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第8号 令和4年4月6日(水曜日)

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令和四年四月六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 城内  実君

   理事 あべ 俊子君 理事 辻  清人君

   理事 宮崎 政久君 理事 武藤 容治君

   理事 青山 大人君 理事 小熊 慎司君

   理事 杉本 和巳君 理事 吉田 宣弘君

      伊藤信太郎君    上田 英俊君

      小渕 優子君    尾身 朝子君

      金子 俊平君    島尻安伊子君

      新藤 義孝君    鈴木 隼人君

      高木  啓君    武井 俊輔君

      土田  慎君    中谷 真一君

      平沢 勝栄君    古川 直季君

      古川  康君    本田 太郎君

      山口  晋君    岡田 克也君

      徳永 久志君    太  栄志君

      松原  仁君    青柳 仁士君

      和田有一朗君    金城 泰邦君

      鈴木  敦君    穀田 恵二君

    …………………………………

   外務大臣         林  芳正君

   外務副大臣        小田原 潔君

   外務副大臣        鈴木 貴子君

   防衛副大臣        鬼木  誠君

   内閣府大臣政務官     宮路 拓馬君

   外務大臣政務官      本田 太郎君

   外務大臣政務官      三宅 伸吾君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  岡本  宰君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 阿部 知明君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁出入国管理部長)        丸山 秀治君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 渡邊  健君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 股野 元貞君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 岩本 桂一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 金井 正彰君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 北川 克郎君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   鯰  博行君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    安藤 俊英君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 町田 一仁君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 大和 太郎君

   外務委員会専門員     大野雄一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月六日

 辞任         補欠選任

  上杉謙太郎君     土田  慎君

  小渕 優子君     上田 英俊君

  尾身 朝子君     古川  康君

  高木  啓君     古川 直季君

同日

 辞任         補欠選任

  上田 英俊君     小渕 優子君

  土田  慎君     金子 俊平君

  古川 直季君     高木  啓君

  古川  康君     尾身 朝子君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 俊平君     山口  晋君

同日

 辞任         補欠選任

  山口  晋君     上杉謙太郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 旅券法の一部を改正する法律案(内閣提出第二九号)

 東日本大震災の被災者に係る一般旅券の発給の特例に関する法律を廃止する法律案(内閣提出第三〇号)


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     ――――◇―――――

城内委員長 これより会議を開きます。

 この際、委員長として、本日の委員会開会に至るまでの経緯について申し上げます。

 ポーランド共和国へ海外出張を予定されていた古川法務大臣に代わり、林外務大臣が急遽出張されることが決まり、海外出張の間に帰国する日程が提示されました。これを受け、野党から与党に対し、林外務大臣や外務省の負担を軽減するため、既に決定されていた四月六日の外務委員会の開会を延期する提案がなされました。その際、与党も野党の配慮に対し、感謝の意を表明いたしました。

 その後、政府に確認したところ、外務大臣は、外務委員会に出席して法案審査に臨みたい旨の意向であることが分かりました。これを踏まえ、与党から野党に対しまして、野党の外務大臣や外務省への配慮に感謝しつつ、既に決定しているとおり委員会を開会させていただきたい旨伝えました。

 昨日の理事懇談会においても、これまでの経緯を踏まえ、改めて協議が行われましたが、本日の委員会を当初の予定どおり行うことが確認され、開会に至ったところであります。

 今後とも、委員各位の御協力を賜りながら、本委員会を円満に運営してまいりたいと存じます。

 この際、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣林芳正君。

林国務大臣 この度の私のポーランド出張は、会期中であったものの、ウクライナ情勢が刻々と変化する中で、城内委員長を始め、委員の皆様、とりわけ野党の皆様には多大な御配慮を賜り、御礼を申し上げます。

 おかげさまで、ウクライナ近隣諸国の中で最多の約二百万人もの避難民を率先して受け入れているポーランドにおける避難民受入れの状況や課題を現地で直接見聞するとともに、ウクライナ、ポーランド両国の政府要人との会談などを通じまして、現地のニーズを的確に把握することができました。また、日本への避難を切に希望しているものの、自力で渡航手段を確保することが困難な二十名の避難民の方々を政府専用機で無事に日本にお連れすることができました。

 中谷総理補佐官、津島法務副大臣にも同行いただき、非常に有意義な出張となったと考えています。

 政府としては、今回の出張の結果を我が国のウクライナ避難民に対する支援等に適切に生かしていくとともに、引き続き、G7を始め国際社会と緊密に連携し、ウクライナ情勢への対応に万全を期してまいります。

 今後とも、委員各位の御理解と御協力をお願いをいたします。

     ――――◇―――――

城内委員長 内閣提出、旅券法の一部を改正する法律案及び東日本大震災の被災者に係る一般旅券の発給の特例に関する法律を廃止する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官渡邊健君、大臣官房参事官股野元貞君、大臣官房参事官岩本桂一君、大臣官房参事官金井正彰君、大臣官房参事官北川克郎君、国際法局長鯰博行君、領事局長安藤俊英君、内閣官房内閣審議官岡本宰君、総務省大臣官房審議官阿部知明君、出入国在留管理庁出入国管理部長丸山秀治君、防衛省大臣官房審議官町田一仁君、防衛政策局次長大和太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

城内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

城内委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。高木啓君。

高木(啓)委員 自由民主党の高木啓でございます。

 本日は、質問の時間を賜りまして、誠にありがとうございます。

 質問に入る前に、林外務大臣、誠にポーランド出張お疲れさまでございました。大変大きな成果を残してお帰りになられたという御報告もありまして、誠にありがとうございます。

 また、ロシアによるウクライナ侵略で戦火の犠牲になられた全ての方々に心から哀悼の意を表します。

 ロシア軍が撤退したキーウ近郊のブチャ市等では、戦時には保護されるべき民間人が多数犠牲となり、正視に堪えない惨状が明らかになりました。

 ロシアによるウクライナ侵略は、北方領土を不法占拠されている我が国としても断じて許すことはできず、ロシアの暴挙を止めるために、政府には、関係諸国と一致結束して、最大限の圧力をかけ続けるよう求めたいと思います。

 一方、国内において、在日ロシア人に対する不当な中傷や非難があるということも聞いています。こうしたことはあってはならないことと私は考えます。

 いずれにいたしましても、我が国の立場は、一貫して、ウクライナと共にあるのでありますから、その姿勢をこれからも堅持し、改めてウクライナの国家と国民との連帯を表明して、旅券法改正等の質問に入りたいと思います。

 最初に、今回の旅券法改正の大きな目的は、旅券の発給申請手続等の電子化に当たっての国民の利便性向上及び行政の効率化でありまして、これらに資するようにすべきであると思うわけであります。

 そこで、電子申請の導入によって、第一号法定受託事務として旅券関連業務を担っている都道府県等現場の意見を踏まえつつ、いかに旅券手続、事務処理の効率化を行うか、また、国の責任において、人員強化及び地方への、今後行うきめ細かな支援に対する外務省の決意、また具体的な取組についてお伺いしたいと思います。

安藤政府参考人 外務省といたしましては、旅券の発給等の申請者でございます国民の皆様の利便性の向上、そして行政事務の効率化に積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。

 申請者の利便性の向上につきましては、今回の電子申請の導入によりまして、旅券の切替え申請のときの出頭が不要になるというほか、スマートフォンでの申請が可能になること、あるいは夜間や休日の申請が可能となります。また、オンラインでの旅券手数料のクレジットカード納付を可能とすべく準備を進めているところでございます。

 また、電子申請の導入によりまして、マイナンバーカードや旅券のICチップに記録されております申請者に関する情報の活用によりまして、旅券事務所の職員による書類の確認作業が減り、審査事務の負担が軽減されるほか、申請の受理に係る窓口対応が不要になるなど、事務処理全体が効率化されます。

 引き続き、外務省の責任において、行政手続及び事務処理の一層の効率化と、国民の皆様にとっての利便性の向上を目指していきたいと考えてございます。

 それから、御指摘ございました都道府県との間でございますけれども、定期的に都道府県の旅券事務所との意見交換を実施するなど、あらゆる機会を通じて都道府県の意見を丁寧に伺ってきているところでございます。

 さらには、都道府県の旅券事務担当者の方々に対する研修を行い、職員のスキルアップへの支援を行ってきているところでございまして、引き続き、外務省といたしましては、旅券事務の効率化に向け、都道府県と緊密に協力してまいる所存でございます。

高木(啓)委員 電子申請の場合は、まず、マイナンバーカードを保持をしている方、その方がマイナポータルに入って、そしてそこに設定をされた特設サイトからアクセスをしていく、そういう流れになるんだろうと思いますが、今御説明があったように、電子申請と書類申請というのは二つのラインでこれからある一定の期間は多分いくんだろうと思いますから、その辺りの事務の効率化、そして、人員も含めた手当てというのを、やはり窓口業務を担っている自治体も大変だと思いますので、そこは是非いろいろな意味で配慮していただきたい、このように思っております。

 電子申請の導入によりまして、原則として、申請のときに窓口に出向くことが必要なくなるわけでありまして、窓口に出向くのは受取のときの一回だけということになろうと思います。

 こうなりますと、窓口に出向くのは一回だけですから、国民の負担は減るわけでありますが、確実な本人確認というものがしっかりできるのかどうか。つまり、旅券の信頼性維持のために、確実な本人確認を含めたいかなる措置を外務省は今講じようとしているのか、その点について見解を伺いたいと思います。

安藤政府参考人 委員御指摘のとおり、確実な本人確認によって、日本旅券の有する高い国際的な信頼性を維持、確保するということは極めて重要であると考えてございます。

 これまで、申請者が旅券窓口に出頭した際に、対面で本人確認及び申請者の意思の確認を行ってきましたが、電子申請におきましては、マイナンバーカードの公的個人認証機能あるいは顔認証技術による写真の照合等によって、出頭と同程度の本人確認及び申請意思の確認を行うことが可能になります。

高木(啓)委員 旅券事務を具体的に行っている窓口に私も聞いてみました。

 今回のこの改正で、国民の負担が減って、受取のときにだけ一回出頭して、これは新規申請ということになりますが、申請者は本人確認の上で旅券をいただく、こういうことになるんですが、電子申請の場合は、当然、顔写真も含めて、これも電子になりますから、デジタル的に言うと、写真というのは意外に加工ができるわけですよね。私、ある企業の採用責任者に聞きましたら、最近の企業採用のときに持ってくる経歴書を含めた写真というのは、ほぼ、加工されているものが多いということも聞いています。

 ですから、本人確認が受取のときに一回だけというのは、実は非常に危険性もあるということは認識をすべきだと思うんです。

 旅券の具体的な窓口に聞きましたら、今までは、書類申請で持ってきて、そこで確認をして、そして交付のときにもう一回、発給のときにもう一回確認をするという二回の作業があったんですが、持ってこられたときに、写真が本人とそごがあるとか、あるいはちょっと差異があるというときには、もう一回撮り直してください、これは言いやすいということなんですね。ところが、できてしまったパスポートを見比べたときに、これはちょっと違うんじゃないかといって差し戻すというのは、なかなかこれはしづらいですよということは、実は現場の方々はそうおっしゃっています。

 ですから、この写真の問題、出頭が一回だけ、受取のときだけというのは、やはりこれは注意が必要だと思いますので、少なくとも、例えば我が国をそのパスポートで出国をして外国で止められてしまったというようなことがないように、写真はしっかりと御本人と整合できるように、最初から注意喚起をやはりしっかりしておくべきだというふうに思いますので、その点も是非配慮をしていただきたい、このように思います。

 次に、電子申請において、旅券の発給制限のかかる方、あるいは国籍に疑義のある方、現場ではそういう方が時々いらっしゃるというふうに聞いています。ですから、そういう方々を電子申請で見極めるということが実際可能なのかどうか、是非教えていただきたいと思います。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 旅券法第十三条に規定されております旅券の発給等の制限の対象に該当し得る者、あるいは日本国籍を有していない可能性のある者につきましては、電子申請におきましても、申請後の早い段階で見極めることが可能となるよう、制度設計を進めているところでございます。

 その上で、まず、旅券法第十三条に規定されている旅券の発給等の制限の対象に該当し得る者につきましては、電子申請を行った場合におきましても、申請者の前科の有無や内容、執行猶予の残りの期間等につきまして、必要に応じ、関係省庁等とも協議の上、慎重に発給の可否を判断することになります。

 また、日本国籍を有していない可能性のある者につきましては、電子申請を行った場合におきましても、日本以外の滞在許可証の有無を含む関係書類の提出を追加的に求めるなどの対応を行うことになります。

高木(啓)委員 細心の注意を払っていただいて、しっかりと我が国の旅券業務が、発給ができますように、是非お願いしたいと思うんです。

 私は、この法改正の質疑をするということで、現場からも意見聴取をしたり、いろいろとレクチャーを受けたり、お話も聞いたりして、旅券発給業務というのは非常に難しいというか、機微にわたる情報もあるわけであります。

 今回あえて質問にはしませんでしたが、戸籍謄本の問題とか、これをどうやって電子申請の場合に持っていくのかとか、あるいは法務省のデータベースとの、戸籍との連携、これもこれからの課題というふうに聞いています。戸籍との連携というのは、これもなかなか難しい話で、読み仮名問題とかいろいろあるわけですよね。

 ですから、電子申請を促進をしていく、これからそういう制度になっていくということは、それはそれで一つ合理性があると思いますが、様々な問題がありますので、そこを一つ一つ丁寧にクリアをしながら、時間を急ぐということも大事ですけれども、しかし、我が国の旅券の信頼性ということも大事ですから、そういう意味での細心の注意を払いながら進めていただきたい、このように思います。

 最近は、旅券の申請から発給まで最短で六営業日というふうに、通常六営業日というのかな、というふうに聞いておりまして、かつてから比べると、旅券発給は非常にスムーズに、スピーディーになったというふうに感じています。

 電子申請についてなんですけれども、当面、現状考え得る申請から発給までの日数というのは、書類、紙で出したときに六営業日ですから、最短で何日ぐらいになるというふうに予想されているのか、あるいは更に時間短縮が可能なのか、その点について見解を伺いたいと思います。

安藤政府参考人 現在、旅券の申請から交付までに要する標準処理期間につきましては、各都道府県及び市町村の旅券窓口によって異なりますけれども、おおむね開庁日ベースで六日間ないし九日間でございます。これは、他の主要国と比べても短いものと考えてございます。

 電子申請を導入しましても、旅券事務所での審査事務あるいは旅券の作成には最低限の時間を要するということで、標準処理期間を直ちに短縮するということは困難でございますけれども、引き続き、電子申請の利用の促進、一層の業務の効率化に取り組んでまいりたいと考えてございます。

高木(啓)委員 少なくとも、紙ベースでのいわゆる書類申請よりも電子申請の方が時間がかかってしまったということがないように是非していただきたいと思うんです。何のための電子申請だったんだと言われかねませんので。

 そういう意味では、電子申請も紙ベースでの申請も、当面この二つの申請方式ができるわけですから、そのときに、最初は同じペースで発給がされる、しかし将来的には電子申請の方がはるかに早くなるんだよということを是非実現をしていただきますようにお願いしたいと思います。

 繰り返して申し上げますが、今回の法改正で、私は、注意しなければいけないのは、やはり我が国の旅券の信頼性、このことをしっかり担保していくということだと思います。

 我が国の旅券は世界でも最も信頼性の高い旅券、こういうふうに言われておりますので、そのことを続けられるように、是非様々な面から、この電子申請の問題も、先ほど申し上げたように、一つ一つ問題をクリアしながら進めていただきたいと思います。

 そして、将来的には、先ほど言ったように、スピーディーに発給をされる、そして、我が国の旅券がスムーズに発給をされた上で、海外に行く際にはこれが今までどおり信頼性のある旅券として扱われるように、是非、外務省の格段なる努力をお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

城内委員長 次に、吉田宣弘君。

吉田(宣)委員 おはようございます。公明党の吉田宣弘でございます。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 まず、非常に基礎的なことでございますが、確認をしておきたいと思います。

 旅券は、所持人の国籍、身分などを証明するとともに、内外の関係官憲に自由通行と保護を要請する公文書であると記載がございます。これは、憲法の先生で、佐藤幸治先生の憲法の教科書に書いてありました。

 そこで、まず、外務省からも、そもそも旅券とは何か、その定義を聞いておきたく存じます。お願いいたします。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 旅券とは、一般に、外国当局に対し、渡航者の国籍国の政府が当該渡航者の国籍及び氏名、生年月日等を証明する文書のことをいうと考えてございます。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 それで、佐藤幸治先生の教科書を読み進めると、過去に、著しく、かつ、直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足る相当な理由がある者に対する旅券不発行規定、これは旅券法の十三条一項七号に関連して、裁判が行われたようでございます。最高裁判所は、公共の福祉のために合理的な制限を定めたものとして、本規定については合憲としたようでございます。これは昭和三十三年の九月十日の判決でございます。

 ただ、このような規定は包括的で明確性を欠くとして違憲と考える学説も有力であって、佐藤幸治先生も、判例の言うように合憲だとしても、恣意的に運用されることのないような注意が必要で、旅券法十四条の定める理由付記も、そのような観点から理解されなければならないと述べておられました。時間がないので内容は省きますけれども、昭和六十年にも最高裁判決がありまして、佐藤幸治先生が述べられておられたような趣旨の判決であるというふうに理解をしております。

 では、何ゆえに裁判になって争われているかといいますと、私の理解では、一時的な海外旅行でも憲法の保障下にあるということが、解釈ですけれども、認められているからだと思っております。

 憲法は明文で外国に移住する自由を保障しておりますが、これは憲法二十二条二項の規定でございます。ここに言う移住には、一般的な旅行も含まれると解されているようでございます。先ほど述べた昭和三十三年の判決にそのような判旨があるようでございます。

 とすれば、すなわち、この旅券というものは、海外旅行の自由という憲法上の権利に関する法律でございますから、旅券法においては、法文の在り方としてできるだけ明確であることが求められると思います。また、行政の恣意的な運用は抑制されなければならないと考えます。

 このような観点から、まず、旅券の失効に係る例外規定、今般の改正でございますけれども、の整備において、外務大臣又は領事官がやむを得ない事情があると認めるときという文言について、私は、法文として明白か、若しくはまた、恣意的運用が制約されるかについてお聞きしておきたいと思っております。

 すなわち、法文の明確性の観点からは、やむを得ない事情とはどのような事情をいうのか、また、行政の恣意的運用の抑制の観点から、認めるときとはどのようにして認めるのかについて、確認をしておきたいと思います。

安藤政府参考人 お尋ねがございました旅券の失効に係る例外規定のやむを得ない事情といたしましては、様々な事情が想定されますけれども、例えば、一昨年来の新型コロナウイルス感染症の流行に際し、一部の国におきまして外出禁止等の措置が講じられたことが挙げられるかと思います。このような場合には、申請者の方が本人の責めに帰せられない事情により在外公館に出頭する手だてがない状況に置かれることになることから、やむを得ない事情に該当するというふうに考えてございます。

 本件例外規定につきましては、委員御指摘のように、恣意的に運用されることのないよう、外国政府による外出禁止措置の実施等によりまして、真に本人の責めに帰せられない事情により在外公館に出頭する手だてがない状況かどうかにつきまして精査した上で、状況に応じて適切に判断してまいりたいと考えてございます。

吉田(宣)委員 御説明ありがとうございます。

 この改正が、国民の側からいえば、その機会、権利というものを広げる改正でございますから、国民の皆様のお心からすれば歓迎すべき改正でございます。いささか厳しい質問をしましたが、その点は申し置いておきたいと存じます。

 次に、改正案では、申請者の利便性向上及び旅券事務の効率化の観点から、一般旅券の発券申請、紛失、焼失、渡航書の発給申請をオンライン化するというふうにお聞きをしております。原則として、切替え申請時の出頭を不要とするとお聞きしました。役所まで出向く手間が省けますので、申請者の利便性は向上いたします。

 そこで、さらに、より申請者の利便性が向上する観点から、マイナンバーカードを利用することも検討されてよいのではないでしょうか。そこで、マイナンバーカードの普及の観点からも是非検討していただきたく存じますが、外務省の答弁をお願いいたします。

安藤政府参考人 今回の旅券の発給の申請手続等の電子化につきましては、申請者の利便性を向上させる観点から、デジタル庁とも緊密に連携しつつ、マイナンバーカード及びマイナポータルを活用して実施する予定でございます。

 まず、国内におきましては、令和四年度中にマイナポータル上での電子申請を可能とすることを目指しておりまして、申請に際しては、マイナンバーカードにより本人確認を行いたいと考えてございます。

 それから、国外におきましては、マイナンバーカードの国外継続利用が開始される令和六年度以降、国内と同様にマイナポータル上での電子申請が可能となる見込みでございます。

 このような取組により、申請者の利便性を一層向上させるとともに、マイナンバーカードの普及に積極的に貢献していきたいと考えてございます。

吉田(宣)委員 是非よろしくお願いしたいと思います。

 質問の順番を少し変えさせていただきます。申し訳ありません。二題飛ばしまして、法務省さんにちょっとお話をお聞きしたいと思います。

 ウクライナからの難民についてでございますけれども、旅券との関係で質問いたします。非常に基礎的な質問でございますが、どうか御容赦ください。

 ロシアのウクライナ侵略はいまだに続けられています。日本政府は、ウクライナからの避難民に対して、人道主義の観点から受入れを実施しております。

 ただ、ロシアからの攻撃で、着のみ着のままで避難したウクライナ避難民の中には、旅券を持たずに避難した方も多いのではないかと思われます。平時であれば旅券を持たない外国人は日本には入国できないかと存じますけれども、では、旅券を持たないウクライナの避難民は日本国に入国できないのでしょうか。法務省に説明を求めたく存じます。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 入管法上、日本への入国には有効な旅券を所持していただく必要がありますが、自己の責めに帰さない理由などにより有効な旅券を所持していない外国人に対しましては、日本国領事館等が日本への渡航のための渡航証明書を発行しており、この渡航証明書があれば日本への入国は可能でございます。

 したがいまして、ウクライナ国内から避難された方が旅券を所持されていない場合であっても、ウクライナ周辺国等にある日本国領事館等が発行した渡航証明書を所持することにより、日本への入国は可能となります。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 旅券がなくても可能だということでございますが、その業務量たるや、非常におもんぱかられるところでございます。外務省の職員の皆様に敬意を表したいと思います。

 次に、ウクライナではこれまで、シリア、アフガニスタン、ロシア、ベラルーシなどから難民、庇護希望者を受け入れてきたとお聞きをしております。そして、ウクライナ国内にいてロシア軍からの攻撃にさらされて、ウクライナ避難民同様に国外に逃れたウクライナ国籍以外の避難民が存在すると思われます。これらの方は、国籍は違うかもしれませんが、ロシア軍の攻撃から逃れてきたという意味では同じだと思います。

 そこで、ウクライナ国籍以外の避難民に対しても公平に対応すべきではないかと存じますが、法務省に見解を求めたいと思います。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘がございました、ウクライナに居住されていたウクライナ国籍以外の避難民の方につきましても、今般のロシアによる侵略により避難を余儀なくされているという点ではウクライナ国籍の方々と同様であり、国籍に関わりなく人道上の配慮が必要であると考えております。

 入管庁におきましては、今回のロシアによる侵略によって避難を余儀なくされた方々につきましては、ウクライナ国籍以外の方であっても我が国への入国を認めることとしております。

吉田(宣)委員 人道的観点から、是非、責に帰すべからざる事由で逃れてこられる方に対しては、大切に支援をお願いしたいと思います。

 飛ばしました質問にちょっと戻らせていただきます。

 今回の改正は、旅券の事務の効率化の観点から、さらに、未交付の旅券の発行経費の徴収について改正が行われるとお聞きをしております。具体的には、旅券の発行後、申請者が六か月以内に当該旅券を受領せず、当該旅券がその効力を失った場合において、申請者が失効後五年以内に再度一般旅券の発給を申請した場合に、効力を失った一般旅券の発行経費を徴収することができるとのことでございます。

 では、この改正を行う背景として、六か月以内に申請した旅券を受領しないままの申請者の数は年間どのくらい存在をされておられて、どのくらいの手数料が徴収できないままになっているのかについてお教えいただければと思います。

安藤政府参考人 旅券が未交付のまま失効した件数及び徴収できなかった国の手数料額につきましては、平成二十九年度から令和元年度までは各年度約一万件で約一億円、令和二年度は約二万件で約二億円でございます。それから、令和三年度につきましては、集計中のため暫定値ではございますけれども、約二千七百件で約三千万円でございます。

吉田(宣)委員 意外と取りに来てくださっていないということがよく分かりますし、その上の手数料がなかなか徴収できないという苦しさも物語っておられるかと思います。

 次に、旅券の信頼性の維持の観点から、旅券の査証欄の増補を廃止すると今般の改正でお聞きをしております。具体的には、旅券の査証欄に余白がなくなったときに、より低額な費用で新たに一般旅券を発行することができるようにするということでございます。

 旅券の信頼性の維持の観点とのことでございますが、そもそもこの増補という実務、これは国際的に言ったら、国際社会からどのような評価を受けているのか、それについてお教えいただければと思います。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 査証欄の増補につきましては、一旦交付された旅券に増補紙を添付し、引き続き有効な旅券として使用するため、一つには追加した査証欄を取り外して渡航履歴を分からないようにする、あるいは取り外した査証欄を使って偽造旅券を作成するといった不正行為が行われるリスクを伴います。

 したがいまして、査証欄の増補は旅券の偽変造防止の観点から望ましくなく、国際民間航空機関、ICAOも平成二十八年以降、各国に対してこれを行わないよう勧告してきているところでございます。そのため、主要国におきましては、査証欄の増補は行われておりません。

 今回の法改正は、日本の旅券についても、増補を廃止することによりICAOの勧告に従うことで、国際的な信頼性の維持を図るものと考えてございます。

吉田(宣)委員 国際社会の信頼というもの、これはもう信なくば立たずでございまして、非常に重要なことであると思いますので、必要な改正かというふうに思っております。

 貴重な質問の機会をいただきました。感謝を申し上げて、私の質疑を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

城内委員長 次に、徳永久志君。

徳永委員 おはようございます。立憲民主党の徳永久志です。

 まずは、林大臣、大変お疲れさまでございました。強行軍の中、いい外交を展開していただいているなというふうに思わせていただきますし、また、この後もNATOの会合にすぐに出発をされるということでもありますので、是非体調に御留意をされて職務を果たしていただければというふうに思うところであります。

 また、今回の林大臣のポーランド訪問は大変大きな成果を上げたというふうに言われておりますので、そういった成果も私たちも立法府の一員として共有をさせていただいた上で、共にウクライナの方々への支援がしっかりとできるような、そういう取組を是非お支えをしていきたいというふうに思っておりますので、その観点からの質問だということで御理解をいただきたいと思います。

 まず、林大臣は、今回のポーランド訪問において、ウクライナのクレバ外相と会談を行われたというふうに報道で伺っております。できれば、その概略、可能な範囲でお知らせをいただきますとともに、特に日本に対しての要望事項あるいは要請、こういうことをお願いしたいというようなことがクレバ外相の方からありましたら、そういった部分についてもお教えいただければと思います。

林国務大臣 ありがとうございます。

 四月二日、同時期にポーランドを訪問しておられましたクレーバ・ウクライナ外相と会談を行いました。クレーバ大臣から、今回の日本の外務大臣のポーランド訪問はウクライナ国民を勇気づけるものであるとして深い感謝の意が表されるとともに、現在の情勢につきまして詳しく説明をいただいたところでございます。

 また、日本政府による、これまでの迅速かつ強力なロシアに対する制裁措置、そしてウクライナの人々への人道支援、さらにウクライナ避難民の受入れへの高い評価と謝意が示されたところでございます。

 さらに、日本政府がウクライナ首都の呼称をウクライナ語による読み方に基づくキーウに変更いたしまして、首都以外の地名も同様にウクライナ語の読み方に変更したことについて、歓迎の意が表されたところでございます。

 それ以上の先方からの、例えば要望等の外交的やり取りについては、ここで明らかにすることは差し控えさせていただきたいと考えます。

徳永委員 こういう要望がありましたは、別にいいんじゃないんですかね。といって、これ以上やっても同じ答えでしょうから、やめますが。

 あと、大臣は、現場を精力的に視察をいただいたということであります。特に、ウクライナ国境近くのメディカという場所ですね。ここは出入国審査を行う施設があるということで、そちらの方を訪れられたということであります。ニュース映像なんかを見ていますと、女性や子供が列を成して、食料とか水をもらうために列をつくってという状況を報道等で目にしますけれども、現地も大分混乱をしているのかな、あるいはどういう状況なのかなといったところでもあります。

 是非、同地を視察されて、大臣としてどのような印象を持たれたのかというのを御披露いただきたいということと、大変心配しますのは、そういった国境の近くでありますから、本当にいろいろな状況の中で逃れてきた方々がおられて、特に、心身共にへとへとになったりとか、あるいは、もしかしたら、途中で攻撃を受けて、けがをされたまま入ってこられたりとか、そういった方々もおられるのではないかと推測をします。医療面でのサポートというのは、その辺り、どうなっているのかなということも含めて、お教えいただければと思います。

林国務大臣 国境のメディカというところに行ってまいりました。徳永委員からお話もありましたように、私も、映像で何度か、行く前に見ておりましたので、物すごい人が行列をつくっておるということと、さらには、男性が、六十歳までは国内に残れということですから、そこまで送ってきて、そこで別れを惜しむというような映像を見ておりました。そういう別離と再会の現場を見させていただいたわけでございますが、一時のピーク時に比べまして、かなり落ち着いてきているという印象でございました。

 人数は、御承知のとおりだと思いますけれども、一桁ぐらいの小さい数字になってきているということでございますけれども、NGOの方が赤いテントを作って、その中を暖かくして、その隣に食事を提供する場所があって、そのテントは、特に子供さんたちが暖かいテントの中で遊べるように、おもちゃがたくさん置いてあるというところを視察をさせていただきました。

 そこの方とお話をしましたら、こういうテントが幾つもあった、ピーク時は。私が行ったときは、先ほど申し上げましたように、かなり落ち着いてきておりましたので、それは一つに縮小されておるということでございましたが、たまたま私が着いたとき、見せていただいたときは、もうそこで遊んでいらっしゃるお子さんはいらっしゃらなかったというようなことでございました。

 大変寒い中で来られて、子供さん連れが多いということで、それに対応したきめ細やかなサービスが官と民の連携の中で行われているということでございましたのと、それから、車に乗ったままで手続を待っておられる方、最初は、誰が来たんだろうというような感じでこっちを見ておられましたけれども、こちらで手を振ったら、向こうも笑顔で手を振り返していただくなど、大変印象的な笑顔があったわけでございます。

 医療サービスでございますが、現地は国境警備隊というものが所管をしておられますけれども、そこに一室、緊急医療的な、応急措置の隊員がおられて、私が行ったときは三人ほどでございましたが、待機をしておられました。その部屋にはいろいろな応急の薬等が置いてありましたが、その方々が、ここではできないことを抱えていらっしゃる方が来られたら、自分たちが運転して近くのそういう措置ができる病院まで運ぶんだ、運んでいたんだということはおっしゃっておられましたので、かなりきめ細かくそういう対応ができておるなという印象でございました。

 まさに政府、自治体、企業、NGOという間の連携がしっかりしておりまして、女性や子供に対するものを始めとする大変きめ細やかな支援が提供されているということを目の当たりにすることができたわけでございますので、後で国際機関の皆様と意見交換をしましたら、少数のサンプルでありましたけれども、ウクライナから来られた方の八割は、事情が許せば帰りたいんだ、こういう意向を持っておられるということが御報告がありましたけれども、まさに一日も早く元の生活に戻れるように、我々も国を挙げて最大限の支援を行っていきたいという思いを新たにしたところでございます。

徳永委員 詳細に御説明をいただきました。ひとときの混乱の時期から比べれば落ち着いてきているということでもありますし、心配をしておりました医療の面においても、きめ細かに行われているということでもあります。

 ただ、あとは、心理的ないろいろな傷を負った方などもいっぱいおられると思いますので、そういった部分に対する日本としてのサポートというものも考えていかなくてはいけないのかなと大臣の今の御発言を聞いて思いました。

 同じく国境の南東部で、ジェシュフというんですか、日本政府の連絡事務所がございまして、そこを大臣が訪れられて、外務省の職員、スタッフと激励を兼ねてお話をされたということであります。

 恐らくそういった方々も、現在、ウクライナに、国内に残っている日本人の方々へのサポートをずっと続けておられるんだろうというふうに思いますけれども、現状、国内に残っておられる日本人の方はどうなんですかねということと、それから、どのような支援をしておられるのかという部分をお教えください。

林国務大臣 先ほどちょっと委員が触れられたトラウマですが、最初に行きましたワルシャワの方の避難民センターにはそういう施設もございまして、少し照明を落としたカウンセリングルームがあって、そういうカウンセリングもそこで提供しているということもございましたので、御報告させていただきたいと思います。

 在留邦人の件でございますが、在ウクライナ大使館は、在留邦人の方々に対しまして、自身の身の安全を最優先とした行動を取ることを呼びかけながら、出国先の入国要件等の情報提供を含む様々な形で情報提供を行って退避を支援をしているほか、在留邦人からの個別の相談や問合せに応じてきておるところでございます。

 一月時点で、在留届出ベースで約二百五十人いらっしゃったわけですが、四月四日時点で確認されている在留邦人数は約五十人というふうになってきております。在留邦人の方々とは連絡を取り合っておりまして、現時点までに、邦人の生命身体に被害が及んでいるという情報には接していないところでございます。

 政府といたしましては、在ポーランドの日本国大使館とジェシュフ連絡事務所とを拠点として、引き続き、こうしたウクライナ在留邦人に対する情報提供、安全確保、出国支援、これらに最大限取り組んでまいりたいと考えております。

徳永委員 以前お伺いしたときはウクライナ国内に日本人の方が約二百数十名残っておられたのが、今回で五十人ぐらいだということでありますので、国外に出られた方というのは大体ポーランドから出ておられる感じなんですか。ちょっと通告はしていませんが、その辺、お分かりになりますか。

林国務大臣 細かな数字は持ち合わせておりませんが、ポーランドに出国されて、そこからまた、経由されている方も含めて、最初に出ていくという意味ではポーランドが一番多いということだと思います。

徳永委員 まだ様々な事情で残られている五十人の方へのサポートをしっかりとしていただきたいと思いますし、その五十人の方々の御無事を本当に祈るばかりであります。

 また、同じくジェシュフでは、国連人道問題調整事務所など、国際機関の関係者らとも意見交換を行ったということであります。その後、報道陣に対しまして、大臣は、今後の課題も幾つか確認でき、大変有意義な機会であった、自分たちの目で確かめ、話を聞いた現場の状況を踏まえ、今後の避難民支援の取組に生かしていきたいというふうに述べられたと報道に接しました。

 大臣に是非お伺いしたいのは、確認できた今後の課題とは何なのか、避難民支援に生かしたい今後の取組ということはどういうことになるのかについて教えてください。

林国務大臣 今おっしゃっていただきましたように、三日間の滞在中、ワルシャワ市内の避難民施設、それから国境地帯の訪問、さらには、ワルシャワとそれからジェシュフと両方で、避難民支援に取り組む国際機関やNGOとの意見交換を行いました。さらには、大使館に新たに設置された避難民支援チームの激励、そしてウクライナ政府とポーランド政府要人との会談ということであったわけでございます。

 これらの機会を通じまして、第一に、ロシアによる侵略によって祖国を追われた避難民の厳しい状況を目の当たりにしまして、避難民の方々が一日も早く元の生活を取り戻せるように、日本として最大限の支援を行っていかなければならないという思いを新たにしたところでございます。

 第二に、これまでの日本政府の人道支援が、現地のニーズを踏まえて、女性、児童、家族支援、そして医療分野で早速有効に活用されているということが確認できたということでございまして、それらとともに、今後の課題についてもいろいろと意見を聴取できたところでございます。

 第三に、ポーランド政府が自治体や企業、市民団体などと連携して大変きめ細やかな避難民支援策を提供しているということを知りまして、日本に来られた避難民の方々に対する国内の支援策を考えていく上でも大変有益な機会となったところでございます。

 この中で、例えば、ウクライナは小麦の世界有数の産地でありますが、小麦を今から種をまく期間に入ってまいるわけでございますけれども、果たしてこれが今までどおりいくのかということでございました。私は、農地がかなり被害に遭っているのかな、こういうふうに思っておりましたが、むしろ、そういうことよりも、農業機械を動かす機械の燃料、これが確保できるのかということと、先ほど申し上げましたように、六十歳以下の男性はみんな国のためにということになっておりますので、農作業をする人手が例えば確保できるのか、こういったことも課題があるというような説明がありました。こういったことも、一つの例でございますが、今後は国際社会が関心を持っていかなければならないということでございます。

 四百万人近くの方が外に出られておるということですが、元々四千万人の人口のところでございますので、国内にも、居所を離れておられる方、また幸いにして居所におられる方も含めて、たくさんの方がいらっしゃるわけでございますので、そういった問題も、これは日本が独自で何かやるということよりも、国際社会がこういうものに、WFPですとか、そういうところがどうやって向き合っていかなければならないのか、こういう課題もその意見交換を通じて浮き彫りにされたということを考えておるわけでございます。

 また、向こうでいろいろ見聞きしたことの中で、今後は日本にも、数の規模は違いますけれども、避難民の方がいらっしゃるということで、そういうものをしっかりとこちらでも、いろいろ条件は違うと思いますが、同じようにきめ細やかに生かしていかなければならない、そういう課題も感じ取ってきたわけでございます。

 こういった声を政府内でしっかり共有して、引き続き、ウクライナの人々に寄り添った支援をしてまいりたいと考えております。

徳永委員 大臣が触れていただきました小麦の件ですけれども、今も学校の地理の教科書には、ウクライナはヨーロッパの穀倉地帯だというような記述が多分あるんだろうというふうに思います。そういった面では、そうした農業に対する支援というものは、特に日本の場合は、アフガンを含めて様々な国の農業支援をやってきた実績もありますので、そういった部分を是非国際社会でもアピールをしていただいて、リードをしていただきたいなというふうに思います。

 次に、今回の特徴的な出来事といたしましては、やはり何といっても、ウクライナの方々二十名、政府専用機に乗せて大臣と一緒に帰国をされたということであります。

 まず、この二十人という方をどうやって選ばれたというか、言葉は悪いですけれども、どういう形で、どういう基準で乗せることになったのかといった部分についてお示しください。

北川政府参考人 お答えいたします。

 先ほど大臣からも述べられましたように、今回のポーランド訪問を通じて、避難民の方々の多くが、事情が許せばできるだけ速やかにウクライナに帰国することを希望しつつ、ポーランドを含む隣国に滞在していることが判明いたしました。その一方で、日本への避難を切に希望しているものの、現在自力で渡航手段を確保することが困難な方々もいらっしゃることが判明いたしました。

 そこで、こうした方々に人道的観点から支援の手を差し伸べるために、帰国に際して政府専用機の予備機に、日本への避難を切に希望しているものの、現在自力で渡航手段を確保することが困難な方々、二十名の避難民の方々に乗っていただいたところでございます。

徳永委員 日本に来たいとおっしゃっている方のうち、自力で日本に来れない方が二十人であったという理解では、どうなんでしょうか、余りここは責めませんが。

 次に行きます。

 是非確認をしておきたいのは、今回、政府専用機で大臣はポーランドに行かれて、そして帰りにウクライナ人二十名を乗せて戻られたということです。

 政府専用機というものは自衛隊機でありますから、自衛隊機を海外に出す場合、そして誰を乗せるのかという部分については、これはしっかりと法的根拠がないといけないというふうに思います。ここは、いわゆるシビリアンコントロールの一つだというふうに思いますので、確認をしておかなければいけないと思っています。

 まず、林大臣がポーランドに行かれたときの、政府専用機に乗られましたが、そのときの法的根拠を教えてください。

町田政府参考人 お答えいたします。

 今般の総理特使である外務大臣のポーランド訪問については、自衛隊法第百条の五、国賓等の輸送の規定に基づき輸送を実施しています。

徳永委員 百条の五、総理、国賓などの輸送というところで、法的根拠として林大臣は政府専用機でポーランドに行かれたということであります。

 それでは次に、二十人のウクライナの方々を政府専用機にお乗せをしました。自衛隊機を外国人の輸送に用いたわけですけれども、それが可能であった法的根拠をお示しください。

町田政府参考人 お答えいたします。

 自衛隊法第百条の五、国賓等の輸送の規定に基づく輸送については、これまでも、内閣総理大臣や国務大臣といった法令において明示的に規定されている方以外に、関係省庁の職員等を同乗させております。これらについては、輸送対象者が公務を遂行するに当たって通常同行させる者と考えられるものであることから、法令上、特段の明記がなくとも輸送を可能としているところです。

 今お尋ねのございましたウクライナの避難民については、輸送対象者たる外務大臣が、来日に向けた調整を行うなどの公務を遂行した結果、外務大臣に同行して来日することとなったものです。これを踏まえ、避難民についても、国賓等の輸送の規定に基づき運航する政府専用機に同乗させることとしたものでございます。

徳永委員 誤解のないようにお願いしたいんですけれども、今回、二十人の方を連れてこられたことは大変よかったと思っています。これに対して何ら私は問題意識を持っているものではありませんが、ただ、やはり政府専用機という自衛隊機を用いたわけですから、そこの法的根拠はしっかりとしておくべきだという観点からの質問だということは是非御理解をいただいておきたいと思います。

 それで、戻りますが、林大臣の公務執行の結果としての同乗である、ウクライナの方が同乗されたということです。これでもって、自衛隊法百条の五の適用で政府専用機にウクライナの方々を乗せて帰ったということです。

 これは、ほかにこういう事例というのはございましたでしょうか。

町田政府参考人 お答えいたします。

 平成十六年五月、小泉総理が政府専用機により北朝鮮に訪朝した際、北朝鮮に残された拉致被害者家族が総理に同行して帰国することとなり、この国賓等の輸送の規定に基づき、本邦へ輸送いたしました。

徳永委員 あくまでも、総理とか大臣とかが公務を執行したその結果としての同乗であったということだと理解をいたします。

 となると、先ほどおっしゃっていました、日本に避難をすることを望んでいるけれども自力で渡航ができない、そういった方々を、これからどうやって日本に来ていただくかということを考えてみた場合、これは、自衛隊機を、大臣とかが乗らずに、そういったウクライナで自力で日本に来ることができない方々を輸送する目的だけで、大臣が乗らずに自衛隊機をポーランドに飛ばしたりとか、あるいはほかの国に飛ばしたりということは可能ですか、現行法でも。

町田政府参考人 お答えいたします。

 今後の避難民の輸送において、仮定の御質問にお答えすることは差し控えさせていただきますが、今後の避難民の方々の輸送の在り方については政府全体で検討するものと承知しております。今後の自衛隊機による輸送について予断を持ってお答えすることは差し控えさせていただきたいと存じますが、いずれにせよ、防衛省・自衛隊としても、引き続き、関係省庁と連携しながらでき得る限りの支援を行っていく、そういう考えでございます。

徳永委員 じゃ、ちょっとウクライナから離れてください。外国人の輸送だけを目的として自衛隊機を海外に派遣をすることは可能ですか。

町田政府参考人 お答えいたします。

 今御説明申し上げました、国賓等の輸送や在外邦人の輸送等によらずに、一般論として、自衛隊機を海外の避難民の方々に輸送するについては、例えば、国際緊急援助法やPKO法の規定に基づく活動として実施することがあり得ると考えております。その場合、これらの規定する要件を満たすことが必要になる、そのように考えております。

徳永委員 国際緊急援助法とか、そこに該当するというのは、今回の避難民とか、あるいは様々な災害とか有事が起こったときに、外国人を輸送というのは多分使えないと思っているんですけれども。

 今回、防衛省設置法で、防衛省の出した法案の中に八十四条の四の改正がありましたよね。あのときには、あくまでも自衛隊機を使う場合には日本人の輸送だと。しかしながら、今回の改正で、日本人の、邦人の定義を拡大させて、大使館の職員とか、あるいは名誉総領事の方とか、あるいはJICAの職員の方とか、そういった方々については、日本の外交活動に御協力をいただいた方だから、日本国籍じゃなくても邦人の枠の中で輸送をすることができますよというふうに法律を改正されましたよね。そうなっているというふうに思うんです。

 その中でいくと、その邦人の定義の中に入らない、全く無関係の外国人の方を自衛隊機を使って輸送することはできないですよね、現行法令では。

町田政府参考人 お答えいたします。

 今般の八十四条の四の法改正について申し上げますと、自衛隊法八十四条の四の規定に基づく在外邦人等の輸送について、我が国の国籍を有しない者のうち、邦人の配偶者又は子など、我が国国民と同視できるものについては、我が国国民と同様に、その生命又は身体の保護を行うため、自衛隊を派遣し、輸送を行うことが可能となるものです。

 御指摘のございましたその他の外国人についても、この八十四条の四の改正後の規定においては、これまでどおり、主たる対象者の同乗者として輸送することが可能というふうになっております。

徳永委員 もうこれ以上やりませんが、主たる同乗者がいない場合の、本当に全くその邦人の定義に入らない外国人の輸送を目的とした自衛隊機の派遣はできないはずですよ。

 何が申し上げたいかというと、今後、もしかしたら、ウクライナの方々も含めて、そういう事例、ケース、ニーズが出てくるのではないか。そのたびごとに、大臣が同乗をして、向こうでそのニーズを把握して云々してまた戻ってくる、これは繰り返せないでしょうということなので、是非、外国人の輸送だけを可能とするような自衛隊機の派遣について、これは新しい法律を作って、可能となるようにしていくべきではないかという問題意識なんです。

 これはウクライナの件だけではなくて、例えば、余り個別ケースを言うとあれなんですけれども、台湾有事とか朝鮮半島有事とか、そういったことも含めて大災害が特に東アジアで起こった場合には、世界の各国から、自国民の保護のために、是非、我が国の国民がどこどこにいるから、安全なところに日本の力で輸送してくれというような依頼も来るかもしれません。東アジアでそれが可能となる国、能力を持っている国は多分日本ぐらいなんでしょう。となってくると、そのときに、いやいや、済みません、法律がないのでそれはできませんと言ってしまえば、これはやはり国際社会として日本が責務を果たしたことにはならないのではないかというような思いを持っていますので、是非、こうしたことが可能となるような検討を早急に進めていただきたいなと思うんです。

 通告していませんが、大臣、今のやり取りを聞いておられて、御発言をいただければと思います。

林国務大臣 日本への避難を希望する避難民への渡航支援に関しては、今回のケースでいえば、現地のウクライナ避難民支援チームというのを立ち上げましたので、このチームで現地の渡航支援ニーズの把握を努める中で、どのような形での渡航支援が可能かということを政府全体で検討していくことにしております。

 この検討した結果、行ったことというのは、恐らくは、それ以降の、こういったような類似のケースについても適用が可能になっていくものというふうに思います。そうしたことを念頭に置いて、今回はしっかりとこれ以降のことを検討してまいりたいと考えております。

徳永委員 是非、防衛省とも連携を取っていただいて、早急に結論を出していただきたいというふうに思います。

 もう一つです。

 繰り返しますけれども、今回のウクライナの方二十人というのは、渡航手段を自力で確保することが困難な来日希望者ということだったという説明が先ほどありました。

 これは、公平性の観点はやはり必要だと思うんです。そういった自力で来日ができない方が今後出た場合に、今回の二十人は、政府専用機に乗って、渡航費も無料であった、しかしながら、ほかの人はそうではないよでは、ちょっとこれは公平性を欠く話になってきますので、やはり自力で来れない方々についても是非、日本でちょっと落ち着きたいというような方については、少なくとも渡航費の支援というものは明言をしていただきたいんですけれども、いかがでしょうか。

林国務大臣 まさに先ほどもお答えしたとおりでございますが、今後、日本への避難を希望する避難民の渡航支援に関しましては、まずは現地のチームで渡航支援のニーズの把握に努めてまいりますが、そうした中で、どのような形での渡航支援が可能か、今委員からは渡航費の支援ということがありましたけれども、どのような形での渡航支援が可能か、政府全体で早急に検討してまいりたいと思っております。

徳永委員 これも是非スピード感を持ってしっかりと、渡航費についての支援をするからということは世界に向かって発信をしていただくことを急いでいただきたいというふうにお願いをしておきます。

 それでは、本題でございます旅券法の改正案についてお聞きをしていきます。

 日本のパスポートは世界最強と言われているのを御存じでしょうか。ビザなしで渡航できる国の数を比べたランキングで、日本のパスポートは、百九十二か国のうち、一位であります。ビザが免除されている国の数がパスポートの信頼性を示す基準の一つとされておりまして、世界最強とうたわれているわけであります。

 是非、大臣、お暇なときにネットの検索エンジンで、日本、パスポート、最強と打っていただければ、だあっと出てきますので、参考までに見ていただければというふうに思いますが、このように、日本のパスポート、最強と言われていることは、私も日本国民として大変うれしいものでありますけれども、大臣としてどのように感じておられますか。

林国務大臣 徳永委員からこの質問をいただいたおかげで、私も、英国のコンサルティング会社のランキングですが、日本とシンガポールが百九十二か国で一位、続いて、ドイツと韓国が百九十、イタリア、スペイン、フィンランド、ルクセンブルクは百八十九、こうランキングが続いていくのを、最新のものを見させていただいたところでございます。

 我が国の旅券が調査対象国最多の百九十二に上る、こういう調査結果、これは、我が国の旅券に対する信頼性の高さを示すものだと考えられまして、私といたしましても、日本や日本人に対する信頼と期待の表れであろうというふうに受け止めております。

 引き続き、我が国旅券に対する高い信頼性を維持すべく努めてまいりたいと考えております。

徳永委員 それで、そうした信頼性の高いパスポート、今のところ、日本国民五人に一人が持つ時代になっています。

 国民の海外渡航を広く保障をする意味におきましても、申請手続の簡素化や合理化、そして適正な手数料の水準といったものが望ましいわけです。そうした中で、発給申請のオンライン化というものは大変時宜を得たものであろうというふうに評価をさせていただきます。

 今回の改正で、特に手数料の値下げや交付期間の短縮など、具体的な国民の利便性向上といったものはどのようなものが挙げられるのか、伺います。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の旅券法改正によりまして旅券の発給の申請手続等の電子化がなされますと、例えば、旅券の発給の申請が他の行政手続と同様にマイナポータル上で行えるようになり、切替え申請を行うに当たって、申請時の出頭が原則として不要になります。

 このような申請手続は、パソコンだけでなくスマートフォンからも行うことができて、夜間や休日にも申請することができるようになります。また、旅券手数料のオンラインでのクレジットカード納付、これを可能とすべく準備を進めているところでございます。

 以上のとおり、今回の旅券法改正が実現いたしましたら、旅券の発給の申請等を行う国民の利便性が向上するというふうに考えてございます。

徳永委員 済みません、具体的に、手数料的にはどうなのか、交付期間の短縮につながるのかの二点、絞ってお答えください。

安藤政府参考人 まず、交付期間でございますけれども、今回の旅券の発給手続の電子化等によりまして業務の効率化ということが図られることになりますけれども、交付期間につきましては、直ちに短縮するということは困難でございますが、引き続き業務の効率化に努めてまいりたいというふうに考えてございます。

 それから、手数料でございますけれども、我が国の手数料につきましては、他の主要国との比較においても特段高額であるとは考えてございません。今回の法改正によりまして、電子申請の導入などを通じまして、申請者の利便性の向上とともに、旅券事務の効率化を図るものでございます。もっとも、電子申請を導入するための経費もかかる、あるいは、パソコンやスマホを持たない方などにも配慮して引き続き紙媒体での申請も受け付けることなどの事情を勘案いたしまして、今回の法改正に際しましては手数料の改正は行わないこととしております。

 いずれにしましても、手数料水準の在り方につきましては、国民の負担軽減という見地から、不断に検討してまいりたいと考えてございます。

徳永委員 ちょっと確認ですが、オンライン申請にすれば交付期間は大分縮まるんだろうという素人考えだったんですが、これはやはり紙ベースの申請も並行して認めたがために、そことの整合性を図りながら発給をしていくと、どうしても今までと同じぐらいの期間が必要だという理解でいいんでしょうか。

安藤政府参考人 発給期間につきましてでございますけれども、御指摘のとおり、電子申請を可能とする一方で、紙媒体による申請も同時に引き続き行うということにしてございます。

 発給期間につきましては、我が国は主要国の中でも短いものというふうに考えてございますけれども、引き続き、発給期間の短縮といった課題については、我々としても検討していきたいというふうに考えてございます。

徳永委員 利便性の向上という観点からいきますと、今回、オンライン申請で、窓口へ出向く、出頭することが不要となるのは切替え申請に限定をされておりまして、それ以外は、やはり引き続き出向かなきゃいけないということでもあります。更に言えば、申請はオンラインで行うことができても、実際に旅券を受け取る際は、新規、切替え、いずれも出頭することが求められているわけであります。

 諸外国では、旅券の申請時だけではなくて、交付時にも出頭の必要のない国もあるんだということを聞いたことがあります。また、政府の規制改革推進会議でも、交付時の出頭についても不要にすべきだという意見が出されているやに聞いておりますが、この辺り、今後の見込みというのはどのような形になると考えればいいでしょうか。

安藤政府参考人 現在、旅券の発給の事務におきましては、本人確認及び申請者の意思の確認が必須でございまして、これまで、申請者が旅券窓口に出頭した際に、出頭した人物と旅券の顔写真を照合して直接本人確認を行っております。

 今回の旅券法改正によりまして旅券の発給の申請手続等の電子化がなされますと、切替え申請を行うに当たり、申請時の出頭が原則として不要になりますが、交付時の出頭は引き続き必要となってございます。

 その上で、旅券の配送による交付といった課題につきまして、安全かつ確実な交付のためのシステム構築、制度設計をする必要があると考えておりますが、何ができるのかということにつきましては検討を進めてまいりたいと考えてございます。

徳永委員 同じく利便性の向上という観点からいいますと、そもそも、パスポートがああいう冊子になっているというのはいつまで続くのかなということがあります。

 恐らく外務省の方々は、海外に行かれた日本人の方が現地でパスポートをなくしてしまった、あるいは盗まれてしまった、だから簡易のパスポート、帰国だけのパスポートを発給するのに結構手間暇取られるんだろうというふうに思いますし、私もアメリカに行ったときにパスポートをなくして大変困ったというような記憶もあります。となると、いつまであのスタイルが続くのかなということなんです。今でいうと、スマホの中に取り込んでしまって、それを見せればオーケーですよというような形はできないものだろうかなというのは素人考えであるんです。

 もちろん、パスポートのサイズとかそういった部分については国際標準で決められていて万国共通だということも承知をしておりますので、ここは、世界最強のパスポートと言われる日本が、より一層の手続の簡素化とかあるいは手数料の低廉化にもつながる、こうした新しいスタイルのパスポートを追求をしていく、そういう議論の先頭に立ってもらえないかなという思いをするんですけれども、いかがでしょうか。

安藤政府参考人 お尋ねの点でございますけれども、旅券のサイズあるいは記載事項などの規格というものは国際標準で決められておりまして、我が国独自のものを定めるということはできません。

 その上で申し上げますと、将来的には、旅券のICチップに記録されている個人情報、これは氏名、生年月日、顔画像等ですけれども、これをスマートフォンに記録するといったアイデアにつきまして、国連の専門機関である国際民間航空機関、ICAOの作業部会において既に議論が始められているところでございます。

 今後とも、我が国といたしましても、こうした議論に積極的に参画してまいりたいと考えてございます。

徳永委員 そういう議論が始まっているということでもありますので、国際的なコンセンサスが得られていくように、是非国際社会の中でリードする役割を日本が担っていただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 あと、若干時間がありますので、一点だけ、同じパスポートで。いわゆる公用旅券、皆さん方が持っておられるれんが色の外交官パスポートとか、ああいった部分についてもオンライン申請をしていくという形になるんでしょうか、これは通告していませんが。

安藤政府参考人 今回の旅券法改正におきましては、一般旅券のみならず、公用旅券につきましてもオンライン化、電子申請を可能とするものでございます。

徳永委員 それでは、もう時間も来ましたので、日ロの平和条約交渉の部分については次回にさせていただきます。御準備いただいた方、大変申し訳なく思います。

 是非、林大臣、体調に御留意をされて、この後のNATOの会議も含めて、日本外交ここにありという姿勢を是非示していただければということをお願いを申し上げまして、質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

城内委員長 次に、太栄志君。

太委員 太栄志でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 外務大臣、本当に大変なところ、またこの後NATOの会議へと出席ということで、本当に連日の御健闘、御奮闘に心からの感謝とまた敬意を表します。どうも本当にありがとうございます。

 私は、本日は四つのことをお伺いしたいと思っております。

 もう大臣もずっとおっしゃっていますが、やはり今、我が国の外交としてはリアリズム外交、まさにそこだと思っておりますので、引き続き大臣には、その点、御留意されて御努力いただきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

 まず最初は、先ほど来議論がありますこのパスポートの問題、旅券法の改正、このことが一つ。これは本当に国民生活にも、多くの人たちにも関心が高く、直結することだと思っておりますので、また、今回のウクライナ情勢を受けて、本当に様々、このパスポートの在り方というのが問われておりますし、また、私たち日本の国としても、様々な有事の際等を含めてどう対処していくのか、その点を確認させていただきたいと思っております。

 二番目としましては、先日のウクライナのゼレンスキー大統領の国会での演説でもありました、また、日本時間の昨晩ですか、国連の常任理事会でゼレンスキー大統領がお訴えされておりましたが、まさに国連改革。このことを、今、ウクライナ戦争の中で、我が国としていかに、ロシアに対して、また国際社会に対してしっかりとした国家意思を示していくのか、そのことはやはり重要だと思っておりますので、そのことを二番目として伺いたいと思っております。

 三番目は、やはり日本の平和。ロシアは隣国です。ロシアだけでなく、様々な軍事的な挑発が続く中での、侵略をいかに抑止していくのか、侵略抑止力としての、やはり私は、核の傘、この点を今日大臣にいろいろと、様々問わせていただきたいと思っております。

 最後に、時間がありましたら日米地位協定。やはり、日米同盟をしっかりと深化させながら、ですけれども、足下、私は選挙区に米軍基地を二つ抱えております。そういった意味でも、基地周辺の方たち、また基地で働いている方たち、生活している方たち、そういった方たちにもやはり安心して、納得していただいて、日米同盟というのを私は前へと進めて、深化させていかなきゃいけないと思っております。

 そういった視点からの四つの質問をしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 まず最初、今回の旅券法の一部改正に関してなんですが、私も先日、十年間のパスポート、更新をしました。一万六千円を支払いました、地元のパスポートセンターで。この発給手数料の一万六千円なんですが、旅券法第二十条で規定されています。

 この手数料に関して、これまでも国会答弁において、現在の岸田総理大臣が、外務大臣のときの二〇一三年、九年前ですね、国民負担の軽減という見地から、絶えず見直しをし、検討しなければならない課題だというふうに明確にお話をされています。

 また、旅券法の一部を改正する法律案には、衆参共に、これも二〇一三年、九年前ですね、手数料軽減を図るべく、事務の合理化などを含め、経費削減に努めるべきとの附帯決議が国会でもなされております。

 先ほどの徳永先生の質疑にありました、世界最強のパスポートということで、それなりの費用というのはかかってしかるべきだと思っておりますが、一方で、先ほど、ドイツは何番目でしたかね、三番目ですか、ドイツは大体一万円ほどですね。イギリスも一万四千円ほど。

 やはり、一万六千円というのは、これは岸田総理が外務大臣のときにも言っていましたし、国民負担を軽減するという観点から、これは見直しできないのかという点を外務省の方にお伺いいたします。よろしくお願いします。

安藤政府参考人 お尋ねの手数料の件でございますけれども、現在、我が国の有効期限十年の旅券に係る手数料は一万六千円でございますけれども、本年一月時点におきまして、オーストラリアが約二万五千円、米国が約一万九千円、イタリア及びイギリスが約一万五千円、ニュージーランド及びカナダが約一万四千円となっておりまして、他の主要国との比較におきましても、特段高額であるとは考えておりません。

 他方、今回の法改正におきましては、旅券の発給の電子申請等の導入などを通じまして、申請者の利便性の向上とともに、旅券事務の効率化を図るものでございます。もっとも、電子申請を導入するための経費がかかること、あるいは、パソコンやスマートフォンを持たない方などにも配慮して引き続き紙媒体での申請も受け付けるといったことの事情を勘案いたしまして、今回の法改正に際しては手数料の改正は行わないこととしております。

 いずれにいたしても、手数料水準の在り方につきましては、国民の皆様の負担軽減という見地から、不断に検討してまいりたいというふうに考えてございます。

太委員 詳しく御説明いただきまして、ありがとうございました。国際比較も含めて教えていただきまして、ありがとうございました。

 私、安藤領事局長に様々な形でアメリカ時代からお世話になっておりまして、詳しく御説明いただきましたが、一方で、やはり外務大臣の発言というのは重たいと思っておりまして、もう九年前です。その間ずっと、検討していくというふうにお話しされていますが、なかなかこれが進んでいない。ずっと一万六千円。

 もちろん、国際比較は大事だと思っています。先ほど言いました、ドイツ、イギリス等を含めて。様々これから利便性を向上させていくという点も含めて先ほど御説明ありましたが、またこれはどうか引き続きの御検討を、何とか次回こそは下げていただけるように御検討いただきますようお願いをいたします。ありがとうございます。

 次に行きます。

 今回の改正法案では、大規模な災害の被災者に係る手数料の減免制度を新設して、大規模な災害に際して、申請者の経済的な自由の軽減を図るために特に必要があると外務大臣が認める場合において手数料を減額していく、そういったことができるとしておりますが、大規模な災害に限らず、例えば、我が国が武力攻撃を受けるとか、あるいは甚大な被害が生じた場合には、この特に必要があると外務大臣が認める場合、こういったケースに含まれるのかどうか、この点を、御見解をお願いいたします。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法改正につきましては、今後、大規模な災害が発生する際に迅速に被災者に対する支援を実施できるよう、一般規定を新設するものでございます。ただし、発生する大規模な災害について、現時点で個別具体的に予断することはできませんので、したがいまして、様々な規模、様態の災害が起こり得ることを前提として、様々なケースに的確に対応できるような制度を整備する観点から、手数料の免除に加えて、減額も可能ということにすることにいたしました。

 こうした減免の基準につきましては政令等で定めることとしておりまして、罹災証明書の発行を受けていること、あるいは災害救助法の適用などを勘案しつつ、これを定める予定でございます。

 委員御指摘の武力攻撃につきましては、同法に明記されているとは承知しておりませんけれども、いずれにいたしましても、様々な要素を総合的に勘案して、関係法令の規定に基づいて適切に判断していくということになると考えてございます。

太委員 ありがとうございます。

 是非ともそちら、まさに様々な想定、まさに危機管理だと思っておりますので、そういった意味での措置をお願いいたします。

 次に移りたいと思います。

 次は、外務大臣の方にお伺いしたいと思いますが、今回の改正とは直接関係ありませんが、まさに今回のウクライナ情勢を受けて、先ほども言いましたが、様々、パスポートの在り方、問題になったと思っております。

 我が国としても、三月二十九日、我が党の羽田参議院議員の質問主意書で、パスポートを持っていないウクライナからの避難民についても、政府は、パスポートを持っていなくても、代わりとなる渡航証明書を短時間で発行し、受け入れるとする、そういった答弁書を決定しております。

 今、国民の五人に一人しか旅券を持っていない、五人に四人は持っていない、そういった状況、我が国として。旅券の発給申請から発給されるまで十日から二週間、私も今回、待ちました。そういった中で、先ほども言いましたが、日本の有事、あるいは周辺有事の際に、旅券を保有していない日本国民からの旅券発給申請が殺到して、発給手続に遅れが生じることが想定されると思っております。

 今回、ウクライナのような事態が、もちろん、こんなことを起こしちゃいけないですが、万が一、我が国から海外へと避難しなければならない、そういったときに、どういった形で、手続の簡略化や、また手数料を免除する、そういったことを想定しているのかいないのか、そのことを含めて、大臣の御見解、大事なポイントだと思いますので、よろしくお願いいたします。

林国務大臣 これは仮定の御質問でございまして、また、武力攻撃のような非常事態におきましては、個別具体的な状況に応じて対応を検討する必要があると考えておりまして、一概にお答えをすることは困難ではございますけれども、関係法令の規定に基づいて適切に対応していくことになる、こういうふうに考えております。

太委員 大臣、今回、我々はいろいろと教訓を得なきゃいけないと思っておりますが、まずは、そういった意味ではパスポート。どういった形で、今からなかなか具体的に言えないと思うんですが、是非ともこちら、相当深刻な事態になると思いますし、様々なことを想定していくのが政治の、また政府の役割だと思っておりますので、この点、私はこれは大事なポイントだと思っておりますので、万が一、日本有事のとき、周辺有事のとき、我が国から海外へと渡航する際のパスポートの在り方、今、国民の五人に一人しかパスポートを持っていないんです。それ以外の方たち、相当これはいろんなことが想定されると思いますので、どうか引き続きの御検討をお願いいたします。

 次に移ります。

 国連改革に関して。私、前回の質疑のときにもお話をいたしました。ロシアとの関係、これは相当、いろんな意味で局面が大きく変わったと思っております。昨日、一昨日とジェノサイドが、本当に恐ろしいことですね、画面を見ることもできないような形の、海外のニュースを見ていてもそんな情勢が続いておりますし、我が国としても、明確に非友好国というふうにロシアから指定されています。また、平和条約交渉も、これは打切りだというふうに明確に言われている中なんですが、そういった中、ゼレンスキー大統領、やはり国連改革をということで、国会での演説でありました。

 私は、やはりここは強い意思を、国家意思を示すべきと思っているんですが、まずこれも大臣に確認させていただきたいんですが、日本政府として、ロシアはソビエト連邦の法的継承国であると認識しているのかどうか、教えてください。お願いいたします。

林国務大臣 これは、一九九一年の十二月に行われました独立国家共同体の首脳レベルの決定に基づき、ロシアから国連宛てに、安全保障理事会やその他全ての国連の機関におけるソ連の加盟国としての地位がロシアによって継続されるということを通知する書簡が発出をされております。

 この通知は全国連加盟国に回章されまして、その後、こうした動きについて異論を唱える加盟国はおらず、現在もロシアが安保理常任理事国の席を有している、こういうふうに認識をしております。

太委員 今、国連憲章では、ロシアは常任理事国に名前がありません。ソビエト社会主義共和国連邦というふうに明記されております。そういった意味で、確かに今大臣からありました、書簡が発出されたと。ですけれども、政府としては、何らかの形でそれを承認した、あるいはそれを認めているということで、そういった認識でよろしいんでしょうか、日本政府として。お願いいたします。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、全国連加盟国にこれが回章されて、その後もこうした動きについて異論を唱える加盟国がおらず、現在もロシアが安保理常任理事国の席を有しておるというふうに認識をしております。

 今の、移行については申し上げたとおりでございますが、我が国としては、やはり安保理は、その構成も含めて、現在の国際社会の現実を十分に反映する必要がある、こういう問題意識を有しておるわけでございます。

 その上で、安保理改革などの国連憲章の改正を要する論点の扱いにつきましては、他の国連加盟国の動きもよく見ながら、国連憲章の改正を必要とする他の課題との関連、関係にも十分留意しながら、不断に検討していくという考えでございます。

太委員 大臣、分かりました。

 ですけれども、日本政府としても正式にこれは承認していないことだと私は思っておりますし、もちろん国連の中でもこれは承認手続は取られていない。国連憲章も、もちろんロシアが今常任理事国だというふうには明記されていない状況だと思っております。

 そういった意味で、もちろん、国連憲章を変えるとか、なかなかこれは難しいことだと思うんですが、やはり私は、ロシアに対する国家意思を我が国として示すべきだと思っております。

 そういった意味でも、やはり、ロシアの正統性、P5、常任理事国から外すという決議を総会で採決するように働きかけを、これは日本政府として、ごめんなさい、これは相当過激な発言と取られるかもしれませんけれども、これはずっと国連に改革を主張してきた、あるいは、東大の北岡先生が今回発言されております。

 正統性がない中で、やはりそういった形での我が国からの働きかけは、相当なプレッシャーに、圧力にロシアに対してなるんじゃないかと私は思っておりますので、ここは、もちろん、プーチン後のロシアというのをしっかりと我々は見据えて外交をしなきゃいけないと思っておりますし、どうロシアを国際社会にまたソフトランディングさせるかというのは中長期的には考えなきゃいけませんが、今はやはり、私は、ここはしっかりと、ゼレンスキー大統領の一番の思いだったと思っております、機能していない国連、これをしっかりと、我が国の意思をどうか示していただきたいというふうにお願いをまた再度させていただきます。よろしくお願いいたします。

 この問題に私がこだわるのは、やはり、ロシアは我が国の隣国です。同じように、東アジアでも、国連憲章を無視して領土拡張とか他国への軍事侵略という、これは私、あり得ると思っておりますので、様々想定してやらなきゃいけませんので、どうかこの点、今回こそ、私はあえて、大臣、我が国として、ロシアをP5から外すという決議をしていただけるように進めていただけないか、再度、もう一回質問、お願いいたします。何とかならないでしょうか。

林国務大臣 ゼレンスキー大統領からも、今委員からお話がありましたような国連の改革等に対する思いが示されたということを承知しておるわけでございます。

 日本もずっとこの問題に取り組んできて、いろいろなグループをつくって改革案を出して、こういうことをやってきたわけでございますが、今回の、常任理事国で拒否権を持つ、ある意味では世界の安全保障に大変大きな責任を持つロシアという国の国際法違反である侵略というものは、やはりこの改革の必要性というのを明らかに改めてしたということではないかというふうに思っておるところでございます。

 各国、複雑な利害が絡み合う安保理改革、委員も御存じのとおりでございますが、これは簡単ではございませんけれども、岸田政権の下で、引き続き、多くの国々と協力して、日本の常任理事国入りを含む安保理改革の実現に今後とも全力を挙げてまいりたいと考えております。

太委員 大臣、どうか引き続き国連改革を進めていただきたいと思っておりますので、その点からの質問になりますが、我が国の想定している国連改革、安保理改革の具体策の中で、紛争の当事国の拒否権に対して一定の制限を設ける、私、これは物すごい大事だと思っているんですが、そういった拒否権に関する一定の制限、この点に関して、入っているのか入っていないのか、そこを教えてください。お願いいたします。

股野政府参考人 お答え申し上げます。

 今御質問のございました拒否権を制限するという件に関しまして、政府としましては、従来から、常任理事国による拒否権の行使は、一般に、最大限自制されるべきと考えております。

 こうした観点から、我が国は、大規模な残虐行為については、常任理事国五か国が自主的に拒否権行使を抑制すべきとするフランスとメキシコによる提案、これを支持してございます。

 フランスとメキシコの提案は、我が国を含む百五か国・地域からの支持を得ておりまして、一方で、ロシアを含む他の常任理事国からの支持はまだ得られていないものというのが現実でございます。

 こうした拒否権の問題を含めて、安保理の改革は決して簡単ではございませんが、引き続き、積極的に日本としても活動してまいる所存でございます。

太委員 ありがとうございます。

 まさに、先ほど大臣の方からもお話がありました、国連の中の様々なグループでということで、G4というんですか、日本とドイツ、インド、ブラジル、常任理事国入りを目指してということで様々な動きをされているというふうに思っておりますが、さらに、このメンバーをどう増やしていくのか、仲間を、あるいは、常任理事国入りの仲間を増やしていく、そういった動き等、働きかけ等というのは行っているのかどうか、教えてください。お願いいたします。

林国務大臣 先ほども申し上げましたように、ロシアが国際秩序の根幹を揺るがす暴挙に出たということは、まさに新たな国際秩序の枠組みの必要性を示していると思っております。

 長年この改革の必要性を訴えて、積極的に我が国は活動してきたわけでございまして、やはり、現在の国際社会の現実を反映するように安保理の構成を変えていかなければならない。そういった意味では、常任及び非常任の双方の議席を拡大するということが重要だと考えております。

 こういう問題意識を共有するブラジル、ドイツ、インドとともにG4という枠組みをつくって、安保理改革に取り組んできております。

 また、三月二十六日と二十七日にTICADの閣僚会合を行いましたが、私からは、アフリカ諸国に対しても、国連安保理改革の必要性も取り上げてきたところでございます。

 G4のほかに、アフリカグループというところがございます。さらには、コンセンサスグループ、UFC、ユナイティング・フォー・コンセンサスというものも決議案を総会に提出したこともあるわけでございまして、我々としては、先ほど申し上げましたようなアフリカ諸国、アフリカグループとも連携を視野に入れながら、複雑な利害が絡み合う安保理改革、決して簡単ではございませんが、そうしたアフリカ等を含めた多くの国々と協力をいたしまして、日本の常任理事国入りを含む安保理改革の実現に向けて、リーダーシップを取っていきたいと考えております。

太委員 分かりました。ありがとうございます。

 なかなかこの安保理改革は難しいと大臣今おっしゃっていたとおりだと思っております。しかし、これは、大きな流れをどうつくっていくのか、まさに今回をそのいいきっかけにして進めていただきたいと思っておりますし、先ほどもありましたように、フランス、メキシコですか、拒否権に関してはやはり一定の制限をということでも、そういった動きもありますので、是非ともこの国連改革を進めていただきたいと思っております。

 次に移りますが、G20サミット、これは十一月なんですが、実際は。バイデン大統領は、ロシアをG20から排除する必要があると思うかと問われて、イエスと答えておりますし、G7の首脳声明でも、国際機関や多国間フォーラムは、もはやこれまでどおりにロシアとの間で活動を行うべきではないというふうに明記をしております。

 そういった中で、我が国として、G20からロシアを排除していくということに関しての見解を、政府の立場を教えてください。お願いいたします。

林国務大臣 まさに今委員から御指摘があったように、国際社会は、ロシアのウクライナ侵略によりまして、ロシアとの関係をこれまでどおりにすることは、もはやできないと考えておるわけでございます。

 先般のG7首脳会合、今御指摘がありましたけれども、ここにおいても、国際機関や多国間フォーラムは、もはやこれまでどおりにロシアとの間で活動を行うべきではないという点で一致をしたところでございます。

 G20へのロシアの参加については、議長国であるインドネシアを始めとするG20のメンバーとも議論しながら、今後の情勢をよく踏まえた上で、政府として適切に対応してまいりたいと考えております。

太委員 ありがとうございます。

 先ほども言いましたが、もちろん中長期的な視点は大事だと思いますが、今やはり、G7をまさに主体とした国際的な連帯をしっかりと示していくことだと思っておりますので、そこからスタートして、何とか大臣のリーダーシップをまさに発揮していただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 そして、これは岸田総理も言っております、国連改革の中で、国連に代わる新たな国際秩序が必要だということを言っているんですが、一方で、政府として、じゃ、どういった新たな国際秩序を目指しているのかというところがなかなか見えてこないと思っております。

 そこに関して、大臣の方から、現在、どういった形で国際秩序というのをつくっていかれようとしているのか、もし構想等ございましたら教えていただきたく、お願いいたします。

林国務大臣 アジアにおきましては、やはりASEAN、これが地域協力の中心として重要な役割を担っておりまして、東アジア首脳会議、EAS、またASEAN地域フォーラム、ARF、拡大ASEAN国防相会議、ADMMプラス、こういう多層的な地域の協力の枠組みがあるわけでございます。

 我が国としては、ASEANの中心性を尊重しておりまして、引き続き、こうした枠組みに積極的に貢献して、地域の安全保障枠組みの強化に取り組んでまいりたいと考えております。

太委員 ありがとうございます。

 私も、やはり鍵はASEANだと思っております。今大臣からもありましたように、ASEANを中心として、まさにADMMプラス、国防大臣級会議等も含めて、これはアメリカとイギリスも入っています。あと、様々な形で、災害復興とか人道支援とか、まさに防衛外交というんでしょうか、そういった様々なことを進めていく、その土台としていろいろとASEANで工夫しながら進めていっているのが、私は、長期的に見ると、軍同士でのおつき合いであったりとか、そういった多国間協力の場として有効に活用できると思っておりますので、やっていただきたいと思っております。

 あと、やはり、ASEAN諸国は、ですけれども、一方で一番ネックになるのが、米中、今既に新冷戦と言われる、様々しのぎを削っている中で、じゃ、アメリカか中国かどっちかと問われるのが一番、これはASEANの国々にとってはなかなか決断できないところでもあると思いますので、そういった意味でも、私としては、まさに日本がインド太平洋の自由で開かれた地域をしっかりと主導していく、リベラルな国際秩序を主導していく、そのことをやっていく。これは、米中じゃなく、そういった緩やかないろいろな共同体をつくって、ASEANを一つの土台として発信していただきたいと思っております。

 その際に、これはまた西太平洋連合という形で、こちらは我が国として、もちろん、これはオーストラリアやニュージーランド、太平洋の島々、島嶼国も含めながら、緩やかな、中国ともうまく共存しながら、アメリカもしっかりとこの地域に結びつけながらやっていただく西太平洋連合に関して、こちらに関して、大臣、もし御見解等ありましたら。よろしくお願いします。

林国務大臣 西太平洋連合という構想、これも承知をしておるわけでございます。

 先ほど、まさに委員からもお話がありましたように、ASEANがやはりASEAN中心性ということを非常に重視をしておりますので、ここの地域で何かをやっていくときというのは、まさにそこにしっかりと重要性を認識しながら進めるということが一つ必要であるかなというふうに思っております。

 西太平洋ということになりますと、今現在ございますAPECというのもございます、環太平洋ということでございますが。そういうものが、先ほど申し上げましたASEANを中心とした組織と、やはり今委員がおっしゃいましたように、いろいろな取組を重層的に重ねることによって、この地域の共同体意識が更に強固になっていく、こういう方向性を目指していくということが大変重要であるというふうに考えております。

太委員 ありがとうございます。

 我が国がしっかりとリベラルな国際秩序をつくっていこう、その強い意思と、私は、主導していくことが、リーダーシップが大事だと思っておりますので、私自身も引き続きこの問題を追いかけていきたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いいたします。

 次に、核の傘、米国の日本への拡大核抑止に関して質問させていただきます。

 私は、国防問題というのはタブーを設けてはいけないと思っております。しかし、今様々議論になっております核共有ではなく、具体的に日本の国に核を配備していくのではなく、やはりまずは我が国としては、核なき世界というのをしっかりと理想を掲げながら、今、日米間での拡大抑止をどう担保して、しっかりと確実にして、さらにはこれを強化していくのか、そのことが一番大事だと思っております。

 毎回お伝えしていますが、やはり今回のウクライナの問題を受けて、国防に関するというんでしょうか、安全保障に関して、我が国の安全保障が脅かされている、そういったふうに感じている国民の方が八割から九割、これは毎日新聞だと九割になっていたと思います。

 そういった意味で、我々としては、やはり現実的な国防論議をしっかりと進めていくべきだと思っておりまして、そういった意味でも、私たち日本の国の安全保障の根幹の部分、それがまさに米国の核の傘、拡大抑止であるわけなんですが、その点に関して、日米間における拡大抑止の担保はどのように確認されているのか、大臣、そこを教えてください。お願いいたします。

林国務大臣 米国は、累次の機会に日米安全保障条約の下での自国、すなわちアメリカの対日防衛義務を確認してきておりまして、この点は今年の一月の日米首脳のテレビ会談におきましても、バイデン大統領から改めて表明があったところでございます。

 また、同じく一月に日米の2プラス2を行いましたけれども、アメリカ側からは、核を含むあらゆる種類の能力を用いた日米安保条約の下での日本の防衛に対する揺るぎないコミットメント、これが改めて表明をされておるところでございます。

 日本政府として、米国が核を含むあらゆる種類の能力を用いて条約上の義務を果たすということに全幅の信頼を置いておりまして、拡大抑止は機能していると考えております。

 日米間では、核抑止を含む米国の拡大抑止に関しまして、日米の拡大抑止協議の場を含めて様々なやり取りを行っておりまして、引き続き、米国の拡大抑止の信頼性の維持強化に向けまして、日米間でしっかりと協議を行ってまいりたいと考えております。

太委員 大臣、ありがとうございます。

 私も、米国の核の傘というのはちゃんと機能しているというふうに確信しております。ですけれども、一方で、やはり、それがちゃんと機能していくのか、運用されていくのか、そこは常に確認していかなきゃいけないと思っておりますし、今大臣が御指摘された日米拡大抑止協議、これは二〇一〇年、民主党政権時代からスタートした。まさにその前のオバマ大統領の核なき世界のプラハでのスピーチを受けての日米拡大抑止の協議だったというふうに認識しております。

 この拡大抑止協議、様々、私も外務省の方からお話を聞かせていただきました。実際、二〇一〇年からスタートしていますが、二〇一三年以降ですか、ホームページ等でも、開催しているという、誰が参加しているか、そういったことは簡潔にホームページに掲載されております。

 それでは、EDD、日米拡大抑止協議、日米間でどのような議論が交わされているのか、外務大臣は当局者間でのやり取りを承知しているのかどうか、どんな内容なのか、また、その報告がされているのかどうか、そこを教えていただけますでしょうか。お願いいたします。

林国務大臣 日米両国間では、日米拡大抑止協議の場を含めて、同盟の抑止政策に関連する様々な事項につきまして、日頃から緊密かつ幅広く意見交換を行っておるところでございます。

 こうしたやり取りの詳細につきましては、我が国の安全保障に関わるという事柄の性質、また米側との関係もございまして、お答えは差し控えさせていただきますけれども、一般論で申し上げますと、抑止政策に係る我が国の基本的な考え方として、主に二点を米政府に説明してきております。

 まず第一点でございますが、我が国は、日米安全保障条約がもたらす核抑止を含む抑止力を重要な柱として自国の安全を確保しており、この観点から、米国が保有する様々な核戦力と通常戦力の総和としての軍事力によって提供される抑止力について、その信頼性が維持されることを重視をしている。二番目に、これとともに、核兵器を含む軍備削減等の努力を重ね、核兵器を必要としない平和な国際社会をつくっていく、このことが重要であるということでございます。

 私も、米国の拡大抑止政策をめぐる議論につきましては、適時適切に報告を受けておるところでございます。

太委員 ありがとうございます。

 ちょっと最後、分かりづらかったんですが、この拡大抑止会議の報告をしっかりと適宜大臣は受けているということでよろしいでしょうか。ごめんなさい、もう一度、大事なポイントですので。

林国務大臣 この日米拡大抑止協議の場を含めた米国の拡大抑止政策をめぐる議論につきましては、適時適切に報告を受けております。

太委員 大臣、ありがとうございます。

 私は、このことは物すごい大事なことだと思っておりまして、というのも、この会議というのが、局内のナンバーツーの方たちですね、事務方会議ということで、我が方からは北米局の参事官、向こうもカウンターパートが出てくるということで、まさに事務方の協議だというふうに認識しておりまして、もちろん、しっかりと報告を受けているのであれば私はいいと思っているんですが、一方で、これまでの、防衛、外務だと思っております、大臣経験者の中で、なかなかどういった実態で運用されているかというのが実情がよく分からない、事務レベルで話し合っているのかもしれないが、実情はよく分からないというコメントが結構出ているんですね、メディアを通して。

 本日いらっしゃらないんですが、岡田先生、先日、党内の部会で様々お話をされた中で、二〇一〇年からスタートした中で、しっかりと報告されているかどうかというのは、私はそこはよく実態は分からないとおっしゃっていました。

 そういった意味で、大臣にしっかりと届いているのであればいいと思っております。

 さらに、ですけれども、やはりそれだけでは私は足りないと思っております。この問題というのは、米国がどう日本防衛のために核兵器を使用するかどうか、その意思決定に我が国がしっかりとコミットしていく、加わっていく、私はそこが最終的にはキーだと思っておりまして、そこまでいかないことには、これ、様々な不安があると思います。

 まず、私が先ほど伺った、ちゃんと核運用がなされているかどうか日米で協議されているか。というのは、これ、まさに米国から見捨てられる恐怖だと思うんですよ。それに対して、アメリカの方が様々性急に行動してしまって、逆に必要以上に攻撃してしまう、それによって我が国が巻き込まれる恐怖というのもあると思っているんですが。

 そういった意味で、これからでも、私としては、まさに日米間で有事の際の核運用に関して、この議論に政治家が加わるべきだと思っております。というのも、この日米拡大抑止協議を今の事務レベルから閣僚級に引き上げるべきだと思うんですが、この点に関しての大臣の御見解をお願いいたします。

林国務大臣 今委員からもお話がありましたように、我が国を取り巻く安全保障環境、また、現実に核兵器が存在しているということを踏まえますと、核抑止力を含む米国の拡大抑止は不可欠であり、米国と緊密に協議、協力していくことが重要であるということは言うまでもないことでございます。

 日米間は、そうした文脈において、今御議論いただきました日米拡大抑止協議の場を含めて様々なやり取りを行ってきております。これを閣僚級に上げるという御指摘でございますが、まさに、それを閣僚級に上げると、2プラス2になるわけでございます。

 まさに、この一月の日米2プラス2においても、閣僚レベルで日米両国が、米国の拡大抑止が信頼に基づき、強靱なものであり続けるということを確保することの決定的な重要性を2プラス2において確認をしたところでございます。

 いずれにいたしましても、重要な御指摘をいただいておりますので、引き続き、米国の拡大抑止の信頼性の維持強化に向けまして、日米間でしっかりと協議を行っていきたいと考えております。

太委員 大臣、ありがとうございます。

 お伺いしたいんですが、ちょっとごめんなさい、これは質問、事前通告していないんですが、それじゃ、2プラス2では、核をめぐる運用に関する話まで、しっかりとそこは政治家同士でできるのかどうか、そこは教えていただくことはできるんでしょうか。お願いいたします。

金井政府参考人 お答え申し上げます。

 事実関係でございますので、私から御答弁申し上げます。

 拡大抑止協議等々で行われております日米の緊密な、核抑止政策を含む様々な安全保障に関わる事柄を緊密に協議させていただいておりますけれども、まさに我が国の安全保障に関わる事柄の性質もございますし、また、米国との関係もございますので、詳細にお答えを申し上げることは差し控えたいと存じますけれども、先ほど大臣からも御答弁ございましたとおり、この一月の2プラス2の場で、まさに、アメリカの拡大抑止が信頼できるもの、強靱なもの、こういうことであり続けることを確保するということについて四人の閣僚の方々が意見交換をされた結果、先ほど御紹介させていただいたような共同声明が出されているわけでございます。

 議論の詳細は、大変申し訳ございません、差し控えさせていただきますけれども、日米双方の間で非常に緊密な意見交換が行われているということを御報告申し上げます。

太委員 ありがとうございます。

 もちろん、出せないところは当然あってしかるべきだと思っておりますが、今、様々国民的な不安が高まっていると思っておりますので、是非とも政治家から、政治の側から、政府からももちろん、しっかりとここは説明していただきたいと思っておりますし、岸田総理が自民党総裁になられる前に、これは御著書でも言っていますが、日米拡大抑止協議、これは運用を実際に話し合うところだと思っていますので、総理も以前、閣僚級にしっかりと上げるべきだ、そういった提言をされていますが、私はそこを、2プラス2ももちろん大事です、運用も含めて、そこを確保していくということをやっていただきたいと思っております。

 先ほどちょっと冒頭言いましたが、大臣にもう一つお伺いしたいのが、やはり意思決定というのが大事だと思っておりまして、我が国として、しっかりとノーと言える、そういった権利を含めた、米国が日本防衛のために核兵器を使用する意思決定に我が国が関与すること、これは想定しているのかどうか、現時点での御返答をお願いいたします。

林国務大臣 これは繰り返しになるかもしれませんが、日米間では、同盟の抑止力、対処力強化に向けた様々な取組について、様々なレベルで日頃から緊密かつ幅広く意見交換を行っております。

 この日米拡大抑止協議では、米国が提供する抑止力の信頼性が維持されることが重要であるということを我が国から説明してきておりまして、双方向の緊密なやり取りが行われております。

 この一月の日米2プラス2においても、今事務方から答弁がありましたように、米国の拡大抑止が信頼でき、強靱なものであり続けることを確保することの決定的な重要性を確認している。同時に、米国は、核を含むあらゆる種類の能力を用いた、日米安全保障条約の下での日本の防衛に対する揺るぎないコミットメントを説明をしております。

 さらに、日米は、二〇一五年の四月の日米ガイドラインに従いまして、同ガイドラインに記載された同盟調整メカニズムを通じまして、平時から緊急事態までのあらゆる段階における自衛隊と米軍の活動に係る政策面そして運用面の調整を強化するために様々なレベルで緊密に連携することとしております。

 こうした点も踏まえて、今後とも、日米拡大抑止協議の場も含めてあらゆるやり取りを通じて、日米同盟の深化を不断に進めてまいりたいと考えております。

太委員 時間が過ぎてしまいました。大臣、詳しく教えていただきまして、ありがとうございました。

 どうか、引き続きこの問題、核の傘の問題ですね、しっかりとこの関係を強化しながら進めていただきますようお願い申し上げまして、私からの質疑といたします。

 どうもありがとうございます。

城内委員長 次に、和田有一朗君。

和田(有)委員 大臣には、本当に大変な激務の中での委員会への御出席、御苦労さまでございます。

 ほかの先生方も言っておられたように、私も先週もこの場でも、随分、あっちに行き、こっちに行き、大変ですねということを冒頭に述べたら、また今回も、あしたからですかね、ベルギーへ行かれる。ほとんど007のような、今日はロンドン、あしたはどこそこみたいな世界で、是非ともお体を大事になさって、国のために働いていただきたいと思います。

 実は、通告はしていないんですが、一点ちょっと大臣の御感想をいただきたいことがありまして、大臣、ワルシャワに入られたときに、無名戦士の墓に花を手向けられました。ポーランドというのは、ヨーロッパの大国でありながら、大変歴史の中で苦しい時代を歩んできた国でありまして、その独立への思いとか国を守るということに関しても非常に強い意思をお持ちの国民の方が多いと私は承っておるんですが、その中で無名戦士の墓に花を手向けられたことについて何か御感想がありましたら、最初にお聞かせいただけますでしょうか。

林国務大臣 ポーランドに着きまして、やはりまずこの無名戦士の墓に参らなければならないということで、中谷補佐官また津島副大臣共々献花をさせていただきました。

 儀仗を受けました。雪が舞い散る寒い中でございましたが、若い兵士が、私も防衛大臣のときの経験を思い出して、しっかり一人一人の儀仗をやっていらっしゃる兵士の皆様と目と目を合わせるように努めたところでございまして、心なしか、隣国でああいう状況が起きておりますので、非常な決意にみなぎる、まなじりを決したと言うと言い過ぎかもしれませんが、そういう姿を目にしてきたわけでございます。

 その後、蜂起博物館というのがございまして、これが、国民がいかにして、今委員がおっしゃったように、これまで苦難の道をたどってきた、しかし団結して戦ってきたかという展示がございまして、短い動画もございましたけれども、やはり第二次大戦でかなり廃墟に近い状況になったところのワルシャワの、多分航空写真だと思うんですが、全域をずっと見せて、この状況から今のワルシャワまで立ち上がったんだというようなことを示すものでございました。

 私はポーランド語はできませんが、この博物館のシンボルがありまして、PWと書いております。これはポルスカ・バルチェンシャというそうですが、戦うポーランド人、こういう意味だそうでございまして、このことは私も要人との会見のときにこちらから申し上げて、非常に向こうも喜んでいただきましたけれども、そういう精神が国の中にしっかりとあって、そういう中で、今回、ウクライナからのたくさんの皆様も受け入れているというのも、その根底にそういうものが歴史としてしっかりあるということを感じさせていただいたところでございます。

    〔委員長退席、辻委員長代理着席〕

和田(有)委員 委員長に向いたら委員長でなかったので、びっくりしてしまいました。委員長じゃないとはおかしな言い方ですけれども、済みません、お顔が替わっていたので、どきっとしました。

 本当にいい御活動をなさっておられると思います。今、私たちも、やはり彼らを見て、しっかりともう一度背筋を伸ばさなきゃいけないなと私は思った次第でございます。

 それで、今日は、旅券法の改正案というのが出ておりますので、まずそのことをお聞きします。

 今回の旅券法の改正の中で、電子申請の導入というものが取り入れられるということですが、旅券のシステムにある個人情報の保護を含めたサイバーセキュリティーはどうなっているのか。今、サイバーテロであったりネット犯罪であったり、そういうものが私たちの日常生活にあふれている中でこういうことをする中で、どのようにサイバーセキュリティーを確保していくのかということをまずお伺いいたします。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 電子申請に係る個人情報を取り扱うシステムの整備につきましては、デジタル手続法第五条第二項の規定に基づきまして、情報システムの安全性及び信頼性を確保することとしてございます。

 具体的には、申請者の申請情報につきましては外務省が管理する旅券発給管理システムに保存されますけれども、旅券事務所等においては、旅券発給管理システムにアクセスして申請情報の閲覧が可能であるものの、端末には申請情報は保存されない仕組みとなってございます。また、申請者側の端末やネットワークにおきましても、基本的に申請情報が残らないような仕組みとなってございます。

 申請情報を記録する旅券発給管理システムあるいは連携するネットワーク等におきましては、ファイアウォール等、十分なセキュリティー対策を講じているところでございます。

和田(有)委員 しっかりやってください。全ての委員の方は、今日はこの点を、旅券法のことを聞きますので、私はこれで終わって、次の段階に参ります。

 ここからは、一ミリも動いていない話を私は今日は聞きたいと思うんです。去年の本会議の代表質問でも我が党の馬場当時幹事長が聞かれたわけですけれども、尖閣関係の領土問題について伺ってまいります。

 今、尖閣の魚釣島に標柱を立てよう、立てたい、こういうふうに石垣市の行政の皆さんが思いを持っておられます。ところが、全くこれが実現しない。なぜ実現しないのか。去年の我が党の、今は代表ですが、昨年の馬場幹事長もこの点を本会議で総理にお聞きしたわけですが、それから今に至っても全く状況は変わらない。なぜ、標柱は設置できないのでありましょうか。

阿部政府参考人 お答えいたします。

 石垣市からの尖閣諸島への行政標柱の設置のための上陸申請につきましては、字名変更を理由としていることから、内閣官房の総合調整によりまして、地方自治法に基づく字名変更を所掌します総務省が窓口となり、昨年九月に政府の検討結果をお伝えしてございます。

 政府としましては、尖閣諸島及び周辺海域の安定的な維持管理という目的のため、原則として、政府関係者を除き何人も尖閣諸島への上陸を認めないとの方針を取ってございます。

 石垣市からの申請につきましては、政府方針を踏まえつつ、地方自治法に基づきます字名変更は、告示により効力が既に生じていること、行政標柱の設置まで求めている手続ではないことを総合的に勘案した結果、政府として、上陸を認めないとの結論になってございます。

和田(有)委員 結局、法律で認めないのではないんですね。今のをお聞きしていても、政府の方針として上陸させない、こういうことなんです。ということは、政治決断ができないということなんです。

 これも、昨年の十二月の議会ですかね、石垣市の市議会でも、この標柱を設置するための意見書というのを、石垣市の市議会も意見書として可決をされておられます。

 要は、国民的な意思として、地元の意思として、政治的に判断をしてほしいと皆さんは思っているわけですね。多くの心ある国民も、なぜできないんだ、法律的にできないんじゃないならば、政治が責任を持ってやるべきではないかというふうに思う方が多いと思うんです。その点について、いかがお考えになりますでしょうか。

    〔辻委員長代理退席、委員長着席〕

林国務大臣 今総務省からも答弁がございましたが、石垣市議会からは意見書が接到しておりまして、地方議会の声として受け止めたいと考えております。

 その上で、政府といたしましては、尖閣諸島及び周辺海域の安定的な維持管理という目的のため、原則として、政府関係者を除き何人も尖閣諸島への上陸を認めない、こういう方針を取っているところでございます。

 尖閣諸島が我が国固有の領土であるということは歴史的にも国際法上も疑いがなく、現に我が国はこれを有効に支配しているということでございます。このことは、行政標柱を設置するか否かにより変わるものではないということでございます。

 尖閣諸島及び周辺海域を安定的に維持管理するための具体的な方策については、様々な選択肢がありまして、また、様々な議論があると承知をしておりますが、実際にどのような方策を取るのかにつきましては、戦略的な観点から判断をしていくべきものと考えておるところでございます。

和田(有)委員 去年の馬場当時の幹事長に対するお答えとほとんど変わらないわけです。

 要するに、戦略的観点から見たときに、標柱設置が今必要なのかどうか、余りそういうのと関係ないだろう、こういうふうな考え方に立っているんですけれども、やはり、議論はあるとおっしゃいましたけれども、どう考えたって、標柱を立てるということは象徴的な事例でありますし、そして日本の意思を海外に示すということになると思うんですね、私は。

 一ミリも動いていないと言いましたが、私、実は、前にも言いかけて、もう時間がなくてやめたことがありましたが、ちょうど今から十年前です、十年前の夏に、私は魚釣島に上陸をさせていただきました。当時は兵庫県の県会議員でした。あれは、国会議員だったら行けなかったと思います。でも、私は上陸をしました。

 あのときは非常に、はっきり言って、我々がその島に上がっていても、ここは日本の国土だと感じられるような雰囲気があったんですよ。上をP3Cが飛んでいくし、沖合には海保の船が遊よくしているし、ここは日本だな、やはり我々は日本の領土にいるなというのは、少なくとも私は実感しました。

 でも、最近のいろいろな報道や現地の方のお話を聞いていると、もはやそんな状況じゃないですよと。いろいろな情報があって、皆さん方は違う判断をされている方もおられるかも分からないですけれども、もうとても、これが日本の実効支配が及んで、これは外務委員会で表現するのにいいかどうか分かりませんけれども、現実の話ですよ、そういう声があるんです、実効支配が及んでいるとは思えないんじゃないかと。だから、それを崩してはならないから行かせないんだというふうに思われる方もいらっしゃる。

 やはり、そうやって我々は、我が方はずっと、緊張を高めてはいけない、緊張を高めると抑止力が下がる、逆に違った話になってしまうということで、ずっと後ろを向いて中国と向き合ってきたから、こんなことになっているんだと私は思うんです。その行き着く先が、最後は、台湾有事であったり、力による状況の変更であったり、そういうことにやはりなっていくんじゃないか。

 何度もこの外務委員会で申し上げていますが、そろそろ、そこら辺、考え方を変えた、戦略的なという言葉が出るんですから、違う戦略を持って領土問題にも当たる、中国に対しても当たるという、向き方を変えるという時期が来ていると私は思いますが、もう一回、大臣、いかがでしょうか、そこら辺。

林国務大臣 尖閣諸島をめぐる情勢につきましては、昨年十一月の外相電話会談におきまして、私から王毅国務委員にも直接懸念を伝えたところでございます。

 また、中国の力による一方的な現状変更の試みにつきましては、国際社会において様々な形で懸念の声が上がっておりまして、一月の日米2プラス2においても、尖閣諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも、引き続き日米が結束して反対することで一致をしたところでございます。

 今後とも、引き続き、日本の領土、領海、領空を断固として守り抜く、こうした方針の下で冷静かつ毅然と対応してまいります。

 このように、日中両国間には、尖閣諸島を取り巻く情勢を含めて、隣国であるがゆえに様々な懸案もあるわけでございます。中国に対しては、主張すべきは主張し、責任ある行動を求めつつ、共通の諸課題については協力するという建設的かつ安定的な日中関係を構築していく、このことが重要であるというふうに考えております。

和田(有)委員 何度お聞きしても、現段階では日本国政府の対中姿勢というのはこういう感じであることはここでもう一回分かったわけですけれども、我々、御先祖様から始まって、聖徳太子の時代から、いかに大陸と向き合うかに私たちの先輩たちは腐心をしてきたわけですね。その中で、どうやって自国を守り、元寇のときの北条執権もそうです、どうやって私たちはこの国を大陸と向き合って守っていくかということに非常に腐心をしてきて、今私たちはここで平和に独立してあるわけですから、しっかりと臨んでいただきたい、このように思います。

 もう一つ、一ミリも動いていない話をさせていただきたいんです、今日は。拉致問題の話でございます。

 ここでちょっと細かい話を今日は聞くんですけれども、兵庫県警と警視庁が捜査に基づいて認定をしている拉致事件というのがあります。いわゆる国の、政府の拉致被害者として認定されるのではない。埼玉県の渡辺秀子さんという方のお子さん二人が連れ去られている。この方々、複雑なと言ったのは、この渡辺秀子さんという方の夫に当たる人が実は北朝鮮の工作員であった、それで逃げちゃった。その後、子供たちも拉致された。このお子さんたちが日本国籍を有していなかったということなんですね。

 そういう中で、この二人のきょうだいの拉致認定も進まず、いろんな形での支援というような形というものがなかなか取られていないんですが、これについて、なぜ拉致認定がなされていないのかということをもう一度改めてお聞きをして、どういう状況にあるのかというのをお聞きしたいと思います。

宮路大臣政務官 北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律第二条第一項第一号においては、「被害者」を「北朝鮮当局によって拉致された日本国民として内閣総理大臣が認定した者」と規定しております。

 高姉弟については、日本国籍を有していないため、被害者として認定はしておりません。

和田(有)委員 そうですね。日本国民でないから、できないんです。となると、これを、やはりこういったはざまに落ちてしまったような人を救うためには、何らかの対処が必要だと私は思うんですね。

 そこで、例えばの話、この法律の文言の中で日本国民に限っている部分を変えるとか、あるいは、その家族もとかそういう言葉を入れるとか、そういう法改正というものが私はやはり必要ではないかと思います。そのことを例えば埼玉県議会なんかでも意見書として今回上げられております。そういったことについて、どうお考えになりますでしょうか。

宮路大臣政務官 御指摘のような意見書等が出されておることについては承知をしております。

 北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律は議員立法により成立したものであり、その後の二回の改正についても議員立法で行われたところでございまして、そうした中で政府として考えてまいりたいと思います。

和田(有)委員 議員立法でというお言葉がそちらからあったわけですけれども、政府としてもやはりしっかりとそこら辺は考えていただきたい、こういうふうに要請しておきます。

 もう一点、若干、次の杉本先生が、いいよ、もうちょっと時間、いいよと言ってくださいましたので、お言葉に甘えまして、もう数分だけこの拉致の関係をお聞きしたいと思うんですね。

 何かといいましたら、北朝鮮に連れていかれたというか、朝鮮にとどめ置かれたアメリカ系の方がおられます。キム・ドンチョルという方ですね。この方が、実は、あれはトランプさんのときだったと思います、救出というかして、アメリカに帰ったんだと思うんですけれども、このキム・ドンチョルという人が、実はいろいろなところで、拉致された日本人に会ったとか、こういう話を向こうで聞いたとか、そういう非常に精度の高い情報を持って帰っておられる。

 このドンチョル・キムですか、この方の情報というものを当局はしっかりと把握しているんだろうか、そして精査をしているのかということをお聞きします。

宮路大臣政務官 政府といたしましては、各種の情報について、平素からその収集、分析に努めておりますが、今後の活動に支障を来すおそれがあることから、その具体的な内容についてはお答えを差し控えさせていただきます。

 いずれにせよ、政府としては、全ての拉致被害者の一日も早い帰国実現に向け、あらゆるチャンスを逃すことなく、全力で行動してまいります。

和田(有)委員 全力でと言われたし、そして岸田総理も、絶えず、これは内閣の最重要課題だ、こう言われるんですが、果たして本当に最重要課題としての取組をしているんだろうか。去年、馬場当時幹事長が聞いてからも、こういった、このキム・ドンチョルの話じゃないですけれども、拉致問題にしても、何一つ進んでいない。一ミリも進んでいない。

 さっきの領土問題もそうです。どんどん国際状況の中では、私は、何か状況としてはいい方向に進んだとは思えないんですね。それはやはり、政治の姿勢が問われているんじゃないかと私は思うんです。

 この拉致された方々も、それは、いろいろな集会に行って、皆さん、もう時間がないと言われる。それを皆さんがお聞きして、最重要課題と言われる。しかし、何か手を打ちましたか、何かしましたか。何にもしていないと思うんですね、私。いや、しているよというのなら、ここで答弁があってもしかりなんですよ。ところが、ない。そういったことを私は大変いかがなものかと思いますので、最後にもう一度、大臣、この拉致問題について外務大臣として何かお考えがありましたら、コメントがあればお願いします。

林国務大臣 岸田総理が常々おっしゃっておられますように、これは内閣の、政権の最重要課題であると私も認識をしております。

 今委員からも触れていただきましたように、被害者の御家族も御高齢となる中で、拉致問題の解決に一切、一刻の猶予もないということでございます。

 総理自身、金正恩委員長と直接向き合う決意を示しておられるところでございまして、拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、政府一丸となって全力を尽くしてまいりたいというふうに考えております。

 私も外務大臣として、あらゆる機会を捉えて拉致問題に関する日本の立場を説明し、多くの国から支持と理解を得てきたところでございますが、今後とも、早期解決に向けて、あらゆるチャンスをしっかりと捉えていきたいと考えております。

和田(有)委員 今日はもうこれで終わりますけれども、本当の意味で最重要課題としての取組をやっていただきたい。これは中国との向き合い方も同じ。一ミリも進んでいない。一つ前に進めていただきたいということを申し上げて、終わります。

 以上です。

城内委員長 次に、杉本和巳君。

杉本委員 維新の杉本でございます。

 余り時間がないので、端的に、旅券法の一部を改正する法律案について、今日は附帯決議も提起させていただきますので、そのことに関わる質問をまずさせていただきます。

 問題意識として、今回、旅券が電子化していくという流れの中にあって、まず伺いたいのが、旅券の査証の現在のページ数、そして、もし法案が通った後、予定されているページ数を伺いたいのと、それと併せて、ページを増やすことができることについての可能性は持ったものなのか、持たない改正なのか、この辺りを伺えればと思います。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、我が国の十年有効旅券の査証欄のページ数は四十五ページでございます。今回の旅券法の改正に合わせて旅券の査証欄のページ数を変更する予定はございませんが、現在のページ数というのは主要国の中でも多いものというふうに承知してございます。

 査証欄のページ数を増やすためには、機材の仕様変更、あるいは旅券システムの改修等のための予算、あるいはそういった作業が生じますところ、費用対効果を慎重に検討する必要があるというふうに考えてございます。

 外務省といたしましては、査証欄に余白がなくなって新たな一般旅券の発行を必要とするケースを最少化すべく、査証欄への押印が不要な顔認証ゲート、これの各国における導入を促進するための取組などを進めてまいりたいというふうに考えてございます。

杉本委員 四十五ページが四十五ページと、変わらないというお答えになりました。ただ、顔認証ゲートとか、もっともっと進めていきますよということで、おかげさまで私も顔認証ゲートを通ることが非常に多く、逆に、スタンプを押していただく機会はかなり減っているという感じなんですが。

 私の親しい、よく海外に行かれる方なんかは、これがちょっと事実かどうかは定かじゃないんですが、発行していただく際に、最初からページ数を多く発行していただくようなことをしていることがあったやに聞いていて、それはちょっと定かじゃなくて申し訳ないんですけれども。

 そもそも、顔認証を進めていくというのは大いに進めるべきであって、そこは全く同意しているんですけれども、一方で、やはり、使う、ユーザー側の視点に立つと、外務省さんがもうちょっと御配慮いただけないものなのかなというふうに感じるのが、この四十五ページという選択だけではなくて、例えば、七十ページ、六十ページ、百ページ、度々行く人もいるかもしれないし、やはり証拠を残さなきゃいけない事実もあるかもしれないので、スタンプを押される。

 一方で、例えば私の知り合いで、余り海外に行かない、それこそパスポートは五人に一人しか持っていないという、先ほど伺ってびっくりしたような状況もあるわけで、そういった方は、そんな四十五ページも要らないかもしれないというのが現実かと思うので、今回の法改正には、顔認証ゲートを進めるということを主な答えとして、なかなか選択肢はあり得ないのかもしれないんですが、是非、附帯でも申し上げるかもしれないんですけれども、ページ数選択制みたいな、そういった利便性を提供していくというのを。

 外務省の立場というのは分かるんだけれども、やはりユーザー目線がちょっと足らないような気が、そこかしこにちょっと感じる。正直、ウクライナから避難してくる方々についてもそうなんですけれども。

 事この旅券について、そういう選択制を考え得ないという答えになるのかもしれないんですけれども、得る方向で検討できないかどうか、お答えいただければと思います。

安藤政府参考人 委員御指摘の点につきましてですけれども、先ほど申し上げましたように、査証欄のページ数の異なる旅券を発行するためには、機材の仕様変更、あるいは旅券システムの改修等のための予算、作業が生じるということでございますので、費用対効果を慎重に検討する必要があると考えてございます。

 委員も御指摘になりましたように、現在、出入国スタンプの押印が不必要となる顔認証ゲートというのが先進国を中心に導入されてございます。我が国におきましても、平成二十九年度以降、顔認証ゲートの導入が進められておりまして、出入国に際して査証欄を使用する機会は減少していると考えております。

 先ほども申し上げましたけれども、このような顔認証ゲートの各国における導入の促進につきまして、出入国在留管理庁を始めとする関係省庁とも連携しつつ、国際民間航空機関、ICAOの会合等の場も含めて諸外国に対して働きかけを行うなど、積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

杉本委員 ちょっと、ほかの方も質問をして、重複になるかもしれないんですが、御発言が、何度か答弁があって、ICAOの勧告があった、信頼性を確保していかなきゃいけない、セキュリティーの問題をしっかりやっていかなきゃいけない、こういう問題意識があると思うんです。

 昨年九月一日に、前総理の菅総理の肝煎りだったかと思うんですが、デジタル庁ができ上がったという事実がございます。それで、本当に素人目に感じるところは、ユーザー目線という感じからいくと、ワンストップサービスという言葉はよく聞くんですけれども、本当にそうなっているかという方向感を、今回のIDに近いパスポートというものが、デジタル庁とどのような連携がきちっとできているのか、できていないのか、セキュリティーの問題も含めて、デジタル庁との情報交換、会議の持ち方、そんなところで我々の納得できるような答えがあるかどうか、確認させてください。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省といたしましても、申請者の利便性向上の観点から、緊密にデジタル庁と連携しつつ、旅券の発給の申請手続等の電子化につきましては、他の行政手続などと同様に、マイナポータルを活用して実施する予定でございます。

 国内におきましては、令和四年度中にマイナポータル上での電子申請を可能とすることを目指しております。また、国外におきましては、マイナンバーカードの国外継続利用が開始される令和六年度以降、国内と同様にマイナポータル上での電子申請が可能となる見込みでございます。

 デジタル庁とは引き続き緊密に連携して行ってまいりたいというふうに考えてございます。

杉本委員 ありがとうございます。

 政府参考人から、安藤さんからお答えは大体いただいたので、林大臣、戻ってこられて、NATOの会議であり、G7でありということで、二十人連れて帰ってきていただいたのは本当にありがたく存じます。

 それで、一応、この法案のために一生懸命帰ってきてくださったというたてつけで理解しておりますので、大臣から、旅券法の一部を改正する法律と東日本震災旅券特例廃止法、この二法案についての審議ですけれども、殊にこの旅券法の改正について、国民目線から見た利便性の向上、あるいはデジタル庁との関連でいくところの行政の効率化、こういった点で大臣の御見解を確認させていただきたいと思います。お願いします。

林国務大臣 ありがとうございます。

 今回の旅券法改正による旅券の発給の電子申請の導入を通じまして、申請者の利便性に関しましては、発給の申請手続等をマイナポータル上で行えるようになります。また、切替え申請を行うに当たり、出頭が原則として不要となるということでございます。また、行政の効率化ということに関して申し上げますと、マイナンバーカードに記録されている申請者に関する情報を活用することで、審査に係る事務の効率化を図ることができると考えております。

 外務省としては、デジタル庁と緊密に連携しながらこうした取組を進めながら、引き続き、旅券の発給等の申請者である国民の皆様の利便性の向上と、そして行政事務の効率化に積極的に取り組んでいきたいと考えております。

杉本委員 将来総理になられる林さんが言っていただいたので、言葉で、さっき九年前の岸田さんのお話もありましたけれども、何か、口では約束したんだけれども、実際は動いていないというような、そういう総理にならないでほしい。別に批判していないですよ、岸田さんを。ただ、林さんには大いなる期待をしているということを、今の御答弁を聞きながら申し上げさせていただきます。

 そこで、ちょっとウクライナ問題。

 大臣、博識だからもう知っていると思うんですが、あえて申し上げますが、領土について、ロシアのニコライ一世の言葉というのをちょっとこの機会に皆さんと共有しておきたいんですけれども、ロシアの考え方を示すものとして、括弧書きで、一度ロシアの国旗が掲げられた土地においては、それが決して降ろされてはならない、括弧閉じというニコライ一世の言葉。ニコライ一世、一七九六年から一八五五年。ニコライ一世、在位期間三十年、一八二五年から五五年。という言葉がございます。

 このニコライ一世の言葉、そして、プーチン氏は、レーニンを否定したりされていて、いわゆる共産主義というものは否定している中で、まさしく、このニコライ一世の帝国主義というんですか、そういう考え方を復活させんとして今日に至っているという気がしてなりません。

 そんな意味から、ちょっと今日はブダペスト覚書とホロドモール、飢饉なのか虐殺なのかについてだけ、もう時間がないんですけれども、確認をさせていただきたいと思います。

 もう一つだけ言っておくと、レザノフというのが、ペリーの来航の五十年ぐらい前に、一度、日本遠征計画というのを立ててあったということで、北海道を破壊し、日本の漁業を壊滅させ、日本の沿岸航路を妨害しみたいな、まずその前に樺太があるんですけれども、そういったレザノフの日本遠征計画というのも過去あったということなので、我々は、このウクライナの事案、本当に申し訳なく、悲しく思っていますけれども、このことが本当に他人事ではなくて、西の事件は東に起こるという認識ぐらいを持たないと、我が国の独立は守れないという意識を持っております。

 そこで、これは一つ飛ばしちゃおうかな、時間が多分なくなるので。ブダペスト覚書というのがあって、これは覚書だったので、法的な条約とかの位置づけとはちょっと重要度が違う、低いというような御見解をちょっと外務省からいただく予定だったんですが。

 それで、このブダペスト覚書というのがあることによって核を放棄したウクライナであり、ベラルーシであり、カザフスタンという国があったということですが、これは、ウクライナを離れて、一般論として大和防衛政策局次長に教えていただきたいというか御見解を伺いたいんですけれども、いわゆる核を持たないことによる抑止力の低下というのが、このウクライナではなくて、例えばカザフスタンやベラルーシにも、ベラルーシは仲よしだから今大丈夫かもしれないけれども、仲が悪くなったら危ないですね、分からない。

 そういった意味で、核を持たないことによる抑止力の低下認識を、防衛上どう認識したらいいのかというのを一般論で答えていただければと思います。

大和政府参考人 御質問ありがとうございます。

 核兵器のもたらす抑止力ということについて、一般的に申し上げたいと思います。

 一般に、核抑止とは、核兵器の存在によりもたらされる抑止のことを指すというふうに理解をしておりますが、言うまでもなく、我が国は唯一の戦争被爆国として、核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずという非核三原則を堅持しておりまして、我が国が核兵器を保有することはありません。

 その上で申し上げますが、我が国を取り巻く安全保障環境や、この世界に現実に核兵器が存在しているということを踏まえれば、我が国が安全を確保するためには、我が国自身の防衛力に加えて、米軍の核戦力や通常戦力を含めた米国の拡大抑止が不可欠であります。

 このため、我が国は、自らの防衛力を抜本的に強化するとともに、日米安保体制の下で、米国の拡大抑止の信頼性の維持強化のため、米国と引き続き緊密に協力してまいります。

杉本委員 拡大抑止、大事だと思いますので、2プラス2も、本当の意味での議論を、太さんも提案していましたけれども、引き続きお願いしておきたいと思います。

 最後に、ホロドモールの、飢饉というか虐殺という認識で、キエフをキーウという呼び方に変えていただいたというのは、自民党の方々の大いなる活動があったのかもしれないんですが、感謝申し上げたく存じますし、ウクライナの政府もおっしゃっていましたが、そのキーウにホロドモール博物館というのがある。ここは飢饉なのか虐殺なのか分からないですが、虐殺という認識をしている国が、ウクライナ、当事国を含めて十七か国あるということの中で、日本国はこのホロドモールのことが飢饉なのか虐殺なのか、どういう認識を持っているのか。

 例えば、リトアニアにはKGBジェノサイド博物館というのもあるようでございます。今回の四百十人亡くなった事案がありました、ブチャの件。ボロディアンカはもっといるんじゃないかというゼレンスキー大統領の発言もありましたけれども。

 本当に信じられないような行為が行われているというのは過去からもあったということなのかもしれないので、外務省の見解を外務大臣にあえて伺いますが、このホロドモールについてどういう認識なのかを、外務省としての御見解を確認させてください。お願いします。

林国務大臣 ソ連邦下で始まった農業集団化により、ウクライナでは一九三二年から三三年に、何百万人とも言われる餓死者が発生する大飢饉、いわゆるホロドモールが発生した、こういうふうに承知をしております。

 日本としては、他国で発生した歴史上の事件について評価する立場にはございませんが、こうした悲劇が二度と繰り返されてはならないと考えております。

 いずれにいたしましても、我が国としては、主権と領土、そして祖国と家族を守ろうと懸命に行動するウクライナの国民と共にあると考えております。ウクライナに対する支援、避難民の受入れ等によりまして、ウクライナを強力にバックアップしてまいりたいと考えております。

杉本委員 NATO外相会合、G7、また頑張っていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

城内委員長 次に、鈴木敦君。

鈴木(敦)委員 国民民主党の鈴木敦でございます。

 いつもありがとうございます。大臣、大変お疲れさまでございます。

 大臣から、ポーランド視察を受けての御報告をいただきました。その中で、ウクライナの小麦のお話を出していただきました。確かに、燃料は恐らく確保できないという状況もありますし、農機具だけでなく、人足も足りないという状況があると思います。そして、これから小麦の価格がどんどん高騰していくんじゃないかというふうに市場でも言われていますが、ここでもう一点、私がサラリーマンといいますか一般の会社員として働いていたときに大変力強い味方になってくれて、そして今でも私の大好きな食べ物であるおそばの話をしたいと思います。

 今、日本で作られている、駅のおそば屋さん、ほとんど小麦を使っております。そして、最も大事なことは、ソバの実というのは、今、七割とかそれぐらいがロシア産なんですね。世界の生産のトップは長野県ではなくて、ロシアなんです。ですから、これから先、そばの価格が六月に実は上がってしまうということもあり、これから先も上がっていく可能性がありまして、おそばというのは、駅で簡単に食べられて、朝一で食べられて、そしてスピーディーに食べられる。国会の中にもありますけれども、頼んだらすぐ出てきて十分で食べられるぐらい、非常にいい食べ物です。なので、働く仲間として、おそばが高くなってしまうと非常に困ってしまう。

 なので、小麦の価格、もちろん高騰すると思いますし、ソバの実も高くなっていくということも想定して、外務省としても情報収集をしていただいて、それで経済産業省なり様々な所管の部署に共有をしていただきたい。これはまさに政府一丸となって対応していただきたいというのを冒頭申し上げたいと思います。

 これを申し上げた上で、法案の話に移りますけれども、徳永委員から、旅券は世界最強だというお言葉がありました。確かに、我が国の旅券を持っていれば、査証なしで様々な国に入ることが、地域にも入ることができます。ただ、これは、査証というのはどういうものかということを考えると、外国から見て自国の害にならない国家だという認識をされている、つまり、日本は非常に安全で安定した国であるという高評価をいただいているということになります。であれば、日本が外国に行っても害にはなりませんよと。

 私は本当に深く思いますけれども、七十七年たって、この国の先輩たちが築き上げてきた世界に対する信頼というのは非常に重いものであるし、これからを生きていく私たちがその資産をどう運用していくかを深く考えなきゃいけないと思いますので、ここで大臣に、もう皆さんがおっしゃっていますけれども、世界最強の旅券と言われている私たち日本の旅券を使って、外交戦略の今後の展望を是非伺いたいと思います。

林国務大臣 英国の調査会社の発表でございますが、我が国の旅券が、事前に査証を取得することなく渡航できる国や地域、百九十二であり、この調査の対象国の中で最も多いと承知をしております。

 今委員からもおっしゃっていただきましたように、これは我が国の旅券に対する信頼性の高さを示すものであると考えられ、私としても、日本や日本人に対する信頼と期待の表れであろうと受け止めております。

 この信頼と期待というのは、これも触れていただきましたように、先人たちの努力によって、世界から日本が得てきたということであります。長い間をかけて得た信頼、得るときには非常に長い間かかると思いますけれども、失うのは本当に一瞬である、こういうふうに考えておるわけでございます。

 そうした信頼を基礎として、三つの覚悟、すなわち、普遍的価値を守り抜く覚悟、そして日本の平和と安定を守り抜く覚悟、そして人類に貢献し国際社会を主導する覚悟、この三つを持って、対応力の高い、低重心の姿勢で、更なる日本外交のフロンティアを切り開いてまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。

 この三つの覚悟は旅券に対しては非常に重く関わってくるものだと思いますので、是非、引き続きよろしくお願いしたいと思いますが、そもそもこの旅券、世界最強だと私たちは認識していますが、国民の皆さんはどうかということになります。

 そもそも、旅券というのは国有財産ですね、国の財産です。そして、それを我々が、一般国民が持ち歩いて、国の保護を受けていますよという証明に使っているものです。ただ、一般の方々は、窓口に行って一万六千円で買っているという認識が非常に高いと思います。そうでないので、旅券に対して様々な、増補だったり、あるいは切替え手続だったりということで、政府としても様々な旅券を発行しているにもかかわらず、余り認識されていない。世界最強の国有財産を持ち歩いて、外国、どこにでも行ける国民だということを、皆さん、認識されていないと私は思います。

 なので、この旅券を受け取りに来ないということが、どういう理由で取りに来ないのか、様々あると思うんですが、まず冒頭、最初は、都道府県の旅券事務所の負担がどれだけ、増えてしまうという声が非常に多かったと思いますが、どんな負担が増えてしまっているのか具体的にお伺いしたいのと、また、今回の法改正で、料金を徴収しますけれども、どれだけその負担を吸収することができるのか、お伺いしたいと思います。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、申請した旅券を受領しない理由につきましては、渡航、旅行の中止、病気、入院、多忙、転居、転勤、感染症蔓延、経済的理由など多様でございますけれども、渡航、旅行中止など、大半が自己都合によるものであるというふうに承知してございます。

 このため、旅券の発給事務を行う都道府県や市町村の旅券事務所におきましては、発行された旅券を受領しない申請者に電話やはがきで催促するといった努力を行っていただいているというところでございます。

 今回の改正によりまして、これまで現実に旅券の作成のために一定の費用が生じていた中で、その費用を適切に徴収することができるようにする必要があるため、今回、改正法にそのための規定を盛り込むことといたしました。今回の法改正によって、旅券が未交付のまま失効する場合には、次に発給の申請をするときに失効した旅券の作成経費を徴収することを事前に周知することで、未交付失効を一層抑制することが可能になることが期待されます。

 定量的に申し上げることは困難でございますけれども、今回の改正によって、都道府県の事務負担の軽減にも資するのではないかというふうに考えてございます。

鈴木(敦)委員 旅券の新規発行、十年で一万六千円です。そして、その内訳をよくお考えいただきたいと思います。これは旅券ではありませんが、冊子を作るのに四千円ですね。そして、ICAOの拠出金ですとか、そういった様々な間接的な行政費が一万円、そして自治体に入るのは二千円ですよね。余り、お金を取ることによって、実費しかかかっていない、ほとんど。なので、事務負担増に対する効果というのは非常に薄いものと思いますけれども、その辺はいかがなんでしょうか。

安藤政府参考人 委員御指摘の点でございますけれども、先ほども申し上げましたとおり、今まで、旅券を受領しないという方々がいる中で、都道府県や市町村の旅券事務所において、そうした申請者に電話やはがきで催促するという努力を行っていただいているというところでございます。

 今回、未交付失効、旅券が未交付のまま失効する場合に、次は作成経費を徴収するということを事前に周知することで、未交付失効を一層抑制することが可能になるということでございますし、これによって、都道府県が今まで催促というのをやっている、電話やはがきでやっているわけでございますけれども、こうした催促というものの事務負担の軽減にもつながるものというふうに考えてございます。

鈴木(敦)委員 では、今後は電話もはがきもされないんですか。これをやめて、徴収するんだったら分かります。でも、電話もはがきも出すのに、今までと同じ対応をしているのにお金だけ吸収しても、事務負担、減でも増でもなくて、プラス・マイナス・ゼロになると思いますが、いかがですか。

安藤政府参考人 今後の対応につきましては、今回の法改正によって、今後、次の旅券を発給時に徴収するという中で、今後の制度設計につきましては、都道府県の旅券事務所ともよく相談しながら考えていきたいというふうに思っています。

鈴木(敦)委員 ですから、この話を立案する段階で、都道府県の負担増があるという実態を把握されて、それを軽減するために今回こういったものを盛り込んでいるのに、政令で定めますじゃなくて、何をするかが決まっていなかったら、こんな話が出てくるはずがないんです。

 是非、どういう話があってこの話が出てきたのか、お教えいただきたい。

安藤政府参考人 本件でございますけれども、現在、旅券は交付時に手数料を徴収しているということで、効力を失った一般旅券の申請者には交付の機会がないということから、現行法の下では、未交付のまま失効した旅券の発行経費を徴収することができていないという現実がございます。

 そういう中で、現実に旅券の作成のために一定の費用が生じているということから、これまで、都道府県の旅券作成事務所の方々におかれては、催促であったりといった形で事務負担をお願いしてきたところでございます。

 今回、これまで実際に未交付のままの旅券があったことを踏まえて、次回の発給の際には徴収するということにおきまして、未交付失効の旅券というのを可能な限り減少させていくというふうに考えてございます。

鈴木(敦)委員 だから、そうじゃない。それは、その仕組みはもう御説明は何度もいただいているんです。そうじゃなくて、今後、この事務負担増になっている部分をやるのか、やらないのかというところなんです。やるか、やらないかだけでいいんです。それをやるか、やらないかというので、都道府県が負担増になるのか、ならないのか、都道府県の人たちはそれを心配しているんですよ。お金はこれで入ってくるけれども、でも、やらなきゃいけないんでしょうだったら意味がないんです。

 だから、やるならやる、やらないならやらない、一言でお答えください。

安藤政府参考人 都道府県の関係者の方々と引き続き緊密に協議をしながら、今後の制度設計を考えていきたいというふうに思ってございます。

鈴木(敦)委員 そういうところを決めてから法律にしていただけませんか。

 今回触れませんでしたけれども、前回の旅券法の改正は平成二十五年でしたよね。それから十年間、後で触れますけれども、旅券法を改正してこなかった、改正するべきだったのに改正しなかった。これだけすごい長い期間やってきて、検討もしてやってきたのに、中身が何にも決まっていなくて、政令で決めますという生煮えの状態で法律にされても、それは非常に、運用、困ると思いますよ。それに、都道府県だって余り喜ばないと思う。

 なので、今後もこの話を出しますけれども、意味がないんだったら、法律にする意味もないわけですから、そこをお答えいただきたいと思います。

 余り長くやっても意味はないと思いますので、次に行きますけれども、では、どうしても受領できないという人たち、これは料金を徴収しないという基準ももちろんあると思いますが、その目安をお答えいただきたいのと、本当にどうしても、何にもできなくなって、実際に窓口に行くことができないという人たちに対する救済措置があるかどうか、お答えください。

安藤政府参考人 委員御指摘の点でございますけれども、現行法の下で、病気であったり、身体の障害など、真にやむを得ない理由によって申請者の出頭が困難な場合には、代理人による旅券の受領を認めるといった措置を講じているところでございます。

 その上で、なお、申請者が自己都合などによって交付のために出頭せず、旅券が未交付のまま失効した場合について、今回の改正により、その申請者が失効後五年以内に再度一般旅券の発給を申請した場合に、効力を失った一般旅券の発行経費を徴収するとしたものでございます。

鈴木(敦)委員 昨日私がレクで言ったことが入っていませんよね。私が、委員会では是非言ってくださいと言いました。紙には書かないでと言ったんです。周知徹底の紙には書かない方がいい、でも、委員会では言った方がいいと一つ言いましたよね。答弁が漏れていますから、お願いします。

安藤政府参考人 お答えいたします。

 いずれにいたしましても、外務省といたしましては、申請者がやむを得ない事情がある場合に、旅券が未交付のまま失効することがないよう、引き続き制度の周知をしていく考えでございます。

鈴木(敦)委員 じゃ、僕から言いますよ。

 どうしても、病気とか、天災とか、道路事情が悪かったら、送るという方法を書いていますよね、旅券法に。規定がありますよね。いざ、どうしようもなくなったとき、旅券を送付することができるという規定が入っていますよね。それを委員会では言ってくれと言いましたよ、私。ただ、紙に書くと、みんながみんなそれにするから、周知徹底はさせない方がいい。ただ、委員会では、この場でははっきり言った方がいいです、その仕組みがあって、救済措置もあるんだということは。どうですか。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 旅券法第八条第二項に規定がございまして、先ほど申し上げましたが、「病気、身体の障害、交通至難の事情その他の真にやむを得ない理由により申請者の出頭が困難であると認められ、かつ、当該申請者が人違いでないことが明らかであるときは、都道府県知事、外務大臣又は領事官は、外務省令で定めるところにより、当該申請者の出頭を求めることなく、当該申請者が確実に受領できると認められる最も適当な方法により一般旅券を交付することができる。」という規定でございます。

鈴木(敦)委員 それをこの委員会で皆さんに周知してくださいという意味で、ここで発言してくださいとお願いしたんです。

 最悪の場合、渡すことができるんです。ただ、郵送ではないんですね。都道府県の職員の方が渡しに行くので、やむを得ない場合。だから、件数がそんなにできないので、私は、周知徹底はしない方がいいですね、そういうふうにお話をしたんです。当たり前の話ですよね。

 だから、そういうシステムはあって、救済措置もしっかりあるんですよということだけは、是非御理解をみんなにしていただかなきゃいけなかったはずです。皆さんから言わなきゃいけなかったと思います。だから、こういうものがいろいろな法律でありますから、是非、今後もちょっと気をつけていただきたいと思います。

 ちょっと質問を一つ飛ばしますけれども、これは大臣にお伺いしたいと思うんですが、大臣の御地元も、そして私の地元も、昨今、大雨とか台風で水害が大量に発生をいたしておりました。この十年間、東日本の特例法以降、様々な天災が発生して、旅券が流される事案もたくさんあったんですが、それでもこの法律を改正せず、旅券法も改正せずでした。

 私の家の周りは全部浸水しましたけれども、幸い、私の旅券は無事でした。もしかしたら、大臣の御地元の近くにいる方は、旅券を流されちゃった方もいらっしゃるかもしれない。でも、その人たちにはこの特例が適用されなかったわけで、十年間、これを、何度も何度もこういうことがあったにもかかわらず、改正されなかった理由を御説明いただきたいと思います。

林国務大臣 東日本大震災による自宅の滅失、損壊等のために、震災発生当日に有効だった旅券を紛失して、一定の期間内に紛失の届出及び新たな旅券の発給の申請を行った方について、この震災特例旅券法の下で、紛失した旅券の残存有効期間を最長の有効期間とする震災特例旅券を国の手数料なしで発行してきたところでございます。

 この措置は、まさに旅券法の特例として初めて導入したものでございます。その後発生した、今委員からもお話がありました別の災害の事例も含めて、様々な要素を総合的に勘案した結果、大規模な災害が発生した際には同様の措置の必要性があると判断いたしまして、迅速に被災者に対する支援を実施できるように、大規模な災害の被災者について手数料の減免を行うための一般規定を新設する今回の旅券法改正に至ったものでございます。

 今後、発生した災害の規模や様態を含む様々な要素を総合的に勘案し、関係法令の規定に基づいて適切に運用してまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 ちょっと長くかかり過ぎましたが、これで、大規模な災害が起こっても一安心ができると思いますけれども、ただ、それだけではなくて、特例法のときには免除という規定でした。しかし、今回法改正される旅券法では減免になっています。減額という規定が入っているんですね。

 旅券が減額で発行されるという事情が私はちょっと理解ができない。手帳なわけですよね。帳面が完全に使えなくならないのであれば、その旅券を使い続けるはずですね。若しくは、流されてしまったら仕方がない。でも、減じて発行するという状況がちょっと私には理解ができなくて、どういう状況を想定して減免とされたのか、御説明いただきたいと思います。

林国務大臣 今回の法改正におきまして、今後、大規模な災害が発生する際に迅速に被災者に対する支援が実施できますように、一般規定を新設するということでございますが、今後発生する大規模な災害において、現時点で個別具体的に予断をすることがなかなか難しいところでございまして、様々な規模や様態の災害が起こり得るということを前提として、様々なケースに的確に対応できるような制度を整備する観点から、手数料の免除に加えまして、減額も可能とすることにしたところでございます。

 この減免の基準でございますが、政令等で定めることとしておりまして、罹災証明書の発行を受けているかどうかということや、災害救助法の適用等々、こういうことを勘案しながら、政令等で減免の基準を定めていく予定でございます。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。

 そういう整理であれば、結構です。一部、お金持ちだけ取るとか、そういうような話が若干出ていましたので、そういうような変な運用をされないのであれば全然構わないと思いますが、ただ、罹災証明とかそういうのは当然だと思いますので、是非、政令でしっかり定めていただきたいと思います。

 法案についてはこの辺りにしまして、残りの時間、少し難民の話に参りたいと思いますが、まず冒頭、昨日お連れいただきましたウクライナの方々について、ちょっと数字だけ事務方に確認したいんですが、昨日来ていただいた二十名のうち旅行証明書で入国した人数の割合、それと、二十名のうち全く日本に身寄りのない方の数、それから、身寄りのない方が、旅券か旅行証明書、どちらで入国をされたのか、お答えいただきたい。

北川政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員からございました御質問でございますけれども、内訳等の詳細につきましては、避難民の方々のプライバシーとの関係もございますので、お答えを差し控えさせていただきます。

鈴木(敦)委員 旅券を発行したのか、旅行証明書を発行したのかがプライバシーに関わるとは私は思えない。

 お願いします。

北川政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、政府専用機にお乗りいただいたのは、ポーランド大使館、ウクライナ大使館に対して日本への渡航を相談してきたウクライナ避難民の方々で、日本への渡航を切に希望するものの、自力で渡航手段を確保するのが困難なウクライナ避難民の方々でございました。

 ただ、その方々のそれぞれの御事情、それぞれの個別の事情等がございますので、避難民の方々のプライバシーの関係もあるということで、お答えを差し控えさせていただいた次第です。

鈴木(敦)委員 それは違いますよ。プライバシーは関係ないから。だって、旅行証明書なのか旅券なのか、どっちなのかと聞いているだけなんだから、その人の名前を聞いているのでもないし、マイナンバーを教えてくださいと言っているんでもないんです。そこをお答えください。

北川政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになり誠に恐縮でございますが、避難民の方々のプライバシーとの関係ということで、お答えを差し控えさせていただきます。

城内委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

城内委員長 速記を起こしてください。

 ただいまの件につきましては、後刻、理事会で協議いたします。

鈴木(敦)委員 そういうところが駄目だと言っているんですよ。

 難民だ、避難民だと。じゃ、避難民というのは法的に規定があるんですか。ないんですよ。それで、政治判断で、その都度その都度、人を入れてきた。そして、今回も旅行証明書なのか旅券なのかの仕組みも分かっていない、そしてそれも答えられない。そういうような運用では、到底これから、我が国がアジアで最も優秀な法治国家だなんて、絶対自信を持って言えない。もっと誇りを持ってやっていただきたい。

 言ってもいいと思いますよ。だからこそ、私は、今までずっとこの委員会でも、法的な整備をした方がいいと申し上げてきたんです。それがないから、プライバシーの問題が出てきちゃうんですよ。

 だから、諸外国では、例えばポーランドの場合は、ポーランドに入国された方が旅券を持っていなくても、ペセルという証明書、番号を発行して、向こうのマイナンバーですけれども、これを発行して、向こうで滞在できるという仕組みもつくっています。そういう整備が我が国にありますか。一切ない。出入国難民管理法しかないんです。だから、この法整備、しっかりすべきだと思います。

 政府一丸だと大臣もおっしゃっているので、是非大臣に御意見をいただきたいと思います。

城内委員長 答弁は簡潔にお願いいたします、既に時間が経過しておりますので。

林国務大臣 入管法上の難民でございますが、これは難民条約で定義される難民を指すものとされております。

 中身についてはもう委員御承知のとおりでございますので、詳細な説明は省きますが、避難民というふうな呼称を難民ではない方についても用いて受入れをやってきたところでございますので、今回のウクライナからの避難民の皆さんに対しては政府全体として的確に対応してまいりたい、まずはそのことをやってまいりたいと思っております。

 その上で、委員からは従来よりいろんな御指摘があったということでございます。先ほど徳永委員にお答えしたことですが、今回のことが一つの前例となって、更なる制度の整備の必要性についても検討していくべきだと考えております。

鈴木(敦)委員 前例はインドシナでもありました。是非よろしくお願いします。

 終わります。

城内委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 初めに、ウクライナ情勢について質問します。

 ウクライナではロシア軍による民間人への残虐行為が明らかとなり、世界中が衝撃を受けています。ロシア軍が地上部隊を撤収させたウクライナの首都キーウ周辺で、軍服を着ておらず、武器も持っていない、市民と見られる人々が路上で多数死亡しているのが見つかった。ウクライナ司法当局は三日、これまでに各地で四百人以上の民間人の遺体が発見されたと発表しています。民間人殺害は断じて許されない国際法違反の非人道的行為であり、我が党は、ロシア軍による残虐な戦争行為を強く非難するものであります。

 林大臣のこの件についての所見を伺いたいと思います。

林国務大臣 ウクライナ政府の発表や各種報道によりまして、ロシア軍が占拠していたキーウ近郊の地域において、無辜の民間人が多数殺害されるなど、残虐な行為が繰り広げられていたことが明らかになっております。

 我が国としては、ロシア軍の行為によりウクライナにおいて多くの市民が犠牲になっていることを極めて深刻に受け止め、強い衝撃を受けております。こうした無辜の民間人の殺害は、重大な国際人道法違反であり、断じて許されず、厳しく非難をいたします。

 こうした残虐な行為の真相は明らかにされなければならず、ロシアの責任は厳しく問われなければならないと考えます。我が国としても、戦争犯罪が行われたと考えられることを理由に、ウクライナの事態を国際刑事裁判所、ICCに付託しておりまして、ICC検察官による捜査の進展を期待をしておるところでございます。

穀田委員 キーウ北西のブチャの市長は、三百人以上が殺されたと告発しています。報道によると、道のあらゆる場所に遺体が横たわっていた、建物の地下室では、体の一部が切断され、拷問されたと見られる子供の遺体もあった、ある人は自転車に乗ったまま横倒れに、またある人は買物袋を握り締め、路上で息絶えていたと伝えています。

 今大臣からもお話がありましたけれども、ロシア軍による残虐行為の真相を明らかにする必要があります。国連のグテレス事務総長が、独立した調査によって責任を明確にすることが不可欠だと指摘していることは極めて重要だと私は考えます。

 ロシアは調査を受け入れるべきだと考えますが、この件に関しての大臣の考えを伺いたいと思います。

林国務大臣 我が国といたしましては、グテーレス国連事務総長の声明も踏まえつつ、引き続き、国連を含む国際社会と緊密に意思疎通を行って対応してまいりたいと考えております。

 無辜の民間人の殺害は重大な国際人道法違反であり、断じて許されません。こうした残虐な行為の真相は明らかにされなければならず、ロシアの責任は厳しく問われなければならないと思っております。

 繰り返しになりますが、戦争犯罪が行われたと考えることを理由にして、ウクライナの事態を国際刑事裁判所に付託しており、このICCの検察官による独立した捜査の進展を期待しております。

穀田委員 後半は全く同じことを二回繰り返しているんですけれども。

 ロシア軍による国際人道法に反する犯罪行為は、その責任を厳しく追及されなければならない。ロシアはそのことについて受け入れるということを我々としては要求したいと思っています。

 次に、前回の質疑で取り上げた、防衛省の陸上幕僚監部が作成した資料について聞きます。

 私は、三月三十日の本委員会で、今皆さんにお配りしている配付資料一枚目、これにあるように、陸上幕僚監部が二〇二〇年二月四日の記者勉強会で配付した「陸上自衛隊の今後の取組み」と題する資料で、「予想される新たな戦いの様相」として、反戦デモをテロやサイバー攻撃と同列視し、グレーゾーンの事態に明示していた問題を質問しました。

 その際、鬼木防衛副大臣は、反戦デモという表記については、合法的に行われている場合も含めて、一様にグレーゾーンの事態の例として記述したことは誤解を招く表現であったと答弁されました。

 そこで、改めて聞きますが、反戦デモをテロと同列視し、自らの主張を受け入れるよう相手に強要するものとしてグレーゾーンの事態に明示したことは、不適切だったと考えているんですか。

鬼木副大臣 お答えいたします。

 御指摘の、令和二年二月の陸上幕僚監部による記者勉強会において使用された資料に記載された反戦デモについて、合法的に行われている場合も含めて、一様にグレーゾーンの事態の例として記述したことは誤解を招く表現であり、その意味において不適切であったと考えております。

 防衛省としては、対外説明に際して、このような誤解を招く表現を使用せず、正確で分かりやすい情報提供に努めてまいります。

穀田委員 この間、官房長官も、この問題について指摘を受けたときには、相変わらず、誤解を招く表現だったとばかり強弁していたことは記憶に新しいところです。

 今日は、改めて、不適切だったということを認めるということですね。

鬼木副大臣 はい。合法に行われている場合も含めて、一様にグレーゾーン事態の例として記述したということは誤解を招く表現であり、その意味において不適切であると考えております。

穀田委員 じゃ、もう一度聞きますけれども、鬼木副大臣は前回の質疑で、反戦デモの記述については、二月四日の勉強会で参加者から用語が不適切ではないかとの指摘を受けた、このため、資料を一度回収して、暴徒化したデモに修正した上で、翌二月五日に再配付したと答弁されました。

 つまり、参加者から反戦デモの記述は不適切だと指摘されなければ、修正する考えは毛頭なかったということになるわけですね。(鬼木副大臣「済みません、もう一度お願いします」と呼ぶ)

城内委員長 じゃ、穀田恵二君、再度質問をお願いします。

穀田委員 参加者から、記者勉強会に参加した人からこの反戦デモの記述は不適切だと指摘されなければ、修正する考えは毛頭なかったということですかと聞いているんです。四日と五日の件ですよね。

鬼木副大臣 毛頭なかったというよりも、その表記について不適切ではないかという御指摘はそうだと考えて、修正させていただいたということであります。

穀田委員 明確にちょっと違うんやね。要するに、誤解を受けるおそれがあるからと言っているから、その点で不適切だという質問があって、そうは思っていなかったんだよね、当時。当時思っていなかったことは明らかなんですよね。分かりますか。だから、修正したって、そう言うてはんねやから。副大臣が答弁されたことと、当時、担当官が説明したことは違う話をしていることを指摘しているわけですよ。

 要するに、防衛省としては、反戦デモの記述は誤解を招くということについては、それぞれの性格の違いをちょっと言って、適当に話を曖昧にしているということが特徴だと思うんですね。

 そこで、資料の二枚目を御覧いただきたいと思うんです。

 二月四日の勉強会で、参加者から反戦デモの記述が不適切だと指摘された際に、陸幕防衛課の三浦英彦防衛班長は、国内で反戦デモが行われたとき、例えば、どのようなやり方がされているのかというのはなかなか難しいのではないかと考える、それは、二〇一四年のウクライナの状況を踏まえれば、反戦デモがどのような組織の組成になっているのかというのはなかなか分かりかねるところがあると説明しています。これ、出ていますよね。

 副大臣、三浦班長が二月四日の勉強会でこのように参加者に説明したのは間違いありませんね。

鬼木副大臣 そのやり取りについて、事実関係をお答えいたします。

 御指摘の点について、令和二年二月四日に陸幕が主催した記者勉強会において、陸幕担当者が記者からの質問に対し、国内で反戦デモが行われたとき、例えば二〇一四年、ウクライナの状況を踏まえると、反戦デモがどのような組織の組成になっているのか分かりかねるところがあります、一義的にはこういった行為は法執行機関が対処すべきですが、軍事力を使っているのかいないのか分からない、我が国の治安を乱すような行為への対処を考えていかなければならないと思いますと発言したことを確認いたしております。

 また、この発言に対し、記者から、基本的にはデモは平和裏に終わるものであり、デモをグレーゾーンに認定するのは乱暴かと、いかにも破壊活動をするように扱うのは危ないのではないかと思いますと質問があり、これに対し、陸幕担当者が、同意です、したがいまして、破壊活動とは区分して記載させていただいていますが、反戦デモだから危険なものかという指摘に関しては、全くそのとおりだと思いますので、表現は考えさせてくださいと発言したことを確認いたしました。

穀田委員 当日の勉強会で、今、この文書を見せましたけれども、これはそのとおりだということはもう認めた。

 鬼木副大臣は、前回の質疑で、防衛省としての考えではないと即答弁されたんですね、この事実を示した瞬間に。それには私、驚きましたけれども。三浦氏は、当時、陸上幕僚監部の防衛班長の立場で発言しています。三浦班長は、反戦デモと記した理由について、ここに書いていますように、二〇一四年のウクライナの状況を挙げて、反戦デモがどのような組織の組成になっているのか分からないからだと正当化していたわけですよね。それを参加者から指摘されて、まずいと気づいたにすぎないということが今の話でお分かりいただけると思うんですね。

 また、資料を再配付した翌二月五日の勉強会では、防衛班の富山武史氏が、反戦デモの記述を修正、回収するに当たり、我々陸自としまして、グレーゾーンの事態というのは何が起こるか分からない事態だと想定しておりますので、他国の諜報員の方とかに扇動されたデモというのがエスカレーションすることによって我が国の主権が脅かされる可能性があるという意図で使用していると説明しています。

 富山氏が二月五日の勉強会でこのように説明したことも事実ですね。

鬼木副大臣 現時点におきまして、委員御指摘のように、陸幕から、我々陸自としまして、グレーゾーンの事態というのは何が起こるか分からない事態だと想定しておりますので、他国の諜報員の方とかに扇動されたデモというのがエスカレーションすることによって我が国の主権が脅かされる可能性があるという意図で使用しているとの発言があったとの事実は確認できておりません。

 現在、引き続き状況について確認しているところであり、準備ができましたら回答したいと考えております。

穀田委員 副大臣、この問題、二つ、私は出して、四月の一日に、事実関係を説明されたしということを述べたわけです。そのことについて説明に来た防衛省の方々は、いまだ特定できていないというお話で、昨日の夜十時過ぎまで特定できていないというお話でした。

 そこで、私は言ったんです。この事実というのは、二〇二〇年の二月四日、二月五日、まず日にちが明らかだ。誰が述べているか、三浦英彦さんと富山武史さんが述べておられる。そして、内容も明らかにしている。だから、この事実を調べようと思うと、特定された日にち、誰が、内容、全部私は明らかにしていて、片方、二月四日の分だけは話をしたけれども、二月五日の分が分からないと。しかも、四月の一日に要請し、ずっと待っていたけれども来なかった。

 この経過は全く不届きと言わなければなりませんし、二月の五日分が明らかにならない、不可解ではありませんか。

鬼木副大臣 二月の五日ですね、二月の五日分。

穀田委員 これは言っているんだから。二月の五日です。

鬼木副大臣 二月の五日につきましては、二月四日の記者勉強会での御指摘を受け、修正した資料を再度配付したものであり、記者勉強会といったものではなかったと承知しております。

 その上で、現時点においては、委員御指摘のように、発言の部分、ちょっと省略しますが、その発言があったという事実が確認できていないということでございます。

穀田委員 本当に不可解と思いませんか。

 二月の四日、二月の五日、お名前も特定し、どこでという話も特定しているということで、調べることができない。そんな、防衛省って事実を特定することに五日も六日もかかって、たかだかこんな話の内容が分からぬというようなことがあるの。本当に情けないと言わなければならないと一言言っておきます。

 富山氏の発言は、反戦デモがエスカレーションすることによって我が国の主権を脅かす可能性がある、そこまで言っているわけですよね。

 だから、副大臣、デモの違いをいろいろ言って話をそらそうとしているけれども、話は明確なんですよ。反戦デモがエスカレーションすることによって我が国の主権を脅かす可能性があると強調して、グレーゾーンの事態に明示したことを当然視しているというのがこの問題の中心なんですよ。つまり、防衛班の二人の説明は、反戦デモがいつ暴徒化するか分からない、テロと同じ危険なものだという防衛省の認識を端的に示しているものだと言わなければなりません。

 しかも、反戦デモと記した修正前の「陸上自衛隊の今後の取組み」、この間明らかにしたこれですよね、この資料は記者勉強会以外にも使われた疑いがある。我が党のしんぶん赤旗の調査で、二〇一九年十月十一日に行われた公益財団法人偕行社の総会で、当時の湯浅陸幕長が講演を行っていることが分かりました。このときにも問題の資料を使っているのではありませんか。

鬼木副大臣 昨日通告いただきました御指摘の資料について、現時点で確認できておらず、お答えすることは困難であります。

 いずれにせよ、陸幕の記者勉強会の資料に記載された反戦デモについて、合法的に行われている場合も含めて、一様にグレーゾーン事態の例として記述したことは誤解を招く表現であり、その意味において不適切であったと考えております。

 防衛省といたしましては、対外説明に際して、このような誤解を招く表現を使用しないことが重要であると考えており、正確で分かりやすい情報提供に努めてまいります。

穀田委員 合法、非合法という問題を今どき言う話がありますか。反戦デモが非合法な場合があるのか。区分けして話をそらしたり、そういうことを見ているとしたら重大問題じゃないですか。反戦デモで非合法って、どういうデモなんですか。言えますか、そんなこと。言ってごらんなさいよ、じゃ。

鬼木副大臣 非合法ということは、その中で暴力的な行為等がある場合には非合法、法律に触れるということだと思いますので、反戦デモ自体は問題があるということではないということであります。

穀田委員 話が全然かみ合うてへんというか、大体、まとまってへんというのがよう分かりましたわ。

 昨日聞いたから分からぬと。そんなこと、調べればすぐ分かりますよ。

 偕行社が発行する雑誌「偕行」、これですよ、二〇一九年十二月号、これを見ますと、湯浅陸幕長は、資料と同じ、「陸上自衛隊の今後の取組み」と題する講演を行っていまして、そこで、グレーゾーンの事態について、「これらは報道戦、テロ行為、扇動による反戦デモなど多様な形態がある。この事態の特徴は、国家が非常事態であると認識する以前に反戦気運などを高めて国家崩壊へ向かわせてしまう危険性があることである。」と述べているんですよね。よろしいか。「反戦気運などを高めて国家崩壊へ向かわせてしまう危険性がある」、ここまで言っているんですよ。

 だから、この内容からしましても、湯浅氏が講演で修正前の資料を使っていたのは疑いない。分かりますやろ。そうしかでけへんわね。誰が考えても分かるわけですよ。

 しかも、湯浅陸幕長は、この偕行社の講演以外にも、例えば東京都防衛協会で、二〇二〇年一月に同じテーマで講演しているわけです。

 鬼木副大臣、反戦デモと記した修正前の資料について、先ほど、不適切だったと言いましたけれども、陸上自衛隊のトップ、陸幕長がその修正前の資料を使ってあちこちで講演している疑いがある。今、この「偕行」という話も知らぬと言うてはったけど、それやったら、こういうことも知らぬのやから、事実関係を調査して公表することはできますね。

鬼木副大臣 防衛省として、これまで、合法的に行われる反戦デモをグレーゾーンの事態の一つとして位置づけたということはございません。したがって、防衛省として、反戦デモについて、そうした記述の有無を網羅的に調査する必要があるとは考えておりません。

 いずれにしても、合法的に行われている場合も含めて、一様にグレーゾーン事態の例として記述したことは誤解を招く表現であり、その意味において不適切だったと考えておりますので、防衛省としては、こうした誤解を招く表現がないよう、正確で分かりやすい情報提供に努めてまいります。

穀田委員 質問に答えていないじゃないですか。私は偕行社の話をして、そうしたら、鬼木副大臣は、昨日の夜やったから、質問が夜あったので分からへんと言ったんでしょう。これは知らぬと、まだ。言ったんでしょう。それまで覚えてへんとは、さっき言ったことやんか。調べられへんかったと言っているんでしょう。

鬼木副大臣 昨日の時点で知っていたか、知らなかったかというと、知らなかったと。

穀田委員 そういうふうに聞いてへんですやん。これ、知っているかと、こんなことをやっているのを御存じかと私聞いたら、昨日聞いたばかりやから分からぬと言ったんじゃないですか。そうでしょう。

鬼木副大臣 そうです、存じません。はい。

穀田委員 だから、だとしたら、この「偕行」という、その文章の中に、そういう説明をしている、陸幕のトップがやっている、同じことを言っている。しかも、その内容が、いわば修正される前の記述でやっているんだろうと。しかも、私が今言ったように、ほかでもやっている。それを事実かと聞いているわけですよ。分からぬのでしょう、今のところ。分からぬのやったら、しかし、重大だから、その時点では修正前のやつをやっている可能性がある、だから調べたらどうやと言っているわけです。調べますな。

鬼木副大臣 防衛省として、これらの合法的な反戦デモを……(穀田委員「そこを聞いてへんて」と呼ぶ)なので、グレーゾーンと位置づけたことはありませんので、したがって、そうした記述の網羅を具体的に行う必要があるとは考えておりません。

城内委員長 申合せの時間が経過しております。御協力をお願いいたします。

穀田委員 協力しているんですよ。協力していないのはあっちなんですよ。

 だって、二〇二〇年の二月にやった話をしたんじゃないですか、私。その前に、二〇一九年にやっているじゃないかと。そうしたら、修正前のでやっていることは事実じゃないですか。

 日にちを言っているんだよ、私。二〇二〇年の二月四日、出したんでしょう。五日に修正したんでしょう。ところが、陸幕長は二〇一九年にやっていると。修正前のやつでやっているしかないじゃないですか。その事実関係を聞いているのに、話を別なことにしたらあかんよ、あんた。あんたってあかんけれども。

城内委員長 既に持ち時間が経過しておりますので、質疑を終了してください。

穀田委員 ですから、これはきちんと公表すべきだと。一言言ってくださいよ、調査しろと。

城内委員長 鬼木防衛副大臣、答弁は御簡潔にお願いいたします。

鬼木副大臣 防衛省としては、合法的に行われる反戦デモをグレーゾーンの事態と位置づけておりませんので、調査する必要は考えておりません。(穀田委員「最後、一言だけ」と呼ぶ)

城内委員長 じゃ、最後、一言短く。もう時間が経過しておりますので。

穀田委員 余りにも、それはほうけているよ。

 この資料には、反戦デモに加えて報道がグレーゾーンの事態と明示されているわけですよ。しかし、反戦デモや報道は、憲法二十一条で保障された表現の自由ですよ。反戦平和の主張をテロと同列視して敵視することは、憲法十九条の思想、良心の自由を侵害する行為と言わなければなりません。それを、陸上自衛隊のトップの陸幕長が先頭に立って喧伝している、まさに憲法に抵触する重大問題だということを改めて指摘し、調査を要求します。

 以上です。

城内委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

城内委員長 これより両案を一括して討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、内閣提出、旅券法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

城内委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、東日本大震災の被災者に係る一般旅券の発給の特例に関する法律を廃止する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

城内委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

城内委員長 この際、ただいま議決いたしました旅券法の一部を改正する法律案に対し、武藤容治君外四名から、自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。杉本和巳君。

杉本委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

    旅券法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法施行に当たり、次の点に十分配慮するべきである。

 一 旅券の発給申請手続き等の電子化に当たっては、国民の利便性向上及び行政の効率化に資するよう配慮を行うこと。

 二 申請者が現に所有する一般旅券の査証欄に余白がなくなった場合、有効期間及び種類が同一である新たな一般旅券を発行することとなるところ、国民負担を可能な限り圧縮するため、配慮を行うこと。

  右決議する。

以上でございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

城内委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

城内委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付すことに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣林芳正君。

林国務大臣 旅券法の一部を改正する法律案を可決いただきまして、誠にありがとうございました。

 外務省といたしましては、ただいまの附帯決議の御趣旨を踏まえつつ、適切に対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

城内委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

城内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

城内委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十五分散会


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