衆議院

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第12号 令和3年5月12日(水曜日)

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令和三年五月十二日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 あべ 俊子君

   理事 伊藤信太郎君 理事 鈴木 貴子君

   理事 鈴木 憲和君 理事 辻  清人君

   理事 中根 一幸君 理事 阿久津幸彦君

   理事 小熊 慎司君 理事 佐藤 茂樹君

      小田原 潔君    尾身 朝子君

      城内  実君    黄川田仁志君

      國場幸之助君    新藤 義孝君

      鈴木 隼人君    薗浦健太郎君

      中曽根康隆君    中谷 真一君

      松島みどり君    簗  和生君

      青山 大人君    岡田 克也君

      緑川 貴士君    山川百合子君

      渡辺  周君    竹内  譲君

      穀田 恵二君    浦野 靖人君

      山尾志桜里君

    …………………………………

   外務大臣         茂木 敏充君

   外務副大臣        鷲尾英一郎君

   防衛副大臣        中山 泰秀君

   外務大臣政務官      國場幸之助君

   外務大臣政務官      鈴木 隼人君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  植松 浩二君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  岡本  宰君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  十時 憲司君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  安中  健君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  山本 英貴君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 保坂 和人君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   石川 浩司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 赤堀  毅君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 遠藤 和也君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 田島 浩志君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岡田 恵子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 大鶴 哲也君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 河津 邦彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 徳田 修一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 安東 義雄君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   本清 耕造君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   岡野 正敬君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    森 美樹夫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           宮崎 敦文君

   外務委員会専門員     小林 扶次君

    ―――――――――――――

五月十一日

 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第九号)

 国際航路標識機関条約の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第九号)

 国際航路標識機関条約の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

あべ委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人といたしまして外務省大臣官房長石川浩司君、大臣官房審議官赤堀毅君、大臣官房審議官遠藤和也君、大臣官房審議官田島浩志君、大臣官房審議官岡田恵子君、大臣官房参事官大鶴哲也君、大臣官房参事官河津邦彦君、大臣官房参事官徳田修一君、大臣官房参事官安東義雄君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長本清耕造君、国際法局長岡野正敬君、領事局長森美樹夫君、内閣官房内閣審議官植松浩二君、内閣審議官岡本宰君、内閣審議官十時憲司君、内閣参事官安中健君、内閣参事官山本英貴君、法務省大臣官房審議官保坂和人君、厚生労働省大臣官房審議官宮崎敦文君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

あべ委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

あべ委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。松島みどり君。

松島委員 おはようございます。連休前に引き続き、質問させていただきます。

 今年四月に外務省に入省した総合職三十二人のうち女性は十八人で、何と五六%に当たります。昨年は十六人で五三%でしたから、二年続き、新入職員の総合職の場合は女性の方が男性より数が多い、そういうことになりました。

 私は、十四年前、二〇〇七年に外務大臣政務官を務めさせていただきましたが、そのとき、猪口邦子議員、この方は男女共同参画大臣も務められたわけですけれども、猪口議員から委員会で質問を受けました。外務省における女性の活躍について、特に女性である松島政務官に答弁してほしい、そういう質問を受けました。

 そのときに、私は、外交官試験、1種採用で、これが今の総合職に当たりますけれども、1種採用で入省予定者のうち女性が七人で四分の一に達しておりますと、非常に興奮ぎみに、四分の一ということで非常にうれしくて、そういうふうに答弁した記憶がございます。そのことが、今にしてみると笑ってしまえるぐらいの躍進ぶりであります。

 また、そのときは答弁の中で、アフリカでも、スーダンやリビア、ナイジェリアなどで女性が働いているというふうに国名を挙げて強調いたしました。しかし、今では、在外勤務の女性職員全体八百三十六人のうち、八十八人がアフリカ大陸、結構厳しい国の多いアフリカ大陸で頑張っておられます。

 全省庁の平均では、総合職入省に占める女性の割合が、三割を目標にしてきて、三割は増えたとはいえ、まだ三割台であることを考えると、外務省は特に女性に、女子学生に選ばれる官庁と言えるのではないでしょうか。

 大臣に、御感想と、外務省で活躍する女性たちへ、もちろん、これは総合職に限ったことではなく、専門職、ある地域の専門の方々、これは私は外務省の非常にいい制度だと思っているんですが、その専門職や一般職の人も含めて、大臣に感想と激励の言葉をいただきたいと思います。

茂木国務大臣 おはようございます。

 松島委員とは経済産業省で大臣、副大臣を一緒に務めさせていただきましたが、経産省、なかなか幹部の女性社員の数といいますか、少なかったわけでありますけれども、大体二〇〇〇年入省ぐらいからかなりその数は増えてきまして、こういった流れをもっと加速したいね、こんな話を当時の松島副大臣としたのを明確に記憶をいたしております。

 外務省においても、新卒採用者におけます女性職員の割合、これはかなり増加傾向にあります。委員御指摘のとおり、総合職の女性採用者の割合も年々増加をしておりまして、例えば、過去四年で見ますと、二〇一七年の入省では二六・九%、全体の四分の一であったのが、今年、二〇二一年四月の入省では何と過半数、五六・二%に増加をしております。さらに、専門職でも、特殊語学を含め、様々な分野で活躍している女性が多いわけであります。

 今、様々な形で、ミャンマー、こういった問題が取り上げられておりますが、ミャンマーは、大使の丸山大使もミャンマー語の専門家でありまして、現地でも様々なネットワークを持っておりますが、中堅で働いている女性の職員の人がいるんですけれども、お父さんは人間国宝だったんですよ、本当は家を継がなくちゃいけなかったんですけれども、やはり外交がやりたいということで、ミャンマー語で、私がミャンマーを訪問したときは通訳してくれましたが、本当にすばらしい女性だった。そういった女性が世界各地に、こんなふうに専門職においても考えているところであります。

 外交力、チームワークを支える、これはやはり人の力によって成り立つものであると考えております。

 外務省は、性別、年齢、専門分野を問わず能力を発揮できる職場であり続けるために、誰でもイコールフッティングで活躍できる職場環境の整備に取り組んできているところでありまして、私も今年の新入職員への訓示で、ただ、コロナ禍でありますから、全員を講堂に集めてという形ではなくて、書面で私の訓示をお送りして、全員にサインするという形を取ったんですけれども、そこの中で、何事にも好奇心とチャレンジ精神を持って前向きに臨んでください、外務省はいつもそんな前向きなあなたとともにあります、このように伝えました。

 やはり外務省は、グローバルスタンダード、これを常に意識をすべき省庁でありまして、今後も、女性職員も含めて、全ての職員がそれぞれの立場で更に力を発揮していけるような職場環境整備に努めていきたいと思います。

松島委員 私も、いろいろな役所を見ている中で、外務省というのは特に若いときからそれぞれの派遣された国において力を発揮できる、その人の個性を発揮できる役所ではないかと思っております。

 ただ、女性にとって働きやすい職場というのは男性にとっても働きやすい職場であります。是非、前回も申し上げましたが、国内における働き方改革と同様、海外の外交官たちにとっても働きやすさ、休みの取りやすさということをよろしくお願いしたいと思います。

 さて、コロナ以前、非常時の在留邦人引揚げといえば、内戦やクーデターというのが原因で、中東やアフリカなどで数年に一度起こる程度だったと思います。それに比べ、今回は、いつも茂木大臣がおっしゃいますように、百一か国、一万二千人を超す帰国困難な方を在外公館と本省を挙げて帰国できるよう支援したというわけで、これは世界的な展開、すごいオペレーションだったと思います。

 私は、以前も申しましたけれども、十か国ほどの大使や総領事から当時のことをメールで伺いました。州境や県境を軍隊が封鎖しているので、地方に住んでいる邦人が国際空港のある首都まで検問をトラブルなく通過できるように、そのために苦労された話はたくさん伺いました。そうした際に、例えば、現地語のできる大使館員があらかじめ日本人の住む遠隔地に出向いて空港まで同伴した例や、あるいは、大使館に用務がある人なので首都に来なければならないといった文書を送って、それを持って軍隊が守る県境の検問所を無事通過してもらったり、いろいろな例がございます。

 テレビを見ておりますと、先進国であっても、欧米諸国ではロックダウンによって武装した警察や軍隊が巡回している、そういう様子を見るわけですけれども、私たち日本人にとりましては、非戦時下で自国の軍隊に一斉検問されるシーンというのは、昭和十一年、一九三六年の二・二六事件、いわゆる雪の帝都、それぐらいしかイメージが湧きません。そういう私たち日本人が外国で暮らしているとしたら、こういうことが起こると本当に非常に不安になる、そう思います。

 月刊文芸春秋に、昨年、武漢から八百二十八人の日本人と家族などをチャーター機で帰還させる、その陣頭指揮を執られた、現在国際協力局長を務めている植野篤志さんの詳細な手記が載っていまして、私は感動を持って読みました。彼は当時、中国大使館ナンバーツーの公使をされていたわけです。

 私は、世界中の外務省職員が関わった全ての脱出劇、帰国支援について、これは外務省全体として非常に大切な経験、資産でありますから、記録に残して共有すべきだと考えます。

 今年度の外交青書にも巻頭特集としてあったんですけれども、ページ数の制限もあったのでしょう、具体的な話はコラムとして「日韓でつないだ 命のバトン」とか「武漢封鎖」とかこの二つがあっただけで、ほかはやはり一般的な例という形、一般的な話であって、実際に起こったであろう各国、各地の苦労話やエピソードは書かれていませんでした。

 そこで、是非記録集を作っていただきたいと思います。もちろん、相手の人の、助けた相手の個人情報もありますから、どこまで公開できるかは別としても、外務省内でお互いに見られるように、そして、できれば、やはり責任を持つ立場である私たち国会議員にも部外秘ということで見せていただきたいと思っております。

 今だったらある程度落ち着いて昨年のことを振り返ることができますし、そしてまた、人事異動が余りないうちでないとまとめにくくなってしまうと思います。こういう在外公館の職員たちが経験した具体的な事例、その過程で心配したことや悩んだことを含めて書いていただきたい。

 もちろん、失敗談も将来の参考になるので、その際に、どんな内容でも、在外公館の職員が書いたことが不利益にならないように、失敗したことも書いてもらえるように、そういうことを明言していろいろな話を集めていただきたいと思います。期限を切らないと作成できませんので、是非今年ということで作っていただく、さらに、在外公館の職員へのいろいろな配慮もした上でということ、いかがでしょうか。

森政府参考人 御答弁申し上げます。

 昨年、新型コロナウイルス感染症が世界中に拡大する中で、委員御指摘いただきましたとおり、武漢、それからアフリカを含めまして世界各地の在留邦人の帰国支援を行い、これまでに、これも御指摘いただきましたとおり、百一か国から一万二千人以上の帰国を実現いたしました。

 海外に渡航、滞在する邦人の保護は外務省の最も重要な責務の一つでございます。外務省としては、これらの経験を踏まえまして、在外邦人の安全確保に今後とも一層万全を期してまいりたいと思っております。

 そのためにも、今委員御指摘いただきましたとおり、これまでに得られた知見、経験を、今後最も適切な形で関係者との間で共有を行い、これからの邦人保護に係る政策立案そしてその実施に役立ててまいりたいと思っております。

松島委員 いつまでに記録集を作ってくれるとか、そういう話が全然なかったんですが。

森政府参考人 お答えいたします。

 記録集を作るかどうかというところまでは、今この場で、また、オペレーションが動いている状況でございますので、改めて考えさせていただきたいと思います。

松島委員 先ほど申し上げましたように、時間がたってしまいますと、いろいろな記憶も薄れますし、是非早めに。

 そしてまた、今、在外公館の中が、例えば二交代制の勤務とかいろいろな形で意思疎通が図りにくいという公館も多い中で、こういうテーマを振り返ることによって、また一致結束してやろうという機運、それぞれの館にとってもいいことだと思いますので、よろしくお願いします。

 次に、具体的な話ですが、いろいろな在外公館の方に聞いた中で、今後につながる提言や検討課題を幾つかもらいました。

 一つは、世界的な観光地にある公館長からのメールでした。日本でも昨年二月、ダイヤモンド・プリンセス号の事案がありましたが、クルーズ船乗客乗員への対応です。

 プライバシーを理由に、どの船に日本人が乗っているのか、情報がなかなかもらえない、そういうので困ったそうです。何とか分かって、そして、携帯電話番号も把握した高齢の日本人御夫妻は、その在外公館が連絡を取ったところ、感染の危険におびえ、また、いつ下船できるか分からない、おまけに英語もよく聞き取りができないということで不安にさいなまれていた方が、領事担当や医務官が何回も連絡を取って勇気づけたことによって非常に安堵して、感謝されたと伺いました。

 それで、質問でございます。

 先ほど、ロンドンで行われたG7外相会合で、我が国は茂木大臣がクルーズ船対策について問題提起をされたと伺っております。どのような内容だったのでしょうか。

茂木国務大臣 G7の外務・開発大臣会合、五月の三日の夜、ワーキングディナーから始まりまして、三日間に及んだわけでありますが、そこでかなり幅広いテーマを扱いまして、中国、北朝鮮、ミャンマーといった地域情勢、また、新型コロナ、気候変動など国際社会の重要課題について、忌憚なく率直な議論を行いまして、日本としてもかなり議論をリードできたのではないかなと考えております。

 北朝鮮の問題、私、リード役をやりましたし、さらに、中国であったりとかミャンマーについてもかなりの発言もしました。さらに、コロナの問題も私がリード役という形で議論を進めたわけでありますが、コロナについては、六月に日本がGAVIと共催をするCOVAXファシリティーサミットへの参加及び追加のプレッジの各国への呼びかけを行う、それから、世界の一人一人にワクチンを届けるラストワンマイルの支援、さらに、コロナの影響を受けている途上国の経済を下支えするため、緊急支援、円借款の拡充の表明、こういったことを行いました。

 同時に、御指摘のダイヤモンド・プリンセス号の経験を感染症対策に生かすべく、私から、クルーズ船を含みます国際交通における感染症対策での関係者、国際機関の役割を明確にするために、G7として国際機関でのガイドライン作りを働きかけていくことを呼びかけまして、G7各国の賛同を得たところであります。

 その結果、成果文書においても、本件について明確な言及を盛り込むことができました。

 引き続き、国際クルーズ船における将来の感染症に対する国際的な備えを強化するための対応について、関係省庁と連携をし、関係する国及び関係機関と議論を深めてまいりたいと考えております。

 ダイヤモンド・プリンセス号、船長さんはイタリア人でした。イタリアの外務大臣とも現地で話をしたんですけれども、やはりイタリアでは船長さんがかなり有名になっているらしいんですね。本を書いたりして有名になっているんですけれども、やはり頑張ったのは日本なんじゃないかと向こうの外務大臣も言ってくれて、なかなかああいう複雑なオペレーションというのはできないよと。

 ただ、今後起こり得るということを考えて、例えば、寄港国であったりとか船主であったりとか船長さんであったりとか、どの国がどういう役割分担をしていくか、こういったことをきちんと決めていくということは重要なんだと思っております。

松島委員 ありがとうございます。

 ガイドライン、ルール作り、是非、これからも進んでいくように願っております。

 こんな例もあります。

 領事担当が非常につらいのが、これは途上国ですけれども、こういう電話が昼夜を問わず、泣き言の電話がかかってくると。現地の人と結婚した日本人女性の場合が多いようですけれども、現在も日本国籍を持っている、そういう方が、経済的に逼迫していて、コロナで悩んで、電話で泣きついてくる、お金を貸してほしいと。

 在外公館の資金貸付制度というのは、上限五万円で、旅行者など短期滞在者が財布を盗まれたような場合、日本にいる家族から送金してもらうまでの一時的な支援、そういうものを想定しているそうです。航空運賃には充てられないというのが前提となっていると伺っています。

 そこで、質問です。

 この貸付制度、平時はそれでいいですけれども、コロナのような世界的緊急事態の場合、日本国籍を持っている、それはその国の人を愛してその国にずっといようと思ったのかもしれないけれども、日本国籍を持っている、そういった方が、やはり、コロナの不安の中で、衛生状態のいい日本に戻りたいといったときに、日本までの最低限の運賃を貸し出すということはできないでしょうか。

森政府参考人 在外公館では、支援を求めてこられる邦人の方々に対して、各人の置かれた事情を十分聴取した上で、最も適切な対応策等について助言あるいは支援を行ってきております。

 そうした中で、どうしても親族、友人等からの金銭的な支援を得られない方の場合には、在外公館では、貸出金制度を活用するなど、邦人保護の観点から適切な対応に努めてきております。

 引き続き、現行制度の下でどのような支援ができるか、個々のケースの事情も勘案しながら適切に対処してまいりたいと思っております。

松島委員 物足りなかったですけれども。

 それで、あと最後に一つだけ、早口で読みます。

 途上国で医務官がいなくて巡回検診制度の対象となっている公館が九十八館だと承知しておりますが、前回伺ったことの続きで、その中でコロナによる入国規制で巡回が実施できないでいる公館が幾つあるか。さらに、その中で外務省が不健康国として認定している公館が幾つあって、そこに何人の外務省職員が働いているのか。数字だけお願いします。

あべ委員長 申合せの時間が経過しておりますので、御協力いただきたいと思います。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 最初の問いについては、五十六公館において巡回検診ができていないという状況でございます。

 そのうち、二つ目の問いでございますが、健康管理休暇制度の対象国が四十公館でございまして、令和三年五月一日時点での外務省職員は二百五十九名でございます。

 以上でございます。

松島委員 どうもありがとうございました。

あべ委員長 次に、黄川田仁志君。

黄川田委員 自由民主党の黄川田仁志でございます。

 茂木外務大臣におかれましては、このゴールデンウィーク中に、ロンドンで行われましたG7外務・開発大臣会合やV4プラス日本外相会議、そしてV4を含む欧州各国歴訪と、精力的に外交日程をこなされました。大変お疲れさまでございました。

 世界ではまだ新型コロナウイルス感染症で苦しんでいる最中でございますが、感染症対策をした上で、リモートではなく、大臣が各国を直接訪問してくださる姿には大変勇気づけられております。ありがとうございます。

 そこで、茂木大臣にお尋ねいたします。

 今回の外遊の成果について、G7外務・開発大臣会合の結果を中心にお聞かせいただきたく、お願いいたします。

茂木国務大臣 今年は、G7が英国が議長国ということになります。そして、G20はイタリアが議長国。そして、今喫緊の課題であります気候変動、COP26、これもまたヨーロッパで、まさに今年、外交の舞台、こういったものがヨーロッパが中心になってくる。そのヨーロッパが、インド太平洋地域への関心というのを昨年来非常に高めている。そういう状況の中での今回の欧州訪問でありました。

 今回は、本年後半のEU議長国になりますスロベニア、そしてバルカン半島、ボスニア・ヘルツェゴビナ、そしてG7での外相会合で英国、さらには、東ヨーロッパ、V4議長国のポーランドを訪問いたしました。

 各国での会談であったりとか、G7、大体二時間ぐらいやりますと三十分とか一時間休みを取る、これをマージンというわけでありますけれども、その空き時間、マージンでの会談を含めまして、合計二十のバイ会談を行いまして、さらには、G7の外務・開発大臣会合、日米韓、そしてV4プラス日本と、マルチの会合にも出席をいたしました。

 今回の歴訪の大きな目的は、冒頭申し上げましたが、自由で開かれたインド太平洋について欧州諸国の認識を確固たるとすることが一つの目的でありました。EUは、四月にインド太平洋における協力のためのEU戦略を発表して、議論を進めている段階にあります。

 ちなみに、この欧州での議論、今年は、一月に私が日本の外務大臣として初めてEUの外務理事会に出席をして本格的な議論が始まり、四月にこういった戦略が発表され、恐らく九月には更に詳細版が発表されることになると思っておりますが、このようなタイミングにおいて、厳しさを増しておりますインド太平洋の情勢について、各国の外相等と対面で議論を行って、自由で開かれたインド太平洋に向けて協力していくこと、一致できたことは極めてタイムリーであったと考えております。

 また、G7の外相会談、ここは、久しぶりにみんな会ったなという感じでありまして、G7の外相が対面でじっくり議論する二年ぶりの機会、こういうことになったわけでありますが、丸二日以上にわたって忌憚なく率直な議論を行い、改めて、G7が結束をして国際社会をリードしていく、こういう決意を確認できました。私自身、G7が戻ってきた、G7・イズ・バック、こういう思いを新たにしたところであります。

 会議の中では、中国、北朝鮮、ミャンマーなどの地域情勢、さらには、コロナ、気候変動などの国際社会の重要課題について、日本としてかなり議論をリードできたと思いますし、存在感も示すことができたと思っております。

 コミュニケ、御覧いただいたと思うんですが、中国、北朝鮮に関するものも含めて力強いメッセージを発することができて、G7としての結束をしっかりアピールできたのではないかなと思っております。

 国際派の黄川田先生にもどうにか合格点をいただけるような内容になっているんじゃないかなと思います。

黄川田委員 ありがとうございます。

 自由で開かれたインド太平洋というテーマを持って欧州各国とお話しされたということで、大臣からとても力強く非常にいい結果が得られたという言葉を得られて、非常にうれしく思っております。

 そして、報道でもございましたが、中国に対しても、新疆ウイグルやチベットでの人権問題、香港の民主主義の危機にも言及がありまして、コミュニケ等で、かなり踏み込んだ文章であったというふうに評価をされています。私もそのとおりだと思っております。

 しかし、その一方で、コミュニケの文章を詳しく読んでまいりますと、中国の海洋進出に関する問題については、中国というまとまりの項ではなくて、南シナ海、東シナ海という項を別建てにして、東シナ海と南シナ海の状況に対する懸念や台湾海峡の平和と安定について触れられております。別の言葉にすると、直接的には中国を名指しして批判はしていないということで、そこはやはり一定の配慮を感じ取っております。

 ロシアに対する警戒感に比べると、欧州諸国の中国への警戒感は、上がっているとはいえまだ薄いのではないかと、私はちょっとそれでも疑っております。そこで、会合に直接臨まれた茂木大臣の中国に対する欧州の警戒度についての評価を再度お聞かせいただきたいと思います。

茂木国務大臣 今回のG7の外相会合、いろいろなテーマについて議論したわけでありますけれども、では、どこに一番時間を使い、いろいろな議論をしたかというと、三つのC、一つはチャイナ、そして二つ目がコビッド、そして三つ目がクライメートチェンジ、こういう形でありまして、中国についてはG7各国全て発言をするという形で、九十分にわたって議論した、地域情勢、中国のところで。また、違うところでも中国に関連した発言も出るという形で、関心が高かったのは間違いないと思っております。

 私からは、東シナ海、南シナ海情勢、そして中国海警法をめぐる動きについて問題提起をし、中国による一方的な現状変更の試みの継続、強化について深刻に懸念をしている旨述べました。各国の外相からも様々な懸念が指摘をされるなど、かなり突っ込んだ議論ができたと思っております。

 こうした議論を踏まえて採択された共同コミュニケ、これは構成上、例えばインド太平洋とか地域の部分と国の部分を分けていますので、そういった構成にはどうしてもなるわけでありますけれども、このコミュニケについては、新疆、チベット、香港への言及、東シナ海、南シナ海情勢への深刻な懸念を含めて力強いメッセージを発出できた、そのように考えておりまして、ページも一ページめくったぐらいのところに書いてありますから、脈絡としてはそういうことなんだろうな、誰が読んでもそういうように読めるんじゃないかなと思うところであります。

 また、G7各国との二国間会談においても、中国に関する各国の認識、これは基本的に一致をしておりまして、私の発言に対しても賛同が得られた、このように考えております。

 英国の前後で訪問した東欧におきましても、中国への対応については非常に今関心が高く、一体これからどういうふうに対応していったら適切なんだろうか、こういう質問も率直にたくさん受けたところであります。そのために、ワーキングランチ、全然飯が食えなかったりとか、ずっとしゃべっていて、こういうこともあったわけでありますが、私から先ほども述べたような現状認識、深刻な懸念に言及したところ、各国とも、ワーキングランチですけれども、食事を取りながら、フォークをペンに替えてメモを取る、こういう感じで非常に真摯に耳を傾けてくれたと考えております。中東欧諸国においても、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化していくことが極めて重要であるとの認識で一致をいたしました。

 また、一帯一路、ヨーロッパの一部でも進められているわけでありますが、これを含めて、経済安全保障を含む様々な国際的な課題に対応していく中でも、基本的価値を共有する国々の結束が重要であること、各国との間で確認をすることができた。やはり、過剰債務の問題であったりとか透明性の問題、開放性の問題、インフラの整備においては、こういったことも重要である、こういった認識でも一致をすることができたと考えております。

 このように、欧州諸国の中国についての認識は我が国からの働きかけを踏まえたものになっていると考えておりまして、もちろん、例えば自由で開かれたインド太平洋に対する協力といったときに、既に進めているフランス、英国、ドイツとこれからという国では、若干それは温度差というか、ありますし、あとは、中国に対する様々な懸念であったりとか関心というのも、どれだけ中国との経済関係が既にできているか、できていないか、それによっても違いがあると思うんですけれども、基本的にこういう考え方で対応することが重要ではないかな、またこういう点に対する留意が必要ではないかな、こういうことについてはおおむね欧州諸国と一致することができた、こんなふうに考えております。

黄川田委員 ありがとうございます。

 かなりの時間を割いて中国問題について話していただいたということでございます。

 ただ、ともすると欧州各国は、中国の警戒感がこちらが油断すると薄れてしまいますので、引き続き継続的かつ積極的に働きかけをしていただきますよう、よろしくお願いを申し上げます。

 そして、台湾に対しての言及もコミュニケの中でされているということでございまして、台湾のWHOの年次総会や世界保健総会への参加の支持を表明したこと、台湾海峡の平和に関する懸念を明示したことは、誠に異例であり、大きな進展であったと思っております。

 それを受けまして早速米国は動いておりまして、五月七日にブリンケン国務長官は、WHOのテドロス事務局長に対して、WHO総会に台湾をオブザーバー参加の形で招待するよう求めたという報道もございました。

 日本も、先般の日米首脳会談、共同声明の中で台湾に初めて言及したわけでございますから、米国とともに具体的な行動を起こすべきであると思っております。

 例えば、日本も米国に続いてWHOの総会に台湾の参加を働きかけるとか、そのような準備等、ございますでしょうか。

岡田政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、国際保健課題への対応に当たりましては、地理的空白を生じさせるべきではないとWHOで一貫して主張してきております。

 今回のような全世界に甚大な影響を与える感染症につきましては、台湾のように、コロナ対策で実効的な措置を取り、成果を上げた地域を含め、世界各国・地域の情報や知見が広く共有されることが重要であると考えてございます。

 先般のG7の外相会合におきましても、台湾のWHO総会へのオブザーバー参加につきましてG7各国の共通の認識が得られまして、これが共同ステートメントにも盛り込まれてございます。

 引き続き、関係国と連携しまして、WHOに働きかけつつ、我が国の立場をWHOでも明確に主張してまいります。

茂木国務大臣 台湾につきましては、三月の十六日の日米2プラス2で、まず、台湾海峡の平和と安全が重要である、このことを明記しました。

 そして、ちょうど一か月後の四月十六日の日米首脳会談におきまして、この平和と安定の大切さに加えて、当事者間の話合いによって解決されるべき、こういう文言が入りまして、今度の五月五日の共同ステートメントの中では、それに加えて、台湾は保健分野において大きな成果を上げている、その知見というのは生かされるべきであって、WHOの総会にオブザーバーとして参加すべきであるということをG7の外相ステートメントの中に盛り込めた。

 一つ一つ、こういった台湾問題の重要性について、日米間で、またG7の間で、さらには、ほかの国も含めて意識というのは高まってきていると思うので、こういったものを踏まえながら、それぞれの国が今後働きかけを行っていくという問題だと思っています。

黄川田委員 ありがとうございます。

 WHOに限らず、国際社会が台湾への関心を持つよう努力しなければならないわけでございます。台湾を国際社会の枠組みに入れていく必要があるということで、日本も引き続き具体的に進めていっていただきたいと思います。

 先ほど茂木外務大臣が、三つのCについてG7外務・開発大臣会合において話し合われたということでございますが、その一つのCであります気候変動について、少しお伺いをいたしたいと思います。

 コミュニケの骨子を拝見する限りでは、資金動員目標を確認する程度で大きな議論にならなかったようにも見えますが、私は、気候変動に関するあらゆる会合の場で、最大の排出国の中国のことを大いに議論していただきたいと思っております。先進国は、気候変動のテーマにおいても、中国に対する問題意識が薄いのではないかというふうに感じております。

 先般の米国主催の気候サミットでは、中国は二〇三〇年までの数値目標は示さず、カーボンニュートラルの努力目標も、G7等で目標としている二〇五〇年と比べると十年も遅い二〇六〇年までとしています。これでは、中国とあらゆる産業分野において正当な競争はできません。

 日本は、二〇一三年基準でマイナス四六%という野心的な数字を掲げました。そして、日本がカーボンニュートラルに向けてリーダーシップを取るということであるならば、中国に対してより厳しいCO2削減目標を迫るべきだと考えておりますが、その辺りいかがでしょうか。

岡田政府参考人 お答え申し上げます。

 五月三日から五日にかけて行われましたG7の外務・開発大臣会合では、中国に対しまして、高度な技術力を有した主要な経済国として、ルールに基づく国際システムへの建設的参加を促しますとともに、気候変動を含みますグローバルな課題に対応するための行動を取ることが、中国を含む我々全ての利益となるとの認識で一致したところでございます。

 まさに、気候変動問題は、国際社会全体が取り組むべき重要な課題でございます。世界最大の温室効果ガス排出国である中国はより積極的な取組を行う必要があるとの点は御指摘のとおりでございまして、各国が連携しながら中国に更なる取組を求めていくことが重要と考えてございます。

 我が国としましては、脱炭素社会の実現に向けた更なる取組を含めまして、関係国と連携しつつ、中国が自らの責任をしっかりと果たしていきますよう働きかけてまいります。

黄川田委員 ありがとうございます。

 世界第二位の経済大国となりました中国に対して、いつまでも途上国の顔をさせておいてよいわけはございません。経済の大きさにふさわしい国際社会における責務を果たしてもらわなければなりません。そのことを中国に身をもって示すために、この野心的なマイナス四六%を掲げたのだと思っております。COP26においても日本の力強いリーダーシップを期待しております。

 ありがとうございました。

あべ委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 今日も質問の機会をいただきまして、大変にありがとうございます。

 まず、茂木大臣、ゴールデンウィーク期間を活用して、九日間にわたっての欧州を歴訪されましたこと、大変お疲れさまでございました。一部、先ほどの黄川田委員と重なるんですけれども、やはり、前回の委員会以後の動きとしてはこの動きが大変大きな動きだったと思いますので、総括的にお聞きをさせていただきたいと思うんですが。

 訪問先は、イギリスのほか、スロベニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ポーランドの東欧三か国でございますが、その間に、先ほどありましたように、G7の外務・開発大臣会合に出席されたほかに、日米韓、V4プラス日本のマルチの会談、さらには、二国間会談で二十以上ですか、二十を超える会談を行ってこられたと伺っております。

 そこで、もう長い話は別にして、総括的に二点お伺いをしたいと思います。

 一点目は、欧州歴訪の成果ということでございますが、今回の歴訪の大きな目的の一つというのが、自由で開かれたインド太平洋の考え方について欧州各国の認識を深めていただくこと、これにあったと思うんですね。一部、イギリスであるとかフランスであるとかドイツというのは、非常に、ここ最近インド太平洋に深い関心というか関わりを持ってきて、艦船を派遣することを決めるなど、具体的な行動も伴うところもあるんですけれども、そのほか含めて、ヨーロッパ全体にこの自由で開かれたインド太平洋の考え方についてしっかりと認識を深めていくことができたのかどうかということについて、どういう成果があったと考えておられるのかということが一点でございます。

 もう一つは、二点目として、G7の外相会合が久々に対面で行われました。アメリカのトランプ前政権のときは、自国第一主義で国際的な協力に背を向けたこともあって、機能不全に陥っていたと言われているこのG7の枠組みが再び動き出したこと、さらに、G7自体が、トランプ政権とは別にして、中国やインド、こういう新興国が台頭して以降、G7は影響力が低下してきたのではないか、そういう指摘をされる中で、今回、法の支配、民主主義、自由、こういう共通の価値観を持ったG7が国際的な協調体制づくりに動き出した、そういうことも言えるのではないかと思うんですが、このG7の外務大臣、開発大臣の会合の意義と議論の内容の成果をどのように捉えておられるのか。

 ちょっとまとめて二点、欧州歴訪の日本外交にとっての成果と、そして二点目としてはG7の意義と外相会議の成果について、外務大臣の御所見を伺いたいと思います。

茂木国務大臣 今回の歴訪の大きな目的の一つは、佐藤委員の方からもありましたように、自由で開かれたインド太平洋について欧州諸国と認識を確固たるものにするということでありまして、G7もありますけれども、EUというものを考えた場合に、今回、最初に行きましたスロベニアは今年後半のEU議長国ということになります。また、東ヨーロッパ、ポーランドを始めとするV4の中で、ハンガリーや、あるわけでありますが、ポーランドがV4の今議長国ということで、そういった国を訪れ、ポーランドにはV4のほかの参加国の外相にも来てもらって、そこで議論をする、V4プラス日本ということで、そこで、自由で開かれたインド太平洋に関する議論を相当させていただいた。

 四月に既にインド太平洋における協力のためのEU戦略というのを作っておりまして、さらに、九月までにこの戦略の詳細版となります共同コミュニケ、これを発出するべく議論を進めているということで、ちょうどいいタイミングで欧州を訪問して、インド太平洋に向けた協力について日本と欧州の間でいい議論ができたのではないかな、こんなふうに考えております。

 また、今回、G7、昨年は、コロナの影響もあったり、また、なかなかG7の中でも足並みはそろわない、こういうところもあって、対面での開催はできなかったわけでありますが、久しぶりに対面でG7の外相が集まりまして、アウトリーチ国も途中から入りましたが、基本はG7の外相が二日以上にわたって様々なテーマで議論をするということで、ほとんどの問題について意見が一致する方向になっていく、共同ステートメントも、私は明確なもの、はっきりしたものが出せたと思うんですが、そういった形で、まずG7、これが結束していく。民主主義、そしてまた基本的人権の尊重、法の支配、こういう価値観を共有して、世界を引っ張っていくべきG7が結束して物事に当たる。

 同時に、G7として、考え方を共有するような、また取組を一緒にできるような同志国であったりとか仲間を増やしていく。こういった意味から、オーストラリア、インド、さらには韓国、そして、今年はブルネイがASEANの議長国でありますからブルネイ、さらにはアフリカの南アフリカ、それぞれ外相を招待国としてお招きするということで、G7を中心にしながらも、またそういう輪も広がっていく。G7がマグネットになるというか中心になりながら我々の輪を広げていく、こういった意味でも、非常に意味のある会合になったのではないかなと思っております。

佐藤(茂)委員 これは明確に、やはりアメリカがバイデン政権に替わってから大きく流れが変わってきているなという感じはしておりまして、共同コミュニケも、例えば日米首脳会談なんかまでの流れの中で積み上げてきたものをしっかりと踏まえた、そういう内容になっているのではないかと思いますので、具体的にどう行動をしていくかというのがこれから問われてくるのではないかな、そのように見ております。

 その上で、G7の外務大臣会合で議題になりました中で、大きく二点、時間の許す限りお聞きをさせていただきたいと思うんですが、一つは、茂木外務大臣がG7の会議の中でワクチン、保健の議論でリードスピーカーを務められまして、新型コロナによる危機を乗り越えるためには、G7として、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの考えの下、途上国を含めた世界全体においてワクチンを始め治療、診断の公平なアクセスを実現することが不可欠である、そういうことをしてきて、賛同を得、一致を見た、そういうように伺っております。私ども、全く同じ認識をいたしております。

 その上で、茂木大臣が、六月に日本がGAVIと共催するCOVAXワクチンサミットへの参加及び追加プレッジを各国に呼びかけるとともに、日本としての今までの努力、具体的には、約八千万ドル、八十七億円の支援を決定したこと、これはラストワンマイル支援ですけれども、ラストワンマイル支援のために八千万ドルの支援を決定したこと、さらには、新型コロナ危機対応緊急支援円借款の枠を最大五千億円から七千億円に拡充することを表明されました。G7でこの分野について日本が議論のリード役を務めて相応の貢献を表明されたことを私は高く評価をしているところでございます。

 その上で、昨晩、COVAXワクチンサミットについて、六月二日にオンライン会議で開催することを正式に決定されて、菅総理及び茂木外務大臣が出席予定であるということが発表されました。

 私は先月の四月二十一日の外務委員会でこのことについて御質問をさせていただいたときに、茂木大臣は、一番大きな課題というのは資金ギャップをどうしていくかということになってくるんだと思っている、そういうふうに御答弁をいただきました。

 実は、今週初めの五月の十日の月曜日に、GAVIのセス・バークレー事務局長及びCEPIのリチャード・ハチェットCEOと、我が国の山口那津男代表を始め我が党の代表メンバー数人でオンラインで会議をさせていただき、私も参加をさせていただきました。

 そのオンラインの会議において、私の方からは、外務省に成り代わりまして、先ほど申し上げました、茂木外務大臣がG7の大臣会合において議論のリード役を務めてワクチンサミットへの参加及び追加プレッジを各国に呼びかけたこと、さらには、その前の日米首脳会談においても菅総理やあるいはバイデン大統領もCOVAXへの支援を行っていくことを合意したことなどを紹介させていただきました。

 GAVIのセス・バークレー事務局長は、二点言われておりました。一つは、新型コロナの流行を収束させるため、途上国でのコロナワクチン普及が欠かせないこととした上で、日本に対して大変感謝をしておりました。昨年九月に日本が各国に先駆けてCOVAXにいち早く参加を表明したことで、かつてない世界的な協力が進んでいる、日本は感染症の解決に対して大変大きなリーダーシップを発揮してくれている、こういう感謝を述べられた上で、その上で二点目に言われたのが、やはり、年内から二〇二二年の初頭までに九十二の低中所得国の人口平均で三割にワクチンが行き渡るようにするためには、十八億回分のワクチンを購入し輸送する必要がある、これを達成するためには二十億米ドルの資金が必要であると。

 この六月にCOVAXワクチンサミットを日本が共催していただけるのは大変うれしく思っているけれども、我々としては、既に二億米ドルを拠出していただいている共催国の日本がAMCに対して今回大変大幅な増額拠出をしていただければ幸甚である、これが彼らの言いたい二点目でございました。

 今、二〇二一年末までに合計八十三億米ドルの資金が必要であって、約十七億ドルが不足しているというように言われております。現在、COVAXファシリティーのAMCに対する各国のプレッジ額は、アメリカの二十五億ドル、ドイツの九・七一億ドル、続いてイギリスの七・三五億ドル、そこから大分引き離されて欧州委員会、スウェーデン、そして日本の二億ドルと、日本は今、世界第六位でございます。

 この六位という順位が日本の国力としてふさわしいのかどうかというのは議論のあるところでございますが、いずれにしろ、COVAXワクチンサミットの共催国として、また、G7各国に追加プレッジを呼びかけられた立場から、資金ギャップを埋めるために、また必要な資金目標を達成するために、やはり今回は、各国プレッジ額に引けを取らない大幅な増額拠出を、共催国にふさわしい額をしっかりと拠出すべきではないかと私はお訴えしたいと思うんですけれども、外務大臣の所見を伺っておきたいと思います。

茂木国務大臣 新型コロナの世界的な今拡大の中で、各国、収束に向けて様々な取組を行っていますが、やはり決定的に効くのはワクチンだと思います。それは、イスラエルを見ても、イギリスを見てもそうだと思います。ただ、一か国で収まったとしても、途上国等でウイルスが残っていたらまた再拡大する、こういう危険性というのは残るわけであります。

 今、では、このままいったときに、途上国の一人一人全員にワクチンを届けるのにどれくらいの時間がかかるかというと、二〇二四年になってしまう、こういう見通しもあるわけでありまして、これを一年でも、さらには半年でも前倒しをしていくということがどうしても必要なんだと思っています。

 そして、ワクチンについては開発、生産、これは極めて重要だと思っています。日本でもやはり私はやらなくちゃいけないと思います。同時に、生産だけではなくて、この調達、分配、まさにここはCOVAXが担うわけでありますけれども、そして最終的には、各国に渡った後にそれが接種会場まで行かなくちゃいけないわけでありますから、コールドチェーンの整備等のラストワンマイル、こういう支援が必要になってくると考えております。

 その上で、ワクチンの公平なアクセスのための多国間の枠組みでありますCOVAXファシリティー、既に日本として、この取組を主導し、二億ドルをプレッジではなくて実際に拠出をするということを行ってきているわけであります。

 また、国際社会の連携の確認と、必要な資金を調達、動員する、このことについて協議するために、六月二日にGAVIとともにCOVAXファシリティーサミット、これを日本が共催をするということを昨日発表させていただいたところであります。

 COVAXファシリティー、これから途上国の人口の三〇%をこのCOVAXファシリティーでカバーしていくということになりますと、二〇二一年末までに、御指摘のように、六十三億ドルが必要とされまして、現時点で約十七億ドルの資金ギャップが出てくるわけであります。

 我が国は今回、この会議を主催をする、世界から注目をされております。主催するのに、そして、各国にこの資金ギャップを埋めるための協力を呼びかけるのに、日本は出せませんというわけにいかないですよ、それは。今後協議をしなきゃなりませんけれども、主催国として相応のやはり責任というか、日本はこれだけのことをやります、皆さんも是非よろしくと、こういう姿勢が示せるようなことをしていきたいと思っております。

佐藤(茂)委員 非常に外務大臣から力強い表明をいただきまして、今日も一部報道では数字が何か勝手に躍っておりますけれども、その数字にいくのかどうかは別にしても、今外務大臣が申されたように、主催国にふさわしい、そういう額を是非世界にしっかりと発出をしていただきたいな、そのことを申し上げまして、もう一点、時間の許す限りなので、最後にさせていただきたいと思いますが、G7の議題の地域情勢の一つで話し合われた問題として、ミャンマー情勢がございます。

 そこで、G7として改めて軍事クーデターを強く非難し、国軍や警察による暴力を非難した上で、コミュニケにもしっかりと明記されたわけですが、このG7の前の四月の二十四日のASEANリーダーズ・ミーティングは、クーデター後初めてミャンマーの国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官も出席して行われました。

 議長声明では、暴力の即時停止、国内対話を促すための特使の派遣、人道支援の提供など、いわゆる五つのコンセンサスが盛り込まれました。G7のコミュニケでもそのことを歓迎、そのように評価されております。

 一方の国軍トップのミン・アウン・フライン氏は、帰国された後に、国内が安定すればASEAN首脳からの建設的な提案を慎重に検討するとの声明を発表して、この合意の早期実行に慎重な姿勢を示しているのは私は問題であって、安定の回復優先を理由に先延ばしされ続ける可能性があります。

 しかしながら、今までのASEANの姿勢と違いまして、内政不干渉とか、あるいはコンセンサスによる意思決定、そういう原則のASEANが、一歩踏み込んで加盟国の政治問題解決に踏み出したことは大変私は評価できるのではないかと思います。

 これからやはり、日本は混迷するミャンマー情勢の事態収拾に向けて、一つは、国軍との独自のパイプを生かした外交上の働きかけを続けるのはもちろんですけれども、もう一つは、やはり、G7の中で地理的にも当事国と最も近いアジアの一員として、ASEANと更に緊密に連携して取り組んで、場合によっては、例えば、日本主催でASEANの会合を開催するなどして、事態の改善を図る努力をしていただきたいと考えますけれども、特別に、このASEANのリーダーズ・ミーティングについても、外務大臣が出された、評価もされておりますが、ASEANと連携した事態の収容を図る努力、さらには、今回行われたASEANリーダーズ・ミーティングの評価について、外務大臣の所見を伺っておきたいと思います。

茂木国務大臣 まず、今回のG7の招待国の中に絶対ASEANを入れた方がいい、こういったことは日本からイギリスの方に働きかけて、議長国でありますブルネイの外務大臣が招待をされるということになったわけでありますが。

 四月二十四日、それに先立って行われましたASEANリーダーズ・ミーティング、相当やはり苦労があったんです、これは。インドネシアの大統領を始め、またルトノ外相も各国と調整をしながら、そしてフライン司令官も呼ぶと。フライン司令官の方にも、軍服で行っちゃ駄目だから、ちゃんとスーツを着て行った方がいいよ、こういうことを言ったり、様々な形で、このミーティングをうまくいかせようという形でかなり率直な意見交換が行われて、委員御指摘のように、五つのコンセンサスが発表された。

 これは、事態の改善に向けた第一歩として歓迎するとともに、ASEANの事態打開のための努力を高く評価しているところでありまして、G7の会合でも、議長国ブルネイの外相が来ていましたから、やはり、ASEANがASEANの一員であるミャンマーの問題についてこういう取組をしているんだ、これをG7全体でも応援していこう、後押しをしていこうということを私の方から申し上げて、G7各国の賛同も得られたところであります。

 もちろん、今、ミャンマーの国内、なかなかまだ事態が安定をしないという中で、五つのコンセンサスが、では、あしたから始まるか、一週間後になるか、いろいろ見ていかなきゃならない、また、進み方が遅かったらそれに対する働きかけもしていかなきゃならない、こんなふうに思っておりますが、少なくともやるべきことは決まってきたというわけでありまして、例えば、特使の派遣であったりとか国内の対話であったりとか、こういったことを一つ一つ実現をしていくということが問題の解決につながっていくのではないかな。

 もちろん、それに当たっては、日本としても、これまでミャンマーの民主化のために、また人道支援のために様々な取組をしてきました、経済発展のために。このままの事態が続いてしまいますと、ではODAは出せるのかというと、出せなくなってくる懸念はあるんですね。それから、民間企業についても、投資したくても、この状況では投資できないわけですよ。そういったこともしっかり考えるようにミャンマー側にも話をしておりますので、そういったことも含めて、日本独自の働きかけ、これもやっていきたいと思っております。

佐藤(茂)委員 大変丁寧な御答弁、ありがとうございました。

 時間が参りましたので、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

あべ委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 おはようございます。立憲民主党の渡辺でございます。

 今、佐藤委員の質問に引き続き、私もミャンマーの問題について冒頭お尋ねをしたいと思います。

 今言及が質問の中でもされました、ミン・アウン・フライン司令官も参加したASEANの会合では五つほど合意がされた、暴力の即時停止、軍民指導者間での対話を開始するということなんですが、これは、当初は民主派勢力の人たちも歓迎するというような報道が出ておりましたけれども、しかし、行動のための明確なタイムラインがないじゃないかと。つまり、具体的な時期、いつなんだということについては、先ほども指摘がありましたように、国内が安定してからだというような、ミャンマーの軍政権はそう言っている。

 この後にG7が開かれて、今日の質疑の中であるとおり、様々な議論が交わされたことは承知しております。

 しかし、やはり一つ重大なことで懸念されるのは、五月八日、ミャンマーの民主派が発足させた国家統一政府、NUGと、NUGが設立をした国民防衛部隊、そしてスー・チー氏が率いるNLDの議員らが設立をした連邦議会代表委員会、これを軍政権はテロ組織だというふうに決めたわけですね。

 そうすると、ASEANで議論をされた前提の、軍民の指導者間での対話を始めるとか、時期は分かりませんけれども、これ、この後になって、いや、相手はテロ組織だ、だからテロ組織とは対話する必要はないと言われてしまえば、これは一体誰が軍民の民なのか分からなくなってしまったわけでございます。

 ASEANでの合意の後、十日もしたら、テロ組織に民主派勢力をした。この点については、日本政府はどう受け止めていますか。決して手放しで、ASEANの合意を、ただでさえその約束が履行されることは明記をされていない中で、その後に今度は民主派勢力はテロ組織だと軍政権が決めたことで、これは相当また情勢が変わったんじゃないかなと思いますが、日本政府はどういう認識を持っていますでしょうか。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、まさに五月の八日、ミャンマーの鍵括弧つきの現政権、民主化の勢力であるところの連邦議会代表委員会、国民統一政府、国民防衛隊、三つの組織をテロ組織に指定したと承知をしております。

 引き続き、国軍、警察による連日のデモ活動に対する取締りで死傷者や被拘束者が出続けているという状況も続いておるというところでございます。

 こうした動き、我が国を始めとする国際社会がミャンマー国軍に対して強く求めてきているところの暴力の即時停止を実現する上で生産的な動きとは言えない、好ましくないというふうに考えておるという次第でございます。

 引き続き、我が国として、ASEANを含む関係国と協力、連携していくとともに、暴力の即時停止、拘束された関係者の解放、民主的な政治体制の早期回復、強く求めてまいりたいというふうに考えておる次第です。

渡辺(周)委員 この問題は私、何回もこの委員会で取り上げてきました。在ミャンマーの丸山大使は、軍の方にも民主派勢力の方にもどちらにもチャンネルがあって、双方と対話できるんだというのが日本の強みだということも繰り返し聞いてまいりました。

 しかし、片っ方が軍政権から言わせるとテロ組織だと言われてしまって、テロ組織ということになれば、これは今の軍政権は、テロ組織とは対話する必要がない、当然そういう話になる。そうすれば、テロ弾圧の名目で、いわゆる民主化を求めるクーデター前の国民の正当な動きに対して、これはテロ行為だということになって、ますます民衆への弾圧が悪化するんじゃないかと非常に懸念されるわけなんですね。

 その双方にパイプを、チャンネルを持つという日本の大使、まさにASEANでの会合、リーダーズサミットもそう、そして大臣が参加されたG7でも、このミャンマーの問題については、ASEANと連携をしながら、しかし、ラーブ外相、議長は大変厳しい口調で、あらゆる支援についてはやはり圧力をかけるんだと、支援を取りやめることで。様々なそういうことがあった。しかし、その後に今度は、民主派勢力、いや、テロ組織だ、言ってしまえば非合法な組織だというふうにでも言わんばかりの、この軍部の方針によって、結果的にはまた軍民の対話が閉ざされてしまうのではないかというふうに思います。

 双方にチャンネルを持つ日本の大使も含めて、我が国として、その状況をどう打破する、あるいはどう改善するために日本が役に立てるのかということについては、外務大臣、今の現状についてどのように改善することをやっていくことができるか、その点、いかがお考えですか。先ほど手を挙げていただいたので、是非お答えいただきたいと思います。

茂木国務大臣 例えば、国軍と元々のNLD始め民主化勢力の間の信頼関係、これは、恐らく昨年十一月の選挙以来、二月一日、急に何にもないのにクーデターが起こるわけないわけでありますから、何らかの中で信頼関係というのも崩れて、それが回復していないという状況があるのは確かだと思います。ただ、そういった状況はみんな分かっているわけであります。それでもやはり、国内での当事者間の対話の必要性というのを四月二十四日のASEANリーダーズ・ミーティングで確認をしているわけであります。

 確かに、ここをテロ組織に指定した、では対話はできないじゃないか、言ってみるとそうかもしれません。そこでどうやって対話を求めていくか、いろいろな工夫が必要なんだと思います。

 これから、例えば特使をミャンマーに派遣をする、その人間がどういう役割を担って、様々な関係者の対話を始めるということが重要だと思っておりまして、この状況になって、すぱっと我々が考えるような民主主義の中で物事が進むということはなかなかないのではないかな。日本の国会を考えていても、なかなか、与野党間で様々なことについて議論はありますよ、それとは違ったレベルなんですから、もう、これは。

 そういう前提でいろいろなものを考えて、ただ、こういう現実がある中で、物事を改善し、戻していく、暴力を停止させなくちゃならない。拘束者の解放もなかなか難しいですよ、率直に言って。解放しろと言って解放するのなら、もう終わっていますよ。いろいろな手を使いながらそういったことも進める、そしてまた、最終的に民主的な体制を回復する、そのために、あらゆる手段、またあらゆる国との連携の中でこういったものを進めていきたいと思っております。

 そういった中で、ASEANのやっている取組、確かに四月二十四日のリーダーズ・ミーティングが完璧だったかといえば、それは見方によっては、欧米諸国から見れば完璧ではないかもしれませんけれども、あれだけの努力を払っているのは間違いない。そのことをやはりG7としても後押ししていこうと私の方から申し上げて、それがステートメントに盛り込まれるということになったわけでありまして、様々な立場から、やはり今のミャンマーの情勢ではよくないと思っているわけですから、よくないどの部分から変え始めたらいいプロセスが始まるかということを考えなくちゃいけないと思っております。

渡辺(周)委員 私が言っているのは、テロ組織に指定したことについては、やはり考え直せということを働きかけるべきだと思うんです。

 なぜなら我が国が、ちょっとこの後触れますけれども、オリンピックの年である。そして、オリンピックの不戦決議、オリンピックの間は戦をやめましょうということをオリンピックのときに、ホスト国がそうしたステートメントを発表します。我が国も、この不戦決議というのを実際に行ったわけなんです。ですから、日本がミャンマーの平和のために何をすべきかということは、今年は殊更にやはり取り組むことをしなきゃいけないんじゃないか、そんな思いがあるんですね。

 今やもう内戦状態だという指摘をする人たちもいます。いわゆる民主化運動に対して抑圧をする、抑制をするというよりも、もうほぼ内戦状態に近いんじゃないかと指摘する内外の声もあるわけなんです。

 そのことについて、また改めてとは思いますけれども、ちょっと一つ、直近で気になるのが、今大臣もちょっとおっしゃられた、我々の考える民主主義とはかけ離れた世界のことで、今、日本人の北角さんという方が拘束されています、邦人ジャーナリスト。この方は、法律の改定で、民主化運動、いわゆる民衆の抵抗運動を取材していたら、虚偽のニュースを流した罪だという、何をもって、そして、いまだに何が虚偽だったのかということも分からない。表現の自由も報道の自由もないようなこの国で、要は後づけで今身柄を拘束されている。

 テロ組織に指定されれば、接触した人たちも処罰の対象となる。そしてまた、ジャーナリストも当然、報道の自由も表現の自由もなくて、拘束される危険があるということを指摘されています。やはり今、日本人の一ジャーナリストだけの問題じゃなくて、この国で何が起こっているかということが、まるでどんどん分からなくなっていく。そういう、今のこの報道すらも非常に危険な状況にある。

 あるいは、ミャンマーはSNS、特にフェイスブックが盛んですから、このSNSで、いろいろな状況をユーチューブなんかで世界に発信をしている方々もいっぱいいます。私たちも、そうしたものを見ることによって、例えば子供が犠牲になったとか、こんな残虐なことが行われたということを目の当たりにするんですけれども、こういう活動すらも、下手すると、これは虚偽のニュースだ、あるいはテロ組織の活動のフェイクニュースだということで捕まるかもしれない。

 是非とも、だからこそ双方にパイプを持つという日本の大使館が、この邦人ジャーナリストに対して、やはり何らかの形で、健康であるということや電話では話をしたというようなことは報道されておりますけれども、今一体どうなっているんだ。この方のやはり釈放のために、日本政府として邦人保護のためにもやらなきゃいけないんじゃないかと思うんですけれども、この邦人ジャーナリストの北角裕樹さん、今どういう状況になっていて、日本政府、大使館は、領事はどのような形でこの方の身柄の安全、早期釈放のために尽力をしているのか。その点についてだけ、このミャンマー問題、最後に伺いたいと思います。

安東政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の邦人ジャーナリストについては、現在ヤンゴン市内のインセイン刑務所に拘束されております。また、五月三日に起訴されたということについても、御指摘のとおり確認しております。

 この邦人とは丸山駐ミャンマー大使が電話で領事面会を行い、健康状態に問題ないことについては確認しているほか、邦人保護の観点から、当該邦人に対する支援や家族への連絡等、できる限りの支援をしてきており、引き続き適切に対応してまいります。

 また、ミャンマー側に対しては、当該邦人の早期解放をあらゆるレベルで求めており、引き続き邦人保護の万全を期してまいります。

茂木国務大臣 政府答弁としてはこういうようになります。

 ただ、どうやったら一番早く解放できるか。向こうで、基本的には内務省になります。キーになる人間もいます。分かっていますから、そこに働きかけはしっかりやっています。できる限りのことをやっています。

渡辺(周)委員 まさに法の支配あるいは法の手続というものが当然今ない中で、幾らでも理由をつけて、はっきり言えば、目障りな人間を排除することは、これはもう軍事政権がやろうとすれば幾らでもできる。

 親日国だと言われていたミャンマー、そしてこの北角さんというジャーナリストですが、地元でも、その地元のメディアの責任者を務めていたという方で、もう長くいらっしゃった方。つまり、こういう方でも目障りな人間は、ある意味見せしめのために、これで世界中のジャーナリストがみんな震え上がるわけでございます。

 ですから、震え上がってしまいますので、やはり私は、日本人だからやるんじゃなくて、ミャンマーで起きていることをいかに報道するために、世界のジャーナリストが萎縮しないようにやはりどうするかということの中でも一つ象徴的な出来事だと思いますので、是非日本政府に御尽力をいただきたいというふうに思います。

 それでは、残りの時間で別の質問に入らせていただきます。

 オリンピックについてなんですけれども、トーマス・バッハ会長、なぜ来なかったのかということについて、今回の来日見送りの理由について是非伺いたいと思うんです。

 私は、緊急事態宣言下であっても、日本が開催可能とするために官民挙げて取り組んでいる姿を見てもらうことは有意義であったんじゃないかと思います。

 四月二十一日、バッハ会長は、理事会後の記者会見で、緊急事態宣言と東京五輪とは関係がないと言っているんですね。ですので、この点についても、緊急事態宣言下だから来るのは好ましくないというふうに判断したとは思えませんので、なぜ今回、来日が見送られたのかということについて伺いたいと思います。

十時政府参考人 お答え申し上げます。

 トーマス・バッハ会長が来日しなかった理由ということでございますが、緊急事態宣言の延長等の諸情勢を踏まえ、五月十七日から十八日の間で調整していたバッハ会長の訪日は延期されることになったと承知をしております。

 会長の訪日延期につきましては、国際オリンピック委員会、IOCにおいて、我が国の状況を踏まえ、総合的に判断されたものと受け止めております。

 なお、我が国の感染状況や諸情勢を見極めながら、できるだけ早期に訪日するという方向で再調整がなされているところと伺っているところでございます。

渡辺(周)委員 それは、緊急事態宣言が解除になったらという意味ですか、そっちは、時期としては。

十時政府参考人 お答え申し上げます。

 今ほども申し上げましたけれども、諸情勢を踏まえて総合的に判断されたということで伺っておりまして、それ以上のことについて具体的、詳細なお話を当方で承っているところではございませんが、今後、緊急事態宣言も含めた諸情勢を見極めながらということで、再検討されるという理解でございます。

渡辺(周)委員 また続報が出れば質問したいと思いますが、IOC副会長のコーツ氏は、五月八日に、計画どおり東京大会を開催すると発言しました。

 先般九日に東京国立競技場で行われた陸上のテスト大会を視察した、IOCの委員でもありますセバスチャン・コー世界陸連の会長は、厳しい状況下だからこそ開催の意味があると語ったと翌十日の毎日新聞朝刊に報じられております。

 この方々のお話を聞くと、とにかく、緊急事態宣言であることと東京オリンピックはもう関係なく、厳しい状況だからこそ開催の意味があるんだ、総理も、安全で安心な大会を進めていくと日本政府は言っておりますので、当然、東京五輪が予定どおり行われるということを前提に今までも質問しましたけれども、今日もまたその質問をさせていただきたい。

 ファイザーから申出があって、あとはドイツのビオンテックという会社から、アスリートに対してワクチンの接種の申出がありました。これは、選手の接種はいつから始まるんでしょうか。

 つまり、提供するんだけれども、各国にワクチンを送ると。日本にはいつ着いて、いつからそのワクチンの接種が始まるというふうに見込んでいらっしゃるか、お答えください。

十時政府参考人 お答え申し上げます。

 五月六日のファイザー社のプレスリリースによりますと、代表団へのワクチンの最初の配送は、世界どこであっても五月末に開始されるという発表がなされてございます。

 そうしたことも踏まえつつ、現在、各競技団体において実施場所や希望する時期等について調整を行っているという状況にあると承知をしておりまして、その結果を踏まえながら、速やかに実施をできるように調整を図ってまいりたいと考えてございます。

渡辺(周)委員 五月末で間に合うんですか。これはやはり副反応を見なきゃいけない。これは、こうしたアスリートとワクチンの接種について、いろいろな方が論文等を書いていらっしゃいます。やはり、一回目の接種から二回目の接種までは当然一定の期間を空けてやる、そして、その間に例えば疲労感であるとか頭痛であるとか筋肉痛であるとか発熱であるとか、いろいろな初期の状況が出る。そして、三週間なりを空けて二回目の接種を受けて、そしてその後に今度はやっと抗体が出てくるということがいろいろ報じられているわけなんです。

 そうすると、逆算をすると、五月の中旬にこれは接種しないと間に合わないんじゃないかということを指摘する方々がいるわけです。ワクチンを接種した後にトレーニングの負荷を一時的に抑制することが当然検討されてしかるべきだという意見もあります。

 つまり、世界によって、早くに打ったか遅くに打ったかによって、予定どおりにオリンピックが迎えられて競技が始まったときに、そのパフォーマンスにおいて、打った時期によって差が出てくるんじゃないかということは当然懸念されているんですね。

 この点については、日本として、やはり同じ時期に打つという何らかのルールも作らなきゃいけないと思うんだけれども、それはあくまでも、これからいろいろ話をして、各国で横並びでやるというわけではないということなんですか。

 つまり、その辺の具体的なスケジュール。何か、ワクチンがファイザー社から提供されることになりました、これは大変心強いです、一歩前進しましたとみんな手放しで喜んでいますけれども、実際、これはいつ届いて、いつ接種が始まるかによって相当その後の、言ったように、二回目の接種までの間隔とその後の様々な影響を考えますと、もうこれは本当に今週中にでも打たなきゃ間に合わないんじゃないかと思うんですが、そこはどうなんですか。それはちゃんと検討はされているんですか。いかがですか。

十時政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま、ワクチン接種のスケジュール、急ぐべきではないか、それから、ルールを定めてやるべきではないか、海外と一律なのかというような御質問がございました。

 まず、先ほども申し上げましたとおり、この件につきましては、五月六日にIOCとファイザー社、ビオンテック社の合意ということで発表がなされたものでございますので、これを受けまして、IOCから各国のNOC、NPCに対して通知、連絡がなされて、IOC、ファイザー社等と各国NOC、NPCの間で調整が進んでいくという状況でございます。

 そうした中で、もちろん早いにこしたことはないんですけれども、例えば我が国の状況で見ますと、各競技団体ごとにそれぞれ、現在、これから強化合宿が行われるとか、選手がそろうのがいつになるかとか、あるいはさらに、代表選考自体も完全に終わっていないとか、様々な状況がございまして、それらの状況を各競技団体にお伺いしながら進めていくということが必要になってまいりますので、なかなか一律に時期や場所を決めてやっていくということが難しい状況も想定されます。

 それから、御指摘にもございましたように、体調面への影響、競技、強化面への影響というものも考慮しながら、各団体、さらには、各選手が希望なり状況を踏まえて検討していくということになりますので、こういったことをそれぞれの団体等ときめ細かに調整をして、できるだけ早く行っていただくように政府としてもサポートをしてまいりたいと考えてございます。

渡辺(周)委員 ちょっと時間の関係で幾つか用意した質問を全部聞くことはできないんですけれども、もうそろそろ、時期がこれだけ切迫してきているわけなんです。これはワクチンもそうなんですけれども、そもそも何人の人間が来日するのかということで、そろそろ、はっきりめどを教えていただきたいというふうに思うんですね。

 前ここでも取り上げましたけれども、今まで官邸で行われていた感染症の対策調整会議というのが、四月二十八日に第七回目がやっと開催された。その前は、第六回が十二月二日。私もここで、今年に入って開かれていないじゃないかということで、ずっと聞いてきました。

 読みますと、そこに大変詳しく、アスリートとかアスリート等、あるいは大会関係者と定義が書いてあって、とても分かりやすいんですね。

 この等というのは、アスリート以外の審判や監督、コーチ、トレーナー、練習パートナー、スタッフ。さらに、大会関係者というのは、この人たちに加えて、VIP、要人もそうだし、放送、報道、マーケティングパートナー、要は、スポンサー枠でついてくる人ですね、スポンサー企業の人たち、大会スタッフ、職員や大会ボランティア、あとは、ほかにも、コントラクターと呼ばれる契約者、競技の計測とか会場の仮設電源の整備等に従事する者も含まれると、いろいろ詳しく書いてある。

 そこで伺いますけれども、アスリートは大体何人ぐらい総勢来るのか。アスリート以外で、今この資料にあるような、アスリート等と大会関係者を含めると、訪日する人たちは総勢大体何人ぐらいと見込んでいるのか。その点については、今現状、どうなっていますか。教えてください。

十時政府参考人 お答え申し上げます。

 東京大会に参加するアスリートの人数につきましては、組織委員会によれば、上限の数で、国内外合わせて、オリンピックは一万一千九十人、パラリンピックは四千四百人と承知をしております。

 アスリート以外の大会関係者につきましては、本年三月に開催されましたIOC、IPC、組織委員会、東京都及び国による五者協議におきまして、大臣より更なる縮減が不可欠である旨を申し入れまして、IOCより、東京大会に来日する大会関係者については、大会に不可欠かつ運営上の役割を担う人々に限定することが表明されたところでございます。

 さらに、先月、四月二十八日に開催された五者協議を受けて発表された共同ステートメントにおきましては、IOC、IPC、組織委員会は、更なる大会関係者の削減に引き続き努めるということを表明しております。

 これらを踏まえまして、現在、組織委員会において大会関係者の来日者数の精査を進めているところと承知をしております。

渡辺(周)委員 そこが決まらないと、様々な国内の受入れの体制も、医療従事者の方々もそうです、あるいは、いわゆるボランティアの方々ですよね、フィールドキャストと呼ばれる方々、こういう方々も、今日はこの辺の数字も聞こうと思いましたが、ちょっと時間がありませんので飛ばしますけれども、つまり、まだ何人来るかが分からないんだけれども、それなりに来る。

 一つ、今やはり議論になっているのが、事前キャンプやホストタウン、この辺については、外務省のホームページでも、グローカルな国際交流を支援しますといって、コロナ前は随分あちこちの事例を、交流事業の様子なんかも紹介していましたけれども、最近はだんだん後ろ倒しになって、最近はいわゆるリモートで交流している話なんかもアップされていましたけれども。

 この事前キャンプやホストタウンは、今のところ、四月の二十七日の調整会議のところで報告された資料によりますと、登録の数は四百五十六、自治体の数は五百二十八、相手国・地域の数は百八十四ということなんですが、幾つか、大阪あたりの自治体では、もう中止や見直しを表明したところも出てまいりました。

 伺いたいのは、事前キャンプやホストタウンの交流事業は今までどおりなのか。今、取り下げたあるいは受入れを見直したところは、自治体は幾つあるのか。その点について教えてください。

植松政府参考人 お答えいたします。

 事前キャンプ地やホストタウンでの選手等の受入れのうち、約三十自治体程度が受入れが中止になったと承知しております。

 あと、交流事業のやり方の変更につきましては、多くのホストタウン等におきましては、そういった実交流ができない場合においても、オンライン交流など様々な交流を計画しておりますが、その辺の数については今のところ把握しておりません。

 以上でございます。(渡辺(周)委員「把握しておりません」と呼ぶ)交流事業の変更の数については把握しておりません。

渡辺(周)委員 地方自治体はみんな、地方でホストタウン事業をやるに当たっては予算を計上しているんです。幾つかの自治体に聞くと、国からまだ何も言っていなくて連絡待ちなんだけれども、もうそろそろ時間切れじゃないかというふうに思わざるを得ないところもあるんです。

 調整会議の中で、地域の保健衛生機能に支障を来さぬように支援体制をちゃんとやるというふうにあるんですけれども、実際、事前合宿だとか、来られたときに、感染者が、陽性が判明した場合、これは地域の医療機関で受け入れて対応するということになるんですか。そこの辺りについてはどうなっているんですか。

 やはり、そういうこともあって、オリンピックに対して最近慎重な意見が増えたのは、本当に今医療が逼迫している中で、外国の選手が事前に来て、平時だったら、交流して、いろいろな子供たちにも世界に目を向ける新しい刺激になるといろいろ皆さん考えていたんだけれども、今はちょっと、もうそれは怖いねということになってきている。ましてや、地元の医療機関は大丈夫なのかということにも当然なると思う。

 その辺の自治体への支援といいますか、連携とかはどうなっていますか。その点については相当相談が来ていると思うんですけれども、いかがですか。

植松政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、陽性者が判明した場合につきましては、通常の陽性者として地域の医療で対応することになっておりますが、まず、その前に、ホストタウンにおきましては、入国前検査におきまして陰性が確保された方が伺うということになっておりますし、また、健康管理、用務先の限定等々を行うことによりましてリスクを下げるということを行っております。

 その上で、体制強化といたしましては、受入れの手順書の作成とか、あるいは検査費用、あるいは保健所の機能強化に対する財政的な支援を行って、体制の強化につきましても支援しているところでございます。

渡辺(周)委員 時間が参りましたけれども、外務省の大臣官房の地方連携推進室というところが、このホストタウンという事業については相当力を入れてやっていたんですね。

 最後、これは外務大臣に。

 これは、決して内閣府のオリンピックのことだけじゃないんです。外務省もこの地方連携推進ということを随分やってきました。この問題について、やるという、オリンピックが開催されるという前提で、地方の事前合宿やホストタウン事業、これが本当に可能かどうかということについて、やはりちょっと一度、地方連携推進室も、あるいは内閣府もそうですけれども、地方自治体とちょっと協議していただきたいと思うんです。

 最後に、ちょっと大臣の御所見を是非伺って終わりたいと思います。

あべ委員長 申合せの時間が経過しておりますから、御協力いただきます。

茂木国務大臣 検討したいと思いますが、当初想定していたのと同じ形ではできないと思います。どういう工夫があるかということは考えなくちゃいけないと思います。

渡辺(周)委員 終わります。

あべ委員長 次に、岡田克也君。

岡田委員 岡田克也です。

 今、渡辺委員が言われたことを私も非常に懸念しているところですので、一言申し上げたいと思います。

 選手やスタッフが地方に散らばるわけですね。それをどうやって管理していくのかというところが、大会期間中は、選手村を軸にして、そして専用のバスで練習所やあるいは競技場に運ぶということを言われていますが、全国に散らばった選手やそのスタッフがきちんと管理できるのかどうかというところを私は非常に懸念しています。そのことによって世界中の様々な変異種が日本国内に広がるリスクというものは否定できないと思うんですね。

 そこは大臣、本当に大丈夫ですか。きちんとできますか。それだけ、ちょっと一言お聞きしておきたいと思います。

茂木国務大臣 まず、大会に参加するアスリートそれから関係者につきましては、ワクチンの接種であったりとかPCR等々によりまして感染の危険がないかということは確認した上で入国をするということになりますが、それでも感染の危険性というのはゼロではありません。

 そういった中で、元々企画していた様々なホストタウン等々に関する事業はあると思いますけれども、今、基本的には、アスリート、関係者と、それから日本の一般国民、これは違った動線といいますか違った形で、大会期間中、その前も含めて訪日後は行動するということですから、いわゆる元々想定していた交流事業ということはなかなかできないんだと思います。握手会をやったりとか、一緒に何か模擬的にスポーツをやったりというのは、なかなか、私は率直に言って、完全に私のこれが所管ではありませんけれども、難しいのではないかな、そんなふうに思いますけれども、そこの中で、安心、安全を確保しつつ、どういったことだったらば交流事業としてやれるかということを検討していくことになるんだと思います。

岡田委員 選手を中心にバブル方式でやるということですが、そのバブル方式というのはどこまで適用されるのかという問題が一つあると思うんですね。

 選手以外の大会関係者、例えばメディアとか、そういうところの問題と、それから、期間中はそういうことであっても、その前の事前のキャンプとか事後、そういうところについて本当にきちっとバブル方式が徹底されるのか、地方にその認識はあるのかということについて、私は、やはり国として基本方針を示さないと、それぞれの思いでやってしまうととんでもないことになりかねないというふうに思っておりますので、ここは政府の中でしっかり御検討いただきたいというふうに思います。

 その上で、私は、今日は北方領土の問題を大臣と議論したいと思っております。

 この通常国会冒頭の菅総理の施政方針演説で、私は、おやっと思いました。菅総理はこうおっしゃったんですね。二〇一八年のシンガポールでの首脳会談のやり取りは引き継いでおり、これまでの諸合意を踏まえて交渉を進めますというふうにおっしゃいました。諸合意とは何かと枝野代表に代表質問で問われて、菅総理が言われたのは、例えば、シンガポール合意のほか、イルクーツク声明や東京宣言などが含まれますというふうにお答えになりました。

 シンガポール合意というのは、これは文書化されていませんが、当時の安倍総理の記者会見を見ると、一九五六年共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させる、これがシンガポール合意だと私は理解していますが、そのシンガポール合意のほかに引き継がれるべきやり取りというのは一体何なんでしょうか。

茂木国務大臣 二〇一八年、シンガポールで安倍総理とプーチン大統領の間で首脳会談が行われたわけでありますが、当然、その首脳会談におきましては様々な議論であったりとか意見交換も行われました。さらに、御指摘のように、一九五六年宣言を基礎として平和条約交渉を加速させる、このことで両首脳は合意したわけでありまして、そこで言うやり取りとは、首脳間で行われた意見交換、議論、そして今申し上げた合意、全体のことをやり取りと指すものだと思っております。

岡田委員 施政方針演説では、諸合意、これはシンガポール合意も含まれるということですから、やり取りというのはその合意以外のシンガポール会談での様々なことだというふうに思うんですが、施政方針演説で、やり取りは引き継ぎますと総理は言われたわけですから、細かいことはいいですが、そのやり取りとは一体何なのかということはやはり説明する責任が政府にはあるんじゃないですか。

茂木国務大臣 合意に至ったわけですね、この一九五六年宣言を基礎として云々の。そこに至りますまでには、急に、会って一発で、では合意をしましょうという話じゃない、相当の議論といいますか意見交換をしてこうなった。そういったもの全体を踏まえて、全体ということであります。

 ですから、それは当然、交渉を進めるとなりますと、そういった二人の間で、両首脳の間で議論されたこと、そういったものを踏まえて議論をしていくということになります。

岡田委員 非常に一般的におっしゃるんですが、しかし、やり取りは引き継いでおりとおっしゃった以上、そのやり取りというのは一体何なのかということを、細かいことはいいですが、それをきちんと説明しないと、施政方針演説、国民に対して行ったものですから、それは演説になっていないんじゃないですか、政府としての責任を果たしていないんじゃないですか。

茂木国務大臣 そこは若干見解が違うかもしれませんが、少なくとも、そういった意見交換、議論を経て、この一九五六年宣言を基礎として平和条約交渉を加速させると合意をしたわけでありまして、この合意を踏まえて、加速させるとの合意を踏まえて、交渉者であります私とラブロフ大臣、今交渉を進めているということでありますから、こういった一連のどういうやり取りだったかということを踏まえ、またこの合意を踏まえ交渉しているということでありますので、このやり取り全体ということで私は問題ないんだと思います。

岡田委員 シンガポール合意の中には、例えば東京宣言を基礎としてということは含まれていないわけですね。今まで歴代の日ロの首脳会談の中で必ず何らかの形で言及されてきた、東京宣言その他の宣言を基礎とするということが今回入っていないわけですよ。基礎とするのは日ソ共同宣言だけです、合意されているのは。

 つまり、このシンガポール合意の意味というのは、そういった今まで日本政府が首脳会談のたびに必ず入れてきた東京宣言等についての、それを基礎とするという言及がなくなったということがこのシンガポール合意の特徴で、つまり、領土問題の解決ということが合意の中から落ちてしまったということだと私は思いますが、そういう解釈で、大臣、合意ですか。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

茂木国務大臣 そこは違っております。

 当然、日ロ間では、九三年の東京宣言であったり二〇〇一年のイルクーツク声明、これを始め、これまで多くの諸文書、諸合意が作成されております。そこの中でも、一九五六年の日ソ共同宣言、これは両国の立法府が承認をして両国が批准した唯一の文書でありまして、現在も効力を有しております。日ソ共同宣言の第九項には、平和条約交渉が継続をされること及び平和条約締結後に歯舞、色丹が日本に引き渡されることを規定をいたしております。そして、日本側は、ここにいう平和条約交渉の対象は四島の帰属の問題である、こういった一貫した立場に基づいて交渉を進めております。

岡田委員 日本政府の立場ということを私は問うているのではなくて、両国の首脳間がどういう合意の下で交渉してきたか、つまり枠組みを決めてきたわけですから、そういう意味で申し上げているわけであります。

 先ほどおっしゃった二島の引渡しが書かれているということも、ロシア側からすれば、それは領土問題がそこにあるということを認めたものではないという説明だと思うんですね。ある意味では、平和条約ができれば厚意でそれを引き渡すんだ、それがロシア側の解釈だというふうに思います。

 したがって、非常に重要な東京宣言、これを言及しなかったということは私は非常に問題だと思うんですが、大臣、改めて聞きますが、東京宣言というのは日本外交の大きな成果、もちろん東京宣言だけではないんですが、つまり、四島に領土問題が存在するということを両国が確認をしたという意味において、非常に日本外交としては大きな進展がそこにあったというふうに私は理解しているんですが、大臣の認識は同じですか。

茂木国務大臣 それぞれの宣言であったりとか合意、それはその時々の状況も含めて全て意味があるものだと思っております、両国で合意したものでありますから。

 岡田委員とこれまでこの北方領土問題を議論してきまして、岡田委員も外務大臣時代、本当に熱心に解決に向けて取り組まれたんだと思います。私も今この立場にあって全く同じ思いであります。

 何回か議論させていただいて、振り返ってみますと、恐らく、交渉の進め方について、これは何が正しいというのはないんだと思うんですけれども、交渉を始める段階から、取るものを全部取る、取っておく、その上で交渉に入るのか、それとも、交渉を進める中で、取らなければならないものというか、それを取っていくのか。

 例えば、データの新しいルールをスクラッチから作るということだったら、もうある程度決めてから取るというのも十分考えられますけれども、現状というものがあるわけであります。そういった中で、交渉を動かし、進めて、そして合意に至るということを考えた場合には、交渉のプロセスの中でお互いの主張をぶつけ合いながら取るべきものを取っていく、こういうプロセスが私は適切ではないかなと考えておりまして、解釈が違うのかもしれませんけれども、岡田委員の先日来の御質問、いろいろ自分なりに考えて、考え直してみたんですが、恐らくそこのところにもしかすると違いがあるのかもしれないと思っています。

岡田委員 質問に答えてもらっていないんですが、東京宣言の意義というのは大臣はどう考えているんですか。

茂木国務大臣 私から一つ一つの意義について申し上げるよりも、今は政府で合意している方針に従って議論を進める。例えば、何が意義があるという話が始まりますと、同じことが起こるんです、先ほど申し上げたのと。そのように思っています。

 私がこれでこういう意義がありますという話になったら、では何でその東京宣言に従ってやらないんだという話になると思います。それで、では、東京宣言に従って交渉を進めて、岡田先生がうまくいったというならそうですけれども、残念ながら、期間もあったと思いますけれども、なかなかうまくいかなかったのが現実だと思いますよ、私は。

岡田委員 ちょっと驚きですが、やはり外交交渉というのは、それぞれが議論して一定の枠組みをつくって、その枠組みの中で更に交渉を重ねていくというのが外交交渉だと思うんですね。

 そういう意味で、東京宣言というのは、四島に領土問題が存在するということを両国の首脳が確認したという意味で一つの土俵をつくったわけですよ。その土俵の中で交渉していく。しかし、その土俵を安倍さんは壊しちゃったわけです。そして元に戻って、今、現にラブロフ外相なんかは、いや、このシンガポール合意によって日本側も、第二次世界大戦の結果、領土問題は存在しないということを日本は認めたんだと、そういう論理を展開しているじゃないですか。

 そういうふうに言わせないために、いや、四島に領土問題は存在するんだ、これは両国で合意したことじゃないかと、そこから議論を始めないと、白紙に戻しちゃったらそれは議論にならないじゃないですか。それが今の現状じゃないですか。

茂木国務大臣 冒頭申し上げたように、日本側の一貫した立場、これは平和条約交渉の対象は四島の帰属の問題である、これは五六年の共同宣言においてもその他においても変わらないことだ、こんなふうに考えております。

 東京宣言に基づかないからもう四島のことを対象にしない、このように話したつもりは一度もございません。あとは交渉です。やはり進め方というのはあると思います。どういうやり方をしたら一番うまく進むか、一番日本にとって望ましい解決策に向かって進展をさせるか。

 主張だけし合うなら幾らでもできると思います。何年間かけてもお互いに主張し合う、日本はこういう立場だ、そしてロシアはこういう立場だと。これから、もう七十年以上やってきて、やはり難しい問題ですけれども私は片づけなくちゃいけないんだと思います、解決をしなければ。ずうっと同じことでお互いが主張だけし合って、次の世代までこの問題を解決させないことが正しいとは私には思えません。

岡田委員 いや、それぞれが主張するだけでは駄目だというのはそのとおりですよ。だから東京宣言が大事なんですよ、四島で合意したわけですから。その合意したものをベースにして議論するのか。

 安倍さんは、いやいや、東京宣言とかそういったことに言及しなければ、つまり、日ソ共同宣言だけを基礎とすると言えば二島は返ってくるんだろうという甘い期待を持って、東京宣言その他を、いわばカードを捨ててしまった。それでうまくいくなら、それはまた一つの議論でしょう。私は二島だけでいいとは思いませんけれども、面積七%しかない、だけれども、少なくともその二島がきちんと返ってくるのなら、それは政治家の、そのときのトップの判断としてそういう選択もあるかもしれません。しかし、二島は全く返ってこないじゃないですか。カードは切ってしまったけれども結果が得られていないというのが現状じゃないですか。何か進展がこれからあるんですか。

茂木国務大臣 交渉事ですから、進展はさせていかなければいけないと思っています。

 ラブロフ外相とは、二〇一九年の九月、国連総会でお会いしてから、その年の十一月には、名古屋でG20の外相会談の際に二回目の会談をし、そして翌月、二〇一九年の十二月には、私がモスクワを訪問して八時間にわたって相当突っ込んだ議論も行いました。

 二〇二〇年、本来でしたら三月ぐらいに更にこの議論を進展させようということでしたが、コロナの影響で、昨年は残念ながら電話でしか会談できなかった。領土をめぐる問題、なかなか電話ではやりにくいです。これはやはり、対面でいろいろなことについて相当時間をかけてやるということが必要なんだと思っています。

 結果を出すというために最大限努力をしておりますけれども、向こうには向こうの主張もあります。やっている中で、ある程度考え方の一致する部分と立場の違う部分というのは明らかになってきていると思いますけれども、そういった中でどう今後交渉を進展させていくか、まさにこれからの問題であると思っております。

 岡田委員に結果は出たかと言われたら、まだ出ていないのは確かです。そこについて反省しろということだったら反省したいと思いますけれども、なかなか、岡田先生はもっと御自身だったら簡単に片づけられたとお考えかもしれませんけれども、私にとっては、かなり交渉はいろいろな交渉をやってきましたけれども、難しい交渉であるのは間違いないな、これは実感しています。

岡田委員 ラブロフ外相は、シンガポール宣言によって、南クリルが第二次世界大戦の結果ロシアのものとなったとのロシアの主張を日本も認めた、シンガポール宣言によって認めたというふうに言っているわけで。

 そういった、私のときも、ラブロフ外相は、第二次世界大戦の結果ロシアのものになったんだという主張をされていました。それに加えて、シンガポール宣言によって日本も認めたんだというふうに彼は言っている。そういったラブロフ外相とどういう交渉をしているんですか。領土問題の交渉はできているんですか、そもそも。全てロシアのものになったんだということを言っているラブロフ外相と領土問題の交渉にそもそも入れているんですか。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

茂木国務大臣 平和条約締結に向けた交渉、それは行っているところであります。そこの中で、何をもってそれが領土問題解決の交渉というのについては、定義はあるのではないかなと思っております。

 私も、岡田委員も一緒だと思いますけれども、ラブロフ外相の主張を全て認めているわけではありませんし、違うことについては当然反論しています。ですから、八時間かかるんですよ。多分、岡田委員も相当長くやられたんじゃないかなと思いますよ。一時間、二時間じゃ済まないですから。相当話しますから、相手は。それに対して、向こうが八つ言ったら、それを全部言い返さなくちゃならないわけですよ。そういう議論をやって、そこの中で、ここは一致できるねということを積み上げていかないと、一遍に、東京宣言があるからこれで解決しようといって解決する問題ではとてもないように私には思えます。

岡田委員 私が聞いているのは、領土問題の交渉になっているのかということを聞いているわけですね。それは、東京宣言というものがあれば、四島に領土問題は存在するということを両国首脳が確認しているわけですから、領土問題はあるじゃないかということで、ではどういうふうにこの領土問題、線を引くのかとか、そういう議論に入れますけれども、そもそも領土問題があるということも認めていない相手と領土問題の交渉というのはどうやってやるんですか。

茂木国務大臣 先ほど申し上げているように、日本の一貫した立場は、平和条約交渉の対象は四島の帰属の問題である、このように考えておりまして、そのような立場に立って交渉を進めているということであります。では、東京宣言、これに沿って交渉を進めましょうといったときに、私はシンガポールの首脳会談にいたわけではありませんから分かりませんけれども、そこでプーチン大統領がイエスと言ったかどうかは、私は疑問だと思います。

岡田委員 疑問ではありますが、こちらの論拠にはなるわけですよ。両首脳が認めたということは、こちらの主張の論拠になるわけですよ。それを後ろに下げてしまったということは、私は、多いなる譲歩だけれども、結果も得られていない、だから大きな失敗だった、安倍外交は、この北方領土問題については。そういうことを申し上げているわけです。

 これから、もう一度、この領土交渉というものが平和条約の前にあるんだということをロシア側に認めさせるところから議論を始めなきゃいけない。領土問題を解決して平和条約を締結するという日本の外交方針をロシア側にも認めさせないと、単に平和条約締結を急ぐ、領土問題はどこかに行ってしまっているような、そういうことでは、これは実際には交渉にならない、交渉が進まないわけであります。それをこれからどうやってやっていくのかということが私は非常に大事だというふうに思うんですね。

 もし、領土問題が存在しないという前提のままで議論したときには、憲法上、いやいや、もう交渉はできません、そういう議論もロシア側に論理として持ち出されかねない。領土問題が存在するんだということをいかにして認めさせるかということが私は交渉のまず第一目標だと思うんですが、そういう認識はありますか。

茂木国務大臣 もちろんそういう認識を持っております。

岡田委員 しかし、そのためには東京宣言をもう一回前面に出さないと、そういう議論にならないでしょう。下げてしまったんです、安倍さんは。私はこれは大失敗だったと思う。もう一回東京宣言を前面に出して、それを基礎とするということを両国で確認する。それは、第二次安倍政権の最初の訪ロのときも、間接的でも確認されていることですよ、歴代総理が確認してきたことですよ、東京宣言その他を基礎とするというのは。それを安倍さんは下げちゃったわけだから、もう一回それを元に戻すというところから交渉を始めるべきじゃないですか。いかがですか。

茂木国務大臣 北方四島の帰属の問題を解決して国境を画定する、そして平和条約を締結する、これが、御案内のとおり、我が国の一貫した立場であります。

 そして、どの合意、どの宣言を取り下げたわけでもありません。ただ、交渉というのは入り方もあります、進め方もあります、どこを強調するかとあります。相手のあることです、それは。自分だけで、自分の論理で算数のように全て解ければ簡単な問題です。相手があって、今の北方領土の現状というのがある中でやる交渉ですから、どういう形から始めるか、それも含めて、まさにこれは交渉の内容の問題、進め方の問題だと思っています。

岡田委員 繰り返しになりますが、プーチン大統領と菅総理の電話会談でも、一九五六年宣言を基礎として平和条約交渉を継続させることに合意したことも改めて確認しましたというふうに菅総理はおっしゃっているんですが、ここに領土問題という言葉は出てこないわけですね。

 やはり、領土問題は存在するんだということを、別の言い方をすれば、東京宣言を基礎とするということを相手に認めさせない限り、向こうは憲法も持ち出してくるし、そもそも彼らの主張は領土問題はないということですから、交渉にならないじゃないですか。だから、大臣は交渉しているとかいろいろ言われるけれども、実際は交渉になっていないんじゃないんですか。そこを、総理も替わったんだから、もう一回東京宣言をいかにして認めさせるかという、そこに主眼を置くような交渉にしないと、この問題はどんどん解決は遠のくばかりじゃないかということを私は言っているんですが、いかがですか。

茂木国務大臣 ロシアの憲法改正後、昨年の九月に行われた日ロの首脳会談でも、プーチン大統領は平和条約交渉を継続していく意向を表明しているわけであります。

 そして、この平和条約交渉、これはまさに北方領土の帰属を解決して国境を画定して、そして平和条約を締結するというのが我が国の一貫した立場であると思っております。

 委員から見て、交渉が進んでいないのではないか、こういうふうに歯がゆく思われる、このことについては真摯に受け止めたいと思いますが、自分なりに様々な交渉をやってきた、こういう経験であったりとか、様々なこれまでのものも読み込んでいます、あらゆるもの、ほとんど、この交渉に関するものは読み込んだ上で、どういうアプローチが適切かということも考えて交渉には臨んでいるつもりであります。交渉になっていないんじゃないか、それは、尊敬する岡田委員ではありますが、それはあんまりではないかなと若干思います。

岡田委員 私は、総理が替わった以上、安倍政権の失敗を踏まえて、もう一度、北方四島に領土問題は存在すると両国首脳が確認した東京宣言に戻すことを交渉の最優先課題にすべきだ、そうでないとこれは動かないということを申し上げているわけです。

 時間も参りましたから……(発言する者あり)あと一分ありますか。

 では、最後に、共同経済活動でも同じですよ。これは新たな特別な制度ということが前提にならないとできないわけですけれども、特別な制度について何か具体的な進展はあるんですか。具体的プロジェクト、こういうものをやっています、やっていますということは示しながらも、しかし、どういう特別の制度の下でやるのかということについての議論の進展が全くないということは、結局できないわけです。できないことをできるように見せているだけじゃないかというふうに御指摘をしておきたいと思います。

 終わります。

あべ委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 四月二十三日の質問に続いて、台湾海峡をめぐる問題について質問します。

 私は、前回、米海兵隊トップのバーガー総司令官が、中国に対抗するために、二〇二七年までに対艦ミサイルなどを装備した海兵沿岸連隊を沖縄、グアム、ハワイに配備する考えを表明している問題を指摘しました。これに関し、中山防衛副大臣から、同部隊の沖縄への配備を打診された事実はないとしながらも、戦力構想については、現在、米国防省内で検討が行われているとの答弁がありました。

 バーガー氏は、昨年七月、メディアに対し、現在進めている海兵隊の戦力再編が日本に影響を与えるのは間違いないと述べ、近く日本を訪問し、直接説明する意向を示していました。

 茂木大臣は、昨年十一月、バーガー総司令官の表敬を受け、会談していますが、その際、海兵隊の戦力再編についての説明はお受けになりましたか。

茂木国務大臣 昨年十一月八日、バーガー米海兵隊総司令官の表敬を受けましたが、その際、厳しい安全保障環境を受けた海兵隊の組織改革の考え方についての説明がありましたが、再編の個別具体的な内容についての説明はございませんでした。

穀田委員 そこで、配付資料の一枚目を見てほしいんですが、外務省の報道発表によれば、バーガー総司令官は会談時、茂木大臣に対し、安全保障環境、今ありましたけれども、安全保障環境が急速に変化する中、脅威に立ち向かう上で日米同盟が強固であることは重要であり、引き続き協力したいと述べたとあります。

 このバーガー氏が述べた脅威とは具体的にどういうことでしたか。

茂木国務大臣 ここにもありますように、厳しい安全保障環境を踏まえた課題や脅威について連携していくこと、議論いたしましたが、先方から脅威の具体的な内容について説明があったわけではありません。

穀田委員 脅威に立ち向かう上でということで、わざわざ報道発表しているわけで、そういう内容がどうだったのかということが問われるわけですよね。

 バーガー氏は、昨年六月の海兵隊の将校向けの雑誌で、今後の海兵隊にとって基準とする脅威とは何かということで説明をしています。バーガー氏は、今後の海兵隊にとっての脅威とは中国がもたらす圧倒的な海洋の脅威であると述べ、この脅威こそ海兵隊の戦力構想と戦力組成の測るべき基準となると明言しています。

 このことからも、バーガー氏からは、海兵隊が今後の基準と定める中国の脅威に対し、共に軍事的に立ち向かうことが求められたのではないですか。

茂木国務大臣 バーガー氏がそのような考え方を持っているのかもしれませんが、先ほど申し上げたように、私に対する表敬の際には脅威の具体的な内容についての言及はありませんでした。

穀田委員 そこで、配付資料の二枚目を見てほしいんですけれども、在日米国大使館のホームページでは、バーガー総司令官との会談が、作戦即応性を維持する取組と、自由で開かれたインド太平洋を守るための信頼できる抑止力に関する協力調整を目的に行われたとされています。これは皆さんにお示ししているものです。

 そこで、会談では、どのような作戦の即応性について抑止力の協力調整が行われたのか、お答えいただきたいと思います。

茂木国務大臣 会談では、日米同盟はインド太平洋の平和、安全、繁栄の礎であり、日米同盟の抑止力、対処力を一層強化し、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて協力していくことで一致をいたしました。また、安保協力や地域情勢について意見交換を行い、東シナ海及び南シナ海において継続、強化される一方的な現状変更の試みに関し、深刻な懸念及び強い反対の意を表明し、引き続き日米で緊密に連携していくことを確認いたしました。

穀田委員 どうも、それだと最初からそう言っていただければ、もう少し話は、その具体的な内容はいかがかということに次はなっているわけですよね。

 それで、私が問うたのは、今言ったように、作戦即応性やそれから抑止力に関する協力調整ということがわざわざアメリカの大使館のホームページに書いているから、聞いているわけですよね。

 バーガー総司令官が二〇一九年七月に発表した米海兵隊の計画指針があります。ここには、潜在敵国である中国の長距離射撃能力の向上に対し、米海軍と連携することで制海権を確保し、海上拒否を実行することなどが掲げられています。また、そのために海兵隊は中国のミサイルの射程圏内で活動するとし、陸上での兵力を分散する必要性を強調しています。バーガー氏が表明した海兵沿岸連隊の沖縄、グアム、ハワイへの配備もこの計画指針に沿ったもので、こうした中で、近年、海兵隊が追求しているのが遠征前進基地作戦、EABOと言われている、そういう作戦構想です。

 そこで、中山副大臣に伺いたい。今私が指摘した遠征前進基地作戦、EABOとはどのような作戦なのですか。

中山副大臣 ありがとうございます。

 米海軍及び米海兵隊の機動展開前進基地作戦、EABO、エクスペディショナリー・アドバンスト・ベース・オペレーション、EABO構想とは、海軍の海洋アセットに加えまして、海兵隊が陸上ベースの選択肢を提供することにより、決定的な攻撃力を更に分散することを追求するための取組として打ち出されたものと承知をいたしております。

 また、本構想は、列島線が生み出す自然の障壁を活用しつつ、地上発射ミサイルを含む多様な機能を持つ臨時拠点を前方に一時的に設置するものであるとされており、危機前の状況から展開することにより既成事実化の取組に対応するとの考え方が示されているというふうに承知をいたしております。

穀田委員 先ほど指摘したバーガー総司令官の計画指針にも書かれていますけれども、このEABO作戦は、二〇一九年二月に海軍作戦部長と海兵隊総司令官の署名を得て正式なものとなっていると言われています。その内容は、海兵隊の小規模で分散された部隊によって要衝となる離島を制圧し、対艦、対空ミサイルや戦闘機の給油拠点など、軍事基地を一時的に構築することで、制海権の確保や敵の海洋進出を阻止するとされています。

 今の答弁は、昨年の十一月十九日の参議院外交防衛委員会で防衛省の岡防衛政策局長が述べた内容とほぼ、そのまま同じと言ってもいいんでしょうけれども、言っていらっしゃいますよね。

 その局長は、EABO作戦について、今もありましたけれども、列島線が生み出す自然の障壁を活用しつつ、地上発射ミサイルを含む多様な機能を持つ臨時拠点を前方に一時的に設置するものとしており、危機前の状況から展開することによって既成事実化の取組に対応するという考えが示されていると説明しています。

 改めて聞きますけれども、そのとおりということでよろしゅうございますね。

中山副大臣 御指摘の岡政府参考人の方が答弁をしましたのは、参議院の外交防衛委員会、令和二年十一月十九日、今先生が御指摘のとおりの発言を答弁としていたしております。確認いたします。

穀田委員 バーガー氏の発言と考えてみましても、この問題は極めて重要だと私は思うんですね。

 これは、EABOのいわゆる一般論ではなくて、今お話あったように、大臣が答弁し、そして局長もそのことを答弁している。

 列島が生み出す自然の障壁を活用するというわけですけれども、列島線、先ほど線をちょっと抜かしましたけれども、列島線が生み出す自然の障壁とは具体的には何か。日本でいえば、九州から台湾までの間に所在する島々のことなんですか。

中山副大臣 この御指摘のEABOが九州また南西地域に与える影響について一概にお答えをすることは困難でございますが、高い能力を有する海兵隊の存在は、米軍の軍事的プレゼンスの重要な要素であり、我が国の安全を確保する上で不可欠であると考えております。

 同時に、在日米軍の安定的な駐留と日々の活動には地域社会の理解と協力が不可欠であり、また、部隊の活動等に際しては、安全かつ環境に配慮した運用の確保が重要であります。

 防衛省といたしましては、日米同盟の抑止力を維持しつつ、地元の負担、こういったものを軽減するため、日米で引き続き緊密に連携していく所存であります。

穀田委員 もう一度聞きます。

 何でこんなのを聞いているかというと、今お話あったのは、いわゆる不可欠論、それから全体の一般論ですよ。そして、米軍の存在、海兵隊の存在の意義、日米安保条約の意義、これを語っているにすぎないんです。

 私、聞いているのは、具体的には、日本でいえば、九州から台湾までの間に所在する島々のことを言っているのかと聞いているんです。

中山副大臣 先ほど来御指摘をいただいておりますこのEABOの作戦構想というものに関しては、先ほど来、列島線という言葉が出ておりますけれども、第一列島線というものを具体的に意識したものではない、かように承知をいたしております。

穀田委員 第一列島線を意識したものではないということを明確におっしゃった。

 私は、列島線ということと自然の障壁ということから聞いたわけですけれども、米海兵隊がEABO作戦でどの島を軍事基地に想定しているかを示す資料があります。

 四枚目を見ていただきたいと思います。これを見ていただくと分かると思いますが、米海軍のジョセフ・ハナセック中尉が具体化したミサイル配備拠点の候補地です。同じものは、EABOが正式な作戦構想となった二〇一九年二月、島嶼要塞と銘打って米国海軍協会の月刊誌にも掲載されています。

 地図上に記されたミサイルの配備拠点を見ると、長崎県の対馬を起点に、南西諸島を通って、台湾、フィリピン、ボルネオ島に至る第一列島線上の十二か所を候補地に挙げています。重大なのはそのうちの六か所が日本の島々で、対馬のほか、鹿児島県の馬毛島、奄美、沖縄本島、宮古、石垣、与那国島の各付近を候補地に想定している。

 中山副大臣、先ほど第一列島線ではないとおっしゃいましたけれども、EABO作戦では、こうした日本の島々を障壁として活用するということではないんですか。

中山副大臣 穀田先生御指摘のこの資料を見ますと、確かに第一列島線、一部なぞらえているところはあるというふうに、この地図から、表から見て思います。

 他方で、この配付されている資料自体は、これは米海軍の正式なものではないというふうに思います。シンクタンクの資料じゃないかと思います。

 そもそも、この米海兵隊、海軍がおっしゃっているEABOを私の口から語る立場ではないという前提ではありますけれども、いずれにしましても、軍事戦略上、地政学というものをベースに一般的には戦略というのは考えられるものであろうというふうに思います。ランドパワー、シーパワー、そういったものを考慮しながら、しっかりとそれぞれのプレゼンスというものを示していく。そしてまた、何よりも一番大切なのは、そういった戦争というものに至るまでの経緯の中でその戦争を回避する、リスク回避というのが最も重要ではないか、そのように考えてございます。

穀田委員 大体、こういう資料を示しますと、すぐ、正式のものではない、こう言って、この間なんかでいうと、検討されているものと承知しているというようなことを言って、現実に何が進んでいるのかということを見ないと私は駄目だと思うんですよね。

 おっしゃるように、確かに研究所のものです。しかし、島嶼要塞構想というのは、一海軍中尉が個人的に発表したものではないんですね。それは、EABOが正式な作戦構想となった二〇一九年二月、海兵隊総司令官による可及的速やかに長距離対艦ミサイルを選択し配備したいとの意向に基づいて具体化されたんですね。またそこで一々来んでもええねんけどね、この間も二〇三〇、まあ、ニゼロサンゼロと言ったりいろいろ言っていましたけれども、その前提となっているのがこの構想なんですよね、基本にある。

 島嶼要塞構想では、対馬から馬毛島、奄美、沖縄本島、宮古、石垣、与那国島に至る各付近を、何度も言いますが、配備候補地に対艦ミサイルのNSM、さらには高機動ロケット砲システム、HIMARS、対空ミサイルのホークやパトリオットの配備などが想定されています。

 私は、前回の質問で指摘した巡航ミサイル、トマホークも今後の配備の対象となるのは疑いないと思います。もし、この島嶼要塞構想どおりに米軍のミサイル配備が行われるならば、米中対立が激化し、有事となった場合、軍事要塞にされた島々が真っ先に標的となる、攻撃対象となるのは明らかではありませんか。

 ですから、日本の島々を戦場にすることを前提にしたこの島嶼要塞構想を、それは一部の勝手なところでやっているんだなんという話ではない、その意味で重く受け止めて、知らない、それは知ったことではないということは、許されないんじゃないですか。

中山副大臣 いずれにしましても、防衛省・自衛隊というのは、我が国の領土、領海、領空を守り抜く、そして日本国民の平和な暮らし、これをきっちり守り抜いていくことにあるというふうに思います。

 一般論として申し上げましたら、例えば、在日米軍及び自衛隊による施設・区域の共同使用の検討に当たって、特定の地域を排除することなく、沖縄を含む日本全国の施設・区域について幅広く様々な可能性を検討してきておりますが、一方で、日米間の具体的なやり取りや検討状況について、相手方との関係、それから情報保全などもございまして、従来よりお答えを差し控えさせていただいております。

 キャンプ・シュワブを始めとする在沖米軍への陸自地対艦ミサイル部隊の配備について、何ら具体的に決まった計画があるわけではありません。今後も、しっかりと日本の領土、領海、領空を守り抜くということに防衛省・自衛隊一丸となって徹してまいりたいというふうに思います。

 他方で、北東アジア地域における我が国周辺の環境も徐々に変化しているということも事実でございます。こういった変化に臨機応変に対応していく、情報収集、そして共有、そしてまた同盟国との協力関係の構築、こういったものがいずれにしても重要であることは何ら変わらない、そのように考えてございます。

穀田委員 副大臣、答弁の要綱というのは大体、これをやっているとよく分かると思うんですよ。大体言うのは、相手方との問題だ、こう言うわけですよ。その次に何を言うかというと、決まっていないということを言うんですよ。それで、その次が一般論で、我が国の領土、領海を守り抜くと。もう一つは変化。大体この四つのワードがあると、話は全部済んじゃうんですよ。

 それに対して、私は何と言っているか。具体的な問題で、島々のそういうところを利用してやっているというのが考え方だと岡さんも言っておられる、副大臣も答弁された、それは具体的にはこういうことなのかと。違うのかということについては、一般論でお答えになるんじゃなくて、そういう考え方があるとすれば、それはおかしいというのかどうかということが問われているんじゃないですか。何か一般論の話で、四つばかりのワードを、もうええから、そこ。副大臣と話をしているんです。どうですか。

中山副大臣 先ほども申し上げたとおり、防衛省・自衛隊として、米軍の戦略、作戦について答える立場には直接的にはないという認識でございます。

 それと、私の知り得るところで申し上げれば、この作戦情報自体も、秘密指定をされているもの、またそうでないものという仕分がなされているようでありまして、今後も関心を持ってしっかりと注視していきたい、そのように思います。

穀田委員 答える立場にないということでは困るわけですよ。日本国民の、先ほど三つ目に言いましたよね、日本の領土、領海を守り抜くと。国民がないわけだけれども、国民が一番、この問題についてどうやねんという不安を抱いているときに、その相手方の戦略について答える立場にないという話では済まないわけですよ、具体的にそのような動きがあるわけだから。そういう問題についてきちんと答えるのが私は筋だと思うんですね。

 先ほど私は、岡防衛政策局長がEABO作戦における部隊展開について、危機前の状況から展開すると答弁したことを指摘しました。まさにこの島嶼要塞構想では、中国による敵対行為の開始前から海兵隊の遠征チームがこの地域の島々を迅速に占拠するとされています。こういう問題まで指摘して、彼らは公開しているんですよ。

 こんな重大な軍事要塞構想を是とすることは、まあ、否定はしていないわけだから、すぐ何かというと、相手がやっていることだとか、公開されていないとか、それから答える立場にないと。答える立場にないじゃないんですよ、答えてくれな困るわけですよ、国民は。

 さらに、この島嶼要塞構想では、もう一つ重大な問題が計画されています。それは、配備するミサイルが米軍のものだけではなくて、陸上自衛隊が保有する一二式地対艦誘導弾の使用も想定されていることであります。

 海軍中尉は、一二式地対艦誘導弾の有用性は二〇一八年に行った環太平洋合同演習、リムパックでテスト済みだと強調しています。私は前回の質問で、防衛省幹部がメディアに対し、一二式地対艦誘導弾を将来沖縄本島にも配備し、宮古島と併せ両側から中国の艦艇を牽制すると述べていることを指摘しましたが、島嶼要塞構想には既に沖縄本島への一二式地対艦誘導弾の配備が前提とされているわけです。

 こうした想定がされていることを、中山副大臣は、実は一連のことについてそういう対応をしているということを御存じなんじゃないですか。

中山副大臣 先ほど先生が御指摘になられた、国会でのこのQアンドAの答弁の仕組みというかパターンというのは、少なからず、例えばこれをインターネットで見ている方なんかはそう思っている方もおられると思います。他方で、私どもも、先生からいただいた問いに対してきっちりと発言できる、許される範囲内でしっかり真摯にお答えをしたいということも事実でございますので、その点、御理解をいただきたいと思います。

 まず、先ほど茂木外務大臣からもございましたように、我が国の防衛力整備、防衛省としての立場を申し上げれば、特定の国を対象としてこれに軍事力で直接対応していくという発想にはまず立っていないということを申し上げておきたいというふうに思います。

 また、先ほど御質問の中にございました一二式地対艦誘導弾の能力向上型を含めて、現時点で具体的な配備先については決まっておりませんが、配備先の検討に際しましては、即応性や抑止力の確保、他部隊との連携、部隊練度の維持等の点を総合的に勘案してまいりたい、かように考えております。

 また、この御指摘の研究事業につきましては、要素技術を研究する段階の事業でありまして、搭載するプラットフォームを特定しているわけではないということも付言をさせていただきたいと存じます。

 したがいまして、装備化の時期、それから、それを前提とした配備先について申し上げる段階にはないということで発言をさせていただきたいと思います。

穀田委員 今、副大臣がお話ありましたこの方針なり対処ということを含めた答弁、その他一連のことが、特定の国を対象にしているわけじゃないとおっしゃいました。

 でも、海兵隊の方針転換、新戦略、新戦力の配置、それらを含めて明確に対中国ということを意識して、その対中国との関係で戦力比較を行って、そこでの脆弱性をどうするかという問題の視点から出発していることは、既にどの文献を見ても明らかであります。しかも、その構想やその問題についての指摘は防衛研究所でもきちんと行われていて、そういう発言も行われています。ですから、そんなふうに防衛副大臣が特定の国に対してやっていないとかという話はおよそいただけないと思います。

 そこで、資料三枚目なんです、先ほどわざわざ察していただきましたけれども、この三枚目の資料にありますように、防衛省は、奄美、宮古、石垣に陸上自衛隊のミサイル部隊の配備を進め、沖縄本島への配備も検討していることは明白であります。

 米海兵隊のEABO作戦は、そうした自衛隊のミサイル配備計画と一体の日米共同基地化であって、今回明らかとなった米海兵隊の島嶼要塞構想、そのことを明確に示しています。

 前回も私、指摘しましたけれども、この問題について、沖縄の地元紙は、一連のこの動きを見る中で、しかも、今、私がお話しした島嶼要塞化という問題が、やはり多くの方々が、現実の問題として軍事要塞化が進んでいるという指摘をしているわけですね。

 ですから、私は、この日本の島々を軍事要塞化する日米のミサイル配備計画は断じて容認できない。だから、知らないとか、それから検討中だとか言うのであれば、逆に言うと、そういうやり方は島民からしても住民からしてもおかしいという要望に応えて、撤回を私は求めたいし、そういうふうに発言するのが日本の政府の役割だということを述べて、今日は終わります。

あべ委員長 次に、浦野靖人君。

浦野委員 日本維新の会の浦野靖人です。本日もよろしくお願いいたします。

 まず最初に、中国報道官による福島第一原発処理水の風刺画についての質問です。

 この件については、小熊先輩が委員会で取り上げていただきまして、そのときに茂木大臣からも中国に厳重に抗議をするということを答弁をいただきまして、実際、ニュースにもなっていましたけれども、抗議を行っていただきました。

 これからもこういった類いの批判には断固とした態度をお願いしたいと思っていますけれども、中国からその後何かそれに対する反応はございましたか。

茂木国務大臣 まず、一般的に、中国政府に対して抗議をしたり、個別の一人一人の発言についてはコメントしないことにしていますが、さすがに、先日の中国の外交部の報道官によりますツイート、これは、日本側の真摯な努力に対して、科学的根拠が全くないままに感情をあおろうとする極めて遺憾なものでありまして、相手に対する配慮とか思いやりが全くない、本当に心ないツイートだ、こんなふうに思っております。

 このツイートについては、もうこれは一人の報道官にとどまらない中国政府の問題として、外交ルートを通じて直ちに厳重に抗議して削除を求めておりますが、現時点で削除されていないということは極めて遺憾であると思っております。

 ALPS処理水の処分については、これまでも、中国を含みます国際社会やIAEAなど国際機関に高い透明性を持って積極的に情報提供してきております。今回決まったのは基本的な方針であります。今後、二年かけて確実に安全性を確認するステップを踏んでいく、そういう中で最終決定というのがなされるものだと思っておりまして、こういった日本のアプローチについては、IAEA、米国からも評価を受けていると感じておるところでありますが、今後も、中国側の不適切な対外発信には断固として対応しつつ、引き続き、国際的な理解を醸成し、風評を払拭するための取組も積み重ねていきたいと思っております。

浦野委員 ありがとうございます。

 私は、ツイッターがまだ削除されていないということですけれども、別に、あのままあってもいいんじゃないかと逆に思っています。中国の外務省のそれなりの立場の方が科学的無知をさらけ出している、世界に向けて恥ずかしいことをツイートしている内容ですので、それはそれで、そのまま残っていた方がいいんじゃないかと思ったりもします。

 日本が処理水の件で、先ほど大臣から答弁いただいたように、今後二年かけていろいろ検討するということですけれども、これをきっかけに、世界中でどういった形で原発の処理水が海洋に放出されているかというのは、改めて、脚光を浴びるじゃないですけれども、客観的事実として世界中で排出が行われている、中国も非常に大きな何十万兆ベクレルといった処理水が海洋に排出されているという事実も報道でよく見かけるようになりました。これまでほとんど、マスコミ等もこの件についてはなぜか触れてこられなかったにもかかわらず、最近は世界的なそういう流れをしっかりと報道していただいていますので、最終的に恥をかくのは中国じゃないかと私は思っています。

 ただ、やはり科学的根拠のないそういった批判、余りにもひどいものに関しては厳重に抗議をこれからもしていただけたらと思っていますので、よろしくお願いいたします。

 続きまして、ミャンマーにおける北角さんの拘束の件、以前に質問をさせていただきました。その後の状況ですね、解放に向けてどのような方策が取られているのか、ミャンマー国軍からの返答なども含めて教えていただきたいと思います。

森政府参考人 在ミャンマー日本国大使館では、ヤンゴン市内のインセイン刑務所に拘束されている四十代の邦人ジャーナリストの方が五月三日に起訴された、これはミャンマー刑法五百五A条及び一九四七年ビルマ入国管理特例法第十三条第一項によるものだそうですが、このことを確認しております。

 さらに、当該邦人とは、前回御質疑いただいた後の四月二十三日に、丸山市郎駐ミャンマー日本国大使が電話によります領事面会を行い、御当人の健康状態、これに問題がないということを確認しております。このように、邦人保護の観点からは、当該邦人との面会を通じた要望等の聴取でございますとか、あるいは御家族への連絡等、できる限りの支援をしてきておるところでございます。

 ミャンマー側に対しましては、当該邦人の早期解放、これをあらゆるレベルで働きかけてきております。

 引き続き、邦人の保護に関しまして万全を期してまいります所存です。

浦野委員 ありがとうございます。

 ただ、まだ解放もされていない、我々、こちら側からすれば納得のいかない理由で拘束をされているわけですから、その点についてはこれからもしっかりと対応していただけたらと思っています。よろしくお願いします。

 続きまして、河野談話と閣議決定の二重規範、ダブルスタンダードについて質問をさせていただきたいと思います。

 我が党の足立委員そして藤田委員が、予算委員会等でもう既に我が党の馬場幹事長の質問主意書に対する回答ということで取り上げて質問をさせていただいておりますけれども、外務委員会でも、もちろん、一番こういったことに面と向かって対応するのは外交の場ですので、聞いていきたいと思います。

 外務省のホームページには、今も河野談話はそのまま掲載をされています。その河野談話の中には、表現として、いわゆる従軍慰安婦という文言がそのまま当然使われているわけですけれども、閣議決定では、その表現はもうふさわしくないということで使わない、予算委員会での総理答弁でもこれから使わないということがありましたけれども、政府として使わないと決めている文言が使われている文書が外務省のホームページにそのまま残っているということについては適切ではないと思うんですけれども、お考えはいかがでしょうか。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の質問主意書に対する答弁書にあるとおりでございまして、これまでの経緯を踏まえて、政府といたしましては、従軍慰安婦という用語を用いることは誤解を招くおそれがあることから、従軍慰安婦又はいわゆる従軍慰安婦ではなくて、単に慰安婦という用語を用いることが適切であると考えており、近年、これを用いているというところでございます。

 他方で、今回の答弁書につきましては、現時点における用語の使用に関する政府の考え方を示したものでございまして、慰安婦問題に関する政府の調査当時に用いられていた個別の用語等につき見直すというものではございません。

 いずれにせよ、政府の基本的立場は、一九九三年八月四日の内閣官房長官談話を全体として継承しているというものでございまして、外務省のホームページでの掲載はこのような立場を踏まえたものでございます。

浦野委員 今の答弁のとおりだと、理路整然と言っていただいていますけれども、しかし対外的に見れば、その当時のそのままの文書が使われているというのは、僕は非常に問題だなと思っています。

 さらに、いわゆる従軍慰安婦と河野談話に書かれているこの言葉ですけれども、英訳はどういうふうになされていますか。いわゆる従軍慰安婦ということを外務省で対外的に話をするときの英訳、それとついでに、これから慰安婦という言葉だけ使うということですけれども、その場合の英訳、違うのかどうかというのもお聞かせいただきたいと思います。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省のホームページに掲載されております九〇年代当時の関連する長官談話の英語版におきましては、日本語の談話で用いられておりましたいわゆる従軍慰安婦という用語につきまして、ソーコールド・ウォータイム・コンフォート・ウィメン、ウォータイム・コンフォート・ウィメンという訳語が用いられているというところでございます。

 政府といたしまして、先ほど申し上げましたとおり、単に慰安婦という用語を近年用いているというところでございまして、こちらの方につきましては、単にコンフォート・ウィメンという訳語を用いているというところでございます。

浦野委員 そのコンフォート・ウィメンというのはいつから、同時期に使われているんですか、その二つは。それとも、ある一定の時期からはコンフォート・ウィメンというのを使っているという話なんですか。ちょっと確認。済みません。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたとおりでございますけれども、以前、まさに談話が発出されたときにおきましては、いわゆる従軍慰安婦という言葉を用いておりまして、近年につきましては、慰安婦で、英訳につきましてはコンフォート・ウィメンというものを用いているというところでございます。

浦野委員 その近年がいつなのかというのがちょっと分からないですけれども、それをちょっと聞きたかったんですけれども、これは通告もしていないのでこれぐらいにしておきます。

 要は、日本国内では、いわゆる従軍慰安婦、従軍慰安婦という言葉が頻繁に使われてきた中で、外務省としては、海外向けにはある一定の時期からはコンフォート・ウィメンという言葉しか使っていなかったということだと思います。

 私、それ自体もダブルスタンダードじゃないかなと思うんですね。いわゆる従軍慰安婦という言葉の訳語と違う言葉を使って外務省が海外に向けてこの話をしてきたというのであれば、私はちょっと、このことについてもダブルスタンダードで、僕はそれはいいと思いますけれども、いいとは思うんですけれども、ダブルスタンダードになってしまっていたんじゃないかというふうに思います。

 河野談話は、その当時の官房長官の談話、いわゆる談話ですけれども、分からないのは、官房長官談話というのは、一体、政府のいろいろな公文書の中で、法的な位置づけというのは、要は、重いか軽いかという話ではないですけれども、どれぐらいの位置にあるのかというのは、明確に何か決まりがあるんでしょうか。

安中政府参考人 お答え申し上げます。

 一九九三年八月四日の内閣官房長官談話につきましてですが、例えば閣議決定されていたかどうかということで申し上げますと、その当時は閣議決定されておりません。

 ただ、その後の歴代の内閣においてその内容が継承されているというものでございまして、これまでも質問主意書に対する答弁書の中でその旨を明らかにしてきているというものでございます。

浦野委員 今の御答弁のように、明確な、法的な軽重の位置づけというのは談話にはなくて、ただ、その後、継承していくという閣議決定をしてしまったものですから、閣議決定は重いものですから、それなりに、いわゆる河野談話を逆に昇華させてしまっているんじゃないかというふうに私は思っています。

 これは、なぜここまで、強制性があったかなかったかという議論については、もう既に主意書に対する答弁書でもしっかりと書かれていますけれども、いわゆる吉田調書、それが虚偽だった、答弁書には大手新聞社というふうに丸めていますけれども、朝日新聞ですよね。これは、この証言が虚偽だったということを認めて、余り大きくない記事で謝罪をしていましたけれども。前提となる話がもう崩れているにもかかわらず、この河野談話を継承するという閣議決定を覆さないというのは、私はおかしいと思うんですね。

 いつもこの話になると必ず引き合いに出されてしまうので、個人的にはかわいそうだなと思うのは河野太郎さんなんですけれども、河野太郎さんのホームページ、これは大分前の、二〇一一年の十一月に書かれているホームページのものがあります。

 その中で、河野太郎さんも、これはQAに、問いに対して答える形でホームページに書かれているんですけれども、河野談話を修正又は撤回するためにはどうしたらいいでしょうか、誰がやればいいんでしょうかという問いに対して、一九九三年八月四日付の内閣官房内閣外政審議室の「いわゆる従軍慰安婦問題について」に替わる事実が出てくるか、あるいはこの調査結果を破棄するかということが必要になります。要は、できるというふうに書いていると僕は思っているんですね。

 この談話を出した本人、お父様ですけれども、その人個人には関係ない、これは官房長官談話ですから、個人の話ではない、関係ないということも書かれているんですけれども。

 ただ、ここで問題になるのは、この記者会見のときに官房長官は、強制連行はあったという認識でいいかという記者の問いに対して、そういう事実があったということで結構ですと答えているんですね。河野談話の中には含まれていないにもかかわらず、記者会見の場で記者に問われて、そういう事実があったということで結構ですと答えた、これが原因で、強制性があったというふうに今も言われているわけですね。

 これは談話の内容を超えて、個人で答えているわけですよ。だから、僕は、そここそ問題であって、政府としてこれを認めているわけではないと思っていますので、是非、この質問主意書の答弁、閣議決定の流れからすれば、河野談話は、もちろん今すぐとかではなくて、しっかり議論した上で、何らかの形で撤回する、今までどおりではいかないということを私は政府の意思としてやらないといけないと思っていますけれども、外務大臣、この点についてどうお考えですか。

茂木国務大臣 九三年の官房長官談話においては、浦野委員御指摘のように、いわゆる強制連行という言葉は用いられておりません。また、これまで日本政府が発見した資料の中に、軍や官憲によりますいわゆる強制連行を直接示すような記述は見つかっていません。このように、政府の立場は一貫していると考えております。

 これが政府として取っていることでありまして、まさにそのQアンドA等におきまして行われたことは河野官房長官が個人として質問にお答えになったことだ、このように理解しております。

浦野委員 かたくなに政府が河野談話を継承しているのは、世界に向けて日本は歴史修正主義者だと思われるのが嫌なのだろうというふうに私はちょっと思っています。でも、歴史を修正しようとしたのは、先ほど出てきた吉田証言であったり朝日新聞であったり、そういった一部の人たちが、歴史とは違う事実を、あたかも日本が悪い、日本人が悪いんだという印象をつけさせるためにロビー活動をした結果だと私は思っているんですね。

 だから、私は、決して今の日本が歴史修正主義者でも何でもなくて、正しい歴史をしっかりと世界に発信する努力を続けている国だというふうに思っていますので、是非、外務省さんはその先頭に立つ省庁ですから、しっかりとこれからもやっていっていただけたらなと思っています。

 本当でしたら更に質問をたくさんお願いをしていたんですけれども、少し時間がありませんので、今日はここまでにしておきますけれども、一つ、私、実は、そうは言うものの、先ほどから中国に対しても批判的なことを言っていますけれども、中国の歴史が結構大好きです。入口は三国志、横山さんの漫画の三国志が入口でしたけれども、春秋戦国時代とかも結構好きで、いろいろな本を読みあさったりしています。

 作者は、残念ながらもうお亡くなりになったんじゃないかと思うんですけれども、鄭問さんという方、漫画家がいらっしゃって、台湾の方だったと思うんですけれども、その人が「東周英雄伝」という漫画を描いています。そこに、その漫画の中に崔杼弑君というストーリーが一つ出てきます。

 それはどういう話かというと、春秋戦国の大国であった斉の国、斉は有名な人がたくさんいますけれども、斉の荘公という方がいらっしゃったときに、大臣の崔杼という方がその君主を殺して、弑虐して、自分のかいらいの人を王様に就けたわけですね。それで、太史という役職があるんですけれども、それは歴史を書き記す人たち、その太史は、崔杼が君主を弑虐したという歴史を書くわけですね。ところが、崔杼はそれがやはり後世に残るのは嫌やから、病気で死んだことにしろと言って、書き換えろと脅すんですね。何人かの太史がそれに逆らって殺されました。それで、兄弟とか親が殺されたにもかかわらず、その役を継いだ子供が、崔杼は君主を殺した、弑君だというふうにまた歴史書に書き残すわけですね。それで、それに怒ったけれども、歴史は、あったことはあったと書く、それが史書だという言葉を言い返されて、諦めて帰っていく、そういうものなんですけれども。

 私は、やはり、歴史というのは、客観的な事実だけがしっかりと残されれば、国によって主観が入るというのはある程度仕方がない。でも、中国というのは膨大な歴史を誇る国で、その中国の歴史がなぜ今でもたくさん残っているかというと、そういった人たちが、あった事実をしっかりと書き残してきた、その時の権力者に逆らってしっかりと書いてきたというのがあって歴史が残っているという物語なんですけれども、私は、その物語をちょっと思い出して、今回の河野談話の話をさせていただきました。

 また、外務省の皆さん、頑張ってください。

 以上です。

あべ委員長 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 国民民主党の山尾志桜里です。

 今日は、ジェノサイドと水際対策、結構この委員会で頻繁にこの二つをやっているんですけれども、この二つとも、状況が継続していますし、国際社会の取組も動いていますので、今回も、この二点、やらせていただきたいと思います。

 まず、ジェノサイド条約についてなんですけれども、ちょっと大臣に時事通信の記事から伺いたいと思うんですが、時事通信、五月五日に、このジェノサイド条約の批准について記事が出まして、こういう記事になっていました。与野党から政府に対してジェノサイド条約批准を求める声が上がり始めた、外務省幹部も、何もしないわけにはいかないと関係省庁との検討を始める考えを示していると。

 こういう記事、よく、誰が言ったのか分からない記事でこういうのが出るんですけれども、大臣に伺います。実際、外務省の内部で、こうやって、少しこの批准に向けて関係省庁との検討を始めようか、こういう動きはあるんでしょうか。

茂木国務大臣 五月五日前後、私は日本におりませんので、少なくとも、私はそのように言っていません。

 また、私から指示を出したことはございませんが、このジェノサイド条約については、国際的な動きもあるわけであります。更に申し上げると、この後、委員の方から、国内法の整備、それに当たっては留保条件がどうなるのか、こういう御議論もいただくんだと思うんですけれども、当然、様々な問題については、想定され得ることについて関係省庁が議論をする、だからやる、だからやらないということじゃなくて、議論の準備をするということはあって悪いことではないと思っています。

山尾委員 玉虫色に玉虫色の答弁で、ちょっと方向性が見えないお答えだったんですけれども。

 ちょっとここをはっきりさせたいんですが、前回、価値の譲れるラインと譲れないライン、どこにあるんだろうという話があって、私は、やはり安易な価値相対主義に陥っては駄目なので、きちっと日本としてのラインを決めていこうと。

 例えば、国によって、大臣もよく言いますけれども、民主主義の在り方というのは様々なありようがあるので、ここは尊重すべき余地というのはそれなりに広くあるんだろう。でも、一方で、ジェノサイドは許さないというところ、ここはやはり譲っちゃいけない、譲れない核心なんじゃないかと思うわけですね。

 その方針を明確にするためにも、ジェノサイド条約に入るべきだと思うわけです。中国、北朝鮮を含めて百五十二か国が批准をしている、この条約。

 改めて伺うんですけれども、大臣、大臣の認識として、入る必要はあるけれども、国内法などを含めてハードルを越える工夫が要るんだよ、それを検討していきましょうという立場に立つのか、それとも、ジェノサイド条約に入る必要性の有無、これについていまだ疑問ありという立場に立つのか、この点はいかがなんでしょうか。

茂木国務大臣 山尾委員の二つの、今どちらなのかというのが、私にはある意味、重なって聞こえます。必ずしも、何というか、表現力がうまく、違っておっしゃっているようなところがありますが、あらゆる条約についても、入る必要があるのかというのと入る準備ができているかというのは、全く別の問題ではなくて、かなり重なっている部分というのはあると思います。

山尾委員 そこで、入る意思があれば、国内法の変更を含めて、そういう準備はやれるし、外務省、法務省はそれをやってきたというお話をしたいと思うんです。

 私、法務委員会にいまして、共謀罪というのをずっとやっていたんですね、テロ等準備罪という法律で出てきました。このときに、必要性は、TOC条約に日本は何としても入らねばならない、そのために、大変だけれども、どんなに国論が反対が多くても、共謀罪、テロ等準備罪、絶対に入るのだ、この意思は、外務省、法務省は極めて強かったわけです。

 私は質疑に立って、そもそも、でも、この共謀罪、テロ等準備罪というのは、まず国内法的に不要なんじゃないですか、今ある法律で全部対処できますよねということをずっと議論してきたわけですけれども、ちょっと改めて伺いたいんですね。

 法務省を呼んでいると思いますけれども、テロ等準備罪、これは成立したわけですが、これまで、成立してからですね、検察官送致あるいは起訴された事例というのはあるんでしょうか。

保坂政府参考人 まず、検察における受理件数と起訴件数についてお尋ねですけれども、現時点で把握しているところでは、いずれもゼロ件でございます。

山尾委員 ないんですよね、いまだ。

 改めて、では、その送致、起訴の手前ですね、警察がテロ等準備罪で捜査をした例というのは法務省は把握されているんでしょうか。

保坂政府参考人 検察官に送致される前の捜査につきましては、これは警察庁の所管ということになりますけれども、警察庁から聞いておるところでは、現時点で把握している捜査の件数、これもゼロ件であるということでございます。

山尾委員 ないんですよね、テロ等準備罪で捜査すら。

 これは、私は、共謀罪、テロ等準備罪なんか作らなくても我が国の個別法でしっかりとカバーできているという論陣を張っていたわけですけれども、やはりそうなんだというふうに改めて思っています。現行法で十分だと主張した二〇一七年から四年たっています。

 でも、何でこの話を今この場でしているかというと、国内治安のためにはほぼ意味がないテロ等準備罪、共謀罪をTOC条約に入るために作ったわけですね、我が国は。

 今回、それを、不要なものを作れと言っているわけじゃないんですけれども、言いたいのは、条約に入るべきだ、是非とも我が国としてこの条約を批准する必要があるという政府の意思があれば、これは新法を作ってでも入るわけです。大臣は重なると言いましたけれども、こういう例を見ると、やはり国としての意思がある、この条約に入る、入らない。やはり入る必要があると考えたら、それに伴って必要な措置を講じるわけです。

 今回、ジェノサイド条約に入るという意思を持ってほしいわけですが、新法は必ずしも要らない、別の方策があるんじゃないかという話をしたいと思います。

 国内法と条約で合わない部分があるときは留保という手段があるというのは、皆さん御案内のとおりだと思います。ジェノサイド条約、留保して入ればいいと思いますが、実際、留保をして入っている国の具体例、あるいは数など、把握している範囲でお聞かせください。

赤堀政府参考人 お答えいたします。

 ジェノサイド条約につきましては、留保に関する規定は設けておられませんが、国連が公表している情報によれば、三十か国近くがこの条約に対する留保又は宣言を付しております。

 例えば、国際司法裁判所への付託について定めるジェノサイド条約第九条について、自国の同意がなければならない旨の留保を締結の際に行っている国があると承知しております。米国もかかる留保を付していると承知しております。

山尾委員 そうなんですよね。米国も含めて三十か国が、留保をつけてジェノサイド条約に入っている。五分の一ぐらいの加盟国が、やはりそういう、国内法、我が国としてはこの点はこうだよ、そういう宣言をする、主張をする、その意思を示した上で入る、これは当たり前のことだと思います。

 では、ジェノサイド条約についてどこまで留保が許されるのか。国際司法裁判所の判決が、まさにこのジェノサイド条約をテーマにして出ていると思います。両立性の基準という有名な基準ですけれども、条約局から説明いただけますか。

岡野政府参考人 一九五一年、国際司法裁判所による勧告的意見が出ております。まさにこれはジェノサイド条約を扱ったものでございますけれども、その際に、留保がどのような形で認められるかどうかが議論になりました。その際には、条約の趣旨、目的と両立しないものであるものは認められないということが言われております。

山尾委員 有名な基準ですけれども、基本的に、留保をつけることが条約の趣旨及び目的と両立しないものであるときは駄目だ、あるいは、条約が留保を禁止している場合は駄目だ、あるいは、条約が特定の留保だけを許容しているときは、それ以外のものは駄目だ、極めてオーソドックスな基準だというふうに思います。

 伺いたいんですけれども、ジェノサイド条約には留保禁止条項や特定の留保だけを許すというような条項はついていますか。

赤堀政府参考人 お答えいたします。

 ジェノサイド条約には留保に関する規定はございません。

山尾委員 そうすると議論が進んでいくんですけれども、やはり、では、日本の国内法で少しギャップがあるかもしれないと思われる部分ですね、扇動というような、犯行にどう関与していくかという態様について、このジェノサイド条約が求めているものと日本の国内法に少しギャップがあるんじゃないか。

 この犯行関与態様の一部について留保をつけることは、何もこのジェノサイド条約の趣旨及び目的と両立しないとまでは言えないんじゃないでしょうか。その点の外務省の解釈はいかがなんでしょう。

赤堀政府参考人 お答えいたします。

 ジェノサイド条約の締結につきましては、引き続き慎重に検討する必要があると考えておりますが、あえて一般論として申し上げれば、仮にジェノサイド条約に留保を付して締結することが可能かどうかを検討する場合には、この条約の趣旨、目的、各国の実行等を踏まえる必要があると考えております。

 なお、国連が公表している情報によれば、ジェノサイド条約の締約国のうち、共同謀議や扇動について留保を付している国はございません。

山尾委員 そうであれば、しっかりと日本が提起をして、その部分の検討を詰めてほしいんですね。私は、その犯行態様のかなりの部分は日本の国内法でカバーできていると思いますので、その一部の部分について日本とギャップがあっても、そこの部分に留保をつけるということは私は十分許容され得るというふうに思っています。今のお答えを聞いていると、そこのところをしっかり外務省としてちゃんと検討しているという状況にないというふうに思いますので、そこをしっかりと検討していただきたいんです。

 大臣、今の話を聞いていていただいて、やはり批准のポイントはそこになってくると思います。もしその犯行態様の部分で一部でも留保が認められないのであれば、それは国内法を変えて入る必要が出てくるでしょう。でも、そうじゃなければ留保つきで今すぐにでも入れる。その点についてしっかりと外務省と法務省できちっと検討を始めていただきたいんですけれども、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 先ほど来答弁がありますように、まず、国際法局長の方から、当該留保というものが条約の趣旨及び目的と両立しないものであっては駄目だという話があって、その上で、赤堀審議官の方から、共同謀議、扇動について留保をつけている国はない、こういう話があったわけでありますけれども、では、この条約の根幹になるような趣旨、目的と、共同謀議、扇動、どこまで関係するのか。私が見る限りは、関係ないと言えないと思います、これは。関係ないと言えないと思います、私は。そこの部分について簡単に留保ができると思っていません。できるんだったらやっている国があるような気もしますし、簡単ではないと思います、その部分は。ただ、それについて、だから検討しないという話ではないと思います。

 あともう一つは、そうなった場合に、今度は留保できないという場合に国内法を作る、ここについても様々な懸念があるわけでありまして、テロ等準備罪を作った、そのときに、山のキノコを取るのは準備行為に当たるのかとかいろいろやって、キノコは駄目になって結局砂利だけになったとか、和歌山のカレー事件で、実行犯が前の日にカレーを食べた、これはテロ等準備罪に当たるのかと。普通に自分がおなかが減ったから食べたんだったら準備行為には当たらないけれども、大量に作って大量殺人の準備をするとか、濃いカレーを作って毒の味を分からなくするとか、それだったら当たるとか、いろいろやったわけですよ、物すごい議論を。なかなかあれは大変でしたね、率直に言って。テロ等準備罪であっても相当大変であったと思います。

 そこの中で、共同謀議、扇動というもの、これを国内法でどうしていくかという問題、外務省だけじゃなくて法務省も絡んでくるわけでありまして、それについて立法措置を取るかどうか。これも非常に大きな判断になってくると思います。

山尾委員 共謀罪のとき大変な議論だったというのは、私も渦中にいましたので実感をしているわけですけれども、だからこそ、やはりちゃんと、この部分の留保というのが本当に可能なのか不可能なのか、しっかり詰めていただきたいんです。

 百五十か国以上もジェノサイド条約を批准していて、その中には北朝鮮や中国のようにかなり法体系が違う国もある。様々な国が入っているわけですね。これに入るに当たって、私は、日本国の法体系として、共同謀議や扇動というものは言葉として対象外にしているわけですから、これに入るためにそこの部分を必要がないのに変えるという方向性は望みません。

 でも、こういった日本のまともな法体系でジェノサイド条約に入れないということは、私はちょっとおかしいと思うんですね。そこの部分の努力をしっかりしていただくのは、まさに外務省の役割だというふうに思うんです。安易に条約に入るがために機能している日本の法体系を大きく変化させるということは私も極めて問題があると思っているので、ちゃんとそういう方向でしっかり法務省と検討していただきたいと思います。私も、もう少し更に具体的な考え方の提案がありましたら、またこういう場でお伝えをしていきたいというふうに思っています。

 その上で、今日、オリパラの方もやろうと思ったんですけれども、ちょっと時間の関係がありますので、引き続き今日はジェノサイドをやらせていただきたいと思います。関係省庁、来てくださった方、済みません。できれば金曜日にもやれたらやりたいというふうに思います。

 今、ジェノサイド条約の話をしましたけれども、今度は、ウイグルにおけるジェノサイドの認定の話をしていきたいんですね。

 認定の手前に調査というのがあるわけですけれども、ここ最近の国際社会の動きを見ると、このウイグルのジェノサイドの問題について、どんどんどんどん国際社会は積極的な動きを強めています。

 アメリカでは、御存じのとおり、ブリンケン国務長官が表明済み。イギリスは、四月二十三日に議会が全会一致でジェノサイドを認定しました。それこそイギリスでは、国内企業向けにウイグルのビジネスアドバイザリーを出して、そこには人権デューデリジェンスそのものがこのウイグルという地域では極めて困難で、ビジネスのリスクが高いですよというような発出までしています。

 アメリカ、イギリスと来て、カナダ。カナダは、二月二十二日に、やはり議会で全会一致でジェノサイドを認定しています。オランダも二月二十五日にジェノサイドを認定しています。フランスでは、マクロン首相が国連ミッションを派遣すべきという発言もしています。

 改めて茂木大臣に伺いますが、やはり国際社会は動きをどんどんと強め、そして広げています。このウイグルのジェノサイドの問題については、私は客観的な証拠をあまた見たときに、ジェノサイドに当たる可能性、疑いが極めて強いというふうに思っています。日本として、しっかりとこの具体的な案件について調査に乗り出す、そして実効性のある国連ミッションを派遣すべきだと外務大臣として強く表明する、そういうことを要望しますけれども、大臣、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 先週のG7外相会談におきましても、中国に関して九十分ぐらい、中国だけということでも使ったんですが、そこの中でも、香港の問題、新疆ウイグル自治区の人権の問題というのは、非常に各国から関心の高いテーマでありました。

 共同ステートメントの前に、新疆ウイグルの自治区に関して、アジアからの唯一の参加国として我が国が参加した昨年の十月六日、僕の誕生日の前の日でありますが、この国連第三委員会の共同ステートメントにおいて、国連人権高等弁務官等によります新疆への早急で効果的で自由なアクセスを許可することを含めて改善を要求しているところであります。

 そして、先週のG7の外務・開発大臣会合のコミュニケでも、現地情勢を調査するための独立した、かつ、制限のない新疆へのアクセスを強く求め、国連人権高等弁務官によるそのようなアクセスを求める、こういったことが表明をされておりまして、そういった方向に従って、実際にまだ分からないところもあります、いろいろな報道もありまして、相当グレーな部分というのがあるのは間違いないんですけれども、確実にそういった事実関係をつかんでいくということは重要だと思っています。

山尾委員 事実関係をつかむための日本国としての具体的な行動を求めたいというふうに思っています。

 時間なので終わりにしますけれども、この問題で日本は、制裁法もない、禁輸措置もない、人権デューデリジェンスの法もない、ウイグルについて、企業へのアドバイザリー指針もない。だから、監視技術についても、ソニーやシャープなどが批判対象になっていても、その反論のすべも政府としてなかなかきちっと与えていないという状況になっていますので、是非、やるべきメニューは大体そろっていますので、一つ一つ実行していただきたいということをお願いして、終わります。

     ――――◇―――――

あべ委員長 次に、原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件及び国際航路標識機関条約の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣茂木敏充君。

    ―――――――――――――

 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件

 大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件

 国際航路標識機関条約の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

茂木国務大臣 ただいま議題となりました三件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 まず、原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件は、令和二年十二月十六日に議定書の署名が行われました。

 この議定書は、英国による欧州原子力共同体からの脱退に伴い、英国において適用される保障措置が変更されること等を踏まえ、現行協定を改め、英国で新たに適用される保障措置等について定めるものです。この議定書の締結により、日英両国間において原子力の平和的利用のための適切な法的枠組みが引き続き確保されることになります。

 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件は、令和元年十一月十八日に議定書の採択が行われました。

 この議定書は、大西洋まぐろ類保存のための国際条約の対象に資源状況が問題視されてきたサメ、エイ類等の板さい類を追加し、紛争解決及び漁業主体の規定を追加すること等により、条約の円滑な運営を促進するためのものです。この議定書の締結は、大西洋マグロ漁業に関する国際協調の促進及び我が国マグロ漁業の安定的発展のために有意義であると認められます。

 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。

 最後に、国際航路標識機関条約の締結について承認を求めるの件は、令和二年二月二十八日に条約の採択が行われました。

 この条約は、国際航路標識協会を国際機関とするため、国際航路標識機関を設立すること及びその運営について定めるものです。この条約の締結は、我が国が確立してきた航路標識分野における指導的地位を引き続き維持し、我が国企業が有する技術の国際標準化等を推進するとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 以上三件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

あべ委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十四日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十分散会


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