衆議院

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第9号 令和4年4月13日(水曜日)

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令和四年四月十三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 城内  実君

   理事 あべ 俊子君 理事 辻  清人君

   理事 宮崎 政久君 理事 武藤 容治君

   理事 青山 大人君 理事 小熊 慎司君

   理事 杉本 和巳君 理事 吉田 宣弘君

      五十嵐 清君    伊藤信太郎君

      上杉謙太郎君    小渕 優子君

      尾身 朝子君    島尻安伊子君

      新藤 義孝君    鈴木 隼人君

      高木  啓君    武井 俊輔君

      中谷 真一君    西田 昭二君

      平沢 勝栄君    本田 太郎君

      三ッ林裕巳君    岡田 克也君

      徳永 久志君    太  栄志君

      松原  仁君    青柳 仁士君

      和田有一朗君    金城 泰邦君

      鈴木  敦君    穀田 恵二君

    …………………………………

   外務大臣         林  芳正君

   防衛副大臣        鬼木  誠君

   外務大臣政務官      上杉謙太郎君

   外務大臣政務官      本田 太郎君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 松多 秀一君

   政府参考人

   (内閣府国際平和協力本部事務局長)        久島 直人君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局審議官)            堀本 善雄君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁出入国管理部長)        丸山 秀治君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       赤堀  毅君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 徳田 修一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 大鶴 哲也君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 股野 元貞君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 實生 泰介君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   海部  篤君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    市川 恵一君

   政府参考人

   (外務省国際協力局長)  植野 篤志君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   鯰  博行君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    安藤 俊英君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 窪田  修君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 小宮 義之君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 内野洋次郎君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房参事官)           坂  勝浩君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局通商機構部長)       黒田淳一郎君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官官房資源エネルギー政策統括調整官)         南   亮君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 町田 一仁君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 大和 太郎君

   外務委員会専門員     大野雄一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十三日

 辞任         補欠選任

  中谷 真一君     三ッ林裕巳君

  本田 太郎君     西田 昭二君

同日

 辞任         補欠選任

  西田 昭二君     本田 太郎君

  三ッ林裕巳君     五十嵐 清君

同日

 辞任         補欠選任

  五十嵐 清君     中谷 真一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

城内委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房地球規模課題審議官赤堀毅君、大臣官房審議官徳田修一君、大臣官房審議官大鶴哲也君、大臣官房参事官股野元貞君、大臣官房参事官實生泰介君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長海部篤君、北米局長市川恵一君、国際協力局長植野篤志君、国際法局長鯰博行君、領事局長安藤俊英君、内閣府大臣官房審議官松多秀一君、国際平和協力本部事務局長久島直人君、金融庁総合政策局審議官堀本善雄君、出入国在留管理庁出入国管理部長丸山秀治君、財務省大臣官房審議官窪田修君、大臣官房審議官小宮義之君、大臣官房審議官内野洋次郎君、農林水産省大臣官房参事官坂勝浩君、経済産業省通商政策局通商機構部長黒田淳一郎君、資源エネルギー庁長官官房資源エネルギー政策統括調整官南亮君、防衛省大臣官房審議官町田一仁君、防衛政策局次長大和太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

城内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

城内委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。尾身朝子君。

尾身委員 おはようございます。自由民主党の尾身朝子です。

 質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 本日は、科学技術外交について質問させていただきます。

 日に日に厳しさを増すウクライナの惨状には、私も本当に心を痛めております。戦火が起きる前から、ウクライナと我が国の間では、お互いの強みを生かして、原子力発電所の廃炉技術協力などを進めていました。また、ロシアとの間も、宇宙開発など、多国間の科学技術の枠組みが存在しています。今後は、情勢の推移を注意深く見ていく必要があります。

 このような状況であるからこそ、国際協力を含む科学技術外交における今後の道筋を今考えておくことが、改めて、重要だと思います。

 さて、本題に入ります。

 近年、気候変動やエネルギー問題など、多国間で解決すべき課題が顕在化し、課題解決のために科学技術が果たす役割がますます重要になってきています。また、米中対立の先鋭化において示されつつあるように、科学技術・イノベーションが国家間競争の中核となり、経済安全保障の重要事項としてクローズアップされています。私も、外務大臣政務官として各国を訪れた際に、科学技術・イノベーションはどの国においても非常に関心を示す課題であったことを鮮明に覚えています。

 我が国が外交や国際協力を科学技術立国日本のために利用することはもちろん、我が国の強みである科学技術の力を利用して、外交に更に厚みを加えることが不可欠です。

 そこで、外務大臣に伺います。

 我が国における科学技術外交推進に対する大臣の意気込みをお聞かせください。

林国務大臣 尾身先生から科学技術外交についてお尋ねがございました。

 私も、議員のときにSTSフォーラム、何度か訪れまして、お父上にも大変お世話になったわけでございます。

 そして、今おっしゃっていただきましたように、科学技術・イノベーション、これは、気候変動もそうでございますし、最近は、パンデミック対応ということで、メッセンジャーRNAのワクチンというものがもしなかったら一体どういうふうになっていただろうかということを考えるだけでも、地球規模課題に対処する上で大きな鍵であり、経済面のみならず、安全保障面、最近は経済安全保障と言われるようになりましたけれども、ますます重要になってきていると思っております。

 国際秩序が不安定化し、先ほど申し上げました地球規模課題が山積しておる現状であるからこそ、科学技術を更に外交に活用して、課題解決や国家間の関係構築強化、これに役立てる必要があると思っております。

 私自身も、科学技術外交の推進を重視しておりまして、外務大臣科学技術顧問、さらには科学技術外交推進会議というもの、こうしたところにいらっしゃる有識者の皆様の知見もおかりしながら、今後も、関連する取組を一層推進して、持続可能な開発目標の達成ですとか、国際社会の平和と安定のためのリーダーシップ、こういうものを発揮してまいりたいと考えております。

尾身委員 大変力強い御答弁、ありがとうございました。

 次に、科学技術外交の強化について質問させていただきます。

 多くの国には、首脳や大臣を科学技術の側面からサポートするために科学技術顧問が置かれています。米国では、冷戦下の一九七六年に、大統領を直接補佐する大統領科学顧問、アメリカ合衆国科学技術政策局、OSTPが議会により設置されました。バイデン内閣では、OSTP局長が史上初めて閣僚級に格上げされています。

 我が国でも、先ほど大臣がおっしゃいましたが、科学技術外交を推進するために、二〇一五年に外務大臣科学技術顧問を任命し、また、その活動をサポートするために、学識経験者を委員とする科学技術外交推進会議が設置されました。

 多国間においては、日本、ニュージーランド、米国、英国などが構築した非公式な国際ネットワークである外務省科学技術顧問ネットワークに参画しています。

 このように、外務省は、科学技術外交を強化するために様々な枠組みを構築してきました。近年は、外交における科学技術関連の課題が急速にその幅と深さを増し、また複雑化しています。そのような中で、適時適切に大臣や政府の意思決定に寄与するためには、国内の体制を強化することはもちろん必要ですが、在外公館における科学技術関連情報の収集力を高めるなど、更なる体制強化が求められています。

 ここで伺います。

 科学技術外交力の更なる推進のため、外務大臣科学技術顧問を中心とした現有の枠組みをより強固なものとすることが必要です。また、その活動を支援するため、ボストンやシリコンバレーのような科学技術情報が集中する地域の在外公館に、科学技術行政官のような、科学技術に特化した職員を配置するべきだと思います。今後の科学技術外交の強化策について、具体的にお聞かせください。

海部政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省といたしまして、事務方といたしましても、委員と問題意識を全く共有するものでございまして、様々な取組を通じてこの分野の外交強化に取り組んでまいりたいと思っております。

 まず、御指摘のございました科学技術顧問を中心とした枠組みでございますけれども、御指摘のように、ただいま、松本科学技術顧問、それから小谷次席顧問に御指導いただきながら、科学技術外交推進会議におきまして、各種課題に関するテーマ別の議論を深めておるところでございます。

 それからまた、これも御指摘ございましたけれども、各国科学技術顧問によるいろいろなネットワークの会合を生かして、例えば先般の東京栄養サミットに際しては、共同声明を発出するということを行っております。

 引き続き、積極的に、両顧問それから委員の皆様方に御関与いただきながら、御指導賜りたいというふうに考えてございます。

 それから、もう一つ御指摘のございました在外公館の活用というところでございますけれども、既に五十三の在外公館において任命、配置されております科学技術担当官というものを通じまして取組を強化しております。

 例えば、本年二月、これらの科学技術担当官をオンライン形式で招集して、科学技術担当官会議というものを開催しておりますし、それから、科学技術担当官にとどまらず、一般の在外公館職員をも対象にした、いろいろな、オンラインでまたセミナーを開催いたしまして、科学技術関連知識、それからリテラシーの底上げ、問題意識の涵養ということを図っておるわけでございます。

 こうした取組を含めまして、国内と在外の双方の体制を有機的に連携させて取組を強化していくということを考えております。

尾身委員 ありがとうございました。

 昨年、日本にゆかりのある二人のノーベル賞学者が誕生しました。ノーベル物理学賞を受賞された真鍋淑郎博士と、ノーベル化学賞を受賞されたドイツのベンジャミン・リスト博士です。この二人は、日本から見たときに実に対照的な経歴を持っています。

 真鍋博士は、東京大学で博士号を取得後、すぐに渡米されて、気象学の先駆的なモデル化を進めるなど、この業績の大部分は米国で行われた研究成果です。

 他方、ドイツのベンジャミン・リスト博士は、フランクフルト・アム・マイン大学から化学の博士号を取得後、米国で研究生活を始め、二〇一八年からは北海道大学化学反応創成研究拠点で主任研究者となり、現在は同大学で特任教授を務め、研究を続けています。

 真鍋博士は研究環境を求めて世界に羽ばたき、リスト博士は同じく研究環境を求めて日本に来ました。

 また、沖縄科学技術大学院大学、OISTのピーター・グルース学長は、ドイツ最大のマックス・プランク研究所の所長を終えた後に、OISTの建学の精神に共鳴し、来日して学長として勤務しています。

 私は、日本でも海外でも、場所にかかわらず、日本の研究者が世界のどこかで学び、働き、あるいは起業することにより、価値を創造し、世界のどこかで活躍し続けることが重要であると考えます。そして、彼ら、彼女らが国際機関、二国間、多国間の枠組みの中で日本のプレゼンスを示す、そのグローバルな活動が結果的に日本の国益に寄与することとなります。他方、世界の優秀な研究者が研究環境を求めて来日する。これが世界規模の研究者の交流のあるべき姿ではないでしょうか。

 学術と産業の世界では、着実に動き出しています。しかしながら、交流の把握とネットワークづくりが最も遅れているのが政府です。この解決のためには、総理や外務大臣が海外のトップサイエンティストと直接ネットワークを築くことが最も効果的です。

 二〇一五年、安倍元総理が訪米されたときに、米国エネルギー庁長官、NIH所長、全米科学協会会長を筆頭に、米国のトップサイエンティストと九十分に及ぶ意見交換の機会を持ちました。これは過去に例を見ない画期的な会合であり、非常に有意義でした。私は、幸運にもこの会合に司会者として参加しておりました。

 外務省も、このような機会を積極的につくり出すことで一歩前に進んでいただきたいと思います。自ら有する世界に広がるネットワークの力を使い、科学技術外交を支える基盤をつくること、また、海外で頑張っている日本人の研究者や起業家にエールを送る取組なども新たに実施する価値があるのではないでしょうか。

 そこで伺います。

 科学技術外交の基盤を強化するため、各国との科学技術ネットワークを構築することが必要です。そのために、トップ外交の機会を捉え、積極的にトップサイエンティストとの交流を促進すべきと考えます。御見解を簡潔にお聞かせください。

海部政府参考人 お答え申し上げます。

 首脳、閣僚レベルでの科学技術外交関連活動、これを積極的に進めてまいりたいというふうに考えております。

 最近の事例を申し上げますと、コロナの下で人的往来に制約がある中ではございますが、例えば、昨年十二月、STSフォーラムの中南米カリブ地域ハイレベル会合、これはハイブリッドでございましたけれども、林外務大臣からビデオメッセージを発出するというようなことも取り組んできてございます。それから、世界各地に所在する在外公館のネットワークを活用したマッチング、それから、人のつながりの確保ということにも取り組んでいるところでございます。

 今後とも、こういうネットワークづくりの強化をいろんなレベルで図りまして、いわゆる国際的な頭脳循環の推進に資する活動を進めてまいりたいというふうに思っております。

尾身委員 ありがとうございました。

 視点を少し変えて、科学技術外交の具体的な事例について考えてみたいと思います。

 新型コロナ対策としての国産ワクチンの開発には国民が大きな期待を寄せています。それは、変異株に迅速に対応し、安定的な供給が保障され、何よりも技術的な信頼が担保されているからにほかなりません。

 今後の国産ワクチンの開発は、国のワクチン戦略に基づき、AMEDにおいて先進的研究開発戦略センターを設置し、政府一体となって進めることになっています。しかしながら、実際の開発過程では多くの困難に直面していると聞いています。具体的には、治験参加者の確保が難しいことです。

 コロナワクチンの開発を進めるためには大規模治験が必要となりますが、日本は既にワクチン接種が進んでおり、日本のみで大規模治験、フェーズ3を行うことはほぼ不可能な状況にあります。このため、製薬企業は独自に東南アジアなどと協力体制を構築して治験参加者を集めています。

 これだけ国民の期待が大きいものを民間企業に任せておいてよいのでしょうか。外務省を中心とした政府が対象国と調整し、治験の環境整備を支援する必要があると思います。高い信頼を得ている日本の科学技術力で生み出される日本製ワクチンは、間違いなく、日本国内のみならず諸外国からも期待されるものです。将来、大規模治験に協力してくれた国に対し日本製ワクチンを優先的に供与するなど、いわゆるワクチン外交にも資するものです。日本外交を支える新たなツールとして活用できるものと確信しています。

 そこで伺います。

 ワクチン開発のような分野において、まさに科学技術外交として大規模治験の環境整備などを積極的に行っていくべきではないでしょうか。御所見をお聞かせください。

赤堀政府参考人 お答えいたします。

 ワクチンを国内で開発、生産できる能力、体制を持つことは外交、安全保障の観点からも極めて重要でございます。委員御指摘のとおり、ワクチン外交、国際保健外交にも資するものであろうと考えます。

 昨年十一月の日・ベトナム首脳会議では、両国の間で、新型コロナワクチンと治療薬の研究、生産について引き続き緊密に取り組んでいくことを確認いたしました。

 国産ワクチンの開発を含め、国際共同治験が迅速に実施可能となるよう、外務省としても、政府のワクチン開発・生産体制強化戦略の下、厚生労働省を始めとする関係省庁と連携し、環境整備等を後押ししてまいりたいと存じます。

尾身委員 国産ワクチンの開発に関しましては、皆さんの期待が大きいので、是非ともよろしくお願いいたします。

 最後になりますが、日夜頑張っておられる外務省の皆様に感謝いたします。中でも、状況がますます厳しくなる中、隣国に移られたものの、変わらずに邦人保護や情報収集の任に当たっておられる松田邦紀在ウクライナ特命全権大使及び館員の皆様、また、それをサポートする宮島昭夫在ポーランド特命全権大使及び館員の皆様に心より敬意を表したいと思います。

 科学技術外交は、日本にとって国際協力における重要な切り札となります。我が国が世界の中で今後とも尊敬される国日本であり続けるため、私も、科学技術外交と科学技術・イノベーションによる科学技術立国日本の推進に全力で取り組んでいくことをお約束申し上げ、質問を終わります。

 ありがとうございました。

城内委員長 次に、吉田宣弘君。

吉田(宣)委員 おはようございます。公明党の吉田宣弘でございます。

 早速質疑に入らせていただきます。

 国連難民高等弁務官事務所、UNHCRは、十一日までに、ロシアによるウクライナ侵攻を受けてウクライナから避難した人の数が四百五十万人を超えたと明らかにしたとのことでございます。特に、ポーランドにはその半数以上の方が避難されています。

 そして、そのポーランドに林外務大臣は総理特使として訪問されました。この訪問は、国難に直面するウクライナの人々への連帯を示すため、可能な限り避難民の受入れに協力し、欧州諸国の負担を共有したいとの岸田総理大臣の決意の表れであり、国際社会から高く評価されていることを確信いたします。

 林外務大臣の訪問から一週間以上経過しましたので、事務方において訪問における記録の整理などは整っているかと推察いたしますので、外務省政府参考人にお聞きをしたいと思います。

 今回のポーランド訪問について、外務省はどのような情報を収集できたのかについてお聞かせください。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 林外務大臣は、三日間のポーランド滞在中、ワルシャワ市内の避難民施設やウクライナとの国境地帯の訪問、避難民支援に取り組む国際機関やNGOとの意見交換、大使館に設置されました避難民支援チームの激励、そして、ウクライナ政府やポーランド政府要人との会談等の日程を過ごされたところでございます。これらの機会を通じまして、主にウクライナ避難民の置かれた状況、現地のニーズ、受入れに係る課題等について把握することができたものと考えております。

 避難民施設につきましては、林外務大臣、ワルシャワ市内の避難民施設を訪問されまして、この施設は元々大型の展示場施設でございましたけれども、約二千五百人が滞在していらっしゃいました。大きなホールに数百人ずつが分散して滞在しておりまして、避難民の九割近くが女性と子供ということでございました。多くの避難民の方々、ここに長期滞在するというよりも、受入れの意思を表明している地方の自治体に移動するまでの一定期間、滞在しているとのことでございます。

 この施設の中には、国内外への移動、医療、就労支援、教育など、それぞれの方々の希望ごとの窓口や、また、子供がくつろげるようなプレールーム、専門家による心理カウンセリングのための部屋などが設置されておりました。特に、九割近くが女性と子供であるということで、子供の心理的ケア、そして、お母さん、母親の就労支援の重要性、こういったところに配慮をしている様子がうかがわれました。医療相談の窓口には、お医者さんの数も十分配置されていたということです。

 総じて申し上げれば、ポーランド政府として、自治体や企業、市民団体、多くのボランティアの方々などと連携して、きめ細やかな受入れ支援の対応を行っていたものと受け止めているところでございます。

吉田(宣)委員 御答弁ありがとうございます。

 避難者の九割近くが女性と子供とのことでございましたけれども、その女性や子供に寄り添うような施設であるというふうなことが聞き取れたかと思います。

 そこで、私、一つ心配しておりますのは、避難施設の衛生環境でございます。世界はコロナ禍でございますが、多くの人が限りある空間に、長期間ということではないかもしれませんが、一定期間にわたり共存をするという場合、感染症への備えが十分であるか、心配いたします。外務省の認識する情報についてお聞かせいただきたく存じます。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど御説明申し上げたところでもございますけれども、ポーランド政府として、自治体や企業、市民団体、多くのボランティアの方々と連携してきめ細やかな避難民支援策を提供しておりまして、避難民施設の衛生環境の維持につきましても、十分な数の医師、お医者さんを確保して相談や助言に当たるなど、適切に対応するべく最大限の努力、配慮を行っていると受け止めたところでございます。

吉田(宣)委員 お医者さんも十分配置されているということでございまして、少し安心いたしました。

 次に、法務省にお聞きいたします。

 林外務大臣には津島法務副大臣も同行されておられます。今外務省からの説明で、子供用のプレールームや心理カウンセリングルームの設置、そして医療、就労支援、お母さんの就労支援、また教育など、個々人の希望ごとの窓口の設置などの御説明がありまして、非常にきめ細やかな配慮であると存じます。

 そして、日本もウクライナ避難民を受け入れてきました。四月十一日時点で五百三十八人とお聞きをしています。この受入れについて、国際社会も日本に対して高く評価していることだと確信をいたします。もちろん、日本国民も支持していると確信いたします。ただし、どのように受け入れるのかという点は、国際社会からも日本国民からも、その期待に沿うような受入れでないとならないというふうに存じます。

 そこで、今外務省から説明があった避難民施設の機能的情報を参考に、受け入れる法務省としてどのような取組を行おうとしているかについてお聞かせください。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 ウクライナから我が国に避難してこられた方々に対しては、一時滞在場所の提供や生活費等の支援にとどまらず、特に、避難民の多くが女性や子供でいらっしゃることを踏まえ、カウンセリング等の心のケアを含む、医療や健康、子供の教育等についての支援が重要と認識しております。

 この点につきましては、先日、ポーランドを訪問してワルシャワの避難民施設等を視察された津島法務副大臣からも、法務省として、ウクライナから避難された方々に対し、ほっとできる、心のこもった支援を検討するよう指示を受けたところでございます。

 ポーランドにおける取組も参考にしながら、法務省としても、避難された方々のニーズに沿った必要な支援を速やかに提供できるよう、しっかりと対応してまいりたいと存じます。

吉田(宣)委員 本当によろしくお願いいたします。過去に様々報道されるような事案もありましたものですから、是非、人道的な立場に立った受入れ、そういったものに関して努めていただきたく存じます。

 次に、支援物資についてお聞きをしたいと思います。

 まず、内閣府にお聞きをいたします。

 内閣府として、国際平和協力法に基づきどのような支援を行っているのかについて御説明願いたく存じます。

久島政府参考人 ウクライナ及び周辺国、すなわち、ポーランド、ルーマニア、モルドバ、ハンガリー、スロバキアにおきまして人道的な国際救援活動を行っておりますUNHCRに対しまして、国際平和協力法に基づいて、先方、UNHCR側から依頼のありました物資、具体的には、毛布五千枚、ビニールシート四千五百枚、スリーピングマット八千五百枚を提供することを決定したところでございます。

吉田(宣)委員 今御説明があった支援物資でございますけれども、これはUNHCRから依頼があったということでございますが、そのほかにUNHCRから物資の依頼等はなかったのでしょうか。お聞かせいただければと思います。

久島政府参考人 今回、UNHCRから物資の提供の依頼がありましたのは、先ほど申し上げた毛布とビニールシートとスリーピングマットのみでございます。

吉田(宣)委員 御答弁ありがとうございます。

 支援物資について、もう少し深く見たいと思います。

 先ほど外務省から御答弁いただいた、避難民施設の衛生環境は非常に良好で、医師も足りているという御説明でございましたけれども、全ての避難民施設がそうであるとは限らないのではないかというふうな思いもいたします。この点、岸田総理は、医療保健等の分野で追加の支援を表明されておられます。

 この関連で、避難民施設の衛生環境維持のために、感染症対策として、例えば、消毒薬であったりとか、避難民の日々の健康管理のための体温計や血圧計、また日常のお薬など、これは支援されておられないのでしょうか。先ほどの内閣府からの御答弁では、UNHCRからそういった依頼は一応ないということでございますけれども、今申し上げたような消毒薬とか体温計とか血圧計、日常のお薬などについての支援はなされていないのかについて、外務省から答弁をいただきたく存じます。

植野政府参考人 お答え申し上げます。

 これまで日本政府が決定した合計二億ドルのウクライナ及び周辺国における避難民向けの緊急人道支援ですけれども、これは、国際機関や日本のNGOを通じて、保健医療分野あるいは水、衛生分野で支援を実施するものでございますけれども、こうした支援活動の中には、委員が今御指摘になった感染症を予防するための消毒液を含む衛生用品を避難民の方々に直接配布する、あるいは、避難施設で活動している医療チーム、これは各国の、例えば赤十字の医療チームが活動していると聞いておりますけれども、この医療チームに対して、体温計、血圧計、それから日常使われるであろう医薬品をお渡しして必要な人に使っていただく、こういうような中身も含まれております。

 今後とも、国際社会と連携しながら、現地のニーズを的確に把握して、ウクライナの人々に寄り添った支援を実施していきたいと思いますけれども、今委員が御指摘された感染症対策とかあるいは日常の健康管理の重要性ということもよく考えて、そうした視点も忘れずに、具体的な支援を考えていきたいと思います。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 避難民の方に寄り添う国際支援、本当に是非とも継続をよろしくお願いしたいと思います。

 次に、法務省にお伺いいたします。

 日本にウクライナ避難民を受け入れる事業についての予算でございますけれども、先日御説明いただいたところによると、五億二千万円、財源は予備費であるとお聞きをいたしました。

 では、その予算はいつぐらいまでもつのか、それを非常に心配しておりまして、使い切った場合に支援継続に対する財源をどのように考えているのかについてお聞きしたく存じます。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 令和三年度にウクライナ避難民受入れ支援事業の委託に係る経費として予備費の使用が決定された五億二千万円は、ウクライナから避難された方々が当面の間、本邦で生活していく上で必要となる経費でございます。今後のウクライナの情勢により、本邦滞在が長期化する場合や、日本への避難を希望するウクライナの方が急増するような場合などには、必要な対応を行ってまいりたいと存じます。

 なお、ウクライナから避難された方々への支援につきましては、御指摘の財源の点も含めまして、引き続き政府全体として検討がなされるべきものであると認識しております。

吉田(宣)委員 今、当面の間というふうな言葉もありましたとおり、この財源で当面の間、何とかするというふうなことでございますけれども、避難民の方が日本に滞在される期間というのは恐らく長期化するというふうに私は推測をしておりますので、状況をしっかり注視していただきながら、長期的な視点も視野に入れて、日本に来られたウクライナ避難民の方が安心して過ごせるような、そういった施策は是非とも継続していただきたいと思います。

 最後の質問になります。林外務大臣にお聞きをいたします。

 林外務大臣のNATO外相会合出席について質問いたします。

 NATO加盟国でない日本の外務大臣がNATO外相会合に参加するのは初めてのことだというふうにお聞きをしております。そこで、今般、日本国として、林外務大臣がNATO外相会合に初めて参加した理由についてお聞かせいただければと存じます。

林国務大臣 今回のNATOの外相会合のパートナーセッションには、NATOからの招待を受けまして、日本の外務大臣としては史上初めて出席をいたしました。

 NATOの場で現下のウクライナ情勢への対応における連携を確認いたしまして、特に、欧州とアジアの安全保障を切り離して論じることはできない、この点を私から強く強調させていただき、参加国の皆様と認識を共有できたということは大変有意義であったと考えております。

 また、NATOのアジア太平洋のパートナーとの関係強化への取組を歓迎し、日・NATO間における具体的協力の推進を確認できたことも有意義であったと考えます。

 さらに、全てのG7参加国を含め、NATOメンバー三十か国の外相が一堂に会する機会を捉えて、米国を始めとする各国の外相との間で、ロシアによる侵略と国際社会の対応の様々な側面について、それぞれ有意義な意見交換を実施することができたところでございます。

吉田(宣)委員 時間が参りましたので、質問を終わります。ありがとうございました。

城内委員長 次に、岡田克也君。

岡田委員 立憲民主党の岡田克也です。

 今日は、事前協議制度について、幾つか論点を絞って議論したいというふうに思っております。

 一九六〇年、日米安保条約締結時の岸・ハーター交換公文、ここでは三つのことを事前協議の対象にしております。米軍の日本への配置における重要な変更、装備における重要な変更、日本国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用。

 こういった事前協議制度、とりわけ、最後に申し上げた戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用、どういう政策的意図を持ってこういったことが事前協議の対象になっているのか、大臣の見解を聞きたいと思います。

林国務大臣 日米安保条約上の事前協議制度でございますが、一九六〇年の岸・ハーター交換公文に基づくものでございます。

 同制度の意義でございますが、日米安保条約改定時の提案趣旨説明におきまして、当時の藤山外務大臣から、「特に重要な事項、すなわち、米軍の配置及び装備の重要な変更並びに戦闘作戦行動のための施設・区域の使用については、別に交換公文をもって、事前の協議にかからしめることとした」と説明したとおりでございます。

 すなわち、事前協議とは、我が国の領域にある米軍が、我が国の意思に反して一定の行動を取ることのないように義務づけられているものだと承知をしております。

岡田委員 在日米軍基地の提供、安保条約六条、それから米軍による共同防衛義務、五条、この二つが日米安保条約の本質的な部分だというふうに私は理解をいたしますが、仮に直接出撃についての事前協議があった場合に、これに同意しないというのは、極めて私は例外的な場合にならざるを得ないんじゃないかというふうに思うわけです。

 基地の提供ということを共同防衛義務の見返り、いわば見返りとして基地の提供をしているときに、大事なときにそれが使えませんよというのは、これは非常に、日米同盟という観点から見ると、例外的な限られた場合にしかできないんじゃないかというふうに思うんですが、大臣の見解をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 仮定の質問にお答えすることは難しいとは思いますけれども、事前協議に際しては、我が国の国益確保の見地から、具体的事案に即して我が国が自主的に判断をして諾否の決定をするということだと考えております。

岡田委員 ちょっと観点を変えて質問したいと思いますが、日本の周辺で有事が発生した場合に、例えば重要影響事態とか存立危機事態、私は存立危機事態については大きな疑念を持っていますが、今の制度に即して言うと、重要影響事態や存立危機事態の認定というものがなされる場合があります。その重要影響事態や存立危機事態の認定よりも早いタイミングで、戦闘作戦行動のための在日米軍基地を使用するための事前協議がなされる、あるいは、日本政府としてその決断を迫られるということは当然起こり得ると思いますが、いかがですか。

林国務大臣 これも仮定の質問にお答えすることは差し控えたいというふうに思いますが、個別具体的な状況においてそれぞれ判断されるべき事柄で、どちらが先かというのも一概に申し上げることは困難であると考えます。

 まあ、全くそういう可能性がないということは言い切れないというふうに思います。

岡田委員 どちらもあり得るということだと思うんですね。

 ですから、日本国政府として重要影響事態や存立危機事態の認定という大きな判断をする、その手前に基地使用の事前協議という大きな判断を迫られる場合があるということだと思います。よく、だから、周辺有事について重要影響事態とか存立危機事態の認定が議論されるわけですけれども、実は基地使用の事前協議というものが一番最初に来る可能性があって、それは日本政府として非常に重大な決断を迫られるということだと思います。

 大臣に確認したいと思いますが、もし在日米軍基地からの直接出撃というものがなされた場合に、例えば航空部隊による相手国に対する攻撃、日本の基地から飛び立って攻撃するというようなことがなされた場合に、当然これは、相手国から当該基地に対する反撃とか攻撃、あるいは基地以外の日本に対する武力行使ということにつながる可能性があるということはお認めになりますね。

林国務大臣 これも、仮定の御質問でございますので、お答えすることは差し控えたいと思います。

 一般論として申し上げますと、事前協議への諾否と日本に対する武力攻撃の有無の間の因果関係について一概に申し上げるというのは大変困難であるというふうに考えております。

岡田委員 因果関係といいますか、当然、今、日本でも敵基地攻撃能力の議論、自民党の中でも大分やっておられると思いますが、在日米軍基地から攻撃をしてくれば、やはり、そこに対する反撃とか、あるいは、基地だけじゃなくてそれ以外の日本に対する攻撃とか、そういうことは可能性としてはあり得るということだと思います。

 そこで、先ほど大臣も答弁されましたが、事前協議について、例えば、岸田外務大臣の時代に、国益そして国民の安全という観点から、具体的事実に即して自主的に判断していきたいというふうに答弁されております。これは岸田外務大臣だけではなくて、たしか安倍総理も同様の発言をしておられたのではないかというふうに思います。

 ここで、国益そして国民の安全の観点というのは、もう少し具体的に言うとどういうことなんでしょうか。

林国務大臣 事前協議に際しましては、我が国の国益確保の見地から、具体的事案に即して我が国が自主的に判断して諾否の決定をするということでございます。

 日本の安全、これを国益というときには念頭に置いておるわけでございまして、それを確保する見地から判断を行うということでございます。

 その際に、極東の安全なくしては我が国の安全を十分確保し得ない、こういう認識の下に、極東の安全に関係する事態を常に我が国自身の安全との関連において判断し、我が国の安全に直接また極めて密接な関係を有するかどうかという見地から対処するというのが従来からの政府の立場でございます。

岡田委員 今、極東という懐かしい言葉を大臣が使われましたけれども、ただ、今、在日米軍基地というのは、狭い意味では極東ということかもしれませんが、米軍の活動範囲は広がっていて、直接出撃攻撃というのはもう少し幅広い範囲でもなされる可能性はあるわけですね、現に、ベトナム戦争のときには沖縄の基地から爆撃機が飛び立っていったわけですから。そういう意味で、私は日本の周辺という言い方をしたわけですけれども、いずれにしても、先ほど言いましたように、その反撃というリスクも抱えながら大きな政治判断をしなければいけないということだと思うんです。

 イエスと言ったことによって被るリスクと、それから、ノーと言ったことによって同盟関係が決定的な危機に至るというふうに思いますので、そのマイナスと、そういうものを判断していくということだと私は思いますが、もう少し丁寧に言うとすると、例えば、米軍が攻撃を行うことの必要性と正当性、在日米軍基地を使わずに目的を達成できる可能性、攻撃が行われることにより日本が受ける影響、とりわけ日本が攻撃を受ける可能性、そして日米同盟に及ぼす影響、そういったことが私は判断要素として考えられるんじゃないかというふうに思うわけですが、もしこれにつけ加えるべきものがあれば、大臣の御見解を聞かせていただきたいと思います。

 いずれにしても、国益そして国民の安全という言葉だけで判断をできるはずはなく、それから、国民にとっても非常に大きな、そのことによって攻撃を受けたり日米同盟がおかしくなったりという大きな判断ですから、もう少し丁寧に御説明されるべきじゃないかと思って私は申し上げたんですが、いかがでしょうか。

林国務大臣 今、岡田委員から四点要素を挙げていただきましたが、まさに、そうした点も含めて、国益確保の見地から、具体的事案に即して我が国が自主的に判断して諾否の決定をするということであろうか、こういうふうに考えております。

岡田委員 そうすると、私の申し上げた四点は、そこは大臣も同じような考え方であるという認識でよろしいですか。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、岡田先生からあった御指摘の点も含めて、国益確保の見地から、これは具体的事案に即して我が国が自主的に判断をするということだと思います。その際に、今先生がおっしゃったようなことというものは、この検討に当たって、判断に当たっての項目には当然入ってくるだろうというふうに考えております。

岡田委員 私は、もう少し判断の基準をはっきりとしておかないと、内々そういうものはお持ちかもしれませんが、いざ協議を求められたときに、政府の中で判断するということになると思うんですが、基準がはっきりしていなければ、議論は錯綜してしまう、結論が出ない、あるいは遅れるということになりかねないと思いますし、国民に対しても、やはりしっかりと、どういうリスクがあるかということは事前に説明して理解を求めておかないと、政府の下す決断に対しての理解はもらえないと私は思いますので、もう少しここのところは丁寧に政府として議論が行われるべきじゃないか、そして国民に対して説明されるべきじゃないかということを申し上げておきたいと思います。

 年末に国家安全保障戦略の見直しというものが行われます。ここでも、重要影響事態と存立危機事態だけではなくて、この戦闘作戦行動のための事前協議への対応というのはやはり大きなテーマだと思うんですね、最初にこれが来ちゃう可能性があるわけですから。そういう意味では、しっかり政府の中で議論されるべきではないかというふうに思っております。

 国家安全保障戦略の見直しの議論というのはもう始まっていますけれども、この事前協議制度についてもう少し、それも含めた議論というものが、どこまでそれが表に出されるかは別にして、なされるという理解でよろしいでしょうか。

林国務大臣 新たな国家安全保障戦略等の策定については、総理からも指示がありまして、関係閣僚の間で議論が行われておるところでございます。

 外務省としても、関係省庁と協力しながら、今委員からお話のあったようなことも含めて、様々な論点、これを検討していかなければならないと考えております。

岡田委員 事前協議制度についても御議論いただけるというふうに理解をいたしました。

 それでは、この事前協議制度の手続についてちょっと議論したいというふうに思っております。

 先ほど来の議論で、事前協議への対応というのは日本政府にとって非常に重要なことだということは確認されたというふうに思うんですが、この事前協議制度、これはアメリカから当然協議がなされるわけですが、日本政府における決定権者というのは誰になるんでしょうか。

林国務大臣 事前協議に関する事項でございますが、これは行政府の専権に属するものであり、事前協議の諾否の決定、これは政府の責任において行われるわけでございます。

 こうした前提の下で、事前協議を受けた場合は、原則として閣議に諮って決定するということになっておりますが、緊急閣議も招集し得ないような場合には、内閣総理大臣と外務大臣、防衛大臣というような限られた者の協議により対応することも排除されないというのが従来からの政府の立場でございます。

 その上で、行政権を担う内閣の長である内閣総理大臣が事前協議の諾否を決定する最終的責任者であるという政府の考えに変わりはないところでございます。

岡田委員 事前協議の諾否を決定する最終的な責任者は内閣総理大臣であるというのは、政府の見解、質問主意書などでも示されております。

 ただ、今大臣も言われたんですが、事前協議というのは条約の実施に当たるから外務大臣の権限だ、権限が外務大臣にあるんだ、そういう政府答弁もありますね。外務大臣に権限があるということは、外務大臣が最終的に決定するということだと思うんですよ。

 だから、内閣総理大臣が最終決定権者であるという見解と外務大臣の権限であるというのは明らかに矛盾しているわけですが、どちらが正しいんですか。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、事前協議に関する事項は行政府の専権に属しております。

 憲法七十二条でございますが、「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。」と規定をしておりますので、そういった意味で、最終的な責任者は総理だということでございます。

 事柄の重要性に鑑みて、原則として閣議にかけ、その余裕がない場合でも総理大臣及び関係大臣と相談すべきことは当然だと考えております。

 おっしゃるように、外務省は、設置法上、条約その他の国際約束の解釈及び実施に関することをつかさどるというふうになっておりますが、まさに、事柄の重要性に鑑みて、原則として閣議にかけてということですし、余裕がない場合においても総理大臣及び場合により関係大臣と相談すべきということは当然であると考えております。

岡田委員 実は、一九九七年二月五日の予算委員会で、私、この件を当時の橋本総理と議論をしております。今から二十五年前ということになります。

 そこで、橋本総理、池田外務大臣、ちょっと答弁が混乱したんですが、最終的には大森法制局長官が出てこられて、今大臣が言われたのとほぼ同様の答弁をされたわけですね。すなわち、事前協議は条約の実施に当たって、権限は外務大臣にあるというふうに大森長官は言われました。しかし、我が国にとって非常に重要な事項であり、閣議決定、了解が運用として相当である、閣議決定ができない緊急時には総理と相談することが法律上、憲法上の要請として望ましい、そういう趣旨のことを大森長官は答弁をされました。

 私、この議論をしていて、これは政府としての運用を述べられたんだけれども、しかし、法的根拠はないんじゃないかと。条約の実施ということで外務大臣だというのは、それはそれで分かりますけれども、我が国にとって非常に重要な事項であり、閣議決定、了解が運用として相当と。でも、それに、基になる法律の規定というのはないですよね。こんな大事なことが法的な規定がないままに運用でやっているということは私は間違いだと思うんですが、いかがですか。

林国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございますが、事前協議自体は、日米安保条約第六条とその実施に関する岸・ハーター公文に基づいて行われるということでございます。

 設置法上の外務省の権限、また、その長たる外務大臣の権限は先ほど申し上げたとおりでございますが、大変重要な事柄、事柄の重要性に鑑みて閣議にかけて、その余裕がない場合においても、内閣総理大臣、場合により関係大臣と相談すべき、このことは当然であるというふうに考えております。

 先ほど申し上げました憲法の条文からも、最終的に、行政権を担う内閣の長である内閣総理大臣が事前協議の諾否を決定するという最終的責任者であるというふうに考えておるところでございます。

岡田委員 同じ答弁を大臣は繰り返されるんですけれども、私は、なぜこれは規定がないのかなということを考えてみたときに、これは最近思うようになったんですが、やはり日米の密約の存在というものが非常に影響しているんじゃないかというふうに思うわけですね。

 例えば、この一九六〇年のときには、朝鮮半島有事のときに、事前協議をせずに、経ないで直接出撃できる、そういう密約があった。これは、藤山外務大臣とマッカーサー駐日大使との間で作成された非公表の密約、朝鮮議事録、その存在は長らく政府は認めてこなかったんだけれども、密約調査の中で、そういうものがあるということが明らかになりました。

 だから、いざというときに、一九六〇年段階で見れば、やはり朝鮮半島というのは極東あるいは日本周辺で何か問題が起こり得る可能性が一番高いところでしたから、せっかく岸・ハーター交換公文で事前協議制度をつくっても、はなから、朝鮮半島有事のときはそれは機能しませんよというふうになっていたわけですね。

 そういうものがあるということになると、やはり法律に基づいて、この事前協議制度についての国内法を整備すると、法律を作っちゃうと、もうそれはやらざるを得ませんから、そういう意味で、密約が存在したことが国内法の手続を避けることになったんじゃないかと私は想像するんですが、いかがですか。

林国務大臣 政府といたしまして、事前協議の手続について、朝鮮半島有事の際の戦闘作戦行動に関する事前協議への対応に関する議論と結びつけて理解しているものではございません。

 いずれにしても、政府としては、現在の事前協議制度に問題があるというふうには考えておらないところでございます。

岡田委員 もう密約は明らかになっていますから、そして今はもう有効ではないということになっているので、今具体的にこれは影響するわけじゃないんですが、恐らく一九六〇年段階ではこのことがかなり影響したのかなというふうに私は思っております。

 そこで、先ほど、大臣はるる同じことを述べられたんですが、行政府の専権だという言い方もされました。しかし、行政府の専権かどうか、それは法律で決めることでありまして、違う決め方もできるはずですね。

 例えば、重要影響事態、存立危機事態、武力攻撃事態もそうですが、そこでは、内閣総理大臣は基本計画を作る、重要影響事態ですね、存立危機事態は対処基本方針を作る、そしてそれを閣議決定する。それに対して国会は承認をする、事前ないしは事後。最終的には国会に報告する。そういう手続が、一連のものが決められております。それはやはり、重要影響事態とか存立危機事態、武力攻撃事態、そこの国民に与える影響の大きさということに鑑みて、そういう規定が置かれているんだというふうに思うんですね。

 そうだとしたら、事前協議だって同じじゃないですか。やはりそういった国会との関係、それから、事前、事後の承認とか、国会への報告とか、そもそも、閣議決定をしなければいけないと法律で重要影響事態や存立危機事態は書いていますよね。あるいは、NSC、国家安全保障会議の役割の中にもそういうものが書いてある。でも、事前協議は書いていない。

 そういうところは、明らかに私は法の不備だと思うんですが、いかがですか。

林国務大臣 政府といたしましては、現在の事前協議制度に問題があるとは考えておらないところでございまして、同制度を見直す必要があるというふうには考えておらないところでございます。

岡田委員 大臣、結論だけじゃなくて理由を述べてください。

 じゃ、どうして、重要影響事態とか、国会の関与とか、それから国家安全保障会議にかけるとか、そういうことが法律で書いてあるんですか。法律で書いてあるのにはそれなりの意味があるわけです。政府の中でも、閣議をやりなさいとか、国家安全保障会議にかけなさいとか、そういうことが法律で書いてある。国会との関係も書いてある。

 それが全部すっ飛んでいるということについて、私は、中身がおかしいと思いますし、それから、法律が全く手当てされていないのもおかしいというふうに思いますが、おかしくないという結論じゃなくて理由を述べてください。

林国務大臣 武力攻撃事態等や存立危機事態の認定と事前協議のいずれも、今委員がおっしゃったように、我が国の安全保障にとって重要な事柄ではあると考えますが、武力攻撃事態等や存立危機事態の認定と、在日米軍の施設・区域の使用に関する事前協議への対応というもの、これはおのずから異なるものでございますので、単純な比較は困難であるというふうに考えております。

岡田委員 おのずから異なる理由を述べてください。

林国務大臣 これは、申し上げましたように、武力攻撃事態等や存立危機事態等の認定と、それから施設・区域の使用に関する事前協議、これは事象として別の事柄でございますので、対応もおのずから異なるというふうに考えております。

岡田委員 特に、この三つの岸・ハーター公文の類型の中での日本の基地からの戦闘作戦行動というのは、これは有事の話ですから、日本の有事じゃないですよ、日本の周りで有事があって、それへの対応ということですから、最初に議論したように、重要影響事態とか、あるいは場合によっては存立危機事態とか、これは順番がどうなるかもいろいろなケースが考えられますが、これは一体の話ですよね。

 例えば、事前協議が最初に来るということになると、ほかの重要影響事態や存立危機事態では国会との関係とか政府の中の適正手続というのが規定されているのに、事前協議についてはそういうものが全部なくて運用でやっていますというのは、私は、明らかにおかしいし、それは国民に対してきちっと説明をする機会を奪っているわけですから非常に問題があると思いますが、いかがですか。

林国務大臣 事前協議に関する事項は、先ほど来申し上げておりますように、日米安保条約第六条とその実施に関する岸・ハーター交換公文という国際約束の実施でございまして、本来、行政府の専権に属するものでありまして、国会の承認を必要とするものではないと考えます。

 しかしながら、事前協議があった場合の状況いかんによっては政府が国会に報告するということはあり得るのでありまして、いかなる場合に報告をするのか、その時期はいつか等については、政府がその時点における諸般の状況を総合的に判断した上で、政府の責任において決定をすることになるというふうに考えております。

岡田委員 国際約束の実施だから国内的な手続はなしでいいというふうに、大臣はそこまでおっしゃっていないですよね、例えば、先ほど来から、少なくとも閣議が必要だとか、そういったことをおっしゃっているわけですから。だから、国際約束の実施だから国内的な手続は要らないということには、絶対、論理的にはならないと思うんですよね。

 そこで、例えば、重要影響事態と比べれば、より深刻な国内にとって影響が出るかもしれない、反撃を食らうかもしれない、そういう重要な判断について、国会に対しても、それから閣内においても、きちっとした規定がないままに運用だけで手続が決まってしまうというのは、私は全くおかしなことだと思うんですが、いかがですか。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、本来、行政府の専権に属するものであり、国会の承認を必要とするものではございませんが、しかし、状況によっては国会に報告することはあり得る、そういうふうに申し上げたところでございます。

 今委員がるるおっしゃったように、事前協議の対象となる事項、これは国民あるいは国会にとっても重大関心事であるということから、政府は、特別の事由がない限り、事前協議の事実を事後に公表し、国会にも報告することとしておるところでございます。

岡田委員 例えば、国家安全保障会議にかけるんですか、かけないんですか。

林国務大臣 事前協議の諾否の決定につきましては、事態によっては安全保障会議に諮るということはある、この旨はこれまでも国会で述べてきたとおりでございます。

岡田委員 どうしてそれが明記されていないんですか。

林国務大臣 明記というのは、どこに明記をという意味でしょうか。

岡田委員 国家安全保障会議の権能として明記されていない。読めますよ。だけれども、はっきり書いていないじゃないですか。ほかの重要影響事態とかそういったものははっきり書いてありますよね。なぜですか。

林国務大臣 これはまた先ほどのところに戻るわけでございますが、本来は行政府の専権に属するものであり、国会の承認を必要とするものではないということが元々ございまして、ただ、先ほど申し上げましたように、状況いかんによっては政府が国会に報告することはあり得る云々申し上げたとおりでございますので、そういったことで、先ほど申し上げましたように、事態によって安全保障会議に諮ることはあるということでございます。

岡田委員 国家安全保障会議は政府の中の話ですから、国会の話じゃないですよね。だから、政府の中の手続について、国家安全保障会議は非常に重要な、基本的に閣議と並んで重要な意思決定の手続だと思うんですが、そこに明記されていないというのは非常に不自然な感じがいたしますが、そのことを聞いているわけです。

林国務大臣 先ほど、私も、事前協議の対象となる事項は、国民あるいは国会にとっても重大関心事であるということから、政府は、特別の事由がない限り、事前協議の事実を事後に公表し、国会にも報告することとしておる、こういうふうに申し上げたところでございます。

 委員も御案内だと思いますけれども、いろいろな仮定の事態を想定して、何がこれに、どういう事象の場合はこうだということ、これを確定的、網羅的に述べるということは難しいというふうに思っておるところでございます。

 そうした意味で、事前協議の諾否の決定により、事態によっては安全保障会議に諮ることはあるということを国会で述べてきたところでございます。

岡田委員 日本の基地から、在日米軍基地から飛び立って、そして攻撃するということの諾否を求める事前協議に対して、国家安全保障会議にかけないということはあり得るんですか。私はちょっと理解できないんですが。

林国務大臣 先ほどの御答弁で申し上げたとおり、事前協議の対象となる事項、これは国民あるいは国会にとっても重大関心事であることから、政府は、特別の事由がない限り、事前協議の事実を事後に公表し、国会にも報告しているということでございます。

 そういった意味で、特段の事由、特別の事由ということでございますが、仮定の事態を想定して、これに該当することとなるか、あらかじめ確定的、網羅的に述べることは難しいというふうに考えております。

岡田委員 議論が全く深まらないんですけれども、大臣、おかしいと思いませんか。戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用、このときの事前協議がなされるというのは非常に大きな話ですよね。政府として、私、重要影響事態の認定、決定よりも、はるかに重い判断を求められるんだと思うんですよ、多くの場合は。

 そういうことについて、国内規定がない、政府の中でどういうふうにこれを決定するのかの規定もない。国会に対しても、多くは事後になるんだろうと思いますが、いずれにしろ、ほかの重要影響事態等で置かれている事前、事後の国会の承認あるいは国会への報告、こういうものが規定されていないというのは、やはり非常にバランスを欠いているんじゃないですか。

林国務大臣 先ほど、特別の事由がない限りということを申し上げましたけれども、どういう事態がこれに当たるかということを事前に確定的、網羅的に述べることはできないというふうに考えております。

 事前協議の事実が、これは一般論でございますが、公表されるということになりますと、米国の軍事機密が直接間接に明らかとなり、我が国自身の安全保障にも重大な影響を与える場合等が特別の事由に該当することとなると考えられるわけでございますが、こういう場合には、国益上の観点から、事前協議の事実、これを例えば国会に報告しないことがあるということについては御理解を賜りたいと考えておりますし、手続上の明記ということが、先ほどから委員からお尋ねがありますけれども、そうした意味で、事前協議の諾否の決定につきましても、事前に国家安全保障会議に諮ることはあり得るというふうに申し上げてきているところでございます。

岡田委員 非常に曖昧な答弁で、私は納得いたしませんので、また機会を見て議論したいと思います。

 最初に戻りますが、やはり、戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用というのは、その事前協議というのは、非常にこれは重い話であります。私は、政府はそのことをちゃんと国民にも説明すべきだと思います。

 そして、これを安易にノーと言うことは恐らくできないんだと思うんですね。日米同盟というのは、先ほど言いました五条と六条だということになると、やはりいざというときに日本を守ってもらうことの見返りとして基地を提供しているということですから、その基地がいざ米軍が使おうと思ったときに使えないということになると、別に直接出撃でなければ使えるわけですけれども、しかし、かなり制約されるということになると、これはやはり同盟の本質に関わる問題。だから、非常に政府としては狭い範囲の中で重大な決断を迫られるということだと思うんですね。

 そういうことをきちっと国民に私は説明しておく必要があるんじゃないかというふうに思います。これから年内、国家戦略について御議論される中でも、こういう説明が、私は、どこかでなされるか、あるいは最終的な成果物にそれが盛り込まれる必要があるというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、年末に向けて議論を進めております三文書の中でもこういう議論をやっていくということは先ほど御答弁したとおりでございますが、先ほど一般論として述べましたように、事前協議につきましてやはり考慮しておかなければなりませんのは、米国の軍事機密が直接間接に事前に明らかになって、我が国自身の安全保障にも重大な影響を与える場合というようなことも念頭に置いて議論をしていかなければならないというふうに考えております。

岡田委員 時間が中途半端になりましたので、ちょっと頭出しだけしておきたいと思いますが、この事前協議の三つの類型の中の一つ、重要な装備の変更ということについて、これも密約調査の結果、討議の記録という文書の存在が明らかになりました。この討議の記録、英文だったんですけれども、ザ・イントロダクション・イントゥー・ジャパン・オブ・ニュークリア・ウェポンズという、ここのニュークリア・ウェポンズ、この訳ですが、私は核兵器と訳すべきだと思うんですが、そこはそれでよろしいですね。

林国務大臣 今、岡田委員がおっしゃった討議の記録については、いわゆる密約問題に関する外務省の調査において、その写しと思われる文書の英文のみが発見されたものでございまして、和文が発見されていないということでございます。

 その上で申し上げますと、今お話のあったニュークリア・ウェポンズの和訳については、当該用語が使用される前後の文脈等にもよると思いますが、一般的には核兵器と訳すことが可能だと考えております。

岡田委員 実は、この討議の記録が出てくるまでの外務省の国会における説明は、藤山・マッカーサー口頭了解というものがありますという説明だったんですね。一九六八年四月に国会にそれを文書で提出をされています、それまでは国会答弁だけだったんですけれども。

 ここで書いてあるのは、装備における重要な変更というのは、核弾頭及び中長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設というふうに文書で示されているんですね。

 ニュークリア・ウェポンズというのは、なぜ核弾頭というふうに訳されていたんでしょうか。

林国務大臣 今お尋ねの装備における重要な変更は、今お触れいただいた藤山・マッカーサー口頭了解によって、核弾頭及び中長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設を意味しております。

 これは、アメリカが日本政府の意思に反して核兵器の持込みを行うことがないようにするためにできた取決めでございまして、その趣旨に照らしても、中長距離ミサイルとは、あくまでも核専用の中長距離ミサイルというものを念頭に置いて了解をされております。核、非核両用のミサイルは、核弾頭を装備した場合には核兵器でありますが、核弾頭を装着しない場合には非核兵器であり、したがって、核弾頭を装着していない核、非核両用のミサイルの持込みは事前協議の対象ではないということでございます。

 今お話がありましたように、藤山・マッカーサー口頭了解については、その後、その内容を整理した上で、一九七五年に米国政府との間で、核弾頭、ニュークリア・ウォーヘッズとの用語を含む英文も文書で確認し、そのことを当時の国会でも御説明しているというふうに承知をしております。

岡田委員 もう時間が来ましたので途中で終わりますが、大臣、多分認識が間違っておられると思うんですが、藤山・マッカーサー口頭了解というものは実は、外務省が国会で説明してきましたが、これは、こういうものは存在しなかったんです。存在したのは、先ほど申し上げた討議の記録というのが存在していて、それをはしょって、討議の記録を隠すという目的もあったんだと思いますが、はしょって一部だけ、国会で藤山・マッカーサー口頭了解がありますと説明してきたのが外務省であって、実はそれはそうじゃなかったんだということが、密約調査の結果、明らかになったと私は理解しているんですよ。

 だから、ある意味ではこれはフェイクだったということで、正しいのは討議の記録、それをつまみ食いして、外務省は、あたかも存在するように、藤山・マッカーサー口頭了解というのが存在するように言ってきたということだと私は理解しております。

 続きは、また次回やりたいと思います。

城内委員長 次に、松原仁君。

松原委員 従来の質問の続きからスタートしたいと思っておりますが、まず、日本大使館館員の拘束について、その後、進展及び謝罪があったかをお伺いいたします。

實生政府参考人 お答えいたします。

 北京におけます日本大使館員の拘束事案について、現在までに中国側から謝罪、再発防止のための説明等はなされておりません。これは大変遺憾であり、我が方として引き続き謝罪と再発防止を強く求めている、こういうことであります。

松原委員 この間、日本側からは中国政府に対して、謝罪をするべきだというふうな申入れは、その後、していますか。

實生政府参考人 お答えいたします。

 個別具体的なことというのはなかなか、いつ、どこで、誰がということは申し上げることは困難でありますが、本件についての申入れというのは、これまでもしておりますし、今後ともしていきます。

松原委員 この日本大使館の館員拘束は、日本政府としては、ウィーン条約に違反している、こういう認識ですか。

實生政府参考人 お答えいたします。

 本件は外交関係に関するウィーン条約の明白な違反であり、我が方として到底看過できず、断じて受け入れられないということで、これまでも様々な形で抗議、申入れということをしております。

松原委員 抗議が全然有効に響いていない。なぜ中国は、全然日本の抗議に耳を傾けないで、逆にいけしゃあしゃあと日本に対して、もっと大使館員を指導しろと言っているのか、こういった議論に進んでまいります。

 次に、南シナ海におけるスカボロー岩礁や南沙諸島における中国、フィリピンのあつれきというものがあって、これが仲裁裁判所に提示をされたわけでありますが、この辺の経緯を御説明いただきたい。言葉が聞こえるようにね。聞こえないから。

實生政府参考人 失礼いたしました。

 お答え申し上げます。

 御質問の件につきましては、二〇一六年七月十二日、南シナ海に関する比中の、フィリピンと中国の仲裁判断に関して、仲裁裁判所は最終判断を発出いたしました。

 仲裁裁判では、この判断では、中国による九段線に基づく主張が国連海洋法条約に反するということ、また、中国による地形の埋立てがフィリピンの主権的権利を侵害しているということなどが認定されました。

 国連海洋法条約の規定に基づき、この仲裁判断というのは最終的かつ紛争当事国を法的に拘束するものであり、当事国であるフィリピンと中国はこの判断に従う必要があります。

 仲裁判断を受け入れないといった中国の主張は、国連海洋法条約を始めとする国際法に従った紛争の平和的解決の原則に反しており、国際社会における基本的価値である法の支配を損なうものであるというふうに考えております。

 当事国がこの判断に従うことにより、南シナ海における紛争の平和的解決につながることを強く期待する、これが我が国の立場でございます。

松原委員 今お話があったように、中国による九段線に囲まれた海域の権利を中国が主張しているけれども、それは駄目だ、国際法に基づいて駄目だと仲裁裁判所が判断をした、スカボロー礁及び南沙諸島における埋立て等も駄目だ、おかしい、こういうことを仲裁裁判所は言った、こういうことであります。

 全くそれは正しい判断だと私も支持したいと思っておりますが、これに対して中国は、このような仲裁裁判所の判断は紙くずだと言っているわけでありますが、この事実関係を教えてください。

實生政府参考人 お答えいたします。

 二〇二一年の七月に、中国外交部の報道官が定例会見において、この仲裁裁判について、違法かつ無効、紙くず同様であるというような発言をしたというふうに承知しております。

松原委員 そうなんです、違法かつ無効と。

 国際社会の極めて重要な仲裁裁判所、ちょうど中国もこれは出てきたから裁判になって、彼らとしては、九段線の中国の主張は駄目よ、埋立ても駄目よ、こういう話でありますから、それに従うどころか、違法だ、紙くず同然だ、こう言った、紙くず同然だと。こんなものは認めない、南シナ海における中国の主権権益は何ら影響を受けないと言っているわけでありますが、この紙くず発言、大臣、紙くず発言をどう思いますか。

林国務大臣 これは、仲裁裁判の最終判断という、国際的な機関による最終判断でございますので、紙くずという表現はいささか不適切ではないかというふうに考えております。

松原委員 いささか不誠実というか、とんでもない発言だろうと思っておりますが。

 だから、私が思うには、この仲裁裁判所の正式な判断、今外務省の政府参考人からも話がありましたが、これはもう最終的な判断だと。それを紙くずだと言うわけですから、中国の考え方からいけば、ウィーン条約に違反している日本の大使館の拘束なんというのは、全然もう紙くず以下というふうに彼らは思っているかもしれない。

 これはやはり、これからの世界を考えたときに、こういう国とどうつき合っていくか。結論としては、日米安保の強靱化等の議論になってくるのかもしれないが、この間申し上げたように、中国の幹部における日本国内の資産凍結というものも常に行える状況をつくる必要がある、G7と連携してという話に結論はなっていくんだと思いますが。

 次の質問。日本としては、二〇一四年、クリミア半島、力による支配、変更の試み、これは国際法に違反していると思いますか。

徳田政府参考人 ロシアによるクリミアの併合でございますけれども、国際法違反と認識してございます。

松原委員 今既に御答弁がありましたが、中国の南沙諸島における力による変更の試み、これは国際法違反ですか。確認。

實生政府参考人 中国が、南シナ海や、いわゆる南沙区、西沙区と言われる新たな行政区の設置を発表し、また、埋められた地形の一層の軍事化など、法の支配や開放性とは逆行する、力を背景とした一方的な現状変更及びその既成事実の試みということを一段と強めているというふうに考えております。

 この南シナ海をめぐる問題は、地域の平和と安定に直結し、南シナ海を利用する日本を含む国際社会の正当な関心事項であり、日本としても、力を背景とした一方的な現状変更の試みを深刻に懸念するとともに、南シナ海の緊張を高めるいかなる行為にも強く反対するということであります。

 その上で、先ほど、仲裁判断の、判決が出たということについて、中国がそれに従わないことというのは、まさに国際海洋法の規定にもとるものであるというふうに考えます。

松原委員 ロシアのクリミア、二〇一四年以降、これは国際法違反である、また、中国の南沙諸島の、とんでもない、紙くず発言も含めて、これは国際法違反である、こういう話だと思います。

 その上で、アメリカが、中国における、ウイグル人を強制収容所に入れるという行動を見て、これはジェノサイドだと言っているということは、これは質問に入っておりません、今日この場で申し上げている。同時に、ゼレンスキーさんは、ウクライナにおけるプーチンによる戦争犯罪、一般の無辜の市民が命を失っている、戦争犯罪であると。この戦争犯罪の更に上書きをするように、ブチャその他の地域における組織的な市民の殺害、そのときに、どうもメディアの報道によると、我々は君たちを浄化するんだと言って殺害をしたというふうなことも言われている。完全に、そうなるとすれば、これはジェノサイドになってくるわけであります。

 こういったジェノサイドも、中国にしても、そしてロシアにしても、ジェノサイドの懸念を国際社会が持つ行為を行っているということになってくるわけであります。

 こうしたことを考えたときに、国際法を無視し、力による現状の変更を行い、そして、ジェノサイドと他の国が思われるようなことを行っている国というのは、私は、これはならず者国家である、明確にならず者国家である、こう思っております。

 これは一般論でありますから、大臣、どう思っているか、お答えください。

林国務大臣 一般論として、やはり国際法は遵守されるべきものだ、こういうふうに考えております。

 中国には、責任ある行動を求めてまいらなければならないとこれまでも申してまいりましたし、今後もそういう対応をしてまいりたいと思っております。

松原委員 こういった国家というのは、一方において人権を抑圧をする、こういったことも平気で行ってくるわけであります。

 これも質問通告しておりませんから答弁者がいないかもしれませんので、答弁者がいたら答弁していただきたいんですが、中国の国家安全維持法、この維持法においては、中国国内にいない人間に対して、これは香港においてですよ、その分裂騒動を支持するような発言をした場合、それを指名手配ができる、こういうふうに書かれているというふうになっておりますが、ちょっと、通告しておりませんし、答弁者はいないかもしれませんが、誰か答弁できますか。

實生政府参考人 中国の香港国家安全維持法という法律についてでありますけれども、これは二〇二〇年の六月三十日に制定され、同日に施行をされております。

 これに基づく逮捕等の事例というものがありまして、それは二〇二〇年八月十日に香港警察が、国家法違反、これは外国勢力と結託し、国家の安全に危害を加えた罪ということで、及び詐欺共謀の容疑で、何名かの人たちを含む、メディア関係者、民主活動家というのを逮捕したというふうな旨を公表しております。

 この法律は全六十六条で構成されてございますけれども、国家分裂罪、国家政権転覆罪、テロ活動罪、外国あるいは海外勢力と結託し国家安全に危害を加える罪の四種類の犯罪行為について構成要件及び処罰等を規定している、このように承知しております。

松原委員 行政区内に住んでいない者に対しても、その人間が中国政府、特に香港に関して分裂を示唆するような行動をした場合は指名手配ができる、そういう条項はありますか。

實生政府参考人 済みません。今御質問の件については、現在、手元に詳しい情報がございませんので、ちょっとこの場でお答えが難しゅうございます。

松原委員 これは、事実として、中国の行政区の外にある、外に存在している人間に関してもそういった指名手配ができる、現実的にできるかどうかは別ですよ、指名手配ができるということが書かれているとすれば、それは我々の自由な発言すら自由にできなくなる危険を及ぼすわけでありますから、これは事実確認を是非ともお願いしたいというふうに思っております。

 私は、同時に、ロシアにおける、今回、侵略や侵攻という言葉を使ったら、これは刑務所に入れてしまう、こういった状況も一方にあるわけでありまして、こういった個人の人権を否定する国家というのは、基本的にならず者国家の要素を持っているということは明確に申し上げておきたい。

 我々は、我々の近くにならず者国家、かつて、ブッシュは三つの国をならず者国家と北朝鮮を含めて言ったわけでありますが、北朝鮮は明らかに国際法を遵守しないならず者国家であるということは、これは明確に私は考えるべきだと思う。

 大きな北朝鮮と言われるようなロシア、大きな北朝鮮と言われるような中国、今申し上げた、国際法は守らない、ジェノサイドらしきものを行っている、そして言論の自由を統制する、大きな北朝鮮のような中国やロシア、これは日本のお隣にあるわけでありますから、極めてこれは深刻に、我々はこういったものと対峙をし、つき合っていかなければいけない。あえて言うならば、ならず者国家の北朝鮮のお父さんがならず者国家のロシアであり、おじさんがならず者国家の中国、こういうふうにも言っても構わないわけであります。

 私は、そういうことを明確に認識をした上で、大臣としては、日本大使館の館員拘束の事件を含めて、今後、どんなふうにこういった国家とつき合っていくべきか、簡単に御所見をお伺いしたい。

林国務大臣 中国に対しましては、先ほど申し上げましたように、主張すべきは毅然として主張し、責任ある行動を求めてまいるということはかねがね申し上げてきているところでございます。

 また、ロシアについても、特に今回のウクライナ侵略、これはもう言語道断でございまして、ウクライナ自体はヨーロッパに存しておりますが、このこと、ウクライナ侵略というのはいわば国際秩序の根幹を揺るがすものである、こういうふうに考えておりまして、最も強い言葉で非難をしてまいりましたし、強い制裁を行って、こういうことが大きな代償を伴うものだということを、G7を始めとした国際社会と協調しながら対応してまいらなければならないというふうに思っております。

松原委員 今ウクライナについておっしゃいましたが、国際法に違反して、力によるこういった変革の試みをやろうとしている中国がいる。中国の南沙諸島の行動に関しても、大臣、言語道断、こういうふうな御認識ですね。

林国務大臣 先ほどの紙くず発言についてもコメントさせていただきまして、政府参考人からも答弁したとおりでございまして、中国に対しては、主張すべきは毅然と主張し、責任ある行動を求めてまいらなければならないと思っております。

 今委員がおっしゃったような懸念事項も含めて、王毅中国の外相との間の電話会談では、こちらからしっかりと主張させていただいたところでございます。

松原委員 私、確認したいのは、ロシアに関しては、国際社会がああいうふうに言っていると、言語道断と大臣はおっしゃった。正しい発言ですよ。そういう感情のこもった発言というのを大臣は時々しなきゃいけませんわ。

 そのことを言うならば、ロシアもいろいろと問題はありますよ。でも、中国はまさに真横にある。我々の利害と直接に向き合っている国であります。

 あえてもう一回問いますが、中国のこの間のこのような国際法を無視した行動、それは我々日本大使館の館員の問題もありますよ。言語道断と言わないんですか。

林国務大臣 ロシアのウクライナ侵略について、先ほど申し上げたとおりでございます。

 中国の今回の日本大使館員の拘束につきましては、従来から申し上げておりますように、謝罪や再発防止のための説明等、なされておりませんで、遺憾でございますので、引き続き謝罪と再発防止を強く求めてまいりたいと考えております。

松原委員 何か、ウクライナ問題に関しては強い表現を使っているけれども、中国問題に対しては余り強い表現をお使いになっていない。これは非常に、私は違うんじゃないか、日本の外務大臣としては。これ以上、恐らく、質問しても、そういった答弁しか出てこないでしょうが、本来であれば、我々はもっとこれは、我々に直接降りかかってくることですから、怒りを込めて発言をしてもらいたい、日本の外務大臣として。林大臣は日本の外務大臣ですから、違う国の外務大臣ではありませんから、もっと強く発言をしてもらいたいと思います。

 次の質問に移ります。

 三月二十三日の答弁で、物理的攻撃と同様に大きな被害が生じる場合、そのサイバー攻撃が我が国の武力行使の前提となる相手による武力攻撃を構成することがあり得るということが、一般論であり、政府の立場だ、こう御答弁いただきました。

 この被害とはどういうレベルの被害か、お答えください。

大和政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、サイバー攻撃単体であっても、例えば物理的手段による攻撃と同様の極めて深刻な被害が発生するような場合などは、武力攻撃に当たり得ると考えているところであります。

 では、実際にどのようなサイバー攻撃であれば、それのみをもって武力攻撃に当たるかについては、物理的手段による攻撃と同様、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、様々な情報を総合して判断すべきものであると考えています。

 その上で申しますが、我が国においてサイバー攻撃と武力攻撃との関係を考える上で一つの参考となるものがありますので、御紹介をさせていただきます。

 これは米国の国防省が戦争をめぐる国際法について二〇一五年に公表した文書でありまして、ここでは、物理的手段により実行された場合に国連憲章第二条四項の武力の行使とみなされるような効果をもたらすサイバー攻撃は当該武力の行使とみなされるであろうとしておりまして、そのようなものとして以下の三つの例を挙げております。一つは、原子力発電所のメルトダウンを引き起こすもの、二つ目は、人口密集地域の上流のダムを開放し、被害をもたらすようなもの、三つ目は、航空管制システムの不具合を引き起こし、航空機墜落につながるようなものということであります。

 繰り返しになりますが、こういった考え方は、我が国においてサイバー攻撃と武力攻撃との関係を考える上で一つの参考になるものと考えているところであります。

松原委員 御答弁いただきました。

 基本的にハードの部分が結果的に今列挙されたわけです。ただ、サイバー攻撃というのは、ソフトのエリアで、最後の部分は情報の混乱によって、混濁によって航空機の事故が起こる、こういうことになりますが、そのソフトの部分のものをどういうふうに判断するか。例えば、それで全ての通信が途絶するとか、様々なことが想定されるわけでありまして、金融機関のサイバー攻撃だってあるでしょうし。こういったものも、どのレベルかで、それはもう武力攻撃と同じような認識を持つ必要があるかと思っておりますので、防衛省におかれては、更にこの辺、深掘りをしていただきたいと思っております。

 次に、金正恩の資産凍結ということで、何回もこれも聞いております。

 私は、この問題も、冒頭の日本大使館の館員拘束も、質問に立つたびにこれからやっていきますから、大臣、全く同じ答弁を同じように繰り返すんじゃなくて、どこかで、さすが日本国林外務大臣というような御答弁をいただきたいと期待をいたしております。

 さて、金正恩に関してでありますが、プーチンに対しての制裁が発動したと。ちょっと、一番を除いて二番目から行きますが、プーチンに対する制裁の判断は、安全保障上の問題があるのかということをお伺いしたい。大臣、三つ目ですよ、二つ目か。

林国務大臣 ロシアによるウクライナ侵略でございます。国際秩序の根幹をこれは揺るがす行為であり、国際社会が結束して毅然と行動しなければならない、先ほど申し上げたとおりでございます。

 我が国は、G7を始めとする国際社会と緊密に連携して、我が国の判断として、プーチン大統領に対する資産凍結も含めて、迅速に厳しい措置を打ち出してきておるところでございます。

松原委員 安全保障上の観点というのは当然入っている、こういう認識でよろしいですね。

林国務大臣 国際秩序の根幹を揺るがす行為であるというふうに申し上げましたので、当然、安全保障上の観点が入っております。

松原委員 安全保障上の観点ということからすると、北朝鮮の金正恩による様々なミサイル発射、また四月十五日には、記念日ですから、大々的な核実験もやるんじゃないか、こういうことも言われている。これは、日本にとって安全保障上の危険をはらんでいますか。

林国務大臣 これまでの北朝鮮による弾道ミサイル等の度重なる発射、これを含めて一連の北朝鮮の行動、これは、日本の、地域や国際社会の平和と安全を脅かすものであり、断じて容認できるものではないと考えております。

松原委員 したがって、プーチンの資産凍結をするということは、同じようにこの日本に対する安全保障上の直接の被害を与えようとしている国家に対しては、これは当然、我々はそういった同じことをやる、これは普通は当たり前ですよね。同じことは同じように対応する。しかも、我が国に近い。

 北朝鮮における意思決定は、私の認識では、やはり金正恩が最も強い意思決定をすると認識しておりますが、大臣はどういう認識でしょうか。

林国務大臣 金正恩委員長は朝鮮労働党の首班である総書記でありまして、同委員長は、国務委員長、また軍の最高司令官、これを兼ねているものと承知をしております。

 北朝鮮の意思決定過程等について、我が国として確定的にお答えする立場にはございませんが、先ほど申し上げたような点を踏まえれば、金正恩委員長は、北朝鮮の最高指導者であり、最も重要な意思決定を行っているものと考えられます。

松原委員 こういう議論をしていますと、プーチン氏の個人資産凍結をするという制裁をしているということは、当然、金正恩に対しても同じような制裁をする環境は完全に満ちている、こう思っているわけでありますが、いかがでしょうか。

林国務大臣 北朝鮮に対しましては、度重なる核実験、また弾道ミサイル発射等を受けて、安保理が国連憲章第七章の下で行動して国連憲章第四十一条に基づく措置を取るとして、累次の安保理決議が採択をされまして、特定品目の輸出入禁止や資金移転防止措置等、極めて厳しい措置が科されてきております。

 これに加えて、我が国自身の措置として、北朝鮮との全ての品目の輸出入禁止等の措置を取ってきておりまして、北朝鮮への人、物、金の流れを厳しく規制する措置を実施してきております。

 政府としては、こうした状況も踏まえながら、北朝鮮に対する対応について、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決に向けて何が最も効果的かという観点から不断に検討してきておりまして、また、今後も検討してまいると考えております。

松原委員 いつも答弁になっていない答弁が多いので。私は、金正恩氏に対して、その個人資産の凍結をする環境は、プーチンに対してやっているわけだから、もう完全にそろっていますね、こういう質問をしたので、本当に御丁寧な答弁なんですが、答えていないというのが毎度なので、非常にそこは、やはりすぱっと答えてもらいたい、こう思いますね。これは本当に、恐らく外務委員会をテレビで見ている人は、いるかどうか分かりませんが、見たら、何なんだろうこれは、こういうふうになってしまうと思うんですね。

 さて、我々は、北朝鮮の人権非難決議、今、提出国から外れていますが、戻るつもりはありますか。

股野政府参考人 お答え申し上げます。

 拉致問題は岸田内閣の最重要課題でございまして、拉致被害者の御家族も高齢となる中、拉致問題の解決には一刻の猶予もないという状況でございます。

 こうした中で、拉致問題の解決に向けたメッセージを国際社会が継続して発出することの重要性や、北朝鮮をめぐる諸情勢を総合的に勘案した結果、本年四月に国連人権理事会において採択された北朝鮮人権決議について、共同提案国となることとしたところでございます。

 現時点で、今後の北朝鮮人権状況決議への対応についてはまだ決まっておりませんが、我が国として、諸情勢を総合的に勘案しつつ、適切に対応してまいりたいと考えております。

松原委員 共同提案国じゃなくて提出国になるべきだということを強く申し上げておきます。

 また、あわせて、大臣、やはり金正恩に対する資産凍結に関しては、研究を始めるというぐらいのことはしてもらいたいというふうに思っております。

 ちょっと質問が前後しますが、北朝鮮のミサイルは日本の排他的経済水域に落下して、日本漁船が、まあ、今回は日本漁船は被災をしなかったわけでありますが、日本漁船が、北朝鮮ミサイルが日本の排他的経済水域に落下した場合に被災をする可能性がある、こう思っているんですね、私は。

 前に岸田さんが外務大臣のときにどういう答弁をしたかというと、事前に通報があればまだしも、事前に通報がなく北朝鮮がこういったミサイルを発射したときに、そのことは非常に我々としては了解し難いというふうに言った。ただ、主権的権利が阻害されているかというふうなことに関しては、はっきり分からない、こう当時岸田外務大臣は答弁しているんですが、私は、林大臣、日本の漁船が北朝鮮のミサイルによって日本の排他的経済水域において被災した場合というのは、これはあり得ると思うんだけれども、このことはどう考えていますか。

林国務大臣 個別具体的な状況にもよるわけでございますので、仮定の質問にお答えすることは難しいとは思いますが、一般論として申し上げますと、外国等のミサイルによって日本の漁船が被害を受けた場合、我々としては、当然、抗議を行って、その上で、原状回復や金銭賠償等を求めるということが考えられると思っております。

松原委員 原状復帰と損害賠償、それ以上のものは、まあ、個別具体的なことはコメントできないと言うけれども、おっしゃらない。

 これは、日本国を守る外務大臣としては、少なくとも、北朝鮮に対して、事前にそうしたらいいという話じゃなくて、やはりEEZの中へ落とすなという話ですよ。日本のEEZの中にミサイルを落とすなということを明確に主張し、今回の北朝鮮の発射に対して、そういう、単に遺憾だ、遺憾だという議論ではなくて、明確にそういったことを主張するべきだと思いますよ、日本のEEZに入れるなと。

 日本の漁船が被災した場合、我々はこれに対してどういう判断をするか。それを、いわゆる我々の主権的権利に対する攻撃と見るのか、ある種の疑似宣戦布告のようなものとして捉えるのかというのは、いろいろな議論があるでしょう。やはりそれは言うべきじゃないですか、大臣。

林国務大臣 そもそも、北朝鮮による弾道ミサイルの発射、これは関連する安保理決議に違反するものでございます。国際法上、いずれの国も、排他的経済水域においてその権利を行使するに当たって、沿岸国の権利及び義務に妥当な考慮を払うというふうにされております。

 まさに個別具体的な状況に応じて判断する必要がありますが、まさに妥当な考慮が払われていないということ、さらには、漁船が被害を受けた場合には、一般論として、先ほど申し上げたとおり、原状回復、金銭賠償等、これは国家責任条文というのがございますけれども、そこに原状回復、金銭賠償等が記載をされておるところでございます。

松原委員 原状回復と金銭賠償だけで済む問題じゃないと思うんだよね、全然、これは。原状回復と金銭補償で済むというふうな御認識を大臣が持たれているとすれば、私は、大きな、国益を守るという意思の欠落というふうに言わざるを得ないと思っているんですよ。それは違うと思うんだよね、発想が。どうぞ、答弁してください。

林国務大臣 これはあくまで一般論として申し上げておりますけれども、我が国としては、当然、抗議を行うということを先ほど申し上げました。その上で、原状回復、金銭賠償等を求める、こういうふうに申し上げたところでございます。

松原委員 全ての場合、抗議は行っているんですが、抗議は一定の効果を上げていない。これで、四月十五日、北朝鮮がまた何かやったときに、また抗議を上げるんですか。私は、そこはどういうふうな制裁よりも、金正恩の個人資産の凍結をするということを強く主張しておきたいと思っております。

 次に、日本の排他的経済水域で中国が資源開発をする可能性は、先ほど申し上げたように、ならず者的な行動、国際法を無視して、国際法を紙くず同然だ、こう言う国家でありますから、当然、そのような国が日本の排他的経済水域で資源開発をする可能性があると思っています。このとき、大臣はどう対応しますか。

林国務大臣 国連海洋法条約上、沿岸国は、排他的経済水域において天然資源の探査、開発、保存及び管理のための主権的権利を有しておりまして、また、大陸棚を探査し及びその天然資源を開発するための、大陸棚に対して主権的権利を有しております。

 個別具体的な状況に即して、今委員がおっしゃったようなケースについては対応していくことになると考えますけれども、我が国の排他的経済水域や大陸棚において、沿岸国たる我が国の同意なく資源の探査や開発といった活動を行うということは認められず、仮にそうした活動が行われる事態が生じた場合には、例えば外交ルートを通じて抗議を行うなど適切に対応することになると考えております。

松原委員 中国が国際法を無視するんですよ。中国という国は国際法を無視する国だということは、既に、紙くず発言もあるし、ウィーン条約抵触の日本大使館館員の拘束もあるじゃないですか。国連の海洋法条約によってこうだと言ったって、そんなのは全くもって中国が無視してくる、明らかじゃないですか。それにもかかわらず、そういう発言をして、リアルな政治とは全く無縁のお話をしているというふうにしか思わざるを得ない。これは、これ以上追及しても答弁はないと思いますから。

 このEEZというのは日米安保条約の五条の範囲に入りますか。

市川政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国及び米国は、日米安保条約第五条に基づきまして、我が国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が発生した場合、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処することとなっております。

 日米安保条約第五条に言う日本国の施政の下にある領域とは、我が国の領土、領海、領空から現実に我が国が施政を行い得ない状態にある領域を除いた領域でございます。

 したがいまして、排他的経済水域は、この日米安保条約第五条に言う領域には含まれていないところでございます。

松原委員 だから隙ありなんですよ。だから中国はやってくる可能性があるんですよ。国際法に違反しても、紙くず発言ですから、構わないわけですよ。日米安保も入っていなければやりますよ。当然やりますよ。

 私は、どういうふうに対応するか、前から提案しているんですよ。中国の政治的な上層部の日本における個人資産の凍結を即時できるようにするべきだと。G7の国々と連携して、そういったところに、同じ発想で、こういったならず者国家的な、ならず者国家ですよ、それに対しては同じように団結をしよう、これをやるべきですよ。その準備を是非していただきたいと思います。

 この海洋の問題を含めて、質問の順番を少し変えますが、日本はアメリカの軍事同盟国であり、アメリカと台湾はいわゆる台湾関係法によって深い軍事関係がある。台湾有事は日本にどのような影響を与えるか、日本はどのような行動を取る可能性があるか、大臣、教えてください。

林国務大臣 台湾海峡の平和と安定は、日本の安全保障はもとより、国際社会の安定にとっても重要でございまして、また、台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待するというのが日本政府の一貫した立場でございます。

 米国との間でも、例えば一月七日の日米2プラス2、また一月二十一日の日米首脳テレビ会談等におきまして、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促すことについて確認したところでございます。

 その上で、いわゆる台湾有事については、仮定の質問であり、その影響について一概にお答えすることは困難でございますけれども、あくまで一般論として申し上げますと、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中で、政府として、いかなる事態に対しても対応できるよう、平素から、体制の整備、また同盟国である米国との連携を含めて万全を期していくということは当然であると考えております。

松原委員 中国ですから、紙くずだと言っていますから、国際法を。ウィーン条約、全然関係ないよと。やりますよ。それは日本のEEZ内もやるでしょう。そのときにどうするのかという話。台湾有事は当然やるでしょう。どこかでやる、どうするのか。

 今、仮定の質問は答えられないというのは、それは一定のそういったことはあるでしょう。しかし、そういったときにこういうことをしますよという、逆に言えば、条件付で情報を出して、我々の立ち位置をあらかじめしておくことは、私は外交上重要だと思っております。

 時間が大分迫ってまいりましたので、次の、最後の質問になりますが、ジェノサイド。ジェノサイド条約を批准すべしということに関して、ちょっと質問が前後して恐縮でしたが、お伺いしたい。

 今回、ウクライナのブチャやブチャ以外のところにおける多くの市民の、無辜の市民の殺害は、戦争犯罪であるのはもとより、これは岸田総理も言っています、戦争犯罪だと。戦争犯罪だけではなくジェノサイドの可能性も高い。ゼレンスキーさんは、これはジェノサイドだ、こう言っているわけであります。

 私はこの議論を本当は深掘りしたかったんですが、時間の都合で最終的な部分だけ言いますが、日本はジェノサイド条約に入っていますか。

股野政府参考人 お答え申し上げます。

 締約国ではございません。

松原委員 なぜ入っていないのかとか、これを詰めていこうと思ったんですが、今日は時間がもう参りましたので、ここは詰めません。日本には共謀や扇動についての法的な整備がないからジェノサイド条約には、なかなか締結しない、入れない、こういう話でありました。

 ただ、そこで私は思うわけでありますが、やはり、こういったときに、ジェノサイドというのは戦争犯罪より重いですよ。中国が国内でウイグル人の浄化を仮にしているとすれば、これはジェノサイドですよ。これは国際法上、戦争犯罪より重いんですよ。ところが、日本はジェノサイドについて語れないんですよ。私は、今回のジェノサイドの可能性について捜査協力をするべきだと思います、日本は。

 このジェノサイド条約に入れない、しかし、私は、留保条件をつけて、扇動や共謀については今後作る可能性があると留保条件をつけて、国連に対して、ジェノサイド条約の締結国にならんとする意思を、僕は、ウクライナのこういう状況もある中で、それぐらいのことをやらなかったら、人権国家日本にならぬのですよ。

 大臣、お答えをお願いします。

林国務大臣 条約の締結に際しての留保でございますが、一般に、当該条約の趣旨及び目的と両立するものである必要がある、こういうふうに認識しております。

 ある条約に留保を付して締結することが可能かどうかを検討する場合には、その条約の趣旨及び目的、また、各国の実行等を踏まえる必要があると考えております。

 以上を踏まえますと、ジェノサイド条約第三条が規定する行為の一つ、また複数について、自国への適用を排除する留保を付すことは、ジェノサイド条約の趣旨及び目的と両立しないおそれがありまして、また、他国から批判を受けたり、留保に異議を唱えられたりする可能性があると考えております。

 また、国連が公表しております情報によりますと、ジェノサイド条約の締約国のうち、第三条が規定する具体的な行為について、明示的に留保を付している国はないわけでございます。

 こうした点を踏まえますと、現時点においては、先ほど申し上げたような、留保を付してジェノサイド条約を締結するということは困難であると考えております。

松原委員 そういうことを大臣、おっしゃると、戦う外交にならないですよ。人権のために戦う外交にならないですよ。それは、ほかの国でこの部分に留保している国はない。いや、我々は留保して、今後それを作る努力もする、若しくは、留保しても、我々にそのことをやらせろと。

 私は、ジェノサイド条約の締結国に日本がなろうという試みをしたときに、いやあ、それはとんでもないと言う国は少ないと思いますよ。よくぞ日本も入ってくれたと言いますよ、留保条件があるという問題があったとしても。

 私は、そのトライをする、今大臣がおっしゃったように、これはなかなかこれでやっている国はないですよ、留保している国はないですよと。でも、これに留保している国がないから、我々が留保条件でそれを締結を目指さないという理由にはならないですよ。意思があるかどうかですよ。

 ジェノサイドという、最大の人類に対する、人権に対する許し難いそういうのをやっているならず者国家があるわけですよ、もう既に。そういった国家に対して、我々はジェノサイド条約に入るんだという意思を表明するだけでも違う。

 私は、トライするべきだと思う。トライをするべきだということを強く主張して、答弁、何かありますか、大臣。(林国務大臣「いや、特にございません」と呼ぶ)答弁がない。戦う外務大臣としては言ってもらわないと。

城内委員長 持ち時間が経過しております。

 じゃ、簡潔にお願いします。

林国務大臣 松原委員の御指摘は、今理解をさせていただいたところでございます。

 条約については先ほど申し上げたとおりでございますが、先生の御意見も踏まえながら、どういうことが可能なのかということは不断に検討してまいりたいと思っております。

松原委員 ありがとうございます。踏まえながら、どういうことが可能か、真剣に日本国外務大臣として検討してください。

 終わります。

城内委員長 次に、青柳仁士君。

青柳(仁)委員 日本維新の会の青柳仁士です。

 今朝の新聞に、各紙、ウクライナのマリウポリでの死者二万人という、こうした記事がたくさんの新聞に載っておりました。新聞の、二万人の死者と言われると、なかなか我々は想像がつかないわけですけれども、私、アフガニスタンやスーダンといった紛争地で働いていたこともございまして、ざっと、この部屋の中にいる人数が四十名だということだとしますと、この場にミサイルが飛んでくると全員が命を落とすわけですが、そういった事件がこの一か月間で五百回起きた、そういうことになります。

 こういった極めて非道な状況の中で、今度は、このマリウポリ、まだ十二万人の市民が残っているということが言われています。また、化学兵器の使用をロシアが行っているというような情報もありまして、極めて深刻化しているというふうに理解をしております。

 そのような中、林大臣の母校でもあります東京大学の入学式におきまして、ロシアという国を悪者にするのは簡単である、もっと様々な視点を持つべきではないかというような祝辞を述べられた方がいらっしゃったそうです。

 こういった、ある意味では日本人が好きなけんか両成敗的な視点というのは、この場合には当てはまらないんじゃないかと私は強く思っておりまして、こうした化学兵器であるとか、あるいは二万人の人々を虐殺しているような国に対して、こちらにも言い分があるというようなことを認めるような状況ではもうまずない、このように考えております。

 そういった中で、やはり、とはいえ、ロシアを、最後まで戦い抜いて、例えばプーチン氏を何とかするというようなことまで考え得ない場合は、最後は、しかしながら、停戦を行わなければならないというふうに考えています。こうした停戦に向けて、これまで日本政府は、様々な、防弾チョッキの供与であるとか、あるいは経済制裁等ということを行ってまいりました。

 こうした方針に関しては、また先ほどの議論ではないですが、経済制裁をやっても、あるいは武器を供与しても、停戦にはつながらない、ロシアを怒らせるだけだというような論調が一部にありますが、私は全くそのようには思いませんで、ロシアにとって、プーチン氏にとって、戦争を継続するよりも停戦に応じた方が楽である、得であると思わせるような環境を国際社会でいかにつくっていけるかということが鍵だと思っておりますので、引き続きの経済制裁を含む様々な厳しい措置というのは絶対に必要であると考えるわけですが、しかしながら、どこかのタイミングで停戦をしなければならないということになりますと、これは話合いの場を持たなければなりません。また、ロシアが一〇〇%悪い、プーチン氏を捕らえて処刑をするんだというような論調ではなかなか話合いというのが実現しないというのも、これまた現実であろうと思っております。

 こうした中で、先ほど申し上げたとおり、日本政府として様々なこれまでウクライナの対応を行っていますが、停戦に対する直接的な働きかけというのはこれまで余り情報として聞いたことがないわけですけれども、例えば、ロシアに対する働きかけ、NATOに対する働きかけ、様々な、あるいは、トルコやポーランドのように、停戦、話合いの場を持たせるということ自体に対する貢献ということも考えられるわけですが、そういった停戦に向けた具体的な支援について、日本政府が今考えていること、また、今後実施し得る可能性のある措置等についてお伺いできればと思います。

林国務大臣 ウクライナとロシアの間では停戦交渉が断続的に行われておりますけれども、この先行きは不透明であり、予断を許さないわけでございます。

 トルコを含めて複数の国、例えば、フランス、ドイツ、イスラエル、オーストリア等でございますが、プーチン大統領に対する直接の働きかけを行っておりますが、プーチン大統領が自らの強硬な立場を和らげ、歩み寄ろうとする兆しは全く見られないところでございます。

 こうした状況においては、ロシアが国際社会の声に耳を傾け、侵略を止めるよう、ロシアに対して強い制裁措置を講じていくことが必要だと考えております。力による一方的な現状変更を許さず、国際秩序の根幹を守り抜くため、G7各国とも連携して積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

青柳(仁)委員 今御答弁がありましたような、強い制裁を継続していく、強化していくということは、これは先ほど申し上げたとおり、ロシアにとって、プーチン氏にとって、現状よりも平和を望んだ方が得であるという環境をつくる上で極めて重要なことと認識しておりますが、ですから、繰り返しになりますが、やはり最後は停戦をしなければならない、話合いに持ち込まなければならないという中において、日本のできることというのもたくさんあろうかと思いますので、そこは是非考えていただきたいと思います。

 また、この戦争の、この侵略行為の帰結がどのようになるかということは分かりませんが、いずれにせよ、例えば停戦交渉を行う場合には、先ほど申し上げましたが、ロシアが一〇〇%悪いということを言っていてはなかなか交渉には応じてもらえないということが事実としてあるかと思います。

 その際に、しかしながら、ロシアが悪いのは確実なわけですが、そうした中に、そうした条件等を話す上で、各国が持つ歴史認識というのは極めて重要だと思っております。一部の方々はまだ、今回の侵略において、ウクライナ側にも責任があるんじゃないかというようなことを言う方もおられます。しかし、ほとんどはやはりロシア側に責任があると思うわけですが、歴史をひもといていきますと、様々な、今回の侵略に至ったポイントというものがあります。

 それぞれについて今国際社会の中では見解が分かれるところでありますけれども、この分かれている見解の中で日本政府としてどういった認識を持っているかということについて、三点お伺いしたいと思っています。

 一つ目は、これは主にプーチン氏が、今回の戦争はロシアの安全保障上やむを得ないものであったということを主張しているわけですね。その理由として、NATOからの軍事的な脅威があったというのが一つあります。これは、NATOの東方不拡大に関する約束というものがありまして、これがNATOによって一方的に破棄された、したがって、自国を守るために今回侵略せざるを得なかったというようなことを言っております。

 ところが、先日の日本の朝日新聞の記事等を見てみますと、ゴルバチョフ元大統領にインタビューをしたところ、ゴルバチョフ氏は、そのようなことをアメリカ側から言われたことはないということを言っております。また、この会話はベーカーとゴルバチョフ氏との間での会話だったわけですが、ベーカー氏の回顧録等を見ても、そういった文言は出てこない。

 また、ベーカー氏が用意したものではない、アメリカ政府の事務方が用意した議事備忘録のようなものの中に、確かに、イーストに対する拡大はしないというような文言があるんですが、これがまことしやかに、ちまたでいわゆる密約として言われているんですが、これもよく見てみますと、特段政府がサイン等をしたものではないということ、また、イーストに関しては、様々な歴史学者の見解によると、当時は東ドイツを意味していたというような見解が一般的であるということも言われております。

 いずれにしましても、様々な見解が分かれるところでありますが、NATOが東側に拡大しないという約束をロシアに対してしていた、こういった事実認識について日本政府としてはどのように考えておられますでしょうか。

    〔委員長退席、武藤委員長代理着席〕

林国務大臣 NATOの東方不拡大の約束、この有無につきまして、交渉当事者でない我が国として事実の認定をすべき立場にはございませんが、例えば、ブリンケン米国務長官は一月七日の記者会見で、NATOが新規加盟国を受け入れないと約束したことはない、こういうふうに述べておられるものと承知をしております。

 その上で、ロシア側が、NATOが東方不拡大の約束をほごにしたとして、ロシアの一連の行動の正当化の理由の一つとしているものと承知いたしますが、いずれにせよ、今回のロシアのウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす行為でございます。いかなる理由であっても、これを正当化することはできないと考えております。明白な国際法違反であり、断じて正当化できず、強く非難をするところでございます。

青柳(仁)委員 現在のロシアの行為が決して許されないということは、これはもう間違いないと思います。

 ただ、今お伺いしているのは、そこに至った、NATOの東方不拡大の約束をNATOがほごにしたということをロシアは主張しているわけですが、それについて日本としてどう考えるかということをお伺いしたいんですが、もう一度お願いします。

林国務大臣 この約束の有無につきましては、先ほど申し上げましたように、交渉当事者でない我が国として事実の認定をすべき立場にはございませんが、ブリンケン米国務長官が会見で述べられたことは先ほど申し上げたとおりでございます。

 正当化の理由にロシアが使っているということは承知をしておりますけれども、いかなる理由を用いても、今回のことは正当化することができないというのが我々の立場でございます。

青柳(仁)委員 ちょっともう一度確認させていただきたいんですが、事実の認定をする立場にはないということですので、ということは、じゃ、例えばこのことについて、ロシアがこれは事実である、ウクライナがこれは事実でないと言った場合には、中立の立場を日本が取る、そういう意味と理解してよろしいですか。事実認定のみの話をした場合ということです。

林国務大臣 先ほどの繰り返しになって恐縮ですが、事実認定をすべき立場にはないということでございます。

青柳(仁)委員 では、大臣の個人的な見解としてはどのように考えますか。

林国務大臣 様々な文献等、御紹介いただいたものは私も断片的には読んだことはございますが、ここは外務大臣としての見解を述べる場だと承知しておりますので、個人的な見解を述べることは差し控えさせていただきたいと思います。

青柳(仁)委員 今、この現状において、ロシアの行為が許されないので、したがって、そこに対して制裁措置を強化するというのは簡単なんです。ですが、実際に、これから、じゃ、話合いをしていこう、あるいはこれを最終的に清算をしていこうという場合に、やはり日本政府としての歴史認識というのは私は極めて重要だと思っておりまして、ここに関して、ある意味、今はその立場にはないということで、どちらにもつけるような形になっているわけですね。

 ですから、国際情勢の流れが万が一にもロシア側につくようなことがあれば、ロシアの肩を持つことも今の御答弁だと可能だということになるわけですけれども、私は、特にこの現状においては、こうした曖昧な態度、立場での外交というのはすべきでないというふうに考えております。

 二つ目の質問に移らせていただきますが、もう一つ、ロシア側が今回の侵略の正当化をしようとしている理由として、ミンスク2という合意があります。ミンスク合意、これの二つ目の合意ということになるんですけれども、これは十三項目から成る合意になっているんですが、この中で、ロシアは、政治項目の履行に関して、これをウクライナ側が履行しなかった、ゼレンスキー大統領が、これは自分が約束したものではないから履行する必要はないというような立場を取ったみたいなことを言っているわけなんです。

 ところが、ウクライナ側あるいは様々な歴史研究者の証言によりますと、そういうことではなくて、ウクライナ側が約束していた政治的な合意項目というのは、あくまで軍事的な合意項目にロシアが応じた上でないと実行できないと。これは当然ですね。停戦が行われない、軍事行動が止まらない中で、平和を前提とした憲法の改正だとか、あるいは様々な国境の措置だとかということはなかなか難しいということだったんですが、軍事行動は止まらなかった。

 この軍事行動が止まらなかった理由は、ロシア側は、自分たちは交渉当事者ではない、この問題は、ウクライナの親ロ派武装勢力、すなわちウクライナ国内の問題であって、自分たちは合意を履行する立場にないというようなことを言っていたわけなんです。ですから、これもまた、ミンスク2が履行されなかったというのは、これは多分事実だと思うんです。

 ところが、なぜ履行されなかったのかということについて、それは、ウクライナ側が、じゃ、ロシアのプーチン氏が言うように、ゼレンスキー大統領の勝手な思いで履行しなかったのか、あるいは、ロシアが軍事合意事項について誠実な行動を起こさなかったからなのか、この点についての日本政府の見解をお聞かせいただきたいと思います。

林国務大臣 今お話のありましたミンスク2と呼ばれる合意でございますが、二〇一五年の二月に、ロシア、ウクライナ、そして欧州安全保障協力機構などが署名をしておりますウクライナ東部の問題の解決に向けた文書の総称でございまして、停戦やウクライナ側による国境管理等のいわゆる治安項目と、ウクライナの憲法改正や、ドネツク、ルハンスク州の一部の地域への特別の地位の付与等のいわゆる政治項目から構成されているものと承知をしております。

 ウクライナ側は治安項目を、またロシア側は政治項目を優先したことから、双方に立場に隔たりがあり、お互いに同合意の不履行を批判し合っていたもの、こういうふうに承知をしております。

 OSCEは、同合意以降も停戦合意が破られて、一万四千人が亡くなったというふうに指摘をしておるところでございます。

 いずれにいたしましても、双方の同合意の履行状況についての主張にかかわらず、ロシアによるウクライナ侵略は国際秩序の根幹を揺るがす行為であり、明白な国際法違反として厳しく非難されるべきものであるというふうに考えます。

    〔武藤委員長代理退席、委員長着席〕

青柳(仁)委員 今の御答弁だとやはり先ほどと同じでして、要するに、治安項目に関してはロシアが履行しなかった、そして政治項目についてはウクライナが履行しなかった、したがってこの合意が履行されなかったということだとすると、これはやはりロシア側にも一分の理があると言っているようなものなんですけれども、これは、じゃ、今の御答弁の御認識としては、要は、お互いに責任があった、こういうふうに日本政府としては考えているということでよろしいですか。

林国務大臣 先ほどと同様、我々はこの条約の当事者、合意の当事者ではございませんので、先ほど申し上げましたように、ウクライナ側は治安項目を、ロシア側は政治項目を優先したことから、双方に立場が隔たりがあって、互いに同合意の不履行を批判し合っていたもの、そういうふうに承知をしておるということでございます。

青柳(仁)委員 答弁、お答えになっていないので、一応申し上げますが、私が聞いているのは、どちらに責任があったかということを聞いているわけなんです。ですから、双方に責任があった、今の御答弁だとそういうふうに聞こえるわけなんですけれども、それでよろしいかということなんです。

林国務大臣 一方又は双方に責任があったかということを述べる立場にはないということでございまして、状況として、お互いに同合意の不履行を批判し合っていたもの、そういうことを承知しておるということでございます。

青柳(仁)委員 恐らく、これ以上聞いても同じ御答弁を繰り返されるだけだと思いますので、これまでにいたしますが、先ほどの質問に関しても、今回の質問に関しても、これは、状況が変わればロシア側につくこともできるような歴史認識になっています。今聞いていただいた皆様、お分かりのとおりです。ほとんど、フィフティー・フィフティーみたいな話になっているわけですね。

 私は、これだけ、ロシアの行為が許されない、また、今日、先ほど、冒頭御紹介しましたとおり、マリウポリで死者が二万人出ている、このような状況にあって、まだ中途半端な立場を取る、考え方を取る外交というのは、極めて国際社会でも信頼を得るのは難しいんじゃないかというふうに考えております。

 また、もう一つだけ、三つと申し上げましたので質問をさせていただきますが、もう一つ、ロシアが今回のウクライナ侵攻の理由ということで主張しているものがありますが、これは侵略に至る直前の経緯です。

 これは、ウクライナ側がドローンでの攻撃を、あるいは、ドローンを飛ばしたということを言っています。また、侵攻三日前の最後通告に対して、ウクライナ側が全く何の行動も取らなかったということを言っているわけです。

 ところが、これは、ウクライナ側によると、ドローンは確かに飛ばしていたんですけれども、ただ、そもそも、二〇一四年のクリミア危機以降、常に交戦状態にあったわけです。ですから、様々な小競り合いが繰り返される中の一つだけを取り上げて、これが原因であった、こういうのはやはりおかしいのではないかということ。

 それからもう一つ、三日前から何もしなかったというんですけれども、これは、いろいろな記事あるいは歴史学者の見解、あとはこういう記事を、特に記事を追ってみますと、例えば、二月の二十四日に侵攻が始まったわけですから二月二十一日に最後通告をしたわけですが、二月二十二日の段階で、ゼレンスキー大統領は、ノルマンディー方式という、独、仏、ロシア、ウクライナの四か国首脳会議の枠組みでの緊急招集が開始されるということを発表しております。その他、独仏始め様々な国が動いていたことが明確なわけなんですけれども、これについては、先ほどと同様になります、日本政府としてはどのように認識をされていますでしょうか。

林国務大臣 ロシアがウクライナ侵略を開始した原因について様々な議論がある、こういうふうに承知をしておりますが、問題の本質は、プーチン大統領が、平和的解決に向けた各国からの働きかけを聞き入れず、ウクライナの非軍事化や中立化といった一方的な要求を実現すべく武力行使に及んだことである、そういうふうに考えております。

 いずれにいたしましても、ロシアによるウクライナへの侵略は、きっかけを問う以前の問題として、国際秩序の根幹を揺るがす行為であり、明白な国際法違反として厳しく非難されるべきものであると考えております。

青柳(仁)委員 最後の質問に関しては、最終的にロシアが軍事侵攻に至ったのは、様々な各国からの申入れや停止のアドバイスを全く聞き入れることなく、独断的に、ロシア、プーチン氏が侵攻、侵略、武力行使に至ったという認識だということですので、その点に関してはそのとおりであろうと思います。

 ですが、その前に申し上げたとおり、それ以外の歴史認識に関して中立的な立場を政府が取るというのは、今こういう状況にあって、国際社会から見て信頼される態度ではない、このように考えております。

 今日は、持ち時間がなくなりましたので、以上で終了させていただきます。また、引き続き、聞き切れなかった質問に関しては別の機会に聞かせていただきます。

 ありがとうございました。

城内委員長 次に、和田有一朗君。

和田(有)委員 いろいろな角度からいろいろな質問がありまして、非常にいい方向に質問があるなというふうに私は思うんですけれども、なかなか御答弁が、いい御答弁が出ないことが多い。そういう中で、私、まず、ようやく、本当にようやく終わった対中ODAのことについてお聞きしたいと思うんです。

 予算化は確かにもう既に何年か前に終わっているんですが、事業がこの年度末で、この年度ということですからついこの間ですね、今年の三月三十一日をもって最終的に終わったということですので、ここら辺で一度、もう一回、一回予算が終わったときにはいろんな議論があったと思うんですけれども、ウクライナの状況を横で見ながら、そして台湾有事を我々感じながらこの総括をしなきゃいけないんじゃないかと私は思いまして、あえて、今日、対中ODAについてお聞きしたいと思うんです。

 まず、幾らかかったというか、我々使って、そして何年、何に対中ODAというものは供与をしたのか、お答えください。

植野政府参考人 お答え申し上げます。

 対中ODAが開始されたのは中国の改革・開放直後の、たしか一九七九年からだったと思いますけれども、累積の支援額は、円借款が約三兆三千百六十五億円、無償資金協力が約千五百七十六億円、そして技術協力が約千八百五十八億円でございます。

和田(有)委員 三兆五千億とか四兆円近いお金を我々は、返ってくるお金もありますよ、これはもちろん。しかし、これを、先ほど松原先生の発言で言うと、紙くずと言うような国に我々は入れてきたわけです。果たしてそれが本当に私たちの国の国益に資するものであったんだろうか。

 その中で、いろんなものを向こうはつくったり、システムを整えたり、やってきました。我々はそういうことを通して、かの国が、まともな国と言ったら変ですけれども、我々と同じような考え方で物を見ることができる国に育ってほしいと思って、お金を、言葉は悪いですけれども、突っ込んだんです。ところが、でき上がってみれば、紙くずと言い、そして、何でしょう、異形の大国になってしまった、こう思うんですね、私は。

 ODAの説明を、資料を見させてもらうと、人道支援を行うとか、基本的人権を推進するとかいう言葉がある。ところが、実際、アメリカなんかは、既に新疆ウイグル自治区強制労働阻止法なんという法律まで作って、要は、この国は人権を阻害しているとはっきりとレッテルを貼っている。そういうところにODAを我々は入れてきたわけですね。

 そういう中で、さらに、これは我々が言っているんじゃないですよ、中国軍の幹部がかつて言った言葉があって、我々は日本がODAをしてくれたからいろんなものをつくることができた、そして、鉄道を敷き、あるいはチベットへ光ファイバー網を建設して、軍隊が随分使えるようになった、よかった、こう言ったことがあるというのですね。そういう発言というのは、外務省は把握をされているんでしょうか。いかがでしょうか。

植野政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員が御指摘された中国の軍の幹部という方の発言については、恐縮でございますが、承知しておりません。

和田(有)委員 これは報道でもなされているんですね。そういうことをやはりしっかりと把握をしてくるべきだったんです、終わった話ですけれどもね。

 私の尊敬する、もうお亡くなりになった台湾の李登輝総統は、こういうふうに言ったこともあるらしいですね。日本の対中援助では、福建省の鉄道だけは造ってほしくなかった、これを使って、台湾に侵攻するときには軍隊がやってくると。実際、それを、台湾有事を想定した演習とかでやっているというんですね。

 こういうことをやってきた対中ODAというものが本当に私たちの国の国益にかなったものであったのか、こう私は思うんですが、大臣、そこら辺、いかがお考えになりますか。

林国務大臣 日中国交正常化以降、日本は、長年にわたって、中国沿海部のインフラのボトルネックの解消や環境対策、保健医療などの基礎生活分野の改善、人材育成等の分野でODAを実施してまいりました。こうした支援は、中国における日本企業等の投資環境の改善を始めとする日中の民間経済関係の進展にも大きく寄与したと考えております。

 中国は、もはや世界第二位の経済大国であり、責任ある大国として、国際社会のルールにのっとり、その発展に貢献することが求められております。

 日本としては、引き続き、様々な機会を捉えて、中国側にそのような行動を求めてまいりたいと考えております。

和田(有)委員 おっしゃることは、このODA、当然我々が出しているお金ですから、それがまずかった、ああだこうだとはなかなか言い難いでしょうけれども、功績の部分を述べておられる。

 ところが、功罪というものは必ず物事をやったらあるはずなんです。いい面もあればマイナス面もあったはずなんです。そのマイナスの面というものについて、しっかりと皆さんは総括をされているんですかね。いいことだけ自分たちで我褒めして、ああよかったよかった。これは四兆円近い国民のお金を使っているんですよ。これは、林さんが大金持ちで、どこかから持ってきたお金じゃないですからね。我々が汗水垂らして働いて、税務署に納めた、出し合ったお金からやった作業ですから、必ず功罪というものがあって、罪もあるはずなんです。

 それについてどう皆さんは捉えておられるのか、お聞きしたいんです。

植野政府参考人 お答え申し上げます。

 対中ODAについての総括という意味では、今大臣から申し上げたとおりでございまして、先生がおっしゃる罪の部分を外務省として総括するということは、正直言ってなかなか難しいところではございますけれども、しかし、今の御指摘も踏まえて、ODAがこれまで中国にもたらした変化、直接のプラスの変化ではなくて、そうじゃないところにどういうものがあったかということについては、改めてきちんと考えて検討したいと思います。

和田(有)委員 そうです。きちんと、功と罪があるんですから、それを見ていかないと、次の世代に、私たちはこの四兆円近いお金を出したということを子々孫々に伝えられないわけですよ。そういうことを私は申し上げたかったんです。

 次の質問に入っていくんですけれども、どうも、今日、松原さんもそうですし、中国のことをお聞きすると、何か、どこか遠いところで物を見てお答えになっているようにしか聞こえないんです、私には。何か、ニューヨークの国連本部にいて、日本の外交官として、外務大臣として、外務省として物をお答えになっているようには感じられないんです、私にとっては。

 恐らく、松原さんもそうだし、皆さんそうなんですよ。先ほどの青柳さんの質問でも、やはり何か、中立的に、言葉を濁して、とにかくその場を終えようみたいな答弁にしか私には聞こえないんですね。こんなことをしているから、中国は、私たちに対してどんどんどんどん先に入ってくるんだと思うんです。

 私、最近思うのは、歴史上、中国というのは冊封国家というのをつくっていくわけですね。朝貢をさせて、それによって自分たちの勢力圏を広げていく。まるで、そういうことをされている中に我々も今組み入れられつつあるように私は危機感を持つんです。だからこそ、はっきりとした態度で、我が国の外務省として、外務大臣として言うべきことは言うという態度を取ってほしいなと私は思います。

 次の質問なんですけれども、何度も続けてきた台湾との関係の話なんですが、台湾有事に関わるので私はこれを何度も聞いているんです。現行法、今の日本の法律で台湾と公式に情報を共有する、交換するということは、現行法上、公的には可能なんでしょうか。

上杉大臣政務官 お答えいたします。

 御指摘の件につきまして、外務省が所管する法令の中で、日本政府が行う情報共有について、特定の相手との間で行うことを禁止するようなものはございません。

 政府としましては、台湾との関係に関する我が国の基本的立場に基づき、我が国の民間窓口機関である日本台湾交流協会を通じ、これまでも幅広い分野で台湾との実務的な情報共有や協力関係を積極的に推進してきております。

 引き続き、台湾に関する我が国の基本的立場を踏まえながら、日台間の協力と交流の更なる深化を図ってまいります。

和田(有)委員 現行法で規定されているものはない、それはしちゃいけないとは書いていないというふうに今言われました。でも、現実には、民間の立場でしかやりませんよ、こういう表現なんですね。これはどういうことかというと、政策的に非常にパイプを自分たちで絞ってしまっているということにほかならないと私は思います。そう見えます。

 次に、今申されたように、窓口機関としての日本台湾交流協会と台湾日本関係協会の間でやるんですけれども、じゃ、これを、この民間機関の間で、ここも何か難しい聞き方になるんですが、安全保障についての情報交換というのは、公的に民間機関の中でできるんでしょうか。

上杉大臣政務官 お答え申し上げます。

 日台間では、我が国の民間窓口機関である日本台湾交流協会を通じて、平素から様々なやり取りが行われております。

 御指摘の件につきましては、一例を挙げますと、アメリカ、台湾間で二〇一五年に立ち上げられ、二〇一九年から日本台湾交流協会も参加している人材育成の枠組みでありますグローバル協力訓練枠組みというのがございます。こちらにおきまして、ネットワークセキュリティーと新興テクノロジーに係るワークショップやサイバー犯罪対策バーチャルセミナー等を開催していると承知をしております。

 引き続き、台湾に関する我が国の基本的立場を踏まえながら、日台間の協力と交流の更なる深化を図ってまいります。

和田(有)委員 実務上はやっているんですよという御答弁なんですけれども。

 じゃ、もう一回元へ戻って聞きたいんですけれども、現行法上ですよ、日本の法律上ですよ、台湾の当局者が安全保障について意見交換をすることは、台湾の安全保障について、現行法上、何か規定はありますか。してはいけないとか、何とかかんとかだとか。

實生政府参考人 先ほど答弁がありましたように、御指摘の点について、外務省所管の法令の中で、日本政府が行うそうした情報共有、その内容が安全保障であるということを問わず、特定の相手との間でそういったことを禁止するというようなものはない、そういう事実関係でございます。

和田(有)委員 法上、規定しているものはない、禁止もしていない。でも、なかなかスムーズには進んでいないと思うんですね。皆さん、御答弁を求めたって、民間の間でやっていますとか、公的にできるんですかと聞いても、いや、民間でやっています、こういう表現なんです。

 こんなことをやっていたって、有事を前にしたという言い方はどうか分からぬですけれども、有事が起こるかも分からないときに、こんな足下がおぼつかない状況では駄目だろう、しっかりと政策転換をして、何がしかの法的な根拠を持たせて、そして、対話ができるような状況をやはり私はつくるべきだろう、こういうふうに思います。

 ちょっと時間がなくなったので、これはもうちょっとやりたかったんですけれども、また次の機会に、違う角度でこのことは聞いてみたいと思います。

 次に、同じような、有事に際してお伺いしたいことがありまして、実は、自衛隊法と海上保安庁法で、若干、一般的に私が読んでみると、何か食い違うような項目というのがあるんです。

 それは、自衛隊法八十条で、実は、一旦有事があったら防衛大臣の下に海上保安庁は入るというようなことが書いてあります。ところが、海上保安庁、二十五条には、軍隊として組織されたものには入らない、こう書いてあります。

 何か一見矛盾しているように思うんですが、こういう状況というものについて、政府はどうお考えになっておられますか。

鬼木副大臣 自衛隊法第八十条においては、内閣総理大臣は、防衛出動又は命令による治安出動を命じた場合において、特別の必要があると認めるときは、海上保安庁の全部又は一部を防衛大臣の統制下に入れることができるとされています。

 これは、重大な緊急事態において、自衛隊と海上保安庁との通常の協力関係では効果的かつ適切な対処が困難な場合に、防衛大臣が海上保安庁を統一的、一元的に指揮運用することを可能とするものでありまして、海上保安庁が実施し得る任務、権限に何らの変更を加えるものではありません。

 統制下に入った海上保安庁は、海上保安庁法に規定された所掌事務の範囲内で、非軍事的性格を保ちつつ、自衛隊の出動目的を効果的に達成するために適切な役割分担を確保した上で、海上における人命の保護等を実施することになります。

 よって、自衛隊法第八十条と海上保安庁法第二十五条とは矛盾するものではございません。

和田(有)委員 矛盾するものではない、非軍事的なものでそういうあれをするんだ、こう言いましたが、しかし、現場で、例えばの話、撃ち合いが始まって、入り乱れて、例えばの話、中国の軍艦と海上自衛隊の護衛艦が向き合って撃ち合ったり追いかけ回したりする中で、その横で、例えば島の周りで何か作業をしている海上保安庁の船が、上手にそういう運用というのが、すみ分けができて、できますか。本当にそういう情報交換とかをきちっとして、そういうことができるんでしょうか。いかがでしょうか。

鬼木副大臣 まず、法的な矛盾がないということは今お伝えしたとおりでございまして、海上保安庁は警察機関、警察権の範囲での行動をする、そして、さらに、それが困難な状態になったときに、自衛隊がその役割を果たすということで、ここでは、そうした通信や相互の運用についての訓練もしっかり行っているところでございます。

和田(有)委員 終わりますけれども、通信やそういう訓練を行っていると。やはり、ようやく、聞きましたら、通信もお互いに連携が取れるように、最近とは言いませんけれども、まあ最近ですね、そういうことができるようになったと聞きました。そのレベルですよ。やはりしっかりともっと連携が取れるように訓練をして、そして、本当に法的に矛盾がない、すみ分けをするんだというのならば、それができるような、運用をできるトレーニングをしないといけないと思いますが、最後にもう一回、その点について、いかがでしょう。

鬼木副大臣 自衛隊法第八十条に基づく防衛大臣の統制に際して、自衛隊と海上保安庁との緊密な連携が重要であることは言うまでもありません。

 こうした点も踏まえつつ、防衛省・自衛隊は、平素から、武力攻撃事態を含め、あらゆる事態に適切に対応できるよう、海上保安庁との間で情報共有を行える体制を維持するとともに、様々な事態を想定して各種の訓練を行い、緊密な連携を保持しております。

 具体的には、相互に使用する通信機器や秘匿通信方法を定めるなど、必要な通信手段を確保するとともに、あらゆる事態に対処するため、例えば海上警備行動命令が発令される事態を想定した共同訓練をこれまでも積み重ねてきております。

 このような取組を通じ、自衛隊と海上保安庁との連携は、これまでと比較して格段に向上をしております。武力攻撃事態を含むあらゆる事態における実効的な対処に万全を期すため、引き続き、海上保安庁などの関係機関との更なる連携強化に不断に努めてまいります。

和田(有)委員 しっかりとやってください。

 終わります。

城内委員長 次に、鈴木敦君。

鈴木(敦)委員 国民民主党の鈴木敦でございます。

 大臣、今週二回目ですね。よろしくお願いします。

 先日の委員会の最後に触れましたけれども、せっかく林大臣がお連れいただいた二十名の方々、旅券で入られたのか、渡航証明書で入られたのか、種別をお伺いしましたが、プライバシーを理由にお答えできないということでした。

 その意味は今でもよく分かりませんけれども、私がそれを聞いたのは、これは法的に根拠はあるのかと聞くために伺ったんじゃないんです。法的根拠はあるんです。入管法の二条の五のイ、用語の説明の中で、括弧書きですけれども、渡航証明書と書いてあるんです。これはウクライナの前からずっとあったものですから、別にそのことを否定しているわけじゃないんです。

 ただ、渡航証明書という書類がどういうもので、どういうフローで発行されるのか、外務省のホームページはおろか、在外公館のホームページにすら載っていないんですね。どういうものなのかが全く分かっていない。

 だから、これはどういうものなのか、まず御説明いただきたいと思います。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 日本に入国しようとする外国人は、出入国管理及び難民認定法に定められているとおり、原則として有効な旅券を所持している必要がございますけれども、この査証申請を行う外国人が自己の責任に帰さない理由により有効な旅券を所持していない場合、在外公館において渡航証明書を発行することができるということでございます。

 委員御指摘のとおり、この渡航証明書は、出入国管理及び難民認定法第二条の規定に基づいて取り扱われることになります。

鈴木(敦)委員 こういうものです。渡航証明書というのはそういうもので、以前、徳永委員でしたかね、アメリカで旅券をなくされたと。そのときに、帰国される際には、帰国のための渡航書という別のまた書類が必要になりますけれども、これについては在外公館のホームページにも書いてありました。どうやって日本に帰国しなければならないかと書いてありました。

 でも、渡航証明書というのは、どこの在外公館のホームページにも載っていません。特に、載っていなければならないところ、今、例えば在ポーランド領事館だとか、モルドバ、ルーマニア、今日大使がいらっしゃいますけれども、そういうところの在外公館に対しては、総理も、あるいは政府も一丸となってウクライナの方々を受け入れるとおっしゃっているにもかかわらず、こういう手段がありますよという広報が何一つされていない。

 ポーランドのホームページには、ポーランドに入国する前、以前、委員会でも申し上げましたけれども、ペセルをどうやって取るか、それを取るとどういうフローがあるか、どこで取るのか、そしてどこで申請をするのか、全部ウクライナ語で書いてあるんです。ポーランドのホームページですよ。ウクライナ語で書いてある。

 ただ、日本政府の、日本の在外公館のホームページ、何が書いてあるかといったら、ビザの取得はこうです、あるいは、旅券を持っていない場合は相談してくださいとメールアドレスが書いてあるんですね。そんなメールマガジンみたいなものじゃ話にならないと私は思います。

 是非、この在外公館、ウクライナ周辺国の在外公館だけでも、ウクライナ語のページを作って、渡航証明書というものがあります、日本はそういう用意もありますということを広報された方がいいと思いますが、いかがでしょうか。

林国務大臣 この未曽有の人道危機に直面しておりますウクライナとの更なる連帯を示すため、我が国はウクライナから第三国に避難された方々の受入れを進めておりまして、政府一体となって、国民の理解も得ながら、関係省庁において必要な支援を行っていく方針でございます。

 現在のウクライナ避難民の差し迫った状況を踏まえますと、有効な旅券を所持していない場合も十分にあり得ると考えております。現在、在ポーランド日本国大使館等においてウクライナ語での査証取得案内を行っているところでございますが、今委員からも御指摘をいただきましたので、ウクライナ避難民の方々の受入れに向けたウクライナ語での更なる広報、前向きに検討していきたいと考えております。

鈴木(敦)委員 これは是非やっていただいた方がいいと思います。日本に逃げたくても、問合せを受けていますと役所の方も在外公館の方もおっしゃるんですが、テレホンショッピングじゃないので、オペレーターの数を増やしてお待ちしていますというわけにいかないわけです。

 ですから、日本政府がこれだけの広報をしていますよと今一番やりやすい形というのは、ホームページですね。そして、ホームページの場合は、私もそうでしたけれども、在外公館のホームページ、外国語で、何が書いてあるか分かりませんが、今、技術が発達していますから、自動翻訳である程度意味は分かるんです。これは、ウクライナ語で書こうがポーランド語で書こうが日本語で書こうが、各地の言葉にも翻訳できるわけですし、それは、世界に対して我が国が何をやっているのかということを広報する意味でも、渡航証明書という最後の手段もあります、そして入国に対してどのような手段がありますということをしっかり広報していただくというのは、前向きに、そして、もう少し前のめりに検討していただければと思います。

 さて、それから、ウクライナの方々を受け入れるという意味での別の解釈、今度は入国されてからの話ですけれども、入国されてから、基本的に今回のウクライナの方々は短期滞在のビザで入ってこられますが、これは入管庁にお伺いします。短期滞在で入ってこられる方々に対して上陸の許可を与える場合に、どのような質問をされていらっしゃるでしょうか。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、短期滞在で入国の申請があった場合、一般論で申し上げますと、通常ですと、短期滞在の在留資格で行おうとする活動の内容でございますとか、どれぐらいの日程でいらっしゃる予定かとか、宿泊先あるいは連絡先、あるいは滞在費等を確認した上で判断をしているところでございます。

鈴木(敦)委員 では、お伺いしますが、一般論で結構ですが、例えば、現地で、日本で接触する方が決まっていないですとか、あるいは旅程が定まっていない、あるいは、生活していく、その旅程に見合うだけの日本円を所持していない、こういう場合はどうなるんでしょうか。

丸山政府参考人 あくまで一般論で申し上げますと、今委員御指摘のあったような状況がある場合、査証、ビザが必要な国かどうかということで国によって異なりますけれども、ビザが必要な国であれば、在外公館でビザを発給するかどうかを、そういった事情も踏まえて判断される。

 あるいは、査証免除の国であれば、日本に来られたときに今のような御質問をするわけですけれども、一般的に、観光と言っているのに滞在費をほとんどお持ちでないというようなことであれば、いろいろ審査した上ですけれども、一般論で言えば、上陸を認めないこともあり得るということでございます。

鈴木(敦)委員 あり得るというよりは、そこであり得るのであれば、我が国はこんなに難民申請に苦労しないんです。恐らく、上陸の許可は下りないと思いますね、お金がないのであれば。

 実例を申し上げますけれども、我が国に上陸をしようとした方で、日本語も英語も話せず、現地の言葉しか話せない方で、日本で生活していくだけの日本円も持っていないという方が我が国に難民申請をしようとした場合に、これは送還される可能性すらあるわけですね。なぜなら、我が国に上陸しようとした理由が、そもそもの短期滞在のビザを取るときに言っていた観光ではなかったからですね。そういう運用もあり得るわけですよね。

 そして、もっと申し上げれば、今、ロシアの侵略でウクライナから逃げている方はたくさんいらっしゃいますけれども、世界各地にいるウクライナの方々はどうでしょうか。ウクライナから直接逃げてくるんだったら分かります。そして、網にひっかかることも分かるんですけれども、例えばオランダにいる方だったらどうしますか。オランダのウクライナの方、でも、本国に帰れないから日本に避難してきたいという方で、片道切符だけ買って日本円を持っていなかった場合、どのように処分されますか。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 若干、一般論も入りますけれども、我が国で避難を希望される外国人から上陸申請がなされた場合には、委員御指摘のような事情など、個々の置かれた状況に十分配慮しながら、発給された査証に基づき、本邦への上陸を速やかに認めることになると考えてございます。

鈴木(敦)委員 分かりました。何重にも網を用意していただいていることは重々分かっています、入管の場合ですね。分かっていますが、万一漏れた場合のことを考えて、このように申し上げているんです。

 では、次の質問に参りますけれども、さきの政府専用機でお連れいただきました二十名の方々、この方々の上陸申請に対して、同じような質問をされましたか。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 個々の具体的な内容は差し控えさせていただきますけれども、今般の場合ですと二通りございます。ビザの発給の段階から親族等がいらっしゃる方と身寄りのない方、両方あろうかと思います。

 それで、親族等がある方であれば、お世話する方がいらっしゃるということで、通常の許可になろうと思います。

 あと、今回、ウクライナの方につきましては、身寄りのない方につきましても、本邦滞在費等を所持していない場合であっても、宿泊先の提供や、本邦滞在中の生活を円滑に行うための当面の間の生活支援等を政府として今準備しておりますので、そういったことも踏まえて上陸審査をしております。

鈴木(敦)委員 今、生活支援のお話がありました。確かに結構なことだと思います。是非されていただきたい。

 ただ、日額二千四百円お支払いする、あるいは生活を今後していくために家電製品を買ったりするために十六万円支給するというような方策は、一体法律のどこに規定をされているんでしょうか。実際、難民に対して千二百円ですとか支給するものはございますが、今回の場合は、どのような条文に基づいてこの決定をなされているんでしょうか。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の措置につきましては、予備費ということで、財政上の措置、予算上措置をいただいて対応しているところでございます。

鈴木(敦)委員 お金の出どころの話ではなくて、お金は、それは予備費からしか出しようがないんです、もう予算は決まっているわけですから。そうではなくて、どのような法律に基づいてこの支出を行ったのかということです。法的にどういう規定があったのか、お答えいただきたいと思います。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の御指摘内容が、何々法のどこの条文に基づいているのかということでございますれば、こういったウクライナからの避難民の方々にこういった生活費を支給しなければならないというような法文の規定はないものと承知しております。

鈴木(敦)委員 分かりました。

 では、大臣にお伺いする質問に入らせていただきますけれども、前回の委員会でも、今回を先例とすると大臣からお言葉をいただきました。大変力強いと思いますけれども、今、様々お話が出てきましたとおり、法律の規定がないことが余りにも多いんです。外国の方々を支援するという当たり前のことをするために我が国が規定している法律はほとんどない。そして、その時々の判断をしている。ある意味で柔軟、しかし、ある意味で超法規的なんですね。

 これはしっかりと規定をするべきだと思いますし、なお、もう一つ、より一層のことを申し上げれば、この難民の認定とか、あるいは避難された方々に対するケアというのは、入管庁の仕事ではなくて、専門の分野で専門の方々がやっていかなければならないことだと思います。

 出入国管理庁というのは、入ってくる方と出る方、そして、今、日本にいらっしゃる方々の管理をされるのであって、難民というのは普通に入ってくるわけじゃないですね。今回のウクライナの件でも分かったと思います。もうそういった範疇から外れて、助けを求めて我が国に来る人たちは、普通に観光に来る人とかスポーツをしに来る人たちとは訳が違います。

 是非、政府一丸だと大臣も何度もおっしゃっていらっしゃいますから、この専門分野でもつくっていくという考え方についても併せてお答えいただきたいと思います。

林国務大臣 我が国では、これまでも、難民の認定を所管する出入国在留管理庁において、難民条約の定義に基づいて、難民を認定すべき者は適切に認定し、受け入れてきたと承知をしております。

 また、難民条約上の難民に該当しない場合であっても、今回のウクライナ避難民のように、人道的な配慮から必要と認められるときには、本邦での在留を特別に許可することとしていると承知をしております。

 加えて、難民と認定されなかった場合でも、入管庁において、判断の客観性、公平性、中立性を確保する取組を行っているというふうに承知をしております。

 その上で、外国からの難民や避難民の我が国への受入れの方針や、受入れに際しての具体的な対応については、個別の状況を踏まえつつ、外交的側面のみならず、法務省を始めとする政府全体として、様々な観点からの判断が必要な問題だと考えております。

 日本として、今後とも適切に対応してまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 適切の考え方については、恐らく、私と大臣、同じだと思います。このままにしておいたら、余りいいことにならないんじゃないかなと私は思っております。

 では、次の質問に入らせていただきます。

 今度はロシアについて行きますけれども、さきに本会議で趣旨説明の行われました関税の法律によって、ロシアの税率が多少上がります。水産物を除外したという報道がありましたけれども、それでも木材に関してはまだかかったままですね。ロシア産の木材、結構家に使われておりますし、新興住宅ですと、かなりの数、ロシア語で書いてある板が張ってあったりするんですね。

 これだけの木材を輸入していて、そして、よく考えれば、日本とロシアの国土の差を比べてみれば、向こうで取れる木材の方がはるかに多いわけですから、輸入した方が安いわけです。ですから、ウッドショックに近いような混乱を生じる可能性がありますし、家の価格が上がれば若い人たちは家を買えませんね。これはどういうふうにお考えになっているか、お答えいただきたいと思います、財務省。

小宮政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、国会で御審議いただいております法案によりまして最恵国待遇の撤回が図られれば、例えば魚介類や木材の一部の輸入品目について、WTO協定税率に代わり、国内法に基づく関税率が適用されることとなります。その結果、関税率が数%程度引き上がる品目が生じます。

 この関税が引き上げられること自体による影響につきましては基本的に限定的であるとは考えておりますけれども、この影響も含め、ロシアによるウクライナ侵略をめぐる影響全般については、物資所管省庁とともに、今後とも注視してまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 数%程度とおっしゃいましたけれども、じゃ、農水省にお伺いしますけれども、ソバの実を含む穀物はどれぐらい税金が上がりますか。

坂政府参考人 お答え申し上げます。

 殻つきのソバの関税につきましては、WTO協定税率が九%、基本税率が一五%でございますので、六%の関税の引上げになります。

鈴木(敦)委員 六%ですよ。結構な額じゃないですか。それだけ上がるということ、そして、そばというのは誰が食べているのかをよく考えてください。高級そば屋だけじゃないんです。駅のそば屋さんとか立ち食いそばだって含まれているんです。その価格転嫁を通じて直接影響があるから、どう考えているんですかと言っているんです。

 そこを踏まえた上で、財務省さん、どうでしょうか。

小宮政府参考人 お答え申し上げます。

 食品などの価格につきましては、先生よく御案内のとおり、国際的な需要と供給の動向、それから物流コストの変動、さらには在庫の状況など、様々な要因の影響を複合的に受けて変動するものであるとは承知しております。

 いずれにせよ、ロシアによるウクライナ侵略をめぐる影響全般につきまして、農水省を始め、物資所管省庁とともに、今後ともしっかり注視してまいりたいと考えてございます。

鈴木(敦)委員 かねてから原材料の価格は上がっていました。それは世界的な問題だったかもしれません。ただ、税金が上がることについては政府の決定ですから、これは国の中でも、どのように圧縮していくのか、吸収していくのかということはもちろん考えていかなくちゃいけないし、数%だから大したことありませんと、それを国民の皆さんに胸を張って言えますか。私は言えないと思いますよ。

 次に行きます。

 徐々に今規制を強めておりますが、大臣にお伺いします。さすがに関税にまで手を出すと、新しい段階に入ってきたと思います。従前から、大臣から三つの覚悟についてお伺いをしていますから、新しい局面を迎えた中での御覚悟を改めてお伺いしたいと思います。

林国務大臣 ロシアによる残虐で非人道的な行為、これがキーウ近郊のブチャのみならず、ウクライナ各地で次々と明らかになってきております。多数の無辜の民間人の殺害は重大な国際人道法違反であり、断じて許されない戦争犯罪であると考えます。一刻も早い停戦を実現し、侵略をやめさせることが必要であると考えております。

 今委員から御指摘のあった八日の制裁の拡大でございますが、石炭輸入のフェーズアウトや禁止を含むエネルギー分野でのロシアへの依存低減に加えて、今お話のあった機械や一部木材、ウォッカ、こういったもののロシアからの輸入禁止や、ロシアへの新規投資の禁止、さらにはロシアの最大手銀行の資産凍結、ロシアの軍関係者、議員などの、資産凍結の対象の更なる拡大、こういう五つの柱から成る制裁を発表して、着実に実施をしております。

 今回の事態を受けて、先ほど御議論いただきましたように、関税が数%、いろんな諸掛かりもあるとは思いますが、プラスの影響がないとは言えないわけでございます、プラスというのは値段が上がるという意味でのプラスですね。そういった意味で、国民の皆様や日本企業を含めて、国際社会に様々な影響が及ぶことは避けられないというふうに思いますけれども、一刻も早くロシアが国際社会の声に耳を傾けて侵略をやめるように、G7各国、国際社会とともに強力な制裁措置を取ってまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 もはやここまで来ると彼が諦めるまでやるしかありませんので仕方がないとは思いますが、国民生活というのは、ロシアとは対岸にあって、なかなか国がやっていることに理解できない方々もいらっしゃるとは思いますけれども、是非、様々な方策を使って、国民の皆様の消費活動を高めるとか、やっていただきたいと思います。

 今、石炭のお話を、大臣、していただきました。石炭、これも徐々に入れなくなる。日本もEUも入れなくなります。そうすると、エネルギーにぽっかり穴が空きます。

 今現在、日本のエネルギー、電力の需給に関して言えば、石炭火力の発電所をフルに活用して今電気をつくっています。かつ、つい先日ですけれども、寒いというだけで、だけでとは言いませんけれども、寒いという理由で電力が逼迫をいたしました。夏を考えたら、ちょっと電力需要、やばいと思います。

 大臣、エネルギー、転換するとおっしゃっていますけれども、外交的にどのように、石炭以外の部分で工面していかなくちゃなりません。玉木代表がおっしゃっていますけれども、安全性が確保された原子力発電所については、私、使った方がいいと思いますが、それが間に合わない以上、夏の冷房需要に対応するためのエネルギーをどう確保していくか、外交的な方針をお教え願いたいと思います。

林国務大臣 今月七日にG7首脳声明が出ておりますが、これも踏まえまして、我が国としては、まず、再生可能エネルギーや原子力も含めたエネルギー源の多様化、そして、LNGへの投資等によるロシア以外での供給源の多角化、さらには、主要消費国とも連携した生産国への増産働きかけを一層強力に進めるということで、エネルギー構成全体の中で、ロシアのエネルギーへの依存の低減、これにつなげていきたいと考えております。

 委員も御承知のように、資源が乏しい我が国におきましては、多様なエネルギー源をバランスよく活用するとともに、市場の安定に向けた取組を進めるということが国内のエネルギーの需要に十分応えていくという観点から重要でございます。

 こうした考え方に基づいて、先ほど述べました取組に加えまして、IEAを始めとする関係の国際機関やG7等の枠組みを活用して、同志国とも連携しつつ、市場の不安定化リスクに対応しながら、我が国のエネルギー安全保障の確保に向けた外交的な各種取組を進めてまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。

 では、G7というお話もありましたから、国際協調のお話をさせていただきたいと思いますが、国連の中で、国連のロシアに対する非難決議あるいは人権理事会からの排除の決議がありましたけれども、国連で決議をするたびに賛成国がどんどんどんどん減っていっております。

 かつ、申し上げれば、人権理事会からの件につきましては、私、ちょっと危惧しているのは、ベトナムが反対をいたしました。性格が違うと言っている方もいらっしゃいますけれども、事実上同じことだと思います。

 国連において決議される内容についてベトナムが反対に回った、これは非常に注視すべき問題だと思いますけれども、大臣、どのようにお考えでしょうか。

林国務大臣 ベトナムは、棄権から反対になったわけでございます。

 緊急特別会合において四月七日に採択されましたロシアの人権理事会理事国資格停止決議、これは、ロシアの人権理事会理事国の資格を停止するといういわば具体的な結果を伴うものであり、極めて重い国際社会の意思を示したものであると考えております。

 したがって、前二回、三月三日と二十三日のロシアに関する国連総会の決議と一概に比較ができないと考えております。

 本決議の採択は、無辜の民間人の殺害など、重大な国際人道法違反である行為を行っているロシアのような国が人権理事会に理事国としてとどまるのは不適切であるという幅広い国連加盟国の強い意思を示すものであって、大きな意義があると考えておるところでございます。

鈴木(敦)委員 引き続き、ロシアに対してはいろいろと決議が出ると思いますので、注視をしていただきたいと思います。

 残余の質問については、次回お願いいたします。終わります。

城内委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 私は、本委員会で、ロシアのウクライナ侵略を止める上で最も重要なのは国際世論による包囲であり、ロシアに対して、国連憲章違反、国際法違反、ジュネーブ条約に違反する無法と厳しく批判する必要性を主張してまいりました。そして、日本政府としてその立場に立った外交活動を行うべきこと、非軍事の人道的支援の強化を提案してまいりました。

 そこで、聞きたいと思います。

 三月十六日は、日本・モルドバ共和国外交関係樹立三十周年の日に当たります。この日、両国外相会談が行われました。会談では、ロシアのウクライナ侵略に対しての対応、難民支援についてどのような議論と一致点があったのか、答弁いただきたいと思います。

林国務大臣 今委員から御紹介いただきました三月十六日の電話会談でございますが、ポペスク・モルドバ外務・欧州統合大臣との間で、ロシアによるウクライナ侵略は、ウクライナの主権及び領土一体性を侵害し、国際法の深刻な違反であり、強く非難されるべきものであること、及び、力による一方的現状変更であり、国際秩序全体を揺るがすものであるということで一致をいたしました。

 また、私からは、モルドバが多くのウクライナ避難民を受けていることをたたえた上で、モルドバを含む避難民受入れ国に対する我が国の緊急人道支援についても説明を行いました。これに対しまして、ポペスク大臣から深い謝意が述べられるとともに、避難民受入れの状況を含め、ウクライナとモルドバをめぐる情勢について説明をいただいたところでございます。

 なお、三月二十五日にも、ソコラン駐日モルドバ大使の表敬を受けております。ウクライナ情勢が話題の中心でございましたが、モルドバが、人口比でいいますと、周辺国で最大の避難民を受け入れている、こういうことを踏まえて、日本からの緊急人道支援や二国間支援を通じてモルドバを支えていきたい意向を改めて私から同大使に伝達したところでありますので、申し添えておきたいと思います。

穀田委員 ドイツやフランス、ルーマニアの呼びかけで、四月五日、モルドバ支援国際会議がドイツで開催されました。日本を含む三十か国以上の代表が、オンライン形式も含めて参加しています。

 モルドバ共和国のガブリリツァ首相は、冒頭、長い間モルドバはヨーロッパの中で最も貧しい国として知られてきたと述べた上で、厳しい財政状況の中、避難してきた人への対応を迫られていると説明し、支援を訴えました。ドゥミトル・ソコラン駐日モルドバ共和国大使は、豊かでなくても、私たちはできることをしたいと思っているとインタビューに語っています。心から私も敬意を表したいと思います。

 人口二百六十四万の国が、先ほどありましたように、一五・七%に匹敵する四十一万人もの難民を受け入れている。本当に頭が下がります。

 そこで、国際機関を経由して二億ドルを支援しているというのが日本政府ですけれども、それだけではなくて、日本として二国間支援が必要だと思うんですが、その点の御見解をお聞きしたいと思います。

林国務大臣 今委員からもお話がありましたように、モルドバは、ウクライナ周辺国の中で最も規模が小さいにもかかわらず、既に今、人口の一〇%以上、正確な数字を委員からもお示しいただきましたが、それに相当する避難民が押し寄せるということで、非常に厳しい状況にあると承知をしております。

 三月十七日のG7外相会合におきまして、モルドバ支援グループ、これを立ち上げることで一致をいたしました。我が国は、ウクライナ及びモルドバを含む周辺国に対して、三月十一日、そして四月五日にそれぞれ一億ドル、計二億ドルの緊急人道支援を決定し、このうちモルドバに対しましては、避難民の保護、食料配布、保健医療等の分野で支援を既に実施をしておるところでございます。

 三月十九日にJICAが人道支援、保健医療分野協力でのニーズ調査団、これを派遣いたしまして、既に、現地でのニーズの把握に加えて、WHOと連携した形で避難民への国際医療支援の総合調整や医療データ管理等に貢献をしているところでございます。

 今後、同調査の結果も踏まえまして、モルドバ支援グループや、四月五日に立ち上げられましたモルドバ支援プラットフォーム、これとも連携しながら、既に実施中の計二億ドルの緊急人道支援に加えて、モルドバのニーズに応える形で二国間支援を実施できるよう、具体的な内容を詰めてまいりたいと考えております。

穀田委員 そういう点を詰めていただきたいと思います。

 次に、防衛省の陸上幕僚監部が作成した「陸上自衛隊の今後の取組み」と題する資料について質問します。

 私は、本委員会でこれまで二度にわたり、陸上幕僚監部が二〇二〇年二月四日の記者向けの勉強会資料で、「予想される新たな戦いの様相」として、反戦デモや報道をテロやサイバー攻撃などと同列視し、グレーゾーンの事態に明示していた問題を質問しました。

 鬼木副大臣は、前回の質疑で、この陸幕資料の記述について、誤解を招く表現であり、その意味において不適切だったと考えていると答弁されました。その後、松野官房長官や岸防衛大臣もそれぞれ記者会見で同じ見解を表明しています。

 しかし、問題は、誤解を招いたということが不適切なのではありません。反戦デモや報道という憲法二十一条で保障された正当な権利を、自らの主張を受け入れるよう相手に強要するものとして敵視すること自体が極めて不適切で重大なんだと私は主張しているところです。そうした政府の根本認識が問われている問題だということをまず指摘しておきたいと思います。

 そこで、鬼木防衛副大臣に聞きます。

 鬼木副大臣は、三月三十日の答弁で、反戦デモと記した修正前の資料が保存期間一年であるにもかかわらず、記者勉強会翌日の二〇二〇年二月五日に回収した、その日に過って廃棄したと推定していると説明されました。防衛省ではこの問題について調査を実施していますが、総括文書管理者などに報告した年月日を述べてほしいと思います。

鬼木副大臣 お答えします。

 令和二年二月四日の記者勉強会で配付した修正前の資料を誤廃棄として総括文書管理者などに報告した件名及び年月日については、一、陸上幕僚監部から総括文書管理者に第一報を行った日が令和三年九月二十四日、二、防衛省から内閣府へ第一報を行った日が令和三年九月二十八日、三、陸上幕僚監部から総括文書管理者に調査の報告を行った日が令和三年十一月十七日、四、防衛省から内閣府に最終報告を行った日が令和四年一月七日となっております。

穀田委員 防衛省が四月四日に回答した、配付資料の一枚目にあるとおりだと確認します。これですね。

 防衛省は、先日、私の資料要求に対して、今答弁にあった四つの年月日ごとの調査文書を提出しています、これぐらいになりますけれども。全部で十三ページあります。

 そこで、配付資料の二枚目は、二〇二一年九月二十四日に陸上幕僚監部から総括文書管理者の大臣官房長に第一報を行った際の文書であります。これを見ていただければ分かります。

 これを見ると、防衛省の内局では、この件の概要報告を当時の防衛大臣に行い、大臣想定を作成していたことなどが記されています。

 問題は、「陸幕監理部としての対応」とある箇所に「行政文書を誤廃棄したものとして処置」と記されていることであります。この記述からも、防衛省の調査は初めから誤廃棄ありきで処理することで進められていたのではありませんか。

鬼木副大臣 令和三年九月二十四日に陸上幕僚監部が総括文書管理者に第一報を行った際に用いられた、行政文書の情報公開請求に係る対応についてという資料にある「陸幕監理部としての対応」には「行政文書を誤廃棄したものとして処置」と記載されております。

 修正前の資料については、陸上幕僚監部が、保存期間が一年未満の行政文書として認識して、既に廃棄しておりました。このため、令和三年七月二十六日の情報公開請求に対しては、不存在として回答するところで調整していたところ、総括文書管理者たる大臣官房長から、修正内容は内容の修正に当たることから、当該資料は保存期間を一年未満とすることができる類型に該当しないものであり、廃棄は適切ではない旨指摘したところであり、当該記述はこれを誤廃棄と評価すべきとしたものであります。

穀田委員 防衛省の調査は第一報から誤廃棄ありきで、処置するという言葉、辞書を引いたことありますか。これ、片をつけると出るんですよね。だから、誤廃棄で片をつけるということで進められていたということが大事だと私は思います、見逃せないと。

 防衛省の説明では、反戦デモと記した修正前の原本の電子データに修正後の内容を上書き保存したため、修正前の電子データが廃棄されたとしています。

 配付資料の三枚目は、今年一月七日に防衛省から内閣府に最終報告を行った際の文書の一部であります。

 ここには、陸幕防衛班の担当者が防衛班長の指導を受け、陸上幕僚監部の共有フォルダ上の元データを用いて内容の修正を行い、上書き保存したとあります。

 この防衛班長とは誰ですか。

鬼木副大臣 防衛班長がどなたかという御質問だと思います。

 三浦英彦氏であります。

穀田委員 三浦班長といえば、私が前回の質問で指摘した、反戦デモがどのような組織の組成になっているか分からないと述べた人物であります。

 また、同じく配付資料の三枚目には、陸幕広報室の報道係が修正前の資料を回収するとともに、修正後の資料を新たに配付し、回収した資料は報道係が広報室において細断したとあります。

 回収した修正前の資料を細断した、廃棄した日が分かる機械的な記録は残っているんですか。

鬼木副大臣 細断した日が分かる機械的な資料があるかという御質問だと思いますが、細断した日が機械的に分かる資料というものはありません。

穀田委員 細断した日、廃棄した日が分かる機械的な、前の方しか言ってはらへんけど、しゃあないよね、ちゃんと聞いてはらへんから。

 防衛省が四月四日に回答した配付資料の一枚目にあるように、回収した修正前の資料については、電子データのように廃棄日が分かる機械的な記録が残っていないので、関係者の聞き取り等から、二月五日に廃棄したものと考えているとあるわけですね。つまり、廃棄日を裏づける記録すら残していないということになるわけですね。

 このように、提出された調査文書を見ると、陸幕の担当者が、反戦デモと記した修正前の資料をいかに廃棄ありきで拙速に処理していたかが分かる。

 私は、三月三十日の質問で、修正前の資料を回収したその日に即日廃棄するなど、故意に廃棄した、隠蔽したとしか考えられないと指摘しましたが、調査文書の内容は、まさにその疑いがますます強まったということが言えると思います。

 私は、前回の質問で、陸上自衛隊のトップの湯浅陸幕長が、二〇一九年十月十一日に行われた公益財団法人偕行社の総会で、反戦デモや報道を、「反戦気運などを高めて国家崩壊へ向かわせてしまう危険性がある」ものと発言していたことを指摘しました。この湯浅陸幕長の発言について、私は事実関係の調査を強く求めましたが、鬼木副大臣は、調査する必要があるとは考えていないと繰り返しました。

 しかし、自衛隊員が部外で意見発表する場合、その手続について定めた防衛大臣の通達があります。我が党のしんぶん赤旗の調査で明らかになったものであります。

 防衛大臣の通達では、自衛隊員が職務に関係する意見を部外に発表する際には、あらかじめ文書をもって届け出ることが定められており、各幕僚長に当たっては、大臣官房長に対して通報するとあります。したがって、湯浅陸幕長が偕行社の総会で行った講演内容も事前に届出が行われており、湯浅氏が反戦デモをグレーゾーンの事態に位置づける発言をしていたことも把握していたのではありませんか。

鬼木副大臣 偕行社講演については、陸幕長から官房長宛てに事前に通報がなされたと承知しております。

 以上です。

穀田委員 なされておる事実は、それはそのとおりなんですよ。だから、私が言っているのは、当然そういうことがあるんだが、中身、問題は、そういう点でいうと、事前の届出が行われており、ここは確認しておると言っているんです。問題は、反戦デモをグレーゾーンの事態に位置づける発言をしていたことも把握しているんじゃないのかと言っているんですよ。

鬼木副大臣 当該通報の際に添付された資料には、グレーゾーンの事態の例として、反戦デモの記述があったと承知しております。

穀田委員 あったということじゃないですか。極めて重大な問題だと私は思いますよ。

 つまり、陸幕長がそういう講演を行っていたということに対して、調査する必要がないとまで言っている。そういう発言を不適切だといった発言をしていながら、それの調査を求めたら、しないと言っている。聞いてみたら、ちゃんと通知があった。そして、通知の中にその内容も書いてあったということ。要するに、事前に知っていたということは極めて重要じゃないですか。

 だから、その意味でいいますと、前回の質問で、鬼木副大臣が調査する必要がないと拒否したのは、既に、湯浅陸幕長が反戦デモをグレーゾーンの事態に位置づけたと発言していることを防衛省として把握していた、だからかたくなに私の調査要求を拒否したということになるではありませんか。

 防衛省は、湯浅陸幕長の、反戦デモや報道が「反戦気運などを高めて国家崩壊へ向かわせてしまう危険性がある」、この内容の講演内容、これを是としているわけですね。

鬼木副大臣 その表現については是としておりません。陸上自衛隊として、これまで、合法的に行われる反戦デモをグレーゾーンの事態の一つとして位置づけたことはありません。

 反戦デモについて、合法的に行われている場合も含めて、一様にグレーゾーンの事態の例として記述したことは誤解を招く表現であり、その意味において不適切だったと考えております。

 その上で、重要なことは、対外説明に際して、このような誤解を招く表現を使用しないことであると考えており、網羅的な調査が必要であるとは考えておりません。

 防衛省としては、正確で分かりやすい情報提供に努めてまいります。

穀田委員 そんな空論を言ってもあきませんよ。

 まず、陸幕長がそういう反戦デモというのは国家崩壊に向かわせてしまう危険性がある、こういう講演内容をやることを知っていて、是正しなかったということは事実じゃないですか。そうでしょう。是正していないんだから、受け取っているのやから。

 湯浅氏は当時陸幕長の立場で、陸上自衛隊を代表してやっているわけです。しかも、その内容は、今言ったように、防衛省は事前に把握していたわけで、その意味でいいますと、防衛省の考え方であるということは明白だと思います。

 私は、前回の質問で、湯浅陸幕長が、偕行社の総会だけでなく、二〇二〇年一月に東京都防衛協会が開いた会合でも、陸上自衛隊の今後の取組と題する講演を行っていることを指摘し、先ほどの配付資料の三枚目の、防衛省から内閣府に行った最終報告の文書によれば、記者勉強会で配付した修正前の「陸上自衛隊の今後の取組み」と題する資料は、陸幕防衛班が令和二年一月に陸上幕僚長が部外講演をした際の資料を参考に作成したと書いているわけですよね。

 この湯浅陸幕長が部外で行った講演とは、二〇二〇年一月二十日に東京都防衛協会などが共催した新春防衛講演のことではないんですか。

鬼木副大臣 御指摘の陸上幕僚長の部外講演については、令和二年一月二十日に、当時の陸上幕僚長がホテルグランドヒル市ケ谷において、新春防衛講演という名称で実施したものであります。

穀田委員 簡単に。この日の講演でも湯浅陸幕長は、反戦デモをグレーゾーンの事態に位置づける発言を行っているのではないですか。

鬼木副大臣 新春防衛講演の資料には、グレーゾーンの事態の例として、反戦デモの記述があります。

穀田委員 もうずっとあるわけですよね。これ、お分かりかのように、反戦デモという内容について、陸幕長がいろいろなところで講演しているということで、しかも、それを基礎にこの資料を作ったというのが今回の大問題なわけですよね。

 もう一度言いますと、湯浅陸幕長がこの時期の講演で使用した資料というのは、二月四日、二月五日の一連のことを私、指摘しましたよね、副大臣。修正前のものしか存在しないわけですよね、当然。二月四日、五日のことなんですから、その年の一月二十日なわけだから。したがって、湯浅陸幕長が反戦デモとして記された資料を使っていたことは間違いないと今もお互いに確認しました。

 陸幕長が、二〇二〇年の一月二十日の講演で使用した反戦デモの資料は、記者勉強会で配付した資料の大本になったものであります。この湯浅陸幕長が使った資料のデータは、反戦デモの記述を修正しているんですか。

鬼木副大臣 そのとき使われた文書は、実際に使われた行政資料ですので、修正せず、そのまま存在しております。

穀田委員 それはえらいことじゃありませんか。

 我が党のしんぶん赤旗日曜版の調査では、記者勉強会から八か月後の二〇二〇年十月、北海道の釧路ロータリークラブの例会で、釧路駐屯地の幹部が修正前の、反戦デモと記された資料を使って講演しています。そのほかにも、同じ年の九月に開かれた札幌大通倫理法人会のセミナーで、第五二普通科連隊の連隊長が同じテーマで講演している。

 こうした講演で幹部が使った資料が、湯浅陸幕長による二〇二〇年一月の講演で使用したデータを基に作成されたことは疑いない。反戦デモの記述を暴徒化したデモに修正したのは記者勉強会限りの話にすぎないということがこれで明らかになった。

 事前も事後も、その後もずっと訂正もしていない、修正もしていないということからしますと、まさにこの反戦デモの記述を修正したのは記者勉強会限りの話にすぎないということがはっきりしたと言えると思うんです。

 陸上幕僚監部が定める内規によれば、部外に対する意見発表の届出に際し添付する原稿や配付資料の保存期間は三年間と定められています。つまり、今でも……

城内委員長 穀田君、申合せの時間が経過しておりますので、御協力をお願いいたします。

穀田委員 はい。

 湯浅陸幕長が使用した資料は保存されているはずです。

 副大臣の方も時間の省略に協力してほしいものだと思います。

 外務委員長、本委員会に今の資料を資料として提出するよう求めます。

城内委員長 後刻、理事会にて協議いたします。

穀田委員 終わります。

城内委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十六分散会


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