衆議院

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第9号 令和3年4月21日(水曜日)

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令和三年四月二十一日(水曜日)

    午後三時開議

 出席委員

   委員長 あべ 俊子君

   理事 伊藤信太郎君 理事 鈴木 貴子君

   理事 鈴木 憲和君 理事 辻  清人君

   理事 中根 一幸君 理事 阿久津幸彦君

   理事 小熊 慎司君 理事 佐藤 茂樹君

      上杉謙太郎君    小田原 潔君

      尾身 朝子君    城内  実君

      黄川田仁志君    國場幸之助君

      佐藤 明男君    新藤 義孝君

      鈴木 隼人君    薗浦健太郎君

      中曽根康隆君    中谷 真一君

      松島みどり君    簗  和生君

      青山 大人君    岡田 克也君

      長谷川嘉一君    緑川 貴士君

      山川百合子君    渡辺  周君

      竹内  譲君    穀田 恵二君

      浦野 靖人君    井上 一徳君

      山尾志桜里君

    …………………………………

   外務大臣         茂木 敏充君

   内閣官房副長官      坂井  学君

   外務副大臣        鷲尾英一郎君

   外務副大臣        宇都 隆史君

   防衛副大臣        中山 泰秀君

   外務大臣政務官      國場幸之助君

   外務大臣政務官      鈴木 隼人君

   外務大臣政務官      中西  哲君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  中込 正志君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  十時 憲司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   石川 浩司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際文化交流審議官)       志野 光子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 赤堀  毅君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 赤松 秀一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 高杉 優弘君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 石月 英雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 有馬  裕君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   本清 耕造君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    森 美樹夫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大坪 寛子君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 大和 太郎君

   政府参考人

   (防衛省整備計画局長)  土本 英樹君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局次長) 青木 健至君

   政府参考人

   (防衛装備庁装備政策部長)            青柳  肇君

   政府参考人

   (防衛装備庁プロジェクト管理部長)        萬浪  学君

   政府参考人

   (防衛装備庁調達管理部長)            内藤 正雄君

   外務委員会専門員     小林 扶次君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十一日

 辞任         補欠選任

  中曽根康隆君     上杉謙太郎君

  山川百合子君     長谷川嘉一君

  山尾志桜里君     井上 一徳君

同日

 辞任         補欠選任

  上杉謙太郎君     佐藤 明男君

  長谷川嘉一君     山川百合子君

  井上 一徳君     山尾志桜里君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤 明男君     中曽根康隆君

    ―――――――――――――

四月二十日

 日本国の自衛隊とインド軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とインド共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 民間航空の安全に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 日本国の自衛隊とインド軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とインド共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 民間航空の安全に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

あべ委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長石川浩司君、大臣官房国際文化交流審議官志野光子君、大臣官房審議官赤堀毅君、大臣官房審議官赤松秀一君、大臣官房審議官高杉優弘君、大臣官房参事官石月英雄君、大臣官房参事官有馬裕君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長本清耕造君、領事局長森美樹夫君、内閣官房内閣審議官中込正志君、内閣審議官十時憲司君、厚生労働省大臣官房審議官大坪寛子君、防衛省防衛政策局次長大和太郎君、整備計画局長土本英樹君、地方協力局次長青木健至君、防衛装備庁装備政策部長青柳肇君、プロジェクト管理部長萬浪学君、調達管理部長内藤正雄君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

あべ委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

あべ委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。岡田克也君。

岡田委員 立憲民主党の岡田克也です。

 先般の日米首脳会談に関して、三点ほど議論したいと思います。

 まず第一に、自由で開かれたインド太平洋ビジョン、今回、ビジョンという言い方がされていますが、この点について確認をしたいと思います。

 日米首脳共同声明の中では、普遍的価値及び共通の原則に対するコミットメントに基づく自由で開かれたインド太平洋という共通ビジョンを推進するというふうに書かれています。普遍的価値及び共通の原則に関しては、自由、民主主義、人権、法の支配、国際法、多国間主義、自由で公正な経済秩序を含む普遍的価値及び共通の原則ということで、このインド太平洋という共通のビジョンの中には、民主主義とか人権という概念が重要な概念として入ってきているというふうに読み取れるわけです。まず、そういう理解でよろしいでしょうか。

茂木国務大臣 基本的にはそのような理解で結構だと思います。

 厳密に申し上げますと、岡田委員、幾つか御指摘をいただきました、自由であったりとか民主主義、そして人権、更に並べていきますと、価値と原則でいうと、これはかなり近いんですけれども、若干、バリュー、価値の部分と原則、プリンシプル、並べていただいた中の前者に重きを置いているのが価値で、後者に重きを置いているのが原則になるんじゃないかなと考えておりますが、おおむねそういった理解で結構だと思います。

岡田委員 そこで、この自由で開かれたインド太平洋というのは、安倍前総理の時代に打ち出された日本外交の看板政策の一つだというふうに思うわけですが、私の理解では、従来、そもそも自由で開かれたインド太平洋の中身がはっきりと定義されていないように思うんです。まあ、時間とともに変化していくのはやむを得ないとは思いますが。

 例えば、最近といいますか、二〇一九年三月の参議院予算委員会で安倍前総理が言われたのは、航行の自由、法の支配などの基本的価値の追求、それからインフラ整備等を通じた連結性の強化などによる経済的繁栄の追求、三番目が海洋法執行能力の向上支援や防災等を含む平和と安定のための協力、この三つを言われています。

 もっと前に言われていたのは、ルールに基づく国際秩序の確保、航行の自由、紛争の平和的解決、自由貿易の推進、こういうものでありまして、いずれも民主主義とか人権という概念は私は基本的に含まれていないものだというふうに理解していたんですが、ここの理解は、大臣、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 様々な会議において、また様々な場面において強調する部分というのは、若干オーディエンスの関係もありますけれども、この自由で開かれたインド太平洋、ここで普遍的な価値、また共通の原則と我々が考えているものが特に変遷してきた、そのようには思っておりません。

 例えば、二〇〇〇年代の一時、自由と繁栄の弧、こういった構想を進めてきましたけれども、この自由と繁栄の弧、これは、ある一定の地域において、そこの秩序であったりとか社会の在り方、規定するような考え方だったのに対して、自由で開かれたインド太平洋、これは、二〇一六年、TICAD6の際に日本が提唱したものでありまして、五年たっておりますが、世界の成長センターとしてのインド太平洋地域、こういう地域的な概念よりも、むしろ、共通の価値や原則、そしてそういったものに基づく様々な具体的な協力、そこにより重点を置いているものだと考えております。

岡田委員 かつて言われた自由と繁栄の弧というのは、私は一種の価値を言う価値観外交というふうに理解をしているんですが、この自由で開かれたインド太平洋というのは、具体的に説明されている、確かに、強弱の置き方で、場合場合で中身は少しずつ変わるんですけれども、もう少し具体的なことを言っていて、人権とか民主主義的な価値とか、そういったものはあえて言ってこなかったというのが今までではなかったかというふうに思います。それがいいか悪いかは別にしてですね。

 私がずっと見たところ、菅総理が一度、基本的価値と法の支配に根差した自由で開かれたインド太平洋の実現と、それから、安倍総理が二〇一七年十一月の衆議院の本会議で、「この戦略はまさに普遍的価値の上につくり上げられた戦略である」ということで、根差したとか上にというのも、言い方はいろいろなんですが、この自由で開かれたインド太平洋、構想そのものではない、その背景にあるものという言い方で使っておられたように思うんですね。

 今回の日米共同声明は、かなりはっきりと民主主義とか人権と。特に人権という概念が入ってきたのは私は初めてじゃないかというふうに思うんですが、そういうふうにされたということであります。

 もう少し定義を、これは日米で協議する必要があると思いますが、明確にした上でやっていかないと、なぜか雰囲気としては分かるんですけれども、内容ははっきりしないままそれを推し進めるというのは、やや日米が協力しながらやっていくビジョンとしてはいかがなものかというふうに思います。

 日本側が人権とか民主主義というものを大上段に振りかざさなかったのはそれなりの理由も当然あるわけで、やはり、この自由で開かれたインド太平洋、対象地域は非常に広範にわたるわけで、アフリカもあればアジアもあるという中で、それぞれ、民主主義の成熟度というか、かなり違う。ASEANですら、選挙で代表者が選ばれているという国は実はそう多くはないわけであります。

 そういう民主主義の成熟度を考えて、余り人権とか民主的価値というものを前面に出し過ぎると、かえってビジョンの外にこぼれ落ちてしまうということもあり得るので、あえて少し懐深く自由で開かれたインド太平洋というものを捉えてきたというのが日本外交だったんじゃないかと私は思うんです。

 そこのところはこれからもよほど気をつけていかないと、かえって、これは実質的には権威主義、専制主義との競い合いだということだとすると、そちらの方が心地いいので、いろいろな国をそちらの方にどんどん追いやってしまう、そういうふうにも考えられるわけですが、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 かなりの部分で岡田委員と考え方を共有すると思っておりまして、民主主義といっても、絶対にこうでなければならない、そういう形というよりも、ある程度の幅というか許容力というものが私は必要だと思っております。

 特に、この考え方、日本、米国だけではなくて、クアッド、さらには、AOIPを発表しましたASEAN、欧州、そしてアフリカ諸国、様々な国を巻き込んでいくという中において、ある程度の幅があるということは私は必要である、こんなふうに今考えております。

 ただ、幅があるためにそういったことについて打ち出してこなかった、そこにつきましては若干岡田委員とは認識を異にする部分はあるかもしれませんが、いずれにしても、我々が大切にしている価値であったりとか、そういったものについてできるだけ共有する国を増やしていく、そのための幅というものは今後とも必要だ、こんなふうに考えております。

岡田委員 安倍総理、第二期安倍政権になって、最初に訪れた国がベトナムでした。菅総理も最初にベトナムに行かれました。私は、若干違和感を感じながら見ていたんですけれども、もちろん、ベトナムは日本にとって非常に大事な国であることは間違いありませんが、別に選挙をやっているわけではありません、社会主義国ですね。そこに行って、自由で開かれたアジア太平洋というふうに言われるのは、少し違和感がございました。

 いずれにしても、今回、日米間でそういった人権とか民主主義の尊重ということを大きく打ち出されましたので、もちろんそれは大事な概念ですから、その背景にある、基本にあるものとして据えることは大事だと思いますが、自由で開かれたアジア太平洋ということを現実に進めていく上に当たっては、もう少し、柔軟性というか、懐の深さということが必要であるというふうに私は考えておりますが、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 先ほど申し上げたように、基本的に岡田委員と私の認識はそんなに変わっていないと思っております。

 特に、インド太平洋の中でも、その中心になりますASEAN、菅総理が昨年、最初の訪問先としてベトナムを選んだ。この中の一つの理由としては、昨年、ベトナムはASEANの議長国でもありました。そういう、まさにASEANの取りまとめる立場にあったベトナムを最初に訪問した、こういう意味合いもあると思うんです。

 ASEAN、アジアの国々、見てみますと、歴史も違います、文化も違います、体制的にもいろいろな違いがあるわけでありまして、そこの中で、ASEANとしても、どうやって一体性、中心性を保とうとするか、こういったことに取り組んでいるわけでありまして、日本としても、一九六〇年代以来のODAでも、そういったASEAN独自の取組というのも支援しながら、民主化プロセス、これも進めてきた、後押しをしてきた。こういったことも踏まえながら、今後、取組を進めていきたいと考えております。

岡田委員 次に、中国であります。

 日米共同宣言で中国の問題について具体的に取り上げて厳しく指摘をしたということですが、最後に、中国との率直な対話の重要性、直接懸念を伝達していく意図、それから、共通の利益を有する分野に関し、中国と協働する必要性を認識したというふうに結ばれました。どういう意図でこの表現を最後に盛り込まれたのか。

茂木国務大臣 今回の日米首脳会談におきましては、地域情勢、これについても、様々、率直な意見交換が行われたわけでありますが、中国について、ルールに基づく国際秩序に合致しない中国の行動に対して、懸念というのを日米で共有したわけであります。

 今後、やはり新しい国際秩序をつくっていく、こういった意味においても、さらには、例えば気候変動対策を進める、そして国際的な通商の円滑化を図っていくという意味でも、デカップリングするのではなくて、やはり、中国に大国としての責任を果たしてもらう、こういった働きかけが必要でありまして、そのための対話を行っていく。基本的に問題を認識した上で、対話によって様々な取組を進めていきたい、これが日米の共通の思いだ、こういう観点から共同声明の中に盛り込んでいるところであります。

岡田委員 私も中国を長く見ておりますけれども、特に指導者が替わって、最近の振る舞いはちょっと目に余る、理解できない行動が続いているというふうに思うわけです。ただ、そうはいっても、隣国であり、経済的にもお互い相互依存している関係で、やはり、しっかりとお互い対話をしていくということが重要だというふうに思います。

 ケリー大統領特使が同じようなタイミングで上海に行き、中国の韓正副首相と気候変動問題で両国の協力を確認いたしました。やはり、そういった一種の使い分けのようなことをやりながら、なるべく軌道修正を努力していくというのが日本やアメリカの取るべき態度ではないかというふうに思いますが、日中の話合い、私は、例えば戦略対話、そういった形で制度化するか、少なくとも外相間では相当しっかりと話し込んでいくということが重要だと思いますが、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 バイデン政権、まだスタートして数か月でありますが、恐らく、トランプ政権と比べた場合に、トランプ政権は、やはりアメリカの利益、こういったものを第一にしながら、一対一で中国と対峙をするという考え方だったのに対して、バイデン政権、岡田委員も今ケリー特使の話をされましたけれども、気候変動であったりとかコロナ対策、こういったことでは中国との協力も模索する。まさに国際協調、こういったものも重視をしながら、一方で、民主主義、基本的人権の尊重、こういった普遍的価値で譲ることはない、こういう考えで、この点については日米の間で一致をしている、こんなふうに考えております。

 トランプ政権と比べて、協調の側面も持っている。しかし一方で、さらに、単純なアメリカの利益というよりも、我々が国際社会全体として守っていかなきゃならない価値というものについてはより強い姿勢を示している、こういう部分もあると考えております。

 中国は、日本にとりましては隣国であります。引っ越しのできない仲であります。経済的な関係、そういったものもあるわけであります。同時に、中国との間では日本は様々な懸案というのも抱えているところでありまして、今後の状況であったりとか、また、戦略的対話というものが内外からどういうふうに受け止められるのか、こういったことも慎重に見極める必要はあると思っております。

 私も、王毅委員とは相当頻繁に、会談であったり、最近はどうしてもリモートになりますけれども、電話会談、先日も電話会談で一時間半、かなり長い時間になると思うんですが、行わせていただきまして、こういったハイレベルの対話を通じて一つ一つ懸案を解決し、また、中国に対しても、しっかり大国としての責任を果たすように働きかけを行っていきたいと思っております。

岡田委員 そうはいっても、やはり日中間、緊張するところはかなりこれから更に厳しくなっていきますから、容易なことではないというふうに思いますが、やはりそこは外交の出番ということでもあると思います。

 台湾問題について。

 今回の首脳会談では、両岸関係の平和的解決を促すという文字が加わりました。これは2プラス2の共同発表にはなかったものであります。

 昨日の本会議の総理の答弁を見ますと、従来の日本の立場を、日米共通の立場としてより明確にしたものであるという旨の答弁がありました。伝えられるところでも、これは日本側が最終的に盛り込んだ、主導的に盛り込んだものだというふうにも報じられていますが、どういう意図でこの最後の平和的解決を促すという文言が入ったのか、御説明いただきたいと思います。

茂木国務大臣 共同声明の策定過程については、まさに外交上のやり取りでありますのでコメントは控えたいと思いますが、その上で、我が国としては、従来から、台湾をめぐる問題、これが当事者間の直接の対話によって平和的に解決されることを期待する、こういう方針は一貫しておりまして、三月十六日の2プラス2におきまして、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した上で、それを踏まえて今御指摘のような表現を盛り込んだということによって、これが日米の共通の立場なんだということをより明確に示す、それがまた、中台含め国際社会に対しても明確なメッセージとして伝えるものになったと考えております。

岡田委員 少なくとも、中国、台湾双方に対してメッセージを発したということだと思いますが。

 そこで、その台湾ですけれども、一九七二年の日中共同声明第三項で、中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを表明し、日本政府は、この中華人民共和国の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持するということが確認されています。

 この意味するところは国会などで当時の大平外相などが説明などされていますが、日本政府としては、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるとの中華人民共和国の主張については、それを承認はしていない、ただ、十分理解し、尊重すると。そして、一つの中国、一つの台湾、あるいは台湾の独立は支持しない、こういった趣旨でこの第三項ができているというふうに説明しておりますが、その考え方は現時点においても変わっていないということでよろしいでしょうか。

茂木国務大臣 十分理解し、尊重する、その上でポツダム宣言の第八項に基づく立場を堅持する、これは全く変わっておりません。

岡田委員 さて、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸関係の平和的解決を促すとしたわけですが、日本として、この両岸関係の平和的解決を促す上で、具体的にどういったことが考えられるというふうに思っておられますか。

茂木国務大臣 ここの部分は、まず、こういった形で日本そして日米の立場というものを明確にさせていただいた、平和と安定の重要性、また、この問題の平和的解決を促す、こういう重要性についてメッセージを発した形であります。

 このことを我々は望んでいる、その上で、そうならない場合の想定というのは当然あり得ると思いますが、では、こういうケースについてどうする、これはまさに今後の外交努力にも関わってくる問題でありますし、安全保障にも関わってくる問題であるということは、岡田委員、よく御理解いただける点だと思います。

岡田委員 ですから、平和的解決に至るような外交的努力、それは日本外交としても大きな課題であるというふうに思います。

 最後に、核の問題についてお聞きしたいと思います。

 先般、東京新聞が報じたわけですけれども、オバマ政権が二〇一六年、広島に行った後ですね、核兵器の先制不使用宣言を検討したが、抑止力の低下を懸念した日本政府が反対した、そのことで断念したということを、当時の核不拡散担当国務次官補だったカントリーマン氏がインタビューで述べたというふうになっております。

 まず、こういう事実があったんでしょうか。

茂木国務大臣 報道の一つ一つについてコメントすることは今までも控えてまいりましたが、日米両国間で日頃から、日米安保、防衛協力について、様々な事項について、緊密かつ幅広く意見交換を行っているところであります。

 先日の岡田委員との議論の中でも、この核の先制使用、この宣言について、これはあくまで一般論という形でお話ししたと思うんですが、全ての核兵器国が検証が可能な形で同時に行わなければ実際には機能しないのではないかなと考えておりまして、現時点で、当事国の意図に関して何らの検証の方途のない核の先制不使用の考え方に依存して、我が国の安全保障に万全を期すことは困難だと考えております。

 こういった考え方については、おおむね日米間でそごはない、こう考えております。

岡田委員 私も外相のときにこの先制不使用の議論というのがあって、そのときに、当時の冷戦時代のソビエトが、先制不使用を唱えながら、現実にはそういったことを考えていなかったということが文書で明らかになって、やはりこの概念は余りよろしくない、そういう御提案をアメリカ側からもいただいたことはあります。でも、そういうことも十分分かった上で、オバマ政権はこの先制不使用ということを打ち出そうとした。それから、バイデン大統領は、大統領になる前ですけれども、先制不使用とは言っていませんが、ソールパーパス、唯一の目的ということで、ほぼ同じようなことを言っているわけですね。

 日本の安全が守られないというふうに言いますが、先制不使用は駄目だということは、逆に言うと、先制使用の余地を残しておかないと日本の安全は守れないというふうに言っていることになりますね。核の先制使用を、その余地を残さないと日本の安全は守られないんでしょうか。先制不使用というのは、もちろん攻撃を受けたら撃ち返すことまで否定しているわけじゃありませんから、それで十分じゃないかと私は考えるんですが、大臣の、なぜ日本の安全が守られないのか、もう少し具体的にお話しいただけますか。

茂木国務大臣 核の先制不使用であったりとか、唯一の目的、ある意味、その先にある崇高な、やはり核廃絶、こういったものも将来的な目標としながら、そこに至るプロセスとしてそういった発言というのは私はあるのだと思っておりますけれども、では、実際にその状況に持っていけるかということを考えたときに、少なくとも、今の我が国を取り巻く安全保障環境については、それだけの保証がないということであります。

 ただ、先制不使用イコール、先制不使用の条件が整っていないと先ほど申し上げましたけれども、これがなかなか現状においては実際に機能するような方策がないという段階で、我が国の安全保障に万全を期すことは困難ということ自体、先制使用を許容しているということではありません。

岡田委員 いろいろ言われますが、よく分からないんですね。

 例えば、先制不使用ということをアメリカが宣言すれば、米朝の話合いだってそこで一歩進む可能性がありますよね。北朝鮮にとっては、アメリカが先に使わないということを明確に言うだけでも。

 ですから、もちろん、こういう宣言政策というのは相手がどう捉えるかという問題はありますけれども、最大の核保有国であるアメリカがそれを言うということは、核の役割を減らしていく、核軍縮の大きな一歩になる、その可能性があるだけに、私は、日本だけの立場で狭く考えてそれを否定してしまう、しかも、その日本の否定が元になってアメリカの政策が打ち出せなかったというのが、これは極めて残念なことだというふうに思うんですね。

 広島からオバマ大統領が帰って、そして、その上で、こういったことで一歩進めようとしたときに、それを実質的にブロックしたのは日本であったということは、私は、極めて残念なことだし問題だと、安倍政権の時代ですけれども、そういうふうに思いますが、何か感想はありますか。

茂木国務大臣 先ほども申し上げたように、私は報道を肯定しているわけではありません。そういった意味で、日米間におきましては、この核抑止力も含め様々な議論をしているということでありますし、核のない世界をつくっていく、これは、唯一の戦争被爆国として日本が大きな責任を持っていると考えておりまして、そういった中で、日本としてきちんとした対応をしてまいりたいと考えております。

岡田委員 最後に確認しますが、この日米首脳会談でも、日米両国は拡大抑止を強化することにコミットしたというふうに書かれているわけですけれども、首脳会談の中でアメリカ側から、核の先制使用の議論は何か議論があったんでしょうか。それに対して、日本としてはどう答えたんでしょうか。議論がなかったのなら、なかったというふうに断言していただきたいと思います。

茂木国務大臣 ありませんでした。

岡田委員 終わります。

あべ委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 立憲民主党の渡辺でございます。引き続いて質問をさせていただきます。

 冒頭、大臣に伺いたいのですが、今日二十一日、韓国のソウル中央地裁で元慰安婦二十人が日本政府に三十億ウォンの損害賠償を求めていた訴訟で、ソウル中央地裁は、国家の行為や財産は他国の裁判所で裁かれないという国際慣習法上の主権免除の原則を認めて、却下をしました。

 今年一月に裁判長が、同じこの中央地裁で、主権免除を認めないで、日本側の全面敗訴の判決を言い渡しておりまして、僅か三か月で司法判断が割れたという格好になっております。

 この点につきまして、現時点での日本政府、外務省の受け止めを伺いたいと思います。

茂木国務大臣 まず、報道も含めて、若干複雑な関係が、混乱している部分もありますので、整理して申し上げた方がいいんじゃないかなと思うんですけれども、まず一件目の判決に関して、今日報道もあったところでありますけれども、実際には三月二十九日に韓国のソウル中央地裁が、訴訟費用確保のために韓国国内の日本政府資産を差し押さえることは国際法に違反するおそれがある旨の懸念を示す決定をしているわけであります。

 こうした韓国国内手続の一つ一つにコメントすることは差し控えますが、この一月の判決、これは、国際法及び日韓両国間の合意に明らかに反するものでありまして、韓国が国家として国際法違反を是正するために適切な措置を講じることを強く求めているところであります。

 一方、本日出されました韓国・ソウル中央裁判所の判決、これは、原告の訴えを却下したもの、このように承知をいたしております。

 元慰安婦等が日本政府に対して提起した訴訟に関して、我が国としては、これまで、国際法上の主権免除の原則から、日本政府が韓国の裁判権に服することは認められず、本件裁判は却下されなければならない、こういった立場を繰り返し表明してきたところでありまして、今回、今日の判決がこのような主権免除についての日本政府の立場を踏まえたものであるとするならば、適切なものであると考えております。

渡辺(周)委員 これを受けて官房長官は、何か、精査をしたいというようなことを会見でおっしゃっております。まだ第一報の整理がついていなかった時点だと思いますが、今、外務大臣の答弁で、少し日本側の立場について理解をしました。

 今おっしゃったような、この一月の判決について、三月二十九日付で、訴訟費用を確保するための日本側の資産の差押えについては、これは駄目だと慎重な見解を示して、事実上、別の判事さんが、判決を下した判事とはまた別の判事が職権で決定文を出していたということも併せて報道をされているわけでございます。韓国は、政権が替わるたびに政策が変わり、過去も裁くというような異例のことが、実際、国際法の中でこんなことが許されるのかということは過去にもございます。

 司法までが不安定なのかというふうに思わざるを得ないことを我々も痛感したことがございますが、今回のことを受けて、変化が起きている、いわゆる国際慣習法上の原則をやっと認めたということで、何かしら変化が起きているというふうに受け止めているのかどうか。

 二〇一五年の政府間合意は救済手段だったということを否定せずに、今もこれは有効だということも併せて判断をしたようでございますが、日本と韓国、というか韓国が一方的に行ってきた様々なこうした訴訟に対して、今後の見通し、変化が見られるのかどうか、その点について、大臣はどう考えていらっしゃるか、再度伺いたいと思います。

茂木国務大臣 先ほど申し上げたように、今回の判決が我が国の主権免除についての立場を踏まえたものであるならば適切なものと考えておりますが、あくまでこれは、一月、そして今回を含めた、また三月二十九日も含めた、司法といいますか裁判所の形でありまして、日本が求めていますのは、韓国が国家として国際法違反、これを是正すべきであるということでありまして、それに対する韓国側の前向きな提案、これを我々としては期待をしたいと思っております。

渡辺(周)委員 改めてこの問題、もう少し、後日報道も更に出てくると思いますので、精査をしながら、また質問したいと思います。

 続いて、五輪のことについて、前回も伺いましたけれども、また伺いたいと思います。

 四月二十日ですから昨日、ロイターという報道機関の報道によりますと、アメリカの国務省は、渡航情報を改定し、渡航してはいけないレベル4の国を世界の八〇%に拡大すると発表しました。現在三十四か国、更にこれに百三十か国を加えることになるとのことでありますけれども、そもそも、この百三十か国に日本は入っているのかどうか、その点の事実確認を行いたいと思います。

有馬政府参考人 お答え申し上げます。

 米国時間十九日、米国務省は、近く渡航勧告の見直しを行い、世界の約八〇%を最上級のレベル4、すなわち渡航中止勧告の対象とする方針を示しました。これを受けて、米国時間二十日から、各国に関する渡航勧告の見直しが順次発表されております。我が国は現在レベル3、渡航再検討勧告のランクでございますが、現時点では、我が国については特段の発表は行われておりません。

 米国政府とは日頃から緊密に意思疎通を行っており、引き続き情報収集を続けるとともに、日本政府として適切に対応してまいりたいと考えております。

渡辺(周)委員 これは入っていたらえらいことですよね。一週間前に、一週間もしていませんね、先週、まさに日米の首脳会談が行われたところでございます。日米の首脳が、更なる日米関係を強固なものにしていくということを約束したばかりでございます。そんなときに、まさか日本に行ってはいけないなどということが入るとは思いませんが、今の話ですと、いまだ、まだ日本にはそうしたことは連絡は来ていないということでよろしいですか。これは、まとめて発表するんですか、それとも五月雨式に発表するんですか。そこのところはどう情報収集していますか。

有馬政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたとおり、米国時間十九日、米国務省は、近く渡航勧告の見直しを行い、新たなる発表を行うということを、方針を示しております。それを受けまして、四月の二十日付で、新たに百二か国がレベル4、新たに二十か国がレベル3、十一か国がレベル2に指定されております。

 米国が今後どのような発表を行うかについては、私の方から予断を持って申し上げることは控えたいと思いますけれども、先ほど申し上げましたとおり、米国政府とは日頃から緊密に意思疎通を行っておりまして、引き続き情報収集を続けるとともに、日本政府として適切に対応してまいりたいと考えております。

渡辺(周)委員 今具体的に数字がありましたけれども、レベル4が百二か国、レベル3が二十か国、レベル2が十一か国ということは聞いている、ただ、その中のどこに日本が入っているか入っていないかについてはまだ把握できていないということでよろしいんですか。

有馬政府参考人 申し訳ございません。委員に混乱をお招きしたとすれば、おわび申し上げます。

 今私が申し上げましたのは、米国時間四月二十日に、国名、今ここに全ての国名はございませんけれども、フィリピン、マレーシア、モンゴル、インドネシア、ミャンマーといった国、百二か国が新たにレベル4に指定され、また、ネパール、ラオス等二十か国が新たにレベル3に指定され、ベトナム、タイ、韓国、シンガポール等が新たにレベル2に指定されておりまして、我が国は三月二十九日付でレベル3に指定されておりますけれども、我が国については特段新しい発表は行われていないという状況でございます。

渡辺(周)委員 その発表で、まさか、日米首脳会談が行われた後にこういうことが報道されたので、実は何かしら日本も影響を受けるのではないか、関係するのではないかというようなことを、少し先走ってやはり勘ぐってしまうわけなんですね。

 だとすれば、いずれにしても、渡航については、報道によりますと、国務省は、渡航者に前例のないリスクだと、それを理由に、三十四か国から、百三十か国を加えることになる、全体の国の八割になるということになるんですが、そうしますと、アメリカのオリンピック選手、開催を前提として質問すれば、東京オリンピックのアメリカ選手の派遣には影響があるのかないのか、影響があるんじゃないか。

 何よりも、行ってはいけない国の、渡航者に前例のないリスクがある国の選手と場所を変えて東京五輪で相対することは可能ということはとても考えられないんですけれども、今回これが発表されることによってどういう影響があるというふうに日本はお考えですか。その点について、ちょっと受け止めを聞きたいと思います。

有馬政府参考人 お答え申し上げます。

 米国選手団の東京大会への派遣につきましては、今後、米国オリパラ委員会によって判断されるものであると承知しております。

 米国のオリパラ委員会がどのように判断されるかについて私から申し上げることについては控えさせていただきますけれども、政府といたしましては、東京大会について、米国を含む多くの国、地域に参加いただけるよう、感染対策を含め、環境整備に引き続き努めていく所存でございます。

渡辺(周)委員 この話はもうずっとやっていますけれども、国内に入国した後の国内の感染対策の話じゃないんです。日本の国に入国できるかどうかということが、これはオリンピックの、選手が来なかったらオリンピックにならないわけですから、そこのところを今まで聞いているんですけれども、ずっと、国内の感染対策に万全を期すと、その話ばかりなんですね。

 では、ちょっと聞きたいんですけれども、外務省は、在外公館を通して、日本政府の五輪開催への決意が、いつの間にか努力を支持されるようになっていますけれども、五輪開催の決意なのか努力なのか、実現に向けての協力を取り付けるという活動はしているんでしょうか。

 というのは、外務省のホームページを見ますと、コロナ前までは、例えばホストタウン、静岡県も十二のホストタウンが、いろいろ様々な、事前の合宿であるとか地域住民との交流のこととかございまして、それに対して外務省もやっていますと、すごく積極的にアピールしていたんですけれども、もう最近は、見ても全然出てこなくなってしまいました。

 この点について、それぞれの国が、やはり東京オリンピック、オリパラ開催に対していろいろな懸念や不安を持っているとすれば、何が不安でどうなんだ、また現状、各国はどのような意向を持っているのかということについて、在外公館を通して説明あるいは情報収集、そして得た情報を集約して本国に伝えるような、外務省を挙げての活動をやっていますか。その点についてはいかがですか。

志野政府参考人 お答えいたします。

 東京大会に関しましては、今年の夏に安全、安心な大会を実現するために、政府といたしましても、IOC、大会組織委員会、東京都などと緊密に連携して準備を進めてきております。

 外務省といたしましても、いろいろな首脳あるいは外相会談の際に総理及び大臣に御発言をいただいたり、あるいは、在外公館における外交活動において必要な情報提供あるいは情報収集などに努めてきております。

渡辺(周)委員 もう何か、今まで同じ言葉、百日切っているんですよ、オリンピックまで。もうとてもそんなレベルの話じゃないんだけれども、そこまでしか答えられないということなのかなと思いますが。

 ちょっと聞き方を変えますが、バッハ会長が五月の十七日に来日をするというような報道がされています。そこで何らかの発言が出るのではないかというふうに言われておりますけれども、丸川大臣あるいは橋本会長が、これまで、選手へのワクチン接種を前提にしていないというようなことを言っているんですけれども、これは、海外から来る選手もワクチンを前提にしていないということなんでしょうか。

 懸念で言えば、レスリングや柔道をワクチンを打っていない国の日本の選手と誰がやりたいと思うかと。もっと言えば、総理がゴールデンウィークに外遊する予定だったインドは、もう今、一日二十七万人というすごい数の感染者が出ている、こういう国の中で本当にオリンピックができるのだろうかと。もっと言えば、ワクチンを前提にしないなんということがあり得るのだろうかということを、これは素朴にみんな思うんですが。

 その点について、今日は、内閣府、来ていただいているね、組織委員会。その点についてはいかがですか。やはり、来る人間も日本の選手もワクチン接種は行って当然だということになります。ならなければおかしいんですが、いかがですか。

十時政府参考人 お答え申し上げます。

 海外から東京大会に参加する選手に対しましてワクチン接種を入国の条件とすることについて、現段階では検討しておりません。

 その上で、東京大会については、ワクチンの接種を前提としなくても安全、安心な大会を開催できるよう、必要な検査、行動管理を始めとした総合的な感染症対策の検討を進めているところであり、これをもって対応を進めていきたいと考えております。

渡辺(周)委員 もうワクチンを打たないで安全、安心というのは、ちょっとあり得ないと思うんですよ。

 これは、相手国も、選手にだって来てもらわないといけない。大体、世界から来る、オリンピック開催を前提とすれば、各国が本当にPCR検査をちゃんと受けることができているのか、本当にその精度は大丈夫なのか、あるいはワクチンはちゃんと行き渡っているのか、そういう各国のそれぞれの事情を考えたら、これは相当急いでやらないと。ワクチンを打ってから二回目の接種の間に例えば二週間の時間が必要、それで、二回目の接種をした後にその効能が出るまでの間また時間がかかると考えれば、オリンピック開催まで、入国まで逆算をしていけば、もう日はほとんどないんです。ですから、そんなことを考えていないみたいなのんきなことは言ってられないと思います。それは逆に、もうオリンピックはないというように何か考えているんじゃないかと疑いたくなるんですが。

 そこの点について、やはりちゃんとそこはやらなきゃいけない。何でワクチン接種が必要じゃないというふうに現時点でお考えなのか、その点についてもうちょっと御説明いただけますでしょうか。

十時政府参考人 お答え申し上げます。

 東京大会におきましては、ワクチンの接種を前提としなくても安全、安心な大会を開催できるよう……(発言する者あり)はい。

 必要な検査、感染症対策を講じることとしておりまして、例えば、出国前七十二時間以内に検査を受検して、陰性の検査証明を取得していただき、入国前十四日間には健康モニタリングの提出を求めるといったことで、感染をしていないということを確認しつつ入国をしていただき、入国後におきましても、健康管理そして厳格な行動管理をしながら、感染を防ぐ対策を講じつつ、大会を開催、運営していくということで対応していくという方向で取り組んでいるところでございます。

渡辺(周)委員 もうあきれてちょっと言葉が出ないですけれども。

 ワクチンを接種をした選手が来る、その上で検査もして、ワクチンを接種しても陽性になった人はいるわけですから。新たな変異株が世界で出ている。もしやるとすれば、そこまでやらなきゃいけないんだけれども、国内の選手も前提にしていない、来る選手も前提にしていない、それで世界二百何か国・地域から来られたら、これは恐ろしいことに本当になるんじゃないかと思わざるを得ない。ちょっとそれは再考された方がいいですよ。

 大体、調整会議も、この間指摘しましたけれども、十二月二日でもうぱたっと止まっているんですね。だから、本当はもうやる気がなくなっているんじゃないかというふうに思わざるを得ないから、何度も質問しているんです。

 ちょっともう十分になりました。ほかの質問にしますけれども、この点について、是非また改めて、このオリンピックの、本当にもう百日切って、もう精神論の時期ではない。ワクチンを接種する日から逆算を、入国の日から逆算をする、あるいは、ワクチンの接種の効用からすれば、もう時間がないわけなんですね。そんなおおようなことを言っている暇があるんだろうかということはまた指摘をして、次、質問したいと思います。

 ちょっと質問は変わりますけれども、今、法務委員会で質疑をされている入管法について、これは所管委員会ではないから中身については質問はいたしません。ただ、外務省の受け止めと今後の取組をちょっと伺いたいと思うんですが、先般、この日本の国における、国連の人権理事会から書簡が出されました。

 法務省は、国際人権諸条約や難民条約に違反するものではないという見解で答えております。

 しかし、我が国は、二〇二〇年の一月一日から三年間、人権理事会の理事国でありまして、これは五期目、五回目です。

 いわばその身内から、改正入管法に対して国際法違反ではないかという共同書簡が出されて、実はその前にも、恣意的拘禁ワーキンググループが、昨年の九月二十三日、日本が収容期間を定めていないこと、収容の必要性や合理性について検討されないこと、それを指摘して、入管法の速やかな見直しを要請していました。

 それを受けて入管法が改正される運びとなるわけですが、まだ審議中ですけれども、これに対して、またこれも国際法違反だという指摘があります。

 私たちは、先ほど岡田委員も指摘されましたけれども、やはり人権外交という中で、今、中国の様々なやり方に対して、人権ということを一つの切り口、やはり普遍の価値をもってして、それを正していこうという立場でございます。

 国連人権理事会の理事国を務めている私どもの国がこのようなことを言われているということに対して、日本政府はどのような今見解をお持ちでしょうか。

赤堀政府参考人 お答えいたします。

 入管法改正案に関しまして特別報告者から書簡が出ておりますけれども、前提といたしまして、我が国は、二〇一九年国連人権理事会理事国選挙に立候補した際、二〇一九年一月に、国連人権高等弁務官事務所及び特別手続との有意義かつ建設的な対話を重視している旨表明しております。

 こういった考え方に基づきまして、特別報告者を含む特別手続による報告が、客観的で正確な情報に基づき正しい理解の下になされるよう協力してきておりまして、引き続き、関係省庁と連携して、特別報告者に対して、日本政府の立場を、考えをしっかり説明していきたいと考えております。

渡辺(周)委員 その説明はいつされますか。

 だから、やはり日本は、国連人権理事会に立候補した際の誓約として、国連人権高等弁務官事務所や特別手続の役割を重視、特別報告者との有意義かつ建設的な対話の実現のため今後もしっかり協力していく、そういう誓約をしてなった、その整合性がやはり問われるわけでございまして。

 私は、今日は法務省の方はお見えになっておりませんけれども、法務省と外務省の方が、日本の政府として、この点については真摯に受け止めて、何らかの形で、ここで法案の話をしてもしようがないんですけれども、やはり政府で共有をしていただいて、重く受け止めて、この書簡の重みを共有して、人権問題で我が国が姿勢を示す、名誉ある地位を占める我が国の立場をつくるべきだと思いますけれども、再度、いかがですか、その点について。

赤堀政府参考人 お答えいたします。

 我が国は、国際人権諸条約や難民条約の締約国として、条約が定める義務を誠実に履行してきており、我が国の制度がそれらに違反しているということは考えておりません。

 御指摘の書簡は、日本政府から入管法改正案に関する説明を受けることなく発出されたものでありますけれども、四月六日に、現地ジュネーブ代表部から特別報告者の事務局に対しまして、我が国の政府の考え方を説明しております。

 今後とも、丁寧に説明し、正確な理解を促進することが重要と考えており、法務省と連携して適切に対応していく考えでございます。

茂木国務大臣 事実関係について、今、政府参考人の方から答弁があったとおりでありますけれども、率直に言うと、やはり、もっと前からコミュニケーションを取っておいた方が私はいいなと思っております。きちんと説明して、理解してもらえることだったらそれでいい。

 もし是正すべきことがあったら、やはり自分の問題ですから、人権を大切にしているというなら、国内で是正すべきことは是正する、しっかりできているのなら、そのことを早い段階から説明する、こういった努力が必要だと思っています。

渡辺(周)委員 またこの点についても改めて質問します。

 残り数分ですが、ちょっと台湾のことにつきまして、日米首脳会談で、五十二年ぶりに台湾海峡という言葉が明記されました。先ほど岡田委員もありましたけれども、両岸問題の平和的解決を促すという意味において、私は、日米協力が一段上のレベルに引き上がった、日台関係も一段上に引き上げるべきと考えます。例えばですけれども、台湾に行く外交官の、あるいは政府関係者を、更に往来を活発にさせるべきだと思います。

 伺いたいのは、直近の政府関係者の訪台というのは一体今何名なのか、それが一問目。そして、今も台湾では、例えば静岡県のお茶を含めまして、産地証明や、あるいは放射線検査の報告書が必要とされるような輸入規制がかかっています。今後、ALPS処理水の対応をめぐっても台湾とは密接に協議すべきだと思いますが、そこで伺いたいのは、国際環境の変化を踏まえて、二十年ぶりにこの内規を見直す考えはないか。そして、政務三役の派遣を含めて、やはり両岸の平和的対話を促す意味においても、積極的に台湾に日本政府の高官が行くべきだと思いますけれども、その点についてのお考えを伺いたいと思います。

石月政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、台湾への出張者を原則課長未満とすること等を定めた内規につきましては、平成十四年以降の見直しを経て、現在は使用されておりません。

 国家公務員の台湾渡航については、台湾との関係については非政府間の実務関係として維持するという基本的立場及び……(渡辺(周)委員「それはいいですから。人数を聞いている」と呼ぶ)はい。柔軟に対応していくということとしております。

 その上で、直近の訪台者数の数字でございますけれども、日本政府関係者の訪台者数を網羅的に把握しているわけではございませんので、正確にお答えすることは難しい面がございますが、直近ということで申し上げれば、現在、日本、台湾共に、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、出入国管理上の水際対策措置を強化しているため、少なくとも、今年に入ってから日本政府関係者が公務で台湾を訪問したケースはないものと認識しております。

 台湾につきましては、日本政府関係者の訪台につきましては、先ほど申し上げました我が国の基本的立場を踏まえ、個別具体的な状況及び必要性に応じて対応することとしております。台湾との関係を、日台間の協力と交流の更なる深化を図っていくとの考えの下、引き続き適切に対応していきたいと考えております。

茂木国務大臣 私の記憶では、二〇一七年だと思うんですが、当時のあかま総務副大臣が台湾を訪れておりまして、地方関係のPRイベントにも出席をしております。

 もちろん、日台間、非政府間の交流ということでありますが、そういったものも踏まえながら、今後どういった交流の促進を図っていけるかということについてはよく考えていきたいと思っていますし、委員おっしゃるように、まだ台湾においても、一方では、例えば東日本大震災のときは積極的に国を挙げて募金を募ってくれたりもありますが、一方では食品の輸入規制等々も残っている、こういうこともありまして、様々な障害を取り払っていく中で一層交流というものが盛んになる、こういったことを期待したいと思っております。

渡辺(周)委員 是非、台湾とは、一九七二年の様々な取決めも承知しています、ここまで政府関係者がなかなか行かれなかったこともありましたが、もうその国際環境が大きく変わってきました。

 やはり、日本が主体的に中国と台湾の間で対話を促すというのであれば、日本の先ほど申し上げたような国益も含めまして、もっと活発な政府幹部の往来をすべきだということを申し上げまして、持ち時間が来ましたので、質問を終わります。

 以上でございます。ありがとうございました。

あべ委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 共産党の穀田恵二です。

 茂木大臣、最初に一言お聞きしたいんですけれども、先ほど連絡がありまして、菅内閣総理大臣のインド出張が中止になったという報告が来ました。お互いのことですから、これは理由は何なんですか。

茂木国務大臣 申し訳ありません。私、ずっと一日委員会におりまして、まだ外務省に戻っておりませんので、様々なことについて、先ほどまで参議院の方でずっと本会議があったりしていましたので、申し訳ないんですけれども、その確認は取れておりません。

穀田委員 とても大事な海外出張で、その問題について私の方が早く知っているというんじゃ、ちょっとね。幾ら委員会に……(茂木国務大臣「しようがない。帰してもらっていない」と呼ぶ)いやいや、ですから、幾ら委員会にあったとしても、それぐらいの報告は必要かなと思うんですよね。そこだけ言っておきたい。別に他意はないんです。だから、何でそういう、理由が何なのかということをお聞きしたかったということであります。

 では、本番に入りますというか、本題に入りたいと思います。

 日米首脳会談について聞きます。

 菅総理とバイデン大統領による初の首脳会談を受け発表された共同声明は、台湾海峡の平和と安定の重要性に言及し、両岸問題の平和的解決を促すことを明記しました。しかし、看過できないのは、この台湾海峡をめぐる問題が、軍事同盟の一層の強化を全面的に打ち出す中で位置づけられていることであります。

 台湾問題で中国が軍事的圧力や威嚇を強めていることは、断じて容認できるものではありません。同時に、日米両国が台湾問題に軍事的に関与する方向に進むことは、問題の解決に逆行することは明らかだと考えます。

 台湾問題の解決は、台湾住民の自由に表明された民意を尊重し、あくまでも平和的な話合いで行われるべきではないかと思うんですが、所感をお伺いしたいと思います。

茂木国務大臣 後半の部分についてはかなり穀田議員と一致する部分はあるんですが、まず、日米同盟に対する見解というのは、かなり幅があるのかなと考えております。

 日米同盟は、元々二国間の関係でありましたが、今や、地域そして世界の平和、安定、さらに繁栄の礎になっている、このように考えております。

 そういった中で、今回、バイデン大統領が就任して初めての首脳会談、英国でもお隣のカナダでもなく日本の菅首相との直接の会談ということになりまして、そこの中では、もちろん、台湾問題だけではなくて様々な国際的な課題、コロナ対応、そしてまた気候変動問題、自由で開かれたインド太平洋の実現、こういったことについても認識の一致を見ているところでありますが、中国であったりとか地域に関する情勢の中で、台湾をめぐる問題、これが当事者間の直接の対話によって平和的に解決されることを期待する、これは我が国の従来からの立場でありまして、これを日米共通の立場としてより明確にしたということは大変意義のあるものだ、このように考えております。

穀田委員 茂木大臣は、今もお話ありましたけれども、台湾海峡をめぐる問題については、これまでも、当事者間の直接の対話によって平和的に解決されることを期待すると答弁しています。しかし、さきの日米2プラス2や共同声明の内容は、それに全く逆行するものだと私は考えているんですね。

 といいますのは、共同声明は、日米2プラス2の共同発表文を踏襲し、中国に対抗するために、日米同盟の抑止力、対処力の強化を確認しています。しかし、これを見ていますと、重大なことは、日米同盟とインド太平洋地域の安全保障を一層強化するとして、日本が自らの防衛力を強化する決意を表明したことであります。

 菅総理は、今回の共同声明を日米同盟の羅針盤と強調していますが、これを盾に日米両国が中国との軍事力の増強を競い合うという事態になるんだったら、大変なことになる。軍事対軍事の悪循環をもたらし、台湾問題の平和的解決につながらないのは明白ではないかと思うんですが、いかがですか。

茂木国務大臣 日米共同声明、私は英文で見ましたので、ちょっとページ数が違うところはあるかもしれないんですが、たしか二ページ目の最初の部分で、おっしゃったような、日米の抑止力、対処力を強化する、こういう言葉があって、中国の文脈の中で最初の部分に若干出てきますけれども、そこと台湾の部分は離れたところで書いてあった、このように記憶をいたしております。

穀田委員 述語の問題と何か文脈の問題に話が行っていますけれども、本質問題をちょっと私は言っているつもりなんですね。ページ数がどこかと、私は余り詳しく、英語訳の問題について、そこのページ数を言っているわけじゃありませんので。問題は、共同声明で記した抑止力、対処力の強化とは一体何かということになりますよね。

 対処力とは、抑止力が破綻した後に起こる事態に対応するための軍事力のことではないか、これが普通の常識だと思うんですね。だから、共同声明で対処力の強化を明記したということは、台湾海峡をめぐる問題で、抑止力が破綻した場合を想定した軍事力を日米双方で強化しようということを約束したということになると私は考えます。

 そこで、米国は、インド太平洋軍司令官が、六年以内に中国が台湾を侵攻する可能性があるなどと危機感をあおり、沖縄からフィリピンを結ぶ第一列島線に精密打撃ネットワークを備えた統合部隊を展開するなどの構想を打ち出しています。御存じのとおりだと思います。

 日本に対しては、次期インド太平洋軍司令官に指名されたアキリーノ氏が、日本は中国からの攻撃に対抗できるよう、米軍との相互運用が可能な防空、ミサイル防衛、航空優勢、警戒監視と情報収集、諜報、偵察能力を強化すべきだと述べて、まさに軍事力の一層の増強を求めています。

 茂木大臣は、こうした米側の要求にお応えになっていくというおつもりですか。

茂木国務大臣 まず、先ほど申し上げたのは、確かに抑止力、対処力の強化ということは書いてありますけれども、それは台湾の文章について書いてあるのではない、その書いてあった位置について申し上げたので、決して何か議論を散らすために申し上げたのじゃない、趣旨としてはそういうことであります。

 その上で、今我が国を取り巻きます安全保障環境、これは穀田委員も御案内のとおり、一層厳しさを増している、このことは、恐らく、ここにいらっしゃる委員の方、誰も否定はされないんだと思います。

 そういった中で、日米、同盟国でありまして、その抑止力、対処力を高めていく、これは、我が国の国民の安心、安全、生命、こういったものを守っていく上で不可欠であると考えております。

穀田委員 先ほど私言いましたように、次期インド太平洋軍司令官に指名されたアキリーノ氏が言っている中身、これは、米軍との相互運用が可能なということで、防空、ミサイル防衛、航空優勢、警戒監視と情報収集、諜報と全部言っているんですよね。まさに、日本は軍事力そのものを強化すべきだということまで言っているわけです。だから、一層の厳しさを増している、一般論はそのとおりで、認識はそうなんでしょうけれども、具体的にそれに応じるのかということを私は言っているわけです。

 皆さん、こういうことを言うと、日本は日本なんですと当然、いつも大臣は言うわけですよ。でも、米軍は、第一列島線付近で武力衝突が発生した場合、増援部隊が到着するまでに三週間かかる、こう言っています。そして、その間、水陸両用能力などを持つ日本の自衛隊が対処することを求めています。さらに、先ほど述べた次期アキリーノ氏は、日本が中国の弾道ミサイルや巡航ミサイルの攻撃に自ら対処できる能力を持つことは、日米と同盟諸国にとって死活的に重要だとも強調しています。

 このように、米国が日本に求めているのは、台湾有事などの軍事作戦で中国との戦力差を埋めるための役割。それに応えていくことは、日本が米中の軍事衝突の最前線に立たされることになりかねないということだということを、今、私としては警告しておきたいと思います。

 私の考えるような考え方、あえて、また次はそういう点を議論したいと思うんです。

 そこで、中山防衛副大臣に伺いたいと思います。

 岸防衛大臣は、三月二十三日の記者会見で、台湾海峡をめぐる問題について問われ、「防衛省・自衛隊としてもあらゆる事態に備えて、わが国の法令の範囲内で適切に対応できるように不断に検討をしている」と答えています。

 そこで、ここで言う「わが国の法令」とは一体何なのか、具体的に法令を挙げていただきたいと思います。

中山副大臣 穀田先生、ありがとうございます。

 まず、今御指摘のありました令和三年三月二十三日火曜日の午前九時三十五分から九時五十六分までの会見、記者からこのような質問がございました。

 先日の日米防衛相会談で、台湾海峡の平和と安定の重要性について認識されたと発表されていますが、その後共同通信が、大臣とオースティン国防長官との間で、台湾有事で緊密に連携する方針を確認したという報道がありまして、これが事実かどうか。これが事実だった場合に、どのような連携を具体的に確認したのか教えて下さい。

大臣からは、

 台湾海峡については、防衛大臣会合の中でですね、台湾海峡の平和と安定が地域の平和と安定にとって重要であるという認識を共有したところでございます。これ以上の具体的なやり取りの内容については、答えを差し控えさせていただきたいというふうに思います。わが国として領土・領海・領空、そして国民の命、平和な暮らしをしっかり守り抜くという政府の責任をしっかり果たしていかなければいけません。防衛省・自衛隊としてもあらゆる事態に備えて、わが国の法令の範囲内で適切に対応できるように不断に検討をしているところでございます。台湾海峡を巡る問題については、当事者間の直接の対話によって平和的に解決をされる、また、地域の安定に寄与することを期待するというのがわが国の立場でございます。中国が軍事力を強化させる中で、中台の軍事バランスは全体として中国側に有利な方向に変化し、その差が年々拡大しているような状況が見られます。防衛省としても、引き続きこの状況については、しっかり注視をしてまいりたいと考えております。

ということでございます。

 この岸大臣の発言は、あくまで、我が国に係るあらゆる事態に備えて、現行の様々な法令に基づき適切に対応できるよう不断に検討を行う旨を申し述べたものであり、特定の法令を念頭に置いたものではないというのが見解でございます。

穀田委員 結局、そのときの発言を読み上げたというのが主な内容で、あと言っているのは、あくまでそういう準備をしているんだという一般論を言っているだけなんですよね。

 私が聞いたのはそうじゃないんですよ。台湾海峡をめぐる問題で、防衛省・自衛隊があらゆる事態に備えると。あらゆる事態に備えるんでしょう、そのために一体どんな法令に基づいて対応を検討しているのか、その法令とは具体的に何かということを聞いているんですよ。

中山副大臣 大臣は我が国のいわゆる防衛について言及をしたまででございまして、台湾有事という今先生から御指摘のあった仮定の質問についてお答えすることは差し控えますが、いずれにせよ、いかなる事態においても、我が国の領土、領海、領空、そして国民の命と平和な暮らしを守り抜くことは政府の最も重要な責務であり、引き続き万全を期していくという考えでございます。

穀田委員 問われた内容を、もう一遍言いますよ。

 大臣が問われたのは、そういう台湾に関係して、それをどうするのかと答えているわけですやんか。私が今度聞くと、一般的決意を述べているだけなんですよ。

 要するに、あらゆる事態に備えて、国民の命って、それは考え方の根本にあるんでしょう。だけれども、そういう場合というのは何か、何でもかんでもできるわけじゃないんですよ。どういう検討をしてはんねんと。あらゆる事態に備えるために法令に基づいて対応を検討しているのか、その法令は何かということを聞いているわけですよ。

 ないなら、ないということで、そういうことについては答えられないなら答えられない、何かきちっと言ってくれないと。

中山副大臣 あえて御指摘の岸大臣の発言ということではなく申し上げれば、防衛省・自衛隊は平素より、防衛省の所掌事務などを定めた防衛省設置法、それから自衛隊の任務、自衛隊の権限等について定めた自衛隊法などに基づき、業務を遂行しているところであります。

穀田委員 そうすると、あらゆる事態に備えて対応を検討していると説明しておきながら、今の説明は、防衛省設置法、自衛隊法でやっているんだと。それはないでしょう。それが全てになっているわけではないことは明らかだと思うんです。

 では、少し角度を変えて聞きますけれども、現行法令には重要事態法や事態対処法というものがある。これらの法律は、防衛省・自衛隊であらゆる事態に備えて対応を検討しているという様々な法令、私ども回答をいただきました、そういう文書の回答が来ているんですけれども、様々な法令から除外されるのかということはどうですか。

中山副大臣 いかなる事態が、例えば重要影響事態、それから存立危機事態、武力攻撃事態に該当するかについては、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合して客観的、合理的に判断することになるため、一概にお答えすることは困難であるというふうに申し上げたいと思います。

穀田委員 そういう一般論を聞いてそれをどういうふうに判断するかというのは、別の、次のカテゴリーの問題なんですよ、本来。

 今私が聞いているのは、全体の法体系と皆さんがおっしゃっているんやから、しかも、現行法令には、そういうように重要影響事態法やそれから事態対処法というのがある、この二つ。これを、防衛省・自衛隊であらゆる事態に備えて対応を検討しているという、その法令からは除外されるのかと聞いているんですよ。

中山副大臣 今も申し上げたように、何か事態が実際生じるまでの仮定の質問には、なかなか具体的には、御納得いただく範囲でお答えができかねるわけでありますけれども、先ほど申し上げたように、重要影響事態、それから存立危機事態、武力攻撃事態、そういった事態を判断するというのは、そのときそのときに応じてしっかりと適宜判断をさせていただくということになろうかと思います。

穀田委員 それは、そういう起こっている事態がどういうのに値するかという話であって、何回も聞いているように、そういうあらゆる事態に備えて対応を検討しているという法令からは除外されるのかどうかと聞いているわけですやんか。ということは、除外されないということですか。どっちなの。

中山副大臣 いずれにしても、法律の中に含まれているということだと思います。

穀田委員 もう一度聞きますよ。

 そうすると、あらゆる事態に備えるための、どんな法令に基づいて対応を検討しているのかという場合、その法令の中に重要影響事態法や事態対処法というのは含まれるということでいいんですね。

中山副大臣 基本的に、防衛省・自衛隊というのは、我が国の防衛に資する、そのための法律でありますから、その我が国を守るための法律の中には、今先生が御指摘になられたような、私たち、国を守るという意味での法令、法律は全てこの中に含まれる、そういう認識でございます。

穀田委員 何回も聞いているその話を、あっちゃこっちゃずらしたらあきませんで。

 一番問題にしているのは、私は、台湾海峡をめぐる問題であらゆる事態に備える、その中にそういう法律はあるのやなと聞いているんだけれども、もう一度。

 だから、一般論じゃなくて、分類をどうするかとか当てはまるかと聞いているんじゃなくて、それは除外されないんだなということでいいんですね。もう一回。

中山副大臣 先ほど、なぜ当日の記者会見を読ませていただいたかというと、大臣は台湾海峡の有事について答弁しておられません。ですから、我が国の防衛についての話を答弁されているということをあえてリマークしたかったので申し上げた次第です。

 その上で、台湾有事という仮定の質問にお答えすることは差し控えたい、かように考えております。

穀田委員 それは、認識の、まさに話をずらすための話でしかないですよね。問われているのは、台湾有事の問題というのが問われているんですよ。要するに、結局、そのことを言うことになるとはっきりせぬわけだけれども、四の五の言って。日本防衛その他という話じゃなくて、客観的には台湾有事が来た場合ということについて質問しているから答えているわけで、そういう脈絡で話をしている内容をそらしては駄目ですよ。

 要するに、防衛省・自衛隊では、重要影響事態法や事態対処法など安保法制に基づいて、台湾海峡で起こり得るあらゆる事態を想定し、既に対応を検討しているということを言わざるを得ないと思います。

 更に聞きます。

 防衛省は、先ほどありましたように、いかなる事態が重要影響事態や存立危機事態に該当するかについては、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して判断すると言います。先ほどもありました。

 そこで聞きますけれども、防衛省・自衛隊が対応を検討しているあらゆる事態には重要影響事態や存立危機事態は含まれないんですか。

中山副大臣 まず、いかなる事態においても、我が国の領土、領海、領空、そして国民の命と平和な暮らしを守り抜くことは、政府の責任であります。防衛省・自衛隊としても、あらゆる事態において適切に対応できるよう不断に検討しているところですが、事柄の性質上、そのような内容について申し上げることは差し控えさせていただきたい、かように思います。

 その上で、いかなる事態が重要影響事態や存立危機事態、武力攻撃事態に該当するかについては、先ほど来御指摘のあったとおり、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合して客観的、合理的に判断するということになるため、一概にお答えさせていただくことは困難であるということでございます。

穀田委員 安保法制の議論のときも同じ答えをやって、そうじゃないんですよ。言っているのは、事態の判断を聞いているんじゃないんですよ。判断を聞いているわけじゃないんですよ。防衛省や自衛隊が対応を検討しているあらゆる事態には重要影響事態や存立危機事態は含まれないのか否かということを聞いているんですよ。答えてくださいよ。

中山副大臣 先ほど来申し上げていることが、繰り返しになると思いますけれども、いかなる事態が重要影響事態それから存立危機事態、武力攻撃事態に該当するかについては、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合して客観的、合理的に判断することになるため、一概にお答えすることは困難であるという認識です。

穀田委員 壊れたレコードみたいに同じことを言っているわけなんです。私が言っているのは、事態の判断を聞いているんじゃないと何回も言っているわけですやんか。

 河野前統合幕僚長は、三月三十日付の朝日新聞で、「今後、想定されるのは台湾有事だ。台湾有事で米軍が出動した場合、日本も「重要影響事態」と認定して米軍の後方支援にあたる可能性は十分にある。」と明言しているんですよ。もしそうなれば、約五万人が駐留する在日米軍基地は出撃拠点になる。

 菅総理は、台湾有事が集団的自衛権行使を可能とする存立危機事態に該当することについては否定していないわけですよ。

あべ委員長 申合せの時間が経過しておりますので、御協力願います。

穀田委員 はい。

 存立危機事態に認定されるような事態になれば、自衛隊が戦渦に巻き込まれるリスクが一気に高まります。中国への軍事的な対応を強化することは、こうした軍事対軍事の危険な悪循環を生み出すだけだ。そのことを指摘して、質問を終わります。

あべ委員長 次に、浦野靖人君。

浦野委員 日本維新の会の浦野靖人です。よろしくお願いします。

 まず一点目ですけれども、邦人拘束についてお聞きしたいと思います。

 報道でもなされていますように、北角裕樹さんというジャーナリストの方が拘束をされたと報道がありました。拘束された理由は、あちら側の言い分によると、うそを流したということだそうですけれども、何がうそで何が本当かというのは当事者によって変わりますので、一概にそうであるということにはなりませんけれども、どちらにせよ、これは非常にゆゆしき事態だと私は思います。

 その同じ報道の中で、日本大使館から面会を求めたけれども、この話を聞いた時点ではまだ実現していないということでした。

 そうであるならば、もちろん、面会をする努力は、現地の在外公館が努力を重ねていただいているとは思いますけれども、間違っていることだということを外交的にやはりしっかりと日本政府として発信していくべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 十八日の夜に、委員御指摘のように、ヤンゴン在住の四十代の邦人ジャーナリストがヤンゴン市内の自宅において逮捕されまして、現在、ヤンゴン市内のインセイン刑務所に拘束をされている。ミャンマー当局によりますと、当該邦人にけが等はないということであります。また、この拘束の理由について、これは委員おっしゃる理由であります。

 ただ、こうした状況は我が国としては受け入れられるものではなくて、ミャンマー側に対して抗議をするとともに、当該邦人の早期解放をあらゆるレベルで求めているところであります。

 二十四日にも、ASEANの首脳会議がジャカルタで予定をされております。昨日も、その首脳会議に出席しますフィリピンのロクシン副首相と私、電話で話しまして、この事態の早期鎮静化と同時に、拘束されている関係者の早期解放、これをしっかり連携して求めていきたいと。多分、その点も、今回の会議では、ASEAN側の主張としても、また国際社会の主張としても、ニュージーランド等々も問題に思っているわけでありまして、しっかりとミャンマー側に伝えるということになると思います。

 もちろん、日本としても、在ミャンマーの日本大使館を含め、働きかけ、しっかり続けていきたいと思います。

浦野委員 是非よろしくお願いしたいと思います。

 まだまだ恐らく数的には、日本に限らず、ジャーナリストの人たちは現地にたくさんいらっしゃると思うんですね。こういう理由で拘束されるという話になりますと非常にゆゆしき事態になると思いますので、是非しっかりと大臣がおっしゃったような対応をしていただけたらと思います。

 続いて、北朝鮮外交について質問をさせていただきます。

 日米首脳会談で拉致問題を含む北朝鮮問題についてお話があったと思いますけれども、どのような話だったのか、まずお聞かせいただきたいと思います。

石月政府参考人 お答え申し上げます。

 先般の日米首脳会談では、菅総理とバイデン大統領との間で、北朝鮮の完全な非核化へのコミットメントを再確認し、北朝鮮に対して国連安保理決議の下での義務に従うことを求めることで一致いたしました。また、菅総理から、拉致問題の即時解決に向けて引き続きの理解と協力を求めたのに対し、バイデン大統領から、拉致問題の即時解決を求める米国のコミットメントが改めて示されたところでございます。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

浦野委員 北朝鮮は、東京五輪への不参加を表明しました。表向きは新型コロナ感染症ウイルスによる世界的な健康上の危機的状況から選手を守るためということですけれども、三月末にはミサイルも発射しまして、今回の発表は額面どおりに受け止めるものじゃないと思います。発表のタイミング、深読みすれば、アメリカとその同盟国である日本に対して強いメッセージを送ったんじゃないか、その強いメッセージが読み取れるんじゃないかと思います。

 ブリンケン国務長官も、北朝鮮に対する新たな制裁措置を検討する可能性があると発言をしましたし、北朝鮮に対して対決政策にかじを切ったんじゃないかというふうに思います。

 もちろん、北朝鮮は反発を強める一方ですけれども、日本としては、北朝鮮の非核化とともに、拉致被害者を取り戻すという最大の目的があります。北朝鮮との直接対話はもちろん糸口さえつかめていない状況で、表向きね、まあ、それは分からないですけれども、今後、日本政府としてどのように北朝鮮と交渉をするつもりなのか。従来の政府方針にあるように、諸外国からの理解と支持を得つつ、北朝鮮による具体的な対応を引き続き強く求めていきますということで、従来のとおりそのままとどめるのか。関係諸外国と連携するとともに、日本独自の戦略を示すべきと考えていますけれども、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 今、バイデン政権、北朝鮮政策のレビュー、多分もう最終フェーズに入るぐらいだと思っておりますけれども、三月の段階というのは、それが佳境を迎えつつある中で、北朝鮮として何らかの意味で挑発行動を取ったという側面は強いと考えております。

 我が国として、日朝平壌宣言に従いまして、拉致、核、ミサイル、こういった諸懸案を包括的に解決して、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化を目指していく、こういう基本姿勢に変わりはありません。

 そして、北朝鮮のあらゆる大量破壊兵器、さらにはあらゆる射程の弾道ミサイル、これの開発であったりとかを止めていく、CVIDを実現するためには、厳格な国連制裁、この履行ということが極めて重要だと考えております。

 そういった中で、この拉致問題、これはまさに我が国自身が主体的に取り組む問題であります。

 恐らく、人権の問題についてこの委員会でも様々な議論を行っておりまして、若干の意見の食い違いはあると思うんですけれども、バイデン政権、この拉致問題、アブダクションというのをまさに人権問題として捉えている、これは間違いないところだと思って、こういったことも受け止めながら、これは日本がやはり主体的に取り組まなきゃならない。

 様々なチャネル、あらゆるチャンスを見極めながら、直接、金正恩委員長と菅総理が向き合う、こういったことが解決に向けては極めて重要だと思っておりますし、昨年も、有本恵子さん、そしてまた横田めぐみさん、それぞれの、お母様、そしてお父様がお亡くなりになる、こういった中において、まさに御家族の皆さん、高齢化をされておりまして、一刻の猶予もできない問題だ、こういう思いでしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

浦野委員 ありがとうございます。

 制裁による影響は着実に出ていると思うんですよね。北朝鮮で、少し前に報道でありましたけれども、在外公館の方々が退去をしたという報道がありました。それは、恐らく日常生活に必要なものすら、物資すら滞るようになってきて、もう生活が維持できないから退去したんじゃないかというふうに報道がありました。

 制裁はかなり効いてきているんじゃないかということも一部報道がありましたので、是非、ありとあらゆるタイミングをつかんで、交渉をよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、防衛省に納入される装備品について質問をします。

 報道によりますと、自衛隊に機関銃を供給している住友重機械工業、住友重機が、現在の陸自の次期機銃選定の途中で辞退した、機関銃の生産をやめると発表したとあります。

 住友重機に関しては、二〇一三年に、これらの機銃の性能や耐久性などのデータを四十年以上改ざんし、防衛省が定める発射速度や目標命中率などの基準を満たさないまま納入していたことが判明して、同社は指名停止措置五か月、賠償請求金額六千二百四十七万ほどの罰金を受けた過去もあるということですけれども、今回の撤退理由について教えていただきたいと思います。

萬浪政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の住友重機械工業の関係でございますけれども、陸上自衛隊におきまして新機関銃の選定に今着手してございまして、住友重機械工業製のものを含む参考品三品種から選定するための試験を行っていたところでございます。

 今般、同社からでございますけれども、仮に同社の製品が選定された場合においても、新機関銃の量産を辞退する旨の連絡を受けてございます。

 防衛省といたしましては、同社が機関銃全体から生産の取りやめを発表したとは承知しておりませんが、いずれにしましても、個別企業の経営方針に関することにつきましては、防衛省からお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 以上でございます。

浦野委員 自衛隊が使用する装備品については、例えば、輸出規制がかかっている当該国の部品を使った整備品を使用していた場合、有事の際に部品供給を意図的に止められるということになれば非常にまずいことになると思うんですね。

 自衛隊で使用する装備品やそれに使われる部品納入について、防衛省ではどのような審査や規定があるのか、教えていただきたいと思います。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛省としては、防衛装備品の納入の際には会計法令等に基づく監督、検査を実施するなど、適切な調達を実施しております。

 また、防衛装備品については、FMSや輸入により海外から調達するものもありますが、防衛省としては、ライセンス国産や国内における整備基盤の確保により、国内において安定的に維持整備ができるよう努力しております。

 さらに、防衛大綱及び中期防において、装備品に係るサプライチェーンの調査等を通じてその脆弱性等に係るリスク管理を強化することとしており、自衛隊において防衛装備品が安定的に使用できるよう努めております。

浦野委員 今御答弁をいただいたんですけれども、住友重機が今回撤退した原因は、実は、表向きは採算などの経営上の理由ということですけれども、一部中国産の部品を使っていて、中国製品を使っていたということがばれて、それで防衛省から絶縁宣言をされたといううわさがあります。

 この点、これは通告していませんので、答弁は結構ですけれども、それが本当なら、これは結構大きな問題になりますので、真実をしっかりと調べていただけたらなと思いますので、是非よろしくお願いをしたいと思います。ごまかして、輸入できないものを輸入していたという話になるんだったら、これは重大問題ですので、よろしくお願いをしたいと思います。

 住友重機だけではなくて、防衛産業から撤退する大手企業が増えているということです。戦闘機も、F35Aが迷走して選定されることになりましたけれども、そのときに、横浜ゴム、住友電工が生産から撤退。その後、戦闘機などの射出座席を生産していたダイセルはもう完全に防衛産業から撤退した。コマツは装甲車製造から撤退。同社は砲弾も製造しているけれども、これも戦車や火砲の数が前防衛大綱から現防衛大綱になって半減することが決まって、撤退も時間の問題だと言われているということです。

 性能もさることながら、海外製品に比べて国産製品は割高だという指摘もあり、企業として、研究開発に投資しても回収できないという面もあると思います。しかし、日本の安全保障を考えた場合に、企業の撤退により純国産装備品の開発が進まないことは非常に危険だと考えますが、この点について、防衛省、見解をお願いします。

青柳政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、防衛事業から撤退した企業があるという御指摘がありましたけれども、これは、そういうものが存在するということは事実でございます。

 この点につきまして、私どもが重要だと考えておりますのは、防衛産業をめぐる動向が、必要な装備品の取得や維持整備等、今後の防衛力整備や自衛隊の運用に大きな影響を与えることがないよう対応していくということでございます。

 我が国の防衛産業が、防衛力整備や自衛隊の運用の観点から、我が国の防衛を支える大きな柱であるということは言うまでもございません。次期戦闘機を我が国主導で開発しているように、我が国の防衛に必要な能力を満たす国産装備品の調達を着実に進めていく必要があると考えております。

 そのためにも、我が国の防衛産業が、安全保障環境に適応した今後必要となる優れた装備品をしっかりと開発、生産することができるよう、技術基盤、産業基盤の強化に取り組むことが重要だと考えてございます。

 その具体例を幾つか申し上げれば、今年度におきましてはこれまでで最高の額となる約二千百十六億円の研究開発費を計上するなど、優れた装備品を造ることができるよう技術の獲得に努めております。

 また、装備品の海外移転を官民連携して推進するとともに、輸入装備品等の維持整備等への我が国の防衛産業の参画を推進してございます。さらに、企業の価格低減努力の一部を利益として還元する仕組みの導入など、企業の裨益にも考慮した、契約制度の改善などにも取り組んでいるところでございます。

 その上で、万が一企業が防衛事業から撤退するとなった場合には、我が国の防衛力整備や自衛隊の運用に影響が出ないよう、撤退を計画している企業からの円滑な事業譲渡を支援するための予算も計上しているところでございます。また、こうした取組を実効的に行うためには産業側との連携が重要でございます。一昨年から経団連との意見交換を行うなど、官民連携を深める努力をしてございます。

 防衛省といたしましては、引き続き防衛技術基盤、産業基盤の強化のための施策に取り組んでまいりたいと考えております。

浦野委員 しっかりとやっていただきたいと思います。

 続けて防衛省に質問をそのまましますけれども、三月十四日にサイバーコンテストというイベントを行っています。ホームページによると、目的は、サイバーセキュリティーに関する専門的知見を備えた優秀な人材を発掘することを目的として開催することとしましたとありますけれども、開催する詳細な理由を教えていただきたいことと、もうこれは時間がないので続けて質問しますけれども、防衛省提出の設置法の一部を改正する法律案の中で、自衛官の定数の変更があります。理由は、サイバー領域の優位性の獲得に必要な部隊の新編、拡充を始めとする防衛省・自衛隊の体制の整備のためということですけれども、上記のコンテストとリンクして、このコンテストでの優秀者を防衛省で雇用するのか、外部から人材を確保することはあるのか、その場合、対象人物が諸外国から影響を受けている人物であるかなどの検査は厳重に行われるのか、答弁をお願いします。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、サイバーコンテストの目的につきましては、成績優秀者も含めましてコンテストの参加者にはサイバーセキュリティーに関する専門的知見が求められる職員の募集案内を行っておりまして、我々といたしましては、この人たちから採用につなげることを目指していきたいと考えているところでございます。

 それと、委員御指摘の二点目でございますが、自衛隊サイバー防衛隊の関連でございますが、サイバー防衛隊の人員規模は全体で約五百四十名、そのうちサイバー関連の人員は隊本部及びサイバー防衛隊を合わせて約百六十名増の四百五十名を予定しておりますが、当該増員につきましては原則現職自衛隊員の補職によって補充するということを考えているところでございます。

 先ほど申しましたように、他方、サイバーコンテストにつきましては、外部からの幅広い人材を確保するための新たな方法として、セキュリティーに関する専門的知見を備えた優秀な人材を発掘することを目的に開催したものでございまして、先ほど申しましたように、自衛官又は技官等の採用につなげたいと考えているところでございます。

 ただ、このサイバーコンテストの参加者にはセキュリティーに関する専門的知見が求められる職員の募集案内を行って採用につなげることを目指しておりますが、今回のコンテストにおける成績のみをもって職員として採用することはないということでございます。

 いずれにいたしましても、職員の採用に当たりましては、面接等も含めた総合的な人物評価というものを慎重に行っていきたいと考えているところでございます。

浦野委員 時間が参りましたので、質問を終わります。ありがとうございました。

あべ委員長 次に、井上一徳君。

井上(一)委員 国民民主党・無所属クラブの井上一徳です。

 本日は、久しぶりに外務委員会で質問をさせていただきます。貴重な質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 日米首脳共同声明について質問をさせていただきたいと思います。

 私も、この日米首脳共同声明につきましては、今後の日米が共に目指すべき方向性を示したものとして一定の評価をさせていただいています。

 中国とは長期的な外交戦略を持って対応する必要があると思っておりますので、まさにこの声明はその出発点だというふうに思っております。これからこの共同声明に基づいて日米が共に具体的な行動をしていく、それによってこの共同声明の真価が試される、そういうふうに思っております。

 そういう観点から、具体的な行動という意味で質問をさせていただきたいと思います。

 まずは、共同声明では、台湾海峡の平和と安定の重要性が明記されたということで、中国は、この共同声明を受けて、尖閣諸島に対してこれまで以上に威圧的、挑発的な行動をしてくることは十分考えられるわけです。そのためにも、尖閣諸島について、しっかりとこれを守り抜く、この意思を明確に示しておく、これが重要だと思っています。

 これは総務委員会でも何回か質問したんですけれども、石垣市において、今、ふるさと納税で、標柱、これは何かというと、尖閣諸島にある字名、これが今までは登野城という字名だったんですけれども、この字名を登野城尖閣という字名に変えたんですね。それに伴って、今、行政標柱をふるさと納税で、浄財で造っていまして、これを古いのに置き換える、こういうことを考えています。そのために尖閣に上陸申請をこれから出すということにしているんですが、この窓口がいまだ決まっていないんです、どこに出していいか。

 それで、私は、政府に早くこれを決めるべきだということで、今日は官房副長官もお見えになっていますけれども、官房副長官にも、これは早く政府内で決めた方がいいということで、官房副長官からも、近々内閣官房で決めるということをおっしゃっていました。私は、早く決めていただきたいということだけ今日は申し上げて、尖閣については、やはり各省庁が個別に対応していては駄目だと思うんですね。私は、まさに、司令塔たる国家安全保障会議、そしてそれを支える国家安全保障事務局、ここがまさに長期的な戦略を持って対応していく、これが非常に大事だと思うんですが、この点について、官房副長官、いかがですか。

坂井内閣官房副長官 尖閣諸島は、歴史的にも、そして国際法上も我が国固有の領土であり、現に我が国はこれを有効に支配をしております。中国側の尖閣諸島周辺の活動に対しては、政府が一体となって、現行の法制に則して冷静かつ毅然と対処しています。

 そして、尖閣諸島及び周辺海域を安定的に維持管理するための具体的な方策については様々な選択肢がありますが、実際にどのような方策を取るのかにつきましては、委員が今御指摘をいただきましたように、政府一体となって検討し、そして戦略的な観点から判断していくべきものと考えております。

 そして、その国家安全保障会議の事務を担う国家安全保障局では、平素から、総理の意向を踏まえつつ、各省庁等から提出をされる情報を総合整理し、そして、国家安全保障政策の企画立案、総合調整、つまり、委員が必要だと今おっしゃった役割を、総合調整の機能を内閣官房内で一元的に行っております。尖閣諸島に関する政策についても、国家安全保障の観点から、政府としての検討、対応に主導的な役割を果たしてきているものと考えております。

 政府としては、引き続き、国民の生命財産及び我が国の領土、領海、領空を断固として守り抜くという方針の下、関係省庁間で連携して、冷静かつ毅然と対応していきたいと思っております。

井上(一)委員 新型コロナ感染対策、これが最優先だということは間違いないわけですけれども、やはり国家安全保障会議も頻繁に開いて、我が国の安全保障についてしっかり議論していく、こういうことを是非政府にはお願いしたいと思います。

 それで、私は常々言っているんですけれども、やはり、尖閣諸島は、自らの国は自らで守る、これから尖閣諸島を守っていく体制をつくるということが大事だと思っているんですが、この共同声明の中で、日本は同盟及び地域の安全保障を一層強化するために自らの防衛力を強化することを決意したということであります。

 私は、次の、来年度予算編成、これが非常に大事だと思っているんですけれども、どういう強い決意を持って臨まれるのか、防衛省にお尋ねいたしたいと思います。

中山副大臣 井上先生、ありがとうございます。

 日米首脳共同声明における、日本は同盟及び地域の安全保障を一層強化するために自らの防衛力を強化することを決意したとの記述につきまして、防衛省・自衛隊といたしましては、現防衛大綱に基づきまして、宇宙、サイバー、電磁波を含む全ての領域における能力を有機的に融合した多次元統合防衛力の構築を引き続き推進するということで、自らを守る体制を抜本的に強化をし、日米同盟の抑止力、対処力を一層強化をしていくという考えでございます。

 令和四年度の予算要求につきましては、こうした考え方を踏まえながら、概算要求に向けて様々な検討を行っているところでありますが、いずれにしましても、防衛省・自衛隊といたしまして、防衛力の着実な強化のために必要な予算要求をしっかりと行っていきたい、かように考えてございます。

井上(一)委員 是非、来年度予算編成に向けて取り組んでいただきたいと思います。

 次は、自らの国は自ら守る、その上で日米安保体制をしっかり強化していく、その観点から、尖閣諸島について安保条約五条が適用されるということが再確認されたことは評価したいと思います。

 日米同盟をやはり量的にも質的にも強化するということで、さきの2プラス2で、日米同盟の役割、任務、能力について協議することによって、安全保障政策を整合させ、全ての領域を横断する防衛協力を深化させ、そして、拡大抑止を強化するため緊密な連携を向上させるということですが、既にこの協議は始まっているのか、そして成果をいつまでにまとめるつもりか、外務省にまずお聞かせいただきたいと思います。

有馬政府参考人 お答え申し上げます。

 この点につきましては、先日の総理訪米に際する共同声明でも、日米の抑止力及び対処力の強化や領域横断的な防衛協力の深化などについて示しているところでございます。

 既に様々な機会を通じて日米間で緊密に協議を行ってきておりますが、今後、日米の外務、防衛当局間で更に精力的に協議を行い、年内に再度実施する予定の日米2プラス2において成果を確認したいと考えております。

井上(一)委員 この役割、任務、能力の協議の中で、従来のように、自衛隊が守りを意味する盾、そして米軍が攻撃を意味する矛というような前提を一度見直して、自衛隊が一定の攻撃力を備えること、これについてもしっかり協議すべきだと私は考えておるんですが、防衛省はいかがですか。

大和政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、先般の日米2プラス2におきましては、我が国を取り巻く安全保障環境が急激に厳しさを増す中、日米同盟の役割、任務、能力に関する協議を通じ、日米同盟の抑止力、対処力の強化に向けた連携をより一層深めていくことで一致いたしました。この協議は精力的に進めてまいります。

 政府といたしましては、これまで、いわゆる敵基地攻撃について、日米の役割分担の中で米国の打撃力に依存しており、今後ともこうした日米間の基本的な役割分担を変えることは考えていませんが、同時に、日米同盟の抑止力、対処力を強化するため、我が国自らが果たし得る役割をこれまで以上に拡大していくことが必要であると認識しているところであります。

井上(一)委員 本当はもうちょっと議論したいんですけれども、時間がないので、またここの点については改めて議論させていただきたいと思います。

 共同声明の中で、香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有するということで、中国の人権抑圧について懸念が表明されております。

 超党派の議員連盟でも人権制裁法の立法化を進めておりますけれども、政府としても、まずは、もう国際スタンダードになっているジェノサイド条約、この早期加入について真剣に検討すべきではないかと思っております。

 既に世界の主要国を始め百五十か国が条約を締結しているということで、日本が加入しないことの方が、むしろ、日本は人権に後ろ向きだ、異質な国ではないかというような、私は間違ったメッセージを出しているのではないかと思いますけれども、このジェノサイド条約の加入について外務大臣にお考えを聞きたいと思います。

茂木国務大臣 この件につきましては、御党の山尾議員とも何度か議論をさせていただいたところでありますが、我が国は、集団殺害犯罪のように、国際社会全体の関心事であります最も重大な犯罪を犯した者が処罰をされずに済まされてはならないと考えております。そして、基本的人権の尊重、これは、国を問わず、国際社会が守らなければならない共通の価値で考えておりまして、日本としてこれまで取ってきた国連総会の第三委員会さらには国連理事会における発言、これは時間の関係で割愛させていただきますが、これまでも述べてきたとおりであります。

 一方、今日、私、岡田委員と民主主義について議論をさせていただいたんですが、これが絶対である、こういった押しつけをすることについては個人的には抑制的である、そんなふうに考えております。

 例えば、我々が共有している今のこの空間、これも絶対的なものではありません。井上先生と私の間にはある程度の距離があります。つまり、光のスピードの分、微妙な時間のずれが生じる、これによって空間がずれて、絶対的なものではなくなってくる、これがまさにアインシュタインの相対性理論になってくるわけであります。そのように、一つのことをこれが絶対的であるという形で決めつけることについては、私は抑制的にならなければならないなと思っております。

 ジェノサイド条約、締約国に対して集団殺害の行為等を犯した者を国内法により犯罪化する義務を課しております。ただし、これを絶対的な理由としてジェノサイド条約を締結できない、そういうふうに考えているわけでも私はありません。そういった中で、恐らく、この問題は国民的な議論というのが私は必要なんじゃないかな、そんなふうに思っております。

 例えば、環境に対する意識が間違いなく日本の国民、企業の間でも高まってきている。人権に対する意識というか、様々な議論が行われるということはいいことだと思っておりますし、国会、国民の間で議論が成熟をしていく。残念ながら、そういう議論というのは日本はこれまで少なかったといった意味で、提起していただいたことについては大変ありがたいと思っておりますが、一層議論を深める必要がある、こんなふうに思っております。

井上(一)委員 最後の質問になります。

 新たな時代を見据えた日米首脳共同声明が発出されまして、そして新型コロナという新たな安全保障上の危機、こういう経験をする中で、平成二十五年に策定された国家安全保障戦略、これを見直す時期に来ているのではないかと思いますけれども、官房副長官、いかがですか。

あべ委員長 申合せの時間が経過しておりますので、御協力願います。

坂井内閣官房副長官 御指摘の国家安全保障戦略であります。平成二十五年十二月に策定された当時、今御指摘されたようなコロナウイルス感染症は存在をしておりませんでした。いろいろな社会変化があります。こういった変化に合わせて、中長期的な安全保障の方向性を見定める努力は鋭意継続をしているところでございます。

 他方、同戦略は、理念、また我が国の国益といった国家安全保障に関する大枠の方針も同時に示しているものでありまして、これらに関しての見直しについては現時点では決まっていないという状況でございます。

井上(一)委員 終わります。

 現時点では決まっていないということですが、是非見直していただきたいということを強く要望して、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

あべ委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 質問の機会をいただきまして、大変にありがとうございます。また、与党の中で自民党さんよりも先に質問をさせていただくことをお許しいただきまして、感謝を申し上げます。

 新型コロナウイルスを収束させるためには、先進国だけがワクチンを打ってよしとするのではなくて、やはり世界中のどこかにウイルスが残っている状態を何としても防がなければいけません。そのためには、先進国、途上国関係なくワクチンに公平にアクセスできる、そういう体制というものをやはり国際協調してつくっていかなければいけないんだろう、そのように思います。

 そのためには、医療体制であるとかワクチンの接種体制が脆弱である途上国への支援が大変重要でございまして、特に、ワクチンを共同購入して途上国などに提供する国際的な枠組みであるCOVAXファシリティーにおいて、日本は中心的な役割をこれまでも担ってまいりました。そして多額の資金も拠出をしてまいりました。

 先日の日米首脳会談でも、日米でこのCOVAXへの支援を強化していく、そういうことで合意をされているわけでございます。

 それで、日米首脳会談の前の先週の四月十五日に、COVAXファシリティー増資準備会合がオンラインで開催されまして、アメリカのブリンケン国務長官、バローゾGAVI理事会議長も出席された中で、茂木外務大臣はビデオメッセージで出席をされまして、六月にCOVAXワクチンサミットをGAVIと共催することを表明されました。

 要は、日本とGAVIが共催で、六月にCOVAXワクチンサミットを開かれる、そういうことを表明されたわけでございますが、この六月に共催されるCOVAXワクチンサミットの主要な話合いのテーマはどうなっていくのか、また、先ほど申し上げましたように、中心的な役割をこれまでも担ってきたCOVAXの枠組みの現状の課題というのはいかなるものであるのかも含めて、茂木外務大臣の見解を伺っておきたいと思います。

茂木国務大臣 佐藤委員がおっしゃるように、世界のどこかにコロナが残っていましたら、それが世界中にまた再拡大する、こういう懸念、危険性というのは残っているわけであります。特に、途上国におきましては、医療保健体制が脆弱なこともありまして、そういった潜在的な問題というのはあるんだろう。

 こういった考え方に基づきまして、佐藤委員からも触れていただきましたが、我が国、COVAXファシリティーの設立当初から制度設計の議論に積極的に貢献をしてきておりまして、また、資金面でも、途上国向けの枠組みでありますAMC、こちらにも増資をして、既に二億ドルを拠出したところであります。そして、十五日の米国とGAVIの共催によります資金準備会合においては、日本として、御指摘のような形で、六月に開催予定のCOVAXワクチンサミット、これをGAVIと共催するということを私の方から表明をさせていただきました。

 恐らく、今後、COVAXファシリティー、これを進めていくという中で、一番大きな課題というのは、率直に申し上げて、資金ギャップをどうしていくかということになってくるんだと思っておりまして、資金目標を達成して、それを確実に、安全性、有効性、品質が保証された形のワクチンを、公平に、より多く届けていくということを重視いたしております。

 私も、様々な国の外相と電話会談等を行っておりますが、やはりこのワクチン、これはどの国にとっても一番重要な問題でありまして、率直に申し上げると、日本でワクチンが作れていればもっといろいろな形で外交の幅が広がるような気もしますが、現実は現実ですから、こういったCOVAXファシリティーについて日本が貢献している、こういった姿を示しながら、また、先日来申し上げているような形のラストワンマイルにおける日本の支援、こういったことも行っていきたいと思っております。

 六月のワクチンサミット、そういった意味で、このワクチンの途上国への普及等々に日本が主体的な役割を示していく、こういう機会にしたいと思っております。

佐藤(茂)委員 大臣、また後で戻ってきていただいたらいいんですが、二、三分、もし、二時間以上質疑が続いていますので、一時席を外していただいても結構ですが。それはお任せします。(茂木国務大臣「ありがとうございます。では、御厚意に甘えます」と呼ぶ)

 それで、今、茂木大臣の方から、このワクチンサミットについて、主体的な役割を果たしていくんだ、そういうお話がございました。先日の四月十五日の準備会合でも、これは日本では余り報道されていなかったんですけれども、首脳級が約十か国、また閣僚級が約十五か国を含む二十五か国の代表や、国際機関や民間関係者が登壇された、そのように伺っております。

 ですから、日本国内よりも、やはり世界で非常に注目される会合になるのではないか、そのように思うわけでございまして、この六月のCOVAXワクチンサミットへの日本側の出席者というのは、それなりの方でないとやはり共催したという形にならないと思うんですが、首相であるとか外務大臣などのそういう首脳級、閣僚級の方という方向で調整されているのかどうか、そのことについて現状をお伺いしたいと思います。

高杉政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘ございました六月に開催予定のCOVAXワクチンサミットでございますけれども、我が国からは共催者として菅総理が出席する予定でございます。

佐藤(茂)委員 是非、日程が許すなら、今の予定どおり総理に出席していただいて、国際社会の中で、このワクチンの問題についてもリーダーシップを発揮している姿を是非見せていただきたいな、そのように思うわけでございます。

 それで、このCOVAXの、先ほど資金ギャップの問題を外務大臣はおっしゃいましたけれども、もう一つ、足下の供給と分配の問題というのが今現実に起こっているんですね。

 というのは、WHOとGAVIが、四月九日に、新型コロナウイルスのワクチンのCOVAXを通じた分配が現時点では約三千八百万回分にとどまっている、そういう発表をいたしました。当初の目標では、三月末までに一億回分の分配を目標にしておられたんですが、その目標の四割にも達しておりません。

 テドロスWHO事務局長は、その四月九日の会見で、課題はCOVAXからの分配ではなくCOVAXへの供給だ、そういうふうに指摘をされたわけでございます。要は、国や企業が、COVAXを経由せずに、それぞれ、ワクチン外交と称されるのか分かりませんが、個別にワクチンを給付する、そういう動きもやはりかいま見られる、そういうことでございます。

 特に、更に問題なのが、世界のワクチンの六割を生産する製造王国インドが、今、国内で変異株の感染が三月中旬から急拡大しております。今日、委員の中でもそういう質問をされた方がおられましたけれども、二つの変異株の特徴を併せ持つ二重変異ウイルスがインド国内で確認されて猛威を振るっている、そういうことでございまして、連日のように過去最多を更新して、インド政府がワクチンの国内接種を優先させるために輸出を一時停止している、そういうことも、大口供給元となるインドがそういう状況ですから、COVAXに大きな影響が出ているという報道もございます。

 ですから、先ほどの資金ギャップの問題をどうするかということも大事なんですが、足下の問題として、COVAXへの供給状況と目標の四割に至っていない途上国への分配の状況というものを改善を図っていかなければいけないと私は考えているんですが、COVAXによる供給と分配の現状の課題と改善策をどのように認識しておられるのか、政府の考えをお聞かせいただきたいと思います。

高杉政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、COVAXファシリティーによるワクチンの調達量は、計画と比べて不足しているというのが実情でございます。その原因につきましては、これもテドロスWHO事務局長が記者会見の方で述べていたとおり、世界的なワクチン供給の不足によるというふうに理解しております。

 GAVIによりますと、今後、供給を増加させる計画であるというふうに伺っております。WHOも述べておりましたけれども、COVAXファシリティーは、迅速かつ効率的に品質が確保されたワクチンを公平に供給するための唯一の国際的な枠組みであるというふうに考えております。

 我が国といたしましては、COVAXファシリティーを通じたワクチンの供給を支援する、そういう観点から、この六月にCOVAXファシリティーの主要な運営機関であるGAVIとCOVAXワクチンサミットを共催します。このワクチンサミットにおいて、各国に対して更なる資金拠出等の協力を呼びかけ、COVAXファシリティーによるワクチン供給の促進に貢献するよう準備していきたいというふうに考えております。

 日米豪印の枠組みにおいても、インドにおける生産拡大のために各国が協力していくということが方向性として合意されておりますので、そういった努力も含めて、我が国として最大限の支援を行っていきたいというふうに考えております。

佐藤(茂)委員 是非、非常に崇高な事業だと思っておりますので、アメリカもバイデン政権になって非常に前向きになっていただいているので、アメリカを始め有志諸国としっかりと連携して、現下のこの足下の問題、解決して進めていただきたいな、そのように思いますので、よろしくお願いいたします。

 その上で、先ほど浦野委員がミャンマーの邦人ジャーナリスト拘束、訴追について質問されましたので、重なるのでもうお聞きしませんけれども、是非ミャンマー側に対して、早期の領事の面会であるとか、あるいは、この邦人ジャーナリストの早期解放というものを更に強く働きかけていただいて実現を図っていただきたいな、そのように思いますので、よろしくお願いいたします。

 その上で、この邦人ジャーナリストだけではなくて、クーデター発生から二か月と三週間が経過しようとしております。事態は、日本の報道を見る限り、悪化の一途をたどっておりまして、改善の兆しが見られません。特に我々が気になるのは、やはり政府には海外に在留する邦人の安全確保という重要な責任がありますので、この状況が今どうなっているのかということで、何点かまとめてお聞きをしたいと思うんです。

 現在のミャンマーの海外安全情報については、どのようなレベルを発信しておられるのか。また、在留邦人に対して、どのような手段で、どういう内容の安全情報を発信されているのか。さらに、何人かもう出国されている方もいらっしゃると聞いているんですが、ミャンマーに滞在する邦人というのは今現在何人おられて、その状況がどうなっているのか、その方々の安全が特にどうなっているのか。具体的に、今回のジャーナリストのように拘束されたりとか、また危害を加えられたりとか、そういうような邦人がおられるのか。また、そういうことも併せて、邦人の安全確保のためにどういう対策を取っておられるのか。

 まとめて外務省の方にお聞きをしたいと思います。

森政府参考人 お答えいたします。

 まず、ミャンマーに在留する邦人に対する安全情報でございますが、在ミャンマー日本国大使館は随時領事メールを発出し、現地の最新の状況を踏まえて、在留邦人に対して注意喚起と不要不急の外出を控えるよう呼びかけております。

 二月二十一日、首都ヤンゴン等の危険情報レベル1となっておったものを、一律にレベル2、すなわち、不要不急の渡航中止に引き上げております。

 また、三月九日に続きまして、四月九日にはスポット情報を発出いたしまして、ミャンマーにて真に必要かつ急を要する用務等がない場合には、改めて商用便による帰国の是非を検討するよう呼びかけました。

 外務省では、引き続き、在留邦人の安全確保のために適時適切な情報発信に努めてまいります。

 さらに、ミャンマーの在留邦人についてお尋ねがございましたが、クーデターの発生した本年二月の時点で、ミャンマーには三千五百人の在留邦人の方がおられました。その後、出国しておられる方もおられますが、在ミャンマー日本国大使館におきましては、輸入物資については、物流や税関手続等の遅延があって品薄となっている輸入品も一部あるものの、在留邦人の方の生活にとりまして生活必需品を含めた物資はおおむね問題なく手に入るとの報告を受けております。

 一方、夜間のインターネットの遮断、モバイルデータ通信の終日遮断が継続するなど、通信環境には大きな制限がございます。また、少額の預金の引き落としは何とか可能でございますが、現金の入手は徐々にできるようになってきているものの、海外送金、受領ができないもので、外貨を受け取ることが極めて困難な状況が続いております。

 政府では、平素から在外邦人の安全を確保するための様々な状況を想定して必要な対応を行ってきており、今後とも邦人保護の強化を図ってまいります。

 なお、拘束でございますが、二月一日のクーデター発生以来、現在拘束中の四十代のジャーナリストの方以外に邦人が拘束されているとの情報には接しておりません。

茂木国務大臣 ミャンマーの情勢、二月一日にクーデターが発生しまして、二か月半以上がたつわけでありますが、状況は改善していない。では、一律に上がってきているかというと、一つの山であったのが三月二十七日、国軍の記念日というところであります。先週から今週の初めにかけては、ミャンマーは旧正月に当たるときでありまして、比較的全体の状況は落ち着いておりましたが、旧正月が明けて、そして、これから週末にASEAN首脳会合が行われる。恐らく、この後の状況をどうコントロールしていくか、極めて重要なタイミングにこれからかかっていくんじゃないかな、そういう状況も注視をしながら日本としても積極的な働きかけを行っていきたいと思っております。

佐藤(茂)委員 是非、邦人保護に注力をしていただきたい、そのように思います。

 その上で、最後になりました。今日はちょっと政府参考人の方に来ていただいているんですけれども、最後になりましたので、外務大臣にもう一問お聞きをしたいと思うんですが、これは四月の十五日にユネスコの執行委員会で、今まで、日本にとっては慰安婦問題の申請であるとか、南京事件の登録をめぐって混乱してまいりました世界の記憶の審査制度改革案が、全会一致でユネスコの執行委員会で承認をされました。報道でも何紙か出ておりますが、日本政府が政治利用を防ぐために改革を主導してきた経緯があります。

 今、もう時間がありませんので、内容はもう皆さん御存じのとおりだと思うんですけれども、要は、改革案というのは、これによって政治的な思惑や一方的な主張に基づく申請や登録を防ぐ上で大きな前進と言えるのではないかと私は思うんですが、日本の外交力が、何年かかけて努力されてきたのが一つ実った成果ではないかと思いますけれども、外務大臣の受け止め。

 もう一つは、やはりその上でも気になりますのが、過去の申請というのが今回対象外になっていまして、二〇一六年に日中韓などの民間団体が申請した慰安婦問題の関連資料というのが新制度の対象とはなっておりません。この資料の扱いは今後どうなる予定なのかという見通しも含めて、外務大臣の所見を伺いたいと思います。

茂木国務大臣 昨年の十月一日に私もユネスコの本部を訪問いたしまして、アズレー事務局長ともじっくり意見交換も行ってまいりましたし、現地では尾池大使も先頭になって頑張っておりまして、様々な働きかけの結果、こういう形になってきた、日本としても歓迎したいと思っております。

 その上で、御指摘の案件につきましては適切な処理が必要だと思っておりまして、今後とも引き続きしっかり取り組んでまいりたいと思っております。

佐藤(茂)委員 以上で質問を終わります。

 ありがとうございました。

あべ委員長 次に、松島みどり君。

松島委員 自民党の松島みどりです。

 まず最初に、現在、コロナの感染が爆発的に拡大している、そういった国の中には医療水準が低い途上国も多く含まれていて、駐在員などでそこに暮らしていらっしゃる日本人の多くの方が、非常に恐怖を感じておられることだと思います。

 私の知る限りでも、アジアの少なくとも三か国にある日本商工会からも、その地の大使館に、是非日本でワクチンの接種を受けたい、そういう要望が出ているというふうに聞いております。

 そこで、政府でもそういう検討がなされているということですが、骨格となる、柱となる部分をまず大臣にお伺いしたいと思っております。

 ワクチンの接種は二回の接種の間に三週間の間隔を空けなければならないということを考えますと、在外邦人の利便性を考え、接種会場に空港を利用できないか、着いたときに一回目、そしてまた、三週間たって、もちろん三週間の中には隔離されている二週間が含まれるわけですけれども、戻るときに、また空港で、あるいは空港の近くでということが便利だと考えております。

 もう一つは、在外邦人の方というのは住民票を持っていないわけだから、やはり国が主体となってこの事業を実施しなきゃいけない。その場合、接種体制、医療面のことはもちろん厚生労働省でありますし、空港を借りることになれば国交省ということになりますけれども、やはり窓口というか、一番中核は外務省になると思います。そこについてのお考え。

 そして、次に時期でありますが、例えば、本当は、在外にいらっしゃる方々は、夏休みに帰国した折にでも是非接種したいと望んでいらっしゃる方が多いというふうに思います。しかし、一方で日本での状況との兼ね合いもありますから、例えば、日本で基礎疾患のない六十四歳以下の方への接種が始まる、そういうタイミングに合わせるということになるのかということも伺いたいと思います。

 さらに、在外邦人の中には、居住国でワクチン接種の機会はあるけれども、日本が承認していないワクチンだから不安だとか、あるいは、衛生面を考えてやはり日本で接種したいという方もいらっしゃる。その国で受けられる状況だけれども、やはり日本で、受けようと思えば受けられるかもしれないけれども、日本に帰って受けたいという方々全てを対象にするのかということと、日本にいる私たちと同様に無料で接種できるということかどうか。

 そこまでのところを大臣に伺いたいと思います。

茂木国務大臣 海外在留邦人の安全確保、これまでも外務省にとって最も重要な責務の一つでありますが、昨年のコロナの世界的な感染拡大、これによってその重要性は更に高まってきているな、こんなふうに考えているところでありますし、安全確保でも様々な側面がありまして、昨年は、世界各国に在住している邦人で、帰国をしたい、しかし、移動制限等々がかかっていてなかなか帰国ができない、そういう方々の、中南米であったり、またアフリカからの帰国についても、在外公館挙げて、また本省挙げて取り組みまして、最終的には、百一か国、一万二千名を超える方の出国、帰国も実現をしたところであります。

 ワクチンの接種についても、各国において、今、ワクチンの接種の状況であったりとか体制、医療事情も違います。また、補償制度、そして、日本が承認済みのワクチンの接種が可能かどうか、それとも、日本で接種が認可されていない、そういうものしかないとか、国は特に言いませんが、大丈夫なんだろうかと思うような形のものを含め、状況が異なる中で、海外在留邦人のワクチン接種に関して、御指摘のように、現地の商工会議所等を含めて、様々な形で御要望をいただいているところであります。

 委員御指摘のとおり、在留先におきますワクチン接種に懸念を有する、こういった海外在留邦人が一時帰国時に接種を希望する場合、日本国内に住民票がない、こういう在留邦人は、元々自分がどこに住んでいたにしても、その市町村でワクチンを接種を受けることができなくなってしまうわけでありまして、こうした場合に接種を受けられる体制、これを国が責任を持って構築すべきでありまして、まさに今、関係省庁において検討を進めているところであります。

 では、どこで打つかということでありますけれども、現時点で確定しているわけではありませんけれども、委員御地元の上野も非常にいい場所だと思うんですけれども、なかなか、羽田、そしてまた成田から上野というわけにもいかないでしょうから、現実的には、成田であったりとか羽田の空港とか、またその周辺での接種、これを念頭に検討を行っていきたいと思っております。

 接種の時期、そして費用を含めて今後詰めていかなきゃなりませんけれども、基本的な考え方としては内外無差別であるということだと思います。国内にいても海外にいても条件が変わらない、こういったことを基本にしながら、ただ、国内と海外で若干の事情が違ったりしますから、そういったものも考慮してやっていく。基本は内外無差別でできれば、イコールフッティングでできればと思っています。

松島委員 つまり、内外無差別でイコールフッティングということは、その前に、ちょっと時期や費用についてはとおっしゃったんですけれども、本人の費用というのは私たちが無料であるのと同じ無料で、もちろん交通費は自分でかけて帰ってくるわけですけれども、よいのかということだけ再確認したいのと、時期は内外無差別だけれども海外の事情を考えるとということは、場合によったら前にも後にもなるということなのか、どういうことでしょうか。

森政府参考人 お答えいたします。

 費用でございますが、無料にすることも含めまして検討中でございます。対応が固まり次第、皆様にお知らせするようにしたいと思っております。

 それから、時期でございますが、大臣が申し上げた様々な事情、この中には、例えば、国内における接種の状況、それから海外在留邦人の方々の状況、様々な事情がございますので、こうしたものも含めて具体的に検討を進めていきたいと思っております。

松島委員 次は政府参考人で結構でございますが、日本で接種を希望する在留邦人の見込みというのは立つのか。在外公館を通じて調査をしたり、あるいは予約サイト、これは大体、申込みも、外務省が予約サイトというものを設けるのかどうかということだけ確認させていただきたいと思います。

森政府参考人 お答えいたします。

 新型コロナのワクチンに関しましては、接種の状況や体制、医療事情、補償制度、日本が承認済みのワクチンの接種の可否と、国によって様々でございます。

 こうした中で、在留先におけるワクチン接種に懸念等を有し、一時帰国時における日本でのワクチン接種を希望する海外在留邦人が一体どの程度おられるのかといったことに関しましては、在外公館等を通じた把握に努め、しっかりと対応してまいりたいと思います。

 委員から予約サイトについて御指摘ございましたけれども、海外在留邦人へのワクチンの接種体制については、現在、関係省庁で検討を行っているところでございまして、詳細についてはまだ決まっておりません。委員が御指摘いただいた点も踏まえまして、様々な事情を有する被接種者の方々が円滑に接種を受けられるよう、予約の仕組みを含めましてしっかりと対応してまいりたいと思っております。

茂木国務大臣 森領事局長は比較的はっきり言う方なんですけれども、なかなか、今、調整があるということで、私の答弁と総合的に聞いていただければと思いますけれども。

 何のサイトもなしに、いきなり来て受けるということはないと思うんですね。やはりそのシステムはつくらなくちゃいけない、そんなふうに思っていますし、ある程度の数というものはどこかの段階で想定をして、それがきちんと受けられる体制を整える、そういうことを基本にやっていきたいと思います。

松島委員 これもまた壮大なオペレーションになると思いますけれども、しっかりとなされるように念願しております。厚労省の御協力にも期待しております。

 次に、これは在外公館の話なんですが、先ほど大臣から、昨年、百一か国から一万二千人の在留邦人が本当に大変な中帰国されたという、その支援に我が国の在外公館が当たったというお話がございました。本当に、無事に帰国された方々、皆さんが、大使館や総領事館に対して心より感謝をされていることだと思います。ある意味、外務省の本質はここに尽きるんじゃないかと私は思うぐらいであります。

 しかし、途上国というか、そういう、非常にいろいろな意味で困難な国にある大使館あるいは領事館の方々は、見送るのは見送って、御自分たちはそのままそこに、そこで厳しい環境の真っただ中、残り続けておられるわけです。

 実は私は、知り合いの大使や総領事にメールを送りまして、委員会質問の材料とするということを明示した上で、館員の方々の状況などをお尋ねしました。およそ十人から返信をもらいまして、ほとんどは途上国のそういう立場の方であります。

 アフリカや中南米、アジア諸国の館では、コロナの感染拡大や、国によってはロックダウンによって治安が悪化したり、あるいは、日本食材など、これはアジアの国々や中東の場合は、タイのバンコクまでこれまでは買い出しに行っていて、それもバンコクが入れないから、それもない。そういうことで、物すごく館員の方々、ストレスを多く感じていらっしゃるんじゃないかと思うんです。

 そしてまた、お子さんを連れていかれた職員の中には、小学校が休校となった。日本でも学校が休校になったらストレスがたまりますけれども、それに加えて、オンライン授業といっても通信事情は悪いし、日本語も英語も中途半端になって非常に不安だ、そういうようなケースとか。

 逆に、これも実際にあった例ですけれども、親御さんが日本で亡くなられて葬儀だ、葬儀といっても、結局、帰国して参加することは諦めざるを得ない、国際便がいつ飛ぶか分からないし、そしてまた日本で二週間隔離されるから。そういった中で奮闘しておられる。

 ところで、ここから先は何とか配慮してもらえないかということなんですが、いわゆる不健康国というふうにみなされている国での勤務には、有給休暇に含まれる三十日の健康管理休暇というのがある。そしてまた、それと別に三十日又は四十五日の休暇帰国という制度があります。いずれも、交通費だけ支給されることになっています。

 健康管理休暇について申しますと、着任から半年後に一回、その後は、国によって半年から二年の間隔、いろいろな間隔はありますけれども、実施されています。

 しかし、日本で二週間隔離され、更にそれぞれの任地に戻って大体二週間隔離されるということを考えると、とても健康管理のための休暇とは言えない。帰ってこられないというようなことになります。

 コロナの前から、この健康管理休暇の際に健康診断を受けるという方が非常に多い。通例ですから、これが取れないということは、健康を犠牲にするということにつながっていくと思います。

 このままでは、さきに質問いたしましたワクチン接種のための帰国もなかなかままならない。そういうわけで、コロナの感染が拡大している国々では、やはり一般の在留邦人同様、そしてまた離れることのできない在外公館の方々は恐怖が募るばかりです。

 そこで、考えたんですけれども、例えば、これが有給休暇に含まれているというのは一つ気の毒だということもありますし、コロナ特例健康休暇制度というような、こういう事態に特別なものをつくれないでしょうか。ほかのときだったら隔離なんかされないわけですから。

 あるいは、例えばこの隔離期間、日本での隔離期間、乗換地での隔離期間、及び大使館のある国に戻ってからの隔離される、そういった期間を休暇の日数に含めない、だから実質的には非常に長くなるわけですけれども、含めないことにするとか、あるいは、元来、交通費しか支給されないことになっているけれども、経由地での宿泊費とか、東京周辺に家をお持ちでない方は、やはりその間の二週間、日本で二週間隔離の間の宿泊費を外務省が負担するとか、何か工夫が必要だと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

 是非これは大臣に、思いも含めてお願いします。

茂木国務大臣 まず、今、松島委員が在外公館に勤務する館員の置かれた状況について、大変関心を持って、また、どうにかできないか、こういう思いを持っていただいていることに感謝を申し上げたいと思います。

 人によっては、外交官、海外で優雅な生活を送っているのではないかな、こういう印象もあるかもしれませんが、先進国もそうでありますが、途上国、相当過酷な条件の下で勤務をしている、こういう現状があるわけでありまして、そういった人たちが更に士気高く業務に専念する、こういう環境をつくることは大臣としての重要な責務だと思っております。

 クリエーティブなアイデアをいただきました。どんなことができるか、よく考えてみたいと思っております。もちろん、いろいろな制約というのもあるかもしれません、予算面だけじゃなくて。ただ、そういった中で一番できることをやっていく、そのことが、外務省の力を高め、そして、委員おっしゃるような、在外にいらっしゃる邦人の方の安全確保を進めていく上でも極めて重要だ、こんなふうに思っております。

松島委員 ありがとうございます。

 私に答えてくれた人たちがほとんど匿名でというか、地域が分からないようにということだったんですけれども、ただ一人、トンガの大使が、国の名前も出してもらってもいいからと言われましたので、事例を紹介させていただきたいと思います。

 実は、ミクロネシアとトンガとパラオ、この三か国は、今までコロナに誰も、感染者が一人も出ていない。これらの国々と、それから、マーシャル、サモア、バヌアツ、この三か国、ここは、帰国者一人の感染が判明しただけで、国内での発生はゼロだと。これを私は外務省に聞いて知ったわけですけれども。

 そうすると、コロナフリーというと一見幸運に見えるんですけれども、それが大変で、太平洋の島嶼国九か国とそれからカリブ海のトリニダード・トバゴでは、入国規制が物すごく厳しいので、入るのが物すごく大変であると。

 トンガの場合は、トンガ政府が特別にチャーターした便しか入国を認めていないので、昨年の秋に赴任する際に、この大使は、成田を出発してからトンガの大使館で勤務を始めるまでに五週間と三日かかっています。

 というのは、途中でシンガポール乗換えで二日留め置かれて隔離、それからニュージーランドで二週間隔離されて、政府チャーター便にその次の日に乗れたから五週間と三日で済んだわけですけれども、トンガに帰ってからも、トンガはより一層厳しい規制で三週間隔離されるので、大使館に足を踏み入れられなかった、そういう状況であります。

 と同時に、医務官がいるのだろうかという話をちょっと思って、私は、大体アフリカなどの大きな、アフリカなどだと途上国といっても医務官がいますけれども、調べましたら、ここの場合はフィジーに、比較的大きな島であるフィジーに医務官がいて、その医務官がトンガとサモアとバヌアツ、これも全部大使館がある国ですけれども、この三か国兼務しています。

 本来ならば、四か国で四半期ごとに一度訪れるのが、これもまた入国できないから、医務官も訪れることができていない。世界中見渡しますと、やはり、そういった国々は、特に島嶼国であるようでございます。

 私は、これは日本政府が、外務省がどうこうしようのない話なんですけれども、さきに大臣がおっしゃっていただいたように、私たちもそういう気持ち、そこで頑張ってくださっている気持ちというのは共有しなきゃいけないなと思っています。

 これまで、私たち国会議員は、世界中に大使館をつくろうつくろうと、そういうことを一生懸命、私もそうですけれども、熱心にやってきました。もちろん外務省も一緒に旗を振って、二〇〇〇年度に百十五だった大使館が現在何と百五十三、物すごく増えたわけです。本当に意味のあることだったと思います。

 でも、新しくできた大使館、やはり、この二十年間に新設された大使館というのは、多くが生活環境の厳しい国であります。そこに赴任されている方々が、人数の少ない大使館というのは、想像の範囲ですけれども、やはり、仲よくいけばいいですけれども、そうでないと精神的なストレスもたまる。日本人もそんなにいないところだ。そういうところで、これらの島嶼国はコロナがそんなに蔓延して全然いないわけだけれども、アフリカ・サブサハラなりあるいは中南米などだと、どんどんコロナの感染者が周りで増えているという状況で、やはり、そこで戦ってというか体を張っていただいている方々のことを政府も、在留邦人を救ってくれたのは在外公館の人たちだけれども、その彼ら彼女らをやはり見守っていくのは、何とかバックアップできることは全てバックアップするというのは、外務省を中心とした政府と私たち国会議員の務めだと思っております。

 多分うなずいていただけると思うんですけれども、最後に一言だけお願いします。

茂木国務大臣 私も昨年、太平洋島嶼国、パプアニューギニアを訪問いたしましたが、なかなか入国制限が厳しい中で、ポートモレスビーの空港に着いて、車で五分のところにホテルがあるんですけれども、何しろそのホテルにいてくれと、そこに首相もそれから外務大臣も来るからということで、パプアニューギニアに行ったんですけれども、動いたのはその空港とホテルの間だけ。それ以外の移動は全くしていない。特殊な外務大臣であってもそうでありますから、恐らく外務省の職員もいろいろな制約の中で頑張っているんだと思います。

 そういった職員が更に活動できるような環境を整える、そのための努力を最大限してまいりたいと思っております。

松島委員 どうもありがとうございました。

 パプアニューギニアは島嶼国でも大きい方ですけれども、それ以外、館員の方々は、一遍日本に戻ったら入国できないからということで、やはり休みをどんなに延ばしてもなかなか取れなかったりしますので、是非是非そういうことをみんなで胸に置いて仕事をしていきたいと思います。

 ありがとうございました。

あべ委員長 次に、中根一幸君。

中根委員 自由民主党の中根一幸です。

 大臣におかれましては、朝からずっと会議で、既にもう五時四十五分で、六時近くなりました、大変お疲れだと思いますが、私が本日のラストバッターでございます。あと二十分、御協力を何とぞよろしくお願いいたします。

 それでは、早速質問をさせていただこうと思いますが、私も実はCOVAXファシリティーの件について質問をしようとしておりました。佐藤先生が先ほど質問していただいたので、重なるところもあると思いますが、せっかくなので質問をさせていただこうと思います。

 現在、世界的に新型コロナウイルス感染症ワクチンの供給がされておりますが、途上国への配付が予定より遅れているとの意見もございます。途上国で今もワクチンを待っている人たちのためにいち早く貢献することが、結局は日本を守ることにつながっていくと思っております。

 COVAXファシリティーにおいて、先日、先ほど話がありました十五日、増資の準備会合が行われたと理解しております。当初、途上国向けの枠組みに必要な資金需要は、二〇二一年度中に人口の二〇%分、十三億回分とのことですが、の供給を目指していたのが、人口の三〇%分、十八億回分の供給目標に上方修正したとのことであります。

 このこと自体は大変すばらしいことですが、そのために必要な資金需要の試算が、七十億ドルから十三億ドル増えて八十三億ドルに上昇し、この増資の準備会合で、その前の時点では二十億ドル不足しているという状況だということでございます。そして、この資金、穴を埋めるためにも、各国から更なる拠出を求めるために、先ほどお話しした、日本がGAVIと共催して行うということを理解しております。このワクチンサミットに向けて、米国始め各国と連携し、日本自らも、先ほど追加という話がありましたが、更なる追加の拠出を行うなど、これまでの貢献を基礎として、更に日本ならではの貢献を行うべきと考えておりますが、いかがでしょうか。

 特に、最後、先ほど大臣は、この問題については資金目標を達成させることだ、この資金ギャップをどうやって埋めるかというようなお話をしていただきました。それを中心に御答弁いただければと思います。よろしくお願いします。

茂木国務大臣 まず、先ほどの松島委員とのやり取りの中で、下町の話をしている中で、浅草と言うべきところを、私、上野と言ってしまいましたので、謹んで訂正をさせていただきたい、こんなふうに思っております。

 中根委員、外務大臣政務官そして副大臣も経験をされ、特に東南アジアにおきましては様々な国を回っていただいたり、ラオスの外務大臣からすると、もう中根さんが永遠の外務大臣だ、こんなふうに言われて若干悔しい思いもしたんですけれども、それだけ貢献をされているんだ、こんなふうに思っておるところであります。

 COVAXファシリティーでありますが、我が国として設立当初から制度設計の議論に積極的に貢献をしてきておりまして、資金面でも、先ほど言ったように、二億ドル既に拠出をいたしております。さらには、六月に開催予定のCOVAXワクチンサミット、GAVIと一緒に共催をさせていただく。

 そういった中で、今実際に途上国への供給が元々のスケジュールより遅れております。しかし、なかなかワクチンが手に入らないという中で、このCOVAXファシリティーのカバーすべき人口を二〇%からもっと上げていく、三〇%ぐらいに上げていく。そうなりますと、当然、資金ギャップというのはより大きくなってくるわけでありまして。

 日本として更なる貢献をしていく、こういうコミットメントを示すことによって、米国はもちろんでありますが、様々な国に対しても貢献の働きかけ、こういったものもできると思っておりまして、そういった先頭に立って頑張ってまいりたいと思っております。

中根委員 ありがとうございます。

 この資金ギャップについて、一点だけ更にお伺いしたいのですが、今のこの時点で、これはプレッジ額なので、これがイコールというふうにはならないと思うんですけれども、日本は、先ほど大臣がお話ししていただいたように、二億拠出しております。しかし、まだの国も含めると、例えば一番多く出している国は米国です。二十五億ドルであります。次に、二番目がドイツ、十・六五億ドル。そして、三番目が英国、七・三五億ということで、そのほかにもたくさんの国がいて、決して二億が少ないわけでは全くないのですが、先ほど言った当初の目的、このサミットの目的のいかに不足分を達成するかということ、これは本当に大変なことだと思いますので、アメリカを始めドナー国と協力して、しっかりと目的を、まずはサミットが成功するために頑張っていただければと思います。よろしくお願いします。

 続いて質問させていただきます。

 続いては、G7の貿易大臣会合について質問をさせていただきます。

 失礼しました。順番を変えまして、WTOの改革についての質問を先にさせていただこうと思います。

 WTOの改革は、本来はG7の貿易大臣会合でお話ししようと思ったんですけれども、その中の主要テーマの一つでありました。

 約四年ぶりの開催となる、年末に十二回目の閣僚会議も控えているという本年、多角的自由貿易体制の維持強化の観点から重要であって、その中でも、このWTOの改革は喫緊の課題でございます。

 近年、WTOは多国間交渉における成果を残念ながら出すことはできておりませんが、新たに就任したオコンジョ・イウェアラ事務局長、私が外務副大臣のときにお会いしております。当時はGAVIワクチンアライアンスのたしか理事会議長という立場だったと思いますが、大変バランス感覚に優れた方だったと記憶をしております。

 このオコンジョ氏は、その他国際機関では、世銀だったと思いますが、要職を務めておりますし、母国ナイジェリアでは外務大臣そして財務大臣等を歴任している方であり、このように、私は、政治的な重みとバランスの感覚の優れた人物であると思っております。

 御本人も当然、この今のWTOの改革に対して、具体的な成果を上げるために大変意欲を示していると聞いておりますので、このオコンジョ新事務局長の下、本年はWTOの改革を進める好機にしていただければと期待しているわけでございます。

 がしかし、一方で、WTOの改革と一言で言っても、WTOの抱える課題というのは様々でございます。電子商取引といった新たな分野におけるルールメイキングの機能強化もあれば、この間も当委員会で話題になりました、上級委員会が停止している紛争処理解決制度の改革といった、様々な課題がございます。

 これは、年末、先ほどお話ししたように、四年ぶりの閣僚会議がありますので、それを節目、目標として、日本として、何がWTO改革の優先分野であると考え、そして、その実行に向けてどのように取り組むか、お考えをお伺いしたいと思います。

赤松政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、WTOが昨今の新興国の台頭やデジタル化の進展等にも対応できていないということも明らかになってきております。加えまして、一方的関税措置や新型コロナパンデミックの影響で世界貿易全体が縮減する中で、多角的自由貿易体制の礎であるWTOの改革というものが国際社会にとって待ったなしの課題になってきているというふうに認識しております。

 日本政府といたしましては、年末の第十二回WTO閣僚会議を見据えまして、特に次の三点、すなわち、第一に、輸出規制措置のルール化を含む貿易と保健分野の取組、第二に、電子商取引を始めとする各種ルールのアップデート、第三に、紛争解決制度改革、これら三点が特に重要と考えております。

 こうした考えに基づきまして、茂木外務大臣から、WTO非公式閣僚会合やG7貿易大臣会合、さらにはオコンジョ・イウェアラWTO事務局長やキャサリン・タイ米国通商代表とのバイ会談におきまして、改革の進め方につき、突っ込んだ議論を行ってきております。

 引き続き、全ての加盟国及びオコンジョ事務局長とも緊密に連携いたしまして、喫緊のWTO改革を主導していく所存でございます。

中根委員 ありがとうございます。

 三点進めていくというような話をいただきました。どれも簡単なものではないと思いますが、新しいオコンジョさんと連携して、一つ一つ進めていっていただくようお願い申し上げます。

 それでは、二番目にやる予定だったG7の貿易大臣会合について質問をいたします。

 日本は、これまで、TPP11、日・EU・EPA、そして先日もこの委員会でも話し合われましたRCEPと、自由で公正な経済圏を広げる観点から、いわゆるメガFTAに参加し、そしてリーダーシップを発揮してきました。茂木大臣のリーダーシップの下、日米貿易協定、日英のEPA、こういった難しいものを短期間で交渉妥結に至った。まさに、自由貿易の旗手としての役割を果たしていただいていると思います。

 一方、ここ数年、残念ながら、世界経済における保護主義そして内向き主義の志向が強まっており、この新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延で、その傾向がより一層加速したと思っております。

 そういった中で、先日、自由で公正な貿易を推進していく上で、オンラインによる、茂木大臣が参加された、G7の大臣会合が行われました。これは非常によい私は契機になるのではないかと思っております。

 貿易大臣会合はこれまでG20等で行われてきましたが、何と、このG7では、今まで起きたことはなかった、初の取組だったということでありまして、対中国の文脈でも基本的価値を共有する各国が協調する重要な機会であり、五月にも二回目の会合が行われると承知しております。

 市場歪曲的な政策慣行、中国問題、DFFT、WTOの電子商取引交渉の現状を始め、議論するべき点はたくさんあるわけでございますが、このG7の貿易大臣会合を通じて、どのようにG7が連携して取り組むことが対中国の観点から重要と考えているか、お伺いいたします。

茂木国務大臣 貿易大臣会合、G20等でやっておりますが、中根委員がおっしゃるとおり、G7でこれを開催するというのは初めてのことでありまして、議長を務めますのがトラス国際貿易大臣、私とは日英EPA交渉、カウンターパートに当たりまして、エリザベス、リズ、こういうふうに呼んでおりますけれども、連携を取りながら、これは、一つには、やはり、コロナによって今広がっている、医薬品とかワクチンの供給をどうしていくか、また、我々として、サプライチェーンの強靱化にどう取り組んでいくか、さらにはデジタル分野の新しいルール作り、当然、大阪トラックで打ち出したデータ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト、この下での取組を加速していきたいと思っております。

 同時に、WTO改革ということでいいますと、先ほどお話のありましたオコンジョ事務局長、スペリングでいいますとウンゴジと書くんですけれども、実際にはンゴジ、こういうふうに発音するんですけれども、彼女とも連携をしながら、特に中国等の問題に関しましては、一つは、産業補助金、国有企業、強制的技術移転、知的財産窃取、こういう市場歪曲的な慣行への対処。そして、既に途上国ではなくなっている国が途上国のままで様々な利益を享受している、こういう体制を是正していく。さらには、データに関します様々な問題もあるわけでありまして、こういったことについてしっかりと取組をしていきたい。

 日米欧三極でやる、またG7という枠組みも使う、さらにはWTOという加盟国が全部参加をする場で、こういったそれぞれの問題、しっかりと取り組んでいきたいと思っております。

中根委員 大臣、前向きな御答弁ありがとうございます。

 今後もこのG7の貿易大臣会合、対中国の観点でも非常に重要な会議となると思いますし、そもそもこのG7、価値と戦略的な利益を共有する同志国であります。G7の議論が、自由で公正な貿易、そして貿易の現代化、デジタル貿易といった諸分野における多国間の議論につながるよう、これから茂木大臣に主導していっていただきたいと思います。

 最後に、時間がなくなりましたが、意見だけにしておきますが、先日の訪米で、菅総理は、バイデン大統領との会談の中で、自由で開かれた太平洋の実現に向けて日米で協力を確認したと承知しております。もっとも、バイデン政権が米国の競争力を強化するまでは新たな貿易協定は締結しない方針であることも表明しております。

 こういった状況の中で、中国が、この間も出ましたが、TPP11への参加に意欲を示すなど、中国がこの地域への関与を深めておるのも事実であります。

 米国のこの地域への関与を得ることが非常に重要であると思っておりますし、TPPへの復帰が中長期的になってしまうのであれば、短期的に米国の関与を得るような仕組みが必要ではないかと思っております。

 コロナ禍で新興国を含めてデジタル化が加速しております。WTOの電子商取引交渉、これは日本も議長国でありますが、それと並行して、例えば、デジタル分野において、豪州、ニュージーランド、シンガポールなどとともに、米国を巻き込むようなルール作り、協力の枠組みというのを立ち上げるというのは有益だと私は思うのですが、提案ですが、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 日本とアメリカの間では、日米貿易協定と同時に日米デジタル貿易協定、これも同時に締結をしているところでありまして、デジタル分野での様々なルール作りについては意見の一致を見ているところであります。

 どういった形でこの枠組みを広げていくか、バイデン政権も、中根委員がおっしゃったような立場でありますが、一方で、インド太平洋地域の経済秩序、これに対しても関与していくという姿勢を示しているわけでありますから、デジタルも一つのいい切り口になる、こんなふうに考えております。

中根委員 今大臣がおっしゃったように、日米デジタル貿易協定、そしてTPP11に加えて、日英のEPA、日・EU・EPA、日本は多くの関係国と……

あべ委員長 申合せの時間が経過しておりますので、御協力願います。

中根委員 デジタル分野で協力を結んでおりますので、デジタル分野のルールメイキングにおいての、いわば日本のハブとしての役割を担える環境にあると思いますので、しっかりと進めていっていただければと思います。

 終わります。

     ――――◇―――――

あべ委員長 次に、日本国の自衛隊とインド軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とインド共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及び民間航空の安全に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣茂木敏充君。

    ―――――――――――――

 日本国の自衛隊とインド軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とインド共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

 民間航空の安全に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

茂木国務大臣 ただいま議題となりました二件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 まず、日本国の自衛隊とインド軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とインド共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件は、令和二年九月九日に協定の署名が行われました。

 この協定は、日本国の自衛隊とインド軍隊との間における、それぞれの国の法令により認められる物品又は役務の提供に係る決済手続等を定めるものであります。この協定の締結により、日本国の自衛隊とインド軍隊が行う活動においてそれぞれの役割を一層効率的に果たすことを促進し、国際の平和及び安全に積極的に寄与することが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、民間航空の安全に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件は、令和二年六月二十二日に協定の署名が行われました。

 この協定は、欧州連合との間で、双方の航空当局による重複した検査、監督等を可能な限り省略するための枠組みについて定めるものです。この協定の締結により、製造者等の負担が軽減されるとともに、効率的な安全監督に関する協力が強化をされ、ひいては欧州連合との協力関係の一層の発展に資することが期待をされます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 以上二件につきまして、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

あべ委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る二十三日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時七分散会


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