衆議院

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第2号 平成30年11月13日(火曜日)

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平成三十年十一月十三日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 武藤 容治君

   理事 伊東 良孝君 理事 小島 敏文君

   理事 齋藤  健君 理事 野中  厚君

   理事 細田 健一君 理事 亀井亜紀子君

   理事 近藤 和也君 理事 稲津  久君

      池田 道孝君    泉田 裕彦君

      稲田 朋美君    今枝宗一郎君

      上杉謙太郎君    加藤 寛治君

      金子 俊平君    木原  稔君

      木村 次郎君    小寺 裕雄君

      斎藤 洋明君    坂本 哲志君

      高木  啓君    西田 昭二君

      福山  守君    藤井比早之君

      藤原  崇君    古川  康君

      宮路 拓馬君    山本  拓君

      石川 香織君    神谷  裕君

      佐々木隆博君    長谷川嘉一君

      堀越 啓仁君    関 健一郎君

      緑川 貴士君    濱村  進君

      大串 博志君    金子 恵美君

      田村 貴昭君    森  夏枝君

    …………………………………

   農林水産大臣       吉川 貴盛君

   農林水産副大臣      小里 泰弘君

   農林水産副大臣      高鳥 修一君

   外務大臣政務官      鈴木 憲和君

   農林水産大臣政務官    濱村  進君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  大角  亨君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 林  禎二君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房長) 水田 正和君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         光吉  一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         横山  紳君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房統計部長)          大杉 武博君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           池田 一樹君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            新井ゆたか君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  枝元 真徹君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  大澤  誠君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            室本 隆司君

   政府参考人

   (農林水産省政策統括官) 天羽  隆君

   政府参考人

   (林野庁長官)      牧元 幸司君

   政府参考人

   (水産庁長官)      長谷 成人君

   農林水産委員会専門員   室井 純子君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十三日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     高木  啓君

同日

 辞任         補欠選任

  高木  啓君     稲田 朋美君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

武藤委員長 これより会議を開きます。

 この際、高鳥農林水産副大臣から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産副大臣高鳥修一君。

高鳥副大臣 このたび農林水産副大臣を拝命いたしました高鳥修一でございます。

 先般、公務出張のため欠席をいたしましたが、本日は、お時間をいただきまして、まことにありがとうございます。

 吉川大臣をお支えし、小里副大臣、濱村政務官、高野政務官と力を合わせ、農林水産業の潜在力を引き出し、地域の活力向上につなげるよう努力してまいります。

 武藤委員長を始め委員各位におかれましては、御指導、御鞭撻賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

武藤委員長 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房長水田正和君、大臣官房総括審議官光吉一君、大臣官房総括審議官横山紳君、大臣官房統計部長大杉武博君、消費・安全局長池田一樹君、食料産業局長新井ゆたか君、生産局長枝元真徹君、経営局長大澤誠君、農村振興局長室本隆司君、政策統括官天羽隆君、林野庁長官牧元幸司君、水産庁長官長谷成人君、内閣官房内閣審議官大角亨君及び外務省大臣官房参事官林禎二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

武藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

武藤委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。宮路拓馬君。

宮路委員 おはようございます。自由民主党の宮路拓馬でございます。

 本日は、質問の機会をいただき、まことにありがとうございます。

 御案内のとおり、本年は明治維新百五十年、いよいよ大河ドラマ「西郷どん」も佳境を迎えております。

 その西郷隆盛公の西郷南洲翁遺訓というものがございます。その中に、政の大体は文を興し武を振るい農を励ますの三つにあるという言葉がございます。文というのは教育、教育振興が大事だということ。武を振るいというのは、やはり安全保障、当時は軍隊ということで、その整備が肝要であるということ。そして三つ目に農を励ます、農業が非常に国の根幹として大切であるということ。これが百五十年前から言われていたということになります。

 実は、私、初当選をさせていただいてより間もなく丸四年が経過をしようとしております。忘れもしない、私の国会での初質問は本農水委員会での質問でありました。当時は、農協改革が大きく取り上げられていた時期でありました。そして、それに次いでTPPの問題があり、地元で私も農協改革あるいはTPPについて非常に厳しい御意見等もいただいて、その意味では、政治家として大変鍛えられたというふうにも思っております。

 その私にとっての政治家人生の四年間は、今の政権になっての農政改革が大きく進んだ四年間であったというふうに思っております。

 今回、大臣所信に対する質疑ということで、私は今回、我が国の農業・農村政策の現状、そして今後のあり方について、大きく質問をさせていただきたいと思います。

 その中で、やはりまず数字というものが非常に大事であろうと思います。現状、成果、そして今後のあり方について、現状を捉えるということ、その意味で、農業産出額等の推移についてお伺いしたいと思います。

 先ほど申し上げたとおり、現政権、安倍内閣では、農林水産業全般にわたる改革を推進し、我が地元鹿児島でも県全体の農業産出額が年々増加するなど、その改革の成果は着実にあらわれているというふうに考えております。一方で、農業者が減少していることを悲観するという声も事実あり、鹿児島においても農業従事者は減っているというのが現実であります。しかし、見方を変えれば、これは、一経営体当たりではその農業所得や産出額は増加しているというふうにも言えるものであると考えております。その意味では、生産性は着実に高まってきているのではないか。

 この点、なかなかこれまでお伺いする機会がなかったものですから、近年の我が国全体の農業産出額、そして農業従事者数の推移がどうなっているのか、また、一農業経営体当たりの所得等の推移はどうなっているのか、この点について現状把握をさせていただきたいと思います。

大杉政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、農業総産出額でございますが、平成二十五年約八兆五千億円、二十六年約八兆四千億円、二十七年約八兆八千億円、二十八年約九兆二千億円となっておりまして、過去二年連続で増加をしているところでございます。

 次に、基幹的農業従事者数でございますが、平成二十五年百七十四万二千人、二十六年百六十七万九千人、二十七年百七十五万四千人、二十八年百五十八万六千人となっているところでございます。

 それから、一戸当たりの農業所得でございますが、平成二十五年百三十二万円、これは農業粗収益四百九十七万円から農業経営費三百六十五万円を差し引いたものでございます。二十六年百十九万円、同様に農業粗収益五百一万円から農業経営費三百八十二万円を差し引いたもの、二十七年百五十三万円、農業粗収益五百四十四万円から農業経営費三百九十一万円を差し引いたもの、そして、二十八年百八十五万円、農業粗収益五百九十三万円から農業経営費四百八万円を差し引いたものとなっております。過去二年連続でこちらも増加しているところでございます。

宮路委員 トレンドとしては、やはり全体の農業産出額が今後ふえていき、農業従事者数、これはやはり減少に歯どめをかけていかねばならないというところは、委員の皆様含め思いを同じくするところではあると思いますが、先ほど申し上げたとおり、やはりその意味では、一経営体当たりの産出額というのはふえている、つまり、農業というのは非常にこれから生産性が高くなっていく、あるいは先のある産業であるということが言えるのではないかと思っております。

 その中で、そうは言っても、私、地元におきましても、今、国の農業の進むべき方向性あるいは志向している方向性というのはどうなっているのか。農業には、産業政策の一面、そしてまた地域政策の一面があると言われております。

 その中で、改めてお伺いをしたいと思います。やはり、国民の皆さん、農業従事者の皆さんにとっても、今、国がどのように我が国の農業のあり方を考えているのか、近年の農政改革の成果をあわせ、今後の農業政策の方向性について、大臣の所見をお伺いしたいと思います。

吉川国務大臣 宮路委員の御地元鹿児島は、農業生産が全国で第三位だと存じます。そのような農業生産の大変すばらしい鹿児島において、宮路委員が党内でも大変御活躍をされている姿に、いつも私も感服をいたしておりました。

 ただいまの、産業政策さらには地域政策の側面もあるのでは、そういった問いに対してお答えをさせていただきたいと思います。

 御承知のように、我が国の農業は、人口減少に伴うマーケットの縮小あるいは高齢化の進行によりまして、耕作放棄地の増加など、大きな曲がり角に立っているのではないかと思っております。その活性化は待ったなしの課題であると認識をいたしておりまして、このような認識のもとにおきまして、安倍内閣におきましては、農業に活力を取り戻し魅力ある成長産業にしていくために、抜本的な改革を進めてまいりました。

 加えて、農村に活力を取り戻すために、日本型直接支払制度の創設や、あるいは農泊など都市と農村の交流等にも力を入れてまいりました。これによりまして、農林水産物、食品の輸出が五年連続で過去最高を更新いたしました。生産農業所得は過去十八年で最高に達するなど、着実に成果があらわれ始めているのではないかと思っております。

 今後とも、ただいま申し上げましたこれらの政策を車の両輪といたしまして、総合的に実行していくことにより、強くて豊かな農業と美しく活力ある農村をつくり上げていく、そういう決意でもございます。

宮路委員 農業産出額全国一位は大臣の北海道。鹿児島も負けずに頑張ってまいりたいと思います。

 今、大臣より、やはり産業政策、これは、人口減少が進む中、それはつまり消費者が減る中で、産出額がふえているということ、その意味では、この産業政策というのがしっかりと進行しているということが言えるのではないかと思います。

 これより先、まず産業政策について、少し深掘りして質問をさせていただきたいと思います。

 この産業政策、大きく二つあるのであろうと思います。一つは、産出額を上げる、所得を上げる、農産物の価格を上げるという意味での産業政策、もう一つはコストを下げるという意味での政策、二つあるんだろうと思いますが、まず、前者である所得の向上、産出額の向上についてお伺いをしてみたいと思います。

 我が鹿児島は、米どころというわけではありませんが、やはり、そうはいっても小里副大臣の御地元等では大変評価の高い米も産出しておるところであります。やはり我が国は何といっても瑞穂の国、米が農業の中心であるのは間違いのない事実であろうと思いますので、まず、米の需給安定についてお伺いをしたいと思います。

 本年度からいわゆる減反生産が廃止された中において、需要に応じた生産はしっかりと行われているのか、行われるのだろうかということが、昨年この農林水産委員会でも、多くの委員の皆様方からも心配の声、あるいは先行きについての質問等もあったところであろうと思います。

 結果、本年、その初年度となるわけでありますが、本年度の米の作付あるいは価格の状況がどうなっているのか、お伺いしたいと思います。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 本年産のお米の作付や価格の状況について御質問をいただきました。

 米政策につきましては、三十年産から行政による生産数量目標の配分を廃止する中で、引き続き、需要に応じた生産を促し、お米の需給及び価格の安定を図ることが重要であるというふうに考えております。

 米政策の見直しに向けましては、この数年、各産地における需要に応じた生産、販売への取組が進んでおりまして、その結果、平成二十七、二十八、二十九年産におきまして、三年連続で全国ベースのいわゆる過剰作付が解消されたところでございます。

 三十年産につきましては、各産地において主体的に作付判断がなされ、主食用米の作付面積は、都道府県ごとの増減がございますけれども前年産とおおむね同水準、主食用米の生産量につきましても、十月十五日現在で三十年産の需給見通しにおける生産量とおおむね同水準と見込まれているところでございます。

 また、三十年産米の出だしの三十年九月分の相対取引価格でございますが、全銘柄平均で六十キログラム当たり一万五千七百六十三円となっておりまして、二十九年産米の同時期に比べまして、六十キロ当たり二百三十七円、一・五%の上昇ということでございます。

 農林水産省といたしましては、引き続き、高収益作物等の拡大に対する支援に新たに取り組むなど、しっかり予算を確保して水田フル活用を推進するほか、需要見通しや価格動向について、一層きめ細かな情報提供を行ってまいります。さらに、事前契約や複数年契約などの取組を推進することにより安定取引の拡大に向けた働きかけを行うことにより、農業者みずからが安心して需要に応じた生産に取り組めるよう努めてまいりたいと考えております。

宮路委員 ありがとうございます。

 主食用米の価格が堅調に推移しているということ。以前心配されていたのは、そうなれば、一時期他作物あるいは主食用米以外の米に移った農家がまた主食用米へ戻ってきて、結果、需給バランスが崩れてしまうのではないか、生産調整というか、いわゆる減反政策をやめるとそういうことになってしまうのではないかということも懸念されましたが、やはり、農業、これも経営であります。とすれば、やはり安定的な見通しを持って営めることが非常に重要であるということ。

 昨今の農業従事者の農家の皆さんにおいてもそれは同様であって、やはり、しっかりとした需要先を確保すれば、そこに向けて安定的に生産をし、そして安定的な取引が行われるということが非常に重要であり、そうした認識がしっかり浸透してきている結果、減反政策廃止初年度においても堅調な推移を見せているのであろうというふうに考えております。

 続いて、産業政策としての一丁目一番地と私も考えております輸出の促進についてお伺いをしたいと思います。

 先ほど吉川大臣の方からも輸出について御言及いただきましたけれども、やはり、農業所得を拡大するためには、人口減少が進む中で、より付加価値を高めて農産物を販売していくことが重要であって、その意味では、海外のマーケットに日本の高品質な農産物を輸出していくということは極めて重要であろうと考えております。

 再来年が二〇二〇年、東京オリンピック・パラリンピックの年になります。二〇一九年一兆円目標に向けて、今、国を挙げて取り組んでいるところであろうと思いますが、農林水産物、食品の輸出促進について、今の現状、そして課題、そして今後の政策の方向性について、改めてお伺いをしたいと思います。

新井政府参考人 輸出促進につきましてお尋ねがございました。

 少子高齢化によりまして国内の食市場の規模の縮小が見込まれる中にありまして、拡大する海外市場へ農林水産物、食品の輸出の拡大を図っていきますことは、農林水産業の維持発展にとりまして極めて重要であると考えております。

 我が国の農林水産物、食品の輸出額は、平成二十九年には八千七十一億円となりまして、五年連続で過去最高を更新いたしました。今年一月から九月につきましても、対前年比で一五・二%の増加となっておりまして、平成三十一年の一兆円目標の達成に必要な増加ペース、大体一一・三%でございますが、それを上回っている状況にございます。

 この勢いを更に加速させるために、農林水産業の輸出力強化戦略に沿いまして、輸出を目指す産地づくりや輸出業者とのマッチングなど生産者の支援、輸出国によります放射能物質規制の撤廃、緩和に向けました働きかけ、輸出先国の各種規制条件への対応の支援、JFOODO、日本食品海外プロモーションセンターによります日本産品のプロモーション等を進めてまいりたいというふうに考えております。

宮路委員 ありがとうございます。

 やはり、国を挙げて今後取り組んでいただきたい、我々もそれを全面的にバックアップしてまいりたいと思います。

 これまで、産業政策の中で所得向上の側面についてお伺いをしてきました。コストの削減についても大きく動いている、進展しているというふうに考えております。その代表例が、やはり農地の集約化、そしてその基盤整備、あるいは農業生産資材、肥料や農薬等の価格の低減、これについてもしっかりと着実に進展していると思いますが、この点については、限られた時間でありますので、割愛をさせていただきたいと思います。

 もう一つの柱、地域政策についてお伺いをしたいと思います。

 農村における人口減少が進む中で、地域を維持、活性化していくためには、農業の振興だけではなくて、商工業あるいは福祉などとも連携して、地域に定住する人々のために仕事を創出していかなければなりません。

 これまで農水省は、中山間地域等直接支払制度等を通じて、集落での活動あるいは小規模農業者の取組を支援してきたと考えておりますが、今後、農村人口が本格的に減少していく中で、今後の農山漁村の総合的な振興政策をどう考えているのか、お伺いをしたいと思います。

小里副大臣 私も、宮路議員がかつて心血を注がれた地域を含めて、週末ごとに農山漁村を歩いているところでございます。

 歩くほどに、おっしゃるとおり、地域における人口減少、そしてまた高齢化の進捗、それがゆえにコミュニティー機能あるいは地域資源の維持にも影響が出ているという現状を目の当たりにするところであります。

 中山間地域のように、なかなか競争原理だけでは立ち行きにくい条件不利な地域につきましては、御指摘のとおり、中山間地域等直接支払制度あるいは多面的機能支払制度等を中心とする地域政策を交えて、地域をしっかり守っていく必要があります。同時にまた、御指摘のとおり、地域における雇用の確保、所得の向上をしっかり図っていく必要があるのであります。

 このため、農林水産省といたしましては、他産業へ就業する農業者の雇用の場を確保するために、昨年改正しましたところの農村産業法による地域に適した産業の立地、導入を促進する、あるいは、地域全体で取り組む六次産業化の取組、また農泊の推進、鳥獣被害対策とともに、有害鳥獣を地域の所得にかえ、また地域の新たな産業として興していく、いわゆるジビエの利活用の推進も行っております。

 また、自民党の中山間地農業を元気にする委員会、ここでたしか二年間議論をしていただきました、これを踏まえた中山間地農業ルネッサンス事業による地域の特色を生かした多様な取組への総合的かつ優先的な支援、また、障害者や高齢者の方々の働く場を確保しようといういわゆる農福連携等を始め、観光、教育と連携した都市農村交流、農村への移住、定住促進等の支援等々を総合的に講じているところであります。

 引き続き、これらの政策を積極的に展開をすることによりまして、若い人も高齢者の人も将来に向けて夢と希望の持てる、そんな環境の整備に努めてまいりたいと思います。

武藤委員長 宮路君、申合せの時間が来ておりますので、よろしくお願いします。

宮路委員 副大臣、ありがとうございました。

 やはり農業従事者、国の農政政策のあり方がどうなっていくのか、これに非常に関心を持ち、逆に言えば、それがしっかり見えていれば、わかっていれば、安心して、安定して、希望を持って農業に取り組めるということであろうと思います。

 今後も、産業政策そして地域政策、その両輪をしっかりと回していく、そしてそれを農家の皆さん方にしっかりと示していく、わかりやすく伝えていく、国においても、そして我々議員としても、それに向けて取り組んでまいりたいと思います。

 質問させていただきまして、ありがとうございました。

武藤委員長 次に、藤原崇君。

藤原委員 自由民主党の藤原崇でございます。

 私の方からも、引き続き質問をさせていただきたいと思っております。宮路委員の質問と一部かぶる点もあると思うんですが、あえてお聞かせをいただきたいと思っております。

 ことし、生産調整が終了して初めての作付である平成三十年産、いよいよ取引が始まりました。農水省資料によれば、取引価格は平均で微増となったということで、滑り出しとしてはよかったと評価ができるんだろうと思っております。

 その一方で、食用米の作付面積、これを見ますと、平成二十九年産に比べると一・六万ヘクタール増ということで、百三十八万ヘクタールとなっております。また、備蓄用米あるいは飼料用米の作付面積については、それぞれ一割以上減少をしているということになっております。

 新制度一年目、平成三十年産、こういうような状況ですが、これに対しての農水省の評価、そして次年度の作付に向けた農水省自身の取組への考え方をお伺いしたいと思います。

吉川国務大臣 ただいま御指摘をいただきましたように、米政策の見直しでありますが、平成三十年から、行政による生産数量目標の配分に頼らずとも、産地や生産者が中心となって需要に応じた生産、販売を行うこととしたところでございます。

 今年度の全国の主食用米の作付面積、今もう御指摘のあったとおりでありますので繰り返すことはいたしませんけれども、飼料用米及び備蓄米の作付面積が減少いたしております。さらに、新市場開拓用米が増加をしているということになっているわけでありますが、これは、各産地におきまして、主食用米の需給状況や輸出への高まりを踏まえて、飼料用米や備蓄米が主食用米や新市場開拓米への転換へと判断されたことによるものと考えております。

 今後、三十一年度に向けてでありますけれども、まずは、高収益作物等の拡大に対する支援に新たに取り組むなど、しっかり予算を確保して水田フル活用を推進していきたい、こう思っております。

 二番目には、需給見通しや価格動向等につきましても、一層きめ細かな情報提供も行っていきたいと考えております。

 そして、三つ目でありますけれども、事前契約ですとか複数年契約等の取組を推進することによりまして、安定取引の拡大に向けた働きかけも行うことといたしたいと思っておりまして、農業者みずからが安心して需要に応じた生産に取り組めるように、更に努めてまいりたいと存じております。

藤原委員 ありがとうございました。

 特に、新規需要米の方に転換をしたのではないかということで、農水省の評価ということでお聞きをいたしました。

 新しい米政策のもとでは、産地で、自信がある産地についてはそれはつくっていってもいいし、あるいは複数年契約の業務用米、それぞれの産地ごとに考えてやっていただきたいということだと思うんですが、全体としてのことしの評価と同時に、来年は、ぜひとも今まで以上にきめ細かい情報の提供と目配りをお願いしたいと思っております。

 そういう中で、たびたび委員会あるいはさまざまな場で発言があるんですが、飼料用米について一つお伺いをしたいと思います。

 米価の安定に対して大きな寄与をしていること、これは間違いがないんだろうと思っております。この助成金の単価については、これは毎年のようにさまざまな議論がなされているところであります。

 確かに、私も一点ではそうかなという面もあるのでありますが、ただ、その一方で、米価の安定という観点では、今の飼料用米の助成水準は欠かすことができないと思っておりますし、あるいは、それ以上に重要なこととしては、農家の方々の農政に対する信頼を維持する、そのためにはこの飼料用米の助成を今までのとおりに続けることが大事だと思っております。

 我が国の農政、残念ながら猫の目農政というふうに言われることもありまして、五年、十年でころっと制度が変わってしまう。そうすると、農家の方々にしてみても、農水省が何か新しいことをするというときに、本当にこれに乗って大丈夫なの、五年後にまた何かちょっと、ある程度いったからちょっと変えるかとか、そういうふうになるんじゃないの、そういう心配を持つと、これはもう何をやってもうまくいかないというふうになると思っております。やはり国がやることはしっかり、この方針でやると決めたら、それはある程度継続性を持ってやる、私は、そのことは、米価の維持、水準の維持以上に、農政に対する農家の信頼、あるいは行政に対する国民の皆様の信頼、そういう意味で非常に重要だと考えております。

 その点に関して、飼料用米の水準をこのまま維持する、その点に関する農水省の考え方と取組を伺わせていただきます。

小里副大臣 お話のとおりに、飼料用米を中心とする水田フル活用制度というものが軌道に乗ってきております。三年前、初めて過剰作付というものがなくて、そして、四年連続して米価が安定をしてきているところでございます。このような飼料用米を始めとする主食用米以外の作物への支援を安定的に実施をしていく、これが何より肝要であると考えております。

 このため、平成三十一年度予算概算要求におきましては、飼料用米等の戦略作物助成の現行単価を引き続き維持した上で、産地交付金についても、基本的な仕組みを維持したまま、高収益作物等の拡大に対する支援に新たに取り組むとしているところであります。

 当省といたしましては、今後とも、農業者の方々が将来に向けて安心してこうした主食用米以外の、飼料用米等の作物の生産に取り組んでいけるように、しっかり必要な予算、制度を確保してまいりたいと考えております。

藤原委員 大変心強いお話で、ありがとうございました。

 やはり、私も地域を歩いていますと、そろそろこの水準がちょっと変わってくるんじゃないのかなという懸念を持つ方がふえてきているなと思っております。やはり私はここが正念場だと思っております。ここでしっかり今の水準を維持していくことによって、国の方は、一度決めたら、少なくとも政権交代とかそういう大きなことがない限りはちゃんと今の水準で続けていく、やはりそういうことを続けていくことが大事だと思いますので、ぜひお願いをしたいと思っております。

 それから、もう一点、大きなテーマで御質問をしたいのは、森林経営管理法についてでございます。

 通常国会で森林経営管理法、さまざまな議論をして成立をしましたが、来年の四月、いよいよ施行ということになってまいります。

 私自身の考えですが、法律をつくるということも非常に大事なのでありますが、それ以上に、運用に向けてどういうふうな仕組みをつくるかということが非常に大事だと思っています。

 例えばなんですが、税制なんかも、いい税制だということですごい議論をしてつくっても誰も使わないというものも残念ながらあります。その一方で、当初と全く違う使われ方をしている面がある。技能実習制度なんかも、残念ながら今は労働力という問題の観点の方が大きい。あるいは、ふるさと納税のように、当初とは形が変わって大きく広がった制度というものもある。そういう意味では、法律をつくる、最初の仕組みをつくるというところも大事ですが、その後どうやって運用に落とし込んでいくかという方が法律をつくる以上に大事だと思っております。

 そういう観点で、まず概略を聞きたいんですが、森林経営管理法、来年四月施行に向けて準備をしていると思うんですが、来年度の施行後のスケジュールについてお伺いをしたいと思います。

牧元政府参考人 お答えをいたします。

 来年四月の森林経営管理法の施行に向けまして、各市町村におきましては、現在、都道府県等と連携をしながら、集積、集約化の前提となります森林情報の収集、整理等の作業を行っているところでございます。

 法施行後でございますけれども、準備の整った地区から速やかに森林所有者に対する意向調査に着手いたしまして、森林の経営管理の集積、集約化を行います経営管理権の設定等に向けて取り組んでいただきたいと考えているところでございます。

 また、都道府県におきましては、引き続き市町村に対する支援を実施するほか、意欲と能力のある林業経営者の公募等の作業を進めていただきたいと考えているところでございます。

藤原委員 ありがとうございました。

 いよいよ来年に向けてということで準備を進めていること、よくスケジュール的にわかりました。

 この法律は、衆議院でも、あるいは国会でもいろいろな議論があった法律であります。目玉になるところは、やはり、所有者がわからない林野についても経営管理権を設定する、あるいは、経営管理権を設定するのが嫌です、そういうふうに言った林野についても一定の手続を踏めば経営管理権を設定できる、これは法的に見ると非常に強力な権利、あるいは財産権との関係で、やはりしっかり審査はしているんだと思うんですが、法律を勉強した者からすると大分攻めている法律だというふうに思います。

 しかし、大事なことは、この法律をつくったけれどもちゃんと実施ができるのかというところであります。

 市町村については、この法律の施行後は、集積の実務、それから、経営管理権の設定を受けたけれども林業経営に適さない森林について、これを維持していかなければいけない。また、県については、これは実務そのものはやらないんですが、所有者不明林あるいは不同意林について、経営管理権をつけるための裁定の業務をやらなければいけない。これらの業務は非常に困難な業務だろうと思っております。

 一例を挙げますと、岩手県でいえば県土整備部というところが公共事業をやる場合、この場合に、土地収用法を使ってそういうふうに不同意のところの土地を買い上げるときには非常に多くの手続があって、ある意味、公共事業をやっている県土整備部、そして土地収用委員会ですら収用法の手続はやりたくないというところがやはりあります。

 そういう中で、新しく、これは恐らく農林水産部などがやるんだと思うんですが、果たして、市町村や県において、それだけの法的なこと、あるいは林業経営に関すること、これができるのかということは非常に心配をされているところであります。

 これに対して、農水省においてどのような支援を考えているのか、お伺いをしたいと思います。

牧元政府参考人 お答えをいたします。

 来年四月からの森林経営管理法の円滑な運用に向けてでございますけれども、まずは、林野庁職員が市町村向けの説明会等に直接出向きまして説明や意見交換を行いますとともに、現場で活用できるような事務の手引等を作成しているところでございます。

 また、御指摘ございましたように、例えば林務担当職員の少ない市町村等もあるわけでございまして、こういった市町村等への人的支援といたしましては、まず一つには、民間の林業技術者を嘱託等で雇用いたします地域林政アドバイザーという制度がございます。こういった制度の活用を促しますとともに、技術者情報を積極的に提供しております。また、森林技術総合研修所という林野庁の機関がございますけれども、こちらにおきましても、市町村、都道府県の職員を対象といたしました実務研修等を通じまして技術支援を行っているところでございます。

 こうした取組によりまして、市町村、都道府県の実施体制の構築というものをしっかり図っていきたいというふうに考えております。

藤原委員 ありがとうございます。

 林業の実務のところもしっかり、林政アドバイザー等もそうですので、ぜひ支援をお願いしたいなと思っています。私の地元でも、花巻市というところで、この林政アドバイザーをお願いして、非常に評価が高いというふうに聞いております。

 それと同時に、ぜひ、法的なところ、そもそも所有者不明林というけれども、本当に所有者が不明と言えるのかどうなのか、あるいは不同意のときにちゃんと手続を一つ一つ踏んでいけるのか。やはり、これは細かい実務の運用の話なんですけれども、そこで一つでも間違いがあると個別の裁定自体が崩れてしまうということで、これは非常に法的にも手続的に大変な業務が市町村に課されるのかなと思いますので、そういう点は関係省庁と協力をしていただきたいなと思っております。

 さて、この森林経営管理法、これはまだこれからスタートする法律なのですが、やはり、どれだけいい制度にできるかということを今お願いしたいのでありますが、その際にはぜひ過去の先例あるいは類似例というものを参考にしていただきたいなと思っております。

 そういう観点でこの森林経営管理法というものを見てみますと、小口で経営管理が適切に行われていない、そういう森林について、市町村を窓口として一部林業経営者に集約させるということが基本的な仕組みになっております。これは、よく見てみると、分散した農地を借り受けて、再配分を行って農地の集約化を進める、そういう農地バンクと基本的な仕組みは同じというふうに言っていいんだろうというふうに思っております。今の農業というのは基本的に集約、集積を進めるという意味では、農地についても森林についても基本的に同じ発想で進んでいるんだろうと思っています。

 そういう意味では、この農地バンク、今、五年目の見直しに向けた議論が進められています。そこで整理されている農地バンクの課題、これは、これから森林経営管理法の実務をつくっていく上で参考にするところ、参考にできるところがあるのではないかなというふうに思っております。

 いろいろな課題が今挙がって、自民党内でも議論をしていますが、例えば、森林経営管理法と関連しそうなところで申し上げますと、貸借までの手続の煩雑さ、あるいは年一回の報告義務、あるいは受け手への支援を充実させてほしい、こういうことが農地バンクの課題として挙げられていますが、これはそのまま、森林経営管理法でも目くばせをして制度設計をする必要があるんだろうと思っております。すなわち、実施権を設定するまで手続を煩雑にしない、実施権をしっかり実施しているか、年一回の報告義務を課すにしても余り過度なものにしない、林業経営の受け手について支援をしていく、これは森林環境税なんかの関係でできると思うんですが、そういうようなところに留意をしてお願いをしたいと思っております。

 そこで、一つ気になる点としては、農地バンクについての課題の一つで、農地バンク自体の問題ではないかもしれないんですが、出し手の方から、機構に農地を貸したいけれども受け手が見つかる見込みがないので借りられないと言われた、そういうような課題が指摘されています。

 森林経営管理法でも、所有者としては経営管理権の設定を受けたいけれども、受け手の林業経営者が見つかる見込みがない、かつ、市町村が担当できる森林経営管理事業も、これはおのずと限度があると思うんですね。無制限に全部受けられるというわけではないと思うんですよね、市町村の財源を使う以上は。そうすると、いや、この森林については、林業経営者も見つからないし、市町村でもちょっとこれは財源的にもう受けられませんよと、そういう農地バンクみたいなことにならないかということはちょっと気にしているんですが、その点に関して農水省の見解を伺いたいと思います。

濱村大臣政務官 この制度の枠組みを踏まえますと、森林経営管理法の円滑な運用に向けては、受け手となります市町村と林業経営者の育成が極めて重要となると考えております。

 このため、農林水産省におきましては、藤原議員御指摘のとおり、受け手が見つからない等の農地バンクにおける課題も参考にしつつ、市町村が森林所有者の意向を踏まえて適切に森林の経営委託を受けられるように、先ほど藤原委員からも御指摘がございました、御地元花巻でも活用なされておられます地域林政アドバイザーの活用や研修等を通じた市町村の体制整備の支援、また緑の雇用事業等による担い手の育成等に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

 なお、農地と少し違いますのは、林業経営に適さない森林であって市町村が受け手となる森林の管理に当たっては、来年度から導入が予定されております森林環境譲与税の活用を念頭に置いて、しっかりと取り組んでまいりたいと思っているところでございます。

藤原委員 ありがとうございました。

 ぜひ、森林について、また出し手の方がそういうようなことにならないように、森林環境税の配分についてもいろいろ考えていただければということは最後に蛇足でお願いをさせていただきまして、これはいい制度だと思いますので、ぜひ農水省のお力で、しっかりした制度で来年の四月から施行をお願いしたいと思います。

 終わります。

武藤委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。

 通告に従いまして、以下、順次質問してまいります。

 まずは、吉川農林水産大臣、御就任おめでとうございます。また、副大臣、政務官の皆様におかれましても、このたびの御就任、重ねてお祝いを申し上げますとともに、ぜひ、この農林水産委員会、一つ一つの委員会を大事にしながら、そして国民の、また一次産業従事者の方々の期待に沿える、そうした委員会の審議を進めていきたいと思っておりますので、どうかまた今後ともよろしくお願い申し上げる次第でございます。

 本題に入ります前に、一つ申し上げておきたいことがあります。それは、北朝鮮と思われる木造船の北海道への漂着、漂流の件です。

 既に日本海側の方は各地、そういう同じような状況がありまして、とりわけ北海道では、先般、北朝鮮の乗組員が上陸をする、そういう事件がありました。こうしたことから、大変、漁業者の方々、また地域の方々も、この問題については関心があるというか、注意をしているという状況です。

 そういう中で、先週から今週にかけて、北海道の留萌管内それから宗谷管内で相次いで木造船が漂着あるいは漂流、そうしたことが散見されました。報道等でも一部ありますけれども、乗組員はいないということで、そうした不安はないというふうに思われますけれども、しかし、これはやはり大変重要なことでございまして、私も、先週、地元の方から連絡をいただいて、すぐに水産庁の方に報告をし、また対応を求めました。大変ありがたいことに、迅速な対応をしていただいて、海上保安庁やあるいは北海道庁の方にも連絡をしていただいて、よかったと思っております。

 ただ、今後は、北海道においては、関係各機関との現場での連携も図っていくということで対応が形づくられました。これからまだどういう状況になるかわかりませんので、ぜひ農林水産省、特に水産庁におかれましては、海上保安庁や関係機関とよく連携を図りながら、漁業者の方々、また地域住民の方々の不安を除く、また事故のないように十分な対応をしていただくことをお願い申し上げる次第でございます。

 それでは本題に入っていきますけれども、きょうは大要四点の質問を通告させていただきました。

 まず一点目ですけれども、漁業者の所得向上についてということで、これは大臣にお伺いしたいと思っております。

 今、この日本の漁業を取り巻く環境というのは、私が申し上げるまでもなく、水産資源の減少による生産量の減少とか、あるいは漁業者自体も減少をしてきているということで、加えて、これは外国漁船の操業も活発になってきている。それから魚等の消費も少し落ちてきているということで、こうした課題が幾つか挙げられておりますけれども、かつては、日本は水産王国として鳴らして、世界第二位ですか、の生産額を誇ってきた。現在は、ピーク時、一九八四年の三四%まで減っているというこの生産額、四百三十万トン前後、こういうふうに言われていますけれども、もう一つ大変難しい局面に来ているのは、漁業従業者も平成二十八年時点で十六万人と、この十年間で三割減ってきているという状況です。

 こうしたことを踏まえて、今回は、今国会に漁業法等の一部を改正する等の法律案、これが提出をされておりまして、これから国会での審議を待つところでありますが。私は、この改正案では、漁業者の所得の向上、こういうことを位置づけておりますけれども、これは大臣も所信で申されておりました、ここがやはり一番大事なポイントだろうというふうに思っております。

 漁業就業者の減少に歯どめをかけて、それから新規の就業者の増加を図っていく。もちろん、生産性の向上、販売力の強化、これも同時に進めていかなければなりませんけれども、しかし、やはり、漁業従業者がふえていくためには、魅力のある漁業、水産業、ここの構築が最も肝要なことで、その意味では、所得の向上というのはまず第一に挙げられてしかるべきと思っています。

 今回のこの法案の改正についてはこれからの審議になると思いますけれども、この見直しが、いわゆる改正のための改正ではなくて、真に漁業者の所得の向上につながっていくということを大変期待もしていますし、重要なポイントだろうと思っています。

 そこでお伺いしますけれども、今回のこの見直しが漁業者所得の向上にどのように結びつくのか、あるいはまた漁業者の所得向上をどう図っていくのか、こういう根源的なテーマですけれども、大臣の所見をお伺いします。

吉川国務大臣 稲津委員の御地元は私もよく存じているところでありますけれども、まさに農林水産業を基幹産業として発展をしている地域でございます。

 先ほど冒頭に御指摘をいただきました外国船籍の件につきましても、これは私どもの水産庁と、さらに海上保安庁とも連携をいたしまして、地域の皆さんや、あるいは地域の頑張っていらっしゃる漁民の皆さんに不安を与えないような形で、しっかりとまた対応してまいりたいと存じております。

 ただいまの所得向上に関しての御質問だったと存じますけれども、今、沿岸漁業を営む個人経営体の平均漁労所得というのは二百五十万円、これは若い方々から高齢者の方々まで含めてでありまするけれども、その前後を推移してまいりましたけれども、平成二十八年になりましてから三百三十八万円となりました。これは浜の活力再生プランに取り組み、一定の成果が上がってきていると認識をいたしております。

 そうした中にありまして、今回の水産改革でありますけれども、我が国周辺の水産資源や漁場を十全に活用することを通じて、意欲ある漁業者や漁業従事者を確保して、その力をフルに発揮して漁業、漁村の活性化や漁業所得の向上を目指していけるような環境をつくっていこうとするものでございます。

 そのために、特に沿岸漁業におきましては、頑張っている漁業者の漁場利用を確保した上で、協業化や地域内外からの新規参入も含めまして水面の総合利用を促していきますとともに、漁業者の所得向上に資する流通構造の改革を通じまして、漁獲物の品質や単価の向上による付加価値の高い漁業を目指すことといたしております。

 積極的にこういったことを取り組むことによって、漁業者が安心して漁業ができる、所得の向上につなげられるような、そして担い手の皆さんが頑張れるような改革を進めていきたいと存じております。

稲津委員 ありがとうございました。

 今後、今国会で、この漁業法の改正の中で更に審議を深めていきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

 次に、平成三十年北海道胆振東部地震に関して質問をさせていただきたいと思います。

 九月六日午前三時七分、最大震度七を観測する北海道胆振東部地震が発生いたしました。加えて、今回の地震では、北海道全域が長期間の停電、いわゆるブラックアウト、これが我が国で初めて発生したということ。それから、その前日には台風二十一号が北海道に上陸しておりまして、これで実は前の日、一日停電だったという地域もございます。まさにダブルパンチの大きな被害がございました。

 私は、発災した朝、テレビで見て、最初は東京の直下型地震の発生の予測ということだと思ったんですけれども、見ますと北海道ということで、驚きまして、そして、すぐに当日、旭川空港経由で現地入りをさせていただきました。その状況はもう筆舌に尽くしがたいほど大変な状況でありまして、以来、直ちに公明党としましても対策本部を設置し、自由民主党の皆さんも対策本部を設置し、連携を図りながら、政府・与党一体となってこの対応に今日まで参りました。

 そして、我が党の地元の地方議員、あるいは我々のような国会議員と綿密にネットワークを駆使して連携をとりながら、さまざまな問題点を行政につないでいく、そういうことをやりながら、九月の十三日には、総理に緊急要請をさせていただいて、速やかな激甚災害指定等の要請をさせてもらいました。これは大変政府の方でも尽力していただいて、激甚災害指定、これまでにないほどのスピードでこれを決めていただき、さらに、十一月の七日には、これは野党の皆さんにも大変御協力いただいて、補正予算を成立をすることができた。後は実効性を伴った被災地支援というものを更に進めていかねばならない、このように思っております。

 吉川大臣も、この間、自由民主党の道連会長としても何度も現地入りをされて、そして十月の七日には、大臣に就任されてから現地入りもされて、具体的な被災地あるいは農業者等への支援の手を打っていただいています。このことには改めて感謝を申し上げる次第でございます。

 そこで、きょうは、まず一点目、農地の復旧ということについて質問させていただきたいと思います。

 今回の被災の中でも最も被害の大きかった勇払東部地区というのがありますけれども、ここにおける、来年の春に今度は農地を復旧して作付できるかどうかという、この問題なんです。

 ここは水田地帯でもありまして、まずは農業用水路の確保ということが一番の問題ですけれども、大変な被害の状況ですけれども、一つは、取水施設のこれまでのものの利用ですとか、そうしたものの水路の復旧ができるということが少しわかってきた。それからパイプライン、これも実際に水を通さなきゃわかりませんけれども、ここも来春までには復旧できるんじゃないかという見通しができ、大変うれしいことです。

 しかしながら、今回の最大の問題は、山が崩れて、山腹崩壊によって土砂が水田、農地に入り込んできて、これを今度は撤去した上での農地の回復ということを図っていかなければならない。これがなかなか厄介だということを聞いております。

 したがいまして、国営の直轄事業と北海道の事業を含めると、大体百四十ヘクタールぐらいは復旧の見通しがなかなかつかない、こういうことでございまして、ぜひこの復旧を迅速に行っていただきたい、このことについてまず対応策を伺いたいと思います。

吉川国務大臣 稲津委員におかれましては、このたびの北海道胆振東部地震に対しましての対策、さらには農林水産関連における対策に御尽力をいただきましたことに、本当に心から敬意を表したいと存じます。

 また、改めまして、被災をされた多くの皆様にお見舞いを申し上げたいと思いますし、お亡くなりになられました方々に対して、お悔やみと、そして哀悼の意を表したいと存じます。

 御指摘がありましたように、約百四十ヘクタールの農地に土砂の流入被害が発生をいたしました。この土砂を迅速に排除をする予定でございます。

 この復旧に当たりましては、まず、二次災害の観点から、山林や道路の復旧工事と連携をして慎重に進める必要があります。しかも、土量が多いこともございまして、時間を要すると考えられておりますが、現在、北海道庁において治山や道路部局との間で工事実施の調整を行っていただいております。この土砂の運搬先が大きな課題の一つになっておりまして、厚真町の沢への搬入ですとか牧草地の盤上げに活用するなど、関係者の意見も聞きつつ、幅広く今検討をいたしております。

 この土砂の運搬先の確保やこれら調整が整ったところから着手を行う方針でありますけれども、できる限り多くの農地において来年の営農が可能となりますように全力で支援をしてまいりたいと存じておりますし、こういった作業というのは迅速に作業をすることが来年の営農の意欲にもつながっていきますので、万全を期してまいりたいと存じております。

稲津委員 よろしくお願いいたします。

 もう一点、共同利用施設、これは例えば貯蔵乾燥施設とか、カントリーエレベーターのことですけれども、そのほかにもいろいろあります。このことをお聞きしようと思いましたけれども、時間の関係上、また別の機会に譲るといたしまして。

 いずれにしても、災害復旧による現況復旧ですとか、強い農業づくり交付金を使った機能アップをさせていく、それから、まず第一義的に、すぐに修復していくという産地活性化事業、これらを迅速に採択していただくとともに、まだなお、この地域においては五カ所ほど、今後の見通しについて、何を使ってどうするかという検討中と伺っていますので、これらに対する支援のほどもよろしくお願いしたいと思います。

 時間の関係上、最後の質問になりますけれども、ため池対策についてお伺いしたいと思います。

 これは、これまでも農水省の中でも、我々も議論をして、ため池対策を講じてまいりました。しかしながら、ことしの七月の西日本豪雨、この被害にため池が、大変不幸な事故もありまして、こうしたことを踏まえて、今回の西日本豪雨、二府四県の中で、ため池が決壊した三十二のうち、実に二十九カ所が防災重点ため池に選定されていなかったということがありました。

 今後、このことについて適切な対応が必要だということで、また、農業利用されていないものもあったり、適切な管理がされていない、こうしたことも散見されました。

 こうしたことを踏まえて、先般、農水省では、防災重点ため池の基準を新たに設定した、このように承知をしております。下流への影響などの具体的な基準をつくって、これで約五倍ぐらいの、五万を超える新たな防災重点ため池ということが選定されると伺っていますが、この基準に基づいた今後のため池の防災対策についてお伺いしたいと思います。

濱村大臣政務官 七月豪雨では、多くのため池での決壊等の被害が生じ、防災重点ため池ではないため池の下流で人的被害が生じたことを受けまして、防災重点ため池は、決壊した場合の浸水区域に家屋や公共施設等が存在し、人的被害を与えるおそれのあるため池といたしまして、その選定基準を見直したところでございます。

 この基準に則して、都道府県と市町村が協議をし、防災重点ため池を選定していくということとなりますが、これまでの約一万カ所から大幅に増加する見込みでございます。

 今後のため池の防災・減災対策といたしましては、全ての防災重点ため池において、ため池マップや緊急連絡体制の整備、浸水想定区域図の作成等を速やかに行うとともに、決壊による影響度が大きい防災重点ため池から優先して、ハザードマップの作成、ため池の改修、補強等を進めることとし、農業上の利用の低いため池については統廃合、廃止を含めて進めていく方針でございます。

 今回取りまとめたこの方針を踏まえて、ため池の防災・減災対策の推進に必要な予算の確保に努めてまいりたいと思います。

稲津委員 よろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わります。

武藤委員長 次に、亀井亜紀子君。

亀井委員 おはようございます。立憲民主党の亀井亜紀子でございます。

 吉川新大臣のもとで新しい体制が始まりましたので、大臣の農林水産業に対する基本姿勢等、幾つか質問させていただきます。よろしくお願いいたします。

 私は、昨年の選挙で国会に復帰して、この一年間、この農林水産委員会に所属をしておりました。感想としましては、大変忙しい委員会で、さきの通常国会でも、私たちは九本の法律を審議をいたしました。その合間にも一般質疑はありますし、ほぼ毎週、何日も稼働しているような非常に忙しい委員会だ、そういう印象を持っております。

 そして、この短い臨時国会にも、七十年ぶりの漁業法の大改正、これは大改正というよりも新法に近いものだと私たちは思っているんですけれども、この法律と、EPAに関連したGI法と、二本もかかっております。審議時間が全く足りない、そのように思っております。

 それだけの幾つもの法律を審議しながら私が感じていることなんですけれども、政府の政策の中に必ず入ってくる文言というのが、成長産業、農林水産業を成長産業にしなければならないということです。

 今回の大臣所信でも、まず、若者が夢や希望を託すことができる魅力ある成長産業にしていかなければならないと。次に、そのための改革を推進してきていて、農林水産物、食品の輸出額が五年連続で過去最高を更新し、生産農業所得は過去十八年で最高に達するなど、改革の成果が着実にあらわれ始めている、そのように御発言をされました。

 そこで質問なんですけれども、農林水産業を成長産業にというときに、何を根拠に成長していると判断をされますでしょうか。ここにあるように、輸出額とか生産農業所得とか、いわゆる数字、先ほど数字が大事なんだとおっしゃった質問者がありまして、それはそうなんですが、果たしてその判断基準というものがこの輸出額、生産農業所得だけであるのか、それが最も大事なのか、大臣の基本姿勢についてお伺いいたします。

吉川国務大臣 亀井筆頭理事におかれましては、どうぞよろしくお願いを申し上げたいと存じます。

 ただいまの成長産業ということについて、私の方からお答えもさせていただきたいと思いますけれども、我が国の農林水産業におきましては、長年にわたりまして産業規模の縮小が続いてきたと思っております。

 例えば、農業に関しましては、三十年ほど前には十一兆円を超えていた農業総産出額が平成二十年代半ばには八兆円台、五兆円台だった生産農業所得が三兆円を切る水準となるなど、ほぼ一貫して縮小をしてまいりました。

 農林水産業に関しましては、食料の安定供給や地域社会の維持等に重要な役割を果たしていると存じておりまして、産業規模を再び大きくして、経済的に持続していくものにしなければ、若者が夢や希望を持って挑戦できる産業とはならないと存じておりまして、将来の食料安全保障の確保等にも大きな問題を生じる可能性もあるのではないかと思っております。

 そのために、安倍内閣におきまして、農林水産全般にわたって抜本的な改革を推進してきたと存じております。これによりまして、直近の農業総産出額や生産農業所得が二年連続で伸びてきたと思っております。さらに、農林水産物、食品の輸出が五年連続で過去最高を更新もしてまいりました。四十代以下の新規就業者も、統計開始以来初めて四年連続二万人を超えるということなど、着実に成果があらわれ始めてきているのかな、こうも思っております。

 また、林業や水産業におきましても、山や海の潜在力を十分に引き出しながら、成長産業とするための抜本的な改革にも取り組んできているところでございまして、引き続き農林水産全般の政策改革に取り組んでまいりまして、若者の皆さんが夢や希望を託すことができる産業の実現を図ってまいりたいな、このように考えております。

亀井委員 全体的なことをおっしゃって、余り大臣のお考えが伝わってこなかったので、なぜ私がこのような質問をしたかということをお話ししたいと思います。

 今、党内で漁業法の改正案について勉強を重ねております。漁業権の付与の仕方、基準も変わってくるわけですけれども、そういう中で感じていること。例えば、今回のような漁業法の改正がされた場合に、養殖業にかなり比重が傾いていくと思いますが、一つの浜があって、そこの浜にノリの養殖業者とクロマグロの養殖業者がいたとして、ノリの方の売上げが五千万で、クロマグロの方の売上げが五億で、輸出に貢献しているのはクロマグロの方だとしたら、このクロマグロの養殖をもっと頑張ってください、そういうような政策になりはしないか、そういう危惧を覚えております。

 輸出産業により貢献している、売上高がより高いところが頑張っている企業であって、そこの企業により多くの若者が勤めていればそこを伸ばしていかなければいけないとなってくると、多様性であるとか中小の漁業者、まあ農業にも言えることですけれども、安倍政権の進めている農林水産業の改革というのが、やはり金額ベースで、それこそこれを市場原理主義というんだろうなと思うんですけれども、どの分野においても、輸出額とか生産額が一番大きな価値を置かれて、それに基づいた改革になっていると感じているんですけれども。

 私が今お話ししたことについて何か、もし大臣、コメントがありましたらおっしゃってください。

吉川国務大臣 今、ノリとクロマグロについて例示をいただいて御質問をいただきましたけれども、私自身は、ノリももちろん大切です、クロマグロも、これは何も輸出ばかりではなくて、国内での消費量においてもとても大切な漁業だと思っておりますので、輸出ももちろんふやしていかなければなりませんけれども、国内においてのそういった養殖面でのノリを始めとする漁業ももちろん大切だ、このように思っておりますので、両面伸ばせるような、そういったことをしっかりと打ち出していく必要があるのではないか、こう思っております。

 そのために、農林水産関連というのは、地域政策もあれば産業政策もあるのかなと、率直に私、そう思っております。

亀井委員 私の農林水産業に対する姿勢というのは、この委員会でも何度も申し上げていますけれども、食料自給率、この数字というのを大事にしております。

 まず、何のために農林水産業があるかというと、この国に住む私たちが食べるもの、なるべく国内で多く生産をされる、そしてそれに携わる人が生活をするだけの所得を得ることができる。農業は季節労働の側面もありますから、閑散期にはその地域のほかの仕事をしたり、全体として年間の所得が生活ができる水準である、そのことによって地方が維持される、そこを一番私は大事にしておりますので、必ずしも、売上げが大きい、輸出に貢献しているからといって、そこを強めればいいかというと、私は大きな疑問があります。

 輸出が伸びたからといって、じゃ、ある漁村に行って、元気な企業はあるけれども前より漁村の人口が減りましたとか、農村に行って、幾つか元気な企業があるんだけれども周りの田畑は荒れていましたというのでは、これは基本姿勢として間違っているだろう、そういう観点で私は農林水産業について考えておりますので、これは私の考え方として述べさせていただきます。

 次の質問に移ります。

 TPP11についてです。

 前国会で、TPP11についてこの委員会でも審議をいたしました。連合審査にも入りました。あのときに、アメリカの復帰の見込みがないのになぜTPP11をそんなに急ぐのか。そして、農林水産分野については、アメリカが戻ってくる前提で、緊急輸入制限措置の発動基準値、米国割当て分も含まれている。非常に高い数字になっているので、実質的にセーフガードを発動するのは不可能な数値なわけですけれども。このことについて、TPP12協定が発効する見込みがなくなった場合に見直すことを各国は理解していると、政府は繰り返し答弁をされてきました。

 五月の十一日に、私、外務委員会の方に行きまして、外務大臣に質問しました。協定の表現ぶりでコンシダー・エニー・アメンドメントと書いてあるのは、コンシダーというのは考えましょう、検討しましょうという意味なので、見直すとは書いていませんよということを外務大臣にも申し上げましたけれども、各国の理解を得ていると答弁されています。

 六月七日の農水大臣の答弁でも、TPP11協定第六条は、TPP12協定が発効する見込みがいよいよなくなった場合には、締約国の要請に基づいてTPP11協定の見直しを行うということを定めたものとあります。

 先日、TAG、日米物品貿易協定の二国間交渉の話が出てきました。アメリカがTPP12に戻るということは、これはもうないと思いますけれども、農水大臣は、この緊急輸入制限発動基準値など、見直しを協定第六条に基づいて求める、そういう予定はおありでしょうか。

吉川国務大臣 この日米物品貿易協定についてでありまするけれども、まず、日米共同声明において、農林水産品については、過去の経済連携協定で約束した内容が最大限であるとの大前提に基づいて米国と合意をいたしていると承知をいたしております。

 農林水産省といたしましては、これを踏まえて、農林水産業の維持発展を旨として関係府省と連携して交渉に臨んでいきたいと考えておりますので、TPP11協定第六条に関連してでありますけれども、この11協定が発効した後に、米国を含めたTPP12協定が発効する見込みがなくなった場合には、締約国の要請に基づきTPP11の協定の見直しを行うことを定めている、このように承知をいたしておりまして、我が国としては、TPP11の早期発効に全力を挙げる旨は米国にも説明をしていると存じておりまして、方針を転換したわけではないと承知もいたしております。

 なお、日米共同声明をもって、このTPP11協定第六条に定める、TPP12が発効する見込みがなくなった場合に該当するかという点につきましては、内閣官房にお尋ねをいただきたい、このように思っております。

大角政府参考人 内閣官房でございますけれども、米国との具体的な交渉につきましては、まさにこれからでございます。個別の事項については何ら決まっているものではない、このようになっております。したがいまして、我が国として、九月の日米共同声明の段階におきまして、米国を含むTPP12協定が発効する見込みがなくなったとは考えていないところでございます。

 いずれにいたしましても、さまざまな面で農林漁業者に懸念がないように対応したいと考えております。

亀井委員 今の御答弁、ちょっと驚きまして、アメリカがまだTPP12に戻ってくるということを期待している、可能性があると期待している、だからTPP11の方の第六条は使わないのだ、見直しは求めないのだということでしたけれども、それでは、じゃTAGというのは何なんでしょうか。

 今までの御説明ですと、アメリカが脱退した後TPP11協定に向けて突き進んだのは、多国間の枠組みにアメリカを戻すためである、二国間の交渉に持ち込まないためにTPP11を進めてアメリカを呼び戻すのだ、そういう論理だったはずなんですけれども、そこに二国間交渉、TAGが出てきたので、これは外交的に失敗ではないかと私は思っているんですけれども、この点も含めて、もう一度、大臣、御答弁をお願いいたします。

吉川国務大臣 先ほども私最後に申し上げましたけれども、TPP11協定第六条の規定に基づく見直しにつきましては内閣官房にお尋ねをいただきたいな、このように思っております。

亀井委員 全くわけのわからない御答弁なんですけれども。

 ちょっと、この問題で全部の時間を使ってしまいそうなので、また次回質問させていただきます。これだけで本当に議論したいぐらいの気持ちです。

 それでは、次の質問に移ります。

 次は、EPA関連です。

 このEPAも、今、私たちは連合審査を要求しているところなんですけれども、非常に農水分野に、特に畜産、酪農に影響が大きいと思っておりまして、じっくり審議をさせていただきたいと思います。

 今回、この臨時国会で、EPAに関連してGI法案の審議が予定をされております。対象となる日本の産品が四十八品目、EUの産品は七十一品目、かなりアンバランスだと思います。そして、EUでは、伝えられるところでは千三百品目余りが登録されているとも言われているんですけれども、今後EUの要求拡大の可能性はありますか。

 登録品目数というのは同程度にすべきではないかと私は思っておりまして、まず日本の品目数四十八を七十一に近づけていく、それからの話ではないかと思うんですけれども、大臣の御見解を伺います。

吉川国務大臣 EUにおきましてGI制度が確立されて、亀井委員も御承知のとおりであろうかと思いますが、大変歴史が長うございます。今指摘がありましたように一千三百以上の産品が保護されているところと承知をいたしておりまして、我が国のGI法というのは、平成二十七年六月から運用を開始をいたしまして、まだ登録数が六十九ということでございます。

 こうした中にありまして、今回の日・EU・EPAの合意におきましては、相互保護を行うEU側の商品を七十一にとどめたということでございまして、相互保護の対象となるEUのGI産品の追加に当たりましては、その都度、GI法に基づきまして、公示及び意見募集、さらには学識経験者からの意見聴取等の手続を行うこととなろうかと思っておりまして、この中で、日本で一般的に使われている名称は保護されないことになろうかと思っております。

 我々といたしましても、今後EUで保護される我が国のGI産品を追加していきたいと考えておりまして、我が国の産品を追加する中でEUのGI産品も追加で保護することはあり得るかなとも、このように考えております。

亀井委員 まずは、四十八品目をEUのレベルに、七十一に近づけていただきたいと思います。こちらが追加登録するときにあちらも、EUの方も、ではこれをと言ってくる可能性があるわけですけれども、これをずっと続けているといつまでたっても差が埋まらないので、日本側がより多く一回に登録ができるように力を入れていただきたいと要請をいたします。

 GI法が発効するとどういうことになるのかについての質問です。

 例えば、説明を伺いましたら、オーストラリア産神戸ビーフのようなものは出回らなくなるということでしたけれども、今、日本で販売されている製品も影響を受けることが予想されます。例えばですけれども、では、明治ブルガリアヨーグルトはブルガリアという名称が使えなくなるというようなことはあるんでしょうか。そういう制約は受けますか。

新井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘がございました明治ブルガリアヨーグルトという名称につきましては、EU側の七十一産品の名称に含まれておりませんので、相互保護の対象とはなっておりません。したがいまして、ブルガリアヨーグルトという名称が使えなくなるということはございません。

亀井委員 今の御答弁で、明治ブルガリアヨーグルトは対象ではない、大丈夫だということでしたけれども、ほかに、今販売されている日本のブランド名で、GI法が発効すると名称が使えなくなる可能性のあるものというのは、農水省の方で把握されていますでしょうか。品目数ですとか対象のブランド。把握されているかどうか、伺います。もしそういったリストがあるのであれば、後日で構わないので、提出していただきたいと思います。

新井政府参考人 今お尋ねがございました日・EU・EPA発効後のEU側の七十一産品の規制対象につきまして、そのGI産品を使用いたしました商品の名称を網羅的に把握しているわけではございません。

 しかしながら、今回の七十一産品の保護の決定に当たりましては、生産者、関係団体等に広く周知をし説明会をするとともに、GI法に基づきまして三カ月間の公示を行いました。

 その期間中に、今お話がありましたとおり、EU側の保護するものが普通名称であるかどうか、あるいは先使用の商品があるかどうかというものをチェックをいたしまして、保護の対象を決定いたしたものでございます。

 例えば、カマンベール、チェダー、ゴーダ等、我が国で一般的に使用されている名称、これを一部使ったGI産品もございましたが、この名称はGI法に基づく規制の対象の外とするというような決定を行ったところでございます。

 今後につきましても、今般の規制内容につきまして、関係団体等を通じて企業に周知を図っていきたいというふうに考えているところでございます。

亀井委員 農水省の方でいろいろお調べいただいて、企業には早目に周知をすべきかと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次の質問も、やはりGIに関する質問です。

 先日、GI登録されている日本側の品目を見ましたら、米沢牛がありました。

 米沢牛について現地の人に伺うと、これは三十二カ月生育をさせないと米沢牛とは呼ばないそうです。EUについては、日本からの輸出に関して月齢制限がなく、米沢牛として輸出ができると理解しておりますけれども、それで正しいでしょうか。

 また、台湾については三十カ月の月齢制限があると聞いております。この場合は、ほぼ米沢牛とも言えないですし、米沢牛以外の名称、例えば山形牛ですとか、何かほかの名称で輸出するしか方法はないのでしょうか。また、日本政府は、月齢制限がある国に対して撤廃要請をしていますか。

 以上について、参考人の方でも結構なので、お伺いいたします。

新井政府参考人 お答え申し上げます。

 米沢牛は、GI産品といたしましては、出荷月齢が生後三十二カ月以上の未経産の黒毛和種の由来の、肉質等級が三等級以上の牛肉として登録をされております。

 そのため、牛肉の輸出に関しまして月齢制限がないEUに対しては、GI登録の条件を満たした牛肉を米沢牛の名称で輸出することができるということでございます。

 それに対しまして、台湾は、牛肉の輸出に関し三十カ月月齢未満の月齢制限があるために、日本のGI産品である米沢牛は、別名称を使用したとしても輸出することができません。しかしながら、生産者団体の判断によりまして、三十カ月齢未満の牛に由来する牛肉を、米沢牛と類似しない別名称で輸出することは可能でございます。

池田政府参考人 月齢制限の撤廃についてお答えをいたします。

 日本産牛肉に対します月齢制限がある国につきましては、これまでの協議の結果、シンガポール向け、香港向け、タイ向けにつきまして、順次制限を撤廃してきたところでございます。

 一方、台湾そしてマカオ向けにつきましては、現在も月齢制限が課せられているところでございまして、我が国はその撤廃を要求しているところでございます。

 これにつきましては、食品衛生を担当する厚生労働省と連携をいたしまして、引き続き月齢撤廃に向けた協議を行ってまいります。

亀井委員 月齢制限の撤廃に向けて、引き続きの御努力をお願いいたします。台湾でも牛肉の需要が高まっているようでして、引き合いもあると聞いておりますけれども、月齢制限のことが一つネックになっておりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、次の質問に移りますが、これもやはりEPA関連です。

 EPAについては、TPPと同等の、全品目の八二%の関税の撤廃が合意されております。その中で、チーズについて、ゴーダチーズのようなハード系に加えて、EUでブランド力の高いソフトチーズ、カマンベールなど、これも、輸入枠三・一万トンを設けて関税を撤廃することが決まっております。

 これによる国内乳製品の生産額の減少、二百三億円とも聞こえてまいりましたけれども、農水省はどの程度見積もっておられますか。また、それに対する国内生産者への対策はどのようにされるのでしょうか。大臣にお伺いいたします。

吉川国務大臣 乳製品、特に今チーズのことにつきまして御指摘を頂戴いたしました。

 御質問の中にもありましたように、このチーズ、三十一万トンということになったところでありまするが、ハード系に関しまして、十六年目までという長期の関税撤廃期間というものも確保いたしておりますので、補正をさせていただきたいと思います。

 さらに、バター、脱脂粉乳等、国家貿易制度を維持しておりまして、最近の追加輸入量の範囲内で関税割当てを設定したということであります。

 さらに、ホエーにつきましても、関税削減にとめるなどの措置を獲得したところでもございまして、このために、当面、輸入の急増見込みというのは考えておりません。乳製品全体の国内需給への影響は回避できると見込んでいるところでございます。

 他方、ホエーとチーズの関税削減や関税撤廃等によりまして、長期的に競合する国産の脱脂粉乳、チーズの価格下落等が生じることによりまして、乳産品向けの乳価の下落も懸念をされますことから、乳製品全体で約百三十四ないし二百三億円、うち、チーズにつきましては七十六ないし八十六億円の生産額の減少が見込まれると試算もいたしたところでございます。

 このために、酪農に関しましては、総合的なTPP等関連政策大綱に基づきまして、従来の畜産クラスター事業による搾乳ロボットの導入など、施設整備等の体質強化対策に加えて、チーズの対策もつくらせていただきました。

 その一つが、チーズ向け原料乳の高品質化に関する支援であります。二つ目が、チーズ工房等の施設整備に関する支援であります。三つ目に、国産チーズの品質向上やブランド化支援等の対策を講じまして、国産チーズの競争力の強化も図っていきたいと考えております。

 国産のチーズというのは、大変おいしいと思いますし、塩分を控え目にしたチーズもたくさんございまして、極めて、今、チーズブームもこれからまさに起きてくるのではないかと思っておりますので、しっかりと支援もしてまいりたいと思います。

亀井委員 我が党は北海道選出の議員が多うございまして、非常に懸念しておりますので、この点については、また他の議員も質問するかと思います。しっかりした支援をよろしくお願いいたします。

 次は、餌米についてなんですけれども、政府は、餌米の生産を補助金をつけて奨励をしてきました。

 このことについて、しばらく前に、経済学者の金子勝さんがいらっしゃいますが、議論をしたことがあります。今、政府の政策が、TPPそしてEPA、これは畜産、酪農に非常に打撃のある、そういう協定を結んでいるわけですから、これから酪農家や畜産農家が減少していく可能性があるわけです。そうすると、この餌米を食べる家畜の数が減っていくことが予想されるわけで、その一方で、餌米の生産をどんどん奨励したときに、この餌米を一体誰が食べるのだろうか、そういう議論になりました。

 まさか人間が食べるようなことになったら、これはパロディー以外の何物でもありませんけれども、今のTPP、EPAの流れ、日本側の譲歩と、それに対する餌米の生産の奨励というのは、整合性がとれないのではと思うんですけれども、大臣はいかがお考えでしょうか。

吉川国務大臣 申しわけありません。お答えをする前に、先ほど、チーズのところで、私、大変数字を誤ったことを申し上げてしまいまして、三十一万トンと申し上げましたが、三・一万トンの違いでございましたので、おわびをして訂正をさせていただきたいと存じます。

 今の餌米の件につきましてお答えをさせていただきたいと思いますが、この主食用米の需要が毎年減少している中におきまして、食料の自給率、自給力の向上を図るために、主食用米から飼料用米、餌米と言われておりますが、転換によりまして、水田のフル活用を進めているところでございます。

 トウモロコシ等の輸入穀物への過度の依存からも脱却をして、国内の飼料生産基盤に立脚した足腰の強い畜産に転換をする観点からも、飼料用米の利用拡大を進めているところでございまして、配合飼料メーカーからは、平成三十年度は約百二十万トン、中長期的には二百万トン弱の需要が見込まれると聞いております。

 こうした中にありまして、TPPや日・EU・EPA交渉におきまして、乳製品の国家貿易制度や豚肉の差額関税制度の維持ですとか、関税割当て、セーフガードなどの有効な措置を獲得をして、我が国の畜産や酪農の再生産が引き続き可能となる国境措置を確保してきたところでもございまして、総合的なTPP等関連政策大綱に基づきまして、体質強化対策や経営安定対策の充実等を講ずることといたしております。

 今、これらを実施することによりまして、畜産物の国内生産量が維持されるものと見込まれていることから、今後の飼料用米の需要見通しに大きな変化はないと考えておりまするけれども、引き続き、飼料用米の生産及び利用の拡大に努めてまいりたいなと考えております。

亀井委員 まだ質問があったんですけれども、時間が来てしまいましたので、EPA関連については、また次回に質問させていただきます。

 以上で終わります。

武藤委員長 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 おはようございます。立憲民主党の佐々木でございます。

 きょうは大臣の所信的発言に対する質問をさせていただく機会をいただきました。通告に従いまして質問をさせていただきたいと思いますが、その前に、それぞれ、大臣、副大臣、政務官の皆さん方、新しく御就任いただきましたこと、ぜひ御奮闘を期待申し上げてございます。とりわけ大臣は北海道人として大変期待を申し上げてございますので、大いに国民の期待に応えていただける農政をお願い申し上げたいと思います。

 質問に入ります。

 お祝いを申し上げた直後にこのことを取り上げるのもどうかというふうには思うんですが、今、政府において、障害者雇用についてガイドラインが守られていなかったということが各省とも大変問題になってございます。

 これは平成十七年からずっと進めてきているわけでありますが、この間、手直しもなく進めてきたわけで、これは農水省だけの責任ではもちろんありませんけれども、漫然と進めてきたという結果で、本年八月に、国の行政機関における障害者の任免状況の再点検というのが発出をされたわけでありますが、農水省における経過、現状をまずお伺いをさせてください。

水田政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のとおりでございますが、今般、昨年、平成二十九年六月の障害者雇用率につきまして、政府全体で再点検を行ったところでございます。

 この結果といたしまして、農林水産省につきましては、まず林野庁及び水産庁を除きました農林水産省については、障害者雇用率が二・三九%から一・二二%になりまして、林野庁につきましては二・三四%から一・六六%になりました。また、水産庁におきましては二・三一%から〇・九五%になったところでございます。いずれも平成二十九年度の国の法定雇用率であります二・三%を下回る結果となったところでございます。

 これにつきましては、第三者検証委員会の報告書において指摘されているとおりでございまして、政府として民間事業者に率先して障害者雇用に積極的に取り組むべきことは当然の責務であるにもかかわらず、組織として障害者雇用に対する意識が低く、相当数の不適切な計上があったことはあってはならないことでございまして、深くおわびを申し上げる次第でございます。

 報告書を真摯に受けとめまして深く反省いたしまして、本年十月二十三日に決定されました、公務部門における障害者雇用に対する基本方針に沿いまして、不適切計上の再発防止に取り組むことはもとより、組織全体として障害者雇用を推進するという意識を徹底いたしまして、法定雇用率の速やかな達成に向けまして計画的な採用を進める取組を強化してまいりたいというふうに考えております。

佐々木(隆)委員 不適切という指摘を受けているんですが。それぞれの省庁で多少特徴があるわけでありますけれども。

 農水省の聞き取りに対する中に、いわゆる特異な計上というもので羅列をいろいろされているんですけれども、矯正視力によるべきところを裸眼視力により計上って、これは眼鏡をかけている人全員障害者だという話になっちゃうので、ある意味では極めて安易な取組だったのではないかと指摘をせざるを得ません。

 農水省は現場もたくさん抱えている省庁でありますので、そんなことも踏まえて、今、共生ということが大きなテーマになっている時代であります、今後の決意について、大臣にお伺いいたします。

吉川国務大臣 佐々木委員から激励も受けました。同じ北海道でございまして、どうぞよろしく御指導をいただけますようにお願い申し上げたいと思います。

 今御指摘をいただいております障害者雇用に関しましては、私どもも大変この事態を重く受けとめておりまして、官房長から答弁がありましたように、大変深く反省もし、申しわけなく、このように思っているところでございます。

 今回のことを受けまして、農林水産省といたしましては、公務部門における障害者雇用に関する基本方針に沿いまして、来年十二月末までに、本省及び地方農政局を含めまして、まずは、林野庁及び水産庁を除いた農林水産省において二百二十三人、二番目には、林野庁においては四十九人、三番目に、水産庁において十五人、合わせて二百八十七人の障害者の方を雇用する計画といたしております。

 この採用に当たりましては、ハローワークを通じた非常勤職員の採用に加えまして、新たに人事院が統一的に行う障害者を対象とした選考試験による常勤職員の採用等も考えているところでございます。

 また、さらに、セミナーや研修等による職員の障害者に対する理解の促進、そしてまた、省内のバリアフリー化も進めなければなりません。障害者の作業環境を整えるための就労支援機器の導入なども考えております。さらに、障害者向けの相談窓口の設置など、人的なサポートも今回の体制の整備に加えているところでもございます。

 こういったことの実施によりまして、地方農政局等も含めて、障害者が活躍しやすい職場づくりというものを進めてまいりたいと考えております。

佐々木(隆)委員 大臣に決意を述べていただきましたので、ぜひその決意に沿って進めていただきたいと思いますが。バリアフリー化をこれから進めるって、これは平成十七年からやっている話なので、これからバリアフリー化を進めるという……(吉川国務大臣「これからもです」と呼ぶ)いや、今そういう答弁だったんですが、これは実はもう十余年もやっている話なんですよね、本来は。ぜひ進めていただきたいと思います。

 次に、さきにどなたかの質問もありましたけれども、ことしの作況にかかわって質問させていただきたいと思います。

 ことしの作況は、生産目標を廃止をして初の年、初年度になるわけでありますが、まずは、初年度として、ことしの作況をにらみながら、評価をまずお伺いをしたいと思います。

小里副大臣 米政策の見直しによりまして、三十年産から、行政による生産数量目標の配分に頼らずとも、産地、生産者が中心となって、水田フル活用等を図りまして需要に応じた生産、販売を行うこととしたところであります。

 今年産の全国の主食用米の作付面積は、都道府県ごとの増減はありますが、前年産とおおむね同水準の百三十八・六万町歩となったところであります。

 こうした中で、飼料用米及び備蓄米の作付面積が減少しまして、輸出用などの新市場開拓用米が増加をしているところであります。

 これは、各産地におきまして、特に業務用などの主食用米の需給状況あるいは輸出への関心の高まりを踏まえまして、飼料用米や備蓄米から主食用米や新市場開拓用米への転換が判断されたことによるものと考えているところであります。

 農林水産省としましては、三十一年産に向けまして、高収益作物等の拡大に対する支援に新たに取り組む等、しっかり予算を確保しながら、本来の飼料用米を中心とした水田フル活用を推進する、そういう方針であります。

 需要見通しや価格動向等について一層きめ細かな情報提供を行うとともに、事前契約によりまして需要の確保をしっかり図る、また、複数年契約等の取組を推進することによりまして安定取引の推進をしっかり図ってまいりたいと思います。

 農業者みずからが安心して需要に応じた生産に取り組めるように、努めてまいる所存であります。

佐々木(隆)委員 ことしから目標を廃止したので、当然のことながら、今副大臣から御答弁ありましたが、需要に応じてということになりますが、その需要をどうやって把握するかというシステムはまだ実は確立をされていない、始まったばかりですから。

 そういった意味で、百三十八万六千ヘクタールと先ほど御答弁がありましたが、ことし国が示した適正生産量というのが七百三十五万トン、予想収穫量が七百三十三万トン、だから需要に見合ったという話になるのかもしれませんが、ことしはたまたま作況一〇〇です。たまたま作況一〇〇だから需要に見合ったということに数字上はなるわけですけれども、作況が一〇二とか一〇三になったら、それは大幅に狂ったわけですよね。

 作付面積も一・二%ふえているわけです。一・二でありますけれども、ふえているわけであります。農協関係者や何かの中では、増産に向かう産地が出てくるのではないかというようなことを既に心配をされている方々もあります。

 よって、ことし初めてですから、一年目の検証というのを相当丁寧に実施をして、そして、転作のあり方も含めてですが、来年からどういうふうにしていくのかということ、ことしが一年目であるがゆえに、そこの検証をしっかりやっていただかないといけないというふうに思うんですね。

 たまたま作況が一〇〇だったから見合っちゃったというだけの話では困ると思いますので、その点について、大臣のお考えを伺います。

吉川国務大臣 御指摘をいただいた点、私もそういった懸念を持っております。よって、しっかりとことしのことを検証して次年度につなげていきたい、こう思います。

佐々木(隆)委員 今大臣から決意を込めて答弁をいただきましたので、ぜひお願いを申し上げたいと思います。

 次に、自給率についてお伺いをいたします。

 先ほども亀井議員からも自給率に触れて質問がございましたけれども、私は、何か農林水産省の近年を見ていると、自給率は死語になってしまったのではないかと実は心配をしております。ほとんどこのことについていろいろな政策に出てこないという意味で大変心配をしておりますし、現実に、自給率は四五%の目標には依然としてほど遠い状況にあるわけであります。

 しかし、今回の大臣の発言で、終わりの五行に、「食料自給率を向上させ、食料安全保障の確保を図ります。」と大変力強く最後で結んでいただきましたので、期待を申し上げているのでありますが、この食料自給率ということについて大臣が最後の段階で触れたということは、何らかの決意があって触れていただいたんだというふうに思うんですが、そこの思いと決意を伺います。

吉川国務大臣 食料自給率に関しまして向上させていくことは、私も大変重要だと考えております。

 このために、現行の食料・農業・農村基本計画におきまして、平成三十七年度に食料自給率をカロリーベースで四五%、生産額ベースで七三%に引き上げる目標を設定したところでございます。御承知のとおりであろうかと思います。

 平成二十九年度の食料自給率でありますけれども、カロリーベースで三八%、生産額ベースで六五%となっておりまして、さらに、政府といたしましても、食料自給率目標の達成に向けまして、まず一つ目には、国内外での国産農産物の消費拡大や食育の推進を進めてまいりたいと思います。そして、さらに二点目といたしましては、消費者ニーズに対応した麦、大豆の生産拡大等々も進めてまいりたいと存じております。さらに三点目といたしましても、付加価値の高い農産物の生産、販売や輸出の促進も図っていくことが大切であろうかと思います。そして、優良農地の確保、担い手の育成の推進といった各般の施策を総合的かつ計画的に進めていくことも大切ではないかと思っております。

 また佐々木委員のお知恵も拝借をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

佐々木(隆)委員 吉川大臣におかしするほどの知恵はないかと思いますけれども、頑張ります。

 それで、先ほどちょっと触れましたけれども、これは質問ではないんですけれども、自給率と食料安保というふうに触れていただいているんですが、食料安保って、普通、我々が受けとめていたのと、ちょっと調べてみたら少し認識が違っておりました。食料安保だから総合安保なのかなというふうに思っていたら、自国の安全保障というふうになっていて、自国の安全保障だけなんですね、農政で使っている食料安保という言葉は。ちょっとここは総合安保の視点も必要なのではないかな、それでなくても経済連携をいろいろやっている最中ですから。ということは、これは質問はしませんけれども触れておきたいと思います。

 そこで、なぜ自給目標にこだわっているかというと、自給目標というのは、ある意味で、日本の農政の目指す姿をそこに数字であらわすものが自給率だと思うんですね。だから、自給率目標というのは農政にとって極めて重要なものだというふうに私は思っております。

 そういった意味で、拡大路線だけではその自給目標を私は達成できないと思うし、今大臣がいろいろ触れていただきましたけれども、全般を見通していかないと、自給というのは私は達成できないのではないかというふうに思います。

 そこで、前の国会で、戸別所得補償制度を野党で共同提案をさせていただきました。我々がこの制度を提案させていただいた基本は、多様性とか地域の共生とかというものと農山漁村の発展というのは一体的なものだというふうに考えておりますので、そうした視点でつくらせていただいているわけであります。

 大臣もお目通しをいただいているというふうに思うんですが、この戸別所得補償制度に対する認識をまずお伺いさせてください。

吉川国務大臣 戸別所得補償制度に対しての認識でございまするけれども、この旧戸別所得補償制度につきましては、全ての販売農家を対象に交付金を支払うものでありましたことから、担い手への農地の集積ペースをおくらせる面があったとも指摘をされました。

 さらに、十分な国境措置がある米につきましては、交付金を交付することは、他の農産物の生産者や他産業、納税者の理解を得がたい等の課題もあったと承知をいたしております。

 このために、安倍内閣におきましては、旧戸別所得補償制度を廃止いたしまして、農地集積バンクの創設や、需要のある麦、大豆、飼料用米の生産振興による農地のフル活用など、前向きな政策を強化してきたと承知もいたしております。

 同時に、日本型直接支払制度を創設いたしまして、地域の共同活動への支援や、中山間地域に対する直接支払いなど、地域を元気にする施策も展開をしてまいりました。

 引き続き、農林漁業者の皆様と真摯に向き合いながら、改革の成果も丁寧に説明をしながら、強い農林水産業と美しく活力ある農山漁村の実現に向けて、施策を強力に展開をしていくことが必要ではないかと今考えているところでございます。

佐々木(隆)委員 今、全ての販売農家を担い手としたというお話がございましたが、我々もこれをかつてつくるときに一番悩んだのは、担い手とは一体誰だというところであります。

 実は、担い手の基準というのは、制度上は何もありません。その都度その都度、こういう人たちを対象にしますと言ったのが担い手になっているだけで、担い手とはこういう人たちをいうんですというようなことが決まっているわけではありません。ですから、私どもは全ての販売農家が担い手だと思っているわけでありますし、そういった意味では、実は、誰が担い手なのかというのは、農政上大変大きな課題でもあるというふうに思っております。

 それで、納税者の理解が得られないということ、俗にばらまきだというふうな批判もいただいたことは事実でありますが、無駄な予算をつくれば、それはばらまきと言えるのかもしれませんが、対象農家が広いからといって、それをばらまきだと言うのは、私は違うと思います。

 それは、先ほど大臣も答弁いただきましたが、地域をつくり上げている全体で担っていくのが農政のもう一つの大きな柱でありますから、四十戸あった集落が四戸になって、集積して、ああよかったということにはならないと思うんですね。では、四戸で集落は維持できるのか、そこに日本型直接支払いをつぎ込んだからといって集落の環境が守られるか、それはなかなか難しいと思うんですね。

 そういう視点が、やはり少し、先ほどもお話ありましたが、大型化するとか集約するとかということだけで農政というものが解決するとは思えないわけであります。

 そういった意味で、このことについて我々はぜひ議論をしていただきたいということをずっと申し上げているわけでありますが、これは委員長にもお願いしておきますけれども、この短い国会で議論するというのはなかなか大変かもしれませんが、ぜひこういったことについて議論をすべきだ、委員会としてもあるいは国会としてもすべきだというふうに思いますので、限られた時間でありますから、これ以上、再質問にはしませんけれども、なぜ認識が違うのかということをやはり共有すべきだということは申し上げておきたいというふうに思います。

 TAGについて質問します。

 TAGというものそのものが何かということなんでありますが、FTAと何が違うのか、全くわかりません。共同声明のいわゆる訳も、アメリカと日本とでは違っていたりして、実質的には私はFTAだと思うんです。物品をやった後にはサービスもやると言っているんですから、これはFTAと何も変わらないんだというふうに思うんですが、なぜ、どこが違うのか、まず説明いただきたいと思います。

大角政府参考人 FTAにつきまして、国際的に確立された定義があるわけではございません。

 これまで我が国が結んでまいりました多くの協定は、物品貿易とサービス貿易全般をカバーしておりまして、そういう意味で、我が国はこれまで、特定の国や地域との間で物品貿易及びサービス貿易全般の自由化を目的とする協定との意味で、FTAという用語を用いてまいりました。

 九月末の日米合意は、基本的にグッズ、物品を対象とするものでございます。これとあわせまして、早期に結論が出るものにつきましても交渉することに合意いたしましたが、これは例えば通関手続など、貿易円滑化に関する措置や輸出入手続の透明性の問題など、物品貿易と同じタイミングで結論を出せる分野に限定されると考えております。

 一方、金融、保険など、サービス分野で制度改正を要するものは、交渉に時間がかかり、交渉の対象には想定されておりません。

 したがいまして、これまで我が国が結んできた多くの協定とは異なりまして、サービス貿易全般をカバーするFTA、さらにはルール分野も含むEPAとは言えないということは、共同声明の内容からも明らかなものと考えております。

佐々木(隆)委員 いや、共同声明の方はそんなことを言っていません。物品とサービスというふうになっていて、日本はそれを、解釈を、物品をやって、その次にサービスをやるというふうに日本語の声明はそうなっているんですが、そんなふうには実はなっていないし、アメリカのこの交渉に当たる方々はFTAだと言っているわけでありまして。

 そして、サービスは時間がかかるという説明が今あったんですが、時間がかかると何が、なぜだめなのか、時間をかけないという理由は何なのか、もう一度お願いします。

大角政府参考人 時間をかけるとだめだといいますよりも、物品との交渉とあわせて同じタイミングで結論が出得るもの、こういったものについて、物品の交渉とあわせて交渉の対象としている、こういったことでございます。

佐々木(隆)委員 ほとんどわかりませんでした。

 実は、水準についても、日本はこれが上限だと言っていて、アメリカはこれがスタートラインだ、TPPがスタートラインだと言っているわけですよね。ここからまた違うんですが。

 もう一つ、一番私は問題だと思っているのは、物品に限定して早く結論を出すということは、物品というのは、手っ取り早く言うと、象徴的なのは自動車と農産物ですよ。物品に限られたことによって、より早く結論が出るということは、より早く影響が出るということですよね。北海道にとっては死活問題です、わざわざ区切ったことによって。これは全部一緒にやってきていただければいいものを、そしてFTAだと言って堂々とゼロからスタートするぐらいな、やはり決意を見せていただくべきだと思うんですね、政府は。

 言葉をかえたからといって、問題を矮小化してしまって、FTAに臨むだけの姿勢が全く感じられないわけです。ここも非常に問題です。

 EPAも実は同じなんですが、TPPの方が物品の量は多いですから影響は大きいです。しかし、EPAは北海道の農業にとっては直撃なんです。ほとんどブランドが一緒ですから。

 TPPの場合は、アメリカが抜けたこともあって、ブランドでそんなに競合しないものも多くなっております。ところが、全体量は確かにTPPの方が多いんですけれども、ブランドでいうと、EPAの方が直撃します。

 それと同じように、TAGで物品に区切ったことによって、その対象になる農産物はほとんどが北海道を直撃するわけですよ。しかも、それは、早く結論を出したい、時間がかからないようにしたいというのは、早く影響が出るということを意味するわけです。これを区切った意味というのは、全く意味がわかりません。なぜFTAじゃだめだったのか。

 日米でFTAをやるんだ、しかし、日本はしっかりととるものはとるしという決意を示すことの方がむしろ大事だったのではないか、決意を言葉によってごまかしてしまったのではないかというふうに、私は非常にこれは心配をし、同時に憤っているわけでありますが、このことについて決意をお願いします。大臣じゃないですか、大臣。

武藤委員長 では、大角審議官から先にやってください。

大角政府参考人 まず、私の方からお答え申し上げます。

 米国との具体的交渉はこれからでございます。決して簡単な交渉ではないと考えております。

 いずれにいたしましても、日米で物品貿易協定について交渉を開始することには合意いたしましたが、簡単な交渉ではないことは間違いなく、容易にまとまるものとは考えておりません。

吉川国務大臣 佐々木委員の御指摘、北海道が直撃だという、そういったお気持ち、よく私もわかります。

 FTAかどうかという御質問の背景には、今私が申し上げましたようなことが、懸念があるのではないかと承知をいたしておりますけれども、この点については、私どもといたしましては、米国側が、農林水産品について、過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であるという日本側の立場を最大限尊重する旨明記をされておりますので、そういった中でこれから交渉に臨んでいただかなければなりませんし、私どももそういった気持ちで臨んでいきたいと考えております。

佐々木(隆)委員 ぜひお願いをしたいんですが、FTAだと懸念があると今大臣おっしゃったんですけれども、だから余計私は心配なんです。FTAならみんな懸念するからTAGにしたのではないのかというふうに思わざるを得ないところが一番心配なところでございます。

 FTAだと言って堂々と渡り合っていただくぐらいな決意を示していただくことの方が、今、非常に大事であるのと同時に、交渉中に何らかが発効するなんということは当然それは考えられません、交渉中なんですから。交渉中は守られたというのはそれは当たり前の話であって、交渉中に物事が発効しちゃったら交渉している意味がありませんので。それはもう当たり前の話であります。

 同じようなことが先ほども質問に出たんですが、TPP、まあCPTPPですが、TPPは、先ほどのやりとりだと、発効してから全体枠を見直すというような、さっき答弁だったんですが、発効しちゃってから見直すんだと手おくれにならないんですか。発効する前に、どのぐらいの枠なんだということを決めて発効しないと、国際交渉の意味がないと思うんですが。

 先ほどの何か答弁を聞いていると、まずは発効するんだ、その後交渉するんだみたいな話の答弁だったんですが、それは順序が逆なのではないかというふうに思うんですが、もう一度答弁お願いします。

大角政府参考人 先ほど申し上げましたのは、アメリカとの具体的な交渉はまさにこれからでございまして、個別の事項、例えばTPPワイド枠の取扱い等、個別の事項について何ら決まっているものではありません。

 したがいまして、我が国といたしまして、九月の日米共同声明の段階におきまして、米国を含むTPP11協定が発効する見込みがなくなったとは考えていない、こういったことでございます。

 いずれにしましても、さまざまな面で農林漁業者に懸念がないようにしっかりと対応してまいりたいと考えております。

佐々木(隆)委員 時間が参りましたので、残念ながらこれ以上議論できないわけでありますが。

 まだそれは何も決まっていないのは当たり前の話です、これからやるんですから。その前に何かが起きるなどということもあってはならないと思いますが。その前だからこそ、国民に対して、安心してください、我々はこういう姿勢で臨みます、頑張りますということを言うべきであって、まだまだこれからだからといって引っ張られたのでは、余計不安が国民の中には広がっちゃうんですよ。それは順序が逆だと私は思います。ここはぜひ再考をお願い申し上げたいというふうに思います。

 実は、WTOのことも今何か見直しをするということ、改革案というものが出ていますし、片一方ではRCEPも間もなくスタートだというようなことを言われていて、国際交渉がどんどんと多岐にわたって動いておりますので、直接の担当が農水省ではないかもしれませんが、ぜひ、農業に極めて影響が大きいのでしっかりとした取組を求めて、終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

武藤委員長 次に、近藤和也君。

近藤(和)委員 石川県能登半島の近藤和也です。

 「つくろう、新しい答え。」国民民主党の議員の一員として、そして農林水産が盛んである地域で生まれ育った人間の一員として、特に一次産業は一番大事だな、この心意気で、この農林水産委員会の議論、これから取り組んでまいりたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 さて、吉川農林水産大臣、大臣就任おめでとうございます。また、副大臣、政務官、就任された皆様もおめでとうございます。

 特に、大臣は何度か落選を経験されておられます。私も二度落選をしているんですけれども、この農林水産大臣就任ということについては、御本人も大変うれしかったと思いますし、支持をされてこられた方も万感胸に迫る思いであったのではないでしょうか。先日伺いました所信については、その気合いも込めた、随分入っているな、そういった思いで私も聞かせていただきました。

 きょうは、その所信についての質疑になります。今後、大臣と長い議論になるのかは、それはわかりませんけれども、きょうは導入的な質問が多くなると思います。どうかよろしくお願いいたします。

 ことしは本当に大変な年でした。まずは、寒い。私の地域でも、氷点下五度、六度といったところがあって、断水といった被害もかなり大変でした。停電の被害もございました。そして、寒い冬が終わったと思ったらとんでもなく暑い夏がやってきて、そして、経験したことのない雨が降って、経験したことのない嵐がやってきて、そして、地域によっては各地域で地震が起きてしまいました。本当に厳しい秋でございました。

 大臣も、就任をされてから各地域に視察に行かれたということも所信の中で述べられていらっしゃいました。この数カ月の、現場を踏まえての大臣の思い、そして、具体的に、これを進めてきたんだ、これをもっともっと力を入れていくんだといったことがあればお聞かせいただきたいと思います。

吉川国務大臣 近藤委員からお話がございましたように、本当にことしは大きな災害、そして地震がたくさんございました。今振り返ってみましても、大阪北部地震、さらには七月の豪雨災害、そしてまた台風二十一号、北海道胆振東部地震、さらには台風二十四号もございまして、農林水産関係に本当に大きな被害を及ぼしておりました。

 今お話をいただきましたように、私も大臣の就任の直後に速やかに被災地を訪問させていただきまして、被害状況の調査を行うとともに、被災自治体ですとかJA、さらには農家、生産者の皆さんとも率直な意見交換も行ってまいりました。

 そのときに思いましたのは、やはり迅速な対応というのが極めて大切であるということ、さらには、来年の営農に向けて、しっかりとした災害対策というものが必要だなということを強く強く感じさせていただいたところでございます。

 そういったことを受けまして、農林水産省といたしましては、緊急的な災害復旧を行ってまいりましたし、さらには、北海道の胆振東部地震におきましては、北海道全土での停電というものもございました。生乳廃棄が発生するなど、甚大な被害ということにもなりました。そのためにも、非常用電源の確保ですとか、被災状況に応じたきめ細かな支援対策を九月の二十八日に決定をいたしまして、経営再建に全力を尽くしているところでもございます。

 また、先ほどの国会におきましても、与野党問わずに大変な御協力をいただきながら、災害対策関連予算も成立をさせていただきましたので、一日も早くなりわいが取り戻せますように、しっかりと努力をしていかなければならないと存じております。

 さらに、これからでありますけれども、防災、減災、国土強靱化のための緊急対策でございます。今申し上げましたような災害を受けまして、重要インフラを対象に点検を行って、その結果を踏まえて三年間で集中的に実施をしていく、そういったことでございます。

 被災地に対するこれまでの支援や災害復旧対策とは若干性格が異なりますけれども、そういった防災、減災、強靱化、その観点からこれからも力強く対策を進めていかなければ、そういう思いでございます。

近藤(和)委員 迅速な対応をとられているといったことも伺いました。

 実際には、自然災害と一次産業というのは、季節に応じての優先順位というものは入れかわるのではないかなと思っています。お米でいけば、刈取りをする前に大雨で稲がやられるということ。また、大雨が来る前に枯れてしまいかねないといった状態。そして、秋、収穫が終わった後であれば、崩れてしまった田んぼなどをいかに早く修理をしていくか、土砂を除くかということも含めて、来年の作付にかかわるといったこともあります。そして、苗などを買うための資金繰りということもあります。季節季節に応じた、よりきめ細やかな対応ということを私からもお願いをしたいと思います。

 特に、災害対応ということであれば、先ほどもおっしゃっていただきましたが、私たちも含めて、全会一致ということで補正予算が成立をいたしました。与党も野党も関係ないといったことでこの臨時国会がスタートしたことは非常によかったなというふうに思います。

 そして、その中で気になったことがございます。先ほど、今後三年間でということを言われました。なぜ三年にこだわるのか。一年集中ということも私はあっていいのではないかと思いますが、この三年の思いについて、ちょっとお伺いをしたいと思います。

吉川国務大臣 緊急的な災害対策というのは、先ほども申し上げましたように、迅速に対応していかなければなりません。ただ、災害の度合いによっては、数年かかる場合、そういったケースもあろうかと思います。

 そういったこともいろいろと勘案をしながら、三年間のスキームというのは、防災、減災、強靱化、そういうスキームの中で、今後、起きてはならないといいますか、緊急的なインフラの、災害が起きたとしても力強く対応できるような、そういった対応をこの三年間でしっかり進めておこう、そういうことで三年ということを申し上げております。

近藤(和)委員 具体的に三年の計画をつくられるという認識で受けとめさせていただきます。ありがとうございます。

 そして、今回の、私の能登半島なんですけれども、今まで大雨の被害というのは本当に少なかったです。大体七十代前後の方が、一度こんな厳しい大雨があったかなという程度で、ただ、それでも、自分の小さいころよりはもっともっとひどかったといった声を伺いました。

 その中で、特に農村地帯の方々で、ため池に関しての意識の変化ということを私も今回の豪雨災害の中で感じました。何かといいますと、ため池というのは基本的に、水が不足しがちなときに田んぼに水を上げるといったものですけれども、今回で、このため池が怖かったという声を随分といただきました。あんなところにため池があるなんてといった声も伺いました。

 今後はこのため池をいかに扱っていくかということを私も気になっていたところでございますが、所信の中でも、このため池のことについて大臣は触れていただいています。どのような取組をされていくのか、お伺いをいたします。

室本政府参考人 平成三十年の七月豪雨におきましては、多くのため池で決壊等の被害が生じたことを受けまして、七月十五日付で省内にため池対策検討チームを設置しまして、今後のため池対策の進め方を検討してまいりました。

 この検討の結果、決壊したため池のほとんどが、いわゆる、決壊した場合に下流に甚大な影響を与える防災重点ため池でなかった、避難行動の判断に不可欠なため池の現状や豪雨時の情報収集が十分でなかったこと、適正に管理されずに放置されているため池があることといった課題が浮き彫りとなっております。

 このため、今回、防災重点ため池の選定基準を見直すことといたしまして、今後、都道府県において再選定していただいた上で、全ての防災重点ため池において、ため池の位置や基本的な諸元を記載しましたため池マップの作成や緊急連絡体制の整備、浸水想定区域図の作成などを速やかに行うと同時に、決壊による影響度が大きい防災重点ため池から優先しまして、ハザードマップの作成、ため池の改修、補強、農業上の利用の低いため池の統廃合、こういったことを進めるなど、効果的に対策を進めていく方針であります。

 今回取りまとめたこの方針を踏まえまして、ため池の防災・減災対策についてしっかりと推進してまいりたい、このように考えております。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 このため池についてですけれども、今までは改修を中心といったことではなかったかなというふうに思います。今後は、廃止ということも先ほどの議論の中で出てまいりました。

 実際には、このため池については、改修だけではなくて、改修をするかどうか、若しくは廃止をするかどうかというのは、農家の方々と農業をされていない地域住民の方々との意識のずれ、そういう難しい問題もあるというふうには思っていますが、やはり、今回、私の地域の話になりますが、避難指示、避難勧告のときに、土砂崩れで、結果として、避難指示が出ていたときにはもう逃げられないといったところもありました。ため池がそういう存在になり得る場所も当然あるわけですね。

 こういったことも含めて、このため池対策の部分については、これは大手を振って、今後の予算、私は堂々と胸を張って主張していただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

 それでは、次の質問に参ります。イノシシの問題です。

 今回の大雨で、今まで崩れなかった田んぼの斜面のあぜのところですね、がたくさんございました。確かに、今までにないような雨だったからということも指摘をされていますけれども、もう一つ言われているのが、イノシシが餌を食べるために、ほじくり返すというふうに私たちの地域では言うんですが、ほじくり返してぼこぼこになって、普通の雨でも崩れていたんじゃないか、そういったことが指摘をされています。このイノシシの被害というのは、各地域、本当に大変なことだろうと思います。

 そして、私も先日、きょうは火曜日なので三日前ですね、能登半島の本当に上の方へ行きました。そこで言われたことが、落石注意だと言われたんですね、その地域の方に。なぜ落石注意かというと、雨のせいじゃなくて、イノシシが山の上を歩いて、そして石がどんどん落ちてくる。このイノシシの被害、鹿の被害もありますが、イノシシや鹿による落石の被害というのは、実際、被害額に計上されていないですよね。されるようなものじゃないというふうに思いますが、今までになかった被害ではないかと思います。

 そして、私も、数年前ですが、軽自動車、軽トラックですね、運転をしているときに、夜の九時か十時ぐらいだったと思います、広域農道のところで、イノシシのお母さんと子供、四頭か五頭いました。もう逃げないんです、イノシシが。間違いなく、ぶつかっていたら、私の軽自動車が破壊されていたと思います。大きな車であれば、イノシシをはねるだけ、それだけでも車の被害も出ると思いますが、はねたイノシシが夜間の道路にいることによって、それにぶつかる車の被害、そして更に二次、三次の被害といった可能性もあると思います。

 このイノシシをめぐる被害というのは、もう挙げれば切りがありません。これらの鳥獣被害ということに対しての現在の認識、そして取組について伺います。

吉川国務大臣 まず、野生鳥獣による農作物の被害を申し上げたいと思いますけれども、平成二十九年度が約百六十四億円と、五年連続で減少はいたしておりまするけれども、鳥獣被害は耕作放棄や営農意欲の減退の要因ともなっておりまして、数字にあらわれる以上に深刻な影響を及ぼしていると認識をまずいたしております。

 このために、生態系や農林水産業に深刻な被害を及ぼしている、今お話にもありましたように、イノシシ、鹿、この生息頭数を十年後の平成三十五年度までに半減することを目指した抜本的な鳥獣捕獲強化対策を平成二十五年に環境省と農林水産省で作成をいたしまして、捕獲に対する支援も行ってきているところでございます。

 この対策に基づきまして、鳥獣被害防止総合対策交付金によりまして、まずは、侵入防止柵の設置、追い払いのほかに、捕獲をした鳥獣をジビエ等に利用をするための処理加工施設や、適切に処理するための焼却施設の整備等に対して、総合的に支援を行ってきているところでもございます。

 また、来年度、三十一年度の概算要求におきましても、捕獲やジビエ利用の推進を図るために、百二十二億円、対前年比約十八億円増でありますけれども、要求をしておりまして、今後とも、地域の実情に応じた鳥獣被害対策が実施できますように努めてまいりたいと存じております。

近藤(和)委員 ありがとうございます。来年度の要求のこともお話を伺いました。

 実際には、平成二十三年のとき、前政権のときにこの鳥獣被害対策は五倍増、それから大体百億を超える前後のところで推移をしてきたと認識をしています。

 その上でなんですが、委員の皆様にもぜひこの言葉を知っていただきたいと思いますが、スマートフォンだとかスマートグリッドとよく言う、賢いだとか効率的だとか、こういう、最近スマート何とかという言葉がいろいろ出ていますけれども、最近は、スマートディア、ディア、鹿ですね、こういう言葉だとか、あと、すれた、賢くなったという意味で、すれた鹿、すれ鹿、すれたイノシシ、すれイノシシ、こういう言葉まで生まれてきているんですね。

 実際には、もう私のところも、本当に山奥のところもあります。いろいろな話を伺います。電気柵に対して、鼻を接触することでイノシシが嫌がって逃げるんですけれども、鼻だと水分がありますから、お尻から突っ込んでその電気柵を破壊する、これは何カ所も聞いています。ある人はそんなおちょくるなという話で怒られましたけれども、これは間違いなく各地域であるなど、イノシシも進化しています。

 そして先日、別の話も聞きました。イノシシが土をほじくり返して、大体、電気柵の柵というのは、下の方は二十センチぐらいですかね、土をかけて漏電させる。それで、ほかのところに入れるようにして、田んぼがやられた、そういったお話も伺いました。

 間違いなくイノシシは進化をしてきています。鹿はとうとう能登半島も全部来てしまうようになったんですけれども、改めて、このイノシシを減らしてくれという声は本当に大きくございます。

 その上でなんですが、やはり、行政にかかわる方々とお話をしていると、このイノシシを本当に、あえて簡単な言葉で言いますが、イノシシをやっつける気持ちがあるのかということは、私は認識を問うていかなくてはいけないと思っています。

 先ほど大臣から、半減という言葉を伺いました。正直なところ、半減というのはぬるいんですよね。このグラフにもございますように、バブル期から考えれば、今三倍になっています。そして、イノシシは大体五頭から六頭、七頭子供を産むと言われています。半分でいいよねということにやってしまったら、簡単に原状回復、更に増加をしていきます。

 確かに、生態系がだとか、生物の多様性が等々の話があるのはわからないでもないです。それもわからないでもないですけれども、むしろ、私の能登半島でいけば、イノシシはもともといなかったんですよね。イノシシがゼロの地域でした。イノシシのゼロの地域からとってみれば、もともとの生態系を守るということはイノシシをゼロにするということなんです。撲滅をする。私はそういった覚悟が必要だと思っています。

 そしてその上で、実際には、動物には国境や県境はないですから、取り締まるところの具体的な線引きというのは難しいと思いますが、やはり私は、全国一律で今イノシシを半減するという目標ではなくて、地域ごとである程度、この地域は撲滅地域だという形で設定をして取り組んでいくことは意味があるのかなというふうに思いますが、この提案についてはいかがでしょうか。

吉川国務大臣 今御指摘をいただきました、イノシシを始めとする有害鳥獣の生息頭数をゼロという目標は、現実的には非常に難しいなという感じはいたします。そこで半減という表現をさせていただきましたけれども、私も北海道であり、鹿の被害が物すごく多いところでございまして、ゼロにするという思いは一緒でございます。

 ですから、国のみならず、例えば北海道の場合は北海道庁との協力、連携の中で鳥獣被害対策というのもやっておりますので、県においてそれぞれのお立場で鳥獣被害をゼロにするという目標を持たれても、私は大変結構なことではないかな、そのようには思っております。新たに被害が発生している地域もございますので、できる限り早期に対策を講ずることが何よりも重要であると考えております。

 そのために、具体的に、被害をもたらす野生鳥獣の数を先ほど半減と言いましたけれども、委員御提案のありましたゼロということも、それぞれの地域において、都道府県あるいは市町村において目標を持っていただいても私は結構だと思いますが、そういった目標をつくって捕獲をしていく。

 さらには、二点目といたしましては、防止するための侵入防止柵の整備なども、これも強化をしていかなければならないと思っております。

 さらに、三点目としては、やぶの刈り払いなどの、野生鳥獣が作物に近寄らないための対策ということも必要ではないか、こう思っておりまして、こういった地域の取組を早期に実施することが必要であろうかとも思いますので、鳥獣被害防止総合対策交付金によって支援を行っていく考えもございますので、しっかりと対応していきたいと思います。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 ゼロ目標地域があっていいのではないかと、踏み込んだ答えをいただきまして、ありがとうございます。

 今度の、来年度の予算は二割増と予定をされておられるようですが、これもため池と一緒です。どんどん踏み込んだ予算要求、実際には全体としてトータルで賛成するかどうかは別として、気持ちとしてまずは応援したいなというふうに思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 実際には、本当に言われるんですね、このイノシシについては。私の地域でもどんどん平均年齢が上がっていっています。イノシシは毎年毎年新しいのが出てきますから、新手があらわれてくるわけですね。もうイノシシの方が圧倒的に数が多いという地域もありますから、ここはやはりお金が必要ですし、電気柵をつくるにしても、五十代、六十代ならいいですけれども、七十、八十、九十になると、電気柵をつくりに行くのも大変です。草刈りも大変です。こういう地域の実情も踏まえて、どんどん踏み込んでいただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

 そして、話をかえます。水産にかかわる話です。

 七十年ぶりの大改正、漁業法のお話は先ほどから出ております。漁業をいかにして盛り上げていくか、支えていくかということは大変重要です。私のところも、海岸線でいけば大体四百キロぐらいになるんでしょうか。それぐらい海となれ親しんだ地域でございます。

 その上で、先ほど各委員からお話がありました。北朝鮮の船が流れ着いてきている、北海道のお話がありました。日本海側全体では過去最高ということが私の地元の新聞でも書いてありました。そして、きのう、地元のニュースでは、違法操業ですね、北朝鮮の違法操業。能登半島沖の大体四百キロぐらい上に大和堆という好漁場がございます。こちらのぎりぎりのところに、実際に踏み込んで北朝鮮の船が進出をしてきています。この問題について、大臣の今の認識、取組についてお聞かせください。

吉川国務大臣 この大和堆周辺の違法操業については、大変遺憾に思っております。

 この大和堆周辺の我が国排他的経済水域における北朝鮮漁船による操業でありますけれども、これは、単に違法のみではございませんで、我が国漁業者の安全操業の妨げにもなっておりまして、極めて問題だと考えております。

 そのために、本年につきましては、我が国イカ釣り漁船の漁期前の五月から、水産庁の漁業取締り船を重点的に配備をいたしました。海上保安庁とも連携をしながら、我が国の漁業者が安全に操業できる状況を確保することを第一に、放水等の厳しい状況、放水というのは厳しくないのではないかということもありまするけれども、北朝鮮の漁船というのは、イカをとって干しているんだそうなんです。その干しているイカに対して放水をしますから、それは商品にならないということで、この放水というのは極めて、この対応というのは有効的な対応だと私も聞いております。

 そういったことをしっかりと今対応しておりますので、我が国の排他的経済水域からこれからも退去させていきたいと考えております。

 外国漁船による違法操業が続く中で、先ほど申し上げましたけれども、海上保安庁との連携強化はもちろんでありまするけれども、漁業取締り能力の向上など、水産庁の漁業取締り体制の強化も図っていかなければなりません。

 今後とも、この排他的経済水域内での外国漁船による違法操業の防止のために、毅然として対応してまいりたいと存じております。

近藤(和)委員 放水等が有効という認識を言われましたけれども、有効なのであれば、過去最高の、北朝鮮の船がどんどん来るということはないと思うんですよね。イノシシのところも、先ほどのグラフを見ていただければ、予算が五倍になったところからイノシシの数が少し横ばいになり始めたということがあります。北朝鮮は人間ですから、イノシシも賢いですけれども、彼らの方がもっともっと考えて行動しますので、本当に効果があるのかどうかということは、私はそこはしっかりと見直していただきたいと思います。

 そして、その上で、これは前の国会から、その前の国会からも繰り返されていることでございます。水産庁の武器携帯についてです。

 実は、齋藤委員が大臣でございました。私も質疑をさせていただきましたが、その進捗状況について確認をいたしたいと思いますが、これは去年の通常国会での議論を少し速く読ませていただきますので、このことについての大臣の認識を確認したいと思います。

 これは十一月三十日の議員の質疑の中です。

 びっくりしたんですけれども、武器の携帯ができないんです。手錠と警棒、これぐらいのレベルしかできないんです。でも、法律上は一応、特別司法警察職員なんですよ。警察なんですけれども、向こうが銃を向けてきたらもう逃げるしかない、退避行動をとるしかない。こんな状況で、私がトップだったら、出ていけと言えないですよ。日本の海を、漁業を守ってくださいと言えないです。だからこそ、今こういう状況になってきて、あの海域を守るためにも、何より必死に働いてくださっている現場の方を守るためにも、この辺の武器の携帯のあり方、今こそ見直さないと、今幸い殉職の方はいらっしゃらないと聞いたんですけれども、そうした中で万が一があったら、それは取り返しがつかないんです。そういった意味で、この点、大臣、これも政治のリーダーシップだと思うんですけれども、ぜひ検討、構いません、今すぐやりますと言うのは難しいのかもしれませんが、こうした武器の携帯も含めて検討をお願いしたいんですけれども、いかがでしょうかということで、当時の齋藤大臣はこう答えられています。

 御指摘、本当にありがとうございます。きのうも、参議院の予算委員会で私の方から答弁をさせていただいているんですが、外国漁船の操業が広域化する中で、増加する取締り要請に対応するために、水産庁もこれまで取締り船の増隻、大型化、装備の充実などを図ってきてはいるんですけれども、これとともに、今後より一層の漁業取締り体制の強化について検討していきたいと思っています。

 実際には、武器携帯のことは齋藤前大臣は答えられませんでした。それに対して、委員は重ねて質問しています。それは、武器の携帯も含めて、身を守る、もしくは取締りの円滑化を図るための、もちろん今私が指摘したような武器の検討も入っているということでよろしいですかというふうに重ねて質問しています。それについて前大臣は、それも含めて検討していきたいと思っています、こういうやりとりが一年前にありました。

 そして、私の方からも、ことしの五月三十日、同様の質問をいたしました。この進捗状況、どうですかということを聞きました。ここについては政府参考人が答えました。最初に当時の齋藤大臣が言われたこと、実質的にはあやふやな答弁しかそこには踏み込まなくて、結果として、この検討しますということは、その当時から半年たっても全く前進していないということが残念ながらわかりましたが、この件について改めて新大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 水産庁の職員の方々、本当に今多くの方々から、漁業関係者の方々から、立入検査、拿捕について、これをやってくれないともう船を追っ払えない、そういう声が本当に上がってきているんです。

 私、ちなみにこちら、配付させていただいた資料なんですが、これが十月十七日に出たデータですが、ちょうどこの船の、漁船の方から衛星の電話でいただいたんですね。とんでもない、大変な状況だ、悔しい、何とかしてくれ、そういう声を聞きました。近藤さん、あんたも何かやっていると聞いたけれども、全然状況は変わっていないじゃないかと怒られたんですね。本当に命が怖い、何を考えているんだ、そういう声をいただきました。

 その上で、放水で本当に効果があるのかというところは今横に置いておいて、やはりあえて立入検査、拿捕というところに踏み込んでいかない限りは、結果としてどんどん、来年も過去最高、その次も過去最高、こんなことになってしまえば、漁業者は潰れてしまいます。そして、漁業の町が潰れてしまいます。地域の産業が壊れてしまいます。このことについて、私はぜひとも大臣に、昨年の前大臣の答弁について、積極的な、やっていきますよ、追い払いますよといった答えをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

吉川国務大臣 立入検査、拿捕、さらには武器携帯についてということでもあろうかと存じます。

 これに関しまして、漁業監督官の武器の携帯等につきましては、現場の漁業監督官の意見も聞きながら今検討を重ねているところでもありまするけれども、漁業監督公務員の採用やキャリアパスのあり方、さらには職員の訓練や安全確保、武器及び弾薬の保管管理体制の整備なども検討をしなければなりません。実務的な課題が多数あるために、引き続き慎重に検討を続けてまいりたいと存じております。

 必要でありますれば、水産庁長官にも答弁をさせます。

近藤(和)委員 慎重に検討という間に、どんどん日本の船が追い払われます。そして、貴重な水産資源が奪われてしまいます。危機感を持って取り組んでいただきたいと思います。

 そしてまた、立入検査、拿捕については、実績がないからということも言われたことがあります。確かに、彼らとは、彼らを国として認めていない、国交がない、そしてさらには漁業協定もない、もちろん国際海洋法条約にも入っていないから、そもそもが、EEZに入ってくることはルール違反ですよということが通じないという現状がございます。

 きょうは、外務省さんにも来ていただいています。

 物理的に追い払うということ、そして、追い払うだけの装備をしっかり武器も含めて検討していくということだけではなくて、やはり外交を通じて、彼らをまともな国にしていく、まともな相手にしていく、国は動かすことはできないわけですから、この部分について中国に働きかける、友好国に。若しくは、違う国、北朝鮮だけでも百六十余りの国と国交があるわけですから、ちゃんとして、あなたの国もこういう世界の共通のルールに入ることがあなたたちの地域の利益になるのではないかといったこと、もちろん抗議も含めてですが、ここは取り組んでいくべきだと思いますが、いかがでしょうか。

鈴木(憲)大臣政務官 お答えを申し上げます。

 まず、北朝鮮に対しては、累次の安保理決議に従った制裁措置のみならず、日米韓、そしてEUなどによる独自の措置が講じられており、その効果について今なかなか正確な情報はないですけれども、一定の効果が上がりつつあるというふうには認識をしております。

 また同時に、委員から、御指摘というか、いろいろなことをやるべきじゃないかというお話がありましたが、まず制裁措置の中で、やはり瀬取りに対しても、しっかりと各国と連携をして進めていかなければいけないというふうに思っていますし、現在も、米軍を始めさまざまな関係国と、航空機による警戒監視活動と同時に、また洋上による監視活動も行っているところであります。

 そして、最後になりますけれども、特に、この大和堆における北朝鮮船籍による違法操業に関する問題については、しっかりと北京の大使館ルートを通じても、北朝鮮に対して累次にわたりこれまでも申入れをしているところでありますが、きょう先生から御指導いただいたこともよく踏まえて、厳正に対処していきたいというふうに思います。

近藤(和)委員 瀬取りの取締りといいますか、協力しないようにということも含めて言っていただいている、そして経済政策がきいているのではないかということも今伺いましたが、これも衛星電話で聞いた話です。去年は相手の船は木造が多かった。ことしは、くしくもこの写真の中で、鋼船が多くなっている。船の絶対量も多いですし、これは燃費、油を食う、木造の船と比べて。ということは、経済制裁が全然きいていないんじゃないかということ、そして瀬取りもされているんじゃないかということの怒りの声が上がってきています。

 ですから、放水についてもそうです、そして瀬取りの取締り、さらには外交ルートを通じての抗議も含めて、そして経済制裁についても効果が本当にあるのかということ。自分たちはやっているという、言いたいことは、気持ちはわかります。いろいろされているとは思うんですけれども、実際には大変に苦しい声がどんどんふえてきているということは、ぜひとも政府、お役所の皆様にも認識をしていただきたいと思います。

 特に、この北朝鮮対策については、アメリカがトランプ大統領になってから急に方針が変わってということで、日本の外交も、以前は圧力、圧力、圧力だったのが、圧力がきいたから対話に進んだんだという言いぶりもありますけれども、実際にはトランプに翻弄されている部分。

 日本が本当に北朝鮮と首脳会談を今進めようという話も仄聞をしています。けれども、もちろん拉致問題、核、ミサイル、これも大事です、ずっと数十年来の問題なのはわかりますが、五年前、十年前にこの違法操業の話はなかったですよね。以前からの問題を解決するのも大事ですが、こちらの問題も早急に私は片がつけられるんじゃないかと思います。

 総理の所信表明にも、この一文、今回の北朝鮮の違法操業問題は全く入っていませんでした。そして、大臣からの所信表明も入っていませんでした。そこは、私は残念だというふうに感じています。

 それでは、次の質問に参ります。

 ちょっと、この問いについては私は、まず大臣に、応援のメッセージを送りながらも残念な質問をいたします。この問題はやはり触れないわけにはいきません。正直に答えていただきたいと思います。単刀直入に伺います。

 十月十七日の、大臣の記者会見、質疑の中で、北海道洞爺湖町でのソーラーパネルをめぐる補助金の詐欺事件について、関係性を問う質問がございました。そこでのやりとりで、事実は承知していないと答えられました。

 ここで伺います。名前の挙がっている鋼材加工販売業アサミ社長の山内氏を御存じでしょうか。

吉川国務大臣 記者会見でそういう御質問がありました。そのときには、私は、全くその件について事実も何も存じ上げていませんでしたので、全く存じ上げません、そのようにお答えをさせていただきました。

 その後、週刊誌等、一部報道で、何か、この補助金の詐欺事件というんでしょうか、搾取事件というんでしょうか、関する口ききをしたのではないかとの内容が掲載をされておりましたけれども、そのような事実は全くございません。

 さらに、念には念を押して、私自身の名誉にもかかわることでもございますので、秘書にも話を聞きましたけれども、今、個人名を言われました方は、私は全く知りません。面識もございませんので何とも言いようがありませんけれども、秘書にも、このようなことがございましたので問合せをきちっといたしましたところ、いわゆる、その一部報道にあるような口ききなどはしたことは一切ないということでございました。ただ、担当部署の連絡先を教えたということは、そういうことはあったようでもございます。

 以上であります。

近藤(和)委員 山内氏とは面識がないということを確認いたしました。

 それでは、あと二人名前が挙がっているんですが、余り個人名を言うのもいかがかと思いますが、鈴木氏、そしてその息子さんについて、面識はありますでしょうか。

吉川国務大臣 鈴木さんと鈴木さんの息子さんに対しては、私も面識がありますし、秘書も面識はございます。

近藤(和)委員 それでは、先ほどの、山内氏からの問合せがあって担当部署に回したというのは、どこの担当部署になるんでしょうか。

吉川国務大臣 この件について、事務所、秘書には私は聞きました。質問がございましたので私は聞きましたけれども、これは、日本政策金融公庫と北海道電力の担当部署を教えてほしいということがあったということでございまして、その連絡先を教えたという、そのようなことでございます。

近藤(和)委員 北海道と、さらには政策金融公庫ということで、確認いたしました。

 そして、メールについて裁判の中で話があったようですけれども、申請の補助金について、バッジの方々等いろいろ、御報告と御相談をしたところ、既に助成金五千万円が決定しているとのことです、そういうメールが、審理の中で検察から山内氏に対して問いがあったようですが、このこと、このメールの存在、また真意といったところ、御認識はいかがでしょうか。

吉川国務大臣 そのようなことがあるということは、私は存じ上げておりません。

近藤(和)委員 改めて、このことについては、やはり、事実であれば、それこそ大臣が知らないところで勝手に名前を使われたということであれば、これはこれで大問題だというふうにも思います。

 一方、大臣がかかわる、若しくは事務所がかかわっていて、結果として詐欺事件に加担をしたということであれば、これもまた大問題ということであります。

 私は、改めて、この農林水産委員会、与党も野党も関係ないと思っています。気持ちのよい議論を今後していきたいと思いますので、どうか事実解明、これからも協力をしていただきたいと思います。

 きょうはもう時間が……

吉川国務大臣 私の名誉にもかかわることでありますので申し上げたいと思いますが、冒頭に申し上げましたように、一切、口ききをしたという事実もございませんし、私の事務所もそういった事実がないということを申し上げさせていただきました。

 それ以上説明のしようがございませんので、はっきりとこの場で申し上げさせていただきたい、こう思っております。

近藤(和)委員 本日は、さらに、先ほどの戸別所得補償制度、また輸出政策等について、生産農業所得について、また人手不足について、さらには、外交交渉、経済連携についての質疑をしたかったんですけれども、時間がなくなりましたので、また次回にさせていただければと思います。

 ありがとうございました。

武藤委員長 次回は、明十四日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五分散会


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