衆議院

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第15号 平成30年5月16日(水曜日)

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平成三十年五月十六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 伊東 良孝君

   理事 伊藤信太郎君 理事 小島 敏文君

   理事 坂本 哲志君 理事 鈴木 憲和君

   理事 福山  守君 理事 佐々木隆博君

   理事 緑川 貴士君 理事 佐藤 英道君

      井野 俊郎君    池田 道孝君

      泉田 裕彦君    稲田 朋美君

      上杉謙太郎君    加藤 鮎子君

      加藤 寛治君    金子 俊平君

      神田 憲次君    木村 次郎君

      岸  信夫君    小寺 裕雄君

      斎藤 洋明君    西田 昭二君

      野中  厚君    藤井比早之君

      藤丸  敏君    藤原  崇君

      古川  康君    古田 圭一君

      細田 健一君    三浦  靖君

      宮路 拓馬君    山本  拓君

      石川 香織君    大河原雅子君

      神谷  裕君    亀井亜紀子君

      後藤 祐一君    関 健一郎君

      江田 康幸君    大串 博志君

      金子 恵美君    田村 貴昭君

      森  夏枝君    寺田  学君

    …………………………………

   農林水産大臣       齋藤  健君

   農林水産副大臣      礒崎 陽輔君

   経済産業副大臣      武藤 容治君

   内閣府大臣政務官     長坂 康正君

   農林水産大臣政務官    野中  厚君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  光吉  一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  三田 紀之君

   政府参考人

   (内閣府規制改革推進室次長)           窪田  修君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 飯島 俊郎君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         天羽  隆君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         横山  紳君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           池田 一樹君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            井上 宏司君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  枝元 真徹君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  大澤  誠君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            荒川  隆君

   政府参考人

   (農林水産省政策統括官) 柄澤  彰君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           別所 智博君

   政府参考人

   (林野庁長官)      沖  修司君

   政府参考人

   (水産庁長官)      長谷 成人君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            高科  淳君

   農林水産委員会専門員   室井 純子君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十六日

 辞任         補欠選任

  斎藤 洋明君     藤丸  敏君

  藤井比早之君     古田 圭一君

  藤原  崇君     井野 俊郎君

  宮路 拓馬君     加藤 鮎子君

同日

 辞任         補欠選任

  井野 俊郎君     藤原  崇君

  加藤 鮎子君     宮路 拓馬君

  藤丸  敏君     三浦  靖君

  古田 圭一君     藤井比早之君

同日

 辞任         補欠選任

  三浦  靖君     斎藤 洋明君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 連合審査会開会申入れに関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇号)

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

伊東委員長 これより会議を開きます。

 この際、連合審査会開会申入れに関する件についてお諮りいたします。

 内閣委員会において審査中の内閣提出、環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案について、内閣委員会に対し連合審査会の開会を申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、連合審査会の開会日時等につきましては、内閣委員長と協議の上決定いたしますので、御了承願います。

     ――――◇―――――

伊東委員長 次に、農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官天羽隆君、大臣官房総括審議官横山紳君、消費・安全局長池田一樹君、食料産業局長井上宏司君、生産局長枝元真徹君、経営局長大澤誠君、農村振興局長荒川隆君、政策統括官柄澤彰君、農林水産技術会議事務局長別所智博君、林野庁長官沖修司君、水産庁長官長谷成人君、内閣官房内閣審議官光吉一君、内閣審議官三田紀之君、内閣府規制改革推進室次長窪田修君、外務省大臣官房審議官飯島俊郎君及び資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長高科淳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊東委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。神谷裕君。

神谷(裕)委員 おはようございます。立憲民主党の神谷裕でございます。

 本日も、こういった質問の機会を頂戴しましたことを、まずもって御礼を申し上げます。

 まず、冒頭なのでございますが、これは質疑通告をしていないんですけれども、ちょっとけさ新聞を見てびっくりいたしたものですから、新聞を見て、東北農政局、情報漏えいという話が出ておりました。この件について、大臣、ちょっと事実関係を含めて御説明をいただけたらと思います。いかがでしょうか。

齋藤国務大臣 けさ報道されている案件につきましては、昨年四月以降、公正取引委員会が調査を行っている案件でありますので、調査継続中でありますので具体的なコメントは差し控えたいと思っておりますが、いずれにしても、農水省として、これまでと同様に公正取引委員会の調査に積極的に協力をしてまいりたいと考えております。

 ただ、仮に、報道されているような内容が事実であるとすれば、極めて遺憾でありまして、厳正に対処します。

神谷(裕)委員 大臣、ありがとうございます。

 何か震災復興に絡んでいるのかどうかというのもあるのかなと思っていまして、仮にこれがために震災復興に影響があってはいけないと思っておりますので、その点だけはどうか御配慮をいただけたらと思っているところでございます。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 先般、TPPについて、実は外務委員会でも質問をさせていただく機会をいただきました。

 今、御案内のとおり、TPP、大変に大きな問題として内閣あるいは外務委員会でも論議をされているというふうに承知をしているところでございますけれども、当然、農業分野、農林水産分野というのもTPPでは一番影響を受けるんじゃないかというようなことを言われている分野でございますから、当委員会でもしっかり議論をする必要があるんじゃないかと私自身思っているところでございまして、そういった意味では、先ほど連合審査をお決めいただいた、これは本当にありがたいことだなというふうに思っているところでございます。

 そこで、まず、TPPについて、先般外務委員会でもさせていただいた質問、ちょっとその事実関係だけ再度確認をしたいと思いまして、きょうは外務省からもお越しをいただいていると思います。

 まず、先般の議論で確認をさせていただいたんですが、TPP11、このTPP11ではアメリカは新規加盟国の扱いになるんだ、TPPワイドとは違って新規加盟国の扱いになるよということだと思いますけれども、この点、間違いないか、まず御確認をさせていただきたいと思います。

光吉政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、アメリカはTPP11協定におきましては新規加入国の扱いとなります。

神谷(裕)委員 そして、ほかにも新しくTPPに加盟をしたいという国があるそうでございます。タイであるとか、あるいはイギリスであるとか、そういうような国があるというふうに聞いておりますけれども、そういった、新しくこのTPP11に加盟をしたい、本当に希望する国があらわれた場合に、新たに、その新しく希望する国はこれまでの既存の十一カ国に対してそれぞれ交渉、協議をする、そして各国と合意を得るという必要があるということになると思うんですけれども、それで間違いございませんでしょうか。

光吉政府参考人 お答えいたします。

 TPP11協定への新規加入国・地域の扱いでございますけれども、協定の第五条の「加入」のところに規定をされております。そこにおきまして、TPP11協定の締約国と新規加入国・地域との間で合意する条件に従って加入することができるというふうにされているところでございます。

神谷(裕)委員 今ほどお話にありましたとおり、五条で、それぞれ各国と協議をしなきゃいけない、そして合意を得る必要があるんだということでございます。

 そうだとすると、当然、協議をして合意を得るということになりますから、その協議の結果というのはいろいろなケースが出てくるんじゃないかなと思うわけです。

 例えば、申しわけありませんが、国力の弱い国がTPPに入りたいと希望されたとします。そうだとすれば、恐らくは丸のみをされる、あるいは、それに加えて何か代償を払わなければいけない、そういうこともあるかもしれません。あるいは、非常にセンシティブな内容もあるよ、一番最初の、宗教的な禁忌の問題なんかで一部留保をかけた国があったというふうに聞いておりますけれども、例えばそういった個別の事情もはかられるかもしれない。

 問題なのはアメリカでございまして、例えばアメリカの場合は、これからまた再度十一カ国、我が国とも協議を行うわけであると思います。

 各国と合意したとすると、既存の協定に加えて、あるいは留保をかけて加盟をすることができる。この点、事実として間違いないですよね。

光吉政府参考人 お答えいたします。

 新規加入協議でございますけれども、これは新規加入の候補国・地域がTPPのハイスタンダードを受け入れる用意があるということがもちろん前提になるわけでございますけれども、最終的にいかなる条件で加入することとなるかにつきましては、各候補国・地域とのそれぞれの協議の結果、個別具体的に決まっていくこととなると思われます。

神谷(裕)委員 今ほど聞いたとおりでございます。

 とすると、やはりアメリカと、特にアメリカは我が国が希望して入っていただきたいということでございますから、アメリカと我が国、どうしても協議をしなきゃいけない。そして、復帰を図る、復帰というのか、あるいは新規加入ということになるんですけれども、結局、我が国は、我が国が希望するようにTPP11にアメリカに入っていただく、新規加入をしていただくということになりますと、我が国とアメリカとの間できっちり協議を行わなきゃいけない。この事実は間違いないですよね。

光吉政府参考人 お答え申し上げます。

 今ほど申し上げましたが、TPP11協定への新規の扱いにつきましては、第五条に規定されているとおり、TPP11の協定の締約国と新規加入国・地域との間で合意する条件に従って加入することとなります。

 いずれにしても、締約国全てと合意しなければ加入できないこととなっているため、新規加入のための協議を行う必要がございます。

神谷(裕)委員 だとすると、今後、アメリカとTPPに対しての協議を我が国は行うわけなんですけれども、この協議、率直に思います、FFR、これはその協議に当たるんでしょうか。

飯島政府参考人 お答えいたします。

 先般の日米首脳会談におきまして、茂木大臣とライトハイザー通商代表との間で、自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議、委員御指摘のFFR協議を開始することで合意いたしました。

 この協議は、公正なルールに基づく自由で開かれたインド太平洋地域の経済発展を実現するため、日米双方の利益となるよう、日米間の貿易や投資を更に拡大させていくとの目的で行われるものでございます。その具体的なあり方につきましては、今後、日米間で調整していくこととなっております。

 本件協議につきましては、日米FTA交渉と位置づけられるものでもありませんし、予備協議でもございません。

神谷(裕)委員 これまで事実関係を確認しましたとおり、TPPワイド、TPP11があります。ただ、TPP11、我が国としてこれから進めていこうと考えている、かつ、そこにはアメリカを戻していきたいという我が国の思いがあります。

 そういったときに、もし、TPP11にアメリカに再度加入をしていただくというか、新規に入っていただく、あえて新規に入っていただくということになるわけでございますけれども、そうだとすると、しっかりと協議をする必要が再度出てくるんだ、そして十一カ国で話をするんだ。そして、その中でいろいろ決まってくると思いますけれども、場合によって、その成果によってはでこぼこがあり得るんだ、ひょっとすると今の協定内容の上前をはねるような内容を結ばなきゃいけないんじゃないか、あるいは、もっと少なくて済むかもしれません。

 ただ、アメリカを相手にするときに果たしてどういうことになるのか、非常に心配なんですけれども、現実として協議をしなければいけないということは確認できたと思います。

 そうだとすると、やはりアメリカが何を言っているかというのは非常に気になるわけでございます。思い出していただきたいのは、アメリカの大統領の発言にございます、よりよい内容というのであれば米国もTPP、考えるという話でございました。

 では、このよりよい内容というのは、ここは農林水産委員会でございますから、やはりここで気になるのは、このよりよい内容の中に農業分野が入っているのかどうか、あるいは、市場アクセス、こういった部分が入っているのかどうか、これが想定されるのかどうか、これを聞かせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

飯島政府参考人 お答えいたします。

 日本政府といたしまして、トランプ大統領の発言の意味するところを説明する立場にはございませんが、米国のTPP離脱表明以降、さまざまな機会に米国に対してTPPへの復帰を働きかけてきたところでございます。この結果、トランプ大統領自身が、委員御指摘になられたとおり、このような発言をするように至っております。

 一方で、TPPは、これまでにも国会で御説明をしてまいりましたとおり、参加国のさまざまな利害関係を綿密に調整してつくり上げた、ハイスタンダードでバランスのとれた、ガラス細工のような協定でございます。一部のみを取り出して再交渉する、変えるということは極めて困難であると考えております。

神谷(裕)委員 いつもそういうふうにお答えをいただくんですけれども、まず、アメリカの大統領の発言の内容についてコメントする立場にはない、確かにそのとおりだと思います。しかし、交渉しなきゃいけない、協議をしなきゃいけない、これは間違いない事実でございまして、それは確認できていることでございます。

 とするならば、当然、攻防というか、攻めもあれば守りもある、その中で、相手が何を関心として持っているのか、それを想定する、これは協議を行う上で最低限必要なことだと思います。

 そういった分析の中に、例えば、一番関心がある分野に農業分野があるんじゃないか、それは想定され得るんじゃないですか。その辺は、もう一度確認します、どうでしょうか。

飯島政府参考人 お答えいたします。

 米側の関心、我が方の関心。我が方の関心につきましては、日米両国にとってTPPが最善であるという立場でございまして、これは米側にも伝えているところでございます。一方、米側は、二国間のディールについて重視をしてきております。

 こういった状況の中で、先ほど委員御指摘になられましたFFR協議を使ってどういった議論が行われていくか、これを今後調整していくことになるかと考えております。

神谷(裕)委員 これまでのアメリカの態度を見ていれば、恐らく農業分野にも関心があるんじゃないかというのは当然想定できることでございます。あるいは先ごろあった鉄鋼、アルミなんかも、その中の話、文脈の中の一つかもしれません。

 しかし、ここは農林水産委員会でございますし、やはり先ほどもお話ししたように、TPP11、先ほど復帰という話をされましたけれども、あくまで新規加盟国、そしてその新規加盟国と今後交渉していかなきゃいけない。そして、その中には、ひょっとすると、このよりよい内容という中には農業分野が入っているんじゃないか。どうしてもやはり懸念があるわけでございます。

 とするならば、この際、米国との協議について、特にこの環太平洋パートナーシップ協定という文脈の中で語られるとするならば、当委員会でも平成二十五年四月に「環太平洋パートナーシップ協定交渉参加に関する件」という形で、重要五品目、しっかりと政府に守ってくださいという決議をさせていただいておりますけれども、環太平洋パートナーシップ協定という文脈で語られるこの協議についても、この決議、当然尊重されるべきであると思いますけれども、いかがでございましょうか。

齋藤国務大臣 これからFFRがどういう議題で議論が始まるかというのは、正直、今農林水産省は、調整中ということで承知をしておりませんし、それから、トランプ大統領のよりよき内容ということについても、何を考えているかというのは、申しわけないですけれども、ちょっとわかりません。

 ただ、いずれにしても、このFFRがこれから進んでいくことになるわけでありますけれども、そこでは、私どもの理解では、日米FTAと位置づけられるものではなく、その予備協議でもない。それから、これから議題は決まっていくということでありますが、いずれにいたしましても、この場においても、私どもは、重要五品目を含めて、相当身構えて、我が国の農林水産業の維持発展を旨として、きちんと対応していきたいというふうに考えています。

神谷(裕)委員 大臣、FFRが日米の今後協議をするステージになるかもしれません。ただ、先ほどの話の中では、あくまでこの経済連携協定の文脈の中で語られるかどうかというのは、いまいちはっきりしていないんですね。

 ですので、FFRがその場になる可能性もあるでしょう。ただ、現実に我が国は米国に対して、TPPに復帰をしてください、そういうことをいわば要望しているというか交渉しているわけでございます。そしてまた、結果としてTPP11ができているわけですから、ここに米国を戻す、戻すというか入っていただく、これは新しく入っていただく。で、協議が必要になるわけです。

 そうする場合、当然、TPPに対して米国に再度入っていただく交渉になるわけですから、これがFFRかどうかは別にして、もしもTPPに対しての協定という文脈の中で今後協議をされるのであれば、この決議というのが守られて当然だと文脈の中では思えるわけなんですけれども、再度確認します。

 FFRと言い切っていいのかどうかわからないです。あくまで、この協議、入っていただくための協議、入っていただくというか、米国が新規に。その協議においては間違いなく、それがFFRかもしれません、この決議が遵守される、これは当然守るんだ、その精神でいくんだというふうに言っていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

齋藤国務大臣 今、委員おっしゃられたように、FFRでこの議論が行われるかどうかわかりませんし、私どもとしては、アメリカがTPPに戻ってくるということを主張しながら、あらゆる場面でまたアメリカと話し合っていくことになるんだろうと思いますけれども、いずれにしても、仮にアメリカが戻ってくるということになって、協議が行われる、手続上そういうふうになった場合においても、私どもとしては、TPPは本当にさまざまな複雑な利害をようやっと調整してつくり上げたものでありますので、どの国にとっても、我が国だけじゃなくてどの国にとっても、一部のみを取り出して変えるということは極めて難しいものであろうと思っております。

 その上で、更に加えて言えば、TPPの国会決議というものは当然重いものでありますので、それをちゃんと踏まえてその場合も対応していくということは言うまでもないことだと思います。

神谷(裕)委員 ありがとうございます。

 ここは農林水産委員会です。やはり大臣に、自民党さんの公約でもあったわけですし、この重要五品目だけは絶対に守るんだということだけは、これは明確に言っていただかなきゃいけない委員会でございます。

 ましてや、先ほど申し上げたように、これはあくまで環太平洋連携協定という文脈の中で協議が行われるんだということで、しかも、FTAなのか、さまざまな見立てもあるんですけれども、まずは協議を行わなきゃいけない、これはもう確実です。

 それが復帰なのかあるいは新規加盟なのか、見立てはあるでしょう。ただ、どうしてもやらなきゃいけない中で、だとするならば、当然にして、この五品目を守っていただくんだ、最低限それはやっていただかなきゃいけないんだというようなことで、どうしてもやはり考えていただかなきゃいけないだろう。

 FFRも、恐らくは、我が国の立場としては、いわばTPPに米国に入っていただく、戻っていただくための交渉という位置づけで取り組んでいるんだろうと思います。ただ、アメリカサイドから見れば、当然、二国間でやるわけですし、FTAの方にもしも結びつけられるんだったら、もしもというか、結びつけたい。

 いわば同床異夢の関係に今の場合まだあるんじゃないかなと思うわけでございまして、その交渉の流れによっては、復帰という選択肢もあり得るでしょう、あるいは、交渉の流れによっては事実上の二国間のFTAというような文脈もあり得るかもしれません、協議ですから。そういったときに、やはりこの重要五品目、どうしても、たとえFTAに切りかわるとしても、これは守っていただきたいと思います。

 もっと言うと、先ほど大臣もおっしゃっていただきましたが、ガラス細工のような、というよりは、我が国としてはもうこれ以上やはり農業分野はどうしても出血できないというところまで来ている、私はそう思います。だとするならば、やはりしっかりと守るということをぜひここは言っていただかなきゃいけませんし、特に、農業分野についてはここがもうデッドラインなんだ、ここは国内ではしっかり反対の意思があるんだということをこの委員会では少なくとも確認をしておきたいんですね。

 そういった意味で、あえて、大臣、農林水産分野の責任者でございます、政府の責任者でございます、重要五品目について、守るんだという決意をお示しいただきたいと思います。いかがでございますか。

齋藤国務大臣 まず、二国間で行われるFFRがそういう日米の二国間のFTAにつながるようなものになるとは私ども認識しておりませんので、それを前提に行われた場合にはどうするかという答弁をすると、何か前向きに受けとめられても困りますので、だから、そこについては、私どもはそういう認識はないということは明言をさせていただきますが、いずれにしても、国会決議の重要性というものはもう十二分にわかっておりますので、先ほど申し上げたように、それを踏まえて対処をしていくということは言うまでもないことであります。

神谷(裕)委員 ありがとうございます。少し安心をしたところでございます。

 ただ、今いろいろと外交政策を見ていまして、では、TPP11を立ち上げたというのはよかったのかなとどうしても思うわけでございます。

 と申しますのも、本来、TPPワイドの形で、11を立ち上げなければ、そこに単純な復帰を促す、戻ってくださいという交渉だけで済んだんじゃないかな。かえって、TPP11を立ち上げてしまったがために、新規加盟国として協議を行わなきゃいけなくなった。そして、その協議の内容も、入ってくるためにはさまざまないわば交渉をしなければいけなくなった。

 だとすると、TPP11を立ち上げてしまって、実際に署名をして、今批准をしようとしている、これは意外とよくないんじゃないか。むしろTPPワイドのままの方がよかったんじゃないか、そして復帰の交渉を待っていた方がよかったんじゃないか、そんなことも実は考えたりするわけでございます。

 先般もこの委員会でお話ございました。アメリカにとって、十一月、政治の季節、中間選挙がございます。そして、今は一番当たりがきつくなってくる時期でございます。そういった前に、むしろ審議を急ぐというか、批准をして、批准というか、同意を与えてしまう、あるいは決めてしまう、我が国の態度を決めてしまう、これがいいのか悪いのか。むしろ、TPP11を、意図的にというか、漂流させてしまって、TPPワイドの方に戻るだけの交渉をする、そういったことが考えられるんじゃないか、戦略的に考えたら実はそちらの方がいいんじゃないか。

 私自身は、TPPに対しては実は間違いなく反対の立場でございますが、この国の国益、戦略を考えたときに、そちらの方がベターなような気がするんですけれども、いかがでございましょうか。

光吉政府参考人 お答え申し上げます。

 御案内のとおり、昨年一月にトランプ大統領がTPPからの離脱を正式に表明し、それ以降、保護主義への懸念が高まる中で、十一カ国で議論いたしまして、アメリカ抜きでもTPPを早期に署名、発効させよう、その重要性について一致をしたところでございます。その上で、この三月に署名に至りました。

 このTPP11につきましては、二十一世紀型の自由で公正な新たな共通ルールをアジア太平洋地域につくり上げ、人口五億人、GDP十兆ドルなど、巨大な一つの経済圏をつくり出していくものですし、関税削減だけではなくて、投資先で技術移転などの不当な要求が行われないなどのルールが共有されることになるので、我が国の企業にとっても、中小企業、中堅企業にとっても多くのビジネスチャンスが広がるものと考えております。

 この意味で、自由で公正な共通ルールであるこういう貿易体制こそが成長の源泉になるということで、今回の11につきまして、日本がリードする意味というのは非常に大きいというふうに考えております。

神谷(裕)委員 実は、TPPワイドとTPP11は決定的に私違うなと思いますのは、12の方は、アメリカも協議に入って、少なくとも合意をしているという事実。11の方は、協定そのものの内容はワイドをぱくってやったものなのかもしれませんけれども、アメリカは協議に入っておりません。この違いは割と大きいのかなと私は思います。

 ですので、11に関しては、新たに米国と協議をしなきゃいけないわけです。ワイドは、言っても、アメリカは中に入って協議をし、合意をしているわけです。この違いはやはり大きいんじゃないか。

 そしてまた、復帰なのか新規加盟なのかの交渉をしなきゃいけないわけですから、中身にもっとこれ以上出血を強いられる可能性があるような11での交渉よりも、むしろこれはやめてしまって、12のまま復帰を促した方が私は得策だと思うんですけれども、光吉審議官、いかがでしょうか、もう一回御答弁いただけますか。

光吉政府参考人 さまざまなアプローチが考えられようとは思いますけれども、今回の11の考え方として、ある意味、TPPの12の内容以上に譲歩はしないというふうな姿勢を示す意味でも、十一カ国で内容を固めて早期に発効していくということに意義があるんじゃないかというふうに考えております。

神谷(裕)委員 譲歩しない、もちろんそうなんですけれども、残念ながら、信用できるのかな。

 要は、米国大統領、戻るためにはよりよい内容とおっしゃっているのも事実なんです。そして、また協議をしなきゃいけません。国力の違いもあるかもしれません。何より、我が国にこれ以上の攻め手が余りないんですね、今の協定に戻れと言うだけであって。

 そうなると、なかなか交渉は難しいですし、むしろ、やはり11をやめてしまった方がいいんじゃないかな、政府が求める形にしていこうと思うんだったら、11というのは間違ったんじゃないかなと思ったりもするわけなんですけれども、ここまでの議論を聞いて、済みません、大臣、どうでしょうか、率直に感想を含めて教えていただければ。

齋藤国務大臣 委員の御質問は、11というものを進めるのではなくて、むしろそのままにしてアメリカの復帰を促した方がベターだったんじゃないかという御指摘だと思いますけれども、今回政府がとった、11をきっちり固めるという方針については、私自身は十二分に納得しておりまして、それがいい対応だなと私自身は確信をしているんですけれども、それを話す立場に今農林大臣としてはありませんので控えさせていただきますが、私自身は納得し、確信をしているということは申し上げたいと思います。

神谷(裕)委員 ありがとうございます。

 ただ、やはり私は間違えたんじゃないかなと思っています。できれば、このTPP11、この国会で通さないで、むしろ、少なくとも十一月過ぎるまではそのままにしておいた方がいいんじゃないかなということを御提言申し上げさせていただいて、本日の質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

伊東委員長 次に、石川香織君。

石川(香)委員 おはようございます。立憲民主党の石川香織でございます。

 私も、きょう質問させていただきます。よろしくお願いいたします。

 まず、きのうの農林水産委員会で青山委員からもお話がありましたけれども、茨城県つくば市の農林水産省管轄の独立行政法人森林総合研究所などの視察に私も行ってまいりましたので、少し御質問させていただきたいと思います。

 予算が五十億円ほどだったものが、三分の一程度、十五億円ほどになってしまったというお話もきのうありましたけれども、排水処理も含めて、非常に老朽化が進んでいるといったことでありました。

 私は、農研機構ですとかJIRCASの皆様とも意見交換をさせていただきましたので、ちょっとお話をさせていただきたいと思っています。

 いろいろな研究分野の方からお話を聞きまして、畜産研究の方がお話をしていた中では、非常に老朽化が進んでいるというお話の中の一例で、牛がかゆくて体を柵に押しつけながらもたれかかったりするので柵が非常に傷んでいるんですけれども、それをしっかりと修繕する予算がない、応急処置で何とか対応しているという状態が続いているというお話をされておりました。

 また、食品安全の分野の研究者の方は、今でも古い装置を使って論文を書いているということで、古い装置を使って論文を書くとなかなか相手にされないんだというようなお話もされておりました。

 あと、感染症などの家畜の研究をされている方は、感染した牛などを飼う施設が老朽化しているというお話がありましたけれども、解剖した家畜を焼却する施設も以前動かなくなったことがあるそうで、家畜を応急処置的に一カ所にまとめて対応していたそうなんですけれども、においも含めて非常に耐えられない、非常に大変な思いをされたといったお話をされておりました。

 皆さん口をそろえて、施設ですとか装置の更新の時期がとっくに来ているのにもかかわらず、予算が足りないので何とか応急処置をしてきたけれども、その工夫を凝らすのが限界だといったお話をされておりました。厳しい財政状況というのは理解しておられると思いますけれども、予算を配分する中で、人間の安心、安全な生活に直結しているという部分で、この部分をもっと意識、認識してほしいという切実なお話を伺いました。

 その中で、輝かしい研究の成果だけに目を向けるのではなくて、こういった現場の悲鳴を聞いてほしい、ぜひ大臣や副大臣、政務官にも足を運んでいただいてこういう部分を受けとめてほしいという強い要望がありましたけれども、この現場の声についてどう受けとめていらっしゃるか、お伺いをしたいと思います。

沖政府参考人 お答えいたします。

 石川委員におかれましては、森林研究・整備機構森林総合研究所に行っていただいたというふうに承知しておりまして、同研究所の施設整備に当たりましては、森林研究・整備機構における業務遂行上の必要性とか、それから施設の老朽化などの状況を踏まえまして、施設整備費補助金として必要な予算を現在確保しているところでございます。

 これまでも、例えば、三十年以上経過して老朽化が著しく、研究活動に支障を及ぼしかねない空調設備、こうしたものについての改修は平成二十五年度に実施いたしましたほか、優良苗木の育種につきましても、先端技術の遺伝子解析技術を用いました研究を行うための施設の整備を二十九年度に実施したところでございます。こうした研究開発の円滑な実施におきまして必要な改修、整備を進めてきたところでございます。

 今後とも、当省が所管いたします森林研究・整備機構が、森林・林業、木材産業に関します試験研究を通じた技術の向上など、その設置目的に即して十分なパフォーマンスを発揮しまして、研究の推進に支障が出ることのないように、引き続き必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えております。

 よろしくお願いいたします。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 三十年から四十年前に建てられた施設が一斉に老朽化しているということでありました。私も、世界のつくばの今のこの現状を見て、少しショックを受けましたし、やはりこのままではいけないのではないか。

 今、十分なパフォーマンスということもありましたけれども、しっかりよい環境で研究をしていただくためにも、今、沖長官に御答弁いただきましたけれども、大臣もぜひ一度、お忙しいとは思いますが、現場に足を運んでいただきたいと思っております。

 では、続いての御質問に移りたいと思いますが、TPPについてお伺いをしたいと思います。

 私は、TPPによる影響という部分についてお伺いをしたいと思います。

 私たち国民が知りたいのは、TPPで大幅な市場開放に踏み切ったときに、生活ですとか収入がどうなるのかという具体的なイメージをしっかり示すようにするのが大切だと思っておりますし、それが政府の役割だと思っております。

 TPP12協定の際に提示をされた資料では、黒塗り部分がほとんどでありまして、契約上、秘密保持という点があったということでありますけれども、情報公開という意味ではとても十分なものではなかったと思います。

 政府はTPP協定についての試算を行っておりますけれども、この政府が行った試算は、国内対策によって生産量は維持されるという前提で試算をされたものでありまして、それは本当に影響について正しく試算をしていると言えるのかどうかというところの疑問が浮かんでしまいます。

 TPPの影響が大きいと予想されます農業の分野でどれぐらい生産量や所得が減るのか、また、国内農業の影響をしっかり計算して示していかなくてはいけないと思っていますが、国内対策をやっているから影響はないんだというのは、やはり農業者の方だけではなくて国民の皆さんに対して誠意を持って説明する姿勢にはなかなか見えないのではないかというふうに感じます。

 そこで、改めてお伺いをしたいと思います。

 TPPの日本農業における影響、また、そういった影響に対しての対策について、御説明をいただけますでしょうか。

齋藤国務大臣 農林水産業への影響と対策について、改めてということですので、いい機会ですので、ちょっとしっかりお話しさせていただけたらと思います。

 まず、TPPにつきましては、特に農林水産分野について、重要五品目を中心にまずは関税撤廃の例外などをしっかり確保しているということを、まずは前提として理解をしていただきたいなというふうに思います。

 例えば、お米につきましては、国家貿易や枠外税率といった現行制度を維持しておりますし、牛肉については、関税撤廃を回避して、十六年かけて関税が九%になるという長期の関税削減期間を確保している。それから、豚肉につきましては、差額関税制度及び分岐点価格という我が国豚肉生産にとって重要な仕組みを確保した上で、国産豚肉が高い競争力を持ちます高価格部位に適用される従価税、今四・三%という比較的低い水準ですが、これを十年かけて撤廃するですとか、それから、国産豚肉に価格競争力が弱い低価格部位に適用される従量税については、関税削減にとどめて、しかも十年という長期の関税削減期間を設け、しかもセーフガード措置を講じるということにしている。

 これは一例でありますけれども、こういう、まずは国境措置をしっかり確保している。

 それから、もう一つは、それでも農林漁業者の皆さん、不安、ございます。

 そこで、安心して再生産に取り組めるよう、総合的なTPP等関連政策大綱に基づき万全の対策を講ずるということにしておりまして、例えば、今、例で挙げましたので、米について言えば、豪州向けの新たな関税割当て枠を確かに設けることになりましたけれども、それに基づいて入ってくるお米につきましては、輸入量に相当する国産米を政府が備蓄米として買い入れるということで、国内の主食用米の需給及び価格に与える影響を遮断する。それから、牛肉、豚肉については、省力化機械の導入ですとか規模拡大のための畜舎整備などの体質強化を講ずる、それと同時に、経営安定対策の充実ということで、例えば牛・豚マルキンの補填率を八割から九割に引き上げる。

 そういう対策もあわせて講ずるということをしているということで、このような個別品目ごとの国内対策の効果も踏まえて、それでは影響はということで影響試算を行った結果、関税削減等の影響で価格の低下は避けられませんので、これによる影響は、約九百億円から千五百億円の生産額の減少が見込まれるだろう。

 ただ、今申し上げた体質強化対策に万全を期しますので、それによって生産コストの低減も図られるだろうし、品質向上も図られるだろうし、それから経営安定対策もありますので、そういった国内対策によりまして、引き続き生産や農家の所得は確保されて、国内生産量の方は維持される、そういうふうに見込んでいるところであります。

 農林水産省としては、引き続き、こういった新たな国際環境のもとでも農林水産業が成長産業となり、農林漁業者の所得向上が実現できるように、政府一体となって取り組んでまいりたいと考えております。

石川(香)委員 御丁寧に答弁いただきまして、ありがとうございます。

 不安に対して万全の対策を図っていくということで御説明いただきました。体質強化、それから所得向上、経営対策ということでありましたけれども、今、畜産のお話もありましたので、そこももう少しお伺いをしたいと思っております。

 畜産の部門で、北海道の話でありますけれども、北海道で生産する牛肉の八割を占めております雄のホルスタインの子牛の価格が今高騰しているということがあります。生後十日前後の初生牛の価格は、五年前の三倍にはね上がっているという状況になっています。北海道におきましては、ことし一月から三月のホルスタイン種の初生牛の価格、十三万六千円であったということでありますけれども、五年前は四万五千円であったということで、三倍になっているということです。

 この価格の高騰は、子牛の供給源であります酪農家が、高く売れる和牛ですとか交雑種を人工授精などで母牛に産ませるケースがふえたということですとか、あと、乳牛も雌を選んで産ませるということで、雄の子牛の数が減少してしまったというのが要因だと考えられています。

 全国的に乳牛が減少している中で、雄雌の産み分けができる性判別精液が普及していったこともこの子牛の不足に拍車をかけているのではないかと言われておりますけれども、こうすると、肉牛農家からは、生産が先細るですとか、経営が厳しい状況が続くといった心配な声が上がっています。

 そこで、アメリカを除く十一カ国によりますTPP11が年内に発効されますと、やはりオーストラリア産牛肉などの関税が下がって、競争はますます激化するということが予想されます。子牛の高騰が続くと牛肉の生産量も落ち、そして価格競争で外国産に負けてしまうのではないか、そういう懸念がありますけれども、この現状についても御答弁いただきたいと思います。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘ございましたとおり、近年、子牛価格、過去にないほど高騰してございます。そういう中で、当然ながら、肉用牛の肥育経営に影響がある、悪化が懸念されるということでございますので、これまでも、繁殖雌牛の増頭に向けまして、和牛の受精卵の活用ですとか優良な繁殖雌牛の導入支援など、各般の対策を行ってまいりました。

 今御指摘ございました和牛受精卵につきましては、性判別精液も含めまして、乳牛の農家が経営の一環として黒毛をつけるというようなことが一つございますけれども、性判別精液に関しましては、ホルスタインとして産まれるものが、生理上は一対一で産まれますので、そこを性判別精液によってホルの雌をふやしていくということで、まず乳牛の親の確保をしていくというのが一つでございます。

 あとは、和牛受精卵を活用することによって、特に価格の高騰を引っ張っております和牛の子牛価格を下げていくという観点から、和牛受精卵の活用をする、また、優良な繁殖雌の導入をするというような対策をずっと打ってまいりました。

 この結果、二十八年に、黒毛で申しますと、繁殖雌牛が六年ぶりに増加に転じました。平成二十九年も、前年から八千頭増の五十九万七千頭というふうに増加傾向が継続し、回復の傾向にございます。黒毛に関しては、足元では子牛価格は低下基調になってございますが、乳用種につきましては、御指摘のとおり、まだ下がり基調にはなっていないというふうに認識をしてございます。

 そういうことも含めて、この基調を確固たるものとするように、これまでの支援に加えまして、平成三十年度からは、繁殖基盤の強化に資する繁殖肥育一貫経営の育成ですとか、あと、キャトルステーション等を核といたしました小規模経営等の繁殖雌牛が地域内で継続、継承される地域内一貫経営体制の確立、こういう支援措置も三十年度から講じているところでございます。

 これらの施策を総合的に展開いたしまして、肉用牛の繁殖基盤の強化を図ってまいりたい、そういうふうに考えてございます。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 子牛の高騰ということについては、今答弁いただきましたように対策がとられているということでありました。

 国産の畜産ですとか農産物は、やはり品質、それから安心、安全という面では絶対に負けないものがあると思っておりますけれども、価格競争という点では非常に皆さん心配されているところでありますので、そういった懸念もしっかり受けとめて、これからも日本の農業、畜産を守るようにしっかりと取り組んでいただきたいと思っておりますし、私たちも引き続き求めていきたいと思っております。

 次に、質問させていただきます。

 今、十勝の小豆が足りないという問題があります。この十勝産の小豆の在庫減少が非常に続いておりまして、今、お菓子メーカーですとか製あん会社が増産を呼びかけているという状況があります。

 なぜこんなことになってしまったかといいますと、需給調整で作付面積を減らした二〇一六年に、その年に十勝で台風が発生しまして直撃をいたしまして、生産量が前の年から半減して、在庫過多の状況だったのが全く逆の状況で、逆に足りなくなってしまったということであります。

 今、今後の原料の確保に非常に不安を抱いているメーカーの声を受けて、ホクレンがチラシをつくって、主に十勝管内の生産者に作付面積をふやしてくださいという呼びかけをしております。

 北海道産の小豆でありますけれども、二〇一二年から一五年は非常に豊作でありまして、在庫がふえました。ここで需給調整が行われました。北海道内の作付面積は一割を減らすという目標を立てておりましたけれども、この需給調整によって二六%も減ってしまいまして、一万六千二百ヘクタールになったということでした。この年に台風が直撃をいたしまして、生産量は前の年よりも五五%減らして二万七千トンに落ち込んでしまったということです。翌二〇一七年には生産量は思った以上に伸びず、作付面積は一万七千九百ヘクタールということで、生産量は四万八千トンであったということでありました。

 この状況を受けまして、値段も高騰しております。一七年産の十勝産の小豆の価格は六十キロ当たり二万千五百円でありました。これは前年の一六年産よりも二千六百円高くなったということでありました。

 小豆の今後の消費の維持、そして生産者の所得の安定を継続させるためには、平成三十年産において最低でも全道で四千ヘクタールふやすことが求められているとこのチラシには書かれております。

 十勝産の小豆は北海道産の七割を占めまして、国内全体の六割以上の生産量を誇っております。十勝ブランドにこだわってわざわざ産地指定で買い付けるメーカーも非常に多いということでありまして、例えば、三重県の赤福でありましたり、虎屋、それから井村屋、山崎製パンなども十勝のブランドにこだわっているということで、こういった日本を代表するメーカーの皆さん方が、チラシで作付面積をとにかくふやしてほしいと呼びかけております。

 確かに、小豆の生産量をふやすためには作付面積をふやすということであります。ただ、輪作の中で小豆ばかり急にふやすというのはやはり簡単ではないという現状がありますけれども、このことについて御答弁をお願いいたしたいと思います。

柄澤政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘ございましたとおり、国産の小豆につきまして、特に北海道畑作農業の輪作体系を支える極めて重要な作物の一つでございます。また、その品質の高さから、実需者からも高い評価を得ているというふうに認識してございます。

 こうした中で、今委員から御指摘がございましたとおりでございます、十勝地方の小豆につきましては、平成二十四年から二十七年にかけて豊作が続きましたので、在庫が積み上がりまして、在庫調整として小豆から大豆への作付転換が進められ、小豆の作付面積が減ってきたわけでございます。そのときに、平成二十八年に台風が来まして収穫量が大幅に落ち込んだ関係で、過剰在庫がなくなり、不足になってきたということでございます。そのことを踏まえまして、現在、ホクレンが中心となりまして、産地に対して作付面積の回復を働きかけている状況だというふうに承知をしております。

 十勝地方の輪作体系、御案内のとおり、今、バレイショ、麦類、てん菜、豆類と四輪作で回されているわけでございますが、そういった中で、全体の体系の中で豆類だけを作付拡大するというのは適当でないということでございますので、豆類の中で大豆から小豆にまた回復をしていくということがポイントになろうかというふうに考えてございます。

 こういったことを踏まえまして、農水省といたしましては、小豆の収量、品質を始めとする生産性の向上を通じた作付意欲の増大に向けまして、畑作構造転換事業、これは二十九年度補正で措置しておりますけれども、この事業によります収量や品質の安定化に向けた圃場排水性の改善ですとか、あるいは産地パワーアップ事業による収穫機等の導入や乾燥調製施設等の整備支援などを進めているところでございます。

 今後とも、国産小豆の安定的な供給に向けまして、必要な措置を講じてまいる所存でございます。

石川(香)委員 ありがとうございます。このことについては、やはり自然災害とそれから需給調整のタイミングが悪くなってしまいましてこういう状況になってしまったということでありました。

 輪作の中でさまざまな調整が必要だということでありますけれども、時間をかけながらにはなるかもしれませんが、小豆の生産量が一定、安定するように、やはり皆が知恵を出し合ってこれからも取り組んでいくということが大切ではないかと思っておりますので、引き続きよろしくお願いをしたいと思っております。

 それでは、最後の質問になると思いますが、鳥獣被害について少し触れさせていただきたいと思っております。

 前回の委員会でも少し質問をさせていただきましたけれども、二〇一六年度の北海道における野生鳥獣における農林水産業の被害総額は四十六億七千五百万円ということでありました。非常に大きな被害額でありますけれども、実は、五年連続で減少をしております。その理由として、ハンターが、非常に若者がふえているという話を前回させていただきまして、女性のハンターがふえているという喜ばしいような現象もあるというお話をさせていただきました。

 この若手ハンターがふえている要因でありますけれども、ジビエでありましたり、アウトドアブームというのがやはり大切なことではないかというふうに考えているんですけれども、十勝の豊頃町にありますエレゾ社というところでは、エゾシカを自分で狩猟いたしまして、自家牧場で放牧豚を飼育して、その肉の解体、そして加工、販売まで一貫して行っているということでありました。

 ただ、非常に注目されているジビエでありますけれども、食肉加工されている鹿の割合は伸びているんですけれども、捕獲された野生鳥獣のほとんどが、残念ながら埋設や焼却によって捨てられているということで、食肉にされるのは一割程度であると思います。

 時間がないので申しわけありませんが、有効活用するための課題について御答弁いただきたいと思います。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 有害鳥獣のジビエ利用につきましての御質問でございます。

 まず、先生から被害状況についてお話ございましたけれども、北海道におきましては五年連続、全国ベースでは四年連続して、トータルとしては被害額が減ってきているというよい傾向にあるというところでございます。

 一方で、その捕獲された頭数に占めますジビエとしての利用率でございますけれども、全国平均では七%程度にとどまっておりまして、北海道のエゾシカにおかれましても、一九%程度というまだまだ低い状況でございます。

 ジビエの利活用が進まない要因、幾つか考えられるわけでございますけれども、捕獲、搬送段階では、やはり野生鳥獣を捕獲するということで、畜産業のように一定の品質の素材を安定、定量で供給できるというものとは違うというようなこと、それから、処理、加工、流通段階では、食肉としての安全性に対する一般的な懸念ですとか、それから、規格、表示方法が統一されていないといったようなデメリットがあるのかなと思っております。

 それから、販売段階では、何としても、やはり消費者の皆様のジビエに対する認知度が低いのではないかというような原因が挙げられておりまして、こういった原因に対応して、それぞれ適切な対策を打っていくことが必要ではないかと考えておるところでございます。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 処理も含めて非常に大切だということでありますので、また今度の機会に質問させていただきたいと思っております。

 ありがとうございました。

伊東委員長 次に、緑川貴士君。

緑川委員 皆様、お疲れさまでございます。国民民主党・無所属クラブの緑川貴士と申します。

 一般の質疑に入る前に、けさ報道のありました東北農政局の現役職員による情報流出問題、これについて少し質問をさせていただきます。

 職員が、報道によれば、落札の決め手となる情報はOBに伝えていないというようにお話をしているということですが、そもそも、伝えているということ自体が私は問題であると思いますし、やはり公務に携わる職員としては、断じてあってはならないというふうに思います。

 過去に落札した業者の技術評価に関する情報までOBに流しているということで、落札の決め手にはならないというふうに譲ったとしても、これは大変重要な情報であることは間違いないわけで、落札するという方向にやはり誘導しているような職員の情報流出があるのではないかというふうに思います。

 大臣からは冒頭でお話しいただきましたけれども、改めて、農水省の今後の対応についてお伺いします。

齋藤国務大臣 けさの報道につきましては、昨年四月以降、公正取引委員会において調査が行われている案件でありまして、現在も調査中であり、事実関係が確定されてから具体的なコメントはすべきだろうと思いますので、コメントは現時点では差し控えさせていただきたいと思います。

 いずれにしても、農林省としては、これまでと同様に公正取引委員会の調査に積極的に協力をしてまいりたいと考えていますが、仮に、報道されておられますような内容が事実であれば、極めて遺憾でありますので、厳正に対処いたします。

緑川委員 これまでも、報道の後を追う形で政府の対応がある。やはり、そうすると、国民の政治や行政に対する、これまでただでさえ数え切れないほどの問題が今湧き起こっている中で、またこうした、後で、イニシアチブをとれないままに対応されるということになると、余計に国民の信頼が揺らぐことになりかねません。どうか、調査の結果がわかり次第、速やかに省として御公表されることを強く望みます。

 続きまして、野生動物のこの冬の果樹被害について質問をさせていただきます。

 この冬は、春先にかけてネズミが果樹の樹木の皮を食い荒らす被害が、特に東北地方の日本海側、これは秋田県、山形県で多発しております。というのは、これは雪が背景にありまして、東北地方では平年の二倍以上の積雪があったという地点が多くありました。ことしではありながら、三十年豪雪と呼ばれる大雪になっておりました。雪や寒さをしのぐために、ネズミが雪の下に巣をつくり、雪に埋もれた樹木の幹や枝をはうことができるようになる。その樹木の皮などを食べる被害がことしは目立っております。

 皮が特にやわらかく若い樹木が狙われていて、中には幹が一回り、一周分食べられてしまうようなものが出てきているということで、これはもうそれ以上成長できないわけですね、養分が届かないわけですから。枯れていくのを待つしかない果樹の木も見つかっており、農家のことしの収入の減少が大変心配されております。

 樹木が折れたりハウスが倒壊したりというような、本来の雪による直接の被害ではない、これは雪害の二次被害とも言えるんですけれども、雪害の直接の被害額には計算されない。ネズミやウサギによる食害は、目に余り見えないわけですね。いわば、これは隠れた雪害なわけです。

 ほかの野生鳥獣のように、被害の発生がすぐに確認できるようなものとはまた違って、ネズミの食害というのは、果樹園の雪が解け始めてからようやく足を踏み込める、そこでようやく確認できるわけですね、生産者の方々が。真冬の期間に被害の発生になかなか気づけない、これも事態を拡大させている、深刻にさせております。

 近年の豪雪と言われた年には、過去も、平成二十四年の十二月から二十五年の一月、二月、これは東北豪雪と呼ばれております。やはりこの東北地方で大雪だったわけです。その前には、平成十七年の十二月から翌年の一月、二月の豪雪、これは年号をとって一八豪雪と呼ばれております。西暦でいえば〇六豪雪とも言われておりますけれども、これが発生していて、資料1をごらんいただければ、これはまた関係性もわかりやすいかなと思うんですけれども、野生動物の種類別の農作物被害のデータです。

 黄色でマークしているネズミの欄、下を見ますと、平成十七年度に二・〇、平成二十四年度、二〇一二年度ですね、これは二・七というふうに表示されています。単位が千トンですから、それぞれ二千トン、二千七百トンの農作物の被害ということになります。過去の大雪の年を見ましても、被害もやはり大雪の年には発生しやすいということが言えるかと思います。

 小動物といっても、ごらんのように、被害の量として少なくない数字であるというふうに言えますが、ネズミの農作物被害について御所見を伺いたいと思います。

荒川政府参考人 まず初めに、私の方からデータ的な面についてお答えをさせていただきたいと存じます。

 農林省は、毎年度、野生鳥獣による農作物の被害状況調査を実施いたしておりまして、二十九年度のデータにつきましては現在精査、取りまとめ中でございますので、現在、直近のデータは二十八年度ということになってございます。

 先生からお示しいただきましたこの十一年度以来の数字、二十八年度までございます。これは数量ベースでお示しをいただいておりますが、私ども、金額ベースでも把握をいたしておりまして、金額ベースで把握をいたしましたベースで申し上げますと、平成十一年度から二十三年度までの間は、大体毎年一億円から二億円程度で推移をいたしております。二十四年度はちょっと後ほど述べますが、二十五年度以降も一億円以下というようなことで、平年ベースでいうと大体そのぐらいの被害額なのかなと認識しておりますが、二十四年度は七億円弱ということで、非常に高い数字になっております。

 これは、先生が御指摘をされました、この年の東北、特に青森での豪雪というようなこととの関係もあるかもしれませんが、青森を中心に、非常に高い金額がここで計上されているということでございます。

緑川委員 年によっては、数倍どころか、先ほど七億円と、金額が乱高下する、そういうネズミの被害であります。

 隣のウサギを見ても、これはやはりコンスタントに被害が数字としてあらわれているわけで、この冬は特に、高く積もった雪を利用して、枝に足が伸びるわけですね、ウサギの。そうすると、枝についている花芽を食べてしまう、そういう被害もふえているということです。

 小動物のウサギ、ネズミ、こうした被害の面積、被害額、これは鹿やイノシシ、よく鳥獣被害と言われているような、毎年顕著に起こるような被害とは言えないかもしれませんが、それだけに対策がとられないんですね。五、六年に一度という、そして周期的に起こるかもわからない、あるいはこの対策がやはりとりづらい面があります。

 雪が多い日本海側では特に被害が出ている。現状では、豪雪の年になれば、やはり先ほどお示しのような被害の額、そして被害の量が拡大するおそれが今後も続いていくわけですが、政府としてどのような御対応をお考えでしょうか。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 果樹のネズミによる被害でございますけれども、今先生からもございましたとおり、一般的には、積雪時にネズミが比較的樹皮がやわらかい若木、また苗木を中心に幹や枝を食害することにより生じます。積雪量とネズミの被害の量との関係について公式に明確になっているわけではございませんけれども、積雪量が多いときには樹体の上部までネズミが到達できるので、より多くの被害が生じ得るというふうに考えてございます。

 農林省といたしましては、まず、積雪時のネズミ被害の防止を生産者に呼びかけるために、農業技術の基本指針におきまして、樹幹へのプロテクター等の巻付け、忌避剤の塗布や散布、殺鼠剤の投与といった対策を明示してございます。また、昨年の冬、雪が多かったわけでございますけれども、まず昨年十一月、本年の一月、二月、この三回、都道府県を通じ関係機関に対してこれらの対策の徹底を通知し、呼びかけているところでございます。

 また、こういう対策を徹底したにもかかわらず、残念ながら樹体の枯死などの重大な被害も起こり得るわけでございます。そういう場合には、現場の要請も踏まえながら、果樹の改植事業の活用を検討していく、そういうことになろうかと思います。

緑川委員 さまざまな対策をとって、現場の命とも言える果樹をやはり守っていかなければなりません。抜本的な対策をとることがやはり難しい、根本策というよりはそれに対する対症療法的な対応ということになろうかと思いますが、そのシーズンの積雪の量を踏まえながら、こうした被害を最小限に食いとめるということも求められております。

 例えば、対策のもう一つとして、繁殖力の旺盛なネズミ、ウサギの生態については、実は明らかになっていないところもあるというふうに聞いております。そうした生態について研究を進めることによって、研究環境を整えることによって、食害の対策に結びつけることも重要だというふうに私は考えるんですけれども、このあたりはいかがでしょうか。

別所政府参考人 お答え申し上げます。

 農林水産省におきましては、野生鳥獣による農業被害対策に関しまして、現在、野生鳥獣の行動特性などを踏まえまして、ICTなどを活用いたしました効果的な捕獲技術の開発などに取り組んでいるところでございます。

 御指摘のネズミによる農業被害の問題への対応でございますけれども、まずは、先ほど生産局長からの答弁にございましたとおり、樹幹の被覆による防護、あるいは忌避剤、殺鼠剤の使用などの対策を適切に講ずることが肝要かと考えておるところでございます。

 その上ででございますけれども、研究機関等から、生態あるいは行動特性を踏まえました新たな効果的な技術開発等の研究提案がございますれば、その実施について私どもとしても検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。

緑川委員 一回食い荒らされれば、この木は、いろいろな技術を使わなければやはり再生することは難しいんですね。

 秋田県では、りんごの学校といって、接ぎ木の技術を応用して、たとえ重要な器官が食われたとしても、別の形で、接ぎ木をすることで養分をまた行き届かせることができるような、こういう対応も今、技術指導を通して考えております。

 毎年の雪害に対応した農作物の管理の御苦労があるにもかかわらず、それに加えて食害という、生産者の冬の御心労がやはりなかなか絶えないシーズンであります。食害の被害を乗り越えてことしも豊かに実らせようと奮起する農家の皆様のこの思いにどうか応えていただきたいので、大臣からも御所感を伺いたいと思います。

齋藤国務大臣 秋田県とか山形県などの東北地方の日本海側地域は、リンゴ、ブドウ、サクランボなど我が国の主要な果樹の重要な産地であると承知しておりますが、同時に、このような産地においては積雪があるということで、特に積雪時にネズミによる被害が生じているわけですが、これが高じて、営農意欲の減退ですとか、それから耕作放棄等に結びつく、そういう可能性もあるものですから、私どもとしては、ネズミによる被害の予防、ウサギもありますけれども、予防を徹底していくことが重要だと考えています。

 このため、農林省では、先ほど説明しましたけれども、積雪時のネズミ被害の防止対策、これはさまざまありますが、まずこれを徹底するということを呼びかけるとともに、地域でネズミ被害の防止に取り組むような場合につきましては、地域の関係者で構成される協議会に対しまして、鳥獣被害防止総合対策交付金によりまして、わななどの購入の支援を可能としているところであります。

 いずれにしても、御指摘のように繁殖力が非常に強いということでありますので、先ほど答弁もありましたけれども、研究の余地もあるんだろうなと思っておりますので、引き続き、果樹産地におけるネズミ被害の防止に向けて、現場で地道な努力を行っている生産者の方々の努力を無にしないように支援をしてまいりたいと考えております。

緑川委員 御丁寧なお答えをありがとうございます。

 広大な果樹園、その広い地域で繁殖力旺盛な小動物に対する対応、大変これは心労が絶えない、そして、わなをかけるにも、もう途方もない努力なわけです。どうか、一筋縄ではいかない難しい取組ではありますが、御配慮のほどお願い申し上げたいと思います。

 続いて、木質バイオマス発電についてお尋ねいたします。

 この木質バイオマスに関連して、まずは、この前、森林経営管理法が衆議院では通過されました。しかし、現場の声というものは、また根強い不安のお声というものも上がっております。森林管理の経営、権利が委ねられる市町村には林業の専門人材が少ない、伐採を進める印象が大変強い法案だが、森づくりはしっかりと図られるのだろうか、目先の利益だけを求めて、伐採業者による乱伐で山が丸裸になってはしまわないかというような声があります。

 森林所有者、素材生産者、自治体関係者、それぞれの立場からこうした声が上がっているわけですけれども、林業の再生と木材関連産業の振興、そして、造林も含めた長期的な視点に立った森づくり、適正な森林整備についての意気込み、改めて、大臣からお聞かせいただければと思います。

齋藤国務大臣 緑川委員には、きょうも緑のネクタイをしてきていただいて、いつもありがとうございます。

 我が国の森林は、現状において、適切な森林整備がなされているとは十分に言いがたいところがあります。そして、それは林業の発展のみならず公益的機能の維持にも支障が生ずる、そういう状況でありますので、先般お世話になりました森林経営管理法案についてお願いをしたところでありますが、同時に、これは大きな改革でありますので、今委員御指摘のように、現場での不安あるいは自治体の皆さんの不安というものは当然あろうかと思っております。

 我々としては、この法案をきっちりと生きたものとするように、現場といい連携で進めていくことに尽きるというわけでありますけれども、まずは、しっかりと、この法案に基づいて、森林所有者がみずから経営管理できない、そういう森林をきちんと特定して、そして、経済ベースに乗るものは林業経営者に集積、集約化する、それから、経済ベースに乗らない森林については市町村が公的管理していただく、そういうきちんとした方向性を共有した上で、さまざま課題が出てくると思いますけれども、それについては走りながら解決をしていくということに尽きるのではないかと思っておりますので、引き続き、現場の皆さんあるいは市町村の皆さん、都道府県の皆さんと連携を密にして取り組んでいきたいと考えております。

緑川委員 やはり、現場の声を置き去りにしない林業、森林行政、お願いを申し上げたいというふうに思います。

 また、木材の供給面での増大が今後この森林経営管理法の施行によって見込まれるということになるかと思いますが、これまで外材に押されていた国産材が、今も供給量をふやし続けているわけです。平成十五年以降は木材自給率が上がっております。おととし、平成二十八年の木材自給率については、三四・八%と、十五年前に比べれば倍近くになっているという計算になります。

 資料2をごらんいただきたいと思いますが、自給率を更に今後高めていこうという中で、これまでは山間部に捨てられてきた間伐材、いわゆる未利用木材というふうに呼ばれます、これでつくられた木材チップや木質ペレット、未利用木質バイオマスというふうに呼ばれますが、これらを燃料材として、平成二十六年には、二、これは単位でいいますと二百万立方メートルが利用されました、実績です。二十八年度は、これは書いていませんが、四百万立方メートルを超える利用量になっております。

 これは、目標としては、書いてあるように、平成三十二年には六百万立方メートル、平成三十七年には八百万立方メートルと、利用量を着々とふやしていくことを国として目指しておりますが、この木材チップや木質ペレット、未利用木質バイオマス、この位置づけですね、燃料材としての有用性、課題についてのお考えをお聞かせください。

沖政府参考人 お答えいたします。

 未利用木質バイオマス発電につきましては、地域に存在する森林資源を有効活用するものでございまして、本格的な利用期を迎えている国産材の大きな需要先になるだけでなく、木材の販売益が継続的に地域に還元されますことから、雇用創出等により地域の活性化にも貢献できるといった有用性があると考えてございます。

 他方で、これまで放置されてきました未利用間伐材等のエネルギー利用を進めるに当たりましては、路網整備、それから木質チップ製造施設の整備などによりまして、安定的、効率的に木質バイオマスを供給する体制を構築することが重要な課題と考えてございます。

緑川委員 さらなる活用が見込まれている未利用の間伐材を通じた未利用木質バイオマスの可能性、これは大きく私も期待をしたいというふうに思いますが、実際の燃料材の収集方法など、これは課題を残しております。

 未利用材として、特に木の根元の部分、タンコロと呼ばれますが、それから枝、こういった低資材、これは直材よりも搬出コストがかかります。チップ化しにくいために、発電所では余り使われにくいということです。破砕チップにならできるけれども、高い発電効率を求めるならば高品質のチップが求められるというふうにも聞いております。

 間伐材やこうした山に残された材、これを搬出するには路網が整備される必要があると、沖長官からもお話をいただきました。建材、合板材と一緒でなく、やはり一緒にこれは搬出しないと割に合わないわけですね、コストが合わない。そして、燃料材は安いので、そのためだけに労働力をふやすこともできない。いろいろな問題があります。

 この安定調達という部分についての御所見、伺いたいと思います。

沖政府参考人 今、緑川委員からお尋ねがあった、森林・林業に関する安定調達についてお答えをしたいと思います。

 委員御指摘のように、森林において伐採されますと、木材として、用材として使われる部分、それから、御指摘のありましたような、タンコロのように残っていくもの、こうしたものをどのように効率的に集めていくかということが最大の課題となること、先ほど御紹介したとおりでございます。特に、切捨て間伐で林地に残された材、それから枝葉、タンコロ、こうしたものを集めるに当たりまして、やはり路網の整備といったところがどうしても重要でございます。

 それとあわせまして、そうしたものを集めていく機械設備といいますか、トラックにつける装置とか、そうしたものを技術開発していくことも重要でございまして、現在、そうした新たな取組における技術開発も進められているところでございます。

 いずれにしましても、未利用材を集めるに当たりましては、そうした施設、それから機械装備、そうしたものを今後ともしっかり対応していきたいというふうに考えてございます。

緑川委員 今後の森林経営管理法とあわせて、やはりこの中で、これまでの森林・林業行政の培ってきた政策をもフル動員して、路網の整備を始めとして、基盤となる部分の整備は不可欠だと思うんですね。

 その上で、各地のさまざまな取組をどうか御支援いただきたいと思いますが、参考として、木材の町である私の秋田県の北秋田市では、小型の木質バイオマス発電設備を開発した会社があります。ボルタージャパンという会社ですが、地理的な優位性が、やはり木材の町ということでありまして、輸送しやすく、コンベヤーで詰まりを起こしにくい切削チップですね、木質チップよりも更に小さい、細かく砕いたチップを使って、長さが六十三ミリ以下、そして水分量が一五%というふうに乾燥させたチップを活用してガス化発電を行っております。

 この木質バイオマスのガス化発電では、従来、タールが発生することで機械が停止してしまうという課題がありましたが、ボルタージャパンでは、良質なガスを抽出しながら、タールの発生、ストップの問題を回避するというプロセスを独自に開発することで、年間で三百二十五日という連続運転ができる。高い燃焼効率を可能にしております。

 地域の木材資源を活用した発電と、そしてその際に生じる熱、この熱も有効に利用していくために、観光客やドライバーの途中休憩所である道の駅たかのすで足湯が昨年設置されております。この熱を住民あるいは観光客にも還元しようと、まちづくりにつなげているという取組があります。この道の駅の、何といっても駐車場の小さなスペースに設置できるぐらいに非常に小型なんですね。この発電設備が、電力消費のピーク時の対応、そして災害時の非常電源としても将来性が高まっております。

 こうした未利用間伐材を活用した木質バイオマス発電の取組、地元で今後ますます注目されているところなんですが、ここでまた、A3資料、二枚目の3に今度は目を通していただきたいと思います。

 この木質バイオマス発電の中で燃料となる種類は、これは資料では四つに分けられております。青色の部分、これは未利用木質ですが、二千キロワットを超える比較的大きな発電設備が利用しているものです。オレンジ色の部分は、同じく未利用木質ですが、ボルタージャパンが開発しているような二千キロワット未満の小型の発電設備が利用しているものです。そしてこのグレーの部分、一番多いですが、一般木質又は農作物の収穫の際に生じる残りを使ったもの。最後の四つ目、黄色の部分は建築廃材です。

 この四つなんですが、木質バイオマス発電所でFIT認定を受けた件数について見ますと、これは数字はありませんけれども、この件数が伸びているんですね。内訳を見ればグレーの部分が突出して伸びていることがわかると思いますが、これは一般木質、農作物残渣ですね。昨年の三月時点で数字としては三百六十三件、前の年からこれははね上がっているわけですが、この急増した背景は何でしょうか。

武藤副大臣 先生にこのグラフで示していただきましたとおり、大変急増という形が見えております。

 今、数字も三百六十三件とおっしゃっていただきましたけれども、もうちょっと正確に、加えて申し上げますと、一般木質、農作物残渣のFIT認定件数、認定容量は、二〇一六年の三月時点では百四件、そして二百九十五万キロワットだったものが、今御指摘いただきましたように、一年後の二〇一七年の三月時点で、三百六十三件、千百四十七万キロワットまで増加しております。さらにその後も、同年四月から九月で、十八件、百三十一万キロワット増加しているということでございます。

 その背景でございますけれども、認定容量の増加分のほとんどを二万キロワット以上の大規模発電所が占めております。そして、FIT制度の買取り価格が、二〇一七年九月以降、二万キロワット以上の規模について二十四円から二十一円に引き下げられることになりました。引き下げた前の、二十四年の買取り価格を希望する事業者によるFITの申請が急増したということが一因であると思います。いわゆる駆け込みということになると思います。

緑川委員 この駆け込みによって、高く買い取ってもらいたいという事業者がふえてこういう数字になったというふうに思いますが、この固定価格買取り制度、FITは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス、再生可能エネルギーを変換して得られた電気、これを国が定めた価格で一定期間電気事業者が買い取るという制度です。

 得られた電気を電気事業者が買い取った際にかかる費用は、結局、電気代の一部として、国民が負担するお金によって賄われているわけです。この電気利用者の負担の増加、発電設備がFIT認定されていても長い間稼働が始まっていない、こういう事業体もふえているという問題があります。

 昨年の四月に、こうしたことを受けて、FITの制度が改正されていますが、再生可能エネルギー発電の事業を適切に実施できるのかどうか。事業計画を通して改めてFIT認定を行っていくというふうに基準を見直していますが、昨年の時点で、急増しているグラフを見てもわかるように、エネルギーミックスで想定している二〇三〇年の導入水準を、実はこれはもう三倍になっているんですね。もうはね上がって、導入水準を三倍に上回っているということです。

 未利用木質の利用を進めていくという方向性でありながら、先ほども林野庁の沖長官からお話もいただきました、しかし、このところ急激にふえているのは、一般木質、農作物残渣によるもののFIT認定がほとんどである。

 この両者の比重を、どのように経産省としてはお考えでしょうか。

武藤副大臣 ちょうど、ことし、エネ基の見直しということでございますが、今御指摘いただきました未利用の木質を中心としたバイオマス発電について、二〇一七年の九月末時点で、FITの導入量は約四十万キロワット、約五十三件です。そして、二〇三〇年の、今のエネルギーミックスにおける未利用バイオマス発電の導入量は、二十四万キロを見込んでいるところであります。

 一般木質、農作物残渣を中心としたバイオマス発電については、二〇一七年九月末時点のFIT導入量が四十八万キロ、これは二十五件です。そして、二〇三〇年度、エネルギーミックスにおける一般木質、農作物残渣によるバイオマス発電導入量は、二百七十四万から四百万キロワットと見込んでいるところであります。

緑川委員 数字としても、これは私のお話のとおりかというふうに思います。

 木材自給率を先ほどお話しのように高めていく。国内製材の供給が、これはやはりふえていく方向で農水省としては進めていく。その中で、国産製材を使った後に残ってくる材、残材もふえます。この一般木質バイオマスによる発電を、やはりこのFIT認定、一般木質バイオマスによってふやして、発電所のFIT認定も進めていくという形であれば、国内製材の残材を利用しての発電であればまだわかります。ここで、資料の4をごらんいただきたいんですけれども、実はそういう状況ではないんですね。

 一般木質バイオマス発電において、実は、海外から輸入される燃料が、この円グラフから、大半を占めているということがわかります。使われる外国産の燃料の中で注目されるのは、パーム油などのバイオマス油脂です。

 一般木質バイオマス発電の昨年九月末までのFIT認定のうち、燃料にパーム油を含むものは、出力ベースでは三六%、件数ベースでは半分以上です、五二%にも達している。つまり、認定された三百八十一件のうちの五二%、およそ二百件で、このパーム油を含んだバイオマス発電が行われております。あるいは、また今後、稼働が始まって行われるということになります。

 何が問題かといえば、国連環境計画、UNEPが二〇〇九年に公表した調査によれば、パーム油を燃焼させると、化石燃料よりも二酸化炭素の排出を減らせるということが言われておりますが、しかし、パーム油の原料となるアブラヤシの農園、プランテーションの開発を考えれば、話は全く変わってきます。

 アブラヤシの多くは、インドネシアとマレーシアにある熱帯雨林、それから湿地である泥炭地を利用して栽培されますが、熱帯雨林はCO2を吸収する機能があります。UNEPの評価では、熱帯雨林の破壊によってCO2排出量が化石燃料の八倍にふえるというふうに見込まれているんです。この泥炭地では、植物の死骸などに膨大な炭素がため込まれておりまして、泥炭地の破壊によってCO2の排出量は二十倍もふえるというふうに計算されています。

 つまり、このバイオマス発電は、化石燃料を使うかわりに、本来、環境への影響を最小限に抑え、地球全体の環境問題の解決を図るために行われるものであるはずなのに、このバイオマスのカテゴリーになぜパーム油があるのか。そして、CO2排出が少なく地球に優しいこととは、これは真逆の結果を招く形になろうかと思いますが、これでは本末転倒ではないんですか。いかがでしょうか。

高科政府参考人 お答え申し上げます。

 パームオイルを利用しましたバイオマス発電につきましては、まず、調達価格等算定委員会の御意見を尊重した形で、コスト低減を図るために、その規模にかかわらずに競争環境が成立しているということから、二〇一八年度、今年度から、全ての規模において固定価格でなくて入札制に移行するということにいたしました。

 それから、FITの認定量の急増を踏まえまして、既に認定した案件も含めまして、今御指摘ございましたけれども、現地の燃料調達者等との安定調達の契約書、これを確認する、それにあわせて、持続可能性につきましても第三者認証によって新たに確認するといったことによりまして、燃料の安定調達に係る認定基準の厳格な確認等、これを行うこととしております。

 こうした措置を講じることによりまして、FIT認定量が急増する中で、コスト効率的かつ長期安定的に事業を実施できる事業者に限りましてFIT新制度の支援を行うことが可能になっていくと考えてございます。

緑川委員 このパーム油、液体燃料なわけです。ほかの木質バイオマス、固体燃料とは違いますね。これで、安価に入手できる、つまりコスト構造に違いがあるということも踏まえて、今御答弁のように、この買取り価格を、決定の仕方を入札制度によって変えるというふうに仕組みを変えられたということです。

 入札制度へと仕組みが変わったからといって、各社の価格競争は熾烈になってくるわけです。大手の事業体によるパーム油脂発電が拡大しないというわけには私はいかないと思うんですね。ますますパーム油の輸入量の増大も心配されます。この点について、どのような御見解でしょうか。

高科政府参考人 お答え申し上げます。

 入札制度におきましては、当然、価格について競争する中で、その入札量についても、これは調達価格等算定委員会での御議論を踏まえまして、それを適切な量で決めさせていただくという形で運用をしていきたいと思っております。

 いずれにしましても、先ほど申し上げましたように、燃料の生産国におきまして、合法性を含めた燃料の持続可能性、こういったものがきちんと確保できるということが大変重要ですので、こうしたことをきちんと確認しながら制度の運用を進めてまいりたいと考えてございます。

緑川委員 安定確保、だからといって、世界の環境に影響を与えるというような動きも、私はどうかと思います。

 熱帯雨林が伐採されることによってCO2の排出量がふえるというだけでは終わりません。熱帯雨林が伐採されればどうなるかといえば、そこに住む希少な生物種のすみかが奪われます。森林の減少は、世界の温室効果ガスの排出原因の一五%を占めるというふうに言われております。パーム油の問題は、つまり、森林の問題、生物多様性の喪失、気候変動問題にも大きくかかわっているわけです。

 アブラヤシのプランテーションという開発の面においても、森林でこれまで伝統的な暮らしを営んできた先住の民族の方がいらっしゃいます。その所有権が認められず、生活の拠点を失うという指摘もされています。このプランテーションの中で強制労働とか児童労働が行われているという現実もあります。パーム油生産は、先住民族の権利の問題を人権の問題にまで及ぼしているわけですね。

 最後に、大臣に伺いたいと思いますが、このパーム油脂発電の拡大、世界の環境に重大な影響を与えかねないというふうに私は思います。この懸念を深めた上で、国内の息の長い造林の取組を踏まえた林業の再生、そしてその先の成長産業化によって、未利用木質バイオマス、あるいは海外資源に頼らない一般木質バイオマスの利用促進を図っていくことが進むべき道であるというふうに私は考えておりますが、大臣のお答えを求めます。

伊東委員長 齋藤農水大臣、時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。

齋藤国務大臣 熱帯雨林の件については、ちょっと私の方からの言及は避けたいと思いますけれども、私どもとしては、木質バイオマスのエネルギー利用については、本格的な利用期を迎えております国産材の大きな需要先になると考えておりますし、また、雇用創出等によって地域の活性化にも貢献するというふうに考えておりますので、農林水産省では、木材を多段階で利用するカスケード利用というものを基本としながら、未利用の間伐材等のエネルギー利用、これを推進していきたいというふうに考えています。

 搬出間伐や路網整備によって木質バイオマスの供給体制を整備するとか、それから、木質チップの製造施設など関連施設の整備ですとか、そういったものに対する支援に取り組んでいるところでありますし、それから同時に、それが無秩序に行われるということは好ましくないと考えておりますので、地域の活性化に向けては、地域の関係者の連携のもとに、森林資源の熱利用等による地域内での持続的な活用、そういう仕組みが大事だろうと思っておりますので、地域内エコシステムの構築、こういうものも重要だと考えておりますので、そのための実現可能性調査ですとか技術開発等への支援も取り組んでいきたいと考えております。

 いずれにいたしましても、未利用間伐材等の木質バイオマスのエネルギー利用というものも、これから主伐が進んでいく中で、積極的に、しかしきちんとした形で進めていきたいというふうに考えております。

緑川委員 決して日本だけが豊かになるとか一国至上主義という観点でない今後の取組を求めまして、そして、再生可能エネルギーの拡大が結局真逆の、本末転倒の結果を招かないということを申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊東委員長 次に、大串博志君。

大串(博)委員 無所属の会の大串博志です。

 早速質問に入らせていただきますが、昨日は土地改良法改正案に関して議論させていただきました。非常に重要な論点だったと思いますので、今後の成り行きも見ながら、また新たな時代に向けての土地改良のあり方を皆さんと一緒に探っていきたいと思います。

 どちらかというと、きのうの議論においてイメージされていたのは、低平地において集約が進んでいる、そういう中で、所有者と耕作者が違いを見せてきている、こういう中で、どのように農地の機能を、かんがい施設等々も含めて、あるいは水利用も含めて維持していくか、こういうことでしたね。

 私、きょうは、どちらかというと中山間地に目を転じさせていただいて、中山間地も、御案内のように、いろいろな統計でいうと、大体日本の農業の四割は、農業従事者やあるいは生産額、あるいは耕作面積に関しても四割近くを日本の農業の中で占めている、私は、極めて重要な農業の部分といいますか、非常に大きなプレーヤーだというふうに思っているんですね。

 そういった中で、中山間地を歩くと、非常に厳しい現状を皆さんも目の当たりにされると思います。特に低平地におけるかんがい施設等をどうするかということと同じような感覚で、例えば中山間地において水をどうやって管理していくのか、得ていくのか、これは極めて大きな課題になっていまして、特に中山間地においては、ため池、これは重要です。私は西日本なので、よく、かめと言うんです、かめ、水がめ。そこがあるからこそ、中山間地で非常に品質のいい米もつくれるし、あるいはいろんな畑作も必要な水を得ながらやっていく、こういうことなんですね。ところが、ため池の現状、非常に厳しいものがあると私は見ています。

 そこで、まず事務方の方にお尋ねしますけれども、現在、日本全国のため池、どのくらいの箇所数があって、どういう状況に今あるのか、実態に関して少し御答弁いただけたらと思います。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 ため池でございますが、全国に約二十万カ所所在をしておるところでございます。特に、今先生からもお話ございましたが、降水量が少ない、大きな河川に恵まれないといった西日本を中心に分布いたしておりまして、特に瀬戸内海沿岸の七府県で全体の五六%を占めるといったような状況になってございます。

 このうち、受益面積が二ヘクタール以上のため池が約六万一千カ所ございますけれども、この七割が、江戸時代以前、場合によっては築造年代がよくわからないといったものも含めまして、江戸時代以前に築造されておるものでございまして、老朽化しているものが多数存在しているのではないかと認識をしておるところでございます。

 農林水産省では、平成二十五年から二十七年にかけまして、全国のため池で一斉点検というものを実施いたしました。二十八年度以降も、下流に住宅や公共施設などがある防災重点ため池、これは約一万一千カ所ございますけれども、そこにつきましては、毎年度、詳細調査を進めておるところでございます。

 直近、平成二十九年の三月末時点におきまして、地震に対する詳細調査を実施したため池のうち、五五%で耐震不足が確認されている状況、それから、豪雨に対する詳細調査を実施したもののうち、三九%で豪雨対策が必要というような状況になっております。

大串(博)委員 今御答弁いただきましたけれども、全国で約二十万カ所、多いですね、西日本が多くあるんですけれども。

 先ほども話がありましたように、江戸時代以前よりできたものも、使っているものもある。何百年ですよ、何百年。当然、傷みます。特に、最近、地震ですね、豪雨もそうなんですけれども、地震があってひび割れが生じている可能性がある、そういうところに大雨が降る、更にそのひび割れ、亀裂を拡大する可能性があるということで、まず水の確保が非常に難しくなっているところがある。

 あと、崩れる可能性があるところがある。ため池ですから、当然、人家より上につくっているわけですね、あるいは農地より上につくっているわけですよ。それが壊れる可能性がある。危険でもある。こういう状況のものが、私が見る限り、私の地元でもたくさん実はあります。

 そういった中で、今局長から答弁もありましたけれども、防災重点ため池ということで、二十万ため池のうちの約一万一千カ所に関しては防災重点だということで、いろんな調査もしながら、手当てもされているということでありました。しかし、この二十万カ所のうちの一万一千カ所で本当に足りるのかというのが私の実は問題意識で、多分、恐らく皆さんもお地元を歩いていかれると、あちこちで、いや、うちのかめ、ため池が危ないんだ、崩れそうなんだ、水が漏れているんだとたくさん聞かれると思うんですね。

 防災ため池ということで予算を投じられる、これは、私、わかります。恐らく、防災という冠の方が予算をとりやすい、あるいは補助率なんかでも、地元負担なんかも少なくやりやすいという面もあるんだと思います。それはよくわかる。なんだけれども、この一万一千カ所より、ほかにも同じく非常に危なくなっているところ、あるいは、水漏れになって機能が低下しつつなっているところ、今はだましだまし使っているけれども、あと数年後には一体どうなるんだろう、私たちの集落はこの水がめを使えるのかというのが非常に心配になっているところもあるんじゃないかと思うんですね。

 こういうところも含めると、大臣、今、取組をしていただいているのはわかります。しかし、これはもう一歩、ため池、ここまで来ると、これは地域でつくったものだから地域でやってくださいと言えるレベルじゃもうないんじゃないかと私は思っているんですね。日本全国の中山間地農業を維持、守るという観点からして、集落を守るという観点からしても、かなり、国がもう一歩前に出て、ため池の長寿命化あるいは維持管理、もう一歩やっていただかなきゃならないような感じがするんですけれども、大臣の御所見をいただきたいと思います。

齋藤国務大臣 まず、ため池は、地域の農業用水を確保するために重要な施設であることは言うまでもないことでありますが、現在は老朽化ですとか自然災害による被災リスクの高まり、こういったものがありますものですから、それを踏まえて、ため池の耐震対策などの防災・減災対策を推進していくこと、これは国としても重要な課題であるという認識をしています。

 このため、局長から答弁いたしましたが、平成二十五年から二十七年にかけましてため池の一斉点検を実施して、その結果を踏まえて、御指摘のように、防災重点ため池、これは一万一千カ所ありますので、それをあぶり出しまして、まずはそれを中心に対策を進めようということで、耐震不足が確認されるか、あるいは豪雨対策が必要なため池については、堤体の改修等のハード対策を実施しようということで進めておりますし、また、ハード整備を早急に実施できないというため池につきましても、次善の策として、ハザードマップ作成等のソフト面での対策を講ずるなど、今、農村地域防災減災事業によりまして総合的に支援しているところであります。

 今御指摘のように、それ以外にも老朽化しているため池はたくさんあろうということでありますので、そちらへの目配りも当然必要なわけでありますが、まずはこの一万一千カ所の防災重点ため池を、これは何とかしなくちゃいけないということで取り組んでいるところであります。

 必要な予算ということの確保も大事でありますので、その予算の確保に努め、そして、地方公共団体と密接に連携しながら、地域の実情に応じた支援というものを心がけていきたいと思っております。

大串(博)委員 防災重点ため池、一万一千カ所、これも非常に大事です、極めて大事。なので、ぜひしっかり力を入れていただきたいと思うと同時に、先ほど言われましたように、一万一千カ所以外のところでも相当傷んでいるところは多いと私は思います。危険だという意味においては、同じように危険であると思うんですね。ぜひ力を注いでいただきたいと思います。

 もう一つ。ため池から水が流れてくる、それで川になるわけですね。小さな集落です、井堰というのがあるんですね、堰です。つまり、川の途中途中で小さな堰をつくって、そこから中山間地の棚田なりに水を分けてやれるようにする井堰というのがあるんですね。これは可動堰の場合もあります、小さなポンプ、モーターを使って可動堰にしている場合もあれば、固定の井堰にしている場合もあるんですね。これも、かなり長い昔から地域で管理しながらやってきたはずなんですね。

 ところが、これも非常に維持管理が難しくなってきている。例えば、燃料を使った可動井堰、小さなポンプを回しているようなもの、これは耐用年数が来て、例えば三十年、四十年ぐらい前に、ちょうど農業が盛んなころに整備をした、しかし、今、改良期に来ているんだけれども、地域だけでそれをやるのは非常に大変だとか、あるいは固定堰に関しても、もうそれが壊れて用を果たさなくなってきている、こういうふうなものも出てきているんですね。これは集落だけで担当するのは非常に難しい。しかし、小規模なものだからなかなか、集落も高齢化する中で手当てするのは難しいというのがあるんですね。

 これに関して局長にちょっとお尋ねしますけれども、今どういうふうな支援といいますか対応をしようとされているのか、御答弁をお願いします。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から御指摘ございました井堰につきましても、全国で耐用年数を超過しているものが三割を占めるというような状況で、大変厳しい状況になっておるところでございます。

 井堰につきましては、水利施設等保全高度化事業という事業がございまして、この事業によりまして、その施設の機能診断を実施したり、あるいは、その機能診断の結果、何らかの改修、補修が必要で、長寿命化が必要だというような場合には、そのための機能保全計画をつくっていただいて、実際に施設の更新や補修に当たっていただく、これについて、この事業で支援をしている状況でございます。

 また、平成三十年度予算で新たに農業水路等長寿命化・防災減災事業というものを創設していただいたところでございまして、小規模な農業水利施設につきましても、より機動的、効率的な長寿命化・防災減災対策が実施できることとなったところでございます。

 ため池同様、井堰につきましても、農業用水を取水するための重要な施設でございますので、これらの事業を活用してしっかりと支援をしてまいりたいと思っております。

大串(博)委員 大臣、どう思われますか。

 今局長からも答弁ありましたけれども、地方の小規模な、中山間地を中心とした井堰、堰ですね、三割が実はもう寿命なんですよ。地域の皆さんは、小地域になっていて、小集落になっていて、若手もなかなか残ってくれない、どうやって六十、七十、八十代の俺らがこの井堰をこれから修理して、賦課金を集めてやっていくんだ、もうやめちゃおうかという声が各地の集落で出てきがちなんですね。

 これに関して、国がしっかり中山間地の農業も含めて守っていくんだというメッセージを発しないと、なかなかやはり、先ほど申しました中山間地農業というのは日本の四割ありますから、私は、かなりの日本の農業像は変わってしまうんじゃないかと思うんですね。たかが井堰と思われるかもしれませんけれども、水がないと農業はできないんです。なので、これは大臣にも、ぜひ、井堰も含めたこういうところに関しての取組をしっかり行っていくという決意を私はいただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

齋藤国務大臣 たかが井堰なんということは一切思っておりません。

 私も都道府県知事あるいは市町村の首長さんから、よく大臣室に来ていただいていろんな要請を伺いますが、そのほとんどが大規模な土地改良の話が多いのも現実でありますが、今、大串委員御指摘のように、こういうきめ細かい、井堰のようなものの整備というものにもやはり我々きちんと目配りをして、そこが隘路になって農業が立ち行かなくなるというようなことがないようにしていかなくちゃいけないということを、今、大串委員の質問を聞きながら改めて思ったところでございます。

大串(博)委員 やはり、集約化していく低平地の農業も大切だと思いますけれども、中山間地農業というのは本当に守らなければならない、食料自給率という観点からも守らなきゃならないと私は思っているんですね。ぜひ、集約化だけじゃない農業の目線を持っていただきたいというふうに思います。

 最後に一問だけ、新規就農支援金に関して、これは大澤局長に御答弁をお願いしますけれども、私は問題意識として、自分の子供たちに継がせる場合、これは該当しないんじゃないかとまだ思っていらっしゃる方は世の中にたくさんいらっしゃるんですよ。実態は、一定程度違う農業形態にお子さん方が乗り出していこうということであればこの支援金の対象になりますね。そのアピールというか周知徹底が私は足りていないと思うんですね。

 だから、それをぜひお願いしたいということに関する答弁を大澤局長にお願いしたいのと、例えば、この間のコンクリート張りの農地をつくる、ああいうことをお子さん方がやろうとした場合には、これは対象になるのかな。この辺は今ちょっと、ふと思いましたけれども、あわせて答弁ください。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘の農業次世代人材投資事業、経営開始型につきましては、御指摘のとおり、農家の後継者でありましても、例えば、新たな販路の開拓や直売、農産物加工など、親の経営を更に発展させる、ちょっと新しいことをやるような取組について市町村が認める場合は対象としております。

 現時点でも、実際にも、平成二十八年度の交付実績について見ますと、この経営開始型、全体、一万二千三百十八人が対象になっていますが、そのうち農家の後継者の方は六千三百十人ということで、全体の五一%が農家の後継者の方になっております。

 普及につきましては、我々もしっかりと引き続きやってまいりたいと思います。現時点におきましては、各都道府県の担当者会議の場で説明していたり、農林水産省のホームページにおきましては、先ほどお話しした要件をしっかり記載するとともに、最近ではホームページで、どういう方が活用されているかというのを幾つか、十事例ぐらい出しているわけですけれども、その中にも、農家の子弟の方が具体的にどういう栽培をして、親からの独立といいますか経営発展をどういうふうに図ってきたかというのを事例でも紹介しております。こういうことをなるべくこれからも続けさせていただきたいと思います。

 なお、コンクリートにつきましては、ハウスの底地にコンクリートを張るかどうか自体は、それは農業の手段でございますので、それがどうこうということではございませんが、そういうことも含めて新しい経営をやっていくという場合には、親とは違う経営発展をしていくという場合には新規就農の対象になるというふうに考えてございます。

大串(博)委員 終わりますけれども、コンクリート張りすることも含めて新しい農業をやっていく場合には、ちょっとやはり不明確性が残るような気がするんです。そうすると、手が挙がるものが挙がらなくなっちゃったりすると思うので、ぜひ明確に宣伝をしてほしいと思います。よろしくお願いします。

 終わります。

伊東委員長 次に、稲田朋美君。

稲田委員 自由民主党の稲田朋美でございます。

 本日は、水産政策、そして、特にトラウトサーモンの養殖についてお伺いをしたいと思います。

 まず、礒崎副大臣にお伺いをいたします。

 政府の農林水産業・地域の活力創造プランにも盛り込まれました「水産政策の改革の方向性」についてですが、現在の水産業の課題、そして目指しておられるあるべき姿、また、その改革の方向性についてお伺いをいたしたいと思います。

 特に、漁業の成長産業化と漁業の所得向上に向けた担い手の確保、投資の充実のための環境整備は重要だと考えております。その中で、「水域を適切かつ有効に活用している者が漁場利用を継続できることを基本とし、有効活用されていない水域について、新規参入が進みやすい仕組みを検討する。」と重要な指摘がなされておりますけれども、この具体的な方向性、そして、その策定時期等についてお伺いをいたします。

礒崎副大臣 お答えいたします。

 養殖、沿岸漁業につきましては、昨年十二月に決定された農林水産業・地域の活力創造プランに盛り込んだ「水産政策の改革の方向性」におきまして、水域を適切かつ有効に活用している者が漁場利用を継続できることを基本とするとともに、近年、地域によっては、漁業者の高齢化などにより廃業し、又は利用度が低下している漁場が生じていることから、有効活用されていない水域について、新規参入が進みやすい仕組みを検討するということとしたところでございます。

 具体的な内容については、現在検討を進めているところでありますが、農林水産省としては、今回の水産政策の改革の中で、水産資源の適切な管理と養殖業を始めとする水産業の成長産業化を両立させ、浜で頑張っている漁業者の所得向上につながることが一番大事であると考えておりまして、そのため、引き続き、ただいま申し上げた検討を深めてまいりたいと思います。

稲田委員 今、副大臣御答弁の中でもお触れいただきました養殖についてですけれども、この養殖について、「水産政策の改革の方向性」の中では、「養殖については、国際競争力につながる新技術の導入や投資が円滑に行われるよう留意して検討する。」というふうに書き込まれております。

 その中で、トラウトサーモンの養殖についてですが、地元の福井においても、革新的技術開発・緊急展開事業地域戦略プロジェクト事業として、トラウトサーモン、すなわちニジマスの養殖に取り組んでいるところでございまして、私も、先日現地を視察させていただいたところでございます。

 世界のサケ・マスの生産量は約四百五十万トン、そして、日本国内の需要も約三十四万トンで、伸び行く傾向にございます。それに対して、国内の生産量は十二・九万トン、そのうち養殖はたったの一・二万トンにすぎないということでございます。先ほどの改革の方向性、国際競争力という観点からしても、この現状は変えていかなければならない、このように考えております。

 近年では、国内でも、全国各地で御当地サーモンとして盛んに生産が行われるようになり、福井では、大型の生けすを導入して養殖を開始しているところです。今後、国内の需要に対応するのみならず、海外への輸出も考えられる大変将来性のある分野だと思いますし、日本の消費者も日本産養殖トラウトサーモンの生産拡大に期待をしているところだと思われます。

 しかしながら、いまだ国内での歴史は浅く、技術的な問題、課題がございます。まず最初に挙げたいのが、優良な種苗を入手するのが困難だという点でございます。

 海面養殖に適した良質な形質を持つ種苗を安定的に確保することが重要ですけれども、現在、国内で入手可能な国産トラウトサーモンの種苗は、海面養殖に適した種別は少なく、そのまま海に出して養殖しても、海水耐性が弱く、壊死する個体も少なくありません。また、海水のストレスで餌食いも悪く、病気になったり、成長性が著しく劣るものも多いというふうに言われているところでございます。

 国内におけるトラウトサーモンの海面養殖用種苗供給の現状と見通し、さらには今後の対応策についてお伺いをいたします。

長谷政府参考人 お答えいたします。

 委員からも詳しく御紹介いただきましたけれども、近年、福井県を始め日本各地におきまして、海面でニジマスを養殖するトラウトサーモン養殖が盛んに行われている状況でございます。御紹介がありましたように、御当地サーモンという言葉も聞かれているところでございます。水産庁といたしましても、各地で取り組まれているこのような取組を応援しているところでございます。

 そういった中で、トラウトサーモン養殖につきましては、内水面で種苗生産したものを海面に移して出荷サイズまで育てておりまして、種苗については、自県内で生産し自給している場合もありますけれども、他県から種苗を購入している場合もございます。

 トラウトサーモン養殖の推進には、安定的な種苗の確保が重要と考えられておりますことから、内水面における種苗生産能力の拡大に向けた取組を進めていきたいというふうに考えているところでございます。

 福井県におきましては、他県から種苗を購入して海面で養殖する形態で行われていたものを、安定的な種苗の確保とコスト削減の観点から、自県での種苗生産を行うべく、国の支援も活用して種苗生産施設の整備を行っているというふうに承知しているところでございます。

稲田委員 また、その種苗の育種、品種改良ですけれども、これについても、時間がかかるというふうには思いますけれども、先行しているノルウェーまたチリとの国際競争に勝つためには、優良な形質を持つ種苗が養殖業者に供給されることも必要だと思います。

 こういった育種、品種改良が、いつごろをめどに、どのように進んでいくんでしょうか。また、最も進んでいると言われているアメリカでも二十年余りの月日を要しているところでございます。遺伝子レベルの解析ができる日本の技術をもって、日本人の味覚に合う純国産、日本の海に適した高成長の育種、生産を国家戦略としても対応すべきだと思いますが、いかがでございましょうか。

長谷政府参考人 トラウトサーモン養殖を今後推進していくためには、海水耐性という言葉も御紹介いただきましたけれども、海面での養殖に適した家系の選抜育種など、養殖の生産性を向上させる取組が非常に重要と考えております。

 育種にはある程度長い期間が必要であります。現状で、何年後に育種された種苗を現場に提供できるかをお話しすることは困難でありますけれども、平成三十年度から我が国の海洋環境に適した品種の開発に必要な予算を措置したところでありまして、生産現場の期待に応えられるよう、今後しっかり取り組んでまいりたいと考えております。

稲田委員 また、その育種の安定供給のためには、養殖現場への供給体制の整備も必要だと思います。

 供給に当たっては、輸送コストを抑えた供給体制も必要でございます。先ほど長官からも御指摘をいただきましたように、福井県内において、淡水養殖場から海面養殖場へ運ぶことを行っておりますけれども、海面養殖を始める時期に集中した活魚輸送車の不足及び活魚輸送技術の不足において、非常にコストがかかる、またその間の魚の安全性ということもございます。

 そういった点の供給体制についての対応策について、お伺いをいたします。

長谷政府参考人 委員から御指摘ありましたように、一般的に、種苗を遠隔地から購入した場合、輸送コストですとか、へい死、死んでしまうといったようなリスクもあります。それが養殖生産の負担となるわけであります。

 この輸送コストの削減のためには、高密度で輸送するという方向になりがちですけれども、それがまた種苗のへい死、死んでしまうということを招くおそれがあることから、福井県の今回の取組のように、海面養殖の生産地の近くで種苗生産を行うということが一つ有効な対応というふうに考えております。

 種苗輸送コストの削減を含めまして、海面トラウトサーモン養殖推進の課題につきましては、今後とも、現場の意見等を踏まえまして一つ一つ解決を図ってまいりたいというふうに考えております。

稲田委員 次に、魚病の対策が確立していないということについてお伺いをいたします。

 すなわち、海面養殖における生残歩留りが悪いということで、海外では九〇%以上、しかしながら、日本では半数が死んでしまうという問題でございます。

 北欧では、ワクチンの普及で、トラウトサーモンの養殖の生産量が飛躍的、十倍ぐらいに拡大をしたと言われております。ところが、現在、トラウトサーモンのワクチンに関しては、海外の承認薬について、国内の使用についても承認が必要でございます。

 海外で使われたワクチンを使ったサーモンが輸入されて、日本の皆さんの食に供されているわけですけれども、そこの承認薬についても、国内で使用するには承認が必要ですし、また、そのデータの収集、時間がかかり過ぎるという問題もございます。

 また、ワクチンの使用方法が、浸漬という、魚を漬ける形、ワクチン水に漬けるという方法しか認められておらず、海外で認められているような、ワクチンを注射して使用するという方法に比べて効果が小さいというような指摘もございます。

 そういった点についての御見解を伺いたいと思います。

池田政府参考人 お答えいたします。

 一般的に、ワクチンの製造、販売につきましては、対象動物に対します安全性でありますとか有効性、あるいは人への安全性の確保の観点から、各国におきまして、その国の法令に基づいて承認が必要とされておりまして、我が国におきましても同様に、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に基づきまして農林水産大臣の承認を得る必要がございます。

 したがいまして、ノルウェーで認められている水産用ワクチンでございますが、我が国において承認申請がなされれば、同法に基づきまして審査を行いまして、問題がなければ使用が可能となるということでございます。

 一方、我が国の水産用ワクチンでございますが、ノルウェーに比べて市場規模が小さく、現在承認されているサケ用のワクチンも一種類となってございます。

 農林水産省におきましては、魚あるいはミツバチなどの市場規模が小さい家畜に対する動物用医薬品の承認申請に必要な試験などの開発費の支援を行ってございます。

 引き続き、現場のニーズを踏まえましたワクチンの開発を推進してまいりたいと考えてございます。

稲田委員 例えば、既に海外で使用されているサーモン用注射ワクチンの効果について、試験をして、そしてその効果が見られる場合には早急の使用の認可をするというような、そういった方法は考えられないのでしょうか。

池田政府参考人 お答えいたします。

 承認に当たりますデータにつきましては、それぞれ必要に応じて提出をしていただきますが、そのデータに基づきまして、それが本当に有効なのか、安全なのか、あるいは人への安全の確保の点から問題がないか、それは一般的に、各国ともその国の法令に基づいてございますので、その承認行為は必要になってきます。

稲田委員 先日、国の規制改革会議において、国内のワクチンの承認手続の迅速化等について議論がなされたということでございますけれども、きょうは規制改革担当の政務官にも来ていただいておりますので、規制改革会議におけるその点の議論及び方向性、さらには、そこでは国内で開発をしているワクチンについて議論されたというふうに承知をいたしておりますが、海外で既に承認をされて、使われて、輸入されているワクチンに関して議論が進められることを要望いたしたいと思います。

長坂大臣政務官 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、本年三月二十日に規制改革推進会議水産ワーキング・グループが開催をされまして、ヒアリングを行った動物用医薬品メーカーからさまざまな課題や論点の指摘がございまして、その一つとして、新しいワクチンの審査期間の短縮に関する指摘があったと承知をいたしております。

 先生御指摘の、既に国内で食用に供されている水産物に使用されているワクチンの認可の簡素化については、当日のヒアリングでの御指摘はなく、現時点で規制改革推進会議において議論されてはおりませんが、養殖業の強化は水産業の成長産業化のためには不可欠であり、ワクチンを適切に活用できる環境を整えることの重要性は会議においても共有されていると理解をいたしております。

 本件は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に関するものでありまして、同法に関する農林水産省、厚生労働省、さらには内閣府の食品安全委員会と課題を共有し、御検討いただくようお願いするとともに、規制改革推進会議の委員にお伝えをした上で、必要な改革を迅速に推進すべく、規制改革を担当する政務官として適切に対応してまいりたいと考えております。

稲田委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 最後に、副大臣に、トラウトサーモンの養殖というのは、国内外での需要も非常に大きいものがありますし、今後の日本の水産業の成長産業化を推し進めることができる非常に重要な分野だと思っております。国が中心となって、オール・ジャパンで、迅速かつ強力に進めていただきたいと思いますが、決意のほどをお願い申し上げます。

礒崎副大臣 お答えいたします。

 昨年四月に閣議決定された水産基本計画では、養殖業を含む水産業の生産性の向上と所得の増大を基本的な方針としており、漁業、養殖業の国内生産量の約四分の一を占める養殖業の振興は、水産業の成長産業化に向け、重要と認識いたしております。

 養殖業の生産性の向上と所得の向上のためには、漁場の有効活用の一層の促進により安全、安心な養殖魚の安定供給やコスト削減を図りつつ、国内外で養殖魚の一層の販路拡大に努めていくことが重要であります。

 御指摘をいただきました、近年各地で盛んに行われているサーモン養殖につきましては、我が国の海洋環境に適した品種やワクチンの開発など、ボトルネックがございまして、その克服に向けた取組が重要であると認識いたしており、平成三十年度予算においても、そのための関連予算は計上いたしておるところでございます。

 農林水産省といたしましては、国内外の需要を見据えて、課題の解決に向けて、国、地方公共団体及び関係業界等が一丸となってオール・ジャパンで取り組み、養殖業の振興を積極的に進め、成長産業化を図ってまいりたいと思います。

稲田委員 終わります。

伊東委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は一般質疑ということで、私からは、我が国の捕鯨政策について質問をさせていただきます。

 鯨類というものは、ほかの水産資源と同様に、科学的根拠に基づいて持続的に利用すべきものでありまして、我が国の地方に根づいている鯨類を有効に活用する文化は、多様性の観点から、尊重すべきものであると考えております。

 私は、この信念に基づいて、公明党の捕鯨を守る議員懇話会の会長として、商業捕鯨の早期再開のために長年にわたり活動を続けてまいりました。きょうは、これらに関して質問をさせていただきたいと思います。

 本日は、齋藤大臣は参議院の本会議でこの間出席できないということでございますので、礒崎副大臣に、大臣にかわって力強い御答弁をよろしくお願い申し上げたいと思います。

 商業捕鯨の再開のためには、鯨類科学調査をしっかりと実施して、IWCにおける商業捕鯨モラトリアムを解除するのに必要な科学的な情報を積み上げていかなければなりません。

 この鯨類科学調査を安定的かつ継続的に実施して商業捕鯨の再開を目指すことを目的とした、商業捕鯨の実施等のための鯨類科学調査の実施に関する法律が、昨年六月、与野党の協力のもとで成立をいたしました。私も、公明党を代表して本法成立のために尽力をさせていただきました。本法が超党派の合意のもとで成立したことで、商業捕鯨の早期再開を目指すという我が国の変わらぬ姿勢が改めて内外に示されたものと考えております。

 そこで、我が国の捕鯨政策の基本的な考え方と、南極海及び北西太平洋における鯨類科学調査の意義について、礒崎副大臣に御意見をお伺いいたします。

礒崎副大臣 お答えいたします。

 まず、基本的な考え方でございますが、我が国は、鯨類についても他の水産資源と同様に、科学的根拠に基づき持続的に利用していくべきものと考えておるところでございます。また、鯨類の利用は、我が国の文化にも根差すものでありまして、文化の多様性の観点から、尊重されるべきであると考えております。

 このような考え方のもとに、商業捕鯨の早期再開を目指していきたいと考えています。

 このため、IWC、国際捕鯨委員会における今後の道筋の議論にあわせ、我が国の目指すべき商業捕鯨の姿について検討を進め、本年九月のIWC総会の機会を含め、商業捕鯨の早期再開のため、あらゆる可能性を追求してまいりたいと思っております。

 また、お尋ねの鯨類科学調査の意義についてでございますが、南極海と北西太平洋には、これまで我が国が行ってきた鯨類科学調査により、持続的な利用が可能となる十分な資源が存在することが確認されております。

 このため、我が国は、商業捕鯨再開に向け、国際法及び科学的根拠に基づき、これら海域における適切な鯨類資源管理に不可欠な科学的情報を収集するための鯨類科学調査を実施しているところでございます。

 今後とも、引き続き、鯨類科学調査を継続し、商業捕鯨再開の科学的正当性を強化して、IWCにおける議論を主導するとともに、得られた科学的情報を活用し、商業捕鯨が再開された際には、より適当な捕獲枠の算出につなげていく考えでございます。

江田(康)委員 副大臣、ありがとうございました。

 しっかりと鯨類科学調査を実施して、商業捕鯨につなげていっていただきたいと思います。

 次でございますが、本法が成立してもうすぐ一年となるわけでありまして、着実な成果が上がっていると私は思っております。

 本法第九条では、政府は鯨類科学調査の実施に要する費用の一部を補助するものとされております。これに裏打ちされて、くじら基金の造成が進んできたところでございます。この基金は調査の安定的な実施に大いに貢献をしているところと思っております。

 また、本法第十条では、政府は、鯨類科学調査の実施のために、実施体制の整備に必要な措置を講ずるものとしております。本法に基づいて、調査母船の日新丸の代船の検討を進めていただいていると承知しております。

 本法では、このように鯨類科学調査に関するさまざまな政府の責務が規定されているわけでありますが、その中で、政府は、鯨類科学調査を安定的かつ継続的に実施するために、基本方針を定めることとしております。

 そこで、副大臣に御質問をさせていただきます。

 鯨類科学調査の安定的な実施に関する法律が昨年六月に成立したわけでありますけれども、基本方針の策定についてはどのような状況に今あるか、お伺いをさせていただきます。

礒崎副大臣 お答えいたします。

 今お話にもありましたように、昨年六月に、多くの政党会派の皆さんの御理解をいただきまして、商業捕鯨の実施等のための鯨類科学調査の実施に関する法律を制定いただいたところでございまして、その中で政府が策定することとされている鯨類科学調査の実施に関する基本方針につきましては、現在、この五月二十六日までパブリックコメントを実施している最中でございます。

 今後は、パブリックコメントにおいていただいた意見を踏まえ、内容について改めて検討を行い、今月末に予定しております水産政策審議会資源管理分科会に報告した上で、できる限り早期に閣議決定を目指したいと考えております。

江田(康)委員 ありがとうございます。

 しっかりとその基本方針の策定をお願いしたいと思っております。

 この鯨類科学調査に用いられている調査母船の日新丸についてでありますが、船齢三十年を超えておりまして、老朽化が進んでおります。鯨類科学調査の安定的、継続的な実施のためには、その代船建造について早急に検討しなければならなかったわけであります。捕鯨関係者からは、長年にわたり、新造船への強い要望があっておりました。

 先ほども申し上げたとおり、この鯨類科学調査の実施に関する法律では、政府は、船舶等の実施体制の整備に必要な措置を講ずるものとしております。

 そこで、水産庁長官にお伺いをいたしますが、老朽化しているこの調査母船日新丸の代船建造をどのように今進めていこうとしているのか、お伺いをさせていただきます。

長谷政府参考人 お答えいたします。

 今、委員からも御紹介いただきましたように、現在調査に用いております捕鯨母船の日新丸につきましては、船齢が三十年に達し老朽化しており、関係者からの代船建造の要望も大変強いと認識しております。

 水産庁といたしましても、母船の代船を建造することは、商業捕鯨の再開を目指すという我が国の強い姿勢を内外に示すことにもなることから、早期に検討すべき課題と考えているところでございます。

 このため、平成三十年度予算に計上しております鯨類捕獲調査円滑化等対策において、我が国として目指すべき商業捕鯨の姿を検討することとしておりますが、その中で、日新丸の今後の取扱いについても検討することとしております。

江田(康)委員 ありがとうございました。

 平成三十年度予算で計上されている鯨類捕獲調査円滑化事業において、商業捕鯨の姿全体を検討するとなっておりますけれども、その中で日新丸の新造船については検討をするということが明確になっているかと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 次に、鯨肉消費の拡大についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 商業捕鯨の早期再開のために鯨類科学調査を実施しているわけでありますが、商業捕鯨を行い、鯨肉を安定的に供給していくためには、鯨の資源、そして捕鯨を行う業者、鯨肉の市場のそれぞれがしっかりと存在しなければなりません。

 商業捕鯨が禁止されて三十年が経過しました。鯨類科学調査の結果、ミンククジラやイワシクジラの資源が健全な状況にあることが明らかになっております。

 一方で、消費者にとっては鯨肉がなじみのないものになりつつあることが懸念されるわけであります。

 また、水産物全体にも言えることでございますけれども、漁業者と消費者を結ぶ鯨肉の加工業者が元気でないと、健全な鯨肉市場を維持することは困難であります。しかしながら、鯨肉供給の不安定さや、それに伴う価格変動によって、鯨肉の加工業者が苦労されているということを聞いております。

 将来、商業捕鯨が再開されて漁業者の皆様が新たに捕鯨業に参入されていくためには、消費者に鯨肉に関心を持っていただいて、鯨肉の加工業者が元気でいてもらわなければならないわけであります。そうでなければ、商業捕鯨の再開はおぼつかないものになると私は思っております。

 そこで、水産庁長官にお伺いをいたします。

 商業捕鯨再開のためには、鯨肉市場が元気なことが大切であります。国民の鯨に関する食文化への理解と関心、また消費への拡大を深めるためにどのような施策を講じていくのか、伺います。

長谷政府参考人 昨年成立いたしました商業捕鯨の実施等のための鯨類科学調査の実施に関する法律、捕鯨法と言っておりますけれども、この法律におきまして、政府は、鯨類の利用についての広報活動の充実等の措置を講ずるものとされております。

 委員や私どもが子供の時代と比べまして、最近の鯨肉消費量が大きく減少しているというのは事実でありますけれども、先ほど副大臣がお答えしたとおり、鯨肉の利用は我が国の文化に根差すものであるというふうに考えております。

 このため、水産庁といたしましては、国民の鯨に関する食文化への理解と関心を深めるために、鯨料理や鯨肉の魅力を紹介するイベントの開催ですとか、鯨の生態等の説明と試食を行う小学校等への出張授業などへの支援を行っているところでございます。

 今後とも、鯨肉市場の活性化に向けまして、しっかりと取り組んでまいります。

江田(康)委員 ありがとうございます。

 今、長官にも申していただきましたように、商業捕鯨を目指して調査捕鯨を安定的、継続的にやっていくというこの法案をつくった以上、商業捕鯨の成立のためには、やはり先ほど言ったように、鯨肉市場というのが非常にしっかりとしていくことが必要だと思っております。

 だからこそ、今心配しております、食文化への国民の理解がなじみのないものになっているというところにおいては、ここから大きく転換して、鯨肉、またその健康性やすばらしさに関心を持っていただくように消費拡大をしていく、その努力を続けていっていただきたい。

 そして、食肉の加工業者においては、今、やはり鯨肉供給の不安定さからくる価格変動で大変に経営が苦労されているところがございます。そこにおいては、今の段階でもしっかりとした対応をとろうとされておりますので、その点についても万全の対応をしていただくようによろしくお願いを申し上げます。

 最後ではございますけれども、IWCの今後の道筋の議論の進捗と、IWC総会に向けた対応方針について伺って、終わりにしたいと思います。

 ことしは、二年に一度のIWC総会が開催される年であります。私は、公明党捕鯨を守る議員懇話会の会長として、商業捕鯨の早期再開に向けた活動を長年行ってきたわけでありますけれども、IWCが商業捕鯨のモラトリアムを導入してから三十年が経過しているわけであります。

 商業捕鯨のモラトリアムには、一九九〇年までに鯨類の包括的な資源評価を実施して、そしてゼロ以外の捕獲枠を設定するという条件が付されているわけです。我が国は、資源評価のための科学的情報や安全な捕獲枠算出方法の制定に大きく貢献をしてまいりました。しかしながら、反捕鯨勢力はゴールを動かし続けて、いまだにモラトリアムは解除されておりません。

 IWCは、何も決められない機能不全に陥ってしまっているわけです。この機能不全に陥っているIWCの状況を打破するために、日本は、IWCの今後の道筋に関する議論を呼びかけております。

 そこで、礒崎副大臣にお伺いをいたします。

 日本が主導しているIWCの今後の道筋の議論の進捗はどのような状況にありますでしょうか。

 あわせて、我々が長年目指している目的は商業捕鯨の再開であります。この膠着した状況を打開する必要があるわけであります。政府としても十分認識していると思いますが、本年九月のIWC総会に向けてどのように対応をしていく考えか、政府の考えをお伺いしたいと思います。

礒崎副大臣 お答えいたします。

 本年九月のIWC総会は、四十七年ぶりに日本人議長のもとで開催される会合であります。

 平成二十八年の前回総会で議論を開始したIWCの今後の道筋について結論を得て、資源管理機関としての機能を果たせていないIWCにその機能を回復させ、商業捕鯨の早期再開につなげるものとしなければならないと考えております。

 しかしながら、我が国が各国に透明性のある形で今後の道筋を議論することを呼びかけてきたにもかかわらず、反捕鯨国は、議論への参加について極めて消極的な姿勢に終始しているのが残念ながら現状であります。

 このため、我が国といたしましては、持続的利用支持国と連携して、反捕鯨国に対し議論への参加を強く働きかけるとともに、IWCの資源管理機関としての機能を回復させる必要性を国際世論にも呼びかけてまいりたいと思います。その上で、IWCの今後の道筋の議論を我が国が主導してまいりたいと考えております。

 また、この議論にあわせ、国内においても、我が国の目指すべき商業捕鯨の姿についての検討を進め、本年の総会の機会を含め、商業捕鯨早期再開のため、あらゆる可能性を追求してまいりたいと考えております。

江田(康)委員 副大臣、ありがとうございました。

 今、力強い決意をお伺いしたところでございますが、ことしの総会は、我が国の森下コミッショナーが議長となっているわけであります。四十七年ぶりの議長ということでありますが、ぜひ、これまでにない、我が国の思いを示す節目とする会合としていっていただきたいとお願いを申し上げます。

 そのためには、我々国会議員も一緒になって臨んでいくことをお誓い申し上げて、本日の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊東委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時三十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十五分開議

伊東委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 森林経営管理法案につきまして、再度質問をします。

 五月九日の本委員会、私の質問に対して、齋藤大臣は次のような答弁がありました。我が国の森林の適切な管理を図るためには、現に経営管理が不十分な森林について経営管理の集積、集約化を図ることが課題、そのように述べられました。今まで行われていた参議院の本会議質問においても、同じ答弁が何度もあったというふうに思います。

 そこでお伺いしたいんですけれども、現に経営管理が不十分な森林というのはどれぐらいの規模にあるのでしょうか。

沖政府参考人 お答えいたします。

 民有林のうち私有人工林約六百七十万ヘクタールについて、その約三分の一の約二百二十万ヘクタールは既に適切に経営管理がなされておりまして、残りの約三分の二の約四百五十万ヘクタールが経営管理が不十分な状態になっているものと考えております。

田村(貴)委員 資料をお配りしております。この資料は、林野庁が訂正をして、提出し直した資料です。新たに挿入された解説図であります。

 この解説図の左側の破線の中の大きな白い部分、これが今長官がお答えになった、現に経営管理が不十分な森林と言ったところであります。その下が集積、集約化された二百二十万ヘクタールなんですけれども、それでは、この二百二十万ヘクタールの集積、集約化されたというのは、どういう基準に基づいてこういう形になっているんでしょうか。

沖政府参考人 お答えいたします。

 既に集積、集約化された私有人工林といたしました約二百二十万ヘクタールは、既に森林経営計画が策定されていると推定される森林の面積に加えまして、水源林造成事業の契約面積の合計としておるところでございます。

田村(貴)委員 そうすると、森林経営計画にある二百二十万ヘクタール以外は、森林経営計画外にあるわけです。その森林経営計画の定めがない森林というのは、経営管理が不十分というふうになるわけなんですよね、こういう図表を出されますと。これは完全にこういうふうに仕切ってしまっているわけなんですよ。

 この解説図では、経営管理が不十分な森林とされた四百五十万ヘクタール、三分の二の森林の行き着く先は、これは矢印を描いていますよね、矢印の先はどうなっているか。公的管理下に置かれる、ないしは、新たに経営管理を担ってもらう必要があるというふうに書いています。この二つのうちどちらかなんですよ。その新たに経営管理を担ってもらうというのは、この法案にある素材生産者等の林業経営者になるということなんですよ。

 ここの白い破線の中の、長官が経営管理が不十分とされた、いわゆる森林経営計画の策定がないところの森林、これはいっぱいありますよ。きれいに管理されて、手入れの行き届いた山はたくさんありますよ。これを十把一からげにして、経営管理が不十分と言い切っていいんですかね。長官、いかがですか。

沖政府参考人 お答えいたします。

 今、田村委員がおっしゃられました点線で囲ったところ、ここは、林業用に供する、将来的に使っていくというところを想定しているわけでございますけれども、この経営計画、その下のまず二百二十万ヘクタールについて述べますと、経営計画は、森林所有者等が一体的なまとまりを持った森林をみずから経営する場合に、市町村森林整備計画に即しまして、森林経営に関する長期的な方針や、森林の主伐、造林、間伐等に関する五カ年の計画を策定しまして、市町村等の認定を受けることができるものでございます。

 経営計画策定者が計画を遵守することで適切かつ持続的な森林経営を推進する制度でございますので、経営計画が策定されている森林、これが、森林計画制度により裏打ちされた、確実に集積、集約化された森林でございまして、上の白地のところでございますけれども、ここについては、そういう意味におきましては、森林経営計画が策定されていない森林ということになりまして、市町村長の認定が行われていない、適切かつ持続的な森林経営が行われていることが担保がされていない森林というふうに考えております。

田村(貴)委員 いろいろおっしゃいますけれども、この図はこの図だけなんですよ。二百二十万ヘクタール以外の四百五十万ヘクタールが、一番最初に長官が言われたように、経営管理が不十分と十把一からげにされているわけですよ。その行き着く先というのは、経営管理権が離されるわけなんですよ。こういう図をつくったらいかぬです、やはり。またわけのわからないものが出てきた。

 資料の二枚目、お配りしています。管理がされていないと言われる範疇に入る森林であります。高知県佐川町の森林、二十ヘクタールで、森林経営計画の対象外であります。管理をしている坂本昭彦さんにお話を聞いてまいりました。政府の言うように集積、集約化されるならば、高性能林業機械を入れなければいけない。償却や維持にもお金がかかることになり、そのため、大量伐採をしなければいけない。高知県は台風も上陸し、とり過ぎれば風で倒れ、豪雨で崩れる。ちょうどいいあんばいで切るのが大事で、とり過ぎればリスクが増すと。まさにそのとおりだというふうに思います。

 こうしたやり方で、森を、森林を維持管理しているところは、日本全国にたくさんあります。こうしたところは全て経営管理を担ってもらわなければいけないということなんでしょうか。

沖政府参考人 お答えいたします。

 本法案におきましては、森林所有者による経営管理が適切に行われていない可能性があり、経営管理権を市町村に集積することが必要かつ適当である森林について、市町村が森林所有者に対し、森林の経営管理の意向に関する調査を行うこととしてございます。

 この意向調査によりまして、森林所有者の経営管理の意向を把握して、森林所有者みずからが、又は委託によりましてですけれども、経営管理を行う意向がある場合は、森林は引き続き森林所有者にお任せし、また、森林所有者が経営管理する意向のない森林について、これにつきましては、市町村が経営管理権を取得できるものとしているところでございます。

田村(貴)委員 今の長官のお話だったら、この図は完全にうそになっちゃうんですよ。だって、その森林所有者ですよ、この高知県の佐川町の方がですよ、いや、私たちはこれまでも自分で管理しています、森を育てていきますと言うんだけれども、この図でいうと白い部分に属されて、行く先は公的管理か、新たに経営管理を担ってもらうところに行くじゃないですか。だから、この図はおかしいと言っているんですよ。これはどうするんですか。

 きょうは時間が限られているので、齋藤大臣、この答弁をずっとされてきたと思うんですけれども、今お話を聞いていただいた中で、こういう、機械的そして決めつけ、恣意的な図を出されると、これは、全国の森林管理者、所有者の方はどう思われるでしょうかね。私は、大変誤解を与えてしまうし、御立腹されてしまうのではないかと思うんです。

 新たにつけ加えられたこの解説では、大変問題であります。これは削除した方がいいと思いますけれども、大臣、お話を聞いておられて、いかがでしょうか。

沖政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘の図でございますが、まず、二百二十万ヘクタールの、森林経営計画が策定されている分については、森林行政の確実性を期するという意味では、森林経営計画制度に裏打ちされた、まさに確実に集積されたもの、残りの四百五十が市町村長による担保がされていないということでございまして、そうした意味におきましては、確実性を持ってこうした印、二百二十万の、下、残りということを掲げさせていただいてございます。

 また、御指摘のように、地域によりましては、自伐林家の方で、今、佐川町のこうした例もございます。こうした例につきましては、今回、四百五十万ヘクタールというふうに言っておりますけれども、林業用としては二百四十万ヘクタールになるんですけれども、我々の方の森林・山村多面的機能発揮対策交付金といったような事業も使っていただいておりまして、全国で見て、こういうところはやはり千、二千ヘクタールぐらい確かあるということはあると思います。

田村(貴)委員 いや、だから、そういうふうにいろいろいろいろ言われるんだったら、そういうことを資料に載せるべきなんですよ。こういう、機械的に、恣意的に一括して書くとわからなくなってしまうんですよ。間違いになっちゃうんですよ。これはやはり削除すべきであります。

 この新たに経営管理を担ってもらう必要がある、その担い手というのはどういったところなのか。

 二月六日に林野庁が都道府県に発した、育成を図る林業経営体の選定で選定される林業経営体は、法案の新たな森林管理システムにおける意欲と能力のある林業経営者となっていくんでしょうか。二月六日の発した通知というのは、この法案にある意欲と能力のある林業経営者を指しているのでしょうか。お答えください。

沖政府参考人 お答えいたします。

 本年二月六日付で都道府県等に発出いたしました長官通知「林業経営体の育成について」及び経営課長通知の「育成を図る林業経営体の選定について」でございますけれども、林業経営の集積、集約化の受皿の確保が重要であるとの認識に基づきまして、意欲と能力のある林業経営体へと育成を図る林業経営体の考え方を示したものでございます。

 本通知は、地方自治体に対する技術的助言という位置づけで発出したものでございますが、本法案が成立した場合は、本法に基づきまして経営管理実施権の設定を受け得る民間事業者に係るものとして改めて発出することを検討しているところでございます。

 なお、本通知では、素材生産の生産量又は生産性のどちらかについて、五年後おおむね二割以上又は三年後におおむね一割以上、現状から増加させる目標を有していることという規模拡大の考え方を示してございますが、現在の規模そのものの大小を問うていないところでございます。

田村(貴)委員 もう、林野庁の方から選定してくれと言われて、都道府県の側では選定されているんですよ。

 例えば宮崎県。ホームページで、その選定された業者名、全部出ています。林野庁長官の長官通知に基づいて選定したので公表しますと。公表されたこの林業経営者、見て驚きましたよ。二十五業者いるんですけれども、何と、私がこの間この委員会で取り上げてきた盗伐問題、盗伐をしている業者まで入っておるんですよ。盗伐の現場を所有者が現認し、警察に通報し、警察が来て現認している、そういう事例をやっている盗伐業者までが意欲と能力のある林業経営体とみなされているわけなんですよ。結果、こういうところに結びつけたいがためにむちゃなことをやっているわけなんですよね。大問題だと思いますよ。

 森林所有者、林業関係者の意向を十分に聞き入れず、恣意的な数字をつくりました。意欲がないと決めつけられた。そして、多くの所有者が今度は能力がないと決められて、山の手入れを十分にして頑張っている方々も経営管理が不十分だとまた決めつけられてしまった。この図表はそれを物語っているわけなんです。そして、経営管理権を移されようとしているわけです。しかも、その移され先には、移譲先には盗伐業者まで入っている。

 森林経営管理法というのは問題だらけじゃないですか。大臣、いかがですか。私、新たに出されたんだから、ちゃんと見ましたよ。見たら、これはやはりおかしい、この資料は。この資料の撤回とやはり審議のやり直し、求めたいと思いますけれども、大臣、いかがですか。

伊東委員長 齋藤農水大臣、時間が来ておりますので、簡潔に御答弁ください。

齋藤国務大臣 資料につきましては長官から説明をさせていただいたとおりでありますし、法案の扱いについては、私の方からのコメントは控えたいと思っております。

田村(貴)委員 また質疑をします。

 きょうは終わります。

伊東委員長 次に、森夏枝君。

森(夏)委員 日本維新の会の森夏枝です。

 本日も質疑をさせていただきます。

 TPPについて伺います。

 日本維新の会では、一昨年の臨時国会ではTPP協定案には賛成の立場をとりました。TPP11が自由貿易の拡充に寄与するかどうかは、これから先、参加各国が自由貿易から得られる優位性をいかに維持するかにかかってくると思います。国内農業への補助についても、単なる補助金にするのではなく、国際競争力を育て上げるものでなければなりません。その点を指摘して、質疑に入らせていただきます。

 アメリカがTPPから離脱し、先般、アメリカ抜きでのTPP11について合意しました。アメリカが抜けることで、当初見込んでいたTPPによる経済効果は減るものと考えられますが、なぜアメリカの参加についての働きかけを待たずにTPP11をまとめたのでしょうか。お答えください。

三田政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年一月に、米国のトランプ大統領がTPPからの離脱を正式に表明いたしました。それ以降、世界的に保護主義への懸念が高まってきたわけでございますが、そういう中で、十一カ国で議論を行いまして、米国抜きでもTPPを早期に署名、発効させることの重要性について一致いたしまして、また、結束を維持し、この三月にチリでの署名に至ったということでございます。

 自由で公正な共通ルールに基づく自由貿易体制こそが、世界経済の成長の源泉でございます。TPP11によって二十一世紀型の新しいルールが実現されることは、我が国にとっても、またアジア太平洋地域にとっても画期的な成果であると考えておりまして、十一カ国も同様の認識であると考えます。

森(夏)委員 日本主導によるTPP11の取りまとめについては、我が国が世界の中で一定の立場を築くことにも一役買っていると思いますが、TPP11の発効を急ぐ意義についてもお聞かせください。

三田政府参考人 お答え申し上げます。

 現時点では、TPP12、もともとのTPPが実現するという保証はどこにもございません。日本といたしましては、まずはTPP11、この早期発効の実現に全力を挙げ、早期にTPP、これの持つ戦略的、経済的意義、そしてその効果を実現したいと考えております。その中で、中小企業の海外展開の支援あるいは農林水産業の体質強化策など、TPP等関連政策大綱で取りまとめました施策を着実に実施していくことでこの効果の実現を図りたい、このように考えております。

 さらにその上で、今後とも米国の動向は注視しつつ、TPP11を早期に発効させることも通じて、TPPの意義、そしてそれが米国の経済や雇用にとってもプラスになるものであることを引き続き訴えていきたいというふうに考えております。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 次に、農林水産分野について伺います。

 TPP11になれば輸出大国のアメリカがいないため、農林水産分野のマイナスの影響もかなり軽減されると思います。一方、有望な輸出相手国が参加しないということでメリットも減るものと考えますが、プラス、マイナス双方から総合的に見て、先般のTPPの合意、署名についてどのように受けとめておられますでしょうか。

三田政府参考人 お答え申し上げます。

 TPP11は、二十一世紀型の自由で公正な新たな共通ルールをアジア太平洋地域につくり上げ、人口五億人、GDP十兆ドル、貿易総額五兆ドルという巨大な一つの経済圏をつくり出していくものであると認識しております。そこでは、関税削減だけではなく、投資先で技術移転などの不当な要求がなされない、知的財産が適正に保護されるなどのルールが共有されることから、我が国の中堅・中小企業にとっても多くのビジネスチャンスが広がるものと考えております。

 自由で公正な共通ルールに基づく自由貿易体制こそが、世界経済の成長の源泉でございます。日本としては、二十一世紀型の新しいルールづくりをリードすることの意味は非常に大きいと考えており、また、それが日本の成長戦略にもつながっていくと考えております。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 次に、今後の農業の構造改革について伺います。

 農林水産省では、これまでも、TPPによる影響を緩和するため、体質強化策を講じてこられたと思います。先般、アメリカ抜きのTPP11となることで影響は軽減されますが、農業の体質強化は待ったなしです。農業の構造改革については、アメリカの参加にかかわらず、積極的に進めるべきと考えます。効果の検証を行いながら、今後とも農業の構造改革を行うべきと考えますが、御認識を伺います。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十七年十月のTPP協定、いわゆるTPP12でございますが、この大筋合意により、我が国の農林水産業は新たな国際環境に入ったと考えております。昨年の十一月にはTPP11の協定の大筋合意にも至ったところでございまして、こうした国際環境のもとで、生産者が安心して再生産に取り組むことができますよう、総合的なTPP等関連政策大綱に基づき万全の対策を講じることとしておるところでございます。

 この大綱に基づきまして、具体的には、体質強化策ということで、一つには、産地の競争力を強化するための産地パワーアップ事業、畜産、酪農の収益力強化のための畜産クラスター事業、さらには、農地の大区画化や高収益作物への転換を図るための基盤整備事業、それと、我が国農林水産物の輸出額を二〇一九年に一兆円にするとの目標達成に向けた輸出拡大対策などの施策を講じておるところでございます。

 農林水産省といたしましては、引き続き、新たな国際環境のもとで、農林水産業を成長産業とし、農林漁業者の所得の向上を実現できるよう、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 今後、農家の方々の声もしっかりと取り入れて、対応していただきたいと思います。

 先日の本会議でも少し質疑をさせていただきましたが、TPP対策として導入が検討されているチェックオフ制度は、国内にはない新たな取組であって、農業生産者から強制的に徴収する形で検討されており、心配の声も上がっております。具体的な事業効果についての評価体制や、生産者に対する公平性をどのように担保するのか、大臣の御見解をお伺いします。

齋藤国務大臣 チェックオフにつきましては、平成二十八年十一月に決定をされました農業競争力強化プログラムにおきまして、チェックオフの法制化を要望する業界においてスキームを決めて、一定程度、七五%以上同意が得られた場合に法制化に着手するとされているところであります。

 現在、これを受け議論しているのは養豚業界だけでありますが、昨年三月に、養豚の関係団体及び学識経験者で構成される養豚チェックオフ協議会が設立されております。

 この協議会で、スキームや事業成果の評価方法、生産者の意見を的確に反映する仕組みなどについて検討が行われているところでありまして、今後、生産者の意見も踏まえて、さらなる検討が進んでいくものと承知をしております。

 農林水産省としては、これらの業界の検討が円滑に進むように、引き続き情報提供や助言を行ってまいりたいと考えています。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 まだ議論がされているのは養豚業界だけということでありますが、生産者の意見を的確に反映するため検討がなされているということですので、引き続き対応をお願いいたしたいと思います。

 次に、ジビエについて伺います。

 四月十八日の農林水産委員会の質疑の際にも、ジビエの利活用に関しましては質問をさせていただき、齋藤大臣からも大変前向きな御答弁をいただきました。鳥獣被害を農村地域の所得アップにつなげていく取組、マイナスをプラスに変える取組、大変重要だと思っております。

 午前中に石川委員からもジビエについての質問がありましたが、捕獲された鳥獣の多くが埋設や焼却によって処分をされているとお聞きしておりますが、農林水産省で詳しい数字を把握しておられましたら、ジビエとして利活用されている鳥獣の数、割合等についてお答えください。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 ジビエの利用についての御質問でございます。

 私ども、昨年度に初めて実施をいたしました平成二十八年度野生鳥獣資源利用実態調査というものをやらせていただいたところでございます。全国にございます五百六十三の食肉処理加工施設におきまして、ジビエとして利活用するために解体された野生鳥獣の解体頭羽数を調べたところでございます。全国で八万九千二百三十頭羽であったところでございます。このうち、鹿が五万五千六百六十八頭、イノシシが二万七千四百七十六頭ということになっておるところでございます。

 これを食肉として御利用されている食肉の量で申し上げますと、鹿肉で六百六十五トン、イノシシ肉で三百四十三トンということになっておりまして、全国平均で見ますと、鹿とイノシシのジビエの利用率は約七%ということでございます。

森(夏)委員 ありがとうございます。捕獲された鳥獣のほとんどが埋設、焼却処分ということであります。

 先日、ジビエ料理のお店をされている方にお会いして、お話を聞いてまいりました。その方は、補助金はもらわず、自分がお店で提供できる数、年間五十頭と狩猟の数を決めているとのことでした。そして、一頭残らず食肉として命をいただいているとおっしゃっておりました。

 高たんぱく、低カロリーのジビエの栄養価についても説明を受けました。また、ジビエは野生ですので、ホルモン剤やビタミン剤などを摂取せず、自然のものだけを食べて大きく育ったジビエは大変体によく、多くの方に食べてほしいとおっしゃられておりました。

 まだまだジビエの認知度も低く、ジビエのよさが伝わっていないともおっしゃられておりました。ジビエを食べ続け、がんが消えた方もいるそうです。

 農林水産省の進めておられるマイナスをプラスにする取組、ジビエの利用拡大に期待をしております。今後の対策として、平成三十一年度にジビエの利用量を倍増させるという政府の目標達成に向け、どのような取組をされるのか、具体的に教えてください。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から御紹介ございました、ジビエの食肉としての利用でございますけれども、捕獲、搬送段階では、野生鳥獣を捕獲するものですから、畜産業のように一定品質の素材が定時、定量で供給できる体制が整っていないという問題、それから、処理、加工、流通段階では、食肉としての安全性に対する消費者の皆様からの一般的な何となくの懸念というものがあるわけでございますし、さらに、規格や表示方法が統一されていないということで、川下の業者の方々は使いにくいといったようなお声もあるわけです。そして、何よりも販売段階では、消費者のジビエに対する認知度が低いということが大きな課題になっておるところでございます。

 私ども、こういった懸念、課題を克服して、平成三十一年度にジビエの利用量を倍増させるという政府の目標を立てておるところでございまして、この目標の実現に向かいまして、例えば、今般新たに導入することといたしております、国産ジビエ認証の仕組みというものをつくろうと思っておるところでございます。衛生管理が徹底し、流通のための規格や表示が統一されたような食肉が流通するような加工処理施設を認証していこうという取組でございますけれども、そういったものを構築していこうということ。それから、捕獲から搬送、処理加工、販売施設がしっかりとつながったジビエ利用モデル地区を整備しようと、今全国から十七ほど手が挙がっておるところでございます。

 こういったジビエ利用拡大に向けた取組に対しまして、鳥獣被害防止総合対策交付金により、しっかり支援をしてまいりたいと考えておるところでございます。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 しっかり取り組んでいただきたいと思っております。

 先日、奈良に住んでいる友人から、狩猟免許を取ろうと考えているという話を聞きました。そして、いろいろ勉強しているそうなのですが、狩猟免許が取れたとしても、やはりさばくところが少なく、また、さばくことが難しいと思うと言っておりました。

 ほかにも、狩猟免許所持者でも、自分でさばくことができず、捕獲をしたらさばくことのできる知人を呼ぶという方のお話も聞きました。

 ジビエの利活用の促進のためには、前回の質疑でも取り上げさせていただきましたが、ジビエカーの導入であったり、自分でさばくことのできない猟師の方には、さばき方を教えるか、さばくことのできる方とうまく連携してもらうことが必要だと思います。

 また、販売ルートの確保も重要な課題かと思います。猟師の方から担い手不足のお話をお聞きしましたが、高齢化だけが問題ではないと感じました。駆除した鳥獣のほとんどを山に捨てて帰るしかないのが現状で、後継者不足の問題があっても、今のままでは子供にも勧められる仕事じゃない、そのようなお話も聞きました。駆除のためとはいえ、この鳥獣を誰か食べてくれたらいいのにと思いながら、撃って捨てて、撃って捨ててを繰り返していると、それに耐えられなくなり、猟をやめてしまう方も少なくないとお聞きしました。

 人間にとっては有害であっても、動物の命を奪うわけですから、食肉として利活用をする。何度も繰り返しになりますが、マイナスをプラスに変えていく取組、しっかりとお願いしたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

伊東委員長 次に、内閣提出、卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣齋藤健君。

    ―――――――――――――

 卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

齋藤国務大臣 卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 食品流通におきましては、加工食品や外食の需要が拡大するとともに、通信販売、産地直売等の流通の多様化が進んでおります。

 こうした状況の変化に対応して、生産者の所得の向上と消費者ニーズへの的確な対応を図るためには、卸売市場につきまして、その実態に応じて創意工夫を生かした取組を促進するとともに、食品流通全体につきまして、物流コストの削減や品質、衛生管理の強化などの流通の合理化と、その取引の適正化を図ることが必要であります。

 このため、公正な取引環境の確保と、卸売市場を含む食品流通の合理化とを一体的に促進する観点から、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 まず、卸売市場法の一部改正であります。

 第一に、目的規定において、卸売市場が食品等の流通において生鮮食料品等の公正な取引の場として重要な役割を果たしていることに鑑み、卸売市場の認定に関する措置等を講ずることを定めることとしております。

 第二に、農林水産大臣は、卸売市場の業務の運営、施設等に関する基本的な事項を明らかにするため、卸売市場に関する基本方針を定めることとしております。

 第三に、農林水産大臣又は都道府県知事は、生鮮食料品等の公正な取引の場として、差別的取扱いの禁止、売買取引の条件や結果の公表等の取引ルールを遵守し、適正かつ健全な運営を行うことができる卸売市場を、基本方針等に即して中央卸売市場又は地方卸売市場として認定することとしております。

 第四に、国は、食品等の流通の合理化に取り組む中央卸売市場の開設者に対し、予算の範囲内において、その施設の整備に要する費用の十分の四以内を補助することができることとしております。

 次に、食品流通構造改善促進法の一部改正であります。

 第一に、目的規定において、食品等の流通が農林漁業者と一般消費者とをつなぐ重要な役割を果たしていることに鑑み、食品等の流通の合理化及び取引の適正化を図るための措置を講ずることを定めることとしております。

 第二に、農林水産大臣は、食品等の流通の合理化を図る事業を実施しようとする者が講ずべき食品等の流通の効率化、品質、衛生管理の高度化等の措置を明らかにするため、食品等の流通の合理化に関する基本方針を定めることとしております。

 第三に、農林水産大臣は、基本方針等に即して食品等流通合理化事業に関する計画を認定することとし、認定を受けた者は、その計画の実施に当たり、株式会社農林漁業成長産業化支援機構による出資等の支援措置を受けることができることとしております。

 第四に、農林水産大臣は、食品等の取引の適正化を図るため、食品等の取引の状況等に関する調査を行い、当該調査の結果に基づき、指導助言等の措置を講ずるとともに、不公正な取引方法に該当する事実があると思料するときは、公正取引委員会に対し、その事実を通知することとしております。

 第五に、これらの改正に伴い、法律の題名を食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律に改めることとしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

伊東委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

伊東委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、来る二十三日水曜日午後一時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時五十二分散会


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