衆議院

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第11号 令和4年4月27日(水曜日)

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令和四年四月二十七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 城内  実君

   理事 あべ 俊子君 理事 辻  清人君

   理事 宮崎 政久君 理事 武藤 容治君

   理事 青山 大人君 理事 小熊 慎司君

   理事 杉本 和巳君 理事 吉田 宣弘君

      東  国幹君    井野 俊郎君

      伊藤信太郎君    小渕 優子君

      尾身 朝子君    金子 俊平君

      島尻安伊子君    新藤 義孝君

      鈴木 隼人君    高木  啓君

      武井 俊輔君    中谷 真一君

      平沢 勝栄君    本田 太郎君

      岡田 克也君    徳永 久志君

      太  栄志君    松原  仁君

      青柳 仁士君    和田有一朗君

      金城 泰邦君    鈴木  敦君

      穀田 恵二君

    …………………………………

   外務大臣         林  芳正君

   総務副大臣        中西 祐介君

   外務副大臣        小田原 潔君

   外務副大臣        鈴木 貴子君

   防衛副大臣        鬼木  誠君

   外務大臣政務官      本田 太郎君

   国土交通大臣政務官    加藤 鮎子君

   政府参考人

   (内閣官房国際博覧会推進本部事務局次長)     長田  敬君

   政府参考人

   (総務省大臣官房総括審議官)           山野  謙君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局郵政行政部長)       今川 拓郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   石川 浩司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       赤堀  毅君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 遠藤 和也君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 徳田 修一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 御巫 智洋君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 岩本 桂一君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    市川 恵一君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    宇山 秀樹君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    小野 啓一君

   政府参考人

   (外務省国際協力局長)  植野 篤志君

   政府参考人

   (文部科学省国際統括官) 岡村 直子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大坪 寛子君

   政府参考人

   (農林水産省農林水産政策研究所次長)       松本 雅夫君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           山中  修君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 大和 太郎君

   外務委員会専門員     大野雄一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十七日

 辞任         補欠選任

  上杉謙太郎君     金子 俊平君

  小渕 優子君     井野 俊郎君

  新藤 義孝君     東  国幹君

同日

 辞任         補欠選任

  東  国幹君     新藤 義孝君

  井野 俊郎君     小渕 優子君

  金子 俊平君     上杉謙太郎君

    ―――――――――――――

四月二十六日

 刑事に関する共助に関する日本国とベトナム社会主義共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

 強制労働の廃止に関する条約(第百五号)の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 千九百七十七年の漁船の安全のためのトレモリノス国際条約に関する千九百九十三年のトレモリノス議定書の規定の実施に関する二千十二年のケープタウン協定の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とスイスとの間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 二千二十五年日本国際博覧会に関する特権及び免除に関する日本国政府と博覧会国際事務局との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 万国郵便連合憲章の第十追加議定書、万国郵便連合憲章の第十一追加議定書、万国郵便連合一般規則の第二追加議定書、万国郵便連合一般規則の第三追加議定書及び万国郵便条約の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 刑事に関する共助に関する日本国とベトナム社会主義共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

 強制労働の廃止に関する条約(第百五号)の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 千九百七十七年の漁船の安全のためのトレモリノス国際条約に関する千九百九十三年のトレモリノス議定書の規定の実施に関する二千十二年のケープタウン協定の締結について承認を求めるの件(条約第六号)


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     ――――◇―――――

城内委員長 これより会議を開きます。

 所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とスイスとの間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、二千二十五年日本国際博覧会に関する特権及び免除に関する日本国政府と博覧会国際事務局との間の協定の締結について承認を求めるの件及び万国郵便連合憲章の第十追加議定書、万国郵便連合憲章の第十一追加議定書、万国郵便連合一般規則の第二追加議定書、万国郵便連合一般規則の第三追加議定書及び万国郵便条約の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長石川浩司君、大臣官房地球規模課題審議官赤堀毅君、大臣官房審議官遠藤和也君、大臣官房審議官徳田修一君、大臣官房審議官御巫智洋君、大臣官房参事官岩本桂一君、北米局長市川恵一君、欧州局長宇山秀樹君、経済局長小野啓一君、国際協力局長植野篤志君、内閣官房国際博覧会推進本部事務局次長長田敬君、総務省大臣官房総括審議官山野謙君、情報流通行政局郵政行政部長今川拓郎君、文部科学省国際統括官岡村直子君、厚生労働省大臣官房審議官大坪寛子君、農林水産省農林水産政策研究所次長松本雅夫君、経済産業省大臣官房審議官山中修君、防衛省防衛政策局次長大和太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

城内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

城内委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。中谷真一君。

中谷(真)委員 自民党の中谷真一です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、心から感謝申し上げます。委員長、また理事の皆様、また委員の皆様、ありがとうございます。

 本日は十五分ということですので、早速質問に移りたいと思います。

 ロシアのウクライナ侵略が始まって二か月が経過をしました。これは最も強い言葉で非難しなければいけませんし、これを食い止めるために、国際社会と協調していかなければいけないということであります。

 ただ、このことに対する懸念というのは、私はこのことに対して思いますのは、力による一方的な現状変更が行われているわけでありますが、これが、ヨーロッパのみならず、世界中に堰を切ったように波及するのではないかというおそれがあるというふうに考えているところであります。

 特に、私どもの東アジア、これは中国という脅威があるわけでありまして、これを鑑み、今後、やはりしっかりと日本としてこれを抑えていく、そういった努力をしていかなければいけないというふうに考えているところであります。

 今、安全保障の議論、非常に行われています。それは中国を念頭に置いてやっているわけでありまして、安全保障、防衛費の引上げ等々についても、我が党でも今しっかりと議論が行われているところでありますけれども、私は、これと同時に大切なのは、やはり外交力の強化だというふうに思っているところであります。

 その外交力の強化の中でも、特に、その最大の武器であるODA、これを引き上げていく必要があるというふうに考えているところであります。日本のODAは、現在、GNI比〇・三四%であります。これは、国際目標〇・七%に対して半分以下という状況にございます。

 今、安全保障の議論をしていまして、それを引き上げると言っていますけれども、同じく、やはりこの外交力強化のためには、ODAを私は大幅に引き上げていく必要があるというふうに考えているわけでありまして、それに、また、政府はちょうど、骨太の方針、来年度の予算編成についての方針を今から議論をするというところでもあります。

 ここは、やはり外務省として、先ほど委員の方も倍増だと言われましたけれども、そういった強い決意を持ってこれに臨んでいかなければいけないというふうに考えているところであります。大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

林国務大臣 中谷委員におかれましては、日頃から、JICA議連の事務局長として、JICAの活動を始めとしてODAに対する多大な御支援をいただき、感謝を申し上げます。

 ODAは、我が国の重要な外交ツールであり、国際社会の平和と繁栄に貢献し、ひいては我が国の平和と安定の実現という国益を確保するため、積極的かつ戦略的に活用していくことが不可欠であると考えております。

 今、御指摘のあった、ロシアによるウクライナ侵略、また東シナ海、南シナ海における中国の活動など、国際秩序に対する力による一方的な現状変更の試みが続く中で、人道支援はもとよりでございますが、やはり、普遍的価値を守り抜く上でも、ODAは極めて重要だと認識しております。

 厳しい財政状況の中ではありますけれども、中谷委員を始めとするJICA議連の皆様方の後押しもあり、令和四年度予算においても、無償資金協力やJICA予算などの二国間支援、国際機関への拠出金等の多国間支援のために必要なODA予算、これは前年を上回る額を計上することができたわけでございます。

 引き続き、JICA議連のお力添えもいただきながら、ODA予算の確保とその戦略的活用に向けてしっかりと努力をしてまいりたいと考えております。

中谷(真)委員 まずは外務省が先頭に立ってここの重要性を訴えていくということが極めて大事でありますので、是非、そこは大臣にお願い申し上げたいというところと、やはり、東アジア、私どものこの東アジアを鑑みたときに、ODAを戦略的に、重点的に使用していく必要があるというふうに思いますので、そこも是非よろしくお願い申し上げたいというところであります。

 今回、ロシアのウクライナ侵略において、ウクライナがスペースXのスターリンクという技術、これは通信技術でありますけれども、これを使用しているというのがあります。ODAを使用するときも、やはり、日本のODAというのはほとんど多分インフラ、橋を造ったり、港湾を造ったり、道路を造ったりというのが多いと思います。ただ、そうではなくて、今後はこのODAについては、私は新たな領域、また、新たな先進的な技術、こういったところにも使用をしていく必要があるというふうにも考えてございます。また、それはひいては日本の技術力向上にもつながっていくというふうに考えているところであります。

 これについて、外務省の考えをお聞きしたいと思います。

植野政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のとおり、世界中で経済社会活動のデジタル化が飛躍的に進む中、新たな領域あるいは技術の分野においてもODAを活用して、途上国の開発課題の解決と、同時に、日本の技術力向上を進めていく必要があります。そのために、きらっと光る技術を有する日本の中小企業、またスタートアップとの連携は極めて重要であると考えております。

 例えば、アフリカのルワンダでは、ICT分野の起業支援あるいは日本企業との協業のための技術協力を実施しております。また、バングラデシュからIT技術者を日本にお招きして、地方の大学への留学とその地方にある中小企業へのインターンを組み合わせた研修を行うことによって、バングラデシュのIT人材の育成と、日本の地方におけるIT人材の確保、この双方に資する協力を進めております。

 さらに、途上国におけるサイバーセキュリティーの強化は、日本自身の安全保障の観点からも重要な課題であると認識をしております。そのため、途上国の政府関係者やサイバーセキュリティー政策担当者に向けた課題別研修をJICAが実施しております。

 今後とも、デジタルやICTが途上国の開発課題の解決のために大きなポテンシャルを有する分野であることを踏まえ、また、そうした支援が日本の技術力向上や日本企業の海外展開につながることも視野に入れて、戦略的にODAを活用してまいりたいと存じます。

中谷(真)委員 非常に重要なことだと思いますので、是非お願い申し上げたいというふうに思います。

 今回、スイスとの条約を結ぶわけでありまして、こういったスイスのような国としっかりと連携、関係を強化していくことは極めて大事であります。

 このスイスについてでありますが、スイスは永世中立国でありますけれども、今回、ロシアに対して資産を一兆円凍結するなど、永世中立国としてはかなり大胆な行動に出ているというふうに考えているところであります。

 こういった、今、ヨーロッパの国々がロシアに対して、特にロシアに資源依存しているわけでありますけれども、ロシアに対してどのようなスタンスを取っているのかということを知っておくことは極めて重要だというふうに考えているところであります。その部分、教えていただきたいと思います。

宇山政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のとおり、ヨーロッパはエネルギーをロシアにかなり依存している国が多うございます。もちろんその割合は国によってまちまちでございますけれども。

 例として、英国、フランス、ドイツについて申し上げますと、英国は、二〇二二年末までにロシア産の石油と石炭の輸入を終了する、その後、できるだけ早くロシア産ガスへの依存も終了させるというふうに表明いたしております。

 それから、フランスは、二〇二七年までにロシアのガス、石油からの脱却を目標にすると表明しておりまして、ガスの供給多角化、バイオガス、再生可能エネルギーの生産増加、原子力発電の最大限の活用に努めるとしております。

 それから、ドイツでございますが、ドイツは特にガスをロシアに半分ぐらい依存しているわけでございますけれども、まず、石油と石炭につきまして、調達先の変更によって二〇二二年下半期までにロシアへの依存をゼロにすることを目指すというふうにしております。天然ガスにつきましては、調達先の変更、貯蔵再ガス化施設の設置、エネルギー源の多様化等によりまして、二〇二四年夏までに一〇%に削減可能と見込んでいるというふうに承知しております。

中谷(真)委員 今、そうやってかけ声は多分各国言っているんでしょうけれども、具体的な行動がどうなのかというのが極めて重要だと思いますので、そこをしっかり注視をする必要があるというふうに考えています。

 また、ヨーロッパのスタンスを見ながら日本のスタンスを決めていかなければいけないということでありまして、これは外交でありますから、やはりバランスを見ながらというところは重要だというふうに考えているところであります。

 そこで、次は万博でありますけれども、今回、万博へロシアの参加をどうするかという議論があるというふうに思います。

 今現在、参加をするかしないか、そういった状況と、また開催国としての検討状況について教えていただきたいと思います。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 日本政府は二〇二〇年十二月以降、各国の政府に対して参加招請を行ってきておりまして、ロシアは昨年の四月に二〇二五年の大阪・関西万博への参加表明を公表しております。

 ロシアによるウクライナ侵攻は断じて許容できない行為でありまして、今後の情勢をしっかりと踏まえながら、適切に対応していく考えでございます。

中谷(真)委員 次に、今回の万国郵便連合、この規則の改正についてでありますが、この規則の改定を詳細に中身を見ますと、非常に発展途上国、途上国の負担増が見込まれるというところであります。郵便の意義というのは世界中のどこにでも郵便物が届くということを考えますと、やはりそういった意味では、途上国をどちらかというと先進国が支えていくという制度でなければいけないというふうにも考えているところでありますが、今回は途上国の方の負担が増えていくというものであるというふうに考えているところであります。

 ここの事務局長は目時事務局長でありまして、これは国連機関の日本の唯一の事務局長でありまして、私も政務官時代に、目時さんのパンフレットを持って、各国の要人に、何とか事務局長にということをやった覚えがあります。この大事な事務局長でありますから、ここはしっかりと日本としても支えていかなければいけませんし、間違った方向に行かないようにしなきゃいけないというふうに思っています。

 何か、この規則の改定についてはアメリカの要求も強かったというふうに聞いているところでありまして、途上国から人気がなくなってしまったら困るというふうに思っているところでありまして、その部分、外務省としてどうであるのか、お答えをいただきたいと思います。

赤堀政府参考人 お答えいたします。

 従来、到着料につきましては、途上国に配慮した低廉な額が設定されており、我が国を含む先進国等においては、万国郵便連合の設定する到着料の制度では国内配達コストを十分に賄えないということが問題視されておりました。

 今回の改正に際しましては、二〇二五年に到着料率のルールを先進国と途上国で共通にする等の改正により、到着料を引き上げました。他方、途上国に配慮する観点から、料率が急激に上昇しないよう上限を設定したほか、新しい制度の適用が困難な途上国には引き続き低い料金の料率の適用を認めるなどの例外規定を設けることで、途上国の理解を得た上で、コンセンサスで採択された経緯がございます。

 万国郵便連合は、郵便に関する国際的なルール作りを担う国連の専門機関でありまして、本年一月から事務局長に就任した目時政彦氏のリーダーシップに寄せられる期待は大きいものがございます。日本政府としましても、日本の経験、技術、人材等の一層の活用を通じて日本とUPUとの関係をより強固なものとしていくことで目時事務局長を支援していきたいと考えております。

中谷(真)委員 終わります。ありがとうございました。

城内委員長 次に、金城泰邦君。

金城委員 おはようございます。公明党、金城泰邦でございます。よろしくお願いします。

 早速、条約三号、四号並びに七号について質疑をさせていただきます。

 まず初めに、日本・スイス租税条約改正議定書についてお伺いいたします。

 スイスは経済規模が大きく、二〇二〇年のGDPは世界第十九位で、一人当たりGDPは世界第二位とのことです。日本国民には余りスイスの経済情勢が認識されていないように思いますし、日本とスイスの経済交流も余り知られていないような気がします。日本との経済交流についてはどのような状況でしょうか。外務省から御説明いただきたいと思います。

宇山政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、スイスは、人口に比べまして経済規模が大きくて、二〇二〇年のIMFのデータによりますと、GDPが世界第十九位、一人当たりGDPが約八万七千ドルで世界第二位となっております。経済の主たる牽引役が、金融、保険に代表されるサービス産業、食品、化学、製薬産業、機械、電子工学、金属産業ということで、例えばネスレ、オメガ、ロレックスなどの世界的な企業、ブランドも有しております。また、観光産業も重要でございます。

 こういったスイスと我が国との経済交流でございますけれども、一八六四年に修好通商条約を締結して以来、長い交流の歴史がございますけれども、特に、二〇〇九年の日・スイス経済連携協定発効以降、経済交流が強化されまして、現在スイスに進出している日系企業が百九十六社ございます。また、スマートグリッド化、金融のDX等の分野、脱炭素化に向けた企業間の協力等が進展しているところでございます。

金城委員 ありがとうございました。

 日本とスイスとの間で、二〇〇九年九月に日本・スイス自由貿易経済連携協定が発効しました。また、二〇一九年二月には日本・EU経済連携協定が発効しました。このような中、スイス国内では、EUに対し、日本におけるスイスの競争力低下を懸念する意見があるとのことです。

 昨年七月に行われた日本・スイス首脳会談において、当時の大統領は、日本・スイス自由貿易経済連携協定を更新し、日本がEUとの経済連携協定を結んだ今、EUに加盟していないスイス、市場のアクセスを向上させることが重要であり、更新の必要があると強調したとのことです。

 今月、四月十八日、スイス大統領が来日され、岸田総理、林外務大臣と会談しております。この日本・スイス自由貿易経済連携協定の見直しについて言及がありましたでしょうか。また、これに関して、日本・スイス租税条約改正にも言及されましたでしょうか。政府は、日本・スイス自由貿易経済連携協定の見直しの必要性についてどのように考えておられますでしょうか。以上三点について、外務大臣から御答弁いただきたいと思います。

林国務大臣 今委員が御指摘のとおり、四月十八日でございましたが、訪日をされましたカシス・スイス連邦大統領兼外務大臣との間で会談及びワーキングディナーを行ったところでございます。

 外交上のやり取りの詳細について明らかにすることは差し控えたいと思いますが、同会談において、二国間の経済関係の更なる強化のために何ができるのかについても意見交換を行ったところでございます。

 我が国といたしましては、二〇〇九年の日・スイス経済連携協定の発効以降、日・スイス間の経済関係は堅調に発展しているものと考えております。引き続き、二国間の経済関係の更なる強化のために何ができるのか、スイス側としっかり議論してまいりたいと考えております。

 また、同会談では、私の方から、日・スイス租税条約改正議定書の署名によって両国における投資、経済交流を更に促進させる素地ができたことを歓迎するというふうに述べたところでございます。

金城委員 大臣、ありがとうございました。

 条約の特典の濫用の防止が改正の規定の一つですが、今回の濫用防止規定の意義はどのようなことでしょうか。また、日本側の防止体制はどのようになっておりますでしょうか。外務省の御答弁を伺いたいと思います。

宇山政府参考人 お答え申し上げます。

 条約の特典の濫用に対しまして、現行の日・スイス租税条約の下でも一定の措置が講じられておりますけれども、今次国会に提出させていただいておりますこの日・スイス租税条約改正議定書におきましては、条約の特典の濫用を防止するための規定を国際標準に沿った内容に改正することとしております。

 例えば、租税条約の特典を本来であれば享受することができない第三国の居住者が、日本で生じた投資所得をスイスの居住者を経由して取得するような仕組みを組成することで条約の特典を不当に享受しようとするような場合に、日本において投資所得に対する課税の減免といった特典を認めることは適当ではございません。

 こういった条約の特典の濫用を防止するという観点から、改正議定書の規定は、条約の特典を享受することを取引等の主たる目的の一つとする場合には、基本的に条約の特典を認めないということとしております。そして、この規定を実施するに当たりましては、国税当局において、各種の資料、情報の収集、分析、調査を行うことによりまして、適切に対応するものと承知しております。

金城委員 次に、日本国際博覧会に関する特権・免除協定についてお伺いいたします。

 大阪・関西万博については、以前も、ロシアの参加、ウクライナの参加について質問させていただきましたが、それから一か月以上がたちましたので、再度質問いたします。

 大阪・関西万博について、ロシアから不参加の連絡はありましたでしょうか。ウクライナから参加の連絡はありましたでしょうか。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 ロシアにつきましては、昨年四月に大阪・関西万博への参加表明がございましたが、その後、不参加といった連絡は特にございません。

 ウクライナにつきましては、二〇二〇年十二月に参加招請状を発出し、その後も積極的に働きかけを行っているところでございます。今般のロシアによる侵略以前には、ウクライナ側から、まずはドバイ万博への対応を行っており、大阪・関西万博への参加は検討中であるという説明を受けてございましたが、そうした中で、今般のロシアによる侵略が行われたところでございます。その後、特段、先方からの連絡はございません。

金城委員 ロシアのウクライナへの軍事侵攻は今も続いており、ウクライナ東部地域においては戦闘が激化するとともに、ロシアが東部地域の占領の態勢に入ったとも報道されています。

 大阪・関西万博について、日本は招請国であります。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」であり、サブテーマの一つが「Saving Lives(いのちを救う)」です。命を奪うロシアのウクライナ軍事侵攻を目の当たりにし、その観点から、招請取消しを検討する必要があると考えますが、外務大臣の御見解を伺います。

林国務大臣 今回のロシアによるウクライナ侵略は、力による一方的な現状変更の試みであり、国際秩序の根幹を揺るがす行為であります。明白な国際法違反であり、断じて許容できず、厳しく非難をするところでございます。国際秩序の根幹を守り抜くため、国際社会と結束して、日本としても毅然と行動をしてまいります。

 ロシアによるウクライナ侵略は、二〇二五年日本国際博覧会、いわゆる大阪・関西万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」、この理念と相入れないと考えるところでございます。

 現下の状況が変わらなければ、ロシアが大阪・関西万博に参加することは想定されませんが、いずれにしても、今後の情勢をよく踏まえた上で、政府として適切に対応してまいりたいと考えております。

金城委員 大臣、ありがとうございました。

 また、この協定では、大阪・関西万博に来日する関係者に、日本への入国と日本における滞在を容易にするために必要な全ての措置を取るとありますが、税の免除や特権付与について、ロシアの関係者に認めるのでしょうか。

 さらに、この協定には、輸出入の禁止及び制限の免除が規定されております。ロシアの輸出入について、一部品目でありますが、現在禁止されています。大阪・関西万博関係であればロシアの輸出入禁止措置は免除するのか、この協定との整合性をどう取るのか、外務省の見解をお伺いいたします。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 この協定の主な対象者は、大阪・関西万博の公式参加者、すなわち国と国際機関の陳列区域代表事務所及び博覧会国際事務局並びにそれらの職員を想定してございます。

 先ほど外務大臣から御答弁申し上げましたとおり、ロシアによるウクライナ侵略は、万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」の理念と相入れないと考えております。現下の状況が変わらなければ、ロシアが大阪・関西万博に参加することは想定されません。

 このような状況におきまして、ロシアが万博に参加した際に特権及び免除の付与を認めるかについて、現時点で議論することは適切ではなく、お答えは差し控えさせていただきたいと考えます。

金城委員 日本国政府は、自国への入国及び自国における滞在を容易にするために必要な全ての措置を取るとの規定について質問いたします。

 一つ目に、政府は全ての措置を取ることとなる関係者について、現時点で何人程度来日すると見込んでいますでしょうか。

 二つ目に、入国及び滞在に関する特権と免除について、ビザ手数料の免除を始め、多くの特権・免除を行うことが盛り込まれています。このような多くの特権・免除を規定した経緯と意味について御説明が必要と考えます。御答弁ください。

 三つ目に、また、この協定には、特権・免除の濫用防止が盛り込まれていますが、どのような体制で濫用防止を、取り締まるお考えでしょうか。御答弁、よろしくお願いいたします。

長田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、最初の御質問、参加国の関係者がどの程度の人数、来日するかの見込みについてでございますが、現在、参加招請を行っている段階でありまして、また、参加が決まった国におきましても、準備を開始したところでございますので、現時点で推計するのは難しい状況にございます。

 他方で、参考までに過去の事例について申し上げますと、二〇〇五年に我が国で開催しました愛・地球博では、開催機関である財団法人二〇〇五年日本国際博覧会協会が、査証を取得するために一万五千件の証明書を発行してございます。

 愛・地球博の参加国が百二十一か国であったことに対しまして、大阪・関西万博では百五十か国の参加を目標としておりますので、愛・地球博の際よりは多くの関係者の来日が見込まれるところでございます。

 二点目の、協定で特権・免除を規定する経緯と意味についてでございますけれども、国際博覧会の開催に当たりましては、公式の参加者あるいは博覧会国際事務局等の関係者が、開催国内に長期間滞在し、事務所を構え、パビリオン建設や展示品の搬入等の準備に当たることになります。

 こうした関係者の活動を我が国の法令にのっとって円滑に行えるよう環境を整備することは、国際博覧会の成功に向けまして、開催国の重要な役割の一つでありまして、我が国も過去の万博の開催の際に取り組んできたところでございます。

 こうした中で、博覧会国際事務局は、近年、国際博覧会の開催及びその準備に向けた環境整備の一環として、公式参加者等への一連の特権・免除の付与等を規定した協定を締結するよう開催国の政府に対して求めてきているところでございまして、二〇〇八年のサラゴサの国際博覧会に際しまして初めて締結されまして、それ以来、二〇一五年のミラノ、二〇一七年のアスタナ、そして先頃開催されていましたドバイの万博に際しましても、BIEと各開催国政府との間で締結されているという経緯がございます。

 そうした中で、我が国に対しましてもBIEから同様の協定を締結するように求められたというところでございまして、本協定を我が国とBIEとの間で締結することによりまして、公式参加者及びBIEによる活動の円滑化が確保され、大阪・関西万博の開催及びその準備に向けた環境が整備されることになると考えております。

 三点目の御質問、特権・免除の濫用につきましてですけれども、協定の十四条の2におきまして、本協定により与えられる特権又は免除の濫用が発生したと日本国政府が認める場合には、日本の法令に従って特権又は免除の付与を停止する権利を有する旨規定してございます。

 実際に濫用が行われたと判断する場合には、対象となる特権又は免除の内容あるいはその濫用の内容を踏まえつつ、当該特権又は免除に係る関係省庁におきまして、個別具体的なケースに合わせて対応していくことになりますけれども、いずれにしましても、関係当局、政府一体となって特権免除の濫用防止にしっかりと対応してまいりたいと考えております。

金城委員 あと二つ質問を用意していましたが、副大臣、また部長、済みません。時間がなくなりましたので、これで終わります。

 ありがとうございました。

城内委員長 次に、岡田克也君。

岡田委員 立憲民主党の岡田克也です。

 まず、条約関係で一問だけ。

 先ほど来、二〇二五年万博に対するロシアの参加の問題が与党の質疑者からも質問が出ました。経済局長の方は、現状のままでは認めることができないというふうに答弁されたと思いますが、大臣の御答弁は、想定されないという答弁だったと思うんですね。

 想定されないというのはどういうことですか。やはり、今のこの状況が続く限りは認めることができないとはっきりおっしゃるべきじゃないですか。

林国務大臣 先ほど政府委員から答弁をいたしましたけれども、そこで認められないという表現を使っていたかどうか、ちょっと私は、ここで聞いておりましたけれども、想定されないというふうに申し上げていたのではないかというふうに思います。

岡田委員 想定されないというのはどういうことですか。想定する主体は誰ですか。ちょっとよく分からない答弁なんです。

林国務大臣 政府として想定をしておらないということでございます。

岡田委員 想定する、しないというのがよく分からないんですね。認める、認めない、どちらなんですか。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、今後の情勢をよく踏まえて対応するということでございますので、今の時点で、先ほど申し上げましたように、現下の状況が変わらなければ、今の状況であれば想定をされないということでございます。

岡田委員 現下の状況が変わらなければ認めないと違う意味で、想定されないを使っておられるんですか。

林国務大臣 最終的に判断するのは政府でございますので、この状況が続いて、二〇二五年に先立ってどこかの時点で判断をするときにこの状況が続いていれば当然認めないことになるということでございますが、まさにまだこの状況がどうなるか分かりませんので、想定をされないというふうに申し上げております。

岡田委員 この状況が続けば認めることはできないというふうに今大臣は答弁されたと思います。想定されないというのは、非常に主語もよく分からないし、想定するというのはよく分からないので、ちょっと確認をさせていただきました。

 それでは、それ以外の問題で、今日は、核の持込みをめぐる問題について少し議論をしたいと思います。

 まず大臣にお聞きしたいと思いますが、核兵器を搭載した艦船の一時寄港や航空機の立ち寄りについて、今の日本政府も、これは事前協議の対象になる、そういう考え方であると考えてよろしいですね。

林国務大臣 我が国は、一貫して、事前協議の対象である核兵器の持込みには米艦船及び航空機の寄港、飛来、通過が含まれると述べてきておりまして、この日本政府の立場は現在も同様でございます。

岡田委員 他方で、米国政府は、NCND政策を背景に、一時寄港や立ち寄りは事前協議の対象ではないという考え方を取っているというふうに理解していますが、その点もよろしいでしょうか。

林国務大臣 アメリカは、外国政府からの照会への対応などにおいて、NCND政策、すなわち、核兵器の所在を肯定も否定もしない政策を現在も取っているというふうに承知をしております。

岡田委員 したがって、アメリカは、一時寄港や立ち寄りは事前協議の対象ではないという考え方だということでよろしいでしょうか。

林国務大臣 我が国を取り巻く安全保障環境や現実に核兵器が存在していることを踏まえれば、核抑止力を含む米国の拡大抑止は不可欠でございます。その上で、米国のNCND政策は、核兵器の隠匿性や残存性を確保するなど、核抑止力を有効に担保するために必要な戦略上の要請に基づくものであると理解をしております。

 その上で申し上げますと、冷戦終結後、これまで公にされた米国の核政策に加えて、米国は我が国の非核三原則に係る立場をよく理解していることから、核兵器を搭載する米艦船及び航空機の我が国への寄港、飛来、通過は現状において想定されていないところでございます。

岡田委員 大臣、その答弁はちょっと驚きですよ。それは密約解明前に戻ってしまっていますよ。

 要するに、密約を解明した結果、日本とアメリカの間に認識の不一致がある、その認識の不一致がいつから発生したかということについて、一九六〇年の岸・ハーター交換公文を交わしたときに果たして認識があったかどうかということについては、外務省はそのときには密約はなかったと言い、そして、有識者は広義の密約があったというふうに言っているわけですね。あるいは、外務省の元次官の中には、いやいや、一九六〇年段階でそういった一時寄港などは当然認めるという共通認識だったんだよ、その後変わっていったんだという、いろいろな見方がありますが、いずれにしても、そういった認識の不一致が、一定の段階で日本政府ははっきり認識したわけです。

 少なくとも、一九六八年の東郷局長による、密約で明らかになった文書を見れば、もうその段階では、認識の不一致があるということについて、総理大臣や外務大臣が替わるたびに外務次官が、そういう問題があるんだ、認識の不一致があるんだということはきちんとレクチャーしていたということは分かっているわけですね。

 今の大臣の御答弁は、アメリカが言ってこない以上、それは艦船に搭載されていない、そういう従来からの答弁に戻ってしまっていますよ。それはさすがに私はちょっと理解できない、容認できないんですが、いかがですか。

林国務大臣 今御指摘のありました認識の不一致を含めまして、いわゆる密約問題については、まさに民主党政権時代に外務省におきまして徹底した調査を行って、二〇一〇年の三月にその結果をいわゆる「密約」問題に関する調査報告書として公表をしておられまして、現政権として、この報告書の内容を引き継いでおるところでございます。

 当時の政府の対応につきまして、その後得られた情報に基づいて評価することは困難であり、いわゆる「密約」問題に関する有識者委員会報告書においても、今委員からも少し触れていただきましたけれども、外交には、ある期間、ある程度の秘密性はつきものであるとした上で、外交に対する評価は、当時の国際環境や日本国民全体の利益、国益に照らして判断すべきものである旨述べられているところでございます。

 しかし、一方で、この問題がこれほどの長期間にわたって国民に対して明らかにされてこなかったということは遺憾であると考えております。

 政府としては、今後とも、国民とともに歩む外交を実践し、国民の負託に応える外交の実現に努めてまいりたいと考えておるところでございます。

岡田委員 ちょっと私、混乱しているんですが、明らかにしなかったことは遺憾であると。それは安倍総理の答弁でもあるんですね。

 ただ、その問題に行く前に、さっきの大臣の答弁は、では、今でも、アメリカが何も言ってこないから、一時寄港とか航空機の立ち寄りとか、そこで核の搭載はない、アメリカが言ってこないからないんだとアメリカのせいにして、日本政府としては、言ってこない以上はないと信ずるという、従来の日本政府のスタンスを今も続けておられるということですか。

林国務大臣 先ほど御答弁したとおりでございますが、一方で、認識の不一致については、今まさに御答弁したように、民主党政権時代の調査によって公表されたものがあるわけでございまして、我々として、この報告書の内容を引き継いでおるわけでございます。

 そのときの報告書には、ある期間、ある程度の秘密性はつきものであるとした上で、当時の国際環境、日本国民全体の利益、国益に照らして判断すべきものであるというふうに述べられているところでございます。

岡田委員 では、ちょっと観点を変えて、また後に戻りますが、安倍総理も言われた、長期間にわたって国民に明らかにされてこなかったことは遺憾である、大臣も言われました。

 明らかにされてこなかったと人ごとみたいに言っていますが、国会でうそを言ってきたわけです、歴代の総理や外務大臣が。ありませんと言ってきたわけですよ。そのことについてどう考えているのか、自民党政権として。もう既に、密約の結果が出て十年たつんです。

 私は、密約の結果を明らかにしたときは、当時の野党自民党や歴代総理を責めることはやめようと判断しました。密約の結果を明らかにするときに、歴代の総理大臣や外務大臣には、こういうことで発表させていただくということを事前に丁寧に説明もいたしました。

 だけれども、それから十年間、ずっとほったらかしで、いや、遺憾だと。遺憾じゃないんですよ。国会でうその答弁をしてきたことについて、やはりきちっとどこかでは総括してもらいたい、そう思って私は質問しているわけです。

林国務大臣 先ほど委員会の調査報告書について申し上げましたけれども、当時の政府の対応につきまして、その後得られた情報に基づいて評価すること、これは困難であり、この有識者委員会報告書においても、外交には、ある期間、ある程度の秘密性はつきものであるとした上で、外交に対する評価は、当時の国際環境や日本国民全体の利益、国益に照らして判断すべきものである旨、この時点で述べられているところでございます。

 そして、ここから先は先ほど申し上げたとおりでございますが、これほど長期間にわたって明らかにされてこなかったことは遺憾であるというのは、今、岡田委員がおっしゃったように、安倍総理も御答弁されたとおりでございます。

岡田委員 ですから、六〇年段階でどうだったのかということを私は言っているんじゃないんです。そこは見解が分かれるところだと思います。でも、六八年以降は、認識の不一致があることははっきりと日本政府は認めていたわけです。そして、その旨を、歴代の総理大臣や外務大臣が替わるたびにきちんと報告していたわけですね。

 だから、六〇年のことを言っているんじゃなくて、六八年、少なくとも六八年の段階では認識の不一致ははっきりと認識していたわけですから、認識の不一致があることは分かりながら、アメリカが言ってこない以上は、核を搭載した船の入港はありませんと言い続けたことは、それは明らかにうそだし、そのことについてどうなのかというふうに問うているわけです。

 大臣の先ほどの答弁は、それは六〇年段階の答弁としてはいいと思いますし、密約調査でもそういったことを、あるいは私の発言もそういうふうに述べていると思いますが、六八年以降は少なくとも通用しない話だと思いますが、いかがですか。

林国務大臣 繰り返しになるかもしれませんけれども、当時の政府の対応について、その後得られた情報に基づいて評価することは困難であるということ、そして、ある期間、ある程度の秘密性はつきものであるということが報告書に書かれております。また、外交に対する評価というのは、当時の国際環境、国民全体の利益、国益に照らして判断すべきということでございまして、これは六八年を境に、そのことについて、六八年以前のみについて語られたということでは必ずしもないのではないかというふうに思っております。

岡田委員 では、大臣、改めてお聞きしますが、現状はどうなんですか。現状でも、アメリカは言わないんです。もうそのことははっきりしている。日本は、アメリカが何も言わないから、ないんだと。これは明らかに国民を欺いていると思うんですね、アメリカが言わないことは分かっていて。だから、こういう現状にあることを大臣はどう考えておられるんですか。

林国務大臣 これは、冒頭申し上げましたとおり、冷戦終結後、米国の新たな核政策が公にされたことに加えて、米国は我が国の非核三原則に係る立場をよく理解しているということから、核兵器を搭載する米艦船及び航空機の我が国への寄港、飛来、通過は現状において想定されていないと申し上げたとおりでございます。

岡田委員 アメリカの核政策の変更によって、現状ではそういうことはないだろうというのは分かりますけれども、アメリカの政策はまた変わるかもしれませんよね。それから、戦略爆撃機とか戦略原潜ということだってあり得る。だから、私は、緊急時における一つの考え方というものを外務大臣としてお示しをいたしましたが、アメリカの政策が変わったらどうするんですか。

 あるいは、今、航空機については、やはり、アメリカの政策といったって、航空機に核を積んでということは戦略爆撃機でなくてもあり得るわけですから、それが日本に来るということは一〇〇%否定はできないんじゃないんですか。どうですか。

市川政府参考人 米国の政策についての御質問でございましたのでお答えさせていただきますが、米国は、二〇一八年、「核態勢の見直し」におきまして、冷戦後、アジア配備の全ての核を撤去したことを表明してございます。

 また、その過程におきましては、一九九一年のブッシュ・イニシアチブにおいて、海軍の水上艦艇、攻撃型潜水艦、陸上配備航空機からの戦術核兵器を撤去する旨を表明、また、一九九四年NPRにおいて、水上艦艇及び空母艦載機から戦術核兵器の搭載能力を撤去することを決定いたしております。

 また、二〇一〇年NPRにつきましては、水上艦艇及び通常型潜水艦からの核兵器を撤去することを含めて、太平洋地域から前方展開の核兵器を撤退させたということを表明していることでございまして、先ほど大臣が答弁されましたとおり、現在の、冷戦終結後、これまでに公にされた米国の核政策に加えて、米国が我が国の非核三原則に係る立場をよく理解しているということから、核兵器搭載の米艦船あるいは航空機の我が国への寄港、飛来、通過は現状において想定されない、このように答弁させていただいているものでございます。

岡田委員 米国が日本の非核三原則を理解しているからそういうことはないであろう、これは従来の、六〇年代からの日本政府の答弁そのままですよ。ちょっと言い方を変えているだけですよ。

 アメリカは、そういう事態は困ると言い続けてきたんじゃないんですか。アメリカとしては、当然、一時寄港とかそういったことはあるんだ、それがないなんと言われたら困るということで、いろんな、ライシャワー発言とかラロック発言とかそういうのも出てきたし、それを、いや、アメリカは理解しているから大丈夫だというのは、それは従来と全然変わっていませんよ、密約調査のその前と。

 余りにもそれは不誠実だと思いますが、大臣、いかがですか。

林国務大臣 今局長から答弁したとおりでございまして、まさに委員がおっしゃったように、長い間このことが放置をされていたということは遺憾であるわけでございますが、一方で、今局長から答弁したとおり、冷戦終結後は、公にされた米国の核政策に加えて、米国が我が国の非核三原則に係る立場をよく理解しているということで、核兵器を搭載する米艦船及び航空機の我が国への寄港、飛来、通過は現状において想定されないと考えております。

岡田委員 アメリカが日本の非核三原則をよく理解していると。具体的にどういう発言があるか、教えてください。

林国務大臣 これはもう委員もよくお分かりのとおりでございますが、外交上のやり取りでございますので、相手側の発言ということについては、こちらから申し上げることは控えさせていただきたいと思います。

岡田委員 少なくとも十年前、私が外務大臣を務めたときには、そういう発言は過去にもありませんよ。こういう不一致があることはむしろ困る、それがアメリカ政府じゃないですか。

 もし、その後、何か違う発言があるというなら教えてください、具体的に。外交上の秘密と全部封じてしまって、それを唯一の根拠にして今大臣は答弁しておられるわけだから、外務委員会で議論する意味がないじゃないですか、それじゃ。きちんと答弁してください。

林国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、これは相手との関係がございますので、ここでつまびらかに、相手がこう言ったということを申し上げるのは差し控えたいと思います。

岡田委員 岸田総理は、非核三原則は変えないというふうに今国会でも答弁をされました。それはいいんですけれども、しかし、現実には、一時寄港や立ち寄りはアメリカ側は協議しないわけですから、あとはもうアメリカ頼みだけで、今、大臣の答弁のように。

 実際、非核三原則に穴が空いているんじゃないですか、一部。にもかかわらず、非核三原則は守ると強弁し続けるというのは、それは不誠実じゃないですか、国民に対して。

林国務大臣 岸田総理が御答弁されておられますとおり、日本政府として、非核三原則を堅持する方針に変わりはないわけでございます。唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現を目指すとの考えでございまして、政府としては、非核三原則を政策上の方針として堅持をしておりまして、これを見直すような考えはないと考えております。

岡田委員 今日の外務大臣の答弁を見たら、米国側は愕然とするんじゃないかと私は思いますよ。恐らく、日米同盟にとっても深刻な事態だというふうに思うんです。この問題が難しいことは分かりますけれども、だけれども何とかしなきゃいけない、そういう方向性を持って対応することが私は必要じゃないかと。

 緊急事態における私の発言も、リスクは非常にありました。だけれども、認識の不一致があるということを明らかにしただけでは、やはり責任を果たしたとは言えない。だから、アメリカの政策の話をして、そしてもう一方では、緊急時においてはそのときの政権が判断するしかないという言い方をすることで、少しでも前に進めたつもりなんですよ、この問題の解決に向けて。

 あれから十年たって、また大臣のような御答弁では、それは元に戻っているだけじゃないですか。密約の解明によって、歴代、自民党政権で事実に反することを言ってきたこと、そのことも明らかになっているわけですから、そこのリスクは大分軽減されているんですよ。問題は、あと、今の現状のこの食い違いを、不一致をどう解決していくか。それについて全く何も言わずに、非核三原則は守ります、そして、アメリカが日本の非核三原則を分かっているから、そういうことはありませんといって、アメリカの責任にしてしまう、これで日米同盟は大丈夫ですか。

 密約調査の結果、関連の外交文書二百九十六点が秘密指定解除されています。その中で、当時、条約局審議官だった栗山元次官が作ったペーパーというのがあります、昭和五十六年六月二十二日。実は、この中で栗山さんが言っておられるのは、緊急時における対応について、国家の緊急存立の場合には政府の責任において最終的に判断するとの国内説明を行うべきだという御提案があります。実は、私の発言は、これに触発されたようなものなんです。

 栗山さんは、もう一つ、この文書の中でこう言っているんですね。従来どおりの日本の解釈で米国と合意することは、米国の核戦略に大きな制約を課すことになるので、米国が同意しない、他方で、一時寄港を全面的に事前協議の対象外とすることは、現状では国内政治上受け入れられない、その中間で日米双方が受入れ可能な新方式を見出すしかないというふうに栗山さんは言われています。

 私は非常に参考にすべき見解じゃないかというふうに思うんですが、いかがですか。

林国務大臣 当時の政府の対応について、その後判明した情報に基づいて評価するということは困難であります。

 また、御指摘の文書を含めて、公開された個別の外交文書の意義及び価値についての判断というのは差し控えたいと思いますが、いわゆる今委員がおっしゃった栗山ペーパーに言及されております、例えば国家の危急存亡の場合には政府の責任において最終的に判断をするとの国内説明を行うという考え方、今委員御自身がおっしゃったように、これは当時の岡田大臣の答弁と矛盾するものではないわけでございます。そして、この岡田大臣がされた答弁というのは、岸田内閣において引き継いでおるということを従来より申し上げてきておるところでございます。

 その上で、冷戦終結後、これまで、米国の核政策に加えて、米国は我が国の非核三原則に係る立場をよく理解していることから、核兵器を搭載する米艦船及び航空機の我が国への寄港、飛来、通過は現状において想定されないというのは、先ほど申し上げたとおりでございます。

岡田委員 一九七四年十一月十九日の日米首脳会談、田中総理とフォード大統領の会談ですけれども、それに向けて、当時の外務大臣は木村俊夫先生、私の郷里の大先輩であります。そして、大平蔵相が外務大臣代理を務めました、一定の期間。このお二人が中心になって、日米首脳会談に向けて、この問題の解決に、何とかできないかということで外務省の中でも様々な協議が行われたということは、この秘密指定解除をされた文書の中でも出てきます、いろいろと。

 どういう対応をされたのか御説明いただけますか、簡単に。

市川政府参考人 御指摘の、認識の不一致の解消に向けた当時の政府の検討状況につきまして、例えば、昭和四十九年十月二十九日付の外務省文書「事前協議問題について」におきまして、同問題について日米交渉において実現すべき基本ライン及び主要な問題点などについて検討が行われておりまして、その中では、最重点は、事前協議の対象となる核兵器の日本への持込みの概念を明確化し、原則として、単純な我が国の領海、領空通過及び一時寄港はこれに含まれないことを確立することにあると記載されており、平成二十二年の調査報告書においても、昭和四十九年十一月、外務省内で核搭載艦船の領海通過、寄港を事前協議の対象から外す可能性について検討を行い、大平外務大臣臨時代理、田中総理大臣などにも諮りつつ、米側への打診を開始したと記載されてございます。

 また、首脳会談における対応につきまして、昭和四十九年十一月十九日の田中総理とフォード大統領第一回会談における核問題詳録には、田中総理からフォード大統領に対して、日米安保条約は日本への核兵器の持込みを事前協議の対象としていること、日本政府としては、この政治的課題に応えねばならぬ立場にあることなどを述べた上で、フォード大統領に米側の理解と協力を求めたことが記録されてございます。これに対しフォード大統領からは、この問題の解決につき、できるだけ協力していきたいと思う、日米両国政府が協力すれば必ず解決策は見出されるものと信ずる、詳しいことはキッシンジャー長官と木村大臣とで話し合ってもらいたい、いずれにしても、この問題のために日米の特別な友好関係を害するようなことがあってはならないと思うとの応答がなされたことが記録されてございます。

 さらに、外相会談における対応について、昭和四十九年十一月二十日の木村外務大臣・キッシンジャー国務長官会談における核問題詳録には、木村大臣から、この問題は我が国国内政治上最高レベルの政治的決定を要する問題であるが、今日この場で詳細に触れることは適当ではないと考える、今後日米の政府間で話し合っていきたいと述べ、キッシンジャー長官から、核についての日本国民の特殊な感情は理解すると述べた上で、今日のこの会談が詳細にわたり話し合う最良の機会ではないとの貴大臣の発言には同感であり、今後、日本側よりワシントンに誰かを派遣するか、あるいは米国側より誰かが東京に来て話し合うこととしてはいかがかと思うなどの応答があったことが記録されております。

 以上でございます。

岡田委員 外相会談では、外には言わないけれども、日米間で、政府内で話し合っていくということが確認されたということです。

 ただ、残念なことに、その直後に田中総理大臣は退陣をするということになって、三木総理になった。三木総理は、この問題、とてもじゃないけれども取り扱うことは難しいということで、そこで一旦沙汰やみになったというふうに理解しております。

 ただ、外務省の中でも、それから当時の木村外相や大平外相代理のそういうイニシアチブもあって、議論はかなりされたということは事実なんですね。そのことは文書で明らかになっております。

 私は、核の持込みをめぐる日米の認識の不一致の問題を放置することは、一つは、日米両国の信頼関係を損ない同盟関係を弱めるものだ、他方で、国民に対して今後も、先ほど大臣が使われたような論理で、いわばそれは私は政治的にはうそだと思います、そういうことが国民の政治に対する信頼を損ねることになりかねない。双方の意味があるがゆえに、やはりこの問題に対して何らかの解決策というのを考える責任があるんじゃないかというふうに思います。もう密約が解明されてから十年たつんです。ずっとこの問題は放置されたままなんです。

 先ほど言いました大平大臣は、総理になった後もこの持込みの問題について非常に問題意識を持っておられたということは、例えば、身内である森田一さんの著書にも出てまいります。伊東官房長官や加藤副長官に、国民に分かってもらえる方法はないだろうかというふうに言われたとされています。

 やはりこれは、半分ぐらいはもう取り除かれているわけですから、残りのところ、これは難しいですけれども、林大臣、大平総理の系譜を継ぐ岸田内閣であり林大臣ですから、この問題を何とかしよう、そういう意欲はお持ちじゃないですか、どうですか。

林国務大臣 御指摘は多といたしたいと思います。

 そして、大平総理は、楕円の法則というのもおっしゃっておられましたが、同時に、永遠の漸進主義ということもおっしゃっておられたわけでございます。そして、岸田総理は、まさにリアリズム外交ということもおっしゃっておられるわけでございます。

 繰り返しの答弁はいたしませんけれども、まさに岡田外務大臣が、緊急事態ということが発生して、核の一時的寄港ということを認めないと日本の安全が守れないというような事態がもし発生したとすれば、それはそのときの政権が政権の命運を懸けて決断し、国民の皆さんに説明する、そういうことであるということを答弁をされた。それに至る経緯が、今委員がるる述べられたこの調査報告書、また栗山ペーパーにも言及をされましたけれども、そういうことであったんだろうなということは私も推測はされるわけでございます。

 まさにこれは岸田内閣で引き継いでおるわけでございますので、今委員から御指摘のあったことも含めて、しっかりと対応してまいりたいというふうに思っております。

岡田委員 国政選挙目前ですから、今慎重になられるのは分かりますが、その後、もし少し時間があるとすれば、この問題についてもしっかり岸田内閣の下で前進させるということについてお願い申し上げたいと思います。

 余りこれを政争の具にするというのはよくありませんので、この問題を解決するためにもし協力する必要があるということであれば、少なくとも、私はこの密約の問題に関わってきたわけですので、個人的には御協力をしたいというふうに思っております。

 さて、残された僅かな時間ですが、中長距離ミサイルと事前協議について、この前ちょっと議論させていただきましたが、限られた時間ですので、端的にお聞きしたいと思います。

 仮に、中長距離ミサイルを米軍が在日米軍基地に配備するということになった場合に、これは事前協議の対象なんでしょうか。

林国務大臣 装備における重要な変更、これは、藤山・マッカーサー口頭了解によりまして、核弾頭及び中長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設、これを意味しております。

 これは、米国が日本政府の意思に反して核兵器の持込みを行うことがないようにするためにできた取決めでございまして、その趣旨に照らしても、中長距離ミサイルとは、あくまで核専用の中長距離ミサイルというものを念頭に置いて了解をされております。

 核、非核両用のミサイルについては、核弾頭を装備した場合には核兵器でございますが、核弾頭を装着しない場合には非核兵器であり、したがって、核弾頭を装着していない核、非核両用のミサイルの持込み、これは事前協議の対象ではないということでございます。

岡田委員 当時、一九六〇年当時と今ではもう全然違っていて、ミサイルのそのものの性能とか位置づけとかが変わってきていると思います。

 一時、米国政府は、中距離ミサイルを配備するということを前政権のときには主張したりいたしました、まだ決まっていないとは言っていましたけれども。

 仮に、日本の在日米軍基地に中距離ミサイルを配備するということになった場合に、それは、あらかじめ協議なしで、アメリカ政府の独断でそれができるということですか。

林国務大臣 藤山・マッカーサー口頭了解につきましては、その後もその内容を整理した上で、一九七五年に米国政府との間で、核弾頭、ニュークリア・ウォーヘッズとの用語を含む英文も文書で確認し、そのことを当時の国会でも御説明をしてきているところでございます。

 したがって、制度としては、この藤山・マッカーサー口頭了解に基づいてなされるというふうに考えております。

岡田委員 大臣は藤山・マッカーサー口頭了解をよく引用されるんですが、その後に、これは密約調査の結果として討議の記録というのが出てきていて、藤山・マッカーサー口頭了解というのは、それの一部分をあたかも文書が存在するかのように説明したということも明らかになっているわけです。

 だから、議論するのならやはり討議の記録を基にして議論しなきゃいけないので、この前も申し上げましたが、藤山・マッカーサー口頭了解というのは、外務省が都合のいいように、もちろんアメリカ政府と協議したかもしれませんが、一部だけ、それをつまみ食いのようにしていったというふうに私は思いますので、その点は申し上げておきたいと思います。

 非常に中途半端になりましたが、やはり、中距離ミサイルを日本に配備した後、撃つときには、これは出撃になりますから、当然事前協議の対象になりますよね。そうであれば、やはり配備のときから当然それは協議の対象になると考えるべきだと私は思っております。

 もう少し議論したかったんですが、時間が参りましたので、この辺にさせていただきたいと思います。

城内委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 立憲民主党の小熊慎司です。

 文通による恋愛の末に結婚した小熊慎司が、万国郵便憲章の条約についてお聞きをいたします。

 今、メールとかが進展していますから、直接のリアルな手紙のやり取りというのが全世界的に少なくなってはきていますが、今回のこの条約については、そういう郵便のやり取りというよりは、まさに、Eコマースの進展によって市場が拡大していくことについて対応するものであります。

 非常にそれは今の時代に合ったものでありますし、また、経済的に恵まれない国と経済的に豊かな国の格差を解消するという狙いもあって、非常にいいものとなっていますが、ちょっと時間も限られているので、二点併せてお聞きいたします。それぞれお答えください。

 まず一点目は、この条約によって、日本がどのように経済的な利益を拡大できるのかという点についてお伺いを、より数値的なものが、こういうものが何倍になるとか、どのぐらいの市場規模がこのぐらい広がるというのがお示しできればお願いいたします。

 あと、一方で、最近、いろいろな物流の進展でありますけれども、昨年、私も関係省庁に状況をお伺いしましたが、コンテナが不足していて、商売上はいろいろな契約が成立するんだけれども、それが滞ってしまうという状況があります。

 関係省庁からそのときお聞きしたのは、三つの理由を言っていました。

 一つには、ロサンゼルス港で、コロナの影響で人手が足りなくて動かせていない、日本の船なんかもほかの国の船も、二、三か月もロサンゼルス沖で停泊を余儀なくされている。

 あともう一個、やはり、中国の経済的進展によって、中国にコンテナが寄っちゃっている、このアンバランス。

 あとは、国際規格になってコンテナができて、ちょうど更新時期になっていて、いろいろ古いのは潰しちゃったので、元々数も少なくなっていた。

 大きくその三つの原因でコンテナ不足が生じているという話も聞きましたが、こうした状況をどうやって解消していくのか。

 こういう条約によって、いろいろなEコマース市場の整備というか促進の条件は整っているんですけれども、いわゆるリアルなアナログなところでは逆にそれが達成できない状況がありますから、こういったものをどう解消していくのか、併せてお聞きいたします。

赤堀政府参考人 まず、外務省より一点目についてお答えいたします。

 万国郵便連合加盟国の郵便事業者が他国に郵便物を送付する場合、送付国は受取国に対して到着料、すなわち受取国の国内配達手数料を支払っておりますが、従来、到着料につきましては途上国に配慮した低廉な価格が設定されており、先進国においては国内配達コストを賄えない状況にございました。

 御指摘の近年のEコマースの市場規模拡大は、途上国から先進国へ小形包装物が大量に送付される状況を引き起こし、先進国において外国から来る郵便物の国内配達コストを賄うことが困難な状況を招いたため、今般の万国郵便条約の更新の際に到着料の見直しが行われました。

 今回の更新の万国郵便条約によるEコマース市場全体への経済効果については、包括的な数字は持ち合わせてございませんが、我が国における到着料の収支について申し上げれば、一定の条件下で試算しましたところ、現行の万国郵便条約が適用されている二〇一九年と比較して、二〇二三年は約十一億円の到着料収支の改善が見込まれ、我が国へ到着する外国からの通常郵便物の配達処理に係る費用負担が改善される見込みでございます。

加藤大臣政務官 小熊慎司委員の二点目の御質問につきまして、国交省より答弁させていただきます。お答え申し上げます。

 世界的な海上コンテナ輸送の混乱につきましてですが、国際海上コンテナ輸送につきましては、アジア発北米向けコンテナ荷動き量の大幅な増加や北米西岸を中心とする港湾混雑等により、世界的な需給が逼迫をしておりまして、海上運賃の高騰や船舶の運航スケジュールの乱れ等が生じていると認識をしてございます。

 このため、国交省といたしましては、昨年四月及び本年一月には船主、荷主団体等が一堂に会した情報共有会合を関係省庁と共同で開催をするなど、現状や今後の見通し等につきまして、随時情報共有を行っております。

 また、北米西岸における港湾混雑につきましては、米国連邦政府や港湾当局におきまして改善に向けた取組が進められていると承知しておりますけれども、国土交通省といたしましても、我が国の状況や混雑解消に向けた対応の必要性等につきましても、米国側にも伝達をしているところでございます。

 国交省としましては、引き続き状況を適宜適切に把握、共有するなど、円滑で安定的な海上物流の構築に向け、関係事業者や関係省庁と連携をしてしっかりと対応してまいります。

小熊委員 今後もいろいろな形でこのEコマース市場というのは拡大していくと思いますが、残念ながらこの物流の部分で止まってしまったのではビジネスチャンスを大きく損なうわけでありますし、また一方で、私の地元で、ビジネスとは関係ないんですけれども、支援物資をアフリカに送りたい、でもコンテナがないから送れないなんということもありましたので、是非これは喫緊の課題として、円滑な物流をしっかり整えていくということにあらゆる努力をしていただきたいということを申し述べまして次の質問に移りますので、加藤国土交通政務官はもう大丈夫です。あと、関係ない政府参考人も。

城内委員長 では、加藤政務官と今後答弁の必要のない政府参考人は退席してください。

小熊委員 次に移ります。

 いわゆるロシアとの八項目の協力プランについてですけれども、これまで衆参合わせていろいろなところで、またこの委員会でも議論してまいりました。政府の予算は、八分野ありますけれども、配付資料にもありますとおり、七分野にわたっていて、十六事業等に二十一・一億円ということになっています。

 この予算の執行については、この外務委員会でも、林大臣も、それぞれ状況を踏まえて対応していくということでありましたが、この十六の予算がついている事業等について、今、当面停止をしているものは結構ですが、まだ停止、中止を決定していないものについてどのようなものがあるか、なぜそれがまだ中止や停止の判断に至っていないのかの理由も含めてお伝えください。

山中政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問のありました八項目の協力プランでございますけれども、現下のウクライナ情勢を踏まえますと、ロシアが現在のままであり続ける限り、ロシアとの関係をこれまでどおりに戻すことは難しいとのことで、八項目の協力プランを含むロシアとの経済分野の協力に関する政府事業については、当面見合わせることを基本としております。

 この中で、経産省の関連予算について申し上げますと、五事業ありますが、現時点では、ロシアからの撤退を含めた難しい判断を迫られる日本企業に対する情報提供等の事業につきましては一部予算を執行しておりますが、それ以外の事業については予算の執行はしておりません。また、他省庁の事業につきましても、現在予算の執行をしているものがあるとは承知しておりません。

 いずれにしましても、ウクライナ情勢は刻一刻と変化しておりますことから、今後の事態の動向や国際的議論を踏まえて、予算の執行を適切に判断してまいりたいと考えております。

小熊委員 今、経産省においては一部あるというふうに言いましたけれども、経産省におけるこの八項目の協力の予算というのは五つありますが、具体的にどれを一部動かしているんですか。今、ビジネスの関係ということは、ロシア・ビジネス総合促進事業等のやつですかね。どれですか。

山中政府参考人 お答え申し上げます。

 具体的には、ロシア・ビジネス総合促進事業等、ロシア地域貿易投資促進事業、産油・産ガス国産業協力事業等でございます。

 これらにつきまして、経済産業省がロシアからの撤退を含めた難しい判断を迫られる日本企業に対する情報提供等を行う事業ということで、例えば、ロシア・ビジネス総合促進事業等におきましては、ジェトロから日本企業に対して、ロシアに対する各国の対ロ制裁の概要やロシアにおけるビジネス環境などに関する情報提供や、ウクライナ情勢を踏まえた相談窓口の設置を行っております。

 また、ロシア地域貿易投資促進事業におきましては、ロシアNIS貿易会から日本企業に対して、ロシア現地の制度改正などの情報提供を行っています。

 また、産油・産ガス国産業協力事業等におきましては、ロシアNIS貿易会が、中央アジア地域も含めた石油や天然ガス開発に関する現地規制等の投資環境に関する情報提供を行う予定です。

 いずれにいたしましても、今後の状況を踏まえて、引き続き日本企業に対して適切な情報提供を行ってまいりたいと考えております。

小熊委員 一つは、撤退を前提に日本企業の後押しをしていくというのは、これは必要なものもあるかもしれません。

 これは非常に高度な政治判断というかが必要ですけれども、エネルギー分野に関しては、ドイツも五五%の使用率であったのを頑張って今四〇%ぐらいまで落として、今後もロシアへの依存度を下げていくということを決定しています。日本は一〇%前後ロシアに関わっていますけれども、これはやっていくということで、今停止は決定をしていないというふうに認識をしていますけれども、こういうことでいいのかなというふうに思います。

 ドイツの担当大臣も、ドイツも苦労はするけれども、ウクライナ国民の苦労から考えれば、それはもう比べるべくもないんだ、国際的な連携の下で、経済制裁、しっかり実効性の上がるものにしていかなきゃいけない。

 こういう、日本のいろんな生活を守っていくということでもありますが、逆に、声高に国際連携と言っていながら、一方でこういうことです。だったら、そんないきがって言う必要がなくて、いきがって言うんだったらちゃんと実行しろという話で。

 この点、大臣、どうですかね。国際社会で、大臣もヨーロッパに行って、いろいろ連携していくと言っているんだったらやれよという話で、やる気がないんだったらそこまで言うなよという話。

 安倍政権のときから、いきがって言うけれども中身がないというのが、伴わないというのがあって、抑制的な林大臣ですから、そんな格好いいことを言わずに、本当に真摯に、正直に言っていけばいいんですけれども、これは言った以上はやらなきゃいけないと思いますよ。国際連携、ドイツの方が全然困っているのにやっているんですもの。やるんですもの。

 どうですか、大臣。

林国務大臣 ちょっと突然のお尋ねでございましたが、首脳レベルで、エネルギーについてたしか声明が出されておりまして、それぞれの国の事情に応じて、同じ方向性を持ってやっていこうというような趣旨がそこで出されていたと承知をしております。

 それぞれの国で、依存度、今委員からもお話があったように様々ですし、それから、日本のように海に囲まれていますと、陸路でパイプラインというのは余りないわけでございます。そういったような違いも含めて、しかし、全体としてやっていこうというのがその首脳レベルで出されたものでございますので、しっかりそこで出された方針に従ってそれぞれの国が努力をするということが、我々が今置かれている状況ではないのかなというふうに考えております。

小熊委員 一方で、確認はきちっと取れていませんが、いわゆる新興財閥の御家族が相次いで亡くなっているというのは、これは偶然とはちょっと想像し難い、すごい混乱している状況が生じています。

 そういう意味では、ロシアとの経済関係を結んでいくというのは、非常に、普通の世界とは違うリスクがあると思います、今のウクライナ情勢を飛び越えて。だから、これは継続をしていくということよりも、一旦やはり全て白紙にするという方が、私は、いろんなリスクを、将来的なリスクを回避できると思いますし、ウクライナにおいて一日も早い停戦が成ったとしても、プーチンのいるロシアとプーチンのいないロシアとでは全然つき合い方が変わると思います。ウクライナが停戦したとしても、プーチンがいるロシアとは真っ当につき合えるとは思えません。

 そういう意味では、このロシア関係というのは、もう一度ゼロベースで見直す、ビジネスの関係も、すごいリスクが高まっていますから。

 そういう意味では、経済制裁をしてウクライナでの停戦を目指すというのはもちろん大きな目標ではありますが、日本とロシアとのいろんなエネルギー関係、ビジネス関係も考慮するのであれば、なおやはり、まずゼロベースにするということが将来的なリスク回避に、ビジネス界にとってもリスク回避になるというふうに思いますし、いわゆる宥和政策が戦争を長引かせ、拡大させるわけにいかないので、岸田内閣をチェンバレン内閣にしてはいけませんから、ここはやはり毅然とした態度が必要だと思いますし、いわゆる、私なりにプーチンさんのどういう人柄かということで想像すると、甘い考えでやるとつけ込んできますから、これはもう徹底的にやらなきゃいけないというふうに思います。

 改めてもう一回、大臣、お願いします。

林国務大臣 まさに委員がおっしゃったように、制裁をしっかりと取っていくということが非常に大事なことであるということはもう申し上げるまでもないことでございます。

 そして、G7を始めとした同志国といかに緊密に連携して、協調して制裁の効果を上げていくかということが緊要であるということはもう言うまでもないことでございますので、そうした観点から、この先、今の戦況がどうなるのか、それからロシアの状況がどうなるのかという見通しを現段階で申し上げるというのは大変難しいことだとは思いますけれども、まずは、今委員がおっしゃったように、制裁の実を上げるということが大事であるというふうに考えております。

小熊委員 是非そこはしっかりやっていただきたいと思いますし、ちょっとまだ甘いと思いますよ。

 この間、アポを入れていて、ほかは誰も会ってくれないといって、ベラルーシの大使と私、会いましたけれども、さんざん勝手なことを言っていましたが、新年祝賀の儀も呼ばれないと、ベラルーシが。そのぐらいのことを日本はきちっと対応しているわけですよ、ベラルーシに対して。ロシアに対しても、これはまさに力による現状変更をしている主体的な当事国ですから、もっと厳しくやはりやっていくということを求めていきたいと思います。

 もう一回、ちょっと立ち戻って確認ですけれども、八項目の協力プランは経産省が大体統括はしているわけでありますが、ほかのところの、ほかの省庁のものですけれども、今のところ、中止になっているということですよね、今年度のやつは。動いているものはないということですよね。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 八項目の協力プランに係ります外務省の予算事業である在ロシア日本センター事業関連予算及び日露地域交流年につきましても、今経産省から御説明のあった政府全体の方針に沿って、どちらも実施を当面見合わせるということとしております。予算は執行されてございません。

 今後のウクライナ情勢、展望を正確に見通すことは困難でございますけれども、これらの事業を具体的にどう扱っていくべきかは、今後の状況を踏まえて、政府として適切に判断してまいりたいと考えております。

小熊委員 今、外務省のことを答えていただきましたが、これまでの大臣答弁では人道的なものはいろいろ考えたいと言っていましたが、結局、この中に人道的なものは一切なかったから今動いていないということの理解でよろしいですか。

山中政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、八項目の協力プランを含むロシアとの経済協力に関する政府事業については当面見合わせることを基本としている中で、先ほど申し上げた経済産業省の三つの事業に関しては、企業の撤収等に資するということで執行しておりますが、それ以外の事業に関しては、現在のところ当面見合せをしているという状況でございます。

小熊委員 ということであれば、人道的なものは特別に考えたいというような趣旨の答弁が林大臣からも何回も、ほかの委員会でもありましたけれども、政府の予算を出している中にはなかったという理解だというふうに思いますけれども、それでよろしいですか。

大坪政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省が所管している事業の中には、日露医療協力推進事業というものがございまして、これは、医療水準を高めまして、ロシア国民の健康寿命の伸長に役立つ事業ということでございます。一義的に人道上の配慮に当たる事業ではないということではございませんが、現時点におきましては、政府の考え方に基づきまして執行を見合わせているところでございます。

小熊委員 それぞれもっと細かく聞きたいんですけれども、この話はもう二月ぐらいから、予算委員会の頃から出ていて、判断が、最終的にそれぞれの事業が、ちょっと時間がかかり過ぎているなというふうに思います。そんな能力のない役人の方々ではないと思うので、スピーディーにやはり対応を考えていかなきゃいけないし、刻々ウクライナ情勢というのは変わっていますから、やはり判断を速やかにするということもしっかり今後、対応としては求めていきたいというふうに思います。

 あと一点。ちょっと瑣末な話かもしれませんが、三月四日の参議院の予算委員会で、我が党の森本議員が林大臣に、この協力プラン、どうなっていくのかと聞いて、新たなものはやらない、じゃ、今までのはどうなんだということを聞いたら、林大臣は、個々に考えていきます、ちなみに、外務省においては、この八項目の協力プランの下で実施される個別の民間プロジェクトのための予算として計上しているものはございませんと答えているんですね。

 うそではないんだけれども、森本さんは、民間プロジェクトにどう予算を外務省はつけているんだという話は聞いていないんです。今年度の、令和四年の予算がどうなっているんですか、新しいものはやらないけれども、既に続いているものはどうなんですかと聞いて、何でこんな答弁書を書くのかな。

 実際、外務省単体のだけれども、民間プロジェクトを支援するやつじゃないけれども、三つもあるじゃないですか。だから、聞いたことと違う、うそじゃないんだけれども、あたかも外務省はもうこの協力プランはないから大丈夫ですよみたいな感じの雰囲気を出そうとしているのか何なのかよく分かりませんが、何でそんな答弁書を書くのかな。

 大臣、記憶があるかどうか分かりませんが、三月四日、そういうふうに答えているんですよ。今までのプロジェクトをどうするんですかと聞いて、その八項目の協力のプランで、国の予算がついている中でどうするんですかといったら、民間プロジェクトで支援するものは、外務省は予算ゼロですと言うんですよね。それはそうなんだけれども、でも、外務省としては、この三つの事業にこれだけの予算があります、これも適切に対処してまいりますというのが正しい答弁じゃないんですか。

 何で、そらすというか、ちっちゃく答えようとするというか、何でこんなふうになるの。うそはついていないけれども、聞いたことにちゃんと答えていないし、邪推すれば、取り繕おうとしている感が否めません。何でこんな答弁になったのか。どうぞ。

徳田政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員御指摘のような、議論をそらすとか、そういう意図は全くございませんで、三月四日の答弁、議事録を改めて見直しておりますけれども、林大臣の方から、医療とかエネルギーとか、幾つかの民間プロジェクトに言及する中で、外務省として、この八項目の協力プランの下で実施される個別の民間プロジェクトのための予算として計上しているものはないという趣旨を答弁させていただいたところでございます。

小熊委員 だから、事実はそれなんだけれども、森本さん、ざっくり方向性を聞いている中で、そんなタイトに何で答えるのという話。二十一・一億をどうするんだという話をしているのに、その中に外務省の予算はあるんだもの。外務省の予算はどうなの、民間プロジェクトの支援どうなっているんだなんて聞いていないんですよ、森本さんは。何でそこに焦点を当てようとするのか、よく分からない。

 続けて行きますが、ウクライナ支援についても、ここでも同じことが起きています。先週の話です。

 徳永さんが、このウクライナ支援民、本当に、国民も含め、マスコミの皆さんも含め、政府専用機で林大臣が行って、百五十人乗れるのに二十人というのは何でだと。

 この間、マスコミとちょっと私的に懇談会をやったら、絞ったんじゃないんですかと言っていましたけれども、僕は、いろいろ外務省に問合せした限りでは、絞ったんじゃなくて、元々応募してきた人が少なかったという認識です。それはなぜか、インフォメーションが浅いから。

 徳永さんはそこを議論しました、先週。私は、ホームページに載せているというのと、在外公館等に来た人で問合せがあればインフォメーションして、行きたいという人についてはそれで判断をして連れて帰ってきた、今でも民間機に乗せているということですが。ホームページでは載せていませんと徳田さんはこの間、答えているんですよ。でも、ホームページには載っているんです。情報は載っているんですよ。

 だから、徳永さんだって、どうやって周知させているんだという意味は、キャンペーンを張るように、募集中なんということをやっているのかと聞いているわけじゃなくて、情報がどう流れているのかと聞いたんですよ。でも、ホームページに載っていない、何でこんな答弁になっているのかなと。

 僕も、だから、個人的にレクを受けて、ホームページには載っているという認識でしたから、俺が間違っているのかなと思ってもう一回省庁に問合せしたら、結果、だから、キャンペーンみたいに張っているわけじゃないので、徳田さんのそういう答弁になったと。

 でも、徳永さんはそんなこと聞いていないじゃない。どうやって情報が流れているのか聞いているんだから、大々的に募集中とはやっていないけれども、情報は在外公館のホームページに出していますというのが正しい答弁じゃないですかね。駄目ですか。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 私が答弁した趣旨は、まさに委員が御指摘のような、渡航支援、募集中というような告知は外務省としてはやっていない、そういう趣旨で御答弁させていただいたところでございます。

小熊委員 これは、だからコミュニケーション能力、我々がざっくりし過ぎているから悪いのか何なのかは知らぬけれども、この間の質疑を聞いたって、別に徳永さんはそこを求めたんじゃなくて、情報をどうやって、そこは、本当にいい意味でですよ、最近言葉が悪い印象になっているけれども、いい意味で忖度してくださいよ。

 哲学同士の、ここをどう磨くかというところなんだもの。こんなタイトなところを言ったって、印象としては、あの議論を聞いていたら、ああ、ホームページには一切載っていないんだなという印象になりますよ。

 こういう文化になっちゃっているのかな、役所というのは、さっきの協力プランも含め。まあ、それはそうだよね。募集しているけれども募っていませんみたいなことがまかり通る国会になっちゃったから。これはよくないよ。そう思いませんか。

 ちょっと、この答弁の書き方は改めてもらわなきゃいけないし、政務三役もチェックするときに、こんな答弁書を書いてくるのは絶対的に直してほしいと思いますけれども、もう一度どうぞ。

徳田政府参考人 お答えを申し上げます。

 改めまして、外務省のホームページにおいて、今申し上げたように、渡航支援、募集中といったような周知、発信は行っておりませんけれども、発信という文脈で申し上げれば、外務省といたしましては、日本への渡航を希望されるウクライナの避難民の方々の受入れを迅速に進めるため、査証の取得に関しては、ウクライナの近隣国のポーランドなどの日本大使館のホームページでウクライナ語で案内するなど、避難民に対する情報の提供と発信を行ってきてございます。その上で、査証申請の書類を可能な限り簡素化した上で、迅速に審査、発給をするなどの取組を続けてきているところでございます。

小熊委員 言葉というのは非常に慎重に扱わなきゃいけませんが、広義で捉えてもらう部分と、狭義に捉えないと事実が伝わらないという部分はありますが、やはり、先週の徳永さんの議論も含め、趣旨をきちっと、どうしたいのかということを議論していたのに狭義の言葉遣いを取られたのでは、真っ当な議論がなりません。

 最もコミュニケーション能力にたけていなきゃいけない外務省がこうした言葉のやり取りしかできないということは、外交力の低下にもつながりますので、ここはもう一回、きちっと、こうした議論のやり取りも真っ当な議論になっていけるようにしていただきたいということを指摘を申し上げて、次に移ります。

 ウクライナ避難民の支援は、そういう意味では、ホームページだけ載せている、来た人だけに教えるというのでは足りないと思います。

 ユニセフで、国境沿いにブルードットという場所を設けています。それは、避難してきた方の思いを聞いて、どこどこに逃げたいんだけれども、例えばドイツに行きたいと言えば、ドイツだと鉄道の支援があるからこうやって行ってください、日本に行きたい、日本はこういうことをやっていますからどうぞ、こうやって、来た人の相談を聞いていろいろ振り分けているんですね。じゃ、そこに日本政府が情報を出しているのかといえば、出していない。

 何万人に知らせた上で二十人しか来ないというのは、それはウクライナの人の選択です。でも、三十人に知らせて三十人しか来なかった、これじゃ駄目ですよ。これも、だから、さっき言ったとおり、やりますと言っていながら、いきって言っているくせに、実態としてはやる気がないんだなと。

 ポーランドではワルシャワ近郊に避難民キャンプができていますよ。何十万人もいる。そこでチラシ一つも配らない、インフォメーションもしない。気がないとしか言いようがない。

 この情報発信、もっとすべきだと思いますよ。ホームページを見てもらった人、訪ねてきた人だけというのは、それはやる気ないよ。人の命が懸かっているんだもの。救う気がない。救う気があったら、本当に、多くの人に、どれだけ日本政府が対応できるかというのを知らせようというふうに発想するじゃないですか。何の情報もない避難民の人に、ホームページを見てくださいなんて、そんな役所根性で人道支援しますなんて、おこがましい。

 もっと情報発信しませんか。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 政府としては、人道的観点から、在ポーランド大使館あるいは在ウクライナ大使館に対して日本への渡航を相談してこられた避難民の方々のうち、日本への希望をされている、他方で渡航手段を確保することが自らでは困難、そういう方々に対して渡航支援を行ってきているところでございます。週に一便、ポーランドからの直行便の座席を借り上げて渡航支援を行っている、こういうことでございます。

小熊委員 ちょっともう時間がないので、この件についてはまた後日やりますけれども、こうした対応なので、私も、あした国会での手続が取っていただければ、二十九日から東欧各国を回ります。外務省の便宜供与はほとんど受けません。いろいろな国際機関、ほかの国の対応を見てきたいと思います。その上でまた議論したいと思いますけれども。

 声高に人道支援と言うんだったら、態度で示さなきゃいけない、行動に移さなきゃいけない。今の段階では移していないというふうに思っていますし、実際、ジェシュフの支援センターも行かせていただきますが、今月いっぱいで、ほかの国の機関やNGOたちは、もうウクライナに行って国内支援に回ると言っています。日本だけです、ジェシュフに残るのは。

 もちろん、邦人の命というのは外務省としても守っていかなきゃいけないというのはありますけれども、マスコミだって、もうリビウとキーウに行っているんですよ、NHKでさえですよ。外部特派員じゃないですよ。直接の社員を送っているんです。ここも、ちょっと、ウクライナの国内支援というフェーズに変わってきていると思います。そこも検討いただきたい。

 最後に聞きます。台湾有事についてです。

 アメリカは早い段階でウクライナに軍を派遣しない方針を示した一方、台湾をめぐっては対応をはっきりさせていません。曖昧な戦略は、アメリカが中国に対し軍事力で圧倒的優位に立っているときは機能していましたけれども、時代は変化して、状況も変化しました。曖昧政策はインド太平洋の不安要素になっていると考えます。

 そこで、アメリカは台湾が中国に侵攻された場合に防衛する意思を明確にすべきだという考えが、今、いろいろなところで主張されていますが、政府の見解を伺います。

林国務大臣 中国による台湾侵攻という仮定の質問にお答えすることは差し控えますが、その上で申し上げますと、本年二月に公表されました米国のインド太平洋戦略においては、台湾の自衛能力を支援することを含め、地域内外のパートナーと協力し、台湾海峡の平和と安定を維持するとされており、これは、米国の台湾に関する立場を改めて示したものと考えております。

 いずれにせよ、台湾海峡の平和と安定は、日本の安全保障はもとより、国際社会の安定にとっても重要でありまして、この点、日米間でも、日米首脳テレビ会談、日米2プラス2などにおいて、台湾海峡の平和と安定の重要性について認識を共有してきております。こうした立場を各国の共通の立場として明確に発信していくことが重要と考えます。

 引き続き、この両岸関係の推移を注視しつつ、両岸の関係者を含む国際社会にしっかりと主張してまいります。

小熊委員 今の私の質問は、安倍元総理がル・モンド紙に寄稿した考え方であります。それについて、今、政府見解を聞きました。

 政府見解のとおりでいいと思います。元総理がこういうふうにあおってくるということこそが逆に緊張感を高めることになると思いますので、是非、今、林大臣が答弁したとおりに冷静な対処をして、この平和、安定に寄与していただきたいというふうに思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

城内委員長 次に、青柳仁士君。

青柳(仁)委員 日本維新の会の青柳仁士です。

 万国郵便連合憲章の第十及び第十一追加議定書等に関する条約について、まずは質問させていただきます。

 今回、条約の中で、国際郵便分野を取り巻く環境の変化ということで、Eコマースの市場規模拡大等ということが書かれておりますけれども、これは全くそのとおりで、郵便というものが多くはEコマースあるいはウェブの空間の中で行われるようになってきているという中で、電子上のやり取りが増えると、書状の国際通常郵便物も減少する。一方で、Eコマースの市場拡大に伴って、国際小包郵便物は増加しているということがあります。万国郵便連合において、取扱量の増減を含む物流の在り方の変遷ということがある中において、組織そのものの人員の増減、あるいは体制の整備等の努力を行うべきではないかと考えております。

 これは何を申し上げているかというと、私自身もかつて国連で働いていたことがありますが、国連という組織は、生まれるんですが、死なないんですね。たくさんいろいろな組織が、今回、今、国際情勢がこういう状況なので、こういう組織が必要だ、こういう部署が必要だ、こういう人が必要だということで、どんどん人とか組織は増えていくんですけれども、役割を終えても削られていかないんです。何かそのまま残って、新しい役割はこうだとか、結果的に非常に重複が多い。これは国連自身も認めておりますが、スクラップ・アンド・ビルドが基本だと思うんですが、このスクラップが極めて下手な組織が国連だと思うんですね。

 今回の万国郵便連合憲章の改定に関しても、UPUという組織も、これだけインターネットが普及して、小包と、郵便物の内容が変わってきている中において、当然のように組織の改編、不必要になった人員に関しては当然削っていくということを含めてやっていくべきだと思うんですが、この辺りの動きというのは具体的にどのようになっているんでしょうか。

赤堀政府参考人 お答えいたします。

 近年の電子商取引の市場規模拡大により、国際郵便分野では、郵便事業者以外の民間事業者等が万国郵便連合に積極的に関与する必要性が認識されてきております。今回の改正により組織改革が行われ、UPUで理事会に助言を行う諮問委員会に利害関係者が参加しやすくなるという改革例がございます。

 また、国際郵便の取扱量増大を受け、郵便輸送の環境負荷への懸念が高まっております。これに対し、UPUは環境に優しい郵便ネットワークの普及を推進しており、我が国もUPUの環境対策事業に専門家を派遣する等、取り組んでおります。

 このように、UPUでは国際物流の変化に応じた体制整備の努力を行っており、我が国としても、今後も自らの知見、人材等を活用しつつ、支援していく予定でございます。

青柳(仁)委員 私、人数の増減等ということについてお伺いしたつもりだったんですが、今のお答えはこの条約案に書いてあるとおりなんですけれども、新しい、民間事業を含めた、議論できる体制をつくっていく、それはもちろんそれで構わないんですが、UPU自身の人員というところに何か変化はあったんでしょうか。

赤堀政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正に伴う直接の変化ということは承知しておりません。

青柳(仁)委員 だから、それがおかしいと思うんですよね。

 国際機関は常にそうなんですが、役割が大きく変遷しました、この紙にも書いてあります。これは外務省からもらった紙ですよ。Eコマースの市場規模拡大等によって、国際郵便分野を取り巻く環境の変化、非常に大きな環境の変化がありますと書いてあるわけです。

 当然、この組織も、やること、仕事の内容が大きく変わっているんですから、それは人員の配置だとか体制だとか、また人数に関しても、変わっていくのが当たり前だと思うんですけれども、この点についてはどう考えますか。

赤堀政府参考人 お答えいたします。

 御指摘も踏まえて、最適な組織、どうあるべきかについて、関係省庁と連携して検討したいと思います。

青柳(仁)委員 外務省の国連に対する態度というのはやはり甘いと思うんですね。毎年毎年、昨年度、これぐらいの予算を渡していたから、今年も大体それをベースに、為替だけを最初は考えて渡していくような仕組みになっていると思うんですけれども、そうではなくて、イギリスなんかは違うんですね。

 イギリスは、パフォーマンス評価とかをやっていて、各国際機関がどれだけ自国の国益の役に立っているのか、今年度の政策アジェンダにどれだけ役に立っているのかということをきちんと評価した上で、その分担金、国連の分担金は変わらないと思いますけれども、各専門機関であるとかファンズ・アンド・プログラムズに対する予算というのは、そういったパフォーマンスをベースに算出しているんです。

 これはイギリスだけじゃなくて、アメリカはもっと大々的にやっていますが、その他の、小さな、オランダとかそういう国であっても、そういう評価を一定やりながら行っております。

 こうした、中身をきちんと見た上で、UPUに対しての支援をどうするのかということを是非外務省の方でも考えていただきたいと思っています。

 また、関連しまして、こうした物流の在り方の変遷を受けて、今後の万国郵便連合に関する体制の整備やルール作りについてどうあるべきだと日本政府として考え、また、どう働きかけるかについて、外務大臣の御見解をお伺いします。

林国務大臣 万国郵便連合は世界で最も古い国際機関の一つでありまして、公共インフラとしての国際郵便制度の発展に重要な役割を果たしてきたわけでございます。

 今御指摘があったように、国際的な電子商取引の拡大を受けまして、UPUにおいても、時代に即した国際郵便業務の在り方、これを検討する必要が生じておりまして、近年ではグローバル物流の分野でも大変重要な役割を果たしております。

 今年、目時事務局長がトップとして就任をしておりまして、事務局長の出身国ということでもあるわけでございますので、専門家の派遣、また日本独自の知見、こういうものを生かしながら、UPUの体制整備、また、会議等において、ルール作りに積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

青柳(仁)委員 日本人が事務局長を務めているということで、それだけの分担金を支払っているわけですから、そういった幹部ポストを取っていくというのは当然のことだと思うんですが、是非、民間を入れた議論の場を、委員会をつくるだとか、それから、今大臣がおっしゃったような、日本政府としての意見をきちんと申し伝えていくというだけではなくて、きちんと組織に手を入れていただきたいんですね。

 国連という組織はやはり、いや、現場で頑張っている方々は本当に頑張っています。これは、今もウクライナでもそうだと思いますが、UNHCRだとかWFPだとか、そういった現場でやっている方々は、本当に危険な中で走り回って、毎日毎日汗を流しながらやっていると思いますが、特に本部だとかアドミに関わっている方々というのは、非常に緊張感のない中で、本当にこの業務は必要なんだろうかということを自問自答しながら仕事をしている人も少なくないというふうに私は承知しております。

 これは、そういう、仕組み的に仕方がないところはあるんですが、民間企業だったらあり得ないと思うんですね。先ほど大臣がおっしゃいましたが、グローバル物流ということで、これだけ大きく市場環境が変わってきている、業務の内容が変わってきている。そして、それに対してのこういう体制も変わってきている中で、当然ですが、必要とされる人間の専門性、あるいは数、これは変わって当たり前ですから、民間企業だったらとっくに、そんなことをやっていたら潰れていますから、そんな企業は。ですから、社会変化、市場環境変化にしっかりと適切に合わせた形での人員とか体制というところまでちゃんと口を出していかないと。

 国際機関に対してそういうことをやっていないのは、日本だけとは言いませんけれども、多くの国がやっていますので、イギリス、オランダを始めとして。ある意味、日本は、行くと歓迎されるんですけれども、それは口出ししないから歓迎されているだけであって、本来、これは全部国民の税金ですから、税金で支払っている、我々国民から集めた税金で国連分担金あるいはその他の負担金というのは出しているわけですから、そこの説明責任をきちんと求めていく、また、必要な変化を促していくというのは当然のことだと思いますので、これは是非、このUPUに限らず、御検討いただきたいと思っております。

 また、ちょっと関連しまして、国連の役割ということについて、ウクライナ危機を踏まえた形で御質問させていただきたいと思います。

 まず、結論から申し上げると、今の国連というのは、日本にとっての戦争抑止力、防衛力としては機能していないと私は考えております。

 そういった中において、日本政府として、まず、日本が将来、ロシアのような核を持つ大国の侵略を受けるリスク、これはあるというふうに考えておられますでしょうか。

    〔委員長退席、武藤委員長代理着席〕

林国務大臣 ロシアのような核を持つ大国が日本を侵略するか。仮定の質問にお答えすることは差し控えたいと思いますが、我が国を取り巻く安全保障環境についてということで申し上げますれば、北朝鮮による核・ミサイル開発、東シナ海、南シナ海における一方的な現状変更の試み、軍事バランスの変化による緊張の高まりなど、厳しさと不確実性を増しているわけでございます。

 今回のウクライナ侵略のような力による一方的な現状変更、これをインド太平洋地域、とりわけ東アジアで許してはならない、これが、今後、日本の外交、安全保障を考えていく上で最も重要な点であると考えております。政府として、いかなる事態に対しても対応できるように、万全を期してまいりたいと考えております。

青柳(仁)委員 今の御答弁の中で、国際情勢として厳しさと不確実性が増しているということ、そしてまた、ロシアによる、大国による力による現状変更が現状ウクライナにおいては行われている、これをアジアに広げてはならないという認識を外務大臣としてはお持ちということですから、これは仮定の質問ということではっきりとお答えはいただいていませんが、これは普通に考えれば、当然日本に対しても、こうした大国の侵略を受けるリスクはあるという認識を持っているというふうに考えるのが普通ではないかなと思います。

 まずそこからお話をスタートさせていただきたいんですけれども、ウクライナの危機は我々日本に三つのことを教えているというふうに考えています。

 これは我が党の緊急提言等でも繰り返し申し上げてきたことではありますが、改めてこの場で申し上げますと、第一には、戦後の世界の平和を担ってきた国連安保理を中心とする国際秩序は機能不全に陥っているということ。したがって、現在の国際情勢下においても、大国による核兵器による威嚇や侵略のリスクが現実に存在するということです。

 二つ目は、核保有国がしかける戦争に対して、アメリカは極めて及び腰である。これまで我が国の安全保障上の唯一のよりどころであった日米同盟は、将来にわたっての絶対的な抑止力、防衛力とは言い難い状況にあるということ。

 三つ目は、現代の戦争はハイブリッド戦であって、日本の軍事以外のハイブリッド戦に対する対処能力は極めて脆弱である。先日成立したばかりの経済安全保障も、我が党から度々指摘させていただいたとおり、極めて防御力としては弱いものにとどまっているというふうに認識しています。

 こうした中で、日本は、ロシア、中国、韓国と領土問題を抱えています。また、北朝鮮からは軍事的挑発を度々受けているということで、ほぼ全ての周辺国と問題を抱えている状況にあります。こうしたウクライナ危機によって不安定化した国際情勢下で、紛争勃発のリスクは世界的に高まっていると考えるのが自然だと思っています。

 こうした中、もう既に世論調査等にも表れておりますが、収束の見えないウクライナ危機を背景に、多くの国民が安全保障に対して現実の脅威として不安を抱いているという状況があるかと思います。

 我々の政治のサイドは、当然のことながら、こうした国民の不安に応えていく義務があろうかと思いますが、私は、最初に申し上げたいんですが、それに対して、現状、今の外務省を始めとする省庁はそういった国民の不安に十分に応えていないと思っております。また、それに対してベストを尽くしてもいないというふうに考えております。それについて、今御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、日本は、専守防衛ということで、ウクライナのような反撃力は持っていないわけであります。そうなると、日本を守っているものは何かという話になるんですが、今、国連安保理は機能しておりません。日米同盟の抑止力、対処力というのは、先ほど申し上げたとおり、核兵器保有国に対してはアメリカは極めて及び腰であるということが、今回、日本の周辺国も見ていますから、分かりましたということですね。

 クアッド、G7、G7は元々軍事同盟ではありませんし、クアッドはインドのこうした極めてネガティブな姿勢というのが最近目立っているというふうに考えています。こうした国際的な枠組みは、世界の国連安保理に代わる安全保障機構としての位置づけにはないし、その力もないというふうに認識しております。

 という中で、ロシアのような侵略国に日本が万が一攻められた場合、何の対処もできずに国民の生命と財産が奪われてしまうという状況にあるのではないかと思っております。

 こういう認識の下で、日本政府として、政府・与党、そして外務省として、国民の生命と財産を守るために日本が他国からの侵略を止める力というのは何であると現状考えているでしょうか。

    〔武藤委員長代理退席、委員長着席〕

林国務大臣 今般のロシアの暴挙、これは、ヨーロッパのみならず、世界の秩序、平和に対する挑戦であり、我々は今回の暴挙を我が事として捉え、対応していかなければならないと考えております。

 ロシアによるウクライナ侵略、そして一層厳しさを増すインド太平洋地域の安全保障環境、これも踏まえながら、まず我が国として、あくまで現実的に検討した上で、国民の生命と財産を断固として守り抜くため、新たな国家安全保障戦略等の三文書、これを策定し、日本自身の防衛力を抜本的に強化をしてまいります。

 また、日米同盟の抑止力、対処力を一層強化をしてまいります。今年の一月でございますが、私自身も出席をいたしました日米安全保障協議委員会、日米2プラス2でございますが、ここにおいても、日米同盟の抑止力、対処力を抜本的に強化するための具体的な議論を進めるということを確認したところでございます。

 さらに、豪州、インド、ASEAN、欧州、こういった同志国とも連携して、G7や日米豪印の取組等も活用しながら、自由で開かれたインド太平洋、この実現に向けた取組を戦略的に推進をいたしまして、地域の平和と繁栄に貢献してまいりたいと考えております。

青柳(仁)委員 我が事としてとおっしゃいましたけれども、我が事について質問をさせていただいています。今おっしゃっていた、防衛三文書を抜本的に見直すであるとか、日米同盟の対処力を強化していくというのは、これからどうするかというお話ですから、私の質問には答えていないと思います。

 もう一度伺いますが、日本の国民の生命と財産を守るのが日本の安全保障、外交の重要な目的だと思いますけれども、現状そうしたものを守っている、日本が他国からの侵略を止めている力というのは、現在、どういう力であると考えていますか。

林国務大臣 先ほど御答弁をいたしましたように、まずは、この三文書を策定して、防衛力を抜本的に強化をしていくと申し上げましたけれども、今現在、防衛力がないというわけではなくて、今あるものを更に強化をしていくという意味で申し上げたところでございます。

 また、日米同盟の抑止力、対処力、これも同趣旨でございまして、抜本的に強化をするために議論を進めるということでございますが、今、現にこの日米同盟の抑止力、対処力というものはあるという認識の上で、更に強化をする具体的な議論を進めるということを確認したところでございます。

青柳(仁)委員 その軍事力を含む対処力に不安があるので、こういう質問をさせていただいているんです。

 日米同盟の対処力、抑止力があるというのは、それは当然だと思います、それがなかったらそもそもやっている必要がないわけで。この委員会でも先日、思いやり予算、新たに名前が変わりましたけれども、そこは賛成、我が党もさせていただいているわけですから、そういった予算は当然そういった日米同盟の対処力を強化するためのものだと考えておりますので、それは当然のようにやっていくんですが、申し上げているのは、そういった状況であっても、今ウクライナの状況を見ますと、核による脅しをしたときに、アメリカが適切に対応してくれないのではないかと多くの国民が考えているということを申し上げているんです。それに対する明確な回答は政府の方からは出せていない。

 また、軍事力が、対処力とおっしゃいました、防衛力があるとおっしゃいましたけれども、今まさに与党の中でも議論されていると思いますが、敵基地攻撃能力、あるいは反撃力、攻撃力といったようなものは自衛隊は持っていないわけですから、これによって十分な抑止力なのかどうかというのは現状疑問があると思うんですね。

 そうした中で、現在は何が国民を守っているんですかということをお伺いしたんですが、これについて、また同じような答弁になると思いますので、これで終わりにさせていただきますが、いずれにしましても、こういった、非常に我が国の対処力、日米同盟や自衛隊の軍事力というものが不安視されている。少なくとも国民はみんな思っていますよ、今現状を見て。それで完全に安心だと思っている人なんか、ほとんどいないです。

 ですから、そういった中において、やはり国際秩序というものは極めて重要なんじゃないかと思うんです。日本が実際に軍事力でもって相手をやり返す、あるいは水際の対処をしていくということの前に、そもそも戦争が起きないような国際秩序をつくる、あるいは戦争を起こした国に対しては強烈な制裁を世界中から受けてしまうような仕組みをつくっていくということが、日本を守ることになるのではないかと考えているわけです。

 その役割の最も重要な組織というのが本来は国連安保理であるはずなんですけれども、それが全く機能していないので、問題があるのではないかというふうに考えているところです。

 そういった中で、今回、国連安保理は、本当に何度も申し上げますが、全く機能していないわけですが、これは抑止力、対処力という意味では全く役に立っていないわけですが、じゃ、今の国連安保理、昨日ちょうど、リヒテンシュタインが提案した、我が国も賛同したということですけれども、そういった提案によって、拒否権を発動した国に対する説明責任を十日以内に国連総会で求めるということを決めたということですが、私、正直、前進ではあるけれども、意味がないと思っています。

 これは多くの関係者がそう思っていると思いますが、なぜなら、まず説明責任はないんですね、P5に。説明はしなくてもいい、ただ、十日以内に総会が開かれるということが決まっただけです。また、説明責任が仮にあったとしても、今回のロシアみたいな国がそれに対してきちっとした対応をするとはとても思えません。ですので、こういった形での改革では、戦争を起こさない仕組みとしての国連安保理というものとしては極めて不十分だと思います。

 そういった中で、日本政府としては、今回の対処について十分だと考えているのかも含めて、国連安保理がどう変われば今回のロシアの暴挙のような事案を今後止めることができるというふうに考えているんでしょうか。

林国務大臣 さきの大戦後、大国間での戦争を二度と起こさないための組織として創設されたのが国連でございまして、安保理の構成国の権限、また責任を含めて国連憲章で定めて、これが一体となって、国連の目的である国際の平和及び安全の維持等に奉仕することが意図されていると理解をしております。

 一方で、そこに様々な制約がありまして、どのようにすればロシアの暴挙のような事実を止められるかについて一概に申し上げることは困難でございます。

 例えば、安保理では、ロシア軍の侵略を遺憾とし、即時撤退を求める決議案が提出をされたわけでございますが、ロシアの拒否権行使により採択をされなかったわけでございます。

 このように、今回のロシアの一連の行動、これは、国連憲章上、常任理事国であるロシアの同意なくしてはロシアの権利及び特権の停止や国連憲章の改正ができないという国連が抱える問題を改めて提起をするものでございます。

 我が国としては、安保理改革の実現に向けて全力を挙げていく考えであり、その方途について不断に検討していく考えでございます。

青柳(仁)委員 拒否権を持つ五大国が国連改革の決定権を持っているから国連改革が進まない、それはおっしゃるとおりだと思います。

 ただ、お聞きしたのはそういうことではなくて、まず、じゃ、ちょっと質問を一つ前に戻しますが、今回のウクライナの危機に対して、国連として様々な対応をしています、人道支援とかそういう話はおいておいて。抑止力、対処力としての国連の動きというのはいろいろなことをやっています、今もグテーレス事務総長がロシアに行っておりますけれども。そういった一連の国連安保理の動きについて、外務省としてはどう評価しているんですか。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回のロシアによるウクライナ侵略、これは申し上げるまでもなく明白な国際法違反というところでございまして、断じて許容できるところではございません。

 そうした中で、安保理におきましては、先ほども御答弁がございましたけれども、ロシア軍の侵略を遺憾とし、即時撤退を求める決議案というものについては、ロシアの拒否権行使により採択されなかったという状況がございます。

 そうした中で、国連におきましては、まさに、別途、国連総会の緊急特別会合が行われまして、ウクライナに対する侵略決議、さらには人道上の影響についての決議が共に百四十以上の多数の賛成を得て採択され、ロシアの侵略に対する国際社会の強い意思が改めて示されたというところでございます。

 そうした中におきまして、国連というところで、様々な制約はある中ではございますけれども、現在の事態に対処しようと努力をしておるというところと認識しております。

青柳(仁)委員 私の質問に全然答えていないと思うんですね。

 今おっしゃったのは、国連が何をしたかという事実関係を言っただけです。私は外務省の評価を聞いているんです。

 決議案を出したけれども、ロシアの反対によって国連安保理は通らなかった、また、その後、国連総会の方で特別緊急会合を開きましたけれども、これは実効性の伴わない決議ですから、結果的にはロシアに対しての効力がなかったわけですけれども、こんなことはみんな誰でも知っている話なんです。

 ですから、それを踏まえて、外務省としては、今回のこのウクライナ危機に対する、だって、国連安保理というのは世界の戦争をなくすための組織ですから、本来業務です。本来の存在意義ですよ、目的ですよ。先ほど外務大臣がおっしゃいましたよ、第二次世界大戦後の世界を平和にするためにあるんだと。だから、それは本来業務ですよね。その本来業務を果たせているのかどうかということについて、外務省はどう評価しているんですかというふうにお伺いしたんですよ。

 もう一度お願いします。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生おっしゃられるとおり、まさに国連安全保障理事会は、国連憲章上も、国際の平和と安全につきまして主要な責任を有しておるという機関でございます。

 その機関におきまして、現下の状況に対しまして、様々な制約がある中でではございますけれども、安全保障理事会の理事国等々、様々な形での対処をしようとしておるという状況かと認識しております。

青柳(仁)委員 ですから、状況の報告ではなくて、外務省の評価を聞いているんです。

 では、そういう状況なので、一生懸命やっているので、国連として一定の役割を果たしている、そういう評価をしているというふうに理解してよろしいですか。

林国務大臣 先ほど申し上げたところでございますが、大戦後、最初にこの憲章を作るときの歴史的な経緯というのは委員もよく御承知のとおりだろうと思いますが、そのときに、ある意味で重要な役割を果たした、これは皮肉を込めてですが、そのロシアが、今回、国連憲章上、常任理事国であるロシアの同意なくしてはロシアの権利及び特権の停止や国連の改正ができない、この国連が抱える問題を改めて提起をするというふうに申し上げさせていただきました。

 今、それが我々がこの受け止めとして申し上げておることでございまして、したがって、安保理改革の実現に向けて全力を挙げなければならない、こういうふうに考えております。

青柳(仁)委員 やはり、ちょっと、聞いていることが、答弁が返ってこないので、なかなかキャッチボールができないんですけれども、外務省としての評価を知りたいんですね。よくやっていると思っているのか、あるいは、やはり現状を変える力にはなっていないと考えているのかというのを聞いているんですけれども、ちょっと次の質問に移ります。

 ということで、今、林大臣がおっしゃいましたが、国連安保理改革を行っていくということを言っているわけですけれども、今の質問とも非常に強く関わるわけですが、国連安保理改革というのは、これまでも日本はやってきたわけです。その目的というのは何だったんでしょう。また、これまでどんな成果があったと日本政府として認識しているんでしょうか。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 一九四五年に国連が創設されて以来、七十五年以上経過いたしますけれども、加盟国の数は約四倍に増えるなど、国際社会の構図は大きく変化したところでございます。しかしながら、安保理の構成はほとんど変化していない。

 安保理改革の目的についてお尋ねでございますけれども、安保理の構成が現在の国際社会の現実を反映するよう改革し、安保理の正統性と代表性を向上させることで、増大する国際社会の課題により効果的に対処できるようにすることであると認識しております。そのためには、常任及び非常任の双方の議席を拡大することが重要と考えております。

 こうした問題意識を共有するブラジル、ドイツ、インドとともにG4という枠組みでも安保理改革に取り組んできておるところでございますし、二〇一〇年以降、毎年G4の外相会合又は首脳会合を開催いたしまして、連携を強化してきておるというところでございます。

 また、アフリカ共通ポジションへの支持を表明いたしまして、アフリカを始めとする関係国とも共同しながら、改革の早期実現のための協力で一致しておるというところでございます。

 従来から、各グループ、様々なアイデアを提起しておるというところでございまして、こうした異なる立場を収れんするための場といたしまして、国連総会の下に政府間交渉の場が設置されております。我が国は、この場におきましても、具体的な成果を目指して、各国との議論を積極的にリードしてきているというところでございます。

 こうした取組もあって、安保理が現状のままではいけないという問題意識は各国に広く共有されているところと認識しております。

 決して簡単な課題ではございませんが、引き続きしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

青柳(仁)委員 ちょっとびっくりしたんですけれども、要は、まず、ちょっと理解を確認させてもらいたいんですが、国連改革の、じゃ、日本政府としての目的というのは、国連加盟国の数が増えたので、その増えた数に応じた国連安保理の常任理事国と非常任理事国の議席数を増やすことであるというふうに今理解したんですけれども、そういう理解でよろしいですか。

遠藤政府参考人 改めて申し述べさせていただきますと、安保理の正統性と代表性を向上させるということで、増大する国際社会の諸課題により効果的に対処できるようにするということが重要と考えておりまして、そのためにも、国際社会の現実を反映するような組織に改革していくべきというふうに考えておるという次第でございます。

青柳(仁)委員 議席の数が増えるということと諸課題に適切に対応というのがちょっとつながらない気がするんですけれども、要するに、議席の数を増やすということだというふうに今おっしゃっていたと思うんですね。その発想が、最初に私は申し上げたんですけれども、今の国民の不安に応えていないと申し上げたいんですよ。

 外務省の中はそういう常識で動いているのかもしれませんけれども、国民はみんな、今、ウクライナの状況を見て不安に思っているんです。そういう中で、国連安保理が全く機能していないというのも、みんなそう思っていますし、それをどう変えていくのか、機能する安保理をどうつくっていくのか、機能しないんだったらほかの枠組みをどう考えるのか、そういう議論をすべきなんじゃないですか。議席の数が増える、増えないとか、そういうことなんですかね。

 また、議席の数が増えたから諸課題への対処能力が増す、これは、学生でも分かるような、論理のつながりがないですよ。意見の集約ができづらくなって、諸課題への対応が遅れることだってあり得ますよね。ここに因果関係は全くないですね。ですから、議席の数を増やすという目的で国連改革を行うというのは、そもそも目的が間違っているというか、手段と目的が逆転しているんじゃないですかというふうに思います。

 また、成果があったかということを私はお伺いさせていただいたんですけれども、何か今の話だと、結局、議席は増えていないんですよ。非常任理事国は増えましたね。常任理事国は増えていないわけですよ。だから、成果はないんですよ。

 今おっしゃっていましたけれども、何か、広くそういった目標とか方向性が共有されたと言いますけれども、これはどうやって分かるんですか。共有されているかどうか分からないですね。逆の意見を持つ人が増えたかもしれないし、それをどうやって外務省は証明するんですか。これは非常に問題があると思います。

 私は、何度も、今日はもう時間がなくなりましたから、残りの問題はまた別途やらせていただきますけれども、外務省と今の政府・与党がやっている方向性というのは、国民の不安に応えていないんです。これを強調させていただきたいんです。議席が増えるかどうかは誰も興味がないんです。

 そうではなくて、我が国の国民の生命と財産を守れていない現状に対して、守れるような国際秩序をつくれるか、国連安保理を変えられるか、変えられないんだったら、新しい国際平和維持機構をどうつくるかということにみんな興味があるんです。是非、そういう本質的な目的を目指した外交政策を実施していただきたいと思っております。

 私からの本日の質問は、以上で終了します。ありがとうございました。

城内委員長 次に、鈴木敦君。

鈴木(敦)委員 国民民主党、鈴木敦でございます。

 まず、質問に入らせていただく前に、知床半島で遊覧船が遭難をいたしまして、多くの方々が命を落とされて、また、行方不明の方々も出ておられます。これについて深くお悔やみを申し上げたいと思いますし、いまだ安否が確認されていない皆様については、一刻も早く元の家に帰れるようにお祈りを申したい、このように思います。

 そして、場所が場所でございまして、海流の関係もあり、当然、ロシア側と協力をしながらやっていかなければならないところでございます。北方領土については我が国固有の領土でございますから、そこを不法に占拠されているという現状と、これに対して、救助のお願いをしなければならないことは非常に遺憾でございますが、しかしながら、人命が懸かっておりますので、大陸の反対側でやっていることとは切り離して、是非協力をしていただきたい、このように思います。

 さて、条約について質問をさせていただきますが、幾つか事実関係を確認させていただきたいと思います。

 租税条約についてから、まず進めさせていただきたいと思いますが、今回、日・スイス租税条約の中に含まれる仲裁という手続でございますけれども、この仲裁に関わる方はどういう方が想定されているのか、まずお示しいただきたいと思います。

宇山政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御質問の日・スイス租税条約改正議定書におけます仲裁人につきましては、国際租税に関する事項について専門知識又は経験を有する個人であるという要件を満たす者から任命されることとされております。また、仲裁人は、当事者である両締約国の権限のある当局や、事案によって直接に影響を受ける納税者等に対して公平でなければならない、かつ、これらの者からは独立していなければならないとされております。

 仲裁のための委員会は三人の仲裁人で構成され、各締約国の権限ある当局がそれぞれ一人の仲裁人を任命いたします。任命された二人の仲裁人が仲裁のための委員会の長となる第三の仲裁人を任命する、こういう手続でございまして、この仲裁のための委員会の長となる第三の仲裁人につきましては、日本及びスイスの国民又は居住者以外の者から任命することが求められております。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。

 仲裁の仕組みについてはこういうことになっておりますが、では、具体的に過去の例、どのような方が選ばれているのか実例を挙げていただきまして、今回の租税条約と同じような条件で仲裁人はどういう方が選ばれたのか、ちょっとお示しいただきたい。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 諸外国の仲裁例についてのお尋ねでございますが、OECDのモデル租税条約及び仲裁に関する二国間の合意モデルによりますと、仲裁判断は、仲裁の要請を行った者及び両締約国の権限のある当局、これの理解を得て、関係当事者の名前及びそれを特定し得る詳細に言及することなく、編集された形で公表されるとされておりまして、仲裁に関する具体的な事例は必ずしも公表されるものではございません。

 このため、現時点におきまして、諸外国の具体的な事例は承知しているところではございません。諸外国の事例につきましては、我が国としても関心を有しているところでありまして、引き続き注視してまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 この租税条約と同じ仲裁の手続については様々な国との間でも協定はありますけれども、具体的にどの方が選ばれるとか、どういうフローで選ばれるということが分かっていない状況では、実際に我が国が、スイスとの間でこれがあると言いませんけれども、仲裁の可能性があった場合、それが発生した場合に、我が国がどういう人を任命して、その人に対して、リーダーとなるもう一人の人をどういう基準で選んでくださいという事例が全くこちら、政府側から提供ができないということになりますよね。

 何か一つ、一例でもあって、モデルケースみたいなものを国が示せなければ、我が国も、若しくは相手国も、どういう仲裁人をリーダーに選べばいいのか、全く尺度がないことになりますよね。それを我が国は知らなくて、もし仮に相手国はノウハウがあったとしたら、相手国に有利な人を選ばれちゃう可能性があると思いませんか。何かモデルケース一例ぐらいはあると思うんですが。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 諸外国の仲裁の例につきましては、先ほど御答弁申し上げたとおりでございますけれども、仲裁に関する具体的な事例は必ずしも公表されていないということがございまして、我々もいろいろな形で情報収集に努めてまいりましたが、現時点において、諸外国の具体的な事例を承知するところではございません。

 それ以外に、仲裁人の選定につきましては、例えばEUにおきましては、仲裁人の候補者リストというものを公表してございます。そこで各国の国際租税法に精通している学者、実務家の方々が挙げられており、EU各国においては、こうしたリストを踏まえ、個別の事案に応じて仲裁人を選定しているものと承知しております。

鈴木(敦)委員 今日は時間もそんなにありませんから余り詰めませんけれども、我が国もある程度の準備をしておかなければ、仕組みをつくっても対応できませんし、これまでこの仲裁の手続は九十か国近くと結んでいるにもかかわらず、いまだに情報収集ができていませんでは、これは非常に困ると思いますよ。これから先も、是非、情報収集を進めていただきたいと思います。

 では、次に万博に行きますけれども、万博については、私自身も、今回ほかの条約でも賛成をいたしましたし、法律案でも賛成しましたから、大きな疑問はないんですが、ただ、一方で、博覧会関連の物品の免税ということが言われておりますけれども、前回、愛・地球博で私も食べたんです。それに関してお金も払ったんですけれども、これの税金が完全に免除されるんでしょうか。あるいは、レストランだけとかパビリオンだけとか、何か分けて考えていらっしゃるんでしょうか。

小野政府参考人 お答えいたします。

 本協定におきまして、陳列区域代表事務所が輸入する物品に関しましては、同事務所の博覧会に関連する非商業的活動の範囲内で、日本国の法令に従って関税を免除するということとしております。

 お尋ねの件につきまして、具体的な判断につきましては個別のケースにもよりますが、一般論として申し上げれば、パビリオンで提供される食品のうち、食品サンプルなど、無償提供されるものは関税の免税対象となります。

鈴木(敦)委員 パビリオンの中を巡回して、お金を払っているかどうかを確認した時点では、もう既に、税金を払っているか払っていないか、処理が終わっているわけでございまして、どのようにこの仕組みを担保されるのかについては聞きたいと思いますし、加えて申し上げれば、資料によると、自動車の直接税も免除ということになっておりますが、ここも詳細を詳しく御説明いただきたいと思います。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 関税の免除につきまして、関税の免税の範囲につきましては税関当局で判断することとなりますけれども、今後、ガイドラインを作成し、関係者である地方自治体、各参加者に対して周知する予定であるというふうに承知をしてございます。

 自動車関連の税につきましてお尋ねでございますが、この協定において免除される車両関連の直接税は、自動車税及び軽自動車税でございます。これらについては免税の対象となります。

鈴木(敦)委員 ガイドラインとおっしゃいましたけれども、じゃ、輸入する際に、これはパビリオンの中で無償提供する食品です、あるいはレストランで使う食品です、こういうふうに申請をさせるということでよろしいですか。

小野政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げましたが、陳列区域代表事務所が輸入する物品に関しまして、非商業的活動の範囲内で関税を免除するということになってございますので、輸入する時点でこの点を確認するということになると承知しております。

鈴木(敦)委員 入れるなとは言いませんけれども、その管理は非常に難しいものになるだろうなという懸念だけ申し上げたいと思います。

 では、条約関連では最後の質問になりますが、郵便憲章について質問させていただきたいんです。

 今日の質疑の中でも、日本唯一の国際機関の事務局長、日本人であるということがありました。この国際郵便の組織については、各国、分担金を払っておりまして、分担等級というのが決まっております。我が国は最も上のランクでございまして、今戦争で疲弊しておりますウクライナは五単位、負担をしておるわけです。

 今、主要輸出品の輸出すらできていないウクライナが、分担金を今後拠出するのは非常に難しい状況にあると言わざるを得ないわけでございまして、このまま放置いたしますわけにいきませんので、是非、これは事務的におっしゃっていただきたいんですが、日本人が事務局長ということもあり、また、本日、リーダーシップを発揮してもらいたいという答弁もありましたから、この郵便憲章の一般規則百五十条の6に規定されております、等級を一段下げるという申請について、事務局長から談話を発表される等の対応を、リーダーシップを取っていただくということはやっていただいた方がいいと思うんですが、いかがでしょうか。

赤堀政府参考人 お答えいたします。

 万国郵便連合一般規則第百五十条6の規定は、分担等級の一時的な変更を請求できる旨の規定でございますが、分担金を維持することができなかったことについて、加盟国自ら立証し、管理理事会に申請を行う必要がございます。

 UPUにおけるウクライナ支援の重要性は認識しておりまして、事務局長の出身国である立場も生かしながら、また、理事会の理事国である立場も生かしながら、外交ルートも活用して必要な助言を行う等、可能な限りウクライナの負担を軽減するための協力を検討してまいりたいと存じます。

鈴木(敦)委員 当然ながら、ウクライナ側から、これをちょっと今回は払えませんから下げてくださいと言っていただくということでございまして、それを事務局として促していただきたいということでございます。

 これをやっていただくということは、我が国が国際社会に対して、あるいはウクライナに対して支援をしているという明確なメッセージにもなりますし、外交力を発揮するという意味でも非常に重要なものだと思いますが、これは大臣、こういったやり方について、もう少し具体的ないろいろなプランがおありだと思いますから、この辺についての受け止めと、あるいはほかの対応について何か今お持ちであれば、お答えいただきたい。

林国務大臣 先ほど答弁をいたしました分担等級も含めて、今のウクライナ情勢であります、また、UPUは、先ほど委員からもお話がありましたように、日本から事務局長を出しているということを含めて、やはり、事務局長の出身国として、UPUのウクライナ支援の取組に積極的に貢献をしていくということは大変大事なことでございますし、国際社会における日本のプレゼンス、これを高めるためにも大事であろうというふうに考えております。

 UPUでは、事務局長が、ウクライナにおける国際郵便業務を継続するため、緊急連帯基金というものへの拠出を加盟国に呼びかけております。これを受けまして、我が国は、UPUに対する任意拠出金、これを活用しまして、当該緊急連帯基金に資金を拠出することとしております。

 こうしたUPUを通じた協力も含めて、ウクライナの人々に今後も寄り添った支援を実施してまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。

 こうした部分を使って外交をしていただくというのも一つのやり方だと思いますし、是非推進していただきたいと思います。

 さて、条約についてはこの辺りにいたしまして、本日はまた国際問題についてやらせていただきたいんですが、いつもとは方向が違いまして、いつもは大陸の反対側をやっておりますけれども、今回、大洋州についてさせていただきたいと思います。

 まず、事務的に確認させてください。

 二〇二一年にソロモン諸島で暴動が発生した際、中国が暴動対策の警備物資を送るだけではなくて警察を派遣したということが報道されておりますけれども、事実確認をお願いします。

岩本政府参考人 昨年十一月二十四日、ソロモン諸島の首都ホニアラにおいて、ソガバレ首相の退任を求める抗議活動が発生し、一部が暴徒化する事案が発生いたしました。

 その後、今年一月、中国は、ソロモン諸島政府の要請に応じる形で、暴動対策警備用物資を提供するとともに、御指摘の臨時の警察顧問チームを派遣したと承知をしております。

鈴木(敦)委員 既に、ソロモン諸島については、太平洋諸島フォーラム等々、オーストラリアですとかニュージーランドから警察や軍の派遣を受けることは度々あったと思いますが、こういった、中国がプレゼンスを発揮し始めたということ、そして、昨今、ソロモン諸島と中国の間では安保条約を結んだということでございますが、まず、大臣、この受け止めをお願いします。

林国務大臣 四月十九日に中国政府が、そして翌二十日にソロモン諸島政府が、両国間の安全保障協力枠組み協定、これに署名した旨をそれぞれ発表したと承知をしております。

 この協定ですが、現時点で全容が明らかにされておりませんで、詳細は確認中でありますが、内容によっては太平洋地域全体の安全保障に影響を及ぼし得るものでありまして、我が国としては懸念を持って注視をしております。

 昨二十六日に、ソロモン諸島訪問中の上杉外務大臣政務官がソガバレ首相及びマネレ外務貿易大臣を表敬した際にも、本協定に関して議論を行うなど、我が国はソロモン諸島政府に対して我が国の考えを累次にわたり伝達してきております。

 また、アメリカやオーストラリア、ニュージーランドを始めとする関係国及び太平洋島嶼国とも意思疎通を緊密に行っており、引き続き、関係国と連携しながら対応してまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 安全保障について、中国の報道官は、両国の安全保障協力の形はオープンで透明感があり、いかなる第三者も対象としていないと、非常に高度な漫才のようなことを言っているんですが、オープンであれば公開されているはずですし、透明感があれば見えているはずです。そして、安全保障なんですから、第三国に必ず影響があるはずです。

 こういったような発言をしている国々が、今、島嶼国に対して様々なことをやってきています。この最終目的は何なのか、私も考えておりますけれども、一つ思い当たる節があるとすれば、四つの国々の名前が挙がります。一つはツバル、マーシャル諸島、そしてナウルと今度大臣が行かれるパラオですね。この四つの国々、共通点は何かといえば、台湾と外交関係があるわけです。

 ソロモン諸島、そしてキリバスは、二〇一九年に台湾とは断交しています。明らかに、その関係の切り崩しにかかっているのは明白であって、政府がこれだけ島嶼国にゴールデンウィークに行かれるということは、その危機感が実際におありなんだろうと思いますけれども、問題は、我が国の中でどのような情報の整理がされているのかということが課題です。

 例えば、外務省の中で、国際協力だったりとかあるいは資金提供という形の様々なカテゴリーの中で、重要と思われたものだけがどんどん政府の上の方に上がっていくと思うんですが、中国がやっていることというのは、一見すると、別にこれはいいことなんですね、お金を貸してあげたり橋を架けてあげたり、別に悪いことじゃないです。だから、これが政府の上の方に、危険ですといって話が上がるわけではないと思います。

 ただ、一方、やっていることは、お金を貸す代わりに土地を九十九年租借したりとか、まるで植民地時代と同じことを中国は島嶼国においてやっているわけですね。既にバヌアツでは恒久的な基地を造る意向があると、否定していますけれども、そういうような話もありますが、これは、外務省の中で、どういうフローで、どういうフィルタリングをされて上に上がっていくのか、そのフローを御説明いただけますでしょうか。

林国務大臣 各国間の外交でございますが、外務本省で、まずは、それぞれの国を所掌する地域部局というのがございます。ここが中心になって、まずはいろんな情報収集をするということですが、そして、必要に応じて個別の政策分野を担当する部局、また、まさに総合的な外交政策の企画及び立案に関する事務をつかさどる総政局ですね、総合外交政策局、ここと連携して情勢の把握に努める、ここで横串が刺さるということになります。それを踏まえて、最終的には、政務三役、私のところで最終決定をするということであろうか、こういうふうに思っております。

 その際、当然のことながら、各国に在外公館がございますので、その任国の外交、安全保障政策全般に関する情報収集、分析業務を行う中で、その任国と各国の関係についても把握、分析をするように、様々な形で取り組んでおるところでございます。

 委員が今おっしゃっていただいたように、安全保障の裾野が、例えば経済ですとか新興技術分野にまで拡大をしてきておりますので、こうした複雑さ、そして厳しさを増す安全保障環境の中で、引き続き対応力の高い外交を展開してまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。

 ただ、中国がこの島嶼部でやっていることについては非常に危険なことだと思いますので、是非、外務省の中だけではなくて、NSCですとか専門分野に上げていただいて、引き続きの情報収集と対応をよろしくお願いしたいと思います。

 終わります。

城内委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 条約の問題点については、後ほど討論の際に指摘することにしたいと思います。

 自民党の安全保障調査会は、先週二十一日、政府が年末に予定する国家安全保障戦略など三文書の改定で焦点となる敵基地攻撃能力について、提言をまとめました。

 この日の会合には、内閣官房や防衛省のほか、外務省からも総合外交政策局の有馬審議官が参加したと聞いております。

 自民党の提言は、敵基地攻撃能力、これを反撃能力と言葉だけ換えて、保有を求めています。また、攻撃対象を敵基地だけにせず、指揮統制機能等にも広げています。さらに、軍事費を五年以内にGDP二%以上、金額にして十兆円を超える大軍拡を狙っています。どれも非常に重大な内容ですが、とりわけ敵基地攻撃能力の保有を公然と求めていることは看過できません。

 これまで政府は、国会で、一九五九年に伊能防衛庁長官が、「平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところではない。」と述べました。また、七〇年には中曽根防衛庁長官が、「非攻撃性の装備でなければならない」と答弁し、攻撃的な兵器、すなわち敵基地攻撃能力の保有は憲法違反だとはっきり表明してきました。

 林大臣、今回の提言は、こうした政府の憲法解釈を根底から覆し、専守防衛をかなぐり捨てるものではありませんか。

林国務大臣 いわゆる敵基地攻撃能力と憲法の関係につきまして、政府は、誘導弾等による攻撃が行われた場合、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限の措置を取ること、例えば誘導弾等による攻撃を防御するのに他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であると解してきております。

 こうした見解と、そして、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいう専守防衛の考え方、これは整合するものと承知をしております。

 いずれにいたしましても、総理の指示の下で、いわゆる敵基地攻撃能力も含めてあらゆる選択肢を検討し、防衛力の抜本的な強化に取り組んでおります。

 なお、この検討は、憲法及び国際法の範囲内で、専守防衛の考えを維持しつつ、行われておるところでございます。

穀田委員 この内容をおよそ専守防衛の範囲内と考えることはできないのは当たり前だと思います。

 一九五六年二月に船田防衛庁長官は、「他に防御の手段があるにもかかわらず、侵略国(相手国)の領域内の基地をたたくことが防御上便宜であるというだけの場合を予想し、そういう場合に安易にその基地を攻撃するのは、自衛の範囲には入らない」と明確に述べています。そうした過去の政府見解には一切、政府も含めて言及しないのは、余りに私は御都合主義だと思います。

 そこで、鬼木副大臣に聞きます。

 自民党の提言は、反撃能力の攻撃対象について、相手国のミサイル基地に限定されるものではなく、相手国の指揮統制機能等も含むとしています。攻撃対象をめぐっては、安倍元総理が講演などで、相手国の中枢を加えるべきだと再三主張してきた経緯があります。

 鬼木防衛副大臣、提言で言う指揮統制機能等とは、相手国の中枢ということではありませんか。

鬼木副大臣 自民党の提言につきましては、一つ一つについてコメントすることは差し控えたいと考えております。

穀田委員 この調査会その他も含めて、ずっと鬼木さんも出席されているんじゃないんですか。それについて、いわば自民党が提言している、これは政権与党が提案しているものとして、逆に言うと、それらの問題について全く見解を持たないということになりますと、これは政府としていかがなものかと思います。一度も出席もせぬと、黙って後でぱっと見たというのやったらしゃあないですよ。ずっと関与していろいろなことをやっているということについて言うと、情けないと言わなければならないと思います。

 私は、指揮統制機能等とは相手の中枢ではないかと聞いたわけですよね。

 政府は、この間、国家安保戦略改定に向けた有識者との意見交換を実施してきました。意見交換に出席した元統合幕僚長の折木良一さんは、一月十二日付の日経新聞で、反撃能力とは、相手の基地に限らず、指揮統制施設や通信施設などへの攻撃も含むと述べています。報道によれば、指揮統制機能等について、防衛省幹部は、日本でいえば、都心の防衛省や首相官邸も含み得ると指摘しています。

 それで、具体的に聞きます。

 防衛省本省には中央指揮所というものがあります。配付資料の一枚目ですね。この中央指揮所に関する政府の答弁です。二〇〇七年五月三十一日の参議院外交防衛委員会で、当時の大古防衛政策局長が、中央指揮所が自衛隊指揮命令中枢だと答弁しています。

 鬼木副大臣、この答弁からも、中央指揮所は自衛隊の指揮命令の中枢ですね。

鬼木副大臣 中央指揮所は、防衛出動等の自衛隊の行動等に関して、防衛大臣が情勢を把握し、適時所要の決定を行い、部隊等に対し命令を下すまでの一連の活動を迅速かつ的確に実施することを目的とするものであり、その機能は、自衛隊の指揮通信等において必要不可欠なものであると考えております。

穀田委員 必要不可欠で中心だと。

 防衛省にある中央指揮所が自衛隊の指揮命令の中枢であることは、二〇〇八年七月十八日の防衛省運用企画局作成の資料でも、「自衛隊の指揮命令中枢である中央指揮所」と明記されています。つまり、中央指揮所は自衛隊の事実上の最高司令部ということであります。

 更に聞きます。

 自衛隊の最高司令部の中央指揮所には中央指揮システムというのが設置されています。そこで、資料の二枚目ですね、見ていただくと、これは非常に分かりやすい。二枚目です。これは折木良一氏が統合幕僚長だった二〇一〇年五月に作成されました。「指揮システムの概況」と題する資料であります。これには、防衛大臣が指揮統制を行うためのシステムとして中央指揮システムというのがあると記されています。間違いありませんね。

鬼木副大臣 防衛省・自衛隊では、自衛隊のオペレーション時の指揮命令の伝達や情報共有を円滑に行うため、中央指揮システムを始めとした指揮システムを整備しております。

 委員御指摘の中央指揮システムは、弾道ミサイル対処や大規模災害等の各種事態に迅速かつ柔軟に対応するため、各自衛隊の指揮システムと連接し、各自衛隊が保有するオペレーション上必要な情報を一元的に集約する機能を有するシステムであり、防衛大臣が指揮統制を円滑に行うためのシステムとなります。

穀田委員 だから、防衛大臣が指揮統制を行うためのシステムということで、非常に重要だということですよね。

 それで、私が指摘した中央指揮システムの資料要求に当たりまして、これなんですけれども、持参したのはちょっと違っていまして、これを新たに持ってきました。これは、いつかと言いますと、驚いたのは、防衛省の指揮系システム、令和四年四月二十五日、防衛省。ということは、おととい、私が質問する前に、新しく資料として作ったということなんですね。

 何を言いたいかというと、要するに、私が皆さんにお渡しした資料というのは、先ほど述べた、折木さんが統幕長の時代ですよね。しかし、それ以来ずっと変わっていないということだということが一つ。

 もう一つ驚いたことがあります。私が配付した資料は、昨晩まで総理官邸のホームページでダウンロードできていました。ところが、今日はできなくなっている。私が通告のレクを行った後に削除したと思われる。こういうやり方までせなあかんのかと。作った資料をダウンロードできないようにする。その一方で、新しい資料を持ってきて、それをいつ作ったかというと、四月二十五日に作った。こういう経緯がずっとある。まさに、不可思議であり、ふざけていると言わなければなりません。

 結局、配付した防衛省の指揮システムに関する資料に明記されているように、中央指揮システムは、防衛大臣が指揮統制を行うためのシステム、つまり、指揮統制機能だと記されているわけであります。ここが肝腎なんですね。だから、やはり、指揮統制機能というところにポイントがある。あれやこれや言うてはりますけれども、結局そのことなんですね。

 配付した指揮システムに関する資料によれば、中央指揮システムは、中央システム、陸海空幕システム、情報支援システムの五つのシステムから成る統合システムで、内閣総理大臣官邸、関係省庁と連携していると記されています。在日米軍ともホットラインで結ばれている。間違いありませんね。

鬼木副大臣 当該資料に記載のとおり、中央指揮システムは、総理官邸や関係省庁、在日米軍とつながっております。

穀田委員 つながっていると。要するに、中央指揮システムというのは、内閣総理大臣官邸や関係省庁、在日米軍とも連携されているということでいいですね。

鬼木副大臣 同じ問いでございますので、そのとおりでございます。

穀田委員 間違いないということと、連携しているということが大事だなということを聞いているんですよ。

 配付した指揮システムに関する資料では、防衛省・自衛隊の中央指揮システムは、官邸や関係省庁、在日米軍とも連携しており、文字どおり、防衛大臣の指揮統制機能だということであります。さらに、この中央指揮システムは、陸海空自衛隊の指揮官が作戦指揮を行うために、全国の自衛隊部隊ともシステムでつながっている。

 林大臣、自民党の提言で言うところの指揮統制機能等は、敵基地だけにとどまらず、日本でいえば、防衛省本省、総理官邸、関係省庁などを攻撃対象にするということだと言わなければなりません。林大臣、これは、相手国を丸ごと攻撃対象にするものであり、国際法上許容される武力行使の範囲を逸脱した全面戦争を行うということではありませんか。

林国務大臣 防衛副大臣からございましたように、党の提言というのは、まだこちらは見ておらないわけでございますし、党の提言でございますから、その中身やそれが何を意味するかについて、政府としてお答えすることは差し控えたいと思います。というか、お答えする立場にないと思っております。

穀田委員 私が聞いているのは、まさにこの図にありますような内容というのが非常にリアルに分かるし、こういう指揮系統になっている。結局のところ、これはまさに指揮統制機能を指しているものだねと。ということは、今自民党やその他が言っているような、敵基地にとどまらず、そういう指揮統制機能等を対象にしようとするということは、まさに相手国を丸ごと攻撃対象にするという論理的帰結を聞いているわけです。いかがですか。

林国務大臣 穀田先生、非常に説得力があるものですから、そうだと言いそうになるところもあるわけでございますが、先ほど申し上げたとおり、党の提言、まだ受け取ってもおりませんし、党の提言の文言や解釈についてはコメントはする立場にはないと思っておりますが、いずれにしても、政府としては、国民の命や暮らしを守るために十分な備えができているのか、これを憲法及び国際法の範囲内で、専守防衛の考え方を維持しつつ、現実的に検討してまいりたいと考えております。

穀田委員 小野寺元防衛大臣は、民間人がいるとか非軍事施設が対象になることはないとしています。しかし、提言では、攻撃対象となる指揮統制機能には「等」の文言があり、攻撃対象は、軍の司令部だけでなく、国家の中枢まで標的にするなど、際限なく拡大するおそれがある。

 さらに、小野寺氏は、相手国が攻撃に着手したと認定すれば攻撃は可能だと説明したと報じられています。そうなれば、国際法違反である先制攻撃との区別も事実上不可能であるというところが今最大の大きな問題になっているわけであります。

 そういう点もあるんだが、いかがお考えですか、大臣。

林国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございまして、我々としては、総理の指示の下で、いわゆる括弧つきの敵基地攻撃能力、この保有も含めてあらゆる選択肢を検討して、防衛力の抜本的な強化に取り組んでおるところでございます。

 大事なことは、やはり国民の命や暮らしを守るため十分な備えができているのかということがあり、憲法や国際法の範囲内で専守防衛の考え方を維持する、現実的に検討してまいりたいと考えております。

穀田委員 この考え方は専守防衛の考え方に反する、命を守ること、すなわちそれは憲法を守ることと同義語であって、そのことによって守るんだということを私は言っておきたいと思います。

 最後に、この問題で重大なのは、今進められている敵基地攻撃能力の議論は、安保法制施行以前に議論されたものとは異なるということであります。

 私は一月二十六日の予算委員会でも指摘しましたが、安保法制で存立危機事態と認定すれば、日本に対する武力攻撃がなくても、他国と戦争を始めた米国を支援するために、米軍とともに相手国の中枢をたたくことができる、これはまさしく憲法九条に真っ向から反するのは明らかであります。

 私どもは、このような考え方は間違っている、危険な動きであるということを指摘し、私どもは、憲法を守ること自身がやはり命を守ることだという同義語であって、そのことのために頑張ることをお話しして、質問を終わります。

城内委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

城内委員長 これより各件に対する討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。穀田恵二君。

穀田委員 私は、日本共産党を代表して、日・スイス租税条約改正議定書及び二〇二五年日本国際博覧会に関する特権・免除協定に反対の立場から討論を行います。

 日・スイス租税条約改正議定書は、投資所得に対する源泉地国での課税限度税率を軽減又は免除する措置を講ずるものです。これは、日本の大企業とその海外子会社が、当該国での外資優遇税制の利益を十二分に受けつつ、その上、本条約によって源泉地国での課税が劇的に軽くなるなど、税制優遇措置を二重三重に享受することを可能とするものであります。また、国際課税分野での大企業優遇税制を国内外で更に拡大強化するものであります。

 日本国際博覧会に関する特権・免除協定は、二〇二五年に大阪の夢洲で開催予定の関西万博の整備のため、公式参加者の陳列区域代表事務所や、博覧会国際事務局の代表者に対して、特権及び免除等を付与するものであります。しかし、関西万博をめぐっては、政府及び大阪府と大阪市がカジノを核とした統合型リゾートとセットで夢洲に誘致し、これを大阪の成長戦略の切り札にしようとしているものです。関西万博の夢洲開催は中止し、カジノ誘致のための関連整備計画は抜本的に見直すべきです。

 なお、万国郵便連合憲章の追加議定書等については、いずれも国際郵便業務を適切に実施し、より円滑に進める上で必要な措置であり、賛成です。

 以上を述べて、討論とします。

城内委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

城内委員長 これより採決に入ります。

 まず、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とスイスとの間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

城内委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、二千二十五年日本国際博覧会に関する特権及び免除に関する日本国政府と博覧会国際事務局との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

城内委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、万国郵便連合憲章の第十追加議定書、万国郵便連合憲章の第十一追加議定書、万国郵便連合一般規則の第二追加議定書、万国郵便連合一般規則の第三追加議定書及び万国郵便条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

城内委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

城内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

城内委員長 次に、刑事に関する共助に関する日本国とベトナム社会主義共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、強制労働の廃止に関する条約(第百五号)の締結について承認を求めるの件及び千九百七十七年の漁船の安全のためのトレモリノス国際条約に関する千九百九十三年のトレモリノス議定書の規定の実施に関する二千十二年のケープタウン協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣林芳正君。

    ―――――――――――――

 刑事に関する共助に関する日本国とベトナム社会主義共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 強制労働の廃止に関する条約(第百五号)の締結について承認を求めるの件

 千九百七十七年の漁船の安全のためのトレモリノス国際条約に関する千九百九十三年のトレモリノス議定書の規定の実施に関する二千十二年のケープタウン協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

林国務大臣 ただいま議題となりました三件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 まず、刑事に関する共助に関する日本国とベトナム社会主義共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件は、令和三年十一月二十四日に条約の署名が行われました。

 この条約は、一方の締約国が他方の締約国の請求に基づき、捜査、訴追その他の刑事手続について共助を実施すること、そのための枠組みとして中央当局を指定し、相互の連絡を直接行うこと等を定めるものです。この条約の締結により、我が国からベトナムに対して請求する共助がベトナムにおいて一層確実に実施されることを確保できるとともに、共助に関する連絡を中央当局間で直接行うことにより、共助の効率化、迅速化が期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、強制労働の廃止に関する条約(第百五号)の締結について承認を求めるの件は、昭和三十二年六月に条約が採択されました。

 この条約は、政治的な見解の表明等に対する制裁、労働規律の手段、同盟罷業に参加したことに対する制裁等としてのあらゆる形態の強制労働を禁止し、かつ、これを利用しないことを約束すること等を定めるものです。我が国がこの条約を締結することは、強制労働の廃止に向けた国際的な取組を促進するとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 最後に、千九百七十七年の漁船の安全のためのトレモリノス国際条約に関する千九百九十三年のトレモリノス議定書の規定の実施に関する二千十二年のケープタウン協定の締結について承認を求めるの件は、平成二十四年十月に協定が採択されました。

 この協定は、漁船の安全のための国際的な規則を定めるため、未発効である千九百七十七年の漁船の安全のためのトレモリノス国際条約に関する千九百九十三年のトレモリノス議定書の規定の修正、実施等について定めるものです。我が国がこの協定を締結することは、我が国を含む各国の漁船の安全性の向上に資するのみならず、この分野における国際協力の推進の見地からも有意義であると考えます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 以上三件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いをいたします。

城内委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る五月十一日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十二分散会


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