衆議院

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第6号 平成30年4月4日(水曜日)

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平成三十年四月四日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 伊東 良孝君

   理事 伊藤信太郎君 理事 小島 敏文君

   理事 坂本 哲志君 理事 鈴木 憲和君

   理事 福山  守君 理事 佐々木隆博君

   理事 大串 博志君 理事 佐藤 英道君

      池田 道孝君    泉田 裕彦君

      稲田 朋美君    上杉謙太郎君

      上野 宏史君    加藤 寛治君

      金子 俊平君    菅家 一郎君

      木村 次郎君    岸  信夫君

      小寺 裕雄君    斎藤 洋明君

      鈴木 貴子君    谷川 弥一君

      西田 昭二君    野中  厚君

      藤井比早之君    藤原  崇君

      古川  康君    細田 健一君

      本田 太郎君    三浦  靖君

      宮路 拓馬君    宗清 皇一君

      八木 哲也君    山本  拓君

      石川 香織君    大河原雅子君

      神谷  裕君    亀井亜紀子君

      高木錬太郎君    後藤 祐一君

      佐藤 公治君    関 健一郎君

      緑川 貴士君    江田 康幸君

      金子 恵美君    田村 貴昭君

      森  夏枝君

    …………………………………

   農林水産大臣       齋藤  健君

   農林水産副大臣      礒崎 陽輔君

   外務大臣政務官      堀井  学君

   農林水産大臣政務官    野中  厚君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 筒井 健夫君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 佐々木聖子君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 新川 浩嗣君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房長) 水田 正和君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房統計部長)          大杉 武博君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  枝元 真徹君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  大澤  誠君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            荒川  隆君

   政府参考人

   (農林水産省政策統括官) 柄澤  彰君

   農林水産委員会専門員   室井 純子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月四日

 辞任         補欠選任

  泉田 裕彦君     本田 太郎君

  藤井比早之君     宗清 皇一君

  古川  康君     上野 宏史君

  細田 健一君     菅家 一郎君

  大河原雅子君     高木錬太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  上野 宏史君     八木 哲也君

  菅家 一郎君     細田 健一君

  本田 太郎君     三浦  靖君

  宗清 皇一君     鈴木 貴子君

  高木錬太郎君     大河原雅子君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 貴子君     藤井比早之君

  三浦  靖君     泉田 裕彦君

  八木 哲也君     古川  康君

    ―――――――――――――

三月二十九日

 森林経営管理法案(内閣提出第三八号)

四月四日

 独立行政法人農林漁業信用基金法の一部を改正する法律案(内閣提出第三九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)


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     ――――◇―――――

伊東委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房長水田正和君、大臣官房統計部長大杉武博君、生産局長枝元真徹君、経営局長大澤誠君、農村振興局長荒川隆君、政策統括官柄澤彰君、法務省大臣官房審議官筒井健夫君、大臣官房審議官佐々木聖子君及び財務省大臣官房審議官新川浩嗣君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊東委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。泉田裕彦君。

泉田委員 おはようございます。自由民主党の泉田裕彦です。

 ただいま議案となりました農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案について、質問をさせていただきます。

 現在、農村地帯では、中山間地域を筆頭に高齢化が進んでおります。後継者不足の農地、これが耕作放棄地となり、地域の活力が急速に失われてきているという現状であります。

 急峻な土地の棚田、これは残念ながら大規模化には適しません。また、豪雪地帯においては、冬期間の農作業が困難な状況であります。冬期間に野菜をつくって所得を上げるということも難しいということがあります。年間所得で比較をいたしますと、どうしても都市部の勤労者に比べて所得が低くならざるを得ないというのが現状というふうに認識をいたしております。

 この間、戦後、高度経済成長が進んで日本経済が大きく発展する中、稲作地帯では半年間農地を休めざるを得ないという環境でした。出稼ぎに出て、そしてまた経済に貢献をする中で、農地はその半年間休ませるということになっています。この休ませている間に、稲わらが微生物によって分解され、土地が肥沃になる、この結果、大変おいしいお米を生産し、都市部に供給してきたという歴史があります。

 一方、世界に目を転じますと、現在、世界的な和食ブームというものが発生をしているわけでありまして、日本食に注目が集まっている。こういったときに、農産物をどういうふうに輸出して所得につなげていくかということも大変大きな課題になっているというふうに考えております。

 そこで、農水省にお伺いをしたいんですが、二〇〇四年から三年間の平均と、統計のある直近の三年間を比較して、農業経営の状況についてお尋ねをしたいと思います。農業粗収益についてで結構ですので、この間の全国平均と豪雪稲作地帯の変化がどのようになっているのか、お伺いしたいと思います。

大杉政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十六年から十八年の三年平均と、二十六年から二十八年の三年平均のそれぞれにつきまして、農業粗収益でございますが、全国平均、それから豪雪稲作地帯である北陸地域の一経営体当たり農業粗収益の数値でございますが、平成十六年から平成十八年までの三年間平均で、全国では三百九十七万三千円、北陸地域では二百九十九万九千円となっております。そして、平成二十六年から平成二十八年までの三年間平均で見ますと、全国では五百四十六万一千円で、北陸地域では三百四十三万一千円となっているところでございます。

泉田委員 ありがとうございました。

 今ほどお話しいただいたとおりなんですが、一経営体当たりの農業所得を見ますと、全国の状況と比べまして、豪雪である稲作地帯の粗利益、この伸びがやはり低くなっているということだと思います。

 特に、生産調整、この目標が達成されるようになってから、ここ数年、米価が堅調な推移を示しております。これはやはり、稲作地帯の農家の所得は伸びているんですけれども、稲作地帯の農家の所得の格差が拡大をしているというところにもつながっていると思います。

 これはどういうことかといいますと、全国的に見て米農家の所得が改善しているのは、飼料用米等への誘導が進んでいますので、やはり減反政策が機能している。もともと価格がそれほど高くなかった主食用米を生産している地域においては、この誘導によって、より高い所得が得られるようになった。一方、もともと高い米価を持っていたところ、稲作地帯、大体ブランド米を持っているわけですけれども、こういう稲作地帯ではブランド競争等も勃発をするというようなこともあって、米価は余り上がっていない。

 結局、稲作地帯の農家、主に所得を米に依存している地域ほど、今回の政策のメリットを受けていない。そして、この生産調整目標、今回、直接支払交付金、その水田向けのものが廃止されるわけですが、打撃だけが農家に来ているというような状況になっているということだと思います。

 今回のこのような政策においても、やはり農業経営、全国どこでもしっかりやっていってほしいというふうに思っているわけですが、地域ごとの米価の変動、これは農水省においてどのように認識されているのか、地域間格差の拡大が生じているという認識をお持ちなのか、この点をお伺いいたしたいと思います。

柄澤政府参考人 お答えいたします。

 米の価格につきましては、民間取引の中で産地銘柄ごとの需給状況が反映された価格が形成されているというふうに理解しているところでございます。

 実際の、例えば平成二十七年産から二十九年産までの価格の動向を見てみますと、御指摘ございましたが、実需者からのニーズが高まっております外食、中食の業務用に仕向けられる銘柄については価格が堅調に推移するという一方で、過剰感がございます家庭用の高価格帯での販売に仕向けられる銘柄につきましては、業務用に仕向けられる銘柄と比較しますと価格が伸び悩んでいるという傾向があるというふうに承知しております。

 これは、今御指摘ございましたが、地域間格差というよりも、仮に同一の県内であっても銘柄による違いが生じているということでございますので、ブランド米の生産拡大などでできるだけ高値で販売したい産地の御意向と、低価格を求める業務用ユーザーの御意向との食い違いによるものであるのではないかと考えております。

 したがいまして、農水省としましては、家庭用のブランド米のみならず、外食、中食向けの業務用も含めて、バランスのとれた形で、それぞれの需要に応じた生産、販売がなされることが重要でございますので、このような観点から、外食、中食などの実需者と産地とのマッチング支援などを実施しているところでございます。

泉田委員 ありがとうございました。

 農家所得で見たときに、やはり銘柄によって変動幅が変わってくるというのは御指摘のとおりなんですが、スタートラインというのがあるわけです。もともと高い値段で売れた主食用米の生産地、ここを業務用に振り向けると、伸び幅は上がるのかもしれませんけれども所得は減るということになるので、そこに誘導するというのは、所得を減らしてくれということを意味するので、かなり無理を求めているということをぜひ認識していただければと思います。

 いずれにいたしましても、二〇五〇年、地球の人口は九十五億人を超えるというような試算も出されております。加えて、新興国の生活水準が向上していますので、穀物だけ食べるという時代から、鶏肉食べたい、豚肉食べたい、牛肉食べたいという形で、新興国も含めて巨大な人口の食生活が改善していくということが予想されているわけでございます。そうすると、やはりこういった、食料危機は起きないのかという観点からもしっかりとした対策が必要ではないかと思います。

 大臣も御存じのとおり、鶏肉を食べようと思えば穀物三人分消費しますし、豚肉は五人分、牛肉は十一人分の穀物が必要ということになるわけですので、ぜひ、日本の食料安全保障の観点からも、しっかりとした、バランスのとれた農業政策をお願い申し上げたいと思います。

 そして、稲作地帯には、食品加工産業が発達しているという特徴もあります。米菓産業というのもこれの筆頭に挙げられる意味ですけれども、米生産地域においてそこを活用した食品加工産業、例えば新潟県を例にとりますと、農業生産が千七百億円ぐらいに対して、米菓産業で千数百億円、これだけの所得を上げているわけです。

 米を輸出するというのは限界があるんですが、米菓製品を輸出していくということになると、地域にとっても当然プラスになりますし、地方創生にもつながるということだと思います。

 ところが、国内産米を欲しがっている米菓産業に供給ができない。これは、直接支払交付金の制度設計に少し問題があるんじゃないか。中で流通できるように、例えば産地交付金をいじるということでも構わないんだと思うんですけれども、ちゃんと域内で、もともと高く売れていたお米、それに匹敵して、こっちに変えてもいいやと農家が思っていただけるような制度設計を地域ごとにやっていただけると、日本の農業はもっと元気が出て地域の活性化ができるんじゃないのかというふうに考えております。

 そこで、大臣にお伺いしたいんですが、今後起きるリスクというのも当然ある食料危機、これを国内、日本としても乗り切っていくために、日本のどこでも、どの地域においても水田フル活用ができるような制度へ修正をしていってほしいというふうに思いますが、大臣の決意をお伺いしたいと思います。

齋藤国務大臣 我が国におきましては、主食用米の需要が毎年おおむね八万トンずつ減少している中で、食料自給率、自給力の向上を図るためには、加工用米など主食用米以外の作物への転換によって、水田のフル活用を進めていくことが重要であると考えています。

 今、泉田委員御指摘のように、水田がフル活用されていれば、いざというときにそこで主食用米を生産することが可能になるわけでありますので、非常に重要な政策だと思っています。

 このため、水田活用の直接支払交付金においては、加工用米等の戦略作物の作付に対して統一の交付単価で支援する戦略作物助成というのを、まず加工用米等でやっています。それに加えまして、地域の裁量で対象作物や交付単価を設定可能な産地交付金によって、水田のフル活用を支援させていただいているところであります。

 御指摘の、加工用米の生産をふやす必要がある地域というのも、当然地域によってあると思います。したがって、そういう地域においては、地域の裁量で活用可能な産地交付金によりまして加工用米に対する追加の支援も可能となっているところでありまして、実際に、新潟県を含めて多くの県や地域で活用されています。

 農林水産省としては、各地域、実情が違いますので、地域に応じて、この加工用米を含め、需要に応じた生産、販売が行われるように、各地域の作付動向や加工用米の使用状況等の情報提供に努めていきたいと考えています。

泉田委員 ありがとうございました。

 ぜひ農水省からのきめ細かい御指導をお願い申し上げたいと思います。

 ちなみに、新潟県の場合ですと、県から、地方分権、地域主権の推進ということで、各市町村に裁量を委ねているというようなところもあります。これ、直そうとすると、やはりもう既に割り振りが変わっているところを変えるということなので、なかなか県議会で御理解をいただくというのも難しいところ、それから各市町村にとっても、これはなぜ変わるんだということになりますので、大きなグランドデザインを農水省から指導していただくことによってこの産地交付金が生きてくるということだと思います。ぜひとも、この政策的な考え方、農水省からの御指導、御助言を頂戴したいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 次に、農業の法人化が進んでおります。これは農業経営にとって大変重要な出来事であると思います。一経営体当たりの売上げの増加がこれによって大きく進んでいるということでありますが、その中で、若干農家から不安の声が出ております。事務処理に大きな負担が生じるのではないかという懸念であります。

 特に、平成三十一年十月から実施をされます消費増税ですが、軽減税率制度が実施をされるということになります。さらに、その四年後の平成三十五年十月には、いわゆるインボイス制度なんですけれども、適格請求書等保存方式というものが採用されることが想定をされております。これが導入をされるということになりますと、原則買い手の求めに応じて売り手はインボイスを交付しなければいけない、こういう義務が生じるわけであります。

 この点、農業生産者の実態を振り返ってみますとどうなっているかといいますと、農協や卸売市場を通じた委託販売という形態が多く使われております。現状、売り手である農業生産者は請求書等を発行しないというのが実務になっております。

 これが定着をしているという状況で軽減税率制度が導入され、インボイス制度においてこのような現行実務から乖離したものを求められるとすると、せっかく経営体として多く雇って経営が安定している中で、プラスアルファの人員を雇わないと処理できないんじゃないか、こういう懸念を抱えておられる農家さん、軌道に乗っているところほど心配をされているというような関係にもなっているかと思います。こういうことを考慮いたしますと、農業生産者の事務負担の軽減に資するような特例を設ける必要があるのではないかというふうに考えております。

 そこで、財務省にお伺いをしたいんですが、適格請求書等保存方式、いわゆるインボイス方式ですが、これにおきまして、農業生産者の現行の請求書等のやりとりの実務を考慮いたしますと、事務負担を軽減するための配慮が必要と考えておりますが、どのような措置を講じておられるのか、お伺いをいたします。

新川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、平成三十五年十月の適格請求書等保存方式、これが導入されますと、原則としては、売り手は買い手の求めに応じまして適格請求書の交付が義務づけられる、こういうことになるわけでございます。

 他方で、これも委員が御指摘になりましたとおり、農業生産者が農協あるいは卸売市場を通じて農産物を販売する場合には、一般的には、どの農業生産者が生産したものか区別することなく取引がされる、あるいは、農業生産者みずからが買い手を見つけて適格請求書を交付することができない、こういった流通プロセスの課題がございます。

 したがいまして、この課題を解決いたしますために、現行の取引実務に配慮いたしまして、農家が農協や卸売市場を通じて委託販売を行う場合、こういった場合には、農家の適格請求書交付義務を免除いたします。買い手の方は、農協あるいは卸売市場が発行する請求書等の保存があれば仕入れ税額控除をできるようにする、こういう特例を設けることといたしております。

 いずれにしても、政府といたしましては、軽減税率制度、適格請求書等保存方式の円滑な実施に向けまして、関係団体とも連携の上、このような特例の内容も含め、しっかりと周知、広報を行ってまいりたい、このように考えております。

泉田委員 ありがとうございました。

 今御説明をしていただいた内容、なかなか現場までには行き届いていないというのが現状だと思いますので、ぜひわかりやすく説明をお願いできればというふうに思います。

 今のような内容を多くの皆さん方に知っていただくということによって、より農業経営に安心して取り組めるということになりますが、後継者を確保する上においても大変重要な課題だと思っています。ぜひとも農林水産省においても理解を得ていくという努力をしていただきたいと思いますが、今後、農家にどのように説明して理解を得ていくのか、農林水産省にお伺いをいたしたいと思います。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 先ほど財務省の方から説明のありましたこの軽減税率制度の導入、それから適格請求書保存方式、いわゆるインボイス制度につきましては、農業者に制度が理解され、円滑に実施されるということが何よりも重要だと思っております。

 まず、我々としては、農業者の方にわかりやすいパンフレット、それから新聞のチラシもつくっておりますが、これをじっくり練ってわかりやすくつくった上で、農業関係団体を通じて配布をしてございます。それから、農業関係団体への説明会を開催した上で、それを通じて農業団体から農家への説明が行われているところでございます。それから、本省、地方農政局等においては、相談窓口を設置しております。

 このようなものを使いながら、先ほど財務省からも御説明がありました、委託販売を行う場合の特例というものも含めまして、農家への説明と理解を得るように取り組んでまいりたいと考えております。

泉田委員 ありがとうございました。

 よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 次に、担い手への農地の集積、集約、これを進めていくというのは、これは難しい地域もあるのも事実なんですが、基本的には重要な、大切なことだというふうに考えております。現在の方針で進めていただきたいというふうに思います。

 しかしながら、この集積、集約化というのは何をもたらすのかということなんですけれども、基本的には、合理化、効率化ということになります。一人当たりの農業者の所得はふえるという政策だと思いますが、これは全体のパイがふえるわけではありません。農村地域全体の所得をふやそうとすると、生産数量を上げるか、価格を上げるか、P掛けるQでしか所得は決まらないわけで、集約化、集積化しても、コストダウン、そして更に人員の削減ということになるわけであります。

 農村地域全体で見た場合には、過疎化を促進する政策という一面も持っているというのがこの集積、集約化ということになるかと思います。地方創生、これをなし遂げていく、特に農村地域でなし遂げていくというためには、やはり農家所得、地域全体の所得をふやしていくという取組も重要ということだと考えております。

 今回の法律案の提案の要旨の中に、成長産業化を目指すということになっていますが、集約化、集積化だけだと、むしろ合理化、縮小を目指すということになってしまうということだと思います。

 ぜひとも、この担い手への農地の集積、集約化、必要なことですが、同時に、施策としてより付加価値をつけて、農村地域が活性化をしていく、こういった姿を目指していただきたいと考えております。

 そこで、お尋ねしたいと思います。

 提案理由の農業の成長産業化ということはどういった姿をイメージしておられるのか、今回の法改正で目指す農業の姿についてお伺いをしたいと思います。

礒崎副大臣 お答えいたします。

 今、農業の成長産業化というお尋ねがございました。これは、意欲と能力ある農業者が低コスト化や高付加価値化などを進める、創意工夫により所得向上を実現することでございまして、農業が持続的に発展していくことだと考えております。

 今回の法律案におきましては、共有者不明農地を農地中間管理機構に簡易な手続で貸し付けることを可能とすることにより、担い手への農地集積、集約化による低コスト化を進めるとともに、農地転用許可を要せずに農業用ハウスの底面を全面コンクリート張りにすることを可能とすることで農作業の効率化や生産性の向上を図ることにより、農業の成長産業化を進めるものでございます。

 このような措置を通じまして地域農業が活性化すれば、六次産業化の取組や担い手を支える集落共同活動などの活動の場を提供することになるとともに、地域全体の活性化にもつながるものと考えております。

 とはいうものの、先生御指摘のように、それだけでは全体のパイがふえないではないかというのはおっしゃるとおりの点もあると思いますが、そうした点で、地域の活力の維持発展のためには日本型直接支払いを含めました地域政策もあわせて重要でございまして、引き続き、産業政策と地域政策、これが農政の両輪でございますから、この両輪を総合的に推進して、地域の活性化にもつながるよう、十分留意していきたいと思います。

泉田委員 大変ありがとうございました。御理解をいただけたと思い、感謝申し上げたいと思います。

 ぜひとも、農村地域で生まれた子供たちが、そしてまた都市部で生まれた子供たちも農村地域で働きたいというような活力ある地域社会、そして、均衡ある国土の発展を目指した日本というふうになっていただけるように、例えば食品加工産業、地域のものと連携しながら輸出も促進する等、さまざまなアイデアを投入しながら農政を頑張っていただきたいと思いますので、この点をお願いして、時間となりましたので質問を終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

伊東委員長 次に、加藤寛治君。

加藤(寛)委員 おはようございます。自由民主党の加藤寛治でございます。

 久々の質問の機会をいただいて、感謝をしながら質問を進めてまいりたいと思います。

 国家の使命、我々政治家が果たさなければならない責任は、まず国民の安全、安心な生活を保障することが第一義であろう、このように受けとめております。もちろん、安全、安心な生活、暮らしには、一つには、国防が強固で、平和な中で暮らせること、それともう一つには、経済基盤がしっかりしていて、食料の安定供給が確実、不変であることであろう、このように考えております。

 国防については今国会でも憲法改正等を含めて論議をされておりますが、きょうは、食料安定供給を果たす食料安保のため、農業振興、発展に向けて今国会に提案をされております農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案についてお伺いをいたします。

 農業の振興、発展、成長産業化を図るためには、担い手への農地集積、集約化を進めるとともに、新しい技術を活用し、先端技術を駆使しながら、AI農業も含め、次世代農業へ向けて農業の効率化、高度化を進めることが必要である、この提案の中で説明、表明をされておるわけでありますが、全くそのとおりだと私も思いますし、論をまたないところだと思います。

 しかしながら、言うはやすく行うはかたしであります。

 今回、農地利用権設定に必要な共有部分の過半の同意を得ることが困難であるなどの状況等から、農地中間管理機構を通じた集積、集約化を進める上で大きな課題となっていた問題解決のための法律改正を行う事由については、両手を挙げて賛成をするものでありますが、そこで、農地の集積、集約を実現するためには、その地域の農地を、全体的に、圃場整備を含めた農地基盤整備が必要不可欠だ、このように考えておりますが、今後、土地改良事業についてどのように取り組んでいかれようとしておるのか。

 私の地元では、平成十四年より圃場整備事業に着手をして、土地改良事業が進められております。現在、その地域全体の五〇%近くが竣工、完成をしておる状況にあるわけでございますが、そこで、平成十五年当時のその地域の出生率というのが一・五五でありました。

 ところが、圃場整備事業が徐々に徐々にではありますけれども進んで、平成二十二年度には一・八三と上昇をいたしましたし、また現在、直近の統計であります平成二十八年の出生率というのは、二・〇七までぐんと上昇をしております。すなわち、圃場整備率の上昇に比例をして地域の出生率が上昇するという好結果が生まれておるわけでございます。

 これは、ひとえに、農地の圃場が整備された結果、機械化が進んで厳しい労働環境が解消されて、加えて規模拡大が図られた結果、収入増につながったことから、農家へ嫁ぐ花嫁さんが増加をして、農業後継者が育ち、増加したことが最大の要因であろう、私はこのように考えております。この結果は、我が国の最大の国難である少子化対策にもつながっていきますし、このことが、ひいては国策の地方創生にも大きく寄与するものであろう、このように考えております。

 そのような観点から考えましたときに、土地改良事業費を大幅に増額すべきであろう、このように考えております。そして、整備率をスピードアップして、私は少子化対策に大きく効果をもたらすという思いから、齋藤農林水産大臣にお伺いをいたします。

齋藤国務大臣 今、加藤委員のお話を伺いながら、圃場整備というものが少子化対策にまでつながっているという話を伺いながら、改めてこの事業の重要性を感じているところでありますが、担い手への農地の集積、集約を進め、農業の振興、発展を図っていくためには、その基盤となる農地について、農地の大区画化や汎用化等の基盤整備を推進すること、本当に極めて重要な課題だと思っております。

 このため、国が広域的に農地の大区画化や汎用化を行う国営の農地再編整備事業ですとか、それから都道府県が行う農業競争力強化基盤整備事業に加えまして、多様なニーズに沿ったきめ細かな耕作条件の改善を機動的に進める農地耕作条件改善事業等によりまして、農地の基盤整備を進めてきたところであります。

 さらに、昨年の土地改良法改正を受けまして、平成三十年度予算におきましては、農地中間管理機構が借り受けた農地について、都道府県の判断によりまして、農業者の申請、同意、費用負担なしで農地の集積、集約化に必要な基盤整備を実施できる農地中間管理機構関連農地整備事業を創設いたしました。

 農林省としては、本件、重要な政策でありますので、引き続き、現場のニーズを踏まえて、圃場整備を始めとする農地の基盤整備の計画的な推進が図れるよう、必要な予算の確保に万全の努力をしていきたいと考えております。

加藤(寛)委員 ありがとうございます。

 この圃場整備事業、土地改良事業の重要性について、私は、こうした機会あるごとにたびたび必要性を訴え、唱えておるわけでございますけれども、国の大きな農業政策の中の一つに、全農地の八〇%の農地を担い手に耕作をしてもらうべく、目標として掲げておられます。全農地を例えば四百五十万ヘクタールと仮定をした場合に、八〇%というのは三百六十万ヘクタールとなるわけでございます。

 そこで、今現在、私がいろいろな資料等々で調査してみた結果、現在の区画整理、圃場整備率というのは約五十数%、五三、四%であろう、このように思います。そうした場合に、五三、四%とした場合に、約二百四十万ヘクタールというのが整備済みということが言えるわけでございますけれども、三百六十万ヘクタールから二百四十万ヘクタール差し引きますというと、残は百二十万ヘクタール、この整備がなされなければ、私は、八〇%の農地を担い手の皆さんが耕作できるという環境というのはできないと思うわけですね。

 そこで、現在の担い手の皆さんが耕作をしておる面積というのが、ちょうど今私が申し上げました、五十数%が耕作をされておるという現状であるわけです。そういうことから考えますというと、やはりこの圃場整備をされた比率と、担い手の皆さんが耕作をしておる現農地の比率というのが、たまたまというか、合致するわけですね。

 ということは、すなわち、先ほど申し上げましたように、三百六十万ヘクタールから整備をされておる二百四十万ヘクタールを差し引いた百二十万ヘクタールというのも早急に整備がなされなければ、国策である全農地の八〇%を担い手に耕作をしてもらうということは実現がなかなか難しいものがあるのではないかなという思いでおります。そうしたこと等も踏まえて、この整備しなければならない百二十万ヘクタールを早急に整備をしないことには、政策が、なかなか実現が難しいのではないかなという思いがします。

 しかし、百二十万ヘクタールを整備するに当たっては、反当百万かかったとしても、十二兆円という費用がかかるわけですね。二百万ならば二十四兆円。

 そうした中で、今、土地基盤整備事業、そうした予算というのが恐らく約五千億程度ではないかなという思いがするわけですけれども、その辺から考えますというと、十二兆にしても五千億からで割ればまだ二十年以上の年数がかかりますし、それが二百万かかるとしたならば、またその倍というようなことで、なかなか先が見通せないような状況ではないかなという思いがしております。

 だから、やはり何らかの方法、方策を考えていただいて、この圃場整備の必要な完成に向けて全力で取り組んでいただきたいなというのが、これは常々私が考えておるような状況でございます。

 ちょうど私も農協の組合長をしておりましたときに、私の地域というのは長崎県の約四十数%、長崎県全体の四四、五%の農産物の生産をする地域であるわけですけれども、その地域の組合員全戸に今後農業を経営していく気持ちがどれほどあるのかということで、後継者がおるのか等々も含めて調査をいたしました結果、これまでに、御承知のように二十年で農業者というのは半減しております、しかしながら、これから十年で私の地域もまた半減をするというような調査の結果が出ました。

 そういうことで、農業者の減少というのはなかなか歯どめがかからないというような状況であるわけですけれども、しかしながら、先ほど申し上げましたように、圃場整備をやって、農業の厳しい労働条件の環境が是正をされて収入がふえるならば、やはりそうした農業後継者というのは育っていくわけでありますから。

 しかしながら、農業者がいなくなってから圃場整備を幾らやっても、これはもう詮ないことでありますので、ぜひとも、短兵急に何らかの方策を講じていただいて、圃場整備を進めていただきたいという思いでおるわけでございます。

 再度、大臣の御所見をお伺いできればという思いがいたしますけれども、よろしくお願いを申し上げます。

齋藤国務大臣 加藤委員の今のお話は、私も過去何回かお聞かせいただいておりまして、その思いの強さ、本当に共鳴するところ大であります。

 農業の発展基盤を強化していくためには、とにかく生産基盤の整備、これを着実に進めていくということに尽きると思っておりまして、したがいまして、担い手への農地集積、集約化ですとか、高収益作物への転換を促す、そういった観点からの農地の大区画化、汎用化等を通じて農業の競争力強化を図っていくということと、それからもう一つは、農業水利施設の長寿命化ですとか、農村地域の防災・減災対策等を通じた国土の強靱化等の施策を推進する土地改良事業というものを大変重要なものとして、私ども、政権を奪還してからかなり進めてきているわけであります。

 予算についての話もありましたが、平成二十九年度補正予算では、千四百五十二億円を計上したほか、平成三十年度当初予算では、前年度三百二十八億円増の四千三百四十八億円を確保したところであります。

 今の加藤委員の計算からいくとまだまだ不十分だということなのかもしれませんが、土地改良事業については、全国各地から事業の推進に向けた強い要望をいただいておるものですから、しっかりと予算を確保して、大規模化や農業の高付加価値化などの事業効果の早期発現に向けた事業の計画的、安定的な推進に努めていきたいと考えております。

加藤(寛)委員 次に、農地賃借権設定についてお伺いいたします。

 これまで五年の賃借権を二十年に延長することについては、借受人にとって五年という短期間借入れの場合、営農計画を立て、耕作に着手しても、土壌、土質状態等々で、営農計画を軌道に乗せるには、石の上にも三年と言われるように、いかなる事業でも軌道に乗るには一定の年月は要するものだと思います。本格的に本当の軌道に乗るには、一昔、十年程度は覚悟が要るものだと思います。

 ところが、軌道に乗りかかったときに地主から返還を求められかねない状況では、腰を据えてしっかり取り組むことができないという不安がありましたけれども、五年から二十年に延長されることになると、不安が払拭されて、しっかりと腰を据えて営農計画を立てて取り組むことができる状態になり、営農経営、基盤強化促進に大きく寄与するものとの思いから、賛意を表しておるところでございます。遅きに失した感さえございます。

 そこで、お伺いをいたします。

 賃借人は借受け期間はできるだけ長期の方が有利なわけでございますが、なぜ三十年とはせずに二十年にされようとするのか、お伺いをいたします。

野中大臣政務官 お答えいたします。

 賃借権をなぜ二十年に設定したかということでございますが、今回の新たな制度により、担い手が新たに農地を利用するに当たって、土づくりや水路の補修等を行う必要がある場合がありますので、賃借権の存続期間は可能な限り、先生がおっしゃったとおり長い、長期とする必要がございます。

 ただ一方、本特例措置は不明な共有者の財産権に一定の制約を課すものであるということとのバランスを考慮する必要もございます。

 この点、昨年創設された、農地中間管理機構に貸し付けた農地について、農業者の負担なしで基盤整備やそれとあわせた水路の補修等を可能とする制度でございますが、こちらの賃借権の存続期間が十五年以上とされていること、そしてまた、農地に係る賃借権でございますが、五十年までは設定可能であるものの、二十年を超える賃借権の設定というのは、全体の割合の一%未満、〇・二%ということでありまして、極めてまれであるということであります。

 これらのことを踏まえまして、担い手が借り受ける上で必要な期間として二十年を上限としたものでございます。

加藤(寛)委員 ありがとうございました。

 次に、農地法一部改正についてお尋ねをいたします。

 底面がコンクリート等の農作物の栽培施設を農地に設置しても農地転用に該当しない旨の取扱いとする農地法の改正は、まさに次世代農業に向けての時代に即応した改正であり、このことにより農業の成長産業化を図り、我が国農業の振興、発展につながり、食料自給率向上へと、国家の使命、食料安保へ向けて大きく寄与するものと期待をいたしております。

 そこで、お伺いいたします。

 営農者は、個人、法人両者あると思いますが、全ての営農者が経営上しっかりと運営、経営できるとは限らないと思います。諸般の事情により営農、耕作廃止に至った場合に、農地におけるコンクリート面の設置並びにその状態を指導監督する方法と、その強制力についてお伺いをいたします。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 経営悪化等になった場合で、所有者みずからが作物の栽培を行うことが困難となった場合は、まず、農業委員会等がほかに経営を行う者がいないかどうかあっせんを行うというのが第一段階です。

 第二段階としては、それでもなお再開の見込みが立たない場合には、農作物栽培高度化施設の用に供する土地ではなくなるということ、栽培しておりませんので、これは都道府県知事によります原状回復命令等の対象になります。

 第三段階として、この際、施設の所有者等が命令に従わない場合、あるいは行方がわからなくなっている場合には、知事による原状回復による関係の代執行も可能となっております。

 最後の段階として、なお、農作物栽培高度化施設及びその用地を所有しているのが法人であって、その法人が事業を中止した場合には、農地所有適格法人の要件を欠くことになりますので、国による買収の対象にもなるという四段階のことを考えてございます。

加藤(寛)委員 時間が参りましたので終わりたいと思いますけれども、最後に、やはり農業の基本、原点というのは、優良農地をいかに多く確保するかにかかっておると思いますので、今後ともの御努力をよろしくお願いを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

伊東委員長 次に、佐藤英道君。

佐藤(英)委員 公明党の佐藤英道でございます。

 初めに、農林水産業における外国人技能実習制度についてお伺いをさせていただき、本法案の質問に移りたいと思います。

 今週の四月二日、私は北海道の平取町にありますびらとり農協を訪問してまいりました。そこで、外国人の技能実習制度についてさまざまな御意見を伺ってきたところでございます。びらとり農協は、「ニシパの恋人」で有名なトマトの名産地でもございまして、いち早く六次化にも取り組み、トマトジュースを中心とした加工品も全国的に流通をしているところでございます。

 このびらとり農協では、平成十五年以来、中国人の技能実習生の受入れを始めて、ことしで十五年目となる、いわば先駆的な取組団体でもあります。百六十三戸の農家のうち六十六戸、百十五名の中国人を受け入れておりますけれども、定着率も大変高く、受入れ農家も大変に前向きなところが多いと伺っているところであります。

 びらとり農協からはさまざまな御意見も伺ったのでありますけれども、まず第一に、手続の煩雑さを少しでも解消できないかという御要望をいただいたところでございます。

 昨年から技能実習制度が新しくなりまして、機構が創設され、事業者や監理団体にとっても、実習計画の作成が義務づけられるなど、事務負担が重くなったという実感を抱いている方が多いようでございました。制度の目的から見て、適正な実習が行われることを担保することの重要性については十分承知をしているところでございますが、同時に、びらとり農協のような長年にわたって成果を上げている農協や事業協同組合、また農家にとって、より使い勝手のよい制度としていくことが、事業の目的である外国人の技能向上にもつながっていくと私は考えております。

 事務負担の軽減について何らか御検討願いたいと考えますけれども、法務省の御見解を伺いたいと思います。

佐々木政府参考人 技能実習制度は、開発途上国等の人づくりに協力することを目的とする制度でございますけれども、一部でこの制度の趣旨が労働力の確保策と誤解され、法令違反等の問題事案が生じているとの実情がございました。そのため、制度の適正化と技能実習生の保護を図ることを目的として、昨年十一月にいわゆる技能実習法が施行され、監理団体の許可制や技能実習計画の認定制が導入をされました。監理団体及び実習実施者の皆様には、申請に際して、技能実習法において定めた許可基準あるいは認定基準に適合していることを立証する各種書類を提出していただいておりますが、これらはまさに技能実習制度の適正化及び技能実習生の保護を図るという技能実習法の趣旨を踏まえ、必要な書類の提出を求めているものでありまして、この点の御理解をお願いしたいと考えております。

 他方で、申請者側の過度な負担とならないよう、各申請書に添付すべき書類につきましては、同時に二件以上の申請をする場合や、過去の一定期間内に同一の書類を提出したことがある場合にあっては、これを省略するということを認めたり、外国人技能実習機構のホームページにおいて申請書類の記載例を掲載するなどの運用も行っています。

 今後、制度の運用状況を把握し、また各方面からの御意見を参考とさせていただきながら、必要に応じて申請書類の軽減化を含めた見直しを検討してまいりたいと思っております。

佐藤(英)委員 ぜひよろしく御検討のほどお願いしたいと思います。

 この外国人技能実習制度につきましては、昨年の制度改正で実習生の居住環境基準が設けられましたが、実習生の居住空間等における通信環境の整備など、幅広い実習生のニーズに応え、暮らしやすい生活を実現していくことも重要と考えます。こうした環境整備についての御要望も伺いました。

 また、監理団体が受入れ相手国について新たな国を検討する上で、有効な情報を可能な限り容易に受けられるようにしていくことについても支援をお願いできないかとも思います。既に多様な国からの受入れを行っている他の監理団体などの経験やノウハウ、また人脈等を有効に活用できるよう、外国人技能実習機構などによるプラットホームの整備や相互連携の橋渡しを行ってはどうかとも考えております。

 いずれにいたしましても、現在、外国人材の登用については、成果を上げて取組を進めているところと理解しておりますけれども、農林水産業においては、担い手の確保という視点からも、重要度は今後更に増していくことも考えられます。今後の取組について、見解を伺いたいと思います。

野中大臣政務官 お答えいたします。

 農村地域におきましては、農業就業者の減少、高齢化等の問題が、人手不足ということで深刻化しているというふうに承知しております。このため、担い手の確保に加え、収穫等の作業ピーク時や規模拡大等に対応するため、外国人材を含めた労働力の確保が大きな課題となっているところであります。

 このような中、技能実習生を始め外国人労働力を活用する動きが広がっておりまして、農業分野の外国人労働者は、平成二十九年で二万七千人と、この五年で約一・七倍に増加をしております。

 このような動きを受けまして、昨年、適正な管理体制のもと、農業現場で即戦力となる外国人材を受け入れる国家戦略特区農業支援外国人受入事業が創設されたところであります。

 また、内閣総理大臣から新たな外国人材の受入れに関して、在留期間の上限を設定し、家族の帯同を認めないといった前提条件のもと、真に必要な分野に着目しつつ、制度改正の具体的な検討を進める、また、各分野を所管する関係省の協力を得て、急ぎ検討を開始するという御指示があったことは承知しております。

 現在、内閣総理大臣の御指示を受け、局長級の専門的・技術的分野における外国人材の受入れに関するタスクフォースでの議論が開始されたところでありまして、農水省としましては、これらの検討に積極的に対応してまいりたいと存じます。

佐藤(英)委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 さて、法案についてでございますけれども、現在、農水省の資料によれば、相続未登記の農地は全国で四十七万七千ヘクタール、また、未登記のおそれのある農地は四十五万八千ヘクタール、合計で九十三万四千ヘクタールと、農地面積全体の二〇%を超えるものとなっております。

 また、この法律案による所有者不明農地への取組は、関係者の権利に配慮しながら農地の積極的な利活用を促すことによって、農地の価値を再びよみがえらせ、長い将来にわたってその価値を守り抜いていくための仕組みづくりであり、積極的に評価をすべきと私は考えております。

 現行制度は、共有持分の過半の同意で五年間の貸付けが可能となっておりますけれども、農地中間管理機構が借り受ける場合には、知事の裁定だけでも可能となっているところでございます。

 今回の法改正におきましては、農地中間管理機構による借受けを更に進めるために、共有者の過半という要件の見直しや探索の範囲及び方法の明確化、不確知の共有者の権利擁護を定めることにより、農地中間管理機構を介する貸借を二十年に限り可能としたものと理解をしているところであります。

 政府は、農地の集積について、全農地の八割を担い手に集積するとの目標を掲げていますけれども、農地中間管理機構に貸し出せば自己負担なしに基盤整備を行えるとの制度も既に動き出しておりまして、これらの農地制度と相まって農地の集約、集積が更に進んでいくことを期待しているところであります。来年、いよいよ農地中間管理機構が立ち上がって五年目の節目を迎えるわけでありますけれども、ぜひ、八割達成に必要な措置についてさらなる検討を進め、果断に実行していくべきと考えます。

 改めて、今回の法改正によりましてどのような成果が期待できるのか、御見解を伺いたいと思います。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 現在、相続未登記の農地あるいはそのおそれのある農地は、全農地の二割を占めます約九十三・四万ヘクタールにも及ぶと考えております。ほとんどの場合、今、事実上耕作されている方はいらっしゃいますけれども、非常に高齢化してございますので、近い将来リタイアをする、その際に誰かほかの人に貸すとなると利用権を設定しようということになります。そうなりますと、相続が未登記だということが大きな問題になってくるわけでございます。

 それをまず探さなければいけないということになりますと、それこそおじいさんの代からの名義になっているような場合でありますと相続人が多数に及びまして、その探索となりますと、多大なコストを要するということになります。現在、御指摘のありました共有者の過半で権利設定ができる仕組みにおいても、そのような報告が多数されてございます。

 それから、そういうことでやっと探して利用権は設定できたとしても、現行法では五年でございますので、これでありますと、土づくりから始めるとか基盤整備を行うということになりますと、五年はあっという間にたってしまいまして、実際には利用できる期間がほとんどなくなってしまうという問題も多く指摘されてございます。

 それから、基盤整備を行うにいたしましても、所有者不明農地でいろいろそういう難しい問題がありますと、基盤整備もその部分は外して実施しようというような地域の事例も挙がっているところでございまして、基盤整備もなかなか効率的に進まないという問題がございます。

 こういうような問題が、今回の措置、簡易な手続で、共有者の一部が不明な農地について農地中間管理機構に貸し付けるということを可能にする措置によりまして、しかもその期間が二十年ということになりますと、御指摘のありました、機構に関係する農業者の負担のない基盤整備も、十五年以上機構に貸し付けることが要件とされておりますので、その事業の適用もできることになります。

 それから、利用権設定に伴ういろいろな手間、コストも解消されますので、それが大きく、担い手による農地の集積、集約化に寄与していくものというふうに考えてございます。

佐藤(英)委員 次に、昨年六月の骨太方針におきまして、所有者不明土地問題に対する対応を進めることが明確化されたところであります。特に、所有者不明土地を生み出す主因の一つとも言える登記未了土地について、一部からは登記の義務化を強く求める声が上がっております。しかし、登記の義務化を議論する際には、同時に所有権放棄の仕組みについても考えていかなければならないと私は考えております。

 さらに、所有権放棄された土地を引き取る市町村の管理にかかわる財政負担についてもどう整理していくかという問題も積み残したままに、一足飛びに登記義務化だけが方向づけられるということは避けなければならないのではないかと思っております。

 また、経済界からの要請も高い、利活用が見込める価値の高い土地について登記義務化の議論も進んでいく中で、農地の議論が置き去りになっていくことも私は懸念をしているところであります。

 現在、法務省に置かれた研究会で議論が続けられていると承知しておりますけれども、農水省にも、主張すべきことをしっかりと主張していっていただきたいと思います。

 また、報道におきましては、今夏の骨太方針に所有者不明土地の解消に向けた抜本的な対策を盛り込むべく今後は検討が進むという記述も見られておりますけれども、私は、以上のような点に十分に配慮して、丁寧に議論を深めていくべきではないかと考えます。御所見を伺います。

齋藤国務大臣 佐藤委員御指摘の、相続登記の義務化の是非、それから土地所有権の放棄の可否など、登記制度や土地所有権のあり方などの根本的課題については、御承知のように、農林水産省だけで結論を出せるという性格のものではございません。中長期的な課題として、政府全体で今取り組んでいるところであります。

 具体的には、法務省が昨年十月に研究会を立ち上げて検討を進めておりまして、農林水産省も本研究会に参加をして積極的に議論しているところであります。

 研究会では、利活用の面で価値が高い土地か否かにかかわらず、農地を含む土地全般について、所有権のあり方など幅広なテーマについて議論が進められているところでありますので、農林省も、我々の主張を十分させていただきたいと思っております。

佐藤(英)委員 齋藤大臣におかれましては、ぜひ、今の御決意のとおり進めていっていただきたいと思っております。

 確かに、農地は、食料の安定供給はもとより、国土保全や景観、集落の維持、文化を育む風土の形成など、多様で多面的な役割を持っていると思います。そうした農地を維持し活用していくことの価値は、数字ではあらわせないものの、人間が生活を営んでいく上での根本にかかわる重要性を持っていると考えます。こうした考えを国民全体でいかに共有していくかが、私も、農地を考えていく上での基本ではないかと考えているところでございます。

 また、最後に、底地のコンクリート張りについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 今回、栽培施設の底地の全面をコンクリート等で覆われた場合でも農地法の農地転用に該当しないとするわけでありますけれども、具体的に農家からどのようなニーズがあるのか、まず伺いたいと思います。

 また、これによりまして、大規模な植物工場が乱立するなどして周辺の農地に悪影響を与えることなどについて、やはり一部不安の声が上がっているのも事実でございます。さらに、一旦コンクリートを打設した農業施設を原状回復させることは、現実的にはかなり困難ではないかとの懸念も伺っているところでございます。

 これらを踏まえまして、今回の制度改正に当たり、周辺農地への影響緩和策及び規模基準並びに原状回復を要するケースについて、どのように整理をされているのか、明確にお答えをいただければと思います。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 まず、農家からのニーズでございますけれども、私どもが聞いておりますところでは、高設棚を設置して養液栽培を行いたいと。この理由としては、非常に労働力が不足し、また高齢化しておりますので、少しでも、作業を手伝っていらっしゃるおじいさん、おばあさん方の腰を曲げなくてもできるようにしたいというようなニーズもございますし、温度管理、湿度管理をあわせて行うことによりまして非常に高収益の農業に転換していきたい、そういう両面からのニーズがまずあると聞いております。

 特に、高設棚をつくる際は、底地が土のままですと時間がたつにつれて傾いてしまうというような話もよく聞いておりまして、養液栽培の方の農業をやることにとっては、下がコンクリートで張ってあるということが非常に不可欠であるという声も聞いてございます。

 それから、同じように、労働力の高齢化との関係ですけれども、移動用カートを設置したいというようなニーズもあるというふうに聞いてございます。

 以上がニーズでございます。

 それから、いろいろな懸念について、新しいことをやりますと、懸念される方ももちろんいらっしゃいます。そういうことも考えまして、我々としては、対象とする施設につきましては、省令でなるべく客観的な基準を決めようと思っておりますが、基本的な考え方としては、まず、専ら農業の用に供する施設、これによって、いろいろ、必ずしも農業のためでないような施設というものはシャットアウトしたい、まずつくる前にシャットアウトしたいというふうに考えてございます。

 それから、農地法の世界でこういう施設を認めるということになりますので、それぞれの農地がやはり農業生産をしっかり効率的に行うということが農地法の精神から必要なことだと思っておりますので、周辺の農地、隣の農地に日照等の影響があって作物が育ちにくくなる、こういうことは避けなければいけないと思いますので、高さの制限を設けたいというふうに考えてございます。

 その他、排水の条件とか、そういうようなことも考えていきたいと思います。

 これで一番大事なのは、事前の届出の際に農業委員会が要件をしっかりチェックしていくということで、周辺農地の農作物の生育に悪影響を与えるような施設がそもそも設置されないようにしたいというのがまず第一点でございます。

 それから、原状回復を要するようになった場合の措置でございますけれども、従来は、こういう施設については農地法の転用許可をとって行うことになっておりましたので、許可をしてしまうと農地の外に出ますから、何らその規制なり監督はできなかったわけでございますけれども、今回の措置は農地のままで届出を行った場合できるということになりますので、従来の農地法による規制がそのまま適用になるという、一種、メリットがございます。

 それを最大限活用いたしまして、農業委員会による、ほかの人がいないかどうかのあっせんなり、それから、知事による原状回復命令それから代執行、それぞれの措置が適用可能となっておりますので、それを総合的に事後チェックという形で行うことによりまして、農地法の目的の達成に資してまいりたいというふうに考えてございます。

佐藤(英)委員 ありがとうございました。

 終わります。

伊東委員長 次に、神谷裕君。

神谷(裕)委員 立憲民主党の神谷裕でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 まず、大変残念なんですけれども、財務省の改ざん、隠蔽の問題に続いて、今度は防衛省から、存在しないとされた文書が確認をされました。実に一万四千ページにも及ぶ膨大な文書でございまして、見つけようと思えば簡単に見つけることができたのではないかなとも思えるわけでございます。政府として真剣に捜す気があったのか、大変に疑問に思うわけでございます。

 また、そもそも、なかったり、あったり、廃棄したり、あるいは存在したりと、説明が二転三転しているわけでありまして、説明そのものも大変に問題なんですけれども、国の公文書管理のあり方そのものについても、やはり大きな問題があるのでは、大丈夫なのかなと心配になるわけであります。

 そこで、改めて、農林水産省の公文書管理の取扱いについて点検をされた方がいいのではないかなと思いますけれども、いかがでございましょうか。

齋藤国務大臣 農林水産省の公文書管理について、この財務省の件があってから、総理から指示が出ておりまして、まず、全ての政府職員には、原点に立ち返って、公文書は国民が共有する知的資源であること、それから、公文書を扱う者の立場は極めて重いことを改めて全政府職員が肝に銘じるように指示がありました。それから、さらに、各行政機関におきましては、幹部職員が先頭に立って、四月からの新ガイドラインによる厳格なルールを全職員に徹底し、確実に運用すること、それから、更新等の履歴が厳格に管理できる電子決裁システムへの移行を加速することという指示がございました。

 農林水産省としては、この総理指示の当日に省内に周知徹底をするとともに、新ガイドラインを踏まえた文書管理規則等を四月一日に施行いたしました。また、総務省から提供されているシステムによって電子決裁を推進するということで、今後とも公文書の適正な管理を徹底してまいりたいと考えています。

 御指摘の点検の話ですけれども、この公文書の管理については、新ガイドラインを踏まえて、私どもとしては、少なくとも毎年度一回、職員による公文書の作成や保存が適切に行われているかどうかについて点検、監査を実施するとともに、新たに文書管理推進期間を設けて職員自身による自主点検を実施するということとしておりまして、これらの取組を適切に実施してまいりたいと考えております。

神谷(裕)委員 公文書管理のあり方は本当に大変難しい問題だと思います。チェックをしていただくこと、本当に大事だと思いますので、お願いをしたいんです。

 そんな中で、農水省でもやはり、毎日新しい文書あるいは記録が日常的につくられていると思います。省内をのぞいてみますと、非常に狭いスペースの中で書架に文書が本当に、ここぞとばかりに詰め込まれている。あるいは、職員の皆さんも狭いスペースの中で必死に仕事をしているわけでありますから仕方がないなと思う面もあるんですけれども、机の上は非常に書類だらけ、あるいは書類の山の中で仕事をしている、そういう方も大勢見受けられるんじゃないかなと思います。廊下から見ていても、その書類の山の中にやはり大事な公文書も無造作に入っているんじゃないかなということがいささか心配になります。

 私自身、自分の机の上を見ると決してきれいな方ではないものですから、余り人のことを言えるわけではないんですが、むしろ、日常的な文書管理というんでしょうか、こういったことが極めて実は大事なんじゃないかなというふうに思うわけでございます。そういう意味では、まずはこういったところから始めてみなきゃだめなんじゃないかと思うんです。

 そしてまた、これだけ紙が多いというのもやはり問題なのかなと思いますので、電子化の議論も進んでいるわけでございますから、ここは思い切って紙を減らしていく努力、これをまた、私自身も紙でないと仕事できない部分もあるので、自戒の念を込めて申し上げますけれども、こういったことについて大臣の所感をお伺いできればと思います。

齋藤国務大臣 農林省においては、業務効率化の観点もございますので、電子決裁を推進しているところでありまして、平成二十八年度の電子決裁率は農林水産省全体で約七四%でありましたが、直近、これは本年二月ですけれども、では約八八%、本省で約九六%、地方支分部局等で約八六%と、電子決裁はここまで来ているわけであります。

 文書そのものの管理は、また別途の観点から、どこまで電子化するか。私、紙を見ながら答弁しているわけでありますが、二十三日の閣僚懇におきまして、総理からの指示に加えて、野田総務大臣の方からも、どのようなものが、なぜ電子決裁ではないのか、今後導入するにはどのような困難があるのか、個別に精査することについて協力依頼がございました。農林水産省としては、その調査に適切に対応し、更に電子決裁への移行を推進してまいりたいと考えております。

神谷(裕)委員 公文書管理というと、ともすると大きな話に思えるんですけれども、実は身近な、日常的な管理というのが一番重要なんじゃないかなと思います。

 私自身、机の上の大体どの辺にどういった文書があるとわかっているというふうには言っていますけれども、実際には、そういった、乱雑というか、整理整頓の中で公文書が紛れているとやはり大きな問題だろうと思いますし、見つかる見つからないというのは実はこういうところから始まるんじゃないかなと思うものですから、そこはやはり大臣にしっかりと省内、点検をしていただいて、少しでも、あわせて、省内の環境がよくなるように紙を減らす努力というか、整理整頓も含めてですけれども、御尽力いただけたらなと思うわけでございます。

 それでは、法案のことについて伺わせていただきたいと思います。

 今次の改正なんですけれども、農業委員会の皆様に大変期待をする、負う部分が多くなるというふうに思います。まずは、所有者不明土地の所有者の確定であるとか不確知共有者の確知作業についても大変に手間がかかり、いかに今回、簡素化が図られるとはいえ、やはり大変だなというふうに思うわけでございます。

 そこでですけれども、こういった農業委員会の皆様に対して、研修などの機会や、あるいは人的や物的、予算上の支援が図られるべきであると思うわけでございますけれども、この点を確認できればと思います。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、農業委員会は、今回の改正において重要な役割を担うわけでございます。

 農業委員会のまず探索でございますけれども、これにつきましては、農地中間管理機構の集積支援事業、これによりまして、探索や制度の研修に要する費用については助成することといたしてございます。

 これらを含めて、農業委員会が的確に所有者の探索なり公示を行えるように、全国組織であります全国農業会議所等と連携いたしまして、研修等、しっかりやってまいりたいというふうに考えてございます。

 それから、人員でございますけれども、これは、農業委員会改革に伴いまして、改正前の体制では農業委員の数が約三万五千五百人ぐらいでございましたけれども、改正後は、農業委員及び農地利用最適化推進委員というのが新設されましたので、合計しますと、若干ふえまして四万三千六百名ぐらいの体制になる見込みでございます。こういうような体制の整備をうまく使いまして、本改正を推進してまいりたいというふうに考えてございます。

神谷(裕)委員 一般的な相続を比べてはいけないとは思うんですけれども、普通に相続をする際に、これも大変な手間暇がかかる、その相続される方の確認をするだけでも大変な手間がかかるというふうによくよく聞いております。

 とするならば、今回、その役割を担うべきは農業委員会になるだろう。もちろん、一部簡素化できる部分はあるというふうに聞いておりますけれども、やはり、十分なスキルとまでは言いませんが、さまざまな支援が必要なんだろうと思います。そういった意味においては、ぜひ、かゆいところに手が届くような形で、しっかりと支援をしていただけたらと思うわけでございます。

 それから、確認したい点が何点かございまして、今回の改正では、農業ハウスの床面を全面コンクリートで覆った場合であっても農地転用には当たらないとなるわけでございますけれども、大きな懸念として聞いておりますのは、そのハウスの周囲や、ハウスとハウスの間、さらにはハウスの存在する周囲の農地全般についても、例えばコンクリートで覆っても認められるんじゃないかなと、いわば拡大解釈の懸念があるんじゃないかなと思います。

 改めて、今回、農地転用が不要とされる範囲についての明快な御答弁と、今ほど御例示申し上げました、ハウスとハウスの間や、ハウスの周辺の扱いについての確認をお願いしたいと思います。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 農地法は、あくまで、農業の生産基盤としての農地、これが食料の安全保障の観点から重要だということで、それを保存して、なるべく農業で活用していくという法律でございますので、今回認められるハウスの全面コンクリート張りは、あくまでハウスの中の全面コンクリート張りを認めるという趣旨でございますので、それが認められたからといって、ハウスの外も一緒にあわせてコンクリート張りしようとか、そういうことまで今回、法律の改正の射程に入れているわけでは毛頭ございません。ということで、それは対象外でございます。

 なお、施設の附帯部分をコンクリート張りするにつきまして一切できないかというと、そういうことではございません。これは、平成十四年の課長通知に基づきまして、農作物の栽培に通常不可欠なもので、独立してほかの用途への利用又は取引の対象にならないようなものについては、最小限認めるということになっておりまして、具体的な例としては、ハウスの横に重油タンクを設置するような場合、こういうものについては認められておりますけれども、周囲を全部コンクリート張りということは一切考えてございません。

神谷(裕)委員 今の御答弁ですと、念のため確認をいたしますが、今回の改正で可能となるのはハウスの中だけですよ、それ以外の場所については従来どおりですよということでよろしいかと思うんですが、念のため、確認をお願いします。

大澤政府参考人 御所見のとおりでございます。

神谷(裕)委員 今ほどの懸念の諸点を確認いたしたとしましても、やはり現場では農業委員会の皆さんと農業者の皆さんの間でさまざまなやりとりがあるんじゃないかなということが想像できるところでございます。先ほど重油タンクの例もございましたけれども、そういったところで、やはり、これは必要なんだ、必要じゃないんだ、あるいはどうなんだというところが言われるんじゃないかということでございます。

 農業委員会の皆さんにお話を伺っても、やはりそこが大変に気になるところであって、法律に書いてもらうのが一番ありがたいんだけれども、あるいは政省令でも、別にしても、明快な判断材料、基準を示していただきたいという話でございます。不要な現場でのいさかいを防止する上でも必要なことであると思いますけれども、取り組んでいただけるか、伺いたいと思います。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 まさに我々、その精神で臨みたいということを考えてございます。

 特に、今回、施設の省令基準におきましては、周辺農地の日照が制限されて農作物の生育に影響を与えないように、例えば高さの基準を設けようと考えてございますが、高さというのは、一定、例えば国土交通省の法律にも建築基準法というのがありまして、ある程度客観的に数値をもって高さの基準等は決められております。そういうものを参考にしながら、なるべく農業委員会あるいは農業者が現場で判断に困ることのないように、明確な基準を定めたいと思います。

 ただ、どんな、何というんですか、法律をつくればつくるほど、制度の裏をかきそうな人もいらっしゃいますので、一方でバスケットクローズ的なものは必要だと思っておりますが、明確になるようなもの、例えば高さのようなものについては、可能な限り数値で明確な基準を定めたいというふうに考えてございます。

神谷(裕)委員 ありがとうございます。

 やはり、現場でいさかいになってしまうというのは、その地域に住んでいる方同士にとっても非常に不幸なことになりますので、できる限り、法律なのか、あるいは政省令なのか、あるいはQアンドAのような形なのかは別にいたしましても、そこはしっかりと丁寧な対応を改めてお願いしたいと思います。

 今ほど高さの話も出てまいりましたけれども、農作物栽培高度化施設について、周辺の農地に係る営農条件に支障が生ずるおそれがないものということでございますけれども、日照についての高さの話は今ほどありましたけれども、周辺環境に影響を与えるという意味では、ほかにもさまざまな要素があるんじゃないかなというふうに考えられます。具体的には、例えば、広さはどうなのかなとか、あるいは水環境なんかはどうなのかなとか、そういったものがあると思うんです。

 こういったものについてもやはり基準をしっかりと定めていただきたいと思うんですけれども、これはいかがでございましょう。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げたとおり、可能な限り客観的にできるものは客観的にという精神で臨んでおります。

 高さの基準のほかの基準の考え方でございますけれども、先ほどお話のありました中で、水環境、これにつきましては、コンクリート張りの施設ができるとなりますと、やはり水はけの点で悪くなるということは当然のことでございますので、そうなりますと、場合によっては周囲の農地に悪影響を及ぼす場合が生じると思います。ですので、排水設備については、できる限り客観的な基準、これこれこういうものをつくりなさいというものを明確に定めたいというふうに考えてございます。

 他方、広さの御指摘もございましたが、広さにつきましては、農地法というのは、あくまでその土地で、現在であれば、耕作の用に供する土地において農業生産が効率的に行われるということを担保するための法律でございますので、ハウスの中でちゃんと農業が行われている限りは、広さについて、農地法の性格から、一定の制約を設けるかというのは若干難しいところはあるかと思いますが、いずれにしろ、全てが農業用の施設でなければならないということはしっかりと定めたいと思っておりますので、過大に広いものをつくって、それをまた、例えば農業委員会の立入調査をさせないとか、そういうことによって実際的に、実際の農業よりも過大になる、そういうものは行わないように、専ら農作物の栽培の用に供するものという要件はかけたいというふうに考えてございます。

神谷(裕)委員 何回もお願いになりますけれども、明確なものをやはりつくっていただきたいなと思うわけでございます。

 先般、我が国の所有者不明の土地が、これは農地ばかりではないんですが、四百十万ヘクタール、二〇四〇年には約七百二十万ヘクタールに上るとの推計があるということでございました。農地では九十三・四万ヘクタールというようなことでございますけれども、我が党の佐々木議員からも指摘がこの前ありましたけれども、国土政策としての観点がやはり十分ではないんじゃないかなというふうに思われるわけでございます。

 こういった所有者不明の土地が時間を経ますと、更に相続等によって細分化や複雑化することが確実となってまいります。やはり、これは早期に手当てをすることが必要であるなというふうに思うわけでございますけれども、今回の改正でもそういったことを一歩進める、そういう意味では非常にいいんだろうと思いますけれども、利用権設定ということでございますので、最終的には、この問題を片づけるためには所有権を確定させるということがやはり重要なんじゃないかな、そうでないと抜本的な対策とはなり得ないんじゃないかなというふうに考えるわけでございます。

 今現在、政府として御対処いただくための議論をされているというふうに伺ってはいるんですけれども、今回の対策の先にある所有権の確定に向けても今回努力できる部分はするべきであると考えますけれども、例えばですが、農地中間管理機構も、どちらかというと利用権というか貸借によるものが多いと思います。そういった意味で、この農地中間管理機構も例えば所有権移転にもう少し力を入れてもいいんじゃないかなというふうに思うんですけれども、お考えはいかがでございましょうか。

齋藤国務大臣 この所有権移転問題は、本当に根本的な問題に手をつけるということになります。

 私どもとしては、所有者不明農地の問題に関して、今回の改正では利用権の設定によって農地の利用を促進しようとしているわけであります。

 そして、今回の措置も、農地を利用する責務を根拠として私権の制限を伴うものでありますので、必要十分な措置としては利用権を設定するということであるという考えに基づいているわけであります。

 一方で、お地元の北海道においては、農地の売買による担い手への農地集積が多いということは承知をいたしているわけでありますが、冒頭申し上げましたように、土地所有権のあり方という根本的な問題に踏み込む必要が出てまいりますので、これは中期的課題として政府全体で取り組むということになるんだろうと思っております。

 具体的には、法務省が昨年十月に研究会を立ち上げて検討を進めておりまして、農林水産省もその研究会に参加しておりますので、そこで私どもの考えを積極的に展開していきたいというふうに考えております。

神谷(裕)委員 大臣御指摘のとおり、財産権というのは非常に重い権利でございます。むしろ、だから財産権という観点に立って大事に思うのであれば、所有権というのがやはり大事なんだろうと思います。むしろそれを本来やるべきなのに、できないから利用権あるいは賃借というところに今は行っているんじゃないかなと思うわけでございます。これは、時間を経れば経るほどに問題は大きくなっていくことはあっても、小さくなることはございません。ですので、ここはもう決意の問題として、ここでしっかりとこの問題を終わらせるんだという意味で、義務化になるのかわかりません、ただ、一歩でも前に進めるように頑張っていただけたらと思うわけでございます。

 今回のこういった動きも含めて、相続者、所有者の確定をやはり進めていくことになると考えるわけでございますけれども、中には、不在村という方、地方での幾分かの農地の相続に、むしろ、都会で戸惑いのある方もいるんじゃないかなというふうに思うわけでございます。むしろ、こういった、都会にあって遠い地方での農地のことをどうしようかなと考えているような所有者に対して、しっかりと相続放棄ができるように、あるいは、より簡便な方法で市町村への所有権の移転ができる、そういった制度、管理や所有のできない方に対してのきちんと所有を諦めてもらう手段を改めて考えるべきではないかなと思うんですけれども、お考えを伺いたいと思います。

齋藤国務大臣 この問題は、私も問題意識は共有するわけでありますが、土地所有権の放棄やその受皿、では、放棄した後その土地は誰のものになるんだとか、その受皿として国以外の機関を例えば帰属先とすることが可能なのかとか、これは土地所有権のあり方に係る根本問題になってくるわけでありますので、農林水産省だけで結論を出せるものではないということですので、中期的な課題として、時間がかかる課題として政府全体で今取り組んでいるところでありまして、先ほども申し上げましたけれども、法務省の研究会におきまして、農林水産省は農林水産省の立場を展開していきたいと今考えているところでございます。

神谷(裕)委員 ありがとうございます。その問題意識は共有するものでございます。

 この後、この法案ではないですけれども、森林もそうでございましょう、あるいはさまざまなところでこの議論が進んでいるわけでございます。ただ、最終的には、中には、例えば農地においても林地においても、いわば、農地ではなくなって、林に戻していくとか原野に戻していくとか、そういうような選択肢もあるいはあるかもしれません。そういった際に、実は、こういった放棄するという考え方というのはさまざま展開できるんじゃないかなと思います。

 まだ議論の途中だと思います。ただ、やはり、おくらせてはいけないという観点のもとに、中期的課題と今おっしゃっていただきましたけれども、お進めいただけたらと思います。

 さて、農地の問題をここで考えてみたいと思うんですけれども、農地の問題を考える入り口として、やはり耕し手、誰に耕していただくかという問題が非常に重要になると思います。この国の農地を耕している皆さん、農業者の皆さんですけれども、残念ながら平均年齢も徐々に上がってきております。そしてまた離農もふえております。

 この際、やはり農地の問題を考える上で、この耕し手が何でこんなに減ってきたのかなということを考えることは非常に重要だと思うんですけれども、農地の耕し手である農業者が残念ながら減っている理由をどう考えているのか、この際、改めてお伺いをしたいと思います。

齋藤国務大臣 現在、いわゆる基幹的農業従事者数というのは、直近の二十九年で約百五十一万人となっておりまして、十年前と比べますと約五十二万人減少ということですので、十年間で四分の一減少をしているということであります。

 これは、一つは、農業世帯の高齢化が進展していますので、その結果として離農が進んだということもあるでしょうけれども、やはり農業そのものが、成長する産業であって、そして所得が確保されるということを今後確保していくということの重要性を私はあらわしているのではないかなというふうに思っておりますので、そのための施策をしっかりやっていかなくちゃいけないというふうに思っております。

神谷(裕)委員 そのとおりでございます。農業者がちゃんとこの農業というもので生きていける、食べていける、これは大事なことだと思いますし、もしそれがきちっとなっていれば農業者も離農はしないんだろうと思います。仮に高齢化が進んできたとしても、若い方が入ってくるわけです、世代間の更新が進んでいくわけでございますから、やはりそういったことをしっかりと考えていくことが実は根本なんだろうと思います。

 そういった観点もあるんですけれども、農地の問題を考えていくと、やはり誰に耕していただくのかということが非常に大きな課題となっていると思います。やはり、平均年齢が上がっているんだよ、離農がふえているんだよ、ではそのあいていく土地を誰に耕していただくのかということが大きな課題だと思います。

 そういった中において、二〇〇九年の農地法の改正だったと思いますけれども、耕作者主義という考え方がございました。このときに条文は変わってしまったんですけれども、改めてなんですけれども、非常に私はこの耕作者主義という考え方は大事だと思っておりまして、やはり農地は農業者の方に耕していただくんだという考え方、あるいは、戦後の歴史の中でつくられてきた考え方だというふうには理解をしておりますけれども、この条文そのものは変わってしまったわけですけれども、改めて、この国の農政における耕作者主義という考え方、これがきちんと生きているのかどうか、大臣に確認をしたいと思います。

齋藤国務大臣 耕作者主義は、一般的に、農地をきちんと耕作している者に農地の権利取得を認めるということとされておりまして、御指摘のように、平成二十一年の農地法改正において、それまでの、農地を耕作者みずからが所有することを最も適当とする、そういう考え方を改めて、農地の利用を本位とする制度に再構築したところであります。

 農業者の減少、高齢化の中で、意欲を持ってこれからの農業を担おうとする方に農地の利用を集積、集約化していくことは、むしろますます重要になってきていると考えております。

 その意味で、耕作者主義という考え方は、現在でも維持されていると考えております。

神谷(裕)委員 耕作者主義という考え方が生きているというお話を伺っただけでも、ちょっとほっとした思いが実はいたしております。

 実は、二〇〇九年の改正のときにこの言葉がなくなったというのが非常にやはりイメージとして大きく思っておりまして、この考え方の裏には、ひょっとしたら、農業者じゃなくても、とにかく誰でもいいから、耕作、このあいている農地を、どんどん農業者がリタイアしていくわけですから、その農地を耕してもらえればという発想に実は農水省全体がなっているんじゃないかなというような実は疑念を私は抱いておりました。

 いわば、農業者じゃなくても、例えば企業に入ってもらっても、とにかくこの国の農地を耕してもらえばいいんだということになったらどうなるのかな。かつて、この耕作者主義ですけれども、小作から解放されるという話の中で、文脈の中で、やはり農業者に耕してもらおうねという概念が強かったと思います。

 そういった意味で、この間の、何となく、企業参入に関する緩和の動きが多々見てとれるわけでございまして、耕作者主義という言葉が、この条文が変わったということと、こういった企業参入の緩和の動きと実はリンケージしているんじゃないか、あるいはそういった疑念を感じるんですけれども、これについての所見を伺いたいと思います。

齋藤国務大臣 私どもの企業参入の考え方については、従来から、特区のときもさんざん議論をさせていただきましたけれども、やはり一定の制約の中で、まずは特区で試験的にということで、養父市で今行われることになっているわけであります。

 ただ、今回の、農業用ハウスの底地をコンクリート張りにするということに関しては、これは現場の農業者自身から、高設棚の設置とか移動用カートを設置して、農作業を効率的に行って労働力不足の解消につなげたいんだとか、それから養液栽培や環境制御の導入によって農作物の収量や品質の向上につなげたいといった現場からのニーズがございまして、今般の法改正はこれに応えようとするものであります。

 今回の改正においては、農地所有適格法人の要件について何かいじるというようなことは一切しておりませんので、そういった意味では、企業参入を進めるという趣旨のものでは、今回のものは全く違うということは付言をさせていただきたいと思っております。

神谷(裕)委員 おっしゃるとおり、この法律についてはそういうようなことはないのかなと。中には、この法律であっても、実はやはりそういう企業への道をよりたやすくするための改正ではないかと言われる方も大勢おられるというのも、実はあるのかなと思いますけれども。

 少なくとも、ハウスの中を、農業者の方のニーズがある、そのとおりだと思いますので、これについてはあえて、ともかく企業参入の話を拡大するということを言うつもりはないんですけれども、この間の農政の流れ、発端はやはり誰に農地を耕していただくかということだと思うんですけれども、そういった中で、やはりそういった文脈の中で語られているんじゃないかなと私自身は思うわけです。

 もちろん、企業さんであっても、真面目に本当に耕作をしていただけるんだ、あるいは地域になじんでいただけるんだ、そういうことであれば地域も納得をして迎え入れてくれるんだろうと思うわけでございますけれども、そういったところで、まだ農業者の方にとっては、企業参入というのは非常に、やはり心理的にもあるいは地域にとっても障壁が高いんだろうと思います。そういった意味においてはやはり慎重に、少なくとも農業者の心に大丈夫だなと思うものがない限り、なかなか進んじゃいけないんじゃないかなと私自身は思うわけでございます。

 また、やはりそういった意味においては、この国の農業者の方に耕作をしていただくということがこの国の農業のあり方であるというふうに思いますし、この間、あいてしまった農地を誰かに、農業者という意味でございますけれども、耕していただくために、行政も地域も、農業委員会の皆さんもそうですけれども、必死に努力をしていただいてきたんじゃないかなと思いますし、そのために、農水省さん、必死になって施策を展開していただいた、このことも決して無駄ではない、むしろ貢献は非常にあった、このように思っているところでございます。

 やはり、あいたから誰でもいいから入ってくれというのは本来のあり方ではないと思いますし、できることであれば、農業者の、特に若者が胸を躍らせて参入したいと思うようなものにしていきたいと思いますし、農業はそういうふうになっていただきたいと思いますし、私はそういうふうになれるというふうに思っております。

 そういった意味では、先ほどの大臣の分析ではございませんけれども、やはり、経済的な要因、しっかりと農業で食べていけるんだ、収入が得られるんだということが非常に重要だと思いますし、逆に、離農あるいは高齢化が進むということは、食べていけない、収入が得られないということの実は証左ではないかなというふうに思うわけでございます。

 特に今日的には、若者の皆さんにとっては、安定化しているということは非常に重要な、というか魅力になるんじゃないかなと思っておりまして、今の農業がそういう産業になっているのかなということを私は点検する必要があるんじゃないかなと思います。

 そういった意味におきまして、例えば農業の、現在も経営安定のための対策をいろいろとっていただいておりますけれども、さらなる経営安定化策であるとか下支え策であるとか、ナラシや収入保険をやっていただいておりますけれども、長期的な価格の下落には、時間を稼ぐことはできるんですけれども、やはり歯どめにはなり切れていないんじゃないかなという私の問題意識もございまして、せめて担い手の皆さん、次の農業をやっていただけるような、そういう担い手の皆さんに対しては、少なくとも将来が少しでも見通せるための岩盤政策というんでしょうか、そういったものを考えるべきではないかなと思うのでございますけれども、いかがでございましょうか。

齋藤国務大臣 御指摘のように、農業が魅力ある産業で、若い人たちが自分もやろうという気持ちになるということが一番重要な政策なんだろうと思っておりますが、一方で、御指摘のように、農業は自然相手の産業でもありますので、経営の安定をいかに図っていくかということも、同時に非常に重要な政策なんだろうと思っております。

 そういう意味では、私どもとしては、もう繰り返しになりますけれども、お米の政策については、飼料用米を生産することによって所得が確保できるし、それから、主食用米については、生産を需要に応じたものに変えていくことによって一定程度価格も安定をしていくだろう。そしてさらには、ナラシや収入保険制度もある。さらに、日本型の直接支払制度で地域の下支えみたいなものを確保していく。中山間地には、中山間地にプラスアルファで御支援をさせていただく。そういう総合的、重層的な政策によって、今、神谷委員御指摘のような展開を図っていきたいなと考えているところでございます。

神谷(裕)委員 ありがとうございます。

 今おっしゃっていただいたとおり、さまざまな施策を現に展開していただいております。今もお話ありましたとおり、収入保険あるいはナラシという経営の安定化策というか収入減少影響緩和対策であるとか、さまざまな施策はとっていただいておりますけれども、やはり、今聞いておりますと、将来的に、例えば米もそうなんですけれども、米価は下がっていくんじゃないかな。もちろん、食べ手が減るわけでございますし、あるいは需要が減っていく中で、外国産米も入ってくるんじゃないか、さまざまな不安な要素がたくさんあるよねと。

 そういったところで、今いただいている収入の安定化策、これは確かに単年度、あるいは直近では二、三年であればきいてくるかなと思います。ただ、五年、十年たったときの長期的な下落に対しては、もちろん、その間に農業者御自身で御努力をいただいて、経営を少しでも変えていただく、あるいは生産費であるとかそういったものを改善していただく、これが本旨なのかもしれません、ただ、やはり長期的に下がっていく。しかも、今の生産費を見ていくと、必ずしも、下がっていく要因として、もちろん機械力もありましょう、あるいはさまざまな御努力もありましょう、ただ、やはり労働賃であるとかそういったところでむしろ無理をしている部分もあるんじゃないかなと思えるわけなんです。

 そういったときに、やはり、長期的に見てある程度下がったとして、そういったときでも、この先経営は大丈夫なんだよ、将来は見通せるんだよというのがいわばストッパーというんでしょうか、岩盤政策なんじゃないかなというふうに思えるわけでございます。

 そういった意味において、今のさまざまな施策というのはそこまで実は行っていないんじゃないかな。それがいわば、米農家もそうなんですけれども、不安な思いに、あるいは将来が見通せないと言っている最大の要因ではないかな。単年度で見ますと、確かに需給もきれいに今していただいているというような状況だと理解をしておりますので、すぐに下落、あるいは米価は特にそうですけれども、なるのかなということにはならないとは思います。

 ただ、やはり将来を見据えて、ましてや農業者の方というのはやはり長期的な展望というのが非常に気になる方々でございますので、そこにはぜひお心を用いていただいて、お考えをいただけたらなというふうに思うわけでございます。

 ちょっと視点を変えまして、地域や集落で、地域の合意のもとに、次の地域を担う担い手に農地を集積していこうという考え方、これについては、当然私も異論はございません。

 しかし、現在の農地集積の目標でございます担い手経営体に八割を集めようというのは、いささか乱暴なんじゃないかな。と申しますのは、八割を担い手に集めた、その結果の副作用が実は出てくるんじゃないかな。いわば、八割を集めるということによって、集落から人がいなくなってしまうような状況にならないか。改めて、この八割を集積した際の農村の状況をどういうふうに考えているのかちょっと聞きたいなと思っておりまして、そういった、例えば目標である八割を集積した後に農村コミュニティーは維持できているのかどうか、こういった懸念についての所見を伺わせていただきたいと思います。

齋藤国務大臣 物事はいろいろな見方で見ていかなくちゃいけないということを感じるわけでありますが、今現在の農業、農村の状況を見ますと、基幹的農業従事者の約八割が六十歳以上だ、そして五十歳未満は約一割にとどまるということで、農業者の高齢化の進行と担い手の不足というのが今深刻になってきておりまして、そういうこともあるので、全国の荒廃農地も引き続き二十八万ヘクタール程度存在しているわけであります。

 このような状況を放置したままでは、むしろこの傾向が悪化するおそれがあるのではないかということで、できるだけ担い手に農地を集積、集約化して、それで地域農業の維持発展を図って、地域の活性化をさせることがやはり大事だなということで、目標を掲げて今やっているということでありますので、いろいろな面があるんだろうと思いますけれども、そういう気持ちでやっているということでございます。

神谷(裕)委員 気持ちはよくよくわかります。そしてまた、現状を考えると、農地の面積あるいは担い手の数、考えていくと、そういうような結論になっていくのかなというような話もございます。

 ただ、本当にもし担い手に八割集めてしまったときに、その農村、維持できるのかな、コミュニティー大丈夫かな、その地域に人住んでいるのかな、どうしてもやはり心配なんですね。やはり農村政策ということも、農水省、しっかり考えていただかなきゃいけないわけですから、集積も大事ですが、やはりどういう方に、どれだけの多くの方に耕してもらえるのか、ここも大事なんじゃないかなと思います。

 そういった観点からもとにではないんですが、農地をやはり地域の担い手にしっかりと集積をしていくということなんですけれども、そのためには、例えば、地域の皆さんが話し合い、合意をつくっていく人・農地プランというのは非常に重要だった、有効であったと私は思っております。

 残念ながら、これはなかなか進んでいないようにも見えるわけでございまして、私は、やはりこの人・農地プラン、しっかりと進めていただきたい、その思いで、その方策について、最後、伺わせていただきたいと思います。

齋藤国務大臣 私も、神谷委員と同じで、人・農地プランは非常に重要だと思っておりまして、地域における人と農地の問題につきまして、地域における話合いを活発化させていって、地域農業のあり方ですとか、地域の中心となる担い手の方を明確化していくというようなことは大事で、平成二十四年からこの運動は展開されているわけであります。

 人・農地プランによって地域の話合いを活性化することは、自分たちの農地をどう使っていくかということを真剣に考える、そういう機運を盛り上げるために極めて有効だと思っておりますので、取組のさらなる推進と実質化を図っていきたいなと考えています。

 このために、地域の話合いを通じて明確化された担い手に対する経営体育成支援事業ですとかスーパーL資金による支援、あるいは、人・農地プラン作成等そのものに関する経費の助成ですとか、それから中山間地域直接支払い等の、同様の話合い機能を有する支援措置との連携みたいなものも大事だと思っていまして、そういう取組を進めてまいりたいと考えております。

神谷(裕)委員 ありがとうございました。

 終わります。

伊東委員長 次に、石川香織君。

石川(香)委員 立憲民主党の石川香織でございます。

 今回の法案についての御質問をさせていただきたいと思います。

 最初にお伺いをしたいのは、所有者不明農地の利活用のための新制度についてであります。

 この問題の根本は、相続未登記の農地が存在しているということでありますが、農地法によって、相続などで権利を取得した際の届出は義務づけられていますけれども、登記は義務づけられておりません。

 登記の重要性をもっと広めていかなくてはいけないのではないのかと思いますけれども、これについてどのような取組をなさっているのか。きょうは法務省の方にもお越しをいただいております。法務省と農林水産省にお伺いをいたします。

    〔委員長退席、坂本委員長代理着席〕

筒井政府参考人 相続登記がされていない農地の発生を抑制するためには、ただいま委員から御指摘がありましたように、相続登記を義務化するかどうか、こういった点についても重要でありまして、中期的な課題として検討を鋭意進めているところではございますが、それとともに、まずは相続登記の重要性を広く周知し、相続登記を促進することが重要であると考えております。

 法務省では、そのための各種の取組を行っているところでございまして、主なものとしては、まず、登記の専門家団体と連携の上、相続登記促進のための広報用リーフレットを作成し、死亡届の受理時にこれを配付するよう各法務局、地方法務局から全国の市町村に対して協力依頼を行っております。現在、全国の七割を超える市町村に御協力をいただいているところでございます。

 また、昨年五月から、相続人の相続手続の負担を軽減し、相続登記の促進を図るために、法定相続情報証明制度の運用を開始したところでございます。これは、戸籍や除籍の謄本の束のかわりとして、法定相続人の情報を一覧にした法定相続情報一覧図の写しの交付を行うというものでございます。これまで多くの方にこの制度を御利用いただいており、その利用者に対して直接に相続登記の促しを行っているところであります。

 これらの取組により、引き続き相続登記の促進に努めてまいりたいと考えております。

齋藤国務大臣 相続未登記の問題の根本的な解決は相続時に登録をしていただくことにあるということで、御指摘のとおりだと思います。

 私どもの努力を少しお話しさせていただきますと、農地法上は、平成二十一年の改正によりまして農地の相続発生時に農業委員会に届出を行うということが義務づけられておりまして、これに基づく相続届出件数も年々増加をしております。平成二十七年には、約四万三千件で合計約二万八千四百ヘクタールに上っているところであります。

 農林省としては、この届出の際に相続登記もしっかりやってくださいと働きかけるよう、農業委員会を促してまいりたいというふうに思っております。

 なお、法務省から答弁がありましたけれども、相続登記の義務化等の一般制度そのものを見直すことについては、先ほど来申し上げておりますように、法務省で研究会を立ち上げて検討を進めておられるので、農林水産省は、その研究会の中で私どもの主張をしっかりさせていただきたいと考えております。

    〔坂本委員長代理退席、委員長着席〕

石川(香)委員 ありがとうございます。

 登記を呼びかける働きかけをなさっているということでありましたけれども、ただ、若い世代の方は、登記がちょっと面倒だというイメージがあるのではないかと思っております。登記をするということの手間とかコストを削減していく努力が必要ではないかと思っているんですけれども、これは、農地だけではなくて宅地でも言えることだと思います。

 そこで、登記の手間やコストを軽減していくという意味での取組についてお伺いをしたいと思います。

筒井政府参考人 御指摘がありましたとおり、相続登記の促進のためには、相続登記の申請手続の負担やコストを軽減し、相続登記をしやすくすることが重要であると考えております。

 そこで、法務省におきましては、相続登記の申請手続の負担の軽減の観点から、平成二十八年には、相続登記の添付書面に関する通達の見直しを行い、また、昨年五月から、法定相続情報証明制度の運用を開始するなどしているところであります。

 また、コストの軽減に関しましては、平成三十年度税制改正要望において、相続登記の促進のための登録免許税の特例を新設することを要望し、平成三十年税制改正の大綱において、二つの観点からの土地の相続登記に対する登録免許税の免税措置が盛り込まれたところでございます。

 その一つは、既に相続登記が放置されているおそれのある土地への対応という観点から、例えば、二次相続、第二次の相続が発生している土地につきまして、その一次相続についての相続登記の登録免許税を免税するというものであります。もう一つは、今後相続登記が放置されるおそれのある土地への対応という観点から、一定の要件を満たす資産価値が低い土地についての相続登記の登録免許税を免税するというものでございます。

 いずれも平成三十三年三月三十一日までの期間適用されるというものでありまして、これらの登録免許税を免除する特例を設けるための法律、所得税法等の一部を改正する法律が今国会で成立したものと承知しております。

 引き続き、相続登記の申請をしていただけるように、施策を進めてまいりたいと考えております。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 さまざまな取組がなされているということでありました。これからも、未登記の土地を減らす、又はふやさない努力をしていくために、引き続き取り組んでいただきたいと思っております。

 次の質問に参ります。

 所有者不明農地について、農業委員会の探索、公示手続を経た上で、不明な所有者の同意を得たとみなして、相続人の一人が農地中間管理機構に貸付けすることができます。今回の制度では、農地の貸付先は、この農地中間管理機構に限られているということであります。

 この機構の事業地域は農業振興地域に限られておりますが、農業は農業振興地域以外にも存在をします。今回、農業振興地域に限られたのはなぜでしょうか。また、今後、農地全体に活用するような制度にするお考えはあるか、お答えいただけますでしょうか。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 今回の新しい法案で提出しております制度につきましては、やはり私権の制限を伴う制度でございます。一定の手続を経れば、不明な共有者については、所有権を持っていらっしゃるわけでございますけれども、手を挙げない限りはそのまま手続が進行してしまうというような制度でございますので、やはり対象地域につきましても一定の制約を私権の制限とのバランスでつくるべきではないかという結論に至ったわけでございます。

 そういうこともありまして、まず、農業の振興を図るべき地域に必要性が高いだろうということで、農業振興地域というのを対象にするということでございます。

 その上で、農業振興地域において農地の集積、集約化が最も効率的かつ確実に達成されるという必要があると思っておりまして、ということから、担い手を探して農地を集積する機能を持っております、公的機関であります農地中間管理機構を貸付先というふうにしたわけでございます。

 今の段階では、この仕組みをまず速やかに、新しい仕組みでございますので、成立をしていただいた上で、周知徹底をして制度を定着したいというふうに考えている次第でございます。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 この所有者不明農地でありますけれども、必ずしも全員が土地を相続し続けたいと思っているわけではないと思います。

 そのほかの選択肢として寄附という手段もあるかと思いますけれども、この寄附という手段について御説明いただけますでしょうか。

筒井政府参考人 お尋ねがありました寄附とは、ある特定の者に対して無償で財産を移転することを意味すると思われますが、これは民法上の贈与に該当すると思われます。

 この贈与と申しますのは、当事者の一方が財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずるものでありますため、お尋ねのありましたように、土地を相続された方は、相手方の承諾が得られる場合であれば、その方に土地の贈与、つまり寄附をすることが可能であると考えられます。

石川(香)委員 寄附という制度があるということでありましたけれども、法務省の御回答ありがとうございました。

 次の御質問に移りたいと思います。

 本法案において、共有者不明農地に係る農用地利用集積計画の同意手続の特例が定められることになりました。このことから、二分の一以上の持分を有する共有者を確知できない場合、農地法の遊休農地対策による都道府県知事の裁定を経なくても賃借権を設定することができるようになりました。また、この不確知共有者の探索範囲も、政令によって一定の範囲に限定されることになりました。

 これらにより、現行の農地法の遊休農地対策による場合よりも賃借権の設定などの期間が短縮されることが予想されますし、そのことを期待しているんですけれども、このことについてお聞きしたいと思います。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 現在の遊休農地に関する裁定制度につきましては、これまで十一件実例がございますけれども、これは、共有者の探索に着手してから実際に知事の裁定がされるまでに、平均で一年九カ月、最大では二年九カ月の期間を有してきたところでございます。

 これだけ時間が非常にかかった原因としては、やはり先ほども御答弁差し上げましたとおり、共有者の探索、あるいは、そういうところに明確なルールがなかったものですから、それこそ世界じゅうちゃんと探せとかいうような運用も一部で行われていたということに伴いまして、期間がかかっていたというふうに考えてございます。

 今回、法案、改正法において提案しております新制度につきましては、農業委員会による共有者の探索範囲が明確化されることになりまして、そこについて一定の範囲に限られていくということ。それから、裁定という都道府県の行為が必要だったものですから、そこで都道府県が慎重になるというところもございましたが、今回の制度においては、裁定によらず、六カ月の公示期間を経ればこれでもう手続が進められるということになりますので、我々としては、大体いろいろ計算してまいりますと、長くても手続開始してから一年程度で利用権設定が行われるのではないかと見込んでおります。

 こういう期間が達成できるように、運用を徹底してまいりたいというふうに考えてございます。

石川(香)委員 一年九カ月から二年三カ月という非常に時間がかかる作業でありますけれども、今回探索範囲が明確化されたことによって作業がよりスムーズに進むことを期待したいと思っております。

 次は、この法律案についてですけれども、二分の一以上の共有者が判明しない場合、市町村が農業委員会に探索を要請することができます。農作物の栽培が適正に行われるように農業委員会が監視、勧告を行うということもセットして行われるわけですけれども、農業委員会の負担が非常にふえることが予想されると思います。

 農業委員会の方の一人は、長年所有者がわからなかった土地の探索をすることは、よくテレビ番組で、先祖のことをさかのぼって歴史をさかのぼるという番組がありますけれども、もうあれぐらいしないと見つからないんじゃないか、非常に大変だなという思いをお話しされていた方もおりました。

 所有者を見つけるということは、非常に農業委員会の負担がふえるという意味で、人員ですとか活動費の体制を改めて整えることが必要だと思いますけれども、このあたりについてお答えいただけますでしょうか。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 農業委員の方からそういうような不安を耳にすることもございますけれども、今までの制度では、確かに、範囲が明確化されていないこともありまして、実例でいきますと、今、約四十ヘクタールの農地の集積に当たって、共有者を探して、一年間で約一千万をかけて相続人を明らかにした、こういうような体験があるものですから、皆さん不安になっているのではないかと思います。

 ただし、今回の改正においては、先ほども説明しましたように、一件当たりの手間は格段に減ることになります。これをまず周知してまいりたいと思います。

 あわせて、所有者等の探索に要する経費について、国による機構集積支援事業による助成をまず考えているところでございますし、人員につきましては、農業委員会改革によりまして、農業委員と農地利用最適化推進委員を合わせますと四万三千六百人程度の体制になるわけでございまして、従来の農業委員だけの体制よりも人的には充実することもありますので、これを、効率的に働いていただくように我々も研修等しっかりやりまして、効率的な機能にしていきたいというふうに考えてございます。

石川(香)委員 やはり今回新しい制度になるということに対して、農業委員会の方々の理解という意味でもまだまだこれからだと思いますので、農業委員会の方々の負担については一層の配慮、そして、御理解いただくように御説明を丁寧にしていただきたいと思っております。

 次の質問は、本法案では、農林水産大臣に対しまして、共有者不明農地等に関する情報の周知を図るために、共有者不明農地に関する情報を提供する努力義務というものを定めています。

 情報を広く周知させることは、不確知共有者の探索においても非常に大切なことであると思いますし、また不確知共有者の権利への配慮という観点からも非常に大切なことだと思いますが、具体的にどのような方法で周知を図っていくのか、お答えいただけますでしょうか。

礒崎副大臣 お答えいたします。

 現在の時代は、やはりインターネットを活用した情報提供が重要だと思っておりまして、共有者不明農地の農業委員会の公示につきましては、市町村に対して、ホームページで公表するなどの措置を講ずるよう求めていきたいと思っております。

 また、農林水産省といたしましても、農地台帳に係る情報が一元的にインターネットで公開されております全国農地ナビというのがございまして、その上でも農業委員会の公示にアクセスができるよう、リンクを掲載するなどの運用を考えてまいりたいと思います。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 主にホームページということでありましたけれども、やはり年配の方は、まだまだホームページ、インターネット環境になれていない方もいらっしゃいますので、このあたりも、周知という方法をより丁寧にということでお願いを申し上げたいと思っております。

 次の質問に参ります。

 公示後六カ月以内に共有者が出てこなかった場合、農用地利用集積計画について同意したものとみなされます。

 ただ、貸し付けた後に共有者が出てきて異論を唱えるという場合も考えられると思いますけれども、この場合はどのようになるんでしょうか。御説明をお願いいたします。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 事後的にほかの共有者があらわれて異議を申し出た場合でも、利用権は法的には有効になります。

 農地法上、利用権の解約には都道府県知事の許可がまず必要になってございます。農地が適正に利用されている限り、実際に耕作されている方の意思に反して利用権が解除されることはないというのが農地法上のルールでございます。

 なお、本手続を経て、実際に耕作されている方が、多分賃料も受け取るということになると思いますが、これは共有者の代表という形で一括して全員の共有者分の賃料を受領しているということに法的には整理されますので、この後で事後的に共有者が出た方についても、賃料を受け取る権利はあるわけでございます。その場合には民法の共有の規定が適用されまして、後で出てきた方が自己の持分に応じて賃料を請求することや、共有者が支払った管理費用で相殺する、こういうようなことが民法のルールに従って行われていくことになると考えております。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 後から出てきた方の、利用権は有効である、そして、賃料のお話がありました。

 その後の話に関しては共有者間の協議ということになるかと思いますが、共有者間でいろいろなことを話すというのは非常に大変なことだと思いますし、すぐに解決できるのかというのは非常に不安なところだと思いますが、共有者間の協議ということについて、円満解決に向けてどのような対応を考えているか、お答えいただけますでしょうか。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 今回の手続におきましては、農地中間管理機構が間に入った契約という形をとりますので、事後的に不明な共有者があらわれた場合に、当事者間でいろいろトラブルがあってということの、そういうことがないように、機構も間に入って、円滑に賃料等の関係が処理されるように制度を運用してまいりたいというふうに考えてございます。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 今までのお話は、貸付けをした後に共有者が名乗り出るということについてお伺いをいたしましたけれども、今度は、名乗りを上げなかった所有者ということについてちょっとお伺いをしたいと思います。

 所有者として名乗りを上げていないとはいえ、財産権は残ります。この不明者の方の財産権についてはどのように考えておられるのか、お答えをお願いいたします。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 出てこない共有者との関係でございますが、財産権につきましては、憲法二十九条第二項に基づきまして、公共の福祉による一定の制限ができるというふうに考えてございます。

 農地につきましては、農地法上の責務規定がございます。農地法上、農地所有者等は農地を適正に利用する責務がございます。今回の制度につきましては、その出てこない共有者という方は、農地を適正に利用する責務をある意味で果たしていないということになるわけでございます。

 今回、そういう状況のもとで、現在農地を管理している方がリタイアする場合に伴って遊休農地化することを防止するための手続であるということ、それから、その農地は機構を通じて担い手等に確実に貸されるということで、農地のより効率的な利用に資するものということと、本制度による機構の貸付けに当たっては、不明な共有者の探索、公示による不明な共有者から異議がないことの確認など慎重な手続をとっているということで、この公共の福祉による一定の制限ということに該当して、かつ、不明な共有者の財産権を不当に侵害するものではないという形で法的に整理しているところでございます。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 貸し付けた後に共有者が出てきた場合でも、又は所有者が結局名乗りを上げないということに関しても、いずれにしても、トラブルがないようにしっかり円満に解決していくことが大切だと思いますので、そのように取り組んでいただきたいと思っております。

 続いての質問に参ります。

 この法案では、利用権設定が五年以内から二十年以内に変更されました。

 民法、農地法、土地改良法などにおける農地の利用権の設定期間というものを勘案しまして二十年以内に延長した理由について、御確認をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 これは、現行の制度、共有者の過半がわかっている場合に貸付けを行うことができる制度等につきまして、やはり過半といっても、全体像を明らかにしないと過半はわかりませんので、結局いろいろ調べなきゃいけない。大変調べたあげくに五年ではというところが非常にネックだったというふうに申し上げました。

 なぜ五年がネックかといいますと、やはり農地を利用するに当たっては、土づくりあるいは水路の補修、こういうところがこういう土地であればあるほど必要になってくるということなのでございます。一方で、賃借権の存続期間は可能な限り長期としたいというふうなニーズはございます。他方で、不明な共有者の、先ほどから御議論させていただいていますとおり、財産権に一定の制約を課すものであることは間違いありませんので、そこからいきますと、余り長い期間はいかがなものかということになるわけでございます。そのバランスを考慮した結果がこの二十年以内ということでございます。

 具体的には、やはり農地中間管理機構を通した場合に、農業者の負担なしで基盤整備を行う事業、これが機構へ十五年以上貸し付けるということが要件になっておりますので、それが使えるようにしたいということ、それから、二十年を超える賃借権は全体の農地の賃借権の一%未満と極めてまれであること、こういうことを考慮しまして、上限を二十年にした次第でございます。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 二十年という設定については今御説明をいただきましたけれども、この二十年以内という設定期間において利用形態は変えることができるのかということについて、お伺いをしたいと思います。

 例えば、二十年間利用していますれば、水耕栽培に切りかえて土地をコンクリート張りにしたいとかそういう転換もあり得るかと思いますけれども、どのような利用形態に変えることができるのかということについてお伺いをしたいと思います。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 今回特例措置を設けますのは、あくまで利用権を設定するに際しての民法の特例ということになりますので、利用形態を変えるとなりますと、例えば、今回あわせて御提案申し上げております、コンクリートを張ってハウスを建てるとか、そういうことになりますと、区画形質の変更ということになりますが、これについては民法の特則を置いておりませんので、民法の原則に戻りまして、これは全員の同意が必要になるということになります。

 ですから、お答えとしては、できるのかできないのかという意味ではできますが、全員の同意が必要なので、これは、不明な方がいることが前提であるとすればなかなか難しいということになります。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 続いては、遊休農地についてお伺いをしたいと思います。

 この法案の対象になっている土地の中には遊休農地も含まれますけれども、農地中間管理機構を利用しても、やはり遊休農地は借り手がつきにくいのではないかという懸念があるかと思います。このあたりについてどのような対策を考えておられるのか、お答えいただけますでしょうか。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正で、利用権の設定期間を最大二十年まで可能とすることにいたしておりますので、これによりまして、農地中間管理機構を通した関係で、土地改良法の昨年の改正により創設された、農業者の負担のない基盤整備事業が活用できることになります。

 こういうことを活用しながら、借り手が引き受けやすい条件を整備した上で、担い手に農地を貸していくということをしてまいりたいというふうに考えてございます。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 遊休農地の問題はすぐに解決する問題ではないかとは思いますけれども、今御説明いただいたような取組で対応していただきたいと思っております。

 この法案は、農地の農業上の適切かつ効率的な利用を確保するという目的にとどまらず、担い手の方の農地の集積そして集約化の進展も目的にしていると思われます。

 本法案の成立が、農地利用の集積そして集約化の促進という点でどの程度進むのか、御説明いただきたいと思います。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 農地の集積、集約化についてのボトルネック、これはいろいろな要因が考えられます。

 その中で、今回の所有者不明農地、これにつきましては、全農地の約二割に当たる九十三万ヘクタールを占めているということと、やはり全国の農地中間管理機構から、この所有者不明農地がまとまった土地の中に点在するということでなかなか集積、集約化が進まないんだという報告が非常に多くございます。こういうことで、農地集積、集約化のボトルネックの大きな一つであるというふうに考えてございますので、これが改善されることによって集積が進まっていくというふうには考えております。

 ただ、これに加えまして、やはり地域での推進体制の強化、あるいは基盤整備の推進等を組み合わせていかないと全体のボトルネックは解消されないというふうに考えてございますので、それらを一つ一つ進めてまいりまして、担い手に八割の農地を集積するという目標の達成に向けて努力したいというふうに考えてございます。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 さまざまなものを組み合わせて、よりいい方向に集積、集約化するということを考えていただきたいと思っております。

 続いての御質問ですけれども、農業用ハウスなどを農地に設置するに当たりまして、農業委員会に届けた場合、内部を全面コンクリート張りにした場合であっても農地転用に該当しないとする今回の法案でありますけれども、これは、固定資産税などの負担が重くならないようにするという、制度の改正を求める声に応じたということだと思います。

 この法案の改正におきまして、コンクリート張りの農地などの需要はどれぐらい見込んでいるのか、そういう見通しがありましたらお答えいただけますでしょうか。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 目標というものは特に設けておりませんけれども、現状の数字を幾つか御説明することをもってかえたいと思っております。

 まず、今回の見直しでは、先ほども御説明しましたとおり、農業用ハウスに高設棚を設置して、砂やれき、養液によって作物を栽培する取組、こういうことに伴う農地の底地コンクリート張りというものが想定されてございます。

 では、現在、養液栽培を行っている農業用ハウスはどれくらいあるかと申しますと、これは全国で約千八百ヘクタール程度でございます。この千八百ヘクタールというのは、今の農地の中に設置されている、コンクリート張りされていないものもあれば、それから、今の農地の外に設置されているものもございます。

 そういう意味で、農地にどれくらいできるかというのはなかなかわからないところでございますが、養液栽培のニーズとしては今はそれぐらいではないかなというふうに考えてございます。この中の一部が、今回の改正によって底地をコンクリート張りにしていこうという形になってくるのではないかというふうに考えてございます。

 それからもう一つ、農業委員会を通じまして、今まで農地だったものが全面コンクリート張りするために農地転用をしたというのはどれくらいあるのかという調査もいたしました。これは全国で、これも全部網羅し切れたかどうかというのはちょっとわかりませんが、調査結果としては三十七施設ということでございます。ですから、進めていくということではありますけれども、最大でもそのくらいの程度なのかなというふうに考えてございます。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 コンクリート張りの農地ということで、今度は、周辺の農地への影響ということについてお伺いをしたいと思っております。

 この法案では、周辺農地の営農条件に支障が生じないようにさまざまな制限というものが設けられております。一つは、土砂の流出、崩壊そのほか災害を発生させるおそれ、二つ目は、農業用用排水施設の有する機能に支障を及ぼすおそれ、三つ目は、集団的に存在する農地を蚕食、分断するおそれ、四つ目は、周辺の農地における日照、通風などに支障を及ぼすおそれ、五つ目が、農地の保全又は利用上必要な施設の有する機能に支障を及ぼすおそれということで記載をされておりますが、面積、広さの制限が特に書いてありません。

 やはり余りに広大な施設が建ってしまったら、周りの影響という意味では非常に心配な面があると思います。排水の面でもそうですし。

 この問題についてちょっとお伺いをしたいんですけれども、面積、広さの制限を設けた方がいいとは思うんですけれども、このあたりについて教えていただけますでしょうか。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 今回の施設につきましては、周囲の農地に悪影響を与えないようにということが法律上の要件になっておりまして、それに基づいて、具体的に、できるだけ客観的に省令で基準を定めたいというふうに考えてございます。

 広さの基準でございますけれども、農地法というのは、やはり一定の土地についてちゃんと農業で使えるようにということでございます。今度は、今回の改正により、ハウスの中では底地にコンクリートを張っても、それは農業として使うという形を担保するということでございますが、そこが広い場合に、農地法上問題になるのは多分その周囲の農地に悪影響を与えるかどうかということでございます。ですから、施設が大きければそれだけ排水施設も非常に立派なものでないと周囲の農地に悪影響を与える、御指摘のとおりでございますので、より多分立派な排水設備が必要になってくるとは思ってございます。

 ですので、そういう形で周囲の農地に悪影響を与えないということは担保できるのではないかと考えておりますけれども、広さ自体は、内部はちゃんと農業として生産されているということでありますので、農地法の規制目的からいって、広さに制限を設けるというのはちょっと難しいのではないかなというふうに考えてございます。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 広さという制限、やはりいろいろな影響を考えましても、明確に基準を出していくというのは非常に大事だと思っていますので、さまざまな支障の制限について書かれておりますけれども、ぜひもう少し明確に入れていただいた方がいいのかなというふうに思います。

 農地といいますと、土があって、畑があって、そしてそれを耕して農作物ができるというのが農地、農業というイメージだと思いますけれども、この法律案では、農作物栽培高度化施設において行われる農作物の栽培を耕作だとみなすということであります。

 さまざまな条件の中でよりよい農業の形を突き詰めていったらコンクリート化することになって、これを農地とみなすということでありますけれども、時代の流れの中で農業の形も変化すると思います。こういった方法はあろうかと思いますけれども、その一方で、今回この法案の改正で植物工場がどんどんふえていくのではないか、そして、結果として日本の農業そして農村の環境を悪化させることにならないかという心配があると思います。

 農業そして農村の環境の悪化という点でも影響がないのか、お考えをお聞きしたいと思います。

齋藤国務大臣 今回の見直しによりまして農業用ハウスの底地をコンクリート張りにするということが想定をされますのは、主に養液栽培を行う場合だろうと考えております。現在、養液栽培が行われている面積というのは、平成二十六年六月末現在で、農地内、農地外に設置されているもの双方を含めまして千八百ヘクタールということでありますので、農業用ハウス設置面積の四%程度ということになっております。

 今回の見直しは、施設以外の部分、すなわちハウスの外側についてまで、重油タンクの話がありましたけれども、ハウスの外側についてまでコンクリート張りを可能とするものにはなっておりません。

 それから、先ほど来局長から答弁をしておりますけれども、今回認められる施設は、周辺の農地の営農条件に支障が生じないように、省令で施設の基準をきちんと定めるということにしておりますので、今回の見直しによって、先生御懸念のようなことがないものと考えているところであります。

石川(香)委員 施設の基準について省令でしっかりと明記していくということでありましたけれども、その一方で、実際、私の周りからも、環境の配慮という意味で心配の声も上がっているのも事実でありますので、この環境の配慮というものに対して最大限配慮していっていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。

 そして、次の質問ですけれども、コンクリートで覆われますとさまざまな用途が生まれてしまうといいますか、物置にしましたり駐車場に使ったりと、農地として正しく利用されているかどうかということは非常にチェックする必要が生まれてくると思います。

 この法案に関して、農作物の栽培が適正に行われているかどうか、農業委員会が監視、勧告を行うということでありますけれども、やはりここでも、農業委員会の事務負担という意味でもふえてしまうと思いますが、具体的にどのようなチェック体制をしくのか、お答えいただけますでしょうか。

大澤政府参考人 確かに、新しい仕組みでございますので、農業委員会がチェックの勘どころをしっかり押さえて、効率的に監視、監督を行っていくということが非常に大事だというふうに思っております。

 今、農業委員会の通常の作業としては、毎年一回、利用状況調査というのがありますけれども、今回の施設については、ちゃんと農作物がそこで生産されているかどうかということをチェックするためには、作物ごとにやはりチェックの勘どころの時期というのがあるんだと思います。ここだけは、その日だけ持ってきてもそれだけはちょっとできないよというところがあると思いますので、それを我々としては研究をして、こういう作物にはこういう時期にチェックをするようにというようなことを、例えばマニュアル化をして農業委員会に周知するということを考えたいというふうに思ってございます。

 それから、予算的な面でございますけれども、例えばこの農業委員会による利用状況調査に要する経費につきましては、機構集積支援事業により助成するということを考えているところでございます。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 チェックの勘どころを研究していくということでありましたけれども、いずれにしても、農業委員会の方の負担、それから、現地でこういうさまざまな場面に出くわしたときに判断に困らないようにしていっていただきたいと思います。そのような配慮をしていただきたいと思っております。

 そして、次の質問ですけれども、違反転用が認められた場合、既にコンクリート張りにしてしまっていた農地を原状回復することはできるのか、お答えください。お願いいたします。

大澤政府参考人 違反転用が確認できた場合には、これは農地法の権限に基づきまして、コンクリートを撤去して農地に戻すことも含めて、都道府県知事による原状回復等の命令の対象になるということでございます。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 時間も来ましたので、最後の質問にさせていただきたいと思いますが、このコンクリート張り農地が放棄されてしまうということも考えられると思います。具体的には、農業をやめてしまった、倒産してしまったという場合でありますけれども、このような場合はどのような対応がとられるのか、最後にお答えいただけますでしょうか。

大澤政府参考人 経営困難になった場合には、四段階の措置を考えております。

 まずは、農業委員会等がほかに経営を行う者がいないかどうかあっせんを行う、これも法律上の権限がございます。

 それから、それでもなお再開の見込みが立たない場合には、知事による、先ほどお話しした原状回復命令の対象になりますし、その命令に従わない場合等々、あるいは行方がわからない場合につきましては、原状回復に関係する代執行の対象にもなるわけでございます。

 なお、用地を所有している者が法人であって、法人が事業を中止した場合には、農地所有適格法人の要件を欠くことになりますので、国による買収の対象ともなり得るということでございます。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 質問を終わります。

伊東委員長 次に、関健一郎君。

関(健)委員 関健一郎でございます。

 質問の機会をいただきまして、心より御礼を申し上げます。

 農林水産省がこのほど取りまとめられました市町村別農業産出額で何と一位の愛知県田原市と九位の愛知県豊橋市を選挙区とする、愛知十五区より参りました関健一郎でございます。きょうはよろしくお願いいたします。

 早速質問に入らせていただきます。

 農業経営基盤強化促進法などの改正について、この法律の改正案の意義、そして進むべき大きな方向性としては、より高い付加価値をつけて利益を上げ、稼ぐ力をしっかりとつけようという生産者、いわゆる担い手の皆さんに、農地をより効率的に集約をさせていくということが大きな大きな目標なんだろうと思います。私もその方針に関して大いに賛同いたしますし、意識高き生産者に農地を集約するというのは、そういう方々のモチベーションにとっても、また地域経済全体にとってもプラスであることは間違いありません。

 そんな中で、相続未登記になっている土地、又は、農地転用の手続をせずに農地をコンクリート張りにしたりすることができることは、現場を回っていて、ある意味、そういう意識の高い生産者にとって、かゆいところに手が届くというところがあるのが事実です。

 その一方で、農地をしっかり管理できない生産者又は法人などがこの制度を使うことで、地域全体の土地のあり方がゆがんでしまう懸念があります。ですから、きょうは、農地をより利用しやすくするという局面と、農地というものをどうやって守っていくか、このコインの裏表について、しっかり質疑を通して明らかにしていきたいというふうに思います。

 まずは、相続未登記の所有者不明農地についてです。

 私の地元の米生産者の方の具体例をもとに話をさせていただきます。

 その方は米生産者で、四十ヘクタールを御自身でやっておられます。そして、何と、ことしに入って耕作放棄地二ヘクタールを自分で取りまとめて自分の農地にしたそうです。

 どういうことをやったか。

 耕作放棄地になっていて、遊休農地ですね、ごめんなさい、遊休農地です。それを見て、あれは誰の土地だというのを御近所さんに聞いて、ほにゃららさんの土地だったよというのを聞いて、その人、今、いなくなっちゃった、子供はと言ったら、名古屋で働いているといって、その人に連絡をとって、あなたの土地は今遊んでいる、このままだと周りにも迷惑をかけるし、あなたの耕作放棄地からカメムシが出てきている、これは私たちの周りの、隣の畑も田んぼも迷惑だから、私に貸してくれ、しっかりと効率的にやっていくからということを、彼は御自身で努力をして、耕作放棄地を集約させてやっていきました。

 ただ、この方の仕事は、耕作放棄地の所有者を探索してやるということよりは、その上更にその農地を拡大させて、より新しい付加価値をつける、まさに農業の生産者としてのところが彼の本業で、もっとそこに自分の力を入れたいなということをおっしゃっていました。だから、彼の言葉、もっと僕に農地が集まったらいいのになというのを日ごろの問題意識として感じておられるそうです。

 ですから、今回の制度の改正、改めて、非常に肯定的なところなんですけれども、その懸念について一つずつ質問をさせていただきます。

 まず、共有持分の過半を有する者を確知することができない場合を対象としておられますが、そのような土地は全国でどの程度あるのか伺います。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 申しわけございませんけれども、共有持分が確知できないということは、確知できないものですから、農地がどれだけあるかというのは正確にはわからないというふうにお答えをせざるを得ないと思います。

 九十三万四千ヘクタールの相続未登記農地等につきましては、どういうふうに調べたかといいますと、農地台帳、住民基本台帳、登記簿の突合によって登記名義人が死亡しているかどうかをまず確認いたしました。

 ということで、そのうち、登記名義人が死亡ということは確認できるわけでございますが、その後、では、どういう共有関係、相続関係が出たのかというのは当然登記簿には書いてございませんので、ですから、死亡したことの確認はできても、その先にどれくらい、持分の過半が確知できないかというのは、この調査方法では調べられなかったというのが実態でございます。

関(健)委員 ありがとうございます。

 まさに、これまでの諸委員の先輩方の質問の中でもありましたけれども、これは土地全体の問題、根本的な問題までさかのぼってしまうと思うので、これ以上そこに関しては詰めませんけれども、今回の法改正で、そのうちどの程度の未登記農地が活用される見込みなのか。

 これはあえてお尋ねしますけれども、今、このような過半を有する者を確知できないというのはどの程度あるかちょっとわからない。ということは、当然、どの程度この改正で活用されることになるかというのもわからないということですよね。

大澤政府参考人 具体的な数字という形ではなかなか難しいと思いますが、先ほどから御答弁申し上げているとおり、全体として九十三・四万ヘクタールに及ぶ相続未登記農地がございますので、この方々が、今ほとんどの場合は問題が起きていないといいますか、事実上耕作している方がいらっしゃいます。

 ただ、その方が農業者全体の高齢化の傾向によって近い将来リタイアしようというときには、利用権を設定するに際してまた同意が必要になる、過半かどうかもわからないという状況でございますので、その方は途方に暮れてしまうということになると思います。

 ですので、これが農地の集積、集約化のネックの一つであることは間違いないと思っておりまして、そのネックの一つが解消されるというのが今回の法案を提出した趣旨でございます。

関(健)委員 ありがとうございます。

 これは、いろいろな地方自治体とかに聞いても、わからない、わからないばかりなんですね、どの程度が過半を有する者を確知することができないのか。だから、九十三・四万ヘクタールの根拠は何ですかというふうに聞いても、なかなか各自治体まで聞いていくと、点々々みたいな感じなんですね。

 ただ、現実的にはそれはしようがないわけですから、その一定の効果、こういうことがあるからこの仕組みを改正するというのがそもそもの論理だと思うんですけれども、数字で出せないのであれば、ただ、私も、現場の生産者さんと話していると、明らかにこれでスピード感が上がったり集約が加速することは間違いないと思うんです。ただ、こういう定量的な、定量的には難しいかもしれない、何とかして客観的なデータに基づいて、こういうのは意味があるんですよということをぜひ筋立てていただきたいということを、一つお願いをいたします。

 もう一つ、何往復もしていただいて恐縮ですけれども、これはたくさんの生産者の人に聞かれたので、あえて。

 これは、共有の所有者が特定できない、確知することができないというふうになっているんですけれども、単独、一人ですね、未登記が一人の場合、単独所有の農地でも所有者の所在がわからない場合というのがあると思うんですけれども、これはどうやって対応しているんですか。

大澤政府参考人 単独の所有者が、わかるかどうかはちょっと別として、まず単独の所有者だったとして、その方がわからないということは、その農地は当然もう荒れ放題になっていると思っておりますので、そういう農地は遊休化していると考えておりまして、その遊休化している農地については、遊休農地に係る知事裁定の仕組みを使うということになろうかと思います。

 今までは、探索の範囲が不明確であったり、それから期間が五年に限定されているというところが、今回の改正で、あわせて探索の範囲を明確化し、期間も最大二十年にするということにしましたので、この制度が使いやすくなるということを考えているわけでございます。

関(健)委員 ありがとうございます。

 繰り返しになりますけれども、より集約をして担い手として頑張っていこうという若い世代の人、若い世代だけじゃないですけれども、そういう意識の高い人たちが、やはり集約に時間がかかるという強い問題意識を持っている方がたくさんいらっしゃいます。これはスピードアップに資する取組でしょうから、そういう詳細もぜひ詰めた上で実現をしていただきたいと思います。

 今の関連ですけれども、一方で、今度は土地所有者、保有者の観点から、権利保護の観点から質問をさせていただきます。

 これは、単純に言ってしまえば、ほかの人の土地利用権を強制的に移転できるということですから、憲法二十九条の財産権との整合性はどうなっているのか、お尋ねします。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 財産権につきましては、憲法二十九条第二項に基づきまして、公共の福祉による一定の制限をすることができるというふうに考えてございます。

 農地につきましては、二条の二におきまして、農地所有者は農地を適正に利用する責務がございます。ですから、そこがまず一つの制限ではないかと思っておりまして、今回の場合には、その責務をその所有者の方は果たしていないことになるわけでございます。

 そういうことについて、適正な利用を確保するための措置というのが今回のまず目的でございますし、それから、機構への貸付けに当たっては、不明な共有者の探索、公示による不明な共有者からの異議がないことの確認という形で慎重な手続をとっているわけでございます。もし仮に、例えば都会に住んでいらっしゃる方が見て、これは危ないと思えば、そこで異議を申し立てるということが保障されているということをもって、この財産権の一定の制約の範囲内であって、財産権を不当に侵害するものではないというふうに整理しているところでございます。

関(健)委員 ありがとうございます。

 まさに、今おっしゃられたとおり、ほっておく、せっかくみんなが集約して一生懸命畑、田んぼをやっているときに、ほっぽられておくと、隣の田んぼ、畑に病気が行ったりカメムシが飛んできたり、あとは鳥獣被害、イノシシとかハクビシンの拠点みたいになっちゃうわけですね。ですから、やはりこれは、もちろん権利との裏表なんですけれども、しっかりとそういう担い手の方に集約ができるように、しっかりとやっていただきたいと思います。

 それで、今答弁いただいた中でもありましたけれども、この仕組みの前提となる探索という言葉についてですけれども、これはどこまでやるのか明確に決まっているのか、お答えください。

礒崎副大臣 お答えをいたします。

 現在はこういうことが法律上明確になっていないものですから、非常に手間がかかっておりまして、戸籍等の公簿での調査に加えて、地域住民に聞き取り調査を行う、あるいは、数代前の登記で相続人が膨大であることが想定されるケースでも、全ての相続人の住所地を特定する、さらに、相続人の住所地が県域を超えた遠隔地であることが判明した場合に、実際に居住しているかどうか直接訪問するということまでやっておりまして、極めて慎重かつ時間と手間がかかっている状況にあります。

 新たな制度におきましては、戸籍等の公簿による調査を原則とし、地域住民への聞き取りを不要とするとともに、探索の範囲も配偶者と子の範囲に限定をし、住所地に居住しているかどうかの確認は、遠隔地については郵送でもいいというようなことを政令の中で明確化して、探索のスピードアップを図ってまいりたいと考えております。

関(健)委員 お答えありがとうございます。

 まさに、この課題は、どこの誰かわからない、行ったら何か大都会にその相続人がいて、その人たちを全部回ってということをやっていたら農家の生産者の皆さんのスピード感についてこれていないというのがこの現状の課題だったと思いますので、ここはしっかりと定義をして、その反面、保有者の権利を侵害することのないような慎重な議論をお願いしたいと思います。

 そして、ちょっと細かいんですけれども、この探索、主体は農業委員会になると思うんですけれども、まさに農業王国豊橋、田原の大農業地帯だったら農業委員の人たちも強い、高い自覚を持っている方がたくさんおられるんですけれども、そうはいっても、全部が農業地帯なわけじゃなくて、農業委員の方の中にも、ちょっと、おまえ農業委員なと言われたから、はい、わかりましたと言って、よく仕組みもわかっていないという方も正直おられます。

 その中で、農業委員全ての方がこの探索、先ほど局長がお答えの中でも、まさに、効率のいい、気のきいた調査をしなきゃいけないということ、気のきいたじゃないですね、そういうのがあったと思いますけれども、農業委員全てがこの探索を果たしてできるでしょうか。仕組みのたてつけについてお尋ねをします。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 新しい制度ですので、やはりしっかりとしたルールなりやり方を考えて、それを全国に周知して研修等に努めていくということが非常に大事だと思っております。

 今考えておりますのは、品目ごとにやはり出荷の時期それから発芽の時期等々生産のサイクルというのがございますから、その中でどこを勘どころとして立入調査等を行っていくのか。あるいは、今回、省令の施設の基準の中で、標識をつけることというのを施設の基準に入れようとしております。そうなりますと、ここが届出による施設だということがわかりますので、これは農業委員だけの努力ではなくて、恐らく周囲の目も働くようになるのではないか。

 周囲に悪影響を与えるということであれば、農業者の方も真剣になりますので、あそこはどうも違うものに使っているようだというような情報、こういうことも活用していくというようなことを考えておりますので、これから具体的に仕組みは設計していくことになると思いますけれども、勘どころを押さえた監督体制ができるように考えてまいりたいというふうに考えてございます。

関(健)委員 ありがとうございます。

 勘どころを押さえた、よろしくお願いをいたします。

 この共有持分の過半を有する者を確知することができない場合についての議論ですけれども、まさに、生産者の皆さんは一刻も早く拡大をしてより収益力を高めていきたい、その一方で、権利も守らなければいけない、その詳細な制度設計が求められているわけですし、改めて、その権利の部分も慎重な審議をお願いしたいと思います。

 続きまして、コンクリート農地に関して質問をさせていただきます。

 これは、先ほど養液の話もありましたけれども、実は、コンクリートを張るということが、いろんな生産者の皆さんにとって結構メリットが多いということが、いろいろ調べると出てきました。

 例えば、私の地元のコチョウランとか洋ランの生産者の皆さんと話をすると、下にコンクリートを敷き詰めるとどういうメリットがあるか。実は、鉢というのは、一個持っていくと結構重たいもので、女性が一人で持つのはなかなか重いので二人で持ったりするわけですけれども、下に滑車がついた台車で、二階建て、三階建てになっているような台車に鉢を置いて、箱ごと、これは業務効率も大幅に上がるわけです。そして、あとは、これは意外だったんですけれども、アルバイトの人を雇うときも、下がコンクリートというのは割と条件面としてプラスなんだそうです。さらに、やはり花の病気の蔓延のリスクもコンクリートは下がるんじゃないかと言っている生産者の方もおられました。

 ですから、底地をコンクリートにするということに関しては、かなりいい、プラスの部分もあるということがわかっています。

 ただ、先ほども申し上げました、コインの裏表で、乱用、悪用されないような議論を詰めていくことが必要だと思いますので、早速質問をさせていただきます。

 農作物栽培高度化施設というのは何なのか、御説明をお願いします。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 農作物栽培高度化施設といいますのは、今回の改正によりまして、農地の底地にコンクリートを張っても農地転用に該当しないようなことにする施設のことを法律上そういうふうな名前で呼んでいるわけでございます。

 その際の施設の要件として、周囲の営農条件に支障が生じないというようなものも加えているわけでございます。

 その省令の中身としましては、専ら農作物の栽培の用に供されるものであることや、周辺農地の日照に影響がないように、施設の高さについて一定の基準を設けるというようなことを今考えているわけでございます。

 施設の高さにつきましては、これは専門家の意見も聞かなければいけないと思いますので、法律の成立後、施行までの間に、専門家の意見も聞いた上で具体的に定めてまいりたいというふうに考えてございます。

関(健)委員 ありがとうございます。

 先ほど、これまでの委員の質問からもありますのでちょっときゅっと質問を締めますけれども、これはどういうニーズ、どの程度のニーズを想定しているのかと、どういう施設が想定されているのかというのを改めてお伺いします。

大澤政府参考人 今回想定している施設は、先生のおっしゃるとおり、温度管理、湿度管理を行うものとか、それから、ハウスの中で高設棚を設置して養液栽培等を行うというようなものでございます。

 先ほど御説明申し上げたとおり、養液栽培を行っている施設というのは、ハウスは、全国で、現在、農地外のもの、農地内のもの含めて千八百ヘクタール程度ございます。その中の一部が、今回の措置によってこの仕組みを利用することになるのではないかというふうに考えてございます。

関(健)委員 ありがとうございます。

 先ほど来、たくさんの委員から同様の質問があったと思うんですが、これは恐らく皆さんが地元で同じ疑念を感じているのでこの質問になったんだと思うんですが、やはり植物工場、水耕栽培への話はかなり懸念を持っておられる方がたくさんいます。例えば、畑にいきなりずどんとコンテナを置いて、その中で植物工場をやりました、これもいわゆる農地転用と言えるのかとか、どこまでがマルでどこまでが農地じゃないのか。

 これは、例えば面積とか高さとか、建築資材はこれですよとか、そういう規制とかをすることは考えておられるのか、お尋ねします。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 まず、法律上、周辺の営農条件に影響が生じないようにする施設だというふうに明記されておりますが、具体的には省令で定めることにしておりますので、我々の基本方針としては、周囲の、要するに隣の農地に影響があるかどうか、あるものについては客観的な基準が可能なものについてはなるべく客観的に定めたい、そうでないものについても、何が起こるかわかりませんので、バスケットクローズ的なものはあわせて設けておきたい、こういう考え方でございます。

 そうした中で、ですので、いろいろなものがある意味ではチェックされる可能性はあるわけですが、一番客観的に定められるのではないかと今思っておりますのは、高さに関する基準でございます。

 これは、要するに、太陽の流れによって、傾いていくと、夕方とかに隣の農地まで日陰になっちゃうということが、これはもう科学的に明らかになりますので、それで高さとの関係で仕組みはつくれると思っております。屋根の部分をどうするかというのも入るかもしれません。

 それから、やはり排水条件を心配されている方が非常に多くいらっしゃいます。これは広さにも一部関係あるかと思いますけれども、この排水条件は、ちゃんと周囲に悪影響を及ぼさないことということが絶対でございますので、施設の規模に応じて多分つくっていく可能性もございますが、これも客観的に定められるものでございます。

 それから、不必要に大きなものというのは困りますので、農業専用ということはしっかりしていきたいと思います。ただし、農業の用に専ら供して生産性を上げるというものについて、例えば構造物がどうかとか、そういうことが周囲の農地に影響を与えるかどうかというと、我々の今の知見では、今までの知見では、必ずしもすぐにそう、一義的に明確とは言えないと思っております。

 ただ、それで何が起こるかはわかりませんので、そういうところはバスケットクローズを置いておきまして、必要に応じて、これはちょっといかにもというものがあれば個別にチェックしていく、こういう考え方でございます。

伊東委員長 関君、ちょっといいですか。

 関健一郎君の質疑の途中でありますが、一応十二時までという午前中の予定になっておりますので、一旦ここで休憩をさせていただいて、残り質問時間は午後一時からということでお願いをしたいと存じます。皆さん、よろしいですか。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三分開議

伊東委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。関健一郎君。

関(健)委員 ありがとうございます。

 午前中に引き続き質問させていただきまして、ありがとうございます。

 コンクリート底地について、引き続き質問をさせていただきます。

 全面的にコンクリートを敷いて営農を取りやめた場合どのような対応をとるのかというのは、先ほどの質問にあったと思います。

 また、コンクリートを除いて土の状態に戻すなど、原状回復をする必要がありますけれども、これは主語は誰なのか、そして、どうしなければいけないのか、その責任の所在についてお聞かせください。お願いします。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 原状回復命令は知事が行いますけれども、命令の宛名はその施設を建てた所有者等でございます。

 行政代執行につきましては、施設の所有者等が命令に従わない場合や行方がわからなくなった場合は、知事が代執行をいたすということでございます。

関(健)委員 ありがとうございます。

 これは、ポイントは、土に返らないということだと思うんです。今、全国各地そうですけれども、ソーラーパネルがいろいろなところに設置をされることがあると思います。畑、畑、ソーラーパネル、雑木林みたいな、モザイク状態でソーラーパネルとかあることが結構ふえてきているんですけれども、御多分に漏れず、それをそのままほっぽらかしちゃうパターンが結構ふえてきているわけです。そういうときにどういう問題が起きているかというと、まさにそこはもう土に返らないわけです。

 ですから、コンクリート、まさしく構造物がどういうふうに撤去されるか、万が一悪用された場合、またはほっぽらかされた場合にどういう対処をするかというのはかなり詳細に、具体的に詰めておく必要があると思いますので、改めてそこは強調させていただきます。

 このコンクリートの底地に関して最後の質問ですけれども、これは、そもそも意識の高い生産者の皆さん、より生産性、効率を上げるために、より付加価値を高めるためにというので、既にコンクリートを張っている方々がいるわけです。そうした中で、今の政府の提案としてこの改正案が出ている。つまり、行政や立法が民間のスピードについてこれなかったという側面があるわけです。

 そこで、お尋ねしたいんですけれども、このたてつけとしては、今後、これが施行されてからコンクリートを敷く、そういう生産者に対して適用されると思うんですけれども、これまでにコンクリートを敷いた人たちに対してどういう対応をしていくのか。つまり、法体系上、遡及というのはそもそもなしなんだと思います。ただ、先ほど申し上げましたように、意識の高い生産者に行政と立法が追いついていなかったという側面があるわけです。ですから、いつコンクリートを張ったか、その対象について御説明をお願いします。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 既に、ハウスの底地を全面コンクリート張りする場合には、二パターンがあると思います。一つは、もともと農地でなかったものをそういうものにする場合。それから、農地であったものを転用してハウスを全面コンクリートにする場合、今までは農地として認めていなかったものですから、そういう場合。その二つがあろうかと思います。

 今回、この法律をつくるに当たっていろいろ議論がございましたが、一定のハウスは全部農地法の規制に定義を変えてやるということになりますと、今私が言った二つの場合それぞれについて、もういきなり農地となっていきなり農地法の規制がかかる。こういうことになりますと、法的な安定性を損なうと思ったので、今回は、今農地のものに新しく施設をつくるというものに限定して設けたわけでございます。

 ただ、法律をつくっていく際に、一部もう既に転用してつくったんだという方がいらっしゃいました。これについては、今回の法案の対象にはしておりませんけれども、いろいろ論点はあろうかと思います。

 例えば、新しく農地法の規制対象にする。これは新しい手続が必要になりますが、そうなった場合には、規制対象に新しくもう一回なるわけですから、一旦規制対象じゃなくなった段階で一般的には土地の資産価値が上がります、それを前提に例えば土地を担保にかけていた場合、そういうふうになりますと、それをもう一回戻すと土地の資産価値が下がるものですから、その担保は追担保が必要になるのかどうか。そういう問題もあって、本当にそこまで考えておられて、それで戻すという決断をされるのかどうか、またそういう方がどれくらいいらっしゃるのかどうか、これは調べてみないとわかりません。

 それから、農地法から転用した場合に、そこが例えばまた都市計画上の新しい線引きが終わった場合、これをどうするか、これはまた複雑な調整が必要になります。

 そういうものについて、やはりニーズを調べて、実態を調べてから、まずどういう取扱いをするかということを慎重に検討した方がいいんじゃないかという結論に達しまして、今回は対象にはしておりませんけれども、そのニーズ等々を、実態を調査した上で、どういう課題があるか、こういうことを検討した上で、方向性について一定の結論を将来得ていきたいというふうに考えてございます。

関(健)委員 ありがとうございます。

 おっしゃるとおりだと思います。ニーズ、実態を慎重に調査検討していただくことがポイントなんだと思います。

 先ほどの答弁でもいただきましたけれども、例えば、排水であるとか日当たりとか、可能な限り客観的な基準を設けて、そこは一定の抑止をかける。その一方で、ニーズとか実態を慎重に調べて、柔軟な対応。これはまさに矛盾するというか、客観的なものをしっかりやりつつ、柔軟な対応というのが求められているんだと思います。

 これはまだまだ、集積をより加速させるという局面と農地をしっかり守っていくというこの両立への懸念というのはあると思いますので、引き続き、現場の生産者が安心して、より現業を営めるような環境、制度設計にしていく必要があるんだと思います。引き続き議論させていただきます。

 では、このコンクリートの農地について、質問を終わらせていただきます。

 続いて、まさにこの法律の中で設定をされている認定農業者制度について質問をさせていただきます。

 これは、なぜここで質問をさせていただくかといいますと、この認定農業者制度に関して強い疑問を持っておられる現場の生産者の方がたくさんいるということから、あえてこの場で質問をさせていただきます。

 具体的には、どういう疑義、疑問を感じているかというと、認定農業者になっても、長期資金を借り入れるとき以外メリットがない。あとは、先進的な農業法人であれ、これはこの人の言葉ですけれども、規模拡大、生産拡大の意図も余りないという人も同じ基準で認定農業者になれちゃっている。あとは、認定を申請する際に生産者の方が提出をします経営改善計画、これは結構ほっぽりっ放しで、その後のフォローというのは行われていない。こういった疑問、不満というんですか、そういうのが複数箇所で上がっていることから、この質問をさせていただきます。

 まず冒頭、お尋ねします。認定農業者の実態について、認定農業者とはというところから改めて教えてください。

大澤政府参考人 まず、認定農業者でございますけれども、これは平成五年から制度ができたわけでございまして、効率的かつ安定的な農業経営を目指す人について、五年間の経営改善計画を作成していただき、その計画を認定する、その認定の主体は市町村という制度でございます。

 認定に当たっては、これは、都道府県、市町村が定めます基本方針なり基本構想で一定の所得水準を決めます、その所得水準を達成する見込みがあるかどうか、これが判断基準になっておりますし、それから、農作業の効率化、作付地の集団化への配慮、それから計画の達成の見込み等を認定基準といたしております。

 その実態でございますが、平成十八年以降、大体認定農業者数は二十万人台で推移をしてございます。平成二十九年には二十四万二千三百四経営体が認定農業者となっております。そのうち、法人は二万二千百八十二法人、個人は二十二万百二十二経営体となっております。年齢分布でございますが、二十代以下が一%、三十歳代が六%、四十歳代が一五%、五十歳代が三〇%、六十から六十四が一九%、六十五歳以上が三三%となっております。

関(健)委員 ありがとうございます。

 今、ふわりと言及いただいたんですけれども、認定の基準というのは、これはきっちり審査されていますか。どういうプロセスで。

 つまり、この質問の意図は、何でもかんでも認定農業者に認定されちゃっているじゃないかという問題意識で聞いているんですけれども、審査基準というのは明確に運用されていますでしょうか。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 この事務につきましては、基本的に市町村の自治事務という位置づけでございますので、我々としては、法律による、具体的には農業経営基盤強化促進法による枠組みのもとに一定の指導を行っているところでございます。

 認定の基準自体につきましては、法律上は、基本構想に照らし適切なものであること、これは市町村がつくる構想でございます。これは、経営形態別に一定の基準があります。それから、効率的かつ総合的な利用を図るために適切なものであること等々が法律上定まっておりまして、国としては、それに従って認定されているかどうかということについては関心を持って見ておりますけれども、個々の基準が適当か適当でないかということについては特に、そこはもう市町村がどういう担い手を育てようとするのか、この考え方次第というふうな考え方を持っております。

関(健)委員 ありがとうございます。

 これは、市町村がサボっているとかそういうことを言っているのでは全くなくて、まさに経営改善計画があるわけですよね、認定農業者の人たちが出したものを一個一個市町村の人たちが厳格にフォローアップしていたら、これは何人人がいても足りないわけです。ですから、現実との兼ね合いの中で、フォローアップできないんですよ。これは、誰かが悪いんじゃなくて、構造的な問題ですから。

 ですから、まさに経営改善計画にのっとって経営が改善していくのであれば、これは認定農業者制度というのが機能しているということだと思うんです。その一方で、やはり、経営改善計画、これはまさに絵に描いた餅なんです。現実的にはそんなにフォローアップできませんから。ですから、これは事実上形骸化していると言わざるを得ない部分があるのも事実なわけです。

 そこで、大臣にお尋ねをさせていただきます。

 このまさに認定農業者制度なんですけれども、これは、ワインでいうとソムリエといいますか、厳しい訓練を受けて、いろいろな勉強をして、いろいろな試飲をして、試験を受かってソムリエになれるのではなくて、手を挙げたら、お酒が好きだからみんななれるみたいな認定農業者制度になってしまっているわけですね。

 さらに、平成五年に創設されたと今局長おっしゃっていただきましたけれども、先進的な法人経営の形式もふえましたし、また、個人でも、より高い付加価値で、規模拡大ではなく高付加価値で経営を成り立たせようと、多様な経営、経営の多角化というのがこの三十年、二十年、二十数年で進んだと思います。

 そこで、認定農業者制度について改正する必要について、大臣の認識を伺います。

齋藤国務大臣 市町村別農業産出額第一位の田原市と第九位の豊橋市を選挙区、地元としている関さんのそういう切り口からの一連の質問、大変関心を持って聞かせていただきました。ちなみに、第五位の別海町は伊東委員長の地元でございますが。

 今の認定農業者制度につきましては、どういう考え方をとるかというのはいろいろあろうかと思います。例えば、入り口を厳しくして、非常にレベルの高い人たちだけしか認定しないというやり方もあるでしょうし、そうじゃなくて、緩くした上で、認定農業者向けの施策をたくさん講じることによってだんだんグレードアップしていっていただく、そういう考え方も当然あるわけであります。

 制度そのものは、局長から御説明をいたしましたように、市町村が地域の実情に応じて定めた基本構想に基づいて認定する仕組みということで、非常に柔軟性の高い制度にしているわけであります。

 そうした中においても、例えば、市町村を超えて広い範囲で活動を行う担い手もおられまして、そういうニーズに応えるために、例えば、複数の市町村で申請を行う場合の手続の簡素化ですとか、それから認定の判断基準を所得に統一するですとか、そういう見直しは本年一月に行っておりまして、農業者のニーズに応える見直しについては随時行っているということです。

 こうした仕組みについては、先進的な農業者や高付加価値化を目指す農業者の育成に効果的につながっているのかという検証は必要だと思っていまして、その検証することを含めて、今後も不断の見直しを行ってまいりたいと考えています。

関(健)委員 ありがとうございました。

 時間が来ましたので、最後に一問だけ、改めまして大臣に質問をさせていただきます。

 きょうの質問の中でも、私は、与野党の先輩方の議事録、拝読をして、勉強させていただいています。また、NHK時代も取材をさせていただいて、まさに必死で勉強して何とか追いついているというのが私の今の状況です。

 その一方で、複雑過ぎるのではないかという問題提起をさせていただきます。

 農林水産省の私と同じような世代の方でも、隣の課の人の話を説明できるかというと、これはほとんどわからぬというのがまさに現実的なというか、大方の方の意見であって、まさにタコつぼ化が進んでしまっているというのが現状なわけです。

 これは結構深刻な問題があって、まず一つは、納税者である国民の皆さんに理解が深まらないということです。私は新人議員でまだまだあれですけれども、質疑の内容をいかに、見てください、見てくださいと地元の方に言っています、そのときに、ちょっとでも、眠くならないように、ぷちっと切られないように、わかりやすい言葉を使って、どうやったら引き続き見てくれるかなということは考えてやっているつもりです。だから、私の話す能力不足という面は多分にあるんですけれども、制度の難解さ、また言葉の難しさというのは否定しがたいものがあると思います。

 ですから、国民の全ての納税者の皆さん、また食べ物が口に入る国民の皆さんにわかりやすい議論、また政策の説明というのはすべきなんじゃないかと思います。

 そして二つ目が、現場の人たちの混乱です。

 先ほども話がありましたけれども、県、国の意思決定に基づいて、全部やるのは市町村の皆さんなんです。あの人たちは、いろいろな課から来る政策を全部二、三人でやったりするわけです。この人たち、めちゃくちゃな量ですよ、仕事量が。皆さんみたいな超専門家が隣の課はわからないという難易度のものを市町村の二、三人に全部ぶん投げるわけです。これは、現場の人はかなり疲弊しています。ですから、それで、機微に理解してそれを実行しろ、これはなかなか難しい側面があると思います。

 そして、何より生産者の皆さんが、私も取材したときに猫の目行政なんてやゆする声もありましたけれども、複雑でわかりにくいというイメージがつきまとっているわけです。大胆な投資とかもしづらいですし、新たに参入しようかなという人の決断を鈍らす遠因にもなっているわけです。

 そこで、大臣に改めてお伺いしますけれども、全ての皆さんによりわかりやすい、単純でわかりやすいたてつけに抜本的にしていくべき大きな方向性というのはどのようにお考えでしょうか。

伊東委員長 齋藤大臣、時間が来ておりますので、端的にお答え願います。

齋藤国務大臣 政策は、実際に現場で使われなければ意味がないので、知っていただくということは何よりも大事だと思っています。

 そもそも、政策をつくるときは多様な細かいニーズに応えてつくっていくわけでありますが、その結果として、複雑になってしまう、そして逆にニーズに応えられなくなるという、そういう、細かく応えようとすればするほどわかりにくくなるという性格のもので、それをきちんと発信していくというのはなかなか難しいなと私も今までの行政経験の中で思っているわけであります。

 農水省は、ウエブサイトやメルマガ、SNSや広報誌等のさまざまな媒体を使って発信をしているわけでありますが、関委員は、農林省のホームページで見られる、ウエブサイトで見られる逆引き事典というのはごらんになったことはありますか。これなんかは、まず自分がどういう農業をやっているかというのをクリックして、そしてどういうものを必要としているかというところをクリックしていって、必要なのは補助金なのか融資なのかとどんどんクリックしていくと、最後に制度が出てくる。そこには、どこに連絡したらいいかという連絡先も書いてある。

 普通は、こんな制度がありますという制度の羅列の中から探すんですけれども、それを逆に、ニーズから制度が出てくるという、そういうのもつくって公開をしているところでありますので、引き続き、使われなければ意味がない、そういう考え方で工夫を重ねていきたいと思っています。

関(健)委員 御丁寧な答弁、ありがとうございました。

 質問時間オーバーしまして、失礼いたしました。

 ありがとうございました。

伊東委員長 次に、大串博志君。

大串(博)委員 希望の党の大串でございます。

 まず、委員長、苦言です。

 本委員会、午後、始まる一時の段階で、特に与党の皆さんの席においては、大きく空席があった。午前中も、私が見ていると、かなりの空席があられました。

 私たちは与党の理事の皆さんからお問いかけを受けて、こういう法案があるからぜひ議論をということで、私たちも、野党ではありますけれども、定例日でもありますし、しっかりした農政をつくらにゃいかぬと思うから、しっかりと議論に応じてきているわけです。

 それを、与党の皆さんがこれだけ空席を明らかにされるというのは、私はたるんでいるんじゃないかなというふうに思うんですね。私は委員会の尊厳にもかかわると思うんですよ、法案審議でこういう状態だというのは。

 私は、委員長に、ぜひ一言、この状況においていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

伊東委員長 大串委員から、開会前の委員の出席状況について御注意、御意見いただきました。

 私から見ておりましても、定数ぎりぎりか、少しということでありましたので、与党の理事の皆さんに御苦労かけますけれども、これまた出席、きちっとした確認、要請等につきまして、お願いを申し上げたいと思います。

 なおまた、野党の皆様にも、これは野党だからこうだという話ではなくて、この農水委員会は与党、野党一緒になってつくり上げていっている委員会でありますので、どうぞその点につきましても御理解いただきたいというふうに思います。

 大串委員。

大串(博)委員 与党の皆さんが事前審査をされて出てきた法案ですから、私は一義的に法案をしっかり抱えていく責任は与党にあると思うんですよ。それは、責任を果たされるのであれば私たちもしっかり議論に臨みますということは、改めて申し上げさせていただきたいと思います。

 質疑に入ります。

 まず、この基盤法、基盤強化法ですけれども、冒頭にお問合せさせていただきたいんですけれども、今回の基盤強化法等の改正案ですけれども、内容を見ると、登記が行われていない、共有分がよくわからない、将来に向けてこの共有分をしっかり集積して耕作してもらえるようにするためには、その共有分に関する意思決定をどこかで図っていかなければならない、その仕組みをつくらなきゃならないというのが一つですね。

 もう一つは、農地の使い方に関して、コンクリートを底面に張って作業効率を上げていくということをしていきたいという、この改正。

 全く二つ関係ないですね。全然私には二つの政策の連関性はわかりません。こういった二つの連関性を感じない政策を、抱き合わせで一つの法案にして出されている。私は非常に、民主主義をとうとぶという観点からするとおかしいと思うんです。

 なぜ、こんな二つの関連性のない内容を、一つの抱き合わせの法案審議の場に持ち込んでこられているのか。これは、法案をつくられた大臣にお答え願いたいと思います。

齋藤国務大臣 この法案で講じる措置といいますのは、今御指摘のように、一つは、共有者不明農地を農地中間管理機構に簡易な手続で貸し付けることが可能となること、それからもう一つは、農地転用許可を要せずに農業用ハウスの底面を全面コンクリート張りとするように、農業経営の自由度をふやすことで農地への投資を行いやすくすること、そういう二つのものでありまして、いずれも、より担い手が農地を利用しやすくなるということで農地の効率的かつ高度な利用の促進を図るということで、共通の趣旨、目的を有しているというふうに考え、一括法としているところでございます。

大串(博)委員 言葉を飾られましたけれども、誰が見てもこの二つの法案、関係性は極めて乏しいんですよ。確かに法律として基盤法と農地法というのはありますけれども、内容が全く違うものですから。

 ちょっと大臣にお尋ねしますけれども、もし片方に賛成で片方に反対だったら、私たちはどういうふうにこの場で賛成か反対か意思表出すればいいんですか。大臣、どう思われますか。

齋藤国務大臣 これは、私たちは両方とも賛成をしていただきたいということで提出をしていますので、そういうことは考えていません。

大串(博)委員 大臣、真摯に答えてくださいね。そういうふうなことを考えていないのはわかっているから議論に応じているわけです。ただ、余りに両方違う内容なので、片方が賛成、片方に反対と。これは大臣、売り言葉に買い言葉みたいにして答弁されますけれども、いいことにならないですよ、そんなことをされると。

 私は前向きに議論しようと思っているんです。だって、農業政策をきちんとしようと思ったら、やはりいい法案を出してほしいと私たちも思うんですよ。真剣に考えます、私たちも。この法案もいろいろな論点があるので、賛成するか反対するか、党内でもいろいろな議論をしました。それぞれ違うものだから、それぞれ悩みがあるんです。だから、民主主義という場において意見をできるだけ十全に表出できるようにするためには、やはり法案というのはその固有の内容において出されてこないと、違ったものを抱き合わせで来られると非常に、明確な国民の意思を伝えるというのは私たちにとって難しいんですよ。

 ですから、大臣、これは何が悪いんだというような感じじゃなくて、ぜひこれからも法案を出すときには、法案をどうしたら通しやすいだろう、どうしたら手間が省けるかというんじゃなくて、国民の皆さんが、さっき関さんから話がありましたよね、猫の目農政だ、こう言われたりすることもある。国民の皆さんは農政に関していろいろな物を言いたいんですよ。私たちはたくさん承りますよ。その声をここできちっとお伝えするためにも、それぞれ意見を言いやすい場をつくってもらって、そういうふうな法律の出し方をしてもらった方が、私は農政のためにもいいんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

齋藤国務大臣 私どもの考えは先ほどお話をさせていただいたところで、担い手が農地を利用しやすくすることで農地の効率的な、高度な利用の促進を図るという観点から、共通の趣旨、目的を有しているということで一緒の法律にさせていただきましたが、今、大串委員がおっしゃったことというのは非常に重要な観点だろうと私も思いますので、しっかりと心の中で受けとめさせていただきたいと思います。

大串(博)委員 ぜひ私たちも建設的な議論をしていきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 そして、この法案の中で少し確認をしたいことがあります。

 共有者不明農地の問題ですけれども、これは、世の中にいらっしゃる共有者という方々の権利保護の問題と、一方で、やはり農地が農地としてあるんだったら使ってほしい、耕作してほしいという願いとのバランスの問題だと思うんですね。これはもう難しいバランスをうまくとっていかなきゃならないというふうに思います。

 そういう中で、肝のところは、私は、共有者の探索方法、これは農業委員会の皆さんがやられるということになりますけれども、探索方法を一定程度に抑えることによってその次の手続ができるようにするというところに今回の法案のみそがあると思うんですね。

 これは大澤さんにお答えいただいていいんですけれども、この探索方法に関しては政令に落とすということになっていました。政令に落とすというふうにいっても、ここが肝である以上、この議論、この委員会の場で余り漠とした答えだけで終わってしまったら法案の中身を議論したことにならないので、私は農水省の皆さんにもお願いして、政令がどうなるかというのを紙でいただきました。これはお配りした資料の一枚目にあります。

 農業委員会による共有不明農地の共有者の探索方法についてということで、丸にありますように、以下の方法により行うことを政令で定める方向で検討中ということで、政令の方向性を示していただきました。これでかなり明らかになったと私は思います。一、二、三、四とありますけれども、基本的には、共有不明者の、知れたる共有者に対して照会をする、そして、共有不明、共有者の知れない場合には登記事項証明書の交付を求めて、そして、その登記事項証明書にある登記名義人の戸籍を求めて、その戸籍の中に記載されている人の住民票を請求して、その住民票まで至り着けばその住民票に対して名前と住所がわかりますから照会をしていくことができる、こういうことですね。

 全国、農業委員会の方々が日本じゅう走り回ってというんじゃなくて、こういう形で共有者であろうという方を特定した上で、この上の方の段落にありますけれども、共有者と思料される者への書面の送付その他の方法により照会する、こういうふうになっている。これで大体わかりました。

 わかりますけれども、一つだけまたもう少し確認したいのは、大澤さん、この一、二、三、四の方法で、共有者と思料される者への書面の送付その他の方法により照会すること、ここにやはり少しまだ曖昧なところが残っていると思うんですね。

 書面の送付その他の方法により照会すること、これまでは、農業委員会の方々が全国を歩いていかれたりもしていたからなかなかうまくいかなかったんだけれども、今回は、書面その他の方法により照会すると。

 この書面の送付その他の方法により照会する、これは具体的にはどの程度のことをすればよしとするんですか。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 先生の御要望に応じてこの資料を出させていただいたわけでございますけれども、なるべく政令の形に近い形でお示ししようと思いまして、こういう形にしました。

 類似の制度で国土交通省の制度がございまして、そこに書面の送付その他の方法とありましたので、そのとおり書かせていただいたんですけれども、実際に考えているのは、どの程度かというのはまた今後のお話になりますが、要は、近くに住んでいる方についてはやはり直接行くのであろうということと、それから、そうでない方は、そちらの方が多いとは思いますけれども、その方はもう書面で足りる、こういう選択制のことを考えてございます。

大串(博)委員 共有者の権利の保護と、農地として使うということのバランスをとる、非常に微妙な論点のところの肝の仕組みだったものですから、あえてこういう紙でいただいて、かつ、今口頭で説明させていただきました。非常に難しいバランスだと思いますので、混乱を生じず、かつ、集約も進むような方向で実施をしていただきたいというふうに思います。

 そして、もう一つ、済みません、ちょっとあっち行ったりこっち行ったりしますけれども、大きな論点から少し議論したいと思うんです。

 二番目の、もう一つの、底地をコンクリートで覆うというこの農地法の改正等に関してですけれども、これは大臣にお伺いしたいんですけれども、これは神谷委員からも、前回の農地法の改正のときの議論が言及されました。私もその議論には携わっておりましたけれども、それまでの自作農主義というところから耕作者主義ということに大きな転換をしたんですね。

 ただ、非常に重要な議論ではあったと思うんですけれども、今回の議論を経て、この農地法というのにこだわるのかこだわらないのか、そこは私も悩ましいところはあるんだけれども、農地というものは一体何なのかと。

 大臣は、農地というのは一体何なのかと思われますか。

齋藤国務大臣 まず、農地は、農地法第二条第一項で、「耕作の目的に供される土地」とされているわけでありますが、農地は、農地法の究極の目的でもあります国民への食料の安定供給の確保に不可欠な国内農業生産の基盤でありまして、その意味で、国民のための貴重な資源であるというふうに農地を認識しているところでございます。

大串(博)委員 例えば、時代がいろいろ進んで、これは頭の体操も含めてですよ、いろいろな先の時代に向けて議論しておかなきゃならないと思うんですけれども、例えば、そうすると、今回の改正法の前に転用をされてコンクリート張りにされている土地は、これは農地ではないんですか。

大澤政府参考人 今回の法律の技術的なたてつけですのでお答えさせていただきますけれども、今回の法律の仕組みでは、既に転用して建てておられるというものについては、農地ではございません。

大串(博)委員 大臣、法律上のことを細かく議論しようと思っているわけじゃないんです。

 すなわち、先ほど、農地というのは農業生産を行うための基盤であり、大事な基礎であるとおっしゃいましたね。そう考えると、例えば、もう転用してしまって、今コンクリートを張って農業生産物をつくられているところ、ここも国民の食料を生産する意味において大事なところじゃないかと私は思うんですよ。

 だから、もちろん農地法の農地には適合しないのかもしれない。でも、そういう農地も今出てきてはいるんですよね。そういう農地を、ではどういうふうに認識するかという問題なんです。そういう農地をどう認識するかと同時に、逆に今度は、農地法というのはやはり存在するわけですから、農地法における農地というのもある。それはどういうふうなものとして認識するかということなんですね。

 禅問答みたいで大変恐縮ですけれども、なぜ農地法というものをあえてつくって、農地法による農地というのを定義し、でも一方で、農地法にはないけれども、農地法には当たらないけれども、私たちの大切な食料をつくってくださる方々が土地を利用していらっしゃる、そういう土地もある。

 この二つはどう理解したらいいんでしょうね、大臣。

齋藤国務大臣 大変重要な視点だと思います。

 今回のこの提案というのは、実際に現場で農業をやられている方々が、どうも土だとこれからの農業を展開していくに当たっては、今までるる御議論いただいているように、もっと有効な方法はやはりコンクリートでやってもらった方がいいということで、これからそういうものはやはり農地だろうということで、転用をちょっと工夫させていただいているということであります。

 既に転用されて農地でなくなっているものとの関係については、私はよく整理をしていかなくちゃいけないと思っていますけれども、今回はそういう、既に起こってきている現場のニーズにきちんと応えることが必要だろうということで提案をさせていただいていること、その点、御理解いただければなというふうに思っています。

大串(博)委員 なぜ私がこれをお尋ねしているかというと、農地とか農業というのは一体何だろうという根本的な問いを今回の改正は投げかけているんだというふうに思うんですね。

 食料をつくっていただくための土地、そこをできるだけ効率的に、あるいはコストを安く、あるいはやりやすくつくってもらう、そういう合理的な観点からいろいろな改正をしていくというのも大切ではあるとは思うんです。経済合理性、これも大切な論点ではあると思う。

 ただ一方で、農地法が、農地法として農地というものを定めているところは、その定義からしても、「耕作者自らによる農地の所有が果たしてきている重要な役割も踏まえつつ、農地を農地以外のものにすることを規制するとともに、農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利の取得を促進し、」こういうふうに書かれているんですね。

 なぜ農地法というものをあえてつくって農地というものを規制しているかというと、私はまさにここにあると思っていて、もちろん、食料増産をするという、この必要性もあります。ただ、それであれば、先ほど言ったように、農地以外でも食料増産されている方はいらっしゃる。しかし、あえてまだ農地法というものは残してやっている。これはなぜかというと、耕作だとかあるいは地域との調和とか、そういったものがやはり農業には必要だからということだと私は思うんですよ。

 そういう観点からいうと、今私は、これまで安倍農政と言われてきた、安倍官邸農政と言われてきた中で、経済合理主義偏重みたいに捉えられている農政のあり方には危惧を持っています。

 そういう論点からきょうの議論もさせていただきたいですし、いろいろな提案もさせていただきたいと思っていますけれども、例えば農業というものの定義なんかも、食料・農業・農村基本法の中でも、農業というのは、食料その他の農産物の供給というのが一つと、もう一つは、多面的機能を維持する、ここに農業というのは二つ書かれているんですね。だから、単に農産物をつくってもうかればいい、経済合理主義があればいい、これだけじゃないと思うんですよ。

 今回の場合は、底地にコンクリートを張るというのは、強い要望もあるし、私は一定の合理性があると思っています。しかし、余りに経済合理主義だけに流れてしまうと、先ほど神谷さんも言われたような、例えば、集約し切ったときに集落はどうなるのか、多面的機能はどうなるのかといった問題を惹起すると思うんですね。だから、私はその辺からも、今回の論点は実は大きな問題の入り口を投げかけているものではないかなというふうに思うんです。それで、禅問答みたいでありましたけれどもお尋ねさせていただいたんですね。

 加えて質問させていただくと、その流れだけれども、今回、共有者不明の土地の集約に関しては、中間管理機構に集約するものについてのみこの手続を適用する、こういうふうになっています。先ほど、なぜかということに関しては大澤局長から答弁ありましたので、わかります。それは聞きました。

 しかし、一定の私権制限を伴う、よって、公の色彩を帯びなきゃならないから中間管理機構に寄せる場合にこれをよしとするということなんですけれども、本当に中間管理機構を通すものだけじゃないとだめですか。集約するという公のメリットがある場合には、中間管理機構を通じて集積する場合だけじゃなくとも、十分、私、公のメリットを果たすんじゃないかなというふうに思うんですね。

 ですから、中間管理機構だけじゃなくてもいいんじゃないかと思うんですけれども、大臣、いかがですか。

齋藤国務大臣 まず、先ほど大串委員が禅問答的なとおっしゃいましたけれども、私はそう思っていなくて、すごく大事な視点だと思っております。

 ですから、今回の法律におきましても、これまで議論させていただきましたように、かなりそこは抑制的にさせていただくという前提で御提案をさせていただいておりますので、こういう議論は私は大いにやっていただきたいというふうにむしろ思っております。

 その上で、今の御質問ですけれども、今国会に、ちょっと繰り返しになりますけれども、法案を提出した制度というのは、そもそも、農地法上の責務であります農地の適正利用が確保をされて、農地の集積、集約化が進むよう、一定の手続を経て、不明な共有者がいても利用権を設定できる、そういう極めて公益性の高い仕組みになっているという、まず一つそれが前提としてあります。

 このために、まず、対象地域を農業の振興を図るべき農業振興地域に限定をするということをさせていただいています。そして、農地の集積、集約化が最も効率的かつ確実に達成されるという必要があることから、担い手を探して農地を集積する公的機関である農地中間管理機構を貸付先としているところであります。

 なお、現行の遊休農地措置におきましても、都道府県知事の裁定による利用権の設定というのは行えるようになっていますけれども、それも機構に限定されているというところは付言をさせていただきたいと思います。

大串(博)委員 その理由は先ほどもお伺いしましたけれども、この資料の二ページを見ていただきますと、担い手への農地集積の状況、これは農水省さんからいただいた資料ですけれども、手書きを加えておきました。二十六年、二十七年、二十八年度、どれだけ集積が行われてきたか。私ちょっと字が汚くて、拙くて恐縮ですけれども、二十六年、二十七年、二十八年の集積は、それぞれ、プラス六・三万、プラス八万、プラス六・二万ヘクタールと来ているわけですね。パーセンテージでそんな感じ。これが八〇%まで行かなきゃならない。かなり高い目標ですね。

 担い手への集積のうち、括弧内がいわゆる中間管理機構を通じたものですよ。二十六年は六・三万中〇・七万、二十七年は八・〇万ヘクタールのうち二・七万、二十八年は六・二万ヘクタールのうち一・九万。中間管理機構によるものは、ある意味まだ少ないですね。

 それで、私も中間管理機構の審議に携わりましたけれども、かなりの疑問もあったことも確かなんです。なかなか難しいだろうなと思った。一方で、農業委員会の皆さんがふだんの活動の中で集積を進められているすばらしい事例も、このほかにたくさんあります。だから、必ずしも中間管理機構が全てだみたいになると、私は逆におかしなことになると思っています。

 私、大臣の今回の所信の演説をここで聞かせていただいて、そこもあれっと思ったんですよ。冒頭に出てくる具体的な策が、「まず、農業についてです。 最重要課題の一つである担い手への農地の集積、集約化を一層加速していきます。農地中間管理機構」と。一番最初に中間管理機構が来るんですよ。農水省の一丁目一番地かのごとくのような聞こえ方が私はしたわけですね。

 大事な政策ですよ。大事な政策だけれども、農地中間管理機構を活用することが全てのごとく農水省の目が行くとすると、私は間違っちゃうんじゃないかなと思うんです。

 今回も、そういうひょっとしたらバイアスが入って、今回の特別的な措置は中間管理機構を通じたものだけということになっているとすると、間違うんじゃないかなと思って。やはり公の目的、大目的は、集約、集積を進めて耕作をしてもらうということですから。

 であるとすると、この仕組みがよく使われるようになるためには、権利保護のバランスにもよりますけれども、中間管理機構だけではないのではないかなというふうに思いますので、これは、今回、いろんなバランスの中で考えられたんでしょうから、将来的な宿題としてお願い申し上げておきます。

 といいますのは、中間管理機構、決して、私、今やはり成果を上げていないと思うんですよ。実際、成果も今この資料で見たとおりでありまして、集約も進んでいない。

 もう一つ大臣にお尋ねしたいと思うのは、そもそも、中間管理機構というものを非常に一生懸命使って集積、集約されようとしている、これは悪いこととは思いません、悪いこととは思わないんだけれども、ちなみに、この中間管理機構を使って、農家の所得はどのくらい上がったんですか。

齋藤国務大臣 経営規模が小さくて分散錯圃の状態にある我が国農業の現状に照らせば、農地の集積、集約化をして生産性の向上、コストの低減を図るというのは、一つの重要な方向だろうと考えています。

 当然のことながら、農地の集積、集約化が進めば、当該農業者の生産コストは低減をするということになろうかと思います。生産コストが低減をすれば、収入が一定ならば、当然所得はふえていくということになるんだろうと、当然のことながら思っているわけであります。

 ただ、実際に所得向上を図るためには、これに加えてさまざまなことをやっていかなくてはいけないのも事実でありまして、今、私どもとしては、機構だけの所得向上効果ということを測定することは困難だなというふうに思っております。

 ただ、平成二十六年の機構発足以来、平成二十八年度末現在で、委員の資料にもありますが、十四万二千ヘクタールにも及ぶ農地を取り扱うに至っておりまして、そういう意味では、コストの低減には大きな貢献ができているんじゃないかなというふうに考えています。

大串(博)委員 コストの低減には大きな効果があるんじゃないかなと思っていらっしゃるとは思いますけれども、この間、佐々木委員がここで質疑を行ったときに、所得に関した質疑が行われました。それに対して、農水省の天羽政府参考人は、こう答えていらっしゃるんですよ。所得ですよ。所得向上を図るため、農地集積バンクによる農地の集積と、イの一番に挙げられているんですよ。これが所得を向上するイの一番の策に挙げられているんですよ。

 にもかかわらず、どれだけ所得が上がっているかわからないというのは、私、やはりどうかなと思いますし、この集積、集約だけに頼って、そうすればコストが下がって所得が上がるだろうという、極めてこれも経済合理主義偏重的な考え方が、私は無理を来してきているんじゃないかなというふうに思うんです。

 やはり、現場を歩いていても、大規模化すればいいもんじゃねえぞという声はどこでも聞きますよ。あるいは、中山間地に行けば、いや、大規模化するところだけにいろんなメリット措置があって、俺らはどうするんだと、中山間地の皆さんの声も聞こえてきます。

 どうも私は、今の農政は、一方向の経済合理主義偏重に傾き過ぎていて、バランスを失しているんじゃないかなというふうに思うんですね。どうも自民党の皆さんの中でも、それじゃいかぬということで、農村、漁村、林村を守らにゃいかぬという意味での議連が立ち上げられたということなんですけれども、私は非常に考えを共有しますね。

 そういう意味からすると、大臣、ちょっとここはもう大臣と考え方の意見交換ですけれども、やはり経済合理主義偏重あるいは市場原理偏重ということでは、農政というのは、私、うまくいかないと思うんですよ。いかに安定した農村を守るか、地域を守るか、山を守るか、緑を守るか、この視点があってこそ、農政というのは私はうまくいくんだと思うんですね。いかがでしょうか。

齋藤国務大臣 私の心の中では、市場原理主義優先という頭に、何度自分で自問自答してみても、なっていません。

 やはり、農村を維持していくためにはさまざまな政策をやっていかなくてはいけませんし、物にはいろんな見方があると思っておりますが、私どもとしては、やはり所得を上げていくということも非常に重要な政策だろうと思っておりますので、その方面でやれることをしっかりやらせていただきたいというだけであります。

 その上で、中間管理機構のお話もありましたけれども、やはり、中間管理機構で市場原理主義だというのは、私はちょっと違うと思っていまして、ほっておけば、これから高齢化をして、後継ぎもいない、そして農地は、そのままでは耕作放棄地になってしまう、そこに公的機関が間に入って、何とか仲介をして農地を耕作できるようにしようということでもありますので、単にコストを下げることだけを目的にしてこの政策をやっているわけではないということはぜひ御理解をいただきたいなと思います。

大串(博)委員 先ほど、集約の目的の中で、そういうふうに、高齢化する中で担い手を将来どうやってつなげていくかということもあるから、集約して中間管理機構にかんでもらってやっていくんだというお話がありました。それは私もわかります。いいと思います。

 ただ、将来の担い手がなかなか見つからないというのは、単に高齢化で人が減ってきているからだけではないんです。農村には若者はいるんですよ。ちゃんといます。お子様方もいらっしゃいますし、できれば農業を継ぎたいなと思っていらっしゃる方はたくさんいらっしゃるんですよ。ところが、なぜ、おまえ、うちの農業を継げよとおやじさんが言えないかというと、所得がどれだけ将来に向けて安定するかわからないから継げと言われない、だから働きに出なきゃならない、だから人手不足になっちゃうんですね。

 そこでやはり必要なのは、単に集約してコストを下げれば何とかなるぞというような考えではなくて、ほとんどそれではもう今、多分、皆さんはどうでしょうか、地元、地方の農家の方々に、これから集約してコストを下げますから大丈夫ですよ、これでおたくのお子さん方にも農家を続けてもらって大丈夫ですよと自信を持って言える方はどのくらいいらっしゃいますか。私は、所得補償しなきゃいかぬと思っています。戸別所得補償をしなきゃいかぬと思っています。そういった、地域を守る、緑を守る、農業のこういう機能に着目して、政府が所得補償をしていかなければならないと私は思っています。

 残念ながら、ことし、今年度から、私たちの戸別所得補償で導入した一反当たり一万五千円、これが七千五百円になり、なくなりました。これは非常に残念であります。

 ただ、ぜひ大臣には、先ほど、私は市場原理主義だけで考えているわけでないとこの政策もおっしゃったので、私は、もう一歩踏み込んで所得補償を、私たちがやったような戸別所得補償を考えていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

齋藤国務大臣 農家の所得を維持あるいはふやしていくにはいろんな方策があるだろうと思っておりますが、私どもは、やはりそういう意味ではさまざまな方法で前向きの政策もやる、セーフティーネットも講じる、それから水田をフル活用できる政策もする、その中で所得が確保できるようにしていきたいというのが私たちの政策であります。

 ですから、一律に戸別所得補償するということについては、私は、確かに安定をするというメリットがあるかもしれませんが、私どもは今それを上回るデメリットがあるのではないかなというふうに考えているということでありますので、多分目指す方向は同じなんだろうと思いますけれども、ちょっと手法は違うなというふうに思っております。

大串(博)委員 私たちは、やはり戸別所得補償があったときに農村が安定した実感を得ました。だからこそ、与党の皆さんからも次々とこの委員会でも、所得補償がなくなることに対する不安の声があるということはこの委員会でも与党の皆さんからも言われたという実績があると思うんですね。

 私たち、今、野党の中でちょっと話しているのは、戸別所得補償法案を復活させる議員立法をまた出していきたいという議論をさせていただいています。ぜひ与党の皆さんにも真剣に議論にかかわっていただきたいというふうに思います。

 もう一つ、市場原理主義でいいのかなと思われる論点が種子法です。

 種子法は去年の議論で廃止が決まって、四月一日から廃止されました。都道府県を中心とした種子の開発では民間の種子開発の参入意欲をそいでしまう、よって種子法を廃止してということでありましたけれども、果たしてその種子法を廃止するという政策と民間企業が参入するという方向性がマッチしているのかなという気がしてなりません。

 最近の報道を見ると、多くの都道府県が、農水省の通達もあるんでしょうけれども、実際、条例等々をつくって、種子法同等の活動を地方行政の中でやっていこうとされているということが書かれていました。かつ、地方においては、やはり何がしかの立法があってほしいというような声があるとも聞いています。これに関して、実は私たちは種子法を復活する法案を、これも野党の仲間でまとめて提案申し上げたいというふうに思っているんです。

 ぜひこれには、大臣も一考していただきたいというふうに思いますし、その際に、本当に、先ほど申しました種子法を廃止したときの思い、これが種子法を廃止するということで達成されているのか。例えば、都道府県でこれまでやってもらっている中で、どうしても特産品的な、特産ブランド的な米とか種子とかそういうところばかりつくられて、業務用の低廉なお米がつくられない、なかなかここに民間が入ってこられないというふうなことだったと思いますけれども、これはまた別の方法で何がしかの対応をすればいいんじゃないかなと私は思うんですけれども、どうですか、大臣。

齋藤国務大臣 種子法の廃止につきましては、これまでも累次御説明をさせていただきましたが、国がその生産を一律な方法によってやり方を決めてやる時代ではなかろう、むしろ、多様なニーズに応えるためには民間の力も活用したらいいだろうということでありまして、国が一律でやる必要はないだろうということでありますので、それを踏まえて、都道府県が自分たちはこうしたい、ああしたいということは、むしろ、私どもが、その法律がなくてもそういう動きが起こってくるだろうという考えに沿ったものなんだろうと私は思っております。

 これにつきまして、法案について私が、野党が出される法案について政府の立場でこの場でコメントをするというのは適切ではないと思っておりますので、避けさせていただきたいと思いますが、私どもの考えというのは、これまでも委員に何度も説明させていただいたとおりでございます。

大串(博)委員 都道府県で一律でなくて自由にやってもらうということでありますけれども、種子法がなくなったことで、都道府県がしっかりとした予算措置を持った上で、安価な種子を提供できる体制を維持し続けていくかというのは非常にやはり疑問があるんですね。そこに民間企業が入ってきて種子を独占するようなことがあってしまうと、非常に高い種子が出回って、結果として高いものを消費者が買わなきゃならなくなるというようなことになりはしないかという、これも自由な競争だけに任せておくとそういうことになりはしないかという危惧があるわけです。

 こういったところも、民間に任せれば何でもいいんだということではなくて、私は一定の公の役割があると思うものですから、私たちは種子法の復活法を議員立法として出させていただきますので、ぜひ一考いただきたいと思います。

 最後に、経済連携ですけれども、堀井さんと農水大臣に一問ずつお尋ねしますけれども、ライトハイザー氏、USTR代表、FTAに関しては日本にこれはやりたいんだと関心は伝え続けているというふうに議会の公聴会で述べましたね。これは本当ですかというのを堀井さんにお尋ねします。本当ですか、日本はそれを知っていますか、どう対応するつもりですかというのをお尋ねします。

 そして、大臣には、そういった流れの中で、今度、四月の十七日からですか、総理がアメリカに行かれて、日米首脳会談が行われる。今トランプさんは、鉄鋼、アルミに関して、日本は不公正な貿易慣行をやっているということで高関税をかけてきました。日本も除外されることはなかった。残念です。

 一方、お隣の韓国を見ると除外をされました。しかし、この除外をかち取るために米韓FTAの交渉にのらざるを得なかったんじゃないか。今回農業は守られたけれども、かなりの再交渉の結果、譲歩を韓国はのまされたということを目の当たりにすると、私、非常に危惧するのは、アメリカに安倍総理が行かれたときに、鉄とアルミの問題は当然議論になるでしょう、そのときに、除外してほしければ貿易交渉を始めようというふうに言われて、二国間どうだと、ライトハイザー氏が言われている二国間どうだと言われて譲歩を迫られる。

 そのときに、大臣に農水大臣としてぜひお答えいただきたいのは、農林水産物に関しては一分も譲歩する余地はないので、ここは交渉は受け入れられませんと体を張って農水大臣としてとめていただけますか。その決意のほどをお尋ねさせていただきたいと思います。お願いします。

堀井(学)大臣政務官 お答えいたします。

 ライトハイザー米国通商代表による連邦議会における発言にもあるとおり、将来的な可能性として米側にそのような見解もあることは承知をいたしております。

 アジア太平洋地域の現状をよく踏まえた上で、地域のルールづくりを日米が主導していくことが重要と考えております。

 その中で、どのような枠組みが日米経済関係及びアジア太平洋地域にとって最善であるかを含め、日米経済対話を通じて建設的に議論をしていきたいと考えております。

齋藤国務大臣 かつて、三〇一条発動のおどしのもとで、アメリカと本当に首をかけた厳しい交渉をやってきた人間としては、今の状況について申し上げたいことは山ほどあるんですけれども、今こういう立場でございますので、まず申し上げたいのは、我が国が今般の措置の適用除外となる際に農林水産品が交渉材料として使われるというのは、全くの仮定の質問なので、お答えをすることは差し控えたいと思いますが、その上で、一般論として申し上げれば、農林水産物について、貿易問題の交渉材料として一方的な譲歩を行う、そういうことは私は想定していません。

大串(博)委員 終わりますけれども、一方的な譲歩のみならず、鉄、アルミをちらつかされた不条理な譲歩もしないように、ぜひお願いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

伊東委員長 次に、金子恵美君。

金子(恵)委員 無所属の会の金子恵美でございます。よろしくお願いいたします。

 大臣は、土のにおいが好きですか。

齋藤国務大臣 大好きですね。私の友人にもたくさん農業をやっている人もいますし、私は、ちょっとずれるかもしれませんが、体育会で運動をやっていまして、しょっちゅう土にもまみれていまして、土というものの温かみ、大好きです。

金子(恵)委員 私も大好きです。子供のころから農作業にかかわり、米づくりとか、そしてまた果樹園でリンゴづくりとか、そういうものにかかわる中で、いつもそばに土がありました。

 私の父は農家の長男で、農業を本当に頑張りました。でも、それでもいろいろなことを学びたいということで、大学は農学部に行って、土壌の研究をいたしました。土づくりです。ふるさとに戻ったときに、少しでも多くの米ができるようにということで、市役所に勤めながらでありますけれども、そういう部署で活躍をしたということでした。もう亡くなってしまっていますけれども。

 私は、今でも覚えているのは、農業は土づくりからということです。そして、耕すということも、やはり大切な土を耕しながら、利用しながら、そして保全しながら新しいものをつくり上げていく、これが農業だというふうに言っていたのを今でも覚えています。

 農業は、先ほど来お話がありますけれども、多面的な機能があって、そして、当然、生産性のこともいろいろと大臣からもお話がありました、もうかる農業というのを目指していかなくてはいけないというわけではありますけれども、でも、やはり単なる産業ではない、地域を守ってきた、地域の住民の皆さんを守ってきた、そういう地域政策という点でしっかりと農業を見ていかなくてはいけないということです。地域政策、そして産業政策、両輪のようにしっかりと回していかなくてはいけない、これが農業です。

 今回の議論をずっと見ていて、私は大変心配しています。それは、産業政策だけで農業を語っているのではないかということです。

 それを前提にいたしまして、きょうの質問をさせていただきたいと思うのですが、繰り返し申し上げますが、単にもうかればいいという農業だけではなくて、地域、ふるさとを守る、そしてふるさとの皆さんを守っていく、そういう農業であってほしいということを願いながら、質問させていただきたいと思います。

 今回、相続未登記農地をめぐる問題ということでありますけれども、相続未登記農地などの共有農地について、共有持分の過半を持つ者が同意すれば、農地の賃借権や農地中間管理権などを二十年間設定することができるようにするということであります。

 まずは、この二十年に引き上げる理由を教えてください。

齋藤国務大臣 今回の新たな制度により、担い手が新たに農地を利用するに当たりましては、まさに土づくりや水路の補修等を行う必要がある場合がございますので、賃借権の存続期間は可能な限り長期とする方がいいだろうということ、他方、本特例措置は、不明な共有者の財産権に一定の制約を課すものであるので、両者のバランスを考慮しなくてはいけないということだろうと思います。

 この点で、昨年創設された、農地中間管理機構に貸し付けた農地については、農業者の負担なしで基盤整備や、それとあわせた水路の補修等を可能とする制度につきまして、賃借権の存続期間が十五年以上とされているということ、それから、農地に係る賃貸借は五十年まで設定可能であるわけでありますが、実態は、二十年を超える賃借権の設定は全体の一%未満と極めてまれであることを考えまして、その両者のバランスとしては、担い手が借り受ける上で必要な期間として二十年を上限とするのが適当であろうという判断をしたところでございます。

金子(恵)委員 民法との関係についてお伺いさせていただきたいと思います。

 現行の基盤強化法において、共有持分の過半を有する者の同意で設定できる賃借権等の存続期間の上限五年とされる背景には、民法第六百二条において、処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には五年を超えることができないとされているということであります。

 民法では、共有物について、「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。」とされています。これが民法第二百五十一条であります。そして、「共有物の管理に関する事項は、」「各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。」とされています。民法二百五十二条です。

 本法案における二十年の賃借権等の設定が、民法との関係においてはどのように解されるのか、御説明いただきたいと思います。

齋藤国務大臣 重要な御指摘だと思います。

 所有者が不明な土地について、民法上、過半の持分の同意が得られた場合には、五年以内で賃借権の設定が可能である、これは御指摘の民法六百二条です。これは、処分の能力又は権限を持たない者が単なる管理行為としてなし得る賃貸借契約を一定年月以下の比較的短い期間のものに限定をするというものになっています。

 今度の制度は、農地については農地法上利用についての責務規定というものがある中で、作物の収穫が限られている農業の場合、五年という短期では十分な利用を確保することができないだろうということで、農業の特質に応じて特別の期間を設けるということにしたものでありますので、そういう意味では、民法の考え方の特則となるのではないかと考えています。

金子(恵)委員 農業の特性というものに鑑みながらということであります。

 次に、農業委員会の責務と言ったらいいんでしょうか、お伺いさせていただきたいと思うんですけれども、農業委員会に対して要請する農地の所有者等の探索がどのようなものなのかは政令で明確化されるということで、先ほどもいろいろとやりとりはあったんですが、その詳細は明らかにされていない点というのは大きな問題だというふうにも思っています。

 農業委員会がどの程度の作業を行わなければならないのか、そのために要する直接的な事務的な経費とか人員はどのように手当てされていくのか、まだ示されていないわけですけれども、農業委員会も責任を持って探索をするということを目指すために、やはりこういうことをしっかりと進めていく、事務的経費の確保、そして人員確保というのを考えていかなくてはいけないと思いますが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

齋藤国務大臣 まず、現在、遊休農地に関する裁定制度等における探索というのは大変手間がかかっておりまして、その範囲が一つは法令上明確でないということがございます。

 その結果、戸籍等の公簿での調査だけではなくて、地域住民への聞き取りを行わなくてはいけないですとか、数代前の登記で相続人が膨大であることが想定されるケースでも、全ての相続人の住所地を特定しなくてはいけないですとか、それから、相続人の住所地が県域を超えた遠隔地であることが判明した場合に、実際に居住しているか直接訪問するなんということも行われておりまして、極めて慎重かつ時間と手間がかかっているのが現状であります。

 新制度においては、探索の範囲は、戸籍等の公簿による調査を原則として、地域住民への聞き取りは不要である、それから、探索の範囲も配偶者と子の範囲までとして、そして、住所地に居住しているかどうかの確認は、遠隔地は郵送で行うなどによって、こういうことを政令で明確化する方向で検討しておりまして、これにより探索はスピードアップをして、むしろ農業委員会の手間やコスト等の事務負担はこれによりまして軽減される部分もある。

 一方、農業委員会は、今回、農地の所有者等の探索に要する経費につきましては、従来も機構集積支援事業により助成をしているというところでもあります。また、人員についても、農業委員会改革で、改正前の体制では、農業委員数は三万五千四百八十八名だったのが、改正後は、農業委員数及び農地利用最適化推進委員数、合計で四万三千六百名ということになる見込みでありますので、体制が整備をされるということも活用しながら推進をしてまいりたいと考えております。

金子(恵)委員 大臣もおっしゃいましたように、この探索というのは大変な労力が必要になってくるということで、法案の中でも「相当な努力が払われたと認められる」という言い方をしているんですが、その相当な努力というのが、今おっしゃられたそういう内容になっていくんだというふうに思います。

 しかし、そういうふうに努力がされたということが認められるという部分ですよね。どういう形で認めるんだろう、結果を出せなければ認められたというふうに言えないんだろうか、そういう解釈もできるんですけれども、そこはいかがですか。

齋藤国務大臣 今、政令でこういうことを定めたいというのを申し上げましたけれども、そういう手順をしっかり踏めばそれでいいということでございます。

金子(恵)委員 相続未登記のこの問題というのは、やはり、農地の問題だけではないんですけれども、抜本的な解決が必要になってくると思うんです。

 相続未登記の農地及びそのおそれのある農地というのは、全農地の約二割、九十三・四万ヘクタールを占めるということでありますけれども、うち遊休農地になっているのは六%ということですので、多くは実態上は耕作されているということだというふうには思います。

 しかし、先ほど来お話がありますように、当該農地を農地中間管理機構に貸し付けようとするのであれば、かなりの努力というものが必要になっていくということで、方向性はそういうことだと思いますが、本当にこれは進めていけるのかどうかというのは、私は確かなものではないというふうに思っています。その辺のところはどうお考えになられますか。

齋藤国務大臣 この相続の未登記問題というのは、私はこれからますます深刻かつ重要な課題になっていくと認識をしています。

 ただ、相続登記の義務化の是非ですとか、それから土地所有権の放棄の可否等は、登記制度や土地所有権のあり方の根本的課題ということだと思いますので、農林水産省だけで結論を出せるものではありませんし、すぐ、一週間、一カ月で結論を出せるようなものでもないと思いますので、中期的な課題として、今、政府全体で取り組んでいるということであります。

 ただ、遅くなればなるほど事態は深刻化するという性格のものであろうと思っていますので、急ぐ必要はあると思っていますが、現在は、法務省が昨年十月に研究会を立ち上げて検討を進めておりますので、農林水産省としても、この研究会の中で私たちの意見をしっかり述べていきたいというふうに今思っております。

金子(恵)委員 山林もこの未登記の問題というのがありまして、国土の七割を占める山林の問題もしっかりと解決させていかなくてはいけないということであります。

 国交省の方からも法案が出ているということでありますので、しっかりと政府を挙げて御検討いただきまして、相続未登記というこの問題が更に大きくならないようにしていかなくてはいけないというふうに思っております。よろしくお願いいたします。

 農地の定義でありますが、農地の定義は、農地法上、耕作の目的に供される土地であると先ほど大臣も御答弁されておられました。そして、この耕作とは、土地に労費を加え肥培管理を行って作物を栽培することでありますが、この定義は今回の法案によって変わらないということでよろしいでしょうか。

齋藤国務大臣 御指摘のように、農地法の農地の定義、今回改正することになっておりませんし、また、耕作とは、農地法関係事務に関する処理基準におきまして、土地に労費を加え肥培管理を行って作物を栽培することをいう、これを変更することも考えておりません。

金子(恵)委員 ハウスの中の底面を全面コンクリート張りするということであります。

 このことについて、そこで行う作業というのは耕作というふうにお考えになられておられますか。

齋藤国務大臣 今回、農業用ハウス等の床面をコンクリート張りすることによって実現しようとしている農業は、もともと土を耕して行うトマト等の栽培に関して、先ほど来答弁していますように、そういうことが行われるようになったのは、温度や湿度の効率的な管理を追求した結果であったり、それから、農業者の高齢化等に伴い、作業の効率化を追求した結果であったりするわけでありますので、いずれも従来の農業の延長線上のものであって、しかも、生産現場のニーズも高いということでありますので、そういう意味では、従来の考え方に沿うものだというふうに考えております。

金子(恵)委員 それでは、農地の概念を変えることではないというふうに思うんですけれども、大変気になっている発言が規制改革推進会議の農業ワーキンググループであったということでありまして、それは、農地法上の農地の定義に対して、技術が進展し、農業のあり方が変化している中で、必ずしも土にこだわらず、農作業を行うために供される土地であれば農地として扱っていくべきだという意見があったということなんです。

 先ほども、大臣は、農業の原点というのは土づくりだということは御理解いただけているというふうに思います。もちろん、先ほど来お話もありますけれども、例えば水耕栽培、養液栽培というものの進展の中で、それを進める上でも、例えば養液等を均一に広げるためには棚を水平に保つ必要があるから、土に高設棚を設置した場合よりは、やはりそれよりもコンクリートの方がいいのではないか、そういうお話というのはあるというふうには思います。

 しかし、そこで行っている作業というのは、もしかすると耕作ではなく作業であって、農業者の、農業生産のそういう活動というよりは、もしかすると植物工場などで行われている作業に近いものではないかというふうにも考えられると思うんです。

 そのことについて、どのように大臣はお考えになられますか。

齋藤国務大臣 大変重要な問題意識だと思っておりまして、どこかで線が引かれるような話になってくるんだろうと私は思いますけれども、ただ、今回の法律に関して言えば、私どもが想定している農作物栽培高度化施設というのは、省令で専ら農作物の栽培の用に供されるというものに限定をするし、それから、周辺の農地の日照が制限されたり農作物の生育に影響を与えないよう、施設の高さなどの基準をしっかり定めていくということをさせていただきたいと思っておりますし、かなり限定的に認めるということを考えているわけであります。

 規制改革会議の意見に植物工場的なものをどんどん進めればいいというのがあったという御発言がありましたけれども、私たちはそれを踏まえて検討したわけではなくて、むしろ現場のニーズが高まってきている、しかし、それが一線を越えないようにどこで線を引くかというのを考えながら今回の法律をつくらせていただいたということでございます。

金子(恵)委員 それでは、大臣、確認をさせていただきますけれども、技術が進展する、それでニーズがある、それに応えていくというのは当然のことではありながらも、でも、やはり農業の多面的機能、そしてまた地域政策として見ていく、あるいは産業政策もそうですけれども、その両輪というものをしっかりと動かしていくということには全く変わりがないということで、やはりふるさとの風景、土、美しい田園風景、こういうものを大切にしていくというお考えであるということでよろしいんでしょうか。

齋藤国務大臣 今回の法律におきましても、そういう趣旨で、周辺に影響を与えないというふうなこともしっかりと確保するということで進めさせていただいておりますので、考え方は共有できるんじゃないかと思っております。

金子(恵)委員 しかし、それでも大規模化を目指しているんじゃないんでしょうか。

 今、予算もそれぞれあるわけなんですが、民間企業の参入がしやすいような、そういう環境づくりをしているように見受けられるんですけれども、平成三十年の予算の中でも次世代施設園芸の取組というのがありますね。この拡大のために、予算が二十三億六千二百万円でしょうか、計上されていると思います。こうやって施設園芸を拡大していく、そして大規模化していくという方向性は間違いがないというふうに思うんです。

 これに例えば企業が参入してきた、しかし、採算性の問題もあって撤退する、そこに全面コンクリートをしたハウスが残るということになりかねないわけです。コンクリートに覆われたその土地というのは、簡単に原状回復できるものでもありません。

 そういうことも含めて、先ほど、美しい田園風景とか、土の香りのするそういう農業というのを私は大切にしなくてはいけないというふうに申し上げましたけれども、ここの部分で、大臣も私が申し上げたことについては賛同していただいていると思いますけれども、でも、こうやって大規模化する、そして、いろいろな企業などが参入できるようにしていくということと矛盾点がないでしょうか。

齋藤国務大臣 ちょっと御質問の趣旨が必ずしも十分に理解できるかどうかわかりませんが、繰り返しになりますけれども、今回の措置は現場の農業者の方々から出てきている切実なニーズに応えていくということをしようとするものでありますし、それから、農地所有適格法人の要件について今回変更していくということでもありませんので、ちょっと委員の御懸念というのは、今回の法律に関して言えば、随分、御心配になるのはわかりますけれども、ややし過ぎかなというふうに思っております。

金子(恵)委員 それでは、改めてお伺いさせていただくんですけれども、今回のこの法案を出すに当たっては、当然、施設園芸を進めている生産者のニーズに応えるということを目的としていたということでありますけれども、その我が国の施設園芸の現状というものをお伺いしたいと思います。

齋藤国務大臣 申しわけないんですけれども、事前に通告がない質問ですので、ここで粗っぽい答弁をするのもちょっと差し控えたいなと思いますので、次回か、あるいは理事会で御協議いただければありがたいなと思います。

金子(恵)委員 我が国の水耕栽培、養液栽培の現状についてお伺いします。

 そのことが今申し上げました施設園芸の中に含まれているということで、そういう質問の仕方をいたしましたが、通告はしていますので、お願いいたします。

伊東委員長 齋藤農林水産大臣、時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。

齋藤国務大臣 養液栽培につきましては通告いただいておりまして、農業用ハウスは約四万三千ヘクタールありますが、そのうち養液栽培装置を備えたハウスというのは約千八百ヘクタールで、全体の四・二%となっております。

 その中で、さらに、温度や湿度、二酸化炭素濃度等の複数の環境を制御できる装置を備えたハウスは約九百五十ヘクタールというふうになっているところでございます。

金子(恵)委員 わかりました。

 時間が参りましたのでこれで終わりたいと思いますけれども、全面コンクリート、やはりいろいろな懸念がまだ払拭されない御答弁でありました。残念でなりませんけれども、これを本当に進めるのであれば、やはり万が一のときのための対応というのをしっかりと考えていただきたいと思います。

 農地をしっかり守っていく、原状回復もどのように進めていけるかということも含めましての御検討をしっかりとしていただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございます。

伊東委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 農業経営基盤強化促進法の一部改正案について質問をします。

 まず、相続未登記農地の利用促進についてであります。

 午前中からこの質問が続いているわけでありますけれども、存続期間二十年のことについて、まずお聞きします。所有者の過半が判明しない場合においても、農地中間管理機構への利用権の設定ができるようにするわけであります。その存続期間が二十年とする問題。

 現状でも、通常の農地の賃借権は二十年を超えるものはもうほとんどないという回答でもありました。つまり、本法案は、ほぼ全てのニーズをカバーできるように上限を設けている。しかし、共有者の同意を得ずに、ある意味強制的に利用権設定できることを考えると、二十年というのは長過ぎるのではないかなというようにも考えられます。

 改めて、なぜ二十年に設定されているのか、回答していただきたいと思います。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 これも、既存の遊休農地に関する措置等を実行した関係者の方々からの切実な要望にお応えしているものでございます。

 やはり所有者不明農地ということになりますと、かなりの場合、人に新たに土地を貸すということになる際に、水路の補修、あるいは土づくり、基盤整備、こういうことがどうしても必要になってくるわけでございますが、手続をとってやった後に五年ということではいかにも短過ぎるということで、まずこれを延長しようということになったわけでございます。

 そのとき、非常に念頭に置いておりましたのは、昨年の土地改良法の改正によりまして、農地中間管理機構に貸し付けた農地については、農業者の負担なしで基盤整備、あるいはそれとあわせた水路の補修等ができることになっております。この条件として、中間管理機構に賃借権を、十五年以上貸すということが定められております。

 ですので、この十五年をクリアしますと負担なしの基盤整備ができる、そういうことが、担い手の農家の方が土地を利用するのにしやすくなるのではないかということをまず考えた次第でございます。

田村(貴)委員 では、もう一問お伺いします。

 例えば、相続人の一人が退職などで地元に帰ってくる、そして、農業をやろうと考えたんだけれども、利用権が設定されていた、そういうことも想定されるわけであります。

 憲法二十九条の財産権が侵害されるという訴えが起こった場合に、どのように応えていくんでしょうか。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 農地につきましては、農地法上、農地の所有者は農地を適正に利用する責務があるわけでございます。

 ですので、今回の制度は、その責務をまさに働かせるために、現在、相続未登記農地の大部分で事実上管理されている方がいらっしゃいますけれども、その方がリタイアする場合等に伴う遊休農地化を防止するための措置であること、それから、農地は公的な機関であります機構を通じて担い手に貸し出されるということで、農地のより効率的な利用に資するものであること、それから、本制度による貸付けに当たっては、不明な共有者の探索それから公示による不明な共有者からの異議がないことの確認などの慎重な手続が確保されているということ、それから、所有権については、いずれにしろこれは権利をさわるわけではないということもございまして、この農地法上の農地を適正に利用する責務を全うさせるための措置として、憲法第二十九条第二項に基づく公共の福祉による一定の制限に適合し、かつ、不明な共有者の財産権を不当に侵害するものではないというふうに考えているところでございます。

田村(貴)委員 なるほど。農地は適正に管理する責務があるということですね。

 その適正に管理する農地が、コンクリートで覆った場合にも農地法上の農地と認めることについて質問をしたいと思います。

 いわゆるコンクリート敷き施設のことについてでありますけれども、この出発点であります。昨年十一月二十九日、規制改革推進会議の意見書であります。読み上げます。「コンクリート敷きの農業用ハウスやいわゆる植物工場などの農作物の栽培に必要な施設については、農地転用を必要とせず、現況農地に設置できる仕組みを設ける。」とし、「関係法律を見直し、必要な法案を次期通常国会に提出すべきである。」と意見したんですね。

 今回の法改正というのは、まさに、この規制改革推進会議の意見に沿う形で出されてきたものであります。

 大臣に、一番大事なところをお伺いしたいと思います。この規制改革推進会議の意見には、植物工場という言葉があるわけなんです。農地法四十三条で特例とする農作物栽培高度化施設というのは、この植物工場も含むのでしょうか。

齋藤国務大臣 農作物栽培高度化施設については、省令で、まず、専ら農作物の栽培の用に供されるものであること、それからもう一つは、周辺農地の日照が制限され、農作物の生育に影響を与えないよう、施設の高さについての基準に該当することなどの要件を定める予定であります。

 したがいまして、この要件に該当するかどうかに尽きるわけでありまして、植物工場がこれに該当するかどうかはこれらの基準に沿って判断されることになるということでありまして、植物工場だからとか、そういうことは想定していないということであります。

 これは、農地法の規制目的に沿った考えということで、我々として判断をしたものであります。

田村(貴)委員 大臣、いまいちよくわかりません。認められるのか、認められないのかというふうに私は質問をしているわけであります。

 規定を省令で定めるというふうに午前中から答弁があっているんです。私が理解しているのは、広さについてはなかなか難しいだろう、しかし、高さについては設けさせていただきますよと。それから、他の農地に影響を与えることのないよう、例えば排水施設などをちゃんと備える。そういうことを考えたら、この条件をクリアしたら、いわゆる企業が参入したいという植物工場も当てはまるのではないですかと聞いているんですけれども、いかがですか。

齋藤国務大臣 繰り返しになりますが、植物工場だから当てはまるというふうには考えておりませんで、これら省令で定める要件に該当するものが対象になるということに尽きるわけであります。

田村(貴)委員 植物工場は排除しないということであります。

 去年の五月二十二日付日本経済新聞の記事をちょっと引用させていただきます。「現在は農地をコンクリートで舗装して植物工場を建てた場合、その土地は農地ではなくなり、固定資産税が上がってしまう。舗装しても引き続き農地と認定できるようにし、工場を運営する企業の税負担を軽くする。最新技術を駆使する企業の参入を後押しし、農業の成長産業化につなげる。」という報道であります。読売新聞の九月三十日付の記事の見出しは、植物工場税負担軽く、企業など参入目指すと。

 こういう雰囲気の中で議論されて、今回、農水省からこういう提案が出てきているわけなんですよね。ここを僕は曖昧にしては絶対いけないと思うんですよ。

 この報道にあるように、コンクリート舗装の農地特例というのは植物工場を対象にしたもの、その本筋は企業の税負担軽減にある。議論の中で、要望の中で、経済界からの要求の中でこういう形になって出てきているわけです。きのうもレクチャーで聞いたら、植物工場は条件がかなったら排除するものではないというふうに言われて、今の大臣の説明でもそういうことなんです。

 私は、やはりこういうスキームでいきますと、企業が節税対策をして農地に植物工場を進出させてくるのではないか、そういう傾向が強まるのではないかなと思うんですけれども、私の懸念についてはどのようにお答えになられますか、大臣。

齋藤国務大臣 繰り返しになりますけれども、先ほど私が申し上げた要件に合致するものが全てということであります。

 それで、その上で、今回の改正において、農地所有適格法人の要件については何ら変更は加えておりませんので、その所有についてのところも変更を加えていないわけですね。

 したがって、企業の参入を進める趣旨のものではなく、繰り返しになりますが、むしろ現場の農業者から、労働力不足の解消ですとか、それから新しい技術の導入ですとか、そういうニーズが高まってきているので、それに合致するような施設をつくるための基準というものをしっかり決めたということであって、植物工場だからとか植物工場じゃないからという観点はないということを申し上げさせていただきたいと思います。

田村(貴)委員 ここは大事なところなんですよ。

 大澤局長、私、先ほど言いましたね、その省令で定めるところの条件ですよ。高さについては設けていきたい、どのぐらいの高さなんですか。広さについてはなかなか難しいだろう、そして、排水施設などを整えて、他の農家に対して、農地に対して影響を与えない。その省令で定める基準について、いま一度お答えいただけますか。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 高さについては、先ほどから、明確な基準を設けたい、それから専門家の意見を聞きたいということを申し上げております。ですので、今、何メートルであるとか、そういう予断を持ってお答えすることは差し控えさせていただきますが、この出発点の趣旨からいたしまして、現在農地でコンクリートを張らないでハウスを建てておられる、そのハウスにどういうものがあるのか、これをまず調べることから始めまして、それで基準を考えていくということでございます。

 その他の基準としては、農業専用の、専ら農業の用に供する施設であること、あるいは排水設備について備えていること、これらについては明確な基準を設けたいと思いますが、何が起こるかわかりませんので、バスケットクローズ的に、その他、周囲の農地に悪影響を与えないものという要件も加えたいと思っております。

田村(貴)委員 だから、この出発点なんですよね。

 私、全て否定するものではありません。大臣に後でもう一回お答えいただきますけれども。植物工場税負担軽く、ここが出発点とするならば、これはおかしなことになってしまうんですよ。官邸を挙げて、規制改革推進会議で、植物工場だと言っているんですよ、税負担を軽くせよと言っているんですよ。これは一つのスタートですよ。そこがスタートでないというんだったら、農水省、頑張ってもらわなくちゃいけません。徹底してそういう利用目途にしてはならないというふうにここで断言していただかなきゃなりません。

 大臣、私、先ほどから議論があっているように、農家の、ハウスの中での人材不足、高齢化、この中でされていることについては否定しません。高設棚の役割、大事だと思いますよ。それから、レールつきの収穫台車の導入、こうしたものがあっている、そしてイチゴやトマトなどの施設園芸で一定のニーズがあっていることについては、私は否定しません。だけれども、税負担を軽くすべき植物工場の導入、こういうものと一緒くたに提案されるのは、ちょっと幾ら何でも乱暴ではないかなというふうにも思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。私は、一定理解しています。

齋藤国務大臣 さまざまな現場のニーズによりまして底地をコンクリートにするということ自体は反対ではないということでありますが、一方、農地として今後も、土のものをコンクリートに変えただけでもう農地じゃありませんということではコンクリート化という現場のニーズには応えられないだろうということでありますので、それは農地として認めるということになったわけでありますので、別に税を軽くするためにこれをやるということではなくて、農地として認めてやれるようにしようというのが趣旨でございます。

田村(貴)委員 農水省から事前に法案の説明があったんですけれども、私はやはり、一つの出発点として、税負担軽減、植物工場、そして規制改革推進会議、もう鳴り物入りで入ってきているわけですよ、こういう話が。農水省から出る提案というのは、規制改革推進会議からの提案が多いじゃないですか。これもそのうちの一つなんですよ。

 先ほどから議論されているところですよね。その説明の中でも、企業が手がける植物工場については一かけらの説明もなかった。ここはやはり隠してはだめですよ。隠れみのにしてはだめだ。そういう参入の余地を大きく広げては、これはやはり農地が農地でなくなってしまうというふうに私は思うわけなのであります。

 次に、農地の考え方についてお伺いしたいと思うんですけれども、農地とは、耕作目的に供される土地をいい、耕作とは、土地に労費を加え肥培管理を行って作物を栽培することである、これが今までの定説であります。農地にコンクリート等で地固めし、その土地に労費を加えて肥培管理を行うことができなくなる場合については農地に当たらない、農水省はそういうふうにしてきたわけであります。

 そうした今までの見解について、いま一度、今度は態度が変わってしまったということなんでしょうか。説明していただけますか。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 農地法制定当時、昭和二十年代でございますが、これは、農作物の栽培というのは土を耕して行われることがいわば当然でございました。そういう前提で、国民に対する食料の安定供給の確保を図るという観点から、耕作の目的に供される土地というのを農地として、これが国民の貴重な財産として守っていきましょう、こういう観点から一定の規制をかけたというのがこの農地法のそもそもの立法趣旨でございます。

 ただし、やはり経済社会情勢の変化に伴って法律も柔軟に考えていくべきところは考えていくというふうなことを私どもは思っておりまして、例えば、平成十四年に、これはあるところから、ある地方公共団体から照会が来たのに答える形ですが、構造改善課長通知におきましては、ハウス、底地は土でございますけれども、ハウスと道路との間の通路部分など、農地の一部をコンクリート張りするということも必要最小限認めるなど、農業の形態の変化、それから現場のニーズに伴いまして、かつ、農地法の目的であります食料の安定供給の確保につながるものについては柔軟な取扱いというのをしてきたわけでございます。

 今回の改正もその延長線上でございまして、施設を、まず現に、隣地、隣の農地に影響を与えないという前提つきで、更に新たな現場のニーズを踏まえて、農業生産技術の向上を生かした農作業の効率化、高度化を図るために、例外的に土を耕さない形態での栽培についても、一定の施設を特定した上で農地として認めよう、こういう流れで理解しております。

田村(貴)委員 農地が農地のまま管理するということは、やはり基本中の基本だというふうに思うわけなんです。

 農林水産省のホームページには、農業、農村の十二の機能というのが挙げられて、非常にわかりやすいんですけれども、これを紹介していただけるでしょうか。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から御指摘ございました、ホームページに掲載されております十二の農業、農村の持つ多面的機能につきましては、平成十三年の学術会議の答申におきまして多面的機能として分類、整理されたものを、一般の方向けにわかりやすく整理したものでございます。

 十二、具体的に申し上げますけれども、まず一つ目が、洪水防止機能でございます。雨水を一時的に貯留することにより、洪水の発生を防止するという機能。

 それから二つ目が、土砂崩壊防止機能。地下水位を安定的に維持し、地すべりや土砂崩壊などの災害を防止する機能でございます。

 三つ目が、土壌侵食、流出防止機能。これは、雨や風から土壌を守り、下流域に土壌が流出するのを防ぐ機能でございます。

 四つ目が、河川流況安定機能でございます。田畑に貯留した雨水が排水路や地下を通して河川に戻ることにより、河川の水量を安定させる機能でございます。

 五つ目が、地下水涵養機能でございまして、雨水などを地下水へとゆっくり浸透させて、良質な水として下流地域の生活用水に活用される機能でございます。

 六つ目が、気候緩和機能でございまして、田の水面からの水分の蒸発などにより熱の循環を促すことで気温上昇を抑える機能でございます。

 七つ目が、生物多様性機能でございまして、豊かな生態系が形成される機能でございます。

 八個目が、農村景観保全機能でございまして、田畑の作物と農家の家屋やその周辺の景観が一体となった機能であります。

 九つ目が、伝統文化保全機能でございまして、伝統行事やお祭りなどが保全される機能でございます。

 十個目が、保健休養・安らぎ機能でございまして、澄んだ空気や美しい緑、四季の変化などが安らぎ、癒やしを与える機能であります。

 十一個目が、体験学習と教育機能でございまして、自然体験学習や農山漁村留学などを通して、感性や情操を優しく豊かに育てる機能でございます。

 十二個目は、その他ということになっております。

 これらが、農業、農村の持つ多面的機能として整理をさせていただいたものでございます。

田村(貴)委員 大変重要な多面的機能、農地、農村の果たす役割というのは、かけがえのない、やはり国土保全、そして私たちの安定的な食料の供給にとどまらない、いろいろな役割があるということを紹介していただきました。これらの多面的機能を見るに、一つ言えることは、農地を農地のままに維持するということは、食料供給にとどまらない価値があるということであります。

 二〇〇九年に改正した農地法一条には、農地を、農業生産の基盤であると同時に、地域における貴重な資源としたところであります。先ほどの省令で、条件をクリアして巨大な資本が農地にもし入ったときに、植物工場なるものができて、底面をコンクリートで覆うということは、これこそ農地の多面的機能を否定することになりはしませんか。私はそういうふうに思うんですけれども、いかがですか。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 農地法は、貴重な資源であります農地について一定の規制を行うということで、規制法でございます。

 規制法におきましては、規制目的との関係で規制内容が決まってくるということが一般でございますけれども、現在でも、多面的機能の有無あるいは多面的機能の程度に応じて農地を区分して、それで規制の程度を変えるという法体系にはなっておりません。

 ですので、農地法によって多面的機能の規制のあり方を変えるというのはなかなか困難なものではないかと思います。

 なお、多面的機能の有無につきましては、これは、個々の農地単位というよりも、周辺農地も、あるいは農村風景を含めた全体として発揮されるものだと考えておりますけれども、今回の法改正で主に整備されると考えております養液栽培設備につきましては、今でも、農地及び農地外に設置されるものは全部合わせても千八百ヘクタールという、農地全体と比べますと非常に少ない部分でございます。

 それから、何度も繰り返し申し上げていますように、周辺の農地に悪影響のないものを省令ではっきりと明記した上で対象にしているということもございますので、少なくとも、その周辺農地全体の多面的機能の発揮に何か支障が出るという事態は想定しているものではございません。

田村(貴)委員 先ほどから何度も言いますけれども、農水省の想定しているものとこの規制改革推進会議から出てきているものというのは違うわけなんですよ。

 植物工場、うまいこといっているかといったら、現実は物すごく厳しい状況にあります。日本施設園芸協会の昨年度の調査でも、四割が赤字、三割がとんとん、黒字の企業は全体の二割。

 以前、我が党の紙智子参議院議員が紹介したんですけれども、北海道千歳市、オムロンがつくったトマト工場に、これは東京ドームの一・五倍の規模で、ガラス温室がつくられた。しかし、わずか三年で撤退してしまったんですね。引取り手がなくて荒れてしまった。幸いにも買い取る企業が出てきたのでよかったんですけれども、一歩間違ったら巨大な廃墟になっていたということです。

 報道でもあっているんですけれども、植物工場は、安定生産が困難である、コストが高くつく、販売先の開拓が難しいというような状況の中で、固定資産税が農地に行ったら十分の一以下になるから、これはいいなと思って来る。そうしたら、農水省の方は、この省令で定めた基準だったらオーケーですよと。そういう入り口をつくっておくと、私が今言ったような懸念が大概出てくるんじゃないかということであります。

 企業は、もうからなければ撤退してまいります。そこに土地があり、そこに根を張って、土を耕している農家の方々がおられるという点では、話が全然違うんです。そうやって営利目的で参入する入り口がある。

 もし、来て採算がとれずに退去してしまった、撤退してしまった、あとはコンクリートが敷き詰められている。その廃墟とならないように担保する制度というのはどこにあるんですか。最後に聞きます。

伊東委員長 大澤経営局長、時間が来ていますので、簡潔にお願いします。

大澤政府参考人 この点につきましては、農地のままにしておくということですので、農地の規制がそのまま適用されます。仮に転用ということになれば、農地法上の規制措置は一切使われなくなります。

 ですので、農地とした場合の、撤退した場合等の措置でございますけれども、農業委員会によるほかの経営者のあっせん、それから都道府県知事による原状回復命令、それから都道府県知事による代執行、それから、法人の場合につきましては、農地所有適格法人の要件を欠くことになりますので、国による買収、こういうものの措置の対象になると考えております。

田村(貴)委員 結局は、自治体にはね返りが来るということもあるわけなんです。

 植物工場は、経済産業省と農林水産省のさまざまな支援があっているわけであります。ここに、わざわざ減税に道を開くやり方、規制改革推進会議のやり方、言われるままに農地の考え方を変えてしまう、曖昧にしてしまう、そういうやり方にはやはり納得することはできない、反対であることを申し上げて、きょうの質問を終わります。

 ありがとうございました。

伊東委員長 次に、森夏枝君。

森(夏)委員 日本維新の会の森夏枝です。

 本日も質問の時間をいただき、ありがとうございます。

 早速質疑に入らせていただきます。

 まず初めに、大臣に質問いたします。

 今般提出された農業経営基盤強化法案の趣旨や背景について教えてください。

    〔委員長退席、坂本委員長代理着席〕

齋藤国務大臣 農業者の高齢化が進み、かつ、農業就業人口が減少する中で、農業の成長産業化を図るためには、農地中間管理機構による担い手への農地の集積、集約化を進めるとともに、新技術を活用して農業の効率化、高度化を進めていくことが必要であると考えています。

 しかしながら、相続しても登記がされない農地等が全農地の約二割存在して、担い手への農地の集積、集約化の阻害要因となっているとともに、水耕栽培や収穫用のレールの導入等の必要から、農業用ハウスの床をコンクリートで覆う場合に、現行の農地法では農地転用の許可を受ける必要があるというような現状がございます。

 本法案では、このような現場ニーズに的確に対応するために、共有者の一部が不明である農地を農地中間管理機構に簡易な手続で貸し付けることを可能とすること、それから、農業生産技術の向上を生かした農作業の効率化、高度化を図るため、農地転用許可を要せずに、農業用ハウスの床面を全面コンクリート張りにすることを可能とすることにより、担い手が農地をより利用しやすくするものであります。

 先ほど来、大企業がどんどんどんどんコンクリート張りの施設をつくってしまうんじゃないか、そういう御懸念が多々示されているわけでありますけれども、御案内のように、企業そのものは今農地を所有できない、そこは変わっていないわけであります。適格法人は所有できるわけですけれども、そこの要件も変えていないわけでありますので、そこは御理解いただきたいなというふうに思います。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 次に、本法案の一つの柱である所有者不明農地への措置に関して伺います。

 まず、所有者不明農地に関して、農村の現場において具体的にどのような問題が生じているのか、お聞かせください。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 現在、相続しても登記がされない農地又はそう思われる農地は約九十三・四万ヘクタール、全農地の二割を占めてございます。

 現在においては、ほとんどの部分で、事実上農地を管理されている方がいらっしゃいますが、そういう方がリタイアして、利用権をほかの人に設定しようということになりますと、相続人を全部探す必要があって、その探索に多大なコストがかかるということで、なかなかその集積、集約化が進みにくい。

 あるいは、努力を払って利用権を設定できたことになったとしても、五年以内しか現状の法律では設定できませんので、利用権設定後、土づくりから始めるとすれば、実際に利用できる期間がほとんどなくなってしまう。

 あるいは、そういうこともありまして、特に、まとまった農地の中にそういう所有者不明の土地が点在するということによって、基盤整備も行いにくい。

 こういう形の問題が多々生じていると承知しております。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 本法案では、農地の集積を一層進めること等を目的として、所有者不明である農地を農地中間管理機構に簡易な手続で貸し付けることを可能とするとのことですが、具体的にどういう手続で行うのか、お聞かせください。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 まず、共有者の過半が判明していない農地につきまして、市町村長の要請を受けた農業委員会が、政令で定める一定の範囲で探索を行います。探索してもなお過半の共有者がわからない場合には、農業委員会は、この当該農地を農地中間管理機構に貸し付けるということを内容とする農用地利用集積計画の案について公示をいたします。その結果、六カ月たってもその案につきまして異議がなかったときは、市町村がその計画案を計画にいたしまして、その計画を公告いたします。その公告の効果として、機構への二十年以内の利用権が設定されることになります。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 続いて、本法案のもう一つの柱であるコンクリート張り農業施設について伺います。

 農業用ハウスの床面をコンクリート張りする目的として、農業の効率化、高度化があるとのことです。担い手不足の解消の面から考えましても、これから更にニーズが高まるのだろうと思います。コンクリート張りにするとアルバイトの方も集まりやすいといったお話もお聞きしました。今、施設園芸では、単なるパイプハウスではなく、養液栽培のための装置等を用いたいわゆる環境制御型の施設園芸に切りかえ、生産性向上を図る取組が進んできているともお聞きしました。

 先ほど申し上げた、農業用ハウスの床面をコンクリート張りする目的として養液栽培装置等を用いた環境制御型施設の導入を図ることが大きいと考えますが、現時点では養液栽培装置等の導入状況はどうなっているのでしょうか。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の農業用ハウスでございますが、約四万三千ヘクタールございますけれども、そのうち養液栽培装置を備えたハウスが約一千八百ヘクタールで、全体の四・二%でございます。その中で、さらに、温度ですとか湿度、二酸化炭素濃度等の複数の環境を制御できます装置を備えたハウスが約九百五十ヘクタールとなってございます。

    〔坂本委員長代理退席、委員長着席〕

森(夏)委員 ありがとうございます。

 養液栽培について、更に伺います。

 養液栽培装置等を用いた環境制御型施設園芸に適した品目にはどのようなものがあるのでしょうか。お聞かせください。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、国内で養液栽培が行われている品目で多いものがトマト、イチゴ、ミツバ、サラダナなどがございます。

 養液栽培装置等を用いました環境制御型の施設園芸は初期投資が大きいので、このように、付加価値が高く、単位面積当たりの収益性が高い果菜類、あと、栽培期間が短く、回転数をふやすことで周年的な収入が見込まれる葉菜類、これが中心となっているところでございます。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 養液栽培装置等を用いた環境制御型の施設園芸を導入すると、どのような効果、メリットがあるのでしょうか。収穫量の増加などを期待できるのでしょうか。お答えください。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 養液栽培等を用いました環境制御技術を導入いたしますと、農作物の生育に適しました環境条件を整えることが可能となりますので、これによりまして収穫量を増大する効果がございます。また、収穫期間の調整もできますので、労働のピークを平準化するような効果、そういう効果もあるというふうに認識をしてございます。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 今後、更にニーズが高まってくるのだろうと思います。

 生産性向上など、メリットがある環境制御型施設園芸ですが、その導入に当たってはコストの増加も懸念されるところです。コンクリート張りにすることでロボットの導入もしやすくなるといった利点もお聞きしました。担い手不足を考えますと、今後もロボットの導入もふえるのではないかと思います。こちらもコスト面が気になります。環境制御型施設園芸による生産性向上の取組について、農林水産省ではどのように推進していくのでしょうか。お聞かせください。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 養液栽培装置等を用いました環境制御型の施設園芸でございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、単収の向上ですとか、天候に左右されない安定生産を実現することができますので、農業者のニーズに対応してこれまでも支援してきているところでございます。

 その際、先生からも御指摘ございましたとおり、特に環境制御型の施設園芸導入に当たりましては、多額の初期投資を要しますとともに、気象条件ですとか作物の生育状況等に応じた環境制御を的確に行う技術が求められるところでございます。

 このため、農林省といたしましては、強い農業づくり交付金ですとか、産地パワーアップ事業によります施設整備への支援、あと、地域の中心的な農業者が行います環境制御技術の実証ですとか、その実証温室での研修の受入れに対する支援などを行ってきたところでございまして、引き続き支援してまいりたいと存じます。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 次に、農業者の方々からの要望について伺います。

 生産方式の高度化等を図るために、この法案では、全面コンクリート張りした農業用ハウスを農地としてみなすこととなりますが、法案の検討に当たって、農業者からどのような要望が来ていたのでしょうか。農林水産省では農業者の要望は把握されていたのでしょうか。教えてください。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 農業者からのニーズといたしましては、やはり農地に高設棚を、農地といいますか、農業用ハウスの土地に高設棚を設置して養液栽培を行いたいんだけれども、時間がたつと、下が土でありますと、だんだんだんだん傾いてきてしまう、そこでまた高設棚を補修しなければいけない、これを何とかコンクリート張りできないだろうか、こういう御意見。

 あるいは、移動用のカート、これは、ハウスの中で作業をされている方が非常に高齢化をしておりまして、なかなか腰を曲げたくないということとか、持ち上げるのが非常に一苦労だということで、移動用カートによって作業を少しでも楽にしたい。あるいは、最近、技術進歩に伴って、収穫用ロボットを導入したい、そのために底地をコンクリート張りした方がいい。通路だけについては今までも認められておりましたけれども、通路だけをコンクリート張りにすると、やはりコストがかかってしまう、全面コンクリート張りの方が、後でお話しします環境制御もできるので、それができないだろうかというような御意見。

 それから、やはり、環境制御型の温室というのは最近多くなってきておりますけれども、下が土ですと、その環境にも影響されてしまうので、なかなか制御がしにくいというような御意見。

 こういう御意見をいただいてきたところでございます。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 続いて、転用許可手続について伺います。

 全面コンクリート張りした農業用ハウスを農地としてみなすということで、農地転用扱いにしないということですが、そもそも、農地を農地以外にする場合には、農地転用に該当し、都道府県知事等の許可を受けることが必要になります。その転用許可を受けるまでに時間がかかるとお聞きしていますが、現在、手続はどのようになっているのでしょうか。どのぐらいの時間がかかるのでしょうか。国として標準的な処理期間を定め、示しているのであれば、教えてください。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 転用の手続について御質問ございました。今先生からお話ございましたように、農地を農地以外に転用する場合には都道府県知事等の許可を要することになっております。こういうことで、無秩序な転用を防止しておるところでございます。

 具体的な手続でございますけれども、農地転用に係ります申請から許可までの判断といたしましては、まず、農業委員会での農地転用許可申請書の受理をしていただいて、農業委員会で審査をしていただいて、都道府県知事などへ申請書を送付していただくというプロセスがございます。その上で、都道府県知事等による審査と決定ということになっておるところでございます。

 お話ございましたように、これらの審査手続が当事者の方にとりまして過度な負担となりませんように、私ども農林省といたしましては、転用許可事務の適正かつ迅速な取扱いというものを決めておるところでございまして、一つは、審査の効率化、提出書類の簡素化などの取組について、許可権者でございます地方公共団体に対しまして、通知等によりまして技術的助言を行うこととしておるところでございます。さらに、先生の御指摘にもございました、農地転用の手続に係る標準的な事務処理期間を定めることなどによって取り組んでおるところでございます。

 具体的な処理期間につきましては、ちょっと細かくなりますけれども、幾つか類型があるわけでございますけれども、例えば、農業委員会が受け取ってから、農業委員会がそれを知事にお渡しするまでは原則三週間以内というふうなこととか、知事の方で受け取られた後、それは二週間以内に結果を出すといったようなことで、標準処理期間を定めておるところでございます。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 通常、農地を農地以外にする場合には都道府県知事の許可が必要ですが、本法案により、全面コンクリート張りした農業用ハウスを農地とみなす場合には、転用許可ではなく、農業委員会への届出制にするとのことです。その理由をお聞かせください。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 農地を農地以外に転用するとなりますと、その後、これは農業委員会も農業上の観点からまたチェックができないということになりますので、周辺の農地に係る営農条件に支障を及ぼさないかどうか、これを確認した上で、慎重に審査をした上で都道府県知事が許可を行うという仕組みにしてございます。

 今回の農作物栽培高度化施設につきましては、まず、施設の基準について、可能な限り明確に客観的基準をつくりたいというふうに申し上げております。客観的な基準ということであれば、その判断が極めて容易になるということもございまして、これは、当てはまるかどうかというのを確認するという作業になると思っておりますので、これは届出という形の中で確認をしていくという考え方で整理してございます。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 少しでも当事者の方々の負担を減らすことができるのであれば、私は賛成をしたいと思っております。

 全面コンクリート張りの農業用ハウスの具体的な基準は今後省令で示すとのことですが、その基準の検討に当たっては、周辺農地への営農に支障がないようにすべきだと考えております。現時点で、省令においてどのような基準を設定するお考えでしょうか。お聞かせください。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 省令におきましては、専ら農作物の栽培の用に供されるものであること、周辺農地の日照が制限されたり、農作物の生育に影響を与えないように、施設の高さについての客観的な基準を設けること等を考えてございます。

 具体的な高さにつきましては、専門的な知見に基づく検討が必要と思っておりますので、専門家の意見も聞いた上で基準を定めたいというふうに考えてございます。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 農家の方々の現場の声をしっかり聞いて、基準を設定していただきたいと思います。

 全面コンクリート張りの農業用ハウスについては本法案の対象となりますが、本法案で想定しているハウスには、ハウスそのものだけでなく、作物栽培に必要な重油タンクや養液タンクなど、いろいろな附帯施設があると思います。こうした附帯施設は農地としてみなされるのでしょうか。どこまでが対象になるのでしょうか。お答えください。

大澤政府参考人 まず、現在でも、底地を全面コンクリート張りしない農業用ハウスは、農地の上で設置することは認められております。その際には附帯施設がどうなるかというのは、平成十四年の課長通知によりまして、当該設備を設置した部分が、農作物の栽培に通常必要不可欠なものであり、独立して他用途への利用又は取引の対象になると認められるものでなければ、当該部分も含め、土地全体を農地として取り扱って差し支えないという運用をしております。今回この運用を変える予定はございませんで、底地の全面コンクリート張りしたものの附帯設備についても、この平成十四年の課長通知に従って判断したいというふうに考えております。

 具体的な事例としては、このハウスを動かすのに必要な重油タンクなどが、この基準に従いまして、全体として農地に取り扱われているというふうに思っております。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 本法案により、全面コンクリート張りの農業用ハウスを引き続き農地とみなした場合で、その後、農作物の栽培が行われていないことがわかった場合にはどのように改善を促していくのでしょうか。お答えください。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 まず、今回の法律案で条文を新設いたしまして、十分に栽培が行われていない場合には指導、勧告ができることとしております。それを超えて、さらに、栽培がもう行われなくなってしまった場合につきましては、通常の農地と同じ扱いでございますので、農地法上のさまざまな規制措置が、監督措置が適用されます。

 具体的には、経営困難になった場合には、農業委員会による、ほかに経営を行う人がいないかどうかのあっせん、それから、知事による原状回復命令、それから、命令に従わない場合等におきまして、知事による原状回復に関係する代執行、それから、法人の場合には、国による買収等の対象となります。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 生産性の向上を図るために、過去に農地転用した上で全面コンクリート張りした農業用ハウスについては、本法案でこれから対象にしようとするハウスと見た目も同じ施設と思われますが、既に転用してしまった施設に関してはどのように対応するのでしょうか。お答えください。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 既に農地を転用して全面コンクリート張りとした施設は、今回の法律案の対象にはしておりません。

 これにつきましては、一旦農地転用したことによって資産価値が上がっているわけでございますので、もう一回農地法の対象にすれば資産価値が下がる、これがどういう影響を与えるのか、それから、新しい都市計画上のいろいろな線引きとの整合性、こういうものをよく見ながら、既存施設の実態、それから農地にすることへのニーズ等を調査いたしまして、農地法上の農地として取り扱う場合の課題について検討した上で、方向性について一定の結論を得たいというふうに考えてございます。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 現場のニーズに合った取組をしていただきたいと思います。

 私は、基本的にはこの法案に関しては賛成の立場ですけれども、少し懸念もございます。

 三月二十八日の委員会で、幼児期からの農業体験の必要性について質問をさせていただき、大臣にお答えをいただきました。今後、担い手不足や高齢化など、農家のニーズに応え、コンクリート張り、ロボットの導入なども進んでくると思います。

 担い手不足の解消のため、生産性向上や効率化という面ではよいと思いますけれども、ロボットの導入などが進んできたときに、将来、野菜が土の中、また土の上で育つことを知らない子供たちが出てきてしまうことのないように、そしてまた、子供たちが食べ物への感謝、農家の方々への感謝の気持ちを持てる教育を改めてお願いをして、少し時間がありますが、私の質疑を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

伊東委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

伊東委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 私は、日本共産党を代表して、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案に反対の立場から討論します。

 反対するのは、本法案が、農地をコンクリートで地固めした場合も農地法上の農地として認めるものだからです。これは、異業種の企業参入が相次ぐ野菜工場を農地として認め、固定資産税を軽減することにその狙いがあります。企業、財界からの要望を受けた規制改革推進会議がまとめた意見書をそのまま法案化したものです。

 地域に根を張って土地を耕す農家と異なり、企業の野菜工場は事業が失敗すれば撤退します。近年、多くの農外企業が植物工場に参入していますが、黒字化するのは難しく、撤退が相次いでいます。コンクリートで地固めした農地を耕作地に戻すには、撤去をした上、土壌整備が必要で、跡地は廃墟と化すケースもあります。

 質疑を通じて明らかになったように、農地法では、農地は「農業生産の基盤」であり、「地域における貴重な資源」と位置づけられています。農地は、国民に食料を提供するのみならず、水源を涵養し、国土と地域社会、文化を守る多面的機能を有するものです。だからこそ農地は保護されるものであり、植物工場にこうした機能は果たせません。

 現行でも、いつでも農地を耕作できる状態で保ったままで、棚やシートの上で農作物を栽培している土地は農地法上の農地であるとされており、農地の一部をコンクリートで固めても、いつでも耕作できる範囲内であれば、農地として認められているのです。現行の取扱いを柔軟に調整するならともかく、法改正して農地の概念を変えてまで固定資産税を軽減すべきではありません。

 以上、指摘し、討論を終わります。

伊東委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

伊東委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伊東委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

伊東委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、鈴木憲和君外五名から、自由民主党、立憲民主党・市民クラブ、希望の党・無所属クラブ、公明党、無所属の会及び日本維新の会の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。亀井亜紀子君。

亀井委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文を朗読して趣旨の説明にかえさせていただきます。

    農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  農業生産の基盤である農地は、国民のための限られた資源であり、かつ、地域における貴重な資源であることを踏まえ、農地の利用の効率化及び高度化の促進が図られるよう、政府は、本法の施行に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。

      記

 一 相続未登記農地の発生を防ぐため、相続等による権利取得に際しての農地法第三条の三の届出義務の周知を図るとともに、相続登記の重要性について啓発を図ること。また、相続未登記農地問題の抜本的解決に向けて、登記制度及び土地所有の在り方、行政機関相互での土地所有者に関する情報の共有の仕組み等について早期に検討を進め、必要な措置を講じること。

 二 農作物栽培高度化施設に係る農林水産省令を定めるに当たっては、周辺の農地に係る営農条件に支障を及ぼさないよう当該施設の規模等について必要な基準を定めるとともに、農地の面的集積や農業の有する多面的機能の発揮への影響について考慮すること。また、現場における運用に当たり、混乱が生じないよう、基準は具体的に定めること。加えて、施設の周囲や複数の施設を一体として扱うことによって広範囲をコンクリート等で覆うことを許容するなど、法改正の趣旨を逸脱する運用が行われることがないようにすること。

 三 底面をコンクリート等で覆った農作物栽培高度化施設の適正な利用を確保するため、農業委員会による利用状況調査、勧告等が適時に行われるようにすること。また、適切な利用が行われていない場合には、速やかに必要な是正措置が講じられるようにすること。

 四 農業委員会が、共有者不明農用地等に係る不確知共有者の探索や農作物栽培高度化施設に係る業務を円滑に実施することができるよう、必要な支援及び体制整備を図ること。

  右決議する。

以上です。

 何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。

伊東委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伊東委員長 起立多数。よって、本法律案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣齋藤健君。

齋藤国務大臣 ただいまは法案を可決いただき、ありがとうございました。附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

伊東委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

伊東委員長 次回は、明五日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十九分散会


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