衆議院

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第4号 平成28年12月13日(火曜日)

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平成二十八年十二月十三日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 北村 茂男君

   理事 江藤  拓君 理事 小泉進次郎君

   理事 斎藤 洋明君 理事 福田 達夫君

   理事 宮腰 光寛君 理事 岸本 周平君

   理事 小山 展弘君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    伊東 良孝君

      伊藤信太郎君    池田 道孝君

      小里 泰弘君    岡下 昌平君

      加藤 寛治君    勝沼 栄明君

      笹川 博義君    瀬戸 隆一君

      高橋ひなこ君    武部  新君

      長尾  敬君    西川 公也君

      古川  康君    古田 圭一君

      細田 健一君    前川  恵君

      宮川 典子君    宮路 拓馬君

      森山  裕君    簗  和生君

      山本  拓君    渡辺 孝一君

      岡本 充功君    金子 恵美君

      佐々木隆博君    重徳 和彦君

      宮崎 岳志君    村岡 敏英君

      中川 康洋君    真山 祐一君

      斉藤 和子君    畠山 和也君

      吉田 豊史君    仲里 利信君

    …………………………………

   農林水産大臣       山本 有二君

   内閣府副大臣       松本 洋平君

   農林水産副大臣      齋藤  健君

   農林水産大臣政務官    細田 健一君

   政府参考人

   (内閣府規制改革推進室次長)           刀禰 俊哉君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 飯田 圭哉君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         山口 英彰君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         水田 正和君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)       西郷 正道君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           今城 健晴君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  枝元 真徹君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  大澤  誠君

   政府参考人

   (水産庁長官)      佐藤 一雄君

   農林水産委員会専門員   石上  智君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月十三日

 辞任         補欠選任

  笹川 博義君     青山 周平君

  中川 郁子君     高橋ひなこ君

  前川  恵君     長尾  敬君

  宮路 拓馬君     古田 圭一君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     笹川 博義君

  高橋ひなこ君     岡下 昌平君

  長尾  敬君     前川  恵君

  古田 圭一君     宮路 拓馬君

同日

 辞任         補欠選任

  岡下 昌平君     宮川 典子君

同日

 辞任         補欠選任

  宮川 典子君     中川 郁子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件(畜産問題等)

 平成二十九年度畜産物価格等に関する件


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     ――――◇―――――

北村委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官山口英彰君、大臣官房総括審議官水田正和君、大臣官房技術総括審議官西郷正道君、消費・安全局長今城健晴君、生産局長枝元真徹君、経営局長大澤誠君、水産庁長官佐藤一雄君、内閣府規制改革推進室次長刀禰俊哉君、外務省大臣官房審議官飯田圭哉君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

北村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

北村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。笹川博義君。

笹川委員 皆さん、おはようございます。

 きょうは、トップバッターで質問の機会を与えていただきまして、大変ありがとうございました。

 きょうは、特に畜産についての質問ということでさせていただきたいというふうに思っております。

 もちろん、私の群馬県の地元においても、大変それぞれ、畜産、盛んにやっておられます。自民党のキャラバン、さらには地元農家の皆さん、それぞれ交流する、また意見を交換する、それぞれの場がありました。

 しかし、それぞれの農家の皆さん方の御意見は、やはり厳しいものがあるというふうに思っております。その厳しい御意見、やはり政府に対する期待ということもあろうかというふうに思っております。その期待に対してどう応えていくか、政治がどう応えていくかということが今まさに問われているということだというふうに思います。

 特に、我が国の場合は、右肩上がりの時代から、大変少子高齢化の中で、これから国内市場の動向がどう進んでいくのか、さらには、中国の台頭も含めて、世界の市場についても大きな変化が起きております。その中で、我々の畜産農家がどう立ち向かっていくのかということであります。そこが大変大きな課題としてあるわけでありますので、そういう意味において、幾つか政府に対しての御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 特に、畜産農家につきましては、近年、大きな災害これあり、家畜伝染病についてもこれあり、さらには、店頭の小売価格、生産コスト、後継者不足。きょうは、朝八時から外国人の労働者の問題も取り上げてまいりましたが、この労働力不足。まさに三重苦、四重苦、大変厳しい環境であります。

 この中で、農林水産業、この政治のトップであります農水大臣として、この厳しい状況に対して的確な考えと認識を持つことは大変大事なことであります。特に、近年にないこの厳しい状況について、農水行政のトップとしての大臣の御認識、御所見をまずお伺いさせていただきたいというふうに思います。

山本(有)国務大臣 委員おっしゃるとおり、過酷な環境になっております。

 特に、畜産、酪農につきまして、酪農における後継牛の減少、これが生乳生産量の伸び悩みにつながっておりますし、肉用牛の生産における繁殖雌牛の減少が子牛価格の高騰につながっております。こうした生産基盤の弱体化につながる問題について、大変な課題であると認識しております。

 このため、雌の性判別の精液あるいは受精卵、そういったものを活用した乳用後継牛の確保、あるいは繁殖雌牛の増頭や導入に対する奨励金の交付、畜産クラスター事業を活用して、子牛の育成部門を外部化して、地域内一貫体制の構築を可能とするためのキャトル・ブリーディング・ステーションの整備、こういったものの支援を講じているところでございますが、多少明かりが見えてまいりましたのは、繁殖雌牛の頭数が平成二十八年に六年ぶりに増加に転じております。また、生乳生産量は二十七年度に三年ぶりに増産に転じているなど、回復の兆しとも思える数字も見受けられるわけでございます。

 今後とも、畜産、酪農の生産基盤強化に向けまして、各般の施策を強力に展開してまいる所存でございます。

笹川委員 ありがとうございました。

 次の、後の質問にもかかわってくるお答えでもあったのかなというふうに思いますが、そのときにまた申し上げたいと思います。

 大臣、それぞれの農水省としての施策について、評価される部分、そしてまた非常に厳しい御意見のある部分を含めて、もう少し、個々の地域に対する施策展開も必要でありますが、国家として、畜産と言われるものの戦略性をしっかりと構築してやっていかなければならないというふうに思うんですね。そういうところは、やはりまだまだ過去の農水の政策から脱却ができていないんじゃないのかなという思いを私は持っておりまして、特に地元の農家の人に、やはりもう少し、明るい展望とは何ですかというところは、売り先は拡大できるのだということを示さなければならない。国内市場に対して明るい展望が見えたとしても、では中長期に見てどうなんですかということになれば、それは決して明るいものではない。ではどこの市場と連結してやっていくんですかということになるわけですので、そこら辺のところをしっかり示すことが大事だというふうに思います。

 さて、続きまして、今、子牛の高騰などによるコスト上昇ということが大きな現場での課題になっておりまして、TPP対策も含めてなんでありますが、この厳しい現況を考えれば、肉用牛の肥育経営や養豚経営の赤字を一部補填するマルキンでの補填率、この引き上げ、拡充を求める声というのは、それぞれ、私も地元でも非常に強いというふうに思いますし、恐らく各代議士の先生方も、地元へ行けば、そういう強い要望というものを日常茶飯事のように耳にするというふうに思うわけでありますので、この補填率について、今後についての御所見をぜひお聞かせいただければと思います。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 牛、豚のマルキンにつきましては、先週の九日、参議院の本会議におきまして、マルキンを含むTPP整備法が承認、成立したところでございます。

 農林省といたしましては、昨年十一月に政府全体の方針として決定いたしました総合的なTPP関連政策大綱を踏まえまして、農林水産業の体質強化を引き続き推進するとともに、TPP協定の発効に伴い必要となりますマルキンの補填割合の引き上げなど、経営安定対策の実施に向けた準備にも万全を期してまいりたいと存じます。

笹川委員 TPPについてはそれぞれ評価はあるでしょう。しかし、TPPがなくなったという前提で物を考えるよりは、TPPがあるということを前提としてやらなければ後手後手になることはもう自明の理でありますので、その点についてはそれで結構だと思うのですけれども、しかし、今冒頭申し上げたとおり、TPPだけじゃなくて、それがなかったとしても大変厳しい状況であることには変わりはない。その中で、支えていく制度の充実、拡充を目指すのは当然のことでありますので、その現場の声をしっかり受けとめて、これからもぜひ施策の展開に当たっていただきたい、これは強く要望させていただきたいというふうに思います。

 続きまして、畜産を支えるこれからの大きな柱であります飼料米、さらに土地改良事業、これは直接、間接的なものでありますが、各自治体やJA、さらには農家は、この飼料米については作付の調整、多収米の選定など努力しておられます。しかし、これも地元では飼料米の政策についてまだまだ疑心暗鬼の声が聞かれます。

 畜産の国際的競争力の向上や自給率向上のためには、やはり国産飼料の拡大は欠かすことのできない要件でありますので、特にこの飼料米制度、ようやくの状態でありますので、そういう意味では、水田活用直接支払交付金も含めて、さらには土地改良事業、これは、いずれにいたしましても、水田の活用、さらには生産効率のアップについてしっかりとやっていかなきゃならない。この農業農村整備事業の財源確保、この二つは至上命題というふうに考えますが、これについての御所見をお伺いします。

細田大臣政務官 ありがとうございます。

 私の地元も米どころ新潟でございまして、その意味で、先生御指摘のとおり、水田活用の直接支払交付金の予算の確保を求める声は非常に強いものがございます。

 この直接支払交付金については、昨年三月に閣議決定された食料・農業・農村基本計画において、まず、飼料米など戦略作物の生産努力目標を策定いたしまして、これは平成三十七年産百十万トンという目標を掲げております。その上で、引用いたしますが、水田活用の直接支払交付金による支援などにより、生産性を向上させ本作化を推進するというふうに明確に位置づけを行っております。これは閣議決定された文書でございますので、財務当局を含めた政府全体の方針であるというふうに御理解をいただきたいと思っております。

 私ども農林水産省としては、今後とも、戦略作物の本作化の推進に向け必要な予算を確保するために全力を尽くしてまいりますが、笹川先生を初めとする諸先生方の御支援もぜひよろしくお願いいたします。

笹川委員 とにかく、財務当局とのしっかりとした取り組みをしてください。我々もしっかり後押しをさせていただきます。やはりこの飼料米制度について誤った発信をしてはならないし、農家の皆さん方をさらに疑心暗鬼に陥らせることは絶対にしてはならないというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 さらには、畜産、酪農競争力の強化について、生産拡大について、実は各地域の全農さんも含めてさまざまな取り組みがあるわけですね。こういう取り組みについてであります。今後とも、ひとつ政府として、やはり世界市場を目指すのであるならば、単に地域だけの取り組みを支えていくのがいいのか、もう少し大きな戦略を持って、もっと面的な大きな政策展開というのが必要なんじゃないのかというふうに思いますが、その辺のところの積極的な支援について、今後についての御所見をお聞かせください。

齋藤副大臣 笹川委員御案内のように、今、日本の畜産をめぐる状況において、各地でいろいろな不安の声が上がっているのは現実だろうと思っております。一方で、先ほど申し上げたように、畜産についても日本の国内でしっかり生産基盤を維持していくということは非常に重要な課題だと思っておりますし、さらにつけ加えれば、これから輸出に向けて、特に和牛を中心に可能性が広がっていくということでありますので、そういう意味では、農林水産省としては、重要な畜産政策の位置づけの中で全力で取り組んでいきたいと考えております。

笹川委員 ありがとうございました。

 今、和牛ということでありますが、しかし、中国、東南アジア等で考えれば、もう完全に豚肉については中国は輸出から輸入国ということでありますので、やはりそういう市場が変化したことに対して日本がどう取り組んでいくかということが大きな課題であります。

 そういう意味では、畜産、酪農の政策価格というのは大変重要であります。農家に対して再生産の意欲を鼓舞するものでなければならない。その視点を欠いての決定は絶対によろしくないというふうに思いますので、再生産の意欲を鼓舞する、その辺につきましての御所見をお聞かせください。

山本(有)国務大臣 おっしゃるとおり、畜産物の行政価格については、それぞれの根拠法令に基づいて毎年度決定されるところでございます。

 まず、加工原料乳生産者補給金の単価及び交付対象数量、また指定食肉、豚肉や牛肉の安定基準価格及び安定上位価格、そして、肉用子牛の保証基準価格及び合理化目標価格を定めております。

 これらにつきまして、各法律に基づいて、その再生産を確保することを旨として定めることとされておりますし、二十九年度畜産物価格につきましても、ルールに基づいて算定の上、生産者の方々を初めとした現場の声も踏まえつつ、食料・農業・農村政策審議会の意見を聞いて適切に決定してまいりたいと思いますが、意欲を鼓舞するような政策価格を目指していきたいというように思っております。

笹川委員 改めて、農家の皆さん方の再生産の意欲を鼓舞することができる、そういう結果になりますことを心より御期待と、強く要望いたしまして、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

北村委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久でございます。

 きょうは、農林水産関係の基本施策に関する件ということで、特に畜産問題等ということで質疑をさせていただくことになりました。

 早速質問に入らせていただきます。

 まず、本題に入ります前に、鳥インフルエンザの対策についてお伺いをしておきたいと思います。

 今シーズン、例年になく早い段階で、野鳥においては全国的に、また家禽においても、これまで発生のなかった青森県とか新潟県とか、ここでも鳥インフルエンザの発生が確認をされている。こうした中で、まず一つは、農林水産省として迅速な対応をしていただいたということで、ここは私は評価をさせていただきたいと思います。

 ただ、その上で、農林水産省として、農家の方々への働きかけ、特に早期の通報の徹底ですとか、それから、もう一方で、農家の方々が安心してその通報を行えるように、殺処分になった場合、その対象となる家禽に対する手当の財源については十分確保していますよ、そうしたことをぜひ強く発信していただいて、十分なその財源確保を示していただきたいということ、ぜひきょうのこの質疑の中でもお話をいただければと思っています。

 それから、もう一方で、風評被害について、これも防止対策をしっかり講じていただきたい、このように思っているわけでございまして、まずは、この鳥インフルエンザ対策について所見をいただきたいと思います。

山本(有)国務大臣 御指摘のように、今シーズンは、高病原性鳥インフルエンザの我が国への侵入リスクが非常に高くなっております。このため、農林水産省としましては、海外での発生状況を把握いたしまして、注意喚起をするとともに、空港や港で消毒マットを用いて靴底消毒、あるいは検疫探知犬等によりまして徹底した水際検疫を実施しているところでございます。

 鳥インフルエンザの蔓延防止に当たりましては、早期の発見、通報及び迅速的確な初動対応が重要でございます。本年も、シーズンに先立ちまして、飼養家禽の異状の早期発見、通報を農家に徹底していただけますように都道府県に改めて求めたところでございます。

 御指摘の手当金でございます。

 鳥インフルエンザによる損失、収入減等に対しまして、現行予算の枠内で対応するということにしておりますけれども、万々が一今後予算が不足するという場合には予備費で対応するというように、政府として万全を期してまいる所存でございます。

 また、風評被害でございます。

 風評被害の防止、これは大事でございまして、生産者、消費者、流通業者等への正確な情報提供が欠かせないところでございますが、鶏肉または鶏卵を食べることにより鳥インフルエンザが人に感染する可能性はないとする食品安全委員会の考え方をまずは周知させなければなりません。消費者庁はホームページを通じて消費者等にお知らせする、あるいは、農林水産省は正しい知識を普及するための通知を業界団体に発出したところでもございます。

 さらには、小売店舗におきまして風評被害を惹起させかねないような表示がなされていないか、今地方農政局等による調査を行っておりまして、不適切な表示が確認された場合には改善等を要求しているところでございます。

 引き続き、県、関係府省庁と連携いたしまして、早期通報の徹底や風評被害の予防など、全力を挙げてまいりたいと思っております。

 以上です。

稲津委員 ありがとうございました。ぜひ万全の対策を引き続き講じていただけるよう、よろしくお願いいたします。

 次に、加工原料乳の補給金について数点お伺いしたいと思っていますが、まず、平成二十九年度の補給金の単価については、一つは需給調整機能、これがしっかり発揮できるということを大前提にして、やはり、生産者の方々にとっては再生産可能となるようなそうした単価水準、そういう意味では二桁の単価水準をぜひともいただきたい、こう思っております。また、交付の対象数量についても、三用途全量を対象に設定をしていただくということが何よりも必要なことでございます。

 私は、きょうここでお伺いしたいのは、まず一点目は、生産費の算定についてお伺いをしておきたいと思います。

 この生産費のところについては、一つは副産物のことなんですけれども、生産コストについて、これは制度創設当時から、副産物に係る経費を含む生産費総額から副産物収入を除いた全算入生産費を算定に用いてきている、こういうふうになっています。

 ところが、もう一方で、もう御案内のとおりですけれども、近年の子牛価格の高騰、これはもう平成十年、十一年次に比べるとホルスタインの雄牛でも二・五倍ぐらいになっているということ、これをどう配慮していただけるのかということが最も重要な点の一つです。

 それからもう一点は、家族労働費をどう見るかということ。これは、生産費の調査の中では、実態に即したものになるようということで、製造業の五人以上の事業所の労賃単価に置きかえる等の評価を実施した、このように承知をしております。

 問題は、この飼育の戸数がどんどんどんどん減少してきている、それから頭数も減少傾向で来ておりますけれども、もう一方で、一戸当たりの経産牛の飼育頭数は増加傾向で推移しているということです。こうなってきますと、生産者の方の労働単価、労賃単価をどう見るか。拘束時間も当然長くなってきている。これはもう調査の上ではっきりしていますので、ここをしっかり対応していただきたい。

 もちろん、フリーストールとか搾乳ロボットとかTMRセンターとかそういうのはありますけれども、これはこれでしっかりやっていただくとともに、この労賃のところをしっかり反映したものにならなきゃいけない、こう思っていまして、この点についての御答弁をいただきたいと思います。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘をいただきましたとおり、加工原料乳生産者補給金単価の算定におきまして、生産者の方々から、一つは、子牛の販売価格は用いる期間を長くするべきではないか、二点目としては、家族労働費については、酪農が長時間労働や休日出勤などが常態化している、そういう状態も考慮すべきであるという御意見をいただいているところでございます。

 いずれにいたしましても、新たな算定方式やこれに基づく補給金単価等につきましては、今後、これら現場の御意見も踏まえながら、食料・農業・農村政策審議会の意見も聞きながら、適切に決定してまいりたいと存じます。

稲津委員 それと、もう一点、このことに関連して申し上げますと、液状乳製品の制度対象による予算確保ということが一つ言えます。

 今回、生クリーム等についても補給金の対象になるということで、これは大変喜ばしいことなんですけれども、一方で、総額の予算が前年プラスできちんと確保できるのかという、そうした不安の声も一部あります。そういう意味では、ぜひ予算の上積みが必要だ、このように強く思っておりますが、この点についてはどうでしょうか。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 加工原料乳の生産者補給金につきましては、今御指摘ございましたとおり、二十九年度から生クリーム等の液状乳製品を対象に追加するとともに、補給金の単価を一本化することといたしております。

 今お話ございました補給金全体の所要額につきましては、新たな算定方式におきます単価と交付対象数量、これにより決まることとなりますので、今後、食料・農業・農村政策審議会の意見も聞きながら適切に決定してまいりたいと存じます。

稲津委員 今御答弁いただきましたけれども、適切に対応していきたいということで、今、きょうここで質疑させていただいたことを、しっかり単価あるいは予算において反映をしていただきたいということを強く望んでおきたいと思います。

 結局、何を言っているかというと、現場の実態にしっかり即した、そういうことをきちんと判断していただきたいということなんです。酪農家の投資を促すような単価水準にしていかなければ、当然これは再生産につながっていきませんし、現場の農家の方々の経営に対する意欲とか、あるいは将来に向けての設計ですとか、そうしたことに直接反映していきますので、まさに将来の投資につながる、そういう観点でぜひ御検討をいただきたいと思います。

 それで、もう一点、肉用牛の繁殖雌牛のことについて一点お伺いしておきたいと思います。

 先ほども質疑、答弁がございましたけれども、肉用牛の繁殖雌牛の頭数、これは平成二十二年ごろをピークに減少傾向がずっと続いてきた。それで、二十八年は久方ぶりに増加に転じたということで、ここはいろいろな対策がじわりときいてきているのかな、功を奏してきているのかなと思います。ただ、しかし、これが単年度に終わらないで、ふえていくということをしっかりこれからさらに対策を強化していかなければいけないだろう、こう思っています。

 もちろん、農水省の方としても、CBSとかCSとか、それから乳用牛への和牛の受精卵の移植技術ですとか、こうしたものを活用していただいております。その上で、この生産基盤強化に向けた取り組み、考え方、このことについて改めてお示しをいただきたいと思います。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘いただきましたとおり、肉用子牛の価格が高騰しております中、繁殖雌牛の増頭は大変重要な課題でございます。子牛の育成部門を外部化して増頭を可能とするためのキャトルステーションの整備、また、優良な繁殖雌牛の増頭や導入に対する奨励金の交付、さらに、乳用牛への和牛受精卵移植技術を活用した肉用子牛の生産への支援など、さまざまな施策に取り組んでございます。

 御指摘ございましたとおり、平成二十八年、五十八万九千頭と繁殖雌牛頭数は六年ぶりに増加に転じ、回復の兆しも見え始めておりますけれども、この動きが確固たるものとなるように、引き続き努力してまいりたいと存じます。

稲津委員 時間になりましたので以上で終わらせていただきますけれども、もう一点、発言だけ許しをいただきたいと思いますが、現場からは、畜産クラスターの着実な前進ということも要望を強くいただいているところでございます。これは、非常に畜産クラスターについては評価をする声があります。ただ、もう一方で、いわゆる地域の家族経営の方々の意欲をどう喚起していくのかという視点に立てば、畜産クラスター事業に家族経営型、こういうものも創設していただきたいという声もございます。

 きょうはそういうことで酪畜の対策について求めてまいりましたが、もう一度、加工原料乳の補給金については、生産者の方々の再生産につながる、そして将来に向けての投資につながっていく、そういう単価をぜひ設定していただきますとともに、予算の拡充を強く求めまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

北村委員長 次に、小山展弘君。

小山委員 民進党の小山展弘です。

 それでは、早速質問させていただきたいと思います。

 まず最初に、きょうは酪農、畜産に関係することということではありますけれども、それにも関連もするんですが、マスコミ等でも、きょうも日本農業新聞一面に書かれておりますが、日欧EPAについて伺いたいと思います。

 これは、十二月の三日ぐらいの新聞ですと年内妥結というようなことも出ておりましたが、今、妥結は難しくても大筋合意だと。何かTPPのまねをしているみたいですけれども、そういうことで、進捗次第ではクリスマス前に閣僚折衝も行うんだ、そういった報道も出ております。

 また、一部の報道では、農産物についてTPPと同水準の市場開放あるいはそれ以上の市場開放をさせられるおそれがあるというようなことも出ております。特に豚肉、乳製品、まさにきょう議論されている内容ですけれども、TPP以上に譲歩するんじゃないかと。

 あるいは、与党の先生方の中でも、TPP以上のことをすることによって今後再交渉を迫られるのではないかというような大変な懸念をする声もあるということも報道で伺っております。日本とEUでは農産物や自動車の関税でかなり隔たりもあるけれども、日本側の方が政治的成果を示すということにこだわって急いでいるということも書かれております。

 TPPがだめだったから、だから外交的成果を焦っているというふうにも感じられるわけですけれども、政権の実績づくり、見えっ張りのために国益を損ねるような拙速な交渉はしていただきたくない。

 また、これまで、TPP、農協法の改正、農協の経済事業改革といったようなことで、農家の人たちは大変、これまで数年間不安にさいなまれてきたわけであります。私は、これ以上もう農家の皆様を不安にさせるような不透明な状況をつくるのはやめていただきたいと思っておりますけれども、この日欧EPAの交渉の現状と今後の見通しについて伺いたいと思います。

飯田政府参考人 お答えいたします。

 世界で今、いろいろな保護主義的な動きが広がっているところでございますけれども、そういう中で、主要なマーケットの一つでありますEU、また基本的価値を共有するEUとの間で本年中に、今いろいろ報道がございますが、EPAの大枠について合意したいということを考えているところでございます。この点につきましては、日本とEUの首脳間の間で累次にわたり確認をしているところでございます。

 交渉の現状につきましては、現在EU側と鋭意交渉中でございますので、内容について言及することについては差し控えさせていただきたいんですけれども、日本とEUの双方の関心分野を踏まえ、また、この点重要でございますが、お互いのセンシティビティーに十分配慮しつつ、そういうことを踏まえまして、国益を十分に踏まえた観点から、日本にとって最善の結果を追求してまいりたいというふうに思っております。

 また、外務省だけでなくて、当然農林水産省も含めてでございますけれども、関係省庁間でやはり緊密に連携をしていくことが重要というふうに思っておりまして、先月には主要閣僚会議の開催を閣議決定いたしております。そういう意味では、政府一丸となって、しっかり体制をつくって交渉を進めてまいりたいというふうに思っているところでございます。

小山委員 飯田大臣官房審議官にもう一つ伺いたいんですが、大筋合意した場合には一定の情報公開というのは行うんですよね。

飯田政府参考人 今後の情報開示については、御指摘や御懸念を十分留意しつつ、今後の交渉の推移を踏まえ、これは相手側ともいろいろ協議をしていかないとと思いますけれども、節目節目で、適切な形で情報提供に努めてまいりたい、この点重要であるというふうに十分認識しております。

小山委員 TPPのときにもなかなか情報が出てこない、そういった中でも、民主党政権のときにはかなり分厚い資料を、二〇一二年、二〇一一年に出てきております。山田正彦農水大臣のTPPに関する著作の中でも、ここまでのものはもう出てこないかもしれないというような記述がありましたが、ぜひ、これは国民生活に大きな影響も与えますので、でき得る限り情報開示をして、正々堂々と議論を行って、反対する人がいれば、いや、こういうメリットがあるんだから、反対に対しても、こういう対策をするんだから、だからどうかこれはやっていきたいというようなことで、正々堂々と情報開示をもう少ししていただきたいと思います。

 それともう一つ、私、地元の街頭演説なんかでは言っているんですけれども、TPPに反対したからといって、これは保護貿易だということではないんですね。我々は、我々と言うとあれですね、私はTPP反対ですけれども、現状維持だと思っています。

 保護貿易の動きが強まっている、保護貿易というのは、今まで以上に関税を高めていこうとか、今あるものを壊してもうやめてしまおう、こういうことだと思いますので、現状維持というのは保護貿易とか保護主義ではないと僕は思っています。今十分に自由貿易だと思っているんですね。ですから、何かそのことでも、現状維持をするということがイコール保護貿易であるかのようなことで考えてしまうというのは、ちょっと私は、これは行き過ぎというか、かえって事実を踏まえないということでもあると思います。

 また、行き過ぎた市場統合、突っ走り過ぎたことがかえって格差とかさまざまな問題をこの域内に、ちょっといい言葉がないんですが、まき散らしてしまって、その問題解決ができなくてそういった保護貿易的な動きが確かに世界的には出ているところもあるわけですから、私は、余り市場統合とかこういったものを急ぎ過ぎないということも、今の時代を考えたとき大事な視点ではないかなと思っております。

 それでは、次の質問に移りたいと思いますが、オバマ大統領が任期中にTPP承認を断念いたしまして、トランプ次期大統領も、現状、TPPからの離脱意向を示しておられる。TPPの発効は大変困難な情勢になっていると思います。もしトランプ次期大統領が今後心変わりをしたとしても、相当な交渉の延期、再交渉といったようなことまで考えられております。

 一方で、先ほど笹川議員の質問の中にもありましたけれども、TPPと関係なく、今の国内制度をさらに一層整備をして、畜産農家の方々初め農家の方々の不安を取り除いて、希望を持てる農政を展開していくというのは大事な視点だと思っております。その姿勢のところは共有するものでありますが、だからこそ我々は、民進党は、マルキン制度の法制度化について、TPP対策と切り離してやっていくべきじゃないかということを提案させていただいております。

 このTPPの将来が、発効がかなり現状困難な情勢になっている中で、このマルキンについては、農家の期待に応えて、TPP関連法案と切り離して、早期に法制度化の実行、実現をすべきだと考えますが、いかがでしょうか。

齋藤副大臣 この牛・豚マルキンの制度拡充につきましては、昨年十一月に、これからTPPが発効するという前提のもとに、関税が段階的に下がっていく、そうしますと、経営の不安定化あるいは農家の方々の不安が出てくるでしょうということで、経営を安定化させるための措置として私ども考えておりまして、委員御案内のように、補填割合を八割から九割に引き上げるですとか、豚マルキンの場合の国庫負担水準を引き上げるとか、そういう対策を経営安定のための対策として講じようとしたところでございます。

 今、TPPの将来がどうなるか不安定化が増しているという中で、TPPが発効しなくてもやるべきではないかという小山委員の御意見については私もわからないわけではないんですけれども、ただ、この措置は、あくまでも経営の安定のためのTPP発効のもとでの措置として考えておりますので、御理解をいただきたいなと思っております。

小山委員 わからぬこともないと御答弁をいただきました。ありがとうございます。

 先ほどの笹川委員の姿勢のところで、具体的なところはちょっと違うテーマでしたけれども、これはぜひ検討していただきたいので、財務当局との交渉があろうかと思いますけれども、ぜひこれは、与野党、ある意味一つの目標に向かって取り組むというようなこともできればいいなというふうにも思っております。ぜひ、法制度化について前向きに御検討を継続していただきたいと思います。

 それと、きょうは加工原料乳生産者補給金制度の補給金単価についてということもテーマでございますけれども、今回のこれも実はTPP対策でやっておりますが、協定発効に先立って実施ということですけれども、協定が発効しなくても実施ということで、これは継続して今後もやっていただけるものじゃないかと思っておりますが、これについても、特に通告はしておりませんが、協定がもし雲散霧消してしまっても、今後もきょうのテーマになっているこの補給金単価の制度変更については継続をしていただきたいと思っております。

 この現行の補給金制度を、十一月に議論のあった規制改革推進会議や与党の議論を受けてどのような制度にしていくのか。いろいろ言われておりますけれども、需給調整が本当にできるんだろうか、あるいは指定生乳生産者団体ではないアウトサイダーの方々による場当たり的な利用といったようなことも大変懸念されております。

 この生産者団体のインサイダーの、中にいる農家の人たちが不利益をこうむるような、そういう制度設計にしては絶対ならないと思うんですけれども、現在のこの検討状況についてお伺いをしたいと思います。

齋藤副大臣 今回政府として決定させていただきました農業競争力強化プログラムにおきましては、生産者が出荷先等を自由に選べるようにするという観点を入れまして、指定団体に出荷する生産者のみに補給金を交付するという制度を改めて、一つは指定団体以外に出荷した生産者にも補給金を交付する、二つ目は全量委託だけでなく部分委託でも補給金を交付するという制度に改革をするというふうにされたところでございます。

 ただ、この制度検討に当たりましては、補給金の交付対象に関して、年間の販売計画の仕組みが、飲用向けと乳製品向けの調整の実効性がきちんと担保できるものとしなければいけない、それからもう一つ、部分委託に関しましても、現場の生産者が不公平感を感じないように、また、よく言われるように、場当たり的利用を認めないようなルール等とすること、それからさらには、条件不利地域対策につきましては、条件不利地域の生産者の生乳が確実に集乳をされて、不利な生産条件を補えるものとすること、これらにつきまして考慮するということになっております。

 農林水産省としても、小山委員の御懸念は十分理解できますので、こういった考慮事項を踏まえまして、次期通常国会への法案提出を念頭に置きまして、早急に基本スキームの検討を行って、関係者の意見もしっかりと伺って、十分な調整をしてまいりたいと考えております。

小山委員 今もまだ検討中ということで、具体的な答弁ということではなかったかと思いますけれども、ここの懸念のところは大変共有するところでもあります。

 私は、本当にこの制度自体を変える必要があったんだろうかということも含めて、正直、ここのところは変える必要もないのではないかというようなことも考えておりますけれども、これはお決めになられたことですので、ぜひこういった懸念事項が顕在化することがないように検討を進めていただきたいと思いますし、また、これは、来年、通常国会、解散がなければということかと。まあ解散があっても、生き残ってまた来たいと思っておりますけれども、また議論させていただければと思っております。

 次に、肉牛の子牛生産について伺っていきたいと思います。

 九州で口蹄疫が発生をいたしまして、大変不幸なことでございましたが、子牛の繁殖農家数が非常に激減をしまして、当時も、支援を受けてそのまま、やはり支援は受けたけれども経営継続できないということで廃業をされた、そういう方々もいらっしゃるわけであります。そういったこともあって、子牛価格も大変高値で推移をして、子牛の頭数も非常に少ないということで、これが肥育農家の経営も大変圧迫をいたしております。

 そこで、多くは、今の体制の中では、繁殖農家が子牛を生産して肥育農家が肥育をするという一定の分担、これは当然、それぞれの技術があるわけですから、そういう分担がなされてはおりますけれども、しかし、子牛が非常に少ないという現状を鑑みて、肥育農家の中には、子牛の繁殖から肥育まで一貫生産をしていこうというような動きもあります。

 私も、このことは、その農家さん個々にも、ケース・バイ・ケースだとは思うんですけれども、農家さんにとってもこれはリスク分散になる。子牛の価格が今高かったり、あるいはまた、今後動向も変わってくると思いますので、リスク分散になるということと、今、子牛が少ないという現状におきまして、この子牛生産を加速させていくという観点からも、一貫生産の農家を奨励していくというか推進していくということは一つの対策ではないかなということも、そんな意見もいただいているんですけれども、例えば一貫生産農家に対しても支援をする、そういう制度の創設なんかも検討されてはいかがかと思いますが、どうでしょうか。

山本(有)国務大臣 おっしゃるとおり、肉用牛の経営の一貫化、これはぜひ進めてまいりたいというように思っております。子牛価格の変動リスク、これが軽減されます。大変なメリットでございます。

 平成二十七年三月に、酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針というものを策定いたしましたが、そこに、繁殖肥育一貫経営への移行を促進する、これを明示しております。

 生産現場におきましても、まず、大規模肥育経営、この方々には、市場価格の変動に左右されない肥育素牛を確保するという意味で、繁殖部門を取り入れるケースが現在ふえてきております。また、中小規模の経営をやっておいでる方々は、新たにキャトル・ブリーディング・ステーションという地域の肥育素牛供給の核となる施設を整備されておったりするわけでございます。

 そういうような取り組みが見られるわけでございますので、一貫経営がまだまだ主流とは言いがたいわけでございますけれども、農林水産省といたしましては、優良な繁殖雌牛の増頭や導入に対する奨励金の交付、また、繁殖雌牛の増頭に必要な畜舎の整備に対する支援、また、畜産クラスター事業を活用して、子牛の育成部門を外部化して、地域内一貫体制の構築を可能とするためのキャトル・ブリーディング・ステーション等の整備、こういったものを積極的に支援していこうというように考えておるところでございます。

小山委員 ありがとうございます。

 静岡というと、余り牛の銘柄、牛肉で有名ではないんですけれども、私の地元でも、夢咲牛とか掛川牛とかいって、結構品評会ではいい成績をとっていまして、そういう中でも、超大規模というような農家さんというよりも中小規模の農家さんになるのかなと思っておりますが、そういった一貫生産の声なんかもありまして、ぜひこれからも進めていただければと思っております。

 農協が単位となって繁殖雌牛を購入して、それを農家にリースして、あるいは貸して、その農家が子牛を生産する、政府はその利子補給の相当額を農協に対して支援するというような事業がございます。子牛頭数が少ない現状において、特に一貫生産農家の場合ですと、こういった農協が単位となる制度を利用しているんですけれども、自主的にもっと繁殖をしていきたいという場合に、利子補給にとどまらず、もう少し、農協に対してであってもあるいは農家に対してであっても支援の充実ができないだろうか、そういう声もありまして、私もこの子牛生産をさらにふやしていくというところから考えればそれは妥当な声ではないかなというふうにも思っているんですが、それについて政府の姿勢を伺いたいと思います。

細田大臣政務官 先生御指摘のとおり、さまざまな政策を組み合わせて実施することにより、子牛生産の拡大を図ることが大変重要であるというふうに考えております。

 このため、御指摘の、優良な繁殖雌牛の増頭や導入に対する奨励金の交付に加えまして、先ほど大臣からも御紹介がございました、乳用牛への和牛受精卵移植技術を活用した肉用子牛生産への支援でありますとか、あるいは放牧に供する繁殖雌牛の導入に対する支援などのソフト面での政策に加えて、畜舎やキャトルステーションなどのハード面の整備をあわせて推進し、肉用子牛生産の拡大を総合的に図っているところでございます。

 また、本年度補正予算におきまして、子牛の損耗防止を図るため、例えば子牛の健康状態を把握するための血液検査の実施に対する支援という措置も導入したところでございます。

 先ほど御紹介したとおり、繁殖雌牛頭数は平成二十八年に五十八万九千頭と六年ぶりに増加に転じ、回復の兆しが見え始めたところでございます。この動きが確固たるものとなるよう、農林水産省といたしまして引き続き努力をしてまいる所存でございます。

小山委員 酪農のことも少し伺いたいと思います。

 今、国は酪農ヘルパー事業というのを行っておりまして、これはヘルパーの人材育成とか雇用環境の改善にも寄与しまして、ヘルパー利用組合の経営にも大変資するものとなっていると思っております。

 この酪農ヘルパーについては、近年、今回政府の文書にも出ておりましたけれども、労働環境が大変厳しいということもあって人材が集まらないというような問題も生じておりまして、酪農家あるいは酪農業全体を支えるという観点からも、一層の制度の拡充、維持を求める声も上がっております。今回も少し制度の拡充もありますが、さらに制度の拡充というのはできないものかなと、酪農ヘルパー事業について、これについても伺いたいと思います。

細田大臣政務官 ありがとうございます。

 御指摘のとおり、酪農ヘルパーは、酪農家の休日確保やあるいは傷病時の経営継続に貢献するとともに、ヘルパー業務を通じた酪農後継者や新規就農者の育成といった役割も担っておりまして、酪農生産基盤の維持にとって極めて重要なものと認識をしております。

 このため、農畜産業振興機構におきまして、平成二十六年度から予算額を大幅に拡充した上で、ヘルパー要員の確保や育成、酪農家の傷病時におけるヘルパー利用の円滑化といった措置の支援を行っているところでございます。

 本事業の実施期間は、先生御存じのとおり、二十八年度、本年度で終了いたしますけれども、来年度以降の実施については、酪農関係者の声も踏まえ、酪農ヘルパー事業がより使いやすいものになった上できちんと実施されるよう、現在、財務当局を含めて折衝中でございまして、所要の予算の確保に私どもとしては全力で取り組んでまいりたい、こういうふうに考えております。

小山委員 ぜひ来年度もできれば制度を維持拡充していただいて、財務当局とTPP以上にしっかり交渉していただければと思っております。

 ここからは少し、先月話題になりました全農、農協改革のことについて質問をさせていただきたいと思います。実は、通告していてできなかった質問も結構ありまして、そういうのも、どうしてもちょっと確認もさせていただきたいこともありまして、お尋ねしたいと思うんです。

 まず、山本大臣に、先日、新聞記事でも、全農が改革について計画を策定するという意思を示したことについて山本大臣が評価をするということで記者会見をされたものが、私も報道で拝見、拝読をいたしましたけれども、今まで、菅官房長官も、全農の徹底した改革、あるいは安倍総理も、新しい組織に全農が変わるつもりで頑張っていただきたいとか、そういった発言がいろいろと相次いでおりまして、山本農水大臣御自身も、徹底した改革ということで発言をされております。

 山本大臣は、全農について、どういう組織、どういうあるべき組織、全農の姿といったものを描いていらっしゃるのか、答弁いただきたいと思います。

山本(有)国務大臣 そのあるべき姿について、農業競争力強化プログラムに明らかになったというように思っております。

 全農改革については、このプログラムで全農とも合意をさせていただいたということが大変重要だというように思っております。いわば勝手に第三者がその組織について強く意見を言うというだけでは、私は、本当の改革にならない、合意して初めてその実が伴うというように思っておりますので、この合意は、繰り返しますが、重要でございます。

 そこで、農業者の立場に立った、共同購入メリットを最大化するよう生産資材の買い方を改め、また、実需者、消費者への直接販売中心にシフトするよう農産物の売り方を改めるというようなことを通じて、生産者、農家所得が上がる、ひいては、さらには全農の収益も確保できるというような、そういう体制を理想とするというところでございます。

 全農におかれましては、こうした事業の見直しが最も効果が上がるような組織体制とすることが求められておるわけでございまして、具体的には、プログラムにありますとおり、購買事業につきましては、生産資材メーカーと的確に交渉できる少数精鋭のシンプルな組織に転換する、あるいは販売事業につきましては、実需者、消費者へ農産物を安定的に販売することを基本とする強力な販売体制を構築するというようなことが求められておりますし、全農の方々からは、輸出についても新しい人材を確保して、新しい事業を展開していくというような決意も聞いておるところでございます。

 いずれにしましても、自己改革というようなことが中心にこれからは進んでいくだろうというように思っております。

小山委員 当初の質問通告をした、二十八日のさまざまな政府・与党での決定の前に、本当は、山本大臣御自身がどうお考えかということをお尋ねして、そのタイミングの方がもっとお答えしやすかったのかなともある意味思うところもあるんですけれども、今までの全農の取り組みについて、あるいは経済事業を営んできた全農の取り組みについて、これまでの歴史についてどのように評価するか、お尋ねしたいと思います。

 全農も、系統三段階から系統二段階ということで、各県連、経済連、もちろん経済連の方がやりやすいという県域については経済連が残っているところもありますけれども、かなりこれは統合して改革をしてきたという側面もあろうかと思っております。

 各県連の経済連の中で子会社をつくったり、あるいは、中には、そういった中で、いろいろ経営に課題を抱えていたところも統合して子会社の整理もしたりして、これは、いわゆるグループ全体の会計ということで考えれば相当財務体質も改善されてきた、トータルで考えればそういうところもあろうかと思っておりますが、これまでの取り組みについてぜひ評価をお尋ねしたいと思います。

山本(有)国務大臣 全農はこれまでも、おっしゃるとおり、かなり内部改革を進めてこられました。特に、組織について二段階、これを求めて、平成十年から十六年、この六年間で三十六経済連と統合するということになりました。また、子会社も整理をいただきました。また、財務につきましても、連結ベースの人件費を削減いただきました。こういうような御努力に対しては高く評価をしております。

 また、農協系統の農産物販売や生産資材の購入につきまして、取り扱いのシェアは大きく低下してきておりまして、農業者、特に担い手農業者のニーズに十分に応えられているかどうかということに対しては多少疑問があるように思っております。

 したがって、全農におかれましても、農産物の販売力の強化、あるいは農業競争力強化プログラムに沿って自己改革、こういうことを進めていただければ、農業者ニーズに応えて、また農業者のメリットをふやすことによって、かえって全農が収益が上がっていくということにつながるように思っております。

小山委員 これまでの取り組みについても高く評価をするという大臣からの答弁は、これまで取り組んできた職員には非常に心に響くものがあろうかと思います。済みません、ちょっと気持ちが高ぶってしまいまして。

 確かに、どんな組織でも改革が必要ないということはありませんので、そういったところは、ぜひ現場の声も聞いていただきながら、そしてまた、これまでの経緯も踏まえてこれからも取り組んでいただきたいと思っております。

 それと、農水省と内閣府の両方にお尋ねをしたいと思いますが、農協改革について、国やあるいは規制改革推進会議もフォローアップをするという表明をしておりますけれども、このフォローアップの対象となるのは何なのか。どこまでもフォローアップという言葉の中でまたいろいろと新たなことで指摘をされるんじゃないか、系統からすると、介入がされるんじゃないか、そういう心配があるわけです。

 例えば農業新聞にも、私どもの党での部会の勉強会のときに発言が出たことについて、信用事業や共済事業、組勘もこのフォローアップの対象として今後検証されていく、そういうことが記事として出ておりますけれども、このフォローアップの範囲、対象についてお尋ねをしたいと思います。

松本副大臣 お答えをいたします。

 今般、十一月二十八日に規制改革推進会議が公表をいたしました農協改革に関する意見、これの中には信用事業や共済事業については明示がされていないところであります。

 他方、本意見の中におきまして、規制改革推進会議も農協組織の改革の実施状況につきまして引き続きフォローアップを行うという記述をさせていただいているところであります。

 この中身でありますけれども、これまでさまざまな場面でなされた議論の中で指摘されてきた農協改革に関する諸課題について幅広くフォローアップを行うことになると考えているところであります。

小山委員 今、内閣府と農水省と両方お尋ねしたいということで伺いましたので、山本大臣、お願いします。

山本(有)国務大臣 まず、原理原則論でございますが、農業競争力強化プログラムにおきまして、全農の自己改革、年次計画、そして数値目標、こういったものが発表されておるわけでございまして、与党及び政府、そのことを定期的なフォローアップの対象とするというように考えております。

 もっと具体的に申し上げれば、信用事業の譲渡につきましては、代理店スキームを活用するということを既に二十六年六月の政府・与党の取りまとめで方向性が示されました。しかし、これにつきましては、単協みずからの選択でありまして、自己改革の中でやっていただきたいというように思っております。

 また、組勘についても御質問がありましたが、一般に、農協に販売する旨が約定書に定められておりまして、農協を利用しない販売がしづらいという指摘があります。また、毎年精算のため、一年間で出荷に至らない畜産農家などには利用しづらいというような問題点の改善、これにつきまして、北海道の農協中央会、北海道信連、これにおきまして、この問題点の共有が図られました。そこでこれは、これまた自己改革の進捗を待つということになりました。

 そして、共済事業でございます。この共済事業は、二十六年六月の取りまとめで、全共連は単位農協の共済事業の事務負担を軽くするような改善策を早急に示すものとするというこれまた方向性が出されておりまして、全共連におきまして、契約申し込み手続のペーパーレス化、キャッシュレス化等に着手していただいております。

 農林水産省としましては、こうした努力また自己改革の成果を見詰めてまいりたいというように思っております。

小山委員 今お二人、松本副大臣と山本大臣のお話の中で、信用事業や共済事業も、特に信用事業の譲渡については、今回の意見の中からは削除されたけれども、フォローアップの対象となるということでお話がありまして、信用事業については二十六年のお話が、今、山本大臣からありましたが、もともとは、再編強化法のときには、農協の信用事業がもし不振になった場合には、これは隣の地域で、農協で合併していくというのが大前提だったと思うんですね。

 ただ、その地域合併によってこの信用事業を安定ならしめるということが不可能なケース、隣も経営が悪いとか、あるいは今後人口が減少していくことが予想される中で厳しくなっていく、そういう場合に、万やむを得ざる対応として信農連への、あるいは信農連がない県域においては農林中金、こういうことだったと思うんですが、この信用事業の譲渡が促進する方向では本来はなかったはずなんですね。

 ここのところが、信用事業、むしろこの代理店方式によってどんどん進めていくというふうに大変大きく方針が変わったんではないかなと思っているんですけれども、あくまでも、大臣からのお話もあったとおり、各単位農協の現場の状況、現場の意見というものを最大限尊重して、地域合併が本来の筋なんだ、さらに言えば、単協で頑張っていくというのが本当の本来の信用事業のあり方だと思いますので、そこは積極的に代理店を推進するということではないということではないかなと思っております。

 それと、済みません、時間も迫ってきたので最後に一点だけ、規制改革推進会議のことでお尋ねしたいんです。

 十一月二十八日についても十一月十一日についても、発表された意見というものの取りまとめの案文というのは、これはどのタイミングで各委員の方がごらんになったのか。そしてまた、この意見は、内閣府の職員さんなのか、どなたが案文を作成されたのか。手渡しされたのは会議の直前なのか、どこかの時点でメールなんかで配信されていて、事前に確認して委員の方がごらんになられたのか。これについてお尋ねしたいと思います。

刀禰政府参考人 お答えいたします。

 規制改革推進会議の農業ワーキング・グループにおきまして意見を取りまとめる過程におきまして、座長の指示に基づいて案文が作成されておりますが、その際には、会議における委員間での議論に加えて、委員、専門委員の関心等に応じたさまざまなやりとりが行われているものと承知をしております。

 会議につきましては、当日の議論を充実させる観点から、通常、所属のメンバーに対しまして会議開催前に配付資料を送付しておりまして、今般の意見についても同様でございます。

小山委員 実はもうちょっと、時間が来てしまったのでもうこれで終わりにさせていただきたいと思いますが、誰が作成をしたのか。

 今も、委員長の指示で作成をしたということだったので、これは多分、内閣府の職員ということなんでしょうか。それとも、どうも、規制改革会議の会議録を見ておりますと、そこで十分に検討されていないようなことが意見でぽんと出てくる。もちろん、意見で出す以上は全員がごらんになられているんでしょうけれども、直前にごらんになられているとすると、では、誰か会議の中で議論していないことを書いている第三のライターがいるのではないかという懸念があるんですね。そういったことももう少し詳しくここはお尋ねをしたかったんですが、時間も参りましたので。

 それと、今まで質問で、松本副大臣が先回りしてお答えいただいた買い取り販売の十一月十七日の質問のときのことでもう少し実は質問をしたかったんですが、どうも次の宮崎委員が買い取り販売のことはいっぱい質問していただけるようですので、その宮崎委員に任せまして、私の質問は終わらせていただきたいと思います。

北村委員長 次に、宮崎岳志君。

宮崎(岳)委員 民進党の宮崎岳志でございます。

 まず、質問をさせていただきます。どうもよろしくお願いします。

 山本大臣、今回私は、質問通告と質問の組み立て、順番等を多少変えております。中身は変わりません。冒頭、笹川委員の質問に対してもちょっと質問と答弁が食い違っている部分もございましたので、よく聞いていただいて、聞いていただいてお答えいただければ通告どおりですので、よろしくお願いいたします。

 さて、まず最初に、加工原料乳の生産者補給金についてお伺いをしたいと思います。手元の資料だと二ページ目になります。

 加工原料乳生産者補給金の対象に、これまでのチーズやバター等に加えて、液状乳製品、いわゆる生クリームを追加されるとのことであります。これは政府のTPP政策大綱に盛り込まれておりましたが、TPPの発効を待たずに先行実施をされるということであります。この政策の目的はどのようなものか。また、なぜこれだけTPP発効を待たずに先行実施するのかということについてお伺いしたい。

 また、加えて、この二ページのところにありますけれども、チーズやバター、脱脂粉乳等にこれまで補給金が出ていた、これが生クリーム等に拡大されるということですから、総額がもしふえない場合は、一個一個のものが薄まってしまいます。そうすると、これまでどおりチーズやバター向けに出荷する農家にとって実質的な収入低下になりかねないということなので、拡大分に応じた予算総額の上積みというのが必要になってくるということだと思うんですが、その予算の上積みというのを実施するお気持ちがあるのかどうか。これについてもあわせてお伺いをいたします。お願いします。

山本(有)国務大臣 加工原料乳生産者補給金、これは、御指摘のように、二十九年度から生クリームも対象に追加する、そして補給金単価を一本化するということとしております。

 この見直しの目的や状況ですが、乳製品向けの生乳の中で将来的な需要の伸びが期待できる生クリームの供給、これを確保するために補給金の対象といたしました。また、単価を一本化する、これによりまして、乳製品ごとの需要に応じた柔軟な生乳供給の促進と酪農家の収益性の増加を図りたいというように思っております。

 これによりまして、我が国の酪農経営の競争力強化、牛乳・乳製品の安定供給、この二つがかなえられるのではないか、こう考えております。

 このように、今回の見直しというのは、酪農の基本政策として、今後も需要の伸び等が期待できる生クリーム等への生産転換を図るべく必要なものであるということから、総合的なTPP関連政策大綱におきまして、協定の発効に先立って、準備が整い次第実施するとされたところでございます。

 なお、補給金全体の所要額につきましてでございますが、新たな算定方式による単価と交付対象数量、これによって決まることとなります。したがいまして、今後、食料・農業・農村政策審議会の意見をいただきながら、適切に決定してまいる所存でございます。

宮崎(岳)委員 この補給金の単価は当然コスト等に基づいて決定をされるというふうになっているはずでございますので、それは予算の所要額とは必ずしもリンクしないわけですね、予算が減ったからコストが下がるというわけではありませんから。ですから、きちんとここについては予算を確保するということが必要だ。

 加えて、こういう補給金をもらえる人ともらえない人がいるというのもおかしな話でありますので、もちろん全てではないにしろ、そういう政策を導入するのであれば、十分な予算的な裏づけをとっていただきたいということをお願いしたいと存じます。

 さて、次ですが、マルキンについて伺います。

 加工原料乳の生産者補給金の拡大というのは、TPPの発効を待たずに行われる。牛、豚のマルキンは、基本的にTPPの発効まで行わないということになっております。

 先日、農水大臣も、私の質問に対して、TPPが発効しない限り行わない、行わないんだけれども、絶対に行わないかと言われれば、それはそうとは限らない、こういうような趣旨の答弁をされたと思います。

 もし、このマルキンがTPPによって発生する損害の賠償である、そういう趣旨であれば、TPPが発効するまでやりません、こういうことはわかるんですね。ただ、これが競争力強化になるんだということであれば、これは、TPPが発効しようがしまいが、やるべきはずであります。

 なぜなら、将来的にTPPが発効するとして、その準備をして競争力を高めておくということは当然必要ですし、TPPじゃなくても、ほかの経済連携協定とか二国間協定とかそういうことがあっても、事前に備えておくということは必要ですし、なくても、いわゆる自給率の向上とか輸出拡大ということにつながるわけですね。ということは、もしこれが競争力の強化につながるのであれば、今すぐにでもやるべきだということになると思います。

 そもそもマルキンというのは、現在、予算措置で行っておりまして、法律的な裏づけはございません。今回法制化するということですけれども、法律がなくてもできるということでありますので、もしこれが本当に競争力強化という意味で効果があるというふうにお考えであれば、すぐにでもやっていただきたいと思うんですが、お考えをお伺いできますでしょうか。

山本(有)国務大臣 牛・豚マルキン、これは、昨年の十一月に政府全体で決めさせていただきました総合的なTPP関連政策大綱に基づいて、法制化した上で、補填割合を八割から九割、豚マルキンの国庫負担水準を国一、生産者一から、国三、生産者一に引き上げるという内容でございます。

 おっしゃるとおり、競争力の強化あるいは体質の強化というような側面も見られるかもしれませんが、あくまで、TPP協定による関税削減という過酷な事態、この過酷な事態に対して、仮に国内産の牛肉、豚肉の価格低下、こういったことが生じた場合にも長期にわたって経営が図られるよう、そのために工夫された措置であるという理解でございます。

 したがいまして、実際にその影響があらわれるのは協定発効日からでございますので、その意味で、これは協定発効日から実施するというように位置づけさせていただきました。

 おっしゃるように、予算でございます。法制化がなくても、今現在、八割できておるわけでございまして、その意味におきましては、さまざまな影響やさまざまな農家実態、そういったものに左右される話ではあるということを前置きさせていただきたいと思います。

宮崎(岳)委員 TPPで肉の値段が下がる、これに対応する措置であるということももちろんわかるんですけれども、競争力の強化ということにつながるのであれば、やはりすぐにでも実施していただきたいということをお願い申し上げます。

 さて、続きまして、今般の農業競争力強化プログラムについてお伺いをしたいと思うんです。

 このプログラムによれば、農家と全農との農産物取引について、現行は主力が無条件委託販売でありますが、買い取り販売への転換を図るべきだというふうにされております。在庫リスクを農家ではなく全農が負う、それによって有利に販売するモチベーションを持たせる、そういう面もないとは言いません。そういう面もあるとは思います。

 しかし、リスクをとれば高いリターンを求めるというのは当然の話であります。安く買って高く売る、利幅を確保するということで、発生し得る不慮のリスクに備える、こういうことが経済学上もごく基本的な原理だと思うんですね。

 そこで、まず今回の無条件委託販売から買い取り販売への転換ということに関連して、今、全農の取引で、米でありますとか野菜でありますとかそういう品目別に無条件委託販売の割合というのはどの程度になっているのか、また、買い取り販売と無条件委託販売において、全農がとっている利ざや、利幅、利益率、そういったものはどのように違うのかということについてお示し願えますでしょうか。

山本(有)国務大臣 平成二十六事業年度において、農協の農産物総販売額に占めます買い取り販売の割合は四%でございます。それ以外の販売、いわゆる受託販売の割合は九六%でございます。

 御指摘の農協の販売事業における利益率が何を意味するかということは定かではありませんけれども、農協の買い取り販売額の粗収益率、これを見てまいりますと、販売額と原価の差額が販売額のどの程度を占めるかの割合、約一二%でございます。買い取りのときの利益は結構大きいというところでございます。農協の受託手数料、いわゆる委託販売における利益は三%でございます。かえって買い取りした方が農協の利益が高いということになっております。少なくとも、現状では買い取り販売の方が逆に農協に有利になっているわけでございます。

 次に、買い取り販売への移行を進めようとするならば品目別に割合を把握しろという話を頂戴しました。

 全農が安定的な取引先の確保を通じた委託販売から買い取り販売へ転換を取り組むに当たっては、各品目ごとにどのような戦略を立てて買い取り販売に臨んでいくか、これは十分に検討が必要でございますが、これにつきましては、同プログラムのフォローアップの中で、全農や農協と相互に意見交換をしながらフォローアップや検証をしてまいりたいというように思っております。

宮崎(岳)委員 私、品目ごとに無条件委託販売の割合がどの程度なのか、あるいは買い取り販売の割合がどの程度なのか、それを把握していないでよくここまで議論を進めてきたなという気がいたします。

 例えば、米と野菜と肉と花卉、そういうものでは商品としての性質も全然違いますよね。それなのに、ざっくり全体では九六%ですよと言って、品目ごとに無条件委託販売がどの程度なのかわからなければ、現状にどのような問題があるのか、あるいは買い取りに切りかえた場合にどのような問題が発生するのか、影響が発生するのか、それすら分析ができないということになります。

 そのような基本的な数字を現段階でも押さえていないというのは驚くべきことで、こんな雑な議論は私はしてはいけないと思います。これについては厳しく苦言を呈しておきたいというふうに思います。

 そして、先ほど御説明でもございました、無条件委託販売より買い取りの方が当然に全農の利幅は大きいということです。買い取りの場合は一二%の利幅が出ます。手数料の場合は三%である。

 私が用意しました資料の四枚目になりましょうか、これは、農林中金総研、農中総研の「調査と情報」という雑誌に、昨年でしょうか、出ているものでございます。尾高恵美主任研究員のレポート、「JAによる農産物買取販売の課題」というものです。二〇〇九年から二〇一三年まで、買い取り販売の粗利益の平均は一二%前後で推移し、委託販売手数料の平均値三・二%前後に比べて高いということがここに書かれております。右上にグラフがあるので一目瞭然かと思いますが、おおよそ四倍、先ほどの農水大臣の説明のとおりでありますが、買い取り販売の方が全農の粗利益というか収入は多くなるということです。

 そうすると、JAが頑張って農産物を多少有利に販売して販売量が拡大したとしても、買い取り販売に転換すると農家の収入が減る。経営的には売れ残りのリスク等がなくなって安定するかもしれませんが、収入自体は減るんじゃないかというふうに懸念されるわけですが、これらの懸念についてはどこまで検討されてこのプログラムをおつくりになったんでしょうか。

山本(有)国務大臣 おっしゃる、農家が逆に買い取り販売で利益を失うのではないかということでございますが、実需者、消費者へ農産物を安定的に販売する強力な販売体制を構築するということが、逆に、生産物に対する保管リスクを負う買い取り型の方がより強力に推進されるのではないか、つまり、今まである農協の、全農の販売先以上に開拓をしていただける期待感が持てるのではないかというように考えておりまして、その意味においては、農家リスクを、逆に、農家の進出における管理リスクを買い取りによって移転していただいて、さらには販売体制が強化を自動的にしていただけるというようなメリットがありますので、中長期的には確実に生産者メリットにつながるというように思っております。

宮崎(岳)委員 ちょっと、今のは頑張れば何とかなるという話だと思うんですね。

 国内においては、口に入れる人の数は決まっているわけですから、それは頑張れば効果は出ると思いますよ。しかし、全農がここまでシェアが高い状況になっているわけです。これが小さなシェアであれば、どんどん伸ばすということはできると思いますけれども、ここまでシェアが高くて、これ以上、販売によって販売額を上げていくというのは相当大変じゃないか。もちろん、外国にこれを輸出するということもありましょうけれども、これだって、国内での消費額に比べればわずかな額である。自給率もこれだけ低いという状況。

 そうすると、この買い取り販売への転換が農家収入の下落につながるということは、十分問題意識を持ちながら対応しなければならないというふうに思います。この点、ぜひ深刻に受けとめて考えていただきたいというふうに思います。

 次に、無条件委託販売から買い取り販売に転換した際の消費税のインボイス方式の適用対象となる、このことについてお伺いをしたいと思います。

 私、この点については財務金融委員会で実は質問をさせていただいております。そのときの図をちょっと直したものがここについておりますが、成立している消費税法に軽減税率制度が盛り込まれていて、税率の一〇%引き上げを受けて、インボイス制度が導入されます。

 インボイスを発行できるのは課税事業者のみです。免税事業者、これは売り上げ一千万円以下であれば免税でもいいということになっておりますが、こういった方々は消費税を自分では納めませんので、インボイスは発行できないということになります。インボイスを受け取らずに物を買った事業者というのは、前の人の分も余分に消費税を納めなければならない、こういう制度であります。そのため、インボイスを発行できない免税事業者が取引をしてもらえなくなる、これがいわゆる取引排除の問題です。

 資料の六番目、最後のページをごらんいただきたいんですが、表があります。これがどういうことが起こるかということを示しております。ちょっと間違いというか正確でない部分があるんですけれども、というのは、これは全て八%で計算してしまっています。本来であれば、農業資材等は一〇%が適用されるでしょうから、一〇%という額が正しくなる。上の表の一番上の列が消費税分四千円となっていますが、五千円ということが正しい、総額は五万五千円ということが正しいということになるんですが、そこはちょっと八%として統一させてもらって説明したいと思います。

 農家が、上の表でも下の表でも農家は真ん中です、課税業者である場合、インボイスを発行しますので、仕入れを五万円分行って、そして付加価値を五万円分つけて十万円にして全農の方に売ります、そして全農はそれを十五万円にして小売業者等にさらに売る、こういうことがあった場合、農家の側は、仕入れをするときに四千円分のインボイスを受け取るということですね。五万円に対して八%で四千円分のインボイスを受け取って、この四千円は既に納めていますよ、そして、全農に販売するときに、これが本体価格十万円で八千円分の消費税がつきますので十万八千円で売る、しかし、既に四千円分のインボイスを受け取っているので、この分は納めなくてよろしい、残り四千円分について自分が納めて、インボイスを全農に渡す、こういうことになるわけです。

 全農は、さらにそれを五万円の付加価値をつけて十五万円で転売するときに、一万二千円の消費税分を乗せて十六万二千円の総額で販売をいたしますが、そのときに、一万二千円が消費税なんですけれども、既に八千円分のインボイスが手元にありますので、残り四千円を納めればいい、五万円が利益になる、こういうことです。

 もし、農家が免税事業者だった場合はどうか。先ほどと同じようになりますが、まず、仕入れのときにインボイスを受け取りません。受け取っても使わないんですけれども、いずれにせよ、受け取りません。そして自分も、売るときには当然消費税分を乗せて、十万円に八%分、十万八千円で全農に販売することになると思います。そうすると、消費税を自分では納めませんので、消費税分四千円分が、付加価値に対する消費税分が自分の利益になる、こういうことです。ですから、自分としての利益が上がる。

 しかし、それを買った方は、全農側はインボイスを受け取れません。インボイスを受け取れないと、本来であればそこまでに既に納められている分の消費税を自分で負担しなければならない。つまり、本来であれば、自分がつけた付加価値の五万円に対して消費税四千円を納めればいいところが、本体価格の総額である十五万円に対して消費税一万二千円を納めなければならない。そうすると、利益が、こちらの図にあるように、本来五万円確保されるべきところが四万二千円しか確保できない。ですから、免税事業者と取引しない。これが取引排除の仕組みであります。これについては、ちょっと迂遠になりましたけれども、こういうことが起こるということですね。

 この表の五枚目をごらんいただきたいんです。図があると思います。これも、財務金融委員会で提出したものをちょっと修正したものなんですが、では免税業者が取引できるのはどういうところなのか、こういう表です。これは麻生財務大臣も、非常によくできた図だということでお褒めをいただいたんですけれども。

 まず、農家が消費者に売る場合は、これはインボイスあるなし関係ありませんのでオーケー、消費者に直売する場合。

 それから、直売所を通す場合、これは複雑でありまして、直売所で買う人が消費者だったら、別にインボイスは必要ありませんからいいんですが、例えば近所の食堂のおやっさんとか居酒屋のオーナーとかラーメン屋のマスターとか、そういう方が自分の店で提供するために買いに来るときは、やはりインボイスがないと消費税をその分納めなきゃなりませんので、インボイスをくれということになりますので、基本的に事業者には売れないんです。

 そして、もちろん、例えば地元のスーパーやレストランに農家が、免税事業者が商品を出したい、あるいは商社や問屋に卸したい、そういうことになっても、これはインボイスが必要になりますので、免税事業者は買ってもらえないんですね。

 唯一例外、消費者を除けば唯一の例外というのは、市場における競り売り、それからJAを通じての無条件委託販売、こういうことになります。

 何でこの二つが例外となっているかというと、自分で値決めをしないからだと思うんですね。値決めをする権限が自分たちにないので税金のごまかしとかそういうこともできないということで、例外的にオーケーにされている。これは諸外国でもそのような措置をとっていると思うんです。

 そうすると、もしこの無条件委託販売を買い取り販売に移行した場合、免税事業者はインボイスを発行しなければならなくなります。つまり、全農に買ってもらえなくなるか、あるいは課税登録をしてちゃんと消費税を納める、自分がつけた付加価値分の消費税を納める、そしてきちんとインボイスを手元に集めて経理をする、こういうことが必要になるわけですね。

 二〇一〇年の農業センサスによると、全国の農家の八三%が売り上げ一千万円未満です。これは百三十七万戸に当たります。従事者でいうと恐らく四百万前後ということになるんだと思います。これらの大半が当然免税事業者です。

 私の地元群馬県でありますが、売り上げ一千万円以上の農家は一三%です。自家消費だけで販売していないというところも一四%ありますので、残り七三%が売り上げ一千万未満。この大半は免税事業者です。そうすると、群馬だけで二万三千戸になるんですね。

 もちろん、これらの農家が全部、課税登録をして、きちんとインボイスを集めて消費税を自分で納付して、きちんと帳簿をつけてということが全てできれば問題ない。

 財務省はこれをやれという話なんですよ。複数税率を導入する以上はインボイスを使うのが当たり前だから、全ての事業者に実質これをやれというのが財務省の立場で、麻生財務大臣の答弁もそういうものです。

 しかし、これは大変困難である。もちろん、やる気のある農家、若い農家、担い手、そういう方はできると思うんですが、高齢者だけで、おじいちゃん、おばあちゃんだけでやっているようなところが本当にこれに対応できるのか。これは大変困難であると思います。

 このような状況について、政府としてどう対応していくんでしょうか。

山本(有)国務大臣 複数税率における免税業者の取引排除、非常に詳しく、しかも適切な御指摘を頂戴しました。

 インボイス方式ということをもう一回おさらいしますと、売り手が税率ごとの消費税額及び適用税率などを記載した請求書を買い手である事業者に交付することにより、買い手である事業者がこの請求書の記載に従って仕入れ税額控除を行うことができる制度でございます。

 インボイス方式では、課税売り上げ一千万円以下の免税事業者は原則としてインボイスの発行ができないということとされておりまして、中小零細の農家は、御指摘のとおり一般に免税事業者に該当すると考えられますことから、そもそもインボイス方式に伴う事務負担はないものの、こうしたデメリットが発生するわけでございます。

 先ほど、翻って考えていきますと、JAの場合、委託販売ではこうしたデメリットが回避されるということでございますし、また、自己改革の中でも、委託販売が適切なものと買い取り販売が適切なものとそれぞれ分けながら、今の三%から向上させていくというような合意がございますので、その意味におきまして、各農家に負担感のないような形でこうした改革が進められるというようにフォローアップしてまいりたいというように思っております。

宮崎(岳)委員 つまり、ほとんどどうするかということは考えていらっしゃらないということだと思うんですね。

 これは私、ことしの二月だったと思いますが、財務金融委員会で質問したときも、実は農林水産省側はこの問題の発生というのを承知していなかったんです。財務省は知っていましたけれども。そもそも、もちろん、今回の買い取り販売への転換がなくても、例えば直売所での販売が制限されるとか、スーパーやレストラン、例えば地元の食堂に地元の食材を卸すというようなことが制限をされますので、影響はあったんです。

 ただ、もし、現行、全農の九六%を占めているという無条件委託販売のかなりの部分を買い取りに転換をすれば、それだけで恐らく本当に対応し切れないぐらいの大きな問題が発生する可能性がありますので、この買い取り販売への転換については、先ほどの質問の点も含めて、極めて慎重に取り扱わなくてはならないというふうに思いますので、この点はよく御認識をいただきたいというふうに思います。

 時間も大分なくなってまいりましたので、次の質問に参ります。

 農業競争力強化プログラムについてお伺いを引き続きいたしますが、このプログラムには、全農が外部からの人材登用を行うというふうに記されております。一口で外部からの人材登用と言っても、どういう人をどういう立場で起用するのかというのは非常に幅広い概念だと思います。トップや最高幹部に起用するということなのか、社外役員的な立場で人を入れるという話なのか、現場の職員として専門家を入れるという話なのか、あるいはアドバイザーや顧問のような形で入れるのか。

 どういう意味をこの文書は持っているのか。この文書だけでは判然としませんので、どのような役職にどのような方を起用するということを想定しているのか、農林水産大臣にお伺いしたいと思います。

山本(有)国務大臣 今回まとめられました農業競争力強化プログラム、この合意の中で、御指摘のように、人材について、これをメリット化するために外部人材を導入するという指摘がございます。こういう新しい試みにおきます対応、改革につきましては、外部から人を入れるということが一つの方法論として一般的に考えられるところでございます。

 しかし、全農におかれましては、こうした事業の見直しが最も効果が上がるような組織体制とすることが求められておりまして、その意味で、あえて申し上げれば、購買事業において、生産資材メーカーと的確に交渉できる少数精鋭のシンプルな組織に転換いただきたいな、それから、販売事業につきましては、実需者、消費者へ農産物を安定的に販売することを基本とする強力な販売体制を構築するというようなことを期待しておるわけでございます。

 外部からの人材、これを役職に登用するか、あるいはそのほかで活用されるかは自己改革にお任せしておるわけでございますが、以上述べたような事業、組織、こうした見直しの中で、おのずから外部人材が適切にワークするというように考えるところでございます。

宮崎(岳)委員 そうすると、私は、この文書を読んだときに、例えば全農なり各農協の幹部、理事、そういったところに外部人材を起用せよという意味なのかと思ったんですが、そういうことではなくして、例えば購買事業で資材メーカーや機械メーカーと交渉できる力のある人、つまりバイヤーですよね、バイヤーを入れるとか、販売事業で販売を強力にできる販売員、営業、そういった方を外部から入れるという話であって、現場レベルの話、あるいは現場のせいぜい管理職レベルの話、こういう意味でよろしいんですか。

山本(有)国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、自己改革の中で外部人材をどう活用するかは、役職に当たる人に登用するのか、あるいは現場で登用するのか、あるいは超技術的な分野、例えばインターネット販売を起こすときに必要なそういう技術を持った人を登用するのかというような、さまざまな考え方がありますので、それは自己改革の中に織り込んで、まずは全農の皆さんがお考えになっていただけるというように期待しておるところでございます。

宮崎(岳)委員 わかりました。

 つまり、最高幹部に起用しろとかそういう話ではなくて、それは御自分でお決めになってください、ただ、自分たちで、農林水産省側で想定しているのは、バイヤーとか営業とか、そういう部門の管理職とか、そういうレベルの方だったりインターネット販売の専門家だ、こういうことだということですね。あえて経営陣に入れろとかそういう話ではないということを確認させていただきました。

 続きまして、農業競争力強化プログラム、これについて引き続き伺いたいんです。

 資料の一ページ、これは政府の文書なんですが、クレジットが政党なんですね。これは私はいかがなものかというふうに正直思います。実質的な効力を与党の文書が持っているというのは当たり前の話ではあると思うんですが、法律的に、あるいは行政の立場で内容を精査されたものではない、これは与党の文書だから当然であります。そのものを正式の政府文書としてクレジットを残したままで入れるというのは、これは党と政府の混同ではないかというふうに思うんですね。これは政治主導とかそういうこととは別の問題です。

 党が政府の主要部分を構成するとか党組織と政府機関が融合して党が政府を直接指導するというのは、これはソビエト連邦の発想なんです。政治委員みたいな人を、細胞とかそういうものを党が各組織に送り込んで直接指導する、まあ、スターリン憲法の党の指導性というやつですね。こういうことは、やはり自由主義の国には私はなじまないと思うので、一定の節度を持ってやってもらいたいと思いますが、これは政府の見解を示していただくようにお願いします。

山本(有)国務大臣 ことしの十一月二十五日に与党におきまして取りまとめられた文書を、同月二十九日に農林水産業・地域の活力創造本部におきまして政府のプログラムとして決定いたしました。農林水産業・地域の活力創造プランの別紙としたものでございます。別紙には与党のクレジットがそのまま記載されております。

 与党のクレジットが入った文書がそのまま政府文書として取りまとめられましたという事案につきましては、平成二十六年六月の農協改革の際に、与党において取りまとめた文書を活力創造本部において取りまとめまして、それをそのまま活力創造プランの別紙とした例がございまして、今回もこの前例を踏襲したものでございます。

 政府といたしましては、活力創造本部で決定しました農業競争力強化プログラムの施策の実現に向けまして全力を挙げてまいる所存でありまして、与党の皆さんの政策立案プロセスを書いたものというように思っております。

宮崎(岳)委員 税調でも、政府税調と党税調はもちろん別なんですね。そこで出る文書も当然別なんですよ。与党の文書をそのまま取り込むというのは、私は変だと思います。

 そうすると、やはり内容的にも変なところが出てくるわけですよね。例えば、与党はフォローアップするという記事があるんですが、この与党というのは何ですか。

 もちろん、今は自民党と公明党だと思いますよ。でも、もしこの期間内に政権交代が起こったり連立の組みかえが起こったりしたら、その新しい与党はこの文書に縛られるんですかね。その与党を拘束するのは、どういう法的根拠で拘束をするんでしょうか。私は、こういったことは根本からやはり姿勢がおかしい。

 そして、前の農協改革でもそうだったんだというふうにおっしゃいましたけれども、自分の政権でやったことを前例として持ち出すのは、これは理屈にはなっていないと思います。もちろん、過去にもほかの例があったかもしれません。民主党政権でも絶対なかったとは、それはわかりませんけれども、やはりこういったことは、政府と党の立場というものはきちんと明確に分けるべきだと思います。

 そして、この文書の中で、全農が自己改革を進めよ、こういうことがあります。これはどのような法的根拠に基づくものであるのかということについて伺いたいと思います。行政学の世界では、行政作用として行政立法とか行政処分とか行政指導とかいろいろあるんですけれども、これは行政指導なんですか。何なんでしょうか。

山本(有)国務大臣 この全農との合意のプログラム、政府としましては、全農がこのプログラムに沿って自己改革を行うことを促すという立場であります。

 その法的根拠は、農林水産省設置法四条、農業協同組合その他の農林水産業者の協同組織の発達に関することに基づく行政指導ということになるわけでございます。

 なお、御指摘のような政権交代論もありますけれども、一般論で、政府としては、政策の実施に当たって、政権与党と十分相談、調整しながら事に当たっていく、そういう立場に立っていると御理解いただきたいと思います。

宮崎(岳)委員 時間となりましたので終わりますが、行政指導だとすれば、これは行政手続法三十二条、行政指導の内容はあくまでも相手側の任意の協力によってのみ実現をされる、そして、相手側が行政指導に従わなかったことを理由として不利益な取り扱いをしてはならないというふうにありますので、この条文をきちんと守っていただくようお願いをして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

北村委員長 次に、村岡敏英君。

村岡委員 秋田県出身、民進党の村岡敏英でございます。

 きょうは、質問させていただきますが、よろしくお願いいたします。

 通告していないんですが、大臣就任当時から、もうSBSは夢にまで出てくるように詳しくなっていると思いますので、SBSのことをお聞きしたいと思います。

 私と予算委員会でやりとりしたときに、大臣は、任意で調べられないと言っているわけだから、強制的にはできないと。任意ですから調べ切れない。私は、強制的にやるべきだということで、食糧法の中で、同法に基づく検査は難しいとの答弁を大臣は言いましたけれども、やるべきだと言いました。

 今回、十六日から再開するということになりましたが、どのような規制、規制といいますか、罰則規定を設けたのか、教えていただきたいと思います。

山本(有)国務大臣 SBS入札でございますが、九月七日に第一回入札を行いました。それ以降は行っておりません。十月七日に公表した輸入米に関する調査結果、国会審議等におきます議論を踏まえまして、SBS入札をより適切に行い、農業関係者等の不信感を生じないようにする観点から、SBS契約の内容の改善を講じた上で、このたび十二月十六日に入札を行うようにいたしました。

 このSBS契約の内容の改善措置といたしましては、SBSの基本要領を改正いたしまして、SBS契約の契約項目として、個々のSBS契約に関連して、輸入業者と買い受け業者及びその転売先との間で金銭のやりとりを行ってはならないことを明記いたしました。また、これに違反した場合には、SBS入札につきまして、資格の停止、取り消し等の措置を講ずることとしたわけでございます。

 今後、改正内容の周知徹底を図りまして、必要とあらば遵守状況を報告させることなどによりまして改善措置の実効性を担保しまして、SBS入札をより適切に運営してまいりたいというように思っております。

村岡委員 まあ、新聞記事、食糧法に基づき立入検査もしっかりすると、これは踏み込んでいただいたと思っています。

 しかしながら、調整金という名前じゃなければ、販促費だったりいろいろなことになればこれは調べ切れないというふうになると、やはりいろいろな疑問点が残りますから、ここはしっかりと、農家の方々が、やはりSBS米、あのように調整金があって、非常に国内の価格に影響があるという心配をされたわけですから、そこはしっかりとやっていただきたい、こう思っております。

 その中で、SBS米、TPPはもうどうなるか大変難しい状況だと思いますが、SBS米の十万トンと七万八千トン、これに関して、七百七十万トンの中では非常にパーセンテージが低い、だから、これは隔離して国内の中で国産米を備蓄すれば余り影響ない。私の方の認識は、業務用米の中で、二百五十万トンの中で、例えばこのSBS米は一〇%ぐらいしか入れないから二百万トンぐらいに影響があると、認識の違いがありました。

 今でも、七万八千トンは別にして、しっかりとした調整金をやれば影響はないという認識でよろしいですか。

山本(有)国務大臣 基本原則としましては、米価格は市場で決まりますが、その市場の大事な要因としては、品質と需給という二つの要因で決定されるというように思っております。

 したがいまして、グラフ等、もう既に御承知のとおり、国内産価格が低いときには十万トンにまで達することがなかった、そういう指標が出ているわけでございまして、我々としましては、SBS米によって、あるいは奨励金、促進費用あるいは調整金というような、当事者間のやりとりが米の価格に影響を持っているというようには考えておりません。

村岡委員 そこでなんですが、十万トンというのを、日本人の主食用米需要量というのが、一年間の米の年間消費量が約五十五キログラムとすると、十万トンが入ると、約百八十一万人がそこを食べているということになります。

 一方、畜産に行きます。

 畜産の中で、大臣にもTPPの中でもお聞きしたことがありましたが、今現在、国内では三十五万四千トン、海外から五十三万六千トン入ってきて、百万トンぐらいの需要があると。

 その中で考えたときに、例えばTPPが成立した場合、これからEPAが欧州となった場合、どういうふうになるかわかりませんが、だんだん伸びていく。その中で、日本は四千トンを目標にしています。四千トンというのは、先ほどのSBS米で、パーセンテージにしたら四千トンというのは非常に低い数字じゃないですか。

 SBSの場合は大してパーセンテージで影響ない、こういう答弁をされました。この四千トンというだけの目標で、国内の畜産農家、和牛農家、これは、確かに伸びていくのはいいです、この四千トンという数字で、海外から経済連携だとかいろいろなことが来て牛肉が入ってきたときに、この四千トンが、畜産農家に、安心してください、海外の市場はたくさんありますと、このような数字でしょうか。認識を教えてください。

山本(有)国務大臣 豚肉では価格調整の、またコンビネーションの輸入というような……(村岡委員「豚肉じゃないです。牛肉」と呼ぶ)牛肉。豚肉ではそういうものがあり、牛肉ではセーフガード等、そうした措置があり、しておりまして、我々としましては、この制度、仕組み、合意内容そして国内対策、これで畜産農家の方々が安心していただけるように、当面そうした施策で対応したいというように思っております。

村岡委員 畜産農家は、牛肉、セーフガードも一%ずつ上がっていけばこれは大変だ。その上、海外から入ってくる値段、これは関税が下がっていく。その中で、海外には八億人市場がある。それが目標で四千トンというのは、今売れているのが千トンぐらいだと思いますけれども、これは海外に牛肉で物すごい市場があるという言い方は過大じゃないでしょうか。和牛が伸びていくのはいいですよ。それはどう思われますか。過大だったと思いませんか。

山本(有)国務大臣 海外市場への輸出というのは、国内農林水産業の振興にとって極めて重要でございます。

 特に、牛肉につきまして御指摘ありましたが、我が国の和牛の品質は、海外諸国からも高く評価されております。今後の輸出市場の開拓のポテンシャルは大きいと考えておりまして、牛肉の輸出というのは、平成二十七年に百十億円、前年対比一三五%というようになっております。

 そうした考え方のもとに、輸出拡大は、積極的になされればさらに伸びていくだろう、こう考えておりまして、例えば、輸出先国によっては、HACCP対応など高度な衛生管理水準の整備を求められるケースもございます。

 これらの条件を満たす食肉衛生施設の整備、こういったものを支援させていただきまして、例えばでございますが、宮崎県、先駆的に牛肉輸出を開始されまして、現在、米国に高い輸出実績、宮崎牛は対米牛肉輸出の四割を現在占めておりますけれども、そうした事業者が、今後、さらにEUにも輸出先を拡大する、新たな施設整備を行うなどのような施策を支援していきたいというように思っておりまして、関係府省、団体、企業と連携して、平成三十一年の牛肉の輸出額二百五十億円、この目標を達成したいというように思っておりますので、ぜひそうした輸出についての分野の拡充をさせていただければというように思っております。

村岡委員 輸出していくのはいいことだと思っているんです。

 しかしながら、これはいろいろな、牛肉の生産者、畜産農家の方々に過大な期待を与えるんじゃなくて、しっかりと着実に再生産できる、そして海外には少しずつ伸びていく、そういう状況なんです。それを八億人市場でどんどん売れていくような形のことを言われるから、それは違うんだ。

 やはり日本の牛肉のおいしさをわかっていますし、そして海外でもわかり始めています。しかし、現実には、オーストラリアの和牛というのは、三十万トンを畜産で生育させて、それを世界に売っているんです。そっちの和牛の方が、物すごい量、世界の中で定着している。その中に入り込んでいくときには時間がかかるんだという認識の中でいろいろな対策をしないと、夢物語ばかり語っていては、農家の方々はやはり信じないんですよ。

 そこの部分をしっかりと対策の中でやっていただきたい、こう思いますけれども、副大臣、どうですか。

齋藤副大臣 畜産農家のこれからの状況を考えたときには、御案内のように、輸入に対する経営安定措置も必要ですし、競争力をつけるための体質強化も必要です、それから輸出もやっていくということで、これらをトータルで皆さん方の不安に応えていくということだと思います。

 輸出については、今御指摘のとおり一朝一夕でふえていくものではないと思っておりますが、一方で、和食ブーム、世界にありますし、世界の需要は非常に大きいわけでありますから、そこに大変であってもチャレンジをしていくということが重要な政策課題ではないかと考えております。

村岡委員 そこは、やはり過大な期待じゃなくて着実に伸ばしていく、その中で国内の畜産農家の方々をやはり守っていかなければいけない、そして成長産業に行くということをしっかりやっていただきたい、こう思っております。

 大臣なんかは、例えば「いきなり!ステーキ」という店を知っているかどうかわかりませんが、行ったことないでしょうね、きっと。(齋藤副大臣「あります」と呼ぶ)ありますか、齋藤副大臣は。

 ここでも実は和牛はあるんですけれども、和牛じゃなくて、日本人も赤身を食べる人たちが多くなってきている、こういう状況があって、そして逆にオーストラリア和牛は霜降りが結構出てきている。ですから、国際競争は非常に厳しいんだということはやはり認識しながら対策をとっていただきたい、こう思っております。

 次にですけれども、実は、農業改革ということの中で、規制改革推進会議から出たことに関して自民党が押し返したということで報道があります。

 しかし、根本的に考えると、実は、私が昨年の六月の農業改革のときに修正案を出して、自主的な取り組みを促進するという修正案が、与党も賛成して可決しました。そして、参議院まで行って、安倍総理大臣と並んで答弁者にもなって、自主的な取り組みを促進するということが法に記されています。

 なのに、この規制改革推進会議に対して、大臣はきちんとこの法律を言っていただけましたかね。自主的な取り組みを促進するが、促進じゃなくて阻害するみたいな形の意見が出てきたときに、しっかりと法を見てもらうようにしていただくと、それは法を改正しなきゃいけない。自主的な取り組み、そこはどう考えていらっしゃいますか、今後も。

山本(有)国務大臣 あくまで我々農林省の立場、大臣としての立場は、平成二十六年六月の政府・与党取りまとめ、これの立場に立って、農協改革集中推進期間、これを五年間と置いて、三十一年五月、ここに向けて自主改革そして自己改革を進めていただける。その中に、プログラムにありますとおり、生産資材の改革や、あるいは流通の改革、そういったものがはめ込んでありますので、これについてのフォローアップをさせていただきながら、三十一年五月、ここまで静かに見守りたいという立場でございますので、あえてそのための法律改正をするという必要はないと思っております。

村岡委員 法律改正をしろと言っているわけじゃなくて、自主的なことを促進すること、それを基本にして進めていただきたいということを言っていますので、お願いしたいと思います。

 そこで、この農業改革一連のことを見ていますと、農業者の方々は、多分与党の議員の人たちも、地元に帰ると、相当激しい怒りや、それから不安を聞いていると思うんです。

 去年の農業改革、その中で、農業委員会やいろいろなことが新しい取り組みをしています。そして、自主的な取り組みを農協もしています。そういう中でこの推進会議のものが出てきた。そしてTPPにも不安がまだまだある。TPPはどうなるかというのはこれから難しくなってきたと思いますが、今度はEPA。欧州とのEPAが大筋合意だ。もう何かどんどんどんどん攻め込まれているような形。

 この不安感に対して、一体農林省はどう考えているのかというのが全く見えてこないんです。いや、外務省が交渉しているから農林省はEPAのことを知らないといえば、そのとおりかもしれません。でも、知らないで、農家の人たちがいろいろな自主改革から何からいろいろな取り組みをしなきゃいけないときに、次々と来るこの新しい出来事に対して、農林省がしっかりと方針を示していないと私は思っているんですが、どのようにお答えですか。

山本(有)国務大臣 TPPにおきましても、政府全体として政策大綱、国内対策、そういったものを確立してまいりました。農林省だけでは、もう言うまでもなく、財政措置というものまではこれは及びません。

 そんな意味で、政府全体でこうした国と国との合意や交渉についてはやっていくべきものであろうというように思っております。

村岡委員 時間がなくなりましたけれども、与党の声も、農林部会から、これは新聞記事ですけれども、お名前は言いませんが、何の情報も与党にもない、国益をどこでとるのか、何の説明もない、こういう不満も出ています。さらには、TPPどころじゃない大きな影響が出るんだと。これは与党の議員さえ思っているわけですから、これを報道で農業新聞で伝えられると、我々ももちろん不安で、農家の人はもっと不安ですよ、政治家がわからないんですから。こういう状況の中で年末を今迎えるんですよ。そして、もし大筋合意となって出てきたときに、これは大きな影響があったときに、もう何の説明もなしにまた出てくる、そして、何の対策もこの場合は今やっていないはずです。これでいいんですか。

 このことは、この年末にこの大筋合意なりいろいろなことが出てくる可能性がある、そのときに何の情報も開示をしていない、そして何の対策もない、こういう状況で年末を、年を越せと言っているのは、農家の人たちは本当に不安だということをもう一度認識していただくことをお願いして、もう時間が参りましたのでやめますけれども、ぜひともお願いしたい、このように思っております。

 ありがとうございました。

北村委員長 次に、畠山和也君。

畠山委員 日本共産党の畠山和也です。

 本題に入る前に、水産庁に一問伺いたいことがあります。水産業共同利用施設復興整備事業について確認いたします。

 この事業は、東日本大震災で甚大な被害を受けた水産業の復興へ、水産業の共同施設や加工流通施設などの整備に国と市町村で八分の七を補助する仕組みになっています。そのような交付金事業です。中小企業庁のグループ補助金もそうですけれども、この事業も返済の時期を迎えてきている中で、震災前と比べて売り上げが戻っていない業者さんも少なくない中、返済猶予の声が上がっています。これは要望をしておきたいと思います。

 聞きたいのは、金融機関からこの業者さんなどが運転資金を調達する際に、この事業で整備した施設が担保となるのかどうかということです。

 石巻市で聞いた事業者からは、基本、八分の七が国費なので、補助残部分、つまり八分の一で、自分で投資したところでしか担保できないと聞いているということでした。ただでさえ、今述べたように販路が回復しておりませんし、サンマなども例年より小さくて、魚価も高くて、魚の確保にも苦労しているという実態を聞きました。その上に必要な運転資金を借りられないということになれば、返済どころか、経営への深刻な懸念も予想されます。

 そこで、補助とされているこの八分の七の部分は本当に担保とできないものだったのかどうか、この点を水産庁に確認したいと思います。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 今、畠山先生の方からお話ございました事業でございますが、国の補助事業等によりまして施設を整備した場合に、その施設を担保に供する場合については、これは補助金等適正化法に基づきまして、農林水産大臣による財産処分の承認が必要となっております。

 それで、この農林水産省の承認基準でございますが、従来は、補助目的の遂行に支障を及ぼさない観点から、最低限必要となりますいわゆる補助残融資の場合のみを認めていたところでございますが、平成二十五年十二月に当該基準を改正しまして、補助部分についても、補助目的の達成を図る観点から、事業の継続のために必要な運転資金の融資を受ける場合についても、本来の補助目的の遂行に影響を及ぼさないことを条件といたしまして、担保に供することを認めることとしたところでございます。

 今後とも、関係市町村から承認の申請があった場合には、この承認基準に沿いまして適切に対応してまいりたい、こんなふうに考えているところでございます。

畠山委員 今答弁がありましたように、きちんと申請がされて、大臣許可を受ければ可能であるという答弁です。今述べたように、現地は返済も含めて大変御苦労されている状況にありますので、この周知をさらに徹底していただきたいと思うんですね。必要な運転資金の確保には相当御苦労されています。

 ただ、こういう補助金で建てた設備をこのように担保とするには許可でやれますけれども、税金は容赦なくかかってくるということもありますので、私もこれはさらに調べて提起したいと思いますが、改善をぜひしていただければということを求めておきたいと思います。

 それで、本題である畜産、酪農に関して質問を行います。

 二〇〇八年度に配合飼料価格が上昇しました。このときに飲用向け、加工原料乳向けともに乳価の引き上げが実施されて以降、プール乳価は上昇基調で推移してきました。二〇一五年度ではキロ当たり百・八円という状況です。

 朝、議員会館の方に六日公表の農業経営統計が入っていまして、これも見てきましたが、一経営体当たりの農業粗収益及び農業所得とも増加しているんですね。

 乳価の上昇はもちろん酪農家にとって喜ばしいことではありますが、この同じ期間、二〇〇八年から二〇一五年の間に、乳用牛の飼養頭数は百五十三万三千頭から百三十七万一千頭へ十六万二千頭減少、マイナス一〇・六%となりました。同じように、飼養戸数は二万四千四百戸から一万七千七百戸と六千七百戸の減少、実にマイナス二七・五%という大幅な減少です。

 乳価は上昇してきているのに、必ずしも経営の安定や継続に結びついていない現状があるかと思いますが、この原因を、大臣の認識はどうかということを伺いたいと思います。

山本(有)国務大臣 まず、乳価上昇にもかかわらず離農が進行しているという点でございますが、酪農経営からの離脱要因に関する二十七年度調査というのを行いましたところ、高齢化、後継者問題が四〇・五%、これが最も多かったわけでございます。次に、経営者の事故、御病気等でございますが、一六・八%、他畜産部門への転換一二・三%、負債問題七・〇%、将来不安六・四%、こうした問題がのしかかり、離農が進行しているという調査の結果でございました。

 そして、飼養戸数、飼養頭数が減少しているという点でございます。この点につきましては、先ほど御指摘いたしました高齢化、後継者不足でこうした経営からの離脱が進行し、飼養戸数が減少しておりまして、これに伴い飼養頭数も減少しているというような状況になっているというように思っております。

畠山委員 経営のところにちょっと視点を当ててみますと、先ほど、朝いただいた統計で見ると、推計家計費は逆に減少しているんですね。ですから、一定の高乳価が安定して必要であることは間違いないですし、再生産可能な補給金単価になっていなかったのではないかということも考えられます。加えて、日豪EPA、TPP、そして日・EU・EPAなど将来不安を増すような現実を前に、後継者などについても、先行きが不透明ということを背景として減少が続いているのではないかと思います。

 そこで、内容に入りますが、加工原料乳生産者補給金の算定方式について、その見直しの中身を伺います。

 今回見直しでは、補給金の対象を生クリーム等まで拡大して、これまで加工品ごとに分かれていたものを、単価を一本化するということになります。その補給金単価算定方式の検討会を読みますと、見直しの初年度となる来年度については、加工原料乳の生産地域における、ここなんですね、生乳の再生産を確保するという観点から、生産コストと取引価格との差を埋める不足払いで行って、まずそれを基準にして、翌年度以降は今行っているようなコスト変動率の方式で行うなどの検討がされてきた。

 この再生産の確保がやはり重要な点だと思いますが、これは事務方で結構ですけれども、検討会でどのようにこの点は議論がされてきたか、紹介してください。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘ございましたとおり、補給金制度、二十九年度から制度対象に生クリーム等の液状乳製品を追加して補給金単価を一本化することとしておりまして、生産者また乳業、学識経験者等から構成されます補給金単価算定方式等検討会で御議論また御検討いただいてまいりました。

 御指摘がございました再生産の確保という観点からいたしますと、補給金の単価につきましては、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法第十一条の二におきまして、「生産される生乳の相当部分が加工原料乳であると認められる地域における生乳の再生産を確保することを旨として定める」というふうに規定されておりまして、同検討会におきましても、この法律の規定に則して、初年度単価につきましては、生産コストから乳製品向け乳価を引くということを基本として設定するということが確認されました。

畠山委員 初年度の設定において、かつてコスト変動率方式の前にやっていた不足払いの中身で基準をつくるということは、私は大事なことだと思うんですね。やはりそういう再生産できるだけの生産コストを賄うという基本的な考え方が必要だと思いますし、それを通じて、その検討会での委員からも、持続的な酪農経営を行うこと、つまり設備投資が可能な水準であるかどうかということを指摘もしているわけです。きちんと投資が引き続き行われるような設定が求められるわけです。

 そこで、先日、実際に十勝地方に私も行きましたが、酪農家から聞いたときに、きょうも議論に出ましたけれども、家族労働費について安いんじゃないかなという指摘は受けました。御存じのように三百六十五日働く酪農家で、その実態をしっかり算定してくれという要望ではあるんですが、つまり、生産コストの評価に当たって、これは実態にそぐわないということにならないかという声が多数あるんですね。

 これはちょっと大臣の方に確認したいんですが、家族労働費を単価の算定に当たって十分に踏まえる、こういう観点が必要だと思いますけれども、見解はいかがでしょうか。

山本(有)国務大臣 御指摘のとおり、家族労働費、これは、酪農が長時間労働あるいは休日出勤が常態化していることも十分考慮しなければなりません。

 新たな算定方式やこれに基づく補給金単価等につきましては、今後これらの現場の意見も踏まえて、食料・農業・農村政策審議会の意見も聞きながら適切に決定をしたいと思っております。

 家族労働費につきましては、これまでも、補給金単価の算定に牛乳生産費統計の結果をそのまま用いていくというのではなくて、酪農労働の質、強度、経営規模等に着目して、酪農経営の実態に即したものになるようにしなければなりません。そこで労賃単価を評価がえしてきたところでございますので、引き続き酪農の労働実態を踏まえた対応をして、統計の数字ではありますけれども、できるだけ高い単価を打ち出すような環境を整えたいというように思っております。

畠山委員 ぜひお願いしたいわけですけれども、酪農家に十勝で聞いたときに、ちょうど二十二歳だというヘルパーさんがいたんですよ。それで、いろいろなお宅をこうやって回れるから非常に勉強になるんだという前向きな意欲あるお話だったんですね。では、今後独立して頑張る気はあるのかいと聞いたところ、少し間があって、大変ですからねということをやはり一言言って、なかなかその先の言葉が出てこないんですね。非常に印象的でした。

 機械化とか外部化とか、いろいろな過重労働の解消は政府として推奨していますけれども、同時にやはり、先ほど冒頭に所得の問題を述べましたが、それに見合う収入をきちんと確保するということも大きなポイントだと思います。過重労働を解消しようとして機械化を進めて、それが負債の返済のため労働強化になったら、これぞもとのもくあみとなってしまうわけですから、十分な補給金単価となるよう改めて求めておきたいと思います。

 乳価の決定について、あわせて伺います。

 この間、北海道を中心に、根釧地域あるいは十勝を含めた家族経営の酪農家の皆さんのお話を聞いてきました。乳価がキロ百円を下回ってくると再生産がやはり難しくなるというお話で、ある酪農家は、乳価が五円下がれば夫婦二人の年間の生活費の方が全て消えるというお話でもありました。

 それで、改めて経過を調べましたけれども、二〇〇六年から二〇〇七年に飼料価格が高騰して、当時、平成の酪農危機と言われるほどとなって、乳業メーカーが一リットル当たり乳価を十円引き上げを行ったことがありました。その際、小売側が猛反発したという報道も当時のものを見受けました。

 それで、乳業メーカーと小売側、とりわけ量販店との価格交渉力の差をどうするかということは課題だと思います。量販店などの不公正取引については徹底した監視が必要であると思いますし、この点は求めておきたい。

 そこで、私が聞きたいのは、売り手側の方の価格交渉力の問題です。その強化が重要であるし、指定団体制度の役割という点でも改めて議論が必要だと思います。

 指定団体制度が乳価の交渉においても大きな役割を発揮していると思いますが、大臣の認識を伺います。

山本(有)国務大臣 現在、指定生乳生産者団体に指定されております農協、農協連は、農業協同組合法に基づき、スリム化、効率化、共同販売の実を上げる乳価交渉の強化、こうしたものを図りつつ、今後とも機能を適正に発揮するということが重要でございます。

 競争力強化プログラムにおきまして、補給金の制度改革とあわせて乳価交渉についても規定しておりまして、「真に生産者のためにあらゆる手段を尽くした交渉へと改革する。」あらゆる手段を尽くして交渉しろ、交渉経緯や結果についての生産者に対する説明責任を十分果たすように、透明性をここの価格交渉においては確保しなさいという改革の指針が合意されております。さらに、酪農関連産業の構造改革や酪農家の働き方改革等を進めるというようにしております。

 総合的なこうした措置によりまして、生産から流通までの各段階において真に酪農家のためになるよう各般の課題に対応して、酪農家の所得向上と酪農業の成長産業化につながる改革をしていこうという合意でございます。

 そんな意味で、交渉力、こうしたものを逆に指定生乳団体の皆さんが存分に発揮することを期待しておるところでございます。

畠山委員 現在、これまでにやりました指定団体制度の役割、価格交渉力の意義ということをお尋ねしたつもりではあったんですけれども、大臣、その点、先にそういうことを今後進めるんだという話でありましたが、これまでの役割について、もう一度ちょっと明確に答弁していただけますか。

山本(有)国務大臣 指定団体と乳業メーカーの交渉で、生乳の需給状況、生産コストの変動をおおむね反映することによって生乳の取引価格は決定されております。そうした近年の酪農家の受取乳価というのは、平成十九年からの御指摘の配合飼料の価格高騰を受けまして、二十年度に飲用、乳製品向けとも生乳の取引価格は引き上げられております。その後も上昇傾向であることは御存じのとおりでございます。

 現行の指定生乳生産者団体たる農協、農協連が、中間流通コスト、物流コスト、こうしたものの削減策とあわせて乳価交渉力を強化していただいて、今後ともその機能を適正に発揮していただけることが生産者にとってかなり重要なウエートを占めていくだろうというように思っております。

畠山委員 質問があるので、先に進みたいと思いますけれども、機能の発揮ということを引き続きさらに強めてという答弁ではありますが、一括集荷、多元販売という形で生産者側が組織されているからこそ交渉力を持つことができたということは確認しておきたいと思うんですね。

 しかし、今般の指定団体制度の見直しでは、一定の条件のもとで、補給金を支給する交付対象を拡大するとしています。それでは生産者側がばらけるということになりはしないのか。つまり、指定団体制度の今ある価格交渉力が結果として弱まることにならないのか、疑問があります。いかがでしょうか。

山本(有)国務大臣 いわば生産者が、全量買い取りに集荷、出荷するよりも、さらに一部分だけ自分で創意工夫した商品をつくるなど、生産者の一つの経営判断みたいなものを重要視することによって、ひいては、指定生乳生産者団体も、それに呼応しながら新しい酪農の経営のあり方というものに進んでいくことによって成長産業化できるのではないかということを期待するところでございます。

畠山委員 ちょっと、私の疑問、懸念に対して、なかなか正面からの回答になっていないような気はするんですけれども。

 このように指定団体で価格交渉力ができたのは、この間の日本農業新聞でしたかにフランスから来られていた方のインタビューもありましたけれども、組織化された生産者がいるからこそ価格交渉力があるということだろうと思うんですね。ですから、それが結果として分散するようなことであるならばどうなるのかということは、根源的に疑問を持つわけですよ。

 ですから、ちょっと交渉力の問題から引き続き議論をしていきたいと思いますが、あわせて、需給の関係からも指定団体の役割をきょうも確認しておきたいと思います。

 現状では、生産される生乳の量については、需給の状況等を勘案して、全国及び地域ごとに生乳の目標数量が設定をされています。その達成を図る仕組みによって、生乳生産量は自主的に管理がされています。こうした自主的な計画生産を通じて需給を安定させて、乳価も安定を図っている側面が指定団体にはあると思います。

 改めて、見直しでは、拡大される交付対象団体にも、飲用、加工用の年間販売計画あるいは年間販売実績を国に報告するような仕組みを求めることになっているようです。それは、国が販売計画や販売実績に関与するということになるのではないのか。国が計画生産に関与するということになるのか。

 ちょっと理論的な問題にもなるかと思いますが、それでは、先ほど述べた現行の自主的な計画生産の仕組みとの関係はどのように整理されるのか、この点の答弁をいただけますでしょうか。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の農業競争力の強化プログラムにおきましては、今御指摘ございましたとおり、補給金の交付対象が広がりますけれども、年間の販売計画の仕組みが飲用向けと乳製品向けの調整の実効性を担保できるようになるものということを考慮して、補給金を受給しようとする個別の生産者、また、生産者が例えば農協等の指定団体等に委託を行う場合にはその農協等が、飲用乳と加工原料乳の年間の販売計画や販売実績等を国に報告するということでございまして、これはあくまでも飲用向けと乳製品向けの調整の実効性の担保という観点でございます。

 これ自体は、生産者または指定団体が現在自主的に行っている取り組みについて言及しているものではないというふうに考えてございます。

畠山委員 いずれにしても、見直しの内容が具体化されるとすれば、いわゆるアウトサイダーが増加し、指定団体制度の機能が結果として弱められていく危険があるのではないか、そのような懸念を持ちます。

 生産者側の価格交渉力が低下して、かつ需給調整まで混乱するような見直し自体、するべきでないということを強調しておきたいと思います。

 時間の関係もありますので、畜産、酪農とTPPあるいは日・EU・EPAとの関係を最後に伺います。

 TPP協定と関連法案が先日参議院で可決されましたが、御存じのように、トランプ次期米大統領からは協定からの離脱が宣言され、発効が見込めない現状となっています。

 そこで聞きたいのは、牛・豚マルキン関連法案です。

 参議院で、総理が審議の中で、国内対策の執行停止は想定していないという答弁をしています。そうであるならば、この牛・豚マルキンについては直ちに実施できる、すべきでないかというふうに思います。TPPの発効を施行日とするということではあるんですが、TPP発効を待てば、新たな拡充ができないという縛りに逆になってしまうのではないでしょうか。

 現場ではこの牛・豚マルキンの充実は言うまでもなく求められていることでして、施行日をTPP発効日ではなく、直ちに実施すべきであるということを求めたいと思いますが、大臣の見解はいかがですか。

山本(有)国務大臣 御案内のとおり、体質強化策と経営安定策に分け、そして、TPPの関連政策大綱、つまり国内対策におきましては、この牛・豚マルキンの制度拡充、こうしたものは、TPP協定による関税削減の影響に対する措置として制度設計されております。仮に国内産の牛肉、豚肉の価格の低下が生じた場合でも長期にわたる経営安定が図られるように措置するという制度、仕組みでございますので、実際にその影響があらわれる協定発効日から実施するということに対して、我々は、TPPの発効をその条件とするということに変わりは今のところありません。

 しかし、予算措置で今まで八割でございます。そんな意味で、今後、いかような環境変化や、畜産、酪農農家の皆さんの経営の状況が変化するかもしれません。それを今から断定的に申し上げることはできませんけれども、今の現状におけます政策の整理としましては、TPP発効の日ということでございます。

畠山委員 野党四党では、TPP特別委員会で、ここの部分をTPP発効の日とはしないということでの法案も出しました。改めて、そういう立場での転換を求めておきたいと思います。

 EUとのEPAについても一言伺っておきます。

 年内の大枠合意に向けた報道がされていますが、これも総理が、TPPの承認意義について、日本がTPP並みのレベルの高いルールをいつでも締結する用意があることを示していくための批准なんだということを繰り返し参議院では述べていました。

 そこで伺いたいのは、EU側が日本に対して、チーズ、乳製品ですね、豚肉などなど、加工品も含めた関税削減が要求されて、一部でTPP水準を超える市場開放を要求しているとも伝えられています。日本の基本的なスタンスが、きょうも議論がありましたが、わかりません。特に農水省の立場が全然わかりません。農産物分野の市場開放でいえば、総理が言うような、今、EUとの交渉はTPPレベルがスタートラインになっているかどうか、明確に答弁していただけますか。

山本(有)国務大臣 日・EU・EPA交渉の具体的な内容につきましては、現在交渉中でありまして、お答えは差し控えさせていただきたいと思いますし、また、農林水産省の立場でございますが、これはあくまで、貿易、生産流通実態を一つ一つ勘案して、そのセンシティビティーに配慮しながらしっかりと交渉に取り組んでいくこと、これを念頭に頑張っていく所存でございます。

 また、総理がTPP並みのレベルの高いルールとおっしゃるわけでございますが、これは、TPP協定において結実いたしました労働や環境などについての高いレベルのルール、これが今後の通商交渉におけるモデルとなることが期待されるという御答弁だというように思います。

 一方、関税の分野、特に農林水産物、農林水産品について、それぞれの品目の貿易、生産流通実態等を一つ一つ、先ほど申し上げましたように、勘案しつつ、センシティビティーに配慮しながら交渉するということを常に念頭に置きながら、厳しい交渉をしてまいる所存でございます。

畠山委員 配慮するというのであれば、聞きたいわけですね。TPPでいえば、除外や再協議がないという答弁でもありました。これまで日本が結んだ二国間協定では除外や再協議は確保されてきたわけでありまして、今回、では、乳製品や豚肉などは重要品目として除外や再協議扱いとして交渉されているのか、または農水省としてそのようなことを述べているのかどうか、答えられますか。

山本(有)国務大臣 現在の日・EU・EPA交渉、どのようなやりとりを行っているかというその交渉の具体的内容についてはお答えは差し控えさせていただきますが、繰り返しになりますけれども、農林水産品につきまして、貿易や生産あるいは流通実態、一つ一つ勘案しながら、センシティビティーに配慮しながら、しっかりとした交渉になるよう取り組んでまいりたいというように思っております。

畠山委員 時間ですので終わりますが、国会や、とりわけ農家、国民に対して、必要な情報や、今、除外や再協議を含めたことの態度もはっきりしない中で、TPPをベースにした譲歩を進めるような交渉は認められないということを述べて、質問を終わります。

北村委員長 次に、吉田豊史君。

吉田(豊)委員 日本維新の会の吉田です。本日もよろしくお願いいたします。

 この委員会でも攻めの農業ということで質問をさせていただいておるわけですけれども、地元に帰って、どうでしたと言いますと、全然質問が攻めになっていないというお叱りを受けることが多うございまして、きょうは、お隣の新潟県、米づくりのライバルでございます細田政務官に攻めの質問をするということでお許しいただければというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。半分冗談でございます、御心配なく。

 攻めの農業、きょうは畜産そして酪農ということなんですが、私は、牛乳、生乳ですね、それから乳製品、ここを中心にしてお聞きしていきたいと思っております。

 自分のことになりますけれども、この牛乳というのは、私がここまで大きな、大きなというのはずうたいなんですけれども、大きな人間になった最大の理由かなと思っております。毎日毎日小さいころから、牛乳は飲むものだ、飲みなさい飲みなさいと親に言われて飲んでおりました。

 今でも私は気がつくと一日一リットルぐらい平気で飲んでいる、そういう人間なんですが、結婚しまして妻に話を聞きますとといいますか、牛乳が出てこないんですね。それで、私がいないとまず牛乳消費量は我が家庭でもほぼゼロに近い、こういう状況になっていまして、実は、日本国の国民一人一人の中にも、牛乳そして乳製品にかかわるものの消費についてはそれぞれ大きな差があるんじゃないかな、こういうことも思っております。

 何よりも大事なことは、やはり攻めの農業というときには、大きく生産して大きく消費する、そういうようないい循環を進めていく、これが何よりもだと思っておりますので、ぜひ、牛乳というものについても、非常に大きな、健康上、さまざまな意味でもいいものだということを私はこの委員会でも披露していきたいな、こう思っておるところでございます。

 そこで、まず最初に、近年の生乳の販売価格の推移とか、それから生産量の推移とかこのあたり、そして、牛乳というものが、生乳が適正な価格で今推移しているのかどうなのか、ここについて確認させていただきたいと思います。

枝元政府参考人 まず、生乳ということでよろしゅうございますか。(吉田(豊)委員「はい」と呼ぶ)

 生乳ということでございましたら、指定団体とメーカーとのいろいろな価格交渉で決まっておりまして、それが波及してまいりますけれども、平成十九年度、また平成二十年度以降、飼料費の高騰等もございまして、生産者が受け取る乳価は上昇傾向でございます。

吉田(豊)委員 確認しますけれども、生乳の消費量は増加傾向にあるということで、そして、価格についてもお聞きしたいんですが、適正なところで今価格設定がされているという認識をされているかどうかを確認させてください。

枝元政府参考人 生乳ということでございますれば、生乳の生産量は若干落ちてございましたけれども、去年、久しぶり、三年ぶりぐらいに増加に転じてございます。

 また、生乳の中の、さっき御指摘あったいわゆる牛乳、飲用と加工用のお乳ということで申しますと、残念ながら、飲用の方のいわゆる牛乳の消費は減少傾向でございまして、例えばバターですとかチーズですとか、あと生クリームですとか、そういう加工用に回る生乳、これの需要は伸びているという状況でございます。

吉田(豊)委員 そのまま飲むということについては残念ながら少し減少しているということなんですけれども、今、消費者の目線でいいますと、非常に健康志向なわけですね。

 そうすると、私、過去にしばらくの間、アメリカに遊びに行っていたことがありました。それで、あちらに行きますと、十何年も前になりますが、もう既に牛乳については、ノーファット、ゼロですね、ゼロファットから一%、二%、三%とか結構細かく分かれていて、そして、消費者の需要に応えよう、要望に応えようという姿勢があるんですが、我が国の状況を見ますと、なかなかそういうところには今進んでいないように私は認識をするんです。

 やはり、生の牛乳、それを消費してもらうことが多分一番効率がいいわけですね、生産者からすると。これを広げていくということの努力をしたいと思うんですが、この需要見通しについてどうお考えか、確認したいと思います。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から御指摘あったいわゆる牛乳等というものには三種類ございまして、搾乳した生乳を成分無調整で殺菌したいわゆる牛乳が一つ。あと、今先生から御指摘ございました、生乳から乳成分の一部を除去したローファットミルク、低脂肪の牛乳ですとか無脂肪の牛乳といった成分調整牛乳という種類。あと、生乳ですとか牛乳にカルシウムとかビタミンとか鉄とかそういうのを添加した乳飲料。これがいわゆる牛乳、飲むものということで種類がございます。

 ただ、残念ながら、ローファットミルクのみの生産動向は把握してございませんけれども、ローファットミルクという概念が含まれております成分調整牛乳とか加工乳の消費は、平成二十二年度をピークに減少傾向でございまして、今年度も、四月から十月の実績では対前年比三・三%減ということで減少してございます。

 また、カルシウムとかビタミン等を入れた乳飲料につきましても、二十五年度までは増加傾向でございましたけれども、二十六年度以降減少に転じておりまして、二十八年度、ことしの四月から十月も対前年度比約五%減というふうに減少傾向で推移してございます。

 残念ながら、飲用、いわゆる飲む形での牛乳の消費というのは減少傾向で推移してございますし、これは今後ともそういう傾向が続くんじゃないかというふうに予測をしてございます。

吉田(豊)委員 現状が残念ながら減少だというところなんですけれども、私自身が消費者として考えてみますと、直接、牛乳、生のものを飲むというのは、それは私の好みでそうなんですけれども、今、例えばコーヒーとかの関連一つを考えてみましても、昔はコーヒーにポーションを入れるだけだった。けれども、例えばアメリカのスタイルの、シアトル・スタイルと言えばいいか、そういうラテですとか、牛乳とセットになって飲む、そういうコーヒー一つをとっても、さまざまなバリエーションが出てきているわけですね。こういうところを私はやはり敏感に捉えるべきだと思います。

 そして、ローファットミルクのことについても、ローファットということは、もともとのものから脂を、さまざまなものをよけるんですけれども、それを捨てるわけではなくて、それが今度は加工の方に回っていく、こういうところでぜひさまざまな消費を喚起していただきたい、こういうふうに思うわけです。

 大臣、ぜひ、こういう今の消費者のトレンドというところを捉えていただいて、そして、攻めの農業というのはやはり消費者のさまざまなニーズを捉えるというところにあると思いますが、いかがお考えでしょうか。

山本(有)国務大臣 消費者の好みとか、あるいは消費者のニーズとか、あるいは消費者が何を求める、例えば健康志向だとかいうようなものを重視した生産に移るということの大事さは、ありとあらゆる製造業でそれが言えることで、農業もそれと異なるものではないというように思っておりますし、先ほどおっしゃいましたアメリカのスーパーマーケットにおける牛乳の種類というのは、人によれば日本の十倍あるというように言われておりますので、いわば消費者ニーズや消費者の立場が強くなればなるほどそうした傾向にあるだろうというように思っております。

 その意味で、生産者が永続する農業を営むためには、そうしたものを先取りして、いわば価格でもって付加価値をさらにつけるというような努力も欠かせないことでありますし、我々はそれを支援していくという立場を守り、かつ推進していきたいというように思っております。

吉田(豊)委員 大臣のおっしゃるとおりでして、結局、生産者という方々はやはり生産に集中したいですし、そして、つくったものがどのように売れるかという見通しというものは、さまざまなエネルギーの根本になると思います。

 ですから、やはり、農産業自身を活性化していく、攻めていくためには、生産者の方々が安心して生産できるためにも、もっと、消費者のニーズはどこにあるかとか、それからどこが発展していく可能性があるか、こういう情報をきちっとお伝えしていく、そういう努力が実は非常に重要だなというふうに思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思っております。

 続いて、生乳、生の牛乳について、あるいは乳製品もそうなんですが、やはり私は、何よりも国産ということにこだわりたい人間なんですけれども、なぜこだわりたいかというと、それは、日本の農産業というものをきちっと足腰の強いものにしていくときは、やはり身近にそういうものがあるというところが重要なことだろうと思うんです。ですから、地産地消という考え方は非常に重要だと思っています。生乳そして乳製品について、地産地消についての取り組みを確認させていただきたいと思います。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 食生活が変化したり健康志向の高まりに伴いまして、チーズ等の消費が伸びる中、酪農家みずからが製造したチーズを例えば道の駅で販売するなど、地産地消の取り組みというのは増加をしてございます。

 農林省としては、こうした意欲ある取り組みを推進するために、酪農家によります特色ある乳製品の開発、例えば自家産の牛乳ですとかヤギのお乳を使用したチーズですとか、そういうものを地元のレストラン等に販売を拡大していくような取り組みですとか、あと、地元産の牛乳を原料として製造いたしまして、喉越しがよくて飲みやすい低温殺菌の牛乳を学校給食用の牛乳として供給する取り組みとか、そういう地産地消の取り組みを支援しているところでございます。

 今後とも、牛乳・乳製品の地産地消の取り組みを支援することによりまして、需要の拡大を図ってまいりたいと存じます。

吉田(豊)委員 農水省の方からいただいた資料で少し勉強しましたが、一番生産者として本当は都合がいい、もうかるのは、生の牛乳そのものを販売していくということなんですね。そうすると、やはり、地産地消という言葉をどういうふうに捉えるべきかといえば、牛乳は全国に生産するところはあるわけですけれども、その身近なところでさまざまなものが消費されていければ一番いい。そのときに、何かというと、加工をする度合いが低ければ低いほど、実は鮮度にかかわる話だから、それは極力その地域地域で生産、消費されていけばいいということになると思うんです。

 それで、少し先の、次の問題にもなるんですけれども、日本と欧州連合、EUの間でEPAの話がありました。けさのニュースのところで、チーズを含む乳製品についてという話があったわけですね。チーズを含む乳製品で、乳製品となると、私たち一人一人何を思い浮かべるかとなると実はそれぞれまた違うわけです。チーズを思い浮かべる人もおられれば、あるいはヨーグルトを思い浮かべる人もいらっしゃる、それから粉ミルクとかいろいろあると思うんですけれども、やはり一番効率がいい、そしてもうかるということを考えたときには、生に近いところで、そしてそれを地域で消費していく、この考え方がまず徹底されて、そしてそれ以外のところの部分についての志向はどうやって輸入も含めて対応していくのか、私はこういう大きな考え方があるべきだと思うわけです。

 そのときに、自分のところの牛乳を飲もう、そして飲んでいるのは自分のところの地元のものだということを考えるためにも、やはりブランド力というものに頼るというのが非常に重要だと思っているわけです。ブランド化、地産地消に伴うブランド化ということについて、今どのように取り組んでいるかということを確認したいと思います。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 牛乳・乳製品のブランド化の取り組みでございますけれども、国産の牛乳の需要拡大、また、地域活性化を図る上で非常に有効だというふうに考えております。

 具体的な例で申し上げますと、例えば、あの有名な群馬県の川場村の道の駅では、地元の酪農家の生乳を使った非常に濃厚なプレミアムヨーグルトを極めて高い価格で販売して、非常に好評を博してございますし、また北海道では、これは牛乳の方になりますけれども、一定の放牧基準を満たしまして、遺伝子組み換えではない飼料、餌のみを使用した酪農家に限定して製造した牛乳を製造して、これも通常よりも高い価格での取引に結びついて非常に好評を博しているなど、さまざまな取り組みが出てきているところでございます。

 こういう地域ブランド化を初めといたします牛乳・乳製品の高付加価値化の取り組みを支援することによりまして、需要拡大に結びつけていきたいと思います。

吉田(豊)委員 ブランド化という話をすると、必ず道の駅とかこういうのが出てくるんですね。だけれども、道の駅とかそんな場所というのは、私たち国民とか地域の人にとっても実は特別な場所なわけですよ。基本的に、毎日買いに行くスーパーとかそういうところではないんです。

 ですから、ブランド化していくということイコール価格が高くなっていて、たまにしか買えないものになる、そういうブランド化ではなくて、もっと地域地域が自分たちのところで自分たちのものを食べていますよと気づく、そのためのブランド力であって、ブランド化。だから、ブランド化することイコール私たち平生の、通常の消費者にとって価格が高くなっていくという話では、私はそれでは違う意味じゃないかなというふうに考えているわけです。

 本当の意味でのブランド力という意味では、たまにしか食べられないものであれば、たまにしか食べられない値段でいいでしょう。でも、平生のところで、やはり自分たちがどこにその食べ物の原点を求めているのか、生産地を求めているのか、これがわかるようなブランド化ということをぜひ図っていただきたい、こう思います。

 乳製品のところに少し入りますけれども、先ほど私の方で、今EPAの交渉のところで、チーズを含む乳製品についてという話を少しだけ、さわりをさせていただきましたけれども、例えばチーズといったときにも、どんなチーズを思い浮かべるかというのは一人一人違うわけですね。

 大臣、済みませんけれども、チーズといって、何とかチーズとあるじゃないですか、まず何チーズを思い浮かべられるか、一言いただいてもいいですか。

山本(有)国務大臣 毎朝食べているのがとろけるチーズというもので、それしか思い浮かびません。

吉田(豊)委員 ちょっと私の想定を超えたお答えだったものですから、済みません。

 とろけるチーズというのは、どういうんでしょう、とろけるんですね。そうすると、プロセスチーズから、多分それをシュレッドしてとろけやすいようにする、そういうことになると思いますけれども、チーズの中で、私が申し上げたかったのは、例えばクリームチーズとかカッテージチーズとか、それから、チーズにしても、モッツァレラチーズとか、カビが生えたチーズとか、もっといろいろあるわけです。

 そのチーズも、実は生の牛乳から比べたときの加工の度合いが全然違っていまして、私がお聞きしたいというか、皆様にお訴えしたいのは、やはり、よりフレッシュに近いものは国内で消費していくというところは基本にしていただきたいわけです。その上で、特色のあるもの、日本ではつくれないものとか、先ほど申し上げた海外としてのブランド力のあるもの、そういうものについては当然頼っていくことは必要だろうと思います。

 根本の話が、私は、生の乳、生乳の生産量を上げていく、そのためにその消費量をふやさなくちゃいけないんだけれども、その方法は、より生に近いものの加工品を国内で消費していくという考え方。

 クリームチーズというものがあります。クリームチーズというのは、そういう意味でいうと、よりチーズの中では加工の度合いが低いものの一つ、ヨーグルトの次ぐらいだとは思うんですけれども、こういうようなものも、実は、国内でクリームチーズをというと、国内のクリームチーズというのはなかなか手に入らないのが現実です。価格が高いんです。

 生クリームもそうですけれども、生クリームなんかは本当に加工の一歩、一つ目の加工のところにある商品だと思いますけれども、こういうものの価格がやはり高いわけですね。そうすると、どうしてもその消費を控えてしまうという状況にある。

 先ほど大臣から、アメリカで十倍とおっしゃいましたけれども、実際、本当にそれに近いイメージを持ちます。あちらに行きますと、ほとんど、乳にかかわる製品の値段も安いしバリエーションも大きいという、これが実際の今の消費者の動向だろうと思います。

 ですから、こういうところを、より国内の酪農関係の方々の生産量をふやして、その消費をどこに持っていくか、ここについての作戦にしていただきたい、こう思うわけなんですが、国産品の販売価格、ここを下げていくためにはどのようなことが考えられるのか、これを確認してみたいと思います。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 国産の乳製品の使用拡大を進めるに当たりまして、乳製品を直接消費するということに加えて、例えばお菓子ですとか飲料とか料理ですとか、そういう乳製品の利用を拡大していくことも大事ではないかなというふうに思っております。

 このため、国産の乳製品の需要拡大を図るために、国産の生乳を活用した新商品を開発するための技術開発の支援ですとか、あと、国産の乳製品の生産コストを下げていくために、まずは生乳生産コストの削減を図るという観点からいたしますと、畜産クラスター事業等により支援を行ってございます。また、集送乳の合理化を図るという観点からは、クーラーステーションの再編整備等について支援をしてございます。また、乳製品そのものの製造コストの削減という観点からいたしますと、乳業工場の再編整備を支援するなどしてございます。

 これら全体の取り組みを通じまして、国産の生乳の需要の拡大、また乳製品の生産コストの削減、これに取り組んでまいりたいと存じます。

吉田(豊)委員 それで、やはり私も農林水産のことを少し勉強しますと、げたを履かせるという言葉が出てくるんですね。それがどういう意味かということはまた改めて機会を得て教えていただきたいと思うんですけれども、乳産品についても、当然げたは履かせていかなくちゃいけない。

 私は、EPAですとかTPPもそうなんでしょうけれども、日本が国際社会の中でさまざまなところと約束をしていく、その中にあっては、我が国の中で履かせなくちゃいけないものは履かせなくちゃいけない、これは当たり前のことだろうと思うわけです。

 でも、その履かせる意味はどこにあって、そして、履かせたものがきちっと、いつまでも履いているところから、いや、もうそろそろげたは要らなくて、自分たちの方でうまいこといきますわというところまでどう展開させるかを視野に入れるということを考えると、私はやはり、改めて、国内の、国産というところにこだわるというその視点というのは非常に重要でしょうし、そこからいかに生産量、消費量をふやしていくかというところに話を広げていくべきだ、こういうふうに思っていますので、改めてまた勉強して質問させていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

     ――――◇―――――

北村委員長 この際、江藤拓君外三名から、自由民主党・無所属の会、民進党・無所属クラブ、公明党及び日本維新の会の四派共同提案による平成二十九年度畜産物価格等に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。小山展弘君。

小山委員 ただいま議題となりました決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきたいと存じます。

    平成二十九年度畜産物価格等に関する件(案)

  我が国畜産・酪農経営は、高齢化、後継者不足などにより、飼養戸数、飼養頭数とも減少傾向にあり、繁殖雌牛や乳用後継牛の増頭、生産コストの削減などによる生産基盤の強化を通じた経営の安定と競争力の強化、労働負担の軽減が喫緊の課題となっている。

  よって政府は、こうした情勢を踏まえ、平成二十九年度の畜産物価格及び関連対策の決定に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。

      記

 一 我が国畜産・酪農の生産基盤の維持・拡大を図るため、地域農業・地域社会を支える多様な畜産・酪農について、畜産物の付加価値の向上や飼料等の生産費削減等の取組を通じて、将来に向けて魅力ある持続可能な経営が実現できるよう、十分な所得を確保し得る実効性のある施策を実施すること。

 二 加工原料乳生産者補給金の単価及び交付対象数量については、生クリーム等の液状乳製品の加工原料乳生産者補給金制度への追加と補給金単価の一本化を行い、酪農家の経営努力が報われ、営農意欲が喚起されるよう、再生産の確保を図ることを旨として適切に決定すること。

 三 労働時間が長いといった酪農経営者の労働条件を大きく改善するため、酪農ヘルパーや公共牧場等を活用した育成の外部化を支援するとともに、搾乳ロボットやパーラーをはじめとする省力化機器や施設の整備に対して集中的に支援を行うこと。

 四 牛肉・豚肉の安定価格及び肉用子牛の保証基準価格等については、畜産農家の経営安定に資するよう、需給動向、価格の推移、子牛価格の高騰等を十分勘案し、再生産の確保を図ることを旨として適切に決定すること。

 五 肉用牛肥育経営安定特別対策事業(牛マルキン)・養豚経営安定対策事業(豚マルキン)の補填率の引上げ、豚マルキンの肉用牛並みの国庫負担水準引上げ及び肉用子牛の保証基準価格の算定方式の見直しについては、畜産農家の経営状況等を踏まえ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づき所要の措置を講ずること。

 六 畜産・酪農の生産基盤の強化を図るため、関係事業者が連携・結集し、地域一体となって収益を向上させる地域ぐるみの畜産クラスター事業を強力に推進すること。また、繁殖雌牛の増頭や新規参入に対する支援及び和牛受精卵移植を活用した和子牛生産、性判別技術と受精卵移植技術の活用による計画的な乳用後継牛の確保、優良な純粋種豚の導入等への支援を一層強化すること。

 七 配合飼料価格安定制度については、畜産・酪農経営の安定に資するよう、必要な財源を確保し、引き続き制度の安定的な運営を図ること。

 八 輸入飼料に過度に依存せず、国産飼料生産基盤に立脚した畜産・酪農経営の確立を図るため、飼料用米・稲発酵粗飼料等を活用した耕畜連携、コントラクター・TMRセンターの育成、高栄養粗飼料の増産、草地改良の実施、放牧の推進、エコフィードの生産・利用等への支援を一層強化すること。

 九 国産畜産物の輸出拡大のため、HACCPなど輸出先国の衛生条件を満たす食肉処理施設の整備の促進、日本ブランドを前面に立てた市場開拓の取組への支援、戦略的な動物検疫協議の実施など、輸出促進対策を一層強力に進めること。また、原発事故等を要因とする各国の輸入規制の撤廃・緩和を強力に申し入れること。

 十 原発事故に伴う放射性物質により汚染された牧草地の除染対策と汚染された稲わら、牧草及び堆肥等の農業系汚染廃棄物の処理を強力に推進するとともに、原発事故に係る風評被害対策に徹底して取り組むこと。

 十一 畜産経営に大きな被害を及ぼす高病原性鳥インフルエンザをはじめとする家畜の伝染性疾病等については、適切な飼養管理の徹底や予防対策などが重要であり、畜産農家における飼養衛生管理基準の遵守に向けた指導や空港等における入国者に対する水際対策を徹底すること。また、産業動物獣医師の育成・確保に取り組むとともに、家畜の伝染性疾病等に係る風評被害防止等の観点から、国民に対して正確な情報を迅速に伝えること。

 十二 加工原料乳生産者補給金制度の在り方の見直しは、指定生乳生産者団体の機能が今後も適正に発揮されることが極めて重要であることを念頭に置き、関係者の意見を聴き、十分な調整を経て行うこと。

 十三 日EU経済連携協定交渉については、年内の大枠合意を目指して交渉が行われているが、内容よりも期限を重視するあまり国益が損なわれることのないよう、特に、豚肉、乳製品等をはじめとする農林水産物の重要品目の再生産が引き続き可能となるよう、必要な国境措置をしっかり確保すること。

  右決議する。

以上です。

 何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。

北村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

北村委員長 起立多数。よって、本件は本委員会の決議とするに決しました。

 この際、ただいまの決議につきまして農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣山本有二君。

山本(有)国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨に従いまして、最近の畜産をめぐる情勢を踏まえつつ、十分検討してまいる所存でございます。

北村委員長 お諮りいたします。

 ただいまの決議の議長に対する報告及び関係当局への参考送付の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

北村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、明十四日水曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十分散会


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