衆議院

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第4号 令和4年10月28日(金曜日)

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令和四年十月二十八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 黄川田仁志君

   理事 小田原 潔君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 中川 郁子君 理事 西銘恒三郎君

   理事 源馬謙太郎君 理事 徳永 久志君

   理事 和田有一朗君 理事 吉田 宣弘君

      秋本 真利君    伊藤信太郎君

      石川 昭政君    上杉謙太郎君

      城内  実君    熊田 裕通君

      島尻安伊子君    新谷 正義君

      鈴木 貴子君    鈴木 隼人君

      高木  啓君    辻  清人君

      中村 裕之君    平沢 勝栄君

      務台 俊介君    青山 大人君

      梅谷  守君    神谷  裕君

      篠原  豪君    松原  仁君

      青柳 仁士君    漆間 譲司君

      杉本 和巳君    金城 泰邦君

      鈴木  敦君    穀田 恵二君

      田村 貴昭君    吉良 州司君

    …………………………………

   外務大臣         林  芳正君

   総務副大臣        尾身 朝子君

   外務副大臣        山田 賢司君

   農林水産副大臣      野中  厚君

   内閣府大臣政務官     中野 英幸君

   法務大臣政務官      高見 康裕君

   外務大臣政務官      秋本 真利君

   外務大臣政務官      高木  啓君

   外務大臣政務官      吉川ゆうみ君

   農林水産大臣政務官    角田 秀穂君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  平井 康夫君

   政府参考人

   (内閣官房TPP等政府対策本部審議官)      谷村 栄二君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 宮坂 祐介君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 早川 智之君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局参事官)            新発田龍史君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 三橋 一彦君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 松井 信憲君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   志水 史雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石月 英雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 實生 泰介君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中村 和彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 宮本 新吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 池上 正喜君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 片平  聡君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    鯰  博行君

   政府参考人

   (外務省国際協力局長)  遠藤 和也君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    安藤 俊英君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房輸出促進審議官)       山口  靖君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           伏見 啓二君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房参事官)           坂  勝浩君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難部長)            渡邉 保範君

   外務委員会専門員     大野雄一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十八日

 辞任         補欠選任

  伊藤信太郎君     務台 俊介君

  城内  実君     石川 昭政君

  新藤 義孝君     新谷 正義君

  青山 大人君     神谷  裕君

  篠原  豪君     梅谷  守君

  青柳 仁士君     漆間 譲司君

  穀田 恵二君     田村 貴昭君

同日

 辞任         補欠選任

  石川 昭政君     中村 裕之君

  新谷 正義君     新藤 義孝君

  務台 俊介君     伊藤信太郎君

  梅谷  守君     篠原  豪君

  神谷  裕君     青山 大人君

  漆間 譲司君     青柳 仁士君

  田村 貴昭君     穀田 恵二君

同日

 辞任         補欠選任

  中村 裕之君     城内  実君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一号)


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     ――――◇―――――

黄川田委員長 これより会議を開きます。

 日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長志水史雄君、大臣官房審議官石月英雄君、大臣官房審議官實生泰介君、大臣官房審議官中村和彦君、大臣官房参事官宮本新吾君、大臣官房参事官池上正喜君、大臣官房参事官片平聡君、経済局長鯰博行君、国際協力局長遠藤和也君、領事局長安藤俊英君、内閣官房内閣審議官平井康夫君、TPP等政府対策本部審議官谷村栄二君、内閣府大臣官房審議官宮坂祐介君、警察庁長官官房審議官早川智之君、金融庁総合政策局参事官新発田龍史君、総務省大臣官房審議官三橋一彦君、法務省大臣官房審議官松井信憲君、農林水産省大臣官房輸出促進審議官山口靖君、大臣官房審議官伏見啓二君、大臣官房参事官坂勝浩君、海上保安庁警備救難部長渡邉保範君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

黄川田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

黄川田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。上杉謙太郎君。

上杉委員 おはようございます。自民党の上杉謙太郎でございます。

 質問の機会をいただきまして、理事の先生方に感謝申し上げたいと思います。

 今日は、日米貿易協定の改正議定書についてということであります。

 牛肉に関してでありますが、私は福島県選出の議員でもありますので、地元は、黒毛和牛を始め、国内産牛肉の生産者がたくさんおります。そういった視点も含めまして質問をさせていただこうと思います。外務省と農水省さんに今日はお世話になりたいと思います。

 この議定書でありますが、二〇一九年、そして二〇年の一月一日から発効して、オーストラリアの方で干ばつがあった影響でそちらの輸入が途絶え、そしてアメリカの方が輸入が増え、結果、セーフガード発動ということになったわけであります。

 今日は最初の質問でありますので、まずは、この改正議定書を締結するに至った経緯、また概要について、外務省から御説明いただきたいと思います。

鯰政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇二〇年一月一日の日米貿易協定発効以来、日米間では同協定に従って貿易が行われてきましたけれども、二〇二一年三月に、米国産牛肉の輸入数量が同協定における二〇二〇年度のセーフガード措置の発動基準数量に達し、同措置が適用されたことを受けまして、同協定に関連する日米政府間の交換公文に基づき、同措置の適用の条件の修正に関する協議を開始いたしました。

 米国と協議を重ねた結果、二〇二二年三月二十四日に日米政府間で実質合意に至り、六月二日、日本時間では三日になりますが、に本改正議定書に署名をいたしました。

 本議定書は、米国産牛肉の発動に係る新たな仕組みについて定めたものでございます。

 具体的には、次の三つの条件を全て満たした場合にセーフガード措置が取られる仕組みとすることを定めております。

 第一に、米国産牛肉の輸入数量が、日米貿易協定附属書1に定める各年度のセーフガード発動水準を超えること。第二に、四年目、すなわち二〇二二年度以降について、米国及び環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定、CPTPP締約国からの合計輸入数量が、CPTPPに定める各年度の発動水準を超えること。そして第三に、四年目から九年目まで、すなわち二〇二二年から二〇二七年度について、米国産牛肉の輸入数量が前年度の輸入実績を超えることでございます。

上杉委員 御説明ありがとうございます。

 追加でいろいろ決まったことがあって、簡単に言うと、CPTPPの枠内で、日本の輸入の方は総量は変わらないわけでありまして、仮にアメリカの基準があっても、CPTPPの範囲内であればオーケーだということで、全体としては、国内の生産者を守るというようなことになっているというふうに思いますけれども、また、この議定書の早期締結が非常に大事だと私も考えておりますが、大臣の方からもひとつ御答弁いただきたいと思います。

 政務官時代に大変お世話になって、ありがとうございました。是非答弁をよろしくお願いします。

林国務大臣 本議定書ですが、日米間の合意に基づきまして二〇二〇年の一月に発効した日米貿易協定の牛肉セーフガード措置の適用の条件、これを修正するものでございます。

 修正された条件の下での同措置の運用を速やかに開始し、もって日米経済関係の一層の発展を促すためにも、本議定書を早期に締結することが重要だというふうに考えております。

上杉委員 ありがとうございます。

 追加で外務省にお伺いしたいと思いますが、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、CPTPPの発動水準が今回のセーフガードの一つの適用の条件として取り入れられているということでありますけれども、もう少しここについて御説明いただけますでしょうか。

鯰政府参考人 CPTPP発動水準につきましては、当初のTPP協定の下で米国も含めて合意した枠組みと同様のものでございまして、今回の日米協議におきまして、TPPの範囲内という我が国の基本的な方針を米側が受け入れて、盛り込むことにしたということでございます。

 この枠組みは、政府として、国内生産への影響を可能な限り抑えるという観点から、最善の結果を得られるよう対応するという考えの下、米国単独水準の大幅な引上げを求める米国との間で、約一年にわたり粘り強く交渉した結果として合意したものであり、全体として、TPPの範囲内と言い得る内容と考えてございます。

上杉委員 ありがとうございます。

 この交渉に当たっては、本当に外務省さん、農水省さんは懸命に努力していただいたんだというふうに思います。国内の生産者また産業を守るために一生懸命やってくれたというふうに思っておりますので、本当に感謝をしたいというふうに思います。

 輸入に関して、守るということもそうでありますけれども、やはり攻めの方も大事でありまして、ちょっと踏み込んでまた御質問したいと思いますが、今度は農水省さんにお伺いしたいと思います。

 今、農業という点でいえば、和牛を始め国内産牛の国内のマーケットは縮小傾向にあるわけであります、人口減少もしているわけでありまして。これは、牛肉のみならず、米を始め、いろんなものがそうであります。だからこそ、国内マーケットが縮小していく中で、農家の皆さんを助けるためには外に活路を見出さなければならない。だからこそ、農水省も五兆円の目標を出して農林水産品の輸出をしているというところであります。

 そういったときに、日米貿易協定合意時に、別のWTOの方でありますけれども、複数国枠のアクセス、対米輸出に関してこれがあって、元々、日本からアメリカに和牛を輸出するというときは二百トンしかできなかったものが、六万四千八百五トンの別の枠があって、加えると六万五千五トンまで輸出できる、そういう状況になったわけであります。ここをしっかりと使って、日本の縮小マーケットの部分をしっかり外に出していって、輸出をしていくというのが大事であるわけであります。ここ数年これで和牛の輸出はどんどんどんどん増えてきたわけでありますが、ここをしっかりとやっていかないといけない。

 ただ、これは複数国枠でありまして、ブラジルだったり、イギリス始めヨーロッパだったり、みんなそろって全部でこの枠ということでありますから、ある意味、取り合いにもなるということであります。

 ここは、この日米貿易協定と併せて、アメリカ側と交渉して、この六万五千五トンの中からしっかり日本の枠をどんどんつくっていく、増やしていくということが日本の国内の畜産農家、和牛、国産牛の生産者を助けていくことになると思いますけれども、いかように御努力されているか、農水省さんから御答弁いただけますか。

坂政府参考人 お答え申し上げます。

 アメリカのマーケット向けの牛肉、複数国向けの低関税枠、御指摘のとおり六万五千五トンございます。これにつきましては、複数国間での競争になりますので、本年につきましては、三月末に枠がいっぱいになって、その後は通常の関税率で輸出をする必要が出てきているところでございます。

 政府といたしましては、低関税でのアメリカのマーケットへの輸出が行えるよう、様々な機会を捉えて働きかけを行っておるところでございます。

 アメリカへの我が国の牛肉輸出につきましては、関税のほかにも、為替の変動でございますとか現地の消費の動向に左右されるということがございますので、輸出動向につきましてはしっかりと注視していく必要がございますけれども、引き続き働きかけを続けてまいりたいと思っております。

 よろしくお願いいたします。

上杉委員 よろしくお願いしたいというふうに思います。

 何か、早い者勝ちといいますか、年度が替わってから早く輸出した方が勝ちというようなことも聞いております。確かに、アメリカの国内での需要ということもありますから、アメリカ国民から見たら、違う牛肉が食べたいというのもありますけれども、今、日本食ブームでもありますし、和牛はおいしいというふうに評判であるわけであります。実際に、二百トンの枠からどんどん増えて、千トン以上にもなっているというところであります。ここからどんどん増やしていくことが必要だというふうに思うんですね。そこは、やはり本当に外交交渉ですよね。何とか何かしらのルールを作ってもっと枠を増やしていけるように、それは引き続き努力をしていただきたいというふうに思います。これは外務省さんも農水省さんもであります。

 そうやってやって、農水省さんの方で、先ほども申し上げましたけれども、五兆円の輸出目標を掲げている、既に実際に一兆円を今もう超えたわけでありますから、それはアメリカのみならず世界中そうでありますけれども、各国各国具体的に、また品目ごとに、しっかりやっていらっしゃると思いますけれども、もっともっと増やしていってもらいたいというふうに思います。

 もう一つは、今、アメリカへの輸出というのは好機であるというふうに思うんですね。

 例えば、福島選出でありますから、二〇一一年、東日本大震災がありました、原発事故があって、いろいろな福島県産品が輸入規制の対象になりました。今、外務省さんも農水省さんも努力していただいて、私も政務官のときに努力させてもらいましたけれども、残る輸入規制をかけている地域と国が十二まで減りました。

 そういった中で、アメリカについては去年全部撤廃をしてくれたわけであります。確かに、去年の撤廃、残りちょっとというのは、野生のマツタケとか野生キノコ、そういった類いのものでありましたけれども、しかし、輸入の規制が解除されたというのはある意味これは好機ですよね。全部なくなったので、門戸が開放されたので、よし、これから輸出できるぞということであります。

 これは福島県産品のみならず、対象となっていた県と地域の産品はそうでありますし、やはりそういった意味から、去年アメリカで輸入規制を撤廃したわけでありますから、更にもっともっとこの好機を捉えて農林水産品の輸出をしていかなければならないというふうに考えております。

 農水省としてはこの輸出拡大に向けて今どのように取り組んでいらっしゃるか、御説明いただけますでしょうか。

山口政府参考人 お答え申し上げます。

 本年一月から八月までの農林水産物、食品の輸出総額は八千八百二十六億円、対前年比でプラスの一四・六%となってございます。そのうち、米国向けの輸出額は千三百五十七億円、対前年度比で二七・八%となっております。

 委員御指摘のとおり、まさに、米国が昨年九月に原発事故に伴う日本産食品の輸入規制を撤廃したことから、輸入拡大に向けた機運が高まっているというふうに認識しております。

 このため、農水省といたしましては、本年二月、規制撤廃により輸出可能となった福島県産米を使ったプロモーションイベントを、また、九月には、国連総会に合わせ、岸田総理や林外務大臣にも御出席を賜り、日本食のプロモーションイベントをニューヨークで開催いたしました。

 さらに、本年四月には、米国における輸出支援のためのプラットフォームを立ち上げ、在外公館やジェトロが現地の事業者と協力して、現地発の活動を行っているところであります。

 農水省としては、引き続き、外務省を始め関係省庁と連携し、官民挙げて農産物の輸出拡大に向けた取組を進めてまいりたいと考えております。

上杉委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 林大臣におかれましても、福島県産品のPR等々、様々に御尽力いただいて、本当にありがとうございます。

 この日米貿易協定、輸入の方については、しっかりと締結をして、かつ、国内の生産者を守っていく。仮に超えてしまうことがあったらしっかりセーフガードを発動するということにして、守るべきは守るということ。あとは、外交交渉、貿易交渉によって、攻めの部分、しっかり輸出するところ、ここもちゃんと取っていくということが大事であるというふうに考えておりますので、車の両輪というわけではないですけれども、この議定書についてはしっかりと進めていき、また、攻めの方の部分で、新たにいろいろな機会を通じて輸出の枠を増やしていく、そういった努力をどんどんどんどんしていっていただきたいというふうに思います。

 これからの日本の主たる輸出品目に、牛を始めとして農林水産品と出てくるわけであります。震災以降、福島の復興なくして東北の復興なし、東北の復興なくして日本の再生なしと安倍総理もおっしゃられていたわけであります。しっかりと外務省、農水省が連携してやっていっていただけたらありがたいというふうに思います。お願いをして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

黄川田委員長 次に、金城泰邦君。

金城委員 おはようございます。公明党、金城泰邦でございます。

 それでは、日米貿易協定改正議定書に関する質問をさせていただきます。

 この改正議定書は、現行の日米貿易協定を部分的に改正し、アメリカ合衆国からの牛肉についての農産品セーフガード措置を適用する条件の改正等を行うものであります。

 具体的には、これまで、アメリカ合衆国からの牛肉の合計輸入数量のみが指標とされ、現行の協定の附属書1に定める各年のセーフガード発動水準を超えた場合にセーフガードが発動することになっております。

 改正議定書では、この現行の指標に、新たに、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定、CPTPPの牛肉のセーフガード発動の指標が加えられることになります。アメリカ合衆国からの牛肉の合計輸入数量とCPTPP締約国からの牛肉の合計輸入数量との合計がCPTPPのセーフガード発動基準を超えることが発動の要件となります。

 この発動基準の変更は、日米貿易協定といいながらCPTPPのセーフガード発動基準を用いることになり、理解しにくい制度ではないかと思います。

 そこで、お伺いいたします。

 改正議定書は日本国とアメリカ合衆国の間で締結すると思いますが、締結後にアメリカからの輸入量が急激に増加をして新たなセーフガード発動基準を超えた場合は、アメリカのみならず、CPTPP締約国各国にもセーフガード発動がなされるのか。また、新たなセーフガード発動基準に、何ゆえアメリカ及びCPTPP締約国からの合計輸入数量がCPTPPの発動水準を超過することを組み入れたのでしょうか。

 これについて、外務大臣の御答弁をお願いいたします。

林国務大臣 本議定書でございますが、日米貿易協定に基づき日米のみの間で運用される牛肉セーフガード措置の適用の条件、これを修正するものでございまして、CPTPPにおける同措置の条件に何ら変更は生じないわけでございます。

 したがって、今委員から御指摘がありました状況におきまして、CPTPP締約国に対して同措置が発動されるということにはならないわけでございます。

 日米の協定へのCPTPP発動水準の導入につきましては、国内生産への影響を可能な限り抑える、そうした観点から、最善の結果を得られるよう対応するという考えの下で、米国単独の発動水準の大幅引上げを求める米国側との間で、約一年にわたって粘り強く交渉をした結果として合意したものでございます。

 このCPTPP発動水準ですが、当初のTPP協定の下で米国も含めて合意した枠組みと同様のものでございまして、TPPの範囲内との我が国の基本方針、これを米側が受け入れたものでございます。

金城委員 ただいま大臣がおっしゃったように、国内の畜産農家の皆様を守るということが非常に大事であるという考えをお伺いできました。

 改正議定書のセーフガード発動基準は、アメリカ合衆国にとっては現行の発動基準より適用が緩やかになるのではないかと思います。今後、アメリカからの輸入量が増えることが想像できます。

 そのような状況に国内の畜産農家は不安に思い、心配しているのではないかと思っておりますが、今回の改正議定書を合意するに当たり、国内畜産農家の意見を聞くとともに、この改正を理解して了解しているのでしょうか。これまでに国内畜産農家の御意見をヒアリングされましたでしょうか。農林水産団体の見解を聴取されたのでしょうか。農林水産大臣政務官に御答弁いただきたいと思います。

角田大臣政務官 まず、今回の合意内容は、TPPの範囲内であり、米国産牛肉の輸入増加を懸念するものではないというふうに考えております。

 この点につきましては、金城委員も御指摘のとおり、特に畜産農家の方々が不安を抱かないよう説明をしていくことは大変重要と考えておりまして、国内の関係者の理解を得るため、合意内容発表の翌日、三月二十五日に生産団体を含めた説明会を開催したほか、それ以降も説明の機会を設けてきたところです。

 その際、生産団体から本合意内容について懸念や反対の声はなく、これらの説明を通じて今回の合意内容に対する理解を得ていると考えております。

金城委員 御答弁ありがとうございます。三月二十五日以降、関係者との意見交換も重ねて、説明もして、特にそういったことに対しての反対の声はなかったという御説明でございました。

 今、畜産農家の声、現場の声についてこのように御答弁いただきましたけれども、条約の交渉はあくまでも外務省の所管であります。外務省は、今御答弁いただいた国内農家の声、団体の意見、現場の状況等をしっかり把握した上でアメリカとの交渉に臨まれたのでしょうか。また外務大臣に御答弁いただきたいと思います。

林国務大臣 牛肉のセーフガード措置の適用の条件の修正に係る日米間の協議に当たりましては、内閣官房や農林水産省と緊密に連携をいたしまして、国内産業への影響を可能な限り抑えるという観点から、最善の結果を得られるよう対応するという考えの下で交渉に臨んだところでございます。

 約一年にわたって粘り強く交渉した結果として、TPPの範囲内と言い得る内容で合意に至ったと考えております。

金城委員 ありがとうございました。

 外務省、農水省、共に情報を連携し合ってこのような条約の締結に取り組まれたことに感謝申し上げたいと思います。

 先ほど来、上杉先生の質問にもございましたように、今回、牛肉に関する貿易協定の改正の議定書でございますが、一方では、やはり、国内の牛肉、畜産農家の方々の支援も同時並行でやっていく。輸入の側面もありますけれども、日本国内として、そういった輸出も一方で考えていかなければいけないだろうと思っております。

 昨日、五年ぶりに鹿児島におきまして全国和牛能力共進会が開催されました。

 これは、五年に一度開催される和牛の品評会ということで、和牛の祭典とも呼ばれております。雄牛や雌牛の体型を審査する種牛の部や肉質を審査する肉牛の部などで好成績を収めることができればブランド力の向上につながるとされておりまして、全国の和牛関係者が重要視する大会でございます。

 この大会の開会式におきまして、地元の塩田知事が、コロナ禍による消費の低迷や不安定な国際情勢による飼料高騰などを踏まえ、和牛の肥育や経営、販売環境は厳しさを増しているということを訴えられたそうでございます。

 我が党、公明党としましても、これまで、飼料価格の高騰で影響を受ける畜産業者を守るため、政府に畜産、酪農経営の負担軽減策を要請などしてまいりました。こういった主張も反映されまして、政府は九月、畜産業者の飼料コスト上昇分を補填する緊急対策を実施すると発表されております。

 このような形で、今、国内の畜産農家の方々を取り巻く環境というのは厳しい中にあって、その中にあって、こういった議定書の改正もあるわけですけれども、岸田総理大臣もこの日の共進会に参加をされまして、稲作、畜産農家が連携した国産飼料の供給、利用拡大、また、畜産農家、肥料メーカーが連携した堆肥の肥料利用拡大、また、牛肉輸出のための高度な衛生管理施設の整備への支援を盛り込む等々を述べられたそうでございます。

 このような国内の情勢の渦中にあって、こういった改正が今回なされます。それで、これまでTPPの議論の中で、TPP参加に対して国内農業対策を実施するとして、政府は、収益力向上に取り組む畜産経営体に、必要な機械、施設の整備等を支援してきました。

 今回の改正議定書合意によりアメリカ合衆国からの牛肉輸入量が増えることがあるとすると、畜産農家、酪農農家に対する支援が必要と考えます。輸入牛肉に対抗するための対策の一つとして、国内産牛肉の輸出を一層推進するべきと考えます。

 私の地元沖縄では、今回の共進会でも、史上初、四位に入賞したということで、地元の畜産農家も大変に喜んでいる状況でございます。

 そういった中、沖縄県では、まだ地元の方では、牛肉の輸出向けHACCP対応の施設がございません。そういったこともございまして、農林水産省は国内産牛肉の輸出を増加させる対策をしっかり支援されることを望みますが、農林水産大臣政務官の御見解をお伺いしたいと思います。

角田大臣政務官 二〇三〇年の牛肉輸出目標三千六百億円の達成に向け、農林水産省といたしましても、輸出に対応できる加工流通施設の整備を推進しているところです。また、施設整備完了後、迅速に認定が行われるよう、農林水産省及び厚生労働省が食肉事業者等に対して施設整備の検討段階から助言できる体制を既に構築をしているところです。

 個別の具体案件については、まずは県庁と御相談いただければと思いますが、国としても、牛肉輸出に向けて助言等を行い、必要な後押しをしていきたい、このように考えております。

金城委員 政務官、御答弁ありがとうございました。

 今回の議定書の改正も、やはり、アメリカとの交渉の中で、いかに国内の畜産農家を守るかということが大事であるということを、先ほど来、外務大臣からも御見解を述べていただきました。

 そういった形で、国内においては、農水省においても今後輸出向けの取組もしっかりと後押ししていただいて、輸入輸出、共に併せて、政府としてしっかりと国内の畜産農家の方々を支援していく方向にあるということを今回確認できたと思います。

 今後も支援をしっかりとやっていただきますようよろしくお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

黄川田委員長 次に、徳永久志君。

徳永委員 おはようございます。立憲民主党の徳永久志です。

 本論に入る前に、ちょっと個人的なことも含めて質問をさせていただきます。

 私、大学時代からずっとおつき合いをしているハイチの人がおります。定期的に連絡を取り合って近況を報告し合ったりとか、随分じっこんとさせていただいているんですが、この秋ぐらいからなかなか連絡が取れなくなって、とうとう音信不通という状況になってしまいました。一体何事だろうと思っていたら、ちょうど外務省のプレスリリースを目にしまして、十月二十三日付でハイチの日本大使館を一時的に閉鎖をしたというようなリリースを見まして、大変驚いたところでもあります。

 既にハイチ全体に退避勧告を出しているということも承知をしていますが、今ハイチはどのような情勢になっていて、そしてどのような御判断で一時閉鎖という重い決断をされたのかについて伺います。

中村政府参考人 お答えいたします。

 ハイチでは、長引く政情不安、これに加えまして、首都圏や主要都市におきまして、暴力行為を伴うデモが断続的に発生しております。特に、武装集団によりまして、誘拐などの犯罪行為が頻発している状況でございます。また、武装集団が石油製品の国内流通を妨害しておりまして、深刻な燃料不足に直面しています。その結果、水の供給を含みます生活インフラが麻痺しつつありまして、機能停止が懸念される状況となっているということです。

 こうした状況を踏まえまして、ただいまございましたとおり、現地時間十月二十三日をもちましてハイチの首都ポルトープランスの在ハイチ日本国大使館を一時閉鎖いたしまして、同大使館の業務を在ドミニカ共和国日本国大使館内の臨時事務所に移転したところでございます。現在は、こちらの臨時事務所から邦人保護業務等を継続しておる、こういう状況でございます。

徳永委員 武装集団がばっこしているという大変な状況かというふうに思います。

 そうした中で、ハイチに在住をしておられる日本人の方々の状況はどうなっているんでしょうか。あるいは、情報を的確に伝達をする取組というのもなされているのかどうか。その辺り、お聞かせください。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 政府といたしましては、かねてよりハイチの在留邦人の安全確保を最優先に取り組んできておりまして、ハイチの治安情勢の悪化に伴いまして、在ハイチ大使館から領事メールを累次発出して注意喚起を行うとともに、危険情報を段階的に見直し、十月十四日には、ハイチ全土の危険情報をレベル4、退避勧告に引き上げまして、同国に滞在する邦人に直ちに退避するよう呼びかけております。

 十月二十七日時点において確認されております在留邦人数は、現地に生活基盤がある方など、ごく少数、十名未満となってございます。ドミニカ共和国の臨時事務所は在留邦人の方々と連絡を取り合ってございまして、現在までに、在留邦人の生命身体に被害が及んでいるとの情報には接しておりません。

 政府といたしましては、引き続き、ドミニカ共和国内の臨時事務所で邦人保護業務等を継続いたしまして、邦人と緊密に連絡を取りつつ、邦人の安全確保等に最大限取り組んでまいりたいと考えております。

徳永委員 現地の日本人の方というのは十人未満ということでもありますけれども、数は決して多いというわけではありませんが、それでもやはり不安な日々を送っておられるんだろうというふうに思いますので、是非、正確な情報伝達と、それから邦人保護という観点でお取組を続けていただきたいというふうに思います。

 そして、このハイチの情勢について、ここ最近の国連安保理では珍しく、この武装勢力のリーダーというか親玉というかに制裁を科す決議が採択をされています。

 こうした安保理の決議を受けて、日本としても、まさにこうした治安回復に向けた取組というものを是非ハイチにおいても行っていただきたいなと。アフガニスタン等では警察官の教育という部分でも大きな力を発揮したわけでありますから、そうしたノウハウも生かしながら、ハイチの治安回復に向けての取組を是非お願いをしたいのですが、御答弁をいただきます。

秋本大臣政務官 我が国は、中南米最貧国でありますハイチの経済発展を後押しするために、社会基盤体制の強化という対ハイチ援助の基本方針に基づきまして、保健、教育、農業、食料、防災等の分野を中心に支援を行ってきております。

 委員御指摘の治安回復につきましては、ハイチが直面する喫緊の課題であります。経済発展の前提となるものでもあります。我が国は、こうした観点から、ハイチ国家警察の機能強化に取り組んできておりまして、昨年十二月には、消防車を四台、救急車を三台供与いたしました。また、本年一月には、当時の副大臣がカナダ政府主催のハイチ情勢に関する閣僚会合に出席し、ハイチ情勢の改善に向けて国際社会が連携していくことで一致をしております。

 我が国といたしましては、引き続き、国家警察の強化支援等を始め、ハイチの治安確保に向けて、安定化に向けた協力を実施していくつもりでございます。

 以上です。

徳永委員 国連安保理決議まであるわけですから、是非、なお一層強い取組をお願いをしたいというふうに思います。

 それでは、本題であります日米貿易協定改正議定書について伺ってまいります。

 ちょっとその前段で、この貿易協定の審議が二〇一九年、国会でずっとされてまいりましたので、そのおさらいの意味も込めて、何問かお聞きをしていきたいと思っております。

 二〇一九年に、この日米貿易協定、国会で審議されておった際に、いろいろな問題点が指摘をされ、中には、これは日本にとって大変不利な協定だ、あるいは、これは不平等だというような指摘が再三にわたってなされました。それに対して、当時の茂木外務大臣は、日米双方にとってウィン・ウィンかつバランスの取れた協定になっているということを繰り返し述べてこられました。また、当時の安倍総理も、我が国にとってまさに国益にかなう結果が得られたと国会で答弁をされておられます。

 まず、先ほども申し上げましたが、当時の議論がどのようなものであったかというおさらいの意味も兼ねまして、当時の外務省の判断として、何をもって茂木外務大臣にウィン・ウィンの協定だと言わしめたのか、この辺について林大臣にお聞きします。

林国務大臣 日米貿易協定に係る日米間の交渉でございますが、まさに国益と国益がぶつかり合う非常に厳しいものであったわけですが、CPTPPまた日・EU・EPA、これが既に発効している中で、他国に劣後しない状況を早期に実現したい、これがアメリカの立場でありまして、一方、農林水産品については、過去の経済連携協定の内容が最大限とする、この日本の立場、こうした立場の中で、最終的な一致点として日米貿易協定が締結されたと承知をしております。

 日本の農林水産品についてでございますが、全て過去の経済連携協定の範囲内であり、これまでの貿易交渉でも常に焦点となってまいりました米は調製品を含めて完全除外、また林産品、水産品、さらにはTPPワイド関税割当て対象の三十三品目など、全く譲許していないところでございます。

 一方、工業品については、日本企業の輸出関心が高く、貿易量も多い品目を中心に、早期の関税撤廃、削減が実現したところでございます。

 自動車及び自動車部品につきましては、更なる交渉による関税撤廃で合意したほか、米通商拡大法二百三十二条の追加関税を発動しないこと、数量制限、輸出自主規制等の措置は求めないこと、これを米側に明確に確認をしたところでございます。

 こうしたことから、政府としては、日米貿易協定は日米双方にとってウィン・ウィンかつバランスの取れた協定であるというふうに考えております。

徳永委員 日米貿易協定は二〇二〇年一月に発効をしました。二年弱が経過をして、今日に至っておるわけであります。

 そこで、もう一度お聞きをします。二〇二二年十月二十八日、今日現在において、この協定、ウィン・ウィンだとまだおっしゃるのかどうかということも確認をさせてください。

林国務大臣 日米貿易協定は、二〇二〇年一月の発効以降、日米双方向の貿易を促進し、我が国経済の更なる成長のみならず、自由で公正なルールに基づく世界経済の発展にも大きく貢献してきていると考えております。

 日米貿易協定が日米双方にとってウィン・ウィンかつバランスの取れた協定であるという考えは、現在でも変わっておらないところでございます。

徳永委員 もちろん、協定そのものの文言とか、あるいはそれに付随する交換公文とか、あるいは日米の共同声明等々でうたわれているのを総合的に文字面を合わせていくと、ウィン・ウィンと言えなくもないんだろうとは思います。

 ただ、私の認識としても、あるいは当時の国会審議の認識といたしましても、日米貿易協定は、アメリカが重視する牛肉や豚肉などの日本の農産品の関税をTPP並みに引き下げる、その一方で、TPPにあった日本の自動車及び自動車部品の対米輸出関税の撤廃が実現されて初めてウィン・ウィンと呼べるものではないかということであります。関税撤廃ができて初めてウィン・ウィンだというふうに胸が張れるものだという認識を私は持っておりますし、また、当時の国会審議でもそのような議論が盛んになされたことは、大臣も御記憶がおありだろうというふうに思います。

 そこで、確認の意味を込めて、自動車及び自動車部品の関税撤廃について現状はどうなっているんですか、御説明ください。

鯰政府参考人 日米貿易協定におきまして、自動車・自動車部品については、関税撤廃がなされることを前提に、具体的な撤廃時期等について交渉が行われることになっております。

 この交渉についてですけれども、二〇一九年九月の日米貿易協定妥結時の日米首脳間の共同声明におきまして、今後の交渉については、どの分野を交渉するのか、まずはその対象を日米間で協議するということになっており、現状、交渉の範囲、スコープを決めるための協議が続けられているということでございます。

 我が国といたしましては、引き続き、自動車分野を念頭に、米側に協議の進展を求めていく。相手があることでございますけれども、二〇一九年九月の日米共同声明等を踏まえ、適切なあらゆる機会を捉えながら、米国政府としっかりと協議を続けていくということでございます。

徳永委員 ちょっと今の御答弁は、後からまとめてまた議論させていただきます。

 ちょっとここで、私の理解が正しいのかどうかの確認をさせてください。

 日米貿易協定は、自動車及び自動車部品について、関税の撤廃がなされることを前提に交渉が行われると理解をしています。つまり、関税撤廃は日米両国で合意をされている、前提となっている、あとは撤廃する時期を交渉して決めるのだ、こう理解をしているのですが、大枠としてそれでよろしいですか。

鯰政府参考人 委員御指摘のとおりでございます。日米貿易協定におきまして、自動車・自動車部品につきましては、関税撤廃がなされることを前提に、具体的な撤廃時期等について交渉が行われるということになってございます。

徳永委員 それでは、この日米貿易協定は、二〇二〇年に発効する際に、そうしたその後の様々な関税撤廃にまつわる交渉、協議といったものを行って、そしてかつ、それらを終了する、結論を出す時期など、スケジュールが決まっていったと思っていますが、この交渉、協議のスケジュールはどのように決まっていったのか、外務省、お知らせください。

鯰政府参考人 二〇一九年九月の日米貿易協定交渉妥結時の共同声明におきまして、今後の交渉については、どの分野を交渉するのか、まずその対象を日米間で協議するということで、先ほど答弁申し上げたとおりでございますが、この共同声明には、併せて、日米両国は、日米貿易協定の発効後、四か月以内に協議を終える意図であるということが書かれてございます。

 この四か月以内に協議を終える意図ということは、四か月以内に交渉の結論を出すということではなくて、日米間でどの分野を交渉するかについての協議を終える目途を示したものであり、その協議が終わった後に日米間の交渉が行われるということになってございました。

 我が国としては、引き続き、この共同声明等を踏まえ、米国政府と適切な機会を捉えながらしっかりと協議を続けていくという所存でございます。

徳永委員 ということは、現状を教えてください。

 二〇二〇年に発効した後、どの分野、どの範囲、どれぐらいの範囲で協議を行うのかを四か月以内に決めるのだということですよね。ということなので、じゃ、これは四か月はおろか、もう二年弱たっているので、もうそこの辺りの議論は終わっているということなのか、いやいや、今継続中ですというのか、あるいは、まだ交渉すら、テーブルに着けていないというのか、その辺りの事実関係を教えてください。

鯰政府参考人 四か月以内に協議を終えるというのは、目途ということを示したものでございました。その後、日米協定全体に関わる交渉の範囲を決めるための協議は、まだ終わっておりません。

 その背景といたしまして、米国でバイデン政権に交代してから通商政策の大幅な見直しが行われており、米国内の競争力を高めるための投資を行うまでの間は、新たな貿易協定は結ばない方針であると理解しております。そのような中で、米国としては、日米貿易協定に関しましても、今後の交渉に向けた日米協議をまとめられる段階に至っていないという事情がございます。

徳永委員 事情はるるおっしゃったので理解しなくもありませんが、確認ですが、それでは、どの範囲、どの分野について議論をしていくのかの絞り込みの協議を今やっているという理解でよろしいですか。

鯰政府参考人 申し上げました協議は、断続的に続けてきているということでございます。

徳永委員 どの分野、どの範囲を協議をしていくのかを、今、交渉を断続的に行っているということですよね。

 その前段で、私はお聞きしましたよね、自動車と自動車部品の関税撤廃は前提となっている、それらはもう日米で合意をされているということであるのに、これはまだ交渉の段階で、まだ自動車及び自動車部品を協議の対象にするということが、この二〇二〇年発効以降の、四か月というふうに決められたその協議の中では、まだ明示的に日米で合意をされていないという状況ですか。

鯰政府参考人 御答弁申し上げましたとおり、日米貿易協定におきまして、自動車・自動車部品につきましては、関税撤廃がなされることを前提に、具体的な撤廃時期等についての交渉を行っていく。その前提としての、どの範囲で交渉するかについての協議がずっと続けられてきているということでございます。

徳永委員 じゃ、今の答弁を私なりに解釈をしますと、自動車及び自動車部品の関税撤廃は合意をされていて、その前提はもう既に十分にお互いの合意事項となって、ただ、自動車及び自動車部品については大変範囲が広いので、その自動車及び自動車部品の範囲の中での絞り込みの作業をやっているのだ、議論をやっているのだという理解でいいですか。

鯰政府参考人 交渉の範囲についての協議を行ってきているということでございます。

徳永委員 交渉の範囲の中の協議、ちょっと全く理解できないんですが、もうちょっと具体的に教えてください。

鯰政府参考人 答弁、繰り返しになってしまうかもしれませんけれども、具体的な撤廃時期等についての交渉、この交渉の範囲をどうするかということについての協議をしてきているということでございます。

黄川田委員長 もう一回お願いします。

鯰政府参考人 繰り返しで恐縮でございますけれども、日米貿易協定におきまして、関税撤廃がなされることを前提に、その具体的な撤廃時期等についての交渉を行うということになっていまして、その交渉の範囲をどうするかということについての協議を行ってきているということでございます。

徳永委員 撤廃の時期を議論をする、その範囲を交渉するというのは何なんですか。

 もうちょっと、だから、関税撤廃の時期を交渉しているのだということなら分かりますよ。関税撤廃の時期の範囲、ああ、何年以内とかそういうことですか。二千X年何月という決め打ちではなくて、今後十年、今後五年という、その範囲のことをおっしゃっているんですか。

鯰政府参考人 ただいま、お尋ねの自動車・自動車部品についてのお答えをしてまいりましたけれども、日米貿易協定の今後の在り方につきましての交渉の範囲、この中に自動車・自動車部品の関税の撤廃についての時期等についても含まれているわけでございますけれども、それについての協議を行ってきているということでございます。

徳永委員 もちろん、自動車関連だけではなくて、ほかの物品のこともあるんだろうと思いますよ。

 私が聞いているのは自動車・自動車部品に関してのことで、今、これは関税撤廃の時期についての議論がなされているのか、いやいや、まだまだその対象範囲の絞り込みの中で、自動車・自動車部品というのは、日本側は上げようとしているけれども、なかなかアメリカ側がそれを受けないんだ、そんな状況という理解なんですか。

鯰政府参考人 撤廃時期等についての交渉が行われることにはなっているんですけれども、その前段として、日米協定の今後の在り方についての協議の範囲についての、交渉の範囲についての協議を行ってきているということでございます。

徳永委員 日米貿易協定の今後の範囲についてといったら、これは全体をひっくり返す話ですか。

 大臣、今までのやり取りを聞いておられて、ちょっと何か整理をしていただけませんか。

林国務大臣 局長がるる答弁してきたところだと思いますけれども、前提は、自動車・自動車部品については先ほど局長が申し上げたとおりでございまして、このスコープというのは、日米貿易協定全体の中でどこからどこまでを範囲にするのかということで、当然、その中には自動車・自動車部品が含まれるわけですが、それでは、それ以外のところをどうするのかという、この交渉の範囲を決めていくということで、そのための協議をするということになっているということだと思います。

徳永委員 これからの交渉の、どの分野のどういったところを交渉の範囲として捉えていくのかという部分の協議をしている、その中に自動車及び自動車部品も入っているという理解でいいんですよね。そうしたら、その交渉の中で自動車・自動車部品が外れてしまう、そういったことも理屈としては成り立つわけですけれども、それはそういうことでいいんですか。

鯰政府参考人 自動車・自動車部品につきましては、関税撤廃がなされることを前提に、もう既になっておりますので、これが外れるということはないということでございます。

徳永委員 ちょっとここに時間をかけてしまってもあれなんですが、交渉の範囲を絞り込む協議を行っていただいていて、それに加えて、自動車及び自動車部品の関税撤廃についてはその中から外れることは断じてないという御答弁をいただいたというふうに理解をしていますので、どうかそういった形で進められることを是非ともお願いをしたいと思います。

 この二年で、今現在、この段階ですよね。まだ絞り込めるところまでは日米で合意に至っていないということなんですけれども、しっかりとやられているんだろうというふうに信じますよ。やっておられるんだろうと思います。

 ただ、例えば、日米首脳会談とか日米外相会談とか、あるいは事務方の実務者協議などで、この自動車の関税の話をどの程度提起を一貫してされてきているのかなという、ちょっと疑問があるんです。党の政調会とかで様々に、外務省の方から、日米首脳会談あるいは外相会談、こういう会談がありましたといって紙ベースで御報告をいただきますけれども、例えば、アメリカのTPPへの復帰を促したというような文言は目にしたことがあるんですけれども、自動車関税の話はなかなか目にした記憶がないんです。

 どの程度提起をされ続けておられるのか、そういった部分について、なかなか詳細にはおっしゃっていただけないのは十分理解をしますので、言っていただける範囲で、大臣、お願いできますでしょうか。

林国務大臣 委員おっしゃったように、いつ、誰が、どのようなと詳細にはなかなかお答えしづらいところもございますが、日米貿易協定の今後の交渉でございますが、二〇一九年の九月の日米共同声明等を踏まえて、米国政府とは様々な機会に協議をしてきております。交渉事であり、相手があることではありますけれども、今後も、適切なあらゆる機会を捉えながら、米国政府としっかり協議を続けていきたいと考えております。

徳永委員 それで、引き続いて交渉をするということでありますけれども、先ほど局長の方からもお話がございましたが、アメリカのバイデン大統領は、アメリカの国内の競争力を強化するまでは新たな貿易協定は結ばないとの方針を打ち出したということであります。これはつまり、競争力が強化をされない限り、競争力を弱める可能性のある関税撤廃などは行わないと言っているに等しいのではないかと私は受け止めているんです。

 こうした方針を打ち出しているアメリカ、これは下手をすると交渉のテーブルにすらもう着かないのではないかというような危惧をするわけなんですけれども、林大臣、関税撤廃をかち取る交渉が行える見通しは立っているんでしょうか。

林国務大臣 今、徳永委員からお話がありましたように、バイデン政権に交代してから通商政策の大幅な見直しが行われまして、米国内の競争力を高めるための投資を行うまでの間は新たな貿易協定は結ばない方針である、これは理解をしておるわけでございます。そのような中で、米国としては、日米貿易協定に関しても今後の交渉に向けた日米協議をまとめられる段階に至っていない、こういう事情があると考えております。

 我が国としては、引き続き、今御議論していただきました自動車部品を念頭に置いて、米側に協議の進展を求めていくわけでございます。交渉事であり、相手があることではありますけれども、二〇一九年九月の日米共同声明に明記をされておるわけでございますから、これら等を踏まえて、適切に、あらゆる機会を捉えながら、米国政府としっかり協議を続けてまいりたいと考えております。

徳永委員 かなり険しい道のりが予想をされるわけですけれども、是非期待を申し上げたいというふうに思っています。

 そこで、一つ懸念事項を申し上げますので、お願いをしたいんですが、今現在、日米貿易協定の規定に基づいて、牛肉を始めとする農産品は関税が引き下げられています。牛肉は、今回の改正のきっかけとなったように、セーフガードが発動されなければならないほど入ってきています。ある意味、日本側は既にカードを切ってしまっています。そうしたときに、自動車関税の議論のためにアメリカと交渉する際に、アメリカから新たなカードを求められることも十分に考えられるのではないかということを大変心配をするものであります。

 こうした場合、政府としては頑として受け付けない、貿易協定締結の段階から自動車関税の撤廃というようなものは合意されていたはずじゃないかといって、断固たる姿勢を示してほしいというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

林国務大臣 まさに委員おっしゃるとおりでございまして、先ほども申し上げました一九年の九月の日米共同声明、これがあるわけでございますので、これに基づいてしっかりと協議を続けていきたいと思っております。

 いずれにいたしましても、我が国の国益に反するような合意を行うつもりはないということを申し上げておきたいと思います。

徳永委員 畜産業者を始めとする農業関係の皆さんは、自動車の関税撤廃を果実としてかち取るから、牛肉などの関税引下げに応じていただきました、国益にプラスになるのだからと。今、それが履行をされていない、実現がされていない状況に私も大変心苦しく思っています。

 この貿易協定は日本の農業に少なからず影響を与えています。アメリカ産牛肉の関税率は、協定発効前の三八・五%から九%にまで段階的に引き下げられる。これはもう確実に引き下げられている。にもかかわらず、主力の輸出品である自動車と自動車部品には関税が残ったまま。自動車の関税が撤廃されなければ、日本の関税削減額はアメリカの四倍に上るとの民間の試算もあるわけです。このような、現状、不平等な状況というものを一刻も早く是正をしていかなければならないということは強く求めておきたいと思います。

 ここまで議論をさせていただいて、外務省の方々もあるいは林大臣も、もしかしたら、またまた批判ばかりというようなお感じを持っておられるのかもしれませんけれども、外交交渉は政府の専権事項ですから、我々、立法府、国会の人間は手出し、口出しできないんです。ですから、何とか自動車の関税撤廃をかち取っていただけるようにお尻をたたいているという理解を是非していただきたいというふうに思うんです。

 大臣、最後に決意のほどをお願いします。

林国務大臣 私も農水大臣のときにこの基になるTPPの交渉があったわけでございますが、こうして国会でいろいろ御議論がある、あのときは決議もありましたけれども、実はそれを盾にして交渉をするということは当然あるわけでございまして、たくさんたたいていただければいただけるほど交渉は有利に進められるという側面もございますので、いろんな御意見を賜れればというふうに思っております。

徳永委員 たたいていただければいただくほどとおっしゃっていただきましたので、これからも加減しながらやっていきますので、御理解をいただいておきたいというふうに思います。

 それでは、今回の牛肉のセーフガード措置についての質問に入らせていただきます。

 この交渉は結構、私、タフな交渉だったんだろうと思います。基準の引上げを抑えたい日本と引き上げたいアメリカとの対立は激しかったというふうに思います。ゆえに、交渉も一年を優に超えたということであります。

 こうしたことでありますから、かなりの決意と覚悟を持って、大臣、交渉に臨まれたんだというふうに思いますけれども、簡単で結構です、こうしたタフな交渉が予想されるものに対してどのような方針で臨まれたのか、お聞きします。

林国務大臣 本議定書でございますが、政府として、やはり国内生産への影響を可能な限り抑えるという観点から、最善な結果を得られるように対応するという考えの下で、米国単独発動水準の大幅な引上げ、これを求める米国側との間で、約一年にわたりまして粘り強く協議を行ったところでございます。

徳永委員 そこで、今回の改正のきっかけとなったのはいわゆる二〇二〇年度の米国産牛肉のセーフガード措置が適用されたことでありますけれども、これは、今回、新たな仕組みで、三つの条件全てを満たすことが新たに求められるということでありますけれども、仮定の話にはお答えできませんとおっしゃらずに、現実の数字の話ですから答えていただきたいんですけれども、今回提案されたこの仕組みが元々あったとするならば、二〇二〇年度にセーフガードは発動はされていなかったという理解をしていますが、正しいですか、農水省。

鯰政府参考人 過去の状況に関して、特定の仮定を設定した場合にどうかということについてお答えするのは大変難しゅうございますけれども、御質問ですので、一定の単純化を前提にあえてお答えをするとすれば、単純に二〇二〇年度の輸入実績を本議定書に定めるセーフガードの適用の条件を過去に遡って適用すると仮定して計算した場合、米国及びCPTPP締約国からの合計輸入量はCPTPP発動水準を超えるという条件を満たさないということになります。

 ただし、二〇二〇年度の輸入統計は、事業者があくまでも現行の日米貿易協定に基づくセーフガードの仕組みを前提として輸入を行った結果の数値でございまして、当時、本議定書の下での仕組みが運用されていたと仮定した場合においても、事業者が同様に輸入を行ったかどうかは不明でございます。

 このように、過去の状況に特定の仮定を設定して議論するのはなかなか難しい、大変難しいということでございます。

徳永委員 単純に、素人目で見ると、発動されなかったんだろうなというふうには思います。

 そうなると、これは実質的に、今回新たな仕組みが取り入れられれば、セーフガードが発動がしにくくなって日本が不利な場合が出てくるのではないかというような指摘がちょっとあちらこちらに見受けられますが、農水省はどう反論されますでしょうか。

坂政府参考人 お答え申し上げます。

 改正後の本議定書の枠組みの中で実際のセーフガードが発動されるかどうなのかということにつきましては、その年におきます各輸出国の生産の状況、それから為替、実需を踏まえた貿易の状況にも左右されてまいりますので、一概に評価を行うことは非常に困難であるというふうに考えております。

 その上で、今回の合意内容につきましては、米国単独の発動水準を当初のとおりに維持した上で、合計輸入数量、これにつきましては、アメリカからの輸入とCPTPP加入国からの輸入量の合計輸入数量、これを当初のTPP協定の発動水準として適用することで、実質的に当初のTPP協定の下でのセーフガードと同様の効果を持つものであるというふうに考えております。

徳永委員 この牛肉のセーフガード措置については、本日はその分野の専門家であります神谷先生に助っ人として質問に立っていただきますので、多くをそちらに譲りたいというふうに思いますが、あと一問だけお願いをします。

 三月二十五日の記者会見で、当時の金子農水大臣が、今回の合意内容が現行のTPPの範囲内にとどまることから、これによる国内の産地への新たな影響は特段ないというふうに断言しておられます。これは、今、大臣は替わられたと思いますが、同様の認識なのか。

 また、セーフガード適用の条件として三つ全てが求められていますが、TPP協定のセーフガード発動条件とは別の条件が二つ追加をされているわけです。それでもTPPの範囲内だと説明する根拠は何なのか。この辺を併せて農水省にお答えを願います。

坂政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、本年三月二十五日の金子前農林水産大臣の記者会見での発言でございます。

 委員御指摘のとおり、金子前大臣から、今回の合意内容は、発動水準がTPPの範囲内にとどまることから、これによる国内産地への新たな影響は特段ないと考えているという御発言がございました。この内容につきましては、農林水産省といたしましては、現在もこの考えについて変わりはございません。

 それから、セーフガードの発動要件につきまして、当初のものと比較いたしまして二つの新たな要件が加えられたということについて、これをTPPの範囲内としている理由でございます。

 まず、今回の合意内容につきましては、元々の要件、アメリカ単独での発動水準、これにつきましては従来の低い水準を維持しているところでございます。

 あわせまして、アメリカそれからCPTPP締約国からの合計の輸入量、これについては、当初のTPP協定の下で、アメリカを含んだ形で、日本の主要なパートナーからの牛肉の輸入量、これが全体として合計した場合にどれだけ日本の国内産業に影響を与えるかということを加味して設定した水準、これがアメリカとの間でも新たに適用されるということになります。

 さらに、二〇二七年度までの間でございますけれども、米国からの輸入量が前年度を上回る場合に発動するという要件が加えられたということでございますが、セーフガードについては、輸入が急増する場合に国内産業を守るという制度でございますので、これについても交渉の結果得られたものであるというふうに考えております。

 それらを考え合わせますと、このような合意については、米国が離脱する前の当初のTPP協定に近い形の要件を設定したものでございますので、それを評価いたしまして、TPPの範囲内と言えるものだというふうに考えております。

徳永委員 それで、今の御説明で理解はするんですけれども、アメリカは、トランプ政権下でTPPから離脱をしていて、先ほど申し上げた、バイデン政権も新たな貿易協定は結ばないという方針を打ち出している中で、TPPと関連した内容を今回アメリカ側が受け入れた、これは一定の意味を持つのではないか、あるいは持たせなければならないのではないか、このことをもって、今回の合意をてこに、アメリカに対しTPPへの復帰を促す何かきっかけになりはしないかというふうに思うんですけれども、これは通告していませんけれども、大臣、もし何かお考えがあれば、お述べいただければと思います。

林国務大臣 アメリカに対しましては、国務長官、また商務長官、そしてUSTR、それぞれと機会があるたびにTPPへの早期復帰を直接促してきておるところでございまして、どういうことが一番効き目があるのかということをここでつまびらかにはなかなかしにくいところがございますが、今委員のお話のあったようなこともいろいろ参考にさせていただきながら、戦略的にTPPへの早期復帰を求めていきたいと思っております。

徳永委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

黄川田委員長 次に、松原仁君。

松原委員 今の徳永委員の質問というのは非常に重要なことを言っているわけでありますが、これは通告もしておりませんし、質問ではありませんが、一つは、この日米の貿易の様々な取決めの中で、自動車に関してアメリカが日本側に折れる、その代わり、日本側が農産物等においてはアメリカの要望に一定折れるという、バーターと言っていいかどうか分からないけれども、そういう関係が恐らくあった、外務省のディールの中に。そう思います。

 自動車に関しては、前提で双方の国が認めているにもかかわらずずっと引き延ばしになっている。大変な問題だと思うんですね。

 なぜかというと、自動車の世界は、これからいわゆる電気自動車の世界に入っていく。ガソリンの自動車等を含めて世界の中で禁止をされるかもしれないという将来的な動きがあるときに、日本の強みは電気自動車ではないわけでありまして、ガソリン自動車における強みを発揮することもなく、引き延ばしになって、結局、餅を食えないで終わってしまう。

 私は、外務省は物すごい日本に対する国益の不利を与えたということで、そこまでまだ行っていませんが、既に自動車業界は大きく電気自動車に移っていることで、我々がメリットを享受する時間軸を外務省の交渉でおびただしく失っているということは明確に申し上げておいて、国益を守っていないということは指摘をしておきたいと思っております。

 その上で、今回の、セーフガードの在り方をもう一回見直す、この見直しのときに、本来であれば、外務省はアメリカに対して、見直しをするならば、当然、今言った範囲の問題等々、そこを突破してもアメリカは更に時間の引き延ばしをやってきた可能性がありますけれども、少なくとも、その四か月後に設定されるべき中身をきちっと、これが条件だ、セーフガードをもう一回いじくるならばこれが条件だ、これぐらいのディールをしなかったら、全くやられっ放しであると私は思っております。

 ちょっと総括的な印象論でありますが、林大臣、感想を教えてください。

林国務大臣 今委員からるる御指摘があったところでございます。

 感想というのもなかなか申し上げにくいところはございますが、具体的なやり取りについては、ここで、このときにこう言った、あのときにこう言われた、こういうことはなかなか申し上げにくいところでございますが、先ほど徳永委員の御質問にお答えしたように、合意事項に入っていることに基づいてしっかりと協議を続けていきたい、こういうふうに考えております。

松原委員 非常に残念な答弁でありまして、これだから日本は対米従属と言われ続けてしまうんだろうと私は思います。率直に申し上げたい。

 さて、今回のこの議定書に関してでありますが、日米貿易協定の交換公文において、セーフガードが発動された場合、発動水準を見直すと。先ほどの徳永委員との質疑の中でも、今回の新しいセーフガードの基準だと二年前のセーフガードの発動はなかっただろう、こういう話になっているわけでありますが、こういうどんどん日本側が譲歩するセーフガードの議論をやっていくということは、そして、それが今回作られた経緯は、非常に日本にとってはプラスではない、ウィン・ウィンだと無理に言っているようにも見受けられますが、プラスではないと思っておりまして、アメリカ側から、確かに交渉としてはタフな交渉だったかもしれませんが、今言ったトータルとして考えたときには、全くもって厳しい日本側の立場を改善する努力が不十分だったと思っております。

 日本の国益に、こういったセーフガード措置の見直し、それから、この交渉自体どういうものか、経緯も含めてお答えください。

鯰政府参考人 お答え申し上げます。

 日米貿易協定に関連して作成されました日米政府間の交換公文上、牛肉セーフガード措置が適用された場合に、適用の条件を一層高いものに調整するために協議するということになっております。これは我が国の交換公文上の義務でございます。

 これは、当時、日米貿易協定の交渉の結果として、全体のバランスの中で設けることになったものと認識しております。

 本改正議定書でございますけれども、これにつきまして、政府としては、国内生産への影響を可能な限り抑えるという観点から、最善の結果を得られるよう対応するという考え方の下、米国単独発動水準の大幅な引上げを求める米国側との間で、約一年間にわたり粘り強く協議した結果、TPPの範囲内と言い得る内容で合意したものというふうに認識しております。

 本議定書の締結によりまして、米国産牛肉のセーフガード措置が新たな仕組みの下で運用されることになりますが、セーフガードの目的である対象産品の輸入の急増への適切な対応を引き続き確保するとともに、日米経済関係の一層の発展を促すことが期待されます。

松原委員 そういう答弁をせざるを得ないんだと思っておりますが、要するに、日本側は更なる譲歩をしたというのが、どう考えても常識的に見ればそういうことになってしまうわけであります。

 日本の食料安全保障の観点から今次改正によって我が国はどのような利益があるのか、利益はないんだと私は思っておりますが、利益があるのか。国内畜産農家に対してしかるべく説明をし、そして理解は得られているのか、御質問します。

伏見政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の協議は、日米貿易協定に関連して作成された日米間の交換公文に従い、発動水準を一層高いものに調整するという論点に絞って行われたものであり、日米双方の利益のバランスを図る性質のものではございません。

 その上で、今回の合意内容は、米国単独の発動水準を維持した上で、当初のTPP協定の発動水準を合計輸入数量に適用することで、実質的に当初のTPP協定の下でのセーフガードと同様の効果を持つものと考えております。

 この合意内容について国内の関係者の理解を得るため、合意内容発表の翌日、三月二十五日に生産者団体を含めた説明会を開催したほか、それ以降も説明の機会を設けてきたところでございます。

 その際、生産者団体から本合意内容について懸念や反対の声はなく、これらの説明を通じて今回の合意内容に対する理解を得ていると考えております。

松原委員 農水省はもっと怒った方がいいんですよ、これは。それは、政府の一員だから丸めて丸めて丸めてそういう話をするんだろうけれども、農水省からすれば、このセーフガードを緩和するなんというのは全くもって納得できないと。しかも、経済産業省も、今日来ているかどうか分かりませんが、経産省的には、日本の強みである自動車と部品に関しての関税撤廃が一歩も進んでいないと言っても、それはそうじゃないと言えないような状況であります。農水省はもっと怒るべきだというふうに思っております。

 次の質問に移ります。

 台湾に対して中国が武力統合という可能性を否定しないで今日に至っている、このことについて御質問いたします。

 日本の外務省は、おとといの私の質問でも申し上げましたが、台湾両岸関係をめぐる話は直接の話合いを通じ平和裏に解決されることを望む、こう言っていますが、具体的なイメージを教えてください。

實生政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の点について、そうしたイメージということについて具体的にこの場で日本政府の方から定義するないしは申し上げることというのは差し控えたいというふうに思います。

 委員御指摘のとおり、台湾をめぐる問題については対話により平和的に解決されることを期待するというのが我が方の従来より一致した立場でございます。

松原委員 中国が武力によって台湾を統合する、併合するということは、これは当然我々の、外務省の発想も含めて、日本側の原則とは違うということは明確におっしゃっていただけますか。

實生政府参考人 我が国は、一九七二年、日中共同声明というのがあるわけでございますけれども、これを踏まえ、台湾との関係を非政府間の実務関係として維持していくこと、また、台湾海峡の平和と安定は、日本の安全保障はもとより、国際社会の安定にとっても重要であり、台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待するということをこれまで一貫して表明してきているところでございます。

松原委員 はっきり答えた方がいいんですよ。そうやってはっきり答えないから、日本は発信をしない国と言われてしまう。中国が武力によって台湾を統合するのは我々は認めない、それをなぜ言えないんですか。

 もう一回確認しますが、中国が台湾を武力統一することは日中の共同声明に違反すると、我々の認識として明確に発信するべきだと思いますが、発信できないんですか。大臣、お答えください。

實生政府参考人 恐縮ですが、先ほど申し上げましたとおり、一九七二年、日中共同声明について、これを踏まえて、我々は台湾との関係を非政府間の実務関係として維持していくということとしていて、また、台湾海峡の平和と安定は、日本の安全保障はもとより、国際社会の安定にとって重要であり、台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待するということをこれまで一貫して表明してきているところでございます。

松原委員 大臣もお立場があるので御発言をされないんだろうというふうに思いますけれども、こういった部分でやはりそれなりの発信をしていかないということは、言ってみれば、日本は中国に対して極めて正当な主張もしない国家だと言われるそしりがあると私は思っております。

 台湾問題はそれぐらいにいたしておきまして、次の質問に入ってまいりたいと思います。

 これは、ウクライナ四州をロシアに編入するとプーチンは一方的に主張したわけであります。

 歴史というのは繰り返すというふうな言葉もありますが、独裁者というのは同じようなことを繰り返す要素があると私は承知をしておりまして、かつて、ヒトラー・ドイツがチェコのズデーテン地方に進駐したとき、あのときには彼はこう言ったんですね。チェコにいるドイツ人の人権がまさに大きく損なわれようとしている、いわゆるそこの人たちが抑圧を受けている、したがって我々はズデーテン地方を併合するんだと。当時の映像を見ると、旗を振ってドイツ軍の進駐を狂喜して迎えているドイツ系の住民の映像が載っているわけであります。

 それで結果としてこういった戦端が開かれていったわけでありますが、今回のプーチンのこの四州の独立、二州の独立及び四州の併合というプロセスは、全く歴史としてヒトラーのズデーテン地方に対する進駐とストーリーが一緒だ。つまり、ウクライナにいるロシア人が抑圧を受けている、ヒトラーがチェコにいるドイツ人が抑圧を受けていると言ったのと全く同じレトリックを使っているわけでありますが、この類似性についてどうお考えか、お伺いします。

池上政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のナチス・ドイツによるズデーテン地方併合と申しますのは、ナチス・ドイツがドイツ系住民が多数を占めるチェコスロバキア領ズデーテン地方の自国への帰属を主張いたしまして、一九三八年にこの地方を併合したこと、これを指すものと承知しております。

 第二次世界大戦前と現在とでは国際情勢も国際法体系も異なっておりまして、ズデーテン地方の併合と今回のロシアによるいわゆる併合、これを比較して一概にお答えすることは困難なところがございます。

 その上で申し上げますれば、例えば、ズデーテン地方併合につきましては、一九三八年、英独仏伊首脳によるミュンヘン会議が開催されまして、その場でこのような併合が認められたという経緯がございます。

 これに対しまして、ロシアによるウクライナ一部地域のいわゆる併合では、そのような会議は開催されず、いわゆる住民投票と称する行為が行われ、ロシアが一方的に併合を行った、こういった相違点がございます。

 いずれにいたしましても、ウクライナ一部地域における住民投票と称する行為及びロシアによるこれらの地域の違法な併合は、ウクライナの主権と領土一体性を侵害し、国際法に違反する行為であり、決して認められてはならず、強く非難するものでございます。

松原委員 その理由づけは、全く同じように、そこに住んでいる自国国民が抑圧されている、それを助け出す、そのためにこの行動を起こす。これはヒトラーがズデーテン地方を併合したときの大義名分であります。プーチンの大義名分は、ロシア系住民がその地域において抑圧されていると。全く同じ図式であるということは我々は認識をしておく必要がある。

 そして、今お話があったけれども、ミュンヘン会談においてそれは是認されたという話でありますが、これを認めてしまったことがその後の大変な大戦争、惨禍に及んだということは事実であって、私はその意味において、このプーチンの野心というのをどこでどう抑制するか、確かに極めて難しい議論でありますが、それについては我々はきちっと行動しなければいけない。

 もっと言うならば、同じような独裁的な国家、権威主義の国家に対して我々が明確な議論をし、反発をする、それがこういったロシアの暴挙を食い止める間接的であるけれども有効な手だてであろうと私は思っております。

 したがって、中国のこの間の共産党大会において台湾の武力併合を否定しなかったことに対しては、先ほど私はあえて申し上げましたが、日本は、日中の宣言に違反するものとして我々はそれは断固認めないというふうな発信をすることが、間接的には、こういった様々な議論に関して、世界の平和を、そしてもう一回暴挙になるようなことを抑制する手法だと思っております。是非、林大臣にはお考えをいただきたいというふうに思っております。

 次に、拉致問題についてお伺いをいたします。

 先般の質問でも、時間が十分でありませんでしたので続けませんでしたが、あめとむちといいますか、北朝鮮が拉致について前向きに行動した場合にどういうメリットがあるか、前向きに行動しないときにどういうデメリットがあるか、私は、認定被害者をある程度絞り込んだ上で、これはこの後質問いたしますが、こういう話をしました。

 このメリット、北朝鮮にとって拉致の解決をするそのメリットに関しても、それは日朝平壌宣言その他あるわけでありますが、どういうふうなメリットがあるのか、これは明快にしていく必要があるだろうと思っておりまして、この間は人道支援と考える食料支援、この具体的な手続についてどういうことになるのか、これをこの場で議論することも一つの北朝鮮に対するメッセージになると思っております。お答えください。

實生政府参考人 お答えいたします。

 今後、北朝鮮に向けての支援ということについては、仮定の質問でございまして、また、その方法や手続には様々な可能性があることから、予断を持ってお答えをすることは差し控えたいと思いますが、その上で申し上げれば、例えば、二〇〇四年の八月に我が国から北朝鮮に対して支援を行った際は、世界食糧機関、WFPでございます、国連児童基金、ユニセフ、それから世界保健機構、WHOといった国際機関を通じて食料支援などを行いました。

 北朝鮮に対する対応ということについては、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的解決に向けて何が最も効果的かという観点から不断に検討を行ってきており、今後も検討していく所存でございます。

松原委員 こういった議論を明確にして、北朝鮮側がこのメリットで動くかどうかというのは若干疑問がありますけれども、そういったものもあるんだというのは俎上に上げる必要があると思っております。

 二つ目、制裁であります。

 制裁は最高度の制裁をしていると言っておりますが、まだ不十分である、まだほかに制裁の余地が残されていると前回の質問でも申し上げました。

 朝鮮総連の約三百五十人と言われる中央委員や専属職員の全員を対象とした再入国禁止を実行するということは、これは、それをアナウンスをして行うことがかなりのインパクトがあると考えておりますが、その現実の可能性、こういったものを検討したことがあるのか、お伺いしたい。

實生政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の再入国禁止措置の対象ということについて言えば、関係省庁の情報に基づいて、政府全体として総合的に判断をしてきているところでございます。

 その上で、北朝鮮に対する今後の対応ということについて申し上げれば、先ほども申し上げましたみたいに、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決に向けて何が最も効果的かという観点から今後とも不断に検討していく、そういうことでございます。

松原委員 やはりこの場で、こういったことは考えられるというぐらいの発言をした方が、それは一つの理屈として言っているんだから。

 今、最高幹部に関しては再入国禁止になっている。しかし、三百五十人とも言われている、実数は分かりません、そういった者に対してもそういったことを行う、次の第二段階として。そういう制裁措置の更なる発動というものを明確にしなければ北朝鮮という国は拉致問題解決の俎上にのってこないというのは、我々がこの二十年間で感じていることであります。

 釈迦に説法でありますが、なぜ五人戻ってきたのか。ブッシュ米大統領が悪の枢軸と言って大変な威嚇を加えたことによって、北朝鮮側がそれまでないと言っていた拉致問題を認めて五人戻したというのが我々の認識であります。

 二つ目は、金正恩委員長に対する資産凍結をアメリカは既にやっている。個人制裁。これに対して、特に今言われているのは、更なる核実験等が行われたときには、EUやイギリスやオーストラリアも行う可能性があるんじゃないかと私は思っております。そのときに、更に彼らの国に比べて拉致問題に対して大きな一つの更なる課題を持っている我々の国は、彼らの国が、かの国が金正恩のいわゆる資産凍結を宣言する前に、既にアメリカは宣言しているわけですから、日本もそれを検討し、考える必要があるというふうに思っておりますが、答弁をいただきたい。

實生政府参考人 お答えいたします。

 北朝鮮に対しましては、度重なる核実験や弾道ミサイルの発射等を受け、国連安保理が国連憲章第七章の下で行動し、国連憲章第四十一条に基づく措置を取るとして、これまで累次の安保理決議が採択され、特定品目の輸出入禁止や資金移転防止措置等、極めて厳しい措置が課されてきています。

 これに加えて、我が国自身の措置として、北朝鮮との全ての品目の輸出入禁止等の措置を取ってきており、北朝鮮への人、物、金の流れを厳しく規制する措置を実施してきているところであります。

 その上で、政府としては、こうした状況も踏まえつつ、北朝鮮に対する対応については、これは先ほど来申し上げていることで恐縮でございますけれども、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決に向けて何が最も効果的かという観点から不断に検討してきており、また今後も検討していくということでございます。

松原委員 質問に答えてもらった方がいいと思うんですよ。

 私は、金正恩総書記に対する制裁措置というのを検討するぐらいはやっておかなければならないと、アメリカはやっているんだから、前から言っている。だから、やはり、拉致、核、ミサイルはそれは結構ですよ、ただ、私はこの拉致問題に照準を合わせて言っているわけですが、これを含めて明快な北に対する圧力を増やす議論というのをこういった場では最低限してもらわないと、私は拉致問題はいつまでたっても解決できないと思っています。

 三番目。これは、国連の北朝鮮人権非難決議の提出国。

 かつては日本は、いわゆるペンホルダーというんですかね、提出国としてEUなんかと一緒にやってきていた。それが今日は共同の提案国になっている、提出国をやめてしまっている。私は、提出国に復帰をするべきだ、このように思っておりますが、御意見をいただきたい。

石月政府参考人 お答え申し上げます。

 国連人権理事会における北朝鮮人権状況決議についてのお尋ねがございましたが、拉致問題の解決に向けたメッセージを国際社会が継続して発出することの重要性や、北朝鮮をめぐる諸情勢を総合的に勘案した結果、本年四月に国連人権理事会において採択された北朝鮮人権状況決議については、我が国は共同提案国となりました。

 今後の対応につきましては、現時点で決まっておりませんけれども、我が国として、諸情勢を総合的に勘案しつつ、適切に対応してまいりたいと考えております。

松原委員 要するに、提出国で文案を作る、ペンホルダーというらしいですが、ここに参加をするのか、文案を作るのはEUに任せて、我々は共同提案国になるのか。重みが違うわけであります。本気で政府が拉致問題を解決しようとするならば、これは提出国になるべきじゃないかと私は思っているんですよ、メッセージとして。

 よろしければ、大臣、お答えいただけますか。

林国務大臣 委員も御案内のとおり、二〇一九年の二月に第二回目の米朝首脳会談が行われました。北朝鮮をめぐる諸情勢を総合的に検討した結果、人権理事会における決議案を提出しないこととした経緯がございます。その後、こういう状況になっているわけでございますが。

 今後の北朝鮮人権状況決議への対応、これは決まっていないわけでございますけれども、我が国としては、諸情勢を総合的に勘案しながら、適切に対応してまいりたいと考えております。

松原委員 我々の本気度を、私が担当大臣を終わった後も若干北朝鮮側のエージェントと議論するときに、彼らは我々の本気度を疑っているという議論があるんですよ。これは私にその情報を伝えた人間複数名の勘違いかもしれない。しかし、本気度を疑われているということ自体が、怒りが伝わっていないということがナンセンスでありまして、その意味では、我々はこういったところで本気度を示す必要があるのではないかということを強く申し上げたいと思っております。

 時間が大分巻いてまいりましたので、朝鮮総連への破産申立て、これもメニューとしてある、北朝鮮に対しての制裁メニューはまだまだたくさんあるということをもう一回申し上げて、最大限の制裁をしているというのは真っ赤な間違いであるということをこの際申し上げておきたいと思っております。

 次に、いわゆる認定被害者の拡充という問題についてお伺いしたい。

 警察庁において認定被害者を確定する作業は今どのように進んでいますか。

早川政府参考人 お答えいたします。

 警察におきましては、拉致容疑事案と判断している事案以外にも北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案があるとの認識の下、警察庁に設置されております特別指導班、その体制は十名程度でありますが、この特別指導班が都道府県警察を指導し、所要の捜査、調査を推進しているところでございます。

松原委員 鋭意進めてもらって、松本京子さんは認定されましたが、他の認定被害者を増やすというか、確定をする作業が必要だろうと思っております。

 そうした中で、平成十八年三月八日の予算委員会において、麻生国務大臣が、政府が北朝鮮に対し、平成十八年の日朝包括並行協議の際に特定失踪者三十四名のリストを提出した、こういうふうに言っているわけでありますが、北朝鮮はこれに対してどういうふうな反応をし、現在どうなっているか、お伺いします。

實生政府参考人 お答えいたします。

 当時も、そして現在も政府として北朝鮮との間で様々なやり取りを行ってきてはいますけれども、そうした交渉の内容であるとか現在までの状況、それは、まさに今後の交渉、やり取りに影響を及ぼすおそれがあるということで、明らかにすることは差し控えたいというふうに思います。

 その上で、最重要課題である拉致問題については、まさにその御家族も御高齢となる中で、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、政府として全力で果断に行動していく考えであるということを申し上げたいと思います。

松原委員 このときに、麻生さんの答弁で、「これに対して北朝鮮側は、この協議において、リストだけでは確認できないので、もう少し日本側からの関連情報の提供があれば、関連情報の提供があれば特定失踪者の調査は行う旨の回答」が来ているということでありますが、これについてはいかがですか。

實生政府参考人 御指摘の部分を含め、その後の、では政府が何をしたのかというようなこと、この辺りの日朝間のやり取り、現在に至るまでの状況等は、先ほど申し上げたみたいに、今後に及ぼし得る影響に鑑みて、明らかにすることは差し控えたいと思います。

松原委員 私は、この間、おとといの質問で大臣にも話を申し上げたように、水面下と水面上はあっていいと思う。しかし、これに関しては、一定水面上に出すというのは外交の手法としてあるだろうと思っています、こういうふうに打ち返した。もちろん、横田めぐみさんの骨が偽だったということも当然海外にも言わなきゃいけないだろうし、あの死亡診断書が全部インチキだったということも明確に言わなきゃいけない。そういったことは表に出して北に対して公開質問状を出す、こういうふうなことを全くやらなくて、拉致問題が時間がたてば解決するなんというのは全くあり得ない妄想であるということは、明確にここで申し上げておきたいと思っております。

 次の質問に移りますが、外務省の外交力というのは非常に重要だと思っています。私はキャッチコピーとして、外交は内政を凌駕するという概念をこれからの世界は持つべきだと思う。

 国際間で決まった取決めというのは国内の取決めよりもはるかに強いインパクトを持つということは、林大臣を含めて御案内だと思っております。したがって、言ってみれば、外務大臣というのはある意味で総理大臣を超えているぐらいのポジションだ。国益上それを担っている。だから、全力で、死力を尽くして国益のために汗を流してもらわなければいけないというのは当然の前提であります。外交は内政を凌駕する。

 その上で申し上げますが、今から十年以上前に、拉致のミッションで毎年五月にアメリカに行っていろいろな人と協議をしてきた。そのときの団長は平沼さんだったというふうに記憶をしておりますが、そのときに、行ったときにアメリカの議員にほとんど会えなかった。民間の議員が行ったからということかもしれません。林大臣が行けば、それはきちっと対応するでしょう。

 しかし、民間議員が行ったときに、予定していた議員関係者とほとんど会えなくて、その秘書であるとか、そういう人間に日本の平沼さん以下六人か七人いた国会議員ががん首並べて会って話をする。もちろん、秘書官が無意味だとは言いません。しかし、やはり、かなえの軽重からいって、ちょっと違うんじゃないかと思いました。

 そのとき議論があったのは、アメリカのそういった議員、五百人を超える議員に対してのアプローチが不十分ではないかということであります。

 外務省として、課題や問題が発生する都度に、それに関係する議員に対して働きかけを行うというのは、それは日米貿易交渉でも当然であります。

 しかし、日頃からアメリカの連邦議会の議員等に関係を構築するというのは必要であって、具体的にどういうことかといえば、簡単に言えば、その議員の誕生日には花を持っていく。これは極めて重要だと思いますよ。結婚記念日にはチョコレートを持っていく。第一秘書か第二秘書か分かりませんが、秘書官の誕生日には、チョコレートケーキと花は言ってしまったから、ほかに何かあるかもしれぬ、もっと大きな花をまた持っていく。その秘書官の夫婦の結婚式には何か持っていく。こういうことというのは実は大変に重要なんです。日頃からそういう滑りをよくしておけば、恐らく平沼ミッションで行ったときもそれなりに会えたと思うんですよ。

 私は、そういうふうないわゆる連邦議会の議員との関係構築を行うことが、ロビー活動と言ってもいいんですが、案件があってやるんじゃない、平生からやる。五百人いるんだったら、そういう人間が百人いれば、それはすごい国益になると思っております。

 このことに対して、これはあえて外務大臣の御所見をお伺いしたい。

林国務大臣 外務省といたしましては、現地の大使館や総領事館を通じまして、日頃から広く米国連邦議会議員や州議会議員との関係構築に努めてきておるわけでございます。

 今委員がおっしゃられましたように花束を贈ったりチョコレートケーキを贈ったりしているかどうかはちょっと手元に資料はございませんが、連邦議会議員や州議会議員の訪日、向こうが来られたときに、我が国の経済、社会及び文化への理解を促進する取組を行うとともに、我が国及び国際社会が直面する諸課題について意見交換を行うなど、我が国の立場への理解、支持の獲得に努めてきております。

 先日も、サリバンさんというアラスカの上院議員が来られまして、表敬の御依頼がありましたので、私も旧知の間柄でございましたから、お会いして意見の交換をしたわけでございますが、こういうことも含めて、より多くの議員との友好的かつ建設的な関係、これは委員おっしゃるように非常に大事なことでございますので、人的リソースや予算をしっかり確保して努めてまいりたいと思っております。

松原委員 今、予算を確保してきっちり対応すると。非常に重要な発言だと思っております。

 少なくとも、平沼ミッションで行ったときに想定するだけの議員に会えなかった、私はそう認識している。議員の秘書にしか会えない。しかと言っちゃいけないけれども。こういうことが民間議員外交でも起こらないように、僕は、これはシステマチックに、五百三十人かのアメリカの連邦議員にはシステマチックに、この議員の担当は誰々さん、この議員の担当は誰々さん、それで、最低限二週間に一回ぐらいはその事務所に行って雑談をする。そういうことを組織立ってやるということの重要性は極めて強いと思っておりまして、そのための予算を獲得するという話ですから、非常に期待をしております。

 こうした中で、いわゆる従軍慰安婦の決議がアメリカで上げられたことがありました。マイク・ホンダ議員ですね。このときに、三十九対二か何かで上げられてしまったということであります。

 私は、日本サイドの立場に立って、少なくとも私は、この従軍慰安婦というものは、実際はそういったいわゆる従軍慰安婦はなかったという立場であります。しかし、このことを申し上げるまでもなく、それに対して違う立場であろうと何であろうと、日米がより強固な同盟関係があるにもかかわらずこのような決議が上がること自体は、日本の国益にとって大マイナスであり、我々の先祖に対しても申し訳ない、我々の後世の人に対しても申し訳ない、そういう話になってくると思っているんですが、これは食い止めることができたのか、できなかったのか、その辺はどうなっていたのか、お伺いしたい。

實生政府参考人 御指摘の米国下院における決議ということが二〇〇七年にございました。その具体的な米側とのやり取りについては、説明の相手方との関係等もあるんですけれども、ただ、我々として、こうした問題についての日本政府としての立場、考えということは、その時点において様々な形で様々な関係者に対して働きかけというのはいたしました。

 ただ、残念ながら、結果としてそういうふうな形で決議案が米国の下院で採択されたということ、これについては大変残念だったというふうに思っております。

松原委員 あえて言葉を選ばずに言うならば、外交的な敗北をしたと私は思っております。敗北をした。少なくとも、日本とアメリカとの関係の中で、こういったものをアメリカの連邦議会で採決をされ可決されるというのは、私は日本にとっての物すごい屈辱であると思っております。今の話では、これを何としても阻止をするという努力をしたんだろうけれども、でも、三十九対二かな、二人しか日本側の意向に従った人がいなかった。もっと接戦まで持っていくべきですよ。

 こういうのも含めて、今言った人的なつながりがない、人的なつながりを日常から持つ努力をしないという私は外交的敗北であるというふうに思っております。こういう外交的敗北は、先ほどの日米貿易協定のものも含めて、日本にとっては極めて将来に対して黒い雲を抱かせるものであります。

 もう一点、時間ぎりぎりですが、お伺いします。

 私がブラジルに行ったときに、今から十年ぐらい前ですか、ベレンというところに行きました。ベレンは、これは日本人の入植者三世がいたりして、お会いすると日本人の顔をしている。そのベレンの人たちが、ベレンの総領事館がなくなるという話があって、大反対運動をしていました。何とか残してほしいと。我々日系人がアマゾンの密林を伐採をし、入植をし、植林をし、そして場合によってはアマゾンの密林の中で部落ごと全部死んでしまったところもある、そういうことをやりながらこの地域に日本人の入植が行われた、そのシンボルであるベレンの総領事館がなくなるのはとんでもない、こういう話でありました。

 圧倒的なそういう声があって、そして、このベレンの総領事館は違う形で、細々とは言いませんが残ることになった。しかし、これも明らかに後退であります。

 この質問はまた次回にも行ってまいりますが、私は、こういうふうな、アメリカという、古代ローマでいえば古代ローマ帝国の元老院みたいなものですよ、ここは押さえなきゃいかぬ。しかし、それぞれの地域におけるそういった日本人を支えようとする人たちを押さえなければいけない。そして、日本の側に立って物事を判断し、日本の声を十分に耳を大きくして聞くような議員を、そして首長を、地方議員を、アメリカの中は少なくとも完璧にこれを育て上げる必要があるだろうし、それを、言ってみればアメリカ以外にインドネシアとかたくさん国がありますよ、日本にとって重要な。そこでそういう人たちを意図的につくるということをすることが私は外務省に課せられた大きな国益上の任務だと思っております。

 時間も参りましたので、大臣、一言御所見をお伺いしたい。

黄川田委員長 林外務大臣、答弁は簡潔に願います。

林国務大臣 はい。

 今おっしゃられたように、外交は煎じ詰めれば人と人との関係が基本であると思っておりまして、日本に対して理解とそして共感を持っていただける方をなるべく増やしていく、これは基本的に大変大切なことだと思っております。

松原委員 以上で終わります。

 予算を獲得して頑張ってください。

黄川田委員長 次に、神谷裕君。

神谷委員 立憲民主党、神谷裕でございます。

 本日は、この場に立たせていただいて質問の時間をいただきましたことを感謝申し上げます。

 私は北海道の選出でございます。ふだんは農林水産の方を勉強させていただいております。そんなこともございますし、今回、日米の協定において重要なのは、やはりセーフガード、牛肉の話だというふうに理解をいたしておりまして、もしも問題があるのであれば、当然にその対策、支援も含めてお話を聞きたいし、問題がないにしても、やはりこれこれこういう理由だから問題がないのだということをこの委員会でしっかりとお聞かせをいただいて、最終的にもしも進めるのであれば進めていく、そのことをお願いをしたいと思ってこの場に参りました。

 林大臣はもとより農水政策については造詣が深いということも理解をしておりますし、農林水産の皆さん方の思いもよくよくお分かりの大臣だと思いますので、その辺も含めて御答弁をいただけたらと思う次第でございます。

 早速でございます。先ほど徳永先生からもいろいろるるございました。やはり、協議というか外交交渉というのは、どちらが勝ってどちらが負けてということではなくて、ウィン・ウィンでなければいけませんし、我が国にとっていいこともなければいけない、アメリカにとっていいこともなければいけない、そのあんばいが非常に難しいんだろうというふうに思うわけでございます。今回は牛肉のセーフガードのことが主要な議題となっているわけでございますけれども、私たちにとってこれは本当にウィン・ウィンと呼べるのかなというのが非常に気にかかるところでございます。

 そういったことも含めて、今回の日米貿易協定改正議定書の協議の結果について率直に政府はどう思っておられるのか、その御評価を伺いたいと思いますし、先ほどからあるように、今回の協議の結果、我が国は何を得たのか、そして何を譲ったのか、ここの部分をもう一度明確に御答弁をいただきたいと思います。お願いいたします。

林国務大臣 まず、本議定書に関する日米協議でございますが、この日米貿易協定に関連して作成された日米間の交換公文上の義務に従いまして発動水準を一層高いものに調整する、この点に絞って行ったものでありまして、戦いに例えれば、設定されたリングの中でどれだけ有利に戦うか、こういうことであったというふうに思っておりまして、複数の項目を議論して全体で日米双方の利益のバランスを図るという性質では最初からなかったということをまず申し上げておきたいと思っております。

 その上で、本議定書は、政府として、国内生産への影響を可能な限り抑えるという観点で、最善の結果を得られるように対応する、こうした考えの下で、米国単独発動水準の大幅な引上げを米国から求められていたわけでございますが、これに対しまして、約一年にわたって粘り強く協議した結果、TPPの範囲内と言い得る内容で合意したものでございます。

 本議定書の締結によりまして、米国産牛肉のセーフガード措置が新たな仕組みの下で運用されることになりまして、セーフガードの目的である対象産品の輸入の急増への適切な対応を引き続き確保したということとともに、日米経済関係の一層の発展を促すということが期待されるところでございます。

神谷委員 大臣、ありがとうございます。

 やはりこのリングそのものの問題はあったのかなというふうに私自身は率直に思っているところでございます。

 先ほどお話にありましたように、オートマティカルに今回は協議をしなければいけなかった、セーフガードが超えてしまったということがあって、自動的に高いレベルでというような形でスタートをしたということでございますが、そもそも、この高いレベルというところについても、我々農業サイドの人間からすると非常に違和感のあるところでもございますが、こういうような交換公文の下にスタートをし、御評価としては、守るところまでは守ったんだという御評価なのかもしれませんが、やはり交渉は全体として捉えなければいけないと私も思います。

 先ほど徳永先生からるるありましたとおり、自動車の話もございました。本来であればこの辺も含めて併せて協議をすべきというところが、本来のこの国の外交の在り方として正しかったと思いますし、先ほどの外務省さんからの説明を聞いていても、やはり余り自動車の方は進んでいないようなイメージをどうしてもどうしても受けるというようなところでございます。

 やはりここは、できることであれば、両方そろえて議論をしていただきたかった、協議をしていただきたかったというのが本音のところだと思いますし、恐らく大臣もそんな思いがあるんじゃないかなと、ここはお察しをするわけでございますが。

 ただ、取るべきは実は自動車だけではなくて、牛肉でいいますと、我が国からもしっかり輸出をしようという話がこの間ございました。さらに言うと、当時、安倍総理だったと思いますが、大きな枠を取ったんだというようなことも実はおっしゃっておられたということでございます。

 実際に、我が国からの牛肉輸出の話、可能性は大いにあるということは誰もが気づいているわけでございますが、実際に、例えば低関税枠のところであるとか、ここが、少し問題になっているというか、使えていないんじゃないかというようなことも聞いているところでございます。

 この話はどうなっているかについて改めて伺わせてください。

坂政府参考人 お答え申し上げます。

 アメリカの複数国向けの低関税枠でございますけれども、本年三月末に枠がいっぱいになりまして、関税が通常の関税率に引き上げられたところでございます。

 政府といたしましては、低関税でのアメリカのマーケットへの輸出が行えるよう、様々な機会を捉えて働きかけを行っているところでございます。

 働きかけの詳細につきましては、相手もございますので詳細には申し上げられませんけれども、引き続き、米国への牛肉輸出の拡大を図るべく、働きかけを続けていきたいというふうに考えております。

神谷委員 今のお話ですと、そもそも低関税枠を確保したと言えるのかどうかというところが揺らいできちゃっているんですよね。そもそもの説明において、確かに複数国枠ではあったけれども、それであっても、当時の説明によれば、現行の三百倍の枠を確保したというような政府の言いぶりもあったと思うんです。

 そんな中で、確かに、そういうような協議があって実質的にまたやっておられるのかもしれませんが、ただ、現実には、確保したと言われていたわけですし、実際には、他国がほぼ枠を占めてしまって、今年もですけれども、来年も果たして入れるかどうか、その低関税枠を使えるかどうかも分からないような状況であると聞いているわけでございます。先ほどの自動車の話もそうですけれども、取れるところを取らずして、セーフガード、要は、農家からすれば、譲るところだけ譲るというような姿勢ではやはり困るんです。

 この辺のところ、牛肉を輸出する可能性は大いにある、しかも、この国の政府として輸出を大いにやっていこうじゃないかと言っているわけでございます。その可能性の一番あるところでしっかりとできていない、これは大きな問題だと思うんです。ここをしっかりやっていただきたいと思うんですけれども、もう一度答弁いただけませんか。

坂政府参考人 お答え申し上げます。

 アメリカへの牛肉輸出の低関税枠、委員御指摘のとおり、日米協定締結前は、日本に用意されている国別枠というのは二百トンにすぎなかったわけでございます。交渉の結果、複数国枠と日本向けの枠を統合いたしまして六万五千五トンの低関税枠へのアクセス機会を確保したところでございます。

 市場環境の変化がございまして、本年につきましては、ブラジル産牛肉の輸入急増、これは、豪州が干ばつで牛肉の輸出量が減少して、その間隙をブラジル産牛肉で埋めるといった国際的な牛肉のマーケットの情勢の変化、そういったものもあったところでございますけれども、現在は、その結果として、低関税での輸出というのが三月末限りで行えなくなったところでございます。

 繰り返しになって恐縮でございますけれども、政府といたしましては、引き続き、低関税での輸出ができるよう、アメリカ政府への働きかけを続けてまいりたいというふうに考えております。

神谷委員 やはり取るべきはしっかり取っていただかなきゃいけないというのが実感としてございます。この間の協議、先ほどの自動車もそうです、この牛肉の輸出もそうなんですけれども、思うように我が方の思いが届いていないのではないか、あるいは実現していないのではないか、そこが非常に問題なんじゃないか。

 逆に言うと、今回のセーフガードは頑張っていただきました。それでも、我が国がどこまで譲れるかの話だったように思います。いわばディフェンスの話です。

 やはりオフェンスサイドにもう一回しっかりと軸足を置いてやっていただかなければいけないと思いますし、そこはトータルの協議の中でやっていただかなければならないんですけれども、こういった外交交渉、ここのところやはりディフェンスばかりに見えるんですけれども、そこをしっかりやっていただきたいと思いますし、大臣はきっとその辺の御決意はあると思うので、少しお言葉をいただけますでしょうか。

林国務大臣 まさに神谷委員のおっしゃるように、総合的にオフェンスとディフェンスのバランスをうまく持っていくということは大変大事なことだ、こういうふうに思っております。

 今回の最初のスタートのお話は冒頭したとおりでございますが、これはこれとして、やはり、一般論にはなるんでしょうけれども、あらゆることを総合的に考えながら、我々、自動車ですと経産省と、牛肉ですと農林水産省、またTPP本部というのもございますので、そういうところがしっかりと意思疎通をしながら、全体としてしっかりした考えを持って臨んでいくということは非常に大切なことだというふうに思っておりますし、そういうふうになるように引き続き努力をしてまいりたいと思っております。

神谷委員 ありがとうございます。

 それでは、次の質問というか、関連してなんですけれども、今般の改正議定書によってアメリカ産牛肉の輸入に対するセーフガード措置の適用条件を修正したわけですけれども、今回の協議によってアメリカ産牛肉の輸入に対するセーフガードが発動しにくくなるんじゃないかなということを懸念しております。実際に高いレベルにしていくということでもございますし、そうなるんではないか。

 先ほどの仮定の話ではございましたけれども、今の状況だと、同じ条件であっても発動しないというようなこともございました。ということは、つまり、輸入の急増を抑制しにくくなるということになると思うんですけれども、この際、国内の畜産、酪農への影響を本当にどう分析しておられるのか、どう考えているのか、そこをお聞かせをいただきたいと思います。

伏見政府参考人 お答え申し上げます。

 一概に評価することは難しいと考えておりますが、今回の合意内容は実質的にTPPの範囲内にとどまることから、これらによる国内の畜産、酪農への新たな影響は特段ないと考えております。

神谷委員 発動しにくくなることは間違いないです。その上で、ひょっとすると、もうこれで発動しなくなるんじゃないか、これ以降なくなるんじゃないか、発動しないんじゃないか、そんなことも懸念されるわけです。だから、今回はしっかりその辺のところも、検証もそうですし、協議もしなきゃいけなかったんじゃないかと思うわけでございます。そういったところが、今の話ですと、枠内だからまあ大丈夫なんじゃないかというような話だったと思うんですけれども、やはりそこはしっかりもう一回見ていただきたいと思うんです。

 先ほどおっしゃっていただいたように、環境は変わっています。本当に環境は変わっています。しかも、今の畜産、酪農は本当に環境が悪いです。それはもう一番よく分かっていると思います。資材は上がっています。飼料も上がっています。経営は厳しいです。アメリカの牛肉が入ってきたときにどこが一番影響があるか。それは、御案内のとおり、例えば交雑種であったりホルスタインであったり、そういった国産の牛肉が影響を与えられる。

 そういったところに本当に影響がないと言えるのか、そこはやはり丁寧に見ていかなければいけないと思うんですけれども、そこについて、要は、総体として見るのではなく、実際に影響がある競合するであろうところにどれくらいの影響があるのかというところを丁寧に丁寧に見る必要があると思うんですけれども、もう一回答弁をお願いできますでしょうか。

伏見政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の御指摘のとおり、米国産牛肉に競合するのは国産牛の中でも主に交雑種や乳用種であると考えておりまして、政府としては、それらへの影響を十分考慮した上でアメリカと協議を行ったところでございます。

 その上で、アメリカ単独の発動水準を維持した上で、当初のTPP協定の発動水準を合計輸入数量に適用することで、実質的に当初のTPP協定の下でのセーフガードと同様の効果を持つ結論を得ることができたと考えております。

 このため、しっかり見なさいという委員の御指摘がありましたが、交雑種、乳用種を含めて、国内生産への新たな影響は特段ないと考えております。

神谷委員 そこは、もう一回とは言いませんが、丁寧に是非見ていただきたいと思います。

 環境は変わっています。状況は残念ながら悪くなっていると思っています。そういった中で、本当に影響があるのか、ないのか。

 そしてまた、米国産牛肉が入ることによって、実際、キャップがかかるとは言いませんが、米国産の牛肉の価格に競合しなければいけないわけですから、物がなくなってきても上がるということもなくなってくる、いわば頭打ちになってくるわけですし、こういったところも逆に影響と言えなくはないのではないかと思ったりもするわけでございます。

 実際に、このセーフガードというか、アメリカの牛肉が来る、来ないは別にしても、やはり我が国の酪農、畜産をしっかりと体質を強化していかなければいけない。環境をしっかりよくしていかなきゃいけない。そのことも併せてお願いをしなければいけませんし、また、今回こういったメッセージが出てくる、しかも経営環境が悪くなっている中でメッセージが出てきているわけでございますから、これについて、やはりしっかり農家に対してメッセージを伝えていく必要があると思うんです。また、そういった方、農業者に対して、経営をしっかり支えていくよというメッセージ、併せて、支援も含めてやっていく、そのことについてお話を聞かせていただけないでしょうか。

伏見政府参考人 お答え申し上げます。

 日米貿易協定等に基づく関税削減は今後とも進んでいくことを踏まえまして、農林水産省といたしましては、引き続き、総合的なTPP等関連政策大綱に基づき、畜産物の需給状況を勘案しつつ、畜産クラスター事業を始めとする生産基盤強化の対策を通じ、畜産農家をしっかりと支援していく所存でございます。

神谷委員 是非よろしくお願いします。

 やはり、いろんな外圧もあるかもしれませんが、それが結果としてこの国の体質を強化することもあり得ると思うんです。というよりは、そうしていかなければいけないと思いますので、そういったための支援は是非積極的にやっていただかなければいけないと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。

 また、本来であれば、本協議にも遅れることなく、先ほどからありましたように、CPTPPについても本来であればしっかりと見直していく、そういったことが必要だと思うわけでございますけれども、これについてどうしていくのか、この辺の努力についてもう一回お聞かせをいただきたいと思います。お願いをいたします。

谷村政府参考人 お答えいたします。

 我が国といたしましては、米国及びCPTPP締約国からの牛肉の合計輸入数量がCPTPPのセーフガード発動水準を超える場合に、CPTPP締約国産牛肉にもセーフガードが発動される、このことがTPP妥結時の考え方に照らせば本来の在り方であるというふうに考えているところでございます。

 このような考え方に基づき、オーストラリアを始めとするCPTPP締約国に対してはこれまでも様々な機会に働きかけを行っているところでございますけれども、引き続きこのような取組を継続してまいりたいと考えておるところでございます。

神谷委員 引き続きこれはやっていただかなきゃいけないと思いますし、逆に言いますと、今回、セーフガードのこともそうなんですけれども、本来、アメリカにとってこういったことというのはTPPに入る大きな動機の一つではなかったのかなと思うわけです。とするならば、本来、パッケージでここは交渉をしていただきたいと思いましたし、密接不可分の関連があるということはもう皆さん御存じのとおりでございますから、一方だけ進めるのではなく、全体を俯瞰してやはりやっていただかなきゃいけなかったのではないか。そういった意味で、この議定書の改正、急ぎ過ぎたような気が私にはしてなりません。

 併せて、本来であれば、自動車の話もそうでした、我が国の牛肉の輸出もそうでした、そういったことも総合的にというか、パッケージで解決していただくのが望ましかったのではないかなと思うんですが、逆に、今回の牛肉のことで我々のカードを一つ大きく失ってしまったのではないか、そのことを懸念するわけでございます。

 ただ、いずれにしても、この国の国益、本当に大事でございますので、引き続き、我が国の農家のこともそうでございますけれども、是非御考慮をいただいて外交を進めていただきたい。そのことを申し上げさせていただいて、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

黄川田委員長 次に、和田有一朗君。

和田(有)委員 条約に関しましては、生産者の皆さんにしっかり理解をしてもらえるように要望いたしまして、細かな点に関しては後段の我が会派の杉本先生に譲りまして、私からはその他のことをお伺いしたいと思います。

 今日はいろんな委員会でいろんな質疑がふくそうしているようでございまして、ちょっと順番を、じゃ、済みません、予定どおり質疑を始めます。

 今日、ほかの委員の先生方からも、国益を守るために外交交渉というのはあるんだと。当然のことでございまして、そのことを前提に、私、今日、組み立てさせていただいたんです。どう考えても、実は先ほど松原先生も申し上げた言葉にあったんですが、日本の外交は外交上の敗北続きではないかというふうに私は感ずる部分があります。そういったことを含めてお伺いしていきたい、こう思うんです。

 まず最初は尖閣に関わる話でありまして、前にも、私、尖閣、魚釣島に上陸させていただいた経験についてはお話をしたことがありましたが、今回の大臣のせんだっての所信にも、尖閣諸島情勢を含むことをしっかりと対応するんだというふうな話はありました。そういう中で、今般、新しい法律が整いまして、土地規制に関する法律、いわゆる重要土地利用規制法というものが、審議会を通して土地を指定していくということが示されたわけであります。

 そういう中で、これは私有地に関する話になるわけですけれども、久場島というところがあります、尖閣諸島には。これは私有地です、今でも。私が魚釣島に行ったときは、あのとき魚釣島は実は私有地だったんです。あの以降、大きな議論になって、民主党政権下で国有地になった、買い上げてしまったという経緯がありましたけれども、今でも久場島は私有地であります。

 そうなれば、土地利用規制法の中で注視区域や特別注視区域に入れるべきだと思うんですが、今そういうふうな形に話はどうも進んでいないように見受けられます。その点、どのようになっておりますでしょうか。

中野大臣政務官 御質問にお答えをさせていただきたいと思います。

 去る十月十一日火曜日になりますが、そのときに開催されました第二回土地等利用状況審議会において、政府側から、初回の区域指定の候補として、北海道、青森県、東京都、島根県、長崎県に所在する国境離島等及び重要施設を提示をさせていただきました。

 区域指定につきましては、準備が整ったものから順次実施することとしておりまして、委員御指摘の久場島を始めとする今回提示したもの以外の離島、施設については、区域指定の対象となるかどうかを含め、引き続き検討を進める考えでございますので、御理解をいただきたいと思います。

 以上でございます。

和田(有)委員 引き続き検討していくというんですが、これはもう全くおかしな話でして、本来こういうところを指定をして、海外の、はっきり言えば中国であったり北朝鮮であったり、そういったところの暴挙を許さない、そういう一つのメッセージを出すべきものだと思うんです。

 なぜ、今回指定に、俎上にのっていないんですか。もう一度、その点、なぜかということをお伺いしたいんですが。

中野大臣政務官 尖閣諸島を始め、歴史的にも国際法上も我が国の固有の領土でありますし、現に我が国はこれを有効に支配しているところであります。

 また、国境離島等を含め、今回政府として提示したもの以外の離島、施設については、法の要件や基本方針の内容に照らし評価をし、土地等利用状況審議会の意見を聴取した上で決定していくこととしております。

 地域指定の対象となるかどうかを含め、引き続き検討させていただきますので、よろしくお願いしたいと思います。

和田(有)委員 これも理解できないわけです。曖昧模糊とした、今後検討するとか、審議会の審議を見てとか、そういう問題ではないと私は思うんです。

 そこで、私は、次に、やはり、こういう状況にあって、これは実はひょっとすると外交上の配慮をもってそういうことをしているんじゃないか。要は、はっきり言えば中国に対して忖度をして、こういうことを言えば何か緊張を高めてしまうとか、相手に対して悪いんじゃないかとか、そういう忖度のような外交上の配慮があって今回これを指定していないんじゃないかというふうに勘ぐってしまうんですが、その点についていかがでしょうか。

林国務大臣 重要土地等調査法の初回の区域指定につきましては、ただいま所管する内閣府から答弁したとおりでありまして、今の委員の御指摘は当たらないと考えております。

 その上で申し上げますと、中国は、政治、経済、軍事等、様々な面で国際社会への影響力を増し、それに伴い、様々な難しい諸課題を提起しております。

 また、日中両国間には、様々な可能性とともに、尖閣諸島情勢を含む東シナ海、南シナ海における力による一方的な現状変更の試みや、中国による台湾周辺での一連の軍事行動、特に、日本の排他的経済水域を含む日本近海への弾道ミサイルの着弾を含めて、数多くの課題や懸案、これが存在しております。

 同時に、日中両国は地域と世界の平和と繁栄に対して大きな責任を有しておるわけでございます。

 中国とは、主張すべきは主張し、責任ある行動を求めつつ、諸懸案を含め対話をしっかりと重ね、共通の諸課題については協力するという建設的かつ安定的な日中関係を日中双方の努力で構築していくことが重要であると考えております。

和田(有)委員 政務官、今日は答弁が大変ふくそうしているようで、こちらで退席していただきたいと思いますけれども、けれども、指定は急いでいただきたい。日本の国益上これはもう大変大切な問題ですから。大臣からは、今、外交上のそんな配慮や忖度があって止まっているんじゃないと言うんですから、では、粛々と国内のそういう担当のところで急いでやっていただきたいということを要望いたします。

 どうぞ、次のところへ、退席してください。

 では、次の質問に移りたいと思うんです。

 そこで、今大臣からも出ましたけれども、今、東シナ海あるいは南西諸島で大変緊張感が高まっているわけですね。その中で、せんだってペロシ下院議長が訪台をした後、台湾の周辺で中華人民共和国は軍事演習を行いました。そのときに、この中で日本の排他的経済水域にミサイルが撃ち込まれたということがありました。

 ここで私がお聞きしたいのは、今日どうしても聞いておきたいと思ったのは、所信で、今も言われたように、多くの諸課題があるというふうに言われる中で、こんなことが起こって、そして、そのときに当然いろいろな抗議をしたり対応はしました。

 参考人の方がおられるので、どういう対応をしたか、先にちょっと教えていただけますか。

實生政府参考人 お答えいたします。

 政府としては、まず、八月三日に我が国の近海に中国によって訓練空域が設定された時点で、中国側に外交ルートで重大な懸念を伝達することをいたしました。

 それからさらに、G7の外相声明を発出し、G7として中国への懸念を表明するとともに、台湾海峡の平和及び安定の維持に対するG7各国のコミットメントを改めて確認したところであります。

 さらに、四日、王毅中国外交部長も参加したASEANプラス3の外相会議において、大臣の方から、台湾海峡の平和と安定の重要性を説明するとともに、中国の一連の軍事活動に対する重大な懸念を明確に表明したということであります。

 その後も、東アジア首脳会議の参加国外相会議であるとかASEAN地域フォーラム、ARFの閣僚会合においても、中国の行動を強く非難し、軍事訓練の即刻中止を求めるということをいたしました。

 また、四日、中国が弾道ミサイルを発射した後、同日のうちに、外交ルートで中国側に対して強く非難し、抗議するとともに、出張先で外務大臣はブリンケン国務長官と一緒にいたので、取り急ぎで対面で意思疎通を行った、そこで中国を強く非難することで一致したというようなこともございます。そこの場では、地域の平和と安定のために引き続き緊密に連携していくことを確認したというようなことでございます。

 以上です。

和田(有)委員 聞いていると、単に懸念を示したとか抗議をしたと言うんですけれども、事の事態が本当に意味が分かっているんだろうかと思うんですよ。

 どういうことかといいましたら、あれは、これは防衛省の方に聞くわけでもないし、そういう場でもありませんけれども、彼らは意図的に撃っているわけです。どこにどう着弾させるかということを計算して撃っているわけです。それはなぜかというと、その後に日本はどう対応するかということをシミュレーションしているわけですよ。見ようとしているわけです、どう反応し、どういうふうに抗議をするかというのを。余りにもその抗議が私はお粗末だと思うんです。

 ちゃんと彼らは、角度を変えてどこに撃てばどこに到達する、どういう被害が出るというのを見せているわけです、彼らなりに。それに対して日本はどう反応するかを見ているわけです。それに全く応えているとは思えないんですよ、この抗議の仕方が。

 一歩間違えば、日本の法体系は、今の国際情勢ではこんなことはないでしょうけれども、これは宣戦布告みたいなものですよ。

 これを、何度どう角度を変えてどうしたらどこに落ちるか、何分後にどうなるか。では、それから何分後に日本政府はどういう対応をして、あんたたちはこういうつもりで撃ったんだろうが、俺たちはこうできるよとか、そういうことをやらなきゃいけなかったんです、恐らく。

 ところが、単に、重大な問題だ、抗議しますとか、そういうレベルのものじゃないと思うんです、私は。そういうことが本当に分かっていらっしゃるのか。

 いや、あなたの認識がそれは違うんですよと言われたらそうかも分かりませんけれども、これはやはり外交上本来取るべき対応ができていなかったのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。大臣、どうでしょうか。

林国務大臣 先ほど参考人から答弁いたしましたように、まず、三日に、訓練空域が設定された時点で、中国側に外交ルートで重大な懸念を伝達しております。そして、G7外相声明を発出して、G7として中国への懸念を表明をいたして、台湾海峡の平和及び安定の維持に対するG7各国のコミットメントを改めて確認をしたわけでございます。

 また、これも先ほど答弁があったとおりでありまして、ちょうどASEANプラス3等がございました。この場におりましたので、その場におられたブリンケン米国務長官と取り急ぎで対面で意思疎通を行って、中国を強く非難することで一致をしたということでございますし、地域の平和と安定のために引き続き緊密に連携していくことを確認し、さらに、四日は、日米豪の閣僚級戦略対話においても緊密な連携を確認しておるところでございます。

 引き続き、関係諸国と連携しながら、安全保障分野における様々な対話や交流を通じて、中国に対して、国防政策及び軍事力の透明性向上や国際的な行動規範の遵守、これを働きかけてまいりたいと考えております。

和田(有)委員 おっしゃっていることは分かりますけれども、もう一度お聞きしたいんですけれども、抗議をしたとかいうのはどういう抗議をしたのか、具体的に教えていただけますか。

實生政府参考人 特に、八月四日の我が国EEZを含む我が国近海に向けての複数の弾道ミサイルの発射ということは、我が国の安全保障及び国民の安全に関わる重大な問題であるとともに、地域そして国際社会の平和と安定に重大な影響を与えるものであります。

 外交上のやり取りについて、そういうことを、何を言ったとか言わなかったとか、つまびらかに、具体的に明らかにするということではございませんけれども、ただいま申し上げたような認識に基づいて中国に対する強い非難、抗議を行ったというふうに御理解いただければと思います。

和田(有)委員 今日もほかの委員からも出ていましたが、ある程度具体的に、つまびらかにすることが抑止につながるんだと思うんですよ。

 いつまでも、これは交渉上の話ですから言えませんとか言っていたら、やはりなかなか本来の抗議の意味にはなっていかない。つまびらかに、あんたらはこういう意図でこういうつもりでこう撃ったんだろう、だから俺たちはこうできるよとか、単純な素人目の言い方かも分かりませんが、そういうことをすべきだったのではなかろうか。

 これは、事この話だけではないと思うんです。私は、後で触れていきますが、北朝鮮の話もそうですし、台湾の話もそうですし、やはりある程度、外交上のあれですからそこは言えませんとか言っている段階をもう超えている、そんなことをやってきたから日本外交というのは敗北を続けてきたんじゃないのかなと思って、私はこのことを一つお聞きしました。

 次に、まさにその本丸のようなところでありますが、前にも一度お聞きしたんですけれども、対中ODAについて、その功罪、もう一度総括というものをお聞きしたいと思うんです。

 それは何かというと、まさに対中ODAこそ日本外交の敗北であったというふうに見る方が多い。私もそう思うんです。

 外務省で前にお聞きしたときに、三兆何千億円にトータルでなりますといいますが、さらに、これとは別に、旧大蔵省や輸出入銀行から資源ローンという名目で三兆円とか、そんなのも援助していますし、トータルでいくと、いろんな形で日本が、中国、中華人民共和国に対してした資金援助というのは七兆円を超える、こう言われるわけですね。

 ところが、これだけしても、現場では、日本から、お金をいただいたというのは変な言い方ですね、正しくないですね、支援があったとか、そういうふうな認識がほとんどない。例えば、何か完成式典をやったって、そこで来賓の人が、これは日本の支援によってできましたというようなことを聞いたこともないというものもあったというんですね。

 そういう中で、援助対象が、もちろん、これは我々、平和的なものですから、橋を架けたり道路を造ったりなんですけれども、これだって、考えてみれば、向こうが本来そこにお金を回すものを別のところに、要は軍事に、そのお金を使わずして使うことができるという考え方にも立てるわけです。

 要は、今のこの覇権主義的な中国を形作ったのは我々の外交であったのかも分からない。いや、それは、日本だけが中国と外交をしているわけじゃないですから、世界中の国がしているんですから、一概にはそうだと断定はできませんが、そういう要素があるのではないかというふうに私は思うんです。

 そこら辺について、今私が申し上げたような考え方というのはどう受け止められるでしょうか。いかがでしょう。

林国務大臣 まず、認知度という御指摘がございましたけれども、対中ODAの実施に際して、大使館やJICAを通じて、中国国内で我が国のODAの認知度を高めるべく、広報活動に努めてきております。

 例えばでございますが、北京の首都国際空港及び南京母子保健センターにつきましては、日本の支援を記すプレート若しくは石碑が設置をされております。また、北京地下鉄一号線については、大使館がプレスツアーを実施しておりまして、中国の主要メディア等によって中国国内で報じられるなど、適切な広報が行われているところでございます。

 また、二〇一八年十月に安倍総理が訪中をされた際に、習近平国家主席からは、これまでの我が国のODAによる貢献を高く評価する旨の発言があるなど、様々な場で中国側からは我が国のODAに対して高い評価と感謝の意が表明されておりまして、対中ODAの認知度が低いという御指摘は当たらないというふうに考えております。

 また、インフラ整備をODAでやることによってその分の予算を国防費等に回せたというような御指摘でございますが、理論上そうした御指摘があり得るとしても、そもそも、中国の国防費の飛躍的な増大、これは急速な経済発展に伴う予算規模全体の拡大による面が大きいと考えております。

 また、我が国は、中国の発展段階に応じて、二〇〇七年度には新規の円借款を終了させるなど、対中ODAの見直しを随時行ってきておりまして、全体として、そのような評価は妥当でないと考えております。

 申し上げましたように、一九七九年以降、我が国は中国に対して、沿海部のインフラのボトルネック解消、環境対策、保健医療などの基礎生活分野の改善、人材育成等の分野でODAを実施してきております。委員のように、対中ODAについて様々な御意見があることは承知をしておりますけれども、対中ODAは、全体として、経済分野を始めとする日中関係に寄与し、日本自身の国益にも資するものであったというふうに認識をしております。

 また、中国の発展段階に応じた見直しを随時行ってきております。

 先ほども二〇〇七年度のお話をいたしましたけれども、その前の年度の二〇〇六年度には、新規の一般無償資金協力を終了させております。その後も実施していた技術協力についても、対象分野を環境や感染症対策等の日中両国が裨益する分野に絞り込んだ上で、二〇二二年三月末をもって対中ODAの全ての事業が終了した次第でございます。

 現在、中国は世界第二位の経済大国でありまして、責任ある大国として、国際社会のルールにのっとってその発展に貢献することが求められております。日本としては、引き続き様々な機会を捉えて中国側にそのような行動を求めてまいりたいと考えております。

和田(有)委員 確かに今言われた側面もありますが、私の考え方にはそぐわないというふうな御答弁がありましたけれども、私は、どう考えても日本が覇権主義的な中国を膨らませてしまったように思う。

 どうも、前にもこれは質疑をやりましたけれども、日本の対中外交が、極めて、誰の顔を見てやっているのか分からないという時代があったように私には思えます。そう思う方もたくさん日本にはいるわけで、やはり、そういうところも含めてもう一度検証していってほしいなと私は思います。

 検証したからどうなるかではありませんが、次の時代に向けて、やはり我々は直すべきところは直していかなければいけません。そういう意味で申し上げました。

 それで、これはもう平行線になりますので、この話はここら辺にいたしますけれども、次の質問に移りたいと思います。

 次は、まさに、中国が習近平体制三期目に入るわけでございます。ここ何回かのこの委員会、何回かというか前回ですかね、委員会でも、習近平体制に対してどう向き合うのかということが随分と議論になりました。

 四期目もあるという前提で三期目が今回決まったとよく言われます。ということは、この後、もう誰も歯止めが利かない、ブレーキがない状況で進むのではないかというふうに言う方も多いわけですけれども、そこら辺について、次の習近平体制についてどのように分析をされておられますか。

林国務大臣 二十二日まで中国共産党大会が開催されまして、そして、二十三日午前にいわゆる一中全会が開催され、習近平氏を党総書記とする新しい指導部が選出されたと承知しております。

 他国の政党の活動について日本政府の立場からコメントすることは差し控えたいと思いますが、その上で申し上げますと、まさに今御指摘のあった点も含めて、政府としても、今回の党大会報告の内容、また、その後の党人事を始め、中国の政策全般についての分析は、我が国の対中政策の立案や実施に当たっても極めて重要であると考えております。今後も不断に関連の動向や施策について情報収集及び分析を行っていきたいと思っております。

 その上で、日中関係は、様々な可能性とともに、数多くの困難な課題や懸案にも直面する中で、我が国としては、引き続き、主張すべきは主張し、責任ある行動を求めつつ、諸懸案を含めて対話をしっかりと重ねて、共通の諸課題については協力するという建設的かつ安定的な日中関係、これを日中双方の努力で構築していくことが重要だと考えておるところでございます。

和田(有)委員 何度聞いてもこういうお答えしか返ってこないわけですね。

 それは、威勢のいいたんかを切れと言っているわけではないわけですけれども、基本的に、中国は今まで、我々が優しい態度を取ると必ず大変なところまで行くわけですよ。それで、向こうが困ったら、またこっちに優しい態度を取ってくれというメッセージを送り始める。

 例えば、天安門事件しかり。終わった後、日本が唯一手を差し伸べた。それによって息を吹き返し、そして民主的なコースが外れていった。さらに、今回の台湾危機もそうです、第四次台湾海峡危機と言われるものもそうです。

 やはり、どこかで毅然とした態度を見せないと、いつまでたったって、日本は言えば何とかしてくれるさ、日本は上手に頭をなでればすぐ済むんだ。頭をなでるか、たたくか、どっちか分かりませんけれども、言うことを聞くさ、こういうふうに思われてきたのではないかと思うんですね、私は。

 それを聞いて、そうでございました、申し訳ありませんという答弁もないでしょうけれども、私は、単純な一般的な表現をすれば、日本外交は中国からなめられていると私は思ってしまうんですが、その点もう一度、いかがお感じになりますか。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、日中関係は、様々な可能性とともに、やはり数多くの困難な課題や懸案にも直面をしております。

 したがいまして、建設的かつ安定的な日中関係ということの御説明の中で申し上げましたように、しっかり主張すべきは主張する、責任ある行動を求める、このことは建設的かつ安定的な日中関係を双方の努力で構築していく上で大事なことだ、こういうふうに思っておりますので、委員がおっしゃるように、日本は、いろいろな忖度をするとかそういうことではなくて、やはり言うべきことはしっかりと直接相手に言うし、国際場裏でも、先ほどG7の外相声明の話もありましたけれども、こういうもので一緒に同志国とともに主張をやっていく、これはやっていかなければならないと思っております。

和田(有)委員 しっかり主張していただきたいと思います。

 我々の御先祖様はみんな、この大陸とどう向き合うかで腐心をしてきたんですね、私たち民族は。それこそ遣唐使の時代から始まって、さらに、その前は白村江の戦もそうですし、全て大陸とどう向き合うか。その先にあるのは、結局、大陸中国です。こことどう私たちは向き合えば、どう向き合っていけば独立を維持し、豊かな国を子孫に残せるかということを、日本民族はずっと苦労しながら歩んできた。それが、日清戦争もあっただろうし、日露戦争もあっただろうし、しかし、それは先人の皆さんの非常な苦労の上に向き合っているわけですよね。それは理解されているでしょうけれども、外務大臣ですから、主張すべきことはしていただきたいと申し述べておきます。

 そこで、次に台湾の話に私は入っていきたいんですが、その前に、そのためにウクライナのことをちょっとお聞きしておきたいと思うんです。

 先ほど松原委員もウクライナのことを若干聞かれましたけれども、もう一度確認です。

 東部諸州をロシアは住民投票をもって併合をしたと言っています。住民投票したと彼らは言っているわけですが、そのことについて日本政府はどういう見解をお持ちですか。

林国務大臣 ウクライナ国内のドネツク、ルハンスク、そしてザポリッジャ及びヘルソンにおける住民投票、これは括弧つきでございますが、住民投票と称する行為及びロシアがこれらの地域を違法に括弧つきの併合する行為、これは、ウクライナの主権と領土一体性を侵害し、国際法に違反する行為でありまして、決して認められてはならず、強く非難をいたします。

 ロシアによる侵略によってロシアの一時的な支配下に強制的に置かれた地域におけるこうした行為、これは、武力によって領土を取得しようとする試みにほかならず、国連憲章を含む国際法に反するものであります。そのような試みは無効であり、国際社会における法の支配の原則に正面から反するものであります。

 我が国は、力による一方的な現状変更の試みを決して看過できず、引き続き、ロシアに対して、即時に侵略を停止し、部隊をロシア国内に撤収するように改めて強く求めるところでございます。また、G7を始めとする国際社会と連携しつつ、強力な対ロ制裁とウクライナ支援の二つの柱、これにしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

和田(有)委員 ということは、住民投票は認めない、そして、住民投票を認めないということは、これはロシア国内の問題ではない、ウクライナの問題であるというふうに解釈していいということですか。もう一度、その点。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、ウクライナ国内のドネツク、ルハンスク、ザポリッジャ及びヘルソンにおける住民投票と称する行為や、ロシアがこれらの地域を違法に併合する行為は、ウクライナの主権と領土一体性を侵害し、国際法に違反する行為であり、決して認めてはならない、こういうことでございます。

和田(有)委員 了解しました。

 さて、そこで私が次にお伺いしたいのは、台湾の話であります。ずっと、予算委員会でもそうですし、この外務委員会でも幾つかの課題について提起をさせていただいて、質問をさせていただきました。

 前にも聞いたこともありますし、今回、ちょっと新たな視点もあるんですが、前にお聞きしたのは、立憲の何人かの方もこのことは後追いで、後追いという言葉は失礼ですね、同様に質問をなさってくださいましたが、いわゆる、日本に台湾の方が帰化をしたときに戸籍が作られる、そこに従前の国籍はどこであったかというものの表示がある、これが極めて不適切だと私は思う。中華人民共和国台湾省だったり、とんでもない表現がある。これを直すべきだ。これは国籍法の関係ですから、法務省の扱いになります。

 もう一つあるのが住民票なんですね。住民票の何かといいますと、日本人で例えば海外赴任、商社やいろいろな会社で台湾に駐在をしていた人が日本に帰ってきたら、住民票にどこから帰国したかというのを書くわけです。そこにやはりとんでもない表現がある。中華人民共和国台北市とか。何だこれはと、みんなぎょっとするらしいですね。あれ、俺は中国に行っていたわけじゃないよねとなるわけです。

 これは日本人の住民票の表記の話ですからまだしも、最初の戸籍に至っては、アイデンティティーに関わる話ですからとんでもない人権問題だと私は思いますが。

 そういう中で、住民票の海外から帰国したときの転入者の表記というものについて、まずこれがどうなっているか、現状を教えていただけますか。

尾身副大臣 お答えいたします。

 住民基本台帳法に基づく転入届においては、届出者は従前の住所を届け出ることとされています。この場合、海外から転入した方については、それまで居住していた国又は地域の住所を転入届に記入することが通例であると承知しております。

 住民票の記載につきましては、一般的に、転入届で届け出られた内容に基づいて記載されているものと考えております。

 いずれにしても、住民票の記載については市町村の判断に基づき行われているものであり、従前の住所について、台湾や中華人民共和国等の記載がなされていると承知しております。

 以上でございます。

和田(有)委員 ところが、これが不思議なことに、幾つかの市において、実際に、どことは申しませんけれども、私は手元に持っていますけれども、持っているというか、今日の時点かどうか分かりません、しばらく前の方のものであったりしますが、台湾から帰ってきて台湾と書いたつもりなのに中華人民共和国になっているという場合があるようです。

 この質問取りのときにもそのお話をしたときに、随分お調べになったと思うんですが、そこら辺、やはり、国、地域となっているわけですから、しっかりと、これは自治体の事務ですから、たしか、総務省の受託事務ではないですよね、自治体の事務ですから総務省がどうこうという指示はできないとは思うんですが、しっかりとやっていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。まず、そこら辺まで。

尾身副大臣 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたけれども、住民票の記載につきましては、市町村の判断に基づいて行われているものでございます。

 台湾に関する我が国の立場等を考え、慎重に検討する必要があるものと考えてございます。

和田(有)委員 これも慎重に検討すると言っているから、こんなことになってきているわけですね。

 この話は、実は次のことに行きたいのでお聞きしているんです。慎重に検討する、そんな状況ではないということを私は申し上げたいんです。

 何かといいましたら、先ほどウクライナのことを聞きましたが、ロシアは、ウクライナに侵攻して今こういうことをやろうとして住民投票をしたりしているのは、理屈としては、国内問題であるからやるんだ、こう言っているわけです、ロシアは。台湾の話を何度もお聞きしたときに、日中共同声明うんたらかんたらという、理解し、尊重しという答弁がありましたけれども、日中間、日台間の規定をすることをお聞きすると。我々は理解し、尊重しているだけであって、中華人民共和国の言ったことをそのまま我々は認めているわけではないわけです。そのはずなんです。それはまた、いずれきちっともう一回別の形で私は質疑をしようと思っているんですけれども、別の形式で。

 その中で、我々が公的な文書に台湾の人のことを中華人民共和国という打ち方をしてしまうと、我々自ら、台湾に起こっていることは中華人民共和国の国内問題であるということを認めることになるんです。分かりますかね、このロジック。

 台湾有事が起こって中国軍が台湾に攻めてきたときに、いや、それはそんなことをしちゃいけません、こんなことをやっちゃいけませんと言ったら、何を言っているんですか、日本さん、あなたたちはちゃんと台湾のことを中華人民共和国台湾省と書いているじゃない、公的に認めているじゃない、公的に国内問題だと認めているじゃない、内政干渉でしょうと切り返されちゃうわけですよ。そういうロジックが成り立つわけですよ。分かりますよね。

 そのことについて、これはゆゆしきことだから、そういう視点からも、住民票だって、あるいは戸籍の問題だって、しっかりここら辺で整理をしなきゃいけないと私は思っているんです。

 何も、台湾の皆さんのアイデンティティーだとか、それは私も思います、友人もたくさんいるし。それだけではなしに、日本の国益を考えたときに、あそこで台湾有事が起こった際、起こらせないためにも、このままだったら、いや、台湾というのは中国の国内ですよねと我々は言っているようなものなんですよ。

 この戸籍の問題なんて特にそうです。台湾から来た人の元の国籍はと書くところに中華人民共和国台湾省と書いていたら、我々は台湾というあのフォルモサの島は中華人民共和国の一部だとはっきりと公的に書いているようなことになってしまうわけです。これではまずいと思うんですが、いかがお考えになりますか。

林国務大臣 台湾有事という仮定の質問にお答えすることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、今の御指摘については、住民票事務及び戸籍事務を所掌する省庁にて検討されると承知をしております。今御答弁があったとおりでございますが。

 政府としては、台湾との関係を非政府間の実務関係として維持していくという従来からの立場を踏まえて、双方の民間窓口機関の間で対話や取決めを積み上げてきておりまして、引き続き適切に対応してまいりたいと考えております。

和田(有)委員 もう積み上げ切っているんですよね、実は。もうピークに来ているわけです。だからこういう事態に今至り始めているんだと私は思うんです。

 もう時間が大分少なくなってきましたから次の質問に行って、この項で恐らく今日は質問が終わるかなと思うんですけれども、まさに今大臣から出た台湾有事という言葉、私が先に言ったわけですけれども、台湾有事は日本有事という言葉の持つ意味についてちょっと提起をさせてもらいたいと思うんです。

 私は、この間、中華民国、台湾の建国記念日、国慶節、双十節といいますが、その式典に台湾に行かせていただきました。そのときに感じたことがありまして、もう向こうでも台湾有事は日本有事という言葉が非常に多く使われていました。特に安倍元総理がそういうしっかりとした発信をなさってくださいましたので、台湾の方もよく御存じです。

 よく御存じどころか、実は、ここで感じたことは、この台湾有事は日本有事と使っているワードは、ワードと言っていいと思うんです、これは一つの単語だと考えていいと思うんです、私たちが感じている意味と台湾の人たちが感じている意味はどうもニュアンスが違うなという気がしてきたんです。

 どういうことかといいましたら、その前提で一つ申し上げると、台湾で有事が起これば日本の自衛隊は助けに来てくれると思っている人がたくさんいるんです、実は。いや、それはもう憲法上も何から見たって、今、日中共同声明の扱いですらこれだけ議論したって話が進まないのに、そういうものじゃないんですけれども、でも、台湾有事が起こったら日本の自衛隊が来て助けてくれるよと思っている人がいっぱいいるんです。大体それがアンケートに出るわけですよ、マスコミの。日本は自衛隊を派遣してくれると思うか。思うという人がいっぱいいるわけです。

 そのことを考えても、台湾の皆さんの日本に対する思いというものは非常に深いものがある。

 そのときに、今回、蔡英文さんではないな、この言葉を言ったのは。どなただったか私は定かに覚えていませんけれども、日本はよく台湾有事は日本有事と言ってくれた、こういう表現をするわけです。要するに、日本は、台湾が大変になったら、私たちは助けるよというような思いをとうとう表してくれたというふうに取っていらっしゃる方が多いような気がします。

 もちろん、シンクタンクや軍の関係のそういう人々は冷静なきっちりとした言葉の使い方もしているでしょうし、分かっていると思いますよ。

 でも、片や日本人は、台湾有事が起これば、当然これは尖閣諸島や与那国やそういうところに関わっていって、前にも私は質問いたしました、そういうこともあって、これは事態認定だ何だになって日本有事と不即不離だよねという言葉で使います。

 でも、ひょっとすると、台湾の皆さんはそうではない捉え方をしている。我々が台湾に対してもっと深いコミットをするということを、とうとうここまで止まっていたものを口から出してくれたと思っていらっしゃるんじゃないかというふうに私は感じるようになってきたんです。多くの台湾の友人の皆さんと話していても。

 そうなれば、今まで実は、私は何でこんなことをとうとうと質問の中で述べているかというと、台湾の皆さんに対して私たちは極めて不親切な行為を取ってきた。日中国交五十年は、日華断交五十年なんです。何も私は、ある面からお祝いする話じゃないと思っています。日華断交五十年ですよ。断交して私たちは切り捨ててしまったんです、平然と。そういうことの二の舞を、また何かしらの出来事が起こったときに台湾の皆さんに心証を与えてしまうのではないか、そんなふうにまで思うようになってきたんです。

 なかなか意が尽くせない、政治家が公式な外務委員会で意が尽くせない質問をするなとお叱りを受けるかも分からないですけれども、皆さんも歯にこもったような答弁しかしていないですからあれですけれども、ここら辺、この台湾有事は日本有事という言葉についてどうお感じになりますか。

林国務大臣 台湾は、日本にとって、基本的価値を共有し、緊密な経済関係とそして人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人でございます。

 その上で、先ほども申し上げましたが、台湾有事という仮定の質問にお答えすることは差し控えますけれども、台湾海峡の平和と安定は、我が国の安全保障はもとより、国際社会の安定にとっても重要であります。台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待するというのが従来からの一貫した立場でございます。

 あくまで一般論として申し上げますと、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中で、政府として、いかなる事態に対しても対応できるように、平素からの体制の整備を含めて万全を期していく、このことは当然であると考えております。

和田(有)委員 これが今の日本国政府の見解としては限界なんだろうと思います。でも、それを打ち破らないともういけない時期が来ていると私は思います。

 私たちにとって最も信頼の置ける、共通の権益を持つ台湾の皆さんを失望させることがあっては私は国益を損なうものだと思いますので、そういう観点から対中外交もしっかりとやっていただきたい。対中国、大陸に向かう外交もやっていただきたいし、台湾との関係も一歩前に構築をしていただきたい。

 今日はその辺にして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

黄川田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

黄川田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。杉本和巳君。

杉本委員 日本維新の会の杉本和巳であります。

 いろいろ、政府、厳しい状況にある中で、まず、いい点は私は言っておきたいと思っていまして、先ほども質疑の中で、G7外相声明とか大臣がおっしゃられましたけれども、対ロシア、ウクライナ侵略に対して岸田総理も林外務大臣も毅然とされているということは、私はすごく評価していい点ではないかなというふうに思います。

 その上で、ちょっと一つだけ御紹介、いろいろ御紹介しちゃうんですけれども、一つ、大臣、多分御存じだと思うんですが、統一教会の問題で、先般も穀田委員からモザンビークの指摘がございましたけれども、政府を挙げて、あるいは国会を挙げてきちっと調査をする必要があるんじゃないかという点を一方的にしゃべりますので、聞いておいていただいて、特に御感想を求めませんが。

 一九七七年から一年半、米下院の国際組織小委員会、民主党御出身のフレーザーという方がフレーザー委員会というのを開き、十一か国、千五百六十三回の聞き取り、百二十三回の召喚状、二十回の聴聞会、三十七人の証言記録、これが四百四十七ページにわたるフレーザー報告となってまとめられています。

 これは、コリアゲート等があって、アメリカの毅然とした姿勢というんですか、そういったものが、大分昔の話ではありますけれども、こういった調査がきちっと行われているという国と、今、政権与党自民党、ぴりっとしていただくどころじゃなくて、しっかり立ち直っていただかなきゃ日本の政治自体の信頼が揺らぐと思っていますので、内閣を構成し、主要閣僚である外務大臣がこの席にいらっしゃいますので、是非ともこのフレーザー委員会並びにフレーザー報告といったものも参考にしていただいて、国民の信頼をかち得ていく政治に是非戻っていくというか、かち取っていくというふうにしていただきたいと思います。

 さて、冒頭は、うちの和田理事から、プロトコールについての質疑は杉本だということでございましたけれども、私の方からは、特に反対するということは基本的にはなくて、むしろ発想のコペルニクス的転換も、我々は柔軟に頭の体操をしておかなければならないのではないかということを触れさせていただきます。

 質疑で、松原委員からは、外交の予算をしっかり取っていくとか、あるいは他の委員からも、輸出枠について、きちっと拡大をする交渉を今後していっていただきたいというお話がございました。

 それで、ちょっと現下の為替の相場を鑑みて、将来を考えると、セーフガードというものが、アメリカの牛肉をできるだけ入ってくるのを抑えるということではなくて、高くてアメリカの牛肉なんか買えないよ、むしろ日本の、国産牛なのか和牛なのか分かりませんが、それをどんどんどんどん輸出していく、そういう時代がパラダイム変化の中で起きてくることも予想できるのではないかと思っています。

 なぜかといえば、ちょっと例としていいかどうか分かりませんけれども、技能実習制度というものがございました。外国からどんどん働きに来てくれる人をできるだけ抑えなきゃいけない、ただ、来ていただきたいんだけれどもという中で、この円安で、日本に行くのをやめて周辺アジアの国に行ってしまうという例がよく見られるようです。

 また、日本の若者が、大臣も御存じだと思いますが、美容師で日本で三百万円も給料をもらえないような立場だった方が、オーストラリアに行って八百万、一千万もらっている。あるいは、すしの職人が三百万円の給料が出ないような奉公をしていたのが、アメリカのニューヨークで働いたら八百万もらえるようになった、最後、最近は独立してフロリダで店を開いたら、これは御存じですかね、八千万、これは月ですかね、もらえるようになったというので、すごいパラダイム変化が起きているかと思いますので、こういった、我々は、ウクライナのことも含めてですけれども、想定外の時代あるいは超不確実性の時代の中に、真っただ中にいるのではないかなというふうに思っています。

 そんな中で、我が党のいろいろな政策もあるんですけれども、ちょっと私個人の、政治家としていろいろまた指摘をさせていただきたいと思います。

 補正予算、あるいは経済対策、今ニュースで、二十九兆一千億だと自民党の中で言っておられます。補正予算というのは毎年毎年、安倍総理のときから岸田総理になっても十五か月予算という言葉が当たり前になっていて、それが普通のことだというふうに思われていますけれども、本当にこの国の財政は大丈夫なのかということをあえて私は言っておきたいと思います。

 また、電気代、ガス代、ガソリンほか、一家庭四万五千円の補助をするんだと。いいんですが、本当に困っている人には補助が要ると思います、しかし、そうではない人には、ガソリンの利用をできるだけ控えるとか、電気の利用を控えるとか、そういったことも、うちの元代表は、そんなことをしたら凍死しちゃうじゃないかじゃないんですけれども、そういうことは当然ないようにしていただかなきゃいけないですけれども、自民党の中でも、昨日、最長不倒距離の国対委員長をされた森山裕先生というか、先生と議員のことを言うのはよくないですか、森山裕選対委員長が、財政の状況についても勘案するような趣旨の、どちらかというとブレーキを踏んでいらっしゃるようなお言葉を党内で発信されたというニュースを見ました。それが本来の政治家の姿ではないかなと私は与野党の各議員にお訴えをさせていただきたい。

 ちょっと私がしゃべって二十分たっちゃうかもしれないんですが、最後に感想を伺うことになるかもしれないんですが。

 それで、例えば、もう御案内ですけれども、イギリス、UKのトラス前首相は、減税政策を掲げて首相になりました。しかし、マーケットから退場を命じられて、あるいは与党内から退場を命じられて総理の座を降り、スナク新首相が、政治経験七年ですよね、その人が、経済を立て直す、全力を尽くすということを言われています。

 なぜこれを言っているかというと、林さんには将来がある。だから、本当に立派な大臣であってほしいしという思いの中で、エールを送る意味で私は言わせていただいていますが、デービッド・キャメロン、スコッティ・キャメロンじゃないんですね、デービッド・キャメロンですが、彼は、選挙で負けるとか、あるいは政治的に不評を買うということを度外視して、大学の授業料値上げに踏み切りました。これが本当の政治じゃないかなというふうに私は思って、いや、やはり選挙で負けたら政治はできないよといったって、役に立たない政治をやっていたってしようがないわけですから、このポピュリズムの政治を続けていて本当にいいのかということを申し上げたく存じます。

 それで、大臣、また聞いてくださいね、国債のイールドカーブの状況です。

 十年債は〇・二五に抑えています。そこから先のイールドがどうなっているか、大臣は御存じだと思いますが、二十年ゾーンで一%プラスアルファ、三十年ゾーンは一・五%マイナスアルファ、四十年ゾーンは一・五%プラスアルファです。要は、十年から先はイールドが、そちらから見ると、こう立っているわけですね。

 それで、マーケット的に言うと、十一年ゾーンを買って一年間持って、十年のゾーンになったら日銀が〇・二五で買ってくれるから、これで超お安いやつを買ってばか高く売れるというのが、これはイールドカーブのオペレーションで非常に単純な話ですけれども、これが現実です。こういう政治をアコードとかいって続けてきているのが今の政治です。

 今の日銀総裁、首を替えたくても、天下の大蔵省、財務省が実は政府より力があって、替えたくても替えられない、そういうことなのかもしれませんけれども、そんな政治を続けていて国民の皆さんのためになるのか。このイールドカーブ一つ取っても、イギリスの政治と日本の政治の違い、申し上げておきたいと思います。

 もう十分たっちゃいました。

 次に、為替ですが、これは所管外なんですけれども、一応、在外公館の費用とかいろいろ膨らむので、もし答えられれば答えていただきたいと思いますが、また聞いてください。要は、麻生さんの後、鈴木、義理の弟さんが続けている、投機的な動きは好ましくないという発言の中での介入です。

 私がマーケットで国債の売買を始めたときに、一番先にお客様の生保から言われたことは、杉本さん、いろいろ説明してくれるけれども、君、単独介入と協調介入の違いを分かっているのかと。今、日銀の審議委員になった高田さんの後任で、私が海外から帰ってきて、着席して一本、生保に初めて電話したときに、一発目に叱られたことがこの単独介入と協調介入の違いです。

 そんなことはマーケットの人間は全員分かっている。こんな単独介入を続けていて、五兆以上介入して、日本の国富を焼け石に水で失って、形だけ円安に歯止めをかけているような格好をつけている。こんなことをオペレーションさせていちゃ駄目ですよ。

 そういうことで、今日はECBが〇・七五上げ二パーになり、FRBはもう四パーというような、日米の金利差が問題ではなくて、対ウォンでも対フィリピン・ペソでも円安です。これは、金利差ではなくて、ファンダメンタルズそのものが本当に疲弊している状況で、マーケットが立ち直れと言ってくれるイギリスと違って、もう日本は見放されているんとちゃうかというふうに私は残念ながら感じてしまいます。

 そういった意味で、在外公館の費用だとか、あるいは、何が上がりますかね、諸経費が膨らんでしまうというような、単純な御担当ではそういう部分になると思いますが、やはり主要閣僚であり、将来を見据えて政治をしている林大臣におかれては、所管の財務大臣に踏み込むことはない中で、最大限、あるいは、農水大臣が牛肉の輸入なんかも、結局、現状ではアメリカから中南米に移っちゃうかもしれませんけれども、そういったことの所管は農水大臣でいらっしゃるかもしれませんが、そういったことが起こる深い原因は為替であり、金利であり、あるいは根本の原因は、日本のファンダメンタルズの本当の弱まっている状況。

 そこの背景として、日銀の債務超過に陥るリスクであるとか、あるいは政府の相変わらずの、補正予算を一回組んだのに、公明党対策で一回ちょろっと少額だけやって、今度は本格的にやるとかいって、偉い方々が三十だ、四十だという、よく小池百合子さんなんかも、豆腐じゃないんだからという話だと思いますが、こういった本当のポピュリズムでない政治を求めることを私は林外務大臣に求めていきたいと思っていますが、非常に、感想だけで結構なんですが、お伺いできればありがたい。

 御清聴ありがとうございました。お願いします。

林国務大臣 杉本先生の御質問についつい釣られて、いろいろなことを言いそうになるわけでございますが。

 外務省の所管ではございませんけれども、為替相場は、私、宮沢大蔵大臣の下で、一九九九年から二〇〇〇年まで政務次官というのをやっておりました。そのときに、本当に今でも記憶をしておりますが、為替について聞かれたら、経済のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましい、以上、こういうふうにずっと言われてきたわけでございますが、これはまさに今でも当てはまるというふうに思っております。

 さっと言うと余り、素通りしてしまいがちでございますが、今まさに委員がおっしゃったように、ファンダメンタルズを反映しているかどうかということと安定的に推移するということは、急激に一方向に動くということではない、こういうような言葉であろうか、こういうふうに思っております。

 そういった意味で、今委員がおっしゃったように、我が省でいいますと、そもそもの国際的な物価高騰に加えて今の急速な円安の進行ということがございまして、やはり在外職員の手当を含む在外公館の予算がかかる影響を直接的に被っておるわけでございます。

 八月には、為替変動が特に激しい公館の増額改定を行いましたけれども、現下の足下の為替変動の状況を踏まえながら、今後、更なる増額改定を調整していくところでございます。

 急激な円安や物価高騰の影響を反映した手当額を支給できるように、令和五年度予算要求において必要な予算を要求しております。在外公館の運営に必要な予算確保に努めて、しっかりとした外交をやってまいりたいというふうに思っております。

 先ほど、イギリスのお話や、また森山選対委員長のお話もございました。それを聞いて思い出しましたのは山中貞則先生でございまして、森山先生が出馬される経緯の中で山中先生もおられたわけでございまして、消費税の必要性を訴えて、曲げることなく、中選挙区制の時代でありましたけれども、落選しても言い続けたということを、我々も、数年でありましたけれども、党内で御一緒する機会もあってその経綸に触れた者としては、こういうものをしっかりと大事に受け継いでいかなければならないと思っておるところでございます。

杉本委員 なかなか答弁しにくい中で、いろいろ御発言ありがとうございました。

 宮沢蔵相時代、ファンダメンタルズ、安定的にということも御紹介いただきました。本当に、ファンダメンタルズを反映してしまっているからこの為替相場であって、焼け石に水の介入があったりいろいろしながら、ぶれながらも、円安トレンドというのは、残念ながら、国力の反映ですから、続いてしまうということを私は予見しております。

 そうならないように、もう長期的な政策を打っていかないとこの国は立ち直れないというふうに思っていますので、是非、主要閣僚として御奮闘をいただきたいと思います。

 あと二問、ささっと伺っておきたいのですが、まずちょっと、中国の三期目の習近平政権に対して、恐らく、お祝いの言葉か何か、コメントか祝電か何かは総理が打たれている、そう推察されますけれども、要は、言うべきは言うというようなお言葉もあって、姿勢は分かっているんですけれども、現実、ゴルバチョフ大統領閣下が私に言ってくださった御指導としては、ロングダイアログが大事なんだということで、やはり、軍事的な、安全保障上の問題になることをできるだけ避けるためにも、外交的なパイプというものは、王毅さんがまた昇格されて、カウンターパートであられると思いますけれども、是非、外交的パイプを引き続き強めていただくというか。

 いろいろ立場は分かっています。時期もあると思います。しかしながら、やはり、顔を見て何ぼ、会って何ぼということであると思いますので、そういった意味で、昔、シャトル外交というような言葉もあり、韓国も交えて、韓国の外相の立場の方とも非常にうまくつき合っていただいていると思いますけれども、対中国を念頭に、外交のパイプというか、日中韓三か国間の外交の展望、シャトル外交というものも昔あったということも頭に置きながら、今後の展望を、是非、言うべきは言うというのは分かっているので、それ以外の部分で教えていただければと。お願いします。

林国務大臣 一般論として、地域の平和と繁栄に大きな責任を共有いたします日中韓、この三か国での協力の方向性、また具体的な協力の在り方、また地域の諸課題等について議論することは重要でありまして、日中韓の枠組みというのは有益であるというふうに考えております。同時に、日中韓協力の実際の取り進めについては、いろんな総合的な観点から検討してまいらなければならないというふうに思っております。

 王毅さんですが、当然、駐日大使をやっておられたという方でございまして、当時の知己もあるわけでございますが、私のカウンターパートでいうと、今まで外相ということでカウンターパートであったわけですが、今度、新しい外相がどなたになるのかということと、これは仮定のことでございますが、今まで、ヨウケツチさんはカウンターパートは秋葉さんということになっておりましたので、もし王毅さんがそういうふうになれば、カウンターパートという意味ではそういうことになるというのは申し添えておきたいと思います。

杉本委員 時間となってしまいました。

 ウクライナについては、情勢はまだ刻一刻と変わるんですけれども、チャーター席をいろいろ外務省の中で御手配をいただいた記憶がありますが、今度、戻っていくとかいうこととか、議員団が日本を訪問されて、東日本震災の知見を生かさせていただきたい、指導いただきたいみたいなことを言ってくださっているので、是非、もうやっていただいていますけれども、ウクライナの方々に寄り添う外交も引き続き外務大臣にお願いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

黄川田委員長 次に、鈴木敦君。

鈴木(敦)委員 国民民主党の鈴木敦です。

 質問に入ります前に、まず、つい一時間ほど前ですが、北朝鮮がまた弾道ミサイルを発射をいたしました。その前後には砲撃も行った、まあ、演習だと思いますけれども。この後触れさせていただきますが、安保理決議については先日否決をされました。その中でも彼らはやってきたということでございます。まず、この受け止めをお願いいたします。

林国務大臣 本日昼頃でございますが、北朝鮮がミサイルを発射したと考えられます。当該ミサイルの弾種や発数等については、引き続き情報収集、分析を行っているところでございます。詳細につきましては、近く防衛省から発表がある見通しでございます。

鈴木(敦)委員 韓国によれば、短距離弾道弾二発ということでございました。

 この後触れますけれども、国連決議にすら違反をして彼らは行動をしておるわけですけれども、そもそも国連自体に機能がないというのも非常に大きな問題だと思います。

 我が国と北朝鮮の間には拉致問題という非常に重要な課題があり、その課題の解決に向けていろいろ御尽力いただいていることとは思いますけれども、これだけ、今年二十八回もミサイルを発射してくる国に対して、こちらから譲歩するところは一切ないんだと私は思います。

 この点、岸田総理についても同じ考えであると思いますけれども、是非とも積極的にこういったことについては議論をしていただきたいと思いますし、今回の弾道弾が、短距離、まあ、どういうものだか分かりませんけれども、我が国の上空を飛び越えなかっただけでもまだよかったもので、彼らがミサイルを発射してくることに我々が慣れないように、常にアラートの状態でいていただくということをお願いを申し上げます。

 協定の本体についての議論をさせていただきますが、まず農水省にお伺いをいたしますが、牛肉の自給率、また飼料も含めた自給率を数字でお願いいたします。

伏見政府参考人 お答え申し上げます。

 概算の数字でございますが、令和三年度の牛肉の自給率は重量ベースで三八%となっております。また、先生お尋ねの飼料自給率を考慮した牛肉の自給率は一〇%となっております。

鈴木(敦)委員 餌も含めると、一〇%ぐらいしか我が国の国産というものはないという状況になります。それは、我が国の牛肉の競争力の低下を招くものでもあります。

 ここからは三役の方にお答えをいただきたいと思いますが、今回、セーフガードが発動した大きな理由というのは、干ばつの影響だったり、あるいはコロナで出荷が減ったということが大きな要因だったと思います。つまり、これらが解決すると輸入量も必然的に減っていくことになると思いますが、今回、セーフガードの見直しをして、これをすることがそもそも大本の日米貿易協定の中に含まれていたから仕方がありませんが、見直しをして、今後、海外から、特に米国から牛肉が入ってくる見通しをどのように分析をされておりますか。

野中副大臣 お答えいたします。

 今委員御指摘のとおり、米国産牛肉ですが、干ばつの影響がございまして、屠殺が進んでおります。米国農務省によりますと、来年の米国牛肉の生産量また輸出量は減少すると予測されております。また、近年、米国産牛肉でありますが、日本だけではなくて、韓国、中国に輸出が非常に進んでおりまして、なかなか買い付け競争も激化しております。ですので、大幅に、私ども、国内の方に輸入量が増えるということは予測しづらいというふうに思っております。

 実際、我が国にどの程度米国産牛肉が輸入されるかは、為替、国内外の需給動向、現地価格等、様々な要因に左右されることでありますので、私どもとしては、引き続き米国産牛肉の輸入動向を注視してまいりたい、そのように考えております。

鈴木(敦)委員 今副大臣からもありましたとおり、輸入の量については為替が大きく関わってくるわけでございまして、中国を始めとするほかの国々が我が国よりも有利な条件で買い付けをした場合、最悪の場合、買い負ける可能性すらあるわけです。

 そして、私はよく牛丼を食べるんですけれども、価格が上がっていますよね。非常に安価で、働いている人たちにとって非常に助かるんですけれども、こういった部分、価格転嫁がどんどんされていくと、一般の働いている人たちが困っていくわけなので、お店側としても、牛肉の価格を急激につり上げるわけにはいかないわけでございます。

 外国から入ってくる牛肉の量、特にアメリカからの牛肉の量がこれだけあると、企業では吸収し切れないということにもなりかねないわけですが、その点、国内の産業も含めてどのように分析をされますか。

野中副大臣 これは牛肉だけに言えることではないんですが、やはり近年、中国の嗜好によってその競争が激化しているというのは間違いないということであろうと思います。

 一方、日本も限られた国土の中で自給率を上げていく努力はしなければいけないんですが、やはり輸入に頼らなきゃいけないということは避けては通れないところであろうというふうに思いますので、先ほどの繰り返しになりますが、様々な動向を注視して、私どもも、国内の消費者にできるだけ転嫁しないような環境づくりには取り組んでまいりたいというふうに思っております。

鈴木(敦)委員 米国の農務省のお話がありましたから少し御紹介しますと、農務省が出しております期末在庫量というのがありまして、穀物は特にそうなんですが、期末在庫のうち幾つかの品目は世界の在庫の約半分が中国にあるというような分析もされているわけでございますから、牛肉だって例に漏れず、彼らが本気で買い付けに来れば我が国ではとても太刀打ちできないという状況ですから、貿易協定を改定するのは別に結構ですが、我が国の安定供給がしっかり図られるように、制度設計を含めて、中長期的な議論をしていただきたいと思います。

 そして、協定の条文についてお伺いをいたします。

 これは本日の徳永委員の質問にもつながることでもございますけれども、せんだって作った、三年前に作った日米貿易協定そのものの中で、交換公文の中には、十日以内に協議を開始して、九十日以内に終了させる観点からとありますけれども、これができなかった一番大きな要因は一体何なんでしょうか。

鯰政府参考人 御指摘の日米貿易協定に関連して作成された交換公文における期日、例えば、九十日以内に協議を終了させる観点からとございます。この文言につきましては、日米貿易協定交渉当時に日米間の交渉の結果として合意したということでございます。また、その性格につきましては、協議期間についての目標を示したものでございます。

 そして、今回、本議定書は、政府として、国内産業への影響を可能な限り抑えるという観点から、最善の結果が得られるよう対応するという考え方の下、約一年にわたり米側と粘り強く協議したということでございまして、その結果としてこれだけの日にちがかかった、一年近い日にちがかかったということでございます。

鈴木(敦)委員 この条文が作られたとき、私はまだ議員じゃなかったので、文句を言っても仕方がありませんけれども、そもそも、セーフガードが発動するかしないかという目標を見直すことを前提に条文に加えるということ自体が私はたてつけ上おかしかったんだろうというふうに思いますし、更に申し上げれば、これは通告していませんけれども、交換公文だけではなくて、議定書の中には、二〇三三年度以降、四年連続でセーフガードを発動しない場合、セーフガードをその後発動できないと書いてありますので、二〇三七年以降は発動できなくなる可能性すらあるわけでございます。

 こういう仕組みのたてつけを放置して、これから先、この後質問させていただきますが、自動車の関税の話をしたとしても、何をひっくり返されるか分からないと私は思いますけれども、局長、それはどうお考えですか。

鯰政府参考人 御指摘いただいた点につきましても、当時の日米貿易協定の全体の交渉の中で得られた結果というふうに認識しております。

鈴木(敦)委員 交渉結果をつまびらかにしろと言っても出しませんし、今後の交渉に関わるのでそこまで深く追及はいたしませんが、とはいえ、これは、この後、次の質問ですけれども、アメリカが最初からTPPに残っていれば、こんなことにならなかったわけでございます。

 それが抜けてしまって、アメリカを別の枠組みとしてTPPと同じ枠組みに入れますよというのが今回の議定書の中にも入っていますけれども、そんなことをするぐらいだったらアメリカに帰ってきていただけばいいんです、TPPそのものに。

 このための議論は進めますよともおっしゃっているし、さきの、この日米貿易協定のときの議論の中でも、アメリカ側のインセンティブは失われているわけではないという分析を当時茂木外務大臣はされておられます。

 でしたら、いっそのこと、戻ってきていただいたらいかがですか。外務大臣、いかがですか。

林国務大臣 我が国としては、米国によるインド太平洋地域の国際秩序への関与、こういう戦略的な観点からも、米国のTPP復帰が望ましいと考えております。

 この考えは一貫して米国に伝えてきております。岸田総理からはバイデン大統領、それから私からは、個別の会談や経済版2プラス2、こういった機会を活用しまして、ブリンケン国務長官、レモンド商務長官、またタイ通商代表に対して、米国のTPP復帰は直接求めてきたところでございます。

 また、先ほど議員外交のお話が松原委員からもございましたが、米国の上下両院の議員や有識者との面会の機会も活用して、アメリカのTPP復帰について働きかけをしてきたところでございます。

 これは、諦めずに、粘り強く、あらゆる機会を捉えて、様々なレベルで米国に対してTPP復帰を働きかけていきたいと思っております。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。

 引き続きお願いしたいと思いますが、ただ、CPTPPに加盟している幾つかの国からは反対の意見も出ているようですけれども、外務大臣の交渉の中で、そういった国々との意見交換はどういったものが、お話しになれる範囲で結構ですが。

林国務大臣 御質問の趣旨は、今CPTPPに残っている国の間で、アメリカの再加入についての反対の議論があると。

 ほかの国がどういう場でどういうふうにおっしゃっておられるかということは、ここでは申し上げることは控えさせていただきたいというふうに思いますが、我々としては、先ほど申し上げたように、粘り強くアメリカのTPP復帰を働きかけてまいりたいと思っております。

鈴木(敦)委員 交渉事ですので、応援しますから、是非ともお願いをしたいと思います。

 なぜなら、我が国は貿易で成り立っている国でございますし、入れなきゃいけませんし出さなくちゃいけない、そういう国柄ですから、通商の部分については円滑にしていただかないといけないと思います。

 自動車についてのお話をちょっとしたかったんですが、もう具体的に、そして深い議論を既に先輩方にしていただいておりますので、私からは、ちょっと改めての確認という意味でもさせていただきたいんですが、当時、三年前の議定書の話をしていたときには、関税については、関税撤廃が明記をされている自動車について交渉を行って、農産品を含めてその他の分野については交渉の対象として想定はしていないということでしたけれども、交渉の範囲を協議するというのは、改めてお願いします。

林国務大臣 日米貿易協定においては、自動車・自動車部品については関税撤廃がなされることを前提に、具体的な撤廃時期等について交渉が行われることになっております。

 二〇一九年九月の、今御指摘のあった、日米貿易協定妥結の際の首脳間の共同声明ですが、今後の交渉について、どの分野を交渉するのか、まずその対象を日米間で協議することとなっておりまして、現在、この交渉の範囲を決めるための協議が続いているところでございます。

 引き続き、自動車分野を念頭に、米側に協議の進展を求めてまいります。交渉事でありまして、相手があることでありますけれども、二〇一九年九月の日米共同声明等を踏まえながら、あらゆる機会を捉えて、米国としっかり協議を続けてまいります。

鈴木(敦)委員 想定をしていなかったということだったと思うんですけれども、自動車に関しては。だから、それは自動車だけを進めていただければそれでいいと思うんですけれども、その後の議論は追加の議論だと思います。

 次に行きますけれども、今、TPP11には新規の加盟の申請が幾つか来ておりまして、イギリスが既に交渉に入っているという状況だと思います。その交渉の進展については内閣官房になるかと思いますけれども、どの国の申請を受けるかとか、どうやって交渉していくかというのは外交戦略の一環でもあろうと思いますので、今、承知しているだけで三か国から来ていると思いますが、それぞれの受け止めをお願いします。

林国務大臣 CPTPPの加入手続では、加入を希望するエコノミーが加入申請を提出した後に、TPP委員会において、当該エコノミーの加入手続の開始の可否をコンセンサスにより決定することとされております。

 現在、今委員がおっしゃったように、英国については加入の手続が進められているところでございまして、台湾の加入手続の開始の可否について、まだ特段、意思決定をされておりません。台湾の加入手続に関する今後のプロセスの詳細はまだ決まっていないところでございます。

 加入申請を提出したエコノミーの扱いについては、他のCPTPP参加国ともよく相談する必要があると思いますが、我が国としては、加入申請を提出した台湾が協定の高いレベルを完全に満たすことができるかどうかについてまずはしっかり見極めるとともに、戦略的な観点、国民の理解、こういったものも踏まえながら対応してまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 台湾からは様々なものを輸入していますけれども、台湾のハーブティーとか結構おいしいんですよ、大臣、御承知だと思いますけれども。

 そういったものも含めて台湾とのやり取りを継続していく、深化させていくという意味でも、台湾との関税の問題ですとか輸入輸出の関係は検討していただきたいと思うんですが、一方で、台湾については、RCEPに関しても全く適用がされておりません。台湾が我が国と、二国間というのは不可能だと思いますけれども、ある程度の枠組みの中で台湾が含まれるような貿易の協定、こういったものを作ることも一つの案だと思います。

 我が国はアジアにおいて最も大きな民主主義国家なわけですから、我が国が主導して周辺国をまとめて、貿易協定を作ってみんなで仲よくやっていきましょう、仲よくやっていける人たちはやっていきましょうという枠組みを、リーダーシップを取っていただくのも一案だと思いますけれども、大臣はどうお考えですか。

林国務大臣 現時点で、今お話のあったような新たな貿易協定に関する具体的な検討がなされているわけではございませんけれども、台湾は我が国にとって、基本的価値を共有し、緊密な経済関係を有する極めて重要なパートナーであります。政府としては、台湾との関係を非政府間の実務関係として維持していくとの従来からの立場を踏まえて、双方の民間窓口機関の間で対話や取決めを積み上げておりまして、引き続き経済関係の強化を図っていきたいと思っております。

鈴木(敦)委員 実務的な関係になってしまうとTPPにも入れないんだと思いますけれども、ここのところは整理していただかないと、重要なパートナーであり大切な隣人、友人ですと言っておきながら、その隣人を切り捨てるような、そんな我が国であってはならないと思います。

 貿易協定についてはこの辺りにさせていただきます。国際情勢について、次の質問をさせていただきます。

 北朝鮮のミサイルの話は冒頭させていただきました。ただ、安保理決議が否決をされて、それも中国とロシアの反対だけで否決をされるような状況にあっては私はならないと思います。他国に侵略をしたり、あるいは他国のすぐ近くに弾道ミサイルを撃ち込んだり、そういうことをする国々の反対で、実際に危機に瀕している我が国を含めた安全保障のための決議に反対をする、そしてそれが成立しなくなるという状況は、どう考えても正常とは思えないと思います。

 国連の予算の分担金を考えても、日本は八%余りを分担しておるわけですけれども、安全保障理事国、常任理事国の中でも、イギリスとフランスを合わせたのと同じぐらい我が国は予算の分担をしておるわけですが、にもかかわらず、国連分担金の十位以内にも入っていないロシアの反対、そして中国の反対で我が国に直接関わる決議が否決をされるということは、これは国連の機能不全以外の何物でもないわけでございまして、数字で表されているわけですから、国連改革という話は何度も大臣やほかの閣僚の皆さんからもありますけれども、具体的にこれははっきりと、日本国の外務大臣として、おかしいことだということは御説明いただいた方がいいと思いますが、いかがでしょうか。

林国務大臣 北朝鮮は特に今年に入ってから極めて高い頻度で弾道ミサイル発射を繰り返しておりますが、こうした我が国、地域、国際社会の平和と安全を脅かす北朝鮮の核・ミサイル活動に対して、安保理が有効に機能できていないわけでございます。

 今年の五月には、対北朝鮮措置を強化する安保理決議が、今御指摘があったように中ロの拒否権行使で否決をされました。また、十月四日の北朝鮮による我が国上空を通過する弾道ミサイル発射等を受けて、同月の六日に国連安保理の会合が開催されましたが、これまで、安保理が一部の国々の消極的な姿勢によって、北朝鮮による深刻な挑発行為と度重なる安保理決議違反に対して行動できていないということは大変遺憾でございます。

 六月には、拒否権を行使しました中ロにその説明を求める国連総会会合が開催をされました。この総会会合において、多くの国から、北朝鮮による核・ミサイル活動に対する懸念、また安保理決議違反に対する非難の声が上がった。このことは意義があったというふうに受け止めております。

 我が国としては、今般、安保理理事国入りするに当たって、北朝鮮問題に関わる議論にも当然のことながら積極的に取り組んで、米国を始めとする各国との緊密な意思疎通と丁寧な対話を通じて、安保理が本来の責任を果たすように努力をしてまいりたいと考えております。

 その中で、ロシアのウクライナ侵略もあり、損なわれた国連の信頼、これを回復すべく取り組んでまいりたいと思っております。

鈴木(敦)委員 まさに国連の信頼というものが今揺らいでいると思います。

 ロシアに関しては、そもそも、そういった場所で拒否権を行使する権限が与えられ続けているということ自体、そして、その権限を剥奪をするという力もないわけでございます。これは大きな問題点だと思いますし、国連改革を先導していくということであれば、まずイの一番に、常任理事国、あるいは非常任も含めてですけれども、何かしら、国連のあらゆる取決めに違反をした場合にはその機能を停止するというような条項が本来機関としてあるべきだったんですが、今までなかったということについて問題の提起をしていただきたいと思いますし、これは、そんなに長くかかってしまいますと、仮定の話をするとまたあれなので、あれなんですけれども、台湾有事とかとよく言うので、台湾有事が起こったときというのは、当事者はどこでしょうか。その国が拒否権を行使したら何もできないということになるわけです。ですから、急いで議論を進めていただかないとならない、このように思います。

 ウクライナの話に行きますけれども、常会まではウクライナに対していろんなことをやりましたね。自衛隊機を使って、あるいは民間機も使って防衛装備を送ったりですとか、そもそも、今、現職の自衛隊の隊員にすら届いていないような最新型の防弾チョッキまで送って支援をしたわけですけれども、これだけやっておいて、その後、四か月間、委員会が開かれておりませんでしたし、戦争の激化についての話は報道等もいっぱいあったんですけれども、我が国の支援が六月以降何があったのかということは余り明らかになっておらないというところで、いま一度、この四か月間の取組についてお願いいたします。

林国務大臣 日本はこれまで、ウクライナ及びその周辺国等影響を受けた関係国に対しまして、約十一億ドルの人道、財政、食料関連の支援を表明し、越冬支援を含めて順次実施をしてきております。また、ウクライナから第三国に避難された方々への日本への受入れ支援、これも行っているところでございます。

 今年六月の通常国会終了以降に限定しますと、G7エルマウ・サミットにおいて、ウクライナ情勢に起因するグローバルな食料危機への対応、また、ウクライナ及び周辺国における人道復旧支援の計約三億ドルを表明をいたしまして、順次支援を実施してきております。

 来年のG7議長国という立場からも、現地のニーズを的確に把握しながら、これまでの知見や経験を生かして国際社会の議論をリードしながら、ウクライナの人々に寄り添った支援を検討、実施をしてまいります。

 今後の支援については、総合経済対策を踏まえて、更なる越冬支援を含む人道支援、また生活再建に必要な復旧復興支援、これを検討していきたいと考えております。

鈴木(敦)委員 ウクライナというのは寒い地域ですので、もうそろそろ氷点下になろうかと思いますけれども、早期に暖房設備だとかあるいは発電設備などを供与するような体制をすぐ整えなきゃいけないと思います。

 現に、ウクライナ政府は、国外に脱出したウクライナの方々は戻ってこないでくださいというようなことを言っているわけです。それだけインフラが破壊をされて、生活が成り立たないという状況になっておりますが、追加の経済対策を立案するのは結構です。でも、それが補正予算の成立後になるとすると、ウクライナに物が現着するのが来年になってしまいますが、そういう時間軸でお考えでしょうか。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、今まで財源を確保して表明をしたものを順次実施をしてきております。

 冒頭に、十一億ドルの人道、財政、食料関連の支援を表明したと申し上げましたが、これも越冬支援を含めて順次実施をしてきておりますので、こちらの方をやっていくとともに、先ほど申し上げました、経済対策も踏まえながら、それに加えて更なる支援をやってまいりたいと思っております。

鈴木(敦)委員 今すぐにやらなきゃいけないことと中長期的に支援しなければならないことは切り分けて考えなければならないと思いますし、我が国が東日本の大震災で各国から支援をいただいたときに、お金だけ渡して、はいどうぞと言われた国よりも、ニーズに応じて様々、今すぐに支援していただくものと中長期的にお金を支援していただくものと、切り分けてやっていただいたわけでございます。それですらまだ復興ができていないというのが我が国でございますから、本当に息の長い支援をしていかなくてはいけないので、ウクライナについては本当に短期的な考えでやらないでいただいて。

 そして、お金の問題だけではなくて、食料支援も含めて十一億ドルだったり三億ドルとかなんですけれども、お金を送っても、そのお金を執行しているだけの余裕が果たしてかの国にあるかということですね。戦争中なんですから、どこかからか物を買ってきましょうというよりは戦わなければいけない人たちなので、現物で支給できるもの、たくさんあると思います。我が国は、車両もあるでしょうし、暖房器具も発電機もあると思いますから、積極的に検討をしていただきたいと思います。

 では、次の質問ですけれども、今度は中国の問題ですね。今まではロシアがやったことについてですが、中国でございます。

 よくウイグルの問題が取り上げられて、アメリカの議会でもウイグル、ウイグルというような話が出ております。当委員会でも、和田委員からもウイグルの話が出たりしていたと思います。

 ただ、ウイグルだけではなくて、中国の場合には、その更に奥にあるチベットに対して様々な弾圧をしてきたわけでございますし、ついこれは数年前ですけれども、ラルンガルゴンパという宗教都市の大半を破壊したりとか、彼らはそういうことも平気でやっている。自国のことだからということで、内政干渉は許さないと彼らは言っておりますが、人権を侵害しているという点においては世界共通の犯罪を行っているわけで、中国によるチベットへの対応、改めて外務大臣からお願いします。

林国務大臣 我が国として、国際社会における普遍的価値である自由、また基本的人権の尊重、法の支配、これが中国においても保障されることが重要であると考えておりまして、チベット自治区における人権状況についても、懸念を持って状況を注視しておるところでございます。

鈴木(敦)委員 それは、山奥だから注視するしかない、そういう考えなのかもしれませんが、人の命が懸かっており、また、思想信条の自由が制限をされるということは、日本であれ諸外国であれ変わらないことでございますので、これはしっかり、見るだけではなくて、行動もしなければいけませんし、発言もしていただかなければいけません。

 これは、G7の議長国もやるわけですし、国連の非常任理事国にも入りますから、ある程度のイニシアチブを持って発言できるわけですから、積極的に発言をしていただきたい。その点が守られないと、我が国の人権どころの話ではありません。

 そして、最後になりますけれども、今度は、今回のこの改定議定書を改定しなければならなくなった大本の理由、今回は干ばつが理由だったわけですけれども、今、海外では様々異常気象が起こっております。オーストラリアもそうですけれども、豪雨がありましたし、北米ではハリケーンが上陸をいたしまして、国葬儀に来られなくなったというようなこともありました。

 世界各国、様々世界の気候変動が起こっているわけですけれども、中でもちょっと注目していただきたいのがパキスタンなんです。

 パキスタンは水害がございました。国土の三分の一が水浸しになるというような大きな被害があったわけで、これを受けて、パキスタン政府はロシア政府から石油を買うことを検討するということを言い始めております、既にインドは買っているわけですけれども。

 いろいろ深いことを考えますと、今年六月の十五日から十八日、サンクトペテルブルク国際経済フォーラム、これはロシア版のダボス会議ですけれども、これは常会の委員会でも質問しました。百二十七か国がここに参加をして、さらに、エジプトは、ロシア独自のカードシステム、ミールというものの導入を進めているということが表明をされました。また、九月の五日、これもロシアですが、東方経済フォーラムというものがあり、六十八か国が参加をしたということでございます。

 これだけ我が国を含めたG7が緊密に連携してといってロシア包囲網をつくったにもかかわらず、何だかんだいってロシアの経済フォーラムにはこれだけの国が来て、さらに、パキスタンのように、我々は石油を入れないとかと言っていますけれども、やむにやまれずロシア産の石油を買わなければならないような国も当然あるわけで、そういう国によって外貨が得られるのであれば、四十八か国、非友好国がありますけれども、その国々がどんなに頑張って門を閉めても、そこから出ていってしまうんですね。漏れてしまう。

 だから、経済制裁を完璧なものにしようと思ったら、そういう国々にこそ支援をして、ロシアから買わないでください、ロシアに近づかないでくださいということを明確にしていただかなきゃいけないんです。これは四十八か国のお友達だけでやっても駄目なので、ほかの国々も併せて、太平洋の島嶼国も含めて、パキスタンなんかは特に近くですし、やらなければいけないと思います。

 このパキスタン、豪雨がありましたけれども、これについて支援はされましたでしょうか。

林国務大臣 ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙でありまして、高い代償が伴うということを示していくことが重要であります。

 ロシアにとって石油輸出は、今触れていただきましたように、重要な外貨獲得手段でありまして、我が国も、G7首脳声明も踏まえて、ロシア産石油の原則禁輸という措置を講じております。

 パキスタンがロシアからの石油の購入を検討しているという報道を承知しておりまして、我が国としては、一刻も早くロシアが侵略をやめるように、また、制裁が一層効果的なものとなるように、パキスタンを含む各国としっかり意思疎通を図りながら、国際社会が連携して対応できるよう外交努力を重ねてきております。

 一方、パキスタンの洪水被害については、パキスタン政府からの要請及び現地の支援ニーズを踏まえて、我が国として、これまでテント及びプラスチックシートの緊急援助物資を提供したほか、国際機関を通じて七百万ドルの緊急無償資金協力を決定し、実施をしております。

 今御指摘のあった点について、パキスタン政府がエネルギー分野を自国の開発課題の一つとして捉えておりますことから、我が国としても、その課題に対応するために、電力の安定的な供給に向けた支援等を実施してきておるところでございます。

 今後も、エネルギー分野において、輸入燃料に代わる代替エネルギーとしての再生可能エネルギーの促進を後押しするほか、パキスタンが洪水からの復興を果たして更なる経済発展を実現するために、防災、水、保健等の分野において、パキスタンの人々に寄り添った支援を実施していく考えでございます。

鈴木(敦)委員 もう時間になりますので最後にいたしますが、さきに申し上げた国際経済フォーラムには、インドやイランあるいはUAEといった国が対面で演説をするというような結びつきも既にできておりますし、この中には、アフガニスタンやミャンマーといった、ロシアとは切っても切り離せないような関係の国々も参加をしているわけでございます。

 特に、ここに直接対面で参加をしたような国々については、それこそ手厚く我が国として対応をして、ロシアとの結びつきを少しでも少なくしてロシアを追い込んでいく、戦争を諦めさせるような外交的な壁をつくり出すということがこの戦争を早く終わらせる一つの要因でございます。

 ウクライナに対して武器を供与したりとか、戦いを激化して諦めさせるのも一つの手ですが、それは二十世紀の戦い方であって、これからは、国際的な貿易やあるいは銀行間の取引でその国を孤立させることによって侵略を諦めさせるという手段を我々はもう既に手にしているわけですから、これをより強固なものにしていただいて、世界平和に貢献するリーダーシップを取っていただくようにお願い申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

黄川田委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 日米貿易協定について質問します。

 今回の議定書は、現行の日米貿易協定で定めるセーフガードの発動要件を新たに見直すものであります。

 まずは、基本的なことについて伺います。

 最初に、牛肉のセーフガードの意義そして目的、その効力について説明をしてください。

坂政府参考人 お答え申し上げます。

 牛肉のセーフガード制度は、日米貿易協定で六つの品目について設定されました、数量に基づくセーフガードの一つでございます。牛肉の輸入量が急増した際に、その関税率を一定期間引き上げることによりまして、国内の牛肉生産への影響を緩和するという目的で設けている制度でございます。

田村(貴)委員 それでは、今度の改定で国内の牛肉の生産は守られるのでしょうか。

坂政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、セーフガード制度の要件を二つ付加いたしましたけれども、結果的には、TPPの範囲内に収まったというふうに評価をしております。その結果、国内の畜産業への新たな影響というのはないというふうに考えておりまして、そのまま守られるというふうに考えております。

田村(貴)委員 新基準では、アメリカからの輸入量が発動基準を超えたとしても、TPP11の発動水準を超えなければ発動しないことになります。

 そこで伺いますけれども、現在の牛肉の輸入量はどのようになっていますか。

伏見政府参考人 お答え申し上げます。

 財務省貿易統計によれば、二〇二一年度の牛肉輸入量は、アメリカから二十二万二千トン、豪州からは二十二万八千トン、その他の国から十一万九千トンとなっております。

田村(貴)委員 合わせて五十六万九千トンであります。

 TPP11の発動水準は、今年度は六十三・七万トンです。来年度は六十四・九万トンです。開きがあります。したがって、オーストラリア産などの牛肉が日本に輸出される、その拡大はますます広がっていくのではないでしょうか。どうですか。

伏見政府参考人 お答え申し上げます。

 実際に我が国にどの程度のアメリカ産牛肉が輸入されるかは、為替、国内外の需給動向、現地価格等、様々な要因に左右されることから、農林水産省といたしましては、引き続き、アメリカ産牛肉の輸入動向を注視してまいりたいと思っております。

田村(貴)委員 それでは、過去において、オーストラリアとアメリカの牛肉の輸入の最大値はどのぐらいになっているか、教えてください。

伏見政府参考人 お答え申し上げます。

 過去のオーストラリアからの牛肉の輸入量の最大値は、二〇〇四年度の四十一万トンでございます。アメリカからは、牛肉の輸入量の最大値については、二〇〇〇年度の三十五万九千トンでございます。

田村(貴)委員 そんなかなた昔の話ではありません。アメリカそしてオーストラリアからは、かつて、一国だけで日本産を超える輸入がありました。これは事実です。ここ数年、コロナで需要が減ったものの、農水省の資料によれば、食肉の供給量は旺盛な食肉需要に支えられ、近年増加傾向で推移しているとして、国内生産量は需要の増加に追いついておらずとしています。農水省はそう書いています。

 国内産の牛肉は、ここ二十年間余りの推移を見ても、ずっと横ばいです。ここ数年を見ると三十三万トン台です。これはもう、外国産が増えることは十分考えられるのではありませんか。いかがですか。

伏見政府参考人 お答え申し上げます。

 可能性の話ということはございますけれども、現在、アメリカからの牛肉の輸入量もオーストラリアの輸入量も、先ほど申し上げたとおり、過去最大量をはるかに下回った形で推移しておりますので、また、国内の生産量については、横ばいというお話でございますが、今、増頭対策等をやっておりまして、徐々に増えているような状況でございます。

田村(貴)委員 だけれども、農水省が出した資料で私は言っているんですよ、国内産は横ばいだと。増えていないんですよ、二十年間。そして、アメリカ産とオーストラリア、ニュージーランド、増える余地がいっぱいあるから、増えるんじゃないですかと聞いているんですよ。

 アメリカ産牛肉の関税は、日米貿易協定、この発効前は、二〇二〇年一月以前には三八・五%でした。それが段階的に、約十五年かけて九%まで下がります。これは大変な引下げであります。

 一方で、TPP11の方はどうなっているんでしょうか。来年度のセーフガードの基準は六十四・九万トンです。アメリカが抜け出しているのに、なぜ基準は高いままなんでしょうか。おかしいではありませんか。

 どうなっているんですか、説明してください。

谷村政府参考人 お答えいたします。

 我が国といたしましては、米国及びCPTPP締約国からの合計の輸入数量がCPTPPの発動水準を超える場合に、CPTPP締約国牛肉にもセーフガードが発動されるということが本来のあるべき姿だと考えております。

 このような考え方に基づきまして、オーストラリアを始めCPTPP締約国に対しましては、これまで様々な機会を捉えまして様々なレベルで働きかけを行ってきたところでございますけれども、今後とも、引き続きこのような取組を継続してまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 全然現状は変わらなくて、そして、CPTPPの基準枠はどんどん上がっているということです。

 更に問題があります。この後、林大臣にもお尋ねしますので、ちょっと聞いておいていただきたいと思います。

 セーフガードの発動は、二〇二二年から二〇二七年度について、米国産牛肉の合計輸入量が前年度の輸入実績を超過する、これは三番目の条件にこう書かれてあります。

 この条件の下では、アメリカとTPP11締約国からの合計輸入量がTPP11発動基準内であれば、米国は、米国の発動基準を超えたとしても、セーフガードが発動されません。輸出を増やすことが可能となります。前年度の輸出を超えなければ、発動基準を超える輸出が認められるということであります。たくさんの条件をつけたんだけれども、その条件がことごとく輸出を拡大させる条件になっているということなんです。

 林大臣、お伺いします。

 この改定というのは、外国からの輸入、その拡大に条件を広げるもの、日本は不利になっているのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

林国務大臣 今御指摘のありました条件でございますが、約一年にわたり米国側と粘り強く協議をした結果、ほかの二つの適用の条件と併せて合意したものでございます。

 一定の条件が満たされる場合に実質的に発動水準が引き上げられ得るのは確かでございますが、前年度の輸入実績を上回るほどに輸入が増加する場合には、輸入の急増への対応というセーフガードの目的を果たし得る仕組みとなっていると考えております。

田村(貴)委員 もう一問伺います。

 発動されたら直ちに再協議、このサイドレターというのは今も有効なんでしょうか。生きているんでしょうか。

鯰政府参考人 仮に、今後、米国産牛肉に対するセーフガード措置が再度適用された場合、日米貿易協定に関連する日米政府間の交換公文上の義務に基づき、再度協議が行われることになります。

 この場合にも、政府としては、当然、今回と同様に、国益が確保されるよう、しっかりと協議に臨む所存でございます。

田村(貴)委員 今回と同様に、国益が損なわれる方向になるんじゃないですかと私は言いたいんです。つまり、アメリカのセーフガードが発動されたとしても、更にまた不利な再協議が始まるということになるんですよ。

 今回の議定書による発動要件は、セーフガードが持っている、関税削減に伴う輸入の急増に歯止めをかける、一番最初に御説明がありました、輸入急増に歯止めをかけるという本来の役割を実質的に無力化させるものであると指摘をせざるを得ません。

 政府は、関税が九%に下がるまでに、国内対策による影響緩和、競争力強化を行うとしてまいりました。国内生産が維持される、影響試算でもそういうふうに主張されてきました。アメリカやオーストラリアの牛肉と競合するのは、日本において和牛ではありません。これは国産牛でありますけれども、今、この競争で最も疲弊しているのは、肉用の雄子牛を生産する酪農であります。

 農林水産省の野中副大臣、来ておられます。ちょっと、聞いた話を聞いてください。

 千葉県のある市では、六戸あった酪農家のうち、二戸が既に廃業しています。北海道では自殺者も出ています。先日のNHKの朝のニュースでは、子牛が売れずに、やむなく殺処分、痛ましい報道もありました。宮崎でも、やめたいけれども、私、直接相談を受けました、政府の指示で規模拡大、機械導入をやってきたけれども、借金があって展望が見えない、どうやって廃業したらいいか、そのことも分からない、そういう話を聞きました。まさに、副大臣、酪農家の半分が今廃業を考えていると言われています。極限状態であります。

 改めて聞きますけれども、TPP大綱でこうした生産農家は維持されていくんでしょうか。

野中副大臣 お答えいたします。

 昨日の農水委員会でも、田村先生から、買取りが最安値の千円だったという、畜産始め、酪農、それぞれの声を教えていただいたところであります。私も、副大臣就任前、畜産、酪農農家から、大変な思いをしているという声を聞いてまいりました。

 その上で、私どもとしましては、総合的なTPP等関連政策大綱に基づいて、畜産クラスター事業による施設整備、そして繁殖雌牛の増頭に奨励金を交付するなど、生産基盤の強化を図ってまいりました。結果、肉用牛の飼養頭数は増頭傾向で推移しておりまして、令和四年、二百六十一万頭まで増加することと、着実な効果が出ているところであります。

 私どもとしては、引き続き、総合的なTPP等関連政策大綱に基づきまして、畜産物の需給状況を勘案しつつ、畜産クラスター事業を始めとして、生産基盤の強化を通じて、畜産農家をしっかりと支援してまいりたく存じます。

田村(貴)委員 これからの見通しも言われましたけれども、本当にTPP政策大綱が功を奏しているんだったら、今、私が紹介したような事例は生まれていないはずなんですよ。どんどんこういう事態が起こっているじゃないですか。

 現在、オーストラリアは、干ばつの影響で生産量が落ちています。日本国内需要も減少になっています。アメリカは、コロナからの立ち直りの状況で、需要、価格も高騰、これは円安も影響しているところがあります。しかし、これらの事情は一時的なものの可能性があって、今後、関税が下がり、輸入枠が拡大すれば、いつ大量に日本に流入してくるかも分かりません。

 引き続きお尋ねしますけれども、今副大臣がおっしゃられたように、昨日の農林水産委員会で野村大臣が、自給率の向上は間違いのない信念だと強い言葉での答弁がありました。

 日本における人口減少、そして消費減少、この中で国内生産を維持していくというのであれば、食料自給率を増やしていくのであれば、それはもう輸入量を減らす以外ないじゃありませんか。

 では、どうやってアメリカからの牛肉の輸入を減らしていくのか。輸入依存を見直すならば、国境措置の見直しが必要となります。

 アメリカに対して、牛肉関税の引上げを交渉する意思は政府にありますか。

野中副大臣 関税率を引き上げよという問いだったと思いますが、CPTPP協定、日・EU・EPA協定、そして日米貿易協定の発効後、関税率は当初の三八・五%から現在二四・一%まで下がっておりますけれども、牛肉輸入量は発効前の水準を下回って推移しているところであります。

 また、これらの協定でありますが、この引下げに当たって、いずれも、鉄鋼、工業品、またサービス分野など、それぞれの分野と併せて、一括して合意しているものでありますので、またその上、関税を引き下げた後にどのような影響が出るかということを考慮しまして、国内の対策も講じたところでございます。

 このような状況を踏まえまして、牛肉輸入に関する関税引上げの交渉は、政府として検討し得るものではないと考えております。

田村(貴)委員 そういうことだから、日本の酪農、畜産、行き詰まっていくんですよ。見直すことが大事です。

 次の質問に入ります。

 オートモービル・アンド・オート・パーツ、米国の自動車及び自動車部品の関税撤廃について、これも伺います。

 二〇一九年、日米貿易交渉が最終合意に至ったとき、当時の茂木大臣は本委員会で、自動車及び自動車部品については、単なる交渉の継続ではなくて、更なる交渉による関税撤廃で合意をしておりますと述べました。当時の安倍首相は、両国にとってウィン・ウィンの合意となったと豪語しました。

 外務省は、日米貿易交渉が最終合意に至った直後の九月二十六日、自動車関連の関税について、米国譲許表に更なる交渉による関税撤廃と明記したとし、今後の交渉は関税撤廃が前提と説明しましたが、協定署名後の十月十八日の説明文書では、米国附属書に関税撤廃に関して更に交渉と明記と書き換えたのであります。関税撤廃と明記したという文書が、関税撤廃に関して更に交渉と変わったわけであります。

 私はこの問題を見つけて、連合審査そして農水委員会で何度もただしてまいりましたが、結論、三回聞いて、譲許表に関税撤廃を明記というのはなかったということであります。それで今日に至っています。

 あれから三年がたちました。関税撤廃の話はうわさにも聞きません。三年前、当時の神田内閣府政務官は農林水産委員会で、関税撤廃がなされることを前提に、市場アクセスの改善策として、その具体的な撤廃期間等について今後交渉が行われると、あとはいつまでに撤廃をするかを決めるだけだというふうにも説明されたんです。

 そこで、伺います。

 午前中、立憲民主党の徳永議員の質問を聞いていました。そして、経済局長の答弁が何回かあったんですけれども、交渉の範囲の中の協議云々で、全然分かりませんでした。

 大臣にシンプルにお尋ねしますので、お答えいただきたいと思います。

 自動車と自動車部品の撤廃そのものの協議はしたのですか、しているのですか、それともしていないのですか。いかがですか。

林国務大臣 日米貿易協定におきまして、自動車・自動車部品については、関税撤廃がなされることを前提に、具体的な撤廃時期等について交渉が行われることになっております。

 二〇一九年九月の日米貿易協定妥結の際の首脳間の共同声明において、今後の交渉については、どの分野を交渉するのか、まずその対象を日米間で協議することになっておりまして、現在、交渉の範囲を決めるための協議が続いているところでございます。

 我が国としては、引き続き、自動車分野を念頭に、米側に協議の進展を求めてまいります。交渉事でありまして、相手があることではありますけれども、二〇一九年九月の日米共同声明等を踏まえながら、適切なあらゆる機会を捉えて、米国政府としっかり協議を続けてまいります。

田村(貴)委員 交渉が行われることになっているということは、結局、交渉していないということですね。はっきりしました。結局、三年たっても、交渉の範囲を何に絞るのか、自動車関税をいつ話し合うのかも決まっていないということです。

 大臣に再びお尋ねします。

 アメリカは本当に関税撤廃をすることに合意をしているんでしょうか。日米双方で関税撤廃を合意しているのか、していないのか、私は非常に、今何も進んでいないから、こうした疑問を持たざるを得ないんです。これについては、イエスかノーかでお答えいただきたいと思います。

林国務大臣 日米貿易協定の米国附属書でございますが、自動車・自動車部品について、関税の撤廃に関して更に交渉すると記載されておりまして、自動車・自動車部品について、関税撤廃がなされることを前提に、具体的な撤廃時期等について交渉が行われることを想定して協議を行っているところでございます。

田村(貴)委員 米国が合意したか、していなかったのか。していなかったのではないか。その疑念は深まるばかりであります。

 三年もたってしまって、牛肉の関税は既に大きく低下しました。最も重要な獲得ポイントだった自動車は、何も進まない、何も結論が出ていない。どこがウィン・ウィンだったのかと言わざるを得ません。

 日本の牛肉の低関税枠についても質問します。

 当時、茂木大臣は、日本から米国向けの牛肉は、現行の日本枠二百トンとそのほかの国の枠である六万四千八百五トンを合わせた六万五千五トンの低関税枠へのアクセスを確保した、現状より三百倍以上の拡大だと説明されました。

 日本独自の枠をやめて、複数国で六万五千トンの低関税枠を日本が使えるわけになったわけでありますけれども、これはその後どうなったんでしょうか。直近のアメリカへの輸出の数量も併せて説明をしてください。

伏見政府参考人 お答え申し上げます。

 アメリカ向け牛肉輸出について、昨年の輸出量は千百七十八トンであり、本日公表された最新の貿易統計の数字を申し上げますと、本年一月から九月の累計輸出量は七百四十六トンと、前年度比八六%となっております。

田村(貴)委員 結局、二百が三百トンですか、たった。そして、六万トンを超える輸出がブラジルからされたんですよね。そして、それも、もう三月の末に枠が消化されたということです。午前中の議論も聞いていて、これからもこの輸入枠が使えない状況にあると。

 三年前は、競合国はニカラグアしかない、そんな説明がされていたんです。ブラジルといえば、牛肉の生産、世界第二位ではありませんか。そうした国の動向すら察知できていなかったのかと言わざるを得ません。

 これも大臣にお伺いしますけれども、三百倍以上というのは一体どこにいってしまったんですか。あのとき豪語されていたことを国民そして国会は聞いたわけなんですよ。

 先ほどの自動車の関税にしても、この日本牛肉の輸入枠、低関税枠にしても、実際そのとおりになっていない。もくろみが外れて、看板倒れではありませんか。林大臣、いかがですか。

林国務大臣 牛肉の輸出につきましては、午前中の質疑の中でもあったように、枠そのものは、数字にしてみれば先ほどおっしゃったような数字であろうか、こういうふうには理解をしておるところでございます。

 自動車また自動車部品については、るる御説明してきたところでございまして、しっかりと日米貿易協定等々で決まったことに基づきまして協議や対応をしてまいらなければならないと思っておりますし、当然、農水省の方からるる御説明があったように、入ったところで決めました対策というものをしっかりと実施をしていくというのも併せて大事なことだと思っておりますので、関係省庁と連携しながらしっかり対応してまいりたいと思っております。

田村(貴)委員 同じ質問を農水省にもお伺いします。

 低関税枠三百倍、この話はどうなったんですか。

坂政府参考人 お答え申し上げます。

 米国への複数国による低関税枠、これは全体で六万五千トンあるというのは事実でございます。

 当時の状況といたしましては、ニカラグアがCAFTAの方に枠を移して、特にほかに競合国はいない、そういう状況ではございまして、当時、ブラジルはコンプライアンスの問題でアメリカへの輸出が禁止されている、そういう状況でございました。

 当初より、市場環境の変化があり得ることは想定をしておりましたけれども、アメリカ市場に向けてのブラジル産牛肉の輸入の再解禁、それから、干ばつによる豪州の牛肉生産の不振によります豪州産牛肉の対米市場への輸出低下など、複数の要因が重なった結果として、結果的にブラジル産牛肉の輸入が急増するという事態に至ったものというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、アメリカ側に対して、政府といたしまして、低関税での輸出が継続できるよう働きかけを行っているところでございまして、引き続きその努力をしてまいりたいというふうに考えております。

田村(貴)委員 全然見通しのない話ですよね。ですから、こういう貿易協定がそういう話につながっていくわけですよ。

 先ほどの自動車関税のことについて、ちょっと戻りますけれども、この間三年間、そういう話合いはヒアリング等々でやっていると聞いてきたんですけれども、これから行われると先ほど大臣からありました。

 自動車の関税撤廃に向けた協議というのは事務レベルでもされていないんですか。やっているんだったら、どのようにやってきたのか、その経過について教えてください。

鯰政府参考人 これは日米間のやり取りで、中身について、いつ、誰がということは御答弁し難いものがありますけれども、日米貿易協定締結後、事務レベルも含めて協議をしてきております。

田村(貴)委員 協議をしてきている、それは、協議をしてきたという事実は、いつ、何回やったのか、それぐらいは答えられるんじゃないんですか。教えてください。

鯰政府参考人 何回とか、いつ、誰がとかということにつきましては、恐縮ですが、答弁を差し控えさせていただきたいと思いますけれども、これまで、交渉のスコープを決めるための協議の中で、自動車の問題につきましても協議をしてきているということでございます。

田村(貴)委員 三年たってもそれだけしか言えないというのは、本当に関税撤廃に米国が合意しているのかということをいよいよ疑わざるを得ないというふうに思うわけであります。

 林大臣、農業の問題で、林大臣も農水大臣を長く務められたので、この議論をさせていただきたいと思います。

 オーストラリアの農地面積は日本の百倍です。平均経営面積は二千五百倍です。競争力で圧倒的に勝るアメリカやオーストラリアの関税を一桁まで引き下げておきながら、まだ更に関税が下げられる、セーフガードが発動されてもその基準を緩和していく、これでは逆行だと思うんです。

 そして今、日本の農家、畜産農家、酪農家は、飼料や資材の激しい高騰によって極限状態まで追い込まれています。北海道がその最たる例になっています。毎日、廃業する農家が出てきています。

 昨日、農林水産委員会で、私は野村大臣に、大臣がライフワークとして食料自給率の向上を掲げてこられた、参議院選挙の公約でも掲げていたということを指摘して、じゃ、何で所信でお述べにならなかったのかということで質問しました。大臣は、昨日の委員会の中で、私の質問に対しても、しっかりと自給率を高めていくというふうに明言されました。

 ということは、やはり輸入依存を改めていかなければなりません。

 そして、野村大臣はこう答弁されました。食料にいたしましても、輸入すれば何とかできたというのが今までの状況だと思いますが、これから先、世界の人口はどんどん増えていくわけでありますから、日本は減っていますが、要は、そういう中で日本だけが輸入できるということにはならない、食料の争奪戦がもう既に始まっていますし、生産資材の争奪戦も始まっているわけであります、やはり国内でできるものは国内でということであります。

 食料・農業・農村基本計画も抜本的に検証して見直すという方針を大臣も農水省も今打ち出しています。そして、仕事に入っています。

 ここで一番やはり要になるのは、食の安全、そして国民に食料を安定的に供給できる食料安全保障の問題だというふうに思います。食料増産、そして自給率向上、これはもう避けて通れない、ここが一番の中心に据わらなければならないわけであります。

 ウクライナのロシアによる侵略がありました。そして、気候危機の問題もあります。さらには、気候危機によって干ばつが続いて、そして食料難に陥っている国もあります。こうした中で、お金さえ出せば日本に外国から農産物とそして食料品が入ってくる、こういう時代というのはない、その保証もない、そういう時期は変わったと。農水大臣は、ターニングポイントだというふうにおっしゃっていました。

 私は、やはり、輸入依存からの、今の日本のやり方、食料自給率の拡大に向けて、こうした自由貿易協定の見直しが必要ではないかというふうに思うわけです。

 林大臣、いかがでしょうか。

林国務大臣 世界で保護主義や内向き志向が強まる中で、我が国は、CPTPPや日・EU・EPA、日米貿易協定、また日英EPA、RCEP協定など、自由貿易の旗振り役としてリーダーシップを発揮してまいりました。

 こうした取組は、相手国・地域との間での貿易・投資の更なる促進という経済的意義のみならず、相手国との二国間関係の強化や、ルールに基づく自由で開かれた経済秩序の構築、また、これに基づく地域や世界の安定と繁栄の確保にも資するという外交的、戦略的意義も有する重要なものと考えております。

 その上で、経済連携協定交渉では、攻めるべきは攻め、そして守るべきは守って、実際に国内の生産者等に影響が出るかどうかということをしっかりと考慮に入れた上で交渉して、結果として、様々な国益にかなう合意内容をかち取ってきたわけでございます。

 そして、政府として、それでもなお残る国内関係者の不安や懸念にしっかりと向き合って、総合的なTPP等関連政策大綱、これに基づく施策など、農林漁業者の皆さんに対してきめ細やかな対策を講じてきておるわけでございます。

 外務省としては、経済連携協定について、引き続き、国内の生産者等への影響についてもしっかりと考慮に入れつつ、国益にかなう最善な結果が得られるように、関係省庁と緊密に連携して取り組んでまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 大臣、それは両立しないと思います。

 今日るる述べてきました。保護主義と言われましたけれども、国民に食料を提供している日本の生産者、農家が守られるのは当然のことであります。それが守られない政治というのはやはりおかしいです。

 際限のない農産物の輸入自由化、それを推進していく本協定を始めとする自由貿易協定からの脱却、このことを強く求めて、質問を終わります。

黄川田委員長 次に、吉良州司君。

吉良委員 有志の会の吉良州司です。

 時間が限られていますので、早速質問に入りたいと思います。

 まず、冒頭、この日米貿易協定、そしてこの改定に携わってきた、交渉そして実務に携わってきた外務省を始めとする関係者の皆さん、また、ワシントンDCの大使館の皆さんの御苦労、それに対しては心から感謝と敬意を表したいと思います。

 ただ、その上で、この日米貿易協定というものは、偉そうですけれども、大局から見た場合には、全く予見不可能な前トランプ大統領、四十年前、下手すると五十年前以上の貿易感覚しか持っていないトランプ大統領、さらには、グローバル企業がここまで世界的なサプライチェーンを構築しているにもかかわらず、そのことを全く理解していない、また、貿易に絡んで、投資、融資始め金融関係、これも全く理解していない時代錯誤も甚だしいトランプ前大統領が、TPPから離脱した。そして、多国間協定については、米国が自分の国益を前面に出せない、圧力をかけられない、ディールできない、そういう中で二国間協定をあえて選択してきた。

 日本としては、本筋はTPPなんだけれども、先ほど鈴木敦さんの発言でもありましたけれども、ただ、時の大統領ですから、応急措置をせざるを得ない、緊急手術をせざるを得ない。そういう中で、この貿易協定を結び、そして今、改定にあるというふうに思っています。

 そういう意味で、今回の改定の中でTPP11基準を盛り込んでいることについて私は評価するわけでありますけれども、この改定の意義について、中身、実務についてはこれまでも議論がありますので、TPP11との関係において、その意義をお答えいただければと思います。

林国務大臣 政府としては、本議定書の締結によりまして、米国産牛肉のセーフガードが新たな仕組みの下で運用されることとなり、セーフガード制度の目的である輸入の急増への適切な対応を引き続き確保するとともに、日米経済関係の一層の発展が促されることを期待しております。

 その上で、今委員からございました米国のTPP復帰でございますが、我が国としては、米国によるインド太平洋地域の国際秩序への関与、こうした戦略的な観点から、米国のTPP復帰が望ましいという考えを一貫して米国に伝えておりまして、こうした姿勢は日米貿易協定の交渉中を含めて一貫して変わっていないわけでございます。

 引き続き、あらゆる機会を捉えて、様々なレベルで米国のTPP復帰を求めていく考えでございます。

吉良委員 米国のTPP復帰を本当に強く求めていただきたいというふうに思います。

 その上で、米国を、TPP11というより、元のTPPに戻すために戻す、そのことは大前提でありますけれども、それ以外のTPPの今後の展開、戦略をどう考えておられるか、簡潔にお答えいただきたいと思います。

林国務大臣 委員も御案内のように、CPTPPは、ハイスタンダードでバランスの取れた新しい時代のルールを世界に広める、こういう意義を有しておりまして、単なる通商協定にとどまらず、これからのインド太平洋地域の経済秩序にとって大変重要な役割を果たすものであります。

 このため、我が国としては、ルールに基づく自由で公正な経済秩序の構築、また、これに基づく地域の安定と繁栄の確保に取り組む、こうした戦略的な観点も踏まえて、CPTPPの着実な実施やハイスタンダードを維持しながらの拡大に取り組んでまいりたいと思っております。

吉良委員 私自身も、民主党政権時代、このTPP、一番の旗振り役でやってきた者でありまして、そういう意味では、米国が抜けた後、このTPP11を粘り強く交渉し、まとめ上げた現政府に対して、私自身は心から敬意を表すわけでありますけれども、今大臣がおっしゃった後段は多少戦略的な答弁もありましたけれども、前半は、かなり経済連携という実務についての説明でありました。

 私がこのTPP推進というものを非常に重視するのは、極めて戦略的意義そして地政学的意義があると思っているからです。

 ここにいる委員の皆さんもTPPのメンバーを地図上で思い浮かべていただきたいと思うんですけれども、基本的には太平洋の周りですよね、もちろん環太平洋ですから。

 一方で、今三期目に突入した習近平中国が中心となって上海協力機構という枠組みがある。これは、ロシア、中央アジア、それから一部中東を含めて、かつてのモンゴル帝国の八割ぐらいをある意味ではカバーした陸の帝国、ランドパワーなんですね。

 これに対して、TPP加盟国というのは、基本的に、まさに自由を重視する海の帝国、シーパワーなんです。それだけに、米国を再び迎え入れることが大事でもありますし、日本にとっても今言いました地政学的、戦略的に極めて重要で、経済的枠組みという位置づけだけではなくて、繰り返しになりますが、地政学、戦略的にも極めて重要だという位置づけが大事だと思います。

 最近、言葉を聞くことがなくなりましたけれども、かつて、第一次大戦前夜、ドイツ、オーストリア、それからイタリアの三国同盟というのがあって、一方、イギリス、フランス、ロシアの三国協商という枠組みがありました。これというのは軍事同盟ではないんですけれども、強い経済的な連携をしているその三国をもって、三国軍事同盟に対抗する三国協商というようなことで世界史で多くの皆さんは学んだと思いますけれども、そういう意味で、このTPPというのは、今申し上げたような協商と言っていいような戦略的意義がある、このように思っているわけでありまして、是非、そういう観点からも、アメリカの復帰を促すと同時に、更なる充実、拡大をお願いしたいと思っています。

 その意味で、先ほどやはり鈴木敦議員からも指摘がありましたけれども、今TPPに加盟したいと挙げている国、エコノミーがありますけれども、その中で日本の国益にとって最も重要なのは恐らく英国であろうと思っています。

 まだ今交渉を始めたばかりではありますけれども、英国がこのTPP11に加盟するとしたらどのような意義があるかということについて答弁いただきたいと思います。簡潔にお願いします。

林国務大臣 英国は、我が国にとってグローバルな戦略的パートナーであるとともに、昨年には日英EPAが発効するなど、重要な貿易・投資相手国でもあります。

 英国との今後の交渉を予断するものではございませんが、英国のCPTPP加入、これは、ハイスタンダードで自由で公正な経済秩序を形成していく上で大きな意義があると考えております。

吉良委員 今おっしゃっていただいたことももちろんそのとおりだと思いますが、私は、先日、十月二十一日の林大臣の所信、その中で安保理改革に向けた発言がありました。「安保理改革に向けては、議論のための議論ではなく、行動が必要です。これまでも多くの国々が安保理改革の必要性を認識してきたにもかかわらず、各国の立場の違いの大きさから、大きな進展が得られていません。九月の一般討論演説でバイデン大統領が安保理改革の必要性に言及した米国に加え、G4、アフリカなど関係国とよく意思疎通しつつ、早期の進展のため引き続き努力します。」と。

 正直、国連自体が、今、安保理が機能していないので、非常に難しい改革だと思いますけれども、それでも、日本国政府として目指していくのであれば、イギリスをTPP11に迎え入れるに当たって、このG4と国連改革を絡めない手はないと思っているんです。

 そのまず一つは、当然、P5は、米国、イギリス、フランスといえども、表上は、日本、ドイツも入ろうとしていますから、むげにはしませんけれども、本音では、特権であるP5、常任理事国の権利を手放したいとは思っていないはずです。

 けれども、イギリスについては、ブレグジットあり、そして今のウクライナ情勢あり、こういうことを考えていくと、今また経済的な低迷、政治的な混乱を考えていくと、イギリスをTPP11に日本が積極的に迎え入れると同時に、イギリスにもきちっと日本に貢献してもらう。

 その意味では、今言った本来仲間であるはずのP3のうちのイギリスが、口だけではなくて、積極的に日本の加盟を後押ししてくれる、このような環境をつくってもらわなければいけない。

 と同時に、安保理改革をやるとなると、今言ったP5の同意と同時に、より多くの国々からの支援が必要になるわけです。

 そのときに大事なことは、イギリスの後ろに控えているコモンウェルス加盟国です。五十六か国あります。しかも、このコモンウェルスの国々の中には、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、シンガポール、マレーシア、ブルネイ。十一分の六がイギリス連邦、コモンウェルス。

 イギリスとしても、コモンウェルスという枠組みの関係の近さを利用して、日本だけではなくて、今言った国々に、イギリスの迎え入れを積極的にやってくれ、こう言うでありましょうし、日本の方が主導権を握って日本が中心になってつくった11ですから、やはりある程度貸し借りをきちっとしながら、積極的に入れるから、G4による国連改革で協力してくれと。その際に、日本が動くときには、コモンウェルスの五十六か国についても、又は、今コモンウェルスに入っていなくても、かつてのイギリス連邦の国々だった国にきちっと根回しをしてくれ。こういうような、トランプさんじゃないけれども、ディール、このような考え方も大事だというふうに思っています。

 大臣、いかがでしょうか。

林国務大臣 大変興味深いお話を聞かせていただいたというふうに思っております。

 おっしゃるように、イギリスはコモンウェルスという大きなグループの、一員と言うとちょっと語弊がありますが、リーダー的存在であるということはもう周知の事実でございます。当然、今のP5の一員でもあるわけでございますが、こうしたことを含めて、我が国にとってグローバルな戦略的パートナーであります。また、重要な貿易・投資相手国でもあるわけでございまして、こうした英国のCPTPP加入、それはもちろん今のCPTPPのハイスタンダードまたルールというものをしっかり維持しながらという大前提はあるわけでございますが、しかし、英国のCPTPP加入は、ハイスタンダードで自由な、公正な経済秩序を形成していく上で大変大きな意義があると考えております。

吉良委員 イギリスと積極的に交渉して、日本の国益拡大に努めていただきたいと思っています。

 今の国連改革を実行するとなれば、より多くの国々から支持を得る必要がある。こういう意識に立って、私は、実は、安倍総理の時代から自民党政権がしきりに外交上言う価値観外交、これに対して物すごく違和感があるんです。

 違和感があるということをあえてお伝えした上で、なぜ価値観外交を前面に押し出しているのか、その目的について、そしてまた、その価値観外交を前面に打ち出すことによる是と非、これについてお答えいただければと思います。

林国務大臣 自由や民主主義、人権、こういった普遍的な価値は今日の我が国の平和と繁栄の土台でありまして、岸田内閣でもこれを守り抜くことを外交の柱の一つとしております。

 一方で、ロシアによるウクライナ侵略は、明白な国際法違反であり、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であって、断じて許容できないと考えております。こうした暴挙に対して、G7を始めとする国際社会と連携しながら、法の支配に基づく国際秩序の維持強化を主導していくということが今後の日本外交に求められる役割であると考えております。

 同時に、今委員がおっしゃられましたように、日本はこれまでも、途上国のニーズに寄り添って日本らしいきめ細やかな支援を、例えばTICADですとか島サミット等のプロセスを通じて行ってきたところでございます。

 引き続き、食料危機や気候変動など、途上国の人間の安全保障を脅かす問題に対して、ODAの戦略的、効果的な活用も通じまして取り組んでいきたいと思っております。

吉良委員 発言には私自身気をつけなきゃいけないんですが、民主主義、法の支配、人権、人権については異論がないと思うんですけれども、普遍的価値というのが本当にあるのか、私自身はそういう問題意識を持っているんです。

 この前大臣と議論したのはたしか予算委員会の分科会だったと思うんですけれども、あのときに、大臣も商社なので、吉良さんはニューヨーク駐在で、私はたばこの貿易をやりながら南米でというような話がありましたが、私は確かに五年半ニューヨークに駐在だったんですが、出張先は九割が途上国なんですね。中南米にはもう百回以上、百二十回は行っていると思いますし、日本にいるときも行く先は東南アジアであり南アジアであり、そういうところにずっと行っていました。だから、私は、貧しい国、それから、気候的にこんな暑い国、こんな大変な状況でよく暮らしていけるなと思うような国をずっと歩いてまいりました。

 ちょっと、あえてアブラハム・マズローの人間の欲求の五段階説というのを資料として出しているんですけれども、これは実は国にも当てはまると思っているんです。

 G7の国、場合によっては第四段階、第五段階、ここにあるのがOECD諸国でありましょう。その頂点にG7、又はベネルクスが、北欧らがここにあると思います。けれども、この国々というのは、既に途上国段階をとっくの昔に卒業した国であると同時に、気候的には温帯と寒冷帯の国だけなんですよ。シンガポールとか一部都市国家的な国、地域を除いたら、残念ながら、この五段階説で上位、トップで自己実現をと言っているのは本当に一握りだし、今言った気候条件的には温帯と寒冷地の国なんです。

 私は、ブラジルに留学しているときに、バスで東西南北、ブラジルだけじゃなくて南米南部を二百八十時間バスに乗って、距離にして地球の半周に当たる二万キロを、ずっと地をはうように、ある意味冒険旅行をずっとしていました。亜熱帯気候からステップ、それから熱帯雨林、同じバスの中で移り変わっていく。そうすると、服装から家からもう全てが変わってくる。そういう意味で、生活もその社会のありようも本当に気候によって左右されるんですよね。

 日本の人もそうだし、先進国にいる多くの人は、基本的には春、夏、秋、冬がある国に住んでいます。けれども、そこで何が正しい、何が普遍的価値だという判断をしているのは、時間軸と空間軸、二〇二二年の十月二十八日、東京という、この接点から物事を見て、何が正しいだ、間違っているか言っているだけで、この空間軸を砂漠の国に移す、熱帯雨林に移す、ツンドラ地方に移す、時間軸を百年後、百年前に遡らせれば、全く違う価値観、また考え方があるわけですよね。

 それを、繰り返しますけれども、既に発展途上を終えた、そして、春、夏、秋、冬がある、そういう国に住んでいるG7、途上国から見ればセレブの国たちですよ。そこが、俺たちが実現している価値をおまえらも当然目指せよと、そういう同じ価値観を持っているところとより仲よくするんだと言って回って、途上国がついてくるわけがないんですよ。

 だから、私は、大臣の所信表明、所信というかを聞いたときに、国連改革をG4と一緒に目指します、それはいいですよ。だけれども、そのための多数派工作をどうやるんですか。

 そういう中で、さっき言ったイギリスのコモンウェルスであり、価値観外交とかいうのを思っていてもいいですよ、大事なことだから。それは同じように思っていますから。私も温帯に住んでいますから。けれども、より多くの国の支持を集めたいということであれば、そんなセレブの価値観を前面に出すのではなくて、多様性を認める。今、発展段階にある、先ほど大臣が答弁してくださったその発展を自律的に、自発的にできる支援を日本がやっていきますと。

 日本の立ち位置というのは、G7でアジアで唯一セレブの国の仲間だということをひけらかすのではなくて、途上国と先進国を結ぶ。その途上国にみんなが好きな寄り添いながら、日本が国連改革を含めて何かやりたいときに支持を得ていく。そのための努力をする、そのための主張をすることが大事なんじゃないでしょうか。大臣、いかがでしょう。

林国務大臣 今、委員が、マズロー五段階欲求説でございますか、これをお示しになって言われたことは、総体的に私も全く異論のないところでございます。

 きめ細やかな支援、日本らしいということ、途上国のニーズに寄り添ったという言い方をいたしましたけれども、我々も、振り返ってみますと、百年前、五十年前どうであったか。では、この国は、今、我々の歴史を振り返るとどの辺りにいるのか。先ほど場所と時間軸を示していただきましたけれども、そういう視点を持って相手に接するということがやはり相手に寄り添うということであり、それは各国様々でありますし、それをあえて言うのか、言わないのか。言われて、よく分かってくれているなと思うのか、何か上から目線だなと感じるのかは相手によって違うところもありますので、できればそういうところまで感じた上できめ細やかにやっていくということであろうと思っております。

 何もこの一番上まで行かなくても、目標としてこういう普遍的な価値を持っていこうということについて、それほど抵抗はないとは思いますけれども、今何かこれに基づいて我々と同じように全てやれと言えば、それはやはり少し違うのじゃないかと思う方々もいらっしゃる。そういうことをしっかりと踏まえながら外交をやってまいりたいと考えております。

吉良委員 無理に基本的価値云々と言わなくても日本の国益を追求する外交はできると思っていることを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

黄川田委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

黄川田委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。田村貴昭君。

田村(貴)委員 私は、日本共産党を代表して、日米貿易協定改正議定書に反対の立場から討論を行います。

 本議定書は、二〇二一年三月に日本による米国産牛肉に対するセーフガードが発動したことを受けて、現行の日米貿易協定で定める発動要件を新たに見直すものであり、その内容は、二〇二二年度以降、米国産牛肉の輸入量が拡大しても、セーフガードが発動しにくい仕組みに改めるものであります。

 我が党は、二〇一九年に現行協定を審議した際、同協定に関する二国間の交換公文には、セーフガードが発動された場合、基準数量を一層高くするための協議を開始することが義務づけられており、米国からの輸入量が歯止めなく拡大するおそれがあると厳しく批判しました。

 本議定書による新たな発動要件は、この交換公文に基づき、セーフガードが持つ関税削減に伴う輸入急増に歯止めをかけるという本来の役割を実質的に無力化するものにほかなりません。国内の畜産農家に及ぼす影響を顧みない措置であり、到底容認できません。

 以上を指摘し、反対討論とします。

黄川田委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

黄川田委員長 これより採決に入ります。

 日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

黄川田委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

黄川田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

黄川田委員長 次回は、来る十一月九日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十九分散会


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