衆議院

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第9号 平成30年11月27日(火曜日)

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平成三十年十一月二十七日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 武藤 容治君

   理事 伊東 良孝君 理事 小島 敏文君

   理事 齋藤  健君 理事 野中  厚君

   理事 細田 健一君 理事 亀井亜紀子君

   理事 近藤 和也君 理事 稲津  久君

      安藤 高夫君    池田 道孝君

      泉田 裕彦君    稲田 朋美君

      今枝宗一郎君    上杉謙太郎君

      加藤 寛治君    金子 俊平君

      神谷  昇君    神山 佐市君

      木原  稔君    木村 次郎君

      木村 弥生君    小寺 裕雄君

      斎藤 洋明君    坂本 哲志君

      西田 昭二君    福山  守君

      藤井比早之君    宮川 典子君

      宮路 拓馬君    石川 香織君

      神谷  裕君    佐々木隆博君

      長谷川嘉一君    堀越 啓仁君

      関 健一郎君    緑川 貴士君

      濱村  進君    大串 博志君

      金子 恵美君    田村 貴昭君

      森  夏枝君

    …………………………………

   農林水産大臣       吉川 貴盛君

   農林水産副大臣      小里 泰弘君

   農林水産大臣政務官    濱村  進君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            室本 隆司君

   政府参考人

   (水産庁長官)      長谷 成人君

   政府参考人

   (国土交通省土地・建設産業局次長)        鳩山 正仁君

   農林水産委員会専門員   室井 純子君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十七日

 辞任         補欠選任

  古川  康君     安藤 高夫君

  山本  拓君     宮川 典子君

同日

 辞任         補欠選任

  安藤 高夫君     神谷  昇君

  宮川 典子君     山本  拓君

同日

 辞任         補欠選任

  神谷  昇君     木村 弥生君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 弥生君     神山 佐市君

同日

 辞任         補欠選任

  神山 佐市君     古川  康君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 漁業法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第八号)


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     ――――◇―――――

武藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、漁業法等の一部を改正する等の法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省農村振興局長室本隆司君、水産庁長官長谷成人君及び国土交通省土地・建設産業局次長鳩山正仁君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

武藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

武藤委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。亀井亜紀子君。

亀井委員 おはようございます。立憲民主党の亀井亜紀子でございます。トップバッターで質問させていただきます。

 質問する前に一言申し上げたいんですけれども、今回の漁業法、七十年ぶりの改正ですが、それに対して質疑時間が大変短く、余りにも拙速だと思います。皆様もお持ちだと思いますけれども、この法律案、電話帳のようです。中身を見ましても、新旧対照になっておりません。つまり、新法に近いと思います。

 なぜこんなことになったかということを専門家に聞きましたら、漁業の法律と資源管理の法律、二本を一つに合わせたから、だからこんなふうに分厚くなったのであって、やはり今までの法律とは根本的に違うというふうに、そういう見解を専門家はおっしゃっています。

 ですので、私は、農協法の改正のときには、よく記録を見ましたら、二カ月の時間をかけて丁寧に質疑と、あと、地方への、現場への委員派遣と公聴会と、参考人質疑は二回やっております。それに対して余りにも拙速ではないかということを先週から申し上げているんですけれども、会期延長はないという前提で、どうしてもあす採決にしないと間に合わない、だから公聴会はなしだと。

 そして、農協と比べると漁協は予算規模が十倍も違うからそこまで時間をかけられないというようなことも言われまして、私、大臣の所信に対する質疑のときに、何をもって成長産業と言うのか、その基準が、輸出高とか生産者の所得ですとか、そういういわゆるお金に換算した価値観に寄り過ぎているのではないかという質問をしたんですけれども、そのときのことを思い出しました。

 ですので、私、まず最初に大臣に、漁業も一つの産業なわけですから、農業と同じぐらい大事である、今回これだけ拙速に議論していますけれども、水産業も一つの産業として農業と同じぐらい重要なんだということをまず初めに大臣に明言していただきたいと思います。

 よろしくお願いいたします。

吉川国務大臣 亀井委員御指摘のとおり、漁業は、私は農業と同じように大切だとも思っております。また、林業ももちろんそのとおりでもございます。

 今回の改革に当たりまして、我が国の水産業に関しましては、日本の周辺水域に形成された豊かな漁場を活用し国民に対して水産物を安定供給するとともに、漁業者が生活する漁村地域の維持発展や、国境監視も含めた多面的機能の発揮に貢献するなど、我が国にとって極めて重要な機能を有していると認識もいたしております。

 こうした我が国の水産業の機能が将来にわたって発揮されますように、今回の法案において、漁村の活性化等に十分配慮しつつ、漁業生産力を発展させるための漁業許可制度ですとか海面利用制度の見直しを行うとしたところでもございます。

 また、今回の水産政策の改革を確実に実行に移すことができるように予算面でもしっかりと確保していかなければならないという思いもございますので、頑張らせていただきたいなとこう思っております。

亀井委員 もう一つ、今の予算面に関する質問ですが、私たち、この委員会で視察がないということで、立憲民主党としては、北海道に、ぎょれんと、あと、小樽の港に視察に行きました。北海道のぎょれんとお話をして私たちが問題点を指摘しましたら、その問題点は、この法律改正に関する問題点について意識は共有できました。

 では、なぜぎょれんはこの法律改正を受け入れたのか、了承したのかということを聞きましたら、それは、予算を三千億円つけてもらえるからだということを言っておりました。どういうことに使うんですかと言ったら、例えば漁船のリース事業などは非常に人気があって順番待ちだ、なので三千億の予算はありがたいということを言われたんです。

 ですので、結局、ぎょれんいわく、自分たちの要望からできた法律ではなくて、やはり、規制改革推進会議がつくった提言に基づいてつくられた法律が上からおりてきた。そして、これを受け入れてくださいとお願いされたんだから、予算要求するのは当たり前だよねと。

 それで、この三千億という約束があって、私たちは、一回きり、三千億もらったからといって、漁業のあり方そのもの、根本的な資源管理とか漁業権のことが変わるわけですから、一回きりでどうしてのんだんですかと言ったら、いや、当然三千億は毎年つくものだと理解している、そういうことで受け入れたと言われたんですけれども、水産業のこの予算三千億というのは毎年必ずつくというそういう理解でよろしいでしょうか。

 大臣にお伺いいたします。

吉川国務大臣 私も北海道ぎょれんの皆さんと何度かお話をすることがございます。確かに、予算に関しましては、このたびの来年度の予算のみならず、毎年、水産関係の予算を充実させてほしい、ふやしてほしいというそういう要望も、私が大臣に就任する前からそういった声はいただいております。

 今回の予算に関しましては、水産改革に資する予算というものをしっかり確保しなければならないと私自身も思っておりますが、我が国の水産業の機能が将来にわたってしっかりと発揮されるための予算を確保する必要があるのではないか、こう思っております。

 まずは、年末の決定に向けて必要な予算が確保できるように最大限努力をしてまいりたいと存じます。

亀井委員 案の定、必要な予算を最大限確保するということであって、毎年その三千億、水産業の予算を拡大したわけではないというふうに捉えざるを得ないなと思っておりますので、これは地元の漁連の認識がやはり甘いのではないか、そう感じております。

 次の質問に移りたいと思います。

 私は、週末、地元で漁業者の声も聞きましたし、また、野党の理事で塩竈と石巻にも行ってまいりました。委員会で視察がない分、現場の方の意見を聞いてまいりました。そして、どういうことを尋ねてほしいかと聞きましたところ、一体、現場にどのぐらい足を運んでこの法律はつくられているのか、まずそれを聞いてくれと言われました。なので、伺います。

 まず、今の政務三役の方はこの間就任した方ばかりですけれども、法律をつくるに当たって政務三役がどれほど現場、漁協などに足を運んだのかということ、そして、水産庁はどの程度説明会を開いたり漁協に足を運んだのかということについてそれぞれお答えいただきたいと思います。

 済みません、水産庁と、あと政務の部分と、別々にお答えいただけますか。

吉川国務大臣 政務三役がどれだけ、何回説明に出向いたのかという御指摘だったと思いますが、確認をしましたところ、政務三役が直接説明に出向いてはいないということであります。

 農林水産省と団体が協力をいたしまして、漁業者団体の開催する会議などさまざまな機会を通じまして、漁協や漁業者等との意見交換を行ってきたと承知をいたしておりまして、本年六月から十月末までの間に全国各地で九十九回の説明会を実施してきたところでもございます。

 詳細につきましてはまた水産庁長官から必要であれば答弁をさせますけれども、漁業関係者の方々に更に御理解をいただけますように、今後も引き続き丁寧な説明に努めてまいりたいと存じております。

長谷政府参考人 お答えいたします。

 今大臣から答弁いたしましたとおり、本年六月から十月末までの間に全国各地で、求めに応じてその都度その都度説明に人を出しております。それで九十九回ということでございますし、これは十月末までということでありまして、今月に入っても、現在も説明を続けているということであります。

 今後とも引き続き丁寧な説明を重ねていきたいというふうに思っております。

亀井委員 そんなことだろうと思いました。政務三役は誰も現場まで足を運んでいないということを伺いまして、やはり、本当に漁業者の声に寄り添っていないなというふうに感じております。私が現場に行きまして話を聞いてまいりますと、この法律がいかに現実に即していないかということがよくわかりました。

 きのうの参考人質疑で漁連の岸会長がいらしていましたけれども、私の地元、島根の方です。島根の漁協で聞いてみますと、理事のレベルでまだよくわかっていないです。例えば、漁業調整委員会の公選制が廃止されるということも、そんなうわさは聞いたけれども、最終的にはよくわかっていない。廃止という文字を見て愕然とするというそんな状態なんです。全然地元に伝わっていません。

 次はTACとIQについての質問をします。このことについて現場でも聞いてみました。

 そもそもこのTAC、トータル・アローアブル・キャッチ、漁獲可能量ですが、国際的に採用されているこのTACの理論というのはどういう背景で出てきたかというのを専門家に聞きましたらば、例えば、ある漁場で百トンのマグロをとってよいとして、十隻の船があったら、日本だったら、均等に割って一隻十トンずつねになる。それは話合いで決まるわけです。

 ところが、海外の場合は、その百トンの枠を我先にとどの船もがとろうとして競争になる。そうすると、漁が解禁になった途端に、最初の方の週に漁が集中して、とり切ってしまう。そして、その時期はその魚の価格も下がる。漁の後半の方になると今度は魚が不足するみたいなそういうことが起きてしまうから、TACと、あとIQ、個別割当てという制度ができてきていると聞きました。

 日本はそれに対して、百トンで十隻だったら、先ほど申しましたとおり、一隻十トンねと。それも、順番に、じゃ一週目はAさんとBさんが漁に出てね、二週目はCさんとDさんねと、漁協で話し合って共同で漁をしてきましたから、そもそもこの制度というのは日本には必要ないですし、日本には合わないんです。

 今何が起きているかといいますと、例えばクロマグロ、クロマグロは資源管理が始まっています。私、沿岸漁業者に話を聞いたんです。そうしたら沿岸漁業者は、俺たち魚はとりに行っていないと言ったんです。どういう意味かなと思ったら、そうなんですよ。定置網の漁業者というのは、網を張って魚が来るのを待っていて、入った魚をとっているから、自分たちで船で魚を追いかけてとりに行っているわけじゃないんです。

 このIQの発想というのは、ノルウェーの最新の漁船、ああいう船が、探知機でどこに魚群がいるのか見つけて、そこまで行ってまき網でごそっととる、そういう漁業を想定してのTACでありIQなんです。

 その理論を持ち込まれて、じゃ、クロマグロはここまでしかとっちゃいけませんよと沿岸の人が言われる。だけれども、定置網にクロマグロが泳いできて入るんですよ。その入ったクロマグロを、今までだったら、ああラッキーと思って売ることができたのが、売っちゃいけませんよとなっているので、もう現実に、そのかかってしまったクロマグロを、しようがないから捨てています。これは法令違反ですと水産庁に言われたんですけれども、漁業者が悪いんじゃなくて、法令が現実に合っていないと思います。

 ですので伺いますが、この今の状況、ですから、日本の従来型の資源管理というのが別に間違っていない、それなりに機能して有効なものであるとなぜ国際社会に対してきちんと説明ができないんでしょうか。

 そして、今申し上げました、定置網にかかってしまう例えばクロマグロの問題などについて、どのように補償を含めてお考えでしょうか。伺いたいと思います。

 まず、国際社会になぜ説明ができないかということは参考人の方で結構です。

長谷政府参考人 亀井委員から紹介していただきました。一斉にとり過ぎてというような話は、資源管理の教科書によく出てくる、カナダですとかアメリカの、オヒョウの、オオヒラメの管理の経緯の話だと思います。

 それぞれの国にそれぞれの背景があって漁業管理の制度ができているということでありますが、現在までの日本の管理につきましては、最低限の親魚資源量の水準を下回らないことを目指して、インプットコントロール、隻数制限などを主体に、一部の魚種についてTACを組み合わせた管理を行ってきたということでありますけれども、現在の状況の中で、それでは資源が本来有する潜在力を十分には活用できない、また、環境要因による加入量の変動によって資源量自体も非常に不安定とならざるを得ないといった一つの限界はあったということであります。

 また、例えばサンマの例で申し上げると、インプットコントロール、隻数制限とかいうことで、サンマについては、北太平洋漁業委員会、NPFCという国際委員会をつくりまして管理を進めていますけれども、隻数をふやさないという合意はできましたけれども、その先の話として、外国漁船は大型化が進んでいたりとかしまして、それだけで十分じゃない。国別の漁獲量制限をしたいということで今交渉を進めているといったような状況であります。

 そういったように、インプットコントロール単独では限界があることから、新たな資源管理システムにおいては、資源の水準を、現在の環境下において最大の漁獲量を持続的に達成できる水準に維持、回復させるというような目標を置いて、その漁獲量管理を基本として、その他の管理手法も組み合わせて取り組んでいこうということであります。

 その中で、漁業者に対しまして、いつまでどれだけ我慢すればどんな資源状況になるのか、それに伴って漁獲がどれだけ増大するのか、マグロなどでももう示していますけれども、その達成確率なども示しながら、漁業者の理解を得ながら今後資源管理を更にステップアップしていきたい、着実に実施していきたいという考えでございます。

亀井委員 先ほどクロマグロの問題を申し上げましたけれども、これが魚種の八割まで最終的に、IQ、個別割当ての制度にするというようなことですから、沿岸漁業者にしてみれば、じゃ自分たちは何の魚をとって売ればいいのか、まあ売って何ぼの世界なので、補償はどうしてくれるんだ、そういう不安の声が大変聞こえてまいります。

 その補償の仕組みについて大臣にお伺いいたします。

吉川国務大臣 今、亀井委員の御指摘の件でありますけれども、漁獲することが難しい定置網について、クロマグロの混獲を回避することが本当に大きな課題となっております。

 この定置網において、クロマグロを放流するための漁具改良等の技術開発ですとか、あるいは魚群探知機等の機械導入、さらには、放流作業に伴う経費の支援を行っているところでございます。

 さらに、本年一月からでありますけれども、クロマグロ漁獲量の大幅削減に取り組む沿岸漁業者を対象に、漁業収入安定対策事業の特例といたしまして、基準収入が平成二十九年の水準から下回らないように措置をいたしたところでもございます。

 これに加えまして、クロマグロの大量来遊があり休漁せざるを得ない場合の補償につきましては、平成三十一年度当初予算として概算要求もしているところでもございます。

 このような今申し上げました取組によりまして、漁業者の放流の負担を軽減しながら、クロマグロの効果的な放流ができるように支援をしてまいりたいと思っております。

長谷政府参考人 申しわけありません。

 クロマグロについては、特に、サンマは国別割当て量を決めようと今努力しているところですけれども、マグロについては、長年の懸案でありましたけれども、関係国との合意もできたということで、漁獲量管理に取り組んでおります。

 そういう中で定置網がなかなか難しいというのは十分承知しておりますけれども、過去の例からいって定置網の漁獲割合というのがかなり大きくなり得るということなものですから、定置網についても、対象として、大臣からお答えしたようなさまざまな支援をして取り組んでいただいているということでありますし、逃がす技術についても、徐々に徐々に習熟が進んでいるということでございます。

 あと、IQ八割と言われましたけれども、全部の八割ということではなくて、沿岸の貝類だとか海藻だとか、あるいは放流に頼っているサケ・マスだとか、そういうもともとTACになじまないようなものは除いたものについて、現状六割というものを八割を目指そうということ、それはTAC対象の話でありまして、IQにつきましては、個別割当てにつきましては、いきなりそういうことではなくて、八割のTACの中から、準備の整ったものからIQを、順次、丁寧な過程の中で導入していこうという考えでございます。

亀井委員 この問題も、質問し出すとそれだけでもう時間が足りないです。準備が整ったものからとは、どういうのを準備が整ったというのかというのもわかりませんし、基本的に私は、魚を田畑のように囲った中で割当てを決めるようなそういう考え方だと思うんですけれども、田畑は動かないので、ここは米、ここは転作で餌米、ここは大豆と分けられますけれども、海ですから、それで、魚は泳いで動くということを忘れていませんかと言いたくなるような論理でして、これは本当にうまくいかないと思いますし、沿岸漁業者が気の毒だと思っております。

 時間がないので次の質問に移ります。

 海区漁業調整委員会の委員公選制を廃止する、これは、今回の改正で一条から除かれた漁業の民主化にやはり逆行する動きだと思います。

 自治体の選挙に例えますが、今、例えば町会議員選挙などで無投票で決まってしまうという、地方議員のなり手がいない問題がありますけれども、じゃ、選挙にならないからといって町長が議員を指名していいか、任命していいかといったら、それにはかなりの反論があると思います。それと同じことだと思います。

 現時点で、選挙になっていないからといって選挙権を取り上げてしまう、この理由はなぜでしょうか、伺います。大臣、お願いいたします。

吉川国務大臣 海区漁業調整委員会の委員公選制を廃止する理由を今問われたところでありますが、この漁業調整委員会が適切に漁業調整の役割を果たすためには、漁業者委員について、地区や漁業種類に著しい偏りがないものとする必要があると考えております。

 他方、現行制度における漁業者委員につきましては、まず、選挙を行うと漁業者の多い地区や漁業種類から委員が選ばれやすい上に、実際は投票実施率が低いこと、そして二つ目でありますけれども、学識経験委員として本来漁業者委員の対象となる漁業者を選任するケースがあることなどの問題があると考えておりまして、このために、今般のこの改正の機会に、これらの問題を先送りすることなく、漁業者を主体とする漁業調整委員会の組織、機能を残しつつも、地区や漁業種類に著しい偏りが生じないよう、公選制から知事の選任制に移行するものと承知をいたしております。

亀井委員 性善説だけでやはり物は語れないと思いまして、もし運の悪いことに、知事に悪意があるというか、何か業者と結びついたりしていたときには、知事が賛成をとりやすいいわゆる取り巻きを調整委員会に送ることだって可能になりますし、基本的に選挙できていたもの、公選制を廃止するというのは私は大変問題だと思います。

 現在選挙になっていないのは、その前に地元での調整があって、各分野で人々が選ばれるように、そういう努力があって選挙を避けているということでして、だからといって公選制を廃止していいものではないと私は強く思いますし、このことは地元で話したときに皆ショックを受けておりましたので、申し上げておきます。

 本当に時間がないので次の質問に行きます。宮城の水産特区の問題です。

 宮城の水産特区の件は、養殖業への企業参入の一つの例として当時大変注目されました。今回はこの特区で導入した制度を全国に広げるような改正だと思っておりますので、この水産特区の評価がどうであるのかというのを伺いたいと思います。

 私、現地に行ってまいりましたが、桃浦のカキの養殖について、現地の人間はあれは失敗だと言っております。まず、会社の方も思ったほどもうかっていない。赤字です。

 そして、その原因は何かと尋ねましたら、まず、受注に対して生産が追いつかない、そこのところがわかっていなかったということもありますし、カキの養殖だけで限定して認定を受けているわけですけれども、実際には、カキの養殖であれノリの養殖であれ、それだけで一年じゅう食べられるわけじゃないので、副業でほかのものをとったりして実際には売っているんです。

 そういうものを含めないで、ただもうカキということにしたので、それも成り立たない原因だろうと現地の人が言っておりましたけれども、この水産特区の評価について大臣はどうお考えでしょうか。

吉川国務大臣 宮城県の特区につきまして、本年の三月に、県において有識者による検証が行われたと聞いております。

 この検証におきまして、復興推進計画の数値目標は達成してはいないけれども、新たな技術の導入による製品の差別化等の取組成果は確実にあらわれてきており、事業を継続することが重要であるとされていると承知をいたしております。

 私どもといたしましても、震災後、漁村としての機能を失っていた可能性のある桃浦地区におきまして、復興特区制度を契機として、企業と連携して漁業生産を回復させ、若い方々の雇用の場が創出されるなど、一定の成果が見られているものと認識もいたしております。

 今後とも、宮城県の指導のもと、桃浦地区の復興が進展することを私どもとしても期待もいたしておりますし、でき得る限りの支援もしていかなければとこう思っております。

亀井委員 現在の制度でも企業参入できないわけじゃないんです。それで、今回の改正によって何が可能になるかというと、漁協の外で企業参入ができるようになる。漁協を通さずに企業が参入できるようになるということです。

 桃浦の場合は、結局、この会社が漁協のメンバーにもなっているんです。ある程度の話合いはできますし、そういうことで、今現在経営はうまくいっていないけれども、余り公に失敗だとは言わないようにしてあげているという現実がありますけれども、実際にはそんな思ったほどもうかっていない。カキが足りなくて、桃浦だけじゃなくて、ほかの地区のカキを持ってきて出荷してみたり、解禁日を破ったり、そういう問題も発生していまして、実際はかなり惨たんたる状況だと思います。

 地元の人の話では、企業参入と政府は盛んに言いますけれども、そんなにうまくいかないだろう、もうかるものならもうとっくにみんなやっているよ、そういう声がありますので、この特区の検証も、しっかり地域の声を聞いてやっていただきたいと思います。

 次の質問は洋上風力に関してです。

 今回、ほかの委員会で洋上風力を推進する法律が審議をされております。

 このたび、漁業権が、漁協ではなくて、知事の認可制、知事に付与されるということで何が変わり得るかと考えたときに、あいた海域を使いたい洋上風力の発電者ではないかなと思います。企業にも漁業権が与えられるという中で、こういう今あいている海域に洋上風力の業者が参入してくるというようなことはあり得るでしょうか。

 そして、参入した後で何か環境の変化、魚が少なくなったとか、直接的な関係を証明するのは難しいかもしれませんが、何か地元と問題が出てきたときにはどのように対応されるのか。

 これはまず政務、政府参考人に伺います。

小里副大臣 現行法の規定からも明らかでありますけれども、漁業権とはそもそも漁業を営む権利でありまして、漁場を占有し支配する権利ではありません。

 したがって、みずからその内容たる漁業を営む場合でなければならないのでありまして、特に、例えば洋上風力発電事業者等が漁業権を取得するということはあり得ないわけであります。この点は改正法においても同様でありまして、御懸念のような事態は生じないものと考えております。

 なお、仮にみずから漁業を営んだ場合であっても、当該漁業権に係る漁場内にこの洋上風力発電施設等を設置する権利を得たというようなことにはならないと考えるところであります。

亀井委員 基本的に、漁業を営まない者には漁業権は与えないと今おっしゃったと理解をしております。それでもちょっと私は不安は残りますけれどもね。事業の中に養殖なりなんなり多少漁業を入れておいて、でも洋上風力もやりますみたいな形で取れたりはしないだろうかとかいろいろ悪いことを考えるわけですけれども、この点についてはしっかり管理をしていただきたいと今は申し上げておきます。

 最後の質問です。きょう、参考資料を出させていただきました。ちょうどきのう、竹島に韓国の議員が上陸したということでまたニュースになっておりました。竹島を抱える島根県は私の地元でして、竹島の日の条例を制定して政府に対応を求めておりますので、きょうはこの質問を最後にいたします。

 竹島というのは、映像を見てお気づきのとおり、あそこに居住できるような空間はありません。なのになぜ私たちがあそこの領有権を求めるか、竹島問題を解決せよと言うのかといえば、これは実は漁業問題なんです。

 この地図にありますように、竹島を囲むように暫定水域があります。そして、この暫定水域と日本列島の間にあるこの島、右に少し大きな丸があって、左側にあと三つ島があるんですけれども、これが隠岐諸島です。

 一九九八年に日韓新漁業協定が結ばれて、これによってこの暫定水域が決められたことで、隠岐の漁業者が漁ができなくなったんですよ。本当はここは共同管理でなきゃいけないのに、入れなくなってしまった。ですから、隠岐の島民は、竹島に住みたいと言っているわけじゃなくて、漁業をさせてくださいと言っているんです。

 なぜこの漁業交渉が進まないのかということを大変疑問に思っておりますけれども、これまでの経緯、そして、この漁業権回復、暫定水域問題についてどのように対応をされてきたのか、最後に伺って終わりにしたいと思います。

 大臣にも最後、一言お願いいたします。

長谷政府参考人 日本海の暫定水域におきましては、我が国のイカ釣り漁業やベニズワイ漁業については操業は行われておりますけれども、まさに今シーズンでありますズワイガニ、マツバガニともいいますけれども、これを対象とする沖合底びき網漁業について、韓国船が、実質的にといいましょうか、漁場を占拠していることによって操業ができない状況が続いております。

 このため、この暫定水域とは別に、相互の排他的経済水域の入漁の協定になっておりますけれども、これにつきまして、過去、日本が韓国に行ってとる量よりも韓国が日本に来てとる量の方がかなり多いという状況が続いていたわけなんですけれども、この暫定水域での今言ったカニの問題が解決しない限り、その韓国の入漁は認めないという交渉をしております。

 その結果、二〇一六年七月以降、韓国漁船の日本水域への入域はストップする形で韓国側のこの対応を促しているということでございます。

吉川国務大臣 今、水産庁長官から説明したとおりでありますけれども、いずれにいたしましても、我が国としては毅然とした態度で交渉に臨んでいきたい、こう思います。

亀井委員 それでは、時間ですのでここで終わりにしたいと思いますけれども、全く質問時間が足りませんので、しっかりした質疑時間の確保をよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

武藤委員長 次に、神谷裕君。

神谷(裕)委員 おはようございます。立憲民主党の神谷裕でございます。

 きょう、漁業法、質問できることはありがたいんですけれども、本当に論点たくさんございます。先般も本会議でさまざま質問させていただきました。まだまだ詰めなければいけない論点、たくさんたくさんあります。

 そういった観点から、きょうはできる限り多くの論点について質問させていただきたいと思いますし、この後も、時間、ぜひお願いをしたいと思います。

 まず、漁業の実質支配の排除について伺いたいと思います。

 現行法の第三十八条第三項、漁業者以外の者による漁業の実質支配の排除、漁業権の取消し、そういう条項であると思います。

 今回、この改正法でこの三十八条第三項が落ちました。この理由をまずお聞かせをいただきたいと思います。

長谷政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の現行の漁業法の規定でありますけれども、現行は、優先順位に従って形式的に免許するものであるにもかかわらず、本来免許されない優先順位の低い者が実質的に経営を支配するという状況が生じることを防ぐための規定でございます。

 一方、今般の改正におきましては、漁業権の免許につきまして、実質的な活動内容に着目して、漁場を適切かつ有効に利用している漁業権者に優先して免許するとともに、未利用の漁場等については、地域の水産業の発展に寄与する者に免許する仕組みとしているところでございます。

 したがいまして、優先順位に従って形式的に免許することはなくなりますので、現行法の三十八条三項は削除という考え方でございます。

神谷(裕)委員 今のお話ですと、確かに、しっかり見ているんだから大丈夫だよというような話だと思いましたけれども、この三十八条の三項、後で取消しができる、そういう規定だったんじゃないかなと思います。

 例えば、当初これの使われ方としては、免許された方、漁業権をとられた方は実際は暴力団だったみたいなケースのときに、取消しを行う際のその根拠になったというような話も聞いております。

 そういった実例とは言いませんけれども、そういった使われ方、三十八条三項はされておりませんでしたでしょうか。

長谷政府参考人 取消しの規定というのはありますけれども、実務を長いことやっておりますけれども、余り実例はないんじゃないかと。全部シラミ潰しに調べているわけではありませんけれども、聞いたことがございません。

 一方、今回のやつにつきましては、例えば、そういう先生が言われるような方が関与して適切、有効な形でないということになれば、そのことをもって、取消しまで含む関与ができるというつくりになっているところでございます。

神谷(裕)委員 実際にその取り消すことまでできることになりますか。この三十八条三項なくして、要は根拠規定がなくなるわけですよね。その上でも、問題がある、それが「適切かつ有効に」という言葉なのかもわかりませんけれども、実際にこの言葉以外で適切かつ有効に使われていたとするならば、例えば排除できないということですか。

長谷政府参考人 暴力団ということに関して言えば、暴力団による者はそもそも漁業権を受ける適格性がないんです。そこではじかれるということでありますし、暴力団まがいといいましょうか、という方が仮に入り込んできたとしたとして、それが適切かつ有効に漁場を使う責務を有するわけですけれども、それに対してもし適切じゃない行使をするということになれば、法律のつくりとしては、指導し勧告をし、それでも是正されないときには取消しというふうな規定になっております。

神谷(裕)委員 若干問題あるのは、そもそも入り口のところではじかれる、そうかもしれません。

 ただ、本当に入り口のところではわからない場合が一つあるんだろうなと。かつ、適切かつ有効に使っていたとすれば実質的に排除できない、そういうような答弁にも聞こえたわけでございますが、いささかちょっとそこは問題だなと思っております。ただ、ちょっと余り横道にそれるわけにいかないので済みません。

 そこでちょっと気になったのが、大臣の本会議での御答弁で、漁業権の免許について、実質的な活動内容に着目をし、漁場を適切かつ有効に利用している漁業者に優先して免許すると御答弁されておりますが、この意味は、まさに関連するところで、適切かつ有効に活用していれば、漁業権の実質的な支配者が、今ほど例示したのは暴力団でございましたけれども、例えば外国資本であっても可とする、そういうことになるのか。そこを確認したいと思います。いかがでしょうか。

吉川国務大臣 御指摘のあった件でありますけれども、そもそも、外国資本の入った我が国の法人が漁業を営むこと自体は現行法においても認められていると承知をいたしておりまして、今回の改正によって取扱いが変わるものではないとは存じておりますが、外国資本が入るか否かにかかわらず、漁業権者が漁場を適切かつ有効に活用していない場合には、都道府県知事が漁業権の取消しを含めて是正措置を講ずることになると承知をいたしております。

神谷(裕)委員 今の御答弁ですと、すなわち、外国資本であっても漁場を適切かつ有効に活用しているのであれば構わないんだというようにも聞こえるわけでございますが、それでよろしいのか。念のため確認をしたいと思います。

長谷政府参考人 大臣が答弁させていただいたとおり、現行制度においても、外国人への免許というのは外規法というやつで禁止しておりますけれども、資本関係であくまで日本法人ということであれば、それを、外国の資本が入っているからといって経済活動を認めないというような制度にはなっていないということでございます。

神谷(裕)委員 そうしますと、実際に外国の企業さんが日本国内の浜で拠点を置いたり、あるいは実際に漁業活動を行った、そういった実例はありますでしょうか。

長谷政府参考人 過去に、私が承知しているところでは、大分県でノルウェーの資本の会社が、日本法人が魚類養殖を行ったというような実例は承知しております。

神谷(裕)委員 魚類養殖の実例を今おっしゃっていただきましたけれども、魚類養殖じゃなくて、沿岸、沖合、あるいは遠洋、そういった実例はありますか。

長谷政府参考人 大分の例は、沿岸漁業、魚類養殖ということでありますけれども、漁船漁業では、むしろ委員の方がお詳しいんだと思いますけれども、過去、台湾系の会社が日本の許可で操業していたという実例はあると承知しております。

神谷(裕)委員 今ほど言っていただいたとおり、実際に外国資本が入っている実例、あるいは外国の企業さんが日本国内で漁業を行っているような実例はあるというようなことでございます。

 そこで考えていただきたいんです。この国のEEZ、あるいはマグロでもそうなんですが、ナショナルクオータというのがございます。これは、日本国がとっていいよという許可でございまして、また、日本の排他的経済水域の中で日本の漁業を行う。その水産資源というのは、基本的には日本国民の共通財産であるわけです。それが、いつの間にか外国の資本が入っていって、結果として、それを漁獲をし、あるいは輸出をするかもしれない、あるいは国内で販売をする。そして、その収益は国外に持っていく。そういったことが現実としてあり得る。というよりは、現実にあったということでございます。

 そしてまた、もう一回考えていただきたいのは、先般もこの委員会で、排他的経済水域というか、EEZの外にあれだけ多くの漁船が集結をしていたという実例がございました。イカの問題もそうです。あるいは、さまざまな魚種において入ってこようとしていた。だけれども、その線の中には入ってきていなかったんです。それは、この国のEEZだからです。

 ただ、実際にこれからこの法律が通って、外国資本の方は何を行うか。このEEZの中で漁獲を行おうとするならば、日本の法人になればいい、そういうことになるわけです。そういった皆様方が、今後、例えば日本の小さな漁業会社に投資をする。そして実質的に経営を支配をする。そして、その上で漁獲を行う。そういったことが現実にあり得るんじゃないかなと思うわけです。

 そしてまた、日本全国には、小さな島、無人島もあります。例えば、実質的な外国資本などそういった皆様方がそういった島で漁獲活動、漁業を行ったとき、この改正法では、先ほどありましたとおり、適切かつ有効であれば排除することはできないわけです。本当にこれでいいのか。私は大いに疑問があります。

 だとするならば、なぜ、現行法三十八条の三項があれば排除できる可能性を残すのに、この三十八条の三項を落としたのか。私はこれが疑問でならないんです。

 どうでしょう。今からでも遅くないんです。この三十八条の三項、これだけは戻そう、そういうことになりませんでしょうか。

長谷政府参考人 これは漁業に限らず、経済活動に対する投資の、国際ルールの、一般的なルールの中の範囲のことだと思っておりますけれども、委員が言われるように、仮定の話としてどこか東シナ海の無人島みたいなことも言われましたけれども、いろいろな仮定を重ねれば、新規の漁場だから地域水産業の発展に最も寄与する者というふうに知事さんも思われるし、その県の地元の漁業者を主体とする海区漁業調整委員会の意見も聞いてそういう企業が入るというのは制度上はないわけではないということでありますけれども、先ほども申し上げましたけれども、大分でも過去にノルウェー系の魚類養殖会社が入っていた。それは、漁場でルール違反で過密養殖をするだとか、そういうことがあればまさに適正じゃないということになるでしょうけれども、地元に受け入れられた外資の、外資系だからといって規制すべきという前提に立つということではないんじゃないかというふうに思っております。

神谷(裕)委員 今は養殖の事例でおっしゃっていただいています。ただ、先ほど申し上げたように、EEZ内の漁獲資源、これはやはり日本国民の共通の財産であるという前提です。あるいは、ナショナルクオータにしてもそうです。マグロで、あるいはそういうのもあると思います。

 だとするならば、これを本来日本国の国民のために使うというのが私は筋だと思います。そのために使うことが筋であって、先ほど養殖の話をされましたけれども、最初から外国の企業でございますといって申請を上げてくる企業なんてないと思います。むしろ、もう既に許可をとっている、漁業権を持っている小さな浜の小さな会社を買い取った方が早いんです。そしてかつ、経営者はそのままでしょう。すなわち外形的には日本の企業です。そして日本の経営者です。しかし、実質的な資本関係において外国だったときに、排除することはできない。しかも、それが先ほどEEZの外にいた漁業者であったとするならば、今後はそういった漁船が中で操業することが十分に可能になるということだと私は思います。

 やはりこういった制度というのは、あらかじめ直しておく、こういった可能性というのは排除しておくべきだと思います。そのための法律があったのにもかかわらず、今回削除されたことが大変な問題だと思います。

 いかがでしょう大臣、今の議論を聞いた上でお考えいただけないでしょうか。

吉川国務大臣 今、神谷委員の御指摘の問題というのは、私は極めて重要な課題の一つでもあろうかと思います。

 そこで、企業の参入につきましては、沿岸漁場での漁業者とのあつれきが生じないように、都道府県による十分な調整が行われて、地域との協調のもとで参入が行われることが基本と考えておりまするけれども、さらに農林水産省といたしましては、企業の参入による活性化だけではなくて、地域の実情に応じた施策を総合的に実施をしていく必要があるのではないかとこう思っております。

 その上で、地域の活性化が図られるように積極的に取り組んでまいる必要があると存じております。

武藤委員長 神谷君、改めて質問してください。

神谷(裕)委員 この論点ばかりやっていてもあれなものですから、十分にぜひ考えていただきたいと思います。

 今、委員の皆様方にも聞いていただいたとおり、結構現実味のある話だと思っていただきたいんです。そして、現実の問題として実際に対処するときに、やはり大事な話だと思いますものですから、ぜひ一緒にお考えをいただけたらと思います。

 ちょっとこの話題ばかりやっていてもあれなので、次の話題に移らさせていただきます。次にやはり気になったのが、漁村地域との関係なんです。

 共同漁業権と区画漁業権の水域はやはり重複しておりまして、両漁業権は団体優先免許という現行制度はもう定着をしているとおりです。しかし、今回、区画漁業権が新たに漁協に関係のない個人又は企業に免許されるということになるわけですけれども、区画漁業権が新たに漁協に関係のない個人、企業に免許されることが、結果として、地域の浜を守ってきた漁協離れというようなことにならないか、そのことを大変懸念するんですけれども、そういった漁協の外に入ってくること、個人、企業、そういったことが浜の合意形成に問題とならないか、まずそれを伺いたいと思います。

長谷政府参考人 今回の法案におきましては、繰り返し御説明しておりますように、漁業権につきましては、漁場を適切かつ有効に活用している漁業者や漁協に優先して免許する仕組みとするとともに、新たな漁場においては、地域の水産業の発展に最も寄与する者に免許することとしているところでございます。

 実際には、各地域のさまざまな条件のもとで多様な漁場の活用実態があるために、新たな漁場などに漁業権を免許する場合を含め、海区漁場計画の作成に際して、利害関係者の意見のほか、地元の漁業者が主体となる海区漁業調整委員会の意見を聞くこととなっております。共同漁業権は従来どおり漁協ということであります。

 これまでも、その共同漁業権の上に経営者、企業への定置の免許もあれば、真珠養殖のような、経営者、企業に対する免許もあったわけです。そういう前提の中で今回再整理しておりますけれども、そういう中で、漁業調整その他公益に支障を及ぼさないように漁業権が設定されなければならないということとしております。

 こういった制度の趣旨を踏まえまして、現に周辺で操業する他の漁業への影響を考慮するなど、地元と協調した漁場利用が図られるということは重要だと思っております。そういう観点から指導もしてまいりたいというふうに思っております。

神谷(裕)委員 そういったことは全くそのとおりだと思います。

 ただ、そういったことを前提とした上でぜひやっていただきたいのは、せめてその漁協の同意を得ること。新たな企業や個人さんが来ました、でも漁協は知りませんでした、ただ周りと協調はとれていますよみたいな形はやはりだめだと思うんです。県が許可しましたから、あるいは海区調整委員会、問題ありません、それはあるかもしれません。ただ、せめて、その前浜の管理のことを共同してやっていこうと思うのであれば、漁協の同意というのは最低限必要じゃないかなと思うわけです。

 こういったことを義務づける、そういったことは考えられないのか。もう一度伺います。

長谷政府参考人 今回の法案におきまして、都道府県知事が、漁業を営む者等の利害関係者の意見を聞いて検討を加えて、その結果を踏まえて海区漁場計画の案を作成しなければならないというふうにしております。

 また、海区漁場計画につきましては、それぞれの漁業権が、海面の総合的な利用を推進するとともに、漁業調整その他公益に支障を及ぼさないように設定されなければならないことともしております。

 また、国と都道府県は、「漁業生産力を発展させるため、水産資源の保存及び管理を適切に行うとともに、漁場の使用に関する紛争の防止及び解決を図るために必要な措置を講ずる責務を有する。」新たに責務規定を置いているところであります。

 このため、新たな漁場などに漁業権を設定するに当たっても、当然、関係する地元の漁協、漁業関係者の意見を聞いて、紛争にならないように、そういう観点で計画を立てるという意味で適切な判断がなされるものと考えております。

神谷(裕)委員 今、話を聞いていても、漁業者の意見を聞くまでなんです。意見を聞くのは誰でもできます。誰でもできるは言い過ぎですけれども、意見を聞いた上でそれをどうするかというのはまた別な話だよというふうに聞こえるわけです。

 逆な言い方をしましょう。漁協の同意がなくてもできるということなわけですよね、これでは。

長谷政府参考人 その点については、先ほども申しましたけれども、共同漁業権の上に今も経営者免許がありますけれども、その部分について、法制上、漁協の同意をとるというような規定にはならないんです。

 ただ、実質的にそこで漁業を営んでいる者がいるわけですから、その方々との調整を図って、紛争のないように漁場計画を立てるという規定を置いているところでございます。

神谷(裕)委員 法制上できないというようなことのようでございますが、やはり、浜を秩序立てて、そして管理をしていく、これは絶対に必要なことだと思います。

 そして、地元の漁業者が納得もしていないのに、その漁業者の集団である漁協も納得もしていないのに、入ることができる。これはやはり大きな問題だと思います。

 ただ、法制上に書けない、百歩譲ってそうだとするならば、この後、何らかの担保、そういったものをかける、そういったことは可能なのか。あるいは、今おっしゃっていただいたことで十分なのか。

 その辺、もう一回確認させてもらっていいでしょうか。

長谷政府参考人 繰り返しになってしまうかもしれませんけれども、そこで漁業を営んでいる方々の意見を十分聞いて、また、地元の漁業者の代表である海区漁業調整委員会にも意見を聞いた上で、それを尊重しながら、紛争が起こらないように計画を立てていくというのがこの法律の趣旨だというふうに思っております。

神谷(裕)委員 今お話をさせていただきました。議論をさせていただきました。新たに浜に参入をする、企業さんが入るということは、やはりそれなりに大きなプレッシャーになります。そしてまた、漁村が受け入れるに当たっても、やはり、新たに来られる方との調和を図っていく、それはもう絶対に必要なことだと思います。

 そういった意味において、私はやはり漁協の同意というのは必要なんじゃないかなと思っておりますけれども、今るるお話しあったとおり、さまざまな考え方はあるのでしょう。でも、できれば漁協の同意というのはやはりとっていただきたいなと思うわけでございますが、大前提として、企業参入と漁村地域、これをどういうふうに考えていくか。

 その基本的考え方は、これは大臣に伺っておきたいと思います。お願いをいたします。

吉川国務大臣 先ほどの外国企業の件につきましても、しっかりと私どもは都道府県の知事とともに対応をしてまいりたいと存じております。

 さらに、今、企業の参入について御指摘もございました。

 これは、沿岸漁場での漁業者とのあつれきが生じないように、都道府県による十分な調整が行われて、地域との協議のもとで参入が行われることが基本となっておりますけれども、企業の参入による活性化だけではなくて、地域の実情に応じた施策を総合的に実施していくということが最も大切なことだろうと思いますので、それによって活性化が図られるように積極的に取り組んでいかなければならないと存じております。

神谷(裕)委員 今、大臣から、地域の活性化、そういったお話もいただきました。実際には、浜が発展していくこと、これが本当に重要なことだと思います。そのために新しい血を入れる、これも大事なことなのかもしれません。

 だとしても、やはり劇薬になりかねないわけです。それが破裂するようなことではいけませんし、あるいは、それが問題のある企業だった、それはもっといけないことだと思いますので、せめて地域の同意を得る努力、それが漁協の同意だと私は思うんですけれども、そういった御努力を重ねてお願いをしたい、このように思いますし、また、制度上もぜひお考えをいただけたらと思うわけです。

 また、時間がありませんので次の論点に移らさせていただきます。

 次に、私、沿岸漁場管理団体について伺いたいと思っています。

 沿岸漁場の管理制度が今回の改正で創設されることになります。沿岸漁場管理団体についてどういった団体が指定をされることになるのか、このことをまずお聞かせをいただきたいと思います。

長谷政府参考人 沿岸漁場管理の業務は公共性が高いことから、その業務の公正かつ中立的な実施を確保できる体制を有する団体を指定する必要があると考えております。

 沿岸漁場の保全活動は、実際には漁業協同組合が行っている場合がほとんどであると思いますけれども、そのため、主として漁業協同組合そして漁業協同組合連合会が指定されるということを想定しております。

 ただし、地域によりましては、漁業者のほかに、漁業者でない、漁民でない地域住民などが参加した協議会などが活動を行っている例もあるため、こうした組織が一般社団法人又は一般財団法人となって収支管理などが適正に行われる場合には、指定し得るという規定としたところでございます。

神谷(裕)委員 今お話にありましたとおり、いろいろな団体が実はなり得るんです、漁協以外の団体が。

 本会議でも私例示をさせていただいたのは、シーシェパードの例でございました。これはちょっと、いささかシーシェパードという団体について皆様も御承知だと思うので、そういう団体だったら入らないだろうと思うと思います。

 ただ、じゃ実際にシーシェパードが来て、太地町で例えばその管理団体になってしまいました。そうなったときには、もうこの地域は終わってしまいます。

 こういった例示はちょっと極端だったかもしれませんが、そこまでいかなくとも、例えば環境に重きをなしている団体であるとか、あるいは、そういった生物資源に対して特段の思いのある団体であるとか、そういった方々が例えば、一人、二人入り込まないとは言いませんけれども、そういった方々の団体が管理団体になる可能性がゼロではありません。

 少なくともこの法律を読む限りにおいては、漁協以外もなれるわけですから、何かの間違いでとは言いませんけれども、なり得るということが何より問題なんだろうと思うわけです。

 とするならば、やはり、漁業の発展に寄与していただくような団体に指定をしていくということが求められていると思うんですけれども、阻害するような団体が指定されることがないように、せめて、これまた同じような理屈でございますが、漁協の同意をとっていただく、そういうことが必要なんじゃないかなと思うんですけれども、この点いかがでございましょうか。

長谷政府参考人 本法案におきまして、都道府県知事は、沿岸漁場管理団体を指定しようとするときは、これも、地元の漁民を主体とする海区漁業調整委員会の意見を聞かなければならないこととしております。そういうことで、御懸念のような事態は生じないと考えております。

 また、沿岸漁場管理団体が制定しなければならない沿岸漁場管理規程につきましても、都道府県知事の認可を受けなければならず、その際も、知事は、海区漁業調整委員会の意見を聞くことになります。

 さらに、都道府県知事は、沿岸漁場管理団体が保全活動を適切に行っていないと認める場合などは、勧告し、又は指定を取り消すこともできます。

 これらの規定を通じまして、漁業生産力の発展という本法の目的に反する団体が沿岸漁場管理団体として指定され、不適正な活動をするような事態は十分に阻止できると考えているところでございます。

神谷(裕)委員 今ほどいろんな御説明をいただきました。海区調整委員会なり、あるいはさまざま聞く、その上で決めるから大丈夫だよ、あるいは取り消すこともできるんだよ、そういうふうな話でございました。

 ただ、大々的に、もう面と向かってこの漁業はだめだというようなことはないにしても、敵対関係とは言いませんけれども、漁協と協調していただく、あるいは浜の皆さんと協調していただく、これは本当にやはり私は必要だと思うんです。

 ですので、何らか、例えば漁協をコミットメントするというか、中に入れていくというか、あるいは同意を得ると私は申し上げていますけれども、そういったことはお考えになれないのか。再度伺いたいと思います。

長谷政府参考人 先ほども申し上げましたように、想定しているのは漁業協同組合なわけでありますけれども、それが、広がりがあって、漁業協同組合の人たちがむしろ広がりを持って地域の一般住民とともに活動したいというような場合、この指定があって当然いいと思っておりますし、まさにその法目的は漁業の発展なわけでありますので、そういう趣旨に沿って、おかしな団体が指定されないようにという指導はしていきたいというふうに思っております。

神谷(裕)委員 時間が参りましたのできょうはこの辺にさせていただきますけれども、本当に細かい懸念が私たくさんあるんです。もうそれはおわかりだと思います。具体的な懸念だと私は思っています、最初の外国企業の話もそうですけれども。こういったことを一つ一つ聞いて、確認をして、かつ、ここにいる皆様も含めて納得をいただかない限り、当然漁業者の納得は得られないと私は思います。

 そのための時間、そしてまた御配慮を心からお願いをして、私の質問を終わらさせていただきます。

 ありがとうございました。

武藤委員長 次に、緑川貴士君。

緑川委員 皆様、お疲れさまでございます。国民民主党・無所属クラブの緑川貴士と申します。

 質問の機会をいただき、ありがとうございます。真摯に議論を進めてまいりたいと思います。

 七十年ぶりの大改正、大きな見直しが含まれている。そして、地元漁業者、大きな懸念を、私、秋田県の地元でも抱いている方がたくさんいらっしゃいます。きょうは、大臣からも、そして政府参考人の皆様からも確かな御答弁をいただけるように努めてまいりたいというふうに考えております。

 先日、本会議で質疑、登壇させていただきましたけれども、そのお答えで、農業者と真摯に向き合い、政策の内容も丁寧に説明するとその場で大臣からお答えをいただきました。

 地元漁協にお話を伺っても、改正の中身については、目的がこれは生産力の向上だからということで、企業の利益を上げることに重きを置いているのか、あるいは現場漁業者の暮らしのためなのかよくわからないという言葉をいただきました。地域の活性化が目的であるのであれば、後で詳しくお話をいたしますが、地元漁業者のために付与されてきた、やはり、限られた、狭い沿岸漁場の優先順位をわざわざなくす必要はありません。

 明治に漁業法が初めて定められて以降、日清戦争後の産業振興策の中で、外部から大型資本の参入を政府が奨励することで、共同であるはずの漁場に新たな争いの種が生まれました。時代の波に翻弄されながらも、漁業権をめぐる現場の調整役となって、国境監視の役割、また、海洋環境を保全する責務、漁場を統一的にまとめる役割を担ってきた主体である地元の漁業者の皆様が、この七十年ぶりの大変革について理解、納得が、残念ながらいまだに進んでおりません。現場への周知がとにかく不十分であるというふうに思います。

 この点、きのうもお話をいただいた全漁連の岸会長からも、地元漁業者が理解し納得いくものでなければ成果は上がらない、改革を進めるのは漁業者自身であるとお話をされました。

 大臣に伺いますが、法案が成立した暁には現場の漁業者の皆さんの不安や不満の声にしっかりと向き合うとおっしゃいましたが、これは順番が逆ではないでしょうか。いかがでしょうか。

吉川国務大臣 現場への丁寧な説明でありますけれども、漁業者への説明につきましては、水産政策の改革の内容や改正法案の考え方等につきまして、漁業者団体の開催する会議などさまざまな機会を通じて説明を行ってきております。また、本年六月から十月末までの間に全国各地で九十九回の説明会等も実施をしてきたところでもございます。

 今後も、このような説明会を引き続き実施をしていかなければなりませんし、全国の浜の要望に応えて説明に出向くことはもちろんのことでありますけれども、現場の漁業者の皆さんと信頼関係を築いた上で、改革が実行できるように努めていかなければならないと存じております。

緑川委員 大臣、今九十九回の説明会等とおっしゃっていただきました。ひたむきな御努力、その数からもうかがえますけれども、漁村の数は日本に六千三百ございます。そして、沿岸距離三万五千キロです。こうした、やはり重く、この日本沿岸全体、しっかりと目で見て捉えていただいた上でこの法案の真摯な議論を進めていきたいというふうに私自身は考えております。

 法案を通してから中身について理解をしてもらうというのは、一方通行でしかありません。仕組みを変えてしまったら後戻りはできない。これは、残念ですが、何度も向き合うというお言葉はいただいているんですが、向き合うことにはならないと思います。改めて、いかがでしょうか。

長谷政府参考人 お答えいたします。

 先ほども御説明したように、これまでも説明会を重ねてまいりました。十月までに九十九回ですか、今月においても各地に説明に行っております。きのうはきのうで、全国の漁協の青年部の方たちが私のところを訪ねてきていただいたので、一時間、改革の話を中心にいろいろな話をさせていただいた。

 浜に浸透させるということについては、もうこれで十分だということは当然ありませんので、今後もしっかりと、この改革の趣旨、この機会を、漁業の再生といいましょうか、復興のチャンスにするんだという思いが伝わるように説明を重ねていきたいというふうに思っております。

緑川委員 ぜひ、回数等ではありません、受け取る側のやはり理解、立場をどうか尊重していただいて、青年部、もちろん漁業者の青年のリーダーでありますし、漁協、地元漁業者の代表としっかりとお話をした上で、現場にもしっかりと浸透していただけるような、納得のいく御説明を何度でもお願いをしたいというふうに思います。

 拙速過ぎる議論という点では、やはり今国会、外国人労働者の受入れを拡大する入管法改正の議論の進め方と、残念ですけれども、これは同じだと言わざるを得ません。声が大きくなる前に早く通さなければという、残念ですが、後ろめたさというのも何となく感じてしまう、そんな国会であります。

 この改正案で免許の法定優先順位を廃止するのは、一定の区画における大規模養殖を行える区画漁業権、そして、定置網で漁業を営む定置漁業権であります。

 まず、区画漁業権で、漁協以外で法人が参入している漁業権の数は、これは割合を見ますと、直近で、全体、法人が四五%で、半数近くが既に参入しております。そして、定置漁業権についても、全体の三六%が法人によって既に免許が取得されております。

 このあたり、政府参考人、どうでしょうか。免許付与の現状をどのようにお考えでしょうか。

長谷政府参考人 お答えいたします。

 漁業の場合、歴史的にもずっと従来からも、法人の参入といいましょうか、とともに産業が継続してきたということであります。それこそ、上場企業も漁業のプレーヤーでありますし、家族経営から法人化していくというようなのもごく一般的に起こっている。

 委員言われたようなパーセンテージというのは、そういうものを反映しているんだというふうに思っております。

緑川委員 その生産額とか等ではなくて、あくまで数なんです。

 真珠の養殖等では確かに大手の水産業者なども参入している。そんな数字なんかもあらわれているとは思うんですが、これを細かく見ると、これらの法人というのは、既に漁業権を取得できている地元漁民七割以上を含んでおります、各法人で。そして、地元漁民七人以上と、地域の雇用を守っている法人が多く含まれているわけです。

 何が言いたいかといいますと、数字を見れば、わざわざ免許の優先順位を廃止しなくても、現行のままの枠組みで十分に参入が可能であって、地域の漁業権を取得できているじゃないですか。地域の活性化につながるこうした法人をむしろ基軸にした法改正の方が地元のニーズにかなうと思いますが、いかがでしょうか。

長谷政府参考人 現行制度につきましては、免許を受けている主体は委員が御紹介いただいたようなことでありますけれども、これは、現行の法律での非常に細かい優先順位の規定を受けて免許を受けているわけです。そういう中で、漁業権の存続期間、五年なりごとで切りかわるわけなんですけれども、その存続期間満了時に、優先順位の高い者が申請してきた場合に、次の免許を受けられないというリスクがあるのも事実なんです。

 また、漁業者の減少、高齢化が進む中で、地域によっては漁場の利用の程度が低くなっているところもあります。地域ごとの差が非常に大きいと思っておりますけれども、今後、どのように沿岸漁場の管理や活用を図って地域の維持、活性化につなげていくのか、浜をどうやって存続させていくのかというのが今回の改革の大きな課題であります。

 このために、本法律案においては、法律で詳細かつ全国一律に優先順位を定める仕組みを改めて、今言われた、地元の七人がとか、そういう主体が、法人がまさに適切かつ有効に利用しているということであれば、優先順位の逆転というか、上位の者に奪われるということをなくして、引き続いて営業できる、漁業ができるという仕組みにするということであります。

 一方でまた、利用の程度が低くなっている漁場については、地域の水産業の発展に寄与する者ということで、その浜の存続を図っていくということであります。

 こうした改正は、まさに、現に地域の水産業を支えている漁業者の経営の発展に向けたインセンティブを与える、インセンティブとなるとともに、地域の活性化につながるというふうに考えております。

 なお、個別の漁業権の付与に当たりましては、事前に既存の漁業者等の利害関係者の意見を聞いて検討を加え、その結果を踏まえて海区漁場計画を策定しなければならないこと、そして、地元の漁業者が主体となる海区漁業調整委員会の意見を聞かなければならないことという規定も置いているところでありまして、このことによって免許が適切に行われるものと考えております。

緑川委員 適切かつ有効にという定義についてもまた後で触れようと思ったんですけれども、だとすれば、今おっしゃった定義はやはり曖昧なわけなんです。適切かつ有効に活用している場合、それは、漁場の環境に適合するように資源管理や養殖生産を行い、将来にわたり持続的に漁業生産力を高めるように漁場を活用していることというふうになっておりますので、地元の漁民七割とか地元の雇用七人というのは全く含まれていないわけです。生産力本位であり、これでは地元の雇用を守るということには私はならないというふうに思うんです。

 新陳代謝は確かに高齢化の中で大事なことかもしれませんが、ここで、だからといって新たな企業が地元雇用を担うかといえば、そこが確かな歯どめになっていないというふうに思うんですが、このあたり、いかがでしょうか。

長谷政府参考人 地元の者が七人だと優先順位は高目になるわけなんですけれども、例えばの例ですけれども、これが、七人で取り組んできたけれども、たまたま切りかえのときに、漁業権の満了のときに事故で六人になっちゃったというだけで、その要件が、順位が下がるんです。そういうことが起こるリスクが今の制度にはあるんです。

 ですから、もしそういうことが起こったとしても、その七人で立ち上げた会社が適切かつ有効に漁場を利用しているのであれば、その法人に新しい免許もするというのが今度の制度なんです。

 そういう意味で、まさに地元で今頑張っている人たちを応援する制度だというふうに私は思っておるところでございます。

緑川委員 何か一〇〇のものをすぐゼロにしてしまっているような感じがします。優先順位を廃止することと守ることというのは、ゼロか一〇〇かの話ではなくて、やはり、その七人、地元の雇用をちゃんと守れるかどうか、そこの一点についてこの優先順位の廃止というのは担保されていないんじゃないかというふうにお伺いしているんですけれども、いかがでしょうか。

長谷政府参考人 繰り返しになってしまうかと思いますけれども、例えば、七人で構成する法人について、しっかり取り組んでいただいているということであれば、その方を優先するという規定になるわけです、次の切りかえのときに。そういう形で頑張っている漁業者を応援していく制度だというふうに思っております。

緑川委員 優先順位が廃止されて、またこれもちょっと聞きたいと思っておりますけれども、地元漁業会社で、経営を頑張っています、非常に経営者も意欲があって頑張っているけれども成果が上がらない、水揚げ高がなかなか上がっていかない会社と、これは条件として、まだ漁業権がない漁場についてどちらに漁業権を付与しようかという話の中で、今の地元漁業会社と、地域外から参入しようという意欲と資本を持つ企業で水揚げ高も地元漁業会社よりも高いと見込まれているところでは、有効かつ適切に活用している場合、これは生産力の高さでやはり見る以上、地元漁業者には厳しい判断がなされるんじゃないかと思いますが、長官の御判断はいかがでしょう。

長谷政府参考人 漁業権の免許、今五年のものが多いんですが、今まさにこの時期、全国で切りかえが行われていて、次の切りかえは五年後ということになるんですけれども、法律施行後、漁業権者からは行使の状況について報告を求めます。

 そういう中で、いきなり切りかえのときにどうこうということではなくて、行使の状況について報告をいただいて、順調にといいましょうか、適切かつ有効に行使されているならそれでよしということでありましょうし、もしその利用度について工夫の余地があるということであれば、これまた地元の漁業者の代表である海区漁業調整委員会の意見も聞きながら指導する。今までの方式から、もう少し有効利用する取組をしたらどうですかという検討をしていただく。それで何か支援が必要であれば、そういうことも検討していく。

 その先にまた、勧告をするだとかいうことがあって、適切かつ有効に使う実態となれば、先ほど言いましたように、単に計画上の生産額などで機械的に判断するということではないと思っておりますので、地元の漁業の常識に鑑みて、真面目に取り組んでおられるという方の経営は、当然尊重されるべきだというふうに思っております。

緑川委員 聞けば聞くほど、なぜそれで優先順位が廃止されるのかというふうにやはり思わざるを得ないところであります。

 明治時代に漁業法ができたように、やはりこの沿岸漁業の漁場は、先祖代々の浜であります。江戸時代で言われていたところのいそにこれは当たります。いそは、地面の真ん前にある海ということで、地先のことであります。ここに住んでいる人たちが専ら利用するやはり専用の漁場、漁業権の地域であり、この地先専用漁業権が一九〇一年に漁業法で定められております。この地先専用漁業権というのは、今の共同漁業権のことであります。

 所有権がない海で、かつ、沿岸漁業のこの範囲が、例えば瀬戸内海では数百メートルしかないところもありますが、多くのところでは一キロないし三キロほどの操業の、結局、狭い範囲の中で、先祖から続くこの伝統のなりわいとしてそれぞれの暮らしを、やはり御自身の手で、それぞれの手で守られてきたわけであります。

 そこに、明治期には、日清戦争後から本格化してきた基本産業の育成政策の観点から、当時、発展的であった新しい漁業、定置網、養殖業、この漁場の中に一定程度の大きさの網が入ったわけです。そうなれば、ほかの人たちは漁業を結局できなくなってしまうわけですし、その歴史の中で、今、共同漁業権の中に、区画漁業権があり、養殖漁業権があるわけです。複層的にこれは重なり合っている中で、地元漁業者が、みんなで利用できる漁場の中に、この漁業の権利をめぐる紛争の歴史の上にあったわけです。

 政府にとって、それで、当時希少であったのは、あくまで漁業者の目線ではなくて、投入したのは資本でした。定置網や養殖などに必要な大きな資本をその浜に投下してくれるという条件で、企業を優遇する制度をつくりました。

 ここで長官に伺いたいんですけれども、当時、明治政府としては、漁業の発達を促して生産力の向上を期待したところであります。これは、結局、明治期と今回の改正と重なる部分があるように思えてならないんですが、御見解を求めます。

長谷政府参考人 委員から御紹介いただいた専用漁業権、明治漁業法の中での専用漁業権というのが、系譜的に言うと、今、共同漁業権という形につながっております。

 いそは地続きという言葉もありますけれども、アワビですとかウニですとかそういう類いのものが、前浜の資源としてその地域の漁民に優先的に利用されてきたということであります。そういう最も根本的な共同漁業権について、今回、改正事項はなくて、引き続き漁協のみがその免許権者になる、免許を受ける者になるということであります。

 そういう基本的な浜の秩序というものは、守るべきものは守りながら、今までも、その上に、先ほども申したんですけれども、定置漁業権だとかは、組合管理ではなくて経営者に免許するというような、真珠養殖もそういうことだということであります。それも、定置なんかも、最近の状況からすると、その労働条件からいっても、いろいろな面で、沿岸漁業の柱になる地域の雇用の、また、若手の就業の対象としても非常に大事な漁業になっている。

 そういうものを、地域のベースになっている共同漁業権を管理している漁協などとの調整を図りながら、紛争にならないように計画を立てて免許するということでありまして、その根本の思想は変わらないわけです。その計画策定ですとか免許申請だとかのプロセスをより透明化させるということはありますけれども、紛争のないように調整をして生産を図っていく、浜が栄えるようにしていくという根本の制度のつくり方というのは、今回も変わっていないというふうに思っております。

緑川委員 そうした、浜を調和させてきたのは、やはり地元の漁民であります。主に漁協にやはり優先的に付与されてきた、あわせて区画漁業権に一本化されることになる特定区画漁業権、これが付与されている漁業権の数としては一番多いです。いかだや生けすなどを利用して小規模な養殖を行う権利が特定区画漁業権です。免許の数として、全国一万四千八百三十の権利があるうちの七千八十七、半分近くを特定区画漁業権が占めておりますが、やはりこれは地元漁協に最優先で付与されてきたものであります。

 これが区画漁業権に一本化されるということは、やはりこの優先順位が廃止される、この認識はどのように捉えたらいいんでしょうか。

長谷政府参考人 現行法上も、特定区画漁業権も区画漁業権の中のくくり、区画漁業権に含まれておるわけなんですけれども、資本の規模から参入が容易であることから、狭い漁場において多数の漁業者により営まれておって、漁業者間の漁場利用の調整が非常に重要となる養殖業として法律の中に明記されているということなんですけれども、具体的には、藻類養殖業ですとか垂下式養殖業など五つの養殖業を法律で定めるとともに、法定の優先順位に従って、漁業協同組合が管理する組合員に行使させるという形の場合、優先順位一位ということになっております。

 しかしながら、この特定区画漁業権に該当する漁業種類であっても、時代の流れとともに漁業の実態は変化してきていることから、必ずしも多数の漁業者による利用を前提としたものばかりではなくなりつつあるというのも現実でございます。

 このため、改正法におきましては、ある区画漁業権を個別漁業権にすべきか団体漁業権にすべきかについては、養殖業の種類によって機械的に判断するのではなくて、改正後の第六十四条の規定によりまして、都道府県知事が海区漁業調整委員会の意見を聞いて、この海区漁業調整委員会というのは地元の漁業者を主体とする委員会でありますけれども、この意見を聞いて、漁業権ごとに判断する仕組みへと改めることとしております。これによりまして、養殖業の種類にかかわらず、地域の実情に応じて柔軟に個別漁業権か団体漁業権かを選択することができるようになります。

 したがいまして、改正後には、特定区画漁業権とそれ以外の区画漁業権とを区別する必要はなくなることから、今回、一本化するとしたということでございます。

緑川委員 時代の変化に対応してというふうにさらりとおっしゃられますけれども、これは一万四千八百余りのうちの、漁業権の数の半分近くですからね。これをおいそれと、漁協からすぐに、優先順位を廃止して他の主体に移行させる、実質それが可能になるというのは、大変これは不安定な制度じゃないかなというふうに思ってしまいます。

 このプロセス、県の策定する計画も、あるいは知事の裁量権も相当大きくなっております。策定のプロセスの透明化と言うんですけれども、あらかじめ、地元漁業者か、あるいは他から参入してくる企業に有利な要件で策定をする場合も考えられますし、調整委員会での公選制も結局のところ廃止されて、知事が議会の同意を得て選出されるという、ある種、知事の提案にもかなうような人が選ばれる可能性もあります。そうなれば、地元の漁業権者の、漁業者の声というのは、実質的に効果的に届いていくのかというのも大変不安視されるところであります。

 この区画漁業権の一本化の話もあわせて、やはり明確に、なぜ有効に適切に活用している場合というのがあくまで曖昧な定義のままなのかというのもこの後議論させていただきたいというふうに思いますけれども、結局、率直に言いますけれども、特定区画漁業権の法人の参入をふやしていく方向になるのではないかと思いますが、将来性はどのようにお考えでしょうか。

長谷政府参考人 特定区画漁業権、多くの場合、今は組合が、漁協が管理する形態のものが免許を受けているわけでありますけれども、それが、繰り返しになりますけれども、適切かつ有効に行使しているということであれば、五年後もその漁協に免許がされるということが法定されているわけです。

 その間の話でありますけれども、この漁場の中で、まあ何でもいいんですけれども、ノリ養殖を免許されたということであって、この漁場が有効に適切に使われているのであれば、その漁協にまた免許されます。

 その中で、やはり、だんだん後継者が減ってきて漁場があいてきているというような地域があるのも事実です。そういう部分で、そういうことであればもう少し、もっと有効に使う算段を考えてくださいというプロセスが入ります。その中で、今までの家族経営体だけではだめなので協業化を進めたいというのもいいんだと思うんです。地元の者で会社経営にしてみるというのも結構だと思います。そういう、漁場を有効に利用する取組について積極的に支援していきたいというふうに思います。

 審議の中で、そうはいっても、潮通しをよくするためにびっしりとは漁場を埋めずにあけているのが、そのことをもって有効じゃないというふうに判断されるんじゃないかというような心配もお聞きしたところですけれども、そういう取組について、例えば、病気の発生を防ぐために密度を調整しているというような話は、当然その有効かつ適切な行使だと思っておりますし、そういうその地域地域の条件、海の条件なり漁業の特性をわかった上で判断する。最終的には、その地域の漁業者の代表で構成される海区漁業調整委員会にも諮りながら、有効かつ適切かどうかというのが判断されていくということだと思っております。

緑川委員 そこのやはり、防波堤というふうにあえて言いたいと思いますが、その歯どめとなるそこの漁業調整委員会、あるいは策定プロセスの透明化というところを、だとすれば、もっともっと厳格に図っていくような方向で改正をしていただきたいなというふうに考えております。

 漁協の役割についても、これまでの評価も伺いたいと思いますが、地場の水産物供給の役割を果たす産地市場の利用を促してきたのが漁協であります。卸売市場法も今般改正されまして、現地の生産地から直接小売などへの販売ルート、こうした自由流通がふえているところでありますが、漁業法の改正の後、漁場に新たに参入した企業によって水揚げされた水産物の販売ルートについては、規定は設けているんでしょうか。

長谷政府参考人 そのような規定は置いておりません。

緑川委員 ここで、皆様にお配りしたA3の資料をごらんいただきたいと思いますが、図表の1、これは漁協の部門別事業の損益であります。直近の五年間で見ますと、各種事業の中で漁業自営と販売事業とでほかの赤字を補填して、安定的に黒字を出しております。漁協の経営を支えている大きな柱であることがまずこの1からわかります。

 そして、皆様、図表4をごらんください。漁協と農協の比較なんですが、そこの2、組合に占める事業総利益に占める割合を見ますと、販売事業が四三%になっています。事業総利益の半数近くを占めているわけです。

 この二つの図表からも、販売事業がいかに大切な事業であるか、そして、これが漁協を成り立たせているかということが明らかであると思います。

 地元漁業者から水産物を引き受けて、左側の下の図ですけれども、産地市場で買参人と販売交渉をし代金を回収している、こうした仕組みであります。産地市場の経済を潤し、そして、漁港周辺の活性化にも欠かせない重要な役割をやはり漁協が担ってきたわけです。

 先ほどの長官のお話では、やはり、そうした自由流通のもとでは、産地市場を介さない、そうした取引もこれは是としているようなお答えでありました。

 これでは結局、地元漁業者に優先的に付与されてきた漁業権が結果としてこれは企業に渡ったときに、販売の受託をすることは想定されていないのであれば、漁協は、販売事業で成り立ってきた基盤を奪いかねないのではないでしょうか。いかがでしょうか。

長谷政府参考人 委員御指摘のとおり、これは農協との大きな違いだと思っておりますけれども、漁協の場合は販売事業が事業の柱であるということであります。このことが、販売事業が、また、組合員、漁業者の所得向上にも直結していくという重要な機能だと思っております。

 具体的には、ブランド化、加工等による付加価値の向上、直接取引、地産地消等、新たな販路の開拓、産地市場の統合、買参権の取得等による価格形成力の強化等々、取組を各地域の漁協の創意工夫で進めていただくことが重要であるというふうに思っております。

 また、事業経営規模が零細な漁協も多いことから、合併等によって事業基盤を強化する、効率的な事業推進体制をとるということも重要だというふうに考えているところでございます。

緑川委員 そうなると、やはりこの自由流通を前提としているのであれば、これは当然、結果としてそうなる方向でと思います。それでは漁協が果たしていた産地市場の役割も結局薄れてしまうことになります。販売事業を弱体化させることに結局つながっていくのではないでしょうか。

 長官、改めていかがでしょうか。

長谷政府参考人 むしろ、組合員の、漁業者の所得向上が重要ですから、漁協には販売力を高めていただきたいというふうに思っておりますし、そのために、今回の改正の中でも、理事の中に販売に関するプロを登用するといいましょうか、一名は置くようにというような規定も置いて、そのことだけでとは思っておりませんけれども、漁協に販売力をつけてもらうという方向で支援もしていきたいというふうに思っております。

緑川委員 結局、その産地市場という拠点がなくなることで、これは漁協だけじゃなくて、地元漁業者も販売するルートを一つ失うことになります。そうなれば、結局、漁業をやめる方も、ケースもこれはふえてくるんじゃないでしょうか。

 平均所得を上げるということは、数字のある種マジックにも見えると思いまして、つまり、零細漁業者がやめてしまうことで、所得が大規模な人たちだけがもうかるような、それが目に見えて平均所得としては伸びているように、そのような映り方にもなってしまうのではないでしょうか。

 やはり、地元の漁協の拠点をしっかりと守っていく、それを法律に位置づけていただくことを重ねてお願いを申し上げたいというふうに思います。

 沿岸の漁場をめぐる権利の振り分け、あるいは、産地市場の担い手としても漁協がこうした大変な調整を行ってきたからこそ、漁場の管理、そして、浜の暮らしのバランスが均衡に保たれてきた面があります。歴史の歩みがあります。

 この優先順位が廃止されて、結局、地元漁業者の利益が、法的な保護が実質なくなってしまうことで、これからやはり、いろいろなお話も、御説明ありますが、統一的な管理という基準からは、私、薄れていくんじゃないかというふうに懸念をいたします。

 個別漁獲割当て権の話もそうですが、統一的に漁業を営む上で、個々に割り当てるという観点よりは、やはり漁業者全体で考えるべきだと私は思っております。

 漁業権を付与される規定について、先ほど適切かつ有効の定義についてはるるお話がありましたのでちょっと省略をさせていただきますが、都道府県によって判断基準が、そもそもこれは違いもあります。多様な浜のあり方があります。でも、それが大きく判断基準が異なることがないように省令を定める必要があると私は思っていましたが、政府に聞きますと、省令も定めませんし、技術的な助言、つまり通達のみで対応するというふうにしております。

 都道府県が困らないように、迷わないように、判断基準が大きく狂わないように、そのための技術的助言であるのに、その技術的助言の定義も、ちょっと長いですけれども、さっきと同じです。漁場の環境に適合するように資源管理や養殖生産を行い、将来にわたり持続的に漁業生産力を高めるように漁場を活用していること。さっきの有効かつ適切にと同じような定義でありまして、何ら踏み込んだ具体性がございません。

 そういう不明瞭な定義で、都道府県は、付与を希望する者がその定義に当てはまるか否か、判断は結局は都道府県任せということになろうかと思います。

 知事の裁量が大きくなっている今、都道府県によって結局これは大きく判断基準が変わってしまうんじゃないんでしょうか。いかがでしょうか。

長谷政府参考人 適切かつ有効に活用している場合ということについては、委員の方から御紹介いただいたところでございます。

 現段階の考え方ということでありますが、具体的には、個々の事案ごとに、まさにその地域ごとの事情というものがございますので、その地域の漁業に精通する都道府県知事さんであったり、また、海区漁業調整委員会の委員さんたちの判断というところも大きいところであります。

 しかしながら、都道府県によって判断の基準が大きく異なり過ぎますと問題ということなものですから技術的助言を定めていきたいと思っておりますけれども、その部分についても、都道府県とまた、よく意見をお聞きして、どのような形で具体化するかということを更に詰めていきたいというふうに思っております。

 あと、事前に既存の漁業者等の利害関係者の意見を聞いて検討を加えて、その結果を踏まえて海区漁場計画を策定するということですとか、海区漁業調整委員会の意見を聞いて適切に免許は行っていくということであります。

 地域地域の事情ということで、ノリ漁場の話をしました。潮通しのために漁場をあけているところが、これは適切なのか、ただ遊ばせているのかというような判断とか、まさにその漁場の特性なりその地域の漁業の特性をわかっていないと判断できない部分があります。そこの、その漁業をやっている人たちの常識に反するようなことであれば適切でないんだというふうに思っておりますが、そういうことが上手に、ばらつきが大きなばらつきにならないように、でも、地域地域の実情がうまく反映できるようなまとめ方をしていきたいというふうに思っております。

緑川委員 なかなか、浜の絶妙なバランスの中に結局はメスを入れていく、その難しさももちろん承知はいたしますし、その大改正という中での議論ですから、余計に法的な枠組みというのは必要ではないかというふうに私はむしろ考えております。

 技術的助言について、今の私のお話の定義よりも一歩踏み込んだ説明を今後行っていくことでよろしいんでしょうか。

長谷政府参考人 基本的な国の今の考え方をお示ししながら、都道府県の実務をされている方の御意見を聞きながら、更にいいものにしていきたいというふうに思っております。

緑川委員 あわせて、活用状況です。

 これは、参入が認められたとして、その後の、第九十条に規定されている、漁業権が付与されて漁場に参入した後、都道府県が国に漁場の活用状況を報告することになっております。この報告する項目についての定めは、先日参考人に伺ったところ、特にまだ定めはないというお答えでありました。今の状況でのお答えもいただければと思います。

 あわせて、活用状況の報告ですが、やはり地元の利益にかなうような項目を私は盛り込むべきだと思います。

 生産力が何ぼとか産業目線の数値ではなくて、地元漁民の雇用要件であるとか、まず算出の、いかに地元に還元できたかの目安となるような項目を、産地市場流通の規定などもあわせて設けられればなおいいなと思いますが、地元目線での項目の盛り込み方についてはいかがでしょうか。

長谷政府参考人 このことにつきましては、免許後、漁場の活用の状況等について知事に報告していただくという規定があるわけでありますけれども、この規定の趣旨は、限られた沿岸水域を漁業者が適切かつ有効に活用する観点から、漁業権を付与された漁場における操業実績、資源管理、漁場改善の取組状況などについて報告を求めて、当該漁業権者の行使状況を把握するためということでございます。

 その項目については、地域への貢献といったようなことも一つあり得るのかなということでお聞きしたところでありますけれども、具体的な報告の頻度や内容については農林水産省令において示すこととしておりますし、漁業権者にとって過度な負担とならないようにしていきたいということであります。

 繰り返しになりますけれども、漁場の利用がもし低下しているのであれば、もう一度、十分に、十全に活用する取組を考えていただきたい。それを支援していきたいということでございます。

緑川委員 時間が来てしまいましたけれども、やはり不安の残る、議論、まだまだしていきたいというふうに思っております。

 何といっても、適正な資源管理、そして成長産業化。本当に、林業と農業、そして漁業にわたる今回の抜本的な見直しであります。ただ、大事なのは、やはり統一的な、何度もお話ししますが、漁場の管理、そして国境を監視する、また、自然環境を守っていくような多面的な機能が漁業にはある、このことを強く申し上げて、地域政策と産業政策両輪で強く後押しをしていただきたいというふうに思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

武藤委員長 次に、大串博志君。

大串(博)委員 無所属の会の大串でございます。

 早速質問させていただきたいと思います。

 漁業法の改正でございます。漁業者の皆様にとって漁業権というのは、私は、まさに命よりも大切な、自分たちの生業を可能とする基礎の問題だと思います。だからこれだけ大きな課題となっているわけでございまして、その点からいって、漁業権というものは何なのかというところからまず議論をさせていただきたいと思います。

 といいますのは、先般、七月の末に、私、何回か取り上げました諫早湾干拓の開門の問題に関しまして、裁判所が、福岡高裁ですけれども、一つの判決を出しました。

 どういう判決かというと、開門を求める原告の方々がいらっしゃって、開門判決は確定しております。これがなかなか行われないということで、ぜひこれをやってほしいということで、当然、確定判決があると、これを執行してもらう、強制執行という段に話がなります。間接強制ということで、間接強制金が国に対して、開門してないじゃないかということで間接強制金が課せられていた、こういう状況にある。この間接強制のあり方に関して、間接強制をしろということが、原告の皆さん、できるのかという、いわゆる開門請求権自体も含めて問われた裁判だったんですけれども、そこでの判決は、開門してくれという原告の皆さんに対して、開門請求権は認められない、こういう判決だったんです。

 その理由が私は極めて問題だったと思っているんです。どういう理由だったかというと、漁民の皆さんです、この漁民の皆さんの漁業権、今回議論になっているように、当然期限がある。期限があるので、この原告の皆さんの漁業権は、平成二十五年八月三十一日という免許期間の経過によって消滅したんだ、漁業権が消滅してしまったんだと。よって、この方々は、もう二十五年八月三十一日以降は開門してくれと言えない。被害は起こっていないから、もうこの人たちは漁業権を持っている人たちじゃないから、開門してくれということは言えないということになったんです。

 漁業権はこんなものなんでしょうか。期限が来たらなくなる、自動的に。その後は、その漁業権に基づいて、漁業をさせてくれ、逆に言うと、漁業ができないのであったら、何で漁業ができないんですかと。それに対して、何がしかの障害があって漁業ができないんだったら、障害をはねのけてくれという権利は、ある期限が来たらなくなっちゃうんでしょうか。

 そこで、政府にお尋ねします。

 これまでも、漁業ができなくなる状況というのはありました。公共事業等々が行われて、公共用地の取得に伴って漁業ができなくなる、よくあります。こういった場合に、どうやって国が損失補償するかという基準があります。公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱、これは、国土交通省が定めている、閣議決定されている基準です。

 この十七条には、漁業権等の消滅に係る補償、つまり、公共事業によって漁業ができなくなる、漁業権がなくなってしまう、漁業ができなくなるわけですから、その場合に対する補償としてどういうふうにするかということが書かれています。これは、当該権利を行使することによって得られる収益、将来得られるですよ、当該権利を行使することによって得られる収益を資本還元した額を基準とする、当該権利に係る水産資源の将来性等を考慮して算定した額、将来性、こういうことです。

 国土交通省にお尋ねしますけれども、これは、例えば、ある方の漁業権が二年後に切れちゃう、そういうときに漁業ができなくなっちゃう公共工事を行っている、そういった場合に、今まで、この補償の要綱に基づく対応においては、あなたの漁業権はあと二年で切れるから、二年分しか補償しませんよということを国土交通省はやってきたんですか。

鳩山政府参考人 公共用地の補償についてお尋ねでございます。

 公共用地の取得に伴い消滅させる必要がある漁業権に対する補償につきましては、先生御指摘のとおり、昭和三十七年に閣議決定されております公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱に基づいて行っているところです。

 土地を取得する場合は、近傍類地の取引価格を基準とした土地の正常な取引価格というものを基準として行っておるところですが、漁業権の場合には、譲渡性がなく、客観的な取引価格というものをもって算定の原則とすることができません。

 このため、漁業権の存続期間の満了後に再度免許される可能性があることを考慮した上で、収益を生み出す資産として評価した額を基準とし、これに当該漁業権に係る水産資源の将来性等を加味して評価することとしております。

大串(博)委員 そういうことです。この補償基準をつくった大もとの国交省、そういうふうな考えなんです。つまり、漁業権が更新されるということを前提に、その先のことまで補償するんです。

 農水省にお尋ねしますけれども、当然、公共事業を担当しているのは農水省も同じですから、農水省も同じ考えでこれまで補償してきている、こういうことでよろしいですね。

室本政府参考人 ただいま国交省さんから御説明があったとおりでございます。

 損失補償基準要綱に基づきまして、一般的に、事業の施行により消滅させる漁業権に対しましては、漁業補償が当然行われるということになりますが、現在実施されている漁業補償というのは、あくまでも漁業権に法定存続期間が存在するということを前提としておりまして、漁業権の存続期間の満了後に再度免許される可能性があること、これを考慮した上で、将来の予測も踏まえて算定した金額を補償するということとされておりまして、この考え方に即して補償したものでございます。

大串(博)委員 満了期間後に更新される可能性があるということで、当然、その先のことも補償してきているわけです。恐らく、二年後に免許期間が切れますからその後は補償しませんなんて政府が言ったことは一度もないと思いますよ。

 ところが、この判決は、平成二十五年八月三十一日の免許期間が失効したことでこの権利はなくなったんだ、漁業権はなくなったんだ、よって、その後は、その被害があるからということで、開門してくれ、開門請求権、これは、金銭的な請求でも、開門してくれという請求でも同じですよね。つまり、自分の権利が害された、物権的権利ですから、排他的に使えるのが漁業権、この物権的権利が害されたからそれをどけてくれ、あるいは補償してくれということは法的な行為として同じです。それができる。今までは政府は、少なくともそこのところを見込んで、漁業権が更新されることを前提に補償してきたにもかかわらず、この判決においては、漁業権は平成二十五年八月三十一日で失効したんだ、だから、それ以降は漁業権に基づいて開門してくれという請求はできないんだということを言った。この判決、農水省、おかしいと思いませんか。

室本政府参考人 あくまで漁業権というのは、今想定されるのは共同漁業権ということで、基本的には十年で消滅し、また再度、新たに付与されるという性格のものでございまして、その主張をしたのは私ども国でございまして、今回、福岡高裁の方で私どもの主張が認められた形になっているということで、国としては、私どもの主張を認めていただいたというふうに考えてございます。

大串(博)委員 補償するのも農村振興局で、裁判に対応したのも農村振興局。先ほど話があったように、農村振興局においてはこれまで補償の場面においては、漁業権が二年後に例えば切れることを前提に二年以降は補償しませんよなんていうのは言っていない。つまり、二年以降も漁業権の権利があるということを前提として補償してきている。

 しかし、諫早湾干拓の被害を受けた漁業者に関しては、漁業権が消滅したということを国が、漁業権とはそういうものだと言わんばかりに何で国が言えるんですか。どうですか。

室本政府参考人 先ほどと繰り返しになるかもわかりませんが、まず、漁業権というのは存続期間が法定されておりまして、一定の期間の経過とともに消滅する権利であるということ、それから、漁業補償は、あくまでも漁業権に法定存続期間があることを前提としつつ、将来の予測も踏まえて算定された金額を補償するということになっておりまして、そういう主張を私どもが行ったわけであります。

 本当に、繰り返しになりますが、高裁判決においてもこの私どもの主張が認められたものというふうに認識しております。

大串(博)委員 そうすると、今後、農水省は、公共用地の取得に伴って何がしか漁業権に被害が及ぶ、それに対して補償しなきゃならないとなったときに、今後は、あなたの漁業権は二年後に失効しますねと言って、二年後までは補償しますけれどもそれ以降は補償しません、こういう態度をとるんですか。

室本政府参考人 漁業権は法定によってその期間が定められているということでございまして、漁業補償の考え方というのは、先ほども国交省さんからあったように、あくまで損失補償基準要綱に基づいて一定の仮定を置いて、社会的割引率などを考慮した形で、あくまで計算上で出したものでございます。

 したがいまして、法定の漁業権の存続期間と漁業補償の算定とは直接矛盾はしないというふうに考えてございます。

大串(博)委員 いや、私は、どういう主張をするのかということを聞いているんですよ。

 先ほど言われたように、諫早湾干拓のこの問題に関して、二十五年八月三十一日に免許期間が徒過して漁業権は消滅したんだ、よって、それ以降は、開門請求、こういった、被害があったからといって請求権を行使することはできないんだと国が主張した。のであれば、同じ理屈で言うならば、今後、いろいろな漁業損失があった場合に、それに対して、あなたの損失も漁業権がある間の話ですよ、漁業権が切れたらその権利はなくなるわけだから、開門請求権だって言えないんだから、損失補償なんてできませんというのが国の立場でしょう。

 矛盾しているじゃないですか。どうですか。

室本政府参考人 今委員おっしゃっていますのは、恐らく調整池内の消滅補償に関係する部分だと思っておりまして、この場合、調整池のいわゆる漁業権というのは消滅しておりますから、そこで、その水を干拓地の営農に供給するということで、法制上は新たな漁業権というのは発生しないというふうに考えております。

 ですから、今後新たにどうするのだということになれば、それは訴訟との関連もございます。現在、請求異議訴訟が最高裁にも上がっておりますので、具体的なコメントは差し控えさせていただきたい、こう思っております。

大串(博)委員 いや、今後、別にその調整池内の漁業に関して個別に言っているんじゃないです。一般論としてです。諫早湾干拓の問題に関して、漁業権が失効した以降は請求権を行使できないと国は主張したのであれば、より一般的に、この補償要綱を変えてくださいと言わなきゃいけないんじゃないですか。補償要綱の取扱いを変えて、期間が徒過した以降は請求できませんというふうに言わなきゃいけないんじゃないですか。

 そういう矛盾を抱えた主張を国は裁判所でしているんですよ、裁判所で。あるときは、漁業権は期間が徒過しても更新される、それを前提に補償しますよと言いながら、あるときは、国は裁判所において、いやいや、二十五年八月三十一日に期間が来て消滅したから、これ以上権利主張はできませんと言っている。

 漁業権をもてあそんでいないですかね。漁業者の皆さんがそれをもとに生活の糧を立てていらっしゃる漁業権をもてあそんでいないですか。

 今回の漁業法にしたって、漁業権のあり方がどうなるのか、私は漁業の皆様は大変心配していらっしゃると思いますよ。それを、この漁業法においてはいざ知らず、少なくともこの諫早湾干拓の問題に関しては、漁業権をもてあそぶような対応を農水省はしていると私は言わざるを得ないと思いますが、農水大臣、この矛盾に関して所見を伺いたいと思います。

吉川国務大臣 請求異議訴訟におきましては、国は、漁業補償は、昭和三十七年に閣議決定された公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱に基づき実施をされており、その考え方は、あくまでも漁業権に法定存続期間があることを前提として、将来の予測も踏まえて算定された金額を通常受けるべき損失として補償することとされている旨の主張をしたところであります。

 なお、御指摘の福岡高裁判決におきましても、漁業権が免許期間の満了により消滅することと漁業補償の実情とは矛盾するものではないと判示されていると承知をいたしております。

大串(博)委員 どこが矛盾していないんですか。ある人が権利を持っていて、それが害された、それを回復してくれということを言う。この法廷の場において、一方においては、その権利は更新されるという前提で国は対応している。一方においては、その権利は更新されないと国は主張している。こんな、あるときはこう、あるときはこうと、漁業権という極めて重要な漁家に対する権利に関して、態度をころころ変えるような国の漁政、極めて大きな問題があると私は思いますよ。

 ちょっと法案担当に聞きますけれども、これはもし、通告していなかったので、難しかったら難しいと言ってください。

 今回の改正で漁業権に基づくこの損失補償の考えは変わるんですか。すなわち、今は、期限が徒過しても、その後の更新の可能性も踏まえて補償されるということになっています。今回の改正で漁業権の更新、付与のあり方が変わるわけですけれども、これによって損失補償の国の考え方は変わるんですか。もし難しかったら難しいと言っていただいて結構です。まだ決めていないということであれば、決めていないということで結構です。

 私は、変わったらおかしいなと。ここで変わるというふうに言われたら、漁業権は余り現状と変わりませんよというのがこれまでの答弁でした。答弁だったんだけれども、補償のあり方が変わってくるようであれば大問題だと思うんです。いかがですか。

長谷政府参考人 共同漁業権存続期間十年という規定は変更がありません。

 それ以上のことについては発言を控えさせていただきます。

大串(博)委員 答弁を控えさせていただきたいということですよね。

 すなわち、漁業権というものは変わりませんよ、余り変わらないから、漁家の皆さん、心配しないでくださいねというのが今回の法律です。そうかと思って私たちは議論している。あるいは、漁業者の皆さんもそう思って受けとめていらっしゃるのかもしれません。

 それが、きのうの参考人質疑でもありました、漁業者の皆様は落ちついて受けとめられているという参考人の方の意見もありましたが、将来の損失補償がどうなるかに関しては答弁を差し控えさせていただきたいと。急に聞いて申しわけなかったですけれども、よく検討していただけると思いますけれども、そういうところまで考えが至っていないとすると、私は非常に心配です。

 適切かつ有効に活用されているか、極めて曖昧な文言で今回法律が立てられている。これに関して私たちは非常に問題視しているわけですけれども、これは、漁業権というものがいかに漁家の皆様にとって重いものかというのをこの審議の場で言いたい、そういうことです。

 それはなぜかというと、諫早湾干拓において漁業権が国によってもてあそばれたような主張をされているから。国は漁業権はしっかり守るという態度をしっかり明示していただきたい。そういう意味から、私は、極めて国が諫早湾裁判の中で申し述べた主張は大問題だったと思うし、将来に禍根を残すと思いますし、ぜひどこかの場で撤回をしていただきたい。そのことを申し上げさせていただいて、質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

武藤委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 法案について質問します。

 漁業者の九四%は小規模沿岸漁業者であります。その沿岸漁業者に対してどれだけの説明を水産庁は行ってきましたか。

長谷政府参考人 漁業者への説明につきましては、水産政策の改革の内容や改正法案の考え方等につきまして、漁業者団体の開催する会議などさまざまな機会を通じて説明を行ってきておりまして、本年六月から十月末までの間に全国各地で九十九回の説明会等を実施してきたところでございます。

田村(貴)委員 しっかりと説明されてきましたか。法案について、九月以降、水産庁の公式の説明会は、東京、大阪、福岡のわずか三会場であります。福岡の説明会に参加した方からお話を聞きました。かなり荒れた説明会になった、十三時から十六時までの予定であったんだけれども十七時過ぎまで延びた、参加者から反対と言って席を立つ者も出た、漁業者のことを理解していない声もあった。納得していないじゃないですか。

 吉川大臣にお伺いいたします。

 本会議での私の質問に対して大臣は、現場の漁業者の皆さんの不安や不満の声にしっかり向き合い、丁寧な説明に努力してまいりたい、そう答えられました。これから具体的にどうされるんですか。それから、不安や不満の声と言ったのは、どういったことを指しているんでしょうか。教えてください。

吉川国務大臣 ただいま水産庁長官も答弁をいたしましたように、十月末までで九十九回の説明も行ってきているところでもございます。

 この説明会の中で、例えば、海面利用制度の見直しに関して、適正かつ有効の判定は誰がどう判断するのかとか、地元の漁業者や漁協ではなく資本力のある企業による漁場利用を目指すのかとか、さらには、不安や不満の声があったと承知もいたしているところでございます。

 このために、法案の内容やその運用に関しましても、国会において御審議をいただくのはもちろんでありますけれども、今後も引き続き説明会を実施をしていきたいと思っておりますし、全国の浜の皆さんの要望に応じて説明会に出向くことも考えております。そして、漁業者の皆さんの不安を解消した上で、この改革を実行できるように努めていかなければならないと存じております。

田村(貴)委員 私、先ほど福岡の例を申し上げましたけれども、私自身も、今度の提案というのは、これは漁協と漁民にとっては大変な問題だと思い、私もできる限り声を聞いてまいりました。

 宮崎県にも行きました。漁協にも行ってきました。長崎県対馬の漁協にも行きました。沖縄県にも行きました。北海道にも赴きました。宮城県にも行ってまいりました。どこでも単位漁協から出てくる声、県漁協でも、よくわからない、これから聞くところ、知らない、こういう声が多数なんですよ。議員の皆さんの地元でもこういう声があるんじゃないですか。

 ある漁連の会長さんは私に対してこうおっしゃいました。私どもも十分に中身を理解しているわけではありません、詳細わからないことが多いのです。長官、これは今月の話です。

 私は冒頭、千の小規模沿岸漁協があると。小規模沿岸漁協の数が千あるんだったら、千の組合長があるんですよ。私は、沿岸漁業者にどれだけ説明しましたかと聞いたんですけれども、こうした千の組合長はこの話を聞いているんですか。そして、説明をされてきたんですか。いま一度お答えになっていただきたいと思います。

長谷政府参考人 委員から御紹介ありました福岡の会議自体、私、出席しておりませんけれども、席を立ったと言われるその組合長さんもよく存じ上げているところであります。漁師かたぎの方でありまして、その場では席を立たれたというのは事実でありますけれども、その後、職員をその組合長さんのところにも一度ならず派遣しまして補足の説明をして、御理解を得る努力をしているところでございます。

 先生から何件か出ました。宮崎につきましては私自身が行くことができまして、県下の組合長さん、組合の職員さんたちに対しまして直接説明をさせていただいたところであります。

 説明が、それはある意味切りがない部分がございますけれども、これまでも努力してまいりましたし、これからも、この改革の趣旨が浜に届くように、理解が得られるように、また、全力を挙げて取り組んでいきたいというふうに思いますし、個々の漁業者につきましては、我々もやっておりますし、全漁連さんの方でも広報媒体を使って各漁協への情報発信というのもされているところであります。

 そのほか、私どものホームページに動画も載せまして、いろいろな形で、浜に届くようにこれからも努力していきたい、しっかり取り組んでいきたいと思っております。

田村(貴)委員 漁獲規制というのは、クロマグロのときのように、沿岸漁民の死活問題にかかわる問題ですよ。それから、区画漁業権などにおける企業の参入、この付与については、七十年間の浜の人たちの生活、なりわい、これらにかかわる重大問題ですよ。既得権にかかわる重大事項ですよ。本法案というのはそれほど大きな重みがあるんですよ。だからこそちゃんと説明すべきじゃないかというのに、切りがないというのはどういうことですか。これは重大発言ですよ。取り消しますか。

 その前にもう一問。私が聞いているのは、千の単位漁協があって、千の組合長がいるんだったら、せめてその組合長さんは知っているのか、説明したのかと聞いているんですよ。その事実だけ言ってください。

 撤回しますか、今の話。

長谷政府参考人 不適切な発言だったと思います。取り消させていただきます。

 千の漁協、各県ごとに、あるいはブロック単位でお集まりいただいてそこでの御説明をしているということでありますし、先ほど、動画でありますとか全漁連さんの広報媒体等も含めまして、個々の漁協、漁業者への周知を図っているところでございます。

田村(貴)委員 まあこういう調子ですから、漁協の方も漁民の方も、水産庁が言っていることが信用できないよという意見が出てくるのは当然なんですよ。

 大臣の先ほどの答弁で、いみじくも大臣言われました。今後も説明していくと。納得しているんだったら説明する必要はありませんよね。

 そして、どういう不安や不満の声が出ているのか。適切かつ有効な判断は誰がするのか、まさにこの法案の根本的な問題です。それから、資本のある者が漁場を利用していくのか、こういう不安が出ている。まさに本質的な疑問や声が出ているわけですよ。その声が払拭できていない。現在進行中です。ですから、やはり説明があると認めたんです。理解が得られているんだったら再説明の必要はないわけですから、漁民、漁協の理解は今の時点でも全く得られていないということであります。

 私は申し上げたいと思います。こうした法案は一旦取り下げて、漁協と漁民の声を聞くところから始めたらどうかというふうに思うわけであります。

 時間がありません。次の質問に移ります。

 地元漁業者が適切かつ有効に活用している場合は継続して地元に漁業権を与えるとこれまで水産庁は述べてまいりましたけれども、この適切かつ有効に活用との判断は知事が行います。具体的な基準は、これは国において策定するんでしょうか。ガイドラインみたいなものをつくるんでしょうか。

長谷政府参考人 適切かつ有効に活用している場合とは、漁場の環境に適合するように資源管理や養殖生産を行い、将来にわたり持続的に漁業生産力を高めるように漁場を活用している状況と考えております。

 具体的には、個々の事案ごとに、地域の漁業に精通する都道府県が実態に即して判断することとなりますけれども、都道府県によって判断の基準が大きく異なることがないようにする観点から、法案成立後、国が技術的助言を定めて、適切かつ有効の考え方を、都道府県の意見もお聞きした上で示していく考えでございます。

 なお、個別の漁業権の付与に当たりましては、事前に既存の漁業者等の利害関係者の意見を聞いて検討を加え、その結果を踏まえて海区漁場計画を策定しなければならないこと、地元の漁業者が主体となる海区漁業調整委員会の意見を聞かなければならないこととしていることから、適切に行われるものと考えております。

田村(貴)委員 そんな大事なことを今から決めていくんですよね。

 先ほど大臣が答弁されましたよね。適切かつ有効に活用、この判断、誰が決めるのか。これは漁民から今沸騰しているわけですよ、漁協から。この一番大事なところの判断基準というのは今からつくっていく。そんな大事な基準も示さず議論しろと言われるのは、本当にできませんよ。

 具体的に確認しておきたいことがあるんですけれども、法案六十二条二項、海区漁場計画、条文では、漁場の位置、漁業の種類、個別漁業権か団体漁業権かの区別を決定しなければいけないとしています。

 既に公示の段階で漁場が個別漁業権と設定されたら、団体漁業権を求めて漁協などが申請しても、その時点ではもう意味がないのではありませんか。いかがですか。

長谷政府参考人 本法案におきまして、海区漁場計画の作成に当たりまして、あらかじめ利害関係者の意見を聞いた上で、区画漁業権については、個別漁業権又は団体漁業権の別を定めるものとしております。

 その際、漁業関係者を主体とする海区漁業調整委員会の意見を聞くこととしており、その区別の妥当性についても判断されることとなっております。

 このため、既に計画の公示段階において設定する漁業権が個別漁業権と定められている場合には、団体漁業権を求めて申請することはできず、また、逆に計画の公示段階において設定する漁業権が団体漁業権と定められている場合には、個別漁業権を求めて申請することはできませんけれども、いずれにしても、事前に必要な調整は行われるものと考えております。

田村(貴)委員 それでは納得できませんよ。

 利害関係者の意見を聞かなければいけないとしていますけれども、これは努力義務なんですよ。聞いてその判断に従うんじゃないんです。海区漁業調整委員会は、公選制を廃止して知事が指名するわけでしょう。だから、知事の恣意的判断というのがこの条文では入るんですよ。入り込むすきがあるんですよ。

 知事の恣意的判断は十分働くことがあるんじゃないですか。漁協の意見は聞いたんだけれども、知事が地元漁業者が漁場を適切かつ有効に活用していないと判断したら、個別漁業権の付与が権限によって可能であるたてつけになっているわけです。長官、聞いていますか。聞いてくださいね。

 地元漁業者が漁場を適切かつ有効に活用していないとあくまでも知事が判断したら、個別漁業権の付与が権限によって可能である、公示の段階でそういうたてつけになっているじゃないですか。だから、知事の恣意的判断が動くことは十分あり得るんじゃないですか。こういう場合もあるんじゃないですか。どうなんですか。

長谷政府参考人 六十三条の問題であります。

 漁場の活用の現況及び漁場計画の案について出された意見の検討結果などに照らしまして、団体漁業権として区画漁業権を設定することが当該区画漁業権に係る漁場における漁業生産力の発展に最も資すると認められる場合には、団体漁業権として区画漁業権が設定されるということもあるという仕組みになっているところでございます。

田村(貴)委員 何だかよくわからないけれども、逆も真なりですか。

 つまり、やはり、適切かつ有効な活用というのは余りにもいいかげんな概念だ、そういういいかげんな概念のもとでこの法律をつくるから、これだけ誤解とそれから疑問を招いているというふうに言わざるを得ません。

 漁業権の付与に係る問題、そして、漁協がこれまで営々として取り組んできたことを今から変えていく、それを納得させるには余りにも無責任なたてつけになっているというふうに思うわけであります。

 もう一問伺います。法案六十三条一項三号、海区漁場計画の要件についてです。

 条文では、「海区漁場計画は、次に掲げる要件に該当するものでなければならない。」とした上で、一項三号で、「活用漁業権が団体漁業権であるときは、類似漁業権が団体漁業権として設定されていること。」というふうにあります。つまり、これは、漁協の中で団体免許を受けている養殖企業は漁協を脱退して個別漁業権を取得することは不可能である、そういうふうに理解してよろしいですか。同一漁場を使う限り、将来にわたって漁協組合員として漁場を再利用する以外に選択肢はないというふうに私は読みましたけれども、それでよろしいですか。

長谷政府参考人 本法案におきましては、既存の漁業権者が水域を適切かつ有効に活用している場合には、その者に優先して免許する仕組みとしたところでございます。

 このため、団体漁業権を受けた漁協が適切かつ有効に水域を活用している場合には、漁協の組合員たる養殖業を営む企業ではなく、その漁協に優先的に免許が行われることとなります。

 他方、団体漁業権を受けている漁協が免許を要望しない場合や水域を適切かつ有効に活用していない場合などにおきましては、海区漁場計画において個別漁業権として定められることとなる可能性はあるということでございます。

田村(貴)委員 それは確認しました。

 いずれにしても、地元漁業者が漁場を適切かつ有効に使っているか使っていないか、ここの判断になってくるんですよ。この判断の基準がないことがやはり大問題だというふうに指摘をしておきます。

 さきの国会で、私は、FAO、責任ある漁業のための行動規範、それから、SDGs、小規模漁業に関する記載について質問しました。

 長官は、我が国は、これらの規定について、いずれも合意した上で真摯に対応してきているところでありまして、責任ある漁業国として、資源管理を行うに当たって小規模漁業者への配慮を行うことは重要であると認識しています、このように答弁されました。

 今も変わりはないと思いますけれども、大臣にお伺いしたいと思います。

 十一月二十日、国連総会第三委員会で、小農と農村で働く人びとの権利に関する国連宣言が採択されました。これは重要な宣言であります。この宣言には、小規模漁業者が自然資源にアクセスする権利も含まれて、FAOそれからSDGsの記述とも合致してまいります。来年からは、国連家族農業の十年が始まります。これには漁業も含まれています。このように、家族経営の小規模沿岸漁業を保全するということは、二重三重に国際約束となっているところであります。

 大臣、沿岸漁業というのは、ほかの漁業と異なった特別の役割があります。特別な配慮が必要ではありませんか。小規模沿岸漁業を大切にすること、資源管理を行うに当たってちゃんと配慮する、これが大事だと思いますけれども、大臣の御認識を伺います。

吉川国務大臣 委員お尋ねの規定は、いずれも、漁業者、とりわけ小規模漁業者への配慮の重要性を規定したものであると承知をいたしております。

 我が国は、これらの国際的な枠組みに対しまして、いずれも、合意した上で真摯に対応してきているところでもあります。

 今後とも、今御指摘のありました沿岸漁業を中心とする小規模漁業者の安定的な操業あるいは経営安定が確保されますように、財政措置、資源管理を含めて水産政策全般にわたって配慮をしてまいりたいと存じます。

田村(貴)委員 小規模沿岸事業者は配慮する、大切だと言われるんだけれども、声を聞いていない。そして、法案の中身は小規模沿岸漁業者の利益に反する形になっている。このことを指摘して、きょうの質問を終わります。

武藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十二分散会


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