第4号 平成31年3月20日(水曜日)
平成三十一年三月二十日(水曜日)午後一時三十分開議
出席委員
委員長 武藤 容治君
理事 伊東 良孝君 理事 小島 敏文君
理事 齋藤 健君 理事 野中 厚君
理事 細田 健一君 理事 亀井亜紀子君
理事 近藤 和也君 理事 稲津 久君
池田 道孝君 泉田 裕彦君
稲田 朋美君 今枝宗一郎君
上杉謙太郎君 大隈 和英君
加藤 寛治君 金子 俊平君
木原 稔君 木村 哲也君
小寺 裕雄君 斎藤 洋明君
坂本 哲志君 杉田 水脈君
西田 昭二君 百武 公親君
福山 守君 藤井比早之君
藤原 崇君 古川 康君
宮路 拓馬君 山本 拓君
阿久津幸彦君 大串 博志君
金子 恵美君 神谷 裕君
近藤 昭一君 佐々木隆博君
櫻井 周君 高井 崇志君
長尾 秀樹君 長谷川嘉一君
堀越 啓仁君 関 健一郎君
玉木雄一郎君 西岡 秀子君
緑川 貴士君 濱村 進君
田村 貴昭君 串田 誠一君
…………………………………
農林水産大臣 吉川 貴盛君
農林水産副大臣 小里 泰弘君
農林水産大臣政務官 濱村 進君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 大角 亨君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 光吉 一君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 横山 紳君
政府参考人
(農林水産省大臣官房審議官) 小川 良介君
政府参考人
(農林水産省大臣官房統計部長) 大杉 武博君
政府参考人
(農林水産省生産局長) 枝元 真徹君
政府参考人
(農林水産省農村振興局長) 室本 隆司君
農林水産委員会専門員 梶原 武君
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委員の異動
三月二十日
辞任 補欠選任
木村 次郎君 百武 公親君
小寺 裕雄君 杉田 水脈君
宮路 拓馬君 大隈 和英君
石川 香織君 櫻井 周君
佐々木隆博君 阿久津幸彦君
関 健一郎君 玉木雄一郎君
森 夏枝君 串田 誠一君
同日
辞任 補欠選任
大隈 和英君 宮路 拓馬君
杉田 水脈君 小寺 裕雄君
百武 公親君 木村 哲也君
阿久津幸彦君 高井 崇志君
櫻井 周君 長尾 秀樹君
玉木雄一郎君 西岡 秀子君
串田 誠一君 森 夏枝君
同日
辞任 補欠選任
木村 哲也君 木村 次郎君
高井 崇志君 近藤 昭一君
長尾 秀樹君 石川 香織君
西岡 秀子君 関 健一郎君
同日
辞任 補欠選任
近藤 昭一君 佐々木隆博君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
農業用ため池の管理及び保全に関する法律案(内閣提出第二九号)
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○武藤委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、農業用ため池の管理及び保全に関する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官光吉一君、大臣官房総括審議官横山紳君、大臣官房審議官小川良介君、大臣官房統計部長大杉武博君、生産局長枝元真徹君、農村振興局長室本隆司君及び内閣官房内閣審議官大角亨君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○武藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○武藤委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。池田道孝君。
○池田(道)委員 自由民主党の池田道孝でございます。よろしくお願いを申し上げます。
本日は、農業用ため池の管理及び保全に関する法律案の審議でございますが、ため池は、皆さん方御承知のように、農業生産にとりまして欠かすことのできない施設でございますし、また、いつの時代につくられたかわからないというような先人たちがつくってくれたため池を今も利用させていただいておるという現実があります。
また、特に地方では、ため池は、その昔には、今でこそ遊泳禁止でございますが、プールのかわりに水泳をするとか、あるいは野菜を洗うとか、冬になりますと池を干して魚をとる、中には、今でもあるかどうかわかりませんが、お金を出して魚をとりに行く、そういう、地域に密着したあるいは生活に密着した施設でございます。
特に、ため池は全国にありますけれども、西日本に多く集中しておりますし、中でも瀬戸内沿岸、大阪から山口まで、そして四国の香川、愛媛。一番多いのは藤井委員のおられる兵庫県でございますけれども、私の地元岡山県にもかなりのため池がございます。
ちなみに、私の地元では、後で管理の状況は質問させていただきますが、わずかな、四十戸未満の町内で三つ、小さい池を入れますと四つの池を管理をいたしております。それだけに、昔から私も地元の土地改良区のお世話をさせていただいておりますし、せっかくこの法案が提出をされたのではありますが、我々にとりましては遅きに失したなという感じもいたしております。
しかしながら、農家離れあるいは高齢化社会に入りまして、そうした管理がなかなか行き届かないという状況の中で、堤防の決壊等があって被害が出る。特に昨年は、全国各地で台風、地震、集中豪雨がございました。私の岡山県でも、あの七月六日からの集中豪雨によりまして、大きな、今まで経験したことのないような被害が発生をいたしました。河川の堤防決壊のみならず、ため池の決壊、それによりまして、広島県、愛媛県を含めて大きな被害が出ました。
そうしたため池というものは、今後も大変重要な施設でございます。そうした中での法案でございますが、このため池に関する、そしてまた、そうした災害のときには吉川大臣も全国いろいろな被災地へ出向かれたことと思います。
そういう状況の中で、ため池に対する現状、そして法案に対する意気込みにつきまして、まず冒頭、大臣にお尋ねをいたします。
○吉川国務大臣 農業用ため池は、農業生産上不可欠な水を供給する施設として、江戸時代以前から築造されております。全国で約二十万カ所が設置されるなど、我が国農業の発展に大きな役割を果たしてきたところでもございます。
しかしながら、ただいま池田委員からも御指摘がありましたように、昨年の七月豪雨では、西日本を中心に三十二カ所の農業用ため池が決壊をしました。そのうち、委員御地元の岡山県におきましては、四カ所の農業用ため池が決壊したと承知をいたしております。
このように、近年、豪雨や大規模な地震により被災するケースが多発している一方で、築造から相当な期間が経過する中、権利者の世代交代が進み、権利関係が不明確かつ複雑となっております。離農や高齢化によりまして管理組織が弱体化しているなどにより、日常の維持管理が適正に行われなくなることも懸念をされるような状況になってきております。
このため、今後も農業用ため池が農業用水を供給する施設としてその機能が発揮されますように、本法案により、施設の所有者、管理者や行政機関の役割分担を明らかにして、農業用ため池の適正な管理及び保全が行われる仕組みを早急に整備をしてまいりたいと存じます。
○池田(道)委員 ありがとうございました。
未来永劫、ため池というものは必要不可欠なものでございます。今後も、ハード、ソフトあわせての整備をよろしくお願いを申し上げます。
続いて、管理状況でございますが、先ほども申し上げましたように、農家離れ、高齢化によってなかなか管理が行き届きません。地域によっては、改良区あるいは水利組合というところでやっておられると思いますが、私のところのことを申し上げますと、三つのため池を年に二回、五月と八月に草刈りをやります。これは非農家も含めて全員でやるわけでございますが、通常は、水番、いわゆる池の守りをしてくれる人を指名をいたしております。その方が、平素は池に水を入れ、大雨のときには唐戸を上げて小川へ流すということをやっております。
手当はわずかしか出ませんけれども、そういう形で管理をしておりますけれども、所有者不明の土地はなかなか管理が行き届かないと思いますが、全国的な状況をまずお尋ねをいたします。
○室本政府参考人 まず、全国的なため池のデータについては、ため池のデータベースというのを平成二十五年から二十七年度にかけまして整備をしております。
これは、全国に二十万カ所あると言われるうちの九万六千カ所、約半分のデータになっておりますが、このデータベースにおいては、アンケート形式で整備したものであって、その中で所有者不明となっているものの中には、アンケートで未記入になっているものというのも入っております。
今申し上げたとおり、ため池の所有者等については現時点では正確に把握し切れているわけではないという状況にはありますが、仮に、管理が不十分なため池というのを所有者若しくは管理者が不明なため池というふうに解釈すれば、このデータベースに整備されている九万六千カ所のうち、所有者不明のため池は二万八千七百カ所、約三割、管理者不明のため池は二千四百カ所、約三%というふうな状況でございます。
○池田(道)委員 所有者不明のため池もかなりあるわけでございますが、管理をされておられるため池の中で、当然、災害による、あるいは通常の改修等が起きてくるわけでございますけれども、その中で、いわゆる個人の方々が所有をしておるというため池も相当あろうかと思います。
例えば、これも全て私の地元を言うんですが、工事をするときに地籍を調べたら、個人の方が何筆もおられた。通常の方はすぐ寄附をしていただけるわけでございますが、中には、そうはいかないという方もおられます。
特に、土手は、先人たちは非常に知恵を絞ってつくられたんだろうと思いますが、土手の中心にはいわゆる刃金というのがございます。最近の重機あるいはランマー等を使ってはできないであろうという、昔の方々が土を少しずつ入れながら、丸太か何かで突きながら刃金をつくったんだろうと思いますが、それを残して工事をするということを多々やっておられます。
どうしてもできないというときには、もう仕方がなくて、その個人の土地を差しさわりのない池の真ん中へ移動していただくということをやっておるわけでございますけれども、そうした個人所有のため池というのがどのぐらいあるかというのは把握をしておられますか。
○室本政府参考人 これも、先ほど申し上げたため池データベース、二十万あると言われるもののうちの九万六千カ所のデータで申し上げれば、約一万八千カ所のため池が個人所有だというふうになっております。
○池田(道)委員 個人所有の方がおられますと、いざ工事に着手するときに非常に手間がかかるということでございます。
その池の管理について一点、要望というかお尋ねをするんですが、池というものは非常に傾斜がきつうございます。草を刈らないと、木が生えるとまたため池がもたないということで、草刈りをするわけでございますが、中には、長靴のスパイクのついたものを履いてきてもらってするとかいうことをやっておりますが、年々高齢化して、毎年その日には一日保険に加入して、もう命がけですわ。
そういう形で作業するわけでございますが、考えるに、今草刈り機をどんどん改良しておりますが、市町村あるいは改良区でもいいんですが、一つへ一台ということは到底できませんが、市町村等へ貸与あるいは購入していただいて、それを実際にやられる方のところへ貸出しをするということが、何か国の方である程度補助を出していただいてできないものかな。
というのが、先般の集中豪雨のときにも、広範囲に農地が水没をいたしました。皆さん方は家の修理の方で一生懸命で、田んぼまで手が回らないということで、草はぼうぼう、草刈り機で刈るというわけにもいかないということもあって、それもあわせてでございますけれども、傾斜地を刈れる、今私のところは、真ん中に鉄ぐいを打って、板を敷いて、三十センチぐらいの幅をつくって、散土を入れて刈る道をつくるようなことを計画しているんですけれども、そういう制度は考えられないでしょうか。
○室本政府参考人 まず、原則論を申し上げますと、ため池にかかわらず、土地改良施設の維持管理に係る費用というのは、その受益者である農家が負担することが基本であるというふうに考えております。
委員の御指摘の、傾斜面を刈る、これは自動草刈り機でしょうか。(池田(道)委員「リモコンで」と呼ぶ)リモコンの草刈り機ですかね。こういった機械の導入支援については、堤体斜面の草刈り以外にも使おうと思えば使えるというようなことから、一般論として申し上げれば、公共事業の予算の中で市町村が購入する費用を支援することは難しいのではないかというふうに考えております。
一方で、地域共同活動を支援するための多面的機能支払交付金というのがございまして、これは、地域共同で草刈りを、人手を使ってやるものでございますが、こういったことをやりながら受益者のいわゆる草刈り等の負担を軽減しているということが全国的に行われております。
加えまして、ため池管理の負担軽減のため、監視するための水位計の設置やあるいは現場のパトロール、こういったことに対しても定額の支援を来年度から措置することとしておりまして、こうした制度を活用していただくことによって農家負担の実質的な軽減が図られるものというふうに考えてございます。
○池田(道)委員 ありがとうございましたというよりか、多面的機能あるいは改良区の方から予算を出しながら草刈りをやっているので、それは当たり前のことであって、その上に、傾斜地が刈れないからどうかなりませんでしょうかという質問をさせていただいているんですけれども、まあよろしいわ、それは。
続きまして、受益者負担ということを言われましたが、受益者がだんだん減っているというようなため池を廃止するということ、これも私のところの例を出しますが、受益者がもうほとんどいなくなって荒廃地になったので、ため池を一つ廃止をいたしました。これは、樋を抜いて、あるいは荒土手を切って、重機が入りませんから、ある程度以上はもう水がたまらないということにして廃止をしたわけでございます。
そういう、全国的に、今は平野部でも農地がなくなって、必要がないというため池もあろうかと思いますが、その廃止の状況、これは町内会、自治会、あるいは改良区と、いろいろな行政も含めて話合いが必要だろうと思いますけれども、その状況は現在どういうふうになっておりますでしょうか。
○室本政府参考人 今御指摘のあったとおり、現に利用されていないため池や、今後利用が見込めないと判断されるため池については、決壊することがないよう、堤体のV字カット、撤去、埋立て、こういった工法によりまして貯水機能を廃止していくということにしております。
このため池の廃止に当たりましては、私どもの補助事業を活用することが可能でありますが、事前に所有者、管理者、水のユーザー、それから都道府県、市町村、こういったところで十分に話し合っていただきまして、事業実施主体や廃止後の河川への取付け水路の維持管理主体をどこが担うかといったようなところについて役割分担を決めていただいた上で、廃止の工事を行っていくということになろうかと思います。
今回、広島県ではかなり、二十三カ所決壊をしておりまして、全国的に要らなくなったため池が廃止されるというふうな方向づけが今回されるのではないかと思っておりまして、しっかりそのことも踏まえて私どもも御支援申し上げたいというふうに考えてございます。
○池田(道)委員 広島県でも、東部の福山地方を中心として今答弁されたような状況になっておるわけでございますが、実際にそういう、必要がないだろうというため池もかなり出てきておると思いますが、それはどういう形で、誰が、なかなか、地元の方が言ってこられる場合とそうでない場合があるわけでございますが、そのあたりはどういう手順で、地域によって全くまちまちなんでしょうか。
○室本政府参考人 まずは、地域の農家の方々がそのため池の水を使うか使わないかというあたりは、これは地域の方で御相談をいただくということになろうかと思います。
その上で、仮にその水を使うということになれば、例えば、受益者が二、三人しかおらずに、今あるため池の貯水量ほど要らないというような場合は、ため池があることのリスクを除去するために、それを撤去して、別途、井戸水とか河川水を手当てするという、代替水源を確保するような調整も可能でございます。
したがいまして、そういう相談をする際には、やはり、市町村、県と相談の上、最終的には農林水産省の補助事業をお使いいただいて、それで、廃止なり、あるいは廃止した上で代替水源を確保していく、こういったことを整備していくことになるというふうに思っております。
○池田(道)委員 時間が参りました。
最後に、昨年の西日本豪雨の被災を受けまして、ため池の一斉点検をされておられると思います。この一斉点検をした後の措置方法が一番大事なのであって、今後どういう形で危険なため池を含めて改修等をされていかれるのか、お尋ねをいたします。
○室本政府参考人 昨年の七月末から、委員御指摘のように、一カ月間かけて八万八千カ所のため池の一斉点検を行いました。
その結果、幾つか判明したことがございまして、一つは、多くのため池で老朽化等によって施設機能に影響を与えかねない状況が非常に多いということ、ため池に至る道路に草木が繁茂していて小規模なため池の位置情報が整備されていない、そういったことによってため池に迅速に到達できないというようなこと、既に廃止や荒廃が進んでいてため池データベースにも反映されていない状況、こういったことが明らかになって、これを解消することが必要であろうということで、このことは岡山県とも情報共有を図っております。
この結果を踏まえた対応でございますが、まず、ため池の規模によらず、決壊した場合の浸水区域への影響の観点から、防災重点ため池の選定の考え方を見直すこととしまして、この五月末を目途に各都道府県で再選定作業をやっていただいております。それで、緊急時の状況把握や避難行動につなげる対策、これを強化していく、それから、施設の保全管理体制の強化や、ため池の機能を維持するための補強対策を実施していくということ、先ほど来申し上げているとおり、利用度が低下しているため池は統廃合していくということで、今後の対策の進め方を昨年十一月に取りまとめまして、こういった内容について三十一年度予算に反映させているということでございます。
○池田(道)委員 危険なため池も全国的に数多くありますので、そうした対応を早く早くお願いをいたしまして、質問を終わります。
ありがとうございました。
○武藤委員長 次に、稲津久君。
○稲津委員 公明党の稲津でございます。
きょうは、農業用ため池管理保全法ということで質問させていただきますが、もう御案内のとおり、昨年来もそうですけれども、この多発する豪雨で農業用のため池の被害が相次いでいるということで、法律に基づいて適正な管理、必要な工事、これを実施していこうということで、本法律が新法として今、案が出されているわけでございます。
それで、特にやはり柱になってくるのが、特定農業用ため池の指定のことと、それから、これに関して、所有者等に適正な管理の努力義務を課すということ、それから、都道府県による防災工事の施行命令、代執行、これを可能にするということだろうと思っております。
現場サイドからも、やはりこれから梅雨どきになる、また台風も昨今多いわけですから、早くこの法律を制定、施行していただきたい、こういう声がございますので、そうした観点に立って、特に新法ですから、少し具体的な、懸念する事項等についての質疑をさせていただきたいと思っています。
まず一点目が、特定農業用ため池と防災重点ため池の相違についてということで、今回、特定農業用ため池を新たに創設する意義も含めてお伺いしたいと思いますけれども、第七条に、都道府県知事は、農業用ため池であってその決壊による水害その他の災害によりその周辺の区域に被害を及ぼすおそれがあるものとして政令で定める要件に該当するものを、関係市町村長の意見を聞いて、特定農業用ため池として指定することができるものとするとあります。
これはもう御案内のとおりですけれども、これまでも、ため池に関しては、防災重点ため池、こういう概念があるわけでございます。
そこで、特定農業用ため池を新たに創設することとした趣旨について、あわせて、特定農業用ため池の指定要件と防災重点ため池との相違について、これは現場からも非常に、どういう違いがあるのかという意見もありましたので、この点について、まずお示しをいただきたいと思います。
○濱村大臣政務官 お答え申し上げます。
これまでは、農林水産省の、平成二十七年、課長通達に基づきまして、下流に住宅や公共施設などが存在し、決壊した場合に影響を与えるおそれのあるため池を防災重点ため池として各都道府県で選定していたところでございますが、課題としては、選定の考え方が統一されていないという状況にございました。また、行政機関、所有者等の果たすべき役割を明文化したものがない等の課題がございましたもので、今回、特定農業用ため池は、防災重点ため池の仕組みを法定化し、また、各都道府県の考え方を統一するとともに、行政機関、所有者等の果たすべき役割を明確にしたところでございます。
このため、特定農業用ため池は、新たに現在選定中の防災重点ため池と同一の選定基準とする考えでございますけれども、国又は地方公共団体という行政機関以外の、個人や改良区、水利組合等の民間で所有する防災重点ため池につきましては、適切な管理が行われなくなるおそれがございますものから、防災工事命令など、本法案に基づく措置を講ずることができるように、特定農業用ため池として指定することといたしたものでございます。
なお、行政機関が所有するため池に対しても、予算措置として補修、補強等の防災・減災対策を講ずる必要が引き続きあることから、法施行後も防災重点ため池という名称は引き続き併存させる考えでございます。
○稲津委員 明確にお示しいただいたので、非常にわかりやすく、理解をさせていただきました。
そこで、ポイントになるのが、決壊、水害その他の災害、こういうところがポイントだろうと思うんですけれども、これは、第十九条に農林水産大臣の指示として書かれております。この中で、特に、農林水産大臣が緊急の必要があると認めるときは、都道府県知事に対して必要な指示をすることができるものとする、こうあります。
そこで、その指示のことについてなんですけれども、勧告、それから特定農業用ため池の指定、立入調査等々ございますけれども、この緊急の必要があると認めるときの状況、それから、必要な指示の具体的な内容についてお示しをいただきたいと思います。
○室本政府参考人 十九条の農林水産大臣による指示でございます。
緊急の必要があると認める、例示をしますと、一つは、第六条の勧告については、堤体の補修、洪水吐けの流木とか堆積土砂の除去、こういったことが行われないまま放置をされ、大雨により決壊するおそれがある状態、あるいは、第七条の特定農業用ため池の指定の関係でございますが、下流に家屋等が存在しているものの、管理者が不在のまま選任されていないような状態、第十条の防災工事命令、十一条の代執行については、堤体の老朽化が著しいにもかかわらず、例えば所有者不明によって防災工事についての権利者間の合意形成が困難で、放置されたままの状態である。そういったことが、必要があると認める状態だというふうに考えてございます。
○稲津委員 それで、今ここまで御答弁いただいて、一つ意見というか申し上げておきたいと思うんですけれども、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、これはつくば市にありますけれども、ため池防災支援システムを開発したということで、ぜひ、今後、そういった中で、こうしたシステムの本格運用がされると聞いていますので、こうしたものも活用を本格的にしていっていただければこうしたことについての対応がまた十分できるのかな、こう思っていますので、御検討いただければと思います。
次に、現場からいろいろいただいている声として、所有者や地方公共団体に対する国の補助や援助はどうなっているのかということなんです。
昨年の七月の西日本豪雨、二府四県三十二カ所のため池決壊、人的被害も含めて、被害の拡大につながった、こうしたことから本法案の提出に至ったということは、これはもう十分理解できるわけなんですけれども、届出の義務化に伴って、地域では、所有者や管理者など一部の者に義務や責任が集中するのではないか、こういう不安感もあるということなんですね。
二十条と二十一条のところには補助それから援助ということが書かれています。例えば二十条のところには、国は、都道府県に対し、予算の範囲内において、市町村等の施行する防災工事に対して都道府県が補助する費用の一部又は都道府県がみずから施行する防災工事に要する費用の一部を補助することができる、二十一条は、援助に努めるということを、国そして地方公共団体に課しているわけなんですね。
それで、所有者や地方公共団体がため池の管理や改修工事を行う、それに当たっての人的あるいは財政的な負担が発生するだろう、困ったものだと。例えば所有者についても、高齢化している、あるいは自治体についても、いわゆる財政状況の中で人員の削減ですとか、果たしてまた専門的なそうした技術を持った人材がいるのかいないのか、こうしたこともあるわけでございまして、改めて、この二十条、二十一条に関連して、国が本法律案で行おうとする補助及び援助のあり方についてお伺いしたいと思います。
○吉川国務大臣 国の補助につきましては、今御指摘をいただいた第二十条におきましては、都道府県を経由して、市町村を含む所有者等が行う防災工事に対する間接補助、都道府県が代執行によりみずから実施する防災工事に対する補助を規定しているところでございます。
また、農業用ため池の適正管理義務を負う所有者等に対する援助につきましては、第二十一条において、ため池の監視や保全管理のための研修、ため池の管理者が行う点検や軽微な補修にかかわる技術的な指導など、資金面、技術面からの援助について規定をしているところでございます。
平成三十一年度の当初予算におきましては、例えば、公共事業である農村地域防災減災事業につきましては、前年度比一二六%となる六百三十八億円を計上いたしておりまして、この中で、施設の補強等のハード対策や、ため池マップの作成等のソフト対策を重点的に進めていくことにしているところでございます。
地方公共団体の行政事務に要する経費につきましては、普通交付税の中で適切に措置されることになると承知もいたしております。
○稲津委員 今大臣から、防災工事にかかわって今私が質問したことに関しての明快な御答弁をいただきましたけれども、今の御答弁の中でも、予算措置、ハード、ソフトにわたって、また普通交付税の措置もあるんだ、こういうお話でした。
そこで、この防災工事の定義について改めてここでお伺いしておきたいと思うんですけれども、今回のこの法律案において、防災工事とは、農業用ため池の決壊を防止するために施行する工事、ここにはため池の廃止も入っているわけなんですね。そのようにしてありますけれども、じゃ、どの程度の改良を対象とするのかということも一つ懸念材料です。
工事の具体的な種類、規模、このことは明らかにしていただきたいと思いますし、これは党内でも一部議論があったんですけれども、それでは、農業用ため池の廃止には、例えば水を抜いたり埋め戻す、こうした工事も防災工事として入るのか否か、このようなことの質問もありましたので、ぜひこのことについてもお伺いさせていただきたいと思います。
○室本政府参考人 この法律案の第二条第三項に規定する防災工事とは、農業用ため池の決壊を防止するために施行する工事で、豪雨対策、耐震対策、老朽化対策のほか、農業用ため池を廃止するために施行する工事も含むものとして定義をしております。
委員おっしゃっています防災工事の内容でございますけれども、例えば、豪雨時における堤体の越流等に対し安全性を確保するための洪水吐き能力の拡大あるいは堤体のかさ上げ、地震時における安定性を確保するための堤体の拡幅などの補強、老朽化による損傷に対し安全性を確保するための堤体や護岸の補修、そして、これは廃止でございますけれども、ため池に貯水できないような、堤体をV字カットするとか、そもそも撤去をしてしまうということとか、埋立てを行う、こういったことを想定しております。
○稲津委員 具体的にお答えいただきまして、ここもかなり明確になったと思います。
それで、一つ意見を申し上げたいと思うんですけれども、全国に二十万ですか、ため池があって、現在の調査の状況等についても先ほどの質疑の中でも明快になりました。
それで、使われていないことが明らかなため池については、防災上、これを埋め戻したりしていくこともやはり十分視野に入れていかなくてはならないと思っています。
それから、現在使用されているため池の中でも、大変危険度が高いんじゃないかとか、しかし、さりとて今ため池を廃止するわけにもいかない、代替の水源をどうするんだ、こういう議論もありますから、そこは慎重の上にも慎重を期すべきと思いますけれども、よく、この調査を進めていく中で、やはり危険度の高いものについては、そうした考え方も含めて、これから十分、所有者やあるいは自治体とも連携しながら、そのあり方について検討、協議を進めていただきたいと思います。
次に、土地改良区等への管理の委託ということでお伺いしておきたいと思うんですけれども、今回のこの法律案では、市町村長は、裁定に係る特定農業用ため池の管理に関し特に必要があると認めるときは、当該特定農業用ため池の施設管理権に基づく措置の一部を土地改良区その他の者に行わせることができるとされております。これは十六条ですけれども。土地改良区は、それでは、市町村長からの委託による業務の負担の増加というものがどの程度になるんだろうかという懸念もやはりあるわけでございます。
それから、予算措置等は十分なのかということですね。
先ほど大臣からも、一部、当初予算等についての考え方も触れていただきましたけれども、私がお伺いしている中では、ため池には大体年二百億程度の農業農村整備事業予算を投入しているということも伺っています。防災工事がこれからため池にふえていくことになると、この農業、農村の予算についてもやはり不足してくるというか、ある程度、そちらの方に、ため池の方に回っていくんじゃないか、そうしたときに、では、その予算は十分確保していけるかどうか。
こうした関係者の方々の懸念に対して、お答えいただきたいと思います。
○吉川国務大臣 十六条第四項に基づきまして、市町村長が管理を土地改良区等に行わせる場合でありますが、これは、土地改良区等の技術職員の有無、本来業務の状況等を踏まえ、土地改良区が受託可能な範囲で、管理内容や費用負担の方法などを定めた協定を締結をして、市町村長が委託をするということになろうかと思います。このため、土地改良区等が管理を受託することにより業務に支障が生じることはないと考えております。
予算面でありますけれども、先ほども申し上げさせていただきましたが、六百三十八億円、平成三十一年度当初予算で計上いたしておりまするけれども、中でも、補強などの防災工事に関しましては、防災・減災、国土強靱化のための三か年緊急対策の予算を活用して、推進していかなければと思っております。
なお、稲津委員御指摘の、防災工事の増加に伴う他事業への影響についてでありますけれども、これまでと同様に、農業農村整備事業全体を推進できますように、必要な予算の確保に全力を挙げて努めてまいりたいと思います。
○稲津委員 ほぼ時間が来ましたので、ここで終わらせていただきたいと思いますが、今、最後に大臣から、この予算の確保についてもしっかり取り組んでいくという、そうした御決意もいただきましたので、ぜひその取組を進めていただきますことをお願い申し上げまして、質問を終わります。
○武藤委員長 次に、神谷裕君。
○神谷(裕)委員 立憲民主党・無所属フォーラムの神谷裕でございます。
本日もまた質問の機会をいただきましたことを、まずは御礼を申し上げます。
きょうは、ため池法案です。ため池法案について、具体的にいろいろと、懸念も含めて聞かせていただけたらなと思うわけでございます。
まずは、今回のこのため池法案でございますけれども、契機となったのは昨年の西日本豪雨かなというふうに思っております。そこで、多くのため池が壊れたとか、さまざまあったというふうに思うんですけれども、逆に申しますと、これまでため池について法的な措置がなされていなかったのかというような感じもいたしております。
なぜ、これまでそういった措置がなされていなかったのか、改めてその理由を聞かせていただけたらと思います。
○室本政府参考人 まず、農業用ため池につきましては、近年、台風等による豪雨、大規模な地震により被災するケースが多発している一方で、築造から相当な年月がたつ、あるいは年代が不詳であるというふうなため池が非常に多いわけでございまして、そういった中で、権利者の世代交代が進み、権利関係が不明確かつ複雑になっている、離農や高齢化によりまして管理組織が弱体化しているというふうな、日常の維持管理が適正に行われなくなることが懸念される状況にございます。
こうしたことから、今後も農業用ため池が農業用水を供給する施設としてその機能が発揮されるよう、この法律案を措置することにより、施設の所有者、管理者、行政機関の役割分担を明らかにし、農業用ため池の適正な管理、保全が行われる仕組みを早急に整備するといったことで、この法律案を提出したということでございます。
○神谷(裕)委員 大臣、今、室本局長から、ため池は大事だから、古いものもあるし、管理も大変だからということで、この法案の提案があったというようなことでございました。
ただ、大臣、私、やはりこの法案、あったのは、昨年の集中豪雨もそうなんですけれども、もともとやはりため池というのは、御案内のとおり、割と雨の少ない地域に、当然、農業用の水を供給するためにできたんだろう、それが多分発端だと思います。ただ、本来そういう水の少なかったところに集中豪雨があった、だから決壊をした、それは、だから、やはり多くは気象の原因が大きいんだろうと思っています。
この気象の変動についてなんですが、大臣と私ども北海道についても、直近、例えば蝦夷梅雨なんていう、本来梅雨はなかったんですけれども、梅雨がやってきたり、あるいは台風、北海道はふだんほとんど台風はなかったんですが、ここ二年直撃したり、そんなことで、実は本当に、災害の傾向というのか、やはり気象の要因というのはすごく大きいのかなと思っています。気象が変わってきた、今回異常気象だよというような状況ではなくなってきていて、今後こういったことがどんどん起こってくるだろうということが実は想像されるわけでございますし、そういった意味で、今回ため池法を整備する、これは本当に大事なことだと思うんです。
そこで、逆に、大臣、こういったやはり気象の変動がありまして、今回、ため池というのは非常にいい契機だと思いますので、例えば今の北海道における台風被害もそうなんですけれども、本来なかった地域にさまざまな災害が起こってくるということがこれから想定をされるわけでございますから、農林水産省におきましても、こういった災害に対する法的な措置であるとか整備であるとか、これ、一回見直す必要があるんじゃないか。あわせて、このため池法案を契機として、これから、この気象変動なりなんなりを原因として今後さまざま出てくるであろう、可能性が高くなってくるであろう、そういう災害にもやはり対応できるように一回点検する必要があるんじゃないかと思うんですけれども、大臣、御所感、どうでしょうか。
○吉川国務大臣 まさに神谷委員が今御指摘をいただきましたように、ため池に関しましても、昨年あるいは近年、台風等による豪雨ですとか大規模な地震により被災するケースがもう本当に多発をいたしております。北海道も、蝦夷梅雨などという、今お話がありましたけれども、本来梅雨がないところですけれども、割かし太平洋側は雨が多い時期があります。私もそう思っております。
気候変動には常に敏感になっておかなければならないと存じておりますので、そのために今回も、我が国の農業の発展に大きな役割を果たしてきた、全国で約二十万カ所設置されているため池の法案を出させていただきましたけれども、ほかの災害等々につきましても常にやはり備えておかなければなりませんので、いろいろな観点から、見直しすべきところは見直しもしながら、対応をしっかりと行っていきたいな、こうも思います。
○神谷(裕)委員 ありがとうございます。
やはり、災害の傾向が変わってきた、そしてまた状況も変わってきたということでございますから、当然、施策も従来のものでは多分届かない、足りない部分が出てくるんじゃないか、そういった観点から、ぜひ見直しの方をお願いをしたい、このように思うわけでございます。
また、今回契機となった昨年の西日本豪雨というか、その際におけるため池の被害、あるいはさまざま農業に関する被害があったと思うんですけれども、その復旧の状況について一度確認をさせてください。
○室本政府参考人 この七月豪雨を契機にしまして一斉点検をやったところ、対象は九万カ所ぐらいございましたが、一千五百四十カ所について何らかの異常なり変状が確認されております。ただ、これは、全てこの豪雨災害によるものなのか、あるいは長年の老朽化によりだんだん壊れていったのかというのが、それは特定できなくて、災害でやられたものについては災害復旧事業で対応するということを現在やってございます。
千五百四十カ所の具体的な中身を申し上げますと、土砂、流木の撤去、こういった地元で対応済みのものというのは約五割ございます。災害復旧事業や補助事業、この補助事業は老朽化のための補助事業というふうにお考えいただければ結構かと思いますが、これが約四割。関係者で現在対応を検討中のものが約一割ということで、地方公共団体等の関係機関との連携のもと、今後とも適切な対策を進めていくというふうに考えてございます。
○神谷(裕)委員 今ほど、さまざま御報告をいただきました。やはり、今のお話で若干心配になりましたのは、老朽化によるものなのか、災害によるものなのか、わからないものも結構あるんだというお話でございました。
ということは、やはり、きっちりデータができていなかったのか、以前から、ため池というものがどういう状況にあるのかということが完全に把握し切れていなかったのかということが改めてはっきりしたわけでございますし、そういった意味でも、逆に、この法案はより必要なんだということが理解をされるのかなと思うところでございまして、やはり急いでやらなきゃいけない法案だったなということを改めて思うわけでございまして、そういう意味で申しますと、ほかにも、ひょっとすると、こういうものがあるかもしれないので、ぜひ見ていただけたらと思うわけでございます。
また、今のお話にありましたとおり、やはり古いものも多いんですね。江戸時代以前のものも多数あるというふうに聞いておりまして、今回の法案でもそうなんですけれども、昨年もそうでございました、林業もそうでございましたし、まず、誰のものなのか、所有者の確定であるとか、あるいは管理者の確定であるとか、まず、そういったことが大きな課題になると思います。
そういった所有者の確定のあり方について伺わせてください。
○室本政府参考人 委員の御質問が、所有者の探索のやり方ということで申し上げれば、登記簿の確認から、住民票の確認、本籍地の戸籍簿を確認してということで、順々に追っていくという手法をとるわけでございますが、一方で、民法上の工作物責任を負うのは、一義的には、被害防止措置を講ずることができる工作物の占有者というふうな考え方になっておりまして、これは構造物を支配する者というふうな考え方でございますが、この所有者の特定が仮に難しい場合にあっても、農業用ため池の管理者が適正に管理を行うことでため池の機能を維持することは可能ではないかというふうに考えてございます。
したがいまして、既存の農業用ため池の届出については、管理者による届出も可能としたところでございまして、管理者から届出が出された場合には、所有者については、不動産登記簿上の名義人を特定しておけば足りるのではないかというふうに考えてございます。
他方で、仮に本格的な補修工事を行うような場合、この場合には、所有者との調整が当然必要となってくるわけであって、工事の内容に応じて、さっき申し上げた相続人の探索を進めていくということになると思います。具体的な探索の方法としては、先ほど申し上げたような、順を追っていくということでございます。
○神谷(裕)委員 今お話がありました。若干不安になってまいりました。というのは、ほかの法案では、実は、所有者というか、確定するのはやはり大変だろうと。なかなか、たどっていくのも大変ですし、中には、相続等で非常に割れている、物すごい数に上っている場合も結構あると聞いております。そういった意味で、先般の法律では、例えば、簡易な方法というか簡便な、いわば特例的な措置もとられていたと思います。
この法案では、そういった措置はとられていないということでしょうか。
○室本政府参考人 探索の方法は、これは、最近できた法律に倣いまして、一定のところまでやって、それで、なかなか所有者が一定の数以上見つからない、これは各工法によって所有者を見つける数が変わってくると思います、例えば全面改修であれば、基本、全員確知しなければいけないということになりますが、一定のところまでやって見つからなければ、これは一定期間工事をして、名乗り出なければ代執行、そういう手続はこの法律の中で措置をしております。
○神谷(裕)委員 それは、実際に大規模改修なりのときだと思うんですが、データベースをつくるときには、そういったことにはならないんでしょうか。
○室本政府参考人 データベースは、先ほどもちょっと答弁申し上げましたが、所有者でなくても、管理者が確知できれば、一人でも確知できれば、その確知できた一人に届け出いただければいい。(神谷(裕)委員「データベース上はそういうこと」と呼ぶ)はい、データベースの登録はですね。仮に、管理者も確知できないという極端なケースがある場合には、これは市町村長の職権で、何らかの形で登録をしていただくということを考えております。
そういったことを積み上げながら、データベース、なるべく二十万カ所に近づけるようなことを考えております。
○神谷(裕)委員 結構やはり大変なんだなというのが率直な感想です。
ただ、やはりこれは緊急性の高いものだと思いますので、そういう意味では、さまざまな手段、手法を駆使されてやっていただけるんだと思いますし、いよいよ、修繕、修理というか、補修なり事業をするということになったときは、当然所有者に対しても働きかけをしなければいけないわけですから、そうなったときには、今おっしゃっていただいたとおり、また探索をしなければいけないということになっていくのかなというふうに思うんですけれども、それだったら、最初にある程度わかるような形をつくった方がいいのかなとも思うんですけれども、なかなかそういうのも難しいのかなと。
そこら辺がちょっとすっきりしないんですけれども、考え方はわかります。また、所有権というのも大事なものですし、実際、今、古いもので、管理者なのか、占有者なのか、そういった方がやっておられる中で運営していくんだろうというようなところなんだとは思います。ただ、本当に古いものだと思いますし、今回、そういういい機会でございますから、所有者なり、あるいは使用者というのか、管理者というのか、占有者というのか、を確定していくんだと思います。
そういった中で、新たに個人を特定できたような場合があると思うんです。あるいは、個人のものでもない、個人のものというふうに考えてもいいんですけれども、恐らく、昔であれば、これは全体の、この村の共有の財産だみたいな形もあるんじゃないかと思うんです。そういった場合に、例えば、これを個人の、特定の方の所有物とみなさないで、例えば公有というか、市町村なり、あるいは土地改良区とか、そういったような形での所有というようなことも考えるべきじゃないかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○室本政府参考人 非常に難しい問題だと思っておりますが、一つは、この届出制度によってため池の所有者なり管理者を特定する、そういった作業を進めていくことになるわけでございますが、実質的にその地域の共有財産、委員がおっしゃる共有財産として管理されているため池について、この法律をもって権利関係を変更する、そういった権能を持たせているわけではないというところは御理解いただきたいと思います。
その上で、仮に、地域の財産として、財産権を移しがえをするということを考えるとすれば、それは、財産区とか、あるいは認可地縁団体を設立していただいて財産権を取得していただくというのが一般的なやり方ではないかなと思っております。
他方で、この法律の成立を契機に、財産権の帰属について、例えば、これは行政が持った方が安全だよね、持っていただいた方がいいよねということで、行政、行政というのはまずは市町村ですね、市町村なり、あるいはその上の県が、仮に、じゃ、うちで持ちましょうという話になれば、これはそういったケースも十分あり得るというふうに思います。現に、法定外公共物で所有者がわからなくなったようなものは市町村に財産権を移すとかということはやっておりますので、そういうことは十分あり得るのではないかというふうに考えております。
○神谷(裕)委員 そういう考え方は本当にあると思います。中には本当に不明のものもあると思いますし、ただ、地域で本当に大変大切なものということであるならば、むしろ自治体が管理をするということも十分考えていただきたいと思いますし、あるいは、ぜひそういった意味で御検討いただけたらと思うわけでございます。
あるいは、これによって権利の関係が動くわけではないということでございますけれども、例えば探索の結果、個人に所有者が特定された、あるいはその方の所有物になったと確定された場合、例えば、税制上の問題であるとか、あるいは相続の問題とか、そういうものは具体的に発生しないでしょうか。
○室本政府参考人 まず、固定資産税は、基本的にため池は非課税ということになっております。したがいまして、所有者が確知されてどなたか出てこられても、固定資産税の支払いというのは、これは免れるということでございます。
相続税については、通常の不動産と取扱いが同じでございまして、遺産額の基礎控除というのがあって、これは、三千万プラス六百万円掛ける法定相続人数という、それを超えることになる場合には相続税がかかる、一般の不動産と同じでございます。
○神谷(裕)委員 ありがとうございます。
実は、そういったことも所有者が確定できない理由の一つかもしれないなというふうに思っておりまして、個人の所有物にした場合、例えばそういったさまざまなこともあるのかなと思いますので、ぜひそういった税制上の問題についても工夫ができたらなというふうに要望させていただきたいと思います。
古いものも多いと聞いておりますし、長く放置されていたものも多いと聞いておるんですけれども、その中では、古いし、あるいは放置されていたということで強度や安全性に問題があるものも多くあるというふうに聞いておりますけれども、それがどれくらいあって、そのために財政的にはどれくらい必要なのか、改めて教えてください。
○室本政府参考人 これも、今現存する古い基準のデータベースのデータをもとにしておりますが、防災重点ため池が一万一千カ所で、これまで五千二百カ所で耐震調査を実施しておりまして、耐震対策を実施したもの若しくは既に耐震性があるというものが二千七百カ所程度ございます。今後耐震対策が必要なものが二千四百カ所程度ということになっております。
今ちょうど、防災重点ため池、新しい基準に基づきまして再選定作業をやっていただいておりますので、現時点で対策の費用を算定するというのは、これはちょっと難しいということで御理解いただければと思っております。
○神谷(裕)委員 今、財政上の方、ちょっと待ってくれというような話なのかなと思っているんですけれども、やはりそこでもう一つ気になるのは、先ほども議論があったように、現在の予算額で見ると、大臣が御答弁いただいたように、六百三十八億円の内数というようなことなんだろうと思うんですけれども、これで十分なのかということをやはり検証したいんですね。
今ほどおっしゃっていただいたとおり、非常に多くの箇所が放置されていたり、あるいは緊急性というのか、措置をしなければいけない、事業をやっていかなければいけないというようなことでございますし、防災上や耐震上の観点からも、これはやはりしっかりやっていかなければいけないんだろうというふうに思うわけでございます。
この法案についても、梅雨の前にというようなお話もありまして、当然、我々もそれは必要だと思うんですけれども、ただ、法案を梅雨の前までに施行させるというのでは、実は甚だ不十分でございまして、本来であれば、もう法案はとっくに通していて、かつ事業も実施して、梅雨の前に全てのため池が修繕が終わっているというのが本来のあり方だと思います。
ただ、どうしてもそこまでいっていないということであるならば、やはり可能な限り迅速にやらなければいけないんだろうと私は思うわけでございまして、その観点から見たときに、果たしてこの予算額で十分なのかというのは非常に気になるところでございます。
恐らくは、これでは足りないのじゃないかなというのが率直な私の実感なんですけれども、特に緊急性の高いものはどれくらいあると見越していて、例えばこの緊急性の高いものの手当てだけでどれくらいかかるのか、例えばそういったことも算定できないでしょうか。
○室本政府参考人 これも先ほど来の答弁と繰り返しになりますが、まず、今データベースで持っているものの中で、防災重点ため池は一万一千カ所なんですね。それが、再選定作業が終われば、恐らく五万カ所を超える数字が出てくるんだろうと思っております。
そうした場合、先ほど大臣から答弁があったとおり、対前年一二六%で六百三十八億円、その内数でやっていくということなんですが、これはあくまで国費ベースで、ですから、事業費ベースに直せば約二倍という規模になっていて、臨時特別の措置も含まれておりますので、そういう予算の枠の中で対応していくということになろうかと思います。
委員が御指摘のとおり、もし、このため池を一気に、危険性のあるものを一気に改修すれば、それはそれにこしたことはないわけでございますが、予算的な手当てとしては、国全体の予算もあるわけでございますので、私どもとしては、なるべくそれをしっかり確保した上で、今ある予算の枠の中で優先順位をつけながら、まずは、住民の生命を守るための避難体制の整備とか、あるいは浸水想定区域図、これはハザードマップまでいかない、その手前のものでございますが、そういったところを新たに選定される防災重点ため池全てに整備をした上で、並行して、ハード的に危険なものの対策を打っていくということで、効率的に進めていきたいというのが私どもの考え方でございます。
○神谷(裕)委員 ありがとうございます。その考え方はあるんだろうと思います。
ただ、大臣、今聞いていただいたとおり、官僚の方では、予算の話、やはり限界があります。大臣にあえてお願いをし、御決意を確認をしたいと思いますが、今申し上げたとおり、やはり防災、減災、大事な観点だと思います。この予算、私、足りるとは思っていません。改めて、御決意、あったら聞かせていただけないでしょうか。
○吉川国務大臣 まず、三十一年度の予算は六百三十八億円、その内数の中で、ため池の、緊急的な、優先度の高いため池をしっかりと対象にして補修等々も行っていくということになりますが、さらに、防災・減災、国土強靱化のための三か年緊急対策の中でしっかりと全体の改修等を実施をいたすための予算も確保してまいりたい、こう思います。
○神谷(裕)委員 ありがとうございます。
やはり、しっかり確保してください。本当に大事な予算だと思っています。そのことを改めて申し述べさせていただきたいと思います。
今回の法律なんですけれども、原則、防災上の観点からの補修については全額公費による負担となるんだというふうに思います。ただ、通常の場合の補修については補助事業となっているということで、先ほど事業費というお話もいただきましたけれども、自己負担分が発生してくるよねという話だというふうに思います。
先ほど稲津委員からもお話ございましたとおり、防災というか、定義という話もございました。そういった定義も大事なんですけれども、私は非常に大事だと思っていまして、しかし一方で、防災上の観点といったところでも、例えば、管理に所有者、管理者の不備があった場合には、補修等の費用については当然所有者負担も発生してくるんじゃないかなと思っておりまして、所有者の負担と、防災というか緊急性というのか、そのバランスというのはやはりとらなきゃいけないのかなというふうに思っていまして、補修等の費用について、所有者負担が発生する場合と、要は発生しない場合、これについて、やはりしっかり線引き、聞いておきたいなと思うわけでございます。
例えば、長期間放置されているなどの場合は、適正な管理がされていないというようなことで個人の責任になってくるのか。例えば、そういった場合、防災上の観点からいってこれはすぐに直さなきゃいけないよというものがあったとしても、それが管理されていない、管理不備によるものだとなったときに、所有者あるいは管理者の責任があるということで、一定程度事業費を負担しなければいけないのか、そういうようなところが非常に気になるところなんですけれども、いかがでございましょうか。
○室本政府参考人 防災工事については、耐震とか豪雨対策については、委員がおっしゃったとおり、農業者の負担がないという形で実施することになると思っておりますが、例えば、今回の法律で管理者と所有者等の適正管理が義務化されますので、今後を考えた場合は、適切に管理されていないという状況が仮にあった場合は、その補修の原因が所有者の責めに帰すものであるというふうなことになってしまいますので、その場合には所有者が応分の負担を出すべきというふうに考えております。
ただ、バランスという御意見がございましたが、実際の防災工事に当たって、どの程度管理の瑕疵みたいなものがあるかどうかというのは、その所有者なり管理者の負担能力とか、あるいは、そのため池に関する防災上の意義がどの程度のものかといったものをやはり総合的に勘案しながら負担額を決めていくということになろうかと思います。
○神谷(裕)委員 非常に気になっていますのは、古いものも多くて、長期間放っておかれたものも多いんだというようなことを聞いておりまして、それが、長期間放置をしていたというか、要は管理がなされていなかったことが、例えば所有者なり管理者の責任で、ここが過失部分に当たるんだ、あるいは責任があるんだというふうなことであると、一定程度やはり自己負担分が発生してくるというようなことも十分考えられるとするならば、結構事業がおくれてくるんじゃないかというようなこともやはり気になるわけでございます。
当然、事業となれば、それなりの一定の金額、一定のお金が必要になってまいりますし、そういう中で、こういったため池、緊急に措置をしていかなければいけないというような状況もあるわけでございますから、どこまでが責任がある、あるいは責任がないと言えるのか。もしそういったところで言える範疇があれば、お示しをいただきたいと思います。
○室本政府参考人 まさに、それは個別のため池の放置の度合いとか、それによっても全然、それぞれ管理実態が全国まちまちだと思いますので、そういったところを押さえないと、一律にこういう考え方でやりましょうというふうには、なかなか難しいんだ、こう思っております。
○神谷(裕)委員 そこは結構しっかりと言っていただきたいなというのが本音でございまして、やはりどうしても、実際に事業に乗りたいけれども、多額の負担が気になってできないよなんというような話があっても、やはり防災上の観点からはあってはならないような気がいたしております。
何回も申しましたけれども、ため池は、やはり放置されて、結果として放置をしていたような事例も多々あるんだと思いますし、先ほど申し上げたように、今回のデータベースづくりの中において、新たに所有者として確知される方、確定される方も多分いらっしゃるんだと思います。そういった方は、意図せずにして例えば放置をしていた結果になるわけでございまして、それが管理責任を問われるというようなことになったときに、今後事業をやっていくというときに、いや、こんなに負担を突然求められても困るんだというようなこともあるのかなと思います。
例えばこういった事例のときに、ほとんど不作為はないんじゃないかなと思うんですけれども、責任は問われるんでしょうか。いかがでしょうか。
○室本政府参考人 繰り返しになりますが、これは、やはり現場の実態を踏まえて、県、市町村の御意見、これも伺いながら決めていくということになろうかと思いますが、ため池の一斉点検の結果から得られた情報では、長い間ため池の管理を放置して、しかも下流で営農をしっかりやっているというようなところというのは余り見受けられない。
つまり、営農をしっかりやっておられる方はため池の管理もしっかりやっているというのが一般論として言えるのではないかと思っておりまして、そういう観点に立てば、放置しているため池というのは、今回、いろいろな県の方で言っておられますが、これは廃止する方向に持っていくんだろうというふうな流れになるのではないかと、これは推測でございますが、一般論としてはそのように推測されるということでございます。
○神谷(裕)委員 ありがとうございます。
一般論としてはそうなんだろうと思います。ただ、丁寧な対応を重ねてお願いをしたい、このように思います。
次の質問に移ります。
本法案では、都道府県に所有者が、届出を義務づけることになるんですけれども、実際の管理に当たっては、一番身近な自治体である市町村も重要な役割を担えるのではないかと考えるわけでございますが、この際、市町村、都道府県、国の役割と責任について確認をさせてください。
○室本政府参考人 まず、所有者等による届出の受理というのは、これはデータベースの整備の前提となる、そういう事務でもあることから、現在ため池データベースを管理している都道府県において、その都道府県の責任において処理をするということになっております。
先ほどの答弁で、ちょっと、市町村の職権でと私申し上げたかもわかりませんが、市町村は県に通知をするだけでして、データベースを処理し管理する、これは都道府県の義務でございます。間違いを訂正させていただきます。
他方で、ため池の管理の状況の把握とか、あるいは管理者に対する指導等の事務、これは現場に最も近い市町村の果たす役割が大きいと考えておりまして、よって、新たに創設する施設管理権の裁定制度においても、市町村を申請主体に位置づけております。
こういうことで、県と市町村、それぞれ役割を果たしていただきたいと思いますが、他方で、国の責務としては、各地方公共団体がその役割を十分に果たせるよう、全国的な見地からの調整とか支援、こういったことを行っていくということで、国、県、市町村がそれぞれ明確な役割を持ってこの法案の措置に対応していきたいというふうに考えてございます。
○神谷(裕)委員 今、都道府県、市町村、そして国の責務についてお話をいただきました。
当然、都道府県にしても市町村にしても、自治体の財政力、そんなに今いい状況ではございません。
そういった意味で、財政上の措置、非常に重要になってくると思いますけれども、この辺の財政上の措置について、しっかり確認をさせていただきたいと思います。お願いします。
○小里副大臣 ため池の補強等を実施する農村地域防災減災事業は、都道府県及び市町村負担分に対して公共事業等債が適用されまして、充当率九〇%、交付税措置率二〇%の措置が講じられることとなっております。
また、防災・減災、国土強靱化のための三か年緊急対策に基づく事業の中で、当初予算における臨時特別措置分については、防災・減災・国土強靱化緊急対策事業債が適用されまして、充当率一〇〇%、交付税措置率五〇%の措置が講じられます。
さらに、本法案に係る地方自治体の行政事務に要する経費については、普通交付税の中で適切に措置されることとなっております。
また、ハザードマップの作成、水位計設置などの監視体制の強化、ため池の廃止など、国民の人命を守るための対策については、定額で支援することとなっております。
これらの措置によりまして、ため池改修等ハード対策及びソフト対策に係る地方公共団体の負担軽減に努めてまいります。
○神谷(裕)委員 副大臣、ありがとうございました。
この法律によるところの財政的な支援というのは、結構しっかりやっていただけているんだろうというふうに思います。ただ、例えば、先ほどの話にあった、自治体がもし所有した場合、これは多分、独自財源になるんじゃないかなと思います。そういった部分もやはりしっかり面倒を見ていただけたらなということをお願いをして、質問を終了させていただきます。
ありがとうございました。
○武藤委員長 次に、堀越啓仁君。
○堀越委員 立憲民主党・無所属フォーラムの堀越啓仁でございます。
本日は、農林水産委員会にて二回目の質問に立たせていただきます。諸先輩の皆様に格段の御配慮をいただきました。このことについて、まず冒頭、御礼申し上げたいと思います。
そして、このたび豚コレラ被害に遭われた養豚農家の皆様方に心からまずお見舞いを申し上げるとともに、実際現場で対応していただいている皆様に敬意を表し、また、政府におかれましては、一刻も早く終息宣言を出していただけるよう、心からお願いを申し上げたいと思います。
また、先週、私の地元の群馬県からも豚コレラ対策の強化を求める緊急要請書をいただきましたので、この場をかりて、重ねて政府に要請をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、さきの臨時国会でも申し上げましたが、現在、私は環境委員会と農林水産委員会に所属をさせていただいております。環境の問題について、特段、もともと議員になる前から関心を持っております。全力で取り組んでいるところでございまして、いわゆる自然系職員、レンジャーに倣いまして、私も自然系国会議員を目指していきたいということで今取り組んでいるところでございますので、そういった観点からも、このため池の問題について、法案について質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
まず、本法案のため池について、各委員からもお話ありましたけれども、少し触れさせていただきたいと思います。
まず、農業用水を確保するために水を蓄え、取水できるように人工的に造成されたものがため池であると承知をしておりますが、やはり、その一方で、かんがいであるとか洪水調整、あるいは土砂流出防止、あるいは生物の生息、生育の場であったり、先ほどお話もありましたけれども、地域の憩いの場として非常に多面的な機能を有しているのがため池であるというふうに承知をしております。
さらに、ため池は、西日本を中心として二十万カ所あるとされ、さらに、七割は江戸時代以前につくられたものがほとんど、あるいはまた、つくられた年代が不明なものがほとんどであるというふうに承知をしております。水田稲作農業を中心とする我が国では、圃場の拡大や土木技術の発達とともに、農業水利施設として、水源として農業用ため池が数多くつくられてきたわけでございます。
ため池というふうに聞くと、私、頭にすぐ浮かぶのが、やはり四国・香川県にある満濃池でありまして、満濃池は、皆さん御存じのように、弘法大師である空海がこの改修に当たられたということで知られております。これは、八一八年に洪水によるため池の決壊を受けて、弘法大師である空海がその改修に当たられたということで有名になっているわけなんです。
ちなみに、私も実は真言宗と並ぶ天台宗の僧侶でございまして、この天台宗の宗祖、開祖である最澄、伝教大師もまた、実は国土の防災のために六所宝塔という宝塔をつくられています。今現在、実は時代の流れとともになくなってしまったんですが、今でも比叡山の延暦寺にある東塔と西塔、そういったところに二カ所ある。私の出身である群馬県にも、もともと一塔、宝塔がございましたが、これも残念ながら今は焼失しておりますが、当時、災害からやはりこの国を守ろうとしたその思いというのは、古くから受け継がれてきているんだろうというふうに思います。
この伝教大師様のお言葉に、正災は諸仏も滅することあたわず、七難は即滅すという言葉があります。これは仁王経というお経なんですけれども、このお経を読誦することによって、災難あるいは災害を消失し国家が安泰になるとされているお経でございまして、この言葉の中にあるものなんですが、天変地異は仏さんでも避けることができない、しかし、それに付随して起こる災難というのは必ず免れる手だてがあるんだということをおっしゃっているわけですね。
昔から、台風や集中豪雨、地震などの天変地異という発生は、これはやはり避けることができなかった。しかし、そうはいっても、それに伴って発生する災害や二次災害というのは、私たちは、防災や減災ということを通じて防げる手段が何かしらあるんだということを、既に昔から教えていただいているんだろうというふうに思います。
これを改めて私たちはしっかりと受けとめて、この今の気候変動の日本において激甚化している自然災害に対して真っ向から向き合っていく、そういった必要があるということを私たちは今もう一度確認をしなければいけない。そういった意味からすると、このため池に関する法案、本当に重要なものであるというふうに思っています。
しかしながら、これらの甚大な被害、昨年の七月にありましたけれども、水害被害を受けて、このため池法案、審議がなされるということになっておりますが、やはり、本来であれば、それを未然に防ぐための防災、減災であってほしかったという思いがあります。
その上でお伺いしたいわけですが、これまでやはり整備が不十分であったということは否めないと思います。そして生じていた問題と、ようやくといいますかやっとというか、本法案をこの時期に提出した理由について、重複するところもあるかと思いますが、農水省に伺いたいと思います。
○室本政府参考人 先ほど大臣からも答弁がございましたが、農業用ため池は、農業生産上不可欠な水を供給する施設として江戸時代以前から築造され、全国で約二十万カ所が設置されるなど、我が国農業の発展に大きな役割を果たしてきたところであります。
しかしながら、農業用ため池については、近年、台風等による豪雨や大規模な地震により被災するケースが多発している一方で、築造から相当な期間が経過する中、権利者の世代交代が進み権利関係が不明確かつ複雑となっている、離農や高齢化により管理組織が弱体化しているなどにより、日常の維持管理が適正に行われなくなることが懸念される状況になっております。
他方で、これまでの農業用ため池に係る整備は、営農上や防災上の優先度に加えまして、事業実施に係る地元調整状況等を踏まえ対応してきたことから、権利関係が複雑化しているため池や利用が低下しているため池など、地元調整が難しいケースについて対策が進まない場合がございました。
近年の災害による被害が相次ぐ中で、このようなため池の管理や補強対策に関する課題が浮き彫りとなったことから、農業用水の供給機能を発揮しつつ、決壊による水害等の防止を図るため、行政が主導して必要な措置を講ずることができるよう、この法案を提出した次第でございます。
○堀越委員 法案提出の理由については、よくわかっております。
その上で、今まで、最後の方に触れられた、その地域の状況やあるいは気候変動等々で大きな被害をもたらすであろうと考えられていたものに対してもやはり対応が難しかった、対策がとりにくかった、だからこそこの法案が必要だ、そういったところはよくわかります。
しかし、やはり同じように防災、減災ということを考えたときに、このため池だけではなく、農林水産所管に係る諸問題に対して、もっと未然に、今現在問題となっている、確かに難しい、だけれども、これを放置しておいたならば、確実に、国民の皆さんの生命とそして生活と財産を奪う可能性が極めて高いと予測されるものに関しては、これを教訓として、やはり事前に取り組んでいただきたいということを、これは私からの意見でございますけれども、切にお願いをしたいと思います。
先ほどお話をさせていただいた伝教大師やあるいは弘法大師、皆さん、自然とともに生きていく、まさしく農業、林業、水産業というのは自然の中にこそあるわけで、やはり自然の猛威に対して私たちがいかに共生していくか、いかにその中でなりわいをつくっていくかということ、これは無視できないことでありますので、ぜひもう一度、あらゆる事業に対して確認をお願いしたいと思います。
そして、ため池に係る究極の防災対策というのは、やはり、農業用として使われなくなった不要なため池をなくしていくということも非常に重要な観点であると思います。当時は必要だった、しかし今現在はそこまで必要性がなくなってきている、しかしそれが防災、減災の観点から危険性が非常に高いのではないか、そういったところに関してはこれをなくしていく、これも非常に重要な観点であると思います。
農林水産省の、ため池の防災・減災の施策体系によると、防災対策として、使用しなくなったため池の廃止を推進とあります。
そこで伺いたいんですが、これまでのところ、全国でどのくらいの数のため池が廃止されたのか、また、その場合の主な理由というのは何だったのか、さらに、その跡地は現在どのようになっているのか、農水省が把握している現状で結構ですので、お答えいただければと思います。
○室本政府参考人 かなり過去にさかのぼって、廃止されたため池の数を把握できておりませんが、例えば直近の二十八、二十九年度においては、全国で四十五カ所の防災重点ため池、これが廃止をされております。あくまでこれは防災重点ため池でございますが。この廃止理由としては、農業利用がなくなったということとか、老朽化による決壊のリスクが高まったということが挙げられております。
ため池の廃止については、一般的には国の補助事業を活用して行っておりまして、跡地という点では、これはそれぞれ地域の実態によってもさまざまでございまして、例えば、一例を申し上げれば、地目をため池のまま、そのままにしている事例、あるいは、山林とか官有地、こういったものに変更した事例、公園などの公共の用に供される施設等に活用されている事例、こういった事例がございます。
〔委員長退席、伊東委員長代理着席〕
○堀越委員 ありがとうございます。
やはり、取り壊すだけではなくて、その後の有効利用、そこも含めて調査をしていただきたいというふうに思います。
ちょっといろいろ所感もあるんですが、次へ行きたいと思います。
まず、ため池廃止を進める現場の都道府県の担当者からは、廃止する場合の手続において、廃止工事に地元の費用負担はないこと、代替水源の確保に努めることを伝え合意を促しておりますが、いわゆる水利権の問題は重く、原則、受益者全員の合意が必要との指摘があります。
そこで、ため池の廃止にかかわる手続を進める上で、受益者の水利権との関係についてどのように農水省は整理されているのか、見解をお伺いしたいと思います。
○室本政府参考人 委員がおっしゃるように、ため池にも水利権がございまして、その水利権を持っている者、水を使っている者が何人いてるかというところで、これを廃止する際には、その利用している者の間の合意が当然必要になってくるわけでございまして、これはもう十分調整をしていただくということ以外に方法はないかな、このように思います。
○堀越委員 ありがとうございます。
現状は理解をしますが、先ほどもお話しさせていただきましたが、ただ単に廃止をするだけではなくて、やはり逆転の発想といいますか、ある意味では、ため池として存在していたものを今廃止にするということになる、その地形等々でそこにため池が存在していた期間が非常に長い場合には、そこの土地そのものを有効利用して、さらに、ため池にかわる憩いの場であったり、あるいは、一例に聞きますと、太陽光パネルを設置をして地域で発電所を設置されているという例も伺っております。
環境省の所管にはなると思うんですが、防災、減災の観点から、そこに樹木を植えていき、弱い地盤をしっかり強固なものに変えていくことによって防災、減災を進めていく、そういったグリーンインフラという概念があります。これを農水と、ぜひ環境省とも連携をして、ため池が廃止された後のインフラ整備を進めていっていただければというふうに私は思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
そして、次の質問なんですが、本法案が、防災・減災対策の観点に鑑みて、またその強化に資することに対しては、目的として、農業用水の確保を図るとともに、農業用ため池の決壊による水害その他の災害から国民の生命及び財産を保護し、農業の持続的な発展と国土の保全に資することを挙げております。ここのところ、私も全く賛同するところであります。
そして、先ほどからお話をさせていただいている自然の観点から、自然系のことからちょっとお聞きをしたいところを次に述べたいと思います。
冒頭にも述べさせていただきましたが、ため池というのは、農業用水の確保だけにとどまらず、確かに人工的に造成されたものではあるけれども、非常に多面的な機能を有しており、現在では、各種生物、生息、生育の場、また地域での憩いの場としてさまざまな多面的機能を有しております。そして、生物多様性保全の観点から重要なため池も多いと私は認識をしています。
農水省が選定されたため池百選、見させていただきましたけれども、これは地元の、私の群馬県にも、太田市にある妙参寺沼が選ばれております。大変光栄なことだと思いますが、これが選ばれている理由というのが、やはり生物多様性の非常にすぐれたため池であるということでございます。群馬県の調査では、九十八種類の植物と二十八種類の鳥類、そして四種類の魚と十七種類の底生動物類、そして三種の両生類、八十一種の陸上昆虫類が確認されている。しかも、時々カワセミも姿を見せる。非常に生物多様性のシンボリックな親水型の公園として、現在、交流の場所になっております。
また、日本も加盟している、自然保護を目的とする最初の国際条約でありますラムサール条約における湿地定義の広がりなども受けて、生物多様性の観点から重要な湿地を保全することを目的に、環境省は、日本の重要湿地五百を平成十三年に公表しておりますが、そこには、さきの満濃池周辺のため池群を始めとして、全国各地にあるため池群も選定をされております。
現在は、国民の生命及び財産を保護するため、最重要課題として防災・減災対策がある一方で、生物多様性保全に配慮した対策も同時に求められている時代であると私は考えております。
御存じのとおり、国交省では、平成九年、河川法が改正をされ、そして河川の環境の整備と保全というものを河川管理の目的に位置づけております。翌年の六月には、美しい山河を守る災害復旧基本方針を策定し、河川環境の保全に配慮した災害復旧に努めています。
そこで、農水省における、例えば、生物多様性保全を重視した農林水産業を強力に推進するため、平成十九年に生物多様性戦略を策定されたと承知しておりますが、本法案との兼ね合いといいますか、生物多様性の観点との整合性について、大臣の御見解を伺いたいと思います。
〔伊東委員長代理退席、委員長着席〕
○吉川国務大臣 農業農村整備事業におきましては、平成十三年に土地改良法を改正をいたしまして、事業の実施に際して環境との調和に配慮することを原則とするとともに、環境配慮にかかわる技術指針等を整備し、環境への負荷や影響の回避、低減により生物多様性に配慮しているところでございます。
農業用ため池は、農業用水の供給機能のみならず、多様な生物の生息、生育の場となるなど、生物多様性の保全機能も有するものであると認識をいたしております。
このため、ため池の整備とあわせまして、生物の生息、生育の場を形成するためのホタルブロック、魚巣ブロックの設置、さらには、ため池貯水面のビオトープとしての活用、そしてまた、ため池を廃止するに当たりましては、希少な動植物を移設するなど、生物多様性に配慮した対策を行うことといたしております。
今後とも、環境との調和に配慮しつつ、ため池の整備を進めてまいりたいと思います。
○堀越委員 ありがとうございます。
先ほどお話をさせていただいたグリーンインフラという概念の点からも、やはり、ため池としての機能は一旦必要とされなくなったかもしれないけれども、そこに生物多様性が存在するということは、逆を言えば、地域のまた財産としてしっかり復活することができるということにもなり得ると思います。
私の出身の群馬県は、実はそんなに多くのため池というのはないんですけれども、利根川と烏川に挟まれた地形になっておりますので水源は非常に豊富でありまして、そんなにため池というのはないんですが、やはり西日本の状況を見ますと、もう地域の中に、住民の生活の中にため池が存在するという地域もあります。これが生物多様性の象徴になり得る箇所であるならば、それをやはり復活させていただくことによって、財産としてまた守られていく、大事にされる、そういったため池もあろうと思いますので、ぜひその点も留意しながら整備を進めていただければと思います。
生物多様性の観点からいえば、やはり環境委員会で私も多々学ばせていただいておりますけれども、生物多様性というのは、本当に繊細なバランスによって成り立っている。この繊細なバランスに、どんな小さいことかもしれないが、手を入れることによって、やはり大きな生態系にインパクトを与えてしまうというのが確実にありますので、そういった観点からもしっかり調査、研究、実証等々を進めていただき、住民の皆さんにしっかり説明をした上で整備を進めていただくことをお願いを申し上げたいと思います。
それでは、次に、細かい条文のところに関しまして質問させていただきたいんですが、本法案の第四条第三項におきまして、都道府県知事は、農業用ため池に関するデータベースを整備するとともに、当該データベースに記録された事項をインターネットの利用その他の方法により公表するものとするとされています。
最近はどのような情報でもネットで見られるようになってきておりますが、しかし、そうはいいながら、地域によってはインターネットの設備等々がまだまだ不十分な、配備が必要なところがあると思いますし、台風や地震などで避難しなければいけない、そういった状況もあります。その中で、リアルタイムな情報がしっかりと把握できなければ意味がないというものもありますので、ネットにアクセスできないような状況も十分想定されるわけでございます。
そこで、現状におけるデータベースの管理及び公表状況の実態についてお答えいただき、その上で、条文にある「インターネットの利用その他の方法」とは具体的にどのような手段を想定しているのか、農水省に伺いたいと思います。
○室本政府参考人 今ありますため池データベースにつきましては、災害等の緊急時に迅速な対応が可能となるよう、国、県、市町村で情報を共有することを目的としておりまして、これは各都道府県ごとに作成され管理をされているものでございまして、公表扱いにはなってございません。
今回、この法律案の第四条三項に基づき整備するデータベースについては、広く周辺住民がその存在を把握できるよう、公表することとしておりまして、その方法については、都道府県のホームページへの掲載のほか、都道府県、市町村への備付け、あるいは、それ以外にも適切な方法があるかどうかというのは今後検討してまいりたいと考えております。
○堀越委員 では、もう一点、それにかかわる質問をさせていただきますが、このデータベースに記録されている情報の更新について伺いたいんですけれども、当然のことでありますが、農業用ため池に関する情報の変更というのは速やかにデータベースに反映されることが求められるわけでございますが、条文を見ていきますと、既存農業用ため池については、附則の第二条第二項に、都道府県知事に届け出た事項に変更があったときには、農林水産省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければならないとされています。
そこで、このようなデータベースの更新がしっかりと行われるために、例えば、本法案の第十八条に基づいて都道府県知事が報告徴収及び立入検査などを行うことも場合によっては必要だと思っておりますが、農水省としてどのような考えをお持ちなのか、御答弁をお願いします。
○室本政府参考人 農業用ため池の所有者等が設置の届出や変更の届出をしなかった場合の罰則規定というのがございまして、これは十万円以下の過料というふうにしてございますが、これによって届出義務の履行を担保することとしてございます。
また、仮に所有者等から届出が行われない場合であっても、届出事項を変更した事実を都道府県が把握した場合は、報告徴収や立入調査を行った上で、県が職権によりデータベースの更新を行うということにしてございます。
こうした措置によりまして、データベースの更新を的確に行うことは十分可能だというふうに考えてございます。
○堀越委員 ありがとうございます。
皆さん本当に真面目に取り組んでいただいておると思いますので、そういったところまでは及ばないというふうには思うわけですが、しかし、このデータベースの更新、やはり先ほどもお話しさせていただいたように、災害、防災、減災の観点から、やはり早急に反映されるものであって、しっかりと全体で把握できるような、円滑な、リアルタイムな情報提供を行うことが大前提になると思いますので、ぜひ徹底の方を図れるように周知の方をお願いしたいと思います。
次に、ため池データベースに関しまして続けさせていただきますが、農水省が所管の国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、略して農研機構の農村工学研究部門が開発した、ため池防災支援システムについて質問したいと思います。
昨年九月に、農研機構は、防災科学技術研究所等との共同研究によって、地震、豪雨のときに、ため池の決壊危険度をリアルタイムに予測し、予測情報をインターネットやメールを通じて防災関係者に配信するとともに、被災したため池の状況を全国の防災関係者に情報共有する災害情報システムを開発したと発表しました。これはすばらしいものだと思います。
地震時には地震情報を受信してから三十分以内、豪雨時には現在時刻から六時間後までにはため池の決壊危険度を予測して、インターネットで予測結果を地図に表示する。国や自治体は、この情報をもとに、ため池周辺の住民の避難対策を行ったり、決壊防止のための緊急対策を行うことができる。また、スマートフォンやタブレットを用いて、ため池の管理者が、現地で被災状況を入力したり、被災写真をアップロードすることによって、国、自治体等の関係機関の間でため池決壊の有無や被災状況を即座に情報共有できるとしており、来年度から本格運用を開始する予定となっています。
これまで、ため池の決壊を予測したり、その危険情報を伝達する方法がなかったことを鑑みれば、本当に画期的なことだと思っておりますし、ICT、IoT、AI技術が目まぐるしく発達している現在においては、人的な二次的被害を防止するのに非常に重要な技術であると思います。ため池決壊防止対策など、防災・減災支援の利用を本当に私は期待しております。
そこで、このシステムは、昨年十一月に農水省において取りまとめられた「平成三十年七月豪雨等を踏まえた今後のため池対策の進め方」において、「緊急時の迅速な避難行動につなげる対策」の中で、ため池データベースを充実し、ため池防災支援システムで関係機関が情報を共有として、推進することとされております。
そこで、このシステムを活用する際に、全国にあるため池のうちどれだけのため池の情報を網羅できると見込んでいるのか、さらに、今後、各地域において有効活用するための整備体制について、農水省の見解を伺いたいと思います。
○室本政府参考人 まさに今委員からお話のありました、ため池防災支援システム、これは、今回の法案に基づく届出された情報は全てこの防災支援システムに登録することを今考えてございます。
委員がおっしゃったとおり、降雨予測データを活用した危険なため池の予測とか、豪雨、地震時において点検を行うため池の抽出、あるいは関係機関における被災ため池に係る情報共有、こういったことにも活用することができるということでございます。
このシステムを有効活用するためには、やはり、国、地方公共団体、ため池管理者、これが一体的にこのシステムを利用することが非常に重要であるということですから、この法案の施行と合わせて、来年度から試行的に届出の登録とかそういった面での運用を開始していく、そういう予定にしてございます。
今、地方農政局とかあるいは都道府県においてこのシステムの説明会、こういったことを開催しておりまして、体制整備を着実に進めている、そういった段階でございます。
○堀越委員 ありがとうございます。
このシステムは、本当に私、有用だと思っておりますし、ぜひ、全力で、農研機構さんとも連携して進めていただきたいというふうに思います。
更に言えば、研究開発というのは多大なる時間とそしてコストがかかってくるわけでございますので、農水省としては、さらなる積極的な支援をお願いしたいというところであります。
実は、先日、我が党の農林水産部会において、農研機構さんに来ていただきまして、農村が、一次産業が生み出すエネルギー、創出、あるいはそのエネルギーの利用研究についてのお話を伺いました。メタンガス、発酵させてそこから発電をする、そこから出てくる副産物を農地に利用して肥料として使う、そういったすばらしい取組をされていると私は本当に思います。
私も農研機構さんを応援したい立場でいろいろお話を伺ってきたわけですが、いいことをしているのに、ちょっと自信なさげにお話をされるんですね。それは、やはりもっと農水の皆さんが応援をしていただけると、本当に農研機構さんも全力で、更に後ろ盾があるということで取り組めると思いますので、これからもぜひ農研機構さんを応援をお願いしたいと思います。
時間的に最後の質問になるかと思いますが、最後に、念押し的、確認的な意味合いの質問になるんですが、現在、全国のため池は約二十万カ所存在するとされています。このうち、平成二十五年から二十七年度に実施したため池一斉点検結果を踏まえた情報を取りまとめた、ため池データベースとして情報整備されているものは、受益面積〇・五平米以上のため池で、二十万カ所の半分にも届かない約九万六千カ所だと聞いています。
また、昨年の七月豪雨を受けた全国ため池緊急点検において、データベースに記載されていない小規模なため池で現地に迅速に到達できない事例や、データベースに記載されているため池でも既に廃止されていたり、あるいは荒れてしまっていたりする、そういった事例が見受けられたとされております。これらのことから、ため池のデータ管理と現状把握は喫緊の課題であると承知をしています。
そこで、まず基本的な確認でございますけれども、全国二十万カ所、これら全てが、本法案の第二条で定義され、農林水産省令で定める要件に適合するものとされている農業用ため池に該当するという認識でよろしいのか、伺いたいと思います。
○室本政府参考人 全国の二十万カ所ある農業用ため池のうち、既に他の用途に転用されているもの、これが仮にあるとすれば、それを差し引いたもの、これが第二条一項で定義する農業用ため池という定義の中に入るものだと考えてございます。
○堀越委員 済みません、時間が来たので終わりにしたいと思いますが、このため池の法案を私は本当に賛同しております。しかし、これを契機にして、今まで防災、減災にとって懸念が残されていた事業に関して放置していたものがあるのだとすれば、もう一度点検をしていただき、国民の皆さんの生命財産、そして暮らしを守っていただくように、私たちも一体となって取り組んでまいりたいと思いますので、再点検の方、よろしくお願いします。
ありがとうございました。
○武藤委員長 次に、玉木雄一郎君。
○玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。
吉川大臣、御無沙汰しております。きょうはよろしくお願いいたします。久しぶりの農林水産委員会で質問に立たせていただきます。
東日本大震災から八年がたち、九年目になりました。当時、津波の被害が多く報じられましたけれども、藤沼池、藤沼湖という大きなため池がありまして、それが決壊をし、八名の死者・行方不明者を出したことがありました。
あのときに、ため池についての、特に耐震の対策をしなければならないということで、平成二十三年度の三次補正予算だったと思いますが、何とか、国の予算でため池の点検や整備をできる、そういった予算がつくれないかということで、当時、振興局や財政当局、主計局にも御協力をいただきまして、多分初めて国の予算としてため池を対象とした予算を計上したのが二十三年度の三次補正予算だったと思います。
当時はたしか二十四億円という小さな数字でありましたけれども、今は、ため池を含む農業水利施設の整備の予算として、たしか十倍ぐらいに、二百四、五十億円になっていると思いますけれども、ため池の整備をやはりしていかなければならないということでこれまで私自身も取り組んでまいりましたので、今回の法律については非常に評価するところが多いですし、やっとここまで来たかなという印象であります。
ただ、幾つか疑問点もありますので、きょうは質問させていただきたいと思います。
まず、そもそも、なぜため池が荒れて、整備が必要になっているのかという背景を考えなければいけないと思います。それはひとえに、日本の農業基盤が弱っている、あるいは受益者が減っている、もっと言えば、管理する農家や農業従事者が減ってきているというところにやはり根本的な理由があるんだと思います。
先ほど堀越委員から話があったように、私の地元の香川県は満濃池があります。まさに弘法大師が整備をした。何百年にもわたって維持されてきたため池もあるわけでありますが、そんな中で、近年、非常に老朽したため池、あるいは整備がおくれているため池が出てきているということであります。
そこで、まず大臣に伺いたいと思いますが、農業をめぐる基本的な認識を伺いたいと思います。というのも、食料・農業・農村基本計画の見直しが始まったと承知しておりますけれども、まず、二つ大臣にお願いがあるんですね。
一つは、これまで、特に五年間やってきた農政についての検証をまずしっかりやってもらいたいと思います、過去の政策の検証なくして次の新しい計画はないと思うので。いいこともあったでしょう。ただ、一方で、予定した成果が上げられていないというものもあるので、客観的な検証をしっかりやるということをまずお願いしたいと思います。
二つ目に、これはきのうの記者会見でも大臣御自身、発言されておられたので安心しておりますが、どうしても、我々もそうなんですが、成功した農家の話ばかり聞きがちになります。特に、大規模で若手で行け行けでやっているというのは非常に華々しいので、どうしてもそういう方々の話を聞くことが多いんですけれども、ぜひ、中山間地で、特に、高齢になっても一生懸命地域を守りながら農業をされている方の声を聞いていただきたい、あるいは中小の農家の声を聞いていただきたいと思います。
特に、この数年間の農政というのは、基本的に三つのカテゴリーの人しか応援しなくなりました。つまり、認定農業者と法人と法人化を前提とした集落営農組織、この三つが基本的には支援対象ですが、そこから漏れてしまうとさまざまな支援策を受けられない。小さな面積の中でも非常にいい農業をやっている方でも、そういったところからはみ出てしまう。
例えば、今、卵価が非常に安くなっていますけれども、中規模の農家の方は、例えば二十万羽、三十万羽やっている方というのはいろいろな支援から外れていく方向になっていて、一生懸命地域の中で頑張ろうとしても、逆に頑張れなくなっている。そういうところにもぜひきめ細かく光を当てていただきたいなと思っております。
まず、今申し上げた、過去の検証をしっかりすること、そして、大規模や成功した農家だけではなくて、さまざまな形態の農家の声をしっかり聞いて、それをこれからの農政に反映していただきたい、このことについての大臣の考えをお聞かせいただきたいと思います。
○吉川国務大臣 玉木先生から御指摘をいただきました食料・農業・農村基本計画の見直しに当たりましては、従来は、検討期間の前半において、食料・農業・農村政策審議会の企画部会において、役所が準備をした資料をもとに、審議会の委員と役所との間で議論をしながら、基本計画の目標と実際との乖離等を検証してきたと承知をいたしております。
このような進め方では、私は、現場の農業者や食品事業者等が抱える課題などを踏まえた議論が不十分になる嫌いがあったのではないかと考えておりまして、このために、今回の基本計画の見直しに当たりましては、まずは現場の農業者等からヒアリングを行って、審議会委員との間での議論を通じて現場の課題を明らかにしていただきながら、これを踏まえて論点整理をした上で、本年秋ごろをめどに諮問を行って、目標との乖離の検証ももちろんでありまするけれども、施策の方向性について議論を深めていくことにいたしているところでもございます。
今御指摘をいただきました、高齢者の声も聞いてまいりたいと思いますし、さらには中山間地域の皆さんの声も聞きたいともちろん思います。そして、こういった声を聞くことによって、それがまた検証にも私はつながっていくだろうと思いますので、幅広く声をお聞かせいただきますように企画部会の方にもお伝えをさせていただきたい、こう思います。
○玉木委員 ぜひお願いしたいと思います。
特に検証いただきたいのは、一番のポイントは食料自給率です。
二〇二五年までに四五%という目標にしております。過去、民主党政権は五〇%ということでしたけれども、少し下げて、二〇二五年に四五%なんですが、基準となっている二〇一三年の三九%から、今は三八に少し微減しております。ただ、上がる傾向がなくて、これは下がっていっています。
特に心配しているのは、TPPが昨年の十二月に発効して、この二カ月で牛肉なんかはすごくふえていますね、輸入が。二月は少し落ちつきましたけれども、一月はどんとふえていますから、二割ぐらいふえています。あと、心配なのは、野菜がすごくふえていますよね。二〇一七年だと、対前年度に比べるとこれも二割増しということですし、私の知り合いの野菜農家なんかは、やはり輸入野菜がふえていることに対して非常に懸念をしておりますし、なかなか、天候の問題もあって、非常に厳しい経営環境に置かれている若手の野菜をやっている農家もいます。
輸入がふえていくということは、ある意味、需要を外国産の農作物で賄うということになっていきますから、食料自給率はどうしても低下をしていくということになっていて、これは改善の兆しがありません。
今の農政を見ていると、日本人の食べるものは外国から、日本人がつくったものは輸出をして外国人のためにということになっているように見えますから、食料自給率を上げていこう、これはカロリーベースも生産額ベースも両方落ちていますからね。もっと言うと、食料自給力も落ちていますから。いろいろな数字が全部落ちているということからすると、果たしてこの目標を達成できるのかということに疑問を抱かざるを得ないと思いますけれども、二〇二五年までに四五%の食料自給率、これは達成できるのかどうか、大臣の現状の認識と、その実現に向けた戦略を伺いたいと思います。
○吉川国務大臣 大変重要な御指摘をいただいたと存じます。
食料自給率でありますけれども、昭和四十年度以降、長期的に低下傾向にありましたけれども、平成十年ころから横ばいで推移をしていると承知をいたしております。これは、長期的には、自給率の高い米の消費が減少をいたしまして、飼料や原料を海外に依存をしている畜産物や油脂類の消費量がふえる中で、平成十年ころより、小麦、大豆等の国内生産が堅調に推移してきたことによるものと考えております。
今後、将来にわたりまして食料の安定供給を確保していくためには、食料自給率を向上させていくことが重要であると認識もいたしておりまして、他方、日本の食を支える我が国の農業でありますけれども、農業者の高齢化、リタイアなど、生産基盤を含めて厳しい状況も続いているのも確かでございます。
このため、政府におきましては、国内外の需要に的確に対応できる強い農業構造の実現を目指して、担い手への農地の集積、集約化ですとか、新規就農の促進ですとか輸出の促進、スマート農業の導入による生産性の向上等の施策を積極的に今推進をしているところでありまするけれども、さらに、国内外での国産農産物の消費拡大や食育の推進ですとか、ニーズのある麦、大豆の生産拡大ですとか飼料用米の推進といった、食料自給率の向上に必要な施策をきめ細かく今講じているところでもございますので、日本型直接支払制度等の地域政策とあわせて、多様な施策も強力に展開をしていく必要があるのではないかと認識をいたしております。
○玉木委員 大臣、それは既存の答弁なんですけれども。それをずっと繰り返してきて、下がってきているんですよね。
私は、戦略的に何をふやせば自給率が上がるのかということを、もっと品目ごとに、具体的にブレークダウンして戦略を練るべきだと思います。
例えば小麦。小麦は圧倒的に輸入ですし、これを上げればかなり上がっていくんですが、私はこの委員会でも何度も申し上げましたけれども、二毛作助成はむしろ減らすんですよね。それだったら、水田フル活用して、やはりもっと二毛作で小麦をつくってもらうような支援を徹底的にするとか、あるいは、さっき言った、飼料が、やはり外国の輸入飼料を使っているからなかなか上がらないということがあれば、そこをどうするのか。
ただ、餌米ではこれは補えないんですよね。やはり、牛に使うといったって、最大使えても三%とかですから。それは鳥とか豚は多少使えますけれども、どんなにやったって、そこは上がらないわけですよ。あとは、トウモロコシを本当につくるのか、つくらないのか。ここは本気で考えないと、低下の傾向はとまらないと思います。
そして、間もなく、あと何十年かたつと、世界じゅうで食料争奪戦が起きますね。国家の安全保障を考えると、自国民に対して、自国の中で自国民がつくったものをどの程度食べさせるのか、供給するのかということは国家戦略としてしっかり持つべきだと思いますし、食料安全保障課も農水省にはありますから、ちっちゃな人員で頑張っておられるのはよくわかりますが、むしろそこをしっかり打ち立てることによってさまざまな政策も決まっていくので、私は、いま一度、食料安全保障のあり方をどうするのか、そして自給率をどうするのかというところを政策の根幹に置いてもらいたいなと思っております。
私は、スイスのように、憲法改正するなら、食料安全保障をしっかり憲法に書き込む、安全なものをいかに国民に届けるのか、そういうことだってしっかり議論していくべき時代にもうなってきているのではないかなと思いますので、いま一度、食料安全保障、そして自給率の問題については、大臣がリーダーシップをとってしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
心配なことは、農地と人の状況です。人・農地プランをしっかりやっていこうということもずっと提案をしてまいりましたけれども、農地も人も、取り巻く環境は非常に厳しいと思いますね。
特に農地に関しては、二〇二五年までに四百四十万ヘクタールということになっていますが、なかなかこれは難しくて、二〇一七年度で四百万ヘクタールになって、四年連続落ちていますよね。どんどんどんどん優良農地は減っていっていますよ。
就農人口についても、二〇二五年に百八十四万人ということで定めていますけれども、二〇一八年二月の時点で百六十九万人。既に割り込んでいますね。
ですから、農地や人をめぐる環境がどんどんどんどんやはり計画よりも悪くなっている中で、果たして予定どおりのものができるのかについては、もう一度厳しくチェックをして、現実的で具体的な目標を定めていただきたいということを改めてお願いしたいと思います。
もう一つ、農業所得倍増計画について伺いたいと思います。
これも当委員会で何度も私はその実現可能性について疑問を呈してきましたけれども、確かに、農業所得は数字上は上がっていますけれども、いわゆる生産額が上がっているということですけれども、これは生産量が減って価格が上がるので、P掛けるQが上がっているだけであって、むしろ生産量は、豚などを除けばほとんど、最近でいうと、一番所得が低かった二〇一四年のときと二〇一七年を比べると、ほとんどのものが生産量を落としています。
例えば、米でいうと七%落ちています。ただ、そのときに、相対取引価格は三〇%上昇しています。これは、餌米政策によって、ある種、税金で強制的に主食用米が上がっているということですよ。米の需要もこの間六%落ちています。野菜について言うと、野菜も七%収穫量が落ちています。しかし、農業物価指数は一二・一ポイントアップしています。
つまり、価格の上昇が補っていて、あたかも所得がふえているように見えていますけれども、その陰で、生産基盤が弱体化している、現に生産量が低減しているということについて、またしっかりとこれも、表面上の数字ではない、その背景で起こっていることをしっかりと見定めてもらいたいと思います。
その意味で、一つ質問と提案を申し上げますけれども、当時、農業・農村所得倍増計画といったときに、二つのことで成り立っていました。いわゆる農業所得と、そして農村所得を組み合わせるということでした。前者の農業所得については、実はもう目標は達成しています。一・二倍ぐらいふえればいい。倍にするために、いわゆる六次産業とか輸出とか再生可能エネルギーとか、農村に落ちているかどうかよくわからないようなものも全部組み合わせて、農村関連所得が約四倍になるという計算でやっていました。
それは全く達成できていませんし、達成できる見込みもないと思うんですが、ちょうど基本計画を見直すときですから、この極めて空理空論である農業・農村所得倍増計画というのは、大臣、この機会に取り下げて、もっと具体的な達成すべき目標を定めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○吉川国務大臣 農業・農村所得倍増計画でありますけれども、食料・農業・農村基本計画に関する議論はもちろんこれからでありまするけれども、農業所得につきましては、平成二十五年の二・九兆円から、直近の数字でもあります平成二十九年では三・八兆円まで増加もいたしております。農村地域の関連所得につきましては、平成二十五年度の一・二兆円から、直近の数字である平成二十八年度では一・八兆円に増加となっております。
農業・農村所得は着実に増加をしているのではないかと思っておりますが、基本計画におきましても、引き続き、農業生産額の増大ですとか、生産コストの縮減による農業所得の増大、あるいは六次産業化を通じた農村地域の関連所得の増大に向けた施策を着実に推進していく必要があるのではないか、このように考えております。
先ほど玉木先生からも御提言をいただきました食料自給率に関しまして、やはり私は、麦をふやすということは、もう大賛成でございます。そういったことも含めて、戦略的な作物、さらには水田フル活用で高収益の作物というものも自給率を向上させる面においては必要だとも思いますので、そういったこともしっかりとこれから考えてもいかなければならないなと思っておりますので、またいろいろな面で御指導いただければと思います。
○玉木委員 大臣、もう一回これは事務方にも見直してもらったらいいと思います。農業所得は、私は、比較的現実的な目標を掲げていると思うんですが、農村関連所得は、当時も私は言いましたけれども、年率一四%で成長しないと達成できないような額なんです、これは。これはそろそろ、全部で七分野ありますけれども、事務方も数字を積み上げるのに苦労していると思いますよ。それをほかに、もっとほかに力を使った方がいいと思うぐらい、余り意味のないことに、やる必要はないと思うので、これはもう御提言ですけれども、ぜひこの際見直した方がいいので、これはぜひお願いしたいと思います。
今、自給率の話で、小麦の話がありました。もうぜひこれはやってもらいたいと思います。餌米政策は、私はどっちかというと、あんなに、反当たり八万五千円とか最大十万円を超えるような額をするのはもういかがなものかと思うので、どうせだったら、人間が食べる作物を戦略作物としてやったらいい。だから、もう畦畔も除去して、それで排水改良をちゃんと入れて、少し緩やかな傾斜の、大きな面積にして、それで大胆に麦をやる。しかも、岩盤政策もあるし、水田活用の交付金もありますから、所得も安定するので、そういうところをきちんとやるというところに、やはりぴしっと整合性のとれた農政にしていったらどうかなと。
この間、餌米政策もやってきましたけれども、これもしっかり見直した上で、本当に自給率を上げていく戦略作物は何なのかというところに各局挙げてしっかり取り組んでいくことが大事だということを申し上げたいと思います。
では、次に、ため池法案について入りたいと思います。
平成二十五年と二十七年、三カ年にかけて一斉点検をされました。それを見ると、耐震不足だとされているのが、現在、二千八百六十、そして豪雨対策が必要だとされているものが一千八百三十と、いずれも三千弱、二千弱あるということです。
今現在もかなり危ないということを把握しているものが数千規模であるわけでありますけれども、今回法律ができれば、この一斉点検で把握をした、耐震不足で二千八百六十、そして豪雨対策が不十分だとされている千八百三十、これらのうち幾つが新しい法律に基づく特定農業用ため池となる見込みでしょうか。
既にもう危ないと把握しているわけですから、法律の成立とか施行を待つことなく、すぐにやらなければいけないと思っているんです。しかも、法律ができるので、ある種の行政上の義務が生じます、これは。だって、閣法で出すわけですから、皆さん。把握しているのに対策しなかったら、場合によっては行政訴訟の対象にもなります。
なので、この、既に政府として、農水省として把握している、耐震不足、豪雨対策が必要だとされているため池のうち、新法における特定農業用ため池として対象となるのはどれぐらいだと把握されておられますか。
○室本政府参考人 まず、委員がおっしゃいました二十五年度から二十七年度の一斉点検、この結果をもとに選定した防災重点ため池、これは、数が一万一千カ所ございます。
これまで五千二百カ所で耐震調査を実施しまして、耐震対策を行ったものも含めて、耐震性能を満たしたもの、これが二千七百カ所、耐震対策が今後必要なものが二千四百カ所ということになっております。
一方で、豪雨時に洪水を流下させるための洪水吐きの能力等の調査は四千九百カ所でやっておりまして、このうち、豪雨対策を実施したものを含め、安全性を確認したものが約三千八百カ所、豪雨対策が今後必要なものが一千カ所余りという状況でございます。
それで、特定農業用ため池との関連を御質問されましたが、特定農業用ため池というのは、まさに今、その前の、新しい基準に基づく防災重点ため池の選定を各都道府県でやっていただいていまして、この五月の末、この段階で恐らく全国ベースで取りまとめが行われるという状況でございまして、今の段階ではわからないという点がございます。
それともう一つは、旧基準の防災重点ため池というのは、国が三つの考え方を示して、この中から選んでくださいということで、各都道府県の御判断で選んでいただいたものですから、考え方がばらばらになっております。したがいまして、今回、統一的な基準を示して選んでいただく新しい防災重点ため池をもとにした特定農業用ため池の考え方と、古い防災重点ため池の考え方というのは必ずしも合わないものですから、今の段階でその数をお出しすることは極めて困難であるというふうに考えてございます。
○玉木委員 これは、しっかり、問題があるなというため池を整備するための法律だと認識しておりますが、今の時点でわからないということなんですが、一斉点検で把握した、今、耐震不足が二千四百、豪雨対策が必要なのが一千ですね、重なりもあるかもしれませんが、この数千規模の対策が必要なため池のうち、逆から言うと、特定農業用ため池にならないものも出てくるということですか。
○室本政府参考人 恐らくそういうものも含んでいると。
例えば、他用途に転用されていながらそれが数字の中に入っていたり、あるいは、旧基準でいけば、下流に民家、家屋等があるものでも選定されていないものがあったり、一方で、高さが高いものだけ選定されていて、耐震性不足と判定されているものは、下流にちょっと民家が一つぐらいあるような、そういうものが選定されていたり、これは一個一個中身を精査しないと何とも言えないとは思いますが、現状で、きちんと重なり合って、数字の重複しているところと重複していないところをベン図的に重ね合わせるというのは、現状まだできない。これが五月の下旬で数字がまとまれば、その辺の作業をやっていくことになろうかと思います。
○玉木委員 ちょっと不安なんですけれども。
これはもう既に一斉点検で、耐震不足だということで二千四百、そして豪雨対策が必要なのは一千と把握されているわけですよね。それは、法律のカテゴリーがどうかは別として、対策をやはり打つべきじゃないですか。あるいは、まさにそう把握したものを特定農業用ため池にしなきゃだめなんじゃないですか。漏れちゃだめなんじゃないですか、それは。
その辺の整理が何か曖昧で、何のために法律をつくっているのかなという感じがするんですが、原則、この二千四百、一千は、特定農業用ため池としてしっかりとした緊急整備をしていくべきだと考えますが、いかがですか。
○室本政府参考人 確かに、整備をするという意味においてはやっていくわけでございますけれども、今後、防災重点ため池の数が一万一千カ所から恐らく五万カ所を超えてくるような状況の中で、先ほども答弁申し上げましたが、予算の優先順位、これをつけながら整備をしていくことに恐らくなろうかと思います。
将来的な長い目で見れば、委員おっしゃるように、いつかの段階では手をつけていく可能性が極めて高いとは考えておりますが、そういう意味では、委員のおっしゃるとおり、まだ手をつけられていないので、しっかり予算があれば打ちたいわけでございますが、私どもとしては、しっかり特定農業用ため池の枠組みをつくって、再度中身を精査して、それで一斉に取りかかっていきたい、こういう思いでございます。
○玉木委員 二千四百と千は急ぐべきだと思いますよ、単純に。法律のカテゴリーがどうこうじゃなくて。一旦調べて把握しているわけですから。ではそれは、どういうやり方でやるかは、いろいろなやり方があると思いますよ。軽度のものだったら多面的機能支払いとかいろいろなことでも、そういう予算も使いながらやらなきゃいけないと思いますし。これは余りのんびりした話じゃなくて、また夏の豪雨があるかもしれませんし、地震に関していえばいつ起こるかわかりませんから、把握しているのに対策を打っていなかったということになると、そこはやはり大きな行政の瑕疵あるいは不作為ということになると私は思います。
大臣、ここは政治のリーダーシップで、一斉点検で把握した二千四百の耐震不足、一千の豪雨対策不足のところは、しっかり、これをまず優先的に、それこそ優先的に、一番最初に取り組むべきため池だと思いますが、これは大臣、まずしっかり進めてください。これはぜひ大臣のリーダーシップで進めていただきたいと思いますが、いかがですか。
○吉川国務大臣 しっかり把握をさせていただいて、どのような形で進められるか、早急に検討もしていきたいと思います。
○玉木委員 あと、これは事務方にもう一つ聞きます。
今回は、所有者不明のため池を市町村がしっかり管理していくという仕組みを入れるのはいいと思うんですが、お伺いします。
所有者も管理者も不明なため池のうち、特定農業用ため池と想定されるものはどれぐらいを考えておられますか。
○室本政府参考人 まず、特定農業用ため池は、今、再選定作業をやっている防災重点ため池から、国なり地方公共団体が財産権を持っているもの、これを引いたものが将来的に指定されるということになりまして、現状でつかんでいる数字としましては、古い基準に基づく防災重点ため池が一万一千カ所ある中で、所有者不明が約二千五百カ所、管理者不明のため池は約八十カ所というふうになっております。
現段階ではその数字しかお答えがちょっとできないということでございます。
○玉木委員 法律をつくるので、大体どれぐらいが対象になって、最終的には国も、県や市町村をサポートする形で、財政的な支援をする努力義務もかかっているわけですから、実際どれぐらいの、すぐにはできないと思いますよ、多年度にわたってやる必要があると思うんですが、今問題だとされているようなため池を整備するのにおよそどれぐらいのお金がかかると想定していますか。個人が負担するもの、市町村が負担するもの、県が負担するもの、国が負担するものがあるんですが、およそ、直していくのにかかるお金ですよね、そういうめどはあるんですか、ないんですか。
つまり、今問題だというのを、完成させる、整備し切る必要な年数と必要な予算総額というのは大体どれぐらいを見越しているのか、教えてください。
○室本政府参考人 極めて難しい御質問でございますが、先ほど申し上げた数字は、防災重点ため池一万一千カ所、これをもとにした数字でございまして、これが恐らく、再選定されると、五倍、五万カ所を超えるであろうと。
五倍ぐらいが、五万カ所程度が仮に特定農業用ため池なり新たな防災重点ため池に指定されるとすれば、その中で、対策の優先度を決めていきながら、予算の範囲内で、まずはソフト対策を一気にやって、ハード対策は非常にお金がかかりますので順次やっていくということになりますが、仮に一ため池の改修費用が平均一億ということになれば、やはりかなりの額になると思いますし、委員がおっしゃるように何年でということになると、全体の数が五万カ所のうち、早急に手当てするものがどれだけあるかというところがまだつかめないものですから、今この場ではちょっとお答えは非常に困難であるというふうに考えております。
○玉木委員 それを急いでもらいたいんです。
せっかく二十五年、二十六年、二十七年で一斉点検をしたので、そのデータをやはりまず生かすべきだと思いますし、繰り返しになりますけれども、耐震不足だと今現在把握しているのが二千四百あって、豪雨対策不足だというのが千あるわけですから、まず、そこからいかに優先的にやっていくかという具体的な計画を立てて、それは予算が厳しい折だとは思いますけれども、そういったところもしっかり予算要求もしていくということが大事ではないかなと思います。
せっかくやったこの一斉点検の成果を生かしてやるべきだということを、大臣、これはぜひお願いしたいと思います。たくさんあるんですよ。たくさんあるからこそ、どこを重点的にやっていくかという戦略が大事なので、そこをぜひお願いしたいと思います。
その上で、提案を二つしたいと思います。
先ほどもありましたけれども、ため池のデータベース、私はこれは非常に大事だと思います。ただ、今聞くと、私も地元の意見を、この前、西日本豪雨災害で決壊しかかったので調べたんですが、地図情報がついていないんですね。今だったら、グーグルマップとか、ただのものでも、地図情報を添付すれば、緯度、経度を入れれば出るわけなんですが、それがなくて、多分、氏名とか住所だけがエクセルに入っている状況のデータベースなんですよ。
せっかくデータベースをつくり直すのであれば、映像的な、視覚的な地図情報をちゃんと集めて収集すれば非常に使いやすくなるし、各都道府県が責任でやりますけれども、国として、振興局として、一斉に見るときに、ああ、これぐらいなんだと、あるいは、茂みがあってここから入っていけばすぐたどり着けるとか、そういうこともわかるので、ぜひデータベースを整備するときには地図情報をあわせて、整備をする最初のフォーマットというか基準を決めてデータベースの整備をしていただきたいと思いますけれども、いかがですか。
○室本政府参考人 まさに、先ほどの御質問にもございましたが、ため池防災支援システム、これを国立研究開発法人農研機構が開発をしまして、全部、届出のデータはそこに登録するという形になろうかと思います。
あわせまして、委員が御指摘の、ため池の位置をマップとして地図上に表示する、こういう取組ももう現在やっておりまして、そういったものを一体的に電子データ化して、分析から表示から全てできるような、そういった形での方向の開発について、今、検討し、試行もやっているところでございます。これからも推進していきたい、こう思っております。
○玉木委員 今のデータベースは地図がついていないんですよ。簡単にできますから、ただで、今。だから、高いお金を使ってやるんじゃなくて、そういったオープンソースのデータも使って、要はグーグルマップを使えばいいので、そういうこともやりながら、きちんとデータを整理していくことが大事だということを、これは提案申し上げたいと思います。
もう一つ。香川県は、実はもう先行的に条例で、今回の法律でやるようなことはかなりやっています。
そこで、いろいろ、同じことが多いんですが、一つ差があって、今回、ため池を新たにつくる人、これは余りないと思いますが、つくる人とか、既存の人は附則で書いていますけれども、届出をすることになっています。届出対象は都道府県です。
ただ、ぜひ運用で変えてもらいたいのは、市町村経由で都道府県に届出をさせるようにしてほしいんです。
何でかというと、ため池の情報は、いざ、防災、何かあったときに、災害があったときに、現場で一番動くのは市町村ですから。基礎自治体が動くので、必ずこのため池のデータを、最終的には都道府県で届出でいいですが、市町村経由で、市町村も共有する形でため池のデータをしっかり届け出るということをぜひやってもらいたい。
法律上は都道府県対象になっていますけれども、市町村を経由して届出をするなど、運用上の改善をして、市町村がぜひデータを把握できるように、防災の観点からもやっていただきたいと思いますが、これは提案ですが、いかがでしょう。
○室本政府参考人 おっしゃるとおり、ため池に最も身近なのは市町村だということでございまして、市町村に実施事務を移すべく、このあたりは県、市町村とも十分調整をしていきたい、このように考えております。
○玉木委員 ぜひ、それは運用指針とかいろいろなことで必ず市町村をかますようにしてください。本当に、災害が起こったときに一番最初に動くのは市町村ですから、そこがちゃんとデータを持っていることというのは大事だと思いますので、ここは強くお願いしたいと思います。
最後に大臣にお伺いしますが、和牛の精液の海外への持ち出しについては、この間、いろいろな問題になっています。植物と違って、動物の精液は同一性とかが確保できないので、難しい話は多分いろいろやられていると思いますが、でも、私は、そろそろ、そんな甘い話じゃなくて、やはりこれは何らかの形で守らないと、オーストラリアン和牛のように負けてしまいますよ。ですから、これは明確な法整備をありとあらゆる知恵を使ってやはりやっていただきたい。
海外への持ち出しを明確に禁止する法整備、必要によっては、条約まで日本が主体的に提案してやるべきだと思いますが、大臣の御見識を伺います。
○吉川国務大臣 大変重要な御指摘だと思っておりまして、ただいま、和牛遺伝資源の適正な流通管理の確保に向けて、現在、有識者に幅広く議論もいただいているところでございまするけれども、ただいまのような御指摘、御意見も踏まえまして、法改正も視野に入れ、どのような対応ができるのか、しっかり検討してまいりたいと思います。
○玉木委員 ぜひ、努力が報われる農業を応援していただきたいと思いますので、大臣の御尽力、心から期待をして、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。
○武藤委員長 次に、田村貴昭君。
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
ため池法案について質問します。
豪雨、地震などで、ため池の決壊、事故が相次いでいます。一昨年の九州北部豪雨では、福岡県朝倉市のため池四十八カ所で決壊、損傷がありましたが、防災重点ため池はわずか一つでありました。昨年の西日本豪雨で決壊した三十二のため池のうち、防災重点ため池は三つにすぎませんでした。
そこでお伺いしますけれども、なぜ、決壊のおそれがあるため池の改修がこれまで十分に進んでこなかったのでしょうか。
○室本政府参考人 まず、対策を必要とするため池が膨大な数に上るという点がございます。それ以外には、規模の大きい工事となることから、十分な調査と設計などの期間、これがかなりの期間を要するということ、それから、権利者間の世代交代、これが進みまして権利関係が不明確かつ複雑になっていること、こういったことを要因として、御指摘のとおり、十分な進捗が図られていないといった状況になっております。
こうしたことを受けまして、三十一年度予算では、農村地域防災減災事業について六百三十八億円という国費を計上しておりますし、また、補助事業制度も大幅に三十一年度から拡充することになっておりまして、加えて、今回の法律によりまして、所有者不明の場合で合意形成が困難な場合、この場合にも代執行による迅速な防災工事等が可能となるよう措置をするということでございまして、こういった措置によって、これまで以上にため池の耐震対策、豪雨対策の進捗を図ってまいりたい、このように考えております。
○田村(貴)委員 膨大な数があり、たくさんの改修工事が必要である、そして、たくさんの費用がかかるわけですよね。
私は、地元の負担の問題について質問をしたいというふうに思います。
総務省の中国四国管区行政評価局が行った、ため池の管理に関する行政評価・監視というのがあります。
広島県内の調査対象四市において、耐震診断をしたため池で、健全度がやや低い、健全度が低いと判定された四十八の防災重点ため池のうち、対策工事を実施せずソフト対策を行うとしたのが、四十八カ所のうち三十九カ所でありました。
なぜソフト対策を選択するのか、その理由について調査したところ、工事の期間中、休耕しなければならないがトップで四七・五%。農業を休まなければいけない。次いで、対策工事費の受益者等の負担があるためとするのが二七・五%あったわけなんですね。
行政評価局の所見では、速やかな対策工事の実施に努めることとしたわけなんです。まずやはり工事をしなければいけないとしたわけなんですね。
実際、その対策工事なんですけれども、地震や豪雨による決壊防止のための工事は、地元の負担はゼロであります。きょうの委員会でもこの論議がされています。
しかし、老朽化等による一般整備というのは、負担の割合の指針が示されていまして、地元には最大七%の負担が示されているところであります。
そこで、一般的な整備、改修というのは、決壊を防ぐ上でも大変重要であると考えます。地元負担がネックになっていれば、必要な工事が進んでいかない可能性も生じるのではないかなと思いますけれども、大臣、いかがですか、地元負担率をなくしていく、引き下げていくということも視野に入れて検討されるべきではありませんかね。いかがでしょうか。
○室本政府参考人 委員が御指摘のとおり、地震と豪雨対策というのは農家負担がゼロである。これはガイドライン上そうなっておりまして、地元負担がかからない、そういう位置づけになっておりますが、これはどういう考え方かといいますと、やはり防災上のリスクの低減というところが非常に大きゅうございます。耐震、豪雨対策というのは、どちらかというと工事規模も結構大きなものになりまして、こういうことにさせていただいているということでございます。
一方、老朽化対策というのは、営農を継続するということで、受益者がそこから、改修をすることによって利益を生むということから、基本七%、中山間地域では二%というふうな負担率にさせていただいていますが、これは、ほかの、ため池以外の水利施設に比べまして、非常に率としては低いということであります。それはなぜかというと、やはり防災の観点があるから低く設定している、そういうことでございます。
一方で、先ほど来申し上げています、非公共の、ため池の監視とか、あるいは、例えば住民でパトロールをするといったようなときには、定額の助成が三十一年度からできるようになりましたし、いろいろな、ソフト対策については総合的にやることにより、結果として、仮にハードで地元負担がかかっても、維持管理面等で農家さんの持ち出しがないようにということで、その辺を考えながら取り組んでいきたいと考えております。
○田村(貴)委員 一般的な整備、老朽化対策も、ここをおろそかにすると、やはり事を重大化してしまう。これはつながってまいりますよね。そして、財政的な負担が心配だという声も地元にはある。これもわかりますよね。ですから、ここはやはり、しっかりと検討の余地を残していかなければいけないというふうに指摘させていただきたいと思います。
次いで、農業用として使われていないため池の扱いについて質問させていただきたいと思います。
吉川大臣、ぜひ聞いていただきたいんですけれども、私の地元の北九州市の小倉北区に、大谷池というため池があります。農業用としての供給はもうされていません。周辺はもう住宅化されています。ため池の所有者は個人であるんですけれども、連絡がつかない状況になっています。決壊すれば住宅への被害が及ぶかもしれないし、昨年七月の豪雨の際に、周辺住民からは、大雨で池から水があふれるのではないかという不安が大きく広がりました。私もこの後、見に行ったんですけれども、こうしたため池は全国各地にいっぱいあると思うんです。
こうしたため池は今度の新法、法案の対象となるんでしょうか。農水省、いかがでしょうか。
○室本政府参考人 この法律案の第二条の第一項におきまして、農業用ため池の定義、これがございますが、それに即して解釈しますと、かつて農業用に利用されていたため池が現に利用されていない場合であっても、仮に将来利用し得る状態にある場合は、遊休施設として本法案の対象になるというふうに考えてございます。
これは、こうしたため池の周辺に家屋や公共施設等が存在し、仮に特定農業用ため池の指定要件、これを満たす場合には、この法律案に基づく防災工事に関する措置、これを適用していくことが可能だというふうに考えてございます。
ただし、委員御指摘のような、農業用としての用途を終えて、将来的にも農業用に使う見込みが全くないという場合、これは、廃止工事を行うのか、あるいはその用途を変えて、例えば治水用に用途を変えて転用していくのかということは、地域の関係者において速やかにお決めいただいた上で、どういった事業制度を活用するかというのを検討していただくというのがよろしいのではないかと考えております。
○田村(貴)委員 ちょっと確認なんですけれども、今後の用途については未確定であるといった場合は、今度のため池新法に基づいて登録をしていくという対象でよろしいわけですよね。
○室本政府参考人 これもなかなか難しいところなんですが、全く今後の対応が決まっていない、農業を継続したい方もおられるし、もう離農したいという方もいて、どういう目的で整備するかというのが決まっていないということであれば、現に農業用に利用されておれば、それは特定農業用ため池として指定可能だと考えております。
ただし、あらかじめ、別のところでそういう、転用しようという合意があった上で、しばらくそれは表に出さずにみたいなことだと、なかなかそれは、法律に従う措置なものですから、難しいのではないか、こういうことでございます。
○田村(貴)委員 それで、大臣、要するに、農業用としてのため池の使命が終わったとして、今度、新法に基づく施策というのは廃止ぐらいしかないわけなんですよね。私は、廃止という選択肢もあるんだけれども、廃止ありきで考えてもいけないというふうに思うわけです。
これは、農水省自身が言っているんですね。「平成三十年七月豪雨等を踏まえた今後のため池対策の進め方」というのが出されています。この中で、ため池の廃止の検討をする際は、ため池が洪水を一次貯留するなど、下流域への被害を軽減することもあることを踏まえ、防災・減災施設としてのストックの有効活用について検討されることが望まれると。これは事実ですね。これを出したのは、農村振興局整備部であります。
農水省が、廃止ありきじゃないよ、防災のために、防災・減災施設としてのストックとしての有効活用も踏まえなければならないと言ったところで、やはりこれは支援策が必要なんですよ、大臣。
それで、保全の必要があるとするため池については、やはり支援をしていくことが基本になってくると思います。これは、新たな新法ではその区切りは出てくるかもわからないけれども、だからこそ、提案者として、政府に省庁横断的な対策を求めたいと思います。
だから、この新法でくくれるところとくくれないところがいずれ出てくるんですよ。そうしたときに、せっかくこうした新法を出したんだったら、ここから漏れるため池、かつては農業用ため池として十分役割を果たしてきたんだから、そこはちゃんと責任を持って対策を講じていく、横断的な対策が求められると思いますけれども、そういう検討をしていただけますか、大臣。
○吉川国務大臣 横断的な対応ということでございますので、どのような対応が必要なのかということは、これからしっかりと詰めをやっていきたい、こう思っております。
また事務方の方から必要な答弁をさせたいと思いまするけれども、しっかり対応していくつもりでもございます。
○室本政府参考人 確かに、委員おっしゃるように、農業用で利用されていて、大雨が来るというので水位を下げて、治水用、暫定的に治水用で使うような、そういう運用を治水部局と農水部局が協調してやっているような事例も、最近は非常に多く見られます。
そういうことから考えてみましても、例えば、農業用で使っている、現に使っているため池が親子であって、ただ、もう十分な量が要らないから、上のため池を廃止して下だけ使いましょうというようなケースにおいては、これは、水に色はついていないものですから、上から下に流れてくるものですから、これは今のこの法律でも対応できるかなというような感じは持っていますが、今農業用で使われているにもかかわらず全て治水に転用するんだということになれば、これは治水部局で活用できる補助事業とか交付金制度がございますので、私ども農水部局も中に入って、そういう交付金で、例えば市が、市町村が事業実施主体で、交付税措置を受けながら事業ができるように積極的に調整をしていく、こういう横断的な連携というのは十分可能でございまして、そういった方向で検討させていただければと思います。
○田村(貴)委員 防災重点ため池の再選定に当たって、これから事業を進める中で、そういうやはり連携とか、それから、何としてでも、やはり防災につながる一番のメリットはこういうやり方なんだということを自治体とか住民に示していただければというふうに思っております。
時間が参りましたけれども、農家がため池の管理、保全に草刈りなどで大変御苦労されています。多面的機能支払交付金、これを使ってやられている農家の方のお話も、私たち香川県に行って聞いてきたんですけれども、これは質問通告していたんですけれども、委託は認められますよね。(室本政府参考人「はい」と呼ぶ)はい。確認しました。
それで、例えば、委託も含めて多面的機能支払交付金を使っても、なかなかやはり費用が足りない。委託にすればかなりお金がかかるという話なので、ため池の草刈りなどの維持管理について、地元への支援、これを大きく広げていく、これがやはり必要ではないかなというふうに考えますけれども、最後、それを質問させていただきたいと思います。
○室本政府参考人 先ほどお答えしたとおり、外部委託、これは可能でございまして、現にやっている地域、全国で、非常に多うございます。そういったことからも、こういったことを積極的に、外部組織に作業を委託するということを進めていただけるよう、これは農政局経由でもしっかり周知を図ってまいりたいと考えております。
○田村(貴)委員 ほかの支援も含めて、よろしくお願いします。
以上で質問を終わります。
○武藤委員長 次に、串田誠一君。
○串田委員 日本維新の会の串田でございます。
最後の質疑ということになりまして、私も通告をさせていただいているんですが、こういったようなかなり狭い法律の部分でございますので、重複というのもちょっと聞いていて感じたものですから、ちょっとずらしたような質問もあるかと思うので、複雑な問題にはしませんので、この法律ができたときの、利用者というか周囲の方々がお困りにならないような形での質問をさせていただきたいと思います。
まず、ため池の定義なんですが、これは面積だけは書かれているんですけれども、深さだとか、あるいは水の有無、一年間において水の水位も上下すると思うんですが、水の水位とか、あるいは、そのため池が人工的につくられたものなのか、自然現象的につくられたものなのかというようなことで、家の周りにそういえばため池あるな、あれはどうなんだろうというようなことで、あるいは、ちょっと深い部分がある、水はちょっと今の段階では入っていないけれども、大雨が降ったときにはたまって決壊するかもしれないというようなことで、大変、該当するかどうかというのをお困りな方もいらっしゃると思うんです。
その部分についての定義について、まずお聞きをしたいと思います。
○室本政府参考人 この法律の対象となるため池というのは、定義のところに書いてありますが、現に農業用に使われている、そういうため池であって、人工物であっても自然にできたものでも、しっかりため池として利用されている、そういったものは対象になるんだろうと考えております。
深さとか貯水量とか、そういうものについては、今回、特定農業用ため池についてだけ、ため池からの距離とため池の貯水量でもって要件をかけておりますので、千トンとか五千トンの貯留量というのは距離に応じてかけておりますが、ため池の定義そのものにはかけてございません。
それから、高さの関係でいいますと、堤高が十五メーター以上で、これは、近代的な施設基準に基づいて人工的につくられたものはダム、そういう定義がございますので、基本的にそういったものはダムであってため池ではないというふうな整理をしていくように今考えてございます。
○串田委員 自然現象でできたのもため池になるというのがわかりました。
それに付随して、こういったような方がいらっしゃって、ちょっと相談を受けたことがあるんですが、もとため池だったのが、ある土砂でそこのため池に土が入り込んだ、この土が入り込んだことによって下の家が守られたと。要は、土砂崩れが、ちょうど穴ぼこ、昔でいうため池なんですが、そこに土が入ったおかげで下の方まで届かなかったと。
今、その現状を、土を出してほしいというようなことの場合、これはこの法律に該当するんでしょうか。
○室本政府参考人 これもなかなか、その程度の問題でございまして、例えば、ため池の底に長い年月をかけて土砂がたまって、それを管理する方々が除去する、これは維持管理の範囲だと考えられるでしょうし、大雨が降って上流の山が崩れてどっとため池に入ってきたという場合には、これは基本的には災害復旧で対応することになりますので、この法律とは別の法律での対応になるということで、これも、個々の事情、維持管理の範疇であればため池の維持管理の中で読めますから、この法律の対象になってくるかな、このように考えます。
○串田委員 次に、またこれも定義なんですが、管理者というのは所有者以外の権原があるということなんですが、この権原というのはどういうようなことで発生するということになるんでしょうか。というのは、かなり、江戸時代から前ですし、自然現象でもため池になるということでありますので、自分たちがつくったという意識がないままに、周囲の人間がそれをため池として利用していくというようなこともあるんだと思います。
というようなことから、この管理者というものの所有者以外の権原、この権原というのは法律的にはどのように定義づけられているんでしょうか。
○室本政府参考人 まずは、この法律が成立する前の段階、民法上の位置づけを御説明しますと、ため池の所有者、あるいは管理者もそうでございますが、現在、施設の保存の瑕疵により第三者に損害を与えたような場合、こういった場合は民法上の工作物責任、これが所有者であっても管理者であっても問われる、そういう責任を有しております。
この法律の中では、特に第五条で所有者等の適正管理義務を明文化し、適正な管理が行われていない場合には都道府県知事が勧告を行うこととしておりますが、管理上必要な措置には補修や補強などの措置も含まれているということで、これについては、主に所有者が管理をして管理責任を負うというふうな形になっておりますが、同様に、管理者もこれは管理責任を負うという形になってございます。
ですから、基本的には、所有者、管理者、ハード対策で大きな改修をやるときにはやはり所有者の権利、所有者権原に基づいて行うということになりますし、管理の範疇であれば、これは所有者又は管理者の権原に基づいて判断をしていくというふうになろうかと思います。
○串田委員 これはちょっとまた難しい質問で、今の質問の続きなんですが、今、工作物とおっしゃられていたんですが、自然現象でできたため池、これは工作物ということになるんでしょうか。といいますのは、江戸時代ですから、所有者が知らない中で周囲の人たちがそれを利用しているという場合があるんだと思うんです。
ですから、所有者が工作をしていない、自然現象ででき上がったときにも、その周囲の本当に利用している人たちではなくて、全く、自分の所有物がため池になっているというような認識もなくても、この場合には所有者がここには該当するという理解なんでしょうか。そしてまた、それは工作物なんでしょうか。
○室本政府参考人 ちょっと私も、その辺、法律の解釈になるとはっきりしたことは申し上げられませんが、本当の自然現象でできたものは、恐らく、そのままでは農業用ため池として使われているのではなく、いわゆる水たまりみたいなものですね、そういったものはこの法律の対象になるのではなく、例えば、自然現象でできたとしても、そこを人工の手を加えて、きちんと、護岸とか、決壊しないような構造にしていく、そういった中でいわゆる工作物責任というのが出てくるのではないかなと思っております。
したがって、この法律案の対象も、水たまりは、これはため池ではない。江戸時代以前につくられて、その当時は自然現象に近かったところをため池として使っていたんだけれども、先人の血と汗によって、それが人工的につくりかえられて、現在でも活用されている、こういったものがこの法律の対象になるということだと思います。
○串田委員 今、難しい質問をさせていただいたんですが、大体理解いたしました。何らかの形で手を加えていかないと工作物にはならないだろうというようなことで、言葉として工作物と言うぐらいですから、やはりそこはそういうようになるのかなと思うんです。
一方で、第五条の中に、農業用ため池の機能が十分に発揮されるように管理をしなきゃいけないというような規定があるんですが、この農業用ため池の機能が十分に発揮されるということは、今回のような、決壊をしないような防災上の管理をするということなのか、農業用のため池として水を供給するという部分が管理されていなければいけないのか、これはちょっと文言からははっきりしないものですから、ここはちょっと明確にしていただきたいと思います。
○室本政府参考人 農業用ため池の機能、この五条で言います機能というのは、農地に農業用水を供給するために農業用水を貯留する機能、このことを指しております。
それで、機能が十分に発揮されているという状態、これは、ため池所有者が、堤体の点検とか改修とか、あるいは、洪水吐きに土砂とか流木がたまったらそれを除去する、こういった管理がきちんと行われていて、必要な農業用水が貯留されて、また、決壊による水害等が発生しないであろうというような状態、これを機能というふうに称してございます。
○串田委員 それの続きで、これもちょっと難しい質問になってしまうんですが、そうやって農業用に利用されていることを定義づけるとするならば、それを廃止するということになったら、必ず水利権としての侵害が発生するというふうに思うんですね。
それで、先ほどから、廃止に関しては話合いをつけなければならないということなんですが、現に農業用として利用されているのに話合いをつけるということは、水利権を利用している方々が農業をやめなければいけないというような事態も発生するかと思うんです。そこに対して、話合いで解決をするということが果たしてそんなにすんなりといくものだろうかという疑問があるんですね。
水利権者に対しての賠償とか、あるいは工事をしている間の損害賠償だとかそういったようなところは、ちょっとここに明記されていないんですけれども、その点はどのようにお考えなんでしょうか。
○室本政府参考人 それは、廃止を判断する者が誰であり、どこの機関かという問題だと思います。
例えば、今、水を使っている農業者が三名おられて、三名全員が、これはもう自分たちは離農しよう、もう営農をやめようということで事業申請していただければ、今、現状の土地改良事業も申請を受け付けて、土地改良事業を使って廃止ができるという流れになるでしょうし、一方で、例えば、市町村が、このため池は極めてリスクが大きいので、やはり廃止した方がいいのではないかということで、市町村の発意でもって水のユーザーと調整をやる場合、この場合は、当然、水利権の問題が絡んできますから、全員の同意をもらわないとなかなか廃止というのには移れない、このように思います。
○串田委員 決壊とかという非常に危険な部分もあって、廃止した方が無難だなというようなときに、一名も賛同者がいなければこれは廃止ができないというのも、果たしてそれは妥当なのかなというような、ちょっとそういう疑問も感じるんですね。
ですから、何か賠償的な部分での解決というのもあっていいのかなというふうな素朴な疑問もあったものですから、ちょっとお聞きをしたんですが、この法律に関しては全員一致でないと廃止ができないというようなことで理解をいたしました。
最後の質問になるんですけれども、ため池というのは江戸時代からできているということなんですが、非常に、そういう意味では、かなり古いものをいろいろと修理をしながら行っているということなんですが、こういうような時代になって、ため池ではない、何らかの農水の供給システムみたいなものが現在検討されていて、将来的にはため池というものがなくなっていく方向ということがあり得るのかどうか、これだけ最後に質問させていただきたいと思います。
○室本政府参考人 ため池に頼らない水の確保、そういう趣旨だと思いますが、例えば瀬戸内地方においては、年間を通じて雨が少ないということで、特に香川県を中心に、歴史的にため池がつくられてきて、そこに河川の取水が加わって、ため池の水と河川の水、ダムの水、これを全て有効に活用する中で地域の営農が成り立っている、そういう状況になっております。
したがいまして、ため池を廃止するというのは、言うのは簡単でございますけれども、なかなか、そういう雨の少ない地域は、ため池を本当に貴重な財産と思っておられる、そういう中で使われておられますので、水不足という観点からしても、なかなかそう簡単にはいかないのではないか、こう思っております。
ただし、委員がおっしゃるように、近傍にダムがあって、ダムの水も、稲作に使われていたものが、畑作に転換するようになって、水がちょっと余ってきた。余ってきたときに、近傍にあるため池が極めてリスクが大きいので、これを廃止してダムに依存しようというような場合には、当然ダムの水を使う方がリスクは下がりますから、そういうような検討は恐らく可能だと思います。
今、新規のダム建設というのは、離島を除いて、地下ダムを除いて、今はやっておりませんので、新たにダムを建設するというのは極めて、農業用ダムをつくるというのは難しい、こう考えております。
○串田委員 通告どおりの質問ではありませんでしたが、回答いただきましてありがとうございました。
終わります。
○武藤委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
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○武藤委員長 これより討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。
内閣提出、農業用ため池の管理及び保全に関する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○武藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○武藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
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○武藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時三十八分散会