第19号 平成30年5月31日(木曜日)
平成三十年五月三十一日(木曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 伊東 良孝君
理事 伊藤信太郎君 理事 小島 敏文君
理事 坂本 哲志君 理事 鈴木 憲和君
理事 福山 守君 理事 佐々木隆博君
理事 緑川 貴士君 理事 佐藤 英道君
安藤 高夫君 池田 道孝君
稲田 朋美君 上杉謙太郎君
上野 宏史君 加藤 寛治君
金子 俊平君 神田 憲次君
木村 次郎君 岸 信夫君
小寺 裕雄君 小林 茂樹君
西田 昭二君 野中 厚君
藤井比早之君 藤原 崇君
古川 康君 星野 剛士君
宮路 拓馬君 山本 拓君
石川 香織君 大河原雅子君
神谷 裕君 亀井亜紀子君
後藤 祐一君 関 健一郎君
江田 康幸君 大串 博志君
金子 恵美君 もとむら賢太郎君
田村 貴昭君 森 夏枝君
寺田 学君
…………………………………
農林水産大臣 齋藤 健君
農林水産副大臣 礒崎 陽輔君
農林水産大臣政務官 野中 厚君
政府参考人
(農林水産省消費・安全局長) 池田 一樹君
政府参考人
(農林水産省生産局長) 枝元 真徹君
政府参考人
(環境省水・大気環境局長) 早水 輝好君
農林水産委員会専門員 室井 純子君
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委員の異動
五月三十一日
辞任 補欠選任
泉田 裕彦君 小林 茂樹君
岸 信夫君 安藤 高夫君
斎藤 洋明君 上野 宏史君
細田 健一君 星野 剛士君
大串 博志君 もとむら賢太郎君
同日
辞任 補欠選任
安藤 高夫君 岸 信夫君
上野 宏史君 斎藤 洋明君
小林 茂樹君 泉田 裕彦君
星野 剛士君 細田 健一君
もとむら賢太郎君 大串 博志君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
農薬取締法の一部を改正する法律案(内閣提出第五〇号)
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○伊東委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、農薬取締法の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省消費・安全局長池田一樹君、生産局長枝元真徹君及び環境省水・大気環境局長早水輝好君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○伊東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○伊東委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。藤井比早之君。
○藤井委員 藤井比早之でございます。
平成十五年以来十五年ぶりの農薬取締法の改正法案につきまして、質問をさせていただきたいと思います。
まず、今回の改正内容については、特に、農薬の再評価制度を導入するというのが非常に重要な改正内容だと思います。この改正趣旨をお伺いするとともに、また、この改正は、農薬の安全性の一層の向上を図るための改正というふうに理解しております。現在、三年ごとに再登録制度がある、今回の再評価制度では十五年程度の間隔になると伺っておりますけれども、これは安全性確保に逆行することにならないのか、現行以上に農薬の安全性を確保するためにはどのような措置をとることになるのか、伺います。
○齋藤国務大臣 農薬は、登録時に効果と安全性について厳正に審査した結果、問題がないと確認したもののみ登録をしています。
一方、科学の発展によりまして、農薬の安全性に関する新たな知見等が蓄積をされ、評価法も発達するものであるので、過去に登録された農薬について、最新の科学に照らして、継続的に安全性を向上していくということが必要であります。
このため、今般の改正によりまして、農薬の登録後も一括して定期的に最新の科学的知見に基づき安全性等の再評価を行う制度を導入する、そうさせていただいているところであります。
具体的には、現行法において再登録の際の検査は省略できると規定されておりまして、この規定に基づいて検査を省略し、結果として販売継続の意思の確認を行ってきたところなんですけれども、登録後の安全性を確保する仕組みとして実質的に機能していないなというふうに思われるものですから、この再登録制度は廃止をして、より安全性の向上に資する制度として新たに再評価制度を導入する、そういうふうにさせていただいているところです。
この再評価制度におきましては、定期的に農薬メーカーにデータの提出を求め、最新の科学的水準で新規登録と同等の評価を行うとともに、安全性に関する重要な知見が明らかになった場合には、再評価を待たずに随時評価を行い、登録の変更、取消しを行うこともある。そのため、毎年、国が農薬メーカーに安全性に関する情報の報告を求めるほか、みずからも情報収集を進め、農薬の安全性を継続的にモニタリングする。こういったことによりまして、農薬の安全性の一層の向上を図ることとしているところでございます。
○藤井委員 ありがとうございます。毎年モニタリングをしていただく、報告していただくということでございます。
最新の基準、これに合わせてというのは非常に大切なことだと思います。党のワーキングチームでも、とにかく三年の再登録が十五年になったら大変だろうというのが最大の論点でございましたので、毎年そういった形でやっていただく、また、最新の知見が出たらすぐ対応していただくということをよろしくお願い申し上げたいと思います。
次に、今回改正するに当たりましては、農家の皆さんにとって、やはり生産コストを低減するということが何よりも大切だと思います。そのような中で、諸外国のジェネリック農薬の普及状況と我が国の普及状況についてお伺いします。
また、生産コストの低減に資するジェネリック農薬の普及に取り組むべきと考えますけれども、今回の改正によりまして、具体的にどのような形でジェネリック農薬の普及に資する形になるのか、それを、今後の取組方針も含めましてお伺いします。
○礒崎副大臣 お答えいたします。
欧米や米国におけるジェネリック農薬の普及率は一五%から二〇%まで程度であるのに対しまして、日本では五%にとどまっております。
その理由は二つありまして、一つは、欧米では、先発農薬と同等なジェネリック農薬について、登録申請時の試験データを一部免除しているのに対して、日本はこれまで、登録申請のための先発農薬と同等の試験を要するため費用がかかっていたこと、もう一つは、欧米では、単一成分の農薬の使用が一般的であるのに対し、日本は、高温多湿で病害虫や雑草の種類が多いため、単一成分であることが多いジェネリック農薬よりも、やはり混合剤のニーズが高かったことがあります。
こうしたことから、ジェネリック農薬の普及のために、競争を促し、農薬のコスト低減に資するものであることから、安全性については先発農薬と同等であることを確保しつつ、ジェネリック農薬が普及しやすく受け入れやすい環境を整備することが重要でありまして、今回の改正法案では、先発農薬の規格の一部を公表し、ジェネリックメーカーが開発の参考にできるようにする、あるいは、先発農薬と規格が同等なジェネリック農薬について、登録申請時の試験データの一部を免除することを盛り込んでおります。
加えて、登録されたジェネリック農薬が先発農薬と安全性や薬効など品質が同等である等、農薬に関する情報を農家等に提供することもあわせて行いたいと考えております。
こうしたデータの一部免除の効果を試算すると、これまで登録に必要なデータの作成費用が新規農薬と同様に約十四億円程度かかっていたものが、一億円程度で済むという試算もございます。そういうことがあり、ジェネリック農薬の登録申請が進みやすくなるものと考えております。
また、そうして少しずつジェネリック農薬、単一のジェネリック農薬がふえていけば、将来的には混合剤のジェネリックということもふえていく、そういうふうに考えているところでございます。
○藤井委員 ありがとうございます。
十四億から一億というのは非常に大きいなと。ジェネリック農薬が普及することによって生産コストが下がって、農家の手取りが上がるということを、ぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。
次に、今回、まさに農家の皆様にとっての改正内容があるんじゃないか。農作業の安全性確保は重要でございます。
今回の改正では、農薬使用者の皆様に対する影響評価の充実、また、動植物に対する影響評価の充実が含まれると理解しておりますけれども、この具体的な内容についてお伺いします。
○池田政府参考人 お答えします。
農薬の安全性を確保する上では、農薬が使用された食品の安全性を確保することはもちろんのこと、農薬を使用する農家の方々の健康や、我が国の豊かな環境を守ることも重要であると考えております。
今般の改正法案におきましては、農薬使用者にとっての安全性をより一層向上させるため、使用時に着用すべき防護装備などを被害防止方法として、法律上、登録事項と登録の基準に明確に位置づけ、防護装備が適切かどうかについても審査することとしております。
評価方法についても充実をさせ、毒性の程度だけではなく、使用方法に従って使用した場合にどの程度体内に吸収されるかという暴露量も考慮いたしまして、仮に、防除の期間、毎日継続して農薬を使用しても健康に影響が出ないかという観点から評価することとしております。
また、動植物に対する影響評価につきましては、豊かな環境を保全するため、影響評価の範囲を水産動植物から人の生活に密接に関係のある生活環境動植物に拡大いたしまして、陸域を含めて一定の動植物に対する農薬の影響を考慮し、登録事項とすることとしておりまして、環境省と連携して、登録時の審査を適切に行ってまいりたいと考えております。
○藤井委員 ありがとうございます。
祖父母の時代のように、散布の後、疲れて、午後ずっと寝ておかなあかんとか、そういうのにはもう最近はなっていないと思うんですけれども、やはり使う方の健康のために、また、動植物ということですから、普通に一般の皆さんにとってええようにしていただければというふうに思います。
次に、マイナー作物についてお伺いします。
マイナー作物については、登録されている農薬がなくて困っておるという話をよく聞くんですけれども、このマイナー作物への農薬登録の拡大に取り組むべきと考えますが、今後の取組方針についてお伺いします。
○池田政府参考人 お答えします。
生産量が少なく、使える農薬に制約のある作物、いわゆるマイナー作物でございますが、これに使用できる農薬の拡大のため、これまで、都道府県が産地の要望を吸い上げて農薬メーカーと共有する、都道府県などが実施する薬効、薬害試験や作物残留試験の実施に必要な経費を助成する、登録申請に必要な試験例数を、生産量が特に多い作物は六例に対しまして、生産量が少ない作物は二例と軽減する、こういった取組を行ってまいりました。
また、昨年四月以降、一連の作物をグループで登録する作物群の導入を進めておりまして、例えば、仁果類として登録することで、リンゴや梨とあわせてビワやカリンにも使用できるようになるなど、生産量が少ない作物の農薬の確保に資するものであるため、作物群での登録が可能な品目を平成三年度中を目途に果樹から野菜類に拡大する、新規登録や再評価の機会を活用して、作物群での登録を進めていただくよう農薬メーカーに働きかけるといった取組もあわせて進めていくこととしてございます。
○藤井委員 ありがとうございます。
法案改正とあわせまして、三十年度中に野菜類へも拡大するということで、明確に時限を切って目標を立てていただいておりますこと、心から感謝を申し上げたいと思います。
次に、ドローンによる農薬散布、これは、やはり労力や人件費等の生産コスト低減に非常に資すると思います。この間も、党の会議のところで、AIとドローンでの散布、ピンポイントで行くというので、農薬使用量十分の一でできるというような事例の紹介もございました。
しかしながら、ドリフトや高濃度少量散布による残留農薬がどうなるかといった点も心配でございます。これからのドローンによる農薬散布、この積極的な導入に向けての今後の取組方針をお伺いします。
○池田政府参考人 お答えいたします。
その前に、先ほどの私の答弁で、作物群の拡大につきまして、平成三年度中と申し上げました。これは平成三十年度中の間違いでございます。失礼いたしました。
ドローンについてのお尋ねでございます。
まず、ドローンによる農薬散布を行います場合、今は、使用方法の変更として、登録の審査を行うことを必要としてまいりました。この審査手続について、既に使用方法として散布が認められている農薬につきましては、ドローンも使用できるようにいたしまして、追加の登録の審査は不要としたところでございます。
また、今後さらに、ドローンに適した高濃度少量散布をした場合の薬害試験や残留試験の簡素化について、平成三十年度を目途に検討を進めているところでございます。
また、ドローンの活用に当たりましては、農薬の飛散の防止対策も含め、適切に使用されることが重要と考えてございます。
このため、空中散布に当たりましては、風向きを考慮した飛行経路の設定、散布区域内の人の立入り防止、適切な飛行速度や二メーター以下の散布高度の維持、強風時の散布の中止などの対策を講じるよう技術指導指針を定めまして、都道府県協議会、地区別協議会を通じまして、空中散布を行う者に必要な指導及び助言を行うなど、オペレーターを含む関係者への周知の徹底を図ってございます。
こうした対応により、防除効果や安全性を確保しながら、ドローンの適切な利用拡大に向けて、引き続き利用環境の整備を図ってまいりたいと考えております。
○藤井委員 三十年度中と伺っておりましたし、先ほども平成三十年度中ということで、私は聞こえたというだけですけれども。ということで、時限を切って取り組んでいただいておるというのは非常にありがたいことだと思います。
本当にドローンを使ったらさまざまな展開が可能であるというふうに思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
最後に質問させていただきたいと思うんですけれども、やはり農産物の輸出促進、これをとにかく進めねばならない、非常に重要だと思います。日本の人口が減っていっても、世界の人口はふえて、農産物の消費はやはりふえていくということでございます。
今回の改正は農産物の輸出促進に資すると考えますけれども、具体的にどのような効果があるのか。実は日本の残留農薬が高くて輸出できないといったケースもあると聞いておりますけれども、こうした場合への対応についてもお伺いいたします。
○野中大臣政務官 お答えいたします。
国によって農作物の品種、栽培方法や害虫の発生状況が異なるため、各国がそれぞれ農薬登録制度に基づいて農薬の安全性を確保しており、各国の使用基準に応じて残留基準値を設定しているところでございます。このため、自国と輸出相手国で残留基準値が異なることがあり、輸出相手国ごとに異なる基準値をクリアすることが農産物の輸出の際の課題となっております。
農水省としましては、輸出相手国において、日本と同等の残留基準値が設定されるようインポートトレランス申請の支援を進めているところであり、今般の制度見直しにより、日本での農薬登録のデータが国際標準に整合することで、そのデータがインポートトレランス申請にも活用できるようになり、輸出相手国による基準値設定が進みやすくなるため、農産物の輸出促進にもつながることが期待されております。
○藤井委員 ありがとうございます。
和食は世界遺産でございます。日本の農産物は安全ですばらしい。そのために、よろしくお願い申し上げたいと思います。
終わります。
○伊東委員長 次に、江田康幸君。
○江田(康)委員 おはようございます。公明党の江田康幸でございます。
本日も、農薬取締法改正案について、私の方から質問をさせていただきます。
私は、議員になる前は二十年以上にわたり医薬品の研究開発に従事しておりましたので、医薬品の安全性と比較しつつ、この法案における質問をさせていただきたいと思います。
農薬といいますのは、やはり安定的に農業生産をする上で必要不可欠なものであり、また、人が摂取する食品に使用されるわけで、環境にも散布されるわけでありますから、安全の確保が第一であるという資材であります。
その一方で、農薬に対する印象は、危険なものであり、できるだけ使わない方がいいといったものが依然として多いように感じます。農薬については、現場に必要不可欠なものであり、同じ薬である医薬品と同じように、数多くの安全性に関する試験をクリアして安全が確保されたもののみを登録して製造や使用を認めているにもかかわらず、そのことが世の中には十分知られていないように思います。
昨今、エビデンスベースで、すなわち科学的根拠をもとに施策を進める重要性が言われておりますが、こうした農薬の安全性こそ、科学的なデータをもとに、エビデンスベースで安全確保を進めることが重要だと思います。今回の法改正は、まさにこうした観点から、安全性の向上を更に進めるものと考えます。
農薬に対する考えや、現行の農薬登録制度が農薬の安全確保を図る上で果たしてきた役割と、今回の改正の趣旨について、大臣よりお答えいただきたいと思います。
○齋藤国務大臣 温暖湿潤な気候で病害虫の被害を受けやすい我が国におきまして、安定的に農産物を生産するためには、効果があり安全な農薬、これを供給することが不可欠であります。
このため、農薬については、安全性を確認したものを登録して製造や使用を認める仕組みとしていますが、その安全性を一層向上していくためには、登録した後においても、委員御指摘のように、最新の安全に関する科学的知見を的確に反映させられるようにすることが重要であります。
また、良質かつ低廉な農薬を供給するため、安全性を担保しつつ規制を合理化し、ジェネリック農薬を導入しやすい環境づくりをすることも重要であります。
このため、これまでの法案を改正いたしまして、全ての農薬について、最新の科学的知見に基づき安全性等の定期的な再評価等を行う制度を導入するとともに、農薬の登録審査を見直して、農薬使用者や動植物に対する安全性に関する審査の充実や、ジェネリック農薬の登録申請の簡素化などの措置を講ずるものでございます。
○江田(康)委員 大臣、ありがとうございました。
今申していただきましたように、今回の改正の主な事項は、再評価制度の導入、またジェネリック農薬の導入に向けた制度の合理化などでありまして、医薬品で既に導入されている仕組みが農薬でも導入されているように思われます。
ただし、必要以上に厳しい仕組みとなって実際に使える農薬が少なくなるといったような事態を招いては、これは意味がないわけでありまして、農薬の実情に即した仕組みであることが重要だと考えます。
まず、再評価制度についてお聞きしますが、農薬については、これまでも、科学の進歩に応じたガイドラインの随時改定や、安全上の問題が明らかになったものについて登録の変更、販売や使用を禁止することで安全性の確保を図ってきたと思うのですが、今回この再評価制度を導入することとした理由、意義についてお答えをいただきたい。
とともに、質問の順番を、一緒にさせていただきますが、再評価に当たっては、農薬製剤が四千剤を超える中で、全ての農薬を評価しようとするためには効率的に評価を行うことが大変重要であります。そのために、有効成分で見ると約六百になることから、有効成分ごとに製剤をまとめて評価するとお聞きをいたしました。
有効成分単位で評価をすることは効率的に評価する上で大変重要でありますが、安全性の観点からは、有効成分以外の補助成分などもしっかりと評価することが重要であります。再評価における安全性評価の考え方をお聞かせいただきたいと思います。
○池田政府参考人 お答えいたします。
まず、再評価制度を導入する理由でございますが、農薬は、登録時に効果と安全性について厳正に審査をした結果、問題がないと確認したもののみを登録してございます。その後、三年ごとに再登録を行っておりますが、再登録時には、法律の規定に基づきまして原則検査を省略しており、販売継続の意思の確認のみを行っているというものでございます。
一方、科学の発展に対応するためには、過去に登録をされました農薬について、最新の科学に照らして、継続的に安全性を向上していくことが必要でございます。
このため、今般、再評価制度を導入することといたしまして、定期的に農薬メーカーにデータの提出を求めまして、最新の科学的水準で新規登録と同等の評価を行うとともに、安全性に関する重要な知見が明らかになった場合には、再評価を待たずに随時評価を行い、登録の変更、取消しを行う。そのために、毎年、国が農薬メーカーに安全性に関する情報の報告を求めるほか、みずからも情報収集を進め、農薬の安全性を継続的にモニタリングするということにしてございます。
また、有効成分と補助成分の審査についてでございますが、再評価制度の導入に当たりましては、約四千ある農薬製剤を定期的に評価する必要がございます。このために、効率的な仕組みにすることが重要と考えております。
このために、同じ有効成分を含む製剤を一括して同時期に評価することとしておりまして、有効成分につきましてはまとめて評価した上で、製剤ごとに補助成分に係る評価もあわせて行うことにより、全ての製剤について新規登録と同様の評価を効率的に進めることとしてございます。
○江田(康)委員 ありがとうございました。
再評価制度が、農薬の安全性の向上を更に進める上で重要な施策であるということがわかります。
ここで、私、質問をちょっとかえまして、五月の二十六日のテレビでございましたけれども、「ミツバチと農薬」という「報道特集」がございまして、養蜂農家のミツバチが蜜や幼虫を残してある日忽然といなくなるという、米作の害虫であるカメムシなどの防虫剤として使われるネオニコチノイド系であるジノテフランとかクロチアニジンという農薬の影響が指摘をされておりました。
そこで、質問をさせていただきますが、欧米においてミツバチが突然いなくなる等の被害が多く報告されておりますけれども、日本でこのような被害は発生しているのか、また、政府としてどのような安全対策を講じているのか、お聞きをしたいと思います。
また、今回の改正によりまして、こういうネオニコチノイド系の農薬を含めて全ての農薬について、安全性に問題のあることが明らかとなった場合は登録の取消しやまた使用方法の変更などを行うことができるようになるのか、この点についても政府の見解をお伺いしたいと思います。
○池田政府参考人 お答えいたします。
我が国におきましては、欧州のように、農薬を種子にコーティングいたしまして、大型機械でそれをまく、それによって粉じんが広範囲にまき散らされる、そういった使用方法はほとんど行われておりません。
被害実態を見ても、農薬が原因と見られる被害ですが、ミツバチの飼養戸数九千戸中五十件程度となっておりまして、欧州のように広範な地域にわたり蜂がほとんどいなくなる大量死は見られておらず、被害の多くは水稲のカメムシ防除の時期に発生しており、ミツバチが殺虫剤の散布時や散布後に水田の周辺に飛来したためと考えられております。
こうした我が国の使用方法や被害の実態に対応いたしまして、ミツバチへの毒性に応じて、巣箱やその周辺にかからないようにするなどを注意事項として設定するとともに、農家と養蜂家との情報共有や、農薬散布時のミツバチの巣箱の退避などの対策を講じているところでございまして、実際に被害の軽減に効果を上げていると考えております。
一方、最新の科学的知見を反映いたしまして、農薬の環境に対する安全性をより一層向上することは必要と考えておりまして、ネオニコチノイド系農薬を含め全ての農薬について再評価を行い、その結果に応じて、安全を確保するために必要な場合には、迅速に登録の見直しなどの適切な対応を講ずることとしてございます。
○江田(康)委員 ありがとうございました。
このネオニコチノイド系の農薬も含めて、最新の科学的知見をしっかりと反映させていただいて、そして再評価また審査をしていっていただきたい、そのように思います。
さらに、あと少しの時間でございますが、質問を続けさせていただきます。
ジェネリック農薬について御質問をさせていただきます。
医薬品と同様に、やはり農薬においてコストダウンの一つの方法は、ジェネリックを導入して競争を促すことで価格の低下を進めることだろうと思います。先ほども質問があっておりましたが、やはり農家の方々にとって、農薬、そして農業の生産コストというのは大変大きな負担になるわけでありまして、ジェネリック農薬の開発は大変重要でございます。
今回の見直しでは、ジェネリック農薬について、提出すべき資料を一部省略できるとあります。今まで十四億円かかっていた農薬の試験にかかわる費用が最大で一億円にまで削減できる、そういう試算もあると聞いております。
このように、登録申請の簡素化が進めば、登録コストの削減が期待されて、農家にとってより安価で質の高い農薬の選択肢がふえることが期待されるわけであります。
ただ、こうした措置によって、ジェネリック農薬の品質また安全性の低下を招くようなことがあっては本末転倒でありますので、ジェネリック農薬の登録申請について具体的にどのように取り組む考えか、政府の見解をお聞きいたします。
○池田政府参考人 お答えいたします。
農薬を登録する際には、人の健康や環境への影響などに関する審査を行い、安全と認められるものだけを製造、使用できることとしておりまして、これは先発農薬だけでなく、ジェネリック農薬でも同様でございます。
一方で、先発農薬と農薬原体の成分、安全性が同等なジェネリック農薬であれば、先発農薬の登録時に安全性を確認済みであるため、試験データの一部の提出は求めないこととしたものでございます。
こうした考え方に基づきまして、後発農薬の農薬原体の成分に関する資料を提出いただき、先発農薬と同等かどうかを確認した上で、先発農薬と重複する毒性や残留に関する試験の提出を免除可能とすることとしておりますが、薬効、薬害、あるいは人への急性毒性など、製剤ごとに確認する必要がある試験につきましては、ジェネリック農薬であっても提出を求めることといたしてございます。
こうした審査により、ジェネリック農薬であっても先発農薬と同等の安全性を確保することとしております。
○江田(康)委員 ありがとうございました。
ぜひとも、ジェネリック農薬のさらなる安全性の確保も担保した上で、コスト削減へとジェネリック農薬の開発を、まだ大変少ない数でございますので、多く進めていただきたい、そのように期待をいたします。
時間が参りましたのでこれで終わらせていただきますが、ぜひとも、農薬取締法改正案、これにおいては、再評価制度の導入や、また今のジェネリック農薬の導入に向けた制度の合理化等々が大変重要な改定でございますので、しっかりと議論して成立を図っていただきますようによろしくお願いを申し上げ、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○伊東委員長 次に、亀井亜紀子君。
○亀井委員 おはようございます。立憲民主党の亀井亜紀子でございます。
きょうも、お時間をいただきまして、ありがとうございます。
短時間ですが、簡潔に質問させていただきます。
このたびの改正法ですが、現場からはおおむね歓迎する声が上がっております。
初め、この法改正について私が読んだときに、規制緩和ではないか、そういう印象を持ちました。三年ごとに再登録されていた農薬が十年間は使えるようになるわけですから、そういう印象を持ったんですけれども、実際に現場で声を聞きますと、再登録のたびにお金がかかるんですね。それで、企業が余り再登録にお金をかけたくないので、使いなれていた農薬がいきなりなくなってしまう、企業がむしろ新しい方を登録して販売したいので、使っていた農薬が急になくなってしまう、そういう不便も現場で生じていたようでして、歓迎する声が上がっておりました。
ただ、一方で、では、どのようにこれから一度登録された農薬を評価していくのか、その新たなスケジュール、再評価のスケジュールについて、不安の声もございます。
ですので、初めの質問は、同じ物質についての再評価はどの程度のサイクルで実施されるのでしょうか。EUでは、初回十年、二回目以降十五年となっていますが、日本ではどうなるのでしょうか。十年を超してから、物質ごとにグループ分けして再評価する中で、十五年目にという物質も出てくるのではないかと思うんですけれども、それではちょっと長過ぎるように思いますし、システムについてお伺いいたします。政府参考人の方で結構です。
○池田政府参考人 お答えいたします。
農薬の新規登録には、メーカーが数年以上かけて創薬をした上で、七、八年をかけてデータを作成し、さらに、国が二、三年をかけて審査をいたし、効果と安全性を確認しております。
さらに、再評価は、農薬の安全性を向上させるために最新の基準に基づいて評価をし直すものでございまして、その実施間隔でございますが、農薬の安全性に関する試験方法が更新される期間、こういった期間に合わせる必要があること、あるいは、再評価を短期間で実施した場合には、国の評価やメーカーの開発にも影響いたしまして新規農薬の登録がおくれるおそれがある一方で、再評価の効果が小さいことなどを踏まえまして、十五年とすることを想定してございます。
ただ、これに加えまして、今後は、毎年の農薬メーカーからの報告などによる継続的なモニタリングを行いまして、安全性に関する知見が明らかになった場合には、再評価を待たずにいつでも評価を行うことにより、現行制度以上に農薬の安全性を確保していくということとしてございます。
なお、再評価の期間でございますが、今後も、科学の発展の動向あるいは国際動向も踏まえつつ、必要な場合には柔軟に変更できるように、法律ではなく省令において実施間隔を定めることとしているところでございます。
○亀井委員 随時見直しを行うということですので、国際的な動向ですとか、いろいろな最新の科学的知見に基づいて柔軟に評価をしていただきたいと思います。
そこで、先ほど江田議員も質問されたことなんですけれども、私も、ネオニコチノイド系農薬について質問させていただきます。
私は、四月の五日の一般質疑のときに、ネオニコチノイド系農薬の規制について質問をいたしております。その後、先日、五月二十六日、TBSの「報道特集」でも、ミツバチが突然いなくなる現象とネオニコチノイド系の農薬との関係について報道されておりました。
この農薬については、EUでは屋外での使用が一部規制をされてきております。そして、日本でも、現場からは規制の声がかなり高まっております。
四月五日の質問の際にいただいた御答弁では、先ほどの御答弁にもありましたけれども、カメムシの防除の時期に殺虫剤として水田で使用しているので、その時期に巣箱を退避させてほしいと。「ミツバチの巣箱等にかからないよう使用面での対応を進めるとともに、農家と養蜂家の皆さんとの情報共有を徹底していただくといったことで農薬の散布時に巣箱を退避していただく、こういった対応を進めてきてございます。」という御回答でありました。
けれども、「報道特集」をごらんになると理解いただけるかと思うんですけれども、巣箱というのは一つ三十キロほどは重さがありまして、そして、幾つもあるんですよね。ですから、数個でしたら退避させることができますけれども、何十箱とあったら、それを退避させる、運ぶというのは大変な重労働です。ですので、対応策としては現実的ではありません。
やはり養蜂家の置かれた立場について御理解いただきたいですし、ミツバチというのは、養蜂家だけではなくて、ほかの作物の受粉にもかかわっておりまして、生態系全体の問題ですから、もう少し現実的な御対応をお願いしたいんですけれども、この点については大臣に御答弁いただきたく、お願いいたします。
○齋藤国務大臣 巣箱の退避につきましては、一概に言えませんで、巣箱を移動して養蜂を行う養蜂家もございますが、一方で、ふだんから同じ場所に巣箱を置いて養蜂を行う養蜂家、こういう方々にとっては負担感があるのは現実だろうと思います。
そのような養蜂家の方には、御指摘のあった水稲の開花期に巣箱を退避するというもののほかにも、ミツバチの移動が盛んな午前八時から十二時の農薬散布を避け早朝や夕方に行うですとか、ミツバチにかかる可能性の低い粒状の殺虫剤を使用したりするなどの対策が有効であると考えておりまして、農林水産省としては、都道府県が中心となって、農家と養蜂家の双方が出席する協議会を設けるなどした上で、地域の実態を考慮して、これらの対策の中で実行しやすい取組を推進するよう指導をしているところであります。
今後とも、現場の声にも耳を傾けながら、ミツバチの被害軽減対策の推進に努めてまいりたいと考えております。
○亀井委員 なぜ、農薬そのものに問題があるかもしれないと疑って再評価をするようなことをされないんでしょうか。
実は、農薬の登録取消しというのは、過去に一度も行われたことがないと聞いております。農薬の製造者や販売者への影響が多いので、実際には行われていない。ということですと、先ほどおっしゃった、随時見直しを行うということの現実性が疑われてまいります。
まさに、今、ネオニコチノイド系農薬のように問題が指摘されている農薬が出てきているわけですから、例えば登録を取消ししなくても、一回保留をして再評価や対策を講じる必要があると思いますけれども、そういった御対応はとれないんでしょうか。もう一度大臣にお願いいたします。
○齋藤国務大臣 まず、農薬は、登録をするときに効果と安全性について厳正に審査した結果、問題がないと確認されたもののみまず登録しているということ、それから、再評価は、科学の発展に対応するため、過去に登録された農薬について、最新の科学に照らして、継続的に安全性を向上させていく、こういう性格のものだということです。
このため、再評価では、国民の健康や環境に対する影響の大きさを考慮して、まずは国内での使用量が多い農薬から優先的に進めていくこととしておりまして、ただ、具体的な農薬ごとの再評価時期は今まだ検討しているところであります、数も多いものですから。
御審議いただいている改正法案が成立した後、速やかに再評価の優先度を示すとともに、各年ごとに評価対象となる有効成分名についても順次告示をしていきたいというふうに考えております。
○亀井委員 その優先順位のトップにネオニコチノイド系を挙げていただきたく、真剣な御対応をお願いいたします。
それでは、次の質問に移ります。
今回の法改正は、ジェネリック農薬を普及させたい、そういう趣旨がございますけれども、日本の農薬メーカーというのはどの程度の競争力があるんでしょうか。また、農薬の主要成分というのはどの程度輸入されているものなのか、その点についてもお伺いいたします。参考人の方で結構です。
○池田政府参考人 お答えいたします。
まず、農薬の有効成分の生産量でございますが、国内生産量が約六万トンであるのに対しまして、輸入量は約三万トンというふうになってございます。
また、日本の農薬メーカーでございますが、世界における農薬の新規有効成分数に占める日本メーカーが創薬した有効成分数のシェアは約四割ございまして、海外メーカーと比較してすぐれた新薬の創薬力を有しており、高い競争力を持っていると考えているところでございます。
○亀井委員 私が思っていたよりは競争力があるんだなと思いました。では、この分野は力を入れていただきたいと思います。
最後に、これは農協に関する質問なんですが、現場から、ジェネリック農薬にしても、肥料もそうなんですが、同じものを農協を通して買うと高いという声が聞こえております。
これは一体何が原因なのか、もし思い当たることがありましたら、御答弁いただきたいと思います。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
我が国の農業資材の価格でございますけれども、平成二十八年度に韓国と比較を実施いたしまして、多くの肥料、農薬が我が国の方が高いという結果になりました。
また、農協系統は、農業者への資材供給のうち、例えば肥料では七割、農薬では六割を担うなど、非常に重要な役割を担っているという状況でございます。
こういう事実関係のもとで、当時、我が国におきます資材価格についての分析をいろいろ行いました。その結果、各都道府県で細分化された施肥基準ですとか農協が策定する栽培暦による銘柄の指定、あとオーダーメード銘柄の製造など、多銘柄を少量ずつ生産する構造にあること、メーカーの工場の稼働率が低いことで高コストな生産構造にあること、また、生産資材の価格ですとか品質の違いが見える化されておらずに競争原理が十分に発揮されていない、こういうことが課題じゃないかというふうに考えてございます。
このため、資材価格の引下げに向けまして、競争力強化プログラムですとか競争力強化支援法に基づきまして、農業資材に係ります規制等の点検、見直し、また、資材業界の自主的な事業再編、参入の促進、農業資材価格の見える化などの取組を進めているところでございます。
また、全農では、農業競争力強化プログラムを受けましての自主改革といたしまして、肥料について、系統独自銘柄の設定によって膨大な銘柄数となっていて、メーカー間の価格競争が起きにくい状況にある、こういう状況であるということを踏まえて、この春から、一般高度化成肥料の約四百銘柄を十七銘柄に集約いたしまして、かつ、入札の方式を導入することによって、おおむね一割から三割の価格の引下げに結びついているという状況でございます。
また、農薬につきましても、ジェネリック農薬の開発に向けまして、現在一剤について開発に着手するなど、農協系統としても資材コストの低減に向けた取組を実施しているところでございます。
引き続き、系統を始め関係団体ですとか資材の事業者、また地方公共団体等々と意見交換を進めながら、資材コストの低減に係る取組を進めてまいりたいと存じます。
○亀井委員 本来、農協というのは農業者のために、大量に共同購入するので安くなきゃいけないんですけれども、実際には、肥料も、安いと思って買っていたら、近くの量販店で売っているものの方が安かったですとか、そういう声がどんどん現場に広がっておりまして、農協の信頼がなくなっていくと思いますので、実際に今そういうことが起きているという、そのことを御報告して、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。
○伊東委員長 次に、石川香織君。
○石川(香)委員 おはようございます。立憲民主党の石川香織でございます。
質問させていただきますけれども、農薬は、害虫を防ぐ、作業の効率化なども含めて、大切な役割があると認識しております。その一方で、農作物を通じて人間の体に入るわけでありますので、そういった人体に対しての影響、それから環境に対しての影響というのも当然重要なことであります。
今回の農薬取締法の目的、現行法では、農薬の品質の適正化とその安全かつ適正利用の確保ということでありますけれども、改正案では、「農薬の安全性その他の品質及びその安全かつ適正な使用の確保」となっておりまして、「農薬の安全性」という言葉を法律の中へ初めて入れたということは非常に評価できる点ではないかと思っております。
農薬はできる限り使わないで、自然のままで体に入れるというのは共通の思い、願いだとは思いますけれども、この改正案の中では、農薬を減らしていこうという方向性は特に見えないかと思います。
EUでは、予防原則に基づきまして、人の健康や環境への影響に対して、農薬の使用の危険性と影響力を少しずつ減らしていこうということが決まっておりますけれども、農薬の使用を最小限化するという枠組みですとか方向性をこれからつくっていくことがまず大切ではないかなと感じますけれども、その点についてはどうお考えでしょうか。
○池田政府参考人 お答えいたします。
温暖湿潤で病害虫の被害を受けやすい我が国では、農産物を安定的に供給するためには、必要な範囲で農薬を使用することは不可欠だと考えております。
また、農薬を使用する上では、人の健康や環境に対する安全を確保することが基本でございますので、農薬登録制度によりまして、安全と認められる農薬だけを製造、販売、使用できるようにするとともに、遵守すべき使用方法などを定め、農薬の適正使用を進めているところでございます。
御指摘のございました農薬の使用量でございますが、これにつきましては、今後とも、農薬の使用に当たっては、安全を確保するため定められた使用方法を守ることはもちろんのこと、農薬だけではなくさまざまな方法を組み合わせた総合的病害虫防除の推進、あるいは、発生前の予防的な農薬散布による防除から、発生予察情報に基づきまして適時適切な防除を行うことへの転換を推進いたしまして、防除に必要な量だけを的確なタイミングで使用するよう取り組んでまいりたいと考えてございます。
○石川(香)委員 ありがとうございます。
的確な量、的確なタイミングといいますか、そういったことも大切だと思いますけれども、今回、どうやって農薬の安全性を確保していくかということで、再評価制度というものを取り入れるということになります。
一見して、この登録制度、再評価制度の違いが、初めはなかなか私もわかりにくいところがありました。というのは、再評価制度は、一定期間、十五年ごとに、有効成分ごとに最新の科学の基準で安全性などを評価して、基準を満たさない農薬は登録を取り消す。今までは三年ごとの再登録制度でありました。これはつまり、三年ごとの再登録と十五年ごとの有効成分というチェックの年数だけを考えますと、農薬の安全性に関する確認の頻度自体は、年数でいえば減るわけであります。
有効成分だけを抽出するといいましても、原体も違うわけでありますし、製造過程もそれぞれ違うわけであります。まとめて再評価という方法でどうやって安全性を高めていくことができるのか、改めて御説明いただければと思います。
○池田政府参考人 お答えいたします。
農薬は、登録時に効果と安全性について厳正に審査をした結果、問題がないと確認したもののみ登録をしております。
一方、科学の発展に対応するために、過去に登録された農薬について、最新の科学に照らして、継続的に安全性を向上していくことが必要と考えております。
このため、今般導入することといたしております再評価制度でございますが、これは三点セットでございまして、定期的に農薬メーカーにデータの提出を求め、最新の科学的水準で新規登録と同等の評価を行う、さらに、毎年国が農薬メーカーに安全性に関する情報の報告を求めるほか、みずからも情報収集を進めまして、農薬の安全性を継続的にモニタリングいたしまして、その中で安全性に関する重要な知見が明らかになった場合には、再評価を待たずに随時評価を行い、登録の変更、取消しを行うということとしてございます。
繰り返しになりますが、これらによりまして、最新の科学に照らして、必要に応じて適時適切に登録の変更あるいは取消しを行う、こういったことによりまして、継続的に農薬の安全性を担保していくこととしております。
○石川(香)委員 毎年のメーカーの報告でありましたり、国の情報収集なども含めてしていくということでありましたけれども、では、どうやって、どういう順番でこれからその再評価をしていくのかということであります。
既に登録されている農薬について、毒性や使用量に基づいて優先度をつけて、平成三十三年度以降順次再評価をするということになっていると聞いております。この点についてですが、優先度が高いイコール危険な薬ではないかというイメージが消費者の中で湧くのではないかと思いますけれども、この点について政府から丁寧な説明が必要になるかと思いますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
○池田政府参考人 お答えいたします。
現在登録のある農薬ですが、繰り返しになりますが、登録時に効果及び安全性を厳正に審査いたしまして、問題がないことを確認したもののみ登録をしてございます。
今般改正で導入をいたします再評価に当たっては、国民の健康あるいは環境に対する影響がより大きなものを優先することが望ましいと考えてございます。
このため、まず、国内で使用量が多い農薬、これを最優先とした上で、次に、使用量は少ないが、一日許容摂取量、これは一生涯毎日摂取しても健康への悪影響がないとされる一日当たりの摂取量でございますが、こういったものが低い農薬を優先して再評価を進める、こういうことにしてございます。
再評価は、全ての農薬について安全性を一層向上させるものでございますので、こうした趣旨が正しく理解していただけるように取り組んでまいりたいと考えております。
○石川(香)委員 ありがとうございます。
新しい制度を取り入れますと、やはり費用の面でもさまざまな部分でかかるのではないかという懸念があります。再評価に伴う農薬メーカーの費用が増した場合に、農薬価格が上昇して、農業経営に悪影響を及ぼすのではないかという懸念も頭の中に浮かぶんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
○礒崎副大臣 お答えいたします。
農薬については、効果があり、人の健康や環境に対して安全と認められたものだけを使用することが最重要であります。
再評価に当たりましては、農薬の安全を確保する上で不可欠なデータの提出は必要であるが、一方で、データ作成がメーカーにとって過度の負担になり、農薬の価格が大きく上昇しないように配慮することも必要であると考えております。
このため、試験のガイドラインを国際標準と調和させ、他国に提出されたデータなど既存のデータを審査に活用できるようにするなど、メーカー負担にも配慮して取り組むことといたしております。
また、今回の法改正では、先発農薬と規格が同等なジェネリック農薬について、登録申請時の試験データの一部を免除することにより、ジェネリック農薬の申請を進めやすくするなど、安全性を確保しつつ、良質かつ低廉な農薬の供給のための見直しもあわせて行うこととしているところでございます。
○石川(香)委員 ありがとうございます。
四千剤、それから有効成分が六百という数でありますので、どういう基準で審査を行っていくかというのは非常に大切な点だと思います。
今、礒崎副大臣からも御答弁いただきましたジェネリック農薬のことについても、私、少し触れさせていただきたいと思います。
今回、このジェネリック農薬の登録申請について、申請に関してかなり簡素化されているという印象を持ちます。審査の簡素化は、やはりジェネリック農薬の普及を促して農薬の価格の引下げを目的にしているのではないかなと感じるんですけれども、このジェネリック農薬のメリットというものは、消費者、農業者にとっては効果が担保された農薬と同じ効果を持つものが比較的安価で購入できるというものが、評価できるメリットだと思います。
ただ、デメリットといたしましては、倫理観の低いメーカーが例えば市場参入をしてきて粗悪な製品が市場に出回るという可能性も否定できないと思いますけれども、その危険性についてはどう御認識でしょうか。
○礒崎副大臣 お答えいたします。
農薬を登録する際には、人の健康や環境への影響等に関する審査を行い、安全と認められるものだけを製造、使用できることとしており、これは先発農薬に限られることではなく、ジェネリック農薬も全くそれは同様であるわけであります。
一方で、先発農薬と農薬原体の成分、安全性が同等なジェネリック農薬であれば、先発農薬の登録時に安全性を確認済みであるため、試験データの一部の提出は求めないこととしたものであります。
ただし、後発農薬が先発農薬と同等かどうかを確認した上で、薬効、薬害や人への急性毒性など、製剤ごとに確認する必要がある試験については、先発農薬と同様に、ジェネリック農薬であってもデータの提出を求めることといたしておるわけでありまして、こうした審査により、ジェネリック農薬であっても、先発農薬と同等の安全性を確保できる、確保することといたしているわけであります。
○石川(香)委員 ありがとうございます。
先発農薬と同等の安全性を確保できるということを御説明いただきましたけれども、やはり、日本の農薬メーカーの強みは、新しい薬の開発力ではないかと思います。このジェネリック農薬が普及されることで、やはり、コスト競争というものが発生する場合になったときに、海外メーカーとの価格競争にさらされる可能性があるのではないかと思います。そうなりますと、国内市場が奪われてしまうではないかという懸念も同時に湧き上がるわけであります。
新しい農薬の有効成分を開発するという機運自体もそがれるかもしれないという懸念もありますけれども、ジェネリック農薬の普及ということが予想される中で、同時に、新剤の開発に対しての支援も行っていくべきではないかと考えますけれども、そのあたりについてはどう御認識でしょうか。
○礒崎副大臣 お答えいたします。
農薬は、長期間使用していますと雑草や害虫等の抵抗性が高まることから、安定的な農業生産を継続していくためには、新たな機能を持った、より効果があり安全な農薬の開発や導入が不可欠であると考えているところでございます。
今般の改正では、安全性の試験方法等を国際標準に整合させる、あるいは、創薬力のすぐれた日本のメーカーの海外展開をしやすくさせることにより、メーカーの国際競争力を高めることも考えておりまして、このことで、新規農薬の開発にも資するものと考えております。
また、あわせまして、病害虫の防除において特に必要性が高い新規農薬や安全性が高い新規農薬については他の農薬に優先して評価する、そういう制度を導入することといたしておりまして、早期に良質な新規農薬を登録するようにしておりまして、こういうことをあわせますと、新規農薬の開発にも十分力を入れていくということになると思っております。
○石川(香)委員 ありがとうございます。
次は、安全性が確保された農薬を購入して、どうやって使っていくかということについてお伺いをいたします。ちょっと質問の順番を飛ばしましたけれども。
心配な使い方といたしましては、農家の方が、購入した農薬を、自己判断で、いろいろ農薬と農薬をまぜてしまうということも想定されるといいますか、今、少しそういうこともあるんだと思います。
その危険性についての呼びかけが少し足りないような印象も持つんですけれども、こういった危険な使い方に対してどう規制していくか、その辺の御説明をお願いいたします。
○池田政府参考人 お答えします。
農作物の病害虫を防除する際に、使用の段階で幾つかの農薬を混合して使用いたします、いわゆる現地混用が行われているケースが見受けられます。
こうした現地混用でございますが、散布労力の軽減などのメリットがあるものの、混用する農薬の種類によりましては、薬害が出たり、皮膚かぶれを助長する場合もございますので、注意事項を守りつつ行う必要があると考えております。
このため、農林水産省といたしましては、都道府県に対しまして、農薬ラベルに混用に関する注意事項が表示されている場合にはそれを遵守すること、あるいは、生産者団体が発行してございます農薬混用事例集、こういったものがございますが、そういったものを利用いたしまして、これまでに知見のない組合せで現地混用を行わないことを生産者に指導していただくよう依頼しているところでございます。
これを受けまして、都道府県におきましては、巡回指導あるいは講習会を通じまして周知徹底を図っていると承知してございます。
こうした取組によりまして、最近十年でございますが、農薬の混用による人への被害、こういったものは報告はされてございません。
今後とも、混用による被害が発生しないよう、指導に取り組んでまいりたいと考えております。
○伊東委員長 石川君、質問時間が来ておりますので。
○石川(香)委員 はい。
時間が来ましたので、終わりたいと思います。ありがとうございました。
○伊東委員長 次に、後藤祐一君。
○後藤(祐)委員 国民民主党の後藤祐一でございます。
冒頭、ちょっと大臣に御見解を聞きたいんですが、きのう、お米の作付動向の発表がございました。きょうの農業新聞にも大きく出ておりますけれども。
一月末に比べると、主食用はある程度上向きになっていて、餌米は相当減少だというような、いろんな傾向が出ているようでございますが、これについての印象というか、単純な印象で結構でございますので、大臣、何かございましたら。ありますでしょうか。
○齋藤国務大臣 第二回目の、作付の状況について公表をいたしました。これによりますと、三十年産の都道府県別の主食用米の作付動向につきましては、前年の作付実績と比較して同水準である県が三十四、増加が六県、減少が七県と見込まれておりまして、現時点では、都道府県ごとの増減はありますけれども、総じて言えば、前年の二十九年産と大きく変化する状況にはないというふうに考えております。
私どもといたしましては、やはり需要に応じた生産というものが定着をしていくということが極めて重要だと思っておりますので、今回の公表結果や最新の需給動向等を注視していきたいと思っておりますし、六月末の営農計画書の提出締切りまで、需要に応じた生産に向けた検討を進めていただきたいというふうに考えているところであります。
○後藤(祐)委員 ありがとうございました。
需要に応じたというところは、特に餌米だとか備蓄米を減らして業務用のお米をふやすケースが多いんじゃないか、特に東北なんかで相当ふえているところはこういった面があるんじゃないかというような分析もなされているようでございますので、ぜひ注視をいただきたいと思います。
それでは、農薬法に移っていきたいと思いますが、まず、今回、法律にきちんと位置づけられました、使用に際して講ずべき被害防止方法ということに関して幾つかお聞きしたいと思います。
これは大臣にお伺いしたいと思いますが、ここ数年の農薬をめぐる事故や被害の発生といったものを具体的な形で私も拝見をさせていただきましたが、装備着用が不十分であったというようなケースがやはり多いようでございます。
これから実際に農薬を使用するケースが多くなるようなシーズンでもございますので、農薬使用に際して現場の農業者の皆様が、具体的な、こういったときには特に気をつけなきゃいけないですよといったものを、二、三わかりやすい形で、注意喚起の意味で挙げていただけますでしょうか。
○齋藤国務大臣 重要な御指摘をいただいたと思っております。
農薬による事故防止のためには、まず、農薬のラベルをよく確認していただくということ、これは当然のことでありますし、定められた使用方法に従って使用していただく、これも大変、当たり前のようで重要なことだろうと思います。
農林水産省では、毎年、農薬の使用に伴う事故及び被害の実態調査を実施しておりまして、平成二十八年度の調査結果では、死亡事故はございませんでしたが、人に対する事故が十九件確認をされております。これは、農薬を誤って飲んでしまったこととか、土壌の薫蒸の際に被覆等の作業管理が不適切だった、あるいは防護装備が不十分だったというようなことが主な原因でありました。
このため、こうした被害を防止するために、農林水産省としては、農薬の使用が多くなる毎年六月から八月までの間に農薬危害防止運動というのを実施しております。そして、そこでは、今、具体的にというお話がありましたが、農薬やその希釈液等を飲物のペットボトル等に移しかえないですとか、それから、土壌薫蒸を行うときは適正な厚さの資材を用いて被覆を完全に行うですとか、御指摘の適切な防護マスクや保護眼鏡等を着用する等の被害防止対策の徹底を毎年呼びかけているところであります。
今後とも、農薬使用現場において、農薬の安全かつ適正な使用が徹底されるよう努めてまいりたいと思います。
○後藤(祐)委員 具体的な御指摘、ありがとうございます。
過去数年の事故を見ますと、特に土壌の薫蒸に関しては相当案件が多いようでございますので、今、具体的に大臣も御指摘いただきましたので、いろんな形での周知徹底もよろしくお願いしたいと思います。
続きまして、今、大臣からの御発言でもありましたけれども、使用に際して講ずべき被害防止方法を実際やってもらうためには、現場の方に伝えなきゃいけないわけですね。
その上で、表示というのは非常に大事になってくるわけですが、改正後の十六条で、農薬の容器に表示をしなければいけない、使用に際して講ずべき被害防止方法を表示しなければいけないということが義務づけられたわけですけれども、農家にはお年寄りの方も大変多いので、例えば字の大きさとか、あるいは書いてある文章だとか使ってある用語が難しい言葉で書かれても、なかなか現場では困ってしまうので、その文章の内容面も含めて、よりわかりやすい表示をいただける必要があると思うんですけれども、これを農水省として、何らか検討して、こういったメーカーの方なんかにお伝えいただける、あるいは働きかけるべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○池田政府参考人 お答えします。
農薬を使用する方々が農薬を適正に使用するためには、農薬の容器に表示されている使用方法あるいは注意事項などが農薬使用者に正確に伝わることが重要でございます。
農林水産省では、農薬の製造者に対しまして、より適切な表示を行っていただくため、農薬の使用者が読みやすい文字や大きさとすること、あるいは色分けなどにより読みやすくすること、こういうことにつきまして、通知を定めて、指導を行ってございます。
しかしながら、農薬の容器には表示をできるスペースに限りがあることから、農薬の製造者の団体などが中心となって、農薬ラベルに二次元コードを表示いたしまして、スマートフォンなどでも確認できるようにするなど、農薬使用者への情報伝達を工夫している、そういった取組も進められてございます。
農林水産省といたしましても、農薬製造者の方々、こういった関係者の方々と連携をいたしまして、よりわかりやすい農薬ラベルの表示に向けて検討してまいりたいと考えてございます。
○後藤(祐)委員 ぜひ徹底をお願いしたいと思います。
この使用に際して講ずべき被害防止方法は、今回新たに審査対象になるわけですが、では、現場で農薬を使う農業者にとっては、この被害防止方法をとることが義務かというと、義務になるわけではありません。
御自分に対する体のリスクについては、御自分の話ですから当然気にされるわけですけれども、特に周辺の農地ですとかあるいは周辺の住宅地への飛散による被害リスク、こういったこととの関係でいうと、法的な義務でないにしても、当然、この講ずべき被害防止方法、現場の農業者の方々は守っていただく必要があるわけですけれども、特にドリフト対策、周りへの被害を防ぐための被害防止方法、これは、今回法律で定める、使用に際して講ずべき被害防止方法の中に、このいわゆるドリフト対策は含まれ得るんでしょうか。
○池田政府参考人 お答えいたします。
農薬の安全性を確保する上では、農薬が使用された食品の安全性を確保することはもちろんのこと、農薬を使用する農家の方々の健康を守ることも重要でございます。
今般の改正法案におきましては、農薬使用者にとっての安全性をより一層向上させるため、法律上、農薬の使用に際して講ずべき被害防止方法を登録事項に位置づけるとともに、被害防止方法を講じた場合においてもなお被害が生ずるおそれがあるときには登録を拒否することとしております。
一方で、この農薬の使用に際して講ずべき被害防止方法には、農薬使用者への影響だけでなく、御指摘のございました農地周辺の方々などもその解釈上含まれるということでございます。
○後藤(祐)委員 含まれるということですので、特にこのドリフト対策については、被害防止方法をきちんと守っていただく必要があるかと思います。
ジェネリックについて行きたいと思いますが、先発農薬の場合の開発コスト、大体百億ぐらいかかると言われていますが、これが大幅にジェネリックの場合はかからなくなるわけで、あと、安全性を確認する試験費用についても、十四億ぐらいかかるものが一億円ぐらいにまで安くなるという御説明を伺いました。
実際、これの製造に至る段階まで含めて、ジェネリック農薬というのは、先発農薬に比べてトータルのコスト、どのぐらい安くつくれるようになるものなんでしょうか。それと、現場の農家が購入する価格というのはどの程度安くなるものなんでしょうか。
現行の比較できる三つのジェネリックでは、三%、五%、あるいは、アセフェートなんかですと一〇から一五%程度安くなっているというような分析もあるようでございますけれども、今度、このジェネリックについては審査が簡略化されるわけですから、少なくとも、現行のこれらのジェネリックよりは、これから出てくるジェネリック農薬というのは先発薬に比べると相当安く買える期待があるということでよろしいんでしょうか。
○池田政府参考人 お答えいたします。
まずはコストのことでございますが、先発農薬を上市するまでにかかる費用でございますが、新たな化合物の探索を行う開発コストが、農薬工業会によれば、二百五十億円から三百億円ほどと聞いてございます。また、登録申請に必要なデータを作成する試験コストを試算したところ、十四億円程度となってございます。
一方、先発農薬と組成や安全性が同等のジェネリック農薬の場合は、開発コストが先発農薬に比べてほとんどかからない上、今般の法改正によりまして、登録申請時の試験データが一部免除になるため、十四億円程度かかってございましたものが一億円程度となる、そういった試算も得られてございまして、導入コストは先発農薬に比べて安くなると考えてございます。
こういった法律の改正によりまして、ジェネリック農薬の登録のための試験コストが大きく低減をされ、また、ジェネリック農薬が参入しやすい環境が整うことで、これまでよりも活発な市場競争が促される、こういったことが期待をされるということでございます。
○後藤(祐)委員 大臣にお伺いしたいと思いますが、安くなるとは断定されませんでしたけれども、ある程度の競争が生まれれば、少なくとも審査コストは安くなっているわけですから、先発薬に比べればジェネリック農薬は安く出回ることが期待されるわけです。そして、先ほどのたしか副大臣の御答弁でもあったと思いますが、安全性に関しては同じようにきちっと見ているということでございますので、安全なものが安くということであれば、このジェネリック農薬はこれからも進めていくべきだと思いますが、大臣の御見解を伺いたいと思います。
○齋藤国務大臣 ジェネリック農薬の普及は、競争を促し、農薬のコスト低減に資するというふうに考えておりますので、安全性については先発農薬と同等であることを確保しつつ、ジェネリック農薬が普及しやすく、受け入れられやすい環境を整備するということは重要であると考えています。
このため、今般の改正法案におきましては、先発農薬と規格が同等なジェネリック農薬については登録申請時の試験データの一部を免除する、それに加えまして、先発農薬の規格の一部を公表して、ジェネリックメーカーが開発の参考にできるようにする、こういう措置を講じているところであります。
そしてさらに、登録されたジェネリック農薬は先発農薬と安全性や薬効などの品質が同等なんだということを、農薬に関する情報、そういった情報を農家等に提供することもあわせて行っていきたいというふうに考えています。
○後藤(祐)委員 同等なんだということを知らせることは大変重要だと思いますので、ぜひ進めていただきたいと思います。
続きまして、生活環境動植物に広がるという件について、きょう、環境省から水・大気環境局長にお越しいただいております。
水産動植物から生活環境動植物に登録の際の対象が広がる、その範囲が余りに広くなってしまった場合、農薬である意味やっつける害虫と極めて近い虫なんかも死なないようにという調べ方をしてしまったら、ほとんど農薬は使えるものがなくなってしまうわけで、この生活環境動植物をどの範囲まで調べる対象にするかというのは極めて重要だと認識しておりますが、いわゆる益虫と言われるようなものに近いようなものが新たに、水以外の、生活環境動植物として調べる対象に入るということをイメージしているのか、あるいは、あらゆる種類の中で幾つか代表的なものをとってというようなことまで考えていらっしゃるのか、そこについてのお考えを知らせてください。
○早水政府参考人 お答えいたします。
生活環境動植物でございますが、その生息や生育に支障を生ずる場合には人の生活環境の保全にも支障を生ずるおそれがあるような動植物ということでございますので、人の生活に密接な関係がある有用な動植物が該当するものと考えております。
評価の対象として新たに追加する具体的な動植物につきましては、改正法案の成立後に、国際標準との調和、外国でもう既に使われているものとか、それからこれまでの科学的知見等も勘案して、そういった集積があるものなどから、中央環境審議会において審議いただいた上で選定したいと考えております。
○後藤(祐)委員 ちょっと、それだけだとわからないんですが、現行で既に使われている農薬、特定農薬と言われる、害を及ぼすおそれのない重曹とか酢とか、こういったものはまず外れることはないという説明を事務的にいただきましたが、特定農薬でない、現行で登録されている農薬が、この生活環境動植物に広がることによって登録できなくなる可能性というのはあるんでしょうか。
○早水政府参考人 お答えいたします。
このような対象生物の拡大につきましては、現行法におきましても行っておりまして、最近、生物による感受性の差があるということで、感受性の高い水生昆虫のユスリカ幼虫を用いた試験を平成二十八年三月から一部の農薬に対して求めております。その結果、基準値がかなり小さくなったものがございますけれども、千分の一ぐらいになったものもございますが、それらにつきましても、使用できないと判断されたものはございません。
このように、今後、評価対象は拡大しても、基本的には、適正に利用をされれば、使用量とか使用頻度、希釈倍率とかそういったもので適正に使用されれば、リスクを適切に管理するということでございますので、そうすれば多くの農薬は継続して使用できると考えております。
○後藤(祐)委員 今の答弁は非常に重要な答弁だと思うんですね。現行の農薬が物すごく使えなくなっちゃうような法改正ですと、現行で問題なんだとすれば、それは問題な農薬は使っちゃいけないわけですけれども、現行の農薬は問題ないということであれば、今回の法改正で現行のものが物すごく使えなくなっちゃうというようなことがないような運用をお願いしたいと思います。
続きまして、再評価制度に行きたいと思いますが、現行の新規登録については、申請から登録まで約二年半から三年かかるというふうな御説明をいただいています。そして、現行の再登録は、これはもうほとんど実質審査を行っていないので、ほとんど時間がかかっていないということですが、今回、再評価制度を導入することによって、この再評価制度にかかる時間というのは、現行の新規登録、すなわち二年半から三年程度かかっているものと同じぐらいの時間がかかるような説明を伺っていますが、これは本当でしょうか。
○池田政府参考人 お答えいたします。
再評価でございますが、農薬の安全性を向上させるために、最新の基準に基づき評価をし直すものでございます。農薬の安全性に関する試験方法が更新される期間、こういったものに合わせる必要がございますので、その実施間隔でございますが、十五年とすることを想定してございます。
○後藤(祐)委員 それは多分違う答弁書を読んでいらっしゃると思うんですが、再評価にかかる時間というのは、現行の新規登録にかかる時間と同じぐらいの時間かかるんでしょうか。その質問も通告していますけれども、さっき答弁があったので、私飛ばしていますので。
○池田政府参考人 大変失礼いたしました。
現在、新規登録にかかる時間が大体二年から二年半ぐらいということでございます。したがいまして、再評価につきましては、項目が新規登録よりも若干少なくなる場合もあろうかと思いますので、これと新規評価と大体同等程度を基本として行うことができるのではないかと考えております。
○後藤(祐)委員 項目は減るけれども同等程度なんですか。
いずれにせよ、現行の再登録の場合はほとんど実質で審査をやっていないので、やはりそこは相当時間がかかることになっちゃう。それは時間的にも金銭的にもコストがかかるわけで、これによって、実際、アメリカでは再評価制度を導入して、それまで登録された農薬を、再評価を受けて、もう一回登録を継続したものというのは六割ぐらいに減ってしまったというようなお話も伺っておりますが、日本でも、この再評価制度の導入によって、従来からある登録農薬が、新規登録でまたふえる分というのも別途もちろんあるんでしょうけれども、従来からある登録農薬が減少する可能性が結構あるのではないでしょうか、大臣。
○齋藤国務大臣 再評価は、その安全性を確保する上から重要な行為だと思っていますので、これはしっかりやっていかなくちゃいけないと思っております。
御指摘の米国では、再評価の実施によりまして、再評価時点で、従来の使用方法では十分な安全性が確保できないと判断されたもの、あるいは、農薬メーカーの経営判断により再評価の申請がなされなかったものについて、登録の見直しや取下げが行われたものがある一方で、安全性や効果の確認された新たな農薬が開発され、登録をされてきた、そういう実情だと承知をしております。
実際に、初回の再評価開始時点、これは一九八八年になりますが、このときの登録数は六百十三成分でありましたが、二〇〇七年時点では、新たに登録されたものも含めて七百二十四成分が登録されておりまして、再評価開始時点よりも登録数は多くなっているわけであります。
日本におきましても、再評価を行うことで、登録の見直しが生じ得る一方、すぐれた新薬の創薬力を有する農薬メーカーによる新たな農薬の登録も期待をされているところであります。実際、数がどうなるかというのは、ちょっと予見することはできませんが。
○後藤(祐)委員 従来からの農薬でいいやと思っていたのが、それで結局コストがかかるんだったら新薬にしよう、同じような効能であっても新薬にしようということになると、結果として、農家が現場で買う農薬価格が上がる可能性があると思うんですね。
今回、再評価制度で、少なくとも再評価に係る部分のコストが上がっているわけですから、これによって、これは大臣にお伺いしたいと思いますが、農家が現場で買う農薬の価格が全体として上がってしまうおそれがあるのではないでしょうか。
それと、時間がないのでもう一つまとめて聞きますが、再登録に、当然、かなりの事務コストがかかります。これに伴って、新規農薬の登録のおくれというおそれもあるのではないでしょうか。
○齋藤国務大臣 いずれも、今回の法改正により想定される懸念なんだろうと思います。
農薬については、効果があって、人の健康や環境に対して安全と認められるものだけを使用するということが、とにかく最重要の課題であると思っています。
再評価に当たっては、農薬の安全を確保する上で不可欠なデータの提出というものは必要でありますけれども、一方で、データ作成がメーカーにとって過度な負担となって、農薬の価格が大きく上昇しないように、そのやり方については配慮することも必要であると考えておりまして、このため、試験のガイドラインを国際標準と調和させて、例えば、他国に提出されたデータなど既存のデータを審査に活用できるようにするなど、メーカー負担にも配慮して取り組んでいきたいと考えております。
また、今回の法改正では、先発農薬と規格が同等なジェネリック農薬について、登録申請時の試験データの一部を免除することで、ジェネリック農薬の申請を進めやすくするなど、安全性を確保しつつ、良質かつ低廉な農薬の供給のための見直しも盛り込まれているということであります。
それから、審査の負担増についてでありますが、今般の法改正に伴う農薬の審査業務の増加は想定をされるわけでありますが、これに対応して、農林水産省における審査体制の拡充や、独立行政法人農林水産消費安全技術センターとのシステム連携等による業務の効率化ですとか、審査の手戻りをなくすために、審査の内容を早期に関係府省で共有することなどにより、できる限り評価能力の強化というものも検討していきたいと考えております。
○後藤(祐)委員 ぜひ、コストが過剰に大きくならないような御配慮をお願いしたいと思います。
最後の質問にしたいと思いますが、お手元に今回の新旧対照表の一部をお配りさせていただきました。これは、今回の改正後の条文はいいんですが、現行条文がちょっと幾ら何でもひどいなと思いましたので御指摘したいと思いますが、現行の三条一項の三号の「人畜」と四号の「人畜」は、これは意味が違うんですね。
これは改正後の条文を見るとようやくわかったんですが、改正後の、これは条がずれて四条の五号というのは、「人畜」というのは、直接人に対しても、直接家畜に対しても危険を及ぼすおそれがあるときはだめだ、登録拒否だという意味です。一方で、新四条の六号は、これは間接的で、その農薬を含んだ農作物を家畜が食べて、その家畜を人間が食べて、人間に被害が生じるおそれがあるとき、つまり、人間への影響があるときに限定されているんですね、新規の六号は。
そうしますと、現行の三条四号の「人畜」というのはそういう意味だったのかと。これは、三号と四号、「人畜」と全く同じ言葉を使っているので、この「人畜」という言葉は、これは読み分けること、できないですよね。
改正後の条文は極めて正しいと思うんですが、改正前の現行の、特に四号の書き方というのは、ちょっと、人畜有害というか、不適切だと思うんですが、大臣、最後に感想を聞きたいと思います。
○伊東委員長 予定の時間が来ておりますので、簡潔に御答弁をお願いします。
○齋藤国務大臣 不適切とまで言えるかどうかわかりませんが、わかりづらく、解釈が二通りに出る可能性もあるというのはよくわかるものでありますので、今回、それを、誤解を招くようなことがないように直させていただいたということであります。
○後藤(祐)委員 素直に、ありがとうございました。
終わります。
○伊東委員長 次に、田村貴昭君。
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
農薬取締法の改正案について質問します。
最初に、大臣にお尋ねしますけれども、二〇〇六年に、超党派による議員立法、有機農業の推進に関する法律が成立しています。化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組み換え技術を利用しないことを基本とする有機農業を推進する、そういう法律であります。
しかし、農地面積当たりの農薬使用量は、二〇〇九年、一ヘクタール当たり十三・二キログラムであり、欧州各国よりも約三倍から六倍日本は農薬を使用しています。有機農業の取組面積は二万四千ヘクタールで、耕地面積の〇・五%にとどまっています。農水省の目標は今年度一・〇%でありますから、まだ半分、ほど遠いという状況にあるわけであります。
そこで、消費者団体を始め、農薬使用に危惧を抱く少なくない人たちから、やはり農薬は減らしていくべきではないかという声が上がっています。
今度の法改正に当たって、農薬の使用を減らすための取組を推進していくべきではないかと思いますけれども、大臣の御所見を伺います。
〔委員長退席、坂本委員長代理着席〕
○齋藤国務大臣 基本的に、同じ考え方で進めていきたいと思っています。
ただ、外国との比較がありましたけれども、我が国の場合は、温暖湿潤で病害虫の被害を受けやすいという我が国の特徴がありますので、やむを得ない面があるわけでありますが、ただ、必要な範囲内で農薬を適切に使用するということは不可欠だろうと思っております。
農薬を使用する上では、人の健康や環境に対する安全を確保することが基本でありますので、農薬登録制度によりまして、安全と認められる農薬だけを製造、販売、使用できるようにするとともに、遵守すべき使用方法などを定めて、農薬の適正使用というものを進めているところであります。
農薬の使用に当たりましては、安全を確保するため定められた使用方法を守ることはもちろんのことですけれども、農薬だけでなくてさまざまな方法を組み合わせた総合的な病害虫防除の推進ですとか、それから、発生前の、予防的に農薬を散布するという防除、これはスケジュール防除といいますけれども、そういう防除から発生予察情報に基づく適時適切な防除への転換、こうすると農薬使用量を減らすことができるということですので、そういったことも推進をして、防除に必要な量だけを的確なタイミングで使用するように、より一層取り組んでいきたいと考えております。
○田村(貴)委員 大臣、有機農業についてはいかがでしょうか。
○齋藤国務大臣 有機農業につきましては、消費者の高度化し多様化する農産物に対する需要に対応するものでありまして、農業生産に伴う環境への負荷を低減もしますし、農産物の有利販売にもつながるということであります。
御指摘のように、欧米諸国では有機食品市場が急拡大をしている中で、有機茶を始め、我が国で生産された有機農産物やその加工品の輸出拡大も期待をされています。
農林水産省では、今御指摘ありました有機農業の推進に関する法律第六条に基づく国の基本方針におきまして、御指摘のように、我が国の耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を倍増させるということを目標として取り組んでいるわけでありますが、まだ達成できるかなというところまでは至っていないのが現実だろうと思います。
この目標の実現に向けて、自然環境の保全に資する農業生産活動を支援する環境保全型農業直接支払いですとか、有機農産物の販売先を確保するためのマッチングフェアの開催ですとか、それから輸出拡大に向けた有機JASの認証取得支援などによりまして有機農業を推進しているところでありますが、今年度は、実は、新たに有機農業者のネットワークの構築による産地化を支援するほか、販売戦略を企画、提案するオーガニックプロデューサーの派遣等を支援するということを新たに始めようと考えておりまして、これらによりまして、有機農業の目標に向けて努力をしていきたいと考えております。
○田村(貴)委員 環境省にお伺いします。
今度は、法改正で、環境の影響調査、影響評価の対象を拡大するというふうに聞いております。
これまでの水産動植物に加えて、陸生生物を加えるとしていますけれども、どういったものが対象になるんでしょうか。この中にはトンボ類は含まれるんでしょうか。
○早水政府参考人 お答えします。
トンボ類も概念上は生活環境動植物に該当し得ると考えておりますけれども、具体的に、新たに評価対象に追加する動植物、評価対象とする動植物につきましては、今後、陸域の動植物も含めて、改正法案の成立後に、国際標準との調和、あるいはこれまでの科学的知見などを勘案して、中央環境審議会において審議いただいた上で選定したいと考えております。
○田村(貴)委員 ちょっと時間がないので次へ行きたいと思うんですけれども、これまで登録されている農薬についても、環境への影響評価というのは、新たに追加された陸生生物も加えていくということでしょうか。この一点だけ答えてください。
○早水政府参考人 お答えします。
既に登録されている農薬につきましても、再評価制度が導入されますので、再評価の際に、新たに生活環境動植物に係る試験生物等の提出を求めて評価を行うこととしております。
〔坂本委員長代理退席、委員長着席〕
○田村(貴)委員 それでは、ネオニコチノイド系の農薬について質問したいと思います。
欧米では、ミツバチの大量失踪が問題となっている。きょうも議論がありましたように、日本でも、ある日突然ミツバチが巣箱から消えてしまっていく、こういう報道も、私も見ました。
ネオニコチノイド系の農薬に疑いがあるとして、EUでは、一部の農薬の使用を暫定的に制限しています。アメリカでは、原因が不明として、従来どおりの使用は認めるものの、新規使用及び適用拡大に係る登録を停止し、それぞれ蜂類の再評価を実施中であるというふうに聞いています。
そこで、まず農水省にお伺いしますけれども、農水省のミツバチ被害事例調査について、被害の原因について説明をしていただけるでしょうか。
○池田政府参考人 お答えします。
ミツバチの減少の原因といたしましては、ダニなどの寄生虫や害虫、病気、栄養不足、農薬などがございますが、農林水産省は、ミツバチが減少する事例の発生と農薬との関係把握などを目的といたしまして、平成二十五年度から三年間、農薬が原因と疑われるミツバチの被害事例について調査をいたしました。
この調査の結果、被害の原因については、被害の発生が水稲のカメムシ防除をする時期に多く、巣箱の前から採取した死虫からは水稲のカメムシ防除に使用可能な殺虫剤が検出されたことから、被害の原因は水稲のカメムシ防除に使用された殺虫剤をミツバチが直接浴びたことである可能性が高いと考えられたが、検出された各種の殺虫剤の被害への影響の程度は特定できなかったということでございます。
○田村(貴)委員 カメムシ防除の殺虫剤というのはまさにネオニコチノイド系の農薬であるということで、ここに直接暴露したことが原因であるというふうにされているわけです。
次に、環境省に伺います。
環境省も、ネオニコチノイド系の農薬の、トンボやあるいはハナバチ類への影響調査をされています。それらの調査を検討したのが農薬の昆虫類への影響に関する検討会報告書というふうに伺っておりますけれども、トンボ類への影響についての評価について教えてください。
○早水政府参考人 お答えします。
御指摘の報告書でございますが、その概要を平成二十九年十二月の中央環境審議会土壌農薬部会に報告しておりまして、その中で、トンボ類へのネオニコチノイド系農薬の影響の総合評価につきまして、次のように取りまとめております。
一九九〇年代から一部のトンボ類の顕著な減少傾向を示すデータはあるが、環境の変化が主要因である可能性もあることから、ネオニコチノイド系農薬等の使用がトンボ類の減少要因であるかどうかは明らかではない。それから、トンボの幼虫に対し、ネオニコチノイド系農薬に比べ、フィプロニルや従来型のフェニトロチオン等で高い毒性が示され、また、ユスリカ幼虫の方が感受性が高い。ネオニコチノイド系農薬等が水田周辺の水中でトンボ類の生息に影響を及ぼし得ることを示す明確な知見はない。底質での生息が長いトンボの幼虫への影響を見るには、慢性的な長期暴露による影響評価の検討が必要。
以上でございます。
環境省といたしましては、引き続き、トンボ類に関する調査研究を推進して、知見の集積に努めてまいります。
○田村(貴)委員 もし重複されたんだったら整理してもらいたいんですけれども、もう一つ、農薬の環境影響調査業務、この報告書のうち、ネオニコチノイド系の農薬についての結果、考察というのがあります。これについても御紹介いただけますか。
○早水政府参考人 お答えします。
御指摘の調査報告書につきましては、その概要を平成二十九年七月の中央環境審議会農薬小委員会において報告しておりまして、その中で、アキアカネ及びアオモンイトトンボのヤゴと、試験生物として国際的に用いられている水生昆虫のユスリカ幼虫について、ネオニコチノイド系の農薬等による毒性調査の結果と考察を示しております。
具体的には、「水生昆虫であるアキアカネ及びアオモンイトトンボのヤゴとユスリカ幼虫で農薬による急性影響を比べた場合、ネオニコチノイド系等の農薬について、ユスリカ幼虫の方の感受性が高い傾向にあり、試験方法も確立していることから、水生昆虫への急性影響を評価するには、ユスリカ幼虫がより適していると考えられる。」と取りまとめております。
○田村(貴)委員 まとめて言いますと、少なくとも、ユスリカ幼虫については影響があるというふうに結果があって、考察がされています。
そこで、資料をお配りしています。
今答弁があったところの資料なんですけれども、ユスリカの四十八時間EC五〇というところを見ますと、例えば、ネオニコチノイド系の農薬、イミダクロプリドは一リットル中に十九・七マイクログラムで、また、ニテンピラムでは百十マイクログラムで、ユスリカ、個体の半数が泳ぐことができなかったというような結果であります。
今、農水省と環境省のこれまでの調査結果、考察等をまとめると、ネオニコチノイド系の農薬というのは、水稲のカメムシ防除に使用された殺虫剤にミツバチが直接暴露したことが原因である可能性が高い。トンボについては明確な知見はないけれども、ユスリカは感受性が高い傾向にあり、微量でも影響が出ているということであります。
そこで、先ほどもお尋ねしましたけれども、影響評価の対象というのは固定的にせず、ここではトンボが対象となりました、トンボも今後対象に加えていくことも含めて、研究調査の充実が私は重要ではないかなというふうに思います。固定的に対象生物を見ないことが大事ではないかなと思いますけれども、この点についてはどういうふうにお考えになっておられるでしょうか。
○早水政府参考人 お答えいたします。
さまざまな生物に対して、生物によって感受性が異なるということでございますので、農薬によって試験対象生物を、感受性の高いものについて一部の農薬について行う、対象とするというようなことは可能かと思います。
評価生物につきましては、いろいろな科学的知見を踏まえて、審議会での審議を踏まえて決定していきたいと考えております。
○田村(貴)委員 少なくとも、農水省の二〇一六年七月の、ミツバチが直接暴露したことが原因である可能性が高い、高い可能性がある、この時点で、やはりEUなどと同様の措置をとるべきではなかったかなという思いもしております。
最後に、大臣にお伺いします。
ことしの四月に閣議決定された環境基本計画、今回の法案は環境省との共管事項であります、環境影響が懸念される問題については、科学的に不確実であることをもって対策をおくらせる理由とはせず、科学的知見の充実に努めながら、予防的な取組方法の考え方に基づいて対策を講じていくべきであるというふうにしています。いわゆる予防原則の考え方というのを閣議決定して規定したわけであります。
農業においてもこの予防原則の考え方というのは大事ではないか、これを取り入れていく必要が、これから必要ではないかというふうに思いますけれども、御所見を伺います。
○齋藤国務大臣 現行の農薬取締法におきましても、人の健康や環境への影響を評価して、被害が生じるおそれがあると認められた場合には、科学的根拠が十分ではない場合であっても、入手可能な適切な情報に基づき、暫定的なリスク管理措置を行うことは可能となっています。
この場合のリスク管理措置といいますのは、使用上の注意のようなものから、最も厳しいものでは販売、使用禁止まで、リスクの程度に応じて講じ、また、科学的知見のさらなる収集を行った上で見直すということにしているわけでありますが、今般の改正法案では、さらに、定期的な再評価を行うとともに、農薬の安全性に関する継続的なモニタリングを行い、新たな知見が明らかになった場合には、再評価を待たずにいつでも評価を行うことで、登録の見直しなど、リスクに応じた必要な措置をより適切かつ迅速に講ずることができる仕組みを整備することとしているわけであります。
今後とも、最新の科学的知見に基づいて、必要なリスク管理措置というものをきちんと講じてまいりたいと考えております。
○田村(貴)委員 時間が参りました。
以上で質問を終わります。
○伊東委員長 次に、大串博志君。
○大串(博)委員 無所属の会の大串でございます。
早速、質問に入らせていただきます。
農薬取締法ですけれども、いろいろな科学技術の進展、進歩に応じていわゆる評価の制度を変えていくということ自体は、私は、時代の流れを受けてのものとして、一定程度是として考えていきたいというふうに思っています。
ただ、いかんせん、農薬に関することでございますので、消費者、生産者の皆さんに安全性に疑義を持たれるようなことがあってはならない、この点だけはやはり外してはならないというふうに思いますので、この法案に関して、全体的なスタンスとしては、そういった観点から私たちも見てきたところでございます。
これは非常に、バランスですね。ですから、時宜に応じてより効果的、有効な登録制度をつくっていくということと、安全性を確保する、この非常にバランスの難しいところをぜひきちんと達成していただきたいというふうに思います。
私の方から、きょうは、その中で、マイナー作物に関する農薬に関する議論をさせていただきたいというふうに思いますけれども、マイナー作物、メジャー、準メジャー、マイナーとありますね。局長に、まず、定義といいますか、マイナー作物、マイナーと言われるんですけれども、簡単で結構です、どういう定義のものですか。
○池田政府参考人 お答えをいたします。
いわゆるマイナー作物と呼ばれているものは、生産量が少なく、また、使える農薬に制約のある作物ということでございまして、その生産量につきましては、生産量が逆に多い作物は年間生産量が三十万トンより多い作物、こういったように定めておるところでございます。
○大串(博)委員 マイナーとなると年間生産量は三万トン以下ということですね。あと、地域特産物としてつくっていくんだというような定義ですね。かつ、いわゆる必要となる作物残留試験例数は二例以上、二例に限っているわけですけれども、これは本当にマイナーなのか、名前も私はどうかなと思いながら聞いてはいるんです。
例えば佐賀県なんかは、マイナー作物の中では、アスパラガスなんですね。佐賀県においては、もともと佐賀県の東部を中心にかなりつくられていたんですけれども、今や西部も含めてふえているんです。土地利用率の非常に高い土地利用型の農業をやる佐賀県なんですけれども、こういう、ある意味、野菜類が非常にふえているんです。収益を上げようという非常に旺盛な経営意欲から、新たに乗り込んでいらっしゃる方もいらっしゃるんですね。
アスパラガスというのは、グリーンのアスパラガスを皆さん想起されると思いますけれども、ホワイトアスパラガスといって、皆さん御存じと思いますけれども、ハウスを真っ黒にして日が当たらないようにして、絶対に当たらないようにして、そうすると白いアスパラガスができるんですね、やわらかい。
これは非常に難しくて、アスパラガスをとるときというのは、大臣、やられたことありますか、はさみみたいなものでちょきんちょきんと切っていくんですけれども、切って、切った後にも光が当たると変色するんですよ、変色というか、色がついちゃうんです。真っ黒くしているハウスの中の電気でさえ反応して青くなっちゃうんですね。そのくらい非常にセンシティブな育て方、収穫をしながら、収益も上げようとしていただいているんです。
このほかにマイナー作物を見てみると、恐らくほかの県でもつくられているものはたくさんあるんでしょうけれども、例えば佐賀県なんかでいうとマンゴーとか、これなんかはつくられている。ミカン農家からマンゴー農家に今変わって、これがヒットしているという農家もあられるんです。
いわゆる稼げる農業を意欲的にやろうとされる農家の皆さんの参入する、ニッチをとっていかなきゃならないですよね、参入するところがまさにこのマイナー作物じゃないかと思われるので、実は、稼げる農家を育てていくという観点からすると、このマイナー作物の育成というのは非常に大事じゃないかというふうに思っていて、少なくとも佐賀県の感覚からいうと、アスパラガス農家さんはマイナー作物農家さんじゃないんですよ、極めてメジャーなんです。
そういう意味から、総論で、まず大臣にお尋ねしますけれども、マイナー作物全体を非常に底上げしていただきたいと思うんです。マイナー作物の振興に関してどういう取組をされる御所存か、お願いしたいと思います。
○齋藤国務大臣 今、大串委員のお話を伺っていて、たくさんとっているものをメジャーな作物と言うのはわからないでもないんですけれども、量が少ないからマイナーという言葉を使うのはどうかなという印象を持ちながらお話を聞かせていただきました。
私は、今委員が御指摘されたような、アスパラガスの生産に力を入れるというようなことは、ぜひとも応援をしていかなくちゃいけない、付加価値を上げて所得を上げていこうという取組ですので、そういうものだと思います。
いわゆるマイナー作物の中には、生産量は比較的少ないとはいえ、御指摘の佐賀県が全国第三位のアスパラガスの生産県であることを始め、ミツバとかニンニクなど、国民の消費生活上身近であって、地域においては基幹作物、そういうマイナー作物もあるわけでありますので、やはり言葉の違和感は拭えないところがありますが。
これらの農作物につきましては、佐賀県のアスパラガスにおいて、実需者の求める数量を安定的に出荷するため、選別機などの導入を促して効率的な出荷体制を構築しようとするJAさがの取組なんかもございます。
また、新潟県のミツバにおいて、低コスト耐候性ハウスや環境制御装置を導入して、生産を拡大することで地域のレストランやスーパーとの契約取引の拡大につなげようとする農業法人の取組ですとか、青森県のニンニクの場合は、海外の見本市への出展や海外バイヤーとの商談会への参加などによりまして、加工品の黒ニンニクの輸出を拡大した流通業者の取組などの事例がありまして、私ども農林水産省としても、これらの取組に対して、強い農業づくり交付金や産地パワーアップ事業等により、機械導入ですとか施設整備等の支援をしているところであります。
これからも、各種の支援事業によりまして、栽培管理、出荷調製のための施設ですとか低コスト耐候性ハウスの導入などによる生産性の向上ですとか、あるいは、海外への輸出を含む販路拡大による所得の向上に向けた、こういった産地や生産者等の取組を後押ししていきたいというふうに考えております。
○大串(博)委員 ぜひよろしくお願いします。
このマイナー作物、全体的な生産量は、ただ、いかんせん少ないということで、農薬の登録はやはり少ないんですね。アスパラガスでも、今のところで、いただいた資料でいうと八農薬となっています。
例えば、新たな登録をお願いしたとしても、なかなか時間がかかるんですね。治験にどうしても時間がかかる。例えば、佐賀の方からは、このアスパラガスのダニ、ハダニに対する農薬を、早期登録をお願いしたいということでお願いしているんですけれども、なかなか時間がかかるんです。
例えば、このハダニに関する佐賀県からの早期の登録農薬の要望というのは三種類あるんですけれども、それぞれ二〇一七年に三種類要望されているんです。
要望されているんですけれども、ぜひこのころまでにお願いしたいというふうにJAの皆さんが言っているのが、その約二年後ぐらいをめどにお願いしたい、こんな感じなんです。要望される方も、やはりどうしてもつつましやかになっちゃう。ダニの問題というのは、今、実は非常に切迫している問題なんだけれども、早期登録をお願いする方が、二年以内にはお願いしますというふうな感じなんですね。
だから、やはり何とか、これは安全性は確保しながらですけれども、早期登録ができるような仕組みをつくっていかなきゃならないというふうに思うんです。
そこで、局長にお尋ねしたいと思いますけれども、今回の法改正が、マイナー作物に関して、安全性を担保しながら、確保しながら登録を迅速、効率的に行えるような仕組みになっているのかどうか、この辺に関してお尋ねさせていただきたいと思います。
○池田政府参考人 お答えいたします。
今回の制度改正でございますが、法律だけではなく、農薬の登録制度全般の見直しを進めているところでございます。
昨年の四月以降、一連の作物をグループで登録する作物群の導入を進めてございます。例えば、仁果類として登録することで、リンゴや梨とあわせてビワやカリン、こういったものにも使用できるようになるなど、生産量が少ない作物の農薬の確保にも資するものでございますので、このため、作物群での登録が可能な品目を、現在は果樹でございますが、平成三十年度中を目途に野菜類に拡大する、あるいは、新規登録、再評価の機会を活用いたしまして、作物群での登録を進めていただくよう農薬メーカーに働きをかける、こういった取組もあわせて進めていくこととしております。
今後も、このような取組により、生産量がほかのものに比べると少ないような、そういった作物につきましても、農薬登録を推進してまいりたいと考えております。
○大串(博)委員 ありがとうございます。
少々前に、幾つかの農産物を合わせた上で登録、確認ができるような仕組みもつくってもらって、それを果樹から野菜に広げていこうというような取組をされている。今回、再評価の中でもいろいろな促進をしていこうということで、これはぜひやっていただきたいというふうに思います。
ちょっと局長に、通告していないので、わかればで結構ですけれども、先ほど申し上げたように、私、あれと思ったんですけれども、今回のアスパラのハダニに関する登録申請なんですけれども、申請している人の方が、二〇一七年に登録をお願いして申請して、でき上がりの姿を約二年後ぐらいに置いて、お願いします、こう言っている。これって、大体、相場感としてこんな感じなんですか。通告していないのでなかなか難しいかもしれないけれども、もし、感じとして言えるところがあったら教えていただきたいというふうに思うんです。
○池田政府参考人 お答えいたします。
登録に当たりましては、そのときのデータですとかそういったものが関係をいたしますので、一概には申し上げられないのですが、今、毎年、約七十の生産量が少ない作物に対しまして、約百三十の農薬の登録が追加されてきてございますので、そういった中で私どもとしても対応してまいりたいと思っております。
○大串(博)委員 確かに、マイナー作物になると作物数も多いし、登録申請数も多いとは聞いているんですね。そういった中で作業される、かつ、先ほど申しましたように安全性を確保しながら作業していただかなきゃならないので、大変だろうなというふうに思いますけれども、さっき申し上げたように、いわゆる農作物の病害虫というのは、結構これは待ったなしなんですね。一旦出ると来年も出る可能性があるので、欲しい農薬というのは本当に欲しいんですよ。
そういう意味で、今回の改正も含めて、マイナー作物に関する登録が早くなるように、そしてマイナー作物の振興も含めてぜひ取り組んでいただくよう、よろしくお願い申し上げたいというふうに思います。
最後に一つだけ。
今回の法改正は、ジェネリックの農薬、これもさっき申し上げたように安全性を確保しながらというのが大前提ではあるんですけれども、やはり農家の方々にコストが安くなるのであれば、私、一定程度推進していくべきじゃないかなというふうに思うんですよね。
そういう観点から、今回の法改正、このジェネリック農薬の推進に向けて、どのように機能するのか、あるいは全体的な取組も含めて、大臣の方から答弁いただけたらと思います。
○齋藤国務大臣 御指摘のように、ジェネリック農薬の普及は、競争を促すことによって農薬のコスト低減に資するものだと考えています。
このため、今般の改正法案におきましては、先発農薬の規格の一部を公表して、ジェネリックメーカーが開発の参考にできるようにする、あるいは、先発農薬と規格が同等なジェネリック農薬については、登録申請時の試験データの一部を免除することを盛り込んでおります。
また、加えて、登録されたジェネリック農薬は先発農薬と安全性や薬効などの品質が同等であるということを農家にも提供することを行っていきたいと考えております。
これらによりまして、安全性については先発農薬と同等であることを確保しつつ、ジェネリック農薬が普及しやすく、受け入れられやすい環境の整備に努めていきたいと考えております。
○大串(博)委員 終わりますけれども、とにかく安全性を確保しながら、しかし、より効率的、効果的かつコストの安い農薬をつくる、このバランスをうまくとっていただきたいと思います。
終わります。
○伊東委員長 次に、森夏枝君。
○森(夏)委員 日本維新の会の森夏枝です。
昨日に引き続き、本日も質問させていただきます。ありがとうございます。
本日は、農薬取締法の一部を改正する法律案について質疑をさせていただきます。
消費者の立場で農薬について考えますと、安全性が最も考慮されるべきポイントだと思います。
日本で販売されている野菜は、形も大きさもそろっていて、きれい過ぎるほどきれいなものばかりです。私は、大学時代に上海に留学をしておりました。中国のスーパーや市場に並んでいる野菜はふぞろいで、日本のものとは全く違っていましたし、いろいろな国のスーパーにも行きましたが、私は、日本ほどきれいな野菜が並んでいる国を知りません。
一方で、日本には健康志向の方も多く、そういった方は虫食いのある無農薬野菜を選んで食べております。また、私が直接農家の方から聞いた話ですが、出荷用の農産物には農薬をしっかり使ってきれいに育て、自分たちが食べる分は体に悪いからと農薬は使わないという話も聞いたことがございます。実態はともかく、これらは農薬の安全性に対する高い関心のあらわれとも言えると思います。
我が国で国産の農産物を安定的に国民に供給する上で、農薬は必要不可欠な生産資材であるということは理解をしております。
国内で使用される農薬を規制しているのが昭和二十三年に制定された農薬取締法ですが、平成十四年に、全国的に無登録農薬を使用する事案を受けた使用規制の強化のための改正と、平成十五年に、食品安全行政全般の見直しに関連した改正を行ってきたということですが、前回の農薬取締法改正から十五年余り経過しておりますが、この間、どのような課題が見つかったのでしょうか。そして、なぜ今の時期に改正をするのでしょうか。お答えください。
○野中大臣政務官 農薬取締法については、これまでも順次改正を行い、農薬の製造、販売、使用の各段階を規制する仕組みを整備することで、農薬の効果と安全性を確保し、農業生産の安定を図りつつ、国民の健康を保護し、環境を保全してきたところでございます。
近年では、先ほどもございましたが、平成十五年の前回の改正後、五年経過したところでその施行状況を検討し、平成二十一年には、我が国における農薬登録制度上の課題と対応方針として、制度の国際調和や再評価制度の導入等の今後の課題を取りまとめ、この方針に基づき、順次、制度の改善を進めてきたところでございます。
また、昨年成立した農業競争力強化支援法においても、農薬に係る規制を、安全性の向上、国際的な標準との調和、規制の合理化の観点から見直すこととされたところであります。
こうした流れを踏まえまして、現行の制度に残された課題について検討を行った結果、最新の科学的知見を的確に反映させられる制度とするとともに、良質かつ低廉な農薬を供給するため規制を合理化するという観点から、再評価の導入、登録審査の見直し等の措置を講ずるよう、今般、農薬取締法を改正することとしたものでございます。
○森(夏)委員 ありがとうございます。
私も、安全性の向上に向け、最新の科学に沿った、時代に合わせた改正は必要だと思っております。
再評価の導入や安全性に関する評価の充実などさまざまな取組を追加される必要があるとのことですが、現在でも、農業の現場では農薬が使用され、農産物が出荷されておりますが、改正をしなければならないさまざまな課題があるといいますと、残留農薬等を心配する消費者の中にはますます不安に思われる方もいらっしゃるのではないかと思います。
課題解決のための改正は必要であると思いますが、現在流通している農薬の安全性に懸念があるというふうにも考えられますが、いかがでしょうか。お答えください。
○池田政府参考人 お答えいたします。
農薬につきましては、これまでも、あらかじめ農産物への効果、食品を通じた人の健康への影響、使用者や環境に対する影響を評価し、問題がないことを確認して製造や使用を認めてきております。
また、登録後も、例えばDDTのように安全上の問題が明らかになったものは、登録の変更や販売、使用の禁止を進め、農薬の安全を確保してきたところでございます。
さらに、今般の改正において、農薬の安全性をより一層向上させる制度とするため、再評価制度を導入し、全ての農薬について、最新の科学的知見に基づく評価を行うこととしてございます。
○森(夏)委員 ありがとうございます。
体に害のない、環境に影響のない、安全基準をクリアしたものしか流通していないということですので、安全であると理解をしております。科学の発展に伴い、最新の科学に照らし、さらなる安全性の向上についてはぜひ取り組んでいただきたいと思っております。
農薬の安全性は重要ですが、一方で、農業の現場で必要としている農薬を確保し、農産物の生産に貢献しなければなりません。その点で、コストというものは重要な課題だと思います。
先ほど亀井委員からも御質問がございましたが、私も農家の方から、農協の農薬は高い、大変負担になっているとお聞きしたこともございます。今回の改正において、より効率的で低コストな農業の実現に貢献するとのことですが、具体的な取組をわかりやすく説明してください。お願いいたします。
○野中大臣政務官 お答えいたします。
今般の改正では、安全性の一層の向上に加え、良質かつ低廉な農薬の供給のための見直しもあわせて行うこととしており、農薬原体の規格の範囲内であれば、低コストな製造方法等への変更が容易になるとともに、先発農薬と同等なジェネリック農薬について、登録申請時の試験データの一部を免除することで、ジェネリック農薬の申請を進めやすくする、制度の国際調和により、日本の農薬メーカーが海外に進出しやすくなり、市場が拡大することにより、農薬の製造コストの低減につながることが期待されます。
○森(夏)委員 ありがとうございます。
農薬が低コストになれば、農家の方々は非常に喜ばれると思います。
次に、農薬メーカーの提出する試験成績の信頼性について伺います。
農薬の安全性を確保するための登録に当たっては、さまざまな試験成績の提出が必要だと思います。農薬メーカーは、新規農薬の開発のために約十年という期間と百億円以上の経費をかけ、必要な試験を行い、登録申請するとお聞きをしました。ただし、これらの試験は農薬メーカー自身が行うとのことですが、データの改ざんとまでは言いませんが、間違いが起きる可能性はあると思います。
登録に必要な試験を農薬メーカーに任せて、提出された試験成績を国が審査するということですが、この農薬メーカーの提出する試験成績は信頼できるのでしょうか。お願いいたします。
○池田政府参考人 お答えします。
農薬登録申請の際に農薬メーカーが提出する試験成績ですが、農薬の効果と安全性を審査する上での根幹となる資料でございますので、その信頼性を確保することは極めて重要でございます。
このため、申請時に提出する毒性試験などを実施する施設の組織体制や試験、操作手順書を通知で定めた上で、試験施設に対する査察を行いまして、基準を満たしているかどうかを確認してきたところでございます。
今般の改正法案におきましては、この基準を、申請時に提出する試験成績が必ず満たすべき法律上の義務として明確に規定をいたしまして、より厳格な仕組みとすることとしております。
今後とも、このような仕組みによりまして、登録時の審査に用いる試験成績の信頼性を確保することで、農薬の安全性についての審査を適切に行ってまいりたいと考えてございます。
○森(夏)委員 ありがとうございます。本改正で、審査がより厳格になるとのお話でした。
仮にですが、農薬メーカーから提出された試験成績が改ざんされていることが万が一わかった場合には、政府はどのような措置を講じるのでしょうか。
○池田政府参考人 お答えします。
試験成績の改ざんはあってはならないことでございまして、これまでも、申請時に厳正な審査を行うとともに、GLP基準として、試験を実施する施設の組織体制や試験、操作手順、記録の保存、施設内での検閲の実施などを定めることで、改ざんの未然防止に努めてまいりました。
さらに、今般の改正案におきましては、いわゆるGLP基準でございますが、これを法律上の義務として規定するとともに、提出された試験成績が当該基準を満たさないときや提出された資料に虚偽の記載があるときには、登録を拒否しなければならないということとしてございます。
また、登録後に試験成績の改ざんが明らかになった場合にも、申請者が遵守すべき法律上の義務に違反したものとして、登録の取消しなどの行政処分を行うことが可能になります。
○森(夏)委員 ありがとうございます。
現在日本に流通している農薬は、安全性が確保されているとはいえ、直接我々の体に入る可能性の高いものです。農薬メーカーによる試験成績の改ざんはあってはなりませんが、そういったことがあった場合には、先ほども御説明ありましたけれども、しっかりと厳格に対応していただきたいと思います。
次に、農薬を使用する場面での質問をさせていただきます。
農薬は、使い方を間違えると危険なものもありますので、正しく使用する必要があると思います。現在でも農薬が関係する事故が全国で起きているかと思いますが、農薬の使用に関して、全国でどのような事故がどの程度起きているのか、把握されているのでしょうか。また、農薬に関係する事故を減らすために農林水産省はどのような取組をされているのでしょうか。お答えください。
○池田政府参考人 お答えします。
農林水産省では、農薬の使用に伴う事故及び被害のより効果的な再発防止策の策定を目的といたしまして、事故及び被害の実態を把握するための調査を実施しているところでございます。
平成二十八年度に発生をいたしました農薬の使用に伴う事故及び被害の発生状況につきましては、農薬の使用に伴う人に対する事故や被害、これは前年度の二十八件に対して十九件でございます。具体的には、飲料の空容器に移しかえた農薬を誤って飲んでしまった事故や、クロルピクリン剤を土壌薫蒸に使用する際に土壌の被覆等の作業管理が不適切だったために生じた被害が多く発生してございました。
このため、こうした被害を防止するために、農林水産省といたしましては、毎年六月からの農薬危害防止運動におきまして、事故調査の結果を踏まえた使用上の注意点について、ポスターなどの広報手段を活用して周知徹底を図るとともに、都道府県が実施しております農薬使用者を対象とする講習会の開催や、農薬適正使用アドバイザーなどの育成などの取組を支援しているところでございます。
今後とも、関係省庁や都道府県などと連携をしつつ、農薬使用現場におきまして、農薬の安全かつ適正な使用が徹底されるよう努めてまいりたいと考えてございます。
○森(夏)委員 ありがとうございます。
農薬の散布は、非常に重労働で気を使う作業だと思います。実際、農薬による健康被害を最も受けやすいのは農薬使用者だと思います。今回の改正では、農薬の登録審査見直しとして、農薬使用者に対する安全性の審査を充実させるとのことです。これはしっかりとお願いしたいと思います。
さらに、農薬の影響が懸念されるのは、散布をする農家だけとは限りません。我が国の農業現場では、住宅地などに農地が近接している場合も多く、使用者に限らず、近接する住民や通行人に農薬がかかったり、吸い込んだりする心配もございます。周辺住民等への対策を講じる必要があると思います。いかがでしょうか、お答えください。
○池田政府参考人 お答えいたします。
住宅地などにおける農薬使用に当たりましては、農薬の飛散などによりまして周辺の住民の方々の健康への悪影響を及ぼさないようにすることが重要と考えてございます。
このため、事前に周辺の住民の方々や学校などの施設に農薬散布について周知をする、あるいは、無風又は風が弱いときに行うなど、近隣に影響が少ない天候や時間帯を選定いたしまして、風向きや散布器具の方向や位置に注意するなどの遵守すべき事項を通知いたしまして、適切に使用するよう指導をしているところでございます。
引き続き、住宅地などでの農薬使用が適切に実施されるよう、通知の一層の周知徹底そして指導に取り組んでまいりたいと考えてございます。
○森(夏)委員 ありがとうございます。
本改正において、人体や環境への影響、さらなる安全性の向上についてお願いしたいと思います。
以上で終わります。ありがとうございました。
○伊東委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
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○伊東委員長 これより討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。
内閣提出、農薬取締法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○伊東委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
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○伊東委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、鈴木憲和君外五名から、自由民主党、立憲民主党・市民クラブ、国民民主党・無所属クラブ、公明党、無所属の会及び日本維新の会の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を求めます。石川香織君。
○石川(香)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
案文を朗読して趣旨の説明にかえさせていただきます。
農薬取締法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
農薬は、農産物の安定生産に必要な生産資材であるが、その販売・使用については最新の科学的知見を的確に反映し、安全性を向上させることが不可欠である。
よって、政府は、本法の施行に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。
記
一 登録された農薬の再評価制度の実施に当たっては、農薬の安全性の更なる向上を図ることを旨として行うこと。また、農薬に係る関係府省の連携を強化し評価体制を充実するとともに、新規農薬の登録に遅延が生じないようにすること。
二 最新の科学的知見に基づく定期的再評価又は随時評価により、農作物等、人畜又は環境への安全性等に問題が生ずると認められる場合には、当該農薬につき、その登録の内容の変更又は取消しができるようにすること。また、定期的再評価の初回の評価については、可及的速やかに行うこと。
三 マイナー作物に使用できる農薬については、作物群を単位とした登録が可能な品目を増やすための作物のグループ化の動きを促進する等の必要な措置を充実させること。
四 良質かつ低廉な農薬の選択肢を広げるために、先発農薬の規格に係る情報を迅速かつ適切に公開し、ジェネリック農薬の開発・普及を促進すること。
五 生活環境動植物についてのリスク評価手法を早急に確立し、登録の際に必要となる試験成績の内容等を速やかに公表すること。
六 安全な農産物の生産及び農薬使用者の安全を確保し、農薬による事故を防止するために、登録に係る適用病害虫の範囲及び使用方法、貯蔵上又は使用上の注意事項等を農薬使用者にわかりやすい手法で表示及び情報提供が行われるよう措置し、農薬の安全かつ適正な使用及び保管管理の徹底を図ること。また、農薬使用の際に、農薬使用者及び農薬散布地の近隣住民に被害が出ないようにするため、農林水産大臣及び都道府県知事は農薬使用者に対して十分な指導及び助言を行うこと。
七 制度の運用及び見直しについては、規制改革推進会議等の意見は参考とするにとどめ、農業生産の安定を図り、国民の健康を保護することを前提に、農業者等の農薬使用者、農薬の製造者・販売者、農産物の消費者等の意見や、農薬の使用実態及び最新の科学的知見を踏まえて行うこと。
右決議する。
以上です。
何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
○伊東委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○伊東委員長 起立総員。よって、本法律案に対し附帯決議を付することに決しました。
この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣齋藤健君。
○齋藤国務大臣 ただいまは法案を可決いただき、ありがとうございました。附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
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○伊東委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○伊東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
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○伊東委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時二十五分散会