衆議院

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第13号 令和3年5月14日(金曜日)

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令和三年五月十四日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 あべ 俊子君

   理事 伊藤信太郎君 理事 鈴木 貴子君

   理事 鈴木 憲和君 理事 辻  清人君

   理事 中根 一幸君 理事 阿久津幸彦君

   理事 小熊 慎司君 理事 佐藤 茂樹君

      安藤 高夫君    小田原 潔君

      尾身 朝子君    木村 哲也君

      城内  実君    黄川田仁志君

      小島 敏文君    國場幸之助君

      新藤 義孝君    鈴木 隼人君

      薗浦健太郎君    中曽根康隆君

      中谷 真一君    牧島かれん君

      松島みどり君    簗  和生君

      青山 大人君    岡田 克也君

      岡本あき子君    緑川 貴士君

      渡辺  周君    吉田 宣弘君

      笠井  亮君    穀田 恵二君

      浦野 靖人君    山尾志桜里君

    …………………………………

   外務大臣         茂木 敏充君

   外務副大臣        鷲尾英一郎君

   外務副大臣        宇都 隆史君

   経済産業副大臣      江島  潔君

   外務大臣政務官      國場幸之助君

   外務大臣政務官      鈴木 隼人君

   外務大臣政務官      中西  哲君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  伊吹 英明君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  岡本  宰君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  山本 英貴君

   政府参考人

   (内閣府総合海洋政策推進事務局長)        一見 勝之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       小野 啓一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 曽根 健孝君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 大鶴 哲也君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 河津 邦彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 御巫 智洋君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   本清 耕造君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    四方 敬之君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    森 美樹夫君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           堀内 義規君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官)  浅沼 一成君

   政府参考人

   (水産庁資源管理部審議官)            高瀬美和子君

   政府参考人

   (水産庁漁港漁場整備部長)            山本竜太郎君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房原子力事故災害対処審議官)  新川 達也君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      松山 泰浩君

   政府参考人

   (海上保安庁交通部長)  吉永 隆博君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)           深澤 雅貴君

   外務委員会専門員     小林 扶次君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十四日

 辞任         補欠選任

  尾身 朝子君     安藤 高夫君

  黄川田仁志君     牧島かれん君

  簗  和生君     小島 敏文君

  山川百合子君     岡本あき子君

  竹内  譲君     吉田 宣弘君

  穀田 恵二君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  安藤 高夫君     尾身 朝子君

  小島 敏文君     簗  和生君

  牧島かれん君     木村 哲也君

  岡本あき子君     山川百合子君

  吉田 宣弘君     竹内  譲君

  笠井  亮君     穀田 恵二君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 哲也君     黄川田仁志君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第九号)

 国際航路標識機関条約の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)


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     ――――◇―――――

あべ委員長 これより会議を開きます。

 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件及び国際航路標識機関条約の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房地球規模課題審議官小野啓一君、大臣官房審議官曽根健孝君、大臣官房参事官大鶴哲也君、大臣官房参事官河津邦彦君、大臣官房参事官御巫智洋君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長本清耕造君、経済局長四方敬之君、領事局長森美樹夫君、内閣官房内閣審議官岡本宰君、内閣審議官十時憲司君、内閣参事官山本英貴君、内閣府総合海洋政策推進事務局長一見勝之君、文部科学省大臣官房審議官堀内義規君、厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官浅沼一成君、水産庁資源管理部審議官高瀬美和子君、漁港漁場整備部長山本竜太郎君、経済産業省大臣官房原子力事故災害対処審議官新川達也君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長松山泰浩君、海上保安庁交通部長吉永隆博君、防衛省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官深澤雅貴君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

あべ委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

あべ委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がございますので、順次これを許します。中谷真一君。

中谷(真)委員 本日は質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。委員長始め、また先生方には心から感謝を申し上げます。

 早速質問に移りたいと思います。

 これは質問通告していないんですが、まず最初に、ミャンマーで拘束された邦人ジャーナリスト北角氏が釈放されるとの報道に接しました。事実関係についてお伺いしたいと思います。

茂木国務大臣 ミャンマーで二回目の拘束となっていた邦人ジャーナリストについては、ミャンマー側に対して、私の直接の指示の下、累次にわたって、丸山駐ミャンマー大使を始め様々なチャネルを通じて、精力的に当該邦人の早期解放を強く働きかけてまいりました。その結果、昨日、ミャンマー当局が同人に対する起訴を取り下げ釈放する旨、発表を行うに至りました。

 現在、在ミャンマー日本国大使館が当該邦人の帰国に向けた支援を行っておりまして、アパートの方から荷物を取ってきたりとか、いろいろ今やっているところでありまして、早ければ本日にも日本に帰国する方向であります。今回、相当苦労しました。

 引き続き、在外邦人の安全確保に万全を期していきたいと思います。また、ミャンマー側に対しては、関係国とも連携し、引き続き、暴力の即時停止、拘束された関係者の解放、さらに民主的な政治体制の早期回復を強く求めてまいります。

中谷(真)委員 いかなる状況においても邦人の安全を担保することは、国の最も重要な使命と考えます。そういう意味では、大臣始め関係者の皆様の御努力に敬意と感謝を申し上げたいと思います。

 それでは、まず日英原子力協定改定議定書についての質問であります。

 この議定書自体は、英国のEU離脱の不具合を補完するものというふうに理解をしているところであります。イギリスはEU離脱をいたしまして、私は結構前のめりだと思いますけれども、ルックアジアであるというふうに思っております。日本とイギリスは日英同盟を結んでいた歴史もあり、非常に強いきずながあります。

 私は、日英関係を強化するのは極めて重要だというふうに考えているところでありまして、大臣はG7に行かれた、お疲れさまでございました、そういうG7の中でもラーブ外相と、三日の日と聞いておりますけれども、二時間半パワーランチをされたというふうにも報道で接しているところであります。日英関係強化のために、具体的な方策についても話し合われたのではないかというふうに思うところでありまして、その内容について外務省からお伺いしたいと思います。

茂木国務大臣 日本と英国は同じ島国であります。そして、日英同盟とお話ありましたが、英国が南ア、ボーア戦争で相当苦労していて、東洋におけるプレゼンス、こういったものをしっかり確保する時代、そういったときに、そのパートナーとして日本と同盟関係を結んだ、それ以来の様々な歴史もあるわけであります。

 五月三日の日、私は、G7外相・開発大臣会合に先立ちまして、同会合の議長でありますラーブ外相との間で、合計二時間半にわたりまして第九回の日英の外相戦略対話を実施いたしました。私とラーブ外相との間で二回目となる戦略対話では、二国間及び国際場裏における幅広い協力について議論を行ったところであります。

 我が国にとりまして、英国は基本的価値を共有するグローバルな戦略的パートナーであります。本年三月に、英国は安全保障、防衛、開発及び外交政策の統合的見直しを発表し、外交政策上の優先事項としてインド太平洋地域への傾斜を明言し、同志国と連携していく姿勢を打ち出しております。G7の外相会合に先立ちまして、非常にタイムリーかつ充実した議論を行うことができたと考えております。

 今回の対話では、安全保障分野で私から、英国のインド太平洋地域への関心、関与拡大及び空母打撃群の日本寄港を歓迎し、ラーブ外相との間で、日英両国が自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて具体的な協力を積み重ねていくことを確認いたしました。

 また、防衛装備、技術協力、サイバーセキュリティーを含みます経済安全保障についても議論をしたほか、中国、北朝鮮、ミャンマーといった地域情勢についても認識を共有し、今後の連携を確認したところであります。

 また、経済分野では、日英のEPAが発効しておりまして、これを通じた貿易・投資の更なる促進で一致するとともに、英国のTPP11加入申請について意見交換を行ったところであります。

 新型コロナ対応では、WHOを含みます多国間主義の重要性及びWHOによる検証、改革の重要性を改めて確認いたしました。私から、日本が六月にGAVIと共催で開催する予定でありますCOVAXワクチンサミットへの英国の協力を求め、支持を得たところであります。

 さらに、英国はCOP26の議長国でもありまして、気候変動について私から日本の取組を説明し、ラーブ外相から、日本の目標発表を歓迎する、こういった旨が述べられたところであります。

 ちょうどその晩からワーキングディナーが始まって、本格的なG7の会合に入るその日に、二時間半にわたって幅広い議論を日英間で、ドミニク・ラーブ外相と二人でいろいろ話をして、言ってみますと、会議をどんなふうに進めようかということまでできた。そして、G7の結束、G7が戻ってきた、こういう意識の下で会議を成功裏に終えることもできた。非常にいい成果だった、こんなふうに考えております。

中谷(真)委員 ありがとうございます。

 その会議や会談の中でも、かなりの時間を中国問題に割かれたというふうにも聞いているところであります。この中国問題、安全保障における認識については、G7又はラーブ外相とも共有されたのではないかというふうに思うところであります。

 この安全保障における協力というのは、関係強化において極めて重要だというふうに考えているところでありまして、これを引き続き様々な面で行っていかなければいけないというふうに思っているところであります。先ほど大臣からもございましたが、防衛装備の関係でもこれを強化していく必要があるというふうに考えているところであります。

 今現在、将来戦闘機を日本主導で開発をするということを防衛省は決めたところであります。この将来戦闘機については、開発から製造、そしてメンテナンスまで入れますと、大体六兆円のビッグプロジェクトであります。イギリスも時を同じくして将来戦闘機を開発するということを言っております。ここにおける協力ができるのではないかということで、今、防衛省は模索されているというふうに聞いているわけであります。

 私は、アメリカとの協力関係というのは決まったわけであります。日米同盟の関係もありまして、これはやらなければいけないというところであります。ただ、アメリカ一辺倒だと、これもまた更に難しさは出てくるわけでありまして、アメリカとの交渉におけるやはりバーゲニングパワーとしても英国との協力というのは極めて重要だというふうに考えております。

 今現在、将来戦闘機における英国との交渉状況についてお伺いをします。

深澤政府参考人 お答え申し上げます。

 次期戦闘機の開発に係る日英協力につきましては、現在、エンジンやアビオニクスといったサブシステムのレベルでの協力の可能性を追求すべく協議を重ねているところであります。イギリス側も、本年三月に国防省が公表いたしました防衛安全保障産業戦略におきましても、日本と重要なサブシステム協力の機会を追求している旨記載をしており、また、本年の二月の日英2プラス2においても、次期戦闘機について、両国の閣僚級で、サブシステムレベルで実施中の対話を歓迎する旨確認をしております。

 次期戦闘機につきましては、国際協力を視野に我が国主導の開発を進めるという方針の下、引き続き、サブシステムレベルでの協力の可能性を追求すべく、日英間で緊密に協議を進めてまいりたいというふうに考えております。

中谷(真)委員 日米で開発をしましたF2戦闘機というのがございまして、この後継機として、今、将来戦闘機を検討しているところでありますけれども、このF2戦闘機のときに、アメリカと一対一でやったものですから、かなり大変だったということを聞いているところでありまして、この将来戦闘機をしっかりと日本主導という形で開発するという意味では、やはりアメリカというのはそういう意味では非常に難しい相手でありますから、イギリスとの関係強化というのは是非やっていただきたいというふうに思っているところでありまして、防衛省にはその御努力をお願いするところであります。

 それでは、次の質問に移ります。

 大西洋まぐろ類保存条約改定議定書についてであります。

 これは、対象となる魚類の拡大、又は紛争解決の仕組みの新設、そして、台湾を想定した漁業主体の参加を新設するものであります。この中で特に注目しておりますのは、台湾の参加であります。G7においても、中国と台湾の関係についてかなり話し合われたというふうに聞いているところであります。また、ステートメントにもそのことが明記されたというふうに聞いております。

 台湾のWHOオブザーバー参加等も含め、G7で話し合われた内容、また、G7と、中国と台湾の関係というのはこういうふうになっていくんだということを、その認識を共有できたのか、この点についてお伺いをしたいと思います。

曽根政府参考人 お答えいたします。

 我が国としまして、従来から、台湾をめぐる問題については、当事者間の直接の対話によって平和的に解決されることを期待するという方針でありまして、これは一貫しております。その上で、両岸関係につきましては、経済分野を中心に深い結びつきを有している一方で、その軍事バランスは確実に変化してきており、台湾をめぐる情勢について国際社会の関心も高まっている中で、我が国としても引き続き関心を持って注視しているところでございます。

 先般のG7外務・開発大臣会合におきましては、台湾海峡の平和と安定の重要性や、両岸問題の平和的解決で一致し、コミュニケの中で、G7の成果文書としては初めて台湾についてこのような認識が明記されたところでございます。これは、我が国の従来からの立場をG7として共有することができた、そのことを示しているものと考えております。

中谷(真)委員 四月の日米首脳会談で、五十二年ぶりですね、台湾について言及をしたというところであります。私は、これは明らかにもうフェーズは変わったというふうに思っているところでありまして、外務省も、これまでの既定路線ではなくて、新たなフェーズに入っていくべきだというふうに思っております。

 日本では尖閣諸島を非常に言われるわけでありますけれども、地政学的に、沖縄本島と台湾に挟まれた尖閣諸島、あの小さなエリアを取ること、これは私は基本的には非常に難しいと。中国の意図はあくまでも台湾、私は、台湾を取れば自然にこの尖閣諸島も取られてしまいますから、台湾を狙ってくるんじゃないかなというふうに思っているところであります。

 ロシアがクリミアを併合したようなハイブリッド戦、こういったものをしかけて、台湾に対しての影響力行使をしていくのではないかというふうに思っているところでありまして、これはもう本当に最大限の警戒を持って当たっていかなければいけないというふうに思っているところであります。

 トランプ政権でも、台湾についてフェーズが変わったということで、外交のレベルを引き上げていったというところであります。トランプ政権においては、アザー厚生長官が台湾に行かれました。また、バイデン政権でもアーミテージ氏が行かれたというところであります。

 私は、日本も外交における人的交流レベルを引き上げていく必要があるというふうに思っているところであります。二〇一七年にあかま副大臣が台湾に行かれたというふうに聞いておりますが、今後のことを考えますと、やはりハイレベルの、政府のハイレベルが行って様々な話合いを行う必要があるというふうに考えております。外務省の見解をお伺いします。

曽根政府参考人 我が国としましては、台湾との関係につきまして、基本的な価値観を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人であるというふうに考えております。

 政府としましては、台湾との関係を非政府間の実務関係として維持していくという従来の立場を踏まえつつ、日台間の協力と交流の更なる深化を図っていきたいというふうに考えているところでございます。

 日本政府関係者の訪台につきましては、我が国の基本的立場を踏まえつつ、個別具体的な状況及び必要性に応じて対応していくこととしております。

 今委員御指摘のとおり、二〇一七年三月には、当時のあかま総務副大臣が台湾を訪問しまして、台北で開催された日本台湾交流協会主催のPRイベントに参加し、開幕式に出席いたしたということがございます。

 政府としましては、台湾との関係を非政府間の実務関係として維持していくという基本方針を踏まえつつ、日台間の協力と交流の更なる深化を図っていくという考えでございますので、今委員のお尋ねの件も含めまして、そのような観点から適切に対応していきたいというふうに考えております。

中谷(真)委員 この台湾における重要性は増していますので、是非、ここは外交レベルを引き上げて関係強化に努めていただきたいというふうに思うところであります。

 それでは、次の質問に移ります。

 国際航路標識機関条約についてであります。

 この条約は、IALA、国際航路標識機関を国際機関に移行するという条約であります。これについては何の異論もないわけでありますけれども、このIALAの活動の中でVDESという、これは何かと申し上げますと、次世代AIS、これは通信ですね、海上における通信、次世代AISと言われており、従来のAISに比べて双方向通信機能を追加したシステム、これをIALAが整備していこうということを企図しているというふうに伺っております。その中で、これは非常に日本財団が熱心に取り組んでいるというふうにも聞いているところであります。

 このVDESについては、整備するに当たって、今、民間のコンソーシアムのようなものをつくってそれで整備していこう、そういう方向で今進んでいるというふうに認識をしているところでありますけれども、これをやはり日本政府としても支えていく、アンカーテナンシーで支えていくということが必要だというふうに思っております。防衛省また海上保安庁、さらには水産庁など、こういった使用者がしっかり支えていくということが必要であるというふうに考えております。

 まず、海上保安庁に、このVDESがあったら使いますかというところをお伺いしたいと思います。

吉永政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、VDESは、AISよりも高速度で広範囲をカバーできるデジタル海上通信でございます。その活用は我が国周辺海域における海上交通の安全性の向上に資するものであると、私ども海上保安庁としても考えてございます。

 これまで、IALAのe―Navigation委員会におきまして、海上保安庁の職員が議長を務め、技術基準の策定などについて主導的役割を担ってきております。また、日本の技術が今後の世界の基準となる可能性もあり、関連の日本のメーカーも注目しています。

 様々な分野で活用の可能性を有するVDESでございますが、海上保安庁としましては、海上交通の安全性を向上させるために、VDESの活用策や普及策などにつきまして、今後もIALAや国際海事機関、IMOにおける検討に積極的に参画してまいります。

 また、その検討に当たりましては、内閣府を始めとする関係省庁とも連携し、有識者の方々の御意見も拝聴しながら進めてまいります。

中谷(真)委員 時間が来ちゃいましたけれども、これは衛星コンステレーションを使うというところでありまして、外交ツールとしての宇宙利用にもなるというところであります。この宇宙利用について、是非、今後、外交上も非常に有意義でありますので、これを使っていただきたいというふうなことを申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

あべ委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 今日も質問の機会をいただきまして、大変にありがとうございます。

 三条約並びに締結する国のことにつきまして、何点か御質問させていただきたいと思っております。

 まず最初に、日英原子力協定改正議定書の件でございますけれども、この改正議定書によりまして、今回、協定の下での協力の適用対象に原子力関連技術を加えております。我が国が締結している十五の二国間原子力協定の中では、二〇一一年五月のカザフスタンとの協定以降の八協定で、協定の適用対象に技術が明記をされております。それより以前の七協定については、適用対象に技術が含まれておりません。

 二国間協定で、カザフスタンとの協定以降、協力の適用対象に技術を加えるようになったのは何ゆえなのか、また、近年締結された協定に適用対象として技術が含まれていることによって、具体的にどういう効果があると想定されているのか、また、二〇一一年からもう十年たっておりますけれども、具体的にどういう効果が生じてきたのか、政府に御答弁をいただきたいと思います。

本清政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、我が国は、核不拡散体制の強化の観点から、原子力関連資機材の輸出国が守るべき指針として、原子力供給国グループ、NSGと呼んでおりますけれども、NSGガイドラインを重視しているところでございます。

 我が国の近年の原子力協定におきましては、このNSGガイドラインや原子力協定に関する国際的な慣行を踏まえつつ、原子力関連技術を原子力協定の運用対象としてきているところでございます。

 この原子力協定の適用対象に原子力関連技術が含まれることによって、協定に従って移転される技術について、受領国政府は平和的利用に関する国際法上の義務を負うことになります。

 なお、原子力協定の適用対象に原子力関連技術が含まれない場合には、そのような国際法上の義務は生じませんが、我が国は従来から、原子力関連技術の移転に当たり、原子力基本法の基本方針を踏まえて、また原子力供給国グループのガイドラインに従って、原子力平和的利用について、相手国政府との間で保証、いわゆるコミットを取り付けておりまして、特段の問題は生じておりません。

 今後も、技術の移転が行われる際には、適切に対応してまいりたいと思っております。

佐藤(茂)委員 そこで、技術に関連いたしまして、廃炉作業でのイギリスの企業との共同開発の状況につきまして、今日は経済産業省に来ていただいておりますのでお聞きしたいと思うんです。

 日英間では、現行の原子力協定に基づきまして、我が国の原子力発電所から生じた使用済燃料のイギリスの事業者への再処理委託であるとか、あるいは東京電力福島第一原発の廃炉作業での協力等が行われてまいりました。特に、海外での廃炉作業の知見の導入について、燃料デブリの試験的取り出しについてイギリスの企業との共同開発を行っておられると伺っております。

 しかし、昨年末の十二月二十四日に、東京電力は、二〇二一年の開始を目指しておりました福島第一原発二号機での溶融燃料デブリの取り出しの延期を公表したわけでございます。理由として、イギリスでのロボット開発が新型コロナの影響で遅れているため、二〇二二年の開始を目指すということを報道で報じているわけでございます。

 廃炉技術を開発する国際廃炉研究開発機構が開発実績のあるイギリス企業に製造を委託していたんですけれども、このロボットアームの性能確認試験が感染拡大で遅れている、そういうように報道されているわけですが、今現在、英国でのロボット開発の開発状況、実際にどうなっているのか、また、コロナ感染拡大という理由でございますので、これが続けば更に作業が遅れる可能性はないのか、経済産業省の御答弁をいただきたいと思います。

新川政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、燃料デブリの試験的取り出しの開始に向けまして、使用するロボットアームの開発をイギリスにおいて進めているところでございます。これは、イギリスの企業が核融合に関する欧州トーラス共同研究施設、JETにおいて使用されているロボットアームを製作しており、この技術を活用して、迅速に開発するため、英国企業と協力をしているものでございます。

 他方、新型コロナウイルスの感染拡大によりまして、この開発作業に影響が出ておりますが、今後の遅延を最小限にして、一年程度にとどめられるよう努めているところと聞いております。

 現在、ロボットアームを格納してメンテナンスをするためのボックスへの組み込みを終えて、動作確認をしております。今後、最終動作確認後に梱包して日本へ輸送し、性能確認試験やモックアップ試験、訓練等を行い、現場へ適用することとしております。

 新型コロナウイルスの感染拡大が世界的な事象である中、今後の工程についても確定的に述べられる状況ではございませんが、今後の遅延を最小限にとどめられるように努めてまいりたいと考えております。

 引き続き、予測の難しい困難な作業が発生することも想定されますが、国も前面に立って、安全確保を最優先に、燃料デブリ取り出しに向けた取組を着実に進めていく所存でございます。

佐藤(茂)委員 福島の方だけじゃなくて、国民も非常に関心の高い問題でありますので、東京電力だけに任せるのではなくて、経済産業省もしっかりと注視していただいて、進捗状況がこれ以上遅れないように是非働きかけをしていただきたいなというふうに思うわけでございます。

 それで、今回、この改正議定書を結ぶイギリスの問題について、外務大臣に何点か、時間の許す限りお聞きしたいと思うんです。

 一つは、イギリスが三月の十六日に、先ほどの中谷議員の質問とも関連するんですが、外交、安全保障政策を包括的に見直す統合レビューを発表いたしました。EUを完全離脱したイギリスが、広範な国々との連携で国力増強を図るグローバル・ブリテン構想を掲げて、特にインド太平洋地域への関与強化を打ち出しております。

 イギリスは、経済面では、先ほどもございましたが、日本など十一か国が参加しているTPPへの加入を二月に申請しておりますし、安全保障面では、イギリス政府が、最新鋭空母クイーン・エリザベスを中核とする空母打撃群をインド太平洋地域に初めて派遣して、日本やあるいは韓国に寄港する、そういうように発表いたしました。日本と準同盟関係にあると言われるこのイギリスの艦隊が、インドやシンガポールに寄港後、南シナ海を通過して日本に寄港するということを我々も歓迎したい、そのように思います。

 それで、先日のロンドンでのG7外相会合の際に、先ほどありましたように、茂木外務大臣は、二時間三十分にわたって、イギリスのラーブ外務大臣との間で第九回日英外相戦略対話を実施されました。その際に、この統合レビューの発表後初めての対談でもありまして、その背景となる考え方であるとか内容について議論されたのではないかと私は考えておりますが、イギリスがこの統合レビューでインド太平洋地域への傾斜と言われるようなインド太平洋地域への関与強化を正式に打ち出したことを、背景となる考え方も含めて、茂木大臣はどのように認識し、評価されているのか、伺っておきたいと思います。

茂木国務大臣 ラーブ外相との日英の戦略対話でありますが、英国は、基本的価値を共有するグローバルな戦略的パートナーであります。そして、御指摘のように、三月に英国が、安全保障、防衛、開発及び外交政策の統合的見直しを発表した。

 例えば、ヨーロッパから世界に運ばれる貨物の四〇%が南シナ海を経由する、こういう問題もあります。海洋安全保障の問題を含めて、インド太平洋への傾斜を強めているということは間違いない、このように考えておりまして、また、英国、EUとも関係ある中で、様々な形で、またバランスの取れた外交を進めていく、こういう観点も持っているんだろうと思っております。

 そういった中で、日本とも自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて協力をしてきたわけでありますが、今回の戦略レビュー、統合見直し、これは英国が今後十年間の戦略としてまとめたものでありまして、そういった意味で、一つは、やはりこういった英国のインド太平洋地域への関与の拡大、さらには空母打撃群の日本寄港、こういったことも発表しているわけでありまして、こういったものを歓迎をしていきたいと思っております。

 三月にこの統合見直しを発表して、私が会いましたのは五月の三日ですから、ほとんど間を空けずに日英間でこういった安全保障の問題、さらには海洋の問題、経済の問題、様々な問題について意見交換をする、すり合わせができたということは極めてタイムリーであった、このように考えております。

佐藤(茂)委員 その上で、もう一つ統合レビューで、最近ちょっと報道が薄くなったんですが、懸念されるのが、保有する核弾頭数の上限目標を引き上げたということが懸念材料としてあります。イギリスは、保有する核弾頭の上限を現状の百八十発から二百六十発と四四%引き上げたわけでございます。他国による核兵器の増加と多様化などを理由に挙げておりますけれども、報道では、台頭する中国やロシアに対抗する狙いだ、そのように言われているわけでございます。

 イギリスの核弾頭保有数というのは、冷戦期の一九七〇年代の後半が最大で、約五百二十発がピークで、それから、ソ連が崩壊して冷戦が終わると同時に、脅威の縮小ということもあって保有数の削減が進んでまいりまして、最近では、二〇一〇年には、核弾頭数の上限を二百二十五発から二〇年代半ばまでに百八十発とする、そういう軍縮計画を打ち出しておりました。

 今回の核弾頭の上限の引上げというのは、そういう冷戦終結以降続いてきたこのようなイギリスの核軍縮の流れを変えるものであって、核政策の転換である、そのようにも言われているわけでございます。

 また、イギリスが加盟している核不拡散条約というのは、第六条で、核保有国に核軍縮に向けて誠実に交渉を行う義務を定めているわけでございます。イギリスの新方針というのは、この第六条から見ても、そういう第六条の考え方に背を向けるものでございまして、NPT体制維持という観点から見ると、このNPT体制を弱体化させるものではないか、そのように言われているわけでございます。

 特に、今年一月には、核兵器の開発であるとか保有、使用を禁じる核兵器禁止条約が発効して、批准国も徐々に増える中で、核なき世界を目指す声が徐々に高まっている中でイギリスが核弾頭の保有増ということを発表したというのは、こういう核軍縮の流れに逆行するものであると我々は捉えているわけでございます。

 これがイギリスだけにとどまらず、ほかの保有国も刺激して軍拡競争にならないように何とか対応しなければいけない、そのように考えているんですが、唯一の被爆国である日本政府として、このイギリス政府の核弾頭保有増の表明についてどのように認識されているのか、また、先日の第九回の日英外相戦略対話では日本の考え方を伝えられたのか、外務大臣にお伺いをしておきたいと思います。

茂木国務大臣 日本の考え方はしっかり伝えさせていただきました。

 また、イギリスの核体制の見直しと、それイコール、NPT体制に対するコミットメントがなくなるということは全く別だ、こういう説明でありまして、英国は、今回の変更の背景として、一部の国において核兵器の著しい増強、多様化が進められ、新たな技術の開発や核ドクトリンの脅威が高まっているなど、安全保障環境が変化しているとの認識を示して、自国及びNATO同盟国のために最小限必要な核抑止力を確保するため、保有核弾頭数の上限を引き上げる方針となった、このように説明しておりまして、今後も、国際安全保障環境や潜在的な敵対国の活動を踏まえて核体制を継続的に見直す、このように言っております。

 同時に、英国は、核兵器のない世界という長期的な目標に引き続きコミットをしている旨明らかにしておりまして、核軍縮を含みますあらゆる側面において、NPTの完全な履行に強くコミットをし、核兵器国としての責任を真剣に受け止めていると述べているところであります。

 我が国としては、NPTの規定に従って、関係国に対して一層の核軍縮努力を促していきます。五月三日の戦略対話におきましても、私からラーブ外相に対しまして、唯一の被爆国として、核軍縮の必要性、これをしっかりと訴え、次回NPT運用検討会議に向けて緊密に連携していくことを確認したところであります。

佐藤(茂)委員 日本政府の政策として、やはり核保有国と非核保有国との橋渡し役をやっていくんだ、そういうことをずっと一貫して言われておりますので、こういう一つ一つの動きに、たとえ準同盟国であろうとも、やはり言うべきことはしっかりと言っていく、そういうことが大事ではないかというように思います。

 最後の質問にさせていただきたいと思うんですが、大西洋まぐろ類保存の条約改正議定書について、特に条約上の漁業主体の地位についてお聞きをしたいと思います。

 本議定書の発効によりまして、台湾が、自らの意思表明により条約上の漁業者の地位を獲得し、意思決定を含む委員会の関連業務に参加することが可能となります。先ほど中谷議員もこの件については触れられたんですが、この件について何点かまとめてお尋ねをいたします。

 台湾に条約上の漁業主体の地位を獲得することを認めた理由は何ゆえかということと、また、別の国際機関であるWHOの年次総会の台湾のオブザーバー参加については中国が断固反対しておりますけれども、台湾が本条約上の漁業主体の地位を獲得することに中国は反対しなかったのかも含め、御答弁いただきたいと思います。

 一方で、二〇一三年七月十日までに協力的な地位を獲得した漁業主体である台湾のみに限定して、同日より後に協力的な地位を獲得したボリビア、スリナム、ガイアナ及びコスタリカは条約上の漁業主体の地位を獲得できないのはどのような理由によるのか、御答弁をいただきたいと思います。

四方政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、台湾でございますけれども、従来より世界有数のはえ縄漁船勢力を有しておりまして、条約区域内で相当量の漁獲を行っております。

 大西洋まぐろ類保存国際委員会との間では、台湾は、これまで、協力的な地位を獲得した漁業主体として、これはICCATと通称しておりますけれども、ICCATの保存管理措置を尊重してまいりました。

 この今回の議定書により台湾が基本的に締約国と同一の権利義務を有することになりましたら、漁業資源の保存管理の観点から、条約区域のマグロ類等の長期的な保存及び持続可能な利用に加え、国際協力の一層の促進が見込まれますので、台湾がICCATの関連活動に参加できる規定を新設することになりました。このことは、我が国の安定的な漁獲にも資することが期待されます。

 中国は、台湾がICCATの関連活動に参加できる規定を追加するこの議定書の採択には反対いたしませんでした。この議定書の採択によって、条約区域のマグロ類等の長期的な保存及び持続可能な利用並びに国際協力が一層促進されることは、中国にとっても安定的な漁獲をもたらすというふうに中国側が期待したというふうに理解しております。

 また、委員から御指摘のありました四か国との関係でございますけれども、この四か国、現状では漁業活動は限定的でございますけれども、我が国といたしましては、当該国の意向及び今後の漁業活動次第では、この条約への加入を促して、応分の義務を果たすよう求めていくこととしたいと考えております。

佐藤(茂)委員 最後になりましたけれども、先ほどの中谷委員の冒頭でも発言がありましたが、ミャンマー国軍側に拘束されておりました邦人ジャーナリストの北角裕樹さんが、起訴を取り下げ釈放されたことに関わって、日本政府及び関係者の御努力に心から敬意を表しまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

あべ委員長 次に、青山大人君。

青山(大)委員 立憲民主党の青山大人でございます。

 まずは、大臣、せんだってのG7そしてヨーロッパ歴訪、大変お疲れさまでございました。

 前回の当委員会でも、そういった中で、様々な質問に対して大臣もお答えになりましたけれども、改めて、大臣、本当に今回とても精力的に行動されたわけでございまして、ちょっと言い残したこととか、これだけは言っておきたいとか、そういった、もしつけ加えることがあれば、是非、G7に限らず、今回のヨーロッパ歴訪も加えまして、何かあったら、まずは御答弁の方をお願いします。

茂木国務大臣 言い残したということでもないんですが、今回、ゴールデンウィークを利用させていただいて、G7、ロンドン出張の前後に、スロベニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、さらには、ポーランドにおきましては、チェコ、スロバキア、ハンガリーも含めたV4との対話も行うこともできました。

 G7だけでも二日以上にわたる長い会議で、国際社会が直面しますコロナ、気候変動、さらには自由で開かれたインド太平洋での協力の問題、さらには、地域情勢として中国、北朝鮮、ミャンマー、ロシア、さらには中東、リビア等々、幅広い分野について、G7の各外相、お互いに、会うのは久しぶりだなという感じで、対面で議論をさせていただいたところでありまして。

 やはり、オンラインでも会議、いろいろなマルチの会議をやっておりますけれども、かなり防疫措置は取っておりました。会場になりましたランカスターハウスというところ、かなり大きな会場なんですけれども、各国、大臣以外でそのランカスターハウスに入れる人間も五人に限定をされる。そして、このG7の閣僚会議、大臣会議をやる部屋には、各国、大臣以外一人しか入れない。こういう非常に厳格な中でありましたが、非常に活発な、率直な、また、様々な課題についてタイムリーな議論というのが行うことができたのではないかな、こんなふうに考えております。

 同時に、マージンという言葉を使うんですが、ちょうど、G7の会議をやりますと、午後が始まると三時ぐらいから四時ぐらいが一旦休みになる、そのマージンの時間、午前中一回ぐらい、午後一回ぐらい、ここでバイの会談を入れたりします。このG7のマージンでの会合、ここでも十何か国と私は会談を行いましたし、全体を合わせますと、今回の欧州出張で二十のバイ会談、これを行わせていただきまして、そういったバイ会談、さらにはG7、そして日米韓、V4プラス日本、様々なマルチの会談におきまして、今、国際社会が置かれている状況、また、そこの中での日本の立場、そういったことについては、しっかり説明、主張することもできたと思っております。

 同時に、例えば北朝鮮の問題、そしてコロナの問題、これは会議でいいますとリード役といいまして、誰かが最初にしゃべって、それがキー等になってその議論が進むという話になるわけですけれども、北朝鮮、そしてまたコロナについては私がリード役を務め、そして中国の問題についても、アメリカのブリンケン長官がリード役で、その後すぐに私がそれを受けて発言するという形でありまして、これはミャンマーの問題もそうなのでありますが、様々な問題について、日本が、議長国であります英国やまた米国とも連携をしながらかなり議論を引っ張り、そしてまたその成果を共同コミュニケに反映することもできた、こんなふうに考えております。

青山(大)委員 大臣、まさに今おっしゃったように、今回、コロナなので、事務方の方もなかなか入れなくて、基本的に大臣が本当に直接対話するという中で、ちょっとこれは、少し、大臣の感じた印象でもいいんですけれども、当然、G7、日本以外全て欧米の国です。ヨーロッパの中でも、イタリアなんかは最近中国からの資本が相当入ってきているとか、そういう状況もございます。大臣もこれまで、副大臣とか、いろいろな外交を経験したと思うんですけれども、ヨーロッパの各国のアジアに対するそういった見方、見立て、何かそういった変化とか、ちょっと感じたこととかはございますかね。

茂木国務大臣 もちろん、中国、経済的にも大国になってきておりまして、この国と全くつき合わない、こういうスタンスではないんだと思っております。

 そういった中で、特に、これは力による一方的な現状変更の試みとは別に、経済面でも中国に対するある意味警戒感は高まっているな、こういうことを感じたところであります。

 その一つは、先進国におきましては、やはり、例えばサプライチェーンの問題であったりとか5Gの問題であったり、一国に依存し過ぎる、こういったことに対する危険性、経済安全保障、こういう側面を非常に各国が意識するようになった、こんなふうに思っているところであります。

 そして、もう一つ、例えば自由で開かれたインド太平洋、これを進めるに当たっても、中国の一帯一路というものを排除するとか、これと違う選択肢を与えるというものではありませんけれども、中国の一帯一路についても、透明性であったりとか債務の持続可能性、こういったものを十分踏まえた上で進める必要がある。仮に経済的に大きく貸し込んで、その上で何らかの経済的な制裁を持ち出して政治的な意向を通させる、こういうことがあってはいけないのではないかなということでありまして、G7としては、やはり違う選択肢、途上国等々にとってより魅力ある選択肢をきちんと示していく、このことが我々の責務ではないかな、多くの国からそういう意見も出されたところであります。

 最後に、例えば、中国、大国でありますけれども、一方で、WTOの場、さらには開発金融の場、こういったところでは世界最大の途上国として様々な恩恵を被っているということでありまして、これを国際社会が支え続けるという構造、これはやはりゆがんでいる。やはり中国にも大国としての責任、こういったものをしっかり果たすように働きかけを行っていくことが重要だ、こういった意見が多く出されまして、総体的に言いますと、中国は大国であるんですけれども、大国らしく振る舞ってほしい、さらには、大国として問題がある行動があったら、それについてはきちんと指摘をし、是正をする、こういう働きかけをしていこうということでは一致できたのではないかなと思っております。

青山(大)委員 思いのこもった詳細な御答弁、ありがとうございます。

 今、経済安全保障について言及がありましたけれども、外務省のホームページを拝見しましても、今回、茂木大臣と英国の外務大臣の間で、TPP、イギリスの方からそういった意欲的な話があったみたいな感じのことが書いてあったんですけれども、実際どうでしょう、TPP、イギリスの方の参加のこれからの見込みというのはどんな感じでしょうか。

茂木国務大臣 イギリスの方は既に加盟申請を出しております。今後、今年はTPP委員会の議長国は日本でありますから、参加に当たっては各締約国の賛同というものが必要であります。

 同時に、TPPにつきましては、物品だけではなくて、サービス、さらには様々なルールについてTPPのハイスタンダードな基準を満たす準備ができているかどうか、このことも重要でありまして、イギリスとの会話の中では、しっかり今そういった準備を進めているということでありまして、まずイギリスがこういった形でTPPに申請をし、そしてまたしっかりした準備を進めているということを歓迎しつつ、また議長国として締約国間の調整も今後進めていきたい、こんなふうに考えております。

青山(大)委員 分かりました。

 あと、今回、G7のコミュニケを拝見しますと、前文の次に外交・安全保障政策のところがございまして、最初にロシアが挙げられています。大臣、今回、G7の会合ではいわゆる北方領土の話なんかは出たんでしょうか。また、大臣がそれについて何か述べたことはあったんでしょうか。

茂木国務大臣 世界地図といいますか、ユーラシアの地図を大体インドあたりで点線を入れて折り曲げてみますと、日本そして東アジアで起きている様々な一方的な現状変更の試み、これは東ヨーロッパ、西ヨーロッパにおいても同じようなことが考えられる。ウクライナで起こっていること、クリミアで起こっていること。そういうことであります。

 どちらかといいますと、ロシアをめぐっては、ドイツであったりとかフランスであったりとか、そういった国がリード役をしながら議論を進めたところでありますが、G7として、これまでもロシアをめぐる情勢については高い関心を持って注視をしてきましたし、本年一月には、ロシアにおけるナバリヌイ氏の逮捕について、また、四月には、ウクライナとの国境沿いであったりとかクリミアにおけるロシア軍の大規模な軍事増強について、G7の外相声明、既に発出をしているところであります。

 今回のG7外相会合では、G7として、ロシアによる情勢を不安定化させる行動の負のパターン、これが継続していることについて深い懸念を共有いたしました。その上で、ロシアとの関係が安定的で予見可能なものとなることに関心を有するとの認識で一致をしたところであります。G7として、国際的に認められた国境内におけますウクライナの主権、そして独立及び領土の一体性への支持も改めて確認をしたところであります。そして、政治的解決に向けて、ミンスク合意の完全な履行のための取組を支持する旨強調した。

 これが全体の話でありまして、ロシアについて、私からは、我が国の基本的立場を踏まえて、地域の安全保障環境が大きく変化をする中で、国際場裏におけるロシアの様々な行動を踏まえて、G7として連携して対応することの重要性を指摘をして、日本として引き続きロシアとの対話を継続していく考えを説明をしたところであります。

 つまり、東アジアにおいても安全保障環境というのは大きく変わってきている。そこの中で、軍事面で中国とロシアの連携というのも様々な動きが見られるわけでありますけれども、この安全保障環境を考えたときに、ロシアとの対話、これを行っていくことも極めて重要だ、こういったことも指摘をさせていただいたところであります。

青山(大)委員 ということは、特段、北方領土については話に出なかったというようなことでよろしいですかね。はい。

 ちょっとG7とは少しそれますけれども、ゲストに参加するはずのインドが結局来られなくて、オンライン参加というふうになったと聞いております。インドで新型コロナウイルスの感染状況が深刻化しているということですけれども、やはり、現在、インドには約一万人弱の邦人がいるとされております。不安な日々を過ごしていると思いますけれども、外務省の海外安全ホームページでは、インド滞在中の皆様へ、インド国内の医療提供体制が逼迫するおそれがあると注意喚起の情報も出ております。

 残念ながら、インドでは、ニューデリー在住の四十代の日本人女性が亡くなったという話も聞いております。デリー首都圏では、PCR検査の予約ができない、出国に際し必要な検査証明書の発行に四、五日かかるとも言われております。

 インド国内が相当混乱している状況と推測されますが、医療提供体制の現状、在留邦人が医療を受けられる状況なのか、また、ここが一番大事ですけれども、日本へ帰国する希望者に対して、帰国できる状況にあるのか、そういった中で、政府、外務省に支援についてお伺いします。

森政府参考人 お答えいたします。

 新型コロナウイルス感染症の拡大が進んでいるインドにおきまして、政府は、在留邦人の方々に対し、外出規制でございますとかPCR検査機関に関する情報提供などの支援を行ってきております。

 邦人の帰国に不可欠なPCR検査、御指摘いただきましたが、十分な計画性を持って準備する限り、受検及び出国前七十二時間以内の陰性証明書の入手は現時点では可能な状況となっております。また、居住地において検査証明の取得が難しく、出国に支障を来すおそれがあるような場合には、現地の大使館、総領事館に是非御相談いただきたいという旨の周知をしております。

 邦人の方々の帰国の手段でございますが、現時点では多くの日系航空会社の直行便が運航されており、これらの直行便の中には十分な数の空席がまだ残されているという報告を受けております。

 引き続き、インドにおける感染状況等もしっかりフォローしつつ、邦人保護のため必要な対応を行ってまいります。

青山(大)委員 まだインドは日本との便が飛んでいるということですけれども、御承知のように、当然、インドというのはとても大きい国でございますし、私もインドへ行ったときは、やはりインドの国内の移動もすごく大変なわけでございまして、空港によってはなかなか日本便がないところもあると思いますし、逆に、インドに限らず、そういった、もう日本便が減っているところもあると思うんですよ。

 当然、韓国なんかはチャーター便を飛ばして、例えばインドに飛ばして自国の国民を連れ戻したりとか、マレーシアなんかもそういうことをやっていると聞いていますけれども、日本の場合は、そういったチャーター便とか出すようなタイミングというか基準というか、その辺の判断というのはどういうふうになっていくんでしょうか。

茂木国務大臣 インドについて申し上げると、今、韓国は定期便が飛んでおりませんから、チャーター便を派遣したんだと思っております。日本の場合は、先ほど森領事局長の方からありましたように、定期便がございます。キャパからいいますと、日本の方がそういった意味で二十倍ぐらい持っているのではないかな、ざっくりした計算でいいますと、そういう状況であるわけであります。

 その上で、日本は、これまでも、昨年一月末からの武漢からの帰国オペレーション、八百二十六名、それから、アフリカ十五か国からアディスアベバに全員を集めて、各国に数名ずついる方を全部拾い上げる、こういうオペレーションを始め、百一か国、一万二千名の帰国オペレーション、こういったことをやってきた実績も踏まえながら、万全の体制で臨んでいきたいと思っております。

 その上で、どういう手順になるかといいますと、邦人の避難が必要となる事態が発生する場合には、まずは、極力、現在のインドもそうでありますが、商用定期便が利用可能なうちに、在外邦人の出国又は安全地帯への移動の確保に努めることになる。その上で、商用定期便での出国が困難、あるいはそれだけでは不十分、こういう状況に至った場合には、個別具体的な状況に応じて、あらゆる可能性を追求しながら、最も早く、そして安全な手段を活用して邦人の退避支援に最大限努める。この最も早く安全なという場合に、商用便の乗り継ぎもあると思いますし、直接で、また、そういうことよりもチャーター機の方がいい、こういう場合もケース・バイ・ケースで出てくるんだと思っております。

 いずれにしても、海外に渡航、滞在する邦人の安全確保、これは外務省の最も重要な責務の一つでありまして、また、そういった意識はこのコロナ禍でより強く外務省の中に今根づいている、こんなふうに思っておりますし、経験も積んできた。そういったものも生かしながら、今後とも、邦人の安全確保、また必要な帰国支援等、万全を期してまいりたいと思っております。

青山(大)委員 是非、日本人の方たちが少しでも安心できるように、引き続きその辺の発信の方をお願いいたします。

 それでは、日英原子力協定改正議定書について質問いたします。

 我が国は、資源の有効利用の観点から、原子力発電所から出る使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム等を有効利用する核燃料サイクルを推進していますが、現在は、使用済燃料の再処理体制が十分ではないため、これまで、その再処理の大半をイギリスやフランスなどの海外に依存しており、今回の日英原子力協定に基づき、英国にも再処理を委託しておりますが、その英国では二〇一一年にMOX燃料加工工場が閉鎖されたため、現在、英国内で燃料加工できず、同国に保管されているプルトニウム等は、他国に移送してMOX燃料に加工するなど何らかの方法を取らなければ我が国に持ち帰れないと理解しています。

 このような状況の下において、英国で保管されている日本のプルトニウムについて今後どのように取り扱っていくのか、お考えを伺います。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国のエネルギー政策といたしましては、委員御指摘のように、原子力発電を進める上で生じます高レベル放射性廃棄物に関しましては、その減容化、有害度の低減、そして資源の有効利用という観点から、これを再処理して、核燃料サイクルを進めるということを基本としてまいってございます。

 その上で、お尋ねの英国内に保管されていますプルトニウムでございますけれども、現在、国内に建設中の六ケ所の再処理工場の運転開始、ようやく許可が出ましたので、もうじきこの稼働に向けた準備が整ってまいるわけでございますが、それまでの措置といたしまして、過去、国内の原子力事業者は、英国に使用済燃料の再処理を委託してきたものがございます。その結果生じました、そして保管されておりますプルトニウムの量、こちらは、二〇一九年末時点で約二十一・二トンとなっていると承知してございます。

 このプルトニウムについては、エネルギー基本計画を定めている中で、利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則を引き続き堅持し、プルトニウム保有量の削減に取り組むということとしておるところでございまして、海外保有分、これは英国分も含めてでございますけれども、着実な削減というのは重要な課題だ、このように認識してございます。

 また、委員御指摘のように、英国内のMOX燃料工場が閉鎖されたということを踏まえますと、英国内に保管されているプルトニウムの取扱いについて、日英両国間で、政府間で、お互いの政策に関する情報を共有し、将来の管理に向けて共に取り組むための政府間協議、これは二〇一八年十月に局長級の対話として始めているわけでございますが、このやり取りを継続していきたいというふうに考えてございます。

青山(大)委員 まだ継続中ということでございますので、しっかりと進めてほしいということ。この質問はこれで終わりにします。

 次、先ほど、ほかの委員からもありましたけれども、本日の議題でございます大西洋まぐろ類保存条約改正議定書では、台湾が、条約上の漁業主体として、意思決定を含む大西洋まぐろ類保存国際委員会、ICCATの関連業務に参加できるとする規定が設けられております。従前から、漁獲枠を割り当てられ、締約国と同様に保存管理措置の遵守に努めてきた台湾に対し、締約国とおおむね同一の権利が付与されているのは妥当な措置であると考えます。

 本日は、この条約、G7の関連で、台湾、そしてWHOについて少し質問させていただきます。

 今月二十四日にWHO総会の開催を控える中、先般のG7のコミュニケにおいて、WHOへの台湾の意義ある参加を支持することが明記されました。しかし、五月十日に、WHOの法務担当が、招待するかも含め、総会を構成する加盟国の決定することだ、事務局の決められることではないと従来の立場を述べたことで、こうした機運の高まりは大きく水を差されました。

 五月十一日には、台湾の外交部が、参加申込期限の五月十日までにWHOから招待状が届かなかったことを明らかにしており、今年もオブザーバー参加ができないような公算が高まっております。

 台湾が参加を拒まれているのがWHOだけではないことを考えると、この問題は、当該国際機関に即した理由だけではなくて、より本質的な点から考えてみるべきだと思います。

 そこで、茂木大臣にお伺いします。

 日中関係、中台関係などの考慮すべきポイントが幾つかある中で、我が国として、国際機関への参加、関与という点で、台湾がどのように国際社会で扱われるべきだと考えていますか。

 また、そのために我が国としてどのような働きかけを行っていく意向なのか、G7の共同声明さえも袖にされてしまった感がある現状では、何か知恵を絞ることも必要であると思います。

 今回の議定書に規定されている条約上の漁業主体という概念も、中国が既にICCATに加盟している中で、台湾が、締約国ではないものの、漁業主体として実質的に委員会の活動に参加することが可能になるという点で参考になるのではないでしょうか。

 何か茂木大臣の方で考えがあれば、是非お伝えください。

茂木国務大臣 課題によって、どういう地域の捉え方とか国の捉え方をするかというのはあると思うんですが、例えば通商の分野、TPPを見ましても、関税として独立した地域、これは加盟の資格があるということで、当然、台湾のような地域も加盟の資格が出てまいります。

 また、今の新型コロナ、こういう国際的に広がる感染症の問題でいいますと、現実的に、地理的に空白ができてしまうということはあってはならないことなんだと思っています。

 さらには、こういう難しい課題を乗り越えていく意味では、台湾のように、昨年、コロナの封じ込めに様々なIT技術を使ったりしながら成功した、こういう知見であったりとかノウハウ、こういうものは、やはり国際社会で私は共有されるべきものであると思っております。

 決してこれが、何らかの台湾の利益のために参加するというよりも、これによってWHOにおけるより幅広い議論であったりとか各国の対応にも資するようなことになる、こんなふうに考えておりまして、そういった観点からも、先日のG7におきましても、台湾のWHOへのオブザーバー参加、全会一致という形で共同ステートメントの方にも載せたわけであります。

 様々な議論が当然こういう問題になると出てくると思うんですが、一定の政治的思惑というよりも、国際社会が抱えている課題を解決するために、どういう人たちがこのグループに入ったらみんなでよりよく解決できるんだろう、こういう視点を持つことが必要ではないかな、そのように考えております。

青山(大)委員 今後、具体的にいろいろやる中で、やはり、このWHOの事務局長の選挙に向けて、我が国の対応の方針というのも是非、大臣、しっかり詰めていってほしいなというふうに思います。

 御承知のように、事務局長、任期が五年で、今のテドロス事務局長の在任期間はあと残すところ一年余りということでございます。もしまた再選されちゃうと、また更に五年間務めることになるわけでございます。テドロス事務局長の組織運営にちょっと偏った疑念があるというのも何となく知られておりますし、次期事務局長候補の擁立に当たっては、特定の国の意向に影響を受けることなく公正中立な組織運営を主導できるかといった点をまず重視していくべきだというふうに思います。

 他方で、現在、十五機関存在する国連専門機関のうち、中国人がトップのポストを占めているのが四機関であるのに対し、日本人がトップのポストに就いている機関は一つも今ございません。その意味で、国際機関における我が国の存在感を高める意味でも、候補者の擁立に当たってはいろいろ考慮すべきでございます。

 政府も、こうした状況に対しては危機感を持っていると思います。関係省庁連絡会議を開催して、国際機関のポスト獲得へ向けて一体となって取り組むということも聞いております。また、今年八月には、万国郵便連合の国際事務局長選挙において日本人候補が擁立もされております。

 組織運営の是非が焦点となると見られるWHOの事務局選挙においても、WHOの公正中立な組織運営といった観点に加え、国際機関における我が国の存在感の向上といった観点からも検討し、候補者擁立の対応方針を固める必要があると思います。

 関係省庁連絡会議は、今年の夏に第二回会合が開催されるとも聞いております。WHO事務局長選挙における候補者の擁立について、我が国としての対応方針は固まっているのでしょうか。政府の検討状況をお伺いします。また、どういった人物がWHO事務局長として適任なのか、また日本人候補の擁立を強く推し進めていく意向もあるのか、併せてお伺いします。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 WHOの事務局長につきましては、今委員から御指摘がございましたように、任期はあと約一年ということでございます。その後任あるいは次の事務局長の選任については、これから様々なプロセスが始まっていくというふうに承知をしておりますので、日本政府としても、これに対してしっかりと様々な観点から考慮をしながら対応していきたいと考えております。

茂木国務大臣 昨年来いろいろな国際選挙もやってきました。WIPOについても、知財に関わる問題であって極めて重要だということで、関係国と連携してシンガポールのタン事務局長を当選に導いたわけであります。さらには、WTO改革が必要な中で、オコンジョ事務局長、恐らく日本が一番中心になって動いて事務局長に選任した、こういうプロセスもあります。

 当然、それぞれの分野で必要とされる知見であったりとか国際ネットワークを持つ、こういう人材としての優秀さもあります。さらに、選挙ですから勝たなくちゃいけない、こんなふうに思っていまして、勝てる候補をどう擁立するか、自前の候補がいい、自前でなくとも、勝てる候補で、また多くの国を巻き込んでそういった改革を実現できる候補、こういったものを考えていきたいと思います。

青山(大)委員 茂木大臣は選挙はお得意ですので、そういったことを踏まえながらしっかりとやってください。

 最後の質問です。国際機関における日本人の存在感ですけれども、まさに今回出ている国際航路標識機関の件ですけれども、その前身となる国際航路標識協会、IALAにおいて、日本は、一九五九年に海上保安庁が国家会員として加盟して、それ以降、連続十一期にわたって日本人が理事を務めている、また、二〇一六年からは、次世代の航空支援システムについて検討し、国際海事機関への提案等を行うe―Navigation委員会の議長を海上保安庁の職員が務めているというふうにも聞いております。やはりこういった国際機関で日本人が活躍できる環境をこれからもつくっていきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。

 最後、私は多分、今回が外務委員会最後の質問だと思いますけれども、せんだって南樺太の資料の件を外務委員会で質問しまして、早速大臣の指示で内閣府の方が少し動いてくれましたけれども、ちょっとまだまだ課題がございますので、是非、南樺太の貴重な資料の保存について、大臣、これからもちょっと頭の片隅に置いてもらいながら、お力添えの方、よろしくお願い申し上げます。

 以上です。ありがとうございました。

あべ委員長 次に、緑川貴士君。

緑川委員 皆様、お疲れさまでございます。立憲民主党・無所属の緑川貴士です。

 条約の前に幾つかお尋ねをいたします。

 インドでは変異株が猛威を振るっております。感染者は累計でおよそ二千四百万人、亡くなる方が一日に四千人以上、火葬も十分にできなくて川に流されている、痛ましいお話も伺います。収まる気配がない厳しい状況が続いているという中で、医療機器や資金の無償援助を日本として応援をしていくということは大切です。

 一方で、変異株の流入から日本国民を守らなければなりません。一日三十万人以上の感染がインドで二十日以上も続いているという中で、インドを変異株流行国・地域に指定せずに、五月に入るまで水際対策が強化されてきませんでした。

 その意思決定というのは関係省庁で連携をして行うというのは承知しますけれども、それを判断する上で重要なインド政府の動きを含めて、情報にいち早くアクセスできる在外公館の情報収集、インド政府高官とのやり取りなどを含めて、これまでの指定に至る現地のプロセスがどういうものであったのか、大臣からお伺いしたいと思います。

森政府参考人 これまで、日本政府全体といたしまして、各国の感染状況等を見極めつつ、新型コロナの感染拡大を防ぐために必要な、いわゆる水際対策措置を講じてきております。

 この中で、外務省では、各国・地域における変異株を含む感染状況、諸外国における水際対策等につき、御指摘いただきましたとおり、在外公館の情報網それから各国政府との関係を活用いたしまして随時情報収集を行い、国内におきまして関係省庁と共有してきております。

 一連の出入国あるいは検疫に関わる、いわゆる水際措置でございますが、このような情報も踏まえて関係省庁間で検討し、政府全体として決定してきておるものでございます。

 B・1・617、いわゆるインドで確認された変異株でございますけれども、この拡大を受けた対応に関しましては、この変異株は感染性、重症度等にまだまだ未知の部分が多いということ、それから、各国内での感染状況の悪化、我が国の空港検査での陽性者数が多いことなどを踏まえまして、五月七日に、インド、パキスタン及びネパールの三か国からの全ての入国者について、検疫所長が指定する施設における六日間の待機等、水際措置を当分の間強化するとともに、これらの国への……(緑川委員「もういいです、検疫措置はいいです、分かりました」と呼ぶ)

 さらに、五月十二日には、懸念すべき変異株にいわゆるインド変異株が指定されたことを受けまして、三か国からの外国人の再入国、こちらも、当分の間、特段の事情がない限り拒否することといたしました。

 引き続き、政府として、国民の健康と命を守り抜いていくことを最優先に、新型コロナの国内での蔓延を防ぐため、政府全体として必要な措置を確実に実施してまいる所存でございます。

茂木国務大臣 今話がありましたように、必要な情報というのはしっかりと収集した上で、政府、関係省庁と共有して、最終的にどういう水際措置を取るか検討しております。

 早いか遅いか、これについてはいろいろな判断があると思いますが、今、EUを見た場合に、インド等三か国に対しては日本のような厳しい措置は取っておりません。日本の方が先を行っております。

 先を行っているからいいということではありませんけれども、日本としては、先手先手で対応していきたい、こういう観点から五月七日に決定をさせていただきました。

緑川委員 先手とは全く真逆だと思いますね。

 三月も、やはり御答弁を大臣御本人から頂戴しましたけれども、情報共有をしっかりしているんだ、連絡を密にしていらっしゃるんだということを、今日も同じ御答弁をいただきましたけれども、やはり、これは野党だけじゃないですよ、与党も含めて、水際対策の強化の指定のタイミングというのは遅かったという声はあるわけですから。

 これは資料をお配りしているんですけれども、ちょっと御覧いただきたいと思います。一なんですけれども、インドでゲノム解析されたコロナ感染者のサンプルのうち、赤い色で描いてあるところ、右側ですね、B・1・617というのがいわゆる二重変異株です。その検出割合というのを含めて、それぞれの株の推移が示されています。これはヒンドゥスタン・タイムズというインドの英字新聞ですが、先月十六日の記事です。

 御覧いただくと、二重変異株が三月に広がって、下旬からはそれが急拡大して、四月の初めには八割を占めるに至っているということが、解析上は、四月の中旬には明らかにされているわけです。

 こうした情報というのは現地で当然いち早く把握されているでしょうし、本当の意味で関係省庁で共有をしているのであれば、やはりもっと早く流行国に指定されるというタイミングが、しかるべき対応で行われるべきだったんじゃないでしょうか。大臣、いかがですか。

茂木国務大臣 それは考え方だと思うんですけれども、様々な情報、一つの新聞だけではなくて、いろいろな情報というのは取るわけであります。そこの中で、先ほど申し上げたように、では日本の対応が遅かったかというと、遅くないという話は申し上げました。だからいいかどうかという話はありますけれども、あらゆる国が例えば再入国を禁止している段階で、日本がやっていない、現段階で、そういうことで緑川先生の御意見があるのでしたら、それはそうであろうと思いますが、少なくとも、EUと比べた場合に日本の方が先にこういった措置を取っている、こういうことを申し上げているだけです。

緑川委員 そのほかの情報で、例えば、全く変異株が広がっていませんみたいな情報というのはないんでしょう。それはあるんですか。ほとんどないと思いますよ。多くは、もうこれだけ深刻な状況になっていますと伝えている情報がほとんどじゃないでしょうか。

 そして、これまでの事実関係も含めて、インドとの2プラス2も、インドで感染が拡大しているという理由でインドの閣僚が来日できませんでした。先月二十日に延期を決めていたわけですから、日本として、その頃からもう分かっていたはずなんですね。なぜそのタイミングで指定できなかったんでしょうか。

 更に言えば、その三日後に、二十三日には二重変異株が五件、国内で初めて確認されました。その時点で流入を既に止められていませんし、イギリスやタイ、インドネシアなどは、大臣、海外情勢も御覧になっているというんですけれども、この時点ではインドからの入国を既に禁止していますよ。他国の動きを見れば、遅くとも同じタイミングでこれは判断できたはずなんですけれども、なぜなんでしょうか。

森政府参考人 御答弁申し上げます。

 御指摘いただきましたインドからの入国の拒否でございますけれども、インドからの入国の拒否自体は、昨年の三月の閣議了解で、全世界からの外国人の入国を拒否した時点で行われております。その後、これは各国共通の事項でございますけれども、外国人の方でも在留資格を持っておられる再入国者、アメリカでございますと例えばグリーンカードの所持者、こういった方に関しましては、最近まで確かに再入国を認めてまいりましたけれども、この方々についても十二日より入国を拒否することといたしました。

 したがいまして、日本が立ち遅れておるということは、先ほど外務大臣からの御答弁からもございましたとおり、ございません。

緑川委員 全く否定されるというところは明らかにおかしいと思いますよ。すり抜けているわけですから。客観的事実としてです。確認されているわけですよね、国内で。

 そして、インド当局、保健当局は、三月下旬の時点では、インドでの感染者数の急増とこの二重変異株というのは関連がないということを三月下旬の時点でおっしゃった。それを日本政府としてはどう受け止めたのかというのは出ておりませんけれども、やはり、そうしたインド政府への配慮があったんじゃないかということに落ち着かざるを得ないわけですよね。ゲノム解析すると、やはりこの資料のような状況になっているわけです。インド政府の三月の発表とは全く違う状況があったわけですよね。これが事実ですよ。

 もう時間がないんですけれども、インドと隣り合うネパールはおととい指定されましたが、このほかに、ブータン、そして東南アジアでも、ラオス、タイ、カンボジアなども、この数週間の間に感染者が急増しているわけです。変異株の流行が原因と言われますけれども、各国では財源不足で対応し切れていない。

 こうした国の指定も視野に入れて外務省として対応していくべき状況に来ていると思いますが、現地の取組状況、いかがですか。大臣、お願いします。

茂木国務大臣 まず、委員、この出典としてヒンドゥスタン・タイムズ、これを引かれていますけれども、恐らくこれは原典があると思うんですね。新聞社が調べたものじゃないと思うんですよ。どういう原典なのかお示しいただけないと、これがどこまで確度があるものかというのはかなり厳しいところがあると思います。

 それから、先ほど、インドとの間の2プラス2、これが延期になった。この理由について独自の見解を述べられましたが、その理由は間違っております。そういう理由で延期をしたわけではありません。そのことは申し上げます。

 さらに、インドにとって申し上げると、日本以上にインドからの人が行っている国もあるわけでありまして、先生のお話を伺うと、あらゆる国に対する、あらゆる水際措置を日本が一番最初に取っていないといけない、このように聞こえます、今までの論理でいきますと。(緑川委員「そんなこと言っていないですよ。いち早くなんて言っていないですよ」と呼ぶ)いや、そう聞こえます、間違いなく。間違いなくそう聞こえます。ですから、私はEUとかより先駆けた話をしておりますけれども、では、どういう基準であれば先生としてはいいとお考えなのか、それをお聞かせいただかないと何となく議論が進まないんじゃないかなと思うので、是非お聞かせください。

緑川委員 もう事実関係として私は伝えているわけで、日本がイの一番に流入を阻止する先頭に立てということは言っていないですよ。各国の状況を冷静に見て判断をしているのかどうかということをお伺いしているわけです。

 日本として現地の危機感をいち早く感じ取れるのがやはり在外公館ですから、感染リスクを伴う公務で、やはり御自身が、現地で務められる在外公館の皆様が十分に御注意をいただいた上で、同時に、やはり流入を阻止する強い気概を持って、国民を守るという危機意識で、強い意識で、情報収集そして連絡を伝えるという使命を担っていただきたいというふうに思っています。

 条約の時間もありますので、ちょっと次へ行きたいと思います。

 インドは、感染が再び急拡大しています。ワクチンを自国民に優先するために、コロナワクチンの輸出を停止しています。その関係で、WHOがアジアやアフリカ、中南米の途上国への公平なワクチン分配の枠組みとして立ち上げたCOVAXという国際的枠組みでも、インドから十一億回分の提供が本来見込まれていましたが、契約どおりの供給ができなくなるという中で、WHOが追加承認をして、中国のシノファーム製のワクチンが使えるようになっています。多くの国では、中国製が唯一の選択肢になるというところが、これからまた増えるところがあります。そして、これまでのワクチン外交に加えて、中国の権威が更に高まるという懸念が一つあります。まずこの一点をお伺いしたい。

 もう一つが、中国製のワクチンというのは、治験データが乏しい、そして、ファイザー製やモデルナ製に比べてその有効性が低いということが指摘されております。中国製のものが効かないと、接種した国が、やはり欧米のワクチンがいいということになって、欧米諸国が今度は供給を増やすかもしれないです。

 接種が進む国では、旅行の本格的な再開というのはこれからなんですけれども、欧米と中国、これはどちらにも言えるんですけれども、どこの国のワクチンを使ったかで、外国人の入国を許したり規制したり、あるいは、渡航させない、就労させないという状況がこれから生まれ得るかもしれない。世界で、ワクチン選びで分断されるような状況というのは、本来ワクチン格差を縮小する目的で立ち上げたはずのCOVAXの枠組みにおいては、これは避けていかなければならない状況であるというふうに思います。

 大臣、ちょっと時間が詰まっていて申し訳ないんですけれども、二点、お伺いできればと思っております。

茂木国務大臣 結局、どのワクチンを打つかによってどういう規制がされるか、そこで差別が起こることがないようにするとか、様々な取組が必要だと思いますが、これは残念ながら、こういうルール作りはCOVAXの枠組みとは違う形で行われる、それについてはそう思っております。

 一方で、WHOは、四月三十日に米国のモデルナ社が開発したワクチンを、また、五月七日には、御指摘のように、中国のシノファームが開発したワクチンをWHOの緊急使用リストに掲載することを決定した旨発表しているところであります。

 COVAXファシリティーを通じて供給されるワクチンについては、WHOによる緊急使用リスト掲載等を参考に、独立した専門家個人により構成される複数のグループで、科学的な観点等から検討が重ねられ、選定が行われます。

 我が国は、ワクチンへの公平なアクセスのための多国間の取組でありますCOVAXファシリティー、枠組みの形成を当初から主導し、既に二億ドルを拠出するなど、中心的な役割を担ってまいりました。六月二日には、GAVIと共催してワクチンサミットも開催をする予定であります。

 そういった中で、世界的にワクチンの供給に制約がある中においても、COVAXにおいても安全で有効かつ品質が担保されたワクチンが供給されるよう努めていきたいと思っております。

緑川委員 来月のワクチンサミット、また総理も御出席されるということで、GAVIとの共催で、日本が主体的に、やはり、今の懸念されるワクチンナショナリズム、こうしたものを振りかざすことで差別的な状況が生じてしまわないような枠組みを是非維持していただきたい、強く求めていきたいというふうに思います。

 西側諸国と連携をする経済安全保障についてお伺いをしたいと思います。

 バイデン大統領の施政方針演説でも、中国との競争を歓迎する、対立は望まないんだということを述べて、経済や技術で勝負をするという唯一の競争相手と位置づけています。そうした中で、覇権を争う米中では、軍事的に対抗するという前に、経済というツールのぶつけ合いでもって勝負を決着させる、経済を使った戦争で、日米共同声明にもあるように、それらの戦争がやはり想定されます。経済安全保障の上でも、協力を深めるということがやはり重要だと思います。

 一方で、バイデン政権としては、経済などの国内対策に余念がないことに加えて、対中強硬姿勢を見せるということで議会をまとめながら、同時に、政権基盤の安定を図るために、外交の上でも、国内雇用対策を念頭にして、自国の産業に有利なサプライチェーンというものを求めてくる場合というのも、これは日本としては想定しておかなければならないというふうに思います。

 そうした中で、例えば、日本がほかの先進国あるいは友好国と二国間で経済安全保障を協議するというような場を立ち上げて、今後重要な分野で経済安保の方向性を信頼できる国同士で、大国のみに依存しない、仮にはしごを外されたときのリスクを多角化しておくということが日本として重要であるというふうに思います。

 サプライチェーンの細かい分野ごとに、様々な国との関係の構築、お考え、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 まず、米中でありますけれども、米中、様々な側面がある、それが、委員御指摘の競争であり、また協力であり、また時によっては対立と。ただ、そこで言う競争というのは、健全な競争でもなければ、委員おっしゃるような戦争的な競争でもなくて、恐らく、いかにして競争で優位に立つか、こういう観点からバイデン政権は、この経済分野、経済競争、また経済安全保障の問題に取り組んでいるんだ、このように理解をいたしております。

 その上で、サプライチェーンなどの経済安全保障上の課題への対応、まず、これはアメリカもそうです、日本もそうですけれども、日本自らの問題である、こういうふうに考える必要があると考えております。経済安全保障上重要な技術や製品の供給網にかけては、官民を挙げて国内の生産拠点の整備を促すということでありまして、例えば、マザー工場と思っていたところが、いつの間にか決定的に古くなってグランドマザー工場になったら駄目なんですよ、やはり。それはやはりしっかりしたものを持っていかなくちゃいけない。国内を、やはり拠点というのを整備しながら、ただ、今の時代、一国で全部できるわけじゃありませんから、一国だけに依存しない多元的なグローバルなサプライチェーンを構築することが重要であると思っております。

 その上で、様々な戦略的価値であったりとか信頼というものもあるわけでありまして、同盟関係も。米国を始めとする関係国と連携を強化しながら、サプライチェーンの強靱化を図っていくということが重要だと考えています。

緑川委員 やはり日米がもちろん中心ですけれども、日米に限らない二国間協力、研究開発の分野では、特にこれは進められる余地があると思うんですね。

 アメリカは当然先端技術に強い国というのは承知しますけれども、特定の分野で、例えば、人工知能でいえばカナダ、そしてバイオ技術でいえばイスラエル、またサイバーセキュリティーでいえばオーストラリア、こうした国々、そういう先端技術に強い、特定の分野で強い二国間で、あるいは少数の国々で研究開発の協力を進めていくということは、やはり日本の国益の担保として非常に重要であるというふうに考えます。

 条約の方に移りたいと思います。

 大西洋まぐろ類保存条約との関連ですが、九〇年代は、これは大西洋でも他の海と同じような形でクロマグロの乱獲というのが相次いで、資源の減少が深刻な時代があって、危機感を強めたICCATで、漁獲量を大幅に削減をする、三十キロ未満の未成魚を原則禁漁として、西大西洋の産卵場での漁獲も制限する、流通過程で漁獲証明書を確認する。漁獲から流通まで一連の対策が功を奏することで、大西洋クロマグロの資源の回復につながっているというふうに承知をしております。

 ただ、厳格な管理がなされてきたはずのICCATで、その区域で、二〇一八年の六月なんですが、違法操業がありました。千二百万ユーロ、日本円で十六億円にも及ぶクロマグロが密売をされて、その組織の関係者七十九人をEUの警察機関、ユーロポールが逮捕したという事件がありました。

 政府にこれを確認しますと、ICCATでは、年次会合の前に開かれる遵守委員会で締約国には事件の概要については報告をされたということなんですが、今なお捜査中のこともあるので、全てを明らかにされているわけではありません。

 ここで水産庁にお尋ねをいたしますけれども、世界有数のマグロ漁業、この消費国として、次回の年次会合に向けて、捜査の進展を含めて報告を求め、それに基づいた実効性のある資源管理策というのを、オンラインの会合になるかもしれませんが、そうした場でも本格的に議論ができるように日本として訴える準備をしていく必要があると思いますが、いかがでしょうか。

高瀬政府参考人 御答弁申し上げます。

 大西洋は、我が国漁業者にとりまして、大西洋クロマグロそれからメバチなどの重要な漁場であるとともに、養殖された大西洋クロマグロの多くを我が国が輸入するということで、我が国にとっては非常に重要な水域であります。このため、大西洋まぐろ類保存国際委員会において、最新の科学的根拠あるいは情報に基づきまして、これらマグロ類の資源管理が図られるようにしっかりと議論が行われるということが我が国にとって重要だと考えております。

 新型コロナウイルスの影響で一部の会合がオンライン形式となる中で、オンライン会合の制約を理由に実質的な議論を先延ばしにするべきではないと考えているところであります。このため、年次会合等がオンライン開催になる場合であっても、過剰漁獲状態にあるメバチの規制強化であるとか遵守問題など、必要な保存管理措置が合意されるよう、世界有数の漁業国であり、海産物の主要な消費国である我が国として、しっかり主張していく考えです。

緑川委員 高瀬審議官は、政府代表として、まさに当の御本人が、オンラインになるかもしれませんけれども、この年次会合に出席をされていくことになる、十一月ですけれども。

 事件についての受け止めというか、事件自体をしっかり、まず、概要でしか伝えられていないわけですから、今の現状、捜査で明らかにされているところでの情報など、しっかり求める必要があると思います。

 深刻なのは、やはりこの事件は、漁獲規制の網をくぐって違法な取引、流通というだけじゃなくて、長年にわたって行われてきたということなんです。

 二〇一八年のこの事件、資料二を御覧いただきたいんですが、これは海域別のカツオ・マグロ類の漁獲量なんですけれども、大西洋のクロマグロが、二〇一八年時点で、全体で捕れる漁獲量が一・〇ということで、一万トンです。それに対して、長年にわたって行われてきたこの違法操業、年間で最大二千五百トンです。これが密売されたということですから、四分の一にもなる量が数字にはカウントされずに長年違法に漁獲されてきたということで、これは、回復してきたとされるこれまでの数字が、ちょっと修正をしていかなければならない必要性が出てくるんじゃないかというほど重大な影響が出てきているおそれがあります。

 加えて、この違法操業というのは、イタリアの漁港、そしてマルタの畜養業者などが漁獲したものというのがフランス経由でスペインに輸入されたということです。つまり、日本が輸入する養殖マグロの三分の一というのはマルタから輸入されているんです。日本として、これは影響の大きい事件ですから、改めて、この事件の詳細を求めるということを訴えるべきだと思うんですけれども、いかがですか。

高瀬政府参考人 御答弁申し上げます。

 今御指摘をいただいたとおり、資源管理措置を決定することとそれから遵守を確保するということはセットでありまして、幾ら資源管理措置を決めても遵守が図られなければ有効な資源管理にはならないという、それは私ども常に認識をしているところであります。

 今回の件につきましても、これはEUが責任を持って捜査をするものと思っておりますけれども、次回の遵守委員会においては、その進捗なり報告なり、しっかり聴取をしまして、適切な処理なりフォローアップなり、あるいは違反をした者に対する何らかの処分なり、そういうものが図られるように進めてまいりたいと思います。

緑川委員 世界の水産物の、トータルが重量ベースで一割から三割を占めると言われているのがIUU漁業による漁獲物であります。

 そうした中で、昨年十二月に公布された水産流通適正化法、これが公布されていますけれども、まだ二年ぐらい必要ですので、これは是非詳細を詰めていただきながら、世界最大のマグロ消費国として、漁業国として、政府としてチェックを厳しくしていただきたいというふうに思います。

 ちょっとメバチの部分は飛ばさせていただきまして、最後にイギリスとの原子力協定についてお伺いをしたいと思います。

 協定改定後も、引き続き原子力平和利用について一層の協力が求められるというのが廃炉の作業であります。佐藤委員からもありましたので、質問は一つにしたいと思いますが、福島第一原発二号機での燃料デブリの取り出しに向けたイギリスで開発中のロボットアームの実験、御答弁では二〇二二年以内の早期に実施をしていくということで、これはイギリスとの連携を更に強めながら取り組んでいただきたいというふうに思っています。

 最後の質問ですが、原発の技術と人材というのは、やはり廃炉には必要です。これまでに国内二十四基の廃炉も決まって、大量廃炉時代を迎えますけれども、各電力会社とも、原発の解体というのは数十年かけて行うという方針です。安全に作業を進めるためにも技術や人材の厚みを維持していくことが必要だと思いますし、困難な廃炉作業に取り組む技術者、作業員などの人材育成について、最後、伺いたいと思います。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、委員御指摘のように、我が国の原子力発電所に関しましては、既に二十四基の商用炉の廃止が決定しておりまして、これを安全かつ円滑に実施していくということは、原子力事業を着実に実施していく上で大変重要な課題だと私ども認識してございます。

 廃炉作業と申しましても、大変高度な技術の維持と高いスキル、そして安全意識を持った人材の確保が大変重要となるわけでございまして、経産省といたしましてもしっかりと支援していきたいと考えてございます。

 幾つか例を申し上げますと、現在、福井県の若狭湾エネルギー研究センターというところで、この地域でのメンテナンス人材の方々を対象に廃炉関係の工事等の研修を行っておりますが、またさらに、福島第一発電所の廃炉作業に関する原賠機構及び日本原子力研究機構における研修事業も実施しているところでございます。

 こういったところを更に充実させていき、安全かつ円滑な廃炉実施がされていくようサポートを続けていきたいと考えてございます。

緑川委員 廃炉の具体的な人材確保も含めて、そうした道筋が示されなければ福島の復興はないということを申し上げて、質問を終わります。

あべ委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 日英原子力協定改正議定書について質問いたします。

 本承認案件は、茂木大臣、東京電力福島第一原発事故十年以降、そして英国への日立の原発輸出プロジェクト撤退後、そういう意味では初めて日本が外国と交わす原子力協定だ、そういうことですね。

茂木国務大臣 本議定書は、一九九八年に発効しました現行協定を改正するものでありまして、新たな協定を締結するものではございません。

笠井委員 第二次安倍政権は、インフラシステム輸出戦略で、原子力の世界市場は年平均約二・二%拡大が見込まれるとしまして、福島原発事故前に三千億円あった原子力の海外受注を二〇二〇年には二兆円にするとして、財界、関連企業を伴ってトップセールスをしてまいりました。

 茂木大臣御自身も、かつて経済産業大臣在任期間中、外国との原子力協力をめぐって、二〇一三年から一四年にわたって、中東、アジア、欧州など諸国を歴訪されて、精力的に会談をされてきました。

 そこで、江島経済産業副大臣に伺いますが、経産省から、インフラ受注実績におけるエネルギー分野の詳細という資料が提出されましたが、原子力分野の海外受注額の最新の実績、二〇一八年になると思いますが、幾らになっているでしょうか。

江島副大臣 最新のデータであります二〇一八年の原子力発電プラントの受注実績はゼロ件でございます。

笠井委員 茂木大臣、二〇一〇年に三千億円だった原子力の海外受注額が、直近、二〇一八年には、今ありました、ゼロ円になってしまったと。原発輸出二兆円目標で熱心に売り込んできた結果こうなったことについて、大臣はどのように受け止められておるでしょうか。大臣の受け止めです。

茂木国務大臣 ちょっと済みません、質問の趣旨がよく分からないんですが。もう少し質問の趣旨を。

笠井委員 私、分からないような質問はしていませんよ。今聞いていらっしゃったんですか。

 二〇一〇年には三千億円だった原子力の海外受注額が、直近、二〇一八年にはゼロ円になったと。第二次安倍政権ではトップセールスでやってきて、大臣も当時は経済産業大臣として各国を歴訪されて、原子力協力あるいは協定をめぐっても様々議論してきたけれども、結果、二兆円を目指したけれども、それを売り込んだ結果ゼロ円になったということについてはどういうふうに受け止めていらっしゃるかと伺っているんですよ。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

茂木国務大臣 いや、それは、ずっと私がこれまで継続して経済産業大臣をやってきたわけではありません。私の時代にも協議をしてきたものもありますし、当然、それは、民間企業も入る中で、コストの問題であったり、様々な競争の中で入札が決まったり、そういう経過の中で結果が出ているものだと思っておりまして、全て一人でやってきた、誰もほかの人間が関与しないでやってきて、あなたはどう考えるんだと聞かれましたらお答えしますけれども、そういう経過だと思っておりますので、私が全てについて、これこれこうしました、あらゆる案件についてこうだと、それをお答えするのは無理だと思いますよ。

笠井委員 何も私は大臣が一人で全部担ってやってきたなんて言っていないんですよ。大臣もそういう一翼を担ってやってきた結果ゼロになったのはどういうふうに受け止めているかと。推進してきたんでしょう。政権ぐるみで売り込むときには大々的に宣伝しておきながら、頓挫した理由については明確に説明できない。これでは国民は納得しないと思いますよ、政権を担ってきたんだから。

 英国では日立が計画撤回。トルコでは三菱重工が断念。ベトナムでは三菱重工と東電が撤退。米国では東芝子会社が破綻。アラブ首長国連邦、UAEでは日立とGEが韓国勢に敗退をし、インドではロシア国営企業が受注をしたということになりました。唯一残るのはポーランドの高温ガス炉だということでありますけれども、これも研究段階だと。

 私も予算委員会で日立の撤退問題について議論したときに、やりましたら、その後、翌日に自民党の議員が予算委員会で、昨日は共産党の議員が質問したけれども、まだ首の皮一枚つながっているんです、ポーランドがあるんだ、こういうふうに言いましたけれども。まさに、そうして吐露したほど、首の皮一枚と、それも今受注がゼロになっているということであります。

 今回の協定はユーラトム離脱に伴い必要な措置というふうに言いますが、外務省は、我が党の問合せに対して、二〇一八年十月二十六日、文書で回答をしております。日英原子力協定は英国のEU離脱後も引き続き英国に適用されます、こういうふうに言ってきたわけですね。

 従来の協定が適用されるならば、改正、変更の必要がなかったはずだ。さっき、冒頭、大臣は新たな協定を結んだんじゃないと言うけれども、明らかに今度は改正議定書という形でやったわけですね。

 それで、福島の事故から十年たって、それから、イギリスへの日立の原発、政府が後押ししたけれども、それも破綻をしたという状況の中で、初めてこういうことをやってきて、当時は、二〇一八年十月段階では、とにかく今あるもので、これで適用されるんだと言っていた。私にも、担当者が六月に来て、二〇一八年、そうした改定は必要ありませんとまで言っていたわけですね。これはどういう意味なんですか。

本清政府参考人 お答え申し上げます。

 私も委員からの事前の質問を拝見しまして、回答文書の方を確認させていただきました。

 当時から、現在もそうですけれども、日英の原子力協定は、英国によるユーラトムからの脱退にかかわらず、引き続き英国に適用されているというふうに考えておりますが、今回の改正議定書において、英国において適用される保障措置、ユーラトム、英国、IAEAのものからユーラトムが抜けることに伴って、保障措置の切替えについて現行の協定に反映させることを規定するものとなっております。

笠井委員 そういう説明はしなかったわけですよ。結局、今のやつでいいんですと言って、改定は必要ありませんと言って、何度やり取りしてもそうやって外務省は答えてきた。実際には、それが十月二十六日の回答ですけれども、十月九日には既に改正交渉の開始の発表を外務省はしていた。ユーラトム離脱に伴う措置、原子力の平和利用の法的枠組みを引き続き確保すると言いながら、この奇貨にはそれにとどまらない改定を行うという目的ができたんじゃないかということを言わざるを得ないと思います。

 茂木大臣に伺いますが、今回の改定で、英国のユーラトム離脱に伴う措置、幾つかありますけれども、これ以外に新たに協定に加わった最大の改正点というのは何でしょう。

茂木国務大臣 例えば協定の規制対象に原子力関連技術を加えた点、こういったものが挙げられると思います。

笠井委員 技術ということでありますが、この十二条では、技術とは、資材、核物質又は設備の開発、生産又は使用のために必要とされる特定の情報をいうというふうにあります。さらに、特定の情報は、指導、技術の養成、訓練、実用的な知識及び諮問サービスを含むというふうにされております。

 大臣に伺いますが、英国との関係で、これまでの設備の協力にとどまらず、技術というのが協定の対象になることで、日英相互の原子力関連技術の輸出が一層進められて、日英共同で新型原子炉の研究開発や人材面での協力が更に進むということを想定しているんじゃありませんか。

茂木国務大臣 そのようなことは想定しておりません。

笠井委員 私自身、カザフスタンとの協定以降、全ての原子力協定の当委員会での審議に関わってきましたが、当時外務省は、技術の文言を入れることで我が国とカザフスタン共和国との間で将来的な原子力ビジネス展開が可能となるというふうに言っておりました。その後の原子力協定、韓国、ベトナム、ヨルダン、ロシア、トルコ、アラブ首長国連邦、インド、それには同様の技術の文言が盛り込まれて、実際に原発輸出プロジェクトが推進をされてきたわけです。だけれども、今度はそういうことを想定していないというふうに断言されるわけですね。

本清政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど佐藤委員からの御質問に対してお答えしたところでございますけれども、我が国は、核不拡散体制の強化の観点から、原子力関連資機材などの輸出国が守るべき指針として、原子力供給国グループ、NSGにより作成されているガイドラインを重視しておりまして、近年の原子力協定については、このNSGのガイドラインや原子力協定に関する国際的な慣行を踏まえて、こういった技術といったものを規定しているということでございます。それは、委員御指摘のとおり、カザフスタン以降の協定に反映されているということになっております。

笠井委員 日英共同での新型原子炉の研究開発、人材面の協力というのは想定していないと大臣は明言されたわけですが、では、外務省に伺います。

 今回の改正議定書の署名は、昨年十二月の十六日だったですよね。そのわずか八日前に、第九回日英原子力年次対話が開催をされております。公表された英文の結果概要には、幾つかいろいろなことが書かれていますが、セッションワンというところで原子力政策というところがあって、その最初の段落で新型原子炉について書かれておりますが、何と書かれているでしょうか、外務省。

茂木国務大臣 ちゃんと、答弁を、私が言ったことと違うことでこう言っていますがと言われると困るので、もう一度申し上げますね。

 正確に申し上げましたら、本議定書は、英国において適用される保障措置が変更されること等を踏まえて、日英両国間における原子力の平和的利用のための適切な法的な枠組みが引き続き確保されることを目的として作成されたものであり、特定のプロジェクトを想定したものではないということでありまして、特定のプロジェクトについて先生がおっしゃいましたから、それは想定していない、このようにお答えしたわけです。

笠井委員 私は、特定のプロジェクトではないんですよ、日英共同での新型原子炉の研究開発、人材面の協力というのが入っているんじゃないのか、そういうことが進むことを想定しているんじゃないかと言ったら、想定していませんと言下に言われたんですよ。これは議事録でちゃんと確認してください。そうじゃなかったら議論できないですよ、これ。

 今、セッションのところに何と書かれているか、言ってください。

本清政府参考人 委員御指摘の第九回日英原子力年次対話の結果概要におきまして、日英両国は、温室効果ガスの削減目標の達成における原子力エネルギーの重要性を強調し、特に新型小型モジュール炉の分野における革新的な原子力技術の開発における協力に期待すること及び高温ガス炉の開発に関する協力の可能性について議論したとの記述がございます。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

笠井委員 署名の直前にこういう形で議論したということで今ありました。

 両国は、特に新型原子炉の開発に協力すると明言をしているわけであります。そういう下で協定が結ばれているということは、そこに技術ということが入っているということは紛れもない事実だと思います。

 茂木大臣、この原子力年次対話の結果概要というのがありますが、これは英文でしか発表されていないんですが、なぜ日本語訳がないんでしょうか。

本清政府参考人 お答え申し上げます。

 イギリスとの間で議論した内容について、英語のみを正文として残したということでございます。

笠井委員 それじゃ国会と国民に説明責任を果たせないですよね。みんな英語読めと。読めない人はどうするんだという話になりますよね。国と国で結ぶそうした対話の中身の概要について。

 しかも、これは、ずっと対話をやられてきて、第七回、二〇一八年の十月二十五日というのがありました。そこまでは、日本語仮訳ということで公表されて、外務省のホームページに載っております。第八回、二〇一九年十一月二十七日、第九回、二〇二〇年十二月八日、これは日本語での公表、仮訳の掲載もやめてしまった、そういうことでしょう。

 なぜ出さなくなったんですか。何か都合の悪いことでもあるんでしょうか。

本清政府参考人 英語で議事録というのか、結果を発表してきたということでございますけれども、御指摘を踏まえまして、今後、国民の皆様に分かりやすく情報発信していく方法については、きちんと考えていきたいと思います。

笠井委員 先ほどの答弁はちょっと違いましたね。だから、とにかくそうやって出してこなかった。

 これは、今の話を見ますと、日立は二〇一九年一月十七日に英国への原発輸出プロジェクトの凍結を発表して、そして二〇二〇年九月十六日に撤退を発表した。日英両国政府が一体となって進めてきた計画が破綻したことと、日本語を載せなくなったことと、無関係と言い切れるか。ちょっとその事実経過について、これからのことはちゃんと出さなきゃ駄目だけれども、そういうことは関係ないというふうに言えるんですか。何で出さなかったのか。

本清政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の日立のホライズンプロジェクトにつきましては、一九年に経済合理性の観点からプロジェクトを凍結し、二〇年に、新型コロナ感染症の影響等により投資環境が厳しさを増していることを配慮して、プロジェクトからの撤退を決定したと承知しております。

 一方で、本議定書及び先ほど御指摘されました対話におきましては、英国において適用される保障措置が変更されることを踏まえて、済みません、議定書については、保障措置が変更されることを踏まえて、日英における平和的利用のための適切な法的枠組みを引き続き確保される目的として作成されたものでございます。

 日英の対話については、その前に実施されたということではございますけれども、いろいろな側面が議論されたというふうに承知しておりますので、この問題だけではないというふうに承知しております。

笠井委員 いや、私の質問に答えていないですよ。日本語で出さなくなったのはそういうことと関係あるんじゃないですか、関係ないと言えるんですかというふうに聞いたのに、そのことに何一つ答えていないですよ。

本清政府参考人 お答え申し上げます。

 ちょっと、どういった経緯でこういう扱いにしたのかということについては、よく精査をした上で御報告申し上げたいと思います。

笠井委員 国民と国会に、そういうことで、日本語でちゃんと言えない理由があるんじゃないか、こういう問題になってきます。国会に改定議定書の承認を求めて、実際に、英国とは原子力年次対話で協力を話し合っている、大体時期が前後して膚接しているわけですよね。ならば、その結果について日本語で国会と国民に説明する責任が当然あるのではないかと思うんですよ。

 議論の前提です、これは、承認案件をかけているんだったら。関係あるのかないのか、そういう、どういう議論をやっていたのかというのが分からなかったら、日本の国会として、国民に対して責任を持って承認します、しませんということを言えないじゃないですか。それも果たさずに、とにかく承認せよというのは通らないと思うんですけれども。

本清政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども大臣から御答弁申し上げたとおり、本議定書の改正によって、具体的なプロジェクトを想定したものではないということでございますので、対話の問題とこの議定書の改正については関係ないものと考えております。

笠井委員 具体的プロジェクトの問題を想定したわけじゃないとかというのは、それは今、これから聞きますが、大臣、ちょっと、今、外務省の方は、これからはちゃんと出すと言いましたけれども、議論の前提として、ちゃんと出すということはいいですね、日本語。

茂木国務大臣 議定書等の内容につきましては、しっかり出させていただきます。(笠井委員「いや、対話。対話の話ですよ、今」と呼ぶ)ちょっと待ってくださいよ、答えているんだから。

 それ以外、必要とされるものがありましたら、委員会においてお話合いをいただければ、できる限りの協力はさせてもらいます。

笠井委員 今、外務省は出しますと言ったけれども、大臣は出すと言わないんですよ。委員会で議論してくれと。これでいいんですか、委員長。

あべ委員長 ただいまの件につきましては、理事会で協議いたします。

笠井委員 だって、承認案件を議論していて、この議論をやっているときに前提となるのが日本語訳で、ないじゃないですかと言ったら、外務省は、これからは出します、済みませんという話だったわけですよ。それを今、委員長、理事会で協議と言うんだったら、これは理事会で協議してもらって、それで審議を止めてもらってもいいですよ。

 大臣も、何でそんなことにこだわるんですか。出したらまずいんですか。(茂木国務大臣「聞いたから答えただけで」と呼ぶ)いや、だから、出したらまずいんですか。(茂木国務大臣「続けてください」と呼ぶ)続けてくださいじゃないですよ。

あべ委員長 では、外務省の本清総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長。

本清政府参考人 私が先ほど出しますというのは、対話の結果概要についての日本語訳を今後出していきますということでございますので、この改正議定書の審議とは関係がない問題というふうに考えております。

笠井委員 関係があるかないかは、議論は委員会で我々がやるので、今、日本語訳、今後出しますと言ったんですよ。いいんですね、大臣、それで。そうやって外務省は言っているのに、大臣は違うと言うの。

茂木国務大臣 違うことは言っていません。本清部長が言ったように、必要となるものについては出します。必要となるものは何かについては委員会で御審議くださいと私は申し上げただけでありまして、出さないとも私は申し上げておりません。

笠井委員 対話の概要については今後出します、日本語の訳をというふうに言ったんですよ。大臣、何かそれは、審議と関わって、それを出さなかったら止めるんじゃないかとか、そういうことを思っているのかもしれないけれども、そうじゃなくて、単純に聞いているんですよ。出しますと言ったんだから、そうだよねと言えばいいでしょう。駄目なんですか、それ。

本清政府参考人 対話の結果概要については今後出しますと申し上げましたので、そこは作業をしますが、本日御議論いただいている議定書の改正問題とは切り離して私どもは考えております。

笠井委員 だから、そこの切り離すかどうかは、それは外務省の解釈で、国会の方が、これが関係あるのかないのか議論するのが国会の場ですから、ちゃんとそれは日本語を出してください。議論の前提です。やはり、その辺は言っておきたいと思います。

 原子力年次対話に出てくる小型モジュール炉、SMRについてですが、先ほど来ずっと、この本議定書とは具体的プロジェクトは関係ないということを答弁で言われていますが、経産省の資料で、四月十四日の総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会に提出されたものによれば、民需停滞で既存軽水炉建設では遅延やコスト増となった下で、英国等が活路を見出すために巨額の費用を投じて開発に乗り出している新型原子炉だということを言っております。

 昨年、今回の改定議定書に署名した十二月十六日から九日後の十二月二十五日、菅政権は、二〇五〇年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略を発表いたしました。原子力を引き続き最大限活用、次世代炉の開発と明記をして、小型モジュール炉の分野で、米英加、アメリカ、イギリス、カナダ等の海外プロジェクトに参画する日本企業を積極的に支援するとされております。

 江島経済産業副大臣に伺いますが、これは、経産省が原子力小委員会に出した資料に明記されておりますが、具体的にどの日本企業を支援するということになりますか、米英加。

江島副大臣 グリーン成長戦略におきましては、この小型モジュール炉につきまして、米英加等の海外実証プロジェクトと連携した日本企業の取組、これを積極的に支援をするとしております。

 この三か国でありますけれども、今年の四月には、日本政府が支援をする日揮ホールディング株式会社が、これはニュースケール社というアメリカの会社でありますが、米国内のこの会社の小型モジュール炉建設プロジェクトへの出資参画を発表するなど、具体的な動きも実際に動いているところでございます。

 英国であります。これは、ロールス・ロイス社のものを始めとして、様々な小型モジュール炉に対して、最短で二〇二〇年代の末の運転開始を目指した英国政府による支援が行われております。ただ、現時点では、この英国におけるプロジェクトに参画する日本企業はないというふうに私どもは捉えております。

 しかし、日本は、世界に冠たる技術立国でございますので、この海外の実証炉プロジェクトへの日本企業の参画につきましては、日本企業の優れた設計や製造技術に対して海外から期待の声があるのも、実際、これは事実でございます。安全、安心な脱炭素技術の最右翼の一つであります小型モジュール炉技術の実現には是非とも貢献したく、これからも支援をしてまいりたいと思います。

笠井委員 企業名も挙げられておりましたが、極めて具体的であります。しかも、支援企業名を明記した経産省資料には、二〇二〇年代末の運転開始を目指す海外の実証プロジェクトと連携した取組を支援し、日本企業がプロジェクトの主要プレーヤーとして参画することを目指すとまで書いてあるわけであります。

 茂木大臣に伺いますが、こうした日本政府の戦略と一体に改定された本協定は、新たに適用対象に技術を加えることによって、日英共同で新型原子炉の開発研究という、あたかも原子力ビジネス展開が可能となるような根拠づけを与えようとするものではないか。

 今年は東京電力福島第一原発事故から十年です。一たび過酷事故が起これば、取り返しのつかない被害をもたらすのが原発です。気候変動対策のために原発を最大限活用するなど、反省のかけらもないのかと言いたいと思うんですが、いかがですか。

茂木国務大臣 東電福島第一原発事故に関する経験と教訓を世界と共有することによって、世界の原子力安全の向上に貢献していくことは我が国の責務であると考えております。

 その上で、本議定書は、英国において適用される保障措置が変更されること等を踏まえ、日英両国間における原子力の平和的利用のための適切な法的枠組みが引き続き確保されることを目的として作成されたものでありまして、先ほど来申し上げていますように、特定のプロジェクトを想定したものではございません。

笠井委員 特定のプロジェクトを想定していないといっても、具体的プロジェクトはどんどん進んでいるわけですよ、こうした議定書と一体になって。

 今、福島の教訓と言われたけれども、世界最高水準の規制基準とよく政府は言いますが、それどころか、テロ対策を怠っていたことも見抜けずに老朽原発の再稼働まで認めてしまう。安全でも何でもないということになってまいります。

 最後に大臣に伺いますが、しかも、資源エネ庁と関係が深い日本エネルギー経済研究所は、英米での新型原子炉の開発状況を分析して、自由化市場において単純な経済的競争力のみを頼りに新型炉の導入を進めることは難しい、事業者のリスクを低減できる支援制度が課題というふうに結論づけています。ビジネスとしても成り立たないと認めているわけでありまして、まさに英国への日立原発輸出破綻の二の舞ではないか。

 破綻した原発輸出をまだ続けるということを恥ずかしいと思わないのかと思いますが、どうでしょうか。

茂木国務大臣 原発輸出、所管の担当にお聞きいただければと、そのように思います。

笠井委員 この協定自身で原子力技術、そして原発輸出、こういうふうに言ったら、それを進めるということで原子力協定というのを結んでいるわけですよね、技術だと。そして、菅政権のグリーン成長戦略だって、その下で新型開発炉をやるという話をしている、そして具体的プロジェクトも進め始めている、そういう中でのこの協定審議です。

 福島原発事故の十年を機に、ドイツの環境省は脱原発の完遂を目指す行動指針を公表して、小型モジュール炉にも反対だとして、再エネ普及の加速が必要だとしております。原発維持による気候変動対策は致命的な間違いだとも言っております。この立場を取りながら、ドイツは、温室効果ガス排出量実質ゼロの目標を五年も前倒しして二〇四五年とする新たな目標も掲げたわけですね。もはや世界の流れは、リスクもコストも高い原発推進ではなくて、省エネ、再エネ、そしてRE一〇〇ということで、これで二〇五〇年カーボンニュートラルをやっていくよというものであります。

 まさにこういう方向に逆行するような本改定議定書というのは、これを結ぶというのは到底承認できないということを強く申し上げまして、質問を終わります。

あべ委員長 次に、浦野靖人君。

浦野委員 日本維新の会の浦野靖人です。よろしくお願いいたします。

 まず最初に、原子力平和利用の質問をさせていただきます。

 日英間では、現行の原子力協定に基づき、我が国の原子力発電所から生じた使用済燃料のイギリスの事業者への再処理委託、東京電力福島第一原発の廃炉作業での協力等が行われてきました。

 福島第一原発の廃炉を早期に実現するためには、国内の努力に加えて、英国など我が国が原子力協定を締結している国々からの国際協力が大いに期待されていますけれども、原子力の平和的利用推進のための協力を目的とする原子力協定の中で、どのような協力が可能とお考えなのかということを、まず一点。

 続いて、既に廃炉に向けた研究開発にフランスやロシアの企業が参加するなど、英国以外の国との協力も行われていると思いますけれども、今後、廃炉に向けた国内努力や国際協力、廃炉作業の実施において具体的にどのように展開されていくのか、お聞かせください。

本清政府参考人 まず、日英原子力協定を始めとする原子力協定においては、協力の方法として、専門家の交換、情報の交換、原子力関連資機材の供給、役務の提供が挙げられております。それぞれの原子力協定の規定に従い、これらの方法を通じて廃炉に向けた協力を行うことが可能となっています。

新川政府参考人 お答え申し上げます。

 福島第一原発の廃炉作業は、世界に前例のない困難な取組であることから、海外の英知を結集させていくための国際協力が重要だと考えております。

 例えば、実際の廃炉事業におきましても、三号機の使用済燃料の取り出しや汚染水の浄化装置において、アメリカの技術が活用されております。

 また、研究開発におきましても、廃炉・汚染水対策事業のダスト集じんシステムという事業におきまして、フランスの企業やロシアの企業の技術を採択する等、海外企業の廃炉作業の知見を積極的に活用しようとしております。

 さらに、国際協力に向けて、海外の専門家等に福島第一原発の廃炉を知ってもらうために、福島第一廃炉国際フォーラムを原賠・廃炉機構が開催をしておりますし、研究開発に関しましては、福島廃炉研究に関する国際ワークショップ、これを日本原子力研究開発機構が開催をしております。

 今後も、廃炉作業を安全に効率的に進めていくために、海外の知見も活用しつつ取組を進めていく所存でございます。

浦野委員 ありがとうございます。

 質問内容はもうかぶるところも出てくると思いますけれども、次に、昨年の十二月、東京電力が二〇二一年開始を目指していた福島第一原発二号機でのデブリの取り出しの延期を公表しました。

 延期については、英国でのロボット開発が新型コロナの影響で遅れているためということですけれども、デブリの取り出しの早期開始に向けて、政府としてどのような支援を行っていくのか、お聞かせをいただきたいと思います。

新川政府参考人 お答え申し上げます。

 燃料デブリの試験的取り出しの開始に向けて、使用するロボットアームの開発をイギリスで進めているところでございます。新型コロナウイルスの感染拡大により、この開発作業に影響が出ておりますけれども、今後の遅延を最小限にして、一年程度にとどめられるように努めていくと聞いております。遅延を最小限にするための取組として、英国での工程を切り上げて早く日本に移送して、開発者の増員を行った上で、ロボットアームの研究開発を加速する予定でございます。

 また、日本企業と英国企業の共同開発に当たりましては、日本政府も英国政府と連携を取りながら、情報交換や新型コロナウイルス感染拡大の中での人材交流に必要な手続の実施などをしております。

 新型コロナウイルスの感染拡大の難しさ、また、福島第一原発二号機の現場の難しさもあると思っておりますが、今後も予測の難しい困難な作業が発生することも想定されますが、適切に対応するよう指導して、今後の遅延を最小限にとどめるようにしていく所存でございます。

浦野委員 ありがとうございます。

 新型コロナの影響はやむを得ないことだと思います。ただ、やはり丁寧にしっかりと説明をこれからもしていただけたらと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

 今般の改正議定書により、協定に基づく日英間の協力対象に原子力関連技術が加えられました。政府は、原子力関連技術の輸出について、従来から、平和的非爆発目的利用について、口上書の交換等を通じて相手国政府による保証を取り付けています。

 また、政府は、本改正で協定の適用対象に技術が追加されることにより、平和的非爆発目的利用について、国際法上の義務を伴う形で原子力関連技術を移転することが新たに可能となるというふうに説明をしています。

 我が国の二国間原子力協定の中で、適用対象に技術が含まれているのは近年締結した協定のみだと思いますけれども、適用対象に技術が含まれることで、含まれていない場合と比べて具体的にどれだけの効果があるのか。また、過去に締結した原子力協定で適用対象に技術を含んでいない協定についても、適用対象に技術を盛り込んで今日的な協定にしていく必要があると考えているのか、お聞かせください。

本清政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力協定の適用対象に原子力関連技術が含まれることにより、協定に従って移転される技術について、受領国政府は平和的利用などに関する国際法上の義務を負うことになります。

 原子力協定の適用対象に原子力関連技術が含まれない場合には、そのような国際法上の義務は生じませんが、我が国は従来から、原子力関連技術の移転に当たり、原子力基本法の基本方針を踏まえ、また、原子力供給国グループ、NSGガイドラインに従い、原子力の平和的利用について、相手国政府との間で保証、いわゆるコミットを取り付けております。特段の問題は生じておりません。今後も、技術の移転が行われる際には適切に対応してまいりたいと思います。

 一方で、原子力関連技術を適用対象としない原子力協定について、現時点で改正する必要があるとは考えておりませんが、今後、特段の理由により改正を検討する場合には、原子力関連技術を適用対象に含めることについても併せて検討することとしたいと思います。

浦野委員 ありがとうございます。

 福島第一原発が甚大な被害をもたらしましたので、いまだに故郷の地に帰れない方々も多数いらっしゃって、原発事故が一たび起きれば非常に大きな影響があるという原発事故の恐ろしさを世界に認識をさせたと思います。

 さきにも述べましたけれども、デブリの処理も進まず、廃炉への道筋も今まだ不透明な中、政府としては今後も他国へ原発を輸出するというお考えなのか、これは確認ですけれども、見解をいただきたいと思います。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力に関しましては、福島事故の教訓、反省ということを忘れずに、安全神話に陥ることなく、安全第一で進めていくことが何より基本だと考えてございます。

 世界を見回してみますと、そういう中で、更なる電力エネルギー需要の拡大、そして脱炭素、カーボンニュートラルの流れが強く進んでいる中で、エネルギー安全保障、気候変動対策、発電コストといった観点から、原発計画自体は進めている国が大変多数ございます。世界で建設中の原子炉というのは、十九か国で五十二基、約五十五ギガワットでございます。

 福島第一原発事故の後におきましても、これまで実績を積み重ねてきました日本の原子力技術に対する期待の声というものは、アメリカ、イギリス、ポーランド等、各国から寄せられてきているという状況でございます。日本といたしましては、このような各国のニーズがあれば、これにしっかり応えていくということとともに、原子力の人材、技術、産業基盤を維持強化していくことを通じまして、世界における原子力の平和利用、気候変動問題の対応というものに対してしっかりと責任を果たしていくことが重要である、このように考えてございます。

浦野委員 日本維新の会は、結党以来、原発のフェードアウトということを訴えています。ただ、原子力分野における技術研究、人材育成については、やはり継続していく立場を表明していますけれども、福島第一原発の事故や度重なる電力会社の不祥事でイメージが悪化して、原子力を専攻する学生が減少しているというふうに聞いています。

 その中で、政府として、原子力分野における人材の育成についてどのような政策を講じているのか、お聞かせください。

堀内政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力の安全確保、信頼性の向上に寄与するためには、大学等において優れた人材を継続して育成していくことが必要だと認識しております。

 一方、我が国の原子力人材の育成の現状におきましては、原子力関係学科、専攻や原子力専門科目の開講数の減少、それから原子力関係の教員数の減少、さらに、稼働している試験研究炉の減少等に伴う実験、実習の機会の減少といった傾向が認められ、大学等における原子力の人材育成の基盤が脆弱化してきており、この対応が課題と考えております。

 このため、文部科学省においては、我が国における原子力分野の人材育成機能を適切に維持していくため、国際原子力人材育成イニシアティブ事業として、大学や高等専門学校等が連携し、基盤的な教育機能を補完する拠点を形成するという取組を支援してございます。

 本事業では、共同カリキュラムの開発、それから、単位の互換の推進、講義資料のオンライン化に加えまして、原子力施設や大型実験施設などの共同利用による実習機会、内容の充実、さらに、原子力専攻の導入となる授業の実施や、産業界との連携によるキャリアセミナーの提供など、人材確保のための取組も行ってございます。

 また、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けましては、英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業におきまして、令和元年度までに、大学や高等専門学校等における廃炉に関するカリキュラムの策定や学生実験環境の充実等の取組を支援するとともに、令和元年以降につきましては、日本原子力研究開発機構と大学がクロスアポイントメントを活用しました産学官連携ラボラトリーを設置しまして、将来の廃炉を長期的に支える人材の育成を進めてございます。

 文科省としましては、引き続き、原子力の基盤と安全を支える幅広い分野における人材育成をしっかりと進めてまいりたいというふうに考えてございます。

浦野委員 是非よろしくお願いします。研究炉を持っている大学が、京大と近大、大学ではこの二つしかないということで、少し寂しい気もしますので、技術の継承、発展はしっかりとやっていただけたらと思います。

 時間もありませんので、次に参ります。次はマグロの議定書について質問をします。

 本議定書には、台湾を想定した漁業主体の参加規定を新設とありますけれども、これについて中国から何かしらの異論はなかったのか、お聞かせいただきたいということと、また、台湾が漁業主体として大西洋まぐろ類保存国際委員会の関連活動に参加できる規定を新設した背景と理由をお聞かせください。

四方政府参考人 お答え申し上げます。

 台湾は、従来より世界有数のはえ縄漁船勢力を有しておりまして、この条約区域内で日本の漁獲量に匹敵する相当量の漁獲を行っております。

 大西洋まぐろ類保存国際委員会、ICCATとの間では、台湾はこれまで、協力的な地位を獲得した漁業主体として、ICCATの保存管理措置を尊重してきておりました。

 今般、台湾がICCATの関連活動に参加できる規定を新設することとなったわけですけれども、その理由といたしまして、台湾が基本的に締約国と同一の権利義務を有することになれば、漁業資源の保存管理の観点から、条約区域のマグロ類等の長期的な保存及び持続可能な利用に加え、国際協力の一層の促進が見込まれるという理由がございました。

 中国の反応でございますけれども、台湾がICCATの関連活動に参加できる規定を追加するこの議定書の採択自身には反対いたしませんでした。その理由として考えられるのは、この議定書の採択によって、条約区域のマグロ類等の長期的な保存及び持続可能な利用並びに国際協力が一層促進されることは、中国にとっても安定的な漁獲をもたらすということを期待したということだと考えております。

浦野委員 ICCATの年次会合は、コロナの関連で中止をされていると思います。重要事項のみがオンラインで協議されたと聞いています。

 ICCAT以外の地域漁業管理機構でもオンラインで会合が開催されているようですけれども、オンライン会合の場合、保存管理措置の見直しは行われず、現状を維持するとの方針を事前に表明する国や、通信環境の未整備などの理由で漁獲枠など利害に関わる決定はできないと表明し、議論を拒絶する国があるという指摘もあります。メンバーの多くがこうした立場を表明すれば、新たな保存管理措置を採択することは困難になるため、現行の保存管理措置を踏襲する可能性が高くなって、このような措置は、資源状況等を踏まえた適切な内容であるとは必ずしも言えないというふうに思います。

 大西洋まぐろ類保存国際委員会の次回の年次会合は本年の十一月に開催が予定されているとのことですけれども、世界有数のマグロ消費国であり、地域漁業管理機構の保存管理措置が消費者や漁業者に及ぼす影響が他国と比較して非常に大きい日本としては、オンライン会合になった場合に備えて、その場合でも本格的な規制などの議論が行われるように、事前準備も含めて対策を講じておくべきと考えていますけれども、いかがでしょうか。

高瀬政府参考人 御答弁申し上げます。

 大西洋は、我が国の漁業者にとりまして大西洋クロマグロやメバチの重要な漁場であるとともに、養殖された大西洋クロマグロの多くを我が国が輸入するなど、我が国にとって重要な水域であります。また、御指摘のとおり、魚の資源状況は毎年毎年、刻々変動しますので、最新の科学的根拠に基づいて、大西洋まぐろ類保存国際委員会においてしっかりと議論をするということが我が国にとって重要だと考えております。

 対面で時間をかけてじっくり議論をして理解を深めるということも重要ではありますけれども、新型コロナウイルスの影響で多くの会議がオンライン形式となる中で、オンライン会合の制約を理由に実質的な議論を先延ばしにするということはできないというふうに考えております。

 このため、年次会合などがオンライン開催となる場合であっても、必要な保存管理措置が合意されるように、事前の二国間での意見交換であるとか、あと、メールを活用した協議なども利用しまして、世界有数の漁業国であり、水産物の主要な消費国である我が国として、議論に積極的に貢献をしていく考えであります。

浦野委員 漁場としての遠隔離島の周辺海域について聞きますけれども、資源のポテンシャルが高いというものの、利用状況が低調であるという指摘があります。水産資源の適切な管理を図るためには漁場整備に向けた動きを加速させる必要があると考えていますが、いかがでしょうか。

 それと、また、沖ノ鳥島周辺の排他的経済水域では中国の海洋調査船が累次にわたり調査活動を行っていることが確認されています。こうした動きに対して、自国のEEZ内の漁場で操業を行っている実態を示すことは、日本の海洋権益の確保の観点からも大きな意義があると考えますが、政府としてどのような政策を講じていますか。

山本(竜)政府参考人 先生から御指摘ございました遠隔離島周辺の漁場についてお答え申し上げます。

 遠隔離島を含みます我が国の排他的経済水域は広大でありますが、沖合漁業の生産量が減少傾向にあり、また、沖ノ鳥島などの遠隔離島の周辺海域は、遠隔であるため、漁場整備の事例は限られております。

 このような遠隔離島の周辺海域を有効に利用するため、水産庁では、令和二年度に、沖ノ鳥島など遠隔離島の周辺海域での漁場整備の可能性について調査を実施しております。この調査では、漁場の利用実態などの情報収集、あるいは漁業関係者からの意見聴取などを行い、漁場整備の対象となり得るカツオ、マグロ、あるいはハマダイの生息が明らかになったところでございますが、ハマダイの分布範囲などが分かっておらず、その把握が課題であります。

 このため、本年度は、対象魚類の分布範囲の把握を行うとともに、効果やコストなどの事業化の妥当性の調査を行い、遠隔離島周辺海域での漁場整備の可能性について検討してまいります。

曽根政府参考人 海洋調査の活動に関して答弁申し上げます。

 沖ノ鳥島周辺海域を含め、我が国の領海、排他的経済水域又は大陸棚において外国が海洋の科学的調査を実施するには、国連海洋法条約に基づき、調査実施を希望する国が、調査実施の六か月前までに我が国に申請を行い、同意を得る必要がございます。

 我が国の同意を得ない調査活動が確認された場合には、現場海域におきまして当該活動の中止要求を行うとともに、外交ルートを通じて、仮に海洋の科学的調査を実施しているのであれば、即時に中止すべき旨の抗議を行っているところでございます。

 我が国としましては、沖ノ鳥島は、国連海洋法条約上、条件を満たす島であると考えておりまして、周辺海域に排他的経済水域等を設置してきておるところであり、沖ノ鳥島周辺海域を含め、我が国の海洋権益を確保すべく、引き続き、政府一体となって取り組んでまいりたいというふうに考えております。

浦野委員 ありがとうございます。

 あと二問用意していたんですけれども、ちょっと時間の関係で、インドからの帰国については、ほかの委員会でも議論もありますので、済みませんけれども、今日来ていただいているけれども、できないので、済みません。

 最後、国際航路標識機関条約について、一問聞かせていただきたいと思います。

 本条約の締結により、機関運営のための分担金を支払う義務を負うこととなっています。国連やWHOなどでは拠出金の額が国ごとに大小様々あるように見受けられますけれども、この分担金はどのような基準で割り当てられているのか、また、割当て以上に拠出することはないのか。さらに、この機関の理事など役員に日本人は何人就任するのか、その割合は参加各国から見て妥当な人数なのか、少ないと思われるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 国際航路標識機関の加盟国の分担金の額につきましては、この条約十三条二の規定に従いまして、各加盟国において同一の額と定められております。この額は総会が決定することになります。

 日本は、現時点においては、この機関に対して分担金以外の拠出を行うことは想定してございません。

 人につきましては、今までございました協会につきましては、日本人が事務局職員として在籍したことはございません。

 新たに設立される機関につきましては、事務局員十数名程度の小規模な組織となることが想定されておりますが、日本人職員の派遣につきましては、海上保安庁とともに前向きに検討していく考えでございます。

浦野委員 ありがとうございました。

 委員会の冒頭に、私も質問で取り上げてきた北角さんが無事に帰ってこられるということが分かりましたので、本当によかったと胸をなで下ろしております。外務省の皆さんも、御尽力ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

    ―――――――――――――

あべ委員長 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官伊吹英明君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

あべ委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

あべ委員長 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 国民民主党の山尾志桜里です。

 まず、台湾とICCATについてお伺いします。

 WHOへの台湾のオブ参加については、これまでも議論がされていましたが、先ほど来の指摘もありましたけれども、ICCATにおける台湾の参加プロセスを見ておくことは有用だと思うんですね。特にICCATにおいては、二〇〇三年に協力的非加盟国として台湾が参加することになったプロセスでは、当時、ICCATの常任議長は日本人の宮原さんでありましたし、かなり積極的な役割を果たしたんだろうというふうに思います。

 そこで、役所でも結構です、伺いますが、このときのプロセスと日本の関与、そして、そのときの中国の反応ですね、この台湾の参加に反対を公的に表明したのかどうかということについて伺います。

四方政府参考人 お答え申し上げます。

 台湾は、二〇〇三年から協力的非加盟漁業主体という形で条約に参加ということでございますけれども、二〇〇三年以前も大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約の適用水域内で相当量の漁獲を行っておりました。このような状況もございまして、二〇〇三年の大西洋まぐろ保存委員会、ICCATの年次会合において、勧告により、ICCATの資源管理措置を尊重すること等で与えられる協力的非締約国漁業主体の地位が創設されまして、台湾は二〇〇三年以降、協力的な地位を獲得した漁業主体としてICCATの資源管理措置を尊重する形でICCATに参加してきております。

 我が国といたしましては、条約区域における資源管理を促進する観点から、台湾の協力的な地位を獲得した漁業主体としてのICCATへの参加を支持した経緯がございます。

 中国の反応につきましては、特段このプロセスの中で強い反応が示されたということは承知しておりません。

山尾委員 このとき中国は強い反応を示したということはないということでした。

 今回、更に台湾の立場を前進させるような形での規定が新設されるわけですけれども、この規定の新設においては中国の反応はどうだったんでしょうか。

四方政府参考人 お答え申し上げます。

 台湾は、従来より世界有数のはえ縄漁業勢力を有しておりまして、この条約区域内で日本に次ぐ第八位の漁獲を行っております。ちなみに、中国につきましては十六位ということで、台湾よりも相当漁獲量としては少ないということでございます。

 そこで、中国の反応でございますけれども、条約区域内の資源管理が更に強化されるということについては中国にとってもメリットがあるというふうに考えて、それで、今回、台湾を漁業主体としてICCATに参加するということについて反対はなされなかったというふうに考えております。

山尾委員 つまり、なかなか国際組織への関与がままならない台湾ですけれども、今のお話を伺うと、それこそ関与がままならない原因の大きな一つである中国、こういった形で、台湾に対する管理強化の場面では中国にとってメリットがあるので反対なし、一方、WHOのように、むしろ国際的知見を台湾に学ぶために参加をしていただこうというようなときには中国は猛反対というような状況が客観的に見られるんだと思います。

 その点、やはり規制をかけるときは賛成して、知見を学ぶ際には反対という態度はフェアではないというようなことをしっかりと主張していただくということも、今回のWHOの台湾のオブ参加を働きかける際には有用だと思うんですけれども、その点、大臣、いかがですか。

茂木国務大臣 言い方はそれぞれあると思いますけれども、基本的に主張されていることは正しいと思っておりまして、やはりそれは、国際場裏での発言というものには一貫性というものが各国に要求されると思っております。特に今、世界は新型コロナの感染拡大という危機に直面をしているわけでありますから、あらゆる経験であったりとか知見、台湾のものを含めて、台湾の措置は成功した、このように言われているわけでありますから、そういったことを活用していくということは人類全体にとって私は必要なことなんだと考えています。

山尾委員 そこは本当に同感です。

 そこで、今回、WHOの事務局側が、判断権は自分にないと主張して、コンセンサスでやるんだというふうに話をしています。一方、現在の状況で、中国が猛反対をしているという中で、コンセンサス方式でなかなか招待することがままならず、ある意味、膠着状態にあるという状態です。

 その点で大臣に伺いますけれども、大臣、昨年の国会でも台湾のオブザーバー参加を問われまして、そのときにこう発言されています。何をすればいいかというと、オブザーバー参加についてはWHOの事務局長が決められるんですよ、呼べばいいんですよというふうに答弁をしています。

 改めて、台湾をオブザーバーとして招待するかどうかの決定権、日本政府としてどこにあると考えていますか。

茂木国務大臣 WHOの憲章には、厳密に申し上げますと、オブザーバー参加について必ずしも明確な規定はございませんが、事務局長はWHOの技術的、行政的責任者を務める、このようにされておりまして、過去に台湾やバチカン等にオブザーバー招待を事務局長が行った例はございます。

山尾委員 過去に事務局長がそういった招請を行っているという前例に基づいてというような答弁と伺ったんですけれども、この点、やはり、さらに、ここはある意味、中国側あるいはWHOの事務局側の見解と日本の見解、そして台湾も判断権は事務局長にあるのだというふうに言っているわけですが、その解釈が衝突しています。しっかりとこの点、根拠を強めていただく必要があると思うんですね。

 もうちょっと追って質問したいんですけれども、台湾がオブザーバー参加をしていたのは二〇〇九年から二〇一六年。このときの事務局長は、ずっとマーガレット・チャン事務局長でした、中国の事務局長。二〇〇八年に親中派の馬英九政権が発足した翌年から招待が始まって、蔡英文政権に替わった二〇一六年を最後に招待がなくなった。

 これはつまり、事務局長が決定、差配できていたことの一つの証左だというふうにも思うんですね。その点、今、WHO事務局側や中国はコンセンサスだと言っているんですけれども、では、この台湾を招待していたとき、二〇〇九年から二〇一六年にかけて、このときは、きちっと加盟国のコンセンサスを取る手続というのはなされていたんでしょうか。役所で結構です。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、二〇〇九年から一六年まで、台湾はWHO総会に招待をされていました。その間、事務局長の判断で招待状が出されていたと承知しておりますが、それについて特別な手続が取られていたというふうには承知してございません。

山尾委員 今の答弁は大事だと思うんですね。招待されていたときには事務局長が招待をしており、コンセンサスを取るような特段の手続はなかったということは一つの大事なファクトだと思いますので、是非、そういうことも含めて、この判断権の所在についてきちっと根拠を持って主張していただきたいというふうに思っております。

 WHOの件は時間の関係でこれぐらいにさせていただいて、ちょっとミャンマーのことを先にしたいというふうに思います。一問だけ、大臣にコメントをいただきたいというふうに思っています。

 皆さんのお手元に、資料二なんですけれども、ミャンマーの民主派が出している、国民統一政府及びこの国民統一政府、NUGが創設した国民防衛隊についての当事者側からのステートメントを皆さんの元に配らせていただきました。

 その上で、私が申し上げたいのは、五月十一日、先日なんですけれども、私、オンラインで、国民統一政府、NUGのアウン・ミョウ・ミン人権担当大臣とキン・ママ・ミョー国防副大臣と一時間半、意見交換をさせていただきました。そして、そのときに、特に人権担当大臣からは、国民統一政府は、既存の民族や政党や性別を超えた形で、しかし、新しい国家をつくるのではなく、新しい国家体制を国際法の下で築いていきたいんだ、その真の政府となるためには、国民のサポート、そして国際社会の理解を得るための外交力が必要だ、歴史的関係を踏まえた希望に満ちたミーティングをうれしく思いますというようなお話をいただきました。

 国民統一政府等に対して、今、国軍側はテロリストというふうに認定をしているわけですけれども、茂木大臣、この認定について、日本政府としてどう評価しておられますか。

茂木国務大臣 ミャンマー国内においては、私は、山尾先生もやっていただいているということですが、様々な対話というのが必要なんだと思います、外部との対話、また国内での対話も含めて。問題を解決しなきゃならない。問題の解決、暴力の停止であり、拘束者の解放であり、そして民主的な政治体制の回復ということになっていくんだと思います。

 そして、それはやはり、ミャンマー国内において、それは利害が違う人は現実にいます、そういった人たちが対話をする中で、ミャンマー国民が求めるような形の政治的体制をつくっていく、そこの中から生まれるものだと思っておりまして、そういったプロセス、今、ASEANの諸国も働きかけを行っておりますが、日本としても、そういったASEANの働きかけ、これも後押ししながら、日本独自の役割も果たしていきたいと思っております。

 今回、邦人のジャーナリストを解放させた、率直に言って苦労しました。恐らく日本じゃなかったらできなかったかもしれない部分もあるかもしれませんけれども、様々な働きかけをあらゆるルートを使ってやっていきたいと思います。

山尾委員 政府、そして与党の議員、そして私のような野党の議員、そしてNGOなどの市民社会、それぞれ役割分担ができると思います。でも、是非、アジアで起きている出来事で、やはりこのアジアが力で正義が抑え込まれていくような状況に今向かっているという危機感を共有しながら、日本は実力のあるアジアの人権国家としてしっかりと道理をやはりぶれずに追求できるような、そんな国家であってほしいというふうに思っています。

 そこで、ちょっと残りの時間、五分ですけれども、水際対策の話に移らせていただきたいと思います。

 まず、オリパラのところを聞きたいんですけれども、ちょっと前回の答弁が不安定だったのでお伺いします。

 オリパラ関係者の入国に当たって、関係省庁の個別協議で入国を認めないとされた案件、私は事前に紙でそういう案件はないといただいていたんですけれども、前回は答えは差し控えるということでした。もう一度聞きます。こういった例はありますか。

伊吹政府参考人 お答え申し上げます。

 オリパラに関連して国内で開催される国際大会に出場する選手、それから東京大会本番に向けて、例えば会場の準備をしたりとか、そういうことをするために来る関係者というのがございまして、この人たちを入国させるということは大会をやる上で必要不可欠だというふうに考えています。

 このため、この人たちに対しては、出国前、入国時の検査に加えて、入国後も定期的に検査をする、それから、受入れ責任者をきちんと決めて、この人たちが管理をする中で行動管理をするということであります。こうした防疫措置を講じた上で、個別に入国を認めてございます。

 お尋ねの点なんですが、選手とか大会関係者が入国するに当たっては、まず、その必要性、本当にこのタイミングで来ないといけないのか、こういうことについて、まず受入れ責任者、多くの場合は組織委員会になりますけれども、こちらの方で精査をした上で、内閣官房の方に相談が来るというプロセスになってございます。その上で、厳格な防疫措置を講じるということを前提として、各省協議で特段の事情による入国可否が検討されるということになりますけれども、現時点において、入国を認めないということにされた案件はございません。

山尾委員 ないんですね。

 組織委員会の方でまず厳格に審査していると言っていましても、組織委員会は、やはりそういう、オリパラをやりたい、そして成功させたいという立場に立つわけですから、そこでの判断だけではままならないから、必要な判断が十分になされないから関係省庁の協議をするわけですよね。そこでやはりちゃんとスクリーニングをしていただかないと、やはり構造上おかしいんだと思います。今、これだけ多くの特別枠でオリパラ関係者が入っている中で、そういった視点から見たときに、たったの一人も、いや、ちょっと待ってくださいよという例がないということ自体が私は極めて問題だというふうに思っています。

 その上で、前回の議事録を見ていただくと、右上の黄色い枠ですけれども、ちょっと人数を聞きますね。オリパラ関係者、議事録のとおり、十一月はゼロ、十二月が三人、一月が二人、二月が八十、三月が四百三十六、つまり、十一月から三月まで五百二十一人が入国して、前回の質疑だと、待機緩和を認めたのはうち百七十九名、つまり約三分の一が待機すら緩和されて入国しているということでした。

 それで、聞きます、五月になりましたので。四月を入れると、四月は何名入国して、そのうち何名に待機緩和したんでしょうか。

伊吹政府参考人 お答え申し上げます。

 オリパラに関連して入国した選手それから大会関係者、これはまだちょっと当事務局で集計しただけの数字ですけれども、四月の新規入国者は九百九十一名というふうになってございます。

 先ほど申し上げたように、この人たちは、受入れ責任者、大会組織委員会が、多くは同行する形で行動管理をしていくわけですけれども、この人たちについて、九百九十一名のうち、そういう厳しい防疫措置を前提として待機緩和を行った人数というのは八百六十五名ということになってございます。

山尾委員 四月は九百九十一名、うち八百六十一名が待機緩和ということなので、おおよそ待機を緩和しているという状況です。

 そうすると、十一月から四月で千五百十二名全員、うち千四十六名が待機緩和なんですけれども、全体数で見るより、何か、どんどんどんどん特別枠で入れる人数が大きくなっていて、しかも待機緩和をほとんどの人に認めるようになっているという、これだけ水際をちゃんとしようという状況の中で、ちょっとやはり問題があると思うんですけれども、幾ら緩和しても管理していますと言っていますが、では、緩和した人の中で、その後、特別枠で入って、陽性者が出たのか出なかったのか、その人数等を教えてください。

伊吹政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げたとおり、四月に入国した人というのは九百九十一名なんですが、このうち陽性者は一名出ております。その一名は、入ってきてからということではなくて、空港で入国のときに検疫の段階で見つかってございます。

山尾委員 検疫段階で見つかった陽性者が一名ということですけれども、そうじゃなくて、この十一月から四月にかけて特別枠で入ってきた人の中で、その後陽性者が出たのか出なかったのか、そして、その人たちは待機緩和がされていたのかされなかったのか、そういう状況を把握されているんですかと聞いています。

伊吹政府参考人 ちょっと累計は把握をしてございませんが、四月の人に限って言いますと、九百九十一名のうち、テストイベント等で入ってきているアスリート、こういう人たちは基本毎日検査をしています。

 それから、普通の関係者は、三日目、八日目、十四日目というところで検査をしているわけですが、そういう、入ってきてからの検査の中で陽性が見つかった事例はございません。

山尾委員 今のお答えだと、四月の中では見つかっていないという認識を示されたわけですけれども、これだけ特別枠を緩めて、しかも待機を緩和しても大丈夫なんだということを積極的に言っていただくためには、全体を通してきちっと常に把握をしていただく必要があると思うし、ちょっと緩め過ぎだと思いますよ。

 時間はもう終わっているんですけれども、大臣、一言いただけたら。どうぞ。

あべ委員長 申合せの時間が経過しております。御協力いただきます。

茂木国務大臣 オリンピック・パラリンピック東京大会、安心、安全な大会にすること、これが大前提だと思っております。

 もちろん、アスリートの皆さんがこれまでのトレーニングの成果を最大限発揮する、こういう機会にすることが必要でありますが、同時に、感染対策等々には、国を挙げてといいますか、関係団体も含めて万全を期していかなければいけないと思っております。

山尾委員 本当に、国民にどんどん厳しい制約をかけながら、水際を緩めているというのはまずいと思いますので、是非再考を促したいと思います。

 ありがとうございました。

あべ委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

あべ委員長 これより各件に対する討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。穀田恵二君。

穀田委員 私は、日本共産党を代表して、日英原子力協定改正議定書に反対の立場から討論を行います。

 本改正議定書は、英国のEU及び欧州原子力共同体脱退に伴い、これまで日英間で実施されてきた原子力の平和利用のための法的枠組みを引き続き確保するための措置にとどまらない重大な問題があります。

 本改正議定書によって現行協定に新たに追加される技術とは、資材、核物質又は設備の開発、生産又は使用のために必要とされる特定の情報であり、この特定の情報には、技術援助として指導、技能の養成、訓練、実用的な知識の提供及び諮問サービスが含まれています。技術が協定の対象になることで、日英相互の原子力関連技術の輸出入が一層進められることになります。

 政府は、二〇五〇年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略の原子力産業として、小型モジュール炉や高温ガス炉の推進を温暖化対策として打ち出しています。これは米国や英国、カナダ等の海外で既に進んでいる次世代革新炉の開発に日本の原子力関連企業が参画することへの政府の支援策であり、グリーン成長の名の下に、原発を最大限活用するものであります。

 第九回日英原子力対話では、小型モジュール炉や高温ガス炉などの共同研究開発が議題となっており、今回新たに追加される技術は、こうした日英が共同で次世代革新炉の開発研究を進めるための根拠となり得るもので、到底認められません。

 今年は、東京電力福島第一原発事故から十年の節目の年です。原発事故は、一たび起これば取り返しのつかない被害と汚染をもたらします。環境問題を原発推進に利用することは許されません。

 なお、国際航路標識機関条約は、船舶の安全な運航に不可欠な航路標識分野でのより実効性のある国際基準の策定に資するものであり、また、大西洋まぐろ類保存条約改正議定書は、ICCATが行う資源の保存、利用の管理のための活動の向上に資するものであり、いずれも賛成です。

 以上を述べ、日英原子力協定改正議定書に対する反対討論とします。

あべ委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

あべ委員長 これより採決に入ります。

 まず、原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

あべ委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件について採決をいたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

あべ委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、国際航路標識機関条約の締結について承認を求めるの件について採決をいたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

あべ委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

あべ委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

あべ委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時八分散会


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