第3号 平成31年3月14日(木曜日)
平成三十一年三月十四日(木曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 武藤 容治君
理事 伊東 良孝君 理事 齋藤 健君
理事 野中 厚君 理事 細田 健一君
理事 亀井亜紀子君 理事 近藤 和也君
理事 稲津 久君
池田 道孝君 泉田 裕彦君
稲田 朋美君 今枝宗一郎君
上杉謙太郎君 大西 宏幸君
加藤 寛治君 金子 俊平君
木原 稔君 木村 次郎君
小寺 裕雄君 斎藤 洋明君
坂本 哲志君 西田 昭二君
福山 守君 藤井比早之君
藤原 崇君 古川 康君
古田 圭一君 宮路 拓馬君
山本 拓君 石川 香織君
大串 博志君 神谷 裕君
佐々木隆博君 櫻井 周君
長谷川嘉一君 堀越 啓仁君
宮川 伸君 山本和嘉子君
関 健一郎君 緑川 貴士君
濱村 進君 田村 貴昭君
森 夏枝君
…………………………………
農林水産大臣 吉川 貴盛君
外務副大臣 佐藤 正久君
農林水産副大臣 小里 泰弘君
農林水産大臣政務官 濱村 進君
国土交通大臣政務官 阿達 雅志君
政府参考人
(内閣官房アイヌ総合政策室次長) 住本 靖君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 大角 亨君
政府参考人
(財務省大臣官房審議官) 山名 規雄君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 光吉 一君
政府参考人
(農林水産省大臣官房審議官) 小川 良介君
政府参考人
(農林水産省消費・安全局長) 池田 一樹君
政府参考人
(農林水産省生産局長) 枝元 真徹君
政府参考人
(農林水産省経営局長) 大澤 誠君
政府参考人
(農林水産省政策統括官) 天羽 隆君
政府参考人
(林野庁長官) 牧元 幸司君
政府参考人
(水産庁長官) 長谷 成人君
政府参考人
(海上保安庁警備救難部長) 星 澄男君
農林水産委員会専門員 梶原 武君
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委員の異動
三月十四日
辞任 補欠選任
古川 康君 大西 宏幸君
石川 香織君 櫻井 周君
金子 恵美君 宮川 伸君
同日
辞任 補欠選任
大西 宏幸君 古田 圭一君
櫻井 周君 石川 香織君
宮川 伸君 山本和嘉子君
同日
辞任 補欠選任
古田 圭一君 古川 康君
山本和嘉子君 金子 恵美君
―――――――――――――
三月十三日
農業用ため池の管理及び保全に関する法律案(内閣提出第二九号)
は本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
農業用ため池の管理及び保全に関する法律案(内閣提出第二九号)
農林水産関係の基本施策に関する件
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○武藤委員長 これより会議を開きます。
農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官光吉一君、大臣官房審議官小川良介君、消費・安全局長池田一樹君、生産局長枝元真徹君、経営局長大澤誠君、政策統括官天羽隆君、林野庁長官牧元幸司君、水産庁長官長谷成人君、内閣官房アイヌ総合政策室次長住本靖君、内閣審議官大角亨君、財務省大臣官房審議官山名規雄君及び海上保安庁警備救難部長星澄男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○武藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○武藤委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。佐々木隆博君。
○佐々木(隆)委員 おはようございます。
直面する諸課題について大臣に質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
最初に、アイヌ新法についてお伺いをいたします。アイヌ新法の議論そのものは国交委員会だというふうに伺ってございますけれども、農水委員会にもかかわりのある部分がありますので、その点を中心にお伺いをしたいというふうに思います。
最初に、アイヌ新法と言って先住民族の本体に切り込んだ法律としては初めてでございますので、そういった意味ではこの法律をつくるために大分御苦労もあったと伺ってございますが、この新法ができるという意味については、私は大変評価をさせていただいてございます。
評価をさせていただくのでありますけれども、国連の二〇〇七年に採択をされております先住民族の権利に関する国際連合宣言というのがございます。その先住民族の国連宣言の中では、極めてくくって申し上げれば三つの権利、先住権、それから財産権、議決権、この三つの権利を保障するべきだということがその中では明記をされているわけであります。
今回の新法の中身でありますが、先住権についてはかなりはっきりと書いていただいたというふうに評価をさせていただいておりますが、とりわけ議決権の記載が弱いのではないかというふうに思うのであります。
アイヌ新法のポンチ絵をいただいてございますけれども、この中でも、具体的に総合的な施策を進めるという段階において、方針、計画というところに財産権や議決権については書かれていてというか、そこで計画がなされなければここのところは実現をしないという仕組みになってございます。
それで、せめて国がつくる方針やあるいは自治体がつくる計画において、議決権というか参加権みたいなものをもっとしっかりと保障すべきではないかというふうに思うんですが、これは内閣官房の方にお伺いをさせていただきます。
○住本政府参考人 お答えさせていただきます。
今回の法案におきまして、市町村が地域振興計画をつくる際に、事業を行う方々から意見を聴取することになってございまして、その際におきまして、当然、事業を行いますアイヌの方々から意見を聞くということにしております。
○佐々木(隆)委員 この概略の説明の中でもそのような表現になっているんですが、意見を聴取するということと、決めるときにいわゆる議決権に参加をするということは、ちょっとニュアンスが違います。ただ意見を聞くだけということでは、私は、せっかくつくるアイヌ新法において少し物足りないのではないか、しっかり議論にも参加をし、議決にも参加をするというところまで保障をしていくべきではないかというふうに思うのでありますけれども、その点について、いかがでしょうか。
○住本政府参考人 お答えさせていただきます。
まず、新しい制度におきまして、官房長官を議長といたします、各大臣で構成いたしますアイヌ政策推進本部を設置し、アイヌの方々の意見をそこにおきましても十分反映していきたいと思っています。
さらに、今回、法案の立法、立案過程におきまして、北海道各地を回りまして、北海道以外でも回りまして、北海道アイヌ協会以外の方々も含めまして、内外で延べ三十六回、約五百三十名のアイヌの方々と我々内閣官房の職員が直接意見交換をさせていただきました。
今後も、法律施行後におきましても、そういったことを着実に実施し、アイヌの方々の意見を取り入れて、当然反映していきたいと思っております。
○佐々木(隆)委員 せっかくつくりますアイヌ新法でありますので、ぜひその点、お願いを申し上げておきたいというふうに思います。
なぜこの課題を取り上げたかというと、実は、農林水産省も極めてここは役割が大きいわけでありまして、その一つが、先ほど申し上げた三つの権利のうちの財産権でありますけれども、林産物の採取、サケの捕獲、これらについては農林水産省の役割ということになります。
この概略、概要で申し上げますと、国有林については特例、サケについては配慮というふうになっているわけでありまして、必ずしも財産権が保障されたかというところが少し曖昧になってございますので、この点について、農水省の、これからどう支援をしていくのかということについて、お伺いをさせていただきます。
○牧元政府参考人 まず、林野関係をお答えをさせていただきます。
アイヌ新法におきましては、委員御指摘のように、国有林野における共用林野の設定についての特例措置が設けられているところでございます。
具体的には、市町村が作成する地域計画にアイヌ文化の振興等に利用するための林産物の採取の事業が位置づけられた場合、アイヌの祭具等の材料の採取、これは、例えばイナウというような祭具は柳からつくられるようでございますけれども、こういった林産物の採取につきまして、共用林野の利用の原則であります、近隣の森林ということには限らず、必要な材料を広く国有林野から採取をすることを可能とするものでございます。
林野庁といたしましても、アイヌ新法の趣旨にのっとりまして、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。
○長谷政府参考人 水産関係でございます。
内水面におけるサケの採捕につきましては、資源保護のため、都道府県知事の許可を受けた者以外は採捕が禁止されております。アイヌ新法におきましては、国の認定を受けた市町村による計画に記載された事業に対しまして、都道府県知事は、当該事業が円滑に実施されるよう適切に配慮することとしております。
具体的には、アイヌの方々からの御要望を踏まえ、北海道庁において、伝統的儀式等に用いるサケの採捕許可の柔軟化や手続の簡素化を検討すると聞いているところでございますけれども、水産庁といたしましても、アイヌ新法の趣旨に沿ったアイヌ施策が推進できるよう、北海道庁とともに取り組んでまいります。
○佐々木(隆)委員 これは要望を申し上げておきたいと思うんですけれども、今それぞれの長官から御答弁いただいたように、国が基本方針をつくって、市町村が計画を立てる、その計画にあるものについて、林産物であれば特例、それからサケであれば配慮をするということになっております。
北海道の市町村でありますから、アイヌに対する思いというのは大変理解が深いので、そこは大丈夫だというふうには思っておりますけれども、あくまでも、計画ができたところに特例を認めるという段階でありますので、アイヌの皆さん方は決してそんな、皆伐をしたり乱獲をしたりするというような、そういう文化を持っていません。自然との共生という文化でありますので、そこをしっかり支援をし、同時に、なりわいとしてそのことも成り立つというような配慮をぜひとも農水省としてバックアップをしていただきたいということを、これは要請をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
次に、豚コレラについてお伺いをいたします。
この豚コレラでありますが、九月の頭に初めて確認をされているわけでありますが、実際には八月の初旬あたりからもう既に出ていたのではないか、そういった症状が出ていたということが言われてございます。
幾つか、私は、初動においてやはりおくれをとったといいますか、ミスとまでは言いませんが、そういう点があったのではないかというふうに感じております。
一つは、飼養衛生管理基準にあります、毎日の頭数の増減というものを記録することになっているわけでありますが、これが記録をされていなかった。それから、県の畜産研究所あるいは家保において、これも、当初、熱射病というような判断を下して、豚コレラということに至るには少し時間を、少しというか、かなり時間を要してしまった。それから、農研機構への連絡が当然おくれているというようなこと。それから、多少異変があった、そんなことがもう報道されていたにもかかわらず、子豚が出荷されていたというような、幾つかの点においてかなり判断ミス的なところがあったと言わざるを得ないというふうに思うんですね。それがこれだけ被害を大きくしてしまっているのではないかというふうに思ってございます。
家畜伝染予防法という、家伝法ですから、本来相当厳しく基準が守られ、農家の皆さん方もしっかり守って、そして今日まで来ているわけでありますが、農水省として、これらの指導、あるいは徹底させるということについて、私は、少し甘かったのではないかというふうに思っているのでありますけれども、この点について答弁をいただきます。
○吉川国務大臣 豚コレラの初動対応について、佐々木議員から御指摘をいただきました。
その前に、アイヌ新法に関しましても、農林水産省といたしましては、林野、水産関係に関する、新法に即した形でしっかり対応してまいりたいと存じます。
豚コレラに関する防疫指針でありますけれども、都道府県に対しまして、豚コレラを疑う発熱、元気消失、食欲減退などの症状が通常以上の頻度で見られた旨の届出を受けた場合、国に報告するとともに、直ちに家畜防疫員を派遣をすること、家畜の所有者に対しましては、移動自粛等の必要な指導を行うことを求めているところでございます。
岐阜県におきましては、昨年の九月に岐阜県で発生した豚コレラの初動対応について検証を行っております。それによりますと、昨年の十一月、初動対応に不備があったと報告をされているところでございます。
豚コレラの発見、通報に関しましては、本年二月二十二日の第五回拡大豚コレラ疫学調査チーム検討会におきまして、愛知県豊田市の事例も踏まえて、豚コレラを疑う症状が認められた場合には、飼養管理者や獣医師は早期に家畜保健衛生所に通報を行うとともに、通報を受けた家畜保健衛生所は豚コレラを疑うものとして速やかに検査を行うよう再度徹底が必要と指摘をされたところでもございます。
この指摘を踏まえまして、三月の十三日に、農林水産省におきましては、下腹部や四肢の紫斑等、豚コレラの早期発見のポイントとなる症状を家畜伝染病予防法に基づく特定症状として通報を義務づけたところでもございます。
これによりまして、農場、獣医師からの早期通報ですとか農場からの移動制限を確実に実施させ、豚コレラのこれ以上の拡大を防いでまいりたい、こう思っております。
○佐々木(隆)委員 反省をしていただくといいますか、検証していただくのは、それはそれでぜひ必要なんですが、検証する前にやはり予防をしてもらわないと、蔓延してから検証ということに、これは今回ならざるを得なかったわけでありますけれども、豚コレラというのは養豚農家にとっては最も気をつけなきゃいけない分野でありますので、そういった意味では、少し農水省、これは都道府県もでありますけれども、もっと徹底すべきだというふうに思っておりますので、ぜひ検証を踏まえて徹底をするように、あるいは罰則なども考えながら徹底をするように、ぜひお願いをしておきたいと思います。
そこで、ワクチンの使用についてお伺いをしたいと思います。
御案内のように、豚コレラ、二十六年前に、一九九二年に発生をしているわけでありますが、その前から発生して、最終的に二十六年前、熊本県でありますけれども、ということでありますけれども、その後、九二年から四年たって、九六年に、養豚農家、農水省一体となって撲滅対策というのが開始をされているわけですね。この撲滅対策を開始をして、それから十年経過をして、接種を全面禁止をしたわけであります。それから更にもう一年たって、OIEに浄化宣言をし、そして更にそれから六年たってOIEが公式に認めたという経過を踏んでいるわけであります。実に十数年かかっているわけですね、この前ワクチンの接種をやめて撲滅運動に取り組んでから。
まさに、ここの場所でもワクチンについていろいろな意見がありました。この当時、この撲滅対策に参加をした農家の皆さん方からお話を聞くと、まさにそれは、この十数年というのは血のにじむような闘いだったと。みんなで何としても清浄国になるんだという強い意思で、みんなで衛生管理を徹底をして今日の状況をつくってきたというお話を伺いました。その当時の皆さん方ですね。
そうしたことからいうと、小里副大臣が、この前の委員会のときに、高位平準化が最も大切だというお話、答弁をされました。私も大変感動して聞いておりました。そのとおりだというふうに思っていたんですが、しかし、片一方で、小里副大臣が野生イノシシへの経口ワクチンの投与を実際に要請をしているという報道がその直後に流れまして、高位平準化と、イノシシへの経口ワクチンですけれども、投与というのは、小里副大臣の中で矛盾をしていないのか。
私は、あくまでも、豚舎の、あるいは養豚農家の皆さん方の衛生管理の意識をどこまで小里副大臣が言うように高位平準化をするかということが最大の目的だというふうに思うのでありますけれども、そこに照らして、今回の野生イノシシへの投与というのは、私はちょっと矛盾をするのではないかというふうに思うんですが、副大臣、お願いします。
○小里副大臣 御指摘ありがとうございます。
おっしゃるとおり、確かに、イノシシに対する経口ワクチンの投与、その効果に期待するが余りに危機管理意識が低下してしまうことがないように、更に緊張感を持って対応していく必要があろうなと思うところであります。
そもそも、豚コレラの発生を予防するためには、飼養衛生管理基準の遵守が最も重要でありまして、全都道府県の防疫レベルを高位平準化することが極めて重要であると考えております。そのために、今回の場合、国が主導して直接現地指導等もやっているわけであります。
今回の場合、難しいのは、養豚への対応と野生イノシシへの対応、この両面での対応を求められているということであります。
養豚への対応は、お話しのとおり、飼養衛生管理水準、これをしっかり遵守していく、これが筋道であります。
一方で、イノシシなどの野生動物には、この飼養衛生管理水準、基準に相当するものがないわけでありまして、そこで、かわる対策というか、防護柵を設置して、あるいはまた個体数を減らしていく、そして、三つ目の対策として経口ワクチンの投与を決めたわけであります。
野生イノシシへの経口ワクチン投与によりまして、感染野生イノシシを減らしていくことで、野生イノシシから直接あるいは人や物を介して養豚農家へ豚コレラが伝播するリスクは徐々に低下していくと考えられます。
しかしながら、欧州の例で、ヨーロッパの例で言いますと、二、三年間使用した事例がありますし、あるいはまた、七年間、経口ワクチンを使用した事例もあると承知をしております。直ちに十分リスクが低下するものではなくて、我が国でも同様と考えられる、長期戦になることが考えられるわけであります。
したがって、野生イノシシへの経口ワクチンを使用しながらも、農家の防御力を上げていき、農家への侵入リスクを低下させていくことが大変重要であるということは、何ら変わることはないわけであります。
このように、野生イノシシへの経口ワクチンの使用は、農家の皆さんが取り組んでいる農場防衛の努力を支援するための対策でありまして、引き続き、飼養衛生管理基準の遵守について、農場への指導助言を徹底してまいりたいと思います。
○佐々木(隆)委員 もちろん、野生イノシシですから、囲い込むわけにもいかないですし、隣の県に行くなと言うわけにもいかないので、その点はわからないわけでもありません。
ただ、心配するのは、まだ原因そのものも究明し切れていないわけでありますので、外国から持ち込まれた豚肉から野生イノシシに行って、日本の飼養豚に行ったのではないかというふうに言われているわけでありますが、それだけでないかもしれないわけですね。
ですから、何よりも大切なのは、やはり養豚農家として、養豚農家の皆さん方の飼養管理基準というものを、小里副大臣が言うように、高位平準化をどうつくっていくかということが何よりも大切だというふうに思いますので、ともすると、ワクチン投与によってそこら辺が曖昧にというか少し油断が出てくるということを一番私は心配をしてこのことを申し上げさせていただいたのでありますが、ぜひ、飼養衛生管理については、徹底をこれからしていただくように求めておきたいというふうに思ってございます。
もう一つ、同じような、これも初動が甘かったのではないかというふうに思われるのが、和牛の受精卵、精液なのか受精卵なのか新聞によって曖昧なのでありますけれども、これが流出しそうになったということが報道されてございます。日本の検査はすり抜けちゃったんですね。中国の入国検査で発見されたという、何ともお粗末な話であります。
海外へのこの種の持ち出しというのが、家伝法の中の申告制ということになっているものですから、悪意を持ってやろうと思えばすり抜けられちゃうというのが今の現状らしいんですね、私も調べてみたら。
済みません、内閣官房の方、もうお引き取りいただいて結構でございます。
○武藤委員長 よろしいですか。(佐々木(隆)委員「はい」と呼ぶ)
では、内閣官房の方、退席、結構です。
○佐々木(隆)委員 この種のものとして、韓国のイチゴも原原種は日本だったのではないかと言われておりますし、中国のブドウも日本が原種だったのではないかと言われておりますし、近年では、オーストラリアのローマ字で書いたWAGYUですね、これも日本の和牛だったのではないかというふうに言われていて、日本での知的財産について、非常に何か甘いのではないかという懸念を持たざるを得ません。
しかも、十一月二十六日なんですが、この違反者を厳重注意のまま解放しちゃったんですね、一回。報道があちこちで出てきて、十二月四日になって慌てて告発ということになったというような状況でございまして、一月二十四日になって、報道によりますと、慌てて全国調査を開始をしたと。
こんな甘いことでいいのかというふうに私は思ってしまったわけでありますが、精液だとか受精卵というのは必ず登録がされているものだというふうに思っていたんですけれども、今、全国調査をするということですから、実態把握がなされていないのかという疑問を持ってしまいました。そのことについて一つ。
もう一つは、ガットの整合性上、品種改良などによってやむを得ないんだという、そうした論法もあるようですけれども、しかし、それは、品種改良に使われるんだということが明確になる何らかの証明があった場合に限るべきであって、それがあるから持ち出しが抑え切れないんだというのは、私は理屈としてはちょっと違うのではないかというふうに思ってございます。
今、原料原産地だとかGIだとか言われているさなかですし、農林水産省もわざわざ、知的財産を守りましょうというパンフレットまでつくって配布をしているという、このときにこうしたことが起きてしまったということについて、これも、初動も含めて、農水省の見解を伺います。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
先生今御指摘いただきましたとおり、家畜伝染病予防法の目的は、家畜の伝染病疾病の発生を予防して蔓延を防止するということでございまして、海外からの家畜の伝染病疾病の侵入を阻止することが必要でございます。
この侵入防止措置の効果は国際的な相互協力によりまして高まるので、我が国も諸外国に家畜の伝染性疾病を伝播させないような措置をとる必要がございまして、その考え方に従って、家畜伝染病予防法に基づきまして輸出検査を実施してございます。
今回の事例は、今先生御指摘ございましたとおり、輸出検査を受けるべきものを、輸出検査を受けずに中国の方に持っていき、中国の当局において見つかり、拒否されてこちらへ戻ってきたということで、その後、告発等々をやっているところでございます。
あと、流通の関係でございますけれども、精液等をつくる場面につきましては、種畜検査等々ございますので、精液がどれぐらいつくられているとか、そういうことは把握をしてございます。また、流通の過程においては、誰に譲渡したのかというようなことをちゃんと証明書を添付して譲渡をするということになってございます。
ただ、その譲渡自体が、生産されて、農家の方に最後まで行って、それが最終的にどうなったかということが十分に把握できているかと言われると、そこはできていないという状況はございます。
そういう中で、まず流出事案の方でございますけれども、本事案の再発防止に向けまして、畜産関係者に対しまして、和牛の受精卵及び精液につきましては、現在、どの国とも家畜衛生条件を締結しておらず、原則として輸出できないということを周知いたしますとともに、これらの輸送には特徴的な凍結保存容器が用いられますので、改めて、船舶会社、航空会社、税関などの関係者に、受精卵や精液が動物検疫の対象であることを説明するとともに、凍結保存容器の外観の特徴を周知いたしまして、同様の貨物を輸出しようとする者がいた場合には動物検疫所に連絡するように要請をしたところでございます。
また、我が国における和牛精液等の適正な流通管理の徹底も求められてございます。学識経験者、畜産関係者等の有識者で構成いたします和牛遺伝資源の流通管理に関する検討会を設置いたしまして、第一回を二月十五日に開催いたしました。
この第一回目の検討会におきましては、有識者から、流通管理の強化の話ですとか、先生からも御指摘ございました、知的財産の観点から、契約による保護の重要性等々、さまざまな意見をいただいてございます。
これからまた検討会を続けてまいりますけれども、今後、この検討会で出された御意見等も踏まえまして、どのような対応ができるのかを検討してまいりたいというふうに考えてございます。
○佐々木(隆)委員 今答弁いただいたんですが、結果、農家のどこへ行ったかというところあたりまではつかみ切れていないから実態把握をしようということなんだと思うんですけれども、牛肉については、それから乳牛なんかは、個体については牛トレサがあって、もう徹底的に追跡ができるようになっているのに、非常に、そういった意味では、精液だとか受精卵について、今の、何かシールを張って、それを必ず、コンピューターで読み取れば、どこへどうなっているかというようなことぐらいは私は読み取れそうな気がするんですけれども、何かそうした、徹底してちゃんと追跡ができる、どこに、今、何が、どういうふうに動いているということがわかるようにやはりすべきだ。
とりわけ、これから農水省は、貿易もやらなきゃいけない、輸出もしなきゃいけないと言っているさなかでありますので、そのときに大切な知的財産も一緒に流出をするなんということになってしまっては困るわけですので、ここはやはり、今の国際的な状況の中で、私は、徹底すべきだということ、これについては要請をさせていただきたいというふうに思います。
あと十分ほどしかございませんので、農政の大きな方向性ということについてお伺いをさせていただきたいというふうに思います。
これは、内閣の官房の方からも来ていただいているというふうに思いますけれども、まず、TPP、EPA等についてでございます。
私は、量のTPP、質のEPAと申し上げているんですが、量的にはTPPの方が大きいわけですけれども、ブランド力でいうとEPAの方がはるかに高いわけでありますので、北海道、私は北海道ですから、北海道については、EPAはほぼほぼ直撃でございます。それから、TPPでも、内閣官房からきのう説明を受けますと、今回の牛肉のあの一・四倍だか一・六倍だかというのは必ずしもこれのせいではない、TPPのせいではない、そう言っておられたわけであります。
しかし、今回の牛肉で一番被害を受けたのはどこかというと、北海道が中心になってつくっている交雑種なんですね。いわゆるホル雄です。ここが、大衆肉なものですから、TPPの相手国からすると、一番競合する分野なわけですね。ですから、そういった意味で、今回の牛肉の一・五倍、一・五倍前後というものも、北海道にとっては相当打撃を受けています。
そこで、お伺いをしたいのでありますが、いわゆる影響試算であります。
TPPとEPA、合わせてですけれども、マックスで二千六百億だというふうに言われております。北海道が、マックスですが、約五百億、約二〇%でございます。
先ほど申し上げましたように、これからのEPAについていえば、チーズ、ワイン、木材などはまさに北海道と直撃でございますので、実はダブルで来るということの試算になっていないわけですよね、一つ一つの試算を今までしていますが。ダブルということになれば、私は影響は更に大きいのではないかというふうに思っております。
加えて、TPPの試算でアメリカが離脱をし、そして、EPAでは今、イギリスが離脱をするかしないかというような話になっている。そして今度、日米協議が始まる。この日米協議、TPPの12とTPP11のときの試算の差額がそのままアメリカの分だとすると、約四割を占めているわけですね、このアメリカの分が。ですから、極めて大きな動きになっているわけです。
これを、もとの試算のままやっていて、対策をつくったからそれでいいんだというのは、私は少し見直すべきではないかというふうに思っているんですが、試算のやり直しと大綱の見直しについて、答弁を求めます。
○大角政府参考人 お答え申し上げます。
牛肉の輸入増の報道につきましては承知しているところでございますけれども、近年の牛肉の需要が拡大している中で、一月については、為替レートが円高に振れたことなども影響しまして、TPP各国からの牛肉の輸入が増加いたしましたが、二月につきましては、前年並みの水準に戻っており、TPP11の影響につきましては、今後の推移もよく見守る必要があると考えているところでございます。
日米物品貿易協定に係る経済効果分析、こういった点につきましては、昨年九月の日米共同声明に、農林水産品について、過去の経済連携協定で約束した譲許内容が最大限であるとの日本の立場が明記され、過去の経済連携協定で最大限のものはTPPだというふうに考えておりまして、その旨もアメリカ側に説明しているところでございます。
農林水産分野の日米貿易協定の影響は、TPP12による影響の範囲内であると考えているところでございます。
○佐々木(隆)委員 多分これは、今聞かれた方も、そんなのんきなことでいいのかという思いをしたのではないかというふうに思うんです。
一つ一つの試算がそうであったとしても、それが三つ一緒になって来るかもしれないという状況に今あるわけですね。そうなったときに、影響というのは更に増幅されるのではないかということでありますので、だから試算をやり直すべきだというふうに私は申し上げているわけですし、試算をやり直すということは、対策大綱も見直さなきゃいけないということになるわけでありますので、ここは求めておきたいというふうに思います。
最後に、基本計画についてお伺いをしたいのでありますが、基本計画というのは五年ごとに見直して十年ずつの計画を立てていくわけでありますが、いろいろな状況が今変わってきているというふうに思うんですね。
大臣が、所信の中でも、大きな転換点にあるんだというようなことを述べておられますので、まず、今回、基本計画をこれから議論をするのでありますけれども、普通であればもう既に議論が始まっているのでありますけれども、これについて、どんな方向性、ポイントみたいなものを大臣としてお持ちなのか、お伺いをします。
○吉川国務大臣 農政につきましては、我が国の農業、農村に活力を取り戻すため、農林水産業・地域の活力創造プランや食料・農業・農村基本計画等に基づきましての進捗状況ですとか実績の検証等も行いながら、必要な施策を着実に実行しているところでございます。
担い手の確保、農地の集積、集約化、需要に応じた農産物の生産、販売や輸出の促進等の施策も進めておりまして、着実にそういった面での成果も上がり始めていると存じております。
現行基本計画の見直しに当たりましても、人口減少に伴うマーケットの縮小ですとか、農業従事者の減少、高齢化、グローバル化などの情勢変化が更に進んでおります中で、これまでの施策につきまして、その成果等も踏まえながら、更に強力に進め、若者が夢や希望を持って取り組める農業を実現する観点から検討を行ってまいりたいと存じております。
その際には、現場の声に真摯に耳を傾けることが重要と存じておりまして、そういう観点から、初めに役所が設定した論点ありきではなくて、ことし前半、食料・農業・農村政策審議会の企画部会という公開の場におきまして、農業者や食品事業者等からヒアリングを行っていただき、論点を整理した上で、秋ごろに諮問を行うこととしたものでございます。
この企画部会は、間もなく、この三月十八日に開催をする予定でもございます。
○佐々木(隆)委員 最後の質問にさせていただきたいと思います。
改革の方向性は継続するんだというのが、大臣がずっとこの間言っておられることなんでありますが、農家数は二十年で半減をしてございます。それから、高齢化は当然でありますが、農地が二十年で約一割減ってございます。主要農畜産物はマイナス一四%ぐらい減産になっております。
それで、農水省はよく産出額はふえているんだということを言うんですが、それは、生産が減少したことによって単価が上がったということでありますので、生産数量がふえているわけではないということもやはりしっかり分析をしていただきたい。
それで、アメリカが、昨年の十二月でありますが、アメリカの新農業法というのが決定をされました。その中で言っているのは、リスク補償と価格の下落に対する損失補償ということを言っております。要するに、エーカー当たりの補償をする、面積当たりの補償をしていくというような方向に今アメリカはなってきております。
ヨーロッパの方では、次期CAP、農業政策ですが、これはSDGsと連動して、そして国際化に伴う食料安保や気候変動などの直接支払いを検討しているということであります。
私は、今こそ、日本もこうした、アメリカやヨーロッパでさえそうなっているんですから、多様性というものに軸足を移して、我々がずっと提唱させていただいております戸別所得などについてもぜひ議論をいただきたいというふうに思いますし、あるいはまた、食料安保ということを言うのであれば、経済連携ということとの関係もきっちり整理をしなければいけない。国内農業をしっかり守らないことには全ては始まりませんので、そういった意味で、この基本計画についても我々自体もしっかり議論を早急にしていくべきだというふうに思うんです。
今、秋ごろだという大臣のお話でありましたけれども、それはもう方向が動かせなくなってしまうということもありますので、その点について、我々が提唱している戸別所得の議論も含めて、ぜひ見解をお伺いしたいと思います。
○吉川国務大臣 戸別所得補償制度につきましては、担い手への農地の集積ペースをおくらせる面があるとか、あるいはまた、十分な国境措置がある米への支援についての、他の農産物の生産者や他産業、納税者の理解が得がたい、さらには、主食用米の需要が年々減少する中で、米への助成を基本にするのでありますれば、米の過剰作付を招く等の課題がございました。
このために、旧戸別所得補償制度を廃止しまして、麦、大豆、飼料用米といった需要のある作物の生産振興による農地のフル活用など、前向きな政策を強化してきたと存じております。同時に、日本型直接支払制度を創設いたしまして、中山間地域に対する直接支払いなど、地域を元気にする施策も展開してまいりました。
次期基本計画の見直しに当たりましては、これまでの施策について、その成果等も踏まえながら、更に強力に進め、若者が夢や希望を持って取り組める農業を実現する観点から検討を行ってまいりたいと存じますけれども、今委員もさまざまな御指摘等も頂戴をいたしましたので、深い議論が行われることにより、より審議が充実することが期待されると存じますので、しっかりとこの基本計画の見直しを進めていきたい、こう考えます。
○佐々木(隆)委員 時間が来たので終わらせていただきますが、ぜひ委員長にも、この基本計画の議論というのは最もベースになる議論でありますので、できるだけ議論の保障をしていただきたいというのと、アメリカの補償は、我々が、農業者が次へ展開するためには再生産をどうやって保障するかということなんです。その再生産を保障するというための政策があのアメリカでさえとられていて、それは、家族農業というか、今の農業をこれ以上減らさないという政策に転換してきているんですね。その点も含めて更に議論をさせていただきたいということを委員長に求めて、終わらせていただきます。
ありがとうございます。
○武藤委員長 次に、亀井亜紀子君。
○亀井委員 おはようございます。立憲民主党・無所属フォーラムの亀井でございます。
きょうは、漁業一本に絞って質問をさせていただきます。
去年の臨時国会で、七十年ぶりの漁業法の改正がありました。改正というよりも新法に近かったと思います。従来の漁業法に資源管理の法律が組み合わさって、電話帳のような分厚さで、中身を見ると各項目が対照になっていないような、新法に近いものだったと思いますので、質問時間が足りませんでした。
まず、資源管理についてお伺いをしたいと思います。
改正漁業法は、資源管理の手法が大きな争点の一つでした。漁獲量減少の理由として地球温暖化などが指摘されているんですけれども、そこで、きょう、皆様に資料をお配りしております。この資料をごらんください。
まず一枚目なんですが、これは世界と日本の水揚げ量の推移。この水揚げ量というのは天然プラス養殖です。両方含んだ漁獲量です。これを見ますと、日本だけがひとり負けですね。世界の水揚げ量は上昇している、それに対して日本だけがひとり負けしている、そういう表になっております。
ところが、次の二ページ目をごらんください。真ん中より下の二つのグラフですけれども、これを見ますと、先進国の漁獲量というのは横ばいです。よくノルウェーの漁業などが引き合いに出されますけれども、ノルウェーも決して漁獲高が上がっているわけではなくて、横ばいですね。EU、米国、似たようなものです。それに対して、右側の開発途上国、中国、インドネシア、ベトナム、こういうアジアの新興国の漁獲量が増大しておりまして、特に中国です。ですので、世界の水揚げ量、各国上がっているという中のかなりの部分は中国ではないか。そうすると、日本は位置的に中国から近いわけですから、日本の漁獲高がひとり負けするというのもあり得る話だと思いました。
そこで、私の質問ですけれども、政府は、昨年の漁業法改正、これは、資源管理の手法を入れたというのは、この一枚目のグラフなどを見て、日本の資源の減少というのは乱獲が原因だ、だからTACという手法を取り入れたのでしょうか。農水大臣にお伺いいたします。
○吉川国務大臣 亀井委員も御承知のことと存じますけれども、我が国におきましては、水産資源の減少によって漁業生産量が長期的に減少傾向にあるという厳しい課題に直面もいたしております。
その要因でありますけれども、一つ目には海洋環境の変化、二つ目には周辺水域における外国漁船の操業活発化など、さまざまな要因が考えられると存じますが、より適切に資源管理を行っていれば減少を防止、緩和できた水産資源も多いのではないかと考えられます。
このような中にありまして、将来にわたって持続的な水産資源の利用を確保するために、昨年十二月に改正された漁業法におきましては、資源を維持、回復させる目標を関係者と共有して、これを実現するため、数量管理に軸足を移した資源管理を行うことといたしたものでございます。
○亀井委員 幾つか全体的な理由を述べられましたので、乱獲が原因ということはお考えじゃないのかなと思いますが。
漁業者は、TAC、漁獲可能量というものを信用しておりません。昨年の議論でも、このTACが果たして有効なものなのか、科学的根拠があって、これを導入すれば資源管理が適切にできるのかという議論がありました。諸外国と違って日本は多種多様な魚をとっていますから、そんなに単純に管理できるものじゃないという指摘もあるわけですけれども、そのほかに、漁業者がTACを信用しないことにはやはり理由があります。
昨年、千葉県の小型漁船の漁師に話を聞いたんですけれども、この方は、二十年前にスルメイカをTACの対象魚種にしてほしいと国会前でデモをした方でした。かつて、千葉県沖では、宮城の方からスルメイカがおりてきて、たくさんとれたんだそうです。それが二十年ほど前にとれなくなってきたので管理していただきたいと、それでTACを要望したそうで、実現したんですけれども、逆に全くとれなくなった。その経験があるので、今はもうイカはとれないのでキンメダイをとっているそうなんですが、このキンメダイが今回TACの対象になったときに、いよいよとるものがなくなって廃業せざるを得ないのでやめてくれ、そういう要望でした。
じゃ、なぜこのTACで資源管理をすると、漁獲可能量を決めると逆に資源が減ってしまったのかということを検証しなければいけないと思います。一部の専門家の指摘には、規制するというのは、通常は現在とっている量よりも少なく枠を決めるので規制がされるんだけれども、当時は、とっていた量よりも多いところに規制をかけたので、逆に、そこまでとりなさいという努力目標のようになってしまって、TACが形骸化した、そういう指摘もあるようなんですけれども、一体なぜ機能しなかったんでしょうか。また、今回はどのように運用されるのか、農水大臣に質問いたします。
○吉川国務大臣 水産資源は、漁業がなくても、海洋環境の変動に伴い資源そのものが変動するとの特性を有していると言われております。また、環境の変動による影響の大きさは資源により異なりますけれども、一般に、表層を回遊する魚種や寿命の短い魚種の方が変動の幅が大きいとされております。御指摘をいただきましたスルメイカでありますけれども、このような魚種の代表例でございまして、研究機関によりますと、近年の資源の減少傾向は産卵場の水温変化等の環境変動の影響が大きいとされております。
一方で、資源が減少傾向にありますときには、無秩序な漁獲を行いますと、減少に一層の拍車がかかりまして回復に時間がかかるために、一定以上の資源をとり残すことは、資源管理上、最低限必要であると考えております。スルメイカにTACを設定することは、今申し上げましたようなことから重要であるのではないかと考えているところでございます。
○亀井委員 ちょっと御答弁が、今後の運用についてどうなるのかというのは余りはっきりしないと感じたんですけれども、ただ、時間がなくなってしまいそうなので、取り急ぎ先に行きたいと思います。
定置網に関してですけれども、この委員会で一月に視察に行かせていただきまして、養殖の現場ですとか、あと、定置網の漁師さんのお話も聞きました。私の地元の島根の漁師さんとも話すんですけれども、やはり定置網漁師が減少すると漁村は衰退すると思います。彼らが漁村に住んで、すぐ近くの浜で漁をしているわけですから。この分野に若者が、新規の人が入ってきているわけでして、定置網漁を守らなければいけないと私は強く感じております。
そこで、昨年も質問したんですが、沿岸漁業、定置網はTAC対象から除外すべきだと私は思います。クロマグロの例も出しました。定置網というのは、魚を追いかけてとりに行くのではなくて、網を張ったところに魚の方が飛び込んでくるわけですから、その中で魚種ごとに分けるということは難しいですから、クロマグロだけ、今も選別してというような手間があるわけで、TACは沿岸には適用すべきじゃないと私は強く思いますけれども、農水大臣の御答弁をお願いいたします。
○吉川国務大臣 沿岸漁業におけます漁獲量管理の具体的な実施に当たりましては、定置網漁業を含め、多様な漁法で多様な魚を漁獲している沿岸漁業の特性にも配慮しなければならないと存じております。漁業者の負担を最小化し、効果を最大限発揮できるような管理手法、さらには漁業者の意見を伺いながら丁寧に構築をしていかなければならないと存じております。
○亀井委員 伊東に委員会で視察をして、定置網の漁師さんにもお話を聞きました。いろいろと知恵は絞っているようですけれども、例えば、網の上のところをちょっとすかせておいて魚が逃げられるようにするですとか、最大限の努力はしていると思います。それでもやはり、いろいろな魚が逃げるわけで、対象魚種だけが逃げてくれるわけじゃありませんから、TAC対象の魚種をふやしていくと、どうしたって定置網の人たちへの影響は出てきますよね。それは現場を見ても私は強く感じましたので、農水省には丁寧な対応をお願いいたします。海外で沿岸漁業が対象じゃないところはありますから、日本もそういう国に見習って、ぜひ外していただきたいと強く要望いたします。
次の質問に移ります。
きょうは外務省からもお出かけいただきました。ありがとうございます。
私の地元、隠岐島を含んでおります。ことしに入って、一月に北朝鮮の漁船が漂着しまして、四人の北朝鮮人が上陸をしております。たまたま発見されたのでよかったんですけれども、誰も気がつかなかったら密入国になるところでした。この事件があってから、非常にやはり警備について危機感を持っております。
そして、私も地元の人間に聞いた話なんですけれども、昨今、北朝鮮の漁船が日本に漂着する原因となっているのは、北朝鮮が外貨を得るために排他的経済水域の漁業権の一部を中国に売却している、そのために、北朝鮮の漁船が従来の北朝鮮の海域の外で操業するために、より日本に近いところで操業せざるを得なくて、それで冬場に遭難して漂着している、そういうことが今言われています。
国連の報告書などでも、北朝鮮の国旗を掲げて偽装した中国漁船が操業しているですとか、おととしの、日本の報道ですけれども、北朝鮮の中国への漁業権の売却益が七十六億円ほどというような数字もあったようですけれども、この件について、外務省は何か情報を得ておられますか。また後ほど同じ質問を農水省にもしたいと思います。まず、外務副大臣、お願いいたします。
○佐藤(正)副大臣 お答えいたします。
朝鮮半島からと思われる船舶の漂着事案は、一昨年及び昨年はそれ以前よりも増加しているというふうに承知しております。その理由について一概に申し上げることは困難でありますが、例えば、昨年十月以降、日本海における荒天が多かったことに加えまして、国際社会による北朝鮮に対する制裁によって食料不足が懸念される中、北朝鮮当局が漁業を奨励したという見方、あるいは、北朝鮮が外貨獲得のために第三国に漁業権を売却し、第三国の漁船が北朝鮮周辺で操業するようになった結果、北朝鮮の漁民がより遠くに出航せざるを得ないという状況になったという見方があります。
また、漁業権の価格につきましては一概に申し上げることは困難でありますが、例えば、先般公表されました安保理北朝鮮制裁委員会の専門家パネルの報告書においては、月額五万人民元、約七千二百五十米ドルとの記載があると承知しております。
いずれにせよ、我が国といたしましては、関連動向につき、引き続き重大な関心を持って情報の収集、分析に努めていきたいと思っております。
○吉川国務大臣 国連安保理北朝鮮制裁委員会の専門家パネルが今週公表した報告書におきましては、日本、中国、朝鮮半島及びロシアに囲まれた漁場におきまして、北朝鮮の漁業許可証を所持していると見られる中国漁船が確認されたとの記載があることは承知をいたしております。これらの中国漁船の存在が北朝鮮漁船を北朝鮮の漁場から追い出しているとの見方があることも承知をいたしております。ですが、これを裏づける具体的な情報を残念ながら持ち合わせておりません。
漁業権の価格も申し上げますか。また、今の、先ほど申し上げました同報告書におきまして、加盟国からの質問に対して、中国漁船の漁民が漁業権の価格は月額五万人民元であると回答したとの記載もあるところでもございます。
○亀井委員 ありがとうございます。やはり、そういう情報が入っているということは、地元の漁師の言い分と合っていると思います。
それで、次に、これはコメントですけれども、北朝鮮の四人が上陸し、隠岐の島町の住民が対応しました。実際に対応した人の印象ですけれども、漁師ではないのではないかと言っています。それは、例えば、着のみ着のままで漂着して、衣類を提供したわけですけれども、それを非常にきちんときれいに畳んで返してくると。別に漁師さんがきちんとしていないと言うつもりはないですけれども、ただ、その立ち居振る舞いが漁師ではなくて軍人ではないか、そういううわさも立っているということは御報告をしておきたいと思います。
次の質問に移ります。
このような状況ですので、領海警備をきちんとしてほしい、そういう要望が強く上がっています。また、海上保安庁の大型巡視船を求める声、当然強くなっておりまして、ことしの予算書を拝見したところ、先日、予算委員会の分科会でも確認をいたしましたけれども、日本海に配備する予定で、二隻の大型巡視船、三十七・五億円の予算が計上されております。これは率直に評価したいと思います。
これは、これから建造するんでしょうから、実際に日本海に配備するのはいつごろになるんでしょうか。また、それまでの間、特に冬場、日本海は大変荒れますが、この間、どのように警備を強化されるのか。
先日、島根のカニかご漁船がロシアに拿捕される、そういう事件も起きまして、本当に強化していただきたいのですけれども、巡視船が間に合わないのなら、例えば舞鶴の方から冬場だけでも回してもらえないだろうかとか、そういう具体的な要望が上がっておりますので、阿達国交政務官にお尋ねいたします。
○阿達大臣政務官 委員御指摘の大型巡視船二隻については、海上保安体制の整備ということで二十九年度当初予算から始めておりまして、この大型巡視船二隻については、来年二月ごろ及び八月ごろをめどに一隻ずつ日本海側に配備することを検討しております。
また、日本海側の冬場の対応については、現場の状況に応じて、各部署の大型巡視船及び航空機を広域的かつ効率的に運用することで、領海警備等に万全を期しているところです。
今後とも、海上保安庁の体制強化を着実に進めるとともに、巡視船や航空機の哨戒により、日本海側を始めとする我が国周辺海域において操業する日本漁船の安全確保に努めてまいります。
○亀井委員 ぜひよろしくお願いいたします。イージス・アショアとかいう前に、足元の領海警備をきちんとしてくれというのが切実な声ですので、よろしくお願いいたします。
では、次の質問です。養殖についてです。
委員会の視察で、沼津のマダイ養殖現場を視察しました。マダイ、アジの養殖業の実情についてお話を伺ったんですけれども、その際、印象に残ったのは、生産コストの六割を飼料代が占めていて、輸入配合飼料の高騰が経営を圧迫しているとのことでした。これは酪農、畜産でも同じ構造だと思いました。
昨年の漁業法の改正は養殖を推進しようというような意図が見えたんですけれども、昨年、宮城県の水産特区の事例についても野党の議員で視察をしたところ、思ったようにはいっていない、桃浦のカキについても、予定したような量はとれなくて、漁の解禁を守らずにとってしまったり、ほかの湾のカキを持ってきてしまったりという事例があったと地元で聞きました。ですので、決して、企業参入を推進して養殖業に入っていっても、うまくいっていません。宮城県の方も、もうかるものならもっと企業がどんどん入っているだろう、やれるものならやってみろというようなことでしたし、その発言が、今回、沼津を視察して輸入飼料の話を聞きましたので、納得したんですけれども。
では、どのように養殖を推進されるんでしょうか。また、昨年の法改正の後、またそれを見越して、養殖業に企業参入を予定している、そういう事例はありますでしょうか。お伺いいたします。
○濱村大臣政務官 御指摘のとおりでございますけれども、まず、養殖業の振興につきまして、国として、国内外の需要を見据えた戦略的養殖品目について設定をしてまいりたい、そして、生産から販売、輸出に至る総合戦略を策定した上で、本格的に取り組んでまいりたいと考えております。
こうした戦略的な取組とあわせまして、我が国の水域を最大限活用できるように、さきの臨時会におきまして漁業法を改正させていただきましたが、意欲的に養殖業を営む者が安心して漁業経営や将来に向けた投資をできるように取り組んでいるところでございます。
また、先ほど御指摘もございました、魚粉飼料が高いというようなお話もございましたけれども、そうしたことに対応するためにも、低魚粉飼料や高効率飼料の開発に加えまして、養殖業の振興の課題に対応するために、優良種苗の開発、新技術を活用した協業化の推進や沖合養殖システムの開発、これらは予算措置をしておりますけれども、我が国における養殖業の発展を更に図っていくこととしております。
今後、このような施策を総合的に実施してまいることにより、我が国の養殖業の振興を積極的に図ってまいりたい、このように考えております。
法改正を見越してということでございますが、具体的に申し上げるわけでございますけれども、最近では、青森県深浦町におきまして、地元企業が、地域と協調のもと、効率的な生産を目指した海面での大規模な生食用サーモン養殖を開始しておりまして、今後拡大を図る方向にございます。地域の活性化に寄与するのではないかということで、期待を集めている状況でございます。
また、水産政策の改革の発表以降、魚類養殖が盛んに営まれてこなかった岩手県の宮古市におきましても、地元漁業者、配合飼料製造企業及び地元自治体が連携して養殖業に着手しようという事例も出てきておりまして、今後、地域と協調した企業の参入が進展することを期待しておるところでございます。
○亀井委員 時間が来ましたので、ここで終わりたいと思います。ありがとうございました。
○武藤委員長 次に、緑川貴士君。
○緑川委員 皆様、お疲れさまでございます。国民民主党・無所属クラブの緑川貴士と申します。
質疑の時間をいただきまして、ありがとうございます。
私からは、本日、二十分、セーフガードについてお尋ねをいたします。
おとといの記者会見で、吉川大臣、輸入冷凍牛肉に係るセーフガードにおいて、現時点で発動する状況にはないというふうに発言をされていらっしゃいますが、TPPが発効した直後のことし一月には、カナダ産、ニュージーランド産の冷凍牛肉を中心に、やはり輸入が急増している。昨年一月に比べて一・八倍となるような三万八百九十七トン。そして、食肉の輸入業者としては、一月の輸入が想定以上に多かった。この一月の輸入について、やはり発動の懸念を広げるものになりました。
一方で、先月、二月に入ってからは、まだ集計が出ていませんけれども、輸入のペースが落ちてきている。企業が決算期を迎える今月の三月は牛肉を含めて手持ちの在庫を減らしていく、だから輸入の数量も減るという見立てもありますけれども、いずれにしても、二月と今月で合わせて四万九千八百八十七トンを輸入することになれば、前年度の数量を基準としたセーフガードの発動水準を超えることになります。
まずお尋ねしたいのが、二月のトータルの冷凍牛肉の輸入数量がどれくらいになりそうであるのか、目安となるものがあれば教えていただきたいということと、また、今年度におけるセーフガード発動の見通しについて、今の時点での御見解を伺います。
○吉川国務大臣 不足があればまた、事務方も参考人としておりますので、お答えをさせていただきたいと思いますが。
今年度二月の冷凍牛肉の輸入量でありますけれども、これは、三月末に貿易統計で公表される予定のために、現時点で把握することができません。
冷蔵と冷凍を合計した二月のTPP11発効国からの牛肉輸入量でありますけれども、これは今お話もありましたけれども、二万二千四百八十九トンで、対前年比、同月二万二千二百五十トンに比べて一〇一%と、落ちついた水準となっております。
今後の輸入動向についてでありますけれども、輸入業者におきましては、三月は決算期のため、例年、国内在庫を少なくする傾向があることに加えまして、二ないし三月は不需要期である中、現在、輸入牛肉の国内在庫が潤沢に存在をしていること、四月からTPP11発効国の税率が更に低下をすること、これは二六・九から二六・六になりますが、などから、輸入業者からは、当面、必要量のみを通関させる方針であると聞いておるところでございまして、現時点において関税緊急措置が発動する状況にはないと考えているところでもございます。
しかしながら、引き続きその輸入動向というのはしっかりと注視していかなければならないと存じています。
○緑川委員 TPPにおける細かい、旬ごとの数量も示されるようになって、より細かく見られるようになったということは、まず一歩、集計、分析という観点からは前進かもしれませんけれども、いずれにしても、まだトータルのはっきりした集計が出ていない以上、やはりこれは予断を許さない状況であることは確かであります。
一方で、警戒するべき状況というのは、年度をまたいでからもこれは続くことになるんですね。
というのは、セーフガードの発動を警戒していた食肉の輸入各社が、それを発動させないためにこの冬こらえていた需要、その反動増が次の年度の初めに来る可能性があること。また、アメリカと合わせれば、日本が輸入している冷凍牛肉、この九割を占めるTPPと、そして、牛肉の数量としては少ないながらも、日・EU・EPAが、年度がかわる来月にそれぞれの協定の発効が二年目を迎えることになります、関税が更に引き下げられるタイミングであること。さらに、決算を終えた企業が、減らした在庫を、一旦減らしながらも回復させる時期であること。いろいろな輸入増につながる要素が重なっているのが四月であります。
この年度がわりの輸入数量の大まかな見通し、政府の今後の対応について伺いたいと思います。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
平成三十一年度の第一・四半期の牛肉の輸入数量でございますけれども、国内の景気動向、また海外の生産動向、為替等、また、先生が先ほどおっしゃったようなさまざまなことに左右されますので、予断を持ってお答えすることはできません。
しかしながら、今年度の第一・四半期でございますが、昨年四月に冷凍牛肉の関税率が五〇%から三八・五%に戻ったという時期でございました。この際には、輸入業者が需要に見合った計画的な輸入を行いまして、発動基準数量は超過してございません。
来年度の第一・四半期につきましても、引き続き、輸入業者等と情報共有を図りまして、需要に見合った計画的な輸入がなされるように、動向を注視してまいりたいと存じます。
○緑川委員 新たな貿易協定が次々に発効している状況であります。これまでの時代の、また違う、これは節目の時代に入ってきているわけであります。生産動向、景気の動向、もちろん為替の動きなどもしっかり見た上で、やはりしっかり分析をしていく必要があるというふうに思います。
なぜ私がこの四月ということにこだわるのかといえば、これは、四月からの、今後数カ月間の期間が、過去に発動されたセーフガードと大きく関係しているからであります。
一九九一年に牛肉の輸入自由化が始まって、その後年々ふえることになった輸入に対して、セーフガードが初めて発動されたのが一九九五年。そして、その翌年の一九九六年も発動されています。そして、生鮮、冷蔵牛肉ですけれども、二〇〇三年にも発動されて、そして、冷凍牛肉としては二十一年ぶりの発動になったおととし、二〇一七年。これは、牛肉全体としては、これまでに四度セーフガードが発動していますが、これまでのセーフガードは全て、前の年度一年間の全体の輸入数量を発動基準とするような、いわゆる年度トリガーではありませんでした。過去四度のセーフガードは全て八月からの発動であります。つまり、四月から六月の三カ月間、第一・四半期の輸入が急増したことを受けて、これまでのセーフガードは全て発動しているわけです。
先ほど申し上げた、輸入増となるプラス要素、これが多い四月から六月にかけて、発動基準数量をにらみながら、この期間の貿易統計の数量をより丁寧に見ながら、慎重に対応していく必要が出てくるというふうに考えておりますけれども、いかがでしょうか。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘いただきましたとおり、これまで、牛肉の関税緊急措置の発動実績は、冷蔵牛肉が一回、あと冷凍が三回ということでございます。
御指摘いただきました、まず最初の平成七年度、八年度の事例でございますけれども、URの合意で関税緊急措置の制度が開始された直後でございました。また、その当時の関税の引下げ幅も小さかった中で、UR合意もあったということで、輸入牛肉の需要が拡大していたということで、制度発足の初年度、次年度に、第一・四半期、出たということです。
平成十五年度、これは冷蔵でございますけれども、これは国内で発生したBSEで相当消費が落ち込んでいた後に消費が戻ってきた反動による輸入増加ということでございます。ただ、これも第一・四半期でございます。
平成二十九年度は、豪州産の輸入がふえていた中で、中国が米国産牛肉の輸入を解禁するという情報が流れまして、これによる先高感が生じて輸入業者が米国産の買いを急いだという、これはちょっと特殊な要因だったかなというふうに思います。
ただ、いずれにせよ、先生御指摘のとおり、第一・四半期というのが、全てこれまで出てございますので、我々も十分注意してまいりたいと存じます。
○緑川委員 やはり、この新たな貿易秩序のもとで、今後、過去のことを見ると、同じような状況がまた出てくるのではないかというふうに私はまず懸念をしておるところでございます。
発動基準に照らす際に、新たな複数の協定がまず発効していますから、チェックする数量、項目が細かくなっている、ふえているような状況の中で、もともとの牛肉のセーフガードというのは、本来は、やはり四半期を区切りとした輸入量のトータルがその前の年度の同じ期間の輸入量と比べて一一七%を超えた場合に発動するという、今の現行のセーフガードはシンプルな仕組みでありました。
一方で、今回のTPPと日・EU・EPAという新たな協定では、それぞれのセーフガードの対象となる輸入数量が設定をされて、これまでチェックしている毎月の貿易統計とは別に、新たに月の旬ごと、上旬や中旬、下旬といった、輸入数量が公表されることになりました。業者がチェックしなければならないものが新たにふえています。今後は、毎月の貿易数量の統計と、TPPと日・EU・EPAのそれぞれの輸入数量を旬ごとに見ながら、それらの数字を発動基準数量に照らし合わせてセーフガードの発動の判断をせざるを得なくなります。加えて、シンプルでないがゆえに、貿易事務の負担も現場でのしかかっています。
現場にとって複雑さが増しているこのセーフガードの仕組みについて、大臣、どのような御所見でしょうか。
○吉川国務大臣 牛肉の輸入急増を抑止する制度といたしましては、ウルグアイ・ラウンド農業交渉の結果、平成七年度から関税緊急措置が施行をされました。その後、TPP11協定、日・EU・EPAなど、それぞれの協定に基づくセーフガードが導入をされてきました。このように、牛肉に対するセーフガードの措置の数は国際交渉の進展に合わせて増加していることは、委員も今御指摘いただきましたことはもう事実でございます。
輸入業者に対しましては、これまでも制度の説明等を行ってきたところでもございまするけれども、今後とも、輸入数量や発動基準数量につきまして、わかりやすい情報提供に努めてまいりたいと存じております。
○緑川委員 大臣おっしゃったように、見るべき指標、判断の目安となるものが把握しにくいものになっていれば、輸入取引の現場にやはり混乱を来すことになると思います。
財務省は、貿易統計に加えて、こうした協定に基づく輸入数量、また決められた発動基準数量、きちんと公表していくというお答えも先日いただきましたけれども、いずれにしましても、これは現場の対応がより重要になってまいりました。
現行の牛肉の関税率三八・五%が、TPPでは、一年目の現在は二七・五%、そしてその後、段階的に下がって、十六年目には九%にまで下げられます。また、日・EU・EPAの輸入量自体は当然少ないものですが、両協定によって、牛肉の輸入はやはりふえる方向になります。
その上で、現場の対応、輸入業者が考えなければならないのが、輸入を急増させないように調整させていくことだと思います。セーフガードを発動させないように、先ほど触れた、さまざまな数量を細かく見ながら、発動基準の一一七%を超えない、ぎりぎりのところを調整をしながらという現場の対応がより必要になっていくというふうに思います。
ここで注意しなければならないことが、セーフガードは発動させたくないけれども、業者としては、やはり輸入によって利益が上がっていくことは間違いありませんので、利益を上げたいわけですから、セーフガードを発動させない程度に輸入がふえていく方向に向かっていくのではないかということです。つまり、セーフガードが発動されないような水準で輸入がふえた年があれば、それが次の年の発動基準になった場合には、より多くの輸入が認められてしまうようになるわけです。数年前の基準では本来発動してもおかしくないような輸入数量であったとしても、この発動基準自体が高くなることでセーフガードが発動しにくくなる事態が今後起こり得るんじゃないかなというふうに私は危惧をしています。
食肉の輸入業者の需要にはかなうものでは確かにありますけれども、国内需要には限度がある以上、価格競争に一層厳しさが増している、その戦いを強いられている現場の畜産家にとっては、今のままでは本当に不利な仕組みとしか言えないんですけれども、大臣、このあたりの御認識、いかがでしょうか。
○吉川国務大臣 牛肉の関税の緊急措置は、ウルグアイ・ラウンド農業合意の際に、牛肉の関税率について、WTO協定で認められた譲許水準である五〇%から三八・五%まで削減することの代償として、輸入急増に対する実効性の高い歯どめ措置となる、要はパッケージで導入されたものでございます。
近年、外食を中心といたしまして牛肉の需要が拡大をしております中、議員の御懸念も理解もできるところでございます。過去には、輸入量の減少に伴い、発動基準数量が低下する年度もありましたことから、必ずしも一方的に発動基準数量が拡大してきたわけではないと承知をいたしておりますけれども、このように、同措置は、四半期ごとに対前年同期比一一七%という基準を設定をいたしておりまして、きめ細かく運用することにより、無秩序な輸入量の増加を抑制して生産者を保護する効果を有するとともに、需要に応じた安定的な輸入の実現に寄与するものであると考えております。
今御指摘をいただきましたように、国内産業を守る観点からも、しっかりと私どもも対応しなければならないと存じております。
○緑川委員 大臣おっしゃった、WTO協定が、かつての発効が、それに基づくセーフガードの仕組みがやはり今の時代に追いつけていない、こういうことしか思えないんですね。
セーフガードの始まりというのが、牛肉の輸入自由化の歴史をたどれば、やはり、貿易の自由化を進めるウルグアイ・ラウンドで、関係国との交渉の結果に基づいて、日本が牛肉の関税率を自主的に三八・五%まで引き下げていく、そのかわりとして、代償の措置として、国内産業を守る観点から、牛肉の輸入が急増した場合には機動的な対応をとれるように措置を図れるという仕組みがもともとのセーフガードの仕組み、つまり激変緩和措置ですね、一時的な措置でしかなかったわけです。
この始まりの中で何年もこの措置を続けているということが、もともとやはりこれは想定されていなかっただけに、TPPのような大型の貿易協定が結ばれるという新しい枠組みの中においては、この仕組みにゆがみが生じてきている。
先ほどお話しした、セーフガードが発動しないような数量ではあるが、年々着実に少しずつ輸入がふえていくような場合には、セーフガードは、実質、トリガーを引けないです。じわじわと輸入が広がっていく状況をとめることができません。そうであれば、結局、セーフガードはガードの意味をなしません。国内の畜産業への影響が大きいと見込まれる品目に対しては、前の年度の輸入実績などを基準とするセーフガードでは、やはり結局のところ、なし崩し的に国内市場が侵食をされてしまう。
そう考えれば、国内の需要量を踏まえた上で、一定の数量に固定した発動基準量にするべきではないかというふうに考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○枝元政府参考人 事実関係だけでございます。
ここ二、三年を申しますと、二十六年、二十七年、二十八年までは基準数量は減ってございまして、二十八、二十九はふえてございますので、対前年で上がるときもあれば下がるときもあるということでございます。
○吉川国務大臣 今参考人からもお答えをさせていただきましたけれども、先ほども私、申し上げましたけれども、輸入量の増加を抑制して生産者を保護する効果を有しておりますので、需要に応じた安定的な輸入の実現に寄与するものと考えておりますので、これからもしっかりと私どもは対応していきたいと思います。
○緑川委員 この質問を最後にいたします。もうこれで終わりますけれども、やはり、消費者にとっては、安い輸入牛肉が入ってくる、デフレマインドが払拭されない中では、確かにこれはありがたいものなのかもしれません。しかし、生産者にとっては、この影響を十分に見きわめていくこと、この少しずつ輸入がふえていく部分がやはり生産現場の痛みを徐々に鈍らせていく効果も、私は、セーフガードが、結局そうした役割が果たされてしまったのかなというふうに思います。
この仕組みのゆがみに気づかず、一次産業が衰退していくのは時代の必然であるというふうに受けとめた現場の生産者が離農していく、畜産をやめていく、こういう流れを加速させないように、この自由貿易、新たな体制の中で、一層国際交渉が進展する時代の中で、国内生産者に対する影響が及ばないようにしっかり十分な対策を求めて、質問を終わります。
○武藤委員長 次に、近藤和也君。
○近藤(和)委員 石川県能登半島の近藤和也でございます。きょうもよろしくお願いいたします。
先ほどの緑川議員の質問、そして先ほどの佐々木議員の質問に少し関連してということで、一言だけ申し上げておきたいことがございます。
それは、何事も想定を超え得るということをやはり為政者側は考えておかなければいけないということです。
牛肉の輸入量がふえたということに関しては、私もレクを受けているときも感じたんですが、先ほどの答弁の中にもありましたが、為替の影響ということで、一時、一ドル百四円でしょうか、そこをつけた瞬間だけがございましたけれども、そういったところを指して、円高で牛肉の輸入量がふえたということが言われています。
ただ、しかしながら、オーストラリア、豪ドルの変化率はそこまででもありません。そしてまた、もしも同じように米ドル建て、米ドル換算ということであったとしても、じゃ、なぜアメリカが二割増、そしてオーストラリアが四割増ということが説明がつきません。オーストラリアが四割増であればアメリカ産の肉も四割増であるはずです。
ですから、何事も強がらずに、事態を謙虚に受けとめていただけたらと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
そして、きょうは、豚コレラ対策、防疫に対しての質問を引き続きさせていただければと思います。
先週、質問させていただいた翌日ですけれども、私たち国民民主党の豚コレラ対策本部として、羽田空港の動物検疫所を視察をさせていただきました。大変お忙しい中、支所長さんであったり、また職員の皆様には、お時間をとっていただきまして、心から感謝を申し上げたいと思います。
私たちの問題意識として、なぜ視察しに行ったのかといいますと、やはり検疫探知犬の数が少ないのではないか、どういう働きぶりをしているのかということをやはり具体的に見ないことには説得力もないだろうといったことも含めて、空港にお邪魔させていただきました。
実際には、ビーグル犬の探知犬の活動を四十分ぐらい拝見させていただきました。ターンテーブル、回るところを、本当に小まめに動き回って、観光客の皆さんがターンテーブルからバッグをおろしてから、そこから移動するところで、ハンドラーと言われる、犬を一緒に連れて回る方とずっと嗅ぎ回って、人の間を縫って行ったり来たりをずっと繰り返す。相当ストレスのかかる作業だなというふうにも感じました。
そして、その四十数分の間ですけれども、数件も、このビーグル犬、フジ号という犬さんでしたけれども、何件か、肉をしっかりと捜し当てていました。
複雑なもので、見つからない方がいいなと思いながらも、そういう現場も見られたらいいなと複雑な思いではございましたが、バッグの前、また観光客の近くで犬がそっと座るということを何度も繰り返して、これくらいのかわいらしいワンちゃんなんですけれども、そっと座る、イコール、何かあるよ、肉や植物があるよということで、そこから検疫官の方が来られて、済みません、空港の方が、正確には検疫官なのか、ちょっとはっきりしない部分はございますけれども、あなたは肉などを持っていないですかということで説得をして、そして、実際にそれを調べるカウンターまで連れていって、かばんをあけるところでもまた別の方が説得をしなければいけない。中国語がほとんどだというふうには思いましたけれども。
そして、実際には、肉などを、ビーフジャーキーなども含めて見ましたし、また、機内食で出た肉も含めて、やはり悪気はなく持ち込んだ方も残念そうな顔をされておられましたし、また、空振りですね、残り香も含めて、何も入っていないものでもやはり探知犬は探知するということも含めて、何事もなく帰っていかれた方もいらっしゃいました。
そして、やはり、犬が探知して座って、その方のところにほかの検疫官の方が行かれるときに、ほかの観光客がどんどん通り過ぎていきますから、そのときには別の方が二人セットで、あなたは肉製品を持っていないですかということを問いかけて、極力漏れが少ないようにしているという動きも拝見させていただきました。
ただ、しかしながら、実際には、犬とハンドラーの一組、そしてこの検疫官の一組。では、ほかはどうなのかといったところも含めて、あの雑踏の中でうまくさばけるのかなといったところはやはり感じたところでもあります。
こういう現場を拝見させていただいた上で、空港における防疫体制、検疫体制について、特に、やはり今アフリカ豚コレラを何とか食いとめなければいけない、もうきょうにでも入っているかもしれないということでございますが、こういったことに対して、特に中国に対しての対策、幾つの空港をチェックをしているのか、港をチェックしているのか、郵便局をチェックしているのか、この現状について教えてください。
○池田政府参考人 お答えいたします。
中国からの直行便が到着する空港、二十三空港ございます。また、クルーズ船やフェリーが到着した港、これは直近三カ月でございますが、十二港でございます。
御指摘の検疫探知犬ですが、空港のうち、中国からの直行便の九割が着陸する主要七空港に配備しておりまして、その他の空港につきましては、この検疫探知犬を派遣して対応をしているという状況でございます。
郵便物につきましては、川崎東郵便局を含む計六カ所の国際郵便局で対応しているわけでございまして、このうち川崎東郵便局には探知犬を二頭配備をするということで、昨年十二月からは、中部国際空港に配備されている検疫探知犬を中部国際郵便局においても活用し、検査をしているところでございます。
○近藤(和)委員 ありがとうございます。
資料の2を見ていただければと思います。
こちらで、先ほど二十三の空港に中国発の飛行機が来ているということを伺いました。そして、チェックが入っている、赤丸で囲んであるところが今この検疫探知犬が入っているところでございます。この地図の全体のものは、この黒丸は何かといいますと、この後お話をさせていただければと思いますが、麻薬探知犬の管理センター、基地を同じように記させていただいています。実際には、済みません、私の資料ではこの二十空港、先ほど二十三空港ということでお答えいただきまして、ありがとうございます。
私の方では二十空港。
あと三つ足らないのは、済みません、私の方では把握しておりませんが、例えば北海道でいけば、この地図でいけば、私のこの資料の中段の上の方ですが、旭川ですね。そして仙台、また新潟、富山、石川県の小松もございます。広島や高松、松山、鹿児島、こういったところも中国からの飛行機、直行便が来ているということで、地理的に考えれば、やはり、石川県の小松や富山であったり、また旭川、鹿児島といったところは、派遣ということだけでもかなり手間暇、ストレスというものがかかるのではないか。こういったところからも、場所が少ない、数が圧倒的に少ないということがわかるかと思います。
そしてまた、郵便局に関しても、今、六つの郵便局ということもお答えいただきました。ほかでいけば、検疫探知犬が配備されていないところでいけば、東京国際郵便局、そして大阪国際郵便局、新福岡郵便局、那覇中央郵便局、この残りの四つも配備されていないということでありますし、また、中国からの船客でいけば、この十二の港、当然、福岡の博多港が一番多いわけですけれども、中国からのお客様八百万人のうちの約二百万人の船で来られる方に対しても、チェックができていないということ。
そして、これは嫌な想像ですけれども、船ということであれば、二〇一七年のクルーズ船が寄港したトップ二十五の港という一覧をちょっと私は見たんですが、やはり博多が一番、次は長崎、三番目が那覇、四番が横浜ですが、五番、石垣、六番が宮古島、八番、鹿児島、佐世保ということで、やはり九州地方が非常に多い、沖縄も含めてですけれども。こういう西の方への警戒ということも、しっかり当たっていただく必要があるのかなと思っています。
実際には、郵便物ということでいけば、今、郵便局では、川崎東郵便局には二頭、そして中部国際郵便局も二頭でよろしかったでしょうか。このチェック体制というところが、郵便物を受け入れる時間に対して、では探知犬がどれだけ活動できるのかといったことに対して、現状を教えていただけますでしょうか。
○池田政府参考人 お答えいたします。
川崎東郵便局に配備しております検疫探知犬二頭でございますが、この二頭、一日当たり計約二時間の探知活動をしております。
検疫探知犬が活動している時間以外においても、家畜防疫官が、税関と連携し、また、国際郵便物を取り扱う日本郵便株式会社からの通知を受けて、小型包装物又は小包郵便物の検査を行っているところでございます。
ただ、この二時間と申しましても、検疫探知犬の活動は、日本郵便株式会社により、動物検疫所が検査を行う場所にその対象のものを一時蔵置してございますので、それを検査するということでございますので、単純に、二時間だから十二分の一ということではございません。
○近藤(和)委員 ありがとうございます。
蔵置しているところを集中的に作業するという答えでございましたが、ただ、実際のところは、これで本当にカバーし切れているのかといったところは、しっかりチェックをしていただければと思います。
そして、このカバーし切れていない空港、港、郵便物も含めて、検疫探知犬がやはり圧倒的に少ないということは、これは共通認識として持たなければいけないのではないかと思います。
資料の1を見てください。麻薬探知犬との比較ということで、簡単な表をつくりました。
麻薬探知犬では百三十頭ということで、検疫探知犬の約四倍ということでございますが、この予算も、これは実際は、検疫探知犬に関しては、ハンドラーの方も海外まで行って、三カ月行って、その研修費用もかかる、そのお金も入っているということも伺いました。
実際には、検疫探知犬と麻薬探知犬との比較で考えてみれば、危険物が入ってくるという点では全く同じである、そして、悪意のない方々が対象であるということであれば、むしろ、検疫探知犬の方が絶対数が多くなければいけないのではないかというふうに思います。
そして、その上で、なぜ検疫探知犬がふやせていないのかということ、そして施設をふやせていないのかということは、麻薬探知犬の経緯を少しやはり調べることも必要なのではないかというふうに思いますが、麻薬探知犬がふえていった経緯、そしてセンターをつくった予算等についても、財務省、よろしくお願いいたします。
○山名政府参考人 お答え申し上げます。
麻薬探知犬の導入の経緯等でございますが、麻薬探知犬につきましては、覚醒剤や大麻などの不正薬物の密輸入を水際で阻止するため、一九七九年に米国税関の協力を得て二頭導入したのが始まりでございます。その後、麻薬探知犬の導入が不正薬物の摘発に効果的であったことから、翌一九八〇年から国内犬を用いた麻薬探知犬の育成に取り組み、一九八一年に国内犬第一号を認定したところでございます。
また、麻薬探知犬を育成、訓練する専用施設である麻薬探知犬訓練センターが整備されたのは一九八七年でございます。麻薬探知犬は、他の使役犬と異なり、民間業者等が取り扱うことのできない不正薬物のにおいを探知するよう訓練する必要があることから、税関職員みずからが育成、訓練する必要があり、そのため、候補犬の調達や訓練方法について、長い年月をかけて独自にノウハウを蓄積してきたところでございます。
こうした努力を行いつつ、これまで、訪日外国人旅客数や輸出入貨物の増加の状況等に適切に対応しながら、準備、配備数を増加させてきており、現在では、全国九つの税関に十二カ所の麻薬探知犬の管理施設を設け、合計約百三十頭の麻薬探知犬を管理しつつ、空港、海港、あるいは国際郵便局などで効果的、効率的な取締りを行っているところでございます。
今後とも、麻薬探知犬の計画的な育成、配備に努め、厳正な水際取締りの実施に取り組んでまいりたいと考えております。
○近藤(和)委員 麻薬探知犬訓練センターに幾らかかったのかということにはお答えいただけませんでしたが、時間もないので、私の方から少し、別のことも含めてお話しさせていただければと思います。
実際には、麻薬探知犬というのは非常に参考になると思います。そしてまた、他国の検疫探知犬ということを少し申し上げますと、例えば、台湾、中国、韓国。韓国は二〇〇一年、中国は二〇〇一年、台湾は二〇〇二年、日本は二〇〇五年からの導入でございます。そして、韓国は何頭いるかわかりませんが、中国は二百十二頭、台湾は四十七頭おります。そして、訓練センターということでいきますと、台湾も中国もございます。韓国はあるかわかりません。そして、オーストラリア、これは二〇〇六年のデータなのですごく古くて現状ははっきりしませんが、現状でも百頭以上おります。そして、訓練センターも当然あります。
日本が他国に比べておくれている。本当であれば、私たちの日本は、花咲かじいさんであったり、また桃太郎であったり、里見八犬伝であったり、犬には文化的にはなじんでいるはずなんですけれども、犬を活用するということでは後進的であると言わざるを得ないと思っています。
そして、今後の国策ということでいっても、インバウンドの拡大、当然、防疫ということに関していけば、リスクは高まります。そして、入国管理法も改正されました。外国人の労働者がどんどん入ってきます。いとしの息子、娘に対して、ふるさとの味を食べさせてあげたいという親心は万国共通だというふうにも思います。こういったリスクがどんどんどんどん拡大していきます。
そしてさらに、空港で見て感じたんですが、悪意のない方だけじゃなくて、悪意のある、日本の養豚業に若しくは日本人に対して悪影響を与えてやろうという悪意を持った人も入ってくる可能性があります。小型のビーグル犬ですから、やはり腰よりも上には反応しづらい。やはり犬が飛びかかってきたら怖いですからそれもいたし方ないとは思いますが、悪意のある人がリュックに担ぐ、そして胸ポケットに肉製品を入れる、そして持ち込んでくる。そしてさらには、複数人、三人、四人、五人で連続して入ってくることによって、その網をかいくぐってくる。こういうことも、テロ的な行為も今後考えていかなくてはいけません。嫌なことも想定をするということは、これは為政者として大変重要なことだと思います。
そして、ぜひとも大臣、現状において、検討していくということで言われましたが、予算だけじゃないのか、ほかの要因があるのかどうかといったことも含めて、予算以外のこういったことが問題なんだよということであれば、お答えいただきたいし、予算だけの問題であればもっともっと頑張っていかなくてはいけないといったことも含めて、答弁をよろしくお願いいたします。
○吉川国務大臣 水際対策を強化する上で、検疫探知犬や家畜防疫官は重要な役割を果たしているということを私も極めて大きく認識をいたしているところでもございます。
検疫探知犬につきましても、五年前と比べて二・四倍となる計三十三頭を配備をして、体制強化に取り組んでいるところでもございまするけれども、最近のインバウンド旅行者の拡大に向けた取組が進められる中にありまして、増大する越境性動物疾病の侵入リスクに適切に対応できますように、今後とも、検疫探知犬や家畜防疫官の計画的な増強について、地道に検討を進めなければならないと存じております。
どの程度増加を図ることができるか、今後しっかりと打ち出してまいりたいな、こうも思っておりますし、現在、民間事業者が育成した検疫探知犬を導入いたしているところでございまするけれども、今後の増頭に当たりましては、十分な頭数の確保が可能とも実は考えております。
業者によりますと、年間十頭以上の増頭にも十分対応できるとも聞いておりますので、今も申し上げましたように、どの程度増加を図ることができるか、今後ともしっかりと打ち出してまいりたいと存じます。
○近藤(和)委員 時間が参りましたので、終わります。
もうちょっと踏み込んだお答え、今後ともよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
○武藤委員長 次に、森夏枝君。
○森(夏)委員 日本維新の会の森夏枝です。
本日も質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。
それでは、早速質疑に入らせていただきます。
前回の質疑では、障害者、女性農家さんたちへの支援について伺いました。日本の農家を守っていくためには、障害者、女性の皆さんにもぜひ活躍をしていただきたいと思っておりますが、若手農家さんたちにも、ぜひ活躍をしていただきたいと思っております。
そこで、本日は、若手農家さんたちに対する支援について伺います。
前回、女性農家さんたちがおしゃれをして農業をしているという話をさせていただきましたが、私がお会いした男性の若手農家さんたちの服装も、地味な色の服装ではなく、赤や青といった派手な色のおしゃれな服装で作業をされておりました。
最近では、農業ファッションブランドのネット通販等もされており、おしゃれな農作業着も売っていますので、これからの農業は、若い方、女性がふえるにつれ、イメージも変わっていくかと思います。
若手農家さんたち自身が、農業の、きつい、汚い、危険といったイメージを払拭して仲間をふやそうと努力をされ、また、積極的にITも導入して、危険でない、きつくない、新しい農業に取り組まれているようです。
これからの若手農家さんたちには、ぜひ、新しい農業、そして、攻めの農業、攻めの農林水産業に取り組んでいただきたいと思いますので、国としてのサポートをお願いしたいと思っております。
まず、新規就農支援について、第三者による経営継承支援について教えてください。
○大澤政府参考人 お答えいたします。
まず、新規就農者につきましては、新規就農を促進するために、就農準備段階あるいは経営開始直後の青年農業者を対象とした資金の交付、それから、農業法人における雇用就農者の研修の支援、無利子融資を活用した機械、施設等の取得の支援などを実施してございます。
このうち、青年就農者を対象とした資金の交付につきましては、さらに、新規就農者の裾野を拡大するために、平成三十一年度から、対象年齢を原則四十五歳未満から五十歳未満に緩和したところでございます。
また、無利子資金につきましては、無利子融資の償還期限を現行の十二年以内から十七年以内にするよう関係法案を提出しているところでございます。
続きまして、第三者継承でございますけれども、第三者継承につきましては、日本政策金融公庫が平成三十年七月に実施したアンケート調査によりましても、法人の中でも、後継者がいる、候補がいるという回答をした法人の約三割が、親族以外の役員や従業員などが後継者候補となっているということで、人材不足が非常に深刻な中で、法人についても、第三者継承も視野に入れながら対策を考える必要があると考えているところでございます。
そういうことから、三十年度、今年度から、都道府県段階に農業経営相談所を設置いたしまして、中小企業診断士などの専門家と連携して、農業法人の抱えるさまざまな経営問題について伴走型支援を始めたところでございますが、その中で、その課題の一つといたしまして、円滑な継承に必要な将来に向けた経営方針の策定、それから承継計画の策定、そういうものの支援を行えるように措置しているところでございます。
○森(夏)委員 ありがとうございます。
新規就農者に対しては、今後とも手厚い支援をしていただいて、若者が農業を職業として選択しやすい環境を整えていただきたいと思います。
私のイメージする若手農家さんというのは、十代、二十代、三十代、四十代の方もそうですが、ぜひ若い方にどんどん農業に参加していただきたいと思っております。
少子高齢化や収入の不安定なことを理由に、後継者のいない農家さんもいらっしゃいます。新規就農者に対して、先ほどもお話ありましたけれども、この第三者による経営継承もうまくいくように、しっかりと取り組んでいただきたいと思っております。
これまで農業を守ってきた親世代や先輩農家さんたちから技術やお知恵を受け継ぎながら、若手農家さんたちには、若い新しい発想で付加価値をつけた高品質な物づくり、世界と戦える攻めの農業にぜひチャレンジをしてほしいと思っておりますので、国としての後押し、大変重要だと思いますので、今後ともよろしくお願いします。
次に、農家の子供による経営継承について、どのような支援策があるのか教えてください。
○大澤政府参考人 お答えいたします。
農家の子供による就農、いわゆる親元就農につきましての農林水産省の支援についてお答えいたしたいと思っております。
よく国として出しております、四十九歳以下の新規就農者、こういう統計を出しておりますけれども、このうち約半分が親元就農ということで、次世代の農業を担う人材を確保するためには、農家子弟のニーズに応じた支援、こういうものを行っていくことも非常に重要なことだと考えております。
一般的な支援といたしましては、例えば、農地の相続時の税負担を軽減するための納税猶予制度でありますとか、入ってきた方に、普及指導員による農業技術のサポートでありますとか、これは最近できたんですけれども、働きながら農業経営を学べる場というのを各都道府県段階に整備しておりまして、これを農業経営塾と呼んでおりますけれども、こういういろいろな制度の中で、親元就農さんの技術面あるいは経営面のサポートをしているところでございます。
また、先ほどお話をいたしました農業次世代人材投資事業、これは新規就農の方を基本的に想定はしておりますけれども、この親元就農の方も、新規作物の導入あるいは経営の多角化を行うなど、新規参入者と同等のリスクを抱える場合には対象といたしておりまして、就農直後の経営確立を支援しているところでございます。この点についても、三十一年度から改善を考えております。従来は、親から子に農地の所有権移転をすることを要件としておりましたけれども、三十一年度からは利用権の設定でもよいというふうに改善することといたしまして、これも現場のニーズに基づくものでございます。
現場の実態を踏まえた見直しを行いながら、今後とも支援を行ってまいりたいというふうに考えてございます。
○森(夏)委員 ありがとうございます。
私、実は、ある畜産農家さんにちょっと担い手についてお聞きしたときに、担い手不足、担い手不足とよく言われるんだけれども、担い手は本当はいるんだと。自分たちには息子や娘もいて、担い手になる人材はいるんだけれども、食べていける職業かどうか、継がせるかどうかはそこなんだというお話を聞きました。
担い手不足対策として、よく新規就農者への支援をしっかり取り組んでいただいているのはわかるけれども、一生懸命農業をやって、子供のころから親の仕事を手伝って、農業を継ぐと決めた若者にももう少し手厚い支援をしてもらえたら、農家を継ぐ若者はもっとふえるとおっしゃっておりました。
私がお話をお聞きした農家さんは、日本の畜産業を守ってきたと自負をしている、今の仕事に誇りを持っていると話されておりました。熱い思いを持った農家さんたちがたくさんいらっしゃいます。その思いを受け継いで、若い人たちに農業を継いでもらい、今後の日本の農業を支えてもらえるようにしっかりと支援をお願いしたいと思っております。
ぜひ、若者が農業を職業として選択するような未来ある産業にしてほしいと思います。そして、補助金を出して終わりではなくて、その補助金を使って成功した農家さんの事例を紹介するなど、ぜひ積極的に情報発信、情報共有をしていただいて、多くの農家さんたちが攻めの農業に取り組めるようにサポートをしていただきたいと思っております。
次に、福島の風評被害対策について伺います。
農林水産委員会でも、福島の風評被害対策については何度か質問をさせていただいております。
三月十一日で東日本大震災から八年が経過しましたけれども、まだまだ風評被害はなくなっておりません。あの震災から立ち上がり、努力をされている皆さんの思いに、国が、そして日本国民が寄り添わなくてはなりません。
津波被災農地も九二%まで営農再開可能となり、被災三県では、業務再開を希望する水産加工施設の再開状況も九六%と、施設においては復旧復興が進んでいると思います。しかし、営農は再開できても、業務を再開しても、風評被害で福島のものが売れなければ、本当の意味での復興にはなりません。
施設の復旧復興は進んでいるとお聞きをしておりますが、売上げの回復状況などもあわせて、福島県の水産業、水産加工業の復興状況について教えてください。
○長谷政府参考人 福島県の水産加工業の復興状況についてのお尋ねでございました。
まず、福島県におきましても、再開を希望する水産加工施設につきましては、本年一月時点で九四%が操業再開をしております。しかしながら、三月八日に公表いたしましたけれども、水産加工業者における東日本大震災からの復興状況アンケートの結果を見ますと、福島県におきまして、生産能力が八割以上回復した事業者は二八%にすぎません。さらに、売上げ面で同水準に回復している事業者となりますと一七%となっておりまして、他の被災県と比較して復興が大きくおくれている状況にございます。
このため、福島県産水産物の販路回復、風評払拭対策につきまして、まず、県や業界団体と連携してモニタリング調査を実施し、その調査結果をホームページ等で提供するとともに、イベント等の機会に説明を実施したり、それから、福島県水産物競争力強化支援事業によりまして、東京、埼玉、宮城のイオンの八店舗におきまして福島県産水産物を福島鮮魚便として常設で販売いたしまして、専門の販売スタッフが安全、安心とおいしさをPR、さらに、平成三十一年度からは、新たに外食店への販売ルートの開拓等の支援を行っているところでございます。
今後とも、復興庁を始め関係省庁、自治体とも連携しながら、福島県の風評被害の払拭に粘り強く取り組み、売上げの回復を全力で支援してまいりたいと考えております。
○森(夏)委員 ありがとうございます。
質問の順番を変えさせていただきます。
福島米の風評被害の現状についても伺わせていただきます。
福島米のブランド米が業務用米や飼料米となっている現状に、福島の農家さんたちは複雑な思いでお米をつくっているとお聞きをしました。福島米の風評被害について、どのように現状認識され、今後どのような対策を講じるお考えか、教えてください。
○天羽政府参考人 お答え申し上げます。
福島県産米の風評被害の現状などについての御質問をいただきました。
農林水産省におきましては、福島県や復興庁、経済産業省とも連携いたしまして、福島県産の農産物等につきまして、いわゆる風評被害などによる販売不振の実態を明らかにするための調査を行っております。
お米につきましては、調査の二十九年度報告書によりますと、全国平均との価格差につきましては縮小傾向にあるということでありますけれども、震災前の水準までには回復していない。
また、大手オンラインストア三社での福島県産の農産物の売上実績は、昨年度、十五・五億円であったものが、三十年度は、本年三月九日現在で既に二十億円を突破し、そのうち、お米の販売額のシェアが七二%に及ぶといったようなことで、販売は着実に回復してきている状況にあると承知をしております。
引き続き、福島県産米の評価を、震災前の水準、さらには、それを超える状況にまで高めていくための取組も重要であるというふうに考えておりまして、農林水産省といたしましては、量販店におけるイベントなどを通じましたPRに対する支援を行うなど、福島県の取組を支援しているところでございます。
○森(夏)委員 ありがとうございます。
風評被害対策については、本当にしっかり取り組んでいただきたいと思います。
もう一問させていただきます。
水産物の海外の輸入規制に対する対策についてお聞きしたいと思います。
この問題については以前にも質問をさせていただいておりますけれども、八年たった今、これらの国に対して、今後更にどのような対策をお考えか、短くお願いします。
○小里副大臣 原発事故に伴いまして諸外国・地域において講じられている放射性物質関係の輸入規制に対しましては、さまざまな機会を捉えて撤廃、緩和を求めてまいりました。
その結果、何らかの規制を設けている国・地域の数は、事故後の五十三から二十四にまで減少をしております。最近では、シンガポールやロシアにおいて緩和が実施をされているところでございます。
一方で、今なお輸入規制を維持している国・地域の中には、国産水産物の主要な輸出先である香港、中国、台湾、韓国等も含まれております。これらの国・地域に対しては、一刻も早く輸入規制の撤廃、緩和が行われるよう、引き続き、科学的な根拠に基づきまして、政府一体となって粘り強く働きかけてまいります。
○森(夏)委員 ありがとうございます。今後もしっかりとお願いします。
五十三カ国・地域から二十四カ国・地域に減少したというのは、大変、国として取り組んでいただいた結果だと思います。
ですが、基準値以下です、安全ですというアピールでは風評被害はなくなりません。日本国内にも、福島のことを大変心配して支援したいと思っている方の中にも、福島のものを買わない、そういう方がいるのも事実です。やはり、第一原発事故の処理、これはまだまだ時間がかかることは理解をしておりますが、放射能は目に見えないものですので、やはり多くの方々が不安に思われているのが事実です。
今後も、福島、東北の被害払拭のために、関係省庁と連携をして全力で取り組んでいただきたいと思います。
以上で終わります。ありがとうございました。
○武藤委員長 次に、福山守君。
○福山委員 自由民主党の福山でございます。
きょうは、お時間をいただきまして、ありがとうございます。
私の質問は、きょう佐々木先生が先ほど少しやった冷凍精子と……(発言する者あり)はい。その問題について、ちょっとやらせていただきたいと思います。
実は、三月三日の日に、我がふるさと徳島で、畜産農家にとって激震が走りました。それは、凍結精液あるいは受精卵、これが販売元が徳島というふうに、某大手新聞の西日本版に大きく出ました。その日、いろいろな形で揺れたんですけれども。
この案件は、もともと、もとをただせば、昨年の七月に出た案件だったように思います。実は、このとき私は、いろいろな知識、私自身がよくわからない部分もあったと思いますけれども、今、豪州のWAGYUという、こういう形で、これについても、こういうのが密輸出されて、これが氷山の一角なんだろうなというふうな認識でおりました。
ところが、この後、農水省が一月に、家畜伝染病予防法違反で大阪府警に告発をいたしました。その結果、捜査した形が流れてきたのが、この三月三日に載ったわけで、先般逮捕者も出たわけですけれども、こういう事例は非常に珍しいと思います。今回、農水省が踏み切ったのは非常に大きなことだ、私もいいことだと思っております。
ただ、やったときに、先ほどちょっと佐々木先生が言った部分もそうなんですけれども、持ち出したのは、日本のフェリー、大阪からフェリーに乗っていっておるんですね。そのフェリーに乗っていって、日本からは持ち出せているんですよ。そして、上海で上陸するときに、証明書がなかったということで上陸できなかった。今、捜査が進んで、逮捕者も出て、わかっている範囲でいけば、そういう罪の意識はなかったみたいで、帰ってきたときに税関に報告をする、そういう形で今回のがわかったというふうな形に聞いておるんです。
そのあたり、今は、昨年豚コレラがいろいろはやって、防疫の方とかそういうのは非常に厳しくやっていただいておるんですけれども、この問題というのは非常に私は大きいと思うんですね、日本はすり抜けられているんですから。だから、この問題についてどう思われておるのか。今後懸念があるし、いつどういう形で出たというのを農水省は把握しておったのか、それでその後どう手を打ったのか、まずお伺いしたいと思います。
○小川政府参考人 お答え申し上げます。
家畜伝染病予防法は、家畜の伝染性疾病の発生を予防し、蔓延を防止することを目的としております。アフリカ豚コレラなど越境性の動物疾病の発生を予防するためには、まず、海外からの家畜の伝染性疾病の侵入を防止することが必要になります。
この侵入防止措置の効果は、輸出国が病気にかかっている家畜などを輸出しないという国際的な相互協力によってより高まっていくことから、我が国も諸外国に家畜の伝染性疾病を伝播させないよう措置をとる必要がございます。その考えに従いまして、家畜伝染病予防法に基づき輸出検査を実施しているところでございます。
具体的には、牛の精液や受精卵を含む動物由来製品を輸出しようとする者は、動物検疫所の輸出検疫を受け、輸出検査証明書の交付を受けなければならないこととなっております。今回はその輸出検査、輸出検査証明書の交付を受けていなかったものでございます。
これまでも、こうした輸出検査につきましては、海外旅行される方を対象にホームページ等で制度を説明したり、船舶会社、航空会社、税関等の関連業者に周知を行ってきたところでございます。
今回の事案を受けまして、輸出検査に係る対策につきましては、国際定期フェリーが就航する港における動物検疫所の職員による見回りの強化を行うとともに、船舶会社、航空会社、税関等に対しまして受精卵等の輸送に用いられる容器の外観を周知いたしまして、同様の貨物を輸出しようとした者がいた場合には動物検疫所に連絡するよう要請したほか、中国当局に対しましても、今後違法な持ち出し、持込みがあった場合には我が国に情報提供いただくよう協力依頼を行っているところでございます。
今回の事案も踏まえまして、引き続き、本件の再発防止に向けて実効上有効な対策を行ってまいりたいと考えております。
○福山委員 済みません、いろいろ、たくさん聞きたいことがあるので、時間、はしょりますけれども。
今回は家畜伝染病予防法の違反容疑で府警に告発をした。ただ、同法律は、今言われた、家畜の伝染疾病の発生や流行を防ぐことが目的である。家畜の輸出規制が主な趣旨ではないわけですよね。
さらに、今回、畜産農家がどういう違反かというと、家畜改良増殖法上の問題が指摘をされておる。この人が罪になったと決まっていないのでこれ以上のことは言いませんけれども、そういう法律の中でやっておる。これは、品種改良を進めて畜産振興を図る目的で定められておって、販売先は制限していないんです。売ってくれと言えば売る。だから、電話がかかってきて、不穏な人だなと思ったけれども、幾らでも買ってくれるということで、数百万で売ったということなんですね。
これは、今何が一番問題かというと、法的に、まずこれは、海外に対する輸出の、輸出といいますか外へ出る話をすれば、今、和牛という最高品質の、日本のこういう遺伝子を持った家畜がいますけれども、こういうものに対して、そういう流出を防ぐための法律、こういうものが完備されていないです、まだつくられていないということが大きな問題だと思うんですけれども、このあたりはどのようにお考えですか。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
委員から今御指摘いただきました輸出の禁止の関係でございますけれども、平成十八年に農林水産省が開催いたしました家畜の遺伝資源の保護に関する検討会におきましても検討がなされた経緯がございます。
当時の議論では、外為法に基づきます必要最小限度の管理として、例えば武器ですとか弾薬等と並んで和牛遺伝資源の輸出を規制するということが議論されましたけれども、WTO協定との整合性等を確保することが難しいのではないかという議論がなされているところでございます。
なお、今般の流出事案を受けまして、和牛遺伝資源の流通管理に関する検討会を農林水産省に設置いたしまして、平成十八年当時の議論の経緯も踏まえながら、我が国における和牛遺伝資源の適正な流通管理の確保に向けて、現在、有識者に御議論いただいているところでございます。
今後、この検討会で出されました御意見等も踏まえまして、どのような対応ができるのかを検討してまいりたいと存じます。
○福山委員 これについては更にちょっと聞きたいことがあるんですけれども、先に、これは海外に対するそういうことを考えなきゃいけない。それと、国内に対していろいろな形で、百八十万本ぐらい今生産されるということをちょっと聞いたこともあるんですけれども、和牛遺伝資源の国内での適正な流通を確保するために、精液、受精卵の購入者の登録制度や流通の監視体制を強化するトレーサビリティー制度、こういうものをやったらどうかということですね。
先ほど言いましたが、我が徳島県から出たので、今、徳島県としても、そういういろいろな意味で、こういうのは、できていなかったから、法律がないから、違法じゃなしにどないでもできるんだよ、これでは困るから、いろいろな形で県の方も、やはり名誉挽回のためにも、私どもいろいろなそんな話もしたんですけれども、今言ったトレーサビリティー制度というのをどう思われますか。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど申し上げた平成十八年の検討会でも、流通経路の確認をどのようにして行うかということが課題になりまして、精液、受精卵の流通過程における譲渡先の記録を残すように家畜改良増殖法施行規則を改正いたしまして、精液証明書等の記載事項に譲渡先を追加したところでございます。
現在行っております検討会におきましても、そういう流通管理の問題の御指摘等も出ておりまして、今後、その検討会等で出された御意見等も踏まえまして、どのような対応ができるのかを検討してまいりたいと存じます。
○福山委員 このあたり、やはり地域によってもあると思うんですね。和牛でも、鹿児島とか宮崎とか、本当に和牛の、あるいは神戸牛、そういうふうなところと、比較的低い地域、いろいろあると思うんです。そのときに、どういうふうな形でそれが流れるか。
日本の和牛という名前だけでいいのであれば、かえって、メジャーなところよりマイナーの方がそういうのをやりやすい。そういう中で、幾ら買って、過去のものが、今回は、おもしろく言えば在庫一掃セールという、八年も九年も前のもの、そういうものも出したそうなんですけれども、そういうふうなことが言われております。
やはり、一番のこれからの問題というのは知的財産と私は思っているんですけれども、こういう問題の中で、先ほど海外のいろいろ規制、あるいはそういう話もお聞きしましたけれども、私は腑に落ちなんで、これは新聞にもちょっと、報道にも出たことがあるんですけれども、現在は輸出されていない和牛が、一九九八年まで二百四十七頭の牛がアメリカの方に輸出された、そして精液約一万三千本が米国の方に渡っておるということ、これが流れて今のオーストラリアのWAGYUになっておるというふうなことも私自身は聞いております。これは和牛より肉質は当然劣るということでございますけれども、私は、この点についてちょっと納得がいかないと思うんです。
このあたり、ちょっと御説明、ある程度は私も今わかってきたんですけれども、調べていると。ちょっと説明してください。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
我が国からの和牛の遺伝資源と申しますか、それの輸出でございますけれども、昭和五十一年に黒毛和種二頭、褐毛和種二頭の計四頭が試験研究用としてアメリカの大学に輸出をされました。その後、平成三年から平成十年までの間で商用といたしまして米国に輸出されておりまして、合計で生体で二百四十七頭、精液一万三千本の遺伝資源がアメリカに輸出をされてございます。
なお、豪州につきましては、日本から直接ではなくて、アメリカから豪州の方に輸出をされているというふうに承知をしてございます。
その後、団体によります輸出自粛の取組、また、平成十二年の我が国における口蹄疫の発生によりまして各国との家畜衛生条件が停止されたことから、平成十一年以降は輸出実績はございません。
○福山委員 これがアメリカに渡った理由、当時の形の中でいろいろあると思います。ただ、そのときはそのときの状況で、今はもう口蹄疫からいろいろそういうものがあった問題でとまっている、これもわかります。
知的財産、先ほど言いましたけれども、畜産においては非常にそれが絞りにくい。先ほど話もございましたけれども、サクランボあるいはブドウあるいはイチゴ、こういうものについては、ある程度の形でできる、知的財産としてできるということもありましょうけれども、畜産というのは非常に難しい。
私がある程度聞いた中の、整理した形で言いますと、国は和牛の遺伝資源が海外に流出すれば国内の畜産業がダメージを受けかねないと警戒してきた。これは事実でございます。畜産農家が改良を重ねて品質を高めた成果が海外に流れ、類似した肉牛が生産されると、ブランドが毀損され、和牛肉の輸出にも影響を及ぼしかねない。
こうしたことから農水省は、二〇〇六年から七年まで和牛を含む家畜の遺伝資源保護へ向けた検討会を設置し、しかし、家畜の遺伝にはばらつきがあり品質が必ずしも安定しないため、知的財産として保護するのが難しいとしてルールづくりが見送られた。以来、家畜の遺伝資源保護へ向けた法整備は進んでこなかった。
現在は、受精卵や精液の管理、販売は、家畜改良増殖法に基づき、原則として都道府県が許可した施設に限られているが、販売先の制限はなく、誰にでも売れる状況になっている。牛の資源は、植物とは先ほど言ったように異なり、知的財産として保護する仕組みをこれまで設けることができなかった。そういうふうなこと。難しいんですけれども、ただ、それでは済まないと思うんですね。
現在、先ほど法律的な話もしましたけれども、いろいろな形で、ざるみたいに、これといった法律がないというのが今の現実で、それをやろうとしたことも、農水省も、動いたことも動いたでしょう。しかし、できなかった。そしてさらに、今回もやろうと、二月にそういうのをつくったというのも伺っております。
こういう形の中で、この問題点ですね、和牛の改良を重ねた、こういう知的財産に関する話はどういうふうに思われますか。
○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
家畜の遺伝資源の知的財産としての保護、活用でございますけれども、先生御指摘ございましたとおり、平成十八年の検討会でも、植物に関する知的財産について定めます種苗法を参考に検討がなされました。
ただ、種苗法に基づく育成者権という観点から見ますと、同一世代でその特性が十分均一であること、また、何代増殖を繰り返しても特性が安定していること等の要件を満たせば、新品種として登録することができるということにされてございます。また、新品種の育成者権を国際的にも保護する必要がございますけれども、そのための条約、いわゆるUPOV条約がございます。
他方、和牛などの家畜の場合には、仮に親が同一であっても、精液や受精卵の段階では形質が未確定であり、同じ能力の牛を増殖することは困難であること、また、植物のような国際条約も存在せず、種苗法のような法律による保護は難しいという考えに至った、そういう経緯でございます。
○福山委員 実は、きのう、初めて、この問題について自民党のPTが立ち上がりました。私も、地元からこういうのが出たので、入れていただいております。これはやはり、そう簡単な話ではないと思うんですね。しかし、これは何としてもやり遂げなきゃいけない保護の問題で、和牛の保護のためにもやり遂げなきゃいけないというふうに思っております。
最後でございますけれども、小里副大臣にちょっとお願い、またお考えを整理していただきたいんですけれども、小里副大臣は、特に農業、畜産については大変造詣の深い副大臣でございます。また、今、豚コレラも大変な状況の中で、御活躍いただいております。
今回、このような事案が出て、この日本の和牛というのは、まさに世界に誇る品種でございます。これをしっかり守るためには、我々も一生懸命、部会の中で、あるいはPTの中で意見を出してまいりたいと思うんですけれども、やはり、政府の方が一体となってしっかりとやっていただくことが私は一番だと思っておりますので、御決意、お考えをお伺いできればと思っております。よろしくお願いします。
○小里副大臣 先ほどから御指摘のとおりでありますが、和牛は、関係者が長い年月をかけて改良してきた、我が国固有の貴重な財産であります。そのため、和牛の、海外資源の、海外への流出には大変大きな危機感を持っているところであります。
農水省では、本件の再発防止に向けまして、全国の家畜人工授精所等に対して、和牛遺伝資源保護に関する理解の醸成や、精液等の適正な流通管理の徹底について改めて周知を行っておりますとともに、船舶会社、航空会社、税関等に対して、受精卵等の輸送に用いられる容器、通常、液体窒素のボンベに入れるそうでありますけれども、そういった容器の外観を周知して、同様の貨物を輸出しようとした者がいた場合には動物検疫所に連絡するように要請をしたところであります。
また、今般の事案を受けまして、和牛遺伝資源の流通管理に関する検討会を農林水産省に設置をいたしました。我が国における和牛遺伝資源の適正な流通管理の確保に向けまして、現在、有識者に議論をいただいておるところであります。
ここまで議論をいただいてまいりましたように、植物とは違う難しさがあるところでありますけれども、この検討会で出された御意見等も踏まえまして、どのような対応ができるか、しっかり対応してまいりたいと思います。
さらに、我が国の優良な植物品種につきましては、海外流出を防ぐために、新品種について海外で知的財産権として保護されるよう支援を行っているところでありまして、平成三十一年度当初予算におきまして必要額を計上する等、しっかり対応してまいります。
○福山委員 どうもありがとうございました。よろしくどうぞお願いいたします。
〔委員長退席、伊東委員長代理着席〕
○伊東委員長代理 次に、稲津久君。
○稲津委員 公明党の稲津久でございます。
通告に従って順次質問してまいります。
まず最初の質問は、TACの魚種の追加、またIQ制度導入での対応についてということで、趣旨は、いわゆる科学的な知見にしっかり基づいた上で、かつ、漁業者の意見をしっかり聞いていくべきだ、そうした視点で質問させてもらいます。
先日、北海道議会から、農林水産大臣始め、議長、総理にも意見書が提出をされました。意見書は、水産政策改革における対応について、こうした意見書でございます。
いわゆる漁業法等の一部を改正する等の法律、これは昨年議論をさせていただいて、昨年十二月十四日に公布がされたということで、この法改正に伴って、資源管理の措置、それから漁業権制度、こうした漁業生産に関する基本的な制度が一体的に見直されたわけでございますけれども、この北海道議会からの意見書の内容については、要約しますと、資源管理に関しては、TAC魚種の追加や個別の漁獲割当て制度による管理を強化するとしているが、導入に当たっては、資源量や漁獲量を正確に把握した上で導入することが必要である、特にクロマグロなどのTAC管理においては、多種多様な魚種をさまざまな漁法によって漁獲している本道漁業の特性を踏まえて、関係者からの十分な理解を得るべきだと。
大変オーソドックスなことでございまして、したがって、TACの魚種の追加ですとかIQ制度の導入に当たっては、科学的な知見は当然として、その上で、漁業者の意見を十分に聞いていただきたい、そして、クロマグロの資源管理、先ほど申しましたように、この操業の抑制ですとか、特に、前に私もこの委員会でもお話し申し上げましたけれども、定置網の場合、いろいろな魚が入ってくるわけですから、いわゆる定置網の開放とかそういうこともありまして、漁業経営に影響を及ぼす、こうしたことを懸念した上で、地域事情をよく考慮して意見を聞いていただきたい、こういう趣旨の意見書が出されたところでございます。
こうした考え方について、あるいはその対応等についてどのようなお考えをお持ちか、この点についてお聞きしたいと思います。
○小里副大臣 昨年十二月に漁業法が改正されまして、漁業を取り巻くさまざまな環境変化に対応するために、資源を維持、回復させる目標を関係者と共有して、これを実現するために、数量管理に軸足を移した資源管理を行うこととされたところであります。
法律の成立に際しまして、衆議院の附帯決議では、漁獲可能量及び漁獲割当て割合の設定等に当たっては、漁業者及び漁業者団体の意見を十分かつ丁寧に聞いて、現場の実態を十分に反映するものとすることとされております。
また、漁獲割当ての沿岸漁業への導入については、多種多様な資源を漁獲対象としている特性を十分踏まえまして、資源評価の精度向上、管理手法の確立、漁業経営への影響緩和策の充実等万全の体制が整うまで慎重を期することとされているところであります。
このことも踏まえまして、法律成立後も、漁業関係者や都道府県との意見交換を行っておりまして、このような中でさまざまな意見を伺っているところであります。
今後も、公布後二年以内と定められている法律の施行に向けまして、引き続き、漁業関係者や都道府県の意見もしっかりと聞きながら、着実に準備を進めてまいりたいと思います。
○稲津委員 施行まで二年あるわけですから、今御答弁いただいたように、しっかり関係者の方々に、丁寧な説明、そして理解をいただけるようによろしくお願い申し上げたいと思います。
次の質問は、北海道のアキサケ不漁の認識についてということで質問させていただきます。
昨年十二月の十三日に、北海道定置漁業協会、ここが主催の定置漁業振興会議が開催をされました。ここには、道立総合研究機構さけます・内水面水産試験場も同席をいたしまして、その際に、アキサケの状況についての報告があったところでございます。
その内容を見ますと、北海道のアキサケの来遊数、これは昨年の十一月の三十日現在で、前年の最終実績と比べて三三%ふえたという報告があったんですけれども、ただ、全体の来遊数というのは、漁期の、漁の始まる前の予想としては、実は比べると二六%下回っていたということで、平成に入ってから、実は一昨年に続いて二番目に少ない状況です。大変深刻な状況だというふうに受けとめております。
特に年齢別の来遊魚、サケの四年魚が七八%、五年魚が五一%、いずれもよろしくないということなんです。特に、今申し上げましたように、五年魚が、平成以降では最低となった一昨年から更に、実に半分まで減っている、こういう極めて深刻な状況です。このときに、この会議の中で、北海道定置漁業協会の方からも、国や北海道、そして試験研究機関に、資源の回復に向けて一層の尽力をお願いしたい、こういうお話があったところです。
私は、このことを踏まえて、農林水産省として、アキサケの北海道の来遊数の状況をどのように認識をして、また今後どのように対応されようとしているのか、この点についてお示しいただきたいと思います。
〔伊東委員長代理退席、委員長着席〕
○濱村大臣政務官 委員御指摘のとおり、平成三十年の北海道のアキサケの漁獲量は約六万四千トンでございまして、これは、過去三十年間で最低でございました平成二十九年の約五万四千トンの約二割増しとはなっておりますが、過去十年の平均漁獲量と比べると約四割減っている状況でございます。
近年のアキサケの不漁の要因といたしましては、海水温の変動によりまして、稚魚が海におりる時期の海洋環境が生存に不適であったことによる回帰率の低下が指摘されております。このため、これまで、放流後の稚魚の生き残りを向上させるために、ある程度育ててから、放流時期あるいはサイズの検証や、より健康な稚魚を育成する手法の開発等に取り組んでいるところでございまして、平成三十一年度当初予算におきましては、新たに、ふ化場の種苗生産能力に応じた適切な放流体制への転換を図り、放流後の生き残りを向上させる取組等に必要な予算を計上しているところでございます。
また、平成三十年四月に、水産庁と国立研究開発法人水産研究・教育機構が共同で開催いたしました機構の研究体制のあり方に関する検討会におきまして、機構の研究内容の見直しや施設の集約化、合理化を内容といたします、外部有識者による提言が取りまとめられました。
本提言におきまして、機構が行いますサケ・マスふ化放流事業につきましては、別途、関係者による議論が必要とされたことを受けまして、ちょうどあす、三月十五日でございますけれども、札幌市におきまして関係者による第一回検討会を開催し、今後、一年間かけて事業のあり方について議論することとされており、回帰率向上に資する研究開発のあり方につきましてもあわせて検討していくこととなっております。
このような施策を通じまして、アキサケの回帰率の向上に向けて取り組んでまいりたい、このように考えております。
○稲津委員 答弁ありがとうございました。
いわゆる対策等については、着手しているという答弁だったと思います。それから、その検討会議ですか、これについても、実施をすることがいよいよスタートするというお話で、ここまでは私も十分理解ができます。
そこで、今お話のあった水産研究・教育機構のことでありますけれども、今の御説明のとおりだと思うんですけれども、これは、平成二十九年それから三十年にかけて、年をまたいでいるので正味半年ぐらいですけれども、ここで、水産庁と水産研究・教育機構で共同で開催したこの検討会、正確に言うと、研究体制のあり方に関する検討会、そこで、サケ・マスの人工ふ化放流について、今のお話のとおり、関係者間の議論が必要である、このように提言がまとめられたということであります。
もう一回、ちょっと戻って考えると、このサケ等のふ化放流事業、これは、この機構による放流、これが大体、平成三十年度でいうと一・三億匹放流している。このほかに、民間で、捕獲目的で放流しているのが、その約九倍程度の十億匹放流しているんです。
ここで大事になってくるのは、やはり、この水産研究・教育機構の放流というのは、これはもう基本は調査研究だということです。ですから、その調査研究のあり方、実効性というものを問わなければいけないと思うんですけれどもね。
今、御答弁いただきましたけれども、実際にこの機構が実施をするサケ・マスふ化放流事業に必要な事業費とか施設の維持更新費、これが削減をされているという実態。例えば、運営費交付金などについては、平成十八年と平成二十九年を比べると、四十億程度ですから、比率でいうと二四・四%削減されている。そして、悲しいことに、ふ化放流経費については、これが三億円程度ですから、平成十八年、比べたら、一八・四%減っています。
こういうことを考えていくと、私は、今お話しのとおり、機構が実施するサケ・マスふ化放流事業のあり方検討、これを開催して、今後、その事業のあり方自体を検討するとありますが、それでは、具体的にどのような視点に立って調査研究を検討するのか、その点についてお伺いしたいと思います。
○長谷政府参考人 ただいま先生からも御紹介いただきましたけれども、北海道におきましては、毎年、民間による約十億尾のサケ・マスのふ化放流のほかに、この水産研究・教育機構が、主要河川ごとの遺伝的な違いを維持するという目的を持って、あと調査研究を目的に、一億四千万尾のふ化放流を行っているところでございます。
そして、先ほど濱村政務官から御紹介いたしました検討会がちょうどあすからスタートするわけでございますが、その中で、機構の行うふ化放流事業の目的の一つである遺伝的な違いの維持を確保しながら、一方で、近年のアキサケの回帰率向上に資する研究開発を含めて、この研究開発を効果的、効率的に実施するための組織体制の導入等によりまして水産業の成長産業化に寄与するという視点に立って、今後あり方の議論を進めていくこととしているところでございます。
○稲津委員 もちろん、予算というのは、その適正というか、それからそのあり方について常に議論をしていかなきゃいけない、そして、その効果というものも検証していかなきゃいけない。そのとおりだと思うんですけれども、しかし、今現実に起きている問題というのは、そのふ化放流の結果として、なかなか回帰してきていない、こういう状況があって、そのことを検討するに当たって、予算を削っていくというのは、私は考え方が逆行していると思いますよ。むしろ、きちんと、少なくとも予算を減らさない段階での研究を進めていくということがまず大前提にあるんじゃないだろうか、このように思うわけでございまして、ぜひ、そこのところもこの検討会でも御議論いただきたいな、このように思うところでございます。
この質問はこの程度にいたしまして、最後に、国産の大規模養殖事業によるサーモンについて、先ほどどなたかも少し触れていましたけれども。
回転ずしに行きますと、私も好きですけれども、サーモンがやはり一番人気みたいで、値段も手ごろで、そして食味もいいということで、回転ずしのネタのサーモンですけれども、実に九割以上がノルウェー産であるというふうにも聞いております。
もう一方で、国産でそれをできないのかという議論があって、そして、青森県で日本初となる生食用のサーモンの養殖事業をスタートしたということで、利点としては、やはり輸入品よりも、当然ですけれども鮮度がいい。それから、輸送コストが少ないですから、そういう利点もあるということが言えると思います。青森県自体も、これは漁業関係だけじゃなくて、県としても地域としてもしっかり支えていこう、そういうことを通して地域の活性化につなげていきたいとお考えだというふうにも伺っております。
そこで伺いますけれども、この大規模養殖事業の生食用サーモン、このことについて、どのように認識して評価されているのか。このことを最後にお伺いして、質問を終わります。
○長谷政府参考人 近年、日本各地におきまして、国内での生食用サーモン需要の増加に応じまして、国内供給の大半を占める輸入養殖サーモンに対抗してブランド化を図る、いわゆる御当地サーモンと言っておりますけれども、この養殖が盛んに行われている状況にございます。
そして、今御紹介いただきましたように、青森県の深浦町におきましては、地元企業が、地域と協調して、効率的な生産を目指した海面での大規模な生食用サーモン養殖を開始しまして、今後拡大を図る方向にありまして、地域の活性化に寄与するとの期待が集まる状況にございます。
農林水産省といたしましては、サーモン養殖を推進するために、我が国の海洋環境に適した海水馴致技術、魚を真水から塩水にならすという海水馴致なんですけれども、その技術、優良品種の開発等を進める必要があると認識しております。このため、平成三十一年度当初予算に必要な予算を計上しているところでございます。
今後、この青森県の深浦町のような先進事例、優良事例を踏まえまして、さきの臨時会で成立した改正漁業法の適切な運用ですとか技術開発を総合的に実施していくことによりまして、サーモン養殖を含む我が国の養殖業を振興して、浜の活力再生を積極的に図ってまいりたいというふうに考えております。
○稲津委員 終わります。
○武藤委員長 次に、田村貴昭君。
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
最初に吉川大臣にお伺いします。
七日の所信質疑でも聞いたところなんですけれども、まず、豚コレラ対策の何といっても重要なことは、海外からウイルスを日本に持ち込ませない、検疫業務が何よりも大事だということであります。急増する来日者数に対して、防疫官が足らない、そして探知犬の数も足らない。体制が追いついていかないもとで、ウイルスが残念ながら侵入した、このことに対する政府の受けとめについて、いま一度お伺いします。
そして、空港や港でこの豚コレラウイルスの侵入を阻むというのが政府の第一義的な責任、責務ではないのですかということをお伺いしたいと思います。
○吉川国務大臣 越境性動物疾病の侵入防止につきましては、水際の検疫強化と農場の衛生管理の向上の両輪で行う必要があると考えております。
水際での検疫は、家畜伝染病予防法によりまして、国の動物検疫所と家畜防疫官が責任を持って担っているところでもございます。このため、家畜防疫官の増員ですとか検疫探知犬の増頭など、水際の体制強化を図っているところでもございます。
一方、我が国におきましては、種々の越境性動物疾病が常在するアジア地域に位置をいたしておりまして、国際的な人や物の往来が増加していることから、水際検疫のみで一〇〇%侵入防止を図ることは非常に難しいとも考えられますが、さらなる越境性動物疾病が侵入するリスクが高くなっていると認識もいたしておりますので、水際での検疫強化には更に努めてまいりたいと存じます。
○田村(貴)委員 やはり空港、港で豚コレラウイルスを侵入させない、ここに政府は第一義的な責任を、責務を負っているということを強く自覚していただいて業務に当たっていただきたい、体制を強化していただきたいというふうに思います。
続いて、小里副大臣に伺います。
副大臣は、何度も岐阜県、感染自治体の方に入られて、農家の方の指導にも当たってこられました。
報道によりますと、飼養衛生管理基準を守れば発生しないであるとか、飼養衛生管理基準が守られていればここまでの感染拡大はなかった、そういうふうに語ったとの報道が見受けられたんですけれども、この言葉だけをもってしてはなかなか私わからないので、ちょっと説明をしていただけますでしょうか。
○小里副大臣 まず、事実確認からさせていただければ、今お話しの、飼養衛生管理基準を守れば発生しないとは申しておりません。一方の、守られていればここまでの感染拡大はなかったと思うということは申し上げております。これは、記者団からの質問に答える形で行ったものであります。ワクチン接種について質問を受けまして、これに対して飼養衛生管理の重要性を説明した中での話であります。
残念ながら、疫学調査チームが発生農場の調査を行った結果、飼養豚への感染につながる要因として何例も挙げられております。例えば、トラクターが野生イノシシの地域を走って、そのまま消毒もせずに養豚場に入っていったという事例や、あるいはまた、決められた専用の靴とか衣服を着用していなかったとかいったような事例等が幾つかありまして、飼養衛生管理基準の遵守がなされていたとは言えない部分があると指摘をされているところであります。
こういった事例を挙げながら、私の方から、飼養衛生管理の遵守、これの重要性についてお話を申し上げたところでありまして、このことは岐阜県知事と面談した際にも申し上げたことであります。
○田村(貴)委員 疫学チームのその解析で、飼養衛生管理基準に照らして守られていなかった、そういう部分があると、今、部分という表現を使われたんですけれども、これは全部が全部そうではないですよね。一くくりにして、飼養衛生管理基準が全体的に守られていないという次元の話ではないというふうに思うわけです。
資料を配らせていただいております。「岐阜県の飼養衛生管理基準の遵守状況」、これは、家畜伝染病予防法に基づいて、生産者は管理基準に基づいて衛生管理を行う、その報告を都道府県がつかみ、そして都道府県の報告を国が掌握し、そして公表している。ですから、農水省のホームページにもあるし、それから岐阜県側のホームページにもある。これは、岐阜県のホームページで公表されている豚の部分についてピックアップしたものであります。二十六年度は書いていないんですが、二十六、二十七、二十八と、ほぼ同じ傾向であります。
まず、全農家数に対して、「指導が不要であった」、指導の必要がなかったという農場数は、大多数であります。そして、「指導を行った農場数」は、あるんだけれども、「うち、改善済」というのが平成二十七年にもあり、二十八年は、「改善指導中」もあるんだけれども、「改善済」もあるわけなんですよ。大多数のところが「指導が不要であった」と。だから、農家にしてみたら、法と飼養衛生管理基準に基づいて衛生管理に努めてきた、それをクリアしたというふうにちゃんと行政の方でまとめておられるんです。
そういう農家に対しても、飼養衛生管理基準が遵守されていないと一くくりにして言ってしまったら、農家は大変なつらい思いをするわけであります。指導中はなしといったところもあるわけなんです。
私は、個々の農家にとっては、管理基準を守って、そして問題が指摘されても改善されているといったことをここで指摘させていただきたいというふうに思っています。
岐阜県の養豚農家全戸に対する調査が行われたわけなんですね。二回にわたって行われ、二回目の二月は、国も入って、国の立会いのもとに行われた。
その農家の検査での状況を聞いたところによりますと、こういう例があったと。例えば、消毒槽が入り口正面に置いてあったんだけれども、国の担当の方が、左にずらした方がいいのではないか、そういう指摘があったと。それから、防護ネットについても、すき間と認識できないところでも、これはすき間ですよねと言われたと。
つまり、大臣、副大臣、極めて微細な指摘があった、微細な指摘にとどまった、そういう二月の立入検査であったということを私は伺いました。
極めて微細な指摘であるということは、ずさんな衛生管理がいわゆる放置されていた、全体にわたって放置されていたということではないんですよ。ですから、これは、法と基準に基づいてちゃんと取りまとめて、そして公表されているこの結果からいっても、私は言えるのではないかなと思います。
ですから、一くくりにして、飼養衛生管理基準が守られていないから感染が防げないという立場に立つのは、これはやはり農家にとっては立つ瀬がない、そして間違った言い方になるというふうに考えますけれども、改めて、小里副大臣、いかがでしょうか。
○小里副大臣 微細な指摘かどうかというところは、いろいろな評価の仕方があろうと思います。
疫学調査チームの調査によりますと、先ほど申し上げたように、トラクターが野生イノシシのエリアを走って、そのまま消毒もせずに農場内に戻ってきたという事例、あるいはまた、柵につきましても、出入り口そのものが閉鎖されていなかったというような事例等も報告をされているところであります。その辺は評価の仕方があろうと思います。
ただ、私の思いとしては、過去の経験から、飼養衛生管理をしっかり守っていく、これがやはり本道であろうなと思っているところであります。
例えば、ちょっと話が長くなって恐縮でありますけれども、私の地元の出水市、日本一の野生の鶴の渡来地であります。そこに隣接をして日本一の養鶏団地があるわけなんですね。その野生の鶴が、ほぼ二年に一度のペースで鳥インフルエンザにかかっております。特に、十年ほど前は、それが養鶏農家に及んで、一戸だけですね、一農場だけこれに感染いたしましたが、そこで私は、その状況を火薬庫の上で火花が散っているということで表現して、防疫措置、飼養衛生管理基準の遵守の徹底を促したわけでありましたけれども、地域一体となって被害を最小限度にとどめて、その後も家畜における発生はないわけであります。
そういった経験に照らして、飼養衛生管理基準の遵守の徹底を訴えたいと思ったわけであります。
○田村(貴)委員 飼養衛生管理基準の遵守は当然のことであります。これは物すごく大事なことであります。しかし、制度に基づいて、農家はチェックシートに基づいて指導も受けてやってきた。そして、検査に入ったときに問題なしと言われている農家もこの中に入っているわけなんですよ。それをひっくるめて管理基準が守られていないと言ってしまうのは、これは間違いではないかと言っているんです。全部が全部そうじゃないでしょう、トラクターの話にしても。そういうことをやってしまうと、農家は立つ瀬がないと言っているんです。
農家だけの責任にされてしまってはたまらないと私は所信質疑のときにも大臣に申し上げましたけれども、やはりそういう気持ちにさせてはいけないと思います。法と飼養衛生管理基準の規則に基づいてやっていることについてはちゃんと認めてあげないといけない。それを超えてウイルスが感染していることが問題ではないのですか。そこが一番今問われているというふうに思うわけなんです。
大臣にお伺いしますけれども、発症と感染拡大を今をもってしても防ぎ切れていないというのは、私は今の飼養衛生管理基準を超えたところに問題があるのではないかというふうに思っているわけであります。発生から半年たっています。感染の原因が特定されていないというのはどこにあるというふうに農水省は考えておられますか。
○吉川国務大臣 豚コレラの発生拡大を防ぐためには、今も議論の中心になっておりますけれども、飼養衛生管理基準の遵守が最も私は重要であると考えております。
このため、岐阜県等の養豚場に対しまして、国が主導して飼養衛生管理基準の遵守状況の再確認と改善の指導も進めているところでもございます。これは岐阜県のみではありませんで、愛知県ももちろんでございます。
また、野生イノシシによるウイルスの拡散防止を徹底することが必要だと考えておりまして、防護柵の設置ですとか、わなを用いた捕獲に加えまして、我が国史上初の野生イノシシ用経口ワクチンの散布も開始することといたしております。
これらにより、感染イノシシの数の減少に努めることといたしておりまするけれども、豚コレラにつきましては、極めて今重大な局面を迎えていると認識をいたしておりますので、更に国が主導いたしまして、各府省、都道府県と一層緊密に連携をとりながら対策に取り組んでまいりたいと存じます。
○田村(貴)委員 飼養衛生管理基準というのは国が定めているものであります。それに基づいて指導も受けながら農家は対策を講じている。そういう仕事は、仕事として毎年終わっているわけなんです。そうやって報告されているんですよ。それを国はちゃんと報告を受けて認めているわけですから、そこで全てが管理基準が守られていないとくくってしまったら、これはだめですよ。だめですよ、絶対。それは経営再開の意欲を失ってしまいますよ、これだけ頑張っているのに。そこを超えてまだ解明できていないんですよ。
そういう解決策を先に、やはり展望を持って語るのが農水省の役割ではないかということを指摘させていただきたいと思います。
最後に、水際での感染防止対策ですけれども、国際郵便物、きょうも議論がなされていましたけれども、川崎東、東京国際等々、六つの郵便局に国際郵便物が届いてきますけれども、探知犬は川崎東郵便局と、あと一部の空港というところの体制にとどまっています。多くの空港や港というところの郵便物がノーチェックにある。また、膨大な国際宅配物、これについても探知犬を充てることはまだされていません。
こうしたものについてはどのように対処されていくのか、これについてお伺いしたいと思います。
○小川政府参考人 今御指摘ございました郵便物あるいは宅配便についてお答え申し上げます。
郵便物としての輸入につきましては、家畜伝染病予防法第四十三条におきまして、日本郵便株式会社が、通関手続が行われる事業所において、検疫を受けなければいけないものが包有し、又は包有されているという疑いのある小形包装物あるいは小形郵便物の送付を受けたときは、遅滞なくその旨を動物検疫所に通知しなければならず、家畜防疫官は、その通知があったときは、小形包装物又は小形郵便物の検査を行うことになってございます。
御指摘のとおり、これに基づきまして、川崎東郵便局を含む計六カ所の国際郵便局で対応しているところでございます。
動物検疫所におきましては、この家畜伝染病予防法が定めております日本郵便からの通知を受けた場合だけでなく、その他の郵便物につきましても、川崎東郵便局、さらに、御指摘ありましたとおり、昨年十二月からは中部国際郵便局におきまして検疫探知犬を活用し、また、その他の郵便局では、税関と連携して、家畜防疫官が検査を行っているところでございます。
日本郵便はもとより、検疫探知犬の活用あるいは税関との連携も含め、水際検査の強化に取り組んでまいりたいと考えております。
なお、国際宅配便につきましては、郵便物ではなく、貨物として輸入検査を実施しております。商業貨物も扱っております通関業者からの申請を受け、全ての貨物について輸入検査を行っているところでございます。また、税関におきましても、関税法に基づきまして貨物の検査を行っているのは御承知のとおりでございまして、両者相まって、すり抜けがないように取り組んでいるところでございます。
○田村(貴)委員 時間が参りました。質問を終わります。ありがとうございました。
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○武藤委員長 次に、内閣提出、農業用ため池の管理及び保全に関する法律案を議題といたします。
これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣吉川貴盛君。
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農業用ため池の管理及び保全に関する法律案
〔本号末尾に掲載〕
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○吉川国務大臣 農業用ため池の管理及び保全に関する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明いたします。
農業用ため池は、農業生産に不可欠な農業用水を供給する施設として、西日本地域を中心に多くの施設が築造され、我が国農業の発展に重要な役割を果たしてきたところです。
しかしながら、近年、台風等による豪雨や大規模な地震により農業用ため池が被災する事例が発生している一方で、江戸時代以前に築造された古い施設や築造時期が明らかでない施設が多いことから、権利者の世代交代が進み、権利関係が不明確かつ複雑になる事例や、離農や高齢化により利用者を主体とする管理組織が弱体化している事例など、日常の維持管理が適正に行われなくなることが懸念される状況にあります。
このような状況を踏まえ、農業用ため池が有する農業用水の供給機能の確保を図りつつ、決壊による水害等の被害の防止を図る観点から、防災上重要な農業用ため池を指定し、必要な防災工事の施行を命ずることができることとする等の措置を講ずるため、この法律案を提出した次第であります。
次に、法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
第一に、農業用ため池の届出についてであります。
農業用ため池の所有者等に対し都道府県知事への届出を義務づけるとともに、都道府県知事が農業用ため池に関するデータベースを整備し、公表することとしています。また、農業用ため池の所有者等は、当該農業用ため池の適正な管理に努めなければならないこととし、農業用ため池の管理上必要な措置が行われていないときは、都道府県知事が必要な措置を講ずべき旨の勧告をすることができることとしています。
第二に、特定農業用ため池の指定についてであります。
都道府県知事は、決壊による水害等の災害により周辺の区域に被害を及ぼすおそれのある農業用ため池を特定農業用ため池として指定することができることとしています。特定農業用ため池の保全に影響を及ぼすおそれのある土地の掘削等の行為について都道府県知事の許可制とするほか、市町村長は災害時の避難に関する印刷物配布等の措置を講ずるよう努めることとしています。
第三に、特定農業用ため池の防災工事の施行についてであります。
特定農業用ため池の決壊を防止するために施行する工事及び廃止のために施行する工事について、都道府県知事への工事計画の事前届出を義務づけるとともに、必要な工事が適切に行われない場合には、都道府県知事が防災工事の施行に関する命令及び代執行を行うことができることとしています。
第四に、裁定による特定農業用ため池の管理についてであります。
市町村長は、特定農業用ため池の管理上必要な措置が行われていない場合であって、所有者を確知することができないときは、都道府県知事の裁定により、施設管理権を取得することができることとしています。
以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
○武藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時十六分散会