衆議院

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第3号 平成30年11月21日(水曜日)

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平成三十年十一月二十一日(水曜日)

    午前九時四分開議

 出席委員

   委員長 若宮 健嗣君

   理事 小野寺五典君 理事 木原 誠二君

   理事 新藤 義孝君 理事 武井 俊輔君

   理事 堀井  学君 理事 寺田  学君

   理事 小熊 慎司君 理事 遠山 清彦君

      小田原 潔君    小渕 優子君

      黄川田仁志君    古賀  篤君

      高村 正大君    佐々木 紀君

      杉田 水脈君    鈴木 憲和君

      鈴木 隼人君    辻  清人君

      中曽根康隆君    中山 泰秀君

      穂坂  泰君    山田 賢司君

      櫻井  周君    山川百合子君

      青山 大人君    高木 陽介君

      岡田 克也君    玄葉光一郎君

      穀田 恵二君    杉本 和巳君

      井上 一徳君    中山 成彬君

    …………………………………

   外務大臣         河野 太郎君

   法務副大臣        平口  洋君

   厚生労働副大臣      大口 善徳君

   外務大臣政務官      鈴木 憲和君

   外務大臣政務官      辻  清人君

   外務大臣政務官      山田 賢司君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  清水 茂夫君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 山内 由光君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 飯田 圭哉君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 桑原  進君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岡野 正敬君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 齊藤  純君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)            金杉 憲治君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    垂  秀夫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           田畑 一雄君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           度山  徹君

   政府参考人

   (海上保安庁次長)    一見 勝之君

   外務委員会専門員     小林 扶次君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十一日

 辞任         補欠選任

  高村 正大君     穂坂  泰君

  鈴木 隼人君     古賀  篤君

  井上 一徳君     中山 成彬君

同日

 辞任         補欠選任

  古賀  篤君     鈴木 隼人君

  穂坂  泰君     高村 正大君

  中山 成彬君     井上 一徳君

    ―――――――――――――

十一月二十日

 経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 日本国と欧州連合及び欧州連合構成国との間の戦略的パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 社会保障に関する日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 日本国と欧州連合及び欧州連合構成国との間の戦略的パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件(条約第二号)


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     ――――◇―――――

若宮委員長 これより会議を開きます。

 社会保障に関する日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官飯田圭哉君、大臣官房審議官桑原進君、大臣官房審議官岡野正敬君、大臣官房参事官齊藤純君、アジア大洋州局長金杉憲治君、領事局長垂秀夫君、内閣官房内閣審議官清水茂夫君、法務省大臣官房審議官山内由光君、厚生労働省大臣官房審議官田畑一雄君、大臣官房審議官度山徹君、海上保安庁次長一見勝之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

若宮委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

若宮委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。黄川田仁志君。

黄川田委員 自由民主党の黄川田仁志でございます。

 本日は、日中社会保障協定の審議ということでございますが、あわせて日中関係全般についても質問させていただきたいと思います。

 まず、日中社会保障協定から入らせていただきます。

 我が国は、中国に最も多く海外進出しているということがございまして、年金の掛金の二重払いについては日本企業の負担も大きく、業界から、この二重払いの解消のために社会保障協定を結んでいただきたいという強い要望が来ていることから、本協定を結ぶことは大変意義があるというふうに考えております。

 そこで、中国が外国人に対して年金制度への加入を義務づけられたのが二〇一一年十月でございまして、かなり時間がたっております。本国会に上がってくるまでにこれだけの時間を要しましたことに対して、これまでの経緯について教えていただきたいと思います。

金杉政府参考人 お答えさせていただきます。

 委員御指摘のとおり、平成二十三年十月以降、外国人が中国国内で就労する場合に、中国社会保険法などに基づき、社会保険に加入することとされました。

 我が国としましては、こうした状況を受けて、駐在員の方の負担の軽減を図るという観点から、平成二十三年五月の日中外相会談において、社会保障協定の締結交渉の早期開催を中国側に働きかけ、二十三年十月に、第一回の政府間交渉が開始をされました。その後、日中間の種々のやりとりが停滞したことはもう御承知のとおりでございますけれども、その間、社会保障協定も三年以上にわたり交渉が行われなかった時期がございます。

 その後、計八回の政府間交渉を経まして、平成三十年一月の日中外相会談において実質合意に至ったことから、平成三十年五月九日、東京におきまして、両国首脳の立会いのもと、本協定の署名を行ったという経緯がございます。

 以上でございます。

黄川田委員 ありがとうございます。

 三年間なかなか交渉が進まなかったということでございましたが、ようやくこうして日の目を見るに当たり、この社会保障協定、しっかりと前に進めていただきたいと思っておりますが、ただ、この社会保障協定におきまして、中国の年金制度では、我が国と同様に、保険料について、企業が負担する分と個人が負担する分とで成り立っております。

 本協定にはいわゆる通算規定がないことから、中国において、年金加入が五年以上経過して、また、最低加入期間の十五年を下回った場合には、企業負担は掛け捨てになってしまうということになっております。個人負担分の保険料については中国国内法で戻ってくる可能性があるということでございますが、企業負担分の保険料については戻ってこないということでございますが、このあたりは何か調整するとか、これはこのままでいかなければならないか、そのあたりをお聞かせいただきたいと思います。

金杉政府参考人 お答えさせていただきます。

 御指摘のとおり、中国の年金制度には、保険料の個人負担分につきましては、申請により被保険者本人に対して払い戻す制度がございます。他方で、企業負担分については、この点も御指摘のとおりでございますけれども、このような制度は存在しておりません。

 こうした中で、今回の協定には通算規定というものが盛り込まれておりませんが、通算規定が存在すれば、企業負担分も含めて保険料の掛け捨ての問題は解消されるという状況がございます。

 通算規定につきましては、交渉の過程で、中国側から、将来的に保険期間の通算規定も設ける可能性を排除しないという説明がございましたので、この点については引き続き政府としても検討してまいりたいというふうに思います。

 なお、中国に我が国から派遣される方々の約九〇%は派遣期間が五年以下というふうに推計されておりますので、こうした方々につきましては、協定発効後は日本の年金制度のみに加入しますので、掛け捨てという問題は生じないということがございます。

 いずれにしましても、通算については引き続き政府として鋭意取り組んでまいりたいと思っております。

 以上でございます。

黄川田委員 ありがとうございます。

 本協定におきましては、日本の企業人の方の九割がカバーできるということでございます。ただ、あとの一割の方、また企業の負担についても、やはり一〇〇%カバーできるように、今後とも、今のお答えのとおり、通算規定を盛り込むということで引き続き締結後も外務省として努力していただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 そして、この中国と社会保障協定を結ぶということは、日中両国の経済的なつながりを更に発展させることになりますので、大変重要でございます。

 ただ、中国と日本の関係、御案内のとおり、いいことばかりではございません。経済的な結びつきを深める一方で、安全保障の問題、また、中国の国内、特に人権問題等がございます。ですので、後半は、この中国に対するちょっと懸案について気がかりなことがあるので、お答えいただきたいと思います。

 まず、新疆ウイグル自治区で懸念されている人権問題について質問させていただきたいと思います。

 昨今、さまざまな情報によりますと、中国北西部の新疆ウイグル自治区で、ウイグル族などの最大で百万人ものイスラム教徒が再教育収容施設と言われるところに拘束されているという情報がございます。訴追や裁判などの手続もなく、一方的に多数の人たちが拉致され拘束されたと言われております。このことが真実であるならば、近年まれに見る規模の人権侵害が行われている可能性がございます。

 現時点で外務省がこの問題について得ている情報がありましたら、教えていただきたいと思います。

金杉政府参考人 お答えさせていただきます。

 委員御指摘のようなさまざまな人権侵害については、国際社会の報道もございますし、あるいは、国際機関の中で、ことしの八月の人種差別撤廃委員会による対中審査、さらには、十一月六日に行われました国連人権理事会で開催された普遍的・定期的レビュー、いわゆるUPRレビューというものがございますけれども、この対中審査におきまして、イスラム教徒が再教育キャンプに収容されていること、あるいは、その数が数万から百万とも見込まれているといったようなことが指摘をされております。

 日本政府としましては、国際社会において普遍的な価値であります自由、基本的人権の尊重、法の支配が中国においても保障されることが重要だというふうに考えておりますので、新疆ウイグル自治区における人権状況につきましても、強い関心を持って注視しているところでございます。

 以上でございます。

黄川田委員 日本としては引き続き注視していくということでございますが、具体的に動き出している国もございまして、報道によると、米国では、連邦議会の超党派グループが、百万人のイスラム教徒が強権体制によって不当に拘束され労働施設に収容されている状況に目をつむるべきではないとして、中国当局に対する責任を追及する法案を提出したということでございます。また、国務省に対して、新疆ウイグル自治区共産党幹部らへの制裁を検討するよう要請し、また、国務省内に新疆問題を取り扱う特別調整官のポストも新設するよう勧告したということでございます。ほかにも、国際社会でこの問題に対してさまざまな動きが見え始めております。

 我が国も国際社会と足並みをそろえる形で何らかの具体的な対応が必要ではないかと考えますが、どのように考えているのか、外務省、よろしくお願いいたします。

金杉政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、十一月の十四日、これはアメリカ時間でございますけれども、アメリカの連邦議会におきまして、超党派議員がウイグルの人権状況をめぐり制裁検討などを促す法案を提出したというふうに承知をしております。

 日本政府としての立場は先ほど御答弁申し上げたとおりでございますけれども、こうした日本の立場につきましては、さまざまな機会を捉えて中国側に直接伝達してきております。

 例えば、先月北京で行われました日中首脳会談におきましても、安倍総理から李克強国務院総理に対しまして、ウイグルの情勢を念頭に置きながら、中国国内の人権状況について注視をしており、日中間でも意思疎通を強化したいということを伝達したところでございます。

 また、先ほども御答弁させていただきました、今月六日に行われましたジュネーブでの国連人権理事会の普遍的・定期的レビュー、対中審査におきましても、日本政府からウイグルの人権状況などに言及しながら、中国の人権状況について勧告を行っております。

 日本政府としては、状況を注視しつつも、国際社会と連携しながらしっかり取り組んでいきたいというふうに思っております。

 以上でございます。

黄川田委員 ありがとうございます。

 中国におきましてもう一つ気がかりなことは、日中間で起きている海洋問題でございます。

 もう御案内のとおり、尖閣諸島に頻繁的に中国海警局の船がたびたび侵入していること、また、日中中間線の日本側の海域で中国が新たに海上ブイを設置したこと、さらには、以前から懸念事項であります海上ガス田の海域で、ことし六月に新たに移動式掘削船が設置され、十七基目の海洋プラットホームの建設が懸念されるなど、中国の傍若無人な海洋進出がとまることはございません。

 中国との間にこのような海洋問題が生じるたびに日本政府もたびたび抗議をしておりますが、一向に改善される兆しがないことに国民の皆様も大変な憤りと不安を感じていると思います。

 また、先月行われた日中首脳会談においても、東シナ海を平和、協力、友好の海にすることを確認し、東シナ海資源開発に関する二〇〇八年合意の完全な堅持を改めて確認したと聞いております。にもかかわらず、この首脳会談後に尖閣諸島接続水域への中国公船の侵入が更に活発したということについては大変な怒りを覚えているわけでございます。我々のやり方に限界が来ているのではないかというふうにも感じております。

 このような状況において、外務省として、この日中間の海洋問題に対してどのように今後厳しい態度をとっていくか、見解を教えてください。

金杉政府参考人 お答えさせていただきます。

 御指摘のとおり、日本からのたび重なる抗議にもかかわらず、東シナ海において御指摘のような問題が継続していることは極めて遺憾でございます。

 中国に対してはその都度厳正に抗議を行っておりますし、その際、尖閣諸島周辺海域への公船派遣の中止、東シナ海資源開発に関する日中間の協力についての二〇〇八年合意に基づく協議の早期再開、日中中間線の日本側海域における海上ブイの撤去などを強く求めてきております。先月の安倍総理の訪中では、御指摘のとおり、東シナ海を平和、協力、友好の海とするということを決意として総理からも直接示していただきました。

 外務省といたしましても、二〇〇八年合意に基づく交渉の早期再開等々について、しっかりとフォローアップをしていきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

黄川田委員 では、最後に大臣に御質問したいと思います。

 これら、中国にしっかりと日本の態度を示すためにも、自由で開かれたインド太平洋戦略のもと、航行の自由、また海上の安全を確保するよう努めなければならないと思います。

 そこで、日本のプレゼンスを強化するために、外務省では、太平洋ではバヌアツ大使館、そして南シナ海に面しているところではベトナム・ダナン領事事務所の新設を要求していると聞いております。これらの新設は大変この戦略上重要と考えておりますが、大臣の見解を教えていただきたいと思います。

河野国務大臣 在外公館の数をなるべくふやそうという話があって、私が行革担当大臣のときに、公館の数をふやすけれども人数を絞るといって、ミニマムマイナス公館というのをつくりました。実際、そういう公館に行きましたら、とても回らないんですね。館員が休みがとれないという現実を目の当たりにして、ちょっとこれは方針を変えなきゃいかぬと。むしろ、公館の数をふやすよりは、その公館の人をきちんと手当てをして、ちゃんと仕事ができるようにしなきゃいかぬということで、少し、公館の数をふやすのはなるべく抑えぎみにして、館員の数をきちんと手当てするという方向にかじを切ろうと思っているところでございます。

 ただ、その中にあっても、このバヌアツ、ダナンというのは南シナ海あるいは太平洋の重要なシーレーンに接しているところでございますので、自由で開かれた海洋秩序ということを考えたときに、あるいは自由で開かれたインド太平洋ビジョンというのを考えたときに、やはりこういう公館はなるべく早目に設置をして、しっかりと日本の戦略の実現に向けて努力をしていきたいというふうに思っておりますので、そういう感じでこれからの予算折衝をしっかりやっていきたいと思っております。

黄川田委員 以上で質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

若宮委員長 次に、杉本和巳君。

杉本委員 維新の杉本和巳です。

 まずもって、きょう、質問の時間を、委員長そして両筆頭を始め理事、委員の各位の御了解をいただいて、順番を先にさせていただいているということに感謝を申し上げます。ありがとうございます。

 さて、質問に入らせていただきますが、まず、ちょっと私の勝手な意見を開陳させていただきます。

 INF全廃から米国が離脱したということがあって、いろいろな表面上の御意見というのは、お立場のある方はいろいろしなきゃいけなかったりとかということなんですけれども、実はその心は何だろうかと私なりの解釈をすると、やはり、アメリカは中国の軍事力を念頭に、ロシアだけを考えているわけではなくて、それこそ地球を俯瞰して考えた場合にその条約を生かしていていいかどうかというような深いところから動きがあったのではないかなというふうに私はちょっと感じているということの意見を開陳させていただきます。

 それで、私は、中国という国、何度かお邪魔させていただいて、その力の勢いが増していく状況であったり、逆に最近は高齢化とか、そういった我が国が先進的に抱えている問題にまた直面されつつある国であって、非常に我が国にとってマーケットとして、あるいは高齢化の、例えばスマートシティーみたいなところで中国に非常に大きなビジネスチャンス、まず我が国の中でスマートシティーを成功させなきゃいけないんですけれども、その上で、中国の各そういった地方公共団体でのスマートシティー化なんかで非常にビジネスチャンスがあるというふうに私は考えています。

 そんな意味から、ちょっと昔の話をして恐縮ですけれども、たしか民主党政権が誕生する前に、鳩山由紀夫元総理が中国に行かれたときに、一緒に随行された方のお話がありました。おい、杉本、何か阿倍仲麻呂だったらしいぞという言葉があって、どんな意味かなというふうに思ったんですけれども、要は、やはり中国、大臣はそういう経験は何度もされているかと思うんですけれども、遣隋使があって、遣唐使があって、唐の時代に遣唐使として行かれたのが阿倍仲麻呂であって、その阿倍仲麻呂から歴史をひもといて中国は話をしてきた、こんなようなお話であったやに聞いています。

 そんな意味で、やはり隣国であって、古い、長い歴史を我が国は中国と持っているわけであります。

 そして、一帯一路といって、アメリカは、国力と借財のバランスなんかを考えましょうみたいなことをペンス副大統領が言われたりということで、我が国は、当然日米関係が基軸であって、パクス・アメリカーナの今の世の中で、アメリカとはきちっと、当然、大事に大事に、一番大事につき合っていかなきゃいけませんけれども、やはり世界全体を見れば中国との関係も、改善方向にあって望ましいと思いますけれども、常に両にらみで我々は我が国の立ち位置を考えていかなきゃいけないということも私は感じております。

 そんな意味で、今次、社会保障協定ということもあるんですけれども、その前に、日中平和友好条約締結四十周年という年に当たり、また、今申し上げたとおり日中関係というのは千年以上の歴史、二千年と言った方がいいかもしれませんが、歴史があり、有史以前はもっとかもしれないということの中で、今後十年、五十年、百年、あるいはもっと長く、我々はどういう展望を持っていったらいいのか、今お立場にある河野大臣の御所見を伺えればと思っております。

河野国務大臣 ここのところ、何か毎日杉本さんの質問に答えているような気がいたしまして、まことにありがとうございます。

 ことし、四十周年という節目の年でございますが、阿倍仲麻呂から考えれば、四十年というのは本当に短い時間なんだろうな。これから先の十年、五十年、百年ということを考えますと、この改革・開放からの四十年、日本は、ODAやら日本企業の投資やらで随分中国の改革・開放を助け、経済発展にも随分寄与してきたという気がしております。

 ここで、ODAをやめて、イコールパートナーとしてこれからやっていこうと。今のところ世界第二、第三の経済国ですから、その二つの国がやはり北朝鮮を始めとしてアジアでさまざまな責任を負っておりますし、地球全体から見れば、気候変動を始めとする地球規模課題にやはり日中がともに責任を持って、肩を並べていろいろなことをやっていくというのが非常に大事なんだろうと思います。

 今までの四十年は、どっちかというと、日中向かい合って、お互いどうなんだという話をしてきたわけですが、だんだん、このお互いどうなんだというところから、肩を並べて、この地球規模の課題に日中が協力しながらいろいろなことをやっていくというのがやはりこれから大事になってくるのではないかな。

 幾らプレートテクトニクスでプレートが動いているといっても、日本と中国の場所はそうそう、ここから先、何万年の単位で変わらないわけですから、これは日中戦略的互恵関係という中で、この考えのもと、肩を並べていろいろなことを一緒にやれる、そういう関係をしっかり構築してまいりたいと思っております。

杉本委員 長い歴史、対話は大事だと思いますので、引き続き、業務に精励というか、御無礼ながら、頑張っていただきたいと思います。

 今お話ありましたけれども、ちょっと思い出しましたが、数年前に私も今の時期に中国を訪問させていただいて、スコールが降ったんですけれども、そのスコールが降った後、テントみたいなところに雨がたまっていたんですけれども、これが真っ黒だったですね。今少しはよくなっているし、環境ビジネスで日本は貢献しているという分野の方も存じ上げているんですけれども、今おっしゃっていただいた気候変動、環境問題を含めて、多く対話を重ねていただきたいと重ねてお願い申し上げます。

 そこで、その環境だとか、あるいは普遍的価値とか、国連で決議されて、そして我が国が主体的に、旗手としてやっていこうじゃないかというふうに承っていますSDGsについてお伺いしたいんですけれども、今回の日中の社会保障に関する協定をどう解釈したらいいか。

 ちょっと難しい解釈かもしれませんが、SDGsの観点からいかに評価したらいいかという点を伺い、このSDGs、大いに我が国はリーダーとして世界各国に進んでいく必要があると思っているんですけれども、この点について担当の政務官から御答弁いただければありがたいと思います。

山田(賢)大臣政務官 杉本委員にお答え申し上げます。

 まず、今回の日中社保協定は、両国における年金制度の適用を調整することによりまして、年金保険料の二重負担の問題を解消することを主たる目的としております。したがいまして、本協定の締結は、我が国にとって次の意義を有していると思います。

 まず、中国に滞在する日本企業の駐在員が抱える両国年金制度の二重加入の問題が解消され、中国に進出する日本企業とその駐在員の経済的負担が軽減されることが期待されております。次に、経済的負担の軽減を通じまして、日中両国間の人的交流及び経済交流の促進に資するものと考えます。そして、さらに、日中平和友好条約締結四十周年に当たる本年に国会の承認を得ることによりまして、日中双方の経済界に前向きなメッセージを発信できるという意義を有しております。

 続きまして、御指摘いただきました持続可能な開発目標、いわゆるSDGsにおきましては、ゴールの一つとして社会保障政策等を導入しております。平等の拡大を漸進的に達成することがうたわれておりまして、年金制度の二重加入を解決し、経済的負担を軽減する本協定の締結は、広い意味でこうしたSDGsの趣旨に沿ったものであると考えております。

 先般の安倍総理訪中の際にも、日中両国の首脳は、SDGsに関する協力を深めていくことで一致しております。

 我が国といたしましては、人間の安全保障の理念に基づき、誰一人残さない社会を実現すべく、SDGsの力強い担い手として国際社会の取組をリードし、SDGsの達成に向け貢献してまいります。

 以上でございます。

杉本委員 ありがとうございます。

 総理も行かれてSDGsの確認をしたということですし、広い意味でも社保協定の意義があるという確認をさせていただきました。ありがとうございます。

 次の質問に移りますけれども、今次締結は、経済界から強い要望があったというふうに承っています。この経済界からの要望は、具体的にはどんな要望であったか、あるいは個別の企業から具体的な要望があったのかどうか等も含めて、念のため、社名は結構なんですけれども、こんな業種からあったとかというような点を確認させていただければと思います。

金杉政府参考人 お答えさせていただきます。

 先ほども御答弁いたしましたとおり、平成二十三年十月以降に、中国の社会保険法などに基づいて、日本から中国に派遣される駐在員の方々は日中双方に年金保険料を支払うこととなりまして、駐在員及び日本の企業にとって大きな負担となってきたということでございます。

 こうした状況を受けまして、経団連、日本在外企業協会、日本貿易会といった海外に進出している日本企業を代表する複数の経済団体、さらには個別の企業から、日中の社会保障協定を早期に締結をしてほしい、そしてこうした負担の軽減を図ってほしいという提言、要望が累次にわたり提出された次第でございます。

 これを受けまして、政府として鋭意交渉を進めまして、今回締結、国会御提出に至ったという状況でございます。

 以上でございます。

杉本委員 御答弁ありがとうございます。

 昔、炎熱商人という言葉があって、商社マンが本当に活躍して、今も各商社は資源投資並びにほかの部分の投資でかなり収益を上げて、今、史上最高の収益の各社という状況かと思いますが、一方で、若い方々は余り海外に行きたがらないというようなことですので、こういった働く環境の整備といったものは本当に大切だと思いますので、こういったことを、中国と今回は結ぶわけですけれども、まだ結べていない国々とも我々は締結をしていく必要が、職場環境としてもあるのではないかと思っております。

 最後に、ちょっと参考までになんですが、オーストラリアなんかは年金支給開始年齢を七十歳からにして、これを大分先の十年以上先から実行するみたいな、このこともきのう実は財務金融委員会で麻生大臣始め財務省の方々に御提言申し上げたんですが、選択可能な支給開始年齢で、いろいろな選択肢を多くして、そして我慢すれば我慢するほど年をとってたくさんもらえるということによって社会保障費の膨らみを小さくできるのではないかみたいな、ちょっとお話をさせていただきました。

 今次協定の発効済みの各国あるいはそれ以外の国において年金制度で特徴的なものはないのかなということで、あれば教えていただきたいし、年金の加入必要年数だとか、年金支給額であるとか、支給開始年齢などで特徴的な国があれば、ぜひこの機会に私も学ばせていただきたいし、委員各位にも教えていただければと思いますが、いかがでしょうか。

垂政府参考人 お答えさせていただきます。

 我が国としてはさまざまな国と社会保障協定を結んでおりますが、委員御指摘のように、年金加入必要年数、年金支給額、年金支給開始年齢について各国の年金制度ごとに差異が見られております。

 例えば、年金加入必要年数につきましては、フランスのように設定されていない国がある一方、チェコでは二〇一九年までにこれを三十五年へ引き上げることとしているなど、各国で異なっております。また、年金支給額については、就労していた時期の報酬に基づいて算出する制度もあれば、居住年数に基づいて算出する制度もございます。さらに、年金支給開始年齢についても、アメリカのように六十六歳からとする国もあれば、中国のように、男性は六十歳、女性は五十五歳又は五十歳からとする国もあり、各国間で幅があると承知しております。

杉本委員 終わりますけれども、年金というのは死なないための保険という言い方をされた学者がいらっしゃいますが、プーチン大統領は、平均寿命が六十歳のロシアで六十歳から支給みたいなので不評を買っておられますけれども、やはり国の財政といったものも皆さん考えていかなきゃいけないということを共有いただきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございます。

若宮委員長 次に、山川百合子君。

山川委員 立憲民主党の山川百合子でございます。

 私からも、まず、日中社会保障協定についてお伺いをしたいというふうに思います。

 まず、基本的なことなんですけれども、中国の社会保険制度は、養老保険、医療保険、工傷保険、失業保険そして生育保険といったいわゆる五険で構成されており、日本の制度では、年金、健康保険、労災保険、雇用保険そして出産育児手当がそれぞれに対応しているというふうに思います。しかし、本協定の適用対象となるのは、我が国の国民年金及び厚生年金保険と、中国の養老保険のうち、被用者を対象とした都市従業員基本保険に関する法令のみとなったようでございます。まずは、この年金制度のみが適用対象となった理由を伺いたいと思います。

 あわせて、我が国がこれまで締結した他国との社会保障協定を見ると、医療保険制度の加入免除まで視野に入れたケースもたくさん見られるわけでありますが、中国との本協定では対象に含まれていません。

 今後、本協定でも適用範囲を拡大していく方針で臨まれるのか、この二点についてまずお伺いをしたいというふうに思います。

金杉政府参考人 お答えさせていただきます。

 御指摘のとおり、社会保障制度では、年金制度以外にも、医療保険制度、雇用保険制度及び労災保険制度の適用調整を行う場合もございます。

 中国の場合でございますが、中国の医療保険制度につきましては、就労していない者を対象としておらず、また、国外での医療行為を給付の対象としておりません。したがいまして、日本からの派遣被用者に同行する配偶者及びその子が無保険となったり、あるいは中国からの派遣被用者が実質上無保険の状態に置かれることのないよう、今回の協定では医療保険制度を対象としておりません。

 また、それ以外の、雇用保険につきましては、協定の対象とするべく交渉を行ってまいりましたけれども、双方の考え方が一致せず、結果として、協定を早期に発効させる必要性を優先いたしまして、現時点ではこの協定には含めないということになりました。

 さらに、労災保険制度につきましては、日中の制度とも、それぞれ自国内の事業者を適用対象とするということになっておりますので、この点については二重加入の問題がそもそも生じないということで、本協定の対象としてはおりません。

 今後の適用範囲の拡大でございますけれども、先ほどお話ししましたとおり、現時点で中国の社会保障制度を前提とすれば、雇用保険については社会保障協定の適用対象を拡大し得るというふうに考えております。実際、交渉の過程で、中国側から、将来的に再検討する可能性、雇用保険については排除しないという説明もなされておりますので、協定発効後も、雇用保険料の二重負担の問題の解消の可能性について、引き続き検討していきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

山川委員 ありがとうございます。

 続いて、通算規定についてお伺いをしたいと思います。

 先ほど少しありましたけれども、今回は通算規定を設けていないわけでありますが、政府が公表している資料によれば、中国がこれまでに他国と締結した社会保障協定において通算規定が設けられていないことなどを踏まえて、本協定においても設けないこととしたというふうにあります。

 通算規定が設けられなかったことは、保険料若しくは年金の掛金の掛け捨ての問題が積み残されたということにもなりまして、被用者にとっての不利益が十分解消されたとは言えないというふうに思います。ですので、中国側に通算規定を設けることができない、まず制度上の理由があるのかという事情を御説明いただきたいと思います。

 また、あわせまして、実は、日英また日韓の協定の中にはやはり通算規定が設けられていないわけでありますけれども、その日英や日韓の社会保障協定においては、もう既に十七年、十三年が発効から経過しているものの、いまだに当該規定は設けられていないわけであります。

 先ほど指摘しました、中国側が他国と締結した社会保障協定においては通算規定が設けられていないことなどを踏まえて本件では設けないというふうな説明と同時に、政府の資料には、将来的に通算規定を設ける可能性が排除されていないというふうにも書かれているわけであります。

 しかし、日英や日韓の方で十七年、十三年たってもまだそれが設けられていないというこの現実を踏まえると、これからもやっていく、そういう可能性は排除しないというふうに言いつつも、なかなか難しいんじゃないかというふうにも想像するわけであります。

 そもそも、この日英、日韓について、協定改定に向けた協議は、もう十三年、十七年たっているわけですが、行われているのか。

 この二点についてお伺いをしたいというふうに思います。

金杉政府参考人 お答えさせていただきます。

 御指摘のとおり、中国側は、交渉の過程で、他国との署名済み及び現在協議中の協定において保険期間の通算規定を設けていない、したがって日本との協定も現時点では同様の取扱いをしたいということを主張してまいりました。

 その背景でございますけれども、中国側によれば、中国の社会保険法、この具体的な運用というのは各地域に委任をされている、現在、地域によっては通算規定について具体的な運用の準備をしている段階にある、さらに、中国の中央政府としては、この中国社会保険法の対象地域全体において統一的な運用がなされるよう今努力している段階だ、したがって、中国が結んでいるその他の社会保障協定と同様、今の時点で通算規定を設けるのは難しいという説明がございました。

 いずれにしましても、この通算規定というのは非常に重要な規定でございますので、日本政府としては、中国側としっかり交渉いたしまして、将来、通算規定を設ける可能性については検討していきたいというふうに思います。

 また、あわせて、英国及び韓国についての御質問がございました。

 もちろん、英国、韓国についても通算の規定は置かれておりません。交渉当時のことでございますけれども、英国、韓国は、自国の社会保障制度などの国内事情を理由に、通算規定を含めることに否定的な対応を示しまして、日本としても、議論が長期化するよりは二重加入の回避に限定した協定を結ぼうということでやり、その際、将来的に保険期間の通算に係る規定を置く可能性を模索することで双方が一致しましたけれども、残念ながら、現時点において改正に向けた動きというのは出ておりません。

 英国につきましては、相手国の財政上の理由から、協定交渉当時には通算規定を設けるに至らなかったということでございますし、韓国につきましては、年金の受給資格要件、当時日本は二十五年でございましたので、こういった点からも通算規定を設けるに至らなかったということでございます。

 いずれにしましても、中国についてはこのような形で提出させていただいておりますけれども、通算については、重要な検討課題として、引き続き中国側と協議をしていきたいというふうに思っております。

 以上でございます。

山川委員 ありがとうございます。

 これまでの日英、日韓について、協議はなかなか難しいという御答弁とともに、中国についてはこれからも一生懸命やっていきたいということなんです。

 ちょっと懸念しているのは、先ほど、今回の協定を結ぶに当たっての企業側からの要請があったんでしょうかというような御質問もありましたけれども、非常に強い要請が企業側からあったと。この協定の締結によって生じる日本企業の負担軽減の効果は五百五十億円というふうに伺っていますし、そうしますと、企業側は非常にこの協定を締結することを望むわけであります。

 これは、協定を結ぶということは非常に負担軽減につながるわけでありますが、しかし、通算規定が設定されないという課題は、個人、被用者が退職後受け取る年金額を左右することにもなろうかというふうに思いますので、個人の不利益を解消するために、ぜひとも、御答弁いただきましたけれども、しっかりと通算規定を設ける協議を積極的に続けていっていただきたいと思います。

 企業側からは声が大きく上がるかもしれませんが、個人からはなかなか上がってこないと思いますので、もう一度その辺の決意をお伺いできればと思います。

金杉政府参考人 お答えさせていただきます。

 先ほど御答弁申し上げましたとおり、経団連等、日本の、海外に進出している重立った企業が参加している団体等から強い要請があって、今回、このような形で締結をいたしました。

 通算規定についても当然我々は念頭に置いて交渉したわけでございますけれども、今はまだ中国側の制度が追いついてきていないという事情がありますので、今後の重要な検討課題として、しっかり取り組んでまいりたいと思います。

 以上でございます。

山川委員 では、どうぞよろしくお願いいたします。

 それで、最後に、社会保障協定の締結国間の主な制度上の違いについてお伺いをしておきたいというふうに思います。

 先ほどの質問で、年金制度の、制度の違いについては御答弁ございましたけれども、もう少し広く、国際比較についてお伺いをしたいんです。

 私が今回のこの審査をする過程で私なりに感じた印象なんですけれども、各国の社会保障制度の多くは、我が国の年金制度と雇用保険制度を一対で制度化している事例が多いのではないかというふうに思います。年金と雇用保険が分離して運用される制度と、そしてもう一つは一対で運用される制度の区別が実態としてあるのか、社会保障協定の締結国間の主な制度上の違いについて御説明をいただきたいというふうに思います。

垂政府参考人 委員御指摘のように、社会保険制度は各国それぞれの固有の事情を反映して設計されております。そうした意味で、一般に、各国の制度間の違いは小さくございません。

 社会保障協定は、あくまでも、それぞれの国の既存の社会保険制度を前提に、二重加入が生じる場合に適用調整を行うことによって二重加入の問題を解消するものでございます。

 委員御指摘の、年金制度と雇用保険制度を一体的に運用している、そういうような場合もございます。そうした国との間におきましても、両国の年金制度について二重加入が生じる場合には、これらの国の雇用保険制度を含め、適用調整の対象となる制度を精査した上で、社会保障協定を締結してきているところでございます。

山川委員 ありがとうございました。

 それでは続きまして、日中社保協定のことから、日中関係についてお伺いをしたいというふうに思います。

 これは、前回も少し質問をしたことを更に質問するということになるんですけれども、先月二十六日に行われた日中首脳会談の際に、安倍総理から、約四十年続いた対中ODAを終了させるとの考えが伝えられました。前回も御質問しましたけれども、この対中ODAについて総括をしていく必要があるんじゃないかということで質問いたしましたけれども、もう少しわかりやすく御説明をいただきたいなというふうに思います。

 ODAの原資が我が国の国民の税金であることを考慮すると、国民への説明責任というのがあろうかというふうに思います。四十年に及び、対中ODA、総額三・六兆円とこの間も御答弁いただきましたが、中国の何に幾ら支援することに使われたのかという視点から、政府参考人から御答弁いただきたいというふうに思います。

 内訳については、運輸や通信、電力、農林・水産、鉱工業、かんがいなど幾つかのセクターに分類して整理しておられるというふうに伺っております。それぞれのセクター別の金額と主な事業と成果について、アウトラインで結構ですので教えていただきたいと思います。

桑原政府参考人 お答えさせていただきます。

 対中ODAについては、これまでに、総額約三兆六千億円を供与してまいりました。その大部分を占める円借款の総額約三兆三千百六十五億円の主な内訳でございますが、運輸分野が約一兆二千三百六十七億円、主要案件としては北京―秦皇島鉄道整備事業等がございます。通信分野が約千四百四億円、主要案件としては天津・上海・広州電話網拡充事業等がございます。電力・ガス分野が約六千二百四億円、主要案件としては天生橋水力発電事業等があります。農林・水産、かんがい・治水分野が約三千二百八億円、主要案件としては内蒙古自治区植林植草事業や湖南省都市洪水対策がございます。環境対策を含む社会的サービス分野が約七千六百五十二億円、主要案件としては昆明市上水道整備事業等があります。鉱工業分野が約千十億円、主要案件としては上海宝山インフラ整備事業等がございます。

 無償資金協力の総額約千五百七十六億円の主要案件については、中日友好病院建設計画、日中友好環境保全センター設立計画等がございます。

 技術協力の約千八百四十五億円の主要案件については、法整備、感染症対策、大気汚染対策、高齢化対策、災害対策を中心とする技術協力プロジェクトがございます。

 以上です。

山川委員 アウトラインで御説明いただいたわけでありますが、これらをもとに河野大臣に伺っていきたいんですけれども、これら今お話しいただいた具体の事業と支援策の積み重ねの上に、今や我が国の経済規模を上回る世界第二位の経済大国、中国が存在しているのだというふうに思います。

 しかしながら、そのような貢献にもかかわらず、中国におけるいわゆる反日感情のようなものはおさまらないということについて、河野大臣はどのようにお考えでしょうか。

 私は、政府間の感情というのはおさまってきている一方で、国民間の感情が必ずしも、必ずしもですが好転していないのではないか、そういう部分もあるのではないかというふうに感じております。一方、四十年間にわたり対中ODAに関して税を負担してきた我が国の国民に対して、いかにその対中ODAが中国の発展のために役割を果たしたかということについて、政府が十分な説明をしていないのではないかというふうに感じています。

 日中両国の国民感情を好転させるためにも、対中ODAに関する河野大臣の総括的な評価と、中国の国民そして日本の国民に対する発信について、河野大臣にお伺いをしたいというふうに思います。

河野国務大臣 日本の対中ODAの四十周年というのは、中国の改革・開放の四十周年と歩みをともにしている、この日本のODAに加え、日本企業が盛んに中国に対して早い段階から投資をしてきたというのが、この改革・開放路線と相まって、中国の経済発展に大きく寄与してきたというのは紛れもない事実だというふうに思っております。

 ここで、対等なパートナーとしてやっていこうということで、新しいODAをやめ、日中の関係を、対等なパートナーとして肩を並べて地球規模課題に取り組んでいこうというふうに切りかえたわけでございます。

 確かに、中国の中では、日本のODAに対して知らない方というのもいらっしゃるのかもしれません。そこについては、日本としても、これまでこういう協力をやってきたんだよということは継続的に発信をしていかなければいけないんだろうと思いますが、それよりも何よりも、今、中国から日本を訪れてくれる観光客の数が飛躍的に伸びているということを考えると、日本に来た中国の方が、今度は日本の社会そのものに触れて、ああ、日本というのはいいところだなと思って帰ってくださる、また、中国から来る方の中でリピーターの割合がどんどんふえているというのは、やはり日本がいいよねと思ってくださる方が大勢いらっしゃるということなんだろうと思います。

 そういう意味で、これからの日中関係を築いていくのは、なるべく多くの方に日本を訪問していただき、また日本から大勢の方に中国を訪問してもらって、国民同士の交流の中で日本社会の実情というのを見てもらって、大勢の日本のファンをつくっていく、あるいは、アニメや漫画を始めとする日本の文化をしっかりと中国の中でも見ていただいて、そういうものに対する憧れというとちょっとあれかもしれませんが、そういうものを通じて、やはり日中の国民の交流というのを強化してまいりたいというふうに考えております。

山川委員 より前に向かってという御答弁になろうかと思いますが、総括もやはり大事だと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。また、国民への発信、国内の国民やそして中国国民への発信というのも私はぜひやっていただきたいなというふうに思っております。

 そして、これからのことが大事だということの中で、今後の日中関係のあり方につきまして、時間もないので簡単に伺っていきたいと思います。

 安倍総理が、先月二十九日の衆議院の本会議において、今後の日中関係については、競争から協調へ、隣国同士として、互いに脅威とならない、そして、自由で公正な貿易体制を発展させていく、習近平主席そして李克強総理と、これらの日中関係の道しるべとなる三つの原則を確認しましたと御答弁をされています。

 この三つの原則をめぐり、日中間で合意した三原則なのかどうかということが議論をされていたわけですが、三原則という名称はさておき、この三つの内容について、今後、日中関係を新たな高みに押し上げていく上での日中の首脳間での共通理解になっていると理解してよろしいのか、これが一点。

 時間がないので続けて聞いてしまいますけれども、日中による第三国経済協力を推進していく上での我が国の方針についてなんですが、この第三国経済協力について五十二本の覚書が交わされています。

 今日、中国が推し進める一帯一路をめぐっては、アジア諸国では事業の見直しや中止を表明する国が相次いでおり、こうした中で日中が第三国の民間経済協力を実施していくことに対しては、中国と一定の距離を置いて実施するべきではないかという声も聞かれています。

 そこで、この第三国経済協力を中国と連携して実施していくに当たっての我が国の方針について、大臣から御所見をお伺いできればと存じます。

河野国務大臣 前半でお尋ねのありました原則については、首脳間で共通理解があるというふうに思っております。

 第三国における経済協力につきましては、これは、一つ一つのプロジェクトの内容が国際スタンダードに合っているかどうかというのが大事なんだと思います。

 そのプロジェクトの透明性ですとか、あるいは全ての国にインフラが開かれているという開放性、それからライフサイクルで見てそのプロジェクトの経済性がどうなのかという視点も当然必要ですし、今話題になっております、受け手の財政の健全性、つまり、お金を借りてプロジェクトをやったけれども、首が回りません、プロジェクトの借金を返せませんということでは意味がないわけですから、こういう観点で、透明性、開放性、経済性あるいは財政の健全性といった国際的なスタンダードに合っているものについて、日中間で企業間の協力を進めていくということが大事なんだろうというふうに考えております。

山川委員 では、あと残りの時間で、APECの首脳会議について伺いたいと思います。

 今回のAPECの首脳会議で、初めて首脳宣言の採択が見送られるというショッキングな結果が世界じゅうに報道されました。もちろん、採択の見送りには、通商政策をめぐる米中の対立という事情があったということは承知をしておりますけれども、我が国は、米中対立が激化する中で、首脳宣言の採択に向けていかなる努力を払ったか、そして、当然努力をされたと思いますが、外交努力がなぜ報われなかったのか、お伺いをしたいというふうに思います。

河野国務大臣 日本は、議長国のパプアニューギニアの共同声明の取りまとめに早い段階から協力をするよということをコミットして、なるべく意見が収れんするような努力というのをやってまいりましたが、残念ながら、コンセンサスが得られなかった。

 パプアニューギニアはまだ引き続き議長声明として取りまとめをするという意向を示しておりますので、現時点でまだこの議長声明も出されていないと承知をしておりますが、それに向けて努力をされているようですので、日本としては、引き続き、協力できるところはこの取りまとめに協力をしてまいりたいと思っております。

山川委員 もう時間が来てしまったので次回に譲りたいというふうに思いますけれども、我が国がこれまで国際的な枠組みとの連携を中心に外交政策を進めてくる中で、米中の利害の対立とか主張が対立した場合に、我が国の外交スタンスについて今後伺っていきたいと思いますので、次回、またよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

若宮委員長 寺田学君。

寺田(学)委員 立憲会派の寺田です。

 日中社保協定について質問をさせていただき、かなり重複する部分がありますので、省いた上で、その後は、前回質問させていただいた日米の貿易協定についての質問をさせていただきたいと思います。

 まず、今回の日中社保協定を結ぶに当たって御尽力されました外務省及びその他関係者の方々に、心から御慰労したいというふうに思います。

 もちろん、さまざま委員会で協議する協定の中において、一長一短の部分があって、賛否というのは分かれると思いますけれども、これほど経済的にリンクしている中国において、二重払いを含めて経済的な負担というものが減っていき、また、投資環境が整っていくということは我が国にとって非常に有益なものだと思っておりますので、関係各位の皆さんに本当に感謝と、その尽力に対する賛意というか、感謝を申し上げたいと思います。

 社保協定で質問しようと思ったんですが、年金加入期間の通算規定やら何やら、そしてまた、中国の五険、五つの保険の他の適用についても前の質疑者の方で質問が出ましたので、簡単にそれ以外の部分のところで質問したいと思います。

 正確な統計は出ていないということを事前にお伺いしましたけれども、今回の社保協定が結ばれ、発効されることによって、日本側企業としてどれぐらいの経済的な負担が軽減されるかということを議事録に残したいと思いますので、何かしら御参考があれば、御答弁いただければと思います。

金杉政府参考人 お答えさせていただきます。

 日中の社会保障協定による日本企業の負担軽減効果でございますけれども、累次の機会に御説明をさせていただいておりますとおり、概算で年間五百五十億円というふうに見込まれております。

 また、より詳しく申し上げますと、中国の年金保険料は二八%で、二八%のうち、二〇%は企業負担分、八%が個人負担分ということでございますので、個人負担の軽減ということに着目すれば、単純計算では、この五百五十の内数でございますけれども、約百六十億円ということになります。

 委員から冒頭御指摘がございましたとおり、経済効果という意味でも大変大きい協定だというふうに我々は思っております。

 以上でございます。

寺田(学)委員 それと、今回、一つの区切りとして五年という期間を設けながら、もちろん、その五年を過ぎた後も多少の猶予をするような、バッファーをつくるような仕組みもつくられているとお伺いしていますけれども、今回、五年という一つの区切りを設定された、設定自体が五年であるということの根拠及び考え方があれば、御答弁ください。

金杉政府参考人 お答えさせていただきます。

 さまざまな考え方があろうかと思いますけれども、過去に日本が結びました社会保障協定の前例、あるいは、先ほども御答弁申し上げましたとおり、五年ということでいえば、中国に在勤されている方々の約九割がカバーされるということから、今回は五年というふうに結論づけさせていただいた次第でございます。

寺田(学)委員 今後また経済的な活動のあり方自体が、年々、いろいろトレンドは変わってくるでしょうから、そこら辺をウオッチしながら、今決められた協定の中で、最大限の、日本側にとっての、そしてまた中国から日本に来られる方々にとっても最大の効用が生まれるように、日々注視していきたいというふうに思っております。

 以上で日中社保協定のことは終わりたいと思います。賛成したいと思っていますので、ありがとうございました。

 前回、質問の中で、いわゆるTAGについての質問をさせていただきました。

 きのうの本会議で、日欧EPAの中でも、そのTAGの解釈のあり方についてさまざま質問が投げかけられておりました。余り抽象的にTAGとFTAは一緒じゃないかと、あっ、大臣がいない、あれですけれども、もう少しブレークダウンしながら議論をしなきゃいけないと思っています。

 できる限り具体的な質問をしますので、まだ大臣は答弁しなくていいので、お手洗いであればそれで結構ですけれども、参考人の方はきょう来ていただいていると思いますし、TAGを締結されるときに現場の方に、TAGを締結というか、日米共同宣言を締結するときに現場におられた方だと仄聞しておりますので、ぜひとも具体的にTAGとは何ぞやというところの輪郭をはっきりと国会の中での御答弁をいただきたいと思っています。

 そのTAGは何だということを読み解く上で、当然ながら基礎となるのが日米共同声明だと思います。その三項にTAGという言葉が出てきて、原文も読みましたし、日本政府が出している和訳も当然読みましたし、アメリカ側の訳も読みました。若干、若干というか、日本語の解釈としては、日本側の和訳とアメリカ側の和訳が一致するとは言いがたい状態なので、ぜひとも誤解をなくす意味で御答弁いただきたいんです。

 まず、日米共同声明の三項、「日米両国は、所要の国内調整を経た後に、日米物品貿易協定(TAG)について、また、他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果を生じ得るものについても、交渉を開始する。」という和訳になっています。

 TAGを議論する上でこの三項が一番大事だと思うんですが、前段と後段が「また、」で分かれます。このTAG、日米物品貿易協定というものに、後段の「他の重要な分野(サービスを含む)」というものがTAGに含まれているのか、はたまた、この三項は前段と後段と分かれていて、TAGは物品貿易協定として物品のみ、この後段にある「サービス」を含まないのか、ここの解釈をまず一つやっていただきたいんですが、どちらでしょうか。

清水政府参考人 お答えいたします。

 今回、交渉開始で合意した協定につきましては、まさに共同声明の三で述べられているとおり、対象は物品貿易でございますが、それに加えまして、「他の重要な分野(サービスを含む)」「早期に結果を生じ得るもの」についても対象になり得るとしているところでございます。

 これにつきましては、例えば通関手続など貿易円滑化に……(寺田(学)委員「もういいです」と呼ぶ)はい。では、失礼します。

寺田(学)委員 ごめんなさい。確認のために、もう一度、その部分だけ聞きますけれども、この三項、「また、」で前段と後半に分かれていると私は解釈していますけれども、TAG、日米物品貿易協定の中には、この後段にある「他の重要な分野(サービスを含む)」「早期に結果を生じ得るもの」、これはサービスの一部だと思いますけれども、それはTAGに含まれているんですよね。よろしいですか。イエスかノーで大丈夫です。

清水政府参考人 お答えいたします。

 三項におきましては、まだ具体的な内容につきましてはこれから協議することになりますが、その協議の結果によって入るものにつきましては含まれることになるということでございます。

寺田(学)委員 端的です。

 この三項に書いてある、後段にある、「早期に」云々と書いている、「サービスを含む」と書いていますけれども、この部分がTAGに入っているんですよね。TAGとは分離した話ではないですよねということです。

 TAGの中の話ですよね、三項にある、後段にある「サービス」と書かれている部分は、TAGの中の話を言っているんですよね。分離した話をしているんじゃないですよね。

清水政府参考人 お答えいたします。

 「早期に結果を生じ得るもの」とされたものについては含まれることになります。(寺田(学)委員「サービスが入っているということですか」と呼ぶ)はい。

寺田(学)委員 こういうことに関して、大臣自身も、誤った発言ととられるような発言もされているんです、茂木大臣も農水大臣の吉川さんも。

 九月二十六日、その本当の当日ですけれども、茂木大臣も記者に、TAGというのは、お話を伺っておりますとFTAのような形のものと聞こえますが、一般的にFTAという形になりますでしょうかという問いに対して、FTAではございませんと言われています。今回、交渉する協定はあくまで物品貿易に限定されたものでありまして、投資・サービス等のルールは含まないものでありますと、中略しましたけれども、そういう話をされています。

 吉川大臣は、十月二日の会見の中で、TAGがですね、あくまで物品貿易に限定されるものでありましてと、こういうことに関しては外務省もしっかりと説明してほしいみたいなことを言っているんです。

 この三項に書かれている、その意味においての、この日米共同声明にある「他の重要な分野(サービスを含む)」、この部分に関しては、サービスは入っているんですよね、そういう理解でよろしいですよね。

 とすれば、この吉川さんと茂木さんが当初言われている発言が事実誤認なんです。物品に限られていないんですよ。三項で言われる「他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果を生じ得るもの」、そういうようなサービスということだと思います。サービスも入っているんです。

 物品のみだということではなくて、サービスも入っているとすれば、先ほどの御答弁はそうでしたので、この茂木さんと吉川さん、茂木さんは多分、きのうの答弁を含めて修正されていますけれども、吉川さんも含めてですけれども、当初、物品に限定しているというのは事実誤認という解釈でよろしいですよね。

清水政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘ございました九月二十六日の茂木大臣の御発言は、今回、交渉開始で合意した協定が物品を対象とするものであり、サービス全般やルール全般を含むものではないとの趣旨を御説明されたもの……(寺田(学)委員「趣旨とかじゃなくて、発言のことを言っているんですよ」と呼ぶ)はい。

寺田(学)委員 僕、当初に言い方を間違えていることを、今、後々修正されているわけですから、別にそれは、それで鬼の首をとったようなことを言うつもりはないですよ。国会全体ですけれども、いや、政府とも何回かやっていますけれども、政府の中でも、このTAGって何ぞやということに対して、はっきりとした輪郭がまだ見えていないような感じなんです。なので、その基礎となる日米共同声明をもとに、TAGは何かということをちゃんと今お話ししているんです。

 先ほど参考人が言われたとおり、この三項にあるTAGには、三項後段にある「他の重要な分野(サービスを含む)」、だから、サービスが含まれている、この三項に書かれている限りにおいてはサービスが含まれているということですので、物品貿易に限られているという言い方は私は誤りだと思うんです。

 その後、修正されていくのは、別にそれで結構なんですよ。なので、茂木さんは、きのうの本会議も含めて、サービスが入っているようなニュアンスは、趣旨は言われていましたのでいいですけれども、吉川さんはそれ以降多分ないと思うんです。農水大臣は、いまだに物品貿易に限定されているものと思われているかもしれません。なので、この場ではっきりとしたいんです。

 物品貿易に限定はされていないですよね。サービスも入っているんでしょう、さっきの答弁のとおりなんですけれども。それでよろしいんですよね。

清水政府参考人 今回のTAGにつきましては、物品貿易全般を議論するものでございます。それに加えまして、今後の交渉次第ではありますけれども、サービスも含めまして、早期に結果を生じ得るものがあれば対象となり得るということでございます。

 今後、どのようなものが対象になるかは、茂木大臣とライトハイザー通商代表との間で決められることであると考えております。

寺田(学)委員 僕、何かを追及するというより、わからないんですよ、その輪郭が。なので、解釈をちゃんと聞きたいんです。

 三項と四項が二つあって、四項には、「日米両国はまた、上記の協定の議論の完了」、だから三項のTAGですよ、「他の重要な分野(サービスを含む)」「早期に結果を生じ得るもの」も含めた、物品とサービスを含めた協議の完了の後に、「他の貿易・投資の事項についても交渉を行うこととする。」と言われているんですよ。

 三項の説明を聞くと、いやいや、制度改正を含むような早期に結果を生じ得ないもの、そういう制度改正を含むようなものは三項では扱わないんです、言いかえてみると、TAGではやらないんです、それは、今うなずかれているので、それでいいですよね。

 じゃ、四項では、制度改正を含むような部分も交渉対象になり得るんですか。

清水政府参考人 お答えいたします。

 日米間で合意した内容につきましては、日米共同声明に書かれているとおりでございます。

 共同声明につきましては、「日米両国はまた、上記の協定の議論の完了の後に、他の貿易・投資の事項についても交渉を行うこととする。」とされておりますが、その中の「他の貿易・投資」の分野について、どの分野を交渉するか、交渉の範囲もまだ決まっておらず、この分野で協定を結ぶと決めたわけではございません。

寺田(学)委員 ちょっと小熊理事にも協力を得て、ちゃんと答えてもらうように交渉してもらうかもしれませんけれども。

 三項は、他の重要な分野で早期に結果を生じ得るものというような制限をかけているんですよね。うなずかれているから、そういうことなんですよね。

 じゃ、その後にある四項は、三項の議論が終わったら、そのほかの貿易・投資の事項についても交渉を行うと言っているんですよ。だから、三項は限定をかけているけれども、四項になったら限定がかかっていないように読めるんです。

 質問の言い方を変えますけれども、四項を読む限りにおいて、協議の対象になり得るものに何かしらの制限はかかっているんですか、かかっていないんですか、どちらですか。

清水政府参考人 お答えいたします。

 共同声明の四項目では、書いてあるとおりで限定はかかっておりませんが、実際にどのような交渉を行うかにつきましては、今後、その分野や範囲につきましては、茂木大臣とライトハイザー代表で協議して合意したものが交渉の対象になると考えております。

寺田(学)委員 四項は限定がかかっていないんですよね。

 もちろん、その後何を議論するかというのは決まっていないということは、御答弁のとおりです。ただ、四項自体は限定が何もかかっていなくて、かつ、FTAではないという言い方をなぜ政府が強弁し続けるか、僕はわからないんですけれども、四項には今度、「投資の事項」というふうに、新しいワードが入ってきているんです。

 これは、一般的な解釈は何かということを、前回の委員会で、私、理事会の方に、私の方にということで、政府が考え、政府が概念として捉えているFTAとEPAの定義は何かということを聞きますと、FTAは、我が国が従来、特定の国、地域との間で物品貿易やサービス貿易全般の自由化を目的とする協定という意味でFTAを使っている、EPAは、物品貿易やサービス貿易全般の自由化に加えて、これは先ほど申し上げたFTAのことですね、FTAに加えて、投資、知的財産の保護など幅広いルールづくりを盛り込んだ包括的な協定については、我が国においては一般的にEPAと呼んでいると。

 投資という言葉が四項に出ている以上、FTAの範囲でもないような気がするんです。

 これは一般的な解釈をお伺いしますけれども、日本政府においてFTAという議論をする範疇において、投資の分野というのは含まれるんでしょうか、含まれないんでしょうか。

清水政府参考人 お答えいたします。

 FTAにつきまして、国際的に確立された定義があるわけではないと承知しております。

 我が国では、従来、特定の国や地域との間で物品貿易及びサービス貿易全般の自由化を目的とする協定との意味で、FTAという用語を用いてまいりました。さらに、投資、知財の保護など幅広いルールづくりを盛り込んだ協定について、我が国においては一般的に、包括的FTA、すなわちEPAと呼んでいると承知しております。(寺田(学)委員「答えていないです。僕の質問に答えていないです」と呼ぶ)

若宮委員長 もう一回、答弁をお願いできますか。

清水政府参考人 FTAにつきましては、国際的に確立された定義があるわけではないと承知しております。(寺田(学)委員「それは聞いていないでしょう」と呼ぶ)はい。

 我が国では、従来、特定の国や地域との間で物品貿易及びサービス貿易全般の自由化を目的とする協定との意味で、FTAという用語を用いてまいりました。さらに、投資、知的財産の保護など幅広いルールづくりを盛り込んだ協定については、我が国において一般的に、包括的FTA、すなわちEPAと呼んでいるものと承知しております。

寺田(学)委員 そんな質問していないでしょう。

 四項に、投資という言葉が出てきていますよね。そのことを踏まえた上で、日本国政府としてFTAとEPAの定義があるわけですよ。なきゃ、総理がFTAとは違うとか、大臣がFTAとは違うと言えないわけですから、定義が決まっていなければ。その定義を聞いたら、投資の分野はEPAに出てくるんですよ。ですよね。なので聞きたいんですけれども、一般的な話で。

 投資の分野、FTAを議論する、そういう対象というのはさまざまあると思いますけれども、その中に投資が入ることはあり得るんですか、あり得ないんですか。投資が入っている、そういうような議論というものをFTAと呼ぶことは、日本政府としてあるんですか、ないんですか。

若宮委員長 どなたが御答弁なさいますか。(寺田(学)委員「基本的に、事前の話だと、ないですよ。だって、ないんですもの。答えないなら、とめてください」と呼ぶ)今お答えは難しい状況ですか。

 では、ちょっと時計をとめてください。速記をとめていただけますか。

    〔速記中止〕

若宮委員長 速記を起こしてください。

 清水内閣審議官。

清水政府参考人 申しわけございません。御質問の趣旨が理解できませんでした。

寺田(学)委員 すごく簡単に申し上げたいんですけれども、私は、外務省から、FTAとは何か、EPAとは何かということ、一般的な定義はないけれども、日本政府としての解釈は、FTAはこれでEPAはこれですということの一般的な定義をいただきました。投資ということに関してはEPAの部分に、FTAというのは物品貿易やサービス貿易全般の自由化を目的とするものだ、EPAはそれに加えて投資などのことを議論するんだと。

 なので、この日米共同声明の四項の話を見ると、四項に貿易のみならず投資と出てくるので、改めてお伺いしたいんですけれども、FTAの協議をする範囲の中で投資を議論することはありますかということです。基本的に、論理展開でいうと、ないと思うんですけれども、いかがでしょう。

清水政府参考人 お答えいたします。

 私の承知する範囲では、これまで我が国が結んできた包括的FTA、EPAでは、交渉を開始する段階から、投資や知的財産の保護など幅広いルールづくりを目的として開始したものと承知しております。

 他方、今回のTAGにつきましては、投資につきましては、TAGの協議が終わった後、協議を開始するとされているだけでございまして、それについて何を協議するか、その後、協定を結ぶかまでは決まっておりません。

寺田(学)委員 そんなことは聞いていないでしょう。

 いや、もう時間が来るのであれですけれども、私が申し上げているのは、この三項と四項、日米共同声明で結んでいるわけですよ、三項で一生懸命、TAGだ、サービスが含まれるけれども、それというのは早期に結果が生じ得るものなんだという限定をかけている。ただ、四項で、それが終わったら無制限に議論対象が広がるんですよ、投資も含めて。早く三項の協議が終わったら、いきなりすぐ四項になれば、制度設計の話ももちろん議論対象になるし、三項の場合に、早期に結果が生じ得る、その早期自体だって物すごい主観的ですよ。物すごい時間がかかればかかるほど、その時間の間で制度設計を含めたことまで議論できるわけですよ。

 だから、正直言って、三項と四項をあわせて読めば、何の制限もかかっていないじゃないかというのが、今回の交渉範囲についての、日米での共同の声明から読み取れる理解だと私は思っているんです。

 うそをついているなんとかと言うつもりはないですよ。正直に国民に対して、こういう協議になって、我が国にとって国益に資することを一生懸命議論してかち取っていくと言えばいいだけの話で、それが、FTAとはやれ違うんだ、何とかだということを言うので、国民の理解も高まらないし、国会での議論もかみ合わないと思います。

 この話はまた続けたいと思いますので、しっかりまた勉強させてください。

 以上です。

若宮委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 国民の小熊慎司です。

 日中社保協定についてまずお伺いします。

 もう既に質疑でも出ておりますけれども、これは、五百五十億の負担が軽減をされる、六万から七万人の人の分でありますけれども。ただ、これは、年金制度、中国と日本との差がある部分がありますが、この点もさっきの質疑でも出ていましたけれども、大枠の中で、中国と日本の制度の差の部分、この差の部分をしっかりどう対応していくのかというのを改めてお聞きをいたします。

金杉政府参考人 お答えをさせていただきます。

 中国に限らず、社会保障協定を結ぶ相手国との差というのはどうしても生じます。その中で、お互いが、ある意味、国民に強制的に加入させている範囲の中で調整を行おうということで、今回については年金ということに限っていたしました。

 また、先ほど御答弁申し上げましたとおり、雇用についても、将来的な可能性について検討してまいりたいと思いますし、さらには、通算規定という残された大きな課題がございますので、こういった点について日中間で引き続き検討していこうということでは一致をしておりますので、この協定が発効した後もしっかりその点はフォローアップしていきたいというふうに思っております。

小熊委員 恐らく、まあ、どんな人でも推測しますけれども、中国との経済的な連携というのはますますふえてくるわけでありますし、お互いの国民の行き来もますますふえてくるところでもありますので、この積み残されている課題、お互いの国の制度の差を埋めていくという努力はこれからまたしていただきたいのと同時に、これは中国だけではなくて、社保協定はほかの国とも結んでいますし、またこれからも結んでいくことが、今、交渉中の国もありますけれども、これはほかの国も同じことが言えて、日本の制度と、社保協定をほかの国とも結んでいる中で、やはり制度的なずれがどの国とも生じているのも事実でありますので、これはまた、世界に目を向けて、こうしたほかの国との社保協定のずれをどのように今対応して、これからしていくのかというのを、また改めてちょっとお聞きいたしたいと思います。

垂政府参考人 お答えをさせていただきます。

 委員御指摘のように、年金制度を含む社会保険制度、各国それぞれの固有の事情を反映しておりまして、一般に、各国の制度の違いは小さくございません。社会保障協定は、そうした各国間の制度の差異、これを前提にして締結されております。そうした意味では、既存の国内制度を変更したり、それに伴う新たな負担を生じさせるものではございません。この点、御理解賜れればと存じております。

小熊委員 あと、更に言えば、これは、どこに所属しての、雇用国の主義なのか出生地の主義なのかでも変わってきますから、対応しているということでありますけれども、それでもまだ漏れている部分、ふぐあいを生じている部分もありますから、きめ細かく不断の努力、見直し、また交渉を続けていただくのと、あとは、グローバルに経済も展開していますし、日本人の方も多くいろいろな国に行っている、またいろいろな国の人が日本にも入ってきているということですから、限られた時間と人材で対応しなければなりませんけれども、更に多くの国々とこの社保協定が結ばれる努力を外務省としてはしていただきたいというふうに思います。

 中国の方にちょっと戻るんですけれども、今、インバウンドで年間三千万人近い方々が訪日しているということで、近年、本当に急増していますけれども、昨年の実数でいうと、この中でも、ビザなしもあればビザありもありますけれども、ビザ発給数は約五百八十七万件ということで、その中でもとりわけ中国が八割を占めていますし、この中国の発給数は五年前に比べて五倍という大急増になっています。

 このビザ発給が多忙となっているということで、さきの委員会でも、これは大臣が答弁をされておりますけれども、ITを活用した合理化を進めることによって円滑なビザ発給を進めていきたいという趣旨の発言がございましたけれども、ただの発給業務ではなくて、どういった人が入ってくるのか、いわゆる犯罪者、またテロリストも含め、いろいろな水際対策もしていかなければならないという点については、これはITだけで全てが解決できるわけではありません。

 この間も最後に主張させていただきましたけれども、こうした急増する業務の中で、必要なことは、もちろんITによる合理化も必要でありますけれども、質的にも高めていくのと同時に、まだまだやはり人的な対応も、人の量としての対応も必要だと思いますけれども、改めて大臣、この件について見解を求めます。

河野国務大臣 日本の限られた財政の中で、人的な体制を無制限にふやすということはできませんので、やはりITを中心とした業務の合理化、ブラックリストのチェックについても、漏れがあってはいけませんけれども、ここもかなりの技術を使った合理化が可能な部分でございますので、中国から大勢の方に来ていただいているというのが今のインバウンドの一つの柱にもなっておりますので、そこのところは、無理なストレスがかからないように、なおかつ、しっかりと水際で対策をしなければならないものを対策をする。

 難しい業務ではありますが、そこがやはり外務省として頭の使いどころだと思っておりますので、しっかりと業務の合理化をやりながら、このビザの申請件数が更にふえ、インバウンド、中国から更に大勢来てくださるように、外務省としてもしっかり努力をしてまいりたいと思います。

小熊委員 これは、ぜひこの後、外務省で対応していっていただきたいことをちょっと提案させていただきますけれども、政府としてもインバウンドの目標値がありますよね。その中で、中国人の割合も大体同じように推移していくと仮定した場合、例えば、じゃ、インバウンドで五千万人になったときに、中国人の方々がどれだけ来て、ビザ発給数もどのぐらいになるかというのは推測が立つわけですよ。今、五年前から五倍の発給数に中国がなっている中で、IT化するのが二〇二〇年とか何年後かになっていますけれども、これによってどの程度人的な合理化がされるのかというのも見えているはずです。それでもやはり、どのぐらい大変だというのが見えてくるはずなんですね。

 その将来推計をもとに、どのぐらいの分量の発給数が出て、合理化によってどの程度時間が短縮されるのかというのは、後ほどちょっと計算をして、資料としていただきたいというふうに思いますが、それは領事局長、可能ですか。

垂政府参考人 委員御所望の資料につきましては、できるだけ早急に用意しまして、提出したいと思います。

小熊委員 推測によって仕事の量が見えてくる、合理化のところも多少見えるという中でも、大臣が言うとおり、これは青天井じゃありませんし、限られた財源ではありますけれども、でも、根性論でも乗り切れる話でもありませんから、ぜひ、その仕事の推測する分量と今の領事体制が、この差を、知恵といったって、具体的に、じゃどうするんだというのも議論しなければいけませんから、どのぐらい足りていないのかというのをもとにまた議論させていただきたいというふうに思っています。

 また、さきの委員会でもまた触れさせていただきましたけれども、大臣からも、ベトナムに関して悪質なブローカーの件も御指摘をいただきました。また、大使館の方でも、ホームページに掲載をし、申請などを受け付けない、そういったブローカーから受け付けないという措置をとっているとも伺っていますが、実際には、就労目的にしているにもかかわらず留学ビザで訪日する若者もふえていて、さきの委員会でも御紹介させていただきましたけれども、ベトナムなどの一部の国の留学生の犯罪が残念ながらふえているところでもあります。

 ただ、私自身が思うのは、これは、犯罪を犯そうとして悪い人間が入ってきているのではなくて、やむなく犯罪に走ってしまうのではないかということも推測されるんですけれども。

 本来であればこの委員会に資料を提出したかったんですが、法務省から資料が来たのがけさだったので手続に間に合わなかったんですけれども、いわゆる、今問題になっています、法務省による実習実施者などから失踪した技能実習生に係る聴取票。その内容ではなくて、これは今、野党の皆さんが合同で、写しがだめだというから手書きでやっていますけれども、そんな話はどこにあるのかなと思いましたけれども、聴取票そのものを下さいと言ったら、やっとけさになって出てきていて、皆さんにお示しできませんけれども。

 この票でやった結果、給料が低いからというのは、法務省の説明では低い数字が出てきましたけれども、今、野党の皆さんの中で手書きでやってそれなりに分析をしたところ、最低賃金を割っているのが、もうざっくり言えば、最低賃金も、県によってとか、また時期によってちょっと揺れ動きますから正確なことは言えませんけれども、大筋で言って八割以上ですよ、実は。最低賃金を割っている、それで失踪したんだという、法務省の説明では違いました。だけれども、我々野党の皆さんが努力して、特に法務委員会の皆さんが中心となって手書きで写してまたそれを再集計してみたら、八割以上です。

 ですから、悪質ブローカー云々もあるし、来た人の中にも確かにもともと犯罪を犯す要素のある人もいるかもしれないけれども、善良な、そうした人々がこうしたことによって失踪し、そしてやむなく犯罪に走っているということもあるんじゃないかということが、この最低賃金を八割以上割っているという状況の中から考えられるんですよ。

 法務省の見解をまずお伺いします。

平口副大臣 御指摘の点は、留学生の場合と在留許可を得ている技能実習生の場合とでちょっと違うと思うんですが、留学生の場合に限定してお答えをさせていただきたいと思っております。

 留学生の新規入国者が増加する中で、一部の留学生が入国当初から多額の借金を抱えて来日しているという事実は確認されているところでございます。その背景としては、そもそも経済支弁能力を有していないという場合があるほか、留学仲介業者が日本語能力に関する証明書等の書類を偽造して高額な手数料を徴収していることが疑われる事案もあるというふうに認識をいたしております。

 このように、留学生の中には、本人の意思とは別に、仲介業者から多額の借金を背負って入国し、来日後、その返済のために不法就労を行ったり犯罪に関与する者もいると思われるところでございます。

 したがいまして、適切な留学生の受入れに資するよう、送り出し国と連携して悪質な仲介業者の排除に努めていくとともに、厳正な審査を行ってまいりたいと考えております。

河野国務大臣 先日、ネパールの外務大臣がいらっしゃいまして、この問題、ネパールからの若者にも多く見られるものでございますから、外務大臣と、ベトナム同様に、これは両国でしっかりネパールの若者のためにも対応しなきゃいけない問題だということを申し上げまして、実は、ネパールとか幾つかの国は、語学の能力の証明書が売買されている、そういう状況があるものですから、ビザの申請のときに大使館の職員が一々面接をしなきゃいかぬという、本来、領事局全体でもっと適正に人員配置をしなければいけないものが、これによって適正配置ができないという現状もありますので、一つは、送り出し国の対応を厳正にする。悪質なブローカー、あるいはネパールのように悪質な語学学校が、日本語も教えずに語学の証明書だけ出しているような、ちょっとそれは極端かもしれませんけれども、そういうところの取締りを日本と相手国とやります。

 それから、今、外務省から法務省に申入れをして、日本の国内で、つまり、留学生が日本語の留学に来ますといって来るんだけれども、ほとんど日本語をきちんと教えていなくて、来ている留学生と言われている人たちが働く、これは語学学校の体をなしていませんので、今、そういう語学学校のリストをつくっていただいて、そこへの受入れに関してはビザを出さないということを外務省はやろうというふうに思っているところでございます。

 さらに、留学生は、一週間に二十八時間だったと思いますが、そこまではアルバイトをやっていいということになっておりますけれども、実は、セブンイレブンで二十八時間やりました、その後ファミリーマートへ二十八時間行きましたというと、なかなか現状でそのチェックができる体制がないものですから、これをまずきちんとチェックができる体制をつくらないかぬ。

 そういうことを考えて、留学生が本当にきちんと、語学の留学なのか、あるいは大学などの高等教育なのか、そこはいろいろあると思いますが、若者が日本に留学というときに、きちんとそこは学業をやっているんだということが担保できる仕組みを早急につくらぬといかぬと思っておりますので、そこは法務省に対して今外務省からお願いをして、今政府内で協議をしているところでございます。

 こういうことがきちんとできるようになりますと、ビザの申請の際に一々面接をしなくても済む、あるいは、そもそもそういうビザの申請が出ないということがありますので、これは、IT化する以前に、業務が合理化され、必要なところに必要な人員を外務省としても配置できるようになりますので、こういう対応は早急にやっていきたいというふうに今政府で考えているところでございます。

小熊委員 まさにその点ですよ。今大臣がおっしゃったとおり、出張までして調べてこなきゃいけないというのは外務省の負担が多くて、今言ったとおり、その前提となっているのが在留資格認定証明書です。この真偽が問われていて調査をしているんですけれども、もともとこれは、外務省のものじゃなくて、法務省のものですよ。

 法務省はその水際対策をすると言っていたけれども、具体的には、だって、外務省が汗をかいてそうやってやっているわけですよ、経費もかけて、時間もかけて、人もかけて。法務省は、じゃ、具体的に何をするの。今、大臣は法務省と協議していますと言ったけれども、法務省、どうしますか、これは。チェック、外国まで行くの、法務省、職員が行くの。どうするんですか、これは。(河野国務大臣「委員長」と呼ぶ)いやいや、ちょっと法務省に先に。

河野国務大臣 今、相手国については、相手国と外務省で何ができるかというのを協議しているところでございますので、今法務省にお聞きいただいても、法務省も回答ができないと思います。

 今法務省にお願いをしているのは、受入れとなっている語学学校を始めとするところの対策は、これは早急にやっていただかなきゃいけませんので、質の悪いところは一覧表にして、そこに対する申請は認めないということをやろうということで動いております。

小熊委員 では、法務省、今言われた日本語教育機関に対する立入調査というのはどういうふうにしていきますか。

平口副大臣 在留資格の留学に係る在留資格認定証明書交付申請においては、勉学の意思、能力や経費支弁能力等の審査を行っているところでございます。特に不法残留者を多く発生させている国からの日本語教育機関入学予定者に対しては、厳格な審査を実施しているところでございます。

 法務省におきましては、日本語教育機関における入学者選考及び在籍管理の徹底を図るなど対策をとっているほか、問題のある日本語教育機関については現地調査を行う等としているところでございます。

 また、不適切な仲介業者が関与している場合など、適格性を欠くとして引き続き留学生受入れ事業を行わせることが適当でない、このように判断された日本語教育機関については、法務省令が定める告示から抹消することといたしております。

 引き続き、日本語教育機関に対しては、厳正、的確な対応を行ってまいりたいと考えております。

小熊委員 やっていないというか、やっていてもこれは急増していて、結果が出ていませんし、今、河野大臣が言ったとおり、これはもっともっと出てきているということで、やっているのが足りていないんじゃないですかね。

 もっともっと外務省としてはやってもらわなきゃ困るというのが大臣の発言だったと思うんですけれども、今やっている体制では間に合っていませんという自覚はありますか。そういう認識はありますか。やっていても足りていないんですよ。だから急増しているんですよ。おかしなものが出てきているんですよ。だって、外務省のチェックで、ベトナムなんて抜き打ち検査したら、一割から二割、おかしいというのが出ているんです。

 今の検査体制が甘い、足りていない、ちゃんとしていないという認識はありますか、もっとやらなきゃいけないという認識はありますか、今やっていますという答弁じゃなくて。もっとやらなきゃいけないという認識はありますか。なきゃいけないでしょう。だって、数字が上がっているんですもの。対応し切れていないですよ。結果が出ていないもの。まして、入管法を改正してもっともっとふえてくるんですよ。どうしますか。もう一回お願いします。

平口副大臣 そこは、できる限り努力をしているところでございます。

小熊委員 これは外務委員会ですから、外務省の皆さんがちゃんと協議して、しっかりこの水際対策、本当に学びたいと思って来ている留学生や技能実習生がいる中でもありますから、それによって全体のイメージが悪くならないようにしなきゃいけないので、このチェック体制はしっかり強化をしてもらわなきゃいけない。

 今、入管法改正で大変なのはわかります。この聴取票も、けさになってこんな簡単なものが出てきた。いいかげんなのかなというのも、善意に、本当に忙しくて、このぐらいのことも今手が回らないぐらい忙しいと思いたいんですけれども、今の河野大臣の答弁と法務省側の答弁を見ると、その認識のずれを感じますし、だから、もっともっと法務省には努力をしてもらわなければいけないところを、これは逆に外務省にしわ寄せしているのと一緒ですよ。

 僕は、外務省の人間をもっとふやしてやれと言ったって、大臣だって、限られた予算と苦しく言わざるを得なくて、余計な仕事をしないためにも、それぞれちゃんとつかさつかさできちっとやっていくという意味でも、もっと認識を厳しく持ってもらわなきゃいけませんよ。

 今、入り口論ですけれども、出口論のところで、来て、やはり最低賃金を割っているということの認識、もう一回聴取票も再調査しなきゃいけないんじゃないんですか。入り口がちゃんとしていても、技能実習生が行った職場とかいろいろなところで、だって、はっきり言えば、労働人口が足りないから枠をふやすという話で入管法を改正していくということもあるんですから。でも、やったけれども、結局、最低賃金を割っているところばかりなんていったらよくないわけですから、ここに関してはどういうふうに調査していきますか。実態を把握していきますか。今の聴取票ではだめなんですもの。ここはどうですか。

平口副大臣 調査票に基づいている違反事案と見られるものにつきましては、早急にプロジェクトチームを組んで対応していきたい、調査、原因等を調べて、しかるべく対応していきたいと考えております。

小熊委員 だから、その失踪の原因のところは、我々の調査で全然ずれが、大幅なずれですよ、誤差の範囲を超えていますから、これはしっかりもう一回調べ直して、しっかり水際対策も、外務省としっかり協議して連携をとれるようにやっていただくと同時に、入ってきた人に対しても、ちゃんとなっているのかということも、今も調べて、なおかつ、これから枠が広がっていくということを考えれば、更に実態把握で、きちっとこの制度を間違った利用をされないようにチェックする体制もとっていただきたいというふうに思っています。

 また、さきの委員会で、新しい制度で受け入れて訪日された方々が、これは我が党の中でも議論していますけれども、あと、私も地元に帰って議論しましたけれども、やはり都市部に行っちゃうんじゃないか、今のままだと。

 きのうも、陳情で来られた私の地元の町長さんが、入管法を改正したとしても、安い労働力がどっと都市部に流れて、都市部では三十数万人の失業者が発生をし、逆に、全国の地方では六百万人の人手不足が続いていくということを私の地元の町長も言っていたぐらいです。

 この偏在性を解消する手だてが今あるとは思えません。何らかのきちっとした、日本全国にしっかり受入れ体制もつくらなきゃいけないんですけれども、都市部に集中してしまわないための制度設計が何らか必要だと思いますけれども、法務省の見解をお願いします。

平口副大臣 お答えいたします。

 人手不足が深刻化する中において、とりわけ地方における人手不足の対応は、政府として取り組むべき喫緊の課題であるという認識はございます。

 今回の新たな外国人材の受入れ制度におきましては、外国人材が自由に受入れ機関と雇用契約を締結することを前提としておりますが、制度の趣旨に鑑みましても、通常は人手不足が深刻な受入れ機関において受け入れられるものと考えられるところでございます。したがって、必ずしも大都市圏に限らず、地方においても受入れは進むものと考えております。

 なお、地方の人手不足に的確に対応する方策につきましては、引き続き政府全体として鋭意検討してまいりたいと考えております。

小熊委員 最初は地方に行ったとしても、その後、職場をかわることはオーケーなんですよね。水が高いところから低いところに流れるように、やはり働く人は低いところから高いところへ行くんですよ。だから、最低賃金のところがあるから失踪もするわけですよ。

 だって、私の地元でも、復興で浜通りの方なんてもう人手不足で、大手なんかは時給千八百円なんというところも出てきていて、そうしたら、そっちに行っちゃって、ほかのところは雇えないですよ。

 同じように、やはり海外の方も、ある意味、日本の魅力で来る、学びたいと来るのもあるけれども、やはり稼ぎたいと来るんですから、より高いところに行くというのは当たり前のことであって、賃金格差がある以上、また、人手不足で賃金が上がってくるということを考えれば、やはり高きところに流れていくということですよ。

 最初は雇用契約と言いましたが、移動があるんですから、そこをどうするのという話です。それを踏まえて言っていますよ。契約書でずっと働かなきゃいけなくて、違うところに行く場合はもう一回本国に戻れといったら、そういうのもなくなるかもしれないけれども、今のままでは、だからそれは、最初は、スタートはそこだけれども、別のところに行っちゃうでしょうという話ですから、そこの手当てをどうするの、対策をどうするんですかという話ですよ。考えていますか、それは。

平口副大臣 お答えいたします。

 御指摘の点をしっかりと踏まえて、今後の制度設計に関与してまいりたい、このように思っております。

小熊委員 我々は、外国人の受入れに関しては、別にネガティブなことはないです。ただ、受け入れるためには、地域にしっかりと根差していかなきゃいけない、手をとり合ってやっていかなきゃいけない部分もあるし、そういう意味では、来年の四月というのは、働き方改革に合わせてやっているのかもしれないですけれども、来年の四月一日というのはちょっと無理だと思いますよ、もっともっと議論しなきゃいけないし。影響を与えるのはいろいろなところの市町村ですから、市町村の皆さんもどんなふうになるのかなと、まだ何もわかっていないですよ。

 もっともっと議論する場を設けて、しっかり、これは国のありようが変わる、本当に歴史的な制度改正ですから、さらなる議論の時間を費やしていただくことをお願いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

若宮委員長 穀田恵二君。

穀田委員 初めに、いわゆる日中社会保障協定について聞きます。

 今、日本で働く中国人労働者、中国で働く日本人労働者が、両国の年金等への強制加入に関する法令が二重に適用されるなどの問題が生じている。本協定は、年金制度への強制加入に関する法令の適用について両国間で調整を行い、相手国で働く労働者について保険料の二重払いになることを回避するためのものであるとこの法案の趣旨を理解しており、当然の措置と考えます。

 そこで、本協定は略称社会保障協定と呼ばれていますが、その適用対象は年金のみで、日本で言うところの健康保険、労災保険、雇用保険などは対象外となっています。これらについては本協定発効後も二重加入が解消されないままとなるわけですが、これらの二重加入について今後どのように解消していくおつもりか、その基本的見解をお聞きしたいと思います。外務省。

金杉政府参考人 お答えさせていただきます。

 委員御指摘のとおり、社会保障協定では、年金制度以外、医療保険制度、労災保険制度、雇用保険制度の適用調整を行う場合もございます。

 他方で、中国の場合でございますが、まず、医療保険制度について申し上げますと、中国の医療保険制度では、就労していない者を対象とせず、また、国外での医療行為を給付の対象としておりません。したがいまして、日本からの派遣被用者に同行する配偶者及びその子が無保険になったり、また、中国からの派遣被用者が実質上無保険の状態に置かれることのないよう、本協定では医療保険制度を対象としておりません。

 次に、労災保険制度でございますが、日中の制度とも、それぞれ自国内の事業者を適用対象としておりますので、労災保険については二重加入の問題が生じないということで、本協定の対象とはしておりません。

 雇用保険制度につきましては、協定の対象とするべく交渉を行った経緯がございますが、双方の考え方が一致せず、結果として、協定を早期に発効させ、年金保険料の二重負担を解消することを優先したため、現時点で本協定に含まれていないということになっております。他方で、中国側からも将来的に再検討する可能性を排除しないということが言われておりますので、雇用保険については、協定発効後も二重負担の問題の解消の可能性について引き続き検討してまいりたいというふうに思っております。

 以上でございます。

穀田委員 制度の違いがあるということと、今後話合いを、交渉することも含めて、課題があるということだと理解します。

 外務省の説明資料によれば、本協定締結による日本企業の保険料の負担軽減効果は年間で約五百五十億円と見込まれていると書かれています。

 そこで、外務省にお聞きしますが、このうち日本人労働者の保険料負担はどれだけ軽減されると見込まれていますか。

金杉政府参考人 お答えさせていただきます。

 中国の年金保険料は二八%でございまして、この二八%のうち、二〇%が企業負担分、八%は個人負担分というふうになっております。御指摘の日本企業の負担軽減効果は個人負担分も含めて算出しておりますので、個人の負担軽減分だけ単純計算いたしますと年間で約百六十億円となる計算になります。

 以上でございます。

穀田委員 個人負担の場合、百六十億だと。

 では逆に、本協定締結によって、日本で働く中国人労働者の保険料の負担はどれだけ軽減されると見込んでいますか。

金杉政府参考人 お答えさせていただきます。

 我が国に滞在資格を有する外国人の方々につきましては、各人が被用者であるか否か、いかなる滞在期間を有するかなどに着目した統計がない状況でございますので、今般の協定によって、日本で働く中国人の、日本側の社会保険料の免除による二重負担の解消額を具体的に算出することは困難でございます。

 以上でございます。

穀田委員 日本の考え方は、統計はない、被用者としての統計はないということなんですけれども、要するに交渉の過程であるわけでしょう。

 つまり、日中両国が双方に恩恵があるということで話し合っているわけだから、今の話でいうと、両国の話合いの中でも、交渉の経過を通じてそういうことも聞きもしなかったということですか。つまり、中国側がどの程度見込んでいるのかということについて、例えば恩恵が全くないのに結ばへんわけやから、恩恵があるから結んでいるんでしょう。そうすると、日本は五百五十億ぐらいだ、相手の側は大体、日本側が何ぼになるのやろという計算をせぬでもええけれども、相手の側は計算していてこの程度やなと思ってはるのやから、それはどうなっているのか。わからぬということは不明ということで理解してええのやね。

金杉政府参考人 お答えさせていただきます。

 交渉ではさまざまなやりとりがございましたけれども、結論的に申し上げますと、中国人の、日本側の社会保険料の免除による二重負担の額というのは残念ながら不明でございます。

 ただ、例えば、少なくとも企業内転勤の在留資格で日本に滞在しておられる中国人、こういった方々は派遣被用者であるというふうに推定されます。その人数は六千人ということでございますが、それでもなお、その派遣期間が五年を超えるかどうかというのは統計的に不明でございますので、冒頭申し上げましたとおり、具体的な額を算出することは困難でございますし、中国側からもその点について特段の説明は今のところないという状況でございます。

 以上でございます。

穀田委員 六千人の企業内転勤という話はわかっているんですけれども、結局、不明だということですね。ただ、相手が言わないということと、お互いに利益というんだったら、あんたのところは何ぼ利益になるのぐらい聞くのは普通や思うのやけれどもね。私ら、商売をやっているわけじゃないけれどもね。

 そこで、何でこんなことを言っているかというと、厚生労働省がことし一月に公表した外国人雇用状況の届出状況によると、日本で働く外国人労働者は約百二十八万人、うち中国人労働者は約三十七万人となっている。これらのうち、日本の社会保障制度である年金、医療、労災、雇用保険、これらについてどのくらい加盟しているのか、そのうち中国人労働者はどのぐらい加入しているのかということについてはつかんでいますか、厚生労働省。

度山政府参考人 お答えを申し上げます。

 我が国の社会保険制度ですけれども、企業と一定の雇用関係があれば、国籍による取扱いの差異がないということになっております。そのため、どの国籍の人が何名かということについては、業務上、そういう意味でいうととる必要がないということもあって、今のお尋ねに関しては把握していないというお答えになるわけでございます。

穀田委員 把握していないと。

 私は、なぜこういうことを聞いているかといいますと、副大臣、外国人労働者が置かれている劣悪な労働実態と社会保障制度というのは極めて密接な関係があるから聞いているわけですよね。

 今お話あったように、日本の社会保障制度というのは国籍を問わずに外国人にも適用されるとなっている。ならば、そのような権利を周知徹底し、全員が恩恵を受けられるようにすることが必要なはずだ。当然ですよね。そうしますと、社会保険制度未加入の問題というのは、労働者が直面している生活や労働条件に直結する問題で、命や暮らしを守るためにも、社会保障制度に加入することは、外国人労働者にとっても利益になる大事な問題なんですね。

 政府は今、入管法の審議をごり押しして、外国人の労働者の受入れ拡大を図ろうとしていますけれども、この間、先ほども議論になったように、技能実習生に対する人権侵害や無権利などが問題になっている。こうした中で、そもそも外国人労働者が現在どれだけの年金や健康保険、雇用保険などに加入しているかということについて、実態すらわからないというのでは、やはり全く話にならぬというふうに思います。

 ここで、持ってきましたけれども、厚生労働省の大臣官房参事官などを務めた西村淳氏が二〇〇七年九月に発表した「社会保障協定と外国人適用」という論文があります。二〇〇七年というのは、ふえつつある外国人労働者に、政府が外国人雇用状況届出を義務化した年であります。増加した外国人労働者の社会保険の未加入問題について、これは書いています。

 この論文の中で、西村氏は、日本で働く外国人労働者の社会保険の未加入問題についてこう言っています。「在日外国人がどの程度加入しているか、どの程度給付に結びついているか、契約や労働期間など労働実態と社会保険加入がどのような関係にあるか、といった実態把握をまず行うことが、問題の所在を明らかにするためには急務であろう。」と指摘し、述べています。

 私はこういう考え方が当然じゃないかと思うんですが、副大臣、いかがですか。

大口副大臣 穀田委員にお答えをいたします。

 今、厚労省としましては、外国人労働者は、一般に我が国の雇用環境に関する知識を十分に有していない等の理由から、雇用管理の改善、これはやはり社会保険に入っているかどうかということも含めて、あるいは再就職の促進、それから専門的、技術的分野の就業促進、そして適正な雇用、労働条件の確保ということが課題であるということは認識をしています。

 そういうことから、厚生労働省といたしましては、平成五年から、毎年六月を外国人労働者問題啓発月間として、これは一カ月間を定めて、事業者団体などの協力のもと、労働条件などのルールにのっとった外国人雇用や高度外国人材の就職促進について集中的な周知啓発活動を実施しているところでございます。

 具体的には、ポスター、パンフレットの作成、配布、事業団体などを通じた周知啓発、協力要請、また、技能実習受入れ事業主などへの周知、指導、そして、留学生を始めとする専門的、技術的分野の外国人の就職支援、労働条件等の相談窓口の周知、これは六言語ですね、英語、中国語、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、ベトナム語の外国人労働者向けの相談ダイヤル等の取組を、関係行政機関、これは法務省とも連携をしながら実施しているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、引き続き、こうした取組を通じて、外国人労働者が日本で安心して働き、その能力を十分発揮できる環境整備に努めてまいりたいと思います。

穀田委員 それは次に質問しようと思っていたことなんですけれどもね。

 問題は、私が言っているのは、二〇〇七年の段階でそういう問題を指摘していたと。

 さらに、西村氏は、「外国人の雇用契約の形態としては派遣や請負などの形態が多く、正社員は直接雇用のうちでも四分の一程度にすぎない。こうした非正規雇用労働者については、」「労働法令上のヤミ派遣も多く見られることが問題になっている。在日外国人の社会保険未加入は、」「実際には人件費削減のため派遣や請負の契約形態になっていることに大きな原因があるのではなかろうか。」というふうに指摘しているんですね。

 だから、こういう実態にあるということは、厚生労働省が認識があるかということが問われている。

 そこで、大臣は、今、外国人労働者問題啓発月間実施の問題について触れられたので、そこについて、じゃ、聞きましょう。

 この実施要綱には、「現在も依然として次に掲げる課題がある。」として、次のように指摘しています。

 先ほど述べた大枠の話とか周知とか啓発とか、それはそのとおりなんですけれども、中身の問題なんですよ。中身は、「雇用管理の改善及び再就職の促進」の課題として、さっき言うてはりましたわな、

 ア 日系人等の定住外国人を中心として派遣・請負の就労形態が多く雇用が不安定な状況は変わっていない。

 イ 事業主の認識不足等により社会保険に加入していない事例や適正な労働条件が確保されていない事例等がみられる。

 また、「適正な雇用・労働条件の確保」の課題としては、

 ア 技能実習生を含めた外国人労働者については、法定労働条件確保上の問題が認められる事案が多いことから、適正な雇用・労働条件の確保が求められている。

さらに、

 イ 外国人労働者の労働災害は増加傾向にあることから、安全衛生の確保のため、安全衛生教育の実施等が求められている。

 これほど厚生労働省が課題と書いているわけですけれども、今、啓発とおっしゃったけれども、改善すべき課題がこれほどあるんだということについての認識で取り組まれていらっしゃるんですね。お答えください。

大口副大臣 穀田委員にお答えします。

 今、その実施要綱を指摘していただきました。この適切な雇用、労働条件の確保の3でございますけれども、これについては、委員指摘のように、そういう認識をしている、課題として認識しているということであります。(穀田委員「実施している」と呼ぶ)はい、課題としてですね。

穀田委員 それは、実施しているからこの要綱があるわけで、要綱に基づいて実施しているということを言ったわけですけれどもね。改善すべき課題がこれほどあるという認識でいるんだなということを聞いているんです。それは確かですな。

大口副大臣 そういう趣旨で述べたところであります。

穀田委員 そういう趣旨でやっておられる、これはとても大事な実施要綱だと思うんですが。

 そこで、私たち野党は、法務省の行った失踪技能実習生の聴取票の公開、提出を求めました。これはもともと、衆参の法務委員会における附帯決議で、出すべし、そういうことを調査すべしというふうに与党の人たちも含めて決めた内容なんですね。

 だから、そんなもの、見せるからそこで見てくれというような話じゃなくて、どうなっているかということについて調査すべきものを、どうなってんねやという話を出さないというのは、まあ、きょうは法務省を呼んでいないからあれやけれども、全く私はけしからぬと思うんですね。

 渋々閲覧を認めて、二千八百七十人の聴取票、写しを私も見ました。きょう若干持ってきましたけれども、こういうものなので、先ほども小熊さんがやっていましたけれども、ここには、労働関係法令に違反する、それは勤めてはるわけだから、違反する過酷な労働実態が書かれています。

 今、中国の、日中の話をしていますから、溶接の仕事をしていた中国の男性は、失踪動機について、低賃金と、暴力を受けたと回答しています。入国前は月額給与は約二十万円と説明を受けていたが、実際は約八万円しかもらっていなかったと書いてあります。

 もう一つ。月額給与が九万円だったベトナム女性は、入国前は労働時間が四十時間と説明されたけれども、実際に働いた労働時間は百三十時間に及んだ、こういう記載があるんですね。

 まさに啓発実施要領では、技能実習生についても、外国人雇用の基本ルールの遵守が求められることや、労働基準法や最低賃金法等の労働関係法令が適用されることについて、関係機関と連携を図りつつ、あらゆる機会を通じて周知徹底、指導を行うと書いているじゃありませんか。

 一体どういう指導をし、役所での情報を共有し、対処してきたのか。だから、こういう聴取票の内容に基づいてつかんでいる実態について情報を共有し、それでどういう指導を何件ぐらい行ってきたのか、言ってください。

大口副大臣 まず、労働基準監督署においては、技能実習生を雇用する約四千八百の実習実施者に対し重点的に監督指導を行っています。

 平成二十九年の一年間において、外国人技能実習生を雇用する五千九百六十六の実習実施者に対して監督指導を実施し、その結果、七〇・八%に当たる四百二十六事業場で労働基準監督法令違反が認められたということで、是正指導を行ったわけです。七〇・八%ですね。

 主な違反事項は、違法な時間外労働等の労働時間に関するものが二六・二%、機械を使用する際の安全基準に関するもの、これは一九・七%、賃金不払い、残業等の割増し賃金の支払いに関するもの、これは一五・八%などでありました。

 また、重大、悪質な労働基準関係法違反により送検したのは三十四件であったということです。

穀田委員 だから、一番最後に数字がありましたけれども、三十四件送検したという話でしょう。七〇・八%も違法をやっていて、毎年毎年実施をやっているわけですよ、啓発。どれほど多くの方々が被害を受けておって、何ら具体的に改善が、事実上されていない。だって、毎年これをやってるのやからね。そして、七割近くが違法をやっているというのをまさに事実上見逃しているという話なんですよ。そういった問題の解決抜きに、外国人の受入れ拡大なんというようなことはあり得ないということははっきりしているじゃないですか。

 そこで、河野大臣にお聞きしますけれども、やはり外国人技能実習制度は、技能実習という名目のもとに、簡単に言うと安い労働力として使うという実態が横行していて、人権侵害、今ありましたように、最低賃金法や労働基準法の法令違反、そして中間搾取もお話がありました。

 こうした技能実習制度の実態は、ILO総会や国連人権理事会やアメリカ国務省などから国際的にも繰り返し批判の対象とされているわけですけれども、こういった問題についてどういうふうにやらなあかんというふうにお思いですか。

河野国務大臣 この技能実習制度というのは、日本からさまざまな国に技能の移転を通じて国際協力をするというのが制度本来の趣旨でございます。ところが、技能実習生を受け入れている企業、実習実施者がそうした制度を理解せず、低賃金労働者として使っているケースがこれまでもしばしば見られ、そうした実習実施者が問題を起こしてきたわけでございますので、そうしたものをやはり厳正に取り締まって、本来の国際協力という目的に沿った事業をやってくれているところも多数あるわけでございますから、国際協力だという本来の趣旨に合う、そういう実習実施者にやはり厳正に限る必要があるというふうに思います。

穀田委員 終わりますが、実施者に限る問題、責任の問題だけではないんですよ。こういう制度自身をつくっていること自体が問題で、法務大臣は大体そう言っているじゃないですか。来年の四月までに実行せえへなんだら帰ってしまうと。もともと、帰ってもらって、それこそ国際貢献にするということが目的なんでしょう。そうじゃないということを、大体、担当の法務大臣が言うぐらいなんだから、法律の趣旨を理解していない実施者がいるじゃなくて、はなからそういう態度ではなかったということがこの法務大臣の答弁から明らかなんですよ。

 私は、そういう意味では、年金や社会保障制度の受入れの整備も当然これから不可欠だと思うんですけれども、何より技能実習生の人権侵害の実態をつかんで、これに心を痛めて、これを抜本的に改善するということが急務だ、それが我々の仕事だ、その点では、ましてや、そういう実態を明らかにする資料を公開するなんか当たり前だということについて述べて、質問を終わります。

若宮委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

若宮委員長 これより討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 社会保障に関する日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決をいたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

若宮委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りをいたします。

 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

若宮委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

若宮委員長 この際、暫時休憩をいたします。

    午前十一時二十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時三十分開議

若宮委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 経済上の連携に関する日本国と……(発言する者あり)経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件及び日本国と欧州連合及び欧州連合構成国との間の戦略的パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣河野太郎君。(退場する者あり)

    ―――――――――――――

 経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日本国と欧州連合及び欧州連合構成国との間の戦略的パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

河野国務大臣 ただいま議題となりました経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十五年四月以来、欧州連合との間で協定の締結交渉を行いました。その結果、本年七月十七日に東京において、安倍内閣総理大臣とトゥスク欧州理事会議長及びユンカー欧州委員会委員長との間で、この協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、我が国と欧州連合との間において、物品及びサービスの貿易の自由化及び円滑化を進め、投資の機会を増大させるとともに、電子商取引、政府調達、競争政策、知的財産、中小企業等の幅広い分野での枠組みを構築するものであります。

 この協定の締結により、幅広い分野において経済上の連携が強化され、そのことを通じ、我が国及び欧州連合の経済が一段と活性化し、また、我が国と欧州連合との関係が一層緊密化することが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、日本国と欧州連合及び欧州連合構成国との間の戦略的パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十五年四月以来、欧州連合との間で協定の締結交渉を行いました。その結果、本年七月十七日に東京において、安倍内閣総理大臣とトゥスク欧州理事会議長及びユンカー欧州委員会委員長との間で、この協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、我が国と欧州連合及び欧州連合構成国との間で、幅広い分野における協力を促進し、戦略的パートナーシップを強化するための枠組みを構築するものであります。

 この協定の締結により、我が国と欧州連合及び欧州連合構成国との間の将来にわたる戦略的パートナーシップを強化するための法的基礎が設けられ、対話、協力等が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 以上二件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

若宮委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十三分散会


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