第13号 平成30年5月10日(木曜日)
平成三十年五月十日(木曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 伊東 良孝君
理事 伊藤信太郎君 理事 小島 敏文君
理事 坂本 哲志君 理事 鈴木 憲和君
理事 福山 守君 理事 佐々木隆博君
理事 緑川 貴士君 理事 佐藤 英道君
池田 道孝君 泉田 裕彦君
上杉謙太郎君 上野 宏史君
加藤 寛治君 勝俣 孝明君
金子 俊平君 神田 憲次君
木村 次郎君 高村 正大君
佐藤 明男君 斎藤 洋明君
杉田 水脈君 高木 啓君
西田 昭二君 野中 厚君
百武 公親君 藤井比早之君
藤原 崇君 古川 康君
古田 圭一君 細田 健一君
本田 太郎君 三谷 英弘君
宮路 拓馬君 山本 拓君
石川 香織君 大河原雅子君
神谷 裕君 亀井亜紀子君
初鹿 明博君 青山 大人君
後藤 祐一君 関 健一郎君
江田 康幸君 大串 博志君
金子 恵美君 田村 貴昭君
串田 誠一君
…………………………………
農林水産大臣 齋藤 健君
内閣府副大臣 あかま二郎君
内閣府副大臣 越智 隆雄君
総務副大臣 奥野 信亮君
法務副大臣 葉梨 康弘君
農林水産副大臣 礒崎 陽輔君
内閣府大臣政務官 山下 雄平君
農林水産大臣政務官 野中 厚君
政府参考人
(内閣官房TPP等政府対策本部政策調整統括官) 澁谷 和久君
政府参考人
(内閣府大臣官房審議官) 伊丹 潔君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官) 宇都宮 啓君
政府参考人
(農林水産省大臣官房長) 水田 正和君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 天羽 隆君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 横山 紳君
政府参考人
(農林水産省大臣官房危機管理・政策立案総括審議官) 塩川 白良君
政府参考人
(農林水産省食料産業局長) 井上 宏司君
政府参考人
(農林水産省生産局長) 枝元 真徹君
政府参考人
(農林水産省経営局長) 大澤 誠君
政府参考人
(農林水産省農村振興局長) 荒川 隆君
政府参考人
(農林水産省政策統括官) 柄澤 彰君
政府参考人
(林野庁長官) 沖 修司君
政府参考人
(水産庁長官) 長谷 成人君
政府参考人
(環境省大臣官房政策立案総括審議官) 米谷 仁君
政府参考人
(環境省大臣官房審議官) 江口 博行君
農林水産委員会専門員 室井 純子君
―――――――――――――
委員の異動
五月十日
辞任 補欠選任
稲田 朋美君 古田 圭一君
金子 俊平君 百武 公親君
岸 信夫君 本田 太郎君
小寺 裕雄君 高木 啓君
藤井比早之君 三谷 英弘君
大河原雅子君 初鹿 明博君
森 夏枝君 串田 誠一君
同日
辞任 補欠選任
高木 啓君 小寺 裕雄君
百武 公親君 佐藤 明男君
古田 圭一君 杉田 水脈君
本田 太郎君 上野 宏史君
三谷 英弘君 勝俣 孝明君
初鹿 明博君 大河原雅子君
串田 誠一君 森 夏枝君
同日
辞任 補欠選任
上野 宏史君 岸 信夫君
勝俣 孝明君 藤井比早之君
佐藤 明男君 高村 正大君
杉田 水脈君 稲田 朋美君
同日
辞任 補欠選任
高村 正大君 金子 俊平君
―――――――――――――
五月十日
卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇号)
は本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
土地改良法の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)
農林水産関係の基本施策に関する件
――――◇―――――
○伊東委員長 これより会議を開きます。
農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房長水田正和君、大臣官房総括審議官天羽隆君、大臣官房総括審議官横山紳君、大臣官房危機管理・政策立案総括審議官塩川白良君、食料産業局長井上宏司君、生産局長枝元真徹君、経営局長大澤誠君、農村振興局長荒川隆君、政策統括官柄澤彰君、林野庁長官沖修司君、水産庁長官長谷成人君、内閣官房TPP等政府対策本部政策調整統括官澁谷和久君、内閣府大臣官房審議官伊丹潔君、厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官宇都宮啓君、環境省大臣官房政策立案総括審議官米谷仁君及び大臣官房審議官江口博行君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○伊東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○伊東委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。宮路拓馬君。
○宮路委員 おはようございます。そして、温かい拍手、ありがとうございます。自由民主党の宮路拓馬でございます。
本日は、霧島連山・硫黄山における噴火災害、それに伴う農林水産業への影響及びその対策について主に質問をさせていただきたいと思っております。
まず、冒頭、硫黄山の噴火が起きたわけであります。二百五十年ぶり、四月十九日から始まりまして、ゴールデンウイークを挟んで、いまだに活動が継続しているという状況でありますが、噴火の農業への影響についてどうなっているのか、まず現状をお伺いしたいと思います。
○塩川政府参考人 お答え申し上げます。
硫黄山では先月十九日に噴火が発生いたしまして、宮崎県及び国交省の川内川河川事務所では、長江川及び川内川の水質検査において砒素などの項目で環境基準を超過したことを公表しております。
また、宮崎県えびの市では、赤子川、長江川及び長江川合流地点より下流の川内川を水源とする河川から取水を行わない方針であること、鹿児島県の伊佐市及び湧水町では、川内川から取水をしないこと、それから同河川から取水する水田において水稲作付を行わないという方針であることをお聞きしておるところでございます。
農林水産省としては、今後も、噴火及び関係自治体の動向を注視しながら、農業者の皆様が営農を継続するために、どのような対応が可能か早急に検討してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
○宮路委員 ただいま御答弁いただきましたとおり、砒素、カドミウム等の重金属が河川をある意味汚染しているというような状況でございます。
委員の皆様方にもお配りさせていただきました資料でございますが、資料一の方をごらんいただければ、白濁した温泉のような状況に河川がなっているということであります。最近の状況ではやや落ちつきを見せてきているとは聞いておりますが、依然として活動自体は続いており、今後とも、しっかりとした調査、分析をお願いしたいというふうに思っております。
そして、今御答弁いただいたとおり、それが農業にも重大な影響を及ぼしているという状況にございます。噴火の影響によって、水稲の作付が困難になっている。
特に、鹿児島は、皆さん、なかなか米はとれないんじゃないか、芋あるいは野菜、果樹が中心なんじゃないかというイメージをお持ちかもしれませんが、今回、この噴火の影響が出ている伊佐市あるいは湧水町、もちろん宮崎県も含まれるわけでありますが、特に伊佐米あるいは湧水米というのは県内でも大変なブランド米でありまして、鹿児島県の中では寒暖の差もある地域であるがゆえに、大変おいしいお米がとれる。今、頑張って米作農家の皆さん方はブランド化を図ってきたところであります。その地域において、今回大きな影響が出ているということであります。
生産者にとっては、これまでブランドを築き上げてきた方々にとっては、作付ができない、農作業ができないというのが一番大きな痛手であるわけでありまして、しかし、これは天災であり、やむを得ないという中において、別の作物、つまり代替作物を導入せざるを得ない状況になっているということであります。
この問題に対して、農林水産省として、今後どのように対応していく方針であるのか、お伺いしたいと思います。
○齋藤国務大臣 農林水産省としましては、水稲の作付が困難な地域においては、大豆や飼料作物といった他の品目への転換を進めることによりまして、農業者の営農を継続していくことが重要であるというふうに考えています。
その際、例えば、大豆や飼料作物の作付を行った方に対しましては、水田活用の直接支払交付金が支払われることになります。また、大豆の作付を行った場合、認定農業者、集落営農及び認定新規就農者であれば、畑作物の直接支払交付金、これはゲタ対策による面積払い及び数量払いが支払われることになります。
このほか、今後、宮崎県、鹿児島県、関係市町等とも連携しながら、農業者の皆さんが営農を継続するために、どのような対応が可能か早急に検討してまいりたいと考えています。
おとといも、鹿児島県知事、宮崎県知事、大臣室にお越しいただきました。それから、きょうも、えびの、伊佐、湧水の首長さんたちが大臣室にお越しになりますので、よくお話を伺いながら、対策をきちっと講じていきたいと考えています。
○宮路委員 宮崎、鹿児島両県において、一千町歩を超える面積において作付を断念せざるを得ないというような情報も聞いているところであります。代替作物への転換においては、今、大臣の方から直接支払交付金のお話がございました。ぜひその財源をしっかり確保して十分な対応をお願いしたいと思います。
代替作物、言うはやすし、行うはかたしであります。特に、そうした稲作以外の作物の生産になれていない農家の皆さん方でありますので、その点については、機械のリースをしっかり行っていただけるように、あるいはまた、その農作業になれていないわけですので、委託がしっかりできるように、これについては、熊本地震の際に当時森山農林水産大臣がしっかりとした対応を行い、代替作物への転換をしっかり行えるようにしたという実績もありますので、そうした経験も踏まえて、農水省として十分な対応をとっていただきたいというふうに思っております。
とはいえ、代替作物への転換ができればいいんですが、畑作に向かない農場もあるわけでありまして、その場合にはやはり補償というものが問題になってまいります。
今回の噴火の影響により、水稲の作付準備をしていた圃場について、代替作物への転換もできない、そういった湿田の場合ですが、移植期前に水稲の作付を断念した場合でも共済金の対象になるのか。これは農家の皆さん方は大変不安に思っているところであります。その点について、農水省の考えをお聞きしたいと思います。
○大澤政府参考人 お答えいたします。
水稲の作付の準備をしていたものの、水稲共済の責任期間である移植期におきまして、噴火に伴う河川水の汚染被害が継続し、作付できなくなった場合には、共済金の支払い対象となります。
この場合、共済金は、経営コストを勘案して通常の半分を支払う仕組みとなっております。多くの方が加入している一筆方式七割補償の場合には、したがいまして、耕地ごとの平均収量の三・五割に相当する共済金が支払われることとなります。
このことについては、現在、農業者向けのチラシを作成している、準備中でございまして、農業共済団体を通じて、今週中を目途に農業者に周知してまいりたいというふうに考えてございます。
○宮路委員 農家の皆さん、生産者の皆さんの不安に十分に応え得るように努めていただきたいというふうに思っております。
今回の噴火、先ほど申し上げているとおり、いまだ継続している状況であります。願わくば、早急に終息をして、今回は作付を断念した皆さんについても、来年は改めて水稲の作付をして、そしてまたすばらしい米をつくっていただきたい、ブランドを守り続けていただきたいというふうに思っておりますが、こればかりは自然災害ですので、神のみぞ知る、そういった状況かと思っております。
そうした場合、来年以降も場合によっては継続して水稲に影響が出てしまうというおそれもあります。先ほど申し上げたとおり、地域によっては代替作物への転換が難しい湿田等もあります。そうしたところにおいて、今後、こうしたことが起こった場合にも対応できるように、暗渠排水等の基盤整備の取組が必要になってくるというふうに考えております。
先日の宮崎県、鹿児島県両県の知事の要望にも恐らくそうした要望も含まれていたとは思いますが、基盤整備に対して、農林水産省の基本的な考え方をお聞きしたいと思います。
○荒川政府参考人 お答え申し上げます。
今先生からお話ございました、水田の畑地利用に必要な暗渠排水などの基盤整備につきましては、農業競争力強化基盤整備事業、それから農地耕作条件改善事業、農業水路等長寿命化・防災減災事業などで支援をさせていただくことが可能となっております。
特に、後で申し上げました二つの事業、農地耕作条件改善事業と農業水路等長寿命化防災事業につきましては、受益面積の多寡によらず、受益者の方が二人以上お集まりいただければ実施可能であるというようなことですとか、事業実施年度に複数回の採択、予算配分を行っておるところでございますので、今年度も、これからでも補助事業の採択申請が可能であるといったようなことでございますので、現地の皆様方に対しまして、機動的な活用が行えるものと考えておるところでございます。
宮崎県、鹿児島県、関係市町の皆様方とよく連携をしながら、地域の御要望に丁寧に対応してまいりたいと考えております。
○宮路委員 熊本地震の際は、農場が地震の影響で水が張れないような状況になって、その上で代替作物への転換等も図られ、結果、飼料用作物あるいは大豆と水稲のブロックローテーションのようなことができるようになった結果、生産者の実質所得維持、あるいは向上した農家もあったというふうに聞いております。災い転じて福となすではありませんが、今回の災害を機に、よりその地域、えびの市あるいは伊佐市、湧水町の農業が強化されるように、農水省としても支援をいただければというふうに思っております。
これまで農業への影響についてお伺いをしておりましたが、お配りさせていただいた資料の二枚目をごらんいただきますと、漁業にも影響が出ている状況にあるというふうに聞いております。
こうした写真を見ると衝撃が走るわけでありますが、地元の関係者からは、魚が大量に死んで大変だという話も、つい先日私の方にも電話がかかってまいりました。
漁業についてどのような影響が今出ていて、そして今後どのように対応していく方針なのか、お伺いをしたいと思います。
○長谷政府参考人 配付していただいた写真にもあるとおりなわけでございますけれども、宮崎県及び鹿児島県によりますと、四月二十三日以降の数日間、宮崎県えびの市内の長江川において大量のコイなどの死亡が確認され、さらに、同河川が合流する鹿児島県内の川内川においても死亡したコイなどが発見されましたけれども、その後は大量死亡の報告はなく、内水面漁業への具体的な影響は現在のところは不明とのことでございます。
なお、宮崎県は、四月二十八日及び五月二日に、長江川及び川内川の水質検査の結果として砒素など六項目が環境基準を超過したことを公表するとともに、赤子川、長江川及び川内川並びにこれを源流とする水域の水を魚類養殖等に使用しないよう関係者に注意喚起したところでございます。
現在、宮崎県及び鹿児島県は、六月から始まるアユ漁などへの影響や今後の対応について、関係漁協と相談しているという状況でございます。
農林水産省としても、引き続き被害状況の把握に努めるとともに、必要な対応について両県と緊密に相談してまいりたいというふうに思っております。
○宮路委員 ただいま御答弁いただきましたとおり、六月からはアユの時期に入ります。川内川、大変、災害もこれまで発生してきましたが、地域に恵みをもたらす母なる川であります。その川において、漁業、これまで内水面漁業にかかわる方々が営々と築かれてきたものでもあります。
先ほど申し上げたとおり、生産者の皆さん方が築いてこられたブランド米、あるいは漁業、そうしたものが今回の災害で大変大きく傷つくのではないかということが懸念されております。
特に、やはり砒素等と聞くと風評被害が大変懸念されるところでありますので、しっかりとした調査を継続していただき、消費者の皆さん方に、伊佐米は、湧水米は、あるいは川内川のアユは、魚類は大丈夫なんだということをしっかりと伝えていただくこともまたこれは大事なことだと思っておりますので、農林水産省、ひいては政府を挙げて対応にしっかりと取り組んでいただきたいというふうに考えております。
続きまして、ちょっと話題はかわりますが、御案内のとおり、先日も、元赤坂の迎賓館におきまして日中韓の首脳会談が開催されたところであります。
これまでの質問と打って変わって、これはうれしいニュースでありましたが、けさの報道によりますと、どうも中国との間で、食品規制に関して、あるいは輸出規制に関して大きな進展があった、あるいは今後ありそうだという報道がございました。
中国向けに精米を輸出できる精米工場等の追加、薫蒸施設も含まれますが、そしてまた、中国による放射性物質に係る農林水産物等の輸入規制に関する協議の場の設置がなされたというような報道でございました。
これが事実とすれば、本当に、日本の輸出一兆円を目指す中で、大変大きな弾みがつく話だと考えておりますが、大臣としてどのように考えているのか、お伺いをしたいと思います。
○齋藤国務大臣 昨日の日中首脳会談の機会に、中国向け日本産精米を輸出できる精米工場及び薫蒸倉庫の追加、それから、日本産農産物、食品の中国向け輸出に係る放射性物質問題対応のための共同専門家グループの設立、この両件につきまして中国側と合意に至りまして、私と程永華駐日特命全権中国大使との間で二つの覚書に署名をしたところであります。
まず、精米輸出につきましては、精米工場二施設及び薫蒸倉庫五施設の追加などが合意をされ、その結果、既存施設を含めますと、精米工場で三施設及び薫蒸倉庫で七施設を使用して輸出が可能となります。これによりまして、中国向けの輸出ルートや流通ルートの複線化が進みますので、中国国内の需要により柔軟に対応できるようになる、このことは大変喜ばしいことと考えています。
今後とも、輸出量の拡大に向けて、昨年九月に立ち上げたコメ海外市場拡大戦略プロジェクトの取組をしっかり進めてまいりたいと考えています。
また、もう一つの日本産食品等に対する放射性物質に係る輸入規制につきましては、共同専門家グループを立ち上げて、当該輸入規制の撤廃、緩和という重要な課題の解決に向けた具体的な議論がスタートする、このようになりました。
今回の合意を追い風といたしまして、日本産精米の中国向け輸出の拡大や日本産食品等に対する輸入規制の撤廃、緩和に向けて全力で取り組んでまいりたいと考えています。
○宮路委員 特に福島の生産者の皆さんにとっては、非常に勇気づけられるニュースだと思っております。いまだ全ての産品について、実質的に輸出が中国にかなわないような状況がある中で、やはり大市場中国に輸出の糸口ができた、あるいは先行きが明るくなってきたというのは、本当に勇気づけられることだと思っております。
ぜひ、特に大臣は、先ほど御紹介いただいた米の海外市場拡大のプロジェクト、これもまさに齋藤プロジェクトだというふうに私も理解しております。今回の件を契機に、更に飛躍的に中国の市場が開放され、それが国内の生産者にとって希望となるような道筋をつけていただきたい。それを最後に要望いたしまして、私の質問とさせていただきます。
ありがとうございました。
○伊東委員長 次に、佐藤英道君。
○佐藤(英)委員 おはようございます。公明党の佐藤英道でございます。
初めに、農作物、畜産物と物流輸送についてお伺いをさせていただきたいと思います。
私の地元北海道は、全国の食を支える農畜の一大生産地でもございます。実際、北海道で生産される農作物、畜産物全体の七割が、本州はもとより全国各地、九州にまでも輸送をされているところでございます。その量は、実に一日当たり約一万トンでございます。
北海道が食料基地として全国の食、命ともいうべきでありますけれども、命をつないでいるとすれば、物流網は命綱であるとも私は思っております。この命綱が切れてしまうと、本州以南については北海道からの食料が途切れることになりますが、北海道にとっても消費地そのものを失い、生産することができなくなってしまうわけであります。
北海道は、四方を海に囲まれて、本州と陸続きとなっていないために、農畜産物は主に海上輸送、鉄道の輸送を利用することになっているわけであります。そうした中、北海道は、鉄道の維持が大変困難な状況にあり、鉄道輸送が危機的な状況にあります。
鉄道輸送のメリットは、まず、五トン単位でも小口輸送が可能であること、また、全国の貨物駅が利用できるため、トラック輸送のコストと労力が大幅に軽減できる点、さらに、全国の鉄道網を活用して九州など遠隔地への物流コストの低減も実現できるのではないかと思います。
先日、JA北海道グループの皆さんが、農畜産物の鉄道貨物輸送力の確保を求めまして、石井国土交通大臣に面会をいたしました。私も同席させていただきましたが、農業にとっての物流の重要性について改めて深く実感をいたしたところでございます。
現在進められている日本産品の競争力の向上については、生産と同じく物流においても、いかに効率的なコストを実現するかは重要な観点であると思っております。この農作物と物流輸送という問題について、大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。
○齋藤国務大臣 現在、人手不足などの理由でトラック輸送コストが上昇している中で、農産物の安定的な輸送を確保するためには、鉄道や船舶への切りかえも含めた物流の効率化に積極的に取り組むことが必要な現状であろうと考えています。特に、北海道のように広大な生産地の農産物を遠く、遠くは九州まで効率的に輸送するためには、鉄道輸送の役割は非常に大きいものがあると考えています。
農林水産省におきましては、国土交通省、経済産業省のほか、全農、全日本トラック協会、日本物流団体連合会等と協力をしまして、鉄道や船舶での輸送を含めて効率的な物流対策の検討、実施に取り組んでおりまして、今後とも、国土交通省等と十分に連携をいたしまして、遠隔地への効率的な物流の実現に取り組んでまいりたいと考えています。
○佐藤(英)委員 ぜひ、御答弁のとおり、農林水産省としても推進のほどよろしくお願いをしたいと思います。
次に、先ほど宮路委員もテーマとされました、昨日の日中韓三カ国の首脳会談についてお伺いをさせていただきたいと思います。
確かに、この隣り合う三カ国は、歴史的にも地理的にも、また文化的にも深い結びつきを持っております。互いに協力し合い、北東アジアの安全保障を安定させ、世界の成長と安定に寄与していかなければならない存在であるとも考えます。
この首脳会談は、開催前から、その中身についてはさまざまな期待と話題を提供してきたわけでありますけれども、北朝鮮の非核化問題は無論として、それと並んで、三カ国が未来に向けてどのような経済協力を構築していけるのか、また、それを示す何らかの新たな構想が提示されるかという点などについても、連日報道されてきたところであります。
今後、三カ国の緊密な連携の重要性はますます増していくものと考えられますが、忘れてはならない課題があるのも事実であります。以前にも質問させていただいた、日本産の農林水産物に対する不当な輸入規制の問題であります。
この点について、今回、我が国から中国や韓国に対して新たなアプローチはされたのか、あるいは、中国や韓国側から何らかの発言があったのか、また、今後のアプローチについて伺いたいと思います。
さらに、三カ国による日中韓自由貿易協定、いわゆるFTA、並びに東アジア地域包括的経済連携、RCEPについて交渉加速化が確認されたとも承知をしているところでありますけれども、農林水産大臣としては、今回のこうした動きについてどのように受けとめられているのか、お聞かせいただければと思います。
○齋藤国務大臣 日本産農林水産物に対する輸入規制につきましては、日中韓三カ国の首脳間でどんな具体的なやりとりがなされたかということにつきましては私から申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、ただ、中国に関しましては、昨日、私と程永華駐日特命全権中国大使との間で、中国による放射性物質に係る日本産食品の輸入規制の問題についての共同専門家グループを立ち上げる、そういう覚書を交わしたところであります。
これによりまして問題解決に向けた具体的な議論がスタートすることになりますが、日本産食品等に対する輸入規制の撤廃、緩和は重要な課題であると考えておりますので、その解決に向けて全力で取り組んでまいりたいと考えております。
また、昨日行われた第七回日中韓サミットにおきましては、御指摘の日中韓FTAの交渉加速化に向けて連携をしていくということで一致をしたところであります。
日中韓のFTA交渉につきましては、農林水産省としては、農林水産品について、貿易実態等を勘案しつつ、そのセンシティビティーに十分配慮しながら、しっかりと交渉に取り組んでいく、その方針でございます。
○佐藤(英)委員 着実に前進をされているということを伺いました。ぜひ今後ともよろしくお願いしたいと思います。
次に、治山事業について幾つかお伺いをさせていただきたいと思います。
御承知のように、昨年七月の九州北部豪雨は、豪雨による被害もさることながら、上流で大量に発生した流木が被害を更に拡大いたしました。福岡県だけで少なくとも二十万トン、五十メートルプールで百四十四杯分に相当する量だとも推定をされると聞いております。
突然家屋の中に大きな流木が突き刺さってきたという被害者の方のお話も耳にしましたけれども、こうした流木による直接の被害に加えまして、流木が河川の氾濫を増幅させたとも言われております。
JRの鉄橋で、流木が橋脚に大量にひっかかった状態で、ただでさえ豪雨でふえている河川の水をダムのように大量にため込み、そのために、河川の氾濫は想定を大きく上回り、想定外の上流箇所での破堤、溢水や、それに伴う浸水が発生したと分析をされているところであります。最後には、この流木でできたダムのために、鉄橋も流失されたと承知をしているところであります。
水が引いた後の地域は、田畑や民家が消え去り、大量の流木が残され、復旧の足かせとなったとも聞いております。
ことしはもう既に奄美地方で梅雨入り宣言がされましたが、今後、国内全域で降雨量が増加する時期に入ってまいります。
一昨年では、北海道でも台風被害で大きな被害がございました。
こうした災害の甚大化を引き起こした流木への対策について、農林水産省の対応状況はどのようになっているのか、まずお伺いしたいと思います。
○礒崎副大臣 お答え申し上げます。
林野庁では、平成二十八年の北海道による台風十号による豪雨や、昨年の九州北部豪雨による流木災害等の発生を受けまして、全国の山地災害が発生するおそれのある森林を対象に緊急点検を実施し、その結果、緊急的、集中的に流木対策が必要な箇所として約千二百地区を抽出したところでございます。
今後、おおむね三カ年をかけて、流木捕捉式治山ダムなどの治山施設の設置、樹木の根や下草の発達を促す間伐等の森林整備等の対策を計画的に実施することとしており、平成二十九年度の補正予算及び平成三十年度の当初予算におきまして、既に千二百地区のうち約六割において着手を見込んでおるところでございます。
今後とも、こうした対策の着実な実施に努め、地域の安全、安心の確保に努めてまいりたいと思います。
○佐藤(英)委員 近年、温暖化による気候変動の影響で、我が国において一時間に八十ミリ以上の降水量を観測する回数も年々増加していると聞いております。また、地震や噴火も活発化しておりまして、国土の七割を森林で占める我が国においては、山地災害の激甚化と頻発化のリスクが高まっております。
山を育て、山を守ることで可能となる土砂災害の防止や土壌保全機能、水源涵養機能の向上がますます重要となってくるものと思います。
しかし、治山事業にかかわる予算は十年前と比べて約六割程度に縮減されておりまして、昨今増大している山地災害への応急的防災措置と発災後の復旧に係る経費で大半を使っている状況であるのも事実であると思います。このまま災害復旧などの対策事業で多くの予算が消費されているのでは、事前防災などの予防的措置には十分に予算が回らないのではないかという不安も感じているところであります。
国民の生命、身体、財産を守るために、減災や事前防災に要する予算の拡充が必要であると考えますが、御見解を伺いたいと思います。
○沖政府参考人 お答えいたします。
近年、集中豪雨や地震等による大規模な山腹崩壊など激甚な山地災害が頻発しており、林野庁としては、平成三十年度においても治山事業五百九十七億円を確保し、土砂の崩壊、流出や流木の発生を抑えるための治山施設の整備や、樹木の根や下草の発達を促す間伐等の森林整備等を計画的に実施しているところでございます。
今後とも、地域の安全、安心を確保する観点から、事前防災、減災に資する国土強靱化に向けて効果的、効率的な治山事業を推進するため、必要な予算の確保に努めてまいる所存でございます。
○佐藤(英)委員 ぜひ、災害の拡大、また人命を守るためにも、しっかりとした予算の確保をお願いしたいと思います。
最後に、農泊について伺ってまいりたいと思います。
来日観光客は、ことし三月まで約七百六十二万人となり、昨年比で一六・五%増、二〇一五年と比べると、この三年だけでも約八五%も増加しております。こうした訪日客の多くが、次に訪日する際は農山漁村体験や四季の体験をしてみたいと考えているとの調査結果も出ております。
これからの観光に農泊が果たす役割は大きいと考えますが、農泊は、外国人だけではなく、都会に暮らす日本人にとっても魅力的な要素が多くあり、観光産業を担う一翼として、今後十分に成り立っていく可能性が高いとも考えます。
政府は、今年度、前年度比で二〇%の予算の積み増しを行い、六十億を計上して、ソフト、ハード両面での支援を進められております。
二〇二〇年度までに農泊に取り組む地域を全国で五百地域に拡大していくとの目標を掲げているとのことでありますけれども、三月二十三日には農山漁村振興交付金の農泊推進対策の申込みが締め切られ、応募状況もまずまずだと聞いているところであります。
今後我が国が観光立国として確立していくために、農泊の成否は極めて重要ではないかと考えますけれども、この成功の鍵となるポイントについてどのように捉えていらっしゃるのか、まずお伺いをさせていただきたいと思います。
○野中大臣政務官 農泊については、国内外の観光客を農山漁村に呼び込み、日本ならではの伝統的な生活体験、また農村地域の人々との交流を楽しんでいただくことを通じ、農山漁村の所得向上と振興を図ることを目的として推進をしております。
このため、観光客のニーズに応じた魅力ある観光コンテンツの創出、農林水産業者を始め旅行業者、宿泊業者など地域の関係者が一丸となった取組等により、農泊を持続可能な産業とすることがポイントであります。
このようなことから、農林水産省といたしましては、平成二十九年度から農山漁村振興交付金に農泊推進対策を創設し、古民家を活用した宿泊施設の整備、地域の食材等を活用したメニューづくりなど観光コンテンツの磨き上げ、農泊に関係する地域の団体の役割分担や合意形成、運営組織の法人化等の体制整備等の支援を行っているところであります。
先ほど先生がおっしゃられました、平成三十二年に向けての五百地域の創出ということでありますが、現在の農泊推進対策の実施状況、昨年度は二百六地域でありまして、先生の御地元は十四地域、北海道は十四地域ということになっております。
今後とも、農泊推進対策により、意欲のある地域を支援することを通じ、我が国の観光立国の推進に資するように努めてまいりたいと存じます。
○佐藤(英)委員 今御答弁がございましたとおり、本当にこの農泊はやはり地方創生にもつながる一大事業でございますので、引き続き推進のほどをお願いしたいと思います。
また、今後やはりこの農泊が、公的支援に頼るのではなく、自立した産業として各地域でいかに発展し、定着させていくことができるかという観点が大変に重要なポイントでもあると思います。次のステップとして、農泊が産業として自立するために、地域が感じている課題をいかに解決していくかということも重要となるわけでありますけれども、農泊に取り組む団体の調査結果を見ると、多くの団体が人材の確保が課題と考えているようでございます。
各地で成功している地方創生の事例を見ても、取組の中核を担う人材の質が最も重要なファクターであることは明らかでありますけれども、農泊を担う人材について、どのような人材が必要であると考えるのか、またその人材の育成についてはどのような取組を進めようとしているのか、お聞かせいただければと思います。
○荒川政府参考人 お答え申し上げます。
農泊を持続可能な産業としていくためには、観光客のニーズをきちんと把握していただくというマーケティングですとか、それから、実際の農泊事業を運営いたします経営ノウハウを持った人材というものが不可欠であると考えておるところでございます。
このため、農林省といたしましては、農泊推進対策によりまして、農泊の取組地域が必要とする多様な人材を確保するために支援をいたしておるとともに、農泊に取り組んでいる地域の皆様に対しまして、農泊先進地域のノウハウを伝えるセミナーですとかシンポジウム、こういったことを開催することで、人材の育成、確保に努めておるところでございます。
さらに、特に農泊地域だけではなかなか確保しがたい料理人の方などいろいろな専門的な人材につきましては、料理人と農泊地域のマッチングを支援することなども通じまして、必要な人材の育成、確保に努めてまいりたいと考えております。
○佐藤(英)委員 よろしくお願いをしたいと思います。
以上で終わります。ありがとうございました。
○伊東委員長 次に、初鹿明博君。
○初鹿委員 おはようございます。立憲民主党の初鹿明博です。
農水委員会で初めて質問をさせていただきます。機会をいただきまして、ありがとうございました。
私は今、超党派の議員連盟の公共事業チェック議員の会の事務局長をさせていただいております。きょうは、その関係で、諫早湾の干拓事業のことについて質問をさせていただきます。
今、皆さんのお手元に資料をお配りさせていただいているんですが、御存じのとおり、非常にこの干拓事業をめぐっては混乱をしておりまして、主に漁業者の方々は、堤防を閉じてしまったことによって水質が悪化をし、漁業に甚大な被害を受けたということで開門を求めている。その一方で、農業者の方は、いや、農業のために堤防を閉じておいてくれ、そういう主張があって、膠着状態が続いてきているということであります。
しかしながら、二〇一〇年に福岡高裁が開門を命じる判決を出して、それを国は上告をせずに、確定判決としてこの開門判決が決まっておりまして、残念ながらそれに国は従っていないということで、毎日、漁業者に九十万円の義務違反の制裁金、間接強制金を支払っているという状況であります。
それに対して、去年の四月二十五日、皆さんのお手元にある資料の二枚目ですけれども、農水大臣が談話を出して、開門はしないで、基金をつくって再生事業を行う、それで和解を進めるんだという、今までと大きく方針を転換するというか、方針を明確にするような談話を出して、福岡高裁も、事もあろうか、自分で開門しろという判決を出していたところが、開門をしないで基金での和解をということを勧告した、そういう事態になっているということであります。
そこで、まず、きょうは葉梨副大臣にも来ていただいておりますが、こういう、国が訴えられて、国が負けて、何らかの義務を負っている、いろいろな補償をするとか、また、何か国の方で対策をしなきゃいけないという義務を負っているような判決が出たのに、それに従わない、従わなかった、そういう例は今まであるんでしょうか。
○葉梨副大臣 お答えいたします。
非常に、諫早の件、複雑な事案であるということは御指摘のとおりだと思います。ただ、今委員御指摘の、確定判決に従っていないということの、どういう意味なのかということ、ちょっと必ずしも明確ではないのかなというふうに思っています。
従来からなんですけれども、私どもとしては、国を当事者等とする訴訟における確定判決には適切に対応させていただいているという旨、答弁させていただいております。
○初鹿委員 適切に対応しているということですが、この判決については、義務に従わないで、間接強制金ということで事実上のペナルティーを受けているわけですよね。それは事実だと思います。それも毎日九十万円支払っているんです。これ、受け取る側は九十万円もらうからいいだろうみたいに思う方もいるかもしれませんが、漁業者一人当たり二万円なんですが、全部実は収入認定されてしまって税金もかかるわけですよ。そうなると保険料が上がったりとか、ある意味、もらう側も非常に迷惑な存在になっているということも言われております。
こういうことをずっと今まで続けてきているということは、私は、国が判決を守らない、しかも当事者に対して迷惑をかけているというのは非常に対応としてはまずいのではないかなということを指摘させていただきます。
その上で、二枚目の資料を見ていただきたいんですが、この干拓事業というのは何のためにやったのかといったら、干拓地をつくってそこで農業をやってもらうためだったと思いますよ。
そもそもは、米不足のときに稲作の農地が必要だということで計画をされて、実際にはもう米が余って耕作放棄地が大量に出ているときに事業にやっと手をつけられるようになって、この干拓地は稲作は認められないで畑作だけになっているという、そもそも最初の考えとは大きく異なって今事業が行われているという事態なんですが、実際に干拓地に入って農業をやっている方がついに開門を求める、そういう訴訟を提起したわけです。
今までは、農家の方は開門に反対をしていて、農業のためにはあけられないんだと主張してきたわけですけれども、事態が変わったと思いますよ、これは大きく。漁業者だけではなくて、本来の目的であった農業をやっている人たちがこんな農地では農業できないよと言い始めている、このことは私は農水省としては重く受けとめなければならないと思いますが、大臣、今、営農者の方が開門を求めて訴訟を提起したことに対してどのように感じているのか、お聞かせいただけますか。
○荒川政府参考人 お答え申し上げます。
諫早湾干拓潮受け堤防排水門の開門につきましては、先生御案内のとおりでございますが、平成二十二年の開門を命ずる福岡高裁の判決が確定した後、国におきましては、開門義務の履行に向けてさまざまな努力を重ねたわけでございますが、それらの方々、諫早湾周辺の農業者の方々ですとか地域住民の方々の強硬な反対によりまして事前対策工事の着手すら行えないということで、現実に開門することは著しく困難な状況にあったところでございます。
今回、今先生お話ございました営農者の方の訴訟でございますけれども、長崎県農業振興公社から干拓農地の利用権の設定の更新が認められない二名の方がいらっしゃいますけれども、その方が国と長崎県などを被告といたしまして、調整池を基地とする野鳥による食害の損害賠償と排水門の開門を求める訴えを提起して、現在、長崎地裁において係争中であるものでございます。
個別の訴訟についての国の考え方につきましては、それぞれ訴訟の場においてきちんとお示しをしてまいりたいと思っておるところでございまして、今後の本件裁判の進行に応じまして、関係省庁と連携をいたしまして、具体的に対応してまいりたいと考えております。
なお、この二名の方に対しましては、長崎県の農業振興公社側の方は土地の明渡しを求めて提訴をしているというふうに承知をしております。
○初鹿委員 この二名の方が公社からリースの再設定を行われなかった理由というのがあるわけですよ。特にこのマツオファームさん、私は去年、現地へ行ってお話を聞いてきましたけれども、ずっと十年間、リース料をちゃんと滞納なく払ってきているんですよ。きちんと営農されていた方なんです。そういう方に対して、滞納があったら直ちに土地を引き渡すように、そういう念書を書けということを公社が迫って、そんな念書は書けない、念書を書かないんだったらリース権の再設定しないということで再設定されていない、そういう状況なわけですよ。これも、非常に公社のやり方というのは強引だし、営農者をばかにしていると思いますよ。
それで、この出している資料を見ていただきたいんですけれども、めくっていただいて、「調整池の水が使えない」というところを見ていただきたいんです。
堤防を締めて調整池をつくって、そこを淡水化して、その淡水を農業用水に使う、そういう計画ですけれども、非常にだだっ広い調整池をつくって、現地に行けば、皆さんぜひ現地に行っていただきたいんですよ、水の色が外と調整池とで全く違いますから。もう真緑で、見た瞬間にこれは汚染されているなということがわかるような水質になっている。それを農業用水として使えというのは、私はやはり問題があると思います。
ここにも書いてあるとおり、水の水質が悪くて、とにかくシジミの殻とかいろいろなごみが入っていて、ホースもすぐに詰まってしまう、それで、夏になるとにおいもする。この調整池は、夏になると温度が上がって、冬は逆に水が冷えて、循環していないですから、寒くなって、農業に全く適さないどころか、悪影響を及ぼしている。しかも、カモがそこに休憩にたくさん来て、そこの池の中には生物が蚊しかいないので、ユスリカしかいないので、ほとんど休んでいるだけで、そこを拠点として農地に行って、作物を餌として食べている食害になっている。そういうことが指摘されているわけですよ。
この調整池というのは本当に必要なんですか。今は本明川の河口に近いところで用水をとっているわけですが、そもそも本明川から取水をするということを検討した方が農業にとっては適切だと思いますが、いかがでしょうか。
○荒川政府参考人 お答え申し上げます。
まず、調整池の水の農業用水への利用でございますけれども、私ども、干拓事業を実施していく中で、平成十二年度以降、長崎県の総合農林試験場の御協力もいただきまして、農業者の参画も得まして、造成農地への導入予定作物、バレイショですとかタマネギですとか、レタス、キャベツなど葉物野菜につきまして、試験栽培を当時から実施いたしております。その結果、目標と同程度あるいはそれ以上の収量、品質が確保されるという結果が得られたことをもちまして、その上で、干拓事業完了後の二十年度から営農が開始されておるところでございます。
それ以降、調整池の水を利用した農業生産が行われておるわけでございますけれども、先生いろいろお話ございました、砂れきが詰まるとかそういったことについても、きちんとろ過装置をつけるとか、そういった営農上の努力、技術指導などもさせていただいておりまして、そういった努力もございまして、干拓地の農業生産は順調に推移をしてきていると私ども認識をしているところでございます。
それから、温度変化につきましても、これも、環境モニタリングにおきまして、平成元年から、締切り前後を通じて、諫早湾の干拓周辺農地の四地点で気温の観測などをやってきておるところでございますけれども、潮受け堤防の締切りに伴う顕著な変化というものは見られていないというふうに認識をしておるところでございます。
それから、本明川からとればいいではないかというお話でございますが、これにつきましては、今、私ども、諫早湾で農業用水を取水していただいている地点は、当然ながら、干拓事業の実施前は海域で塩水だったわけでございますけれども、平成二十四年十二月に環境アセスをやりまして、仮に開門した場合にはどうなるかということを調べているわけでございますけれども、今の取水地点におきましては、塩分濃度が上昇をいたしまして、農業用水としての利用は困難になるという結果が得られているというふうに認識をしておるところでございます。
○初鹿委員 そうはおっしゃいますが、農業がうまくいっているんだったら、こういう訴訟を提起するということにはならないんだと思うんですよね。今回、営農者の方が開門しろと提訴したということは、農水省、もう少し真摯に受けとめるべきだということを申し添えさせていただきます。
では、次の資料を見ていただきたいんですが、まず裏面を見ていただきたいんですけれども、これは、この前の五月の一日に、佐賀、福岡、熊本県の三県の漁協がこの和解勧告に関して漁協の考え方というものを示しました。
これによると、開門をしないで基金案を進めてくれというような、そういうことを求めるような意見になっているんですが、その前の新聞記事、四月二十五日の段階では、佐賀県の有明漁協は、三県の漁業団体に対して、開門をしない前提の和解協議を丸のみするのは避けたいといって、開門しない前提ということを明記しないでくれ、そういうことを決めているわけであります。ほかの新聞記事などを見ていても、南西の五つの支所でも同じように、あくまでも基金とこの和解協議は別だということを言っているわけです。しかしながら、こういう意見書が出てきた。
その背景には何があるかといったら、農水省が執拗に漁業者団体に働きかけをして、そして、基金を受け入れないんだったら有明海で今まで再生事業で使ってきた予算をもう一切つけないぞ、そういうおどしにも近いようなことをやってきたんじゃないかということが言われているわけです。
ここに、次のページですけれども、裁判の、二月二十六日、弁護団の最後の意見陳述書を添付しましたが、ちょっとこちらを見ていただきたいと思いますが、堀弁護士の書いた意見陳述書であります。
ここを見ていただければ、農水省が非常に執拗に漁業団体に対して、まず会議を開けだとか、そこでいろいろな支配、介入とも言えるようなことを行ってきているということが示されております。そして、更に言うと、この一番下の行から、「わたしたちが驚いたのは、二月十日の土曜日に開催された三県の会合には、農水省のみならず、本件訴訟を担当している訟務検事も出席していた」ということなんですよ。訴訟をやっている検事が、ある意味予算権を持っている農水省と一緒に行って、和解協議が有利になるような、そういうことを整えるために漁業者団体にある意味圧力をかけるようなことをするというのは、私はいかがなものかというふうに思うんです。
そこで、伺います。
まず、農水省は、このような形で漁業者団体に、和解案の前提となるこの基金の受入れというものをするように、その裏として、基金を受け入れなければ予算を削減するかのような、そういうことを言って団体の意思を変更させるというか、意思を形成するようなことをしたのかどうかということをまず伺いたいと思います。
そして、法務省の方には、まず、二月十日に訟務検事が本当にここに出席したのかどうか、そのことをお答えいただきたいと思います。
○荒川政府参考人 お答え申し上げます。
本年の三月五日に、福岡高裁から開門しないことを前提とした和解勧告が行われたわけでございまして、私ども、それ以降、和解協議の場などを通じまして、開門しないことを前提とした和解が実現できるよう、真摯に努力をさせていただいておるところでございます。
一方、先生お話ございました、五月一日に佐賀、福岡、熊本の三県の漁業団体の代表の方々が共同で記者会見をなさいまして公表された文書というのがあるわけでございますが、これらの文書につきましては、それぞれの漁業団体の中でのいろいろな議論、あるいは三県漁業団体が集まっての御議論、そういった組織内での討議が重ねられて、その結果、自主的な判断に基づいて取りまとめられたものと承知をいたしておりまして、国が漁協にこういう文書を出せというようなことを働きかけたということはございません。
○葉梨副大臣 御指摘の委員会でございますけれども、本件訴訟を担当していた訟務検事一名が出席していた、このことは事実でございます。
ただ、これにつきましては、訴訟追行に向けた準備行為の一環として出席したものと承知しております。
○初鹿委員 副大臣、これは不適切だと思いませんか。
訴訟を担当している検事が、訴訟を有利に進めるために、特定の団体に行って、しかも予算権を持っている農水省と一緒に行って、そして国にとって有利な結論を出すように求めるという行為は、私は、非常に不適切だと思いますし、裁判の公平性を損なう行為じゃないかと思いますよ。
ほかの訴訟で、例えば刑事裁判とかで考えてみてくださいよ。検事さんが、被告の証拠になるような方のところに行って、お金を、金銭をちらつかせて有利になるような証言をしてくれなんということを言ったら、それは大問題になるじゃないですか。
そして、一番の問題は、漁業者の中の分断を求めているようなことになるわけですよ。裁判を行っている原告の方も漁業者ですよ。そういう方にとって、仲間が和解の方に行くということになって、そこで分断工作をするようなことを訴訟を担当している検事がやるのは私は不適切だと思いますが、いかがですか。
○葉梨副大臣 まず、訴訟を担当している検事というような御指摘でございましたが、これは刑事裁判における検事とは違いまして、訟務検事という名前でありますけれども、国にかかわる裁判の指定代理人ということでございます。
ただ、個別の事案につきまして、個別の訴訟に関することについてはお答えを差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論として申し上げますと、国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律、いわゆる法務大臣権限法第八条においては、いわゆる先ほどの指定代理人は、代理人の選任以外の一切の裁判上の行為をする権限を有するものと規定されています。指定代理人が、訴訟追行をすることはもちろん、訴訟追行に向け種々の事件関係者と打合せをするなど、訴訟追行に向けた準備行為をすることは当然にあり得ることだと考えております。
○初鹿委員 一般の検事とは違うというのはわかりますよ。むしろ訴訟の当事者でありますからね。でも、その当事者が、予算の配賦権を持っている農水省と一緒に、団体に対してこのような、有利になるようなことを求めていくというのは、私は不適切だと思います。皆さん方はそうじゃないという主張をされるのかもしれませんが、私は、裁判の公平性に非常に疑義を呈するようなことになりかねないんじゃないかということを指摘させていただきます。
農水省に伺いたいんですけれども、そもそも基金案というのは、平成二十七年に、漁業団体の方から、有明海の再生のために基金をつくって再生事業を行ってくれということを先に提案していたんですよ。そのときはそれを受け入れずに拒否をしておいて、今回、和解の引きかえとして基金案を持ってきたというのは、非常にアンフェアじゃないかと思うんですね。
では、何で二十七年のときは基金案を受け入れなかったんですか。
○荒川政府参考人 お答え申し上げます。
平成二十七年の五月に、佐賀、福岡、熊本三県の漁業団体の皆様方から、有明海の再生に向けて、漁業者が機動的な取組を行うことが可能となる仕組みとしての基金的予算の要望をいただいたところでございます。
その要望に対しましては、当時、通常、基金方式は、その必要性を厳格に検討して、極めて限定的に用いられているものであるということでございますので、基金の創設は原則として困難であるということを御回答申し上げたところでございます。
○初鹿委員 そのとき困難だけれども、今度は困難じゃなくなった、その理屈がよくわかりませんけれどもね。和解を前提に、裁判を終結することができるならということを言いたいのかもしれませんが、私は、そのときに断っておいて今回は持っていくというのは非常に問題じゃないかなというふうに思います。
そして、そもそもこれまでも、基金をつくらなくても一千億ぐらいかけて有明海の再生事業を行ってきているわけですが、一千億かけても有明海の水質の状況はさほど、悪化はしなかったかもしれませんが、改善はしていないし、漁業への影響もなかなかとまっていないわけです。ですから、ここで百億円の基金を積んだところで、私は状況は変わらないと思うんですよ。
やはり最初の原点に戻って、福岡高裁が最初に命じたように、開門をして水質がどうなるのか調査するべきだと思いますよ。この判決も、ずっと永久にあけっ放しにしろということを言っているわけではなくて、開門して調査しろということなわけですよ。ぜひこれは開門をやっていただきたいと思います。
では、今全く締め切っているかというと、そんなことはないんですよ。今でも、排水するためにあけて、水を海に流しているんです。今逆に、むしろ、閉じて水質を悪くして緑になった水を、わざわざ腐った水を流しているような状況なわけですよ。こんなことをやって水質を悪くして漁業に影響を与えているぐらいだったら、部分開門をして、実際にどういう影響があるのか、それで本当に水質がよくなって漁業が再生するのかどうかの、そういう確認をするべきじゃないかと思うんです。
ですから、まず、大臣、この談話、撤回してください。そして、農業者も漁業者もお互いにハッピーになるためには、一回、部分開門して、長期の、何年間かにわたって調査して、そして水質がよくなるのかどうか確認しましょうよ。そうじゃないと、恐らく、このまま基金案をつくっても、感情的なしこりはずっと永遠に残り続けると思うんですよ。ぜひ、ここを一回、確かに談話を出して決めたのかもしれませんが、農業者も提訴をしたという事態の変化も踏まえて考え方を改める必要があるんじゃないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○齋藤国務大臣 この諫早湾の干拓開門問題につきましては、御案内のように複数の訴訟が提起をされておりまして、開門と開門禁止といった、裁判所の判断も相反するものが存在する状況となっています。また、今、初鹿委員がおっしゃいましたような意見もあれば、そうじゃない意見も多々ある、そして経緯も積み重なってきている。
そういう状況を何とか打開して問題を解決、そのためには、平成二十二年の開門を命ずる福岡高裁の判決が確定した後で、現場での工事着手を試みるなど、国は開門義務の履行に向けて努力を重ねてきたんですけれども、現実に開門することは著しく困難な状況にあるという判断、それから、同判決が確定した後は、開門しない方向での司法判断が重ねられてきているという経緯、こういうことを総合的に考慮した結果、諫早湾周辺の農業者や地域の方々が抱える不安を払拭するとともに、漁業者の方々の思いである有明海の再生、これを速やかに進めるためには、開門しないという方針のもとで、基金による和解を目指すことが最良の方策なんだろうということで判断をさせていただいたわけであります。
開門問題をめぐりましては、三月五日には福岡高裁から、開門しないことを前提に開門にかわる基金等の方策による解決を図ることが、現在の混迷、膠着した状況を打開する唯一の現実的な方策という和解勧告も出されております。また、御案内の五月一日には、佐賀、福岡及び熊本の三県の漁業団体が一致して、開門しない前提の和解協議を進めてほしい旨を文書で表明されているところでございます。
私は、これらのことは全ての関係者において重く受けとめるべきものと考えておりまして、国としては、現在、福岡高裁の請求異議訴訟で行われている和解協議におきまして、開門によらない基金による和解に何とか至れるよう、関係省庁と連携して真摯に対応してまいりたいと考えています。
○初鹿委員 三漁協のこの意見書、最後の三行を改めて読んでもらいたいんですけれども、「有明海の再生のためには、開門調査を含む有明海の環境変化の原因究明が必要だという思いは今も変わりありません。」と。和解協議、受け入れるけれども、開門調査はやはりやってほしいというのが漁業者の願いですから、そこはやはり真摯に受けとめていただいて、私は開門調査、ぜひしていただきたいというふうに思います。
ちょっと話をかえて、諫早湾はここで終わらせていただいて、アニマルウエルフェアについて最後質問させていただきます。
東京オリンピック・パラリンピックが行われますが、ここで提供される畜産物のアニマルウエルフェアが、オリンピック組織委員会が作成した調達基準に含まれました。しかし、残念ながら、その内容を見ると、まだまだ世界の水準に至っていないんですよね。例えば、ケージフリーの鶏卵を提供するというのが世界の水準になっているのに、バタリーケージで飼育している、そういう鶏卵でもよいということになっていたり、世界ではもう認められていない妊娠ストールの豚、豚を妊娠ストールで飼育するというのもここでは許容されたりということであります。
そういう状況であるんですけれども、日本として、これから日本の畜産の食品なども輸出をしていこうというときに、国際競争力ということを考えたら、こういう低いレベルのアニマルウエルフェアで満足しているわけにはいかないと思うんです。もっとより高いアニマルウエルフェアに配慮した畜産物を調達できるようにしていくことが必要だと思いますが、農水省としてどのような取組を行っていくのか、いこうとしているのか、また行っているのか、最後にお聞かせいただきたいと思います。
○伊東委員長 礒崎農林水産副大臣、時間が来ておりますので、簡潔に答弁をお願いします。
○礒崎副大臣 お答えいたします。
昨年四月に東京二〇二〇組織委員会から示された持続可能性に配慮した調達コードでは、畜産物の提供事業者に対して、アニマルウエルフェアの考えに対応した飼養管理指針を満たすことが求められており、この要件を満たす方法としてGAP認証取得等の取組が明示されています。
このため、農林水産省としては、畜産におけるGAP取組を拡大するため、平成三十年度において、日本版畜産GAPの指導員等の育成及び生産者による日本版畜産GAPの認証等の取得、日本版畜産GAPの認証取得に向けた準備段階の取組となるGAP取得チャレンジシステムの普及の推進等について支援をしており、この中でアニマルウエルフェアについても時間をかけて研修等を行っているところでございます。
このように、二〇二〇東京大会において、その調達基準を満たす畜産物が十分供給されるよう努めるとともに、これを一つの契機として、我が国の畜産業におけるアニマルウエルフェアの定着、向上が図られるよう、引き続き努力してまいりたいと考えております。
○初鹿委員 済みません、質問がちょっと残ってしまいましたが、これで終わらせていただきます。ありがとうございます。
○伊東委員長 次に、神谷裕君。
○神谷(裕)委員 立憲民主党の神谷裕でございます。
連日質問の時間をいただきまして、本当にありがとうございます。
きょうは一般質疑でございますが、逐次いろんなお話を聞かせていただきたいと思っております。特に、私、水産に関心があるものですから、きょうは一般質疑に当たって漁業の問題に触れさせていただけたらと考えているところでございます。
一番最初なんですけれども、大臣、先日ノルウェーに御出張なされたというような報道を実は伺いました。水産の現場を見て回り、漁業者の皆さんとも意見交換をされたと伺っております。また、現地の漁業大臣とも意見交換等を行われ、水産政策等についても大いに知見を広げてこられたんじゃないかなというふうに思いますけれども、まずもって、今回の御出張の成果についてお伺いをさせていただきたいと思います。
○齋藤国務大臣 今回、我が国における水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化、この両立のための検討に資するように、五月一日から三日までノルウェーを訪問いたしました。
具体的には、サンドバルグ漁業大臣と両国の水産政策に関する意見交換を行いまして、捕鯨に関する連携など水産分野における協力を始めといたしまして、両国間の経済関係のさらなる発展を目指すべきとの認識を共有したところであります。また、少人数で効率化されたまき網の漁船、これに乗らせていただきましたし、それから自動化、省力化が進んだサーモン養殖場も見せていただきまして、さらには、実際に漁業をやっている方などとの意見交換の場も持たせていただいたということであります。
今回得られたこれらの知見につきましては、もちろん我が国とノルウェーでは事情が違うことは十分承知をしておりますけれども、我が国における水産業の成長産業化のための検討の参考事例として活用させていただくとともに、今回の訪問がノルウェーとの友好関係発展のさらなる一助になればというふうに思っているところでございます。
○神谷(裕)委員 まことにいろんなものを見てこられ、いろんな意見交換をされ、特に鯨の問題、本当に大変大切な問題ですから、本当にすばらしい意見交換ができたということであればありがたいなと思う次第でございます。
ノルウェーは、御存じのとおり水産輸出の大きな国でございます。そういった国を念頭にした上で、政府が進める今の漁業の成長産業化というものを考えたときに、いい意味でも、あるいは余りいい意味ではなくても、参考になる事例はたくさんあったんじゃないかなというふうに思います。しかし、我が国の漁業とは根本的に違うさまざまな状況がやはりあるんだということでございます、今ほども齋藤大臣からもお話ございました。こういった状況を考えれば、単純にノルウェーの成功事例を我が国に当てはめるということにはなかなかならないのかなというふうにも私も思います。
そこで、率直に、大臣自身がお考えになる、漁業をめぐる私ども日本、我が国とノルウェーとの違い、あるいは、ノルウェーを見てこられまして、我が国にこれは導入すべきじゃないかなと思われた点、あるいは、これは難しいよねと思われた点、そういった諸点がありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
○齋藤国務大臣 まず、ノルウェーと我が国では、全生産量の八割を占める魚種の数でいいますと、ノルウェーは八種類なんですが我が国は十六種と魚種が多様になっておりまして、漁業種類も、全生産量の九割を占める漁業種類が、ノルウェーの二種に対して日本は十一種ということで、日本の方が格段に多様であるということがあります。
また、養殖につきましても、ノルウェーではサーモンなどの魚類の養殖がほとんどでありますけれども、それに対して我が国では貝類ですとか藻類も含めて多種多様な養殖が営まれておりますので、ノルウェーを参考としながらも、我が国では、現場の実態に即した、よりきめ細かな政策の対応が当然必要だというふうに思っています。
一方、ノルウェーへの出張におきましては、両国、日本もノルウェーも、限りある水産資源を適切に管理しながら水産業の振興を図るという考え方は共通しているなということをしみじみ実感をいたしました。
特に私が感じましたのは、ノルウェーでは、ニシンやタラの資源危機がございまして、このときに漁業、水産業者の危機感が相当深まって、そして、一九九〇年代以降、厳格な漁獲量の管理を導入して、そして資源回復に成功して、さらには漁船の大型化ですとか省力化等による生産性の向上、さらには海外市場の徹底したマーケティングに基づく輸出拡大等に取り組んできたということで、大きな危機感を持つような出来事があったということがその後のノルウェーのいろんな工夫につながっていったのかなということを強く感じました。
こうしたノルウェーの事例も参考にしながら、我が国における水産業の成長産業化の検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
○神谷(裕)委員 今ほど、ニシンやタラの話が出てまいりました。これは我が国にも実は似たような事例がございました。TACの問題であるとか、そういったことをやはり契機にしているということについては同じなのかなと思いますけれども、我が国とノルウェーではやはり状況が若干違うところがあるんだということは、大臣が見てこられたとおりでございます。
その上で、大臣が見てこられたノルウェーと我が国との漁業をめぐる状況の違いということを私なりにも考えてみますと、今大臣おっしゃられたように、主要な対象魚種、これがやはり違いますね。八割を超える魚種についての魚種の多さ、我が国は多い、あるいはノルウェーは比較的対象魚種が少ないよねというのがあると思いますし、漁業資源のほとんどが、ノルウェーの場合、沿岸域というよりは国際的に共同管理された漁場に依存しているよね、そういったことはあるのかなというふうに思います。
対象魚種は本当に八割を占める、今御紹介いただきましたけれども、我が国がおよそ十六種、ノルウェーは八種でございまして、ノルウェーの漁業が輸出志向性が非常に高い、そして、我が国ではどちらかというと自国向け消費を中心とした漁業であるということなど、さまざまに違いがあるというふうに思います。もちろん、自然条件の違いや漁業をめぐる伝統なども違うわけでございまして、そこから起因する漁業に対する考え方であるとか、あるいは資源管理の方法なども当然違ってくるのかなというふうに思っています。
公海漁場で輸出向けに少ない魚種をとっているノルウェーの漁業と、沿岸域や沖合あるいはその他公海域での遠洋漁業も含めた自国民向けの食料供給を中心に多種多様な漁業を行っている我が国の漁業では、漁業の成長産業化といっても、やはり、その成長のさせ方や資源管理の方法が同じではないんじゃないかなと私には思えるわけでございますけれども、こういった点について、再度、大臣の御所見をいただきたいと思います。
○齋藤国務大臣 基本的には考え方を同じくするものだと思います。
我が国の漁業は、ノルウェーと異なる自然条件や、あるいは漁業の発展の歴史的背景も違います。漁獲、養殖される魚種が我が国の場合は大変豊富で、それから大規模で効率的な遠洋、沖合漁業、あるいは小規模で高付加価値な沿岸漁業、それから魚類のみならず貝類や藻も含めた養殖業など、多種多様な漁業種類が営まれている点は、大きく異なるわけであります。
我が国のそういった漁業の成長産業化を進めるに当たりましては、ICTを活用した漁獲ですとか販売手法、こういう点はノルウェーのよいところを取り入れる余地はあるのではないかと思いますけれども、我が国の漁業の特徴を踏まえた対策というものが大事だというふうに、当然、認識をしております。
農林水産省としては、今回の水産政策の改革で、我が国の水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化を両立させるということに力を入れていきたいと思っていますが、実際に現場で漁業に従事する漁業者の方々が改革の成果を実感できなきゃ意味がありませんので、我が国にふさわしいやり方の検討を深めてまいりたいと考えております。
○神谷(裕)委員 今、本当に大事な点をおっしゃられていたと思います。
ICTを使われた販売の方法というか売り方というところ、やはり、売り方についてはまだまだ工夫の余地があるなと思っておりますし、あるいは水産庁の方でもこれまで、例えば浜の方で高度化であるとか、あるいは高付加価値になるような形で魚を売っていこうじゃないかというようなことでさまざま御尽力いただいていますし、さまざまな政策を打っていただきました。
ただ、それとしても、まだまだ、なかなか対応化できていないよな、あるいは市場の需要もあるのかもしれませんけれども、なかなか高い形で売っていけていないなと思いますので、そういった意味では、まことに、大臣が見てこられた知見というのを今後反映させていただけるとありがたいなというふうに思うわけでございます。
私自身もノルウェーの漁業を見ていて、大変にうらやましいなというふうに思っている点が一つございまして、それは、さっき大臣もおっしゃっていましたけれども、船が大きいというようなこともありまして、漁船の、漁業船員の居住性の問題、これは本当に物すごい違いがあるなと。船に乗ってこられたので、恐らくその実感をお感じになっているんじゃないかなと思いますけれども、もちろん、ヨーロッパの漁船を見ていますと、一人一人の船員の居室が、あるいは個室であったり、あるいは居住性が本当に格段に違うわけでございます。
その背景には、我が国のトン数規制のあり方であるとか、あるいはヨーロッパは漁船についてはメートル規制になっていますから、そういった規制のあり方の違いも当然にあるんだろうと思うわけなんですけれども、やはりここは、最近、漁船の船員のなり手になる若い方も少なくなっている現状にございます。あるいは、これは我が国の遠洋漁船の場合も特にそうなんですけれども、なかなか乗り手が少ない中で、特に免状を持っている、有資格、海技士であるとか、そういう方々がなかなか乗ってこないものですから、そもそも運航そのものは大丈夫なのかみたいな話も出てきているような状況にあるわけですね。
そういったことを少しでもいわば緩和をしていこうということを考えたときに、やはり船員の福祉に資するような場合には、例えば許可トン数の緩和であるとか、こういったことをぜひお考えいただけないかなというふうに思うわけでございます。この点についてのお考えを伺わせていただけたらと思います。
○長谷政府参考人 重要な御指摘、視点だというふうに思います。
漁船のトン数につきましては、委員十分御承知のとおり、漁業調整や資源管理の観点から、船の大きさが漁獲能力の大きさを反映しているものとして、漁業許可制度の中でこれまで制限してきたところでございます。
しかし、私も、日本漁船はもちろん、ノルウェーの漁船、双方乗った経験から、居住性の違い、実感しております。特に日本の沖合漁船との比較をすると、かなり違うなということでありますし、また、課長時代、大きな転覆事故なども体験しているというようなことであります。
そういうことから、これまでも、基本は今言いましたように船の大きさ、トン数でということなんですけれども、漁船の安全性ですとか乗組員の居住性を確保するための増トン、規制緩和ということは随時行ってきたところでございます。
しかしながら、今後更に人口減少、少子化が進む中で、委員もおっしゃったように、若者に乗ってみたいと思ってもらえる漁船であるということは、ますますこれから重要なことだというふうに認識しております。
このようなことから、昨年四月に策定された水産基本計画におきましても、持続可能な漁業の確立の項目の中で、漁船の大型化による居住環境の改善や安全性の向上が必要としているところでございます。
水産庁といたしましては、もうかる漁業創設支援事業の活用などによりまして、居住性などにすぐれた漁船の導入をこれからも進めてまいりたいというふうに考えております。
○神谷(裕)委員 ありがとうございます。
大臣、日本の漁船に乗ったことはございますか。
○齋藤国務大臣 何度かございます。
○神谷(裕)委員 ありがとうございます。
そうしますと、もう言わなくてもおわかりになるとおりでございまして、本当にここを変えていかないと、多分、乗り手はいなくなっていきます。中には、遠洋船の場合、外国人を乗せている場合もありますけれども、そうはいいながらも、やはり外国人も人ですから、漁船員であって、人でございますから、こういった方々の居住性というのは本当に大事だと思いますので、許可トン数の緩和の話もそうなんですけれども、できれば何らかの方策あるいは支援策も持って、こういった居住性、当然、船を改造するのも簡単な話ではないので、ぜひ、いろんな支援あるいは考え方をやっていただけたらなと思うわけでございます。
次の質問に移らせていただきます。
いっときは長期間の魚価の低迷なんかもございまして、低い魚価の中で、コスト削減を進めながらもなかなか収益が上がらないなど、厳しい経営を余儀なくされる漁業者の方が大勢おられました。しかし、水産庁を始め、収益構造を改善させるために、例えば漁業の構造改革としての減船支援、あるいは燃料代や漁具高騰時の支援といったさまざまな施策が打たれてまいりました。このほかにも、もうかる漁業あるいは積立ぷらすといったさまざまな経営のための支援策によって、現在、漁業経営も少し落ちついてきたのかなというふうには見ております。
そういった漁業経営そのものについての支援のあり方について、今の漁業改革の方向性ではなかなか、もちろん、めぐりめぐって経営そのものにきいてくる面があるとは私も思います。ただし、直接的な経営支援策あるいは経営安定策というところまではなかなか見えないのかなというようなイメージがございまして、こういった直接的なもの、これまでもやってきていただいていますけれども、そういったものの今後の方向性を含めてお話をいただけたらと思います。
○長谷政府参考人 平成二十八年の沿岸漁業、養殖業生産量は、前年に比べ二十七万トン減少して四百三十六万トンとなったものの、産出額は前年並みの一兆五千八百五十六億円となっておりまして、生産量とは異なる傾向を示しております。こうした中で、漁業及び養殖業の平均産地価格についても上昇傾向で推移しているところです。
もちろん、このことをもって漁業経営の状況がよくなったとは一概に言えないと考えておりますけれども、これまで農林水産省が取り組んでまいりました、各漁村地域の漁業所得を五年間で一〇%以上向上させることを目標とする浜の活力再生プランの推進、漁業経営セーフティーネット構築事業や漁業共済、積立ぷらすによります漁業収入安定対策の実施、そして、もうかる漁業、漁業構造改革総合対策事業等の施策が一定の成果を上げてきているものとも認識しております。
今後とも、水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化を両立させながら、これら漁業経営の安定、改善が図られるように、これからも必要な施策を講じていく所存でございます。
○神谷(裕)委員 ありがとうございます。本当にしっかりとやっていただきたいと思います。
個人的には、浜プランもそうですけれども、積立ぷらすであるとかセーフティーネット事業、これは漁業者の方に、大変助かっているよというようなお話を本当に多々聞いております。こういったことが漁業者を支えてきた、今後も支えるだろうと思うわけでございますから、引き続きしっかりと、漁業経営そのものを支えていくんだという思いでぜひやっていただきたいということを、改めて、御要望かたがた申し上げさせていただきます。
次の質問に移らせていただきます。
資源管理の方法についてでございますけれども、先般大臣も言及されました、「水産政策の改革の方向性」でも議論されておりますアウトプットコントロール的な考え方、こういったものを検討されていると思います。
先ほど、タラであるとかあるいはニシンの話もされておりましたけれども、TACについては、もう幾つかの魚種で我が国でも導入されているなというふうに思っておりますし、この国でも幾ばくかの経験をもう有しているというふうに思っているところでございますが、IQ、特にノルウェーではIVQですか、ベッセルのQについて導入されていたというような話でございますけれども、やはり我が国は魚種が多い、漁法も非常に複雑であるよねというようなこともあって、多種多様な魚種を漁獲する我が国の漁法には現実的ではない部分もあるのかな、もちろん対象にできるものもあると思いますし、対象にできないものもあるんだろうというふうに思うんですけれども。
一方で、IQ、特にIVQについては、我が国でも多少の経験があるというふうには聞いております。サバ類についての試験的なものが実施をされているというふうにも記憶をしているところでございます。今回の御出張でも見てこられたと思いますけれども、こういったIQ制度のよい面や悪い面等あると思うんですけれども、仮に、IVQでもIQでもそうなんですが、我が国に置きかえたときの、導入するということであれば現実に課題があると思うんですが、その課題についてお聞かせをいただきたいと思います。
○長谷政府参考人 IQ方式とは、TACを漁船や漁業者ごとに配分して漁獲を管理する方式であります。このうち、漁船の使用権が移転する場合に限って漁船の漁獲枠の移転を認める制度をIVQ方式などと称しております。個々の漁業者に一定の漁獲量が割り当てられることから、管理の責任が明確化されることによりまして、より緻密な数量管理が可能となるとともに、割り当てられた漁獲量を漁業者の裁量で計画的に消化することで効率的な操業が促されるといったメリットが一般的には指摘されるということであります。
その一方で、漁業者ごとに個別で管理いたしますから、監視コストが増大するといった課題も指摘されているところであります。
こうした点を踏まえた上で、先ほど大臣から御説明したような日本の漁業の多様性なども踏まえた上で、我が国漁業の操業実態、資源の特性に見合った活用方法について検討を進めていきたいというふうに考えております。
○神谷(裕)委員 ありがとうございます。
IQ、漁獲割当て量についてなんですけれども、このIQそのもの、漁獲割当て量そのものというのが一体どういうものなのかということをやはりもう一回考えなきゃいけないと私自身は思っています。
今回割り振るとすれば個人に帰属するものになるわけでございますけれども、それは本来、IQ、国別割当て量もそうですけれども、漁獲量そのものがやはり国民共通の財産であると思いますし、漁業者共通の財産、本来、漁獲できる権利というのはそういうものだと私は思います。それを個人に帰属させるわけでございますから、こういったIQの場合の、漁獲枠というのか漁業権というのか、この扱いというのが非常になかなか、しっかりと考えなきゃいけないんだろうというふうに思うわけでございます。
本来、やはりこういったIQを付与する場合、漁獲枠を付与する場合、この漁獲枠そのものについての、権利と考えていいものなのか、あるいはこういったものは権利と解されるべきではないのか、こういったことを伺いたいと思います。いかがでしょうか。
○長谷政府参考人 委員からも御指摘ありましたように、TAC制度が、もう二十年やっていて、その中でIQについても、その中でといいましょうか、それと並行してIQについても、まき網の試験操業の件は言及されましたし、日本海のベニズワイ漁業ですとか、あるいはマグロ関係、これまでもやってきたところであります。
それを、更に権利性が強まるわけですけれども、譲渡性を持たせる、これはITQということになりますけれども、そういうITQ方式につきましては、漁獲枠が一部の者に集積される中で漁業者が減少して、漁村社会に悪影響を及ぼすといった指摘ですとか、操業実態のない者が投機的に割当てを売買することなどの懸念が指摘されているというのは承知しているところでございます。
適切な資源管理や資源の合理的な活用が図られるように、今後のIQ方式の活用の検討を進めていきたいというふうに思っておりますけれども、そういった懸念も考慮をしながら、しっかりと検討を進めていきたいというふうに思っております。
○神谷(裕)委員 IQ、ITQ、かつての漁業許可もそうだったんですけれども、時に物権的に相続もされた、あるいは売買もされたというような歴史があったと思います。ただ、これは実際には、国から付与している、いわばとっていいよというぐらいの話でございまして、そこまで強固なものかと言われれば何とも言えない部分があったかなと。
今回の漁獲枠についても、本来、ナショナルクオータ、これはやはり日本国全体の、国民の財産だと思いますが、それをIQ、個人の枠に帰属せしめるとするならば、やはりここは厳格に運用していただきたいと思いますし、そういった意味で、実際に漁獲を行えない方が漁獲枠を持つことについては厳格に、やはり違うんじゃないかと私自身は思うわけです。そういった意味で、ITQまではやはり行き過ぎだろうと思いますし、IQもやはり厳密に考えなきゃいけないんだろうと思っているところでございます。
ミナミマグロの事例であるとか、さまざまな知見はあると思うんですけれども、そういったことにぜひ御留意をいただいて、できることであれば、こういう方向に進まないような方向で私自身は進めていただきたいなと思う次第でございまして、この点、御要望させていただきます。
時間になりましたので、残余、まだたくさん水産の質問をしたかったのでございますけれども、時間がなくなりました。またの機会にさせていただけたらと思います。
本日はどうもありがとうございました。
○伊東委員長 次に、後藤祐一君。
○後藤(祐)委員 国民民主党の後藤祐一でございます。
まず冒頭、齋藤大臣に伺いたいと思いますが、本日、予算委員会で、今、柳瀬元総理秘書官に対する参考人質疑が行われておりますが、経済産業省で、齋藤大臣が五十八年入省、柳瀬元総理秘書官が五十九年入省、一期下で大変親しい関係にあると思いますが、私も両方にお仕えしたことがございます。
比較的自分勝手にどんどん進めちゃうタイプが多い経産省の方の中で、柳瀬元総理秘書官というのは、割合上司に忠実に、大変記憶力のいい、ロジカルな方だと私は印象として残っておるんですが、齋藤大臣の印象をお答えいただけますでしょうか。
○齋藤国務大臣 柳瀬さんと一緒に私も仕事をしたことがありまして、自動車交渉を、私は米州課で彼が自動車課で、まさに厳しい交渉を一緒にやっておりました。
その当時は、おっしゃるように非常に堅実な仕事をされる方だと思いましたし、確かに上司の言うことを、後藤さんと比較してどうだったかはちょっとよく覚えておりませんが、堅実な仕事をされる方だったなと思っています。
○後藤(祐)委員 私も上司に忠実に仕事をしていたつもりでございますが。御答弁ありがとうございます。与党の先生方、ありがとうございます、受けていただいて。
もう一つ、ちょっと通告にはないお話ですが、大事な話なので大臣に伺いたいと思いますが、きのう、日中韓の首脳会談がございました。その場で、日中韓のFTAの交渉の加速化で一致したという報道が、これは一部、毎日ですとか時事ですとか、農業新聞にもありました。
この日中韓のFTAというのは、いろんなメリット、デメリットあると思いますが、特に農林水産業の観点から懸念もあると思います。これが進んでいくことについて、私はやや農林水産業の観点からは懸念材料も多いんじゃないかなと思いますけれども、齋藤大臣の印象をお答えいただけますでしょうか。
○齋藤国務大臣 当然、交渉でありますから、さまざまなことが懸念されるわけでありますけれども、私どもとしては、従来の通商交渉に臨む方針は一貫をしておりまして、貿易実態をしっかり見きわめて、センシティビティーにしっかり配慮をして、間違いのない交渉を進めていくというその方針は、本件においても変わりはありません。
○後藤(祐)委員 ありがとうございます。
これは、政治的な意味合いもいろいろあるでしょうし、ただ農業だけで判断してはいけないのかもしれませんが、やはり特に中国は日本に対しての農林水産品の輸出も多いですし、あるいは、韓国は米を始めとして日本と重なるところもいろいろございますから、慎重に御対応いただきたいということを申し上げておきたいと思います。
それでは、本題に入りたいと思いますが、まず、森林環境税についてお聞きしたいと思います。
きょうは、総務省から奥野副大臣にお越しいただいております。ありがとうございます。
この森林環境税、森林の支援策としての財源としてはある意味望ましい面もあるとは思うんですが、配分基準ですね、各市町村への。この配分基準が、人口割というものが入ってしまいました。
三割は人口割で決まるわけでございますが、これはなぜなんでしょうか。つまり、林業とほとんど関係のない東京のど真ん中の自治体が、人口だけ多いということでお金をもらえちゃうわけですね。
これに対して、需要対策だというへ理屈はあるのかもしれませんが、できればこの人口割はやめていただいて、林業の就業者数と森林の面積、これで決めるべきだというふうに考えます。今決まってしまった状態ではあると思いますが、今後の変更はあり得るのではないかと思いますが、副大臣の御見解をいただきたいと思います。
○奥野副大臣 今の御質問は人口割のところに焦点が当たっていたんですが、そこからちょっと申し上げると、都会だから森林がないからいいじゃないかというような理屈じゃなくて、やはり都会の方にも木材を利用していただくとか、それから、納税していただくわけですからそれに対する理解もしていただかなくちゃいけないということから、基本的に人口というものも、都会の人も含めて人口を加味したわけであります。
そもそもから申し上げると、市町村にかかわる森林環境譲与税の使途については、間伐等の森林整備とか、人材育成、担い手の確保、あるいは木材利用の促進や普及啓発などというふうにしているわけであります。
また、譲与基準については、これらの使途と相関の高い指標として、私有林人工林面積で五割、林業就業者数で二割、人口三割というふうにしているのは今御指摘のとおりであります。
この割合については、森林整備等が使途の中心であることを踏まえて、私有林人工林面積と林業就業者数で合わせて七割にするとともに、木材利用を促進することが間伐材の需要の増加に寄与することや納税者の理解が必要であることなどを勘案し、人口で三割としたものであります。
以上であります。
○後藤(祐)委員 ちょっと残念ですね。副大臣の御地元なんかは、まさに人口の少ない町村が多いんじゃないかなと思うんですけれども。
最初、導入するときの説得という意味ではそういう段階もあったのかもしれませんが、これから実際使途の話になっていったときに、しかも都会には基本的には裕福な自治体が多いわけで、利用促進のところで、へ理屈でお金が来るというのはいかがなものか。
私の選挙区には、神奈川では村があります、清川村という人口三千人の村があります。一方で、神奈川には四百万人近い横浜市もあるんですが、これは、与党の皆さん方からも賛同の声が上がっておりますけれども、ゼロかどうかは別として、三割が本当にふさわしいのかどうかはぜひ与党の中でも、そして野党でも議論を今後続けさせていただきたいと思います。
続きまして、林業就業者割というものが二割分ございますが、これはよく聞きますと、例えば林業を行っている会社があった場合に、その会社の所在地ではなくて従業員の住所で決まる。
個人でやっていらっしゃる場合は、もちろんその方の住所になるのはある程度仕方がないと思うんですが、個人で林業をやっていらっしゃる方はかなり山林に近いところにお住まいの方だと思うんですね。ですが、会社として、例えば二十人、三十人の会社があったとして、その住所は、実はもう少し都会の方に住んでいらっしゃる場合が大いにあるんです。実際、私の周辺では結構あるんですね。
そうしますと、この林業就業者割というのは、全体の二割ですけれども、就業者の数というのは日本全国でそれほど多くはありませんから、実は一人、二人の違いが大きいんですね。これは会社にお勤めの場合は会社の所在地で考えるべきではないかなと思いますけれども、いかがでしょうか。
○奥野副大臣 市町村分の森林環境譲与税の譲与基準のうち、人材の育成、担い手の確保に相関の高い指標としては、林業就業者数を用いることにしているわけであります。
譲与基準については、市町村別に把握できる客観的な数値に基づいて譲与が行われる必要があることから、林業就業者数の把握方法としては、基幹統計である国勢調査の結果を用いることが適切であると考えております。
しかし、譲与基準の具体的な内容につきましては、今後、国勢調査の内容等を十分に分析の上、これから決めてまいりたいというふうに考えているところであります。
○後藤(祐)委員 これからお決めになるということであれば、柔軟な対応が可能だと思います。
林業の事業者がどこの市町村におられるかということは、これは税を納めているわけですから全部完璧にわかるはずです。むしろ、従業員の方がどこにお住まいかというのは、調べるのは逆に難しい可能性がありますよね。国勢調査でちゃんと林業というところに丸を全員していればとれるかもしれませんが、いいかげんに国勢調査をお答えされていた場合には狂っちゃうわけですから、これは事業者の方で捕捉した方がむしろ確実なデータがとれると思いますので、ぜひ御検討いただきたいというふうに思います。うなずいていただいてありがとうございます、副大臣。
もう一つ残念なのが、森林面積割のところで、これは私有林と人工林だけであって公有林は入らないという形になっているわけでございますが、この公有林については別途、もしかしたら地方交付税も含めた他の手当てがなされているからだというような理屈なのかもしれませんが、この前法案審議のありました林業の経営管理法案などでも、私有林に比べて公有林に対してやや冷たいのではないかという感じもあります。実際、参考人で来られた方にもそういうお答えがありました。
ぜひ、この森林面積割、公有林も含めて計算すべきではないでしょうか。
○奥野副大臣 今、後藤さんの言にもありましたけれども、譲与基準に用いる森林面積については、まず、国有林というのは国の予算で処理されている、それから、今おっしゃったとおり地方団体が所有する公有林については地方財政措置で処理されているというのが今までの実態でありまして、それぞれ財源が手当てされているということに鑑みて、市町村が実施する森林整備等に要する費用に相関が高いと考えられる指標として、私有林かつ人工林の面積を用いることにしたわけであります。
なお、森林環境譲与税の使途については、平成三十年度税制改正の大綱において、森林整備及びその促進に対する費用とされておりまして、森林環境譲与税を創設するための法律案についても同じように規定をしていくつもりにしております。
こんなことでありますので、各地方団体においては、こうした使途の範囲内で、それぞれの地域の実情に応じて森林整備及びその促進に関する事業を幅広く弾力的に実施していただけるものと期待をしているところであります。
○後藤(祐)委員 先ほど申し上げた清川村は不交付団体で、地方交付税を受け取っていないんですね。特交なんかはちょっと別とすると。ですから、財源が来ていないんです。いろいろな事情が市町村ごとにあると思うんですね。
交付税で措置されているからお金が行っているでしょうというのは、現実に交付税の計算というのはそういうふうには決まっていないわけでありまして、実際、公有林というのは現場では荒れている部分も当然あるわけですから、ぜひ今後御検討いただきたいと思います。
これに関連して、農水大臣に一問お伺いしたいと思いますが、今申し上げたように、公有林についても荒れているところがありますし、お金が回らなくてなかなか管理が行き届かない市町村がたくさんあります。というか、そっちの方が現状だと思います。
これに対しては、森林環境保全直接支援事業という公共事業に近いような形の支援策があるというふうには伺っておりますが、これの増額ですとかも含めて、公有林の経営管理に関しての支援策を充実すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○齋藤国務大臣 森林の有する多面的機能を発揮しつつ、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理、これを実現するためには、適切な森林整備を推進することが極めて重要で、その点では民有林も公有林もないと思います。
このため、農林水産省としては、公共事業であります森林整備事業によりまして、公有林も含めた民有林における造林や間伐等の森林整備に対して、国と都道府県を合わせて約七割の補助を今行っているところでありまして、公有林も含めて民有林の森林整備をしっかり進めていきたいと考えています。
森林環境税ですけれども、所有者の経営意欲の低下等の理由によりまして私有林の整備が進んでいない現状のもとで、公的な管理を始めとする森林整備等の財源として創設をされる、これが本来の姿ではありますけれども、私有林の整備よりも公有林の整備がどうしても優先されるというような地域の実情がある場合には、市町村の判断によりまして、この森林環境譲与税をそういった公有林の整備に充てることは可能であり、適切であると考えています。
○後藤(祐)委員 ぜひ応援をいただきたいと思います。
それでは、奥野副大臣、どうもありがとうございました。ここまでで、後はないと思いますので、御退席いただいて結構です。
続きまして、TPPに行きたいと思いますが、TPPは条約、法案とも今審議が始まっておりますけれども、きょうの農水の理事会でも内閣委員会との連合審査について野党側からは申入れをさせていただいていると思いますが、ぜひこれは、農林水産業に対する影響というのは大変大きなものがあると思いますので、農林水産委員会として連合審査を求め、そして結果として連合審査を実現するようにしていただきたいと思いますが、委員長、お取り計らいを願います。
○伊東委員長 これにつきましては、与野党で、筆頭理事、協議しておりますので、またその上で決めたいと思います。
○後藤(祐)委員 ぜひよろしくお願いいたします。
連合審査が確定していないので、今の段階ではこの場で質問をした方がいいと思いますので、続けさせていただきたいと思います。
まず、タイがTPPに加盟をしたいという話が出てきております。もちろん確定したわけではありませんが、タイが入った場合には、日本にとってメリット、デメリット、かなり大きく出る部分があると思います。
まず、デメリットというか懸念でございますけれども、タイがTPPに加盟した場合に、日本の農林水産業にとって大きなマイナスの影響が出る可能性がある品目、幾つかあると思います。とりわけ米については、特にTPPというのは各国別の枠がありますから、タイから日本に輸入する米の枠というのが別途できてしまった場合、これは大変大きな懸念材料になるわけでございますが、ほかにも鳥肉だとか砂糖だとかパイナップルとか卵とかいろいろな、輸入量は多いものがございます。
それぞれ、関税が低いですとか、それほど影響はないという御説明もあるのかもしれませんが、現時点での輸入の実態、関税の実態等を見て、タイがTPPに加盟した場合に、農林水産業の観点からマイナスの影響が大きく出るのではないかというものを、上から三つぐらいを念頭にお答えいただけますでしょうか。
○野中大臣政務官 お答えいたします。
まず、タイがTPP11参加に向け強い意向を示している、また国内で検討を進めているということは承知をしておりますが、まだ正式な表明を行われたわけでもございませんので、仮定の質問についての回答は差し控えたいと存じます。
なお、TPPの新規加入国への対応を含め、今後の経済連携の取組について一般論として申し上げれば、農林水産省といたしましては、我が国の農林水産品について、貿易実態等を勘案しつつ、各品目のセンシティビティーに十分配慮しながら対応していくこととなります。
○後藤(祐)委員 ちょっと残念ですね。冒頭、齋藤大臣の御答弁の中で、貿易実態を見きわめるだとか、センシティブなものはきちっと対応していくですとか、お答えがあったわけですから。
タイの話、ここまで先方が前向きになっている以上、現実味を帯びてくるわけですから、当然もう計算されていますでしょう。だって、関税率でわかっているわけですし、日本とタイの間ではFTAがありますから、もう関税率で下がっているものはかなり下がっているんですね。農水産品はどうか、ちょっと物によりますけれども。実はもうわかっているんじゃないんですか、影響は。
日本とタイの間でTPPに加盟した場合にどういう影響が農水産品に関して出るかという計算は、既にされていますか。
○野中大臣政務官 委員おっしゃるとおり、タイとは平成十九年にFTAを締結しておりますが、まだTPPについては正式な表明を行っていないという、まだスタートに立っていない状況でございますので、そういった試算はないものと考えております。
○後藤(祐)委員 試算はないというのは本当ですか。そういうところからうそが始まっていくんですよ。だって、自分が担当だったら、いや、これは将来なるかもしれないから、どういう影響が出るかというのはまず計算しますでしょう。そう難しくないですよ。齋藤大臣、うなずいていますけれども。
まさにこれから出てくる可能性が大いにあるわけですから、しかも、何か小さい国で、輸出入が余りないような国だったらともかく、タイはやはり大きな国ですよ。これはきちんと、まさに貿易実態を見きわめて、センシティブなものについてはそういった対応をしていく上でも、準備すべきだと思いませんか、大臣。
○齋藤国務大臣 まず、タイは、今答弁いたしましたように、正式表明していないので、この件についてどうこうとコメントすることは控えたいと思いますが、ただ、一般論で言いますと、これから交渉を始めるに当たっては、どういう影響が出るかというのは当然腹づもりとして持つべきだし、持っていなくちゃいけないと思います。
しかし、それを、この品目が危ないとかこの品目が大変だということを事前に表明するということは、ある意味、弱みを相手に見せることでもありますので、交渉をもしかしたら不利にする可能性があるということも考慮して交渉は進めていかなくちゃいけないんじゃないかなというふうに思っています。
○後藤(祐)委員 逆にプラスになるところはどこなのかということについて、TPPの交渉を担当してこられた澁谷統括官にお越しいただいておりますけれども、同じ答えをいただいてもあれなので。
日本からタイに輸出している額の大きいものが幾つかあると思います、自動車の部品ですとか機械ですとか。こういったものというのは、先ほどお話に出た日本とタイの間の二国間のFTAで、ほとんど関税ゼロになっていると思うんですね。二〇〇七年十一月に日・タイFTAが発効していて、鉱工業品については十年で撤廃になっているんですね。
ですから、実は、日本からタイに輸出する多くの項目については、もう既にほとんど関税撤廃になっているのではないんですか。これはTPPと関係なく、事実関係としてお聞きしたいと思います。
○越智副大臣 私から御答弁させていただきます。
まず、五月一日に、茂木大臣がソムキット副首相らとTPP11協定の現状について情報提供また議論を行ったということでございます。
そういう中で、TPP11は、二十一世紀型の自由で公正な新たな共通ルールをアジア太平洋につくり上げて、そして、人口五億人、GDP十兆ドル、貿易総額五兆ドルという巨大な一つの経済圏をつくり出していくものである、そして、新たな加盟については、TPPのハイスタンダードでバランスのとれた二十一世紀型の新たな共通ルールを共有していくということで、意義は大きいという認識でございます。
その上で、今の御質問でございますけれども、現時点では、タイとは参加を前提とした正式な協議は行っておらず、予断を持ってお答えすることは困難であります。ただ、その上であえて申し上げますと、タイ側で関税が賦課される工業製品の我が国からの輸出上位三品目は、いずれも乗用車の完成品となっているということでございます。
○後藤(祐)委員 乗用車の、ちょっとよく聞こえなかったんですが、車の関係のもので関税が残っているものがあるということですか。どのぐらいの関税なんですか。
○澁谷政府参考人 事実関係ですのでお答えいたしますが、先生御指摘のように、日・タイのEPAで鉱工業品で先方の関税が撤廃されたものもあるわけですが、自動車についてはまだ残っておりまして、乗用車、完成車でございますけれども、ガソリン乗用車三千cc以下のものについては現行の関税が八〇%。ディーゼル乗用車は、二千五百cc超のものは、これは六〇%。それから、ガソリン乗用車三千cc超は、EPAで下げましたが、下げたにもかかわらずまだ六〇%、八〇から六〇まで下げるというのがEPAの結果でございますので、まだ六〇%残っている。
以上三つが、関税が賦課される工業製品の我が国からのベストスリーということでございます。
○後藤(祐)委員 なぜか、オフェンスの方というか、TPP側の方ではお答えされるのに、農水さん側、むしろダメージが大きい側はお答えになられないのは、どうなっているんですか。
では、内閣府側に聞きます。ダメージの方、上位三つをお答えください。
○横山政府参考人 お答え申し上げます。
輸入実績ということで申し上げますと、農林水産物の輸入でございますが、第一位が鳥肉調製品、それから鳥肉、エビ調製品、こういったところが上位に参ります。
○後藤(祐)委員 まあ、不完全ですが、せめてそのぐらいお答えしてくださいよ、政務官。
それで、先ほど完成車の話がありました。完成された自動車については、東南アジア各国はかなり高い関税をかけているのはよくあることですが、自動車部品はほぼゼロになっているはずなんです。
例えば、タイには日産が出ていて、マーチとかをつくっているんですけれども、そこに対して日本から部品を供給するときに、関税がかかると非常にやりにくいんですね。そこは多分なくなってきている。そのあたりがTPPなりFTAのメリットだと思うんです。米州課であるいは自動車の関係もやっておられた齋藤大臣の方がよくおわかりだと思いますが。
実は、その辺のメリット、かなり、もう終わっているんですよね。完成車をゼロにしろというのはなかなか難しい話で、だから、それがわかっているから日本の自動車メーカーも必要なところはタイに出ていったりしているわけですね。あるいは、東南アジアや中国、ほかの国に行って、そこから出したりしているわけですよね。アジアとしてのグローバルなチェーンがもうできているわけでありまして、そう考えると、実は、メリットというのがどの程度あるのかがよくわからない。
一方で、はっきりお答えになられませんが、鳥肉の加工品は私は調べました。タイは関税率が、これは教えていただいていますよね、八・五%と五%という二つあって、物すごい高いわけではない。これがゼロになると、それだけのメリットはありますが、すごい高い関税率があるわけではどうもないということのようなんですが、やはり圧倒的に心配なのは米なんですよね、タイの場合は。実際にジャポニカ米とインディカ米は違うかもしれませんが、タイからインディカ米が大量に入ってきて、冷凍チャーハンか何かにそっちを大量に使うようになって、日本のものを使わなくなるというようなことになったらどうなるのかとか、考えるといろいろなことがあるわけです。
ぜひ、これは齋藤大臣にお伺いしたいと思いますが、タイがTPPに加わるという話が出てきたときに、米について、TPPでは国別の輸入枠を日本は設けていますが、タイから日本への米の輸入枠を別途設けるということになってしまうと、これは間違いなくかなりダメージがあると思うんです。ですから、タイがTPPに加わるということについて、全体として慎重に対応していただきたいと思いますが、とりわけタイから日本への、タイ向けの米の輸入枠、これはつくらないということをお約束いただけますでしょうか。
○齋藤国務大臣 まだタイの正式表明もない段階で、これをこうしたらどうするんだ、これをこうしたらどうするんだという話にお答えするのは、私は本当に適切じゃないなと思っておりますが、先ほど申し上げたように、国内におけるセンシティビティーというものは、一二〇%、十分承知をしておりますので、それを踏まえて対応していきたいと思っています。
○後藤(祐)委員 メリットの方がすごく大きくてといったときにどうするかという話なら、まあ、これでも心配しなきゃいけないです、農水としては。ですが、どうもタイについては、とれるところはもうかなりやってきているという感じがありますので、何も譲る必要は全くないのではないかということを申し上げておきたいと思います。
続きまして、TPP11に関連する話を続けたいと思いますが、まずは牛と豚のマルキンについてでございますけれども、マルキンを定める法律、これが整備法の中に入っているわけですが、この法律は、TPP11が発効しないとこの法律は施行されない、こういう形の法案になっております。
ただ、では、これは予算上、今実務としてどうなっているのかということを教えていただきましたら、牛の方のマルキンについては、今年度、既に九割というお金が確保できておりまして、四月の分の牛からは適用される。実際のカウントなんかは六月ぐらいから実務上始まるということですけれども。
つまり、法律が施行になっていなくても、マルキン法が施行になっていなくても、予算上は、牛に関しては、もうこの四月からちゃんと九割でやるということが決まっています。つまり、TPP関係ないんです。ですが、豚については、今年度はまだ八割、昔からの八割分しか予算確保されていないという状況になっております。これが何を物語っているか。
これは、まず事実関係として正しいでしょうか。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
牛マルキンにつきましては、今御指摘いただきましたとおり、子牛価格が過去にないほど高騰しているということで、肉用牛肥育経営の収支の悪化が懸念されるので、国際協定締結への対応とは切り離した緊急の対策として、平成三十年度単年度の措置として、本年四月以降に販売した牛について、補填率を九割に予算措置として引き上げてございます。
豚については、そういう対応をしてございません。
○後藤(祐)委員 予算措置としてもう行われているんです、牛九割は。TPP関係ないんですよ。
そうしますと、では豚の八割のところをどうするかということが恐らくこのマルキン法の意味でして、つまり、財務省に対して、平成三十一年度予算でちゃんと豚マルキン九割をよこせという根拠とするためにこの法律はある。さすがに法律で決めれば、財務省はノーと言えませんから。
TPP関係なく、豚マルキン九割をとるための法律ということになっていませんか、大臣。
○齋藤国務大臣 TPPの議論をするときに、この牛、豚のマルキンの議論は十分したわけであります。これは、当然のことながら、協定が発効したときの経営安定対策として、予算措置ではなくて、法律でしっかり書くということを決めさせていただいたということであります。
ですから、そういう意味でいうと、予算措置でも十分対応は可能だったわけでありますけれども、このTPP、当時は12でしたけれども、これを実施に移す際の経営安定対策としては、法定化で九割ということを決めさせていただいていた。
先ほど局長から答弁したように、今回牛について上げたのはまた別の理由で、単年度限りで一年間措置するのが適切であろうということで予算措置をしたということで、分けて考えていただければありがたいなというふうに思っております。
○後藤(祐)委員 つまり、九割にするきっかけとしてTPPはあったと思いますけれども、きっかけでお役はもう果たしたわけですから、実際、予算としては牛は九割とれているわけですから、豚の九割とりましょうよ。
与党の先生方も野党の先生方も、ここにおられる皆さんは、豚九割早くとろうということで、恐らく農水省も御賛同いただけると思うんです。財務省なんですよ、問題は。でも、法律で書いたら、さすがにノーと言えない。
つまり、この法律は、TPPと実はもはや関係なくなっていて、平成三十一年度予算で豚九割とるための道具になっているんですよ。だったら、整備法にしちゃうと、その施行日が11の施行日になっちゃっているから、11がいつ発効になるかというのはわからないじゃないですか。ことしの十二月までに施行になるんですか、発効になるんですか。あるいは、もっと言うと、八月三十一日の来年度の概算要求締切りまでに11が発効するんですか。わからないじゃないですか。
与党の先生方、マルキン法だけ別にしませんか、与野党で。切り離して、議員立法で、豚も含めたマルキン法で切り離して通しちゃえば、そうしたらもう簡単じゃないですか。財務省はイエスと言うしかないんですよ。しかも、その用意はあるわけですよ。ぼけぼけしていると、三十一年度に間に合わなくて、ずるずる後ろに行く。これは、ここにおられる皆さんの思いと外れていませんか。
このマルキン法については、取り出して、単独の形で民主党時代に我々提案させていただいています。ぜひこれは与党の先生方にも御理解をいただきたいと思いますが、これを齋藤大臣に聞いてもしようがないと思うので、次に行きたいと思います。
ぜひ、与党の先生方、これは考えていただきたいと思います。何で11の発効日にマルキン法の施行日を合わせるのか。全く意味がありません、全く意味がない。九割施行されているんだから、牛は。これはぜひ与党の中でも御理解いただきたいと思います。ぜひ出していただきたいと思います。
では、次に行きたいと思いますが、11の見直し規定六条についてお伺いしたいと思います。
この六条では、TPP協定が効力を生ずる見込みがない場合に、締約国の要請により本協定の見直しを行うことを定めています。
これは何を言っているかというと、アメリカが入らないことが確定した場合には見直しを行うということが読めるわけでございますけれども、これについては、以前もこの場で、特に乳製品のTPPワイドの七万トン枠、日本に対してTPPの締約国各国合計の輸入の総枠を七万トンというふうに定めておりますけれども、これは、アメリカが入ることを前提にできた数字であります。アメリカが入らないことが確定した場合には、この六条により見直しを行うことを定めているわけですから、七万でなくてもっと小さい数字にしてくれということを当然求めるということになるんだと思います。
これは、セーフガードについても前回御指摘させていただきましたが、こういったTPPワイドの日本に対する輸入枠、乳製品の七万トン枠やセーフガードなどについてのTPPワイドの枠については、アメリカが締約国となる見込みがなくなったら見直しを求めるということでよろしいんでしょうか。
○澁谷政府参考人 見込みがなくなった場合は見直しを求めるということで、各国に説明をしているところでございます。
○後藤(祐)委員 これは重要な御指摘だと思いますが、アメリカが入らないということが確定したら七万トン枠は見直しを求めていくということですが、これは実際、オーストラリアだとかニュージーランドが、はい、わかりました、七万トン、下げますとなるわけないじゃないですか。
本来アメリカを含めて七万トン枠だったものが、アメリカが入りません、11で発効しました、こういったオーストラリアやニュージーランドなんかが、本来だったらとれる枠よりも、アメリカがいない分、もっとたくさんとれちゃうわけですよね。そういう輸出入実態がどんどん進んでいってしまったときに、いや、アメリカが入らないことが確定したので七万トンを下げさせてくださいと言ったって、そんな交渉に先方が応じる可能性はほぼあり得ないと思いますが、いかがですか。
○澁谷政府参考人 同じようなTPPワイドの枠、まさに乳製品なんかで持っている国が、カナダ、ほかにもTPPワイドの制度を持っている国が幾つかありますが、同じような制度を持っている国が幾つかある中で、ニュージーランド、オーストラリアも含めて、アメリカがTPPへ復帰しないことが確実になった場合にはいずれにしてもいろいろ調整が必要になるだろうということで、そういう認識が多くの国で共有をされ、特にTPPワイドのようなものの取扱いについては、ニュージーランド、オーストラリアも含めて理解を得ている、こういうふうに考えております。
○後藤(祐)委員 理解を得ているという言葉の意味がよくわかりませんが、そもそもこの11の交渉のときに、将来アメリカが抜けた場合にはこういったTPPワイドの枠については見直しを行うということで合意を目指すべきだったんじゃありませんか。
○澁谷政府参考人 事前に合意するということは、実態上、修正について合意するという形になりますので、そういうことは、いずれにしても、発効した後、状況の変化を見ながらきちんと議論していくということで、第六条の規定を設けるということで各国が合意したということでございます。
○後藤(祐)委員 オーストラリア、ニュージーランドには、この逆側のこういったTPPワイド枠で、彼らも下げたいというような枠が何かあるんですか。
○澁谷政府参考人 オーストラリア、ニュージーランドからは、11の交渉の中で日本が六条の発動をした場合に、自分はこういうことを主張するというような話は特段聞いておりません。
○後藤(祐)委員 成り立たないんですよ。オーストラリア、ニュージーランドは、これをイエスと言う余地がそもそもないんですよ。
ですから、これは、アメリカが入らないということが確定した段階で、この七万トン枠は過剰に譲り過ぎたということが確定しちゃうんですよ。これは交渉としては負けじゃないですか。何で11交渉の段階でそこをもっとこだわらなかったんですか。
逆に言うと、11の段階では、七万じゃなくて、もっと小さい数字の枠ということを決めればよかったじゃないですか。その上で、アメリカが入ってきたらまた七万に戻すということにすべきだったんじゃありませんか。
大臣、どう思いますか。これは負けですよ、この戦は。
○澁谷政府参考人 今、先生まさにおっしゃったわけでございますが、アメリカのTPP復帰を促すというのが十一カ国の立場でございまして、仮に、アメリカがいないことに伴う修正を先に行った場合に、まさに今先生がおっしゃったとおり、アメリカが戻ってきた場合には、アメリカの分をどうするかという交渉をしなきゃいけないわけでございます。
十一カ国としては、アメリカの復帰を促すという立場であるということを踏まえて、また、日本以外にも同じような制度を持っている国がある中で、各国で議論をした結果、現時点で修正を行わず、発効後必要と判断する時点で見直しを行うということで合意したものでございます。
○後藤(祐)委員 アメリカが戻ってきたときは簡単ですよ、七に戻せばいいんだから。12で合意した内容に戻せばいいんですから、簡単じゃないですか。11の場合の数字を交渉の中で議論して決めればよかったじゃないですか。そういう議論はしなかったんですか。
○澁谷政府参考人 発効前に、特に市場アクセスのように非常に相互にお互いに絡み合っているようなガラス細工の、特にガラス細工性の強い市場アクセスについて、発効する前に一部を修正するということはなかなか難しい。ただ、一旦発効した後は、それに伴って、その後の状況の変化に応じた見直しというのは可能であろう。
十一カ国の間でさまざまな議論、いろんなシミュレーションを行ってさまざまな議論をした中で、最終的な結論は、先ほど申し上げたとおり、発効前にここは修正を行わずに、発効後の見直しに委ねようというのが結論でございます。
○後藤(祐)委員 おり過ぎですよ。11の条約を結べばよかっただけなんですよ。11に一番ふさわしい数字をちゃんと、多少時間がかかってもつくるべきだったんじゃありませんか。アメリカが戻ってきたら、12で合意した数字に戻せばいいだけじゃないですか。それは簡単なことじゃないですか。へ理屈を言っているだけですよ、澁谷さん。
大臣、どうですか。大臣は、日米交渉を含めて、こういった交渉をむしろオフェンス側でやってきた経験があって、農林水産副大臣時代も含めてディフェンス側もやったことがあって、両方の事情をよくわかっていると思うんです。この交渉のやり方は稚拙じゃありませんか。11では、七じゃなくて、三だか四だかわからないけれども、もうちょっと小さい数字を時間がかかってでも合意をして、アメリカが戻ってきたらまた七に戻すということを日本として主張すべきだったと思いますが、どう思いますか、大臣。
○齋藤国務大臣 私ども、交渉そのものを行っているわけではありませんので、交渉の複雑な過程についてはつまびらかに承知しているわけではありませんが、今、澁谷さんから御説明したように、まず、枠自体は変わっていないので、11になっても国内に与える影響は変わらない。そして、アメリカがもう戻らないということがはっきりした場合には、枠数量等の見直しを行うということを各国に明確に伝えて理解をいただいているという御説明をいただいているので、それを信じているということでございます。
○伊東委員長 後藤君、時間ですので。
○後藤(祐)委員 終わりますが、理解をいただいているといって、オーストラリア、ニュージーランドは、じゃ、いいですよといって戻すわけないじゃないですか。
では、戻さなかったときは責任をとっていただけるんじゃないかということを申し上げて、終わります。
ありがとうございました。
○伊東委員長 次に、田村貴昭君。
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
霧島連山・硫黄山の火山噴火に伴う河川汚濁、そして農業被害について、きょうは質問をします。
四月十九日、硫黄山が噴火し、活発な火山活動が続いています。そして、宮崎県えびの市内を流れる赤子川、長江川、鹿児島県に通じる川内川では、砒素など環境基準を超える有害物質が検出され、農業用水が取水できない事態となっています。
お手元配付の資料をごらんいただきたいと思います。
上流の方から並べていますけれども、1は赤子川、水が真っ白になっています。そして2は、その下流にある長江川の大原橋付近から私が撮影したものでございます。それから3、長江川が川内川と合流するところですね、川の色の違いがお見取れいただけるんじゃないかと思います。それから4です、宮路議員の配付資料でもありましたように、魚が死んでしまう、ぷかぷか浮いてしまうというところは、あちこちで報告されてきたところであります。
川からの水を取水する農業地域では、ことしの稲作はできないと判断し、断腸の思いで田植を断念しています。
そこで、大臣にお伺いします。
宮崎県えびの市で四百六十ヘクタール、六百五十戸、鹿児島県湧水町、伊佐市で六百二十ヘクタール、七百五十戸、計千八十ヘクタール、千四百戸が今の時点で稲作を断念していると聞いています。今後も見通しが立たないとなったら、営農意欲を失う、ひいては離農をもたらしていく。既に離農の声も上がっているところです。
宮崎、鹿児島の両県知事とももう面談されたと伺っておりますけれども、齋藤大臣の受けとめと支援への決意をまずお聞かせいただければと思います。
〔委員長退席、坂本委員長代理着席〕
○齋藤国務大臣 えびの高原の硫黄山の噴火に伴います周辺河川の水質への影響を踏まえまして、現在、宮崎県えびの市では、赤子川、長江川及び長江川合流地点より下流の川内川、これを水源とします河川からの取水は行わない、それから、鹿児島県の伊佐市及び湧水町では、川内川からの取水は行わない、また、同河川から取水する水田において水稲作付を行わないという方針を決められているということはお聞きしております。
農林水産省としては、水稲作付が困難な地域、これが広がってきているということについては深刻に受けとめておりまして、こういった地域での大豆や飼料作物といった他の品目への転換を進めることによりまして、何とか農業者の営農そのものが継続できないか、このことが重要であると今考えております。
また、そのほかにも、今御指摘ありましたように、おととい宮崎県、鹿児島県の両知事ともお目にかかりましたし、それから、きょう、えびの市、伊佐市、湧水町の首長さんとも、これは国会が終わって夕方になりますけれども、夕方じゃないかな、終わってからお目にかかることになっておりますので、よく皆さんの御意見を聞きながら、農業者の皆さんが営農を継続するためにどのような対応が必要か、この点について早急に検討してまいりたいと考えています。
○田村(貴)委員 六月の田植に向けて、まさに準備をしている、準備に入るといったところでありました。稲作農家の思いに、今、思いをはせないといけないと思っております。
水稲の共済はどうなっていくでしょうか。移植期における制度についての説明をお願いします。
○大澤政府参考人 お答えいたします。
水稲の作付の準備をしていたものの、水稲共済の責任期間である移植期におきまして、噴火に伴う河川水の汚染被害が継続し、作付できなかった場合は、共済金の支払い対象となります。
この場合、共済金は経営コストを勘案して通常の半分を支払う仕組みとなっておりますが、多くの方が加入している一筆方式七割補償の場合は、耕地ごとの平均収量の三・五割に相当する共済金が支払われるということになります。
このことにつきましては、農業者向けのチラシを作成し、農業共済団体を通じて、今週中を目途に農業者に周知してまいりたいと考えております。
○田村(貴)委員 三・五割の補償になることは確認させていただきました。
それで、転作等における支援措置についてであります。
宮崎、鹿児島両県知事からは、水田活用の直接支払交付金の確保、種子代、農業用機械導入等の支援、代替水源の確保のための調査を始め、切実ないろいろな要望が出されています。これに対する農林水産省の受けとめはいかがでしょうか。
○柄澤政府参考人 お答えいたします。
農水省といたしましては、水稲作付が困難な地域においては、大豆や飼料作物といった他の品目への転換を進めることによりまして、農業者の皆様の営農を継続していくことが重要だと考えております。
その際、例えば大豆ですとか飼料作物の作付を行った方に対しましては、水田活用の直接支払交付金、これは十アール当たり三万五千円でございますが、これが支払われることになります。
また、大豆の作付を行った場合には、認定農業者等の要件に合致する場合に、いわゆるゲタ対策、畑作物の直接支払交付金による面積払い、これは十アール当たり二万円でございますし、更に数量払いが支払われることになります。
このほか、御指摘ございましたような種子代ですとか機械導入、代替水源調査などの御要望をいただいているところでございますので、今後、宮崎県、鹿児島県、また関係市町村等とも連携しながら、農業者の方々が営農を継続するためにどのような対応が必要か、早急に検討してまいりたいと存じます。
〔坂本委員長代理退席、委員長着席〕
○田村(貴)委員 両県知事の要望は、現行制度にもありますし、ハードルの高い要求ではないというふうに思います。最低限度の今やってほしい措置、対策だというふうに思いますので、これに加えてどれだけの検討ができるのかといったところを詰めていただきたいなというふうに思っております。よろしくお願いします。
それで、上流の赤子川、私行ってまいりまして、1の写真ですけれども、強酸性だというので、ちょっと私も手をつけるのもいかがなものかなと思いました。不思議なことに、硫黄臭はかすかにしたんですけれども、鼻をつまむようなにおいではなかった。どこに行ってもそういう状況ではないんですけれども、中にある、川の中の成分については基準値を何十倍上回るものが出てきたのと、下流域まで行っていることに大変驚きました。硫黄山から二十キロ以上も離れた川内川でも基準を上回る砒素が検出されたということであります。
こうした私たちにとって有害な重金属類の河川への流出原因についてはこれから解明を待たなければいけませんけれども、今の時点でどうしてこういう状況になっているのか、環境省、お答えいただけるでしょうか。
○江口政府参考人 お答え申し上げます。
気象庁が五月一日に発表した資料によりますと、硫黄山周辺で泥水の噴出が見られており、硫黄山周辺の沢で灰色の泥水が流れていることを確認したとされてございます。
また、環境基準を超える砒素などが周辺の河川で検出されている点につきましては、火山の専門家の見解といたしまして、硫黄山の地中には砒素などの有害物質も硫化物として多く堆積しており、これらの硫化物を含む泥水が噴出し、河川に溶け出したとしているとの報道を承知してございます。
○田村(貴)委員 活発な火山活動が続いていますので、やはり発生源対策を考えていかなければいけない。これは霧島連山にかかわる話ではないわけですね。火山大国日本ですから、こうした現象というのはどこでも起こりかねないということだというふうに思います。
現地は、ぜひ聞いていただきたいんですけれども、わからないんですよ、なぜこうなっているのか。そして、専門家とかそれから国の知見を寄せてほしい、ぜひ私たちではわからないことを教えていただきたいと言っておられますので、私は、やはり知見の導入が求められるというふうに思います。このメカニズムについての解明を急いでいただきたいと思います。
そして、えびの市が沈殿池を数カ所つくるというふうにも伺っております。非常災害なので、国立公園内における造作等についてはクリアできると考えていますけれども、自然公園法との関係で説明をいただけるでしょうか。
○米谷政府参考人 国立公園の特別地域内において工作物の新築等を行う際には、通常、自然公園法に基づく環境大臣の許可が必要となりますが、非常災害のために必要な応急措置として行う場合には、その行為をした日から起算して十四日以内に環境大臣にその旨を届け出る必要はありますが、事前の許可は不要となります。
なお、この件につきましては、五月七日にえびの市から相談を受けまして、この旨を伝達しておるところでございます。
○田村(貴)委員 原因をできれば取り除く、これができれば河川汚濁の問題を解決することができるわけです。
内閣府から山下政務官にお越しいただいております。
そこで、質問をさせていただきたいんですけれども、活動火山対策特別措置法、この第二十八条ではこういう規定があります。「国及び地方公共団体は、火山の爆発に伴い河川の流水の水質の汚濁が著しくなり、人の健康又は農林漁業等に係る被害が生ずるおそれがある事態が生じたときは、速やかに当該河川の水質の汚濁を防止し、又は軽減するため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」まさに今度の事例がこの条文に当てはまるというふうに考えます。
発生源対策をしなければ解決できない。そして、鹿児島県の知事も、上流域における恒久対策を国に求めているところであります。河川の汚濁防止、軽減に政府としてどういう措置が考えられるのか、内閣府防災としてこれからどうされるのか、お伺いしたいと思います。
○山下(雄)大臣政務官 お答えいたします。
河川の汚濁防止、軽減については、水質等の状況を把握した上で、どのような対策が可能かということを検討する必要があるというふうに考えております。
鹿児島県におかれましては、昨日、対策本部会議が開かれて、これまでの経緯や現状などについて議論がなされたと承知しております。また、宮崎県についても同様の議論がなされているというふうに伺っております。
内閣府としては、これらの現地の取組を支援するために、昨日ですけれども、関係省庁の連絡会議を開いて、まずは情報の共有を図ったところであります。引き続き、農林水産省や環境省など関係省庁と連携して取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○田村(貴)委員 えびの市の沈殿池をつくるとかいろいろな対策については、国も一緒にやっていくというスタンスでよろしいですか。
○山下(雄)大臣政務官 関係自治体の話をよく伺った上で、我々としても、各省庁と連携して、何が対策としてとり得るかを検討していきたいというふうに考えております。
○田村(貴)委員 各省庁連携の話が出てまいりました。そこで、最後に、齋藤大臣にもその連携のイニシアチブを内閣の一員としてお願いしたいと思います。
えびの市で農業生産法人で働く方に、連休中でありましたけれども集まっていただきました。伺えば本当にお気の毒で、去年に仲間で会社を立ち上げた、そして稲作をやっていると。
きょう宮路議員からもお話ありましたように、えびのとか湧水、それから伊佐市、日本の名立たる米どころで、おかずが要らずにお米が食べられる、非常においしいお米ができるところです。農家の落胆というのは本当に想像にかたくないところであります。
借金をして機械も購入した、収入がなければ払う当てもなくなっていく、肥料をまき、種もみの準備にも入っていただけに残念である、ことしは諦めたけれども、来年は作付ができるのであろうかと。ここの思いにやはり行政が、国がしっかりと応えていかなければならないというふうに思います。
きょうは私は発生源対策の方も質問をしましたけれども、これにおいては、農林水産省の所管を出てしまうところもあります。しかし、大臣、この問題解決に省庁間の連携、ぜひともイニシアチブを発揮していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
○齋藤国務大臣 今回の硫黄山の噴火により一番影響を受けていますのは農業者であります。したがって、農業用水を確保し、営農を継続するためには、御指摘の発生源対策というのは重要であるというふうに認識をしています。
このため、河川への有害物質の流入防止対策を行うように、関係府省に対して、農業を所管する大臣として、積極的に働きかけてまいりたいと思います。
○田村(貴)委員 被災者、被災農家に寄り添った対策と支援を心から求めまして、きょうの質問を終わります。
ありがとうございました。
○伊東委員長 次に、大串博志君。
○大串(博)委員 無所属の会の大串博志でございます。
早速質問させていただきたいと思います。
日米の新経済対話に関してなんですけれども、私、四月に質疑をさせていただいたときに、総理がトランプ大統領との日米首脳会談に向けて出発しようとされる前、農水大臣に、貿易に関してどのような話が出てくるか非常に心配されていたときでした、よって、農林水産の面においては、TPP以上、更に譲歩をさせられるようなことがあってはならないという決意の言葉も言っていただきたいというふうに思って質疑をさせていただいたんですけれども、ちょっと驚いたんですけれども、大臣からの答えは、自分の思いはある、いろいろもちろんそれはあって言っている、しかし、ここでのコメントは差し控えさせていただきたいというふうに、言われなかったんですね。私は、これは非常に農水大臣として心配なんです。
というのは、農林漁業の皆さん、今後の日米新経済協議、新協議ですね、新経済協議、どうなるんだろうと物すごく心配されているんですね。もちろんTPPもそうですよ。それに対して農林水産大臣が、農林水産大臣としてこうしますと、きちんとした物言いをしないで、どうやって農林漁業者の不安を払拭できるのか。ただでさえ、今、農林漁業の皆さんは、将来が心配だから、若手に、あるいは自分の子供たちに継がせることをやめようという方々がたくさん出てきていらっしゃるのは大臣も御存じのことと思います。にもかかわらず、コメントはしないというようなことでは、私はあってはならないと思うんですね。
ですから、ぜひ大臣には、しっかりと農林水産大臣としてこうするんだという方針はきちんと述べていただきたいというふうに思うんです。
その上で、この新経済協議ですけれども、私は、日米首脳会談の結果でこれは今後進むことになっているわけですけれども、どう見ても、日米FTA、これが始まるんだなというふうに思わざるを得ないと思うんですね。
先ほど後藤委員がTPPの議論をされました。TPPもこれからいろいろ議論がある。しかしながら、この日米の首脳会談で決まったことは、自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議を茂木大臣とライトハイザーUSTR代表の間で開始するということなんですね。
これは、日米FTAそのものじゃないですか。そう思われませんか、大臣。違いますか。
○齋藤国務大臣 まず、先ほど、私が意見を差し控えたということをお話しされましたけれども、あのときの議事録を見てみますと、私自身の思いはいろいろありまして、これまでも、TPP、日・EU、オーストラリアも、私、農林部会部会長、副大臣で関与してきまして、私自身は、農業の維持発展を旨としてこれまでも取り組んでまいりましたと申し上げた上で、そういう意味では、大変強い私の意見は総理には十分伝わっていると思いますと。
その上で、総理がトランプさんと交渉に入ったということは申し上げた上で、今回の日米首脳会談で合意されましたのは、自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議、これを開始するということがまず合意をされたと。
それで、本協議は、公正なルールに基づく、自由で開かれたインド太平洋地域における経済発展を実現するため、日米双方の利益となるよう、日米間の貿易・投資を更に拡大させていくとの目的で行われるもので、これは総理もはっきりおっしゃっておりますが、本協議は、日米FTA交渉と位置づけられるものではなく、その予備協議でもない、こう総理もたしか本会議で答弁をされていたと思います。
我が国としては、TPPが日米両国にとって最善であると考えておりまして、その立場を踏まえた上でこの議論に臨んでいくということとしております。
もちろん、具体的な議論の対象とか開始時期はまだ決まっておりませんで、これからアメリカ側と調整をしていくことになるわけでありますが、いつものことになりますけれども、農林水産省としては、我が国の農林水産業の維持発展を旨として、関係省庁と連携して、引き続き適切に対応していくということであります。
○大串(博)委員 今、大臣、日本の立場として引き続きTPPが望ましいということであって、これは日米FTAではないんだというふうに、日本側の総理大臣としては、安倍総理としてはそうだということはるる申し上げられていらっしゃるんですけれども、でも、非常に驚きなのは、当時、私も見ました、安倍総理とトランプ大統領が並んで共同記者会見をやった。異様だったんですよね。
安倍総理は、一生懸命、TPPがいい、TPPがいいということを繰り返し言ったということをおっしゃっていた。その横でトランプさんは、言下にTPPは嫌なんだと。言下にその場で否定されている。私は、異様な日米首脳共同記者会見だったと思いますよ。通常は、スタンスがそろったことをやはり言うんです。ところが、議題となったそのことに関して、言うことが全く違っている。
トランプさんは、繰り返し、記者会見の最後に至るまで、私はTPPには戻りたくないんです、二国間の協定の方がよいと思っています、アメリカにとってもアメリカの労働者にとってもその方が有益です、私は二国間の貿易協定の方が好ましいと思っています、日本にとってもいいものができるはずです、繰り返しこうやって言っているわけですよ。
その枠組みとして新経済協議というのがあって、そのタイトルですら、私は、もう少し貿易色を薄めた、例えば、経済対話とか、ソフト面あるいはルール面を含めたことの打ち出しで来るのかなと思ったら、自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議、これはまさにFTAそのものじゃないかと私は思うんですね。よって、私は非常に危惧をしているわけです。
この上で、大臣にお伺いしたいんですけれども、この貿易協議が進むわけですね、この貿易協議が進む中において、例えば、大臣は、担当の茂木大臣との関係で、農林水産担当大臣としては、絶対にこういう協議、こういう内容になってもらわなきゃ困るというようなことは言っていらっしゃるんでしょうか。それは、どういう内容として茂木大臣には言っていらっしゃるんでしょうか。
○齋藤国務大臣 先ほど私が申し上げたような、日米FTAではない、それからその予備協議でもないということは、わざわざ私が茂木さんに申し上げるまでもなく、総理を含めて共有をしている認識であるということは申し上げさせていただきたいと思います。
その上で、まだ議題等についてもこれからでありますので、そういうものが明らかになってきた段階で私どもの意見はしっかりと伝えていきたいと思っています。
○大串(博)委員 FTAではない、予備協議ではないというふうに言われる。
予備協議のことに関して一つ申し上げさせていただきますと、私も、民主党政権のときにはTPP担当の政務官をやりました。その間、USTRともやり合う機会があった。実感からすると、予備協議という言葉でもいいかもしれません。日本側からいうといわゆる入場料ですね、前払い、これを強く要求してくるのがアメリカ政府ですね。
これは、過去の貿易交渉も私は担当したことがありますけれども、極めてその特色が強いと思うんです。ましていわんや、トランプ大統領、自分はディールが得意だということをおっしゃっていらっしゃるんですね。その傾向は非常に強いんじゃないかなと私は思いますよ。
例えば、今回の鉄鋼、アルミニウム、高関税を打ち出して。これは、もちろんアメリカのためにやっているんだという本質論も言っているんだと思いますけれども、多分に交渉材料、そのほかの交渉材料として使っている可能性がある。例えば韓米のFTAの見直しの場合には、これは入場料的に使われましたね。
実際、トランプさん、その日米首脳の共同記者会見のときに言っているんですよ。二百三十二条、米通商拡大法二百三十二条ですね、このアルミと鉄鋼に関して高関税をかけた根拠法。関税をそれぞれかけています、これは多くの国との交渉材料となっていますと明らかに言っているんですね。もうみずから、これを一つの交渉材料として、本丸でいいものをとっていくということに使うんだぞと言っているに等しいんですよ。
日本もこの鉄鋼とアルミにかけられています。そのいわゆるビハインドもある。ビハインドもある中で、これが本当に予備協議でないと言える根拠というのは、この日米新経済協議が予備協議ではない、この鉄鋼とかアルミの、ある意味人質のような形でとられて、本格的な貿易交渉が始まる前の入り口の段階で大きな譲歩を枠組みとしてとられるというような予備協議でないと先ほど言われましたけれども、その根拠はどこにあるんですか。
○齋藤国務大臣 まず、アメリカが手ごわい相手であるということ、それからさらに、トランプ大統領が更に手ごわい相手であるということは十二分に承知をしております。
その上で、私どもがこの協議を受け入れるに、協議するということを決めるに当たっては、それなりにしっかりした判断をして、この協議を合意しているわけであります。その判断として、総理が申し上げているように、これは日米FTAでもなければ予備協議でもないということをはっきり申し上げた上で、この協議を立ち上げているということであります。
○大串(博)委員 どうもまだふわふわするんですね。日米FTAでもない、予備協議でもない、議題等々もこれから決まる。では、何なんですか、この協議は。
いつ始まると農水大臣は認識しているんですか。いつ始まり、どういう内容の協議だというふうに農水大臣としては認識しているんですか。
○齋藤国務大臣 現時点での私の認識ということになれば、本協議の議論の対象ですとか開始時期というのは、正直、これからまだ米側と調整をしていくことになっていますので、私としては、どういう協議というのは申し上げにくいわけであります。
ただ、繰り返しますけれども、日米FTAでもなければ予備協議でもないということは明確に申し上げたいと思いますし、この中で、TPPにアメリカが戻ることが最善であるというスタンスを引き続きアメリカと調整をしていくことになるのではないかと思っております。
○大串(博)委員 TPPに戻ってほしいという基本的なスタンスがある、それはわかりました。ただ、それが本当に可能かというと、相当難しくなってきているんじゃないかという、普通に考えるとそれは思う。
TPPに戻られなかった場合に、二国間の協議になっていく。その場合に、鉄鋼とかアルミのハードルがあるから、それを越えていくときに大きな譲歩を求められることになり得るんじゃないかというのが非常にやはり心配であって、農家の皆さんはこの行く末を非常に注視されていると私は思うんですね。
ですから、タイミングに関しても、今まだタイミングも決まっていませんということでした。ただ、今のトランプ政権のいわゆる目の前にあるであろう彼の時間軸を考えると、今回の北朝鮮との彼の行為を見ても、どう考えても、秋の中間選挙を見据えて、そこに向けて成果を出していきたいということは明らかなんじゃないかと思うんですね。
そういう意味からすると、私、悠長な構えを、こちらとして、まだ決まっていないからななんて言っていられる状況ではないと思うんですよ。何がしかこちらから、より積極的に、受け身じゃなくて、向こうはアルミと鉄鋼という非常に攻めのハードル、球を投げてきているわけですよ。こっちからだって何か投げないと、受け身でいると、向こうから投げた球を返すときに譲歩させられる、こんな形になっちゃうんですね。
こちらからは何か攻めていくものが、私、なきゃいけないと思うんですけれども、どうですか。
○齋藤国務大臣 今の大串委員の御指摘については、私もいろんな思いがあります。
ただ、これだけは申し上げたいんですけれども、私は、本気で、まだアメリカがTPPに戻ってくる可能性はあると思っているんですよ。それで、アメリカの向こうの業界もそういう意識が強いところがありますし、ですから、その道をこの協議の中で追求をしていきたいと本気で思っています。
○大串(博)委員 終わりますけれども、TPPの内容ですら私たちは非常に不安なんです。そのことも踏まえて、私は、農水大臣にはしっかり交渉をしていただきたいと思います。
以上で終わります。
○伊東委員長 次に、串田誠一君。
○串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。
今、TPPの質問が続いておりまして、私もTPPの質問をさせていただくのですが、直前に大臣が、まだ復帰をするということを期待しているというお話もありました。
トランプ大統領というのは、予想以上に取引が上手なのかなという印象も受けております。ことしの四月十三日でしょうか、復帰に関する検討を指示したというような話もありますが、実態に対しては、具体的な動きがないというような報道もあります。当時、発表したときには農業の盛んな共和党議員や知事がいたということで、中間選挙を見据えたリップサービスというようなこともあるのかもしれません。
それはよくわからないんですけれども、先ほどの質問の中で、アメリカがTPPに戻らないことが確実になったときには修正をするというような発言もありましたが、こんなことで、TPPに入らないとか条件がよくなったら戻るとかいうようなことを繰り返している状況の中で、確実に戻らなかったときというのはどういうような時期が想定されるのか、まずここだけお伺いしたいと思います。
○澁谷政府参考人 新協定の第六条の発動の御質問ということでございますけれども、今後のアメリカの通商政策の動向によって、アメリカが戻ってこないということが確実になったということを六条の協議を要請する締約国が判断したとき、そういう趣旨でございます。
○串田委員 そういうことだとは思うんですが、具体的には、戻らないということ確実であるという認定は、これは実はなかなか難しいのかなという中で、期待をしている、そしてまたトランプ大統領の方は条件がよくなれば戻るというようなことであると、かなり振り回されているという印象というのはあるのかなと思います。
そういう意味で、そういう交渉で、我が国の国益を損なうような誘致というか招聘というものが行われるということであれば、まんまとうまく交渉が成功したということにもなりますので、その点についてはしっかりと吟味をしていただきたいと思います。
まず、TPPのことに関して、基本的なことだとは思うんですが、TPP11と12、これは、国の数が違うということもあるんですけれども、それ以外の内容について、何か違いはありますでしょうか。
○澁谷政府参考人 TPP11協定は、アメリカがいないと発効できないTPP12の内容を、アメリカ以外の参加国でそれを組み込んだ協定を発効させることを通じてTPP12の内容を実現するための新しい法的枠組みということでございます。
もともとのTPP12の特徴であるハイスタンダードを維持するという観点から、協定内容の修正という形では行っていないわけですけれども、知的財産関連など二十二項目、ルールの規定二十二項目を凍結するということで合意をしたものでございます。その意味では、二十二項目が凍結されているというところがTPP12と異なる点でございます。
それから、先ほどの後藤先生あるいは冒頭の御質問にもございました第六条において、アメリカの動向次第で締約国の要請に基づいて協定の見直しを行う、この規定もTPP12にはなかった規定でございます。
○串田委員 そういう意味では、TPPに関しては補正予算が毎年組まれているわけでございます。本会議におきましても、関連法律の整備に関して、我が党の森夏枝議員から、投資をしている金額についての質疑もあったわけでございますけれども、毎年大体同じような金額で補正予算が組まれているということであります。
まず最初に、どうしてこれが補正予算なのか、毎年同じような金額が組まれているわけでございますので、当初から予定されているような気もいたしますけれども、その点について御回答いただきたいと思います。
○水田政府参考人 お答えいたします。
平成二十七年十月でございますが、TPPの大筋合意がございました。これによりまして我が国農林水産業は新たな国際環境に入ったということでございまして、こうした国際環境に早急に対応できるよう、平成二十七年度、そして二十八年度、二十九年度の補正予算におきまして、農林水産業の体質強化を加速するための対策を講じてきたところでございますが、これらは、いずれもそれぞれの当初予算の編成後に生じた事由に基づいて補正予算に計上したということになってございます。
具体的には、平成二十七年度の補正予算でございますけれども、二十七年十月にTPPが大筋合意いたしました。それを踏まえまして、農林漁業者の将来への不安を払拭しまして、経営発展に向けました投資意欲を後押しするという観点で、同年の十一月に策定されました総合的なTPP関連政策大綱に基づきまして体質強化策を早急に実施するため、補正予算で措置をしたということでございます。
また、二十八年度の補正予算でございますけれども、これは、二十八年の八月に策定されました未来への投資を実現するための経済対策、この中におきまして、先ほどのTPPの大綱に基づきます施策を着実に実施するということとされましたところでございますので、これもその年の補正予算で措置をしたということでございます。
さらに、二十九年度の補正予算でございますけれども、その二十九年七月に、日・EU・EPAの大筋合意がございました。こういったことを踏まえまして、新たに必要となる施策などを盛り込んで、その年の十一月にTPPの大綱が改定されております。これに基づきまして体質強化策を早急に実施するという観点で、補正予算で措置をしたというものでございます。
○串田委員 その部分についてもう一歩踏み込んで、要するに、国民としては、アメリカが加わるとか加わらないとか、11とか12とかというような中で、まだ発効もされていないわけですが、二十七年からかなり大きな税金がそこに予算として組まれているということでありますと、TPPがまだ発効していない中で、その予算というのは一体どのようなものに利用されているのか、これが必要であるかどうかというのはやはり国民にも理解をしていただかなければいけないと思います。
具体的にどういうもので、必要だからこう利用したということで、これがTPPが発効したときには役立つんだというような、もう少し具体的な説明をしていただきたいと思います。
○水田政府参考人 お答えいたします。
御質問いただきましたTPPの対策の予算の関係でございますけれども、まず、総合的なTPP等関連政策大綱に基づいてやっているということでございますが、この大綱におきまして、農林水産分野につきましては、大きく分けて二種類の対策を行うということになっているところでございます。
一つは、TPPの発効を見据えまして、これに備えることをきっかけとして、協定の発効を前提とせずにそれを見据えて取り組むべき体質強化に対する対策、これが予算でやっているものでございます。それからもう一つは、TPP協定発効後に必要になる関税削減の影響、これに対応するためにやるという経営安定対策の充実、こういったものでございます。
これまでの補正予算に計上いたしました対策でございますけれども、これは全て今申し上げました二種類のうち前者の方でございまして、体質強化を加速する対策ということになっているところでございます。
具体的には、担い手の育成という観点で、次世代を担う経営感覚にすぐれた担い手の育成ですとか、国際競争力のある産地のイノベーションの促進ですとか、また畜産、酪農の収益力の強化を図る総合プロジェクトの推進、あるいは高品質な我が国農林水産物の輸出などの需要フロンティアの開拓、こういったものに資する予算。さらには、林野関係では、合板、製材、構造用集成材などの木材製品の国際競争力を強化するための対策、また、水産関係では、持続可能な収益性の高い操業体制への転換、こういったものに必要な施策を講じているということでございます。
○串田委員 きょうはそんなに時間がありませんけれども、TPPが発効されることによる体質強化というのは、ある意味では、ちょっとわかりづらいのかな。人材育成ということなんですが、TPPが発効されたことによってどういう人材が必要なのかというようなことがちょっとぴんとこないような気もするわけでございますので、予算を組んだ中でそれがどういうふうに利用されているのかというのをやはり検証していくという意味では、もう少し具体化というものを提示していただきたいなというふうに思います。
きょうは時間がありませんので、その点については触れませんが、また次回が、別の機会があればお聞きをしたいと思います。
次に、アメリカは、TPPではなくてFTAとかそういったような二国間協議で十分じゃないかというような話があるんですけれども、我が国としては、それよりもやはりTPPの方が有利であるというところというのは一体何であるのかというのをちょっと明確にしていただければと思います。
○横山政府参考人 お答え申し上げます。
日米の経済関係全体をどのように捉えるかということでございますので、必ずしも農林水産分野だけということではないかと存じますけれども、我が国としては、まさにインド太平洋地域において公正なルールを広げていくという観点、そういったことも踏まえた場合に、日米の関係の貿易関係がどうあるべきかということを考えた場合に、TPPというのが最善であろう、こういった立場で協議に臨んでいく、こういうことでございます。(発言する者あり)
○串田委員 私もわからないと言うしかないんですが。
それの方が最善だというのはなぜなのかというのを聞いているわけであって、そこをもう少し具体的にお話をいただけないでしょうか。そういうことを明確にしていかないと、やはりトランプ大統領のような交渉上手な人にしっかりとした対応というものはできないと思うんですよ。
ですから、もしその点について回答できるのであれば、いただきたいと思います。
○澁谷政府参考人 アメリカに対しては再三再四実は話をしているところでございますけれども、TPPの特徴は、関税もさることながら、やはり新しいルールを共有するということでございます。
知的財産の保護、投資規制の見直し、国有企業とか労働制度の見直しなど、こうしたルールをアメリカも含めてアジア太平洋に広げていく、その効果の方が非常に大きいというふうに日本としても考えているところでございます。
○串田委員 これもちょっと時間がないので余り深くは触れませんけれども、そこの違い、もう少し明確になるといいのかなと思います。
最後に、自給率についてお伺いいたしますが、私も自給率というものを上げていかなければならないと思っているんですが、現実は、かなり下がってきているというのは事実だと思います。
このTPPが発効されることによって自給率というのはどうなっていくと予想されているんでしょうか。
○天羽政府参考人 お答え申し上げます。
TPPの発効による自給率への影響いかんということでございました。
平成二十七年十二月に公表いたしましたいわゆるTPP12によります定量的な影響試算及び平成二十九年十二月に公表いたしましたTPP11による影響試算においては、それぞれ、国内の農林水産物の生産額への影響とあわせて、食料自給率への影響についても試算をお示ししたところでございます。
どちらの試算におきましても、価格の低下により国内の農林水産物の生産額の減少が生じるものの、国内対策により国内生産量が維持されるものと見込むとともに、食料自給率の水準は試算を反映した水準と同程度になるとしたところでございます。
○串田委員 時間になりましたが、四月十三日に、トランプ大統領が、農業の盛んな共和党議員と知事の前では加入をすることを示唆するという、これは、アメリカにとっては加入すれば農業に関しては有利になるということのシグナルでありますので、そのような考え方で臨むということになると大変危険ではないかなということを申し上げまして、終わりにしたいと思います。
ありがとうございました。
――――◇―――――
○伊東委員長 次に、内閣提出、土地改良法の一部を改正する法律案を議題といたします。
これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣齋藤健君。
―――――――――――――
土地改良法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○齋藤国務大臣 土地改良法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
土地改良区は、土地改良法に基づき土地改良事業を施行することを目的に、地域の耕作者や農地の所有者を組合員として設立される公共的な法人であり、農業用用排水施設等の維持管理を通じて、良好な営農環境の確保に寄与してきたところです。
近年の高齢化による離農や農地の利用集積が進展する中で、土地改良区の組合員についても土地持ち非農家の増加が見込まれます。このような状況の中で、土地改良施設の維持管理や更新を適切に行っていくためには、耕作者の意見が適切に反映されるような業務運営を確立することが求められています。
また、土地改良区の業務執行体制が脆弱化しており、適正な業務運営を確保しつつ、より一層の事務の効率化や改善を図ることが求められています。
こうした状況を踏まえ、土地改良区の業務運営の適正化を図る観点から、土地改良区の組合員資格の交代の円滑化を図りつつ、土地改良区の体制の改善を図る措置を講ずるため、この法律案を提出した次第であります。
次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
第一に、土地改良区の組合員資格に関する措置であります。
土地改良区は、貸借地の所有者又は耕作者で事業参加資格を有しないものを准組合員として加入させることができることとします。また、事業参加資格を所有者から耕作者へ交代する場合の農業委員会の承認制を届出制とするとともに、農地中間管理機構が農地の貸借を行う場合の組合員の資格得喪通知について、農地中間管理機構が単独で通知できることとします。
さらに、土地改良区の理事定数の五分の三以上は原則として耕作者たる組合員とするとともに、土地改良区は、総会の議決を経て、農業用水の利用の調整に関し利水調整規程を定めることとします。
このほか、土地改良区は、地域住民を構成員とする団体で土地改良施設の管理に関連する活動を行うものを施設管理准組合員として加入させることができることとします。
第二に、土地改良区の体制の改善に関する措置であります。
総代会の設置要件及び総代定数を見直すとともに、総代の選挙について選挙管理委員会の管理を廃止することとします。
また、二以上の土地改良区が、土地改良事業のほか、土地改良区の事業の一部を行うため、土地改良区連合を設立することができることとします。
さらに、土地改良区は、決算関係書類として、収支決算書等に加え、原則として貸借対照表を作成するとともに、監事のうち一人以上は原則として員外監事を選任することとします。
以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
○伊東委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時十分散会