衆議院

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第2号 令和4年3月4日(金曜日)

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令和四年三月四日(金曜日)

    午前八時三十一分開議

 出席委員

   委員長 城内  実君

   理事 あべ 俊子君 理事 辻  清人君

   理事 宮崎 政久君 理事 武藤 容治君

   理事 青山 大人君 理事 小熊 慎司君

   理事 杉本 和巳君 理事 吉田 宣弘君

      伊藤信太郎君    上杉謙太郎君

      小渕 優子君    尾身 朝子君

      斎藤 洋明君    島尻安伊子君

      新藤 義孝君    鈴木 隼人君

      高木  啓君    武井 俊輔君

      中谷 真一君    平沢 勝栄君

      本田 太郎君    岡田 克也君

      徳永 久志君    太  栄志君

      松原  仁君    青柳 仁士君

      和田有一朗君    金城 泰邦君

      鈴木  敦君    穀田 恵二君

    …………………………………

   外務大臣         林  芳正君

   外務副大臣        小田原 潔君

   外務副大臣        鈴木 貴子君

   防衛副大臣        鬼木  誠君

   内閣府大臣政務官     宗清 皇一君

   外務大臣政務官      上杉謙太郎君

   外務大臣政務官      本田 太郎君

   外務大臣政務官      三宅 伸吾君

   国土交通大臣政務官    泉田 裕彦君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澤田 史朗君

   政府参考人

   (内閣官房内閣情報調査室次長)          柳   淳君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁出入国管理部長)        丸山 秀治君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岡田 恵子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 實生 泰介君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            岡野 正敬君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    市川 恵一君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    宇山 秀樹君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            長岡 寛介君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    小野 啓一君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   鯰  博行君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    安藤 俊英君

   政府参考人

   (外務省国際情報統括官) 山内 弘志君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 吉田 昭彦君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官官房資源エネルギー政策統括調整官)         南   亮君

   政府参考人

   (国土交通省航空局交通管制部長)         工藤 貴志君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 大和 太郎君

   外務委員会専門員     大野雄一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月四日

 辞任         補欠選任

  武井 俊輔君     斎藤 洋明君

同日

 辞任         補欠選任

  斎藤 洋明君     武井 俊輔君

    ―――――――――――――

三月一日

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

城内委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官岡田恵子君、大臣官房参事官實生泰介君、総合外交政策局長岡野正敬君、北米局長市川恵一君、欧州局長宇山秀樹君、中東アフリカ局長長岡寛介君、経済局長小野啓一君、国際法局長鯰博行君、領事局長安藤俊英君、国際情報統括官山内弘志君、内閣官房内閣審議官澤田史朗君、内閣情報調査室次長柳淳君、出入国在留管理庁出入国管理部長丸山秀治君、財務省大臣官房審議官吉田昭彦君、資源エネルギー庁長官官房資源エネルギー政策統括調整官南亮君、国土交通省航空局交通管制部長工藤貴志君、防衛省防衛政策局次長大和太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

城内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

城内委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。松原仁君。

松原委員 おはようございます。

 早速、質問に入っていきたいと思います。

 今回、私は、ウクライナ問題を一つの起点にして、大きな世界の構造が変わろうとしているような気がしております。とりわけ、我々と同じ自由や人権、法の下での平等、こういった価値観を持っている国々と団結をしていくことが、こうした中で我々がこれからの繁栄を維持するための最大の要諦であると私は思っております。その観点からいたしますと、常に、政権も言っているように、G7と一体となって我々が行動するということは、長期的に見ても、また我々の国益に大きくつながるというふうに考えております。

 その上で、私は今日の質問で明らかにしてまいりたいということは、G7の一致結束が極めて重要であるという中において、残念ながら、我が国はその大きな一翼を担いながら、G7の中においてのいわゆる存在感が非常に薄いのではないかということを申し上げておきたいわけであります。

 今回のロシアに対する様々な我々の制裁措置、個人に対する凍結措置、こういったものは、当然、返り血を浴びる、こういう表現が適切かどうか分かりませんが、返り血を浴びることになります。ドイツも、また他の国々も、返り血を浴びる。しかし、その返り血を浴びても、我々が尊重する共通の価値観を断固として貫徹をするというところに、我々のこれからの繁栄と我々の自由はあるんだということを明確に認識をした上で、質問に入っていきたいと思います。

 参議院で質問がありました。国民民主党の川合さんが質問した。ウクライナ大使が外務大臣に会見したいと、聞くところによると、一か月近く前から要請があった、実際一か月かどうか私は分かりませんが、長期間にわたって、要請があったが、そのことが大臣まで届かなかったということであります。

 このことは極めて問題でありまして、一国の大使というのは、その国を代表する存在であります。その存在から、このようなことが、強く、会いたい、特にこういった国際的な緊張状況の中で、会いたいという話があったとき、今申し上げたように、会わなかったというのは、大臣がそれを知らなかったから会わなかったのかどうかというのが一点。

 その上で、今後は、こういったことは外務省の内部でとどめるのではなく、少なくとも、大臣、ここには伝えるということを、明確に、一つの外務省の中の決まりとして決めていただきたい。

 大臣にお伺いいたします。

林国務大臣 おはようございます。

 今、松原先生からお話がありましたコルスンスキー駐日大使との面会でございますが、昨日の川合先生の御質問がございましたので、改めて事実関係を確認いたしましたところ、二月二十四日に在京ウクライナ大使館から口上書で要望がございまして、双方の都合のよい日時を調整した結果、三月二日の夕刻にコルスンスキー駐日大使とお会いする運びとなったところでございます。

 委員からお話がありましたように、各国の在京大使から外務省政務三役に面会したいと要請があった場合には、事情にもよるとは思いますけれども、担当課からそれぞれ政務三役に報告し、判断を仰ぐようにしておりましたので、今後も、そのルールをしっかりと守ってまいりたいというふうに思います。

松原委員 一か月という報道もあったわけですが、もちろん、そういった正式な文書のものがというのは、外務省はおっしゃっているわけでしょうが、本来は、私は、日本の外務省としては、要請がなくても、どうなんだということを逆に聞いていくぐらいのデリカシーを持たなければいけないというふうに思っておりまして、この問題については、これからはこういったそごがないように、強く申し上げておきたいと思います。

 二つ目には、私が仄聞するところでは、ウクライナ大使から、ヒューマニティービザの発給、これをお願いしたいというふうな議論がされているというふうに聞いております。

 これに関しても、検討するということを言っておりますが、私は、G7の中における日本の立ち位置は、スピード感と規模感、何かをする場合のスピード感と規模感が、一致結束しているというときの最大の要諦であると思っております。

 スピード感は大事です。大使と会うのもスピード感が大事。今回のこのいわゆるヒューマニティービザ、大使からそういう要請があったと聞いておりますが、どうなっているか、お伺いします。

林国務大臣 委員からヒューマニティービザというお言葉がございましたが、困難に直面するウクライナの人々のための支援に力を尽くして、避難民の受入れを進めていきたいと思っております。

 現在、日本には、在留資格を有するウクライナ人が約千九百人いらっしゃると承知しております。まずは、その方々の親族や知人の方の受入れを行っていくということを想定しているわけですが、それにとどまらず、人道的な観点から対応していくということにしております。

 まず、日本に親族や知人がおられる方については、短期査証を発給し入国を認めることになります。また、日本に親族や知人がおられない方についても、人道上の配慮の要否を個別に判断し、配慮が必要な場合に、短期査証を発給して入国を認めるということにいたしました。

 こうした方々について、さらに難民認定申請があった場合には、出入国在留管理庁において、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づきまして、難民と認定すべき者を適切に認定するとともに、難民と認められない者であっても、本国の情勢等を踏まえて、人道上の配慮が必要と認められる者については我が国への在留を認める、こういうことになります。

 また、受け入れた方々の状況を踏まえながら、来られた後、更に人道的な観点からいかなる対応を行うべきか、これについても、政府全体としてスピード感を持って対応していきたいと考えております。

松原委員 次に私の方からお伺いしたいのは、SWIFTのジョイントステートメント、英文のものがありますが、これに日本が入っていないんですよ。私は、今日の一貫したテーマとして、G7の中で日本が存在感を出していない、スピード感と規模感において、ほかの六か国に余りにも見劣りしてしまうということは、これは日本の国益上よくないということを申し上げているわけでありまして、スピード感という観点からいくと、何でこのジョイントステートメントに日本が入っていない、カナダなど含めて入っている、これは、彼らからの申出が遅かったのかどうか、事務的なことをちょっと教えてもらえますか。

宇山政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、これまでも、G7の枠組み、その他国際社会と連携しながら、このロシアによるウクライナ侵略について対応してきております。

 委員御指摘の欧米諸国の声明、二月二十六日のものであると思いますが、これは、G7の枠組みではなく、欧州と米国、カナダの間で調整された、いわゆる大西洋協力の枠組みで発出されたものでございます。

 欧米諸国からこの声明への参加の要請がありまして、日本もこの取組に加わったということでございまして、ほかのG7諸国からは、これを強く歓迎する意向が示されたという経緯でございます。

松原委員 そういうのをへ理屈と言うんですよ。

 いいですか、確かにこれは、G7の枠組みだったら日本は入れますよ。ただ、実際、これ、G7の中で日本だけが外れているんですよ。私は、こういうものに日本も初めから入る、G7でやろうじゃないか、俺の名前も入れろよと。

 物事はスピード感と規模感が必要であるということを申し上げました。このいわゆる七か国、G7の中で日本だけが抜けていたということに関しては、私も様々な与党の議員の方とも話をしていて、残念だという声も聞かれております。私は、このことに関して大臣はどう思っているのか、率直にお伺いしたい。

林国務大臣 この事実関係、今政府参考人からお答えしたとおりでございますが、参加の要請があって、そして、その日のうちにこれに加わったということでございます。G7諸国からは、これを強く歓迎する意向が示されたということでございます。

 この枠組みで、やはり、G7の枠組みというのは、委員が最初から、冒頭からおっしゃったように、非常に大事でございまして、今後は更にこの重要性は増すものだという御指摘、もうそのとおりだ、こういうふうに思いますので、首脳、そして閣僚を始め、様々なレベルで緊密に連携しながら、足並みをそろえて、今後も対ロ制裁を主体的に、適時適切に実行してまいりたいと思っております。

松原委員 G7の国で、現実に日本以外が全部署名していて、このステートメントが残っているわけですよ。もちろん、G7は歓迎するでしょう。それは歓迎するに決まっているんですよ。ただ、やはり、中心は、そうしたら日本を除いた六か国だねという認識がG7の中に広まる一つの端緒になる可能性がある。国益上、我々はG7の中で一定の立ち位置を維持しようとするならば、経済規模だって大きいんだから、当然、こういうものが出るときには入れろよ、大西洋だけでやるんじゃないよ、日本も入れろよというのを主張するのは政治的に当たり前のことだと私は思っています。

 G7の中における日本の存在感を上げることは日本の国益につながる、返り血を浴びてもそれをやらなけりゃいけないと私は申し上げた。スピード感と規模感なんです。この点を、くどいようですが、申し上げながら、次の質問に入ってまいります。

 SWIFTの効果は、ロシアにおいてどの金融機関に対して行われたか、ちょっと時間もないので簡単に言ってください。

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 今般のEUの決定によりましてSWIFTから排除されるロシアの銀行は、VEB、プロムスビャジバンク、バンクロシア、VTB、オトクリティエ、ソブコムバンク、ノビコムバンクの七行でございます。

松原委員 私も資料をいただきまして、ロシアの銀行の総資産額ランキングトップ二十五行、これを見ましたが、ここには七つの中で五つの銀行が入っている。計算すると、今回、最大の金融機関は、これは対象になっていないわけであります、ロシアにおける。これが圧倒的なシェアを持っているわけですが、大体この上位二十五行で、そこには五つ入っています、七つの制裁対象が。二五%ですよ、総資産のランキングで。ということは、まだ七五%には、SWIFTも、それを外すというところまではいっていないということであります。

 私は、どこまでこれをやるかというのは、それは特に西側諸国の総意の中での議論でしょうが、これはこれから進んでいく可能性があるというふうに考えております。

 ここでお伺いしたいことは、こういった影響というのは中国の金融機関にも大きく出ると思っておりますが、これについての御答弁をお願いしたい。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 こうした措置が他国の金融機関にどのような影響を与えるかについて、予断を持って申し上げることは差し控えたいと存じますが、経済制裁を行うに当たっては、制裁の実効性を最大限に高めつつ、制裁が実施されていない国や機関、分野等に資金が流れる等の副次的な効果をどう最小にするかを考えていくことが重要であると考えております。

 こうした観点も踏まえつつ、引き続き、SWIFTからのロシアの特定銀行の排除が国際的な資金の流れに与える影響について注視してまいりたいと存じます。

松原委員 これと関連する形ですが、サハリン1、サハリン2に関して、これはどうなっていくのかという話であります。

 松野官房長官は記者会見において、エネルギー安定供給に支障がないことを大前提に、G7と歩調を合わせ日本政府の関与の在り方を検討していく、こういうふうに言っているわけでありますが、これはどういうことですか。このいわゆるサハリン1、サハリン2に参加している日本の企業、具体的に言えば三井物産や三菱商事、日サハリン石油ガス開発に対して、政府として何らかの助言をする可能性があるということですか。お伺いいたします。

南政府参考人 お答え申し上げます。

 私たち、先生おっしゃるようなサハリン1及びサハリン2に関する報道、対応、これはもちろん承知しているところでございます。

 まず、これまでのロシアへの制裁強化によりまして我が国へのエネルギー安定供給に影響が出るということは、これは想定されていないところであります。

 また、松野官房長官、先ほど先生おっしゃったように、コメント、会見なさったわけですが、私たちはそれを受けまして、今後の国際的なロシア制裁強化の動きの中で、エネルギー安定供給と安全保障は最大限守るべき国益の一つとしまして、先生の先ほどからの御指摘のとおり、G7とも歩調を合わせて、適切に私たち政府として対応してまいりたい、そのように思っています。

 また、日本のエネルギー安定確保につきましては、今後、あらゆる可能性も視野に入れつつ、エネルギーの安定供給確保、これに全力を尽くしていきたいと思っております。

松原委員 SWIFTからロシアの七つの銀行が排除された。私は、これは二五%効果ですから、もっと排除する可能性が今後出てくる。すると、いわゆる日本の企業が様々な支払いの部分等において大きな影響を受ける可能性がある、こう考えておりますが、そういう場合に、政府として、そのリスクや様々な分析をし、情報を共有し、時としてこういったカンパニー、ここに助言をするということはしないのかどうか、お伺いしたい。

南政府参考人 お答え申し上げます。

 今後、SWIFTの制裁がどのような形になっていくかということを仮定した質問にお答えするのは差し控えたいと思いますが、今後、エネルギーの関係について問題があった場合には、G7諸国の官民の取組事例なども参考に、企業には適切な助言を行ってまいりたい、そのように考えております。

松原委員 これは、シェルは撤退をするということを言って、エクソンモービルは検討に入っていると。

 全体がこういうものに関して大変に否定的になったときに、それぞれも、それはヨーロッパの国だって返り血を浴びているわけだから、それはプライベートカンパニーのことだからプライベートカンパニーの意思に任せます、いわゆるカントリーリスクを含めてSWIFTにほかの金融機関が入れられる可能性も含めて独自に判断してくださいよということでいいのかどうか。

 これは、経済産業省は今日は政務官を要求したつもりが来ていないので、大変恐縮ですが、このことに関して、全体の外交を統括する外務大臣として、もしできれば御所見をいただきたい。

林国務大臣 今、経産省から御答弁があったとおりでございますが、まさに、委員が今、返り血を浴びる、こういうふうにおっしゃっていただきましたけれども、いろんな制裁をやる、これは日本だけではなくて、G7のほかの国も同様でございますが、そのことによって国内のそれぞれの企業が影響を受けるということは当然可能性として出てくるわけでございますので、これにしっかりと政府全体として対応していくということは必要だと考えております。

松原委員 しっかりして対応するという中には、当然、今言った様々なことも入っていくというふうに私は考えております。

 シェル等の撤退も、会社だけで行ったかどうかを含めて、それは実態は分かりません。やはりG7の結束、スピード感と規模感、スピード感です、これはきっちりしていかないと、日本の立ち位置というのは極めて失われてしまうと思っております。

 次に、ロシアの政治指導者に対する個人資産の凍結が行われましたが、この状況を、EUやアメリカの制裁について簡単に述べてください。お願いします。

宇山政府参考人 お答え申し上げます。

 アメリカやEUによるロシアの政治指導層に対する個人制裁についての御質問であったと思いますけれども、いずれも、プーチン大統領、ラブロフ外相始め、政策決定過程において重要な役割を果たした人々並びにいわゆるオリガルヒ、財閥等に対して資産凍結を実施していると承知しております。

松原委員 ここでおっしゃったことでありますが、団体的に、私が知る限りにおいて、EUは非常に大きな規模感でやっている。六百八十個人、それは二〇一四年以降でしょうが、そして五十何団体と、七百規模の様々な個人、団体の資金制裁を行っている、凍結ですね。イギリスもやっている。日本が一番、ある意味において規模感が小さいんだろうというふうに思っております。

 お伺いしたいことは、スイスなんかは、EUが制裁をする個人、団体に関して、それを援用してこれを行う、こういうことを言っているわけでありますが、このことは事実でしょうか。簡単に。

宇山政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のスイスでございますが、二月二十八日にスイス政府は、プーチン大統領を含むロシア政府要人の資産凍結等、EUの対ロ制裁をスイス国内でも全面的に適用する旨、発表したと承知しております。

松原委員 私は、先ほどから申し上げているように、G7内における日本のこういった人権、自由、法の支配を守ろうという姿勢は毅然としなければいけない。であるならば、規模の問題というのは重要でして、日本は規模が極めて小さいわけでありますが、スイスが行ったように、EUのこういった凍結の援用というものも検討することを含めて考えるべきだと思いますが、大臣、御所見をお伺いします。

林国務大臣 今委員から御指摘のありましたEUの個人資産凍結のリスト、これも我々参考にしながら、大事なことは、今委員がおっしゃったように、G7を始めとする国際社会と緊密に連携するということであろう、こういうふうに思っておりまして、この連携を保ちながら、迅速に厳しい措置を打ち出してきております。

 引き続き、今後も、状況を踏まえながら、G7を始めとする国際社会と連携して取り組んでまいりたいと思っております。

松原委員 是非、EU並みの規模感をスピードを持って実現するということがやはりG7の中における日本の立場というものを強くする、スピード感と規模感ということを、くどいですが、申し上げておきたい。

 次に、政府は、イギリス及びEU、欧州連合に拠点を持つ我が国の金融機関グループに対し、イギリス及び欧州連合の対ロシア金融制裁措置対象となった個人及び団体とは、海外拠点等が属する国の制裁に係る法規制を踏まえた対応を指導するべきだと思うが、いかがでしょうか。

宗清大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 金融庁におきましては、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドラインに基づきまして、海外拠点を有する我が国の金融機関グループに対しまして、海外拠点が属する国の制裁に係る法整備が我が国よりも厳格である場合も勘案しつつ、グループとして一貫したマネロン、テロ資金供与対策に係る方針等を策定し、この方針等に基づきまして、顧客の受入れ、顧客の管理等についてグループ全体で整合的な形で実施することを指導しているところでございます。

 これにつきましては、松原先生が令和二年に提出されました林鄭月娥香港行政長官への米国金融制裁適用に関する質問に対しまして政府として回答した方針から特段変更したものではございません。

 金融庁といたしましては、ロシアに対する制裁の実効性を確保するため、G7を始めとする国際社会と緊密に連携して対応をしてまいります。

松原委員 要するに、指導するわけですから、日本の金融機関でヨーロッパにある若しくはアメリカにあるところは、アメリカやEUが個人資産の凍結をしている者に対して、厳しくその措置に当たっていることを考えて、それを踏まえて行動するようにという助言をする、指導する。つまり、簡単に言えば取引をするなということですよ。だから、現実問題、日本が資産凍結を規模感少なくやっても、ヨーロッパの日本の金融機関はヨーロッパの規模感で個人制裁を事実上やっていくことになるということなんです、今の話は。

 だからこそ、EUのルールを、EUの規模感を援用する、それも早くやる方が、スピード感と規模感における日本のG7の立場を、結局同じなんだから、だったら早く言った方がいいよ、現実が同じなんだからということを私は強く要請をしておきたいというふうに思っております。

 次に、時間の都合でちょっと一つ飛ばしまして、いわゆる北方領土をロシアから返還させる日本の交渉でありますが、このプロセスに関して予定どおり進むと考えるかどうかという質問は、もう時間がないので飛ばします。

 大臣にお伺いしたい。

 日本が領土問題を解決してロシアとの間に平和条約を締結するという大原則は、こういった事態にあっても、これはもう大目標として存続している、こういう認識でよろしいか。

林国務大臣 領土問題を解決をして平和条約を締結する、この基本方針には変わりがないところでございます。

松原委員 こういった状況ですから、極めて、北方四島における日本の様々なロシアとの活動も、ロシア側から制限しておる可能性もある。そうした中においても、大臣としては、この領土問題を解決して日ロ平和のための条約を作るという決意を表明されたと思っております。

 私は、先ほどからスピード感と規模感ということを言ってきた。戦争犯罪についてお伺いしたい。

 いわゆる戦争犯罪については、ウクライナ情勢に関して、国際刑事裁判所が戦争犯罪の捜査を開始した、最近、テレビでも今日あたりやっていますが、これは、いわゆるICC、国際刑事裁判所に参加する三十九の国が捜査を付託をして、捜査をカリム・カーン主任検察官が始めたというのが報道されている。このことは承知していますか。

鯰政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、二月二十八日、国際刑事裁判所、ICCのカーン検察官は、ウクライナの事態について捜査に向けた手続を行う旨及び締約国による付託を促す旨の声明を発表いたしました。これは、締約国による付託があれば、予審裁判部による許可の手続を経ずして検察官が捜査を正式に開始することができるということを念頭に置いたものでございます。

 これを受けまして、三月一日にリトアニアがICCに付託いたしました。これにより捜査の開始が可能になりました。その後、昨日の時点の状況ですけれども、欧州諸国、カナダ、オーストラリアなど三十九か国がこの件をICCに付託してございます。

松原委員 これ、日本が入っていないんですよ。日本はこの付託に入っていないんですよ。

 これは、入る必要がないから入らないのか、情報が遅れたから入らないのか、我々はスピード感を伴うことを嫌っているから入らないのか、説明してください。

林国務大臣 今回のロシアによるウクライナに対する軍事行動、これは力による一方的な現状変更の試みでございまして、国際秩序の根幹を揺るがす行為で、明白な国際法違反でございます。断じて許容できず、厳しく非難をいたします。

 ICCとの関連では、今説明があったように、欧州を中心にこの付託を行ってきている状況でございますので、我々としても、かねてからICCをめぐる動向を注視してきておりますが、事柄の重要性にも鑑みて、我が国の対応については引き続きしっかりと検討していきたいと考えております。

松原委員 これが問題なんですよ。

 だから、結局、スピード感がないんですよ。三十を超える国々が参加しているのに、日本は付託に参加しない。SWIFTに関しても、日本は最初のステートメントに参加をしない。結果として金融機関に対して指導はするんだけれども、規模感もそこまでいかない。こういったことが続いている。ウクライナ大使と会う会わないということは別にしても。

 私は、スピード感と規模感が、G7の中で、人権と自由と法の支配というものを考える国家として、日本はどうなっているんだというふうに、まあ、みんな言いませんよ、一緒にやってもらいたいから。でも、内心は、日本の立場と矜持は非常に今落ち込みつつあるような気がしてなりません。

 そこで、次の質問ですが、いわゆるG7の国の中で、人権侵害制裁法案、俗称マグニツキー法とも言われておりますが、これを持っていない国はどこでしょうか。

岡野政府参考人 人権侵害を根拠として制裁を行うという意味でのマグニツキー法、アメリカは持っておりますし、EUにおいても持たれております。日本ではございません。

松原委員 要するに、人権を尊重する国だけれども、人権に関してのこういった制裁法案を持っていないのは日本だけだと。

 大臣、今までいろいろ聞いてきましたが、要するに、日本がG7と共有の価値を追求するというときに、ちょっと説得力がないんですよね。マグニツキー法、いわゆる人権侵害制裁法案、私は必要だと思う。これは、一人の政治家としても、林さん、林大臣、御所見をお伺いしたい。

林国務大臣 日本は、人権、これが普遍的な価値であって、人権擁護は全ての国の基本的な責務だと考えております。日本は、そうした考えで、これまでずっと、人権侵害に対してはしっかり声を上げるということ、そして一方で、対話と協力を基本とし、民主化、人権擁護に向けた努力を行っている国との間で二国間対話や協力を積み重ねて、自主的な取組、これを促してきております。

 今お話のあったような、人権侵害を認定して制裁を科すような制度、これを日本も導入すべきかどうかについては、これまで、先ほど申し上げたような日本の人権外交を踏まえ、全体を見ながら、引き続き検討してまいらなければならないと思っております。

松原委員 これは必要だと思いますよ。G7の中で日本だけが持っていない。いわゆるスピード感と規模感と、あとはこういったツールですね、人権を守るためのツール、全部日本は他の国より劣っているということが今日の質疑で明らかになって、非常に残念であります。

 それは、やるのはやるんですよ、みんな称賛してくれますよ。しかし、内心では、日本がリーダーシップを取っているとは思っていない。やはり外務省としては、このことに関しては深く認識をしてもらいたいと思います。

 その上で、次の質問に入ります。

 プーチン氏に対する個人資産凍結に日本は踏み切ったわけでありますが、ちょっと視点を変えて、安全保障上の理由があると考えるならば、北朝鮮の核、ミサイル、拉致は、ロシアのウクライナ侵攻以上に、ある意味では日本にとって直接的な安全保障上の危険性を持っていると考えますが、どなたでも結構です、御所見をお伺いしたい。

實生政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、これまで、弾道ミサイル等の度重なる発射を含め、一連の北朝鮮の行動というものは、日本、地域及び国際社会の平和と安全を脅かすものであり、断じて容認できるものではないというふうに、このように認識しております。

松原委員 直接的ですからね。

 その上で、お伺いしたい。アメリカは金正恩氏に対して資産凍結を行っているかどうか、お伺いしたいと思う。

實生政府参考人 お答えいたします。

 米国は金正恩委員長を制裁対象と指定した制裁を取っておるというふうに、このように承知しております。

松原委員 明確に言ってもらいたいんだけれども、アメリカは金正恩氏を個人制裁の対象にしております。アメリカは金正恩氏を個人制裁の対象にしておりますから、当然、ドル決済のものに関しては、金正恩は資産を動かすことができないということになるわけであります。

 なぜ日本は、これだけ日本に対してミサイルをぶっ放し、核実験をやり、そういった国の指導者を、アメリカですら個人制裁の対象にしている、なぜしていないのかというのは、していない理由を長々言うだろうから聞きませんが、何でしていないのか、非常に疑問でなりません。

 私は、岸田さんが無条件に金正恩に会うというのは、北朝鮮にしてみれば、日本が北朝鮮に対して白旗を掲げているようにしか見えないというふうにも考えられる。私は拉致をずっとやってきて、そう思っている。

 私は、ここで拉致の議論を余りする思いもないが、ストックホルム合意自体も破棄しないことがこの問題の長期化にむしろ結びついていると大変に怒りを持っている一人であります。

 そこで、私は、金正恩の制裁等を行うというのは必要だと思います。これは答弁を求めません。ああ、答弁できますか、林さん。どうですか、大臣。

林国務大臣 ウクライナ事案を踏まえてというような文脈でお尋ねだ、こういうふうに思いますが、今回のウクライナ侵略は、まさにアジアを含む国際社会の秩序の根幹を揺るがす深刻な事態だと考えております。

 そうした意味で、先ほど来、G7と連携をしていくということも、まさにこういった一方的な力による現状変更をインド太平洋や東アジアで許してはならないという意味でも大変大事だ、こういうふうに思っております。

 そうした意味で、資産凍結についてですが、これは個別具体的な状況に応じて検討をされるべきだというふうに思いますし、そういう意味では、予断を持ってお答えすることは控えますけれども、その実施等について、その時々の国際情勢、これを考慮して、G7を始めとする国際社会との連帯も重視しつつ、総合的に判断するべきものと考えております。

松原委員 今の大臣の思いは、言葉の裏にある思いは、私は非常に必要だと思って聞きました。

 つまり、今回の金融制裁で明らかなことは、実際は、ある国で日本より厳格な制裁が行われれば、そこに支店を持っている日本の金融機関は、現実に、それに基本的に従わざるを得ない、日本がその個人にやろうと。ということであることを逆手に取るならば、G7の価値を共有する国々で、それは戦争をするわけではなく、様々な経済制裁や、同時に、いわゆる個人の資産凍結をするということは極めて有効であるということが恐らく証明される。それは一〇〇%有効とは言いませんよ。

 であるならば、北朝鮮との関係においても、もちろん日米基軸もありますが、G7の国々に対して、今回も、圧倒的な協力をする、同じ水準のスピードと規模感で同じ行動をする、マグニツキー法も作る、そういったことをして、貸し借りとは言いませんよ、しかし、同じ信念と、人のために一緒に戦っていくんだと。

 そして、我々にとっては、同じように北朝鮮の問題がある、拉致、核、ミサイルの問題がある。このことに関して、金正恩を含めて全てのこういった者に対して、日本だけではない、G7の国々、そういった国々と一緒になって、資産凍結を含めた行動をすることが最大の武器になるということを私は明確に申し上げておきたいわけであります。

 今、大臣は、そのことをえんきょくにおっしゃったんだろうというふうに理解しております。

 そして、本当は今日、質問で、中国大使館における日本の館員のことと、あとは、排他的経済水域におけるいわゆる主権的権利を持っている地域において、仮にそれを中国が侵害した場合に、日本は、それに対してもG7の国々と一緒になって、個人制裁、さらにはいわゆる経済制裁も含めて検討する。

 私は、もう最後、言いっ放しで終わりますが、そういったことを、例えば、じゃ、尖閣に対して、無人島に対して中国が占有してくる、そのときには、尖閣を守るためのこういったことをやるよと、これは明確に言わなきゃいけない。水面下ではない、公に、どの国であろうと、こういったことをする国家があるならば、その国家の政府要人に対しては個人資産の凍結を含めて行うということを私は公に言うべきだと思っている。

 そして、そのためには、そういった個人の資産の凍結をする前提において、スピード感が大事ですから、あらかじめ、どこにどういうものがあるかというのを把握するぐらいの、本当にぎりぎりの、そういった強い外交というものを展開してもらいたいと思っております。

 時間が参りましたので、以上で終わります。ありがとうございました。

城内委員長 次に、岡田克也君。

岡田委員 立憲民主党の岡田克也です。

 私からは、冒頭、ウクライナの問題。

 まず、ウクライナに滞在する日本人、百二十人という数字が予算委員会などで述べられておりますが、状況がかなり大きく変わってきたことをもって、現状、更に退避する人の数が増えているんじゃないかというふうに思いますが、この現状あるいは見通しについて、まず説明をしていただきたいと思います。

林国務大臣 ウクライナの在留邦人でございますが、皆様に対して、これまで累次にわたって退避を呼びかけてまいりました。一月時点での在留届出ベースで約二百五十名でございましたが、三月二日時点で約百十人となっております。

 ロシアによる侵略後、一定程度の邦人の陸路による出国は確認されておりますが、御指摘のとおりでございますが、退避の働きかけにもかかわらず、残留意思の固い方々や、それぞれの特段の事情で残られている方々がいるということは事実でございます。

 引き続きウクライナに残られている方々の多くは、ウクライナ人配偶者等、現地に生活の基盤がある方々でございますが、これ以上の詳細については、邦人の特定につながるおそれもございますので、邦人の安全を確保する観点から、回答を差し控えたいと思います。

 我々は、引き続き、流動的な現地情勢の中でございますが、あらゆる事態に備えながら、邦人と緊密に連携を取りつつ、出国支援を始めとする在留邦人の安全確保、これに最大限取り組んでまいりたいと思っております。

岡田委員 今の、配偶者がウクライナ人という御説明がありましたが、当然、そういう場合にも、その配偶者あるいは子供については、日本人と同じように、日本大使館がしっかりと国外退避について協力するという理解でよろしいですね。

林国務大臣 まさに今委員からお話があったように、我々、邦人とその御家族も含めて緊密に連絡を取りながら、出国支援を始めとする安全確保に最大限取り組んでまいりたいと思っております。

岡田委員 まず、そこに全力を尽くしていただきたいというふうに思います。

 その上で、先ほど大臣から、ウクライナ人の状況についてかなり明確な御答弁をいただきました。そこで、幾つか質問したいというふうに思っておりますが、もう一度ちょっと確認したいんですが、ウクライナ人の退避、日本がこれを受け入れる、そのスケジュールと規模感を、先ほど松原委員の質疑の中にもありましたが、やはり日本としてはっきり言うことが大事だと思います。いつ頃にどのぐらいの規模で入れるというお考えか、述べていただきたいと思います。

林国務大臣 我が国が今からどういうことをしていくか。まず、親族や知人がおられる方に短期査証、そして、おられない方についても人道上の配慮の要否を判断して短期査証、そして難民認定ということは松原委員にお答えをしたところでございます。

 現在、在留資格を有するウクライナ人、我が国には約千九百人いらっしゃるということでございますので、この中でどれぐらいの皆さんの御希望が出てくるのかというのを受け止めてしっかりと対応していきたいとは思っておりますが、現時点で、何人ぐらいで、いつぐらいというところまではまだいっていないというのが状況でございます。

岡田委員 大臣は先ほど、日本に親族、知人がいる、千九百人、それ以外にも人道上の配慮で受け入れるとおっしゃったわけですから、これは国の意思として受け入れるわけですから、どのぐらいの規模を受け入れるのか、そしてどういうタイミングでそれを入れるのかということはやはり明確にすべきだと思うんですが、いかがですか。

林国務大臣 それぞれの皆様の個々の御意向、また個別の事情等もあろうか、こういうふうに考えておりますので、人道的観点も踏まえて、適切に対応してまいらなければならないと思っております。

岡田委員 日本にそういった親類や知人がいるということだけではなくて、それ以外も含めて人道上の観点から入れるという御説明だったんじゃないですか。そうすると、それはやはり日本の意思ですよ、どのぐらい入れるか、あるいはどういう基準で入れるか、いつまでにそれをするか。そのことについて全く述べられないというのは、私はよく理解できないんですが、いかがですか。

林国務大臣 今委員がおっしゃったように、例えば、大使館の現地職員等々、いろいろな関係者もおられます。こういう情勢でございますから、情勢が刻々動いてございますので、こういう皆様からの御要望や人道的観点、個別の事情、御意向、こういうものを踏まえていかなければならないと思っております。

岡田委員 非常にはっきりしないわけですけれども、私は、言葉だけで実体を伴わないことにならないか、そこを非常に心配しているわけですね。

 例えば、難民申請があった場合にはこれを認めますというふうに、大臣、先ほど松原委員の質問に対して言われました。これは、従来の日本政府の難民申請に対する、非常に厳しい態度を取っておられますが、これを変える、例えばベトナム難民のときにはかなりの数を受け入れたわけですが、そういった特別の対応をするというふうに理解してよろしいですか。

林国務大臣 先ほども松原委員に対してお答えをしたと思っておりますが、まず、難民申請があった場合には、出入国在留管理庁において、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づいて、難民と認定すべき者を適切に認定する、それから、難民と認められない者であっても、本国情勢等を踏まえ、人道上の配慮が必要と認められる者については我が国への在留を認めることとなる、こういうことでございます。

岡田委員 何もお答えいただいていないんですが、日本の難民の受入れの基準というのは非常に厳しいわけですね。ですから、今回のこのウクライナの、どのぐらいの方を日本政府は受け入れようと思っているか分かりませんが、それについて同じ運用をしたのであれば、ほとんどはねられてしまうということになると思うんです。

 そうじゃなくて、特別の扱いを、今回のウクライナからの避難民については特別の扱いをする、そういう意味でおっしゃっているのか、それとも、結局はほとんどはねられてしまう、そういう結果になりかねないのか、そこを明確にお答えください。

林国務大臣 出入国在留管理庁等を含めて、これは政府全体として対応していかなければならない、こういうふうに思っております。

 そういった意味では、官房長官も申されておりますけれども、この受入れについては人道上の観点から政府全体として考えていく、こういうことでございますので、今委員が御指摘のあったような点も踏まえて、しっかり対応していきたいと思っております。

岡田委員 どうもはっきりしないので、前向きの姿勢を示しつつ、現実には従来と変わらない運用だということでは、これはうそを言ったことになりますからね。これは政治主導でしっかりとやっていただきたい。

 従来の手続というのは非常に厳しくて、本当に難民と認められないんですよ、日本では。そのことの是非を今議論しようとは思いませんが、少なくとも従来とは違う扱いを、ベトナムのときにはしたはずですね。ですから、このウクライナの避難民についてもするんだと、総理もあそこまでおっしゃっているわけですから、当然、政治主導でそれをやっていただきたい。そうでなければ、これは総理も大臣もうそを言ったことになるということを申し上げておきたいと思います。

 それから、難民の申請が認められない場合にも在住を認めるというふうにおっしゃいました。非常に結構なことだと思います。ただ、その資格もどうなのか。

 短期滞在で認められても、働くことすらできない。やはり、きちんと働くことができて、そして、日本語が学べて、子供たちが学校に行ける、そういう待遇が受けられるような状況をつくり出さないと、受け入れるだけでは駄目だと思うんですが、そこはいかがですか。

林国務大臣 まさに、受け入れた方々の状況を踏まえながら、さらに人道的な観点からいかなる対応を行うべきか、これについて政府全体として対応していくということ、先ほど松原委員にもお答えしたとおりでございます。官房長官も同趣旨のことをおっしゃっておられるところでございます。

 まさに、今回の、先ほど松原委員とのやり取りでも申し上げましたように、ウクライナとの連帯を示す、こういう意味で、しっかり取り組んでまいりたいと思っております。

岡田委員 これは後で触れたいと思いますが、アフガニスタンから退避してきた人たちに対する政府の対応というのはかなり問題がありますから、同じようなことになるんじゃないかということを大変懸念しているということをここでは申し上げておきたいと思います。

 さて、そのアフガニスタンなんですが、昨年の八月十五日にカブールが陥落をいたしました。そして、各国が関係者の国外退避に努力された。日本も、自衛隊、自衛隊機を出して対応したけれども、現実には、日本人一人と、米国の要請を受けたアフガニスタン人十四人のみ輸送することができて、約五百人の大使館やJICAの現地職員、そしてその家族、ほかにも若干いたんですけれども、基本的にその人たちを退避させることができなかった。これは私、非常に大きな日本外交にとって失点だった、残念なことだったというふうに思うんですね。

 大臣、どう考えておられますか。

林国務大臣 自衛隊機による退避オペレーションに関しましては、政府として、事態が刻一刻と変化していく当時の状況下において、可能な限りの対応を行ったという認識をしております。

 八月十四日までには、民間チャーター機による大使館員、現地職員やその家族等の退避計画をほぼ整えておりました。また、それと並行して、十四日夜の時点で、防衛省に対して、自衛隊機の利用可能性につき内々打診をしていたところでございます。

 しかし、十五日にカブールが陥落をいたしまして、カブール国際空港の民間機が運航を停止して以降、空港の状況は大変混乱を極めていたところでございまして、これまでの計画を一から再検討する必要が生じて、外務省から防衛省に対し、自衛隊機の利用可能性についての検討は一時ホールドとしてほしい旨を連絡したところでございます。

 また、まずは、カブール空港を利用している各国の軍用機の余席の提供、これを要請しましたが、それを確保することが難しいということが判明をいたしました。

 その後、カブール国際空港の混乱の収束状況、各国軍用機の離発着を含む空港の運営状況を見極めながら、退避実現のための様々な手だてを検討したわけでございますが、その結果、最終的に、自衛隊機派遣が可能な状況となり、また、それが最も効果的で、かつ、それ以外の有効な手段はないという結論に達したところでございます。そのために、二十日に外務省から防衛省にそのような考え方を伝えて、自衛隊機派遣の具体的検討を要請をいたしたところでございます。

 こうした一連の経過については、内閣官房を含む政府内で随時共有を図りつつ対応を行っていたものでございます。

岡田委員 私も、八月十四日までのことについて問題があるというふうに言っているわけではないんですね。それから、日本人については、ほとんどの方が十五日以前に国外に退避をされていて、オペレーションとしては、かなり努力されてうまくいっていたというふうに私は評価をしているんです。

 問題は、大使館やJICA関係者を中心とする五百人、これについて、八月十五日にカブールが陥落するという新しい事態を受けて、自衛隊機の派遣要請を防衛大臣に対してするのは八月の二十日ですから、この十五日から二十日までの間、外務省あるいは内閣官房でどういう議論をしていたのか、これがよく分からないんですね。

 今大臣るる述べられましたが、外国の軍用機で運ぶという選択というのは、私はあり得ないと思うんですよ。五百人ですよ。もちろん、大使館の職員は、アメリカに頼んで、結局イギリスの軍用機で国外に退避したということですが、五百人というボリュームをどこかに頼んで、もちろんチャーター機とかそういうのは飛ばない状況ですから、どこかの国の軍用機に乗っけてもらうというのは、それはちょっとあり得ない選択だった。

 だから、自らやる、自衛隊機を出すしかないという、そのことは八月十五日の段階で私ははっきりしていたと思うんです。それを、事務的にいろいろ検討して状況を見ながら、二十日まで時間がたってしまった。これはやはり、私は相当問題だと思うんです。何を議論していたんですか。

林国務大臣 先ほども申し上げましたように、十五日にカブールが陥落をしたわけでございまして、民間機が運航を停止したわけでございます。そうしたところでございましたので、空港の状況等を踏まえて、自衛隊機の利用可能性については検討を一時ホールドしてほしいという旨を連絡したところでございます。

 そこで、各国の軍用機の余席の提供を要請して、それが確保をするのは難しいということが判明をしたわけでございますので、その結果として、その後、自衛隊機派遣が可能な状況となって、それが最も効果的で、それ以外の有効な手段はない、こういう結論に達したということでございます。

岡田委員 もう一回聞きますけれども、五百人を他国の軍用機で運んでもらうというその可能性を、本当にどこかに頼まれたんですか、米軍とかほかの国に。私は、それぞれが自国の関係者を運ぶのに必死になっている中で、十人、二十人ならともかく、五百人というロットを運ぶというのはあり得ない選択だと思うんですが、大臣、そう思いませんか。

長岡政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま大臣からも御答弁申しましたとおり、十五日、カブールが陥落した後、カブールの国際空港は極めて混乱をしておりました。その段階で、空港内には武器を持った人物が侵入したり、あるいは空港に対する攻撃の可能性も排除されないなど、そういう空港の状況をまずはしっかり見極める、そういう必要がございました。

 それと同時に、大使館の現地職員、さらには邦人も含めて、一刻も早い出国のためにどういうことができるかということを、状況が刻一刻変化する中、様々検討した中で、まずは、関係国の軍用機の余席の利用ということが可能かどうかということを特定の国に確認をしながら、その可能性を見極めたというところでございます。

 その後、十八日以降は、カブールの国際空港の混乱がかなり収束をしていた、それから各国の軍用機も具体的に離発着を行っていた、そういったことを確認をしましたので、その上で、改めて自衛隊機の派遣ということを具体的に検討し、かつ、それを要請をした、そういう経緯でございます。

岡田委員 五百人については後回しになったということですかね、今の御答弁だと。日本人とそして大使館員について検討していたということですよね。そういう趣旨でおっしゃったんだと思うんですが、でも、それで本当にいいんですか。もちろん、日本人の扱いとそれから関係者の扱いで差が出ることはあるかもしれませんが、やはりそれはデュアルで、同時並行で、どういうふうに運ぶかというのを検討すべきだったんじゃないんですか。そこが飛んでしまっているというのは、私は理解できないんですね。

 それから、空港の状況が非常に安定していない、しかし、それが落ち着いた上で、またそこから検討を始めますということなんですか。落ち着くことを見越して様々な手段を用意しておくというのが、それは当然外務省の責任だったんじゃないんですか。

長岡政府参考人 当時のカブールからの出国のオペレーションについては、幾つかの段階というかフェーズがございまして、一つは、最終的には航空機でもってカブール空港から海外に出国をするということなんですけれども、同時に、カブール市内から、タリバーンの検問所とかがある中をどうやって安全にカブール空港まで連れてくるかということも一つ大きな課題としてございまして、我々は、一方で、今、主として空港からの出国の話を申し上げましたけれども、いかに現地職員やその家族をカブール市内の安全なところに集め、かつ、彼らをいかに安全にタリバーンの検問所等を通りながら空港まで連れてくるか、それを同時並行的に検討していたところです。

 実際に、八月の自衛隊機の派遣を決めた後にそういうオペレーションも行いまして、無事に我々が提供したバスに現地職員やその家族を全部乗せて、さらに、出発しようと、その段階で残念ながらあの大きなテロが空港で発生した、そういう経緯でございます。

岡田委員 テロが起きて運べなくなってしまったというのは非常に残念なことだったと思います。韓国との差は一日でしたが、その一日が非常に大きかったということです。

 ただ、自衛隊機がカブールに到着したのは八月の二十五日です。三十一日には米軍が撤退することはもう分かっていた。だから、非常に窮屈なオペレーション。何でもっと早く自衛隊機を派遣できなかったのか。

 例えば、二十日に派遣要請をして、それから政府として決定して出すわけですが、準備行為という考え方もありますよね、早めに近くまで出しておく。移動のために時間もかかります。C130、足も短いし、時間がかかっちゃう。ですから、早めに周辺、パキスタンならパキスタンに出しておくという選択をどうして取られなかったんですか。そういう準備行為というのは、今までも何回かやっておられるじゃないですか。いかがですか。

長岡政府参考人 繰り返しの御答弁で恐縮でございますけれども、十五日のカブール空港で民間機の運航が停止した後、その段階で自衛隊機の利用の可能性については一時ホールドしたいということを外務省から防衛省には申し上げましたが、その後、先ほど申したように、外国の軍用機の余席の提供の可能性を追求し、それが難しいという中で、最終的には、自衛隊機の派遣が可能になるということでもって、二十日に外務省から防衛省にそのような正式な考え方を伝え、具体的な派遣の要請を正式に行ったというものでございます。

 その後、直ちに先遣隊を派遣をして、カブール空港における自衛隊機の受入れの準備ないしは現場における各国の軍隊との連絡調整、そういったことを鋭意行った、そういう状況でございます。

岡田委員 ですから、五百人を他国に頼んで運んでもらうという発想そのものが私は理解できないわけですね。

 官邸は、この間どういうふうに、この十五日から二十日の、あるいは二十三日の派遣決定までどういうふうに機能したんでしょうか。

澤田政府参考人 お答えいたします。

 政府といたしましては、在外邦人の安全確保を含め、いかなる事態にも迅速に意思決定をし、対応できるよう、司令塔たるNSCを中心に、平素から幅広く議論を重ねてきているところでございます。また、内閣官房を中心に、関係省庁が連携し、様々なケースを想定し、政府の危機管理対応について検討を進めてきております。

 昨年八月のアフガニスタンに関する対応につきましては、官邸危機管理センターに八月十四日に情報連絡室を立ち上げ、二十三日に官邸対策室に改組し、この間、関係省庁を交えて情報の集約や現地の情勢の評価等を行い、邦人等の安全確保などにつきまして対応を協議してきたところでございます。

 また、二十三日には、国家安全保障会議を開催いたしまして、在外邦人等の輸送のための自衛隊部隊派遣を含めました方策につき関係閣僚間で議論を行うなど、万全を期してきたものと考えております。

岡田委員 二十三日に官邸対策室を設置したと。そのときには自衛隊機の派遣を決めたんですが、それまで何をしていたのかと聞いているんですよ、十五日から。

 つまり、カブールが陥落して、事態が大きく変わったわけでしょう、今までのオペレーションでは駄目だと。当然、外務省の中でもいろいろ議論されたと思いますが、官邸が司令塔機能というなら、十五日からしっかりと官邸が中心になって検討しなきゃいけなかったはずですね。

 具体的に言ってください。十五日、十六日、十七日、官邸はどういう役割を果たしましたか。

澤田政府参考人 お答えいたします。

 急変する事態を踏まえまして、八月十四日に官邸危機管理センターに情報連絡室を立ち上げたところでございますが、内閣官房を中心に、関係省庁間で情報の集約、情勢の評価、邦人等の安全確保に関する方策等を検討いたしまして、適時適切に総理や官房長官など官邸要路に報告し、指示を仰いだものでございますが、邦人等の安全確保に関する危機管理の性質に鑑み、詳細は差し控えさせていただきたいと存じます。

岡田委員 私は、余り官僚の皆さんを責めてもどうかなと思うのは、やはりこれは政治主導なんですね、こういう危機の対処は。

 外務大臣は日本におられなかった。別に、いなくたって、きちっと連絡が取れていればいいんですよ。果たしてどうだったのか。そして、官房長官はどうだったのか。

 確かに、この時期は非常に難しい時期で、コロナの対応に官邸は追われたというのは一つありますね。それからもう一つは、国内政治状況も、菅総理が次の代表選挙に出ないというふうに発表されたのは九月の三日ですから、その直前の段階で、岸田さんが出るとか、誰が出るとか、そういうことが行われていた時期でもあるので、なかなか大変だったとは思いますが、だからといって、五百人の人たちの命を後回しにしていいはずはないんですね。

 そこを本当に外務省なり官邸なりがきちんとやったのかどうかというのは、私は非常に疑問がありますね。大臣、いかがですか。

林国務大臣 政治の状況がいかなる状況であっても、政府としては、こうした事態にしっかりと対応することは、当然の前提として必要であるというふうに思っておるところでございます。

岡田委員 アルジェリアの邦人に対するテロ事案、平成二十五年ですが、これに対して検証委員会を政府は設けて、一か月ぐらいで検証結果を、報告書をまとめているんですね。これはなかなか優れたものだ、しっかりしたものだと私は評価をしております。その中には、官邸の司令塔機能を十分に発揮させることが大事だということも書かれています。果たして、先ほどの準備室でそういった役割が果たされたのかどうか。

 確認ですけれども、その平成二十五年の報告書の中で、マニュアルの策定、政府全体としての対応についてマニュアルを策定する必要があるというふうに指摘されていますが、その政府全体のマニュアルというのはできているんですか。

澤田政府参考人 お答えをいたします。

 海外における邦人等の輸送に関しまして、その手順や関係省庁の役割を整理、確認したものは整備をしたところでございます。

 例えば、具体的な手順や、その際留意すべき点などを整理したものでございますが、邦人等の安全確保に関係する事案の性質上、これ以上の詳細については差し控えさせていただきたいと存じます。

岡田委員 マニュアルがちゃんとできていれば、十五日に事態が一変したのに、結局、二十三日に対策室、それまでは十四日につくった準備室というようなことに私はならないと思うんですね。

 だから、この間のやはり検証をしっかりと、このアルジェリアのときのように行うということが私は非常に大事なことだというふうに思うんです。いろいろ言っていても、いや、秘密だとかいろいろ言って、まともな答弁は返ってこないんですが、本当に、あの危機の中で五百人の人たちの命を危険にさらし、そして世界的な評価も、日本に対する評価もかなり落としてしまったということに対して、もっと危機感を持って、私は、政府の中で検証組織をつくって、そして検証すべきだ、その結果を発表すべきだ、アルジェリアのときのように。

 大臣、いかがですか。

林国務大臣 今の、八月のアフガニスタンに関する政府の対応でございますが、その経験等も踏まえて政府として不断の検討を行う中で、政府部内の更なる連携強化や意思決定の迅速化、これに努めてきているところでございます。

 実際に、エチオピアですとかウクライナ等、海外における治安情勢が悪化する兆候が見られる際には、より機動的に関係省庁間で会議を開催する等してきたところでございます。

 有事の際の邦人等の退避支援を含む政府の対応については、今後も引き続き、平素から様々な状況を想定して、適切に対応していくべきだと考えております。

岡田委員 大臣、求められているのは大臣の判断ですよ、政治家としての、官僚の作ったものを読むんじゃなくて。

 実は、この国会に自衛隊法の改正も出てきていますね。中身は、私、そんなに違和感はないんですが、しかし、この今回のアフガニスタンの件で今回の改正が出てきているとすると、やはり、ちゃんとした検証があって、どこが問題だったのかというのを踏まえて法改正が出てこないとおかしいじゃないですか。そこが全くブラックボックスになっている。そういう法改正というのは、私、認めるべきじゃないと思いますよ。政府として、この検証についてしっかりと議論してもらいたいというふうに思います。

 時間もありませんので、あと、このアフガニスタンからの出国者、日本のNGOで働いていた現地スタッフや、あるいは日本への留学経験者、これは日本としてはかなりお金を出して、アフガニスタン人の日本への留学生というものを手当てしてきたわけですけれども、そういう中に、日本に退避したいという人はまだたくさんおられます。そういうことについて、これは日本にとっては大きな資産でもあるんですね。それに対して余りにも冷た過ぎませんか。今、ほとんど認めていないでしょう。

 先ほどウクライナについて少し前向きな答弁をされましたが、それと比べても随分差があるなというふうに思うんですが、そういった、かつての留学生や、あるいはNGOで働いていたアフガニスタン人のスタッフについて、もっと積極的に受け入れる、そういうお気持ちはありませんか。

林国務大臣 まず、アフガニスタンの情勢悪化後でございますが、様々な外交努力を政府としてやってきておりまして、五百七十名、約五百七十名の日本関係の方が本邦に到着しております。この五百七十名、約五百七十名のアフガニスタン人のうち、大使館、JICAの現地職員とその配偶者及びお子様は約三百七十名ということでございます。

 今お話のあったような日本関係のアフガニスタン人の出国についても、現地職員等以外についても個別の事情を踏まえて必要に応じて支援を行ってきており、今後もきめ細やかに対応していきたいと思っております。

岡田委員 きめ細やかはいいんですけれども、実際の受入れは非常に厳しいですよ。これはやはり政治が大きな方針を出さないと、ウクライナのときもそうなんですけれども、やはり日本として、かつての留学生や、あるいはNGOで働いていた人、これは欧米ではアフガニスタンの場合にも受入れをしていますよ。そういったものについて積極的に受け入れる、このぐらいは受け入れるんだという方針をしっかり出さないと、現場は動きませんよ。やはり、外国人を入国させることについて非常に厳しい対応というのが伝統的な日本の対応ですから、だから、政治の大きな方針を出す。

 それから、せっかく入った人も、なかなか職業に就けない、日本語を学ぶ機会もない、子供も学校に行けない、そういう事態が起きています。

 大臣、受け入れる以上はしっかりとした対応が必要じゃないですか。そういったことについて、もう少し現実をしっかりと踏まえて対応すべきだと思いますが、そして、アフガニスタン人でそれができないのなら、結局、ウクライナの場合も同じようなことになってしまいかねないというふうに思いますので、その体制を整えるべきだと思いますが、いかがですか。

林国務大臣 日本に入国をされたアフガニスタン人のうちで、例えば大使館やJICAの現地職員等については、それぞれ日本政府及びJICAとして、住居や食事、日本語教育の機会の提供等の支援を行ってきております。

 大使館やJICAの現地職員以外のアフガニスタン人については、一義的には身元保証人の方々に日本における生活全般を支援していただいておりますが、日本政府としても、個別の事情を踏まえて必要に応じて支援を行ってきておるところでございます。

岡田委員 その身元保証人というのは、これは大変なんですよ。大学とかNGOといったって、たくさんの人を、そこで職業も探して、そして住居も、生活の面倒も見るというのは、それは限界があるわけですから、やはり政府の責任としてしっかりとそれはやるべきじゃないですか。

 そもそも、余り入っていないということも問題なんですよ。だから、ちゃんと入れて、そして、入れた以上は、政府が責任を持って、そして生活が日本でできるようにする、場合によっては定住できるようにする。そこまでやらないと、単に入れただけでは、これはかえって、日本を当てにして来たけれども、もっとほかの国に行った方がよかったとか、あるいはほかの国に行こうとか、そういう話にもなりかねないんですね。

 大学やNGOも困ってしまっていますよ。だって、そんなにたくさんの人を受け入れることはできないじゃないですか。彼らに、身元引受人だから責任を取れといったって、できないじゃないですか。それは政府の役割だというふうに私は思うんですね。そこについて、きちんと対応するという一言をいただけませんか。

林国務大臣 先ほども申し上げたとおりでございまして、個別の事情を踏まえて必要に応じて支援を行ってきておりまして、今後もきめ細やかに対応していくということが大事であるということは当然のことだと考えております。

岡田委員 林さん、細やかにはいいんですが、大胆にやってもらいたいんですよ。

 本当にこれは困っている人がたくさんいます。話を聞いてくださいよ、現実に。やはり、日本国として非常に情けない姿だと思いますよ。あれだけアフガニスタンについて、日本もお金を投じ、人づくりとか様々な協力をしてきました。その人たちが今困っているんです。将来の日本の資産にもなるんです。そこに対してしっかり手当てをする。もちろん、ウクライナも大事ですよ。だけれども、アフガニスタンについてもそれと同じような支援をしていく、あるいは人によってはそれ以上の支援も必要だというふうに思いますので、是非よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 終わります。

城内委員長 次に、青山大人君。

青山(大)委員 先ほど松原委員の方からも、駐日ウクライナ大使が林外務大臣に面会を求めたにもかかわらず約一か月間会えなかった、そういう事実のこともあったんですけれども、これはやはり外交上大変な問題であると私は思っております。

 大臣の面会が実現しなかった原因に、鈴木副大臣がその原因とも一部聞いていますけれども、改めて事実関係を鈴木副大臣に問います。

鈴木副大臣 青山委員にお答えをさせていただきます。

 そのような報道が出ているということは私も承知をしておりますが、事実関係としては事実無根であるということをはっきり述べさせていただきたいと思います。

 私が大臣の面会要請を止めていたということはもちろんありませんし、また、他の報道でも、関連してではありますけれども、私自身が大使との面会要請を応じなかった若しくは拒んでいたという論調の報道等も出ておりますが、それに関しても事実無根であるということも付させていただきたいと思います。

青山(大)委員 それぞれ解釈はあるかもしれませんけれども、これは、鈴木さん、外務省の副大臣というお立場でございますし、今、無根とおっしゃいましたけれども、ただ一方で、相手の方の、当事者の方は、そういうふうに、鈴木副大臣には、原因じゃないかというふうな疑惑を持たれているようでもございますし、そういう中で、更に疑惑がどんどんどんどん増大していって、日本のマスコミでもそういった報道が出てしまう、これは非常にちょっと問題じゃないかなと思いますけれども。じゃ、どういったことが原因になったと考えられますか。

鈴木副大臣 お答えをさせていただきます。

 欧州局長が、今日も出席をさせていただいておりますけれども、直接コルスンスキー駐日大使ともやり取りをさせていただいております。大使からも事情もお伺いをしておりますし、また、外務省内といいますか、とりわけ欧州局内でありますけれども、お調べさせていただいた事実関係についてもお伝えをさせていただきます。

 その上で、事実として今判明していることは、少なくとも、口頭での要請はあったものの、通常発出されている書面での要請が届いていなかった、また、副大臣室には要請として伝わっていなかったということが確認をされ、そしてまた、その事実関係については大使の方にもお伝えをし、共通の理解を今得ているところだと認識をしております。

 引き続き、再発防止、とりわけ、こういう現下の情勢に鑑みまして、ウクライナ大使はもとより、関係各国の大使とも緊密な連携をさせていただきたいと思います。再発の防止に徹底して取り組んでまいる所存です。

青山(大)委員 今、御承知のように、非常時であってですね、そういうふうにこういった組織の問題が出てしまったというような認識だと今伺ったんですけれども。じゃ、鈴木副大臣は、外務省の組織上の問題というような認識なんですか。

鈴木副大臣 事実関係として、ウクライナ大使にそういった思いを抱かせてしまった、これまた事実であります。

 組織としてという意味では、私も今、外務省の副大臣という任を頂戴をしておりますので、私を筆頭に、私からも関係各所にしっかりと、再発防止に努めるように、総力を挙げさせていただきたいと思っております。しっかりと努めてまいります。

青山(大)委員 分かりました。

 事実として、今、鈴木副大臣の方から、鈴木副大臣が原因でそういうふうに一か月間も面会の希望が放置されていたということは事実無根であるというふうに答弁があったので、そこは、これ以上、私もその事実確認ができませんので、一応、その副大臣の御答弁を尊重させていただきますし、ただ、今ちょっと副大臣も、ありましたけれども、どうしても今は、SNS上で、不正確な知識とか事実誤認のことがどんどん広まっていくという世の中でございます。今回のロシアによるウクライナ侵攻を、例えばSNS上で、一九九四年のブダペスト覚書を論拠に、日本の抑止力としての核保有を安易に唱える論調が一部の政治家の間にも見受けられます。そこではあたかも、ソ連邦崩壊後、ウクライナの所有物であった核兵器をロシアに返せと言われて返したので、返してしまったという前提がなされているようでございます。

 こうした論調は、ウクライナのクレバ外務大臣がアメリカの番組の出演のときに、当時、もしアメリカがロシアとともにウクライナの核兵器を奪わなかったら、より賢明な決定を下すことができただろうと語ったとの報道が端緒となっているようでございます。

 昨今は、SNSの発達で、不正確であろうとなかろうと、情報が拡散しやすく、また、まるで大勢がその論調に同意しているかのように見えて、あらぬ方向に言論が引っ張られていく危険性もあります。まさに、今回の鈴木外務副大臣の件もその一端だというふうに思います。

 私は、政治家は、国民の皆様をミスリードしてはいけない、その行く先に思いをはせる想像力が必要で、政治家の職務の責任は非常に重いと日頃から思っております。

 そこで、まず、一九九四年、ブダペスト覚書が締結された背景、事実関係を、当時の状況や地理的要因を含めて、正確にお伺いします。

宇山政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御質問のブダペスト覚書に係る当時の経緯、背景でございますけれども、一九九一年の十二月にソビエト連邦が崩壊したわけでございますけれども、それまでソ連の一部であったウクライナに、ソ連が配備していた核兵器が残存することとなったわけでございます。これは、当時、カザフスタンやベラルーシも同様の状況でございました。

 当時、G7におきましても、ソ連崩壊に伴う混乱によって、核兵器の管理、特に、冷戦終了後に削減されることとなっていた核兵器の廃棄、処理が進まないのではないか、あるいは核兵器や核物質が第三国に流出するのではないかといった危惧があったわけでございます。

 そういう中で、ウクライナに残存していた核兵器につきましては、米国と、法的にソ連の継承国となったロシア、そしてウクライナの間で、この核兵器の取扱いについて議論が行われたわけでございます。

 その結果として、ウクライナが、非核兵器国として核不拡散条約、NPTに加入する、そして一定期間内に旧ソ連が配置していた残存の核兵器を処分する、その代わりに、米国、英国、ロシアが、ウクライナの独立、主権、既存の国境を尊重すること、そしてウクライナの領土の一体性や政治的独立に対する武力による威嚇又は使用を差し控える義務を再確認する、そういった内容の、委員御指摘されたブダペスト覚書、これが一九九四年の十二月に先ほど申し上げた四か国の間で取り交わされたということでございます。

 この背景には、当時、冷戦の終結、ソ連の崩壊、旧ソ連諸国の分離独立、そして欧州とロシアの間に位置するウクライナの地理的重要性などなど、当時のウクライナを取り巻く情勢、様々な要素が重なった結果、このブダペスト覚書の署名に至ったものと見ております。

青山(大)委員 まさに今、局長、御答弁があったように、当時はウクライナと同様にベラルーシやカザフスタンも核兵器を配備されていたわけでございますけれども、外務省としまして、今回、ロシアのプーチン大統領がウクライナへ侵攻した、侵攻を決断した要因として、こういったウクライナのいわゆる核兵器を放棄したことが影響があったのか。両者の関係について、政府の分析をお伺いします。

宇山政府参考人 お答え申し上げます。

 ロシアのプーチン大統領が、今回、いかなる判断でウクライナ侵略を決定したかという点につきましては、我が国としてコメントする立場にございません。

 しかしながら、どのような判断があったにせよ、今回のロシアによるウクライナ侵略は、力による一方的な現状変更の試みであり、国際秩序の根幹を揺るがす行為でございます。いかなる理由であっても、正当化することはできません。明白な国際法違反でございます。

 また、先ほど申し上げました一九九四年のブダペスト覚書、これは、ウクライナがいわば核兵器を放棄する代わりにウクライナの領土を保全すること、これをロシア、米国、英国が確認したものでございますので、このブダペスト覚書にも反するものであるということで、日本政府として、今回の侵略、厳しく非難するという立場でございます。

青山(大)委員 少し視点を変えますけれども、林外務大臣が、先週の所信表明のときに、日米同盟の抑止力、対処力を一層強化としていますが、もとより専守防衛を旨とする我が国において、抑止力の強化とは具体的にどういったものを指しているのか、大臣に一問お伺いします。

林国務大臣 先般の日米2プラス2でも確認をしたとおりでございますが、我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中で、政府として、引き続き、領域横断的な能力の強化、即応性、抗堪性及び相互運用性の向上、さらには、宇宙、サイバー分野での協力深化、拡大抑止の強化等、様々な分野で日米間の防衛協力を進めて、同盟を絶えず現代化して共同の能力を強化する、こういう決意を表明したところでございます。

 加えて、我が国が自らを守る体制を主体的、自主的な努力により抜本的に強化をして、自らが果たし得る役割の拡大を図っていく、これが必要であると考えております。

 現在、岸田総理の御指示の下で、新たな国家安全保障戦略などの策定に取り組んでおりまして、我が国の防衛力の抜本的な強化に取り組むことで、様々な事態に対応する能力を向上させ、日米同盟の抑止力、対処力を一層強化していく考えでございます。

青山(大)委員 これでこの質問は終わりにしますけれども、当時の、一九九一年のソ連邦崩壊後の情勢と今の情勢は全く異なるわけでございまして、たまたま、ブダペスト覚書の一件だけ、そこだけ抜き取って、安易な議論とか、又は、そういった事実確認をしないでSNS上に発信する国会議員が複数見られること、私は非常に危険だなと思っております。

 私、今も、大学受験の予備校で世界史を高校生に教えております。一九九一年、ソ連邦崩壊とか、当時のまさに戦略核兵器削減の話なんかは、これは高校生でも分かっている話です。それを、何か、国会議員の方たちがいきなりぽんと出してきて、あのときウクライナが核を放棄したから今ロシアに攻められるんだとか、そういう安易な発想は非常に危険ですので、その辺、外務省はそういった過去の歴史、事実関係をきちんと伝えていってほしいなというふうに思っております。

 それでは、次の質問に行かせていただきます。

 三月一日に、林大臣が会長、藤末健三参議院議員が事務局長の超党派、日本・モルドバ友好議員連盟で、モルドバの国会議員団とオンライン会談を行いました。モルドバから日本に対して中小企業支援への感謝の言葉を頂戴したり、今後の経済連携等について前向きな議論が行われました。

 一方で、当然、今回のロシアによるウクライナ侵攻など、特に避難民の受入れについても活発に話合いが行われました。モルドバは、三月一日の段階で九万人ぐらい、ウクライナからの避難民を受け入れているとのことでございましたが、昨日には十一万人にも達していると伺っております。モルドバに限らず、ウクライナ周辺では今も多くの避難民を受け入れ、その数は日に日に増加しております。

 日本として、一億ドル規模の緊急人道支援の実施を表明していますが、迅速かつ日本の顔の見える支援が必要ではないでしょうか。また、ウクライナ周辺国の中でも、財政基盤の弱いモルドバへの支援が重要と考えます。大臣の考えを伺います。

林国務大臣 御指摘のとおり、顔の見える支援というのを迅速に実施することが重要であると考えております。

 今回の緊急人道支援ですが、UNHCRやユニセフ、こうした国際機関を通じて実施するものでありますが、それぞれの機関に対して、我が国からの支援であるということが十分に伝わるように適切に広報をしていただくことになっております。

 また、一億ドルの緊急人道支援の対象には、ウクライナからモルドバなど周辺国に避難している人々に対する支援、これも当然含まれておりまして、現地で活動している国際機関等と連携することで、速やかに支援を実施してまいりたいと思っております。

 また、モルドバについて御指摘がございました。御縁があって、私も議員連盟の会長を引き受けさせていただいておりますが、やはり、持続的に経済が発展していくことと、それによって貧困を削減していかなきゃいけない、このことが大事でございまして、九七年以降、農業や保健医療や教育等の分野で総額約二百八億円に上る継続的な支援を実施してきたところでございます。

 今後も、同国のニーズ等を踏まえて適切に対応してまいりたいと考えております。

青山(大)委員 林大臣も約三十分ぐらい参加していただいて、本当に先方の方も感激、感謝したと思いますので、是非、やはりこういった、大臣を先頭に外交努力の方をよろしくお願いいたします。

 続きまして、先週の大臣所信でもありました在中国日本国大使館員の拘束の事案についてお伺いいたします。

 二月二十一日、北京において、在中国日本国大使館員が、その意に反して中国側当局により一時的に拘束されるという事案が発生をしました。林外務大臣も、先般の外務委員会において、外交関係に関するウィーン条約の明白な違反であり、到底看過できず、断じて受け入れられない、改めて謝罪と再発防止を強く求めますとも述べられております。

 まず確認しますが、その後、中国側から謝罪と再発防止について回答は得られたのでしょうか。

實生政府参考人 お答えいたします。

 現在までのところ、中国側から本件について、御指摘のようなコミュニケーション、連絡というものは接到してございません。

青山(大)委員 今回の中国当局による大使館員の一時拘束により、今後、我が国の本当に大使館員、職員が正当な任務を遂行するに当たって、これをきっかけに萎縮することがあってはならないと考えます。まさにこれは国益に関わる大きな問題だと思いますので、今回の事案で、政府として、中国側の主張内容を否定すべきは否定するなど、もっともっとコメントを発信すべきだと私は考えますが、先ほどもちょっとまだ中国側の回答はないというのもありましたけれども、もっともっと政府は発信すべきじゃないかと考えますが、いかがでしょうか。

實生政府参考人 本件について、中国側は中国側の独自の主張をしているわけですけれども、先ほど委員からも御指摘がありましたみたいに、当該館員は外交官としての正当な業務を行っていたにもかかわらず、その意に反して拘束をされたということで、このことは、外交関係に関するウィーン条約が規定する外交官の身体の不可侵の明白な違反であります。

 中国側の主張は全く当たらないということで、断じて受け入れることはできませんし、中国側に対しては、そうした旨を明確に反論して厳重な抗議を行うとともに、謝罪と再発防止を強く求めているところであります。

青山(大)委員 是非ちょっと大臣からも一言答弁を頂戴したいと思いますので、お願いいたします。

林国務大臣 ただいま答弁をしたとおりでございます。中国側の独自の主張、これは全く当たらず、断じて受け入れることはできないわけでございまして、今答弁させていただいたように、その旨を中国側に対しては明確に反論して厳重な抗議を行うとともに、謝罪と再発防止を強く求めておるところでございます。

青山(大)委員 本当に、繰り返しですけれども、こういった一件によって、今後、我が日本国の大使館員が現地で正当な任務を遂行するに当たって萎縮するようなことがあってはならないと考えますので、そこはしっかり大臣を先頭に是非取り組んでほしいというふうに思っていますので、重ねて強く要望させていただきます。

 最後に、北方領土について伺います。

 ロシアと日本の間には領土問題がございますけれども、二月二十八日の参議院予算委員会で、自民党の佐藤参議院議員、佐藤正久議員の質疑に対して、北方領土が占拠されていることは国際法違反であると認識しているとの答弁が宇山欧州局長の方からありました。

 改めて林大臣にお伺いをさせていただきます。現在のロシアによる北方領土の占拠は国際法違反であるという認識で、大臣、確認しますが、よろしいでしょうか。

林国務大臣 欧州局長が答弁したとおりでございます。

青山(大)委員 大臣からも同じような答弁を頂戴して、安心したところでございます。

 冒頭、ウクライナの件があって、ちょっと若干質問が変わってしまいましたけれども、本当に、引き続き、大臣を先頭に様々な外交案件に取り組んでいただきたいと思っていますので、私の質問を終わりにします。ありがとうございました。

城内委員長 次に、和田有一朗君。

和田(有)委員 おはようございます。日本維新の会の和田有一朗でございます。

 外務委員会では初めて質問させていただきます。感謝を込めながら質問したいと思います。

 まず最初に、せんだって、大臣は、ウクライナの皆さんに連帯を示したいということで、お召し物もいろいろとなさったというふうに言っておられました。私も工夫してみまして、こちらにバッジをつけてまいりました。これは自分で工夫して作ったバッジでございまして、一つは拉致問題のバッジ、もう一つ、下に黄色いバッジをつけております。

 大臣、ちょっとお聞きしたいんですが、黄色いバッジなんですが、御存じでしょうか。

林国務大臣 ちょっと遠くて色があれですが、似たような色に北方領土の関係のバッジはあったかと思いますが、もう少し黄色いようにも見えますけれども。

和田(有)委員 そのとおりでございます。政府参考人の方からちょっとお知恵をいただいたのか分かりませんが。北方領土返還運動のバッジが黄色でございます。これを二つひっつけて、ブルーは青空、そして黄色は小麦、こういうことでウクライナの国旗ができているようでございます。連帯の意を示して私は自作いたしまして、持ってまいりました。

 いよいよ質問に入るんですが、その前に、私、せんだっての衆議院の予算委員会の場で、最初に、小松基地を飛び立った航空自衛隊の隊員の方が、当時、そのとき行方不明でございましたので、一日も早い救出を念じたいということからスタートしたんですが、残念なことに、残念な結果になってしまいました。私は、貴い命を国のためにささげてくださった自衛官の皆さんに敬意を表しつつ、哀悼の意を表して、質問に入りたいと思います。

 四十五分間いただいておりますので、長時間、多岐にわたりますので、若干整理をしてまず御説明しておきますが、ウクライナ問題について触れた後、その次に、先ほどの質問にもありましたが、そういったものも触れますが、中国関係をお聞きして、そしてそこから台湾問題についてお聞きしながら、最後に私なりの問題提起をさせていただきたい、こういうふうに考えております。そういうことで、皆様、理解をしていただければ幸いでございます。

 まず、ウクライナ関係でございますが、情報収集についてお伺いをいたします。

 当然、日本は、いろいろな角度から情報を集め、分析をしていると思うんですが、大変、この点に関しては、インテリジェンスのことですからお答えにくい面もあろうかと思いますけれども、今回のロシアの軍事行動について、どれぐらい把握をし、分析をしておられるのか、お伺いします。

林国務大臣 ウクライナをめぐる緊張の高まりを受けまして、政府として、ロシアによる侵略の可能性も含めて、重大な関心を持って情報収集、分析に努めてきたところでございます。

 外務省としても、在外公館等を通じまして、インテリジェンス情報を含め、鋭意情報の収集、分析に努めているほか、関係国の情報機関とも緊密に連携して情報交換を行ってきております。

 中身については、委員もおっしゃっていただきましたが、日本のインテリジェンスの実態に関わるものでもありますので、具体的に申し上げることは困難でございますが、いずれにしても、今後もこうした取組を進めつつ、情報の収集、分析に万全を期してまいりたいと考えております。

和田(有)委員 お答えにくいと思いますけれども、軍事行動があるという分析はなさっておられたんでしょうか。もう一回確認します。

林国務大臣 繰り返しになって恐縮でございますが、中身につきましては、情報収集、分析の実態に関わるものでございますので、具体的に申し上げることは差し控えたいと思います。

和田(有)委員 そうしか、当然、お答えはできないとは思うんですけれども。

 では、在外公館における情報収集や分析能力を上げていくということがこれからも続けて必要なんですけれども、どのような努力をなさっておられるか、教えてください。

山内政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省は、世界全体で百五十三の大使館、六十七の総領事館というネットワークを持っておりまして、そういう外務省の強みを通して、常日頃から情報収集、分析を行っているということでございます。

 また、多様な情報を幅広く収集、分析するために、地域の専門家やサイバーなどの新たな分野の専門家の育成や、公開情報の強化などを行っております。

 以上でございます。

和田(有)委員 自前の収集だけでは、当然、物事は裏づけができなかったりするわけでして、やはり同盟国や同志国や、そういった国々との、情報機関との連携というものは絶対必要になってくるわけですね。特に今回なんかは、NATO加盟国ではありませんけれども、G7各国の情報機関とは我が方は十分に連携を取れていたとお考えでしょうか。

山内政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、米国、英国を始めとする関係国から、平素から緊密に連携し、様々な情報交換を行っております。

 我々としては、こうした方向に沿って、我が国自身の情報収集、分析能力を更に高めていって、同盟国との、友好国との連携も一層強化してまいりたい、そういうふうな考えに基づいてやっております。

和田(有)委員 当然そうはなるんですけれども、そのようないろいろな情報を集めていく中で、このような事態に至った理由というものを今どのように分析をなさっておられるか、お聞きします。

宇山政府参考人 お答え申し上げます。

 今回のロシアによるウクライナ侵略、なぜ発生したかという御質問であったと思いますが、これは様々な見方がございますけれども、ここに至る経緯を簡単に申し上げれば、ロシアは昨年からウクライナ国境周辺地域で軍の増強を行いながら、米国やNATOに対して、NATOの東方不拡大等を法的に保障するようにという要求をしてまいりました。米国やNATOは、この危機をロシアとの外交交渉で打開するように努力したわけでございますが、二月二十四日に至り、ロシアは自称ドネツク人民共和国及びルハンスク人民共和国の要請を受けた自衛権の行使と主張して、ウクライナへの侵略を開始したものでございます。

 これは明白な国際法違反であり、国際秩序の根幹を揺るがす行為でございますので、いかなる理由であっても正当化することはできないと考えております。

和田(有)委員 私は経緯を聞いたのではなく、その都度その都度においていろいろな分析をしていたはずなんですね、いろいろな国からインテリジェンスを集めながら。その都度、この時点でこういう状況になっているからこれは危ないとか、その理由というのがあったはずなんですよ。単に軍隊を出したいから来たんじゃないんですね。プーチンさんの頭の中にはプーチンさんの頭の中の論理があって、物事は積み上がっていっているはずなんです。それを分析するために情報というのはあるんです。

 私、なぜこれを今言おうとしているかというと、よく、さきの大戦の前に、日本は情報を取れなかった、だからあの戦争に入ったんだと言う人がいるんですね。でも、全くあれは間違いでして、実は、大変、現場ではいい情報というのをいっぱい、戦前、日本は集めています。公電で全部本省に上げていますよ、あの当時。

 例えば、最後の段階でも、ヤルタの会談でも、小野寺信少将なんというのは、いつ、どこからソ連が攻め始めるかとか、ヤルタ会談は何があって、何がどうしゃべっているか、全部これを調べ上げて本省、日本に送っているんですね。ところが、全部各方面はスルーしているわけです。

 立場はちょっと違いますけれども、先ほどの立憲さんの御質問にもあったけれども、やはりここの部分でも、外務省の体質に至る部分というのは私はあると思うんです、今。もっと情報というものを丁寧に扱って、現場から上がってきたことをしっかりと分析をしていれば、いろいろな対策が取れたのではないかと私は思いまして、今、この質問をしました。

 これはフィードバックして、後の台湾のところでもお話を申し上げますので、今、ちょっとこれを触れました。

 次に、私たちは、ウクライナから、今、ただ見て、大変だ、助けてあげなきゃと言っているだけではやはり駄目でして、何かを学ばなければならないはずなんです。今起こっている状況というものについて、私たちはやはり学んでいくものがあるだろう。

 私、これ、一番最初に見たときに何を思い出したかというと、いわゆるミュンヘンの宥和外交というものを思い起こしたんです。まさに今起こっていることは、宥和的なことをただ場当たり的にやってきたからこういう状況に至ってしまったのではないかと私は思います。

 大学生の方が、国際関係を学ぶ学生さんは、まず最初に学ぶのは、このミュンヘンの宥和外交であったり、そういったものを学びます、国際関係をやるときには。まさに、今回のこの出来事というのは、はっきり言って、さきの大戦前のミュンヘン会談における宥和政策と符合する部分というのが、実は私、この経緯の中であるように思うんですが、その点、どうお考えになりますか、こういう議論に対して。

林国務大臣 戦前の外務省の電報についてお触れをいただいて、感謝を申し上げなきゃいけないんじゃないか、こういうふうにも思いますが、ミュンヘン会議での宥和策と符合するところがないかということについては、第二次大戦前の国際情勢と今のウクライナ情勢、これは単純に比較することは難しいとは思います。

 したがって、学生ではありませんけれども、我々、中長期的な視点を持つ場合に、やはり、歴史に学ぶということは大切なことではないかというふうに思っております。

和田(有)委員 歴史に学ぶ、まさに私は、このミュンヘンの宥和策にもう一度、歴史は繰り返すということではありませんが、学びながら対処をしっかりとしていただきたい、このように思うのであります。

 このミュンヘンの話については、ズデーテンにナチス・ドイツが侵攻していくのを傍観してしまったというか、許してしまった状況ということについて、せんだって、英国のウォレス国防相というのも、これはそういう類似性があるのではないかと実はおっしゃられたようです。

 それはもう物の見方がいろいろありますけれども、ただ、一点、言えることは、今起こっていることは、プラハの春でもないし、ハンガリー動乱でもない。これはまさに、ミュンヘンで起こっていた、あのさきの大戦の状況であると私は認識をしております。

 ですから、そういうつもりで構えていかなければならないだろう。ということは、よっぽどの、歴史的な転換点に立って、私たちは、力によって現状を打破するという、今まで積み上げてきて、そうはさせなかったわけです。それが変更させられてしまうのではないかという思いを持って事に当たらなければならないだろうということを私は思って質問しました。

 そこで、次に、中国の問題をお伺いしたいんです。

 私たちは今、中国と向き合っています。ウクライナの問題を先ほど申しましたが、ウクライナが今、向き合っているロシアと我々は国境線を挟んでいるんですね、海の上ですけれども。私たちの隣の国はロシアです。南に目を転じると、隣の国は台湾です。そういう中で、中国と向き合っていかなければならない。

 その中で、まず、先ほども質問が出ましたが、ちょっと角度を変えて、中国大使館の館員の拘束の問題についてお伺いしたいと思います。

 二月二十一日、北京市内で在中国日本大使館員が中国当局に一時拘束されました。この大使館員は、中国当局者に対して外交旅券を複数回にわたって提示したにもかかわらず拘束されたことが分かっています。

 外務省では、この件について、外交関係に関するウィーン条約の明白な、先ほども答弁ありました、中国に対し厳重に抗議し、謝罪と再発防止を強く求めてきたということなんですが、どういうルートで、どれぐらい強く求めたんですか。教えてください。

實生政府参考人 お答えいたします。

 本件事案の発生を受けまして、二月の二十二日、東京におきましては、森外務次官が楊宇駐日中国臨時代理大使を外務省に招致して、厳重な抗議を行うとともに、謝罪と再発防止を強く求めました。

 また、同日二月二十二日に、垂駐中国大使から呉江浩中国外交部部長助理に対しても同様の申入れを行ったところであります。そこの内容というのは、先ほど申し上げた、厳重な抗議を行うとともに、謝罪と再発防止を求めるということでございます。

 以上です。

和田(有)委員 そうやって、我が国に駐在するしかるべき人に抗議はしているわけですけれども、そういう中で、中国外務省は、二月二十三日に、中国が言っているんですよ、中国で身分に適合しない活動に従事していたからだと主張した上で、中国側から日本側に対して厳正な申入れを行ったと。中国が我々に申入れをしているわけですよ。我々からしたら、何を言っているのかな、こう思いますが、類似の事件が再発しないよう求めると中国が日本に言ってきているわけです。

 一体、これは何なんですかね。身分に適合しない活動って、何のことなんでしょうか。

實生政府参考人 本件について、中国側が独自の主張を行っているということは我々承知しておりますけれども、それが何を意味をするのかということを我々の側で具体的に解説をするというような立場にはございません。

 いずれにしても、こうした主張をしていることを我々、承知していますけれども、繰り返しになりますが、当該館員は外交官として正当な業務を行っていたにもかかわらず、その意に反して拘束されたものであり、このことは、外交関係に関するウィーン条約が規定している外交官の身体の不可侵の明白な違反だということ、中国側の主張は全く当たらず、断じて受け入れることができない、中国側に対しては、その旨を明確に反論して厳重な抗議を行うとともに、謝罪と再発防止を強く求めているというところであります。

和田(有)委員 私は、ちょっと視点が違うと思うんです。

 当然、それは公式コメントとしては、ステートメントとしては大事ですけれども、相手がなぜそういうことを言っているのか、相手の立場に立って、相手の頭の中の論理でもって考えてみる姿勢というのが私は必要だと思うんです。それで、最初にインテリジェンスのことも実はお聞きしたんです。ミュンヘンのことも取り上げて聞いてきたんです。

 今回、相手が何で言っているのか分かりませんが、理不尽なことを言っていますよ、それはそうなんですよ。何を言ってやがるんだ、こう思うんですけれども、しかし、相手には相手の都合があります。じゃ、相手の理屈は何なんだということを分析し、なぜ今の時点でそういうことを言うのかということを分析し、私たちは構えていく必要があると思って、今の質問をしました。もう一回聞きませんけれども、これは。

 ともあれ、条約違反の行為を行ったにもかかわらず反発する中国に対して、厳重に抗議するのは当然ですね、それは当然。抗議だけで済ませていいんでしょうか、こんな話。外務省は更なる措置、対応を検討したんでしょうか。

 本件に対する今後の対応について、改めてお伺いいたします。

實生政府参考人 本件に関しては、現時点で今後の対応ということは、我が方として予断することは差し控えたいと思いますけれども、中国側に対しては、本件について今後適切な措置を取る権利を留保するという旨を明確に伝えてございます。

和田(有)委員 この話はこれ以上しませんけれども、やはり何となく我が方は大陸中国、中華人民共和国に対して気を遣っているように思えるんですね。私からですよ、そうでない人もいっぱいいるかも分かりませんが、私にはそう思える。

 さて、そこから次の話に行きたいんです。台湾の話でございます。

 先ほど言いましたように、日本は北側に国境線を接してロシアとつながっています。南は与那国島のはるか沖合百キロほどのところに台湾と国境線で接しているんです。

 そういう中で、今、ロシアによるウクライナの侵攻の問題、極悪非道なるこのロシアの軍事侵攻、これは絶対に許されないわけですが、この軍事侵攻を受けて、日本でもようやく現実的な、論理的な安全保障の議論というのが進み始めたと私は思います。

 その中で大きな要素というのが台湾有事であります。中国が台湾を侵攻したらどうするんだと。ロシアのウクライナ侵攻は、我々にとってそういう意味で身近な問題なんです。対岸の火事ではない、他山の石なんです、まさに。そういう意味で、台湾有事について我々はしっかりと考えていかなければいけないと私は思うんです。

 そこで、質問を続けていくんですが、現行法の中で、台湾有事が起こった場合に、日本と台湾の間の安全保障に関する対話というものは現在可能なんでしょうか。やることができるんでしょうか。

 台湾の蔡英文総統は、日本との政府間同士の安全保障対話を、産経新聞のインタビューに答えるという形で求めておられます。これについて日本はどうお応えになるのか、お伺いします。

林国務大臣 両岸関係については、経済分野を中心に深い結びつきを有している一方で、その軍事バランスですが、全体として中国側に有利に変化しておりまして、最近の動向を含めて関心を持って注視をしております。

 日台間では、我が国の民間窓口機関である日本台湾交流協会を通じて、平素から様々なやり取りが行われていると承知をしております。引き続き、台湾に関する我が国の基本的立場を踏まえながら、日台間の協力と交流、これは更なる深化を図っていきたいと考えております。

 安全保障対話の可否についてなど、今お話のあった点について、台湾に関する我が国の基本的立場を踏まえながら、適切に対応してまいりたいと考えております。

和田(有)委員 まあまあ、そういうお答えしかできないんですかね。もう一歩前に進めるべきだと思うんですが。

 そのことについて、ずっと、個別具体的にこれから聞いていきます。

 台湾有事の際、極めて重要で、かつ根幹の問題として認識すべきは、今答弁ありましたように、非政府間の関係であるということになってしまうんです。じゃ、日台間の安全保障に特化したホットラインを設置して相互通報できるような手だては、そんな民間レベルの話でできるんでしょうか。

 日本と台湾の間には、規定する関係法はありません。アメリカはあります。ありますけれども、これは、言い方は悪いですが、マジックみたいなもので、米台法も防衛とかそういうことまでは書き込んでいないんですよね、実を言うと。米台同盟があるわけでもないんですね、これは実を言うと。要は、ビジネスをする上でどうするか、武器をどう売るかとか、そういうことをちゃんとお墨つきを与えている法律なんですけれども、日台間に関しては、全くこの法体系、ありません。

 そういう中で、安全保障に関する対話、相互通報ということは可能なんでしょうか。

林国務大臣 台湾との間でございますが、民間窓口機関である日本台湾交流協会を通じて、平素から様々なやり取りが行われていると承知しております。

 一例を挙げますと、米台間で二〇一五年に立ち上げられまして、二〇一九年からは日本の台湾交流協会も参加している人材育成の枠組みであるグローバル協力訓練枠組みにおきまして、ネットワークセキュリティーとそれから新興テクノロジーに係るワークショップ、また、サイバー犯罪対策バーチャルセミナー、こうしたものを開催をしておると承知しております。

 引き続き、台湾に関する我が国の基本的立場、これを踏まえながら、日台間の協力と交流、更なる深化を図ってまいりたいと思っております。

和田(有)委員 一歩一歩は前に進んでいますよということなのか分かりませんが、ここで、今サイバーの話が出ましたから、ちょっとそこについて聞いていくんですけれども、今、ウクライナで、まずサイバー戦が始まるわけです。いろいろなフェイクニュースが流れたり、事実無根のうわさ話、昔でいえばひそひそ話みたいなものがいろいろなところに流されたりしながら、サイバー戦が始まっていくわけですね。最後に電気が止まったり、何とかが止まったりとか、混乱、攪乱、やっていくわけですね。ハイブリッド戦争です。

 こんなことが今起こっていく時代に、中国から台湾は山のようにサイバー攻撃を受けています。そういう中で、サイバー攻撃に関するいろいろな取決めとか意見交換というのを、やはりしっかりと日台間でやる必要があると思うんですね。そこら辺についていかがお考えになりますか。

實生政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま大臣の方から、人材育成の枠組みにおける取組ということを紹介申し上げましたけれども、そうしたことなど、我が方の台湾に関する基本的立場というのは、一九七二年の日中共同声明を踏まえて、日台関係を非政府間の実務関係として維持していくということですけれども、そうした基本的立場を踏まえて、御指摘の点も含めて、日台間の協力、交流、どういったことが可能か、適切かということを不断に検討し、深化を図っていこうというふうに考えております。

和田(有)委員 じゃ、ちょっと角度を変えまして、最近の報道によりましたら、陸上自衛隊は、三月一日、米国、オーストラリア、フランス、インドネシア、フィリピン、ベトナムの六か国との多国間演習をして、サイバー防護競技会というのを開催したというふうに読みました。

 このようなサイバー攻撃に特化した多国間演習というのを日本が開催するに至った経緯をごく簡単に教えていただけますか。なぜ六か国だったのでありましょうか。

 防衛で答えられないんですかね。ちょっと行き違いですかね。答えられなかったらまた次回に送らせていただいて。どうですか。私の質問の、要求をしたけれども、ちょっとこの細かなところにまではしていないですか。ごめんなさい。

 次に行きます。

 じゃ、ちょっとこのサイバーのことをお伺いするんですけれども、幾ら当局の皆さんとお話をしても、サイバー攻撃を、いわゆる安全保障に関するサイバーとそうでない部分を省庁間で割ってしまうので、なかなかうまくキャッチボールができないんですね。話がかみ合わないんですけれども、答えられるなら、日本と米国はサイバー攻撃の対応に対してどういう枠組みをつくっているのか、お答えできる方がおられたら、お願いします。

 済みません。やはりちょっと、質問の調整のときでもなかなかうまく意図も伝わらないし、次に送りましょう、これも。申し訳ございません。

 では、次に行きます。

 要は、サイバーにおいても、実は、さきの産経新聞のインタビューに答える形で蔡英文総統は、我々はたくさんの知見を持っている、是非とも協力していこうということを申し上げておられるわけですね。それにしっかりと応えていく必要がやはりあると思います。

 そこから更に踏み込んでいくんですけれども、要は、事態対処法、武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保する法律について若干お聞きしたいと思います。

 この中に、第三条の七項というのがありまして、武力攻撃事態及び存立危機事態への対処に関する基本理念について述べているわけですね。こういう中で、アメリカ合衆国と緊密に協力するほか、関係する外国との協力を緊密にしていくということを書いているんですが、アメリカとの緊密な協力をつくるというのは当たり前なんですけれども、この関係する外国との協力というのは、一体どこを想定すればいいんでしょうか。もう一声言うと、台湾は含まれるんでしょうか。いかがでしょうか。

 これも私の質問を作るときのあれで、ちょっとうまくコミュニケーションが取れていないな。じゃ、これは次に送ります。

 それはまあいいんですけれども、次に、では、実はなぜこういうことを一つ一つ聞いていくかというと、アメリカのNSCが秘密文書として作成していた文書が公表されたものの中に、インド太平洋戦略枠組みという戦略文書があります。ここに、台湾を防衛するという言葉が明確に、実はアメリカはもう書き込んでいるんですね。ということは、日本はアメリカと協力するということは、こういう書き込みがあるということは、当然、台湾有事においては私たちは関わりを持たざるを得ないということを示しているんだと私は思うんです。

 そういう中で、民間とのおつき合いでとか、民間同士の話でということで、安全保障対話は私はできるとは思えないんですね。もっとしっかりした、法的な根拠を持った連携というものをつくっていく必要があるだろう、このように私は思いまして、再三、今、こういった質問をさせていただいたわけでございます。

 そういう中で、日台関係を規定する法律が必要だと思うんですが、前の予算委員会でもお聞きしましたが、もう一度お聞きします。これは、私が今申し上げたような中で、必要ではないでしょうか。いかがお考えでしょうか。

鬼木副大臣 日米同盟の中で、台湾有事を防ぐために日本として何ができるかという通告をいただいておりまして、枠組みという御質問じゃなかったので、そこにきちんとお答えできるか分かりませんが、まず、日米同盟という中で、台湾有事を防ぐために日本として何ができるかということでお答えさせていただきます。

 米国は、従来、台湾関係法に基づき台湾への武器売却を行ってきておりまして、本年二月に米国政府が公表したインド太平洋戦略においても、こうした支援を含む従来の米国の方針と整合的な形で、台湾の自衛能力を支援することを含め、地域内外のパートナーと協力し、台湾海峡の平和と安定を維持する旨記載していると承知しております。

 その上で、台湾をめぐる情勢の安定は、南西地域を含む我が国の安全保障にとって大変重要であり、台湾をめぐる問題について、我が国としては、対話により平和的に解決されることを期待するとの立場であります。

 また、日米間では、本年一月の日米首脳電話会談や日米2プラス2においても、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促しております。

 近年、中国が軍事力の強化を急速に進める中、中台の軍事バランスは全体として中国側に有利な方向に変化をし、その差は年々拡大する傾向が見られ、また、中国軍機による台湾南西空域への度重なる進入を含め、中国は台湾周辺における活動を更に活発化させております。防衛省としても、引き続き関連動向を注視してまいります。

 我が国を取り巻く安全保障環境は急速に厳しさを増しており、力による一方的な現状変更の試みの深刻化や軍事バランスの急速な変化といった課題に直面をしております。

 防衛省・自衛隊としては、我が国の防衛力を抜本的に強化することにより抑止力を高め、我が国の領土、領海、領空、そして国民の生命と財産を守り抜いてまいります。

 以上です。

和田(有)委員 ありがとうございます。

 そこで、緊張するあの地域でのことが触れられておりましたけれども、確認のためお聞きしたいんですけれども、与那国空港というのは台湾が管轄する台北飛行情報区という航空管制域に入っているんですね、実を言いましたら。現実には、確かに那覇の管制官とやり取りをしながら入るんですが、公式には、実は与那国空港というのは、日本の空港でありながら、台北の空域みたいなところにあるんです。

 これが、やはり、こういう緊張が高まったときに影響が出ないはずはないと思うんですが、いかがでしょうか。

泉田大臣政務官 お答えをいたします。

 委員御指摘のとおり、与那国島周辺の空域につきましては、台北FIRの情報区域内に位置をいたしております。

 したがいまして、民間航空の安全という観点から、与那国空港に離発着する航空機等につきましては、国際民間航空条約に基づきまして、その飛行計画を台湾当局に通報いたしております。また、日本の管制機関と台湾の管制機関との間で、飛行の都度、あらかじめ密接に調整を行い、管制業務を実施をしております。

 有事で飛行機が飛ばない状況というのは、また、そのときにこういうことができるのか、そもそも飛行機が飛んでいるのかということで、影響が全くないということではないんだろうというふうに受け止めております。

和田(有)委員 そうですね。影響ないはずないんです、これは。こういう緊密なところにある。

    〔委員長退席、あべ委員長代理着席〕

 それで、加えて、今のは民間航空機の話、次の話は、先日も報道があったように、中国艦艇が宮古の沖を通ったり、いろいろなことをします。空でも戦闘機が入ってくることがあります。

 この本当に小さな空域の中で、与那国島周辺の空で何が起こっているかというと、未確認の飛行機がやってきたら、日本は、当然、スクランブル発進します。台湾からもスクランブル発進してきます。ずっと外にいる航空母艦から米国の飛行機もスクランブル発進してきます。それを監視します。非常に狭いところで、マッハ何ぼという物すごい速い飛行機がこんなにこんがらがって、これは速記を起こすのが大変でしょうけれども、コンジャンクションしてやるわけですよ。一歩間違えば大変な事故を起こしかねない、あるいは不測の事態を起こしかねない状況に、今、あの与那国の上は、空域はあるんです。

 恐らく、航空自衛隊の皆さん方は物すごい緊張を強いられていると思います。どこでもそうですよ、でもこの空域は、一歩間違ったら、しゅっと飛んできた中国の飛行機にぴゃっとついていったら、後ろから台湾の飛行機がぴゃっとついてくる。これは当然、中国と言っちゃいましたけれども、仮想する別の飛行機が来たときに、相手とは連絡は取れません。日本と米国の飛行機は自動的に連絡がちゃんと取れます。台湾とは取れません、日本は。米国と台湾も、さっき言ったように、軍事同盟を持っていませんから、実は取れないんです。非常に危険な状態にあるんです、これは。

 現時点で、これについて対処をしていくために安全保障対話とかが必要なんですけれども、その前提として、実務的な部分で何らかの連携を取るということはいかがなものかと思いますが、どうでしょうか。

    〔あべ委員長代理退席、委員長着席〕

鬼木副大臣 自衛隊の航空機や艦艇の運用に当たっては、他国軍の航空機や艦艇との衝突を避けるなど不測事態の発生の回避に万全を期すことは当然でありまして、御心配、そのとおりでございます。

 その上で、政府としては、台湾との関係は、一九七二年の日中共同声明を踏まえ、台湾との関係を非政府間の実務関係として維持していくとの立場を取ってきておりまして、御指摘の点も含め、台湾との関係については、こうした立場に基づき、適切に対応していく考えであります。

 いずれにせよ、防衛省・自衛隊としては、自衛隊の艦艇や航空機の運用に当たって、安全に万全を期す考えでございます。

和田(有)委員 そこで、前も私、予算委員会でお聞きしたことなんですけれども、民間でと言いますけれども、今、台湾にある日本の大使館に当たる交流協会の事務所では、自衛隊のOBの方が一人行っているだけなんです。これでそういうことが、緊急事態の中で対処していくことができるのか。だから、現職の自衛官を増員して入れるべきだ。立場的に無理だったら、当然、一旦出向して民間人という資格にしてとかできると思うんですよ。やはりそれぐらいしないと、この状況の中で対応し切れないと思います。

 それが一つと、ちょっと時間がなくなってきているので併せてお聞きしますが、台湾側からはいろんな提案をされていると思います。こちらにいろんな情報やそういうものは公電で上がっているはずです。でも、それについてちゃんとお応えになっているんですかね、皆さんは。

 その中で、もう時間がないので質問を先々しますけれども、例えば台湾軍がやる演習というのがあります。これに、日本側もお招きをされているんじゃないですか。そこら辺、どうなっていますか。教えてください。

鬼木副大臣 まず、日台交流協会への件ですが、日本台湾交流協会においては、現在、自衛官OB一名が台北事務所で勤務しているものと承知しております。

 台湾は、我が国にとって、基本的な価値観を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人であります。その上で、政府としては、台湾との関係は、一九七二年の日中共同声明を踏まえ、非政府間の実務関係として維持していくとの立場、繰り返して申し訳ありませんが、その立場でありまして、御指摘の点を含め、台湾との関係については、この立場に基づいて適切に対処していく考えであります。

 いずれにせよ、防衛省・自衛隊としては、御指摘も踏まえつつ、中台の軍事動向について引き続き強い関心を持って情報収集、分析を行ってまいります。

 通告いただいているのが以上でございまして、演習の件についてはちょっと通告いただいておりませんで、申し訳ございません。

和田(有)委員 そこまでは申し上げていないです。これはやはり、聞く方も聞く方だし、答える方も答える方になってしまいましてね。ただ、恐らく、台湾側からいろんな提案がなされていると思います。

 それで、何で私、最初に情報の話をしたかというと、それが上がってきているのにスルーしてしまっているはずなんですよ。私、そう思うんです。それはここで問いませんけれども、たくさん大切な情報は、皆さん、来ているはずなんですよ。でも、お応えしていないと思いますね、私は。それはちゃんとやってほしいと思います。

 もう一点、最後にお伺いします。

 大切なパートナーだと言うんですね。ところが、これは外務省にお聞きするんですが、日本には台湾の大使館に当たる台北代表処というのがあります。これは、衆議院の予算委員会のときも名称のことをお伺いしましたが、ここにおられる皆さんは、実は民間人だということになっているわけですね、当然。民間人という扱いをしているわけです。外交官特権もなければ、外交官ナンバーの車があるわけでもなければ、何でもないんです。

 ところが、日本は台湾に、同様に在外公館に当たるものを置いています。この皆さんは、向こうで日本の外務省の外交官としての仕事をなさっておられるんです。

 先にちょっとお聞きしたいんですけれども、向こうにおられる日本の外交官の方は、総統府に行ったり、総統にお会いになったり、部長に会ったりされているんでしょうか。

實生政府参考人 我が方の、台湾、出先の職員の個別のそういった総統等の要人とのやり取りについては、ちょっと、個別にそういうのがあるなしということについては、事柄の性質からもお答えは差し控えたいというふうに思います。

和田(有)委員 それは極秘でも何でもないはずですよ。向こうの総統府のホームページや何かでも出てくるだろうし、私は、いろんな関係の方から会っていると聞いています。ちゃんと総統にもお会いさせてもらえるし、外交部長にも、外交部長は向こうの外務大臣ですね、お会いさせてもらえるし、必要な作業をやっています。

 でも、日本で皆さん、お会いになりますか。どうなっていますか。

林国務大臣 先ほど来お話をしておりますように、台湾は、日本にとって、基本的価値観を共有して、緊密な経済関係と人的往来、これを有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人でございます。

 台湾との間では、民間の窓口機関である日本台湾交流協会を通じて、平素から様々なやり取りが行われていると承知をしております。

 例えば、新型コロナウイルスの感染拡大という未曽有の困難に直面する中でも、台湾への四百二十万回分のワクチン供与、また、台湾からは日本へのマスクや酸素濃縮器の供与等もタイムリーに対応ができておりまして、意思疎通は緊密に行われているものと考えております。

 今委員からお話のあったような点も含めて、台湾との関係については、我が国の基本的立場、これを踏まえながら、適切に対応してまいりたいと考えております。

和田(有)委員 緊密に、重要なパートナーと言うのならば、普通、向こうは外交儀礼上、総統が我が方の外交官と会ったりしているのに、こっちが会わないというのは極めて不親切というか、マナーという点でも私は非礼だと思います。やはりそこら辺から、この待遇や扱い、一足飛びに外交官ナンバーの車を上げましょうとかというのは、それは無理かも分からない。でも、向こうが会ってくれているのに、こっちは会わない。外務省にも入れないらしいですね、聞いていると。こんな話、ありますか。私、彼らの思いを聞くときに、心が痛みますね。

 やはりそれはしっかりとやっていただきたいということで締めますけれども、なぜこんなことをお話しするかというと、今、私たちは歴史的転換点に立っている。それは、中国という国とどう向き合うかに懸かっている。その中で、力による変更は認めてはならない。そのために私たちは何ができるかをいろんな角度から研究して、できることがあるはずです。そのためのメッセージの一つが、この台湾とのいろんな協力関係であるという点で質問をさせていただきましたが、ちょっといろいろと私の不手際もありまして、なかなかいい形でキャッチボールできなかった面もありまして、その点はおわび申し上げますが、これは続けていきたいと思います。

 ありがとうございました。終わります。

城内委員長 次に、青柳仁士君。

青柳(仁)委員 日本維新の会の青柳仁士です。

 昨日、我が党の藤田幹事長、そして遠藤国対委員長と一緒に外務省に伺いました。用件は、ロシアによるウクライナ侵略に関する緊急提言というものを提出をさせていただきまして、森事務次官の方と意見交換をさせていただきました。

 今日は、そちらの内容について、改めて大臣としての御所見をいただきたいという趣旨で質問に立たせていただきます。

 まず、提言の中で、私ども日本維新の会の基本的な現状認識ということで申し上げておりますのは、先月の二十四日に、私たち日本維新の会は、党の代表コメントにおいて、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、国家主権と領土の一体性を侵害する露骨な侵略行為であり、力による現状変更を重ねるロシアの不法行為は断じて容認ができないという認識を明確にさせていただきました。また同時に、日本政府に対して、民主主義陣営と固く結束しつつ、終始一貫した行動を取るように求めてまいりました。

 今、その後の動きもありまして、ロシアによるウクライナ侵攻に対して、NATO、そしてG7をリーダーとする国際社会は、欧州向けのガスパイプライン計画の撤回、ロシアの一部金融機関のSWIFT、国際銀行間通信協会からの排除、プーチン大統領らの資産凍結といった経済制裁措置を矢継ぎ早に打ち出している状況にあります。また、ウクライナ軍向けの武器供与、多国籍の即応部隊の東欧派遣、インテリジェンスの提供と公開による情報戦等を実施しております。

 このように、欧米の政治リーダーたちは、新しい国際秩序が形成される歴史の転換点に私たちは今立っているという大局観と覚悟を持って、各国内で賛否の分かれる政治決断をトップダウンで矢継ぎ早に打ち出している状況にあります。

 一方で、今、日本は、また現状に返ろうとしているのではないかと私たちは認識しております。今の日本とロシアの関係、あるいは今の国際秩序というものが今あって、そして、私たちが今それに対して何か動いたものは、後でまたこの状態に戻ってこなければならない、だからその関係性を考慮しなきゃいけない、国際秩序を元に戻さなきゃいけない。ほかの今の欧米のリーダーたちの動きを見ていますと、そういう思いはみじんも感じないんです。

 ここから新しい歴史が生まれていく、新しい国際秩序が生まれていく、日本とロシアの関係も新しいものになっていく、ここに戻ってくるつもりはないんです、そういう覚悟を持って政治決断を行っていくということが今この状況においては求められることだと思いますし、また、先ほど来からお話が出ておりますけれども、台湾有事や、あるいは日本と周辺国との関係性の有事においては、そういった政治決断ができない政府では国民の生命と財産を守る外交、防衛はできない、このように日本維新の会は考えております。

 そうした中で、本当に日本政府としては、ウクライナ危機が国際秩序の根幹を揺さぶるものであるというもの、そしてやはり、日本は軍事力を持たない、自衛力しか持たない国として、国際秩序が日本を守っているんだ、この認識が非常に重要だと思うんです。

 日本を守っているのは日米同盟、これは軍事的には日米同盟かもしれません。また、憲法だという方もいらっしゃいます。しかし、実際のところは、アメリカや欧州、そして日本を中心とした、G7を中心とした、こうした国々がつくってきた戦争を起こさない国際的なシステム、あるいは国際秩序じゃないかというふうに考えているんです。

 であれば、平和を求める国家として、そうした国際秩序を自ら積極的につくっていく努力をもっと外務省はやるべきではないか、このように日本維新の会は考えております。

 そうした基本認識に立ちまして、私たちとして、このウクライナの現状に対して提案を出させていただいております。今日は、ちょっと時間の関係もありますので、そのうちの主要な部分のみ質問をさせていただきます。

 今回、今申し上げたとおり、非軍事的な平和構築努力であればこれは日本でも行えるという中において、まずは、国連総会におけるロシアの非難決議というもの、これは非常に重要なものであったと考えております。まずは、法的拘束力を持つ安保理での決議、これは残念ながらロシアの拒否権というものによって成立することはありませんでしたが、そして、一昨日行われた国連の緊急特別総会、こちらでは百四十一か国の国々が賛成に回り、そして反対は五か国ということで、中国も棄権をしたということで、一定、国際社会の結束を見せることができたのではないか。

 また、クリミア半島の併合のときと比べると、四十か国以上の国が賛成に回ったということもありまして、これは国際社会にとっての成果ではないかと考えているんですが、我々が問いたいのは、その中で日本は何をしていたのかということなんです。

 特に、国連の安保理の決議のときにインドが棄権をしました。これは非常に重要なことだと思います。インドにはインドの事情があると思います。パキスタンとの関係、軍事的な関係、また、ロシアから武器を買っているという事実、こうした様々な事情があるのは分かります。

 しかし、我が国の安全保障にとって、クアッドという新しい枠組みを進めているわけです。この中でインドに裏切られたら、我が国の安全保障上極めて致命的なダメージがあるというふうに考えているんですけれども、このインドの棄権に至る前にこれを食い止めるべきでなかったかと私たち日本維新の会は考えるわけですけれども、これについて、実際に安保理決議がなされる前に、日本政府としてはどのような動きをしていたのか、どのようなインドに対する働きかけをしていたのか、ふだんからどういった関係性を目指した外交をしているのか、この点について大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 我が国は、御指摘のありました安保理決議案、また総会決議案、これに共同提案国入りをいたしまして、なるべく多くの国がこれらの決議案に共同提案国入り等をする形で採択されるよう、関係国に働きかけてまいりました。

 インドとの関係ですが、二月十一日の日米豪印外相会合、また昨三日の日米豪印首脳テレビ会議において、現下のウクライナをめぐる情勢についても意見交換を行っております。

 各国は様々な事情を踏まえて独自に態度を決めるものであり、委員からも少し言及がありましたけれども、これはインドについても同様だというふうに考えております。

 インドとの間では、様々な機会を捉えて、今後も意思疎通を行っていきたいと考えております。

青柳(仁)委員 様々な努力を行った上でのあのような結果であったということでありますが、やはり政治も外交も結果が全てだと思いますので、次からは必ず、棄権することがないような、そういった積極的な外交を行っていく必要があるということを繰り返し申し述べさせていただきます。

 一方で、様々な努力をしてきたということに関しては、これは政府のこの努力をされた方々に敬意を表したいと思いますけれども、ますます、そういった努力を行っていくことが、やはり将来的な、日本の国民の生命と財産を守る、そういった外交につながっていくんだ、こういう思いを、国民の代表だと思って、是非外交官の皆さんも働いていただきたいと思っております。

 また、ロシア及びベラルーシに関する経済制裁についてお伺いします。

 欧米諸国と協調して経済制裁を段階的に発動して、そして、ロシアとウクライナとの停戦交渉が成果を上げるように促していくべきであるということを我が党の提言の中では申し上げております。

 この趣旨は、経済制裁をやっても、ロシアを困らせても何にもならないじゃないか、日本とロシアの関係を壊すだけじゃないかというような意見もあるんですが、我が党はそのような立場には立っておりませんで、やはり、暴力でもって、理不尽な暴力でもって迫ってくる相手に対しては、この暴力を続けるよりも話合いをした方が得であると思わせるような外部環境を意図的につくっていくことが最終的な和平につながっていく、そのために経済制裁は必要である、ですから、より強い経済制裁を、プレッシャーを日本からもかけていくべきではないか、こういう考え方をしております。

 そういった中で、同様のことがベラルーシにも言えないかというふうに考えるわけです。ロシアに対しては一定程度既に進んでおります。しかし、ベラルーシは、この大きな有事の中で、隠れたところでいつの間にか核保有国になろうとしています。また、目立たないところで派兵の準備をしていたり、ロシア軍に協力をするということを行っています。これは、ロシアも確かに非常に問題があります。しかし、ベラルーシも同様に問題があると思います。

 ですので、ベラルーシに対しての経済制裁、報道を見ておりますと、日本政府としても検討しているということですけれども、ロシア並みの強力な経済制裁を科すべきではないかと思っておるんですけれども、この点について大臣の御所見をお願いいたします。

林国務大臣 今般のロシアによるウクライナ侵略については、日本として、G7を始めとする国際社会と連携して対応してきております。

 今お話のあったベラルーシでございますが、ロシア軍によるベラルーシ領域の使用を認めるということなどでロシアの軍事行動を支援しておりまして、日本として、同国を強く非難をいたします。

 三月三日でございますが、今回の侵略に対するベラルーシの明白な関与に鑑み、ルカシェンコ大統領を始めとする個人、団体に対し、対ロシア制裁と同様の制裁措置や輸出管理措置等を講じたところでございます。

青柳(仁)委員 対ロシア制裁と同等の制裁を科すという方針だということですので、これは我が党の申し上げていることと同様ですので、是非その方向性で、しっかりとした、話合いを促すための経済制裁ということで徹底的にやっていただく必要があると思っておりますので、この点について強調させていただきたいと思います。

 一方で、やはり最後は話合いだという面もございます。和平というのは、両者が話し合わなければ進みません。そのためには、やはり話合いの場を具体的につくっていくということがこれは必要になってまいります。

 そういった中において、日本ができる役割はないのかということを我々は申し上げております。日本が両者の間を持って和平の仲介をする、これはちょっと今までの日本の外交からするとハードルが高過ぎるかなという気もいたしますが、しかしながら、今、例えば、ウクライナの大統領は、国際司法裁判所に対してロシアを訴えております。ここの仮処分によって休戦を行うというようなことを考えていたり、また、イギリスのジョンソン首相は、三十八か国と一緒に国際刑事裁判所にプーチン氏個人を訴えることによって、何らかの弁明の場、プーチン氏個人と国際社会とが対話する場というものをつくり出そうと。もちろん、この裁判の結果がこの期間内に出るとは誰も思っていないんです。ただ、それによって対話の機会をつくろうということをやっている。

 そういうことを考えながらやっていると思うんですが、こうした対話の機会をつくる、あるいはよい合意ができるための後押しをするというようなことについて、日本政府の現状行われていること、また方針についてお伺いできればと思います。

林国務大臣 二月二十六日でございますが、ウクライナは、ロシアを国際司法裁判所に提訴するとともに、ロシアによる軍事行動を直ちに停止することを命ずる暫定措置、これを指示することをICJに要請したと承知をしております。

 我が国は、ロシアによる軍事行動を最も強い言葉で非難するとともに、ロシアに対して、即時に攻撃を停止し、部隊をロシア国内に撤収するよう強く求めてきております。

 この暫定措置手続でございますが、これは他の全ての手続に優先するものでありまして、ICJは、口頭弁論を三月七日及び八日に行うと既に発表しております。

 我が国は、ICJによるこのような速やかな対応を支持をしております。ICJの暫定措置命令は、当事国を法的に拘束するものであり、国際社会と連携して、暫定措置命令に従うよう強く要請していくことが重要であると考えております。

青柳(仁)委員 ICJの方針を日本政府としても支持をしていく、また、その立場、意見を明確にしていく、これは国際社会にとって非常に重要なことだと思います。

 日本は今まで、こうした海外の有事に対してはどちらかというと受動的な姿勢がある。これは、国際社会のほかの国々もそのように考えている、見ていると思います。

 そういった中で、日本が一歩前に出る、もう一歩積極的な姿勢を示すことで、その他の国々に与える影響というのは非常に大きいものだと考えておりますので、是非、こうした一つ一つの動きに対しても、後ろからでも支持をしっかりと表明していく、また、積極的な意見を述べていく、こういうことが非常に重要だと思っております。

 そういった中で、やはりコミュニケーションの問題というのは非常に重要ですから、今、ウクライナのセルギー・コルスンスキー大使が林外務大臣に面会を求めたけれども一か月間も話ができなかったとか、いや、でも、それは実は林外務大臣ではなくて鈴木副大臣だっただとか、そういうつまらないコミュニケーションミスをやらないでいただきたい、このように思います。

 この点は余りにもつまらない問題だと思いますので質問はいたしませんが、これだけ重要なことが動いている横で、こんなコミュニケーションミスをしているような政府ではどうしようもないと思いますので、この点はしっかりと反省していただいて、外務省内でのコミュニケーションの在り方というのをしっかりと見直していただきたい、外に向けて恥ずかしくない仕事の仕方をしていただきたい、このように思います。

 また、ウクライナ難民受入れと難民の認定についてお伺いいたします。

 今、ウクライナ難民、これは六十五万人、ポーランドの周辺に発生していると言っております。我が党は昨日、UNHCR、国連難民高等弁務官の日本代表、駐日代表の方と、来ていただいて議論をさせていただいたら、最大四百万人まで増える可能性があると国連としては見積もっているそうです。こうした難民の支援というものは非常に重要なものであります。

 我が党としては、私たち、今日もここに同僚議員が三人おりますけれども、私たちの議員歳費、給与を毎月二割、身を切る改革としてカットしておりますが、そこでカットした給与を一千万円分、UNHCRに、ウクライナの人々の難民支援に寄附をするということを昨日させていただきました、全体から見れば小さなお金ですけれども。

 今度は、これは、より日本国民の思いをしっかりと、ウクライナの方々を救う、人々の生活を支えるということにおいてやっていくのはやはり政府であろうと思いますので、こういったことに対して、国内にいるまずはウクライナ国民、これがビザが切れれば現地に帰らなければいけないのかというような問題もあります。また、現地でビザがしっかり発行されて、こちらに来てしっかり在留資格を維持できるのか。こういった一つ一つの制度が切れ目なく日本政府として用意することができているのか、その辺りの方針とそして現状のお考えをお聞かせください。

林国務大臣 これに先立つ質疑の中でも既に答弁をさせていただいておりますが、困難に直面するウクライナの人々のための支援に力を尽くして、避難民の受入れを進めてまいりたいというふうに思います。その上で、受け入れた方々の状況を踏まえながら、さらに人道的な観点からいかなる対応を行うべきかについては、政府全体としてスピード感を持って対応してまいりたいと思っております。

青柳(仁)委員 そのような形で、強い経済制裁をかけながら対話の場を促し、また、今現在、すぐに、困っている方々への支援の手を差し伸べるということを迅速に是非政府には行っていただきたい、これが我が党の短期的な提言であります。

 また、中長期的な提言として、先ほど冒頭に申し上げたとおり、やはり平和をつくる、戦争を起こさせない国際秩序をいかにつくるかということが我が国の安全保障上極めて重要だと考えております。そういった中で、安保理改革についてお伺いします。

 これまで、国連安保理改革ということで様々な努力が長年続けられてきたということは承知しております。しかしながら、結果として一歩も進んでいないというふうに認識をしております。

 こうした中で、ウクライナのゼレンスキー大統領が、国連におけるロシアの投票権剥奪ということを今国際社会に向けて訴えております。これは当然、安保理における拒否権も含んだ話であります。これは確かに、非常に突っ込んだ提案だと言わざるを得ないわけです。

 外務省の皆様、これまで外交に関わってきた皆様から非常識と思われるほど、絶対に不可能と思えるような提案であろうと思われるんだと思うんですが、しかしながら、それだけ高い球をせっかくこの有事に飛ばしていただいた勇気ある大統領がいるわけですから、その大統領の勇気に応える形で是非日本もこの点については支持をして、そして、そこまでの成果が仮に得られなかったとしても、国連改革を一歩でも二歩でも前に進めて、本当の意味で大国の暴挙を制止できる国際システムとしての新しい国連システムの構築というものを行っていく必要があると思いますし、また、その中で日本政府のリーダーシップを発揮すべきと考えますが、この点についてのお考えをお聞かせください。

林国務大臣 国連は、さきの大戦後、二度と戦争を起こさない、そのための組織として創設をされたわけでございますが、御案内のように常任理事国に拒否権がございまして、特に、米ソ冷戦時代には、国連が国際の平和と安全の維持の機能、これを果たすことができなかったわけでございます。今回のロシアの一連の行動は、こうした国連が抱える問題を改めて提起するものだと考えております。

 ロシアによる安保理での拒否権行使を受けて、国連総会が、全加盟国の意思を結集する場として緊急特別会合を開催したわけでございます。多くの国がロシアを非難する中で、総会決議、これは採択に至ったということでございます。

 我が国として、現在の国際社会の現実を反映して、安保理が、国際の平和と安全に貢献する機能、これを十分に果たすことができるように、日本の常任理事国入り、これを含む安保理改革のために、引き続き、多くの国々と協力して、積極的に活動してまいりたいと思っております。

青柳(仁)委員 安保理改革が進まない理由というのは非常に単純でして、安保理を変えるかどうかを決めるのが安保理だからなんです。つまり、安保理で拒否権を持つ国々が最高意思決定機関であるからなんです。

 ですが、今回のゼレンスキー大統領の提案というのは、それを変えようという提案なんです。つまり、五大国と言われる、P5と言われる、拒否権を持つ五大国、この国連安保理を変えることを外部の合意で行うことができれば、国連安保理改革は進むのではないかと思うわけなんです。

 これはやはり、歴史上の極めて大きなチャンスが訪れている。また、非常に勇気ある大統領の勇気ある提案が、今ここで我々にボールを投げられている状態ですから、是非、日本としてもそれに誠実なお答えを出していただきたい、このように考えております。

 また、新しい国際経済システムの形成ということについても提案をさせていただいております。

 私たちの中長期的な提案というのは、戦争を起こさない仕組みを世界全体でつくっていこう、そういった世界をつくるにおいては、軍事とは関係なく日本ができること、日本の外務省ができることはたくさんあるのではないかということを申し上げているわけですが、経済面に目を向けていきますと、新しい経済秩序ということで、現在の経済システムを前提としない、安全保障と両立する新しい経済システムということを考えていくべきではないかと。これは、今、今国会でも審議入り、これからしますけれども、経済安全保障の概念にも含まれることであります。

 今、例えば、欧州とロシアをつなぐガスパイプラインはもう既に凍結をするということになっておりますけれども、つまり、ある意味で、西側と東側、かつての冷戦のような、そういった完全に分かれた経済をつくってしまう、これは、ある意味で非常に不安定な世界をつくり出す、また、私たちの経済成長、世界の経済成長、ある意味、その力を弱めてしまうものではないかと我々は思っております。

 ただし、全体としては、経済としてはつながりながらも、半導体であるとか高性能技術、あるいはそういった、エネルギーや食料といった、本当に国民生活にとって重要なものに関しては切れている、戦略的に、ある部分では切れている、全体として緩やかにつながっているけれども、そういった戦略的な部分は切れているような緩やかなブロック経済というものを目指して、これはロシアだけではありません、我が国の周辺国を含む極めて重要なサプライチェーンという、これは経済安全保障法案の中でも議論されておりますが、そういったことを含んだ中で、世界全体のつながりを保ちながら、経済安全保障上重要な技術、インフラ、物資等を戦略的に切り離す緩やかなブロック経済というものをつくる。

 例えば、こういった新しい世界観を示しながら、外交でその成果をかち取っていくというような、国際社会でのリーダーシップの発揮、外交というものを、日本政府、我が国として行っていくべきではないかというのが我が党の提案でありますけれども、この点についての大臣の御所見をお願いいたします。

林国務大臣 日本はこれまで、自由貿易の旗振り役ということで、自由で公正な経済圏の拡大、ルールに基づく多角的貿易体制の維持強化、推進してきたわけでございます。

 そうした中で、グローバルなサプライチェーン、この脆弱性や、国家、地域間の相互依存リスク、これが顕在化をしてきております。残念なことかもしれませんが、現実的にはそういうことになってきております。世界各国が、戦略的物資の確保や重要技術の獲得にしのぎを削る、そういう政策を展開するようになりました。

 こうした世界的な動きに対応するため、まさに、今委員からもお話のありました経済安全保障、これの取組として、まず、経済構造の自律性の向上、そして日本の技術の優位性、ひいては優位性を持つことによる不可欠性、この確保、基本的価値やルールに基づく国際秩序の維持強化、これを目標として、引き続き外務省としてもしっかり取り組んでまいりたいと思っております。

青柳(仁)委員 まさに新しい世界の構想を示して、それを達成するために今我々は次に何をやるべきではないかということを考えるということを、今までの継続で、これは経済においても今の日本政府もそうですけれども、去年の継続で今年も何をやるかを考える、これまではこれをやっていたからこうすべきだというふうな価値判断の基準にするというような、そういう本当に閉じた外交の考え方ではなくて、本当に私たちの、国民の利益そして生命と財産を守るということの中で最適な外交とは何なのか、世界はどんどん変わっていきますから、その変わっていく世界の中において日本の外交はどういうふうな姿が最も理想的であるのかということを常に考えた、積極的、能動的な外交というものを是非お願いしたいということを申し上げております。

 今日は、時間がなくなってしまいましたので、通告した質問の全てをカバーすることができず大変申し訳ございませんが、引き続き、我が党としては、また是々非々の姿勢で日本政府としての対応をただしていきたい。必要な部分に関しては反対もしっかりとしながら、きちんとした批判、そして、きちんとした、また時には後押しもしながら、日本の国民のためになる外交というものがつくられるようにしっかりと働いてまいりたいと思いますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

 では、以上で質疑を終わります。ありがとうございました。

城内委員長 次に、鈴木敦君。

鈴木(敦)委員 国民民主党の鈴木敦でございます。

 大臣以下、外務省の皆さん、連日お疲れさまでございます。

 この一か月、直近でいうとこの一週間余りですが、世界でも近年まれに見るような緊張感と、あと、その緊張のはじけてしまった先の最悪の現実を我々は見ているわけでございます。まさに、先日の本会議でも申し上げましたが、この二十一世紀においても、一部の国家は侵略を決断し得るという残念な結果を我々は目の当たりにしているということになります。私はまだ三十代前半ですから何とも申し上げられませんけれども、いまだに世界というのはままならないものだというふうに感じざるを得ないわけです。

 こう考えると、今まで日本政府はずっと、紛争ですとかあるいは防衛に関して言えば、起こることは考えられないというような発想の下で様々政策の立案や議論をされてきたことと思います。ただ、現実に、核保有国で、そして国連の中で常任理事国になっているような国が侵略をし得るということがここで分かったわけですから、これ以降、我々国会議員以下、大臣、政府におかれても、起こり得ないということは考えられない、このように申し上げたいと思います。

 その上で、今紛争が起こっているウクライナについて、どうしても触れなければいけません。

 ウクライナは今、持ちこたえておりますけれども、これによる人権ですとかあるいは経済に対する影響というのは計り知れなくて、とても大きいものにこれからなっていくと思います。これについては、私の前の委員の皆さんがその知見を生かして皆様に御質問させていただいていましたので、私、今回は資源についてまず伺いたいと思います。

 ソ連からロシアに転換が行われてから三十年余りになります。その間、北方領土の返還の交渉もあり、また平和条約のお話もあり、ロシアとは資源開発や経済開発の場面で様々協力体制をしいてまいりました。

 先輩たちはこのロシアとの協力をなぜしなければいけなかったかというと、エネルギーのほぼ全量を他国からの輸入に依存している我が国において、特定の国に依存してエネルギーを輸入することはできない、だからエネルギーを分散して確保する、そういう観点でロシアとの北海における様々なエネルギーの開発を行ってきた、このように私は認識をしているわけです。

 まず、そのお話の本筋に入る前に、経済産業省の方から、この実績についての詳しい事実確認をしたいと思いますが、日本がロシアと共同で資源開発を行った今までの実績、件数と金額をお教えいただけますか。

南政府参考人 お答え申し上げます。

 日本政府としてこれまで支援を実行したロシアの資源開発プロジェクトの件数は、サハリン1プロジェクト、サハリン2プロジェクト、ヤマルLNGプロジェクト、INKザパド・プロジェクトの四件でございます。

 それぞれ、サハリン1プロジェクトへは、旧石油公団時代に約二百五十億円の出資、サハリン2プロジェクトについては、JBICとして約四千二百億円の融資、NEXIとして民間銀行出資約千六百億円に対する保険、それからヤマルLNGプロジェクトは、JBICとして約二百六十億円の融資、INKザパドへは、JOGMECとして二十一億円の出資を通じて支援しておりました。

 以上でございます。

鈴木(敦)委員 この中で、現段階においてもずっと継続して行われている事業、そして、今我々が拠出している金額についてお教え願えますか。

南政府参考人 お答え申し上げます。

 日本政府として現在支援しているというロシアの資源開発プロジェクトですが、現在は、北極LNG2プロジェクトの一件でございまして、JOGMECとして千二百六十億円の出資、JBICとして二千二百二十億円の融資、また、NEXIが民間企業の出資に対する保険を通じて支援しているところでございます。

鈴木(敦)委員 ここまでが、今現状でも通じている資源プロジェクトになりますけれども、この中で、今冒頭お話にもありましたサハリン2でございますけれども、このサハリン2の事業化に向けて紆余曲折あったと承知しておりますが、この経緯について御説明いただきたいと思います。

南政府参考人 お答え申し上げます。

 サハリン2の資源開発の経緯ということでございますが、サハリン2プロジェクトについては、一九九四年、三井物産と三菱商事に加えまして、イギリスのシェルなど他国企業が共同でサハリンエナジー社を設立しまして、共同で出資をし、参画をしております。

 その後、一部企業の撤退を経まして、二〇〇六年、当時出資していたシェル、三井物産、三菱商事から、ロシアのガスプロム社への株式譲渡が基本合意の下、行われまして、ロシアのガスプロム社五〇%プラス一株、シェルが二七・五%マイナス一株、三井物産一二・五%、三菱商事一〇%という現在の出資構成となっております。

 その後、二〇〇九年からLNGの生産を開始し、現在に至っております。

 政府による公的支援金額につきましては、JBICとして約四千二百億円の融資、NEXIとして民間銀行出資約千六百億円に対する保険を実施されました。ただし、これらは、現在では全て完済済みというふうになっております。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。

 詳細は後ほど御説明しますが、このサハリン2をめぐって、二〇〇六年、ガスプロムに対して、三井物産ですとかが譲渡を行ったという御説明がありました。この譲渡を行った理由について御説明いただけますか。

南政府参考人 お答え申し上げます。

 これは、実際、民間企業同士のやり取りですので、必ずしも完全に正確か分かりませんが、実際に、サハリンでの環境問題、これにしっかり対応するということで、それまでは、シェルと三菱商事、三井物産だと外国企業ばかりなので、ロシアの企業としてガスプロムを入れようということでガスプロムが参画したと私は承知しているところでございます。

鈴木(敦)委員 環境問題があったということは確かにそのとおりだと思いますが、環境問題への対応にわざわざ国内企業を入れなければならないというその論理は私は理解できないんです。

 国がお金を入れて事業を進めているわけですから、正確な部分を承知していると思いますけれども、ロシア側が横やりを入れて五〇%まで出資額を増やしたのではないんですか。

南政府参考人 お答え申し上げます。

 実際にガスプロムが入ってきましたのが二〇〇六年ということで、かなり昔のことでありますが、私が理解しているところによれば、ロシア側から確かにロシア企業を入れるようにということがあったわけですが、ただ、そのときに、ロシア側から日本企業やシェルにはそれなりの対価がもちろんしっかり支払われておりまして、ロシア側の横やりという面ももしかしたらあったのかもしれませんが、事業者側も、やはり外国企業だけでプロジェクトをするというよりも、ロシア側の企業を、母国の企業ですから、入れようかという、そこは多分民間企業としてもいろいろな形での検討があって、その上で譲渡がなされた、これは少し昔のことでもありますので、そのように私は承知をしているところでございます。

鈴木(敦)委員 ロシア側から、ロシアの国内企業を入れるように要請があったということでございます。そして、加えて、二〇〇六年、既にプーチン政権ということでございます。これを念頭に置いていただいて、この後の質問をさせていただきます。

 今、ロシアから石油の約五%、天然ガスも八%、サハリンで取っているものもありますので、こういったものがたくさんありますけれども、代替の確保若しくは代替できる場所のめどは、経産省、立てていらっしゃいますでしょうか。

南政府参考人 お答え申し上げます。

 ロシアからのシェアにつきましては、まさに先生おっしゃったとおりでございまして、実質的な量が現在ロシアから来ているということでございます。

 これは元々、石油もガスも中東の依存度が非常に高い中で、中東以外の国でどこから多角化をできるかということを検討した場合に、一定程度のロシアからの調達というのは、エネルギー全体で見た場合の多角化につながるということで、私たちは、ロシアからの輸入についても政府としてサポートしてきたところでございます。

 ただ、これから途絶した場合ということですが、私たちも、ロシアからの石油やLNG輸入が途絶した場合においても、我が国のエネルギー安定供給確保に支障を来さないためにも、やはり政府として生産国への増産に向けた働きかけを進めていきたいと思いますし、また、少し時間はかかると思いますが、更なる調達先の多角化にも取り組んでまいりたい、そのように思っております。

鈴木(敦)委員 エネルギーサークルの一部にロシアが含まれているということ、そして、天然ガスに関して言えば、我が国が輸入している全量の第四位に当たる、大量の天然ガスを輸入しているわけです。

 これを踏まえた上で、外務大臣にお伺いするんですが、こういった紛争が起こると、どうしてもエネルギー価格が上昇します。ガソリンだけでなくて、LNGですとかLPGもそうですが、ガスもどんどん世界的な逼迫をしていきます。そして、これが各国で取り合いになるんですね。なぜかというと、これは量がなくなったのではなくて、紛争で使うので各国が取り合うということになるんです。

 そして、先ほど御説明を申し上げ、そして経産省からも御説明がありましたとおり、ロシアという国は、自国の開発のために自国の企業を入れてくれ、そういう人たちが政権を持っているんです。その人たちと、外務大臣、交渉していかなくちゃならないんですね。この場合の対応について、ちょっと今考えていらっしゃるお考えをお聞かせ願えますか。

林国務大臣 原油を始めといたしますエネルギー資源、またさらには各種の鉱物資源の安定的供給というのは、世界はもちろんですが、特に我が国の経済の安定にとっては極めて重要だと考えております。

 そもそも、このウクライナの情勢がここまで緊迫化する前の昨年来から、エネルギー価格、これは高騰が続いておりました。さらに、このウクライナ侵略後に一層高騰してきております。また、それに加えて、脱炭素化に向けた再生可能エネルギー、これの導入拡大によって鉱物需要も拡大をしてきている、こういうことでございますので、今般のロシアによる侵略、これが今後の資源の世界的な需給バランスにどのような影響を及ぼすかについては予断を許さない状況だと考えております。

 政府としては、市場の不安定化リスクに対応しまして、引き続き資源の安定供給確保に向けて貢献をするため、産出国への増産に向けた働きかけ、これを行うとともに、IEAを始めとする関係国際機関、また、G7、G20等の枠組みを活用しながら、米国等の主要な消費国、これと連携をしながら機動的に対応してまいらなければならないと考えております。

鈴木(敦)委員 エネルギーの安定供給はもちろんです。そして、LNG、燃料ガスですとか原油に関しては中東とかオーストラリアで代替が十分可能だと思います。ただ、鉱物資源、パラジウムですとかニッケル、ニッケルに関しては特にロシアからの輸入が非常に多いんですね。ほかの地域で代替できないようなものもある中で、取り合いになるということなんです。だから、増産に向けたといっても、鉱物の増産は、掘る人工がそんなにそろうわけでもありませんのでなかなか難しいと思いますけれども、ここは各国で融通し合うような、そういったイメージなんでしょうか。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、米国等の主要な消費国とも連携して機動的に対応していかなければならないというふうに思っております。

 また、必ずしも外務省の所管ではないかもしれませんが、こうした鉱物資源については、代替のものの活用等をやるためにも、必要な科学技術の振興といったものも必要になってくるのではないかというふうに思っております。

南政府参考人 今委員からパラジウムのお話がございましたので、答弁させていただきたいと思っております。

 ロシアからは、自動車等の排ガス用触媒等に使用されるパラジウムを輸入しておりまして、パラジウムの場合、世界の生産量の約四割をロシアが占めております。我が国も輸入量の約四割がロシアからの調達となっているところでございます。

 世界的に、ロシアからの供給不安から、足下のパラジウム価格が上昇しつつあることはまさに事実でございまして、企業としましては、従来から調達先の多角化や在庫の確保に取り組んでおりまして、現時点では、直ちに供給に障害があるなど大きな影響があるということではないと私たちは認識しております。

 しかしながら、政府としましては、これまで、鉱物資源の安定供給に向けまして、JOGMECを通じた資源探査や民間企業へのリスクマネーの供給、さらには、資源外交を通じた資源国との関係強化、こういったことをしておりまして、今後も、このように総合的な対策を講じることで鉱物資源の安定供給にできるだけ取り組んでいきたい、そのように思っております。

鈴木(敦)委員 今、支障がないという言葉がありました。これを受けて、次の質問に移らせていただきます。資源について支障がないと言うこと自体が問題です。

 一つ飛ばしますけれども、日本はロシアとこういったガス田ですとかあるいは石油に関して共通の資源プロジェクトをやっていますけれども、これは、ロシアに対して一歩踏み込んだ制裁という意味で、撤退するということ、特にサハリン1に関しては、経済産業省さん、株主ですね、そこまで政府は考えていらっしゃいますか。

南政府参考人 お答え申し上げます。

 今次のロシアの侵攻に関しまして、我が国は、国際的な制裁強化の動きの中で、G7を始めとしました国際社会と連携をしながら取り組んでいるところでございます。そうした中で、エネルギーの安定供給と安全保障を最大限守るべき国益として対応していかなければならない、そのように考えているところでございます。

 様々な動きが、国際的な動き、報じられておりますが、私たちとしましては、しっかりと状況を見極めた上で、また、G7などの連携も含めながら対応を判断していくべき、そのように考えているところでございます。

鈴木(敦)委員 G7との連携はもちろんですけれども、冒頭申し上げたとおり、起こらないという前提条件はもはや通用しないんです。ですから、今この段階において、EU若しくはG7が、外貨の獲得手段であるエネルギーの輸出をずっとロシアは続けていますけれども、もうロシアから買いませんよ、若しくは鉱物資源もロシアから買いませんよとG7が言い始めた場合、我が国はやるんですか、乗るんですか。そこが大事なところだと思いますが。

南政府参考人 お答え申し上げます。

 私たち、欧州のロシア産ガスへの依存度が三割を超えているなどという事情もあるかと思いますが、ロシアからのエネルギー供給途絶を回避すべく、今般のG7による金融制裁においても、エネルギー分野については原則として例外扱いとされていると承知をしているところでございます。

 こうした現状も踏まえまして、我が国としては、ロシアからのエネルギー輸入に関し、国際的なロシア制裁強化の動きの中で、エネルギーの安定供給と安全保障を最大限守るべき国益としまして、G7ともしっかり歩調を合わせて適切に対応していく、そのように認識しているところでございます。

鈴木(敦)委員 外務大臣も同じお考えでしょうか。

林国務大臣 大事なことは、やはりG7を始めとする国際社会と緊密に連携してロシアに厳しい立場で臨むということであろう、こういうふうに思います。

 制裁措置を、個別に繰り返すことはいたしませんが、こうした制裁措置を国際社会と連携して講じることで、ロシアの軍事行動の継続の意思、そして能力、両方に制約を課していく、こういうふうにつながっていくと考えております。

 今、経産省からもありましたけれども、既存の民間プロジェクトについては、今後、それぞれ事業ごとに応じて検討がなされていくというふうに考えております。

鈴木(敦)委員 一部に対して制裁を科して、そしてエネルギーですとか資源に関しては自分たちはそれを買い続けるということは、ロシアに対してもそうですが、和田委員の質問にも関連するかもしれませんけれども、特定の国に足下を見られる可能性があるんですね。つまり、資源ですとかエネルギーの分野は、この国に関しては制裁を出してこないだろう、だからこれをやっても大丈夫だろう、そういった考えが出てこないとも限らないんです。

 だから、仮にそうなった場合の対応というか、外務省として何を考えていらっしゃるのか、そういうことなんですね。今の段階でやりますというわけじゃないので、それをお聞きしたいわけじゃありませんが、仮にG7がやらなかったとしても、我が国の近隣の状況を考えたら、我々、ダブルスタンダードだと言われないだけの言葉は必要なんですね。それは外務大臣として何かお考えはありますか。

林国務大臣 先ほど申し上げたように、発表した措置を速やかに制裁として実行する、まずこれが大事なことであるというふうに思っております。その場合でも、今後の状況を踏まえながら、G7を始めとする国際社会と連携して適切に取り組む、これが重要だと考えております。

 その上で、ロシアのウクライナ侵略を受けた市場の不安定化リスク、これに対応して、引き続き資源の安定供給確保に向けて貢献をするために、産出国の増出に向けた働きかけや関係強化、IEAを始めとする関係国際機関及びG7、G20等の枠組み、これは先ほど申し上げたとおりでございますが、こういった枠組みを活用しながら、米国等の主要な消費国と連携して機動的に対応してまいらなければならないと考えております。

鈴木(敦)委員 特定の国の名前は挙げませんけれども、我が国周辺国を考えたら、代替の方法はこうしますだけでは恐らく足りないと思いますね。今後何が起こるか分かりませんよ、冒頭に申し上げたとおり。ですから、事前の準備はあらかじめしておいていただきたいと思います。

 時間の都合上、幾つか質問を飛ばさせていただきますが、北方領土について伺います。

 総理は、現段階においては申し上げることはできないと予算委員会でもおっしゃったそうですけれども、現段階というのはどのくらいまで指しているのか、外務省としては、大臣、いかがですか。

林国務大臣 北方領土問題に関する我が国の立場、また、御高齢になられた元島民の方々の思いに何とか応えたいという私自身の思い、いささかも変わらないわけでございますが、この状況に鑑みれば、今のお話のように、いつ今の状況が変わるのかということを申し上げるのは大変に難しいことだというふうに思います。

鈴木(敦)委員 何月何日からこうしてくださいということではなくて、今、現段階というのは、ロシアがウクライナに侵攻、侵略をしている段階です。そして、私たちのスタンダードな考え方としては、北方領土の問題が解決してから平和条約を結ぶ、ここに関しては、皆さん共通の考えですよね。

 だから、その交渉に入れないということは、平和条約も当然結べないわけで、ロシアが侵攻している、侵略している段階は駄目なのか、ロシアから兵を引くまでなのか、ここが問題になってくるんですね。例えばアフガン戦争ですとかイラク戦争のとき、アメリカが撤退するまでに何年かかったかということなんですね。

 これは、もし、最悪の場合、ロシア軍が一部の地域に駐留をするようなことになったら、それが全部撤退するまで平和条約の交渉も何も進まないということなんですよ。だから、ここの認識を、大臣、いかがなのか、お伺いしたいと思います。

林国務大臣 これは繰り返しのお答えになるかもしれませんが、今の状況に鑑みれば、平和条約交渉の展望について申し上げる状況にはないと考えます。仮定を置いて、この場合はこうだということを申し上げることは非常に難しいと思います。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。そういった断固とした決意を言っていただきたかった。

 なので、前提条件を置いて、こうしたら平和条約を締結しますよなんて言っていると足下をすくわれるので、しっかりとその辺りは、主張すべきは主張をしていただきたい、このように思います。

 時間の都合上、最後の質問になってしまうかもしれませんが、ロシアとウクライナ、その周辺の質問をさせていただきます。

 今回の事の発展は、東部のドネツク及びルハンスク人民共和国の分離を始めとして起こっていますが、この周辺、例えば、モルドバでは沿ドニエストル・モルドバ共和国、ジョージアではアブハジア、南オセチア、あるいはアゼルバイジャンでナゴルノ・カラバフ共和国、これも一方的に分離独立を宣言して、主張して、一部にはロシア軍が駐留をしている状況です。

 大臣、これはどういう状況だか分かりますよね。第二、第三、第四のドネツク州です。そして、全て黒海に面していて、オデッサは今、ロシア軍が掌握しています。どれぐらいの危機感をお持ちですか。

林国務大臣 我が国は、ウクライナは当然でございますが、モルドバやジョージアの主権及び領土一体性の原則に基づいた平和的解決、これを一貫して支持をしてきております。また、G7諸国も、モルドバ及びジョージアの主権及び領土一体性の原則に基づいた平和的解決、これを支持しておるところでございます。

 なお、現地の報道によりますと、トランスニストリアにおいては二千から二千五百人、アブハジア及び南オセチアにおいては五千から一万人規模のロシア軍、これが駐留をしておるわけですが、三月四日現在においては、ロシアのウクライナ侵略を受けた特段の情勢変化は見られていないということでございます。

 我が国として、同地域の状況を引き続き注視をしてまいらなければならないと思っております。

鈴木(敦)委員 この三地域のロシア軍が動いていないことは非常に不気味だと思いますね、ベラルーシが行っているんですから。

 ただ、このモルドバですとかジョージアあるいはアゼルバイジャンといった周辺国から、あるいは大使から、外務大臣に対して、何か要請ですとかあるいは意見ですとか、何か書簡が届いたとかいうことはないんでしょうか。

林国務大臣 外交のやり取りに関することでございますので、詳細は控えたいと思います。

鈴木(敦)委員 やむを得ないとは思いますけれども、ただ、この三地域については私は注視した方がよろしいと思いますね。新しい火種になりかねないとも思いますし、我が国の周辺国に対するプレゼンスを維持するという意味でも、非常に重要なことかと思います。

 最後に、これは御質問としてちょっと、回答が出てくるかどうか分かりませんが、一番最後の質問をさせていただきます。これは中国に関することです。

 中国は昨今、領海侵犯を繰り返し、さらに、我が国の海保も大変疲弊をしている状況にあります。度々外務省としても遺憾の意を表明されていますし、事に及んで、来るたびに海上保安庁がずっと頑張って警備をして、そして並走をして我が国の船を守っている、こういうことが繰り返されています。

 そのたびに、我々としては、我が国として遺憾ですと答えて、そして、中国側からは我々の固有の領土だという回答がやってくる。このメッセージの送り合いをずっと今続けているわけですけれども、そろそろ、世界がこういう状況ですから、次の一手を何かお考えになった方がいいと思いますが、何かございますか。

林国務大臣 尖閣諸島周辺の日本の領海内で独自の主張をするといった中国海警船舶の活動、これはそもそも国際法違反であり、断じて容認できないわけでございます。

 昨年十月の日中首脳会談において岸田総理から習主席に対し、また、昨年十一月の外相電話会談において私から王毅国務委員に直接、尖閣諸島をめぐる情勢について懸念を伝えたところでございます。

 中国による一方的な現状変更の試みについては、国際社会において様々な形で懸念の声が上がっておりますので、先月の日米2プラス2においても、尖閣諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも引き続き日米が結束して反対する、こうしたことで一致をいたしました。

 今後とも、引き続き、日本の領土、領海、領空を断固として守り抜くとの方針の下で、中国に対しては主張すべきは主張しつつ、冷静かつ毅然と対応してまいりたいと思っております。

鈴木(敦)委員 ありがとうございました。

 繰り返しになりますが、起こり得ないということはあり得ないです。なので、不断の努力をしていただきたいと思います。

 終わります。

城内委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 ロシアによるウクライナ侵略についてお聞きします。

 百九十三か国で構成される国連総会は、三日、ロシアを非難し、ウクライナからの即時撤退を求める決議案を百四十一か国の賛成で採択しました。国際社会のプーチン政権に対する断罪が下されたと考えます。

 国連総会は二〇一四年のクリミア併合の際もロシアを非難する決議を採択しましたが、その際、賛成が百か国と比べても、今回の決議は圧倒的多数の世界の声が示されております。

 決議は、冒頭で、国家間の法の支配を促進する上で国連憲章が最も重要であることを再確認するとし、ロシアがウクライナで軍事作戦を行うと宣言したことや、核戦力の準備態勢を強化する決定を行ったことを非難しています。住宅や学校など民間施設への攻撃や民間人の犠牲者の報告に深い懸念を表明し、今の世代を戦争の惨劇から救うため、緊急の行動が必要だと認識するとまで記しております。

 そこで、林大臣、今回の国連総会決議に対する受け止めを率直にお聞きしたいと思います。

林国務大臣 三月二日の国連総会の緊急特別会合におきまして、ロシアによるウクライナへの侵略を最も強い言葉で遺憾とし、ロシア軍の即時、完全、無条件の撤退を求めること等を内容とする総会決議案が、今委員からもお触れいただきましたように、百四十一か国という多数の国の賛成によって採択をされたわけでございます。

 我が国は、ロシアによるウクライナの侵略を厳しく非難するという基本的な立場に基づいて、この総会決議案の共同提案国となり賛成票を投じたものであり、これほど多くの国が賛成し、総会決議案が採択されたことを歓迎いたすわけでございます。

 ウクライナ情勢に関する国連の議論の中で、これまで非常に多くの国が、ロシアの侵略は、ウクライナの主権及び領土一体性に対する侵害であり、国際法に違反し、国連憲章にも反するとして、非難の声を上げてまいりました。

 政府として、今般の総会決議案の採択、これは、こうした国際社会で幅広く共有をされている強い意思、これが改めて確認されたものと受け止めておりまして、決議が実施されるということが重要であると考えております。

穀田委員 共同提案国として九十六か国が名を連ねたことは、極めて重要だと考えています。このことも、国際社会の確固たる意思を示すものになったと思います。

 決議に賛成した百四十一か国を見ますと、米国とその同盟国だけではありません。半数以上が非同盟諸国会議に属する非同盟諸国であります。

 今回の決議は、非同盟、中立の国の多数が国連憲章を守れという流れをつくったことの結果だと考えますが、大臣の見解はいかがでありましょうか。

林国務大臣 国連は、その全ての加盟国の主権平等の原則に基礎を置いておりまして、その中でも総会は、全ての国連加盟国で構成され、各構成国はそれぞれ一票の投票権を有しておるわけでございます。

 三月二日の緊急特別会合における総会決議案は百四十一か国の賛成多数によって可決をいたしましたが、欧州諸国や我々のみならず、アジアやアフリカ、ラテンアメリカを含む多数の国連加盟国が賛成票を投じたわけでございます。

 政府としては、引き続き、国際社会と連携して、ロシアに対して、即時に攻撃を停止し、部隊をロシア国内に撤収し、国際法を遵守するよう強く求めていく考えであり、国連においても、こうした基本的立場を踏まえて積極的に貢献してまいりたいと考えております。

穀田委員 私は、流れといいますか、そういうものをつくる上で、いろいろな国が役割を果たしたということを言っているわけです。

 今回の決議採択に至るまで、各国大使の演説から浮かび上がったのは、大国の横暴に対する小国といいますか、小さい国の怒りが非常にあったと思う。それぞれの大使の発言を読んでみますと、本当に、よく私は感動を覚えるんです。例えば、ジャマイカの大使は、その国の大きさや地位にかかわらず、全ての国に安全な環境をもたらしてくれるよう設計されたのが国際法の枠組みと国連憲章だと発言しています。また、サモアの大使は、世界平和の維持と規則に基づく国際秩序の尊重を確保するためのツールがある、その焦点は国連憲章の前文にあるに違いないと強調したように、このように小国の存立の基礎として国連憲章を強く主張したのが特徴的だったと私は率直に思います。

 我が党は、ロシアが二〇一四年にクリミア併合を強行したときも、二〇〇八年のグルジアの一部独立を一方的に承認し軍事侵攻したときも、国連憲章、国際法に反する行動として厳しく批判してきました。

 国連憲章は、前文で、言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から、国家の領土保全や政治的独立を定め、領土をめぐる軍事的威嚇や武力行使を禁じている。今回のロシアの侵略は、この国連憲章を踏みにじる暴挙であり、二度の世界大戦を経て築かれた平和秩序を根底から脅かすものだと言わなければならないと思います。

 プーチン大統領は、ヨーロッパやアメリカの批判や経済制裁の動きへの対抗措置として、核戦力を念頭に抑止力を特別警戒態勢に移行させるように命じました。核兵器の先制使用も辞さないと述べたことに続く、危険極まりない行為だと言わなければなりません。

 各国がロシアに対する経済制裁を決めたのは、国連憲章と国際法を踏みにじったウクライナ侵略への対抗措置であります。これに対して、核戦力の態勢を引き上げ、先制使用で脅かすなど、断じて許されない無法な行為と考えますが、大臣の所見はいかがでしょうか。

林国務大臣 今回のロシアによるウクライナ侵略は、力による一方的な現状変更の試みであり、国際秩序の根幹を揺るがす行為であります。明白な国際法違反であり、断じて許容できず、厳しく非難をいたします。

 その中で、今委員からお話がありましたように、ロシアが核抑止力部隊の態勢を引き上げたことについては、情勢の更なる不安定化につながりかねない危険な行動であるというふうに認識をしております。

 我々は唯一の戦争被爆国であり、核兵器による威嚇も、ましてや使用も決してあってはならないということを強く訴えてまいりたいと思います。

穀田委員 核兵器の使用や威嚇は、核兵器禁止条約で禁じられた違法な行為であります。

 国連の中満泉軍縮担当上級代表は、大惨事につながる誤算のリスクを更に増大させる、核兵器による勝者はない、皆が犠牲者となると警告しましたが、プーチン大統領が核態勢の強化を命じたことは、米国を始め他の核保有国との間で緊張を強める危険なものだと思うんですね。

 プーチン大統領は、ロシアが核保有大国であることを誇示し、攻撃が行われれば核兵器で応えると公言していますが、ここで言う攻撃とは通常兵器による攻撃のことであって、全く許されない暴言だと言わなければなりません。

 プーチン大統領は二〇二〇年六月、核兵器をどのような場合に使用するかを定めた「核抑止力の国家政策指針」と題する大統領令に署名しています。そして、その内容を公表しました。そこには、核兵器使用への移行条件として、ロシアや同盟国に対する核兵器や大量破壊兵器による攻撃に加えて、通常兵器による攻撃があった場合も核兵器を使用すると定めています。

 先ほど大臣からありましたように、唯一の戦争被爆国である日本政府として、ロシアが二〇二〇年に核兵器の先制使用を公然と国家の指針に掲げたことに対して厳しく批判したことはありますか。

林国務大臣 二〇二〇年六月二日でございますが、プーチン大統領は核兵器使用の可能性を規定する条件として、ロシアやその同盟国に対する弾道ミサイル発射に関する確実な情報を入手した場合などを列挙した核抑止分野における国家政策の原則に署名し、公表したと承知をしております。

 我が国としては、これに対して声明等を発出してはおりませんけれども、地域の安全保障に与える影響等も踏まえつつ、米ロ間の動き等を緊密にフォローしてきており、引き続き関心を持って注視をしてまいります。

穀田委員 つまり、このときに声明やそれに対応するような立場は表明していないということですよね。注視している、それは前から注視しているんですよ。しかも、これは御承知かと思うんですけれども、単に二〇二〇年だけじゃなくて、二〇一四年にも軍事ドクトリンとしてこのことを出している。だから、一貫したロシアの立場であって、その一つ一つに対して明確な立場を表明し、唯一の被爆国としての責任と世界に対する発信ということが私は大事だと思います。

 大統領令では、核兵器の使用の可能性を決する条件として、ロシアや同盟国に対する、一つ、弾道ミサイル発射の確実な情報、二つ、核兵器やその他の大量破壊兵器の使用、三つ、核戦力の応戦を阻害する国家ないし軍事施設への攻撃、四つ、通常兵器による攻撃、この四つを挙げているんですね。これらの核兵器の使用に関する決定というのは、プーチン大統領が判断するとしているわけですよね。

 このように、ロシアは核兵器の先制使用を公然と国家の指針にしているわけで、唯一の戦争被爆国である日本政府として、この考え方の撤回を求めるべきではありませんか。

林国務大臣 我が国は唯一の戦争被爆国でありまして、様々な機会を捉えて、核兵器による威嚇も、ましてや使用もあってはならないということを強く訴えてきておりまして、引き続き、こうした考え方にのっとって適切に対応してまいりたいと考えております。

穀田委員 いや、一般論で訴えてきたというんじゃなくて、こういう事態の下で、きちんとこれらについては態度を明らかにし、撤回を求めるべきとちゃうかということを言っているわけですよ。やはり、常々そういうことを言っているということで済まされないわけですよ。こういう対応を彼らがしているということに対して、通常兵器でやってきてもやってやるんだというようなことまで言っているわけですやんか。そんなの許されへんということについて、撤回せんかいなというぐらい言うのが筋ちゃうかと言っているわけですよ。

 ですから、私は、国家の指針として核兵器の先制使用を公然と掲げていることに対して、それ自身に対してすぱんと批判することが必要だと。そういう意味では反省を求めたいと思います。

 そこで、次は原子力協定の問題について触れたいと思います。

 岸田総理は、ロシアとの関係をこれまでどおりにしていくことはもはやできないと述べています。

 日本政府は、ロシアとの間で原発輸出を可能とする原子力協定を締結しています。他国を核兵器で威嚇するような国に対して核物質や関連資機材、それから技術を輸出するような枠組みをこのまま維持し続けることなど、到底許されないと思います。

 ロシアとの関係をこれまでどおりにしていくことはもはやできないというのであれば、ロシアとの原子力協定こそ見直すべきではありませんか。

林国務大臣 我が国が他国と締結する原子力協定でございますが、移転される原子力関連資機材等の平和的利用、不拡散、こうしたことを法的に確保するための枠組みでございまして、特定のビジネスやプロジェクトについて取り決めるものではないものでございます。

 日ロ原子力協定もこうした枠組みでございまして、今回のロシアによるウクライナ侵略を受けて、現時点でこうした協定の見直しが必要だとは考えておらないところでございます。

穀田委員 それはちょっと私はおかしいと思いますよ。

 ロシアとの原子力協定は、二〇〇九年五月に行われた、当時のプーチン首相、当時首相でしたからね、それから麻生総理との首脳会談に合わせて署名が行われたものです。

 当時から、原子力施設に対するIAEAの査察など保障措置の適用が限定的だったことが懸念されていたわけですよね。それは大臣も御承知かと思うんです。

 国会審議に当たって衆議院外務調査室が作成した資料でも、我が国が、非軍事目的として、それらを軍事利用していないという確証を得ることは極めて困難であると書いてある。そのような協定だということなんです。

 今、資機材、平和的利用、不拡散、こう言いましたわね。その当時から、その確証を得ることは極めて困難だということを書いている協定なんですよね。

 しかも、今回の事態でロシア軍は、ウクライナ侵攻後、チェルノブイリ原発を制圧し、首都キエフにある放射性廃棄物の処理施設にもミサイルを撃ち込んだと報じられています。

 これに対してIAEAは、三日の臨時理事会で、ウクライナに侵攻したロシアに対する非難決議をついに採択しました。

 決議では、原子力施設や民間人に直接的な脅威を与え続けていると指摘し、原発事故のリスクを著しく高め、ウクライナ国民や近隣諸国、国際社会を危険にさらしていると批判しているわけであります。また、IAEAが原子力施設を監視、検証する保障措置の活動をロシアが妨げているということに重大な懸念を表明しています。

 さらに、先ほどの報道によりますと、ロシア軍は四日、ウクライナ南部にある同国最大のザポロジエ原発を砲撃したと載っています。原発で火災が起きた。ウクライナのクレバ外相は、同原発が爆発すれば、チェルノブイリ原発の十倍の破壊になると警告し、攻撃の即時停止を呼びかけています。

 こうした事態を見れば、まさにロシアが原子力の平和的利用を遵守しているとか、そういう保障措置を、活動をきちんとやっているなんということはあれへんわけやね。そういう事態を見て、さっきの話で、これを変えるつもりはないというようなことを言えるわけ。

林国務大臣 今お話がありましたけれども、この協定につきましては、まさに平和的利用、不拡散等を法的に確保しよう、こういう枠組みでございまして、特定のビジネスやプロジェクト、これをやるための取決めではない、こういうことでございます。

 こうした枠組みでございますので、現時点では、協定の見直しが必要だとは考えておらないところでございます。

穀田委員 大臣は、平和的利用だとまず言いますわな。言っていますよね。その次に、ビジネスという話をしている。私、ビジネスの話は一言もしていないんですよ。当時の原子力協定に対して、私たちがこういう問題を指摘したことはありますよ。それで多分、事務方はそういうことを文章で書いてんのやろうと思うけれども、私はそんな話は一言もしていないんですよ。その当時から問題になった、保障措置が大丈夫か、平和的利用というけれども、そうかと。そうじゃないじゃないか、今の事態は。

 しかも、おっしゃっているのは、現時点ではというようなことを言っているということは、これは、現時点でも、こういう平和的利用であり、保障措置の活動を妨げ得ないというふうに判断しているということですか。

林国務大臣 この枠組み自体は、先ほど申し上げたような、平和的利用、不拡散等を法的に確保するための枠組みでございますので、これが特定のビジネスやプロジェクトについて取り決めているものではないということでございます。

 また、同協定での協力事例はごく少数にとどまっておるというふうに承知をしておりますが、そういった意味で、現時点での協定の見直しが必要とは考えておらないところでございます。

穀田委員 大臣、文章を読まぬと、お互いにちょっと、話をきちっとしましょうな。ビジネスの話を言っているんじゃないんですよ。平和的利用という建前からしても違うじゃないかと。IAEAも、当時、この協定が問題になっているときに、この国会の審議自身の中で、検証する保障措置の点は危ういという議論になっていた、二つ目。三つ目、今、IAEAが、検証する保障措置の活動をロシアが妨げているということを言っている。三つ言っているんです、私は。そうなると、原子力協定に反する行為をやっているんじゃないのかと。

 じゃ、逆に聞きますよ、大臣。原子力協定に、少なくとも、当時議論になった様々な議論と不安、危惧、それに反していないというふうにお答えですか。

林国務大臣 今委員がおっしゃったような御指摘があるという今御質問でございますけれども、この協定自体は、平和的利用や不拡散等を確保するための枠組みでございます。

 したがって、個別のビジネスやプロジェクトをこれに従ってやる場合には、これがそういうことを法的に確保するという枠組みではございますが、これがあるから何か新しいことをやるということではないわけでございますので、そういった意味で、現時点で協定の見直しが必要とは考えていないということを先ほど申し上げたところでございます。

穀田委員 まず、協定自身が議論になったときから、その保障措置というのがきちんとやられるかということで、実は、この協定を結ぶときに何年もかかった理由は御存じですか。それは、保障措置がないということについてずっと議論して、総理大臣、当時の麻生さんの時代も含めて、これでは相手がそういうことになるからできへんという話でずっと長引いていったわけじゃないですか。

 それが、協定が結ばれたときも、国会の審議の中で、ビジネスの話以前に、そういう保障自身がきちんと措置が取られるかということについて議論になった。その問題がずっと議論になっているわけです。協定をやる際にはこれが肝腎だということが議論になったわけです。

 三つ目に、今IAEA自身が非難決議を上げて、これは大変なことだと言っている。しかも、爆撃したり攻撃したり、そのことが行われている、原発に対する様々なことが行われている、こういうときにのほほんとしていてええのかという話をしているんですよ。分かりますか。

林国務大臣 穀田先生の御指摘、御意見は分からないというわけではございませんけれども、先ほどの繰り返しになって恐縮でございますが、これは平和的利用、不拡散等を法的に確保しよう、こういう枠組みでございます。したがって、経緯等も先ほどおっしゃっていただいたような経緯があったということであろう、こういうふうに思いますけれども、現時点で、今、協定の見直しが必要ということではないということでございます。

穀田委員 話は分かったけれどもというような話なんだろうけれども、これは経緯のある話なんですよ。しかも、断固としてと、いろんなことをやるんだと言っているんでしょう。まさに平和的利用に反しているじゃないか、こういうことが起こっているじゃないか、IAEAもこう言っているじゃないかといって、どんと言うのが日本政府に必要なことじゃないですか。

 岸田総理は、外務大臣だった二〇一四年三月十三日の参議院外交防衛委員会で次のように答弁しています。読み上げたいと思います。「ある国と原子力協定の枠組みを整備するかどうか、その際には、当然のことながら、核不拡散の観点ですとか、あるいは相手国の原子力政策ですとか、それから相手国の日本への信頼とか期待、さらには二国間関係の状況を総合的に勘案し、個別具体的に決定をする、検討をしていく、こういったことですが、その際に、当該国の政治情勢あるいは治安情勢、こういったものについて勘案しているのかという御質問ですが、これにつきましても、従来から、当該国の政治情勢、治安情勢についても勘案をしております。こういったものを総合的に勘案した上で、原子力協定の枠組みを整備するかどうか、検討をしていくというのが我が国の基本的な考え方です。」このように答弁しているんですよね。まさに、当該国の政治情勢、治安情勢について勘案すると。

 今、皆さん、これほど世界が侵略を批判し、IAEAがこの問題について批判をし、日本が唯一の被爆国として、その問題に対して様々な点が問われている。こういうときにロシアとの原子力協定を維持し続けることは、この答弁に照らしても、今日の現状、状況に照らしてみても、もはや成り立たないのではないですか。

林国務大臣 現時点での我々の考え方については、先ほど申し上げたとおりでございます。

 今後の対応ということが、まだ、この状況の推移等、大変不透明でございますので、今申し上げることは大変難しいとは思いますけれども、当然に、岸田当時の外務大臣が答弁されたことというものは、政府としてその方針で臨まなければならないというふうに思っております。

穀田委員 当時の外務大臣の方針を踏まえてというわけでしょう。だったら、余り詰めてわあわあ言うつもりはないけれども、要するに、当該国の政治情勢、治安情勢について勘案するというわけでしょう。今日の政治情勢って何なんですか。国連が百四十一か国の賛成を得て、侵略だとこれを断じたんでしょう。そして、そういう中で、IAEAもこれは大変だということを決議している。これほど緊迫した政治情勢ってほかにありますか。そして、治安情勢について、今爆撃されたりしているという治安情勢を今私は述べました。これは大したことないと言うんですか。

 だから、当該国の政治情勢、治安情勢、これをどう認識しているかということを問われるということなんですよね。だから言っているんですよ。

 私は何も、林外務大臣の政治論について、その考え方、立場についてあれこれ言っているんじゃないんですよ。今我々が、少なくとも原子力協定をめぐる問題で、これにどういうふうな立場で臨むかということについて、礎石を据えた話を基にして、これからいってもおかしいじゃないかという話をしているわけですよ。もっと私は事態は緊迫していると思うんですね。そのときにどういう態度を取るのかということが問われていると思いませんか。もう一度、最後に言ってください。

林国務大臣 温かいお言葉をかけていただきまして、ありがとうございます。

 先ほどの岸田当時の外務大臣の答弁は、委員が御引用なさったように、締結時についてというお答えであった、こういうふうに思いますが、先ほど申し上げましたように、この事態に対応して、G7等普遍的価値を共有する各国と今連携して対応に当たっておるところでございますので、過去の政府答弁や、各国と、普遍的価値を共有する国と連携して対応していくという考え方でしっかり対応してまいりたいと思っております。

穀田委員 この質疑は、原子力協定は二〇一一年なんですよ。つまり、その後十年たった時点で、もう一度どうするかということを問われたときにやっているということを御承知おきいただきたいんですね。二〇〇九年、二〇一一年、二〇一四年と経過がある話なんですよ。それを踏まえてもらわな、やはり大臣が今、臨むに当たって、今日の現状の治安情勢、そしてまさしく政治情勢、いわば国連が断罪したという下での我々の対処が求められている、そういうことについて改めて提起して、私の質問を終わります。

     ――――◇―――――

城内委員長 次に、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣林芳正君。

    ―――――――――――――

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

林国務大臣 ただいま議題となりました日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、我が国に合衆国軍隊を維持することに伴う経費を日本側が負担し、我が国に駐留する合衆国軍隊の効果的な活動を確保するため、米国政府と協議しつつ検討を行ってきました。その結果、本年一月七日、東京において、私と駐日米国臨時代理大使との間で、この協定に署名を行いました。

 この協定は、我が国が、我が国に雇用されて合衆国軍隊等のために労務に服する労働者に対する一定の給与及び手当の支払い並びに合衆国軍隊等が公用のために調達する電気等の料金又は代金の支払いに要する経費の全部又は一部を負担することを規定しています。

 また、我が国が、施設及び区域に設置される訓練能力に関連する資機材及び関連する役務を米国政府が調達するための経費、並びに、我が国政府の要請に基づき、米国が、合衆国軍隊の行う訓練を他の施設及び区域又は米国の施政の下にある領域若しくは米国の領域に変更する場合には、その変更に伴って追加的に必要となる経費に係る費用の支払いに要する経費の全部又は一部を負担することを規定しています。

 この協定は、二〇二七年三月三十一日まで効力を有することを規定しています。現行の協定が本年三月三十一日まで効力を有することとなっておりますので、この協定は本年四月一日に発効させる必要があります。

 この協定の締結は、日米安全保障条約の目的達成のため我が国に駐留する合衆国軍隊の効果的な活動を確保するためのものであり、ひいては日米関係全般並びに我が国を含むインド太平洋地域の平和及び安定に重要な意義を有するものであると考えます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いをいたします。

城内委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十七分散会


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