衆議院

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第2号 令和6年12月18日(水曜日)

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令和六年十二月十八日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 堀内 詔子君

   理事 中曽根康隆君 理事 星野 剛士君

   理事 山田 賢司君 理事 源馬謙太郎君

   理事 鈴木 庸介君 理事 太  栄志君

   理事 青柳 仁士君 理事 西岡 秀子君

      逢沢 一郎君    五十嵐 清君

      英利アルフィヤ君    大空 幸星君

      勝目  康君    島田 智明君

      新藤 義孝君    平沼正二郎君

      広瀬  建君    松島みどり君

      向山  淳君    茂木 敏充君

      小熊 慎司君    亀井亜紀子君

      篠原  豪君    竹内 千春君

      武正 公一君    渡辺  周君

      西田  薫君    和田有一朗君

      深作ヘスス君    西園 勝秀君

      山崎 正恭君    阪口 直人君

    …………………………………

   外務大臣         岩屋  毅君

   内閣官房副長官      青木 一彦君

   防衛副大臣        本田 太郎君

   外務大臣政務官    英利アルフィヤ君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 内野 宗揮君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   大鶴 哲也君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 林 美都子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 大河内昭博君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 高橋美佐子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 林   誠君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 日下部英紀君

   政府参考人

   (外務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化参事官)           斉田 幸雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 石川 誠己君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            河邉 賢裕君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   中村 仁威君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    有馬  裕君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    片平  聡君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    岩本 桂一君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 有馬 孝典君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月十八日

 辞任         補欠選任

  松本  尚君     勝目  康君

同日

 辞任         補欠選任

  勝目  康君     五十嵐 清君

同日

 辞任         補欠選任

  五十嵐 清君     島田 智明君

同日

 辞任         補欠選任

  島田 智明君     向山  淳君

同日

 辞任         補欠選任

  向山  淳君     平沼正二郎君

同日

 辞任         補欠選任

  平沼正二郎君     松本  尚君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

堀内委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付のとおり、外務省大臣官房長大鶴哲也君外十四名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

堀内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

堀内委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。中曽根康隆君。

中曽根委員 自由民主党の中曽根康隆でございます。

 本日は、貴重な質疑の時間をいただきまして、ありがとうございます。十五分という短い時間ですので、早速質疑に入らせていただきたいというふうに思います。

 まずは、韓国についてお伺いをしたいと思います。

 言うまでもなく、我が国にとって大変重要なパートナーであるのが韓国であります。これまで、尹大統領の下で日韓関係は飛躍的に改善したというふうに思います。これは、両国のやはりリーダーの強い覚悟と、そして意思、これによるたまものだと思いますし、私は心から敬意を表しております。

 また、来年は、日韓国交正常化六十周年という節目の年でもあります。こういったいい機運の中で、皆様御案内のとおりで、戒厳令の布告、そして弾劾訴追案の可決により、韓国は今、大変混乱状況にあります。

 私が気になるのは、野党から出された一回目の弾劾決議案、ここにはこういうふうに書いてあります。尹大統領は、北朝鮮と中国、ロシアを敵対視し、日本中心の奇妙な外交政策にこだわり、日本に傾倒した人物を政府の主要職位に任命するなどの政策を展開することによって、北東アジアで孤立を招き、戦争の危機を誘発させ、国家安全保障と国民保護義務を放棄してきた。ちょっと目を疑うような文章であります。もし野党が政権を取った場合に、日韓関係は一体どういうふうになってしまうのか、ひいては日米韓はどうなってしまうのか、大変危惧をしているところであります。

 日米韓の連携は、昨年のキャンプ・デービッド合意、御案内のとおりで、三か国の首脳がしっかりと話し合い、そして同じ方向を見て、大変未来志向な合意がなされて、大変良好な状態でありました。あれから一年ちょっとたった今、気づいてみれば、韓国の大統領は職務停止、アメリカは新しい大統領になる、先行きの不透明極まりない状況になっております。

 今後の三か国の関係、何が何でもしっかりと維持をしていかなくてはいけないですけれども、こういうときこそ、日本がやはりリーダーシップを取って、この強固な三か国の連携というものを維持をしていく努力をしていかなきゃいけないと思いますけれども、政府の受け止め方と、そして今後の主体的な取組方針についてお伺いをしたいと思います。

岩屋国務大臣 今回の韓国での出来事は、私どもも正直衝撃を持って受け止めましたし、今なお特段かつ重大な関心を持って動向を注視しているところでございます。

 米国ではこれから新政権が発足をするということで、今後の日米韓の関係はどうなるのかという中曽根委員からのお尋ねだったと思います。

 韓国の内政についてコメントすることは控えたいと思いますし、米政権の今後の政策についても予断を持って申し上げることは控えたいと思いますが、いずれにしても、我が国を取り巻く地域の安全保障環境はますます厳しさを増していると認識をしておりますし、国際情勢もまだまだ激動が続いているという中でございますので、こういう複雑化する国際的な課題に効果的に対応する上で、日米韓の戦略的な連携はこれまでになく重要だと考えております。

 私も、十一日の日韓外相電話会談及び、その前に九日には北朝鮮に関する日米韓の高官協議、こういうことを今行っておりまして、情勢が流動化する中にあっても、この三か国が緊密な連携を確保し続けていることの重要性というのをお互いに再確認をしているところでございます。

 また、十四日、韓国の韓悳洙大統領代行が談話を発出しまして、日米韓の信頼を維持することに全内閣が最善を尽くす旨強調されたと承知をしております。私どもも、引き続き日米韓で緊密に連携して取り組んでまいりたいと思っております。

中曽根委員 大臣、ありがとうございます。大変心強い御答弁をいただきまして、安心をいたしました。

 日米韓の連携は、もちろん、言うまでもなく、地域の平和と安定のためにも極めて重要だというふうに思います。台湾海峡を含む防衛的な側面もそうですけれども、日米韓そして台湾、これによる半導体のサプライチェーンの構築、いわゆるチップ4ですね、こういった意味でも、安全保障、経済安全保障上でも大変重要な役割を担っている連携でありますので、是非とも日本のリーダーシップを発揮をしていただきたいというふうに思います。

 続いて、ちょっとアジアの外交についてお伺いしたいと思います。

 戦後日本は、御案内のとおりで、吉田ドクトリンの下に、安保、これはアメリカに任せて、しっかりと経済成長するという路線を取ってまいりました。結果的に、そのおかげで今の日本の豊かな暮らしがあることは言うまでもありませんけれども、冷戦が終わって、各国が独自のアイデンティティーを模索した上で世界の中で存在感を示していく、そういうステージに入ったときに、日本としては、なかなか独自の戦略、そして独自のアイデンティティーというものを打ち出して世界の中で存在感を出すことができなかった、存在感が低下をしていった側面があるというふうに思います。

 一方で、安倍政権以降、数々の多国間の枠組みを日本主導で機能させて、我が国の国際的立場というのは飛躍的に上昇したと言えると思います。今後、我が国がより必要とされ、そして頼られ、そのプレゼンスを確保するためには、今後、独自の外交戦略がこれまで以上に求められているというふうに思います。

 そういった中でキーとなるのが、東南アジアや、いわゆるグローバルサウスと言われる国々との関係強化、そして信頼の醸成だというふうに思います。

 西側諸国は、この十年余り、自由、民主主義、法の支配といった価値観外交を展開して世界の秩序を保とうとしてまいりましたけれども、ロシアによるウクライナ侵略だとか、中東情勢、力による現状変更、こういったことによって一層世界は分断をしているというふうに思います。アジア諸国、グローバルサウスというのは、必ずしも西側が出している価値観に呼応しているともなかなか言い難い状態だというふうに思っております。

 こういった中で、人権や法の支配といった従来の価値から一歩進んだ日本が大切にしている価値観、例えば人間の尊厳に光を当てるとか、思いやりとか、人徳とか、他者ファーストとか、やはりこういったことによって世界の分断を止めて共存共栄を図っていくべきだと思いますし、それこそが日本にしかできない外交だというふうにも考えております。

 アジア諸国、グローバルサウスとの連携を深めて、それを強みとして世界の中で重要な橋渡し、ブリッジ、外交を展開をしていただいて、我が国の存在感を飛躍的に高めて、同時に、我が国が地域の安定に寄与するものであるというふうに確信をしています。

 御案内のとおり、アジアのダイナミズムはもう無視できない状況にあります。まさにアジアの時代が到来をしています。アジアを一つの政治的、経済的、そして文化的なコミュニティーとして共栄していく意識は必須でありますし、日本も、地政学的なメリットも大きいですし、果たすべき役割も大変大きくなってくるというふうに思います。

 我が国の外交戦略、特に東南アジアとの関係をどういうふうに位置づけていらっしゃるか、説明できる範囲で具体的に教えていただきたいと思います。

岩屋国務大臣 中曽根委員御指摘のとおりに、アジアとの関係、グローバルサウスとの関係は、これからの日本外交にとって極めて重要だと考えております。

 一般に新冷戦みたいなことが言われておりますけれども、もう世界は二極で片づくような時代ではなくなってきている、もう多極化しているし、更にしていくと見なければいけないというふうに思っておりまして、我が国はアジアに存在する国でございますから、当然、アジアに軸足をしっかり置かなければいけないと考えております。

 グローバルサウス諸国を含む各国との関係を更に緊密に取ってまいりたい、そのことがまた自由で開かれたインド太平洋ということにつながっていくと思っています。

 また、委員御指摘のように、法の支配、自由主義、民主主義、これはもちろん大事なことで、これが貫徹する世界を目指していかなければいけませんが、その上で、更に幅広く包摂の外交を展開していかなければいけないと思っております。

 十月にラオスで日・ASEAN首脳会議が行われましたが、石破総理からは、これまで半世紀以上にわたって築いてきたASEANとの心と心がつながる真の友人としての関係を更に強化していきたいという決意を伝えております。

 私自身も、外相就任以来、フィリピン、ベトナム、インドネシア、マレーシア、タイ等の各国のカウンターパートとの懇談を、会合を行ってまいりました。各国の外相と個人的な信頼関係をしっかり構築をして、経済安全保障、人的交流など幅広い分野で関係を更に発展させていきたいというふうに考えているところでございます。

中曽根委員 ありがとうございます。

 アジアの国々との関係強化で欠かせないツールがODAだというふうに思っております。ODAはよく批判の対象になります。年間、補正も合わせて一兆円近いお金を海外に出すぐらいなら、国内の苦しい人に使えという声は私も地元でもよく聞きます。

 ただ、この日本ならではのODA、これはアジアの諸国から大変評価を受けているものであるということはやはりしっかり認識しなきゃいけないと思います。

 他国の支援のような目立つ箱物をどかんと造るのではなくて、しっかりと人に寄り添う支援、ODA、キャパビル、こういったものは、やはり地元企業に経験を積ませて人を育てて、そして日本がそこからいなくなった後もその国がちゃんと自走できるような、そういう非常に丁寧な支援をしているのが日本独自のODAだというふうに考えておりますし、これが非常に感謝されて、生きている。この地道にやってきたODAというものが今ボディーブローのように利いてきて、日本の信頼感というのは非常に高い状況が保たれているというふうに思います。

 また、ODA以外にもOSA、今回も出てきました。昨年も数々の実例がありますし、令和六年度も、フィリピン、インドネシア、モンゴル、ジブチと案件がこれから続いてまいります。

 このODA、OSA、我が国にとって、さっき申し上げたとおり、非常に重要なツールであって、特に保護主義がどんどん強まっていく世界情勢において、戦略的に、すなわち、人とかお金とかインテリジェンス、こういったものを省庁横断的に活用することによって相手国にしっかりと寄与していくと同時に、世界における日本の存在感を高めていく。

 また、不可欠性にもこれは直結するものですので、是非とも、一部世論に負けずに、これからも外務省として積極的にODA、OSAというものを活用していくことを期待しますけれども、政府の意気込みを伺いたいと思います。

岩屋国務大臣 先生おっしゃるとおりだと思います。

 私も、まだ就任三か月たちませんが、既にこの間、数十か国の外相のみならず関係者とコンタクトを取ってまいりましたが、特にグローバルサウスと言われる国々の代表の方にお会いすると、まさに、日本がODAで本当に地域に寄り添った、人々に寄り添った活動を展開してきたことに対する高い評価をいただいているんだなということをつくづく感じておりまして、委員御指摘のように、それがボディーブローのように利いて、日本の信用というものができているんだなということを実感をしているところでございます。

 それに加えて、今御指摘があったようなOSAという安全保障分野での協力支援ということも始めておりますので、共に外交上の重要な手段として今後ともしっかり取り組んでいきたいと思いますし、委員御指摘があったように、本年は国際協力七十周年を迎えるという節目の年でもありますので、更にこのODAを発展的に深化させるためにはどうしたらいいかということを真剣に取り組んでいきたいというふうに考えております。SNSでの発信などを含めて、また、広報にもしっかりと努めてまいりたいと考えております。

中曽根委員 日本にしかできない外交が必ずありますし、今、それがまさに求められている時期だというふうに思います。これからも政府としてしっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 ありがとうございました。

堀内委員長 次に、武正公一君。

武正委員 立憲民主党、武正公一です。どうぞよろしくお願いいたします。

 七年ぶりに国会に戻していただきまして、この外務委員会も二〇〇〇年以来よく所属をし、外務副大臣も務めさせていただきました。今日、こうして立憲民主党のトップバッターで質問の機会をいただき、外務委員会の理事、委員の皆さんに、そしてまた外務委員会の皆さんに、また、外務大臣始め、外務省の皆さん始め、感謝申し上げたいと思います。

 まず、先日、ノーベル平和賞を日本被団協が受賞されまして、私も、田中熙巳代表委員のスピーチを、画面の目の前に座って、食い入るように拝見をさせていただきました。非常に感銘深いスピーチだったなというふうに思っております。

 一九五六年、被団協結成までは、四五年の原爆投下以来、なかなかそうした結成には至らなかった国内の事情などもありながら、その後の、長年の活動が認められたことは言うまでもありません。

 特に、二つの大きな目的で被団協は活動していることを言っておられました。それはやはり、戦争を遂行した国の賠償を求めるというのがまず第一で、そして第二が核兵器廃絶だというようなことでスピーチを進められる一方、そうした運動が、NPTから核兵器禁止条約の会議に、条約につながっていったことも含めて、次世代にこの活動をいかにつなげていくかということを高らかにうたわれたなというふうに思っております。

 この間、やはり多くの方々が、今回、平和賞受賞に当たっていろいろな活動をされてこられていると思います。

 私の知るところでは、二〇一五年の十二月十日に、広島、長崎の被爆者がノーベル平和賞の授賞式に招待をされました。これについては、広島・長崎被爆者プロジェクト代表、阿部憲二桐蔭横浜大学教授、代表の皆さんの働きかけ、こういったものもあったのではないか。今回の受賞に向けて、それはあくまで一例でありますが、多くの方々のそうした努力が平和賞につながったのではないかと思っております。

 そのときには、今はもう亡くなられてしまいましたが、山根隆治元参議院議員から私は阿部先生を紹介いただきまして、山根さんから引き継いで、そうした手紙を、ノーベル財団始めアメリカ政府などにも発出をしてきた経緯もあります。いろいろな方々の思いが今回の受賞につながっているんだというふうに確信をいたします。

 この受賞について、大臣の御所見、御感想を伺えればと思います。

岩屋国務大臣 私も武正委員と同じように、あの日、テレビの前で田中代表委員の演説を拝聴して、大変心を動かされました。

 長年にわたって被爆の実相を世界に対して発信し続けてこられた被団協が、ノーベル平和賞という栄誉ある賞を受けられたことは極めて意義深いことだと思っておりますし、これまでの活動に心から敬意を表したいと思います。更に祝意を申し上げたいと思っております。

 人類に多大な惨禍をもたらし得る核兵器が将来二度と使われることがないように、核兵器のない世界に向けた国際社会の取組を主導することは、唯一の被爆国である我が国のある意味歴史的な使命だというふうに、改めてその思いを強くしたところでございます。

武正委員 是非、立憲民主党を始め多くの政党が日本政府に求めておりますように、このスピーチでも取り上げられた核兵器禁止条約、来年もまた会議がありますので、やはり日本もオブザーバーとしての参加を決断すべきであるということを求めたいというふうに思います。

 また、ちょうど民主党政権下で、私が副大臣を務めたときの外務大臣であった岡田克也元外務大臣がスタートいたしましたNPDI、軍縮・核不拡散イニシアチブ、これは、二〇一四年、自民党、公明党に政権が替わっても継続がされております。

 ただ、この回数が、第八回まではほぼ毎年のように開催されていたのが、ここに来て間が二年、三年と、ちょっと間が空いている状況がございます。もちろん、トランプ大統領を始め、またプーチン大統領などの核使用発言なども含めて、世界情勢が非常に、核をめぐる状況も変わってはきておりますが、今言われたように、日本の役割という意味では、やはりこのNPDIも積極的に関わっていくべきだというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。

岩屋国務大臣 最終的な核兵器の廃絶に向かうための様々な効果的な取組をこれからも引き続きしっかりと進めてまいりたいというふうに思っております。

 委員御指摘になった核禁条約オブザーバー参加については、これまでも累次答弁をしてまいりましたように、この条約の意義というのは、私どもよく認識をしておりますけれども、すぐさま署名、締結をするというわけにいかないと。やはり核の最終的な廃絶に向けて何が効果的か、何が実効的かということを、オブザーバー参加している各国の状況も子細に検証しながら、引き続きしっかりと検討を重ねてまいりたいと思っているところでございます。

武正委員 そのオブザーバー参加を断られる理由として、日本は核の傘に守られているんだと言えることや、あと、大臣所信にも拡大抑止についても触れられているので、そういう考えかなというふうに思いますが。

 先ほど触れましたNPDIは、核の傘に守られている国がこの会議を主導して、言い出しっぺで、オーストラリア、ドイツと始めたわけですから、やはり、私は、アイデアがまだまだちょっと足りないんじゃないかなと。政府に求めていきたい。まだまだやれることはあるんじゃないか。これはこの外務委員会も含めた国会も同様だというふうに思っております。

 そこで、拉致問題に移らせていただきます。

 先日、十一月二十三日、全拉致被害者の即時一括帰国を求める国民大集会、私も出席してまいりました。そこで決議がまとめられております。特に、家族会メンバーの親の世代はお二人となり、横田早紀江さん八十八歳、有本明弘さん九十六歳に、拉致被害者である横田めぐみさん、有本恵子さんに何としても会っていただかなければならないという強い決意を示すものとなりました。

 特に、決議文の文章の最後には、「金正恩委員長に伝えたい。」と。「もし、このお二人が健在なうちに拉致被害者に会えないことがあれば、私たちは強い怒りを持って国交正常化に反対し、独自制裁強化を求め、更なる然るべき措置を取る。」と文章を結んでおります。

 そのぐらいやはり強い覚悟と決意を、家族会始め、また拉致議連も同様だというふうに思いますが、こういうような状況で、私は先ほども核なき世界についてのアイデアということも言いましたが、いま一度、取組、全力でというふうに、総力を挙げてと大臣所信では述べておられますが、具体的にどうその総力をかけていくのか、お伺いしたいというふうに思います。

岩屋国務大臣 委員御指摘のように、拉致被害者やその御家族の方々も御高齢になっている中で、非常に時間的制約のあるこの拉致問題、ひとときもゆるがせにできない人道問題であると同時に、そもそもその本質は国家主権の侵害であり、政権にとっても最重要課題だと思っております。

 その中で、石破総理も、日朝間の諸懸案を解決するため、もう一度日朝平壌宣言の原点に立ち返って、機会を逃さず金正恩委員長に対して呼びかけていくということを述べております。

 今後の対応について具体的にお答えすることは差し控えたいと思いますけれども、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現するとともに、北朝鮮との諸問題を解決するために、総理の強い決意の下に、私どもも総力を挙げて有効な手だてを講じていきたいと考えております。

武正委員 この外務委員会では、二〇〇三、四年の頃でしたか、小委員会を設けまして、そこで理事が拉致問題について話をする、それが今の拉致特につながっていったという経緯がございます。そのときは、理事会だったか小委員会の方で、在日本イギリス大使にも来ていただいて、当時、イギリスが非常に北朝鮮といろいろな意味でのやり取りがありましたので、話を聞くようなことも設けました。

 ですから、この外務委員会の役割というのはまだまだ非常に大きなものがあるというふうに思いますし、先ほどちょっと聞いたんですが、拉致特、今、立憲民主党が委員長をしておりますが、拉致特の理事懇の開催を求め、呼びかけたんですが、自民党さんの理事が出てこられないということで特別委員会が理事懇を開けないというのを、先ほど国対、筆頭理事合同会議で聞いてまいりました。

 拉致問題にずっと関わられていた委員の方もたくさんいらっしゃいますので、この国会で拉致特を開くということを是非お願いをしたいというふうに思います。これは大臣に聞いてもあれなので、皆さんにお伝えしたいと思います。

 それで、次は、安全保障会議について、今日、官房副長官、おいでいただいています。ありがとうございます。

 安全保障会議というのは、四大臣だったり、九大臣だったりということで、特に外交、安全保障についての関係大臣が集って、しっかりと話をする、情報共有する、日本の方向性を議論するという場で非常に大事だというふうに思いますが、その開催回数、一昨年、昨年、今年とお示しいただけますでしょうか。

青木内閣官房副長官 お答えいたします。

 まずは、御指摘の国家安全保障会議、NSCについてでございますが、国家安全保障に関する外交政策、防衛政策、経済政策の基本方針並びにこれらの政策に関する重要事項を審議する四大臣会合、そして、国防に関する重要事項等を審議する九大臣会合、重大緊急事態への対処に関する重要事項等について審議を行う緊急事態大臣会合、この三つの会合で構成されております。

 その上で、お尋ねのございました二〇二二年、二三年、二四年の国家安全保障会議の開催回数につきまして申し上げれば、二二年は、四大臣会合は三十回、九大臣会合は八回、緊急事態大臣会合は一回。二三年につきましては、四大臣会合は十六回、九大臣会合は五回、緊急事態大臣会合は開催しておりません。二四年度は、四大臣会合は五回、九大臣会合は四回、緊急事態大臣会合は開催していないということでございます。

武正委員 この三年間をお伝えいただきました。

 合計回数でいうと、一昨年が三十九回、昨年が二十一回、今年が九回ということなんですね。もっと遡っていきますと、二〇一四年から、三十三回、三十五回、四十八回、四十六回、十七回、十九回、四十三回、二十五回と、二〇二一年まで大体二十回あるいは三十回、四十回というような感じで開いているわけなんですが、今年は九回しか開かれていない。この理由、そしてそれについて官房副長官としての御所見を伺いたいと思います。

青木内閣官房副長官 お答えいたします。

 まず、国家安全保障会議、NSCの開催につきましては、基本的な考え方を申し上げれば、時々の安全保障情勢に応じ、議長である内閣総理大臣の指示による総合的な判断を受けて開催しているところでございます。

 その上で、ここ数年のNSC、特に四大臣会合の開催実績につきましては、一定の傾向をあえて申し上げれば、例えば、国家安全保障戦略等、いわゆる安保三文書の策定過程にあった二〇二一年から二二年の間におきましては、国家安全保障戦略等についてという議題の下、十八回というかなりの頻度で開催しておりました。また、北朝鮮による弾道ミサイル等の発射につきましては、二〇二一年は四回、二二年は三十一回、二三年は十八回、二四年は十一回と、そもそも年によって発射回数が異なっており、北朝鮮による弾道ミサイル等の発射を受けて開催する四大臣会合の開催頻度につきましても一定程度影響を受けております。

 このように、NSC四大臣会合の開催頻度は国際情勢や国内における政策議論の在り方に左右されるため、暦年ごと、開催頻度などの側面のみに着目して議論することは、政府としては特に重要ではないと考えております。

 その上で、何よりも重要なことは、時の内閣総理大臣が必要であると考えたときに、ちゅうちょなく機動的にNSC四大臣会合を開催することであるというふうに思っております。石破政権では、石破総理の強力なリーダーシップの下、必要な際にはNSC四大臣会合を開催してまいる所存であります。

武正委員 そうすると、石破総理がそのニーズを感じておられないというふうに受け取られてしまうんですが。石破総理は総理になってからまだ二か月ぐらいでしょうかね。ですから、その前からも、要は岸田総理の頃も極端に今年は減ってしまっているということは、決してそれが総理御自身の考えというよりも、やはり政府として何らかのそういう意図が働いているのではないかというふうに私は考える次第です。

 岩屋外務大臣に伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。私はもっと安全保障会議を開くべしというふうに思いますが、御所見を伺いたいと思います。

岩屋国務大臣 官房副長官から答弁があったとおりだと思いますが、そもそも国家安全保障会議というのは、安全保障政策をつくっていくときの会議は別にいたしますと、国家安全保障上極めて緊急な、なおかつ重大な事案が発生したときに総理の御判断で開かれるという趣旨、目的の会議だと思いますので、一般論から言うと、そういうことが余りない方が好ましいんだろうと思いますが。

 しかし、今日冒頭に申し上げましたように、世界情勢は激震が続いているさなかでございますので、国家安全保障会議、四大臣会合であれ、九大臣会合であれ、緊急のものであれ、適宜適切に開かれていってしかるべきだと考えております。

武正委員 官房副長官、ありがとうございました。御退室していただければと思います。

 外務大臣からも総理に進言をして、提案をして、是非、安全保障会議開催をやはり密にしてもらう必要があるのではないかというふうにお願いしたいと思います。

 それでは、今お手元の方にちょっと資料を配らせていただきました。外務省予算について伺いたいと思います。

 私も、立憲民主党の外交、安全保障プロジェクトチームに出て、この資料を見てびっくりしまして、こんな予算の資料って七年前にもあったのかなと聞いたんですね。つまり、当該年度の予算を一つの棒グラフにするのではなくて、前年度の補正と当該年度の予算が一つの棒グラフになっている。

 予算というのは単年度主義で、四月―三月で予算についての審議をする国会に対して外務省からこういう資料が出るということは非常に驚いたので、お聞きをしました、いつからこれをやっているのと。それから、なぜこういう資料を外務省は出すようになったのかということを聞いたんですが、確たる答えがいただけなかったところもありますので、外務大臣、いかがでしょうか。

岩屋国務大臣 御指摘を受けて、確認できる範囲で申し上げますと、平成二十九年度の予算の説明資料以降、前年度補正予算額と当年度予算額を合計したこのようなグラフを用いた説明を行ってきているということでございます。こうしたグラフを用いるようになった具体的な経緯等は必ずしも定かではないんですけれども、あくまでも説明の仕方の一つだということでございます。

 なぜこういう説明の仕方をするのかと申し上げますと、補正予算と翌年度の当初予算の編成時期が、例年、基本的に非常に近接しているということがございます。翌年度の当初予算で間に合わない案件が補正予算で手当てされているということも踏まえまして、外務省予算の総額を分かりやすく説明するという観点から、こうしたグラフを用いて説明をしてきているということでございます。

 引き続き、外務省の予算についても、国会、国民の皆様に丁寧に説明することを通じて御理解をいただいていきたいと考えております。

武正委員 全然分かりよくないですよね。すごい答弁書を書かれたものだというふうに思いますが。だって、我々国会は年度年度で予算のチェックをするわけですから、それが、年度をまたいだこうした資料を出されて、分かりやすいですよ、補正の時期と重なりますからなんて、そんなことは本当にふざけた話だというふうに思うんですね。どうですか、これ。おかしくないですか。

 あと、ちょっと伺いたいんですが、外務省の補正予算が非常に、当該年度の予算に計上すればいいのに補正予算に計上するような形で、補正予算がいつも水膨れしているということで、過去も、やはりできるだけ当該年度に予算計上するようにとして求めてきた経緯があるんですね。そのときに、国連始め拠出金の関係もありますみたいな話は伺ったことがありますが、それでもいろいろ努力をしてきたのではないかというふうに思います。

 今の説明以外に、そのような国際機関への拠出ということも何か理由にあるのであれば、御説明をいただければ。そしてまた、それをどう対策をしてきたのかも含めてお答えいただければと思います。

岩屋国務大臣 先ほど、補正予算においては緊要性の要件を満たす予算が計上されるというふうに申し上げましたが、例えば、令和六年度補正予算の外交関連部分について申し上げれば、イスラエル、パレスチナ情勢への対応、国際機関からの緊急の要請を受けた人道支援を含め、喫緊の外交課題に対応するための予算を計上させていただいたところでございます。

 外務省の予算は、当初予算が成立した後も国際情勢が刻々変化を続けることから、こういう国際情勢に適切かつ速やかに対応する必要がありまして、年間の予算につきましてもこうした考え方の下で編成をしているところでございます。

 近年、急速な進展を見せる情報戦や、ウクライナ情勢、中東情勢を始めとする流動的かつ複雑性を増す国際情勢に対して、適切かつ速やかに対応することが日本の国益にかなうという考え方で予算をつくってきているわけでございますが、今般、補正予算をお認めいただきましたが、補正予算全般についての考え方について様々国会でも御指摘をいただきました。また、今日の先生の御指摘なども踏まえて、更に予算の計上の仕方、作り方についてしっかり検討していきたいと思っております。

武正委員 是非、特に前年度、前々年度、補正予算は額も非常に膨れておりますので、この内訳を委員会の方に御提出をいただきたい。

 今回も、補正予算、外務省さんの予算の説明書は本当に非常に大くくりで、プロジェクトチームでも岡田元外務大臣も指摘をしておりましたが、余りにもちょっと漠として分からない。やはり国会への説明というのは、外務省さん、なかなかどうなのかなというところはありますので、特に補正予算の中身について、是非国会への提出資料をもう少し細かく出していただきたいということをお願いしたいと思いますし、具体的に、一昨年、昨年、それから今年と、補正予算の中身について委員会に御提出をお願いしたいというふうに思います。

 これは、委員長、じゃ、外務大臣、いかがでしょうか。

岩屋国務大臣 委員会に提出せよということでございましたら、委員会で御決定いただければそのようにさせていただきたいと思います。

堀内委員長 ただいまの件につきましては、後刻理事会で協議させていただきます。

武正委員 よろしくお願いいたします。

 それでは、最後、もう一つです。

 それで、再度検討するとは言いましたけれども、こういう説明、これはやはり見直しますよね、この棒グラフ。いかがでしょうか。

岩屋国務大臣 そのことも含めて検討させていただきます。

武正委員 是非よろしくお願いいたします。

 やはり、多分外務省だけだと思うんですね、こんな資料を出しているのは。恥ずかしいですよ、本当に。是非よろしくお願いいたします。

 それでは、FOIP、自由で開かれたインド太平洋の進展について伺いたいと思います。

 これは、三本柱と外務大臣が大臣所信で述べた一つということでありますし、私もこの場をおかりして、安倍元総理が亡くなられたことを心からお悔やみを、そして御冥福をお祈り申し上げたいと思います。追悼演説でも、野田立憲民主党代表が、安倍元総理の光と影ではありませんが、プラス、マイナス両方に触れながら追悼演説を述べたことを、私も国会外でありましたが、聞かせていただきました。

 経済、金融について、私は、やはりアベノミクスの負の遺産が今行き過ぎた円安の原因であるということなので、非常に今の日本の物価高をもたらしている側面というのは否定できないというふうに思っております。

 一方、自由で開かれたインド太平洋というものは、やはり非常に大事な側面であるというふうに私も考えます。二〇〇〇年当初からずっと進めてきたインド重視の日本外交、これは政権交代からも、当時の民主党政権も引き継いで取り組んでまいりました。私も、二〇〇九年から二〇一七年まで日印友好議連の幹事長も務めさせていただきましたので、福田元総理、町村元外相、細田先生などが歴代会長を務められたという経緯もございます。

 FOIP、自由で開かれたインド太平洋に関しては、ASEANでは、AOIP、インド太平洋に関するASEANアウトルックが二〇一九年につくられているなどしておりますし、二〇一八年には、岩屋外相は防衛大臣としてASEANの防衛担当大臣会合にも出られているということですので、お詳しいというふうに思います。

 そういった意味では、開かれたインド太平洋、特にインド洋、それから太平洋といっても、西太平洋というところが一つエリアだとしますと、アフリカの東部、インド、ASEAN、そしてまた西太平洋諸島というような意味での関係強化が必要というふうに考えますが、御所見を伺いたいと思います。

岩屋国務大臣 武正委員御指摘のとおりだと思っております。

 FOIP、自由で開かれたインド太平洋という構想は、安倍元総理、安倍政権が日本発の構想として発信をしてつくり上げてきた日本外交のある意味大きな遺産だというふうに思っておりまして、これを更にしっかり維持、継続をして、発展をさせていかなければいけないと考えております。

 こうした中、今も委員から御指摘がございましたが、例えばアフリカ諸国に対しましては、実は、来年はTICAD9が日本で開催されるわけでございますけれども、二〇一六年の第六回アフリカ開発会議が初めてFOIPを提唱する機会にもなったということでございまして、アフリカ諸国との関係も一層強化してまいりたいと思いますし、また、御指摘のあったインドとは、基本的な価値を共有するFOIP実現のための重要なパートナーでございまして、グローバルサウスの代表格でもございます。日印特別戦略的グローバルパートナーシップの下に、幅広い分野で二国間関係を一層強化し、また、国際社会の中での協力関係を深めていきたいと思っています。

 また、ASEANでは、今も委員から御指摘がありましたASEANアウトルック、AOIPに沿った具体的な協力を積み重ねてきております。今後も、AOIPの主流化を後押しするとともに、ASEANとの具体的な協力を推進してまいりたいと思っておりますし、太平洋の島嶼国も非常に重要でございまして、本年七月の第十回太平洋・島サミット、PALM10の成果を踏まえて、二国間での協力も通じて、島嶼国各国や地域全体との連携協力を不断に強化していきたいと思っております。

 これらの取組を通じて、FOIPを更に充実発展をさせてまいりたいと考えております。

武正委員 ASEANということでいきますと、いろいろな条約を各国と結んでおりますけれども、租税条約について、未締約国がカンボジア、ラオス、ミャンマーということになっております。

 ミャンマーについては、今、クーデター後、様々な関係についていろいろ難しい状況にあるということは承知しておりますが、カンボジア、ラオスについてはやはり租税条約締結が必要ではないかというふうに思いますが、この点、御所見を伺いたいと思います。

岩屋国務大臣 政府としては、相手国との経済関係、我が国の経済界からの要望、あるいは租税条約の締結から生じ得る効果という観点を踏まえまして、新規の租税条約の締結や既存の租税条約の改正を進めてきているところでございます。

 既にASEAN諸国を含め、多くの新興国とも租税条約を締結をしてきておりますが、今後、経済関係の発展が見込まれる国を含めて、我が国の租税条約ネットワークを更に拡充していく観点から、新規の租税条約の締結に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

 また、ミャンマーについては、御指摘のあったとおり、情勢が悪化の一途をたどっておるようなことでございますので、情勢を今後しっかり注視をしていきたいと思っております。

武正委員 租税条約については、外務省と財務省とそれから経産省が定期的に会合もやっているようですので、是非外務省サイドから、特に財務省への働きかけを大臣からもお願いをしたいというふうに思います。

 もう時間も限られておりますが、特に、先ほどお話があったインドにつきましては、日印の協力を通じて、今、中国のプレゼンスが強くなっているカンボジア、ラオスへの働きかけ、先日は、カンボジア、ラオスで地雷除去に当たっておられるJICA専門員の林明仁さんも報道されておりましたが、今ウクライナ関連の地雷除去に関わっているというようなことも含めますと、そういった協力について、取組について、インドとうまく協力をしながら進めていくということが必要ではないかな、これも一つアイデアということで御提案をしていきたいと思います。

 最後に、在外邦人対策、ちょっと時間がなくなってしまったんですが、過日のシンセンでの日本人学校の事件、もう事件から三か月経過をするんですが、なかなか真相が明らかになっていないということなんですが、この事件に至るに当たっても、蘇州だけでなくて、そのほか、ソウルとかいろいろなところで事件がありながら、特に中国で続けざまにこうした事件が起きてしまった。特に、亡くなられた十歳の男子児童の方のお悔やみ、そしてまた御冥福をお祈り申し上げますが、一日も早く真相を明らかにする必要があると思うんですが、今の状況をお伺いしたいと思います。

岩屋国務大臣 シンセンにおける日本人学校児童殺害事件につきましては、深い悲しみを禁じ得ず、政府として極めて深刻に受け止めております。

 本事件の発生を受けまして、中国在留邦人の不安が急速に高まっていることから、一刻も早い事実解明と説明をあらゆるレベルで中国側に求めてきているところでございます。私も、王毅外交部長に対し、電話会談でその旨強く求めたところでございます。できるだけ早く、直接会ってまた伝えたいと思っております。

 中国側からは、事件の詳細につき、司法プロセスの中で適切な形で説明する機会があるとの説明を受けておりまして、引き続き緊密に意思疎通をしていきたいと思っております。

 また、邦人の安全確保のために、中国側に対して、日本人学校の警備を強化することを求めていることはもちろんのことながら、各地の日本人学校の安全対策の強化をするために、今般の予算でもお願いをしておりますが、補正予算で二・六億円、また、七年度当初予算概算要求に三・六億円を計上しておりまして、こうした取組を通じて、中国における在留邦人の安全確保に万全を期してまいりたいと考えております。

武正委員 時間が来ましたので終了いたしますが、私も、外務副大臣のときに、中南米でも日本人学校の警備の要請も受けた経緯がございますので、全世界の日本人学校、そしてまた日本語補習校、また、国際交流基金が日本語補習校の調査も行っているやに聞いておりますが、ちょっとそれはなかなか内容は明らかにできないということですが、是非差し支えのないところでお聞かせいただいて、海外で学ぶ邦人の子供たちが安全にそして充実して学べるように、そのサポートをやはり国会としても求めていきたいと思いますので、そうした情報共有もお願いをいたしまして、終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

堀内委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 立憲民主党の小熊慎司です。

 まず初めに、お聞きをいたします。

 故安倍晋三元首相の奥様である昭恵さんが、トランプ次期大統領と面会をされました。政府としてはコメントする立場にはない、また、政府関係者は民間人の社交の話だというふうにしておられますけれども、また一方で、テレビのコメンテーターで弁護士の橋下徹さんに言わせれば、外務省はメンツを潰された、半ばすねているということも言及していますが、それは彼の見解であって、逆に、すねていたり、メンツを潰されたということも、トランプさんの術中にはまるなと思います。

 淡々としていていいなとは思いますが、コメントする立場にはあると思います。民間人であったとしても、私もいろいろな友好議連をやっていますけれども、民間人外交を支援しているじゃないですか、国としても、我々議員としても。

 今回の件は、別に普通の民間人ではないわけですね、国葬儀までやられた方の奥様でありますから。報道によれば、石破総理に本と記念品を託されたということでありますから、これはしっかり政府としても対応しなきゃいけない。

 僕はよかったことだと思います。外交ですから、石破総理が会えていない中で会いたいというのであれば、あらゆる外交手段、ツールを使って、ルートを使って日本の国益のためにやることは、私は別に悪いことじゃないと思いますので、安倍総理をしのんでいただいたトランプ大統領、このつながりがあったわけですから、是非政府として、私は面会はよかったと思う、評価をしたいと思います、ただ、これをしっかり成果に結びつけていかなきゃいけないと思いますので、官房長官はコメントする立場にはないと言っていましたけれども、改めて、岩屋大臣、コメントをお願いします。

岩屋国務大臣 委員御指摘のように、安倍元総理の昭恵夫人とトランプ次期大統領夫妻が旧交を温められたというふうに承知をしております。

 昭恵夫人は、もちろん今は民間人でいらっしゃいますけれども、委員御指摘のように、ほかならぬ民間人でいらっしゃいます。日米関係という意味で、極めて重要な個人的な関係を有しておられる方でいらっしゃいますから、今回、旧交を温められたということは、大変好ましいことであって、歓迎すべきことだというふうに考えております。ただ、政府の外交行為の一環ではございませんので、政府としてコメントをする立場にないということを申し上げたということであると思います。

 私としては、日米両国の関係が、公的であれ、私的であれ、民間レベルであれ、様々な形で深まることは大変好ましいというふうに思っております。

小熊委員 だから、コメントする立場にないという冷たいのを先に言うんじゃなくて、今大臣が言ったみたいなことを言えばいいんですよ。だって、昭恵さんのほかだって、民間外交、民間人交流というのは政府として評価しているじゃないですか。それは関係ありません、立場にありませんなんて言いますか。言わないですよね。どこかの地方都市と地方都市の友好で何かハッピーニュースがあれば、政府としてもよかったですと真っ先に言うじゃないですか。

 逆に、そういうふうに何かクールさを装うことがもう既にトランプさんの術中にはまっている、マウンティングされているなというふうにも私は思いますので、今後、しっかりコメントの評価については岩屋大臣のようにやっていただきたいと思います。

 これで、だから、トランプさんも、記者会見の中では、総理が会いたいというのであれば会うと。本当は就任前は誰とも会わないと言ったけれども、会うとなっていますから、ソフトバンクの孫さんも会っているわけですし、これは会うべきだと思うし、ましてや、記念品はもう届いたんですかね。

岩屋国務大臣 それはまだ確認できておりません。

小熊委員 いやいや、外務省、これは大事なことだから。次期大統領が託したんですよ、総理にと。これを答えられる人は役人ではいないの。これは早急に確認するべきですよ。

 ちゃんとお礼状をすぐ出して、だって、我々だって選挙のとき、そういうものじゃないですか。恩を受けた人にはちゃんとお礼状を出したり、すぐ電話したり、ありがとうございますとやるじゃないですか。お礼状じゃなくて、電話するじゃないですか。でも、選挙民じゃなければお礼状を出したりしますよね。

 それは一般社会人としての儀礼でもあるし、これは国のことですから、大臣、やはりこれをすぐ確認していただいて、政府としての対応をしなきゃいけないですよね、総理に届くわけですから。どうですか。

岩屋国務大臣 石破総理もいただきたがっていると思いますので、それはすぐに確認をさせていただいて、しかるべき、しっかりと礼を尽くしたいと思っております。

小熊委員 いただきたがっているというと、何かおねだりしているみたいなので、早急に承りたいということで。しっかり御礼と、あとは、だから返礼品を持って会いに行きたいといえば、なるんじゃないですかね。是非、今回のことをそういうふうに生かしていくということ。

 また、今後、こういったことがいろいろ起きてくると思います。実際には、本当に、会いたいというのに会えなかった中で昭恵夫人が会われたということで、ある意味では、プライドが高いというか、外務省としてもメンツを潰されたと思う向きもあるかもしれませんけれども、それは国益のためですから、そこは乗り越えて、今後、日米のみならずほかの国との外交関係も、これはいろいろなツール、ルートを通じてやっていくということにはこだわりなくやっていただきたいというふうに思います。

 次に移ります。

 この間も、我々友好議員連盟ともウクライナの要人の方々とお会いをさせていただきましたけれども、ウクライナの戦争は一日も早い解決が望まれますし、また、複雑化する中東情勢への対応も大変難しい状況にあります。

 トランプさんがなってどういうふうになっていくのかというのは読めないんですけれども、読めないからこそ困ることもあって。ただ、日本が今、ウクライナへの支援、また中東への対応、これはアメリカとも歩調を多少合わせながらやっていきますけれども、これがずれた場合、アメリカと歩調を合わせていくのか、あくまでもウクライナや中東に関しては日本の基本姿勢を貫いていくのか。この大方針はどうしますか、大臣。

岩屋国務大臣 米国の新政権といいますかトランプ政権がいかな外交政策を取ってくるのか、今委員御指摘があったウクライナの問題あるいは中東の問題について、これについては予断を持って申し上げることは控えたいというふうに思います。

 我が方の方針は、やはりロシアによるウクライナ侵略というのは、言うまでもなく、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であって、これは許されないという問題意識の下に、ウクライナ支援をしっかりと続けてきているわけでございますし、中東情勢についても、現在の中東情勢の緊張の高まりを深刻に懸念をし、一刻も早い情勢の安定化、それから人道支援の活動を更に持続させていくために積極的な外交を続けていきたいと考えております。

 日米関係は極めて重要な二国間関係でございますから、次期政権ともしっかりとこれらの点も含めて協議をして、米国が正しくリーダーシップを発揮していただけるように日本としても協力をしていく、支援をしていく、あるいは協働していく、そういう考え方で臨んでいきたいというふうに考えているところでございます。

小熊委員 仮定の話になりますけれども、ですから、そこでそごが生じた場合、日本としては、やはり米国に倣うのか、あくまでも今までの対応を続けていくのか、この基本姿勢がどうですかと確認している。アメリカがどうであろうと、日本のこの外交基本姿勢、支援の在り方は変えていかない、この基本方針は貫くんだ、平和のために、力による現状変更は認めないために。その確認をしたいんです。あくまでも基本を貫くということでいいですね、どういう状況になろうと。

岩屋国務大臣 先ほども申し上げましたように、この段階で、米国のまだ発足もしていない新政権の外交政策について、予断を持って申し上げることは控えたいと思います。

 その上で、今、日米関係というのは、今までにない高みにあるというふうに思っておりますし、それは、現政権だけではなくて、来るべき米国の新政権ともそういう関係をしっかり強固に保っていきたいというふうに考えております。その中で、様々な事案の対応については、日米間でしっかりと意思疎通をして、そごのないように努めてまいりたい、この段階ではそのように申し上げるしかないというふうに思っております。

小熊委員 アメリカとは同盟関係ですから、全くアメリカと真逆のことをするわけにはいかないというのも分かりますけれども、日本の基本姿勢というのは私は間違っていないと思いますので、アメリカが違うことをしようとしたら、まさに国際社会の連携の中で日本がリーダーシップを発揮して、この基本姿勢を貫けるようにやっていかなきゃいけない。

 トランプさんというのは何をやってくるか分かりませんから、ここはしっかり、そこは振り回されないように日本外交を貫く、国際社会の連携の下で貫く。日米同盟がありますから、全く違う対応を取るというのもそれはしんどいし、現実的でないのも私も分かります。でも、そうなりかねないわけでありますから、しっかり今のうちから、ほかの国、アメリカ以外の様々な国との連携強化を。

 ただ、ほかの国も、今も話がありましたけれども、韓国もいろいろ大変だし、フランスも大変だし、ドイツも来年選挙で、政権交代がどんなふうになるかも分からないしという状況の中で、日本は与党が少数与党になりましたけれども、今のところ混乱することなく、熟議の国会で成果が出ていると思いますから、こうした熟議の国会の中で、是非日本外交の基本方針が貫けるように努力をしていただきたいというふうに思います。

 次に移ります。

 今も同僚の武正議員の中でもありました自由で開かれたインド太平洋構想、FOIP、これは私も評価をするところでありますし、この委員会で度々言及もさせていただいてまいりました、質問させていただいてまいりました。

 その中で、FOIPでやると、インドとかアジアとかASEANみたいな話ばかりですけれども、先ほど大臣が言ったとおり、やはり島嶼国との連携は非常に大事です。人口は少ないけれども、やはり一つの国ではありますから。

 そういう中で、私も、太平洋島嶼国友好議員連盟も役員をさせてもらっていますし、国別で言うと、トンガの友好議連の事務局長、サモアの友好議連の事務局長もさせていただいていて、度々ちょっとのろけるんですけれども、うちの妻はサモアで、海外青年協力隊で行っていた縁でサモアとの友好をさせていただいて、文通で結婚したんですけれども、みんな、ほかのメンバーは結構知っているんですが、それはそれとして。

 トンガの方もお引き受けをしまして、この間、中谷防衛大臣が友好議連の会長なので、中谷大臣とトンガの大使と会食をする機会がありました。その中でも、OSA、安全保障能力の強化支援について、会談の中で、会食の中で話題になりまして、トンガとしても是非やっていきたいと。中谷大臣はこれを進めようと。この話を委員会でしてもいいですかと言ったら、中谷大臣はいいよと言っていただいたので、今日質問させていただいているところであります。

 外務省に聞いたところ、今、フィジーとか、ほかはやっていますけれども、今後の中でトンガも入っているんですが、今後の取組ですね。まず、じゃ、どういうふうに取り組んでいくのか、このOSAの進め方。また、軍隊を持たない国はOSAをやれないので、コーストガードとか海上警察の支援はODAでやっていくしかないわけでありますけれども、そのOSAそしてODAによるコーストガード、海上警察などへの支援について、今後の取組をまずお聞きいたします。

斉田政府参考人 お答え申し上げます。

 太平洋島嶼国につきましては、我が国と歴史的なつながりも深く、我が国が重視する諸課題についての国際場裏での連携協力において重要なパートナーでございます。また、海上輸送の要となる地域でもあるなど、自由で開かれたインド太平洋の実現、この観点からも極めて重要な地域と認識しております。

 OSA、政府安全保障能力強化支援につきましては、同志国の軍に対する資材供与またインフラ整備といった、こういう支援を通じまして、安全保障上の能力や抑止力、こういったものの強化に貢献することを目的としております。

 太平洋島嶼国を含むインド太平洋地域は、主要な対象地域でございます。太平洋島嶼地域におきましては、軍を有する三か国、そのうちフィジーに対しましては、令和五年度において警備艇の供与を決定いたしました。また、パプアニューギニア及びトンガにつきましても、OSAの目的に照らしまして、支援実施の意義や相手のニーズ等、こういった要素を総合的に勘案しまして、今検討を行っているところでございます。

小熊委員 大臣にちょっとお答えいただきたい。

 これは一か国当たり五億前後なんですけれども、ちょっと事前に聞いたら、OSAの対象は、この島嶼国の中でも、フィジー、パプア、トンガです、軍隊があるから。もうフィジーはやっているということですが、今後、だから、パプアニューギニアとトンガになってくるんですけれども、この間、外務省の説明だと、まずパプアをやって、予算の制約があるので、その次はトンガだと言ったんですね。

 でも、今お話しさせていただいたとおり、トンガはすごくやる気になっているので、だから、例えば四、五億しか予算が一年でつかないのであれば、これを分けるんじゃなくて、逆に、来年はパプアも二・五億、トンガも二・五億、その次も二・五億ずつ積み増す、こう段階的にやるとか、同時並行で。パプアをやってからトンガじゃなくて。予算は半減しちゃうけれども、それぞれ二か国を同時並行で進めていくというやり方はどうですか、大臣。

岩屋国務大臣 小熊委員におかれては、御夫妻そろってこの島嶼国との友好関係の進展に御尽力いただいておりますことを心から敬意を表し、お礼を申し上げたいと思います。また、なれ初めも聞かせていただいて、ありがとうございました。

 今御指摘がありましたが、事務方から答弁させていただいたように、パプアニューギニア及びトンガについても、今、総合的にその中身を検討しているところでございますので、どんな中身になるかということにもよりますし、なかなか先生がおっしゃるとおりにうまく二分割でやれるかどうか、そこはちょっと確約は難しいんですけれども、一刻も早く、パプア並びにトンガについても、OSAの目的に照らした支援が実施できるように努力をしてまいりたいと思います。

小熊委員 大使の発言で、首相の発言ではありませんが、トンガとしては早急に連携していきたいということでありますので、対応を是非お願いしたいと思いますし、こういう国々にコロナ前ですけれども行ったりしていて、やはり中国の台頭が著しいわけである。もちろん、中国も純粋に島嶼国の開発のためにやっている部分もないとは言えませんけれども、やはり覇権主義的なことが見え隠れするし、経済基盤も脆弱な国でもありますから、その小さな島の経済も多少めちゃくちゃにしている部分もある。

 私も中国との交流もしていますから、中国の政府の方と会うときには、あなたたちのやっていることは押売に近いから嫌われるよ、目的はいいけれども手段が駄目だから、ちゃんと丁寧にやった方がいいというのは、ちゃんと率直にお話もさせていただいていますが、いずれ、そのFOIPの重要性、FOIP構想のまさに一つ一つ、様々な実現を図っていくという意味では、まさにこの島嶼国でのこうした連携が重要であります。

 OSAはOSAとしての仕組みがありますけれども、軍のない国をどうしていくかというのを、ODAでコーストガードは今言ったようにやっていっているわけですけれども、年々やはり薄くなっているし、なかなか見えてこない。

 フィリピンとの連携は、コーストガードへの支援は見えていますけれども、やはり小さな国へのこうしたODAを通じての海上警察、コーストガード等への支援は見えてきていない、効果がまだちょっと出にくい。ここはもう一段アクセルを踏まなきゃいけない、ギアを上げていかなきゃいけないというふうに思います。軍隊がない国ですから、より丁寧な連携強化が必要ですよね。

 これについて、もうちょっと力を入れませんか、大臣。必要性があると。今ちょっと、何となくじゃないけれども、もう一段踏み込むべきだと思いますよ。

岩屋国務大臣 他国の支援の在り方について、これを評価したりコメントをしたりすることは控えたいと思います。

 今日、ODAの関係で冒頭に申し上げましたように、やはり日本のこれまでの、本当にその国、その地域に寄り添って、ODAを通じた、これからはOSAもその中に入ってきますが、やってきた貢献というのは、必ず先方にしっかりと伝わって残っていくものになると思いますし、ただ、物を供与するだけではなくて、やはり、そこに携わる人材の開発とか能力向上支援ということを含めてやっていくことはこれからも本当に大事だと思っておりまして、予算の制限も全くないとは言えませんが、その中にあっても、この島嶼国、それぞれ小さい国でありますけれども、国に大も小もない、それぞれの国を尊重した日本ならではの支援、貢献というものをこれからもしっかり続けてまいりたいと思っております。

小熊委員 さらに、PALMのメンバーの中にはフランス領もありますから、そういうところ、島嶼国だけじゃなくて、フランス領であっても大臣がいたりはしますけれども、島嶼国の連携の中には、やはりフランスとの連携も必要となってきますから、是非更に、限られた予算でありますけれども効果的になっていくように、しっかり連携を取ってやっていただきたいというふうに御提言を申し上げて、次の質問に移ります。

 この委員会でも何回もやっていますが、今、東日本大震災復興に向けて各地域で取り組んで、また国内外からの支援の下に力強い復興もなされていますが、福島県においては、原発事故災害はまだ継続中の災害でもあります。

 事あるごとに支援もいただいていますけれども、事あるごとに、何かあるごとに風評被害も発生をしている。場合によっては、それは風評被害じゃなくて人口減少だからしようがないんだみたいなことを東電の社員にも地元の経済人が言われる始末で、風化も始まっているなというふうに思います。

 そういう中で、この話を聞くと、歴代大臣、政府関係者は、科学的根拠をお示しをし、一層の払拭に努めていきますと、通り一遍の答弁しかないんですよ。科学的根拠を示してちゃんと説明はしています、政府も、福島県も、地元も。それで取り去れないから、より一層の工夫が必要なんですけれども、改めて、大臣、今まで以上の取組、通り一遍だったら要らないんです、今まで対応してきました、政府も、地元の人たちも。でも、それをやはり凌駕するものがなければ、これが払拭されない。情報が伝わりにくい海外においては特にそうです。

 改めて、大臣の志をちょっとお聞きいたします。

岩屋国務大臣 委員御指摘の日本産の食品に対する風評被害、これを払拭するということは政府の最重要課題の一つだと思っております。

 これまで様々なレベルでその取組を行ってまいりましたが、現在までに、震災後に規制を導入した五十五か国・地域のうち、四十九か国・地域が規制を撤廃し、規制を維持しているのは六つの国と地域となっております。

 今後も、これを完全に解消していくことが目標でございますので、あらゆる外交機会を捉まえて、また、在外公館や海外で築いた人脈といった外務省の持つリソースを最大限に活用しながら、規制を残している地域の早期撤廃に向けて全力で取り組んでまいりたいと思っております。

小熊委員 中国の外交部の、固有名詞はちょっと言えないんですけれども、数年前にちょっと意見を交わしたときに、我々だって科学的知見はありますよ、分かっています、これは政治問題なんですと言いました。今ほどもちょっと、さっきの質疑でもあったとおり、韓国の大統領も、もし最大野党の李在明さんが大統領になったら、はっきり言えば、福島に対するヘイトスピーチを繰り返していますから、あれはヘイトスピーチですよ、科学的根拠もない。大統領になったら収まるのか分からないけれども。

 だから、科学的根拠を訴えたって届かないし、中国の外交部も政治問題だと昔から言っていたわけです。だから、真っ当なアプローチじゃないんですよ。まさに外交力が試されていて、科学的根拠を示すということは、もうそういうことじゃないんです。福島を利用しているだけですから、外交のツールとして。韓国の最大野党の彼も、そういうことで反日みたいなのをあおっているわけでしょう、また福島をツールにして。とんでもないことなんですよ。ですから、通り一遍のじゃないんだというのは、そういう意味です。政治での解決なんです。これが問われているんです。それで、利用もされちゃう。

 ちょっとごっちゃの質問になってくるけれども、もはやSNSの世界でもこういうことがまかり通っているわけです。日本の国も、フェイクニュースもいっぱい出ていたりもしますから。本当に、大臣も複雑化したという言葉を使っていましたけれども、こういう世界でも複雑化してきて、だから、通り一遍の対応では駄目なんです。

 一つには、ストレートな対応じゃなくて、この委員会でも言ってきていたんですけれども、福島は安全ですよ、おいしいですよだけじゃなくて、映画とかドラマで誘致をしてもらって、肩肘張らずに、福島は大丈夫ですなんてせりふがなくても、情報発信をしていくということで信頼を回復していくということが重要なんですね。

 それは成功例があるんです。TOKIOの皆さんが福島に支援に来ていて、福島は安全ですよなんてことを言わない。福島おいしい、福島すばらしいと。今でも来ていただいて、いろいろな活動をしていただいているし、それで福島県庁にはTOKIO課というものまでできたわけですよ、連携して。もう数年前ですよ。おおという言葉がありましたけれども、このぐらい、だから情報発信がまだまだなんです。そういうアプローチはすごくいいと思います。だって、分かる人は分かるんだもん、科学的根拠は。分からない人へのアプローチは、だから、それを言ったって駄目だし。

 だから、中国政府がこうやって政治利用していたって、インバウンドで中国の方が福島がいいと言って来てくれる。韓国の今度大統領が何かやってヘイトスピーチをしたって、福島いいねと来てくれる人はいる。そういうソフト的なアプローチがより一層必要ですよ。その点については、大臣、どうですか。

岩屋国務大臣 それはまさに、あらゆる角度からのアプローチが必要なんだと思います。当然、正攻法で科学的根拠というのをしっかり示して、安全性を示して説得するというのも一つの方法だと思いますし、今委員が御指摘になったように、むしろこのソフトパワーというか、そういう日本のあらゆる文化を通じて、その被災地の安全性を間接的ではあってもアピールするという方法もあると思いますし、外務省だけではなくて政府全体でそれは取り組んでいかなきゃいけないと思いますが、先生御指摘になった外交力によってまた突破しなければいけないということもあると思います。

 韓国も今流動化しておりますけれども、岸田、尹関係で改善に向かったこのトレンドというのをしっかりキープしていく中で、この風評被害の問題といいますか、輸入規制の問題も解決していかなきゃいけないと思っておりますし、中国との間もいろいろありますけれども、戦略的互恵関係の下に包括的な協力関係をしっかり進めていく中で解決を図っていくということも外交の仕事だと思っておりますので、しっかり取り組んでまいりたいと思います。

小熊委員 外務省だけじゃなくて、歴代自公政権は、全員が復興大臣のつもりで頑張りますとその都度言うし、総理の所信では必ず福島の復興なくしてと。言葉はもう何回も聞いたのでいいんですよ、行動を起こしてもらえば。外務省もやる必要はあるんですよ。

 国際会議、いろいろ福島優先でお願いします。大臣、どうぞ。

岩屋国務大臣 あらゆる外交の機会、また在外公館、海外のいろいろな外交シーンにおいて、是非、被災地の産品をしっかりと紹介し、宣伝をしてまいりたいというふうに思っております。

小熊委員 政府参考人にも来ていただいているので、中国は解禁に向けて動き出していますけれども、この間も中国大使館の方と意見を交換したら、ちょっと何か気になることを言っていたので、今後、時系列をちょっとお示しを、どういうふうに進んでいくのか、実際、解禁に向けてどういう時間軸になっているのか。

 あわせて、SNSの中での風評被害というのは、本当にこれから、フェイクニュースとかも、選挙も我々は影響しちゃっているわけですから、取り締まるというわけじゃないけれども、ここにどう対応するかですよね。オールドメディアだけじゃなくて、このSNSの世界に対応していかないと、本当に、風評被害というのは今まで以上に広がっちゃうと思います。それで、取り返すのが大変。

 この二点、政府参考人、それぞれお願いします。

大河内政府参考人 御質問の中国の日本産水産物の輸入規制の解除、時系列でございますが、まさに先月、ペルーで行われました日中の首脳会談、こちらにおきまして、両首脳が、ALPS処理水の海洋放出と日本産水産物の輸入規制に関する発表を両国できちんと実施していく、こういうことを確認した次第でございます。また、併せまして、石破総理から、中国による日本産水産物の輸入回復を早期に実現する、こういうことを求めたという次第でございます。

 具体的な時期に関しましては、まだ決まったものではございませんけれども、政府としましては、習近平主席自身が日本産水産物の輸入規制に関する発表の実施に言及した、これは非常に重要な意義があるというふうに考えてございますし、引き続き、中国に対しまして、早期実現を求めていきたいと考えてございます。

林(美)政府参考人 東京電力福島第一発電所の事故に関して、SNSによる風評被害の防止につきましてですが、ALPS処理水につきましては、外務省のホームページやユーチューブで、科学的根拠に基づく多言語で情報を掲載するとともに、旧ツイッター、XなどのSNSを活用して積極的な情報発信を行っています。また、SNS上で逆に科学的根拠を欠く情報が確認された場合には、記者会見やプレスリリースの発出を通じて直ちに反論するようにしています。

 また、最近では、外務省や在外公館のSNSにおいて、引き続き、被害地を含む日本各地の観光、文化、食などの魅力を伝える動画を発信して、各国の市民の対日理解を深め、これをもって風評被害の起こりにくい土壌をつくる努力を払っているところでございます。

小熊委員 非常に教科書的な、優等生の答弁でありましたけれども。

 まず、水産物のことに関しては、さっきから言っているように、政治力で、政治問題としてはいじられてきていたし、中国も科学的根拠と言っていて、じゃ、あんたらの指標は何だ、IAEAの枠組みしかないだろうと何年も前から僕は言っていたんですよ。それ以上の何かあんたらの物差しがあるのであれば示してこいよと。結局、IAEAの枠組みで中国はやるわけでしょう。分かっていていじってきていたから、こんなのはこれからの推移もどんどんどんどん切り込んでいって、早期の解消に向けてやっていってください。彼らはただ政治の課題としてやっているだけだから。この後、私は中国の公使と会いますから、私も今、厳しく言っておきます。

 あと、SNSは本当にひどい状況で、別に福島のことだけじゃなくて、この間もテレビで見ていたら、日本の運動会で、上海を乗っ取るぞと、全然違う、赤組頑張れとやっているのに、その字幕がついているとか、うそでしょうと思うことを平気で垂れ流されちゃっている。

 日本でもちょっと目に余るようなユーチューブとかもあるし、あと、近年では中国の旅行者は、それはそうだ、私も地元に二十六自治体があるけれども、役場とか行って、さらっと議場の方まで行けちゃったりしますよ、議会事務局に行こうと思うと。でも、そんなのを映されたり。

 あと、私もSNSを発信するときに子供が映っていたら、顔はカットしたりぼやかしたりしますけれども、ただ、同僚議員の中には平気で子供の顔も上げちゃっている人はいるけれども、中国人ユーチューバーもやっているわけですよ。こういう世界ですよ。

 これも、先週、中国の参事官が来て、言ったら、フェイクニュースとかそういうのはやめましょうと言っています、中国政府としても国内にと。そんな通り一遍のことなんて聞くわけないじゃないですか、そういうやつらは。やはり厳しくこれを潰していかなきゃいけないんですよね。だから、今言った対応はそれは当たり前です。でも、効果が出るかどうかというと、これはちょっと疑問符がつく。そのぐらいもう大きな波になっちゃっています。

 これは答弁は求めませんけれども、より現実の方がもっと進んでしまうし、いい部分もありますよ、いい情報発信もできるツールではあるけれども、悪い情報発信は今までのツール以上に広まりやすいので、これはもっとシビアにやっていかなきゃいけないと思うし、そういう意味では予算づけも必要ですよ。日本のサイバー防衛隊だって全然脆弱だし、ほかの国と比べたら。だから、我々も、計り知れない世界に入ったなというふうに思っています。

 そういう意味で、今年の選挙も、東京都知事選や兵庫県知事選も、いいとか悪いとかの評価じゃなくて、大きな影響がありました。これは、まさに国際的風評被害の部分でも、いい部分も発信できるかもしれないけれども、悪い部分も広がるということを懸念するところでありますので、より一層の力の入れ方、対応の仕方をもっと深刻に考えていかなければならないことでありますし、これによって、大きな経済的損失とか人的損失、取り返せないものも出てくるはずです。

 もっとシビアに対応していただけるようお願いを申し上げ、質問を終わります。ありがとうございました。

堀内委員長 次に、竹内千春君。

竹内(千)委員 こんにちは。立憲民主党・無所属の竹内千春です。

 今回、初当選をさせていただきました。今日、初質疑となります。

 私は元々、民間会社の勤務をして、その後教員になって、この過去十五年は弁護士をさせていただいています。その弁護士活動の傍らに、日弁連の国際室というところに籍を置いて、弁護士また弁護士会の国際活動にも従事をしてまいりました。立憲主義、民主主義、そして国際的な視野にも基づいて政治活動を行ってまいりたいと思っています。

 さて、今日は、十二月十一日の岩屋外務大臣の所信についてお尋ねをいたしたいと思います。

 まず、大臣の所信全体を拝見したときに、少し人権に焦点を当てたような言及が少なかったなというように、ちょっと私は印象を持ったんですが、私自身、弁護士という立場からも、今日はあえて人権に比重を置いた質問をさせていただきたいと思います。

 まずお聞きしたいのですが、大臣所信において、経済外交というところの中で、日本企業の海外展開を後押ししていくというようなことが述べられていて、それとともに、ルールに基づく自由で公正な経済秩序の維持拡大の重要性も述べられています。

 これは、国際的な企業の役割がどんどんどんどん大きくなっていく中で、やはり、企業がただ営利を追求するんじゃなくて、企業の直接の取引先だけでなく、またその後に続々と続くサプライチェーン、それらを全て含めた、国境を、国を越えてでも、その全てを包括した人権の保護が、これから社会的な重要性が高まってきているという、いわゆるビジネスと人権の重要性も含まれての御発言だったんだろうと私は思っているんですけれども、まずそこをちょっと確認をさせていただいてよろしいでしょうか。

岩屋国務大臣 そこの考え方は、竹内委員がおっしゃるとおりでございます。

 外務省として、日本企業の活動というものをしっかり支援をしていくというふうに申し上げましたが、企業活動が人権に与える影響について、国際的な関心が非常に今高まっているときでございますので、当然、そのことを踏まえた企業支援というものをやっていかなければいけないというふうに思っております。

 政府は、二〇二〇年の十月に、ビジネスと人権に関する行動計画というのを策定をしております。そこにおいては、日本企業の国際的な競争力及び持続可能性の確保、向上、これはもちろんですけれども、国際社会を含む社会全体の人権の保護、促進、SDGsの達成への貢献といった目的などが定められているわけでございます。

 この行動計画では、企業に対して人権デューデリジェンスの導入、促進を期待することを表明しておりまして、企業の意識の啓発、喚起をすべく取組を行ってきているところでございます。

 この結果、例えば、国内外のサプライチェーンにおける人権尊重の取組や、人権デューデリジェンスを促進するための取組が進展していると承知をしておりまして、本年一月に公表された経団連のアンケート調査によると、国連ビジネスと人権に関する指導原則に基づき取組を進めていると回答した企業は七六%になり、二〇二〇年調査の三六%から大幅に増加したと承知をしております。

 引き続いて、政府一丸となって、外務省はもとより、ビジネスにおける人権尊重の取組を重視して進めていきたいと考えております。

竹内(千)委員 ありがとうございます。

 企業の人権保護の観点もしっかりと政府としても進めていきたいということをお聞きして、私もうれしく思っています。

 今大臣が、ビジネスと人権に関する行動計画、二〇二〇年から二〇二五年のものだと思いますが、それを述べられました。これは、国家の人権保護、企業の人権尊重責任、そして人権侵害に対する救済へのアクセスという、元々は国連の指導原則、これを踏まえて作られたものであると思います。

 二〇二〇年に作られて、二〇二五年、今二〇二四年なので、あと一年で終わろうとしているんですけれども、まず、私が内閣府の資料で見たところ、この計画の間に今まで約十回の会議が開かれてきているというふうに認識しているんですけれども、年によっては一回、多いときで四回ということなんですけれども、これはまず間違いないでしょうか。

 いいですかね。間違いがないということで。

斉田政府参考人 お答え申し上げます。

 最新のもので、つい先日、令和六年の十二月の十七日に会合を開かさせていただきましたので、十一回ということになります。

竹内(千)委員 ありがとうございます。

 私、個人的に、今年二回開かれたということではあるんですけれども、中には一回の年もあり、ちょっと全体的に少ないのかなというふうには感じてはいるんですが、でも、十回のこの協議会、これを通じて、大臣として、何か成果であったりとか、そういうものを感じられているものはございますでしょうか。

岩屋国務大臣 現在、検討がまさに進んでいるさなかでございますので、この段階で確たることを申し上げられないのでございますが、これまでの国内外での取組の実情を踏まえた、より実効性のあるものを目指して、ステークホルダーからの関与も得ながら、引き続き、省庁横断的に取り組んで、しっかりした改定を行わなければならないと思っております。

竹内(千)委員 最後の十二月の十一回目はちょっと私は把握をしていなかったんですが、五月の二十二日のときに、この二〇二〇年から二〇二五年の計画が終わって、次の計画に着手するということを了承したというふうにその会議で決まっていたというふうに私は理解しているんですが、そうすると、この五年間でどこが不十分で、その改定作業に当たるということは、どこを改定していこうというような議論があったのではないかと考えるんですが、そのような改善点、改定点というものはございますでしょうか。

岩屋国務大臣 申し訳ありません、今、先ほど申し上げたとおり、五月、先生御指摘のように、関係省庁連絡会議において改定作業に着手することが承認されたということで、そこから今検討作業が始まっておりますので、この段階でこれとこれとこれというふうに明示的に、確定的に申し上げられるものはないというふうに御理解いただければと思います。今、あらゆる分野について検証を行っているということだと思います。

竹内(千)委員 ありがとうございます。

 その行動計画が作られたその二年後に、二〇二二年に、その政府の国際基準を踏まえた、企業による人権尊重の取組を促進すべきまた別のガイドライン、責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドラインを作成したというふうに理解をしているんですけれども。

 このガイドラインは、企業に人権保護とかを義務づける、サプライチェーンに対して義務づけるものではなくて、啓発とか努力義務を与えていくというようなものであるんですが、それができてからこの二年間、この間に、このガイドライン自体がどれぐらい浸透、普及して、これが任意義務を求めるものであるけれども、企業が自ら遵守していく遵守傾向があるとか、あるいはやはりこの点が課題である、不十分であるとか、何かこのガイドラインに関して、もし今の御見解があったらお聞かせをいただきたいです。

斉田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、ガイドラインにつきましては、人権尊重への取組が進んでいない企業の約半数から具体的な取組方法などが分からないという声が寄せられましたことから、ガイドラインの整備ということを進めたものでございます。

 先ほど大臣の方から御答弁申し上げましたとおり、今年の初めになりますけれども、企業の方のアンケートの結果でございますが、これは七六%ということで大分進んでいるということではございます。

 ただ、やはり企業の大きさ、例えばで申し上げますと、やはり大きな企業の方は導入は物すごい進んでいる一方、従業員の多くない企業の方はまだまだ進んでいない面もあるということでございますので、引き続き、そういった面を含めて取り組んでいく必要があろうかと存じております。

竹内(千)委員 ありがとうございます。

 今、先進国では、先ほど大臣もおっしゃられた人権デューデリ、サプライチェーン、直接の企業が雇用している人以外にも、関係するステークホルダーに人権保護を義務づける、そういう動きが広がっていて、EUでも、今年、この人権デューデリの指令が合意に達した、二〇二六年には、加盟国は人権デューデリというのが法律として従わなければいけないという状態になっていくわけです。

 そうすると、そういう先進国、人権デューデリがもう既に法制化された国との取引を行う日本企業も、もしそこが整っていないと取引先とかから外れていくということになるわけなので、企業の国際的な競争力を高める、維持していくためにも、また、元々本来、社会的なそういう影響を与える企業には人権を守る責任があるという、この両方の観点からも、日本においても、先ほどのガイドライン、今任意のものから法制化の方に向けていくべきではないかと私は考えるんですが、大臣の見解をお聞かせいただけたらと思います。

岩屋国務大臣 まずは、これまで行動計画を作って、御指摘があったようにガイドラインも作って、そういう人権に関する意識の普及啓発に努めてきたわけですが、委員御指摘のように、確かにこれを法制化している国もございます。フランスであったりドイツであったり、企業に対して人権デューデリジェンスの実施を義務化している国もございますので、それらの状況もよく踏まえた上で。

 ただ、実際に法制化するとなると、やはりかなりのプレッシャーが企業に対してはかかってくるということもございますし、また逆に、委員御指摘のように、それがないと競争力がやがて減退していくというようなこともあろうかと思いますので、様々な観点から、将来的な法律の策定可能性も含めて、関係各省庁間で政策対応についても検討していきたいと思っております。

 国会においても、是非いろいろ各党各会派の皆さんで御議論いただければというふうに思っております。

竹内(千)委員 ありがとうございます。

 次に、大臣は所信の中で、女性・平和・安全保障、いわゆるWPS、これも引き続き推進してまいりますというふうに述べられていらっしゃるんですが、これは、ジェンダーの視点を踏まえた、そんな活動を通して国民の保護、国際社会の平和と安全に貢献するんだ、そういうことではないかと私は理解をしておりまして、ここでは、ジェンダー、特に女性の権利保護という視点からちょっとお伺いをしたいと思っています。

 女性差別撤廃条約は、一九七九年の国連総会で採択されて、八一年に発効して、日本は八五年に締結をしています。女性差別撤廃委員会はこの条約の履行を監視するために設置された委員会で、女性差別に関する様々な課題についての改善点や提案の勧告を行っています。

 今年の十月の二十九日に、女性差別撤廃条約の実施状況に関する第九回日本政府報告書に対して、委員会が総括所見を発表しました。この委員会は日本政府報告書に関して、例えば選択議定書の批准であったり選択的夫婦別姓の導入など、数々の勧告を行っているんですが、これらは今回初めて出てきたというものではなくて、過去ももう何回も出されているけれども、それが改善されないというものが多く含まれているわけなんですが、大臣はこの委員会からの勧告自体をどのように受け止められているか、見解をお聞かせをいただきたいと思います。

岩屋国務大臣 御指摘のとおり、十月十七日、ジュネーブで開催された女子差別撤廃委員会におきまして、我が国の女子差別撤廃条約の実施状況に対する審査が行われました。

 審査におきましては、第九回報告以降の各分野の履行状況について、関係省庁から構成される政府代表団から適切に説明するとともに、委員からの質問に対して誠意を持って回答し、理解が得られるように努めたところでございます。

 これを受けて、十月二十九日、委員会から、我が国の女子差別撤廃条約の実施状況に関する第九回政府報告審査を受けた最終見解が公表されたところでございます。私どもとしては、まずは、この勧告の内容を十分に検討して、必要に応じて適切に対応してまいりたいというふうに思っております。

竹内(千)委員 ありがとうございます。

 私は、先ほど、弁護士を十五年やっていたと言ったんですけれども、弁護士になったその翌年にアメリカに留学していたときに、ニューヨークで国連女性の地位委員会というものの年次大会があって、NGOとして参加していた日弁連のメンバーに同行させてもらって傍聴させていただいたことがあるんですね。本当に多くの、特にやはり女性が多いんですけれども、世界各国から集まって、それぞれ、ジェンダーに関する課題を一生懸命訴えている姿を目の当たりにしました。

 今私が述べたのは女性の地位委員会で、今回の委員会とは別のものではあります。ただ、同じ、女性の差別改善、国際組織というのはいろいろな似ている面があると思うんですが。

 また、つい先日、十二月の三日に、先ほど大臣が述べられた女性差別撤廃委員会の日本報告審議をジュネーブで傍聴されたNGOの方々が参議院議員会館にたくさん集まられて、その報告集会を行っていて、私もそれに参加をしたんですけれども、日本から百を超える方たちが、いろいろな団体が実際にジュネーブまで行って、その状況を訴えているんですね。まずはこの状況を、思いが多い方たちがこれだけいるんだということ。

 先ほど、勧告に関して内容を検討してとおっしゃられたんですけれども、条約を日本は締結をしている、選択議定書は批准していないですけれども、やはり締約国として勧告を受けていることを、私は、もうちょっと真摯に、何度も何度も、また今回もまた今回もというのではなく、もっと真摯に受け止めて、やはり国内法において履行していく努力をしなければならないんじゃないかと思うんですが、大臣はいかが思われますでしょうか。

岩屋国務大臣 もちろん、勧告については真摯に受け止める必要があると思うんですけれども、一々は申し上げませんが、中には法改正が必要になってくるものもありますし、その中には既に国会の中でも議論をされている問題もございますし。すぐさま勧告どおりのことを実現できるか、あるいはすべきかということについては、やはり慎重な検討が必要なんだろうというふうに思います。

 まずは、しっかりと真摯に勧告を受け止めた上で、これをいかに、女性の人権の擁護、向上のためにどういう方策が必要かということについて、やはりしっかり政府の中でも検討を進めてまいりたいというふうに思っております。

竹内(千)委員 ありがとうございます。

 今大臣は、中には法改正が必要なものもあるからとおっしゃられたんですけれども、これは当然、法改正が必要であっても、それが女性のいろいろな差別につながっているのであれば変えなきゃいけないというものが勧告だと、まず私は思っています。

 特にその重要性が高く、早急な対応を必要とする項目四つが挙げられて、その中に、今国内でもその改正の機運がちょっと高まっているとも言える選択的夫婦別姓の実現があります。これは四回目の勧告で、また、実施状況を二年以内に書面で提出するようにと特に今回求められているんですが。

 まず、ここで確認なんですけれども、この選択的夫婦別姓に関してですが、婚姻をした後に、夫婦いずれかの氏を必ず選んで名のらなければいけないという国が日本以外にどれぐらいあるのかというのをちょっとまず確認をさせてください。

内野政府参考人 お答え申し上げます。

 夫婦の氏に関する制度は国によって様々でございますが、平成二十二年に法務省が行った調査によりますれば、まず、夫婦同氏と別氏の選択を認めている国としては、英国、ドイツ、米国、これはニューヨーク州の例でございます、ロシアなどがございます。また、夫婦別氏、これを原則とする国といたしましては、カナダ、これはケベック州の例でございます、韓国、中国、フランスなどがあり、婚姻の際に夫の氏は変わらず、妻が結合氏となる国といたしましては、イタリア、トルコなどがあると承知しております。

 これに対しまして、法務省が把握しているところではということですが、現在、婚姻後に夫婦のいずれかの氏を選択しなければならないという夫婦同氏制、これを採用している国は我が国以外には承知しておらないということでございます。

竹内(千)委員 ありがとうございます。

 選択的夫婦別姓制を取っていない、夫婦どちらかの姓を名のらなきゃいけないのが、今、日本だけという、この現状ですよね。

 この現状を踏まえて、そして、女性差別撤廃委員会から、日本も批准をしている、条約を批准しているこの委員会から再三勧告を受けている。これを踏まえて、選択的夫婦別姓の実現について、大臣の御見解をお伺いをしたいと思います。

岩屋国務大臣 選択的夫婦別姓、別氏制度の導入については、国民の間に様々な意見があり、政府としては、国民各層の意見や国会における議論の動向を踏まえて検討していく必要があるということを申し上げているわけでございますが。

 先ほどから紹介していただいているように、様々なこの委員会からの累次にわたる勧告もありますし、各党各会派の中でもこの問題に対する議論が、従来に比べればかなり進んできているというふうに思います。さらに、国会においてもしっかり各党各会派の意見を交わしていただきたいと思いますし、私も、政治家個人としては、この問題に関心を持って取り組んできたところでございます。

 今は政府の立場ですから、国民各層の意見や国会における議論の動向を踏まえて検討していくとしか申し上げられませんけれども、是非この議論が更に進展していくことを私としては期待をしたいと思っております。

竹内(千)委員 ありがとうございます。

 今、国民の間で様々な意見があるという、政府が繰り返し述べられていること、これは言うまでもないんですけれども、どんなものも、今推し進められようとしているマイナ保険証とかだって、一体化とかだって、いろいろな意見がある、むしろ少数派のものが通ろうとしているわけで、この選択的夫婦別姓のときだけ国民の意見が分かれているということはどうなのかと。

 やはり婚姻後も自分の氏を名のりたいという、自分のその氏がアイデンティティーとなっている、そんな当事者二人はもう結婚できないというのは、やはり私は大きな人権侵害だと思っています。

 今、大臣は、政治家個人としてはこの点を進めたいと、進めたいというか、関心を持っているというような言い方をしていただいたので、少し、正直うれしく思ったんですけれども、やはり、この件に関しては、もう二十年以上、検討しています、現在調整中です、議論を重ねていますというようなことをずっと内閣総理大臣が言い続けてきて、大臣だけじゃないですけれども。それを、ずっとどきどきしながら、もう認めてくれるんじゃないかと思いながら、そして、海外まで救いを求めていく女性たちがこの国にはたくさんいるということ。

 だから、やはり政治家が発する言葉の重みをもうちょっと私たち政治家は考えなきゃ、私も含めてこれから考えていきたいなと思っていますので。できましたら、やはり条約締結国である外務大臣という立場から、政府の方に、石破総理とかほかの国務大臣にも働きかけをしていただけたらなと私は思っています。

 次のテーマに移らせていただきます。

 大臣は、所信表明の中で、核兵器のない世界の実現ということも言及をされています。

 先ほど武正委員の方からも核兵器禁止条約の話は出ましたが、改めて、日本は世界で唯一の被爆国であります。そして、この間、つい先日、日本の被団協がノーベル平和賞を受賞したというような状況で、来年の三月に第三回の締約国会議がやってくるというところで、やはりこの三月までに結論を出すべきじゃないかという声は多く聞かれ、また、私もそのように思っております。

 大臣が、十二月十日の大臣の会見記録の中で、ちょっと読み上げさせていただくと、仮にオブザーバーとして参加する前に、どういう立ち居振る舞い、言動というものがあり得るのかを含めて、今子細に検討してみているところであるというふうに述べられています。また同時に、核の傘の下にありながら、参加している、発言もしているドイツなどの例もあるので、何が現実的で、何が実践的で、何が効果的かということをしっかり検証していきたいというふうにおっしゃられているので。

 今どう思われますかと聞いても、ちょっと十二月十日のあれなんですが、この検証していきますという言葉を、ほかの大臣たちとかが使っているような、その場しのぎというか、そこを、軽い言葉ではなく、本当にしっかりと検証をして、どこかでちゃんと答えを出して発言するというようなことを行ってほしいと思っております。

 今の、何が実践的で、何が効果的で、何が現実的かというところを、今の段階で構わないので、少し具体的に、そういう何かイメージがあったら、それを教えていただけたらと思います。

岩屋国務大臣 核禁条約というのは、最終的に核をなくすということですから、唯一の被爆国である我が国としては、最後の到達点として目指していくべき方向であるというふうに思っております。

 しかしながら、もう長くは申し上げませんが、現実には、核兵器というものが今なお世界に数千発もあって、いや、もっとか、いずれにしても、我が国はその核兵器国に取り囲まれており、むしろ核能力は増強されつつあるという状況の中にございます。しかも、核を使用するということを公然と言い出す、そのことを威嚇に使っている国も出てきているような中にあって、やはり国民の生命財産を守り抜くという責任を有している政府としては、核抑止ということを今放棄するわけにはいかないというのが我が国の置かれた状況であると思います。

 そういう前提に立ったときに、果たして核禁条約のオブザーバー参加をして、どういう我が国の立ち居振る舞いがあり得るのか、そのことが本当に核を廃絶していくということに効果的につながっていくのかということは、子細に検討した上で判断しなければいけないと思っているんですね。

 我が国は、ドイツとかノルウェーとか、オブザーバー参加している国もありますが、それらの国と決定的に違うのは、やはり唯一の被爆国ということだと思います。その立場にある我が国が何を述べることが適切か、また不適切なのかということはやはり子細に検討しなければ、ただ参加をしてみせればいいということではなかろうというふうに思っておりますので、そのことを今子細に検証し、また検討をしているところでございます。

竹内(千)委員 ありがとうございます。

 今、大臣の、唯一の被爆国というところが大きいというそのお言葉は、ありがたく重く受け止めます。

 今、ただ、多くの国民、そして野党のほとんど、そしてまた与党公明党も、このオブザーバー参加については賛成の立場に立っていると私は理解しているんですけれども。ですので、是非大臣のリーダーシップで進めていく方向に行っていただけたらと思います。

 最後に、近隣諸国との関係について伺いたいと思います。

 同じく所信表明の中でも述べられていましたが、グローバル化が進む中で、やはり日米同盟を基軸としながらも、日本を取り巻く、今いろいろな国々と対話外交を進めていくということはとても重要な外交の課題だと考えます。

 特に、隣国である中国との外交チャンネルを粘り強く模索して、両国の国益の最大化というのを図るということは大事だと思います。報道とかでは、外務大臣が年内に訪中して、中国の要人とも会談が行われるというようなお話もちょっと聞いていたんですけれども、これは分かりませんが。

 その際にも、先ほどもちょっと出ていました日本産の水産物の輸入再開の早期実現など、両国が抱える懸案事項も議論されると思うんです。一方で、戦略的互恵関係、これを発展させていくという議論も、水産物に関しては具体的にいつになるか分からないというお話は先ほどされていましたけれども、そういう懸案事項と同時に、戦略的互恵関係についてお話をされていくのだろうと思うんですが。

 その中で、このテーマも先ほど議論には上がっていましたが、今、中国で治安が大変、いろいろな事件が起きている。

 先般十一月に、中国での短期滞在、この査証の免除措置が再開されたということで、これから邦人もすごく中国へ行きやすくなって、両国民の交流も取りやすくなるだろうと思う。その中で、日本人とか、日本人だけじゃない、アメリカ人とか、外国人がターゲットとなる多数の事件が起きています。シンセンの中国人の、学校のそれだけでもなく、また、学校だけじゃなく、日本料理店が並ぶ通りであったりとかということが行われています。

 先ほど、日本人学校に対して予算措置がつけられて、いろいろ邦人保護を準備されているというお話もあったんですが、不動産不況とかもあって、中国全体が治安が悪化してくるとなると、学校に限定されず、邦人保護というものが広く求められるのではないかと思うんですが、その点について、どのようにこれから邦人を保護していこう、守っていこうと思われているか、見解をお聞かせをいただけるとありがたいです。

岩屋国務大臣 中国との間には、委員御指摘のように、様々な問題がある、解決をしなければいけない問題があるわけですが、石破総理も、李強首相とも、習近平主席とも首脳会談を行って、日中は戦略的互恵関係を包括的に発展させていこう、そして、建設的、安定的な二国間関係にしていこうということを申し合わせて、確認をして、様々なレベルのやり取りをしていこうとしておりますので、私も、事情が許せばできるだけ早く訪中をしたいと思っているところでございます。

 二国間のそういう関係を築くためには、やはり国民同士の交流が土台になりますので、委員御指摘の、さきの中国による査証免除措置の再開は非常に朗報だったと思っております。これで両国民の行き来が活発化していくことを期待したいと思いますが、その大前提はやはり邦人の安全確保でございますので、政府としては、中国側に対して、日本人学校の警備強化はもちろんですけれども、在留邦人の安全の確保をあらゆるレベルで求めてきているところでございます。

 今後とも、外務省として、在留邦人の安全確保に万全を期していきたいと思います。最近はいわゆる無差別殺人みたいなことも頻発しているやに聞いておりますので、邦人の安全確保には引き続き万全を期していきたいと思っております。

竹内(千)委員 ありがとうございます。

 国際社会からの信頼が得られる、人権にも重きを置いた対話と協調の外交を進めていただけたらと思っています。

 今日はありがとうございました。

堀内委員長 次に、太栄志君。

太委員 太栄志でございます。

 二年ぶりに外務委員会に戻ってまいりまして、本日は岩屋大臣と初めて質疑をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 先ほど来も本当に議論のあるとおり、今、本当に世界が激変しております。そういった中で、大臣始め外務省の皆さん、また防衛省の皆さんが、我が国の外交また安全保障を担っていただいておりますことに、まず冒頭、心からの敬意と感謝を申し上げます。

 そして、私、先日、アメリカを訪問してまいりました。ワシントンを訪問してまいりました。まさに今、世界が変わる状況。そういった中で、トランプ大統領が誕生直後の、当選直後のアメリカに行ってまいりました。

 改めて、いろいろな課題を解決していく上で、今、日本に対する期待が大変高まっている、そのことを痛感しましたし、だからこそ、我が国が、どう、より主体的に、また、より能動的に、世界に対して、また国際社会に対して働きかけていくのか、その重要性を本当に今痛感して帰ってきたところでありますので、そういった視点から、本日、大臣と議論をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まずは、隣国中国に関してお伺いいたします。

 我が国の最大の貿易相手国ですが、アメリカに行って改めて思いました。政治の分断が今アメリカで一番課題でありますが、アメリカ政治の中で、与野党、超党派的な合意ができているのが、まさに中国に対する脅威というか、中国に対する強硬論というのが唯一合意ができているという中で、一方で、大変感情的に中国に対して向き合っているのを見てきまして、私は、もちろん同盟国としてのアメリカは大事ではありますけれども、そこは日本は引きずられちゃいけない、しっかりと我が国のスタンスを持って中国と向き合っていかなきゃいけないというふうに思っている次第であります。

 そういった視点から、先ほど竹内委員からもありました、まず、中国における邦人確保、それをどう進めていくのか。また、中国との間で今気をつけなきゃいけないのは、まさに不測の、お互いが意識しない中での軍事衝突が起きること、それをどう防いでいくのか。そして、もう一つは、どう中国と共存していくのか。その戦略をしっかりと私たちが、日本が主導していかなきゃいけないというふうに思っている次第であります。

 そういった視点から、まず最初に大臣にお伺いしたいのが、ホームページを見て私は驚きました。外務省はホームページで、中国に対する海外危険情報、我が国は、今レベルゼロですね。この状況に関して、まず、どういった基準でこのレベルを決めていったのか、そして、なぜこれが今ゼロなのか、その点、教えてください。

岩屋国務大臣 御指摘の危険情報は、渡航、滞在に当たり特に注意が必要と考えられる国、地域に関して、日本国民の生命及び身体に対する脅威を考慮しつつ、中長期的な観点から、その国、地域の治安情勢を始めとする政治情勢、社会情勢等を総合的に判断し、それぞれの国、地域に応じた安全対策の目安をお知らせするものでございます。

 これは、渡航、滞在する邦人の保護というのは政府の最も重要な責務の一つでありますので、中国における渡航、滞在中の邦人に対しても適宜適切に危険情報を含めた情報発信、注意喚起をこれまでも行ってまいりましたし、これからもしっかり行うことによって、在留邦人の安全確保に努めてまいりたいと思っております。

太委員 大臣、もちろん今趣旨は分かりましたし、先ほど来、邦人保護のために予算措置も含めて相当進めている、意識を持っていらっしゃるということは分かったんですが、これは予算は要らないことですよね。この警戒レベルゼロ、この理由をもう一度御説明いただけますか。なぜか。お願いします。

岩屋国務大臣 この段階では、危険情報のレベルとしてはそのように判断をしているからでございます。

太委員 どの段階でしょうか、教えていただけますか。どの段階で。この段階とおっしゃいましたが、いつの判断ですか。

岩屋国務大臣 現状について、そのように判断をしているということでございます。

太委員 事前にこれは通告もしています。これは大事なポイントなんですよ。これはいつ決めたんですか。今年の春の時点ですか、それともいつでしょうか。お願いします。

岩本政府参考人 この危険情報でございますが、これは中国に限らず全ての国について、その時々の状況を踏まえて、レベル自体については上げるか下げるか判断をしてきておりますので、中国については、今大臣から答弁がございましたとおり、現時点において今の状況を維持している、そういう形になります。

太委員 昨日、質問取りのときに外務省の方と議論をさせていただきまして、まさに毎日状況を見守っているとおっしゃっていたんですよ。まず、私もそういったことなんだなと思って、ホームページを見させていただきました。本日、現在有効ですということでそれぞれの情報が流れていると思っていますので、そういった意味で日々見直しを進めながら進めているんだなというふうに認識をしているんですが、この外務委員会でもさんざん松原先生がこの問題を取り上げてきたと思っているんです。

 それから、この夏に本当に痛ましい事件も起こっていますね。蘇州の日本人学校のスクールバスが襲われる、お母さんとお子さんが襲われてしまう、そういった問題だったりとか、また、九月にもありました。シンセンで日本人学校に登校中の十歳の男の子が亡くなってしまった、こんな痛ましい事件も起こっているということがありました。

 ですから、私は、いまだにこのレベルゼロというのは相当問題だと思います。ちょっと大臣、この点に関して大臣の御認識を教えていただけますか。様々な事件が起きています。邦人の殺害事件も起きています。

岩屋国務大臣 確かに、蘇州、シンセンで痛ましい事件が起こったことは事実でございます。

 それがゆえに、邦人の安全確保については万全を期していかなければいけないと思っているところでございますが、例えば、ウクライナであったりガザであったり、戦闘が起こっている、テロ組織が武器を使用した騒乱状態が発生している等々の事象に比べれば、誠に残念な痛ましいことではありましたけれども、中国全土に対する危険情報レベルを引き上げるべき状況にあるかどうかという判断からすると、現状の判断になっているというふうに御理解をいただければと思います。

太委員 大臣、中国に対して過度に配慮し過ぎているんじゃないかと私は正直に思っております。

 というのも、じゃ、日本以外の国はどうなのか。調べてみたら、日本以外の隣国の、まさに環太平洋の主要国の状況を御存じですか、大臣。ちょっと教えてください。日本以外の環太平洋地域の主要国、前日に通告しています。お願いします。

岩本政府参考人 各国も日本と同様の危険情報的なものを出しておりますが、ただ、ちょっとまず大前提として、それぞれ少しずつやり方は違いますので、単純に比較することは難しいということは御理解をいただきたいと思います。

 その上で、主な国について御説明をいたしますと、アメリカが現在、日本の危険情報のレベルで申し上げますと、レベルの1相当。そして、イギリスはゼロ相当ですね。豪州がレベル1相当。カナダもレベル1相当。一方で、フランスは一部を除いて、新疆ウイグル自治区は1になっておりますが、そのほかはゼロという形になっているということでございます。

太委員 環太平洋地域、まさに御指摘いただいたとおりで、アメリカ等を含めて、台湾、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国も含めてレベル1以上ですよね。もちろん、それぞれの国でこの基準というのは違ってくると思っていますが、しっかりと国民に対して注意喚起をして、それで警戒レベルを示しています。それをしていないのが我が国なんですよ。

 大臣、これは私、相当深刻な問題だと思っておりまして、いろいろな形で外務省の皆さんが対応しているというのは重々承知しています。メールとか、またスポット情報ということで注意喚起をしていますよね。特にこのシンセンの事故が起こった後もなさっています。ですけれども、おかしなのは、注意喚起をしながら、なぜこの渡航レベルをしっかりと上げないのか。これはやはりおかしいですよ。

 大臣、邦人の命も失われてしまっています。そういった意味で、予算措置、これは要らないです。私は、これは早急に、遅過ぎると思っていますので、まず中国に対してはやはり毅然と冷静に対処していく。これは冷静に今の状況を見たら、先ほど竹内議員からもありました、やはりこの経済不況が続く中、治安が相当悪化しているというのは、これは誰の目にも明らかですね。そういった中で、この状況はないと思っているんです。

 大臣、最後に、この点に関してもう一度御発言をお願いいたします。何とかしてほしいです、まずは。

岩屋国務大臣 毅然とか冷静とかいう次元の話ではないと思いますね。やはり邦人の安全確保、保護の観点から必要と判断されれば、危険情報のレベルを上げることもある、下げることもあるということであって、外交上の配慮で行っていることではございませんので、そのように御理解をいただきたいと思います。

太委員 ほかの国と比較してもやはりおかしいですし、冷静に、邦人を守るという、しっかりと政府として最低限これは私はやるべきことだと思っていますので、引き続き、どうか不断に御検討いただきたい。お願いします。

 次に行きます。

 次に、先ほど言いました、中国とやはりしっかりと向き合いながらも、今一番気をつけなきゃいけないのは、お互い意図しない形で不測の事態の軍事衝突を生み出さないことだと思っておりますので、そういった視点からお伺いします。

 今年の八月に、中国軍機による長崎県の男女群島沖で領空侵犯がありました。日本と中国は昨年から空と海の防衛当局同士のホットラインがスタートしているんですが、それでは、この領空侵犯に対して、しっかりと日中の間で、この問題、ホットラインは活用されたのかどうか、その点に関して教えてください。これは防衛省の方になりますかね。御担当の方、副大臣、どうかお願いします。

本田副大臣 御質問にお答えいたします。

 御指摘のホットラインにつきましては、昨年五月にその運用を開始して以降、円滑に意思疎通を行える状態を確保してきております。本年十一月に行われた日中防衛相会談においても、引き続きホットラインを適切かつ確実に運用していくことを確認をしたところでございます。

 その上で、個別の事案におけるホットラインの使用状況につきましては、相手国との関係もあり、円滑な意思疎通をしっかりと確保していく、こういった観点からもお答えをしてきていないということを御理解いただければ幸いでございます。

 同時に、委員御指摘のとおりでございまして、日中間において不測の衝突を回避すること、また、そのために日中防衛当局間において適時の意思疎通を確保していくことは極めて重要だと考えておりまして、かかる観点からも、ホットラインの適切かつ確実な運用を中国側との間でしっかり今後も確保していく所存でございます。

太委員 どうもありがとうございます。

 もちろん、個別の案件に対して、御報告はなかなか難しいんじゃないかというふうには思っておりました。

 そういった中なんですが、一方で、今回、防衛省さん、また外務省さんのこの中国機の領空侵犯があった後の動きを見ている中でも、あれは実際、ホットラインでいろいろな意思疎通が中国側とできていたのかなと少し疑問に思っているところだったんですよ。

 実際、これはメディアの報道もありました。ホットラインは、昨年五月に、昨年確かにこれは運用を開始しましたが、それ以降、実態が形骸化しているんじゃないか、機能していないんじゃないかという指摘が、これは産経新聞の今年の九月四日の記事で指摘されているんですが、政府筋の話だということなんですが、これはどういうふうに御認識されているか、副大臣、お願いします。

本田副大臣 お答えいたします。

 機能していないのではないかという御指摘でございますが、その機能していないということの意味するところは定かではございませんけれども、政府といたしましては、先ほど申し上げたとおり、そのホットラインの使用状況については、相手国との関係等もあり、詳細に内容を述べてはおりませんが、今後とも確実な運用を、中国側との間でしっかりと運用していくということに変わりはございませんので、御理解をいただければと思います。

太委員 この点で、もう一点指摘させてください。

 まさにこのホットラインが機能していないんじゃないかという話の中で、事態発生から対話開始まで、四十八時間の待機規定があるんじゃないかということが指摘されてきました。最大四十八時間の待機時間を認める、そういった規定が中国側から、これは二〇一八年の運用開始以前の段階で日本側に申出があったというふうに言われていますが、この点に関しては実際にあったんでしょうか。教えてください。防衛省の方、お願いします。副大臣、お願いします。

本田副大臣 お答えいたします。

 日中ホットラインにつきましては、中国側との間で、その技術的詳細等を定めた覚書を二〇一八年に作成しており、これに基づきこれまで運用してきております。

 この覚書の中身につきましては、四十八時間ルールということでございますけれども、相手国との関係もあり、円滑な運用、意思疎通を確保していく、こういう観点から、これまでも日中双方で非公表としてきております。ただ、中国側との間では、緊急の状況を含め、円滑に意思疎通を行える状態、これは確保してきております。

 日中間において不測の衝突を回避すること、また、そのために日中防衛当局間において適時の意思疎通を確保していくことは、委員御指摘のとおり極めて重要な事項でございますので、かかる観点からも、ホットラインの適切かつ確実な運用を中国側との間でもしっかり確保していく所存でございます。

太委員 どうもありがとうございます。

 これは大変重要な問題だと思っておりますので、私もこれからもこの点を注視していきたいと思っておりますので、日中のこのホットライン、これは生命線になるんじゃないかと思っておりますので、是非とも問題があれば改善していただきたいと思っています。

 あと、外務大臣にも、これは管轄外かもしれないんですが、是非とも大臣にも後押しをしていただきながら、もちろん正規のルートはあると思いますが、ここも後押しをしていただくということも含めて、御見解をお聞かせください。

岩屋国務大臣 先ほどの領空侵犯などの事案の場合は、当然のことながら、防衛省・自衛隊において一番早く感知し得ることでございますけれども、外務省としては、その報を受けた上で、しかるべく対処をしていかなければいけないというふうに思っております。

 防衛省とこれからもしっかり連携して、日中の不測の事態のときの対応方について、しっかりと対策を取っていきたいと思っております。

太委員 大臣、ありがとうございました。

 それでは、次に移ります。次は、TPP。

 中国が、三年前にTPPに加盟申請してきました。台湾も、同じタイミングで加盟申請してきました。私はやはり、ここはしっかりとアメリカにももう一回戻ってきてもらう、そういったことを目指しながら、台湾の加盟も、これはしっかりと後押しを我が国はしていかなきゃいけないということだと思っておりますが、それと同時に、これから我が国としてトランプ政権にしっかりと向き合っていく上でも、中国が加盟申請をしている今のCPTPP、これはうまく活用していくべきじゃないかというふうにも思っております。

 というのも、やはり中国に対しては毅然と対処していくことも大事でありますが、我が国とアメリカは、もちろん安全保障分野ではほぼ利益が一致すると思いますが、経済分野ではなかなかそうもいかないです。そういった中で、どう我が国として独自性を見出していけるか、そこを冷静に対処していきたいというふうに思っています。

 まず、お伺いします。大臣も行っていたんでしょうか、ペルーとブラジルでAPECとG20がありました。そこで中国がTPPに対する働きかけを大分していたんじゃないかということが報道されていますが、この点に関して、どのように我が国として、外務省として把握しているのか、まず教えてください。

岩屋国務大臣 中国やCPTPP締約国等との間では平素から様々なやり取りを行ってきておりますが、その逐一については、外交上のやり取りであり、控えさせていただきたいと思いますけれども、このCPTPPは、委員御承知のとおり、非常に高いレベルの自由貿易の枠組みでございまして、幅広い分野をカバーした高い水準の新たな共通ルールを維持し、世界に広めていく意義を有していると思います。

 したがって、新規加入に当たりましては、加入要請をするエコノミーがそのような意義を共に実現するパートナーとしてふさわしいかどうかが重要になりますとともに、新規加入対応に係るオークランド三原則、協定の高い水準を満たす用意があるか、貿易に関するコミットメントを遵守する行動を示してきているか、TPP締約国のコンセンサスがあるか、ここに照らして判断をしていくということになります。

 中国の動向については、高い関心を持って注視していきたいと思っているところでございます。

太委員 ありがとうございました。

 外務省として把握されていないでしょうか、どなたか、もし。昨日、幾つか教えていただいたと思います。これは大事な動きだと思っておりまして、可能な範囲で、無理なら無理で構わないんですが、教えていただけますか。

片平政府参考人 今大臣からも御答弁いたしましたとおり、中国の動向については高い関心を持って注視しているところでございますが、第三国間のやり取りについてお答えすることは差し控えさせていただきたいと思っております。

太委員 今、相当局面が変わってきたというふうに思っています。まず、TPPに対して、今大臣からありましたように、万が一中国が加盟するのであれば、それはTPPの高いスタンダードをしっかりとクリアしてもらう。特に国営企業の問題とか、あるいは知的財産権の問題とか、これは、相当今、中国では厳しい条件だと思っています。

 ですけれども、中国の改革派の中には、何とか今の経済を変えていくためにも、TPP加盟ということを考えている人たちというのはいますので、そこをしっかりと見据えながら、しっかりと改革した中国と、我々は受けるという、これが大前提です。

 ですけれども、今局面が変わったというのは、まさに今、中国はまたしゃかりきになってというか躍起になって、特にトランプが次になると、多国間のこういった枠組み、貿易協定に後ろ向きなトランプだからこそ、今、中国が様々、幾つかの国に対しても、中国は公表しているということですよね、ペルーとか、あるいは幾つかの国が後押しをしてくれる、そういったことも発表している中で、やはり我々日本としては、ここは冷静に対処していかなきゃいけないと思っております。

 これも答えられる範囲で。我が国に対してこれまでどういった働きかけがあったのか。今回のブラジル、ペルーにおいても、あるいはこれまでも含めて、そこを教えてください。中国からですね。

岩屋国務大臣 これも外交上のやり取りの一つでございますので、それを明らかにすることは控えさせていただきたいと思います。

 TPPは、委員御案内のとおり、英国も加入して拡大をしつつございます。コスタリカという話も出てきております。でも、決して、閉鎖的、排他的な枠組みではなくて、先ほど申し上げた要件というものをしっかり満たすということが大前提になりますし、締約国各国の賛同が必要だということでございますので、あくまでも、そういう基準に照らして判断をしていかなければいけないと思っているところでございます。

太委員 我々はしっかりと中国に対して、TPPで日本の国がしっかりと主導権を持ちながら、TPPを運営しながらも、中国に対して歯止めをやはりかけなきゃいけないというふうに思っております。

 そういった意味で、このTPPのルールの中で、今、加盟国が、一旦加盟した国、もちろんハードルは高いですよ、全加盟国からの承認が必要ですので。ですけれども、加盟した国が、加入後にTPPの高いスタンダードを守らなかった場合というのは、TPPを脱退してもらう、そういったことというのはできるんですか。もちろん自主的に、アメリカはそうでしたね、自主的に脱退するということはあると思うんですが、そうじゃないケース。そこはどういうふうに外務省として認識されているか、教えてください。脱退させるかどうかですね。

岩屋国務大臣 脱退に関しては、CPTPPでは第四条におきまして、締約国が所定の手続によって協定から脱退することができる旨定めておりますが、御指摘のような、締約国を脱退させることができる旨の規定は含まれておりません。

 したがって、一般論として申し上げますと、CPTPPの義務違反があるというような場合には、CPTPPに規定される紛争解決手続等によって対処されるというふうに承知をしております。

太委員 どうもありがとうございました。

 いずれにしろ、フェーズが変わりました。そういった中で、我が国としてしっかりと、これまでのように、このTPPを主導していただきたいと思っていますし、まさにトランプだからこそ、どう多国間での、アメリカ抜きです、その枠組みをこれからも活用していくのか。

 CPTPPに関しては、東大の鈴木一人先生も言っていますが、アメリカは珍しく、日本主導の国際的なこの枠組みに介入してこなかった。そういった意味で、これはまだまだ活用すべきだと思っていますので、そこを是非とも外務大臣のリーダーシップで進めていただきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

 次に、具体的に日米関係に関してお伺いします。

 大臣は、先週の所信表明の中でも、日米同盟をより深めるということをおっしゃっていますが、具体的にどういうふうに深めていかれるお考えがあるのか教えてください。

岩屋国務大臣 これから、特に米国においては政権が移り変わるわけでございますので、早期に米国新政権とも、今までどおり、あるいは今まで以上に信頼関係を強固なものにし、日米同盟による対処力、抑止力というものを充実強化するとともに、経済安全保障の分野でありますとか様々な分野において、この日米同盟が我々が目指すFOIP、自由で開かれたインド太平洋の公共財としての多岐にわたる分野で働きができるように、役割を果たすことができるように、そういう関係をこれからも維持発展させていきたいと思っております。

太委員 どうもありがとうございます。

 今大臣がおっしゃったことを推進していく上で、日米の対処力であったり抑止力を高めていきたいということをおっしゃっていました、具体的に。

 私は、そのためには、まさに今こそ、日米のガイドライン、防衛協力のための指針、これは二〇一五年に改定されました。それ以来、今九年目ですか、改定されていません。ガイドラインこそ改定すべきだと思うんですが、大臣、この点どうでしょうか、御見解をお聞かせください。

岩屋国務大臣 委員御指摘の日米ガイドラインですが、これは、言うまでもなく、日米同盟に関連する諸情勢に変化が生じて必要と認められる場合に、日米両政府が適時適切な形で見直しを行うものとされております。そして、日米同盟の抑止力と対処力を強化するとした国家安全保障戦略などを踏まえて、現在、今後の防衛協力の在り方、あるいは日米の役割、任務、能力を含めて、幅広く日米間で議論を行っているところでございます。

 したがって、政府として、直ちに日米ガイドラインを見直すことを考えているわけではございませんが、今述べたような日米間の議論も踏まえながら、その見直しの必要性については不断に検討していく必要があると思っているところでございます。

太委員 大臣、先ほど来お話ししているとおり、今、国際情勢は大変変わってきました。アメリカとの関係も、実はこれは変えていかなきゃいけない段階に来ています。しかも、大臣、今おっしゃったように、三年前に防衛関連の三文書も改定しました。まさに、このタイミングでこそ、私は、ガイドラインを変えていかなきゃいけないというふうに思っています。

 まず、先ほどからおっしゃっている自衛隊と米軍との関係を具体的に、三文書改定で大分変わりましたので、我が国の防衛政策が変わったのは事実です。そういった中で、自衛隊と米軍との関係をもう一度、その役割と任務と、そして能力を再定義していく新たな段階に入っていますので、まず、そこをしていかなきゃいけない。

 そして、国民に対しても、私、ずっと言っていますが、残念ながら、三文書を改定した後、防衛政策を大きく転換しましたけれども、いまだに国会で十分な審議がされていないですよね。そこも、私、問題があると思っています。そういった意味で、ガイドラインを策定していく、アメリカとの協議をしていく中で、しっかりと国民にも、どういうふうに我が国の防衛政策が変わっていったのかをオープンな場所で示していく、それも大事。

 一番大事なのは、やはり抑止力を高める、日米がしっかり連携してやっていくということを指針として落とし込んだということを、周辺国にもしっかりと認知していただけることにつながりますので、そういった意味でも変えていかなきゃ駄目な段階と思っています。

 御党の今の政調会長ですか、小野寺先生も、三文書改定直後に言っていますよ、ガイドラインを早急に見直した方がいいと。これは早急にやってほしいです、大臣。そのことこそが、トランプ第二次政権下のアメリカと我が国がしっかりとこの地域で同盟を深化させる、そのことにつながると思います。是非とも大臣、これを進めていただきたいと思っています。

 じゃ、次に行きたいと思います。

 あと、韓国ですね、韓国との関係。

 先ほど中曽根先生の冒頭のお話もありましたように、これまでにない関係だったと思っていますし、ですが、一方で、それは、尹大統領の強いリーダーシップ、そこに日本がおんぶにだっこな状態だったというふうに思っております。そういった意味で、その尹大統領が今職務停止になっている段階で、これからどういった形で韓国との関係をやっていくのか。

 やはり改めて私はアメリカに行って思ったのは、日本だけでトランプ政権に対処していくのでなく、どう仲間と一緒に、それは同志国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、そういった国と一緒になってアメリカに対する働きかけをしなきゃいけないと思っていますし、関税の問題も駐留米軍の負担の問題も含めて、それぞれの国に共通する課題ですので、やっていかなきゃいけないと思っています。

 具体的に事前にお伝えしていますが、ACSAですね。この問題、韓国とは、我が国政府としては、十年近く前にもう既にやりましょうということを提案していると思うんですが、これはどう進んでいく予定なんでしょうか。もちろん、今の情勢は大変なことだと思いますが、ですけれども、だからこそ今、冒頭でも言いましたが、日本の国がどう能動的に働きかけていくか、能動性です。

 そういった意味で、大臣、今からこそ、いつまでも尹大統領に頼っていてもしようがないです。そういった中で、たとえ、共に民主党、革新系の政権になったとしても、日本のリーダーシップでこれを進めるべきだと思いますが、ACSA、今こそ進めるべきだと思います。どうぞ御見解をお願いします。

岩屋国務大臣 委員おっしゃるように、日韓関係、日米韓の関係というのは、これからも地域にとって極めて重要な関係であるというふうに思います。

 韓国の内政の動向については、予断を持って申し上げることは控えなければいけないと思っておりますけれども、いずれにしても、この日韓関係、日米韓の関係をこれからも維持発展させていくという考え方で私ども臨んでいきたいと思います。

 その一環としての防衛協力の中のACSAということについても、日韓間で実務レベルで協議は行ってきているのですが、締結を前提とした交渉開始にはまだ至っておらないことは御指摘のとおりでございます。今後、できるだけこの協議も前に進めることができるように努力をしてまいりたいというふうに思っております。

太委員 どうもありがとうございます。是非ともこれは進めていただきたく、お願いいたします。

 最後に、これも深刻な、日米関係というのは、私の地元には米軍の基地が二つあります、そういった意味で、基地周辺の住民の犠牲の上に日米関係というのはあっちゃいけない、そういった同盟というのは持続可能じゃないというふうに思っています。

 特に、PFASの問題ですね。これは米軍基地だけじゃないんですよ、いろいろなところにありますけれども、PFASの問題で周辺住民が苦しんでいるのにもかかわらず、その汚染源すら調査、立入検査できない。これは異常な状況ですので、我が国の主権の問題と関わります。

 私は、この問題、もちろん地位協定の問題はありますが、補足協定の中でこれを何とか、日米の環境分野に関する協力ということで進めていくべきだと思っていますし、それは岸田総理も、今年の初めにお伝えして、何とか2プラス2でも意識合わせしてやっていると。先日もやっていますよね、この問題。

 どうか大臣、この問題、やはり外務大臣のリーダーシップでしか進まない問題ですので、この点、後押ししていただけるように、最後に御見解をお願いします。

岩屋国務大臣 政府としてはこれまでも、米国の環境保護庁や米国防省を含めて、様々なレベルでやり取りをしてきております。また、本年七月に行われた日米2プラス2におきましても、このPFASを含む二国間協力の強化について議論をしたところでございます。

 米軍との関係ではこれまでも、もしPFOS等の漏出が起こった場合には、環境補足協定に基づいて、米軍施設・区域内の立入り等を実施をしてきているところでございます。

 今後とも、この日米地位協定、環境補足協定及び関連する諸合意の下に、在日米軍施設・区域内外の環境対策が実効的なものとなるようにしっかり取り組んでまいります。

太委員 大臣、ありがとうございました。

 ですが、一歩も前進していないのがこれは現実ですので、どうか進めていただくようによろしくお願いします。

 以上です。ありがとうございました。

堀内委員長 次に、和田有一朗君。

和田委員 日本維新の会の和田有一朗でございます。

 岩屋大臣に質問していくんですけれども、私、前期、最初から外務委員会におらせていただきまして、最初の林さん、上川さん、三人目の大臣ということになります。同じことを繰り返すことになってくるんですが、その前の太さんと結構ダブっておりまして、それでも言うべき必要なことはお聞きしようと思いますので、聞かせていただきたいと思います。

 最初は軟らかなことから聞こうと思います。予算の関係です。JICAの予算のことを聞こうと思うんです。

 JICAの予算が昨年減りました。これは大変な問題だと思います。やはり我が国が海外に対してプレゼンスを高めていくために、我が国の外交を進めていくためには好感度を上げたり、いろいろな形で必要な作業です。

 そのことにまず先立って、私も実は学生時代から薫陶を受けた方がおられます。末次一郎という人物でございます。末次一郎さんという方は、さんと言うとお叱りを受けますね、先生は鬼籍に入ってもう時間がたつんですけれども、民間外交を進められた方で、そして、民間外交といっても、特に日本の戦後問題を処理をしていく、沖縄復帰をする、そして北方領土の返還をするということに人生を懸けられた方でございました。

 その中に、私は学生時代に薫陶を受けましたし、岩屋大臣も随分と薫陶を受けられましたし、前期、ここに座って随分と厳しい質疑を、私も後で対中問題をやりますけれども、前の大臣に随分聞かれた松原仁代議士もそうですし、今愛媛の知事をやっている中村時広さんもそうですし、皆さん末次先生の薫陶を受けました。

 末次先生は、沖縄返還のときに、民間人として三人、外務省のお手伝いをした方がいる、早稲田の大浜先生、外交官の若泉さん、それから末次先生、この三人で外務省のできないことをやって、沖縄返還をやった、それが終わった後は、モスクワのクレムリンのプリマコフとのカウンターになって、外務省のできない仕事をやられた。さらに、その中で、ほかにやったことが、JICAの創設の、創設まではいきませんが、生みの親になったと言われています。

 実は、この門下生、末次先生の薫陶を受けた人間は門下生と我々は言うんですが、末次先生の銅像が、今、沖縄の那覇のJICAセンターに建っていて、これを掃除に、毎年、一年に一回行く。それが終わったら、後で勉強会をする。

 今年のときに岩屋大臣にメッセージをいただいた。その中に書いておられます。末次先生が生みの親と言われるJICA協力隊について、六十年を来年は迎える、それをしっかりと私も応援していきたい、先生の思いを大事に引き継ぎながら、協力隊活動を一層支援したい、このように、実は大臣にメッセージをいただいたんですね。

 そういう前提に立って、JICAの予算が非常に厳しい。来年度に向けてどのようにお考えかをお聞かせください。

岩屋国務大臣 和田委員とは、もうお互いに若い頃からの長いおつき合いをいただいておりまして、共に末次一郎先生の御指導をいただいたということで、そこから話を引かれての今の問いでございますので、非常に答えにくいのでございますけれども。

 JICAの運営費交付金及び施設整備費補助金、いわゆるJICA予算については、令和六年度当初予算においては、対前年度比三十七億円の減額となってしまいました。

 先日、和田委員も役員をやっておられる超党派のJICA議連が外務省にお越しいただいて、私も決議を受け取って、令和七年度当初予算への応援をいただいたところでございます。

 来年は、JICA海外協力隊の発足六十周年を迎える節目の年でもありますので、現下の予算編成過程において、しっかり所要額の確保に努めるべく今努力をしている最中でございます。引き続いての力強い御支援をよろしくお願い申し上げたいと思います。

和田委員 しっかりと予算獲得に向けて、財務当局と頑張ってください。

 では、次に移ります。

 次は、アルバニア決議というものについての解釈をお聞きしたいんです。

 実は、五十年前にアルバニア決議というのが、第二十六回国連総会で第二七五八決議というのでなされました。何かというと、これは、中華人民共和国の代表が国連における代表である。要は、国連のシートは中華人民共和国が持つということを決議したものであります。

 順番は通告でもしておりますが、私はこれから入るというふうに通告しましたので、今日は入れ替えて。

 国連における中国の代表権、国連のシートは誰が持つかということに関する決議です。これについては、単に、国際連合においてのシートは、中国というものに関しては中華人民共和国であるということを決議した決議にしかすぎないはずなんです。ところが、昨今、どうも、中華人民共和国、北京政府は何と言っているかというと、これは一つの中国を認める宣言だとか、あるいは、彼らが言うところの一つの中国原則、あるいは、台湾は中華人民共和国の一部だといったような立場を補強する決議だと言い始めている。

 どうも何か言っていることがおかしいなと私は思うんですが、日本政府のこのアルバニア決議に対する解釈についてお聞きします。

大河内政府参考人 御指摘の国連総会決議二七五八号でございますけれども、中華人民共和国政府の代表を国際連合における唯一の合法的な中国の代表として承認する、この旨定めたものでございまして、まさに御指摘のとおり、国連における中国の代表権について決議をした、このように解しておるところでございます。

和田委員 全く、日本政府がそのようにはっきりと解釈をしているということは心強い限りでございます。

 何回も今まで、外務委員会でもそうですし、予算のときも私、聞いたと思うんですけれども、この話は日中共同声明とも相通ずるところがあって、日中共同声明の解釈、すなわち、台湾が中国の不可分の一部であるという中国の主張を日本は理解し、尊重しているだけであって、認めてはいない。だから、今回でも、このアルバニア決議は、中国は主張はしているけれども、我々は認めているわけでもないし、そういう内容ではないということをアルバニア決議に関してここで確認できたと私は理解しました。

 次に、台湾の話が出ましたので、次のことをお聞きしたいと思うんです。CPTPPでございます。

 先ほど太先生もお聞きになりましたけれども、英国が今回決まりました。これから、まだまだたくさんの国が、国、地域が加入申請をしております。当然、台湾も加入申請をしている。中国もしている。今後のロードマップなり進み方についてどのようになっておるか、もう一度改めてお伺いします。

岩屋国務大臣 CPTPPは、先ほども申し上げたように、非常に高い水準の貿易枠組みでございまして、新規加入に当たっては、加入要請をするエコノミーがそのような意義を共に実現するパートナーとしてふさわしいかどうかということが重要になります。

 中国の貿易慣行やビジネス環境に関しては様々な意見があると理解をしております。中国がこの協定の高い水準を完全に満たすことができ、加入後の履行においても満たし続けていく意図と能力があるかについて、まずは適切に見極める必要があると考えております。

 台湾についても、それは同様ではありますけれども、台湾は、我が国にとって、基本的な価値を共有し、緊密な経済関係を有する極めて重要なパートナーでございます。また、かねてから加入要請に関して様々な取組を公にしてきていると承知をしています。我が国としては、そのような台湾による加入要請を歓迎しているところです。

 いずれにしても、加入要請を提出したエコノミーの扱いについては、他の締約国ともよく相談する必要がございますので、我が国としては、戦略的な観点、それから国民の理解、そういったことも踏まえながら適切に対応していきたいと思っております。

和田委員 ありがとうございます。

 台湾に関しては、申請をしていることは歓迎をしている、こういう答弁でありました。実際に歓迎するならば行動を示していかなければいけないので、今後の、もちろんこれは日本だけでできないという仕組みがあったり、ロードマップはこれからだといろいろありますけれども、できるだけ潤滑に台湾が加盟できるように進めていただきたいということを要望しておきます。

 これほど、半導体においても、何に関しても、我々は緊密な関係を持ち、もはや抜き差しならぬ、経済分野においても関係があると思います。そういう意味では、早くCPTPPに入ってもらうことが両国の国益にかなう、我が国との経済の発展にもかなうと私は思いますので、つけ加えておきます。

 そこから次に、大臣の対中姿勢について聞いていこうと思うんです。これも太先生と結構かぶるところがあったりするんですけれども、あえてお聞きしていきたいと思うんですね。

 ビザ免除の話から入りたいと思うんです、やはり。

 中国はビザを免除する、そういうことになりました。このことは聞こうと思ったんですがやめましたけれども、ビザを免除することについて、石破総理が、とにかく習近平さんと会ったときに交渉でかち取ったかのようなニュアンスを醸し出す向きもゼロではない、外務省は。でも、実は、たまたまとは言いませんが、一生懸命交渉してかち取ったものではどうもないみたいだと。中国は、実は、日本だけではなしに、いろいろな国々とワンパッケージでビザ免除を出している。それをどうも外務省も発表まで御存じじゃなかったのではないかという報道もありました。

 いろいろな議論はあります。そのことは私は今日聞きませんし、聞いたって詮ないことで聞きません。でも、ビザを向こうが免除したなら、じゃ、相互主義だ、こっちも免除だと。さっき、大臣は、交流が進むことはいいことなんだという言い方をされました。ということは、相互主義だ、向こうが免除したらこっちも免除だ、いっぱい人が動けばいいというような考え方に立ちがちだと思うんですが、しかしながら、今日の最初に小熊先生が言ったように、水産物にしたって何にしたって、まだまだ向こうは高い壁をつくっているわけです。

 そんな中で、相互主義だから、はい、ビザは向こうが免除だからこっちも免除ですなんというふうなことでいいのかなと私は思うんですが、その点、いかがでしょうか。

岩屋国務大臣 中国がコロナが始まった後やめていた措置を再開をした、それは日本だけが対象ではないというのは外務省もとうから知っておったことであって、それを何も政権の手柄のように喧伝をしたという覚えはございませんので、そこは誤解のないように願いたいと思います。

 その上で、交渉事ですから、もちろん、我が方からの要求、要望もある、中国側からの要求、要望もある、すぐさま聞けないものもあるということでございますので、今そのやり取りをしている最中ですので、中身について申し上げることは控えさせていただきたいと思いますが、そこは適切に判断をしていきたいと思っております。

和田委員 適切に判断すると。適切に判断というのは、お人よしでは駄目なんですね、我々、国益を背負ってやる交渉ですから。今の答弁ではそのことをしっかりと御理解いただいていると思うし、しっかりやっていただきたいんです。ですから、単純に、よく、相互主義だ、向こうがこうだからこっちもこうだではないということをしっかり理解した上で交渉していただきたい。

 その中で、次の質問に入るんですけれども、先ほども出ましたし、あれですけれども、日本人が拘束をされています。私の地元の神戸学院大学の教授、この方は籍は中国ですけれども、前の期のときに私は聞きました、この方はどうなっているんだ、抗議をして、ちゃんとしているのかと。こういった、ある製薬会社の方もとどめ置かれたままです。

 この人たちを救うための交渉をしているんでしょうか。単にお願いをしているだけじゃないんですか、帰してくださいとかどうなっているんですかと聞いているだけじゃないのか。きちっと交渉をしているのか、このことをまずお聞きをしたいんです。いかがですか。

岩屋国務大臣 中国における一連の邦人拘束事案については、これまで様々なルートを通じて中国側とやり取りを行ってきております。邦人の早期釈放、まだ五人残っているんですかね、強く求めてきております。私も、王毅外交部長と初めて電話会談をした際にも強く申し入れたところでございます。現地の大使館も努力を重ねております。

 ただ単に様子を聞いているのではなくて、早期釈放、解放に向けて、今後ともしっかりと交渉を行っていきたいというふうに思っております。

和田委員 先日、垂前中国大使が新聞に寄稿を載せられました。まさに、邦人の解放というのは、要請するだけでは駄目だ、交渉をしなければ実は取れないんだ、実現しないんだと。今内容はとかいろいろ言われましたけれども、実際に交渉をするという姿勢を見せなければ、ここで今答弁、語っていることを聞いているだけでは、そうはなかなか聞き取れないわけです。

 これは当然向こうもウォッチしていますから、その中で、ああ、この程度に言っておけばいいやというふうな中国側の状況になりかねないわけです。きちっと、我々はカードを持って交渉するということをしっかりとこの場ででもやはり言っていかないといけないと思うんですが、もう一回、その点についていかがでしょうか。

岩屋国務大臣 それはしっかり交渉してまいります。

 よく米国の例を出されるわけですけれども、司法制度の異なる第三国の事例と単純に比較することは困難だと思っておりますけれども、我が国としては、邦人の早期釈放に向けまして、引き続き最大限の外交努力、交渉を行ってまいります。

和田委員 ならば、そこで一つ御提案なんですね。先ほどでも出てきた危険情報のレベルの話なんです。

 アメリカは先般、三人取り返しました。中国で拘束されている人たちを三人取り返したわけです。何でか。これは、アメリカは危険情報が高かったのを下げたんです。下げると、返してくれた。これが因果関係でつながっているというのは、いろいろな議論はありますけれども、これも一つだろうと言われています。

 そういう中で、ここでお聞きしたかったのは、もう一つは、先ほどもう答弁がありましたけれども、本当に今危険レベルがゼロでよいのかと、実際に。

 確かに、騒乱が終わって、天安門事件のときみたいなことになっているのではないです。しばらく前にジャスコが襲われて、わあとなっていたときのような状況じゃないですけれども、少なくとも邦人が非常に反日感情にあおられつつあるような中で、痛ましい事件、事故が起こる、この中で、やはり上げるべきではないか、こう思うんですが、いかがでしょうか。もう一回お聞きしたいんです。

岩屋国務大臣 危険情報レベルについての考え方、判断は、先ほど申し上げたとおりでございます。

 あらゆる角度からと申しますか、あらゆる材料を交渉のためになるようにある意味用いていかなければいけないということは事実でございますが、委員もさっき自ら指摘されたように、ここでのやり取りも全部聞かれているということであるならば、あれを使う、これを使うという話は余りしない方がいいのではないかと思っております。

和田委員 はい。それも一理あるんですが。

 そういう中で、もう一つ、この危険情報を上げるということは我が国の経済安全保障上必要だと私は思っているんです。

 それは何かというと、これを上げると、向こうに行っている人が、帰りたくても帰れない人が帰りやすくなるんです。もうそろそろ撤退したいなと思っているような人はたくさんいるはずなんです。今、経済が鈍化している中で、北京政府が統治する大陸中国において。そういう人々は帰りやすくなる。それから、投資も、こういう状況ならちょっと待とうかという人が出てくる。もっと交流を増やそうとおっしゃっている方々がおられるのも分かります。そういう中で言うのもあれですけれども、これは議論ですから。

 やはり、コロナのときに、私たちはチャイナリスクを下げられたわけですよね。必然的に、向こうから人が来ない、中国大陸から来る人が物を買ってくれない、その中で、どうしてほかで稼ごうかということを随分考えて、チャイナリスクをヘッジするような作業をやってきたはずなんです、私たちは。それを、もう一回チャイナリスクを取りに行く必要はないと私は思っているんです、経済安全保障上も。

 そう考えると、危険情報を上げて、なかなか人の往来が逆の意味での状況になった方が私は経済安全保障上いいという考え方を持つんですが、この点についていかがでしょうか。

岩屋国務大臣 それぞれのやはり企業経営体が、当該国のカントリーリスクあるいは危険レベル等々も含めて総合的に判断してお決めになっていくことだろうと思うので、危険情報レベル等を促したり、せき止めたりする材料として考えるという考え方は、私は余り適切ではないのではないかと思っております。

和田委員 そういう大臣のお考えもありましょうし、私のような考えをする国会議員もいるということをこの場で申し上げておきたいです。

 次に、もう一点、対中関係でお伺いしたいんですけれども。

 これもいろいろな物の見方がありますから、何とも言い難いものがありますが、先ほども出ました、五島列島の上空に領空侵犯がありました。領空侵犯というのは非常に重いことです。領海は無害航行というのがありますし、そんな簡単に止められるものじゃありませんけれども、領空というのは、基本的に入ったらもうそれが即領空侵犯として、滞在ですよ、ある意味で。

 ところが、現場の皆さんのお話を聞いていると、今の時代の高度な機器を使って飛んでいる戦闘機なんというのは、逆に、不測の出来事があると言いましたけれども、デジタルのコンマ一を、インプットを間違えただけでぴゅっと違うところに飛んでいっちゃうと言うんですね。そうすると、ぴゅっと入っちゃうというわけです。それで、不測のことが起こる。だから、起こらないようにいろいろな情報共有をやる、ホットラインを持つのは大事だと。

 前の期でも、私、台湾との情報共有ができるような体制をつくれというのは、それなんですね。日本と台湾は情報交換を戦闘機同士でできないんですから。一度、一度じゃない、〇・〇〇何度インプットを間違えるだけでぴゅっと入っちゃうんですから、戦闘機が。それはいいとして。

 入ったときに日本が抗議をしたら、中国は速やかにそれを認めたんです、今回。大概は認めないんです、中国という国は。当然、謝罪はしませんけれども、その事実を何だかんだと言って認めないわけですよ。ところが、認めたんです。

 なぜかというと、現場のいろいろな関係者の方々に個人的に話を聞いていくと、あれはね、代議士、台湾海峡を護衛艦が突っ切ったからですわ、こう言うんです。そうしたら、向こうはこたえた。それぐらいやらぬと、向こうは尻に火がつきませんぜ、こういうことを言う現場の皆さんが結構おられたんです、私がいろいろなところで聞いていると。

 台湾海峡というのは公海です。台湾海峡を走るということは、誰に何を言われることもないことです。ところが、彼らは物すごく今過敏になっていると言われている。そういう中で、やはりきちっと何がしかの我々は態度を示すということが大事ではないか。要は、こういったことがあったときに、先ほどのビザの免除の話もしかり、いろいろなこともしかり、何か我々はそれなりの態度を示すということが必要だと思うんです。

 そういうことについてどう思うかと、今の世間一般に言われているような、中共政府が、北京政府がすぐに領空侵犯を認めたことについての因果関係について何か御所見はありますでしょうか。お聞きしたいと思います。

岩屋国務大臣 委員の御見解は御見解として拝聴させていただきましたが、そこに因果関係があるかどうか、すなわち、中国側の意図が那辺にあったかということについてコメントすることは控えたいというふうに思います。世の中の事象はアクションがあればリアクションがあるという、それはそのとおりだと思いますので、そういう御意見、御指摘も踏まえていきたいと思いますが。

 やはり中国には地域の大国としてその責任をしっかり果たしてもらいたいというふうに私どもは考えておりますので、その観点から、言うべきことはしっかり言っていく、協力し得るところは協力をしていくという、まさに戦略的な互恵関係、建設的、安定的な関係を築くということを目標に据えて、適切に対応していきたいと思っております。

和田委員 そこで、戦略的な互恵関係という言葉に至ったわけですけれども、私は、どうも日本政府が取ろうとしているのは、戦略的な互恵関係というふうには何となく取れない。先ほどのほかの委員の方からも声がありましたけれども、向こうの顔色をうかがいながら何かしているようにしか見えない。交渉をしていると言いながら、交渉をしているというよりは、やはり何か遠くから要望をして終わっているような感じに見えてしまう。

 やはりそこら辺を、今度、報道ベースですけれども、大臣は北京に行かれて、王毅外相と会談するのではないかというような記事が出始めました。そういう中で、本当の意味で戦略的互恵関係を結べるようなカードを持って交渉する、やはり向こうがえっと思うようなことも言う、そういうことをしっかりとやっていただきたいと思うんですが、もう一回その辺について、王毅さんに会われるとしたらどんな思いで、どんな構えでお会いになるか、お話しいただければと思うんですが。

岩屋国務大臣 我が方が何かすり寄っているかのように見えるというのは全くの誤解だと思います。そういう思いでそのような対中外交を進めるつもりは全くございません。

 しかしながら、中国と我が国は、この地域において、それぞれの国益のみならず地域全体の平和と安定、発展に責任を持たなければいけない地域のいわば大国だと思います。その責任感にのっとって、中国側に言うべきことはしっかり言っていく、しかし、両国が協力する必要があることについてはしっかり協力をしていく道筋もまたつけていく。妙な手練手管ではなくて、そこはそういう思いを持って誠心誠意の外交を展開してまいりたいと思っております。

和田委員 ここでは終わらないんです。まだ、私、十分ありますので、何かこれで終わってしまいそうな質疑でしたが。

 そこで、次に、対北京政府、中国との関係なんですが、尖閣のことをお聞きしたいと思います。

 私、今年、石垣市の調査船に乗って尖閣手前に行きました。手前というか、尖閣に行きました。上陸はしていませんけれども。その尖閣というのは非常に緊張した状況にある。そんなきれいごとで中国と向き合うことはできません、あれは。その更に先には中国のブイがある。このブイについて、今まで多くの議員が、我々は、早く撤去すべきだ、あるいは中国に撤去させるべきだ、いろいろな議論をしてまいりましたが、何にも動いていない。

 このブイについて、今のところ、外務省、どうなっているでしょうか。

岩屋国務大臣 中国による当該ブイの設置は、境界未画定海域における国際法上の義務との関係で極めて問題のある行為でありまして、我が国としては全く受け入れられません。

 中国側に対しては直ちに抗議するとともに、昨年来、首脳、外相レベルを始め、あらゆる機会を捉えて即時撤去を強く求めておりますが、現時点ではまだ状況が改善していない。これは極めて遺憾に思っております。

 政府としては、ただいま申し上げた外交的取組に加えまして、これまで、現場海域における必要な警戒監視及び状況の把握を行うとともに、あらゆる角度から調査、分析を重ねております。

 引き続き、あらゆる機会を捉えた外交的取組や調査、分析を継続するとともに、当該ブイが船舶交通や我が国漁業活動へ与え得る影響も踏まえまして、関係省庁間で連携して、可能かつ有効な対応を適切に実施してまいる所存でございます。

和田委員 これは、同じことをもう何か月、何年言っているのかということなんです。そのうちにブイが増えてきたんです。一つは、尖閣の先のは一つなくなりましたよ。でも、どこですかね、南鳥島かどこか、あっちの方にブイがまた浮かんでいる。こんなことを繰り返していたら、日本の国益は当然失われるわけです。

 もっと言えば、今日これは触れませんけれども、あの先には油田があります。白樺油田ですか、油田があります。あれはぎりぎり際に、向こう側に建っています。でも、下にパイプを打って抜いているのは日本側の地面から石油を抜いているんです、彼らは。こんなことも、何にも我々は最近言わずに石油を取られている、こんなことが続いていきます。

 そういったことも、ここで幾ら何度言ったって水かけ論。今まで、松原代議士が、大臣、大臣、それでいいのかと言ったって、ブイを撤去した大臣はいないわけで、それでも、しかし、我々は言い続けなければいけない。絶対にブイを撤去すべきです。日本が撤去すべきです。

 これは、ある意味、非常に緊張しますよ。日本の海保があそこまで行ったら、それは、ついてきて、こうなりますから。でも、やらなきゃいかぬです、これは。やれば、彼らは、ああ、日本はそこまでやるんだなと思って、そういう距離感を今度は保つはずです、と私は思います。

 ですから、これは外務大臣に聞くのでとこういうことを問取りでやると、いや、それは国土交通のあっちでしょうとか、これはこっちでしょうとなりますけれども、あえてもう一回申し上げています。あれは撤去すべきです。

 もう一回だけ、撤去すべきだという声に対してどう、何かお返事があれば、御回答があれば。

岩屋国務大臣 最終的に撤去されるべきものだと思います。中国側において撤去をするようにしっかりと働きかけてまいります。

和田委員 あれによって、日本のあの水域のいろいろな水温だとか何とかが、たった今も全部送られているわけですから、しっかりとしていただきたいと思います。

 もう一つ、実は、これはいつかな、しばらく前に、夏ぐらいかな、ルーマニアの公使が北方領土に行っているんですね。ルーマニアの駐ロ公使が北方領土を訪れています。国後と色丹に行っています。このことについていかがお考えになるのか、ちょっと改めてお聞きしたいんですが。

岩屋国務大臣 本年七月、御指摘の在ロシア・ルーマニア大使館の公使による北方四島訪問に関する報道を受けまして、直ちにルーマニア側に連絡を取り、事実関係を確認をいたしました。その際、仮に訪問が事実であれば、我が国の立場から受け入れられないということを伝達をしたところでございます。その後、ルーマニア側からは、在ロシア大使館の公使はサハリン本島のみを訪問したものであって、北方四島は訪問していないという説明を受けました。

 いずれにしても、北方領土問題に関しては、政府は、これまでの方針を堅持し、四島の帰属の問題を解決し、平和条約を締結するという方針の下にしっかり対処してまいりたいと思います。

和田委員 末次一郎先生が人生を懸けて北方領土の返還に取り組まれた。結果的には、現時点においてはできていません。

 私も、強烈な思いがあったのは、ゴルバチョフが日本に来たとき、あのとき、私、学生で、お手伝いに事務所に行ったんだと思うんです。官邸で、当時の官邸、まだ古い官邸ですよね、あのときに晩さん会をやっていて、末次先生がおられて、その席から次から次に指示がやってくるわけです。これを探せ、あの文書を探せ、何とかしろ、それをずっとスタッフでみんなで手分けして送る、それを一生懸命プリマコフ経由でゴルバチョフに上げるわけですよね。一生懸命やっておられた。我々はやはり領土を戦で負けて取られるとこんなことになるんだということを私は学生のときに感じました。

 そういうこともあったんですけれども、末次一郎先生の薫陶を受けた者の一人として、領土を守る決意に関して、今日の質疑の最後に大臣にお聞きしたいんです。

岩屋国務大臣 末次一郎先生のお話もしていただきましたが、先人の皆さんの努力で沖縄も返ってきたわけですが、まだ北方領土の問題あり、竹島の問題あり、また、我が国固有の領土である尖閣の周辺の問題もあります。こういう、我が国の領土、領海、領空を守る、国民の生命財産を守るというのは国政の最大の責務だというふうに考えておりますので、外交という立場から、そのために全力を尽くしてまいる決意でございます。

和田委員 では、全力を尽くしてください。

 終わります。

堀内委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

堀内委員長 速記を起こしてください。

 次に、深作ヘスス君。

深作委員 国民民主党、深作ヘススでございます。

 本日、当選後初めて質問に立たせていただきます。

 この外務委員会において決められていくこと、そして議論をされていくこと、これは、我が国の在り方、世界各国から我が国がどう見られるかだけではなく、我が国の価値そのものを定義をしていくものだと考えております。ですので、本日は、大臣に対して、我が国として様々な諸課題にどう取り組んでいくのか、私なりの観点から御質問をしてまいりたいと思っています。

 先ほど来、既に様々な先生方から私の想定をしていた質問をされていて、どのような形で私も取り組もうかと思っているところではございますが、様々な先生が取り上げました韓国について、まず冒頭、お伺いをしたいと思います。

 先日、韓国軍による竹島に関する軍事訓練が行われたというふうに承知をしております。既に外務省の方からも、これに対して報道声明が出ていますが、改めて、大臣の御認識そして御見解についてお伺いをしたいと思います。

岩屋国務大臣 御指摘のとおり、十二月十六日、韓国軍が竹島で軍事訓練を実施いたしました。

 今般の竹島に関する訓練の実施は、竹島が、歴史的事実に照らしても、かつ国際法上も明らかに日本固有の領土であることに鑑み、到底受け入れられず、極めて遺憾であり、直ちに強く抗議をしたところでございます。その上で、日本として、竹島問題についての一貫した立場に基づいて、引き続き、韓国側に適切な対応を求めてまいります。

 国際法上何ら根拠がないまま行われている不法占拠に基づいて、韓国が竹島に対して行ういかなる措置又は行為も法的な正当性を有するものではないと考えております。

 今日るる申し上げたように、日韓関係は極めて重要な二国間関係だと思っておりますけれども、それはそれとして、本件、竹島の問題については、しっかりと我が国としての立場を堅持し、毅然として対応していきたいと思っております。

深作委員 ありがとうございます。

 やはり、日米関係もそうですが、日米韓、この関係が重要とされている中において、今回のこの訓練は定期的に行われているものと承知をしています。

 他方で、今回、今までと違うのは、韓国の政権が大変不安定な中、これはアメリカからも指摘がありましたが、韓国軍の統帥権がどうなっているのか、これが大変不安定な中にあっても、今までどおり行われたということです。

 これに対して、日本としてしっかりとこれまでの立場を表していきながら、連携をしていくべきところは連携をする、他方で、国際法上に照らして、そして我が国の主張すべきところをしっかりと主張していくということを、改めて大臣、そして外務省からもしていただきたいと思います。

 それでは、続きまして、アメリカとの関係についてお伺いをしてまいります。

 今回の所信表明においても、大臣は、アメリカとの関係を深化をさせていくということをおっしゃられました。その中で、先ほども質問にありましたが、先日、安倍昭恵夫人がトランプ氏との面会を果たされました。

 現時点において石破総理がトランプ氏と会う予定があるのか、又は、それに対して御存じのことがあれば、是非お聞かせください。

岩屋国務大臣 安倍元総理御夫人の昭恵夫人が今般トランプ次期大統領御夫妻と歓談をされたということは大変好ましいことだというふうに考えております。

 石破総理とトランプ次期大統領は、トランプ次期大統領が大統領選挙に当選直後に電話会談をしておりまして、できるだけ早期に会って意見交換をしようということは確認しておりますけれども、その後、トランプ次期大統領の陣営側と私どもと意思疎通を継続してきております。その詳細をつまびらかにすることは、先方との関係もあり、差し控えたいと思いますが、双方の都合のよい時期に会談を行い、じっくりと堂々たる首脳会談をやってほしいと私は願っておりまして、そのための準備をしっかり外務省としても進めてまいりたいと考えております。

深作委員 ありがとうございます。

 今回、今大臣からも御答弁をいただきましたように、内容については明らかにできないということは承知をいたしております。

 他方で、様々なこれまでの議論の中でも、いろいろな連携の中で、アメリカとの関係のパイプをつくっていくということは重要であると思っておりますし、私自身も、安倍総理がどの首脳にも先んじてトランプ・タワーでトランプ氏と会ったこと、これが間違いなく日米関係、これを深化をしていく上で、第一回目のトランプ氏の就任の前に会ったということは大変重要であったと思っています。

 ですので、今回、まだほかの首脳とも会っていない、会うつもりはないと言っている中ではありますが、日本が貪欲に首脳間関係を築いていくこの姿勢を、引き続き、それに向けて動いていただきたいと思っています。

 他方で、既にトランプ政権下でこれからどんどんと様々な役職、大統領が指名できる様々な役職が今名前として挙がってきています。

 こういったノミネーションが今行われているわけですが、最終的には、上院におけるコンファメーションヒアリングを通らない限り、これが確定をしない中ではあるものの、今、こういったノミネートされている方々との関係、これをどのようにつくっていくというようにお考えなのか、又は、それを今、日本政府としてどのように動こうとされているのか、もし今動きがあれば、是非そちらについてお知らせください。

岩屋国務大臣 事柄の性質上、どういう作業をしているかということはなかなか申し上げにくいんですけれども、御指摘の米新政権との関係構築については、外務本省はもとよりですけれども、在外公館の双方において、委員も米大使館で一時期仕事をされたことがあると伺っておりますが、米国の大使館も含めて、共和党の有力者とも着実に今関係構築を進めているところでございます。この努力を更に進めてまいりたいと思います。

 例えば、私の場合は国務長官がカウンターパートになるわけでして、マルコ・ルビオ氏が指名をされておられますが、これも御指摘があったとおり、上院での承認を得られなければ正式なスタートにならないということで、どの段階で、どういうお目にかかり方をすることが一番適切かということを今検討しているところでございます。

 ちなみに、ブリンケン国務長官からは、先般、私がお会いしたときに、次期国務長官にもしっかり仕事を引き継いでいくというお話をいただいておりまして、できるだけ早く、直接ルビオ氏ともお目にかかる機会をつくりたいと思っております。

深作委員 ありがとうございます。

 今回これをお伺いしたのは、実は、今回大統領が指名をする中に、DNI、国家情報長官という役職がございます。私は、アメリカの連邦議会で勤務をしていたときに、今回ノミネートをされたトゥルシー・ギャバード氏の下で働いておりました。このDNI、私も、当時働いていたとき、まさか彼女がこのような形になると思ってもおりませんでしたし、先日、このノミネーションが発表されたときにすぐにやり取りをして、私自身が当選をしたということも報告をして、お互いにそういったやり取りをしたりしておりました。

 今回この御質問をした一つの理由は、これまで、大臣が今までおっしゃられてきたように、いろいろな方面で種まきをしていき、それを育てていくことが二国間関係を育てていくのであれば、このノミネーションの中にどれだけ私たち日本がパイプがあるのか、これは一つの答え合わせになると思っています。

 これまで日本が取り組んできた様々な種まきがここで花を開く可能性があるんだ、ここで芽を出す可能性があるんだということの一つの指標になると思いますし、これは、私自身が想定をしていなかったように、どこでどのようなつながりができてくるか分からない中で、幅広い観点から人材の交流をしていく、そして、今委員会に所属をされている先生方、この議員同士の交流ということも大変重要であると思っています。

 私も、アメリカの連邦議会で働いていたときに、どうしても議員に対して、ほかの国の役所から来ると、議員が会わずにスタッフでそれを止めてしまうということが、大使級であれば会うということがありましたので、どれだけいわゆるロビーイングに近い活動をしても、なかなかそれが本当のネットワークになっていかないということを実感をしています。

 その意味で、大臣に御質問することでもないですし、提案することでもないんですが、やはり議員外交も含めてこういった関係を、アメリカだけではなく友好国、有志国の議員とともに広げていくということが、我が国にとって大変重要だと思っています。

 もし大臣から、こういった人材の交流であったり、こういった二国間関係を育てていく上で、こういったことをやっていこう、又はこういったことを考えているということがあれば、是非お聞かせください。

岩屋国務大臣 今委員の、そういうこれまでの個人的な人間関係を聞かせていただいて、大変心強く思いました。米国との間では、公的なところだけではなくて個人的な関係、民間レベルの関係、もう様々に、重層的に日米関係が強固になるということが大切だと思っておりまして、もちろん議員外交も大変重要だと思います。

 是非、先生方においてそういう取組をしていただいて、外務省の外交を後押ししていただければ大変ありがたいというふうに思っております。

深作委員 ありがとうございます。

 先ほど既に太議員からもございましたが、続きまして、大臣の所信の中にありました日米関係の深化をどのように行っていくのか、先ほども既に答弁がございましたので改めてお伺いすることはございませんが、私自身も、今、新しい局面に入り得るこのときにこそ、様々な日米間の約束事、ガイドラインも含めてお互いが見詰め直していく、そしてそれを前に進めていくようなことを是非取り組んでいくべきであると考えております。

 続きまして、一つ飛ばしますが、済みません、日米安全保障条約第六条についてお伺いをさせてください。

 日米安全保障条約第六条には、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」と記されています。

 この中で、極東という言葉が出ています。極東というのは大変ファジーなものでございまして、この極東が何を意味するのか、大臣から是非教えてください。

岩屋国務大臣 委員の質問へのお答えの前に、ちょっとお許しをいただいて、先ほどの委員に対する答弁で、竹島のところで、竹島で韓国が訓練をしたと私は述べたと思うんですが、上陸はしていない形での訓練であったようですので、竹島の周辺海域でと言った方が正確であったと思いますので、そこは訂正をさせていただきたいと思います。

 その上で、極東とは何かということでございますが、これまでの政府統一見解では、これは一九六〇年以来の見解ですけれども、すなわち、日米両国が、条約に言うとおり、共通の関心を持っているのは、極東における国際の平和と安全の維持である。実際問題として両国共通の関心の的となる極東の区域は、在日米軍が我が国の施設・区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与し得る区域である。かかる区域は、大体において、フィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であるというのがこれまでの政府の見解でございます。

深作委員 ありがとうございます。

 この見解につきましては、既に大臣がおっしゃられたように、昭和三十五年に示されて、その後に岸田外務大臣、そして、本日御臨席の茂木外務大臣の下でも確認をされました。

 そして、本日も改めてこれをお伺いをさせていただきましたのは、この第六条が今後、私も実はアメリカで勤務をしていたとき、ハワイ選出の下院議員の下で外交政策に当たっていました。その中で、ハワイでミサイルの誤報事件というのがあって、もしかしたら、北朝鮮から飛んできたミサイルが今ハワイに着弾をするかもしれない、そういった事件がありました。

 最終的には誤報だったんですが、それが起きた直後、ハワイにおいて、北朝鮮というものが自らの脅威であるということをこのハワイ選出の議員又はその周辺の者たちが認識をするようになって、机上演習をしたときに、では、もし何か有事が起きたときにどうしていくのか、今は、インド太平洋軍と呼ばれるハワイに展開をしている軍隊やグアム、こういったものがどういう動きをしていくのかという机上演習を行っていました。

 実は、その中で、私はアメリカの海軍と海兵隊の現役軍人とともにこういった机上演習をやっていたんですが、当たり前に、沖縄にある、展開している彼らはどうするのか、沖縄を常に挙げていました。もちろん、この第六条で定義をされているように、日本においてアメリカ軍が基地を持つということは定義をされているわけですが、どこかこれが私たちの国でないような、彼らのもののように扱われていることに、そんなことは全くないんですが、その言葉の使い方に大変違和感を持ちました。

 今回これを御質問したのは、これまで歴代、アメリカの政権が替わると、日米安全保障条約第五条が尖閣に対して適用されるのかということを確認をされてきていると思います。今回がどうなるかというのは差しおいても、もちろん、これが抑止力に対して、こういったことを確認をし続けることは重要でありますが、こういったファジーな内容が、国際状況がどんどんと変わっていく中において、アメリカにおいて変えられていく可能性がないのか。

 これに対して日本が、もしそこが、この極東というのは、先ほども大臣はおっしゃられませんでしたが、台湾は含む、そして韓国は含むということがこれまでの見解となっていますが、それ以外の地域で何かが起きたときに、これを曲解又は拡大解釈をされることがないのか。

 それについて、大臣の御見解があれば是非お聞かせください。

岩屋国務大臣 先ほど、安保条約の解釈についての政府の見解を申し述べたんですけれども、同じく、政府の見解として、極東の範囲についての政府統一見解で示されているとおり、極東に対して武力攻撃が行われ、あるいは、この区域の安全が周辺地域に起こった事情のため脅威される、つまり脅かされるような場合、米国がこれに対処するために取ることのある行動の範囲は、その攻撃又は脅威の性質いかんにかかるのであって、必ずしも先ほど申し上げた極東の範囲に局限されるわけではないというのもございますし、条約というところに限定しないで物を申し上げれば、日米同盟というのは、もう広く、アジア、インド太平洋の公共財だというような言い方もしてきておりますように、また、条約上の狭義の解釈とは別に、やはり日米同盟というのは、地域全体の平和と安定に対して対処力、抑止力を強化することによって、責任、役割を果たしていかなければいけないのではないかと考えております。

深作委員 今大臣から御答弁をいただきましたように、政府見解の中には、その区域に局限されるわけではないと。ある意味で、ここがまだファジーなまま、これが定義をされています。他方で、もし仮にこの区域が変わったりする場合においては、日本政府との協議が必要となっているというふうにここにも示されています。

 ですので、大臣におかれましても、今後、トランプ政権がどういう動きをしてくるか分からない、また、国際情勢がどんどんと変わっていく中で、こういったことが、日本の意思と外れて様々なものが拡大していかないように、是非大臣にもウォッチをしていただくとともに、この私たちの国を守っていく、そのために、最前線で引き続き大臣に御活躍をいただきたいと思います。

 お時間をいただき、ありがとうございました。

堀内委員長 次に、西岡秀子君。

西岡(秀)委員 国民民主党に所属をいたしております西岡秀子でございます。

 大臣、大臣御就任、誠におめでとうございます。

 私は、三期目になりますけれども、初めて外務委員会に所属をさせていただきます。大臣には初めての質問となりますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。

 大臣所信の中で大臣も述べられておりますけれども、外交努力、そして、丁寧な対話を通じたきめ細やかな外交を積み重ねることが大変重要だということを大臣も述べられております。今まさに国際情勢が混沌とする中で、この外交の力、これからまた大臣の活躍、大変重要な役割だというふうに思います。御活躍を心から御期待申し上げて、質問に入らせていただきます。

 私は、被爆地長崎市から選出をさせていただいている議員でございます。

 まず、日本被団協のノーベル平和賞受賞、このことについて質問をさせていただきます。

 午前中の質疑でもございましたけれども、私からも、この長年にわたる日本被団協の皆様の、原爆という筆舌に尽くし難い経験を受けながらも、自らの体験を語り、そして被爆の実相、核兵器廃絶を国内外に訴え続けてこられた皆様の、本当に地道な、草の根とも言える御活動に対して、心からの敬意とお祝いを申し上げたいと思います。

 また、この活動を続けている中で、多くの被爆者の方が既に亡くなられております。この亡くなられた皆様にも敬意と、この受賞は本当に皆様のお力だということも含めて、心から御冥福をお祈り申し上げたいというふうに思っております。

 この授賞式でスピーチをされました田中熙巳様でございますけれども、十三歳で長崎で被爆をされまして、今九十二歳でございます。自らオスロの授賞式ですばらしいスピーチをされました。これは大臣もお聞きになり、心を動かされたという御発言を先ほどいただきましたけれども、このスピーチ、本当にすばらしいものがあったというふうに思いますし、国内外の多くの方に多くの示唆を与えられたというふうに思います。

 今年一月現在、核弾頭の数は推定で一万二千百二十一発、その九割をロシア、アメリカが占めているわけでございますけれども、これまでの前提が大きく崩れまして、中国が核戦力を増強し、北朝鮮も保有するなど、状況が大きく変化をいたしております。そして、ロシアによるウクライナの侵攻が長期化して、ロシアが核兵器の使用を示唆をするという、核兵器の使用のリスクが冷戦後最も高まっている状況だというふうに思います。

 こういう時期にノーベル平和賞を日本被団協が受賞されたという意味、大変大きな意味があるというふうに思いますけれども、このことに対する大臣の御見解をまずお伺いをしたいと思います。

岩屋国務大臣 先ほども申し上げましたが、私もちょうど田中さんの演説をテレビの前で聞いておりまして、本当に心が揺さぶられました。

 もう被爆者の方々も、田中さんも九十二歳でいらっしゃるということで、御高齢になられておられますし、実際に自らが体験した被爆体験を語れる方がこれから残念ながら少なくなっていくという中で、次の世代に是非これを伝えていきたいという思いがひしひしと伝わってまいりましたので、私どももその思いをしっかりと受け止めて、核軍縮、そして最終的には核廃絶に向かって努力を続けなければいけない、その思いを新たにさせていただいているところでございます。

西岡(秀)委員 大臣、ありがとうございます。

 今まさに、若い世代への継承について大臣から言及をしていただきました。田中様のスピーチの中にも、本当に大きくこの思いが込められていたというふうに思います。

 現在、被爆者の皆さんの平均年齢は八十五歳でございますので、自ら被爆の実相を語ることができなくなる時代が、大変悲しいことでございますけれども、すぐそこに来ているという中で、現在も多くの若い方々が、被爆者の皆様に代わって様々な行動を自ら起こして活動していただいております。

 例えば、大臣も御承知だというふうに思いますけれども、高校生平和大使。高校生平和大使でございますけれども、二〇〇一年から活動をスタートして、現在で二十七代目。二〇一三年には外務省から第一号のユース非核特使を委嘱されて、各国大使が集まる軍縮会議で民間人初となる演説を行いまして、毎年、国連に全国で集めた一万人署名を持参をして活動を展開をしていただいておりまして、国連では、ヒロシマ・ナガサキ・ピース・メッセンジャーとして高い評価をいただいております。

 高校生平和大使以外にも多くの若い方々が活動をしていただいておりますけれども、この若い方の活動に対して、我が国として今後どのように支援をして未来へつなげていく方針であるかということを、大臣にお伺いをしたいと思います。

岩屋国務大臣 委員御指摘のとおり、若い世代にしっかりと伝えていくということが大変重要だと考えております。

 今委員からは高校生平和大使の話をしていただきましたが、そのような考え方に基づいて、これも紹介がありましたが、被爆者やその記憶を語り継ぐ若い世代の方々に、非核特使であるとかユース非核特使として活動いただいております。

 非核特使はこれまでに百八組、三百二十名、ユース非核特使はこれまでに五十五組、七百八十七名に委嘱して、世界中の指導者や若者の被爆地訪問を呼びかけて、実現をしてまいりました。

 また、我が国が拠出して国連が立ち上げたユース非核リーダー基金プログラムを通じて、今年八月、約四十か国からの参加者が被爆地を訪れるなど、次世代の育成にも取り組んでいるところでございます。

 また、先般のノーベル平和賞授賞式の機会にオスロを訪問した日本被団協の代表団にも、高校生が平和大使として参加されたと承知をしています。

 引き続き、こういう活動を更に展開してまいりたい、促進してまいりたいと思っております。

西岡(秀)委員 もうほとんど時間がなくなっているわけでございますけれども、核兵器禁止条約締約国オブザーバー参加について質問をさせていただきます。

 これまでこのオブザーバー参加はかなわなかったわけでございますけれども、来年三月に予定をされております。これまで国会での石破総理の御答弁は、ドイツが参加をしているということ、核の傘の下にドイツが参加をしていることについて検証してみたいという御発言をされておりまして、明らかに政府のこれまでの答弁とは変化をしているのではないかと私は大きな期待を持っているわけでございますけれども、このオブザーバー参加をする意味、特に、核兵器禁止条約の第六条、被害者援助と環境回復、第七条、国際的協力及び援助、これは本当に日本でしかできない大きな役割があるというふうに思っております。

 このオブザーバー参加についての岩屋大臣の御見解と、現在、外務省として、総理の国会での答弁を踏まえてどのように検証されているのかということ、そして、いつ頃をめどに参加の是非を明確にされるかということをお伺いをして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

岩屋国務大臣 本件については今日も幾たびか答弁をさせていただきましたが、私ども、核禁条約は最終的な核兵器廃絶の出口に当たる条約なので、とても大切だと思っておりますけれども、もう多くは申し上げませんが、やはり現在の厳しい我が国を取り巻く安全保障環境を考えますと、一方で核抑止ということについても考えていかざるを得ない状況にございますので、なかなかすぐさま署名、締結をするというわけにいかない。

 そうすると、オブザーバーとして参加して何を唯一の被爆国たる日本が言うべきか、全体の運動に対してそれがどのような効果をもたらすのか、そのこともよくよく考えた上で判断しないといけないと思って、今、核の傘の下にありながらオブザーバー参加している国のこれまでの言動等を検証させていただいているところでございます。

 まだ結論が出ているわけではありませんが、来年三月のことも念頭に置きながら、更に検討を加速していきたいと思っております。

西岡(秀)委員 時間が経過いたしました。

 オブザーバー参加、是非実現を心からお願いをして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

堀内委員長 次に、山崎正恭君。

山崎(正)委員 公明党の山崎正恭です。

 本日は、外務委員としての初めての質問になります。この委員会から大会派順ということで、済みません、順番に慣れていないんですけれども、多くの委員の先生方が御質問をされまして、少し内容的にかぶるようなものもありますけれども、お許しいただきまして、質問させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 先ほど西岡委員からもお話がありました。まず初めに、被爆者の立場から核兵器の廃絶などを訴えてきた日本原水爆被害者団体協議会、日本被団協に対するノーベル平和賞の授賞式がノルウェーの首都オスロで行われました。

 日本被団協は、一九五六年八月十日に、自らを救うとともに、私たちの体験を通して人類の危機を救おうとの結成宣言とともに誕生し、今まで七十年近くにわたって核廃絶に向かって活動をされてこられました。

 先ほど来ありますけれども、授賞式で演説を行った田中熙巳代表委員は、日本被団協が一九八五年に行った原水爆被害者調査についても触れられまして、原水爆は命、体、心、暮らしにわたる全てに被害を加える、命を奪われ、体にも心にも傷を負い、病気があることや偏見から働くこともままならない実態が明らかになり、自分たちが体験した悲惨な苦しみを二度と世界中の誰にも味わわせてはならないとの思いを強くしたと述べられました。

 二〇一六年四月には、日本被団協が提案し、世界の原爆被害者が呼びかけた核兵器の禁止、廃絶を求める国際署名は大きく広がり、千三百七十万名を超える署名を国連に提出、その大きなうねりの中で、二〇一七年七月七日に、百二十二か国の賛同を得て核兵器禁止条約が制定されました。

 田中代表委員は、重要なのは、核兵器の保有と使用を前提とするのではなく、核兵器は一発たりとも持ってはいけないというのが原爆被害者の心からの願いであります、そして、直ちに発射できる核弾頭が四千発もある、広島や長崎で起こった数百倍、数千倍の被害が直ちに現出する、皆さんがいつ被害者になってもおかしくない、あるいは、加害者になるかもしれない、ですから、核兵器をなくしていくにはどうしたらいいのか、世界中の皆さんで話し合い、求めていただきたいと思うのでありますと、熱烈たる思いを込めたメッセージが世界に発信されました。

 また、演説の中で、先ほどもありました、原爆被害者の平均年齢は八十五歳となり、十年先に直接の被爆体験者として証言できるのは数人になるかもしれない、その中で、被爆者たちの草の根の運動、証言や各地の被爆者団体の運動の記録などをアーカイブスとして保存、管理していくといった活動を十五年近く行ってきたNPO法人ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会の活動を紹介し、これらを活用して、国内にとどまらず、国際的な活動に大きく展開してくださることを強く願っていますとの要望とともに、核兵器の非人道性を感性で受け止めることができるような原爆体験の証言の場を各国で開いてくださいという強い要望を発せられました。

 まずは、このことに対する大臣の見解と今後の政府のお取組についてお伺いいたします。

岩屋国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、被爆の実相を唯一の被爆国である我が国が世界に伝えていくということが、核軍縮、あるいは最終的な核廃絶に向けた取組の原点として極めて重要だと思います。

 しかし、委員も御指摘のあったように、また西岡委員からも御指摘のあったように、被爆者の方々、もう平均八十五歳になられるということで、やはり若い世代にも是非これをつなげていくということが大切だと思って、先ほど申し上げた、非核特使とかユース非核特使という活動を支援をしているところでございます。

 また、政府としては、来年が被爆八十年に当たるということも踏まえまして、唯一の戦争被爆国として、被爆者の方々と協働し、被爆の実相の正確な理解を、今後とも、様々な工夫を凝らしながら、世代と国境を越えて一層伝えることに全力を挙げていきたいと思っております。

山崎(正)委員 大臣、ありがとうございました。

 こういった記録をしながら、いわゆるそういった形のことを継承している団体というのはたくさんあると思いますので、是非活用をお願いしたいと思います。

 実は、私は、前職が中学校の教員を二十四年間やっておりました。中学校の社会科の教員をやっておりまして、子供たちは三年に一度、修学旅行で必ず平和学習に行きます。長崎に行くこともあれば、最近では沖縄に行くこともあるんですけれども、私は社会科の教員ですし、見た感じそのもので生徒指導なんかも担当しておりましたけれども、実は、こういったことがありました。

 非常に、大変厳しい、ふだんの学校生活の中ではなかなか授業中に座っておることがままならない生徒も一緒に連れていったことがありましたけれども、沖縄の暗いガマの中に入って、そして、そこで、そのときにもう八十を超えられていた高齢の方からの生のお話を聞く機会があったんですけれども、本当に我々も驚いたとともに感動したんですけれども、本当に誰一人、誰一人声を出さずにその方の話に耳を傾ける。やはりそこに持つ、この証言の本物の教育の力といいますか、その力を圧倒的に感じたところでございます。

 できる限り、この生の証言というのはそういった力がありますので、できる限り続けていただきながらも、やはり先ほど言ったように、どうしても物理的には難しくなるわけですから、しっかりとそれを少しでも体感できるように、今は学校でもICT教育をやっていますけれども、相当発展しておりますけれども、そういったことでどうやってつないでいくかということが重要だと思います。

 これは私どもの責任でもあるんですけれども、学校における平和教育が少し弱ってきているなというふうに感じます。例えば、一番顕著なのは、昔の子供さんは、恐らく、八月六日に広島に原爆が落とされた、九日に長崎に落とされたということを知らない子供さんというのはほぼいなかったと思うんですけれども、今、長崎とか広島でない、私の地元の高知なんかでは、実は、小学生とかに聞いたときに、答えられないという子供たちが増えてきております。

 そういった意識、それはもちろん教育現場も責任を感じているところだと思うんですけれども、文科省さんとも連携しながら、そういったところをしっかりとまた取り組んでいただけたらというふうに思います。

 次に、オスロでの演説の最後に、田中代表委員より、人類が核兵器で自滅することがないように、そして、核兵器も戦争もない世界の人間社会を求めて共に頑張りましょうとの訴えが世界に向けて発せられました。

 そこで、改めてにはなりますけれども、核のない世界を目指して、岩屋外務大臣の決意をお伺いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。

岩屋国務大臣 田中さんのお話はもう本当に私も心を動かされましたけれども、今委員が御指摘になったように、最後に、人類が核兵器で自滅することのないようにというふうにおっしゃった言葉がずっと今も頭の中に残っております。

 映画のストーリーなんかではよくそういうのがあるんですけれども、本当にこれから、AIなんかもどんどん発達してきて、防衛システムをそういう人工知能にかなり委ねるみたいなことが出てきたときに、いつ何どき映画の中でしかなかったことが起こるかもしれない、そういう危険も出てきている時代だというふうに思いますので、この核廃絶に向けて日本ができる取組を、あらゆる取組をやはりやっていかなければいけないと思っています。

 一つは、NPT体制における取組ですね。核保有国と非保有国が入っている枠組みですから、その間をつないで核軍縮を実現していくという、日本がやはり汗をかくべき場面、ところだと思います。

 それから、国連ですね。先般、百五十二か国の支持を得て、我が国が毎年提出している核兵器廃絶決議が議決されましたけれども、これに加えて、今、核兵器用の核分裂性物質生産禁止条約、FMCTと言っておりますが、この立ち上げ会合を、FMCTフレンズ立ち上げ会合というのを開催をしました。これを条約交渉開始へ向けてつなげていくなど、我が国ができる取組を一歩一歩、一つ一つ積み重ねていきたいと思っております。

山崎(正)委員 ありがとうございました。

 次に、これも今日多くの皆さんからお話が出ましたけれども、アメリカの次期大統領に共和党のトランプ前大統領が就任することが決まっています。

 大統領の公約を見ますと、先ほどもありました、全ての国との輸入製品に関税一〇%から二〇%、対中国関税は六〇%かけるなどの内容が並びます。元々ビジネス人でありまして、ディール好き、ディールが得意なトランプ氏は、一回目の大統領としての経験を生かして、更にそういった面の交渉力を発揮するのではないかとの声もあり、より一層アメリカ・ファーストの色合いも強くなってくることが想定されます。

 そして、今日、様々ありました、あくまで現在の予想ではありますけれども、最初に中曽根委員からもありました日米韓の三か国、そして日、米、フィリピンの三か国のこの枠組みが強化された、こういったことに関しては、トランプさんもしっかりと引き継いでいくのではないか。また、日米安全保障の投資や防衛費の増加も含めた安保三文書に対しても、トランプ氏が高く評価しているのではないかというふうな声もございます。

 また、皆さんからありました、孫社長が今後一千億ドル、十五兆円規模の投資という、多額の投資というのは、トランプさんにとっては非常に重要であり、そういったところにとって非常に日本は重要なのではないかというふうな見方がある一方で、やはり心配されるのは、インド太平洋経済枠組みは引き継がない。そして、やはりTPPに対しても、離脱したのはトランプさんがきっかけというか、そこで協議の離脱も行ったということもございます。

 そういった様々な予測がある中で、例えば、保守系のシンクタンクのハドソン研究所で、トランプ政権のときに駐日大使に決定していたけれども、その後落選したので実現されなかったワインスタイン日本部長は、石破総理とトランプさんはどういうふうな関係になるんだろうかということに対しまして、二人ともよい関係を築くのではないかと。二人とも既存の考え方をしない非主流派であり、自国で長年……(発言する者あり)済みません、ちょっとまずかったですかね。長年、既得権益層と闘ってきたこともありますし、都市より地方を好む性格ではないかということで、うまくやるのではないかというふうな、そういった予測もあるところでございます。

 米国にとって日本が非常に重要な関係になっていくことは大事だと思うんですけれども、そこで、今回お聞きしたかったのが、このような状況も含めまして、選挙戦の公約等から、あくまでまだ正式には発足していない今の段階ではありますけれども、一期目と二期目のトランプ政権の違いなんかをどのように捉えて、我が国の国益を守っていくために、どのようなこれから外交政策を進めようとしているのか。現段階でのトランプ氏の一期目からの変化など、外務省が認識しているものなどがあれば、そういったことの見識をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

岩屋国務大臣 石破総理とトランプ次期大統領の関係は、先生がおっしゃった後段の予測に私も期待をしたいというふうに思っております。

 トランプ政権はこれから発足するわけですから、その後の政策について、あるいは、したがって、一期目との政策の違い等について予断を持ってお答えすることは、コメントすることは控えたいというふうに思いますが、米国の政策が日本を含む国際社会に極めて大きな影響を及ぼすということは間違いがないことであって、そのことに高い関心を持って注視をしていきたいと思っています。

 ただ注視をしていくのではなくて、我が国にとっては唯一の同盟国でございますし、今なお世界一の経済大国、軍事大国でございます。アメリカのリーダーシップがいかにあるかということは、世界をまさに変えていくわけですね。よりよく変えていってもらわなきゃいけない。そのことをやはり我が国は同盟国として米国と力を合わせて協働、共に働いていくという関係でありたいと思っておりますので、そういう考え方でこれから発足していく米国の新政権と向き合っていきたいというふうに思っております。

山崎(正)委員 済みません、もう一問予定しておりましたが、時間になりましたので、申し訳ございません。

 以上で質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

堀内委員長 次に、阪口直人君。

阪口委員 れいわ新選組の阪口直人です。

 今日は、人道外交という視点から、パレスチナとミャンマーの問題について質問したいと思います。

 武力紛争にもルールがあります。国際人道法の下で、意図的に民間人や民間施設を攻撃することは禁止されている。

 昨年十月以降、更に激しくなったイスラエルによるガザへの攻撃、病院や難民キャンプ、学校なども攻撃をしていて、多くの犠牲者が出ています。これは人道に対する犯罪、ジェノサイド犯罪に相当します。国際人道法のジュネーブ第四条約において、民間人の追放や強制的な送還も禁止しています。イスラエル軍はガザ北部からの撤退命令もしている、これも戦争犯罪であり、ジェノサイドに相当します。

 よく言われる憎しみと暴力の連鎖などではなく、複雑な宗教対立でもない。何十年もの間、イスラエルがいかなる戦争犯罪また人道に対する罪、国際法違反を犯そうとも、一度も正しく裁かれたことがない。国際社会によるイスラエルの不処罰という恥ずべきあしき伝統が、ジェノサイドを可能にしてしまっていると私は考えています。日本政府には、そして大臣には、この流れにくさびを打ち込んでいただきたいと思って質問します。

 まず、国連総会は十二月十一日に、UNRWAの活動を全面的に支持をして、そして、十月末に活動禁止の法案を可決したイスラエルを非難する決議を百五十九か国の賛成で可決しました。日本も賛成しました。これはアメリカとは異なる行動なんですね。この行動の根拠と、そして、このことを契機にイスラエルに対してどういうアクションを起こしていくのか、大臣の考えをお聞かせください。

岩屋国務大臣 十月末にイスラエル議会で成立をした、ウンルワ、アンルワと言う人もいますが、現地ではウンルワと言っているのでウンルワと申し上げますが、UNRWAの活動を大幅に制限する法律が可決されたことを受けまして、私は、外務大臣談話を発出し、深刻な懸念を表明をしたところでございます。

 UNRWAは、ガザ地区だけではなくて、中東地域全域における数百万人ものパレスチナ難民への支援において、人道支援だけでなくて、医療、教育において必要不可欠な役割を果たしていると思います。人道状況の改善には、UNRWAや、その他の国際機関による支援活動が可能な環境が持続的に維持、確保されることが重要でありまして、我が国は、イスラエル政府に対して、そのことを強く求めております。

 こうした基本的な考え方に基づいて、国連総会決議においても賛成票を投じたところでございます。

阪口委員 賛成票を投じたということは非常に重いことだと思うんですね。ですから、UNRWAの活動を守るだけではなくてイスラエルに対して停戦を働きかけていくということを、日本としての責任を持ってやっていくべきだと思います。

 また、ICCは、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント前防衛相に対して逮捕状を出しました。これは、ガザでの民間人の虐殺を指揮した戦争犯罪、そして、その責任を問うものであります。

 お伺いします。日本政府は、イスラエルの行為はジェノサイドであるとお考えでしょうか。

岩屋国務大臣 戦闘が長期化する中で、ガザ地区において危機的な人道状況になっている、多数の民間人が犠牲になっていることを深刻に懸念をしております。

 私自身、就任直後に、当時はイスラエルはカッツ外務大臣だったんですが、今は国防大臣に変わっておられますが、電話会談を行って、人質の解放と人道状況の改善につながる停戦の実現と事態の早期鎮静化の必要性を強調して、事態がとにかくエスカレートしないようにすべきだということを強く申し上げました。

 その上で、今般のイスラエルの行動全般をどう評価するかということでございますが、私どもとして事実関係の正確かつ十分な把握が必ずしもできないということもございます。また、したがって、我が国として確定的にこれを評価することは難しいものがあるんですけれども、私は、イスラエルが国際人道法を含む国際法を逸脱をするおそれが非常にあるということを懸念をしておりますので、引き続き、国際人道法の遵守、そして人道状況の改善ということを強く求めていきたいと思っております。

阪口委員 客観的に見て、国際人道法から逸脱するおそれというよりも、完全に逸脱していると私は考えています。

 例えば新疆ウイグル自治区における人権じゅうりんの問題であったり、あるいは、こういった中国、アメリカというような超大国の問題、超大国がバックにいる問題だからといって、私は、日本は人道外交ということを中心に置いてぶれずに行動するべきだと思いますので、やはり正しい認識からスタートすべきだと考えております。

 次に、ミャンマーについてお聞きしたいと思います。

 二〇二一年二月、ミャンマー国軍は、その前年の総選挙で圧倒的に支持を得て二期目の政権を担っていたNLD政権を暴力によるクーデターで転覆させて、実権を握りました。そして、平和的に抵抗運動をしている市民を武力で弾圧し、人権じゅうりんを行っています。

 実は、私、一九九五年から六年にかけて、自宅軟禁から一時的に解放されたアウン・サン・スー・チーさんの自宅前で行われたいわゆる対話集会に四回ほど参加しまして、そこで彼女のスピーチを聞きました。彼女はマハトマ・ガンジーに大変な憧れを持っていて、ガンジーの非暴力不服従運動、決して暴力に対して服従しない、しかし暴力に訴えない、こういった運動をミャンマーにおいても展開して民主主義を実現していきましょうと熱く訴えていました。

 そして、クーデターの後の民衆の抵抗運動も本当にすばらしいモラルで、決して暴力に訴えることがないデモであったんですが、残念ながら、国際社会は動かなかった。一番期待していた日本、七六%の方々が日本に期待していると言われていたにもかかわらず、日本も効果的に動くことができなくて、やむなく少数民族武装勢力との戦いに身を投じているというのが現状であると考えています。

 ミャンマーの現状に対する認識、どのように現状を把握しているのか、そして、どのように特に民主化勢力と連携していくのか、この点についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

岩屋国務大臣 ミャンマー情勢については、委員もお詳しいと思いますが、昨年十月以降、各地に紛争が拡大をして、ミャンマー国軍は多くの拠点を失っており、ミャンマー情勢は更に混迷を来しているというふうに認識をしております。

 我が国は、クーデター以降、ミャンマー国軍に対しては、暴力の即時停止、被拘束者の解放、民主的な政治体制の早期回復について具体的な行動を取るよう、一貫して求めてきております。引き続き、ASEANにおけるミャンマー問題への取組とも密接に連携して、事態の打開に向けて取り組んでいく考えでございます。

 様々な情報の収集、分析を行っておりますが、詳細については控えさせていただきたいと思います。

阪口委員 私は、ミャンマーにおいては、いわゆる民主化勢力の側で様々な活動を行ってきたんですが、彼らが、これはアウン・サン・スー・チーさんも含めて言うには、日本政府の対応が一貫して非常に冷淡であるということなんですね。

 ですから、今、戦いにおいて、今大臣がおっしゃられたように、国軍が非常に追い詰められている、民主化勢力が攻勢に出ているという中で、民主化勢力を代表する国民統一政府を含んだ側との密接なコミュニケーション、彼らの思いをしっかりと受け止める、そういう体制を是非つくっていただいて、そして、選挙において国民の民意を得たその勢力とともにしっかりとミャンマーの民主化を実現する、そのための力をかしていく、こういう外交であってほしいと思います。

堀内委員長 質疑時間が経過しておりますので。

阪口委員 そうですね。もう終了したと思うので、もし大臣、何か一言ございましたら。

堀内委員長 では、簡潔にお願いいたします。

岩屋国務大臣 御指摘を踏まえて、ミャンマーに一日も早く平和と安定が戻るように全力を尽くしてまいりたいと思います。

阪口委員 ありがとうございました。

堀内委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十六分散会


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