衆議院

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第12号 令和4年5月11日(水曜日)

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令和四年五月十一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 城内  実君

   理事 あべ 俊子君 理事 辻  清人君

   理事 宮崎 政久君 理事 武藤 容治君

   理事 青山 大人君 理事 小熊 慎司君

   理事 徳永 久志君 理事 杉本 和巳君

   理事 吉田 宣弘君

      青山 周平君    伊藤信太郎君

      上杉謙太郎君    小渕 優子君

      尾身 朝子君    金子 俊平君

      島尻安伊子君    新藤 義孝君

      鈴木 隼人君    高木  啓君

      武井 俊輔君    中谷 真一君

      平沢 勝栄君    山口  晋君

      岡田 克也君    太  栄志君

      松原  仁君    青柳 仁士君

      沢田  良君    和田有一朗君

      金城 泰邦君    鈴木  敦君

      穀田 恵二君

    …………………………………

   外務大臣         林  芳正君

   内閣府副大臣       赤池 誠章君

   外務副大臣        小田原 潔君

   外務副大臣        鈴木 貴子君

   防衛副大臣        鬼木  誠君

   外務大臣政務官      上杉謙太郎君

   文部科学大臣政務官    鰐淵 洋子君

   厚生労働大臣政務官    島村  大君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  岡本  宰君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         渡邊 国佳君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局審議官)            石田 晋也君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁在留管理支援部長)       君塚  宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   石川 浩司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房外務報道官)           小野 日子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       赤堀  毅君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 徳田 修一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 渡邊  健君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 御巫 智洋君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 安東 義雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化参事官)           宮下 匡之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 股野 元貞君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 岩本 桂一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 金井 正彰君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局南部アジア部長)      加納 雄大君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            長岡 寛介君

   政府参考人

   (外務省国際協力局長)  植野 篤志君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    安藤 俊英君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房学習基盤審議官)       茂里  毅君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         達谷窟庸野君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           宮崎 敦文君

   政府参考人

   (水産庁増殖推進部長)  廣野  淳君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         河野  順君

   政府参考人

   (観光庁国際観光部長)  金子 知裕君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 町田 一仁君

   外務委員会専門員     大野雄一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十一日

 辞任         補欠選任

  小渕 優子君     山口  晋君

  武井 俊輔君     青山 周平君

  本田 太郎君     金子 俊平君

  青柳 仁士君     沢田  良君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     武井 俊輔君

  金子 俊平君     本田 太郎君

  山口  晋君     小渕 優子君

  沢田  良君     青柳 仁士君

同日

 理事小熊慎司君同日理事辞任につき、その補欠として徳永久志君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑事に関する共助に関する日本国とベトナム社会主義共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

 強制労働の廃止に関する条約(第百五号)の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 千九百七十七年の漁船の安全のためのトレモリノス国際条約に関する千九百九十三年のトレモリノス議定書の規定の実施に関する二千十二年のケープタウン協定の締結について承認を求めるの件(条約第六号)


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     ――――◇―――――

城内委員長 これより会議を開きます。

 理事の辞任についてお諮りいたします。

 理事小熊慎司君から、理事辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

城内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

城内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に徳永久志君を指名いたします。

     ――――◇―――――

城内委員長 次に、刑事に関する共助に関する日本国とベトナム社会主義共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、強制労働の廃止に関する条約(第百五号)の締結について承認を求めるの件及び千九百七十七年の漁船の安全のためのトレモリノス国際条約に関する千九百九十三年のトレモリノス議定書の規定の実施に関する二千十二年のケープタウン協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長石川浩司君、大臣官房外務報道官小野日子君、大臣官房地球規模課題審議官赤堀毅君、大臣官房審議官徳田修一君、大臣官房審議官渡邊健君、大臣官房審議官御巫智洋君、大臣官房審議官安東義雄君、大臣官房サイバーセキュリティ・情報化参事官宮下匡之君、大臣官房参事官股野元貞君、大臣官房参事官岩本桂一君、大臣官房参事官金井正彰君、アジア大洋州局南部アジア部長加納雄大君、中東アフリカ局長長岡寛介君、国際協力局長植野篤志君、領事局長安藤俊英君、内閣官房内閣審議官岡本宰君、警察庁刑事局組織犯罪対策部長渡邊国佳君、金融庁総合政策局審議官石田晋也君、出入国在留管理庁在留管理支援部長君塚宏君、文部科学省大臣官房学習基盤審議官茂里毅君、厚生労働省大臣官房総括審議官達谷窟庸野君、大臣官房審議官宮崎敦文君、水産庁増殖推進部長廣野淳君、国土交通省大臣官房技術審議官河野順君、観光庁国際観光部長金子知裕君、防衛省大臣官房審議官町田一仁君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

城内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

城内委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。武井俊輔君。

武井委員 おはようございます。自民党の武井俊輔です。

 連休明け最初の質問をさせていただきますが、まず冒頭ですけれども、大臣、韓国に行ってこられたわけでありますけれども、大統領就任式等に出席をされたわけでございます。大変お疲れさまでございました。

 ちょっと通告しておりませんが、日韓関係、大変課題も山積しておりまして、具体的なことはこれからということであろうと思いますが、実際に韓国、政権が替わり、また、韓国に行かれまして、先方の日韓関係の改善の意欲というものをどのように、そういう印象を持たれたか、またどのように感じられたか、率直な御意見をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 昨日、尹錫悦韓国大統領の就任式に出席するために、岸田総理の特使として韓国をおとついから訪問をいたしました。

 私から尹大統領や朴振韓国外交部長官候補に対しましては、一九六五年の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の基盤に基づいて日韓関係を発展させていく必要があり、そのためには旧朝鮮半島出身労働者問題を始めとする日韓間の懸案の解決が必要であるという旨述べたところでございます。

 その上で、朴外交部長官候補との間では、日韓関係のこれ以上の悪化を放置してはならないという認識で一致をするとともに、日韓間の懸案等について、これらを早期に解決すべく、今後、ハイレベルの間も含めて、両政府間でスピード感を持って協議していくことで一致をいたしました。

 また、尹大統領からは、日韓関係を重視しており、関係改善に向けて共に協力していきたい旨述べるとともに、今後、緊密に意思疎通を行っていきたい、こういう発言があったところでございます。

 日韓関係を健全な関係に戻すべく、日本の一貫した立場に基づいて、今回の尹大統領や朴外交部長官候補とのやり取りも踏まえて、この新政権と緊密に意思疎通をしていく考えでございます。

武井委員 課題はもちろんあるわけでございますけれども、方向性としては、少し光が差してきたかなという思いもございます。私たちも、政治の側から、議連等も含めてしっかりとまたサポートしてまいりたいと考えております。

 続きましては、ロシアの関係でありますけれども、ゴールデンウィーク中でございましたけれども、ロシアが、六十三人の、政治また民間人含めて、入国措置を発表いたしました。

 誰がどうだ、何でかというようなこともいろいろ話題になるんですが、これは向こうが決めたことでありますけれども、その中で、やはり私が特に遺憾でありましたのは、衆参の与野党問わずの沖北委員会の理事でありますとか、北方領土の関係者、民間人の方々もあります、団体の長の方々の入国拒否などが大きく示されたところであります。

 非常に先方のこの問題に対する強い意思を示したということであろうと思いますが、我々もそれに負けるわけにはいかないわけでありまして、この北方領土交渉にいささかも、日本の姿勢が、影響があるようなことはあってはならないと考えますが、改めて決意をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 五月四日でございましたが、ロシア外務省は、日本によるロシア人に対する個人制裁などを理由として、日本人六十三名のロシアへの無期限入国禁止を発表いたしました。

 ロシアによるウクライナ侵略は明白な国際法違反であり、また、多数の無辜の民間人の殺害は重大な国際人道法違反であり、戦争犯罪であって、断じて許されないと考えております。

 軍事的手段に訴えて今回の事態を招いたのはロシア側であり、日ロ関係をこのような状態に追いやった責任は全面的にロシアにあると考えております。それにもかかわらず、ロシア側が、今、武井委員から御指摘があったように、北方領土返還要求運動団体の関係者を含めて多くの日本人の入国禁止措置を発表したことは、断じて受け入れられないわけでございます。

 また、北方領土交渉について申し上げますと、日本政府として、領土問題を解決して平和条約を締結する、こうした対ロ外交の基本方針は不変でありますが、本件に対する今後の対応について、この時点では申し上げるべき状況にはないと考えております。

武井委員 ありがとうございます。

 やはり、姿勢を示していくということは、時間も限られている中で、それぞれ北方領土の関係者の皆さんの本当に気持ちを支えていくという意味でも非常に大きなことでございますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 続いて、沖縄復帰五十年につきまして、連休前の二十七日でございましたけれども、小渕委員が趣旨弁明をなさいまして、衆議院でも沖縄復帰五十年の決議をいたしたところでございます。また、参議院でもされるというふうに伺っているところでございます。

 そういう意味で、今年は沖縄復帰五十年、大きな節目の年でございますが、大臣も沖北委員会などでも様々な答弁等に臨んでおられるわけでございますけれども、外務大臣として、またお一人の政治家として、沖縄の課題にどう向き合い、沖縄の振興にどう取り組んでいきたいか、御決意をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 五月十五日が、一九七二年の沖縄の本土復帰から五十周年の節目の日となるわけでございます。

 さきの大戦において、沖縄は悲惨な地上戦を経験し、一九五二年のサンフランシスコ平和条約の発効以降も二十年間の長きにわたって我が国の施政権の外に置かれるという苦難の歴史を刻んだわけでございます。こうした苦難を耐え抜かれた沖縄の方々の心情に思いを致しているわけでございます。

 また、基地負担について、沖縄における米軍施設・区域の整理縮小のため様々な努力を行ってきたところでございますが、今なお、沖縄の皆様には大きな基地負担を負っていただいているわけでございます。

 外務省としては、この沖縄返還五十周年の節目の年に当たって、引き続き沖縄の負担軽減に全力で取り組んでいくとともに、沖縄県の持つ固有かつ多様な魅力を認識して、外務省沖縄事務所、これを最大限活用しながら、国際的取組を始めとした沖縄の振興に貢献をしていく所存でございます。

武井委員 ありがとうございます。

 私も外務省にお世話になっておりましたとき、ちょうど沖縄事務所の二十周年がございまして、やはり役割として外務省として果たしていくことが非常に多くあるということを改めて実感をいたしました。また大臣を先頭に、外務省を挙げて沖縄振興に取り組んでいただきたいと重ねてお願いをしておきたいと思います。

 続きまして、六月に決定されると報道されておりますG7サミットについてであります。

 私の地元宮崎県も誘致に名のりを上げておるわけですけれども、現在で、首脳会談の誘致を表明しているのが福岡、名古屋、広島の三つ、閣僚会合に至っては、北は札幌から、二十三の自治体があるわけでして、どうも話を聞くと、正式には発表していないけれども水面下で誘致をしている団体も、自治体も幾つかあるということですから、実際はそれ以上あるということだと思いますが。

 いろいろとネットで見ても、各県独自のホームページを作ったりして、非常に熱を帯びてきているわけでありますが、そういう意味で、六月ということは、来月に迫っておるわけでございますけれども、このG7サミットの今後の発表のスケジュール、そしてまた、その関連会合がそもそも幾つあるのかというのが、もちろんこれはサミットによって数が増えたり減ったりするわけでありますので、その辺も含めてまだまだちょっとよく分からないところがあるわけですが、今後の発表のスケジュール、そしてまた関連会合の数、そしてまた、どういう基準で最終的に外務省として選考、選定をするということをお考えか、お伺いをしたいと思います。

渡邊(健)政府参考人 お答えいたします。

 来年のG7の関係閣僚会合の開催につきましては、現在二十以上の自治体が立候補を表明していると承知しておりまして、その選定に当たりましては、宿泊施設、会議場、交通アクセス、警備などあらゆる観点から総合的に検討を行っているところでございます。

 また、開催する関係閣僚会合の種類につきましては、現在政府内で検討しているところでありますが、本年議長国のドイツにおいて開催される関係閣僚会合や日本サミットで扱うテーマなどを踏まえて決定したいと考えております。

 スケジュールにつきまして、サミット首脳会合につきましては、本年六月二十六から二十八の、ドイツで行われる予定のエルマウ・サミットまでには政府として判断したいと考えておりますが、関係閣僚会合につきましては、その後しかるべきタイミングで決定していきたいと考えております。

武井委員 ありがとうございます。

 是非、非常に自治体も期待、注目もしておりますので、しかるべき対応をお願いしたいと思います。

 続きまして、済みません、大分遅くなりましたが、法案についてでございますが、ベトナムとの共助協定についてお伺いをいたします。

 実は、もちろんこれは、法案は必要ですし、やるべきだというふうには思っておりますが、ベトナムの犯罪というのは非常に今急増しておりまして、かつては中国が非常に多かった時代もあるんですけれども、令和三年で、総検挙人員で、中国が二千三百五人に対してベトナムは四千七人ということで、全体の犯罪の、外国人の国籍別でいっても三七・五%、そういう意味でも、件数でも約四割ということで、ベトナム人の犯罪が非常に増えているという現状は確かにあるわけであります。

 去年も、豚を盗んで家で解体して食べたとか、いろいろなそういうような報道もあって、どちらかというと、凶悪犯というよりは窃盗とかが多いような認識があるわけですけれども、このベトナム人の犯罪の増加というものについて、どのように対策を考えているか、お伺いしたいと思います。

渡邊(国)政府参考人 お答えいたします。

 令和三年中、ベトナム国籍を有する者の検挙件数、人員は、刑法犯、特別法犯合わせて六千三百二十九件、四千七人となっておりまして、来日外国人犯罪全体を国籍別に見ますと、検挙件数、人員共に最多となっております。

 ベトナム人による犯罪の特徴につきましては、刑法犯では万引き等の窃盗犯が多数を占めております。特別法犯では、正規の在留期間が経過した後、就労目的でそのまま不法に残留し、あるいは偽造在留カードを入手して正規滞在者を装うなどの事案が多く見られるところであります。

 警察といたしましては、こうした犯罪を検挙するとともに、ベトナム人に偽造在留カードを提供したりあるいは就労先をあっせんする国内外の悪質ブローカー等の取締りも強化しているところでございます。

 一方で、ベトナム人を始めとする在留外国人の方々が犯罪に巻き込まれたり関与することのないよう、外国人の方々との共生を図る観点を含めまして、関係行政機関、住民団体、企業等と協調いたしまして、防犯講習や交通安全教室等の各種警察活動も推進しているところでございます。

武井委員 ありがとうございます。

 今お話がありましたけれども、悪質ブローカーという話なんですけれども、実際、ベトナムの人、また関係者に話を聞きますと、ベトナム政府は、送り出し機関が、要するに実際に来る人から、留学生であるとか技能実習生、三十六万円とか、一応法律的に定めているそうではありますけれども、ただ、実態としては、百万円以上のお金を払って日本に来ているという人が非常に多い。要するに、日本に来る段階で非常に多くの借金を抱えて来ている、それがやはり困窮を生み、犯罪を生んでいる要因ではないかという一つの指摘もあるわけでございます。

 そういう意味でも、ベトナム人の犯罪が増加をしているということは、いわゆる送り出し機関、また、これは政府の側、また政府の関係の団体の問題でもある部分もあると思いますけれども、そういった、先方にも対応を改めていただかなければいけない点があると考えますが、この課題と対策をどのように認識されているか、お伺いします。

君塚政府参考人 今御指摘ございました技能実習の関係でございますけれども、不当に高額な手数料を徴収するなどの不適正な行為を行う送出機関等につきましては、確実にこの制度から排除をしていくということが必要でございます。そのためには、相手国政府との緊密な連携、そして排除に向けた各種の取組を進めていくことが不可欠でございます。

 そこで、技能実習制度におきましては、現在十四か国との間で二国間取決めを作成しており、不適正な事案を把握した場合には、この枠組みを通じまして相手国に通報して調査を依頼し、その結果に基づきまして送出機関への指導や認定取消し等を求めているところでございます。

 また、これに加えまして、日本側における措置といたしまして、昨年八月には、失踪者の発生が著しいベトナム送出機関五機関につきまして、ベトナム政府に通報の上、技能実習生の新規受入れを停止する措置を講じたところであります。

 出入国在留管理庁といたしましては、引き続き、制度を共管する厚生労働省や外国人技能実習機構との連携強化を図るとともに、相手国政府との協力関係をより一層密にし、不適正事案に対し厳正に対処してまいります。

武井委員 ありがとうございました。終わります。

城内委員長 次に、吉田宣弘君。

吉田(宣)委員 おはようございます。公明党の吉田宣弘でございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 まず、日・ベトナム刑事共助条約について質問をいたします。

 本条約については、その締結により、より充実した刑事共助を実施できるようになるとともに、その確実性が高まる、また、中央当局間の直接の連絡により、刑事共助を効率化、迅速化できると説明をいただいております。

 そこで、まず、この本条約締結以前は日本とベトナムという両国は刑事共助はどのように行われていたのかについて、外務省から確認をさせていただきたいと思います。

加納政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国におきましては、刑事共助条約を締結しない場合におきましても、国際捜査共助法等に基づき、我が国に外交ルートを通じて共助を要請してきた国との間で、相互主義が保証されることを条件に、共助を実施することが可能でございます。また、我が国からも同様に、外交ルートを通じて相手国に対して共助を要請することが可能でございます。

 これまでベトナムとの間では、一方の国からの要請に基づき、双方の外務省及び在外公館を通じ、関係者の事情聴取の結果等、捜査に必要な証拠を両国間で提供し合ってきたところでございます。この条約を締結することで、共助の実施の連絡を従来の外交ルートではなく中央当局間で直接行うことが可能となり、共助の実施の効率化、迅速化が期待できるものでございます。

吉田(宣)委員 御説明ありがとうございます。

 これまでは外務省さんを通じて行っていたということが中央当局間が直接やれるということで、そういった意味で効率化、迅速化というのが図られることが期待できるのではないかと思います。

 次に、先ほど武井先生からも御質問がございましたが、ちょっと私からも関連で二点ほどお聞かせいただきたいと思います。

 日越関係はあらゆる分野で急速に展開しており、特に、両国間の人的往来は、在留邦人数、在留ベトナム人数共に大幅に増加している、人的往来の活発化に伴い、在留ベトナム人による我が国での犯罪検挙数が増加しており、刑事共助のニーズが一層高まっているとの御説明をいただいたところでございます。

 そこで、このことを裏づける統計的な根拠をお示しいただければと思います。よろしくお願いします。

加納政府参考人 お答え申し上げます。

 日越関係の人的往来は、御指摘のとおり近年大幅に増加しております。

 例えば、ベトナムにおける在留邦人数でございますけれども、二〇〇五年には四千二百七人であったところでございますが、二〇二一年十月現在では二万二千百八十五人と約五倍になっております。また、我が国における在留ベトナム人数につきましては、二〇一一年に四万四千六百九十人でございましたけれども、二〇二一年十二月現在では四十三万二千九百三十四人と十倍近くに増加したと承知しております。

 このような人的往来の活発化に伴いまして、残念ながら、我が国での在留ベトナム人による犯罪検挙件数も増加しております。二〇一一年のベトナム人による犯罪の検挙件数は千七百四十九件でございましたけれども、二〇二一年には六千三百二十九件と三倍以上に増加していると承知しております。

吉田(宣)委員 日・ベトナム間の交流というものが非常に活発化して深まっているということに伴い、人的な数字も上がってきている、結果、いわゆる犯罪というふうなものも増えてきているというふうな御説明でございました。

 そこで、またそれに関連してでございますが、今度は警察庁さんにお伺いしたいんですけれども、今御説明があったベトナム人検挙数の増加に関連して、直近の二〇二一年に検挙されたベトナム人は主にどのような資格で日本に滞在しておられたのか、統計的な数値がございましたならば教えていただければと思います。

渡邊(国)政府参考人 お答えいたします。

 二〇二一年、令和三年におけますベトナム人の総検挙人員は、先ほど申し上げましたとおり、四千七人でございますけれども、これを在留資格別に見てみますと、一番多いのが技能実習で、千七百八十七人、四四・六%となっております。次いで、留学が八百九人で二〇・二%、こういった状況となっております。

吉田(宣)委員 在留資格、このようなことによる統計というのは今後の対策にしっかり生かされていかなければいけないのじゃないかなというふうに思っておりますので、御説明いただいたことに感謝を申し上げます。今後の取組に生かしていきたいと思います。

 次に、強制労働の廃止に関する条約、ILO第百五号条約について質問をいたします。

 本条約については、締結が長年求められてきたこと、国内で労使共に締結に賛成していること、ILO事務局に加えて、EU等からも締結に向けた働きかけを累次受けていること、国際労働基準に対する我が国、ILO常任理事国の遵守姿勢を示し、強制労働の廃止に向けた国際的な取組を促進する観点からも有意義であることから、本条約を可能な限り早期に締結することが重要であるとお聞きをしております。

 そこで、早期にということでございますが、それではなぜこれまで本条約を締結してこなかったのか、その理由について外務省から答弁を求めたいと思います。

赤堀政府参考人 お答えいたします。

 本条約は、締約国に対して、政治的な見解の表明等に対する制裁、労働規律の手段、同盟罷業に参加したことに対する制裁等としてのあらゆる形態の強制労働を禁止し、かつ、これを利用しないことを約束すること等を定めるものでございます。

 国内法制との関係では、本条約の締結のためには、国家公務員の政治的行為等に対する懲役刑を含め、本条約に抵触するおそれがある国内法上の懲役刑を改める必要がある等の観点から、慎重な検討を行ってきたところでございます。

 近年、本条約締結の重要性は、国際場裏や日本国内の労使の間でもますます指摘されるようになり、関係省庁との意見交換、諸外国の国内制度についての調査、ILO事務局との直接のやり取り等を集中的に行ってまいりました。

 その上で、昨年国会内において立ち上げられた本条約の締結に向けた検討の場において国内法制上の検討と必要な調整が加速した結果、昨年六月に強制労働の廃止に関する条約の締結のための関係法律の整備に関する法律が成立したことにより、本条約の締結のための環境が基本的に整ったものと考え、本国会に、本条約の締結につき御承認いただくべく提出したところでございます。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 次に、今般、刑法改正案が国会において審議されているというふうに承知しております。

 刑事施設における受刑者の処遇のより一層の充実を図るため、懲役及び禁錮を廃止して拘禁刑を創設し、その処遇内容等を定めるとともに、罪を犯した者に対する刑事施設における処遇の充実を図るための規定の整備を行うというふうにお聞きをしているところでございます。素人的なイメージで恐縮でございますが、禁錮刑と懲役刑が混ざって拘禁刑という名称になるようでございます。

 今御答弁いただいた内容からしますれば、私は、公務員に対する懲役刑の存在が本条約締結の壁になっていると理解したところでございますけれども、今般の刑法改正で新たな何か障害になってはいけないのではないかというふうに思っております。

 そこで、今般の刑法改正と本条約の整合性についてはどのように整理されているのかについて、外務省から答弁をいただきたいと思います。

赤堀政府参考人 お答えいたします。

 今国会に提出されています刑法等一部改正法案においては、現行刑法で定められている懲役、禁錮を廃止し、これらに代えて拘禁刑を創設し、これに処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができるものとすることとしています。

 拘禁刑に処せられた者が行う作業が本条約上の義務に抵触しないように担保するための在り方については、本条約締結のために令和三年六月に成立した強制労働の廃止に関する条約の締結のための関係法律の整備に関する法律の趣旨を踏まえて、関係省庁間で協議し、適切に対応することとしております。

 具体的には、同法により改正された国内法令上の行為を行ったことにより拘禁刑に処せられた者が受刑する場合には、刑法等一部改正法案において刑事収容施設法を改正し、「刑事施設の長は、受刑者に対し、その改善更生及び円滑な社会復帰を図るため必要と認められる場合には、作業を行わせるものとする。ただし、作業を行わせることが相当でないと認めるときは、この限りでない。」との規定を設け、相当性を欠く場合は受刑者に作業を課さないものとしていることを根拠に、条約上の義務を履行する観点から相当性を欠くものとして、本人の意思に反して作業を課さないこととし、その旨の通達等を法務省から各刑事施設長宛てに発出することにより確保することが予定されているものと承知しております。

吉田(宣)委員 御説明ありがとうございました。

 次に、漁船の安全のためのケープタウン協定についてお聞きいたします。

 本協定については、漁船の安全のための国際協力を推進し、我が国の漁船の安全性を向上させることが重要である、本協定が規定する国際漁船安全証書を我が国が発給する体制の確保が不可欠であると説明をお聞きしているところでございます。

 ところで、既にこの協定を締結している十七か国について御説明いただきましたが、この国の中にアジアの国が入っておりません。そこで、本協定が日本を含むアジア諸国にとって不利になることのないようにしていただきたいと思いますけれども、この点について外務省の答弁を求めたいと思います。

赤堀政府参考人 お答えいたします。

 漁船の安全に関するケープタウン協定は、我が国を含むアジア諸国の提案により、本協定の規則を適用するに当たり、測定の基礎として、長さに代えて総トン数を使用できる規定を設けるなど、アジア諸国の漁船の実態を踏まえた内容でございまして、我が国を含むアジア諸国も参加の上、本協定が採択されております。

 また、二〇一九年に発出されました、本協定の二〇二二年十月までの締結を目指す宣言には、中国、韓国、インドネシアなどのアジア諸国も署名しており、韓国については、昨年十二月に、本協定の締結のための国内手続を開始する旨を発表しております。

吉田(宣)委員 御説明ありがとうございました。

 最後の質問になりますが、最後は林大臣にお聞きしたいと思います。

 林外務大臣は、先般、カザフスタン、ウズベキスタン、モンゴルを訪問をされたとお聞きをしております。この時期に旧ソ連邦に所属していたカザフスタンとウズベキスタン、そしてロシアと長い国境を有する、かつて社会主義国家であったモンゴルを訪問されたことの甚深の、深い意義について、私なりに感じ取っているところでございます。林外務大臣のこの職務遂行に対して、私は衷心より深く敬意を表するところでございます。

 特に、カザフスタンは、二〇〇二年から継続してCSTO、集団安全保障条約機構に加盟をしております。ロシアと条約を締結しているわけでございますが、継続して締結をしているという状況です。ウクライナ情勢を踏まえると、カザフスタンは現在、私は非常にセンシティブな状況にあるのではないのかなというふうに思っております。

 そこで、今般、ロシアと関係性の深い三か国、カザフスタン、ウズベキスタン、モンゴルを訪問された目的と感想についてお示しいただければと思います。

林国務大臣 四月二十八日から五月二日まで、我が国の戦略的パートナーであり、今御指摘のあったように、地政学上の要衝に位置するカザフスタン、ウズベキスタン、モンゴルの三か国を訪問いたしました。

 今回のカザフスタンとウズベキスタン訪問は、日本の外務大臣としては十二年ぶりになり、本年、日本と両国との外交関係樹立三十周年の節目を迎える中で、戦略的パートナーである両国との二国間関係を強化する上で、時宜を得た、有意義なものとなったと考えております。

 カザフスタンとウズベキスタンでは、アフガニスタン情勢、それからウクライナ情勢、これらを含む国際情勢についても率直な意見交換を行いました。

 ウクライナについて、私から日本の立場を説明し、両国からは、国際法の原則及び国連憲章に基づく平和的解決が必要、こういう指摘があったところでございます。

 また、アフガニスタンについて、ウズベキスタンの発電所建設への日本の協力が、ウズベキスタンからアフガニスタンへの電力の供給という形で地域の安定化につながっているということにつきまして、先方の大統領や副首相から高い評価をいただいたところでございます。

 また、モンゴルは、中国とロシアに挟まれて、地政学的に大変重要な位置を占める国でございます。今回の訪問においては、外交関係樹立五十周年を迎え、我が国と普遍的価値観を共有するモンゴルとの間で、戦略的パートナーシップを一層強化していくことを改めて確認をいたしました。

 また、ウクライナ情勢を含む国際情勢について率直な意見交換を行うとともに、自由で開かれたインド太平洋の実現、拉致問題を含む北朝鮮への対応等について、引き続き協力していくことを改めて確認したところでございます。

吉田(宣)委員 林大臣、御答弁ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

城内委員長 次に、松原仁君。

松原委員 おはようございます。

 既に、韓国の訪問に関しては、自民党の議員からそのことについての大臣に対する問いがなされておりますので、私も率直にいろいろと聞きたかったんですが、これは省いて、質問に入ります。

 知床半島における遭難事故、カズワンの事故がありますが、この事故に関して、海上保安庁が、非常にロシアと、ロシアというか、日本人の遭難者、行方不明者の探索に努力をしているということであります。

 このいわゆるカズワン遭難事故に関して、外務省としてはどういうふうな働きをしているのか、お伺いいたします。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 ロシアとの間におきましては、捜索救助を行うに当たり、相互に協力することを定めた二国間協定などに基づきまして、両国の救助調整本部の間において捜索救助に係る連絡調整を実施してきているところでございます。この救助調整本部、日本側におきましては、海上保安庁の小樽の救助調整本部でございます。

 その際、外務省といたしましても、海上保安庁などによる円滑な捜索救助のため、外交ルートでロシア側に対して働きかけ、申入れを行うなど、関係省庁と連絡して対応してきておりまして、ロシア側に対しましては、本件の概要などを伝え、関連情報の提供を依頼しております。ロシア側からは、捜索に関し、その必要な協力を実施する、そして、関連情報に接すれば提供するといった回答を得ているところでございます。

 引き続き、外務省といたしましても、外交ルートも含めたロシア側との必要な連絡や調整を継続してまいる所存でございまして、政府全体として行方不明者の捜索に全力を尽くしてまいりたいと考えております。

松原委員 当然のことをやっている、それは御努力しているということですが、私が今日申し上げたいのは、国後現地に、海上保安庁は当然行方不明者の捜索をしているということですが、外務省は現地には外務省の人間を派遣をしてこの作業に対して関わっているのかどうか、確認します。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省として現地に職員を派遣しておるわけではございませんけれども、関係省庁とも連携しながら、在外公館や在京大使館を経由したといった外交ルートでの働きかけ、申入れなどを通じて取り組んできているところでございます。

松原委員 一言でいいですよ。派遣していない、こういうことです。

 私は、今回のこういうものに関して、やはり外務省は、日本人の生命財産を守るという極めて重要な視点から、行方不明者が十二名ですか、今この段階で。こういうことに関して、ロシアの、国後のところにこの十二名が、行方不明者が行っている可能性があるというのであれば、やはり外交ルートで、机の上に座ってロシア側と調整するのではなく、やはり政治ですから、行政ですから、本気で日本の外務省も、ちょうどこれはロシアとの、それは彼らが、北方四島は、日本が認めているわけじゃないんですが、今居座っている。その中で、外務省は、様々な議論をするということを考えたら、やはり知床に外務省の人間がいるのが、私は日本の行政としての当然の情熱というか、パトスというか、そういうものの吐露であって、それを後方から調整していますというだけでは、本当の意味での行動する外務省というふうには思えないわけであります。

 私は、ちょっともう時期が遅れてしまっていますが、こういった国後に外務省の職員がいるべきだと思います。大臣、御所見をお伺いしたい。

林国務大臣 外務省としては、今政府参考人から答弁いたしましたが、関係省庁とも連携しつつ、これまで外交ルートでの申入れ等は行ってきております。引き続き、適切に対応してまいりたいと考えております。

松原委員 ちょっとこれは大臣に質問する予定ではなかったんですが、申し上げたのは、国民のために行動する外務省であるというのをやはりこういうときに見せなきゃいけない。ロシアだって、日本の外務省の人間が知床にいるかどうかというのは、これは見ていますよ、ああ、彼らは後方から机に座ってやっているだけだなと。

 やはり、日本人の行方不明者を救出しようという情熱を考えるならば、今の答弁ではちょっと残念ですね。もう一回答弁してください。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、外務省としてやるべきことをしっかりとやってまいらなければならないと思っております。

松原委員 やるべきことの中に、当然ロシアとの調整はしますよ。しかし、その場に行くというそのことのメッセージ性というもの、このことに対する日本の、国のメッセージ性をきちっとロシアに伝えることが、ロシア側も、これは先ほどあった二国間協定ですか、こういったものがあってやっているんだろうけれども、外務省も知床に出てきてやっているんだな、これはやはり一つの大きな事実ですから、それは電話で後方から調整するのとは全く違うということを少なくとも大臣は肝に銘じてほしい、こういうふうに考えております。

 これ以上は答弁は、この問題は結構です。

 さて、今回のロシアの暴虐なウクライナに対する侵略がずっと続いていて、何月かたったわけであります。私は、何をここから学ぶべきか、ロシアがいきなりウクライナに対して侵略をしたというふうなことの背景を、なぜそうなったかという伏線を考えていかなければいけないというふうに思っています。伏線を考えていく。

 そのときに、幾つかの、それまでの歴史的な経緯、国際社会における紛争、こういったものをけみし、それに対して国際社会はどのように、一つ一つに対して、そういったものを押し返してきたか。これが不十分だったから、私はこういったことに結果としてなったのではないかというふうに思っております。

 そこで、ロシアがなぜウクライナ侵攻をしたかという文脈の中で幾つか聞いていきたいと思いますが、かつて、アメリカ、米英と言った方がいいでしょう、イラクに対して、大量破壊兵器をあんたは持っているだろうといって侵略をしたわけでありますが、そのときに、どういうふうなことでそうなったのか、この状況、特に国連においてどういう議論がなされていたか、こういったことをまず外務省、政府参考人にお伺いしたい。

長岡政府参考人 お答え申し上げます。

 イラクにつきましては、安保理決議の六百八十七というもので、イラクの大量破壊兵器の即時の現地査察のために特別委員会を設置をする、それで国連は査察を実施をするということをやってきておりましたが、イラクはその査察に対して拒否や妨害ということを繰り返ししてきたという事実関係がございます。

 そういう中で、国連安保理としては、イラクの大量破壊兵器という問題に対処するために、累次の安保理決議を採択して査察の強化等に取り組んできたというふうに理解をしております。

松原委員 既に私、申し上げたんですが、今、大量破壊兵器があるんじゃないかということで、昨日も様々御担当の方と話しましたら、そういったものはありませんという一万ページの報告書をイラクが出してきたというふうな話も聞きました。ないものをないと証明するというのは非常に難しいですよ。あるものをあるじゃないかというのは簡単ですが、一万ページの報告書で、ないんですと言ってきた。しかし、そんな報告書は不十分だという議論が国連の中で起こったというふうに聞いております。

 結論として、大量破壊兵器はイラクで見つかりましたか。

長岡政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど御答弁申しましたように、国連として、国際社会として、イラクの大量破壊兵器の廃棄という問題に取り組む中で、イラクは様々な妨害行為といったものを行ってきたわけでございます……(松原委員「あったかなかったのか答えてくれればいいよ」と呼ぶ)はい。

 最終的に、イラクにおいて大量破壊兵器が、例えば化学兵器、生物兵器、そういったものがあったということは、最終的には確認されなかったというふうに承知をしております。

松原委員 つまり、大量破壊兵器はなかった、こういうふうな判断をしたわけであります。

 このことに関して、イギリス、フランス、ドイツ等はどういう反応をしたのか、ロシアはどういう反応をしたのか、お伺いします。

長岡政府参考人 お答え申し上げます。

 他国の政府がこの問題についてどのような対応を取ったのかについて、日本政府として全てをつまびらかに承知しているわけではございませんけれども、例えば、イギリスにおいては、イラク戦争の後に何度か調査委員会といったものが設置をされたというふうには承知をしております。

松原委員 もうちょっときちっと答弁してくださいよ。

 イギリスではどういうふうな話があって、ブレアさんに対しての、例えば、訴追までいかないけれども、そういう議論があったりした。ドイツ、フランスにおいてはどういう議論があったか、それを答えてくださいよ。

長岡政府参考人 お答え申し上げます。

 例えば、二〇〇三年の二月でございますけれども、フランス、ロシア、ドイツは、共同して、国連による査察の継続というのを求める共同宣言を行っております。また、イギリスにつきましては、先ほど申しましたように、複数の委員会が設置をされて、インテリジェンスの問題を含めて、イラク戦争における対応というものを検証したというふうに承知をしております。

松原委員 こういった国々において、米側が、米英がイラクに対して大量破壊兵器があるということを理由にして戦争を起こした、このことに対してはどういう評価がされたんですか。お伺いします。

長岡政府参考人 お答え申し上げます。

 イラクの大量破壊兵器の問題につきましては、国連の決議の先ほど申した六百八十七に加えて、その前の六百七十八号、あるいは千四百四十一号、そういったものによって、アメリカ、イギリスを含め、多国籍軍による武力の行使といったものは正当化されるというふうに日本政府としては考えてございます。

 イラクは、湾岸戦争が終結した後十二年間にわたって、累次の安保理決議に違反をし続けて、国際社会が与えた平和的解決の機会を生かそうとせず、最後まで国際社会の真摯な努力に応えようとしなかった。このような認識の下で、日本としては、先ほど申し上げたような安保理決議に基づく米国、英国等の各国による行動を支持をしたということでございます。

松原委員 日本は、もう一回確認しますが、この米英の、イラクに対して、戦争というか、大量破壊兵器があると思って侵攻した、結果、なかった、しかし、この米英の戦端を開いたことは、我々は、それは正しい、こういうことを今局長はおっしゃったんですが、大臣、それでよろしいんですね。確認です。

林国務大臣 ただいま政府参考人から答弁したとおりでございます。

松原委員 これに関して、ドイツやフランス、ロシアはどういうふうに、正しいと言っているのか、言っていないのか、日本政府の見解をお伺いしたい。

長岡政府参考人 お答え申し上げます。

 日本政府として、他国が、また第三国の取った行動に対していかなる評価をしているかについて正式にお答えする立場ではないので、御答弁は控えたいと思います。

松原委員 ちょっとおかしくないか。だって、我々はG7の行動と行動を共にするとかいろいろとやっているのに、そのときにドイツがどういう行動をしたか、フランスがどういう行動をしたか、答える立場にはない、そのことを検討する立場にもないということになるならば、これは、この外務委員会をやっている意味がなくなっちゃうじゃない。違いますか。

 今の答弁で、我々は答える立場にないということで、全くもって、このイラクに関して大量破壊兵器がないというのが分かったとき、私の記憶では、ブレアさんに対しても、どうなんだという声がイギリスで上がったと仄聞しています。

 そういったことも含めて、日本政府は、我々はそれに対して、国際社会と連携して関係するとか、様々大臣も答弁している。国際社会との連携の中で我々は行動すると言っている。

 これは、今の答弁で、そういう答弁で、外務省は、これから判断をし、行動する、そういうことなんですか。大臣、答えてください。

林国務大臣 二〇〇三年のイラクに対する武力行使ですが、国際の平和及び安全を回復するという目的のために武力行使を認める国連憲章第七章の下で採決された関連する安保理決議により、正当化されていると考えております。

 イラクに対する武力行使を支持するに至った当時の問題の核心でございますけれども、クウェートを侵攻して、国際社会の信用をイラクが失っている中で、査察への協力を通じて、大量破壊兵器の廃棄、これを自ら証明すべき立場にあったイラクが、即時無条件の査察受入れを求める安保理決議に違反し続けて、大量破壊兵器が存在しなかったことを自ら積極的に証明しなかったことにあると考えておるところでございます。

松原委員 大丈夫かなという気もするんですが。

 なかったわけですよ、結論。なかったものを証明しろというのに熱心じゃなかったというのは、これはちょっと、その理屈自体が私はいかがなものかと思っております。

 ただ、私が今ここで明らかにしていきたいのは、なぜロシアが今回ウクライナを侵攻したかということであります。

 アメリカがイラクに対して戦端を開き、結果、大量破壊兵器がなかった。しかし、今、日本も、そのアメリカの戦いは正義であった、こう大臣がおっしゃる。つまり、大量破壊兵器がなくて、それを理由にした戦争も許容される、こういうことであります。

 我々は、日米同盟ですから、それはそれで一定の理解を私もしますけれども、ロシアとしては、これを見たときに、ああ、大国はこういったことをしても誰も文句を言わないんだな、こういうふうな認識をしたのではないかというふうに思っているわけです。

 やはり、こういうところの一つのけじめをどうするか。これは国連の、まさに国連自体の、倫理規範というんですか、その公平性が問われると思っています。

 二つ目に、シリアの問題に行きましょうか、先に。

 シリアにおいて、ロシアが攻撃を加えた、ジェノサイドを加えたと言われております。ジェノサイドが行われたのではないかと言われている。このときに、市民に対する、神経ガスを使うとか、化学兵器を使うとか、こういうことが行われたと言われております。

 このときに、これに対しては、国連安保理及び国際社会はどういうふうな批判をしたのか、これをお伺いしたいと思う。

長岡政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、ロシアのシリアにおける内政に対する関与でございますけれども、ロシア政府は、二〇一五年の九月三十日以降、シリア政府の要請に基づくとして、シリアの領域内において空爆等を実施しているというふうに我々は承知をしております。

 その上で、ロシアによるシリアでの空爆の開始については、例えば、米、英、独、仏、そういった国々が、一般市民に死傷者を出しているロシア空軍による攻撃に深い懸念を表明するとともに、シリアの反体制派に対する攻撃を即刻中止をすることなどを呼びかけております。

 また、G7としましては、シリア政府による化学兵器の使用、それを非難をしておりますが、同時に、ロシアが、国連の安保理の下における化学兵器禁止機関と国連の共同調査メカニズム、これのマンデートの更新を拒否したことについては遺憾の意を表明している、そういうことでございます。

松原委員 結論的に私が言いたいのは、このシリアにおいては、大変な、化学兵器も使われて殺りくが行われ、様々な識者によれば、今回のウクライナよりもある意味で悲惨なレベルの状況が起こっていたということを様々な方がおっしゃっているわけであります。

 そのときに、国際社会はどこまでロシアを孤立させたのか。このときに、確認ですが、ロシアに対して、それは現実、シリアもそうですが、ロシアに対しての具体的な、今回、ウクライナ問題でロシアに取っているような経済制裁というのは行われましたか。お伺いします。

長岡政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもが理解している限りにおいて、シリアにおけるロシアの行動について国際社会として制裁を取ったというふうには、少なくとも我々が理解している限りにおいては、特段ないというふうに思います。

 他方で、申し上げますと、この十年以上に及ぶシリアの内戦については、国連の安保理が一致した行動を取ろうとして何度か決議を出しております。一部は採択をされておりますが、ロシアは十回以上にわたって拒否権を行使をしているという事実もございます。

松原委員 そういうことなんですよ。ロシアは、イラク戦争におけるアメリカが、大量破壊兵器がないという中においても、国際社会から大きな非難を受けることもなく、そして、シリアにおいてロシアが様々なことをやった。恐らく、ロシアの側としては、今回のウクライナの問題を考えたときに、もう既にシリアで同じことをやっているから、国際社会は余りロシアに対して反発をしないだろうとたかをくくっていたのではないかと私は思いますよ。このとき、経済制裁は行われていない。

 つまり、ロシアは、こういうことを見て、ウクライナに対してシリアと同じレベルの残虐非道なことをやっても、国際社会は行動しないだろうと見誤って行動した、これが一つの歴史的な経緯だろうと思っております。

 ここから我々が学ぶことは何かといえば、その都度その都度きちっと、単に遺憾であるとか、単に外交ルートで抗議をするというレベルではなく、一定の重みを持った反撃を一つ一つ行っていく、それがやはり大事なんだ、こういうふうに思っております。

 このことについて、林大臣はいかがお考えですか。

林国務大臣 今るる松原委員から、これまでの歴史的な経緯について御議論いただいたところでございます。

 我々としては、今回もそうでございますが、G7を始めとする同志国としっかり連携を取りながら、しかるべく対応していくということが当然大切だ、こういうふうに思っておりますし、更に申し上げますと、普遍的な価値、すなわち、自由や民主主義、人権、そういうものを守り抜く覚悟というのを岸田政権は三つの覚悟のうちの一つ目に掲げてきておりますが、そういった観点から、G7を始めとする同志国、また国連場裏等々において適切に対応していくことが肝要だというふうに考えております。

松原委員 そのG7の団結とかいうことを、今大臣がおっしゃったような人権であるとか法の支配の下の平等、自由、そういうのを尊重している国がイラクのときにどういう反応をしたか。ほかの国のことですからお答えできません、そういうことを大見えを切って言われてしまうと、何をここで議論していいのかという話になる。

 これは局長、やはり明確にその辺は答えられるようにしてほしい、それはしゃくし定規ではなく。そうしなかったら、外務委員会で、日本が一つの意思を確立するということはできない。

 その上で言いますが、アメリカの、米英の、イラクに対して大量破壊兵器があるぞといって攻撃をしかけた。イラクは何回にもわたって国連に対して不誠実であった、こういうふうに言っている。

 不誠実であったということであるならば、今回、今日、安保理で北朝鮮のミサイルの問題も扱われると聞いておりますが、北朝鮮こそ、度重なってこういったことに対して不誠実な態度を取っている。

 ということは、イラクの事例と単純には比較はできないが、条件としては、アメリカがイラクに対して行ったようなことが、それは国連の、大国によって北朝鮮に対して行うことも理屈の上では可能になる、こういうことになると思うんですが、大臣、お答えいただきたい。

林国務大臣 当時のイラクをめぐる情勢、そして北朝鮮をめぐる情勢、これを一概に比較してお答えすることは困難でありますが、また、イラクに関する安保理決議と北朝鮮に関する安保理決議、これは規定ぶりが異なっておりますため、同列に論ずることは適切でないと考えております。

 北朝鮮に関する安保理決議でございますが、例えば、直近の北朝鮮に関する安保理決議第二千三百九十七号ですが、国連憲章の第七章の第四十一条に基づく措置を取るというふうにした上で、種々の制裁措置等が規定をされております。国連憲章第四十一条は、安全保障理事会が、その決定を実施するために、兵力の使用を伴わないいかなる措置を使用すべきかを決定する旨を定めておりまして、当該決議の措置は、国連憲章第四十一条に基づく、兵力の使用を伴わない措置として位置づけられるものであると考えております。

 いずれにいたしましても、北朝鮮による累次の安保理決議に違反した核・ミサイル活動は断じて容認できず、今後とも、日米、日米韓で緊密に連携するとともに、国際社会とも協力しながら、関連する安保理決議の完全な履行を進めて、北朝鮮の完全な非核化を目指す考えでございます。

松原委員 今、イラク攻撃の正当性を、国連の安保理決議に対してないがしろな姿勢を示したからやっているんだという話をしたから、その一点においては同様ですね、こう私は言ったわけであります。

 これは、今日、時間が余りないので、本当はもっと徹底してやったら、やはりそこが大事なんだよね。ドイツやフランスが米英と同じ立場を取ったとは私は確認していませんから、イラクの問題に関しても。その辺で、日本がやはり日本としてどういうふうな態度を取るのか、分析をするのか、この辺を今日は実際聞きたかったんですよ。

 その上で、次に参りますが、いわゆるウクライナ戦争において、私はウクライナは敗北しないと思っておりますが、大臣はウクライナが勝つというふうに思っていますか。やはりそれは、思うということが、まあ、思っているか思っていないかというとなかなか言いづらいだろうけれども、しかし、現状ではかなりウクライナ軍が頑張っているので、その辺についてのコメントをいただきたい。

林国務大臣 戦局につきましては、様々な情報があります。例えば、九日に英国のウォレス国防相がおっしゃっていらっしゃいますのは、ウクライナがロシア軍を破る可能性は非常に高い、こういうふうに述べられたと承知をしております。

 我が国として、確定的な評価やまた予測を申し上げることは困難であると思います。

 国際社会が長きにわたって懸命な努力と多くの犠牲の上に築き上げてきた国際秩序の根幹、これがロシアのウクライナ侵略により脅かされておるわけでございまして、平和秩序を守るため、G7を始めとする国際社会で足並みをそろえて緊密に連携をして、断固たる決意で対応していく必要があると思っております。

 我が国は、主権と領土、そして祖国と家族を守ろうとして懸命に行動するウクライナの国民と共にあるわけでございます。引き続き、強力な対ロ制裁とウクライナ支援の二つの柱、これにしっかり取り組んでいくことで、ウクライナを強力にバックアップしてまいりたいと考えております。

松原委員 今、ウクライナでは大変な激戦が続いている。マリウポリの製鉄所内のウクライナ側に対してロシアは十一日にも化学兵器を使うんじゃないか、こういうふうなことも言われているわけであります。

 大臣、やはり、日本はウクライナに対する連帯を様々表明していると思っています、私は。そうした中で、マリウポリの、ウクライナのために、ウクライナの自由のために戦っている兵隊たち、市民たち、その者に対して、大臣の方で何か激励の言葉をこの場でおっしゃることができれば聞きたいと思いますが、いかがでしょうか。

林国務大臣 まさに、先ほど申し上げましたように、今起こっていることというのは、長きにわたる我々の先輩方の努力や犠牲の上に成り立って築き上げられてきた国際秩序の根幹、これがロシアのウクライナ侵略によって脅かされているわけでございます。

 そういった意味で、祖国と家族を守ろうと懸命に行動するウクライナの国民と申し上げましたが、この中には、今委員がおっしゃった、戦っていらっしゃるウクライナの皆さんも当然含まれているわけでございます。そういった意味で、我々はウクライナの皆さんと共にあるということを重ねて申し上げた上で、我々として、対ロ制裁やウクライナ支援、この二つの柱にしっかりと取り組んでいくことで、こうした皆さんの今の活動、努力を強力にバックアップをしていきたいと考えております。

松原委員 今回の戦いは、ウクライナを勝利に導くというのは、これはウクライナ単独の問題ではなくて、全世界の大きな、これからの環境をつくるということになると思います。これでロシアが勝つようなことがあったらどうしようもないわけであります、はっきり言って。

 その中で、大臣、お伺いしたいのは、ロシアが敗北をする、少なくとも、民主主義と自由と人権を応援する側が勝つということは、ウクライナからロシア兵が撤退するだけではなく、私は、本来であれば、国連の常任理事国、ロシアがこれを辞めるということも含めて考えるべきであると思っている。これは簡単にできないかもしれない。

 G20が近いうちに行われるという話があるけれども、これにロシアが参加することに関しては、これを認めますか、大臣は。大臣の御発言を聞きたい。

城内委員長 既に持ち時間が経過しておりますので、御答弁、簡潔にお願いいたします。

林国務大臣 国際社会は、ロシアのウクライナ侵略によって、ロシアとの関係、これまでどおりにすることはもはやできないと考えております。

 G20へのロシアの参加については、議長国であるインドネシアを始めとするG20メンバーとも議論しながら、今後の情勢をよく踏まえた上で政府として適切に対応してまいります。

松原委員 もうちょっと歯切れのいいメッセージをいただいた方が、日本のG7の中における立場もよくなるだろうというふうに思っております。

 時間もかなり経過しているようですから、あと少しで終わりにいたしますが……

城内委員長 いや、もう持ち時間が。

松原委員 やめた方がいいの。はい、分かりました。

 それでは、以上で終わりますが、私が申し上げたいのは、北朝鮮もしかり、またロシアもしかりでありますが、同様に、中国も空母の問題等があります。本当はこれも質問したかったんですが、こういうこと全体で何が言えるかといえば、そのとき、最初の最初にきちっと歯止めをかけないと、ロシアのウクライナ戦争みたいな暴走になるということであります。

 したがって、我々日本も、遺憾ですとか何とかですというのじゃなくて、実効性を持つ、相手がこれはまずいなと思うようなことを、きちっと、都度都度反撃をしていくということを心から外務大臣及び外務省にはお願いをして、私の質問、山のようにまだ残りがあるんですが、終わります。

 ありがとうございました。

城内委員長 次に、青山大人君。

青山(大)委員 まずは、議案となっています三条約について幾つか質問をさせていただきます。

 まず、日本とベトナムの刑事共助条約に関してお伺いいたします。

 刑事司法分野における国際協力を推進する法的枠組みの整備に関しては、本条約のような刑事共助条約のほかに逃亡犯罪人引渡条約がございますが、現在日本は逃亡犯罪人引渡条約をアメリカと韓国以外の国とは締結しておりません。先ほど他の委員の方からも、今、在留ベトナム人による犯罪が増えている、そういった指摘もございました。そういった中で、今回、ベトナムとの刑事共助条約が提出されていますけれども、今後、ベトナムとの間で逃亡犯罪人引渡条約の締結を検討する必要もあると考えますが、いかがでしょうか。政府の見解を伺います。

加納政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの、ベトナムとの犯罪人引渡条約締結に向けた検討状況につきましては、外交上のやり取りに関わることですので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

 その上で申し上げますと、ベトナムを含む諸外国との間で人的往来が増大する中、我が国で犯罪を行った後、母国に逃亡する来日外国人犯罪者の問題は、関係省庁と連携しつつ、政府として適切に取り組むべき重要な課題だと認識しております。

 犯罪人引渡条約をどこの国と締結するかについては、来日外国人犯罪者の問題を踏まえるとともに、相手国との犯罪人引渡しの具体的必要性の有無、相手国の刑事司法制度が適切に運用され、我が国から引き渡された者が不当な扱いを受けることがないかどうか等、諸般の事情を勘案して検討してまいりたいと存じます。

 なお、このような問題への対応といたしましては、まずは個別具体的な必要性に応じ、相手国の関係機関との間で実務的な協力を積み重ねることも重要でございます。相手国とは、いかなる対応が可能か、引き続き話合いを行っていく考えでございます。

青山(大)委員 逃亡犯罪人の引渡条約がアメリカと韓国の二か国にとどまっている理由としては、やはり日本の死刑制度の存在が死刑廃止国との間で条約締結の障害になっているということはあるんでしょうか。あるのか、ないのかだけで結構です。

加納政府参考人 繰り返しの答弁になって恐縮でございますけれども、犯罪人引渡条約をどこの国と締結するかにつきましては、来日外国人犯罪者の問題を踏まえるとともに、相手国との犯罪人引渡しの具体的必要性の有無、相手国の刑事司法制度が適切に運用され、我が国から引き渡された者が不当な扱いを受けることがないかどうか等、諸般の事情を勘案して検討してまいりたいと存じます。

青山(大)委員 分かりました。

 それでは、次の条約に行きます。

 ILOの、今回、第百五号の条約の承認を求めるの件が出ていますけれども、同じくILOの第百十一号条約の締結に向けた国内での取組状況についてお伺いいたします。

 今回、ILO第百五号条約を批准すれば、日本はILOの基本条約八つのうち七つを批准したことになり、未批准の条約はILO第百十一号条約、雇用及び職業についての差別待遇に関する条約のみとなります。このILO第百十一号条約は、今日現在、ILO加盟国百八十七か国のうち、約九四%に当たる百七十五か国が批准をしております。

 私は、二〇一八年の外務委員会、当委員会において、ILO第百十一号条約の批准に向けた取組姿勢について質問し、当時、政府の方から、答弁として、国内法制との整合性について検討すべき点があるという観点から、引き続き慎重に検討を行っているとの答弁がございました。

 あれから数年たっておりますので、百十一号条約批准に向けた取組の進捗状況についてお伺いをいたします。

林国務大臣 ILO第百十一号条約でございますが、人種、皮膚の色、また、性、宗教、政治的見解、国民的出身又は社会的出身、この七つの事由に基づく雇用及び職業における差別待遇の除去を目的としております。

 この条約の締結の重要性は認識をしておりますが、公務員の政治的見解の表明の制限、また、肉体的、生理的差異を考慮して、就業、労働条件について性に基づく保護を設けること等に係る国内法制と条約との整合性を慎重に検討する必要があると考えております。

 このILO第百十一号条約を締結する上での課題について、関係省庁とともに検討を進めてまいりたいと考えております。

青山(大)委員 本当に、繰り返しですけれども、ILO加盟国百八十七か国のうち、もう九四%の国が批准をしているわけでございます。当然、日本は国内法の整合性ということもありますけれども、対外的にも、何で日本はという声も出てくるわけですし、是非、前向きに検討の方を改めてお願い申し上げます。

 条約の三つ目、ケープタウン協定についてお伺いいたします。

 ケープタウン協定の締約国は、対象となる自国の漁船について、協定が定める漁船の構造及び設備に関する規則の規定の適用を確保する義務を負うとのことでございます。

 日本では、船舶安全法の下、省令において漁船の構造及び設備に関する規則が定められていますが、現行の国内規則はこの協定が求める要件を一部満たしておらず、我が国は、本協定の締結に当たり、現行の国内規則を一部変更する必要があるとのことでございますが、本協定の締結に伴う国内規則の変更が漁業経営に与える影響について、どういったものがあるのでしょうか。また、漁業者へ負担をかけるものになるのか、仮に負担をかけるものであれば、負担軽減に向け、支援やサポートを行うつもりなのか、政府の考えをお伺いいたします。

廣野政府参考人 お答えいたします。

 漁船の安全のためのケープタウン協定でございますが、この規則の適用対象は、締約国が、長さでいうと二十四メートル以上、又は国際トン数三百トン以上のいずれかを選択することとされてございます。

 我が国としては、国際総トン数三百トン以上を選択することとしておりまして、我が国漁船に当てはめますと、国内総トン数百八十九トン以上の漁船が対象となりまして、それ以下の漁船は対象とはなりません。

 これらの対象となる漁船は遠洋漁業や沖合漁業を行う漁船でございまして、安全関係の設備の追加に一定の費用負担がかかるものの、同協定に関しては、漁業関係者も参加する形で検討会を十一回にわたって行い、関係業界に対し、国内実施による影響等について十分に説明を行ってきており、同協定の締結について理解を得ながら調整を進めてきたところでございます。

青山(大)委員 しっかり、そういう、条約によって負担がないとか、理解が得られたのであれば、そういったことで結構だと思っております。

 以上、今回議題になっている三つの条約について質問させていただきました。これ以降は、全般について質問させていただきます。

 まず一点目。

 近年、当然、今のウクライナの情勢や北朝鮮の核ミサイル開発などをめぐり、国際情勢が目まぐるしく変化する中で、外交、安全保障の課題は山積しております。これに伴い、外務省の業務が飛躍的に増大しておると思いますし、また、私もこの委員会でも何度か質問させてもらいましたけれども、やはり在外公館の設置も今後計画的に進めていく、戦略的に行っていくべきと考えております。

 そういった中で、やはり外交官の増強は必須ではないかと私は考えております。令和四年度の予算においても、外務省は六千五百四人の定員を確保しておりますが、海外主要国の外務省の定員の数、例えば、アメリカは二万八千人以上、中国も約九千人、英国も八千七百九十八人、フランスが八千六百三十八人、ドイツが七千四百二十八人と比較すると、やはり日本の外交官の数というのはまだまだ少ないのではないか、私はそのように考えております。

 日本の外務省も、将来的には、そういった主要外国と比較して、ある程度の体制を目指し、定員の増員を今後加速すべきと考えますが、政府は、大臣は、こういった人員の配置、拡充の方向性についてどのように考えているか、お伺いいたします。

林国務大臣 外交実施体制の整備は内閣の重要課題として掲げられておりまして、外務省の定員については、これまでも重点的な措置が講じられてきております。

 他方、今、青山委員から御指摘いただいたように、我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しております。国際社会でリーダーシップを発揮し、また在留邦人の安全確保といった重要課題に対応するためには、やはりこの外交実施体制の一層の強化が必要であると考えております。

 徹底した業務の合理化や効率化、そして人員配置及び業務分担の見直し等を行いつつ、できる限りの人員の増強、これを引き続きお願いをしていきたいと思っております。

 また、量に加えて、職員一人一人の能力向上、これは極めて重要であると考えております。研修の充実や専門性を考慮した人員配置等を通じた人材の育成によりまして、質の面からも外交実施体制を強化して、戦略的な外交を展開してまいりたいと考えております。

青山(大)委員 実は先日、私の地元にある筑波大学の学生さんたち、将来、国家公務員、いろいろな省庁ですけれども、そういったことを考えているサークルの方たちを議員会館に、国会議事堂を案内してから呼んで、途中、外務省の方にちょっとお願いして、筑波大学出身の外交官の方に話を頂戴しました。

 参加された三十人の学生たちは本当に目を輝かせて、やはり、なかなか外交官の仕事って、ちょっと分かりにくい面もあるじゃないですか。ですから、今大臣おっしゃったように、質の確保という面でも、そういった学生たちに、是非、そういった現役の外交官の方たちに話をしてもらう機会をつくったりとか、もちろん、外交官の資質って、なかなかペーパー試験では測り切れない部分もやはりあるじゃないですか。当然、コミュニケーション能力もそうですし、語学もそうですし。そういった中で、是非、裾野を広くして、諸外国に負けないような、そういった外交官の育成、人数も含めて、これからも取り組んでほしいと思って、重ねて要望をさせていただきます。

 続いて、マスクについてちょっとお伺いいたします。

 イギリスが今年一月にマスクの着用の義務を撤廃しました。フランスも三月に解除されました。アメリカでもCDCが二月に指針を緩和し、現在はほとんどの地域で屋内でも着用の義務が不要になっております。また、欧米の航空会社が、各国の行動規制緩和に合わせて、四月に入ってから相次いでマスク着用の義務を撤廃しております。

 もちろん、日本は別にマスクの着用を義務づけしているわけでは当然ございませんけれども、国によって、マスク着用を促す契機が法律上の義務か否かという違いはありますが、日本もそろそろマスクの着用の見直しの合理的必要性が出てくるんじゃないか、私はそのように考えております。

 まずは、諸外国、マスクの着用状況について、政府が確認されている内容をお伺いいたします。

島村大臣政務官 お答えいたします。

 新型コロナウイルス感染対策としましては、どのような場面でマスク着用を義務づけるかは、今委員からもお話ありましたように、諸外国においては様々でございます。

 例えば、今委員からもお話ありましたように、米国におきましては各州で対応が異なっておりまして、CDCの考え方は、感染レベルが中又は低い地域においては屋内でのマスクの着用の推奨を解除しております。ただ、スクールバス等でマスクの義務を解除しておりますが、感染のレベルの高い地域、こういう地域では屋内でのマスクの着用を引き続き推奨している状況でございます。

 また、英国、イギリスにおいては、マスク着用の義務は解除されておりますが、医療、介護等の施設では、引き続きマスクの着用が推奨されていると承知しております。

 フランスもそうですし、ドイツも、いわゆる医療関係施設、介護老人ホーム等ではマスクの着用がまだ義務化されている状況でございます。

 お隣の韓国においては、屋外でのマスクの着用の義務の緩和は行っておりますが、屋内ではマスクの着用はまだ義務化されていると承知をしております。

 以上です。

青山(大)委員 では、この後、一方、国内に目を向けて、現在、日本国内ではマスク着用についてどういった方針が取られているのか、改めてお伺いをいたします。

島村大臣政務官 委員も御案内のとおり、新型コロナウイルス感染症の感染経路は、飛沫やエアロゾルの吸入、接触感染等であり、三密の回避で、換気などに加えてマスクの着用が極めて重要でございます。このため、日本におきましては、国民の皆様方に、マスクの着用を含め、基本的感染対策に徹底して御協力をお願いしている状況でございます。

 専門家からは、マスクを着けずに大声で長時間会話するような感染リスクの高い場面を避けることが重要であると指摘されており、政府としましても、マスクの着用を現在も呼びかけを行っております。

 ただし、子供の着用に関しましては、特に二歳未満の乳幼児はマスク着用が推奨されず、また、二歳以上であっても就学前の子供については、本人の調子が悪かったり、持続的なマスクの着用が難しい場合は無理にマスクを着用させる必要はなく、マスクを着用する場合は保護者や周りの大人たちが子供の体調に十分注意した上で着用していただきたいと考えております。乳幼児の場合は、感染の予防は、保護者とともに、三密を避け、人との距離を確保、手洗いなどほかの感染防止策にもしっかりと取り組んでいただきたいと思っております。

 子供の健全育成の観点からも、日常生活を継続しつつ、感染拡大防止を図ることを、取組を進めてまいりたいと思っております。

 以上です。

青山(大)委員 ありがとうございます。

 大人はある意味、自分たちで判断できるわけですけれども、やはり子供ですよね。

 今政務官がおっしゃいましたけれども、私も今五歳と三歳の子供がいますけれども、親がいる前でしたら、そこで親が着けなさいとか外しなさいと言いますけれども、やはり特に学校とかそういう場面では、なかなか大人の目が届かないところもあります。特に今、これから暖かくなってくる中で、特に子供たちの運動とか体育、そういった場面については、学校の方では、幼稚園とか小中とかで、体育とか運動のときのマスクの着用についてはどういった考えなんでしょうか。

鰐淵大臣政務官 お答えいたします。

 今委員の方からも御指摘ございましたが、子供たちが長時間マスクを着用することにつきましては、特にこれからの季節は息苦しさ、また暑さを懸念する声が上がっております。このことは承知をしております。

 文部科学省では、学校における新型コロナ対策の参考資料といたしまして、衛生管理マニュアルを作成し、教育委員会等を通じて各学校に周知をしております。その中では、政府の基本的対処方針を踏まえまして、身体的距離が十分に取れないときはマスクを着用するべきと考えられるとしております。

 その一方で、このマニュアルにおきましては、十分な身体的距離が確保できる場合や体育の授業ではマスクの着用は必要でないこと、また、気温、湿度や暑さ指数が高い日には、熱中症への対応を優先させ、マスクを外すことを示しております。そして、特に、委員からも御指摘ございました幼稚園におきまして留意すべき事項といたしまして、本人の調子が悪い場合などに無理して着用させる必要はないことを記載をしております。

 感染拡大を防止し、子供たちの学びを継続していくためにも、政府の基本的対処方針を踏まえまして、学校においてマスク着用を含む基本的な感染対策を徹底することが必要であると考えており、各学校におきまして、衛生管理マニュアルで示している視点等に留意しながら、適切なマスクの着用について指導していくことが重要であると考えております。

青山(大)委員 今、体育の授業においては基本的にマスクの着用は必要ありませんとその衛生管理マニュアルに書いていますけれども、実際は、多分、全国たくさんの学校でマスクをしながら体育の授業、幼稚園でも運動がされています。

 これは私、別に現場の先生たちを責めるわけじゃないんですよ。先生たちだって、学校でクラスターとかが発生してしまったら当然大変なのも分かる。ただ、やはりそろそろ、新型コロナも三年目になってきまして、最初の、当初とはまた違うわけじゃないですか。その中で、今、せっかくそういった文科省がマニュアルを作っているのであれば、そこをしっかりと徹底してほしい。あとは、親御さんに対してもそれを徹底してほしいなと思っております。子供たちは判断できないじゃないですか。

 先ほどの、政務官おっしゃった、「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル 「学校の新しい生活様式」」のバージョン八、四十ページの記載なんですけれども、確かに、体育の授業においてはマスクの着用は必要ありませんと書いてあるんですけれども、ただし、十分な身体的距離が取れない状況で、十分な呼吸ができなくなるリスクや熱中症になるリスクがない場合にはマスクを着けましょうと書いてあるんですけれども、このただし書というのは本当に必要なのかなと思うんですよね。このただし書があることによって、当初の、マスクの着用は必要ありませんというところが消えちゃっているのかなというふうに思います。

 このただし書があるために、現場で無理な運用がなされているようにも思います。つまり、なぜ体育では不要との原則があるのかを考えることなく、指導する側が慎重を期する余り、安易にただし書を根拠に運用されているなと思われます。

 また、今年二月に、保育所に対して、政府が、可能な範囲でマスクを着けるよう一旦推奨したこともあったじゃないですか。そういうことも影響しているのかなと思います。

 やはり、幼稚園では、密の状況でないにもかかわらず、マスクを着用して運動しているケースがいまだにあり、マスクの形状や材質によっては、運動により心拍数が上がって呼吸が激しくなると、息を吸い込んだ際にマスクの布が張りつくように口の中に引き込まれ、逆に吐く息が抜けず、更に息を吸おうとすると布がもっと口内に張りついてくる。非常に危険でございます。

 通常の生活では呼吸が激しくなる状態は余りないので、どのマスクが運動時に不適切かは気づきにくく、体育の授業で呼吸が上がったときに初めて危険に直面しかねません。このとき、子供たちがパニックに陥らずにマスクを外すことを冷静に判断できればよいですが、子供、特に幼稚園児、保育園児にそれが可能なのか、懸念をいたします。

 マスク推奨という言葉を用いたり、原則で不要としながらもただし書をつける、こうした政府の姿勢が、ただし書に該当しない状況であっても、安易に体育で子供たちにマスクをさせて走らせる現状につながっているのではないでしょうか。

 私は、ただし書は削除して、体育時は不要であると明確な見解を示すべきと考えますが、どうでしょうか。

鰐淵大臣政務官 お答えいたします。

 感染拡大防止をいたしまして子供たちの学びを継続していくためには、引き続き学校におきまして基本的な感染対策を徹底することが重要であると考えております。

 その一方で、今も委員からも御指摘を様々いただきましたが、特にこれからの季節におきましては、熱中症にかかることも含めて問題がございますので、その対策は必要不可欠であると考えております。

 こういった認識の下、文科省におきましても、ホームページにQアンドAを掲載をしておりまして、熱中症などの健康被害が発生する可能性が高いと判断される場合はマスクを外す、そういったことも示しております。また、四月二十八日には、熱中症事故の防止について通知を発出をしておりまして、その趣旨も改めて周知をしているところでございます。

 文部科学省としましては、引き続き、委員の御指摘も踏まえまして、様々な機会を通じまして、教育委員会関係者や学校関係者に対しまして、熱中症対策も含めて、衛生管理マニュアル等の趣旨を丁寧にしっかりと説明をしていきたいと思っております。

青山(大)委員 是非とも、是非ともお願いいたします。

 もちろん感染対策は大事ですけれども、子供たちで重症化するリスクとか亡くなっている数が少ない中で、感染対策のマスクによって熱中症で死んでしまったなんていったら、本末転倒じゃないですか。そんなことはあってはいけないし、本当に現場の方たちも今大変なので、やはりある程度、是非文科省から、体育は要りませんよ、それぐらい言った方が私はいいとむしろ考えております。是非、周知徹底を重ねてお願いいたします。

 また、今回の質疑に当たって、関係省庁へ状況を確認した際、そういった、政府がホームページ等で、密ではないときにマスクを外して構いませんといった周知をしているとは知らずに、子供のマスク着用を、外した方がよいのではないかといった一般の方からの問合せが結構各省庁にもあるというふうにも伺いました。一律マスク着用が前提という誤解が根強く広まっているのは、やはり周知がなかなか今現在行き届いていないことの表れだと思っております。

 是非、重ねて周知を徹底してほしいと思いますし、厚生労働省の事務連絡、令和四年三月二十二日付の「保育所等における新型コロナウイルスへの対応にかかるQ&Aについて(第十四報)」の問い二十において、「一律に着用を求めたり、児童や保護者の意図に反して実質的に無理強いすることにならないようにすること。」とありますが、これが実際現場で実行されるよう、更なる具体的な通知や対策を是非考えてほしいと思っていますけれども、いかがでしょうか。

島村大臣政務官 今委員からも御質問ありましたように、厚生労働省としましては、保育所に関しましても、一律にやるのではなくて、しっかりと、先ほどお話ししましたように、お子様が、マスクをできる方に関してはしていただく。ただ、お子様の成長、発育に関して、これが被害が起きる可能性があるようでしたら、これは周りの大人たち、周りの方々がしっかりと感染予防に対して対策しますように、我々はこれを周知徹底していきたいと思っておりますので、今お話ありましたような事務連絡を出させていただいております。

 以上です。

青山(大)委員 たまたま私もこの質問を作っていたら、ニュースで、政務官がまさにちょうどタイムリーに、どこかの講演会で、マスクについて今後ちょっと見直しをしていこうという発言もございましたので、多分政務官も思っていること、私と近いのかなというふうに思っております、まさにこれから暑くなってきますし。

 あと、これもよく親御さんから聞くんですけれども、体育や登下校でマスクは外してもよいと学校の先生からも声をかけられるんですけれども、その声かけしている先生自身がマスクを外していないため、結局、子供はやはり素直なんですよね、だから外さない、外せないという声もやはり聞くんですよね。ついちょっと前は、マスクを外さないで先生が校庭二周しちゃって倒れちゃったというのも、実は私もそういう、近くの学校であったものでして、やはり大人がそういう場面場面で判断して外すということも必要だと思うんですね。

 WHOのホームページでも、三月七日の更新で、子供がスポーツするときのマスクについて、走る、跳ぶ、遊ぶなどのスポーツの活動のとき、呼吸に影響するかもしれないので、子供にマスクは必要ないと記載、英文でされています。

 政務官、多分何度も答弁されていて、また同じ答えになるかもしれませんけれども、改めて、今後どういうふうに考えているか、最後に質問させていただきます。文部科学政務官、もし何かあれば、併せて答弁を求めます。

島村大臣政務官 委員から御質問のように、我々は、マスクの着用に関しましては極めて重要であると考えております。

 専門家の方々からも、マスクをつけずに近距離で会話するような感染リスクの高い行動を避けることが重要であると指摘されており、屋外でも、人との距離が十分取れない場合には、会話を行う際にはマスクを正しく着用していただきたいと思っております。

 ただ、他方、人との距離が十分取れれば、屋外でのマスクの着用は必ずしも必要ではなく、特に、委員がおっしゃっていただきましたように、今後、夏に向けて気温、湿度が高くなるわけですから、熱中症のリスクを考えますと、屋外では、人との距離が十分である場合、具体的に申しますと、少なくとも二メートル以上の距離が確保できれば、昨年の、令和三年の六月より、厚生労働省としては、マスクを外すことを推奨させていただいております。

 今後は、この基本的感染対策も含め、感染状況がまだまだ分からないところもございますので、専門家の科学的な意見を伺いながら検討してまいりたいと思っております。

鰐淵大臣政務官 お答えいたします。

 今後のマスクの着用を含めた感染対策につきましては、その時点の感染状況や最新の科学的知見等を踏まえまして見直しをしていくことが必要であると認識をしております。

 これまでも、衛生管理マニュアルにつきましては随時見直しを行ってきておりますけれども、引き続き、厚生労働省等とも連携を取りまして、必要な対応を行ってまいりたいと考えております。

青山(大)委員 特に子供たちの体育の授業については着用する必要なしということを、改めて発信の方をお願いいたしますし、ちょっとここで無理くり大臣に聞くのも恐縮な面もあるんですけれども、やはり大臣も、四月にヨーロッパ、ベルギーに行かれたりとか、いろいろな海外の現状を目の当たりにされていますけれども、振り返って、この日本の状況、特に子供たち、幼稚園とか保育園の体育で、密でもないのに子供がマスクをして苦しそうに走っている、無邪気にやっている、こんな現状についてどう思われるでしょうか。個人的なお考えで結構ですので、お伺いいたします。

林国務大臣 厚労省や文科省から、それぞれの国の事情、あったところでございます。

 外務省としては所管外でございますが、御承知の上での御質問ということで、直近、韓国で屋外のマスクの着用の義務の緩和が行われておると聞きました。ちょうど移動中、町中を通る機会がありましたので、ずっとどうなっているかなと見ておったんですが、やはり、国民性が近いのかもしれませんが、ざっと見て、八割、九割の人はまだマスクをしながら外を歩いておられる。別にそんな混み合って物すごく人が近くにいるというわけではありませんが、長らくずっとこういう状況が続いてきて、すぐにマスクを外すということになかなか至らないのかなというふうに思って見ておったわけでございます。

 まさに、そういった意味でも、先ほど来、両省からお話がありましたように、丁寧に周知をして、先ほど委員がおっしゃっていただいたように、今からだんだん暑くなってまいりますので、逆のことが起こらないように細心の注意を払っていくということは、政府全体としても大変大事なことだというふうに考えております。

青山(大)委員 やはり子供たちは素直ですので、是非ともお願いいたします。

 次の質問に行きます。

 国際機関での日本人の登用に関してお伺いいたします。

 この前の当委員会でも、まさにUPU、万国郵便連合で国際事務局長を日本人が務めるようになったという話もございました。昨年の五月、当委員会において、ちょうど今月に投票が行われるWHO、ちょっとさっきも私もWHOの話をしましたけれども、WHOの事務局長選挙において日本人の候補者を擁立すべきじゃないかと、去年、当委員会で私も質問させていただきましたけれども、結局、現職のテドロス氏以外に候補者の届出はなかったというようなふうにも聞いております。

 今回、日本人の立候補者がいなかった理由、そして、各国からテドロス氏以外に候補者の届出がなかった要因の考察、そして、次回、二〇二七年予定の次期事務局長選挙の日本の取組や見通しについて、政府の見解をお伺いいたします。

達谷窟政府参考人 お答え申し上げます。

 今回のWHO事務局長選挙についてでございますが、諸般の状況を鑑みまして、日本政府としては候補者の擁立に至らなかったところでございますが、WHOにおいて日本がプレゼンスを発揮し、政策立案に貢献していくということは重要であると考えてございまして、次回の選挙に向けて、関係省庁とともに戦略的に取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

 なお、他国の候補者の状況でございますが、国際選挙に関する他国の対応につきまして、日本国政府としてお答えするのはなかなか難しいというところでございます。

青山(大)委員 これ、何で聞いたかというと、去年質問したときに、茂木当時の外務大臣が結構意欲的なこともおっしゃったので、そのことを聞いたわけでございますけれども、国際機関での日本人の登用は、当然、日本の存在感を示す意味でも重要であると考えます。

 大臣、これは去年も茂木大臣にも聞いたんですけれども、そういった日本人のポスト獲得の意義やそのための具体的な戦略について、やはりきっちりと考えなきゃなというふうに思っております。新しく林大臣に替わられたので、大臣の考えについて改めてお伺いいたします。

林国務大臣 国際機関の職員は、中立的な存在であることが求められる一方で、やはり日本人幹部が世界で活躍するということで、国際機関との連携がしやすくなるわけでございます。また、そうした職員は日本の顔ともなっていくことから、政府としても、国際機関のトップポストの獲得を重視をしております。

 先ほど御指摘いただいたように、今年一月に、万国郵便連合、UPUの事務局長に目時政彦氏が就任をいたしました。また、世界税関機構やアジア開発銀行などの国際機関においても日本人トップが活躍をしておるわけでございます。こうした国際機関のトップポストを獲得するためには、やはり、知識経験、また、語学力、マネジメント能力、こういったものを兼ねそろえた人材の育成が必要であると考えております。

 そういった人材が一人でも増えるように、国際機関の若手人材派遣制度であるJPO、ジュニア・プロフェッショナル・オフィサーや、将来の幹部候補になり得る中堅レベルの邦人職員の派遣、こういったことを進めております。

 引き続き、外務省としては、内閣官房と外務省が共同議長として開催しております関係省庁連絡会議、この枠組みを活用しながら、国際機関のトップポストの獲得に向けまして、中長期的に、有力な候補の裾野を広げる観点からも戦略的に取り組んでまいりたいと考えております。

青山(大)委員 ありがとうございます。

 そのためにも、先ほども質問しましたけれども、外交官の増員ですとか、特に若い人たち、どんどんどんどん学生にも外交官の魅力とかを伝える努力をこれからもよろしくお願いいたします。

 オーストラリア関係の質問、済みません、ちょっと用意したんですけれども、時間ですので、これで終了します。

 以上です。ありがとうございました。

城内委員長 次に、和田有一朗君。

和田(有)委員 今日、ほかの方も韓国とのことをお触れになられました。大臣は昨日、韓国の大統領の就任式に行っておられましたので、ちょっとそのことも、通告、僅かにしましたけれども、お聞きしたいと思うんです。

 今日は、自民党の先生からも、対韓国のことについてお聞きになりました。

 私、一点確認しておきたいことがありまして、今、日韓関係が冷え込んだ原因というのは、我々には何もない、要は韓国にあるということを、これはやはりもう一回きっちり確認しておかなきゃいけないと思うんです。国と国との約束をまず守らないということから、これはスタートをしていると思うんですね。

 そこら辺について、大臣はどのようにまずお考えか、お聞きしたいと思います。

林国務大臣 北朝鮮への対応を始め、地域の安定にとりましては、日韓、日米韓の連携は不可欠であると考えております。

 日韓関係は、旧朝鮮半島出身労働者問題や慰安婦問題などによって非常に厳しい状況にありますが、このまま放置することはできないと考えております。

 国と国との約束を守る、これはやはり国家間の関係の基本であるわけでございます。日韓関係を健全な関係に戻すべく、こうした日本の一貫した立場に基づいて、尹大統領や朴外交部長官候補を始め、新政権と緊密に意思疎通をしていく考えでございます。

和田(有)委員 一貫した立場をしっかりと言いながら、こう言いましたけれども、大体、韓国という国の政治を見ておりますと、政権の支持率が下がってくると、日本に対して、彼らが言うところの正しい歴史観を持ち出して、我々からいうとフェイクにまみれた歴史観を持ち出して、この日本をあげつらって、それで政権を浮揚しようとするようにどうしてもなってくる。今まで、大概の政権はそうなってきた。

 そういうことをしっかりと念頭、念頭に置くというのは変ですけれども、何というんでしょうね、そういう今までのことを我々は見ながら、向き合っていただきたいと思うんですね。

 今回の、これから修正を、日韓関係の在り方をいろいろと考えていく中でも、結局、七年前の日韓合意を履行する、公式合意をやはり置いて、それを出発点にしてやっていくべきだと私は思います。

 もう一回、その点について、大臣、何かお考えがあればお願いします。

林国務大臣 今委員が御指摘になったことも含めて、これまで何度も我々の立場については申し上げてきたところでございますし、先ほど申し上げたように、国と国との約束を守ることが国家間の関係の基本であるということでございます。そうした一貫した立場に基づいて、意思疎通を行っていきたいと考えております。

和田(有)委員 しっかりとお願いします。

 では、協定の方についてお聞きしたいと思います。

 ケープタウン協定でございますけれども、今まで随分議論に参加したりしてきているんですけれども、今までは、条約を締結したり、議定書を交わしたりということに至っていないのに、今になって急に締結するということになった。それはなぜかということをまずお聞きします。

赤堀政府参考人 お答えいたします。

 千九百七十七年の漁船の安全のためのトレモリノス国際条約及び同条約に関する千九百九十三年のトレモリノス議定書は、欧州諸国の主導でまとめられておりますが、アジア諸国の漁船に不利な内容であったため、我が国は締結してまいりませんでした。

 一方、漁船の国際的な安全基準の策定は、可能な限り多くの国が取り組むことが重要であることから、我が国は、アジア諸国と連携しつつ、漁船の安全のためのケープタウン協定の交渉過程において、我が国を含むアジア諸国も締結可能な内容の規定を提案し、これらの規定を本協定に盛り込むことを実現しました。これによって、我が国としても受入れ可能なものとなった次第でございます。

 本協定の交渉過程において、政府は、関係業界と相談しつつ、我が国の漁船の実態を踏まえて交渉を行うとともに、関係業界に対して本協定の国内実施に必要な措置やその影響等について十分に説明を行うことにより、本協定の締結について、関係業界の理解を得ながら調整を進めてまいりました。

 その結果、今般、本協定の実施内容の国内実施方針につき関係業界で意見の一致を見るに至り、また、本協定が近く発効要件を満たす可能性があることを踏まえて、今次国会に本協定の締結についてお諮りすることとした次第でございます。

和田(有)委員 関係業界の皆さんも納得するところまで来たから締結できるようになったんだというふうに理解をさせていただきました。

 しからば、もう一点確認したいんですけれども、漁業者の方へ、要は、関係業界といったら、漁連とかそういう皆さんだと思うんですね、私は。そういう皆さんが、これなら我々もいけるという判断で合意が、国内的な合意ができたからだと思うんですが、そういう意味で、漁業者の皆さんへの影響というのはどんなものがあるのかないのか、特に、内海の、瀬戸内海とかそういったところの漁業者の皆さんに対して影響はあるのか、そこら辺を確認したいと思います。

廣野政府参考人 お答え申し上げます。

 ケープタウン協定の規則の適用対象は、締約国が長さ又はトン数のいずれかを選択することとされております。

 我が国としては、国際総トン数三百トン以上を選択することとしておりまして、我が国漁船に当てはめますと、総トン数百八十九トン以上の漁船が対象となります。逆に言うと、それ以下の、それ未満の漁船は対象となりません。

 まず、対象となる漁船につきましては、遠洋漁業、沖合漁業を行う漁船でございまして、安全関係の設備の追加等に一定の費用負担がかかるということでございますが、関係漁業者も参加する形で検討会を十一回にわたって行いまして、国内実施による影響等について十分に説明を行ってきておりまして、理解を得ながら調整を進めてきたところでございます。

 一方で、お話にございましたシラス漁を始めとする内海の沿岸漁業で使用される漁船は、いずれも国内総トン数百八十九トン未満。例えば、兵庫県のシラス漁船でございますと、同県の許可方針により九・九トン以下となっております。同協定の規則の対象とはならないため、同協定締結による影響はないと考えてございます。

和田(有)委員 分かりました。私の地元も、漁師の皆さん、たくさんおられて、地場産業になっておりますから、安心されると思います。

 では次に、ベトナムとの共助の関係について行きたいと思うんです。

 今回、ベトナムとの共助を、条約を結ぶわけですけれども、それが、より充実した刑事共助を求めてするんだということなんですが、じゃ、これまでとは何が違うのかということをまずお伺いします。

加納政府参考人 お答え申し上げます。

 日・ベトナム間では、これまでも刑事共助を行ってきたところでございますが、お尋ねの点につきましては二つほど挙げられるかと存じます。

 まず、この条約の締結により、これまで国際礼譲に基づき実施されてきた共助が条約上の義務となることで、一方の国から請求する共助が相手国において一層確実に実施されることを確保することができることになります。

 また次に、この条約の締結により、ベトナムとの間で行うことができる共助の類型が増えることになります。

 本条約第十五条1は、証言の取得等のため、拘禁されている者の身柄を一時的に移送するという類型の共助を定めておりますが、このような共助につきましては、我が国の国際捜査共助法は、相手国との間に条約があることを前提に、一定の条件の下でこれを実施することを規定しております。

 このため、この条約を締結することで、新たに実施できることになります。

和田(有)委員 二つの大きな点があって、より充実したものになるんだ、こういうことなんですが、私、以前、台湾と司法共助はできないのかということを、実はこの外務委員会で、何回か前にお聞きしたんです。そうしたら、これが出てきまして、このことを前に聞いたときに、ICPOルート等を使ってできるだけやっているんです、できるんですというような御答弁があった。台湾とは条約は結べない、しかし、ICPOルート等を用いて、そういうやり取りをするんだと。

 そのとき、私が、ICPOに台湾は加盟していない、じゃ、どうやってするんですか、こう聞いたら、今日はそのことが分かる者が陪席しておりませんので答えられませんと終わっちゃったんです。

 じゃ、またやりましょうということだったので、今日、たまたまこういうのが出てきたのでお聞きしたいんですが、じゃ、そのとき、ICPOには未加入であるという中で、台湾とICPOルート等を使って共助をやるんですと言ったんですが、これは一体どういうことなんでしょうか。

渡邊(国)政府参考人 お答えいたします。

 警察といたしましては、ただいま委員から御指摘がございましたように、台湾との捜査協力を行う必要がある場合には、ICPOルートにより、台湾当局との間で情報や資料の交換を行っているところであります。

 これにつきましては、ICPO事務総局が加盟国と台湾との間で連絡を仲介しておりますことから、我が国といたしましても、他の加盟国と同様、ICPO事務総局を通じて、台湾との間で必要な捜査協力を実施しているところでございます。

和田(有)委員 事務総局を通して、加盟国ではないけれどもやり取りするんだというのですが、それではやはり、今、犯罪が非常に複雑化して国際化している中では、私は不十分だと思うんです。

 実際にいろんな現場の話を聞いても、実は、日本で本来捜査を進めていって、最後に親分を捕まえたいのになかなか捕まえられないとか、そういう情報が行き来、うまくいかないとかそういうのがある、そういうふうに、相手国でもそうですね、あるというふうに聞きます。

 調べてみると、これは初め、前回のときの質疑のときも、これは国として外交関係がないから条約が作れないんですというような、結局、答弁の言いぶりだったんですね。そういう表現ではありませんけれども、そういう言いぶりなんです。

 なおかつ、加えて、そのときに、国と国との条約ですからという表現を言われていて、よく今回見てみると、香港とこういった共助の条約は結んでいるんです。国ではなく、国と地域。ですから、いろんなところで、外務省のホームページを見たって、台湾は国と地域の中でちゃんと出ている、地域として。

 では、香港と条約は結べるのに、どうして台湾とは結べないんでしょうか、教えてください。

小田原副大臣 和田委員にお答え申し上げます。

 香港は、中国の一国二制度の下で、香港特別行政区基本法に基づいて、中国政府から刑事共助協定の締結権が付与されています。平成二十年の五月に我が国との間で、刑事に関する共助に関する日本国と中華人民共和国香港特別行政区との間の協定が締結されています。

 台湾については、我が国の法令上、香港のように外国政府による刑事共助協定の締結権が付与されているような場合以外には、外交関係を持たない地域との間で捜査協力等を行うことは困難であります。しかしながら、台湾との各種の実務的な協力について、引き続き、我が国の法令の範囲内で適切に対応していく考えであります。

和田(有)委員 私、今、大変、今日の質問ではないところで気づきをいただきました。

 一国二制度の中で、中華人民共和国は香港に対してその権限を付与している。しかし、台湾には付与されていない。一国二制度の中にもなければ、中華人民共和国の中にもないということです、これは。これ以上、私、今日は聞きませんよ。本当は聞く質問を作りかけていたんです。

 大臣、アメリカ合衆国は既にそういう表現をやめたんです、実を言うと。今度、次の機会にお聞きしようと思いますが、今日、私、目が覚めてしまいました、ここで。一国二制度として、北京政府は香港には付与している、台湾には付与していない。こういう前提で私たちは向き合うべきではないかなと思いますが、このことはこれ以上聞きません、私。

 次に行きますね。分かりました。でも、これは台湾とはしっかりとやるべきだと私は思います。

 そこで、もう一点、次にお聞きしたいんですが、WHOの総会にオブザーバー参加をしようと、台湾の皆さんは一生懸命、SARSのときから、いろいろな衛生管理の話も含めてやっておられます。その点について、日本は応援すべきだ。既に参議院でも決議をしました。そして、大臣も、そのことについては折に触れ答弁で述べられておられます。それについて、もう一度お聞きしたいと思います。

林国務大臣 我が国は、国際保健課題への対応に当たりましては、地理的な空白を生じさせるべきではないと一貫して主張いたしまして、台湾のWHO総会のオブザーバー参加、これを一貫して支持をしてまいりました。

 特に、今回の新型コロナのような全世界に甚大な影響を与える感染症については、台湾のようにコロナ対策で実効的な措置を取り成果を上げた地域を含めて、世界各国・地域の情報や知見が自由、透明、迅速な形で広く共有をされることが重要であると考えております。

 こうした考え方の下で、日本を含むG7各国は、昨年五月のG7外務・開発大臣会合コミュニケにおきまして、世界保健機構の諸フォーラム及び世界保健総会への台湾の意義ある参加を支持するという立場を表明をしております。

 政府としては、引き続き、WHO等の場で日本の立場を明確に主張していくとともに、台湾のWHOオブザーバー参加に関して、関係国と連携をし、WHOに働きかけてまいりたいと考えております。

和田(有)委員 しっかりと、台湾がこのWHOという国際機関の場で活動ができるように、日本政府は支援をしていただきたいと思います。

 そこで、ここからお聞きしたいのは中国の話でございます。大陸中国、中華人民共和国です。

 今年、いわゆる日中国交正常化五十周年ということになると思うんです。これについて、やはりしっかりと総括をしておかなければならないのではないか。日中国交正常化をやって何を私たちは、こういう言い方は変ですけれども、得たのか、あるいは失ったのか、そういうことについてきっちりと、私たちは立ち止まってもう一度考える必要があるのではないかと思うんです。この日中国交正常化五十年の歩み、あるいはそのことについて、まず大臣はどうお感じになっておられるのか。

 それと、あわせて、恐らく今、全然こんな話は出てきませんけれども、日中国交正常化五十年の式典なりなんなりをやるべきではないかとか、あるいは両首脳がどうこうするとか、行くとか行かないとか、そんな話が、今出てきませんけれども、ちょっと前まで出たりしていました。そこら辺についてどのようになっているのか、お考えになっているのか、お聞きしたいと思います。

林国務大臣 国交正常化以降のこの五十年の中で、日中関係におきましては、その時々の状況に応じて様々な問題があり、現在においても多くの懸案が存在をしております。

 同時に、日中関係は、一貫して、日中双方にとってのみならず地域及び国際社会の平和と繁栄にとって重要であり、主張すべきは主張し、責任ある行動を求めつつ、共通の諸課題については協力するという建設的かつ安定的な日中関係、これを双方の努力で構築していくことが重要だと考えております。

 そして、中国に対しては、我が国として様々な機会に責任ある行動を呼びかけてきております。具体的には、ロシアによるウクライナ侵略は国際秩序の根幹を揺るがす行為であり、中国を含む国際社会が結束して毅然と対応することが重要である、こういう旨説明するとともに、中国も国際社会とともにロシアに対しての軍の即時撤収、国際法の遵守を強く働きかけるよう求めてきておるところでございます。

 先ほどお尋ねのあった日中国交正常化五十周年の関連行事でございますが、現時点で何も決まっていないところでございます。

和田(有)委員 中国は今、ウクライナ問題で非常にロシアと関係を緊密にしております。それは、どこまでが正しい情報で、どうかはもちろんまだ分からない部分はいっぱいあります。しかし、多くの人々は、そして世界の目は、中国はロシアと非常に緊密である、そして、例えばロシアに対する制裁に対しても、国連の場ではっきりとした態度を出さなかったり、そういう状況があるのを見て、いかがなものかと思っている。そういう中で、日中国交正常化をお祝いする空気には我が国においてはなっていないと私は思います。そのことは理解していただきたいと思うんですね。

 それで、今までの歩みを考えたときに、ちょっとお伺いしておきたいことがあるんです。

 令和元年の十二月に外交文書が公開されております。そのときに、昭和六十三年八月に竹下総理が訪中するということに関してのくだりが出てきて、当時の中島駐中国大使というのが、訪中直前、このとき、靖国参拝というのが非常にいろいろと議論になっていたときです、靖国参拝は絶対に避けてもらいたい、こういうふうに言った。皆で渡ろう方式も不可ですよ、こういう表現をしている。これが、靖国神社に対する不参拝というのが、外交交渉上の駆け引きという以上に、外務省の幹部の皆さんの歴史認識になっていたのではないか、こう見て取れる部分がある。

 その後、二年後の湾岸戦争のときだって、実は、当時の栗山外務次官という方が、戦前の日本の、さきの大戦に関して、日本は加害国であって、中国、韓国は被害国だというふうに規定をして、歴史の教訓を生かして、過去の過ちを繰り返さない外交をすべきだ、こういうことを言ったというのが、公開された外交文書の中に、くだりがあるそうです。

 そういった流れの中で、外務省のいわゆる外交のカードとか外交の向き合い方以上に歴史認識というものが形作られて、その中で中国外交というものがなされていたのではないかと私はこの日中国交五十年の中で思うんですが、その点、いかがでしょうか。

林国務大臣 今委員が御指摘があったことを含めまして、外交記録の公開というものは、我が国政府の過去の外交活動の成果、これを歴史的な検証に委ねるということを目的としておるところでございます。

 公開した個別の記録の意義や価値の判断というものは差し控えたいと思います。

和田(有)委員 これは、学者さんが後々に何か研究して言った話ではなくて、外交というのは私たちの国益に関わる話ですから、その都度その都度、修正すべきことは修正し、そしてしっかりとした次のカードに、生み出していくということに私は尽きると思うんです。何か、大学の先生になって、そのことを研究しましょうというんじゃないんですから、当事者として、しっかりとそこら辺、向き合っていただきたいと思うんです。

 中国という国は、これは攻めていけばどこまでも行けると思えばどんどんどんどん入ってくる、そういう歴史を持っていると私は思います。これはくみしやすしと思えば、どんどん条件をつり上げていく。

 そういう中で、こういう態度で向き合ってきたから、いわゆる一般論でよく言われる歴史戦というものでも、私たちは世界中に、中国だけじゃありません、先ほど言った韓国からもフェイクニュースのようなものを、いわゆる慰安婦像というものを作るときの話でも、まき散らされてきた。これに対してしっかりと向き合う必要がある。それをやはり日中国交正常化五十年という節目に、もう一度改めて私は見詰め直していただきたいと思います。

 もう一回、大臣、そこら辺、いかがでしょうか。

林国務大臣 外交記録の公開については、先ほど述べたとおりでございます。

 我々が外交を行う上で、先輩方が築き上げてきた日本に対する信頼といったようなものを含めたこれまでの経緯というものは承知をしながら、しっかり外交を進めてまいらなければならないと思っております。

和田(有)委員 このウクライナの問題が一番大きな契機に今なっています。西側の結束、あるいはこれからの世界の秩序の在り方、こういう中で私たちがどういう立ち位置を取るのか、そして、どういう外交の向き方をするのかというのが今問われているわけですから、そういう中で対中姿勢というものをしっかりと、まあ、今回の外交の白書ですか、そこにも、書きぶりが変わってきました、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 次に移らせていただきますが、拉致の問題です。

 実はこれは、今言った対中、対朝鮮半島との関わり方の中で起こっている話というか、今日聞きたいことなんですが、いわゆる拉致問題の中で、今、日本は二つの放送を北朝鮮に向かって放送をしています、ラジオ放送をしています。そのことについてお聞きしようと思うんです。

 元々、家族会の皆さんや救う会の皆さんが組んで、「しおかぜ」というラジオ放送を始めました。北朝鮮にいる日本から連れ去られた人たちに対していろいろな情報を送りたい、例えば、お父さんやお母さんの声を、元気な声を聞かせたい、そんなところからスタートしたんですが、この「しおかぜ」という放送は民間団体がやっているわけです。こんなの民間団体がやっていたらおかしいじゃないか、国がしっかりせいと言っている中で、もう一つ放送が始まりました。国もやっています。要は、今二つの放送局から放送しているようなものなんですね、北朝鮮に向かって。

 ところが、この放送というのは、いわゆるラジオ短波放送でやるんですけれども、これの放送施設というのは一つしかないんです、日本には。KDDIが持っている八俣送信所というところの送信施設で放送するんですね。

 これが実は、もうこれからはラジオの時代じゃない、ネットだとかいう声もあるし、いろいろな合理化だとかなんとかの中で、非常にこの送信所、KDDIという民間企業の持つ送信所です、これに対するいろいろなバックアップというのがどんどん減っていって、メインは一応やはりNHKの国際放送ですから、これもどんどん今カットしていって、その中で、いっぱい放送機材があったのが減らされていったり、そういうふうなことで非常に苦境に立ち始めているんですね。

 このままいくと、この八俣送信所なるものがいつまで機能するか分からないとまで言われている。技術伝承という観点からいっても、日本のメーカーが作ったものでこの送信所の送信施設が動いているのではもうなくなり始めている。わざわざ海外に行って探してきて、何かメンテナンスしなきゃいけないぐらいの状況になっている。

 まず、拉致問題を解決していくために北朝鮮に向かって放送するということが非常に私は大事だと思うんですけれども、その中で、この八俣送信所に対するいろいろな支援、あるいはラジオ放送そのものに対する支援というものをまずどうお考えになっているのか、お聞きしようと思うんです。

 その中で、もう一つこの場で申し上げておきたいのは、この「しおかぜ」という皆さんがやっている放送を、夜中発信するんです、夜中。何でかというと、向こうの人たちはいっぱい聞いているんです。聞いているのは、変な言い方ですけれども、こっそり隠れて夜中に聞くんです。本当に聞いているんです。なぜ分かるかというと、脱北した人たちがみんな言うわけですよ、あれで聞いて、世界の正しいニュースを知ったとか、日本の現状を知ったとみんな言うんです。

 ところが、それが怖いものですから、北朝鮮は妨害電波をかけるようになった。妨害電波をかけられたら困るから、今度はもう一波と、二波出すんです、同じものを。二つの周波数で今放送しているんです。そうしたら、もう一つにもかけるわけです。ところが、政府がやっている、ふるさとの声でしたっけ、何でしたっけ、あれ。あれに関しては妨害電波が出ないんですよ。ということは、向こうの人は聞いていないか、聞いていても余り役に立っていないということなんです。

 そういうことも考えて、日本から北朝鮮に向かって、いわゆる対外宣伝ラジオをしっかりとやらなきゃいかぬと思う、それについて政府が応援しなきゃいかぬと思うんですが、いかがでしょうか。

赤池副大臣 委員の御質問に回答させていただきます。

 委員御指摘のように、北朝鮮内への情報伝達手段が限られている中で、北朝鮮にとらわれている拉致被害者等の日本人、北朝鮮市民や北朝鮮当局に対し、我が国政府や国民、さらには国際社会からのメッセージを伝達する手段として、北朝鮮向けラジオ放送は極めて効果的だというふうに認識をしております。

 このような観点から、政府といたしましては、自ら、北朝鮮向けラジオ放送「ふるさとの風」、日本語ですね、及び「日本の風」、韓国語を運営するとともに、委員御指摘の民間団体、特定失踪者問題調査会に業務委託をし、その運営する北朝鮮向けラジオ放送「しおかぜ」の中で政府のメッセージを送信をしているところであります。

 「ふるさとの風」、「日本の風」については、北朝鮮におけるこれらの番組の聴取機会を増やすべく、これまで、予算措置を講じつつ、周波数を増やし、出力を増大させ、時間枠拡大を図ってきているところであります。

 さらに、民間の「しおかぜ」についても、特定失踪者問題調査会への委託業務に関して、その放送時間や放送回数を拡大するとともに、その関連予算として、委託業務の拡大に伴い、順次予算を増大をしてきております。具体的には、平成二十九年度は一千八十七万四千円でありましたが、累次増やして、今年度、令和四年度は四千百二十九万三千円に増額をしてきているところであります。

 今後とも、北朝鮮向けラジオ放送の充実強化について、しっかり政府といたしまして精力的に取り組んでまいりたいと存じます。

和田(有)委員 できるだけ予算も増やしてきた、そして応援している、こういうことなんですが、なかなか根本的にこの「しおかぜ」の充実に、じゃ、本当につながるところまでいっているかというと、私はなかなかまだ至っていないと思うんです。

 「しおかぜ」というのは、民間の知識と感覚で放送をやっていますから、やはり向こうの人も案外聞きやすいというか、そういう部分がある。じゃ、予算だけつければいい、政府の方も予算だけつけて放送すればいいではない。それはよく分かっているんですというようなニュアンスだと私は思うんですけれども、やはりもっと柔軟に、そして予算も柔軟なつけ方をして、なおかつ、もう一つ言うと、八俣送信所の、このままいくと日本は自前で国際放送ができないような状況になりかけているところをしっかりと支えていくということが必要だし、それが拉致被害者の皆さんに、御家族の皆さんに伝わるようなやり方をやってもらいたいと思うんですが、もう一回、拉致の方から、何か思うことがあったら御答弁をお願いできますか。

赤池副大臣 お答えいたします。

 委員御指摘のとおりでありまして、その思いは共有しているものというふうに考えているところであります。

 そういう面では、予算は累次拡大してきておりますが、送信所の問題となるとこれはまた所管外ではありますが、しっかり政府全体として一つ一つ課題を克服すべく、そして本当の目的は、拉致された我が同胞を奪還する、一日も早く帰国をすることでありますから、引き続き全力で取り組んでまいりたいと存じます。

和田(有)委員 ありがとうございます。赤池さんから力強い御答弁をいただきました。

 最後に、この項で最後にお聞きしたいんですけれども、やはり日本はこういう対外発信、情報発信というものがなかなか、今までもほかの先生方もこの外務委員会でも聞かれてまいりましたけれども、弱いと思います。このまさに「しおかぜ」といったようなものは対外情報工作なんです、これははっきり言えば。いわゆる日本の対外情報工作活動の一環なんです。日本に対していい印象を持ってもらう、あるいは日本が進もうという外交の中の道しるべをつくる。

 これは、一番最初に日本がやったのは何かというと、日露戦争です。日露戦争で対外情報工作活動をやって、日本が、あれは勝ったとは言いにくい、負けなかった状況をつくるために、国内作業をやったんです、工作活動を。それの一つの形が、例えば、今で言えばラジオであったりするんだと思います。ネットだ、やれSNSだといっても、基地局が潰されたら、電気が通らなくなったら、最後はラジオなんです。あの東北の震災のときもそう、私も経験した阪神・淡路でもそう、最後はラジオなんです、やはり。

 だから、海外に対して情報宣伝工作、工作活動という言葉は今の日本国では使えないでしょうけれども、私は政治の立場だから言えると思います。情報工作活動をするためにはラジオというものが非常に大事だ、そういうことも使いながら、これからの日本のこの主権を守っていくための考えというのを、決意について、大臣にお聞きしたいと思います。

林国務大臣 政府といたしましては、我が国の政策や立場について、客観的な事実に基づく正しい認識が形成をされまして、我が国の取組が国際社会から正当な評価を受けられるように、私自身による記者会見やインタビュー等による発信、さらには在外公館を活用した発信、ソーシャルメディア等を通じたオンラインでの情報発信、様々な手段を活用して、戦略的な対外発信に取り組んできておるところでございます。

 引き続き、国際社会の正しい理解を得るべく、政府一体となって、戦略的かつ効果的な発信、これを一層強化していきたいと考えております。

和田(有)委員 政府一体となってというのならば、できたら、このラジオ短波放送に対しても、外務省からも、何らかの予算的な措置なり、いろいろな形での支援というものが私はあってもしかりだと思います。その点も、今後検討していただければと思います。

 これで終わります。

城内委員長 次に、鈴木敦君。

鈴木(敦)委員 お疲れさまです。国民民主党の鈴木でございます。

 今回も三協定をまとめて審査しておりますけれども、おおむねこの国の国益にかなう形にされていただいているというふうに評価をさせていただきたいと思います。特に、今日の質問の中でもいろいろありましたベトナムとの協定に関してもそうですし、強制労働に関しても同じことでございます。

 また、今回はケープタウン条約についてちょっとお話をさせていただきたいんですが、今回は漁船に関しての話でして、長さ若しくは総トン数という形で規定をしているんですが、船舶というのは難しいもので、船舶に対しての規定を設けようとすると、どうしても、長さか重さか若しくは航続距離でしか測ることができないんですね。

 これは、一つ問題になるのが、知床半島の遭難の件ですね。あの船も、結局、今いろいろな報道等でもありますけれども、何か、瀬戸内海用の、内水用の船だったのが、波の荒い、外洋に近いところで使われたと。いろいろありますけれども、それだけではなくて、実は、あの船にかかっていた基準というのは、港から出て二時間で帰ってこられる船に対する規定しか設けられていなかったんですね。だから、これは長さもそうですし、船の航続距離もそうですけれども、基本的に、船はそういうものでしか規定のしようがないんです。

 これは国交省にお伺いしたいんですけれども、長さだとか、あと、二時間で行って帰ってこられるということは、結局、二時間そこでぷかぷか浮いていない限り救助ができない船であるわけですから、漁船以外の船に関しても、例えば、重さだとか乗客数だとか、様々な部分で規制を設けるべきだと思いますし、大臣がそろそろ発表されると思いますけれども、その内容について御説明いただきたいと思います。

河野政府参考人 お答えします。

 船舶安全法では、気象、海象条件、陸や他船からの救助や支援の期待度を考慮して、陸岸からの距離に応じ、平水、沿海、近海及び遠洋の四つの航行区域を設けております。これらの航行区域に応じて安全基準を設定し、船舶の安全性を確保しております。

 今回事故を起こした船舶は、委員御指摘のとおり、限定された沿海区域を航行する小型旅客船に該当します。定員分の救命浮器や救命胴衣の搭載、陸上との間で常時通信できる無線設備などの搭載を義務づけております。

 事故の原因につきましては、現在、運輸安全委員会が調査を実施中と承知しておりますけれども、国土交通省としましては、二度とこのような悲惨な事故を起こさないよう、本日、第一回を開催します知床遊覧船事故対策検討委員会におきまして、設備要件を含めまして、安全対策を総合的に検討してまいります。

鈴木(敦)委員 これはこれから始まる話ですから、これ以上もう面倒なことは言いませんけれども、ここに示すだけにしますけれども、救命浮器といって、ただ浮かばせておいて、遭難した人たちがただぷかぷか浮かんでそれにつかまっていてくださいみたいなものですら、今認められているわけで、水温五度ではそんなのではもたないですから、いろいろなことで考えていただきたいと思います。

 協定本体の話をさせていただきます。

 これは本来は大臣にお伺いするつもりはありませんでした、動向についてお伺いできればよかったんですが、このトレモリノス条約についてはオーストラリアが入っておりません。署名もしていませんし、どうにもなっていません。

 これは、レクのときにどうなっていますかと言ったら、調査していないと言ったんです、オーストラリアについて。外務大臣、ちょっと御説明いただけますか。

林国務大臣 海洋の安全及び秩序を重視する我が国は、太平洋地域の主要国である豪州を含めて、できる限り多くの国が漁船の安全のためのケープタウン協定を締結し、漁船の安全に関する国際ルールの整備が進むことが重要だと認識をしております。

 豪州は、本協定の原則を支持しつつ、その締結について検討段階であるというふうに理解をしております。豪州に対しては、本協定の重要性について情報共有しながら、海洋の安全及び秩序のための協力を引き続き進めていく考えでございます。

 この調査でございますが、この協定を国会に提出するに当たって、発効要件が満たされるタイミングの把握、これを主な目的として行ったものでございます。

 このため、調査対象国については、二〇二二年十月までに本協定の締結を目指す旨の宣言に署名した国の中で本協定を締結していない国を中心に、本協定の議論への参加状況や漁業活動の状況を検討して、決定をしたところでございます。

 豪州ですが、二〇二〇年の国別の漁獲量が第五十二位であり、本協定の発効要件の対象漁船、これが大体三十隻程度というふうに把握しておりまして、調査の対象には含めなかったわけでございますが、これは必ずしも我が国が豪州を重視していないということではないわけでございます。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。

 本来、これは事務的にお答えいただければよかったことです。大臣にこんな技術的な部分をお答えいただく必要は本来なかった。そして、私も別に、オーストラリアという国、個別の国が個別の協定にどう入ってくるか入ってこないかについて、とやかく言うつもりは全くなかったんですが、ただ、一方で、オーストラリアと我が国の間では、オーストラリア沿岸地域でミナミマグロの漁獲量をめぐって長い戦いがずっとあったはずです。

 あの漁場は、七〇年代に日本人が開拓して、私財をなげうってつくったところを、排他的経済水域からも排除するような形でオーストラリアがやってきた。その当時、二・五倍、我が国はオーストラリアよりも捕っていましたけれども、今は同じ水準しか捕れなくなった。世界的にも下がっていますけれども、今は日本もオーストラリアも同じく六千トンぐらいしか捕れなくなったんです。

 それを含めても、オーストラリアと日本の間での漁業という部分には、多少のわだかまりがまだ残っているし、かつ、大臣も副大臣も政務官も、太平洋の島嶼部にこのゴールデンウィークにかけてずっと行かれていますよね。安全保障上、あの地域が重要だというのは私も分かりますし、政府もそうお考えなのは分かります。そのすぐ下の大陸に、たった三十隻しかないからということで調査をしなかったということが非常に問題だと思うんですね。

 なぜ対象が三十隻とおっしゃったかというと、これはまさに、この協定の発動要件である、二十二か国以上、そして長さ二十四メートルの船が三千六百隻以上になるまで発動できないという規定のために、数が多いところだけを積算していった結果なんですね。

 オーストラリア三十隻とおっしゃっていますけれども、多分、私は行ったことはないですけれども、あの大陸というのは沿岸部にしか町はないですよね、ほとんど。キャンベラもシドニーも海の近くですよね。漁船がないわけがない。

 何が見落とされているかというと、この三十隻というのは、この協定の中にも入っている、公海を運航する船であること、だからこそ少なくなっているんです。でも、沿岸でミナミマグロが捕れるからオーストラリアはその規定から外れているというだけなので、外務省はそういう分析をしていただければよかった。でも、そこまでやっていない、何も検討をしていないというところが私は非常に問題だと思います。

 これについては、私は、外務省の皆さんには猛省を促したいと思いますが、大臣、御所見をいただけますか。

林国務大臣 限られたリソースの中で最も有効的に何をやっていくかということは常に考えておかなければなりませんが、今委員から御指摘のあった点も含めて、戦略的に重要だと思われることについては、しっかり今後も調査等を行っていくということは大事なことだというふうに考えております。

鈴木(敦)委員 よろしくお願いします。

 全て我々国に仕える、そして国民に仕える者は、熱烈な愛国者であるべきなんです。日本の国益にかなうかどうかという判断をしていただかなければいけない。それは、条約の発効を上から下にやっていくために加盟国を積算していくことではないはずです。是非よろしくお願いします。

 次の質問に移らせていただきますが、これは厚労省に伺います。

 ゴールデンウィークに入る直前ぐらいに、我が国で海外旅行客の受入れを順次再開する、限定的に再開するというような報道がありましたけれども、今日の青山委員の質疑の中でもありましたが、マスクの着用義務がなくなっている国は結構あります。今日はアメリカと韓国の話がありましたけれども、もうスイスもシンガポールもマスクについてはかなり限定的に、緩和をされていますよね。

 そういう国々の方々が我が国に旅行でやってくるわけですが、我々は、今日ありましたけれども、義務じゃないんです、着用してくださいと言っているだけなんです。でも、着用義務があった人たちというのは、明確に、これはしなければいけなかったし、今はしなくていいですよというふうになっている。その人たちは、日本に来たって、しません。

 これはどういうふうに筋書を書いていくのか、厚労省、お願いします。

宮崎政府参考人 お答え申し上げます。

 マスクの着用に関しましては、先ほど、青山委員との質疑の中で政務官より御答弁申し上げたとおり、新型コロナウイルス感染症の感染経路は、飛沫、エアロゾルの吸入、接触感染等でございますので、感染防止のためには、三密の回避や換気などに加えまして、マスクの着用が極めて重要だと考えております。

 このため、入国される方、現在、検疫では、日本に入国する全ての方に対しまして、マスクの着用、手指消毒の徹底、三密の回避といった基本的な感染防止対策を行うように、御協力という形でお願いをしているところでございます。全ての入国者の方に対してお願いしているということでございます。

 六月以降の水際対策の具体的な在り方につきましては、外国人観光客の受入れ再開も含めまして関係省庁で検討中でございますが、検疫体制や防疫措置の実施状況等を勘案をいたしまして、新型コロナの内外の感染状況、主要国の水際対策の状況等も踏まえながら、適切に判断していくこととしております。

 また、実際入国された方に対しての国内での対応ということは、これは国籍等によって何か違いを設けるわけではございませんので、これまでも、国内にいらっしゃる外国人向けには、厚生労働省のコロナ特設ホームページあるいはSNSを通じまして、基本的な感染対策について多言語で発信をいたしまして、協力を呼びかけております。あるいは、在京の大使館とも連携して、感染対策を呼びかけるようなお願いもしているところでございます。

 引き続き、関係省庁とも連携しながら、感染対策の情報発信などを行いまして、基本的感染対策の徹底をしていただくように周知をしてまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 マスクの着用の意義については、もう三年も私もやっていますから、それなりにベテランだと思いますから、分かっていますよ。

 ただ、今、エアラインですら、マスク着用義務のないエアラインもあるんですね。フィンエアーだとか、ブリティッシュ・エアウェイズとか、あるいはヴァージンアトランティック、あの辺りはもうマスクをしなくていいんです、飛行機の中の方が換気しているからと。

 そういうことになっている人たちは、例えば、現地から、イギリスからこっちに飛んできたりとか、フィンエアーは関空に入っています、BAも羽田空港に入っていますから、直接乗ってきますよ。マスクなんか持っていないと思います。その人たちに、その場で、じゃ、言うんですか、マスクしてくださいねと。それは誰が言うんですか。明確にありますか、基準が。お願いします。

宮崎政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、今現在、検疫では、日本に入国する全ての方に対しまして、検疫法十六条の二第二項の規定による必要な協力ということで、全ての入国者に対しまして、感染防止対策に努めることということを具体的にお示しをして、協力をお願いをしているということでございます。

鈴木(敦)委員 だから、持ってこなかった人たちにどういうふうにするんですか。一便三百人以上が乗っている飛行機に着用義務がないんですよ、今。そういう人たちが入ってきたときに、マスクしてくださいねと配るんですか。誰が配るんですか。このレクのときにも、厚労省の皆さん、外国人に関しては観光庁だと言いましたよね。

 じゃ、観光庁の方に聞きます。外国人の方にどうやって働きかけをするんですか。

金子政府参考人 お答えします。

 水際対策につきましては、感染拡大防止と社会経済活動のバランスを取りながら、政府全体で段階的な緩和を進めているところでございます。現在、観光目的の入国につきましては認められておりませんけれども、今後、こうした段階的な緩和の中で、適切なタイミングで政府全体で検討されるものと承知をしております。

 観光庁といたしましては、マスクの着用を含めまして、手指消毒、三密回避など、旅行中の基本的な感染防止対策、これを国籍を問わず、これは重要でありまして、その徹底を図る必要があると考えております。今後、海外からの旅行客受入れが再開する際には、基本的な感染防止対策につきまして、どのように遵守していただくか、どのように伝達をしていくかなど、しっかり検討していく必要があるというふうに考えている次第でございます。

 引き続き、厚生労働省を始めまして、関係省庁とも相談の上、適切に対応をしてまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 結局、厚労省も観光庁も、具体的にどっちが何をやると決まっていないわけじゃないですか。誰がこの水際対策をやるのかということも決まっていないし、お願いしますとお願いをするだけなわけですよね。これは私たち一人一人もそうですけれども。

 私たち日本人は真面目だからいいですよ。でも、マスクをしない人たちに対して何も言えないということですよ。その明確な基準もないということです。どうやって水際対策なんかするんですか。もはや水際でも何でもない。だったら、我々もマスクを外しませんか。どうですか、厚労省。

宮崎政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しの答弁になりますけれども、まず、六月以降の水際対策、具体的な在り方については、先ほど観光庁からもお話ございましたけれども、関係省庁で具体的な在り方について検討中でございまして、具体的なやり方につきましては、関係省庁と連携しながら、しっかりと必要な基本的感染対策が守られるように徹底をしてまいりたいというふうに考えておりますし、今、現状では、検疫の場面におきましては、マスクの着用、手指消毒の徹底、三密の回避といった感染防止対策、具体的に明記をいたしまして協力をお願いをして、実際に御協力をいただいているというふうに考えているところでございます。

鈴木(敦)委員 関係省庁との連携とおっしゃっていますけれども、インターネットで公表されている今年三月以降の水際措置の見直しというところに、あなた方、外国人の新規入国について云々かんぬんの後に、観光目的以外の入国を認めますとかといろいろ書いているんだから、あなた方が決めるんですよ、厚労省。そこは責任逃れはできない。

 私たちも含めて、子供たちの運動も含めて、大人だって苦しいですよ。今日の委員会の中だって、たくさんの委員がマスクを外したりしているじゃないですか。大臣だって、いつも苦しそうにしている。もうそろそろ、呼吸が苦しいということについて我々も認識しなきゃいけないと思いますよ。六月から始まるとかいろいろ報道はありますけれども、その前にやっておかないと、責任を取るの取らないのという話じゃないですよ。是非これはお願いしたいと思います。

 もう時間がないので、済みません、いろいろ予定していたんですけれども、一つだけお伺いしたいので。

 大臣、パラオに行かれたと思いますので、その御報告をお願いします。

林国務大臣 私の、苦しいかどうかについて心遣いをいただきまして、ありがとうございました。元気にやっております。

 フィジーとパラオ、外務大臣としては三年ぶりに訪問をいたしまして、フィジーでバイニマラマ首相兼外相、また、太平洋諸島フォーラムというのがございまして、このプナ事務局長、パラオではウィップス大統領とそれからアイタロー国務大臣、それぞれ会談をいたしまして、大変有意義な議論を行うことができました。

 いずれの会談においても、ロシアによるウクライナ侵略によって国際社会の根幹が揺らぐ中で、基本的価値を共有する国々の結束が重要であるとの認識を共有しつつ、国際情勢、地域情勢、また二国間関係について率直な議論を行い、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた連携を確認をいたしました。また、中国とソロモン諸島との間の安全保障協力協定につきまして、この地域の安全保障環境に大きな影響を及ぼし得る問題である、そういう認識を両国と共有するとともに、引き続き、関係国で緊密に連携していくことを確認をいたしました。

 今回の訪問を通じまして、太平洋島嶼国は日本の特別な友人であるということを改めて実感をいたしました。新型コロナの影響を始め、この地域が直面する課題を太平洋島嶼国が乗り越えていけるように、引き続き、日本としてできる限りの協力を行ってまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。非常に有意義だったということで、よかったです。

 パラオは私もいつか行ってみたいなと思っておりまして、あの国は戦争のときにも大変な苦労をされた国でもありますし、今、新しい安全保障上の在り方が出てきてしまいまして、我が国としてできる範囲のことは全てやっていただきたい、このように考えております。

 本日は島嶼国についての質問を幾つか考えておりましたけれども、これは次回に回させていただきまして、今日はこれで質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

城内委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 本日の議題である三つの条約については、いずれも必要なものであり、我が党としては賛成です。

 そこで、本日は、前回の四月二十七日に続き、政府が年末までにまとめるという国家安全保障戦略など三文書の改定に向けて自民党が出した安全保障に関する提言について質問します。

 前回の質問でも指摘しましたが、自民党の提言は、敵基地攻撃能力を反撃能力と言葉だけ換えて、その保有を政府に公然と求めています。しかし、重大なことは、今進められている敵基地攻撃能力保有の検討は、安保法制施行以前に議論されたものとは異なるということであります。

 私は、一月二十六日の予算委員会でも指摘しましたが、安保法制は、存立危機事態と認定すれば、日本への武力攻撃がなくても、他国と戦争を始めた米国を支援するため、集団的自衛権の行使として武力行使ができる。

 これまでの専守防衛の原則では、日本が侵略された場合に、それを排除するための武力行使は必要最小限とされていました。侵略を日本の領土、領空、領海から排除することが武力行使の目的とされ、相手国まで攻め込むことはしない、これがこれまでの原則とされていました。

 ところが、安保法制の下で集団的自衛権の行使として自衛隊が武力行使を行った場合にはどうなるのか。相手国との戦争で米国を勝たせることが武力行使の目的になってしまうのではありませんか。外務大臣にお聞きします。

    〔委員長退席、武藤委員長代理着席〕

林国務大臣 専守防衛の原則とそれから安保法制との関係ということでございますが、専守防衛とは、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための最小限度にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいうと考えております。

 限定的な集団的自衛権の行使も含めて、憲法第九条の下で許容される武力の行使は、あくまでも武力の行使の三要件に該当する場合の自衛の措置としての武力の行使に限られており、我が国又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の発生、これが前提となっておりまして、他国を防衛すること自体を目的とするものではないわけでございます。

 このように、専守防衛は現在においても憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいうものであり、政府として、我が国の防衛の基本的な方針である専守防衛、これを維持することには変わりはないと考えております。

穀田委員 大体いつも同じ答弁をするんですけれども、安保法制の下で集団的自衛権の行使として自衛隊が武力の行使を行った場合、相手国との戦争で米国を勝たせることが武力行使の目的となるのは、この間推察される明らかなことであります。この目的が達成するまで自衛隊は武力行使を行うことになり、必要最小限という歯止めがなくなる。米国の戦争にどこまでもつき従い、武力行使を歯止めなく拡大していくことになると指摘しておきたいと思います。

 さらに、自民党の提言は、反撃能力の攻撃対象を敵基地だけに限定せず、相手国の指揮統制機能等にまで広げるよう求めています。こうなると、私が前回指摘したように、日本でいえば、防衛省や関係省庁、総理官邸に当たるようなところも攻撃対象にすることになります。

 そこで、鬼木防衛副大臣に改めて聞きます。

 これまで防衛省としては軍事上の指揮統制機能とはどのような機能と考えてきたのか、お答えください。

鬼木副大臣 防衛省として、一般的に指揮統制機能とは、軍事上のオペレーション等において、上位部隊が隷下部隊に対し指揮命令の伝達や情報共有を行うための機能であると考えております。

穀田委員 自民党の提言は、反撃能力の保有を政府に求める理由として、中国が地上発射型の中距離弾道ミサイルを約九百発保有していることなど、中国の軍事動向が安全保障上の重大な脅威となってきていると強調しています。

 しかし、実際に中国の指揮統制機能を攻撃対象にするということはどういうことか。それを示す資料があります。二〇一七年九月二十六日開催の防衛大臣直轄部隊長会同及び学校長等会議で使用された陸上幕僚監部の施策説明と題する部内資料であります。現在の山崎統幕長が陸上幕僚長だったときのもので、私の資料要求に対し防衛省が提出したものであります。

 資料は全部で二百四十二ページありますが、本日配付したのはそのうちの三枚です。資料の二枚目には、中国における二〇五〇年までの軍事戦略などに加えて、統合作戦能力の向上として、中国軍の指揮命令機能が図で示されています。これを見ると、最上位にある中央軍事委員会が発する指揮命令は軍令系統と軍政系統の二つに分かれており、軍令では、中央軍事委員会が常時統合作戦運用を担当する五つの戦区統合司令部を指揮し、軍政では、中央軍事委員会が陸海空の各軍やロケット軍、戦略支援部隊、統合後方支援部隊の各軍種を管理しているとされています。

 鬼木副大臣、この図はそういうことですよね。

    〔武藤委員長代理退席、委員長着席〕

鬼木副大臣 まず、委員御指摘の会議は、当時、直面する陸上自衛隊の重要課題等について、あくまでも陸上自衛隊の内部において認識の統一や検討の資を得るために実施したものであり、ここで使用した資料についても、陸上自衛隊の内部で検討の資とするために作成された参考資料という位置づけであることをまずは御理解いただきたいと思います。

 その上で申し上げますと、中国は、近年、建国以来最大規模とも評される軍改革に取り組んできたとされ、二〇一六年末までに、首から上と呼ばれる軍中央レベルの改革は概成したとされております。

 具体的には、従来の陸軍七大軍区が廃止され、陸海空の作戦指揮を主導的に担当する五大戦区、すなわち東部、南部、西部、北部及び中部戦区が新編されたと承知しております。また、陸海空軍のほか、ロケット軍、戦略支援部隊、聯勤保障部隊も新たに成立したとされております。

 これら一連の改革は、統合作戦遂行能力の向上とともに、平素からの軍事力整備や組織管理を含めた軍事体制の強化を図ることにより、より実戦的な軍の建設を目的としたものであると考えられており、委員御指摘の資料における記載についても、その旨を記載したものであると承知いたしております。

穀田委員 その指摘は、いわゆる防衛白書令和三年版の中身を今ずっと読んだだけなんですよ。そういうことであります。陸幕が中国側の資料を基に独自に整理した。

 だから、問題は、そこの中にありますように、二〇二一年、これは令和三年ですけれども、防衛白書にも、統合作戦能力の向上として、最高戦略レベルにおける意思決定を行うための中央軍事委員会統合作戦指揮センターが設立されたと分析しているわけであります。

 そこで、資料三枚目には、今副大臣からお話があった、五つの戦区の区割りが色分けされています。それを見たら、お分かりですね。五つの戦区の司令部は、それぞれどこに置かれていますか。

鬼木副大臣 中国政府は、御指摘の各戦区の具体的な区割りやその司令部の所在地を対外公表しているわけではありませんが、令和三年版防衛白書のお尋ねのページの図表においては、一部報道や米国防省報告書等の情報を基に、各戦区司令部の所在地を含む中国軍の配置のイメージを記載しております。

 当該図表においては、東部戦区司令部は南京、南部戦区司令部は広州、北部戦区司令部は瀋陽、中部戦区司令部は北京、西部戦区司令部は成都と記載をいたしております。

穀田委員 つまり、作戦指揮を主導的に担当する五大戦区と分析をしているというのがこの防衛白書にもあります。まさにこの戦区というのは、中国全土に配置されているということであります。

 この陸幕資料によれば、中国軍の指揮命令機能は、最上位の中央軍事委員会が中国全土に展開する戦区司令部や軍種司令部を通じて、隷下にある全国の部隊を指揮統制する統合作戦体制が取られていることであります。

 自民党の提言では、相手国の指揮統制機能等も攻撃対象にするとのことだが、先ほどの副大臣の答弁に照らせば、中国の場合、この陸幕資料にある指揮命令機能も攻撃対象から排除されないということになるのではありませんか。

鬼木副大臣 御指摘の自民党の提言については、その内容の一つ一つについて確たることをコメントする立場にはございません。

 いわゆる敵基地攻撃能力を含むあらゆる選択肢については検討中であり、現時点で内容等をお答えできる段階にはありませんが、新たな国家安全保障戦略等を策定していく過程で、憲法及び国際法の範囲内で現実的に検討してまいります。

穀田委員 先ほど副大臣は答弁の中で、防衛省としてということで、一般的に指揮統制機能とはということで、上位部隊が隷下部隊に対し指揮命令の伝達や情報共有を行うための機能だ、こうおっしゃった。とすると、今分析している中国軍の部隊はまさにそのとおりだということになるではありませんか。

 だから、論理じゃなくて、日本の自衛隊の、先ほどもお話があった指揮系統の問題からすれば同じことになりますよね、それはいいんですね。ということは、排除されないということですね。

鬼木副大臣 政府としては、従来から、誘導弾等による攻撃が行われた場合、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置を取ること、例えば、誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、憲法上、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能と考えております。

 その上で、御質問の点について一般論として申し上げれば、この昭和三十一年の政府見解における誘導弾等の基地とは、必要最小限度の措置の例示の中で述べられたものでありますから、法理上は、その対象を攻撃することが誘導弾等による攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限の措置か否かとの観点から個別具体的に判断されるということとなります。

穀田委員 そういう点でいうと、攻撃の対象から排除しないということになるわけですよ。しかも、中国の問題についてしゃべっているときに一般論でごまかしてはあきません。後半の方で言われているように、具体的な内容について今おっしゃったわけですから、結局、中国の指揮統制機能といった場合に、このことに当てはまるんじゃないかということを私は聞いているわけですよね。ですから、一般論で、法理の話をしているわけじゃないんです。中国の場合、防衛省の考える指揮統制機能は、この陸幕資料に記された指揮命令機能に当たることは明らかであります。

 内閣法制局長官を務めた阪田雅裕氏は、四月二十七日付の東京新聞で、自民党の提言が相手国の指揮統制機能等も攻撃対象に含めたことについて、「指揮命令の中枢部まで破壊することになれば、敵国を全面的に攻撃することにほぼ等しく、他国の軍隊と何が違うのか。」と指摘しています。私は全くそのとおりだと思うんですね。

 林大臣、攻撃対象を指揮統制機能等まで広げるということは、中国でいえば、この陸幕資料に記された指揮命令機能も攻撃対象にするということになるわけですよね。そうなれば、中国と全面戦争を行うことになるんじゃありませんか。

林国務大臣 誘導弾等の基地等につきましては、先ほど防衛副大臣から答弁があったとおりであります。

 いわゆる敵基地攻撃能力や、自民党提言では反撃能力とされておられるようでございますが、この内容につきまして、政府としてお答えする立場にはないわけでございます。

 政府としては、急速なスピードで変化、進化しておりますミサイル等の技術に対して、やはり国民の命や暮らしを守るために十分な備えができているのか、あらゆる選択肢を排除せずに、現実的に検討しているところでございます。

 引き続き、憲法及び国際法の範囲内で、専守防衛の考えを維持しつつ、検討してまいりたいと考えております。

穀田委員 当時から問題になったのは、基地だけの問題なんですね。今、そうじゃなくて、指揮統制機能というところまで広げるということについて、私、議論しているわけですよね。

 先週の質疑で、大臣は、自民党提言を御覧になっていないと答弁されました。今度は御覧になってその話はされたと思うんですよね。

 私は、前回、防衛省の指揮統制機能等の資料を示して、自民党の提言の指揮統制機能等の攻撃対象が、日本でいえば防衛省本省、総理官邸に当たると論理的帰結として質問しました。今回は、防衛省、陸幕の資料に基づいて、中国でいえば指揮命令機能になるんじゃないかと、前回は論理的帰結と言ったんですね、今回は事実を例示してお尋ねしているが、いかがですか。

林国務大臣 先ほど防衛副大臣から答弁がありましたように、昭和三十一年の政府答弁で、誘導弾等の基地ということについては、必要最小限度の措置、この例示の中で述べられたものでございますので、この対象を攻撃することが誘導弾などによる攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置か否か、こういう観点から個別具体的に判断されるものだと考えております。

穀田委員 その答弁は当てはまらないわけで、しかも、そのことに、もしそういう形で攻撃対象の問題について議論するとしますと、結局、事実上攻撃対象から排除しないという答弁だということになるわけなんですよね。

 要するに、誘導弾等の基地、それを、指揮統制機能があってこそ動くんだ、ここを攻撃することができるのかということを私は聞いているわけですよね。中国の場合はそうなるじゃないか、しかも、事実で、皆さんが、防衛省が出している資料でいえばこれだろう、これを攻撃することになるよねということを聞いているわけです。

 自民党の提言を受け取った岸田総理は、国民の理解があって初めて前に進めることができると述べ、丁寧な説明に努めるように求めたと言われています。林大臣も、それから鬼木副大臣も、いつも同じフレーズを繰り返すんじゃなくて、きちんと丁寧に答えるべきだと思う。

 最後に、石破茂元防衛大臣は、メディアの取材に対し、攻撃対象の範囲を拡大することは相手国との緊張を逆に高めることにもなると認めています。石破氏は、「例えば、相手の首都や政府中枢施設に対する反撃も予定するとなれば、相手が日本を攻撃する意思を強めかねないし、専守防衛の趣旨からもどんどん離れていくことになる。」と語っています。

 まさに、敵基地攻撃能力の保有は日本を軍事対軍事の危険な道に引き込むものであり、専守防衛の原則、憲法九条と絶対に相入れない、このことを改めて指摘をして、今日の質問を終わります。

城内委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

城内委員長 これより各件に対する討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、刑事に関する共助に関する日本国とベトナム社会主義共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

城内委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、強制労働の廃止に関する条約(第百五号)の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

城内委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、千九百七十七年の漁船の安全のためのトレモリノス国際条約に関する千九百九十三年のトレモリノス議定書の規定の実施に関する二千十二年のケープタウン協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

城内委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

城内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

城内委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時七分散会


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