衆議院

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第2号 令和2年11月13日(金曜日)

会議録本文へ
令和二年十一月十三日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 あべ 俊子君

   理事 伊藤信太郎君 理事 鈴木 貴子君

   理事 鈴木 憲和君 理事 薗浦健太郎君

   理事 中根 一幸君 理事 阿久津幸彦君

   理事 小熊 慎司君 理事 佐藤 茂樹君

      小田原 潔君    尾身 朝子君

      城内  実君    黄川田仁志君

      國場幸之助君    鈴木 隼人君

      高木  啓君    中曽根康隆君

      中谷 真一君    深澤 陽一君

      松島みどり君    簗  和生君

      渡辺 孝一君    青山 大人君

      岡田 克也君    神谷  裕君

      緑川 貴士君    山川百合子君

      渡辺  周君    竹内  譲君

      穀田 恵二君    浦野 靖人君

      山尾志桜里君

    …………………………………

   外務大臣         茂木 敏充君

   法務副大臣        田所 嘉徳君

   外務副大臣        鷲尾英一郎君

   外務副大臣        宇都 隆史君

   外務大臣政務官      國場幸之助君

   外務大臣政務官      鈴木 隼人君

   外務大臣政務官      中西  哲君

   財務大臣政務官      船橋 利実君

   経済産業大臣政務官    佐藤  啓君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   石川 浩司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房外務報道官)           吉田 朋之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       小野 啓一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岡田 恵子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 遠藤 和也君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 河津 邦彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 徳田 修一君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            山田 重夫君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   本清 耕造君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    市川 恵一君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    四方 敬之君

   政府参考人

   (外務省国際協力局長)  植野 篤志君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    水嶋 光一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           山本  史君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 町田 一仁君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  岡  真臣君

   外務委員会専門員     小林 扶次君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十三日

 辞任         補欠選任

  辻  清人君     深澤 陽一君

  簗  和生君     高木  啓君

  山川百合子君     神谷  裕君

同日

 辞任         補欠選任

  高木  啓君     簗  和生君

  深澤 陽一君     渡辺 孝一君

  神谷  裕君     山川百合子君

同日

 辞任         補欠選任

  渡辺 孝一君     辻  清人君

    ―――――――――――――

十一月十二日

 包括的な経済上の連携に関する日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 包括的な経済上の連携に関する日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

あべ委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長石川浩司君、大臣官房外務報道官吉田朋之君、大臣官房地球規模課題審議官小野啓一君、大臣官房審議官岡田恵子君、大臣官房参事官遠藤和也君、大臣官房参事官河津邦彦君、大臣官房参事官徳田修一君、総合外交政策局長山田重夫君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長本清耕造君、北米局長市川恵一君、経済局長四方敬之君、国際協力局長植野篤志君、領事局長水嶋光一君、厚生労働省大臣官房審議官山本史君、防衛省大臣官房審議官町田一仁君、防衛政策局長岡真臣君の出席を求め、説明を聴取したいというふうに存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

あべ委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

あべ委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。伊藤信太郎君。

伊藤(信)委員 自由民主党の伊藤信太郎でございます。

 きょうは、質問の機会をありがとうございます。

 世界じゅうが注目しているアメリカの大統領選でありますけれども、バイデンさんが新大統領に就任することが確実視されているわけであります。

 御案内のように、アメリカで大統領がかわると政治のスタンスというのは大きく変わるわけでありますけれども、この予想されるバイデン新政権に向かって日本はどのような形で外交を進めていくのか。また、アメリカとは非常に緊密な関係がありますけれども、時として、安全保障上の関係と経済的な関係の間で必ずしもスタンスが一致しないという局面もあると思いますけれども、そのバランスというのをどのようにとっていかれるつもりか、お伺いしたいと思います。

鷲尾副大臣 日米同盟は、日本外交、安全保障の基軸であり、インド太平洋地域と国際社会の平和と繁栄の基盤となるものであります。今後も、安全保障面においても、経済面においても、日米間で強固な関係を築いていく考えに変わりはございません。

 なお、昨日の菅総理とバイデン次期大統領との電話会談でも、こうした点を確認したところであります。

伊藤(信)委員 そして、そのバイデン新政権ですけれども、対中政策というものも変化があるのではないかと予想されるわけであります。

 米中関係が変化、どのようにこれから起きるのか、そして、その中で日本としてはどこまでアメリカ側のスタンスに歩調を合わせていくのか、我が国の立ち位置というものを日米関係、日中関係の間でどのようにとっていくのかについてお伺いしたいと思います。

鷲尾副大臣 バイデン候補が選挙戦を通じまして、気候変動分野や同盟関係の重視などの姿勢を示していたことは承知いたしているところでございまして、ただ、まだ政権発足前でございますので、政権移行チーム、そして新政権で打ち出される外交政策の方針を注視してまいりたいと存じます。

 米中関係におきましては、米国全体として、中国に対して厳しい見方が増していると承知しておりまして、米国と中国が安定的な関係を構築していくことは、我が国のみならず、国際社会の平和と安定の観点からも重要と考えております。

 そのような観点から、日本としては、同盟国たる米国との緊密な協力を進めつつ、中国との安定的な関係を築き、中国が大国としての責任を果たしていくよう、さまざまな方策やアプローチを駆使して働きかけていく考えでございます。

伊藤(信)委員 次に、日中関係についてお伺いしたいと思います。

 中国とは、情報セキュリティーの問題、尖閣諸島の問題、大和堆の問題、日本の国益に直結する安全保障の問題で大きな葛藤といいますか、ぶつかりがあるわけでありますけれども、同時に、経済関係を考えれば、日本にとって欠くことのできない経済的なパートナーであります。

 この違う二つの、違うといっても関係している二つの間で日本はどうやってバランスをとって日中関係というものを進めていくのか、お考えをお伺いしたいと思います。

鷲尾副大臣 中国は、隣国であると同時に世界第二位の経済大国であり、日中関係は日本にとり最も重要な二国間関係の一つでございます。

 中国との間にはさまざまな懸案が存在しておりますが、引き続き、首脳会談や外相会談等のハイレベルの機会を活用しまして、主張すべきはしっかりと主張し、懸案を一つ一つ解決し、また、中国側の前向きな対応を強く求めていくというのが基本方針であります。

 この基本方針に基づきまして、それぞれの課題や事案に適切に対応してまいりたいと思います。

伊藤(信)委員 TPP11、苦労して日本がある意味では最終的に主導してきたわけでありますけれども、ここにバイデン新大統領ということも含め、アメリカや、あるいはイギリスやほかの国が加わる可能性というのはどれぐらいあると考えているか。

 そしてまた、日本にとってやはり東南アジア諸国との関係は非常に重要だと思いますし、またインドとの関係も重要だと思います。そして、もちろん中国、韓国との関係も重要であります。そういった中で、TPP11プラスアルファ、そして、今だんだん進んできて、もう少しで締結に行きそうなRCEPとの関係をどのように見ているのか。

 そして、複数の経済関係の協定があるわけですけれども、その中の整合性というものを、国としても、あるいは品目としても、どうとっていくのか。日本の農業、食料を守るためにも、しっかり、スタンスをはっきりして進んでいただきたいと思いますが、その辺の御説明をお願いしたいと思います。

茂木国務大臣 まず、私の方からTPPの関係も含めてお答えをしたいと思うんですが、今、バイデン次期大統領、政権移行の準備に入っておりまして、特に、コロナ対策等々の検討も進んでおりますし、恐らく、今月末、サンクスギビングの前には、主要なスタッフといいますか、これも決まり出してくるのではないかなと思っておりますけれども、現時点において、米次期政権の通商政策について、完全にこうなっていくと予断を持ってお話しすることは差し控えたいと思っております。

 その上で申し上げますと、我が国としては、GDPが世界第一位であってグローバル化も圧倒的に進んでいる、こういった米国を含めて、できるだけ多くの国、地域がTPPに参加することが望ましい、こういった考えに変わりはございません。これは、日米の貿易交渉を行っている中でも、最終的にはやはりTPPにアメリカが戻ってきてくれることが最善の道だと思っている、こういったことは何度も米国の方にも直接申し上げているところであります。

 ハイスタンダードでバランスのとれた二十一世紀型の新たな共通ルールを世界に広めていくという意義を有しておりますTPP11への新規加入については、英国であったりとかタイを始めとしてさまざまなエコノミーが関心を示しておりまして、英国は、先日、トラス国際貿易大臣が訪日をいたしましたが、二〇二一年、来年の前半にもできれば加入手続に入りたい、こういう話もしておりました。我が国としても、こうした関心表明を歓迎しているところであります。

 来年、TPP委員会の議長国となる我が国としては、新規加入に関心を示すエコノミーの動向を注視しながら、戦略観点も踏まえながら、引き続きTPP11の着実な実施、そして拡大に取り組んでいきたいと思っております。

 御案内のとおり、TPP11、これが昨年の一月の一日に発効いたしまして、日・EU・EPAが二月の一日に発効する。こういった中で、TPPを離脱したアメリカとの間は、補完する形で別途、日米貿易協定そして日米デジタル貿易協定、こういったものをつくり、また、EUを離脱する英国との間では、今回、日英の包括的経済連携協定に署名をして、この国会でも御審議をいただきたいと思っております。

 さらには、今、RCEPも大詰めの交渉を迎えるという形でありまして、基本はマルチの枠組みをベースにしながら、それを補完するようなさまざまな二国間の経済連携協定もつくる。日本が自由貿易の旗手として、自由で開かれた貿易体制、さらには二十一世紀型の新しい共通ルールをつくっていく、これをリードしていきたい、こんなふうに思っております。

伊藤(信)委員 貿易に関しては、WTOの事務局長がまだ、決定が延期される、また、コロナの問題でありますけれども、WHOの事務局長の初期の対応について世界からいろいろな意見もあるところであります。

 日本はやはり、日本のこれだけの状況を考えますと、もう少し国際機関の長をとってもいいと思うんですけれども、実際に非常に少ないわけですね。日本が国際機関の長をとって、世界のルールを決める上での主導的立場をとるべきだと思いますけれども、その方策はどのようにあるのか、お聞かせ願いたいと思います。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 グローバルな課題に取り組む上での国際機関の重要性を踏まえまして、日本はこれまで、WHOやユネスコを含む四つの国連専門機関や国際原子力機関、IAEAで日本人トップを輩出してまいりました。現在も、世界税関機構やアジア開発銀行を始めとする機関で日本人トップが活躍しているところでございます。

 また、本日未明に、国連総会及び安保理において行われました国際司法裁判所裁判官選挙におきましても、日本の岩沢雄司候補が、五名の当選者の中でも最多数の票を獲得し、再選いたしました。

 今後も、関係省庁とも緊密に連携し、長期的視点に立って、適切なポスト獲得に取り組んでまいりたいと考えております。

 また、このためには、価値観を共有する国々との連携も重要でございまして、適切なトップの選出につきまして、今後とも関係国としっかり連携してまいりたいと思っております。

伊藤(信)委員 次に、北朝鮮の拉致、核、ミサイルの問題についてはどのように解決しようとしているのか、お伺いしたいと思います。

鷲尾副大臣 我が国といたしましては、日朝平壌宣言に基づきまして、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化を目指す考えに変わりはございません。日米、日米韓の結束のもとで、国際社会と連携しながら、朝鮮半島の完全な非核化を目指してまいります。

 特に、拉致問題は菅内閣の最重要課題でございます。拉致被害者の御家族が御高齢となる中、拉致問題の解決には一刻の猶予もございません。引き続き、米国などとも緊密に連携しながら、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現するべく全力を尽くしてまいります。

伊藤(信)委員 ロシアの新憲法には、領土の割譲に向けた行為や呼びかけを禁止する条項というのが盛り込まれております。こういった中で、北方領土の返還交渉をどのように進めるか、お聞かせ願いたいと思います。

茂木国務大臣 北方領土問題につきましては、次の世代に先送りすることなく、終止符を打つべく、領土問題を解決して平和条約を締結するとの方針に基づいて交渉を行っているところであります。

 菅政権として、一昨年のシンガポールでの安倍前総理とプーチン大統領のやりとりについて、しっかりと引き継いでおりまして、引き続き粘り強く交渉に取り組んでいきたいと思っております。

 交渉の責任者であります私とラブロフ・ロシアの外相の間では、昨年九月のニューヨーク、そしてさらには十一月の名古屋、そして年末には私がモスクワの方に赴きまして、多分、領土交渉としては異例の長さになると思うんですが、八時間にわたって交渉を行いました。

 今後に向けた展開が見えてきたやさきに、ことしに入ってから新型コロナ、この拡大ということで、なかなかそれ以降対面の協議が進められていなかったわけでありますが、新政権のもとでも、領土問題を解決して平和条約交渉を締結する、こういった目標に向かって引き続きしっかりと取り組んでいきたいと思っております。

 その上で、領土譲渡禁止条項を含みますロシア憲法改正との関係でありますが、ロシアの内政であったりとか対外政策を含む動向については、もちろん常日ごろから関心を持って注視をしているところでありますが、この交渉、まさに進められている段階でありまして、これについて、この問題がどう関係してくるか等々は、今後の交渉にも十分影響を与えるということで、コメントは控えさせていただきたいと思います。

伊藤(信)委員 これで質問を終わります。ありがとうございます。

あべ委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 何年かぶりで当委員会の理事につかせていただくことになりました。また、きょうは、こういう質問の機会をいただきまして、大変にありがとうございます。

 きょうは十五分と限られておりますので、大きな点だけ何点かお聞きをさせていただきたいと思うんですが、まず、十一月の七日の午前に、現地時間の七日の午前だったと思うんですが、アメリカ大統領選挙におきまして、現地メディアが、民主党の元副大統領のバイデン氏が当選確実となったという報道をいたしました。まずは、この場をおかりいたしまして、バイデン氏並びに史上初の女性副大統領となられるハリス氏にお祝いを申し上げたいと思います。

 アメリカ大統領選で勝利を確実にしたバイデン氏の今度の政権の陣容というのはこれからなんですけれども、今、大統領選でのさまざまなお訴え、公約などを見ておりますと、外交、安全保障政策では、トランプ政権が掲げてきたアメリカ第一主義から同盟関係や各国との連携を重視する国際協調路線に転換を図る意向である、そのように言われております。

 具体的には、選挙戦を通じて、例えば、温暖化対策の国際的枠組みであるパリ協定について、大統領就任の初日に復帰する、そのように明言をしておられますし、また、トランプ氏が来年七月WHOから脱退すると国連に通知しましたけれども、これについても脱退手続を中止する方針だ、そのように報じられているわけでございます。また、それ以外にも、国連人権理事会であるとか国連人口基金への復帰の方向でもあるというように言われているわけでございます。

 このことを考えましたときに、きょうは何点か大臣所信に沿って御質問をさせていただきたいと思うんですけれども、先日の当委員会の大臣所信で、冒頭で新型コロナウイルス感染症への対応について述べられておられました。また、六番目には、地球的規模課題への対応というものについても、六つの柱のうちの六つ目として述べられていたわけでございます。

 新型コロナ禍の中で、各国がワクチンの開発あるいは配布などで協力して、コロナの感染拡大防止に協力しつつ世界経済の回復を目指す上で、私は、このバイデン氏の国際協調路線の意義は非常に大きいと思っているんです。

 新型コロナウイルスの感染を完全に世界的に終息させるには国際協調が何よりも必要ではないか、そのように思うわけでございまして、外務省の来年度の概算要求の柱にも新型コロナウイルス感染症の克服というものを一番目に挙げておられて、さまざまに取り組むということを言われているんですが、例えば、ワクチン、治療薬、診断薬の供給支援、途上国への保健医療体制支援を通じた感染拡大防止、こういう分野でアメリカのバイデン氏の政権とはしっかりと協力していける、そういう可能性があるのではないかと私どもは与党の一角として思っているわけでございます。

 具体的には、WHOからの脱退撤回とかいうことにとどまらず、新型コロナウイルスのワクチン共同購入のCOVAXファシリティーに、現在未参加国のアメリカに政権がかわれば参加してもらうチャンスだ、そのように私どもは思っております。

 COVAXファシリティーというのは、御存じのとおり、GAVI、CEPIあるいはWHOが主導して、途上国を含めて公平にワクチンを供給することを目指しているわけでございますが、日本の参加が明確になったことによって、また、他国への参加も促したことで各国の参加が相次ぎまして、大きな流れを日本が主導して、現在では世界百八十カ国以上、世界の人口の七〇%以上をカバーする仕組みとなったわけでございますが、一方で、アメリカ、ロシアという大国がこの枠組みに参加しておりません。

 しかし、アメリカが政権交代をして、国際協調路線を掲げるバイデン氏の政権がスタートするに当たって、日本政府からもう一度しっかりとアメリカの参加を強く私は働きかけるべきだ、そのように思っているわけですが、こういう新型コロナウイルス感染症の国際的な克服に向けての日米の協力しての貢献の可能性と、具体的にはCOVAXファシリティーへのアメリカの参加への働きかけについて、外務大臣の見解をお伺いしたいと思います。

茂木国務大臣 恐らく、バイデン新政権の間では、佐藤委員御指摘のように、国際保健課題を含め、さまざまな分野で日米間で協力していける、そういう潜在的な可能性は非常に高いと思っております。

 もちろん、日本としてトランプ政権とも非常に良好な関係を築いてきましたが、トランプ政権は、言ってみますと、米国第一主義のもとでさまざまなことについて二国間関係で問題を解決する、こういう手法をとってきたのに対して、バイデン次期大統領は、多国間主義を強調しておりますが、一方で、内政上の課題、国内の分断解消それから四つの優先分野、こういったものも打ち出しておりまして、恐らく、内政重視の中で多国間主義にいかにコミットしていくか、こういうスタンスでさまざまな問題に臨んでいくんじゃないかな、こんなふうに考えているところであります。

 そんな中で、この新型コロナ感染症によりまして、特に医療保健体制が脆弱な途上国において、人間の安全保障が脅かされている。グローバル化の進展に伴って、各国のみの取組の限界がある中で、国際連携の強化というのは必要だと考えておりまして、我が国として、ワクチンの早急な開発と、人口の少ない国であったりとか途上国も含めた公平な普及に向けて、これまでも、御指摘のCOVAXファシリティーの枠組みの重要性を提起をして、アメリカを含みます各国に協力を働きかけておりまして、今後もそうした取組をしっかりと進めていきたいと思っております。

 少なくとも米国は、国際保健分野においてもリーダーシップをとってきた国であります。新政権の個別の政策、これについては今後固まっていくということでしっかり見きわめていきたいと思いますが、我が国として引き続き米国と連携して、国際保健課題の解決のために積極的に取り組んでいきたい、こんなふうに考えております。

佐藤(茂)委員 今は目下の新型コロナウイルス感染防止のために、やはりアメリカの力をしっかりと、どう生かしていくかということも極めて大事だと思いますので、ぜひお願いをしたいと思います。

 それで二点目には、大臣所信の一番目に挙げておられました日米同盟の強化ということについて、一点だけお聞きをしたいと思います。

 昨日、菅総理とバイデン氏が電話会談をされました。この中では、メディアも報道しておりますけれども、アメリカの日本防衛義務を定めた日米安保条約第五条の適用の範囲として尖閣諸島が入るんだ、そのことを見解をされたこと、あるいは、インド太平洋の平和と安定に協力していくんだというようなことについてもお互いに合意をされた、そういう報道も出ておりますけれども、目下、やはり政権移行の中にあって、日米同盟をどう強化していくのかということは、これから極めてその部分、難しいかじ取りになろうかと思うんです。その中で、目下の、今、日米間の懸案である在日米軍駐留経費の日本側負担分をめぐる交渉について、十一月十一日にこの交渉を開始したということを日本政府として発表されました。

 この点についてだけお聞きをしたいと思うんですけれども、日米両政府は、原則五年ごとに特別協定を結びまして、米軍基地で働く従業員の給与であるとか、あるいは光熱費などの日本側負担額を決めていっているわけでございます。二十年度予算で合計千九百九十三億円を計上しているんですが、この協定が今年度末で期限を迎えるために、来年度以降の負担額を協議する正式交渉が先日始まったということなんです。

 ただ、アメリカの政権移行期の交渉というのは、私も二十七年ぐらいになりますけれども、恐らく初めてではないか、そのように思っているんですが、バイデン次期政権というのは、予定どおりいけば来年の一月二十日に発足する予定で、駐留経費をめぐる交渉というのは、そういうことから、トランプ政権を相手として交渉していかなければならない、そういうことになります。

 ただ、トランプ氏自身、まだ大統領選で敗北も認めておりませんし、その政策の一つの中心者となるべきエスパー国防長官を解任して、そういう状況から、非常に先行きに、現政権、不透明感が漂っているわけです。しかしながら、日本側としては、駐留経費の負担は令和三年度の予算案に反映させる必要があるために、年内に交渉を妥結させていかなければいけない、そういう事情もあります。

 ですから、常識的には、もうかわる予定であるトランプ政権と、次の五年間の負担額について、今、政権からおりるトランプ政権と決めるのではなくて、現行の特別協定を一年間暫定延長するとか、そういう、現時点で決められるものの範囲をある程度限定して、そして来年に次期バイデン政権と再交渉するというのがやはり理想的ではないかと私個人は考えますけれども、来年度以降の在日米軍経費の日本側負担に関する日米両政府の交渉について、政府としてどういう方針で臨まれるのか、外務大臣にお伺いをしたいと思います。

茂木国務大臣 日米間の、まさに今週、第一回目の正式交渉が行われて、交渉継続中ということであります。

 そこの中で、今回の交渉に臨むに当たっての基本認識ということでありますけれども、我が国を取り巻きます安全保障環境、これが一層厳しさを増す中、日米同盟は、我が国の防衛のみならず、インド太平洋地域の平和と安定のためにはなくてはならない存在でありまして、米軍の駐留が日米安保体制の中核的要素である中、在日米軍駐留経費、これは、在日米軍の円滑かつ効果的な活動を確保する上で重要な役割を果たしてきている、こういう基本認識のもとで、さらに、安全保障政策の対象、これが従来のものからサイバーであったり宇宙といった新たな領域に広がっていて、また、その脅威が拡大をする中で、日米双方が果たすべき役割、これは大きくなってきていると考えております。

 交渉は継続中でありますが、今回の交渉では、一層厳しさを増すこういった地域の安全保障環境、そして我が国の厳しい財政状況等を踏まえて、また、委員の方からも御指摘ありましたように、今アメリカが政権移行期である、こういったことも踏まえて適切に対応していきたいと思っております。

佐藤(茂)委員 もう一点、時間の許す限りお聞きしたいと思うんですが、きのうの本会議でも質問があったんですけれども、今、RCEPの交渉が大詰めに来ております。日中韓やあるいはASEAN十カ国など十五カ国が参加するRCEPの閣僚会合が、十一日、テレビ会議で行われまして、十五日の首脳会合で協定への署名を行う方向で最終調整が進められていると認識しております。

 具体的な、物品にどういう関税がかかるか等については正式に決まってから公表されるのではないかと思いますが、ただ、RCEPが合意に達すると、参加十五カ国で世界の人口の三割、また世界のGDP貿易額の約三割、日本の貿易額の約五割をカバーする巨大経済圏が生まれますし、日本にとっては主要な貿易相手国である中国や韓国と初めて結ぶ自由貿易協定となっております。

 また、日本企業というのはアジア全体にサプライチェーンが広がっておりまして、関税の削減、撤廃というのは、中小企業なども含め、幅広い経済活動への恩恵が期待されます。

 日本にとっても、そういう意味から非常に意義のある協定であって、ぜひ日本政府として合意形成の努力をしていただきたいと思いますが、RCEPの協定の意義と大筋合意に向けた見通しについて、最後に外務大臣にお伺いしたいと思います。

茂木国務大臣 RCEPの意義については、まさに佐藤委員がおっしゃっていただいたことに尽きると。正確に、どれぐらいをカバーするかとか、どういう意味があるかとおっしゃっていただいたことは、全く意見を一致をいたしております。

 我が国としては、昨年十一月のRCEP共同首脳声明を踏まえて、RCEPの年内署名と、貿易赤字拡大の懸念であったりとか幾つかの国内事情を抱えているインドの交渉復帰に向けて取り組んでいるところでありまして、現在、交渉は大詰めを迎えておりまして、十五日にはビデオ会議形式でRCEPの首脳会議が開催予定されるところであります。

 交渉の結果、あさってでありますから予断することは差し控えたいと思いますが、RCEP協定によって地域に広がりのあるサプライチェーンが活性化、効率化され、貿易投資が促進し、そして自由で公正なルールづくりが推進される、こういったことを期待したいと思います。

佐藤(茂)委員 引き続き、茂木大臣には、包容力と力強さを兼ね備えた外交の方針のもとに、戦略的に存在感のある日本外交を展開していただくことを期待いたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

あべ委員長 次に、岡田克也君。

岡田委員 立憲民主党の岡田克也です。

 私からは、まず、予算委員会の続きですが、九月十一日の安倍談話について少しやりとりをしたいと思います。

 予算委員会でのやりとりでも、私は、迎撃能力を高めるだけでは不十分という安倍談話ですから、当然、迎撃能力の反対である攻撃能力ないしは反撃能力、こういったものを持つことを議論しているのかと問うたのに対して、明確な答えはありませんでした。しかし、どう考えても、論理的にはそういうことだろうというふうに思います。

 別に、結論を聞いているわけではなくて、そういうことを議論のテーマにしているということぐらいはお認めになるべきじゃないですか。

茂木国務大臣 先日の内閣総理大臣の談話をめぐるやりとりの中で、岡田委員の質問に対して、私の方から、一般的に、迎撃能力の反対の意味の言葉として攻撃能力や反撃能力がありますが、さまざまな外交努力を含めて、相手のミサイル発射能力を削減することや攻撃能力を低下させることも、概念上、迎撃能力の向上につながるものであると。概念の整理として、私はそういうことだと思っております。

 単純に、迎撃能力の反対側に攻撃能力、反撃能力があるということではなくて、つまり、攻撃能力が削減される、相手の、このことも迎撃能力の向上につながる、概念としてはそういうことだということを申し上げました。

 現在、まさに談話にあるとおり、抑止力を強化するため、安全保障政策の新たな方針を検討しているわけでありますが、これは憲法の範囲内において国際法を遵守しつつ行われているものでありまして、専守防衛の考え方についてはいささかの変更もございません。

岡田委員 大臣、何も答えていないんですが、二つ聞きます。

 一つは、大臣のおっしゃった、相手の攻撃能力を削減させるという、反撃能力や攻撃能力ではない形でのやり方ということになると、まさしく外交とかいうことになるのではないかと思うんですが、では、具体的に中国や北朝鮮とそういった交渉を何か行っているんですかというのがまず第一です。

 第二は、そういうことを仮にある程度やっていたとしても、攻撃能力そのものについての議論も行っているはずですが、そのことは否定されるんですか。

 この二つ、答えてください。

茂木国務大臣 朝鮮半島の非核化、これを進めていくということは国際社会の一致した考えだと思っておりますし、さらには、あらゆる射程の弾道ミサイル、この発射は国連の関連する安保理決議違反ということでありまして、今、国際社会全体として、北朝鮮に対する制裁を守る、より厳しい制裁をとる、こういう状況の中で北朝鮮の前向きな対応を引き出す、こういったことも含めた外交努力というのは続けているわけであります。もちろん、それ以外に、それぞれの、米国また日米韓、こういった連携のもとでの働きかけ、こういったことも行っております。

岡田委員 菅総理は、条件をつけずに金正恩委員長ともお会いする用意があるというふうに言われています。そういう中で、一方で攻撃能力を持つという議論をしているとすれば、それはまさしく支離滅裂というふうにも見えますね。

 ですから、この安倍談話そのものが私は非常に唐突感を持って聞いたわけですけれども、話合いをしっかりしたいというのであれば、一方で日本が攻撃能力を持つということを議論するのは、タイミングとしては私はおかしいというふうにも思うわけです。

 しかし、安倍談話そのものを素直に見れば、やはり、攻撃能力を議論する、そのための紙なんだなというふうにしか読めないんですね。そういうことはないと否定されますか。

茂木国務大臣 先日もお話ししたと思いますが、対北朝鮮に対する日本の方針でありますが、日朝平壌宣言に従って、拉致、核、ミサイル、諸懸案を包括的に解決して、不幸な過去を解決し、国交正常化を目指す。こういったもとで、このやり方でありますけれども、これは、単に圧力だけじゃなくて対話、対話と圧力をうまく使い分けながらやっていくということで、その意味で、条件をつけずに金正恩委員長と向かい合う、こういうこともございますし、一方で、国際社会全体が北朝鮮の非核化を促す意味では、今制裁緩和というのは時期尚早だと思っておりまして、そういった意味では、北朝鮮に対する圧力を維持するということも極めて重要だと思っております。その間に矛盾はないと思います。

岡田委員 圧力と対話の間に矛盾はないというのは、私はそれはそのとおりだと思いますよ。当然、国連安保理に従って、あるいは日本独自の制裁も含めて、圧力を高めていくことで対話に追い込んでいくということだと思うんですね。その対話路線を否定して圧力一辺倒だった、そういう時期が安倍さんにあるから、おかしいと私は予算委員会で言ったわけですけれども。対話をするための手段としての圧力の強化ということは、それは重要なことです。そして、最終的には菅総理も、直接話合いをしたいというふうに言っているわけです。そのことを私は言っているんじゃないんです。

 そういう議論を一方でしているときに、攻撃能力の話というのは、もちろん、これは北朝鮮だけではなくて中国もあればロシアもありますが、しかし、対北朝鮮ということを考えたときに、政府として支離滅裂じゃないかと言っているわけです。

茂木国務大臣 政府内での検討状況について現時点で明らかにすることは差し控えたいと思いますが、政府として、我が国にとって望ましい安全環境を実現するため、平素からさまざまな外交努力を行っているというのは確かなことでありまして、談話にあるとおり、安全保障政策の新たな方針、これを検討することにしておりますが、政府内での検討状況につきまして、現時点で明らかにすることは差し控えたいと思います。

岡田委員 何も答えていないんですが。

 私は、ぜひ、総理を補佐する立場として、この間北朝鮮との交渉が進まなかった一つの理由として、やはり安倍総理の一貫しない方針というのがあったことは間違いないというふうに予算委員会で申し上げました。

 トランプ大統領が全ての選択肢はテーブルの上にあると武力行使を否定しない中で、それを高く評価すると言ってみたり。私は、日本国総理大臣として、日本の国民の命と暮らしを守るという観点からいえば、軽々に言うべき言葉では絶対なかったというふうに思います。北朝鮮はそれをどう受けとめたか。次は、国連総会で、対話じゃない、圧力だと言われた。実はその直後に国難来るといって解散されて、今我々はその選挙で選ばれているんですけれども。でも、わずか一年後には、いやいや、直接向き合う、無条件でお会いすると。

 これだけ変節してくると、やはりまともな交渉相手として相手は見なくなる。だから、菅総理には、そういうことではなくて、しっかりとみずからの考え方で、本当に腰を据えて交渉するならそういうことで物事を進めてもらいたいということを私は申し上げているわけです。

 そこで、ことし末までにあるべき方策を示すというふうに安倍談話にはありますが、ここは変わっていないんですか。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 政府といたしましては、菅総理が本国会の所信表明演説で述べられましたとおり、九月十一日の内閣総理大臣の談話を踏まえて議論を進め、あるべき方策を取りまとめていく考えでございます。

岡田委員 局長に答えていただかなくて結構です。これは四大臣会合ですから外務大臣に聞いているんですね、今何も答えなかったので。

 ことし末までにあるべき方向を示すということは変わっていませんかと確認しているんです。イエスかノーかでお答えください。

茂木国務大臣 まず、先ほどの岡田委員の御議論の中で、決して私、日本の方針が変わっているんだと思っておりません。北朝鮮を取り巻きますさまざまな状況の中で、例えば北朝鮮からしますと、やはりアメリカの脅威、これは大きいわけでありまして、それにどう対峙していくかという中で物事を考えるというのは当然のことなんだと思うんですね。

 そこの中で、アメリカが最大限の圧力をもって対峙する、さらに、それによって金正恩委員長を対話に引き出す、そういった米朝協議というのが始まったわけでありまして、そしてまた、米朝協議によって、一つの北朝鮮のコミットメント、これも引き出したわけでありますから、それについては当然日本としても支持をして、そこの中で、日本としても今後条件をつけずに向き合うという方向をとった。これは、私はやはり、全体の状況を考えたら当然のことなのではないかなと思っております。

 しかし、その一方で、今、北朝鮮が着実に核開発能力を向上し、そして弾道ミサイルと、増強しているということは間違いないわけでありまして、そういったことから、我が国の平和であったりとか国民の命を守っていく、そのためにどういうことを行っていくか、この検討はしっかり進めなければいけない、そのように考えております。

岡田委員 今年末までにということについてのお答えはなかったわけであります。

 それから、先ほどおっしゃった話は、やはり、トランプ大統領は、かなり極端に、徹底的に武力行使も含めてプレッシャーをかけて、そして一転して米朝首脳会談、世界も驚いたわけですね。

 トランプ大統領が右と言えば右、左と言えば左、私は、日本外交は非常に惨めだったというふうに思うわけですね。武力行使と言えば、武力行使を高く評価する。首脳会談と言われたら、条件なしでお会いしたいと。これでは、やはり日本外交はないのと一緒です。

 やはり日本には日本の国益もある、拉致問題もあるし、核・ミサイル問題だってアメリカとはまた違う状況がある、そういう中でやはり直接交渉をする必要が私はあると思うんです。最初に首脳会談をやるのがいいかどうかは別にして、やはり直接交渉をする。そのためにはやはり独自の日本のポジションというのを保持しないと、何かアメリカに振り回されているような、こういう外交はもうやめてもらいたい。結果的には、残念ながら拉致家族は帰ってこなかったし、核、ミサイルの開発はどんどん進んで、今や日本に到達する。そういう状況を招いたということは私は深刻に反省すべきだし、やり方についても、同じやり方では絶対だめだ、そういう思いで申し上げております。

 時期も言われなかったんですが、私はちょっとやりとりの中で驚いたんですが、菅総理が、閣議決定がされていないので、安倍談話について、原則として後の内閣に及ぶものではないと考えているというふうに言われました。驚いたのは、四大臣のうちの外務大臣と、それから菅さん自身も官房長官として取りまとめの中心を担った人ですから、そのお二人が安倍さんの談話について拘束されるものではないと、私、聞いてもいないのにわざわざ言ったのでちょっと驚いたんですが、これはどういう意味ですか。

茂木国務大臣 談話というものは閣議決定がされていない、そうなると、閣議決定を得ていないという意味では、効力が後の内閣に及ぶものではない、こういう解釈でありますが、一方で、菅総理は、私の内閣においても、談話を踏まえて議論を進めて、あるべき方策というものを考えていきたいと言っておりますので、決して矛盾はしていない。

 閣議決定されていない以上、それを法律的に引き継ぐものではないけれども、しかし、しっかりそれを引き継いで議論を進めていきたいということをおっしゃったんだと思います。

岡田委員 予算委員会でも申し上げたように、中途半端な攻撃力を持っても抑止力としては機能しない。だから、やはりこれは筋が悪いということでフェードアウトしよう、事実上。そういう意味で、時期も決めないし、閣議決定していないから拘束されないということを言っておられるのか、あるいは、総選挙も近い中で、少なくとも一年以内にはあるわけですから、与党の中でもそれに対して厳しい意見もある、だから選挙が終わるまでは先送りしようということなのか、私はいずれかだと思うんですが、どちらですか。

茂木国務大臣 どちらでもありません。

岡田委員 ということは、年内に何らかの見解が示されるというふうに理解しておきたいと思います。

 次に行きます。

 エスパー国防長官が解任されました。私は、現在のアメリカの状況を大変心配をしております。混乱はなおも続く可能性がある。それから、トランプ大統領自身が、発信が今完全にない、自身の声で発信することがない、記者の質問に答えることがない、そういう状況だと理解しています。

 これはやはり、例えば中東とかアフガニスタンとか、いろいろなところでこの空白に乗じて突発的なといいますか、いろいろなことが起きる可能性がある。あるいはロシアや中国だってわからない。今回の香港の議員が資格を失った問題も、そういう時期だからこそあったという見方もある。私は、相当緊張感を持って日本政府は備えなければいけないというふうに考えておりますが、大臣、いかがですか。

茂木国務大臣 米国が今、政権の移行期にあることは間違いないと思っております。一方で、来年の一月二十日になりましたら新政権が発足することも間違いないと思っております。

 そういった中で、現在の政権ともそうでありますが、きのうも、菅総理、バイデン次期大統領と電話会談を行いまして、日米同盟を更に強化していく、そして、自由で開かれたインド太平洋、この実現に向けて協力をしていく、さらには、日米安保条約第五条を尖閣に対ししっかり適用する、アメリカとしては、第五条の義務、このコミットメントをしっかり行っていくと。非常にいい会談ができたのではないかなと思っておりまして、日米間では、さまざま変化します、それは東アジアだけではなくて、さまざまな地域の情勢について、常々意見交換、そして情報分析等々を行っておりまして、対処の方法であったりとか、また状況認識について、日米間にそごはないと思っております。

 政府として、米国の内政状況、深くコメントすることは避けたいとは思いますが、米国政府とともに、今申し上げたような共通認識に基づいて、日米同盟の抑止力、対処力の一層の強化に取り組むとともに、我が国の平和と安全、インド太平洋と国際社会の平和と安定のために、引き続き連携をしていきたいと思っております。

岡田委員 私は、きのうの会談はそれなりに評価したいと思います。それから、五条の適用をバイデン氏が述べたということ、これを百点満点と言った人がいるらしいんだが、私は、今まだ大統領じゃないわけですから、手放しで喜べる話ではないというふうには思いますね。

 では、バイデン大統領になるまでのこの間をどうするのか。かえって、既成事実をつくりたいと思う人がいれば、バイデン大統領になる前の混乱時期にというふうに考える余地だってある。だから、私は緊張感を持って対応する必要があるというふうに思っているわけです。いかがですか。

茂木国務大臣 緊張感を持って対応する必要があるということについては、岡田委員と認識を一緒にいたします。

 その上で、今アメリカにおいて政権の空白が起こっているわけではありません。同時に、一月の二十日には新政権が発足することも間違いない事実だ、このように思っておりまして、日米同盟であったりとか自由で開かれたインド太平洋、こういった問題について、米国の考えに変更はない、このように私は考えております。

岡田委員 米ロの二大核大国の軍縮をめぐる議論、新STARTの延長問題、さまざまな議論が両国間で交わされていたというふうに承知をしておりますが、現状どうなっているでしょうか。簡単に、事務方で結構ですから答えてください。

本清政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、米ロ間においては、新STARTの延長を含め、引き続き軍備管理・軍縮に関する協議が行われており、直近では、十月五日にフィンランドのヘルシンキにおいてビリングスリー軍備管理担当米大統領特使とリャブコフ・ロシア外務次官との間で協議が行われ、それ以降も米ロ間ではさまざまな形でやりとりがなされていると承知しております。

岡田委員 中身の説明は全くなかったんですが、バイデン氏の見解はトランプ大統領とは大分違うというふうに理解をしています。

 私は、新STARTを更に延長すること、あるいは中身を更に充実させることは、やはり、核軍縮を進めると日本が言う以上、日本がしっかりそのことを述べるべき話だというふうに思います。

 ふだん地道に軍縮を進めていくというふうに言われていますが、これなどは日本にとって非常に大事な話だと思うんですが、大臣、いかがですか。

茂木国務大臣 日本としては、米ロによります新STARTの引き続きの履行及びさらなる核兵器削減に向けた対話の継続、これをずっと求めてきているところであります。

 そして、バイデン次期大統領でありますが、選挙公約におきまして、新STARTの延長を追求し、これを新たな軍備管理取決めのための基礎とする旨表明をしている、このように承知をしておりまして、新政権の発足前でありまして、この後どうなっていくかということはありますが、基本的な考え方はそういうことだというふうに、そのように理解いたしております。

岡田委員 私もバイデン氏と基本的に同じ意見です。

 外務大臣は一時、アメリカ側のトランプ政権の主張、つまり、中国も巻き込まないと意味がないという議論にくみしておられたと思いますが、私は、やはり、二大核超大国である米ロがしっかりとこの新START、単純な延長なのか、更にもう少ししっかり、さまざま問題がありますから、それを解決したような中身のある延長がより望ましいと思いますが、それをした上で、米ロがしっかりと軍縮をやるという流れをつくった上で、中国をその議論の中に取り込んでいく、そういう考え方しかないのではないかというふうに思います。いきなり中国を一緒になんというのは、結局それは、話がまとまらないばかりか、新STARTそのものもおかしくなってしまう。そういう認識、共有されますか。

茂木国務大臣 私、これまで岡田委員との議論の中で、新STARTの延長、これは重要である、同時に、これは米ロだけではなくて、今、軍事力を大幅に増強している中国を巻き込んだ、より広い国、さらにはより広い範囲の核軍縮・軍備管理、これは重要である、このように話してきておりますけれども、実際、では、どういう順番でそれを進めていくかということにつきまして、中国が入るまで何もSTARTはやらなくていい、こういう話は一度も私はしたことはないと思っております。

岡田委員 議事録をまた精査したいというふうに思いますが、では、次に行きます。

 経済連携協定について、まずRCEPについて、先ほど来議論が交わされています。

 民主党政権のときに、このRCEPの枠組みについて、ASEANプラス3でいくか、ASEANプラス6でいくかという議論があって、日本としては、やはりオーストラリア、ニュージーランド、インドを入れるべきだということで、私たちはそのことを主張して、民主党政権の末期でしたが、実質的な合意をした上で、安倍政権がスタートして、首脳間が調印して議論が始まった、こういう経緯で、したがって、私も、このRCEPがまとまったことは評価したいと思いますが、インドが抜けてしまったのは非常に残念というふうに思っています。

 このRCEPの意味の一つは、やはり中国と韓国、日本にとって最大の貿易相手国であるこの二カ国と日本が同じ枠組みの中に入ったということも、実は今それがないわけですから、評価できるというふうに思います。そういう認識は共有されますか。

茂木国務大臣 このRCEPの意義でありますけれども、先ほどから議論がありますように、GDP、さらに貿易額で三割を占めるこの地域においてこういった協定ができる、特に、日本にとって、貿易額の約三割に達します韓国、中国と初めての経済連携協定ということでありますから、この意味は大きいと思っております。

 そして、やはり、ASEANプラス3よりはASEANプラス6で進める、このことの方が、さまざまなルールをつくっていく、こういう観点からも望ましいと考えておりまして、ニュージーランド、オーストラリア、これはTPP11にも参加をしている国であります。

 そこの中で、インド、我々としては参加してほしいと思っておりますが、貿易赤字拡大の懸念であったりとか、幾つかの国内事情を抱えているということで、なかなか難しいという側面はありますけれども、十億人を超える人口を抱えて、近年着実に経済成長を実現している、こういったことを踏まえましたら、インドがこの協定に参加することは極めて重要であると思っておりまして、我が国としては、インドの参加に向けて引き続き主導的な役割を担っていきたい、こんなふうに思っております。

岡田委員 次、TPP11ですが、非常にハイスタンダードな協定であると。WTO体制が必ずしもうまく機能していない中で、やはり、それにかわるものとしてこのTPP11を戦略的に活用して、民主主義国家の共通のプラットフォームとして拡大していくというのは、私、日本外交にとって極めて重要じゃないかというふうに思います。

 そういう意味では、先ほど来イギリスの話が上がっていますが、例えば、EUと、あるいは、アジアを更に、まあ、ASEANの中でも入っていない国がありますし、アジアの深掘りとかそういったことも、もちろんアメリカとどうするか。そういったことについて、やはり日本外交として戦略的に、相手が望むから検討するというだけじゃなくて、どこをどういうふうに、ここに参加をしてもらうことが世界の全体の自由貿易体制にとってより意味があるかという視点で考えていくべきだと思うんですが、大臣のお考えを聞きたいと思います。

茂木国務大臣 個々の国について、今、日本からこの国を想定してぜひ参加してもらおうということを表に言うという立場にはないと思っておりますが、いずれにしても、このTPP11、自由貿易、これを推進していく体制をつくる上で非常に大きな意味を持っている、このように考えております。

 そして、このTPPのハイスタンダードを満たす、こういう意思のある国にはぜひ入ってもらいたいということで、さまざまな意見交換というのは行っているところであります。

岡田委員 終わります。

あべ委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 渡辺でございます。

 まず、冒頭一問だけコロナについて伺いたいと思うんですが、コロナの第三波が、今、指摘をされ、警告をされております。

 今、外務省として、入国、再入国、それから帰国と、対象を広げて段階的措置に及んでいるわけでございますけれども、今回、この第三波が専門家から指摘をされ、専門家会議では、このまま放置されれば更に急速に増大をする、広がるということが言われております。

 そうした中で、今、海外渡航、入国、再入国、帰国、この段階的な措置、これは変更はありますか。

水嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 新型コロナの世界的な感染拡大は依然として継続しておりまして、一部の国におきましては再拡大の傾向が見られるなど、引き続き警戒が必要な状況が続いております。

 外務省といたしましては、現地政府及び関係機関と連携をして情報収集を行い、また、海外渡航者等に対しては、各国・地域の実情に即した適時適切な注意喚起を含めた情報発信などを行っていきたいと思っております。

 このような点を踏まえまして、百五十二カ国・地域に対して、今、感染症危険情報のレベル3、渡航はやめてくださいという渡航中止勧告を発出しております。それ以外の国、地域はレベル2、不要不急の渡航をやめてくださいを発出しております。

 十月三十日には、一部の国、九カ国でレベルを3から2に引き下げる、また、逆に、ミャンマー、ヨルダンは2から3に引き上げるということをいたしました。

 今後も、感染症危険情報を柔軟かつ機動的に運用していきたいというふうに思っております。

渡辺(周)委員 状況によっては、いわゆるこの段階的措置に変更があるんですか。あるということでいいんですか、今のお答えは。

茂木国務大臣 もともと、この水際措置、そして人の往来の再開の問題につきましては、感染拡大の防止と両立する形で行うという方針で進めておりますので、それは、各国における感染の状況であったりとか移動制限の状況、さまざまなものを見ながら総合的に判断していくということでありまして、その基本的な考え方に変更はございません。

渡辺(周)委員 これは非常に悩ましい問題で、国内の移動もそうなんですけれども、やはりグローバル化する中で、ビジネスマンの行き来あるいはマンパワーの行き来ということを考えれば、そことどう両立させるか。しかし、今非常に感染拡大が急速に起きている中で、適切にそこは対応していただきますようにと思いますし、また、我々も具体的なやはり提案をしていきたいと思います。

 今までの質問と、ちょっと深掘りをしたいと思うんですけれども、菅総理がバイデン次期大統領と電話会談をした。しかし、先ほど来出ていますように、いわゆる思いやり予算の交渉についてはトランプ政権と行っている。

 今交渉しているのはトランプ政権ということで認識をしておりますけれども、エスパー国防長官は解任をされた。そして、国防次官、国防副次官、補佐官、相次いで辞任をする。国防の責任者が現在不在の中で、事実上、店じまいが始まった。まあ、政権末期であります。下院の軍事委員長が、これは報道によりますと、バイデン大統領就任までの七十日間は危険なことになるということを、非常に心配してコメントをされております。

 このアメリカの政権移行が、ポンペオ国務長官は、トランプ政権は二期目だ、二期目に移行すると言い張って、そしてトランプ大統領みずからは敗北を認めない中で、例えば再集計でありますとかあるいは訴訟でありますとか、さまざまなことで、今、スムーズな移行が行われる可能性は非常に低いわけでございます。

 今、この現状について、外務大臣はどのように認識していらっしゃいますか。

茂木国務大臣 今回に限らず、選挙を受けた米国での政権の移行、これは米国の内政上の問題でありまして、評価を差し挟むべきではないと考えております。

 他方で、米国情勢が我が国に与える影響も大きいことは確かでありまして、政府としては、米国大統領選挙の結果確定の行方であったりとか、政権移行プロセス、これは着実に私は進んでいると考えておりまして、そういった状況、また米国のさまざまな状況について注視をしていきたいと考えておりますが、例えば駐留経費、この改定の協定について今週行いましたが、政権移行期にあるということで何らカウンターパートがいないとか全く話が進まない、こういう状況にはない。トランプ政権のもとで、日本側とアメリカ側、カウンターパートでしっかり議論は進めております。

渡辺(周)委員 それでは、ちょっと具体的に伺いたいのですけれども、いわゆる思いやり予算の、先ほども公明党の委員から御指摘があったと思いますけれども、報道等によりますと、我が国は来年度予算の編成に入っている、そういう意味では、この移行期の間に思いやり予算については一定の決着を見なければいけない。となりますと、一年間暫定的に、来年度の日本の予算編成に間に合うように、一年間は、相手の交渉の中で、そこだけは得たいというような報道がありますけれども、これは本当ですか。

 つまり、日本側の言い分というのを、アメリカ側が、今の交渉相手側が、一年間、つまり、バイデン政権が始まって、また交渉が始まる前、とにかく日本の予算編成に間に合うような形で、一年間だけのいわゆる思いやり予算の交渉をしているというような報道があるんですけれども、これは本当ですか。それはアメリカ側もわかって交渉している話ですか。いかがですか。

茂木国務大臣 現行の在日米軍の駐留経費の負担に係る特別協定、これは御案内のとおり来年の三月末まで有効期限があるところでありまして、日米間では、調整の上、十一月の九日及び十日、日米両政府、ワシントンにおきまして、在日米軍駐留経費に係る正式交渉、第一回目を行ったところでありますが、交渉は継続中であります。

 さまざまな報道については承知をいたしておりますが、今回の交渉では、一層厳しさを増す地域の安全保障環境や我が国の厳しい財政状況等を踏まえ、また、米国が政権移行期であることも考えて適切に対応していきたいと思っております。

渡辺(周)委員 ですので、さまざまな報道の中で、単年度で、日本は予算編成が今渦中にあるので、必要だから、思いやり予算の交渉、つまり、単年度でだけでもまとめたい、そういうふうに報道されているんですが。つまり、それは本当ですかと、そこを聞いているんです。

茂木国務大臣 申し上げたように、今交渉中であります。いろいろな形でやりとりというのを行うわけであります。それは日本の国益に沿って行っていきたいと思っておりますし、日本も大変厳しい財政状況の中にある。一方で、日本を取り巻きます安全保障環境も厳しくなっている。そういう中でどうしようかということについて、今、交渉を行っているところでありまして、具体的に、この交渉、今後、続いているわけでありますから、こういうことにしていますとか、こういう方向にしていますということは、今後の交渉に影響を与えるということで、それは当然控えさせていただきます。

渡辺(周)委員 つまり、もう店じまいが始まっている現政権と交渉したことが、いわゆる四年間の任期でバイデン新政権が誕生する中で、そこは整合性がとれるのかということを非常に心配しているんです。御存じのとおり、トランプ大統領は相当な増額を求めてきた。それに対して、バイデン政権がどのような態度をとるかは、まだ詳細はわからないわけでございます。

 ですから、私も政権与党時代に、この思いやり予算の中身については相当かかわっております。中身も知っています。ここで言うわけにいきませんけれども、それだけに、今、日本の予算編成のことを考えて急ぐよりは、やはりバイデンの新政権になってから、そこでやはりこの思いやり予算というものの中身をもう一回精査して、そこをやはり新政権と交渉するべきじゃないかということを私は申し上げたいわけでございます。

 このことについても、同じことの答弁で、時間が限られておりますので、お答えはいただきませんけれども、言わんとすることは伝わったかというふうには思います。

 それで、もう一つ、直近の話でございますけれども、この移行期の中で、先ほど岡田委員からも指摘がありました、引用されましたけれども、香港では、全人代の決定に基づいて、司法手続も経ないで民主派の議員の資格が剥奪され、民主派の議員十五人も抗議の辞任をしたということでございます。

 この点について、先ほど鷲尾副大臣から、主張すべきはしっかりと主張というふうに答弁されていました。その点について、日本政府としては、今回のこのことにつきましてどのような考えを持っているのか、そして、この点について、何らかの主張すべきは主張するのか。その点については、大臣、いかがですか。

茂木国務大臣 御指摘の、中国全人代常務委員会の決定及びそれに基づきます四名の立法会議員の資格喪失、そして、これに抗議した議員の辞職表明を含めて、昨今の香港情勢については重大な懸念を強めておりまして、これがもたらす影響など、今後の動向を注視をしていきたいと思っております。

 これまでも、この国家安全法制定以来、さまざまな形での、日本としての遺憾の意の表明であったりとか、また、G7での外相声明の発出等々を行ってきました。適切な方法で日本としての働きかけを行っていきたいと思います。

渡辺(周)委員 今の日本政府としての正式な見解は、やはり懸念をしているということでよろしいですか。

 今の大臣のお答えが、日本の、今回の全人代の決定によっていわゆる民主派とされた議員が資格を剥奪された、そしてそれに抗議して十五人もの議員が抗議の辞任をする、そのことについて、先ほど出たような例の法律以降、この点について非常に懸念を国際社会がしているわけなんですけれども、我が国としても懸念をしているということで今お答えいただきましたけれども、これは何らかの、対外的なメッセージとしては、今回のことについて見解を示されるんでしょうか。

茂木国務大臣 今申し上げたように、直近の状況につきまして重大な懸念を強めていると申し上げたわけでありまして、これはオープンな場所で申し上げていることだと思っております。

渡辺(周)委員 そこで、更に伺いたいんですけれども、今回、アメリカの政権がかわることによって、バイデン・アメリカが、WHOへの復帰でありますとかあるいはパリ協定への復帰というものをまさに行うであろう、歓迎すべきことでございます。

 トランプ政権の時代、米国が国連離れをした。その間にさまざまなことが起きました。例えば、中国の国際機関への影響力の増大が起きているわけでございます。

 例えば、二〇一八年に、ジュネーブにあります国連人権理事会からアメリカは脱退をしました。そして、その後、中国が、人権状況の調査を担う特別報告書を選出する委員の一人に中国の外交官が登用されました。ウイグル問題等懸念されるわけなんですけれども。

 そして、ことしの六月末に、人権理事会で、香港国家安全維持法、これに、施行に対してイギリス主導の懸念声明がまとめようとされました。そして、それに対抗して、香港の国家安全維持法を支持するということがそれぞれ発表をされたわけでございます。懸念をするということに署名した国が二十八カ国、支持をすると言った国が五十四カ国です。つまり、何が起きたかといいますと、アメリカが国際機関から脱退をした間に、例えば今回のようなことでいえば、国際社会の中で、やはり中国の強い影響力のもと、支持をするということがマジョリティーを占めたわけでございます。

 この点について、アメリカがWHOも含めてさまざまな国際機関に対して背中を向けている間に、中国が非常に強い影響力を保つようになった。例を挙げますと、ジュネーブの国際電気通信連合、ITUの事務総局長は中国、カナダのモントリオールにあります国際民間航空機関、ICAOは、これも中国のトップがいる。そして、総会では、ICAOでは台湾を排除したわけでございます。WHOも台湾を排除するということが起きる中で、ますます国際機関の中の中国寄りの決定が行われていくのではないかと大変懸念をするわけなんですけれども。

 何とか、それだけに、アメリカが国際機関に復帰をすることによって、やはり西側の民主主義国家あるいは同じく価値観をともにする諸外国と一緒になって、やはり国際機関が公正で中立であるように、我が国としてもぜひ存在感を高めていただきたいというふうに思いますけれども、国際機関における中国の影響力が大きくなるということについて、日本の外務省はそういう認識を持っているのか、そして、あわせて、そのために、そうさせないために日本はどうするのかということについては、外務大臣、どうお考えですか。

茂木国務大臣 中国は、国連において、拒否権を持ちます安保理の常任理事国の一つでありまして、また、米国に次ぐ世界第二位の国連分担率を負担しておりまして、大きな影響力を有しているのは事実だと思っております。また、御指摘のように、現在、十五の国連の専門機関のうち、四機関において中国人がトップのポストについているわけであります。

 一方で、国際機関においては、トップを含む職員の中立性が保たれ、透明な運営がなされていることが重視をされておりまして、決して国際機関の中国化が進んでいるとまでは言えないと思っておりますし、恐らく、ことしの選挙でいうと、中国はWIPOを一番とりたかったと思います。ところが、結果的にはシンガポールのタン事務局長ということになっているわけでありまして、さまざまな形で、人権の問題になりますと、それぞれの国の立場がありますから、必ずしも中国寄りだとかアメリカ寄り、こういったことで物事が決まっているとは思っておりません。

 その上で、日本としても、これまで五つの国際関係機関を始めとする機関で日本人のトップを輩出しておりまして、現在も世界税関機構やアジア開発銀行などの機関で日本人トップが活躍をしているところでありますし、また、けさ行われましたICJの裁判官選挙でも、現職の岩沢雄司裁判官が、五人の当選者の中で最多得票を獲得して、見事トップで当選を果たしたところであります。

 もちろん、私も十分だとは思っていません。もっとこれから日本として国際機関のトップであったりとか幹部に人を送り出す、そのためには、かなり中長期的な戦略的な取組が必要だと思っておりまして、そういったこともしっかり進めていきたいと思います。

渡辺(周)委員 中国問題については、先般の大臣の所信の表明の中で、日中関係は、最も重要な二国間関係の一つです、中国との間にはさまざまな懸案が存在していますが、引き続き首脳会談や外相会談等のレベルの機会を活用して、主張すべきはしっかりと主張し、懸案を一つ一つ解決していきたい、そして、中国側の前向きな対応を強く求めていきますということなんですけれども。

 王毅国務委員兼外務大臣、十月に来日をするというようなことも言われておりましたけれども、いろいろ諸事情で先送りになった。そして、十一月、今月を軸に、十一月中に訪日をするのかということが言われておりますけれども、その点について、十一月の来日はあるんでしょうか。その点はいかがですか。

茂木国務大臣 王毅国務委員の訪日の可能性については、現在、日中間で協議をしておりまして、具体的な日程は決まっておりません。

渡辺(周)委員 具体的な日程は決まっていないということですけれども、引き続き首脳会談ということを大臣は所信でおっしゃいました。そうしますと、習近平国家主席との会談、今先送りになっておりますけれども、いわゆる国賓としての来日というこの話は、私は、王毅さんが来るということはこの地ならしに来るのかなというふうに理解をしておりますけれども、この習近平国家主席の国賓来日という話は今も生きている話ということで理解してよろしいですか。

茂木国務大臣 王毅国務委員・外相との間ではさまざまな問題につきまして議論したい、このように思っているところでありますが、習近平国家主席の国賓来日につきましては、何度も申し上げておりますように、現段階で日程調整をする段階にない、このように考えております。

渡辺(周)委員 ということは、王毅さんが来日をしても、それは、その地ならし、その前段階の話ではないという理解でよろしいですか。

茂木国務大臣 まだ来ておりません王毅さんと何を話をするかにつきまして、この場でつまびらかにすることは控えたいと思います。

渡辺(周)委員 中国側は大変強い関心を持っている。そして、物の報道によりますと、向こうから来るといったものを断る理由はないということですね。ですから、当然このことについても議題になると思うんですが、その点については、今ここでは、まだ来てもいない人間の話をするわけにいかない。だけれども、来るとなれば、何を議題にするかと両国間で当然設定をするわけですから、そんな行き当たりばったりで、一国の外相同士が話をするのに、あるいは総理に会うかもしれぬという方が、何の目的で何を話したくて来るのかということは知らないわけがないとは思いますけれども、ただ、この場では、議事録に残るような形で恐らくお答えはできないんだろうというふうに思うんですが。

 一つ、ちょっと懸念することを言います。先ほどから尖閣の話、安保条約の第五条は適用されるということをバイデンさんが言ったということは先ほど来議論をされておりますけれども、十一月四日に中国が海警法を公表しました。この海警法が、独自の領有権を主張しているわけでございまして、中国があらゆる措置をとることができるというふうに、たしか七十九条には明記されているわけですが。これは当然尖閣を念頭に置いたものというふうに日本側は理解しているということでよろしいでしょうか。

茂木国務大臣 中国の意図についてお答えする立場にございませんが、御指摘の法案を含めて、中国海警局をめぐる動向について、引き続き高い関心を持って注視をしていきたいと思っております。

 尖閣諸島周辺海域におきまして、中国公船によります領海侵入であったりとか接続水域内での航行が過去最高を更新し、中国公船によります日本漁船への接近事案が繰り返し発生する等、一方的な現状変更の試みが継続していることはまことに遺憾だと考えておりまして、中国のこうした行動につきましては、外交ルートを通じて繰り返し厳重に抗議をしてきているところであります。

 中国の意図がどこにあるか、こういったことも含めて議論というのは必要だと思いますけれども、先ほども申し上げましたが、王毅さんとは何度も話をしています、王毅国務委員とは。そんなに、事務レベルで議題を何から何にするということがなくても、比較的率直な意見交換を私はできると思っています。

渡辺(周)委員 それじゃ、ちょっと防衛省にきょう来ていただいていますけれども。つまり、この海警法によって中国はあらゆる措置をとることができる。中国の海警法がいわゆる権限を与えられて、そういう意味では、日本の海上保安庁のみならず、民間船舶に対しても何らかの実力行使ができるような権限を与えられているわけなんですけれども、その点について、これは相手があくまでも治安機関、警察機関である以上は、こちら側のカウンターパート、日本側は海上保安庁なんだけれども、だけれども、相手の持っている装備が軍並みの火器を持っているというふうに理解をすれば、海上警備行動なりに移るということも考えなければいけないわけなんです。

 こうした場合に、日本の防衛省として、その準備あるいはその想定というものはされているのかどうか、その点についていかがですか。

町田政府参考人 お答えさせていただきます。

 防衛省・自衛隊では、まず、この海域周辺、海上自衛隊の哨戒機によって、我が国固有の領土であります尖閣周辺を含む東シナ海を航行する船舶、これの状況を毎日監視しております。また、これに加えまして、同じく海上自衛隊の護衛艦、これを柔軟に運用いたしまして、警戒監視それから情報収集活動を実施してございます。これによって得られました情報を警察機関である海上保安庁に適時適切に提供して、我々の能力を生かして緊密に連携させていただいているところでございます。

 他方、今御質問がございましたような状況における具体的な対応におきましては、それぞれの状況に応じて判断する必要がございますが、いずれにしても、防衛省・自衛隊としては、我が国の領土、領海、領空を断固として守るため、引き続き、警戒監視、情報収集に万全を期すとともに、海上保安庁などの関係省庁と緊密に連携して対応していく、そういう考えでございます。

渡辺(周)委員 私も、町田さん、一緒に与党時代にいろいろなことをやりまして、よく存じておりますけれども。

 この尖閣国有化、民主党政権で国有化を宣言して以来、大変、あのときもいっぱい海警が来ました。あのときと比べ物にならないぐらいの今は装備をしている中で、あのときは、いわゆる海上自衛隊の護衛艦が余り近くにいると、日本が自衛隊、軍を出してきたということで緊張が高まるので、相当離れたところにいたわけですね。ですから、そのとき、では、何かあって駆けつけろと言われても、ちょっと間に合うことができないかもしれないぐらいの当時距離にいたことは、相当神経を使ったんですが。

 そういう意味では、海上保安庁と海上自衛隊、もっと言えば米軍も含めて、そこは、スペックの共有化あるいは情報の瞬時における共有化というものはできているんですか。今はそこのところはどうなっていますか。

町田政府参考人 お答えさせていただきます。

 まず、警察機関の海上保安庁との関係でございますけれども、事態が起こったときに対処するためには、情報共有、これがスムーズにいくということが非常に重要でございます。したがって、必要な通信手段は海保さんとの間で既に確保しているところでございます。

 具体的に申し上げますと、防衛省と海保との間で、電話、メールはもとより、秘匿が可能な専用の電話、これを整備いたしまして情報共有を図っておりますし、無論、事があったときに適時に情報共有を行うために、定期的に相互通信の訓練も行っているところでございます。

 今後も、各種訓練を通じて、関係機関相互に情報共有を図れるネットワークシステムにつきましても検討していくところでございます。

 それからもう一点、御指摘のございました米軍との関係でございますけれども、米軍との警戒監視情報に関する連携のあり方につきましては、大変申しわけございませんが、事柄の性質上、詳細にお答えをすることは差し控えさせていただきますが、私ども、ガイドラインに明記されているとおり、平時から緊急事態までのいかなる段階においても、切れ目のない形で、我々日本の平和、安全を確保するための措置をとるというふうにしておりますので、自衛隊と米軍が能力に応じて相互に支援する形で、共同の情報収集それから警戒監視を行うことも含まれているところでございます。

 いずれにいたしましても、防衛省としては、海上保安庁、米軍ともに緊密に連携して、いかなる事態にも対応できるよう、緊張感を持って情報収集、警戒監視等に当たる所存でございます。

渡辺(周)委員 まだ質問を用意していたんですけれども、ちょっと時間が来ましたので、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

あべ委員長 次に、青山大人君。

青山(大)委員 まずは外務大臣にお尋ねいたします。

 菅新総理が誕生されて、先月、十月十八日から二十一日までの間、ベトナム及びインドネシアへ外遊に行かれました。私はとても違和感を持った次第です。新しく総理が就任されて、国会の所信表明で外交方針を述べる前に外遊された。

 過去にこういった例がどのぐらいあるのかなと調べたところ、例えば、二〇〇九年、政権交代が起きたとき、当時は、鳩山新総理になって、もともと国際会議があったから行かざるを得なかった。二〇〇八年の麻生さんのときも、国際会議、これは仕方ないですよね。あとは、例外的に、安倍さんが返り咲いた二〇一二年に一度あっただけでございます。

 当然、新総理が国会を開く前に、所信表明を行う前に行けば、我々野党だって、国会軽視ではないかとか、そういう批判をせざるを得なくなってしまいますし、国民の皆様だって、当然今、新型コロナウイルス感染症の対策を一番にやってほしい、そういう期待がある中で新たな総理が誕生した中で、これはやはり国民の皆様からの信頼も失ってしまうおそれがある。

 なぜこのタイミングで、焦って、国会の所信表明前にこれらの国へ緊急に総理が行く必要があったんだろうか。外務大臣の見解をまずはお伺いいたします。

茂木国務大臣 よくわからないんですが、国際会議だったら所信表明前に行っていいんだ、二国間の重要な会談は所信表明前じゃないんだ、その論理については私は全く理解できませんが、いずれにしても、御紹介いただいた民主党政権時を含めて、過去にも総理が所信表明演説前に外国を訪問した例は何度もある、そのように承知をいたしております。

 そして、菅総理、十月十八日から二十一日までのベトナム及びインドネシア訪問で、菅総理から、自由で開かれたインド太平洋のかなめとなるこの地域において平和と繁栄を確保していくことの強い決意を内外に示して、首脳間で協力の強化を確認できたこと、これは、我が国の外交上、極めて有意義であったと考えております。

 日本とASEANの間は、御案内のとおり、一九六〇年代からさまざまな結びつきというのがあるわけであります。ベトナムはことし、ASEANの議長国であります。そしてインドネシア、ASEANの言ってみると盟主といいますか大国であって、極めて重要な位置を占めていると思っておりまして、外交的にも大きな成果があった。

 もちろん、コロナ対策にも、菅政権としてしっかり当たっているところであります。

 今回の両国の訪問は、相手国との日程調整の結果、国会での所信表明前となりましたが、帰国後の所信表明演説において、菅総理から政権の外交方針についてもしっかりとお示しをしており、特段の問題があるとは考えておりません。

青山(大)委員 先日、大臣も、この場の御挨拶で、コロナの中でも精力的な外交を行って、大臣がですね、各国の外務大臣ともテレビ会議とか電話会談を八十回以上されたとおっしゃいましたし、それから、重要な局面では会談も必要である、そういった中でおっしゃっていまして、たしか大臣も、ことしの一月、それらの国にも訪れていますし、八月にも東南アジア、メコン流域の国々に行っていますし。

 私は、今回の菅新総理の外遊、本当に総理が必要だったのか、むしろ、外務大臣、茂木さん、あなたがしっかり行かれて、これまで茂木大臣が築いたものを残す意味でも、別に大臣が行かれればよかったんじゃないのかなと思っております。なぜ茂木大臣じゃなかったんですかね。

茂木国務大臣 私は、ことしの一月の初めに、ベトナム、そしてインドネシアを含め、フィリピン、タイと四カ国、年初に訪問いたしております。フック首相、そしてミン副首相兼外務大臣、さらにはジョコ大統領、ルトノ外相ともその際に会談を行ってきておりまして、意思疎通はしっかりできていると思っております。

青山(大)委員 大臣も、先日の挨拶の中で、六つの分野に焦点を当てて戦略的に外交を展開されていくとおっしゃっていました。その一つ目に、日米同盟のことも言及されました。当然、今アメリカは大統領選のさなかでございますので、こういう状況ではもちろんなかなか行きにくい状況は私もわかっています。

 茂木大臣、これまでも経済産業大臣とか非常に重要閣僚を御経験されて、本当にこれからもしかして日本の総理大臣になられるお方かもしれません。

 大臣、もし自分が総理になったときに、最初に、外遊先というのは、やはり大臣も国会とかが始まる前とか所信を述べる前とかに行ってということがあるのか、そして同時に、これは個人的お考えですけれども、もし大臣が総理になったとしたら、どこの国に最初に外遊に行かれますか。

茂木国務大臣 ありがとうございます。

 まだそこまで考えが至っておりません。

青山(大)委員 でも大臣、それに対して別にどうこうはないですけれども、やはりそれは、大臣、ぜひ今のうちにそういうことを想像して外交をやってほしいと思いますし、ぜひ国会の場で、総理としてしっかりと所信表明、外交方針を述べて、こういうことをしたいんだ、そういうことを述べた上で、日本のリーダーとして外遊すべきだと私は思います。

 その点、やはり大臣はそう思いませんか。

茂木国務大臣 青山議員の御趣旨というのは十分理解をいたします。

 ただ、いろいろな物事というのは同時並行的に起こってくるものでありますから、重要なことはきちんと、事前であるか事後も含めて、そういったことを国民に対しても丁寧に説明するということなんだと思っております。

 今回は事前に行くことになった。恐らく、国会が始まりますと、なかなか総理も含めて外遊の機会というのはとりにくい、そういった中で、例えば、自由で開かれたインド太平洋、十月の六日の日だったと思いますが、日米豪印外相会合を開いて、日米豪印でしっかり取り組んでいこう、こういったことを申し合わせて、さらには、価値観を共有する国々にこういった考え方を広げていきたい。

 そういう中で、総理がみずから初外遊としてベトナムそしてインドネシアという重要な国を選ばれて、そこの間でも、日本の提唱する自由で開かれたインド太平洋、そしてASEANの持っているAOIP、この関係についても共有性についても意見の一致を見た、これは極めて大きなことだったと思っております。

青山(大)委員 次の質問に行きます。

 新型コロナウイルスに関するもので、私は治療薬の充実がワクチンよりも大切だなと思っているんですけれども、政府による治療薬に関する取組を私は国民の皆様に広く周知することも大切だと思っています。

 もちろん、そういう中で、海外から要請があった際にアビガンの無償供与が行われております。

 たしかことしの四月、安倍前首相、前総理が、治療薬として期待されるアビガンの臨床研究を進める方針を表明されて、希望する国々に無償供与する、世界の英知を結集して治療薬の開発普及を進めたいと述べられています。その後、茂木外務大臣も、四月の会見で、アビガンについては七十カ国以上からの提供要請を受け、三十八カ国に無償供与すると述べられております。

 また、四月の二十二日に、中東のイランで革命防衛隊が軍事衛星の打ち上げに成功したと発表し、アメリカとの対立に緊張が走った際、その後、五月に安倍前首相がイランの大統領と電話協議し、コロナの感染拡大を防ぐためにも地域の安定は不可欠と抑制的な対応を求め、アビガンの無償供与を表明し、これに対してイランの大統領も謝意を示したとの報道も伝わってきております。

 五月に茂木外務大臣がアビガンに対して、エストニアに最初の供与を行った旨、記者会見で表明されております。

 このように、日本から海外へのアビガンの無償供与についてこの春にいろいろな動きがありましたが、その後、現時点で何カ国からの提供要請を受け、何カ国の国や地域に日本からアビガンを既に供与されたのか、お伺いをいたします。また、供与する国々にはアビガン投与効果のデータを日本へ提供することを求めているとも伺っていますが、その後のデータ回収など、経過について、現在の状況を大臣にお伺いいたします。

植野政府参考人 お答え申し上げます。

 アビガンの無償供与につきましては、これまでに八十カ国近くから外交ルートで提供の要請を受けておりまして、これまでに計四十四カ国に対して供与済みでございます。

 また、供与後の取扱いですけれども、被供与国において、臨床研究データについては、各国が取りまとめた後、我が国に提供されることになっておりまして、これらのデータは、日本国内におけるアビガンの承認審査等に際して有効性及び安全性等の確認に活用されるものと承知しておりますけれども、詳細においては厚生労働省において調整中と承知しております。

茂木国務大臣 事実関係については今植野局長から説明があったとおりですけれども、私も八十回ぐらいの外相電話会談をやっておりまして、アビガンを提供した国、若しくはもうすぐアビガンが届く国につきましては物すごく感謝されています。必ず向こうから、アビガンを送ってくれたということに対して日本の友情に感謝したいという話がありまして、本当に、ある意味、日本の外交上も非常に重要なことであり、また、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを進める、こういう日本の方針にも合致したものだと思っております。

青山(大)委員 まさに私も大臣と同じ考えで、やはりそういった日本の治療薬、もちろんこれは国内でまだ承認されていないものでもございますので、なかなか簡単にというわけにいかないのも私も承知していますけれども、日本産のそういったものを海外に送ることで外交上も各国から感謝されるというような大臣の御答弁を聞いて、治療薬もそうですけれども、次の質問の中で、ワクチンも、やはり私は今後そういった体制にしていかなければいけないというふうに強く思っています。

 当然、茂木大臣は今外務大臣ですので、もちろん所管でないのはわかっていますけれども、やはり、先ほども言ったように、経済産業大臣とか重要な閣僚をこれまで経験される中で、多分いろいろな、例えば新型インフルエンザ対策の際、そのときはちょっと政権が違ったかもしれませんけれども、いろいろなこれまでの経験もあると私は思っております。

 今、ワクチンに関しては、予防接種法及び検疫法の一部を改正する法律案が審議中でございますけれども、コロナ対策として、海外ワクチンの確保に六千七百十四億円の予算がついています。国産ワクチンの完成へ時間がかかるため、海外ワクチン確保へ多額の予算が計上されているわけですが、やはり私は国産のワクチンの生産体制の取組をしっかり行っていかなければいけないというふうに思っていますけれども、現状について、所管の方へお伺いいたします。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 新型コロナウイルスを始めとした予期せぬ感染症に対するワクチンにつきましては、先生御指摘のとおり、国内で開発、生産ができる体制を確立しておくことは重要であると考えております。

 このため、第二次補正予算等におきまして、研究開発及び国内の生産体制の整備につきまして全面的に支援を進めており、国内で開発している新型コロナウイルスワクチンの中にも臨床試験が行われているものがあると承知しております。

 厚生労働省といたしましては、新型コロナウイルスワクチンの早期実用化のみならず、コロナ後のワクチンを含め、開発の基盤や生産体制の整備の後押しを進めてまいりたいと考えております。

青山(大)委員 しっかり体制を進めてほしいんですけれども、大臣も御承知のように、二〇〇九年の新型インフルエンザ対策の際には、ヨーロッパの製薬メーカーからワクチンを緊急輸入したにもかかわらず大量に余ってしまった、そういったこともございました。

 海外からワクチンを確保する方針を批判する、全てを批判するわけじゃありませんけれども、やはり全国民分のワクチンを確保する必要が本当にあるのだろうか。

 ましてや、通常は十年かかると言われる医薬品の製造において、これほど急ピッチで製造された海外メーカーのつくったワクチンでございます。安全性に不安が残る中、重症化率が低いために接種の必要性を感じない、あるいは、副作用の不安があるということで接種者が少ない可能性もございます。

 今回の海外ワクチン購入が、アベノマスクの二の舞、つまり必要なときに必要な人へ行き渡らず、大量に無駄になるおそれもあります。

 御承知のように、今回のコロナでは、マスクや防護服、人工呼吸器など、製品や原料の多くを中国など海外に依存していたため、物資調達の厳しさに直面しました。

 ワクチンの確保に当たって、茂木外務大臣も、八月に、イギリスの訪問時に、アストラゼネカ社のワクチン購入についてイギリスの外務大臣と会談を行い、後押しに非常に大きく努められたということも聞いていますけれども、やはり今後は、ワクチンを含め、国内で製品調達できるような体制を日本は整えていかなきゃいけないと今回のコロナで改めて問題意識を持った次第でございます。

 現在の国内ワクチン実用化の予算に比べて、海外ワクチン確保の予算は多額でございます。このような多額の予算を国産生産体制へと向けていく、今後の日本に必要ではないかと思います。

 改めて、これは本当に、大臣の所見を聞きたいです、外務大臣ですね。これまでのいろいろな経験を踏まえて、茂木大臣だからこそ私は質問できると思っています。今後、ワクチンをめぐるこういった現状についてどうお考えか、大臣の考えをお伺いいたします。

茂木国務大臣 新型コロナウイルスの感染者、残念ながら全世界で五千万人を超える、なかなか感染の拡大がおさまらない状況にあるわけでありまして、この局面転換のためには、やはりワクチンというのは極めて重要だと思っております。

 今、欧米諸国、アメリカもそうでありますが、EU等を見ていますと、人口の二倍とか三倍のワクチンを確保すると。もちろん、ファイザーであったりアストラゼネカ含め、自国産のものを含めてということでありますけれども、海外からも持ってくるということを含めてそれだけの量の確保に努めている。

 それは、安全性が最終的に、本当に、今開発している、第三相に入っているものも含めて確保できるかどうか、こういう見きわめもしながら、ある程度多目の量を確保する、こういう方針を各国はとっているのではないかなと思っております。

 日本としても、本来、やはり国内で開発できた方が私はいいと思います。率直に言って、そこそこの医薬品メーカーがそろっているわけでありますから、世界に名立たると言うかどうかは別にして、きちんとその一角に日本の医薬品メーカーが入っていないというのは残念だな、この状況をやはり変えたいなと思っております。

 同時に、こういった現状においても、やはり、小さな国とか途上国、これは自国でワクチンを開発したり、また調達するということが難しくなってまいりますから、CEPIにお金を出してワクチンを開発する、また、GAVIにお金を出して、拠出をして、そしてCOVAXファシリティー等々を使って小国やさらには途上国にワクチンを普及する、こういった意味でも、日本はしっかり貢献をしていきたいと思っております。

青山(大)委員 本当に、非常に大臣の心強い御答弁だと思います。

 本当に、どうしても、製薬メーカー、保険の関係もございますし、なかなか、厚生労働省の管轄、とはいえ産業としては経済産業省としても、当然、今言ったように外交の観点もありますし、まさに、こういった各省庁をまたぐわけですから、ここはぜひさまざまな重要閣僚の御経験もある茂木大臣が束ねられるよう、今後、そういった国内での生産体制について、ぜひ今回をきっかけに改めてつくってほしいと思いますし、これはワクチンじゃないですけれども、先ほどの治療薬、やはり国産のそういったアビガンがあったおかげで、外交上も大きな日本の国益、メリットがあったわけでございます。そういった今後の取組を重ねてお願いいたします。

 最後に、北方領土に関して少し質問させていただきます。

 先ほども、ほかの委員の方からも、ことしロシア国内で憲法の改正があった、そういう中で、憲法が改正されて、領土に関して、国境画定を除き、領土の割譲に向けた行為や呼びかけを許さないと言及されている部分がございます。

 当然、我々から見ると、北方領土は国境画定の交渉の部類であるとの認識でございますけれども、果たしてロシア側は同じような認識でいるのか、大変気がかりでございます。

 ちょうど、先般も、十一月九日、今週月曜日に、北方領土返還促進に関する要請の請願が議員会館でも行われました。私自身も、昨年五月、国後島へビザなし交流で訪問した身として、やはりさまざまな思いも持っております。

 大臣に改めてお伺いいたします。

 先般の大臣挨拶でも、北方領土問題に関しましては、領土問題を解決し、平和条約を締結するとの基本方針のもと、粘り強く取り組みたいとおっしゃっていましたけれども、この原則論、何回も伺っております。改めて、ロシア憲法改憲が今後の北方領土の交渉に与える影響について、大臣の認識をお伺いいたします。

茂木国務大臣 まず、北方領土問題につきまして、次の世代に先送りすることなく、終止符を打つべく、領土問題を解決して平和条約を締結するとの方針に基づいて交渉を行っているところであります。

 去年十二月、モスクワに行ったときに、八時間やりましたが、相当議論できたと思ったんです、率直に言いまして。ことし、今度はラブロフ外相を日本に呼んでまた長い時間をかけて更に詰めようというところで、コロナということで、若干交渉がとまっている部分がありますが、しっかり交渉というのは続けていきたいと思っております。

 その上で、改正ロシア憲法のお話がございましたが、内容的には、ロシア連邦は自国の主権及び領土の一体性の保護を保障している、隣接国家とのロシア連邦の国境画定、国境線設定及び国境線再設定以外のロシア連邦領土の一部譲渡に向けられた行為及び当該行為の呼びかけは容認されない、こういう表現になっているところでありますが、これがどういう意味を持つのか、また、ロシアの内政、対外政策を含む動向については、常日ごろから関心を持って注視をしているところでありますが、交渉でありますから、まさに今進んでいる中で、これをどうやっていくということについてはコメントは控えさせていただきたいと思います。

青山(大)委員 私も初めて国後島に行って、正直、私も愕然といいますか、船から見ても、まるで中央アジアのカラフルな建物が建っていて、入るときも厳重にいろいろチェックされたりして、やはり戦後の時間の流れや大きさも実感しましたし、本当にここはぜひしっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 特に、ことしはコロナで、元島民の方たちの自由訪問ですとか船での墓参とか航空墓参、当然ビザなし交流も今できていない状況でございます。

 実は、きょうも、この外務委員会の前に、一緒に国後島に行った元島民の方たちとちょっと電話でしゃべったんですけれども、その方たちからも、大臣にぜひ伝えてほしいということで、コロナの現状ですけれども、来年度は必ず、自由訪問、墓参、ビザなし交流ができるように、これはしっかりとロシアに働きかけてほしい、そういった御要望を頂戴いたしました。その点について、何か御答弁があればお願いいたします。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 来年度以降の四島交流や墓参等の事業につきましては、新型コロナをめぐる状況等を見きわめる必要がございますけれども、航空機墓参を含めまして、四島交流や墓参等の事業の重要性に鑑み、可能な限り早期に事業を実施できるよう、日ロ政府間及び我が方と四島側の実施団体間で協議を継続していく考えでございます。

茂木国務大臣 御要望、しっかりと承りました。

 コロナというものはありますけれども、そういった状況を見なきゃいけませんが、重要な事業だと思っておりますので、しっかり進めたいと思います。

青山(大)委員 これで質問を終わりにしますけれども、本当にきょうは、総理の初外遊のことから、アビガンの話ですとかワクチンの国内生産体制の充実、そして北方領土、幅広い分野を質問させていただきました。本当に茂木大臣にそれぞれ丁寧に御答弁してもらったというふうに思っています。本来であれば外務委員会の所管ではない部分も、あえて質問をさせていただきました。

 やはり、これから本当に大臣には、繰り返しですけれども、さまざまな重要閣僚を経た中で、これからも、もしかして日本のトップリーダーになるかもしれない、そういう思いで、もし総理になった場合はどこに行きますかと言われて、まだ考えていませんじゃなくて、もう今の段階で、自分が総理になったらこういうことをするんだと、そういった、ぜひ強い決意を持って臨んでほしいと私は思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

あべ委員長 次に、緑川貴士君。

緑川委員 皆さん、お疲れさまでございます。立憲民主党の緑川貴士です。

 まず、新型コロナウイルスの一日の国内感染者の数がここに来て急増しているということについて、渡辺委員からの御指摘がありました。きのう、おとといで千五百人を超えまして、きのうが過去最多と。そして、八月以来、三カ月ぶりに高い数字が続いているということで、日本医師会では第三波と見られるという指摘がなされています。

 政府の分科会では、対策の強化を求めるという緊急提言がまとめられています。その中に、国際的な人の往来の再開に伴う取組についても強化を求めています。

 日本としては、この国際的な人の往来については、これまで、感染の拡大防止と両立をするという形で、特定の国との二国間で双方のビジネス渡航を例外的に認めるという、ビジネストラック、レジデンストラックの運用を少しずつ広げてきました。でも、それは、あくまで感染拡大が比較的コントロールできていた、日本を含むアジアで感染拡大の防止と経済回復の両輪を回すための動きだったわけですけれども、やはり、ここに来て国内の感染状況のフェーズが変わっています。

 今のこの状況と、そして分科会の御提言、外務省としてどう受けとめて、今後お応えをしていくのか、伺いたいと思います。

水嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国として、経済活動をコロナのもとで再開していく上では、国際的な人の往来再開、これを感染再拡大の防止と両立する形で進めていくことが極めて重要であるというふうに考えております。

 今、委員も御指摘ございましたが、これまでに十カ国・地域との間でいわゆるレジデンストラックといったことを実施をしておりますし、三カ国との間でビジネストラックというものも実施をしてございます。これも、このような考え方に基づきまして、必要な追加的な防疫措置、こういったものを講じながら進めてきたということでございます。

 今後の対応でございますけれども、委員の御指摘ございました、十一月九日に開催されました新型コロナウイルス感染症対策分科会でも提言がございましたが、これを受けて、翌十日には政府の新型コロナウイルス感染症対策本部が開催され、施策の決定を行っております。それらも踏まえながら、また、国内措置としては、厚生労働省などの関係省庁と連携しながら、外務省としても必要な役割を果たしていきたいというふうに考えております。

緑川委員 その分科会を受けた会議では、国際的な人の往来の再開に伴う取組についての対応策というのは検討されているんでしょうか。

水嶋政府参考人 十一月十日に開かれましたコロナウイルス感染症対策本部におきましては、分科会の提言を受けて、主に国内での対応について、地方自治体との連携、そういったものに重点を置いた施策が決定をされたというふうに承知をしてございます。

緑川委員 自治体からも、やはり移動の自粛ということを求め始めております。そうした中で、国際的な人の往来の再開についても懸念する声が自治体からも上がってきているというふうに思いますけれども、外務省としての御認識はいかがですか。

水嶋政府参考人 今、世界におきましてはコロナウイルスの感染が拡大している状況にあるというものは御指摘のとおりだと思います。

 ただ、水際措置につきましては、先ほど来答弁を申し上げていますように、国際的な人の往来再開、これは感染再拡大の防止と両立する形で行っていくということで、政府として対応してきております。そのような基本的な考え方に基づきまして、今後とも検討してまいりたいと思っております。

緑川委員 やはり外務省としてのトップである大臣からもお答えいただきたいというふうに思いますけれども、先ほど渡辺委員に対して、感染拡大の防止と両立をするという形での方針変更には変わりがないということを御答弁いただきました。

 ということは、今このスキームの利用について調整を進めるというあくまでこの前提というのは、その対象国、地域の感染状況が落ちついているということがやはり前提だというふうに思いますし、これは、この前提の中には当事国である日本も含まれるというふうに思います。そうした中では、この感染拡大の防止を両立するということの基本方針に変更はないとしても、やはりフェーズが変わっている、このことについての御認識、そして今後の対応を伺いたいと思います。

茂木国務大臣 感染の状況がどうであるか、これについて外務省として所管をしているわけではありませんから、こういう状況であったらどういうフェーズに入ったと私の方からお答えすることは控えたいと思いますが、確かに感染者数はふえている、このことは事実であると思っております。

 一方で、日本で出ている感染者と、今、ヨーロッパ等々拡大が進んでいる国を比べてみると、二桁違います、基本的には。そういう違いもあります。一方で、今、日本がレジデンストラック、ビジネストラックを行っている国、ここにつきましては、終息しているかどうかは別にしまして、かなり落ちついた状況にあるというのは間違いないことだと思っております。

 そういったことも含めて、これは厚労省であったりとか、また水際対策になりますと法務省も含め、関係省庁としっかりと連携をしながら、いずれにしても、感染拡大防止と両立する形での人の往来の段階的再開、こういったものを進めていきたいと思っております。

緑川委員 大臣、お答えいただいた中に、二桁海外と違う、感染者の数は違うというふうにおっしゃっていますけれども、受け入れる側の対象国の問題が一つあると思います。それは基準として、例えば、今日本とレジデンストラックを運用しているマレーシアは、日本としては感染症危険情報のレベル3で、これは日本への入国拒否の対象国でありますけれども、マレーシア政府は、今週から来月上旬まで、マレー半島の十一の州のうちの八の州に活動制限令を出すと発表しています。

 対象国の中でも厳しい状況になってきているんですけれども、一方で、マレーシアの基準で見ますと、相手国の累計の感染者の数が十五万人を超えたら、マレーシアの場合には、その相手国はマレーシアの入国拒否の対象になります。日本の累計の感染者の数は今どうかといえば、きのう時点で十一万四千五百人余りです。千五百人以上のペースでふえているわけですから、今のペースが続けば、来月の上旬には十五万人に達します。

 非常にスピーディーな判断が求められるというふうに考えておりまして、互いの国が入国拒否対象国になった場合の対応はしっかり考えていくべきだというふうに考えます。マレーシアを含めてレジデンストラックの運用を始めている対象国への影響、また、ビジネストラックも三カ国と運用しているわけですから、こうしたスキームが今後利用しにくくなっていくのではないかという懸念をビジネスマンも、現場の声も上がってきていると思います。

 業務渡航の特例措置への影響を改めてどのようにお考えか、伺いたいと思います。

茂木国務大臣 単純に、レジデンストラックが始まったから野方図に入ってくるという問題ではありません。基本的には、そういった国についてはビザを停止しております。新しいビザを発給しない限り入国というのはできないわけでありますから、さまざまな手段を使ってしっかりしたコントロールはとっていきたいと思っています。

緑川委員 いずれにしても、大臣がおっしゃった基本方針の、感染拡大の防止と両立する形というところがいよいよこの国内において非常に厳しくなってきているということは申し上げておきたいと思いますし、確かに、ビジネス需要に応えていくという、国として板挟みの状況にあるというのは十分承知をしておりますけれども、であるから、速やかな方針決定、十日の時点では何も判断がなされていないということと変わりませんから、出張の準備を進めている国内企業もありますので、現場の混乱を生まないように、方針決定、そして丁寧な周知をお願いしたいというふうに思います。

 アメリカ大統領選でバイデン氏が当選確実になりました。菅総理との電話会談もきのう行われたわけですけれども、次のバイデン政権の関係の構築についてお尋ねをしたいと思います。

 バイデン氏は、上院議員そして副大統領を含め、四十四年の国政経験がある。外交アドバイザーの人材も豊富ということです。ですので、バイデン政権では、同じ民主党のオバマ前大統領のもとで外交を担った高官が再び政権の中枢に戻り、これから外交政策の主導が、トランプ政権下のホワイトハウスというところから、今度国務省に戻っていくという見方が出ています。

 他方、日本でも、菅政権に移行して、外交政策の重心が官邸から外務省に変わっていきます。

 首脳外交というのは今後ももちろん大事なんですが、アメリカ民主党政権下における国務省そして日本の外務省、この事務レベルの意思疎通をいかに活発にしていくかという点がとても大切であるというふうに考えておりますけれども、大臣から御所見を伺いたいというふうに思います。

茂木国務大臣 確かに、これまでのトランプ政権、さまざまな問題について、トップ同士の会談で物事が決まるということはあったと思います。ですから、印象論とすると、先生おっしゃるように、なかなか事務方が十分機能せずに、トップでその場で全てを決めている、こういう印象を持たれるかもしれませんが、必ず、実態からいいますと、それは米国の政権と日本の政権でありますから、民主党政権においても、また共和党政権においても、さまざまな、大使館ルート、そしてまた高官レベルも含めて局長クラスから次官クラス、そして大臣クラス、こういったようなコミュニケーションはとっております。

 米国の国務省、極めて重要な省庁であると考えておりまして、デパートメント・オブ・ステートですから、そういう位置づけであるところでありまして、しっかりとこれからも連携をとっていきたいと思っています。

緑川委員 事務レベルというのは、やはり他国との交渉において、日米関係を外にアピールしていく場として重要な首脳会談ということを早期に実現していく上でも、そうしたきめ細かい調整ということはとても大切であるというふうに思いますし、自民党とアメリカの民主党の結びつきというのは、一方で、これまでの共和党との関係と比べるとやはり薄いという指摘もあります。

 日本における民主党との関係はもとよりですけれども、アメリカ民主党政権との関係づくりにはやはり過去苦しんできたというところは、これまでの経緯であると思います。

 九〇年代のクリントン政権時の対米貿易黒字の削減、そして市場開放を迫られたという経緯もありましたし、オバマ氏が初めての会談に当たっても、事務での調整というところは決して円滑ではなかったというふうに認識はしておりますけれども、こうしたもとで、オバマ政権時代に築かれた人脈ということは、より大きな頼りになっていくというふうに思いますし、さまざまなルートでぜひ構築を進めていただきたいというふうに思っています。

 トランプ政権の四年間で、やはりアメリカファーストのもとで、それまでの国際的な取決めとか協力関係というのは大きく変わってきたところです。

 ですけれども、アメリカの今後の民主党政権でも、確かに人権問題とか気候変動などの対策についての例外はあるにしても、トランプの自国第一主義とは確かに違いますけれども、やはり内向きの思考が今強まってきているというのは、トランプ政権下における点と共通してくる部分もあるのかなというふうに感じています。

 今後、国内対策として、医療保険改革、また経済対策も、これは深刻に、まず状況に対応していかなければなりませんけれども、アメリカ国内の課題に多くの資源また財源が振り向けられようとしている中で、多国間協力の場であるとはいっても、同盟国に負担を求めるような交渉というのは、今後、民主党政権下においてもふえてくる可能性も、注意深く見ていく必要があるというふうに思いますけれども、大臣、どういうふうにお考えでしょうか。

茂木国務大臣 バイデン政権、まさにこれから政権移行期でありまして、新しい閣僚等につきましても、一部についてはサンクスギビングの前には決まってくるのではないかなと思っておりますが、いずれにしても、この政権移行期間、さらには新政権発足後の政策方針というのがどうなるか、見きわめていかなければいけないと思っておりますが。

 トランプ大統領、確かに、アメリカファーストのもとで、バイを中心にしたさまざまな交渉というのをやってまいりました。

 一方で、バイデン次期大統領、多国間主義へのコミットメント、これを強調しておりますが、同時に、国内の分断の解消、そして国内における四つの優先分野ということで、やはり、かなり国内でやらなければいけないことがあるというのも重要でありまして、そこの中で、米国という世界の大国に、国際秩序、気候変動問題等々につきましてはかなり考えの一致できるところがあると思うんですが、それ以外も含めて、国際的な課題へのコミットメントであったりとかアジア太平洋の秩序維持へのコミットメントをしっかりと維持をしていく、引き出していく、これは日本にとって大きな役割だと思っておりますし、また、国際社会が日本にそのことを期待しているのではないかな、こういう思いで取り組んでいきたいと思います。

緑川委員 多国間協調というところへの熱と、そして国内対策に向ける熱量、この資源のバランス、向け方というのは、やはりアメリカとしては非常に難しいかじ取りになってくるというふうに考えておりますし、日本としては、自分たちの、みずからの立場を伝えることとあわせて、同時に、この地域を含めて、戦略的に重要な地域である、経済成長の原動力であるアジア太平洋地域に対して、やはり日本と歩調を合わせながらアメリカとして主体的に関与を続けていくということが、互いの利益、日本とアメリカの国益につながるということをあわせて丁寧にお伝えをしていくということが重要であるというふうに思います。

 大臣からもそうした思いをいただきまして、共有させていただくんですが、それでもなお、当面は、アメリカ国内の対策にはやはり引き続き精いっぱいという状況は続くのではないかというふうに思います。

 アメリカでことし三月にまとめた、日本円で二百三十兆円規模の経済対策の期限というものが夏に切れました。それ以降、給付の規模というのが縮小しています。GDPの四月―六月期のような大幅なマイナス成長にならないように、今後は、アメリカとして、厳しい財政状況のもとでも手厚い失業給付というものを盛り込んだ大型の追加策というのが検討されていますが、そのためには、今、この混沌としたアメリカにおいて、今の議会で対策をまとめるという必要があります。

 トランプ大統領が選挙の敗北を認めないという状況も続いているということもありますから、対策の成立がおくれてくる。更に言えば、新たな政権が発足した後も、政府の財政支出についても議会の承認が当然必要になってきます。その中で、上院で共和党が過半数を維持した場合に、ねじれの状況です。ですから、思うような対策がとれないかもしれない。公約として掲げる富裕層への増税などの実現は、やはりこれは厳しくなってくるんじゃないかというふうに考えます。

 そういう中で、今後の国内対策を円滑に進めたいというバイデン氏の思いの中で、トランプ氏が主張していたような、アメリカ製品をたくさん買ってもらおうというバイ・アメリカンの政策を、これは選挙でもバイデンさんはアピールをしていましたけれども、いよいよ貿易面でも現実的にアメリカ製品の輸出拡大につながる政策をとって、みずからの支持をアメリカ国内で高めていこうという考え方もこれは否定できないというふうに思います。

 あくまでバイデン氏、国際ルールにのっとった形ではあるというふうに思いますが、アメリカ製品をもっと買えと今後強く求めてくるようなことがあったり、アメリカが輸出する上で不利になるような円安を牽制してくるような場面ということはやはり想定していかなければならないというふうに考えておりますけれども、大臣、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

茂木国務大臣 アメリカの大統領選挙と一緒に議会の選挙が行われておりまして、今、上院が、定数百の中でちょうど四十八対四十八という状況でありまして、上院の構成がどうなるか決まっていないところで、今委員御指摘のような形で、民主党の政権ができても上院のマジョリティーが共和党になる、こういう可能性もあって、その場合は、一般論でありますけれども、さまざまな、予算等々で調整に時間がかかる、こういったことも想定をされるのではないかなと思っております。

 そういったことは過去のアメリカでも起こってきたことでありますけれども、それがすぐに通商政策にどうはね返ってくるか。これはまさに、例えば、ではUSTRのトップにこれから誰がなっていくのかとか含めて、政権の陣容であったりとか通商政策を見きわめながら考えていきたいと思っております。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

緑川委員 大統領就任、一月二十日以降に対して、それでもやはりねじれの状況というのは私は起こってくるというふうに思っておりますし、現実的な対策をバイデン氏はとっていく部分はあるというふうに考えておりますので、しっかりと想定をしていただきたいというふうに思います。

 バイデン政権で国際協調には確かにかじを切っていく中で、パリ協定やイラン核合意への復帰、WHOの脱退の取りやめということは予想される部分もありますが、トランプ大統領が否定してきたこうしたものを、混乱が続くアメリカにおいて直ちにそうした動きがとれるかというと、なかなか難しいというふうに思いますし、世界に向けたリーダーシップ、影響力をすぐに取り戻していくというふうにはまだなかなか考えにくいのかなというふうに思います。

 その中で、トランプ氏が否定したものの中にTPPがありますけれども、きょうも委員からさまざまな御指摘をいただいていますが、日本は、アメリカが将来復帰することを前提として参加国と交渉しています。TPP11の枠組みを日本が主体的につくったというわけですけれども、バイデン氏にかわったとしても、やはりアメリカへの現実的な影響というものは考慮される、つまり、輸入の増加につながるような多国間の自由貿易協定の締結については、やはり積極的な対応を示さない部分もあるのではないかというふうに考えますが、大臣、いかがでしょう。

茂木国務大臣 先ほど申し上げたように、なかなか、次期米国政権の通商政策について、今、こうなっていくと予断を持つことは難しいと思います。

 では、パリ協定とかWHOのようにデーワンにTPPに復帰するかというと、その可能性は極めて低いと残念ながら思っておりますが、日本として、米国は、GDP世界第一位でありますし、経済もグローバル化をされている、十分TPPのハイスタンダードを満たせる国だと思っておりまして、そういった国々がTPPに参加をして自由貿易体制を更に拡大する、そして二十一世紀型の共通のルールをつくっていくということは極めて重要なことだと思っておりまして、引き続きアメリカとの間でも、こういった問題について意見交換、意思疎通をしていきたいと思っています。

緑川委員 アメリカ大統領、次期大統領としての、やはり国際社会に対してのリーダーシップをとっていきたいという強い思いがやはりあると思います。

 そして、その一方で、国益への懸念を示すような、例えば共和党支持者からの声も当然これは配慮しなきゃならない。アメリカ国内の世論の突き上げで、トランプ大統領の影響力というのはやはり今後も根強くアメリカ国内で残っていくというふうに思います。

 バイデン氏が掲げている政策への支持を取り付けるために、やはりこれは党派を超えて、共和党などの要求も受け入れながら、政策を円滑にまずは進めたいというバイデン氏の思いというのはあると思います。アメリカ国内の対策に精いっぱいという状況の中で、その内向きな流れがやはり変わっていきにくい。

 世論ということでいえば、やはり対中政策についても今後の動きも注視したいと思いますが、中国との激しい貿易摩擦、また先端技術をめぐる対立について、アメリカ国内ではどう思っているかというと、実は、この対立については国民の相当数が肯定しているという状況もあります。

 米中対立が前提となっている状況の中で、安全保障とあわせてやはり重要なのが、自由や人権をどう守っていくのかという視点を、これは日本外交の役割として、大切な役割として求めていきたいと思うんですが、分断が進む、まあ中国に対して人権の尊重や法の支配を訴えるということは当然なんですが、同じく社会の分断が今まさに進んでいるアメリカに対しても、日本が言うべき部分があると思います。

 コロナ禍において、人種間の所得格差が広がっていったり失業や倒産が相次いだり、将来不安が高まっている中で、今のアメリカ国内のはけ口として、アメリカに住んでいる多くの邦人、また日本企業、アジア系の市民や留学生が、今まさに差別とか迫害を受けかねません。そうした影響を受けないように、日本としてしっかりと、これは新しいバイデン氏に働きかけていくことが大切であるというふうに考えておりますけれども、大臣、今後の取組について伺いたいと思います。

茂木国務大臣 バイデン次期大統領も、八日の勝利宣言のスピーチで、もう、ブルーステート、つまり民主党の州、そしてレッドステート、共和党の州じゃなくて、ユナイテッドステーツだ、こういう話をして、自分は分断ではなく統合の大統領になる、このように話されていた。それだけ大きな課題である、また、アメリカ社会にいわゆる分断というものがさまざまな形で存在しているというのは事実なんだと思っております。

 そういった中で、アメリカには多くの日系企業が進出をし、また日系人の方もたくさんお住まいでありまして、その安全確保、これは外務省にとっても極めて重要な課題だ。状況を注視しながら、万全の対応をとっていきたいと思っております。

緑川委員 やはり、人権の問題への意識、あるいは日米間で非常にバイデン政権になって重なっていくべき理念というところがあるというふうに思いますので、多国間協力体制を深めながら、これは、世界に視野を広げながら、多くの地球規模の課題にしっかり対処していく必要があるというふうに思います。

 時間もちょっと限られてきてしまっているんですけれども、SDGsの関係について少し、途中になってしまうと思うんですが、触れさせていただきたいと思います。

 今、日本とアメリカが掲げている共通の政策として、二〇五〇年脱炭素社会の実現に向けて、社会や産業のこれまでのあり方というのは大きく変わっていくことになると思います。

 コロナからの復興として、グリーンリカバリー、今雇用が失われている状況を変えるためにも、気候変動対策としての再エネとか省エネ、こうした環境の分野、また災害や感染症に強い社会に変えていく、そうした分野を経済成長につなげていく、そこから、そうした分野から新たな雇用や産業を生み出していく、そうしたことを後押しする復興策、このグリーンリカバリーという考え方が広がってきています。

 これは、人の命、また環境、経済成長を両立させることを目標としているSDGsとも重なっていきます。五年前に国連総会で合意された国際公約ですけれども、今、その重みがもっともっと増してきているんだろうというふうに思います。新型コロナが浮き彫りにした課題の解決、これを進めていくために、SDGsの達成への取組強化が今より一層重要になってきているというふうに思います。

 これまでのSDGsに対する政府の取組、そしてそれに対する御所見を伺いたいと思います。

あべ委員長 外務省小野大臣官房審議官、答弁は簡潔にお願いいたします。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 日本政府といたしましては、SDGsを総合的かつ効果的に推進するために、二〇一六年五月に総理を本部長としますSDGs推進本部を設置し、一六年十二月にSDGs実施指針を策定しております。また、一七年の十二月以降は、SDGs達成のための政府の主要な取組をまとめたSDGsアクションプランを毎年作成しております。このほかにも、関係省庁が一体となって、あらゆる分野の関係者と連携協力しながら、オール・ジャパンで取組を進めております。

 現在、新型コロナ感染症の拡大で、特に脆弱な立場に置かれた人々ほど深刻な影響を受けていることを踏まえると、SDGsの誰一人取り残さないという考え方に立ち返る必要がございます。

 こうした観点から、ことし十二月にも、SDGs推進本部におきまして、アクションプラン二〇二一を決定する考えでございます。

緑川委員 もう質問はいたしませんけれども、今のグローバル目標に対する政府の方策、その実施指針というのは、やはりギャップが大きなものであるというふうに感じざるを得ないわけです。

 特に、この感染症というものが非常に多項目にわたって横断的な影響を各目標に対してもたらしている以上は、SDGsの大きな改定ということも、人間の安全保障を外交政策の柱に据えている日本として、しっかりと国際社会に提言をしていく必要もあるのではないかというふうに思います。

 時間が来てしまいましたので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

あべ委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 立憲民主党の小熊慎司です。

 まず、茂木大臣に質疑をさせていただきます。

 先日、あるテレビを漫然と見ていたんですけれども、ある番組で、ちょっと発言が許せないものがあったものですから。

 そもそも、外交というのは、前近代的には、一部の人間がやって、秘密主義でやっていましたけれども、百年前ぐらい、第一次世界大戦周辺から、外交の民主化、民主的外交ということで、今、日本政府においても、外交青書の第三節にも「国民の支持を得て進める外交」、外交政策を円滑に遂行するに当たっては、国民の理解と支持が必要不可欠であるというふうにも認識をされているところでもあります。

 ただ一方で、やはり誤解が生まれているなというのがありまして、さきに述べたあるワイドショーの番組で、元財務官僚の山口何がしさんという方が、外務省は外交をやっていない、私は、財務省にいるとき、外務省が大嫌いだった。これは個人の所見ですから、別にそれは、そういうものであるんだろうと思いますが、外務省は高級旅行代理店なんだと、そういうふうにやゆをされました。これも個人の受けとめ、考えですから、この発言に対して、もちろん、前政権も現政権もワイドショーのコメンテーターのコメントにも一々チェックをしているようではありますが、これを個人的に、発言を取り消せとか圧力をかけてほしいというものではありません。ただ、そういった印象を持たれてしまっている。

 外交青書にはちゃんと書いてあるんですけれども、それを読む一般国民がどれだけいるかといえば、数少ない。ワイドショーを見る人たちは数多い。そういう中で、外務省なんてこんなもんだと言われてしまったのでは、まさに国民の理解を得て進める外交が成り立たなくなります。

 まず、そこで大臣に言いますけれども、こうした発言が出てしまう、それなりのコメンテーター、しかも元官僚、これはマイナスになりますけれども、何でこうしたことになってしまうのか、印象を持たれてしまうのか。事実とは違います。私は、日本の外務省というのは、しっかり外交をやっている、もっと改革、改善をしなければならない部分もありますけれども、国際貢献においても、JICAを始め、世界一の国際貢献をしていると思っています。そうしたことが理解をされない。

 ワイドショーのコメンテーターが言えば、それは影響は大きいです、国民にとっては。何でこうしたことが起きてしまうのか、その誤解を持たれてしまう原因と、また、こうした発言に対して、圧力をかけるべきではないですが、どうやっていい印象を持たれる、理解を深められるようにしていくのか、対応をお伺いいたします。

茂木国務大臣 小熊先生おっしゃるように、外務省としてもできるだけの努力をしながら一つ一つ外交面でも成果を上げなければいけないという思いで取組をしておりまして、日本が提唱した自由で開かれたインド太平洋、この考え方というのは、今、米国のみならず、豪州、インド、ASEAN諸国、欧州にまで広がって、多くの国から賛同や支持を得ているところであります。

 そして、TPP11も日本を中心にまとめました。日・EU・EPAもそれに続いて、さらには日米貿易協定等々、さまざまな貿易協定やルールづくり、日本が主導しているというのは、これはある程度国際社会でも認識をされている部分があるのではないかなと思っております。

 何をもって高級旅行代理店というのかよくわかりませんが、少なくとも、ことしは代理店に近い仕事はしました。武漢からの日本人の救出に始まりまして、世界各国で、コロナの中で移動制限がかかっている、そして日本に帰国をしたいという方を、帰国のお手伝いをする。そのために、チャーター便の手配、そしてまた現地政府との交渉、移動手段の確保等々を行いました。

 アフリカにおいては、数人ずつしかいない国、邦人が、帰国したい、十五の国、十のルートを使って、当時、唯一定期便が飛んでいたエチオピアのアディスアベバに集まってもらって、そこから帰国をする、こういうオペレーションもやりました。それを高級旅行代理店と呼ぶかどうかは別にしまして、邦人の保護ということでも一つ一つ実績を上げ、今、一万二千人を超える方、百一カ国からの帰国というのを実現しております。

 こういった実際の成果であったりとか努力、これを国民の皆さんに御理解いただく、こういった努力は更に続けてまいりたいと考えております。

小熊委員 これは、前段には、大臣への待遇とか国会議員をアテンドしたりするみたいな話があったので、そういうことを捉えて言っているんだろうなと思いましたし、たかだかと言っては悪いんですけれども、たかだか二年しか財務省にいない山口何がしさんに言われてしまうというのは、だからこれは、ある意味では、各省庁間でも風通しのいい形にしていかなければならないと思いますし、私も、過去のこの委員会で、個人的に外遊したときに、便宜供与、公私の区別はつけなきゃいけないから、どういうことがラインになるんだということを質問もして、そこで、答弁でも納得しましたけれども、過剰なそんな案内なんかはしていませんし、外務省が、現地においてでも。

 そういう意味では、しっかり理解を深める、そういった部分においても間違った印象を持たれないように、その情報発信は、財務省での経験をもとにしゃべっていましたから。だから、他省庁のそういう一年、二年ぐらいの職員も外務省のあり方というのがちゃんと伝わるように、いろいろ省庁連携もしていっていただきたいというふうに思いますし、先ほど言ったとおり、外務省がどういうふうにやっているか、日本外交はどう努力しているかというのは、私は理解しているつもりですけれども、それがうまく伝わっていない。一部コメンテーターによってそれに泥を塗られてしまうというこの現状についても、やはりしっかり見据えた上で情報発信、また対応していかないと、まさに外交青書で言っている、国民の理解を得て進める外交ということの前提が大きく崩れますので、そこはこれからも努力をしていただきたいというふうに思います。

 次の質問に移りますけれども、ちょうど、自由で開かれたインド太平洋についても触れていただきました。これもいい構想だと思います。

 そもそも、このインド太平洋地域は、日本にとっての貿易額はざっくり言うと四分の三も占めているわけでありますし、また、近年の世界の成長についてもこの地域だけで三分の二も占めています。人口においても世界の半分以上がこの地域にいるということで、非常にこの地域の安定、発展が世界の平和、安定に大きくつながるということですから、この構想はすばらしいというふうに思います。

 大臣所信の中でも、これをしっかり実現に向けて努力していくという御発言もありました。

 詳細を見れば、ただ、太平洋島嶼国への言及がなかった。また、外務省のホームページを見ても、そこに対する情報が少ない。そもそも、ホームページを見ると、太平洋島嶼国は今中国の関与が大きくなってきているので、オーストラリアはステップアップ政策ということで強化をしていく、これと連携していくということは言及しています。ニュージーランドはパシフィックリセット政策、これも太平洋島嶼国への関与を強化していくという政策、これと連携していくと。

 これは、もちろん連携は必要だというふうに思いますけれども、日本政府そのものがこの太平洋島嶼国にどうやっていくかというのは、どこどこの港を整備します、空港を整備しますは書いてありますけれども、せっかく太平洋島嶼国、島サミットもしっかりやってきている実績がある日本ですから、これは大臣の所信の中にも太平洋島嶼国ってちゃんと入れなきゃいけないし、アフリカも入っているわけですから。

 アフリカで起きている中国のむちゃくちゃな債務超過に陥らせるようなお金の貸し方、これは太平洋の一部でも起きていますから、やはりそういったことも考えても、一つ一つの国は小さいです、本当にちっちゃいですけれども、でも、一カ国は一カ国ですし、まさに太平洋地域のど真ん中にいるわけですから、もう少しスポットを当ててもいいなと。

 ここはこうします、ああしますということがいっぱい書いてあるんですけれども、太平洋島嶼国のところは、実は、ホームページを見ていただければわかるとおり、首脳会議でこれを歓迎するという、向こう側の言葉なんですよ。我々が太平洋島嶼国をどうするというのは、ニュージーランドと連携します、オーストラリアと連携しますしか書いていない。

 大臣が、私の質問の前にも、この自由で開かれたインド太平洋地域のことを、重要性を訴えられました。そのとおりです。だからこそ島嶼国にもっと言及しなきゃいけないし、コミットしていかなきゃいけない。

 実際やっていると思いますけれども、情報の発信の仕方が、そこが薄いですよ。大臣所信の中にもなかったでしょう。ホームページにもないんです、余り。ほかの関与を通じてやっているんです。

 これについて、どういうふうにやっていくのか、改めてお伺いします。

茂木国務大臣 小熊委員の意見、全く賛同いたします。

 ですから、私も、八月以降、本格的に海外に行く、出張を再開する中で、かなり時間的には無理をしたんですが、パプアニューギニアを回ってまいりました。そして、向こうの首相ともじっくり議論してきたところでありまして、太平洋島嶼国・地域、これは、日本と豪州をつなぎますシーレーン、そしてインド洋から南シナ海を抜けて太平洋へと抜けるシーレーンが交わる戦略的に重要な地域であります。

 我が国は、こうした重要性を踏まえて、自由で開かれたインド太平洋実現のためにも、太平洋島嶼国との間で、これまで、安定、安全の確保、そして強靱かつ持続可能な発展、さらには人の交流、人的交流、往来の活性化を目指す、こういった協力を行ってきております。残念ながら、今ちょっと、太平洋島嶼国みんな、完全に国境を閉じているとか、こういう状況で人的往来がなかなか再開できない状況にあるわけですが、どこかのタイミングでこれも考えていきたいと考えております。

 こういった中、先月、十月の二十日に、私自身が、太平洋・島サミットの中間閣僚会合の機会に、太平洋島嶼国のニーズをしっかりと聴取をして、今後の協力の方向性についておおむね一致をしたところでありまして、来年の第九回太平洋・島サミットに向けて太平洋島嶼国との関係を更に強化をしていきたい、そういう重要な地域であります。

 そして、今、中国がどういう対応をとっているか、こういったこともしっかり念頭に入れながら対応していきたいと思います。

小熊委員 私も超党派の太平洋島嶼国議連の役員の一角を担わせていただいていますし、何度も言っていますけれども、私の妻も協力隊でサモアという国に行っていたという経緯もあります。自分としても、島嶼国の連携を政治のテーマの一つとしています。

 来年、島サミットも三重県で開催をされるということでも節目の年になります。私も、島嶼国の大使の方々とこの間意見交換をしたときに、まさにこの構想については非常に期待をしているという発言もいただいていますから、ぜひ、これは連携も今までしているんですけれども、その表の出し方が、だから薄いわけです。ホームページの部分を見てください。大臣の中にも、島嶼国って、この間の所信にはなかったわけです。だから、こういうことをしっかり意識をして、更に加速をしていただきたいなというふうに提案をさせていただいて、次に移ります。

 次は、国際機関の日本人職員の増強についても、大臣、触れられました。今のような、いろいろな外交を進める上ででも、これはやはり国際協調、国際連携というのが必要だというのは、これまで与野党ともに確認をしてきているところであります。ただ、実態的には、国際機関の日本人職員が少なくなっている、また、国際機関の幹部職員の日本の停滞というのもあるというところであります。

 JPOの派遣制度というのもあります。ただ、これは三十五歳以下ということで、若手育成ですからこれはこれでいいんですけれども、実際、ほかの国を見てみると、それなりのキャリアを持った人たちが職員になっていく。

 まさに、派遣するのであれば、やはり年齢も、若手を育成するというコンセプトを外せば、しっかり日本人の有為な人材を送り込んでいくということであれば、逆に、今、文科省が大学院生をふやそうといってばあっとふやしちゃったんだけれども行き先がないという、ポスドク問題というのがあるんですけれども、それを考えても、だから、年齢制限を撤廃して、それなりに、大学院を出て、しかも海外留学もしたりいろいろな経験をして、さあ、四十過ぎぐらいで何かやろうかと思ったらやれないという、まさにポスドク問題というのがあるんですけれども、そうした経験、知見を積んだ有為な人材がごろごろ転がっているということを考えれば、このJPOの派遣とは別に、そうした人材をしっかり発掘して日本人職員として国際機関に送っていくという、もっと幅を広げていかなければ、大臣が言った増強にはなっていかないというふうに思います。まず、その点について見解を求めます。

茂木国務大臣 このJPOに加えまして、平成二十九年から、より人材発掘の幅を広げて高位のポストを獲得する観点から、公募によります中堅レベルの日本人の派遣、こういったものも開始をしているところであります。

 国際機関を見ていますと、いろいろなキャリアパスの人が事務局長になったりしているんですが、まず若いうちに国際機関で経験を積んで、また自国に戻ってそれなりのポストについて、そういうポストに出る。

 国際機関によっては極めて専門性が要求される、そして高度な語学能力が要求される部分と、また、政治力、これが極めて重要で、逆に閣僚を経験していないととれない、こういうポストもあるわけでありまして、そういったさまざまなことを考えながら、やはり人材としてのプールをふやし、また、そういう交流をふやしていくということがどうしても今後必要になってくる。

 そういう課題にしっかり取り組みたいと思っております。

小熊委員 次の質問まで答えていただいていたんですけれども。まだ一番目の質問だったんですが。

 まさに、国際機関で経験を積んだのを育てていくということなんですけれども、いわゆる語学力というのもありましたけれども、今言った余っている大学院生、博士号をとった人たちというのは、海外での留学経験がありますから、国際機関ではなくても。そういう人材の発掘をしっかりしてほしいというのが趣旨でありました。

 その次に、まさに国際機関の幹部人事です。

 今言われたとおり、ほかの国はこれに閣僚級の人を送ってくるわけです。日本はやはり、国際機関とか外務省の関係者というのを立候補させたりするんですけれども、それは能力で決めるべきなんですが、やはりそれは比べてみるといろいろ差が出てしまうということで、閣僚経験者を出してほしいという、出すべきだという考えは私はあるんですけれども、外務省に聞いたら、英語力といったら、英語力はやはり英検一級ぐらいなきゃだめだというんですよね。

 そうなると、じゃ、その閣僚級の人を幹部人事の選挙にやるのにどうやって育てるのというと、大臣も英語はしゃべれると思うんですけれども、一級ではない、英検一級。ああ、城内さんはしゃべれると思うし、鈴木貴子さんも留学したからしゃべれると思いますが。

 英語をしゃべれる国会議員は何人かいますけれども、英検一級までのという人がどれだけいるのかというと、幹部人事に関してですよ、職員じゃなく、幹部人事に関して、これもしっかり擁立していくんだということであれば、いや、閣僚級も理想なんだけれども、そうじゃなく、とにかくいい人材を擁立していきたいという考えなのか。

 与党内でも、これは閣僚級を出していかないとポストとれないんだから頑張ろうぜということを検討している、提言しているということも聞きました。

 でも、実際、閣僚級、それはいっぱいいますよ、優秀な外務大臣、副大臣経験者。いますけれども、じゃ、それだけの英語力、磨いてもらう、もともとある人がやるのか。この辺どうですか。

茂木国務大臣 まず、あらゆることについてそうなんですけれども、私は資格をとろうと思っておりませんので、英検も一度も受けたことがありません。ソムリエの資格も持っておりません。それでも十分ワインは楽しめる、こんなふうに思っているところでありますけれども。

 若干先ほど小熊委員の質問に触発されて、少し先のことまでお話ししたかと思うんですけれども、最終的にはやはり幹部人材もとっていくということが極めて重要で、そこの中で、かなり専門職的な事務局長と、政治力が要求されるというか、多国間の、いわゆる大国間の利害を調整するような政治力が要請される、こういうポストがあると思っておりまして、率直に申し上げて、今の日本ですと前者の方がとりやすいのは確かだと思います。後者になりますと、やはり持っている重みであったりとか語学力、これは英語だけじゃありません、やはりフランス語がどうしても必要になってきます。こういった問題も含めて、どれだけ有資格者がいるかという話。

 さらには、英語、フランス語が話せる人は、概して性格的に問題があったりしますから、いろいろなことも含めて本当にいい人材……(発言する者あり)城内さんはドイツ語ですから大丈夫です、いろいろなことを考えていかなきゃならないと思っております。

小熊委員 大臣のために、英語、フランス語ができる人が変な人が多いというのは大臣の個人的な見解で、周囲の人間の見解であるということを一応たださせていただいて、英語、フランス語ができる人でもすばらしい人はいるということを申し述べて次に移ります。

 今課題になっています東電の福島第一原子力発電所のALPS処理汚染水、政府は処理水と言っているんですけれども、正確に言うと、七割方再処理しなきゃいけないので、処理したけれどもまだ汚染水なんです。これを海洋放出するかどうかということで、我々は福島ありき、海洋放出ありきじゃだめだと。そもそもこれは、十年ぐらいためておけば、十二、三年で半減期を迎えるんですよ。敷地がいっぱいだといったって、周辺の敷地がありますから、東電の敷地外の。これを敷地外保管して半減期を迎えるという時間的余裕を持った方がいいというのが私の主張なんですけれども。

 さはさりながら、今、海洋放出を決めていなくても、これをめぐって国内外でいろいろな意見が出て、風評被害も出ています。これに関しては、もちろん政府は、政府を挙げて科学的知見に基づいた情報発信をしていただいていますけれども、そもそも風評被害、これは、コロナでも皆さん感じるように、科学的根拠じゃなくても思い込みでいろいろな反応をする人がいるのが世の中です。そういうところにしっかりアプローチをしないと、風評被害というのはなくならないんです。そういう意味では、地元の中でも、具体的にちゃんとした風評被害対策が行われているということは思っていません。外務省もこれまで努力はしてきました。その中で、いわれのない輸入規制というのも撤廃もしていただいていますけれども、風評被害というのはまた別の世界ですから、これに対してはなかなかない。

 そもそも、茂木大臣のもとじゃないですけれども、前の前の大臣のときですけれども、外務省も万全にやっていきます、安倍内閣は全ての閣僚が復興大臣ですと言いながら、ずっとやっていた飯倉公館での被災地の農水産物の食の提供が一年間も滞っていた。何が情報発信だ。まあ、これはしようがないんです、風化もするから。でも、みんなが復興大臣だと言いながら、言っている人が風化をしちゃいけないんですよね。でも、風化した過去の事例もある。難しいんです、これ。

 今の現段階、努力していないとは言いません。ただ、地元にとっても、現実でも、国内外で、海洋放出するかもしれぬというだけでわあっとなっている。実際、風評被害が起きる。今やっていることは、努力は認めます。ただ、結果が出ていないという認識のもとに、具体的にこれをしっかりどうしていくのか。海洋放出、多分やると思いますよ、今の政府は。僕はやっちゃいけないと思っているけれども。

 責任を持って判断しますと言っていたけれども、それは無責任なんだ。ちゃんと対策もとっていないのに、やります、努力しますじゃだめです。ここにちゃんと具体的な成果を上げなければ、責任を持ってということはない。言葉だけだ。

 大臣、どうでしょうか。

あべ委員長 茂木外務大臣、申合せの時間が経過しておりますので、御協力よろしくお願いいたします。

茂木国務大臣 はい。ALPS処理水、若しくは、もう一回処理をしてトリチウムだけにする水も含むんだと思いますけれども、その取扱いについては、現時点で、政府としての方針、決定時期など正式な決定はなされていないと考えております。

 いずれにしても、IAEAの総会であったりとか、また在京外交団向け、そしてまた国際原子力機関のレビューを受け入れる等々を含めて、国民に対しても、国際社会に対しても、丁寧な説明をしていくことが重要だと考えております。

小熊委員 それでは今結果が出ていない。地元も具体的な風評被害対策になっていないという評価でありますから、引き続きこれは議論していきたいと思います。

 ありがとうございました。

あべ委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 私は、核兵器禁止条約と政府の対応について質問します。

 国連で二〇一七年七月に採択された核兵器禁止条約の批准が五十カ国に達し、来年一月二十二日に発効することが確定しました。

 核兵器禁止条約は、核兵器の非人道性を厳しく告発し、その開発、実験、生産、保有から使用と威嚇に至るまで全面的に禁止して違法化し、核兵器に悪の烙印を押すとともに、完全廃絶までの枠組みと道筋を明記しました。

 この条約の発効は、広島、長崎の被爆者を始め、核兵器のない世界を求める世界の声が結実した壮大な一歩であり、我が党は、核兵器廃絶を戦後一貫して訴え、その実現のために行動してきた党として、心から歓迎するものです。

 核兵器禁止条約の発効によって、人類は、一九四六年一月の国連総会の第一号決議が原子兵器の撤廃を提起して以来、初めて画期的な国際条約を手にすることになりました。

 ところが、菅内閣は条約に署名する考えはないと繰り返し、核兵器禁止条約に背を向ける立場を示しています。

 茂木大臣、日本政府は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向けた国際社会の取組をリードする使命を有しているとたびたびおっしゃっていますが、だとするならば、従来の態度を改めて、速やかに核兵器禁止条約を署名し、批准すべきではないでしょうか。

茂木国務大臣 穀田委員おっしゃるように、我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向けた国際社会の取組をリードする使命を有しておりまして、核兵器禁止条約が目指す核廃絶というゴールは共有をしているところであります。

 一方で、核兵器のない世界、これを実現していくということを考えますと、現に核兵器を保有している国を巻き込んで核軍縮を進めていかないとどうにもならない、こういう側面もあるわけでありまして、現状では、核兵器禁止条約は、米国を含みます核兵器国のどこからも支持が得られない状況でありまして、さらに、ドイツ、カナダ等多くの非核兵器国からも支持が得られていない、これが現状だと思っております。

 さらに、我が国を取り巻きます安全保障環境が一層厳しさを増す中で、抑止力の維持強化を含めて、現実の安全保障上の脅威に適切に対処しながら、地道に、現実的に核軍縮を前進させる道筋を追求していくことが適切であると考えております。

 この後の署名等について御質問があるのでしたら、お答えをさせていただきます。

穀田委員 核兵器禁止条約は、前文で核兵器の非人道性を厳しく告発し、国連憲章、国際法、国際人道法に照らしてその違法性を明確にする太い論理が貫かれています。記されていると言っていいでしょう。

 この非人道性は、被爆者を先頭に戦後一貫して訴え続けてきたことで、そのことが条約の前文に、基本命題になっています。この禁止条約に背を向け続けることは、唯一の戦争被爆国としての政府として極めて私は恥ずべきことだと指摘しておきたいと思います。

 政府は、核兵器禁止条約への参加を拒む一方で、核保有国と非核保有国との橋渡しに努めると強調しています。しかし、核兵器をめぐる国際政治の構図は、核兵器の廃絶か、それとも核兵器に固執するのかの対立になっており、この両者は百八十度立場を異にしています。

 向いている方向が百八十度違う、そういう立場を橋渡しするなど、そもそも成り立つ問題ではないんじゃないかと思うんですが、いかがですか。

茂木国務大臣 必ずしもそうは考えておりません。

 確かに、核兵器を実際に保有している国と持っていない国の立場は違うわけでありますが、では、今、例えば冷戦時代のように米ソがどんどん核開発競争を進めている状況にあるかというと、そうでもないと考えておりまして、核の廃絶に向けてお互いにどんなことができるか、こういう共通の基盤をつくっていくということが極めて重要でありまして、そういったことでも日本はしっかりと努力をしていきたいと思っております。

穀田委員 共通の基盤をつくることは当然であります。問題は、核兵器禁止条約の是非を超えてそれは可能です、しかし、政府が主張する橋渡しという議論は、そうした核廃絶に向けた議論ではありません。大体、核兵器の廃絶を究極の課題として永遠の将来に先送りした上で、合意できる他の課題を探そうというものでありまして、そのような立場が国際的に成り立っているか否か。

 そのことを端的に示しているのが、日本政府が橋渡しの実践として毎年国連総会に提出している核兵器に関する決議案の採択結果であります。

 茂木大臣は、十一月四日の衆議院予算委員会で、十月十五日に提出した決議案について次のように述べています。恐らく昨年よりも多くの国の賛同を得て採択されることになる、このように答弁しています。

 ところが、先日、外務省が私に提出した資料によれば、第一委員会での採択結果は、昨年よりも多くの賛同を得るどころか、昨年に比べ賛成が九カ国減って百三十九カ国、共同提案国も三十カ国減って二十六カ国、その逆に、棄権は七カ国ふえて三十三カ国、反対も一カ国ふえて五カ国になっているではありませんか。この事態をいかが見ますか。

茂木国務大臣 核兵器のない世界に向けた共同行動の指針と未来志向の対話、この決議案が採択されたことについては評価をしておりますが、率直に申し上げて、雰囲気からいって私はもう少しふえるのではないかなと思っておりましたが、今回はコロナの影響もあって、オンラインと対面をまぜた形での開催となったことを含めて、なかなか、数につきましては私の予想どおりではなかったということを率直に認めたいと思っております。

 そして、賛成国数が減少したこと自体、真摯に受けとめて、今後の国連総会での採択においてはより幅広い国の支持を得られるように、積極的に働きかけを行っていきたいと思っております。

穀田委員 日本は、一九九四年から連続して決議案を提出していますが、今回の第一委員会での賛成国数は過去十八年間で最も少ないわけです。そして逆に、棄権は最多となっています。オーストリアやニュージーランド、メキシコ、南アフリカからは、決議案が核兵器禁止条約に一切言及していないことに厳しい批判や失望感が表明されたことは御承知かと思います。他方、核保有国で賛成したのはアメリカとイギリスのみ。昨年賛成したフランスも棄権に回り、中国やロシアは反対した。核保有国と非核保有国の橋渡しをするというが、実態は橋の両方が落ちているという状態ではないか。

 政府は、この間の答弁で、核兵器禁止条約がカナダ、ドイツなどNATO諸国から支持を得られていないと強調していますが、それでは聞きますけれども、國場政務官にお聞きします、日本の決議案に棄権した三十三カ国の中には、NATO加盟国はフランス以外はないんですか。

國場大臣政務官 本年の国連総会第一委員会で我が国が提出した核兵器廃絶決議案に棄権した国のうちNATO加盟国は、フランスのほか、ベルギー、カナダ、ドイツ、オランダ、ノルウェー及びスペインの七カ国であります。

穀田委員 七カ国あると。日本の決議案に棄権した三十三カ国には、カナダ、ドイツを始め、オランダ、ベルギー、ノルウェー、スペインが入っているわけですね。これらの国々は、実は昨年の決議では賛成の立場をとっていた。こうした実態を見ても、政府が主張する橋渡しなるものは、もはや国際的にも破綻したものであるということは明らかかと思います。

 日本政府の国連決議は、核兵器廃絶を究極目標としています。実は、この究極論というのは、二〇〇〇年のNPT再検討会議で、非核保有国の厳しい批判によって核兵器国が取り下げざるを得なかった破綻済みの主張だということをあえて言っておきたいと思います。

 そこで、もう少し聞きたいと思います。

 政府は、核兵器禁止条約に参加することは、アメリカによる核抑止力の正当性を損ない、国民の生命と財産を危険にさらすことを容認しかねないと繰り返してきました。同じことが二〇一八年の外交青書にも明記されています。

 この政府の立場について、河野前外務大臣は、二〇一七年十一月のブログで、禁止条約への参加は、日本国民の生命や財産が危険にさらされても構わないと言っているのと同じだと述べています。茂木大臣も同じ考えですか。

茂木国務大臣 若干ニュアンスというか、私の考え方で申し上げますと、我が国の周辺は、質、量ともにすぐれた軍事力を有する国家が集中をしている、これは事実だと思います。軍事力のさらなる強化、そして軍事活動の活発化の傾向が顕著になっているわけでありまして、現実に、核兵器などの我が国に対する安全保障上の脅威、これが今申し上げたように存在する以上、日米安全保障体制のもとの核抑止力を含みます米国の拡大抑止、これは不可欠なものだ、これが現実の姿だと思っております。

 我が国自身の防衛力を強化しながら、日米安保体制のもとで核抑止力を含めた米国の抑止力を維持強化させていくこと、これは我が国の防衛にとって現実的かつ適切な考え方であると思っております。

穀田委員 ニュアンスは違うと言って、抑止力の話を言っているわけですけれども。

 河野前大臣は、要するに、核兵器禁止条約に我が国が参加すれば国民の生命が危うくなると述べているわけですよ。これと同じ見解かということを言っているわけです。もう一度。

茂木国務大臣 我が国が核兵器禁止条約に署名する考えがない、これは、冒頭申し上げた、そういう意見の違う国があり、そしてその橋渡しをする、こういう立場に立つものでありまして、核兵器禁止条約が目指す核廃絶のボールは共有しているけれどもアプローチが違うということで、署名する考えはない、それが私の考えです。

穀田委員 明確に否定はされないと。

 つまり、私が言っているのは、そんな形で、今お話があったように、ゴールが同じだ、アプローチが違うという話を言っているんじゃなくて、それは最初に大臣がお話ししたとおりですやんか。そうじゃなくて、それに参加すれば国民の命が危ういというようなことまで言ったとしたら、話は全然、ゴールどころか、プロセスも全くそんな話じゃなくなるじゃないかということを言って、否定しないというのは、私は重大だと思うんですね。(茂木国務大臣「ニュアンスが違うと言った」と呼ぶ)ニュアンスが違うと言っているから、否定していないわけで。私は、そっちの方の話、では抑止力の話に行きますけれどもね。

 では、核抑止力とは一体何なのかといえば、いざというときには核兵器を使用する、核のボタンを押すというのが抑止力の本質であります。すなわち、いざというときには広島、長崎のような非人道的な惨禍を引き起こしても許されるという立場なわけですね。被爆を体験した国がその惨禍を他国に与えてよいとすること自体が非人道的であり、反道徳的だと言わなければならないと私は思います。一体、どういう理由で広島、長崎を再現することが許されるのかと思います。

 ついでに言っておきますと、河野さんは、もし核を使えば、みずからも同様の、あるいはそれ以上の耐え難い報復に遭うと認識させることが必要、こうした考えが抑止という発言までされているんですね。だから、抑止なんて格好いいことを話しているけれども、ここまで言っている事態なわけですよね。

 だから、政府がともかくも一連の国際のこの問題について核兵器の非人道性を訴えるならば、こうした核抑止力論にいつまでもしがみついていてよいのかということが問われるんじゃないでしょうか。

茂木国務大臣 河野前大臣の抑止に対する考え方を私はよく十分理解していないのかもしれませんけれども、基本的に、抑止ですから強制とは違うわけであります。逆の概念になってくるわけでありまして、使わせないようにする、そのために抑止があるわけでありますから、そういう核兵器等々を使わせない、それによって非人道的な惨劇が起こらないような状態をつくるために抑止というのが私は存在していると思っております。

穀田委員 抑止というのは、いざというときに使うという話があって抑止なんですよね。いつもそうおっしゃっているわけですやんか。この事態が、つまり、報復するだとかそういうことまで言って、いわば非人道的な惨禍を引き起こしてもよいんだと。結果としてそうなるわけですから。そこまで議論を詰めなければならないと思うんですね。

 その点、核兵器禁止条約は、核兵器の使用の威嚇、すなわち、いざというときは核を使うぞというおどしによって安全保障を図ろうという核抑止力も禁止しています。世界の多数の国がこの流れに合流しているとき、唯一の戦争被爆国の日本政府が核の傘にしがみつき、これに背を向ける態度は、極めて異常と言うほかありません。

 このように、政府が、結局のところ、唯一の戦争被爆国を看板にして橋渡しを説くのは欺瞞そのものだと私は言わざるを得ないと思います。核保有大国のお先棒担ぎでしかないということを改めて指摘をしておきたいと思います。

 それでは、ちょっと角度を変えて茂木大臣に聞きます。

 今、何度も繰り返して、大臣も繰り返していますが、核を含む、米国、アメリカの抑止力に依存することが必要だとする政府としては、核兵器の存在や米国を含む核兵器の保有が日本の安全保障環境において地域の緊張と対立を生む原因になっているということは全く考えていない、また、考えたこともないということでしょうか。

茂木国務大臣 多分、順番が逆なんだと思っておりまして、それは先ほど申し上げたように、我が国の周辺には質、量ともにすぐれた軍事力を有する国家が集中している、そして、軍事力のさらなる強化や軍事活動の活発化、この傾向が顕著になっている、これが現実の姿だと思っております。

 それで、それに対応するためには、日米安全保障体制のもとでの核抑止力を含む米国の拡大抑止は不可欠だと考えております。

穀田委員 政府の安全保障に関する外交防衛政策の基本方針である現在の国家安全保障戦略を策定するに当たり、総理、安倍総理ですね、当時。前総理の出席のもとで開かれた二〇一三年九月十二日の安全保障と防衛力に関する懇談会で外務省が配付した「我が国を取り巻く外交・安全保障環境」、これですけれども、説明資料があります。その資料の中の「(参考)我が国の安全保障における核軍縮・不拡散上の課題」というのがあります。こういうものですけれどもね。

 この文書を見ますと、米国を始めロシア、中国、北朝鮮の四カ国の核保有国の現状を挙げた上で、「核兵器の存在、又は核兵器保有という政策オプションが地域における緊張・対立の原因かつ帰結となっている。」と書かれています。

 つまり、外務省では、現在の国家安全保障戦略の策定に当たって、核兵器の存在や核兵器の保有という政策オプションが地域の緊張と対立の原因であり、帰結になっているという考えを示していた。このことは、当然茂木大臣も御存じのはずですが、違いますか。

茂木国務大臣 ちょっと、どの資料のことなのか、今、私の手元にありませんし、そういうお話があるという話も聞いておりませんので、確認できないものに対してコメントはできません。

穀田委員 確認できないということですけれども、私、今述べた安全保障と防衛力に関する懇談会というのは前安倍総理が開催したもので、そこに配付された資料は、当時の総理大臣決裁のところにありますけれども、懇談会の終了後、速やかに公開することが定められている。そして、ホームページにも載っています。

 だから、その基本方針、考え方、そのことについては、外務大臣である茂木さんも当然御存じではないんですか。

茂木国務大臣 穀田先生、穀田先生が先ほど読まれた文というか、比較的私、文書については自分で記憶できる方でありますけれども、全ての文言について記憶しておりませんから、事前に、こういう文書について指摘をするんだけれども、その考えを聞かせてくれということでしたら十分対応しますけれども、全く今初めて聞いたことについて、また、間違えて答えるのもいけませんので、そこはきちんと、そういった形でお出しいただきましたら、誠実にお答えをさせていただきたいと思っております。

穀田委員 文書の中身、外形ですね、それが出ているか何だかという話について、薄めては私はならぬと。考え方なんですよね。

 だから、問題は、「地域情勢における重要な構成要素‥核兵器の存在、又は核兵器保有という政策オプションが地域における緊張・対立の原因かつ帰結となっている。」という考え方、この問題なんですよね、その考え方。

 これは外務省の平松総合外交政策局長が、安倍前総理を始め麻生副総理、当時官房長官だった菅総理、官房副長官だった加藤官房長官など、出席した主要閣僚に対する説明として使われたものであります。

 政府は、米国の、アメリカの抑止力が日本の安全保障に不可欠だと主張する。しかし、他方で、外務省は、核兵器の存在や核兵器の保有という政策オプションをとること、つまり、核兵器の使用を前提とした政策をとることが地域の緊張と対立の原因、帰結になっているという考え方を示している。

 この考え方について茂木大臣は否定されますか。

茂木国務大臣 今、具体的な名前を聞いたので。平松さんが総合外交政策局長だと、相当前の話ですよ。その状況から考えましたら、確実に我が国は、東アジアの安全保障環境は私は変わっている、このように考えております。

穀田委員 相当前と言って、二〇一三年と最初から言っていますやんか。最初に、第二次安倍政権ができたときと言っていましたやんか。(茂木国務大臣「七年前だよ、七年」と呼ぶ)まだ近い話ですやんか。しかも、中期防を含めたものを決めるときの大事な会議で言っている話ですやんか。余り価値を低めずに、考え方の問題について議論しましょうと私、言っているわけだから。その辺は考え方でいきましょうな。

 私は、この策定というのは、今お話ししたように、第二次安倍政権の初めての安全保障、防衛力に関する方向を決定したものだけれども、今お話しありました核兵器をめぐる情勢は、二〇一三年に外務省が指摘していたとおり、緊張と対立の原因となっていることを一層示していると思います。そうやって米国の核抑止力にしがみつくこと自体が、地域の緊張と対立を激化させる原因になっていることではないかと思います。

 茂木大臣は、先ほどもお話しありましたように、核兵器禁止条約によって核兵器国と非核兵器国の間の分断が深まってしまうことは避けなきゃならない、これは一貫して述べています。

 しかし、この外務省の文書にもあるように、禁止条約が核保有国と非核保有国との分断と対立を深めるのではなくて、核兵器の存在と核兵器の保有という政策オプションが緊張と対立の原因であり、帰結となっているんだと私は思います。そう思いませんか。

茂木国務大臣 それは原因と結果を裏側で言っているだけですから、同じことをおっしゃっているんだと思います。

穀田委員 原因と結果ではなくて、そういう分析のもとにそういう方向性を出したという、言わば前提になっている話だと。その結果、まさに、その後の、先ほど、二つ前にお話がありましたけれども、緊張が高まっている、その情勢をどう見るんだという話がありましたけれども、まさにそのとおり、そのことによって激化しているということだと思うんです。

 しかも、巷間言われていますように、そういう形で抑止力があったとしても北朝鮮の動きはとまらないということとかも含めて、その効果の問題についても、巷間言われていることは確かだと私は思います。

 最後に、来年予定されているNPT、核不拡散条約の再検討会議で、核兵器禁止条約という国際規範を力に、核保有国に対して、ここからが大事です、NPT第六条の核軍備縮小、撤廃交渉の義務、それから二〇〇〇年のNPT再検討会議で合意した核兵器の完全撤廃の実行を迫る、ここに私は被爆国としての責務があると思います。

 国際的な世論と運動を発展させることがいよいよ重要になっています。先ほど私はドイツの例を言いましたけれども、ドイツでは、世論調査では六六%が禁止条約への参加を支持しています。反対はわずか一二%。同じくベルギーでは参加支持が六四%。もとより、日本では、参加すべきと答えた方が七二%に達しています。

 政府は、従来の態度を改めて、速やかに禁止条約を署名し、批准すべきだ、そのことを改めて強く主張して、質問を終わります。

あべ委員長 次に、浦野靖人君。

浦野委員 日本維新の会の浦野靖人です。よろしくお願いいたします。

 外務委員会、実は、初めて初当選させていただいたときに一番最初に配属をされまして、右も左もわからない中で、外務委員会という、もちろん、地方議員の出身ですけれども、国会にしかない、そういう花形の委員会に所属をさせていただきました。当初、当然途方に暮れまして、そのような中で、小熊大先輩が立て板に水のごとく質問を繰り出されている委員会をずっと見させていただきまして、すごいなと思って、さすが違うなという、大先輩でね、それをよく思い出すんですけれども。

 きょうは、四つ質問をさせていただきたいと思います。

 尖閣諸島における中国の活動についてなんですけれども、これは、私、内閣委員会に所属させていただいたときも質問させていただいて、つい先日の予算委員会でもこの件について質疑をさせていただきました。その中で、私は、映像を、中国艦船と日本の漁船、そして海上保安庁などが今やっているその映像を公開をすべきだということで質問させていただきました。その点については、検討するというところまでは言っていただいていますけれども、なかなかそれ以上前に進まない。

 尖閣諸島について、やはり実効支配をしているんだということの積み重ねをしていかないといけないということで、当然、固有の領土ですから、いろいろなことをやっているわけですけれども、その中でも、環境省においては、今回、新たに生態系の調査などもしていただくということを、前向きな答弁をいただきました。水産庁においても水産資源の調査をされるということ、そして、灯台については保守点検をきっちりと、防衛省ですかね、でやっていただいているということで、各省庁から前向きな答弁をいただきました。

 その中で、やはり、外務省の方でもさまざまな取組をもちろんしていただいていることは承知なんですけれども、特に、大臣所信において茂木大臣から、東シナ海における一方的な現状変更の試みは断じて認めないという力強い宣言がありましたので、ぜひ外務省としても更に強い発信をしていただきたいなと思っているんですけれども、その点について大臣の御見解をいただきたいと思います。

茂木国務大臣 まず、この外務委員会、小熊委員はもちろんでありますが、岡田委員、そして穀田委員始めいろいろな先生方からさまざまな形で御指導いただいていることに感謝を申し上げたい、そう思っております。

 それから、尖閣諸島でありますけれども、御案内のとおり、歴史的にも、また国際法上も我が国固有の領土でありますから、多分、実効支配とお話しされましたが、有効に支配している、こういう状態にあると思っておりますが、この尖閣諸島周辺海域において、年間を通じた中国公船による領海侵入や接続水域内での航行が過去最高を更新して、中国公船によります日本漁船への接近事案が繰り返し発生している等、一方的な現状変更の試みが継続していること、引用していただきましたが、まことに遺憾だと考えております。中国のこうした活動については、外交ルートを通じて繰り返し厳重に抗議をいたしてきております。

 今後とも、日本の領土、領海、領空を断固として守り抜くとの決意のもと、冷静かつ毅然と対応してまいりたいと思います。

浦野委員 ありがとうございます。

 きのうの加藤官房長官の記者会見でですかね、アメリカとの安全保障の関係で、尖閣諸島は安全保障の対象になるという話を、言質があったということで、バイデン次期大統領との話でそういうのがありましたというニュースもありましたけれども、もう一つ、北方領土と竹島についてはその対象にならないということも、実際、加藤官房長官が従来どおりの、これまでの政府の説明と同じような説明をしました。

 要は、やはりしっかりと、我が国の領土だと口では言っても、今言われている有効支配ですか、有効支配がちゃんとできていなければ、そういう対象にもなかなかなっていかないんだということはやはり肝に銘じて、これからもしっかりと領土を守る、外交上、そういう活動もしっかりと展開をしていただけたらと思っております。

 次に、SDGsと関西・大阪万博との関連について。

 関西・大阪万博、二〇二五年ですので更に先ですし、井上担当大臣を、今回、しっかりと担当大臣をつくっていただいたということは、非常に大阪の人間としてはありがたいと思っています。

 ただ、SDGsの中に健康に関するものも含まれ、それを所信でも大臣が言及されましたので、特に、今回の万博、そのテーマに沿ってやっていくということで決めていますので、関連が強いと考えています。そうなれば、具体的な取組というのが何かあるのかなというふうに思っているんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

四方政府参考人 お答え申し上げます。

 大阪・関西万博が掲げますテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」でございまして、このテーマのもとで行われる一連の活動は、SDGsの達成に向けた取組と合致するものとして位置づけられております。

 二〇二五年はSDGsの達成期限である二〇三〇年の五年前であり、大阪・関西万博は、SDGs達成に向けたこれまでの取組状況を確認し、その達成に向けた取組を加速させる絶好の機会となるというふうに考えております。また、この万博の機会に、二〇三〇年以降を見据えたSDGs関連の取組につきまして世界各国の有識者や来場される皆さんが議論を行う場を設け、その成果を世界に発信していくことも今後検討してまいりたいと思います。

 内閣官房や経済産業省とも連携しながら、外務省といたしましても、引き続きオール・ジャパン体制でしっかり準備に取り組んでまいりたいと存じます。

浦野委員 具体的な取組というのは、今言及はなかったんですけれども。

 当然、SDGsはさまざまな分野に多岐にわたるものですので、これから、二〇三〇年というお話でしたけれども、それまでにかなりいろいろとやっていくというのは理解をしていますけれども、二〇二五年の万博に向けてさまざまな仕掛けを政府としてやっていっていただけたらと思っております。よろしくお願いいたします。

 次に、脱炭素社会について。私も勉強不足で、外務省の方に来ていただいたときにいろいろちょっとお話を教えていただいたんですけれども、CO2の排出量などは国際間の取決めで、いろいろ、途上国の排出量を売買する、売買するというか調整する、そういう仕組みとかがあります。

 脱炭素についても、そういった国際的な取組というのが現状あるのか。そして、あるのであれば、そういうのをこの日本もやっていくのかというのをちょっとお聞きしたいんですけれども、現状を今ちょっと御答弁いただきたいと思います。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、気候変動の問題は国際社会が取り組むべきグローバルな課題であって、我が国としましては、パリ協定を着実に実施していくということは大変重要であると考えてございます。本年はパリ協定の本格運用が開始される年でございまして、来年行われるCOP26に向けまして、気候変動対策に向けた国際的な機運が高まりを見せております。

 先般、総理の所信表明演説におきまして、二〇五〇年までに、温室効果ガスの排出を実質ゼロにする、脱炭素社会の実現を目指すことを日本は宣言をいたしました。これに対しましては、国連事務総長、来年のCOP26議長国のイギリス、その他の国々から歓迎の意が表明され、国際社会からも高く評価されているところでございます。

 また、菅総理とバイデン次期米国大統領との電話会談におきましても、気候変動問題を含めた国際社会の諸課題に対して日米間でともに連携していくことで一致をいたしました。

 引き続き、来年のCOP26に向けまして、日本の取組を世界に発信し、諸外国と連携、協力を深め、この分野での国際的な取組をリードしていきたい考えでございます。

茂木国務大臣 恐らく、もう発想を変える必要があると思うんです。環境問題というのが経済成長の制約要因という考え方から、まさにグリーンリカバリーのように、経済成長とグリーン化、これは相互作用を持ちながらいい効果をもたらす、こういう考え方が必要だと思っておりまして。パリ協定という話がありましたけれども、二〇〇〇年前はパリももっと寒かったわけですよ。当時はジュリアス・シーザーがガリア提督ですから、フランスを押さえていたわけでありますけれども、そのころは赤ワインができないぐらいフランスも寒かったわけでありまして、この二〇〇〇年間でもこれだけ変わってきている。もっと動きが早くなってきておりますから、しっかりした取組が必要だなと思っております。

浦野委員 ありがとうございます。

 CO2の排出量なんかは、この次に質問をする予定の、キッズ外務省のいろいろ調べて比較をしてみたというところがあるんですけれども、そこにも、排出量の多い国というのは中国、アメリカがやはり断トツなんですね。

 今大臣がおっしゃるように、それは経済に対してマイナスになるものではなくて、それをすることによってまた更に発展をしていく方向になっていくという考え方というのはやはり大事だと思うんですね。

 今、博識の大臣ですので、ガリア総督の話が出ましたけれども、僕らはもうちょっと身近な話でいうと、セミの生態分布ですね。大阪は、僕が子供のころはアブラゼミがほぼメーンだったんですね。ところが、今メーンなのはクマゼミなんですよ。クマゼミというのは南の方、九州の方でしか子供のころはいてなかったんですね、実は。それが今どんどんどんどん南限が上がってきて、大阪、関西でもクマゼミが普通にというか、もう主流がクマゼミになってしまいました。昔はクマゼミがおったら、もう、うおっと言うてみんなで取り合いするぐらいのレアなセミだったんですね、クマゼミというのは。でも、今はもうアブラゼミがほとんど見られなくなりまして、それがどんどんどんどん南限が今北上していっているそうです。

 これは、クマゼミは暖かい地域に出るセミだそうですので、日本国内でもどんどんどんどんそれが上がっていっているというのは、やはり温暖化の影響なんじゃないかなと思いながら毎夏過ごしているわけですけれども。地球環境の問題は世界規模で取り組まないといけないと思いますので、これからもしっかりと外務省も発信をしていっていただきたいと思います。

 キッズ外務省の件なんですけれども、これは大変いい取組だと思うんですね。恐らく、余り委員会で取り上げられたことがないみたいで、事務所に来ていただいた担当の方が物すごく喜んでおられたので、何かほとんどやはりみんなさわってくれないんやろうなというふうに思うんですけれども。

 でも、今これはすごく重要なホームページになっていまして、というのは、今の子供たちというのはいろいろなことを調べるのは全部ネットで調べますよね。そうしたら、このキッズ外務省に、今さっきちょっと紹介させていただいたいろいろな数字をデータ化して比較をしているところがあるんですね。かなり今たくさんの比較の項目があるんですけれども、その中の一つにCO2の排出量だとか、あと、面積の小さい国の順だとか、そういう本当になかなかおもしろい項目がいっぱいずらっと並んでいるおもしろいページがあるんですね。子供たちは、今はもうネットで何でも調べますので、そういうところに行き着いて恐らくそういうのを見ているんだと思うんですけれども、うちの子供も多分そういうのを見たことがあるみたいですけれども。

 今現在、これはもっと項目をどんどんどんどんふやしていきましょうよという話なんですけれども、一つは、僕が先ほど取り上げた脱炭素の関係、世界でどれぐらい炭素が使われていて、使われているという言い方なのか排出されているという言い方なのかわかりませんけれども、それが、CO2の排出量と同じようにどれぐらい世界各国が出しているのかとか、例えば。もう一つ、話題になりました判この制度、使っている国はどれぐらいあるのかとか、あと、ちょっと難しい話だと、総理の外交に使っている時間が、各国の首相が外交に使っている時間はどれぐらいなのかとか、そういうデータがあれば結構おもしろいかなと思っているんですけれども、いかがでしょうか、この取組。

茂木国務大臣 いずれにしても、キッズ外務省のことを取り上げていただいたのは初めてじゃないかなと思っておりまして、小中学生にこういったことを知ってもらうということは極めて重要で、世界いろいろ雑学ランキングも含めて内容は充実していきたいと思っております。残りにつきましては、手を挙げていますから。

吉田政府参考人 キッズ外務省についてお尋ねをいただきまして、まことにありがとうございます。

 キッズ外務省というのは、日本の外交政策であるとか外務省の活動につきまして、主に小中学生のような若年層に向けてわかりやすく説明する、伝えるためのサイト、外務省ホームページの中に開設したコーナーでございます。独自のキャラクターなどを用いまして、外務省の活動を説明する動画であるとか、クイズ、ニュース、新聞で取り上げられることの多い言葉であるとか国際問題、こういったものについて説明するQアンドAのコーナーなど、多数のコンテンツを用意してございます。

 アクセス数も年々ふえておりまして、昨年度は年間約四百六十万件でございました。今年度は、コロナ禍ということもあるのかと思いますけれども、それをかなり大きく上回る見込みでございます。

 御指摘いただきました世界いろいろ雑学ランキングの掲載事項につきまして、そういったアクセスの件数であるとか、国際情勢であるとか、そういったことを踏まえて定期的に見直して追加、修正を行っておりますので、今回の御指摘を踏まえまして今後とも内容の充実を図ってまいります。

浦野委員 ありがとうございます。

 これは、質問通告して来ていただいたときに、これ、大臣が手を挙げて答弁するんちゃいますかねと職員の方が言っていたので、そのとおりになっていますけれども、ほんまは先に聞いて大臣に感想を聞こうと思っていたんですけれども、先にお答えになりましたので。

 ぜひ、キッズ外務省、これからも充実をさせていただきたいと思います。

 どうも、質問を終わります。

あべ委員長 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 国民民主党・無所属会派の山尾志桜里です。

 まず、香港の民主派議員四名の資格剥奪についてお聞きしたいと思います。

 先ほど渡辺周議員の質問に対して茂木大臣は、重大な懸念を強めている、もたらす影響を注視していきたいというふうに、加藤官房長官のコメントと全く同じだったので、これが菅政権としての一致したコメントだと思うんですけれども。

 ただ、昨年来からの一連の出来事、そして今回、民主派議員の資格剥奪という民主主義と法の支配のちゃぶ台返しのような、こういうことが行われていることについて、やはり、重大な懸念を強めているということだけでは人権国家の価値観外交として余りに弱いんじゃないかなというふうに思いますので、ぜひ茂木大臣に、せめて重大な懸念という中身についてもう少し御自身の言葉で語っていただきたいというのが一問目なんです。

 先ほどから伺っていると、茂木大臣は御自身の言葉で説明される、答弁される大臣なんだなというふうに思っていますので、ちょっと考えていただく時間の間に、各国の外相あるいは担当官のコメントを紹介したいと思います。

 イギリスのラーブ外相はこんなふうに言っている。民主的な反対勢力に嫌がらせをし、抑え込み、失格させようとする一連の動きは、中国の国際的評価を汚し、香港の長期的な安定を損なうものだと。かなり強い言葉で話しているという状況ですね。

 オーストラリアのペイン外相は、立法会が香港の人々にとっての政治的な表現の場であり続け、一国二制度の支えとして役割を果たし続けられるよう当局者に求めると。これもかなり強い言葉で自制を求めています。

 アメリカですけれども、オブライエン大統領補佐官が言っているのは、中国政府が国際的な約束をあからさまに破ったことは疑いようがない、一国二制度は中国が一党独裁を香港に拡大するための隠れみのになっているということを言っています。

 言葉の強弱は、各国の情勢、そして外交上のバランスを図る必要があると思うんですけれども、言葉を尽くして価値を語る、中身を語るということで説得力を出す、存在感を出すということは、私、もっとできるんじゃないかというふうに思いますので、茂木大臣、いかがでしょうか、この重大な懸念の中身について。

茂木国務大臣 何人かの海外の外相や補佐官の名前を挙げていただきましたが、例えば、先日、G7の外相声明をつくるに当たりまして、相当、私、ラーブ外相と調整をして、それで発出に至る、こういう経過もありまして、ドミニク・ラーブという人間がどういう言葉を使うかということについても十分承知をいたしております。

 そういった中で、香港、やはり一国二制度のもとで発展していくことが重要だ、民主的に、安定的に発展していくことが重要だ、こういった考え方については多くの国が共有をしてくれるのではないかな。それに対して逆行するような動きが今議会において起こっている、このことについては極めて深刻な問題だ、遺憾だ、そのように捉えております。

山尾委員 今大臣から、逆行する動きが議会で行われているという答弁もありました。

 今回いろいろ、国安法の施行とか、相次ぐ拘束とか、日経新聞の香港支局への捜索も含むメディア弾圧とか、三権分立はないというキャリー・ラムの発言とか、そういった中で、今度は、大臣がおっしゃった、やはり議会でこういった、民主主義、法の支配という基本的な価値に逆行する動きが議会で行われたということを率直に指摘していただいたという点は、私は評価をしたいと思います。

 今、香港でこの価値基準の変更を黙認したら、それこそ世界の価値基準が中国基準に修正されていくということにもなりかねないので、ぜひきちっと物を言ってもらいたい。そして、物を言うだけじゃなくて行動の手段を広げておきたいということで、次にマグニツキー法の話に入りたいと思います。

 ちょうど、きのうのロイターの記事だと、イギリスでは、この香港問題について、中国にマグニツキー制裁を検討しているという議会答弁があったということなんですが、このマグニツキー法、人権侵害を行った個人や団体を対象としてビザ規制や資産凍結をするという制度です。今、国際的に広がっていますが、日本の現状はどうなんでしょうかということで確認したいと思います。

 人権侵害を理由に制裁を科すことは可能なのでしょうか。まず、法務省の担当の方。人権侵害を理由に入国拒否ないし退去強制をすることはできますか、あるいは、したことがありますか。

田所副大臣 上陸拒否の措置については、入管法五条一項に上陸拒否事由を列挙して、いずれかの事由に該当する者は上陸を拒否することとしているが、この上陸拒否事由の中に人権侵害を直接の理由とするものは存在しません。

 以上です。

山尾委員 存在しないということですから、当然、法のもとでしたことがないということだと思います。

 財務省、伺います。同じく、人権侵害を直接の理由に資産凍結を行うことはできますか、したことはありますか。

船橋大臣政務官 お答えいたします。

 外為法では、国連安保理決議など我が国が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行するため必要があると認めたとき、国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するため特に必要があると認めるとき、あるいは、我が国の平和及び安全の維持のため特に必要があるとき、このいずれかの要件に該当する場合において、資産凍結等の経済制裁を発動することが可能であります。

 委員御指摘の人権侵害を直接の理由とした外為法に基づく資産凍結の措置につきましては、今申し上げた三つの要件のうち国連安保理決議等に基づく場合は可能でありますが、それ以外については困難と考えております。

山尾委員 安保理決議なしにはできないということでありました。

 経産省にお伺いします。同じ質問ですね。輸出入規制をすることはできるんでしょうか、人権侵害を理由に。

佐藤大臣政務官 お答えいたします。

 資産凍結と同じようなスキームになりますけれども、現行外為法では、制裁に関連する措置として、三つの要件のいずれかに該当する場合において、輸出入に係る承認を受ける義務を課することが可能とされております。

 その要件は、繰り返しになりますが、我が国が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行するため必要があると認めるとき、国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するため特に必要があると認めるとき、我が国の平和及び安全の維持のため特に必要があるときの三つでございます。

 ですので、人権侵害を直接の理由として輸出入に係る制裁を行うことは、国連安保理決議等がある場合を除き、難しいと考えているところでございます。

山尾委員 それでは、外務省に伺います。外務省として、人権侵害を直接の理由にビザ規制をしたことはありますか。

水嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 査証事務につきましては、日本国の利益及び安全の維持並びに日本国の外交政策の円滑な実施に資するとともに、外国に渡航し、又は滞在する日本国民の利益を衡量して運用するということを原則としておりまして、個々の査証発給の可否につきましては、この運用原則に基づいて、外務大臣等の裁量により、個別具体的に判断をするというふうになっております。

山尾委員 ということで、つまり、人権侵害をきちっと直接の理由にして制裁をするという手段が日本にはないんですね。

 制裁メニューとしては、今言ったように、物をとめる、人をとめる、金をとめるというメニューはあるんだけれども、人権侵害を理由にはこういったメニューを発動することができない、安保理決議がある場合を除いては。なので、せめて日本版のマグニツキー法というのを整備して、それを可能にしておくという仕組みを今つくっておくことが必要だと思います。

 こうしたマグニツキー法の動き、アメリカを皮切りにここ五年で急速に拡大していますけれども、諸外国のこうした動きについて、外務省はいかに把握されていますか。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 マグニツキー法につきましては、まず、二〇一二年にアメリカにおきまして、ロシア人弁護士セルゲイ・マグニツキー氏の死亡に関与した者や当局の違法行為を暴露しようとする者への殺害、拷問などの人権侵害行為をした者に対し制裁を行うことができる、セルゲイ・マグニツキー法の支配責任法が制定されたと承知しております。

 その後、その法律は、二〇一六年になりまして世界マグニツキー人権責任法に改正され、世界じゅうにおいて、外国政府の違法行為を暴露しようとする者又は国際的に認められた人権を追求しようとしている者への殺害、拷問などの人権侵害行為をした者に対し、資産凍結や入国制限の制裁を行えることになったと承知しております。

 こうしたアメリカの動きに続く形で、イギリス、カナダなどで、人権を理由とした制裁措置を可能とする法律などの整備が進展していると承知いたしております。

山尾委員 皆さんのお手元の資料をごらんいただきたいと思います。

 これは経済安全保障の専門家の井形彬先生の調査によるものなんですけれども、まず一ページ目、成立済みが九つの国と地域ということになっています。米国、イギリス、カナダ等々書いてあると思います。

 そして、もう一枚開いていただくと、ここでは、EUが今マグニツキー法制定に向けて動いていますけれども、下に書いてあるとおり、議長国のドイツがことしじゅうに通すと、EU版マグニツキー法を。そして、来年一月には施行したいと述べておられますので、制定に向けて秒読みと言っていいのではないかと思います。

 もう一枚めくっていただいて、今度、オーストラリア、ここは検討中ですけれども、おもしろいのはというか興味深いのは、産業団体もこれを必要としていると。持続可能なビジネスにはこういったことを考慮しなきゃいけない、あるいは、オーストラリア企業はCSR上、世界のベストプラクティスを維持したいというようなことで、産業団体も含めてこういった制裁法をつくっていこうという動きが進んでおります。

 そして、もう一つめくっていただくと、これはおもしろいのはスイスなんですね。スイス、永世中立国ということで知られておりますけれども、ここでも、国全体とした制裁より、人権侵害にかかわった人へのピンポイントのスマート制裁が必要だ、こういう切り口でマグニツキー法の議論が進んでいるということであります。

 ここで茂木大臣に伺いたいんですけれども、こうしたふうに民主主義国が相次いでマグニツキー法を制定する中で、日本が動いていかないと、価値観外交は絵に描いた餅になってしまうし、そういった価値を同じくする国との連帯の輪からも外れてしまうので、ぜひ、日本の法体系、枠組みに沿う形で日本版のマグニツキー法というのを制定すべく、内閣そして国会一体となって動いていきたいなというふうに思うんです。

 茂木大臣、きのうは、情報収集、調査研究を進めるというような形で、ちょっと慎重かなというふうに受けとめたんですけれども、改めて、このマグニツキー法の必要性に向けた大臣の認識と、あるいは、こういった情報収集や調査研究を進める上で、目標、枠組み、期限など、明確にできることがあればお答えください。

茂木国務大臣 まず、我が国は、人権を普遍的な価値であるとして、その達成方法や文化に差異はあっても、人権擁護は全ての国の基本的責務と考えております。

 今、法務省、財務省、経産省、外務省、個別の案件について、こういう制裁ができるか、これはとめられるかという質問をしていただいて、それぞれについて現行制度ではこうだという答弁をさせていただいたところでありますけれども、少なくとも、日本のアプローチがどうであるにしても、人権状況の、達成方法が違うことによって、日本が人権問題について後ろ向きだと見られることはよくないことだと私は思います。今の日本の人権外交のあり方であったりとか国際法上の義務、これは考えなきゃなりませんけれども、そこの中で国際社会が今動いている、それに対してどんな対応ができるか、これは重要な検討課題だと思っております。

山尾委員 ありがとうございます。

 もちろん、WTOルールとか国際法のルールにどう一致させていくかということは大事な検討課題ですけれども、今見ていただいたように、既にもう成立し、運用している国もWTOの枠組みに入っている国であり、国際法のもちろん縛りの中でやっていることですので、ぜひ、日本でもできることだというふうに思います。

 今、議連の中でもこれを進めておりまして、参考資料を添付しております。ぜひここは、外交ですので、立法府、内閣、一緒になって、新たな手続、仕組みをつくることができればと思っております。

 本日はありがとうございました。

     ――――◇―――――

あべ委員長 次に、包括的な経済上の連携に関する日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣茂木敏充君。

    ―――――――――――――

 包括的な経済上の連携に関する日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

茂木国務大臣 ただいま議題となりました包括的な経済上の連携に関する日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、本年六月以来、英国政府との間でこの協定の交渉を行いました。その結果、令和二年十月二十三日に東京において、私と先方国際貿易大臣との間で、この協定の署名が行われました。

 この協定は、我が国と欧州連合離脱後の英国との間で、物品及びサービスの貿易の自由化及び円滑化を促進し、投資の機会を増大させるとともに、電子商取引、知的財産の保護等の分野における協力を強化するものであります。

 この協定の締結により、経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定、いわゆる日・EU・EPAのもとで得ていた利益を引き続き確保し、日系企業のビジネスの継続性を確保できます。また、高いレベルの貿易・投資ルールのもとで、我が国と英国との間の貿易・投資のさらなる促進につながると考えます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 何とぞ、御審議の上、本件につき速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

あべ委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十八日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することといたしまして、本日は、これにて散会をいたします。

    午後一時三分散会


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