衆議院

メインへスキップ



第10号 令和元年5月9日(木曜日)

会議録本文へ
令和元年五月九日(木曜日)

    午前八時三十分開議

 出席委員

   委員長 武藤 容治君

   理事 伊東 良孝君 理事 小島 敏文君

   理事 齋藤  健君 理事 野中  厚君

   理事 細田 健一君 理事 亀井亜紀子君

   理事 近藤 和也君 理事 稲津  久君

      池田 道孝君    泉田 裕彦君

      稲田 朋美君    今枝宗一郎君

      上杉謙太郎君    加藤 寛治君

      金子 俊平君    木原  稔君

      木村 次郎君    小寺 裕雄君

      斎藤 洋明君    坂本 哲志君

      西田 昭二君    福山  守君

      藤井比早之君    藤原  崇君

      古川  康君    本田 太郎君

      宮路 拓馬君    山本  拓君

      和田 義明君    石川 香織君

      大串 博志君    金子 恵美君

      神谷  裕君    佐々木隆博君

      長谷川嘉一君    堀越 啓仁君

      関 健一郎君    緑川 貴士君

      森田 俊和君    濱村  進君

      田村 貴昭君    森  夏枝君

    …………………………………

   農林水産大臣       吉川 貴盛君

   農林水産副大臣      小里 泰弘君

   農林水産大臣政務官    濱村  進君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         光吉  一君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           新井ゆたか君

   政府参考人

   (林野庁長官)      牧元 幸司君

   農林水産委員会専門員   梶原  武君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月九日

 辞任         補欠選任

  上杉謙太郎君     本田 太郎君

  古川  康君     和田 義明君

  関 健一郎君     森田 俊和君

同日

 辞任         補欠選任

  本田 太郎君     上杉謙太郎君

  和田 義明君     古川  康君

  森田 俊和君     関 健一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第三一号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

武藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、来る十四日火曜日午前九時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

武藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官光吉一君、消費・安全局長新井ゆたか君及び林野庁長官牧元幸司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

武藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

武藤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。小島敏文君。

小島委員 皆様、おはようございます。早朝から御苦労さまでございます。

 今回、こうして質問の機会をいただきまして、大変ありがとうございました。

 それでは、今回の管理経営に関する法律の一部改正の質問をする前に、まず二点ほど、ちょっと確認をしておきたいというふうに思っております。

 森林経営管理法が平成三十年の五月二十五日に成立をいたしまして、ことしの四月一日から施行されたわけでありますけれども、経営管理が不十分な民有林を意欲と能力のある林業経営者に集積、集約化する新たな森林管理システムを構築するということでありますけれども、森林経営管理法も始まったばかりでありまして、今、全国の市町村でこの準備に取りかかっておるというふうに思うわけでありますけれども、現在、市町村の準備状況をどのように把握をされておるか、まずお伺いいたします。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年五月に森林経営管理法が成立して以降、その円滑な施行、運用に向けまして、まずは、林野庁職員が市町村向け説明会に直接出向きまして、法の具体的な内容等につきまして丁寧に説明いたしますとともに、現場からの質問、意見なども踏まえつつ、事務に係る手引等の作成を行いまして、昨年十二月には都道府県、市町村への配付を行ったところでございます。

 これらの結果といたしまして、市町村、都道府県におきましては一定程度理解が進んでいるというふうに考えておりまして、具体的には、その事務を担う新たな組織を立ち上げた市町村でございますとか、あるいは、経営管理実施権の設定を希望する民間事業者の公表に向けまして、既に公募を開始した都道府県もあるということでございます。このように、森林経営管理法に係る取組が順次展開されつつあるところでございます。

 なお、四月からは、新たに林野庁内におきましても森林集積推進室を設置したところでございまして、引き続きまして市町村等への指導助言等に万全を期してまいりたいと考えているところでございます。

小島委員 各市町村が合併しまして、例えば農地中間管理機構なんかにしましても、非常に今回法律が変わったわけですけれども、やはり現場を見ますと、地方の役割といいますか、人材が減っておるという中で、大変苦労しております。そういう中であるからこそ、どうか林野庁におかれてもしっかり今後の指導をよろしくお願いしたい、このように要望しておきます。

 また、このたびの法律案は、森林経営管理法の施行前の平成三十一年二月二十六日に提出をされております。新たな森林管理システムが動き出す前にこの法律案が検討、提出されたわけでありますけれども、政府においては、どのような分析をされて本法案による後押しを有効にすると考えておるのか、お伺いいたします。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年成立いたしました森林経営管理法に基づきます森林経営管理制度が本年四月から施行されているところでございますけれども、このシステムを円滑に機能させるためには、システムのかなめとなります意欲と能力のある林業経営者の育成というものが不可欠でございます。

 このためには、国有林が民有林を補完する形で、長期安定的にこのような林業経営者に木材を供給いたしますとともに、国産材の需要拡大に向けて、川上、川中、川下の事業者との連携強化を図るということが有効であるというふうに考えております。したがいまして、できるだけ早期にこの仕組みを整備するために、今回、法案の提出を行ったところでございます。

 なお、こうした仕組みの検討につきましては、一昨年に実施をいたしました国有林の木材販売に係る民間事業者からの改善提案等を踏まえますとともに、昨年秋以降は林政審議会におきましても議論を重ねていただいたところでございます。

小島委員 いずれにしましても、やはり今、農林水産についてはかなり急ピッチに改革が進んでおるという中で、我々は一生懸命ついていっていますけれども、なかなか現場の方は大変だと思いますので、御指導をよろしくお願いしたいとお願いしておきます。

 本題に入りますけれども、管理経営法第三条によりますと、国有林野の管理経営の目標を、三つありまして、国土の保全その他国有林野の有する公益的機能の維持増進を図るとともに、あわせて、林産物を持続的かつ計画的に供給し、国有林野の活用によりその所在する地域における産業の振興又は住民の福祉の向上に寄与することにあるとされております。

 この法律案は、一定の期間、安定的に樹木を採取できる権利を意欲と能力のある林業経営者に設定できるようにするものであります。

 先ほど言いましたこの一、二、三ですけれども、それぞれはどのように効果、影響を及ぼすのか、まずお考えをお聞きしたいと思います。

 特に、公益的機能の維持増進に悪影響を及ぼすようなことはないのか、公益的機能が損なわれるようなことはないのか、どのように担保するのか、あわせてお伺いをいたします。

吉川国務大臣 国有林野の管理経営の目標は、国有林野の管理経営に関する法律第三条の規定のとおり、公益的機能の維持増進を図るとともに、林産物の持続的かつ計画的な供給及び国有林野の活用により地域の産業振興又は住民の福祉の向上に寄与することとしているところでございます。

 本法案は、国有林が民有林を補完する形で、意欲と能力のある林業経営者に長期安定的に木材を供給をすることにより、森林経営管理制度の円滑な実施を支援し、地域の産業振興に寄与することを狙いといたしているところでもございます。

 なお、本法案の実施に当たりましては、森林におけるレクリエーション活動を実施している森林においては樹木採取区の設定を想定をしていないなど、住民の福祉の向上の目標に支障が生じないこととする方針でもございます。

 また、国有林の公益的機能の維持増進に関しましては、本法案では、樹木採取権者は、事業を開始する前に、農林水産大臣と五年ごとに具体的な施業の計画等を内容とする契約を締結しなければ樹木の採取はできないこととしております。

 この契約におきまして、樹木採取権者の施業の計画は、現行の国有林の伐採のルールにのっとり、農林水産大臣の定める基準や国有林野の地域管理経営計画に適合しなければならないこととしておりまして、このような仕組みによって公益的機能の維持増進を担保してまいりたいと思います。

小島委員 国産材供給目標に果たす役割についてお聞きしたいと思います。

 森林・林業基本計画においては、平成三十七年、元号が変わりましたから令和七年ですけれども、国産材供給量の目標が四千万立米とされております。現在、国産材の二割弱を国有林から産出しておりますけれども、林野庁は、令和七年におきましてもこの供給目標を引き続きまして、約二割、しっかりと供給していきたいということをおっしゃっております。

 そこで、民有林を含めて、国産材の供給目標をどのように達成しようとされておるのか、お伺いいたします。また、この法律案がどのような役割を果たしていくのか、あわせてお伺いいたします。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 森林・林業基本計画におきましては、製材、合板用材につきましては、中長期的に住宅需要の減少が予想される中、非住宅分野等での利用促進等を見込み、現状維持というふうに見込んでおります。また、パルプ・チップ用材については減少、燃料材につきましては、木質バイオマス発電や熱利用向けの需要拡大等を踏まえて、増加をするというふうに見込んでおりまして、令和七年の総需要量を七千九百万立米と見込んでいるところでございます。

 このため、森林・林業基本計画の需要見込みを踏まえまして、製材用材につきましては、性能、品質の確かなJAS構造材の利用促進、また、新たな製品開発による非住宅分野への利用促進に向けた支援、また、合板用材につきましては、大規模需要者のニーズに応える集成材、合板等を低コストで安定的に供給する体制整備への支援、また、燃料材等につきましては、木質バイオマスを地域内で持続的に活用する地域内エコシステムの構築への支援等による需要拡大策を実施することとしております。

 これに加えまして、国産材供給量を、御指摘ございましたが、四千万立米とするための民有林、国有林合わせた国産材の安定供給体制の構築、また、加工、流通体制の整備等を通じた木材産業の競争力強化の対策を一体的に実施することによりまして、需要と供給のバランスを図りながら取組を進めてまいる考えでございます。

 なお、本法案は、民有林を補完する形で、国有林が長期安定的に意欲と能力のある林業経営者に木材を供給いたしますとともに、川上、川中、川下の事業者との連携による木材の安定供給を確保する取組への支援措置を講ずるものでございまして、国産材の需給バランスを確保しつつ、国産材供給量の増加を後押しする役割を果たすものと考えているところでございます。

小島委員 今、一部御答弁いただきましたけれども、私が一番懸念していますのは、我々も、こういう川上から、出す方の議論をしっかり今していますけれども、これは、供給も大事ですけれども、やはり需要、このことをしっかり考えていかないと、どんどんこれから供給が過剰になってくると木材価格が低迷する、そうすると、一もとらない二もとらないということになりますから、いわゆる需給バランス、これをどうとっていくのかということが一番重要だろうと私は思うんです。

 そこで、再度、この需給バランスの確保に向けてどのように考えておられるか、御意見をお伺いいたします。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、需要をしっかり確保していくということが非常に大事かというふうに考えているところでございます。今後、国産材の供給量というものは増大していくというふうに見込んでおりますけれども、それに見合うだけ、需要もしっかり確保していくことが重要ということでございます。

 そこで、先ほど御答弁を申し上げましたように、住宅だけではなくて非住宅にも木材を使ってもらうとか、あるいは都市部でもどんどん木材を使っていただくとか、そういうような取組を強化することによって需要というものをしっかり確保していきたい、また、需要の開発を進めていきたいというふうに考えているところでございます。

小島委員 CLTということが言われていますけれども、日本は、二時間耐火、三時間耐火、そういう柱材をつくっていますよね。長い将来、これからは何十階建てのビルもできるというふうな流れですけれども、都市において、そういった非住宅のビルとか、そういう面にしっかり使っていくということをやはり一つの眼目にして需要の拡大を図っていただきたい、このように要望しておきたいと思います。

 次に、国有林の九割が保安林ですよね。保安林というのはなかなか伐採できないんですよ。地元で百七十町歩の山があって、三十年前から何とかこれを活用しようと思って広島県庁へ何度も足を運んで運動したんですが、保安林ということで、さっぱり、木も切れないということがありました。最近になってやっと、二、三年前に実は、いいですよとなったんですね。

 そういう状況もあって、保安林の解除というのは難しいなと思うんですが、九割も国有林の中にあって、果たしてこれが樹木採取区となり得るのかということを、単純なんですが、お聞きしたいと思います。そして、樹木採取区を指定された場合に、保安林はどのように目的が損なわれないように担保していくのか、お伺いいたします。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 保安林については、なかなか規制があって切れないのではないかという御指摘でございます。

 保安林につきましては、もちろん、御指摘のとおり、いろいろな規制はかかっているわけでございますが、ただ、その指定の目的に応じた立木の伐採方法等の指定施業要件が定められているところでございまして、その範囲で立木の伐採を行うことは可能ということでございます。実際、現在の立木販売等もそういう保安林においても行われているわけでございます。

 このように、樹木の伐採が可能な保安林につきまして、今回の新たな制度におきます樹木採取区の指定は可能であると考えておりまして、その場合、事業者は保安林の指定施業要件に基づき適切に伐採を行うこととなることでございまして、指定施業要件に基づく適切な伐採ということで保安林の目的が損なわれるということにはならないものと考えているところでございます。

 なお、事業者が保安林のルールに基づかない伐採を行った場合は、樹木採取権実施契約に適合しない伐採でございますとか、あるいは森林法違反に問われる可能性があるわけでございます。仮に、そのような伐採を行った場合には、樹木採取権の取消しということもあり得るということで考えておるところでございます。

小島委員 その点のところをしっかり、誤解のないように、御指導のほどをよろしくお願いしたい、こういうふうに思っています。

 確かに、渓流部においては五十メーターは木を残すんよとか、いろいろそういう細かな規定がありますけれども、やはり今、天候不順という中で、余り、保安林というのは、国有林というのは皆伐ですから、基本は。だから、やはりこれからの、切ることによって異常気象においてのそういう災害等が起こる可能性は十分あると思うので、しっかり御指導のほどをよろしくお願いしたいと思います。

 次に、先日、栃木県へ視察に行ってきました。地元の方々と意見交換を行ったわけですけれども、その中で指摘されましたことを一点ほど質問したいと思います。

 今回の制度の要約を見る限りなんですが、樹木料が年々改定されるということで、市場価格に応じて上がったり下がったりするということなんですが、今回の制度ですと、川上から川下まで連携して協定を結んで制度に参加するということのようなので、そうすると、それぞれが協定価格を当然結ぶわけなんです。市場価格というものは一体何なのか、そして、何を基準にするのかということを具体的にはっきり決めていただけると、川中、川下までの協定価格もそれなりに連動して変えるということが納得の形でできるので、期間が長い制度ですから、その辺の価格をクリアにしていただけると参加する業者もうまくいくと思いますという意見でした。

 これは本当に、あの現場に行きまして、これは川中の意見なんですけれども、率直な意見だなと思うんですね。ここらをひとつ御説明いただければと思います。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 樹木料を設定する際に使用します市場価格とは何かというような御質問かというふうに思います。

 まず、樹木料を設定する際に使用する立木の市場価格でございますけれども、これは、樹木採取区の伐採しようとするそれぞれの森林ごとに、当該箇所から生産が見込まれます丸太のその時点での市場の価格、これを基本にいたしまして、その市場の価格から、これも地域地域によって異なりますので、当該箇所における伐採、搬出コストを差し引いた額をベースとして算出することを想定しているものでございます。

 なお、こういった考え方につきましては、関係者の皆様方にもよく御説明をして、御理解いただけるように努めてまいりたいと考えているところでございます。

小島委員 時間が来ましたけれども、どうぞひとつ、しっかり、地元の現場の方はそういうことで非常に心配していますので、細かい御指導をよろしくお願いしたいと思います。

 最後に、これ以外でも、例えば外国人材、これをどう入れていくのかということもあると思うんですね。農業、水産業は入っていますけれども、林業についてはまだ非常に進んでいないということがあって、これをどうするかという問題もあります。同時に、町に木材を使う場合に、設計者が実は育っていないということがあります。このこともやはり大きな問題であって、今後とも育成方をよろしくお願いいたしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

武藤委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久でございます。

 それでは、早速、通告に従いまして質問させていただきたいと思います。

 まず、樹木採取権の存続期間についてということでお伺いしていきたいと思います。

 これは第八条のところに書かれておりますけれども、農林水産大臣は、林業経営者に、一定期間安定的に樹木採取区に生育している樹木を採取する権利、いわゆる樹木採取権を設定することができる、こうしておりまして、樹木採取権は物権とみなす、樹木採取権の存続期間は五十年以内とする、このようにございます。

 今私が読み上げましたように、樹木採取権の存続期間というのは五十年以内とされているわけでございますけれども、これは林政審議会で示された「権利の考え方」、ここにおきまして、林業経営者の実態を踏まえて、基本的に期間は十年間に設定をするとあります。そして、その上で、大規模なものについては区画面積に応じて長期の期間を設定する、こういう考え方が示されておりまして、法律上、上限の五十年ということが設定をされているわけでございます。

 その意味で、今回の、樹木採取権を付与して、そして長期的、安定的に木材資源というのを有効に活用していくという基本的な理念に立っていくと、最大で五十年ということが、ここが見えてくるのかとは思いますが、この樹木採取権の存続期間について、これは樹木採取権者を始め事業運営者の方々に大きな影響を与えることからお伺いしますが、二点、一つは、基本的に十年間としたその理由、もう一点は、長期の期間、最長五十年と規定している理由、この二点について、この委員会において改めて明確に御答弁いただきたいと思います。

吉川国務大臣 樹木採取権につきましては、地域の意欲と能力のある林業経営者の育成や地域の産業振興への寄与の観点から、これらの林業経営者が対応しやすい規模に鑑み、その期間は十年を基本として運用としていく考えでございます。いわゆる原則十年ということでございます。

 他方で、現に地域の森林組合等から長期間の権利設定を求める声があることも踏まえまして、国産材の需要拡大のニーズが特に大きい地域におきましては、当該地域の需要動向や森林資源の状態などを勘案しつつ、一般的な人工林の造林から伐採までの一周期の五十年を上限といたしまして、十年を超える期間も設定をできることとしているところでございます。

稲津委員 よくわかりました。

 いわゆる最長五十年という理由についても、やはり、樹木が生育していって、そして伐期を迎えてくる、この一つのリズムというかサイクルで五十年ということも、これは非常にわかりやすいですし、それから、基本十年とはありますが、しかし、多くの林業関係者の方々からもそうした長期の声もいただいているということで、そうしたことを総合的に勘案して、明確に、今回、この法律に基づいて決めていただいたということですので、ここは尊重していきたいなというふうに思います。

 次に、樹木採取権の指示、取消しについてということでお伺いしていきたいと思います。

 これは八条の二十一、二十二に明記されていますが、農林水産大臣は、事業の適正を期するために、樹木採取権者に対して報告を求め、調査し、指示をすることができる、こうしております。そして、もう一点、農林水産大臣は、樹木採取権者が樹木採取権実施契約において定められた事項について重大な違反があったときは、樹木採取権を取り消すことができる、このようにあります。

 そこで、このことについて少し詳しく述べていただきたい、この委員会で明確にしていただきたいという趣旨から質問させていただきます。

 まずは、樹木採取権者に対して実地調査をするということ、それは具体的にどのような報告を求めていくのか、また、どのような場合に実地調査をするのか、この二点について明確にさせていただきますとともに、この樹木採取権の取消しについては、先ほど私が読み上げましたように、重大な違反があったときというふうに規定されておりますが、それでは、どのような場合にこの重大な違反ということが言えるのか。樹木採取権を取り消すということですから大変大きなことでございますので、先ほどの質疑の中で、保安林の指定解除というか、保安林の樹木の伐採等についての中にもいわゆる違反行為に類するお話がありましたが、改めてこの委員会で、この場において明確にしていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、樹木採取権者に求める報告あるいは実地調査についてでございます。

 樹木採取権の制度の適切な運営を図るためには、樹木採取権者の事業の実施状況を把握いたしまして、不適切な事業が行われている場合には、適切な是正措置を講ずることが必要なわけでございます。

 このため、農林水産大臣は、樹木の採取箇所、採取面積、経営状況など樹木採取権者に対する業務等の状況に関する報告の徴求を行うということ、そして、報告内容に疑義がある場合などにおきまして実地調査の実施をやるということによりまして、事業の実施状況を適切に把握できるようにしていきたいと考えているところでございます。

 また、二点目に御質問ございました、重大な違反があったときに取消し、どのような場合かということでございます。

 今回の樹木採取権者につきましては、国有林のルールをしっかり守って伐採をしていただくというようなことになっているわけでございます。このようなルール、例えば一カ所当たりの皆伐面積を五ヘクタール以下にするとか、あるいは沢とか尾根筋とかに保残帯をしっかり残すとか、そういうふうなルールが決められているわけでございますので、そのようなルールを守らないで例えば伐採が行われたようなときとか、いろいろな違反の程度にはよるかと思いますけれども、そのような場合に取消しになり得るというふうに考えているところでございます。

稲津委員 今の質問と答弁のところというのは、私は非常に大事なことだと思っていまして、この樹木採取権者になり得ようとする方々あるいはその関係する方々にとって、大変、一番気にしているところだと思うんです。

 どのような場合に違反とみなされるのか、あるいはまた、どのような報告やあるいは調査があるのかということは、この事業にかかわらず、世の中のさまざまな事業運営するに当たっては、法律を守っていくということについて、ごく当たり前のことなんですけれども、しかし、今回、こうした国有林の人工林の伐採の権限を与えていく、こういうわけですから、ここはぜひ、この法律が通った暁には、私は、明確に関係者の方々に周知を徹底していただきたい、このように思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 次にお伺いしますのは、樹木採取区隣接国有林の伐採、取得の手続についてということなんです。

 これはちょっとわかりにくいので、一つ例を挙げて申し上げたいと思うんですけれども、例えば、樹木採取権者になった、そして国有林の人工林の伐採に入っていく、そのときに、指定の区域に隣接する国有林、これは例えばおおむね保安林になっていると思うんですけれども、そこのところに、もう伐期を迎えている、あるいはもう伐期を過ぎている、そしてそれは非常に有効な資源であるということ、これを実際に見た樹木権者や関係者の方々が、あれは非常に資源としていいよね、ぜひこの機会に、樹木の採取区域ではないんだけれども、この際、例えば、ぜひこれを切って販売をさせていただきたい、こういう考えが出てくる可能性というのは少なくないと思っています。

 特に、いわゆる国産の広葉樹については、現場サイドではやはり物が少ないという意見もあり、こうしたことを考えていきますと、樹木採取区に隣接している国有林内の例えば広葉樹等について、権利者と特定の買受け希望者が伐採、取得しようとする場合、どのような手続が必要なのかということなんです。

 例えば、当然、これは林産物の売払いという販売方法のルートでいくと、立ち木の販売とか素材の販売とか、この中には随意契約があったり一般競争入札があったり、いろいろあるわけですけれども、私は、できる限りそういうニーズには対応していくべきじゃないだろうかなと思っていますし、その際は、もちろんルールに違反しちゃいけませんけれども、できるだけ簡素な手続で行うことも必要なのかなと思っております。

 先ほどの小島先生の御質問の中にもありました、国有林の九〇%が保安林で、その保安林から必要な樹木を供給するということについて、私も非常に関心を持ってお話を伺っておりましたが、そういうケースということも、私の今話したことを含めて、十分あり得ることですので、この点についてもこの委員会で明確にさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 今回のこの制度におきます樹木採取権というものは、あくまでも樹木採取区内の樹木を伐採することができる権利ということでございます。

 したがいまして、今委員から御指摘ございましたような、例えば、隣接する場合ではあっても、樹木採取区外の国有林内の立木の伐採、取得というような場合にあっては、これは樹木採取権者、樹木採取権者以外の者にかかわらず、国有林の立木販売のルールに従ってやっていただく必要がございます。具体的には、会計法等の規定に基づきまして、原則として一般競争入札により販売することになるということでございます。

 このように、ルールとしてはやはり一般ルールでやっていただくよりしようがないわけでございますけれども、ただ、今委員御指摘ございましたが、例えば、広葉樹で、もう伐採の適齢期に達しているような山があって、ぜひそこを買いたいというような御要望がありましたときには、また個別個別で具体的に御相談に応じて、ルールとしては一般ルールの中ではありますけれども、適切に対応させていただきたいというふうに思っております。

稲津委員 その一般ルールをしっかり守りながら、その上で、また丁寧な対応も必要かと思いますので、よろしくお願いします。

 次は、広葉樹の植栽についてお伺いしたいと思います。これは本会議でも一部触れさせていただきましたけれども、しっかり書いてきましたので、これを読み上げて質問させていただきたいと思います。

 森林・林業基本計画における森林の有する多面的機能の発揮に関する目標は、森林に期待される機能が重複している中で、育成単層林を整備するなどして森林資源利用を図るとともに、環境に視点を置いた公益的機能を発揮すべく、育成複層林への誘導を進めています。この中で、今後の目標は、平成四十七年までに、もう平成が終わりましたので、済みません、ここは令和になりますけれども、育成単層林を平成二十七年比で約四%減、育成複層林は倍増するとしています。

 このことを踏まえて、広葉樹林と針葉樹林の状況を見ると、国有林における広葉樹林及び針広混交林と針葉樹林の面積は、平成三十一年と平成二十六年比で、広葉樹林及び針広混交林はプラス五万五千ヘクタール、逆に針葉樹林はマイナス八万ヘクタールとなっています。

 これまで拡大造林で奥地を単層針葉樹の人工林にした地域などは、今後、広葉樹に再造林し、森林の、多様性をもって、生態系への影響を図り、同時に、近年は国産材の広葉樹が十分供給されていない現状もあることから、今後は、国有林の伐採、再造林の折には広葉樹の植栽をふやすことが必要と考えますが、所見を伺いますという、原稿をそのまま読ませていただきましたけれども。

 決して広葉樹を何が何でもふやしていく必要があるんだと言っているんじゃなくて、これは、針広混交林という考え方、それから、それが山にとっては、環境にとって非常にいいということ、プラス、広葉樹の国産材というのが、今申し上げましたように、近年は少し少ないということもありますから、こうした考え方を踏まえた広葉樹の植栽をふやすことが必要じゃないかなと私は思っておりますが、このことについて御答弁いただきたいと思います。

濱村大臣政務官 今委員御指摘のとおり、森林・林業基本計画におきまして、平成四十七年、これは令和十七年になりますが、二百万ヘクタールと二倍にする目標を掲げておるのは、御指摘のとおりでございます。その上で、この森林・林業基本計画におきましては、それぞれの森林に期待される機能や自然条件等に応じまして、広葉樹の導入等による針広混交林化など、多様で健全な森林へ誘導することを目標としております。

 国有林におきましても、自然条件や社会的条件に応じまして、針葉樹の育成単層林について、天然更新や広葉樹の植栽によりまして針広混交林化を推進しており、この五年間で広葉樹林及び針広混交林が五万五千ヘクタール増加しておることも、委員御指摘のとおりでございます。

 今後とも、このような取組によりまして、多様で健全な森林づくりを推進してまいりたい、このように考えております。

稲津委員 ありがとうございました。

 ここも明確にお答えいただきましたので、大変わかりやすくなったというように思います。

 もう一問、優良苗の安定供給ということについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 これは、日本の、現状、苗の問題ですけれども、二〇一六年度の山行苗木、こう言いますけれども、この生産量は約六千万本となっています。このうち約一割を今コンテナ苗が占めるようになったということで、苗木の安定供給は、コンテナ苗が進んでいくことによってこれも大変安定化が図られている、このように言えると思います。

 コンテナ苗ですけれども、これも何回か質疑の中でもありますが、裸苗と違って、寒冷地の冬季ですとか、極端に乾燥のあるそういう地域、あるいは、季節は別ですけれども、通常の植栽の適期、例えば春とか秋以外でも定着率が非常にいいということで、林野庁もこの普及と生産拡大に努めているというように承知をしています。

 そこで、お伺いしますが、今後のコンテナ苗の供給の目標というのが仮にあるとすればそれもお聞きしたいと思いますし、コンテナ苗導入の支援状況を、今後のことも踏まえた上で御答弁いただければと思います。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 コンテナ苗は、今委員御指摘がございましたように、植付けがしやすく、また、伐採時期に応じた植栽が可能というような特性を持っておりまして、再造林コストの削減に資する伐採と造林の一貫作業を進める上で大変重要な役割を担っているものと考えているところでございます。

 したがいまして、農林水産省といたしましては、まずは国有林において率先してコンテナ苗の活用を図りますとともに、コンテナ苗の生産者の規模拡大、ここには実は目標がございまして、年間五万本以上の生産者の割合を過半にしたいというふうに考えておりまして、なるべく生産者の規模拡大も進めていきたいということ。

 それから、コンテナ苗生産基盤施設等の整備、それからコンテナ苗の生産、利用に関する技術研修等を実施しているところでございます。

 今後とも、これらの対策を通じまして、コンテナ苗の安定供給に努めてまいりたいと考えているところでございます。

稲津委員 終わります。

武藤委員長 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 おはようございます。

 国有林野の管理経営法について質問をさせていただきますが、その前に一点、豚コレラについてなかなか終息が見えないものですから、私は立憲民主党の対策本部長を拝命してございまして、そういう立場からも、一点、豚コレラについてお伺いをさせていただきます。

 今、現在のところ、きのうの段階ですが、五府県、二十二例、八万九千頭が処分されたというふうなことでございますが、もうこれは昨年の九月からの話でありまして、半年以上たっているんですが、なかなか終息の方向というのが見えてこないということで、質問をさせていただきたいというふうに思います。

 岐阜県の報告書、これは岐阜県でなくても同じ認識だと思いますが、報告書でまとめているのは、一つ目には危機管理の欠如、二つ目には管理体制の不備、三つ目には作業者への教育訓練。

 そして、近年のというか近ごろの傾向としては、最初は野生のイノシシから感染したというようなことで、飛び飛びに出てきていた、それからあるいは、間違って肉を出荷しちゃったとかというような、どちらかというと飛び飛びに発生していたのが、このごろの傾向としては、関連農場とか、あるいは発生したところのすぐ近くにまた飛び火をしているというような傾向があって、むしろこれは、野生のイノシシというよりは、人によって感染をしていっているのではないかというふうに、これは私の推測ですが、そのように思われるわけであります。

 そうした意味からも、この報告書の中でも、飼養管理基準の遵守事項を十分に掌握しなかった可能性も指摘されているというようなことも言っているわけで、養豚農家の皆さん方には申しわけない話になるかもしれませんが、養豚農家も含めて、その地域で完全に消滅するというぐらいまでは次の支援ができないぐらいな厳しい体制をとらないとこれは終息しないのではないかという心配をしてございます。前のときも十年かかっています。

 そういった意味からも、農水省挙げて、あるいは大臣も積極的にそのことについて発言されているのは承知の上です。承知の上ですが、これはもう一度、安全意識というよりはもう危機管理の問題ですから、そうした視点で、残念ながら、小里副大臣にこの前答えていただきましたが、高位平準化という状況にはなっていないというふうに言わざるを得ないというふうに思うんですが、今後、やはりもうちょっと危機感を持った対応というものを求めたいというふうに思いますので、一点お願いいたします。

小里副大臣 御指摘ありがとうございます。

 御案内のとおり、今回の事案の困難性というものは、野生のイノシシに感染をして、これが主な発生源となっているというところにあろうと思います。このため、より高度な飼養衛生管理が農家に求められるというところでありますけれども、御指摘のとおりに、なかなか飼養衛生管理基準が遵守されていない事例がありました。

 このため、県の家畜防疫員に加えて、農林水産省及び養豚診療専門の獣医師による直接の改善指導を繰り返し実施をしてきたところであります。全国的にも、チェックシートを活用して、飼養衛生管理基準の遵守状況の再確認と改善の指導を進めてまいりました。さらには、一旦畜舎を空にして、ハード面、ソフト面、両面からしっかりと飼養衛生管理を向上させようということで、早期出荷によるクリアリング、これを提案をし、調整をしているところであります。

 一方、岐阜県や愛知県の自治体職員の方々も、長期にわたりまして緊張感を持って防疫に努めてこられたところであります。都道府県職員や政府職員の危機意識と飼養衛生管理基準の遵守徹底の必要性を共有をするために、全国の都道府県を対象とした会議を定期的に開催するとともに、豚コレラの発生を受けて、ウエブ会議等でも情報共有を図ってきたところでありまして、直近では、四月二十五日に、吉川大臣のもとに全国の主任者会議を開催したところであります。

 ワクチンのないアフリカ豚コレラ、これに備えるためにも、緊張感を持って、更に飼養衛生管理の向上に努めてまいりたい、早期の終息を図ってまいりたいと思います。

佐々木(隆)委員 事件は現場で起きています。幾ら会議を重ねても、なかなか解決、今までも努力をされてきたことは承知していますが、やはり現場にしっかりそのことが伝わる、そしてそのことが徹底されるということをぜひ求めておきたいというふうに思います。

 それでは、きょうのテーマであります国有林の管理経営法についてお伺いをいたします。

 一つ目は、改正目的についてであります。

 大臣は、きのうの趣旨の説明の中でもおっしゃっておられるわけでありますが、昨年の森林経営管理法を補完するために国有林を提供するというふうな表現なわけでありますが、昨年の経営管理法は、もともとは森林環境税から発生をしていて、その創設に伴って、地域の森林環境整備あるいは森林保全、地域の森林をどうやって守るかというのがそもそもの目的でつくられた、その分の林野庁部分として我々は論議をしてきたというところなんですが、今回のは国有林を伐採するという話ですから、昨年の法律と今回の法律がリンクをしているというふうには思えないわけですね。

 補完をするといって、なぜ民有林を国有林が、民有林の人たちという意味なんでしょうけれども、民有林を国有林が補完をしなきゃいけないのか。もっと言えば、昨年は民有林が中心で西日本の皆さん方が中心ですと言っていました、ことしは国有林が中心で東日本の人たちが中心です、東日本が西日本を補完する、こういう理屈になっちゃうわけです。

 なぜこれは補完といってわざわざ関連づけなければいけなかったのか。法目的、私は違うと思うんです。この法律はこの法律で論議すべきだというふうに思うんですが、その点についてお伺いします。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、昨年成立いたしました森林経営管理法でございますけれども、これは、民有林の集約化を進めるというような観点で、まだ集約化できていない民有林について極力市町村に一回集約をいたしまして、そして、そのうち経済的に回るような山につきましては、意欲と能力のある林業経営者、具体的には森林組合とか素材生産業者とか自伐林家の方々とか、そういった皆さんに実施権をお渡しをしていこうということが一点。ただ、経済的に回らない山もございますので、そういう経済的に回らない山につきましては、御指摘ございました森林環境税を活用して、市町村が公的な整備なりを図っていくというような趣旨でございます。

 したがいまして、昨年の森林経営管理法におきましても、市町村が公的な管理をするという面ももちろんあるわけでございますけれども、もう一方の面として、集約化した森林を意欲と能力のある林業経営者にお渡しして、そういう意欲と能力のある林業経営者をしっかり育成していくというような目的もあるところでございます。

 今回の法律につきましては、まさに、新たな森林管理システムの中の意欲と能力のある経営者、具体的には森林組合とか素材生産業者とか、こういった皆様方に、国有林からも長期安定的に木材を供給するということによって積極的に支援することが必要であるということで本法案を提出したものでございまして、その面で、意欲と能力のある林業経営者の育成を図るという面では、森林経営管理法とリンクをしている制度ではないかというふうに考えているところでございます。

佐々木(隆)委員 申しわけありませんが、私にはちょっと理解するのが難し過ぎる話です。意欲と能力のある森林経営者なんというのはどこにもたくさんいるわけであって、昨年これを受けた人たちだけのために国有林を提供するかのような説明に聞こえるわけで、それは少し違うのではないか。

 というのと、この次、続いて質問させていただきたいんですが、特に八条関係でありますが、昨年のはどちらかというと地域の緑を守るというのが主体的に置かれていて、その中で採算ベースに乗るものについてという話であって、であれば、今回のこの八条の六でありますが、「効率的かつ安定的な林業経営の育成を図るため、」こう書いてあるんですけれども、国有林管理経営法にある「公益的機能の維持増進」は必要ないのかということが疑問になってまいります。

 先ほども小島議員の質問の中でも答えられておりましたけれども、三条に書いてあるからいいんだという理屈だとするならば、なぜ「効率的かつ安定的な林業経営の育成を図るため、」というところだけ抜き出さなきゃいけなかったのか。先ほどもお話あったように、公益的機能と林業経営という二つの目的があるんだ、それは三条に書いてあるんだというものの中で、わざわざこの八条に経営の方だけ抜き出して書いてあるわけですから、それはやはり少し、三条に書いてあるからいいという理屈は通らないというふうに思うんですね。

 もう一つ申し上げます、余り時間を与えられておりませんので。

 もう一つ言えば、先ほど保安林の話も出ておりましたが、保安林はまさに水源涵養であって、公益的機能です。ここも切っていいよと言っているんですから、これに公益的機能を外してしまうというのは、やはり私はおかしいと思うんです。

 三条に書いてあるからといって、八条で急に経営のところだけ、林業経営のところだけ抜き出して、片方を外してしまっているわけですから、そういった意味では、両方の機能があって、その中で国有林をどう切るのかという話でなければ話としてはつながっていかないのではないかというふうに思いますので、三条があるからいいという答え以外の答えをお願いします。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 三条について御指摘をいただいたところでございますけれども、繰り返しになるかもしれませんが、現行法三条におきましては、国有林野の管理経営の目標の第一といたしまして、「国有林野の有する公益的機能の維持増進を図る」ということが明記をされているわけでございます。そして、この国有林野の管理経営におきまして、御指摘ございました「公益的機能の維持増進」につきましては、分収造林を始めとする、現行法に位置づけられる全ての制度に共通して図られるということが、言ってみれば明らかなわけでございます。

 したがいまして、委員の御指摘ではございますけれども、今回の八条の六においては、公益的機能の維持増進を図るということについてはあえて明記をしていないということでございます。

 一方、「効率的かつ安定的な林業経営の育成を図るため、」ということにつきましては、先ほど御紹介をいたしましたように、今回の制度の趣旨がまさにそういう効率的、安定的な林業経営、意欲と能力のある林業経営者の皆さんに長期安定的に材を供給していくんだということが制度の趣旨でございますので、その目的を明らかにするために、八条の六において明記をしているところでございます。

佐々木(隆)委員 残念ながら私には理解しかねる答弁であって、先ほど申し上げましたように、三条には両方書いてあるわけです。両方書いてあって、八条であえて効率的な運営の方だけ書いたわけですから、そのときに、じゃ、三条にある公益的機能は要らないのかという話になってしまいますので、私は、並列して書いて何ら問題はないというふうに思うんですけれども、ぜひそこは更に検討をいただきたいというふうに思うんです。

 それに関連してお伺いをします。

 その際に、相当規模、一団の区域というような表現が出てくるんですが、なぜこんな極めて条件のいいところだけに限定したのか。急傾斜地や奥地を外して、条件のよいところをということになると、なぜそれほどのある種便宜を図らなければいけないのかということについて、ぜひ説明をいただきたいと思うんですね。

 例えば、緩やかな傾斜地の一団があったとして、その先に、一つの区域の中にもうちょっと急傾斜があったらそこだけやらないのか。そんな変な理屈は通らないわけでありまして、極めて私は、先ほどの話もそうでありますが、未来投資戦略の長期、大ロットで安定的に供給するというその呪縛から林野庁は解き放たれるべきではないかというふうに思ってございます。

 そういった意味で、このことによって企業が一団の、長期間にわたるということになれば、かえって林野庁が民間の競争を阻害する結果になってしまうのではないかということも考えられるわけで、この点について、なぜそんな条件のいいところだけに限定したのかということについて説明いただきたい。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 そういう条件の悪いところの扱いでございますけれども、実は、現行の入札による立木販売におきましても、そういう急傾斜地とか林道から離れた奥地の森林につきましては、木材生産を行っても採算が合わなくて、仮に対象としても落札されないことから、立木販売の対象にもなっていないというところでございまして、今回の樹木採取区についても、そういう現在の立木販売と同様に、このような急傾斜とか、そのような森林は対象から外すということとしておるところでございます。

 なお、このような箇所で公益的機能の発揮のために施業が必要な場合には、もちろん森林整備事業によって施業を実施するということができるわけでございます。

 それから、今回の制度によって何か競争が阻害されるのではないかというような御指摘もあったところでございます。

 今回の樹木採取権の制度につきましては、現在行っております立木販売とかシステム販売で国有林の供給量を出しているわけでございまして、そこの部分は、基本的には従来と同じようなやり方で仕事の発注をしていきたいというふうに思っております。

 今回の新しい制度につきましては、あくまでも、これから国有林につきましても供給量をふやしていくわけでございます、自給率五〇%目標に向けて国有林の方も供給量をふやしていくわけでございますので、国有林の供給量がふえる部分の一部について、今回の新しい考え方で発注をしたいということで考えているわけでございます。

 したがいまして、現在立木販売等で仕事をやっていただいている業者の方が疎外をされるとか、そういうことにはならないのではないかというふうに考えているところでございます。

佐々木(隆)委員 これは、森林のプランにおいても、これから伐期を迎えて、国産材の自給を高めていかなければならないというのは、これは一致している考え方ですので、そこを否定するつもりはないのでありますが、それであれば、例えば林道なんかについて、補助事業などで林道を整備することによってコストを下げるということは、ヨーロッパなんかはもうそういう取組をやっているわけですから、何もこの方法しかないわけではないというふうに思うし、奥の方がコストがかかるから外したんだというのは、ちょっと理屈としては、これからの林政の上において、少し違うのではないかというふうに思います。

 時間がなくなってまいりましたが、あと二問だけお伺いをしたいと思います。

 今のに少しかかわりますけれども、採取権についてお伺いをいたします。

 八条の五、十五、十九にかかわりますが、意欲と能力のある林業経営者という表現、私は余り好きではありませんけれども、将来の見通しを持ってやれること、長期的、安定的にやれること、物権的権利とみなしてやるというようなことが新たにこの採取権として出てきたわけでありますけれども、国が契約相手ですから、いわゆる公共事業ですから、公共事業で、先ほども話に出ましたけれども、五十年という必要性がどこにあるのかというのはよくわかりません。

 確かに木の周期は五十年でしょうけれども、相手が国なんですから、国を相手にそんな長期の契約を結ぶという必要が私はどこにもないというふうに思うんですね。そんなことを言ったら、道路が十年計画で計画されました、十年全部うちの企業にとらせてくださいという理屈と同じ理屈になっちゃいます、それは。そんなばかな話はないので、毎年入札をして、それでも次の年もとるために設備投資をして、みんな頑張って次の年もとるわけです。

 毎年毎年とは言いません。十年ぐらいあればもう十分な話であって、その間に自分の経営がきちっと確立できないようなところを五十年も守ってあげるなどという公共事業というのは、私は、極めて珍しい話であって、余りいい前例だとは思えないわけでありますので、ひょっとすると、五十年といったら、世代が二つか三つわたっちゃうわけですね。おじいちゃんの代に契約しましたなんという話になるわけです。そんな契約の仕方というのは私はないというふうに思いますので、ここは十年で私は十分だというふうに思いますが、これは大臣に答えていただいた方がいいかもしれません。

吉川国務大臣 樹木採取権につきましては、今、佐々木委員は、余り好きじゃない言葉だ、こう言われましたけれども、地域の意欲と能力のある林業経営者の育成の観点から、これらの林業経営者が対応しやすい規模に鑑みまして、その期間は十年を基本として運用していく考えであります。十年を基本とするということは、十年が原則と捉えていただいて結構だと思いますけれども。

 他方、現に地域の森林組合等から長期間の権利設定を求める声があることも踏まえまして、国産材の需要拡大のニーズが特に大きい地域におきましては、当該地域の需要動向や森林資源の状態などを勘案しつつ、一般的な人工林の造林から伐採までの一周期の五十年を上限といたしまして、十年を超える期間も設定できることといたしたところでもございます。

 仮に、事業開始後に相続などの一般承継が発生した場合におきましても、これによって権利を取得した者に対しましては、林業の経営能力など、当初の権利者と同水準で事業を実施できるか否かを農林水産大臣が審査することから、これにより適切に事業が実施されるように措置をされているものと考えております。

佐々木(隆)委員 今大臣お答えいただきましたが、十年が基本とするのなら、基本だけで十分だと私は思うんですね。わざわざ、括弧、五十年を上限とするなどと書くと、一つは、戦後の復興期でもあるまいし、業者をそこまで国が育成をしてあげなきゃいけないというような状況というのは、私はちょっと違うと思うし。

 受注者は長い方がいいに決まっているんですよ、それは。そんなことを言ったら、受注者はみんな長くとらせてくれと言うに決まっているので、そういうニーズがありましたというのは、これはこの場合に通用しない説明だというふうに思いますし、下手をすると、長期間にわたることによって業界の系列化が始まるのではないかというおそれもあります。

 そういった意味でも、十年を区切りにするだけでも私は十分長いと思いますけれども、下手すると、大手の川中か川下の業者が川上の業者まで全部抱え込むようなことも起きてしまうかもしれないので、そういった意味でも、私は、余りにも長過ぎる契約だということは指摘しておきたいと思います。

 最後の質問にさせていただきます。再造林についてであります。

 素材生産と植林を一体で実施するというのはコストが安くなると。それは確かにコストは安くなると思いますが、基本的に、今までの経過からすると、今までの山のつくりからすると、伐採をする業者と植林をする業者というのは別の業者です、ほとんどの場合。今、一緒にやる業者も出てきていますけれども。それは、だから、ジョイントを組むか何かしてやれということになるのかもしれませんけれども、伐採が終わった途端に私はやりませんと言ったときに、どうやってペナルティーをかけるのか。

 そして、そのときには国が責任を持って植林をしますというのなら、それはそれで別に発注して十分なのではないかというふうに思うんですね。ですから、同時並行発注をすれば済む話だと思うんです。伐採は伐採で、一年おくれで植林をずっとやっていけば、それはもう極めて効率的にやっていけるわけですから。なぜ一体でなければならないのか。

 と同時に、これは前から問題になっております八条の二十五ですが、申入れでは私は弱過ぎるというふうに思います。申請やあるいは計画の段階から含めて、しっかりとこのことをある程度義務的に課していけるような方法を、民間だから義務づけはできないとするならば、それにもっと近いものにしていくべきだというふうに思うんですが、この点、最後に質問させていただいて、終わらせていただきたいと思います。

牧元政府参考人 お答えをさせていただきます。

 再造林の関係でございますけれども、今回の樹木採取権につきましては、区域内の樹木を伐採することのみを権利の対象としておりまして、植栽は権利の対象外ということでございますので、採取跡地における植栽も含めまして、樹種、本数など、植栽の方針は国が責任を持って決め、その樹木は国有林としてしっかり管理をしていきたいというふうに考えているところでございます。

 他方、伐採後の植栽作業につきましては、これを低コストで効率的に実施するということが、これは大変大きな課題だと思っております。と申しますのも、全国的にも主伐がふえていく中で、再造林をしっかりやっていくということが非常に求められているわけでございまして、その上では、伐採と植栽を一貫して行うという一貫作業をぜひ進めていきたいわけでございます。

 そこで、樹木採取権者が伐採と一貫して行うということが望ましいというふうに考えているところでございますが、ただ、御指摘いただきましたように、例えば樹木採取権者に植栽を義務づけた場合どうなるのかといいますと、民法の規定によりまして、植栽した樹木は当該樹木採取権者のものとなってしまいまして、国が直接国有林を管理経営することができなくなるというようなことにもつながってしまいますので、義務づけまでするということは適当ではないのではないかと考えております。

 ただ、本法案におきましては、「植栽をその樹木の採取と一体的に行うよう申し入れるものとする。」という規定に基づきまして、国が公募をする際に、樹木採取権者が植栽の作業を行う旨を国が申し入れることとしております。この申入れに応じて申請した者の中から樹木採取権者を選定することとなりますので、樹木採取権者は確実に樹木の採取と一体的に植栽を行うことになると考えているところでございます。

佐々木(隆)委員 時間が参りましたので終わりますけれども、今の説明で、私も植林が必要でないなどと全然思っていません。植林は大切です。そのときに、もっと法律上きちっとそのことが担保できる仕組みをつくるべきだということを申し上げているのであって、それが余りにも弱過ぎるのではないかということでございます。

 終わらせていただきます。

武藤委員長 次に、石川香織君。

石川(香)委員 石川香織でございます。

 おはようございます。質問をさせていただきたいと思います。

 今回、国有林の管理経営に関する法律案ということでありますが、日本の森林の約三割を占めるこの国有林でありますけれども、木材の供給だけではなく、土砂災害の防止などの国土保全、それから良質な水資源の維持、それからさまざまな動植物を育むといった、さまざまな役割を果たしていると思います。国有林は、私たちが生きていくという上でも守り続けていかなくてはならない大切な財産であるということは言うまでもありません。

 今回の法律案はこの国有林にいわば長期的な、特権的な風穴をあけるということが言えると思いますので、一歩間違えたら、山が荒れてしまう、はげ山になってしまうというおそれもあるということで、修正案も含めて、きょうしっかり審議をさせていただきたいということで、質問に入りたいと思います。

 まず、この法案がこうして審議されることになりました背景についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 昨年の五月二十五日に成立をして、ことし四月一日に施行されました森林経営管理法との関係であります。

 森林経営管理法が円滑に実施をされて意欲と能力のある林業経営者を育成するためには安定的な事業量の確保が必要だということで、この法案が出てきたと思います。しかし、実際には、森林経営管理法が動き出すことしの二月にこの法案が提出をされております。

 森林経営管理法が国会審議中であります昨年の四月十三日の林政審議会で、林野庁はこういうふうに発言をされております。

 国有林の木材を政策ツールにして、民間事業者が木材の需要を拡大しながら長期、大ロットで国有林の木材を販売していくという仕組みをつくることによって、新たな森林管理システムの後押しをしたいという検討をしているとおっしゃられております。

 しかし、まず、森林経営管理法が施行されてから、自治体でありましたり民間業者の方々はしっかり準備できているのか。それから、始まってからの実感を含む課題などを整理をしていく、注視をしていくということがまず初めに大事ではなかったのかなというふうに感じています。

 この森林経営管理法に基づくいわゆる新たな森林管理システムの体制ということでありますけれども、市町村はまずしっかり準備をできているのか、そういった状況をしっかり把握をされているのかということをお伺いをしたいと思います。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年五月に森林経営管理法が成立して以降、その円滑な施行、運用に向けまして、林野庁職員が市町村向け説明会に直接出向きまして、法の具体的内容等について丁寧に説明をするということ、また、現場からの質問、意見なども踏まえながら事務に係る手引の作成等を行いまして、昨年十二月には都道府県、市町村への配付も行ったということでございます。

 これらの結果といたしまして、市町村、都道府県におきましては一定程度理解が進んでいるのではないかというふうに考えております。具体的には、事務を行う新たな組織を立ち上げたような市町村が出てきたり、あるいは、経営管理実施権の設定を希望する民間事業者の公表に向けまして、既に公表を開始した都道府県もあるというふうに伺っているところでございます。

 このような形で、森林経営管理法に係る取組が順次展開されつつあるというふうに認識をしているところでございます。

石川(香)委員 順次動き始めているという状況でありましたけれども、ただ、まだまだ始まったばかりでありますし、現場は混乱しているのではないかなというふうに感じております。

 この森林経営管理法が円滑に実施されることでありましたり、林業事業者の育成をしていくといったことを目的として語りながらも、この法案が新たな森林管理システムということとどう関係していくのか。さっき佐々木委員も質問されておりましたけれども、果たして、森林経営管理法、この法案がどう関係していくのかということについて、なかなか見えにくいのではないかと私も感じています。

 率直に、そんなに急がなくてはいけないのかなというふうな感想も持つわけでありますけれども、このあたりについてもお伺いをしたいと思います。

牧元政府参考人 昨年成立いたしました森林経営管理法に基づく森林経営管理制度、これは本年四月から施行されているところでございますけれども、このシステムを円滑に機能させるためには、システムのかなめとなる意欲と能力のある林業経営者の育成というものが不可欠となっているところでございます。

 このためには、国有林が民有林を補完する形で、長期安定的にこうした林業経営者に木材を供給いたしますとともに、国産材の需要拡大に向けて、川上、川中、川下の事業者との連携強化を図ることが有効であるということでございまして、できるだけ早期に仕組みを整備するために、今回法案を提出したところでございます。

石川(香)委員 この関係性が見えてこないという指摘、先ほども佐々木委員からありましたが、出発点の時点で、当時の林政審議会の施策部会長も、トップダウンで政策の仕組みが決まってしまったとおっしゃられています。専門家でない方が戦略を出して、それから林野庁や農水省が新しい政策を検討するという状況は決してボトムアップのやり方ではないのではないかと、非常に重い発言をされております。

 この出発点も含めて、果たして、現場の方でありましたり、専門家の方々もそうでありますけれども、意見をしっかり、大切にしているのかという疑問を感じざるを得ないというのが率直な感想であります。

 この国有林事業でありますけれども、林野庁が国有林野事業として一元的に管理経営を行っていると思います。

 この歩みについて振り返ってみますと、国有林事業は、昭和二十二年から特別会計でありましたけれども、前後の高度成長期もありまして、黒字経営で推移して、国に寄与してきたということであります。その後は、貿易の自由化でありましたり円高の進行などによって木材価格が低迷したということもありまして、収入が減少いたしました。そして、平成十年に、公益的機能の維持増進ということを旨とする管理経営方針に転換をいたしました。平成二十五年度に、公益重視の管理経営をなお一層推進することと、そして、一般会計で行う事業ということに移行をしたと思います。

 今回のこの法案では、国有林事業において長期、大ロットエリアを新設するということでありまして、再び収益重視に戻ったような印象も持ちますけれども、しっかりと公益的機能を守っていけるのかということをお伺いをしたいと思います。

濱村大臣政務官 国有林野事業につきましては、公益重視の管理経営の一層の推進とともに、民有林に係る施策との連携を図りつつ、その組織、技術力、資源を活用して林業の成長産業化の実現に貢献していくこととしております。

 このような中で、本年四月より、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理に向けて森林経営管理制度が民有林に導入されたところでございますけれども、国有林といたしましても、本制度が円滑に機能するように積極的に支援していくために、本法案を検討してきたところでございます。

 本法案では、樹木採取権者は、事業を開始する前に、農林水産大臣と五年ごとに具体的な施業の計画等を内容とする契約を締結することとなっておりまして、締結がなければ樹木の採取はできないこととなっております。

 この契約におきまして、樹木採取権者の施業の計画は、現行の国有林の伐採のルールにのっとって、農林水産大臣の定める基準や国有林野の地域管理経営計画に適合しなければならないこととしておりまして、このような仕組みによって、公益的機能の維持増進をしっかりと担保してまいれるというふうに考えております。

石川(香)委員 今答弁の中にもありました樹木採取権ということについても伺ってまいりたいんですけれども、国有林野を、一定期間、それも基本的に十年ということでありましたけれども、こういった長い期間、権利を民間事業者に与えるということが可能になるこの法案でありますと、やはり公益重視の管理経営を加速していくべきだと。今、災害とかいろいろ非常に重要な局面もありますので、加速していくべき流れに逆行していかないかということも疑問として出てくるわけであります。

 この樹木採取権でありますけれども、意欲と能力のある林業経営者という方々に国有林野の樹木を採取する権利を与えて、存続期間最大五十年ということでありました。基本的に十年という説明もありましたけれども、需要拡大が見込まれて、また、その需要に対応できるような場所においては区域面積に応じて最長五十年という期間でありますけれども、どのような場合に、大規模で、そして長期の樹木採取権の設定が想定をされるのか、お伺いをしたいと思います。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 樹木採取権につきましては、先ほど大臣から御答弁がございましたように、地域の意欲と能力のある林業経営者の育成、地域の産業振興への寄与の観点から、これらの林業経営者が対応しやすい規模に鑑みまして、その期間は十年を基本として運用していく考えでございます。

 他方、では、もっと長期の場合としてどういう場合があるのかということでございますけれども、これにつきましては、例えば、地域の取組として大規模な製材工場等を新たに誘致をするような場合、そのような場合には、投資の回収期間が三十年とか五十年とか、そのような長期にわたるような場合もあろうかというふうに思います。特に、国有林の割合が比較的高く、民有林のみでは原木の長期安定的な供給が困難であるような地域におきましては、このような長期の樹木採取権が、こういう新しい工場等の導入等に関しまして必要となるということも想定されるのではないかというふうに考えているところでございます。

 したがいまして、原則十年ということでございますけれども、当該地域の需要動向や森林資源の状態なども勘案しつつ、一般的な人工林の造林から伐採までの一周期の五十年を上限として、十年を超える期間も設定できることとしているところでございます。

石川(香)委員 この五十年ということでありますけれども、やはり長過ぎるのではないかという指摘を私もさせていただきたいと思います。

 この五十年という長い歳月を、国の財産である国有林に対して管理をしていくというのも、大変な作業になると思います。大変責任のあることだと思いますけれども、一体、誰が、どうやって管理をしていくんでしょうか。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 今回の樹木採取権は、民間事業者に樹木を伐採して取得できる権利のみを付与するものでございまして、国有林野の管理経営は引き続き国が責任を持って行っていくということでございます。

 具体的には、現行の国有林の伐採のルールにのっとりまして、農林水産大臣が定める基準あるいは国有林野の地域管理経営計画に適合した樹木採取権実施契約を五年ごとに農林水産大臣と樹木採取権者で締結しなければ樹木を採取できないこととしておるところでございます。

 この事業の適正を期するため、農林水産大臣は、この契約に基づく事業の実施状況につきまして、樹木採取権者から毎年報告をさせ、必要な指示を行うこととしているところでございます。

石川(香)委員 毎年の報告でありましたり、大臣との五年ごとの契約をしなくてはならないということを強調されておりますけれども、ただ、この法律の中に五十年という年月を書くわけでありますので、これは非常に重いリスクのあることではないかなというふうに感じます。

 きのうも亀井委員からも指摘がありましたけれども、きのうは、切って、植えて、切ってということで、一度で二度おいしいという表現をされておりましたが、そういうこともあり得るというのは十分考えられると思います。最終的に、はげ山が残ってしまうのではないかという指摘もありましたけれども。

 五十年間という長い年月でありますので、管理をしていくといっても、結局、人が入れかわって、定点観測をしていくということも不可能に近い、困難ではないかなと思います。管理をしていくということは大変な負担であると同時に、やはり管理をし続けるにも限界があるのではないかと思います。

 それに、ただでさえ職員の方も不足をしているという問題についても触れておきたいと思います。

 林野庁の職員でありますけれども、昭和三十九年、八万九千人いらっしゃいました。平成三十一年度には四千人になっているということであります。伐採などの現場作業に直接従事する職員であります定員外職員という方々は六十人となっています。この五十年余りで、定員外職員、およそ四万人から六十人に減っているということであります。もちろん、この間、収益重視の時代でありましたり、さまざまな時代背景はあるかと思いますけれども、ここまで減っているのかというのは、非常に、現実として、愕然とするのではないかなと思います。

 今、災害の発生でありましたり、鳥獣被害もふえているということで、やはり現場で作業に当たる方の必要性、非常に求められていると思います。ただでさえ職員が減少する中、そして国有林野事業の仕組みも変わるということで、業務がふえてしまうのではないかという心配があります。それによって職員の方々の労働条件も悪化してしまうのではないか。

 私は組織の体制をもっと強化するべきではないかと思いますけれども、御認識を伺いたいと思います。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 国有林野の職員につきましては、御指摘ございましたように、かつては約九万人おりましたのが、今は大体四千人という規模でございます。九万人というのは、現場の、まさに労働者も抱え込んでいたということでそういう数字になっていたわけでございますけれども、現在は、まさに管理運営を行う要員のみということでございまして、具体的な作業につきましては、森林組合であり、素材生産業者でありといった、民間の事業体の皆さんに発注をして、やっていただいているという実態があるわけでございます。

 そこで、今回の樹木採取権の設定等によって業務の増大等を招かないのかというような御指摘もあったところでございますが、今回の樹木採取権の設定は、権利者の監督等の新たな業務も確かに発生するわけでございますが、一方、今回の新たな仕組みの導入につきましては、かなり長期間にわたるわけでございますので、その期間における立木販売の入札事務等が不要となるということで、一方では業務の効率化も期待できるという側面もあるわけでございます。

 したがいまして、業務量が一概にふえるということにはならないのではないかというふうに考えております。

 しかしながら、国有林におきましては、資源の成熟に伴いまして事業量が増加しつつあるということは事実でございます。

 これまでも、国有林野事業全体の効率的な執行に努めてきたところでございますが、引き続きまして、事業全体を通じた事務、業務の改善、あるいは必要な組織、定員の確保に努めますとともに、新たな仕組みの導入におきましても、職員の負担増につながらないよう、現場の実情に応じた効率的な運用に取り組んでまいりたいと考えております。

石川(香)委員 新しい国有林野のシステムになれば、入札の事務などの回数も減る、あとは、効率も上がるというお話もありましたけれども、しかしながら、やはり国有林野事業の役割というのは非常に大切でありますので、しっかり役割を果たしていくためにも、ぜひとも組織の強化を私からは要望させていただきたいと思います。

 樹木採取権に戻りますけれども、誰がこの権利を有するのかということを選定するとき、地域における産業の振興に対する寄与の程度というものも審査する上で重要な項目になるということでありますけれども、こういった度合いというのは、非常に優劣をつけるのは難しいのではないかと思います。

 選定する過程において、当然、公平性でありましたり透明性、公正性というものが担保されなくてはなりませんけれども、どういう評価方法をとるのか、教えていただきたいと思います。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 樹木採取権者の選定に当たりましては、樹木料の算定の基礎となる額、事業の実施体制、地域の産業振興に対する寄与の程度といったような事項を勘案して評価をすることとしております。

 このうち、御指摘ございました、地域における産業振興への寄与の程度についてでございますけれども、これにつきましては、素材生産量の増加を通じて雇用がどれだけ増大するのかとか、あるいは、事業所の有無や事業の実績など、樹木採取区の所在する地域における取組などにつきまして評価をする考えでございます。

 公募の際には、現行の国有林野事業の入札等と同様に、評価する項目及びそれらの配点につきまして公表いたしまして、選定プロセスの公平性などを確保しながら樹木採取権者の選定を行ってまいりたいと考えております。

石川(香)委員 では、この樹木採取権はどういう林業経営者に設定するか、今少し触れていただきましたけれども、改めて条件をお伺いをしたいと思います。

 川中、川下事業者との連携によって安定的な取引関係を確立することなどを求めていると思いますけれども、この安定的なという言葉の意味するところは、つまり、機械などの整備が、整っている、若しくは人手が潤沢にあるということになるのではないでしょうか。また、ここでの安定的というのは規模の大きさを示すことになるのかということについてお伺いをしたいと思います。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 この木材の安定的な取引関係の確立についてでございますけれども、これは、川上、川中、川下の事業者間で取引先ごとに樹種、用途、量等に関する協定等を結ぶ、この協定等を結ぶことによりまして、安定的な需給関係が確立されているかどうかということを確認をするというふうに考えているところでございます。

 したがいまして、機械の状況とか、あるいは人手の状況とか、あるいは規模とか、そういうところを問うものではないというふうに考えております。

石川(香)委員 もう少し聞きたいと思いますけれども、川上から川下までをカバーすることができるということになれば、大手の企業グループなどを示しているのではないかという懸念も当然出てくると思いますけれども、まずはしっかりと地元で頑張る企業にメリットがなくてはならないと思いますけれども、しっかりと地元の企業に対してメリットがあるのかということについてお伺いをしたいと思います。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 木材の安定的な取引関係の確立についてでございますけれども、これは、現状でも、市場を介さずに、川上、川中の協定による直送方式の木材供給でございますとか、あるいは、川上、川中、川下の事業者が連携した、顔の見える木材での家づくりといった、川上、川中、川下のサプライチェーンを構築する取組というものが実際行われているところでございまして、こういった取組につきましては、実際に地域の中小の事業者の皆さんも参画してこのようなサプライチェーンが構築されている事例が出てきているというふうに承知をしているところでございます。

 したがいまして、大手だけではなくて、地域の中小の事業者でも十分対応できるのではないかというふうに考えているところでございます。

石川(香)委員 今、顔の見えるというお話がありましたけれども、国有林の木材販売の二〇一七年度の実績というものを調べてみますと、立木販売、製品、丸太販売でありますけれども、これらを購入しているのはほとんどが地元の事業者であるということだそうです。かつ、地元の中小事業者であるというデータがあるそうであります。

 立木販売の件数、二〇一七年度は千百七十八件あったそうでありますけれども、購入した事業者の八九%が地元の事業者であるということで、かつ、そのうちの中小事業者が占める割合は八七%ということでありました。まさに地元の顔の見える事業者の方々ということであると思います。

 丸太販売については、委託販売、システム販売というものについても同様に高い水準で地元の事業者が購入をして、そのうち中小事業者が占める割合が同様に高いという実績があるそうであります。

 まず、地元の中小事業者なくして国有林木材の供給はあり得ないという現状があると思います。地元の事業者の存在の大きさというものを改めて認識する必要が今あるのではないかと感じています。

 次の質問に移らせていただきます。

 この法案の第八条二十五では、「農林水産大臣は、樹木採取区内の採取跡地において国有林野事業として行う植栽の効率的な実施を図るため、当該樹木採取区に係る樹木採取権者に対し、当該植栽をその樹木の採取と一体的に行うよう申し入れるものとする。」とあります。

 山に重機が入っている間にコンテナ苗を使って植林も同時にすれば、当然コストも削減できますし、省力化できるということで、合理的だという面が当然あるかと思います。ただ、新たに植林された樹木でありますけれども、国有財産ということでありまして、法律上、植林を、樹木採取権者の義務ではないということで、あくまで、農林水産大臣が樹木採取権者に対して、植林と採取を一緒に行ってもらうように申入れをするということであります。

 先ほど来、御指摘が委員からもありましたけれども、申入れでは弱いのではないかという指摘をさせていただきます。公益的機能を維持するために再造林は重要な作業でありまして、確実に行わなくてはならない作業だと思います。申入れ程度で再造林を確実なものにできるのかどうか不安が残らないでしょうか。お伺いをしたいと思います。

吉川国務大臣 確実な再造林についてだろうと思います。

 樹木採取権につきましては、区域内の樹木を伐採することのみを権利の対象とし、植栽は権利の対象外であることから、樹種や本数など、植栽の方針は国が責任を持って決めて、その樹木は国有林として管理をすることといたしております。

 他方、伐採後の植栽作業についてでありますけれども、低コストで効率的に実施するために、樹木採取権者が伐採と一貫して行うことが望ましいと考えているところでございまして、したがいまして、本法案における、「植栽をその樹木の採取と一体的に行うよう申し入れるものとする。」との規定に基づき、国が樹木採取権者を公募する際に、樹木採取権者が植栽作業を行う旨を国が申し入れることとしているところでございます。国は、この申入れに応じて申請した者の中から樹木採取権者を選定することとなりますので、樹木採取権者により確実に植栽が行われることとなると私どもは認識をいたしております。

石川(香)委員 ぜひ、申入れでは弱いのではないかという指摘をさせていただいていますので、法律上にもしっかり書くぐらいのことをしないと守れないのではないかと思います。もう少し強く、義務づけるような文言にしていただかないと、やはり、再造林、伐採とあわせて契約で書くということでありましたけれども、しっかり文言として書かなくてはいけないのではないかということもあわせて申し上げさせていただきます。

 それで、仮に、再造林をしなかった場合というのは当然あるかと思います。今、申入れのみということでありましたけれども、重大なルール違反だと思いますが、このときのペナルティーというのをしっかり設定しなくてはいけないと思いますけれども、このペナルティー、どういうふうに設定をされているんでしょうか。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 植栽を低コスト、効率的に実施するために、樹木採取権者が伐採と一貫して植栽作業を行うことが望ましいことから、この法律案の「申し入れる」との規定に基づきまして、国が公募する際に、樹木採取権者が植栽作業を行う旨を国が申し入れることとしているところでございます。

 国は、先ほど来答弁がございますように、申入れに応じた者の中から樹木採取権者を選定するために、樹木採取権者が確実に植栽を行うこととなるところと考えております。

 仮に、事故等によりまして樹木採取権者が植栽を行えない場合は、国は、他の事業者に委託することによりまして、責任を持って植栽を実施することになるというふうに考えております。

 また、樹木採取権者が一方的な事情により植栽を行わないような場合、こういったような場合にも、国が、他の事業者に委託することによって、責任を持って植栽を実施することになりますけれども、こういう一方的な事情によって植栽を行わないというような樹木採取権者に対しましては、損害賠償金を請求することや、悪質な場合には権利を取り消すなど、適切に対処してまいりたいと考えております。

石川(香)委員 ぜひ、ルール違反をした場合は、強い姿勢で臨んでいただきたいと思いますし、やはり、最終的に責任の所在ということにもなりますので、しっかり考えていただきたいと思います。

 それで、監督という役割がありますけれども、樹木採取権の権利を得た、その長い間、チェック機能を果たして保つことができるのかということと、誰がその役割を担っていくのかということについてもお伺いをしたいと思います。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 この樹木採取権制度におきましては、樹木採取権者を、農林水産大臣と五年ごとに、国が定めたルールに適合した樹木採取権実施契約を締結しなければ樹木を採取できない仕組みとしておりまして、樹木採取権者は、同契約で定めた事項について履行の義務を負っているわけでございます。

 この契約の実施状況につきましては、先ほども御答弁を申し上げましたように、国は、樹木採取権者に対して毎年結果を報告させまして、その内容を確認するとともに、必要に応じて実地調査、指示を行うということでございます。

 では、誰がやるのかということでございますけれども、これはまさに、国有林として、森林管理署なり森林官というものを国有林が所在する地域に全国的に配置をしておりますので、このような機関を使ってしっかり調査を行いまして、五年ごとの実施契約の締結と相まって、長期にわたるチェック機能が担保されるのではないかと考えているところでございます。

石川(香)委員 もう一つ、想定をされるケースといたしまして、樹木採取権を取り消すといったこともあり得るのではないかと思います。もし樹木採取権を取り消すといったことになれば、どういう手順で取消しをするのか、また、取り消されてしまった後の樹木採取区の取扱いということについても、あわせてお伺いをしたいと思います。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 農林水産大臣は、樹木採取権の行使の適正を担保し、適切かつ効率的な国有林野の管理経営の実施を確保する必要がある場合には、その限度において樹木採取権を取り消すことができるとしているところでございます。

 具体的には、まず、樹木採取権者が国の伐採ルールに従わない伐採を行うなど、樹木採取権実施契約において定められた事項について重大な違反があったとき、また、農林水産大臣が事業の適正を期すため樹木採取権者に対して行う指示に正当な理由なく従わないようなとき、また、樹木採取権者が十分な社会的信用を有していない者となるなど欠格事由に該当することが明らかになったとき等におきまして、樹木採取権を取り消すことができるとしているところでございます。

 樹木採取権の取消しにつきましては、これは樹木採取権者に対する不利益処分に該当するということでございますので、行政手続法に基づきまして聴聞手続を実施をいたしまして、樹木採取権者等の意見を十分に考慮した上で、樹木採取権の取消しの妥当性を判断するということになろうかと思っております。

 また、樹木採取権が取り消された後の樹木採取区につきましては、国有林野として国が責任を持って管理経営を行うということでございます。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 この法案でありますけれども、全国十カ所からスタートするというお話がありましたけれども、何年ぐらいで、どのぐらいふやしたいというイメージをお持ちなのか、また、どのような効果が得られれば取組を拡大していくということになるのかということについてお伺いをしたいと思います。

牧元政府参考人 樹木採取区は、御指摘ございましたように、当面十カ所程度をパイロット的に設定をいたしまして、事業の実施を通じまして、事業者の応募状況や申請の内容、また、樹木採取権者の事業量拡大など事業の実施状況について検証いたしますとともに、地元自治体等の評価も伺いつつ、樹木採取区の規模、期間、事業の要件等が適切かを判断をいたしまして、次のステップにつなげていくというふうに考えているところでございます。

 なお、今後どれぐらいふやしていくのかということでございますけれども、どれぐらいふやすのかという見通しについては、現時点ではちょっと確たることは言えないところでございますけれども、地域における国産材供給量増大等のニーズを踏まえまして、今後、供給量の増大が見込まれる国有林材の増加分の一部につきまして、区域の指定を行っていきたいというふうに考えております。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 供給量がふえても需要はふえていくのかということについてもお伺いをしたかったんですけれども、時間になりましたので終わりたいと思いますが、造林作業を担う人材の育成でありましたり、機械化による省力化の推進、国の支援、十分な予算が必要な分野だと思います。

 樹木採取権でありますけれども、十年でも長いと思いますけれども、最大五十年という余りに長い権利設定、それから、伐採とあわせて確実な再造林の徹底、また、地元の事業者の方が力を発揮できるような後押しも含めて、以後しっかり審議をしていただきたいということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

武藤委員長 次に、緑川貴士君。

緑川委員 皆様、朝からの質疑、大変お疲れさまでございます。国民民主党・無所属クラブの緑川貴士です。

 令和最初の法案質疑ということで、まず、節目ということで、平成最後に下されました農政の評価の受けとめについてお尋ねをしたいというふうに思います。

 今ちょうどお手元に渡っている資料の一枚目、済みません、まだ渡っていないところもあると思うんですが、1をごらんいただきたいというふうに思っております。日本農業新聞が先月の二十六日に報じている意識調査の結果であります。

 安倍内閣の農業政策について、最も厳しい、全く評価しないというのが二九・六%、そして、どちらかといえば評価しないというのが三八・九%、合わせれば六八・五%であります。過去最大の市場開放となったTPP、農産物の開放となりました、そして日・EU・EPA、こうしたものへの不安の大きさがやはりあらわれた形であります。

 先月からは、どちらの協定も二年目に入り、牛肉などの関税は一段と引き下がる形になっています。国内対策を講じるから影響はないというふうにしてきた、その対策を行ってきたところではありますが、二〇一五年以降、食料自給率は下がっています。そして、農業生産量の減少にも歯どめがかかっていません。国際化への不安から離農している人もふえている。これは間違いなく地域農業への影響が出てきているところであります。

 政権運営が謙虚かどうかの評価では、全く謙虚ではないという厳しい評価が四二・九%です。戦後以来の大改革であるとか、攻めの農業であるとか、また成長戦略の柱であるとか、勇ましい言葉をこれまで並べてきたところでありますが、今、現状は、先ほど申し上げたとおりです。

 競争原理をひたすらに追い求めて、市場開放一辺倒に映るような官邸主導の政策決定が次々に行われている、そういう強引な議論から導かれるこれからの将来不安に対する疑念、その一端を反映した今回の評価とも言えますが、大臣、どのような御所感でしょうか。

    〔委員長退席、伊東委員長代理着席〕

吉川国務大臣 御指摘の報道でありますけれども、これは四月二十六日のものと承知をいたしておりまするけれども、特定の報道機関が独自に行いました調査の一つ一つについてコメントすることは差し控えさせていただきたいと思っておりまするけれども、いずれにいたしましても、安倍内閣におきましては、農政全般にわたりまして改革を行ってまいりました。これによりまして、生産農業所得は過去十九年間で最高となりましたし、四十代以下の新規就農者が四年連続で二万人を超え、輸出も六年連続で過去最高を更新をしております。一兆円目標の達成も視野に入ってきたところでございますので、着実に成果があらわれ始めているところでもございます。

 引き続き、現場の農業者の皆様と私ども農林水産省は真摯に向き合いまして、政策の内容を丁寧に説明をしながら、農業の成長産業化と農業者の所得向上の実現に向けて全力で取り組んでいく所存でございます。

緑川委員 大臣、真摯にというふうにおっしゃるんですけれども、やはり行動に結びついていかない。光と影の部分が確かにありますけれども、いい面だけ取り上げて、その成果を演説、発言されるのではなくて、今の現場の実情、本当の切実な声というのも、これは影の部分でございますので。

 平成を振り返りますと、農林水産行政は経営を軸に据えた施策が打ち出されたんですが、それに期待する声は確かにあります、でも結局、大規模事業者の優遇という形しか見えてこないことへの不安が、こうした数字にあらわれているんじゃないでしょうか。

 未来投資会議から端を発している今回の国有林改革の議論についても、私は、これは同じことだというふうに思います。

 今回の議論では、五十年を上限としている樹木採取権を与えて長期的に安定的に供給を可能にするということで、川上側の林業で安定的な事業量を確保する、同時に、木材の需要拡大を行おうとしている川中、川下側の木材関連産業の連携強化も進めていくということですが、これはまず前提として、国有林が特に多い東北や北海道では、民有林の直送方式が盛んな西日本と違って、こうした連携の仕組みはなじみが薄いわけです。

 この上限、五十年とはいっても、いきなり五十年という長期の採取権の設定がなぜ必要なのか。亀井委員もきのう質問されましたけれども、やはりそこには違和感を感じるわけであります。

 例えば、私は思うんですけれども、五十年の樹木採取権を得られれば、それをもとにして融資を受けられる、そして、この樹木採取権についても、市場価格よりも高く、かつ一番高い購入額を提示した業者に決めるということになるわけですから、例えば経営の体力のある大手の事業者が、その融資をもとにして、まだ進出をしていない東北や北海道で伐採から販売を一括して行う施設、仕組みを一体的に整備していくこともやはり今後可能になっていくわけです。

 ですから、十年を基本としながらも、この五十年というのをあえて明記しておくことで、地域の外からの事業の進出に積極性を持たせているように思いますが、御認識はいかがでしょうか。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 樹木採取権につきましては、十年を基本としつつも、先ほど来御議論が出ておりますように、五十年を上限として、十年を超える期間も設定できるということにしているわけでございます。

 そこで、長期にわたる設定の必要性があるのかどうかということについては、先ほども御答弁申し上げましたように、具体的に、投資回収期間が長期にわたるような製材工場等が地域に立地するような場合には、このような長期にわたる期間も必要ではないかというふうに考えているところでございます。

 なお、その場合、そういう何か大規模な業者によって事業が、言ってみれば独占されるのではないかというような御指摘かとも思いますけれども、そこの点につきましては、現在も、国有林の伐採とかそういう仕事を実際にやっていただいているのは、先ほども御指摘がありましたように、中小の事業者が大半を占めているわけでございます。

 今回の制度につきましても、中小の事業者が協同組合等を組んで連携して受けるということも可能でございますので、決して中小事業者を排除するものではなく、むしろそういう中小の事業者の育成を念頭に置きまして、このような制度設計を行ったという経緯でございます。

緑川委員 やはり、大手の製材工場、結局、大量に原木を集められるということがあります。連携をしたといっても、地域の中小の製材工場にとっては、この原木の調達が、主導権を持って地域で調達することが難しくなっていく、そういう影響がやはり私は出てくるというふうに思います。

 本来、そうした中小の事業者こそが、山村地域の雇用、地域の経済を維持していく上でやはり欠かせない存在であるわけですから、大手の事業者がその役割を担えるかどうかというのは、そこまでルールづくりをしなければ、本当に歯どめにならない、骨抜きの法案になってしまうんじゃないかというふうに私は思います。

 この中小製材所の存続を図ることを十分に考慮する必要があると思いますが、大規模製材所との間でどんなすみ分けを図っていくんでしょうか。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の製材工場の現状というものを見たときに、御指摘ございましたような大規模な製材工場が原木の七割を消費するということで、かなり規模拡大が進展しているということは事実でございます。

 ただ、一方で、中小規模の製材工場につきましては、山村地域を中心に、全工場数の九割を占めておりますし、地域の経済、社会を支える大変重要な存在であるというふうに私ども認識をしているところでございます。

 したがいまして、こういう中小の製材工場につきましても、地域の工務店等、中小規模の事業者をまさに顧客としているわけでございますので、大規模とは違った役割を果たしているというふうに考えているわけでございます。林業の成長産業化を図る上で、大変重要な存在だというふうに私ども考えているところでございます。

 今回の制度につきましても、こういった中小の製材工場なりをもちろん排除するということではなく、まさに中小の製材工場なりといろいろな連携を結んで、山側で供給の増大を図るというようなケースも十分想定されるわけでございますので、本制度も活用しながら、こういう中小の製材工場がますます発展されるように、私どもとしても、引き続きまして、さまざまな支援を講じていきたいというふうに考えているところでございます。

緑川委員 やはり、川上から川下の連携というふうに、一口に、民有林の森林経営管理システムの中でも、そして今回の国有林の議論でも、これは言うんですけれども。

 では、中小の川中、川下事業者、当然、切って、使って、植えるという、この循環のサイクルの中にしっかりと組み込んでいくためには、林野庁はどういうふうにその法的な担保をしていくつもりでしょうか。具体的にお答えいただきたいんですけれども。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 中小の製材業者の重要性については、先ほど申し上げたとおりでございます。今回の法律の中でも、こういう中小の製材業者をもちろん排除しているわけではございませんし、条文で明確にというのが御質問でございますけれども、条文の中でも、特に規模において例えば差別をするとか、規模において何か審査基準を設けて大規模なものしか入れないようにするとか、そういうことは想定をしておりませんし、条文上もそのような構成にはなっていないところでございます。

緑川委員 それが骨抜きだというんですよ。

 その中で、サイクルをつくるのはいいですけれども、国がそこはちゃんと責任をとれるのかという話なんですね。このサイクルを、この循環型のサイクル、わかりますけれども、それを回していくためには、やはり、四十年から五十年という林齢を伐期とする短伐期施業、これを量的な木材生産機能を高めていく上で最大限に発揮させる目的としては、それ自体は理にかなっていることかもしれませんが、それを担保するルールが実効性があるかということが問題です。

 先日の本会議の大臣のお答え、樹木採取区については、当面は一カ所当たり数百ヘクタールで、実際に伐採を行う場合には、国有林野の伐採のルールにのっとり、一カ所当たりの皆伐面積の上限は五ヘクタールにするというものですけれども、これから多くの区域が、パイロット的には十カ所と言われていますが、更にふえていくというふうにすれば、広大な範囲の全容を、その状況を誰がどうやってチェックするのか。ルールを遵守する体制をどうやって担保していくんでしょうか。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の樹木採取権制度につきましては、今後増大が見込まれる国有林材の一部について導入ということでございます。

 したがいまして、国有林の発注のルールを全て変えるわけではなくて、あくまでも増大が見込まれる国有林材の一部について導入されるものでございますけれども、その実施に当たっての国有林の伐採ルールへの適合につきましては、現在の立木販売と同様に、事業者から報告させる実施状況の確認でありますとか、あるいは国による現地調査、これを、先ほども御答弁申し上げましたように、私どもの森林管理署とか森林官がまさに国有林のある地域には全国的にこれは配置をされているわけでございますので、こういう機関を使ってしっかり調査、監督をしていくということでございます。

 そして、この樹木採取権の実施状況のチェックとか伐採ルールの遵守というものの体制についても十分担保できるというふうに考えているところでございます。

    〔伊東委員長代理退席、委員長着席〕

緑川委員 樹木権の実施契約とか森林法の違反、当然、違反すればそういう行動に移る、それはわかりますけれども、例えば、済みません、これは細かく伺いたいんですが、国による現地調査で、森林官であるとか森林管理署がどうやって察知するのか、あるいは、ふだんどのぐらいの頻度でパトロールなりそうした調査を行っているのか、伺いたいと思います。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 国有林の体制につきましては、先ほど全国で約四千名というふうに申し上げたところでございますけれども、約百の森林管理署があるわけでございます。その森林管理署がそれぞれ、国有林の存しているエリアごとに森林官事務所というものを配置をしておりまして、森林官が実際に現地に張りついているわけでございます。

 その森林官におきましては、担当するエリアにつきましてはまさに日常的にこれを見回って監督をしているわけでございまして、どのぐらいの頻度ということでございましたけれども、これはまさに日常的に森林官が見回ってそれぞれのエリアを監督をしているわけでございますので、今回の樹木採取区が設定をされた場合に樹木採取権者が不適切な伐採等を行った場合にも、これは速やかに発見して適切な措置を講ずることができるものと考えております。

緑川委員 日常的にというのは、どこまでの範囲を日常的に回るんでしょうかね。本当に広大な、私の秋田県なんて、国有林、宝庫と言えるところですけれども、本当にそんな日常的に全ての全容を把握できるぐらいの頻度で回れるんでしょうかね。

 林野庁も、さまざまな縛りは設けるというふうに言いますけれども、十年なら十年、結局は、ルールを守れば自分がとりたいように、供給しやすいように木材を供給できるというふうに説明をしているところです。

 民有林の状況に少し触れますと、たとえ五ヘクタールを超える国有林とか皆伐ではなくても、ほぼ皆伐と言えるような列状間伐あるいは群状間伐、こういうものが行われているところが一部ではあります。この山が雨風にさらされて、結局、そういうところでは荒れ果てて、長期の施業ができなくなっているところも出てきているわけです。そういう業者に対して道を開くような、この管理経営の今回の法案の改正だというふうに思います。ルールの範囲内での荒い施業ということが結局は十分にあり得る。国有林のほとんどが保安林であれば、なおのこと懸念が深まるわけです。

 これまでの林業政策の流れの中で、国の各種補助制度に沿うようにして一部で行われた大規模な施業、あるいは皆伐、これが山林を劣化させている、ひいては土砂災害を誘発させている面も、これはやはり否定できません。このあたりの懸念はいかがでしょうか。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、国産材に対する需要の高まりなどから、主伐の増加が見られているところでございます。そういうところにおきまして、私どもも、再造林をぜひやっていただきたいということで、民有林も含めて指導申し上げているところでございます。

 その意味で、再造林をするためには、まず、伐採と一緒に行う一貫作業によって低コスト化を図るということが大変重要だというふうに考えておりまして、そのようなことを推進することによりまして、まずは再造林をぜひ普及をしていきたいというふうに考えているところでございます。

 なお、御懸念ございましたように、一部にそういう荒れている山があるのではないかという御懸念の声でございます。そういうような森林につきましてはどのような対応をとるのか、例えば治山事業なり、いろいろな事業で対応する必要もあろうかと思います。それにつきましては、それぞれのエリア、エリアごとの森林の状況を見ながら適切に対応させていただければというふうに思っております。

緑川委員 やはりどうも重きが置かれているのが、意欲と能力のある林業経営者というふうに言いますけれども、植える意欲と能力がある林業経営者を育てていくということが大事だと思います。とってばかりの意欲ではない、やはり植える意識をしっかり高めていくような内容を法案に明記しておかなければ、私は、公益的機能ということを守ることは難しいというふうに思いますよ。

 この新たな森林管理システムが、これまでに起きている荒い施業を放置するどころか広げていく懸念、昨年も議論させていただきました。

 国有林の中で、木材生産性の高い区域とそうでない区域、また、災害の危険が大きい区域とそうでない区域、生産性と災害防止という二つの大きな軸を基本にして森づくりを進めていこうという林野庁の姿勢はわかるところでございます。木材生産に適した生産性の高い場所では、木材生産機能を重視して人工林を維持していく、一方で、痩せた土壌では木材生産の無理はしない、急斜面、また崩壊の危険性がある場所は、公益的機能を発揮できるように安定した老齢林に誘導していく、こういう流れだと思います。

 ここで資料の2をごらんいただきたいんですが、一枚目です。

 全国森林組合連合会がつくった図ですけれども、林齢に応じた公益的機能の高低を示す図でございます。右側に書いてある、生物多様性の保全、また水源の涵養機能、そして表層土壌の有機物量、また生態系の炭素量など、森林の公益的機能は年を重ねていくほどに高まっていくことがわかります。

 ここでお尋ねをいたしますが、今回対象となる国有林は、この図でいうと、若齢林の終わりあたり、あるいは成熟段階の入り口あたりに区分されると思いますが、樹木採取区で樹木をとらなかった場合には、これは確認ですけれども、その樹木の木材生産以外の公益的機能は一層発揮されていくという認識でよろしいでしょうか。とらなかった場合です。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、今御指摘をいただいたペーパーについてでございますけれども、私どもとしましては、地域全体で見ますと、特定の樹種とか林齢に偏った森林よりも、若齢級から高齢級までさまざまな育成段階や樹種から構成される森林が配置されることが望ましいというふうに考えておりまして、したがいまして、国有林野におきましても、個々の森林の自然的、社会的条件に応じてでございますけれども、通常の伐期による施業のみならず、長伐期施業とか複層林施業とか、そういうさまざまな施業を通じて多様な森づくりを進めていくんだ、そこが非常に大事ではないかなというふうに考えております。

 この樹木採取区におきましても、これも御答弁申し上げたとおりでございますが、現行の国有林の伐採ルールにのっとりまして、農林水産大臣が定める基準等に従ってしっかりやらなきゃいけないということで、公益的機能の確保が図られるということでございます。

 こういうような取組によりまして、さまざまな育成段階や樹種から構成される多様な森林への誘導につなげていくということが大事ではないかなというふうに考えているところでございます。

緑川委員 大まかにはそうですけれども、私の質問には余り具体的に答えられていないですね。

 私は、林野庁のフォレスターの養成テキストとかというのもちょっと調べさせてもらいましたけれども、ここにこう書いてあります。「量的な木材生産機能だけを考えるなら、若齢段階の後半から成熟段階にかけて収穫するのが最適という考えも成り立ちます。しかし、他の多くの機能は、皆伐後の林分初期段階から若齢段階にいったん低下し、森林構造の発達とともに緩やかに増加していくことが示唆されています。」と。これはこの図のとおりじゃないですか。

 それで、お伺いしますけれども、樹木採取区、これからの規模に応じてですけれども、この規模をトータルで考えてもらいたいですが、その区域内において樹木をとらなければ、やはりこれは林齢が増していくことになりますから、その点においてはふえていくこと、これはよろしいですね。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 木を伐採することによって一時的に多面的機能が低下をするということは御指摘のとおりかと思いますけれども、先ほど御答弁申し上げましたように、地域全体で見れば、特定の樹種や林齢に偏った森林よりも、若齢級から高齢級までさまざまな段階にあるというものが適切だというふうに考えておりまして、その意味では、適切に伐採をして森林を更新をしていくということが非常に重要ではないかな、それは総体として見れば多面的機能の維持増進にもつながるのではないかなというふうに考えております。

緑川委員 再造林をすれば、それはそうですよ。伐採した後にというところを私は言っているわけです。

 この林野庁の、私が今お話ししたとおりでも、公益的機能の高まりというのはやはり今お認めになりました。

 何を言いたいのかといいますと、今回の仕組みの導入で、国有林の木材の大量生産への転換ということが、その側面が強くなったわけです。木材生産力を高めていく区域とそれ以外の国有林のエリアでこれから区分けしていく以上、それ以外のエリアでは、公益的機能をより維持する、さらには高めていくことが一層重要になってきています。

 それ以外のエリアでは、例えば、奥山では、本来食べ物が見つかるはずの熊が、人工林の杉が植えられてきたことでその熊の食べ物が見つからない、人里の雑木林に隠れて畑を荒らしたり、また人家を襲ったり。動物たちにとっては、自然の山が、今これは自然ではないわけです。奥山でさえです。

 また、戦後に造林される過程で、火山灰の地質から成るもろい地盤の上にも、杉やヒノキ、本来、挿し木から育っているような、根を深く張らない針葉樹が植林をされている。それらが成長しても、これまでのとおり適切な手入れがなされないことで、災害の危険性がより高まっているところがあるわけです。

 今回の仕組みを導入することで、これは、公益性を守る、公益的機能を守るという観点では、本来の自然の形に戻していく必要性が一層高まっているというふうに言えますけれども、一方で、人工林から針広混交林、また広葉樹林への誘導は、決して簡単なことではないと思います。政府としてどのような対応を検討していますか。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 森林・林業基本計画におきましても、それぞれの森林に期待される機能や自然条件等に応じまして、広葉樹の導入等による針広混交林化など、多様で健全な森林へ誘導するということにしておるわけでございます。

 国有林におきましても、自然条件、社会的条件に応じて、針葉樹の育成単層林につきまして、天然更新や広葉樹の植栽によりまして針広混交林化を推進をしているところでございます。

 人工林への広葉樹の導入につきましては、御指摘のように、いろいろ技術的な課題もあろうかと思います。種子の供給源となる広葉樹林からの距離をどうするのかとか、そういう自然条件に応じた伐採方法を適切に選択する必要があるというふうに考えておりまして、林野庁としては、針広混交林化への誘導技術等に関する各種マニュアルや技術指針を取りまとめまして、これらを踏まえて取組を進めているところでございます。このような取組によりまして、多様で健全な森づくりというものを進めていきたいというふうに考えております。

緑川委員 木材生産性の機能を高める一方での、このもう一つが全く欠けていると思うんですね。

 この針広混交林化に対する施策、具体的な取組、もう一回お答えください。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 針広混交林化を進めるために、林野庁としては、針広混交林化への誘導技術に関する各種マニュアルでございますとか技術指針でございますとか、こういうものを取りまとめて、しっかり技術指導を行って、こういう針広混交林化を進めているということでございます。

 そして、これは民有林においても推進されているところでございますけれども、国有林におきましても、これは、天然更新でございますとか広葉樹の植栽等によりまして針広混交林化を推進をしているというところでございます。

緑川委員 やはり、技術指導とかマニュアル作成で進んでいないから誘導が難しいというふうに言っているんですよ。ここの具体的な取組を真剣に考えていかなければ、やはり私は、公益機能を守るということは本当に軽視されてきていると言うしかありません。この機能を、林野庁として、よりそれぞれの機能を明確にした森づくり、ゾーニング、また、環境保全型の林業の手法とは何か、災害を防止するために、減災する施業とは何かということを、これはやはり本当に本気で考えていただきたいというふうに思います。

 林業の債務は、そもそも、整備をしてきても、その整備のお金がもう借金であふれております。二兆円という税金を使って返済額を埋めましたけれども、まだこれは一兆円以上も債務が残っているわけです。そこに、森林環境税という新たな税金で、その整備が足りない森林の経費に充てる。やはり、国民が森林政策のツケをかぶるという格好になっているというふうに思います。その反省の上に立った上で、実効性のある取組を強く求めていきたいというふうに思います。

 国有林の保全管理の上で、ちょっと地域の問題なんですが、懸念される問題として、ナラ枯れの被害がございます。

 資料の二枚目をごらんいただきたいと思いますが、国有林の三割が人工林、そして六割が天然林と言われておりますが、ナラ枯れは、ナラ類やシイ、カシ類の樹木を枯らす病原菌のナラ菌、そして、この病原菌を媒介するカシノナガキクイムシによる樹木の伝染病であります。

 古くから発生している病気ですが、一九三〇年代には鹿児島県、そして一九五〇年代には山形県、兵庫県で被害が発生しておりますが、数年で終息をしています。一方で、東北地方ではナラ枯れの被害が一九八〇年代以降から日本海側を中心に被害が広がって、まだ終息を見ていません。山形県では大幅に減っているところですが、管轄内のトータルの被害量はまた減っているんですが、それ以外の秋田、宮城、岩手ではふえる傾向にあります。太平洋側への拡大も目立ちますけれども、国としての今後の対応を伺います。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 ナラ枯れについてでございますけれども、全国の被害量は平成二十二年度がピークとなっておりまして、平成二十九年度の被害量は、ピーク時の、全国的に見れば約四分の一ということでございます。しかしながら、御指摘ございましたように、近年、東北地方で被害量が増加傾向にあるということでございます。ここ五年間について見ますと、山形県内では減少傾向にあるものの、秋田、宮城、岩手では増加傾向ということでございます。

 このため、農林水産省といたしましては、予防薬剤の樹木への注入、被害木の伐倒薫蒸といった防除事業に取り組んでいるところでございまして、今後とも、関係する府県と連携いたしまして、民有林を含め地域一体となって、効果的なナラ枯れ被害対策を推進してまいりたいと考えております。

緑川委員 これはやはり終息していない、そして一層の取組の強化というものが求められるところです。

 通告を大臣にしておりましたので、改めて私の秋田県の状況もお伝えしますと、予防と駆除を今組み合わせながら対策をしていますが、抜本的な防除対策はやはりありません。木一本ごとに作業するために、急な傾斜地、また、道路から遠い奥地では作業が本当に大変です。抑え込むということが完全にはできていない状況です。二〇一〇年には、森林公園そして景勝地などを対象に、守るべきナラ林に指定して重点的に防除を行っていますが、ナラ枯れに強い森づくりに向けた御助力、御決意、大臣から伺いたいと思います。

吉川国務大臣 ただいまも林野庁長官からお答えをさせていただきましたけれども、予防剤の樹木への注入、被害木の伐倒薫蒸といった防除事業に取り組んでおりまするけれども、今後とも、秋田県を始め関係する府県等と連携をしなければもちろんなりませんし、民有林を含めて地域一体となった効果的なナラ枯れ被害対策を推進をしていかなければなりませんので、しっかりと、県とも連携しながら対応してまいりたいと存じます。

緑川委員 力強くお言葉をいただきましたので、しっかり、実効性のある取組をしていただきたいというふうに思います。

 木材生産の話に再びちょっと戻りますが、川上から川中、川下との連携の中で、原木の供給コストを低減させるために、民有林における森林経営管理システムにおいても仕組みが導入されました。加工施設の大規模化で加工のコストを抑え、またICTの利活用によって流通のコストも抑制をしていく、こういう取組ですが、これを国有林においても、こうした連携を通じた各種事業の合理化、効率化を進めていくというふうにしていますけれども、これはそもそも、議論の中では、未来投資会議の提案によれば、現行よりも有利な立木、樹木の資産の売却となる手法の可能性を検証すること、これも、今回のこの管理経営の法案改正においての仕組みの導入を図る目的の一つになっております。

 たとえ、事業の採算を、先ほどのシステムのように伐採、販売の流れをつくったとしても、川上から川中、川下への直送方式、つまり、市場を介さない直接流通による木材供給の体制が立木資産の価値を下げているというふうに、そういう方向に働いていると思います。

 今、杉の立木でいえば、一本当たりの価格はおよそ千七百円と言われています。立木の価格は、ピーク時の一割から二割程度に落ち込んでいます。樹木の採取権者である素材生産者は、市場価格以上の樹木料を取られ、おまけに一番高い価格を提示した業者が買うことになりますから、これは直接流通によって安く販売するという状況にやはりなっていくと思うんですが、いかがでしょうか。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、直送方式についてでございますけれども、一般的な直送方式におきましても、山土場などで選別を行った上で、例えば、A材は製材工場とか、B材は合板、集成材工場とか、C材はバイオマス工場とかバイオマス発電所とか、それぞれ契約や協定を結んで取引を行えば、必ずしもそういう安い価格で取引されるということにはつながらないのではないかというふうに考えているところでございます。

 今回の樹木採取権の関係でございますけれども、樹木採取権者である素材生産業者は、確実な事業量の見通しが得られることによりまして、人材や機械といった経営基盤が強化をされまして生産性の向上が図られるということ、また、その機械、人員、路網を効率的に配置することによってコストの低減が期待をできるのではないかというふうに考えているところでございます。

 したがいまして、今回のシステムによってそういう価格の低下を招くとか、そういうことには必ずしもつながらないのではないかと考えているところでございます。

緑川委員 余り否定するところでは本当にないと思うんですけれども、国産の例えば集成材に係る生産コスト、主要コストを海外品と比べた場合は、加工に伴うコストは輸入品のおよそ二倍です。国産の方がコストがより割高なんですね。安ければ安いほど製材業者はありがたいわけですから、何だったらこれは海外品でつくってもいいわけですよ。

 そういう中で、コスト圧力が本当に強い中で、素材生産者は安く売らざるを得ない状況なんじゃないですか。買いたたかれている状況というのも聞いております。いかがですか。

牧元政府参考人 川上側の業者と川中側の業者でいろいろな価格交渉が行われているというふうに承知をしているところでございますけれども、ただ、現在の状況を聞きますと、素材生産業者の皆さんにおかれては、かなり、資源の充実ということも背景にして生産が活発化してきておりまして、そのことによって、必ずしも、川中から買いたたかれて経営が苦しい、そういうところもあるかもしれませんけれども、全国的に見ますと、素材生産業者の皆様方は、資源の充実を背景にかなり生産活動を活発化してきておりまして、経営状態も比較的向上しているのではないかというふうに私どもは認識しているところでございます。

緑川委員 いや、本当に生産性が向上しているとしたら、ここまで林業を力を入れて議論している状況にはなっていないというふうに思いますよ。

 国は、木材市場を介さない直送方式で流通させることでコストを安くできる、それで利益率を上げる、このことでもって、また、これは生産性を上げる、売上げがあるだろうというふうに言いますけれども、この直送方式が、素材生産業者を、立木資産の価値をやはり下げる方向に働いています。

 一方では、この直送方式は市場の選別機能が生かされないわけですから、今御答弁の一部にありましたが、材質が結局、A材だろうがB材だろうがC材だろうが、画一的に扱われることになるわけです。材質を選ばないで木材を大量にさばけるのは、直送方式の対象が、合板材料向けだったり、木質バイオマス発電燃料向けだったりするからです。材質を問わないことが、やはり立木の価値を下げてしまっているんです。

 三枚目の資料、原木とその用途の図を参考にもしていただきたいんですが、材質は、品質のよいA材であっても、B材やC材であっても、画一的に扱われてしまう。相当量のA材が、いい、良質なA材が、B材やC材として取引されている。樹齢が五十年を超えてくる、例えば原木一本を見てみますと、A材、B材、C材の一般的な割合は六対二対二と言われています。最も割合の高いA材、せっかくここまで育ててきたA材の原木が、この直送方式で取引されることによって、A材が安い価格で取引されているということになります。

 引き続き、この点については、需要の掘り起こし、需要拡大に向けた、海外に展開していくということも必要になってくると思いますけれども、まず議論はこのあたりにして、質問を終わります。

武藤委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 国有林野の管理経営法の改正案について質問します。

 まず、ずっと議論されている樹木採取権者についてお伺いします。

 去年の林政審の速記録を読ませていただいたんですけれども、この樹木採取権者の対象についてです。「大手の方を入り口で排除することはできないですけれども、」と言われていますね。そして、樹木採取区の「その規模が必ずしも大手企業の今の財務状況からみて魅力ある規模なのかということもあるかもしれません。」このように説明されているわけであります。

 答弁で大手企業とは言われていないんですけれども、林政審の議論の中で林野庁は大手企業と言われているんですよ。樹木採取者というのは大手企業のことを念頭に置いているんですね。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 今御紹介、御指摘いただきました林政審の中では、今御指摘いただきましたように、大手企業を入り口で排除するものではないということで議論があったかというふうに承知しておりまして、要は、中小企業者を基本的には念頭に置いておりますけれども、大手を排除する趣旨ではないということのお話だったかというふうに思います。

 したがいまして、今お話がございましたように、御指摘ございましたように、大手のみを念頭に置いているということはないということでございます。

田村(貴)委員 対象に入るということであります。

 そして、その樹木採取者に最長五十年の伐採権を与えるということであります。複数の伐区、それから数百ヘクタールに及ぶ森林を一手に担わせる。ですから、この林政審の説明では、逆に言うと、その規模が大手企業にとって魅力ある規模なのかわからないと。結局、ここに行き着いていくわけですよね。

 五十年、五十年と言いますけれども、先ほどから、森林組合の方からも長期の権利設定を求める声もあると言われました。先月、農林水産委員会で栃木県に視察に行ったときに、ある森林組合の代表の方は、五十年たったらうちの森林組合はどうなっていくのかという発言も出されたわけですよ。答弁と説明が納得できるような形に今なっていないと思います。

 五十年といったら、これはパイロット事業で全国で十カ所ぐらいでしょう。わずか十の樹木採取者に独占的な権益を与えることになるんじゃないですか。経営難で途中で施業を放棄されたら、国は大きなリスクを買ってしまう。

 そうした意味からも、こういう設定はやめるべきだ、そして、この法律は条文を変えなければいけないというふうに思います。

 それから、植栽義務化についてですけれども、本会議で吉川大臣はこのように答弁されました。国の申入れに応じる者を選定するから確実に植栽が行われるとしたわけなのであります。

 しかし、担保がないんですよ。この申入れと、意欲と能力のある林業経営者と国との間の約束事というのは、契約書にするんですか。それとも、植栽については業者の方からは同意書をとるのか。契約書と同意書、これは交わすのかということをお伺いしたいと思います。

牧元政府参考人 今回の制度につきましては、樹木採取権につきましては、あくまでも区域内の樹木を伐採することができる権利でございまして、植栽は権利の対象外ということでございます。植栽については国が責任を持って行うということでございます。

 そして、植栽につきましては、ただ、伐採と一貫して行うことがコストの低減に向けて望ましいということで国が申し入れるということでございまして、これは契約を締結して植栽を行うということと考えております。

田村(貴)委員 契約書を交わすんですね。そして、樹木を植栽するという同意は文書にして提出されるんですね。どうなんですか。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 本法案における「植栽をその樹木の採取と一体的に行うよう申し入れるものとする。」という規定に基づきまして、国が樹木採取権者を公募する際に、樹木採取権者が植栽の作業を行う旨を国が申し入れることとして、この申入れに応じて申請した者の中から樹木採取権者を選定をするというこの手続でございます。

 これによりまして、樹木採取権者は確実に樹木の採取と一体的に植栽を行うことになるということでございます。

田村(貴)委員 そういうのを空約束と言うんですよ。これは係争になったらどうするんですか。担保はないじゃないですか。

 林政審の議論の中で、この先、木材需要が大幅に、かつ長期的、継続的に広がっていくことが見込まれる場合には、より長期の、大面積の権利を設定させていただくこともありますと言っているじゃないですか。

 対象は、大企業を排除しない。そして、広範囲にわたる森林を担わせる、最長五十年。しかも、契約的な取決めは、担保がない。やはりこれは、こういう提起の仕方は大問題であるというふうに思います。私たちは認めることはできません。

 次の質問に入ります。

 育成単層林の経営の採算性についてお伺いします。

 林野庁がことし四月に示した森林・林業・木材産業の現状と課題というものには、「望ましい森林の姿」という図が載っておりました。木材生産を目的とする育成単層林を三分の二に集積、集約することとしていますけれども、この育成単層林というのは、育成、伐採、植栽を繰り返していくわけですよね。

 この基本というのは、林野庁が主張されている五十年の標準伐期で主伐していくということの理解でよろしいですね。

牧元政府参考人 御指摘いただきました「望ましい森林の姿」の中では、地域の自然条件に応じまして、御指摘ございましたように、一千万ヘクタールの人工林のうち、林業に適した森林六百六十万ヘクタールでは、適切な間伐や再造林による育成単層林として維持をいたしまして、それ以外では、針葉樹と広葉樹がまざった森林等へ誘導するということによりまして、多様で健全な森林を育成することとしているところでございます。

 人工林におきましては、現在、若い林が非常に少なくて資源構成に偏りがあるということが非常に問題でございます。伐期が到来した資源を適時に伐採いたしまして、その後、再造林を行うことによって、切って、使って、植えるという循環利用を進めていくことが私どもは大事だというふうに思っております。

 ただし、この際、自然条件などによりましては、長伐期による森林経営が適している場合がもちろんあろうかと思います。したがいまして、一律に五十年での皆伐のみを進めるものではなくて、地域の実情に応じた適切な資源管理を図ることが重要と考えているところでございます。

田村(貴)委員 でも、説明の資料は、五十年周期、そして標準伐期は五十年と書いているじゃないですか。ここが基本となるわけですよ。

 そういうやり方で今からこういう「望ましい森林の姿」に変えていくとどうなっていくかということについて質問したいと思いますけれども、国有林の二〇一七年の再造林、保育の費用は、一ヘクタール当たり幾らですか。資料ももらっていますけれども、お答えいただけますか。

牧元政府参考人 お答えいたします。

 国有林における再造林については、二〇一七年度の実績で、植栽、下刈り等の初期経費としまして、これは条件のいいところ、悪いところも含めまして、一定の条件のもとで計算をいたしますと、一ヘクタール当たり平均で約二百二十万円程度かかっているところでございます。

田村(貴)委員 一方で、林野庁の資料によれば、国有林の立ち木の販売価格は、二〇一七年度、一立米当たり二千六百円となります。一ヘクタール当たりの立ち木の量というのは平均で五百立米としてありますので、一ヘクタール当たり百三十万円の販売額というふうになります。百三十万円の販売額に対して、再造林と保育にかかる費用というのは二百二十万円。ペイできないじゃないですか。赤字を生むんですよ、こういうやり方だと。

 だから、やはり、一律ではないと言うけれども、基本は一律なんですよ。短伐期、そして皆伐の方針、これを大規模集約化して育成単層林に求めるわけでしょう。こういうやり方が将来的にどうなっていくのかということです。赤字を繰り返すことになっていくのではないですか。長官、いかがですか。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 我が国の森林は、資源が充実して主伐期を迎えつつある一方で、若い林が非常に少なくて資源構成に偏りがある状況であるということでございます。このため、伐期が到来した資源を適時に伐採して、その後、再造林を行うことによりまして、切って、使って、植えるという循環利用を進めていく必要があるために、一定量の主伐は必要であるというふうに考えております。

 また、自然条件などによっては、長伐期による森林経営が適している場合もあることに加えまして、さまざまな育成段階とか樹種から構成される多様な森林に誘導していくことが重要と考えておりますので、繰り返しになりますけれども、一律に皆伐のみを進めるわけではなくて、長伐期化等による多様な森林整備を進めることが重要というふうに考えております。

田村(貴)委員 戦前、大規模に皆伐してしまいました。そして、戦後、一斉に造林したものの、今から短伐期そして皆伐でやってしまったら、やはり林業は衰退する一方だというふうに指摘せざるを得ないと思います。

 私たちは、短伐期皆伐の施業を木材生産の中心にすることはもう改めるべきだというふうに主張したいと思います。はげ山をつくらずに、持続可能な森林を可能とするために、長伐期多間伐、この施策をしっかりと中心に据えることを要求するものでありますけれども、吉川大臣、私は、これからの望ましい森林、森のあり方というのは、長伐期多間伐、これをやはり中心にすべきだと思うんですけれども、大臣の御所見はいかがでしょうか。

吉川国務大臣 人工林におきましては、現在、若い林が非常に少なく資源構成に偏りがあることから、伐期が到来した資源を適時に伐採をして、その後、再造林を行うことによりまして、切って、使って、植えるといった循環利用を進めていくことが重要と考えているところでもございます。

 この際、自然条件などによりましては、長伐期による森林経営が適している場合もあります。一律に五十年での皆伐のみを進めるのではなくて、地域の実情に応じた適切な資源管理を図ることが重要と考えているところでもございます。

田村(貴)委員 基本的な方向性が違いますので、私たちはこれを主張していきたいと思います。

 そして、こういうやり方では経営的に維持できない、また借金、赤字を抱えてしまうということに加えて、自由貿易協定、経済連携協定であります。TPP、EPAでどうなっていくのか。林産物の関税、TPP発効で十六年目に撤廃ですよね。そしてEPAでは八年かけて全ての関税が撤廃、しかもセーフガードなしです。今から安い林材がたくさん入ってくる。太刀打ちできるのかという問題も迫っているわけであります。

 林野庁は、私有人工林において、現状一千五百万立米の国産材供給が、十年後には二千八百万立米になるKPIを示していますけれども、こういう外的要因をもって本当に達成できるんですか。そういう具体的な根拠を示していただきたいと思うんですよ、一千五百万、二千八百万。いかがですか。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘いただきました国産材供給量に係るKPIについてでございますけれども、これは、私有人工林からの国産材供給量につきまして、私有人工林の集積、集約化等を推進するための目標として定めたものでございまして、御指摘ございましたように、二〇一五年の千五百万立方を、二〇二八年に二千八百万立方まで伸ばすというふうにしているところでございます。

 一方、森林・林業基本計画の中でも、二〇一四年実績の二千四百万立方を、二〇二五年には四千万立方に伸ばすというような目標も別途掲げているところでございます。

 いずれも、国産材の需要の増大ということでは同じ方向性を持った目標ということでございまして、私ども、この基本計画の目標設定に当たりましては、需要、供給両面からいろいろ分析を重ねた上で、このような目標を設定しているものでございます。

田村(貴)委員 需要があるのか、需要をつくっていくのか、この議論については次にさせていただきたいと思います。

 きょうは質問を終わります。

武藤委員長 次に、森夏枝君。

森(夏)委員 日本維新の会の森夏枝です。

 昨日に引き続き質問させていただきます。よろしくお願いいたします。

 先日、農林水産委員会の視察で、栃木県の国有林伐採現場と木材加工の現場を視察させていただき、森林組合の方々から御意見を伺ってまいりました。視察の機会をいただきまして、まことにありがとうございました。

 私の地元選挙区の大山崎町には天下分け目の天王山がありまして、地元の方々とドングリの植樹やアカマツの植樹、また、タケノコ掘りで山へ行くことはございますし、私の生まれ故郷の愛媛県西条市には西日本最高峰の石鎚山がありまして、登山にも行きますし、子供のころから、タケノコ掘りなど、山へはよく行っておりました。ですが、今回のような林業の現場へ行くのは初めてで、大変勉強になりました。

 私が視察の現場で感じたのは、この五十年、百年と育ててこられた日本の森林資源を適切に管理し、守っていかなければならない、今回の法改正によって、これらの資源を有効活用できるようにしなければと強く思いました。

 そこで、木材生産の低コスト化について伺います。

 日本と地形や森林所有規模等の条件が類似するオーストリアとの丸太価格のコストを比較すると、日本の丸太には流通コスト、伐出コスト等がかかり過ぎていて、立木価格がオーストリアの半分にも満たないとのことです。森林所有者や林業従事者の所得向上のためにも、オーストリアのように、路網の整備や供給規模の大ロット化を進め、生産性向上を進めていかなければと思います。

 林業の成長産業化に向けて、今後木材生産の低コスト化に取り組まれると思いますが、どのような取組を行われるのでしょうか。

小里副大臣 林業の成長産業化を実現をしていくためには、木材の伐採、搬出の低コスト化が極めて重要と認識をしております。

 このため、高性能林業機械の導入と路網ネットワークの整備による効率的な作業システムの構築を進めるとともに、近年発展目覚ましいICT等の先端技術を活用しまして、伐木等作業の無人化に向けた林業機械の開発、リモートセンシング技術で得られたデータを活用した路網の自動設計等への支援も行っているところであります。

 農水省としましては、このような取組を通じまして、木材の伐採、搬出コストの低減を図り、林業の成長産業化を実現をしてまいりたいと思います。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 ただいま副大臣からも、極めて重要だと考えていると。ICTであったり高性能の林業機械なども使用して、作業の効率化、生産性の向上が今後更に進められていくと思います。

 視察の際にも、プロセッサーやフォワーダー等の高性能の林業機械による作業現場を見せていただきました。プロセッサーによる作業では職人わざも見せていただき、高性能の機械を使いこなす熟練のわざがあれば、更に効率よく作業が進むのだと感動いたしました。

 私は、十連休中に、ある赤字の森林組合を、民間から、立て直しのために組合長になり、一年目から黒字化させた元組合長さんからお話を聞いてまいりました。

 五年償却の二千万円のプロセッサーも、大事に使えば六年、七年使える、森林組合の持ち物と思うと、自分で購入していないので、どうしても手入れをしない、機械を大事にしない人が多いとおっしゃっておりました。手入れをしないと故障も多く、修理費もかかる、一年でも長く大事に使えば、その分コスト削減につながる、物を大事に使うことでも低コスト化を図れるので、そういった指導もきっちりする必要があるとおっしゃっておられました。

 林業に携わる方々、また森林所有者の方々の所得向上のためにも、今後もさまざまな低コスト化に取り組んでいただきたいと思いますが、意欲と能力のある林業経営者の育成にも力を入れていただきたいと思います。

 それでは、次の質問に移ります。

 国有林の分布について伺います。

 国有林はなぜ東日本に多く、西日本に少ないのでしょうか。お答えください。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 国有林は、約七百六十万ヘクタールの面積を有しておりまして、全森林面積の三割を占めるところでございます。

 ただ、委員御指摘のように、地域によって分布は大きく異なっておりまして、地域ごとの森林面積に占める国有林の割合というものを見てみますと、例えば、北海道森林管理局管内では五割以上が国有林ということに対しまして、近畿中国森林管理局管内では一割未満とか、かなり地域によって賦存量に差があるところでございます。

 御指摘のように、東日本に比較的国有林が多くて、西日本には比較的少ない分布状況となっております。

 この要因については、いろいろあるところでございますけれども、多分に歴史的な要因によるものであるというふうに認識しているところでございます。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 歴史的な要因があるとのことですので、また私も少し調べてみたいと思います。

 今回の法改正によって、川上、川中、川下の連携強化を進め、意欲と能力のある林業経営者に国有林からの木材を安定供給して、国有林と民有林を協調出荷することで、協定価格で供給し、販売収入を安定させたり、国有林と民有林が隣接する地域の森林においては路網整備や間伐等を連携して進められると思いますが、今回の法改正によって、国有林の少ない西日本の地域に対する支援策などはあるのでしょうか。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 国有林野事業につきましては、公益重視の管理経営の一層の推進を図りますとともに、民有林に係る施策との連携を図りつつ、その組織、技術力、資源を活用いたしまして、地域の林業の成長産業化の実現に貢献をしていくこととしているところでございます。

 こうした方針のもと、国有林の少ない西日本におきましても、今回の法案による取組に加えまして、現地検討会等の開催を通じた林業の低コスト化に向けた新たな施業技術の普及でございますとか、あるいは、専門的かつ高度な知識、技術を持ち、地域において指導的な役割を果たす森林総合監理士の系統的な育成による市町村への技術支援などによりまして、民有林における新たな森林管理システムの実施に向けた支援を進めていきたいというふうに考えております。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 西日本に対しても、低コスト化であったり、先ほどお話しいただきました指導や育成などもしていただけるということで、お願いしたいと思います。

 国有林の少ない地域においては、今回の法改正によって、国有林からの供給によって民有林からの供給が圧迫される必要はないかもしれませんが、国有林材との協調出荷というのは難しいと思います。

 森林経営管理法によって西日本の民有林の集約化等も今後も進められていくと思いますが、国有林の分布には差がありますので、地域に応じた林業政策をお願いしたいと思います。

 次に、樹齢百年級の木材利用の促進について伺います。

 国産材の需要拡大、利用促進はもちろんのこと、私は、特に樹齢百年級の木材の需要拡大、利用促進について力を入れていただきたいと思っております。

 視察をさせていただき、山に入り、改めて感謝の気持ちを持ちました。百年前に一本一本植えてくださった先人たちの思いを無駄にしてはならない、樹齢百年級の木材利用の促進を図るべきと思いました。視察でもお聞きしてまいりましたが、樹齢百年級の木材は、需要も少なく、また、大き過ぎて木材加工できる機械が限られている上に、搬出コスト等もかかるために、よい値で売れないと聞きました。百年前に植えられた木が、立派に育っているにもかかわらず、需要が少ないというのは大変残念に思います。

 本日は、資料をお配りさせていただきました。

 今回、視察の際に訪れさせていただいた二宮木材さんが、樹齢百年級の木材を京都のお寺のために百本納めたという記事です。百年級の木材で千年残る大仕事ができたと誇りに思われているというすばらしい記事です。

 百年級の木材が売れない、値がつかないと言われますけれども、こういった記事を見ますと、需要はあると思います。百年級の木材の利用促進に向けた支援策は何かありますでしょうか。

牧元政府参考人 お答えいたします。

 戦後造成されました人工林が本格的な利用期を迎えている中で、大径材の利用についても推進していくことが大変大事だというふうに考えております。

 今後の木材需要の拡大のためには、従来の住宅分野に加えまして、公共建築物を始めとする非住宅分野における木材の需要拡大に取り組む必要がございます。大径材の需要策としても大変期待をされているところでございます。

 林野庁といたしましては、大径材の利用推進にもつながりますように、まずは、大径材の加工が可能な木材加工施設の整備、先ほど委員から御指摘がありましたように、なかなか加工できる工場が少ないということがございますので、こういう加工が可能な施設の整備、それから、木材利用のモデルとなる公共施設の木造化、木質化、加えまして、非住宅分野の建築物におけるJAS構造材の需要拡大等に対して支援を行っているところでございます。

 今後とも、大径材を含めた木材の利用推進を進めてまいりたいと考えております。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 ぜひ加工できる施設の整備をお願いしたいと思います。

 二宮木材さんも千年残る仕事ができたと誇りに思われていると思いますが、百年前に植林してくださった先人たちも喜んでくださっていると思います。大き過ぎる木は要らない、売れないと言われることのないように、国の資源を大切に、木材の需要拡大、利用促進をお願いしたいと思います。

 次に、森林環境税の使い道について伺います。

 現場の声をお聞きすると、森林行政に携わる人の中には実際に山に入ったことがない人が多く、森林環境税の使い道がわかっていない役所の人が多い、基金として積み残すことになるのではないかと不安の声を聞きました。既に、府や県で徴収されている森林整備や森林資源の循環利用のための府民税、県民税ですが、積み残しをしているところもあり、適切に使われていないものがあるとお聞きをしました。

 改めて、森林環境税の使い道について教えてください。また、積み残しが多くなることのないように、今後、森林環境税が適切に使われるように指導されるのでしょうか。お答えください。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 森林環境譲与税の使途についてでございますけれども、法律上は、「森林の整備に関する施策」及び「森林の整備の促進に関する施策」と規定されているところでございまして、各地方公共団体において、この使途の範囲内において地域の実情に応じて幅広く、弾力的に事業を実施することが可能となっているところでございます。

 具体的には、間伐等の森林整備でございますとか、人材育成、担い手の確保、木材利用の促進や普及啓発等に充てられるものと考えておりまして、森林経営管理法に基づく森林所有者への意向調査でございますとか、市町村が行う間伐等に活用されることも想定をしているところでございます。

 また、その使途につきましては、毎年度インターネット等による公表が各地方公共団体に義務づけられておりまして、このことによりまして、地方公共団体の判断で適正な使途に用いられているということが担保されるものと考えているところでございます。

 農林水産省といたしましても、これまで、こうした税の趣旨や仕組みにつきまして市町村等への説明に努めてきたところでございますが、引き続きまして、市町村等による森林整備等の取組が効果的となるよう支援をしてまいりたいと考えております。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 実際に積み残し等もあるそうなので、しっかりと指導もしていただきたいと思います。

 先ほど、赤字の森林組合を黒字化した元森林組合長さんのお話をさせていただきましたが、この方は、片道四十分の山道をプラント苗を背負って一日八往復して植栽する姿を見せ、組合の人たちの意識改革をしていったそうです。森林環境税の使い道もそうですが、やはり山のことは山に入って現場の感覚がわかる人でないと使い方がわからないと思います。役所の方々も数年で配属が変わってしまうので山のことを知らない人が多く、現場の思いが伝わらず困っているとのお話もお聞きしました。現場の声をしっかり反映させて進めていただきたいと思います。

 最後に、森林組合改革について伺います。

 日本の林業を守るためには森林組合改革も必要と考えますが、今後の改革の必要性についてはどのように考えていらっしゃいますでしょうか。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 森林組合は、地域の森林の経営管理の主たる担い手として大変大きな役割を果たしておりまして、林業の成長産業化を進める上でも大変重要な存在であるというふうに考えているところでございます。

 本年四月から施行されました森林経営管理制度においては、森林組合は、まず一つには、経営管理実施権の認定を受ける意欲と能力のある林業経営者としての役割、またさらに、市町村がみずから経営管理する森林の施業を受託すること、さらには、市町村が行う意向調査等に協力、支援を行うことなど、多くの役割が期待をされているところでございます。

 こうした中、森林組合系統におかれては、市町村との連携強化にも取り組んでいるというふうに承知をしているところでございます。

 このため、林野庁といたしましても、森林組合の一層の経営基盤の強化を推進するため、経営の健全性確保に向けまして、指導等を引き続き行ってまいりたいと考えております。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 時間となりましたので終わりますが、森林組合の改革については、また次の機会にも質問させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

武藤委員長 次回は、来る十四日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.