衆議院

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第11号 令和3年4月28日(水曜日)

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令和三年四月二十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 あべ 俊子君

   理事 伊藤信太郎君 理事 鈴木 貴子君

   理事 鈴木 憲和君 理事 辻  清人君

   理事 中根 一幸君 理事 阿久津幸彦君

   理事 小熊 慎司君 理事 佐藤 茂樹君

      小田原 潔君    尾身 朝子君

      城内  実君    黄川田仁志君

      國場幸之助君    新藤 義孝君

      鈴木 隼人君    薗浦健太郎君

      中曽根康隆君    中谷 真一君

      松島みどり君    簗  和生君

      青山 大人君    岡田 克也君

      緑川 貴士君    山川百合子君

      渡辺  周君    竹内  譲君

      穀田 恵二君    浦野 靖人君

      山尾志桜里君

    …………………………………

   外務大臣         茂木 敏充君

   法務副大臣        田所 嘉徳君

   外務副大臣        鷲尾英一郎君

   外務副大臣        宇都 隆史君

   農林水産副大臣      葉梨 康弘君

   内閣府大臣政務官     三谷 英弘君

   外務大臣政務官      國場幸之助君

   外務大臣政務官      鈴木 隼人君

   外務大臣政務官      中西  哲君

   財務大臣政務官      船橋 利実君

   厚生労働大臣政務官    こやり隆史君

   環境大臣政務官      宮崎  勝君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  藤井 敏彦君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  十時 憲司君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁出入国管理部長)        丸山 秀治君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 大鶴 哲也君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 遠藤 和也君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 徳田 修一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 御巫 智洋君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    四方 敬之君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 江島 一彦君

   政府参考人

   (財務省主税局国際租税総括官)          武藤 功哉君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    重藤 哲郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官)  浅沼 一成君

   政府参考人

   (水産庁資源管理部長)  藤田 仁司君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           田村 暁彦君

   外務委員会専門員     小林 扶次君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とセルビア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とジョージアとの間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とジョージアとの間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 日本国における経済協力開発機構の特権及び免除に関する日本国政府と経済協力開発機構との間の協定の規定の適用範囲に関する交換公文を改正する交換公文の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)


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     ――――◇―――――

あべ委員長 これより会議を開きます。

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とセルビア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とジョージアとの間の条約の締結について承認を求めるの件、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とジョージアとの間の協定の締結について承認を求めるの件及び日本国における経済協力開発機構の特権及び免除に関する日本国政府と経済協力開発機構との間の協定の規定の適用範囲に関する交換公文を改正する交換公文の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房参事官大鶴哲也君、大臣官房参事官遠藤和也君、大臣官房参事官徳田修一君、大臣官房参事官御巫智洋君、経済局長四方敬之君、内閣官房内閣審議官藤井敏彦君、内閣審議官十時憲司君、出入国在留管理庁出入国管理部長丸山秀治君、財務省大臣官房審議官江島一彦君、主税局国際租税総括官武藤功哉君、国税庁課税部長重藤哲郎君、厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官浅沼一成君、水産庁資源管理部長藤田仁司君、経済産業省大臣官房審議官田村暁彦君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

あべ委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

あべ委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がございますので、順次これを許します。小熊慎司君。

小熊委員 立憲民主党の小熊慎司です。

 まず、いわゆる日・セルビア租税条約、また、日・ジョージア租税条約、日・ジョージア投資協定についてお伺いをいたします。

 セルビアについては世界史をやっていれば必ず出てくる名前でありますが、ジョージアというと大概の日本人が、えっ、アメリカのジョージア州というような感じにもなっていますが、ただ、近年、ある牛丼屋さんでシュクメルリというジョージアの代表的な料理が販売をされ、大分はやって、期間限定だったのですが、はやってまた復刻したという経緯もあって、徐々に認知度も日本において少しずつ上がってきている国ではないかなというふうに思います。

 また、両国ともに、やはり、EU、ロシア、中東、中国との関係を見れば、いろいろな意味で地政学的に非常に重要な国の両国でもあります。現在のところ、日本とセルビア、また日本とジョージア、それぞれの経済交流というのは、世界の中では比率はそう高くはないのかもしれません、人的交流も多いとは言えないのかもしれませんが、そういった意味でも、地政学的にも非常に重要な国でありますので、これから、こうした条約の締結によって、協定の締結によって、ますます日本との関係性が深まっていくことが望まれているわけでありますし、今回はそうした条約の審議になるというふうに思っています。

 一方で、過日も、山尾委員の方からかな、ありましたけれども、中国の一帯一路構想の中で債務のわなという言葉を、これを外務省としては正式に使うかどうかという議論もありましたけれども、先週行われました超党派の島嶼国議員連盟の中でも、やはり、持続可能な地域の発展のために、そういう債務超過を起こすようなことをわざとやるような発展はないんだ、これは連帯してそういったものにはやはりしっかりくぎを刺していこうということが、イシューの確認がされていましたし、各国の大使がお越しになっての議連開催でありましたけれども、そうした意見には賛意を示されていただいたという経緯もございます。

 この一帯一路構想、ある意味では、いい部分もあるし成功している部分もあるというふうに思います。

 この外務委員会で数年前に調査でヨーロッパを訪れたときに、ポーランドを訪れたときに、もう既にポーランドでは、最初は一帯一路を歓迎していたんですけれども、数年たってみると、ウィン・ウィンの関係じゃ全然ないんだ、やはりこれは中国の国益でしかなかったという意見が、ポーランドの超党派の国会議員と会談する機会がありましたので、そこでいろいろな意見を伺った次第であります。

 ですから、そういう意味でも、このセルビア、ジョージア両国共に、今現在、一帯一路構想、結構、中東やヨーロッパの国々の中では、思った以上にプロジェクトが進んでいないとか、思った以上にその国の国益につながっていないとかという意見も出ているんですが、このセルビアとジョージア両国について、一帯一路についての状況をまずお聞かせいただきたいと思います。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、セルビアと中国との間でございますけれども、一帯一路に関する覚書が結ばれておりまして、セルビアは、中国にとりまして、西バルカン地域におきます最大の投資先となってございます。中国企業によります高速鉄道の近代化、高速道路の建設、架橋工事、橋を架ける工事でございますね、といったインフラ建設が実施されていると承知しております。二〇二〇年の中国への輸出額は三・七億米ドル、中国からの輸入額は三十二・九億米ドルでございまして、セルビアの全世界との貿易において中国が占める割合、これは八%でございます。

 続きまして、ジョージアと中国との関係でございます。同様に、一帯一路に関する覚書が両国間で結ばれておりまして、ジョージアの東西を結ぶ国際幹線道路の一部区間、これはAIIBの融資によりまして整備されていると承知しております。二〇一九年の中国への輸出額は二・二億米ドル、中国からの輸入額は八・六億米ドルでございまして、ジョージアの全世界との貿易において中国が占める割合は、同じく八%でございます。

 他方で、同じく二〇一九年のセルビア及びジョージア両国の全世界との貿易に占めるEUの割合、これはそれぞれ、セルビアが五〇%強、ジョージアが約四分の一、二五%程度でございまして、両国にとりましては、EU、欧州、これが主要かつ最大の経済パートナーとなってございます。

小熊委員 セルビアとジョージア、ジョージアは特に、例えばロシアに対するスタンスは我々側に近いというものがあるんですが、セルビアもジョージアも実は、先ほどポーランドの例を紹介しましたけれども、一帯一路に対して少しクエスチョンが出ている、課題が出てきている中で、比較的、セルビア、ジョージアは一帯一路構想の成果が表れている国でもあるというふうに私は承知をしています。

 まして、セルビアは、今問題になっている中国のウイグルでの問題についても、あれは単にイスラム教のテロリストを抑えるためであるんだということをセルビアの政府首脳も発言をされているような状況でもありますから、そういう意味では一帯一路構想とうまくいっている方の国だという認識でいいのか、もう一回確認をさせてください。

 その中で、それは一帯一路構想がうまくいっているからこそ、日本がどうそこに入り込んでいくというか、連携を強めていくのかということも併せてお伺いいたします。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、セルビアの意義でございますけれども、一帯一路構想がございますけれども、セルビア自身、非常に質の高い労働力を有しております。かつ、EU加盟交渉も行っております。EUなどとのFTAを締結しておりまして、こういった市場へのアクセスが非常に容易でございますので、日本としては、こういったセルビアの将来的有望性に鑑み、引き続き日本企業のセルビアへの海外展開を支援してまいりたい、このように考えております。

小熊委員 ちょっとまた確認ですけれども、一帯一路構想に関しては、いろいろ問題点はあるものの、その地域の発展につながるのであれば否定すべきものではないという日本政府の見解があるというふうに思います。

 また、一帯一路構想と、ある意味、連携できるものがあれば、民間ベースでありますけれども、その連携を模索しているという政府の取組も承知をしているところでありますが、この地域の中ではセルビアとジョージアは一帯一路がまあまあうまくいっているので、うまくいっていない国で一帯一路と一緒になれとは言いませんけれども、こういうところでその一帯一路との共同プロジェクト、民間ベースを促していくということは、今後、どうでしょうか。お伺いいたします。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、一帯一路につきましては、委員からの御指摘がございましたとおり、債務の持続性、透明性、開放性、こういったものが確保された上で進めていく、こういう認識でございます。

 日本としては、ODA、政府開発援助を通じた協力、あるいは世銀、ADB等の国際金融機関とも連携しながら、ジョージアを含めまして、開発途上国の経済発展に貢献してまいりたい、このように考えております。

小熊委員 その方向性についても、これは本当は大臣に答えてもらわなきゃいけないんだけれども、方向性については、極端に言えば、中国けしからぬ、一帯一路なんか絶対駄目だという言い方と、でも、やはり、これは国際社会の一員でもあり、日本にとっては隣国でもありますから、民間ベースになるかもしれませんが、共同のいろいろなプロジェクトをやっていきながら、今、国際社会の中で指摘を受けている様々なその一帯一路構想の中の具体的案件、問題点を出しているものに関しては、逆に日本がリーダーシップというか、国際社会の共通の価値観といったものはこういうものだよ、こうやらなきゃいけないよ、そういうパートナーとしての役割を果たしていくということが私は大事だと思います。全く全否定すれば、ただ敵対していて、そこからは何も生まれないというふうに思います。

 これは別にこのセルビア、ジョージアに限らず、先ほど御紹介した島嶼国、これは脆弱な国ですから、本当に債務超過に、もうサラ金みたいなものですよ、はっきり言えば、一頃の。返せる当てもない収入以上のお金を貸して身ぐるみ剥いじゃうみたいなことになっていて。中国だって、本来そんなことじゃないと思います。歴史上大国でした。ただ、現代においては、この国際社会の中では、ある意味、新人だと思います。やはり、大国としての立ち居振る舞い、国際社会での立ち居振る舞い。

 今だと、現代の国際社会、例え話が合っているかどうか分かりませんけれども、例えば、野球とかサッカーをやっているときに、違う種目を持ち込んでいってグラウンドを荒らしていくみたいなことを中国はやっているふうにも見えますから、是非、全く否定、敵対ではなく、逆に、寄り添いながら、しっかり国際社会の価値観に寄せていく、中国を寄せていくということがいろいろなきっかけを通じて必要だというふうに思います。

 そういう意味でも、今回のこのバイの条約、協定ですけれども、ただ、国にもいろいろなつき合いがありますから、そういった国を通じて、中国とのいろいろな連携の中で、そうした、中国を国際社会の基準に合わせてもらっていくことをこつこつやっていくことが重要だと思いますが、そういう方向性で今後日本外交は進むのかどうか、これは大臣ですかね。

茂木国務大臣 明日から大型連休に入りますので、その期間を利用して、私も、ポーランドを含め、ヨーロッパの訪問の予定でありまして、一帯一路に対して実際にそれぞれの国がどのように感じているのか、このこともしっかり議論してきたい、こんなふうに思っているところであります。

 海外におけるインフラの整備、日本としては、質の高いインフラを整備していく、さらには債務の持続可能性、こういったものを重視をしてきたわけでありまして、一帯一路について、もちろん、小熊委員おっしゃるように、全て否定するつもりはありませんけれども、こういった国際スタンダードになっている、質の高いものを造っていく、また、相手国の債務との関係もよく見ていくということが必要であると思っておりまして、一方では、インフラ投資、これをがんがんやる、もう一方では、WTOにおいて、また気候変動になりますと、いや、うちは途上国ですと。そこら辺の整合性というのも必要なのではないかなと思っています。

小熊委員 是非、外遊された中でいろんなことを確認していただいて、まさに中国の言ったのが、スタンダードが世界の幸せになるんじゃなくて、もう既にいろんな国で共有しているスタンダードこそ、中国に寄り添ってもらった方が中国もよくなるよという、そういう流れにしていけるように、その一助となるように、今、米中対立とかいろいろありますけれども、基本的にはそういった方向に向けて努力をしていくことが重要だというふうに思いますし、今回、セルビアとジョージア、ある意味では大きな条約ではないのかもしれませんけれども、こうしたこともきっかけに、そういうチャンスを是非成果に結びつけていっていただきたいなというふうに思って、次に移ります。

 国際スタンダードという意味では、これは個人の人生の価値観になるので、国際的スタンダードという言葉が当てはまる議論になるか分かりませんが、夫婦別姓についてです。

 この委員会でも過日議論になりましたけれども、今、コロナ禍の中で人的交流が進んでいませんが、いろいろな交流が深まれば、人的交流、また婚姻する方々も国境を越えて出てくるというふうには思いますけれども、私なりに調べてみたら、セルビア、ジョージア共に、婚姻時には夫婦別姓、同姓、複合姓の中から選択ができる国というふうになっています。

 このセルビア、ジョージアではありませんが、先頃、アメリカで別姓のまま結婚した、私も会ったことがあるはずなんですが、想田映画監督とその奥様が別姓で結婚して、これを日本で裁判に持ち込んで、戸籍に入らないのはどうかという不服を申し立てたところ、戸籍には載らないけれども、別姓は有効であるという判断が東京地裁で過日、確認をされました。

 このことについて、日本では別姓は駄目なんですけれども、海外で別姓で結婚して、戸籍にはそれは載せられないけれども、オーケーです、有効です、婚姻関係はオーケーですと認める。ある意味、国内で結婚した人は別姓は駄目で、戸籍に載る載らないはまた別ですよ、有効かどうかという意味では、海外で別姓であればオーケーになるというのが、日本人同士でもね。

 このことについて、政府としての見解をまずお聞きいたします。

田所副大臣 委員御指摘の事件の判決について、外国の方式に従って夫婦が称する氏を定めないまま婚姻の手続を行った原告らが、戸籍等により婚姻関係の公証を受けることができる地位の確認を求めた訴えについては、不適法として却下をされたわけであります。そのような公証の方法を設けていない立法不作為の憲法二十四条に違反するとの原告らの主張も認められず、その国家賠償請求も棄却をされたものであって、国が全面的に勝訴したわけであります。

 もっとも、委員御指摘のように、この判決の理由中におきまして、このような場合については、我が国においても、民法第七百五十条の効力が発生する前の暫定的な状態で婚姻が有効に成立しているとの意見も付されていたことを承知しております。

 その上で、政府としては、このような場合にも、そもそも婚姻が我が国において有効に成立しているとは考えていないということでございます。

小熊委員 いずれにしても、先ほど言った国際スタンダードというわけではありませんが、例えば、政治の役割は様々な国民の選択をしっかり確保していくということでもありますし、その反対している人の議論の中で、家族が壊れるという議論は、これはちょっと、間違いというか焦点が違うなと。夫婦同姓でも破綻する家族は破綻しますから、別のところの問題です。

 いろいろな歴史的経緯はありますけれども、やはり選択的夫婦別姓としていくことが、こうした外国の事例が日本に持ち込まれて、いろいろな課題がやはり出てきます。やはり、それは価値観の問題ですけれども、私、この際調べてみたら、このセルビア、ジョージアみたいな国が結構多いんです。別姓、同姓、複合姓、三択ですよ、選択して選べますと。じゃ、その国の別姓の家族たちが何か破綻しているのか。関係ないです。家族のきずなは、もっと違うところが、大事なところがあるはずです。同姓だから家族のきずながとやっているということ自体、家族の大切さを間違ってしまうというふうに私は思っています。

 これはしっかり議論して、我々は、夫婦の選択的別姓を求めています。与党においてもいろいろな意見が多様であります。生き方にも関わってきますけれども、やはりこうした国際的に人的交流がなっていく場合においては、ある意味、国際スタンダードというのであれば、この選択的夫婦別姓というのが、これはしっかり取り組んでいくということが、また日本の外交においても、国際社会の理解を得るためにも、また様々な人的交流が拡大していく中においてもそごを来さないのではないかなと思いますが、そうした方向性について、大臣、何か見解はありますか。

茂木国務大臣 所管外でもあります、また、この問題については国会での議論も必要だと思いますけれども、ますますこれから、小熊委員おっしゃるように人的な交流も増えてきます。そして、グローバルスタンダードというのはある程度明確なのではないかな、この問題については。個人的にはそのように考えております。

 それから、今後の日本を考えたときに、このコロナの後にもう一つ大きな壁がやってきます。少子高齢化という壁でありまして、これを乗り越えていかなきゃならない。なぜ結婚されないのか、なぜお子さんを産まないのか、これは選択でありますし、いろいろな理由もあると思うんですけれども、この同姓の問題、これが一つの障害要因になっていたとしたら、最大の少子化という壁を乗り越えていく意味で、これを変えていくということも日本の将来を考えたときに必要ではないかなと思っております。

 更に申し上げると、恐らく、七十歳で結婚される方もいらっしゃると思います、それも結構だと思うんですけれども、一般には若い方が結婚するというのが多いんだと思いますけれども、そういった若い方の意向を聞いてみると、選択的夫婦別姓については好意的な方が多い、このように私は認識をいたしております。

 さらに、現状で子供の数が減っていくと、仮に茂木家と小熊家で子供が一人ずつで結婚をするということになったら、茂木氏か小熊氏がなくなってしまうということでありまして、そういった家族の継続性、こういったことも考える必要があるなと思っておりまして、様々な観点から議論を進めていただく必要がある、こんなふうに思っております。

小熊委員 まさに、スピードアップをしてこうした議論をした方がいいな、もう数年来議論をしてきていますし。

 大臣は覚えているかどうか分かりませんが、数年前、お食事をさせていただいたときに、こうした話題にもなって、やはり家族で大事なのは名字よりも愛だよなというのを、大事な確認、したような記憶がありますが。

 そうしながら、次に進みたいというふうに思います。

 ちょっと条約から外れますけれども、外務省としても抗議をしているところでありますが、中国の趙立堅報道官の福島に対するツイッター、ALPS処理水をやゆして、しかも葛飾北斎の作品をいじってやっている。この報道官、ちょいちょいいろいろなことを、これ、野心的にやっているんだろう、中国が戦略的にやっているんだろうと思います。CGを使ったり、こうして浮世絵をいじったりするぐらいのこと、個人でできるはずはありませんから。これは中国の悪いところだと思います。

 一民間人がいろいろなことをやるというのは、それは間々どの社会でもあることですけれども、国の報道官がこんなことをやるということは、とんでもない。抗議もしていただいている。ついこの間は、コロナは米軍が中国に持ち込んだとか言った報道官ですし、また、オーストラリアの軍隊に対してもやゆするようなことをツイッターで上げている。これはわざと、そういう担当だと思いますけれども、こういうのはやはり許しちゃいけないなと思いますし、およそ大国のすることじゃない、邪道な行為です。

 一民間人がやっているのであれば、いろいろな人がいますから、あるけれども、これは、そういう意味でも、一つ一つやっていっても、これは毎回やっている人ですから、確信犯ですから、やはり大国としてこんなことをやっていることが外交上何の得点にもならぬ、かえって自分に唾を吐いているようなものだということも含めて、今後、言っていただきたい。

 こういうこともされていて、科学的にはいろいろな議論があって、科学的には、事故の起きた原発から海洋放出は一切世界でどこもないんですけれども、いわゆるトリチウム水というのは全世界で流していますし、大気放出もしているのは分かっています。多分、中国もそれは分かっていながら、こういうことをやってくる。

 民間人、普通のいろいろな人たちもいろいろな思いを持つというのが、これが世間相場です。そういう中で、だから風評被害が起きるんです。科学的根拠だけで人は判断しませんし、いろいろな、国の報道官でさえ、やゆをしてくる。

 そういう中で、農水省においては攻めの農業とかつてからやっていますけれども、ずっと歴代、国、地域別では香港が一位ですよ。次に中国とかアメリカが来ますけれども。やはり、香港は中国本土の野菜とか嫌いだから日本から買ってくれているのかなと思っていたら、香港の日本の農林水産物を買う中で一番、二〇一九まで数年連続で一位だった品目というのは、食べ物じゃなかったんですね、実は。真珠だったんですよ。二〇二〇年は、何か真珠はどかんと落ち込んで、ナマコが一位に来ていますけれども。ほかの国、日本の農産物を買ってくれている国、あちこち、トップスリーの品目は何かなと思ったら、農産物は余りないです。お酒とか入ってくる、加工品とかです。ずっと攻めの農業といっても、まだちょっと成果は出ていないなというところでもあります。

 そういう中で、輸入禁止措置を取っている福島県始め隣県も、副大臣のところもそうですけれども、こういう中で、それを乗り越えてどうやってやっていくのと。今言ったように、中国の報道官が、これはとんでもない報道官で例にならないかもしれないんですけれども、でも、世間一般の人もこんなふうに思ってしまう、だから風評被害がある。それは茨城県の立場でも分かると思う。こういうのを乗り越えてどうやってやっていくんだということをお伺いいたします。

葉梨副大臣 お答えいたします。

 私も、今御指摘があったように茨城県で、茨城県の漁協なんかも大変心配をしています。ですから、とにかく、処理水が放出される、二年あるわけですけれども、これは政府全体としてしっかり対策を講じて説明をしていく、これが一番大事なことだろうと思います。

 国外に対して、ALPS処理水の取扱いについて、これまでも在京外交団への説明や国際会議等での発信、各省庁のホームページを通じて情報提供を行ってきました。基本方針の決定後も、政府全体として、海外に対して丁寧に説明して、国際社会の理解の醸成を図ってまいります。

 また、我が省としても、科学的根拠に基づかない輸入規制等により輸出に影響が出ることのないよう、引き続き、関係省庁と連携して、輸出先国に対し丁寧に説明をしていきたいというふうに考えています。

小熊委員 時間がないのであれですが、葉梨副大臣も本当は、隣県だから風評被害もあって、分かっていると思いますけれども、科学的根拠だけを丁寧に説明したって、これは、だから、解決する問題ではないんですよ。とりわけ輸入規制している国は、特に日本の隣国です。

 私、台湾も行きましたが、台湾は政治問題だと言っていました。野党がぎゃんぎゃん騒いでいるから、蔡英文さんは、決断するところまで行ったんですけれども、できなかったという話を直近で訪れて聞いてきました、数年前に。中国も、外交部の人間としゃべったら、これは科学的な話じゃない、いろいろな外交上の問題ですとはっきり言いました。

 ですから、やはり、外交交渉上、輸入規制を外していくという意味では、これは外交力だと思います。一般国民、市民レベルには、葉梨さんは隣県だから分かるとおり、科学的根拠じゃないアプローチですよ。

 こういう趙立堅みたいな、はっきり言えば愚劣な、ああいうやゆする、でも、そういうふうに思ってしまう人たちもいるんです、世の中に。その人に科学的根拠を言ったって、聞く耳を持たないですよ。そういう人にどうアプローチしていくかというのが鍵ですから。これは是非今後とも議論していきたいと思いますので、そういうテーマで、切り口で答弁を今後はいただきたい。数年間、こういうことをずっと言っています。

 是非お願いしたいと同時に、趙立堅には、大臣も記者会見で、一報道官のことにコメントすることはないとは言っていましたけれども、オーストラリアの外相は一報道官に重大抗議をしていましたので、そういうことが福島に寄り添うということにもなりますから、福島、またその隣県、こうした風評被害を受けている人間にとっては、一報道官といえども、大臣が抗議したというのは非常に大きなことだというふうに思いますので、今後、今回のことも含め、もっと強い抗議を、是非言葉を発していただきたい。それが、まさに政府全体がこうした風評被害、福島の問題に取り組んでいるということの証左にもなりますので。

 一人一人が復興大臣というのが今の政権の立場だと思います。もし一言、大臣。

茂木国務大臣 心ない書き込みはあってはならないと思っております。

 その上で、私としては、一報道官というより中国に対して厳重に抗議する、このように申し上げました。

小熊委員 ありがとうございます。終わります。

あべ委員長 次に、辻清人君。

辻委員 自民党の辻清人でございます。

 今日はこの三条約について御質問させていただきますが、委員長を始め理事の皆様に感謝をさせていただきます。

 茂木大臣におかれましては、この後参議院があるというふうに聞いていますので、御自由に御退席いただいて結構でございます。

 今、小熊委員から、さきの中国の報道官の発言、ないし、日本の、我が国の固有の文化である浮世絵に対するやゆに対する抗議の発言がありましたが、私からも同じように抗議をさせていただきますと同時に、福島の農産物、今日の条約の話になるんですが、欧州でいち早く我が国の農産物の輸入規制を撤廃したのはセルビアなんですね。

 それだけじゃなくて、本年、東日本大震災から十年でございますが、セルビアから送られた義援金約三億円以上、これは震災七か月後時点で世界五位、ヨーロッパではトップの額です。しかも、失業率二〇%で、人口七百万弱で、平均月収が五万円足らずの国ですよ。そういう国が、東日本大震災の際にそれだけの額の義援金を出していただいて、最も早く我が国の農産物の輸入規制を撤廃していただいた。言うまでもなく親日国でございます。

 セルビア、ジョージア、またOECD、まとまった、衆議院の外務委員会でこの三つの議論を三時間するということはなかなか機会がないので、いろいろ今、時事問題も含めて横道に外れる誘惑はあれど、できるだけこの条約に徹した議論をさせていただきたいと思います。限られた時間ではございますが、よろしくお願いを申し上げます。

 じゃ、セルビアの話に今入ったので、先ほど小熊委員から中国との話もあったと思うんですが、もうこれは釈迦に説法でございます、外務委員の皆さんなので。私もささやかながら歴史を少し学んだ立場としては、まずセルビアの話からさせていただきます。

 これは、非常にバルカン半島、よくバルカン半島、バルカン半島と言いますけれども、恐らくこれは旧ユーゴスラビア、本当に昔、二千年以上でいうと、ローマ、東ローマ帝国、ビザンチン帝国、その後、オスマントルコ、ロシア、欧米、そして今、中国ですよ。結局、これだけの小国が半島で何千年もの間、人類が営んできたいろいろな歴史があるんですけれども。

 よく昔の、日本でいうとバルカン政治家という言葉がありますけれども、それこそ、よく立場を変えたり、大物に対して、少数派閥でいろいろと権謀術数の限りを尽くすということに対するやゆなんですけれども、いささか、私は、これはバルカン半島の国々に対しては失礼な言い方だなと前から思っていまして。

 というのは、これは、バルカン半島もそうなんですけれども、朝鮮半島、スカンジナビア半島、アラビア半島、半島と名のつくところって、目の前に海があって、後ろ側には大国があるんですよ。そういうところが外交をするのって、すごい、多分、その国に生まれ育って歴史を分かっていないと、私みたいな外から見た人間がこういう国だというふうに判断はできないと思うんですね。

 そういう意味では、一帯一路も含めて、中国が今、世界ですごいです。いろいろな意味ですごいです。その中でセルビアもジョージアも影響を受けていますが、恐らく、我々が思っているよりもこういった国々ってしたたかだと思うんです。

 ただ、我々からすれば、特に地球の十字路というふうにも言われているセルビアが、分かりやすい言葉で言ったら中国側になびいてしまうというのは、これは、我々、地政学的に見たら死活問題でございます。

 なので、そういった観点から、セルビアと今回租税条約を締結する意義を改めて外務省から教えてください。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員から御指摘ございますとおり、セルビアは大変な親日国でございます。まさにお話しいただきましたとおり、東日本大震災の直後には、大使自ら率先して、チャリティーイベントを各地で開催して、三百万ドル近い額を送られましたし、当時のセルビア大使、震災直後も、日本国民への連帯を示すために退避しない、東京にとどまるということもしていただいております。

 このセルビアとの間での租税条約を締結する意義でございます。

 セルビアは、質の高い労働力を有しておりまして、将来的なEU加盟を見据えて、EUへの製品供給元として、投資の潜在性、高くございます。また、セルビアは、EUに加えて、トルコなどともFTAを締結しておりまして、こういった大きな市場、大規模市場へのアクセスが容易でございます。さらに、セルビアは近年、外国投資を積極的に受け入れておりまして、製造業を中心として、日本企業、日系企業の進出が増加しておりまして、このように日本とセルビアの経済関係は緊密化してございます。

 現在、日本とセルビアとの間には租税条約はございませんけれども、今回御審議いただきますこの条約を締結することによりまして、日本、セルビア両国で生じる二重課税を除去し、国際的な脱税及び租税回避を防止することは、日本とセルビアとの投資、そして経済交流、これらを一層促進するために大きな意義がある、このように認識してございます。

辻委員 ありがとうございます。是非よろしくお願いします。

 今日、まだ触れられていなくて、ちょっと時間の関係上、もしかしたらという気持ちもあるので、まず、ちょっと順番を変えて、日本とOECDの特権・免除に関する改正交換公文について質問させていただきます。

 OECD、これはもちろん経済協力開発機構でございますが、OECDの本部に私も以前訪れたこと、もちろんありますけれども、これはパリ十六区にありまして、日本人が多い。パリの二十区の中の十六区って、ちょっと余談ですけれども、ブローニュの森が目の前にあって、日本でいうと、そうですね、私、東京の出身なので、世田谷と港区を足して二で割って半分に割ったぐらいの面積でしょうかね、非常に日本人の方も多い地域で、そのOECDの本部というのは、ルイ十六世とマリー・アントワネットが昔住んでいた城、それをそのまま後で改修して使っているという、日本から派遣された官公庁の方々も非常に、好むと言ったら変ですけれども、場所の一つだというふうに伺っております。

 これは、一言で言うとマーシャル・プランの受皿ですよね。戦後、欧州復興の受皿としてマーシャル・プランというものがございまして、その後、ちょっと趣旨が変わって、日本が欧米諸国以外だと初めて一九六四年に入って現在に至るわけで、我々、こういう世界にいると、シンクタンク的な機能もありまして、OECDって、よく、日本の生産性がOECD諸国中最下位だとか、学力でいうとOECD中日本が何位だとか、日本の様々な機関がそれを使って、いかに日本がその中でというふうな指標がいろいろ出てくるんですが、その中での、今回議論されているこの条約というのは、国際機関で働く方々の税金を免除される特約なんですが、これは私も最近までちょっと認識していなかったんですが、東京にこのOECDの支店というかブランチがあるんですね。そこに働いている日本人の職員の方々に、日本の国内の税金を免除するための条約の改正だというふうに伺っていますが、改めてその意義について教えてください。

四方政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、一九六四年にOECDに加盟いたしまして、OECDとの間で一九六七年に特権・免除協定を締結しましたが、締結から五十年以上が経過する中で、OECDはグローバルかつ普遍的な活動を行う国際機関に成長し、世界のルール、スタンダード作りにおきまして、OECDの重要性は増してきております。

 また、OECD東京センターは、一九七三年にアジア唯一の広報センターとして設立されまして、OECDの活動に対する理解の促進やアジア地域におけるアウトリーチ等を行っておりまして、その機能及び活動の拡大が重要となってきております。

 そうした中で、OECD側から、OECD加盟国のうち、自国籍職員の給与等に対する課税が発生する国は実態上日本のみであることにつきまして、対応を求められてきました。こうしたOECDをめぐる状況の変化等を踏まえまして、種々検討を行った結果、日本人職員についても給与及び手当に対する課税を免除することを含めまして所要の改正を行うべく、今般、現行の交換公文の改正を行うことといたしました。

 本改正交換公文の締結は、OECD東京センターを始め、我が国におけるOECDの活動の円滑化、強化に向けた環境整備につながるとともに、世界のルール、スタンダード作り等におけるOECDとの協力関係の強化に資するものと考えております。

辻委員 ありがとうございます。

 要は、国内の日本人で、ただ、立場としては国際公務員とでもいいましょうか、という立場で、特権で税金等々が免除されるという、その枠組みを今議論しているわけでございますが、個人的な感想も含めて、これは外務省の戦略とも合致しますけれども、これからこういう国際的に活躍している日本人をどんどん増やそうという試みで今やっていると思いますが、そもそも、このOECD、今、三十七、加盟国があると思いますが、入るメリットってあるんでしょうかね。

 今、最近だと、昨年、南米のコロンビアですか、加盟をしていて、もう既に、当初、私が申し上げたようなマーシャル・プラン的な意味合いではなくて、経済協力を議論する機構としての色彩がここ数十年すごく強くなっていると思いますけれども、今後、職員を増やす、その戦略は大いに結構ですが、こういった、増やすための、OECD自体に入るメリット、増やす基準、プロセス等々ございましたら、ちょっと説明していただければと思います。

四方政府参考人 OECDの原加盟国は、一九六一年の設立当時、欧州を中心としました二十か国でありましたけれども、設立から六十年近くが経過する中で、アジア大洋州地域においてはオーストラリア、ニュージーランド、韓国、また中南米の中ではメキシコ、チリ、コロンビア等が加わりまして、本年、三十七か国まで拡大しております。

 OECDの新規加盟プロセスにおきましては、加盟申請国のOECDのルールやスタンダードへの参加状況、法の支配に基づく民主主義や人権へのコミットメント、開かれた透明な市場経済の導入といった点を踏まえつつ、加盟審査開始の是非について議論が行われます。その後、各分野の委員会における技術的な審査を経て、理事会でOECDの基本的価値との整合性等も踏まえて議論して、最終的には理事会でのコンセンサスで加盟につき決定されます。

 なお、昨年四月に加盟申請を終了し、加盟招請を受けたコスタリカは、現在、国内手続を進めており、それが完了し次第、正式加盟予定でございまして、また、現在六か国が加盟申請中でございます。ルーマニア、ブルガリア、クロアチア、アルゼンチン、ブラジル、ペルーということでございます。

 OECDは、多岐にわたる経済社会分野において調査、分析、政策提言を行うとともに、いわゆるライクマインデッドというふうに言えると思いますけれども、そういう加盟国の中での国際的な政策協調の重要な場として機能してきております。また、質の高いスタンダードを形成するとともに、デジタル課税等、先進的課題に関するルール作りを先取りする取組も行ってきております。

 OECDへの加盟を通じて、こうした高いレベルの国際的なルール作りの議論に日本としても主体的に参加することは極めて重要だと考えております。

辻委員 ありがとうございます。

 我が国が掲げている自由で開かれたインド太平洋構想ともかなりシナジー効果があるというふうに考えていますので、是非ともよろしくお願いします。

 さて、先ほど話したセルビアと、黒海を挟んでといいますか、反対側のジョージアについてお話をさせていただきたいと思います。

 租税条約と投資協定でございますが、これは、今のJICAの理事長の北岡伸一先生が以前おっしゃっていたことなんですけれども、ビザンチン、イスラム、モンゴルに侵略されて、トルコ、ロシア、イランに挟まれて、よくアイデンティティーを失わなかったなということをおっしゃっていました。ジョージア、人口三百万人ちょっとの、言ったら小さい国でございます。それでも、地政学的に非常に不利というか、影響力にさらされる場所に置かれながらも、いまだに大変誇りと尊厳を持って歩んでいる国でございます。

 これもちょっと余談になりますが、これはよく知られていることですが、ワイン発祥の地でもございますね。日本の和食が二〇一三年にユネスコの無形文化遺産になったときに、ジョージアのワインも同じタイミングで遺産登録されていますが、非常に親日的な国でもあります。

 先ほどもお話に出ましたが、やはりロシアの影響、それこそ、今年、国交樹立三十周年の国って、ジョージアを含めて、非常に多いんですね。それはなぜかというと、当然、ソ連崩壊後、大体九〇年から九一年にかけて国をつくった国が多いからでございますが、このジョージアも、それこそスターリン、ヨセフ・スターリンの生まれた国でもございますし、ロシアの影響、ソ連の影響というのがあったんですが、今、欧州に仲間入りをする戦略で頑張っています。

 そういった中で、我々の国としても、今、中国との影響も含めて、これはちょっと大風呂敷な質問になるんですが、今回の租税条約、投資協定、改めてその意義を質問させていただいて、恐らくこれが私の最後の質問になると思います。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 ジョージアにつきましては、黒海に面しておりまして、委員御指摘のありましたとおり、アジアと欧州を結ぶ要路、地政学的に非常に重要な土地、地域に位置してございます。

 近年、こうしたアジアと欧州を結ぶ要路に位置するという観点を生かして、地域の物流のハブとなることを目指した経済政策、インフラ整備をジョージアは主として推進していると承知してございます。

 また、貿易・投資の政策面では、EUなどとの間でのFTAを締結しておりますし、外国からの投資を常に積極的に取り込んでおります。ジョージアのビジネス環境、非常に良好だと、国際的にも高い評価を受けているところでございます。

 日本との関係につきましては、これまで、人材育成、インフラ整備、ビジネス環境整備を柱として、ジョージアの自立的発展を日本として支援してまいりました。また、ジョージアには現在六社の日系企業、トヨタ系の企業、それからパナソニック系の企業などが展開してございます。日本企業の関心も高まっておりまして、今後更なる投資が見込まれると期待しているところでございます。

 こうした中で、今般、これまで日本とジョージアとの間で適用されておりました一九八六年の日ソ租税条約をジョージアとの間で全面的に改正をし、また、日・ジョージア投資協定、これを新たに締結することによって、日本とジョージアとの投資、経済交流を一層するために大きな意義がある、このように考えているところでございます。

辻委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間的な制約もあってなかなか深掘りできず、悔しい気持ちでございますが、いずれにしても、この条約、協定、今日掲げているもの、もちろん応援させていただいていますが、地政学的な重要性と、あとは様々な我が国との歴史の積み重ねももちろんバックグラウンドとして配慮しながら、国益に資するような外交を展開するきっかけにしていただきたいという思いを、期待しまして、少し時間は早いですが、私の質問に代えさせていただきます。

 ありがとうございます。

あべ委員長 次に、小田原潔君。

小田原委員 自民党の小田原潔であります。

 質問の機会をいただいて、ありがとうございます。

 まず、日・セルビア、日・ジョージア租税条約でありますが、我々はこの手の条約を多数の国と締結をしています。それは恐らく、通商上のつき合いをするに当たり、最低限と申しますか、最低限というとどうしても一律になりやすいと思いますが、ルールをお互い守っていくという側面と、二国それぞれと我が国がどう戦略的に、具体的には、国際社会の発展に寄与すると同時に我が国の国益を守るという側面があると思います。

 まず、一律性に関しまして、利子に対する課税が日・セルビア、日・ジョージアの租税条約でそれぞれ五%、一〇%と異なる理由、背景、交渉の経緯を教えてください。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問のございました利子に対する源泉地国における限度税率につきましては、委員から御指摘ございましたとおり、日・セルビア租税条約では原則一〇%、日・ジョージア租税条約では原則五%となってございます。

 利子を含む投資所得に対する源泉地国課税の限度税率につきましては、相手国との経済関係、我が国及び相手国が他国との間で締結している租税条約の内容、各投資所得の源泉地国における国内法上の税率などを総合的に勘案しつつ、相手国との交渉の中で決まるものでございます。そのため、それぞれの条約の交渉の結果として相違が生じているものでございます。

 なお、より限度税率の高い日・セルビア租税条約では、セルビアが、日本以外の国又は地域との間で、利子及び使用料に対する源泉地国における限度税率についてこの日本との条約よりも低い税率などを含む協定を締結する場合、こういった場合には、日本からの要請に基づいて交渉を開始するということとしております。

小田原委員 余り一覧表には出てこない貸し借りがそれぞれあるということでありましょう。

 次に、個別の国とのおつき合いに関して質問させていただきたいと思います。

 さっきの小熊委員、辻委員からも多少同様のお話がありましたが、セルビア、ジョージア共に地政学上大変デリケートで重要な位置にあるようにお見受けしますし、特にジョージアに関しては、私たち日本人にとって、恐らく、二〇一五年の、グルジアをジョージアと呼び直しますと言われるまでは、グルジアというのは旧ソ連の国が独立したんだなぐらいの認識しかなかったと思います。ただ、ジョージアと読み直すんですよ、なぜならみんながジョージアと呼ぶのが普通だからですよと言われて、本当にすとんと納得した人が日本人に多かったのかどうか、疑問に思います。

 元々、自称、これはエンドニムというそうですが、ジョージアの人たちは自分の国をジョージアとは言わず、サカルトベロ、カルトベリ人の土地、これは中部カルトリ地域が紀元前六世紀ぐらいまではギリシャ文明とは無縁であったというところから来ているというふうに思います。それがなぜジョージアになるのか。

 また、ジョージアと呼ぶからですよと我々は六年前に説得されましたが、ロシア語読みでは今でもグルジアと呼ぶわけですから、なぜグルジアをジョージアにしなければいけなかったのか。そこには、恐らく強烈な、南オセチア戦争を始めとする反ロ感情があったというふうに思われるわけであります。

 ただ、これまた辻委員からありましたけれども、ジョージアは中部のゴリがヨシフ・スターリンの出生地でありますから、ソ連と極めて結びつきの強い、また、当時は共産党員が大変多かった国だというふうに認識しています。それが、なぜ、手のひらを返したように、二〇〇八年からロシアと断交しているのか。これも我々にはなかなか分かりにくいところであろうと思います。

 国名、他称、これはエクソニムというそうでありますが、これは恐らく、元々ギリシャ語のゲオルギオス、ゲオはジオグラフィーのジオですね、大地。大地の人たち、転じて農民というのが語源だというふうに思います。

 先ほど辻委員からワインの発祥の地というお話がありましたが、それ以前に、小麦、ライ麦の最も有効な品種の育成地であったということがあるようでありますので、恐らく、ギリシャ文明の人たちから見ると、このカルトベロというのは、農産物を持ってくる人というところからエクソニムがグルジアになり、またそれを、ロシア語読みが嫌だからジョージアになったということなのであろうというふうに思われます。

 ただ、引き続き残るのは、なぜこんなにロシアと仲が悪くなったのか。だからこそ、私たちにとっては、地政学上、大変大事なパートナーになり得るということであろうと思います。

 元々、ジョージア人、中心的な人たちが王国をつくったのが紀元前六世紀にコルキス王国というのが民族的にでき上がりましたが、ローマ帝国に紀元前六五年に征服されて属国になった。それから、ロシアに攻め込まれ、ロシア革命のときは一旦独立宣言をしてグルジア共和国ができ上がるわけですが、一九二一年に赤軍に侵攻され、ソ連になったという経緯があるというのが背景でありましょう。

 また、ヨシフ・スターリンが本当にグルジア人の代表だったかというと、ここにも疑問が残り、スターリンは一八九九年から神学校をやめて革命家に転向した。つまり、本当に根のマインドセットを持ったリーダーだったかというのは、クエスチョンマークのまま今に至っていたということではないかと思います。

 さて、このように極めて複雑な、かつ、元々南オセチア戦争が二〇〇八年に起こったのも、アルメニア人、オセット人、そしてグルジア人という少なくとも三つ以上の人たちが共同に暮らしている中で、どの政権が国をリードしようとも、そこに強い反感を持つ人たちが残りやすいという性質があったのではないかと思わざるを得ません。

 さて、現在、我が国と、また、一帯一路の重要なルートとなるとも思われる地点でありますから、投資額は日、中、今のところ拮抗しているというふうに認識をしております。この条約を通じて、我が国の対ジョージア外交の方針や、特に戦略について教えてください。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 ジョージアにつきましては、アジアと欧州を結ぶ要路に位置しているということに加えまして、先ほど委員から御指摘のございました歴史、古来より、ロシア、トルコ、イラン、かつてのペルシャ、こういった周囲の大国との複雑な歴史を経る中で、このジョージアという国、誇り高く、自立を求める気風が育まれていった、このように私どもも認識しているところでございます。

 ロシアとは、二〇〇八年以来、武力紛争を契機として外交関係を断絶しておりまして、現在、ジョージアは、地域の物流のハブを目指した経済政策、特にEU、欧州との関係の強化、これに向けた経済政策を推進しておりまして、既にEUとの間でも貿易の自由化を進めているところでございます。

 ジョージアは、日本にとりまして、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を共有する国と認識しております。

 このようなジョージアとの間で、自由で開かれた国際秩序の構築に向けた連携を図る、それと同時に、ジョージアを含めて、コーカサス地域の自立的な発展のための人材育成支援、さらにはインフラ整備、またビジネス環境整備、そのための支援等を日本として積極的に実施してまいりたいと考えてございます。

小田原委員 ありがとうございます。

 国際社会の歴史上においても、現在、このセルビア、ジョージアとの租税条約を結んでいくということは大きな、オセロゲームで例えるのが少し不謹慎に聞こえるかもしれませんけれども、オセロゲームの大事な一手になっていくと思います。大いにこの条約をばねにして、日・ジョージアの戦略的な関係を構築していっていただきたいと思います。

 さて、この日・セルビア、日・ジョージア租税条約、両方とも支店などの恒久施設がなければ課税されないということになっております。これは、両条約に限らず、この条項が税源侵食と利益移転を活用して租税回避に使われないかというところが無視し得ない懸念だと思います。

 特に、インターネットを通じた電子取引で買物をし、自国内の倉庫と物流センターのみが介在して配達が行われることが主流になっていくと、恒久施設、パーマネントイクイップメントというのでしょうか、の認定が国の税収を左右することになります。

 特に厄介なのは、買物をする本人にとっては、取引の場所がどうかという認識はほとんどなくて、アメリカ合衆国が発祥のA社とか我が国のR社とかが提供するサイトだとかホームページにアクセスすると欲しいものが買えますよということなのが重要であって、両社の本店所在地がどこかという認識は全くありません。

 したがって、本店所在地がケイマンにあろうと、バミューダにあろうと、キュラソーにあろうと、取引をした、買物をした本人は、どこで取引をしましたかと、答えれば、電車の中とかスマホの画面というのが素直な気持ちでありましょう。

 その取引や発注というのは、コンピューター上で処理され、その製造拠点が世界中のどこにあろうと無関係に発注が行われ、結果的には注文した人がどこでそれを受け取るのかというのが最も重要な事象になろうと思われます。

 特に、物流センターが複数の業者の仕事を請け負うような物流センターである場合、例えば、A社やR社固有の会社の恒久施設となかなか認定しづらいというのもありましょう。

 本来であれば、最も大事なのは、配達される人の届け先ということになろうと思います。そうでなければ、行く行くは、例えば、住宅を電子取引で買えるようになると、全ての資材の消費税を逃れて、数百万円同じ住宅が安く買えるなんということが起きかねないと思います。

 今回はこの二つの条約に限定をいたしますが、物流センターは恒久施設に該当するのか、また、BEPS対応については、個別の条約でなく、国際社会に税務当局と協働して対処していくべきかと思いますが、この点の現状についても教えてください。

武藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、インターネットを通じた通販業者と申しましても、その事業形態は様々でございまして、一概に申し上げることは困難でございますが、今回御審議いただいております両租税条約の規定におきましては、倉庫や物流センターのような商品の保管、展示や購入のみを行う場所等でありましても、それが企業にとって準備的、補助的な活動ではなく本質的な活動であると認められる場合には、恒久的施設、PEと認定して課税することが可能となるということでございます。

 また、委員御指摘のBEPSの問題は、多国籍企業が、国際的な税制の隙間や抜け穴を利用した過度な節税や租税回避により、本来課税されるべき経済活動を行っているにもかかわらず、当該経済活動に係る税負担を軽減している問題のことを指しております。BEPSの問題がG20などの場で取り上げられました結果、現在、OECDを中心に精力的な議論が行われまして、二〇一五年には、BEPS対応のための十五の勧告として最終報告書が取りまとめられたところでございます。

 我が国としましては、BEPSプロジェクトの合意事項等を踏まえまして、御指摘の恒久的施設関連規定の見直しのほか、過大支払い利子税制、移転価格税制の見直し等を含めまして、必要な見直しを累次の税制改正等を通じて着実に実施してきたところでございます。

小田原委員 是非とも、物流センターへの課税にこだわるわけではありませんが、ここを国際社会と協働して有効な課税が実現できるようにするということは、まさに国際社会への貢献、また具体的なセルビア、ジョージアに対する貢献でもあり、この条約の期待される大きな成果であろうと思いますので、引き続き努力をしていただきたいと思います。

 最後の質問であります。

 OECDの交換公文締結の承認でありますが、辻委員からも触れられましたけれども、OECDの広報を担当する東京センター、広報センターが東京にあることは大変重要と思いますし、加盟アジア国のほかの国に取られてしまうとこれはまた大変なことになると思いますが、現在、邦人五名のみの事務所で、税金の課税の免除はよいとして、OECDの本部が期待しているとおりの役割が果たせているのかについても教えていただきたいと思います。

 と申しますのは、アジアの諸国が、OECDの加盟を目指すとか、OECDとの密接なやり取りをするに際し、まず東京の拠点を頼るようなことになっているのか。ホームページを拝見すると日本語の発信が多いようにもお見受けいたしますし、もし私がアジアの担当者だったら、恐らく、まずパリのOECD本部のホームページを見て情報を収集すると思います。

 しかしながら、毎回毎回パリまで行って更なる交流や意見交換をするというのは現実的にはしんどいでしょうから、もしも、初期的な若しくは中間地点までのミッションを東京に出張することで果たせるのであれば、それはアジア諸国にとっても、またOECD全体にとっても便益が大きいと思いますが、まず東京の拠点を頼るような体制が確立しているのか、今後の東京センターの体制方針について教えてください。

四方政府参考人 お答え申し上げます。

 OECD東京センターは、一九七三年にアジア唯一の広報センターとして設立されまして、当初は、日本国内向けの広報活動を中心として、OECDの取組に関する講演会の開催や日本語ウェブサイトの開設などを行い、我が国におけるOECDの活動に対する理解の拡大に貢献してまいりました。

 近年は、OECDに一か国も加盟していないASEAN諸国、東南アジアにおいてOECDのルールや質の高いスタンダードを普及していくことが重要となってきている中で、その活動が拡大しております。

 例えば、ASEAN関連会合の機会を利用し、東京センターは、東南アジア諸国の経済見通しに関するOECDの報告書を発表するといったような取組も行っております。さらに、同センターは、OECDとERIA、これは我が国がその設置に当たり主導的な役割を果たした東アジア・ASEAN経済研究センターでございますけれども、そのERIAとの協力に関する覚書を基に合同シンポジウム等を開催し、OECDと東南アジアとの関わりを深化させてきております。

 ちなみに、本日の夕刻ですけれども、このOECDとERIAとの間で、今後も協力を推進していこうということで、改定版の覚書をオンラインで署名をする予定でございます。

 このように、東京センターとしても東南アジアとの関わりを深化させてきておりまして、アウトリーチ活動がますます重要となる中で、今回の交換公文の改正というのは、東京センターを始めOECDがグローバルな活動を強化する上で環境整備に資すると考えております。

 政府としましては、引き続き、OECD東京センター、機能強化を通じて協力を強化して、東南アジア諸国の将来的なOECD加盟も見据えて、アジア地域における地域のハブとしてのOECD東京センターを積極的に支援してまいりたいと考えております。

小田原委員 終わります。ありがとうございました。

あべ委員長 次に、中曽根康隆君。

中曽根委員 自由民主党の中曽根康隆です。

 質疑の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 まず、国際課税ルールについて、今、小田原先生もちょっと触れられましたけれども、質問したいと思います。

 皆さん御存じのとおり、GAFAの存在感というのはすごいものがあります。この四つの会社の製品とかサービスを使わないで生きていく方がもう難しいと言っても過言ではないような世の中になっていますけれども、こういったIT企業というのは、活動する市場国に物理的なプレゼンスがなくて、縦横無尽に世界でビジネスを展開しているわけであります。

 現在の国際課税ルールでは、恒久的施設なくして課税なしというルールがありまして、こういった巨大IT企業というのは、市場国に物理的な拠点がないために、適切に課税もされておりませんし、また、相対的に税負担が軽くなっているという現状があります。これにより、一方、市場国に恒久的施設をしっかりと持っている、そしてしっかりと税負担をしている従来型の企業との間で不公平が生じているという現状であります。

 この問題に関して、昨年、二〇二〇年の一月にOECDの新ルール案について大筋合意がなされました。ここでは、市場国が巨大IT企業などの出す一定水準以上の利益に課税することができるという案が盛り込まれております。

 各国は二〇二一年半ばに最終合意を目指しておりますけれども、今後の見通しと、合意に至るまでの課題及びその解決策等を教えていただきたいと思います。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

武藤政府参考人 お答え申し上げます。

 大規模な多国籍企業を対象とした市場国への課税権の配分に関する新たなルールの導入につきましては、経済のデジタル化に伴う国際課税制度の見直しの一環として、OECDやG20を中心に約百四十か国が参加するBEPS、包摂的枠組みで議論されているところでございます。

 昨年十月には、この包摂的枠組みで、技術的な論点をカバーした青写真というものが合意、公表されたところでございます。この青写真では、例えば、対象企業の範囲、市場国への課税権の再配分の具体的方法、効果的な紛争防止、解決手続等が残された主な論点として示されております。

 これらの諸課題のうち、例えば対象企業の範囲につきましては、業種により課税対象を絞るべきという考え方や、売上規模や利益率により絞るべきとの考え方がありまして、まだ合意には至っておりませんが、我が国としましては、課税対象企業数の限定が制度の円滑な運営確保のために極めて重要と考えているところでございます。

 いずれにしましても、国際課税制度の見直しにつきましては、先日、G20財務大臣・中央銀行総裁会議におきましても、もう一つの柱でございますグローバルミニマム課税制度の導入と併せまして、本年半ばまでに合意を目指すことが再確認されたところでございまして、我が国としましても合意形成に積極的に貢献していきたいと考えているところでございます。

中曽根委員 ありがとうございます。

 ヨーロッパを中心に、各国独自でデジタル取引に売上税を導入するような動きもあるようですけれども、これはこれで二重課税の問題とかいろいろ懸念されるわけでありまして、やはり、しっかりとした国際的な枠組み、そしてルール策定をする必要がありますし、日本のリーダーシップを期待したいと思います。

 続いて、ジョージアとの投資関連協定についてお伺いをします。

 ちょっと余談ですけれども、十五年前、私が大学院に行っていた頃にベストフレンドと言われるのが、ジョージア人の、ミニストリー・オブ・ジャスティスから来ている友人でありました。まだ当時、ロシアとグルジアは、非常に攻防、戦争している最中でありまして、まさにジョージアの赤ワインを飲みながら、ソ連からの独立におけるその影響とか、民主主義を追求していくことの困難さみたいなのを夜な夜な聞いていた記憶がございます。

 そもそも、この投資関連協定を結ぶということは、投資の自由化や促進の法的枠組みをしっかり定めて、経済関係を強化していくことだというふうに思います。ただ、これは、ただ単に協定の数が多ければいいというものではなくて、しっかりとその質が伴っていなくてはいけない。とはいえ、やはり、より多くの国と、そして地域と、しっかりとしたウィン・ウィンの協定を結ぶということは国益に資することになるというふうに思います。

 政府は、二〇二〇年までに百の国・地域を対象とする投資関連協定の署名、発効、これを目標に掲げておりましたけれども、今現在、七十九の国・地域との署名済み、そして交渉中の協定が十六本と、合わせて九十四の国・地域をカバーしている現状でありまして、目標という意味では未達成に終わっているわけであります。

 欧州諸国は、優に百本を超える協定を締結している国が非常に多いですけれども、日本は、署名数でいうと世界の五十六位ということになります。ちょうど一年前の、去年の四月の茂木大臣の本件に関するこの委員会での御答弁でも、この目標に対する成果というのを一度きちんと検証した上で、来年以降の方針、戦略を検討するというふうに述べられております。

 この目標未達成の要因分析と、今後の新たな数値目標や戦略を教えていただきたいと思います。

四方政府参考人 お答え申し上げます。

 本年三月でございますけれども、投資関連協定の締結促進等投資環境整備に向けたアクションプランということで、これまでの成果の検証と今後の方針ということで、関係省庁で取りまとめをいたしました。

 我が国は、二〇一六年の時点で、委員御指摘のとおり、二〇二〇年までに百の国・地域との間で投資関連協定を署名、発効するとの目標を掲げましたけれども、現在までには七十九の国・地域との間で投資関連協定を発効済み又は署名済みでございまして、これらに交渉中のものを加えますと、合計九十四の国・地域をカバーすることになります。

 この結果、発効済み又は署名済みの投資関連協定が我が国の対外直接投資残高に占める割合が、二〇一六年の約三五%から約九三%まで増加いたしました。また、政府としましては、TPP11、RCEPといったマルチの協定、日・EU・EPA及び日英EPAといったハイレベルの協定の署名、締結を我が国が主導したこと等を踏まえれば、大きな成果を上げることができたと考えております。

 今後の方針につきましては、新たな数値目標を掲げることは現段階では考えておりませんけれども、引き続き、投資先としての潜在力の開拓や、他国の投資家と比較して劣後しないビジネス環境の整備等に向けまして、特に中南米及びアフリカを中心に、戦略的観点及び質の確保の観点を考慮して、積極的に取組を進めてまいりたいと考えております。

中曽根委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間もないので、質問を飛ばしていきますけれども、今回のジョージアとの投資協定において、アンブレラ条項が盛り込まれておりません。このアンブレラ条項は何かというと、投資受入れ国が相手国の投資家による投資活動や投資財産に関して義務を負った場合には、それを遵守しなくてはならない旨を定める条項であります。

 また、アルゼンチンやアルメニアなどとの協定にはアンブレラ条項は規定されておりませんけれども、その代わりに投資に関する合意というのが盛り込まれて、これによってアンブレラ条項と同様の効果が確保されております。

 今回の協定ではこのような合意も含まれていないわけでありまして、日本企業が安心してジョージアに投資するためにも、本協定においても、このアンブレラ条項とか、又はこの合意、投資に関する合意というのは必要ではないかと思いますけれども、政府としてのお考えを簡潔にお願いいたします。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国としましては、委員御指摘のございましたいわゆるアンブレラ条項、投資受入れ国政府と企業との間の契約違反を、ISDS、国と投資家との間の紛争解決、このISDSの手続の対象とする条項を含め、我が国の投資家及びその投資財産が適切に保護される規定を盛り込むべく、投資協定の交渉に臨んできております。

 しかしながら、個別の条項について相手国が難色を示す場合には、全体的なバランスを考慮しつつ判断する方針を取っているところでございまして、今回の日・ジョージア投資協定についても、両国による交渉の結果、関連の条項を盛り込まないことで合意したものでございます。

 なお、いわゆるアンブレラ条項がない場合でございましても、例えば、契約に違反する政府の措置が、公正かつ衡平な待遇を与える義務や、一定の要件を満たさない収用、国有化などの禁止義務等の違反を構成するときは、協定の違反としてISDS手続を利用することは可能でございます。

中曽根委員 ありがとうございます。

 さっき辻先生からもちょっとありましたけれども、OECDを始めとする国際機関の日本人職員の数と幹部ポストの獲得についてちょっとお伺いをしたいと思います。

 様々な課題がもう一国では解決できないこの世の中で、多国間の多様なプレーヤーが複雑に絡み合っている状況において、国際機関の存在意義というのはますます高まってくるというふうに思います。そこで、日本人がどれだけいるか、そして日本人がどれだけ主要なポジションに就いているかというのは、非常に国益に直結してくるというふうに思っております。

 OECDにおいては、ナンバーツーである事務次長に日本人が就いておりますけれども、職員数という意味では九十一人であって、全体の四・六%にとどまっております。これはもっと増やせると思いますし、その他国際機関においても職員の増員と幹部ポジションの獲得というのは、是非とも、外務省そして政府として戦略的に働きかけていただきたいというふうに考えています。

 今、十五ある国連専門機関では、中国が四つのトップのポジションを獲得している一方で、日本はゼロであります。国際機関の中国化が進んでいるなんということも言われますけれども、やはり、これは後々非常に、ボディーブローのように日本とか世界に対してネガティブな影響を与える可能性もあります。

 やはり、日本としても、このポストにはこの人を送り込もう、そういった戦略を持って、そのために、例えば国際機関幹部養成のコースとかそういったようなものを各省庁に置くとか、そういった仕組みをしっかりと、ポストを取りに行く仕組みをつくっていくということが大事だと思いますけれども、政府としての見解をお伺いしたいと思います。

大鶴政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに委員御指摘のとおり、国際機関におけます日本人職員の増加及び昇進につきましては、国益に直結する重要な課題というふうに外務省としても考えております。

 戦略についてお尋ねでございます。まさに、数を増やす、裾野の拡大、それから、より影響力のある高位ポスト、昇進を獲得していく、この双方を行った上で、できるだけ定着、拡大を目指していくということに尽きるかと思っておりまして、前者につきましては、若手の日本人を国際機関に派遣いたしますジュニア・プロフェッショナル・オフィサー、JPO制度を活用し、また、後者におきましては、将来的な幹部職員を増加させるということを目的といたしました中堅レベルのポストへの派遣制度を活用して、着実に実施してきております。

 また、これらの制度による派遣であるか否かにかかわらず、その他施策も駆使しながら、日本人職員の増加、昇進に向けて、外務本省及び在外公館一体となって後押しをしております。

 また、本年二月には、内閣官房と外務省の共催によりまして、国際機関幹部ポスト獲得等に戦略的に取り組むための関係省庁連絡会議というものを開催しております。十六省庁の参加を得まして、国際機関のトップ、幹部ポストの獲得ですとか、官民からの国際機関への人材送り込みにつきまして意見交換を行いました。

 引き続き、国際機関で働く日本人職員の増加、昇進に戦略的に努めていきたいと考えております。

中曽根委員 ありがとうございます。

 中国は、幹部ポストを獲得することによって、国際ルールや国際標準を自分の国に有利な形に変えようとしているのが明らかでありまして、そのポスト獲得のために、途上国に金銭的な援助などもしながら影響力を強めているといった状況であります。極めてしたたかであるわけでありまして、気づいたときには幹部が中国だらけとならないように、しっかりとした戦略そして実行をお願いをしたいというふうに思います。

 ちょうど茂木大臣がお戻りになられましたので最後に一点だけ、ちょっと法案とは関係ないんですが、大臣に御質問させていただきたいと思います。御到着早々、大変恐縮でございます。

 今月二十一日、一週間前、韓国の中央地裁が、元慰安婦による訴訟において、原告の訴えを却下する判決を宣告いたしました。主権免除の原則を踏まえたとしておりますけれども、茂木大臣も、これを受けて、適切なものと述べるにとどめられているように、これは、別に喜ぶべきものではなくて、むしろ当たり前の判決なわけであります。

 また、この度、ドイツのドレスデンの博物館にも慰安婦像が展示されたりしておりまして、やはり引き続き、この世界で間違った歴史認識を既成事実化しようとする動きが目立っている状況であります。

 我が国としては、しっかり、日韓請求権協定であったり日韓合意であったり、そういった歴史的事実を世界に発信して、多国間において日本の正当性、正しい歴史認識を持ってもらう必要があるというふうに考えています。自分の支持率が下がると対日感情をあおって、内政と外交を混同して、こういう国とのバイのやり取りというのは非常に難しいというふうに思います。だからこそ、世界世論をやはり巻き込んでいかなきゃいけないというふうに考えております。もちろん、対中国というものを考えれば、日米韓が、軍事的にもそうですし、しっかり手を組まなきゃいけませんけれども、やはり、日韓という二国間の問題においては、日本政府として毅然とした態度そして行動を取っていくべきだというふうに考えております。

 茂木大臣は連休中にG7に出席される予定というふうにお伺いしておりますけれども、是非とも、その際に、各国のトップに対して日本の立場そして意見というものを主張していただければなというふうに考えております。ちょっとざっくりした質問になりますけれども、大臣の包括的な御見解、よろしくお願いします。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

茂木国務大臣 中曽根委員の方から御指摘いただきましたが、元慰安婦等が日本政府に対して提起をしました訴訟に関して、我が国としてはこれまで、国際法上の主権免除の原則から、日本政府が韓国の裁判権に服することは認められず、本件訴訟は却下されなければならない、こういう立場を繰り返し表明してきました。今回の判決において、主権免除の原則を踏まえて原告の訴えを却下したことについては、適切なものというか当然のものである、このように考えているところであります。

 今後の日韓関係への影響について、予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思いますが、これまで述べてきているとおり、旧朝鮮半島出身労働者問題、また慰安婦問題に関して、韓国により国際法が破られ、二国間の合意が実施されておらず、日韓関係はかつてなく厳しい状況にある、こういう基本的な認識に変わりありません。

 今年は、G7の議長国が英国、そしてG20がイタリアという形でありまして、まさにマルチ外交の舞台というのが欧州になるわけでありまして、様々なやり取りの中で、これは、日韓関係が、健全な、元に戻る、もちろん日本側には何の責任もありませんけれども、そういったことが極めて重要である、こういったことはそれぞれの会談等において適時適切に私の方からしっかりと説明をしていきたい、こんなふうに考えております。

 政府として、日韓関係を健全な関係に戻すためにも、外交当局間の意思疎通、これを維持し、なかなか難しいところもあるんですけれども、日本の一貫した立場に基づいて、引き続き韓国側に適切な対応、これを求めていきたいと思います。

中曽根委員 ありがとうございます。

 自民党としても全面的にしっかりと大臣、そして政府をバックアップしていくことを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

あべ委員長 次に、山川百合子君。

山川委員 おはようございます。立憲民主党・無所属の山川百合子でございます。

 今日は、まずは日・セルビア、日・ジョージアの租税条約について初めに伺っていきたいというふうに思います。

 今日の条約等は、これまでの四名の方の質問と質問が少しかぶる部分もありますが、深掘りも含めてちょっとお聞きしていきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 まず最初にお聞きしたいのは、この租税条約二条約に二つのことが導入されなかった、AOAアプローチと仲裁規定の導入がなかったことについて伺っておきたいと思います。

 我が国が締結する租税条約は、基本的にはOECDモデル条約に沿って策定されております。そのOECDモデル条約の二〇一〇年の改定で、OECD承認アプローチ、AOAアプローチが導入されました。政府も、新規の締結あるいは改正の際には、このOECD承認アプローチに基づいた規定を導入することを目指しているとされていますけれども、今回の両条約にはこのAOAが導入されないまま締結をされています。

 また、仲裁規定についても、モデル条約では、事案解決がしないまま一定期間が過ぎたときに仲裁に付すことができるよう、その手続に関する規定が設けられていますし、政府も同じように、新規のもの、あるいは改正のときにはこの仲裁手続を積極的に取り上げていくとされていますが、両条約にはAOAそして仲裁規定のいずれの導入もなかった、その理由についてお伺いをしておきたいと思います。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、委員御指摘のOECD承認アプローチ、いわゆるAOAでございますけれども、これは、支店等の恒久的施設に帰属する事業利得に対する課税につきまして、本支店間の取引に関して独立企業原則をより厳格に適用し、本支店間の内部取引を網羅的に認識して、恒久的施設に帰属する利得を計算することを規定するものでございます。我が国としては、租税条約を締結、改正する際には、AOAに基づいた規定とすることを目指してございます。

 しかしながら、このAOA、OECD承認アプローチの実施には、本店と支店との間の内部取引の網羅的な認識が必要でございまして、精緻な国内法、そして高度な執行能力が当局に求められます。

 このため、各国の実情に照らしまして、その導入を困難とする国がございます。セルビア及びジョージアは導入を困難としており、これらの国との間で導入に合意できる可能性はないと判断されたところでございます。

 続いて、仲裁規定についてでございます。仲裁手続を導入する目的、これは相互協議手続の円滑化、実効性の向上により納税者の負担軽減を図り、投資環境の整備及び国際的な投資交流の促進に資することでございます。このため、我が国といたしましては、租税条約の新規締結、改正交渉の中で仲裁手続の導入を積極的に取り上げていくこととしております。

 しかしながら、これも先ほどのAOAと似たようなところがございますけれども、相手国の事情によりましては、国内法上の制約や執行当局のリソースの不足といった事情のため、仲裁手続の導入が困難である国がございます。今回のセルビア及びジョージアは導入を困難としておりまして、これらの国々との間で導入に合意できる可能性はないと同じく判断されたところです。

 しかしながら、セルビア及びジョージアとの、これら両国との深化する経済関係を踏まえますと、両国との租税条約の早期締結は重要でございます。このため、AOA及び仲裁手続の導入は見送った上で、租税条約の締結を優先することとしたものでございます。

山川委員 続いて、デジタル課税を政府としてどのように議論していくかということについて、先ほども少し質疑がありましたけれども、伺っておきたいと思います。

 莫大な利益を上げているであろうGAFA等に代表されるIT企業や多国籍企業などが、恒久施設、PEがないところでは課税されない、また、タックスヘイブンを利用した利益移転によって税負担を逃れている状態、現状は看過できないというふうに私は思います。世界中から得ている利益に対して相応な税を納めて、市場国にもちゃんと還元する責任があるというふうに思います。特に、このコロナ禍で、経済の低迷によって税収は減っている、そして財政出動等で非常に大変な状況がそれぞれある中では、やはり多国籍で世界にグローバルに展開する企業がそれぞれの市場国においてやはり相応の納税をするということは、極めて私は今、更に大事なのではないかなというふうに思っております。

 それで、社会が大きく変化するとき、それに対応する政策にも大きな転換が求められ、それを可能にするための資金、すなわち税収をどう確保していくのかというのが根本的な課題となります。

 アメリカの国会には歳入委員会というのがあるようで、そういったものが日本にないため、それを議論する専門の場というかがないように思います。ですので、せっかく今日は質問の機会をいただいたので、今日は船橋財務大臣政務官にいらしていただいておりますので、御見解を伺っておきたいと思います。

 先ほど、御質問の答弁の中で、昨年の一月に大枠合意したOECDの新ルール案についてのちょっと御説明もありましたけれども、青写真という形で大きく二つの柱、一つはデジタル課税、一つはミニマム課税というふうに大枠が合意されたというふうに思いますが、政務官に御質問なんですけれども、経済のデジタル化、グローバル化が従来の国際課税ルールで捕捉できなくなった今、適正な税収確保に向けて、これらの新しい国際課税ルール策定の動きに対して、財務省としてはどのような問題意識を持ち、どのように積極的に対応していこうとされているのか、御見解を伺っておきたいと思います。

船橋大臣政務官 お答えいたします。

 国際課税につきましては、日本はこれまで、BEPSプロジェクトを主導いたしますとともに、二〇一九年には、G20議長国としてリーダーシップを取りまして、経済のデジタル化に伴う国際課税上の課題を主要議題といたしまして、二つの柱から成る国際的な解決策への作業計画を策定いたしますなど、成果を上げてきているところでございます。

 デジタル化の進展を踏まえますと、第一の柱といたしましては、消費者がいる市場国に物理的拠点を置かずにビジネスを行うことができる多国籍企業にも市場国が適切に課税できるようにすること、また、第二の柱といたしましては、軽課税国を利用した租税回避行為を防止すること、こうしたことは、企業間の公平な競争条件の確保という観点からも極めて重要な課題でございます。

 こうした国際課税制度の見直しにつきましては、先日のG20におきまして本年半ばまでに合意を目指すということが再確認をされているところでございまして、日本といたしましても、引き続き積極的に議論に貢献をしていきたいと思っております。

山川委員 ありがとうございます。

 先ほどの外務省の方からの御答弁とまた同様のような内容だったとは思うんですけれども、じゃ、この大枠合意、今年の夏に最終合意ということですが、大体、今の議論の中で、これが合意に至って実際にそれが課税されるようになると、どのぐらいの税収が日本側にあるのかなというのはすごく関心なんですが、なかなか今の段階でそんな数字を試算することも、決まっていないことですから難しいのかもしれませんが、せっかく政務官に来ていただいていますので、何かいただけることがあればと思いますが、いかがでしょうか。

船橋大臣政務官 まだ今ほどお答えをいたしたとおりのことでございまして、これから合意をしていく中で、今ほど委員からお話があったような、我が国としてどの程度税収を見込むことができるのかということは、今後の協議次第ということになろうかと思います。

山川委員 是非、本当に、世界での合意においてやはり適正な納税をしていただくような仕組みをつくり上げていただきたいというふうに思っております。ありがとうございます。

 それでは、今日はありがとうございました。

 それで、続いて、日・ジョージア投資協定について伺いたいと思います。

 まず一つ目は、アクションプランはなぜ達成できなかったのかでございます。先ほど中曽根委員さんからもそのような御質問があったかと思いますが、御答弁の中で、なぜ達成できなかったのかという御答弁はなかったと思うんですね。

 百と目標を掲げたけれども、いろいろ数字を出されて、やっていますということは分かりましたけれども、お聞きしたいのは、大きく掲げて、七省一緒にプランを立てて、しかも、かなり短い期間で百というかなりアグレッシブな目標を立てたわけなので、それだけ重要性が高いということでアクションプランを立てたんだと思うんですけれども、私も先月の報告書を拝見させていただきましたが、なぜ達成できなかったのかということは特に書かれていなかったですし、どういう困難が四、五年の間にあったのかということについて伺っておきたいと思います。

茂木国務大臣 投資協定にしてもそうでありますけれども、さらに経済連携協定、当然相手もあることでありまして、日本として優先的に取り組むもの、こういったものを重点的にやりながら、できるだけ、掲げた目標ですから、達するように努めてまいりましたけれども、結果的には、何というか、数字自体は達成していない、これは事実だと思っております。

 ただ、今回御審議いただいておりますジョージアにつきましても、ここは黒海に面して、アジアと欧州を結ぶ要路に位置しておりますし、かつて、中世の時代においても、例えば十字軍の時代、この花の十字軍と言われた第三次十字軍のとき、ヨーロッパ側、英国のリチャード一世は地中海を通ってエルサレムを目指したわけでありますけれども、一方で、神聖ローマ帝国、今のドイツですけれども、ここのフリードリッヒ二世は黒海、このジョージアの辺りを通りながらエルサレムを目指す。

 こういった形の要路でありまして、現在も、物流のハブを目指した経済政策を推進して、積極的に投資誘致を行っておりますし、最近、ジョージアは、ワインがうまいんですよ、すごく。ニューワールドの中でも非常にジョージア産のワインはいいと言われておりまして、今後投資機会というのも増えていくんじゃないかな、こんなふうには考えているところでありますけれども、そういったことを一つ一つ仕上げていきたいと思っております。

 そこで、戻りまして、アクションプランに関してでありますけれども、我が国は、二〇一六年の時点で、二〇二〇年までに百の国、地域との間で投資関連協定を署名、発効する、こういった野心的な目標を掲げ、取組を進めました。現在までに七十九の国、地域との間で投資関連協定を発効済み又は署名済みでありまして、これらに交渉中のものを加えますと、合計九十四の国、地域をカバーすることになります。

 さらに、何というか、何か国というだけではなくて、では、投資の額、こういったことで見てみますと、発効済み又は署名済みの投資関連協定が我が国の対外直接投資残高に占める割合、これはアクションプランを作りました二〇一六年のときは三五%だったのが、現在は九三%に増加をいたしております。

 同時に、最近で申し上げますと、こういったバイの何というか投資協定であったりとか租税条約、こういったものも重要ですが、日本として、マルチの舞台、ここで極めて主導的な役割を果たしてきた。TPP11、そして、先日御審議をいただきましたRCEPもそうでありますが、こういうスケールの大きなマルチの経済連携協定、さらには、日・EU・EPAであったり日英のEPA、こういったハイレベルの協定、この署名、締結、我が国が主導してきたわけでありまして、大きな成果を上げることができた、こんなふうに考えております。

 もちろん、今後を考えますと、まだ中南米であったりとかアフリカ、こういった国も残っておりまして、相手との経済関係であったりとか、また、地理的な重要性、こういったものも考えながら、一つ一つ着実にこういった投資協定等々を進めていきたい、こう考えております。

山川委員 ありがとうございます。是非、掲げた目標には達成しなかったけれども、いろいろ成果もあるということですが、今後も進めていっていただきたいなというふうに思います。

 続いてこの投資協定について伺いたいのは、これはジョージアの投資協定にかかわらず、一般的に、全般的に、投資協定全般なんですが、これをどのように広報していくかということであります。

 というのは、私、今回の質問に当たっていろいろ調べていたら、ジェトロのだと思うんですが、動画でこの投資協定のこと、十分ぐらいでしたですかね、出ていたんですね。そこの中で、ある中小企業の方が、いや、投資協定ってあるって知らなかったんですよねというようなことをおっしゃっていたんですね。ああ、そうなんだ、結構知られていないものなんだなと思いまして、ちょっといろいろ調べて、いろいろといっても検索ぐらいで、すぐヒットしたんですけれども、ジェトロが実施したアンケートでは、二〇二〇年、去年ですね、海外進出企業の半数以上が投資関連協定を全く知らないと回答した。また、調査結果からは、企業が進出先国・地域でトラブルに直面した際に、投資協定の活用がその解決手段となり得るという認識を有していない実態も浮かび上がったというふうにジェトロのところに出ていました。

 国会では投資協定というのはかなり頻繁に審議されていますけれども、当の企業の方々、海外に進出している企業の方の半数が知らないということになりますと、やはりそれを知らしめていかなきゃいけないんじゃないかなと思いますが、広報についてどのようにしているのか、していくのか、経産省に伺いたいというふうに思います。

田村政府参考人 お答え申し上げます。

 海外市場の重要性が増大し、我が国企業の海外投資が増加する中、投資を適切に保護するとともに、円滑なビジネス展開を促進するべく、中小企業も含めて投資協定の周知、広報や利活用の促進を図っていくことは、委員御指摘のとおり、極めて重要な課題と認識してございます。

 このため、経済産業省といたしましては、一、日本商工会議所やジェトロと連携した解説動画の配信を通じた投資協定の仕組みや活用事例の紹介、二、ジェトロからの投資協定関連情報の発信、三、関係経済団体等との協力による投資協定に関する説明会の実施、四、ジェトロ本部における窓口やジェトロの海外事務所での相談対応、五、新輸出大国コンソーシアム、これは、海外展開を図ります中堅・中小企業に対しまして、中小機構等の支援機関を結集いたしまして総合的な支援を行う仕組みでございますけれども、このコンソーシアムを通じた専門家によるハンズオンの支援等に取り組んできたところでございます。

 今後も、投資協定に関しまして、日本商工会議所等の関係経済団体との連携の下、ジェトロや在外公館等を活用しつつ、積極的に周知、広報や利活用の促進を図ってまいりたいと存じます。

 以上です。

茂木国務大臣 これ、もちろんジェトロの問題ということではないと思うんですけれども、外務省も含めて、投資協定、締結したから終わりではなくて、まさにそこから始まると。実際に投資が生まれて、それが日本企業であったりとか相手側との経済関係の強化が図られて、目的が達成されるわけでありますから、様々な広報につきましては、今まで以上に強化をしていく必要があると思っております。

 特に、大企業ですと、ある程度アンテナを高くして、いろいろなものについては情報収集しているにしても、なかなか中小企業において、そういう情報収集というのにはある程度の困難もあると思いますので、より積極的な働きかけをしたり、実際にそういう投資協定を使って中小企業が、ジョージアにしてもそうですし、セルビアにしてもそうですし、投資をして成功した、こういう事例を作ることによって、あのA社でもできたんだから、うちでもできるんじゃないか、こういうメンタリティーというか、そういう雰囲気を作っていく、こういったことも重要だと思っています。

山川委員 是非、広報というか、伝えていくこと、そのことによって、進出する企業もそうだし、受ける国の方の発展にもつなげていっていただきたいと思うんですよね。というのは、ビデオで中小企業の方がおっしゃっていて、その会社は、水を逃さないような技術を持っていて、その技術がアフリカの大地に、水がなかなか、雨が降らないんでしょうかね、水の確保が大変なところで活用することによって農作物が育つというような、企業にとっても、そしてそれを受け入れた国にとっても非常に有益な進出だと思うんですよね。

 ですので、すごくいい例だなと思ったんですけれども、せっかくやっていても半数が知らないなんということであれば、非常にもう残念なことでありますので、外務省、経産省、連携して取り組んでいただきたいというふうに思います。

 続いて、ISDSの現状と改革の見通しはどのようになっているのかということについて伺っておきたいというふうに思います。

 このISDSについては、投資家を保護するという面と国民の健康や環境といった公益を守るための国家の規制権限を一企業が侵しかねないという面の両面を持ち合わせているというふうに懸念がされている面があろうかと思います。特に、ヨーロッパなどからはそういう声が上がっているというふうに思います。

 だからこそ、TPP12の際には、アメリカの保険会社から日本の皆保険制度が訴えられかねないんじゃないかということは懸念として上がっていた。大臣は、そういうことはアメリカとの間ではなかったということはこの間御答弁いただいたんですが、私などもそういうことは心配をしたんですね。

 近年締結された投資関連協定においては、投資家がISDSを利用できる投資紛争の範囲を限定する内容の規定を設けるなどの動きが見られたり、EUなどは、将来的な多国間投資裁判所の設置を見据えて、FTA交渉においても、常設の投資裁判所制度を盛り込むように交渉しているようであります。

 この外務委員会のこれまでの中でも、投資家の保護の在り方ということについては研究を重ねているとか、国際場裏でも様々な投資紛争処理メカニズムのよりよき在り方について国際的な議論が進んでいて、そういうところに積極的に参加しているとか、ISDSをもっといいものに改革していこうという議論もあって、そういうものに建設的に日本として貢献しながらといったような御答弁もあります。

 そこで伺いたいのは、日本が参加している議論の場では、どのようなことが話されているのか、議論されているのかを伺っておきたいと思います。

四方政府参考人 お答え申し上げます。

 国と投資家との間の紛争解決手続、ISDSに関する条項は、締約国が協定に基づく義務に違反した結果、投資家が損害を受けた場合に、投資家が国際仲裁に直接付託することができることを定めておりまして、我が国経済界が重視している規定でございます。

 ISDS条項につきましては、国家の規制権限を不当に制約するものではないかといった問題提起がなされることもあると承知しておりますけれども、同条項は、本来、投資受入れ国が正当な目的のために必要かつ合理的な規制を差別的でない形で行うことを妨げるものではございません。

 その上で、こうした論点も含めたISDSの在り方につきましては、国連国際商取引法委員会、UNCITRALと呼んでおりますけれども、この委員会を含めまして、様々な国際的な枠組みの中で議論が進められておりまして、我が国としてもこれらの議論に積極的に参加をしてきております。

 いずれにしましても、我が国としては、投資家の保護と国家の規制権限との間の適切なバランスの確保等に努めつつ、投資関連協定の交渉に引き続き積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

山川委員 続いて、今度はジョージアについて少し伺っておきたいと思います。

 先ほども議員の中からいろいろとそれぞれの国についてのお話、御質問もありましたけれども、私からも、この機会に、特にジョージアについて関心を持ちまして、ちょっと私にとって身近でなかったのですが、いろいろと調べてみますと、先ほど小熊委員からもありましたけれども、シュクメルリという料理が日本で、松屋で提供されていたとか、あとコンビニでもそういうお弁当が売られていたりとか、大臣から先ほどワインのお話もありました。それからダンスですね、すごくすばらしいダンス、ジョージアンダンスというのを私も拝見いたしまして、とても魅力ある国だなというふうに思っています。

 先ほど、百の目標を掲げた投資協定がまだ達成していない中で、このジョージアは、今、協定を、締結が実現したわけですが、つまり、我が国にとって、ジョージアという国の位置づけ、重要性、先ほど少し大臣からもありましたけれども、重要性、位置づけについて一言伺っておきたいというふうに思います。

徳田政府参考人 お答えを申し上げます。

 ジョージアにつきましては、黒海に面し、アジアと欧州を結ぶ要路に位置しておりまして、地域の物流のハブとなることを目指した経済政策、インフラ整備を推進しておりますし、外国からの投資誘致にも積極的に取り組んでおりまして、その良好なビジネス環境は国際的にも高い評価を受けてございます。

 そのジョージアと日本との関係でございますけれども、一九九二年八月に外交関係を樹立して以来、友好協力関係を発展させてきております。来年の二〇二二年、これは外交関係樹立三十周年を迎えるということでございます。

 二〇〇七年二月には在日本ジョージア大使館が、二〇〇九年一月には在ジョージア日本大使館がそれぞれ開設され、それも契機に、両国の関係は一層深化してございます。

 二〇一五年の四月には、ジョージア政府からの要請を受けまして、また国際社会における呼称なども勘案して、日本政府として国名の呼称をグルジアからジョージアに変更したところでございます。

 要人往来も活発に行われております。二〇一九年三月にはバフタゼ首相が訪日し、二〇一九年十月の即位の礼正殿の儀には、その参列のためにズラビシビリ大統領が訪日したところでございます。

 ジョージアは、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を共有する重要なパートナーでございまして、日本として、ジョージアとの間で、自由で開かれた国際秩序の構築に向けた連携を図るとともに、人材育成支援、インフラ整備、ビジネス環境整備支援、こういったものを積極的に実施しながら、ジョージアとの関係強化に取り組んでまいりたいと考えております。

山川委員 ちょっと時間がもうなくなってきたので、最後、二つあるんですが、そのうちの一つになっちゃうと思いますが、先ほどの御質問にありましたけれども、日・OECD特権・免除に関する改正交換公文の関連で、国際機関で働く日本人が少ないので増やす努力をいろいろしているという、先ほど御答弁でも、いろいろされていることはございましたけれども、大臣に最後にお聞きしておきたいんですが、いろいろ努力はしているけれどもなかなかまだ増えていっていないんじゃないかなというふうに思います。

 このことは、やはり、国際機関に日本人がいるということは、重要な位置を占めているということは、非常に国益上も私も大事だと思っておるんですが、今後の、取組はしているということは分かりましたが、どのように成果を上げていくかということをお伺いしたいと思います。

 それから、準備していただいたと思うんですが、準備は大臣は必要ないのかもしれませんが、対中政策とあと人権外交についてはまた次の機会にさせていただければと思います。

茂木国務大臣 国際機関でありますから、当然中立性というのは確保しなければいけないわけでありますが、同時に、そういった中で、日本人の国際機関職員が世界で活躍をするということは、日本の存在感を高めて、日本と国際機関の関係強化の観点からも重要であると思っておりまして、増えてきております。じゃ、満足かといいますと、山川委員もお考えのように、まだまだと思っております。

 そして、国際機関、いきなりトップを狙うとなってもなかなかこれは難しいところもあるわけでありまして、言ってみると、底辺とか真ん中の部分を膨らませていく、こういった取組はどうしても必要になってくると考えておりまして、具体的に申し上げますと、三十五歳以下の若手人材を派遣する制度でありますジュニア・プロフェッショナル・オフィサー、この制度の下で、これは一九七四年からやっておりますが、これまでに千八百人を超える意欲ある若手人材を国際機関に派遣をしております。また、中堅でいいましても、二〇一七年から中堅レベルのポストへの派遣制度を開始しておりまして、これまでに十一人派遣をしたところであります。

 これらの制度による派遣であるか否かにかかわらず、日本人職員の昇進に向けて、外務本省であったり在外公館一体となって支援を行っているところであります。

 こうした取組、着実に成果を上げておりまして、二〇二五年までに国連関係機関の日本人職員を千人にすることを目指す、こういう目標を初めて掲げた二〇一五年当時、国連関係機関で働く日本人の職員数は七百九十三人だったのが、現在は幹部八十八人を含めまして九百十二人までなってきております。引き続き、関係省庁とも連携をして、日本人職員の増加、また主要ポストの就任に努めていきたいと思っております。

 多層的な取組が必要だと思っておりまして、例えばトップを狙うとなると、いろいろな国で、首相を経験したりとか大臣を経験する、こういった方が、実際に政治家がそういったポストに出るということもありますので、国際経験豊かな山川先生も、政治の世界でも活躍されると思うんですけれども、国際機関の活躍というのも一つの選択肢としてお考えいただけるとありがたいと思います。

山川委員 過分なお言葉をいただきまして、ありがとうございます。

 質問を終わります。

あべ委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 茂木大臣に最初に質問します。

 本日の議題である条約のうち、租税条約及び投資協定に関しては、後ほど討論で問題点を指摘したいと思います。

 そこで、今日は、今国会に提出されている大西洋まぐろ類保存条約改正議定書に関連して質問します。

 今回の改正は、直接は条約の対象となる魚種を拡大する等のものだが、漁業の資源管理や予防原則を明文化するなど、重要な点もあります。

 そこで、マグロ類等、高度回遊性の資源の管理、中長期の影響を見据えた漁獲の規制、ルール作りについて、外務省としてどのような取組をされてきたのか、簡単にお答えいただければと思います。

茂木国務大臣 穀田委員、常に議論を先取りして、いい議論を展開していただいていることに感謝を申し上げたいと思います。

 世界有数の漁業国であります我が国は、国連海洋法条約、そして国連公海漁業協定等を締結して、漁業資源の保存管理に関する国際的なルール作りを推進してきております。

 また、我が国は、条約区域におけるマグロ類に関する漁獲枠の設定等の保存管理を積極的に貢献してきておりまして、本議定書の作成過程においても、日本は中心的な役割を果たしてきております。

 日本は、マグロだけではなくて様々な海産物について、漁獲というか漁業の面でもそうでありますけれども、消費、こういった面でも主要国であるわけですから、そういった主要国の立場として、様々なルール作りで主導的な役割、これからも果たしていきたいと思っております。

穀田委員 いつもうんちくのあるお話、ありがとうございます。

 持続的漁獲が可能な水準の維持に、FAOの持続的漁業の行動規範、SDGsや、さらにはWCPFC条約でも、小規模、伝統的漁業の存続に特別の配慮を明記しています。私は、これが世界の常識だと思っています。したがって、資源管理と予防原則の大切さ、これをしっかり踏まえて、今後も私どもとしては取組を強めていくべきだと考えています。

 次に、資源管理に入る前に、農水担当の副大臣にお伺いしますが、現場からの切実な声を踏まえ、二、三、要望を踏まえてお聞きしたいと思います。

 定置網漁の位置づけについてです。

 私の地元京都府では、穏やかな若狭湾と対馬暖流の影響を受ける日本海に面しているため、暖流に乗って来遊するマグロやサワラなど浮魚類、そして日本海固有の冷水で生活するズワイガニやカレイ、沿岸性のアワビやトリガイなど、四季を通じて様々な漁業が営まれています。中でも、生産量、生産額とも大型定置網の比率が高く、生産量の約八割、生産額の約六割を定置網が占めています。

 先日、舟屋で有名な伊根町の漁業関係者の話をお聞きしました。定置網漁は待つ漁業であり、資源管理そのものだとおっしゃっていました。その方々の話では、定置網に百匹の魚が入ると、六十匹ほどは逃げてしまい、三十から四十匹ほどが残るということでした。

 このように、定置網漁は魚を待ち受けるという漁法であり、良好な資源状況の下で成り立っている。これは、水産資源の再生産という点でもとても調和の取れた漁法であり、だから、日本で約七百年以上も続いてきた。さらに、地域の雇用機会の創出に大きく貢献してきました。

 そこで、伝統的な定置網漁の果たしてきた役割、また小規模沿岸漁業者の役割について、認識を改めて確認したいと思います。

葉梨副大臣 穀田先生おっしゃるとおり、定置網漁業でございますけれども、全国の沿岸漁業の生産量の四割を占める。そういうことで、それぞれ地域によって魚種は異なりますが、ブリ、イワシ、サバなどの日本の食卓に欠かせない多種多様な魚の安定供給に大きく貢献してきました。

 そして、小規模沿岸事業者、一本釣り、刺し網とかいろいろございますが、少量ですが単価の高い魚や、ウニ、アワビ、そういったいそ根資源や海藻等の多種多様な魚介類、これを水揚げしていただいておりまして、漁村の活性化、さらには、日本の食文化の形成、さらに、行事に色を添えるというようなこともございまして、非常に重要な役割を果たしてきたというふうに認識をしています。

穀田委員 極めて多様で広範囲な形で重要な役割を果たしているということがお話がありました。

 そういう下で、現実は極めて厳しい。さきに紹介した舟屋の町、伊根町でも、かつて二百数十隻の船が操業していましたけれども、今では十五隻ほどに激減しています。全国的には、沿岸漁業に関わる経営体数は、一九八八年には十八万あったけれども、二〇一八年には七万四千にまで激減しています。

 ここまで激減した原因を農水省はどのようにお考えですか。

葉梨副大臣 漁業者の数でございます。

 御指摘のとおり、沿岸漁業者につきましては、二〇〇八年に十八万三千人だったものが二〇一八年には十二万四千人と、三二%の減となっています。この間、沖合、遠洋漁業者も二八%減となっているんですが、それよりも多い減少ということです。漁獲量自体は、沖合、遠洋漁業が非常に低下している中で、沿岸漁業は、下がってはいるんですけれども、沖合、遠洋ほどの下がり方ではないんですけれども、やはり、高齢化が非常に大きな問題だと考えています。

 沿岸漁業者の約四三%が六十五歳以上、リタイアが進んでいます。沿岸漁業者の八三%に後継者がいなくて、経営を継続できなくなって、廃業に至ることなどが考えられています。しっかりと対策を取っていかなければいけないというふうに考えています。

穀田委員 数字と現象面、それはそのとおりです。

 問題は、私は原因を聞いているわけですね。原因分析並びに対策を仮に講じてきたとしても、それが効果を発揮していないという責任が問われている。そこからスタートすることが必要だと私は思います。

 沿岸漁業者の実態は、先ほど述べたように、大変厳しいわけです。そこで、具体的な問題について、幾つか提案したいと思うんです。

 一点目は、定置網リースへの補助制度についてです。

 二〇一八年まで、定置網は消耗品であるとの理由で、リースへの補助がありませんでした。漁業者と私ども日本共産党の度重なる要望に応えて、政府は、ようやく二〇一九年度予算から、リース方式での定置網の導入に対し二分の一の補助をすることになりました。

 定置網の新規導入は二億円ぐらい超えますし、高いものでは八億円規模の投資が必要です。修理にも二千万から三千万かかる。漁業者にとっては大変重い負担になってきました。この補助金導入により、京都府では、二〇一九年度に三事業者、二〇二〇年度には六事業者が補助を受けて、とても喜んでおられます。

 ところが、このリース事業への補助金は一回こっきりのものだと聞いています。定置網の寿命は十年程度ですから、一回きりの補助ではなく、次の更新時に再度補助できるような、恒久的な制度として発展させるべきでは、充実させるべきではないんでしょうか。

葉梨副大臣 御案内のように、御指摘のリース事業による定置網事業への支援、これは令和元年に始まりました。これまで、全国での実績が百十三件というふうになっています。

 実際のところを言うと、なかなか一般的に、補助対象物件の更新というのに更に補助事業の対象というのはなかなか一般的には例がないというのも御存じの上で質問されているんだというふうに思います。

 定置網ですけれども、もう釈迦に説法ですが、網を固定する部分は長もちしますので、一旦設置されれば、十年又はそれ以上にわたって網を補修しながら使用されているというふうなことで、この事業の対象になったものが更新時期になっているというものは多分今ないんだろうというふうに思います。

 なかなか、今申し上げたように、非常に厳しいものがございますので、更新の際にリース事業を利用できるかについては、リース事業によって定置網漁業にどういう効果があったということをしっかり見極めながら慎重に検討していかなければいけないというふうに思っています。

穀田委員 十年後というもので見れば、お互いそういう認識、共通しているわけだけれども、元々、この定置網リースの補助制度というのは、水産業成長産業化沿岸地域創出事業として始まったものです。

 その政策目標は、漁業者の所得向上、五年間で一〇%以上というものであります。この政策目標の達成年は二〇二三年です。再来年ですよね。再来年までに沿岸漁業者の所得を一〇%向上させるという目標は達成される見通しでしょうか。

葉梨副大臣 結局、この水産業成長産業化沿岸地域創出事業、これの事業目標が、おっしゃるとおり、五年間で一〇%ということなので、基本的に、この事業の対象になるものについてはそれをしっかりと目標にしていくということになっていきます。

穀田委員 いや、目標になっているのは知っているから、だから聞いているんですよ。

 だから、はっきり言うと、なかなか現場の現実というのは、政策目標の達成は現状では困難だと。ですから、だとすると、私は、制度の趣旨からも、次の更新時も使えるよう、恒久的なものとして継続すべきではないかと。

 漁網へのリース補助ができたことによって、現場では、よし、漁業を続けようという新しい意欲、インセンティブが生み出されています。

 京都では、漁船の造船所がなくなったこともあって、お隣の福井県にお願いしていますけれども、福井県の造船所には発注が相次ぎ、船を発注しても六年待ちという盛況だそうです。

 ですから、私、珍しく、喜ばれているということを言っているわけですからね。けなしているわけじゃないんですよ。これをもうちょっとやろうやないかということなわけですね。

 ただ、網がなければ漁業はできない。網がなければ漁業はできない、これを命綱というわけですね、簡単に言えば。まあ、そういうことなんですよね。そういう命綱の制度なんです。だから、継続すべきだと思うんです。

 関連して、もう一点伺いたいと思います。

 同じく伊根町に、定置網の固定資産税の評価について聞きました。定置網の減価償却期間が三年間となっているが、定置網は大切に使い、先ほども大臣もお話ありました、耐用年数は十年以上となっているので、減価償却期間を実態に合わせて延長してほしいとの要望でした。

 確かに、この問題は個々のケースによって難しい問題もあると思うんです。現場が何より大事で、農水副大臣はいろいろ現地に行っていろいろなことをお聞きしていただいていますから、是非一度、直接意見を、要望をお聞きいただければなと思っています。

 その上で国税庁に聞きますけれども、減価償却期間の延長について水産庁から具体的な検討要望があった場合に検討いただけるか、また、現行制度で、減価償却資産のうち、漁網について耐用年数の適用を長くして償却する方途、道筋はないのか、この点についてお答えいただきたいと思います。

江島政府参考人 お答えいたします。

 御質問いただきました定置網につきましては、税制上、漁具の資産区分に含まれておりまして、その耐用年数は御指摘のとおり三年……(穀田委員「もうちょっと大きい声で言ってくれない」と呼ぶ)済みません、繰り返します。御質問にありました定置網につきましては、税制上、漁具の資産区分に含まれておりまして、その耐用年数は御指摘のとおり三年となっております。

 この定置網の耐用年数に係る具体的な要望につきましては、まずは所管省庁であられる農林水産省において、その使用実態等を踏まえ、どのような対応が必要かを御検討していただく必要があるものと考えております。

重藤政府参考人 御質問は、三年という期間よりも長く償却することができるかという点だったと思います。

 まず、税法上、法人でありますと、現行税法でも、法定の耐用年数よりも長い期間で償却するということはまず可能でございます。

 そういう一般的な取扱いとは別に、また、この漁網に関しまして申し上げますと、漁網の償却限度額の計算につきましては、所轄の国税局長の認定を受けた場合にはその償却率によることができるとされておりまして、その場合の償却率は、その漁網の種類に応じて、新たに取得して事業の用に供された日から、その漁網の修繕等を行いつつ、最終的に廃棄されると予想される日までの経過月数に応じて、それに対応した率によるということになっておりまして、その場合には、償却期間は、法定耐用年数である三年ではなくて、償却率に応じて、短い場合は二年、長い場合は二十年までの期間で償却するということが可能でございます。

穀田委員 今二つお答えいただいて、だから、水産庁として、漁具のそういう今の現実について一つ一つやはり検討してもらうということが必要だと思うんですね。

 これは、先ほど、一番最初に副大臣は、この沿岸漁業の極めて重要な位置づけを多彩にお述べになったわけですよね、まさに。ただ、それは生活を支え合ってこそということがありまして、それを支える意味では、それを援助してあげてこそ成り立つんだということですから、よく検討していただきたいと私は思うんです。

 あわせて、今、制度の問題がありました。これは、私どもも初めて、こういうことについては、ああ、こういう制度があるのやな、こういうやり方もあるのやなということが、ほとんどこれは、はっきり言って、知られていないんじゃないですかね。

 といいますのは、私は、一番最初に言いましたように、償却の仕方については、その時々、うんともうかったとかいろいろなことがあって、形が随分あるんですよね。それは分かっているんですよ。だけれども、そうじゃない方々が、声を上げられない方がいらっしゃるわけですよね。だから、そのような制度があれば、関係団体に、そして関係者に広く周知すべきだと。私は改めて、それはええ制度やなと思いましたわ。

 したがって、制度が広く知られていないことを前提に、水産庁としても、事業者が税務署と相談できるような、親身できめ細かな対応をすべきだと。やはり、検討ということと、そういうことでのきめ細かな対応、この点について、副大臣の決意を聞きたいと思います。

葉梨副大臣 今、そういう切実な要望があるということ、私も承りましたので、まず、要望している伊根ですかの漁協、その背景、具体的内容をしっかり伺っていきたいと思いますし、また、関係団体にも同様の要望があるのかどうかということも含めて、しっかりと承っていきたいというふうに思っています。その上で、我々として何ができるか、検討していきたいと思います。

穀田委員 いつも、葉梨副大臣とはばんばんとやり合っているんですが、今日は、全体としては前向きな努力とお互いの認識の一致があったということでは、画期的なことだったと思います。

 ここからはまた少し態度が変わるわけですけれども、クロマグロの資源管理と小規模沿岸漁業について聞きたいと思います。

 まず、魚種ごとの総漁獲可能量を定めたTAC制度について。

 日本の漁業の九四%は小規模沿岸漁業経営体で、その経営体数は約二万。片や、ニッスイやマルハニチロなど大手水産関連会社も参加する大型、中型のまき網漁業の経営体数は二十程度しかありません。しかし、クロマグロの漁獲規制、漁獲枠の上限は、まき網、大規模漁業優遇となっていて、日本企業の九四%を占める小規模沿岸漁業者に不利な枠組みとなっている。

 この点を是正すべきではないか。端的に。

葉梨副大臣 端的に、簡潔に申し上げます。

 小規模の漁業者に対しては、相当、我々としても配慮をさせていただいておるということを私どもは認識しておりまして、例えば、三十キログラム未満のクロマグロの小型魚の配分、これについては、大中型のまき網は半減、さらに、二〇一八年から三分の一ですけれども、そっちは四割削減にとどめている、二〇一五年の基準年度。三十キログラム以上の大型魚についても、大中型まき網漁業は減らしているわけですけれども、沿岸漁業については更に上乗せ配分をしているというようなことで、運用面で相当配慮をさせていただいているということをお答えさせていただきたいと思います。

穀田委員 大体いつもそういうふうにお答えになっているんですけれども、ICCATは、沿岸漁業に配慮する一方、漁獲圧力の高い大型まき網漁業者に対しては、禁漁期間を十一か月、要するに年間一か月しか漁を認めないという厳しい規則を取っています。それから、スペインでは、漁船に監視員を乗せ、監視カメラで不正がないか監視しています。アメリカでも、沿岸漁業者が漁獲枠を超えて捕り過ぎた場合は大型まき網船の方の漁獲を削るという、こんなふうに、沿岸にそうして回している。日本近海でどうしてこういう規制措置を国内に適用しないのか。

 漁獲枠の上限が決まっているんだったら、小型沿岸漁船の権利を守ることをまず優先して、その上で、漁業資源に最大の圧力となっている大型まき網の漁業に対して規制を行うのが当然じゃないかと私は思うんです。

 先ほど、魚の重さの話が出ましたけれども、沿岸漁業者は普通、五キロ以下のマグロは捕りませんが、京都であれば八キロ以下も捕らないということで、ずっと厳しい自主規制を行っているんですよね。しかし、定置網であればマグロは勝手に入ってくるわけで、枠を超えたものについては、もう一度網を海に投げてマグロを海に帰している。その際、一緒に入ったブリやサワラも逃げてしまうということになるわけですね。漁業者にとってみれば、事は死活問題なんですね。そうまでして厳しい漁獲枠の上限を守っているのが沿岸なんですね。

 ところが、一方で、大型まき網船団の横暴、勝手は目に余るものがあります。これは一昨年十二月に我が党の田村議員が取り上げましたけれども、テレビ東京の「ガイアの夜明け」という番組で、クロマグロをまき網でごっそりと捕る、マグロの重みで下の方のマグロが圧死する、そして、死んだマグロは海に投棄する。個体が死んでいるかどうかにかかわらず、その数量は漁獲量です。これを海に捨ててカウントしない、これは資源管理の大問題です。厳しい漁獲枠を強いられている沿岸漁民の皆さんがこの映像を見て怒るのは当たり前なんですね。

 農水省は、こんな不法な操業を繰り返す大型まき網事業者に対して、きちんとした調査、指導を行ったんでしょうか。

葉梨副大臣 御指摘の報道でございますけれども、我々も調査をさせていただいたんですが、具体的な船名や日時等が不明で、報道側からもこれを特定する情報が得られなかったということで、事実関係を確認することができなかったんです。

 その上でなんですが、クロマグロについては、改正漁業法に基づく管理の対象となる前の平成三十年から、海洋生物資源の保存及び管理に関する法律に基づいて、漁獲可能量制度の対象とされてきております。正確かつ迅速な漁獲量の把握は非常に重要であると認識しておりまして、今後、改正漁業法に基づく数量管理を基本とした資源管理を実施していくに当たり、管理の透明性の確保、これが重要と考えています。

 我が国としてどのような取組が可能か、しっかり検討をしていきたいというふうに思います。

穀田委員 最後にしますが、それは条約に書いているとおりなんですけれども、私は、スペインなどで取り組まれている監視員の乗船、監視カメラの設置の義務づけも含めて、有効な対策を取るべきだと思います。調査したと言いますけれども、たかだか二十なんです、会社は。あなたのところ、やったんかと聞けば、やっていないかどうかというのは分かるわけで、それは、私は甘いと思うんですね。

 しかも、水産庁は、大型まき網船がどこで操業しているかモニターしているはずなんです。死んだマグロが底引きで大量に揚がった、あるいは海に大量に浮いているなどの……

あべ委員長 申合せの時間が経過しておりますので、御協力願います。

穀田委員 漁業者の通報を促し、漁船を選定し、厳しく取り締まるべきだということを思います。

 残念ですが、環境省を呼んでいたんやけれども、堪忍してください、ちょっと時間が来ましたので。申し訳ありません。

 終わります。

あべ委員長 次に、浦野靖人君。

浦野委員 日本維新の会の浦野靖人です。よろしくお願いいたします。

 最初に、日本国とジョージア間の協定についてお伺いいたします。

 豊富な天然資源と十三億人の人口を背景に、大きなポテンシャルを有するアフリカ諸国との間では、投資協定の締結により投資の自由化及び保護を図る意義は大きいと考えますけれども、我が国とアフリカ諸国との間の投資協定は、発効済みが四本、署名済みで発効前のものが一本の五本にとどまっています。一方で、中国は、アフリカ諸国との間で発効済みが十九本、署名済み十五本の計三十四本を有しており、韓国も、発効済み十六本、署名済み三本の計十九本の投資協定を有していることからも、日本の遅れが目立つように思われます。

 政府は、現在、アフリカの八か国との間で投資協定の交渉を行っていますけれども、これらの国々との交渉の早期妥結及び他のアフリカ諸国との間の投資協定の新規の交渉開始に向けて取組を加速すべきと考えますが、いかがですか。

茂木国務大臣 是非、積極的に進めていきたいと思っております。

 委員御指摘のとおり、アフリカは、豊富な資源、高い人口増加率と、大きな経済的潜在性を有する二十一世紀最大のフロンティアでありまして、民間企業もその潜在性に今注目をしております。

 また、アフリカは、例えば、文化人類学者のレヴィ・ストロースの「悲しき熱帯」、トリステ・トロピクに出てくるような停滞ではなくて、様々なイノベーションというのが今進んでおります。

 ケニアで何が起こっているか。銀行システムが余り発達していなかった、その分、エムペサという会社、これは元々通信の会社ですけれども、これが電子決済のシステムを導入いたしまして、電子決済で全てできるようになってきております。

 ルワンダ。道路が未整備、なかなか輸血用の血液が地方の病院に送れないということで、ドローンを使って、一括管理でこういった輸血用の血液を送る。

 こういう様々なイノベーションも進む、こういう新しい発展の地であるとも考えております。

 政府としても、アフリカの潜在性は極めて大きいと認識をしておりまして、日本企業のアフリカ進出を後押しをするために、投資協定の締結を含めて、他国の投資家と比較して劣後しない、さらには、より有利なビジネス環境の整備に向けた取組を進める考えであります。

 コートジボワールとの間では投資協定を結んでおりまして、現在四本が発効済みということでありまして、また、現在八か国との間で投資協定、交渉中であります。もちろん相手のある話でありますけれども、当然日本企業として様々な国の企業とも競争していくわけでありますから、そういったところに劣後しないようなスピード感を持って取り組んでまいりたい、そう考えております。

浦野委員 ありがとうございます。

 我が国が締結した二国間投資協定の中には、例えばエジプトやスリランカ、トルコのような、かなり前に締結された保護型の協定も含まれています。経済界からは見直しの要望が出ていますけれども、今後、可能な限り自由化型協定とする方針のようですけれども、内容的に古くなった既存の投資関連協定も保護型協定から自由型協定へ改正を積極的に進めていくべきと考えますが、いかがでしょうか。

四方政府参考人 委員から御指摘のございました、投資協定における保護型、自由化型ということでございますけれども、投資協定における保護型というのは、主として、投資財産の設立後の投資家及び投資財産の保護について規定するということと考えておりまして、また、自由化型につきましては、保護型に含まれる規定に加えて、投資の参入段階における内外無差別等の投資の自由化についても規定するというものを自由化型というふうに一般的に言われておるわけですけれども、そのどちらとするかは、我が国経済界のニーズ、相手国の事情等も勘案しながら、相手国との交渉を通じて決まってくるものでございます。

 その上で、締結済みの投資関連協定の見直し、これは委員からございました保護型から自由化型への改正の可能性ということでございますけれども、これらの協定、いわゆる保護型協定締結後の日本の投資状況、我が国経済界の具体的なニーズの把握に努めまして、その見直しの必要性、相手国の事情、相手国が自由化型を受け入れる用意があるのかどうか等も総合的に勘案いたしまして、どのような対応が可能か、政府として不断に検討してまいりたいと考えております。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

浦野委員 続いて、次の質問に移ります。

 パブリックコメント努力義務は、締結国に対して、協定の対象となる事項に影響を及ぼす規制を設定したり変更したりする場合に、公衆による意見の提出の機会を与えるよう努めることを義務づけるものですけれども、本協定には定められていません。

 投資先の国においては、投資家が意見を出す機会が設けられないまま投資活動に重要な影響を与えるような規制の制定又は変更がされたり、撤退を余儀なくされる事態を可能な限り防ぐ必要がありますけれども、本協定においても、各締約国に対し、規制の制定又は変更の前に投資家による意見提出の機会を設けることについての努力義務を課す規定を設けるべきではなかったかと考えていますが、いかがでしょうか。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、公衆による意見提出の手続、いわゆるパブリックコメントに関する努力義務規定につきましては、投資環境の整備における透明性の確保を図るものであり、我が国としては、これを含む我が国の投資家の保護に資する規定をできる限り盛り込むように、投資協定の交渉に臨んできております。

 しかしながら、個別の条項につきまして相手国が難色を示す場合には、全体的なバランスを考慮しつつ判断する方針を取っておりまして、今回の日・ジョージア投資協定についても、両国による交渉の結果、関連の条項を盛り込まないことで合意したものでございます。

 いずれにいたしましても、我が国といたしましては、必要に応じ、協定に基づく締約国間の合同委員会の場も活用しつつ、透明性の向上を含む、我が国投資家にとっての投資環境改善のための働きかけを引き続き行ってまいりたいと考えております。

浦野委員 少し条約から外れますけれども、楽天の中国企業からの出資について少しお聞かせいただきたいと思います。

 報道によると、三月二十一日、楽天が、日本郵政、アメリカのウォルマートなどから総額二千四百二十三億円を調達すると発表しましたけれども、そこに、中国のネット大手、テンセントグループから六百五十七億円の出資が含まれています。

 そのことで日本政府が警戒を強めているということですけれども、二〇一九年に改正された外為法では、海外企業が指定業種の企業に一%以上の出資をする場合、届出を行うことということを義務づけていますけれども、その指定業種は、国の安全を損なうおそれが大きい業種ということで、武器製造、原子力、電力、通信などが対象であります。

 まさに楽天は携帯電話事業を扱っている業種というわけですから、対象になるわけですけれども、このテンセントが開発したウィーチャット、これは世界で十億人が使っていると言われていますけれども、そのウィーチャットは、中国政府がそのデータを使って利用者を監視しているという疑念もあるものです。アメリカでも、前大統領がウィーチャットアプリのダウンロードを禁止する大統領令を出して騒動になりましたけれども、政府として、この件についての認識と、今後の方針を教えてください。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 楽天、テンセントの個別のケースにつきましてはなかなかお答えすることが難しゅうございますけれども、一般論として申し上げれば、経済安全保障の観点から、二つ、大きく、守るべきものを守り、育てるべきものを育てるというのが肝要でございます。守るべきものということの代表例が個人情報であり、また機微な技術情報であるということでございます。

 統合イノベーション戦略にも明記をされておりますが、関係省庁、特に企業の国際提携、合従連衡が非常に複雑な形で行われておりますので、それに合わせた形での対応を取るべく、鋭意対策をし、また検討をしているところでございます。

 とりわけ、外国からの資本の受入れというものが、潜在的には情報の流出を招きかねないということから、国会で、昨年、外為法改正をしていただきまして、今委員からも御発言がございましたとおり、従来の外為法より格段にスクリーニングの網を細かくしたということでございます。

 これが一例ではございますけれども、様々な形で、今後とも、国家安全保障局として、外務省さん、関係省庁と一体となって取組を進めてまいりたい、かように考えてございます。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

浦野委員 済みません、質問の仕方を間違えました。申し訳ないです。

 今、しっかりと答弁はしていただいたんですけれども、LINE問題でも、総務省から行政指導があったということもありましたし、この部分に関しては、これから、実際に海外企業にそういう情報とか、そういったものを委託しているという会社は世界中どこにでもあって、日本の会社でもそんなのはもう普通に行われていることですので、実際に、そういったことを全部、今回のLINEさんのときのように、じゃ、国内に全部やってしまうのかとか、それとも、それはそれ、これはこれで、海外にそういう業務を委託したりとか、コストとかの部分も関係がありますから、していくのかというのは、非常に難しい問題になってくるとは思いますけれども。

 政府としては、そこら辺の対応はしっかりと、これから先、考えていただかなければならないと思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。経済安全保障の問題ですので、しっかりと対応していただけたらと思います。

 次に、セルビア、ジョージアの租税条約についてですけれども、経済のデジタル化に伴って、GAFAに代表される巨大IT企業が、インターネット上のプラットフォームを通じて境界を越えたサービスを提供することで、サービスの提供先となる市場国に恒久的施設を設けることなく大規模なビジネスを展開することが可能になる。先ほどの話ですね。

 しかし、恒久的施設がなければ課税なしを基本原則とする租税条約の下では、市場国は、企業が自国内に恒久的施設を設けることなく得た事業利得に対して課税することができないため、このような企業と従来型企業との間の税負担の公平性が問題になっています。課税ルールの見直しに向けた国際的な議論が進んでいると聞いていますけれども、昨年、我が国を含む百三十七の国と地域は、巨大IT企業などが市場国に恒久的施設を持たない場合にも、市場国が一定水準以上の利益に課税することを認めるOECDの新ルール案について大枠合意に至っています。

 各国は本年半ばでの最終合意を目指していますけれども、課税権の分配などをめぐっては、先進国と発展途上国との間に意見の対立が見られる。フランスや英国などの欧州諸国は、独自にデジタル取引による売上げに対して課税を行う動きを見せています。そうなれば、二重課税のリスクが高まり、世界経済に悪影響を与えるおそれもある。そのような事態を防ぐためには、実効性のある課税ルールの策定に向けて各国の歩み寄りが求められますけれども、立場の違いが見られるフランス、インドなどと良好な関係を築いている我が国が、最終合意に向けてどんな解決策を提示するのか、お聞かせをください。

武藤政府参考人 お答えいたします。

 デジタル化の進展によって、消費者がいる市場国に物理的拠点を置かずにビジネスを行うことができる多国籍企業にも市場国が適切に課税できるようにすることは、企業間の公平な競争条件の確保という観点から、極めて重要な課題でございます。

 一方で、今御指摘ありましたとおり、各国がばらばらにデジタル企業等に対して一方的な課税措置を行うことは、企業の経済活動のみならず、世界経済全体に負の影響を与えかねないことから、現在、OECDやG20を中心に約百四十か国が参加する枠組みで、グローバルな解決策の合意に向けた議論が行われております。

 現在、課税対象企業の範囲、市場国への課税権の再配分の具体的方法、効果的な紛争防止、解決手続等が残された主な課題として議論が行われておりますが、もう一つの柱でありますグローバルミニマム課税制度と併せまして、本年半ばまでの合意期限に向けて、我が国としても合意形成に積極的に貢献してまいりたいと考えてございます。

浦野委員 近年、多国籍企業や富裕層によるタックスヘイブンを利用した課税逃れが大きな問題となっていますけれども、この課税逃れは、違法性のないもの、違法性のあるもの、両方の事案があると思いますけれども、国際的な租税回避行為について日本政府としてどのような方針で対応しているのかということと、また、課税逃れを指摘するには富裕層などの海外資産の把握が必要と考えますけれども、これについてもどう把握しているのか、お聞かせください。

武藤政府参考人 お答え申し上げます。

 国際的な租税回避につきましては、それが必ずしも違法性があるとは言えないとしても、税制の公平性を損なうものであれば、納税者の信頼を揺るがしかねない大きな問題であると考えております。その対応は、経済がグローバル化していく中、BEPSプロジェクトのように、国際的な取組を通じて各国が協調して行うことがますます重要になってきております。

 先ほど申し上げましたとおり、OECDやG20を中心に、いわゆるタックスヘイブンなどの軽課税国への利益移転に対して、国際的に合意された最低税率による課税を実質的に確保するルール、すなわちグローバルミニマム課税制度の導入が経済のデジタル化に伴う国際課税制度の見直しの一環として議論されておりまして、先日のG20財務大臣・中央銀行総裁会議において、本年半ばまでの合意を目指すことが再確認されたところでございまして、日本としては、引き続き国際的な取組に積極的に貢献してまいりたいと考えております。

 なお、富裕層の海外資産の把握に関しましては、国税庁の所管でございますので、国税庁の方から引き続き答弁させていただきたいと思います。

重藤政府参考人 富裕層などの海外資産の把握についてお答えいたします。

 国税庁におきましては、富裕層への対応に当たりまして、事務量を優先的に投下して的確な納税者管理に努めるとともに、調査を実施することで、適正課税の確保に努めているところでございます。

 その中で、富裕層の海外資産の把握を行うためには、国外財産調書、国外送金等調書、それから、各国との共通報告基準、CRSと呼ばれておりますが、に基づく金融口座情報の自動的情報交換などの、租税条約等に基づく情報交換などの積極的な分析、活用を行っているところでございます。

 また、多国籍企業の海外資産の把握という点では、申告書、それから国外送金等調書のほか、BEPSプロジェクトの勧告を踏まえて新たに導入されました国別報告書など、あらゆる資料及び情報を収集、分析しているところでございます。

浦野委員 今日はOECDに関する質疑も、せっかく来ていただいたんですけれども、時間が来てしまいましたので割愛させていただきます。

 どうもありがとうございました。

あべ委員長 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 国民民主党の山尾志桜里です。

 投資協定については、もう八人目の質問者でありますし、先ほど、パブコメの努力義務については浦野委員からも指摘がありましたので、一点、ただお伺いしたいと思うんですね。先ほど小熊委員も指摘していましたが、中国の一帯一路構想の文脈で、債務のわなという問題、そして、それと関連をして、やはりアフリカ諸国との間の投資協定の取組について、これを伺いたいと思います。

 役所の方から、中国は、アフリカ諸国で発効済みが十九本、署名済みが十五本、合計三十四本と伺っていますけれども、日本では、発効済みの協定数は何本で、署名済みで発効前というものが何本、そして交渉中の国が何か国あり、その交渉状況などを役所から伺い、そして大臣から、この点について今後どういった方向性で取り組むおつもりか、伺いたいと思います。

四方政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国とアフリカ諸国との間の投資協定の現状でございますけれども、発効済みは四本でございまして、エジプト、モザンビーク、ケニア、コートジボワールでございます。署名済みで未発効のものはモロッコでございます。交渉中といたしましては、アンゴラ、アルジェリア、ガーナ、タンザニア、セネガル、ナイジェリア、ザンビア、エチオピアでございます。

茂木国務大臣 アフリカのポテンシャルは極めて大きいと思っております。

 先ほど、浦野委員の質問の中で、レヴィ・ストロースの例を出して、もう熱帯の停滞ではない、全く新しいイノベーションも始まる地域である、このようなお話もさせていただいたところであります。

 日本は、四半世紀を超える歴史を誇りますTICAD、これを通じて、アフリカのオーナーシップそして国際社会のパートナーシップ、こういったものを重視しながら、ビジネス促進を含め、アフリカ自身が主導する発展を力強く後押しをしてきたところであります。

 私も、昨年の十二月そして今年の一月、アフリカ六か国訪問をいたしました。恐らく、二か月間で歴代の外務大臣で六か国訪問したというのは、私が初めてということになると思うんですが。

 向こう側から日本に対する期待というのも極めて高いと思っております。インフラの整備にしても、日本が行っているインフラ、まさに質の高いインフラである。そして、相手国の財政状況、こういったものもしっかり考えながら、様々な、融資であったりとか援助も行ってくれる。こういった形で、是非受け入れたい、こういうニーズは高いと思っております。

 投資についても同じでありまして、民間企業もそういった関心が高まっているところでありますから、今、四方経済局長の方からも現状については説明をさせていただきましたが、決してこれで満足することなく、さらに、ほかの国に劣後しないというか、ほかの国と比べてもより良好なビジネス環境を築くために取り組んでいきたいと思っております。

山尾委員 これで満足しないとおっしゃいました。日本のため、アフリカのため、そしてアフリカ東部を含めた自由で開かれたインド太平洋構想の主導的な立場でしっかりリードいただくためにも、是非しっかりと発展させていただきたいと思っております。

 その上で、今日は水際対策のことを幾つか伺いたいと思っております。

 一月八日の緊急事態宣言から、特段の事情を除いて外国人の新規入国停止が続いています。ただ、特段の事情を広げ過ぎたり、あるいは特段の事情で入っていただいて、安易に十四日間の待機を免除、緩和などしていないでしょうか。こういう問題意識でございます。

 皆さんのお手元に速報値を配らせていただきました。赤枠で囲った部分、ここがいわば、一番下の令和三年一月、二月、三月と見ていただきますと、一月に二千四百九十二名、二月に一千四百六十九名、三月に二千十七名、総計で五千九百七十八名。これが、入国停止をしているとはいえ、特段の事情で入国を認めている外国人の入国者数ということになると思います。

 これは数字なので、役所の方に伺います。

 このように三か月連続四桁で、二月から三月にかけてはまた増加傾向なんですけれども、そのうち、十四日間の待機措置を緩和あるいは免除をした入国者は何名なんでしょうか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 海外からの入国者の入国後十四日間の健康状態の確認を行う入国者健康確認センターでは、特段の事情により入国しているかどうかを区別しておりませんので、原則といたしまして、全ての入国者の健康確認を行っております。

 厚生労働省といたしましては、お尋ねの数値についてはいずれも把握していない状況でございます。

山尾委員 厚労省は把握していないということでした。これは、通告のときに、関係省庁全てで一番答えられるところでお願いしますと言っていますので、政府として把握していないということだと思います。ちょっと把握していただいた方がいいと思うんですね。

 では、これは把握しているんでしょうか。この五千九百七十八名の方のうち、入国後、コロナですね、陽性が判明した方はいるんでしょうか。そして、それは何名でしょうか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 入国者は、健康確認センターによる健康フォローアップを通じて、入国後十四日間以内に陽性が判明した者につきましては、現時点では六名把握しているところでございます。

山尾委員 特段の事情で入国していただいて、入国後、陽性が判明した方がいると。

 六名というのは、今年に入って、総計六名ですか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 今申し上げた答弁は、特段の事情に限らない入国者のうち、入国後十四日間に陽性が判明した人数でございます。

 冒頭に説明したとおり、特段の事情についての入国者数は私どもの方では把握していないところでございます。ということでございます。

 また、この数字は、議員御指摘のとおりでございまして、入国者確認センターは一月二十日から開始しておりますので、この数値というのは、この一月二十日からの確認した数値でございます。

山尾委員 特段の事情というのは、原則入国停止にして、本当に例外的に特段の事情で入っていただいているという方で、その方の中で、陽性の方が出たのか出ないのか、何名なのか、その方の中で、十四日間の待機を免除したり緩和したのは何名なのか、そして、そういう方の中に陽性者は出たのかどうか、そういうことも把握していないというのはもう極めて問題だというふうに思います。

 その上で、特段の事情についてちょっと質問を続けるんですけれども、こんな曖昧な状態で、特段の事情での入国事情、要件が広がっていませんかということです。

 特段の事情での入国について、人道上の理由、公益の理由にプラスして、いわばオリパラ関係者を中心とするアスリートトラックが始まったのは昨年十一月からと聞いていますが、これは正しいですか。

十時政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆるアスリートトラック、アスリート用東京オリパラ準備トラックのことをおっしゃっていると理解いたしますが、これは、東京大会に関連して国内で開催されるテストイベント等の大会に出場する選手等の入国につきまして、東京大会の成功に不可欠で、公益性がある者と認められることから、出国前七十二時間以内の検査や入国時の到着空港における検査、入国後の行動管理及び健康管理などの必要な防疫措置を講じた上で、特段の事情として入国を認めるものでございまして、昨年、令和二年十一月十二日に運用を開始しております。

山尾委員 それでは、このアスリートトラックが始まった十一月、十二月、一月、二月、三月、アスリートトラックでの入国者数を月別に教えてください。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 東京オリンピック・パラリンピックの準備、運営上必要不可欠な大会関係者は本年二月から、関連大会に出場する選手やコーチ及びプロスポーツ選手は本年三月から、それぞれ、公益性や緊急性を踏まえ、個別に特段の事情で入国を認めているところでございます。

 先ほど御説明ありましたように、緊急事態宣言が提出されるまでのアスリートトラックでの入国者に加え、特段の事情で入国を認めた東京オリンピック・パラリンピックの準備、運営上必要不可欠な大会関係者、関連大会に出場する選手やコーチ及びプロスポーツ選手を、取り急ぎ上陸許可時の情報に基づき集計したところを御報告いたしますと、昨年十一月はゼロでございます、十二月が三人、本年一月が二人、本年二月が八十人、本年三月が四百三十六人、合計五百二十一人が入国しております。

山尾委員 これ、どんどん増えているわけですね。それはオリパラ開催ありきでやっていますから、増えるわけですけれども。

 一月八日の緊急事態宣言が再発令されたときに、一旦アスリートトラックは止めますというふうに伺ったんですけれども、これ、止めなかったんでしょうか。止めたんだったら、いつ再開したんでしょうか。

十時政府参考人 お答え申し上げます。

 政府において、水際対策強化に係る措置として、本年一月十三日以降、全ての対象国、地域との国際的な人の往来を制限いたしました。

 これによって、外国人の新規入国を拒否する一方、特に人道上配慮すべき事情がある者や公益性のある者については、個別の事情を踏まえ、十分な防疫措置を講じることができることを前提に、特段の事情による入国が例外的に認められているところでございます。

 いわゆるアスリートトラックについても、政府全体の水際対策の強化を踏まえまして、本年一月十四日以降、運用を停止したところでございますが、必要性や緊急性がある者に限って、十分な防疫措置を講じることを前提といたしまして、個別に特段の事情による入国が認められているところでございます。

山尾委員 つまり、止めた後、増えているんですね。結局、アスリートトラックという名前は止めても、説明では準アスリートトラックというふうに聞きましたけれども、これは両方とも個別の判断なので、準があろうとなかろうと同じだと思うんですね。そういう中で、個別の判断でどんどんどんどん入れているということだと思います。実質は、止めた宣言というのは形式だけで、制度としては、同様の措置として数を増やしていたということが明らかになったわけですけれども、あと二つ聞きます。

 オリパラ事務局から、入管庁や外務省、厚労省、内閣官房で、この人たちを入国させてほしいというふうに人が個別に上がっていくわけですけれども、政府の調整で、この人たちはちょっと入国をやめていただきましょうというふうにはねた例はあるんでしょうか。あるとしたら、件数をお答えください。そして、今言っていただいたアスリートトラックで来た総数のうち、十四日間待機を免除あるいは緩和をした人数は幾つなんでしょう。

三谷大臣政務官 まず、入国を認めないとした案件についてお答えさせていただきます。

 東京大会関係者の入国に当たりましては、それぞれの必要性や緊急性等について確認をした上で、各省協議を行い、特段の事情による入国可否が検討されますが、個別の内容へのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

十時政府参考人 待機緩和を認めた人数についてお答え申し上げます。

 アスリートトラック及びアスリートトラックの停止以降に個別に入国が認められたアスリート等のうち、待機緩和を認めた人数は百七十九名となってございます。

山尾委員 五百名余りのうち、百七十九名に待機緩和を認めているということですから、相当の数、待機緩和しちゃっているわけですね。そういう中で、今、要するに、ちゃんと政府の調整で、この人たちはちょっと控えてもらいましょうとはねた例はあるのかと。お答えは控えますという話でしたけれども、私、昨日、ここに紙でいただきましたが、関係省庁の個別協議において、特段の事情による東京大会関係者の入国に当たり、入国を認めないとされた案件はありませんとお答えいただいております。

 もう時間になりましたけれども、特段の事情をゼロにしろとは言いません。ただ、オリパラありきで、オリパラ事務局がこの人を入国させてと言ったら全部入国させて、そのうち三分の一ですか、十四日間待機緩和あるいは免除というのは、水際として極めて危ういと思いますので、ちょっとこれは再検討していただきたいと思います。

 以上です。

あべ委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

あべ委員長 ただいま議題となっております各件中、まず、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とセルビア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とジョージアとの間の条約の締結について承認を求めるの件及び投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とジョージアとの間の協定の締結について承認を求めるの件の三件について議事を進めます。

 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。穀田恵二君。

穀田委員 私は、日本共産党を代表して、日・セルビア、日・ジョージアの二つの租税条約及び日・ジョージア投資協定に反対の立場から討論を行います。

 二つの租税条約は、これまでの租税条約と同じく、投資所得に対する源泉地国での課税限度税率を軽減又は免除する措置を講じています。これは、日本の大企業とその海外子会社が、当該国での外資優遇税制の利益を十二分に受けつつ、さらに、外国税額控除制度や外国子会社配当益金不算入制度によって源泉地国での課税が劇的に軽くなるなど、税制優遇措置を二重、三重に享受することを可能とするものです。

 日・ジョージア投資協定は、日本の多国籍企業の海外展開を促すため、相手国との間で投資環境の整備を図るものです。本協定に盛り込まれたISDS条項は、進出国の国の制度や政策の変更によって損害を受けたと主張する多国籍企業が、その国の政府を相手取り、損害賠償を求めて提訴できる取決めです。これは、一企業が国家を訴え、国の主権を脅かすことにつながりかねません。

 なお、日・OECD特権・免除に関する改正交換公文については、現行の交換公文を改め、OECD東京センターの日本人職員の給与、手当への課税免除などを付与するためのものであり、賛成です。

 以上を述べ、二つの租税条約及び日・ジョージア投資協定に対する反対討論とします。

あべ委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

あべ委員長 これより採決に入ります。

 まず、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とセルビア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

あべ委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とジョージアとの間の条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

あべ委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とジョージアとの間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

あべ委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、日本国における経済協力開発機構の特権及び免除に関する日本国政府と経済協力開発機構との間の協定の規定の適用範囲に関する交換公文を改正する交換公文の締結について承認を求めるの件について議事を進めます。

 これより本件に対する討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 日本国における経済協力開発機構の特権及び免除に関する日本国政府と経済協力開発機構との間の協定の規定の適用範囲に関する交換公文を改正する交換公文の締結について承認を求めるの件について採決をいたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

あべ委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

あべ委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

あべ委員長 次回は、来る五月十二日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時八分散会


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