衆議院

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第3号 令和4年10月26日(水曜日)

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令和四年十月二十六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 黄川田仁志君

   理事 小田原 潔君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 中川 郁子君 理事 西銘恒三郎君

   理事 源馬謙太郎君 理事 徳永 久志君

   理事 和田有一朗君 理事 吉田 宣弘君

      秋本 真利君    伊藤信太郎君

      上杉謙太郎君    城内  実君

      熊田 裕通君    島尻安伊子君

      新藤 義孝君    鈴木 貴子君

      鈴木 隼人君    高木  啓君

      辻  清人君    平沢 勝栄君

      青山 大人君    篠原  豪君

      松原  仁君    青柳 仁士君

      杉本 和巳君    金城 泰邦君

      鈴木  敦君    穀田 恵二君

      吉良 州司君

    …………………………………

   外務大臣         林  芳正君

   防衛副大臣        井野 俊郎君

   内閣府大臣政務官     中野 英幸君

   法務大臣政務官      高見 康裕君

   外務大臣政務官      秋本 真利君

   外務大臣政務官      高木  啓君

   外務大臣政務官      吉川ゆうみ君

   防衛大臣政務官      木村 次郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  加野 幸司君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  平井 康夫君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 宮坂 祐介君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 早川 智之君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局参事官)            新発田龍史君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 松井 信憲君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   志水 史雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       赤堀  毅君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石月 英雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岩本 桂一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房政策立案参事官)         岡野結城子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 林   誠君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    中込 正志君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            長岡 寛介君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局アフリカ部長)       齋田 伸一君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    鯰  博行君

   政府参考人

   (外務省国際協力局長)  遠藤 和也君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    安藤 俊英君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難部長)            渡邉 保範君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房施設監) 杉山 真人君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 小杉 裕一君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 安藤 敦史君

   政府参考人

   (防衛装備庁プロジェクト管理部長)        坂本 大祐君

   外務委員会専門員     大野雄一郎君

    ―――――――――――――

十月二十六日

 日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

黄川田委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長志水史雄君、大臣官房地球規模課題審議官赤堀毅君、大臣官房審議官石月英雄君、大臣官房審議官岩本桂一君、大臣官房政策立案参事官岡野結城子君、大臣官房参事官林誠君、欧州局長中込正志君、中東アフリカ局長長岡寛介君、中東アフリカ局アフリカ部長齋田伸一君、経済局長鯰博行君、国際協力局長遠藤和也君、領事局長安藤俊英君、内閣官房内閣審議官加野幸司君、内閣審議官平井康夫君、内閣府大臣官房審議官宮坂祐介君、警察庁長官官房審議官早川智之君、金融庁総合政策局参事官新発田龍史君、法務省大臣官房審議官松井信憲君、海上保安庁警備救難部長渡邉保範君、防衛省大臣官房施設監杉山真人君、大臣官房審議官小杉裕一君、防衛政策局次長安藤敦史君、防衛装備庁プロジェクト管理部長坂本大祐君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

黄川田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

黄川田委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。中川郁子君。

中川(郁)委員 自民党の中川郁子です。

 質問の機会をいただきまして、大変ありがとうございます。

 ロシアによるウクライナ侵攻から、一昨日の二十四日でちょうど八か月がたちました。冬を前に攻防が激化して緊張が続いています。

 私の地元の北海道でも、侵攻以来、宗谷海峡、津軽海峡をロシア海軍、中国海軍の艦艇が通過、また、九月には、我が国の固有の領土である北方領土で合同軍事演習ボストーク二〇二二を実施するなどがあり、北海道の住民は不安を募らせています。

 北朝鮮はミサイル発射を繰り返していますが、九月下旬以降は頻発化し、十月四日には、日本列島を横切る新型地対地中長距離弾道ミサイルによって、四千五百キロメートルラインの太平洋上の設定された目的水域を打撃させました。

 国際情勢はこのように厳しさが続いています。

 それでは、質問に入りたいというふうに思います。

 まず一番目は、北朝鮮による拉致問題についてです。

 一九七〇年から八〇年代にかけて、多くの日本人が不自然な形で行方不明となりました。日本当局による捜査、調査、証言などがあり、これらの事件の多くは北朝鮮による拉致の疑いが濃厚となりました。一九九一年以来、政府は機会あるごとに北朝鮮に対して拉致問題を提起しましたが、北朝鮮側はかたくなに否定し続けました。

 しかし、二〇〇二年、初の日朝首脳会談において、北朝鮮は長年否定していた日本人拉致を認めて謝罪し、同年十月十五日、五名の被害者の帰国が実現いたしました。二〇〇四年、第二回日朝首脳会談を経て、帰国者の家族の帰国、来日が実現したところです。同年五月には、日朝間政府合意、いわゆるストックホルム合意により、北朝鮮側が調査開始を表明、その後、日本政府担当者を平壌に派遣しています。

 ところが、二〇一六年、核実験、ミサイル発射の後、一方的に調査の打切りを宣言しました。

 五人の拉致被害者が帰国されたのが、十月十五日でちょうど二十年です。いまだ帰国できない拉致被害者の皆様方の御家族も高齢化しています。二〇二〇年には、有本恵子さんのお母様の嘉代子さんが、横田めぐみさんのお父様の滋さんが、そして、二〇二一年には田口八重子さんのお兄様の飯塚繁雄さんが御逝去されています。

 新たに拉致被害者家族会の代表になられた横田拓也さんが五月に国会に参考人としてお出ましをいただき、被害者全員の即時一括帰国を求めて証言されました。北朝鮮の食料事情は想像を絶するほど厳しいものがあると言われており、医療環境も劣悪、脆弱です。発言の自由、移動の自由を奪われ、思想の自由もなく、人質として今も必死に命をつないでいます。

 北朝鮮による拉致問題は、言うまでもなく、国家ぐるみで行われた重大な人権侵害であり、我が国に対する主権侵害、領海侵犯である重大な事案であることを忘れてはなりません。

 このような中、七回目の核実験の可能性について、去る十三日の参議院外交防衛委員会で、浜田防衛大臣も、準備を整えている可能性があると答弁され、林外務大臣も、引き続き必要な情報収集、分析に向けて全力を挙げていくと答弁されました。

 林大臣にお尋ねします。

 拉致被害者の御家族の不安は増大する一方であると思います。現在、政府は様々な外交アプローチを続けていると承知していますが、その外交交渉の状況を御家族の皆様だけにでも情報提供できないでしょうか。

林国務大臣 北朝鮮による拉致が発生して長い年月がたった今も、今、中川委員からございましたように、二〇〇二年に五名の拉致被害者の方々が帰国されて以来、一人の拉致被害者の帰国も実現していないことは痛恨の極みであります。解決を強く求める御家族の切迫感を共有いたします。

 拉致問題の解決に向けては、米国を始めとする関係国と緊密に連携しつつ、我が国自身が主体的に取り組むことが重要であります。

 これまで、岸田総理自身、条件をつけずに金正恩委員長と直接向き合う決意を述べてきております。

 我が国としても、日朝平壌宣言に基づいて、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化を目指す考えであります。

 御家族も御高齢となられる中で、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現するため、全力で果敢に取り組んでまいります。

 また、交渉の状況について明らかにするのは、今後の対応に支障を来すおそれがある点は御理解をいただいていると思いますけれども、今後とも、情報提供など、御家族の気持ちに寄り添って、丁寧な対応に努めていきたいと考えております。

中川(郁)委員 是非、丁寧な対応をよろしくお願いします。

 次に、台湾情勢について質問をさせていただきたいと思います。

 台湾有事は日本有事、すなわち日米同盟の有事でもある。今年の夏、凶弾に倒れた安倍元総理は、昨年十二月、台湾のシンクタンクが主催した会合にオンラインで講演し、強い口調でこのようにお話しになりました。その上で、台湾への武力侵攻は日本の国土に重大な危機を引き起こす、習近平主席には会談のたび、我が国の尖閣諸島を防衛する日本の意思を見誤らないように伝えてきたことを明らかにされておられました。

 二十二日に閉会した中国共産党大会で、党を率いる中央委員に習近平国家主席が選出され、党トップとして異例の三期目入りが確実となりました。また、党規約の改正案が採択され、習近平国家主席の共産党での核心的な地位、つまり、習近平主席を毛沢東以来の領袖として位置づけること、また、台湾独立に断固として反対して抑え込むことなども党規約に盛り込むことを決めました。

 一方で、台湾は十日、中華民国百十一年目、台湾にその基礎を置いて以来七十三回目の国慶節をお祝いしました。

 蔡英文総統は、そのスピーチの中で、コロナ禍にあっても台湾経済は安定した成長を遂げることができたとし、世界的な衰退の中でも成長し続けていることを強調しました。また、台湾の半導体製造についても、世界の半導体製造の鍵を解くと、経済安全保障推進の立場を明らかにしました。

 台湾海峡の平和と安定についても触れ、両岸関係の発展の基礎となるものであるが、遺憾ながら、北京当局は、軍事的威嚇、外交的圧力、貿易妨害及び中華民国、台湾の主張を排除するという試みを強めており、台湾海峡と地域の平和と安定の現状を脅かしているとしました。

 我が国の衆参両院の議員も、超党派の議員連盟である日華議員懇談会として訪台し、台北市内総統府前で横断幕を持ってパレードに参加しています。

 日本と台湾の国交断絶から五十年が経過しましたが、新型コロナ前の往来は七百八万人、そのうちの四百九十一万人が台湾から来日しています。リピーターも多いということでありますが、習近平政権が誤った行動を取らないように、同じ価値観を持つ民主主義国家が連携することが重要であると考えています。

 台湾海峡の平和と繁栄を構築するために我が国として今後どのように取り組んでいくのか、政府のお考えをお聞きいたします。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 中台関係につきましては、経済分野を中心に深い結びつきを有している一方で、その軍事バランスにつきましては、全体として中国側に有利に変化してきており、最近の動向を含めて関心を持って注視しております。

 台湾海峡の平和と安定は、日本の安全保障はもとより、国際社会の安定にとっても重要であり、台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待するというのが我が国の従来からの一貫した立場でございます。

 八月四日の排他的経済水域を含む日本近海への弾道ミサイル発射を含め、中国による一連の軍事活動につきましては、我が国の安全保障及び国民の安全に関わる重大な問題であるとともに、地域及び国際社会の平和と安定に重大な影響を与えるものと認識しております。深刻に懸念しており、中国側に対し強く非難、抗議したところでございます。

 台湾海峡の平和と安定の重要性について、引き続き中国側に直接しっかり伝えるとともに、米国を始めとします同盟国、同志国と緊密に連携しながら、各国共通の立場として明確に発信していきたいと考えております。

 今後とも、両岸関係の推移をしっかりと注視してまいります。

中川(郁)委員 次に、海洋安全保障の強化についてお尋ねをしたいというふうに思います。

 自由で開かれたインド太平洋、この我が国の外交方針を進めていくことは非常に重要であると思います。

 その要素の一つである海洋安全保障には、海洋における法とルールの支配により海洋秩序を維持するといった基本的価値観の共有、航行の自由及び海上安全を確保するため、シーレーン沿岸国の海上保安機関の能力強化という二つの柱があります。

 外務省、JICA、海上保安庁がそれぞれの分野で取り組んでいる国際協力は重要であると思います。二国間、多国間で行う各国海上保安の連携強化、海上保安能力向上のための海上保安庁モバイルコーポレーションチーム派遣や連携訓練の推進、また、プログラムによる人材育成支援、プレゼンス向上のための巡視船、航空機派遣や、海賊対処派遣船、練習船などによる戦略的寄港の推進などがあります。

 つまり、港湾の整備や巡視船の供与といったハードの協力、そして、セットで行うソフトである技術協力、その二つが車の両輪であることが重要であると思います。

 特に、それぞれの専門家の皆さんが現地に赴いて技術や経験を伝える、それだけでなく、日本人としての気持ちまでも伝える日本型アプローチは重要で、現場で共に汗をかき、時に船の上では潮をかぶりながら取り組んでいると伺っております。

 資源の少ない我が国にとって、シーレーン沿岸国の能力強化を進めることは重要であり、価値観を共有する国々との連携強化は待ったなしであると思います。海洋安全保障の強化をどのように進めていくのか、お尋ねします。

黄川田委員長 石月審議官、答弁は簡潔に願います。

石月政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、我が国は、海洋国家として、特に重要なシーレーンが位置するインド太平洋地域を中心に、海洋安全保障協力の取組を推進してきております。

 具体的には、シーレーン沿岸国に対して、巡視船の供与ですとか通信システム等の海上保安関連機材の供与、専門家派遣等による人材育成の実施、能力強化、こういったことを実施してきております。

 また、海賊対策として、アジアでは、アジア海賊対策地域協力協定に基づくアジア各国の海上保安能力強化の取組への支援、また、中東のアデン湾での海賊対処行動を始めとした海賊対策、こういったことを通じまして、日本船舶を含む海上交通の安全確保に積極的に貢献してきているところでございます。

 日本を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増している中で、我が国としては、こうした取組を引き続き継続、強化し、法の支配に基づくインド太平洋の推進、こういったことに貢献していきたいと考えているところでございます。

中川(郁)委員 ありがとうございました。

黄川田委員長 次に、吉田宣弘君。

吉田(宣)委員 おはようございます。公明党の吉田宣弘でございます。

 本日も質疑の機会を賜りましたこと、委員長を始め皆様に心から御礼を申し上げたいと思います。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 林外務大臣は、先日、普遍的価値を守り抜く覚悟、日本の平和と安全を守り抜く覚悟、そして、地球規模の課題に向き合い国際社会を主導する覚悟、これら三つの覚悟を持って、対応力の高い、低重心の姿勢で外交を展開するとお述べになられました。公明党は、この大臣の姿勢を強く支持いたします。

 通常国会冒頭にも同じ決意を示されたわけでございますが、そのときと違い、今回の決意においては、その前提として、ロシアによるウクライナ侵略、北朝鮮、中国に対する御認識をお述べになられておられます。

 私は、ここで中国に関して質問をさせていただきたいと思っております。

 林外務大臣がお述べになっておられるとおり、尖閣諸島情勢を含む東シナ海、南シナ海における力による一方的な現状変更の試み、台湾周辺での一連の軍事行動、特に、日本の排他的経済水域を含む日本近海への弾道ミサイルの着弾など、数多くの課題や懸案が存在していることは紛れもない事実だと思います。

 このような状況ではございますが、是が非でも回避されなければならない事態、それは台湾有事であろうと思います。台湾有事は絶対に起こさせてはならないと思います。

 ただし、さきの中国共産党大会において、概要、台湾について武力行使の放棄を約束せず、あらゆる必要な措置を取る、祖国の統一は必ず実現しなくてはならず、必ず実現できると習近平国家主席はお述べになられました。

 そうである以上、台湾有事への懸念を払拭することはできませんし、中国の台湾に対する動きからも目を離すことはできません。先ほど中川先生も御質問されましたけれども、台湾有事が発生すると日本にも甚大な悪影響が生じることは容易に予想ができます。繰り返しではございますが、台湾有事は起こさせてはならないと思います。外務省は、対中国外交においては、このことを一番の念頭に置いて継続し、行っていかなければならないと強く思います。

 そこで、大切なことは、常にそうであるとは思いますが、中国との対話の扉は常に開いておかなければならないということであろうと思います。

 そこで、まず、これまでの中国とどのような対話が実績として行われてきたのか、時間が限られておりますので、習近平国家主席の二期目の期間で御説明をいただきたいと思います。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘のございました習近平主席の第二期以降につきましても、中国との間で、首脳会談や外相会談を始め、様々なレベルで意思疎通を行ってきております。

 岸田政権成立直後におきましては、昨年十月に岸田総理と習近平国家主席との間の日中首脳電話会談、さらに、林大臣と王毅外交部長との間ではテレビ会談や電話会談を実施しております。このようなハイレベルでのやり取りに加えまして、事務当局間においても様々なレベルにおいて協議をしてきております。

 また、経済分野におきましても、昨年十二月に第七回になります日中CEO等サミットがオンライン形式で行われ、また、本年九月には李克強国務院総理と日本の経済界のオンラインの対話が行われるなど、交流が盛んに行われております。

 さらに、国民交流の分野におきましても、日中国交正常化五十周年の本年、百七十を超える事業が実施され、又は予定されております。

 引き続き、あらゆるレベルで中国側との対話を行っていきたいと考えております。

 以上でございます。

吉田(宣)委員 御説明ありがとうございます。

 本当に活発な対話の機会を設けていただいていることに感謝を申し上げます。引き続きお願いいたします。

 次に、多くの報道によると、今回新たになった中国共産党の最高指導部は、全員が習近平国家主席に極めて近い存在で固められたとのことでございます。としますれば、これまで以上に習国家主席の考えが色濃く中国の国家政策に反映してくることが予想されます。また、これまで以上に習近平国家主席の考えていることをより深く研究することが必要であろうと思います。

 特に、報道によると、習近平国家主席の活動報告において、マルクス主義の中国化の新境地を切り開くとの項目が新たに登場し、習主席はマルクス主義の中国化と現代化を掲げたとのことでございます。

 そこで、外務省としては、習近平国家主席のこの思想を深く研究し、更に理解をし、そして、今後どのような国家政策となって表れてくるのかについて予測する取組を間断なく行っていかなければならないと考えますけれども、外務省の受け止めをお教えください。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、中国共産党第二十回党大会の中央委員会報告におきまして、第二章として、中国化、時代化したマルクス主義という記載があると承知しております。

 政府といたしましては、諸外国の政策について情報収集し、分析していくことは重要と考えております。中国につきましても、今委員から御指摘のあった点も含めまして、関連の動向や施策をしっかりと注視、分析していきたいと考えております。

吉田(宣)委員 是非よろしくお取組をお願いしたいと思います。

 私自身の話を少し申し上げて恐縮ですけれども、マルクス主義と資本主義の思想的闘争というものは、かつての冷戦下時代、激しく活発に行われておりました。ただ、ソ連の崩壊という現象において決着がついたと私自身は甘く考えていたところを今反省しています。

 ただし、私の中でマルクス主義を全否定したことはなく、それは、マルクス自身が自分の思想を展開することにおいてその原点は何だったのかなと考えたときに、推測ではありますが、恐らく全人類の幸福の実現のために考え始めたのだろうと私は思っておりますので、それを信じておりますので、全否定はしたことはございません。

 ただ、このような習近平国家主席という中国において大きい存在がより大きくなった状況を踏まえて、習国家主席という人物を通して私はマルクス主義について改めて学び直そう、そのように思っております。

 マルクス主義を考えることは、決して資本主義をないがしろにするとかいうことではありませんで、資本主義の本質みたいなことを勉強するには私は非常にいい材料だと思っておりまして、習主席の考え方に近づくためにも、私自身、そのような研さんを積んでいきたい、そのように思っております。

 以上申し上げたような私の思いはこれはこれとして別にして、習氏の三期目の出発に当たり、林外務大臣の所感をお聞かせいただければと思います。

林国務大臣 二十二日まで、委員御案内のように中国共産党大会が開催されまして、そして、二十三日の午前にいわゆる一中全会が開催されまして、習近平氏を党総書記とする新しい指導部が選出をされたわけでございます。

 他国の政党の活動についてコメントすることは差し控えますが、その上で申し上げますと、日中関係は、様々な可能性とともに、数多くの困難な課題、懸案、こういったものにも直面しておるところでございまして、引き続き、主張すべきは主張し、責任ある行動を求めながら、諸懸案も含め、今お話がありましたように対話をしっかりと重ねて、共通の諸課題については協力するという建設的かつ安定的な日中関係を日中双方の努力で構築していく、これが重要だというふうに考えております。

吉田(宣)委員 まさに大臣がおっしゃったとおりだと思います。是非とも強い取組をお願いしたく存じます。

 今、林外務大臣から所感を御披露いただきました。この大臣の思いを受けまして、中国との対話をどのように展開していくのか、外務省の御所見をお伺いしたいと思います。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 今ほど大臣から答弁がありましたとおり、建設的かつ安定的な日中関係の実現に向けまして、大臣の御指導の下、しっかりと取り組んでまいりたい、そういうふうに考えております。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 本当にくどいようでございますけれども、台湾有事はとにかく起こさせてはならないということを強く肝に銘じていきたいと思います。

 私自身も、外務省の皆様と、いろいろと御指導もいただきながら、台湾有事を起こさせないための取組というのはいかなる方法があるのか、ただ駄目だと言うだけでは決して説得力を持つものではないわけでございますから、習近平国家主席の考え方、それは色濃く中国の様々なレベルにおいて反映し、主張されてくると思いますので、その主張というものも真正面から対峙しながらも、しっかり彼らの台湾有事、武力行使というものを止める取組というものを引き続きお願いしたく存じます。

 私からの質問は以上で終わります。ありがとうございました。

黄川田委員長 次に、松原仁君。

松原委員 質問の順番をちょっと変えて行いますので、恐縮です。

 この間の日曜日に、全拉致被害者の即時一括返還、国民大集会が開かれたわけであります。拉致問題はずっと膠着状況がどう見ても続いている、私も責任の一端を感じているわけでありますが。

 これは、一般論といいますか、当然のことですから、拉致対策本部にお伺いしたいわけでありますが、今日の拉致問題について北側と交渉は続いているのかいないのか、お伺いいたします。

平井政府参考人 お答え申し上げます。

 北朝鮮との交渉でございますが、政府の最重要課題でございまして、果断に取り組んでいるところでございます。

松原委員 最重要課題で、果断に取り組んでいると。当然そうだろうと信じているわけでありますが、この場で言えることで、特に北朝鮮との間でこういうことをやっています、そういったことについて、あればコメントしてください。

平井政府参考人 お答え申し上げます。

 岸田総理自身、条件をつけずに金正恩委員長と直接向き合う決意を表明しているところでございまして、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指していくこととしております。

 今後の交渉に影響を及ぼすおそれがあるため、詳細については明らかにできないことは御理解をいただきたいと思います。

 政府として、北朝鮮に対しては、拉致問題の解決に向けて様々な形で働きかけを行うなど、あらゆる努力を行っているところでございます。

松原委員 交渉事ですから言えない、こういうふうに言えばこの場は収まるというふうに思っているのかもしれませんが、要するに、私も反省をしているわけでありますが、二十年間膠着している、これは事実であります。

 北朝鮮側は拉致について公式には何と言っているんですか。

平井政府参考人 北朝鮮からは、拉致問題は完全に終わった問題だといった反論の記事をホームページに掲載するなど、そういった主張をしているところでございます。

松原委員 私、確かにこれは通告していないけれども、これは通告しなくたって、当然、一つの当たり前のこととして、こんなことはぱっと答えてもらわないとということですよ。これはアンダーでやっている、水面下でやっているというけれども、やっているんだったら、もうちょっと、この辺、ぱっぱっと答えられるし、本当は言いたいことはここまで来ているけれども、それは言えないけれども残念だ、そういう顔をしていないよ。

 問題は、冷静にこの議論は進めていかないと、近い将来で解決するということにはなかなか私はならぬのじゃないかというふうな大変な危惧を持っています。時間が経過をしているわけであります。

 北朝鮮は、認定被害者に関して、五人は帰した、八名死亡と言った。この八名死亡と言ったのは二十年前に言って、その後、横田さんの死亡の日にちがずれていましたとか、その後生きていることが分かって、ずれていました。横田さんの骨を、遺骨を持ってきたらインチキでしたという話をしている。

 こういった議論について、北朝鮮とはその後詰めているんですか。それとも、これはおかしい、インチキの骨だといって、投げかけて終わっているんですか。ちょっとそこを教えてほしい。

平井政府参考人 お答え申し上げます。

 北朝鮮との交渉の具体的な内容については、今後の対応に支障を及ぼすおそれがあることから、お答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。御理解をいただければと思います。

松原委員 お答えを差し控えるものと差し控えぬものがあって当然でありますが、全部お答えを差し控えるというんだったら、全然これは、国会で、ここは外務委員会ですが、拉致特等で議論する必然性すらないということになってしまうので、そこはちょっと切り分けをして、ここは交渉上どうしても秘密にしておきたいというものは、それはそれで結構ですよ、それが全体の七割も八割もあると私は思っていませんから。やはり、そこはちょっと話をしてもらわないと困ると思っております。

 北朝鮮は、八人死亡と言ってきている。八人死亡と言ってきているその死因に関して、日本側は了解をしているんですか、いないんですか。教えてください。

平井政府参考人 お答え申し上げます。

 拉致被害者の死亡についての確認は、そういった確認したという事実はございません。

松原委員 ここで時間を使ってもしようがないので。私は、建設的な議論をしようと思って、今日はこの外務委員会に立っております。

 今のままでは、なかなか拉致被害者の帰国というのは簡単ではないという認識を持っています。北側のペースでやるというのは、北側がカードを持っているんですからそういうふうなことになろうかと思っておりますが、しかし、我々のペースもきちっと中に入れなければいけないというふうに思っておりまして、この八人死亡の状況というのを日本側は恐らくそれは納得していない、横田めぐみさんにしても、ということだと思っています。

 私がある関係者に聞いたところ、関係者に御迷惑がかかるといけないので名前はつまびらかにしませんが、明確な死亡であるという証拠が出ていない限りにおいては、北朝鮮において拉致被害者は生存しているというのが基本的な議論としてあったというふうに私は認識しております。

 これは極めて重要なことでありまして、やはり横田めぐみさんに関しても、偽の遺骨を出し、偽の死亡診断書を出し、他の八名も同じであるということになれば、これは理屈からいくと全員生きているという話になるわけでありまして、死んでいるんだったら死んでいる証拠が出てくるはずでありますが、全く出てきていない。それは、様々な臆測というのがあって、生きている人間の左手を切って落としてDNAを出してくるかもしれないとかというリスクはありますけれども、しかし、現実的には、少なくとも死亡というものは、確認されていない限り、北朝鮮が死亡と言っても生きているというのが私は事実だと思っています。

 私はここで提案をしたいわけでありますが、水面下の交渉でやれば進むような環境でないことは、二十年の経過でやはり証明されていると私は思っています。だから、一方で、我々は、国連を含む国際社会に北朝鮮の拉致問題を、人権侵害ということを含めて、これをばしっと、このことについて議論しようということをやっているわけでありますが、この拉致問題に関して北朝鮮に対して、我々は、八人死亡と言われている死亡の事実が全くもって道理に合わないということに関して質問状を出して、それをやはり国際社会に、こういったことで北朝鮮の主張というのは全くうそ八百であるということを示す必要があると私は思っているんですよ。

 そういうことは目に見えてやるべき事象だと思っておりますが、これについての御所見を大臣にいただきたい。

林国務大臣 先ほど来、内閣官房の方からも答弁いたしましたように、まずは、二〇〇二年、五名の拉致被害者の方々が帰国をされて以来、一人の拉致被害者の帰国も実現していないこと、これは本当に痛恨の極みだと思っております。解決を強く求める御家族の切迫感を共有しております。

 その上で、委員からは、表でもいろいろなことができるのではないか、こういう御指摘であった、こういうふうに思っております。ここの審議も当然でございますし、本会議でのいろいろな、諸々の演説等でも、この問題について言及をしてきておるわけでございます。

 今後どういう形でやっていくかというのは、先ほど答弁がありましたように、今後の対応に支障を来すおそれがあってはならないということで、考えていかなければならないわけでございます。

 一方で、御家族の気持ちに寄り添って丁寧に対応するためには、やはり情報提供も含めてしっかりやっていく、こういうことが基本的な考え方であるべきだと思っております。

松原委員 私が言っているのは、日本は国際機関に働きかけをして、北朝鮮に対する様々な圧力を加えるということも戦略の一つで、私もそれは間違っていないというふうに思っています。であるならば、国際機関に我々が働きかけるというのは、我々の行動が国際機関に分かるような行動でなければ、日本政府、日本側、日本の、拉致された側の正当性を明確にできないということを言っているんです。

 だから、今、球はどっちにあるんだと。北朝鮮が認否に関して、本当に生きているということを言うのか、そうでないならば、こういう状況ですよということを言うのか。今の科学技術をもってすれば、いつ命を失ったかも分かると私は聞いていますから、そんなリスクのあることは北朝鮮はできないだろうと思っている。であれば、北朝鮮側に球がある形をまず国際社会に明確にする。

 だから、今言ったように、安否確認で死亡情報がうそっぱちだ、横田めぐみさんに関しては偽遺骨が来て終わっている。これを、偽遺骨が来て終わっているので我々は真相を究明したいんだ、真相を究明するために、我々は別にそのことで激高しようと思っていない、冷静な議論でやっていこうではないかと。これを打ち出すには、公に質問状で出すか、何で出すか分かりません、それを北朝鮮に出す。彼らが受取を拒否するかどうかも分からないけれども、それは国際社会が見ていますから。

 北朝鮮という国は、日本人が拉致された問題に対して、日本の政府また様々な関係者がそのことを質問状で出しているのに、それに対して明快な答弁をしていない国だ、こういうことを北朝鮮が世界に知らされることは北朝鮮にとってのデメリットだから、それは彼らにとって困るんです。水面下の必要はないと私は思っています。水面下は水面下で必要なものをやる必要がある。

 明確に表でやった方が、国際社会が、北は駄目だな、北朝鮮はもうちょっと誠実にやれよ、日本の言っていることが正しい、こういうふうなことになるという意味で、最後のいわゆる交渉というのは別かもしれないが、表立ってそういうふうなことをやっていくべきではないですかと私は言っているんです。

 大臣に御所見をお伺いしたい。

林国務大臣 表でどういうことをやるか、これは、先ほど答弁がありましたように、我々の基本的なスタンス、表に出すべきことについては出してやってきておるのは委員御承知のとおりでございます。

 その上で、表でやることと水面下でやることというのは当然リンクをしてくるわけでございますので、そういったことをしっかり考えて対応してまいらなければならないと思っております。

松原委員 私、冒頭、まず言っておかなきゃいけないのは、北朝鮮というのは本当に、人権侵害をして、国家主権を侵害し、アーミテージさんに私も十数年前に会いましたが、継続する、現在進行形のテロを行っている国家とアーミテージさんは私に言いました。そういうとんでもないことをやった国である。それは、どれほど怒っても、怒り心頭に怒っても足りないぐらいの怒りを我々は感じているということは、冒頭、当然のこととして、この場で私も自分の思いを申し上げた上で、しかし、拉致問題解決には、その怒りは怒りとして内面に抑えながら、冷静なる協議をしていかなければいけない。

 こういうことで、今、一つの、例えば死亡の、安否確認に関しての我々の態度、恐らく、国際社会や、そして北朝鮮にそういった書簡を出すということを含めて表立ってやっていないと思うので、そういったことをまずやるところからしなければ、全然何もないままにずっと時間が流れていくんじゃないかということを大変に危惧しているということをまず冒頭申し上げたい。

    〔委員長退席、西銘委員長代理着席〕

 さて、次に、北朝鮮はとんでもないということは冒頭言った上で、しかし、北朝鮮側と、私も担当大臣で二、三やり取りするときに、彼らがどういうことを言っていたか。

 たくさんあるんですが、一つは、やはり、五人を日本に帰国させたということによって、すさまじい反北朝鮮感情が大変に日本国内で沸騰したのは御存じのとおりであります。このことは、北朝鮮側から見ると、残念ながら、北側から見て成功した事例にはなっていないわけであります。

 五人帰して収まるかと思ったら、あそこまで日本の怒りが頂点に達した。それは、そもそも北朝鮮側が、同じ印影で死亡の判こを押すとか、もう全くあり得ないような、荒唐無稽な死亡の状況を説明するがゆえにそういうことが起こったわけでありますが、彼らは、したがって、帰す場合に、日本の国の、国内におけるすさまじい反北朝鮮感情が吹き荒れることは、これは何としても避けたいというのが一つの本音でありました。

 ほかにもいろいろとあるんですけれども、それはここでは言いません。

 私は、このことを考えたときに、あのときに、政府、小泉純一郎さん、あの政府が、最初はそれで収めようと思っていたのかもしれないけれども、政府の手に負えないぐらいの日本人の国民の感情の強烈な爆発があった。したがって、その政府とだけやることによって、同じことが二度起きないということにはならないというふうに当然懸念を持っていると。

 冒頭申し上げたように、北朝鮮はとんでもないですよ。しかし、解決するためには冷静にやらなければいけないということを私は申し上げている。

 そこで、私は、私も担当大臣のときにもそれは考えたんですが、国には拉致対策本部という総理大臣を中心にしての組織がある、しかし、実際、拉致の世論を誘導しているのはどこか。有識者ですよ、有識者の方々が誘導している。個名を挙げるのがいいかどうか分かりませんが、ジャーナリストの櫻井よしこさん、私も大変に尊敬しておりますが、こういった方、有識者の人たち。それから、救う会、家族会、荒木さんなんかの特定失踪調査会、そして超党派の議連。安倍さんは、総理にいた頃は、超党派の議連で、我々野党まで声をかけて、官邸で協議をする舞台を彼は設定してくれていました。大変に私は大事なことだと思っています。

 つまり、与野党の議員と、家族会と、救う会と、調査会、そこに私は有識者を入れるべきだと。さらには、そこにプラスして、北朝鮮に拉致されていて、戻ってこられた方々、彼らは北朝鮮の実情を知っています。招待所の状況であるとか、また、北朝鮮においてそういった被害者がどういう扱いを受け、どうなっているのか、肌身で分かっている。そういった人たちを入れた、私は、今の拉致対策本部とは別の一つの協議体をつくるべきだと考えています。

 その協議体において、今申し上げた安否確認に関して、じゃ、これは、今生きていませんと北朝鮮が言う、しかし、我々はそれをチェックをしますよ、そして我々は、確かにそれがそうだと思われないものに関しては、きちっと生存したまま日本に帰国をさせるべきだ、こういうやり取りから始めていかなければ、いつまでたっても私はこの問題は解決できないというふうに思っております。

 ここで林大臣に聞くことではなく、それはむしろ総理大臣に聞くべき話なんですが、こういった協議体をつくって、つまり、北側の立場に立って、安心してという表現はあえて使いたくないが、北側が拉致被害者を出すことに関して抵抗感なくそれが行えるような出口論というのを私は考えていかなければいけないというふうに思っております。

 これが私の基本的な大づかみな発想で、それをしなければ、水面下でやっていますと今審議官は言っていたけれども、そういうレベルの話では、二十年間進まなかったように、これからも進まないだろうというふうに思っています。

 その上で、私は、北朝鮮に対して、やはりあめとむちというのは重要であるということは前から言っている。

 昨日も、増元さん、第二代目の拉致家族会の事務局長と会って話をしました。彼が言っているのは、何で小泉純一郎のときに五人戻ってきたのか。それは、アメリカのブッシュが悪の枢軸の一つとして北朝鮮を名指しをした。私も、これは蓮池さんか何かの著書で、北朝鮮の政府高官が脂汗を流していたというのを読んだことがありますよ。増元さんもそのことは言っていました。やはり、それだけ恐怖を感じた。つまり、圧力によって、北朝鮮は、アメリカの極めて親しい同盟国である日本に対して被害者を出すということをやってきたというのが、あのときの恐らく事実だったと私は承知をしております。

 日本政府は前から米支援とかをやっていますが、これがそういった問題を解決することにどこまで効果があったかは極めて不透明であります。だから、むちというのは極めて必要であるというふうに認識をしております。

 そこでお伺いしますが、北朝鮮サイドに対するあめとむちとしてどういうものが想起されるか、お伺いしたい。

    〔西銘委員長代理退席、委員長着席〕

林国務大臣 外交を進めるという観点から、私の方からもお答えしたいと思いますが、日朝平壌宣言に基づいて、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決して、不幸な過去を清算して、国交正常化を目指すというのが対北朝鮮外交の基本方針であります。

 その中で、どのように包括的に解決していくか。今委員はあめとむちということをおっしゃられたわけでございますけれども、これはまさに交渉の手のうちに関わることでございますので、こういうあめがあります、こういうむちがありますというのをあらかじめ明らかにするということは適当ではない、こういうふうに思っておりますが、今委員がおっしゃったように、これは当然のことだと思いますけれども、相手がどういうふうに考えているのか、相手がどういうふうにいろいろなことを受け止めるのかということを考えながら外交をやるというのは一般論として当然のことである、こういうふうに思っておりまして、そういった意味で、この諸懸案の解決のために何が最も効果的かという観点から不断に対応を検討してきておりまして、いわゆる対話一辺倒でもなく、圧力一辺倒でもないということで、この点については岸田総理も明確に述べられているところでございます。

松原委員 これも、一定の共感を日本国民に与えるためには、水面下ではなく、北朝鮮が拉致問題で我々に対して誠実に応えをしてきたというときにはこういったことがありますよということは、やはり表立ってやるべきことではないかと私は思っています、大臣は違うかもしれませんが。北朝鮮に対しても、それは当然、北朝鮮にはそういったことは伝えているのは常識であるから、しているんだろうと思いますが、やはりこれはするべきだと思っています。

 あめとしては、これはつまり北朝鮮に対する支援ということになりますが、支援としてはどういうものが日本として、経済制裁が国連において行われている中で支援が可能か。これは事務方にお伺いします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 むちという観点で、委員からは、朝鮮総連に対して一般的に破産申立てが可能なのかということをお伺いしています。

 この点につきまして、一般論といたしましては、債務者が破産法第十三条において準用する民事訴訟法第二十九条の要件を満たす法人でない社団である場合には、その債権者は破産手続開始の申立てをすることができます。この点に関する見解に変更はございません。

松原委員 じゃ、あめの部分はいいです。大臣がああいう発言をしてしまったので、事務方は答弁しづらいんだろうと思っていますが。

 あめの部分に関しては、やはり人道支援に関して、日本は北朝鮮に対して、輸出入は日本の国の制裁としては行っているけれども、そこに関しての幅があるのではないかというのが私が申し上げてきているところであります。あめがどれぐらい効果があるかというのは、実は効果がないというふうに言う人もいるわけですが、私は、一つの状況として、それは想定をしておく必要があるということを申し上げたい。

 仮に、日本が北朝鮮に人道支援で米支援をする、どの程度か分かりませんが。この場合はどういう手続になりますか。手続論で教えてください。

黄川田委員長 すぐ答えられませんか。

 では、速記を止めてください。

    〔速記中止〕

黄川田委員長 速記を起こしてください。

 岩本大臣官房審議官。

岩本政府参考人 お答えいたします。

 委員御承知のとおりでございますけれども、今、我が国としては、国連安保理決議に基づいて特定品目の輸出入禁止措置等を行っているわけですけれども、今委員が御指摘のあった食料支援、これについては、これとはちょっと別途、別のものとして検討をするかどうかということになろうと思います。

 ただ、それ以上に、食料支援を実際に行うときの詳細な手続については、申し訳ございません、ちょっと今手元に資料がございませんので、また別途御報告させていただきたいと思います。

松原委員 これは昨日レクで言ったと思うので、もうちょっと答弁してもらいたかったんですが。

 いずれにしても、その手続についてやはり調べておくということは、それは一つのサインですから、調べていますよというのを、今日はこの委員会で私が発言をしたので、こういったことも一つの手続としてしっかりと対応してもらいたい。

 先ほど、むちというか制裁強化の部分で話がありましたが、私は、今申し上げたとおり、北朝鮮の朝鮮総連に対する破産申立てというのは、これは現在はやっているんですか、いないんですか。

新発田政府参考人 お答え申し上げます。

 朝鮮総連に対して破産申立てを検討するかにつきましては、個別具体的な債権回収に関わる事柄でございまして、整理回収機構における今後の債権回収業務に支障が生じ得ることから、お答えは差し控えさせていただきたく存じます。

松原委員 それを政治的に扱うかどうかというのは政府の判断でありますが、やはり、北朝鮮にとって朝鮮総連というのは極めて重要な組織であります。メンツを重んじる北朝鮮の政府にとって、朝鮮総連が存在しているというのは極めて重要なポイントでありますから、それに対しての破産手続をするであるとかというのは大変な、北朝鮮側に対しては、つまりは、ブッシュさんが悪の枢軸と言って北朝鮮政府高官に脂汗を流させたと同じぐらいの、そこまではいかないかもしれない、それは分かりません、北朝鮮の置かれた立場が。しかし、そういったインパクトを与えるものであるということを是非とも検討していただいて、そういった意味を含めて、我々の制裁の項目としてカウントをするべきだと私は明確に申し上げておきたいわけであります。

 大臣の御所見はいかがですか。

林国務大臣 大臣も経験された松原委員のいろいろなやり取りをお聞きをしておりまして、先ほども少し触れましたけれども、当然これまでもそういうことの考え方でやってまいりましたが、いろいろなあめとむち、手のうち、これは、外に出すことを控えなければならないものは多々あるとは思いますけれども、それぞれの検討に当たって、やはり、これはどういうふうに相手に受け取られるか、相手がどういうふうに思うのかということを不断に考えながら、いろいろなオプションを検討するということが大事であるということを改めて痛感させていただいておるところでございます。

松原委員 是非、担当大臣の松野官房長官とも御相談していただきたい。

 私は、ほかにも制裁を更にアップするものとしては、これは既に私が質問主意書等で答弁をもらっているわけでありますが、いわゆる朝鮮総連の全ての中央委員会委員と専従職員の再入国禁止の制裁対象を拡大するであるとか、又は、ほかのものもいろいろとあるということを申し上げておきたいわけであります。御検討をいただきたいと思っております。

 ちょっと時間が、北朝鮮以外のことも大分詰めたいと思っておりましたので、一旦、中国問題に入っていきたいというふうに思っております。

 今回の習近平さんの任期を事実上取っ払ったものは、ある種の上からのクーデターと言っていいものだろうと私は思っております。

 上からのクーデターというのは、例えば歴史的には、似たような案件かどうか分かりませんが、古代ローマのカエサルという偉大な政治指導者がいましたが、彼がコンスルをずっとやるぞ、永続的にコンスルをやるぞと言って、おまえもか、ブルータスで有名な話で、暗殺をされたわけであります。つまり、古代ローマの共和制においては、コンスルをずっとやるというのは、これはもう許し難い共和制に対する暴挙であると。

 これはそうだったのでありますが、習近平は、二期という常識的なルールを打ち破り、また、その他の年齢的なものも乗り越えて三期目に突入した。だから、ある種の上からのクーデターというふうに言って過言ではないと私は思っております。

 その上で、似ているんですよね、毛沢東さんと。毛沢東さんは、最終的に文化大革命まで敷衍をしていくわけでありますが、その前に、揚子江を泳いで渡る、大変なパフォーマンスを行ったわけであります。

 今回、実は、胡錦濤さんが、大会の途中といいますか、私がいろいろと関係者に聞きますと、外のマスコミが入った瞬間にあの場面に遭遇した、こう聞いています。つまり、これは大臣も御承知のとおりだと思いますが、中で秘密裏に様々なことが議決されて、最後に外のマスコミを入れてしゃんしゃんのところを見せるんでしょうか、その前に本来は胡錦濤さんにちょっと御退場いただこうと思っていたのではなかろうかというふうに臆測が飛んでいるわけであります。

 あの映像を我々が見ますと、本人は席を立ちたがらなかったように見える。そして、その後の歩いている姿を見れば、あの場で退席をしなければいけないほど御病状は悪化していたとは思えない。つまり、あれは、そういったある種の習近平体制が盤石であるということを見せるためのパフォーマンスであったのではないかと私は思っております。

 林大臣も大変親しくされていると私は聞いておりますが、胡春華さんが思わずこの二十五人から漏れてしまった。この二十五という数字が大体の数字なんですよ。二十四というのはちょっとおかしいのでありまして、多数決をやることも一応建前としているその合議体の中で、二十五というのが妥当な数字である。

 だから、これについてもいろいろな臆測が飛んでおります。二十五名出してきたんだけれども、そこで習近平さんが胡春華さんを外すべきだという提案をして、満場一致でそれが受け入れられたのか、若しくは、初めから胡春華さんが知らないところで二十四名を印刷をしていたのか、これは分かりません。

 こうした中国共産党の上からのクーデターが行われた。しかも、毛沢東回帰、毛沢東的な時代に回帰する、こういったイメージが非常に強いわけでありますが、鮮明であるわけでありますが、ちょっと大臣の総体としての御所見をお伺いしたい。

林国務大臣 大変興味深い御見解を賜りました。

 今、松原委員からお話のあった見解も含めまして、今回の中国共産党大会については様々な見方がある、こういうふうに承知をしております。

 他国の政党の活動につきまして、日本政府の立場としてコメントすることは差し控えなければならないと思いますが、その上で申し上げますと、今御指摘のあった点を含めて、政府として、今回の党大会の報告の中身、それからその後の党人事、こうしたものを始め、中国の政策全般についての分析、これは、我が国の対中政策の立案や実施に当たって極めて重要であると考えております。不断にこの関連の動向また施策について情報収集をし、その分析を怠らないようにしていきたいと考えております。

松原委員 時間も大分なくなってきてしまったので、簡潔に、毛沢東時代と習近平が目指す今の時代の類似点、事務的にお答えください。

岩本政府参考人 お答えいたします。

 日本政府の立場として、中国を含む他国の歴代政権、その政策を比較して論じること自体は差し控えなければならないと思っておりますが、その上で申し上げれば、今委員御指摘の点も含めて、中国の現政権が過去の政権との関係でもどういった動向にあるのかということ、これは様々分析が行われていると承知をしております。

 政府としましても、こうした分析を参考にしながら、現政権の政策全般について、しっかりと情報収集及び分析を行っていきたいと思います。

松原委員 今後の中国の出方を考える上で、毛政権のときとどういうふうな類似点があるのかを含めて、慎重に判断する必要があると思っております。

 あえて言えば、今回の習近平総書記の毛沢東主席時代との類似点、一つは個人崇拝、これは明らかにあるというふうに私は思っております。そして、毛語録というのは、あの頃は、紅衛兵というのが赤い冊子を振り回していまして、私も記憶の片隅に残っておりますが、同じように習語録なるものが恐らく作られるだろうし、今、小学校、中学校、高校で、習総書記の思想の研究というのが進んでいるということは御案内のとおりです。

 そして、思想闘争を経済活動より強調する。これは、いわゆるトウショウヘイ、李克強以来の経済開放政策を完全に転換する可能性があるというふうに私は考えております。

 これが日本にとってどういうふうなマイナスになるか、どういうふうなプラスになるか、どういう戦略を練るかというのは、これは外務省と経済産業省で話をするべき議題だと思っておりますが、国有企業に関して、習近平氏は、より強く、よりよく、より大きく後押しをしていきたい、こう言っている。また、今回の演説においても、社会主義という言葉を七十八回使っている。いわゆる思想闘争を前段に押し出していこうというのが極めて毛沢東と似ていると思っております。

 あとは、共同富裕という習近平さんの言葉が、私が言うまでもなく、毛沢東氏が一九五三年に共同富裕と言った。全く同じせりふを習近平が使っているということは喚起をしていく必要があるし、一九五六年に百家争鳴という言葉を毛沢東氏が使った。同じ言葉を習近平氏は二〇二二、今年使い始めた。全くそれは、ワーディングも含めて同じであります。

 そうした中で、実は今日、時間があればウイグル問題についても様々、マグニツキー法、人権侵害制裁法案を含めて議論を進めていきたかったのでありますが、それは次の機会として、集団指導体制も、毛沢東は事実上、劉少奇一派をたたき潰したといいますか、トウショウヘイも左遷をさせられた。今回は、その意味では、胡春華を含めて、左遷とまでは言わないけれども、降格ですよね。あり得ないことが行われた。集団指導体制が排除された。集団指導体制というのは、文化大革命の反省から私は起こったというふうに承知をしております。

 私がしゃべり続けていては質問にならないので、そこでお伺いしますが、習近平氏は、中華民族の偉大なる復興という言葉を一つのスローガンとしています。中国人民の偉大なる復興と言っていない。私、非常に気になるんですが、これはどういうふうに分析をしているのか、お伺いしたい。

岩本政府参考人 今御指摘の、中華民族の偉大なる復興、これについては、習近平総書記が最初に就任された二〇一二年に打ち出された概念だという具合に承知をしております。

 その上で、御指摘のこの中華民族の概念ですけれども、これについて明確な定義は明らかにはなっておりませんけれども、一般的には、中華人民共和国の国民、そして海外にいる華人、いわゆる中国系の人々を含む広い概念であるという具合に承知をしております。

松原委員 この中華民族の復興という言葉を使うところに、私は、ウイグル等における様々な人権侵害の発生する余地があるんだろうと思っております。

 本当は文化大革命についての評価等も聞きたいんですが、時間がありませんから、台湾問題について飛んでいきたいと思います。

 日本は、中国共産党というか中国、中華人民共和国を、中国の唯一の政府として承認をしている。この中国、中華人民共和国が台湾を不可分な領土としていることを十分理解し、尊重している。これは外務省の方にお伺いしたんです。

 つまり、最初の、唯一の合法政府であることを承認はレコグナイズ、次の、理解し尊重するはフューリー・アンダースタンド・アンド・リスペクトでありまして、そして、政府はこの中華人民共和国の立場を十分理解して、今言った、台湾が不可分の一部であるということを理解をした上で、台湾との関係は非政府間の実務交渉として維持、台湾をめぐる問題が両岸当事者間の直接の話合いを通じ平和的に解決されることを希望、この立場はよろしいですか。

岩本政府参考人 我が国の台湾に関する基本的立場につきましては、ただいま委員が御説明のあったとおり、政府としては、一九七二年の日中共同声明を踏まえて、日台関係については非政府間の実務関係として維持していくということで一貫しておりまして、この立場には何ら変更はございません。

松原委員 この両岸関係で、中国は、不可分の一部、こう言っているわけですが、これに関して、そうであるならば、日本は、平和裏の統一というのは、今回のロシアのドネツクとかあの辺がそれになるとは到底思えないのであって、台湾の政府が、選挙で選ばれた合法的な政府が、我々は中国に、一緒になりたい、こういうふうに言って中国が承認するという、これぐらいですよね。ただ、私もアンケート調査を見ますと、台湾人の自意識というのは、中国人ではなくて台湾人だという意識、プライドが今どんどん高くなっているという実態がありますから、なかなか難しい、そういう平和裏は難しい。

 軍事的に台湾を中国が武力併合しようとする場合は、これは日本としたらそれは認めない立場であるということが一点と、それからもう一点は、その場合に、台湾という国は、外形的には国家としての外形を持っているという認識を、日本の外務省は持っているだろうと私は承知をしておるんです。ということは、まさに、中国とは別のカテゴリーになるのかどうか分かりませんが、台湾が、未承認国家から、中国が武力併合に失敗すれば承認国家になることがあり得るのか、これをちょっとお伺いしたい。

黄川田委員長 岩本審議官、答弁は簡潔に願います。

岩本政府参考人 我が国としては、台湾海峡の平和と安定が重要であると考えておりまして、台湾をめぐる問題、これについては、対話により平和的に解決されることを期待するというのが従来からの一貫した立場でございます。

 その上で、委員の先ほどの御質問、一部仮定の質問になると思いますけれども、いずれにしましても、我が国の基本的立場、これは先ほど申し上げたとおり、一九七二年の日中共同声明を踏まえて、日台関係については非政府間の実務関係を維持していく、この立場で一貫しております。

松原委員 時間が参りましたので終わりますけれども、済みません、警察庁を含めて、拉致問題のいわゆる認定被害者を今増やす努力をしているのかとか、そこの担当者はどれぐらいの数がいるのかとか、また、ロシアのプーチン政権が四州を合一したあのやり方というのは、ナチス・ドイツのヒトラーがズデーテン地方を合併したときと全く類似しているのではないかとか、様々な質問をまだしたかったわけでありますが、今日は残念ながら時間が来てしまったので、その後の質問は他の機会に回していきたいと思っております。

 今日はありがとうございました。

黄川田委員長 次に、青山大人君。

青山(大)委員 それでは、早速質問をさせていただきます。

 まず、新たな国家安全保障戦略の策定について伺っていきます。

 年内に新たな国家安全保障戦略、そして防衛大綱、中期防衛力整備計画を策定するとのことで、今、様々な政府内外で議論が行われているというふうに思っていますけれども、二〇二二年の防衛白書を見ますと、ここにはしっかり、我が国の国家安全保障政策に係る主要な文書として、国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画がある、国家安全保障戦略は、外交政策及び防衛政策を中心とした国家安全保障の基本方針として、二〇一三年十二月に我が国として初めて策定されたものであると明記されております。

 一方で、二〇二二年の外交青書を見ると、国家安全保障戦略についてはほとんど明記されておりません。

 国家安全保障戦略は、我が国のおおむね今後十年間の外交の基本的な方針の基になる最上位の戦略なのかなと私は解釈をしていますが、実際のところ、外務省にとってどういった位置づけになるのか、お伺いさせていただきます。

加野政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、国家安全保障戦略の位置づけ、性質ということでございますけれども、御案内ございました現行の国家安全保障戦略は、二〇一三年十二月に我が国で初めて策定されました国家安全保障に関する基本方針ということでございます。我が国の国益を長期的な視点から見定めました上で、我が国が取るべき国家安全保障上のアプローチを示すものでございまして、政府において、より一貫性のある安全保障政策を推進することに資するものというものでございます。

 現行戦略におきましては、国際協調主義に基づく積極的平和主義を基本理念として掲げまして、その上で、米国を始めとする関係国と緊密に連携しながら、我が国の安全、アジア太平洋地域、さらには国際社会の平和と安定及び繁栄のために、これまで以上に積極的に寄与していくということを記載しているというものでございます。

青山(大)委員 ちょっと中身は置いておいて、だから、それがどういった位置づけなのかなと。いわゆる国家安全保障戦略が、国家の最上位の外交、安全保障の戦略と位置づけられて、そういった戦略の下にほかの政策との整合性を図っていくものなのかな、それとも、いろいろな、様々ないわゆる文書というのがあると思うんですけれども、そのうちのただの一つにすぎないのか、そういったことをちょっと確認したかったので、もう一回答弁をお願いいたします。

加野政府参考人 お答え申し上げます。

 国家安全保障戦略がどのような役割を果たしているかという観点からお答え申し上げたいと存じますけれども、この国家安全保障戦略というのは、我が国で初めて策定されたものでございますが、この戦略によりまして、外交政策、防衛政策を中心といたしました国家安全保障政策、これを従来よりも一層戦略的かつ体系的に実施をできるようになってきているということがございます。

 また、我が国の安全保障政策に関する透明性を高めまして、内外の理解の促進にも現実に寄与してきているというふうに私どもは考えているところでございます。

青山(大)委員 取りあえず、じゃ、私の認識のように、そういった結構最上位の戦略として位置づけられているというような認識でよろしいんですね、はい。

 そういった中で、先ほども御答弁があったように、これは二〇一三年に初めて策定されて、今回が初めてのいわゆる改定となるわけでございますけれども、二〇一三年以前は国家安全保障戦略がなかったわけでございまして、実際、じゃ、それを策定したことによって、どういったものが変わっていったのか。そして、十年前、初めての策定でしたし、当然、今回初めての改定を迎えて、改善すべき点も幾つかあるのかなと思っていますけれども、そういったことを踏まえまして、二〇一三年、平成二十五年十二月に策定された国家安全保障戦略の総括を改めてお伺いさせていただきます。

加野政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどお答え申し上げました点と一部重なりますけれども、まず、国家安全保障戦略というのは、我が国で初めて策定された国家安全保障戦略に関する基本文書であるということがございます。それまで防衛政策、外交政策、それぞれでやっておりましたのが、従来よりも戦略的かつ体系的に政府としてきちんと実行できるようになってきているということがございます。また、我が国の安全保障政策に関する透明性を高めて、理解の促進に資するという面がございました。

 ただ、その上で、御案内ございましたとおり、戦略が策定されてから既に約九年の月日が経過しているわけでございます。その間におきまして、世界のパワーバランスが変化する、あるいは我が国周辺における軍備の増強は加速している、加えまして、経済安全保障、宇宙、サイバーといった新しい脅威が増大するなど、安全保障環境には大きな変化が生じてきているわけでございます。

 こうした課題に対処すべく、政府といたしましては、本年末までに新たな国家安全保障戦略等を策定するということにしておりまして、現在議論を行っているという状況でございます。

青山(大)委員 そこで、そういう背景を基に、ちょっと大臣にお伺いしたいんですけれども、十年に一度の大きな改定の際に担当大臣の一人として携わること、これは政治家としても政治家冥利に尽きると思います、本当に、今後十年の我が国の外交、安全保障の大きな方針を作っていくわけで。

 これまでも一年間議論されて、いろいろな会議の大臣のコメントなんかも私も拝見させてもらいましたけれども、まだまだ議論は出尽くしていないと思っていますけれども、大臣に、この策定に向けてどういった考えを持っておられるのか、現時点でお伺いさせていただきます。

林国務大臣 今、青山委員からお尋ねいただいたように、国家安全保障戦略、これは外交政策と防衛政策を中心とした国家安全保障の基本方針でありまして、今お話があったように、おおむね今後十年を見据えて策定をするという大変重要な文書だと思っております。

 二〇一三年に初めての国家安全保障戦略が策定されて九年が経過をしておりますが、この間、ミサイル技術の著しい向上、それから力による一方的な現状変更の試みが深刻化していること、さらには軍事バランスの急速な変化、そして、宇宙やサイバーといった新しい領域や、さらには経済安全保障ということが出てきておりまして、我が国を取り巻く安全保障環境が一段と厳しさを増しております。こうした現実の中で、我が国が平和と繁栄を確保するために、日本の外交、安保、両面での役割を強化をしていきたいと考えております。

 そうした中で、本年末までに新たな国家安全保障戦略等を策定しまして、我が国自身の防衛力の抜本的強化、これに取り組むわけですが、それだけではなくて、日米同盟の抑止力、対処力、この強化をしっかり図ってまいりたいと思っております。

 そして、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた取組、これは関係国や地域のパートナーとも連携しながら推進していかなければならないと思っております。

 国際情勢や安全保障環境は絶えず変化をしていくものでありまして、我が国としては、その時々の情勢を適切に踏まえた外交政策を遂行していく考えです。

 その上で、国家安全保障戦略の策定については、関係閣僚間で議論が行われているところでございまして、外交政策に関する記載も含めて、内閣官房を始めとする関係省庁とともにしっかりと検討していきたいと考えております。

青山(大)委員 大臣、もちろん、今おっしゃったようなことは当然大切なんですけれども、二〇一三年、約十年前と今で大きく違った点の一つとして、やはり、我が国で急速な少子化が進んでいること、私、結構これは十年前と大きな変化だと思っているんですよね。また、この十年間で、多分、十年前に比べて、いわゆる国家公務員の方の早期退職が増えてしまったとか、そういった点も最近問題になっていると思います。

 大臣はおっしゃっていませんけれども、例えば岸田総理が、新たな国家安全保障戦略の策定のプロセスを通じて、反撃能力とかいわゆる敵基地攻撃能力の保有を含め、あらゆる選択肢を検討すると述べたりとか、防衛費を幾ら増額すべきかとかいう議論がどうしても注目されて、そういったものが報道される傾向が見受けられるんです。

 例えば私も、防衛費のNATO基準のいろいろな資料とかを拝見しますと、これは防衛省以外のいろいろな予算も含まれているわけでございますし、言うまでもなく、外交、安全保障は、我が国の国民の命と暮らしを守るには、装備だけじゃなくて、さっき大臣がおっしゃったように、当然、経済力とか人口、あらゆる能力が求められると思っていますけれども、私は、人口減少、少子高齢化が将来の日本の安全保障にとって一番の脅威かなとある意味考えております。

 だからこそ、向こう十年間の大きな方針を作るわけですから、私は、外交力と防衛力の強化のために、人への投資、これもよく総理も言いますけれども、人への投資も意識して新たな戦略に組み込んでもらえないかというふうに考えているわけでございます。

 次の質問にもかかってきますけれども、私も当委員会でも言っていますけれども、外交官の数、どうしても日本はまだまだアメリカとか、アメリカは二万八千人、中国も約九千人、イギリスも八千人強、日本の外務省は六千五百人ぐらいですね。私は、やはり安全保障を高める、外交力を高めるという意味で、今後十年間の基本方針になる国家安全保障戦略の中に、そういった人への投資、外交官の増強なども、これは戦略の一つとして明記してもいいのかなというふうに思います。

 言うまでもなく、一人前の外交官を育成するには、一朝一夕にはいきません。長い期間が必要です。外交官を魅力ある職業として、そして若い人たちが途中で辞めることがないよう、そういった仕組みづくりも含めて戦略の中に組み込むことも検討すべきかなと思いますけれども、大臣のお考えをお伺いします。

林国務大臣 今委員からお話がありましたように、外交を強力に推進するために、外交の実施体制の強化というのは不可欠であると考えております。

 外務省の定員については、これまでも重点的な措置が講じられてきておりますが、我が国を取り巻く安全保障環境、先ほど申し上げたように厳しさを増してきておりまして、外交実施体制は一層の強化が必要だと思っております。

 外交は全人格を懸けた勝負と言われることもございますが、国と国との関係も、煎じ詰めれば、究極的には人と人との関係ということになるわけでありますので、量も大事でありますが、職員一人一人の能力向上、これは極めて重要であると考え、従来から、研修の充実や専門性を考慮した人事配置等を通じて、時代の要請に応じた人材育成に努めてきております。

 国家安全保障戦略の策定に当たっても、関係閣僚間で議論を行っておりますと申し上げたところですが、今申し上げたような様々な論点と併せて、内閣官房を始めとする関係省庁とともにしっかり検討していきたいと考えております。

青山(大)委員 これは大臣のお考えで結構なんですけれども、私も一経営者として、やはり会社を強くするには、まさに社員、しっかり従業員を教育し、育てていくということが大切だと思うんですけれども、国家公務員の中でも、やはり外務省というのは、海外の駐在員も多いわけですし、ある意味ちょっとほかの省庁とはまた違うような働き方もあると思うんですけれども、大臣として、そういった本当に若い外交官を育てるに当たって、こういうことを工夫しているとか、こういう考えを持っているんだというのがあれば、ちょっと大臣のお考えをお伺いさせていただきます。

林国務大臣 たしか入省式のときだったと思いますが、特に外交官でございますから、言葉が大事であるというお話をしたときに、言葉が単に伝える手段ではなくて、伝えるべきものをしっかりと持っているということが合わさってこそ言葉の力が発揮できる、こういうようなことを申し上げた記憶がございますけれども、その伝える言葉ができなければしようがないわけですが、その両方を併せ持って外交をやるべしと。先ほど申し上げたように、全人格を懸けた勝負と外交は言われることがございますから、そういう意味のことを申し上げたわけでございまして、そういう意味で、まさに実施体制の中でも一番大事である職員一人一人の能力向上、これは不断に努力を積み重ねていかなければならないと思っております。

青山(大)委員 ありがとうございます。

 少し外務省とは外れるんですけれども、やはり若い方たちの、人への投資ということで、自衛官の方で定員及び現員の推移を見ますと、最近では充足率が九三・四%ですかね、なかなかここ数年、定員を満たしておりません。

 結構私も、地元とかで、高校とかを卒業されたお子さんを自衛隊に入隊させている親御さんたちといろいろな会話をしたりするんですけれども、やはりちょっと聞くのが、住んでいる、いわゆる隊舎というんですかね、結婚するまで住まれている、基地内にある隊舎、ここの老朽化といいますか、進んでいると。ここ数年は、もちろんコロナ対策というふうな、そこもなかなか、当然相部屋なので、なかなかちょっとそういう難しいのもあったかもしれませんけれども、やはり施設が古い。

 そこら辺の、まさに今こういう少子化の中で、当然、自衛隊からすると募集対象者の人口も少子化で減少するわけでございますし、近年自衛隊の志願者も減少しているとも言われていますし、そういった中で自衛隊に入っていただいた、まさに国のことを考えてくれるような、そういう若者を大切にしていくという意味でも、給与とか各種手当の処遇改善もそうですけれども、やはり住環境、隊舎をしっかり整備すべきかなと思っておりますけれども、事前のレクで聞いた中ですと、そういった隊舎の整備計画が策定されていないようなことを聞きました。

 今日は副大臣に来てもらっていますけれども、ここはしっかりある程度、今回、国家安全保障戦略を含めて安保三文書の改定が行われるわけですから、その中で、今後のそういった隊舎の整備計画を作って、ここの隊舎は何年後に予定ですよとか、そういったことをしっかり作ってほしいなと思いますけれども、お考えを伺います。

井野副大臣 先生の御指摘、ありがとうございます。

 我々防衛省としても、安全保障環境が急速に厳しさを増す中、防衛力の持続性、強靱性の基盤となる防衛施設の十全な機能発揮を確保することは重要であると思っております。

 その上で、御指摘のように、自衛隊員がその能力を十分に発揮し、士気高く任務を全うするためには、隊舎、庁舎などの老朽化対策を始めとした生活、勤務環境の改善を推進していくことも重要であります。

 そのため、防衛省としても、これまで、生活、勤務環境の改善の一環として、毎年度、隊舎、庁舎等の老朽化対策に取り組んできたところであり、これからも計画的に進めていく考えでございます。

 今後、やはり、御指摘のように、新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた議論が加速する中で、当然に、こういった隊舎、庁舎等の老朽化対策を含め、施設の強靱化等についてもしっかり取り組んでいくつもりでおります。

 以上であります。

青山(大)委員 若者、独身者が住まう隊舎の方を特に、是非計画的に、しっかり組んでやってほしいなというところでございます。

 またちょっと外務省の方に戻しますけれども、その前に、これは質問ではないんですけれども、年内といってももうすぐでございますけれども、そういった新たな国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画という重要な三文書の改定がございまして、閣議決定前に国会でそういった改定案を示すことはできないのか。

 これは結構、本会議とか予算委員会を見ていましても、維新の皆さんとか国民民主党の方からも、是非閣議決定前にそういったいろいろな党の考えも入れてくれないか、そんな質疑も行われておりました。やはり、外交、安全保障は世論の幅広い御理解や納得を得られなければ、岸田総理の言う国民とともにある外交、安全保障はできないと思います。

 そこで、委員長、ちょっと提案なんですけれども、是非閣議決定前に安全保障委員会との連合審査を開催するなど、そういったことができないか、ちょっと提案をさせていただきます。

黄川田委員長 理事会で協議いたします。

青山(大)委員 是非御検討のほど、お願いいたします。

 今日は国会が始まって初めての外務委員会ですけれども、ちょっと自民党さんの委員さんもなかなか席に着席されないような状況なので、本当に現下の外交、安全保障を真剣に考えているのかなと非常に私は今疑問に思っているんです。なので、改めてこういった提案もさせていただきますので、お願いいたします。

 それでは、質問に戻らせていただきます。

 これも当委員会で話をさせてもらっていますけれども、在外公館の整備方針についてちょっとお伺いさせてもらいますけれども、やはり、一番新しいものが平成二十六年のものであって、その平成二十六年に作られた整備方針、目標だった百五十大使館体制は実現しているという中で、在外公館の機能と質の両面を強化し、総合的な外交力の強化のためにも、今回、繰り返しですけれども、新たな国家安全保障戦略を作るわけですから、そういったことを踏まえまして、在外公館の新たな整備計画を策定すべきというふうに考えますけれども、お考えをお伺いいたします。

林国務大臣 外交実施体制の強化に向けましては、在外公館の新設そして人員の拡充、こうした体制の強化に努めてきております。

 令和四年度にお認めいただきました在キリバス大使館の新設、これもこれに含まれておりまして、令和四年度末までに在外公館数が二百三十一というふうになります。引き続き、体制の強化に努めてまいりたいと思っております。

 在外公館等の新設に当たりましては、従来、安全保障上の観点や戦略的対外発信、また日本企業支援といった経済上の観点、そして邦人保護、国際社会における我が国との協力強化、他の主要国の公館設置状況、相手国の在京大使館の有無等を含めて、その時々の国際情勢や各国、各地域の動きを注視しながら、二国間関係の重要性に鑑み、総合的に判断してきております。今後とも、適切に判断してまいりたいと思っております。

 在外公館の新設のみならず、適正な人員配置や在外公館の施設の整備、機能の強化といった質の向上も必要であると考えておりまして、この六月に閣議決定されました経済財政運営と改革の基本方針二〇二二、いわゆる骨太方針ですが、これにおきましても、「人的体制、財政基盤、在外公館の整備を図り、邦人保護体制等を含め外交・領事実施体制を抜本的に強化する。」こう定められております。これを踏まえて、引き続き、外交実施体制の抜本的強化に取り組み、戦略的な外交を展開していく考えでございます。

 中長期的な在外公館の整備方針については、新設の基準等については、公表済みの在外公館の整備方針から大きく変わるものではございません。

 引き続き、外交実施体制の強化に取り組んで、戦略的な外交を展開していく考えでございまして、様々な機会を捉えて、当省の取組について発信も行ってまいりたいと思っております。

青山(大)委員 これは参考人の方で結構なんですけれども、今大臣が、今年度のキリバスは今オープンに向けてやっているということですけれども、来年度、どういったものを外務省としては新たに新設なりで考えているのか、ちょっとお伺いいたします。

志水政府参考人 お答え申し上げます。

 令和五年度機構要求に関しましては、在セーシェル大使館の、現在、兼勤駐在官事務所でありますが、そこからの格上げ、それから、在ベルギー大使館と兼轄になっております北大西洋条約機構、NATO政府代表部を実館化すること、それから、在イタリア大使館の兼館、兼轄しているということですが、在ローマ国際機関政府代表部を新設すること、それから、マルタという国がございますけれども、ここは今イタリアからの兼轄となっておりますが、このマルタにおきまして兼勤駐在官事務所を新設することを要求しているところでございます。

青山(大)委員 分かりました。

 これも何度か委員会でやりましたけれども、太平洋島嶼国も、今年度、キリバスが開館するということですけれども、残りのクック諸島、ツバル、ナウルとかニウエ、もちろん邦人がほとんどいない地域ですけれども、安全保障上とか考えて、そういったものを是非検討も含めてお願いいたします。

 在外公館の関係でもう一点。現在、防衛駐在官の派遣状況が八十六大使館、六代表部とのことでございますけれども、今の国際情勢を鑑みて、防衛駐在官を今後どういうふうに派遣していくのか、もっと増やしていくのかとか含めて、その辺の考えをお伺いさせていただきます。

安藤(敦)政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさと不確実性を増す中、各国に派遣され、情報収集、自衛隊の運用の調整、防衛協力の推進などを行う防衛駐在官は、かつてないほど重要な役割を担っております。このため、今年度までの十年間、アジア、欧州、アフリカ各国への新規派遣等により、防衛駐在官二十五名を増員したところでございます。

 さらに、英国との防衛協力強化、ロシアによるウクライナ侵略の状況を踏まえまして、令和五年度予算編成過程におきましては、英国及びウクライナに追加派遣する防衛駐在官二名の増員を検討しているところでございます。

 その上で、防衛省といたしましては、防衛駐在官制度の更なる充実は不可欠と考えておりまして、厳しい行財政事情、要員の確保、養成の観点を踏まえつつ、新規派遣、兼轄等の様々な選択肢を含めまして、ニーズに応じた適切な配置を実現すべく不断に検討してまいります。

青山(大)委員 分かりました。

 在外公館関係で、これもこの前大臣が記者会見をされていましたけれども、国際的な物価高騰と最近の急速な円安の進行で、在外公館に勤務する職員の円ベースの給与、手当の価値が下がっている。急激な為替の変動に対応できる制度があるのか、制度があれば対応すべきと考えますけれども、大臣、ちょっとその辺の考えをお伺いさせていただきます。

林国務大臣 国際的な物価高騰に加えまして、最近の為替相場での急速な円安の進行の影響、これは甚大でありまして、在外職員がかかる影響を直接的に被っているわけでございます。こうした厳しい勤務環境においても在外職員がその職責に応じて能力を十分に発揮することができるように、適切な水準の手当を支給することが重要であると考えております。

 この在外職員の手当ですが、急速な円安や物価高騰の影響を反映した手当額を支給するために、本年八月に、為替変動が特に激しい公館の増額改定を行ったところであります。現下の足下の為替変動の状況を踏まえながら、今後、更なる増額改定を調整していきたいと考えております。

青山(大)委員 是非その辺はしっかり、私は手厚くすべきかなと思っていますので、大臣、先頭に立って、財務当局との交渉の方をお願いいたします。

 という中で、そういった意味でも、外交力、安全保障も含めて、在外公館の体制、私はしっかりやっていくべきだという考え方なんですけれども、ちょうど十月五日にキーウで在ウクライナ日本大使館が再開されたというふうに聞きまして、今のその体制がどうなのかなということをちょっと質問させてもらいます。

 危険な状況の中で大使館業務を再開したというようなことはもちろん分かるんですけれども、もちろん最小限の人数だということですけれども、ロシア語とかウクライナ語を理解できる人間が一人もいなかった、ある日。そんなことが外に漏れ出て報道されている。せっかくこうやって、危険な状況の中でキーウで再び再開して頑張っている中で、やはりこういうことになっちゃうと、国民の皆さんからしたら、外務省は何をやっているんだとなると思うんですよね。

 多分、皆さん、職員一人一人はそんな気持ちはないと思っていますけれども、実際、報道されているような、大使館、キーウで再開されたけれども、ロシア語とかウクライナ語を話せる人間が一人もいないような、そんなローテーションを組んでいるのか。その辺の実情をお伺いします。

 あともう一点は、ウクライナの対応については、G7と協調、合わせていくというふうにはよくおっしゃるんですけれども、アメリカとかイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、大体どこも、キーウ、四月から五月にかけて大使館を再開されていて、お隣の韓国も五月にキーウで大使館を再開させているんですけれども、日本だけが十月にまでずれ込んだといいますか、あえて遅らせたのかとか、その辺の理由が何かあれば、併せてお伺いさせていただきます。

中込政府参考人 お答えさせていただきます。

 今回の、まず大使館の再開の時期の話でございますけれども、再開に当たりましては、松田駐ウクライナ大使がキーウを訪問いたしまして、安全状況を含む現地情勢の視察、それからウクライナ政府関係者との意見交換等を行って、キーウの日本大使館の活動再開に向けた事前の調査というのを行ったところでございます。

 このような調査の結果、十分な安全対策を講じることによって、キーウにおいて大使館業務を行うことは可能と判断したことで、今回、キーウの大使館再開を決めたということでございます。

 再開の時期でございますけれども、館員の安全確保を含め、総合的な観点から慎重に検討を続けてきた結果、日本政府として今般の大使館再開は適切と判断したということでございまして、これまでの間も、大使館はございませんでしたけれども、累次にわたる首脳会談、外相会談などを通じ、ウクライナ政府との間で緊密に意思疎通を図ってきたというところでございます。

 それから、先ほど御質問いただきましたウクライナ語の職員の話でございますけれども、在ウクライナ大使館におきましてはウクライナ語を専門とする外務省職員がいないという報道、これは事実と異なっておりまして、本年二月のロシアによるウクライナ侵略以降も一貫して、大使館にはウクライナ語を専門とする職員を配置してきておるところでございますし、また、ロシア語ができる職員もおりまして、そういう職員も含めて、大使館業務を適切な形で遂行する上で必要な体制を取っているところでございます。

 外務省としましては、従来から、研修の充実、専門性を考慮した人事配置等を通じ、地域専門家の育成に努めてきており、引き続き、ウクライナ語も含めて、職員の拡充、育成に努めてまいりたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

青山(大)委員 私は報道に対して事実かどうかというのは検証できないので、もし本当にその報道と違っているのであれば、これは結構相当な、詳しく内容が書かれていますので、そこはちゃんと、じゃ、外務省としてしっかり言うべきところはちゃんと対応された方が私はいいと思いますし、逆に、もしかして確認した中で、どういうことがあるのか分かりませんけれども、しっかり、こういうふうなことがないように私は対応するべきだというふうに思います。

 あともう一点、ちょっと聞きたかったのは、今、ウクライナに在留邦人は何人ぐらいいらっしゃるのかということを、ちょっと併せて。

中込政府参考人 ウクライナに、現在、在留邦人は約五十人程度おるところでございます。

青山(大)委員 それで、ちょっとウクライナのがあって、現在、ちょうど同じ時期に、アフガニスタンのカブールにおいても最小限の体制で日本国が大使館を再開されたということですけれども、逆に、今度、このカブールに関して言うと、ほかの国もまだ余り未再開の状況の中で日本がこういうふうに再開した。別に私は、その判断についてのいい、悪いじゃないんですけれども、逆に言うと、カブールについて日本が新しく再開したというのはどういう理由があるのかなということをちょっとお伺いさせていただきます。

長岡政府参考人 お答え申し上げます。

 アフガニスタンの日本国大使館は、昨年、現地の治安状況の悪化に伴いまして、八月十五日に一時閉館した後、カタールのドーハにあります日本国大使館の中に在アフガニスタン日本国大使館の臨時事務所というものを設けて業務を行っております。

 一方、その後、アフガニスタン国内のカブール市内の状況等の変化も踏まえまして、現在、カブールにおいても、最小限の体制で、必要な大使館の業務を限定的に行っております。

 このような業務を行うに当たって、我々としては、具体的には、現地の状況に関する情報収集をしっかりやる、同時に、邦人保護の業務、さらにはタリバーンの幹部に対して様々な働きかけということを実施をしている、そういう状況でございます。

青山(大)委員 ちょっと時間がないので、最後の質問に行きます。フィリピン残留二世の無国籍問題に関してお伺いします。

 戦前、一九三〇年代後半には在フィリピン日本人の数は約二万四千人にも達したそうでございますが、太平洋戦争終結後、日本人一世は日本に強制送還され、又は戦争で命を失い、二世はフィリピン人の母とともにフィリピンに残されました。

 戦後のフィリピンにおける反日感情の中、差別や報復を恐れた残留二世は、生き延びるために日本人であることを隠した。日本名をフィリピン名に変え、また、当時は日本もフィリピンも父親の血統で国籍が決められていたため、日本人父との血縁関係を隠すために出生の証明書等を廃棄せざるを得ず、やむなく無国籍状態となった方も少なくありません。十分な教育と就業の機会を得られず、社会的、経済的にも不安定な状況に置かれ、貧困の連鎖は次世代にも及んでいます。

 その後、一九九五年の日本による残留日本人調査を皮切りに、民間支援による身元捜しは進み、二〇〇三年には、NPO法人フィリピン日系人リーガルサポートセンターが日本で設立され、日本の家庭裁判所の許可を得て新たに戸籍を作る、就籍による二世の国籍回復の取組が始まりました。現在まで、二百八十八人の残留二世が国籍を回復したとのことでございます。

 戦争の被害者である彼らは国により救済される必要があると思いますが、対象者は既に高齢化しており、時間との戦いとなっています。また、年月の経過とともに、ますます証拠が失われ、就籍許可申立ても難しくなってきています。

 そこで、伺います。

 本年よりフィリピンにおいて残留二世の調査実施を予定していると伺っていますが、そうした無国籍の残留二世の国籍回復に向けた取組の状況についてお伺いいたします。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省といたしましては、御指摘のフィリピン残留日系人の方々の高齢化が進む中で、在フィリピン大使館員立会いの下での残留日系人の方々への聞き取り調査を含め、身元確認につながる実態調査を実施してきております。

 フィリピン残留日系人の方々の一日も早い国籍回復に向けまして、当該調査の拡充を含めて、フィリピン政府と意思疎通をしながら、更なる取組を進めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

青山(大)委員 ありがとうございました。

 残留二世の方々は、複雑な思いのまま、戦後七十七年もの間、大変な御苦労をされてきました。少しでも多くの方が救われるように、引き続きお願い申し上げます。

 以上です。ありがとうございました。

黄川田委員長 次に、源馬謙太郎君。

源馬委員 立憲民主党の源馬謙太郎でございます。

 初めて外務委員にならせていただいて質問させていただくこと、ありがとうございます。

 私が申し上げるまでもありませんが、ロシアによるウクライナへの侵攻はいまだに続いております。さらには、北朝鮮による核やミサイルの問題、それから中国との関係、そして台湾有事への懸念など、日本を取り巻く環境というのは非常に緊張感を増していると思います。

 私たち野党も、外交や安全保障については決して対立をするわけではなくて、現実的な外交、安全保障政策を行っていかなくてはいけないというふうに考えておりますので、そうした観点で幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 そう言っておきながら、一番最初の質問で、大変恐縮なんですが、世界平和連合から各大臣、そして副大臣、政務官の皆様がこれまで推薦確認書を提示されたことがあるか、そして、それに署名を求められたことがあるか、さらには、署名したことがあるか、この三点についてお伺いをしたいと思います。

 議運で我が党の方から誠実、正直に答えてくださいと求めたところ、官房長官も政府としてそれを共有するというお答えでしたので、誠実かつ正直にお答えいただきたいと思います。

林国務大臣 御指摘の団体からの文書の提示は確認をされませんでした。

源馬委員 では、秋本外務大臣政務官にお願いします。

秋本大臣政務官 三点お尋ねがあったと思いますけれども、全てありません。ノーであります。

源馬委員 高木政務官、お願いします。

高木大臣政務官 御指摘の団体からの文書の提示は確認されませんでした。

源馬委員 吉川政務官、お願いいたします。

吉川大臣政務官 御指摘の団体からの文書の提示は確認されませんでした。

源馬委員 ありがとうございます。

 もう御答弁がない政務官の方は退席していただいて結構でございます。ありがとうございます。

 それでは、質問に戻りたいと思います。

 まず、中国について伺っていきたいと思います。

 共産党大会が終わりまして、新体制が発足いたしました。習近平氏の三期目が始まりまして、新体制が発足いたしました。異例の三期目ということで、これから更に強力な指導体制になるのではないかということが言われております。軍備もどんどん増強されて、経済もいいですし、体制も整い、さらに、終身政権を目指しているのではないか、こういった臆測も出ているほどでございます。

 中国は日本にとって重要な隣国ではもちろんありますが、同時に、様々な意味で脅威にもなってくる相手でもあります。この異例の三期目に突入した中国の現状をまずは大臣がどう御認識をされているのか、今後の日本との関係なんかも含めて御答弁いただきたいと思います。

林国務大臣 二十二日まで中国共産党大会が開催されまして、また、二十三日の午前にいわゆる一中全会が開催されまして、習近平氏を党総書記とする新しい指導部が選出されたと承知をしております。

 他国の政党の活動についてコメントすることは差し控えたいと思いますが、その上で申し上げますと、日中関係が様々な可能性とともに数多くの困難な課題、また懸案にも直面する中で、我が国としては、引き続き、主張すべきは主張し、責任ある行動を求めながら、諸懸案も含め対話をしっかりと重ね、共通の諸課題については協力するという建設的かつ安定的な日中関係、これを日中双方の努力で構築をしていくことが重要だというふうに考えております。

源馬委員 いろいろな表向きな発言等、いろいろなことがあると思いますが、重要な中国との関係を是非いいものにしていっていただきたいし、何をおいてもやはり我が国の国益が一番大事ですので、そうしたスタンスでの対中関係を築いていただきたいと思います。

 ちょっと配付資料の一枚目を見ていただきたいんですが、高木政務官のツイッターですね。この共産党大会についての有本香さんという方のツイートをリツイートされております。胡錦濤前国家主席が人民大会堂から連れ出される場面が世界に流された。習近平の三期目は政敵の徹底排除から始まる。今後、経済は統制されて改革開放の果実は溶け、言論と人権は一層抑圧される。日本にとっても対岸の火事ではない。逃げ遅れた日本企業からも犠牲者が出るだろう。

 このツイートを高木政務官がリツイートしているわけですが、これは高木政務官もこう思っているということでよろしいですか。

高木大臣政務官 御質問の件につきましては、私が思っているということではなくて、こういう事実があるということでリツイートをしたというまででございます。

源馬委員 じゃ、これは事実と認識されているということですね。

高木大臣政務官 この時点でのこのツイートに対して、こういうことが起こったということのリツイートでございます。

源馬委員 いやいや、先ほど政務官が、こうした事実があるということを発信するためにリツイートしたという御答弁だったと思いますが、これは事実と認識をされているということですね。徹底排除から始まるも事実、そして、今後、経済は統制されて改革開放の果実は溶け、言論と人権は一層抑圧されるというのも事実という御認識でリツイートされたんですね。

高木大臣政務官 このツイッターの件のリツイートは、私は、下の黒くなって見えていないところがあるんですが、これはたしか動画か写真だったと思うんですけれども、こういうことが起こったということを重要だと思って私はリツイートしたまででございます。

源馬委員 それだったら、例えばニュースの公式アカウントでもいろいろ出ていまして、私も見ました。それをリツイートするなら分かりますが、この一アカウントのオリバー・ホサムかな、分からないですけれども、このアカウントのツイートをリツイートしている有本さんのツイートを更にリツイートする必要はないんじゃないですか。

高木大臣政務官 大変恐縮ですが、必要があるかないか、そういうことではなくて、こういう事実に対してリツイートしたというまででございます。

源馬委員 だったらニュースサイトとかをやるならまだ分かりますが、この有本さんのコメントに同意をして、その事実があるといってリツイートしたわけですよね。

 さらに、その次の資料も御覧ください。

 今度はリフレ女子という、よく分かりませんが、リフレ女子というアカウントのツイートをまたリツイートされていますね。これは退席ではなくて追い出しだと。このことをリツイートした。

 どういう御認識で、今回の中国共産党での一幕は確かにありましたけれども、それをこのように解釈をしている人のツイートをリツイートしたことは、政務官としてどういう考えでリツイートされたんですか。

高木大臣政務官 こちらも、下にありますニューヨーク・タイムズの、これは動画だったと思いますけれども、こちらのことを中心にリツイートしたということでございます。

源馬委員 このことに長く時間を取られたくありませんが、だったらニューヨーク・タイムズのツイートをリツイートすればいいじゃないですか。なぜこのリフレ女子のツイートをリツイートされたんですか。

高木大臣政務官 別にそれは特に意味がないと思います。私はたまたまこのツイートを見てリツイートしたということでございます。

源馬委員 たまたま見てリツイートするというのは、民間人ならいいですけれども、我が国の外交を担う外務大臣政務官なわけですよね。ちょっと思慮が足りなさ過ぎませんか。有本さんのツイートの中の、逃げ遅れた日本企業からも犠牲者が出るだろうということを世の中に広めるという、それが外務大臣政務官のやるべきことなんですか。むしろ、やっていいことなんでしょうか。ちょっと認識をしっかり教えてください。

 事実だというふうに、この事実を広めたいという御答弁がありましたから、これは事実かどうかも含めて御答弁をお願いします。

高木大臣政務官 先ほど申し上げたとおりでございます。

源馬委員 じゃ、逃げ遅れた企業からも犠牲者が出るだろう、これを事実だと認識をされているわけですね、外務大臣政務官として。

高木大臣政務官 先ほど申し上げたとおりでございまして、私は、この下の、ちょっと黒くなっておりますけれども、この部分の事実についてリツイートしたということでございます。

源馬委員 何度言っても伝わらないようですが、それだったらニューヨーク・タイムズのツイートをリツイートしたらいかがですか。

 外務大臣に伺いますが、政務官としてちょっと軽率な行動だと思いますが、ちゃんと外務大臣政務官が務まるとお思いになりますか。こういうツイートを世の中に更に拡散させようとする方が、それが適切なのか、その行為が適切なのか、そして任に当たるのか。どうお感じになりますか。

林国務大臣 今、政務官御自身から御説明があったとおりだ、こういうふうに思っております。

 対外発信については、いろいろな御指摘を招かないように注意をしていくのは当然でございますが、御指摘があれば、今、高木政務官が御説明されたように、しっかり説明をするべきだと思っております。

源馬委員 もうやめますが、高木政務官には、我が国の外交政策を担う政務官なわけですから、是非慎重な行動を求めたいと思います。

 さらに、これについて細かく聞くわけではありませんが、次の三枚目も、中国が台湾のTPP加入に反対というニュースを、これはそれをそのままリツイートするんじゃなくて、御自身で笑止だと。入っていない国が、入っていない国の加入に反対。中国は何の資格で言っているのと思う。中国さん、入ってから言ってねと。

 去年だろうが、もう国会議員ですよね、自民党さんはやじを飛ばしますが。これは本当にふさわしいと思うんですか。こういうことを発信する方が外務大臣政務官でいいのかということなわけですよ。

 政務官、これから慎んでいただけるのか、あるいは、このツイート、不適切だと思いますが、こういったものを削除するお考えはあるのか、ちょっと聞かせていただきたいと思います。

高木大臣政務官 御指摘の点については、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。

源馬委員 是非気をつけていただきたいと思います。

 それから、次は台湾について伺っていきたいと思います。

 中国の習近平の三期目、新体制に突入して、これまでも既定路線であるのではないかと言われてきた台湾統一への意欲がますます強まったのではないかということが各所で指摘をされております。

 アメリカのペロシ下院議長が訪台した後に、ミサイル発射がありました。日本のEEZ内にも入りましたが、そもそも、これまでも下院議長が訪台したという前例もありますし、米国の国会議員も頻繁に最近は台湾に行っている事実もあります。ですから、つまり、これは、一つのきっかけとして習近平政権が利用して台湾への意思を示したというふうに捉えるのが現実的だと思います。三期目になってより強固な基盤を持ったからこそ、習近平氏の悲願の台湾統一に向けて動きやすくなっているというふうに思います。

 同時に、これをやらなかったら、三期目になっても、必ずしも武力統一じゃなくても、台湾統一ができなかったら失権を免れないわけですので、より台湾有事に発展する可能性が高くなるのではないかというふうに言われております。

 アメリカの元国防副次官補のエルブリッジ・コルビー氏なども、二〇二七年までには台湾に侵攻する能力を整えるように人民解放軍に指示したとも述べておりますし、更にそれが前倒しになっている可能性も高いという見解を言っております。

 この台湾有事について、現在の台湾の情勢も含めて、大臣の捉え方をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 いわゆる台湾有事という仮定の御質問にお答えすることは差し控えたいと思いますが、台湾海峡の平和と安定、これは、我が国の安全保障はもとより、国際社会の安定にとっても重要でございます。台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待する、これが従来からの一貫した我が国の立場でございます。

 この点、これまでも、日米またG7を始めといたしまして、各国との間で台湾海峡の平和と安定の重要性について一致をしてきておるところでございます。

 また、私から王毅国務委員に対しても、五月の日中外相テレビ会談などの機会に、台湾海峡の平和と安定の重要性について述べてきております。

 こうした立場を中国側に直接伝えるとともに、各国の共通の立場として明確に発信をしていく、このことが重要だと考えております。

 引き続き、両岸関係の推移を注視しつつ、しっかりと主張してまいります。

源馬委員 仮定の問いには答えられないというお言葉がありましたけれども、やはり外交も、仮定のことが起きないように、いろいろな外交努力、今大臣が御答弁していただいたような努力をして、その仮定の台湾有事が起こらないようにしていくということが必要だと思うんですよね。ですから、仮定のことには全部お答えできないというのは私はちょっとおかしいのではないかと思います。

 さらに、これも私も台湾あるいはアメリカでも意見交換をしてきたときに、中国が武力統一を目指すときというのは、武力統一が可能であると中国が判断したとき、あるいは武力統一せざるを得ないというふうに判断したときの二つに限られる、こういうような認識があると思います。

 それは一体どういうときだと大臣はお考えになっているのか。つまり、中国として台湾に武力侵攻しなくてはいけないと考えるときはどういうときなのか、そして、今なら武力統一できると考えるときはどういうときなのか、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、台湾有事という仮定の質問にお答えするということは差し控えたいと思いますが、それでは、どういう場合にそういうことになるのかということ。

 これは、他国の判断について我々がコメントするということは差し控えなければならないと思いますし、先ほど委員がおっしゃったように、あらゆる事態を想定して備えるということは当然やるべきことですし、やっているわけでございますが、どういう場合にどういうことをするかということをこちらが申し上げるということは、相手の国に対するコメントとともに、我々の手のうちを明かすということにもなるわけでございますので、具体的にどういう場合かということについてはコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

源馬委員 分かりました。

 では、大臣に、我が国と台湾の友好関係についてどういう御認識をお持ちか、聞かせていただきたいと思います。大臣の所信にもいろいろな国の話は出てきましたが、台湾海峡の安全というのは出ましたが、それ以外に台湾への言及はなかったように思いますが、台湾との友好関係についての御認識を伺いたいと思います。

林国務大臣 台湾は、日本にとって、基本的な価値観を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人だと考えております。

 東日本大震災の際には台湾から大変心温まる支援をいただくなど、日本と台湾は大規模災害などの際にお互いに助け合ってきたわけでございます。

 さらに、新型コロナウイルスの感染拡大という未曽有の困難に直面する中においても、日本から台湾への四百二十万回分のワクチン供与、また、台湾から日本へのマスクや酸素濃縮器の供与等、日台の関係は更に深まってきております。

 台湾との間で、我が国の民間窓口機関である日本台湾交流協会を通じて平素から様々なやり取りが行われておりまして、経済、文化、人的往来等の様々な分野で日台の実務協力、交流が着実に深まってきております。

 引き続き、台湾に関する我が国の基本的な立場を踏まえながら、日台間の協力と交流の更なる深化を図ってまいりたいと考えております。

源馬委員 ありがとうございます。

 これは、武井副大臣がいらっしゃったら、今日は外遊中と伺っていますが、いらっしゃったら武井副大臣に伺いたかったんですが、配付資料の次のページを御覧いただければと思います。

 これは武井副大臣の御自身のツイッターですが、台湾と国交がなく、外交を政府が担うということが難しく、実質的に自民党がそれを担ってきましたとあります。これは大丈夫かなと思います。

 大臣、これは事実ですか。実質的に台湾の外交を自民党が担ってきたというのは事実ですか。

林国務大臣 台湾は、我が国にとって、基本的な価値観を共有して、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーでありまして、大切な友人であるということは先ほど申し上げたとおりでございます。

 政府としては、台湾との関係を非政府間の実務関係として維持していくという立場を踏まえて、日台間の協力と交流の更なる深化を図っていく考えでございます。

 台湾との関係においては、これまで、与野党問わず、多くの国会議員の皆様により台湾側との間で活発な交流が行われていると承知をしております。こうした国会議員による交流を含む多層的な交流が日台間の協力と交流の深化に大きく貢献をしているものと認識をしております。

 武井副大臣のツイッターにつきましては、本人から御説明した方がいいとは思いますけれども、こういうことを踏まえてのツイッターではないかというふうに考えております。

源馬委員 当然、副大臣御本人に伺った方がいいんですが、少なくとも、こういう発言を対外的にするというのは、私は、これを事実だと本当におっしゃるならそれはそれで問題ですし、事実でないことをこうして発信する方を副大臣にするというのはやはり問題だと思いますので、高木政務官も含めて大臣から注意をされた方がいいのではないか、発言にしっかり気をつけろという注意はされた方がいいと思います。

 もしこういう認識だったらそれは改めてもらわないと、台湾との外交は自民党が実質的に担ってきた、こんなことを言う人が副大臣では私は心もとないなと思いますので、是非注意をしていただきたいと思います。

 それから、今、台湾は日本にとっても大切な友人という御答弁がありまして、私も本当にそのとおりだと思います。台湾に対する認識というのはもちろん私も理解をしております。やはり、大切な友人であることも間違いない。ただ、いろんな関係があるわけですね、自民党だけじゃなくて。

 そうした上で、かねてから、台北駐日経済文化代表処がありますが、そこの車両に外交官ナンバーが付与できないかというお話はずっとあったと思います。これも是非、私としては、外交関係があるかどうかにかかわらず実現をしていくべきものだと考えています。

 例えば、税金の免除だけではなくて、日本の公的施設に入る場合にも様々な不都合が生じて公務活動に支障を来すというような指摘もありますし、これは何とかできないんでしょうか。是非前向きな御答弁をお願いしたいと思います。

林国務大臣 台湾につきましては、一九七二年の日中共同声明を踏まえて、非政府間の実務関係として維持していくというのが我が国の基本的立場でありまして、引き続き、こうした立場を踏まえて適切に対応してまいりたいと考えております。

源馬委員 別にその立場を変えろというふうに言っているわけではないんですね。それはそれで、そういう関係を保ちつつも、大切な友人なわけですから、便宜を少し図るとか、そういうことは十分できるはずだと思うんですよ。

 例えば、アメリカも、外交関係はありませんが、ナンバープレートは外交ナンバーを付与していると聞いていますし、カナダも国際機関ナンバー。日本にも外交官ナンバーのほかに国際機関ナンバーがあるわけですけれども、カナダではそういう対応をしている。オーストラリアも外交官ナンバー、チェコも国際機関ナンバー、マレーシアでも公務のナンバー、フィリピンも外交ナンバー、シンガポールも外交ナンバー。いろんな国で、外交関係がなくても、日本と同じような立場であっても外交ナンバーを大切な友人に付与しているわけなんですよ。是非もう少し踏み込んでいただけないですか。

林国務大臣 国土交通省が発給する一般のナンバープレートと異なりまして、外交のナンバープレートは、外交関係に関するウィーン条約、領事関係に関するウィーン条約、特権免除条約・協定で規定されました財産の不可侵及び課税の免除を担保するために、外務省が、外務省設置法に基づいて、外交使節団、領事館及び国際機関の駐日事務所に対してナンバープレートを発給しているものでございます。

 台湾について申し上げますと、先ほど申し上げましたとおり、非政府間の実務関係として維持していくということが我が国の基本的立場でございます。

源馬委員 基本的立場は分かっているんです。

 じゃ、パレスチナはどうなんでしょうか。

高木大臣政務官 台湾についての立場については外務大臣から御説明のとおりでありますが、我が国は、現在、パレスチナを国家承認していないわけでありますが、イスラエル、パレスチナ間の紛争については二国家解決というものを支持をいたしておりまして、パレスチナの国家承認については、和平プロセスの進展に資するかどうかといった観点から、引き続き総合的に検討しているものであります。

 このような状況を踏まえまして、外交上の儀礼の観点から、駐日パレスチナ常駐総代表部に対して外交ナンバープレートの発給を行うとの判断に至ったものでございます。

源馬委員 それはダブルスタンダードじゃないですか。パレスチナはよくて台湾は駄目だという理由には全くなっていないと思いますが。

 せっかく手を挙げていただいたので、高木政務官にもう一回伺いますけれども、高木政務官は、次の資料にもあるとおり、日仏の協定を審査した際に、私からは台湾とも検討すべきではぐらいの、やはり台湾を大事に考えていらっしゃると思うので、その立場も踏まえて是非お伺いしたいと思うんですが、外交上の儀礼でパレスチナには外交ナンバーを付与する、一方で、台湾とは大切な友人だけれども付与できないというそのダブルスタンダードについて一回ちょっと教えてください。国民の皆様が分かるように、台湾の皆様が分かるように是非御答弁をお願いします。

高木大臣政務官 繰り返しになりますけれども、我が国は、現在、パレスチナを国家承認していないわけでありますが、イスラエル、パレスチナ間の紛争については二国家解決というものを支持いたしています。パレスチナの国家承認については、和平プロセスの進展に資するかどうかといった観点から、引き続き総合的に検討しているものであります。

 このような状況を踏まえまして、外交上の儀礼の観点から、駐日パレスチナ常駐総代表部に対して外交ナンバープレートの発給を行うという判断に至ったものでございます。

源馬委員 ここで何か変わるわけではないということは分かって質問しておりますが、是非前向きに検討してもらいたいと思います。

 別に、外交官ナンバーを付与することとか、旅券は認めているわけですね、台湾の旅券を。そういうこともあるので、これが例えばほかの国との関係に何か影響を与えるとか、そういうことはないと思います。ほかの国でもできていることだと思います。ですから、是非引き続き前向きに検討していただけたらと思います。

 それから、もう一点。

 例えば台湾の方が日本人と結婚されたときとか、あるいは日本に帰化されるとき、あるいは日本人の養子になるときなどに台湾出身者の方の身分が変わったとき、戸籍における国籍とか出生地というのが中国あるいは中国台湾省となってしまう。これは大変台湾の方たちのアイデンティティーにも関わる問題で、何とか改善してほしいということももちろん外務省でも聞いていると思いますが、これを何とかできないものなのか。

 たしか、まず法務省に確認しますけれども、なぜこういうことになっているかということは、当時、まだ中華民国だったとき、中華民国の国籍の表示を中国と記載することについてという通達が根拠になっていると聞きますが、それはそのとおりでよろしいですか。

高見大臣政務官 お答えをいたします。

 委員御指摘のとおり、戸籍事務におきましては、日本人と婚姻した台湾出身の配偶者の国籍として中国と記載をしております。

 これは、理由でございますけれども、そもそも、日本人が外国人と婚姻をした場合には、日本人の戸籍に配偶者である外国人の国籍に関する事項を記載する必要があるとしております。そのため、日本人が台湾出身の方と婚姻をした場合には、その国籍については、我が国が国家として承認しているところの中国と記載しているというわけでございます。

源馬委員 なぜ国籍を書かなきゃいけないんですか、戸籍に。

高見大臣政務官 お答えをいたします。

 戸籍に配偶者の国籍をなぜ書かなければならないかというお尋ねでございました。

 国籍を記載する趣旨でありますけれども、夫婦の一方が外国人の場合でございます。外国人につきましては、戸籍が作成をされませんので、国籍に関する事項を戸籍に記載しておかなければ、その外国人の人定事項が特定されないことに加えまして、その夫婦の間に出生した子の嫡出性あるいはその国籍の認定等について疑義が生じてくる、こうした理由でございます。

源馬委員 子供については、子供の国籍が決まれば子供の戸籍に国籍が明らかになるわけですから、別に両親の国籍を書く必要はないんじゃないかと思うんですよね。

 例えば、在留カードで今やっているように、国籍又は地域、このようなやり方も取れると思うんですが、もし仮に、戸籍上、今は国籍というふうになっているところを、国籍あるいは出身国あるいは地域みたいにしたことによって、何か不都合は生じるんですか。

高見大臣政務官 今委員から御指摘がございました在留カードにつきましては、これは、当該外国人の基本的身分事項として国籍の属する国又は地域を記載することとされておりますので、地域として台湾と記載をされているものと承知をしております。

 一方、戸籍につきましては、今申し上げましたとおり、外国人の人定事項に関わる、また、出生した子の嫡出性、国籍認定などのために国籍を記載しておるものでございまして、制度の趣旨が異なることから、それぞれの制度の趣旨に基づいた運用を行っているところでございます。

源馬委員 これも時間が足りないのでこれ以上やりませんが、是非、何か実害的な支障が生じるならあれですけれども、そういうことじゃないと思うんですよね。国籍、地域とやれば別に国籍を書いたっていいわけですから、それで実害が出るわけではないと思うので、引き続き前向きに是非検討していただけたらというふうに思います。

 それから、済みません、あと二つほど駆け足で伺いたいと思いますが、少し飛ばします。

 今、ウクライナ支援についてNGOの方とかからお話を聞いていると、かなり前なんですが、やはり、あのウクライナ侵攻が始まった直後というのはウクライナから逃げてくる人たちがたくさんいて、その方たちに一番必要な支援というのは現金給付だったということなんです。

 各国の支援とかあるいは国際機関の支援というのは現金給付をしてどんどんそういう人たちを助けたのに、日本政府のお金だと現金給付ができないと。なぜかというと、全件モニタリングを、もらった人が何を買ったかを全部把握しろみたいな、そんな非現実的な対応をやっているので、全然それができなかったというお話がありました。

 これはちょっと改善されたというふうにレクで伺いましたけれども、この点について御説明をいただきたいと思います。

林国務大臣 今御指摘のありました現金給付を通じた支援でございますが、人道支援の手法として国際的にも採用されている支援形態であるというふうに承知をしております。

 同時に、国民の税金を原資としておりますODAを実施する際には、国民に対する説明責任を果たしていかなければならないわけでございまして、どのような形で支援を行うことが適切かについては、関係機関とも意見交換をしつつ検討しております。

 ウクライナ支援ですが、ウクライナ国内外に滞在する避難民の流動性が高く、支援後にモニタリングを行うことが困難である点は理解し得ることから、モニタリングに係る条件を緩和する方向で検討しております。

 NGOを通じた支援は、現地のニーズにきめ細かく対応することができるほか、日本の顔が見える支援という観点からも大変重要であると考えておりまして、引き続き、NGOと緊密に連携しながら、ウクライナ支援に努めていきたいと考えております。

源馬委員 事前のレクでは、全件モニタリングから二割か三割ぐらいのモニタリングに緩和することと、使用目的をちょっと広げるというようなことを伺いました。確かに改善はされると思うんですけれども、やはり二割、三割のモニタリングもなかなか大変だと思うんですよね。特に、戦争から避難してくる難民の皆様に対する支援が、どうやって何を買ってどう使ったかということを全部報告を受けるというのは、やはり現実的ではないと思います。全部というのは、二、三割の人でも自分が使ったものを全部報告するというのは非常に現実的ではないと思います。

 一方で、大臣がおっしゃったように、税金を使っているので、日本国民に対する説明責任というのはもちろん必要だと思いますが、ほかのODAだったら確かにそうだと思います。むしろ、よりちゃんとモニタリングしてもらいたいと思うぐらいですが、こうした緊急性の高いものは、是非柔軟に使えるように。

 それから、ちょっと一言だけ言っておきたいんですが、この方針が決まるまで三、四か月かかっているんですよね。私もNGOの方からお話を伺ってすぐ外務省にお話をつなぎましたけれども、そのときは全件モニタリングの一点張りで、ようやく、すごい長い時間がかかって一歩前進と。あのときに現金支給が一番必要だったんですね。今じゃないと思うんですよね。ですから、スピード感もこれからもっと持っていただきたいということは注文しておきたいと思います。

 最後に、済みません、大臣に。

 これはまた別の機会でも質問させていただきますが、私は長いことカンボジアにおりましたので、是非これは伺っておきたいんですけれども、先月、カンボジアのクメールルージュ裁判がようやく終わりました。これまで日本は、余り目立っていないですが、かなり側面支援してきたというふうに思っていますが、細かいことはまたの機会に伺いますが、大臣、談話も出されていますけれども、クメールルージュ裁判終了についての大臣の今の御所感を伺いたいと思います。

林国務大臣 日本は、カンボジアの和平プロセスの総仕上げとしてクメールルージュ裁判を重視し、二〇〇六年の裁判開始以来、約九千万ドルの資金的支援のほか、日本人の裁判官等の派遣やドナー国会合を通じて、国際社会を主導しながら運営面での支援を行ってきたところでございます。

 今年の九月二十二日の最高審の判決によりまして裁判プロセスが終結をいたしましたが、カンボジアにおける正義の実現、また、法の支配の強化、これに資するものであったと評価をしております。

 裁判プロセス終了後も継続予定の普及啓発、教育活動等を通じまして、本裁判の意義が広くカンボジア国民に共有されまして、次世代の人々や国際社会のための遺産として引き継がれ、法の支配の強化に資することを期待をしておるところでございます。

源馬委員 ありがとうございました。

 終わります。

黄川田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時三十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

黄川田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。青柳仁士君。

青柳(仁)委員 日本維新の会の青柳仁士です。

 今日は、外務省の方で今検討している開発協力大綱の改定についてお伺いをしたいと思っております。

 外務省の国際協力局の方からいただいた資料で、開発協力大綱の改定についてというものがあります。これは、今回、二〇一五年に改定されて以降およそ十年ぶりということで、様々な環境変化に伴って新たな大綱を策定する、そういうことで今検討が進んでおると。来年の六月までぐらいをめどに完成をさせるということで、有識者の懇談会を始め、また省庁内での検討が進んでいるというふうに承知しております。

 この中で幾つかお伺いできればと思うんですが、まず一つ目は、開発協力の非軍事原則というところで、これまでのODA大綱の中には、例えば前回のものの中には、開発協力の実施に当たっては、軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避するというような文言がありまして、これを軍事的用途及び国際紛争助長への使用の回避ということで柱の一つに据えられております。

 まず、今回の大綱においてもこの非軍事原則というのは堅持する見込みであるかどうか、これについてまずはお伺いできればと思います。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま、現在検討が進められているところの開発協力大綱の中において、非軍事原則、維持するか否かという御質問を賜りましたけれども、今まさに様々な形で検討を進めておるというところでございますので、全体の結果、今全て予断するということは差し控えますけれども、ODAの非軍事原則を含む現在の大綱に掲げられている諸原則につきましては基本的に維持しつつ、改善、強化するような余地があるかどうかというところにつきまして今検討しているというところでございます。

青柳(仁)委員 今回、非軍事原則に関しても検討した上で、強化を含めて考えていくということなんですけれども、一方で、今年の末までをめどに防衛三文書、いわゆる国家安全保障戦略を始めとする三文書の改定というのが進んでおります。

 この中の議論に、さきの国会で成立したものを含め、経済安全保障という概念が出てきます。また、今回の開発協力大綱の改定の背景というところにも、経済と安全保障が直結して各国に影響を及ぼすようになってきているというふうに書いてあります。

 これは極めて正しい認識だとは思うんですけれども、ロシアのウクライナ侵攻、これも今回の開発協力大綱改定の背景の大きな一つというふうに書かれていますが、この中で我々が目の当たりにしているのはハイブリッド戦争というもので、軍事、非軍事、それらを合わせた形で、様々な防衛、安全保障、あるいは戦争というものが行われるという状況かと思います。

 そういった中で、例えば中国においては超限戦という概念もありまして、戦争には八十ぐらいの方法がある、そして、軍事的な従来型のものもあれば、非軍事ということで、情報戦、外交戦、あるいは、こういった経済戦、金融戦といったようなもの、さらには超軍事と言われる領域も含まれた形で考えていく。

 そういった中で、例えば、今回の年末までの防衛三文書改定においても、先制攻撃であるとか、あるいは専守防衛、又は反撃力、反撃能力といった議論が非常に中心的にされておりますが、この中においても、どこまでが専守防衛と言えるのか、どこからが戦争行為と言われるのかというところの線引きが非常に曖昧になっている。

 例えば、サイバー攻撃というのは攻撃に入るのかとか、それから、もっと言えば、中国の一帯一路みたいに、周辺国に鉄道をつなぐことで経済的な依存度を高めさせることで自国を攻撃しにくくなるとか、あるいは、有事の際には兵力であるとか武器であるとかを輸送しやすくなる、こういったことを着々と積み上げている行為というのは、これは戦争と言えないのかどうか、戦争行為ではないのか。

 経済安全保障は、前回成立した法案においても、サプライチェーンの安全性を確保する、防衛、軍事に関係するようなものはサプライチェーンを日本国内でしっかりとやれるようにするというような内容になっているんですが、これも、ゴルフシャフトの素材はロケットだとかミサイルにも使えるようなものがあったり、新素材というのはほとんどデュアルユースあるいは多様な目的での活用が可能なわけですね。

 ですから、そういった中において、今、どこの境界線までが本当の意味で非軍事と言えるのかというのが非常に曖昧になっていると思うんです。

 こういったことを現場の判断に任せると、じゃ、どこまでが軍事ですかと。例えば、半導体の日本の専門家が、今中国はやっていませんけれども、ちょっと懸念される国に対してODA、JICAの専門家として派遣されたら、これは恐らく経済安全保障上よろしくないですね。ですから、そういう判断が、現場の派遣担当者だとかあるいは個々のプロジェクトの判断に任せていると、これはなかなか、恐らく現場は萎縮するんじゃないかと思うんですね、ここまでは何か抵触しそうだからやめておこうと。

 この議論は、民間企業との関係性において、経済安全保障のときにもあった話なんです。戦争の定義が広がっているので、これはもしかしたら軍事に関わるかもしれない、だから、投資するのはやめておこう、造るのはやめておこうみたいな、民間企業が萎縮すると、イノベーションが起きなくなるんじゃないか。

 同様に、どこまでが線引きか分からないと、現場の判断に任せる、例えばJICAだとか、あるいは国際協力に関わる専門家だとか、あるいは現場の大使館の担当者だとかというのが恐らく萎縮するんじゃないかと思うんですね。

 ですから、ここに関して、現実的に世界において軍事領域が拡大しているわけですけれども、この中で、それによってODAの活動あるいは開発協力の活動が制約されるべきではないと私は思うんですが、こうした非軍事と軍事の線引きというのは現状どのように考えておられるか、この点についてお伺いできればと思います。

林国務大臣 経済安全保障でございますが、これは多岐にわたる新しい課題でございまして、必ずしも明確な定義があるわけではないわけでございますが、近年、今委員もお触れになっていただいたように、安全保障と経済を横断する領域で様々な課題が顕在してきております。

 そうした中で、経済領域における安全保障リスクの拡大、すなわち経済安全保障の強化、これが外交面からも重要になってきておるわけでございます。こうした国際情勢の変化や時代に即した開発協力の在り方、これを模索するに当たっては、こうした経済安全保障の重要性なども踏まえて議論を行っていく考えであります。

 例えば、途上国の経済的自立性の向上、こういうものに資する支援や、我が国及び途上国のサプライチェーン強靱化に資する支援、また、鉱物資源等産出国との関係強化に資する支援等、経済安全保障の観点からODAを戦略的に活用していけるよう、議論を進めていきたいと考えております。

青柳(仁)委員 今御答弁いただいたようなサプライチェーンの強靱化に資するような協力というのは、これはODA、開発協力でも当然分野として関わってきますし、可能だと思いますので、そういった戦略性を持って是非やるべきだと思うんですが、その際に、軍事と非軍事原則に関して判断を現場だけに任せると、やはり、何度も申し上げますが、萎縮すると思うんです。できるだけやらない方向でやろうというふうになりますので、是非、日本のODAというのはかつては世界一だったわけで、今も十分、世界に冠たる国の国際協力として様々な国から感謝もされているし、評価もされていると思いますので、そういったツールをひとつしっかりと活用していただいて、日本にとっての重要な政策の実行というところに生かしていただければと思っております。

 もう一つ、あとは情報を集めるということも、これも安全保障上非常に重要なことなんですが、例えば、日本のODAのプロジェクト、JICAの専門家なんかの中には、大臣アドバイザーと言われる人がたくさんいまして、各国の途上国の大臣室に机を置いていて、そこで日々大臣と御飯を食べたり、ちょっと決裁の代わりを書いたりとかいうことをしているような人もいるわけですね。こういった方々には、例えば、実際にあった話ですが、今度中国からの要人がやってくるんだけれども同席してくれないかとか、どうしたらいいか、ちょっとアドバイスをくれないかというようなことを内々に相談されたりしている人も実際におります。

 ですから、そういったリソースを、余り安全保障に戦略的に活用しますといっても、これはなかなか、様々な外交上の問題が起きると思うんですが、事実として、現在、そういう情報を知り得るところに日本のODAの協力で人が配置されているということは一つのアセットだと思いますので、これも是非積極的にといいますか、認識をされた上で、全体の方向性の中で検討いただけたらというふうに思っています。

 次に、同様に開発協力大綱の件なんですが、人間の安全保障についての扱いをお伺いいたします。

 これまでODA大綱の基本方針の一つは、これは緒方貞子さんが提唱されまして、長く日本のODAの柱になっていたものだと認識しておりますが、人間の安全保障、いわゆるヒューマンセキュリティーというものを持っておりました。最近、国連開発計画、UNDPやJICAが新時代の人間の安全保障ということで盛んにPRも行っているところですけれども、この人間の安全保障、ヒューマンセキュリティーというのは、これからも開発協力大綱の中でも、開発協力の中の柱の一つになるという理解でよろしいでしょうか。

林国務大臣 我が国は、テロや紛争、災害、感染症、貧困など、人間に対する直接的な脅威、これに対処するために、個々の人間の保護と能力強化、これを重視する人間の安全保障の考えを開発協力の基本方針として推進してきておりまして、二〇一五年に策定された現行の大綱においても、人間の安全保障の推進、これを我が国の開発協力の基本方針の一つと改めて位置づけております。

 近年、ウクライナ情勢による人道危機や新型コロナ、気候変動、こうした地球規模課題の複雑化、深刻化など、世界はいわば複合的な危機に直面をしておりまして、一人一人の生命と尊厳を守る人間の安全保障の理念はこれまで以上に重要となっていると考えております。

 新たな開発協力大綱においても、誰一人取り残さない社会の実現に向けた国際的取組を日本がリードしていけるように、また、個人やコミュニティーの安全にとどまらず、個人間、コミュニティー間の相互依存、地球全体と人間社会の関係性も意識をしました連帯の概念を盛り込んだ新たな時代の人間の安全保障を、日本の開発協力の柱の一つとしてしっかり位置づけていきたいと考えております。

青柳(仁)委員 是非、すばらしい概念だと思いますし、なかなか国際場裏で発信すると、様々な国で、内政干渉だと。いわゆる、あらゆる人間の生活、命の安全を保障するというような概念ですから、国民の命は全てその国の権力を持っている人のものであるというある種の考え方を持ったような国からは否定される面も、これまでもあったと思いますし、これからもあると思うんですが、是非、日本の開発協力の柱として、非常に重要な概念だと思いますので、引き続き訴えていただければと思っています。

 また、もう一つ、SDGs、持続可能な開発目標ということで、今年がちょうど折り返し地点で、あと八年ぐらいあるんですけれども、ここ二、三年、コロナで停滞しておりまして、グテーレス国連事務総長もその点、非常に懸念をされているというふうに認識しております。

 SDGs、あるいは、その元々の概念になっている持続可能な開発、サステーナブルディベロップメント、これも、これからも達成に向けて努力していく、また柱の一つとして据えていく、そういう理解でよろしいでしょうか。

林国務大臣 SDGsでございますが、持続可能な世界、これを実現することを目指して国連で採択をされました国際社会全体の目標であります。来年は、今委員からお話がありましたように、SDGsの達成に向けた中間年ということになります。引き続き、我が国を含む国際社会全体がこの目標達成に向けて取組を加速化させるということが重要だと考えております。

 岸田政権が掲げる新しい資本主義、これは、資本主義がもたらす弊害を是正しながら、持続可能な経済社会をつくり上げて、社会課題の解決を新たな成長の源泉としていくというものでありまして、まさにSDGsの達成につながるものであると考えております。SDGsの達成のためには、従来の官民連携の在り方を超えまして、社会起業家の支援、また、インパクト投資の推進など、幅広い関係者での官民連携を一層深化させていくことも重要だと考えております。

 国際社会が新型コロナ及び気候危機という未曽有の危機に直面している中で、政府としては、新しい資本主義の下で、二〇二五年の大阪・関西万博の機会等も活用しながら、引き続き、SDGs達成に向けた国際社会の取組を主導していく考えでございます。

青柳(仁)委員 SDGs、是非、コロナに負けずに達成の努力、日本としても進めていただければと思うんですけれども、まさに、この新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画というのを私も読ませていただきました。

 我が党としての姿勢というのはいろいろあると思うんですが、個人的には、SDGsの文脈でいうと、非常に先取りした内容だなというふうに思っておりまして、というのは、元々、この十七個のゴールを世界全体でやろうという議論があったときに、日本政府が実は最初に手をつけまして、MDGsという、その前の目標に対するフォローアップ会合というのを仕掛けたことがあります。これはなかなか取組としてうまくいかなかったんですけれども、最終、リオ・プラス20というところでSDGsが決まったときに、それ以前からあった援助の効率性という議論がかなり力を失っていったという経緯があります。

 なぜかというと、援助の効率性というのは、言ってみれば資金援助、ヨーロッパがやっているような、お金だけ出すというのが何か全て効率的で正しいみたいな話で、日本がやっているような、人を出したり信頼関係を築いたりとか、そういうのは中間コストがかかっているとか、日本人にお金が入っているとかいって批判をされていたんですけれども、この議論は今ほとんど聞かれなくなりましたが、まだ根強く残ってはいるものの、当時に比べると相当聞かれなくなりました。

 その当時にどういう議論があったかというと、要するに、政府だけのお金を幾ら効率化しても、こうしたSDGsだとか、人間の安全保障だとか、あるいは地球規模課題を解決するのは不可能ではないかという国際的なコンセンサスがあったわけです。ですから、SDGsは民間企業やその他のアクターを巻き込んでいこうと。

 特に民間企業は、例えば、今年の外務省のODAの予算、ずっと五千億円とかそれぐらいのレベルで推移していると思うんですけれども、例えばですけれども、三菱商事の年間の売上高は十兆円ですね。ソフトバンクが九兆円。

 ですから、経済規模だけでいえば、そういった企業が東証一部上場企業だけで日本に二千社あるわけですね、日本だけで。これは世界にすると三万社あるわけですけれども、そういう民間企業の持つリソース、お金もそうですが、優秀な人材だとかイノベーションだとか技術だとか、そういったものを社会課題解決に生かしていく、これをやらないとSDGsの達成は難しいし、人間の安全保障とか地球規模課題というのも解決できないだろう、こういう議論が実際に国際場裏でありました。

 それを、じゃ、どうしていくかといった中で、今、経団連とかが例えばソサエティー五・〇フォーSDGsとか、あるいは経済同友会がステークホルダー型資本主義と言っていますが、いわゆるビジネスセクターにおけるサステーナビリティーと言われるような潮流がありまして、これは簡単に言えば、企業がお金をもうけながら社会課題を解決していく。官の側、政府の側は、それを後押しするというよりも、その市場原理をつくっていく。つまり、社会に悪影響を与えながら自分だけがもうかるような企業というのは、それはどんどん淘汰されていく。

 そうではなくて、社会に対してもいい影響を与え、そして、自社ももうかるような、社会価値と経済価値の両方が高い企業というのが生き残り、そして、そうではない企業、お金もうけばかり考える企業とか、あるいはどっちも駄目な企業は市場から退場してもらう、こういう仕組みをつくってきた。これを労働市場においても、あるいは消費、生産市場においてもつくってきたというのが今までの経緯だったと思っております。

 これの一番進んでいるのが投資市場で、これがESG投資と言われて、いわゆる社会価値と言われるエンバイロンメント、ソーシャル、ガバナンスという、環境、社会、ガバナンスというところが優れた企業、これが、ただ単に利益率が高いとか、それだけではなくて、そういった両方が高い企業が評価される。この市場が今や三十五兆ドル、今円安でちょっと計算が難しいですけれども、三千五百兆円以上あるということですね。そういう規模になっている。

 ですから、そういった大きな動きの中で、この新しい資本主義でまさに言われているんですけれども、我が国でも社会的課題と経済的成長の二兎を追いたい起業家が増えている、あるいは、そういった社会価値と経済価値の両方が高い企業、これはベネフィットコーポレーションというふうにこの新しい資本主義なんかに書いてありますけれども、そういったところに対する新たな法整備が米国を始めのところで整備されつつあって、これを日本としてもやっていかなきゃいけないと書いてあるんですけれども、これは日本だけじゃなくて、是非、このODA、開発協力を通じて、ほかの国々にもこれを広げていくというようなことが非常に重要ではないかというふうに思っております。

 これは新しい資本主義の中の言葉だと、資本主義のバージョンアップということの三大柱の一つに、市場も国家も、すなわち新たな官民連携によって、その社会課題を、解決を目指していく、こういう構想が述べられております。

 こういった、今申し上げたような国際的な潮流を踏まえた上で、今回の資料の中にある、開発協力をめぐる官民の新しい役割分担ということを今回の開発協力大綱では書いていくというふうに書いてあるんですが、この点について今どのようなお考えをお持ちか、教えていただけますでしょうか。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおりでございまして、まさに開発途上国への民間資金の流入というのが、大きなトレンドといたしましては、公的資金を大きくしのいできているというところがございます。そうした中におきまして、民間部門の活動が開発途上国の経済成長を促す大きな原動力となっているという流れにございます。

 こうした中で、現行の大綱におきましても官民連携による開発協力の推進がうたわれまして、ODAを始めとする公的資金が触媒的な役割を果たすということによって民間企業の投資を促し、さらに、開発途上国の成長、貧困削減につなげてきたというところがございます。

 加えまして、これも御指摘のとおりでございますけれども、近年、ESG投資を始めといたしまして、社会的価値の創出を目指すという活動、あるいは、現地で活動している、途上国におきまして活動している日本のスタートアップ企業の取組等々も増えてきているという中におきまして、SDGs、気候変動等々の取組に当たって、民間セクター、市民社会等による取組はますます重要になってきているというところでございます。そうした中で、官民協力をしながら、開発協力を更に進めていきたいというところでございます。

 民間企業はもちろん、さらには市民社会、地方自治体、大学、研究機関等との連携につきまして、今まさに開発協力大綱全体の議論の中におきまして更なる検討を進めておるところでございますけれども、そうした方向を踏まえて、しっかりした大綱を作っていく努力をしてまいりたいと考えております。

青柳(仁)委員 おっしゃるとおり、こういった潮流を踏まえて、今までの開発協力というのは、どうしてもやはり官対民といいますか、官が主導するとか、官が後押しするとか、何か官と民は別のものであるような、あるいは官の方がメインであるかのような、まあ、実際もそうでしたけれども、大綱の中でもそういう前提があったように思うんですが、今や社会課題解決の主役は民ですから。

 そして、民も、今ちょっとお答えの中に、企業だとか、何か大学だとか、NGOだとか等々みたいな言い方があったんですけれども、これはそれぞれ全く違うアクターですから。一番大きな力はやはり企業だと思いますけれども、でも、企業という文脈と大学という文脈は全然違うものですし、それから、それとNGOとかNPOというのも、これもまた全く違う領域の話をしているので、何か、様々なステークホルダーとの連携みたいな、ぼやっとしたことでやるのではなくて、それぞれどういう動きを今していて、それぞれどういう市場原理が生まれようとしていて、その中で、まさに触媒というのであれば、市場の失敗を正すような介入の仕方というのは、ODAとしてどういうことが可能なのかということを是非戦略的に考えていただけたらと思っています。

 また、スタートアップの支援について今ちょっと触れられていましたが、どういったことが可能かというのを、現状のアイデアでも構わないんですが、教えていただきたいんです。

 というのは、例えば、今申し上げた文脈の中で、ジップラインという最近五島列島に来たスタートアップ企業があります。このスタートアップ企業はアメリカのスタートアップなんですが、何をしていたかというと、ルワンダという国で、世界で初めてのドローンの全国ネットワーク、全国配送網というものをつくり上げました。

 彼らは、要は、私も現地に行ったことがあるんですけれども、一番遠いところだと車で九時間ぐらいかかるんですね、山の上とか。それでも、そこにおよそ十五分で中央からドローンを飛ばします。しかも、携帯電話のファミリープランだけでやっているので、ほとんどコストをかけずに、こんな、ラジコンみたいなのが飛んでいくんですけれども、そこで何を運んでいるかというと、妊産婦の血液なんですね。

 現地で亡くなる方が非常に多いです、出産のとき。亡くなる原因は、医療行為によるミスだとか病気だとかそういうものではなくて、ほとんどの方が単なる出血多量なんです。ですから、輸血さえすれば助かる命というのがあるんですが、ところが、地方ではなかなか輸血用の血液をためておけないんです。そういった設備がまずない。それから、あったとしても、停電が多いので、すぐ電気が切れて、駄目になってしまう。なので、中央で管理している血液を手術中に届けるということを彼らは可能にして、今や、五島では多分その他のいろいろな物品を運んでいると思います。

 ですから、世界で今まで存在しなかったドローンの全国ネット、全国宅配網というのを途上国で彼らがつくり上げて、しかも、それが非常に大きな社会課題解決につながっているわけです。

 こういう起業家が、日本にもたくさんそういった夢を持っている人はいまして、経産省がJ―Startupとかをやっていますけれども、ちょっとあれだとまだまだ不十分で、特に海外に行こうというスタートアップの方に関しては、J―Startupはやはり国内のフィンテックとかが多いので、なかなかちょっとそこに手が届かないとかがあると思うんです。

 ですから、そういうところは是非、まさに官が、開発協力が呼び水になって、そして後押しもしながらやっていくということが必要だと思うんですが、この点ちょっと、スタートアップの起こすイノベーション、それによる社会課題解決というようなことについて、現状、外務大臣あるいは外務省のお考えをお聞きできればと思います。

林国務大臣 今お話がありましたように、民間セクターや市民社会による取組、これは幅広さと規模、この両面で存在感を増していると思っております。今お話のあった、日本のスタートアップ企業が途上国で先駆的な事業に取り組む事例を御紹介いただきましたけれども、増えてきていると思っております。

 政府としては、企業やNGOによる社会的価値を創出する多様な活動に対して、例えばJICAで中小企業・SDGsビジネス支援事業というのをやっておりますが、こうしたものを通じて、民間企業が途上国の開発課題に貢献する製品等のビジネス化に向けた支援を行っております。

 そのほか、日本のスタートアップ企業が途上国に進出するに当たって、現地企業のマッチング、それから資金面、こうしたところの支援を行っているところでございます。

 こうした先駆的な事業を行う民間企業を含む様々なステークホルダーと連携しながら、時代に即した適切な官民連携の在り方、これを模索していきたいと考えております。

青柳(仁)委員 是非その方向で御検討いただければと思うんですが、今JICAがやっていること、あるいは外務省のODAというのは、やはり、今大臣から御紹介もありましたが、中小企業支援とか、ややちょっと一昔前のスキームというか、そういうところをちょっと発展させている程度というふうに思うんですね。今申し上げたような、まさに官が主導して、社会課題解決がビジネスをベースに市場原理を通じて行われていくような仕組みづくりというところには、今までほとんどタッチしていないと思います。

 そこのエッセンスといいますか、その内容に関しては、実はこの新しい資本主義というところに結構書いてありますので、こっちの方が、正直、今の開発協力大綱の検討でやられている話よりもやや進んでいる気がしますので、もうちょっとこの辺の議論というのを取り入れてもらって、現状、今までこういう協力の仕方をしてきたから、それをこう強化しようとかではなくて、時代がかなり変わっていますから、ですから、その変わった新しいレジームの中での新たな開発協力の役割、これを是非、お題目だけではなくて、具体的なスキームに、今までも民間連携事業は、PFIとかPPPの領域に入っていったり、エクイティーで出せるようにしたりとか、いろいろアップグレードしてきたのは分かっているんですが、アップグレードが更に必要かなと思っていますので、その辺、是非御検討いただければと思っています。

 それからもう一つ、民間セクターのニーズに応じた開発協力の在り方を検討する、これも国際協力局からいただいた資料に書いてあるんですけれども、民間企業が今何を求めているかということなんです。

 これは、今も再三出てきたとおり、社会価値と経済価値の両立するマーケットの中で、市場原理によって地球規模課題を達成する、こういうのがESG投資だと三十五兆ドルという規模になっているという中で、じゃ、誰がその社会価値というのを測るのか。経済価値は簡単なんです。利益率だとか売上高だとか、そんなので簡単に測れますけれども、一体、じゃ、原発をやめることと砂漠化を止めることとどっちの方が価値が高いんだとか、なかなかこれは難しいですよね。

 ですから、そういった企業の行う活動についての社会価値の基準というものが、IFRS財団あるいはEUの方で、世界全体でその基準の統一化というのが今進んでおります。これはESG投資だとかサステーナビリティー基準というところをベースに進んでいるので、全てを含んだ話ではありませんが、一定、企業が行うことに関しての社会価値というのはそういう形で進んでいます。

 それから、企業が行うプロジェクト、あるいはビジネスに関しての社会価値というのは、インパクト投資という名前で、これも評価手法がかなりアップグレードを続けているという状況です。

 先日、経済産業委員会の方で、金融庁の方と経産省の方と、このIFRS財団の基準作りにやはり日本もしっかり参加すべきじゃないかというお話をさせていただきました。

 これはなぜかというと、社会価値とは何かですから、例えば、今回、二〇三〇年以降、脱炭素の中で、新車販売にはハイブリッド車が販売できないということで、日本の国内産業は大変困っているわけですけれども、ただ、グリーンかブラウンかという議論で、これは環境によい、これは環境に悪いという線引きで、どこまでは環境によくてどこまでは環境によくないのかという、この線引きを勝手に決められてしまうと、これは本当に社会価値の上で意味があるのかも分からないし、あるいは、我が国の競争力の面でもどうかという面があると思うんです。

 ですから、そういった基準作りはしっかりやるべきだという議論をしたんですが、その際に、IFRS財団に日本人を一人送り込んで、そしてそういった議論に参画している、また、金融庁、日本政府としても、あるいは経産省としても、その動きを積極的にバックアップしながらやっているというお話がありました。

 是非、こういった基準作りへの参画、あるいは、でき上がった基準に対する、日本企業が高く評価されるための支援というのも、これは海外においては十分に開発協力の領域だと思いますし、また、そういった国際機関に人を派遣していくというのも、社会課題解決という文脈であればODA予算を使って可能なんだと思うんですけれども、この辺りについての御認識を教えていただければと思います。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のとおり、サステーナビリティー、あるいはESG、脱炭素等々、様々な課題への対応に関する国際的な市場のルール作りに我が国として積極的に参画していくということは極めて大事な課題というふうに認識しております。

 そうした中で、まさにこの国際ルールを作っていく過程において、我が国としての主体的な参画をどういうふうな形で開発協力の分野で後押ししていけるのかというところにつきましては、今の大綱の議論も踏まえながら、しっかりと考えてまいりたいというふうに考えております。

青柳(仁)委員 まさにそういった、IFRSの方、あるいはEUでの議論、ただ、EUでの議論は外務省の方なのかもしれませんね、そういういろいろなところで進んでいる外交交渉を是非見ていただいて、その中で、やはり今後の開発協力の国際的な評価というのもその基準で決まってくると思いますので、また、実際の社会課題解決の効果もそこによって相当変わってきますので、是非外務省としてもしっかりと検討していただければと思います。

 特に、開発協力大綱の改定に関する有識者懇談会の第二回会合の議事録を見させていただいた、誰が発言したのか分からないんですが、委員からの発言としても、社会課題というのは多様なわけですけれども、ここは気候変動ということに限らせていただくと、気候変動においては、サステーナブルファイナンスが主流になってきており、公的資金をレバレッジにしていかに民間資金を呼び込むかが鍵である、そのためには、事業の安定性や収益性に加え、中長期的な価値創造にどう資するか、インパクトの可視化が非常に必要であるということを言っています。

 これをやるためには、当然、インパクト投資の事例をつくっていく。これは最初のうちは恐らくほとんど開発協力の領域になると思います、ビジネスではなかなか難しいと思うんですが。

 実際、今ビジネスで使われているインパクト投資、企業が投資をして、それがどれぐらい社会課題に資するのかということの評価の体系の大本は、国連が事業として行っていた自らのプロジェクトを評価する指標というのが基になっています。ですから、そういったものを後押しするというようなことも非常に重要ではないかと思います。

 それから、有識者懇談会のメンバーを見ていると、今申し上げたような内容について余り御存じの方が見当たらなかったものですから、この方は多分非常に詳しいんだと思うんですが、金融庁とか経産省の方とも是非連携を取っていただいて、この新しい資本主義にまさに書いてあることですけれども、こういう社会価値と経済価値の両方を高めていくような、そういうマーケットづくりというところへの支援というのは是非考えていただければと思います。

 それからもう一つ、民間企業のニーズに応じたというふうに書いてあるので、民間企業のニーズ、いろいろ聞いてみました。ただ、かなり多かったのは、国際調達に参加したいんだけれども、参加できないという企業が結構いました。

 例えばですが、ある食品の大手企業は、世界で今、RUTFという、ピーナツバターですね、これは栄養失調の子供に与えると一か月ぐらいで大体元に戻っていくというようなすばらしい製品なんですが、これを最初に作ったのがフランスのニュートリセットという会社。そこがいまだに、そこの子会社か関連会社がいまだにマーケットの七、八割を占有していまして、そしてまた、そのマーケットのほぼ九割は国際調達。WHOのガイドラインに基づくユニセフが買っているんですね、ユニセフかWFPが。ここがほとんど寡占状態になっていて、参入しようとしてもなかなかそこに入れないというような話が実際にあります。

 外の人を入れるかどうかの議論の際には、フランス人の方が非常に多くその検討会のメンバーに入っていたりということもありますので、是非そういう、民間企業の実際に困っている国際調達、ここも支援をすべきだと思います。

 また、国際調達をするに当たって、国際機関の中にシニアレベルでどれぐらい日本人がいるかということが相当大きなファクターになってくると思うんですが、こうした国際交渉の中での国際機関への人材の派遣、派遣というか人材の強化、あるいは、国際調達に関しての開発協力大綱を踏まえた現状の方向性について教えていただければと思います。

石月政府参考人 お答え申し上げます。

 国連を始めとする国際機関における調達ということで、途上国の支援等の活動実施のために物品・サービスを世界各国の企業から購入しておりますけれども、外務省では、国連を始めとする国際機関の調達への日本企業の参入及び受注の拡大を目的として、各種支援策を実施してきているところでございます。

 一例を申し上げますと、平成二十七年以降、日本企業を対象とした国連調達セミナー、これを毎年度開催しておりまして、多数の日本企業の参加を得ているところでございます。

 本年二月に開催されたこのセミナーでは、国連活動支援局サプライチェーンマネジメント部の三井清弘チーフ、ユニセフ・イラク事務所の竹友有二物流・物資調達専門官等の国連邦人職員より、参加した日本企業に対して、国際機関の入札参加及び受注獲得のための実践的かつ具体的なアドバイスを行っていただいたところでございます。

 また、国連を始めとする国際機関調達への日本企業参入拡大のため、日本企業支援窓口を設置し、日本企業からの個別相談を受けているところでございます。

 引き続き、国際機関の邦人職員増加に取り組むとともに、邦人職員とも適切に連携協力し、国連を始めとする国際機関の調達への日本企業の参入及び受注拡大のための支援を継続してまいりたいと考えております。

青柳(仁)委員 いろいろるる対策を打たれているということは理解するところなんですが、ただ、民間企業に実際話を聞いてみると、外務省がやっていただいていることに関しては感謝はする、しかしながら十分ではないという認識がほとんどです。十分ではないというか、実際の成果を取るにはちょっと支援が足りなさ過ぎるというふうに考える方が多いようですので、そこは、なかなか外務省側から話をするとそういう話は言わないと思うんですけれども、実際皆さんそう思っているところですから、是非、実質的な成果が取れるように、より支援を拡充していただきたいと思います。

 そして、最後になりますけれども……

黄川田委員長 申合せの時間が経過しておりますので、御協力お願いします。

青柳(仁)委員 同じ会派なので、済みません、少し延長させていただきますが、SDGsの今後の方向性というところで、今ちょっとるるお話があった内容を踏まえ、今度開発協力大綱を作ると十年間になりますね。そうすると、今からだと二〇三〇年を超えるわけです。そうすると、二〇三〇年までがSDGsですから、その次の新しい国際社会の中での潮流というところまで含んだ大綱になるというふうに理解しております。

 そういった意味では、先ほど来から申し上げているとおり、これまでやってきたことの延長線上で考えるのではなくて、今、国際場裏でこうした社会課題解決であるとか開発協力というものがどういう方向性に向かっているのか、特には、やはり民間企業を中心とした動きが全く、もうがらっと変わってきていますから、そういったことをしっかり踏まえた上で、新しい戦略を是非果敢に打ち出していただきたいなと。

 その際には、余りこればかり紹介するのも、私が言うのもなんなんですけれども、新しい資本主義の中に、資本主義のバージョンアップに向けてという項が一番最初にありまして、その二ポツの、二つ目のところに、市場も国家もによる社会課題解決と新たな市場、成長、国民の持続的な幸福実現、これは国民ですから日本向けに書いてありますが、ただ、ここに書かれていることというのは、今申し上げてきたような、国際場裏でずっとコンセンサスもあり議論されてきた次の方向性だと思いますので、開発協力大綱、今ちょっと素案を見ますと、何かこれまでの議論の延長線上だなという印象を正直持っております。なので、是非もっと果敢に、大きなところを、二〇三〇年以降まで続く大綱ですから、考えていただきたいと思っております。

 時間が参りましたので、以上にさせていただきます。ありがとうございました。

黄川田委員長 次に、和田有一朗君。

和田(有)委員 日本維新の会の和田有一朗でございます。

 通告に従いまして質問をさせていただきたいと思うんですが、ちょっと時間が足りないところにたくさんの質問を用意しておりますので、できるところまでやらせていただいて、当局の皆さんは準備をしてお待ちくださっておりますが、今日できなかったものは次回必ず全てやらせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 では、今日、何人もの方が御質問になりましたが、拉致のことをお伺いしたいと思うんです。今日お伺いする拉致のことは、映画のことです。「めぐみへの誓い」という映画についてお伺いしたいと思うんです。

 一月の本会議におきまして、我が党の馬場代表は、この「めぐみへの誓い」というものの海外での上映に対する在外公館の対応についてお伺いをいたしました。要は、ミュンヘンで行われたときの上映会に対して外務省、在外公館、大使館等のバックアップが足りていないんじゃないかということを随分危惧される声も多方面からありまして、馬場代表はなさいました。

 そのことで、随分改善はされたようには承っておりますけれども、やはり、今回、所信を読みますと、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、あらゆる機会を逃すことなく全力で取り組みます、こういう言葉が所信の中にあるわけでございまして、本当にあらゆる機会を逃すことのないような取組に日本政府はなっているんだろうかという観点からお聞きしたいと思うんです。

 この「めぐみへの誓い」、これは実写版、実写版というのは、アニメではなくして実際に役者さんが演じる映画、原田大二郎さんがたしか横田滋さんをやっておると思うんですけれども、そういう演技をする映画なんですけれども、非常にすばらしい映画です。最後にもう一回この項の締めくくりに私は御紹介しますけれども、やはりどうしても涙が出てしまうような映画です。これをやはり世界中で多くの人に見てもらって、日本にはこういう問題があるんだ、北朝鮮とはこういう国なんだということを分かってもらうという、民間の方がMプロジェクトというプロジェクトを立ち上げて、海外で上映する運動をやっておられます。

 その中で、まずお伺いしていくんですけれども、後援名義というものを欲しいということで申出があったようです。

 普通、私も地方議員を長くやっておりましたから、市役所や県庁に、教育委員会に後援の名義を下さいと言ったら、非常に複雑な書類があって、あっちの窓口に行って、次はこっちに行ってあれをやって、お役所仕事で非常にややこしいというのは私も実はよく存じ上げております。このことではなくても、お役所で後援名義をもらおうというのは。でも、その中で、特に、海外でこの映画を上映するに当たって後援名義を下さい、こう言ったときに非常に煩雑で難しかったと。

 実は、後援名義を申請するに当たって、内閣府の方の拉致担当の方からは、非常にややこし過ぎて、いろいろな指導を在外公館にしたりいろいろなところにしなきゃいけないので、取り下げられたらどうですかとまで言われたというんです。どういうことなんだ、こういうふうに言われる方もおったように私には聞こえてきたわけですね。

 一般の方から見ると、外務省が後援しています、拉致問題のお役所も後援していますとある方がやはり押し出しがいいじゃないか、こう思うわけですが、そこら辺、こういう海外での後援名義というのをするときはどんなふうになっているのか、今回、取り下げられたらどうですかなんというふうな話にまでなったというふうに仄聞するんですが、そこら辺の真偽も含めて、どうなっておられるか、お伺いします。

平井政府参考人 お答え申し上げます。

 拉致問題対策本部の後援等名義に関する規程におきましては、拉致問題対策本部事務局は、後援等名義の使用の承認後、同承認を受けた主催者等を監督指導するものとしておりますが、海外での行事等につきましては、拉致問題対策本部事務局が現地でかかる監督指導を行うことが困難であることから、原則として、後援等名義の使用は承認しないこととしております。

 海外での行事等につきまして、拉致問題対策本部事務局への後援等名義の使用の申請が接到したことは事実でございます。

 当該申請者とのやり取りとやり取りの詳細につきましては差し控えさせていただきますが、その上で申し上げさせていただくと、拉致問題対策本部事務局から当該申請者に対しまして、海外での行事等への後援等名義使用申請に対する考え方等を丁寧に御説明をさせていただきましたところでございます。

 いずれにせよ、民間主導で拉致問題に関する啓発活動が進んでいることは心強いと考えているところでございまして、政府といたしましても、拉致問題解決に向けた国際世論の喚起のため、今後も積極的に広報啓発に取り組んでいく考えでございます。

和田(有)委員 私は今の答弁に驚いてしまいまして、もうちょっと穏やかな答弁ぐらいするのかと思ったんです。指導ができないから承認しない。一丁目一番地の政策で、国家としてどうしてもこれは取り戻すために頑張るんだと言っている中で、こんな答弁なんですかね。答弁なんですかって変ですね。こんな姿勢でいいんですかね。私にはちょっと理解ができないです、はっきり言って。

 まだ数問この項の質問がありますので、それをしてからもう一度そのことについてお聞きしますけれども、例えば、今度、ロサンゼルスだかどこかでやろうというときに、ジャパン・ハウス、いわゆる日本語でいうと日本文化センターとかそういうところになるんでしょうけれども、そういうところでやろうとしたときに、お金を徴収されるわけです。それは、いろいろな規定があって、お役所にはお役所の、お役所でなくても民間でもいろいろな規定があって、そういう代金というか料金というのは決まっているんでしょうけれども、しかし、今私が申しましたように、国家としてどうしても解決しなきゃいけない、そういう政権の一丁目一番地だと言っているようなことを、民間で肩代わり、肩代わりというのは変な言い方ですね、民間の方々が一生懸命やってくれているものを、全てしゃくし定規に、お役所仕事に、料金を取っている。

 いや、そんな高いお金じゃないと思いますよ。別にお金がもったいないから出してくれと言っているんでもないんです。しかし、物の考え方として、こんな姿勢でいいんだろうか。日本の例えば外務省所管のそういう施設を使って、外務省も国家としても世界に向かって啓発をしよう、知ってもらおうと思っている活動をやることに対して料金を取る、こういう姿勢でいいんだろうかと思うんですが、そこら辺、いかがでしょうか。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のジャパン・ハウス・ロサンゼルスにおきましての映画「めぐみへの誓い」の上映に際しましては、主催団体よりジャパン・ハウスの多目的スペースの使用申請がなされまして、非営利団体がスペースを使用する際には一律に適用している料金を徴収することになっておりますため、同料金を徴収したと承知しております。

 いずれにしましても、民間主導でこのような活動が進んでいることは心強いと考えております。

 政府といたしましては、拉致問題解決に向けた国際世論の喚起のため、国際シンポジウムの開催や在外公館を通じた取組等を行ってきております。拉致問題に関する国際世論の理解と支援を得るため、いかなる方途が効果的かとの観点から、今後も、不断の検討を行いつつ、積極的に取り組んでまいる所存でございます。

 以上です。

和田(有)委員 私には、しゃべっている言葉は分かっても、思いが伝わらないですね、全く。どんなことをしても我々は拉致被害者を取り返す、そのために我々はバックアップをすると言いながら、言っていることがとんちんかんなように私には聞こえるんです。先ほどの拉致の担当の方も、指導ができないから後援を出せない、海外では出さないことになっていますとか。

 じゃ、指導ができないというのは、どんな指導を普通はすることを想定しているんですか。

平井政府参考人 後援名義の使用におきましては、承認された主催者等又は関係者がこの規程の趣旨に反する行為を行っている疑いがある場合には、現地調査等必要な調査を行い、その事実が判明した場合には、承認主催者等に対しその是正を文書により勧告することとされております。

 したがいまして、仮にこういった事実が認められた場合に、海外で直接調査することが困難であることから、海外における後援名義の付与については承認しないこととしております。

和田(有)委員 全くナンセンスな話ですよ。

 拉致問題を解決しようという人々が集まって日本国のためにやっている作業で、それを、不祥事があったら、変な団体だったらいけないとか、調べられないとか。こんな時代に、ネットを使ってZoomで役所でも会議をやっている時代にそんなことを言いますかね。そんなことを言っているから一人も帰ってこないんですよ、小泉訪朝以降。ジャパン・ハウスの料金にしても、高いとか安いとかの問題じゃないんです、これは。本気かどうかの話の一つの姿勢の問題だと私は思うんですね。

 そういう中で、戦略的な発信にこれから外交は取り組むんだというふうに大臣は所信で述べられています。以上の諸課題について、着実に具体的な成果を上げるために云々かんぬん、戦略的な対外発信に取り組むとともにと。それで、親日派、知日派育成を努める、こういうことも書いておられるんですね。

 こういうふうにうたっておられる中で、やはりこの拉致問題の取組一つ取ってみても全然戦略的になっていないわけですよ。拉致の担当のところは指導ができないから後援を出せませんとか、在外公館ではああだとか。

 やはりこれは、トータルに見て、戦略的に、みんなで、オール・ジャパンで取り組む一種の工作活動ですよ、我々にとっての対外工作ですよ。このことに関してはする意思が見えない、私にはそう思えるんですが、そこら辺、大臣、いかがお考えですか。

林国務大臣 北朝鮮による拉致が発生して長い年月がたった今も、二〇〇二年に五名の拉致被害者の方々が帰国されて以来、一人の拉致被害者の帰国も実現していないということは痛恨の極みであります。解決を強く求める御家族の切迫感を共有しております。

 拉致問題の解決に向けて、米国を始めとする関係国と緊密に連携しながら、我が国自身が主体的に取り組むことが重要だと考えております。

 岸田総理自身も、条件をつけずに金正恩委員長と直接向き合う決意、これを述べてきておるところでございます。

 政府として、拉致問題解決に向けた国際世論の喚起のために、北朝鮮人権侵害問題啓発週間の国際シンポジウムを開催したり、在外公館を通じた取組等を行ってきておりまして、拉致問題に関する国際世論の理解と支援を得るためにいかなる方途が効果的かという観点から、今後も、不断の検討を行いつつ、積極的に取り組んでまいりたいと思っております。

和田(有)委員 実は、後段、私はあと数点今日は質問を用意していますが、そこら辺からスタートしていく話だったんですが、ちょっと時間が足りないので、次回、近々に時間がたくさん私はもらえると思いますので、その点、次に行こうと思うんですが。

 最後に、この映画を見られましたか。まだ見られていませんでしょうね。まあ、これは質問じゃないですから。

 この映画の中でこういう言葉が出てくるんですよ、横田めぐみさんから。これは映画ですから、本当にどういうことを言ったかどうかはそれは分かりませんけれども、私たちが行方が分からないということを知ってくれたら、私たちが誘拐されたということが分かれば、私たちの国、日本の国は必ず連れ帰しに来てくれるはずだ、それまで頑張ろう、そういうせりふがあるんですよ。そういう思いで、横田さんも、みんなそうだし、ほかに、たくさんの皆さん、有本恵子さんもそうだろうし、皆さん待っているんですよ。このシーンを見たら、私は涙が出ましたよ。その思いが役所の皆さんはあるんですか。私はそれを言いたいんですよ。

 それで、最後にテロップが流れるんですよ。テロップというか、字幕が流れるんですね。この物語の将来を作るのは私たち一人一人ですと出てくるんですよ。我々国会議員であろうが大臣であろうが、みんな国民一人一人がこの未来の物語を紡いでいくはずなんですよ。その気持ちが皆さんにはないんじゃないかと私には思えるんですよ。

 もう一回、大臣、そこら辺、御感想を聞かせてください。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、二〇〇二年以来一人の帰国も実現していないということは本当に痛恨の極みでございまして、解決を強く求める御家族の切迫感を共有しているところでございます。

 ロサンゼルスの映画でございますが、これは上映会実施が九月二十五日であったと聞いておりますが、九月二十一日にロサンゼルス総領事館から在外公館後援名義の使用許可ということでございます。

 また、料金でございますけれども、非営利団体と営利団体と二つの区別がございまして、当然、今回は非営利団体としての料金が適用されたということでございますが、先生の今いろいろ御指摘があったように、この思いを持ちながら、できることをしっかりやっていくということは大切なことだと思っております。

和田(有)委員 できることを知恵を出してできるようにやっていただきたいと思います。

 今日はこれで終わらせていただきます。ありがとうございます。

黄川田委員長 次に、鈴木敦君。

鈴木(敦)委員 国民民主党の鈴木敦でございます。

 私は理事会にオブザーバーで出席をお認めいただいておりますが、その場では発言できませんので、ここで提案をさせていただきたいと思いますが、先国会の会期が終わってからもう四か月余りがたつわけですが、この間、世界的には気候変動がたくさんあり、あるいは、英国では、女王陛下が崩御され、総理が辞任、就任、また辞任、就任と続いたわけでございます。アジアに目を向ければ、中国は演訓といって台湾の海峡周辺に十一発の弾道ミサイルを撃ち込む、あるいは、北朝鮮は乱射をして、一発は我が国の上空を通過するというような事態が起こっているわけでございます。

 これまでの四か月、たくさんの問題があったことはこの外務委員会の委員各位も御承知のとおりですし、本日の委員会で各委員から様々な議論が提起されましたが、それはその所為であると思います。

 したがって、この外務委員会については、着実に質問時間を確保することはもちろん大切なんですが、それだけではなく、活動しているという意味でも、我が外務委員会は、対政府質疑だけではなくて、定期的に議員間討議も含めた委員会の開催を行うべきと思いますので、後刻、理事会での御協議をお願いいたします。

黄川田委員長 理事会で協議いたします。

鈴木(敦)委員 それでは、質問させていただきます。

 様々な議論があるということは先ほど申し上げました。なので、本日は、アジアの三つの国と地域についての質問をさせていただきます。

 最初に台湾でございますが、中国の共産党の党大会で習近平主席から、母国の統一は必ず実現されなければならないし、必ず実現できるというような発言がありました。中国は、軍事、非軍事にかかわらず、やる気であろうと思います。

 こうなったときに、なぜ中国が台湾にこれだけ固執するのかということを考えなければならないわけですが、一部では、国威啓発なんだ、あるいは、習近平主席のレガシーづくりだという話がありますが、もう三期目に入って事実上任期を撤廃している人がレガシーづくりを焦る必要は全くないわけでございます。したがって、台湾を取りに行く理由はほかに考える必要があります。

 例えば、地政学上、今、戦略物資となっている半導体をめぐる問題、自国の影響下に世界大手のファウンドリーを有しておくという優位性を維持するということと、もう一つは、台湾周辺の海峡を手中に収めることによって、中国海軍は潜水艦が潜水航行したまま太平洋に出ることができるようになります。

 軍事的にも非常に要衝と言われる場所でございますから、台湾に対して、アメリカもそうですし、中国もそうですが、かなり大きな関心を持っているのはもう間違いなく、皆さんも御承知のとおりです。

 なので、そんな中で、すぐ目と鼻の先にある我が国が、国交もなければ、何のパイプも持っていない。そして、この後の質問でもいたしますけれども、結びつきそのものが非常に希薄である。言葉では言うんですけれども、何かしらの外交手段がない限り、何かがあったときに遺憾だと言うだけでは何の意味もないわけですから、米台間はやり取りが既にあります、その枠組みの中に我が国が入って外交上の取組をするということについて、外務大臣、この考え方はいかに考えられますでしょうか。

林国務大臣 台湾は、日本にとって、基本的な価値観を共有し、緊密な経済関係、そして人的往来を有する極めて重要なパートナーでありまして、大切な友人であります。

 これまで一貫して、台湾との関係は、一九七二年の日中共同声明を踏まえまして、非政府間の実務関係として維持していくこと、また、台湾海峡の平和と安定は重要であり、台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待することを表明してきております。

 これが政府の基本的な立場でございますが、アメリカとの関係というお尋ねでありましたけれども、例えば、日米首脳会談等々におけるいろいろな声明等が出ておりますが、そういった文書には台湾海峡の平和と安定といったような文言が入っておるというふうに承知をしております。

鈴木(敦)委員 非政府間での実務上の関係ということなんですけれども、それでは追いつかないという話をこれから申し上げます。

 今、これは例にするのも申し訳ないんですが、ロシアとウクライナの紛争がこれまでずっと激化をしているわけですけれども、ウクライナの場合は、NATO三十か国とロシアが一国で対峙をしているわけでございます。しかしながら、東アジアにはそういった枠組みは全くなくて、日本と韓国が個別にアメリカと安全保障条約を結んでいるだけでございます。そして、今回当事者になる台湾は国ですらないわけでございます。

 これを、アメリカと緊密に連携するとか、実際に何かがあったときにどうやっていくかという枠組みは何一つつくることが今現状できていないわけですから、そういった意味での結びつきは非政府ではもはや不可能であると考えるのが妥当だと思いますが、この点についてはこれ以上前に進めるお考えはないということでしょうか。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、日米関係の文脈においてもいろいろな文言を掲げておりますように、台湾海峡の平和と安定というものに対して、日米の首脳間でも、平和的に問題が解決されることが必要だ、こうした文脈で一致をしておるところでございます。

 また、仮定に基づいたお話はできないことは御存じのとおりでありますが、いろいろな事態を想定して、外務省の仕事であります邦人の保護等には万全の対応を期さなければならないと思っております。

鈴木(敦)委員 ちょうど邦人の保護というお話をいただきました。

 事前に私が質問したのと同じ内容ですが、有事という言葉を使うと武力的な、軍事的なものを想定されがちですけれども、仮に平和的に統一をされたとしても、台湾という地域を統治している政体が変わるわけです。これが、アフガニスタンもそうでしたけれども、政体が変わったときに、じゃ、邦人保護のために我が国がチャーター機を飛ばしますだとか、あるいは自衛隊を派遣しますだとかいう取決めをしようと思っても、相手が政府ではないんですよね。我が国のカウンターパートが政府ではないんです。

 仮にも邦人との人的往来が多いパートナーであるという御説明があるのであれば、いざ政体が変わったときに避難される方々に対してどうやって促すのか、あるいは実行していくのか。アフガニスタンのときのようにはできないですね。

 これを取決めを事前にしようと思っても、政府ではないので、国ではないのでできないという状況になっているのではありませんか。

林国務大臣 海外に渡航、滞在する邦人の保護は、先ほど申し上げましたように、政府の最も重要な責務の一つであります。平素から、在外邦人の保護や退避、これが必要となる様々な状況を想定し、必要な準備、検討を行っております。

 その上で、一般論として申し上げれば、邦人の退避が必要となる事態が発生する場合には、まず、極力、商用定期便が利用可能なうちに、在外邦人の出国、出境又は安全な場所への移動の確保に努めることになるわけでございます。

 商用定期便での出国、出境が困難、あるいはそれだけでは不十分な状況になった場合には、個別具体的な状況に応じて、あらゆる可能性を追求しながら、邦人の安全確保に万全を期すべく、政府として全力を尽くしていく、そうした考えでございます。

鈴木(敦)委員 商用定期便というお話でしたが、台湾に乗り入れをしている航空会社の大半が中国系の航空会社でございますが、我が国から乗り入れている航空会社はそんなに多くありませんし、そもそも今はコロナもあってそんなに飛んでいないという中で、商用定期便で帰ってきてくださいと言ったところで帰ってこれない可能性が非常に高いんですが、そこについては何か検討されておりますか。

林国務大臣 先ほどはあくまで一般論として申し上げたわけでございますが、まずは極力、商用定期便ということを申し上げました。

 商用定期便での出国、出境が困難、あるいはそれだけでは不十分な状況になった場合には、個別具体的な状況に応じて、あらゆる可能性を追求しながら、邦人の安全確保に万全を期すべく、政府として全力を尽くしてまいりたいと思っております。

鈴木(敦)委員 また外務大臣が政府専用機で行って何人か連れて帰ってきてくれればそれはそれでいいんですが、事前にある程度の整理をしておいていただかないと追いつかない問題だと思いますし、アメリカ側も台湾の再統一に向けた中国の動きを非常に警戒をしていて、短期的に行われるのではないかというような見通しも最近出てまいりましたので、議論されているとは思いますが、加速していただく必要があるのではないかと思います。

 それでは、中国本体の問題に移らせていただきますが、中国は、さきもイギリスからちょっとお話を伺いましたが、イギリスの元空軍のパイロットが中国軍にリクルートされて訓練をしていたという問題。これはあくまで外国の話ですけれども、イギリスが訓練をした軍人が中国の軍隊に訓練を行った、人的なリクルートを行ったということでございます。

 我が国でいうと、本日は防衛省を呼んでいませんから別にその話はしませんが、我が国から出ていく技術とか、あるいは人的な資源というのが非常に問題になっているわけです。

 さきの国会で経済安全保障推進法案が成立しまして、半導体もその中で重要物資に入りましたけれども、ただでさえ中国には我が国は半導体の製造装置を大量に輸出しております。対中国の輸出で最も多いのは半導体の製造装置、制御装置系でございます。こういったものを造って送るのはまだいいとして、我が国でそれを研究して開発をしている方々が非常に高い値段の俸給を受けて中国に引き抜かれている、我が国の開発力が奪われるということが実際に発生しているわけでございます。

 これは経済産業省とかいろいろな役所の所管でもあると思いますけれども、外交上大きな問題だと思います。我が国の技術とか、技術者が技術を持ったまま他国に引き抜かれる、そして、それが軍事技術に利用されて、最悪の場合、ほかの地域で人の命を奪う可能性があります。

 これについては外務省として何かしらの手だてをして水際対策をしないといけないと思いますが、大臣、いかがですか。

林国務大臣 半導体を含みます機微技術や、今委員からお話がありましたこうした分野における人的資源の流出防止、これは、国際情勢が複雑化して経済領域における安全保障リスクが拡大する中で、我が国自身が取り組むべき喫緊の課題であると認識をしておりまして、外務省としてもしっかり取り組んできております。

 一例を挙げますと、先般の日米の経済版2プラス2におきましても、国際的な平和及び安全の維持の観点から、新興技術の軍事転用を防止するため、輸出管理を強化していくことで一致をいたしたところでございます。

 その上で、中国との関係について申し上げますと、中国は日本にとって最大の貿易相手国でありまして、中国に進出する日系企業や駐在する日本人社員は極めて多いわけでございます。経済について、日本全体の国益に資するような形で、対話と実務協力を適切な形で進めていく必要も一方ではあると考えております。

 経済大国となった中国に対しては、引き続き、主張すべきは主張し、国際社会のルールにのっとり大国にふさわしい責任をしっかり果たしていくように求めてまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 確かに貿易相手としては最大なんですが、中国が国内で使っている法律、国家情報法の第七条には、いかなる組織及び個人も、法に基づき国の情報活動に協力し、国の情報活動に関する秘密を守る義務を有しという文章があるので、国民全てが中国政府の命令でスパイとなり得る可能性があるという法律を持った国と、ルールに基づいたやり取りをしてくださいとお願いをしなければいけないわけです。

 そして、この後申し上げますけれども、国際仲裁裁判所の判例に対して、紙くずだと言うような人たちです。その人たちと、よろしくお願いしますという議論だけでは不十分です。

 外務大臣、いかがですか。

林国務大臣 よろしくお願いしますというだけを申し上げているわけではございませんで、しっかりと主張すべきは主張するということに加えて、先ほど申し上げましたように、例えば、日米の間で2プラス2というのは今まで外務大臣、防衛大臣でやっておりましたけれども、これを、経済版ということで、こちらは外務大臣と経産大臣、先方は国務長官と商務長官という形で開いた。

 こういうことで、輸出管理の強化については申し上げましたけれども、いわゆる経済安全保障と言われているものについてもしっかり同盟国の米国と一緒になって対応していく、こういう姿勢も示したわけでございまして、そういうものも、硬軟両様といいますか、やるべきことはしっかりやらなければならないと思っております。

鈴木(敦)委員 さきの予算委員会でも言いましたけれども、今、世界的に、半導体を取られたら何にもできません。スマートフォン一つ造れませんし、我が国の基幹産業である自動車だって半導体でほとんどコンピューターみたいなものになっていますから、半導体をめぐる今後の外交になる。エネルギーの外交になりますよとずっと言っていますけれども、それと併せて議論をしていただければと思います。

 もう一問、中国のお話をしますが、これはさきの国会からずっと言っておりますけれども、中国が影響力を及ぼしているのは太平洋の島嶼国も同様でございまして、ソロモン諸島と安全保障条約を中国は結びました。一番最初、冒頭に申し上げたように、台湾を取れば潜水艦が潜水航行したまま太平洋に出ることができるわけでございまして、それも含めて、先を先を考えて、太平洋島嶼国に対して投資もしているし、安全保障条約も締結をしているわけです。中国というのはその辺はすごくうまくできていると思います。

 地球の裏側に衛星用のパラボラアンテナを立てたりとか、彼らは長期的な考えで世界戦略を練ってやってきておりますが、じゃ、我が国が太平洋島嶼国に対してどれだけのコミットをしているか。先国会で大臣とは何回か議論させていただきましたけれども、直近の御活動を御報告願えればと思います。

林国務大臣 今お話がありましたように、太平洋島嶼国地域、これは、自由で開かれたインド太平洋の実現の観点からも極めて重要な地域であります。

 一方、近年、中国による太平洋島嶼国への関与、これも今お話があったように増大をしてきておりまして、我が国としては強い関心を持って関連の動向をフォローしております。

 我が国は従来から、太平洋・島サミット、また二国間会談等を通じまして、太平洋島嶼国との間で地域情勢を含めて率直な意見交換を行い、協力を深めております。

 これは前回議論がもしかしたら済んでおるのかもしれませんが、五月に私がフィジー、パラオを訪問いたしました。また、岸田総理が、八月にフィジー、九月にパラオ及びパプアニューギニアの首脳との会談を行っておりまして、関係の強化を確認をしてきております。

 また、この地域の関与を強化する豪州やニュージーランド、アメリカ等々の同志国と連携をいたしまして、本年の九月でございますが、国連のハイレベルウィークに際しましてニューヨークで行われました同志国によるブルーパシフィックにおけるパートナー、この初めての外相会合に出席をしてまいりました。太平洋島嶼国とともに今後の協力について議論を深めたところでございます。

 今後も、日本としては、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けまして、十回目を迎える二〇二四年の太平洋・島サミット、そして、来年に行う外相レベルの中間閣僚会合、さらには、二国間での対話と協力、これを進めていきたいと考えております。

 そして、先ほどのブルーパシフィックにおけるパートナーのように、同志国とも連携しながら、各国のニーズにそれぞれ寄り添う形で、太平洋島嶼国の発展やその一体性、これを力強く支えて、地域全体との関係を強化していきたいと考えております。

鈴木(敦)委員 ニーズに合わせてということですが、中国は太平洋島嶼国に対する投資額が大変多くて、トンガが一・六億ドル、サモアが二・五億ドル、あるいは、バヌアツで一・九億ドルとか、パプアニューギニアなんて三十九億ドルとか、巨額の投資をしているわけでございまして、これも影響力を高めるための一つの方法ですから、我が国もそういった方法を、これは所管ではないと思いますけれども、検討していただければと思います。

 最後に、北朝鮮についてでございますが、防衛省にお伺いしますけれども、我が国が保有しているイージス艦ですけれども、SM3の発射実験を行った例を御説明願います。

木村大臣政務官 お答えいたします。

 SM3ミサイルを使った迎撃射撃は、海上自衛隊のイージス艦のイージス装置に係る試験の一環として、これまで、平成十九年十二月「こんごう」、平成二十年十一月「ちょうかい」、平成二十一年十月「みょうこう」、平成二十二年十月「きりしま」、平成三十年九月「あたご」の五回、海上発射試験を実施しております。

鈴木(敦)委員 実弾で発射したのは十五年も前でございます。一隻につき一発ずつしか撃っておりません。

 これは事前に説明を受けましたが、誘導弾はそれでいいんだ、あとはシミュレーションで何とかするんだということなんですが、私が自衛隊で撃っていた銃も同じですけれども、実際に撃ってみて、それが抑止力につながっている点もありますので、システム上大丈夫ですということではなくて、見せる力というものも防衛省にはお願いをしたいわけでございます。

 そして、最後の質問になりますが、外務大臣に再度お願いするんですけれども、私がせんだっての連合審査会のときにも御提案申し上げたんですが、短波放送ですね。今「しおかぜ」で使っておりますけれども、電波を使った放送というのは有事の際に最も適切で、これが最後の手段になるというものでもございます。

 例えば、トンガ。覚えていらっしゃると思いますけれども、海底火山が噴火して海底ケーブルが断絶をしたので、現地の情報が入らなくて、我が国は哨戒機を飛ばしました。それぐらい、今、通信というのはほとんど全部海底ケーブルなんですね。

 我が国に入ってくる海底ケーブルは大体三十本ぐらいあるわけなんですが、何かの状況で、例えば他国の侵略を受けて海底ケーブルが断絶をするとか、あるいは、島が多い地域でございます、沖縄もそうですし、北海道もそうですけれども、幾つかの海底ケーブルを切るだけで通信を途絶させることが可能な地域なわけですね。現に、それをやった実験をする人たちもいれば、軍事的に海底ケーブルを破壊するという実例もあるわけですから。

 私は、外務省とお話をしていて、この前の質問レクのときにびっくりしたんですけれども、今どきラジオはインターネットで聞くんですと言われたんですね。若い人はそういう考えでよろしいのかもしれませんが、内閣府防災担当も防災のためにラジオを備蓄してくださいと言っているわけじゃないですか。にもかかわらず、外務省の方がインターネットでラジオを聞くんですと。そういう考え方では、とてもじゃないけれども、じゃ、何のために内閣の拉致対が「ふるさとの風」を放送しているのという話になりますよね。「しおかぜ」に関しては、妨害電波が出るぐらいちゃんと効果が出ているにもかかわらず、予算がつかなかったりだとか、不条理なことが多いと思うんですが。

 この短波放送だけに限らず、電波全体を含めても、東日本の震災のとき、海底ケーブルが二十か所ぐらい断絶して修復に四か月かかりました。それだけじゃなくて、もし仮に武力紛争とかになった場合にはもっと多くの通信が断絶する可能性もあるわけですよね。だから、そのときには、仮に他国に侵略を受けて我が国からインターネット経由の通信が全くできなくなったときは、短波放送を使わないと外国に現状を知らせることはできません。

 武器は何とかなるんですよ。ウクライナを見れば分かるじゃないですか。大砲にしろ、ミサイルにしろ、助けてくれと言えれば他国からの供与を受けることも可能ですけれども、助けてくれと言うことすらできなくなったら、もう気がついたら日本はないですよ。

 短波放送は外交手段だと言ったのはそれが理由なんです。他国に対して一方的に通信をさせることができるというのは電波なんです。断絶できないですから。そういう意味でも外務省として放送というものについてもっと関与するべきだと思いますけれども、大臣、お願いします。

林国務大臣 政府といたしましては、我が国の政策や取組、それから立場に対する国際社会の理解と支持を得るための戦略的な対外発信、これを展開してきておりまして、太平洋島嶼国においても、引き続き、様々な手段を活用して戦略的かつ効果的な発信に取り組んでいく考えでございます。

 先日の委員会でもお答えをしたところでございますが、外務省所管ではないものの、短波放送、これは、NHKワールドJAPANが、日本語に加えて、一部の国、地域において多言語での短波放送を実施しております。

 今委員がおっしゃったように、短波放送、無線ということですから、そういった意味で非常に重要なツールである、こう認識をしておりまして、また、この放送が日本に対する理解促進に寄与しているものと認識をしております。

 外務省としても、NHKワールドJAPANと緊密に連携をしてきているところでございます。

鈴木(敦)委員 NHKワールドについてですけれども、放送時間も最盛期に比べたら削減をされているし、使用言語も減っているわけでございます。かつ、ウクライナの紛争が始まったとき、NHKワールドは何分放送したかというと、たった二十分ですよ。それしか放送していないところと緊密に連携をしても余り効果はないわけでして、だから、そこを国と外務省が所管してもっと拡充をしてくださいということを最後にお願い申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

黄川田委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 私は、今月十三日に行われた衆院連合審査会で、質問の冒頭、林外務大臣に、数々の反社会的活動が不法行為と司法に断罪されている統一協会に対する認識を伺いました。

 そこで、本日は、具体的に統一協会の海外宣教の問題について質問します。

 統一協会の海外宣教をめぐっては、全国霊感商法対策弁護士連絡会が政府に対し、これまで繰り返し実態を告発してきました。

 例えば、皆さんにお配りしている配付資料の一枚目、二枚目は、二〇〇一年十二月、外務大臣ほか関係大臣に提出した、宗教法人の解散命令請求を求めた申入れ書であります。そこでは、海外宣教の実態について次のように告発しています。

 「日本人の信用を世界各地でおとしめているのが、世界平和女性連合のボランティアと称して各国で展開している伝道活動です。世界各地に合計二千から三千人の日本人女性が「海外宣教」として派遣されています。彼女らは滞在国ではボランティアと称していますが、実際は統一教会の信者勧誘、合同結婚式参加者の募集活動をしているのです。 このような違法滞在の実情が判って、強制退去を命じられた例は枚挙にいとまがありません。強引な勧誘等のため警察沙汰を起こしたり、現地住民とトラブルになる例も少なくありません。せっかく海外青年協力隊等の若者がつちかった成果(日本への信頼)を、そぎ落としつづけています。 まして、信者の家族にとって、全く会話が通じない国に、幼い子供さえ残して長期間滞在する「海外宣教」活動の指示は、まさに本人の生命の危機、家庭の崩壊をもたらしかねない問題です。」このように述べています。

 全国弁連はそのように告発しているわけですが、林大臣はこうした統一協会の海外宣教の実態についてどう認識されておられるか、お聞きしたいと思います。

林国務大臣 今委員から御指摘のありました二〇〇一年の十二月二十七日付の申入れ書におきまして、外務省に対しては、統一教会信者である多くの韓国人が我が国に入国して信者に違法活動を指示することがないよう、適切に対処するとともに、宣教活動目的で多くの統一教会信者の邦人が、ボランティアと偽って、世界各国に派遣され、在留目的外の活動をなし、また危険な地域に侵入していることに留意し、適切に調査するということを求めていると承知をしております。

 外務省といたしましては、これまでも、邦人保護の観点から、在外公館の領事が中心となって、宗教に関連するものに限らず、在外邦人の方々からの様々な相談に応じて問題の解決を図ってきておりまして、引き続き、在外邦人に対するきめ細やかな支援を継続していきたいと考えております。

穀田委員 一般論はそのとおりなんでしょうけれども、全国弁連も告発しているように、統一協会は、数千人に上る女性信者を、実際は宣教活動が目的にもかかわらず、世界平和女性連合のボランティアと今お話がありましたように偽って、世界各地に派遣し、在留目的外の信者勧誘などを行わせているわけであります。全く言葉も通じない国に長期滞在を強いる海外宣教は、家庭崩壊をもたらし、危険地域に派遣された信者にとっては命の危険にさらされる問題だということを改めて指摘しておかなければならないと思います。

 重大なのは、こうした非人道的な統一協会の活動を政府として称賛し、お墨つきを与えている問題があるということであります。

 そこで、外務省にお聞きします。

 外務省は、アフリカのモザンビークで太陽中学校、高校の理事長を務める人物に対し、二〇一九年度、外務大臣表彰を授与しております。その理由は何ですか。

齋田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、令和元年度外務大臣表彰におきまして、モザンビーク太陽中学、高校を開校し、理事長として運営をしております宝山晶子氏を、モザンビークにおける長年にわたる教育、医療関連活動、これは大変モザンビーク側からも評価をされておったものでございますけれども、これに鑑みて表彰したということでございます。

穀田委員 大臣表彰を授与した当時の外務大臣は誰ですか。

齋田政府参考人 河野太郎外務大臣でございます。

穀田委員 当時の河野大臣によって大臣表彰が授与されたということであります。

 資料の三枚目は、モザンビークの日本大使館がホームページに掲載した大臣表彰の伝達式の資料であります。そこには功績概要とありますよね。大臣表彰を授与した学校の理事長について、同人は、NGO世界平和女性連合の派遣員だと記されています。これは事実ですね。

齋田政府参考人 宝山氏は、世界平和女性連合の派遣員として一九九四年からモザンビークに駐在し、関連活動に従事しているものと認識しております。

穀田委員 事実だと。九四年から派遣されていると。長きにわたって統一協会の関連団体のことを仕事にしていると。つまり、女性連合は統一協会の関連団体であります。その団体の海外派遣員と知った上で功績をたたえる表彰を授与したということになります。

 この女性連合の派遣員が理事長を務めるモザンビークの学校を運営支援している団体は一体どこですか。

齋田政府参考人 世界平和女性連合モザンビーク支部が現地におきましてこの学校の運営を行っており、運営に当たっては同連合からの支援も受けているというふうに認識をしております。

穀田委員 女性連合の支部の支援を受けていると。極めて重大な事実だと思います。

 私は持ってきたんですけれども、これですね、女性連合のホームページには、大臣表彰を受賞したことを記したブログが掲載されています。そこには、モザンビークの学校については、世界平和女性連合、WFWPが運営支援と公言しているわけであります。ですから、今それをお答えになったということで確認してよろしいね。

齋田政府参考人 委員の御指摘のとおりでございます。

穀田委員 指摘のとおりだと。

 つまり、河野大臣による大臣表彰は、統一協会の関連団体である女性連合が運営支援する学校で理事長を務める女性連合の派遣員に対し、その功績をたたえて授与したということであります。統一協会の関連団体の活動に当時の河野大臣が大臣表彰を与え、称賛していたという重大問題であります。

 女性連合が統一協会の関連団体であることは、外務省も大臣表彰を授与する前から十分把握していたはずではありませんか。

齋田政府参考人 お答え申し上げます。

 当時、外務本省といたしましては、本件授賞の判断に当たりまして、NGO世界平和女性連合がいわゆる旧統一教会の関連団体であるということは認識をしておりませんでした。

穀田委員 本省としてはとわざわざつけ加えるところが微妙だわね。

 ということは、現地は掌握していたということ。

齋田政府参考人 御質問を受けまして、昨日、現地のモザンビーク大使館に確認をいたしましたところ、恐らく当時の担当者は認識をしておっただろうということでございました。

穀田委員 事は極めて重大じゃないですか。

 現地は認識していたと。本省は知らなかったと。私が質問をするということを受けて確かめたと。昨日来たときには、大体、現地時間がどうのこうのと言って、モザンビークなんて昼間でっせ。それで、どうやって言っているか分からんとか言って、よう言うわと後で思っていたけれども、そこでたしなめてもしゃあないから黙っとったけど。

 そやけど、現地は知っていた、本省は知らなんだということがあってええのか。どうですか。

齋田政府参考人 お答え申し上げます。

 当時、現地は知っていて、本省はそれについて認識をしていなかったということのそごの理由につきましては、昨日までにお調べできておりません。申し訳ございません。

 いずれにしましても、外務省といたしましては、この宝山氏が、モザンビークでの二十五年以上にわたる教育、医療関係活動を行い、日本とモザンビークの二国間の相互理解の促進に貢献したこと、そして、それがモザンビーク政府側からも高い評価を受けているということを勘案いたしまして、この宝山氏個人に対して授賞を決定したということでございます。

穀田委員 そんな理屈は通りませんで。だって、こういう問題を警告しているのがこの申入れ書じゃありませんか。偽ってやっていると。そういうことについて、個人の活動だとか、現地、つまりモザンビークが称賛しているだの、その話をしていたんじゃ駄目ですよ。

 ということは、この大臣表彰を行うに当たってそのことを確認していなかったということになるじゃないですか。

 女性連合がホームページで公開した、これですね、海外ボランティア活動の隔年報告書があります。これを見ると、モザンビークの学校など各地で行っている活動とともに、これですね、これは誰かすぐ分かりますわな、巻頭ページには統一協会の文鮮明総裁と妻の韓鶴子総裁の写真が掲載され、二人が女性連合の創設者と説明しているわけであります。

 このホームページで公開された報告書一つ確認するだけでも、女性連合が統一協会の関連団体であることは一目瞭然ではありませんか。

 そこで、今そう言ったよね、現地は分かっておったと。現地の報告がなかったということでいいんですね。二つ言ってください。

齋田政府参考人 正確に確認をしておらないわけでございますけれども、現地の一部は承知をしていた、しかしながら本省として当時認識をしていなかったということでございますので、現地から本省にそのような報告はなかったというふうに考えます。

穀田委員 そういうふうに現地に責任を負わせたらあきまへんで。そんなもの、表彰するというのは本省が責任を持っているわけじゃないですか。現地が責任を持っているわけじゃないですよ、こんなこと。誰がやっているんですか、表彰は。大臣の表彰でしょうが。

 女性連合の派遣員である理事長に大臣表彰を授与する以上、女性連合がどういう団体なのか、事前に調べないはずがないんですよ、本来。統一協会の関連団体と知った上で授与したとしか考えられません。

 大体、こういうときに現地の責任にするなんてもってのほかと言わなくちゃならぬ。そういうことについて知らなかった自分らは申し訳なかったと言うのが筋じゃないですか。

 では、次にもう一つ行きましょう。

 これは、トゥルーピース、雑誌があります。二〇一四年八月号には、韓鶴子総裁が韓国の拠点施設で行った女性連合の海外派遣二十周年記念特別集会という内容が掲載されています。集会にはモザンビークの学校の理事長も出席し、現地の活動を報告しております。それが資料の四枚目です。

 その理事長が次のように述べている。「つねに六百数十人が学校プロジェクトに関わっています。そのため真の父母様の自叙伝も、一日で六百冊以上を配布することができました。また、韓国の先生が自叙伝をモザンビークに送ってくださり、そのおかげでたくさんの自叙伝を配布することができました。当校の卒業生で、大学入学後に教会員になり、CARPに所属し、祝福を受けた人もいます。」理事長はこのように報告しています。

 つまり、モザンビークの学校では、教育と称して、実際は、生徒に対し文鮮明や韓鶴子の自叙伝を大量に配布するなど、宣教活動が行われているわけであります。その結果、卒業後に、今この文書に書いているように、統一協会の信者になった者や、大学で原理研究会に加わった者、集団結婚式に参加した者なども出ているわけです。

 林大臣、河野大臣による大臣表彰は、こうした海外宣教にお墨つきを与えたことになるのではありませんか。

林国務大臣 今、この資料四というものを見させていただきました。先ほど、現地と本省の間での事実関係を必ずしも詳細に全て把握をしているわけではない、こういう答弁でございましたが、このことも含めて、事実関係をしっかりまずは把握をさせたいというふうに思っております。

穀田委員 事実関係を把握したいと。それは約束していただいたと言っていいですね。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、事実関係をしっかりと把握をさせたいと思っております。

穀田委員 理事長の報告書には、配付資料にあるように、見ていただいたら分かります、これですね、「真のお父様の自叙伝をもらい、喜ぶ学生達」との説明つきで、教室内で文鮮明総裁の書籍を手に掲げる学生たちの写真が掲載されています。まさに海外宣教が行われていることを裏づけています。

 大臣、世界平和女性連合は、大臣表彰でお墨つきを得たことを最大限に利用しています。これまで、国内では、モザンビークの学校の運営支援と称して、各地でチャリティー行事などの資金集めまで行っています。その最大の売りがこの大臣表彰なんですね。

 実際、女性連合は、先週二十日に出した公式見解、今日持ってきましたけれども、これですね、これでは自らを正当化する主張を展開しています。そこでもどう言っているか。「日本の外務大臣表彰を受賞し、私たちの活動がベスト・プラクティスと認められ」たと強調しているのであります。こんなお墨つきを与えた外務省の責任は極めて大きいと言わなければなりません。

 岸田総理は、この間の質疑で、統一協会による被害について、様々な形で政府には情報として入っていたわけで、それを今日まで放置したことは、政府として深刻に受け止めなければならないと答弁されました。

 大臣、そうであるならば、女性連合の活動を称賛した大臣表彰を直ちに取り消すということが筋ではありませんか。

林国務大臣 今委員から御指摘があったことも含めまして、先ほど申し上げました資料の四等々、それからまた現地とのやり取り等、まだ最終的に確定をしておらないような答弁でございましたので、まずは、そういう経緯、事実関係をしっかり確認して、どういうふうに対処すべきか検討したいと思います。

穀田委員 検討するということなので、二段階ですよね。調査をする、検討するということだと。

 私は、今回の統一協会に関わる問題でいうと、政治家の個人の方々が広告塔としての役割を果たしたという問題は極めて重大だ。それと同時に、自民党自身が党組織としてやはり様々な癒着があり、この問題も極めて重要だと私たちは指摘をしてまいりました。

 しかし、今回の問題は、全国弁連の申入れ書でまさに様々な形で政府には情報として入っていたわけで、まさに、一番最初にお示ししたこの資料は政府には入っていたわけですよね。二十年前から指摘しているわけですよ。それには大臣が、もう一つの申入れ書の一番前、それには入っているわけですよ。

 となると、今総理大臣が言っている、様々な形で政府には情報として入っていたわけで、それを今日まで放置したことは深刻に受け止めなければならないということでの一定の反省の弁がありました。私は、まさに答弁そのものが、今このことが問われていると思うんですね。

 つまり、個々の政治家が行った、自民党としてやったというだけじゃなくて、政府が外交活動の中でこういう形で統一協会を称賛したという新たな事実はゆるがせにできないということだと思うんです。そういう立場から調査するということでよろしいですね。

林国務大臣 今御指摘のありました岸田総理の御答弁の趣旨もしっかり踏まえて、経緯、事実関係の確認をしたいと思います。

穀田委員 改めて私は、大臣表彰の取消し、そして、今度は、今調査をするとおっしゃいましたので、その調査結果を公表するということでよろしいですね。

林国務大臣 まずは、事実関係、経緯を確認をさせていただきたいと思います。

穀田委員 さっきから確認は聞いてまっせ。確認したら、それを公表するのが筋でしょう。だって、これほど大問題になって、しかも、そごがあった。それから、そのことについて知らなかったという本省の見解もある。この事態に対して総理大臣の発言もある。それは政府の問題だという形になってきたとすれば、単に調査しましたでは済まない。公表するということが極めて当然だということを述べて、私の質問を終わります。

     ――――◇―――――

黄川田委員長 次に、本日付託になりました日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣林芳正君。

    ―――――――――――――

 日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

林国務大臣 ただいま議題となりました日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定に基づくアメリカ合衆国からの牛肉についての農産品セーフガード措置が令和三年三月に適用されたことを受けて、アメリカ合衆国政府との間で、現行協定に関連して作成された両政府間の交換公文上の義務に基づき当該措置の適用の条件を修正するための協議を行ってきました。その結果、令和四年六月二日にワシントンにおいて、我が方駐アメリカ合衆国大使と先方合衆国通商代表との間でこの議定書の署名が行われました。

 この議定書は、現行協定の内容を部分的に改正するものであり、協定附属書1に定めるアメリカ合衆国からの牛肉についての農産品セーフガード措置の適用の条件を修正するものです。

 この議定書の締結により、アメリカ合衆国からの牛肉についての農産品セーフガード措置が新たな仕組みの下で運用されることとなり、セーフガード制度の目的である輸入の急増への適切な対応を引き続き確保するとともに、日米経済関係の一層の発展を促すことが期待されます。

 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。

 何とぞ、御審議の上、本件につき速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

黄川田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る二十八日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十二分散会


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