第13号 平成30年12月11日(火曜日)
平成三十年十二月十一日(火曜日)午前八時五十分開議
出席委員
委員長 武藤 容治君
理事 伊東 良孝君 理事 小島 敏文君
理事 齋藤 健君 理事 野中 厚君
理事 細田 健一君 理事 亀井亜紀子君
理事 近藤 和也君 理事 稲津 久君
秋本 真利君 池田 道孝君
泉田 裕彦君 稲田 朋美君
今枝宗一郎君 上杉謙太郎君
鬼木 誠君 加藤 寛治君
金子 俊平君 木原 稔君
木村 次郎君 小寺 裕雄君
斎藤 洋明君 坂本 哲志君
中曽根康隆君 西田 昭二君
福山 守君 藤井比早之君
藤原 崇君 古川 康君
宮路 拓馬君 石川 香織君
神谷 裕君 佐々木隆博君
長谷川嘉一君 堀越 啓仁君
緑川 貴士君 山岡 達丸君
濱村 進君 大串 博志君
金子 恵美君 田村 貴昭君
森 夏枝君
…………………………………
農林水産大臣 吉川 貴盛君
内閣府副大臣 左藤 章君
農林水産副大臣 小里 泰弘君
内閣府大臣政務官 長尾 敬君
厚生労働大臣政務官 新谷 正義君
農林水産大臣政務官 濱村 進君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 大角 亨君
政府参考人
(内閣府食品安全委員会事務局長) 川島 俊郎君
政府参考人
(財務省大臣官房審議官) 山名 規雄君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 吉永 和生君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 横山 紳君
政府参考人
(農林水産省消費・安全局長) 池田 一樹君
政府参考人
(農林水産省食料産業局長) 新井ゆたか君
政府参考人
(農林水産省生産局長) 枝元 真徹君
政府参考人
(農林水産省農村振興局長) 室本 隆司君
政府参考人
(林野庁長官) 牧元 幸司君
農林水産委員会専門員 室井 純子君
―――――――――――――
委員の異動
十二月十一日
辞任 補欠選任
金子 俊平君 中曽根康隆君
山本 拓君 鬼木 誠君
関 健一郎君 山岡 達丸君
同日
辞任 補欠選任
鬼木 誠君 秋本 真利君
中曽根康隆君 金子 俊平君
山岡 達丸君 関 健一郎君
同日
辞任 補欠選任
秋本 真利君 山本 拓君
―――――――――――――
十二月十日
一、主要農作物種子法案(後藤祐一君外八名提出、第百九十六回国会衆法第一三号)
二、国有林野事業に従事する職員の労働関係を円滑に調整するための行政執行法人の労働関係に関する法律の一部を改正する法律案(佐々木隆博君外四名提出、第百九十六回国会衆法第一八号)
三、国有林野事業に従事する職員の給与等に関する特例法案(佐々木隆博君外四名提出、第百九十六回国会衆法第一九号)
四、畜産経営の安定に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する法律案(佐々木隆博君外六名提出、第百九十六回国会衆法第二三号)
五、農業者戸別所得補償法案(長妻昭君外六名提出、第百九十六回国会衆法第三三号)
六、農林水産関係の基本施策に関する件
七、食料の安定供給に関する件
八、農林水産業の発展に関する件
九、農林漁業者の福祉に関する件
一〇、農山漁村の振興に関する件
の閉会中審査を本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
農林水産関係の基本施策に関する件(畜産問題等)
平成三十一年度畜産物価格等に関する件
――――◇―――――
○武藤委員長 これより会議を開きます。
農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官横山紳君、消費・安全局長池田一樹君、食料産業局長新井ゆたか君、生産局長枝元真徹君、農村振興局長室本隆司君、林野庁長官牧元幸司君、内閣官房内閣審議官大角亨君、内閣府食品安全委員会事務局長川島俊郎君、財務省大臣官房審議官山名規雄君及び厚生労働省大臣官房審議官吉永和生君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○武藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○武藤委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。石川香織君。
○石川(香)委員 おはようございます。立憲民主党の石川香織です。
本日、私は主に酪農の部分についてお伺いをしたいと思っております。
今、酪農、畜産業界は、年内発効のTPP、それから、来年二月とも言われておりますが、日・EU・EPA、そしてTAGなど、自由貿易の波にさらされて大変厳しい状況が続いております。
ことしは天候不順によって牧草の収穫もおくれまして、栄養価も低いということで、非常にそのあたりも懸念をされております。これによって輸入飼料の割合が高くなってしまって経営を圧迫するおそれ、それから、地震の影響でさまざまな影響もありました。ストレスによって早産してしまったり、乳房炎になったり、それから分娩の時期がずれたということで、地震から三カ月たった今も影響が及んでいる部分が多くあるということでありました。
その中で、集送乳調整金単価、燃料が高騰していること、それから改正畜安法の施行による影響など、そのほかさまざまな諸経費の影響も考慮して、そういったものを加味した単価にしなければならないと思いますけれども、そのあたりについてお伺いをしたいと思います。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
集送乳調整金は、畜産経営安定法におきまして、「指定事業者が集送乳に通常要する経費の額から効率的に集送乳が行われる場合の経費の額を控除して得た額を基礎として定める」、そういうふうにされてございます。
単価の算定に当たりましてはこの規定に基づきまして行いますけれども、御指摘ございました燃油価格ですとか運送料金等の集送乳に要するコストにつきましては、その変動に対応できるように、公表された直近の物価指数を反映するということでやろうというふうに考えているところでございます。
いずれにいたしましても、本年度の集送乳調整金単価につきましては、食料・農業・農村政策審議会の意見を聞いた上で適切に決定してまいりたいと存じます。
○石川(香)委員 ありがとうございます。さまざまな経済状況、いろいろな変化を踏まえた補給金、それから集送乳調整金の単価にしていただきたいと、改めてお願いを申し上げたいと思います。
続いて、乳価についてお伺いをします。
今、各指定生産者団体が大手乳業メーカーに対して、二〇一九年度の飲用向け乳価の大幅値上げを求めているようであります。さまざまな報道もありました。
今、生産の減産に歯どめがかからないということから、乳価を上げることで生産基盤の強化につなげたいという思いが生産者団体にはあるかと思いますけれども、このことについての受けとめをお伺いしたいと思います。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
今お話ございましたとおり、まさに乳価交渉、現在行われているところと承知をしてございますけれども、民間事業者の間で行われるものでございますので、コメントは差し控えたいと思います。
なお、総合乳価につきましては、十九年度からの配合飼料価格の高騰を受けまして、二十年度に飲用、乳製品とも生乳の取引価格が引き上げられまして、その後も上昇しているというふうに承知をしてございます。
○石川(香)委員 民間同士の交渉にはなりますけれども、非常に関心の高い部分であると思いますので、きょう質問させていただいております。
乳価が上がれば、増産意欲が強い酪農家の励みになるという部分があると思います。一方、乳業メーカーにとっては、今、原料乳の安定確保ということが大きな課題の中で、増産意欲のある酪農家の生産基盤の維持拡大のためには、この乳価引上げで投資意欲を高めるということ、当然大事であるということは理解はできると思いますけれども、その一方で、財源の確保も大きな課題であると思います。
指定生産者団体は、値上げを求める以上、傘下の酪農家の確実な増産を求めなくてはいけないという部分もあると思います。来年の予定されております消費税の増税もありますし、この上げ幅についてはすぐ判断することは難しい課題なのかなというふうに個人的には思います。
そんな生産者と指定団体、それから乳業メーカーがいわば運命共同体のようになって、生産基盤の強化、乳価の引上げなどについて取り組んでいる中、今、スーパーによるいわゆる買いたたきが、牛乳について、乳製品について行われているということについて質問させていただきたいと思います。
ことしの上旬には、十年ぶりに牛乳が安値を更新、記録したということでありました。東京地区では、スーパーなどで、牛乳一リットルの紙パックで特売品で二百円を切ることも多くなったということであります。
今、自社ブランドといって、自分で商品開発をしてさまざまなコストを削減するプライベートブランド、こういった商品になりますと、ある有名スーパーでは、百八十五円、さらに百六十五円という価格で販売しているものもあるそうであります。
今、牛乳は、ほとんどの家庭に常備しているのではないかという牛乳でありますけれども、競争激化しているスーパーのいわゆる目玉商品、客寄せ商品として扱われているということで、牛乳の小売価格の低迷を招いてしまっているのではないかということが考えられるかと思います。
しかし、その一方で、小売業者が牛乳、乳業メーカーに対して値下げを強要するという、悪質なケースも相次いでいるということであります。そのことを受けまして、農水省が適正取引のガイドラインを作成いたしました。この内容についてお伺いをしたいと思います。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
今御指摘いただきました、本年三月に策定、公表いたしました牛乳・乳製品製造業を対象とした適正取引推進ガイドラインでございますけれども、独占禁止法ですとか下請代金支払遅延等防止法上禁止されてございます優越的地位の濫用に関しまして、問題となり得る事例をわかりやすく示して、取引当事者間の取引トラブルの未然防止を目的としたものでございます。
また、ガイドラインの実効性を高めるために、小売業者に対しましては、適正な取引の推進またガイドラインの遵守を求めるとともに、製造業者が不正となり得る行為に甘んじることなく、ガイドラインを活用して小売業者に対して適正な取引を求めていくように、製造業者にも周知を図り、その活用を促しているところでございます。
農林省といたしましては、本ガイドラインに基づきまして、優越的地位の濫用の未然防止を図り、不公正な取引の排除に努めるとともに、公正取引委員会など関係省庁とも連携いたしまして、適正な取引の推進に努めてまいりたいと存じます。
○石川(香)委員 ありがとうございます。
このおつくりいただいているガイドラインは、過度な安値販売に歯どめをかけるという効果はあると思いますけれども、法的な拘束力はありません。あくまで業界内の自主的な取組に委ねられているというところであります。
以前、農水省は同様に豆腐とそれから油揚げについても安売りの自粛を求めましたけれども、実際、その後の小売価格に大きな変化はないということであります。やはり牛乳も、豆腐、油揚げも日もちがしない商品というところで、小売店の交渉力が強い点というのがこの部分と共通しているのかなというふうに感じます。
今現状はスーパーが利益を削っておりますけれども、安い小売価格が定着してしまいますと、将来、牛乳の取引価格にも大きな影響を及ぼすおそれがあると思います。
消費者にとっては、品質が変わらずに安い価格で買うこと、購入ができるというのはうれしいと思いますけれども、一方で、乳業メーカーが小売店から厳しい対応を強いられているというのは、やはり、メーカー、酪農家にとっては利益の減少になりますし、牛乳の生産量がもし減ってしまえば、価格高騰などを招いて、最終的には消費者に返ってくるという部分があると思います。しっかりここは適正に取引されますように、引き続き農水省でしっかりと監視をしていただきたいと思っております。
続いて、九月六日の北海道胆振東部地震のことについてお伺いをしたいと思います。
再三いろいろと質問をさせていただいておりますけれども、北海道の酪農、それから農業、それから畜産、大きな被害が出ました。
今、酪農経営支援総合対策事業の中で、緊急時の電源確保、それから、災害時にしっかりと全農家がやりくりできるような状況を目指すための対策というのを取り上げていただいておりますが、現在、この部分について追加要望を調査中ということでありました。その要望の応募状況をお伺いしたいと思います。
また、こういった支援はぜひ継続的に支援をしていただきたいと思うのですが、そのあたりについてもお伺いをしたいと思います。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
停電時の緊急時に搾乳を継続するために必要となります非常用電源等の整備につきましては、先生お話しいただいた酪農経営支援総合対策事業で支援をしてございます。
この事業は、事業実施主体でございます一般社団法人の中央酪農会議が十月の三日から十一月の二日まで要望調査を実施いたしまして、その結果を踏まえて、一定程度準備の整った団体に対しては交付申請を行うように、また、調査時点で準備の整っていなかった団体に対しましては速やかに所要の手続を進めていただくように、十一月二十一日付で連絡を行ってございます。
現在、順次、交付申請が行われているところでございまして、全体についてまだ申し上げられる段階ではございませんけれども、今後とも速やかに交付申請、交付決定の手続が行われるように、関係団体と連携して取り組んでまいります。また、来年度以降につきましても必要な予算の確保に努めてまいりたいと存じます。
○石川(香)委員 ありがとうございます。ぜひ引き続き支援していただきたいと思います。
というのも、今、何百万円もする自家発電機が何カ月待ちという状況の中で、購入を考えて応募しても、実際に手にするには日数がかなりかかるという現状があります。
しかし、その一方で、あと何年酪農家を続けられるかわからないのになかなか購入するのが難しいと言っている方も実際いるのも現状でありまして、高価な自家発電機でありますので、農協ですとか地域単位でしっかり連携して、非常時にうまくやりくりできるように常備することが大事だと思いますので、個人で負担する部分についてはしっかり営農計画に基づいて考えて購入をして、投資をしていっていただきたいと思うところもあります。
そして、農家だけではなくて乳業メーカーに対しても自家発電機を導入していかなくてはならないというのも重要な事柄であるということを以前質問させていただきましたが、今、乳業メーカーにも非常用電源装備の導入を要請しているというお答えを先日の農林水産委員会でいただきました。やはり民間企業の危機管理として大切な面でありますが、その反面、すぐには対応できないという事情もあるかと思いますので、何らかの形で国が手を差し伸べるということも必要になるかもしれません。
いずれにせよ、二度とこういう事態が起きないようにしなければならないと強く感じています。
この酪農経営支援総合対策事業の中に、家畜の再導入というものがあります。補助率は二分の一以内で、上限、妊娠牛が二十七万五千円、そのほかは十七万五千円となっています。
これは、そもそも以前五万円の補助だったということでありますけれども、これが二十七万五千円に大幅アップしたということでありまして、ここは非常にありがたいと感じますけれども、今、妊娠牛の相場は八十万円ほどと言われております。
今の相場を考えるとこの金額が適切なのか、もう一度見直していただくということはできないでしょうか。お伺いしたいと思います。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
酪農経営支援総合対策事業の中で、今回の災害によりまして死亡、廃用、またやむを得ず売却をいたしました乳用牛にかわる乳用牛の導入、貸付けについては、今先生御指摘のとおり、補助率二分の一以内で、妊娠牛が二十七万五千円、その他十七万五千円を上限としているところでございます。
家畜の死亡又は廃用に対しましては家畜共済の共済金が支払われますけれども、新たな家畜を導入しなければならない際には当該共済金を導入経費の一部として活用することが一般的ではございますが、今回、災害の対策ということで特別に措置をしているところでございます。
現在、初妊牛の相場が高騰していることは承知をしてございますけれども、仮に、現在の市場価格に合わせて更に上限額を引き上げますと、市場価格のさらなる高騰につながりかねないこと、また、家畜共済のようなみずから災害に備える取組を阻害しかねないことなども考慮する必要がある、そういうふうに考えているところでございます。
○石川(香)委員 ありがとうございます。
共済というものがあること、それから、市場価格のいろいろなバランスも含めてこの価格ということで、今御説明をいただきました。
しかし、いろいろな対策を講じていただいておりますが、そもそもブラックアウトが起きないようにしなければならなかったというふうに思います。
この部分は、これからは北海道の話になりますが、エネルギーの供給のあり方は農林水産分野にも切って切り離せない大事な部分だと思います。
今、さまざまな自然エネルギーに積極的に取り組んでいこうという流れもある一方で、今、大規模化していく酪農家が処理に困っていたふん尿をバイオマス発電という形で付加価値をつけるという取組は非常に大事だと思いますけれども、酪農地帯である十勝管内では、このバイオマス設備を申請をしても、北海道電力の方で、送電線の容量がいっぱいだという理由でその申請が断られてしまう、そしてバイオマス施設をつくることができないという異常事態に陥っています。
日々出るふん尿処理に追いつかず、非常に規模拡大の歯どめにもなっていると思いますけれども、この現状を農林水産省はどう見ているか。それから、他省との連携も含めてお答えをいただきたいと思います。
○吉川国務大臣 私からお答えをさせていただきたいと思います。
畜産の生産基盤強化にとりまして、今、石川委員から御指摘もありました規模拡大ですとか、さらに、産地形成に伴う家畜排せつ物の適切な処理は重要な課題でございます。特に、北海道におきまして、石川委員の御地元、十勝管内もそうだと思いますが、バイオガス発電は、環境への負荷が小さい有力な処理方法の一つとして取組がふえていると承知をいたしております。
ただ、バイオガス発電により発生した電力を売電する場合には、電力会社の送電網に接続する必要があります。北海道電力の空き容量不足のために新たなバイオガス発電施設の建設ができない状況となっていることは、私どもも承知をいたしているところでございます。
本件につきましては、これまでも地元関係者からの要請をいただいておりまして、電力行政を所管する経済産業省にその旨を私どもからも伝えてきております。これからも、畜産を担当する農林水産省といたしましては、引き続き、経済産業省とも連携をしなければならない、こう思っておりますので、その上で、解決に向けて更に努力をしてまいりたいと思います。
○石川(香)委員 大臣、ありがとうございます。
引き続き、ぜひ経産省と連携をとっていただきたいと思っております。
今また、民間の知恵を使って省庁と連携をして、地産地消型の取組を開発しているという方もおります。いろいろな選択肢が出ていますけれども、バイオマス、まず、付加価値をつけるという前に、日々のふん尿処理が非常に大変だということが大前提の大きな問題でありますので、環境の配慮といった部分もありますけれども、ぜひこれからも農林水産分野の観点からしっかりと考えていただきたいと思います。
それから、次に、EPAについて一点お伺いをしたいと思います。
今、冒頭にもお話ししましたが、TPP、EPAそれからTAGとさまざまな、自由貿易化がなされる波が来るということで、この状況を爆弾低気圧が三つ来るという表現をしている農業者の方がいました。再三質問をしてまいりましたが、このEPAについて、チーズ向け生乳の品質向上に取り組んだ酪農家に対して、一キロ当たり最大で十五円の奨励金を支払うという緊急対策があるかと思います。
内訳としては、チーズ向け生乳に対して一キロ十二円、そして、チーズ製造それから販売に取り組む生産者に対して一キロ三円ということでありました。二〇一七年度の補正予算で決まったものでありまして、百五十億円ということでありましたが、これは単年度の措置で終わってはいけないと思っております。
このチーズの競争力強化対策予算について、今後どのような位置づけになるのか、お伺いをしたいと思います。
○小里副大臣 農林水産省では、日・EU・EPAの合意結果を受けまして、二十九年度補正予算によりまして、チーズ向け対策として約百五十億円の補正予算を確保いたしております。その中で、チーズ向け原料乳の低コスト化、高品質化に関する支援をいわゆるクラスター枠の中で行っております。また、チーズ工房等の施設整備に関する支援、品質向上、ブランド化、需要拡大に関する支援を講じまして、国産チーズの競争力強化を図っているところであります。
引き続き、三十年度第二次補正予算におきまして、農林水産業の強化策として、チーズ対策予算をしっかり確保してまいりたいと思います。
○石川(香)委員 ぜひ引き続き取り組んでいただきたいと思っております。
次は、酪農ヘルパーのことについてお伺いをしたいと思います。
今、北海道では、酪農家一人当たりの労働時間が、ニュージーランドの二倍、それからアメリカの一・五倍と言われています。一戸当たりのヘルパーの利用日数が増加している一方で、ヘルパーで活躍する人は日々減っているということでありました。
私の地元の広尾町というところでは、年末のお休みをとるのに半年前からヘルパーを予約しなきゃいけないと話をしておりました。今、酪農ヘルパーは大変重要な役割を担っているにもかかわらず、お給料がなかなか上がらないとか離職率が高いといった現状があるかと思います。
ヘルパーという仕事は、自分自身が牧場を経営するということの修行を兼ねて働いている方も多くいらっしゃるかと思いますけれども、このヘルパーという職業を見ますと、なかなか、今後も家族を養っていくには非常に厳しい条件だというふうに言っている方もいらっしゃいました。
そこで、私は、ヘルパーの地位向上が大切ではないかと考えています。処遇の改善はもちろんでありますけれども、具体的に挙げれば、ヘルパーが働く農場でその経営に参加をしていくというプロセスを重視したりすることも大事ではないかと思いますし、こういった意見は実際に聞きましたけれども、ヘルパーをヘルパーだけで終わらせず、ステップアップするためのステージだと捉えることが大事ではないかと、個人的には感じております。
この酪農ヘルパーの地位向上のために取り組んでいることがありましたら、教えていただきたいと思います。
○濱村大臣政務官 酪農ヘルパーは、酪農家の休日確保や傷病時の経営継続に貢献するだけではなくて、新規就農することによって、将来的に地域を支える担い手としての位置づけも大変重要であると認識をしております。
酪農ヘルパーがそのような位置づけにふさわしい評価を受けるためには、酪農に関する確かな技術力を有することが必要でございます。このため、農林水産省では、ヘルパーとして雇用される前後の一定期間における各種研修を支援し、飼養管理技術の習得、向上を推進しているところでございます。
また、酪農ヘルパーから新規就農の促進に向けては、酪農経営安定化支援ヘルパー事業におきまして、継承予定農家への事前派遣研修によって経営ノウハウを継承する取組や、次世代を担う就農者として経営を開始する際の資金の交付や、青年就農者を雇用する法人等に対する研修経費等に対する支援を実施しているところでございます。
引き続き、現場の協力も得ながら、酪農ヘルパーの地位が向上し、やりがいのある魅力的な職業として認識されるよう、各般の施策を実施してまいりたいと思うところでございます。
○石川(香)委員 ありがとうございます。
今も少し触れていただきましたが、農水省で、慢性的な人材不足を補うために、ヘルパー確保の支援、それから学生のインターン、それから雇用前研修、酪農ヘルパーの育成支援を行っていますけれども、この応募状況もあわせてお伺いをしたいと思います。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
酪農ヘルパーにつきましては、現場からも、募集しても人が集まらないですとか、雇用後短期間で離職をしてしまうといった声を聞いてございまして、これらの課題の解決に資するように、近年、酪農ヘルパーの人材確保また育成に対する支援を強化してございます。
今お尋ねございました支援メニューの実績につきましては、平成二十九年度におきまして、学生のインターンシップが二百三十二名、あと、雇用前研修が二十一名、初任者研修が百七名となっているところでございます。
引き続き、酪農ヘルパーの人材確保を図りまして、酪農の労働負担の軽減や休日確保に欠かせない酪農ヘルパーの利用拡大に向けて支援をしてまいりたいと存じます。
○石川(香)委員 ありがとうございます。
北海道の中にも、ヘルパーを農協の子会社の正社員として採用しているところもあるそうであります。JA道東あさひの子会社、ASAHIサポートセンターというところでありますけれども、そういった取組をすることで、昨年、二〇一七年の九月から四カ月間で六人雇用したという実績もあるそうであります。
引き続き、このヘルパーの育成の支援、それから地位向上をぜひ取り組んでいただきたいと思います。
続いて、今、ヨーネ病がはやっているといいますか、なかなか根絶されないということについて、最後にお伺いをしたいと思います。
ヨーネ病は、法律で家畜伝染病に指定されている病気であります。現在、北海道では、二十四カ月以上の乳牛に対して、少なくとも五年に一度はヨーネの検査をしなくてはいけないということでありました。
ことし、北海道の十勝地方でもこのヨーネ病が発生して、非常に深刻な問題になっております。北海道内では、平成二十九年、七百十三件発生でありますけれども、全国的には八百十七件発生をしております。ほとんど北海道で発生をしております。ほかの主な伝染病と違って、継続して発生し続ける非常に厄介なものであります。
なぜヨーネ病は継続して発生し続けると分析されているのか、お答えをいただきたいと思います。
○池田政府参考人 お答えいたします。
ヨーネ病でございますが、細菌を原因といたしまして、慢性の水様性の下痢や泌乳量の低下などにより生産性を低下させる、牛などの反すう動物の病気でございます。
この病気は毎年発生をしておりますが、その原因としては、まず、その潜伏期間が六カ月から数年と非常に長いこと、あるいは、その病原菌の排菌量が少ない場合がありまして、検査で見つけることが難しいこと、このため、感染を確認するまでに同居牛に伝播してしまうことがあること、また、ワクチンや治療薬がない、こういったことが挙げられているものと承知しております。
○石川(香)委員 ワクチンがないというお話もありましたけれども、あわせて、開発状況はどうなのか、お伺いをしたいと思います。
○池田政府参考人 お答えいたします。
ヨーネ病のワクチンあるいは薬の開発状況のお尋ねでございますが、これは開発が困難でございまして、世界的にも実用化されたというものはございません。このことから、我が国では、定期的な検査、そして感染した牛の発見、処分によって、その発生及び蔓延防止を行うこととしております。
薬あるいはワクチンの開発は困難でございますが、一方、高い感度と確実性の両方を兼ね備えた診断法、こういったものの確立に向けた研究が進められているところでございまして、農林水産省としてもこれを支援しているところでございます。
○石川(香)委員 ありがとうございます。今、実際に使っているワクチンであったり薬がなかなかないという状況の中で、確実にヨーネを見つける診断法を模索しているというお話がありました。
このヨーネ病でありますけれども、見方を変えれば風土病という見方もできるかと思います。ある意味、この病気とうまくつき合っていくという言い方が正しいかはわかりませんけれども、この病気の特徴をしっかり捉えて、農家であったり、検査で非常に負担が大きくなる保健所、それぞれ農協、農済にとっても、この考えを持つことが大切ではないかなと思います。
今、アメリカですとかデンマークでは、ヨーネ病は定期的な検査はありますけれども、殺処分するかどうかは選択制になっています。カナダでは、検査、殺処分とも選択制になっています。酪農が盛んなオーストラリアでは、以前は国を挙げてヨーネ病の防疫に取り組んでまいりましたけれども、風土病の一つの扱いにして防疫予算を縮小して、生産者主導の管理となったということであります。
日本でヨーネ病が見つかってしまいますと、メジャーな市場に出品できなくなったり共進会に出られなくなったり個人売買という選択肢になりまして、収入面でも非常に苦しい思いをさせられるということでありました。
実際、ヨーネ病をどうしたらなくすことができるのか、手探りの中で、農家の方々は検査をくぐり抜けているということでありましたけれども、毎年発生しているヨーネ病の被害を減らすためにはどんなことが大切か、今できることをお答えいただきたいと思います。
○池田政府参考人 お答えいたします。
ヨーネ病の被害を減らすためには、家畜伝染病予防法に基づきます定期的な検査を進めまして、発見した牛を処分していくということが重要と考えております。
農林水産省におきましては、この検査をより効率的に行うことが重要なため、平成二十五年三月に家畜伝染病予防法の施行規則を一部改正いたしまして、より信頼度の高い検査法であるリアルタイムPCRを導入したところでございます。
それだけではなく、生産者の方々の自主的な防疫の取組を促す、そういった目的で、都道府県によります家畜衛生管理の指導の実施、あるいは、農場へヨーネ病に感染していない牛を導入するための、移動時に行う検査への支援などを進めているところでございます。
○石川(香)委員 ありがとうございます。
時間がなくなりました。
なってからでは非常に大変でありますので、ならないように、それぞれの立場で、予算措置、それからいろいろな勉強会なども取り組んで、農家の方にどんどん発信をしていただきたいと思っております。
ありがとうございました。
○武藤委員長 次に、亀井亜紀子君。
○亀井委員 おはようございます。
私は、畜産部分の質問をさせていただきます。
それでは、早速ですけれども、最近の報道で気になったことから質問させていただきます。
一点目は、和牛受精卵の中国への持ち出しについてです。
ことしの七月に、大阪府の男性が、ストロー数百本を使って、液体窒素ボンベに入れて中国に持ち込もうとした、これが中国当局に見つかったという報道がございましたけれども、この件に関する詳しい経緯と、それから対策についてまずお伺いしたいと思います。
○武藤委員長 経緯ですね。
○亀井委員 じゃ、経緯は参考人の方で、あと、大臣からも一言お願いいたします。
○池田政府参考人 和牛受精卵の中国への持ち出しの経緯についてお尋ねがございました。
牛の精液や受精卵を海外に持ち出す際には、家畜伝染病予防法に基づきまして動物検疫所の輸出検査を受ける必要がございますが、先般、この検査を受けずに海外へ持ち出し、中国当局に輸入をとめられたという事案がございました。
これにつきまして、農林水産省といたしましては、受精卵などの輸送には外見でも容易に判別できる特徴的な容器が用いられます、このため、こういったことにつきまして、船舶会社、航空会社、生産者団体、税関などに注意喚起を行いまして、同様の貨物を輸出しようとする者がいた場合には動物検疫所に連絡するよう要請を行ったということでございます。
本件につきましては、事実関係の調査を進めているところでございまして、その結果を踏まえまして厳正に対応を行っていきたいというふうに考えてございます。
○吉川国務大臣 今、池田局長からお答えをさせていただいたとおりでありまするけれども、本当に残念なといいますか、あってはならない、起こしてはならない事案だと私も承知をいたしておりまして、厳正に対処をするということはもちろんでありまするけれども、いかにして再発防止を、しっかり防いでいくかということも大切であろうかとも思いますので、挙げてしっかり対応をこれからもしてまいりたいと存じます。
○亀井委員 今回は、水際というか、中国に行ってから見つかったわけですけれども、何とかとめることができました。これまでにもう渡ってしまっているものがないかどうか心配にもなっているわけですけれども、しっかりした対策をしていただきますようにお願い申し上げます。
それでは、次の質問ですが、これも報道で知ったのですけれども、米国産牛肉、三十カ月の月齢制限がありますけれども、これを緩和する、その方向で今パブリックコメントなどを募集しているというように聞いております。これは、日米経済対話の議題にのせるようにトランプ大統領からかなり圧力があったと聞いております。
やはり、今回、月齢制限を外すに当たって、圧力があったからと言われるのもちょっと情けないですし、それ以外の根拠が必要だと思いますけれども、何を根拠に月齢制限を外すのか、そして、もし再びBSEが発生したり、あるいは危険部位が混入していたと判明したときには、どういうプロセスでどういう対応をされるのか、質問いたします。
内閣府の方と、あと厚労省の方と、よろしくお願いいたします。
○左藤副大臣 先にちょっと内閣府からお答えを申し上げたいと思います。
今先生から御指摘あった、撤廃するということでございますが、今回の評価は、平成二十三年に厚生労働省から、米国産牛肉の輸入を三十カ月齢以下に限るという輸入条件を国際的な基準を踏まえて更に引き上げた場合のリスクについて食品健康影響評価を行うよう依頼されたものでございまして、食品安全委員会プリオン専門調査会がその審議を行ったところでございます。
先生の御心配のBSEに関する国際的な基準は、パリにございます国際獣疫事務局が定めておりまして、牛肉の貿易に関する月齢の規制閾値は設けておりません。加えて、BSEの発生数は世界全体で減少し、現在ではほとんど確認されない状態に至っております。
これらを踏まえて、食品安全委員会プリオン専門調査会は、月齢条件を条件なしとした場合の人のプリオン病発症の可能性を検証いたしました。
その結果、米国におけるBSE対策は適正であると判断され、米国から輸入される牛肉の摂取に由来する定型BSEプリオンによる人のプリオン病発症の可能性は極めて低く、月齢条件を条件なしとしても、人へのリスクは無視できるという評価が取りまとめられたところでございます。
先生がおっしゃったようにパブリックコメント中でございますが、今のところは厚生労働省に答申がされておりませんので、月齢条件は今廃止はされていないという状況になっております。
○新谷大臣政務官 お答えいたします。
食品の安全対策につきましては、科学的な見地に基づいて対応することが重要である、そのように考えております。
BSE対策に関しまして、国内、国外の双方でBSEが発生するリスクが低下したということを受けまして、これまで、国内の検査体制や輸入条件等につきまして、食品安全委員会の科学的な評価結果に基づきまして、国内で食用処理される健康牛の全頭検査の撤廃、そして、一定条件のもとでBSE発生十四カ国からの牛肉の輸入再開、これらなど見直しを行ってきたところでございます。
これら十四カ国のうち、議員御指摘の米国、あるいはカナダ及びアイルランド産の牛肉、この月齢制限の取扱いにつきましては、先ほどお話がございましたが、食品安全委員会においてリスク評価を行っているところでございまして、現在、評価書案のパブリックコメントを行っている、そのように承知をしておるところでございます。
さらに、委員がおっしゃっておられた、万一、特定危険部位などが混入した場合、これらの対応につきましては、BSE発生国からの牛肉の輸入については、従来より、食品安全委員会のリスク評価結果に基づきまして輸入条件を設定しているところでございます。
もし、委員御指摘のように、脊柱など特定危険部位の混入など輸入条件への不適合事例、これが発生した場合におきましては、輸出した施設からの牛肉の輸入を停止するとともに、輸出国政府に対して、原因の究明、再発防止措置を講ずるよう求めることになる、そのようになっているところでございます。
○亀井委員 今回、この質問をするに当たって農水省に質問を出したら、農水省の管轄ではなくて、いや、内閣府と厚労省なのですと言われたんですけれども、今の御答弁を伺って、最近症例がないのでそろそろ緩和してもいいだろうと判断したというふうに聞こえます。
そうであるのだとしたら、これから発生したときにはどうするのですかということで今伺ったんですけれども、もう一度確認ですけれども、まず、発生したとき、例えば危険部位が混入しているとわかったときとか、すぐに一度輸入を停止してというような対応を厚労省が主導してされるということでよろしいんですか。
○新谷大臣政務官 お答え申し上げます。
先ほども申し上げさせていただいたところでございますけれども、特定危険部位が混入して不適合事例が発生した場合には、輸出した施設からの牛肉の輸入を停止するとともに、輸出国政府に対して、原因の究明、再発防止措置を講ずるよう求めることになる、そのようになります。
なお、輸出国政府の原因調査の結果、輸出国の管理システムの不備が原因であることが判明した場合、この場合には当該国からの牛肉の輸入を停止することになりますけれども、ただ、これに関しては近年発生事例はありませんので、それを申し添えさせていただきます。
○亀井委員 そうですね、ちょっと時間もないので先に行きたいと思います。
新谷政務官、御公務がおありだということなので、席を外していただいて結構です。ありがとうございました。
では、次に、CPTPPの牛肉のセーフガード発動基準についてお伺いいたします。
これは、私、以前も大臣所信のときに伺いまして、それに対しての御答弁が、まだ米国がCPTPPに復帰するかもしれないから再交渉はしないのだというようなお答えでした。
それで、私は、一方で米国との二国間の交渉が始まるわけですから、じゃ、何をもってCPTPPにアメリカが復帰する、そう思われているのかということが非常に疑問だったんですけれども、その点についてお伺いしたいと思います。
長尾政務官、お願いいたします。
○長尾大臣政務官 亀井委員にお答えいたします。
まず、セーフガードの件についてでありますけれども、TPP11協定の第六条では、米国を含めたTPP12協定が発効する見込みがなくなった場合等には、締約国の要請に基づいて協定の見直しを行う旨、規定をしてございます。
九月の日米共同声明では、米国との間で日米物品貿易交渉、TAGを開始することに合意したということでありまして、米国との具体的な交渉はこれからでございます。現時点での個別の事項については何も決まっておりません。
したがって、現在、我が国としては、TPP11協定第六条の見直しが可能となる、米国を含むTPP12協定が発効する見込みがなくなった場合に当たるということには考えておりません。
いずれにせよ、さまざまな局面で農林漁業者に懸念がないように対応してまいりたいと思います。
○亀井委員 何度聞いても私はわからないんですけれども、前回の御答弁、きょうと同じですけれども、それを伺った後で私なりに考えました。
それで、唯一その御答弁が成り立つとしたら、米国との今度始まる交渉、私はFTAと呼びたいと思いますが、それが決裂することを見込んで、一応テーブルには着いたけれども、決裂させる方向に持っていってCPTPPに戻そうというような意図があるのであればその御答弁は成り立つんですけれども、それ以外はちょっと理解に苦しむんですよ。
それで、昨年の八月に米国産の冷凍牛肉……(発言する者あり)
○武藤委員長 御静粛にお願いいたします。
○亀井委員 昨年の八月に米国産の冷凍牛肉に対してセーフガードを発動したと思うんですけれども、それは実際に基準に達したから発動したのでしょうし、もう一つ、アメリカに対してメッセージにはなったと思うんです。つまり、自由貿易交渉に戻らないとこういうことが起きますよという一つの呼び水としてのメッセージにはなったのかもしれないと思いますが、それで戻ってくる先がCPTPPじゃなくて二国間交渉なわけですよね、結果として。
ですので、私は、本当に先ほどの仮説ですけれども、二国間交渉を決裂させてCPTPPに、多国間の枠組みに戻すのだともしも考えているとして、だとしても、その間、セーフガードを発動できないわけですよね、CPTPPの枠組みの中で。そして畜産農家は大変な被害を受けるわけですけれども、この間の対応についてはどうするのだろうと思うのですが。済みません、二つ質問が一緒になりました。
まず、米国とのFTAについて私は今のような仮説も持っていて、仮にそうだとしてもそのとおりですと言えるわけがないんですが、ただ、なぜ米国との二国間協定を、CPTPPを放置したままされるのか。厳しい交渉をしていただきたいですし、私はあくまでもCPTPP、これも反対ですけれどもまだましですから、戻すような努力をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○長尾大臣政務官 お答え申し上げます。
二国間交渉は米国をTPPに戻すことにつながるのかという御質問だと思いますけれども、今回、日米で物品貿易協定については交渉を開始することに合意をしたということで、TPP交渉においても、関税についてはバイ交渉、すなわち二国間でさまざまな協議を行ってきたものでございます。
米国がすぐにTPPに復帰というのは現実には難しいかもしれませんけれども、これからTAG交渉が、米国のTPP復帰に向けてプラスになってもマイナスになることはないというふうに考えております。
○亀井委員 済みません、やはり今の御答弁でわからなくなりました。
アメリカがCPTPPに復帰するのは難しいとおっしゃったので、見通しとして難しいのであれば、セーフガードの枠組みの見直しの再交渉は申し入れるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
まず、いかがですか。じゃ、これは長尾政務官ですよね。外務省ですよね。よろしくお願いいたします。
○長尾大臣政務官 復帰等々については何を根拠にということでありますが、これまでの政府答弁の繰り返しになりますけれども、米国が確実にTPPに復帰するということを申し上げたというわけではありませんで、現時点では米国がTPPに復帰する見込みがなくなったわけではないというふうに申し上げております。
とにかく、我が国としては、最終的に米国がTPPに復帰することが日米両国間にとっても最善であるというふうに考えておりまして、米国にもその旨伝えているところでございます。
以上です。
○亀井委員 完全にCPTPPに戻らないという、見込みがないとまでは言わないけれども難しいというように解釈をいたしましたけれども、難しいのがわかっていながらセーフガードの発動基準を放置したままでは、これは畜産農家が大変気の毒ですので、これは真面目に再交渉を申し入れてください。強く要望をいたします。
そして、その見直されるまでの間の畜産農家に対する対応、支援、どのようにされるのでしょうか。これは農水省に伺います。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
CPTPPにおきます牛肉の国境措置につきましては、関税撤廃を回避いたしまして、十六年目までという長期の削減期間等を獲得したこと、和牛等の国産牛肉については、品質、価格面で輸入牛肉と差別化されていることから、当面、輸入の急増は見込みがたいというふうに考えてございます。
他方、上位等級以外の牛肉につきましては、品質、価格面で豪州等からの輸入牛肉と競合いたしますので、長期的には、乳用種を中心に国産牛肉全体の価格の下落が懸念されます。
このため、平成二十九年十一月に改定いたしました総合的なTPP等関連政策大綱に基づきまして、畜産クラスター事業によります省力化機械の導入や施設整備等を始めとする体質強化対策を講ずるほか、経営安定対策といたしまして、牛マルキンの補填率を八割から九割に引き上げる等の措置を協定発効に合わせて講ずることとしております。
農林省といたしましては、生産者の方々の不安や懸念に向き合いまして、意欲ある生産者が将来にわたって希望を持って畜産経営に取り組んでいただけますように、必要な対策をしっかりと講じてまいります。
○亀井委員 少々心もとないなと感じましたけれども。
世界の潮流として、自由貿易を進めて関税をなくして、その分を所得補償で支えるという方向に、直接支払い制度の方向に向かっているわけですから、やはり酪農、畜産家に対してもそういう方向で支援をすべきではないかなと私は思います。御検討をお願いいたしたいと思います。
次の質問ですが、時間がなくなりました、子牛の価格についてです。
子牛の価格が昨今非常に高い、どこに行ってもそういう声が聞かれます。これはいい面と悪い面とありまして、高くて助かっているところもありますけれども、一方で、規模拡大をしようとしている農家にとってはなかなかそれが難しいわけです。
そして、これから輸入牛肉もふえる中で、競争力をつけるために規模を拡大したいと考えている、元気があるところもあるのですけれども、こういった畜産農家に対して何か支援策はお考えでしょうか。これは参考人の方にお伺いいたします。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
子牛価格の高騰は、御指摘ございましたとおり、肥育農家の経営にとりましてはコスト増の要因になりますので、肉用牛の生産基盤を強化して肉用子牛の生産頭数の増加を図るということが喫緊の課題だというふうに考えてございます。
こういうことから、農林省におきましては、畜産クラスター事業等を活用いたしました哺乳ロボットなどの省力化機械の導入、また、キャトルステーションですとか飼養規模の拡大のための畜舎の整備、乳用牛への受精卵移植技術ですとか発情発見装置などのICT等の新技術を活用いたしました和子牛の生産拡大、優良な繁殖雌牛の増頭や導入の取組に対する奨励金の交付、また、生産基盤の強化に資します繁殖肥育の一貫経営の育成、こういうことを支援しているところでございます。
こういうことから、繁殖雌牛の飼養頭数は、平成二十二年以降減少傾向にございましたけれども、平成三十年の二月一日時点で前年比一万三千百頭増の六十一万四百頭となりまして、二十八年以降三年連続で増加し、回復基調にございます。
このような基調を確固たるものといたしますために、総合的に対策を実施いたしまして、生産基盤の強化に取り組んでまいりたいと存じます。
○亀井委員 今、規模拡大に関する質問をいたしましたけれども、ただ、これではやはり限界がありますし、海外には負けると思いますので、ではどうすべきかということで、私はきょうアニマルウエルフェアについても質問したかったんですけれども、時間がなくなりましたので次回にいたします。
アニマルウエルフェアは農村開発という分野にも役立ちますし、質ですとかほかの分野で勝負する、そういう分野も切り開かないと、やはり規模だけで戦うと負けると思いますので、次回また質問をさせていただきたいと思います。
ありがとうございました。以上です。
○武藤委員長 次に、坂本哲志君。
○坂本委員 自由民主党の坂本哲志でございます。
畜産物価格決定に向けて、二十分間の質問時間をいただきました。感謝を申し上げたいと思います。
今回の質問を考えるに当たりまして、とりわけ酪農につきまして、北海道農業協同組合の中央会、北農中、それから、私の地元でございます熊本県の酪農業協同組合、酪連に、何を一番質問してほしいかということをお尋ねいたしました。それぞれ五点ほど挙がってまいりました。そして、そのワン、ツーはお互いにやはり共通のものでありました。
北海道からも、そして九州からもともにワン、ツーで挙がってきたのは、家族経営の酪農家に対するクラスターの採択基準の弾力化をお願いしますということでありました。それから二番目は、家畜排せつ物処理施設が老朽化をしている、これを何とかしていただきたい、これにはかなりいろいろな制約がありますので。この二点がともに挙がってまいりました。
私は、北海道の場合には大規模経営が多くてメガファームも多いわけですので、北海道酪農から家族経営に対する支援が第一に挙がってきたのは意外な感じがいたしましたけれども、考えてみますと、集落を形成するのはやはり家族経営の農家であります。また、家族経営農家は、お互いにそれぞれネットワークを形成して、常に切磋琢磨をしながら農業の質を高めるとともに、コミュニティーの原点でもございます。さらに、さまざまな形で地域貢献もしておりますので、日本の酪農あるいは日本の農業に家族経営は欠かせないものである。北海道からも九州からも家族経営の支援の要望があったのも、やはりそういうことなんだということで納得するものがありました。
自民党には畜産・酪農対策委員会というのがありまして、ことしも十二月三日から十二月九日まで、三班に分けて、この畜産物価格決定に対応するために、関東、北海道、九州の酪農、畜産を視察したところでございます。
この委員の中には事務局長を務められました宮路拓馬さんもおられまして、北海道に行かれたそうでありますけれども、ちょうど折からの大雪で、大変なスケジュールの中で、難行苦行しながら根釧地区あたりに行かれたそうであります。
この関東と北海道と九州の視察団の報告から挙がってきたものも、やはり、家族経営に対する支援がなくては今の日本の酪農は衰退していくばかりである、そういう報告でございました。
ただ、一概に家族経営の酪農と言っても、幾つかのタイプがございます。家族経営は大方、搾乳牛五十頭前後、肥育二十頭から三十頭、こういったところが一般的でございます。お父さんやお母さん、経営者夫妻、後継者の子供さん、若しくは雇入れ人がいて、大体四人から五人、六人が酪農従事者であるというような全体的な家族経営タイプの像でございますけれども、しかし、その中でも、私は三つのタイプに分かれるというふうに思います。
一つは、後継者がいない現状維持派、若しくは、経営者の方が高齢化をされて、将来なかなかやっていけないのではないか、そのためには規模を縮小するしかないではないかというような規模縮小型。
それから二つ目は、現状維持ではあるが、まだ若い経営者で、現状の搾乳牛の頭数を維持しながら効率のよい経営をやろうとしている酪農家、このタイプがございます。こういったものに対しては、もちろんお父さん、お母さん、父母が手伝うということになります。
そして三番目のタイプは、後継者として予定されている子供さんがいて、お父さん、お母さんも健在で、さらには一人ぐらいを雇用し、六人ぐらいあるいは七人ぐらいで家族経営的な手法で酪農をやり、将来は搾乳牛百頭以上ぐらいまで拡大していこうという意欲あふれる家族経営の酪農家。
この三つのタイプに大体分かれるのではないかなというふうに思います。
ただ、この三つとも共通していますのは、家族的な協力で質の高い酪農をしていこうという意欲。それから、地域と一体になって、集落の一員として集落作業にも協力していこうという共助の精神というのが強いということ。そしてもう一つは、酪農家同士で、また酪農家以外の農業者ともネットワークをつくりながら、異業種間交流も重ねながら、新たな地域社会の展開を考えていこうとされていること。こういった共通の思いを皆さん持っておられて、非常に真剣な方々ばかりであります。これほど意欲と、そして志と、さらには経験がある家族経営をしっかりと守っていくことは、これは本当に国の責務であるということをつくづく感じます。
もちろん、五百頭から二千頭というメガファームも重要であるということは、これは論をまちません。大規模農家は、多くの乳量を確保し、所得も安定をさせますし、そして、雇用している人への休日なども確実に確保されます。さらに、肉用牛の素牛の供給にも寄与されておられます。雇用増大と、観光牧場など地域振興にも貢献しようという強い意思を持って努力をされている方々ばかりでございますので、こういった方々におかれましては、今後の日本酪農界のトップランナーとして、今後もしっかりと酪農界を引っ張っていただいてほしいというふうに思います。
しかし、家族経営酪農は、高齢で後継者はいない現状維持派にいたしましても、高度で貴重な酪農の技術を持っていらっしゃいます。もしそれを続けることで、みずからの畜舎やあるいは技術などを新たな新規就農者へのバトンタッチをすることができるならば、これは大きなまた一つの財産になります。
また、若い経営者が現状維持ながらも効率のよい酪農を目指す当面の現状維持酪農家につきましては、それこそが将来の地域のリーダーでもあり、将来の家族型酪農を担っていく人材でもあります。
さらに、家族経営ながら、後継者がいて、搾乳牛百頭以上まで拡大を目指す家族型酪農家は、とりわけ都府県におきましては地域の担い手であります。
こういった方々に支援の手を更に伸べていく新たなスキームをつくっていくべきではないのかというふうにも私は思うところであります。
現在の畜産クラスター計画に係る総合評価では、女性の参画、あるいは輸出の促進、そして雇用の創出、新たな産業、いわゆる六次産業化の創出などにポイントが与えられております。
しかし、一心不乱に酪農のために家族総出で経営をしている者としては、なかなかそういうところまでは手が届きません。とりあえず、まず畜舎をどうしようか、あるいは堆肥舎をどうしようかということでございます。家族経営の経営形態を、先ほど私が言いましたように三類型に分類化し、さらに、家族経営のよさを総合評価ポイントに加えるような、新たな家族経営評価基準をつくるべきではないのかというふうにも考えます。
後継者の存在、酪農に従事する家族構成、さらには地域への常日ごろの活動に対する客観的評価、そして酪農の経験と技術を将来新規就農者に引き渡してもよいという覚悟、こういうことなどを考慮しながら、地域酪農、家族酪農の実態をきめ細かく考慮したポイント等をやはりつくっていく、考えていくべきではないかというふうに思いますけれども、こういった新たなスキームに対してどのように考えておられるのか、農林省にお伺いをいたしたいと思います。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
畜産クラスター事業は、畜産農家を始めといたしまして、地域の関係者が連携した収益性及び生産性向上の取組を支援する事業でございます。農林省が定めております畜産クラスター計画に係る評価基準におきましても、新規就農の確保ですとか担い手の育成への対応など、地域の政策課題を解決するための取組も一応設定はされてございます。
しかしながら、先生から今御提案がありました事項の中にも、クラスター事業の目指す方向と合致する部分もさまざまございますし、事業の目的の中でどのような対応、どのような評価が可能なのか今後検討してまいりたい、そういうふうに存じます。
○坂本委員 しっかりと検討していただきたいと思います。
具体的に、私の地元熊本県の菊池地域は、九州の酪農の中心でございます。それだけに、酪農組合も複数存在いたします。JA菊池傘下の酪農家が百四十七戸。それから、合志酪農組合と西合志酪農組合、菊池酪農組合と三つの組合が十年ほど前にございましたけれども、これが合併しまして熊本酪農組合となりました。この傘下が五十数戸。そして、熊本市酪農組合傘下が数戸。酪農を始めたきっかけが、それぞれの歴史的な経過がありますので、組合が乱立しているのが実情でございます。
その中のJA菊池の百四十七戸は、全てが家族経営型でございます。ことしの年間の生乳の生産数量は、この農協だけで八万二千トンと見込まれております。宮崎県全体の全生産量よりも多く、やがて鹿児島を追い抜くと意気込んでいるところでございます。
そんな中でも、JA菊池が、十年後には三十戸ほど減少し百十三戸になるというシミュレーションを立てております。七十歳以上の経営者、あるいは後継者不足、こういった厳しいものを考えれば、どうしても十年後にはそのくらいにはやはりなってしまうであろうということでありますが、これにクラスターでどれだけ歯どめをかけられるかというのが私たちの一つのまた仕事でもあると思います。
クラスター事業の予算増とともに、クラスター事業の狙いに対して、国と各団体と個別農家がしっかりとした共通の認識を持ち合わせているということが大切であると思います。
本来、クラスター事業は、大規模農家ばかりではなくて、意欲ある家族経営農家や将来を考えた農家であれば国が責任を持って支援する、こういう考え方でつくられました。しかし、それがいつの間にか、大規模経営支援中心で、家族経営には厳しいという評価に変化してきたこと、そこに今の日本の農業を始めとする一次産業政策への根深い不信感があるというふうにも考えます。
私は、本来の畜産クラスターの方向性は間違っていないというふうに思います。しかし、余りにも数字や実績や結果を急ぐ余りに、そこにさまざまな誤解や曲解が生じているのではないか。現実に毎日生産に追われる農家と、国がやろうとしている畜産クラスターの認識が共有されているとは思えません。さらに、その間に入るJAや都道府県などを始めとする各団体にも戸惑いが生じているというふうに言っていいと思います。
ここで、本来のクラスター事業の思想に戻らなくてはならないというふうに思います。メガファームあるいは将来大規模酪農を目指す農家と、優良な家族経営農家の共存は不可欠でございます。必要なことは、個々の酪農家や団体が国の畜産クラスターの狙いを十分に理解し、団体や市町村が事業申請に当たって適切な指導をすることが求められます。しかし、現段階では規模拡大のみが強調され、目指すべき家族経営酪農の姿や将来の日本酪農の体系が現場にも団体にも浸透していないというふうに感じます。
家族経営の幾つかをモデルとして、将来のあるべき経営体の姿をしっかりと啓発した上で、各団体に対しても浸透すべく指導すべきではないかというふうに思いますけれども、農林省のお考えをお伺いいたします。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど先生から三類型というお話ございましたが、昨年、中央酪農会議の方がほぼ全戸の酪農家に対して調査をいたしまして、その御意向は、規模を拡大したいという方が二六%、また、規模を維持したい、また若干規模縮小したいという方が七〇%、また、離農したいという方が二%、そういう状況になってございます。
先生から御指摘あったように、そういう方々にそれぞれさまざま課題がございまして、規模拡大したい方というのはクラスター事業等でも対応できますし、また、規模を維持したいという方でございましても、クラスター事業による機械導入等は支援をしてございますし、ほかのさまざまな施策等もございます。また、離農を希望される方については、そこの資産をどういうふうに、どなたに引き継いでいくかという、後継者また新規参入のそういう課題等々ございます。
それらの施策が十分に現場に伝わっていないという御指摘はそのとおりでございまして、そういう方々のそれぞれの課題に応じてどういう対策が必要なのか、また、それを、現場と一体となりましてその方々にきちっと伝えていくということが非常に大事だというふうに思ってございますので、これからも御指導いただきながらそのような対応をしてまいりたい、そういうふうに存じます。
○坂本委員 きめ細かな指導、あるべき日本酪農の姿、それをしっかりとやはり細かく訴えていただきたいなというふうに思います。
次に、家畜排せつ物処理施設の問題についてお伺いします。
家畜排せつ物に関しては、排せつ物処理法が平成十一年に成立し、そして十六年から本格施行されました。それと前後いたしまして、畜産環境リース、いわゆる畜環リースによりまして、各畜産農家、酪農も含めて、環境対策というものを講じました。平成十五年、十六年、そして十九年まで、全国で一万一千三十五件の畜環リース事業が行われております。平成十三年から十五年、十六年時期に畜環リースが始まりました。そして、畜環リースの期間は十七年間でございます。ですから、これから三年、四年の間に一斉に更新を迎えるということになります。
しかし、その更新を迎える前に、規模拡大をしたり、あるいはそれぞれの畜舎を建設したりということで、非常にそれぞれの排せつ物施設、ふん尿処理施設が傷んでおります。大きな損壊も受けているところでございます。特に共同利用施設として整備をしました処理施設は、それぞれの農家が規模拡大をしたため、その処理能力をはるかに超える深刻な状態になっております。
平成の十三、十四にスタートをして、十七年で畜環リースがやがて更新期を迎える。しかし、その前に、施設がさまざまな傷みに陥っている、この状況を何とかしなければいけない。この三年間、この五年間が一番大切な時期であると思います。
この問題は酪農だけではなくて、肉牛も養豚も養鶏も同じ悩みを考えております。何としてでもこの対策を、今年度から、あるいは来年度から、あるいはその次の年度も含めて、補修も含めて対応策を考えていただきたいというふうに思うところでありますけれども、農林省のお考えをお伺いいたします。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
家畜排せつ物法は平成十六年に本格施行されまして、その当時整備された堆肥舎等の経年劣化が進んでいるということは承知をしてございます。
畜産の発展のためには、引き続き、家畜排せつ物を適正に処理することは重要でございますので、共同利用の処理施設でございますれば強い農業づくり交付金、また、畜産クラスター計画に位置づけられた経営体の処理施設の整備については畜産クラスター事業により支援を行っているところでございます。
また、更新を含みます、個々の畜産農家が希望する家畜排せつ物処理施設、機械の整備の場合にはリース方式により支援をしているところでございます。
このうち、畜産クラスター事業につきましては、畜産農家の方々の使い勝手がよくなるように、規模拡大要件を緩和した中山間地域優先枠の設定ですとか、規模拡大でなく生産量の増加等生産効率を改善する場合でも可能となる等の要件の改善を行ってまいりました。
このように、新たな処理施設を整備したいという場合には、畜産クラスター事業等により支援を行うことが可能だろうというふうに思ってございますし、引き続き、現場の御意見を聞きながら、支援対策の改善も図っていくべきだろうというふうに思ってございます。
ただ、既存施設の単純な補改修につきましては、他の補助金と同様、支援対象とすることはなかなか難しいというふうに考えてございますけれども、地域の実情に応じて、どのような補改修、長寿命化、そういうことが効果的なのかなどにつきましても引き続き検討してまいりたいと存じます。
○坂本委員 これで終わりますけれども、クラスター事業にいたしましても、家畜排せつ物処理施設にいたしましても、やはり農林省の方向と現場の感覚、これが少しずれがあるところがありますので、しっかり、きめ細かな現場の意見を聞きながら、これから一つ一つ確実に政策を進めていただきたいと思います。
終わります。
○武藤委員長 次に、稲津久君。
○稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久でございます。
通告に従って、順次質問をさせていただきたいと思います。
まず最初に、燃油高騰による集乳流通への影響についてということでお伺いをさせていただきたいと思います。
ことしは大変自然災害の多い年でした。北海道胆振東部地震、それから相次ぐ台風の被害もありました。こうしたことが農業へのあるいは一次産業への大きな影響があったわけですけれども、実は、酪農、畜産関係でいうと、それだけではなくて、長雨とか日照不足とか、そういうことによって飼料の生育も大きな影響を受けました。それから、何といっても、日・EU・EPAそれからTPP等の国際貿易交渉の進展の先行きに対する農家の方々の不安というのも、これは現実にございます。
そうした中で、近年の中でも、とりわけこの数年、あるいは今後も含めて、酪農あるいは畜産の経営を取り巻く環境というのは大変大きな変化があると思っています。
したがって、私どもといたしましては、やはり経営の安定化をしっかり図っていく。それから、意欲のある生産者がその酪農、畜産の経営を継続的、安定的に進めていくことができるように適切な御支援をしていかなければならない。特に、畜産物価格の適切な設定は、これは経営安定対策上、最も重要な取組になるというふうに思っております。
そこで、伺います。
まず、酪農ですけれども、今申し上げましたように、燃油高騰対策。
今、この酪農の状況を申し上げますと、私があえて申すまでもありませんけれども、農家戸数は、これはどんどん減少していっている傾向に歯どめがまだかかっておりません。一方では、飼養する頭数は、減少傾向で来ましたけれども、今十六年ぶりに増加をしているということ。したがって、酪農の生産現場は大規模化が進んでいるということが言えると思います。
そういう状況なんですけれども、そこで、先ほど申し上げましたように、経営安定対策として、生産者補給金については、これはぜひとも再生産可能となる水準、単価を維持する、設定する。それから数量についても、更にこれは安定的に適切に対応して、設定していかなければならない、こう強く思っています。
もう一方で、集送乳の調整金についてなんですけれども、ここのところの課題というのは、一つは、これも議論になってまいりましたが、ドライバー不足が大きな問題でございます。
それとあわせて、燃油の高騰。
これは、例えばガソリンだけ見ても、例えば北海道の私たちの地域を見てみますと、リッター百二十円台だったのが、今はもう百五十円を超えました。今、少し原油価格が下がったので、百五十円よりも下がっていますけれども。
集送乳の車両に充填する軽油を考えてみますと、軽油は、これは系統からの報告ですけれども、平成二十八年度の年間平均で、リッター当たり百四円です、百四円。これが、平成三十年の十一月一日時点で百四十円三十銭。ですから、これは四十円余り上がっているんです。これは大変大きな影響だと思っています。
したがって、この燃油高騰の状況、その与える影響について農水省としてどのように受けとめていらっしゃるのか、その点についてお伺いしたいと思います。
〔委員長退席、伊東委員長代理着席〕
○濱村大臣政務官 集送乳調整金は、あまねく地域から集送乳を行うことを確保するために交付するものでございまして、畜産経営安定法において、「指定事業者が集送乳に通常要する経費の額から効率的に集送乳が行われる場合の経費の額を控除して得た額を基礎として定める」、法第二十二条第二項、と規定されておるものでございます。
単価の算定に当たりましては、当該規定に基づきまして、燃油価格等の集送乳に要するコストの変動に対応できるよう直近の物価動向をしっかりと踏まえて、食料・農業・農村政策審議会の意見を聞いて適切に決定をしてまいりたいと思っております。
○稲津委員 ぜひ、そこの御配慮をいただきたいと思っています。
要約しますと、やはり、集送乳の調整金については、今私が申し上げました燃油高騰も含めた経済情勢の変化というのが、まず一つ要因として挙げられる。その上で、しっかりこの単価の検証を行った上で、私が今申し上げましたようなことを背景にした適切な単価設定をぜひとも進めていきたい、このように思っておりますので、よろしくお願いいたします。
二点目の質問に移りますけれども、国産チーズの品質向上、ブランド化、需要拡大の支援についてということでお伺いしておきたいと思います。
日・EU・EPA、これは発効に向けてカウントダウンがしておりますけれども、この日・EU・EPAに最も影響を受ける国産チーズのところについての対策というのは、これはこれまでも議論をして、それを確立させていただいていると思っています。
もう一方で、特にこのチーズについて、最近、国産のチーズの輸出量が大変ふえている、これはうれしい話なんですけれども。報道によりますと、これは新聞を少し読ませてもらいますけれども、本年一月から十月の累計で前年同期比二割を超え、五年前の同期比では約三倍だ、加工済みのプロセスチーズが台湾や東南アジア向けに伸びたとあります。
EUの、あるいは欧米のナチュラルチーズ、どちらかというと塩味が強くて、これも大変好まれているのですけれども、逆に、東アジア等で好まれているのは、どちらかというと、やはり日本人と食味が近いんですかね、いわゆる日本で生産されているプロセスチーズ、少し甘みのあるもの、これが人気なんですね。
そういう意味では、これから国産チーズの輸出ということも本格的に考えていかなければならない時期に来ていると思っております。
しかしながら、私が先ほど申し上げましたように、日・EU・EPAの発効に伴って、やはり国産チーズに影響は、これは確実にあるわけで、ここの対策をどうするかということで、いわゆる国産ナチュラルチーズの競争力の強化を図るということがまず一つあります。そして同時に、この高品質化、コストの低減、需要拡大、これが最も重要なことだと思っております。
その意味で、この現状を踏まえて、農水省としてどのように受けとめ、取り組んでいくのか、お伺いしたいと思います。
○小里副大臣 農林水産省におきましては、日・EU・EPAの合意結果を受けまして、二十九年度補正予算によりまして、チーズ向け対策として、総合的なTPP等関連政策大綱に基づく対策を打っているところであります。例えば、チーズ向け原料乳の低コスト化、高品質化に関する支援、チーズ工房等の施設整備に関する支援等を行うとともに、品質向上のための技術研修会、ブランド化のための国内コンテスト、需要拡大のための消費拡大イベント開催に関する支援を講じまして、国産チーズの競争力強化を図っているところであります。
さらに、三十年度第二次補正予算におきまして、農林水産業の強化策としてのチーズ対策予算、しっかり確保してまいりたいと考えております。
〔伊東委員長代理退席、委員長着席〕
○稲津委員 よろしくお願いします。
そして、先ほど私が申し上げましたような国産チーズの輸出強化も含めて、しっかりこれを前向きに受けとめていただいて、諸般の施策を進めていただきたいと思います。
次に移ります。
次は、女性獣医師の就業環境の整備についてということでお伺いしておきたいと思います。
先週の土曜日、札幌で、私どもの公明党北海道主催の政策懇談会の中で、北海道獣医師会の皆さんとの意見交換をさせていただきました。
そのときに出てきた大きなテーマでございまして、これはきょうお集まりの委員の皆さんの中でも関心を持っている方もいらっしゃると思うんですが、いわゆる産業動物臨床獣医師、また地方公務員で勤務している獣医師が現実には不足しているという深刻な状況の一方で、現場では何が起きているかというと、女性獣医師の割合が年々増加しているということ、これはもう御存じのとおり。北海道大学の獣医師の専門コースについては、ことし、入学者の約七割が女子学生、このように聞いております。
だから、職場における女性獣医師の比率というのはどんどん高まっていくんですね。これは悪いことではないと思っています。
ただ、ここで一つ考えていかなきゃならないのは、女性獣医師が継続的に働いて活躍するためには、妊娠、出産、育児における、例えば休職期間の確保ですとか、あるいは子育てをしながら働くための託児環境というんですか、保育環境の整備や、あるいは一旦やめてまた復職してくる、その支援が必要である、このように思われます。
そこでお伺いするんですけれども、例えばワークシェアリングですとかパート勤務ですとか、勤務形態の多様化の促進とか、あるいは復職における不安解消に向けた研修ですとか情報提供ですとか、このような支援を図るべきと考えております。具体的にはそうした取組を農水省としても支援していると伺っておりますが、このことについて改めてお伺いさせていただきたいと思います。
○池田政府参考人 お答えいたします。
女性獣医師、委員御指摘のように、近年増加しておりまして、平成二十八年十二月三十一日現在で全獣医師の三〇%を占めてございまして、特に二十代、三十代では約半数を女性が占めているところでございます。
一方、獣医師の活動分野別に見ますと、農林水産分野の公務員獣医師やペットなどの小動物診療獣医師における女性の比率、これはそれぞれ三三%である一方、家畜などの産業動物診療獣医師における女性の比率は一三%にとどまっているところです。
ただし、産業動物診療分野に就職した女性獣医学生の割合は、平成十九年度の六%から、平成二十九年度には一〇%とふえているところでございまして、その活躍のための環境整備は重要と考えてございます。
こういった中で、農林水産省といたしましては、女性獣医師の方々が生涯を通じて能力を十分発揮できる環境づくり、これが重要と考えております。このため、出産や育児により職場を離れた女性獣医師などを対象といたしまして、職場復帰、再就職に当たりまして最新の知識の習得あるいは獣医療の技術の向上を図るための研修、産業動物診療施設の雇用主を対象といたしまして、女性獣医師などの就業に対する理解醸成を促すための講習、獣医学生を対象に、将来の就業先について考える機会を提供するため、産業動物診療獣医師として働く女性、先輩女性獣医師の方々による職場と働き方の紹介、こういったことの取組を支援しているところでございます。
○稲津委員 今御答弁いただいたんですけれども、復職に向けた講習ですとか、事業主の方々への啓蒙、それからさまざまな働きかけの事業を進めているということで、それは理解できるんですけれども、それが果たして効果があるものになっているのか、あるいはそれによって格段の成果が進められてきているのかということについては、私はもう少し検証した方がいいと思うんですね。
ただ、そこの事業というのは、平成三十一年で、五カ年事業として一旦まず完結すると聞いていますので、ぜひ、来年度の中で、その事業検証を図って、更にグレードアップして臨んでいただきたい。でなければ、女性の産業診療獣医師というのは、やはり労働環境の劣悪なこともあったり、今私が申し上げたようなことも現実にあるわけですから、そこの対応を進めていただくことを強く申し上げておきたいと思います。
次の質問に移ります。
次は、畜産の小規模農家への支援強化についてということで、ただいま坂本議員からも、大変現場に即して、かつ具体的な提言等がございまして、私も先ほどお伺いしていて、なるほどな、このように実は思っていたところでございますけれども、同様な質問になるかもしれませんが、お許しをいただいて、させていただきたいと思います。
肉用牛の飼養の頭数についても、小規模層を中心に減少してきているということで、もう一方ではこの頭数もふえているということで、こういうことを考えていくと、なかなか、先ほどの酪農と同じなんですけれども、小規模なところがどのような状況になっているかということについて、やはりここは対応をしていくべきだろうと思っています。
そこで、肉用子牛の補給金制度の見直しが出てくるんですけれども、御案内のとおり、二階建てを一本化して補給金にしていくということなんですが、私どもも農業団体や関係者の方から聞いているのは、やはり小規模、中小規模に配慮した保証の基準価格にすべきだ、これがしっかり確立しなければなかなかその対応はできないんだという話があります。
一頭当たりの生産費も、例えば十頭から十九頭という中小規模では、やはり生産費も随分格差があるというふうに伺っております。こうしたことを踏まえた上で、できるだけ高く保証基準価格を設定することが望ましいと思っておりまして、これは強く申し上げておきたいと思います。
その上で、今後、TPP11ですとか日・EU・EPA、こうしたことを勘案していった中で、果たして小規模な経営が成り立つのかどうか。実際に、肉用牛の繁殖は飼養十頭未満が全体の六四%ぐらいと聞いていますので、これはかなり現実的な、深刻な課題であるというふうに思っています。
こうしたことを踏まえて、畜産の小規模農家への支援強化についてどのような対応をされていくのか、お伺いしたいと思います。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
繁殖農家につきましては、九頭未満の小規模層が、戸数で、今御指摘あったとおり全体の六割強、頭数ベースでは二割弱というのを占めている状況にございます。
去る十一月の二十日に行われました肉用子牛生産者補給金に係ります算定方式検討会の取りまとめにおきましても、新たな保証基準価格の算定に当たっては、小規模な肉用子牛経営の実態を踏まえつつ、酪肉近で示している近代化を促進する方向に沿ったものとすることが適当と明記されてございます。
これらの点を踏まえまして、今後、食料・農業・農村政策審議会畜産部会の意見をお聞きしながら、新たな保証基準価格を適切に決定してまいりたいと存じます。
○稲津委員 ぜひとも、よろしくお願い申し上げたいと思います。
時間が来ましたので、最後の質問、簡潔に申し上げたいと思います。
先ほど来も質問がありました家畜排せつ物の処理施設についてですけれども、今、更新時期を迎えて、耐用年数をもう超えているところも幾つかあるということで、この対策です。
特に、私は、バイオマスプラントをしっかり導入すべきというふうに思っておりまして、ただ、先ほど来、電力会社の送電網の話もありました。それから、私、大事だと思っているのは、FITなどによる売電という考え方もありますけれども、もう一方で、やはり高次元でのバイオマスプラントの活用が大事である。
ことし、ドイツ・ミュンヘン周辺を歩きまして、そこで視察をさせていただいた中で、バイオマスプラントを見ました。向こうは、電気だけじゃないです、ガスもつくる、それから熱も利用する、そして堆肥も活用するということで、こうした耕畜連携も含めたバイオガスのプラント、これを今後、やはり積極的にその支援を図っていくべき、こう思っていますが、見解を伺います。
○新井政府参考人 お答え申し上げます。
畜産バイオマス発電の取組は、家畜排せつ物の有効利用により地域内への利益循環が可能であること、それから、安定的に発電可能な電源であることから重要な取組でございまして、北海道を中心に普及しております。
しかしながら、一方、電力会社の系統の容量上の制約の問題によりまして、新たな施設の整備が滞っている状況にあることは承知をしているところでございます。
このため、農林水産省では、市町村が中心となりまして、経済性が確保されたバイオマスの利活用を推進いたしますバイオマス産業都市のスキームを活用して、FIT制度に依存せず、熱や肥料の利用も含めた地産地消型の取組を支援しているところでございます。
北海道におきましても、このようなFITと地産地消を組み合わせた取組事例が出てきておりまして、地元の意向を踏まえまして推進していきたいというふうに考えております。
○稲津委員 終わります。
○武藤委員長 次に、山岡達丸君。
○山岡委員 山岡達丸でございます。
きょうは、御質疑の時間をいただきまして、委員長始め委員の皆様に心から感謝を申し上げます。
また、吉川大臣始め政府の皆様におかれましては、日々さまざま行政におかれまして力を発揮せられていることに心から敬意を表しながら、きょうは農林水産物の基本施策、畜産問題等ということでありますので、そこも含めて、あるいは北海道の震災のことも含めて、少し質疑をさせていただければと思います。
また、別の委員からもお話ございましたが、平成三十一年度の加工原料乳の生産者の補給金や集送乳調整金について、これが決定されるという時期になっておるところでありますが、本当に、全国的な燃油の高騰、そしてドライバー不足のお話もありました。
直近のコストは非常に高くなって、非常に厳しいという状況になっておりますし、震災時においては、指定団体等も、まさにあまねく集乳のために遠隔地へも、集配の努力というのは可能な限りこの北海道においてもやってきた、大きな役割を果たしているということを踏まえて、こうした状況を踏まえて、きちんとした適切な価格を設定していただきたいということをまずお願いをさせていただければと思います。
一般に、北海道の本当に今大きな心配として、酪農家の方あるいは畜産の方がお話としてありますのは、これまでの委員の御質問にもありましたけれども、いわゆるTPP、あるいは日・EU、TAGといった国際交渉の話であります。
きょうは先ほども長尾政務官が御答弁をされておられましたが、いわゆるチーズ等の優先的な低関税輸入枠、この年間七万トンという枠や、あるいは牛肉のセーフガードの五十九万トンの枠がTPPで設定されている中で、アメリカがそこから離脱してしまった。
そして、今、政府の御答弁では、見込みがなくなった場合には見直しの規定で議論するけれども、今現在見込みがなくなったわけではないという前提に立っているというお話の御答弁もありました。
私から少し質問の仕方を変えてお伺いしたいんですけれども、それでは、具体的な例示として、アメリカと、この交渉状況は、どういう状況になったらアメリカがTPPには参加しないという判断になるのか、その具体的な例示について御答弁をいただければと思います。お願いいたします。
○長尾大臣政務官 山岡委員にお答えをいたします。
TPP11協定第六条におきましては、TPP12協定が「効力を生ずる見込みがない場合」とございますが、これについては、これまでの政府答弁のとおり、米国の通商政策の動向を踏まえて判断をすることといたしております。
また、多くの方々、山岡委員も含め、また北海道の地元の皆さんが御懸念を持たれていらっしゃるのは、いわゆるTPPワイド枠等の扱いだと承知をいたしております。このため、米国の通商政策の結果、TPPの外で同じような関税割当て枠が発生をして、現在の割当て枠を超えるようなことになる等の懸念が現実のものとなる可能性が高いと判断される場合には、TPP11協定第六条の要請を行うことになると考えております。
とにかく、さまざまな面で農林漁業者の皆さんの懸念がないようにしっかりと対応してまいりたいと思います。
○山岡委員 今、長尾政務官から大変重要な御発言をいただいたと思います。
このワイド枠が、ほかのところでも同じ、同様の枠ができて、その場合にはアメリカが参加しないというふうに見込まれるんだというお話でございました。
これは少し具体的に伺いますけれども、例えばセーフガード枠とかあるいは低関税輸入枠が、TAGの交渉がこれからどうなっていくかというのはこれからの議論なんでしょうけれども、この中で同様の枠組みの議論ができて、その方向になったときには、このTPPには参加せず、TPPのこの部分については見直しをするという理解でよろしいでしょうか。
○長尾大臣政務官 お答えいたします。
九月の日米共同声明では、米国との間で日米物品貿易協定、TAGを開始することに合意をしたということでありまして、米国との具体的な交渉はこれからでございます。現時点では、TPPワイド枠の扱い等、個別の事項については何も決まってございません。
その上で、TPP11第六条を具体的にどのような場合に我が国として発動するかにつきましては、今後の日米間の交渉にも影響を与えることから、詳細は控えさせていただきたいと思います。
○山岡委員 これからの交渉でありますので、交渉に影響を与えるというのはもっともな御答弁でありますので、このことは深く伺いませんが、まさに別のところで同じ枠組みができたときには、これはアメリカが参加しないんだという見込みが高いものだと政府として判断するという御答弁をいただきましたので、これを前提に、地元の酪農家、畜産家、皆様、こうした状況の中でいろいろこれから先のことを念頭に置いて考えていくということで、今後、また別の機会にでもこのお話を伺いたいと思います。
これを受けて大臣にお伺いしたいと思いますが、今お話にもありました、別の交渉の中でそういう枠組みができるというのは、恐らく相当先のことであろうと思います。その中で、TPPもあり、日・EUの交渉もあり、そしてTAGもあり、この酪農、畜産という生産者にとっては、十年後、二十年後を見据えて投資をしてまで私たちは続けていいのか、あるいは子供たちに引き継がせていいのか、そうした時間軸の中で皆様が経営をされている中で、この国際交渉の行方というのが非常に大きな将来不安を生んでいるというのが厳然たる事実であることは、北海道選出の大臣もよく御存じのことだと思います。
そこで、細かい施策等々の話はいろいろあるわけでありますけれども、総論としてお伺いしたいと思います。
大臣に、農林水産省ある限り、これはやはり、北海道の酪農家、畜産業、あるいは全国の酪農、畜産家、これはしっかり守っていくんだ、そうしたことが、今、おっしゃっていただけるんでしょうか。そのことを含めて御答弁いただければと思います。
○吉川国務大臣 まず、農林水産省といたしましては、生産者の方々の不安や懸念にしっかり向き合わなければならないと思っております。意欲ある生産者が将来にわたって希望を持って畜産、酪農経営に取り組んでいただけるように、必要な対策はしっかりと講じてまいるところでございます。
その上で、今、我が国におきましては、TPP等関連政策大綱に基づきまして、畜産クラスター事業ですとかチーズ振興対策などの体質強化対策を講ずるほかに、経営安定対策として牛・豚マルキンの補填率の引上げ等の措置を実施することなどによりまして、万全の国内対策をこれからも実施していかなければ、そういう思いでございます。
○山岡委員 大臣の決意の話もお伺いしたかったところでありますが、また改めて、その機会を持ってお伺いしたいと思います。外交交渉と農家の関係については、これからまた本当に、都度都度、大きな議論になろうかと思いますので、どうかまた引き続きの御質疑をさせていただければと思います。
政務官におかれましては、この次があられるということで、これで御退室いただくということでございますので、ありがとうございました。
あわせて、大臣にお伺いいたします。
今度は震災関連について少しお伺いいたしますが、北海道の厚真町という町を中心に、安平、むかわと大きな震災があったことは大臣もよく御存じで、私、大臣と御一緒に被災地を歩かせていただいたという貴重な経験もさせていただきました。
いろいろな個別の課題はあるんですけれども、きょう取り上げたいのは、いわゆる鹿、鳥獣害、この対策についてです。
御存じのとおり、山が崩れて土砂がああなったばかりに、町を挙げて鹿柵を、ずっと張りめぐらされた柵が、ほとんどとは言いませんが、かなりの部分で壊れている。来年の営農に相当影響する程度の深刻な事態であります。
委員の皆様ももう御存じのことだと思いますが、当然、鹿は生き物でありますから、一カ所あいている場所があればどこからでも入ってくる。ですから、穴がないように全て張りめぐらしていかなきゃいけないというのが、本当に地元の、地域の今喫緊の課題として、農家の皆様とか、本当にみんな口々に口にされます。
北海道は、寒い時期でもあり、雪でもあります。ですから、来年の営農に間に合わすとしたら、見込み的には、来年の四月ごろに地域を挙げて一斉にこの対策を打っていかなきゃいけない。現実的には、三メートルぐらいの金網フェンスのいわゆる対策で設置していかなきゃいけない。そうすると、人員にしても金銭にしても期間にしても非常に限られていて、かなり、これまでの通常の施策ではない、この特殊な状況において特別な対策が必要な状況になるというのが、来年の四月までの状況であります。
これは非常に深刻なので大臣にお伺いしたいんですけれども、この状況において、ぜひ農林水産省を挙げて手厚く対応をしていただきたいんです。ぜひ大臣に御見解を伺いたいと思います。
○吉川国務大臣 今御指摘をいただきましたように、北海道胆振東部地震におきまして、鳥獣の侵入防止柵については相当な被害が生じていることは私も承知をいたしております。厚真町とむかわ町、安平町を中心に、山林の土砂崩れの発生等によっての被害額が約一・九億円と認識をいたしております、鹿柵被害ですね。
このために、鳥獣の侵入防止柵の整備につきましては、農林漁業者が安心して営農を再開できますように、農業者がみずから柵の設置を行う場合には、資材費用相当分につきましては定額で支援をいたします。鳥獣被害防止総合対策交付金による手厚い支援を行うことといたしております。
さらに、来期の営農のことでありまするけれども、これに支障が生じないように、被災農地の復旧状況など現場の状況を踏まえながら、順次柵を再整備する方向で、今、交付金の配分主体であります北海道庁と実は調整を進めております。その調整が整い次第、必要な支援を行ってまいりたいと存じておりまするけれども、来年四月までにこれはできるだけ間に合わせたいと思います。
○山岡委員 今、大臣から御答弁がありましたが、来期影響を生じないというお話がございました。最後、できるだけというお話がありましたけれども、これは本当に、一カ所でも穴があけば、御存じのとおり、そこから鹿は入ってくるわけであります。そうしたら、水稲にしても大豆にしても、本当に大きな被害がある。鹿柵だけでも一・九億円の被害でしたけれども、鳥獣の被害は、もう全国、皆様御存じのとおり、これは被災地にとって本当に非常に深刻な話でありますので、お話にもありましたけれども、来期への影響は生じないようにできる限りをするということを責任を持って答弁されたことを受けて、これはしっかり対応していただきたいということを重ねてお願いを申し上げるところであります。
時間が限られているので、次に、林業のことについて伺います。
林業も、先日、災害特の質疑の中で農水省に質問をさせていただいたんですが、あそこは民間の事業者が持っている民有林が非常に多いんです。あの被害の結果、いわゆる整備ができなくなれば資産価値が落ちて売買ができなくなる、そうなりますと事実上の放棄をしてしまうことが非常に深刻だというお話をさせていただきました。直接の被害は四千三百ヘクタールでありますけれども、あそこは一万ヘクタールぐらいの民有林が広がっておりまして、被害があったことによって、あそこの場所に行けなくなる、被害がない場所に例えば入れなくなる、整備ができなくなる、そのことによっても資産価値は下がります。保安林にするということでも資産価値は下がる。そして民間の方が、じゃ、もう僕は関係ないよ、事実上整備しないよと意思をなくしてしまったら、ほかの森林にも影響が出る。非常に深刻な状況であります。
先日の農水省の答弁では、復帰を希望する森林所有者が所有を望む場合はできるだけ負担の少ない形で整備したいということの答弁はあったんです。私が申し上げたいのは、所有を望まなくなってしまった場合どうするのかという問題意識を持っています。
そのためにも、将来ビジョンをしっかり持って、ただの復旧ではなくて、将来、十年後はここをこうするよ、二十年後にはここをこうするよ、三十年後にはこうするよ、あるいはさまざま、資産価値を落とさないためにこういう対策をとるよということを、将来ビジョンを描く。これは丁寧に描いていかなければ、皆、将来に希望を失って、林業、事実上の放棄をしてしまうという事態になります。
こうした将来ビジョンについては、まず農水省に伺いますけれども、これはきちんと議論する予定はあるんですか。どういう場所で議論されるのか。そのことをお伺いしたいと思います。
○牧元政府参考人 お答え申し上げます。
北海道胆振東部地震でございますけれども、委員御指摘のように、極めて大きな面積の森林が被害を受けたということでございます。こういったことに鑑みまして、御指摘のように、中長期的な林業の復興に向けてのビジョンを策定するということが極めて重要だというふうに考えているところでございます。
被災地域では、これは道庁が中心になりまして、国や町や研究機関等の関係者も参画いたしまして、胆振東部森林再生・林業復興連絡会議というものが設置をされているところでございます。今後、地域の関係者が一丸となって森林被害の早期復旧あるいは地域林業の復興を図っていく上で、この連絡会議というものが大変重要ではないかというふうに考えているところでございます。
農林水産省といたしましても、本連絡会議への参画でございますとかいろいろな支援等を通じまして、関係者の合意によるビジョンのもとで、地域の林業の復興が着実に進められるように、北海道庁等ともよく連携をして、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。
○山岡委員 今御答弁にもありましたけれども、復興連絡会議が非常に重要だというお話がありました。まさに、復旧させるだけじゃなくて、連絡会議という名称ではありますけれども、しっかりと政府もコミットしていただいて、先々のビジョンを民間の方にお示しする、伝わる、そういう中身として将来ビジョンを描きながら進めていただきたい。
最後に、この件についても大臣にお伺いしたいと思うんですが、林業者の方は、農家の方も兼業している方があの辺はすごく多くて、それを担保にお金を借りているとか、林業の資産価値が下がることによって、いろいろな影響が出てきます。売買もできなくなる、あるいは金融機関の担保にもならない。そのときに、民間事業者ですから、個人の判断で、さまざま、国とか道の影響が及ばないような状況もつくられてしまう可能性もあるわけであります。
この林業の復旧、復帰について、大臣としてどのような決意を持って当たっていくか、そのことについて大臣にお伺いしたいと思います。
○吉川国務大臣 今回の災害におきましては、極めて大きな面積の森林が崩壊をいたしました。資産としての森林が一瞬にして失われたことから、森林所有者の方々の落胆も極めて大きなものと私ども認識をいたしております。まさに私も、大臣就任前でありまするけれども、お伺いをした折には、もう山がなくなった、そういう表現をされる方がいらっしゃいました。そうした中で、被災地域では、森林の早期再生と地域林業の復興に向けて、林業関係者が一丸となって懸命な努力をなさっていると私も承知をいたしております。
農林水産省といたしましては、今後とも、こうした林業関係者の思いや努力にしっかりと寄り添わなければならないと存じておりますし、復興に向けた取組が着実に進むように、先ほど林野庁長官からも申し上げましたけれども、この復興連絡会議とも連携をとりながら、全力で取り組んでまいりたいと思います。
○山岡委員 この件はまた質疑いたしますが、まさに、早期再生だけじゃ、これはおかしなことになってしまうんです。同じ場所に同じカラマツを植えれば、四十年後に売りどきが全部来てしまうわけです。計画性を持って植林をしていかないと、これは将来の産業としては維持できなくなっていく。
ですから、早期復旧というのが唱えられますけれども、計画性を持って山をつくっていくという視点を持ってぜひ当たっていただきたいということを、あわせてお伝えをしたいと思います。
本当はいろいろ個別事業の話についても伺いたかったんですけれども、時間が来てしまったのできょうはここまでにさせていただきますが、きょうは質疑の時間をいただきましたことに心から感謝を申し上げさせていただきながら、質問を終わらせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
○武藤委員長 次に、近藤和也君。
○近藤(和)委員 石川県能登半島の近藤和也でございます。
私は先週まで地元のお魚のPRを何度もさせていただきましたが、肉も当然ございます。能登牛、今、頑張っているところでございます。ぜひとも皆様に、能登牛というすばらしい牛があるんだ、肉牛があるんだということをお見知りおきいただければと思います。
早速ですが、質問に入らせていただきます。
先ほど亀井委員からも質問がありましたが、和牛にかかわる、受精卵が中国へ密輸出されかかったということで、この経緯については先ほど確認をいたしました、中国当局にとめられたと。そして、私の方でペーパーを配らせていただいておりますけれども、外見、この大きなポットのようなこういったものは、これからは船舶、空港、税関等で見つけ次第、動物検疫所に連絡をしてくださいということを確認いたしました。その上で、大臣からも、残念で、あってはならない、厳正に対処、再発防止策を図っていくという答弁が先ほどございました。ここを踏まえた上で、質問に入りたいと思います。
現在、家畜伝染病予防法におきましては、今回の事例はどうかわかりませんけれども、三年の懲役若しくは百万円以下の罰金となります。この刑が軽いか重いかということについて、まずお伺いをしたいと思います。
例えばですが、皆様に見ていただければと思います、今回のこのポットのような中には、大体四、五百本ぐらいストローが入っていると聞いています。一本当たり二万円から三万円です。そうなので、二万円掛ける五百でいきますと一千万円、三万円掛ける五百本だと一千五百万円です。一千万から一千五百万の価値があるものが今回もし見つかっても、最大三年若しくは百万円以下の罰金ということで、こちらの軽重については、抑止力にならないと考えますが、いかがでしょうか。
○池田政府参考人 お答えいたします。
家畜伝染病予防法では、海外からの家畜の伝染性疾病の侵入を防止することを目的といたしまして動物や畜産物の輸入検査を、また、我が国から家畜の伝染病を相手国に伝播させず国際的な信用を担保することを目的として輸出検査を実施しておりまして、この検査で我が国が必要と認めた家畜衛生上の条件や輸出相手国が求める家畜衛生上の条件に合致しているということを確認した上で、輸出あるいは輸入検疫証明書を発行することとされているわけでございます。
今般、この輸出検査を受けずに、牛の受精卵を国外へ持ち出し、中国当局に輸入をとめられたという事案がございます。この件につきましては、家畜伝染病予防法に基づく輸出検査ということでございますので、伝染病の拡散を防止をし国際信用を担保するという観点から定められておりまして、まず、今回の事例について、この法の目的に照らしましてしっかりと調査をしていくということが必要だと考えております。
○近藤(和)委員 予防法の目的、観点からはというところでは、少しずれるのかなというふうにも私は受け取ることができると思います。
そして、きょうは財務省にも来ていただきました。
今回の件も含めて、類似の、わかりやすく言えば牛肉の密輸出が行われた場合、どのような罰則が適用されますでしょうか。
○山名政府参考人 お答え申し上げます。
一般論として申し上げますと、税関長の許可を受けずに牛肉などの密輸出が行われた場合には、関税法第百十一条違反、無許可輸出罪となり、五年以下の懲役若しくは一千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科することとなります。
ただし、当該犯罪に係る貨物の価格の五倍が一千万円を超えるときは、罰金は当該価格の五倍以下となります。
具体的には、例えば貨物の価格が一千万円の場合には、罰金の上限額は五千万円となります。
○近藤(和)委員 ありがとうございます。
五倍若しくは一千万円以下ということでございます。
先ほどの予防法との軽重ということでいけば、こちらの方が重いわけですけれども、結果として、今回、中国当局でとめられたということで、日本を通過をしてしまったわけです。
ことしですけれども、金に関しても罰則が大きく引き上げられました。五百万から一千万に引き上げられて、そして、先ほど財務省さんが言われたように、五倍ですよね。ですから、例えば金を一億円、入る、出すの場合ですけれども、一億円だと五億円取られるんですね。それだと、リスク高いですから、やはりやめようかということになると思います。今回の、例えば和牛そのものであったり受精卵に関しては、一千万なのか、若しくは百万ということになりますので、私は抑止力にならないんじゃないかということを心配をしています。
特に、この和牛に関しては、明治以降、心血を注いできた伝統工芸品、まあ芸術品と言ってもいいと思います。こちらをしっかりと守っていかなくてはいけないというところで、金も今回引き上げました、そして先週は漁業法も引き上げましたよね。アワビやナマコ、二百万から三千万に引き上げました。こういったことも含めて、ぜひとも、今後、検討というか、この委員会の中で皆様お含みおきをいただければというふうに思います。
そして、これらの議論、宿題を残した上でということですが、そもそも論として、今、日本は、和牛をそして日本の農産品をどんどん輸出をしていこうと、一兆円戦略で、来年何とか達成できればというところまで来ていますが、和牛もどんどん、今、輸出を頑張ってきているところでございます。
資料の二枚目ですが、左下、香港、カンボジア、米国、シンガポール、この各国への輸出実績というものがございます。そして、これらがある中で、実際には、今回は中国へ受精卵が密輸出されかかったということですが、そもそも論として、中国への肉牛の輸出、これは過去あったわけですね。ちょっと確認の意味で、よろしいでしょうか。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
二〇〇一年までは、年間数トン程度ではございますが、実績がございました。
○近藤(和)委員 ありがとうございます。
そうなんです。BSE以降ですね、中国への輸出ができなくなったのは。一方で、ここ数年の間に、口蹄疫もありましたけれども、香港、カンボジア、米国、いろいろな国が日本の和牛を買ってくれるようになったわけです。
最初から中国がしっかりと、輸入をしたい、こちらから輸出できるということになっていれば、こういう抑止力というところも含めて、私は、日本のためにもなりますし和牛の価値を守っていくことにもなると思いますが、大臣、こちらについての御所見はいかがでしょうか。
○吉川国務大臣 本件につきましては、我が国の牛肉の輸出が順調に増加する中、大変私は遺憾なことだと存じております。
これはもう、厳正に対処すべく事実関係の調査を進めているところでございますし、今後とも、我が国の貴重な遺伝資源が不正に海外に持ち出されることのないように、的確に対応してまいりたいと存じております。
○近藤(和)委員 和牛の輸出を頑張っていくという覚悟もちょっとお伺いしたいんですが。
○吉川国務大臣 大変失礼いたしました。
和牛の輸出につきましても、もちろん頑張って、これから輸出増加に努めてまいりたいと存じます。
○近藤(和)委員 中国にということはあえて伺いませんでしたが、今やはり一番トップは香港なんですよね。そして、アジア地域がやはり多いです。日本人と舌が似ているのかわからないですが、和牛を好まれているんじゃないかなという見方と、もう一つは、これらの、香港、カンボジア、シンガポール、国を特定するわけにはいかないですが、マネーロンダリングのような和牛ロンダリングですね、のような行為が行われているのではないか、私はここも心配をしています。
ですから、今回の、罰則を強化する、そしてさらには摘発から告発への割合を高めていく、こちらも抑止力を高めていくということになると思いますが、そしてさらには、ちゃんと正々堂々と輸入してください、輸出させてくださいということも、私は、これは国として頑張っていく、努力していかなくてはいけないことではないかなというふうに思いますので、今後、私もこの委員会を通じて、細部、御提案も含めて進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、次の質問に参ります。
昨日も岐阜県で豚コレラが発生をいたしました。この件について、現状について伺います。
○池田政府参考人 お答えいたします。
岐阜県でございますけれども、野生イノシシで豚コレラが確認されているところでございまして、その中で、昨日までに四例の豚コレラが豚で発生をしたという状況でございます。
この中で大事になってまいります野生イノシシの対策でございますけれども、現在七十頭の豚コレラ陽性が確認をされております。このために、岐阜県では、対策といたしまして、野生イノシシと豚との接触の防止というために、家畜伝染病予防法に基づきまして飼養衛生管理の徹底を指導する、あるいは養豚場の畜舎の周囲の電気柵あるいはワイヤメッシュ柵の設置の支援、消石灰、畜舎専用防護服などの防疫資材の配付、こういったことを実施をしてございます。
また、わなを設置いたしまして、野生イノシシの浸潤状況の把握を行うとともに、個体数の削減を図っておりまして、さらに、イノシシの生息域周辺での防護柵の設置や緩衝帯の整備、あるいはイノシシの感染が確認されている岐阜県及び愛知県の一部の市町村において狩猟を制限するなど、イノシシの拡散防止を図っているところでございます。
○近藤(和)委員 ワクチンについてはどのような状況でしょうか。どこが主体的にやっていくのかも含めて教えてください。
○池田政府参考人 お答えいたします。
豚コレラの対策でございますが、家畜伝染病予防法に基づいて農林水産大臣が定めております豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針に基づいて実施しております。
現在は、早期の発見と患畜及び疑似患畜の迅速な屠殺を原則として対応しておりますが、今御指摘ございましたワクチンにつきましては、防疫措置の実施状況や感染の広がりなどを考慮いたしまして、現行の防疫対策では、感染拡大の防止が困難だと考えられる場合に限って緊急的に使用するということにされているところでございます。現時点では、県の防疫対応や農場における農家の方々の飼養衛生管理基準の遵守などによりまして、そのような事態にまでは至っているとは考えておりません。
したがいまして、岐阜県と連携いたしまして、引き続き同病の発生予防及び蔓延防止にしっかりと対応してまいりたいと考えております。
○近藤(和)委員 ワクチンを打つことによって豚にどのような影響があるのかということも含めて、今のところは打ちたくないという答弁だったのかなというふうに思いますけれども。
ただ、この地図で出ていますように、もうイノシシが川を渡ってしまったわけですよね。イノシシは大体三キロから五キロが生活範囲だということも確認をいたしましたけれども、それでも、私の能登半島の例でいけば、十年で百キロ北上しちゃうわけですよ、いなかった地域に。そのことを考えると、岐阜県、この中に関ケ原も近くにありますけれども、どんどんどんどん全国にこれがもし広がっていくということを考えると、私は、危機感をもっともっと強く持ってやっていただきたいなと。
また、イノシシがかかわっているわけですよね。今回、四例目はイノシシだったということで、野生のイノシシを飼っているこの県での施設でさえもそのようなことが起きているわけですから、しっかりと本当に危機感を持って対応をお願いしたいと思います。
それでは、最後の質問になります。
このペーパー、四番目ですね、見ていただきたいと思いますが、これは酪農の場所、酪農家の放牧場のところの地図、写真になります。
何かといいますと、雪が降ると電気柵を取りますので、雪解け時期に、電気柵が取れた段階で雪が解けてきて、イノシシが入ってきて、そしてイノシシが、おなかもすいているし、実は雪解けだから土もやわらかいんですよね、そうなのでミミズをどんどんどんどん食べて、余り言いたくはないですが、トラクターで耕したかのような、見事なまでのこういう侵食をされてしまっているという状況でございます。
時間がないので手短に申し上げますが、積雪地におけるイノシシ対策というのは電気柵では限界があるのではないか。そして、皆様から伺う御意見としては、しっかりとした柵をしようとした場合にはお金の都合、予算がということで、なかなかできていないということを伺いました。こちらについての現状を聞きたいと思います。
○室本政府参考人 委員がおっしゃるとおり、イノシシによる酪農への被害としましては、牧草地における牧草の食害あるいはその掘り起こし、そういったことがあるということは承知いたしております。
積雪地帯におきましては、雪の荷重で電気柵等が倒れたりするものですから、耐雪性の侵入防止柵を設置する際は、非常に高価であるという点も考慮しまして、地方農政局長が認めた場合には、上限単価を超える、そういった助成もできる仕組みを整えておりまして、地域の実態に応じたそういう支援を現在もやっているところでございます。
○近藤(和)委員 しっかりとこの対応をされているということですが、その対応しますよということが伝わっていないのか、もしくは対応するという気持ちで実際運用面で問題が出ているのか、この特別な理由ということもきのう伺いましたけれども、特別な理由の解釈によって、それがハードルになっているのかもしれないなというふうにも感じています。
そこで、大臣、最後、お伺いしたいと思いますが、本当に、イノシシは病気も運んでくるわ、田んぼもやっつけるわ、そして牛の餌まで食べちゃうわということで、飼料の自給率一〇〇%に持っていこうということもやっていて、まさに国策を邪魔しているわけですよね。ありとあらゆる意味で、このイノシシの撲滅対策にかける意気込みをお聞かせください。
○吉川国務大臣 撲滅対策でありますけれども、これは、農作物被害防止の観点からも、引き続き関係省庁や各自治体とも協力し、しっかりと野生イノシシの対策を進めていかなければならないと存じております。
今回も、イノシシに関連をしての豚コレラの感染が確認をされておりますので、農場への侵入防止柵の強化ですとかあるいは捕獲による個体数の削減によりまして、豚とイノシシの接触防止を図るなど、岐阜県と連携をして、この発生予防、蔓延防止対策にも今しっかりと取り組んでいるところでもございます。
きのうも岐阜県知事から私へ直接お電話をいただきました。更に対策を強化すべく、今連携を図りながら、近いうちに岐阜県での対策本部というのが開かれるとも聞いておりますので、こちらからも参りまして、今回の対策を更に講じていきたい、こう思っておりますし、今御指摘をいただきましたことにつきましても、全国の自治体とも協力をしながら、この野生イノシシの対策をしっかりと進めてまいりたいと存じます。
○近藤(和)委員 ありがとうございます。覚悟を伺いました。
来年はいのしし年です。イノシシが繁栄する年ではなくて、徹底的に淘汰する年にしていきたいと思いますので、どうか一緒に、お力添えをよろしくお願いいたします。
以上で質問を終わります。ありがとうございました。
○武藤委員長 次に、金子恵美君。
○金子(恵)委員 無所属の会の金子恵美でございます。よろしくお願いいたします。
冒頭、きょうの日農新聞の一面でありますけれども、「米国乳業団体 TPP超開放要求 日本の国家貿易廃止も」というような大きな見出しの記事があったのを大臣は御存じだというふうに思うんです。一言で言えば、TPP11、日・EU・EPAを上回る市場開放を求めるというようなことであります。大変気になるのは、最後の、「要望書の中では、「日本との自由貿易協定(FTA)を歓迎する」という一文もあった。」ということでありまして、日本政府が今まで言っている日本の貿易協定を指すTAGというその文言は一言も入っていなかったということでございます。これまでもTPP11そして日・EU・EPA、これが発効されるというような方向性があり、それでなくても、もう現場の生産者の皆様は大変不安感を強くしていらっしゃるというふうに思います。
もしできれば、大臣、通告はしていないんですけれども、やはりこれは今後、交渉事ではありますけれども、強い姿勢で臨まなくてはいけないという、その御決意というのを示していただきたいなというふうに思うんですが、大臣、一言いかがですか。
○吉川国務大臣 その報道は私も承知をいたしております。
今御指摘をいただきましたことに対しましては、米国との交渉はまさにこれからでありますので、具体的な個別品目についてお答えすることは差し控えさせていただきたいと存じまするけれども、いずれにいたしましても、私、再三再四申し上げてきましたように、この日米共同声明を大前提に、将来にわたって我が国の農林水産業の再生産が確保されるように、私どもとしても農林水産省として最大限の努力をしていかなければならないと存じております。
○金子(恵)委員 最大限の努力を求めているのは、本当に、この委員会にいる全ての委員、そして本当に、国民を代表する国会議員全てだと思いますし、生産者の気持ちというか、その考え方も含めて、全てこの場でしっかりとお届けさせていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いします。
それを前提といたしまして、三日に第一回目の食料・農業・農村政策審議会畜産部会が開催されまして、二〇一九年度の畜産・酪農政策価格の議論が始まったということであります。第二回目は十三日に開催されるというふうに伺っています。これはもう傍聴も可能だということで、申込みされている方もいらっしゃると思いますが、残念ながら、前回、一回目の議事録がまだ農水省のホームページにアップされていないようでありますので、四日の日農新聞の記事によってまた質問させていただきたいと思うんです。
焦点となっている肉用子牛生産者補給金制度の保証基準額について、有識者からは、小規模農家の生産費に配慮した水準を求める声が相次いだということであります。当然、先ほどもお話がありましたけれども、繁殖経営は構造的に中小企業が多いということであります。もっともな指摘であり、そういう声にやはり対応していかなくてはいけないというふうに思っています。この声がしっかりと反映された保証基準額になるということを願ってやみませんが、酪農についても、加工原料乳生産者補給金の単価が焦点となっている、条件不利地も含め、集乳経費に当たる集送乳調整金は、輸送費が高騰する中、十分な単価を確保できるかが課題になっているというようなことであります。
こういう御意見というのが出ているということでありますので、この畜産部会での議論についての御所見をお伺いしたいというふうに思いますし、また、今後どのような議論を期待しているか、大臣、お願いいたします。
○吉川国務大臣 今、金子委員からもお話をいただきましたように、第一回目の食料・農業・農村政策審議会の畜産部会におきましては、肉用子牛の生産者補給金制度における保証基準価格の設定に当たりましては、繁殖経営は中小規模が多いことから、中小規模の経営の生産費を考慮すべきである、そういう意見は出されております。
さらに、集送乳調整金に当たりましても、輸送コストが今上昇している中にあって、単価を適切に設定すべきという御意見もあったと聞いております。
特に、肉用子牛の生産者補給金制度におきましては、総合的なTPP等関連政策大綱におきまして、TPP11協定発効に合わせて、肉用子牛保証基準価格を現在の経営の実情に即したものに見直すこととされておりますので、畜産部会における御意見も踏まえながら適切に決定することが私は最も重要であると考えております。
○金子(恵)委員 TPP11が発効すれば新たな仕組みに移行するということでありますけれども、その上で、今大臣おっしゃっていただいたように、現場に寄り添った形でしっかりそれを進めていくというふうに私は聞き取らせていただきましたが、それでよろしいでしょうか。
○吉川国務大臣 もちろんでございます。
現場の皆さんが御苦労されておりますので、今回の畜産、さらには酪農の価格等の決定に当たりましては、そういったことをしっかりと踏まえて部会でも決定をしていただけると思っておりますし、私どももそういう思いでございます。
○金子(恵)委員 五日に、二〇一八年度、今年度の二次補正予算に盛り込む農業関係の項目が公表されたといいますか明らかにされたということでありますけれども、これは自民党さんの農林合同会議ですか、そこで明らかにされたということでありますので、私は今回、レクを受けさせていただいて、いろいろと役所の皆さんから聞き取りさせていただいたときに、この内容はどうなっているのというふうに伺いましたけれども、残念ながら、私には示していただけませんでした。ですので、あえてこの場でお伺いさせていただきたいんですが。ただ、報道では、この中身については、TPP11、日・EU・EPAの発効に合わせた国内対策を柱の一つにしているということを伺っているところでもあります。
やはり、二次補正予算に盛り込む内容というものも、当然、先ほど大臣おっしゃっていただきましたように、現場に寄り添う形での対策でなくてはいけないということでありますけれども、制度がもうこれ以上、今の段階で変わるということはないというふうに思います。
ただ、今後の課題も含めましてなんですが、例えばマルキンのその補填というのは、平均的な生産費が基準で、大規模で生産費が低い経営体ほど恩恵を受けるという仕組みですね。でも、先ほど来、やはり中小経営者あるいは家族経営の方々もしっかりと支援をしていくという方向性は重要なんだということを、この委員会でも確認をさせていただいています。
今後のことも含めまして、やはり、大きな交渉事があって、そして日本の畜産は大きく変わっていくんだというふうに思いますけれども、それも含めて、大臣の御所見を伺いたいと思います。
○吉川国務大臣 まず、金子委員、補正予算についての考え方を私から述べさせていただいてよろしゅうございますか。
補正予算につきましては、これは十一月の二十日に総理から御指示をいただいたところでありまするけれども、まず一つには、総合的なTPP等関連政策大綱に基づく畜産クラスター事業等の農林水産業の体質強化対策の実施、そして二つ目に、重要インフラの緊急点検等を踏まえた、ため池等の防災、減災、国土強靱化のための緊急対策、さらには、台風二十四号等の災害によりまして被害を大変多く受けた農業ハウスの再建等の対応などにかかわる対策を中心に、今現在検討を進めているところでもございます。
さらに、私ども農林水産省といたしましては、現場で必要な施策が適切に展開できますように、必要な補正予算の確保に全力で取り組むことはもちろんでありまするけれども、今御指摘をいただきましたマルキン対策等々につきましてもしっかりと対応をさせていただけるようにしたいと思っております。
○金子(恵)委員 済みません、時間が限られておりますので幾つかの質問を飛ばさせていただきまして、福島の福島牛、和牛ですね、これをどういうふうに支援していただけるか、これをちょっと質問させていただきたいと思うんです。
原発事故後、大変な苦労がありました。それでも風評被害と現在も闘っているわけでありますけれども、生産者が品質向上を本当に努力して目指してきまして、味のレベルが大変向上したというふうに言われているところでもあります。また、高品質の種雄牛も誕生しているという福島の現状であります。
例えば、二月に、東京都の中央卸売市場食肉市場においては、ここで第五十三回の肉用牛枝肉共励会が開催されたんですが、福島牛が最高位の農林水産大臣賞を受賞しています。そしてまた、種雄牛については、これは勝忠安福という名前、六歳の、福島県の農業総合センター畜産研究所で飼育されています牛ですけれども、それが歴代最高成績の基幹種雄牛として認定されております。そうやって、質を本当に高めている努力もしています。
しかし、一方で、価格を見ますと、これも東京都中央卸売市場における福島県産の和牛取引価格でありますけれども、十月時点で一キロ当たり二千四百五円で、全国平均はそれより一割高い二千六百四十二円だったんです。ずっとこの三、四年間なんですけれども、一割低い状態で進んでいるというようなことで。
繰り返し申し上げますけれども、大変すばらしい品質のものができ上がっているということであります、本当に現場の生産者の方々の努力が実っている、でも、こういう状況になっています。
これをどのように分析して、そしてまた、更にどのような支援を今後していただけるのか、お伺いさせていただきたいと思います。
○吉川国務大臣 平成二十九年ですから昨年でありますけれども、に行いました福島県産の農産物等流通実態調査に基づく指導におきましては、小売業などの関係事業者に対しまして、福島県産であることのみをもって取り扱わなかったり買いたたいたりすることのないようにすること、さらには、他県産の農産物等と福島県産農産物等とを対等に比較して取扱商品を選択するようにすることなどの指導通知を発出いたしました。
そのほかに、日本チェーンストア協会、全国スーパーマーケット協会等の役員に対しましても、農林水産省、経済産業省、復興庁が直接説明をしてきたところでありまするけれども、さらに、三十年度におきましては、牛肉等の影響の大きい品目に着目をいたしまして、生産者から小売業者に至るまでの流通段階ごとに、取引価格がどのように推移をして、どの段階で取引価格が伸び悩んでいるのかを追跡する調査を、三省庁が協力して、国が指導する形で新たに行っているところでございます。
こうした取組によって、品質の高い福島県産の農産物が適正に評価をされて流通が正常化するように、引き続きまた努力をさせていただきたいと思っております。
○金子(恵)委員 買いたたきがないようにお願いするという通知も出してはいただいているんですが、それがどこまで実効性があるかわかりません。さらなる取組をお願いし、そしてまた大臣にも福島牛を食べていただきたいということもお願いいたしまして、私の質問を終わります。
ありがとうございます。
○武藤委員長 次に、田村貴昭君。
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
私は、先月二十一日に宮崎県の盗伐問題を取り上げました。小里副大臣、早速宮崎の国富町に入っていただきまして、ありがとうございました。被害者の方は国の対応に大変期待を持っておられます。
ところが、副大臣、また盗伐事件発生であります。お配りしている資料1をごらんいただきたいと思うんですけれども、見渡すところ数百本、被害者は複数おられます。持っていかれています。無断伐採で持っていかれています。樹齢が五十年後の木もありました。もちろん、境界標もちゃんとあるところであります。
被害者の方は、親から受け継いで大事に育ててきた杉の木なのに、この杉の木が成長したら家を建てようと考えていたのにということで、その落胆と怒りは想像にかたくありません。
盗んでも捕まらないから盗伐がはびこる、後を絶たないのであります。国と行政の対応をあざ笑うかのようなこういう盗伐をやはり摘発し、そして撲滅させていく、まさに今、農水省と林野庁の本気度が問われているところだと思いますけれども、副大臣、決意を込めて、今後の対応についてお聞かせいただきたいと思います。
○小里副大臣 お話しのとおり、田村委員からの御指摘を踏まえまして、去る十一月三十日、私も宮崎県国富町の現場を視察してまいりました。
本当に、麓の、道路からすぐ見えるところが派手に伐採をされておりまして、また、地籍測量の跡というか、くいがしっかり打ち込まれている、そういうところも見てきたところでございます。それだけに、事態の深刻性というものを痛感いたしました。早速、県等に対して、再発防止に向けての強化策を指導をしたところ、要請をしたところでございます。
また、農水省としましては、警察庁に対しましても、無断伐採の発生について情報共有を図るとともに、森林・林業関係者、警察等が連携した、伐採現場の巡視パトロール等の実施について協力依頼を行う等の対応をしてきたところであります。
警察庁においても、各都道府県警察に対して通知をいただいたところであります。現に、これに基づいて、協定に基づいた合同のパトロールが行われておりますし、また、国富町におきましては警察による調査が行われていると聞いているところであります。
このような無断伐採事案は、委員がおっしゃいましたとおり、森林所有者が長年かけて、手塩にかけて森林を育ててきた、その御苦労を思いますときに、大変重大な問題であると改めて認識をしております。
農水省としましても、無断伐採の防止に向けまして、更に対策の強化をしっかり図ってまいります。
○田村(貴)委員 警察庁が通知も出して取り組んでいるといったことも、今わかりました。
林野庁にお伺いしますけれども、数万本の盗まれた木がビジネスとして成り立っているわけですよね。
私は、森林経営管理法の議論のときに、川下の利益ばかりを追求していったらモラルハザードが起きると。これは、盗伐という究極のモラルハザードが起こっているわけですよ。これで、林野庁、来年四月に森林経営管理法、施行できますか。できませんよね、こんな状態で。
盗伐ビジネス、これは調査を当然されていると思うんですけれども、いかがですか。
○牧元政府参考人 お答え申し上げます。
流通している木材が盗伐による木材かどうかということについてでございますけれども、そもそも、誤伐か盗伐かという判断、これがいつも問題になるわけでございまして、また、この伐採届等が真正なものであるかというような判断も必要ということでございます。
先ほど御指摘がありましたように、一部事案につきましては、したがいまして警察において捜査中ということでございます。なかなか、この強制力を伴う対応がないと難しいという面もあるということも事実だというふうに思っております。
一方、農林水産省といたしましても、いわゆるクリーンウッド法に基づきまして木材の合法性確認を進めているところでございますので、このような使える手段というものは最大限使いまして、合法伐採木材等の流通、利用の促進を図ってまいりたいと考えております。
○田村(貴)委員 林野庁長官に聞かなかった方がよかったかなと、今思いましたね。副大臣の答弁を今聞かれておったでしょう。何ですか、その盗伐か誤伐かわからないって。これは犯罪行為そのものですよ。だから警察も動いているんじゃないですか。しっかりと認識していただきたいと思います。
時間がないので、きょうは乳価、畜産の価格の問題について議論をしていきたいというふうに思います。
酪農、畜産政策については、昨日、日本共産党国会議員団として、吉川農水大臣に申入れをさせていただきました。加工用原料乳生産者補給金を再生産可能な水準とするように引き上げること、それから生乳の需給調整について国が責任を果たす等々の申入れをさせていただきました。ぜひよろしくお願いしたいと思います。
お伺いしたいんですけれども、酪農家の戸数の減少、それから乳用牛の減少に歯どめがかかっていません。
資料2をごらんいただきたいと思います。
中央酪農会議の資料では、「一日に二戸が廃業!」と、驚くべき見出しも躍っているわけでありますけれども、右のグラフを見れば、北海道の酪農は、生乳生産量が増加傾向にありますので、大規模化が進んできたことがうかがえるところです。
畜産クラスター事業、きょうも議論があっているんですけれども、規模拡大や生産効率向上が要件となっています。
そこで、お伺いいたします。
酪農、畜産農家が利用できる支援制度で、現状維持や規模を縮小する場合でも使えるものがあるのか、これについて御答弁いただきたいと思います。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
現状の経営規模を維持する意向を有している小規模な酪農家の方に対しての支援策ということでございますが、例えば、畜産クラスターの事業のうち規模拡大要件がない機械導入への支援ですとか、あと、性判別精液の利用や育成牛の地域内流通等への支援、牛床マットや扇風機などの導入によります飼養環境の改善への支援、酪農ヘルパーや公共牧場等を活用した作業の外部化への支援等の施策が講じられているところでございます。
○田村(貴)委員 事前レクでもお伺いしましたけれども、ほぼ全ての事業は、経営規模の拡大それから生産性向上が条件となっているわけであります。楽酪事業についても、ミルキングパーラーは導入すると一千万円から一億円、それから搾乳ロボットは三千万円ぐらいかかるというふうに説明も受けました。多額の借金を抱えるわけであります。
そこで御紹介したいのは、十一月十四日付の日本農業新聞であります。「北海道 生乳基盤危機」「設備更新…迫る決断 負債か、離農か」、負債か離農か。「相次ぐ国内市場開放による将来不安や、高騰する設備更新費用などが引き金となり、苦渋の決断を強いられている。」、こういう記事でありました。
大臣にお伺いします。
設備投資には、特に酪農は莫大な負債を抱えることになります。それが離農を生む一つの大きな要因になっているとの御認識はございますか。
○吉川国務大臣 離農の要因につきましては、農林水産省の直近の調査によりますと、第一位が高齢化、後継者問題であります。第二位が経営者等の事故、病気、死亡となっております。これに加えまして、今、負債問題を理由とするケースも確認をいたしておりまして、酪農経営におきましては、収益に見合わない負債というのは離農の要因になり得ると認識をいたしております。
○田村(貴)委員 それで、大臣、ぜひ聞いていただきたいんですけれども、生産規模の拡大に取り組む農家はおられます。私は否定しません。一方で、将来への不安から、現状の経営規模を維持したいという農家、規模を縮小せざるを得ない農家さんもおられるわけです。
大事なのは営農を続けていくということであろうかと思います。こうした農家にも、先ほど中央酪農会議のアンケートの結果、生産局長から答弁がありましたけれども、維持していく、減少が七割程度ですか、そういう状況にあるんだったら、こうした農家にも必要な支援が必要ではないか。
あわせてお伺いします。
そうした農家が今、牛舎の補修に差しかかっていて、これが差し迫った問題になっています。生産性拡大を条件とせず、こうした農家にこうした支援が必要であると思いますけれども、いかがでしょうか。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
畜産クラスター事業の話だろうというふうに理解いたしておりますが、クラスター事業は畜産、酪農の体質強化を図るために、地域の関係者が連携をいたしまして、畜産経営の生産性や収益の向上を進めることが目的でございます。施設整備に対する支援を行う際には、原則として規模拡大を要件としておりまして、生産性の拡大を条件とせずに支援するということは適切でないというふうに考えてございます。
ただし、土地の制約などによりまして規模の拡大が困難な場合には、現状で地域の平均規模以上の経営であれば、生産効率の向上によりまして出荷量が増加する等の取組が支援対象とできる生産効率向上要件により、施設を整備することは可能でございます。
また、中山間地域におきます施設整備については、中山間地域優先枠を活用することによりまして、飼養規模が地域の平均規模に満たなくても支援することが可能であるという状況になってございます。
このように、畜産クラスター事業の実施に当たりましては、規模拡大を基本としつつも、現場の声を聞きながら、きめ細やかな対応を行ってまいりたい、そういうふうに考えております。
○吉川国務大臣 小規模で経営をされている方々に対しても、畜産クラスター事業のうち、規模拡大要件のない機械導入への支援ですとか、さらに、性判別精液の利用や育成牛の地域内流通等への支援ですとか、そしてまた、牛床マット、扇風機等の導入による飼養環境の改善への支援、そして、さらにまた、酪農ヘルパーですとか公共牧場等を活用した作業の外部化への支援ですとか、施策を講じているところでもございますので、これからも現場のさまざまな御意見をお聞きをしながら、この小規模家族経営も維持発展ができるように全力を挙げてまいりたいと存じます。
○田村(貴)委員 転換点に立っているというふうに思いますよ。与野党問わず、きょう、この問題が出ているわけですよ。そして、大規模化を要件とするから離農が続いているわけですよ。生産戸数が減っているわけじゃないですか、生産者が。ここが、今までの対策で反省点とすべきでありませんか。ここを変えないとだめですよ。一顧だにしないという考えですか。これから改善するんですか。局長、どうですか。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど御説明したように、中央酪農会議の調査では、規模を拡大したいという方が二六%、規模を維持若しくは縮小したいという方が七〇%、離農したいという方が二%という状況でございます。
先ほども御説明しましたとおり、確かに、クラスター事業の施設整備については規模拡大というのが要件になってございますけれども、今大臣からも御説明いたしました、クラスター事業の機械導入ですとか、あと楽酪ですとか性判別精液とか、そういうのは規模拡大ということを条件にしているわけではございません。現状維持の方でも対象になる事業でございます。
ただ、そこがうまく現場に伝わっていないというようなことだとか、そういうことは私どもも聞いてございますので、また、その事業の使い勝手の問題も聞いてございますので、そもそも、経営維持の方を対象にしていないということではなくて、その対象になっている事業は多々あるところ、いかにうまく使っていくかということも含めて、今後検討していきたいというふうに思ってございます。
○田村(貴)委員 酪農家の声、畜産家の声の将来への不安は、これは全然消えませんよ、そういう姿勢では。政策転換を強く求めたいと思います。
私も、北海道のいろいろな農家の方からお話を聞いてまいりました。規模拡大、効率化、利益、利益率引上げなど、小規模農家はやめろと言っているようにも聞こえる。そこに農家がいて農業をしているから、北海道の風景もつくって観光も成り立つし、地域を成り立たせている。
北海道に限った話ではないというふうに思います。日本の農業というのは、小規模家族農業であります。世界は、小規模家族農業に政治の光を当てるという流れになっています。こういう質問もしたかったんですけれども、きょうは時間がございません。
日本の農業の主役、小規模農業、家族農業の意向をしっかり酌み取って、そこに光を当てる農政への転換を強く求めて、きょうの質問を終わります。
○武藤委員長 次に、森夏枝君。
○森(夏)委員 日本維新の会の森夏枝です。
本日も質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。
それでは、早速質問に入らせていただきます。
まず、乳用牛、肉用牛の飼養頭数に関して伺います。
この十年間、乳用牛の飼養頭数が年々減少傾向にあったものが、ことし、十六年ぶりに前年比五千頭増加し、肉用牛も平成二十九年から二年連続で増加しております。
飼養戸数が減少する中、人手不足や家畜伝染病等、また燃油の高騰など、さまざまな問題のある中で、農家の方々が御努力をされてきたのだと思います。
そして、農林水産省としても、さまざまな支援をしてこられたと思いますが、飼養頭数を増加させるためにどのような対策をとられてきたのでしょうか。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
平成三十年の乳用牛の飼養頭数、前年に比べて五千頭増加いたしまして、百三十二万八千頭でございます。また、肉用牛の飼養頭数は、前年に比べ一万五千頭増加いたしまして、二百五十一万四千頭となったところでございます。
また、乳用牛につきましては、後継牛の確保が課題となってございますけれども、二歳未満の未経産牛の頭数も増加をしておりまして、また肉用牛については、生産基盤に直結いたします繁殖用の雌牛の頭数も増加しておりますので、明るい兆しが見えてきたものだというふうに考えているところでございます。
農林水産省としての対策といたしましては、クラスター事業によります規模拡大ですとか収益力の強化、また酪農ヘルパーやコントラクター、キャトルステーションなどの外部支援組織の強化、性判別精液や和牛受精卵を活用いたしました効率的な子牛の生産等々の取組を支援してきたところでございまして、現在の飼養頭数の増加はこれらの成果もあらわれてきているものではないかというふうに考えてございます。
○森(夏)委員 ありがとうございます。
さまざまな取組が結果としてあらわれ、飼養頭数の増加、また酪農の経営安定、また畜産価格の安定につながっているものと思います。特に家族経営をされている畜産農家さんをしっかりサポートしながら、今後も酪農の経営安定対策をしっかりお願いしたいと思います。
次に、飼料自給率の現状と目標について伺います。
平成二十九年度の全体の飼料自給率は二六%で、この十年間の飼料自給率は二五%から二八%で推移をしております。
平成二十九年度の粗飼料自給率が七八%から、平成三十年度には一〇〇%を目標にされているとお聞きをしております。濃厚飼料は一三%から二〇%を目標にされているとお聞きしております。
粗飼料と濃厚飼料を合わせ、平成三十七年度に飼料全体で自給率四〇%を目標とされておりますが、どのような計画で進められるのでしょうか、お答えください。
○小里副大臣 平成二十七年三月に策定しました食料・農業・農村基本計画におきまして、粗飼料と濃厚飼料とを合わせた飼料自給率を二十五年度の二六%から三十七年度に四〇%まで向上させることを目標としております。
具体的には、現状七八%でありますところの粗飼料自給率を三十七年度に一〇〇%に引き上げるために、草地基盤の整備や、不安定な気候に対応した技術の普及、例えば、不安定な気候に対応しまして、収穫時期の異なる種類の草を植えることによるリスク分散であるとか、そういったことで草地の生産性向上を図ってまいります。
コントラクター等の飼料生産組織のICT等を活用した作業の効率化、また繁殖基盤強化に向けて、肉用繁殖雌牛の放牧に対して、その牛の導入や柵等の支援をする等々、地域内一貫生産体制の構築に向けて取組を推進するということ等を計画しております。
また、現状一三%でありますところの濃厚飼料自給率を三十七年度に二〇%に引き上げるために、農場残渣等の未利用資源の利用拡大、飼料用米の生産拡大、子実用トウモロコシ等の国産濃厚飼料の生産、利用体制の構築等の取組を推進することとしております。
農水省としましては、これらの取組を総合的に推進することによりまして、飼料自給率の向上を図ってまいります。
○森(夏)委員 ありがとうございます。
気候等の問題もあり、大変な部分もあるかと思いますが、さらなる飼料自給率のアップに向け、取り組んでいただきたいと思っております。
先ほども少しお話もありましたが、エコフィードの利用の現状と今後の取組について伺います。
食品ロスの観点からも、ぜひエコフィードの利用拡大は進めていただきたいと思っております。エコフィードの利用現状と、利用拡大に向けた今後の取組をお願いします。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
エコフィードの製造数量でございますけれども、近年順調に伸びてございまして、平成二十九年度が約百二十二万TDNトンと、トウモロコシに換算いたしますと約百五十二万トン、輸入数量の約一五%に相当する数量になってきております。
このような中、エコフィードの利用は、飼料コストの削減また飼料自給率の向上にも貢献いたしますので、農場残渣等の季節性のあるエコフィード原料の保存性の改善によります年間を通じた安定的な供給、食品廃棄物のうちのカット野菜くずなど不可食部分の飼料資源としての有効活用等の取組を推進いたしまして、食品ロスの削減とあわせてエコフィードが生産また利用されるように努めてまいりたいと考えてございます。
○森(夏)委員 ありがとうございます。
お話ありましたけれども、畜産農家の経営安定また所得向上のためには経営コスト削減が必要です。そのために飼料コストの低減も不可欠です。また、食品ロスの観点からも、エコフィードの活用をぜひ今後も進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
次に、豚コレラについて伺います。
平成二十二年には、宮崎県で発生した口蹄疫では二十九万七千八百八頭もの家畜のとうとい命が犠牲となりました。畜産業や地域経済にも多大な影響を及ぼしました。
ことし九月から、国内では二十六年ぶりとなる豚コレラが発生をいたしました。農林水産省豚コレラ防疫対策本部を設置し、速やかな対応はとっていただいたと思いますが、昨日も四例目が出てしまいました。
発生の原因と、五例目を出さないための取組についてお聞かせください。
○池田政府参考人 お答えいたします。
昨日、岐阜県関市のイノシシ飼養施設におきまして、四例目となります豚コレラの疑似患畜が確認をされました。現在、当該施設における防疫措置を進めているところでございます。
本病の発生予防及び蔓延防止には、農場におけます飼養衛生管理基準の徹底や発生後の防疫措置の迅速かつ的確な実施が大変重要であり、これまでも岐阜県と連携して取り組んできております。
また、四例目の発生事例につきましても、拡大疫学調査チームにより発生原因の究明に当たっているところでございまして、調査の結果得られた知見に応じまして、必要な防疫措置の追加などを行ってまいりたいというふうに考えてございます。
○森(夏)委員 ありがとうございます。
私はこれまで、農林水産委員会にて、ジビエの利活用について何度か質問をさせていただきました。先週の土曜日にも、京都環境フェスティバルというイベントに行きましてシシ汁をいただいてまいりました。栄養価の高いジビエをもっとたくさん皆様に食べていただくためには、豚コレラの感染を拡大させないようにしなければなりません。
また、畜産価格の安定のためにも、家畜伝染病を出さないための取組は大変重要かと思います。野生イノシシによる感染ということで、五例目を出さないように、大変難しい部分もあると思いますけれども、今後も防疫対策強化をよろしくお願いしたいと思います。
次に、畜産物の輸出について伺います。
近年の畜産物の価格の安定には、輸出が好調であることが挙げられると思います。GI法も今国会で成立をしました。品質のよい日本産ブランド牛や乳製品等を今後更に輸出拡大していただきたいと思っております。
平成二十九年の鶏卵の輸出額は十・二億円。三十一年の目標では、二十六億円、一万トンという、これまでの倍以上の目標値となっております。その要因としては、日本産の生卵がアメリカへ輸出解禁となったことが挙げられると思います。十四年もの間粘り強く交渉し輸出解禁につなげたということで、関係者の皆様は大変喜ばれていると思いますし、期待も大変大きいものだと思います。輸出拡大への取組は大変すばらしいと思います。
平成三十一年に、農林水産省は食品の輸出一兆円を目標とされておりますが、目標達成に向けどのように取り組まれているのでしょうか。
○濱村大臣政務官 我が国の農林水産物、食品の輸出額は、平成二十九年は八千七十一億円となり、五年連続で過去最高を更新しております。本年一月から十月の合計におきましても、対前年比で一五・二%の増加でございまして、平成三十一年の一兆円目標の達成に必要なペース、これは一年当たり一一・三%超の増加を必要としておりますが、このペースを上回っている状況でございます。
こうした輸出の取組を維持促進し、一兆円目標の着実な達成に向けまして、農林水産業の輸出力強化戦略等に沿って、輸出を目指した産地づくりや輸出業者とのマッチングなど生産者への支援、輸出先国による放射性物質規制の撤廃、緩和に向けた働きかけや輸出先国の各種規制への対応支援、JFOODOによる日本産品のプロモーション等を進めていくところでございます。
○森(夏)委員 ありがとうございます。
輸出拡大は農家の方々の所得向上につながりますので、今後も、一兆円の達成に向け取り組んでいただきたいと思います。日本の安心、安全な畜産物の販路拡大、よろしくお願いいたします。畜産物の輸出拡大のためには、先ほども申しましたが、家畜伝染病を出さないことも大変重要でありますので、引き続きよろしくお願いいたします。
最後に、ことしは、大阪北部地震、七月の西日本豪雨災害、台風二十一号、二十四号、北海道胆振東部地震等、大変災害の多い年となりました。畜産、酪農にも大変被害が出ました。畜産、酪農の被災農家への支援対策についてお聞かせください。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
本年度は、お話ございましたとおり、七月の豪雨、台風二十一号、北海道胆振東部地震等の災害が相次いでおりまして、飼料作物の倒伏や畜舎の損壊、停電によります搾乳の支障、断水等の多大な被害が発生いたしました。
農林水産省では、被災状況に応じまして職員を現地に派遣し、詳細な被災状況や現場のニーズを把握するとともに、被災されました畜産農家に対しまして、自給飼料の被害により不足する粗飼料の購入、簡易畜舎の整備や畜舎、機械の簡易な修理、被災家畜の避難、預託、死廃家畜に係る家畜の導入、乳房炎の治療等に対する支援策を講じてまいりました。
特に、北海道胆振東部地震におきましては、全道一円に及びます長時間の停電によりまして、多くの酪農家が生乳廃棄を余儀なくされたことを踏まえまして、乳房炎発生の予防管理のための取組、停電時の電力確保に要した発電機の借り上げ、酪農家の非常用電源の整備に対する支援を充実したところでございます。
農林省といたしましては、被災された畜産農家の方々が経営を継続、また再開できるように、引き続き全力で支援してまいります。
○森(夏)委員 ありがとうございます。
災害はいつどこで起こるかわかりません。私は、被災地支援も重要だと思っておりますが、被害を未然に防ぐ、最小限にする防災・減災対策への取組が非常に重要であると思っております。自家発電機や非常用電源設備など、非常に有効であり、必要だと思っております。
今回の北海道のブラックアウトの原因についてはしっかり把握され、既にブラックアウトを起こさないための対策はとっていただいているようですが、このたびの地震を教訓にしなければならないと思います。被災された農家の方々が離農を選択しなくてもいいように、被災者の皆様に寄り添った早期の御支援をお願いしたいと思います。
以上で終わります。ありがとうございました。
――――◇―――――
○武藤委員長 この際、野中厚君外六名から、自由民主党、立憲民主党・市民クラブ、国民民主党・無所属クラブ、公明党、無所属の会、日本共産党及び日本維新の会の七派共同提案による平成三十一年度畜産物価格等に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。石川香織君。
○石川(香)委員 ただいま議題となりました決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。
案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきたいと存じます。
平成三十一年度畜産物価格等に関する件(案)
我が国畜産・酪農経営は、飼養戸数が減少する一方、一戸当たり飼養頭羽数は増加を続けているものの、担い手の高齢化、後継者不足は深刻さを増しており、特に経営継続の危機にさらされている中小・家族経営を強力に支援する必要があるとともに、より多くの若手が就農を目指す魅力ある労働環境づくりが課題となっている。また、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)、経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定(日EU経済連携協定)の発効が目前に迫る中、将来への懸念と不安を抱く生産者も多い。
よって政府は、こうした情勢を踏まえ、平成三十一年度の畜産物価格及び関連対策の決定に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。
記
一 地域農業・地域社会を支える家族経営や法人経営といった多様な畜産・酪農の生産基盤の維持・拡大を図るため、組織的な生産体制の整備、畜産物の付加価値の向上、良質かつ低廉な飼料等の供給等の取組を通じて、魅力ある持続可能な経営が実現できるよう、十分な所得を確保し得る実効性のある施策を実施すること。
二 日米物品貿易協定に関しては、適宜適切に国民に情報を開示すること。
また、CPTPP、日EU経済連携協定による我が国農林水産業への定量的影響評価については、他の参加国における試算例や各県の試算例も参考として、より精緻なものとなるよう、見直しに努めること。
三 各般の経営安定・安定供給のための備えを通じて、関税削減等に対する生産者の懸念と不安を払拭し、確実な経営安定を図るとともに、国産チーズ等の競争力強化等の体質強化対策を着実に実施することを通じて、収益力・生産基盤を強化し、我が国の高品質な畜産物の新市場開拓を推し進め、畜産・酪農の競争力の強化を図ること。その際、実施した対策の効果を検証し、適宜必要な見直しを行うこと。また、これらの施策等により、食料自給率の向上を図ること。
四 加工原料乳生産者補給金・集送乳調整金の単価及び総交付対象数量については、中小・家族経営が中心の酪農家の意欲が喚起されるよう、再生産の確保を図ることを旨として適切に決定すること。
また、改正畜安法の下、酪農経営の安定と需給状況に応じた乳製品の安定供給の確保が図られるよう、需給変動等に備え、万全な需給安定対策の在り方についての酪農業界全体での検討を、国は十分に支援すること。
五 肉用子牛生産者補給金制度における保証基準価格の算定方式については、中小・家族経営を中心とする現在の経営の実情に即したものとし、繁殖農家の経営努力が報われ、営農意欲が喚起されるよう、再生産の確保を図ることを旨として適切に見直すこと。
六 酪農家や肉用牛農家の労働負担軽減・省力化に資するロボット・AI・IoT等の先端技術の導入等を強力に支援するとともに、酪農ヘルパーの人材確保・育成、利用拡大に対して支援を行うこと。
七 畜産・酪農の収益力・生産基盤・競争力を強化するため、畜産農家を始めとする関係者が連携する畜産クラスター等について、中小・家族経営にも配慮しつつ、地域の実情に合わせた地域が一体となって行う、外部支援組織の活用、優良な乳用後継牛の確保、和牛主体の肉用子牛の生産拡大、畜産環境対策等の多様な展開を強力に支援すること。加えて、肉用牛・乳用牛・豚の改良等を推進する取組や、肉用牛の繁殖肥育一貫経営や地域内一貫生産を推進する取組を支援すること。さらに、生産基盤の脆弱化が特に懸念される中小・家族酪農経営については、需要に応じた生乳生産が確保されるよう地域性を踏まえた生産基盤の強化措置等を講ずること。
八 国産飼料の一層の増産と着実な利用の拡大を図り、飼料自給率を向上させるため、草地改良や飼料作物の優良品種利用の取組、ICT等の活用による飼料生産組織等の作業の効率化、放牧、国産濃厚飼料、未利用資源を利用する取組、有機畜産物生産の普及の取組を支援すること。さらに、良好な飼料生産基盤を実現させるため、大型機械体系に対応した草地整備、泥炭地帯における草地の排水不良の改善等を推進するとともに、酪農経営における環境負荷軽減の取組を支援すること。
また、配合飼料価格安定制度については、畜産・酪農経営の安定に資するよう、同制度に係る補填財源の確保及び長期借入金の計画的な返済を促すことにより、制度の安定的な運営を図ること。
九 国産畜産物の輸出に当たっては、オールジャパンでの戦略的で一貫性のあるプロモーションの企画・実行等による海外需要の創出等に取り組むとともに、輸出拡大に対応できるように国産畜産物の供給力の強化を進めること。また、日本版畜産GAPについては、その取組や認証拡大を加速度的に進展させるため、普及・推進体制の強化の取組等を支援すること。特に、原発事故に伴って導入された諸外国における日本産農林水産物・食品の輸入規制等の緩和・撤廃を図るため、政府間交渉に必要な情報・科学データの収集・分析等を十分に行い、輸出先国への働きかけ・交渉を強力に推進すること。
十 原発事故に伴う放射性物質に汚染された稲わら、牧草及び牛ふん堆肥等の処理を強力に推進するとともに、永年生牧草地の除染対策、原発事故に係る風評被害対策に徹底して取り組むこと。
十一 畜産振興、畜産物の安定供給と輸出促進を図るため、高病原性鳥インフルエンザや口蹄疫、豚コレラ等の家畜の伝染性疾病等の発生予防・まん延防止対策を徹底し、農場の飼養衛生管理指導、診断体制の強化、野生動物の監視等の取組を支援すること。また、地域の家畜衛生を支える産業動物獣医師の育成・確保を図るとともに、家畜の伝染性疾病等に係る風評被害防止等の観点から、国民に対して正確な情報を迅速に伝えること。
十二 多発する自然災害による畜産・酪農の被害への対応に万全を期すこと。特に、北海道胆振東部地震による停電の影響により被害を受けた乳牛に対する乳房炎の治療・予防管理や非常用電源の確保等について強力に支援すること。また、乳業メーカーに対して、自家発電施設の導入など、停電等の非常時への対応を強化するよう指導すること。
右決議する。
以上です。
何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
○武藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○武藤委員長 起立総員。よって、本件は本委員会の決議とするに決しました。
この際、ただいまの決議につきまして農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣吉川貴盛君。
○吉川国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
○武藤委員長 お諮りいたします。
ただいまの決議の議長に対する報告及び関係当局への参考送付の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○武藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
本日は、これにて散会いたします。
午後零時九分散会