衆議院

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第6号 令和5年4月12日(水曜日)

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令和五年四月十二日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 黄川田仁志君

   理事 小田原 潔君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 中川 郁子君 理事 西銘恒三郎君

   理事 源馬謙太郎君 理事 徳永 久志君

   理事 和田有一朗君 理事 吉田 宣弘君

      秋本 真利君    伊藤信太郎君

      上杉謙太郎君    神田 潤一君

      城内  実君    塩崎 彰久君

      島尻安伊子君    鈴木 貴子君

      高木  啓君    辻  清人君

      寺田  稔君    平沢 勝栄君

      青山 大人君    篠原  豪君

      太  栄志君    松原  仁君

      青柳 仁士君    杉本 和巳君

      金城 泰邦君    鈴木  敦君

      穀田 恵二君    吉良 州司君

    …………………………………

   外務大臣         林  芳正君

   外務副大臣        山田 賢司君

   経済産業副大臣      中谷 真一君

   防衛副大臣        井野 俊郎君

   外務大臣政務官      秋本 真利君

   外務大臣政務官      高木  啓君

   外務大臣政務官      吉川ゆうみ君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  井関 至康君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   水野  敦君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 保坂 和人君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 實生 泰介君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中村 和彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 日下部英紀君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 今福 孝男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 宮本 新吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 池上 正喜君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 片平  聡君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 松尾 裕敬君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   海部  篤君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           鳥井 陽一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房参事官)           坂  勝浩君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局通商機構部長)       柏原 恭子君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長)     猪狩 克朗君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 小杉 裕一君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 北尾 昌也君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 安藤 敦史君

   政府参考人

   (防衛省整備計画局長)  川嶋 貴樹君

   参考人

   (独立行政法人国際協力機構理事長)        田中 明彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十二日

 辞任         補欠選任

  鈴木 隼人君     神田 潤一君

  篠原  豪君     太  栄志君

同日

 辞任         補欠選任

  神田 潤一君     塩崎 彰久君

  太  栄志君     篠原  豪君

同日

 辞任         補欠選任

  塩崎 彰久君     鈴木 隼人君

    ―――――――――――――

四月十一日

 平和的目的のための月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の枠組協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 航空業務に関する日本国と欧州連合構成国との間の協定の特定の規定に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 協力及び電子的証拠の開示の強化に関するサイバー犯罪に関する条約の第二追加議定書の締結について承認を求めるの件(条約第九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平和的目的のための月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の枠組協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 航空業務に関する日本国と欧州連合構成国との間の協定の特定の規定に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 協力及び電子的証拠の開示の強化に関するサイバー犯罪に関する条約の第二追加議定書の締結について承認を求めるの件(条約第九号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

黄川田委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として独立行政法人国際協力機構理事長田中明彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として外務省大臣官房審議官實生泰介君、大臣官房審議官中村和彦君、大臣官房審議官日下部英紀君、大臣官房参事官今福孝男君、大臣官房参事官宮本新吾君、大臣官房参事官池上正喜君、大臣官房参事官片平聡君、大臣官房参事官松尾裕敬君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長海部篤君、内閣官房内閣参事官井関至康君、内閣府政策統括官水野敦君、法務省大臣官房審議官保坂和人君、厚生労働省大臣官房審議官鳥井陽一君、農林水産省大臣官房参事官坂勝浩君、経済産業省通商政策局通商機構部長柏原恭子君、貿易経済協力局貿易管理部長猪狩克朗君、防衛省大臣官房審議官小杉裕一君、大臣官房審議官北尾昌也君、防衛政策局次長安藤敦史君、整備計画局長川嶋貴樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

黄川田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

黄川田委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。寺田稔君。

寺田(稔)委員 自由民主党衆議院議員、寺田稔でございます。

 本日、久しぶりでありますが、質疑の時間をいただきましたこと、感謝を申し上げますとともに、限られた時間でございますので、早速質疑の方に入らせていただきます。

 私も、広島県の選出議員の一人といたしまして、これまで、被爆者救済、また核兵器なき世界に向けた取組の一端を担わせていただき、政治活動を開始する前からも、被爆二世の一人として、多くの被爆者の方々、自らの身内も含めてでございますが、直爆被害者、また間接被爆者、胎内被爆者、また残留放射能の被害者、さらに黒い雨被爆者等々、多くの被爆者の方々と語り合い、そして、直接その被爆体験を見聞してきた者の一人として、また議員活動の一環として、また議連活動としてもこの問題に取組をさせていただいてきているわけでございます。

 議員外交の一環といたしましては、初当選後直ちのタイミングでありましたが、タイとインドで開催をされました平和円卓会議、同僚議員とともに、そしてまた各国の議会関係者とともに、核兵器なき世界に向けた取組、また被爆の実相の発信などをさせていただいたわけでございます。

 また、昨年は、NPTの運用検討会議、一般討議の場にも出席をさせていただき、このNPTの場にも出席をさせていただきました。御承知のとおり、NPTの最終合意の採択には至りませんでしたが、第一委員会における核軍縮の討議、またステートメント、一歩前進をした形となっているわけでございます。

 また、昨年のドイツで開催されたエルマウ・サミットにおいても、首脳会談のステートメントとして初めて核兵器なき世界という大目標が掲げられ、そして、それが最終宣言として採択をされたところは記憶に新しいわけでございます。

 また、今月の四日、五日と、核軍縮についてのオピニオンリーダー、有識者また世界の担当者も含むいわゆる国際賢人会議が開催をされまして、白石座長の下で、大変前向きな議論、大変厳しい安全保障環境の中でありますが、そうした議論が展開をされました。

 昨年末には、被爆地広島においても平和円卓会議が開催をされ、そしてまた、賢人会議、U20の会議、また子供サミット、さらに、今月末には、平和についてのシンポジウムも、我々議連を中心に超党派のメンバーで開催予定にいたしております。また、ノーベル平和賞を受賞したICAN主催の国際軍縮シンポジウムも月末に開催予定ということで、もう目前に迫っておりますが、来週からのG7の外相会合、そして、五月の十九日からのG7広島サミットに向けて、核兵器なき世界に向けた議論を大いに盛り上げていくことができればというふうに考えているわけでございます。

 しかし、先ほども申しましたとおり、大変厳しい安全保障環境の中でございます。前回の国際賢人会議においては、我が国の六つのエレメントを盛り込んだアクションプラン、核軍縮に向けての現実的な取組、そして、核兵器保有国と非核保有国の間の橋渡し役を、我が国がその役を任じながらしっかりと核軍縮につなげていく現実的なアクションプランにつき賛同の意見、そしてまた、それを更に進化をさせるべきである、CTBT、FMCT始め、とりわけカットオフ条約の交渉の開始、またCTBTの発効に向けての取組ということも大いに期待されるわけでございます。

 こうした状況を踏まえ、大臣、いよいよG7の外相会合が目前に迫ってきております。また、G7広島サミットに向け、この核の問題、どのような取組を行っていかれるのか、御所見をお伺いをいたします。

林国務大臣 核軍縮をめぐる国際社会の分断の深まり、また、ロシアの核兵器による威嚇などによって、今委員からもお話がありましたように、核兵器のない世界に向けた道のり、これは一層厳しいものになっていると考えております。しかし、まさにこのような中であるからこそ、核兵器のない世界の実現に向けて、現実的かつ実践的な取組を着実に進めていく必要があると考えております。

 G7広島サミットでは、広島と長崎に原爆が投下されてから七十七年間核兵器が使用されていない歴史、これをないがしろにすることは決して許されないというメッセージを力強く世界に発信したいと考えております。

 私自身、今月のG7外相会合の機会、これも活用しながら、G7メンバーとの間で核軍縮の進展に向けて議論を深めていきたい、こう考えておるところでございます。

寺田(稔)委員 是非ともそうした取組を前に進め、G7広島サミットの成功へと導いていかれることを切望するわけでございます。

 大臣、今月初、訪中後、ベルギーで開催されました、今月のちょうど四日、五日、国際賢人会議と同じタイミングでありました、国際賢人会議の場には大臣のメッセージも披瀝をされたわけでございますが、NATOと日本など四つのパートナー国による外相会合、また、その機会でバイ会談も持たれたというふうにお伺いをしておりますが、ここでは核の問題についてどのような議論をされ、またどのような成果があったのか、大臣にお伺いをいたします。

林国務大臣 今般、ベルギーのブリュッセルを訪問いたしまして、昨年に引き続いて、日本の外務大臣として二回目となるNATO外相会合のパートナーセッションに出席をいたしました。また、この機会に、合計十二の国、機関との間で二国間会談等を実施したところでございます。

 NATO外相会合においては、四日の閣僚級のNATOウクライナ委員会において核の問題が取り上げられた、こういうふうに理解しておりますが、私からは、各国外相との間で行った二国間会談の多くにおきまして核の問題を取り上げたところでございます。

 例えば、ストルテンベルグ事務総長との会談におきましては、ウクライナ情勢を中心に議論した中で、私からは、唯一の戦争被爆国として、ロシアによる核の威嚇、これは断じて受け入れられず、ましてや、その使用はあってはならない、こういう旨述べたところでございます。その上で、日・NATOの間で引き続き連携していくことで一致をしたところでございます。

寺田(稔)委員 ロシアによるウクライナ侵略から、はや一年と二か月がたとうとしておりますが、先月の二十五日、プーチン大統領は、隣国のベラルーシに戦術核を配備すると表明をし、七月の一日までにそのための貯蔵施設を建設をする。これは、これまで何度かプーチン氏が核による威嚇を表明していましたが、更に一歩進んだ形でもって、より現実的にその脅威が増したものというふうに考えております。

 こうしたロシアによるウクライナ侵略は、核兵器使用の威嚇を繰り返す中で出口の見えない状況となっており、まさにこれは、世界の恒久平和、また人類社会に対する重大な挑戦であるというふうに認識をしております。

 このロシアの問題に加え、北朝鮮、既に幾度かの核実験を強行をいたしております。部分的核実験禁止条約の適用除外となっております地下核実験、そしてまた累次にわたる弾道ミサイルの発射、これらは国連安保理決議違反でありますとともに、NPTの三本柱の大変重要な要素でありますところの核拡散防止にも違背をする重大な行為であり、我が国の平和と安定を揺るがすものでございます。

 また、イランの核問題、これも中東地域の平和と安定を大変脅かしておりまして、前々回のNPTの会議においては、このイランの問題についてなかなか決着がつかず、最終文書の採択には至りませんでした。

 しかしながら、今回は、最終合意にはなりませんでしたが、合意目前まで行きました宣言文が国連によって正式登録文書として登録をされ、来月以降に開催されるNPTワーキングにおいても、その議論の起点、スターティングポイントとなるものであり、期待を抱かせる内容となっております。

 このように、世界は依然として核兵器の直接的な脅威にさらされていると言っても過言ではありません。そしてまた、核物質の拡散の懸念も非常に高まっている現実があります。FMCT、カットオフ条約の交渉も急がれるわけでございますが、我が国は唯一の戦争被爆国として、被爆者救済、これは一人でも多く、また一日も早く進めていかなければならないわけであります。

 一昨年のあの黒い雨訴訟、集団訴訟の解決によってこの問題がかなり進むものと期待をされましたが、残念ながらまだその進展が見られないところでして、この問題についての被爆者救済の進展について、厚生労働省にお伺いをいたします。

鳥井政府参考人 お答えいたします。

 いわゆる黒い雨訴訟に関する令和三年七月の広島高裁の判決につきましては、総理談話において、判決の問題点についての立場を明らかにした上で、上告は行わないこととし、原告の皆様に被爆者健康手帳を速やかに発行するとともに、原告と同じような事情にあった方々について、総理談話を踏まえ、判決の内容を分析した上で救済の基準を策定し、訴訟外においても救済することといたしたものでございます。

 これを受けまして、令和四年四月から運用を開始したいわゆる黒い雨に係る被爆者健康手帳の交付につきましては、対象者数を令和四年度末において約一万一千人と見込んでおりましたところ、本年一月末現在で四千四百八十七名からの申請を受け付け、三千四百七十六名の方に被爆者健康手帳を交付し、百三名の方からの申請を却下させていただいているところでございます。

 却下の主な原因でございますが、黒い雨に遭ったことが確認できなかったことや疾病要件が確認できなかったことでございます。

 引き続き、迅速な救済に努めてまいりたいと考えております。

寺田(稔)委員 国は、広島高裁判決の上告を断念したわけでございます。したがって、当然、原告は全員勝利でありますし、そのときの政治決断で、同様の条件のものは皆救済するという政治決断をしたわけですね。

 今言われたとおり、対象者は一万人を超えております。これは、いわゆる狭い降雨地域、いわゆる宇田雨域と呼ばれます非常に狭い広島市内の降雨地域に限っての話でありますが、厚生労働省は、残念ながら、それらの方々に対して、申請をしてくださいという声かけすら行っておりません。まだその政治決断の結果も知らない、黒い雨を浴びた被爆者の方にお会いし、私の方からも、こうこうこういうことになりましたよと説明して、ああ、そうなんですか、それは初めて知りましたというのが現状であります。

 厚生労働省のホームページを見ても、一切、そうした一万人を超える、これは直爆被害、いわゆる放射性降下物による被害でありますが、ガンマ線を浴びた方々に対する救済姿勢が見られない。是非とも積極的に、この救済姿勢、とりわけその対象者に対してはやはり声かけを行い、申請を促すという行為を是非ともしていただきたいと思います。時間の関係でお答えは要りません。

 あと、この議題から多少変わります、多少関連する点もあるわけでございますが、我が国の農産物輸出の促進、これは現在、官民挙げて取組をしているわけでございます。この農産物輸出でございますが、生産者に聞くと、なかなかネックがある、販路の拡大ができない、あるいは、知的所有権の問題でもって高いハードルになっているという声を直接私もお聞きをしたわけでございます。

 大変地域資源豊かな日本の農産物の生産者が丹精込めて作ったものが、残念ながらそうした理由がネックとなって輸出ができないという現状がありますが、農水省の取組、そしてまたそれに対する外務省の支援につき、それぞれお伺いをいたします。

坂政府参考人 お答え申し上げます。

 農林水産物、食品の輸出拡大に向けましては、委員御指摘のとおり、海外における知的財産の保護、ブランド化の取組が必要だと考えております。

 日本産品のブランドを知的財産としてしっかり保護していくためには、模倣品や名称の不正使用について外国の当局が取り締まり、市場から排除する権能のある地理的表示制度の活用が有効と考えております。

 このため、農林水産省といたしましては、外国政府に対しまして、地理的表示の相互保護の枠組みづくりを求めていくほか、輸出産品について国内外における地理的表示等の登録申請を促していくことにより、日本産品のブランド保護の取組を進めているところでございます。

 引き続き、これらの取組を通じまして、我が国の農林水産物、食品の輸出の促進を図ってまいりたいと考えております。

中村政府参考人 続きまして、外務省の取組についてお答えいたします。

 御指摘のありましたブランドあるいは地理的表示制度につきましては、外務省といたしましても、日本の各地域の産品のブランドが地理的表示制度を通じて海外で保護されるよう、日・EU経済連携協定あるいは日英経済連携協定などの国際条約を用いまして、地理的表示制度の対象となる品目の拡大等に向けまして、農水省を始めとする関係省庁と共同しながら尽力しておるところでございます。

 また、これに加えまして、農林水産物、食品の輸出額を二〇三〇年までに五兆円にする、こういう政府目標がございますので、この達成に向け、様々な取組を実施しております。

 一例を御紹介いたしますと、昨年度からの新たな取組といたしまして、輸出額の大きい国、地域の四公館に、現地事情に精通しております農林水産物・食品輸出促進アドバイザーというものを設置いたしますなど、在外公館の体制強化を図っております。

 今後とも、あらゆる外交機会を捉えまして、また、在外公館や海外で築いた人脈、こういった外務省の持つリソースを最大限活用しながら、農林水産物、食品の輸出拡大に、各国の地域事情に合わせて取組を行ってまいりたいと考えております。

寺田(稔)委員 是非とも積極的な取組をお願いして、質疑を終えます。

 ありがとうございました。

黄川田委員長 次に、金城泰邦君。

金城委員 おはようございます。公明党、金城泰邦でございます。

 通告に従いまして、一般質問をさせていただきます。

 まず初めに、私の地元沖縄の宮古島周辺沖で墜落したと思われる陸上自衛隊ヘリコプターの状況について、これは一日も早い安否確認がなされることを願ってやみません。

 しかしながら、現時点での詳細な状況は分かりません。マスコミ報道しか情報はございません。どのような状況だったのか、陸上自衛隊・防衛省は現時点での状況をどのように分析されておられるのか、防衛省、今日は副大臣より御答弁をいただきたいと思います。

井野副大臣 これまで、自衛隊の航空機、艦艇による捜索、海上保安庁の航空機、巡視船による捜索、陸上自衛隊による沿岸部の捜索などを懸命に行ってきたところでございます。その中で、今までに燃料タンクらしきものを含む機体の部品や航空ヘルメットなどが発見されているものの、現在も、機体搭乗していた第八師団長坂本陸将ほか九名について見つけ出すに至っておりません。

 また、今般の事故の原因についてでございますけれども、現在、陸上幕僚監部に設置した事故調査委員会で調査中であり、確定的に申し上げることは困難でございますけれども、一般論として申し上げれば、現場海域において、機体に搭載されていた救命いかだが展開されていない状態で発見されていることなどを踏まえれば、状況の急変により事故につながった可能性が考えられております。

 いずれにしても、そういった様々な点を含め、今後調査を進めてまいりたいと思っております。また、引き続き捜索に全力を尽くしてまいりたいと思っております。

金城委員 捜索は困難であると思いますが、是非とも尽力していただければと思います。

 周知のとおりでありますけれども、沖縄県には三十一の米軍専用施設があり、その総面積は一万八千六百九ヘクタールで、沖縄県の総面積の八%ございます。人口の九割以上が居住する沖縄本島では、本土面積の約一五%の面積を占めております。その規模は、東京二十三区と比較すると、十三区を覆ってしまうほどの広大な面積となっております。現在では、国土面積の約〇・六%しかない沖縄県に全国の米軍専用施設面積の約七〇・六%が集中しています。

 また、陸上だけでなく、沖縄県及びその周辺には、水域二十七か所と空域二十か所が訓練区域として米軍管制下に置かれ、漁業への制限や航空経路への制限等があります。また、その規模は、水域が約五万四千平方キロメートル、空域が約九万五千平方キロメートルと、大変広大な範囲となっております。

 このような状況の中、米軍基地の周辺では、これまで様々な事件や事故が繰り返し発生しております。私たち沖縄県民は事件や事故が発生しないことを心より念願していますが、米軍基地がある限り、何らかの事件や事故が起こる可能性があります。

 そこで、本日は、幾つかの観点から質問を行い、政府の見解をお伺いしたいと思います。

 まず第一点目は、沖縄政策協議会並びに小委員会の活性化についてであります。

 沖縄政策協議会は、平成八年に、沖縄県の地域経済を自立させ、県民の生活向上に資するため、沖縄県に関連する基本的政策について協議する場として設置されました。また、平成二十五年には、米軍基地負担の軽減及び沖縄振興策に関する諸課題への対応を目的として、小委員会が設置されました。

 ちなみに、外務大臣も、各大臣の一人として、沖縄政策協議会も小委員会も構成メンバーになっておられると伺っております。

 この会議の構成メンバーですが、沖縄政策協議会も小委員会も、沖縄県内の構成メンバーは県知事だけと伺っております。しかし、県知事一人が多様化する沖縄県民の声を代弁しているとは私は思っておりません。県内の市町村はそれぞれ違った環境にあり、違った課題を持っています。基礎的自治体として、より住民に近い行政を担っております。

 そこで、提案いたしますが、構成メンバーについて、県知事ではなく、市町村長が構成メンバーとなる委員会を設置するなど、より住民、県民の声が届くようにしていただきたいと思います。御答弁を求めたいと思います。

水野政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、沖縄政策協議会につきましては、沖縄県知事が構成員となってございまして、県内市町村長は含まれてございません。地元の御意向を幅広くお伺いしながら振興施策に反映させることは、極めて重要であると考えてございます。

 沖縄振興に関しましては、これまでも様々な機会を通じて意見交換を実施してきているところでございます。

 例えば、内閣府として、沖縄担当大臣に政府側の窓口となっていただきまして、御出張される際、それから東京で御要望をお受けする際には、県知事に限らず、県下市町村長、経済界といった多くの関係者と直接意見交換、協議をさせていただいているところでございます。

 また、沖縄振興に関する重要事項を審議するため、県知事、市長会、町村会、さらには県、市町村の議会の代表者も構成員とする沖縄振興審議会というのもございます。これを開催して、種々協議、意見交換を実施してきたところでございます。

 今回の委員の御指摘も踏まえながら、多様な御地元の声を反映できるよう、引き続き、大臣はもちろん、事務方においても、現場に足しげくお伺いするとともに、市長会、町村会とも密な連携を取りまして、沖縄の一層の発展に取り組んでまいりたい、かように考えてございます。

金城委員 御答弁、ありがとうございます。

 しっかりと沖縄の暮らしを守るための振興、発展、先ほど申し上げましたが、目に見える形での基地の制限もさることながら、空域や海域など目に見えないところの制限もあるわけでありまして、そういったことも考慮していただきまして、引き続き、また沖縄の各市町村の皆様とも連携を取っていただいて、振興、発展に御尽力いただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

 次に、外務大臣にお伺いいたします。

 現在、日本を取り巻く外交、防衛の環境が不安定な状況となり、政府も、防衛三文書の改定を行い、日本、特に南西地域の防衛力増強を図ろうとしております。地域住民は大変不安に感じております。

 外務省、防衛省は、外交、安保の状況について、身近なところで不安定な状況を感じているより多くの方々、南西地域、特に宮古、八重山諸島の方々に十分な説明を行うとともに、住民、県民の声を聞いていただく取組を推進していただきたいと切に願いますが、御所見をお伺いいたします。

林国務大臣 我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中で、外務省としては、在日米軍の安定的な駐留と活動にとって、沖縄を始めとする地元の皆様の理解が重要であると考えておるところでございます。

 これまでも、私を含めました外務省の政務が地元自治体の首長の方にお会いするなど、累次の機会に我が国の外交政策、これを丁寧に説明し、また、地元の皆様の声に耳を傾ける機会、これを設けてきたところでございます。また、外務省の沖縄事務所におきましても、沖縄担当大使を始めとして、外務省の考え方を地元に御説明するとともに、地元の方々の意見、要望、これを本省に報告をしておるところでございます。

 これからもこうした取組、一層推進してまいりたいと考えております。

金城委員 大臣、ありがとうございました。

 今、外務大臣に御答弁いただきましたが、地元では、具体的な防衛力増強に関して、新たな石垣島駐屯地が設置され、ミサイルが配備されるなどの動きがありますが、外務大臣への質問に加えまして、宮古、八重山諸島の具体的な防衛力増強に関し、地元では、一二式地対艦誘導弾や〇三式中距離地対空誘導弾が今後スタンドオフミサイルに変更され、他国からより攻撃を受けやすいような状況になるのではないかとの不安を口にする住民、県民が多くおられます。

 そこで、このような状況も踏まえ、昨日のニュースでも報道されましたが、三菱重工業との契約の一二式地対艦誘導弾能力向上型及び島嶼防衛用高速滑空弾の件も含めて、防衛省から御答弁を伺いたいと思います。

川嶋政府参考人 御答弁申し上げます。

 まず、一二式地対艦誘導弾能力向上型を含む各種スタンドオフミサイルにつきましては、これは当然、これから造っていくというところもありまして、具体的な配備先は決定していないということで、今後の配備場所等について申し上げることは今々現在の段階では困難であるということを御理解いただいた上で、南西地域の防衛体制の強化について申し上げれば、厳しい安全保障環境を踏まえれば、これは喫緊の課題であるというふうに私ども認識してございます。

 防衛省は、これまで、地対空誘導弾部隊、地対艦誘導弾部隊等を奄美大島、宮古島、石垣島に配備したほか、今後、与那国島に地対空誘導弾部隊、沖縄本島の勝連分屯地に地対艦誘導弾部隊を配備することといたしてございます。

 これらの部隊が装備する誘導弾は、島嶼部に対する侵攻阻止、あるいは経空脅威からの防空、これを目的としたものでありまして、専守防衛の基本方針の下で許容される自衛のための必要最小限の範囲を超えるものではございません。

 なお、防衛省として、地元との関係について申し上げますと、防衛省におきましては、新たな部隊が配置される、あるいは基地を造るといったときには、地元の自治体等と緊密に連絡調整いたしまして、丁寧にこれまで御説明してまいりました。したがって、今後とも丁寧な説明に心がけていきたいと考えてございます。

 また、念のためでございますけれども、今々現在、こういった南西諸島に配備しておりますものにつきまして申し上げますと、〇三式中距離地対空誘導弾、これを配備しておるわけですが、これは、現在の形でありましても、今後その能力向上を図っていく予定であるのでございますけれども、これは、航空機やミサイルといった経空脅威からの防空を目的としたものでございまして、いわゆるスタンドオフミサイルではないということでございます。

 また、地対艦誘導弾、ミサイルについて申し上げますと、現在配備いたしておりますのは一二式地対艦誘導弾でございまして、これはスタンドオフミサイルではございません。ただし、先ほど先生からお話がありましたその能力向上型、これはスタンドオフミサイルであるということでございます。ややこしゅうございますので、ちょっと念のため御答弁させていただきました。

 その上で、今般、先生御指摘の公表されました契約につきましては、四種類契約をしてございます。一つは、一二式地対艦誘導弾能力向上型の地発型、地発型というのは地上から発射するものでございます、これの量産につきましてが一つ目でございます。二つ目といたしましては、同じく一二式地対艦誘導弾能力向上型、これについての地発型、これは地上発射型、艦発型、水上艦艇から発射するもの、それから空発型、航空機、主として戦闘機から発射するものの開発が二つ目でございます。三つ目といたしまして、島嶼防衛用高速滑空弾の量産、これを契約をいたしてございます。四つ目といたしまして、潜水艦発射型誘導弾の開発、これが四つ目の契約でございます。

 ちなみに、潜水艦発射型誘導弾と申しますのは、潜水艦から誘導弾を発射する場合には二つの方法がございます。一つは、背中に穴が掘ってあってという言い方も変ですが、背中に発射装置、セルと言われるものを積んで、そこから発射するような場合。もう一つは、一般的に、潜水艦の前部には魚雷発射管が装着されておりまして、その魚雷発射管から魚雷ではなくていわゆるミサイルを発射するもの。そういう二つのタイプがございますのですが、今回は、後者といいますか、魚雷発射管から発射するタイプでございます。

 一二式地対空誘導弾につきましては、これは地発型、艦発型、空発型、いずれ量産をいたしまして装着をしていきたいと考えておりまして、防衛省が期待する主力のスタンドオフミサイルになるんだろうというふうに考えてございます。

 また、それとともに、恐らく主力のスタンドオフミサイルになるものが島嶼防衛用高速滑空弾ということでございまして、いずれも、防衛省、私どもは大変大きな期待を抱いて、これの成功を祈念しているということでございます。一生懸命頑張ってまいりたいと考えてございます。

 ありがとうございました。

金城委員 詳細な御説明、ありがとうございました。

 ちょっと時間が参りましたので、残余の質問はまた改めてさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

黄川田委員長 次に、松原仁君。

松原委員 まだ全員そろっていないんですが、委員長の指名が早いものですから、一応質問を始めたいと思います。

 本当に、林大臣におかれては、この間、途中たくさん答弁を求めますが、アジア版NATOをつくろうという、表面で言うかどうかは別にして、意識を持って努力をしていることを私は評価をしているということは冒頭申し上げて、質問に入ります。

 皆さんに資料をお配りいたしておりますが、アジア歴史資料センターという、この資料を御覧をいただきたいと思っております。

 皆さんにお配りしたのはコピーのコピーになりますのでちょっとぼやけておりますが、非常に明解なものを見ますと、「本邦内政関係雑件 植民地関係」と書いてあるんですね。その上には外務省記録と書いてあります。その下が昭和十八年。左下には内務省資料と書いてあります。ですから、元々内務省が募ったものを外務省が記録した、こういうふうなことではないかというふうに類推をするわけでありますが。ですから、出典はアジア歴史資料センター、原本所蔵、外務省外交史料館、こういうことになるわけです。

 その資料に書かれていることを確認をしていきたいと思います。事実確認だけまずしていきたいわけでありますが、皆さんにお配りした資料の四ページ目ですね、私が読み上げます。これはたくさんある資料の私が質問しようとする部署に関連しているところだけを選んだので、この冊子自体は極めて大部なものであるということは申し上げておきたい。「昭和十三年二月陸軍特別志願兵令ノ制定ニ依リ同年四月ヨリ朝鮮人ニ対シ志願兵制度実施セラレタル処志願者ノ数ハ年々増加ノ傾向ニ在リ」、こう書いてあるわけであります。

 そこで、この資料に関して、外務省の資料にあるわけですので、昭和十六年、昭和十七年、昭和十八年の志願者の数と入所者の数を、まず事実関係をお答えいただきたい。

實生政府参考人 委員が御提示の資料の該当部分の読み上げをいたします。年度、志願者数、入所者数の順番で読み上げることといたします。

 昭和十六年度、十四万四千七百四十三、三千二百八。昭和十七年度、二十五万四千二百七十三、四千七十七。昭和十八年度、三十万三千三百九十四、六千(限定数)となっております。

松原委員 つまり、志願者は、冒頭私がこのページの右に書いてある部分を読んだわけでありますが、極めて増加をしておりまして、昭和十八年に至っては三十万に対して六千人しか入所できないというので、倍率が五十倍ですか、これぐらいに人気があったというか志願者が多かった。こういうことが当時の日本の客観的な資料から、推察というか、それを我々は確認することができるわけであります。

 そこでお伺いしたいわけでありますが、韓国外務省が三月二十八日、駐韓日本大使を呼び出して、小学校教科書の検定結果について抗議をした。これについて、韓国系シンクタンクは、望んで日本の軍人になったという誤解を招きかねない、こういうふうに言っているわけでありますが、誤解というよりは、実際、入所者に対して志願者が五十倍とか、この文書にそう書いてあるわけですから、韓国外務省の、若しくは、日本の軍人に望んでなったというような誤解を招きかねないというのは、これは事実と違うと私は思うのでありますが、林外務大臣の御答弁をお伺いいたします。

林国務大臣 今御指摘いただきました資料の存在について承知をしておるわけでございますが、これは当時の内務省が、今委員がお触れになったように、作成したものと承知しておりまして、外務省として、当該資料に記載のある数字、これが正確であるかどうか等について確認することが困難であるため、お答えを差し控えたいというふうに思います。

松原委員 これは外務省の資料でもあるんですよ。元々内務省が作ったものであっても、この紙にきちっと書いてあるとおり、外務省の資料としてこれは存在をしているわけですよ、外務省記録ですから。

 外務省記録として残っているこの中身に関して、今の大臣の御答弁で、五十倍ですよ、これだと。だから、私は、事実は事実として言わないと、例えばこういった日本の軍隊に志願した人も、強制的に志願させられたというふうなことを韓国側が言ってきて、また次の何か様々な国家間の争い事になるんじゃないかというのを非常に心配しておりまして、内務省というのも、意図的にこんな数字を荒唐無稽につくるということは、必要性がないですよ。これに書いてあるとおり、どんどんと志願者が増えていると言っているわけですよ。それにもかかわらず、確認できませんというのは、私はいささか、ちょっと答弁としては納得できないのであります。

 もう一回、答弁してもらえますか。

林国務大臣 当該資料でございますが、当時の内務省が作成した資料、これを外務省のファイルで保管をしたもの、こういうことだというふうに承知をしておりまして、外務省として当該資料に記載のある数字が正確であるかどうか等について確認するということが困難であるということでございますので、先ほど申し上げましたように、お答えを差し控えたいと申し上げたところでございます。

松原委員 私がこの質問をしようと思って外務省と様々質問レクをしたときに、そういう資料はないという最初は答弁だったんですよ、お答えが。これは、あったわけですよ。

 当時の日本の内務省がべらぼうなインチキの数字を挙げることは、少なくともここで挙げる必然性はないんですよ、五十倍まで。これをやはり否定をする、戦前のものは何でも否定する、そういうふうな林大臣の、まあ、今はそこまで、否定するとは言っていないけれども、確認できないとか、うまく言葉を逃れていますが。

 これは明確に、当時の内務省はこういうことを言った、こういうふうに書いてあるという、この記載の事実は、じゃ、認めてもらえるということで、もう冒頭認めていますが、改めて、この記載している事実が内務省の中にあったということを、そして外務省の記録としてこれはあるということを、これは認めるとおっしゃってください。

實生政府参考人 先ほど大臣より御答弁申し上げたとおり、この資料、当時の内務省が作成した資料を外務省のファイルで保管したものと承知しております。

松原委員 これを確認できないと言ってしまったら、外務省の記録も、あっても意味がないようなことになってしまうので。そこは、国立公文書館に入っているわけですから。こういったものをきちっとやっておかないと、我が国の連綿と続く名誉に関わる話ですから。強制的に連れて行かれたんだと言ってきたときに、いや、違うんだと明確に言い返す材料であるし、また、彼らは、自分が志願して行くやつはいなかったと、もう既に抗議をしているんですよ、韓国の側としては、駐韓日本大使を呼んで。

 この抗議に対してはどう考えているんですか、大臣。

實生政府参考人 ソウルにおきまして、当方の日本大使館の関係者が韓国外交部の招致を受けて、本件についてのいわゆる抗議ということを受けておりますけれども、その具体的なやり取りについては、外交上のやり取りということもありまして、差し控えたいと思います。

 ただ、我が国は我が国としての、その教科書についての彼らの指摘については、我が国の立場等、きちんと申し述べております。

松原委員 少なくともこの資料が事実であるとするならば、事実ですよ、私はそう思っていますよ。内務省がそんないいかげんなことをして数字を作る必要はないんですから、この案件に関して、五十倍も志願者がいるという。それに関して日本の在韓大使が抗議で呼ばれたのならば、いや、それは違いますよと、我々の方にはきちっとしたデータが国立公文書館の中にありますよと。

 今、我々議員で、議連で、国立公文書館の話、尖閣の問題や様々な話があると、我々はそれを海外との様々な議論をするときに、我々はこういうものがありますよという材料にしようとしている。この資料も国立公文書館にあるんですよ、今。国立公文書館をつくる意味がないじゃないですか、一々確認できないと言って、こういった資料を有効に活用しないのであれば。

 私は、この件に関しては、特に外務省は国立公文書館との連携が必要ですから、極めて、これ以上答弁を求めませんが、皆さんには国益を考えるということを、もっと明確に主張してほしいというふうに思っております。

 それでは、日本人の拘束事案に関して、これから質問を始めてまいります。

 日本人が拘束をされたわけでありますが、今回は、ある製薬会社の幹部職員が拘束をされた。中国の秦剛さん、外務大臣と林大臣が会って、早く解放しろと、こういうふうにおっしゃったというふうに仄聞しておりますが、その経緯、お伺いしたいと思います。

林国務大臣 今次の邦人拘束事案につきましては、四月の私自身の中国訪問に際しまして、中国側に対して抗議をいたしまして、当該邦人の早期解放を含めて、我が国の厳正な立場、これを強く申し入れたところでございます。

松原委員 Nさんと言った方がいいのかな、この人物、製薬会社に勤めていた。製薬会社の中国における代表であったときに、中国商工会議所の幹部をやっていたというふうに私は聞いております。こういった事実があるかどうか、お伺いします。

松尾政府参考人 お答え申し上げます。

 事柄の性質上、また御家族の意向も踏まえ、人定事項を含め、当該邦人に係る詳細についてはお答えを差し控えたいと考えております。

松原委員 先ほど大臣は抗議をしたと言っております。抗議をしたということは、本来は捕まるべき人物ではない者が捕まったという意味で抗議をしたということでしょうか。大臣、もう一回お答えいただきたい。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、抗議をして、我が国の厳正な立場を強く申し入れたところでございます。

 これ以上のやり取りにつきましては、先方の発言を含めて外交上のやり取りでございますので、お答えすることは差し控えたいというふうに思っております。

松原委員 次の、過去の邦人拘束事案の方に、時間の都合もあるので参ります。

 政府として中国国内での日本人の拘束人数を把握しているわけでありますが、どういう状況で何人拘束をされ、何人釈放されたのか、お伺いしたい。

松尾政府参考人 お答え申し上げます。

 中国における一連の邦人拘束事案については、二〇一五年五月以降、今回拘束された一名を含め、合計十七名の邦人が拘束されたことを確認しております。十七名のうち、十一名は帰国済み、一名が亡くなられております。帰国した十一名のうち、五名が起訴前に解放されており、六名が刑期を満了して帰国しております。

松原委員 十一名が釈放、帰国ということですね。

 我々は、外務省は中国に対して司法プロセスの透明化を求めている、これはどういうことなのか。恐らく、この後、質問を続けていきますが、極めて司法プロセスが我々から見ると不透明というか、人為的じゃないかというふうに率直に思うわけであります。私も関係者にいろいろと話を聞くと、極めて、法治国家というよりは、その辺が人為でいじられるようになっているということを聞いております。

 今回、製薬会社の幹部が拘束された事案に関しては反スパイ法ということも言われておりますが、反スパイ法の該当案件というのは五項目あるわけですね。その五項目に関して、これは最終的には質問から落としたんですが、事前には質疑をしていたので、この反スパイ法の具体的項目の五項目、簡単におっしゃっていただけますか。

實生政府参考人 お答えいたします。

 中華人民共和国反間諜法というようなものがございまして、そこに、この法におけるスパイ行為の定義というものがございます。五つございます。

 一、中華人民共和国の安全に危害を及ぼす活動。二、スパイ組織への参加又はスパイ組織及びその代理人の任務引受け。三、国家秘密若しくは情報を窃取、偵察、買収若しくは不法に提供する活動。四、これは中国政府のということだと思いますけれども、敵に対する攻撃目標の指示。その他のスパイ活動というふうになっておると承知しております。

松原委員 時間の都合で、中国の刑法もちょっとここで御披瀝をしたいんですが、今回は特に刑法及び反スパイ法というふうに報道ベースではされているわけです、今回の製薬会社の幹部の拘束は。

 今言ってもらった中の幾つかは非常に、この五つが具体的になったというふうに、実は反スパイ法の制定で分析されているわけですよ。当初、法案になかったスパイ行為についての五項目の具体的な定義規定が加えられ、二〇一四年十一月一日、全人代常務委第十一回会合で再度審議されて、可決、成立をしたと。

 この五項目が今までなかったから、極めて、どういう形で拘束というか捕まるか分からなかったけれども、五項目できたから具体的になったというんですけれども、これ、五項目、具体的と思えないんですよね、今の一項目めも含めて。五項目めにおいては、その他のスパイ行為なんて、全部入っちゃうじゃないかと。その他のスパイ行為というのは何なのかという、その定義すらないという、日本の法律だったら恐らくもうちょっと精緻に作ると思うんですが、そこは取り締まる側が自由に取り締まれるような、そういうふうなたてつけになっていると思っております。

 こういうのを踏まえていわゆる司法プロセスの透明化と言っているんだと思っておりますが、御答弁をいただきたい、大臣に。

林国務大臣 中国側とのやり取りをつまびらかにすることは差し控えますが、政府として、一連の邦人拘束事案におきまして、今まさに委員がおっしゃったように、そもそもどのような行為が反スパイ法に違反するとみなされるのかが明らかでないということを踏まえて、中国側に対して、これまで説明を求めるとともに、プロセスの透明性の確保、これを働きかけておりまして、今後とも、かかる働きかけを行ってまいりたいと思っております。

松原委員 今、大臣もさすがにおっしゃったわけでありますが、プロセスの透明性以前に、この五項目が、それまでと違って新しく提示されたというのが極めて詳細になったみたいなことを言っていますが、その中身が全然そうではないということは、今の大臣の御答弁も含めて分かるわけであります。

 確認をしますが、九人の邦人の刑が確定をしていると。中国側はどう主張しているのか。中国側の主張です。外務省の現地の大使館員は裁判を当然傍聴している。傍聴していると思っておりますから、傍聴していて、中国側は何が理由で、一人ずつを照合すると、プライバシーもあるでしょう、丸めて、十一名に関して、どういうふうに中国側は捕まえた理由を、拘束理由を言っているのか、教えてください。

松尾政府参考人 お答え申し上げます。

 有罪の確定判決を受けた邦人、これは九名でございます。その九名については、いずれも中国の刑法に基づき、国家の安全に危害を与えた罪で有罪判決を受けているものと承知しております。

松原委員 もうちょっと、もう少し深掘りして答えてもらいたいんですが、時間の都合で、次に行きましょう。

 日本人が、今後、邦人が中国で活動する場合、これだけ反スパイ法にしても刑法にしても幅が広いというか、人為的な解釈で拘束できるというふうに我々は見ています。これに対して、日本人が拘束をされ、今回も、この拘束された製薬会社の幹部、もう何十年も中国で活動していて中国では知らない人がいないぐらい有名な人だった、機微な情報を知ってしまったがゆえに拘束されたのではないかというふうに言う人もいますが。こういうことだと、日本の邦人は中国じゃ活動できなくなる、心配で心配で。私が聞いたら、僕は中国の方に行って活動しなければいけないという話だったけれどもそれはお断りした、そんな話も聞いていますよ。

 私は日本邦人を守るためにガイドラインを作るべきだと思いますが、もっとも、こういった法律に対してのガイドラインが可能なのかどうかというのは分かりませんが。ガイドラインを、従来の拘束事案を含めて、検討する意思はありますか、大臣。

林国務大臣 中国側に対しては、これまで、様々なレベルや機会、これを通じまして、中国における司法プロセスにおける透明性の確保などを働きかけており、引き続き、そのような働きかけは、先ほど申し上げましたように、継続をしてまいります。

 また、外務省は、海外安全ホームページ、それから在中国大使館、総領事館を通じまして、中国では、国家安全に危害を与えるとされる行為は、刑法、反スパイ法等に基づき取調べの対象となり、国家安全当局に拘束されるおそれがあるので注意するように呼びかけておるところでございます。

 海外における邦人の安全と安心は外務省にとって極めて優先度の高い課題であると認識をしておりまして、引き続き、中国側に強く働きかけていくとともに、きめ細やかな情報発信、注意喚起を通じまして、在留邦人の安全確保に努めてまいりたいと考えております。

松原委員 実際、そういったものが極めてやりづらいというのは、様々な、中国から戻ってきた人に聞いても、分からないと。ここに行ったらこれが軍事施設だというのが分からないようなものもあったりするし、ある日突然標識が変わったようなこともあるような話も聞いております。だから、本当に注意深くしていないと、いつ何どき捕まるか分からないというリスクがある。

 これは、本人が意識しないで、例えば合弁会社であれば、情報はお互いに知るわけです、やはり一緒に仕事をしていけば。今回の製薬会社の幹部は分かりませんが、そういった意味で、彼は中国における厚生労働省等とも非常に親しくしていたと私は聞いています。そういったことから、機微な情報に、何を機微かとこの場では言いませんが、触れてしまったということがやはり拘束事案の理由ではないかと私は思っております。

 そうなると、中国におけるビジネスというのは極めて厳しいというか。中国は日本にどんどん投資してくれと言っています。それは中国の経済産業部門でしょうが、一方のいわゆる公安部門は全く違う動きをしている。本来であれば、中国でそれは、うまくお互いが話し合って、両方が、両方がというのは、少なくとも経済で日本側からたくさん資金や人材を呼び込みたいというんだったら、その辺は少しするべきだと私は思っておりますが、それは高度なレベルで外務省的に働きかけていただきたいと思っております。

 次に、日本大使館館員の拘束事案、ちょっと時間が大分押してまいりましたので、お伺いしますが、これはウィーン条約に抵触をする。

 ウィーン条約の中身を簡単に、一分ぐらいでお話しいただけますか。

片平政府参考人 お答えいたします。

 外交関係に関するウィーン条約は、外交関係並びに外交上の特権及び免除に関する国際条約でございます。一九六四年に発効し、我が国も同年に締結しております。国際法上、国を代表する外交使節団及びその構成員たる外交官等には、その任務の能率的な遂行を確保するため特権及び免除が認められており、外交関係に関するウィーン条約は、それを明文化した条約でございます。同条約は、外交官が享有する身体の不可侵や接受国の裁判権からの免除等について規定しているものでございます。

松原委員 極めて重いものですね、ウィーン条約。

 そこで、日本人の外交官、大使館員が、過去、三件、四件、拘束された事案があるということでありますが、我々は認めません、しかし、中国側は何と言っているんですか。中国側の主張をお伺いしたい。

實生政府参考人 本件、今回、近いところで、昨年の二月二十一日、北京市内において、在中国日本大使館員がその意に反して中国側当局に一時拘束されるというような事案が発生をしました。これに対して、我々は中国に対して、厳正な、我々の立場を申し入れておりますけれども、外交上のやり取りについての詳細というものは差し控えたいというふうに思います。

松原委員 もうちょっと言ってもらわないといかぬと思うんですが、身分不相応な行動をしたとかいうふうに私も仄聞していますよ。とにかく、どうも抽象、模糊として、客観的な事実でどうだということではなくて、威嚇的な行為のために取っ捕まえているというふうにも言えるような案件だと思っております。

 アジア版NATOの話の前に、ちょっと時間の都合で、アジア版NATOを最後にいたしまして、人権、サプライチェーンについて、飛びたいと思います。

 日本企業に対する様々な、特に今、人権に関しては、公共調達における人権尊重の確保に努めるということがこの度報道されたところであります。中谷元さん、総理補佐官でありますが、極めてこの問題に熱心に取り組んでいて、ようやくこういったところまで来たのかなと、これ自体は評価をしておりますが、まだまだG7の国々に対しては不十分であるというふうに思っております。

 今回のいわゆる公共調達における人権配慮、簡単に、どういうことか、おっしゃってください。

井関政府参考人 お答え申し上げます。

 四月三日、中谷元総理大臣補佐官主宰の下で、ビジネスと人権に関する行動計画の実施に係る関係府省庁施策推進・連絡会議の第七回局長級会合が開催されまして、その場で、公共調達における人権配慮に関する政府の方針について決定を行いました。

 具体的には、公共調達の入札説明書や契約書等において、入札希望者、契約者は、責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン、人権DDガイドラインを踏まえて人権尊重に取り組むよう努める旨の記載の導入を進めることといたしました。

 昨年九月に開催しました同会議の第六回局長級会合において人権DDガイドラインを策定し、企業の人権尊重の取組を促してきているところでございますが、経済主体の一つである政府自身としても率先垂範して人権尊重の取組を進めていくという観点から、中谷総理補佐官の下で、関係府省庁間で、公共調達における人権尊重の取組の推進に関して議論を行ってきたものでございます。

 今回の決定を受けまして、公共調達における人権尊重の取組が進むものと期待しております。

 以上でございます。

松原委員 遅ればせながら、特にサミット前に駆け込んだのかもしれませんが、これ自体は評価をしたいと思っております。

 時間の都合で、設問の二を抜いて、三番目ですね。

 結果として、毎回私この場で言っておりますが、G7の国々と歩調を合わすというのは日本の国益であると基本的に思っています。

 もちろん、グローバルサウスの問題を含めて、価値観というものに関してはこの外務委員会で様々な議論がありますが、短期的には、やはりG7という我々がよって立つ基盤を尊重する。ということになれば、マグニツキー法と人権デューデリジェンスというのは、ほかの国は持っているわけですから、ドイツの事例はもう時間がないので割愛させてもらいますが、やはりつくるべきだと思うんですよね。

 今回の配慮規定というのは非常に大事ですが、つくるべきだと思いますが、それに対しての外務大臣の決意をお伺いしたい。

林国務大臣 我が国は、人権は普遍的な価値であり、人権擁護は全ての国の基本的な責務である、こうした考え方から、これまで、人権侵害に対してしっかり声を上げる一方、対話と協力を基本とし、民主化や人権擁護に向けた努力を行っている国との間では、二国間対話や協力を積み重ねて、自主的な取組を促してきております。

 今の御指摘のような、人権侵害、これを認定して制裁を科すような制度、これを日本も導入すべきかについては、これまでの日本の人権外交を踏まえて、全体を見ながら、引き続き検討をしてまいります。

 今お尋ねがあったように、日本政府として、業種横断的な、責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン、これを昨年九月に決定、公表しております。

 今後も、国内外の動向を踏まえながら、人権デューデリジェンスに関する将来的な法律の策定可能性も含めて、関係府省庁間で更なる政策対応についても検討していくものと考えております。

松原委員 大臣はやはりつくるべきだと内心思っていると思うので、是非閣内をまとめて、それは議法でどうしてもやってくれというなら我々もやぶさかではありませんけれども、これを是非進めていきたいと思っております。

 次に、北朝鮮の課題についてという項目に入っていきます。

 竹内舞子さんという二〇一六年から二一年にかけて国連安保理北朝鮮制裁委員会専門家パネル委員をやっていた女性が指摘していることでありますが、あえてこの場で質問したいと思っておりますのは、日本は安保理決議というのを、これは当然守るわけでありますが、安保理による北朝鮮決議案の中にこういうものがあると。北朝鮮の団体や個人との合弁企業、共同事業体の開設、維持及び運営を禁止する、既存の組織は解散しなければならない。しかし、日本には、北朝鮮の団体や個人との合弁企業や共同事業体の設立を禁止する、又は既存の組織は解散しなければならないという法律はないために、北朝鮮との間で過去に設立された組織を解散する必要がないと。

 つまり、彼女が言うには、国内における安保理決議は未履行である、こういうふうなことを言っているわけでありますが、このことに関して、政府参考人、答弁をお願いします。

今福政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国といたしましては、国連安保理決議に基づく特定品目の輸出入禁止措置や資金移転防止措置に加えて、我が国自身の措置として、北朝鮮との全ての品目の輸出入禁止等の措置を取っております。北朝鮮への人、物、金の流れを厳しく規制する措置を実施してきているところでございます。

 こうした中で、外為法に基づいて、原則、北朝鮮に住所等を有する個人や法人等に対する支払いを禁止するなどの対北朝鮮措置を取っておりますので、北朝鮮企業との共同事業を行うことは困難であると考えております。

 政府といたしましては、引き続き、関連安保理決議の実効性を確保するとともに、我が国として取っている措置の実施を徹底していきたいと考えております。

松原委員 これ以上、更問いしませんが、全然答弁、聞いていることに答えていないよね。

 今言っているのは、この竹内さんが、彼女は今言ったように北朝鮮制裁委員会専門家パネルの委員ですよ、二一年まで。彼女が、日本の国内法が未整備のために、この国連の制裁が完全に履行されていないと言っているんですよ。政府の答弁は、北朝鮮に対しての制裁、こういったものは完璧だと言うけれども、全然完璧じゃないということをこの国連の専門家パネルの女性が言っているんですよ。

 そのことを指摘しているので、あなたがおっしゃったことは全然このことに関しての答弁になっていないので、そのことはこれからもきちっと追及していくし、そういったものを是非とも外務省においても検討してもらいたいと思っております。

 次に、この間、前々回の外務省の質疑ですか、いわゆる北朝鮮の状況の議題設定ということで、林大臣から前向きな御答弁をいただいて、大変にこれは評価しているところでありますが。

 そのときに、利害関係国としての韓国を、共同で北朝鮮の状況の議題設定の提案を行うべきである。提案する可能性については、この間、大臣は十分前向きな答弁をしていますので、そこに韓国を入れるべきではないか。韓国も、そういった意味において、ある意味で北朝鮮の拉致問題とか一緒になって解決できる環境がようやく整ってきたと思うので、これについて御答弁を、前向きな答弁をいただきたい。

林国務大臣 拉致問題を含む北朝鮮をめぐる問題につきまして国際社会が高い関心を持って取り組む、これは重要でありまして、安保理においても、この議題の下で拉致問題を含む北朝鮮の人権状況について議論を行ってきております。今後もそのような機会を模索していく考えでございます。

 今お話のあった点も含めて、今後の対応につきましては現時点で予断を持ってお答えすることは差し控えますが、いずれにしても、我が国は、米国や韓国を含む関係国とも緊密に意思疎通を行いつつ、引き続き、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決に向けて全力を尽くしてまいりたいと思っております。

松原委員 予断を持って御答弁は差し控えるが、それはもう、やる意思があると私は判断をしましたので、林大臣、これは、アジア版NATOも含めて、こういったことをきっちりやっていくことが必要ですから、汗をかいていただきたいと思います。

 次に、これも古い、旧聞になりますが、韓国のレーダー照射問題についてであります。

 韓国大統領が訪日をしたときに、このことは話題にされましたでしょうか。大臣、お答えください。

林国務大臣 平成三十年の十二月二十日の火器管制レーダー照射事案については、韓国側に対して、かねてより再発防止を強く求めてきたところでございます。

 先般の日韓首脳会談では、日韓間の懸案を含めて、日韓関係全般について議論いたしました。総理からは、日韓間では隣国であるからこそ困難な問題もあるが、日韓間の諸懸案について適切にマネージしつつ、順次取り組みたいという趣旨を述べました。

 これ以上の詳細については、外交上のやり取りであり、差し控えたいと思います。

松原委員 議論の中に入っていたというふうに期待をしたいところであります。

 問題は、このことによって、よく防衛省は制服組、背広組という、背広組、制服組でいいですよ、こういうふうに言われております。私は、現場の制服組が、やはり、この問題をそのままスルーしていってしまうと、我が国は、我々の命を懸けて戦おうとしていることに関して、少し、もうちょっと真剣に取り組んでもらいたい、こう思うのではないかと思っております。

 制服組が、今のような状況を続けていて、政治的には妥協の産物かもしれませんが、納得すると思いますか。答えるのが制服組ではなくて背広組ですから、制服組の気持ちをちゃんと確認をしつつ答えてもらいたい。お願いします。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 北朝鮮の核、ミサイルをめぐる状況を含め、日韓両国を取り巻く安全保障環境が厳しさと複雑さを増す中、日韓、日米韓の連携はますます重要となっております。

 現在、日韓防衛当局間には火器管制レーダー照射事案等の課題がございますが、平成三十年十二月二十日の火器管制レーダー照射事案に関する防衛省の立場は、平成三十一年一月に公表した最終見解のとおりでございます。

 防衛省・自衛隊といたしましては、最近の日韓関係を健全な関係に戻す大きな流れの中で、韓国側と緊密に意思疎通を図っていきたいと考えており、防衛大臣の下で内幕がしっかり連携をして、我々として主張すべきところはしっかりと主張をして、話合いにより、火器管制レーダー照射事案等の防衛当局間の懸案の解決を図っていきたいと考えているところでございます。

松原委員 僕は、もちろん、防衛の問題というのは、それは日本国憲法の下でやっているわけでありますが、ロジックの部分と同時に、やはり人間というのは情念というのがあるわけですから、こういった部分できちっと自分たちに寄り添ってやってもらっているのかという思いが、広範に、自衛隊の隊員の皆様に、お互い共有されているということは極めて重要だと思っておりまして。

 私は、このレーザー照射問題を、今の状況のままいってしまうというのは、やはり、喉にちょっと刺さっているとげがあるというか、防衛省の、実際、制服組、現地に行って命を懸けて戦おうとする側からすると、今のこの玉虫色の妥協でいいのかというのは、これは、今日は防衛大臣は来ていませんけれども、強くそのことは指摘しておきたい。やはり、士気を高揚させるためにどうするかというのは極めて重要なことだと思っております。

 時間が大分迫ってまいりました。ここからアジア版NATOについて、戻って質問したいと思います。

 林大臣は、先日、報道によると、ブリュッセルでのNATO会談で、日本とNATOとの関わりは一段高みに上がったと。最終目標はどこに設定して、高みと言ったんでしょうか。

林国務大臣 NATOの外相会合におきまして、私から、NATOのインド太平洋への関与拡大、これを改めて歓迎するとともに、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた新たなプラン、これを紹介しまして、各国との間で法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化のために更に連携を強化したいという旨述べて、参加者から賛同を得たところでございます。

 日・NATO協力については、私から、NATOの信託基金への三千万ドルの拠出などを通じたウクライナ支援を実施すること、また、先般、NATOが主導する災害救援物資の空輸オペレーション、これに我が国として初めて参加したこと、これを表明いたしました。

 各国からは、様々な分野で日・NATO協力が進展していることについて歓迎の意が表されまして、日本とNATOの連携をまた一歩前に進めることができたと考えております。政府として、引き続き、欧州とインド太平洋の安全保障は不可分、こういう認識の下で、国家安全保障戦略を踏まえながら、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化のために、NATO及びその加盟国、パートナー国を始めとする同志国と協力をしていく考えでございます。

松原委員 そういった趣旨であるということも理解します。

 自由で開かれたアジア太平洋といいますか、これは当然目標とするところであって、それを実現するための手段としては、やはりアジア版のNATOのようなものは現実的には必要になってくるだろうというのが衆目の一致するところであるというふうに認識をしております。

 時間の都合でちょっと質問を、二、三を飛ばしまして、四番目でありますが、今日の報道でも、外交青書において、中国とロシアの戦略的パートナーシップを大変に警戒をしているということを外務省自身が文章として出しているわけでありますが。

 これは、脅威であるということを認識しているという理解でありますが、その場合に同志国と連携をすべきだというふうに考えます。大臣の答弁をお願いします。

林国務大臣 中国とロシアは近年緊密な関係を維持しておりまして、ロシアによるウクライナ侵略直前の昨年二月四日に行われた首脳会談では、NATO拡大の反対などを盛り込んだ共同声明を採択しております。

 そして、今年の三月二十日から二十二日まで習近平国家主席がロシアを訪問した際に、共同海上・航空パトロール及び共同演習、これを定期的に実施し、両国軍の相互信頼を深化させていく、こういうことを盛り込んだ共同声明を採択をしております。

 実際に、共同での軍事演習の実施、それから共同航行、共同飛行といった日本周辺での一連の動きなど、軍事協力が緊密化しておりまして、我が国と地域の安全保障上の観点から重大な懸念を持っておるところでございます。

 両国の対外政策を含む動向については、我が国として引き続き関心を持って注視し、米国を始めとする関係国と連携しながら適切に対応してまいりたいと思っております。

松原委員 今大臣の答弁の中にあったわけですが、NATOをアジアに持ち込むなと中国、ロシアが牽制しているということは、逆に言えば、今、日本を含む、これから時間があれば更に深掘りをしてまいりますが、これはやはりアジア版NATOということを彼らも認識しているということだろうと思っております。

 その上で、先般、この委員会で、オーストラリア及びイギリスとの間で、RAA、円滑化協定が成立しました。

 この意義を簡単に、簡単にですよ、時間もあるので、おっしゃってください。

實生政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の日豪、日英の円滑化協定、それは、日豪又は日英の一方の国の部隊が他の国を訪問して活動を行う際の手続を定めることや、同部隊の法的地位を明確にすること等を通じ、共同訓練や災害救助等の部隊間の協力活動の実施を円滑にするとともに、部隊間の相互運用性の向上を図るものでございます。

松原委員 こうしたRAAを、日本は日米安全保障関係にあるわけでありますが、このRAAのようなものをアメリカ以外のところと結ぶというか、これは日本にとって初めてのことと承知しておりますが、いかがですか。

實生政府参考人 委員御指摘のとおり、我が国が締結する同種の協定としては、これら日豪、日英というのは初めてのものでございます。

松原委員 今回、日本がRAAを結んだオーストラリアはどういう国とこれを結んでいるか、簡単に答えてください。

今福政府参考人 お答え申し上げます。

 第三国間で締結されている円滑化協定と同種の協定につきましては、我が国は当事国ではないため網羅的に述べることは困難でございますが、当方で承知している範囲で申し上げれば、豪州、オーストラリアは、現在、パプアニューギニア、マレーシア、ニュージーランド、フランス及びフィリピンとの間で、円滑化協定と同種の協定を締結していると承知しております。

松原委員 これは応用形で考えると、オーストラリアと日本はこれを結んでいる。オーストラリアがこれを結んでいる国々とは、日本もこういった協定を結びやすいというふうに私は思っております。

 その上で、時間の都合もあるので大臣に質問しますが、日本は、イギリスというのはヨーロッパにあるんですが、オーストラリア、既に中国に対して極めて警戒を持っているカナダ、そしてフィリピン、そして今オーストラリアが結んでいる国々、マレーシア。さらには、ちょっとこれはあえてASEANにもくさびを打ち込まなければいけないという点でインドネシア。こういった国々と、外務大臣、汗を流していただいて、円滑化協定を結ぶべきだと思いますが、御所見をお伺いいたします。

林国務大臣 昨年十月に定めた国家安全保障戦略では、同志国間のネットワーク、これを重層的に構築、拡大し、抑止力を強化する取組の一つとして、まさにこの部隊間協力円滑化協定を位置づけておるところでございます。

 この円滑化協定に関しましては、各国と安全保障、防衛協力を進める中で、相手国との二国間関係、それから自衛隊と相手国軍隊との協力の実績、そして相手国からの要望等、こういったものを総合的に勘案しつつ、締結の要否を検討してきておるところでございます。

 政府としては、こうした同志国等との連携の強化の観点から、安全保障に関する協定の締結を含む様々な取組、進めてまいりたいと考えております。

松原委員 前向きな答弁で、実際に、我々のある種、生活観ですね、価値観というよりは生活の在り方を守るという観点からは、特に権威主義国家の台頭が、連携、戦略的パートナーシップが重くなっている中で、これは大事だと思っております。

 そうした中で、時間が来たので最後の質問にしましょう、今お話があったアジア版NATOの実現という観点から、こうしたことを通して、RAAを通して、東シナ海、南シナ海における防衛ラインもきちっとしたものになる。こういったことを、やはりこれから、今既に御答弁があったので、そういうことと理解はしておりますが、日本としては、やはり、あえて言葉を選ばずに言うならば、アジア版NATO、アジア版NATOというと、何かヨーロッパのNATOのあれみたいですから、そうじゃなくて、アジアにおける同じような、人権を尊重し、だからこそマグニツキー法も人権デューデリジェンスも必要なわけでありますが、その我々と同じ、価値観という言葉は余り、あえて使いたくないですが、そういった我々の土俵と同じ土俵を持つ国々と連携をして、ある種の新しい機構をつくるということに対して、やはり日本が中心でやっていく必要があるんだろうと私は思っております、規模的にですね。

 このことに関して、人権外交ということも含め、最後に外務大臣の御答弁をいただきたい。

林国務大臣 この国家安全保障戦略の記述は先ほど申し上げたとおりでございまして、ネットワークを重層的に構築すると書いております。RAAがその取組の一つとして位置づけられておるわけでございます。

 まさにこうした同志国等との連携の強化という観点で、安全保障に関する協定の締結を含む様々な取組、進めてまいりたいと思っております。

松原委員 今日、質問を用意したものが全部できてはおりませんが、こういったこと、外務省の日本における繁栄のプロセスというのは極めて重要でありますから、林大臣には大いに汗をかいていただいて、所期の目的を達成してもらいたいと思いますし、冒頭申し上げたような、日本の過去の名誉に関する問題については毅然と行動してもらいたいということを申し上げ、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

黄川田委員長 次に、太栄志君。

太委員 神奈川十三区の太栄志でございます。

 本日は、久しぶりにこの外務委員会での質疑の機会をいただきましたことを、まず心から感謝申し上げます。

 早速質疑に入りたいと思います。

 まず、日米ガイドライン。

 昨年十二月の安保三文書の改定を受けまして、反撃能力を保有することとなりました。その上で、日米防衛協力のための指針、つまりガイドラインですね、この見直しの必要性について議論させていただきたいと思います。

 我が国と米国は、これまでも、政策転換があった場合には、過去三回ガイドラインを策定してきました。そういった中、まず外務大臣にお伺いしたいのが、日米ガイドラインで、この意義というか目的、これの効果というか、そういったところをどのようにお考えなのか、そこをまず教えていただけますでしょうか。お願いします。

林国務大臣 これは、日米ガイドライン、もう釈迦に説法でございますが、日米同盟を継続的に強化していく、両政府がその国家安全保障政策に基づいて各自の防衛態勢を維持していく、こういうことを掲げておりまして、この中で、米国は、引き続き、その核戦力を含むあらゆる種類の能力を通じて、日本に対して拡大抑止を提供する、また、引き続き、アジア太平洋地域において即応態勢にある戦力を前方展開するとともに、それらの戦力を迅速に増強する能力を維持する。こういうことが書かれておりまして、まさに日米の防衛協力ということの基本的な意義と、そしてそれのための指針というものが書かれておる、こういうふうに承知をしております。

太委員 大臣、今ありましたが、まさに防衛協力のための協力の在り方、そして指針を示していくということであります。

 その上で、これまで三回作っています。七八年、九七年、そして最近だと二〇一五年。なぜこの日米ガイドラインを作っていったのか、そこをもう一度、その効果、大臣の御見解を教えていただけますか。お願いいたします。どういった効果があるのか、お願いします。

林国務大臣 必ずしも御質問の意味を正確に捉えておるかどうか心もとないところもありますが、まさにその時々の我が国等を取り巻く安全保障の環境、これを踏まえて日米間では様々な議論を行ってきたわけでございまして、そういったことを踏まえて、先ほど申し上げましたようなガイドライン、これも適時適切にそういうことを反映させてきた、こういうことではないかというふうに思っております。

太委員 大臣、私、日米ガイドライン、この意義というのは三つあると思っているんです。

 まず一つは、両政府間の政治レベルで、自衛隊と米軍の役割、任務、能力についてしっかりと確認をすること、これがまず一つ。二つ目が、両国民に対して日米防衛協力の現状をしっかりと明示すること、そのことが二つ目。最後に、ガイドラインによって、周辺国、他国に対して、日米防衛協力の実効性、これはまさに抑止力につながると思っています、そういった意味で、抑止力をしっかりと高める。

 この三つの意義があると思っていますが、大臣、それでは、今回の反撃能力の保有を受けて、日米ガイドラインを見直す必要性があるのかないのか、そこを教えてください。

林国務大臣 日米のガイドラインの見直しでございますが、同盟関係に関連する諸情勢、これに変化が生じて、先ほど申し上げましたように、そのときの状況を踏まえて必要だと認める場合に、両政府が適時適切な形で行うものでございます。そうした中で、日米ガイドラインの見直しの必要性についても不断に検討していくということでございます。

 その上で、反撃能力に関する日米の防衛協力の詳細、これは今後日米間で議論していくことになるわけですが、弾道ミサイル等への対処と同様に、当然のことながら、これは日米が協力して対処していくということになるわけでございます。

 そうした中で、我が国の反撃能力の保有のみをもって、直ちに日米ガイドラインの見直しが必要となるというふうに考えているわけではございません。

太委員 大臣、今の御発言、御見解、一月十一日でしたか、ワシントンで、2プラス2の直後に、まさに同じように述べられておりました。

 それから三か月たちましたが、まさに不断に、今すぐ、直ちに見直す必要性は感じていない、ですが、不断に検討していくということでありましたけれども、この三か月間、どういった検討があったのか、進展をちょっと教えていただけますでしょうか、具体的に。お願いいたします。

林国務大臣 日米間では、今後の日米防衛協力の内容、そして日米の役割、任務、能力について幅広く議論しておるところでございます。

 この議論の内容なのでございますが、まさに我が国の安全保障に直結するという事柄の性質もございまして、また、相手との関係もあり、お答えすることは差し控えたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、ガイドラインの見直しの必要性、これは不断に検討していくわけですが、反撃能力の保有のみをもって、直ちにその見直しが必要になるものと考えているわけではないということは、申し上げたとおりでございます。

太委員 大臣、今、同盟関係に変更はないということをおっしゃっていますが、今回、反撃能力保有によって、明らかに同盟関係、これまでは、完全に反撃能力、打撃力は米国に依存する、これはガイドラインにも明記されています。それが今回、我が国が反撃力の一部を担うことになった、これは事実ですよね。これは関係に変更が生じていますよね。それなのに、なぜ。

 大臣が先ほどおっしゃったのが、同盟関係に変化が生じた、情勢にもとおっしゃいました。情勢等に、環境にも、変化が生じた場合にはガイドラインを変更するということを言っておきながら、これは私、ちょっと悠長に構え過ぎなんじゃないかというふうに思っているんですが、大臣、これは変更が生じていますよ。

 実際、私も防衛省の方に、二月十日、内閣委員会で質問しました。基本的には変わっていないと言うんですけれども、ですけれども、一方で、防衛省も明確におっしゃったのが、我が国の反撃能力の保有に伴い、これまでのように米国の打撃力に完全に依存するということではないと。これは変わったということですよね。なぜガイドラインを変更しないんですか。私は本当に対応が遅いと思っています。

 大臣、もう一度、この点、繰り返しになってしまいますが、ちょっとお願いします、踏み込んで。御見解をお願いします。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、ガイドライン、これは不断の見直しを今までもしてきておるわけでございます。日米防衛協力の内容、そして日米の役割、任務、能力については幅広く議論しておるわけでございまして、まさに、見直しの必要については、先ほど申し上げたように不断に検討していくわけですが、反撃能力の保有のみをもって、直ちにその見直しが必要となるということを考えているわけではございません。

 まさに、先ほど申し上げたような議論をしていく中で、必要ということになれば当然これは見直すわけでございますし、議論をしていく中でそれは判断をしていくということになろうかというふうに思っております。

太委員 大臣、やはりちょっとこれは対応が遅いと思います。

 実際の、今の二〇一五年のガイドラインの中では、これはもう矛盾が生じています。二〇一五年の安倍政権下のガイドラインの中では、打撃力に関して全面的に米国に依存する、そういうふうに書いていますよ。ですけれども、今これは変わりましたよね。我が国が打撃力の一部を担うというふうになった状況ですので、これはもう整合性が取れていないですよ。それなのに放置しているというのは、やはり私はおかしいと思っています。

 あと、反撃能力の部隊配備は二〇二六年を想定しているということですよね。そう考えたら、では、どういったタイムテーブルを持っているのか。大臣、この点をちょっと教えていただけますか。

 いつまでも不断の見直しを検討しているだけではどんどん時間だけが経過しますし、あと、やはり今、安保環境は大変厳しいです。そういった意味で、大臣のタイムテーブル、どういうような計画を持っていらっしゃるのか、教えてください。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇一五年に策定されました日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインでございますけれども、そちらに明記されている、日本は日本の防衛を主体的に実施するということ、それから、米国は、自衛隊を支援し補完するとともに、拡大抑止を提供する、このようなことが書かれてございますけれども、こうした日米の基本的な役割分担は変わっていない、このように考えております。

 したがいまして、先ほど大臣からも答弁申し上げましたとおり、日米間において不断の検討や協議を行っていく中で、今後必要という判断がなされる場合にはガイドラインの見直しも行うことになるということでございますけれども、現時点において、我が国が反撃能力を保有するということのみをもって、直ちにその見直しが必要となると考えているわけではございません。

太委員 どうもありがとうございました。ただ、残念ながら、全くこれは進みそうにないので。

 ガイドライン見直し、二〇一五年、制定されたときは安倍政権下でした。そのときも、やはり水面下の交渉から始めて二年半かかった、二年半以上かかっているということですし、二〇二六年頃の部隊配備を考えている中で、ちょっともう動き出していただかなければと思っておりますし、あと、ガイドラインには、現在、打撃力に関しては全面的に米国に依存すると。これはもう変更されていますので、ここは大臣、どうかしっかりと意識をしていただきたいと思っています。

 冒頭も言いました、なぜ私がここまでこだわるかというと、今回の安保三文書改定のときもそうでしたが、ずっと密室で、国会審議はほとんど行われずに決まったように、やはり、どう国民に対してしっかりと明示的に示していくのか。そういった意味でも必要ですし、これは抑止力を高めるという視点からも必要ですので、やはりしっかりと政治がコミットした中で、私は、ガイドラインの策定ということをやっていただきたい。

 ですけれども、やはり時間がかかるのであれば、例えば中間報告的な形でも、実際、二〇〇五年には行っていますよね、「日米同盟 未来のための変革と再編」ということで。まさに日米のRMC、今も実際、協議は進んでいると聞いていますが、役割、任務、能力の協議に関して、中間報告的な形でも構わないので、まずはとにかく動いていただくということを改めてお願いして、この問題は引き続き、大臣、続けさせていただきたいと思っていますので、これは大事ですので、どうか引き続きよろしくお願いいたします。

 それでは、次に移ります。日韓関係に関して。

 尹大統領の本当に強いリーダーシップで、今、日韓関係、また、もちろん日韓の外交努力、本当に、林大臣を始め、御尽力に対して、私自身も敬意を表しております。

 一方で、この関係をどう制度化していくのか。また政権が替わったときに、我が国としてしっかりとした日米韓協力を安定させなきゃいけないというふうに私は思っておりますが、その視点から考えたときに、今回の対韓輸出管理規制措置に関して、これは経産省の方からでしょうか、今回の規制措置を一旦緩和するという決断をされましたが、この間、二〇一九年からの妥当性と検証の必要性に関して、経産省の方から見解を教えてください。お願いします。

中谷副大臣 先生御下問の、まず、妥当性でありますけれども、フッ化水素、フッ化ポリイミド、レジストの三品目につきましては、二〇一九年七月当時、韓国の輸出管理の体制、運用面での懸念があったことから、包括許可から個別許可にいたしました。

 その後、本年三月六日、韓国によるWTO紛争処理手続の中断の発表を受けまして、三月十四日から十六日の間、輸出管理政策対話を開催いたしまして、双方の輸出管理制度の運用状況などについて意見交換を実施したところであります。

 その上で、二〇一九年から三品目につきましては個別許可を行ってきた中で、健全な輸出実績の積み上げが確認をできたというところであります。また、我が国として、以前から三品目に関する韓国側の輸出管理当局の体制や運用、制度措置などの不備について指摘してきたところでありますけれども、今回、慎重かつ入念に再検証した結果、その取組や実効性に改善が認められました。さらに、三月二十三日付で、韓国側からWTO事務局に対し、日本の輸出管理措置に関するWTO紛争解決手続を取り下げる旨が通知されたというところであります。

 こうした状況を踏まえまして、我が国の判断といたしまして、三月二十三日に三品目の輸出管理の運用見直しを行ったところであります。今後も、適切な運用、管理を実施する観点から、引き続き検証していきたいというふうに考えているところであります。

太委員 副大臣、どうもありがとうございました。

 それでは、元々今回の輸出規制を行ったときには安全保障上の懸念があったということだったんですが、では、これはもう払拭されたということでよろしいですか。そこをちょっと明確に教えてください。

中谷副大臣 先生の御下問はホワイト国であるかどうかということだというふうに思いますが、結論から申し上げますと、今後ホワイト国に復帰させるかどうかについては、現段階では何も決まっていないというふうな状況であります。

 引き続き、政策対話を通じまして、通常兵器のキャッチオール制度の運用状況など、三品目以外の幅広い分野における韓国側の輸出管理制度と運用状況について、更にその実効性をしっかり確認していくということであります。その中で、韓国側の今後の姿勢を慎重に見極め、我が国として責任ある判断を行ってまいります。

 以上です。

太委員 元々安全保障上の懸念ということ、これは私も大切な視点だと思いますので、ここはしっかりと守ってほしいと思っています、韓国に対して。

 一方で、今回は完全に、徴用工問題、取下げのタイミングがまさにそうですよね。徴用工問題で韓国側からのアクションに対して、我が国としてそれに応じてということだったと思いますが。

 やはり、今回の半導体関連の物資、先ほどの三品目にしても、韓国との関係の中で、経済安全保障上の、サプライチェーンの強靱化、そういった視点も大事だし、あと、安全保障上も、戦略的な視点からどううまく協力していくかが私は大事だと思っていますので。

 今、副大臣、ちょっと質問の前にお答えされてしまいましたが、まさにホワイト国にもう一度戻してもらう。韓国は既に大統領が指示を出して、あとは事務方で、これはもう手続が進んでいると聞いています。

 そういった意味で、私は、やはりここは安定的な日韓関係をつくる上でも、我が国からもアクションが必要だと思っていますので、安全保障上の懸念がなくなったのであれば、ここは早急に、我が国の方こそ韓国をホワイト国に復帰させる、そこを是非とも御決断いただきたいと思っています。

 この点を含めて、大臣の方からもちょっと御見解をお願いします。

林国務大臣 韓国向けの安全保障に係る輸出管理の運用の見直し、これは輸出管理を適正に執行するために行ったものと承知をしております。

 その上で、先般の日韓首脳会談におきまして、両首脳は輸出管理分野においても進展があったということを歓迎したところでございます。

 いずれにいたしましても、首脳間で一致したとおり、政治、経済、文化など多岐にわたる分野で政府間の意思疎通を活性化していきたいと思っておりまして、私といたしましても、様々な政策分野における各省庁による日韓対話、これを積極的に後押ししてまいりたいと考えております。

太委員 どうもありがとうございます。

 この問題は、本当に、私も韓国にこの間、二回行ってきまして、その中でも、この一年、やはり韓国で、日本との、まさに今いい形で、尹政権、日韓関係、相当高い意識でやっていただいていますので、そこを是非とも生かしていただきたいと思っていますので、引き続き、大臣のリーダーシップをお願いいたします。

 次に、ごめんなさい、時間がなくなってきたので、ちょっとクアッドに関してはなしで、次に進みたいと思います。

 対中関係について、まず大臣から、岸田政権の対中外交に関して、ちょっと短めでお願いしたいんですが、御説明をお願いいたします。

林国務大臣 日中両国間には、様々な可能性とともに、数多くの課題や懸案が存在いたします。同時に、日中両国は地域と世界の繁栄に対して大きな責任を有しております。

 昨年十一月の首脳会談で得られた前向きなモメンタムを維持しながら、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含めて対話をしっかりと重ねて、共通の課題については協力する、建設的かつ安定的な関係を日中双方の努力で構築していく、これが基本的な考え方でございます。

太委員 今大臣、主張すべきはしっかり主張する、また、対話を重ねていくというふうにおっしゃいました。

 また、今回の安保三文書の改定の中でも、もちろん、防衛力を整備していこう、抑止力を高めていこう、それと併せて、外交ということをしっかりと打ち出したのは私も大変よかったと思っております。

 一方、対話をやっていこうと言いながら、離任された、この前の孔駐日中国大使ですか、岸田総理との離任面会申請があったということですが、ここを断った理由、もちろん、別に外交儀礼上は私は特に問題ないというふうに思っていますよ。ですけれども、その上で、その理由に関して教えてください。

林国務大臣 孔鉉佑前駐日大使の離任に当たりまして、岸田総理への表敬依頼がありましたが、日程の都合上、同表敬は実現をしなかったところでございます。

 なお、付言いたしますと、駐日大使の離任に当たって総理表敬が行われることは慣例になっているわけではありませんで、近年、我が方の中国大使の離任時にも、中国国家主席や国務院総理への表敬、これは行われていないということでございます。

太委員 私もその点に関しては了解しております。

 一方、今、日中関係は本当に厳しい状況が続いています。中国に対しては、軍事的にも日米でしっかり対峙していかなきゃいけない段階だと思っておりますが、そういった意味で、先ほど大臣は、対話を大事にしましょうと。それは大事だと思っていますし、今回の三文書の中でもグローバルな中での我が国の戦略というのが見えてきたんですが、対中、対韓、その具体的な戦略というのが、少し大丈夫かなという、見えてこない部分が多くありました。今回の問題も、厳しいからこそしっかりと、我が国として、度重なる領海侵犯に関してもしっかりと非難する場でもあったと思いますので、そういった機会として捉えてほしかった。

 実際、これは二〇一九年五月、当時の駐日大使、程大使ですか、離任のレセプションに、当時、安倍総理は出席されていますよね。そういった意味で、私としては、ここはいろいろなやり方があったんじゃないかというふうに思っています。

 では、次に行きたいと思っています。

 中国が二〇二一年九月にTPP加盟申請を行っておりますが、この点に関して、大臣の御見解を教えてください。お願いいたします。

林国務大臣 CPTPPは、自由で公正な経済秩序を構築するという戦略的な意義を有しておりまして、市場アクセスの面でもルールの面でも大変高いレベルの協定でございます。

 中国の貿易慣行に関しては様々な意見があると理解しておりまして、中国がCPTPPの高いレベル、これを完全に満たすことができるかについて、まずはしっかりと見極める必要があると考えております。

 加入申請を提出したエコノミーの扱いについては、他のCPTPP参加国ともよく相談する必要がありますが、我が国としては、戦略的観点、また、国民の理解も踏まえながら対応してまいりたいと考えております。

太委員 大臣御指摘の点は大事だと思っています。加入に際しての高いスタンダード、そこはしっかりと守らなきゃいけないです。そこは絶対妥協しちゃいけないと私は思っていますが、一方、どう中国を我々の既存の国際秩序の中に組み込んでいくか。これは相当大変なことだと思いますが、今は米国も入っていません。もちろん、米国にしっかり復帰してもらうこと、これも大変なんですけれども、行いながら、それと同時に、どう中国を大きな戦略の中で巻き込んでいくのか。

 そういった意味では、このTPPは私は一つの突破口になると思っていますので、もうイギリスが加盟することになりましたので、次は中国、もちろん台湾も含めてです、そこを大臣、進めていただきたいと思っています。

 あと、これは質問したかったんですけれども、松原先生が先ほど質問されたと思いますが、今回の邦人拘束事案。

 中国において、どのような活動が反スパイ法違反とされると認識されているか。この点、教えていただけますか。お願いいたします。

實生政府参考人 中国のいわゆる中華人民共和国スパイ法、反間諜法というものがございます。それは、先ほど松原委員の御質問に対しても、こうした概要が、項目があるということを御紹介いたしました。

 ただ、どのような活動が違反と認識されるかという部分につきましては、我が方として、中国の国内法について有権的に解釈をし、お答えするという立場にはないということであります。

 そもそも、これは先ほどの答弁で大臣の方からもありましたけれども、どのような行為が反スパイ法に違反するとみなされるのかということが明らかでないことを踏まえて、中国側に対しては、これまで説明を求めるとともに、プロセスの透明性の確保を働きかけてきているということであります。今後ともかかる働きかけを行っていくという考えであります。

太委員 この点は、今、中国に駐在されている日本人の方たちは相当不安だと思っています。そういった意味で、安心を少しでも提供できるように、まさにガイドライン、ステートメントを含めて、そこの作成に向けてどうか動いていただきたい。そこをお願いいたします。

 時間がなくなりました。次ですが、PFASの問題です。

 有機フッ素化合物を含む泡消火剤の流出に関して、これは沖縄だけの問題じゃないんです。私の地元神奈川でもそうですし、東京の多摩地区でも最近また出てきたということですが、これは少しずつ代替品への交換が進んでいるということで、そこをまた別途教えていただきたいと思っています。

 これは、やはり一番大事なのは、政治がどう関与していくのかということだと思っています。国民の命が懸かっています。そういった意味で、やはり大臣、私は一年前もこれを聞いて、2プラス2を含めて、ブリンケン国務長官ともいろいろ話をしているということだったんですが、どうか引き続き、環境補足協定でなかなか守られていない部分、ここをどう我が国として、基地の立入りを含めて、行っていくか。

 そこに向けて、この問題、やはり大臣に引き続きリーダーシップを発揮していただきたいと思っていますので、どうか、これは依頼で、終わります。

 どうもありがとうございました。

黄川田委員長 次に、青柳仁士君。

青柳(仁)委員 日本維新の会の青柳仁士です。

 今日は、開発協力大綱の改正案について議論させていただきたいと思っております。

 これまで、予算委員会また本外務委員会において、岸田総理また林大臣に様々御答弁いただきまして、議論させていただきましたので、今日は、JICAの方から田中理事長にお越しいただいております。お忙しいところ、ありがとうございます。

 まず一点目なんですけれども、オファー型協力についてということで、今回、これは新聞報道もありましたが、開発協力大綱の改正案に関しまして、要請主義というのを見直すというような方針が一定示されております。

 これは前回の委員会でも指摘させていただいたんですが、今の日本のODAのやり方というのは、要請書というものを取り付けて、それに対して行う。これは、内政干渉を行わないとか、表面的な意味合いというのはあるんですけれども、実態上は、その要請書は余りその国の本当のニーズを反映しているわけでもなく、かなり恣意的に作られていたりとか、あるいは、手続上大臣だけが出していたりとかいうケースもあるわけです。形骸化しているという面が一つある。

 それから、それがあるがために、それを取り付けなきゃいけないがために、本当は今すぐこういう支援をしなきゃいけないと思っていてもなかなかそれがタイムリーにできなかったり、あるいは、日本側はこうしたいと思っているのにその要請がないからできないとか、こういうかなり弊害がありました。

 ですから、現在、それは、私は撤廃すべきだと思うんですが、撤廃というところまではいかなくとも、今回の開発協力大綱の改正案の中に、オファー型協力ということで、そのまま原文を読ませていただきますと、「ODAとOOF等」、OOFというのは民間の資金ですね、「様々なスキームを有機的に組み合わせて相乗効果を高め、日本の強みを活かした魅力的なメニューを作り、積極的に提案していくオファー型協力を強化する。」というふうに書いてあります。

 この際に、魅力的なメニューをつくっていくということは、これはもちろん必要なことであります。ですが、それはもうやっていると思うんですね。日本はこういうことをやれますよとか、JICAにはこういうスキームがありますよとか、あるいはJICA以外のメニューもこういうのがありますよと相手国に提示する、これはふだんからやっている話で、それだったら、別にオファー型協力と銘打つ必要は全くないと思うんです。

 このオファー型協力が、きちんと我が国の方針を反映させたもの、あるいはタイムリーに行えるようになるには、この要請書の取付けのプロセスというものを飛ばせるのかどうかというところが非常に重要な論点だと思うのですけれども、これは冒頭、林外務大臣にお伺いしたいんですが、外務省として、今回のオファー型協力に関しては、単にメニューを見せていいものをやるとかそういうことではなくて、全体のODAの国としての手続を含めた改正を念頭に置いているというような理解でよろしいか、お願いいたします。

林国務大臣 新たな開発協力大綱案では、ODAと他の公的資金等の様々なスキームを有機的に組み合わせて相乗効果を高めて、日本の強みを生かし、協力メニューを積極的に提示するオファー型協力というのを打ち出しております。

 このオファー型協力ですが、日本側からの提案を示して、より能動的な形で相手国との対話、協働を通じた案件形成を行っていくものであります、今おっしゃったとおりでございますが、やはり、国民の税金を原資とするODAの供与である以上は、先方政府の最終的な意向を確認するために正式な要請を取り付けるという手続自体は維持する必要があると考えております。

 このオファー型協力の具体的な実施の在り方等については、まさに現在、政府、JICA内で調整中でございますが、今委員からの御指摘も踏まえつつ、能動性、戦略性の高い開発協力を推進していきたいと考えております。

青柳(仁)委員 ちょっともう一つ、更問いで聞かせていただきたいんですが、今の御答弁だと、要するに要請書自体は残すということなんですが、この要請書の在り方というのは非常に重要だと思うんですね。

 今みたいに、定型のフォーマットを向こうから取り付けて、それに口上書をくっつけてやり取りするというようなものが、本当に形骸化しているこういうものを残すのか、あるいは、国際機関みたいに、どちらかというと、こちら側が用意したようなドラフトみたいなものに対して、向こうが受け入れてもらえるかどうかという判断を聞いていくというようなプロセスも可能だと思うんですけれども、そういったオプションも含めて柔軟に考えるのか、あるいは、その部分に関しては全く変えるつもりがないのか。その点について、現状の御理解を教えていただけますか。

林国務大臣 まさに先ほど申し上げましたように、最終的には、原資が国民の税金でございますので、意向を確認する、これは必要だ、こう思っております。

 その具体的な実施の在り方、まさに政府、JICA内で調整中でございますので、今の委員からの御指摘を踏まえながら、どういう手続というものが、オファー型協力のよさを生かしながら、しかし、我々として最終的な意向を確認できるのかという観点からも、しっかりとこの最終的な詰めをやってまいりたいと思っております。

青柳(仁)委員 是非柔軟に、合理的にお考えいただきたいなと思います。

 今大臣が御指摘いただいたとおり、国民の税金を使って行っている事業ですから、逆に言えば、そういう余り意味のない手続のために非効率があってはならないというふうに思いますので、今、安全保障環境も非常に、この後質問させていただきますけれども、重要視されている中で、やはりODAの意義というのはますます重要になってくるという中において、より我が国の意向を反映し、また、効率的、合理的な援助を行っていくということを念頭に、制度の改変、お願いしたいと思っております。

 続いて、このオファー型協力に関して、基本的には魅力的なメニューをつくっていくというような中身だと聞いておりますけれども、仮にオファー型協力というスキームができた場合、今よりも自由度が増す、あるいはオプションが増すという、こういう理解でおります。逆に、そうでなければこれはやる必要はないし、ここに書く必要はないと思うんです。

 新しいオファー型協力ができた場合に、JICAとして、新たな取組とかプロジェクトというのはどういうようなことが現在考えられるか、お聞かせいただけますでしょうか。

田中参考人 オファー型協力につきましては、林大臣からも御答弁いただいたとおり、日本の強みを生かした魅力的なメニューを積極的に提示することで、開発協力の能動性、戦略性を強化するということだと理解しております。

 ただ、青柳先生おっしゃったとおり、JICAはこれまでも途上国政府とは積極的な対話を常に続けておりますが、今回、オファー型ということが一つのテーマとして出てきたわけですから、これを積極的に活用して、これまでも、これまで以上に、私どもの強みのあるところを積極的かつ明示的に相手国に提示して、そして開発効果を上げていきたいというふうに思っております。

 現在、JICAでは、これまでの協力の中、開発課題を、JICAグローバル・アジェンダという形で、二十ぐらいのテーマに分けて、それぞれの中で、これまでJICAが行ってきたものの中で科学的に見てかなり効果があると思われるようなものを、まとめてこういう戦略でやっていくとあなたのところの国ではうまくいきますよというようなことを提示できるようなことを整理しておりますので、これも外務省とよく調整させていただいて、新しい形の姿を見せていくことができるといいと思っております。

青柳(仁)委員 是非、実態に即した、まさに林大臣おっしゃったとおり、国民の税金を使っている事業ですから、効果がしっかり出るように、無意味な手続でそういった効果、効率の発現というのが妨げられないように、まさに、実施機関のJICAの働いている皆さんは、そういうところにじくじたる思いも相当持っている方は多いと思いますので、しっかりと制度に反映させていただきたいなというふうに思います。

 それから、次に参ります。

 安全保障との関係についてということで、今回の開発協力大綱の改正案の中には引き続き非軍事原則が保たれております。軍事と非軍事の境界を明確に引くということがはっきりと書かれているわけですけれども、昨年の国会で議論されていた安保三文書の改定の際に、ハイブリッド戦争だとか、そういったキーワードの中で、昨今の安全保障環境の中では軍事と非軍事の境目が分からないということを、これは防衛相も、それから総理もおっしゃっています。

 ですから、こういう認識の中で、軍事はやらないんです、それは、今までみたいに、例えば武器に対する供与はしないとか、警察のトレーニングはやるけれども兵隊のトレーニングはやらないとか、そういう簡単な線引きだけで境目を見定めるのは非常に難しい状況にあります。

 例えば、中国の一帯一路なんかに代表されるように、資金を供与することによって経済的依存を高めることで、相手国を依存的な立場に置くということ。あるいは、国際的なインフラの連結性を高めることで、鉄道だとか道路だとかを、これはまさに一帯一路ですから、他国への有事の際の兵力の動員、あるいは物資の動員というものを容易にする。それから、情報通信メディア等に浸透して、民主主義国家の意思決定に外から干渉する。重要なサプライチェーンを独占して、有事の際に国民生活の維持が困難な状況をつくる。こういうことを平時から進められているのが、現在の、現代の戦争とはこういうものである、この認識は、多分、ここにいる皆さんも、それから去年の安全保障三文書の改定に関わった方々、みんな同じ認識を持っていると思います。

 こうした今私が例に挙げたようなものというのは、通常、経済協力なんです。道路を造ったり、橋を造ったり、鉄道を造ったりしていますし、情報通信の技術協力ということで専門家を派遣したりもしています。古い昔は、JICAは中国に鉄鋼技術の専門家を送って鉄鋼技術を教えたりしていました。今、逆転されちゃいましたけれども。今、経済安全保障の世界でそんなことをやったら大変なことになります。

 ですから、そういう、どこまで協力していいかというところはなかなか線引きが難しいと思うんですが、これはまた林外務大臣にお伺いしたいんですが、開発協力としてこれまで扱ってきた、今申し上げたような分野がかなり多く含まれるんですが、現時点ではっきりしたことはまだ線引きはできないかもしれませんが、今後、実施の際に、開発協力とこの軍事、非軍事の線引きというのはどのように行っていけると考えておられますでしょうか。

林国務大臣 今委員が御指摘されたように、安全保障の対象が、経済、技術等の分野に及びまして、軍事と非軍事の境界というのが曖昧になってきておると考えております。まさに御指摘があったように、国家安全保障戦略、昨年末に改定いたしましたが、ここにもこうした現状認識を示したところでございます。

 そうした中で、ODAの軍事的用途への使用を回避するという非軍事原則を堅持しつつも、ODAを始めとする国際協力の戦略的な活用によりまして、我が国の安全保障にも資する外交的取組を強化していくことが一層重要となってきております。

 具体的には、ODAを通じたサプライチェーンの強靱化、資源の持続的供給、技術の育成、保護等の協力、これは、開発途上国の経済社会の自律性、強靱性の強化、また、持続的成長、こういったものにとどまらず、我が国にとっても重要になってまいりまして、こうした点は開発協力大綱案にも盛り込んでいるところでございます。

 今年前半を目途に策定いたします新たな開発協力大綱の下でも、引き続き、ODAの実施に当たって、非軍事原則との関係を個別具体的に検討の上で、開発途上国の課題解決への対処と同時に、我が国の平和と安全、更なる繁栄、こうしたことにつながる協力を推進していきたいと考えております。

青柳(仁)委員 今おっしゃったとおりなんですけれども、本当に、我が国の国益の増進ということを考えれば、今まで以上にこの非軍事、軍事というところの線引きは難しい。見極めながら、かつ積極的にやっていかなきゃいけないというところがあろうかと思います。

 そういった中で、やはりこれはある程度外務省の方でしっかりとした線引きをしないと、現場任せで、どこまで教えていいですかとか、どういう専門家ならオーケーですかというのを現場で判断するのはなかなか難しいと思うんですよね。ですから、ここはやはり防衛省等とも協力をしながら、全体的な戦略の下で行っていくのが重要だと思っています。

 そういった中で、これはちょっと次の質問を続けて聞かせていただきますが、今のような議論というのは、国会とか外務省、防衛省の方では、通常どおり、常にやられているんですが、なかなかJICAの方でそういう議論というのがされることは余りないのではないかと思うんです。

 ただ、一方で、今、林大臣もおっしゃったとおり、どこまでが軍事か非軍事かという中で、我が国の国益に資する、安全を担保するというようなこともODAに今後求められていくという中においては、まさに今議論されている経済安全保障とか、こういったことは非常に重要になってきます。開発協力大綱の案の中にも、国際社会の分断を防ぎ、より大きな市場をつくり、経済発展の果実を多くの国で共有していくことの重要性というのが指摘されています。これが一つです。

 それから、経済安全保障は、昨年末に、法律が成立をしまして、現在その具体的な制度化が進められているところですけれども、そういった中で、それも含めて、今度、自由で開かれたインド太平洋ビジョンというのがありまして、この中で、法の秩序に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化に取り組むということを日本の方針として示されております。この中では、中国が独自の価値観を世界に広めているという状況下で、日本とか同盟国、同志国が同じ価値観をグローバルサウスにも浸透させていく、こういう必要性が指摘されております。

 こうした経済安全保障であるとか、あるいはこういうFOIPで示されているような価値観を広めていくだとか、こういう役割というのが今までのODAにはなかったような要素だと思うんですが、これからやはり役割として考えていかなきゃいけないと思います。具体的な制度なんかは当然できていないと思うんですが、現状、こういった点に関して、田中理事長のお考えをお聞かせいただければと思います。

田中参考人 JICAは、これまでも、我が国開発協力の実施機関として、国際協力を促進して、我が国及び国際経済社会の健全な発展に資することを目的として事業を実施してきておるわけであり、途上国に寄り添った開発協力をすることによって、途上国から日本に対する信頼を獲得するということをやってきております。

 こういう活動は、JICAはODA機関でございますから非軍事の活動でございますが、これによって相手国の信頼をかち得るということによって日本に対する安全保障環境を全般的に改善するということに私どもは貢献させていただいているんだと思っております。ですから、その形で日本の安全保障という国益にもJICAにおける非軍事の活動が役立っているんだというふうに、私はそのように思っております。

 ただ、この中で、最近の、経済安全保障推進法の成立に見られますように、国際情勢は大きく変化しております。私どもも、この経済推進法で実施される様々な取組を十分注視し、そしてまた、外務省を始め政府各省からも御指導いただきながら、JICAの取組が、途上国のみならず日本の経済安全保障にも貢献し、ひいては、自由で開かれた国際秩序を維持発展させて、途上国を含む国際社会の共存共栄の実現に資するものにしていきたいというふうに思っております。

 また、自由で開かれたインド太平洋のビジョンの下、法の秩序に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化して取り組むということは日本政府の方針でもございますので、その中で、私どもの活動を、開発途上国の皆さんに、こういうことをやっていくことが日本とパートナーの国の双方にとって利益になるということを示していく。そのやり方として、やはり私どもは民主主義体制の国でございますので、困っていても何とか民主主義を進めたいというふうに思っているような国に対しては特にとりわけ丁寧に、また、私どもの価値観からして十分民主的であると現在は評価されないにしても、日本と協力していくことがそれらの国の人々にとって役に立つんだということを示す。それによって、徐々に徐々にではありますけれども、自由主義的な価値観、国際的な法の秩序に基づく秩序が役に立つ、組むんだったら日本とかそれ以外の自由主義の諸国と組むのが利益になるんだというふうに思ってもらえるような協力をやっていきたいと思っております。

青柳(仁)委員 まさにJICAは、海外で様々な専門家とか、それからJICAの職員も含めて多様なアクターが、多分、日本の国の機関の中でも外務省以上に人も予算もありまして、たくさんの人が活動していると思いますので、そこで何を伝えるかというのは非常に重要だと思いますので、今おっしゃったような形で、より強い期待が込められているということを是非考えていただけたらと思っております。

 それから次に、サステーナビリティーについてお伺いしたいと思います。

 これはずっと以前から、今回の開発協力大綱にサステーナビリティーというのをしっかり入れるべきだということを私の方からも申し上げてきましたし、党としても提言書等々出してきたところですけれども、今回の中に極めていい形で入っておりまして、非常によくまとまっていたので、そのまま読ませていただきます。

 民間企業との連携というところで、「民間企業の取組は、開発途上国の開発課題の解決と持続的成長に一層重要な役割を果たしている。」この認識は正しいですね。そして、「SDGs採択により経済・環境・社会の課題が統合され、SDGsへの取組と企業価値が連動し得るようになったことで、多くの民間企業や投資家が開発課題により積極的に取り組み、持続可能な社会を実現するための金融(サステナブルファイナンス)を進めるようになっている。これを受けて、開発途上国にとっての民間資金の重要性も高まっており、インパクト投資やESG投資など、開発効果を有する民間資金の活用は国際的な潮流となっている。これらを踏まえ、従来の官民連携の取組を引き続き推進するとともに、スタートアップや中小企業を含め、民間企業を開発のプラットフォームに巻き込み、開発途上国の開発課題と結びつけるための開発協力を推進していく。具体的には、インパクト投資やESG投資、ブレンディッドファイナンス等の推進のため、開発途上国における経済基盤の構築、民間人材の研修・留学、法制度整備支援、開発モデルの提示、海外投融資を始めとする公的資金の戦略的活用等を行う。」というふうにありまして、ちょっと長かったんですけれども、今までの開発協力には余りなかった文章だと思います。

 こういうことがうたわれることは非常に重要なことで、そして、今回はまだこれは案ということですから、今パブリックコメントを受けて、また修正されるというふうに認識はしておりますが、是非、こういうところは保っていっていただきたいなと思っております。

 そういった中で、サステーナビリティーというのは、昨日もちょうどJICAの議連があって、私もちょうどそのサステーナブルファイナンスの方が来ていたのでお話を伺ったんですけれども、ちょっと投資家側と同床異夢のところがありまして、投資家の進めているサステーナブルファイナンスというのは、リーマン・ショックとかで、リーマン・ブラザーズが潰れる前日まで何の情報も知らされていなくて財産を一気に失った投資家たちが、何で自分たちにもっと情報を出さないんだというようなフラストレーションから始まって、情報をできるだけ開示させるための手段としてESG投資を使っている、そういう側面があるというふうに思っております。

 そういう中で、ですから、単にファイナンスだけが重要なわけではなくて、むしろそういう民間の市場メカニズムを利用して社会課題解決を行っていく仕組みをつくろうとしているところに意味があるんだと思うんです。

 ESG投資は今四千兆円というお金が集まっていますが、これも、社会価値の高い企業がどんどん繁栄し成長し、お客様から選ばれ、パートナーから選ばれ、投資家から選ばれ、労働者から選ばれる、一方で、そうでない社会価値の低い企業、あるいは社会課題解決をしっかりやっていない企業、又は、余りそれが、逆に悪い影響を与えている企業はどんどん市場から淘汰されていく。こういうマーケットをつくろうというのがサステーナビリティーの本質なわけなんですけれども、こういったところと、JICAがやっている、官と官の間で、国民の税金を使って向こうの政府に対してお金を出すという基本的なやり方、様々スキームがあるのは理解していますが、同じサステーナビリティーと言いながらちょっとすれ違っている部分も感じているところなんですが。

 現状、前回の委員会で実は林大臣に同じ質問をさせていただいたんですけれども、田中理事長として、このサステーナビリティーということと日本の開発協力について、どのような認識をお持ちでしょうか。

田中参考人 私は、二〇一二年から二〇一五年までJICAの理事長をさせていただいて、その後、六年半ほど学界に戻っておりまして、また四月にJICAの理事長を拝命したんですけれども、この間に起こった大きな変化にやはり着目せざるを得ないと思っております。

 それは、SDGsというものができたということもあり、それからパリ協定が実現したということもあり、そしてまた、このサステーナビリティーに関して、民間企業を始め多くのステークホルダーが自らのこととして認識し、行動し始めてきたということ、これが、私が昨年の四月にもう一回JICAに戻ってきたとき認識した現実でございます。

 元々JICAの事業は開発協力ですから、MDG、それからSDGsに続くこういう開発課題についてはプロフェッショナルとしてやってきたという自負はございますけれども、やはり、官と官とだけでやっている開発協力でなく、民も含め、そして、使えるところでは市場メカニズムも使ってサステーナビリティーを実行していこうという機運が高まっていることは、私は大変すばらしいことだと思っております。

 そして、開発協力大綱にも、先ほど委員が御紹介いただきましたように、その面についての記述が大変丁寧になされるようになっておりますから、これが閣議決定されるということでありましたらば、私どもとして、これを着実に、積極的に推進してまいりたいと思いますし、また、JICA自体は、開発途上国におけるサステーナビリティーを実現するということが主なミッションでありますけれども、その際、やはりJICAという組織自体が、自らの経営、運営、そして事業においてサステーナビリティーをちゃんと実現できているのかということについての自省、反省、そして情報公開ということを私としてみると積極的に進めてまいりたいと思っております。

青柳(仁)委員 まさにおっしゃるとおりの認識だと思いますので、是非、JICAに期待している民間の企業あるいはサステーナビリティーの関係者というのは非常に多くおりますので、そういった期待に応えられるようなしっかりとしたリーダーシップを期待しております。

 それから、サステーナビリティーに関してもう一問お伺いしたいんですけれども、JICAの方で、そういうことでサステナビリティ・レポートというものを出されているので、これをちょっと読ませていただきました。

 ちょっと、正直申し上げると、少し初歩的なレベルのものだなという印象で、それはなぜかというと、今、民間では多くのところが取り組んでいる、いわゆるバックキャスティングと言われる、どういう構想、状態に社会を持っていきたいのかということを最初に考えてから現在何をすべきかと考える、このやり方は、TCFDだとか気候変動でももう標準化されておりますし、そういうことをやっていたり、それから、その他いろいろあるんですけれども、ちょっとこれからまだまだブラッシュアップが必要だなというふうに思いました。

 ただ、お伺いしたら、先月ぐらいからちょうどサステーナビリティーの推進室が立ち上がったというようなお話だったので、まだ取組が始まったばかりなんだろうというふうに思っておりますので、これからの動きを期待しているところなんですが、そういった中で、民間企業、今、上場企業でサステーナビリティーに取り組んでいないところは多分ないと思います。今、上場基準にも入っていますし、それから、経団連とかでサステーナビリティーを知らないというのは、これは社長が恥をかく、こういう状況になっていますのでないと思うんですけれども、そういうところの多くが、今、CSO、CEOとか、COOとかCxOとか、いろいろあると思うんですけれども、あの中で、CSO、これはチーフ・サステーナビリティー・オフィサーというんですけれども、こういう役員を配置するというような動きも進んでいるんです。JICAでもそういうことをやってみたらどうかなと思うんですが、これについての御意見を伺いたいと思います。

 それからもう一つは、今、JICA内部の人材のお話をしましたが、外部の人材に関して、従来のJICAの専門家だとかコンサルタント会社だとか、おつき合いしている人たちの中にはいない方が結構多いと思うんです、大企業の中でサステーナビリティーを推進しているだとか、あるいは、スタートアップとかでそういうアイデアを具体的な形にするだとか、データとかAIと組み合わせてサステーナビリティーに取り組んでいる人だとか。今までのいわゆる専門家人材、日本の国際協力専門家人材にちょっと見当たらないような人たちが今サステーナビリティーを推進して引っ張っているという現状もあるというふうに認識しております。

 こういった方々を連れてきて日本の力に役立てるためには、新たなそういう人材発掘、リクルートのツールが必要だと思うんですが、この点についてJICAの認識を教えていただけますでしょうか。

田中参考人 今委員から御指摘いただいたこと全て、私ども、これから胸の中に入れて、積極的にJICA自身の改革ということで取り組んでまいりたいと思います。

 先ほど申し上げましたが、去年の四月に私はJICAへ戻ってきまして、幾分かJICAの中のサステーナビリティーの状況を見て、これはもうちょっとちゃんと、JICA、頑張らないと駄目だというふうに思いまして、それで、組織的にもやはり進めていかなきゃいけないということで、まず、上級審議役の中の一名をサステーナビリティー担当ということにいたしまして、それから、先ほど御紹介いただきましたように、サステナビリティ推進室というのをこの四月一日付で発足させました。

 そして、このサステナビリティ推進室の取組をJICA全体として推し進めていくために、サステーナビリティー委員会というのを、昨年、私が着任してからつくりまして、これは、委員長は私でございまして、組織として、私としてみると、のろのろしていたら今の速い時代についていけないんだから、積極的にやってくださいということで今進んでおります。

 これは誠に言い訳のようなことで恐縮でありますが、委員御指摘のサステナビリティ・レポートは、私が準備したものでは、こういうことを言うのはよろしくないと思いますけれども、私の前任者からずっとやってきたものなので、この間のサステーナビリティー委員会で、この次以降のサステナビリティ・レポートは、必ずバックキャスティングに基づいて目標をつくり、そして、国際的、それから民間企業と比べても遜色のないようなレポートを作ってほしいというふうに指示をしたところであります。

 そしてまた、専門人材についても、青柳先生おっしゃるとおり、優れた知見を持った人たちの御協力をいただかないといけないというふうには私も認識しております。

 これは、従来のJICAの専門人材ということからすると、かなり広い視野を持った、あるいは、場合によると、金融とかの専門的知識を持った方でなければいけないわけでありますが、私は、今、JICAの職員に指示していることは、JICAというのは常に学ぶ組織でなきゃいけない、今までの知識だけに安住していてはいけないのであって、今後の時代に対応していくために、様々な外部の専門家からも学び、自らも学び、このようなサステーナビリティーに関する専門人材を育てていきたいと思います。

 そして、JICAに頼めばサステーナビリティーの専門人材を出してくれるよというふうになるまで実現していければいいと思っておる次第であります。

青柳(仁)委員 ありがとうございます。

 まさにおっしゃるとおりで、お話の途中にありましたけれども、国際社会の潮流あるいは国際社会で議論されていることであるとか、それから日本の民間企業の取組であるとか、そういったものと遜色のないレベルのサステーナビリティーの取組というのを是非JICAの方でも、あるいは日本の国の方でも行っていく必要があろうかというふうに思っております。

 ちなみに、サステーナビリティーの社会課題をマーケットメカニズムを通して解決をしていくだとか、こういうサステーナビリティーで言われているような考え方というのは、いわゆる、今、政権の方で出されている新しい資本主義の最初、一ページ目に書いてある話なんですね、実は。

 これはそういうことでいいですかと以前予算委員会で岸田総理に聞いたら、そういうことですというふうにお答えされていました。

 事実、新しい資本主義の委員の中にもサステーナビリティーの専門家がいらっしゃったりするんですけれども、そういったことですので、これは国際的な潮流でもありますし、日本のビジネスチャンスなんかにもつながっていく話でもありますから、その点については、是非、今の政府の方向性を支持したいと思っておりますし、積極的に進めていっていただけたらいいのではないかというふうに思っています。

 次に、もう一つ、今回の開発協力大綱の中で、インパクト投資やESG投資の領域にも踏み込んでいくようなことが書いてあるわけなんですが、これは、結構また新しい話になってくるわけですね。社会価値を測る指標とかKPIをどう設定するかという問題、それから、ちょっと例示で言わせていただきますが、そういったKPIを、要は、日本の企業は社会価値が高いと日本人はみんな思っているんですけれども、なかなか、それを評価する指標が駄目だと、そういう評価をしてもらえないと、ESG投資だとかインパクト投資の中では評価が低くなってしまう。

 その評価の基準を作るのが、今、EUで一個進んでいるのと、もう一つアメリカの方でも、IFRSというのが、あとSECというのが進んでいるんですけれども、いろいろなそういう中に、前、金融庁と議論していまして、金融庁から人を送るべきじゃないかみたいな話をして、今一人、日本人が行っております。ただ、こういうところにも、JICAのスキームとかを使ったら、もっと簡単に人を送り込めるんじゃないかというような気もしますし、そういう途上国の動きを更に加速化していくことも可能なんじゃないかと思います。

 それから、サステーナブルファイナンスというお話がありまして、これに関しても、ファイナンスにばかり目が行っているんですが、実際には、金融機関というよりかは、実際にサステーナビリティーの取組を進めている一般企業とどういう関係性をつくっていくかの方が実は本質的なわけですけれども、先ほど読み上げたような長い文章の中では、まさに新しい概念なものですから、今私がちょっと挙げたような、こういう新しい諸論点を新たに方針として考えていかなきゃいけないというふうに思うわけですが、この点について、まず現状、田中理事長のお考えをお聞かせいただければと思います。

田中参考人 インパクト投資、ESG投資、こういう面についても、私どもも注目していかなければいけないというふうに思っております。

 これまでもJICAでは、SDGs債などJICA債券の発行というのをやってきておりまして、これが、JICA債券を買っていただくことがインパクト投資ですよというふうに言って民間企業の皆さんにお願いしておるということで、そういう意味で、サステーナブルファイナンス市場の発展にもいささか貢献してきたんじゃないかなというふうに思っております。

 ただ、先ほど委員もおっしゃられたように、このような投資についての評価というようなものも国際的に議論が進んでいるところでございます。JICAとしても、そのような議論にできる限り参加できれば望ましいというふうに思っております。今現在、インパクト投資に関わるGSG国内諮問委員会というのが動き出していますけれども、そのメンバーに、私どもの上級審議役が今入って議論をさせていただいておるところでございます。

 それからまた、このサステーナブルファイナンスの中でも、実際に、民間企業にサステーナブルな事業を促進していただくための取組というのも重要だと思っておりまして、JICAでこれまで行ってきたものでいいますと、中小企業・SDGsビジネス支援事業というのをやって、日本の中小企業や様々な企業の皆さんが、開発途上国でサステーナビリティーの促進に期するような事業をやっていただければ、それの最初の何年間分かのトライアルの資金を提供させていただくということで推進しておりますし、それから、これもまた、私が昨年の四月に戻ってきて大分変わったと思ったのは、JICAのスキームの一つの海外投融資でございまして、これの案件数が非常に増えており、特に、直近で目立つものでいいますと、再生可能エネルギー分野の海外投融資が、二〇二二年度は五件ありまして、アゼルバイジャン、ウズベキスタン、エジプト、ベトナム、ラオス、こういうところで太陽光発電、風力発電をやっている民間企業に、海外の金融機関や日本の金融機関とともに協調融資させていただいているということがございます。

 そのような形を含めて、今後もインパクト投資への御理解が社会の中で深まり、さらに、私どもの事業としても、サステーナビリティーを促進する民間企業との連携を深めていきたいと思っております。

青柳(仁)委員 まさにお話しいただいたような、JICAはいろいろなスキームを組もうと思えば組めますので、いろいろな形で、最適かつ合理的で効果の高いサステーナビリティーの取組というのを考えていただければと思っております。

 また、開発協力大綱の改定に際しては、恐らく外務省とJICAの間でもいろいろなお話をされているとは思いますが、やはり現場から生まれてくる知恵というのは非常に重要ですし、実際にどういうスキームを組むか、戦略は細部に宿るじゃないですけれども、その細部がどうかというところでかなり効果が変わってくると思いますので、是非、そこで有効なディスカッション、また、JICAとしてもリーダーシップを期待したいと思っております。

 残余の質問、ABEイニシアチブについて聞こうと思っていたんですが、ちょっと、時間の関係上、次回、外務省に対して聞かせていただきます。

 質問を終わります。ありがとうございました。

黄川田委員長 次に、鈴木敦君。

鈴木(敦)委員 鈴木敦です。

 本日の会議でもロシアとウクライナの紛争の話が出てまいりましたが、ちょっと思い返すと、これは通告しておりませんので分からなければ分からないで結構ですが、事務方にお伺いしますが、ロシアとウクライナの紛争というのは、今まで起こっていた紛争とは、特に日本が経験したような紛争とは少し違います。というのも、ロシアがウクライナに対して宣戦布告をしたのは何日ですか。事務方、分かりますか。

 だろうと思います。

 では、ウクライナがロシアに対して武力紛争の宣戦布告をしたのはいつでしょうか。していないですよね。

 日本が経験した戦争は、大体宣戦の布告がありました。最後通牒を突きつけて、駐箚使節団が交渉をして、決裂をして、双方引き揚げた後、国交が断絶して武力紛争に至る、これが日本が想定しているというか、経験をしたことのある戦争の在り方です。ですから、これは実はもう古いお作法なんです。本来はやらなければいけませんが、やっていないんです。

 アメリカはどうかというと、アメリカも、大東亜戦争以降、宣戦の布告はせずに武力紛争をしてきました。連邦議会が承認をした、あるいは、国連安保理の決議に基づいて武力紛争をしてきているだけで、最後通牒などは行われていません。

 ですから、今まで考えられていたような日本の考え方で武力紛争というものを考えると、ちょっとずれてきた議論になると思います。

 その上で、今回のロシアとウクライナの武力紛争がどうやって起こったか。それは、大国同士、そして国同士が、いざ来い、来たれの尋常な勝負でぶち当たったわけではありません。

 あくまで、今回行われたのは、二〇一四年以降、ウクライナの一部の領域でロシアの協力を得ている親ロシア派と言われる勢力が独立を宣言をして、あるいは、ロシア軍が一部を占領して、今回、人民共和国から併合の申出があったのでロシアはそれを併合して、ロシア側としては、ウクライナのNATO加盟あるいはEUの加盟がロシアに対する直接的な脅威だということ、あるいは、二つの人民共和国に対する集団虐殺が行われているということで、ロシア側からの集団的自衛権という考え方。個別的自衛権、集団的自衛権双方の考え方からこれは正しいものなのだというプーチン大統領からの演説があったということであります。

 我が国でもこれは似たようなことが起こることを想定しなければいけないということですね。最後通牒が来て、それから閣議を決定して、それに対して反撃をするのだということを考えているいとまはもうないということです。

 だから、反撃能力云々の話をする前に、反撃をするかどうかということを決める時間はないんです。もし今あるとしたら、そういったロシアの今回の経験を踏まえて、勝手に一部の領域が独立を宣言したり、あるいは他国に併合を求めたりしたときに、それを我が国の国内法で処罰ができるかどうかということです。

 これは法務省に伺いますが、日本には既にそういった規定があります。刑法八十一条、外患誘致。これは日本の法律の中で最も重い、必ず死刑を求刑されるものです。これが、このロシアとウクライナの武力紛争も踏まえて、適用が可能であるのかどうか。これは法務省にお伺いしたいと思います。

保坂政府参考人 犯罪の成否につきましては、捜査機関により収集された証拠に基づいて個別に判断されるべき事柄でございますので、お尋ねの事案が刑法八十一条の外患誘致罪に当たるか否かにつきまして、一概にお答えすることは困難でございます。

 ただ、あくまで一般論として申し上げますと、刑法第八十一条の外患誘致罪は、外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた場合に成立し得るというふうにされているところでございます。

鈴木(敦)委員 し得るということで結構だと思います。それを決めるのはかなりたってからだと思いますので。

 プラスして申し上げれば、今回、このドネツク、ルガンスク両人民共和国で行われているように、親ロシア派と呼ばれて武力勢力に加わっている方々については、同様に一般論で、刑法の八十二条、これは適用可能でしょうか。

保坂政府参考人 先ほど申し上げましたように、それは捜査機関により収集された証拠に基づいて個別に判断されるべき事柄でございますので、お尋ねの刑法八十二条の外患援助罪に該当するか否かについて、一概にお答えすることは困難でございますが、一般論として申し上げますと、お尋ねの刑法八十二条の外患援助罪につきましては、日本国に対して外国から武力の行使があったときに、これに加担して、その軍務に服し、その他これに軍事上の利益を与えた場合に成立し得るというふうにされておるところでございます。

鈴木(敦)委員 犯罪の成否については裁判所が決めることで、それは行政が決めることではありませんが、とはいえ、どういうケースでこれが運用されるのかということを考えてもいないというのはおかしいんです。一概にお答えいただくのは困難だ、それはそうですよ、判例がありませんから、両方については。でも、どういう状態でこの法律が使われるのかということが分かっていないと、いざ使うというときにどうやって使うんですか。これは一度も使われたことがないんですよ。かつてゾルゲ事件のときに使おうとしたという記録が残っていますけれども、使いませんでしたね。

 どうやって使うのかが分からない。成立したときには、この法律はちょっと名前が違いました。条文の中にも、帝国に対し戦端を開きですとか、そういった文言が入っていたのを削除したんです。これは、我が国が平和主義を取り入れるために、戦端という言葉をわざわざ削ったんです。そのとき時点では、この法律は使う予定があったし、どうやって使うかもちゃんと決定されていたはずですよ。

 今になって、実際にこの外患誘致と思われる事象が大陸の反対側で起こっているのに、一般論でしかお答えいただけないというのは、我が国に対する危機感がなさ過ぎると思いますよ。いかがですか、法務省。

保坂政府参考人 刑法の罪につきまして、こちらの法務省刑事局の方で、あらかじめどういう場合にこれを適用するのかということを想定しておくというのはなかなか困難でございまして、あくまで捜査機関により収集された証拠に基づいて、個別個別に、その事案ごとに犯罪の成否というのは判断されるべき事柄であるというふうに考えておるところでございます。

鈴木(敦)委員 それじゃ、これは使えないじゃないですか。

 私は、今、具体的な地名を挙げていません。これは、レクのときにはあえて言いました。今ここで具体的な地域を挙げて、どこかの国からこういうことがあって、そのときに処罰できますかと言ってしまえば、それは問題だと思います。だからあえて地域を指定していませんが、日本の周辺の国のことを考えていただきたいと思います、法務省には。中国もあり、ロシアもあり、北朝鮮もあり、全てが核兵器と弾道ミサイルを保有しているんです。

 ロシアについては、ウクライナに対してこの外患誘致が適用され得る事件を起こしているわけですから、具体的にどういう場合に使うのか、どういう場合は処罰の対象にするのかということを考えていないというのは、これはおかしいと思いますね。日本で起こったらどうするんですか。そのときに何年もかけて裁判するんですか。上告まで待って、何年もたってから処罰したら、ウクライナとロシアの紛争だって終わりますよ。そのときになってから処罰なんてできないと思いますがね。

 これは法律を運用するという意味で、事前にかせを決めておかないと、そのときになってから使うか使わないかを長時間議論している時間はありませんよ。これはしっかり法務省の中では議論していただきたいと思います。

 これを踏まえて申し上げますが、この外患誘致にしても、外患援助にしても、武力の行使と書いてあります。武力に含まれているものが、それは国際司法裁判所上の非常に狭い意味での武力であると考えておりますが、ここには、現在行われているようなサイバー戦争だとか、あるいは経済戦争という概念が含まれていません。いませんよね。

保坂政府参考人 お尋ねもまた犯罪の成否ということになりますので、個別に判断されるべき事柄でございまして、一概にお答えは困難でございますが、今委員がおっしゃった外患誘致罪におきます武力の行使、これが構成要件になっておるわけですが、この武力の行使につきましては、一般に、軍事力を用いて国際法上の敵対行為に相当する攻撃行為をすることをいうというふうに解されているところでございまして、これに当たれば該当しますし、当たらなければ該当しないということだろうというふうに考えております。

鈴木(敦)委員 ですから、その場合は、我が国に攻撃を受けた場合のみ適用されるわけですから、攻撃を受けてからやったんじゃ遅いじゃないですか。法律は、処罰するためじゃなくて予防のためにあるんでしょう。日本がもし仮にルガンスクのようなことになったとき、ドンバス地方のようなことになったときに、なってから、これは裁判で決めなきゃいけませんねと考えていくんですか。現地では武力紛争が起こっているんですよ。そういう考え方はおかしいと思いますよ。

 もし仮に、サイバー戦争とかで通信網が遮断をされる、あるいは経済的に、株を買い占められたり、土地を買い占められたり、島を買ったり、一部の地域で、もしこういうことが他国によって行われたときに何もしないということですか。犯罪の構成要件を、どういう場合を想定してということを言っているんじゃありません。こういうものも我が国に対する侵略じゃないんですかということです。この国を本当に守りたいんですか、この法律で。ミサイルをドンパチ撃ち込まれてからじゃないと何もできません、法務省はそういう考えなんですか。

保坂政府参考人 法務省が所管いたします刑法ということでございますと、刑法の構成要件というのがございます。この構成要件に当たるか否かによって犯罪の成否が変わるわけでございます。

 もちろん、刑法には、いわゆる一般予防効果といたしまして、こういうことが処罰されるということが法律で示されることによって予防するという効果もございますが、他方で、刑法を実際に適用して処罰をするというのは、その事象が起きたときに、その事象におきます個別の事実関係に応じてそれが成立するかどうかが判断され、最終的には司法判断によってそれが適用されるということになるということだと考えております。

鈴木(敦)委員 予防効果だというのであれば、どういう場合に適用するかは構成要件が分からなきゃ駄目じゃないですか。八十一条を適用できないんじゃ、意味ないじゃないですか。どういう場合にこれが使われるのかが想定されていないのに、予防効果なんかあるんですか、これは。ないでしょう。どういう場合にこれを使うか分かっていないんでしょう。だって使ったことがないんだから、分かるわけないじゃないですか。

 この辺については引き続きやりますけれども、しっかりした基準を設けておいていただかないと、全く予防効果なんかないと思います。この国は守れません、この法律では。

 では、もう次に行きますけれども、こういう状況です、林大臣。法律上、日本でドンバス地方のようなことがあっても、法務省も刑法も守ることはできません。なので、どうしても外交の力が最後のとりでになってしまいます、もし仮に何かが起こっても、法律では適用できませんので。ですから、外務大臣には、更に手前の、予防という意味でやっていただかなきゃいけないと思います。今申し上げたように、ロシアもウクライナも北朝鮮も、北朝鮮は日本人を拉致するような国ですし、中国は台湾の周辺で軍事演習をしていますし、ロシアは言わずもがなです。こういう国々と対峙しなければいけませんので、改めて今後の外交方針を伺いたいと思います。

林国務大臣 大変興味深いお話を聞かせていただきましたが、まさに、刑法は、性格上、そういうことなのかなと思って聞いておりましたが。

 その手前の手前、手前のところにグレーゾーンといった対処というのがあるのではないかと思いますが、まさにその手前として、我々、外交でしっかりと、そこに至らないようにするということが大事であるということは申し上げるまでもない、こういうふうに思っておりまして。

 そうしたときに、せっかく今日御議論いただいたので、日本の刑法にはこういうものがあって、恐らく、構成要件ということで一定のものはあるのではないかと私も理解しておりますので、必要があれば、そういったものを説明することによって、本来持つべき抑止効果なるものが発揮できればと思って聞いておりましたが、そういうものを使わずしても、しっかりと外交を進めることによって、そういうことを未然に、起こらないようにするというのが大事な役割であると考えております。

鈴木(敦)委員 ありがとうございました。

 引き続き議論させていただきます。終わります。

黄川田委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 今日も、先般に続きまして、統一協会の関連団体、世界平和女性連合に対するODAの資金無償協力について質問します。

 この問題をめぐっては、昨年十一月十一日の質疑で、岸田総理が外務大臣だった二〇一五年、政府がアフリカ、セネガルの職業訓練校の建設資金として九百五十五万円余りを供与していた事実が判明しました。それ以降、私は、三月十七日及び二十九日の質疑で、公開資料に基づいて、次の五つの問題点を指摘してきました。

 第一に、政府がODA資金を供与した女性平和団体の代表、つまり職業訓練校の校長は、セネガルの世界平和女性連合の副会長として統一協会の韓鶴子総裁の記念式典に出席していること。

 第二に、この職業訓練校の校長は、統一協会の中核組織、天宙平和連合のセネガル代表団として同国の政府高官との会談に出席していること。

 第三に、職業訓練校では、統一協会関係者のスタディーツアーと称する訪問を受け入れるとともに、校舎には韓鶴子総裁の肖像写真が飾られていること。

 第四に、職業訓練校には米国の世界平和女性連合から一万四千ドルの資金提供が行われ、職業訓練校の校長が感謝状を送っていること。

 第五に、職業訓練校には世界平和女性連合から八千ユーロ分の機材供与が行われていること。

 こうした五つの問題点を指摘し、資金を供与した女性平和団体が、世界平和女性連合と関係ないどころか、統一協会と密接な関係にある、女性平和団体は世界平和女性連合の正体を隠した偽装団体だと明らかにしました。

 その上で、私は、先月二十九日の質疑で、林大臣に対し、政府資金の返還請求を行うように求めましたが、改めて大臣の考えをお聞きしたいと思います。

林国務大臣 本件につきましては、先日の質疑を踏まえまして、外務省において、改めて、公開情報の確認、また先方関係者からの聴取を含め、調査をまさに行っているところでございます。引き続き、しっかり再調査を行わせたいと考えております。

穀田委員 林大臣、調査にどれだけ時間をかけるつもりですか。

 私は、十一月十一日、それから田村貴昭議員が総理大臣に質問した十一月二十八日、そして三月十七日、三回、この問題について、私たちとしては事態を明らかにしてきました。そして、ずさんさを指摘し、大臣の責任で調査すべきだということも私は言いました。その際に、十一月の調査を約束したときには、十二月に外務省として調査をし、二月に大臣に報告している、こういう経過ですよね。

 そして、私が、今回の調査の起点となったのは、三月十七日にもう一遍提起して、ほぼ一か月たっているわけですよね。一体いつまでに結論を出すのか、期限を明確にしていただきたいと思いますが、いかがですか。

林国務大臣 まさにこれまでの調査で、結果として必ずしも十分な事実の把握ができていなかった、こういうこともございましたので、しっかりと必要な確認は行いながら、可能な限り早急に調査を終えるということにしたいと考えております。

穀田委員 先ほども私が明らかにしましたように、この間のどういう問題点があるかということについては、五つの点について指摘をしました。

 そこで、外務省の調査では、ODA資金を供与した女性平和団体は世界平和女性連合の傘下団体ではない、女性連合は職業訓練校の運営に関係していないとしています。

 しかし、そうではないことを示す事実が、女性連合の公開資料があります。皆さんにお配りしている資料の二枚目、これは、政府資金で建設された職業訓練校の写真であります。これを見ると、校舎の正面と側面に看板が掲げられており、そこにはFFPMという文字とマークの二つが記されています。FFPMとは、世界平和女性連合のフランス語の略称であります。

 そして、このマークも、女性連合のシンボルマークであります。この女性連合のシンボルマークは、配付資料の一枚目、外務省の大使館が掲載した写真でも確認できるんですね。よく見ていただくと、拡大するとこうなるんですよね、実際は。こうなんです、皆さんのところへ出していませんけれども。小さいやつを見ると、ぐっと絞って見るとよく分かるんですよね。

 さらに、もう一つ、配付資料の三枚目、職業訓練校の校長が使用した学校の公印であります。この公印にも、女性連合の略称、FFPMという文字が学校名の上にはっきりと刻まれているのであります。

 大臣、これら三つの公開資料を見ても、世界平和女性連合が職業訓練校の運営を行っているのはもう明白ではありませんか。数々の事実を突き詰めても、いや、それは調査中だとか待ってくれって、そんないいかげんな話はもうあきまへんで。どうですか。

林国務大臣 今委員が御指摘の写真、世界平和女性連合のホームページに掲載されているということは承知をしておるところでございます。

 今御指摘のあった点についても、当該職業訓練校の代表ともやり取りを行っているところでございますが、いずれにしても、改めて全体的に調査を行っているところでございますので、現時点で、個別の事項について、これ以上のことをお答えするということは差し控えたいと思います。

穀田委員 もう何回、一つずつ順番に詰めてきているわけですよね。外務省が出しているホームページにも証拠があるやないか、ここまで言っている。相手が出している問題についても、ここを指摘をしている。それでも調査と。私は、いつまでに終わるのかと聞いたわけですよね。

 外務省の調査では、職業訓練校では布教活動などの目的外の活動は行われていないとしています。

 しかし、統一協会の中核組織、天宙平和連合が公式ホームページに掲載した、セネガルにおける計画策定と題する二〇〇八年一月五日付の記事があります。記事には、天宙平和連合の会合に、セネガル政府で職業訓練分野を所管する技術教育職業訓練省の教育局長と技術顧問が出席し、問題の職業訓練校のプロジェクトに感想を述べ、子供たちを統一協会の関連団体、世界平和青年連合に参加させる決意を表明したとあるんですね。

 これは、セネガルの問題についての、いわば両方が、今言ったように、世界平和青年連合に参加させる決意を表明したと書いているわけですよね。つまり、セネガルでは、統一協会が職業訓練校を信者獲得の拠点にしており、所管官庁の幹部職員が一緒になって活動しているということを示す以外の何物でもありません。

 こうした実態があることをしっかり認識すべきではありませんか。

林国務大臣 今御指摘があった事例については、通告はもちろんいただいておりませんので、この場で即答するということは控えたいと思いますが、先ほど来申し上げておりますように、今御指摘があった件も含めて、調査の中でしっかり確認をしたいと思います。

穀田委員 林大臣、私が公開資料を基に指摘した冒頭の五つの問題点、将棋でいえば、もう詰んでいるんですよ。それをまた、仕方がないから、しゃあないなということで、新たに今日指摘した四つの内容から、政府資金を供与した女性平和団体と世界平和女性連合は一体の組織であり、職業訓練校が統一協会の海外活動の拠点になっていることは、どの資料を見ても、今まで私が明らかにしてきたこと全て包含して見ているということになれば、明らかだと思うんですね。

 じゃ、今、大臣の責任で行っている調査、再でありますとか、ああしますとか言っていますけれども、こうした事実が確認された場合は、当然、資金の返還請求を行うんですね。

林国務大臣 まさに、現在、改めて調査を行っているところでございますので、再調査の結果を踏まえた方針につきまして、今の段階で予断をするということは適切ではない、こういうふうに考えております。

 セネガル側も、本職業訓練校の実績、これは評価をしておりまして、女性の社会進出を支援するという資金供与の目的に沿った活動が行われて、十分な開発効果が上がっているということも認められるということから、この点は考慮する必要があると思っております。

 いずれにいたしましても、しっかり調査を進めて、調査の結果を踏まえて、法的な観点、これも勘案しながら検討していきたいと考えております。

穀田委員 それでは、端的に聞きますけれども、対応の選択肢には返還請求が含まれるんですか、それとも選択肢から排除するのですか。後ろ、いいから。

 大臣の、この間の私が指摘した五つの問題点、今日明らかにした四つの点、誰が考えたかて、統一協会の支援の下に、そしてそれを信者獲得のためにも動いているという事実を私は明らかにした。それを再調査すると。そうして、そのことについて言えば、確認された場合、対応する場合の選択肢には返還請求は含まれるのか、それとも選択肢から排除するのか、それはどうですか。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、再調査の結果を踏まえた方針について予断するということは適切ではないと考えております。

 いずれにいたしましても、あらゆる可能性を排除せず、しっかり調査を進めて、調査の結果を踏まえて、法的な観点も勘案しつつ検討していきたいと考えております。

穀田委員 そこで、もう一度、端的な話ですが、あらゆる可能性ということについて言うと、そこなんですよ、問題は。私は、これほど明らかにして、統一協会が反社会的団体であって、政府自身、また自民党自身がこれを排除しなければならないといった問題を提起している点について明らかに私はしてきたわけですよね、ずっと。

 そういうことでいうと、あらゆる可能性ということについて排除しないという言い方をすると、どこのところにあらゆるというのが係っているのか私は分かりませんから、選択肢から排除するかということを聞いているんですよ。要するに、返還請求ということについて選択肢から排除するのかと聞いているんですよ。

林国務大臣 まさに今、再調査の結果を踏まえた方針について予断することは適切ではないと考えております。結果、どうするのかとお聞きになられましたので、あらゆる可能性を排除せず、こういうふうに申し上げました。

穀田委員 それは重大な意見でして、結局、それについては、分かりやすく言うと、選択肢から排除することはないということになっていいということですね。それだけ確認しておきたいと思います。

林国務大臣 まさに先ほど御答弁したとおり、あらゆる可能性を排除せず、しっかり調査を進めて、調査の結果を踏まえて、法的な観点、これも勘案しつつ検討していきたいと考えております。

穀田委員 これ自身は重大な新しい踏み出しだと思って、それを確認しておきたいと思います。

 私が何でこれをずっと追及しているかといいますと、統一協会という反社会的集団に政府が一千万円近い国民の血税を供与し、海外活動にお墨つきを与えたという重大問題なんですよね。それを曖昧な態度でお茶を濁し、返還請求を行うと明言できないというのは、統一協会との関係を絶つと表明した岸田政権の根本姿勢が問われるというものだと私は考えます。

 調査の結果、世界平和女性連合との関係、統一協会との関係が確認されたにもかかわらず、資金の返還請求を行わないならば、前回の質疑で指摘したように、その理由は、政府資金の供与が、申請から承認、契約締結の指示に至るまで、当時の岸田外務大臣の関与の下に行われたからだと言わざるを得ない、そのことを強く指摘して、質問を終わります。

     ――――◇―――――

黄川田委員長 次に、平和的目的のための月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の枠組協定の締結について承認を求めるの件、航空業務に関する日本国と欧州連合構成国との間の協定の特定の規定に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件及び協力及び電子的証拠の開示の強化に関するサイバー犯罪に関する条約の第二追加議定書の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣林芳正君。

    ―――――――――――――

 平和的目的のための月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の枠組協定の締結について承認を求めるの件

 航空業務に関する日本国と欧州連合構成国との間の協定の特定の規定に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件

 協力及び電子的証拠の開示の強化に関するサイバー犯罪に関する条約の第二追加議定書の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

林国務大臣 ただいま議題となりました三件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 まず、平和的目的のための月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の枠組協定の締結について承認を求めるの件は、令和五年一月十三日に協定の署名が行われました。

 この協定は、宇宙空間における技術開発競争が活発化する中、日米間の個別の宇宙協力を円滑に進めるため、アメリカ合衆国政府との間で宇宙協力に関する基本事項を規定するものです。

 この協定の締結により、日米の実施機関が個別の協力活動を円滑に実施することができる仕組みが確立され、日米間の宇宙協力の更なる促進及び効率性向上が期待をされます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、航空業務に関する日本国と欧州連合構成国との間の協定の特定の規定に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件は、令和五年二月二十日に協定の署名が行われました。

 この協定は、我が国と欧州連合構成国との間の既存の二国間航空協定の特定の規定を我が国と欧州連合との間の航空関係の現状を踏まえた内容とすることで、航空関係の安定的な発展に向けた基盤を整備するものです。

 この協定の締結により、我が国と欧州連合との間の航空分野における協力が一層強化されることが期待をされます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 最後に、協力及び電子的証拠の開示の強化に関するサイバー犯罪に関する条約の第二追加議定書の締結について承認を求めるの件は、令和三年十一月十七日に議定書が採択されました。

 この議定書は、より迅速かつ円滑な手続による電子的形態の証拠収集を可能にするため、締約国の当局間の協力、他の締約国に所在する団体との直接の協力等について定めることで、容易に国境を越えて広範な影響を及ぼし得るサイバー犯罪に有効に対処するものです。

 この議定書の締結は、治安対策に資するとともに、各国と協調したサイバー犯罪対策の一層の強化に向けた強い決意を国内外に示す見地からも有意義であると認められます。

 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。

 以上三件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いをいたします。

黄川田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十四日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十二分散会


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