第3号 平成30年11月14日(水曜日)
平成三十年十一月十四日(水曜日)午前九時十一分開議
出席委員
委員長 武藤 容治君
理事 伊東 良孝君 理事 小島 敏文君
理事 齋藤 健君 理事 野中 厚君
理事 細田 健一君 理事 亀井亜紀子君
理事 近藤 和也君 理事 稲津 久君
池田 道孝君 泉田 裕彦君
稲田 朋美君 今枝宗一郎君
上杉謙太郎君 尾身 朝子君
加藤 寛治君 金子 俊平君
木原 稔君 木村 次郎君
小寺 裕雄君 斎藤 洋明君
坂本 哲志君 西田 昭二君
福山 守君 藤井比早之君
藤原 崇君 古川 康君
古田 圭一君 宮路 拓馬君
山本 拓君 石川 香織君
神谷 裕君 佐々木隆博君
長谷川嘉一君 堀越 啓仁君
関 健一郎君 緑川 貴士君
濱村 進君 大串 博志君
金子 恵美君 田村 貴昭君
森 夏枝君
…………………………………
農林水産大臣 吉川 貴盛君
農林水産副大臣 小里 泰弘君
農林水産大臣政務官 濱村 進君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 大角 亨君
政府参考人
(外務省大臣官房参事官) 林 禎二君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 光吉 一君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 横山 紳君
政府参考人
(農林水産省経営局長) 大澤 誠君
政府参考人
(農林水産省農村振興局長) 室本 隆司君
政府参考人
(林野庁長官) 牧元 幸司君
政府参考人
(水産庁長官) 長谷 成人君
農林水産委員会専門員 室井 純子君
―――――――――――――
委員の異動
十一月十四日
辞任 補欠選任
稲田 朋美君 尾身 朝子君
同日
辞任 補欠選任
尾身 朝子君 古田 圭一君
同日
辞任 補欠選任
古田 圭一君 稲田 朋美君
―――――――――――――
十一月十四日
特定農林水産物等の名称の保護に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)
は本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
特定農林水産物等の名称の保護に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)
農林水産関係の基本施策に関する件
――――◇―――――
○武藤委員長 これより会議を開きます。
農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官光吉一君、大臣官房総括審議官横山紳君、経営局長大澤誠君、農村振興局長室本隆司君、林野庁長官牧元幸司君、水産庁長官長谷成人君、内閣官房内閣審議官大角亨君及び外務省大臣官房参事官林禎二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○武藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○武藤委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。金子恵美君。
○金子(恵)委員 無所属の会の金子恵美でございます。よろしくお願いいたします。
ことし、我が国は、大阪北部地震、七月の豪雨、台風二十一号、そして北海道胆振東部地震と、多くの災害に見舞われました。災害で亡くなられた方々に哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様方に心からお見舞いを申し上げます。
吉川大臣は、大臣就任直後から、大阪府、和歌山県、北海道、愛媛県、広島県、岡山県を訪問されたということでございます。そして、被災の状況を御自身の目で御確認をされまして、所信的発言の中でも、農林水産業を生業として取り戻していただくために万全の対策をとらなくてはならないと痛感しましたとおっしゃっています。
そこで、改めて被災地の農林水産業の再生についての御決意をお伺いしたいと思います。
○吉川国務大臣 ことしは、ただいま金子委員からもお話がございましたように、大変大きな地震や災害が続きました。大阪北部地震、平成三十年七月の豪雨、台風二十一号、そして北海道胆振東部地震、さらには台風二十四号などであります。このように全国各地で災害が発生をして、農林水産関係に甚大な被害を及ぼしております。
私自身も、今お話をいただきましたように、速やかに被災地を訪問させていただきまして、被災自治体や生産者の方々との率直な意見交換を行ってまいりました。その際、強く感じましたことは、迅速な対応が極めて大切であるということ、そしてまた来年の営農に向けてしっかりとした支援対策が必要だということを感じたところでもございます。
このような状況を踏まえまして、農林水産省といたしましては、それぞれの災害に応じまして、災害復旧事業による農地、農林水産共同施設、森林関係、漁港施設等の早期復旧、さらには、農業用ハウス、機械等の再建や修繕の支援などのきめ細かい支援対策をできる限り早期に決定をいたしまして、農業者の経営再建に全力を挙げているところでもございます。
また、減災、防災、国土強靱化のための緊急対策は、電力喪失等を原因とする致命的な機能障害を回避したり、自然災害時に人命を守るために機能を確保する必要がありまして、重要インフラを対象に点検を行いまして、その結果などを踏まえて、三年間で集中的に実施するものであります。
農林水産省といたしましても、この緊急対策をしっかりと進めていくことが最も大切であろうかと存じております。
○金子(恵)委員 ありがとうございます。
しっかり進めていただきたいんですけれども、今回の補正予算で、災害対応の予算は総額九百七十四億円、公共事業、公共の方は九百二十二億円、非公共五十二億円が計上されているということであります。これらを十分に活用して、そして、被災された農業者の方々のニーズにしっかり対応していくということに尽きるわけですけれども、柔軟に支援策を講じていただきたいというふうにも思います。
そしてまた、甚大な被害を受けたところというのは大変時間もかかってくるということではありますけれども、そうなりますと、私も被災地福島の人間といたしましていろいろな経験をさせていただいているわけなんですけれども、やはり、第一次産業にかかわる皆様方の心が折れていくという様子も拝見させていただいてきました。
しっかりと支えていく仕組みというのは重要でありまして、そしてまた、さらには、自治体職員の方々の負担軽減といいますか、そういうものも必要になってくるわけです。補助金をもらうにしても煩雑な手続が必要であるとかということになっていくと、やはり大変厳しい状況になってくるわけで、そうしますと、やはり被災地の方々のまずは心も含めてしっかり支えていく、あるいは今申し上げましたように、自治体をもしっかり支えていくような、そういう相談の窓口も含めて整備していくということが重要かと思いますが、一言何かありましたらよろしくお願いします。
○吉川国務大臣 金子委員の御指摘はもっともだと思っております。
私も、大臣に就任する前に、地元でもありますので、北海道胆振東部地震の震源地でもあります厚真町を始めとする三町にも何度も足を運びました。その折に、自治体の長の皆さんを本当に助けていただいていたのは、東北六県の皆さんも北海道においでをいただいて、大変な御支援をいただいておりました。そういう形での自治体間との連携、さらに、それを支えていく私ども農林水産省分野でのいろいろな形というのはこれからもしっかりとしておかなければならないと思っておりますので、ただいまの御指摘を踏まえまして、災害対策に関しましてはしっかりとまた対応するように努力もしていきたいと思います。
○金子(恵)委員 よろしくお願いします。
そして、吉川大臣は、大臣就任後の初の国内視察先に福島を選んでくださったわけなんですけれども、十月の五日に、フェリスラテ、これは原発事故で避難した酪農家五人の方が営んでいらっしゃる福島市の復興牧場ですけれども、これを視察されたということでございます。そして、その後、内堀知事と会談をされたということであります。
もちろん、この福島を始めとする東日本大震災、原発事故の被災地では、地震、津波そして放射能汚染などのような本当に課題があり、そして、そこからの農林水産業の再生に向けて、農林漁業者の皆さんは本当に血のにじむような思いをして、努力をして今に至っているということを御理解いただきたいというふうに思うんですが。
私、でも、残念ながら、フェリスラテをごらんいただくのはいいです、これは一つの、復興予算も使っての成功例と言ったらいいんでしょうか、そして齋藤前大臣も実はフェリスラテをごらんいただいているんです、毎回毎回、大臣が福島入りするたびに、ここだけ視察というのもどうかなと思いまして、もちろん、北海道の御出身でいらっしゃいます大臣は酪農にも御関心があったのかなというふうに思いますけれども、それにしても、私はやはり、光の当たっていない、そういう部分の被災地の様子をしっかり見ていただきたいという思いがあるんです。
一番最初に福島を選んでいただいたことに対しましては、私は評価したいというふうに思います。ありがたいことだと思っています。でも、もっと、本当の厳しい状況を見ていただきたいと思います。
被災地をごらんになって、特に福島をごらんになっての所見と、そして今後の取組についてお伺いしたいと思います。
○吉川国務大臣 確かに、先進的に取り組むという酪農でございまして、また、更に規模も拡大をしていきたい、そういったお話も頂戴をして、大変元気が出てきたなというのが実感でございました。
ですが、一方で、今金子委員が御指摘をいただきましたように、まだまだたくさんの課題が残っております。内堀知事ともお話をさせていただきましたけれども、知事からは、営農再開ができない部分ということもお話を頂戴いたしました。さらには、風評の払拭、そしてまた輸出の促進の課題についても伺いましたので、それらにつきましてもまたしっかりと対応していかなければ、そういう思いを持たせていただいたところでございます。
今、農林水産省におきましては、福島県をしっかりと農林水産業を再生するために、まずは農業関連インフラの復旧や機械、施設や家畜等の導入、林業再開に向けた実証事業の実施、漁業の本格的な操業再開に向けた取組など、農林水産業の再開へ支援を行ってまいりました。さらに、生産から流通、販売までに至る総合的な風評対策などにも今現在も取り組んでいるところでもございます。
さらに、諸外国・地域における食品等の放射性物質に関する輸入規制につきましては、もう委員御承知かと存じまするけれども、福島第一原発事故直後、輸入規制が講じられておりました五十四の国、地域のうち、これまでに二十九カ国・地域での規制撤廃を実現しておりまして、粘り強く、また、更に働きかけを行っているところでもございます。
閣僚全員が復興大臣であるという意識を私ももちろん共有させていただいておりますし、被災者の皆様の気持ちに寄り添って、単なる復旧にとどまらない、将来を見据えた福島の復興再生に全力を挙げて取り組んでまいりたいと思いますし、また、時間の許す限り、金子委員の御指導もいただきながら、これから頑張ろうとしている、そういった方々にもぜひお会いをさせていただければ、こう思っております。
○金子(恵)委員 漁業の方でいえば、まだ試験操業中、林業の再生のためには、森林の除染をどうやっていくかということの課題もあるということでありますので、ぜひよろしくお願いします。
そこで、原発事故の避難指示区域であった地域では、新たな特産品、特産物をつくろうと、花卉栽培に力を入れるというようなことで復興の象徴としているところもありますが、実は、四月の五日の当委員会において、私は齋藤前大臣に、花卉振興と東京オリンピック・パラリンピックにおける国産花卉使用について質問をいたしました。
その際に、東京オリンピック・パラリンピックを復興五輪と位置づけているのであれば、ぜひ被災地の花を使っていただきたいということを申し上げ、私の地元の川俣町の特産花卉、アンスリウムを御紹介したという経緯もございます。
そのときの大臣の答弁の中では、農林水産省としては、ビクトリーブーケを始め東京大会のさまざまな場面において国産花卉が使用されるよう、花卉業界とも連携して今東京オリンピック・パラリンピック組織委員会に働きかけをしているところでありますが、引き続き努力したいと思いますという答弁をしていらっしゃるということであります。
この働きかけは、新大臣になられてももちろん引き続き行われることだというふうに思っておりますが、どのような形で取組が行われているのか、先般、川俣町の町長が実際にこのアンスリウムの件で組織委員会に要望書を提出したということでもありまして、かなり力は入れているんですが、それ以外にも、飯舘村というところでは、オリジナル品種のタイタンビカスというものを東京オリンピック・パラリンピックで使っていただきたい、そういう願いを持っていたり、また、相馬郡全体としてはトルコギキョウの栽培に力を入れているということであります。
そんなこともございまして、ぜひ、どのような取組を引き続き行っていただけるのか、御答弁をいただければと思います。大臣、お願いします。
○吉川国務大臣 東京オリンピック・パラリンピック競技大会におきまして、福島県を始めとする被災地の花卉を活用するということは、これは復興の進展をあらわすシンボルとなると私も考えております。
この件につきまして、花卉の生産、流通、販売、フラワーデザイン等に関係する主要九団体が大同団結をしていただきまして、昨年五月に日本花き振興協議会を結成していただきました。東京大会における国産花卉の活用について、具体的な検討を行っているところでもございます。
私ども農林水産省といたしましては、ビクトリーブーケを始めとして、競技会場など、東京大会のさまざまな場面において、被災地の花を含めて、国産花卉が使用されるよう、東京オリパラの組織委員会にも働きかけてきたところでもございます。
また、さらに引き続き、業界の皆さんとも連携をして、実現ができますように働きかけてまいりたいと存じております。
金子委員の御地元は、この東京オリパラで、たしか野球、ソフトが開催をされます。そういった関係方面にもまた一緒に働きかけをしていただけますと力強いな、こう思っておりますので、よろしくどうぞお願い申し上げます。
○金子(恵)委員 ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
次に、TPPの発効や、そして日・EU・EPAの国会審議が控えていたり、あるいは、来年一月には米国とのTAGの交渉が始まるというようなこの時期なんですけれども、きのうの日米共同記者会見が安倍総理そしてペンス米国副大統領とで行われたということで、FTAと言ったか言わないかという話が、きょうのこの委員会の前の理事会でも協議がされたところでもあります。農業者の方々は大変不安だと思うんです。きょうの日農新聞にも、言ったのか言わないのか、どうなんだ、本当に混乱しているというお話、この記事というのが載っているわけなんですけれども。私は、こういう部分も含めて、日本のその姿勢といいますか、そういうものをしっかりと示していかなくてはいけないというふうに思っています。
それで、ちょっと一つ質問を飛ばさせていただきますが、そういう姿勢を示さないと、本当に農業者の方々の理解を得ることができないという状況になっている中で、ちょうど十月二十四日の日本農業新聞、日農新聞の紙面でなんですけれども、モニター調査の結果というものが出ているんです。それが、安倍内閣の農業政策を評価しますかという問いに対しては、「全く評価しない」三三・七%、「どちらかといえば評価しない」三九・七%で、合わせて、評価しないと答えた方は七三・四%にもなるということがわかっているわけなんです。前回、四月のモニター調査においても同じような数字なんですが、そこから比較しても、やはり、全く評価しないという方は三・九%増ということになっています。
このような数字をどのようにお考えになられるんでしょうか。
規制改革推進会議などの諮問会議の発言力が強く、官邸主導の農政改革について、その政策決定のプロセスを、「生産現場の実態と乖離しており、農家の声を十分に反映していないため評価できない」と調査の中で答えた方々は八一・五%にも上るんです。
いろいろな交渉事の中で、農業というものがないがしろにされているのではないか。そして、全く農業を知らない方々の協議の中で我が国の農業、農政が決められているのではないか。こういう思いというのが現場から出ているのではないかというふうに思うんですけれども、大臣は、この調査をごらんになって、どのようなお考えをお持ちでしょうか、どのように受けとめていらっしゃいますでしょうか。
○吉川国務大臣 御指摘の報道は私も承知をいたしておりまするけれども、どのような方がモニターになっているかなど、具体的な調査方法を承知をしておりませんし、特定の報道機関が独自に行った調査でありますので、コメントは差し控えたいと思いまするけれども。
その上で、我が国の農業は、人口減少に伴うマーケットの縮小、高齢化の進行ですとか、耕作放棄地の増加など、大きな曲がり角に立っていると存じております。その活性化は待ったなしの課題と認識もいたしておりまして、その認識のもとに、この安倍内閣におきまして、農政全般にわたる改革を行ってまいりました。
その結果、生産農業所得が過去十八年で最高となりましたし、四十代以下の新規就業者が四年連続で二万人を超えるなど、着実に成果があらわれ始めてきていると存じております。
引き続き、農業者の皆様と真摯に向き合いまして、改革の内容も丁寧に説明しながら農政改革を推進するとともに、より農業の成長産業化を実現をしてまいりたいと存じております。
○金子(恵)委員 済みません、通告をしていましたので、この調査についてわからないということではなくて、やはりどのように、受けとめて、この数字を見ていただくと、かなり厳しいと思います。
モニター調査の最後では、「農政の立案、検討に当たって、どの組織・機関が役割をより発揮すべきだと考えますか。」、そういう質問もあるんですけれども、やはり、最も多かったのが、「生産者、消費者、学識者らでつくる農水省の審議会」八〇・三%であります。一方で、「規制改革推進会議などを含む首相官邸」と答えた方は四・八%のみであります。
つまりは、現場の声をしっかり反映させて政策をつくる、そういう原点に戻らなくてはいけないというふうに思っております。
しっかりとそれを進めていただくことをお願い申し上げまして、時間になりましたので、私の質問を終わらせていただきたいと思います。もっと真摯にこの数字を受けとめていただきたいということもお願い申し上げます。よろしくお願いいたします。
ありがとうございます。
○武藤委員長 次に、田村貴昭君。
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
最初に、日米貿易協定について質問をします。
トランプ大統領と安倍首相は、九月に、日米物品貿易協定交渉を新たに開始すると合意しました。
そこで、外務省にお尋ねしますけれども、この協定は、ガット、関税及び貿易に関する一般協定の上ではどういう扱いになるのでしょうか。ガット協定一条では、ある国に与えた関税を下げるなどの有利な待遇はほかの全ての国にも適用されるという最恵国待遇の原則が定められています。ガット協定一条の例外を定めた二十四条に適合させるということでしょうか。
○林政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、関税及び貿易に関する一般協定、いわゆるガットの第二十四条8は、関税同盟及び自由貿易地域の定義を規定してございます。自由貿易地域については、実質上全ての貿易について関税その他の制限的通商規則が廃止されている関税地域の集団をいうと規定してございます。
このガット第二十四条8に規定する実質上全ての貿易の要件を満たすかどうかという具体的な判断基準は確立しておりませんけれども、これまで、我が国としては、第一に、貿易量において実質上全ての関税その他の制限的通商規則が廃止されなければならないという量的基準、第二に、主要分野が自由貿易地域内の自由化の対象から外されてはならないという質的基準の両方を満たす必要があると考えてございます。
なお、量的基準については、貿易額の九〇%の関税撤廃を一つの目安としてございます。
○田村(貴)委員 そうしたら、そのガット協定二十四条8の(b)、ここに書いてある自由貿易地域というのがあるんですけれども、日米間での貿易協定は、この自由貿易地域というものを目指して今から話し合っていくということでよろしいんですね。
○大角政府参考人 TAGにつきましては、基本的に物品を対象とするものでございまして、これまで我が国が多数結んでまいりましたFTAとは異なりまして、包括的なFTAではございません。
我が国はこれまで、特定の国や……(田村(貴)委員「そんなことは聞いていないよ。聞いていない。質問を聞いていましたか」と呼ぶ)はい。もちろん、聞いております。物品貿易及びサービス貿易全般の自由化を目的とする協定という意味で、FTAという用語を用いてきております。
この交渉は、基本的に物品を対象としておりまして、サービスを含みます他の重要な分野で早期に結果が生じるものにつきましても交渉するとして合意したものでございます。これまで我が国が多数結んできたFTAとは異なるものでございます。
交渉はまさにこれからでございます。現時点で交渉の具体的な結果を予見することは困難でございますけれども、いずれにしても、交渉結果につきましては、我が国として、いかなる貿易協定もWTO協定と整合的である、こういう必要があると考えております。
○田村(貴)委員 その後の質問でそういう答えならばいいんですけれども、何を先走ってお答えになっているんでしょうか。
制度上のことを聞いているんですよ。国と国が貿易協定をするときに、ガット加盟国は、この二十四条の8(b)しかないじゃないかと。そうですよね。そこを聞いているんですよ。それしかないんですよ。
それで、このガット二十四条についての外務省の説明はどうなっているのか。ホームページを探しました。今もアップされているので紹介したいと思いますけれども、「日本のFTA戦略」というのが外務省に載っています。何と書かれているのか。「自由貿易協定(FTA) 物品の関税及びその他の制限的通商規則やサービス貿易の障壁等の撤廃を内容とするGATT第二十四条及びGATS(サービス貿易に関する一般協定)第五条にて定義される協定。」と、しっかり説明しているじゃないですか。
ある国同士の貿易協定の例外を、ガットはこの二十四条で定めているんですよ。その二十四条について、外務省はFTAだと言葉の説明で書いているじゃないですか。日本政府が言っている、先ほど先回りしたお答えにあったTAGというのは、外務省が言うように、FTAにほかならないのではありませんか。ちゃんと答えてください。答えられませんか。
○林政府参考人 お答えいたします。
先ほども申し上げましたとおり、そもそもFTAについては国際的に確立した定義があるわけではございませんけれども、委員御指摘のガット二十四条の自由貿易地域について定められているものと整合的なものというふうに考えてございます。
そのガット二十四条への適合性と、それからその協定をどう呼ぶかということについては、直接的には関係がないものでございます。
○田村(貴)委員 いろいろいろいろ、そのごまかしが、農政モニターにもあらわれるように、私も後で指摘しますけれども、不信、そして不満と怒りを買っている状況にあるわけですね。
日本政府が幾らごまかしをもってしても、アメリカ側はどう言っているのか。相次いでFTAと発言しているじゃないですか。報道も相次いでいます。昨日来日したペンス副大統領は、その訪日に向けてツイッターでこう述べています。FTA、自由貿易協定の交渉について安倍首相と協議をすると。御自身がツイッターで、自国民、世界じゅうに向けて発信しているんです。
少なくともアメリカの認識はFTAではありませんか。大臣、そう思われませんか。アメリカ側はFTAという認識じゃないんですか。
○吉川国務大臣 ペンス副大統領の発言につきましては、私はコメントは差し控えさせていただきたいと思っております。
いずれにいたしましても、日米間の交渉につきましては、九月の日米共同声明に従って行うことで一致をしておると存じておりまして、この点について日米間に認識のそごはないと承知はいたしております。
○田村(貴)委員 吉川大臣、ここは物すごく大事なところです。
貿易協定というのは、まず第一に、農産物への影響なんですよね。TPPだってEPAだってそうですよね。
そこで、吉川大臣に答えていただきたいということで、大臣の今後の交渉のカウンターパートナーとなるパーデュー・アメリカ農務長官は何と発言しているか。四日、日本との農産品をめぐる通商交渉、ここで、日本がEUと結んだEPAやTPP、これについて、これらを上回る水準や関税引下げを求めて、述べているではありませんか。
日欧EPAやTPPを上回る水準となれば、米、牛肉を始め農産物の輸入自由化、これは際限なく拡大されることになりますよね。日本の農林水産業は壊滅的な打撃を受ける、こういう流れに今あるんですよ。アメリカの農務長官がそういうふうに言明しているんですよ。
さて、農林水産省、安倍政権としてこれに対抗できるんでしょうか。大臣、しかとお答えいただきたいと思います。
○吉川国務大臣 日米物品貿易協定につきましては、日米の共同声明におきまして、農林水産品について、過去の経済連携協定で約束した内容が最大限であるとの大前提について米国と合意をしていると思っております。
ただいま御指摘をいただきましたパーデュー農務長官等米国要人の発言に対してコメントをいたしますことは差し控えたいと思います。日米共同声明は、日米首脳間で文書により確認したものでありますので、私は非常に重たいものと認識をいたしております。
農林水産省といたしましては、この日米共同声明を踏まえて、農林水産業の維持発展を旨として、関係府省と連携して交渉に臨んでいくという思いでもあります。
○田村(貴)委員 大臣の今の御答弁を生産者の方が聞いたら、やはり弱腰だなと思われるんじゃないですか。どこまでアメリカの主張に日本は納得していくんだろうか、そういうふうに受けとめてしまいます。
出されたので私も言いたいと思うんですけれども、首脳会談の合意事項の中で、日本としては農林水産品について、過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であるということの文章は書かれています、私も知っています。その意味は重たい、文章に書かれたから重たいと言っているんですけれども、この共同声明というのは、尊重すると述べているにすぎないんですよ。尊重すると述べているにすぎないんです。
外務省、一言で言ってください。尊重すると述べているにすぎないんですよね。TPP水準を超えないと確約したものなのか。確約した文章なんですか。お答えください。
○大角政府参考人 内閣官房の方からお答えさせていただきます。
共同声明の中では、「日米両国は以下の他方の政府の立場を尊重する。」ということで、日本として農林水産品について、過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であることについて尊重するとなっております。
これは、通常の交渉の中では、認識するとかというような言葉がよく使われている中で、ここで尊重するという言葉になったことの意味は大きなものがあるかと考えております。
○田村(貴)委員 尊重するということで、確約したものではないということであります。
そこで、もう一つ聞きますけれども、二十四条8(b)の自由貿易地域というのは、これは国同士、実質の貿易について関税その他の制限的通商規則を廃止するという条項になっているんですけれども、自由貿易地域を構成する上で、日本政府としては関税撤廃率をどのように捉えていますか。今までされてきた説明でいいですので、数字を出してお答えください。
○林政府参考人 お答えいたします。
先ほど申し上げましたとおり、ガット二十四条8に規定する実質上の全ての貿易の要件を満たすかどうかの具体的判断基準は確立してございません。
ただ、先ほど申し上げた量的基準、質的基準のうち、量的基準については、我が国としては貿易額の九〇%の関税撤廃を一つの目安としてきているところでございます。
○田村(貴)委員 とんでもない話ですよね。日米で自由貿易地域をつくって、九割以上の米国産の産品が無関税で自由に入ってくる、ここに踏み出すということですよ。WTO、ガットの仕組みの中ではこれしかないんですよ。こういう方向に今進んでいるのに、尊重している、信頼している、それでは責任ある立場とは言えませんよ。
TPPだってそうじゃないですか。断固反対がTPP参加、そして主要五品目についても国会決議に違反して対象とし、FTAを避けるためとしてTPP11を進めて、結局はFTA交渉に入っていっている。これ、現実ですよ。これは生産者と国民をまただますことになりかねないと、私は強い懸念を覚えるものであります。こうしたやり方はだめです。直ちに日米貿易協定は打ち切る、こういうことを求めたいと思います。
そこで、先ほど金子議員からも出されましたけれども、この輸入農産物の制限なき拡大、大規模営農の推進化等に生産者は大変な怒りと不安を抱えています。
資料をお配りしています。十月二十四日付の日本農業新聞の一面に「農政 評価しない七三%」の大きな見出しが躍っております。
裏面に農業に関するところの世論調査の結果が出されていますけれども、米の生産調整廃止にしても、農協改革にしても、日米貿易交渉入りにしても、所得増大政策についても、このモニターでは、評価しないが多数の声であります。
その評価について、先ほど吉川大臣は、どういう人がモニターなのかといったところで、コメントは差し控えたいと言われたけれども、これは日本農業新聞社に対してそういう答弁は失礼じゃないかなと思いますよ。やはり歴史があって、伝統があってこういうモニターをされているわけですからね。謙虚に受けとめるというのが大臣の一番の使命じゃないですか。
同じ質問ですけれども、一番最後に私は注目したんですよ。問いの二十、「安倍内閣では、規制改革推進会議などの諮問機関の発言力が強く、官邸主導で農政改革を進めています。いまの政策決定についてどう思いますか。」。アンサー、この2です。「生産現場の実態と乖離しており、農家の声を十分に反映していないため評価できない」、実に八一・五%。質問も具体的ならば、回答も具体的。ですから、生産者の思いというのは非常にリアルなものがあるというふうに思います。
官邸農政、官邸主導という言葉がこの委員会でもたびたび取り上げられてきたわけであります。こうしたやり方について、生産者は、現場と乖離している、私たちの声をもっと聞いてほしいと言っていることについて、大臣、もう一度お答えいただきたいと思います。これまでのやり方を改めて、そして農家の声に謙虚に耳を傾けるべきではありませんか。いかがですか。
○吉川国務大臣 先ほどの金子委員に対しましての答弁と同じ思いでありまするけれども、御指摘の報道は承知をいたしております。今も、資料で拝見もさせていただきました。しかしながら、先ほど申し上げましたように、どのような方がモニターになっているかなど、具体的な調査方法を私自身承知をしておりませんので、この報道機関が独自に行った調査であり、コメントをすることは差し控えたいと申し上げさせていただきました。
その上で、先ほども申し上げましたけれども、繰り返しになり大変失礼かと存じまするけれども、我が国の農業は、人口減少に伴うマーケットの縮小ですとか高齢化の進行、耕作放棄地の増加など大きな曲がり角に立っておりまして、その活性化は待ったなしの課題だと私どもは認識をいたしております。
この認識のもとに、農政全般にわたる改革を行ってまいりました。その結果、生産農業所得が過去十八年で最高となり、四十代以下の新規就農者が四年連続で二万人を超えるなど、着実に私は成果があらわれてきていると思っております。
引き続き、農業者の皆様と真摯に向き合います。さらに、改革の内容も丁寧に説明をいたしたいと存じますし、この農政改革を推進するとともに、より農業の成長産業化の実現に向けてしっかりと取り組んでいく姿勢には変わりはございません。
○田村(貴)委員 謙虚に耳を傾けていくとおっしゃるならば、こうしたモニターや世論調査の結果は謙虚に受けとめるという一言でいいんじゃないでしょうか。世論調査が誰がお答えになったかわからないと言ってしまったら、これは民主主義は深まりませんよ。
生産者の声に真摯に耳を傾けない官邸サイドから、また新たな提案が出てまいりました。漁業法の大改悪であります。
最初に、苦言を呈しておきたいと思います。
この漁業法の改定は、なぜ行う必要があるんでしょうか。立法事実を示す資料を、六日の閣議決定、私たち会派でレクチャーを受けました、そのときに資料を求めたにもかかわらず、まともな資料が今をもってしても提出されていません。そもそも、法案の農水委員への配付は三日後の八日でありました。法案が出れば通常は配付される調査部、調査部も大変苦労されていると思いますよ、こういう提案で。今も未定稿のままであります。まだ法案提出の段階に来ていないんじゃないですか。入管法改正案と同じく、生煮えの状態で出してきたんじゃないですか。
与党は、伺えば、あしたの本会議に漁業法をかけたいというようなことも聞いておりますけれども、余りにも拙速です。この短い会期中の間に漁業のあり方を全面的に変える、こういうやり方は断じて認められません。
一点、伺います。
生産者の理解は得られているんでしょうか。漁民の声を聞け、漁協の役割を潰してくれるな、こういう声を私はあちこちでいっぱい聞いてまいりました。区画漁業への民間参入とか漁業の優先順位の廃止であるとか、こうしたことについて漁協、漁民の理解は得られていると思っておられますか。その一点だけお答えいただきたいと思います。それは大臣に対してお願いしたいと思います。説明会じゃないから。大臣です。
○武藤委員長 申合せの時間が経過しておりますので、大臣、簡潔にお願いいたします。
○吉川国務大臣 漁業法の改正案の取りまとめに当たりましては、これまで、地方説明会などさまざまな機会を通じて、漁協や漁業関係者との意見交換を行ってきております。その法案の内容につきましても、全国漁業協同組合連合会や大日本水産会等の全国団体の理解もいただいていると承知をいたしております。
○田村(貴)委員 そのことは、はっきりさせていきたいと思います。
時間が来たので終わります。ありがとうございました。
○武藤委員長 次に、森夏枝君。
○森(夏)委員 日本維新の会の森夏枝です。
今国会も農林水産委員会でお世話になります。引き続き御指導賜りますよう、よろしくお願いいたします。
吉川大臣、御就任まことにおめでとうございます。大臣に御就任されて初めての党の部会において、吉川大臣は、災害対策と通商政策、水産改革を課題に挙げ、御自身の言葉で五分以上思いを話されたとお聞きをしております。
私は、特別委員会の方も、希望どおり、災害特と震災復興特に所属が決まりました。国内で災害が頻発する中、被害に遭われた地域の迅速な復旧復興に向け、私も取り組んでいきたいと考えております。
それでは、質疑に入らせていただきます。
まず初めに、農林水産関係の被害状況について伺います。
九月六日には、大臣の御地元の北海道で震度七の地震が起き、農作物や酪農に大変大きな被害が出ていると思います。
六月十八日の大阪北部地震でも大規模停電が起こりました。大阪の友人、知人にも確認しましたところ、夜はコンビニに人があふれ、少しでも人のいる安心、安全な場所、情報が入る場所に多くの人が集まり、異常な光景だったと話を聞いております。
平成三十年七月豪雨、台風二十一号、二十四号では、関西、四国、中国地方を中心に、農林水産関係でも、今までに経験のないような被害に見舞われました。
まず、平成三十年七月豪雨及び台風二十一号、二十四号について、政府で把握されている農林水産分野の被害額、またその内訳について、特にハード面についての被害を詳細にお聞かせください。
○小里副大臣 お話のとおり、ことしは、平成三十年七月豪雨、台風第二十一号、第二十四号など、大きな被害が頻発をしております。吉川大臣を始め政務三役が全員で手分けをしまして、それぞれの被災地を訪問し、現地の状況の把握に努めてきたところでございます。
平成三十年七月豪雨では、梅雨前線によりまして、広い範囲で記録的な大雨となりました。ため池の決壊や林地の大規模崩壊等、中国、四国地方を中心にして、全国で農林水産業に甚大な被害が発生をいたしまして、現在までに三千二百七十三億円の被害額となっていると把握をしているところであります。
また、猛烈な風を伴った台風第二十一号、第二十四号では、全国で農業用ハウスの倒壊や果実の落果、高潮、高波による漁港の損壊など、農林水産業に広域的に、かつ甚大な被害をもたらしました。台風第二十一号は、現在までに三百二十九億円、台風第二十四号は、現在までに五百六十四億円の被害額となっているところであります。
農林水産省としましては、被災された農林漁業者の方々の不安を解消して、意欲を持って一日も早く経営再建に取り組んでいただけますように、被災状況に応じ、緊急的な災害復旧や、被災農業者向け経営体育成支援事業等による農業用ハウスの再建など、きめ細かい支援対策を早期に決定をしたところであります。
被災された農林漁業者が営農意欲を失わないように、支援を加速化させていく考えであります。
○森(夏)委員 小里副大臣、ありがとうございました。
大変な被害が出ていると思います。政府として、しっかりと被災地の支援をお願いしたいと思います。
次に、先日の予算委員会で我が党の政調会長が発言をさせていただいたことを、再度、農林水産大臣に伺います。
先ほど、小里副大臣よりことしの夏の被害状況を伺いましたが、来年以降も台風は多く発生し、また被害が出てしまう可能性もあるのではないかと思います。災害が少しでも未然に防げるような努力が必要だと思います。災害が起こる前に被害を最小限に抑えられるような仕組み、また各自の御努力も必要かと思います。
先般、九千三百五十六億円の補正予算が成立しましたが、復旧復興費に七千二百七十五億円、昨年も三千億円の予算がついております。二十八年度予算では、災害復興の予算が一兆九千億円ついております。
吉川大臣は、今後の農林水産分野の災害に対して、農家の方々を始め国民と日本の農林水産業を守るために、被害を減らすための取組としてどのようなお考えをお持ちでしょうか。お聞かせください。
○吉川国務大臣 森委員の御指摘のとおり、災害に対する事前の防災・減災対策というのは極めて大切なことであると存じております。
近年、御指摘をいただいておりますように、集中豪雨、大規模地震等による災害が大変多くなっておりまして、さらに、これは激甚化いたしております。その災害による被害を軽減するためには、今申し上げましたように、事前に防災、災害対策に取り組むことは、インフラ整備のコストを軽減する観点からも私は重要と考えているところでもございます。
平成三十年の七月豪雨あるいは北海道胆振東部地震によりまして、重要インフラの機能に支障を来しました。国民経済や国民生活に多大な影響が発生したことから、現在、総理の指示に基づきまして、電力喪失等を原因とする致命的な機能障害を回避したり、自然災害時に人命を守るために機能を確保する必要がある重要インフラを対象に、今、点検を行っているところでもございます。それを十一月末までに、点検結果と、さらに対応方策を取りまとめることといたしております。
この点検結果などを踏まえまして、排水機場等のインフラ施設の非常用電源設備の確保ですとか、あるいはため池の改良など、防災、減災、国土強靱化のための緊急対策を三年間で集中的に実施をして、災害に対して強靱な農山漁村をつくり上げてまいりたいと存じております。
○森(夏)委員 大臣、ありがとうございます。
防災、減災の取組をしっかりお願いしたいと思っております。
災害のうち台風に関しては、発生をしてからおおむね五日間で勢力が弱まり、台風ではなくなるそうです。また、台風の進路予報の精度も年々上がってきております。ことしの予報では、台風が発生しましたから始まり、幾つかの台風の進路が示されるとともに、このまま行くと日本列島に直撃します、皆さん台風に備えてくださいや、非常に強い勢力のまま過去最大級のなどの予報が出されるのを何度も耳にしました。このような予報をうまく活用し、この五日間で、台風の進路、台風の大きさ等を踏まえ、未然に防ぐ対策の強化をお願いしたいと思っております。
例えば、台風直撃の前に少し早目に収穫をして冷蔵庫に保管をしておくことなどができれば、被害額も減少させることができると思います。保管のための冷蔵庫や非常用電源等の整備は必要だと思っております。
ことしは本当に災害の多い年でした。一つ一つの災害を教訓に、今後の取組に生かしていただきたいと思います。人命を守り、農作物を守るために、気象庁を始め各省庁との連携を更に強化していただき、また、必ず来る台風に対してしっかりと備えていただきたいと思います。
次に、台風の個別の被害についてお伺いをします。
ことしの台風二十一号、二十四号で、倒木処理が全国で問題になっております。この倒木の処理については、通常の立木の伐採とは異なり、切断時のはね返りや、伐採又は切断時の材が不安定であるために、二次災害を起こしやすい条件にあることから、専門家でないと伐採することが困難であるとお聞きをしております。
私の地元京都でも、今回は今までに例のない規模の倒木が、京都市、亀岡市、綾部市など京都府内全域で起きています。今までどのように倒木の処理をしてきたのか伺いましたが、今回の台風のように広域な大災害は初めてで、経験のないこととお聞きをしました。何段も木が重なって倒れていると崩れてしまう危険性があるために、倒れている一番上の木から処理をしないといけないそうです。効率的に上の木から処理をしようとすると、現実的ではありませんが、空輸しないと上から処理していくというのは大変難しいと思います。現状では、専門家も少ない中、処理対応が追いつかず、手つかずのままという状況です。
七月豪雨、台風十二号、二十号、二十一号、二十四号と、たび重なることしのような災害が来年も起こらないとは言えません。時間はかかると思いますが、倒木処理を進め、今後に備える必要があるかと思います。
倒木の処理はどのように行っているのか。また、手つかずの倒木は今後どのようにされるのか。対策についてお答えください。
○牧元政府参考人 お答えをいたします。
委員御指摘のように、ことしは、台風二十一号などによりまして、京都府などで大変大きな風倒木の被害が起きているところでございます。
この風倒木の処理についてでございますけれども、これは森林整備事業によりまして、被害木の伐採、搬出と、その後の植栽に対して支援を行っているところでございます。既に、京都府の一部の市町村におきましては、森林組合等が被害木の処理に着手をしているというふうに承知をしているところでございます。
また、そもそも、風害等の災害に強い健全な森林を育成するということ、水源涵養等の森林の有する公益的機能を発揮させていくということも大変重要だというふうに考えておりまして、このために、森林整備事業によりまして間伐、再造林等を推進しているところでございます。
引き続きまして、京都府、地元の市町村等と連携をいたしまして、これらの取組を推進いたしまして、森林の復旧整備を図ってまいりたいと考えているところでございます。
○森(夏)委員 ありがとうございます。
大変数が多く、私の地元でもまだまだ手つかずのところもございますので、これもしっかりと対策を講じていただきたいと思います。
前国会で、私の地元選挙区である京都乙訓地域の放置竹林の問題も質疑させていただきました。この竹もことしの台風で倒れてしまいました。向日市には竹の径というすばらしい絶景スポットがあります。行ってみたい新緑絶景ランキングで日本一となったところです。その絶景の竹林も台風で倒れてしまっておりますので、また政府の力もおかりをして、一刻も早く復旧されますようお願いをしておきたいと思います。
次に、園芸施設共済について伺います。
大臣が記者会見で、大阪で保険加入のばらつきがあるとお話をされておりました。京都での加入率は四割とのことです。なかなか掛金を支払うのが大変かと思いますが、やはり、こういう事態が重なりますと、そして今後の災害の可能性も考えますと、加入していただくことがよいかと思っております。もちろん強制するわけではございませんが、自己努力を促し、その努力を国や自治体で支えていくというあり方が望ましいのではないでしょうか。
そこで、今後、園芸施設共済の加入促進に関して、国としてどのように取り組まれるのか、お聞かせください。
○大澤政府参考人 お答えいたします。
御指摘のとおり、自然災害が多発する中で、事前に農業者の皆様が災害に備えていただくという観点から、園芸施設共済に加入していただくことは極めて重要であると考えております。
これまでも、利用者が加入しやすい仕組みにするということで、補償内容の充実等も行ってまいりました。また、ことしからは、共済金の支払いを受けなければ掛金が下がる、自動車の保険のような仕組みを導入いたしまして、なるべく掛金の負担についても軽減するような仕組みを導入しているところでございます。また、加入促進という観点からは、実行しております農業共済団体による全ての未加入者への戸別訪問、こういうことにも取り組んできているところでございます。
また、ことしの災害の多発に対応いたします観点から、本年からは毎年、降雪前の十一月と台風前の六月を、災害に強い施設園芸づくり月間というふうに設定をいたしました。この十一月から、まず災害を避けるための事前の技術指導とともに、共済に入っていただくためのパンフレット、ポスターの作成、配布、それから農林省の職員による各地へのキャラバンなどを実施しているところでございます。
今後とも、このような取組を継続いたしまして、施設共済への加入を促進してまいりたいというふうに考えてございます。
○森(夏)委員 ありがとうございます。
しっかり対応していただいているそうなので、これからもお願いしたいと思います。
最後に、入管法に関して質問をさせていただきます。
今回の入管法で、在留資格、特定技能について、受入れを希望している十四業種に農業と漁業が入っております。
通常国会でも、担い手不足の問題や若者の育成についても何度か質問をさせていただきました。高齢化社会、人手不足の対応として今後優秀な外国人の受入れが必要であることは理解をしておりますが、今回の受入れは最大四万七千人とのことですが、農業、漁業の分野ではどのぐらいの人数が不足していると懸念をし、どのぐらいの希望や要望があるのか、教えてください。
また、漁業従事者に関しては毎年二千人弱の新規就業者がいらっしゃるとお聞きをしました。毎年二千人の新規就業者がいても目標数や要望に足りないのでしょうか。あわせて伺います。
○大澤政府参考人 お答えいたします。
現在、これは政府全体で、外国人材、今回の新たな在留資格の創設による業種別の外国人材の受入れ見込み人数等につきましては、政府全体で今精査中でございまして、今最終段階に入ってきていると思いますので、これは政府全体として、全業種で、しかるべきときに国会にもお示ししたいというふうに考えております。
ただ、農業、漁業におきましては、三つのポイントがあると思っております。
まず、共通して、就業者の減少、高齢化が非常に進行しているということがあります。
二つ目としては、有効求人倍率も全産業平均を上回る人手不足の状況にあるということがございます。二つ例を挙げますと、農業分野では例えば畜産、養畜関係の作業員が有効求人倍率二・八倍、それから漁船員は二・五二倍というような状況にございます。
三つ目のポイントとしては、人手不足の解消のために、政府といたしましても、先端技術の活用でありますとか、新規就農者に対する支援でありますとか、いろいろ取り組んでおりますけれども、現場において雇用労働自体の需要が非常に増加しておりますので、その需要増に対応し切れていないということがあろうかと思っております。
そういう状況でございますので、外国人材、外国人技能実習生等の活用が現在増加しておりますので、最終的な数字につきましては近々お示ししたいと思っておりますけれども、いずれにしろ、即戦力となる外国人材のニーズは極めて高いものというふうに認識しております。
○長谷政府参考人 漁業就業者の確保につきましては、就業希望者が経験ゼロからでも就業、定着できるよう、就業相談会の開催や漁業現場での長期研修等を支援しておりまして、毎年千九百名程度の新規就業者を育成、確保してきたところでございます。
しかしながら、平成二十九年の漁業就業者数十五・三万人と、直近三年間で約一割減少しております。六十五歳以上の就業者が五・九万人と全体の約四割を占めますので、今後も減少が続くと見込まれます。
このため、農林水産省としては、引き続き、新規就業者の育成、確保に向けた取組を着実に支援するとともに、水産改革の取組を通じて、漁業を若者にとってやりがいのある魅力的な産業にしていくこと等によりまして、将来の我が国の漁業を担っていく国内人材の確保を目指していくこととしておりますけれども、なお人手不足の状況を直ちに改善し解消することは困難であると考えているところでございます。
○森(夏)委員 現場で何人足りないのかという把握はしっかり必要だと思っております。
最後の質問に移ります。
外国人技能実習生の失踪に関してですが、農業従事者が一番多いという御説明を受けておりますが、農業関係の技能実習生の失踪者数は把握をされているのでしょうか。お答えください。
○大澤政府参考人 お答えいたします。
技能実習生の失踪につきましては、法務省の調べがございます。それによりますと、技能実習生全体での失踪数は平成二十九年で七千八十九名、そのうち農業分野の技能実習生の失踪者数は千二百七名と聞いてございます。ちなみに、これは分野別に分かれておりますけれども、分野別の中では建設関係が最も多く、二千五百八十二名というふうに聞いております。
以上でございます。
○森(夏)委員 ありがとうございました。
労働力の確保は農林水産業にとって非常に重要な課題でありますが、入管法についてまだまだわからないことが多いです。特に日本人の農業従事者、漁業従事者の所得向上を考えますと、人手不足解消のための外国人の必要人数について整合がつくように引き続き教えていただきたいと思います。
時間となりましたので終わります。ありがとうございました。
○武藤委員長 この際、暫時休憩いたします。
午前十時十五分休憩
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午後一時開議
○武藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
本日付託になりました内閣提出、特定農林水産物等の名称の保護に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣吉川貴盛君。
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特定農林水産物等の名称の保護に関する法律の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
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○吉川国務大臣 特定農林水産物等の名称の保護に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
この法律案は、経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定を締結し、これを的確に実施するため、特定農林水産物等の名称の保護に関する法律等の改正を行うものであります。
次に、法律案の主要な内容を御説明申し上げます。
第一に、登録又は指定の日前から農林水産物等に使用されていた特定農林水産物等に係る地理的表示と同一の名称の表示等の使用期間の制限を行うこととしております。
第二に、広告等における特定農林水産物等に係る地理的表示の使用について規制の対象とすることとしております。
このほか、所要の改正を行うこととしております。
以上が、この法律案の提案理由及び主要な内容であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
○武藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
次回は、明十五日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後一時二分散会