衆議院

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第10号 平成30年5月11日(金曜日)

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平成三十年五月十一日(金曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 中山 泰秀君

   理事 小田原 潔君 理事 木原 誠二君

   理事 新藤 義孝君 理事 鈴木 貴子君

   理事 山口  壯君 理事 末松 義規君

   理事 小熊 慎司君 理事 遠山 清彦君

      小渕 優子君    黄川田仁志君

      熊田 裕通君    高村 正大君

      佐々木 紀君    杉田 水脈君

      鈴木 隼人君    田中 英之君

      辻  清人君    渡海紀三朗君

      中曽根康隆君    船橋 利実君

      星野 剛士君    三ッ林裕巳君

      宮澤 博行君    宮路 拓馬君

      宗清 皇一君    山田 賢司君

      阿久津幸彦君    神谷  裕君

      亀井亜紀子君    篠原  豪君

      山川百合子君    吉良 州司君

      関 健一郎君    太田 昌孝君

      岡田 克也君    穀田 恵二君

      丸山 穂高君    井上 一徳君

    …………………………………

   外務大臣         河野 太郎君

   外務副大臣        中根 一幸君

   厚生労働副大臣      高木美智代君

   防衛副大臣       山本ともひろ君

   外務大臣政務官      堀井  巌君

   農林水産大臣政務官    野中  厚君

   政府参考人

   (内閣官房TPP等政府対策本部政策調整統括官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 飯田 圭哉君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 増島  稔君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 松浦 博司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 長岡 寛介君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 志水 史雄君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    鈴木 量博君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    山野内勘二君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   三上 正裕君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    相星 孝一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         天羽  隆君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房国際部長)          渡邉 洋一君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難部長)            奥島 高弘君

   外務委員会専門員     小林 扶次君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月七日

 辞任         補欠選任

  緑川 貴士君     井上 一徳君

同月十一日

 辞任         補欠選任

  黄川田仁志君     田中 英之君

  熊田 裕通君     星野 剛士君

  辻  清人君     宮路 拓馬君

  堀井  学君     宮澤 博行君

  阿久津幸彦君     亀井亜紀子君

  山川百合子君     神谷  裕君

  関 健一郎君     吉良 州司君

  岡本 三成君     太田 昌孝君

同日

 辞任         補欠選任

  田中 英之君     三ッ林裕巳君

  星野 剛士君     熊田 裕通君

  宮澤 博行君     宗清 皇一君

  宮路 拓馬君     辻  清人君

  神谷  裕君     山川百合子君

  亀井亜紀子君     阿久津幸彦君

  吉良 州司君     関 健一郎君

  太田 昌孝君     岡本 三成君

同日

 辞任         補欠選任

  三ッ林裕巳君     黄川田仁志君

  宗清 皇一君     船橋 利実君

同日

 辞任         補欠選任

  船橋 利実君     堀井  学君

    ―――――――――――――

四月十九日

 沖縄・高江の米軍ヘリパッドを撤去することに関する請願(志位和夫君紹介)(第九八九号)

 沖縄県民の民意尊重と、基地の押しつけ撤回に関する請願(志位和夫君紹介)(第一〇三五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

中山委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官飯田圭哉君、大臣官房審議官増島稔君、大臣官房参事官長岡寛介君、大臣官房参事官志水史雄君、北米局長鈴木量博君、国際法局長三上正裕君、領事局長相星孝一君、農林水産省大臣官房総括審議官天羽隆君、大臣官房国際部長渡邉洋一君及び海上保安庁警備救難部長奥島高弘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中山委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。末松義規君。

末松委員 おはようございます。立憲民主党の末松義規でございます。

 きょうは、北朝鮮問題が非常に今さまざまに動いているところでございますけれども、それは後でやるとして、最初に、私のずっと政治家として心の中に持っていた、疑問を含めて日米の地位協定について、ずっと私、考え続けているところがございますので、そこの質疑から始めさせていただきたいと思います。

 私も、外務省に入る、あるいは外務省時代を通じて、国際法ということを若干かじって、また勉強もしてきたことなんですね。

 そこで、第一の資料、今お手元にあります一枚目、外務省のホームページで「日米地位協定Q&A」というのがございまして、「米軍には日本の法律が適用されないのですか。」というところで、「一般国際法上、駐留を認められた外国軍隊には特別の取決めがない限り接受国の法令は適用されず、このことは、日本に駐留する米軍についても同様です。このため、米軍の行為や、米軍という組織を構成する個々の米軍人や軍属の公務執行中の行為には日本の法律は原則として適用されませんが、これは日米地位協定がそのように規定しているからではなく、国際法の原則によるものです。」と、こう書かれているんですね。ここに、ちょっと私は非常にひっかかってきたわけでございます。

 そもそも外国軍隊と受入れ国との関係というのは、まず受入れ国の国家管轄権が最初にあって、そのもとに駐留軍地位協定という、例外的な範囲内で受入れ国の管轄権の放棄がなされているというのが一般的な私は認識であったわけでございます。それが、しかるに、日本ではあたかも在日米軍の管轄権がまず第一にあって、その上で日本の国家管轄権があるような書き方がなされているし、そのような印象を持ったわけですね。

 今読んだように、この外務省のQアンドAに書かれているように、「これは日米地位協定がそのように規定しているからではなく、国際法の原則によるものです。」こういうふうに書かれてあるわけでございます。これはちょっとおかしいなというのが私の印象でございまして、ちょっとその前に、これの背景を私の方で説明させていただきます。

 この資料の三枚目、追加資料というところで、これは衆議院の調査局の外務調査室がつくったものでございますけれども、まず、上に書いてあるように、日本の敗戦というのを通じて米軍による日本の占領が行われてきた。これは一九四五年ですね。それから、日本国憲法の施行が一九四七年でございますから、米軍の占領下において憲法が公布されたということ。その後、一九五二年に日本の主権が回復をした。それと同時に、サンフランシスコ平和条約、そして旧日米安保条約、さらには行政協定が発効した。そして、その改定のような形で、そのまま継続的に一九六〇年に現在の日米安保条約と日米地位協定が発効をしたということで、それ以来、この日米安保条約及び地位協定は一度も改正がなされていないということでございます。

 余り、異常な状況下、占領軍の中で憲法が公布したからということを強調すると、いかにも、末松、おまえは憲法九条改正派かと言われそうなので、誤解されたら困るので、憲法九条に対する私の立場を先にちょっとだけ申し上げますけれども、私自身は憲法九条を守るという立場を堅持してきているわけでございます。

 そして、もっと正直に言うと、外務省勤務の前半の時代には憲法九条改正派に私も属していました。その後、在イラクの日本大使館勤務時代にイラン・イラク戦争というものに巻き込まれまして、その戦時下で、イランから大量のスカッドBというミサイルの攻撃にさらされて、隣でミサイルが爆発して、本当に生々しい、想像を絶するような戦争体験をやって、そして一年間戦時下の中で逃げ惑ったような体験を持っているわけですね。それから私は憲法九条改正派から憲法九条護持派に考え方が百八十度変わったという、私自身の経験があるわけでございます。

 話がちょっとそれましたけれども、要は、この外務省の書き方を見ると、何か、米軍の占領下での憲法の発効という特殊事情を踏まえて、安全保障については日本の国家管轄権がまず米軍にあって、そのもとで、何か奴隷意識のようなもの、これを非常に私は感じるわけですね。

 そこで、ちょっと外務省の方にお伺いしたいんですけれども、これは追加資料の三、今のQアンドAをここで二番目に書いているのと、三番目に、米国務省の要請に基づいて国家安全保障諮問委員会という報告書が二〇一五年に出ていますけれども、この諮問委員会の報告書では米軍と受入れ国との関係について書いてあるわけです。ちょっとこれを読みますと、「ある国に所在する者には、当該国がその国家管轄権について一部の制限に同意している場合を除いて、当該国の法令が適用されるのが、一般的に受け入れられている国際法の原則である。」と。駐留軍地位協定は、この原則に関する合意された例外を規定するものであり、協定によって、受入れ国は、派遣国の利益のために、本来有する一定の管轄権及びその他の権利を放棄することに合意していると。

 つまり、この国家安全保障諮問委員会の報告書では、国際法の原則というのが、当該国の法令が適用されるのが一般的、つまり、受入れ国の法令が適用されるのが一般的に受け入れられているんだ、これが国際法の原則だと言っている。

 ただ、外務省のこのQアンドA、今上にあるものを見ると、地位協定がそのように規定しているからではなくて、国際法の原則によると。これが、米軍及び軍属の行為に対しては、日本の法律は原則として適用されないと書いてある。これはちょっとおかしいのではないかと思うんですが、その点はいかがですか。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、委員御指摘のございました、追加資料三ページ目にございます米国務省の要請に基づく国家安全保障諮問委員会でございますけれども、これは確かにアメリカの国務省のホームページに記載がございまして、この機関は、まさに国務省に対する独立のアドバイズのための機関として設定されているものでございまして、アメリカの国務省の機関自体ではないというふうに私ども認識しております。

 いずれにしましても、国務省に対するアドバイズのための機関として設定されたものですので、この機関について、私どもとしてコメントする立場にはございません。

 また、御指摘のございました地位協定の問題でございますけれども、外務省のホームページの問題でございますが、在日米軍の行為や、米軍という組織を構成する個々の米国人や軍属の公務執行中の行為には日本の法律が原則として適用されないことを一般的な形で定めた条文が日米地位協定に規定されているわけではございません。

 外務省としては、これまで御説明してきているとおり、これは一般国際法によるものであるというふうに考えてございます。委員御指摘の外務省ウエブサイト等における説明の中で、日米地位協定がそのように規定しているからではなくというふうに記載されているのは、この事実を説明したものでございます。

末松委員 通常、駐留軍がそこで駐留することについて、一般の国際法ってあるんですか。ちょっとそれを言ってくださいよ。

三上政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論として、一般国際法上、軍隊が受入れ国の同意のもとでその国にある場合に当該軍隊はその裁判権等から免除されているという考え方のことを言っているということでございます。

 ただ、個別具体的な事象において、派遣国と領域国のいずれが優先的に管轄権を行使するかについては、そういった外国におります軍隊の地位に付随する考え方を踏まえた上で、そういう原則を踏まえつつ、必要に応じて派遣国と接受国との間の協議等を通じて具体的取扱いが決定されるということが一般的になっているということでございまして、日米地位協定はこうした具体的な取扱いをあらかじめ定めたものと考えております。

末松委員 いや、だから、私は、ここに書いているように、一般国際法と言っているけれども、それは何だと言っているわけですよ。

 あなたが今答えたのは、それぞれの国が、それぞれの接受国とそれから駐留軍の国との間で全部取決めがなされているわけであって、それは個々違うわけですよ。米韓、あるいは日米、そして日・フィリピンもそうだったし、あるいはNATO、全部違うわけですよ。そして書き方も全部違って、それを何で一般国際法というのか、そこについて説明してくださいと言っているわけです。

三上政府参考人 お答え申し上げます。

 一般国際法ということを申し上げましたけれども、この一般国際法につきましては、国際社会の国々を一般的に拘束する国際法として、主として慣習国際法を指すものであると考えております。それから、慣習国際法に加えて、国連憲章に代表される普遍性の高い条約を含めた意味で用いられる場合が多いというふうにも理解しております。

 それで、先生御質問の、では、どこに書いてあるのかということにつきまして、ここを見れば全部書いてあるということはございませんが、そこの、一般国際法の慣習法の中で、外国で活動する軍隊というものにつきましては、先ほど申し上げましたように、受入れ国の同意でそこにいる場合には、その軍隊は裁判権等から免除されるという考え方は確立されると考えております。

 その上で、しかし、具体的な事案に応じて、その国の事情等に応じて、管轄権をどう調整するかということについてはそれぞれの国が地位協定等で整備している、こういう考え方だと思います。

末松委員 だから、甘い書き方をするなということなんですよ。これは一般国際法という話ではなくて、しかも、ここで書いてあるように、国際法の原則によりますって、冗談じゃないですよ。私も、それは、外務省に入るとき、あるいは外務省のとき国際法を一応かじりましたよ。それはあなたの方が当然すごく勉強されているしあれだけれども、でも、国際法の原則とか、あるいは、さっきあなたが言われた国際慣習法に、この地位協定のことが書いてありますか。さっきあなたが言ったように、個々にしか書いてないでしょう。もう一回答えてくださいよ。

三上政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、慣習法ですので、どこかに書いてあるということではございませんけれども、外交官とかそういうのもあると思いますけれども、軍隊というものについても、外国で活動する場合には、それに付随してそのまま受入れ国側の法令を全て適用して、場合によっては裁判権に服せしめるということが、軍隊については特別な法的な地位があってできないんだという一般的な考え方、これは慣習法上の考え方で、ここを見れば書いてあるということではないんですけれども、そういうふうに理解しているということでございます。

末松委員 だから、私が言いたいのは、国際慣習法とか、確かに、いろいろな地位協定の接受国の関係でいけば共通部分があるよと、共通部分を示して、そういったふうに決められていることが多いですねということ、これは言えるわけです。ただ、それがあたかも国際慣習法ですというような言い方というのは、それはないだろうというのが私の問題提起であって、それは、あなたが今うなずいているように、ここで外務省の考え方がちょっとトリッキーなんですよ、本当に。

 一般国際法上とか国際法の原則とか、こんなことを言って、私も一瞬そういうふうに印象を持ったんですよね、ああ、こんなものなんだ、全部米軍が、在日米軍は好き放題やれるんだみたいなところの印象を持ったのは、基本的に、何かあたかも国際慣習法という一般法があって、それで規定されているような言い方、これは絶対におかしい。

 だから、私は、この第二番目の、QアンドAで、これは日米地位協定がそのように規定しているからですと書けば、これは日米地位協定がきちんとやっているんですね、そのもとに我々としては動いているんですねということがよくわかるわけですよ。

 でも、この書き方は、「日米地位協定がそのように規定しているからではなく、国際法の原則によるものです。」というふうに書いた途端に、ほかの国の、NATOとか、いろいろな国々との地位協定、それぞれ違うだろう、違うことを、ここで「国際法の原則による」なんていいかげんな書き方をやるなと言いたいわけです。それについて、どうですか。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますけれども、日米地位協定上、米軍人及び軍属の公務執行中の行為に日本の法律が原則として適用されないというようなことを一般的な形で定めた条文はございません。

 したがいまして、こういう適用の除外については、私どもとしては、一般国際法によるものであるというふうに、繰り返し国際法局長の方から答えているところでございます。

末松委員 ちょっと言っていることがわからないんだけれども。日米地位協定が定めているから、こういう軍人とか軍属の公務においては、そこはきちんと、日本の法律は適用されないと書いてあるんですよ、日米地位協定に。それは違うのか。まず、ちょっと確認してくれよ。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、日米地位協定第十六条におきまして、日本国において、日本の法令を尊重することは、米軍の構成員及び軍属並びにそれらの家族の義務であるという旨の規定がございます。これは、在日米軍に限らず、外国軍隊が受入れ国の法令を尊重するのは当然のことでございますので、そのことをこの日米地位協定第十六条は確認したものでございます。

 他方で、先ほど私の方から申し上げましたとおり、その公務執行中の行為について日本の法令が原則として適用されないということを一般的な形で定めた条文は、日米地位協定にはございません。

 この点につきましては、これまで御説明しているとおり、外務省としては、これは一般国際法によって除外されているというふうに考えております。

 以上でございます。

末松委員 日米地位協定上で、一つ一つ、日米地位協定は、日本の法律が適用されないというか制限を受けているということは、ずっとそこは原則としてやってきたわけですよね。要するに、日米地位協定があることによって、そこで制限を受けている。

 これは、全く制限を受けていないという位置づけなんですか、あなた、書いてないと言ったけれども。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 大きな、ざっくりとした形でちょっと申し上げさせていただければと思うのでございますが、あくまでも一般国際法の原則として、軍隊には軍隊としてのさまざまな特性がございますので、その外国軍隊が接受国に入った場合にさまざまな形で特権が認められるというのは、これは一般国際法上の原則だということでございます。

 その上で、国に応じて、例えば日米間であれば日米地位協定があって、国と国との間のさまざまな個別の事情を踏まえまして、日米地位協定によって、どういう形でのその免除が可能になるのかというのは子細に定められている、それを定めたものが日米地位協定、そういうものでございます。

末松委員 だから、余り議論を繰り返さないでくださいよ。

 日米地位協定で、そこで日本の主権の制限が行われているわけですよ。だから、日米地位協定だけを書いておけばいいわけで、どうして一般の国際法の原則なんという曖昧な言葉が入ってくるんだというのが私の疑問なんですよ。では、それを答えてくださいよ。

 さっき、三上局長とは話をして、あなたの方で同じことを繰り返してもしようがないんですよ。

鈴木政府参考人 これまでの国会においてでも、外務省の方から累次この点については御説明させていただいておりまして、あくまでも、外国軍隊が接受国に入るということについては、ここはいろいろな特権免除等が発生するのは一般国際法に基づくものであるというのが私どもの国際法の解釈だというふうに考えております。

末松委員 これは確かにいろいろな北米局長が答えていますよ。

 これは、ここでも一般国際法上って、みんな外務省の整理になっているんだけれども、では、要するに、日米の地位協定は、一切、米軍に関しては日本の法律あるいは主権が制限されるということを書いてないんですか。だから国際法の原則を持ってこないとだめなんだ、こういう論理で言っているわけですか。それは累次の国会の答弁も同じことになっていて、それを変えていないだけなんですよ、あなたが言っているのは。

 外務省の根本認識を、ちょっともう一回お伺いしたいです。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 一般国際法上、駐留を認められた外国の軍隊には、特別の取決めがない限り接受国の法令は適用されません。このことは、我が国に駐留する米軍についても同様でございます。

 しかしながら、このことは、米軍がその活動に際し、我が国法令を無視してよいということを意味するものではなく、外国軍隊が接受国の法令を尊重しなくてはならないことは、当該軍隊を派遣している国の一般国際法上の義務であると考えられます。

 日米地位協定第十六条が米軍の構成員及び軍属による日本国法令の尊重義務を定めているのも、かかる考え方に基づくものでございます。

 以上でございます。

末松委員 いや、あなたの意見で言ってくれよ。もう一回同じ答弁を繰り返し読んだら、時間の無駄じゃないか。

 在日米軍が日本の国の法律の尊重義務というのは、書かれているのは、私だって当然読んでいるわけですよ。だから、それは読んでいるけれども、結局、ここの書き方によったら、外務省のこのQアンドAについては、これは日米地位協定がそのように規定していない、だから国際法の原則でやるんだと。

 いや、あなたは一般国際法、一般国際法と言っているけれども、そこはおかしいだろうと。日米地位協定にきちんと全部書かれてますという話じゃないと、日本の主権を制限するのはその協定以外に何かあるのか、こういうことになるわけですよ。

 そこの点だけ、そこに絞ってだけ、あなたの解釈を言ってくれますか。同じことを言わないでくださいよ。

鈴木政府参考人 繰り返しになって申しわけございません。

 私どもの理解としては、一般原則として、国際法上、接受国に対する外国の軍隊のいろいろな特権免除の規定があって、その上で、日米地位協定に基づいて、個別具体的な、在日米軍の駐留に関する個々の具体的な例外、主権免除等の例外規定が個別具体的に定められているというふうに考えてございます。

末松委員 では、あなたの言う一般国際法って何なのかと、もう一回戻りますよ。何なんですか、それは。慣習法だというのは、先ほど三上局長だって慣習法とか言っていたけれども、何を指しているわけ。これは全部、個々の国によって具体的に決められた取決めで厳格に守られているんですよ。あなたの言う一般国際法、ちょっと説明してくださいよ。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 一般国際法とは、慣習国際法に加え、国連憲章に代表される普遍性の高い条約を含めた意味で用いられる場合が多いというふうに理解しております。

末松委員 いや、だから、それは何ですか。国連憲章上なんですか、あるいは国際慣習法なんですか、それを言ってくださいよ。そうじゃないと議論が進まないじゃないか。

三上政府参考人 同じような答弁を繰り返して申しわけございませんけれども、慣習国際法、一般国際法上、先ほど申し上げていますように、軍隊が外国で活動するときの法的な地位という考え方が原則としてある、そういう大きな原則、考え方を述べているということでございます。

 例えば、では日米地位協定のようなものがなければ全てその国の法律が適用されるのかという問いに対して、いや、仮にその地位協定というものが全くなくても、軍隊に対しては接受国の法令がそのまま適用されて場合によっては裁判権を行使するということはできないというこの一般的な考え方、これを原則として、そこの原則をちょっと強調してホームページは書いておりまして、その上で具体的な調整は地位協定でやっているという制度でございます。

末松委員 日米地位協定がなくても軍隊には手は出せない、主権は制限されるということって、ほかの国でもそういうことが当然行われていくなんて到底考えられないんだけれども。地位協定があるから初めて我々としては特別に主権を制限しているわけでしょう。今の発言、問題じゃないですか。

三上政府参考人 申しわけありません。基本的な原則、考え方ということで申し上げた次第でございます。

末松委員 だから、その基本原則というのは、外務省は明らかにしているんですか、そうしたら。これがわからないから、外務省の何か甘い考え方というか、いいかげんな、ふわっとした考え方に、一般原則とかあるいは一般国際法ではといって、結局みんな煙に巻かれているんですよ、議論が。

 では、そこをちゃんと公表してくださいよ、どこがどうなんだと。ぎりぎり言うと、そんなこと、あり得ないんですよ。全部、軍隊はきちんと接受国と派遣国の間で決められている、それしかないんですよ。そうじゃないの。

三上政府参考人 現在、各国とも、大原則だけでは運用ができませんので、それを具体的に、個別の事情に応じて取り決める地位協定のようなものをつくるというのが一般的なプラクティスになっている。日米地位協定もその一つということでございます。

末松委員 では、例えば、これはあり得ない想定なんだけれども、中国軍隊が日本に入ってきました、それに対して日本の国は、主権の制限になっちゃうんですか。

三上政府参考人 今申し上げているのは、接受国の同意の上で軍隊が来る場合でございますので、来るときにどういうことで来るかというのは話し合う必要があると思います。

末松委員 そんなとっぴな私の想定は、基本的には戦争状態になるんですよ、戦争状態ということですよ。

 だから、接受国と受入れ国がちゃんと合意しているというのが、それがまさしく日米地位協定だ、これがあるからみんなそういうふうに従ってやっているということだから、ここに一般原則とか書くべきじゃないでしょう。そこはちょっと、これ以上言っても何か繰り返しになるから。

 大臣も今お聞きになっていたと思いますけれども、そこは私は大臣の方に、更にきちんと検討していただきたいということをお願いしたいと思います。大臣、いかがですか。

河野国務大臣 政府の立場は、今、政府参考人が答弁したとおりでございます。

末松委員 改めて、そこは検討をお願いいたします。

 時間がないので、では、次に移らせていただきます。

 今、北朝鮮の問題でいろいろと動いていて、きょうのニュースだと、米朝首脳会談が六月十二日シンガポールで開催されるとトランプ大統領がツイッターで示したということですけれども、このシンガポールの米朝首脳会談の会合に、日本は何らかの形でシンガポール会談に参加をするんでしょうか。

河野国務大臣 今検討されているのは米朝の首脳会談でございますので、これは米朝で行われるものと認識をしております。

末松委員 ということは、何らか、日本としては、派遣団とかあるいはそういったものは送る気はない、こういうことですね。

河野国務大臣 首脳会談でございますので、この場に安倍総理が参加することは想定しておりません。

末松委員 そんなことを言っているんじゃなくて、日本として何らかの形で参加、別に、安倍総理が参加せよとか、そんなことを言っているわけじゃないんですよ、外務大臣が参加せよと言っているわけじゃないけれども、日本として何らかの形で参加をするんですかというふうに聞いているだけですよ。

河野国務大臣 首脳会談に参加するということは、その場に首脳がいることを参加するというふうに認識をしております。

末松委員 いいですよ、もう。何かこれ以上言ってもしようがない。日本として何か関与をするのかということ。別に、首脳会談に、その場に割り込めと言っているのでは、外交常識からいってあり得ない話だから、そんなことを言われる必要もないよね。

 それから、一連の最近の外交を通じて、北朝鮮による具体的な非核化のステップというのは、北朝鮮より何か示されたんでしょうか。

河野国務大臣 済みません、ちょっと質問の意味がよくわからなかったので、もう一度。

末松委員 いや、最近の、いろいろと動きがありますよね、その動きの中で、北朝鮮によって具体的な非核化のステップとか、あるいはそういうような行動計画を含めて、北朝鮮から何か示されましたかと、それを聞いているんです。

河野国務大臣 今、米朝の間でさまざまなやりとりが行われております。先日は、ポンペオ国務長官が、平壌に御本人が行かれました。

 今その中でさまざまなやりとりというのが行われているわけでございますが、具体的な内容について、これは情報を共有している日本が勝手に対外的に申し上げていいことではないというふうに思っておりますので、差し控えたいと思います。

末松委員 なぜ聞くかというと、やはり具体的な非核化のステップというのがないと対応しようにも対応できませんよねという日本政府の立場があるので、あえてお聞きしているわけです。

 あと、ではもう、それは秘密だから言えないという話であれば、これはどうですか。

 核問題のみならず生物化学兵器、これについて非常にクローズアップされてきているんですけれども、それについて何か進展はあったんですか。

河野国務大臣 従来から、国際社会は、核兵器のみならず生物化学兵器を含む大量破壊兵器の完全かつ不可逆的、そして検証可能な放棄を求めるというのが大前提でございます。

 国連の関連安保理決議においても、核兵器のみならず全ての既存の大量破壊兵器のCVIDというものを義務づけているところでございます。G7の外相会合あるいは先日の日中韓サミットにおいてもそれを確認をしているところでございます。

末松委員 北朝鮮からは、特に何もそれについての反応はなかったということですね。

河野国務大臣 今の時点で日本が北朝鮮の反応を対外的に申し上げるというのは、情報共有を受けている日本として差し控えなければならないというふうに思っております。

末松委員 これも秘密だから言えないと。

 では、拉致問題について聞きます。

 韓国の大統領が北朝鮮に、日本の拉致問題、言ってくれたそうですけれども、それは結果はどうなっていたんですか。

河野国務大臣 文在寅大統領から金正恩委員長に対して、拉致問題に関する問題提起というものをしていただいたところでございます。

 これは、安倍総理から文在寅大統領に拉致問題を南北首脳会談で提起するようにお願いをしたことを受けて、文在寅大統領から金正恩委員長に問題提起をしていただきました。

末松委員 それで、結果はどうだったんですかと聞いているんです。

河野国務大臣 問題提起を結果としてしていただきました。

末松委員 北朝鮮から何か反応はあったんですか、なかったんですか。

河野国務大臣 今の段階で、差し控えたいと思います。

末松委員 これも秘密ということですか。

 中国の首相に対して、やはり、金委員長に直接拉致問題を申し入れてくれというのは、総理から頼んだんですか。

河野国務大臣 九日の日中首脳会談の中で、安倍総理から、中朝のやりとりのあった場合に拉致問題を提起するよう、李克強国務院総理に要請をいたしました。

末松委員 では、李総理の方から、その反応はどうだったんですか。

河野国務大臣 首脳会談における首脳間でのやりとりでございますので、こちらからの発言について対外的に公表するのは問題ないと思いますが、先方の反応について首脳会談の中身をこちら側が申し上げるのは適切でないというふうに思っております。

末松委員 これも外交秘密ということで、この委員会にはしゃべってもらえないということですね。

 トランプ大統領がアメリカの人質三人を解放したということで、ニュースで沸いているわけですけれども、拉致問題で、今日本は、アメリカとかあるいは韓国、いろいろな間接的な働きかけを強めているわけですけれども、今回、直接北朝鮮に働きかける、こういうふうな意思はありますか。

河野国務大臣 これまでも、さまざまな場面において北朝鮮に対して日本は、日朝平壌宣言でうたっている核、ミサイル、拉致問題を包括的に解決をし国交を正常化させる、この立場に変わりはないということは、さまざまな場面で北朝鮮に対して伝えてきているところでございます。

末松委員 拉致問題については。

河野国務大臣 平壌宣言にうたっているのが、核、ミサイルそして拉致問題を包括的に解決をし国交正常化をするという日本の立場に変わりはないということを、北朝鮮にこれまでさまざまな場面において伝えてきております。

末松委員 では、特に拉致問題だけを働きかけるということではないということですね。

 報道を見ると、日米の立場と、あと中国と韓国の立場が、ちょっと温度差が微妙に違うような印象を持っているんですけれども、そこで、河野大臣の印象というのはありますか。

河野国務大臣 そういう報道があるのは私も拝見をしておりますが、日米韓あるいは中国、ロシアの間で、北朝鮮の核兵器を、完全かつ不可逆的、そして検証可能な方法で廃棄をさせなければいけない、それに対して国際社会として一致して圧力をかけ続けていかなければいけないという認識について差があるとは私は思っておりません。

末松委員 今その立場については差がないということであるし、そうでなきゃいけないと私も思うわけです。

 そうしたら、最後に、日中会談で李総理の方から、ともに自由貿易を擁護したいという発言があったということなんですけれども、米国の関税引上げ問題とか赤字解消問題で、中国側との間で突っ込んだ話合いというのはしましたか。

河野国務大臣 日中首脳会談の中で対米貿易についての直接な議論は行われなかったというふうに認識をしております。

 会談の中で、李国務院総理から、自由貿易をともに擁護しようというような発言があったというのはそのとおりでございまして、自由貿易体制を維持発展させていくために、国際ルールに基づく自由で開かれた経済秩序を構築しようということで首脳間で一致が見られたというふうに認識をしているところであります。

末松委員 外務大臣のレベルで、米国の今の貿易制限的な話について話し合ったことはありますか。

河野国務大臣 それは日中間の外務大臣の間ということだろうと思いますが、王毅外務大臣との何度かのやりとりの中で、最近の保護主義的な動きが見られるというようなことについて、これは、済みません、会談の中でしたかワーキングランチの中でしたか、ちょっとそこは、今記録が手元にないものですから定かではありませんが、そのようなことが話題になったのではないかというふうに認識はしております。

末松委員 これも、これ以上突っ込んでも何か回答が出てきそうにないので、次の話題に移ります。

 イラン核合意からトランプ政権が突然離脱をするというのがありました。このアメリカの離脱の理由というのは、確かに発表もされていますけれども、一応お伺いしておきます。

河野国務大臣 核合意の問題点としてトランプ大統領が挙げられているのが、一つは、イランに対する原子力活動への制約について時限条項が存在する、二つ目として、査察に関する条項が不十分である、三つ目として、弾道ミサイル開発を制限していない、こうしたことをトランプ大統領が指摘されたというふうに認識しております。

末松委員 これに対して、イランとか、非常にかなり強い反発があったわけですけれども、フランス、英国、ドイツとか、関係国の反応はどんなものですか。

河野国務大臣 欧州の独仏英三カ国については、このJCPOA、核合意を維持するべきだということで、アメリカに対しても首脳レベルでさまざま働きかけが行われました。また、イランについては、先日、外相間の電話会談をいたしましたが、今のところかなり抑制的な対応をとっている。イランとしては、このJCPOAがかかわる問題がどのように発展していくかを今静観しているという状況だろうというふうに思っております。

 日本といたしましては、この核合意というのは維持されるべきだというふうに思っておりますので、先日のイランの外務大臣との電話会談を皮切りに、関係国とさまざま意見交換をしながら、このJCPOAの維持に向けて少し日本は動いていきたいというふうに思っているところでございます。

末松委員 TPPの場合もそうだったんですけれども、アメリカについて、政権の交代によって、今までやってきた国際約束が安易にほごにされていくというのを見ると、これはちょっと問題じゃないかと思うんですけれども、その辺についての認識はいかがですか。

河野国務大臣 日本はJCPOAの当事国ではございませんので、これについて日本政府としての立場、是非を述べることは差し控えなければならないと思っておりますが、今回のアメリカの発表により、核合意の維持を困難とするような大きな影響が出るとすれば、それは非常に残念だということを申し上げてもよろしいかと思います。

 日本は、国際的な核不拡散体制と中東の安定にこの合意は資するものだというふうに認識をしておりますので、関係国が引き続き建設的な対応をすることを期待したいというふうに思っております。

 先ほど申し上げましたように、日本としては、この核合意の維持に向けて、関係国と連携をしていきたいというふうに思っているところでございます。

末松委員 そこは、今、日本政府として、従来からの立場を堅持するということをお聞きしました。

 ちょっと、時間がもうなくなってきたので次の話題に移りますけれども、資料の二にございます、中国による我が国の排他的経済水域において、調査とか、あるいは資源採取が行われているというニュースが四月十四日に報道されているわけですが、これについてお聞きしたいと思います。

 まず、大臣の認識をお伺いしたいんですけれども、例えば、北海油田で英国の財政が立ち直った、そういうこともあって、日本も近海のレアアースとか海洋鉱物資源の開発を積極的にやっていくべきだと私は思っておりますし、今回、東大とか早稲田の調査で、レアアースが日本の海域で数百年分発見されたというようなニュースもあって、こういう積極的な海洋資源の開発、これを進めていって、逆にドル箱にするような、こういうことをやればいいと私は思っているんですけれども、大臣の認識はいかがでしょうか。

河野国務大臣 近海におけるこうした天然資源の探査というのは非常に大切なことだと思っておりますし、これがドル箱になれば、こんなにありがたいことはないわけでございますから、そこは、可能性として積極的に追求をする必要はあるというふうに思っております。

 ただ、ドル箱になればいいわけでございますが、これはかなり深い海でございますので、コスト的に引き合うのかどうか、これは、きちんと開発ができるかどうかということはしっかり見きわめる必要があると思います。

末松委員 こういう中で、中国が、日本の了承を得ずに調査、資源採取をしているとの報道がここであるわけでございます。

 上の沖縄トラフの方はどうも境界未画定地域だという話があるわけですけれども、下の方は、これは日本の排他的経済水域の中じゃないかと思うわけなんですけれども、この辺について、二〇〇三年、四年とか、あるいは二〇一二年とか一四年、こういったことで中国が勝手に資源探査をしたとか調査をした、こういう事実はありますか。

奥島政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘の事案は、二〇〇三年から二〇一四年の間、沖ノ鳥島や沖縄付近海域で発生した事案であるというふうに承知してございます。

 いずれの事案におきましても、海上保安庁等により、我が国の排他的経済水域において、我が国の同意を得ない中国海洋調査船による調査活動を確認したものでございます。

末松委員 さらに、中国がこういう調査に基づいて論文を発表してきた。これはずっと前から政府は承知をしていたんでしょうか。

中山委員長 政府側はどなたが答弁なさいますか。

 河野太郎外務大臣。

河野国務大臣 読売新聞でしたかが、学術論文を出して言及しているという報道をしているということは承知をしております。

末松委員 その報道によると、何か、先に論文を発表すると学問上の優先権を得るんだと。そうすると、あたかも領土問題で優位に立つような、そんな印象を受けることがあるんですけれども、それはどうなんでしょう。そういうことがあるんでしょうか。

河野国務大臣 済みません、外務省として、そうした権利のあるかどうかについてお答えをする立場にはないものですから、ちょっと、明確にどうこうとこの場でお答えできません。

末松委員 私もちょっと内閣府の副大臣のときにここで結構、領海的というか、排他的経済水域、大陸棚の延長で努力をしたことがあるので、学術論文とかそういうことはないと思うんですけれども、できればそこはちょっと調べていただければありがたいと思います。それは当然外務省がそういうことを知っている立場にありますので、そこはよろしくお願いします。

 それと、今の中国の違法調査、まあ我が国から見れば。これで日本はどういうふうな対応をしたんでしょうか。まず、現場ではどういうふうな対応をされましたか。

奥島政府参考人 お答えをいたします。

 海上保安庁におきましては、関係機関と連携をしつつ、巡視船及び航空機により、無線、電光掲示板を使用した中止要求、あるいは継続的な監視等、その時々の状況に応じた対応を行ってきているところでございます。

末松委員 その対応というのは、中止をしろとか、そういうところまでいった対応ですか。

奥島政府参考人 ちょっと正確な文言はあれですけれども、我が国の同意を得ない海洋調査は認められない、海洋調査を中止してください、こういう趣旨の要求でございます。

末松委員 要求というところが重要なんだろうと思いますね。

 政府としてはどういう対応をやりましたか。

河野国務大臣 中国船舶による、我が国の同意を得ずに実施をされている調査活動というのがございましたが、これは、外交ルートも通じてさまざま申入れをしてきているところでございます。

末松委員 外交ルートというと、どういうルートでやったんですか。

河野国務大臣 日中高級事務レベル海洋協議等、さまざまな場を活用してやってきたわけでございます。

末松委員 在日本の中国大使館に対しても働きかけを行ったんですか。

河野国務大臣 済みません、個別にどこまでというのは今持っておりません。

末松委員 まあ、私の方はちょっと外務省の関係者から聞いていたところはあるので。

 その日中の事務レベル協議で、日本側がそれはおかしいぞと言ったということに対して、中国側はどういうふうな反応をしたんでしょうか。

河野国務大臣 こうした外交協議の中で、こちら側の対応について申し上げることはできますが、相手側の対応につきましては、外交上のことでございますので、差し控えたいと思います。

末松委員 それはちょっと余りにも答弁なさ過ぎですよ。

 だから、例えば、中国側は中国側の主張を述べたとか、そのくらいの反応は言ってもいいんじゃないですか。

河野国務大臣 外交交渉でございますので、差し控えるべきところは差し控えなければならぬと思います。

末松委員 そうしたら、我が国が言っていることに対して、一切何の反応もこの国会の外務委員会で言えないという話になったら、この外務委員会の存在意義は一体何なんですか。

河野国務大臣 公で議論されることにつきましては、答弁するのはやぶさかではございませんが、こうした、外に出ない交渉の中のことを外に申し上げるというわけにはいかないのは御理解をいただきたいと思います。

末松委員 私も外務省にいましたけれども、外務省で公開の議論というのはほんの少しで、あとはみんな水面下の話ですよ。だけれども、やはり、言えることはしっかり言っていかないと議論にならないじゃないですか。

 さっきからずっと、もうみんな秘密、秘密ということで、結局議論が続かないんですよ。そこは、そちらで言える限りのことを、やはり頭を使って、もうちょっと国民にも伝えると。これは、我々は別に委員会だけで審議しているのじゃなくて、しっかり記録として残るし、また、国民が見るわけですから、そこはやってもらわないと本当に困るんですよ。

 そこは、ちょっと大臣の方で、できるだけそこはきちんとやるということを答弁してもらわないと困ります。

河野国務大臣 適切に対応します。

末松委員 あと、今の日本の領域確保に向けた大臣の断固とした決意を問います。

河野国務大臣 政府として、領土、領空、領海をしっかり守り抜くのは当然のことでございます。

末松委員 午後は、TPPについて審議が行われるということでございます。

 最後に、TPPについて、農水省が出した農産物に対するTPPの影響評価という資料を見たんですけれども、ここで、影響評価といいながら、国内対策をその影響評価の中に入れてやっている。一応、国内対策が、平成二十七年三千億円、二十八年三千億円、そして二十九年三千億円と、計一兆円近く国内対策を入れているんですけれども、それを入れながらの影響評価というのはおかしいと思うんですが、そこは農水省の関係者に問いたいと思います。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 農林水産物の生産額への影響評価につきましては、現実に起こり得る影響を試算すべきものというふうに考えておりまして、協定の発効による効果だけではなく、国内対策の効果もあわせて考えることが適切というふうに考えてございます。国内対策なしの試算を行うことにつきましては、現実に起こり得ることとは異なるということでございますので、これを行うことは考えてございません。

 したがいまして、いわゆるTPP11の農林水産物の生産額への影響試算も、TPP12のときと同様でございますけれども、まず、関税撤廃の例外、それからセーフガード等の国境措置を確保したことなどを前提といたしまして、品目ごとの定性分析を行い、その上で、国内対策も踏まえて試算を行ったということでございます。

末松委員 終わりますけれども、TPPも、先ほど言ったように一兆円近い予算が使われているということは、それだけマイナスの、予算先取りということになると、それは日本の予算に対する影響もあるわけですから、そこをきちんと踏まえてやらないと、いかにも何か最初から結論ありきのようなやり方はおかしいということを指摘いたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

中山委員長 次に、関健一郎君。

関(健)委員 国民民主党の関健一郎でございます。

 質問の機会を賜りまして、御礼を申し上げます。ありがとうございます。

 冒頭、大臣にお伺いをいたします。

 米朝首脳会談が六月十二日にシンガポールで開催されるということが決まりました。会談にどのようなことを期待されているか、これは大臣の期待するもの、大臣の御所感を伺います。

河野国務大臣 場所と時間が決まったようでございますので、この米朝の首脳会談が行われるということに向けて一歩一歩前進が見られているというふうに思います。

 米朝首脳会談では、核を始めとする大量破壊兵器そして弾道ミサイルのCVIDに向けた協議が進展することを日本としては大いに期待をすると同時に、トランプ大統領から拉致問題について問題提起をしていただくことになっておりますので、それに対する北朝鮮の反応というのをしっかりと見きわめていきたいというふうに思っているところでございます。

関(健)委員 ありがとうございます。

 確認ですけれども、完全な非核化に向けてのプロセスというのにも強い期待感をお持ちだということでよろしいでしょうか。

河野国務大臣 今回CVIDを目指しているのは、核に加えて、生物兵器、化学兵器、そして弾道ミサイルについても、同じように北朝鮮に対して完全かつ不可逆的、そして検証可能な廃棄を迫るというのが、これは国際社会の一致した立場でございますので、国際社会を代表して、トランプ大統領からしっかりと北朝鮮と交渉していただきたいというふうに思っております。

関(健)委員 ありがとうございます。

 北朝鮮情勢について幾つか質問をさせていただきます。

 まさに、北朝鮮にスパイ容疑などで拘束されていた韓国系米国人らが解放されるなど、米朝間での交渉の進展が著しいということがあると思います。非核化をめぐっても水面下で何らかの進展があった可能性が高いというのは、複数の専門家も指摘するところだと思います。

 日本としては、完全かつ検証可能で不可逆的な非核化、大臣も言及されましたけれども、また、核に加えて生物、化学を含む全ての大量兵器、あらゆる射程の弾道ミサイルの即時の完全廃棄がなされない限り評価しない、賛同しないという姿勢でよろしいでしょうか。

河野国務大臣 国際社会として、核を含む大量破壊兵器そして弾道ミサイルのCVIDというのが、これまで一致して国際社会が北朝鮮に対して求めてきたことでございますので、その実現に向けての第一歩になることを強く期待をしたいというふうに思っております。

関(健)委員 ありがとうございます。

 少し非核化に向けての具体的な質問をさせていただきますけれども、イランを例にとりますと、イランの核合意は歴史的と評価されましたが、イランはウラン濃縮活動などを十年から十五年制限と、一定の遊びを持たせる、遊びというか余裕を持たせる、イラン側も受け入れやすい内容としての合意があったと思います。

 北朝鮮の非核化について、同程度の譲歩といいますか、遊びというか幅のようなものを認めるというお考えはありますでしょうか。

河野国務大臣 核兵器に関して申し上げれば、完全な非核化ということが条件でございますので、国際社会としては北朝鮮に対してそれを求めていくということになろうかと思っております。

 詳細につきまして、さまざま日米韓を始め国際社会で連携をしているところでございますが、こちら側の手のうちをさらけ出すわけにはいきませんので、具体的な中身については差し控えさせていただきたいと思います。

関(健)委員 ありがとうございます。

 私、連休中に中国に行かせていただきました。その中で、中国の政府関係者の方とお話をさせていただくときに、やはり、北朝鮮に対する認識、複数の方から共通した認識が浮かび上がってきました。日本の専門家とも余り変わらないんですけれども、まずは、国際社会の連携した圧力がかなりきいてきているということがあるようです。

 その方は、その前の日に金正恩さんと高官と一緒に飯を食ったと言っていましたけれども、実は、圧力がきいているんだというのは、言外にやはり複数の高官が言っていたと。つまり、僕たちちゃんとできているんだよというよりは、当事者が結構圧力がきいているということがどうやらあるようです。

 ですから、一つ目は、国際社会の連携した圧力がかなり北朝鮮にきいているんだというのが要因一なんだと思います。

 そして、要因二が、トランプ大統領の予見可能性の低さ。つまり、何をされるかわからないという恐怖感から、余りちゃんと言うことを聞かないとひどい目に遭わされるんじゃないか、そういう素朴な恐怖感があるんじゃないかというのが二点目でした。

 そして、三点目が、北朝鮮は一定の核開発にめどがついたのではないかというのが三つ目の指摘でした。まさに金正恩の権力の基盤でもあるわけですから、簡単に核廃絶しますということを言うわけはないですし、我が国も過去に何度も煮え湯を飲まされた経緯があると思いますので、まさに融和路線はこの三つの要因で進んでいるのかと思います。

 そして、複数の方が口をそろえて言うのが、これは、融和の大きなベクトルというか路線は変わらないものの、時間がかかるんだろうということを口をそろえておっしゃいます。ですから、私は、日本が蚊帳の外だ中だという議論は余り意味がないと思っていますし、この北東アジアの安全保障の枠組みをどうやって構築していくかというのが日本の果たすべき役割だと考えています。

 そんな中で、大臣にお伺いしますけれども、日本の経済制裁もやはりきっちりきいてきているわけです。裏返しに、しっかりと手を緩めずに圧力維持を唱え続けている日本というのがファクターの一つなんだと思います。

 今後、北朝鮮に、経済制裁を解除、解除というか、一つ和らげるよというメッセージを出すことで、我が国の悲願でもある拉致被害者の全員の救出と非核化を後押しするのであれば、その交渉のカードというのも一つ、一定の合理性があるのかなと考えるんですが、大臣の御所感を伺います。

河野国務大臣 おっしゃるように、国際社会の一致した北朝鮮に対する圧力、経済制裁というのが今回の北朝鮮の政策変換に大きな影響を及ぼしたんだろうというところは、おっしゃるとおりだと思っております。

 その上で申し上げれば、今も北朝鮮は制裁逃れをやろうとしている。特に、東シナ海上での瀬取りというのは、かなり巧妙かつ活発になってきております。日米韓、あるいはそこにさまざまな有志国が加わった瀬取り対策の強化というのも今やらせていただいているところでございますので、この国際社会の一致した圧力が抜け道がないように、きちんと圧力がかかっていくというのが、米朝首脳会談を前にして極めて重要だというふうに思っております。

 これまで国際社会は八回北朝鮮と対話をしてまいりましたが、いずれも失敗をしたということを考えれば、北朝鮮が大量破壊兵器あるいはミサイルに関するCVIDをきちんとやるまで圧力をかけ続けていく、これが大事なんだろうというふうに思っております。

 国際社会として、今それに異を唱える国は一つもないと言ってもよろしいかと思います。北朝鮮のCVIDをきちんと実現するために、国際社会で足並みをそろえて、この圧力の最大化、これを維持してまいりたいと思っております。

関(健)委員 ありがとうございます。

 北朝鮮に関して最後の一問なんですけれども、まさに今おっしゃられましたとおり、北東アジアの安全保障は今後どうなるか。米朝首脳会談ももちろん期待したいですけれども、またいつものように、ちゃぶ台返しというのは必殺わざなわけですから、それに対して、不安定になったときもそのリスクを最小限にするというのが日本の一つの役割なんだと思います。

 ですから、今後行うべきである六者協議というのも、日本はぜひイニシアチブをとっていただきたいですし、あとは、外務省の実務の方々にお話を聞くと、やはり核廃棄というのは時間がかかるんだろうと。繰り返し大臣もおっしゃられていますけれども、完全かつ不可逆的な廃棄に向けて検証可能なプロセスをしっかりつくらなければいけない。まさに、日本のとるべき役割というのは、そういう実務の中でのより効率的な非核化に向けた道筋をつけることかと思いますが、改めて日本が今後とるべき役割についてお尋ねします。

河野国務大臣 日朝平壌宣言でうたった核、ミサイル、拉致問題を包括的に解決し国交正常化をするという日本の立場には全く変わりはございません。そういう意味で、今度の米朝首脳会議がどのように行われ、どのような成果を上げるかということを、これはしっかり見ていきたいというふうに思っております。

 六者会合がいいのか、どのようなメカニズムがいいのかというのは、それが終わった後、関係国と連携をしながら考えてまいりたいというふうに思っております。

関(健)委員 ありがとうございます。

 最後に、一方的に、一部報道で、金正恩さんが、文在寅さんもトランプさんも拉致問題解決のことは言ってくるんだけれども日本だけは言ってこないというような趣旨の発言があったというニュースがあったので、ぜひ、日本からも厳しく、拉致問題解決については明確なメッセージをお伝えいただきたいと思います。

 北朝鮮に関しては終わらせていただきます。

 続きまして、たびレジの話をさせていただきます。

 私、先ほど申し上げたように、連休中に中国に行かせてもらいました。そうすると、携帯、スマホのショートメールに、ローミングサービスが使えますというのと、もう一個、たびレジ登録はこちらというショートメールが来るんですね。ちょっとうれしくなりましたけれども、これはどういう仕組みなんでしょうか、教えてください。

相星政府参考人 お答えいたします。

 二〇一六年七月のダッカでのテロ事件を受けまして、たびレジの登録促進を図るために、大手通信のキャリア、ドコモ、au、ソフトバンク、三社の協力を得まして、海外到着後、ローミングサービスの際に送信されるショートメッセージの中に、たびレジの案内文とたびレジの登録サイトのリンクを掲載していただいております。

 携帯端末を海外に持っていかれる渡航者の方に直接たびレジの案内をすることができる取組だと考えております。

関(健)委員 ありがとうございます。

 たびレジなんですけれども、まさに携帯電話会社の皆さんと協力をしていただいたりとか、飛行機の中で映像、動画が出るんですよね。そういうことをやる目的、つまり、この安全情報とかそういうことは、どういう人たちにどういう方法で伝えるべきだとお考えですか。

相星政府参考人 お答えいたします。

 たびレジで対象としておりますのは、海外に渡航される、これは三カ月未満の渡航者を想定しておりますけれども、その方々が、海外での渡航先あるいはメールアドレスを登録することによって、行き先の在外公館あるいは外務省の本省から、現地の安全にかかわる最新の情報あるいは緊急時の連絡を直接受け取れるサービスでございます。また、万が一という事態にありましては、安否確認を行う際にも活用させていただいております。

 やはり、海外に参りますと、日本語で得られる情報が限られている中で、日本語でのそういう情報を得られるという意味でも非常に大きな意味を持っていると考えておりますし、海外で邦人の方がテロやあるいは災害といった事案に遭遇するリスクを下げ、緊急事態における被害を最小限にするために、邦人一人一人に対して適時適切かつ効果的な情報伝達が不可欠だと考えておりまして、そういう意味でのたびレジを活用していただきたいと考えております。

関(健)委員 ありがとうございます。

 今、最後に言っていただきましたけれども、適宜適切、効果的に、これが一番大切なんだと思います。

 たびレジからゴルゴ13の話にちょっと移らせていただきたいんですけれども、なぜゴルゴ13がたびレジを勧めているのかというのを、きのうこのゴルゴ13を思いついた役人の方にお話を聞かせてもらったんです。実はすごい、大変敬意を表するというか、大きな大きな問題意識を持ってこの外務省のゴルゴ13の漫画はつくられていたということがわかったので、ちょっと説明をさせていただきます。

 まさに、先ほど御説明いただいたダッカの襲撃テロ事件がありました。これが二〇一六年の七月一日です。これは、日本人の七人のとうとい命が失われました。ISを名乗る組織が犯行声明を発出しました。市内のイタリアンレストランのホーリー・アルティザンというお店なんだそうです。これは、ピザのおいしいイタリアンレストランなんです。

 それで、外務省がそのときに出していた注意なんですけれども、バングラデシュに関する注意喚起というのを、二〇一五年十月にレベルを上げているんです。どういう注意書きをしてあるかというと、邦人男性がオートバイに乗った者らに拳銃で撃たれ殺害されたほか、点、点、点と、ISに属する組織が邦人を標的としたこと、引き続き日本を標的とする可能性を示唆していますと。そして、欧米関連施設、欧米系外国人が多く利用する施設、レストランに注意してねと外務省はちゃんと呼びかけているんです。ところが、これは外務省のホームページでしか見られないわけです。

 そして、その次です。ラマダンに関する注意喚起というのがありました。これは、特に欧米諸国におけるテロの実行を呼びかけている。というのは、ラマダンでテロをやると功徳があるぞという操作、洗脳をしてローンウルフ型のテロをあおっていることが注意喚起されているわけです。

 それがどういうことかといいますと、結局、この年は六月がラマダンの月だったそうで、金曜日に集団礼拝というのが行われるそうです。そこは宗教心みたいなものが高まるから気をつけてねという注意喚起を外務省はしています。この日付が、六月の十日、十七日、二十四日、七月一日。この日付は集団礼拝があるから気をつけてねと書いてあるんです。それが、この二〇一六年の七月一日なんですね。

 この事件に対応した外務省の職員の方は、もしこの情報を一人でも多くの人に、そして被害に遭われた方に事前に私たちが知らせることができたら、このとうとい命を助けることができたんじゃないか、犠牲が出ることがなかったんじゃないかという強い問題意識を持ったんだそうです。今の、たくさんの情報がもし手元にぱっぱぱっぱメールで入ってきていたら、きょうは危ないんだなという認識になったかもしれない。そういう問題意識から、この外務省の職員の方は、どうすれば一人でも多くの方に知ってもらえるかというのを考えたんだそうです。

 そうしたら、被害に遭われた方は中小企業だったんですね。一部上場企業というのは、いっぱい研修も受けて、企業のお金の中でいろいろ庇護のもとやれますから大丈夫なんです。ところが、海外に進出しよう、リスクをとって頑張ろうとしている企業の皆さん、中小企業の皆さんはそこまで手が回らないこともある。こういう人たちにどうすればアクセスできるのかなと考えたんだそうです。

 そこで、三十から五十歳ぐらいの男性は床屋でゴルゴ13を読んでいることが多いということを考えて、じゃ、ゴルゴ13にたびレジについて言ってもらおうということを考えたんだそうです。

 これは、私もおもしろいなと思いましたけれども、非常に考え抜かれた工夫が敷き詰められているというか、こういうのを一人でも多くの人に本当に知らせるべきだなと思います。

 ここから質問に移りますけれども、このたびレジ、今、海外に出ていく旅行者の人が、旅行に限らずですけれども、海外に出ていく人が年間何万人いて、たびレジに登録している人というのはどのぐらいいらっしゃいますか。

相星政府参考人 お答えいたします。

 昨年の海外への邦人の渡航者数は年間約千八百万人という推定がなされておりまして、その中で、たびレジの登録者数なんですけれども、これは昨年の一年間という数字では出ていないんですが、二〇一八年、一番最近の、五月の新しい数字で、累計登録者数ということになりますけれども、それで約三百六十万人という数でございます。

関(健)委員 ありがとうございます。

 一人でも、まさに、海外のテロなどのリスクから、そういうところからリスクを取り除くということを考えると、恐らくこの数字はもっと上がるべきだし、上げるべきなんだろうと思います。

 どうすべきだと思いますかね、その認知度向上に。具体的な取組について伺います。

相星政府参考人 これまでも、登録者数の増加を図るためにさまざまな努力を行ってきております。

 旅行会社との連携を行ったり、都道府県、政府関係機関への呼びかけを行ったり、また、先ほどのゴルゴ13の安全対策マニュアルもそういうことですし、あるいは、空港等でリーフレットを配布したりポスターを掲示したり、あるいは、国際線の飛行機の機内誌あるいは旅行ガイドブックに載っけてもらうといったような取組も行ってきておりますし、あるいは、さまざまな媒体を使って、フェイスブック、ツイッター、LINEで、このゴルゴも活用した形での広報も行ってきている次第です。

 ただ、まだまだ、委員御指摘のとおり、登録者数は不十分でございまして、更に多くの邦人渡航者に利用していただけるような形にしていきたいと考えております。

関(健)委員 ありがとうございます。

 やはり、それは海外に行く人が全て登録してくれるのが一番いいんだと思います。やはり、おっしゃるとおり、海外にいて日本語の媒体に直面することがなかなかないという中で、まさに、きょうは地下鉄に注意してねとか、そういうレベルの情報をぱっと入れてもらうことがいかに海外での安心につながるか。まさに生命財産の保護という一番根幹の役割ですから、少しでも多くの人に認知をして、登録をさせていただきたいということですけれども。

 では、具体的に、今フェイスブックとかおっしゃいましたけれども、それは大事なことだと思います。高倉大臣の動画もありますけれども、ああいうことでやはり外務省のホームページをクリックするという、これだけでもまさに一つの大きな進展なわけです。

 ですから、そういういろいろな多角的な取組を進めていくべきだと思うんですけれども、私もそうですし、外務省の皆さんもそうだと思うんですけれども、これはやはり頭がかたくなってしまうんですね。こういうときに、どういう人をターゲットにして何を伝えたいのか、そういうので御飯を食べている民間企業の方々がいるわけです。

 例えば、今、私たちがニュースを見るときには、新聞も見ますけれども、やはりスマホのアプリで見るわけですよね。ああいう広告のところにもしたびレジとあったら、それは非常にアクセスがふえるわけです。それとか、フェイスブックというのは、もう政治家とかそういう人しか使わないみたいな言われ方もさんざんしていますけれども、実は、ツイッターとかインスタグラムとか、そういう方が若い人にはよりアクセシビリティーが高い。

 つまり、さっきキーワードであった、適宜適切、効果的にというのがあるんですけれども、これは、やはり一人でも多くの人にアクセスしてもらうというために、いっそのこと、民間企業とか、まさにマーケティングとか、そういうのを専門としている人たちに、その認知向上のために委託とかそういうことをしてみるというのはいかがでしょうか。これをお伺いします。

河野国務大臣 海外における邦人の安全確保というのは、政府としての重大な責務でございますが、おっしゃるように、そのための手法というのはさまざまあるんだろうと思います。そこに民間のお力をおかりするというのはとても大切なことだと思っていまして、だからこそゴルゴ13とのコラボというのもやりましたし、あるいは、通信キャリアの中には、今、外務省と協力をしてくださっているところもございます。

 さまざまな形で民間と協力をしながら、民間の力をかりながら、適時適切に、どうしたら効果的な情報発信ができるか、これはやっていかなきゃいかぬというふうに思っておりますので、いいお知恵がありましたら、ぜひ外務省の方にお寄せいただけたらと思います。そこは、しっかり民間と協力してまいりたいと思います。

関(健)委員 大臣がしっかり後押しするという御発言をいただきましたので、僕も、できることは何でもやりますので。

 サイドストーリーというふうに思われる方も多いかもしれませんけれども、やはりこのゴルゴ13動画を思いついた方の情熱というのは尊敬に値しますし、もし私たちがもう少し発信力があれば、あの不幸な事故は防げたのにという強い思いから、このゴルゴ13動画ができ上がっているわけです。

 ですから、こういう思いをまさに昇華させるためにも、一人でも多くの方に、海外に行く一人でも多くの方にこういう情報が適宜適切、効果的に行く仕組みを考えていくべきだと思います。

 このゴルゴ13動画に関しては、これで終わらせていただきます。

 次の質問に移らせていただきます。

 SDGsアクションプランというのがありまして、これは実は、私の地元のチョコレート屋さんから、これはすばらしい取組だ、なぜか外務省が主管しているということなんですけれども、恐らく、SDGsと言われても、みんな何のことやらさっぱりわからないと思いますので、これについて御説明をお願いします。

増島政府参考人 お答え申し上げます。

 持続可能な開発目標、すなわちSDGsと申しますのは、誰一人取り残さない包摂的な社会と持続的な成長を実現する鍵でございます。

 持続的な開発目標につきましては、二〇一六年の五月に、総理を本部長、官房長官及び外務大臣を副本部長といたしまして、全閣僚を構成員とするSDGs推進本部を設置いたしまして、具体的には、二〇一六年の十二月に、推進本部の第二回会合において、ビジョンや実施原則、優先課題等を定めまして、SDGs実施指針を決定いたしております。

 先ほど委員から御指摘のありましたSDGsアクションプラン二〇一八につきましては、二〇一七年の十二月の第四回SDGs推進本部会合で決定したものでございまして、SDGsの推進を通じまして、創業や雇用の創出を実現し、少子高齢化やグローバル化の中で実現できる豊かな活力のある未来像、これを世界に先駆けて示していくための、日本ならではのSDGsモデルを構築することを目的としたものでございます。

関(健)委員 ありがとうございます。

 これは実はすばらしい制度で、国際的な普遍的な実現すべき哲学などについて、国内で何ができるかやっていこうよということなわけですね。

 北海道の下川町というところ、受賞したのは内閣総理大臣賞でしたっけね、があるんですけれども、これが、本当に過疎の限界集落から、そこに歯どめがかかって、今、右肩上がりになりつつあるんですけれども、まさに町おこしにこの仕組みを使っておられたんだそうです。

 私がなぜこの話をするかといいますと、先ほど登場しましたチョコレート屋さんが、豊橋でチョコレートをつくっているんです。その方は、障害のある方とかを雇用して、そのチョコレートを、無理やり買ってもらうとかじゃなくて、本当においしい、最高のクオリティーのものを高く価値をつけて売ろうという取組を進めておられる方なんです。ラ・バルカというチョコレートの会社なんですけれども。

 その人は、下川町の役人の人から電話がかかってきた、私の町でチョコレートをつくってくれませんかと。そういう電話は結構あるのでお断りしようと思ったんだけれども、とりあえず来てくれと何度も電話があるので行ってみたら、まさにこのSDGsを使った枠組みがもう既に機能し始めていた。

 これは今どういうことになっているかというと、一部上場企業とか、そういう企業ブランドを高めようとしている人たちにとっても結構これは使われているんですね。ここは具体名を申し上げませんけれども、大手商社とかでもこの枠組みを使うことで、CSRとか企業メセナとかそういう言葉がありましたけれども、このSDGsの枠組みの中でということ自体が企業ブランドの向上につながるというのは、割とそういう企業の人たちの間ではみんな知っているというか、そういうふうになりつつあるんだそうです。恥ずかしながら私も知りませんでしたけれども。

 この話のポイントは、そのチョコレート屋さんが下川町にチョコレート工場をつくる、そうしたら、なかった雇用を創出することができる、雇用を創出して、その生産物をまた全国に売ったりするということで、経済が回るわけですね。地方経済の活性化につながっているわけです。

 外務省として数少ないコンテンツですよね、地方経済の活性化につながるというのは。ですから、これは物すごく貴重な枠組みですし、もっと拡大をしていくべきですし、認知度向上に向けた取組をするべきだと思いますが、御所見を伺います。

増島政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど委員から御指摘のありましたSDGsアクションプラン二〇一八の中では、日本のSDGsモデルの柱の一つといたしまして、SDGsを原動力とした地方創生というのを掲げてございます。現在、政府が一体となって、先駆的モデルとなる自治体を支援しながら、成功事例を普及、展開することとしております。

 先ほどもまた委員からも御指摘のありました下川町ですけれども、昨年十二月に実施いたしました第一回SDGsアワードというのがございますが、こちらで下川町はSDGs推進本部長賞を受賞されております。まさに地方自治体によるSDGs推進の先駆的事例でございます。

 先ほど申し上げました支援、こういった賞などを通じまして、こうした優良事例をふやしてまいりたいというふうに考えております。

関(健)委員 これはまさに内閣総理大臣賞を受賞した町長さんのコメントがあるんですけれども、地域活性化、地方創生のツールとして取り入れ、目指す姿の実現に向けて邁進していきたいと。つまり、これは結構すごい話なんですよね。限界集落で林業しかなかったような町がこの枠組みを使って歯どめをかけて活性化が進んでいるという話ですから、いろいろなところにこれを認知していただいて、これを使ってもらえるような取組をぜひ加速していただきたいと思います。

 このSDGsに関しては、これで終わらせていただきます。

 大臣に伺います。外務省の仕事の簡素化についてお尋ねします。

 これは報道で、外遊冊子廃止という、ロジブックとかそういうのを廃止するという報道があったんですけれども、私は、国会議員にならせていただいてまだ半年ですし、非常に非効率的な霞が関、永田町の部分というのがよく目につくんですけれども、このロジブックの廃止というのは大臣のお考えというのは、これは報道どおりでしょうか。お考えを伺います。

河野国務大臣 だんだん国際化が進展する中で、外務省がやらなければいけない業務というのは極めてふえてきておりますが、外務省の予算あるいは人員というのがなかなかそれに合わせて飛躍的にふえるということはこの先考えにくいという中で、限られた予算、定員の中で、簡素化できるものは簡素化して、必要なところへやはりリソースを振り分けるということをやらなければいけないんだろうというふうに思っております。

 外務大臣が出張をする、あるいは国際会議その他の行事を国内で行うというときに、ロジがスムーズにいくように、職員がこれまでロジブックというのをつくって極めて丁寧に準備をしてくれておりました。これまで出張に行っても、その出張の流れというのが極めてスムーズにいっておりましたが、多少外務大臣が出張のときに不便を感じても、簡素化できる業務を簡素化して、その分、もう少し本来やらなければいけない外交の本来業務にリソースを振り分けることができれば、我が国全体としてその方がプラスではないかというふうに考えておりまして、こうしたロジブックをやめる。

 あるいは、幾つか実は惰性でやっていた、よく手紙なんかをその人宛てに入れる、ピジョンボックスというんでしょうか、ところが、最近メールを使うものですから余りそれを使うことはないんですけれども、今まで外務大臣が出張するときにはロジ室にそれを設置していたということで、それがずっと続いていましたけれども、よく考えたら余り使わないよね、だったらそういう業務はやめてしまってもいいかなということで、より効率的、効果的にできるように、少し業務の見直しというのを積極的にやろうではないかということで、ロジブックのようなものは廃止をさせていただきましたし、領事局の中の領事業務というのは、少しIT化を進めて効率的にできるようにする。

 今さまざまな取組をやらせていただいているところでございますので、しっかりとリソースの集中ができるようにやっていきたいと思っております。

関(健)委員 ありがとうございます。

 大臣になってしまうと、いろいろまさに見えないところもあると思うんですが、やはりたくさんの方の、段取りというか、そういうのでまさに外遊日程というのは固まっていると思うんです。

 私も、記者のときに、サミット、経済大臣会合というのにくっついて行かせていただきまして、そのときは二階先生が経済産業大臣だったんですけれども、そのときに、やはり日本だけ突出して、ついている役人の数が多いんですね。

 それで、イタリアのスカイオーラという大臣とバイ会談をやるとなったときに、日本人は、まず二階大臣がどこから入って、どの階段を上って、万が一トイレへ行きたくなったらどっちにあるか、電気はそこにある、トイレットペーパーは大丈夫か、この細かい段取りまでやって、多分ロジブックというのはそのレベルだと思うんですね。すごいものだなと僕は思ったんですけれども。それで、大臣はこっちから、ドアから入って、スカイオーラさんがこっちで待っていて、笑顔でマスコミの方を向いてください、カメラはこっちですよ、こういう段取りが役人の皆さんによってされていたわけです。これは大したものだなと思ったんですけれども、三十分前ぐらいから、もう役人の皆さんが五人も六人もいるわけです。

 一方、イタリアのスカイオーラ大臣の周りの人は誰もいないわけです。それで、三十分前ぐらいからもう日本の役人がいらいらしているわけです。何で向こうの担当者がいないんだ、こうやってこうやって段取りを決めなきゃいけないのにとか言って。そういうことで、十五分前ぐらいになってもまだ来ない。十分前になってもまだ来ない。これでもう日本の役人の人は怒っちゃうわけです。何だ、段取りが全然なっていないじゃないかと。あげくの果てに、英語じゃなくて日本語でその人は怒っていましたけれども。

 さすがに、イタリアの役人の人も大体十分前ぐらいになって来て、スカイオーラさんはどこから入ってくるんですかという質問も、わからない、時間どおりに来るだろう、こういう感じなんですね。ですから、それがグローバルスタンダードというか。それで、まさに日本の大臣が五分前ぐらいに行ったときに、そのスカイオーラ大臣は本当に直前に、想定したドアと別のドアから入ってきたんですけれども、本当にここにコーヒーの跡がついていたんです。

 つまり、がっちがちにロジを固めた日本と、イタリアの、ある意味適当というか、時間どおり来たからいいじゃないかみたいな、圧倒的な差を見たんですけれども。まさにこれはオーバースペックといいますか、やり過ぎなんですね、一言で言うと。

 ですから、この質問の趣旨は、そのロジブック廃止とか、ある意味当たり前の感覚というか、世の中の皆さんからいえば当たり前の感覚というところがあると思いますので、引き続き、不断の見直し、効率化というのを続けていただければと思います。

 大臣、まだまだ効率化の必要性はあると思いますが、最後、お伺いします。

河野国務大臣 世の中いろいろなスタンダードがありまして、ラテンアメリカンスタンダードとかイタリアンスタンダードとか日本のスタンダードとか、いろいろなのがあって、それはもう臨機応変に対応する、その臨機応変な対応力というのも必要なのではないかなと思いますし、あるいは、先方から日本にお迎えをするときに、日本式のスタンダードで非常に物事がスムーズに、流れるようにいくというのも、これもある面、おもてなしの一つで、外交の一部かなというふうに思います。

 だから、全部一律にやるというよりは、やるべきところでやる、多少大臣が不便をしても、手を抜くところは手を抜いて、必要なことにその力を振り分ける、そういうことが臨機応変にできるような外務省にしていきたいというふうに思っております。

関(健)委員 終わります。ありがとうございました。

中山委員長 次に、岡田克也君。

岡田委員 まず最初に、北朝鮮問題について、少し、最近、日中韓サミットもありましたので、確認をしたいと思います。

 先ほども議論に出ておりましたCVID、核兵器を含む大量破壊兵器及び弾道ミサイルの完全、検証可能な、かつ不可逆的な方法での廃棄ということについて、大臣は先ほど、関係国間、具体的には日米韓中ロの間で差があるとは思っていないというふうに答弁されたわけですが、今回の日中韓サミットにおける共同宣言では、このCVIDは明記されなかったわけです。そこで書かれているのは、「朝鮮半島の完全な非核化」それから「関連国連安保理決議に従った、国際的な協力及び包括的な解決」という言葉であります。

 日本側としては当然CVIDを明記したいと考えたと思いますが、それが共同宣言に入らなかったことについて、どういう経緯があったのか。もちろん、外交上のやりとりについてお話しできないこともあるとは思いますが、ここは一番肝のところなので、日本と韓国、中国の間でスタンスの差が微妙にあるのかないのか、そこについてお話しいただきたいと思います。

河野国務大臣 先ほど申し上げましたように、北朝鮮の大量破壊兵器そして弾道ミサイルのCVIDというところにつきましては、恐らく国際社会一致しているというふうに思っておりますし、この北朝鮮の非核化が大事だ、そこに至るまで圧力をきちっとかけ続けなければいけないということに関して申し上げれば、日米韓はもとより、中国についてもそこは同じでございます。

 一月でしたか、私が北京に参りまして、王毅外務大臣、ヨウケツチさんあるいは李克強国務院総理とお目にかかった、そのときから、中国側も北朝鮮の非核化に向けてきちんとした圧力をかけるというのが大事で、北朝鮮あるいは朝鮮半島の非核化というものをやらなければいけないということについて、中国に関してもそごはないというふうに思っておりますし、また、ロシアについても、ラブロフ外務大臣が来日されたときに、そこは認識は同じでございました。

 今回の共同宣言の中にCVIDが入っていないという報道が一部あったようでございますけれども、今回の共同宣言には、安保理決議に従って北朝鮮問題の解決に向けて協力をするというふうに明記をしてございます。

 安保理決議の中には、北朝鮮による核兵器を含む大量破壊兵器及び弾道ミサイルの完全、検証可能かつ不可逆的な方法での放棄というのが明記されておりますので、安保理決議に従ったというところは、つまりCVIDということでございます。

 日中間でもし何らかの違いがあるとすれば、日本は、例えば安保理決議に基づく経済制裁というのはもちろんやるわけでございますが、それに加える独自制裁というのもやるわけでございます。中国は、やはり同じように、安保理決議だけでなく中国の独自制裁というのが行われているようでございますけれども、中国は基本的に、安保理決議でやるんだというのが中国の立場でございます。

 今回の日中韓サミットの共同声明とは直接は関係はございませんけれども、中国は国際社会で決めたことをきちんきちんとやる。そのかわり、中国も国際社会の一員として安保理決議に含まれているところは完全に履行する。我が国は、それに加えて必要ならば、それに加えた制裁もする。そういうところで、立場に違いがないかと言われれば、そこに微妙な差はあるのかもしれません。

 ただ、中国は、安保理決議の制裁だけでなく、それに加えた独自制裁をやっているようではございますから、どうなのかというところはあるかもしれませんが、そういうニュアンスの差はあるのかもしれませんけれども、少なくとも北朝鮮あるいは朝鮮半島の非核化ということについては同じ方向を向いて進んでいるというふうに認識をしてよろしいのではないかと思っております。

岡田委員 CVIDというのは、目指すべきゴールということだと思うんですね。制裁についてはそのプロセスの話で、どういうふうにして制裁というものを、そのゴールを目指して考えていくかという話で、ちょっとこれは違う話だと私は思います。

 そのゴールであるCVIDについて、報道によれば、日本国政府としてはそれを共同宣言に明記したいと考えたけれども、それは果たせなかった。

 李克強首相との日中の首脳会談がありましたが、その外務省の発表文書では、安倍総理がCVID実現のために日中で連携することが重要であると述べ、「両首脳は、安保理決議の完全な履行は引き続き日中共通の立場であることを確認した。」と。つまり、安倍総理がCVIDのことを持ち出して日中で連携する必要があると言ったことに対して、中国がどう答えたかということはここには書いてないわけですけれども、突然安保理の決議の履行の話になっている。

 意味は同じかもしれませんが、やはりそこに微妙な違いがあるのではないか。つまり、CVIDと安保理の決議の履行というのがイコールであるというのであれば、もう少し中国側の反応というのが、安倍総理が連携が必要であると言われたわけですから、それに対してどう答えたかというのがあったはずだし、それが書いてないというのはやはりそこに議論が残っているのではないかというふうにも考えられるわけですが、いかがなんですか。

河野国務大臣 先ほども申し上げましたように、安保理決議は核兵器を含む大量破壊兵器及び弾道ミサイルのCVIDというのを明確にうたっているわけでございますから、安保理決議とCVIDの間に差があるというふうに私は考えておりません。

岡田委員 ですから、日本政府がCVIDを明記したいというふうに主張したはずですが、それがそうならなかったのは、じゃ、どこに原因があるんですか。

河野国務大臣 安保理決議をしっかりやっていくんだということイコールCVIDでございますから、それは別物であるというふうに私は認識をしておりません。

岡田委員 基本的には同じものだと私も思うんですけれども、あえてCVIDという言葉を書かなかった理由が何かあるのではないか、そこに微妙な問題があるのではないかというふうに思って聞いているわけです。

河野国務大臣 北朝鮮に対して圧力をかけ続けようというのは、これは日中韓だけでなく、国際社会全体でやってきたことであります。

 国際社会がなぜこうして足並みをそろえているかといえば、安保理決議を累次きちんとみんなで採択をしてきて、それに基づいて国際社会挙げて北朝鮮に対して圧力をかけていこうということをやってきた、その成果が南北の首脳会談になり、六月の米朝首脳会談という形で実を結んでいるわけでありますから、国際社会として、これからも引き続き、北朝鮮の非核化を目指して、あるいは大量破壊兵器、弾道ミサイルのCVIDに向けて足並みをきちんとそろえていこうという、ここに恐らく異を唱える国はないだろうと思います。

 そういう意味で、CVIDの基礎になっているのが安保理決議ということでございますから、安保理決議をみんなでやっていこうと日中韓が首脳レベルでうたうというのは、今後の六月の首脳会議、そしてその先のプロセスをにらんでいくと、日中韓の首脳が国際社会が基礎としている安保理決議をやっていくぞと呼びかけるというのは、特に何か異を唱えるものではないのではないかと思います。

岡田委員 これ以上繰り返しませんけれども、CVIDをあえて避ける中国と日本との間に若干の微妙なニュアンスの差があるのではないかというふうに考えているということは指摘しておきたいと思います。

 では、そこで、そのCVIDを実現するための手段としての圧力をかけ続けるということですが、例えばトランプ大統領は先月の日米首脳会談後の記者会見で、我々は決して過去の政権の行った過ちを繰り返すことはない、これはいいですね、北朝鮮が非核化されるそのときまで我々は最大限の圧力をかけ続けていく、こういうふうに述べられています。

 CVID達成まで制裁の解除は一切やらないというふうにも受け取れるんですが、アメリカの理解としてそういうことでいいんでしょうか。

河野国務大臣 当然、北朝鮮は、ちょっと何かやったら対価が欲しいと思っているんだろうと思います。

 他方、国際社会としてはこれまで八回それをやってきて今日があるということでございますから、それは、やることをやったらきちんと対価が出てくるよというのが国際社会の立場でございます。

 そうはいってもというところはあるのかもしれませんが、その間を今度の米朝首脳会議その他で埋めていこうというのが、これからの国際社会と北朝鮮との間のいわば対話になるんだろうというふうに思いますので、国際社会の代表としてアメリカが今度シンガポールで六月十二日に米朝首脳会談をやりますが、そこから先のプロセスを国際社会としてどう考えるかという、この手のうちを北朝鮮に教える必要はないと思いますし、また手のうちを明かすべきではないというふうに思っておりますので、国際社会としての考え方は、北朝鮮がCVIDを達成したら対価をきちんと出そうというのが今の国際社会の立場であるということは申し上げておきたいというふうに思います。

岡田委員 今の国際社会の立場だというふうに言われますが、日本自身も、例えば安倍総理もこの日中韓サミットの中で、北朝鮮に具体的な行動をとらせる必要があるというふうに言われています。大臣も何度もそういうことは言われていると思うんですね、具体的行動。

 ということは、具体的行動というのは、別にCVIDという最終ゴールではなくて、具体的行動は具体的行動ですから、何か意味ある具体的行動があれば、その過程で制裁の一部解除、もちろん、安保理決議に反しない範囲で制裁を解除するということは、それは当然あるという前提で今まで日本政府は説明してきているんじゃないんですか。

河野国務大臣 具体的行動にもいろいろなのがあると思います。核兵器関連施設、ミサイルその他を全部外へ持ち出してしまうというのも具体的な行動でありまして、それならば、その具体的行動が行われれば、当然、北朝鮮は対価を求めてくるということもあろうかと思います。

 ここはどういうやりとりにするかというのは、これは国際社会と北朝鮮との間のやりとりの肝の部分でございますので、今、それに対して何か前提を申し上げる、あるいは何かを排除するというのは差し控えたいというふうに思っております。

岡田委員 私は、具体的なことを言っているわけではなくて、基本的考え方の問題として申し上げているわけです。

 日本政府も、具体的な行動と言われていたわけですから、最終的には、それはゴールとは違う概念として使っておられるというふうに思うんですね。恐らく、韓国も中国も当然そうだと思います。

 約束対約束、行動対行動というのは二〇〇五年の六者会合の共同声明でも出てくる言葉ですが、それが甘過ぎたという中で、うまくいかなかった。もちろん、五カ国側が甘過ぎたというだけではなくて、やはり米国を始めとするこちら側といいますか、北朝鮮でないサイドにもいろいろな問題があったことも事実で、それはこの前少し議論をいたしましたけれども、北朝鮮だけが約束を守らなかったということでは私は必ずしもないと思いますけれども。

 いずれにしても、その行動対行動というときの行動の中身が大事だねということは理解しますけれども、全部やらないと、つまりCVIDが完全に終わらないと何もしないというのは私は現実的じゃないというふうに思いますし、日本政府もそういう立場ではなかろうと思って聞いているわけですが、もう一回御答弁いただけますか。

河野国務大臣 現時点で、北朝鮮にそうだと申し上げる必要もないと私は思っております。

 少しずつ何かをやって少しずつ対価を出すというやり方でこれまで失敗をしてきているというところから、この間違いを繰り返さないというのが今の国際社会の立場でありますので、今、国際社会の方から北朝鮮に対して、我々の考えている前提はこういうことだと申し上げるべきではないというふうに考えております。

岡田委員 次に、イランの核合意について申し上げたいと思います。

 私は、このイランの核合意から米国が離脱をするということは、国際社会に及ぼす影響は非常に深刻であるというふうに思うわけですね。

 ところが、先ほどの大臣の答弁を聞いていても、もちろん核合意は支持しているということは言われているわけですけれども、少し動いていきたいとか、それから、日本は当事国ではなくと、もちろん直接の当事国ではないことは事実ですけれども、何か、このイラン合意、今回この核合意をアメリカが離脱するということについて少し軽く見ていないかという印象を受けるんですが、この核合意離脱、米国の離脱ということに伴ってどういった問題が発生するというふうに認識しておられますか。

河野国務大臣 日本がこのJCPOA、核合意の当事国でないというのはそのとおりでございますから、そこはほかに言いようがないというふうに思います。

 このイランの核合意というのは、国際的な核不拡散体制を維持していく上で、あるいは中東の安定を維持していく上で私は非常に重要な一つのピースだというふうに認識をしておりますが、そうした日本の立場あるいは私の思いというものをアメリカ政府には累次申し上げてきて、若干、一部神学論争的なところもございますが、アメリカがこのような決定に至ったというのは非常に残念だというふうに思っております。

 G7の外相会合の中でもこの問題は議論され、日本とヨーロッパはこの核合意が大切だということをアメリカに対してさまざまその場でも申し上げてまいりましたが、アメリカの現政権は考え方が少し違うということのようでございます。

 日本としては、猶予期間をアメリカ政府が設けるということでございますので、その間に当事国あるいは関係国としっかり連携をしながら、この核合意のアメリカによる離脱ということが大きな影響を及ぼすことがないように、対応できるところをしてまいりたいというふうに思っております。

岡田委員 アメリカが離脱するということになると、それに対抗してイランは核開発を進める可能性はあると思うんですね。そうなれば、中東における核のドミノ、例えばサウジとかそういった国も同様に核を持とうと考えるかもしれない。中東は極めて不安定化する。

 それから、今回の離脱だけで、イランの中での穏健派と言われる人たち、大統領も投票で選ばれている、そういう意味ではイランは私は民主主義国家の面も持つと思うのですけれども、そのイランの権力構造が根本から変わってしまいかねないということで、私は、もっと日本として具体的なアクションを目に見える形でとるべきではないかと。

 このアメリカの離脱宣言の前に、それはたまたまかもしれませんけれども、フランスのマクロン大統領も、それからドイツのメルケル首相も行かれたし、イギリスは外相がアメリカに行ったということであります。それに比べると、日本のこの問題についての影が薄いのではないかというふうに思うんですが、いかがですか。

河野国務大臣 一つは、当事国であるかどうかというところは大きな差なんだろうと思いますし、日米の、同盟国として、大っぴらに見えるところで友達に何か言うのか、見えないところで友達に何か言うのか、そういうことは当然あろうかと思います。

 外に向けて、やっていますよと言ってアピールするのも時によっては大事だと思いますけれども、物事を実質的に動かすときには、外に向けてアピールするよりも、実質的に相手がその言葉を聞いてくれるかどうかということの方が大事なのではないか。今回の日本の動きはそういうことを考慮しての動きだというふうに御認識をいただきたいと思います。

岡田委員 説明としてそういう説明があることはわかりますけれども、本当にどこまでやっているのかという問題だと思うんですね。例えば、安倍総理とトランプ大統領の間で電話会談などをやったときにこの問題についてどこまで真剣に話をしているのか、余り外務省の、あるいは政府の発表からは聞こえてこないわけであります。

 フランス、ドイツ、イギリスなどは、この核合意について、離脱しない、維持するというふうに言っていますけれども、私は、そういうふうに言ってみたところで、結局アメリカが制裁の対象にするということになれば、こういった国々のイランにおける企業の行動も実質的には制約されて、結局この核合意全体が実質的には維持できないという状況になる可能性が非常に高いと思うんですが、いかがですか。

河野国務大臣 アメリカは、九十日ないし百八十日の、制裁に至るまでの猶予期間を設けるというふうに言っておりますので、この期間の間に事態がしっかりと収束できるような対応をとりたいというふうに我々は思っておりまして、それはヨーロッパあるいはイランについても同じなんだろうというふうに思います。

 本当にアメリカの制裁が発動されたときにさまざまな影響が出てくるというのは、当然にそれは懸念されるところでございますので、実際にアメリカの制裁というのが発動されたときにどのような影響になるかということの評価を含め、今、関係国とさまざま意見交換、議論をしているところでございます。

岡田委員 例えば二〇一二年の国防授権法、これから九十日か百八十日の猶予期間で対応するというのは、ですから、取引をやめる、そういう期間としてアメリカは設定していると思うんですね。それをやめなければ制裁の対象に加えるぞということになると思うんです。

 ですから、九十日か百八十日の猶予期間があるということは、当該企業にとって、ペナルティーが科されるということを避けることにはなっても、従来の経済取引ができなくなるという意味においては、それは変わらないというふうに考えるわけですね。ですから、非常に深刻だと思うんですが、いかがですか。日本企業も含めてですよ。

河野国務大臣 深刻な状況であるというのは間違いないというふうに思っております。

 日本は、イランとも友好な関係をこれまで維持してまいりましたし、JCPOAによる制裁解除に伴って、ファイナンスのファシリティーを設置したり、さまざま、日本とイランの間の経済関係を発展させるべく努力をしてきたわけでございますから、それに対する影響は当然に、アメリカの制裁発動ということになれば出てくるというふうに思っております。

 少なくとも、日本企業がこのアメリカの制裁の影響をこうむることがないように、また、可能な限り日本とイランの間の経済関係というのが維持できるような努力というのは当然にしてまいりたいと思っておりますし、この核合意については、引き続き、アメリカを始め関係国と協議を続けるというのが我が国の方針でございますので、少なくとも、この猶予期間を最大限活用して、日本としてできることはやってまいりたいというふうに思っております。

岡田委員 今の大臣の御説明は、対象となる日本企業がペナルティーの対象にならないように具体的に働きかけるということにとどまらず、やはりこの離脱そのものが極めて問題がある、そういう観点からアメリカ政府に真剣に働きかける、そういう意味に理解していいですね。

河野国務大臣 アメリカ政府とも、働きかけはしっかりやっていきたいと思っております。

岡田委員 トランプ大統領は、核合意離脱に際して、きょうの行動は北朝鮮への重大なメッセージになる、米国はもはや口先だけの脅しはしないというふうに発言しています。

 今回の核合意離脱が北朝鮮との交渉に与える影響ですが、トランプ大統領はそういうふうに言っているわけですが、私はこれは、結局アメリカというのはいろいろ約束したって簡単に破ってしまう国だというふうに受け取られて、北朝鮮との交渉の上においても大きなマイナスではないか、そういうふうに考えるんですが、大臣の御見解を問いたいと思います。

河野国務大臣 アンマンでポンペイオ国務長官とお目にかかったときに、かなり時間を割いて、今と同じような議論をいたしました。

 トランプ大統領のおっしゃっているようなメッセージもあると思いますし、今、岡田委員がおっしゃったようなメッセージというのも当然あろうというふうに思います。

 我々としては、このイランの核合意が与える影響について、日本の考え方というのを先方に申し上げたところでございます。アメリカの中にもさまざまな議論があったというふうに承知をしております。

岡田委員 では最後に、前回の続きなんですけれども、前回、二〇〇五年の六者会合について大臣と議論いたしました。私は、最後の場面で、これが結局うまくいかなくなった、そこについて大臣の答弁をいただいたわけですが、大臣はこういうふうにお答えになったんですね。背景としては、北朝鮮が、完全、検証可能かつ不可逆的な方法での核、ミサイルの廃棄に向け、必要なコミットメント及び具体的な行動を示さなかったことにあると。

 これは背景説明としてはわかるんですが、本当のところ、この六者協議が最終的に行き詰まった具体的なところというのは一体どこにあったというふうにお考えですか。もう少しきちんとした答弁を求めたいんですが。

河野国務大臣 先般申し上げたとおりでございますが、岡田委員からもう少しここの経緯を研究すべきだという御提案をいただきましたので、今、外務省内の関係する書類を集めたところでございます。

 この六者協議に関してはさまざまな本も出ておりますので、今それを読んで当時の当事者の話を聞く準備をしているところでございますので、国会、出張の合間にしっかりと検討していきたいというふうに思っているところでございますので、もう少々お時間をいただきたいというふうに思います。

岡田委員 ぜひ、関係の本も大部のものが何冊もありますが、目を通していただいて、関係者の意見も聞いていただきたいというふうに思います。

 その検討が済んだところでもう一回質問しますから、答えてください。終わります。

中山委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 きょうは、大臣にまず、朝鮮半島問題について伺いたいと思います。

 先月二十七日に行われた南北首脳会談で両首脳が署名した板門店宣言は、完全な非核化を通じて核のない朝鮮半島を実現する、朝鮮戦争の終戦を宣言し、停戦協定を平和協定に転換し、恒久的で堅固な平和体制構築のための南北米三者又は南北米中四者会談の開催を積極的に推進していくことなどを合意しました。

 私は、朝鮮半島の非核化と北東アジアの平和の体制構築に向けた大きな前進だと考えますが、改めて所見を伺いたいと思います。

河野国務大臣 北朝鮮が政策を転換しつつあるというのは、北朝鮮危機の終結、そして北東アジアの平和と安定に大きく寄与するものだというふうに思っております。

 今休戦協定になっているこの朝鮮戦争に関する協定について、当事者である南北、そしてアメリカ、中国がこれをどのように最終的な平和条約に持っていくのかというところもこれから大きな課題としてクローズアップされてくることになると思いますが、それは、大量破壊兵器あるいは弾道ミサイルのCVIDというのが実現された後の話でございます。

 まず、日本として、このCVIDを実現するために、国際社会が一致して北朝鮮に圧力をしっかりかけていくこの体制を維持していく。そのために、今盛んに行われている瀬取りを始めとする制裁逃れを一つずつきちんと潰していくということが非常に大切だと思っておりますので、六月十二日と発表のありました米朝の首脳会談に向けて、国際社会の足並みをきちんとそろえていけるように努力してまいりたいと思います。

穀田委員 私は、考えが少し違いますね。

 やはり大事な問題は、国際社会が、もちろん国連の決議に基づいてどう行動していくかということもあるわけですが、この間、日中、日中韓、そういうさまざまな会合がされていまして、韓国の青瓦台の報道発表によれば、九日の中韓首脳会談でこのように述べていますよね。

 両首脳は、北朝鮮に対して一方的に要求するのではなく、北朝鮮が完全な非核化を実行する場合、体制保証と経済発展支援などの明るい未来を保証する上で、米国を含む国際社会が積極的に参加すべきだということで意見をともにした、こういうふうに発表しています。

 こういう点でも、私は、私ども言っているのは非核化と平和体制の構築、そういうものを一体で進めることが大事だというふうに思います。

 実は、これは私ども、安倍首相にも申入れを行いまして、そういう六カ国の協議当事者に対して、非核化と平和体制構築を一体的、段階的に進めるべきだということについて要請してきましたが、その方向と大体こういう流れは一致していると考えています。ですから、この方向が事態打開と今後の米朝会談の成功の上での最も重要なポイントだと考えていまして、中韓の首脳会談で共有されたのは大きな意義があると思います。

 一方、今大臣がおっしゃったように、日本というのは、非核化という問題と、今お話ありましたように、圧力というものを最大限かけていくという極めて特異な立場をとっているということを指摘せざるを得ない。したがって、このような立場に固執していくと、今後の事態打開の上で日本が足を引っ張るというだけになりやしないかということを率直に指摘しておきたいと思います。

 次に、防衛副大臣に聞きたいと思います。また来ていただきまして。

 陸上自衛隊の日報隠蔽問題について聞きます。

 防衛省は、イラク派兵の日報をめぐり、陸自研究本部が昨年三月下旬に存在を確認していたにもかかわらず、一年以上も隠蔽していた問題について、現在、いわゆる大野チームですか、調査を進めていると聞いていますが、四月四日の調査開始から既に一月以上が経過しています。

 調査結果を公表するめどは立っているのかということをまずお聞きします。

山本副大臣 お答えを申し上げます。

 ただいま穀田委員御指摘で、その中で隠蔽ということをおっしゃられましたけれども、我々防衛省・自衛隊は一切隠蔽をしておりませんので、そこは御理解をいただきたいと思います。

 お尋ねの大野リーダーによる調査チームのことでございますが、小野寺防衛大臣より、正確な事実関係をより着実に把握をし、より早急に発表できるよう、全力を尽くして調査を行うようにと指示をしており、これまで、事実関係を示す裏づけとなる証拠の収集や、現在のところ本件に関係すると考えられる者に対しまして、対面又は電話による聞き取りを実施しております。大野リーダーのもと、調査を進めている段階でございます。

 お尋ねの、いつごろ公表できるのかということでございますが、現在、与野党の国対の御議論におきまして、調査報告は今月中に提出させるという報告が出されたと承知をしております。

 防衛省としましても、真摯に受けとめ、今月中に国会に提出できるように努力をしてまいる所存でございます。

穀田委員 すぐ隠蔽でないねんという話をしはるから、よっぽど国民の理解と違うてるな、これでは相当難しいなと。みんな、新聞もメディアも含めて隠蔽と書いているのは、それを一々やり出したら切りがないけれども、じゃ、あの反省は何だったんだということを改めて指摘しておきたいと思います。

 大体、国会に、イラクの日報が存在しないと言っていた当時、国会では、南スーダンPKOの日報隠蔽が発覚し、大問題になっていた。同時に、安保法制に基づき駆けつけ警護の新任務が付与された自衛隊のPKOの派遣の最中に、隊員が戦闘に巻き込まれる事態が危惧されていた。だから、政府は現地の治安情勢は落ちついていると繰り返していたけれども、公表された日報には、首都ジュバで戦闘が生起し、宿営地の付近でも激しい銃撃戦があったことが記されていたわけであります。

 イラク日報の隠蔽が、PKO日報と同じく、現地情勢の厳しい実態を隠すために意図的に行われたとすれば、極めて重大な問題だと思います。

 防衛省は、この間、約一万五千ページに及ぶイラク日報を公表しましたけれども、宿営地の攻撃が相次いだ二〇〇四年から二〇〇五年にかけての日報は発見できなかったとしています。

 そこで確認ですけれども、先日私は防衛省からもらいましたけれども、イラク日報の作成根拠となった二〇〇五年四月二十六日付の陸上幕僚長の指示文書、これですね、これはそっちからもろうたやつです。私どもに提出されたのはほんの数ページですけれども、これを見ますと七十七ページまであるんですけれども、これを見ますと、定期報告には、日々報告、ほかに週間報告、中間報告、月間報告、さらには帰国後の報告などが記されています。これらの探索は一体どうなっているのか、お聞きします。

山本副大臣 お答えをいたします。

 御指摘の文書は、平成十七年四月二十六日に出されています第六次イラク復興支援群等の派遣、交代等に関する陸上幕僚長指示であり、当該文書は、平成十七年の二月から六月の間イラクに派遣された第五次イラク復興支援群が第六次イラク復興支援群と交代するに当たって定められたものであり、第六次隊が報告すべき定時報告の種類、報告の時刻、報告要領等が定められたものと承知をしております。

 具体的には、第六次イラク復興支援群等が作成すべき定期報告として、現地時間十七時の人員・装備等の現況、異状の有無、本日の状況及び明日の予定、現地の治安の変化等を現地時間二十二時までに報告する日々報告……(穀田委員「そこはいいんです。そうは言っているんです。だから、どうなってんのやと聞いているんです、探索は」と呼ぶ)

 そういった、今委員御指摘の日々報告あるいは週間報告、月間報告、中間報告等ですが、ことしに入り、さまざまな部署から日報が見つかったことなどを踏まえまして、防衛省として、再発防止策をより一層徹底するために、四月の六日に小野寺防衛大臣から全国二十五万人隊員に特別訓示を行ったことに加え、四月七日に防衛大臣から、全ての部隊、機関において、海外に派遣された自衛隊の活動に関し、全ての日報を含む定時報告の探索作業を徹底して行い、統幕への集約作業を原則四月二十日までに終えるよう通達し、その結果を同月二十三日に公表させていただきました。

 公表した集約作業の結果でお示ししたとおり、現時点において、陸自のイラク日報以外のイラクにおける陸自の活動にかかわる定時報告は確認されておりません。

穀田委員 最後の一つと、真ん中の二つを言ってくれればいいんですよ。お互いに文書を持っとんのやから、それを一々説明せえへんかてわかっとんのやから、そんな時間とったらあきまへんで。

 要するに、現時点にはない、わからぬということでしょう、ないと。最後、それなんですよ、結論は。

 私は、複数の定期報告、これを見たらわかるように、定期報告をいっぱいやっているんですよ。それにもかかわらず、日報以外は一つも発見できなかったというのは極めて不可解だ、誰が考えてもそれはおかしいと言っているんですよ。

 だから、防衛省の発言からしますと、小野寺防衛大臣は、現場の隊員が緊張感を持って対応した状況がわかる一次資料として貴重なものだと言っているわけですから、そういう角度からすれば、どうして発見できないのか。

 それから、じゃ廃棄したのか、その責任は、誰がやったんだということについてはっきりしなければ、こういう報告書があるということで、少なくとも、日々報告、週間、中間、月間、家族支援実施状況まで書いているわけですよ。それを二十五万人調べたと言っとんのやから、そうしたら、そういうことについて、誰が廃棄したのかということも含めて、徹底調査をすべきだと思います。

 問題は、この一連の日報隠蔽の背景に何があるのかということだと思うんです。

 私は、今度、これまた防衛省からいただいた資料ですけれども、こういう、「陸幕施策等説明」、これはお知らせしていますから、いただきました。これはおたくのところが出した資料です。

 そう題する内部文書なんですけれども、これは陸上幕僚監部の防衛部、運用支援・情報部、教育訓練部が作成したものであって、この文書を説明する回答によりますと、「陸上自衛隊の方針等について周知徹底するとともに、直面する陸上自衛隊の重要課題等について認識の統一を図る。」ということを目的に開かれた防衛大臣直轄部隊長会合などに使われた文書とのことだけれども、そこで確認ですけれども、もう端的に言ってくださいね、この会議はいつ行われましたか。

山本副大臣 お答え申し上げます。

 陸上自衛隊の防衛大臣直轄部隊長会同は、年に一回、定例的に開催しているものでございます。平成二十七年、お尋ねの平成二十七年は九月二十八日に開催をしております。

穀田委員 平成二十七年、西暦でいえば二〇一五年九月二十八日。九月二十八日といえば、何と安保法制が九月十九日に強行成立されたわずか九日後のことであります。

 その会議で使われたこの陸幕文書には、安保法制が成立するや否や、次の防衛大綱や中期防に向けたさまざまな施策の具体化が年度ごとに記されているものであります。

 このうち、教育訓練部が作成した資料には、今後の自衛隊の任務について、看過できない重大な記述があります。

 一つは、集団的自衛権の行使容認に伴い、米軍、他国軍との共同作戦、武力行使を伴う任務遂行の可能性が増大すると書かれています。二つ目に、安保法制によってPKOなどの国際任務の権限が拡大し、他国と連携した戦闘を伴う任務遂行の可能性が増大すると記しているわけですね。

 山本副大臣、こうした記述があることは間違いありませんね。もう、間違いないならない、違うなら違う、二つに一つだから、言ってください。

山本副大臣 お答え申し上げます。

 御指摘の記述はございます。

穀田委員 記述があると。これはやはりえらいこっちゃと思うんですね。

 この問題というのは、私は、今述べたように、もう一度、この文書のここにあるわけですね、こういうものです。「将官教育の方向性」ということで、「任務の拡大」というところで、集団的自衛権の行使に係る憲法解釈に関する閣議決定を踏まえて、米軍、他国軍との共同作戦、武力行使を伴う任務拡大、増大だと。こうなってきますと、これは大事な大きな問題だというふうに私は言わざるを得ないと思います。

 私は、今述べましたけれども、この会合は、陸上自衛隊の方針等について周知徹底するとともに、直面する陸上自衛隊の重要課題等について認識の一致を図る、これも、防衛省からいただいた文書の中に、この二つの会合の性格について書かれている文章を今直接読み上げたわけですね。「直面する陸上自衛隊の重要課題等について認識の統一を図る。」ということを目的に開かれた会合で使われたということを確認したということですね。

 結局、安保法制によって自衛隊の任務が拡大し、他国と連携した戦闘を伴う任務遂行の可能性が増大する、極めて重大な記述と言わなければなりません。

 そこで、この陸幕文書を使った当日の会議には、陸上幕僚長、陸上幕僚副長、研究本部長、陸上幕僚監部各部長などの幹部が多数出席したのではないのかということについてお答え願いたい。

山本副大臣 お答えを申し上げます。

 委員御指摘の、陸上幕僚監部教育訓練部が作成をしました「幹部の人材育成について」の資料につきましては、陸上幕僚監部が、陸上自衛隊に関係する施策等について陸上自衛隊内に周知し、陸上自衛隊の方針や重要課題等について認識の統一を図るために作成したものであります。それは、今委員も御指摘のとおりでございます。

 そういったものでありまして、「将官教育の方向性」の部分については、将官に対する教育の方向性について陸上自衛隊の内部で検討の資とするために作成された参考資料という位置づけであるということもあわせて御理解をいただきたいと思います。

 そして、その会同のメンバーはどういう参加者かということでございますが、平成二十七年の九月二十八日に開催をしました防衛大臣直轄部隊長会同の参加者は、陸上幕僚長、陸幕副長のほかに、陸自における防衛大臣直轄部隊の長となっています。

穀田委員 だから、いつもそういうふうに、指摘すると、参考文献だということで逃げるのと、それから、いずれにしても、陸幕長以下幹部が列席した会議で、認識の統一を図るために、だって、認識の統一を図るためにやっているという会議なんだから、そういうことは紛れもない事実だと。

 問題は、政府は、安保法制の審議を通じて、自衛隊が戦闘に参加することは憲法上許されないと表明してきたわけです。ところが、陸幕長ら幹部が出席して開かれた会議では、他国と連携した戦闘を伴う任務遂行の可能性が増大するなどと、政府見解と全く異なる分析が行われている。極めて重大と言わなければなりません。しかも、この陸幕文書の会議には、イラク日報を隠蔽した研究本部からも幹部が出席している。

 結局、一連の陸自日報の隠蔽は、戦闘を伴う任務遂行の可能性が増大するという安保法制の本質、それを隠すためだったのではないですか、一言。

山本副大臣 お答えを申し上げます。

 先ほど参加者の件を申し上げましたけれども、繰り返しになりますけれども、参加者は、陸幕長と陸幕副長……(穀田委員「載っているからそれはええっちゅうのや」と呼ぶ)今委員御指摘の研究本部長は参加をしておりません。隠すというようなことはございません。

穀田委員 防衛省からもらった文書に、出席の一覧表、平成二十七年学校長等会議、両方やっているって、両方の話をして説明しているじゃないですか。同じ文書を使ってんのやから。間違ったことはあきませんで、それは。まず訂正しなきゃね。

 もう一度言いまっせ。出席者、平成二十七年度学校長等会議、それから直轄部隊長合同会議、二つを指摘してんのやからね。ちゃんと見てへんということです、おたくのところね。言うてんのやから、ちゃんと。もう本当に時間食うだけやな、ほんまに。

 そして、陸幕文書には、「安全保障関連法制の動向」として、「戦闘を伴う任務遂行」と書かれているわけですよ。このことからも、文書にある「戦闘」が、そういう意味でいうと、極めて重大な中身だったということがわかるんだと思うんです。

 私は、当時も、イラク派兵のまともな検証もないままに強引に成立させてはならぬということで、イラク行動史を取り上げたことがあります。これは、副大臣も知っていると思うんです。

 この陸幕文書には、もう一つ、重大な計画が記されています。防衛部が作成した資料には、「南西地域における平素からの部隊配置の推進」として、奄美、与那国、宮古、石垣島に加えて、沖縄本島にも、二〇一九年度末を目途に、新たに陸上自衛隊の部隊を配備する計画がある。沖縄本島に陸上自衛隊のどんな部隊を新たに平素から配備するかが記載された箇所は黒塗りで隠されていますが、部隊の配備先を見ますと、沖縄本島の地図の米軍キャンプ・シュワブ、キャンプ・ハンセンあたりを矢印で指しています。

 在沖縄米海兵隊のトップ、ニコルソン四軍調整官は、昨年十一月の記者会見で、水陸機動団の部隊を沖縄に置くことについては聞き及んでいると述べ、配備先としてキャンプ・シュワブやキャンプ・ハンセンが想定されるなどの認識を示しています。

 だから、そうしますと、黒塗りの部分にはそうした配備計画が書いているのか。これはそちらが出した資料ですからね、くれぐれも言いますけれども。どうですか。

山本副大臣 お答えを申し上げます。

 先ほどの参加者の件でありますけれども……(穀田委員「もういい、そっちが間違ったのははっきりしているから」と呼ぶ)いえ、私が申し上げたのは、防衛大臣直轄部隊長の会同のことでございまして、委員が御指摘された学校長等会議には、確かに研究本部長は参加をしております。

 さらに、今お尋ねの陸幕作成の資料での南西地域への自衛隊の配備に関してでございますが、平成二十七年度時点で検討していた内容を記載しておりますけれども、その検討の内容の一つ一つについてはお答えを差し控えますけれども、防衛省として、キャンプ・シュワブやキャンプ・ハンセン、そういったところに普通科部隊、そういったものを配備するという計画はございません。

穀田委員 先ほど言いましたように、私は、質問要項のときに、おたくの出した資料に基づいて、などということで二つの会議が行われているということは指摘をして、そのことを質問しますと言っています。ですから、そういうことでちゃんと聞いていただいて、回答していただければと思います。

 私は、ことしの三月三十日の本委員会並びに四月十三日の安全保障委員会で、日米の動的防衛協力に関する検討文書を示して、防衛省内で、沖縄本島の米軍基地を自衛隊部隊と恒常的に共同使用する計画があることを指摘しました。

 その後、私の指摘を受けて文書が次々と出てきました。三つ出てきた。

 ところが、ほかにないのかと私がこの間質問をしたら、また発見されて、防衛省が発見した文書がまた出てきました。今度は英文のやつまで出てきているということまでおまけつきで、ようこれだけ出てくるな、ほかにもうないのかということを言いたいわけです。

 ですから、もうここまで来ると、山本副大臣がお得意の、真贋のほどはなんと言っている場合じゃなくて、小野寺大臣はさらに、前政権のものだなどと逃げてはいますけれども、この今度の陸幕文書にあるように、今示された、おたくのところが出した新しい文書にあるように、安倍政権のもとで沖縄本島の米軍基地に自衛隊部隊を配備する計画がないというふうな話をしますけれども、この文書自身には、そのことを秘密裏に進められていることは明白ではないか。改めてもう一遍お聞きします。

山本副大臣 お答え申し上げます。

 我が国の安全保障環境が厳しさを増す中、南西地域における自衛隊配置の空白状況を早期に解消することは喫緊の課題と考えております。

 そのため、防衛省としては、沖縄県においては、平成二十八年三月に与那国沿岸監視部隊等を配置したほか、現在は、宮古島及び石垣島に陸自の警備隊、中距離地対空誘導弾部隊及び地対艦誘導弾部隊の配置を進めています。

 また、我が国の今後の防衛力のあり方についてはさまざまな検討を不断に行っているところですが、その検討の内容一つ一つについてお答えすることは差し控えます。

 いずれにしましても、防衛省として、御指摘の、本島に普通科部隊等々を配備するというような計画はございません。

穀田委員 終わりますけれども、これが、おたくのところが出した、二つとも、「南西地域における平素からの部隊配置の推進」というやつなんですよ。これまた、私が求めたところに対して、新しい文書が発見されましたということで持ってきた「南西地域における新たな陸上部隊の配置に関する構想」というやつなんですね。これは全部符合しているんですよ、私が提起してきた内容が。出したらもう、全て黒塗りで出しておきながら、何も決まっていないということは許されないというふうに思います。

 私どもはそういった点も今後とも追及していくということを表明して、終わります。

中山委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高でございます。

 午前中、私で最後ですので、よろしくお願い申し上げたいというふうに思います。

 さて、国会はちょっとこの間ずっととまっている状況でしたけれども、外交は大きく動いておりまして、拝見していますと、成果も幾ばくかあったかなというふうに思います。

 特に、日中韓の大臣の会合をされたり、また総理も会合されたりして、非常に動きが大きくて、報道で見るだけでも、日中とは海空の連絡メカニズムだけじゃなくて共同宣言に拉致問題を盛り込まれたり、非常に成果を出されていると思うんですが、大臣に改めてお伺いしたいんですけれども、今般の日中韓首脳会談、そして日中首脳会談においていかなる成果をお出しになったのか、お答えいただけますか。

    〔委員長退席、山口(壯)委員長代理着席〕

河野国務大臣 今回の日中韓サミットは、二〇一五年十一月以来、約二年半ぶりの開催となりました。このサミットの定期開催を再確認し、日中韓協力の新たなスタートを切ることができました。これは、第一回の日中韓サミットからことしがちょうど十年目ということで、これまで着実に進展してきた未来志向の協力を今後連携、更に促進をしていくということになりました。

 また、三カ国で図らずもリレー開催ということになりましたオリンピック、パラリンピックを一つの契機として、人的交流を推進していこうということでも一致をいたしました。

 また、北朝鮮情勢を始め地域国際情勢についても首脳の間で議論が行われ、北朝鮮につきましては、大量破壊兵器及び弾道ミサイルのCVID、これをしっかり協力していこうということを確認すると同時に、拉致問題の早期解決に向けて安倍総理より両首脳に支持と協力を呼びかけ、理解をいただき、サミットの成果文書に拉致問題が初めて言及されるということになりました。

 また、質の高いRCEPの早期妥結及び日中韓FTAの交渉の加速化、こうしたことを通じて、自由貿易の推進にともに日中韓で取り組んでいこうということで一致をいたしました。

 また、その後、日中首脳会談が、これは八年ぶりの日本公式訪問ということになりますが、北朝鮮問題を始め国際情勢が動く中、日中平和友好条約締結四十周年であることし、日中関係を全面的に改善し、新たな段階へ押し上げていく重要な一歩になったというふうに思っております。

 首脳会談でも、このほか幅広い分野における協力、交流について意見交換が行われ、北朝鮮問題についても日中両国の間で突っ込んだ意見交換をすることができました。

 このようなサミット、そして日中の首脳会談でございました。

丸山委員 おおむね前進いただいていると思っていますし、しっかりやっていただいていると考えているんですが、ちょっと今、大臣の御発言を聞いていて、うんっと思ったのがCVIDの部分でして、若干、見ていますと、共同声明には不可逆性という部分は落とされていると思うんですが、このあたりは、議論されていて、ある程度の共通認識に至っていらっしゃるという認識でいらっしゃるということですか。

河野国務大臣 先ほども岡田委員でしたかに申し上げましたが、安保理決議というのがCVIDを、これは核だけでなく大量破壊兵器並びに弾道ミサイルのCVIDということを明確に記述しております。この安保理決議に従ってやっていこうということでございますので、これはイコールということでございます。

丸山委員 そういう意味ではうまくおやりになっていると思いますし、ぜひ、それは日本としても言っていける部分だと思いますので、しっかり国益を追求していただきたいと思います。

 もう一つ、細かい部分で気になるのは、東北の農水産物の話ですね。

 私も、昨今いろいろな外交関係の方と情報交換していますと、やはりここの部分に関して、特に中韓、あと台湾もですか、このあたりの国々が輸入の中止という形でやっている状況に対して、農業関係者も、特に東北の関係者の方々もやはりこれは必ずおっしゃいますし、同時に外交の関係では難しいという話も出ていたんですが、特に台湾は、今選挙前ということもあって、恐らく厳しいかなと思います。

 ただ、台湾に対してもしっかり交渉いただきたいというふうに思いますが、一方で、中韓に関しては、特に中国は、関係の方々の話を聞いていると、結構、おっという反応というか、もしかしたらうまく交渉できるんじゃないかというのも見えているような感覚を、私、個人的な部分では感じるんですが、このあたりに関して、中国、韓国に対しての交渉を、今どのように成果を受けとめられているのか、よろしくお願いします。

    〔山口(壯)委員長代理退席、委員長着席〕

河野国務大臣 今回の首脳会談の中で、総理から、食品の輸入制限の撤廃について問題提起をさせていただきました。また、日中首脳会談においては、中国による放射性物質に係る日本産食品の輸入規制の問題について、共同専門家グループの設立ということで一致をいたしまして、会談後の署名式で、農林水産省と中国側当局との間の覚書に署名が行われました。

 日韓の首脳会談では、時間の制約もあったものですから、この件は特段に取り上げることはございませんでしたが、引き続き、この日本産の食品、食材、科学的な根拠に基づいた規制の早期緩和、撤廃を働きかけていきたいというふうに考えております。

丸山委員 中国が今一番もしかしたら交渉の糸口がつかめ始めているかもしれないという御回答でしたので、できるところからやっていくというなら、外国だったらまず中国だと思いますし、韓国は今国際的な訴訟になっていますので、そういった意味でかたくなな部分もあるかもしれませんが、今チャンスだと思いますので、北朝鮮問題もある中で、半島の情勢を考えた中でうまく国益をとっていくというのも一つ、ミサイルの問題、拉致の問題は大事ですが、同時に並行でよろしくお願い申し上げたいというふうに思います。

 もう一つ確認しておきたいのは、ちょっと日中韓とは離れるんですが、慰安婦像の話です。

 フィリピンで今回慰安婦像の撤去に至ったということですが、ずっといろいろな国々で外務省としてもしっかり交渉、ネゴシエーションしていただいているのをたびたび私も委員会で申し上げた関係上、多分うるさく言われないようにだと思いますが、うちのところにも説明に来ていただいて、やっていただいているのはわかっております。しかし、結果を出さなければ、やはり国民の皆さんからは何やっているんだというお声がありますし、何より間違った、日本の見解とは違うことが広まっていく、そして固定化されるというのは非常に国益を損する話だと思いますので、しっかり撤去できるものは除いていく、国際社会の中で理解を得ていくというのは非常に大事なところです。

 そういった意味で、今回のフィリピンの件、ほかの国では撤去できていないところも多い中で、非常に上手にやられたなというのを正直感じるところなんですが、これに関して、まず、大臣、どのようにお考えか、見解をお伺いできますでしょうか。

河野国務大臣 昨年の十二月でしたか、フィリピンに慰安婦像が設置され、これは我が国政府の立場と相入れないということを累次フィリピン政府に申し上げてきたところでございます。

 先般、フィリピン側から、周辺道路の改善工事のために撤去が必要だという連絡をいただきまして、フィリピン政府側の決定により慰安婦像が撤去されたということでございます。

丸山委員 これはやはり、うまくいった事例と難しい事例と、いろいろな国との関係もあるので一概には言えない部分もあるのはもちろんなんですが、しかし、分析をして、どうやったらうまくいくのかというのは、しっかり外務省の中でもノウハウを蓄積いただきたいと思うんです。

 今回のを見ていますと、ほかと違うのは、大きいのはやはり、政治家が行ったときに具体的な話をされているという報道も出ています、河井議員だとか野田大臣も行かれたときに具体的にお話しされて、これが大きかったのかなというふうに思いますし、また、フィリピンとの関係というのもあるんだろうとは思いますが、こうした部分、事前に連絡があったという報道がありますけれども、これは事実かどうかと、今大臣、それはあったので、あったんだと思うんですけれども、そして、この撤去に至った理由についての分析、非常に大事だと思うんですけれども、外務省としてはそれについてどのように捉えられているのか、見解をお伺いできますか。

志水政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、フィリピン側から事前に連絡があったかということに関しましては、河野大臣からも冒頭話がございましたように、今回の撤去に際しまして、フィリピン側から在フィリピン日本大使館を通じまして我が方に対して事前連絡はございました。

 撤去の理由ということでございますけれども、これに関しましては、フィリピン政府は、周辺道路の改善工事のために撤去が必要であったと説明しております。

 いずれにいたしましても、撤去はフィリピン側の決定により行われたものでありまして、我が国政府としてこれについて有権的な答えをする立場にはございませんけれども、これも丸山委員御指摘のとおりでありますが、本件に関しましては、我が国の政府の立場とは相入れない、極めて残念なことであるということで、累次にわたって申入れをしてまいりました。それは、事務方のみならず、政治レベルの方による申入れもございましたし、御指摘にもありましたけれども、野田総務大臣から、ないしは堀井外務大臣政務官からといった申入れもございました。

 分析等について申し上げるのは差し控えたいと存じますけれども、いずれにせよ、理由としてフィリピン政府が公式に挙げているものは工事のためということでございますので、そのように御理解いただければと存じます。

丸山委員 これはぜひほかの国でも工事していただかないといけないと思いまして、道路工事をしていただくためにはやはりいろいろなスイッチがあって、その大きなスイッチ、お話が今あったように、政務が動くというのも非常に大きなスイッチの一つだと思いますので、これはなかなか、野党側の議員という身分というよりは、大臣だとか政務官、官邸というのもあるかもしれません、こうした部分の皆さんの御努力、非常に大事な点になっていくと思います。

 今回、非常にうまくやられたと思いますし、ぜひ引き続き、日本の立場と相入れない、間違った、違う歴史観という形が世界じゅうに広まらないように、残らないように、引き続きよろしくお願い申し上げたいと思います。私も見ていきますし、また情報交換させていただきたいというふうに思います。

 ちょっと話題がかわるんですが、サイバー攻撃関連についてお伺いしたいんです。

 私、総務委員も兼ねていまして、総務委員会で今般、衆議院では既に法律が通過いたしましたが、いわゆるDDoS攻撃という形で、東京オリンピックが特にもう迫っておりますので、そのときを狙ってサイバー攻撃がふえるんじゃないかという懸念から、たくさんデータを送り込んでサーバーをダウンさせる、しかも、それはマルウエアを使って、一個のサーバーだけじゃなくてあらゆる端末から、例えば、監視カメラだとかそういった部分にまでIPが割り振られていますので、ネットワークにつながっているそうした機器から一斉に攻撃をかけることでサーバーをダウンさせるというDDoS攻撃が今脅威になっております。これに対しての防衛策として、総務委員会の方では、今、鍵がかかっていないそうした監視カメラだとか、そうした民間のものに対してもしっかりチェックをして、問題があれば是正のお願いをしていくという形の法案を通しまして、これは、基本的には成立するものだと見ていますが。

 一方で、では、日本の政府本体のこのカウンター能力というのですか、要は反撃能力がどうかというのは非常に気になるところですし、もし有事の際は真っ先に、恐らくそこが敵としても狙ってくるところだと思いますが、この点をお伺いしていきたいんですけれども、昨今、記事で、この反撃能力を保有するということを防衛大綱に明記しようじゃないか、検討するんだというような記事が出ています。この点、本当にそうなのかというのをお伺いしていきたいんですけれども。

 同時に、法律的な部分、確認しておきたいのは、専守防衛等の関係性で恐らくいちゃもんがつけられる可能性が、まあ、いちゃもんって関西弁ですかね、文句が、何か問題があるんじゃないかと言われる可能性がありますね。そこの部分について、政府としてどういうふうに現時点で考えているのか。

 同時に、DDoS攻撃は、恐らく一個のサーバーでやったって大した意味はなくて、総務委員会でも申し上げたんですけれども、あらゆるマルウエア、しかも世界じゅうに散らばったマルウエアからの攻撃が通常であって、なおかつ効果的な部分ですので、正直言うと、それに対する防衛、反撃しようと思ったら、こちらも基本的にはマルウエアを他国なり、国内でもいいんですけれども、あらゆる部分にマルウエアをばらまいて、そこからの攻撃を同時にかけることが非常に有効であって、物理的にも技術的にもそうしないと、単独サーバー若しくは少ない少数サーバーからの攻撃だったら、基本的に、IPが割れてしまえば、全部カットしてしまえばそれで終わってしまうので、ほとんど有効性を発揮できないと思うんですね。

 そういった意味で、今申し上げた、マルウエアをばらまいていく、若しくはそういった第三者サーバーを介して攻撃するというのは非常に大事な攻撃能力なんですが、しかし、これは現行法上、刑法上は非常に難しいと思うんですよ、刑法上は。問題は、憲法上これが許容されているのか。つまり、刑法を変えてこれを行うことが可能なのか。

 憲法上の解釈について、法律上の解釈、幾つか伺いましたが、この点をお伺いできますでしょうか。

長岡政府参考人 御答弁申し上げます。

 いわゆるサイバー攻撃につきましては、技術の進歩に伴って、今委員がお話しされたようなDDoS攻撃も含めてさまざまなものが今現実のものとしてあるので、その一々について具体的にお話しすることは非常に困難ですが、憲法上の考えということで、政府としては従来から、武力の行使の三要件を満たす場合には、憲法上、自衛の措置としての武力の行使が許されるという立場をとってきておりまして、その前提で法理上の考えを申し上げますと、このような自衛の措置としての武力の行使の一環として、いわゆるサイバー攻撃という手段を用いることは否定されていないというふうに考えております。

 他方で、我が国が自衛権の行使として実施する措置の具体的な内容については、当然ながら、対応すべき事態の態様、状況、そういったものを個別具体的に判断する必要があると考えておりまして、一概に申し上げることは困難でございます。

 いずれにしましても、サイバー空間における対処に関しても専守防衛というのは当然の大前提であり、また、関係する国内法それから国際法、これを遵守するという考え方も当然というふうに考えております。

 以上でございます。

丸山委員 実質お答えになっていないんですけれどもね。

 マルウエアを、第三者サーバーを介して攻撃するというのが可能かどうか、そこが非常に大事なところなんですけれども、現時点で解釈できていなかったらそれはおかしいと思うんですが、できるんですか、できないんですか。

長岡政府参考人 先ほど申し上げた答弁と同じような内容になって恐縮でございますけれども、法理上としては、自衛権の行使としての武力の行使の一環として、いわゆるサイバー攻撃という手段を用いることは否定をされていない。ただ、具体的にどのような形でもって、我々としての、自衛権の一環としてのサイバー攻撃を行うというのは、個別具体的な状況を見て検討しないといけませんので、一概には申し上げられません。

 また、具体的な対応について、こういう場合にはこういう措置をとるというような、いわゆる我が方の手のうちを明らかにするということは、あり得べき攻撃者との関係でも適当ではないというふうに考えております。

 以上です。

丸山委員 確かに、それは一理あります。しかし、問題は、どこまでできるのかを明確にして、そして、できないのであれば、私は、これはある程度そこの部分も論点にして、憲法改正の議論があるわけですから、やっていかなきゃいけないと思うんですよ。

 でも、今の御答弁だと非常に曖昧で、できるかどうかもわからない、現実的にあった場合に対応を確認していくというのは、結局、それも軍事機密になっていくわけで、確認できないわけですよ。では、何のために憲法の規定があって、何のために、今回、防衛大綱にこれを書こうとして見直したのかが見えない、わけがわからない状態なんです。

 私は、おかしいのであればそれは変えていかなきゃいけないし、サイバー攻撃が今主要になってくる中で、しっかりこれは防衛できないと国民生活は危ういことになると思いますので、これは曖昧にしていただきたくなかったですし、引き続き確認はしていきたいところですが、残念ながら時間がなくなってきましたので、これはこれで終わらせていただきます。

 引き続き、ほかの委員会も含めまして、ちょっとお伺いするかもしれません。また、個別に教えていただいても構いません。よろしくお願いします。

 最後、済みません、大臣にお伺いしておきたいのは、ロシアの関係だけお伺いして終わりにしたいんですけれども、経済協力の話をずっとされてきましたが、残念ながら、ハバロフスクの空港の新ターミナルの協力は頓挫したんじゃないかという話が出ていますが、これはどうなんでしょうか。今どういう見解で政府としていらっしゃるのか、最後にお伺いして、終わりにしたいと思います。

河野国務大臣 ハバロフスクの空港の国内線新ターミナルの建設については、ことしの三月に工事が着工されたと承知をしております。

 他方、国内線新ターミナルの整備、運営及び既存の国際線ターミナルの運営については、日ロの企業間で引き続き協議が行われているというふうに承知をしております。

 政府としてもこの動向を注視しておりますが、企業間の契約交渉に関することでございますので、これ以上政府としてお答えをするものがございません。

丸山委員 もう時間が来たので終わりますけれども、ロシアとの関係、いいところだけ持っていかれて結局何も実らなかったというのを非常に危惧しております。日中韓は動いておりますが、ロシアの方もしっかりと国益の追求をよろしくお願いします。

 以上で終わります。

中山委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時八分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時四十分開議

中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣河野太郎君。

    ―――――――――――――

 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

河野国務大臣 ただいま議題となりました環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、アメリカ合衆国が環太平洋パートナーシップ協定からの離脱を表明したことを受け、同国を除く同協定署名十一カ国で同協定の内容を実現するための法的枠組みとしての協定の交渉を開始しました。その結果、平成三十年三月八日にチリのサンティアゴにおいて、十一カ国の代表者によりこの協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、アジア太平洋地域において、物品及びサービスの貿易並びに投資の自由化及び円滑化を進めるとともに、知的財産、電子商取引、国有企業、環境等幅広い分野で新たなルールを構築するための環太平洋パートナーシップ協定の内容を実現するための法的枠組みについて定めるものであります。

 この協定の締結は、我が国の成長戦略に資するものであり、また世界的に保護主義的な風潮が広まる中で、自由貿易の旗手である我が国から世界に向けた力強いメッセージとなり、アジア太平洋地域に二十一世紀型の貿易・投資ルールを広げていく上で大きな一歩となることが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 何とぞ、御審議の上、本件につき速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

中山委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

中山委員長 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官松浦博司君、経済局長山野内勘二君、内閣官房TPP等政府対策本部政策調整統括官澁谷和久君、農林水産省大臣官房総括審議官天羽隆君及び大臣官房国際部長渡邉洋一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中山委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。亀井亜紀子君。

亀井委員 立憲民主党の亀井亜紀子でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 ふだん私は農水委員会に所属しておりますけれども、きょうは外務委員会の方に出張して質問させていただきます。

 このTPPといいますと、交渉が始まったころから、産業界、自動車産業を代表とするそういう輸出産業対農業の構図で報じられることが多かったんですけれども、私はそれ以上に、TPPというのは、物品取引じゃなくてサービスも含めた、投資も含めた、もっと国の制度を大きく変えてしまう協定だと思っておりまして、そういう意味で、農業にとどまらずもう少し広い視点で質問ができたらと思っております。

 初めに、このTPPの協定に関する国内協議が始まった当初のときからちょっと振り返って、質問させていただきます。

 初めてTPPという言葉を聞いたのは、菅政権のときだったと記憶しております。二〇一〇年に、菅総理がTPPの交渉入りを検討するということを言い出しまして、当時政権与党であった民主党の中にも賛否両論ありましたし、私が当時所属していた国民新党は明確に反対をしておりました。

 そして、いろいろ議論があった中で、最終的には、菅政権から野田政権にかわり、けれども、民主党政権のときには交渉参加は表明せず踏みとどまりました。

 そして、衆議院選挙で政権交代があり、その選挙においては自民党は明確に、TPPの交渉参加は反対だ、そういうふうに言って戦ったと記憶しております。

 そして、安倍政権が発足し、二〇一三年にTPPへの交渉参加を決めたわけですけれども、ここに至る経緯、つまり、TPPに余り前向きではなかったと私は記憶しているんですけれども、それから交渉参加を決めたその理由は何であったのか、何をTPPから得ようとしたのか、まずそこの点についてお伺いいたします。

河野国務大臣 TPPは、二十一世紀型の自由で公正な貿易・投資のルールをアジア太平洋地域に構築するという経済的意義にとどまらず、基本的価値を共有する国々が経済のきずなを深め、地域の平和と安定を強化するという長期的な戦略的意義がございます。

 我が国は、こうしたTPPの意義を踏まえ、TPP12の交渉に参加し、このTPP12協定という成果を得たわけでございます。

亀井委員 農業の分野から強い反対があったにもかかわらず交渉入りをしたというのは、今おっしゃったように、もっと広い貿易・投資のルールづくりに参加して、その中で守るべき分野は守っていった方がいいという判断に基づいて入っていったんだろうと思います。

 あのときに交渉参加を政府が決めて、むしろその交渉参加を決めるのが遅過ぎた、入るんだったら最初から入らないとルールづくりに参加ができないしというようなことを言っていたのも記憶しているんですね。交渉に参加してみないと、そこまで何が話し合われていたのかベールに包まれていたわけなんですけれども、参加して、けれども、当初一番期待された自動車の関税の撤廃というところには全く至らなかったわけです。

 では、何が得られたのかということなんですけれども、TPPに、最終的にアメリカが脱退を決めて、ここが、日本がもし抜けるのであれば非常によいチャンスだったと思うんですね。それであっても、アメリカが抜けた後でも日本は前のめりにCPTPPという形で推進をし続けた。その理由が私はどうしてもわからないんですけれども、なぜCPTPPという形にこだわったのでしょうか。

河野国務大臣 TPP11は、二十一世紀型の自由で公正で新たな共通ルールをアジア太平洋地域につくり上げようというものでございます。対象は人口五億人、GDPで十兆ドル、貿易総額が五兆ドルという、巨大な一つの経済圏をこのTPP11でつくり出すということになったわけでございます。

 この中では、関税を削減するだけでなく、例えば、投資先で不当に技術移転を要求されない、あるいは知的財産が適正に保護される、こうしたルールが共有されるということから、我が国の中堅・中小企業にとっても多くのビジネスチャンスが広がるものというふうに考えます。

 自由で公正な共通ルールに基づく自由貿易体制こそが世界経済の成長の源泉であると考えておりまして、このTPP11により日本が二十一世紀型の新しいルールづくりをリードすることの意味合いは非常に大きいと思います。我が国にとりましてもアジア太平洋地域にとっても画期的な成果を得ることができたというふうに考えております。

亀井委員 質問には入れておりませんけれども、補足ですが、TPP、またアメリカが抜けた後のCPTPP内にとどまったというのは、アメリカと二国間での交渉に持っていかれるよりは、多国間の中の枠組みにとどまって、米国とのFTAに引き込まれるのを防ごう、そういうような意図もあったのでしょうか。

河野国務大臣 我が国は、アメリカにとりましてもこのTPPに復帰することがベストの選択というふうに考えておりまして、私どもは今、アメリカに対してTPPに復帰するように呼びかけをしているところでございます。きょう、あすというわけにはいかないかもしれませんが、アメリカがこのTPPに復帰するということを強く期待をしております。

亀井委員 ただ、これまでのところ、トランプ大統領の態度、発言を見ておりますと、TPPには興味がなさそうに見えます。アメリカの復帰というのは、そんなに明るい兆しがない、見通せない中で、私はこのCPTPPの交渉の中で、なぜ日本がTPP11を前提とした、アメリカが抜けた枠組みでの日本の権利というものをもっと主張しなかったのだろうかと疑問に思っています。

 具体的に申しますと、農業の分野です。

 まず、第六条、その協定の見直しのところですけれども、その文章を見ますと、加盟国が修正に応じる保証というのはないですよね。検討する、英語の表現ではコンシダーですから、見直しの申出があったら考えましょうかぐらいのことで、別にそれでその内容について見直される保証は全くその文言の中にはないわけですけれども。そういった中で、一番私が問題が大きかったと思うのは、農林水産分野でのセーフガード、緊急輸入制限措置の発動基準値がそのまま残されてしまったことだと思います。

 例えば、バター、脱脂粉乳のTPP参加国全体向けの低関税輸入枠、TPP枠、これはアメリカも含まれた場合での七万トンの枠というのを維持してしまったので、アメリカが参加しなくても、この七万トンの枠をほかの国で分け合うことができます。乳製品の分野では、アメリカよりも、ニュージーランド、オーストラリア、カナダ、このあたりの国が怖いわけですよね。ですから、アメリカの枠の分もこれらの国々がもらったわけですから、今大喜びです。

 また、牛肉の分野でも、発効時、セーフガードの発動基準が五十九万トンで、これが十六年目に七十三・八万トンまでふえることになっています。二〇一六年度の牛肉輸入量というのは五十二・六万トンなので、もともとこの発動基準自体が高いんですね。その中で、オーストラリアから最大で二十七・七万トン、五三%、二番目がアメリカからで二十・七万トン、これが約三九%。つまり、アメリカが離脱して、この分はカウントされないので、オーストラリアが現在から対日牛肉輸出量を二倍にしても、まだセーフガードの発動基準に足りないわけです。

 こんな基準をなぜ残してしまったんでしょうか。伺います。

河野国務大臣 TPP11においては、もともとのTPP12の特徴でありますハイスタンダードを維持するという観点から、米国不在であっても協定の内容自体は維持した上で、ごく一部のルール分野の適用の停止のみを行うということで合意をいたしました。世界で保護主義への懸念が高まる中、このアジア太平洋地域に自由で公正なルールに基づく経済圏をつくり上げるという意思を世界に示すことは、自由貿易を推進する観点から画期的な意味があるというふうに思っております。

 TPP11協定第六条において、アメリカを含めたTPP12協定が発効する見込みがなくなった場合には締約国の要請に基づき協定の見直しを行う旨規定をしております。この点、米国からの輸入量も念頭に合意された、いわゆるTPPワイドの関税割当て等については、この第六条に基づく見直しの対象となります。

 こうした我が国の考え方につきましては、閣僚会議の場も含め、茂木大臣から各国大臣に明確に伝えており、これに対し、各国からも特段の異論がなかったものと承知しておりますので、各国の理解を得ていると考えております。

亀井委員 同じような質問は農水委員会の方でもされているんですけれども、やはり返ってくる答えが、見直しをするということは理解されているものと思う、そういうような答弁なんですね。今の大臣のおっしゃったことも規定されているということなんですけれども、その規定されているというのは、その第六条にある締約国から申出があった場合には検討する、コンシダーという、そこの部分を規定されていると読んでいるんでしょうか。お伺いします。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 このTPP11の協定の第六条には、締約国は、TPP第二十七章の二条、委員会の任務の規定を適用するほか、TPPの効力発生が差し迫っている場合又はTPPが効力を生ずる見込みがない場合には、いずれかの締約国の要請に応じ、この協定の改正及び関係する事項を検討するため、この協定の運用を見直すというふうに明確に規定されているところでございます。

亀井委員 やはり、今お読みになったのが、その一般的な見直し条項のところだけですよね、その規定するというのは。コンシダーとしか書いていないというものですから。そのほかに、例えばその会合で書かれた文章、そういう確約があって修正されるものと理解するならわかるんですけれども、この修正条項を見る限りにおいては、いわゆる日本の役所言葉で、検討するというのは何もしないということと同じで、前向きに検討するといってようやく少し進むのかなというような言葉の使い方ですけれども、それと同じように、これは何ら見直しを意味するものとは読めません。

 ですから、農水分野に関しては、TPP11、CPTPPにおいて、日本だけが唯一凍結項目を出さず、TPP12から条件を後退させてしまった、事実上かち取ったセーフガードを発動できなくしてしまった唯一の国だと思っておりまして、これは一次産業がかなり壊滅的なダメージを受けると私は理解をしております。

 一次産業がやはりダメージを受けるというのは、安倍政権が地方創生特別委員会をつくったり、私はそちらの方にも入っておりますが、地方の人口減少であるとか、いろいろ問題、課題を提起する中で、やはり一次産業が衰退するというのが一番地方が疲弊していく原因ですので、それに逆行する協定だと私は思います。

 次に、日米並行協議の位置づけについて伺います。

 日米並行協議というのは、日本がTPP交渉参加を認めてもらう条件として、二〇一三年四月の日米合意に盛り込まれたと理解しております。

 アメリカの要望に沿った協議内容で、合意事項はTPP発効時点で効力を持たせるという位置づけだったはずですけれども、ここに盛り込まれたことが、まだTPPが発効してもいないのに、前倒しで法律となって改正され始めていると思います。

 TPPが発効しなくても、この間話し合われた合意事項というのは有効なのでしょうか。そうであるなら、なぜでしょうか。大臣にお伺いいたします。

河野国務大臣 日米並行交渉の結果作成された書簡に記載された非関税措置などは、そもそも我が国のこれまでの取組や今後自主的に行う取組を確認したものであることを踏まえ、今後とも適切にその準備を進めていく、そういう考えでおります。

亀井委員 済みません、適切にその準備というのは、ではTPP発効に備えた準備ということではなくて、それとは関係なく、米国からいろいろな要望が出てきている、それに対する準備ということでよろしいですか。

河野国務大臣 時期については日本が判断をすることにしております。

亀井委員 やはり、その日米並行協議がそもそも始まったとき国民に説明をされた、TPPの交渉参加の条件として並行して話し合うのだというところからは、ちょっと違ってきているように聞こえます。

 伝え聞くところによりますと、二〇一三年、この協議が始まったときに、当時のカトラーUSTR代表代行が来日して、外務省経済外交担当大使森健良さんに日本の法改正リストを手渡したというふうに聞いております。その内容は、米韓FTAに盛り込まれたものと似た、日本にとっては法外なもので、日本側はTPP交渉に入る前のこの事前協議で、米国の自動車の関税撤廃をTPP交渉で最も遅いものとそろえるという、その条件をのまされたと聞いております。これは事実でしょうか。また、このときカトラー氏が渡した法改正リストなるものがあるのでしょうか。大臣にお願いいたします。

山野内政府参考人 TPP12の協定交渉時に米国と並行交渉をしたわけでございまして、我が国は、そのTPP交渉参加に関する日米の事前協議の結果としてその並行交渉を始めたわけでございまして、今御指摘のとおり、外務省の経済外交担当大使である森健良とカトラー当時のUSTRの通商代表代行との間で二〇一三年から行われたものでございます。非常に厳しい交渉でございました。

 これは、その交渉の中身については、常日ごろから御理解いただけているところと思いますけれども、相手もありますし、我が方の手のうちをさらすということにもなりかねませんので、交渉の中身についてのお答えは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、交渉の結果まとまったものは、全て国会に御提出して承認をいただいているというものでございます。

亀井委員 TPP交渉の最中にその交渉の中身について答えられないというのは理解できます。ただ、その交渉の結果協定を結ぶ、結ばない、その審議をしているところで、やはり、その内容が出てこない、特に、こちら側がどう返したかということじゃなくて、相手が何を要求してきたかというのが今の時点になってもわからないというのは、私はこれは問題だと思います。

 ですので、二〇一三年にカトラーさんが日本に要求してきたリスト、これを提出していただきたいんですけれども、お願いできますでしょうか。

河野国務大臣 交渉の中身については、相手方との関係もございますので、差し控えたいと思います。

亀井委員 相手が何を要求しているのか、そのリストの中のまだ一部しか日本はもちろん受けていないと思いますけれども、やはり今後のアメリカとの交渉の参考になるものですし、やはり議会として知っておく必要があるんじゃないかと私は思いますので、このカトラーさんのリストについては、理事会の方でも御協議いただけるようにお願いしたいと思います。

中山委員長 後刻、理事会で協議させていただきます。

亀井委員 では、次の質問に移ります。

 アメリカは、もう大分前から、初めは年次改革要望書、ここには例えば司法制度改革ですとか郵政民営化ですとか、そういうことが書かれていたわけですけれども、そのときから名前を変えて、現在では、外国貿易障壁報告書というものがUSTRから発表されております。各国に対して要望を出していて、その中に日本の部分があります。

 ですから、堂々とUSTRは発表していますから、アメリカ側が何を要求しているかというのは明らかなんですけれども、これに対しての対応ですね、会議体として、今お話しした日米並行協議のほかに、日米経済対話というのもございます。また、先日、日米首脳会談で合意した、貿易に関する協議を設けるというのも発表されておりますけれども、この日米並行協議、日米経済対話、この間合意された協議、何がどう違うんでしょうか。それぞれの位置づけについて、例えば参加者ですとか開催頻度ですとか、あるいはどれかに統合されていくのか、その違いについてお答えください。外務大臣に伺います。

河野国務大臣 まず、自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議につきましては、先般の日米首脳会談で、茂木大臣とライトハイザー通商代表との間で、自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議を開始するということで合意をいたしました。この協議は、公正なルールに基づく自由で開かれたインド太平洋地域の経済発展を実現するために、日米双方の利益となるように、日米間の貿易や投資を更に拡大させていくとの目的で行われるものでございます。

 一方、日米経済対話は、貿易及び投資のルールと課題に関する共通戦略、経済及び構造政策分野での協力及び分野別協力の三本の柱に沿って議論をしてまいりました。これまで、麻生副総理とペンス米国副大統領との間で昨年四月及び十月の二回実施されてきております。茂木大臣とライトハイザー通商代表の間の自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議の結果は、この麻生副総理とペンス副大統領の間の日米経済対話に報告されることになっており、両者がいずれかに集約されるというものではございません。

 なお、TPP12協定交渉時の自動車貿易及び非関税措置に関する米国との並行交渉は、我が国のTPP交渉参加に関する日米事前協議の結果として、森外務省経済外交担当大使とカトラー米国次席通商代表代行との間で二〇一三年から行われ、二〇一六年二月のTPP協定署名をもって、この協議は終結をしております。

亀井委員 なかなか複雑なんですけれども、御説明いただきましてありがとうございました。

 では、次の質問ですが、規制改革推進会議というのがございます。ここの民間委員が集まって話し合われた内容が法律となって、官邸主導でここの国会に出てくる、そういう動きがかなり顕著になっていると思います。

 この規制改革推進会議というのは、米国が要望してきたいろいろな規制緩和、安倍政権自体が岩盤規制を打破するということを言っているわけですから、要望のあった規制を議論する場としてまず存在しているんでしょうか。また一方で、外務省の方で官民連携推進室というのが設置されています。これはどのような組織なのでしょうか。

河野国務大臣 規制改革推進会議というのは、経済に関する基本的かつ重要な政策に関する施策を推進する観点から、内閣総理大臣の諮問に応じ、経済社会の構造改革を進める上で必要な規制のあり方の改革に関する基本的事項を総合的に調査審議し、内閣総理大臣に意見を述べることとしております。

 また、外務省の官民連携推進室は二〇一五年九月に設置されましたが、新興国を中心とする海外の経済成長の勢いを日本経済に取り込むという観点から、政府は日本企業の海外進出支援を重視してきております。官民連携推進室はこの取組を推進するために設置されたもので、ここでは、インフラシステムの海外展開や企業などからの照会、要望に対する第一次的な窓口業務、農林水産物、食品の輸出促進や日本の食産業の海外展開支援などの業務を行っております。

 規制改革推進会議と官民連携推進室というのは、全く、官庁も別でございますので、特に関係はございません。

亀井委員 御説明ありがとうございます。

 この、いわゆる官民連携推進室、外務省にあるものというのは、日本企業が海外にインフラ投資をしていくときにその手助けをする部署として存在するわけで、一方で、安倍政権が官民連携ということをよくおっしゃるんですけれども、その政府全体の方針があるので各役所にこの官民連携の部署があって、今実際に見ますと、例えば公共施設などの総合管理計画が、たしか国交省の方だったと思いますけれども、発表されていたり、官民連携事業案件リストなるものも出てきているわけです。

 これは、安倍政権全体にわたって、官民連携という分野でそれぞれ別個に各役所に設置されているものというふうに理解すればよろしいでしょうか。

山野内政府参考人 先ほど大臣から御答弁申し上げましたとおり、今の日本の置かれた状況から考えますれば、海外の経済成長の勢いをしっかり日本の経済に取り込むという観点から、日本企業の海外進出を支援するということを非常に重視しておりまして、それを実践をするために、二〇一五年九月に官民連携推進室を設置したところでございましたけれども、インフラシステムの海外展開のほかに、さまざまな企業からの照会、要望等に対する第一次的な窓口業務をやっておりますし、日本政府全体として推している農林水産物、あるいは日本製の食品の輸出促進、そういったものの日本の食産業の海外展開の支援、こういったこともその業務の一環として行っているところでございます。

亀井委員 日本が積極的に海外に投資をする、それを推進するのは結構だと思うんですけれども、一方で、海外からやはり日本に投資が入ってくることにも備えなければいけない。

 その中で、TPPに関して私が非常に気になっているのは、TPP協定第十五章の政府調達の部分です。ここの部分が今回のCPTPPでは凍結をされていると伝えられましたけれども、よくよく見てみますと、凍結をされた部分というのはごく一部、今後の適用分野の拡大の部分が凍結をされただけであって、そのほかの部分は凍結されていないんですよね。

 例えば、水道、ガス、電気、公共交通機関、レストラン、学校、病院、電話、スマホ、郵便などなど、日常生活の中であらゆるサービスを受けて私たちは生活しているわけで、TPP協定というのが、物品だけじゃなくて、国境を越えるサービスの貿易章、これは十章、それから十七章は国有企業及び指定独占企業章、第十五章は政府調達というふうに、いろいろなサービスに関してのルールを決めております。そして、この政府調達の部分で一番心配されるのは、やはり地方の公共事業に外資系の企業が参入してくるであろう、そのリスクなんですよね。

 TPPでは、国有事業、公共調達のところまで自由化をして、いろいろな、例えば公開入札を原則とするですとか、入札における内国民待遇及び無差別の原則、調達の過程の公正性及び公平性などが規定されています。詳しく言うと、過去の実績を入札の資格条件としてはならない、これは十五章八条一項。あるいは、技術的な理由でほかに選択肢がなかった場合にだけ公開入札の例外は認められる、これが十条ですね。それから、入札に当たっての技術仕様について、貿易に障害を与える仕様は禁止するとあるので、例えば日本独自の技術仕様とか特殊な技術仕様などは一切できないことになる、そういうふうに読めます。

 今、地方の公共事業は、その実績や規模などにおいて、建設会社がAランク、Bランク、Cランクに分かれて、ある程度すみ分けをして入札をされていると思います。地方の経済というのは、やはり一次産業と公共事業で成り立っている部分があるわけですけれども、ここに外資系の企業が参入してくる、そして公正な競争条件を確保しなきゃいけないということは、入札の条件の書類を、英訳を出さなきゃいけないということですよね。それが地方自治体に求められているということをまだ日本国民は余りわかっていないと思います。では、どのレベルまで求められるのかというのが、都道府県と政令指定都市までですね、今は。

 これだけでも大変な作業だと思うんですけれども、ここの部分は今回のCPTPPで凍結されていないということでよろしいですね。

山野内政府参考人 政府調達の観点でございますので、ちょっと技術的ではございますけれども、御説明させていただきます。

 WTOの政府調達協定におきましては、基本的な考え方といたしまして、都道府県及び政令指定都市につきましては、一定基準額以上の調達、それを指定された範囲のものにつきましては内外無差別で行うということになっておりますけれども、基準額以下の調達あるいは対象範囲外のサービスの調達、そしてあと政令指定都市以外の市町村におきましては、そういう調達などにつきましては内外無差別による調達を実施する義務はない、こういうのが基本的制度でございます。

 今回、TPP協定におきまして我が国が約束した内容というものは、このWTOの政府調達協定の水準と同様のものでございますので、このTPPの協定によって追加的な負担が生じるということはないというふうに考えております。

亀井委員 今おっしゃったことは、WTOの中のGPA、公共調達についての国際条約かと思いますけれども、これにもいろいろ問題があるので、WTO百六十二カ国の参加国の中で十七カ国しか入っていない。ここに入っていない国が今回TPPには入っているわけですから参加してくるということで、今まで対象でなかった国々も入ってくるというのは事実ですよね。ちょっと確認いたします。

山野内政府参考人 それは御指摘のとおりでございます。

 ただ、我が国の地方公共団体が負っているやるべきことについての変更はないということを申し上げたところでございます。

亀井委員 ただ、今まだそういう例がないだけで、参入はしてこられるわけですから、やはり参入してくれば公平に英語で入札の書類も出さなきゃいけないですし、だんだんそういう場面は出てくるだろうと思います。そのことについてやはり、地方公共団体がその準備ができているとは思えませんし、きちんと情報は伝えていくべきだと私は思いますし、私はこの分野についてはやはり慎重であるべきだと考えております。

 そして、ISDSについて質問いたしますが、公共調達の分野で、仮に外資系の企業が日本の公共事業、地方の入札などで参加をしてきて、それで、公平ではないということでISDSで訴える可能性というのもあると思います。

 今までの例えばISDSの事例ですと、有名なのはフィリップ・モリスの一件で、これはフィリップ・モリスの香港にある子会社を通じてオーストラリア政府を訴えたというものです。オーストラリアの政府で、たばこのパッケージにたばこが健康を害しますというようなことを小さい文字で書こうとしたときに、それは利益を損なうということでオーストラリア政府が訴えられて、国民がISDSというものの存在に驚いたというお話はよく聞く例なんですけれども。

 今後、やはりそういった、例えば日本のどこか地方公共団体が入札に関してどこかの企業から訴えられるとか、そういう可能性もISDSというのは持っているわけで、初めは積極的に推進をしていた国々でさえ、ちょっと今見方が変わってきている中で、今回、CPTPPの交渉の中で、日本は凍結を求めず、むしろ推進したというふうに聞いているんですけれども、それは事実でしょうか、そしてそれはなぜでしょうか。

河野国務大臣 TPP11協定を含む投資関連協定のISDSは、投資受入れ国の司法手続に加え、中立的な国際投資仲裁に紛争を付託できる選択肢を投資家に対して与えることによって、投資受入れ国において日本企業がビジネスを行う上での予見可能性や法的安定性を高めることから、海外投資を行う日本企業を保護する上で有効であり、日本の経済界も重視している規定でございます。

 我が国としては、こうしたISDSの意義を踏まえ、投資関連協定交渉において引き続きISDS条項が盛り込まれるよう取り組んでいく考えでございます。

亀井委員 日本の企業が海外に投資をして被害をこうむったときに何らかの救済措置が必要だというのは理解ができるんですけれども、でも、それがISDSであるべきかどうかというのは私は疑問があります。

 通常の司法の機関ではなくて、特別な仲裁措置というか、ISDSという規定が設けられているというのは、私はやはりちょっと、訴えられることを考えたときに、主権を損なうと考えておりまして、ここは慎重であるべきだと思います。ですので、ここは大臣とは見解が異なりますし、国民の間でもまだそんなに合意はできていないと感じております。

 また内容は変わりますけれども、NAFTAについてお伺いをいたします。

 今、トランプ政権のもとでNAFTAの再交渉が行われています。再交渉が議会で成立するかどうか、今ぎりぎりのところのようですけれども、トランプ政権がNAFTAの再交渉を求めている、この背景というものについて、外務省がどういうふうに見ておられるのか、伺いたいと思います。

 ちなみに、私のNAFTAに対する考え方なんですけれども、ちょうどNAFTAの交渉が進んでいるときに私はカナダに住んでおりまして、国内で大変な議論になっていた時期をずっと向こうで過ごしておりましたので、当時のことをよく覚えています。それで、今、九四年に発効してから二〇一四年で二十年たったんですけれども、NAFTAというものがどうであったのか。

 私は、勝者はないように思うんですね。少なくとも、トランプ政権が選挙に勝った、それは、メキシコから労働者が流れ込んできてアメリカ人の雇用を奪っている、だから壁をつくるのだというふうに言ったわけですけれども、でも、メキシコ人が好んでアメリカに出稼ぎに行っているわけではなくて、彼らは、NAFTAの結果生活ができなくなってしまった元農民か、あるいは、特区で働いているけれども、いわゆるワーキングプアの状態で生活ができなくなった人たちか、そういう人たちがアメリカに新天地を求めているわけです。ですから、原因はメキシコにあるわけじゃなくてやはりNAFTAにあると思います。

 そういった中で、アメリカは、メキシコから輸入されてくる自動車の部品の、協定に締約している三カ国での部品生産の比率の引上げを今求めていて、六二・五%から七〇%を要求しているようなんですけれども、こういうNAFTAについて日本はどう見ているのかというのを外務省に対してお伺いいたします。

河野国務大臣 アメリカ、カナダ、メキシコは、おっしゃるように、昨年八月から現在に至るまで、累次にわたりNAFTAの再交渉会合を開催し、大筋合意に向けて現在も交渉中であるというふうに承知をしております。

 日本といたしましては、第三国間の通商協定交渉についてコメントする立場にはございません。しかし、メキシコ及びカナダには自動車メーカー等数多くの日本企業が進出しているということから、NAFTAを活用した企業活動が積極的に行われているものと承知をしております。その再交渉によるこうした日本企業への影響その他について、引き続き注視してまいりたいと考えております。

亀井委員 NAFTAにカナダは加盟していて、そして、今回のCPTPPのときに、カナダは最後、文化的な要素というのを持ち出してまで、締結時、余り交渉に前向きではなかった、最後までごねたというようなことが聞こえてきております。

 私、それで思い出すことが、やはり当時のNAFTAの締結のころのことなんですけれども。小選挙区制度の怖さとしてよく挙げられるのは、カナダの一九九三年のキャンベル政権のもとでの総選挙で、当時の与党だった百六十九議席持っていたカナダ進歩保守党が、選挙の結果、百六十七議席失って二議席しかとれなかった、そういうことがありました。

 それの背景なんですけれども、やはりNAFTAとGST、グッズ・アンド・サービス・タックスという連邦税であったと私は確信をしています。NAFTAの貿易交渉が始まったときに、当然、関税がゼロになるということは関税の税収がなくなるので、その分を何に求めるのかという議論があって、カナダはGSTという、日本で初めて消費税を導入するような、そういう議論になりました。

 ですから、GSTを導入することによって関税減収分の穴埋めをしようとして、これが非常に国民に不人気であったということと、加えて、NAFTAが決まった後で、例えばカナダの工場がメキシコに移転していったりということも重なって、かなり政権が不人気だったと記憶しています。

 そこで質問なんですけれども、関税を撤廃していく方向に日本があるわけで、その分の減収分というのをCPTPPまたTPPでどのぐらいと計算をされているのか、その減収分の部分の財源をどこに求めていくのか、そういう試算をされておりますでしょうか。質問いたします。

山野内政府参考人 今の詳細な質問について、通告をいただいておりませんので、関税を撤廃することによって減った部分をどう補うかということについての直接の数字を持ち合わせておりませんけれども、このTPPについてのその経済影響分析というものは行っておりまして、これは、GDPのベースでいいますと一・五%のGDP成長をもたらす経済効果があるというふうに試算されているというふうに承知しております。

亀井委員 私の通告で、特に農業分野でどれだけの減収になるのか、その関税撤廃分ですね、そういう質問はさせていただいたので、では、それについて質問いたします。

 加えて、そのCPTPPが発効した場合の食料自給率との関係、どのくらい落ちるのか、変わらないのか、その点についても質問いたします。

野中大臣政務官 お答えいたします。

 まず、税収の減額はいかほどかということでありますが、これは、資料は、データは財務省のデータ、試算でございますけれども、まず、TPP12におきましては、平成二十七年十二月に公表されました関税収入減収額及び関税支払い減収額の試算において、農産品の関税収入減収額でございますが、初年度で六百六十億、そして最終年度で一千六百五十億であると承知をしております。また、TPP11におきましては、初年度で百九十億、そして最終年度で六百二十億円であるというふうに承知をしております。

 そして、自給率についてもお答えをさせていただきたいと存じますが、昨年の十二月に公表いたしましたTPP11の定量的な影響試算、この段階で、生産額の影響とあわせて、自給率への影響も試算をしたところでございます。詳しく申し上げますと、影響試算の結果、価格低下による生産額の減少は生じますが、国内対策によって生産量は維持できるというふうに見込んでおりまして、その結果、カロリーベースで平成二十八年度の三八%という水準と同程度になるものと見込んでおります。

亀井委員 今の御回答に関しての質問ですが、以前、二〇一一年ごろだったと思いますけれども、TPPが発効したときに自給率四〇%が一四%になるというような数字を農水省が出していたように記憶しているんですけれども、そういう数字はありませんか。

 そして、今の現状であっても四〇%というのは、緊急時、例えば輸入が途絶えたようなときには、国民一人二千キロカロリーを確保する計画というのは、米じゃなくて田んぼが芋畑になった場合のカロリー計算でされておりますので、その点も含めて、もう一度自給率について伺いまして、ちょっと時間ですので、最後の質問といたします。

天羽政府参考人 お答えいたします。

 今ほど先生がおっしゃられた自給率についての試算でございますが、それは、TPPの交渉に入る前に、全ての農産品の関税率が全部撤廃されるという前提のもとでの試算であったというふうに承知をしております。

亀井委員 ありがとうございます。

 一四%が何をベースに出した数字なのか気になっていたので、そこは確認ができてよかったです。

 まだまだいろいろ質問したいんですけれども、時間が来たので終わらせていただきます。私は、まだいろいろと確認すべき点がたくさんこの案件についてはあると思っております。

 お時間いただきまして、ありがとうございました。以上です。

中山委員長 次に、神谷裕君。

神谷(裕)委員 立憲民主党の神谷裕でございます。

 きょうは、貴重なお時間を頂戴いたしまして、本当にありがとうございました。私も、ふだんは、亀井亜紀子議員と一緒で、農林水産委員会の方に所属をさせていただいております。

 私がおります北海道でございますが、御案内のとおり、農業あるいは漁業、水産業というものを基幹産業としている地域でございまして、特に、御案内のとおり、農林漁業者については、このTPPについて大変な大きな懸念というか反対の感情を持っておられる方が多うございます。そういう中にあって、もし、どうしても、やはりこれは国益なんだ、進めるんだということであるならば、ぜひ丁寧な形で、そういった皆様に対しても御説明をいただけたらと思うわけでございます。

 それでは、質問をさせていただきたいと思います。

 最初の質問でございます。報道等でも、タイとか、あるいは幾つかの国でTPPに関心を示している国があるんだというふうに聞いております。タイのほかにもたくさんあるんじゃないかなというふうに思っているんですけれども、そういった国がどういった国があって、あるいは、その関心の程度がどれくらいのものなのか、まずはお聞かせをいただけたらと思います。

山野内政府参考人 今、神谷委員から御指摘のありました東南アジアのタイのほかに、韓国あるいはイギリスなどがTPP11への参加に関心を表明しているというふうに承知しております。タイに関しましては、先般、茂木大臣に対してTPP11参加への強い意向を示したというふうに承知しております。韓国は、TPP11への加入の是非を年内に決定するということも表明しているところでございます。

 このように、さまざまな国、地域がTPPへの参加に関心を示しているということは、政府としては歓迎したいというふうに思っておりますが、まずは、TPP11協定の早期発効に全力をささげていくということが重要かというふうに思っております。その後、TPPの拡大ということも視野に入ってくるというふうに思っております。

 こういった観点から、我が国といたしましては、そうした関心国あるいは地域に対して必要な情報提供を行っていきたいというふうに考えているところでございます。

神谷(裕)委員 ありがとうございます。

 今お話にありましたとおり、韓国、タイ、イギリス、さまざまな国が関心を示していただいているというところでございまして、今お話にありましたとおり、我が国としては、TPP11、これの発効をまずは目指していくんだというお話でございました。

 また、こういった関心を示している国、タイあるいは韓国、イギリス、そういった国々が、この後実際に参加の意向を示したとして、交渉をしようということになった場合、どういう形で実際に交渉が行われるんでしょうか。

 まずは、そういった国が、まずこのTPP11で既に合意していることということをいわば受け入れるということが恐らくは大前提になるんだろうというふうには思うのでございますけれども、逆に言いますと、こういったことを全て丸のみしないと入れないということになるのか。

 あるいは、当然、個々の国で事情というものがあるんだろうと私は思います。そういった事情について、その関心のある国々が個別に、例えば十一カ国との間で交渉をする、その上で、例えばセンシティブなものについて、例えばですが、十一カ国御了解をいただけるというようなことがあった場合には、例えば一部留保をかけるようなことができるのか、そういったこと。例えばですけれども、一番最初のTPP、4のときに、例えばブルネイが宗教上の理由なんかでできたなというのを覚えているんですけれども、そういった本当に典型的な事例はともかくとして、例えばそういったことが可能となり得るのか、交渉で全て決まってくるのだよという話なのか、ちょっとその辺を教えていただけたらと思います。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の新規加盟ということについてでございますけれども、これはTPP11の協定の第五条に規定されておりまして、恐縮ですけれども、読み上げさせていただきますが、「国又は独立の関税地域は、この協定の効力発生の日の後、締約国と当該国又は独立の関税地域との間で合意する条件に従ってこの協定に加入することができる。」というふうに規定されているところでございます。

 今まだ、これは署名が済んだところで、各国で国内手続をやっているところでございますので、まずはこれを発効させることが重要でございますけれども、こうした加入交渉について一般的に申し上げますれば、候補国あるいは候補地域がTPPのハイスタンダードを受け入れる用意があるということを前提に行うものでございますけれども、最終的にいかなる条件で加入することになるかということにつきましては、各候補国・地域とそれぞれの交渉の結果、個別具体的に決まっていくことになるというふうに考えているところでございます。

神谷(裕)委員 今のお話のとおりでございますと、個別に交渉して、多少のところ、でこぼこが出てくる部分があるのかなというような意図だと思うんですけれども、それで大丈夫ですか。

山野内政府参考人 何分まだTPP11につきましては、各国が署名をして、各国でそれぞれ国内手続中でございますので、まだ発効しておりませんし、具体的な加入という事例があったわけでもございませんので、ただ、この文言上、考えられる考え方ということで述べさせていただいたものでございまして、実際どうなるかということについては、先見的に申し上げるのは非常に難しいかと思います。申しわけございません。

神谷(裕)委員 ありがとうございます。

 今、御関心を示してくださった国、タイあるいは韓国、イギリス、こういったことであれば、今後、交渉の中であるいは決まってくるのかな、そこででこぼこはあるのかもしれないし、ないかもしれないという話だと思うんですけれども、アメリカ、結局、このTPP11に関して一番重要になってくるのはアメリカの加盟ということになるんだと思います。

 TPP11から見れば、アメリカは新規加盟国という扱いになるんですよね、大臣、そうですよね。まあ、うなずいていただいたのですけれども、そうすると、また、このアメリカについて、もしこのTPP11に加盟をしよう、あるいは、日本政府が一生懸命説得をした結果、関心を示していただいたとしましょう。そうしたときに、また再度、アメリカとこの十一カ国との間で、この加盟についての協議というのか条件整備というのか、そういったことがされるんでしょうか。その辺を教えてください。

山野内政府参考人 TPP11と米国との関係についての御質問でございました。

 我が国といたしましては、TPPが日米両国にとって最善であるというふうに考えるところでございまして、これは累次の国会等の答弁で総理始め関係閣僚が答えているところでございますけれども、日米両国が日米経済関係及びアジア太平洋地域の発展にいかに協力すべきかということ、あるいは、TPPの持つ意義といったものも含めて建設的な議論を今後米国とは行っていくということでございますけれども、その上で、米国から仮にTPP参加の意向が示された場合の具体的なあり方ということにつきましては、本当に恐縮でございますけれども、現時点で予断を持って申し上げるというのは非常に難しいというふうに思います。

神谷(裕)委員 もちろん、今の段階で予断を持って許さないのはそのとおりでございます。ただ、先ほど申し上げたように、このTPP11にとってアメリカは新規加盟国ですよね。だとするならば、これからアメリカとその十一カ国との間で再度このTPPについて協議を行うということが前提になると思うんです。そういったときに、果たしてどういった協議がなされるのか、これは非常に注意が必要だろうと私自身は思うわけでございます。

 というのは、これはTPP12、ワイドであったときには、もう既にパッケージとしてまとまっていたわけでございますが、これ、内容そのものはほぼ、ワイドと11で、確かに協定の内容は非常に近いものだというふうには思います。

 しかし、実際にこれからTPP11に対してアメリカが参加をしていただくとなったときに、実はもう一回、振出しとは言いませんけれども、協議を行わなければならない、そういうことですよね、念のための確認です。

山野内政府参考人 委員御指摘のとおり、もともとのTPPは、参加国のさまざまな利害関係を綿密に調整してつくり上げた、ハイスタンダードでバランスのとれた、ガラス細工のようなものであったわけでございまして、そこから、署名はしていたけれども、米国は離脱ということになりまして、いろいろ御発言をトランプ大統領はなさっていて、我々はそれの意図するところ等について分析を試みているところでございます。

 いずれにいたしましても、さまざまな要因もございますものですから、加盟ということでいえば、先ほど御説明させていただきました条文がございますけれども、具体的にどういうふうにこれが展開するかということにつきましては、具体的に申し上げることはなかなか難しゅうございますので、予断を持って申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、いずれにしても、TPPは日米両国にとって最善であるというような立場から、議論には臨んでいきたいというふうに考えているところでございます。

神谷(裕)委員 ありがとうございます。

 もちろん、ガラス細工ということを総理も、あるいは大臣もおっしゃっておられるわけでして、そういったセンシティブな内容なんだよというような前提ではありますけれども、実際にはこれからまた協議が行われる可能性があるんじゃないか、というよりは協議が行われるんだということでございますから、これは相当注意が必要なんじゃないかなと思っておりまして、その意味でいいますと、米国の大統領がTPP協定の復帰の条件として現在のTPP協定よりもよい内容ということをさまざまおっしゃっておられると思います。問題なのは、このよりよい内容というのが果たしてどういったことを指しているんだろうか、そういうようなことだと私は思うんです。

 このよりよい内容、あるいはよりよいという部分について、やはり、しっかり我が国として、もし今後協議をするということであれば、絶対これは分析なり、あるいは関心について知っておくべきだと思うんですけれども、こういった分析がなされたんでしょうか。お知らせをいただきたいと思います。

河野国務大臣 日本政府としてトランプ大統領の発言を説明する立場にはございません。

 もともとトランプ大統領はTPPは離脱するとおっしゃって離脱をされたわけでございますが、それ以来、さまざまなレベルで、米国に対してTPPに復帰することがアメリカの最も利益にかなうのだという説明をしてまいりました。

 その結果、ことしのダボス会議の席だったでしょうか、あたりから、トランプ大統領がTPPへの復帰ということをおっしゃるようになったというのは、我々の働きかけの結果、トランプ大統領自身がこのような発言をすることになったんだろうというふうに思っております。

 一方、このTPPそのものは、参加国が綿密に利害関係を調整した上で、バランスのとれたハイスタンダードな、そしてガラス細工のようなものをつくり上げてきたわけでございますから、この一部を取り出して再交渉、一部を変えるということは、これは極めて困難というふうに申し上げざるを得ないと思います。

神谷(裕)委員 大臣おっしゃったとおりでございます。今のワイドというか11でも、相当我が国にとってはなかなか厳しい内容をのんだんだと思います。だから、まだ国内的には大きな大きな反対の声があるんだろうと思います。しかし、現実の話として、TPP11を我々はもう既に協議をスタートし、あるいは署名をし、現在この委員会でも議論をしているわけでございます。

 そういった中において、依然として我が国の志向としては、当然アメリカにもこれに入っていただきたいと思っているわけでございます。そしてまた、TPP11にとってはアメリカは新規加盟国でございます。となれば、再度協議が要るわけです。そういったときに、確かに、これはもうガラス細工のような協定である、これまでの会合、協議の結果こういったものができたんだという主張はできるとは思います。

 ただ、現実の問題として、アメリカ大統領、トランプ大統領の発言内容を伺っていれば、当然、よりよい内容ということをこだわってこられると思いますし、現にそういったことで要求をされていると思うんです。

 となれば、当然、想定ではないんですけれども、オフェンス、ディフェンスの考え方があると思いますし、このよりよい協定、よりよい内容、これはどうしてもやはり気になるんです。

 大臣、どうでしょうか。ここで具体的な何かを言えとまでは言えないにしても、仮にこういったよりよい内容が盛り込めるということであれば入るんだという意思がしっかりと示されたときに、我が国としては再度アメリカと協議を行う、そういった用意があるのか、その辺を教えていただけたらと思います。

河野国務大臣 繰り返しになりますけれども、TPPは既に参加国がさまざま利害調整をしてつくり上げたガラス細工のようなものでございますから、その一部のみを取り出して再交渉をする、変えるということは極めて困難と言わざるを得ません。

神谷(裕)委員 となれば、日本政府が思っておられるようなアメリカの復帰というのが現実味を帯びるのかどうか、あるいは復帰を求めなくていい、あるいは、そういったことはないとは思うんですけれども、どこかで見切りをつけるのか、そういったこともあるのかなと思いますけれども。

 ガラス細工のような確かに協定かもしれません。現実に、ただ、11においても、ワイドと若干の修正とは言いませんけれども、削られた部分があったわけでございます。そういったときに、本当にこれはもう一行たりとも変えられないんだということで、アメリカ政府を現に説得し、取り込むことができるのか。再度、大臣、お聞かせいただきたいと思います。

河野国務大臣 我が国政府の立場は、アメリカにとってTPPに復帰することがベストな選択である、この考えに変わりはございません。

神谷(裕)委員 そういうときに、考えたときに、アメリカの時間軸で考えたらどうだろうかなと考えますと、この十一月にはアメリカ中間選挙があるわけです。中間選挙のことを念頭に置きますと、当然、外交的にも厳しい要求が出されるんじゃないかなと私は思うわけです。当然、この十一月の中間選挙に向けて、米国の大統領にとっては最も成果が欲しいタイミングになってくるわけでございますし、日米二国間の交渉についても、当然、より厳しいものになるんじゃないかなと私は思うわけでございます。

 現に、鉄鋼やアルミ、こういったことも、この中間選挙、あるいはそういった文脈で触れると比較的わかりやすい部分もあるのかななんというふうにも思ったりするんですけれども、こうやって、向こう様は我が国に対して高目のボールを投げてきていらっしゃいます。そして交渉を有利に運ぶ、そういうこともあるのかなというふうに思うのですけれども、そうだとするならば、我々もディフェンスばかりではなくて、やはりオフェンシブなことも考えなきゃいけないだろうと。

 そういった意味で、我が国からアメリカに対しもうちょっと高目のボールを投げる、そういうようなことも考えてはいかがかなと思うわけでございますが、大臣、いかがでございましょう。

河野国務大臣 鉄鋼、アルミ、アメリカがいろいろ関税措置をとってまいりましたが、アメリカの関連措置の内容や日本企業への影響というものを十分に精査した上でアメリカへの働きかけを継続するのが大事なんだろうと思っております。その上で、WTOの枠組みの中でどうするかということは検討していきたいと思います。

神谷(裕)委員 そういうこともあると思いますし、鉄鋼、アルミはそうだろうと。オフェンスというよりは、ディフェンスの部分はそうだと思います。

 では、我が国としてオフェンス、どう相手を攻略していくかと考えたときに、このTPPもそうでしょうけれども、入っていただくためにどういう道筋を描いていくかというのはやはり大事なんだと思います。

 もちろん真摯に説得をする、これは大事だと思いますけれども、これまで、TPPの内容についても当然アメリカはよくよく御存じだと思います、何しろ交渉していたわけですから。ということは、これでは足りないんだということなのか、あるいは、これに対して、我が国としても、鉄鋼、アルミもそうかもしれません、もうちょっと何か色をつけたら入ってくれる、そういうようなことなのか、あるいは、そういうことをされては困るので、我が国としても何らかボールを投げておくのか。やはり交渉ですから、攻めもあれば守りもあると思います。我が国としても攻めなければいけないと思うんです。

 この辺について、大臣、どうでしょう。我が国の攻めの戦略、教えていただけないでしょうか。

河野国務大臣 我々としては、アメリカがTPPに復帰するのがベストだと考えておりますので、地道に説得するまででございます。

神谷(裕)委員 地道に説得をしていただく、本当に大事なことだと私も思います。

 そういった意味で、先ほどのよりよい内容というのも非常に気になるわけでございますし、やがて、そのよりよい内容の中で、一番危惧しておりますところの農業分野でのさらなる開放というかそういうものがあり得るのかな、そういうことを、やはり私の地元でございます北海道の皆さん方は大変に危惧をしておられるわけです。

 そういった意味で、もちろん譲っていただきたくないと思いますし、あるいは、しっかりと守るべきは守っていただきたい、とるべきはとっていただきたい、そういう思いでございますので、どうかしっかりと頑張っていただきたいと思いながらも、特に攻める方でお言葉がいただけなかったのはちょっと残念でございます。

 次の質問に移らせていただきます。

 WTOでは、不公正な貿易措置に対して、パネルの措置とか報復関税などのさまざまな措置を制度としてとっていると思います。TPPについて、こういった不公正な行為が行われた場合、どういった措置をとり得るのか、そこをもう一回確認をしておきたいと思っています。

 ISDSのように、企業が国家のルールの変更に対して訴訟等を行うことで是正するということは十分に聞いているんですけれども、国対国の紛争の場合、どういった取決めがあるのか、ちょっと確認をさせてください。

山野内政府参考人 TPPの協定の第二十八章に、紛争解決というところで規定が設けられておりまして、この第二十八章において、国と国の間の紛争解決手続が定められているところでございます。

 そこの章におきましては、最終報告書でパネルが義務違反などを決定した場合には、被申立て国がそれを遵守しなければいけませんし、その被申立て国が違反等を是正しない場合には、申立て国は、代償交渉の後、報復関税等の措置により被申立て国の利益を停止することができる等々、非常に詳細な手続が定められておりまして、これらの国と国の間の紛争を解決する制度につきましては、WTOの制度と基本的に同様のものでありまして、我が国がこれまで締結したEPA等にも設けられているものでございます。

神谷(裕)委員 ありがとうございます。

 TPPの中にもそういうのがあるのかなということで、ほっとした反面、ちょっとこれは通告にないんですけれども、仮になんですが、今TPP枠とかセーフガードがあると思うんですけれども、こういったものを、例えば、各国の合意に基づいて変更する分にはいいんでしょうけれども、一方的に削減を我が国がするとは思わないんですが、枠やセーフガード、これを、例えばアメリカがもう入らないということがほぼ確定をしたということで新たに削減をしようとなったときには、これは何らか、そういった対象国から、これは問題だというふうに提訴される可能性はありますでしょうか。

山野内政府参考人 まだTPP11につきましては署名が終わった段階で、各国が国内手続をとっているところでございますけれども、先ほど御質問ございましたけれども、このTPP11には第六条で見直しという部分がございますものですから、そこを通じて、まず、そういう場合に至りましたら議論が行われる、こういうことになろうかと思います。

神谷(裕)委員 ありがとうございます。

 六条にも期待をしているんですけれども、どこかでアメリカがもう入らないということを我が国が見切ったときに、例えば、先ほども亀井議員お話しされていたと思うんですけれども、アメリカが入った上でのセーフガードあるいはTPP枠ということでございますから、どこかのタイミングであるいは修正をするかもしれないというようなときに、これは国から訴えられるようなことがあってはならないと思うものですから、念のための確認でございました。

 次の質問に移らせていただきます。

 よく、保護主義に対しての自由貿易という言われ方をするんですけれども、TPPなどの経済連携協定というのは、加盟国間の自由度を高める反面、逆に、非加盟国には排他的な側面を持っていると私は思います。いわば仲よしグループのお友達グループをつくる動きなんですけれども、誰とでも仲よくしようというような、いわゆる自由貿易とは若干違うのかなと思っています。

 そういった意味で、TPPは、自由貿易、よく、反保護主義とか、いろいろ言われるんですけれども、TPPも自由貿易と言えるのかどうか、そこを念のため聞いておきたいと思います。

河野国務大臣 TPPを始めさまざまな、FTA、EPAと呼ばれている協定がございます。これは、実質上、全ての貿易を自由化することによって世界貿易の一層の拡大に貢献することを目的とするWTO協定の中で認められている制度でございます。

 特にこのTPP11は、人口五億人、世界の一五%のGDPを占める巨大な市場を生み出すことになり、ブロック経済と、このTPPあるいはFTA、EPA、何が違うかというと、このTPP11は、決してクローズなものではなくて、全ての国に入っていただける。トランスパシフィックといっておりますけれども、これは別に、太平洋にいなきゃいけないという地理的な制約もございません。既に、タイ、台湾、コロンビア、あるいはイギリス、さまざまな国がこのTPP参加に関心を表明してくれております。

 仲よしグループと、ではどこが違うかというと、これはハイスタンダードな仲よしグループですから、この仲よしグループに入るためにはそれぞれ努力をしてくださいというところはございますが、しっかり努力をしてくれればどなたでも入っていただけるということで、かつてのブロック経済圏という、完全に門戸を閉ざして外を入れないというものとは全く違う、むしろハイスタンダードなルールを積極的に世界に広げていこう、そういうことで、これはむしろ自由貿易に資するものというふうにお考えをいただいてよろしいかと思います。

神谷(裕)委員 本当に御丁寧な説明ありがとうございました。

 一つ、私自身の懸念といたしましては、WTOそのものが、さきの大戦の反省に立ってそこからスタートしているよね、かつ、ブロック経済というのはどうだったよねという反省に基づいてスタートしているという思いがありまして、そういった意味において、今大臣のお答えというのは、まさにその流れに沿ったもので、やはりそこは気をつけなきゃいけないと思っているものですから、やはり、ブロック経済そのものが排他的になったときに何が起こり得るかというのも想像できるわけでございますし、そういった過去の反省に立ったときに、不断にそういうところは見ていかなきゃいけないかなと思いまして、一言申し上げさせていただきました。

 次の質問をさせていただきます。

 政府は、これまでもアメリカの復帰を促して、働きかけを一生懸命行ってきたと思うんですけれども、今のところまだ復帰は実現をされておりません。むしろ、麻生副総理とペンス副大統領のもとで行う日米経済対話という提案をのんできたというふうに思います。

 では、TPPではなくて、こういった日米二国間協議を受け入れたんだと、米国サイドから見たらこういうふうに見えるんじゃないかなと私には思えるんですけれども、この辺はいかがでございましょうか。

河野国務大臣 今の質問にお答えする前に、WTOのところでございますが、やはりこのWTOが全ての基礎である、そして、このWTOによって自由貿易というのが広まって日本もその利益を受けてきたということで、日本はやはりこのWTOの体制を守るための努力というのは真剣にやらなければいけないというふうに思っております。

 ただ、残念ながら、最近のアメリカの一部の動きが、ややWTOに逆行するというのか反するというふうにとられかねなくもないというものもございますので、ここは、先般のG7の外相会議その他で、日欧でやはりこのWTOをしっかり支えていかなければいけないという確認をいたしました。

 もちろん、アメリカも、今例えばこのWTOの枠組みの中で、Eコマースのような新しい経済の仕組みをどう取り扱うか、これは、日本、アメリカ、ヨーロッパといったところが中心になってこうした新たな枠組みをつくろう、これにはアメリカも積極的に乗ってきてくれておりますので、そうしたものをしっかりと利用しながら、このWTOをしっかり守っていくということをやらなければいけないというふうに思っているところでございます。

 今般の自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議、長ったらしいのでFFRと言っておりますが、これは、公正なルールに基づく自由で開かれたインド太平洋地域の経済発展を実現するために、日米双方の利益となるような日米間の投資あるいは貿易をどう拡大させていけるだろうかということを協議するという目的で行われるものでございます。

 アメリカは二国間のディールに関心があるというのは、もうこれはトランプさんのツイッターを見ていればよくわかる話でございますが、日本としては、先ほどから申し上げているように、TPPが日米両国にとって最善と考えており、この立場を踏まえ引き続き議論をしていこうということでございますので、この協議は、日米のFTA交渉であるとか、あるいはその予備協議であるとかということには全く当たりません。

神谷(裕)委員 時間が参りました。

 WTOについての意識、私も同じようなものがございまして、ただ、このFFRについては本当に注意をしております。特に、貿易取引のための協議という部分が入っております。貿易という部分が入っております。これが果たしてどういうものなのか、今後またいろいろと教えていただきたいと思います。

 たくさん質問を用意してきたんですけれども、届きませんでした。御準備いただいた皆さんにおわびを申し上げさせていただいて、私の質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

中山委員長 次に、吉良州司君。

吉良委員 国民民主党、吉良州司です。

 いつも冒頭申し上げることですけれども、TPPに関しても、まだ党内的な手続を終わっておりませんので、きょうの質問にかかわる私の発言は、議員としての吉良州司個人の責任で行うということをまずお断りさせていただきたいと思います。

 まず、TPP11の取りまとめ、大変御苦労さまでした。私自身は、この短期間において、しかもアメリカが離脱するという中で、日本の主導によってこのTPP11を取りまとめたということは、大変高く評価をしております。そういう意味で、河野大臣、それから茂木大臣、外務省の皆さん、特に経済局の皆さんも大変な御苦労をされたと思いますので、この場をおかりして、その労をねぎらいたいというふうに思います。

 一点残念なのは、昨年の三月、私は、この外務委員会において、トランプさんの就任後の離脱表明を受けて、即座にTPP11を進めるべきだということを申し上げました。その時点では、答弁としては、全く考えていないという答弁でありました。

 これは外交でありますので仕方ないとは思っていますが、当時の状況を考えると、トランプさんも、よく状況を把握していないまま選挙キャンペーンのときに離脱と表明し、そして就任直後できっちりと事務方からの説明を受ければ翻す可能性がある、この時点でTPP11ということを表明し、そこに走ることは、その時点でトランプさんの心変わりを誘発して、TPP11を生かすという可能性がかなり高いと判断をしていたんだと思います。その状況もよくわかりますが、ただ同時に、やはり、考えている、可能性があるんだったら、選択肢の一つとしてぐらいはあるというような答弁をぜひしてほしかったなというふうには思っています。

 もう一点、直接的な質問とかかわりないことですが、今私が申し上げたことについて、私ども深くかかわった民主党政権と比較して言うならば、反省すべきは、いいことだったらすぐ打ち上げてしまう、根回しも十分しないまま、必ず落とせるところに落とすという根回しがない中で、これでいったらいい結果が生まれる、いいぞと思ったら、言ってしまう。ところが、根回しが進んでいないために途中で頓挫するということで、残念ながら期待を裏切ってしまう。一方、今言った、私のような批判はあるけれども、確実に落としどころに落とすまでは公表しないというのが、ある意味では、長いこと政権を担っている政党の知恵かなということも正直思うところであります。

 いずれにしても、TPP11、これを、アメリカが離脱する中で、またこの短期間でまとめ上げたこと、これは日本外交の一つの大きな転機だというふうに思っていますので、改めて称賛をさせてもらいたいと思います。

 これまでの質疑者の中で、既に基本中の基本の質問ということで出ているかもしれませんけれども、まず、私の方からも、このTPP、TPP11の意義についてお聞きしたいと思います。

河野国務大臣 吉良委員からお褒めをいただきまして、ありがとうございます。

 やはり、トランプ大統領就任直後は、きちんと理解をしていただいて戻ってもらうのがいいのではないか、これは、私が外務大臣になりましたのは八月の三日だったと思いますが、まだそれを引きずっていて、私も、ライトハイザー通商代表に初めてお目にかかったときには、やはりTPPへ戻ってくるのがいいのではないかということを申し上げて、その場で、それはないという話になったわけでございますが。その後、いろいろ、日本からしつこくいろいろなレベルで働きかけをすることによって、トランプ大統領が、いいディールになるなら戻ってもいいと、まだ余り中身を理解していただいていないなというところはございますが、これが、やはりいいから戻ろうというふうになるのではないかという期待を持ちながらも、やはりTPP11というのはしっかり進めていかなければいかぬというふうに思っております。

 このTPP11協定は、二十一世紀型の自由で公正な貿易・投資ルールをアジア太平洋地域に構築するという経済的な意義にとどまらず、基本的な価値を共有する国々が経済のきずなを深め、地域の平和と安定を強化するという長期的な戦略的な意義があるわけでございます。そういう意味で、アメリカの参加というのは、そうした観点からも非常に望ましいと私は考えているところでございます。

 また、世界的に保護主義が高まっていく中で、日本が自由貿易の旗手として、TPP参加国以外ともさまざまな経済連携協定交渉を進めております。例えば、EUとの間でEPA交渉を進め、RCEPあるいは日中韓のFTAといったことを今積極的にやっております。

 このTPPがまとまった、TPPが前へ進んでいるというのは、日本がやっているほかの自由貿易協定にも大きな後押しになってきたのではないか。そうしたことから、このTPP11を早期に発効していくということに大きな意義があるというふうに思っております。

吉良委員 ありがとうございます。

 今大臣が答弁された中身はもう全てそのとおりなんだろうと思いますし、そのことも私自身は了としているところなんですが。

 一方で、私も外務省にお世話になったことがありますので、外務省としては言いづらいけれども実はこういう意義があるんだ、ただ、この外務委員会もいろいろな国の大使館の方々がみんな見て耳をそばだてている中で言えないこともある、だけれども日本の国益を考えたときに非常に有意義だ、そういうことは、野党と与党・政府とのかけ合いで、与党は、また政府は言えないこと、それを我々野党がきちっと発言をし、議事録にも残し、そして、政府としては言えないだろうけれども、このTPPの意義については野党議員の中でこういうことを言う議員もいますということで、政府として言っているんじゃないんだという言い方ができると思います。

 なぜこのことを言うかといいますと、今大臣がおっしゃった意義について、そのとおりなんですけれども、私はよく外務省を含め役所の方にも言うんですけれども、言葉にすると非常にきれいなんだけれども、いわば平面的で、立体的なイメージが浮かばないことが多いんですよ。それを、いろいろな具体例を出すことによって立体的に理解をしていく。

 このTPPは、先ほど来の話にあるように、農林水産関係者を含めて非常に抵抗も強い。けれども、私は、さっき言った評価もしているし、進めていかなければいけない。そういうときに、どうやって多くの国民に理解してもらうのか。それは、そういう人たちが立体的に理解をしていってもらわなければいけない。そういう説明も、さっき言った諸外国との兼ね合い上言えないことは、こういう人もいるということで伝える、言えることはもうちょっと掘り下げて立体的に言うということを言ってもらいたいというふうに思っています。

 私がこれから何点か、今大臣の方から出なかった、私が考える意義についてお話をさせていただきたいと思います。

 一点目は、もう当たり前のことではあるんですけれども、私、先日の四月十九日の衆議院本会議、インフラ展開の質疑でありましたけれども言わせてもらったこと、これは、世界経済と日本経済というのは極めて強く連動しているということなんですね。これは、世界経済、米国経済、中国経済、OECD、ASEAN、BRICS等のGDP成長率の推移と日本のそれとをグラフにあらわしますと、ほとんどシンクロしているんです。ということは、世界経済がよければ日本経済がいい、世界経済がよくなければ日本経済もよくない、物すごく単純な傾向を示しているんです。つまり、日本は、このTPPを利用、活用しながら、まずはTPP11だけれども、先ほどの答弁にもあったように、これを拡大していきながら地域経済そして世界経済の向上に貢献することが必ず日本経済の成長になって舞い戻ってくる、そういう効果があるんだということもやはり宣伝材料の一つにしていただきたいというふうに思っています。

 二点目は、これも以前この委員会の資料として配らせてもらったものでありますけれども、資料の一をごらんいただきたいと思います。

 これは、TPPと上海協力機構の加盟国また準加盟国を図で示したものでありますけれども、これを見て一目瞭然のように、中国を中心とする上海協力機構、これは、ある意味ではユーラシア大陸全域をカバーするようなランドパワーというような位置づけができるのに対して、TPP加盟国、アメリカは今入っていない、コロンビアもまだこれからということで少し色を薄くしておりますけれども、これはシーパワー、先ほど河野大臣も言っておられた自由貿易の一つの枠組みになっているわけであります。

 シーパワーというのは、当然ながら自由な貿易・投資というものと自由な海上輸送、自由な航行というものを希求しますので、そういう意味では、このTPP11、そしてまたアメリカを巻き込む、更に拡大する、この国々をふやすことによって、先ほどおっしゃった、価値観を同じくする、また自由投資・貿易、そして航行の自由を希求する国々との連携を深めていくという地政学的な意味合いがあると思います。

 そして、三番目としては、私流の言葉で言わせていただきますと、日本の産業構造、産業生態系の変化に対応する仕組みであるということですね。

 これはどういうことかといいますと、日本企業の中で、そこまでハイスペックではない製品をつくっている工場が、いい悪い両面ありますけれども、どんどん海外に投資をして出ていっている。日本は、人口減少、少子高齢化もあって、国内マーケットが残念ながら先行き縮小してしまう可能性がある。そうなってしまいますと、どうしても国内において投資するというインセンティブというか投資意欲が欠けてしまう。そうすると、国内で閉じてしまうと、ますます日本経済がシュリンクしてしまう。そういうときに、このTPPを始めとして、面としての経済連携を拡大していくことによって、日本国内では残念ながらもうなかなか通用しなくなったけれども、まだその製品を必要としている国がある、企業がある、人がある。

 そして今回、このTPPの大事な意義というのは、一つは、経済的に日本のようにGDPの大きな国も、ブルネイも、ニュージーランドという、この規模の大小が違う国々も入っているということ、また、ベトナムに象徴されるように、発展段階が違う国々も入っているということ、これが非常に重要であります。

 私は商社勤めをしておりましたが、大概、ビジネスモデルとか商品、製品というのは、悔しいけれども大体アメリカが発祥の地で、そこではやったものを日本に導入してくる。それで、日本である程度それをはやらせる。ところが、だんだんブームが去ってしまうと、これを今度、東南アジアに持っていく。そしてまた、何年かそれで食っていく。またそれも少し下火になってくると、これは南アジアに持っていく。最後は、言い方は失礼だけれども、アフリカに持っていって、そこで商品ライフが終わってしまう。こういうようなことを、ここで終わりだからといって絶対諦めないというのが我々商社マンの性癖なわけですけれども。

 そういう意味では、日本で通用しなくなっても、製品にしろビジネスモデルにしろ、まだまだ通用する国がある。だから、発展段階の違う国もこの枠組みに入っているということは極めて重要な意味を持つというふうに思っています。それが三つ目の意義です。

 それからもう一点は、意義というより、なかなか政府として、余り政府側から言わないことなので私の方から言わせていただきますと、ISDSです。

 これはどうしても、多くの日本人、そして国会議員もそうですけれども、アメリカ企業の訴えによって日本が窮地におとしめられる、またそれによって日本の大事なルールを変えなきゃいけないんじゃないか、そういうふうになってしまうんじゃないかという危惧を持ちますけれども、山野内さん御存じのように、これは、日本が結んでいるEPAには基本的に全部盛り込まれている内容であって、なぜ盛り込んでいるのかというのは、日本企業が、特に途上国、政権交代等によってルールが大きく変更されるおそれがあるその国に投資するときに、このルールがなければ日本企業の利益を守れないからこの項目が入っているのであって、アメリカも確かにNAFTAの中でメキシコとカナダを訴えていますけれども、訴える理由があるんですよね。訴えても、結果は別にしまして、日本がそういう訴えられるような扱いをしない限りは、先進国の中で訴えられることは私は極めて少ないと思っていまして、逆に、日本企業が今言った途上国に出ていくときの日本企業の利益を守る、この意味合いの方がはるかに大きいということをもっともっと強調していただきたいと思っています。

 これについては、ちょっと手前みそにはなりますけれども、海外でそうやって投資のビジネスとかをやってきた、私を含めたそういう経験を持つこの辺の周辺にいるビジネスマンの数と、それから農業者を中心とした日本のTPPまたISDSがあると困ると思っている人たちの数の圧倒的な非対称性がありますので、なかなかこのISDSの意義について強調するという人が少ない。また、政府の側からはその話を私は余り聞いたことがありません。

 攻められたときに守る一方になっていますから、ぜひそのことも強調していただきたいというふうに思っています。

 以上、私自身が申し上げた意義、先ほど言いましたように、そのとおりですと言えないことは承知の上ですけれども、河野大臣の方から一言あれば、お願いします。

河野国務大臣 委員の御自身の経験に裏打ちされた御高説を拝聴いたしまして、本当にありがとうございます。

 さまざまな形で、またさまざまな場面で、このTPPの有用性、その意義というのをぜひ委員にも対外的に説明をしていただきたいというふうに思っておりますし、ISDSにつきましては、以前一度ネットでどうも誤った話が随分拡散をされたということがあったようでございまして、どうも本来の意義が違った形で流れているというところがあるんだろうと思います。

 そういうところについては、我々政府としてもきちんとした御説明をしていかなければいけないのかなというふうに思っておりますが、このTPPがこれからの日本経済の発展に大いに資するように、我々としてもしっかり努力をしてまいりたいというふうに思っております。

吉良委員 次なんですけれども、TPPのいろいろな分野の中で、特に貿易に関すること、原産地規則、そして原産地規則の完全累積制度というものがありますけれども、この原産地累積制度の概要、簡潔な概要とその意義についてお尋ねします。

河野国務大臣 TPPの原産地規則は、TPPに参加するいずれの国で生産されても、一定の付加価値がつけられるなどの要件を満たせば関税引下げのメリットを受けられるという仕組みになっているわけでございます。この仕組みによって、広大な地域において多様な生産ネットワークによるサプライチェーンの構築が可能となります。

 これは、日本の企業にとって、さまざまなビジネスモデルの選択肢を広げるものになるのではないかと思っておりまして、こうしたTPP11協定の活用によって、我が国のさまざまな企業がさまざまなメリットを受けられることになるんだということを政府としても引き続き積極的に説明をしていきたいというふうに考えております。

吉良委員 ありがとうございます。

 私は、この原産地累積制度というのが、この取決めの中でも最も大きな内容であり成果だというふうに思っています。それは、今大臣からもありました、日本企業というのは、円高のよしあしは別にして、この間、本当にバリューチェーン、サプライチェーンというものを面的に構築してきて、どういう状況になろうとも生き延びていくというようなサプライシステム、バリューチェーンを築いてきたというふうに思っています。

 これは以前の委員会でも申し上げたんですが、私がコロンビアに行って、コロンビアに進出している日本の企業の人たちと話をしたときのことです。当時、日本とコロンビアとで二国間のEPAを結ぼうとしていましたけれども、コロンビアに進出している日本企業関係者から言われたことは、それでは不十分なんです、ないよりはましですけれども不十分なんだ、それよりも東南アジアを巻き込んだ面での連携を築いてくれという要望を受けました。当然ですね。というのは、コロンビアの企業が輸入していたのは、日本企業がタイに投資した、そのタイ工場からの部品を集め、そして中国なら中国の投資したところから部品を集め、それを組み合わせてコロンビアでつくっている。もちろん、日本からの輸入もあると思います。

 だから、今言ったように、日・コロンビアだけで結んだのではそのメリットは出ないんですね。今言った、日本が、日本の企業が価格競争力を高めていくために構築した面的なバリューチェーンを生かすためには、まさに面でなければ効果がない。そういう意味では、この原産地累積制度というのは、いわばメード・イン・TPPを可能にした。

 特に重要なのは、今言ったバリューチェーンの中でも日本が主要部品、核になる部品をつくっている場合が多い、けれども、日本単独では、それまでの二国間のEPAの特恵関税を受けられる、その付加価値までは届かなかった。そういうときに、メード・イン・TPP、日本の主要部品とタイのこの部品と、そしてベトナムのこの部品とを組み合わせる、まあタイは今入っていないからマレーシアにしましょう、これを組み合わせて、全部でメード・イン・TPPのパーセンテージをクリアできれば、関税のメリットが得られる。日本の工場、事業所、雇用を維持しながら関税メリットを得られるというのは、極めて大きなことだというふうに思っています。

 これは、実は、私は、外務省が長いこと地道にやってきたチャイナ・プラスワンという戦略ともある意味ではリンクするというふうに思っておりまして、そういう意味で、このTPPとチャイナ・プラスワンの関係についてお聞きしたいと思います。

 ちょっと質問がわかりづらいですかね。もうちょっとブレークダウンした方がいいですか。

 チャイナ・プラスワンという外交戦略が、このTPP11の成立、発効、また将来的にアメリカを招き入れていく、この仕組みに対してどういうメリットが生まれるかということについてお聞きしたいと思います。

河野国務大臣 なかなか難しい質問でございますけれども。

 企業にとって、中国のさまざまなビジネスリスクを回避するという観点からチャイナ・プラスワンということで、TPPの域内の国に拠点を設けようというような可能性が出てくるんだろうというふうに、そういう視点でお考えなのではないかというふうに思っております。

 そういうことを考えると、この中国を含まないTPPというのは、チャイナ・プラスワンという、委員のおっしゃる企業戦略に極めて沿っているということになるのかなというふうに思います。

 今、日本は、TPP11、ここまでこぎつけましたので、次はRCEP、インド、中国その他を包括的に含んだRCEPというものを次にやろうではないかというふうに考えているところでありまして、どちらにせよ、このTPP並みのスタンダードの高いRCEPというのをやらなければいけないのかなというふうに思っているところでございます。

 そうなれば、そういう新しいルールにRCEPに参加する中国も当然合わせなければいけないということになりますので、ビジネスリスクという観点からは少し抑えることができるのではないかというふうに思っておりますが、委員のおっしゃるようなチャイナ・プラスワンという戦略を考えている企業から見れば、まずこのTPP11の発効によって拠点をつくる選択肢というのが広がってくるということになるのではないかというふうに考えます。

吉良委員 今大臣がおっしゃった後段のところで、タイがTPPに入りたいという意向表明、これはいろいろな理由があると思いますけれども、私自身が考える一つの理由としては、やはりベトナム、伸び行くベトナムに今のASEANにおけるタイの地位が奪われかねないのではないかという危機感を持っているというふうに思っています。

 それは、今私が申し上げたチャイナ・プラスワンの関係で、まあ断っておきますけれども、私はいつも言うんですけれども、日本が南米だったりヨーロッパの横に引っ越しができない以上、中国とは未来永劫、必ず仲よくしていかなければいけない、これはもう私も心の底から思っている一人でありますが、ただ同時に、今、飛ぶ鳥をも落とす勢いの中国、南シナ海の行動等を見ても、また東シナ海での行動を見ても、一方でやはり警戒も必要だというふうに思っています。

 これまでもやはり何かあったときに日本たたきがあって、そして日本企業が被害を受ける、これは近過去にそういう経験もしているわけなので、そういう意味では、日本政府がやはり中国のリスクに対して、中国にかわる投資先を日本が、日本政府が支援をしているというこのチャイナ・プラスワンという戦略を私は極めて正しい戦略だと思っていますし、それと、TPP11、またTPP12、その拡大版が生きてくるということになればなおのこと、今言った中国のリスクを回避するための投資先はどこだろうと探すときに、TPP加盟国が圧倒的に有利になるんだろうと思っています。

 それは、さっき言った原産地累積制度もあるからです。ベトナムは明らかにこのことを意識して、さっき言った、発展段階が違うにもかかわらず、私は強くコミットしてきたんだろうというふうに思っています。

 このTPP11が発効して、これがどんどん拡大していけば、今までタイに投資をしていたところも、ましてアメリカが入ってきたとなれば、もうタイへの投資からベトナムに変更だということが十分あり得るので、私は、タイが、急遽といいますか、やはり入りたいという意向を示しているんだろうと思っています。そういう意味で、このTPPに加盟する国はチャイナ・プラスワンの対象国として非常に有力になる、そういう関連があるということも指摘をさせてもらいたいと思います。

 先ほどの答弁で、大臣の方からRCEPのことについての言及がありました。ずばり聞きます。TPPとRCEPと、どちらが大事でしょうか。優先順位はどちらが高いでしょうか。

河野国務大臣 これはもう、時期的な優先順位でいえば、TPPはここまで来ておりますから、TPPの早期発効をまず目指すというのが我が国の戦略でございます。

 他方、RCEPは、TPPに参加をしていない韓国や中国を含む、そしてインドも含め更に巨大な経済圏でございますので、そういう意味では、このRCEPをできるだけ質の高い協定にして発効させていくということを狙って交渉していきたいというふうに思っております。

 規模からいえば、人口、GDPあるいは貿易総額、RCEPの方が相当大きくなるわけですから、これを無視するわけにはいきませんが、だからといって、このRCEPを質の低いものにするということもできませんので、そこは鋭意しっかり交渉してまいりたいというふうに思います。

吉良委員 外務省として、外務大臣としてはそのようにお答えするしかないというのは十分承知をしておりますが、私自身ははっきり申し上げてTPPがはるかに優先するというふうに思っています。

 今、時間軸の話も大臣されましたけれども、中国もいずれTPPに招き入れなければならない、招き入れたい、そう考えたときに、RCEPが動いてしまうと、成立してしまうと、幾ら高いレベルのRCEPに仕上げたいといっても、今現在、ラオスもカンボジアも入っているASEANと、そして、まだまだ一党独裁で政府の統制が非常に強い中国が、ここが入っているRCEPのレベルがTPPのレベルに追いつくとはとても思えません。

 一方、中国の国力を考えたときに、今あえて国名を出しましたけれども、カンボジアそしてラオス等は、今はフィリピンもそうですけれども、やはり中国の国力にぐっと吸い寄せられてしまっている。そうすると、RCEPが成立してしまうと、やはり中国の影響力によって低いレベルの協定で満足してしまう、このリスクが高いというふうに思っているんです。

 そういう意味では、まずは高いレベルの協定に、そこに参加できる国をまず引き込んでいく、そして、さっき言った、中国等を少し時間差があっても時間をかけて招き入れていく、こういう本音の優先順位が必要だと私は思っています。

 ただ、外務省としてはどっちも大事だ、こう言い続けなければいけないのは十分わかっていますが、本音としては、私は、交渉だけ重ねて、実態的にはRCEPはたなざらしでいい。そして、TPPを早く発効させて、アメリカを招き入れ、コロンビアを招き入れ、先ほど言及のあった台湾、タイ、そして私の構想があります。

 今、政府はインド太平洋戦略ということをしきりに言っていまして、それ自体は間違っていないと思いますが、最後の資料五を見ていただきたいと思います。

 これは政府方針を十分加味した上でですけれども、まさに今は環太平洋ですけれども、これをまさにインド洋も含めた協定に拡大していく。これは、先ほど言いました地政学、シーレーン防衛等も含めても、このトランス・パシフィック・アンド・インディアンオーシャン・パートナーシップというのに仕上げていくことによって、RCEPの中の重要な国であるインドもここに巻き込んでいける。そして、このインド・太平洋を考えるときに欠かせないインドネシアも招き入れていく。ドゥテルテ大統領のときにすんなりいくかどうかわかりませんけれども、フィリピンも当然招き入れていく。いずれは、南西アジアの国、また東アフリカの国というふうにも拡大していかなければいけないでしょうけれども、日本の国益、さっき言ったシーレーン等含めても、まずはインドを引き入れる。

 インドは、中国とは違った意味で、まだ国内での発展段階が余りにも違いますので、なかなかTPPのレベルにいきなりついてこれるとは思いませんけれども、ティア1、ティア2じゃないですが、J2リーグみたいな予備軍をつくってでも、将来的なトランス・パシフィック・アンド・インディアンオーシャン・パートナーシップの構想を打ち出すべきだと思っていますし、アメリカ抜きでTPP11をまとめ上げた今だからこそ、日本がそれを主導する、その価値がある、その資格があると思っています。

 河野大臣、いかがでしょうか。

河野国務大臣 もう既にTPPにはさまざまな国が関心を寄せてくれております。日本としては、なるべく早くTPP11を発効させ、そしてTPPを質の高いルールとして拡大をしていきたい。

 そのときに、委員おっしゃるように、インド・太平洋地域にこうしたものを広げていくというのは、自由で開かれたインド太平洋戦略とも非常に整合をする戦略でございますから、積極的にそうしたことをやってまいりたいというふうに思っております。

吉良委員 ありがとうございます。

 そこまで踏み込んでもらえるとは思いませんでした。もちろんインド太平洋戦略という大きな方針があるからではありましょうけれども、この構想についても前向きに捉えていただいたという理解をいたします。

 時間もなくなってきたので最後の質問に移っていきたいというふうに思いますが、私の前の質問者も、米国復帰についての話をしきりにしておりました。

 まず私がお聞きしたいのは、言えること、言えないことがあると思いますけれども、先ほど河野大臣も言っていた、米国にとってもこのTPPが米国の国益にかなうんだという話をされておりましたが、具体的に、アメリカの復帰を促すときにどういう説明をされているんですか。ただその方が国益にかないますよなんて単純な説明はしていないですよね。アメリカの産業構造、貿易構造、投資構造、そういうことも含めて、あらゆるアメリカのメリットを日本側からも説いて、そして復帰すべきではないですかという説明をされていると思うんですけれども。

 今言った、言えないこともあるかもしれません、けれども、言える範囲で、どういう理由づけでアメリカを説得しているか、教えてください。

河野国務大臣 TPPにアメリカが入ることが、アメリカの経済あるいは雇用といったものに大きくプラスになるという説得を今試みているところでございますし、アメリカと一緒になってつくってきたTPPが発効すれば、例えばアメリカの農家とオーストラリアの農家を比べたときに、さまざまな足かせになるようなことがこのままいけば起きかねない。ですから、それは、アメリカにとってやはりTPPに入るというのが一番早い話でもありますし、効果の大きな話でもございます。

 トランプさんは、二国間のディール、こうおっしゃっておりますが、なかなか、そういうディールを一つ一つやっていくというのも、USTRも決して大きな組織ではございませんし、時間もかかる。特に、NAFTAの再交渉もやれば、さまざまなことをやっている中でございますから、これはやはり、アメリカにとってTPPに早期に復帰するのが経済的なメリットは一番大きいということをきちんと理解をしていただく、そういう作業をしているところでございます。

吉良委員 私がこのことをお話ししたのは、自分の浅学非才というか無知もさらけ出すようなんですけれども、実は私は、アメリカの世界的な産業構造について少し誤解をしておりました。トランプ大統領が離脱を表明したときに、私は、何もわかっていない大統領だなと。

 確かにメキシコとアメリカの間では貿易は赤字かもしれないけれども、アメリカの資本でメキシコに工場をつくり、そのメキシコでつくったものをアメリカ人が必要としていて、それを輸入すれば輸入業者のビジネスがあり雇用があり、それをまた全米に運ぶ流通業者のビジネスがあり雇用があり、そしてまた小売の、それを売るビジネスがあり雇用があり、そして税収がある。そのメキシコから輸入したものの、今言ったようなビジネスであり雇用であり納税を考えたときに、アメリカの方が圧倒的にプラスになるじゃないか、しかも、メキシコからアメリカに輸出すればするほど、その配当収益がアメリカに入ってくるじゃないか、こういう話をしていました。

 これは、今言ったことも一部は間違いではないと思います。ただ、数字的に見たときに私は愕然としました。

 そういう意味で、ちょっと資料の二、三を見ていただきたいと思うんです。

 資料二は、日本の経常収支です。ブルーが貿易収支。それから、オレンジ色がサービス。それから、グリーンは、そこに書いてあります対外債権、日本の場合、債権が多いですけれども、配当、金利収入が中心の第一次所得収支が緑色ということで、日本の場合は、御承知のとおり、貿易収支については、油の値段がどうなるかによって、最近はマイナスにもなり若干のプラスにもなるというのがずっと続いています。しかし、その一方、第一次所得収支という対外的な投資から上がる配当、金利収入が最近は二十兆前後ありますので、それによって常に経常収支を高いレベルで維持できている。これが日本の構造です。

 私、これはアメリカもそうなんだと思っていたんです。ところが、資料三を見てください。

 愕然としたのは、アメリカの場合は、日本が二十兆前後ある第一次所得収支というのが日本と同じレベルでしかないんですよ、これだけGDPが三倍も違っていながら。

 実例の一部ですけれども、今、中国とアメリカの間で貿易摩擦になりかねませんけれども、これも多くの人が、トランプさん、何考えているんだ、実際、中国からアメリカに輸出しているのは、ほとんどアメリカが投資している企業からの輸出じゃないかと思っていると思うし、私も思っていたんです。

 ただ、統計上は、例えばアップルがスマートフォンをつくる際に、例えば台湾資本の鴻海が、四川省成都に工場があって、五兆円ぐらいアメリカが輸入していますけれども、それはいわゆるOEM生産であって、委託生産であって、投資そのものではないんですよね、当然、鴻海がつくっているわけですから。そういう意味では、実は日本とは少し構造が違っていた。

 逆に、よくTPPの中でルール等々言われる特許等のサービス収支が極めて大きい。サービス収支の方が第一次所得収支よりも大きいわけですね。圧倒的な貿易収支のマイナスがあるというのがアメリカの構造なんです。

 これがあるからトランプさんが言っていることが間違っていないというふうに私は言うのではないんですが、外務省、特に北米二課にあっては、アメリカの産業構造、こういう国際収支の構造というものをもっと掘り下げて分析していただいて、そして、それを我々議員にもきちっと披露してもらって、そして、アメリカと交渉するときも、先ほど大臣がこういう説明をしている、これも間違ってはいませんけれども、もっともっとアメリカの実務レベルまで納得できるようなデータを持って、示して、説明して、そしてアメリカを再度TPPに招き入れていただきたい。

 ありますか、もうこれで終わらなきゃいけない時間になったんですが。では、一言大臣に。

河野国務大臣 大変丁寧な御説明をいただきまして、ありがとうございます。

 日本とアメリカの経済構造というのは、この数字を見ていても大きく違いますし、それぞれの企業の投資行動あるいは企業構造というのを見ても、やはり違うところはあるんだろうというふうに思います。そこを、おっしゃるように、もう少し丁寧に掘り下げて、アメリカの政権、アメリカの企業が納得する、そういう説明に我々の説明もポリッシュアップしていかなければならぬと思いますので、そこはしっかりと担当してやってまいりたいと思います。

吉良委員 最後に、TPP11の早期発効と米国の再度の招き入れ、そしてトランス・パシフィック・アンド・インディアンオーシャン・パートナーシップの成立に向けて頑張っていただくようにお願い申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

中山委員長 次回は、来る十六日水曜日午前八時十分理事会、午前八時二十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十七分散会


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