第11号 令和元年5月14日(火曜日)
令和元年五月十四日(火曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 武藤 容治君
理事 伊東 良孝君 理事 小島 敏文君
理事 齋藤 健君 理事 野中 厚君
理事 細田 健一君 理事 亀井亜紀子君
理事 近藤 和也君 理事 稲津 久君
池田 道孝君 泉田 裕彦君
今枝宗一郎君 上杉謙太郎君
加藤 寛治君 金子 俊平君
木原 稔君 木村 次郎君
小寺 裕雄君 斎藤 洋明君
坂本 哲志君 杉田 水脈君
西田 昭二君 福山 守君
藤井比早之君 藤原 崇君
古川 康君 宮路 拓馬君
山本 拓君 吉川 赳君
池田 真紀君 石川 香織君
大串 博志君 金子 恵美君
神谷 裕君 佐々木隆博君
長谷川嘉一君 堀越 啓仁君
関 健一郎君 緑川 貴士君
濱村 進君 田村 貴昭君
森 夏枝君
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農林水産大臣政務官 濱村 進君
参考人
(筑波大学生命環境系准教授) 立花 敏君
参考人
(全国素材生産業協同組合連合会会長) 日高勝三郎君
参考人
(東京農工大学大学院農学研究院教授) 土屋 俊幸君
参考人
(信州大学名誉教授) 野口 俊邦君
農林水産委員会専門員 梶原 武君
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委員の異動
五月十四日
辞任 補欠選任
古川 康君 杉田 水脈君
石川 香織君 池田 真紀君
同日
辞任 補欠選任
杉田 水脈君 吉川 赳君
池田 真紀君 石川 香織君
同日
辞任 補欠選任
吉川 赳君 古川 康君
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本日の会議に付した案件
国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第三一号)
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○武藤委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人として、筑波大学生命環境系准教授立花敏君、全国素材生産業協同組合連合会会長日高勝三郎君、東京農工大学大学院農学研究院教授土屋俊幸君、以上三名の方々に御出席をいただいております。
なお、本日出席予定の参考人信州大学名誉教授野口俊邦君は、所用のためおくれて御出席になりますので、御了承願います。
この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用のところ、本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、立花参考人、日高参考人、土屋参考人、野口参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。
それでは、初めに、立花参考人、お願いいたします。
○立花参考人 皆様、おはようございます。筑波大学生命環境系の立花と申します。
本日は、このような機会を設けていただきまして、大変ありがたく思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
私は、二十七年余り、国内外の森林管理、林業、木材産業、木材需給、貿易の研究をしてまいりました。これまでの研究成果を踏まえながら本日の意見陳述をさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
まず、私、森林管理と木材利用について、どういった形で考えればいいかについて申し述べたいと思います。
皆様御存じのとおり、我々に課せられていることは何かといいますと、将来世代の資源ということも考えながら、しっかりと使っていくということだと思います。それでいきますと、将来世代の資源配分を考えながらですので、化石燃料とか枯渇性資源というのはなるべく使わないというか最小限の使用をする、その一方で、再生可能な資源をしっかりと使っていくというのが我々の課題であります。
そうした中で、森林は、いわば再生可能資源であります。その質と量を考え、質を劣化させない、量を減らさない、そういう形で我々は有効活用していくということが大事になっているわけでございます。
森林を減らさないということになりますと、成長量に対してそれよりも少ない量で伐採して使用していく、そしてまた、使用に当たっては、なるべく長く地上にとどめる、また、リユース、リサイクルによってそれも更に長くしていくということによって、まさに地球上に炭素を固定していくということにもなります。
森林を持続可能に管理し、木材をしっかりと地上で使っていく、これをまさに我々はしていかなければいけません。
そうした中で、日本の木材需給あるいは森林管理がどうなっているかについて、概要をお話ししたいと思います。
国民一人当たりの木材消費量につきましては、一年当たりで見て、一九七〇年代初めには一・一立方メートルほどでした。それが最近は〇・六立方メートルを切るぐらいになっております。つまり、半分近くになっているということでございます。
欧米先進国で見ると、一立方メートル程度消費している国が多くあります。そうした中で、ようやく日本でも、木材自給率がここ数年上がってまいりました。特に、一九六〇年には八九%ぐらいあったわけですけれども、それが二〇〇〇年代初めには一九%ほどになりました。ようやくこれが、二〇一七年で三六%まで回復してきているということになります。
これについて、私の研究室で試算した結果を御紹介いたしますと、ドイツ、オーストリアでは八割ぐらいの自給率になっています。また、フィンランド、スウェーデンでは一〇〇%を超しております。さらに、ニュージーランドでは三〇〇%を超しております。そうした中で、日本の三六%は極めて低いというふうに言わざるを得ません。これをいかに高めるかも我々にとっては大事な課題であるということになります。
また、こうした中で、日本が輸入する林産物、木材の中で丸太が占める割合というのがどうなっているかですけれども、近年は一割に満たないぐらいになりました。かつては、一九六〇年代の初めのころには、もうほとんどが丸太でした。それが今は一割もいっていないということでございます。つまり、外国から入ってくるものは木材製品ということになりますので、この木材製品に対して、我々は、国内の丸太を加工して製品にし、これを使っていくということが必要になっているということになります。
木材産業がいかに木材を使っていくか、国産材を使っていくか、それはいわば地域の経済、社会に対しても大きく貢献するものだというふうに私は考えております。
では、森林管理はどういうふうにすればいいかということについて御説明いたします。
日本は二千五百万ヘクタールほどの森林があります。皆さんはどう思いますか。この森林は同じように管理すればいいんでしょうか。私は、違うんじゃないかというふうに考えております。つまり、山が急峻なところは、なるべく伐採せずに、しっかりと管理をして土砂災害を防いでいく、あるいは、平地に近いところはしっかりと木材を使っていくというようなことではないでしょうか。
広く公益的機能、公益的機能、そればかりを求めていきますと、結局は木材の消費量が限定的になってしまうということになりかねません。そうすれば、結局は、地球温暖化、それに対して影響するようなCO2などを排出するようなものを、化石燃料を使うとか枯渇性資源を加工していくとかということになりかねないわけでございます。そうしたことを考えながら、我々は考えていきたい。
それで、では、森林をどうすればいいかですけれども、私は三つの方法を考えたいと思っております。
それは、まず、多面的機能というのを考え、公益的機能と生産機能から成りますけれども、まず、山が急峻なところであるとか奥地、奥山の方であれば、これはもう保護林としてしっかりと保護していく、伐採の対象にはしないということですね。
一方で、平地に近いようなところ、比較的アクセスがいいところについては、これはしっかりと木材を生産して使っていきましょう、そうした生産林としていきましょうということでございます。
その間にあるようなところにつきましては、これはいわば公益的機能も生産機能も両方とも十全に果たしてもらえるような形で管理する。一つの方法としては保安林だと私は考えております。管理をしっかりと行いながら、生産については一定程度の制限をしていくということですね。許可を持ちながら生産をしていくようなことによって、さまざまな状況に応じながら適度な伐採をしていくということが可能になるんだろうというふうに思っております。
そうした保護林と、生産林と、その中間にあるような制限林として、一つの例としては保安林ということになりますが、こうした形で管理をしていくということが大事なんだろうというふうに思います。
ちなみに、私の試算ですけれども、人工林の中の五百万ヘクタールを生産林として植えてから五十年で伐採するというのを想定します。そうすると、主伐、間伐合わせて、恐らく年間五千万立方メートルぐらいの生産が可能となります。それに、人工林ではない、天然林の里山にあるようなところ、あるいは保安林として制限しているようなところでも一定程度の生産は行われますので、これは六千万、七千万立方メートルの木材生産というのが可能になってくると思われます。つまり、これは国産材の自給率を八〇%、一〇〇%まで持っていくという可能性も十分にあるということでございます。
こういった森林の管理をしながら木材を使うということを我々は行っていかなければいけないということです。
先進国を一つ例にとって御紹介をしたいと思いますけれども、ドイツが、我々、林業先進国としてさまざまなことを学んできました。実は、ドイツというのは、森林面積が一千百十万ヘクタール、要するに、日本の人工林を少し多く、一割程度多くしたぐらいであるということですね。
一九八〇年代の後半に、ドイツ、日本、ともに年間三千万立方メートルぐらいの木材生産量でした。それが二〇〇〇年代の前半のころになりますと、ドイツは四千万立方メートルぐらいの年間生産量になりましたが、日本は二千万立方メートルを切るような形で、もう大きな差をつけられてしまったわけです。それがようやく、その後、二〇〇〇年代以降の日本のさまざまな政策なり産業の取組があって三千万立方メートルぐらいの国内の木材生産量になっておりますけれども、ドイツについては五千から六千万立方メートルぐらいということで、まだまだその差は大きいということになります。
では、どうしてドイツがこういった木材生産量をふやすようになったかといいますと、一つは風倒被害によって大量の木材が出てきたということがあるんですけれども、その中で製材業が大きく発展していきました。原木を五十万立方メートル以上生産するような工場が幾つもできて、それが全国各地に点在するんですね。その周辺に中小の工場があって、そしてそれが、大規模な工場は国際的に木材輸出をしていくということをしましたし、中小のところは、例えば、径が違うとか樹種が違うとかというような大量生産には向かないようなものを加工しながら、地場で供給していくというようなことをしていきました。その結果として、大きく生産をふやしていったということになるわけでございます。
森林総合研究所の堀靖人博士がこんなことを言われています。木材供給の共同化と販売窓口の一本化によってまとまった量の木材供給が、丸太供給ができ、それが林産業の発展にもつながっていったんだということでございます。この部分、私は非常に重要なんだろうというふうに考えております。
それを踏まえながら、本法案の意味づけ、課題について、私なりの見解を述べたいと思います。
まず、ドイツの例に見ますように、木材供給のまとまりと木材産業の関係性というのは非常に重要であるということになるわけでございます。製材とか合板、こうした産業用材を念頭に置きながら、丸太を安定的に供給をしていくということが大事になるわけです。
日本は、この十年余り、工場の大型化も図られてきましたし、素材生産の規模も大きくなってきております。その結果、先ほど申し上げましたように、木材生産がふえ、自給率も高まってきているということになるわけですけれども、そうした安定供給に向けての一つの方策として、私は、国有林のシステム販売というのがあるんだろうというふうに考えております。
国有林のシステム販売は、立木販売と素材販売、両方あるわけですけれども、今回のこの法案で対象となっているような樹木採取権という取組というのは、いわば、立木販売について、期間を長くし、規模を大きくし、その上でさらに、樹木採取権実施契約というものを結ぶことによって、よりしっかりとした形で生産をしていく、長期的な視点でしていくというようなことになると思います。ですので、まるっきり新しいものではなく、立木販売というのを発展させる形で今回これができているのではないかというふうに判断をしているわけでございます。
林業経営者の皆さんがこれからこの権利を取得した場合なんですけれども、二百ヘクタールぐらいが想定されていて、それが十年とすると、年間二十ヘクタールぐらいということになりますが、これでは一年の事業量としては少ないと思います。そうすると、国有林と民有林と両方で事業をしていくということが考えられます。つまり、双方で素材生産をしながら地域に対しての貢献もしていくというのが、林業経営者に求められている姿なんだろうと思います。
五十年という期間につきましては、これはいろいろな考え方があると思いますけれども、長期的な視点に立って、そして安定的にその経営をしていくという視点に立ちますと、木材産業がしっかりと木材を需要し、加工し、供給していくというようなものが伴うのであれば、その五十年というのも否定されるものではないというふうに思います。つまり、限定的な形での五十年なんだろうというふうに思います。
一般的には、十年、二十年ぐらいの中でこうした生産が行われていくということになるのではなかろうかというふうに考えております。そこにおきましても、五年ごとに、先ほど申し上げました契約が更新されるということになりますので、そのときにしっかりと状況を判断しながらということになるんだと思います。
最後に、課題、私が本法案にかかわって課題として挙げたいものがございますので、それをこれから申し述べます。
国有林では、現在も民有林の関係者とともに技術の普及の取組をしているというふうに聞いてございます。現地検討会などを行っているということなんですけれども、そうした採取権を取得した林業経営者の技術を国有林がプラットホームになってそれをより広めていく、さらに、民有林の仕事の中で、ほかの林業経営者、素材生産業者の皆さんとともに技術を高めていくということが必要になってくるんだろうというふうに考えております。そうしたプラットホームのような場をもっと国有林が提供するということをぜひ考えていただければなというふうに思っております。それが結局は林業経営者の間接、直接の育成にもつながっていくんだろうと期待されるわけです。
また、木材採取権の対象が外延的に拡大するというのは考えにくいと思います。つまり、経済効率からいって、生産性が悪いところ、遠隔なところは対象にならないわけですよね。ですので、そうすると、どの程度までが対象になるのかというのを、林野庁におかれては、なるべく早い時期に大体の方向性を示してもらうということが必要なんだろうというふうに思います。
最後に、植栽の問題というのが課題として考えられると思います。
国有林の使命を考えるときに、植栽がなされないということはあり得ないと思います。特に保安林であれば、これはもう植栽というのは必ずしなければなりませんし、国有林ですので我々国民の目がしっかりと行き届いていますので、それもありますので、林業経営者を選定するに当たっても、そのあたりをしっかりと見定めながらこの制度を運用していっていただきたいというふうに考えてございます。
以上で私の意見といたします。(拍手)
○武藤委員長 ありがとうございました。
次に、日高参考人、お願いいたします。
○日高参考人 皆様、おはようございます。
本日、このような場は初めてでございますので、大変緊張しております。お聞き苦しい点も多々あろうかと思いますけれども、御容赦くださいませ。どうぞよろしくお願いします。
御案内いただきました全国素材生産業協同組合連合会の日高と申します。出身は九州の宮崎でございます。
森林を管理、また伐採して安定的に供給するという、要は、森林を契約して、立木を伐採して搬出するというような事業体の集まりであります。近ごろは、山を伐採した跡地の再造林、そして管理ということも九州では目につくような事業体もふえてまいりました。
この全国の組織は、相互の会員の連携と、前向きに業界の組織化を推進し、素材生産の担い手を発展させるということで昭和五十年に創立され、そして北海道から九州に至る約八百の事業体の組織で構成されております。素材の生産、流通を通じて、川上、山主さんとそれから製材工場の加工のパイプ役として、国産材振興に資するよう努力を重ねております。
そして、この組織も、近ごろの環境問題、また温暖化に関連する部分について、その時代に伴うようにということで、みずから行動規範をつくり、そしてまた、特に再生可能エネルギーの合法木材の認定に関連する部分についても、襟を正して、我々業界でやろうということで、特に青年部会の理事の皆さんに承認させていただいて、今、北海道から九州に至る若手と全国を、情報交換そして研修の場として、前向きに行動しておる団体でございます。
私は、先ほど御紹介させていただきました、九州の宮崎の出身でございます。
宮崎の方も、ことしで二十八年連続、杉の生産量では国内トップを走っておるわけです。宮崎でいろいろな問題が出てくることは、全国に関していろいろな林政の問題につながってくるということで、それでも、いろいろ問題、壁はあるにしても、それを乗り越えて時代に前向きに行動する業界にならにゃいかぬということで、機械も、私のところが恐らく最初ではなかったかと思うんです。三十年前の平成元年にハーベスターという機械を導入しまして、その当時から山林従事者というのはもう激減しておりました、杉の価格も下がるということで。
しかしながら、宮崎においては、山林従事者は少なくなったんですけれども、技術者は少なくなったんですけれども、飫肥杉の旺盛な成長量とそれから機械の導入によって何とか材積、量を維持し、そして増産に結びつけたというようなことで、今までにおいては、非常にタイミングよく、高性能の機械、それから飫肥杉の成長量、そして近ごろでは、大型木材工場、木材工業製品ですね、集成材、合板関係から、それからまたバイオマス、それからまた港を活用した木材貿易ということで、今、港に当たっても、もう港のおろし場がないということで、オファーがあっても海外に物を輸出できないような状況になっておる地域もございます。
いずれにしても、ひところからすると、物が余って余ってどうしようもないという方向から、物が欲しいということで、おかげで山側に関連する部分では買い手市場から売り手市場に徐々に移っていっておるというようなことを肌で、また仕事を日々通して感じるようになりました。
そういう中で、お話をいただいた中で、日本の平均の木材の蓄積、森林の蓄積量は、世界平均の倍ほど蓄積量がある。しかしながら、実際出てくる数量は、どうしても海外の林業経営と比べて不足しているものが、いまだに路網の整備とそれから機械化、そして雇用の安定がされていないというような状況であります。
私たちが外国の材を取引をする分に当たって、量が余って余ってしようがないというようなその時代に、国産材を何とか活用してくれということがあったんですけれども、国産材はまともに出てこぬと。雨が降ったら出らぬ、風が吹いたら伐採もできぬというような中、安定供給ができぬから価格も出せぬというようなことを長く言われた経緯がございます。
そのような中、今回、長期にわたる安定的な事業量の発注ということは、我々からすると非常に、経営的にも、そしてまた機械の関係の投資にしても、それからまた、エリアが広くなりましたら、自然的なリスクの中にも、雨が降っても風が吹いても、エリアが広くなるとそれに準じて仕事のできる環境の場所も見つけることができる、そして、雇用も、安心して、その技術に応じた、仕事をする環境の場に対応して作業士を育てることもできるというようなことで、ぜひ、安定供給と、それからまた、地域に貢献して安定的に雇用の場が提供できますように、ひとつ御理解のほどをお願い申し上げます。
それから、近ごろ特に感じるのですけれども、宮崎の方では、建設機械に比べて林業機械というものがほぼ肩を並べるぐらいに多くなりました。そういう中で、よく、突発的な洪水の影響によりまして地域が寸断するとかそれからまた崩壊してといったときには、土木の皆様と一緒に、我々も山と林業のノウハウ、技術、見識がございますから、その高性能の林業機械を活用して、危険な災害、二次災害を伴わぬような行動を、地域によっては活動をするというようなことも目にしたり聞いたりするようになりました。我々も、行動することによって、そういう災害に対して地域の皆さんの安全も守っているというような認識も芽生え始めております。
いずれにしても、森林に関しては、ことしから環境税、また、我々も、世間の皆さんの視点にそぐうような、納得していただけるような、そういう業界になるべく努力をしておりますので、今後とも御理解のほどをお願いしたいということと、それから、切ったら植えるということで、今、宮崎の方では、伐採をする時点で、植林をするという前提のことを想定して伐採、搬出をしておる。私も、ほとんど、伐採する分については再造林をする、管理もさせていただいておる取引先もございます。
そういう部分からしましても、今から安定供給をする分について、そしてまた、再造林をして森林を循環的に活用する意味でも、ぜひ、そういうまとまった事業量と、そしてある程度の長期の、林野庁が示しております十年というのは我々からするとほどよい期間ではなかろうかというふうに納得しております。
今後とも、林業の成長産業化を目指し、山村の活性化、地方創生に微力ながら力を尽くしてまいりたいと思いますので、諸先生方の引き続きの御指導と御協力のほどをお願いしまして、意見を述べさせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
○武藤委員長 ありがとうございました。
次に、土屋参考人、お願いいたします。
○土屋参考人 皆さん、おはようございます。
ただいま紹介いただきました、東京農工大学、国立の大学ですが、東京農工大学の方で林政学という分野で教員をしております土屋と申します。
このような場を今回提供いただきまして、意見を述べさせていただくのを非常に光栄に思っております。短い間ですが、よろしくお願いいたします。
皆さんのお手元に簡単な、いわゆるレジュメというようなものがおありではないかと思います。全部で十項目があるんですが、それに従ってお話をさせていただきたいと思います。
いつも、講義等でも、ちょっと興が乗ってしまいますと最後の方が駆け足になることが多くて、学生からよく文句を言われているもので、ちょっと今回も怪しいなと思っておりますので、その点はぜひ御質問の方で補填していただければと思います。
それでは、始めたいと思います。
まず、参考人の専門は、今申しましたように、林政学という分野です。これはちょっと聞きなれないかもしれませんが、いわゆる森林政策学とか林業経済学といったようなのがその分野に入っているような、そういう学問体系です。そこで、実はその内容については、一番初めに発言をされた参考人の立花さんが御説明した内容とかなりダブっているので、それではなくて、この「参考人の立場」に書いてありますように、少し、政策の検討過程に即した形での意見を述べさせていただきます。
この法案の検討時に、私は、林政審議会がありますが、そこの施策部会長をやっておりました。この件については、特に施策部会で検討を行って、それを踏まえて林政審議会の本審で検討を行うというスタイルをとっておりましたので、そこの施策部会長として、検討の責任者としていたということになります。林政審の本審では、その検討結果の提案者でもあったという立場です。ですので、余りそこから外れたことは申し述べられないという制限もございますが、その過程で、実は個人的な意見もかなり陳述しております。その陳述内容を主に中心にしてここでは発言をさせていただきます。
初めは、かなり前提的な話になりますが、三番の国有林の公共性についてです。
皆さん、恐らく日本の国有林の成立経緯については御承知のことと思いますが、かなり成立経緯は複雑なところが各国と比べてもあるのが日本の国有林の特徴なんですが、そういった経緯はともかくとして、国有林が、国が所有する森林としてずっと維持されてきた、明治以来維持されてきたのは、森林の持つ公益性が、公共としての国が所有することを正当化した、つまり、別の言い方をすれば、国が所有することによって公益性を担保する、そういう役目が国有林にはあるというふうに考えております。
今、御承知のとおり、国有林野の会計は一般会計化をしております。この一般会計化の意味というのが今の公共性と絡んで非常に重要だと思っております。つまり、国が責任を持って、公共性を担保しつつ国有林経営を行う姿勢のあらわれとしての一般会計化というのがあるのではないかと思います。
一九九八年、平成十年に国有林野事業の抜本的改革があったのは皆さんも御承知のとおりだと思います。それを更に踏まえて、二〇一三年、平成二十五年からは国有林野事業の一般会計化が始まっております。つまり、今ちょうど五年間が経過したということになります。つまり、その五年間の経験といったことをやはり我々はまずは重視すべきだというふうに考えております。
そこでは、いわゆる国民の森林(もり)若しくは国民の森林としての国有林ということでさまざまな努力がされてきたというふうに、比較的近くで見てきた者としては思っております。
例えば、民国連携という言葉がありまして、民有林の方の事業者や関係者と国有林の担当者がさまざまなところで協力する。例えば、森林法に基づく市町村森林整備計画や更にその下の森林経営計画の策定等でアドバイスや一緒に策定をするようなことをする、それから、研修等でさまざまな国有林を研修の場に提供したり、そこでの研修をともに行うといったようなこと。実はこれはそれ以前からもやっていたんですが、一般会計化後、非常に目立って熱心に取り組まれているというふうに評価しております。
更に言えば、公共性の一つの担保である自然保護若しくは生物多様性の保全等について、御承知のとおり、世界自然遺産地域、それから国立公園等においては国有林の割合が非常に高くなっています。そういったところでの協働型管理ということで、そこの森林所有者若しくは管理者である国有林若しくは林野庁と、それから環境省やさまざまな関係機関や関係者の間の協働に、これもまさに現場で私はかかわっているのですが、そこでの参画の度合いが目に見えて非常に熱心若しくは前向きになってきているということを感じております。
こういった、これは単なる一例、二例ということですが、こういった形での、国民の森林(もり)としての国有林の立ち位置、こういったことを私たちはかなり重視すべき若しくは尊重すべきというふうに考えております。
では、そういったことが海外の先進諸国でどうなっているかということをごく簡単に申し上げます。それは四番です。
経営の公社化、つまり、国が直接経営するのではなくて、民間活力を導入したような形で、民営化ではないんですが、公社化を図る、そういった形はかなり一般的に先進諸国では行われているというふうに認識しております。ただし、これは、経営を完全に私企業に委ねるような、いわゆるコンセッションのような形は、これは実はすごく昔からの例であるカナダぐらいでして、ほかは余り見られないというふうに考えられます。更に言えば、国有林の人工林の部分について経営権をほぼ売却するような形は、ニュージーランドを除いては、ほぼ先進国ではないというふうに認識しております。
つまり、経営の効率化を図るために民間の活力の導入ということは一定程度進めるというのは世界の流れですが、そのことと別に、国有林の公共性ということは国が主導して担保する、責任を持って担保するというのが一般的なやり方ではないかというふうに考えております。日本でもそういうふうな形での方向性が今も続いているというふうに考えております。
ここから少し、今回の政策についての内容について、少しかかわった者として考えを述べたいと思います。五番、六番です。
今回の政策立案過程の部分ですが、この部分については少し批判的な言い方になるのを御承知おかれたいんですが、少し唐突であったように私は感じております。つまり、これは内閣府やそれから官邸の成長投資会議等での提案に基づくもので始まったというふうに考えておりまして、そこの委員構成を見ますと、専門家が必ずしも多い形ではない形で、トップダウンで行われたということがわかると思います。そういった形は、これまでも申しましたように、長い、複雑な成立経緯を持って、多様な公益的機能をあわせ持つ国有林の重要な経営判断を行う場合は、やはりそういう少数の非専門家に委ねるべきではなかったというふうに、実はこれは林政審議会の場でも私は発言しておりますが、思っております。
ただし、それを補填する意味で、今回の林政審の検討過程を見ますと、先ほども申しましたように、施策部会で二回、集中的に審議を行っておりますし、林政審議会の本審の方でも一回、かなりの時間を割いて検討を行っております。その期間は実は短い、十一月に集中したんですが、短期間という制約の中では必要最低限の検討はこの中でできたというふうに考えております。
もちろん、本来は、先ほどの、一般会計化のときの二〇一一年、平成二十三年のように国有林部会のようなものをつくって、かなり、たび重なる検討を加えるというようなことは今回の場合も必要であったというふうに私は認識しておりますが、そこまではいかないにしても、関連法案としての森林経営管理法、これは民有林についてのものですが、そのときの検討時に林政審の検討がかなり不十分であったのと比べると、今回は最低限の検討は行われたというふうに自負しております。
今回の法案の私的評価です。
これについては恐らくこれから御質問等があると思いますので、ここでは簡単に述べますが、先ほども申しましたが、私企業に経営を委ねるコンセッション方式とは異なる形です。別の言い方をすれば、国が国有林の管理者として経営を差配する力をぎりぎりのところで確保できたというふうに考えております。
しかし、この部分というのは多分に林野庁の裁量の範囲内で、若しくは林野庁の良識で、そういった判断で確保できるといったような構造になっているというふうに今度の制度を理解しております。ですから、そういうのがもしも失われた場合は、危険性としてはさまざまな問題が生じる可能性もある、危険性もあるということでもあります。
ただし、そういった意味では国有林のコントロール力がかなり強いので、私企業の立場からしますと、事業としてその採算性についてはどうなのか、若しくはそれに対して意欲と能力のある者がどれだけ手を挙げてくれるかということについては、これからの実際の実施過程で見守っていく必要があろうというふうに考えております。
今のことも関係しますが、八番、試行としての認識です。
日本の国有林ではこれまで、これは少し見解が立花さんと異なるかもしれませんが、実施した経験はない、つまり、これだけの長期間にわたって大面積の部分を委ねるといった形は経験がないというふうに考えております。さらに、これも説明しましたように、海外でも同様の条件での事例はほとんどないというふうに考えていいです。それから、既存の、これはいわゆる森林関係ではないさまざまな天然資源や自然資源等の制度等でも、日本でも余り類似の制度はないというふうに認識しております。
つまり、今回のは非常に革新的若しくは先進的な一つの取組というふうに考えられます。そのこと自体は私は評価するんですが、ただし、それは試行という側面が非常に強いというふうに考えております。
そのことは、今回の法案の中を見ますと、五年後の見直しということが明記されております。このことを私も非常に評価いたしますが、その影響や効果の評価を、公平性、公益性の観点から、さらには民有林の方で行われております、先ほども申した森林経営管理法に基づく、それから森林環境譲与税も関係しますが、新たな森林管理システムへの効果、それとの連携、そういったこともここでは評価する必要があろうかと思います。更に言えば、今回の施策部会等の検討は最低限のところはしたんですが、より広い国民諸階層や各界からの意見聴取も更に進めるべきというふうにも考えております。
こういったことを、五年後の見直しということにまでいく前に、前倒しで検討を始める必要が私はあるのではないかと思います。
そこの検討については、別の言い方をすればモニタリングということになります。九番になります。
このモニタリングに一体どういう機関が適当かということなんですが、一つは国会であることは、これは言をまちません。ですが、国会以外の部分で考えると、一つのありようとしては、林政審議会という、国民の関係各階層の委員によって構成される常設機関、公的な常設機関である林政審議会もその任の一部を担うことが可能ではないのかというふうに会長として考えております。つまり、ここでは、成立した後の当面のモニタリングの機能というのを林政審議会である程度果たすべきではないか。そこでは、当然ながら、民有林部分での新たな森林管理システムとともにそれを考えていくといったことが必要じゃないかというふうには思っております。
林政審議会は当面ということを言ったのは、場合によっては、将来的に第三者委員会的なものが必要になるかもしれないというふうに個人的には少し考えておりますが、これについては、この五年間の検討の中で、見直しの検討の中で議論すればよいことだと思っております。
それでは、最後です。十番目です。
ここは私の意見的な部分を前面に出しておりますが、御承知のとおり、二〇〇一年に森林・林業基本法が成立しております。我が国の森林政策、林業政策はこの森林・林業基本法に基づいて行われていることは皆さん御承知のとおりです。その中で、第二条と第五条というのをここでは挙げました。
第二条は、これは全体的なところで、「森林については、その有する国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、公衆の保健、地球温暖化の防止、林産物の供給等の多面にわたる機能」、これを多面的機能と申しますが、「が持続的に発揮されることが国民生活及び国民経済の安定に欠くことのできないものであること」を非常に重視して、将来にわたってその適正な整備及び保全が図られるということが重要であるということを述べております。これは、単に林野庁だけではなく、国全体の大きな責務としてこれが書かれていると認識しております。
その中で、第五条で、実は、ここでは国有林について述べております。「国は、基本理念にのつとり、国有林野の管理及び経営の事業について、国土の保全その他国有林野の有する公益的機能の維持増進を図るとともに、あわせて、林産物を持続的かつ計画的に供給し、及び国有林野の活用によりその所在する地域における産業の振興又は住民の福祉の向上に寄与する」、この三つの目的があるわけですが、「寄与することを旨として、その適切かつ効率的な運営を行うものとする。」この精神は、今回の法案の審議に当たっても我々は忘れてはいけない、私自身も忘れてはいけないことというふうに考えております。
その意味からいきますと、今後の、これは国の政策を決定していく皆さんに対しての要望になりますが、国有林の公共性をより強化する方向でさまざまなことを御検討いただければと思っております。もちろん、今回の法案もその中の一部というふうに考えられますが、今のところ、まだ公共性の担保という面では、国有林野の果たす役割は十全に発揮できていないというふうに考えております。
例えば、これは私の専門に近いところでいいますと、野外レクリエーションの分野やそういう機会の提供、それから生物多様性の保全、そういった面において、各国、特に先進諸国と比べると、資金若しくは人材の面で非常に見劣りするというのが現在の状況であります。こういったことを、先ほど言ったような国有林の公共性といったことに基づいて更に高めていくということが、これからの人口減少社会の中で非常に重要になってくるというふうに考えております。
以上、非常に雑駁な、かつ、一応時間内におさまったと思いますけれども、内容でした。
以上、ありがとうございました。(拍手)
○武藤委員長 ありがとうございました。
次に、野口参考人、お願いいたします。
○野口参考人 皆さん、おはようございます。
私、長野なものですから、新幹線の通らない、飯田線の方の長野なものですから、おくれてはいけないと思って、すぐ近くのホテルをとったんですが、環境が変わるとちょっと寝方が違いまして、ついつい安心して、目が覚めたのが八時三十五分ということで、慌てて参りました。大変申しわけありませんでした。
実は、こういう機会は、昨年の民有林の森林経営管理法に関して、参議院で参考人として意見聴取ということをさせていただきましたので、これで二回目であります。
そのときにどういうことを申しましたかというと、レジュメは既に配られているんですよね、三枚つづりですけれども。これはもう既に通ってしまっていますので、どういう理由で反対をしたのかということを申し上げ、そして、今回の国有林版は、これは当然、その流れの中でやはり問題がある、反対である、こういう趣旨になっているわけです。
2番の、二〇一八年五月二十二日、参議院農林水産委員会として意見陳述という、その中に、なぜ反対しているのかという、その理由です。
もう既に指摘はされておりますけれども、八四%の森林所有者に経営意欲がない、こういう決めつけ方。これは、客観的にそのデータを、大学生とまで言わなくても、高校生にでも見せて、そして、これで経営意欲がないという結論は絶対に出てきません。読み間違え、あるいは、答弁、今回もまた聞かれたようでありますけれども、正確性を期したものというふうに農林水産大臣はお答えになったようですが、正確性というのと間違っているのとでは、意味が違います。そういう間違いのもとで出された前提条件、これが崩れている。
そして、さらに、個人で経営している、それに対して市町村がまず介入する、これは財産権の侵害になりはしないか、そういった点。
あるいは、森林所有者の責務という項目がありますけれども、それが、努力義務だったのが、強制ということになっている。これも今までの法体系のもとでは違うのではないかと。
それから、市町村への経営管理権の集中や、場合によっては都道府県による代替執行。
皆さんも既に御承知のように、市町村では専門の職員はほとんどいません。大体、林務課なんというのがある市町村はまずありません。農林水産関係の部署であります。せいぜい担当者は一人しかいない。
県にあっても、非常にその数は減っておりまして、例えば、お恥ずかしい話ですけれども、長野県の大北森林組合補助金不正受給問題というのがありました。これは七年にわたって十五億円もの不正融資が行われたんですけれども、それは、一つは、大きな要因として、実際に林道をつけていない、これを、まあ来年までつければいいやというような、繰越しというようなやり方は闇繰越しといいますけれども、などをやっているというのはなぜかというと、人手がないんです。現場に行って、そしてちゃんと現地検査をすれば、あっ、これは完了していないなと。そういうことをずっと許してきた。これも、そういう状態からすれば、他県も基本的に一緒だと思うんです、人手がない。
したがって、市町村や都道府県がかわりをするという、もちろん、実際は業者がやられるわけですけれども、それをしっかり監督するということも含めてこれは無理であるというのが私の理由であります。
そして、今回につながります。
6のところに、国有林野事業における配慮というのが既に書かれておりました。それはどういうことかというと、低コスト、大ロット作業を導入することによって効率性を上げ、そして林業の成長産業化を進める、こういうような意味でありますが、これもやはり今の流れからして、また、次から述べますけれども、国有林の独自の歴史からしても反対であるということをまず表明しておきたいと思います。
3番、森林経営管理法と直結した、その国有林版、国有林野管理経営法案、略称に反対。
前の森林経営管理法と違って、これは国有林野法という、略称ですけれども、それの改定版ということであります。もう既に法案を見ておられると思いますけれども、一章節を導入するというだけで、かなり大きく性格が変わっています。憲法九条に自衛隊を一項目入れれば全く性格が変わるというのと同じようなものであります。
まず、ちょっと講義めいて恐縮ですけれども、非常に大事なところで、余り私以外の学者でも言っていないところですので、少し学生の気分で聞いてください。
3の(1)のところです。国有林野事業の持つ公共性に完全に逆行しているという。
先ほど土屋先生も公共性ということをおっしゃいました。今、私はかなり厳密な意味で公共性というのを使うんですけれども、下に書いてあります、国有林ということではなくて、森林の持つ公益性、これは皆さんがおっしゃいます。公益的機能とそれから木材生産機能、これをあわせて多面的機能だということは、これは森林基本法の中にも書かれております。
ただ、この場合の意味が違ってまいります。どんな所有形態の森林であろうと、その森林が存在する限り、そこから木材生産を行う、あるいは特殊林産物をとる、これはまさに経済的機能です、対価が得られているわけですから。水資源涵養あるいは土砂災害防止、地球温暖化、これは、広く多くの人たちに利益を与える、森林が持っているところの公益的機能であります。しかし、国有林の場合には、ただ、今言った一般論的な木材生産機能や公益的機能とは異なる公共性があるということであります。
それはどういうことかというと、端的に言えば、今、国有林が一応、実際にはそうなっていないので、標榜しているという言い方をしましたけれども、三大使命というのをここに、一番最後に書いています。
公益的機能の維持増進。これは、当然、例えばそこを自然休養林にして、お金の問題というよりも、国民に奉仕する、こういった意味合い等も国有林ならではのことであります。
林産物の持続、ここが大事です、林産物の供給ではなくて、林産物の持続的、計画的供給です。もうかるからたくさん切るとか、もうからないから売らない、売惜しみをするとか、そういうことではなくて、計画的、持続的に出すという、ここが、同じ木材生産でも、公共性を持ったその役割であります。
それから、地域貢献。これは、もともと国有林の多くが地元の農民たちの入会林野だった、そういうところを囲い込んだ、こういう歴史に基づいているものでありますけれども、いずれにしても、そこの材を地元の企業等に払い下げ、地域振興を行う、こういう趣旨であります。
さて、こういう内容なんですけれども、二ページ目を見ていただけませんか。二ページ目に、国有林野事業が今まで、公共性を発揮するどころか、まさに国家的私物であるかのような極めて乱暴な取扱いを行ってきたというのが、(2)のゴシック体の下の1からずっと、7までであります。ポイントだけ申します。
1のところは、四七年に、戦後国有林野事業が、国有林野事業特別会計法、しかもこれは独立採算制。独立採算制ということは、企業会計だということであります。
先ほどの、国有林が広く国民に奉仕するものであれば、それは企業会計としてやるべきものではなくて、本来なら一般会計でやるべきものだった、つまり最初からボタンのかけ違いであった。もしこれを特別会計にするならば、例えば学校、国立大学とか、もう今はちょっと違いますけれども、国立学校等への投入は、学生からの授業料は入るけれども、それで収支とんとんにせよ、外部資金を稼いできて自分のところでとんとんにせよ。こういう考えではありませんでした。つまり、必要な経費は学生から取った分以上にかかる、そういうところに対しては国のちゃんと投資を充てる、こういう考え方でありました。これは、国産材、国有林野事業はそうではありませんでした。
最初は景気がよかったので、問題にならずに、むしろ黒字路線が続いて、そして、それは一般会計にも繰り込まれる、こういう時期もありました。しかし、七〇年代になると、非常に外材が、もう六九年で過半であります、国産材価格が低迷する、赤字続きということがずっとしばらく続きます。
そして、ついに、七八年度、国有林野事業改善特別措置法というのが制定されました。ここからが、物すごい荒治療が始まるわけです。
借金がどんどんかさんでくるので、経費はもうできるだけかけない。例えば、人工造林をしていたものを、もう人工林ではなくて天然下種更新だと。上から種が落ちてくる、それでやろう、こういうようなやり方。あるいは人手、一番大事な人手、これはばっさばっさ切っていく。八万九千人いたのが、今現在、その到達点は四千人ですよ。こんなことで、ほぼ同じ面積の国有林をどう管理すればいいんでしょうか。こういうことになってきたわけであります。
そしてもう一つ、ゴシックで書いていますのは、これは、私、裁判にもかかわっていますけれども、国有林野事業に分収造林制度、緑のオーナー制度というのが入りました。年配的にも、お若い方も多いので御存じないかもしれませんけれども、実は、国有林の分収育林制度が導入されて、一口五十万で出資者を集めた。これはインフレヘッジになるとか、あるいは、夢やロマンを持ちませんかという非常に甘い勧誘の言葉、パンフレットがあちこちに出されました。
その結果、八万数千人から五百億円を集めましたけれども、これは結局、大半が不落であるか、あるいは、価格は五十万どころか、九四%がもとの水準よりも割っている。これで、国家的詐欺だというので国は訴えられました。裁判は、結果的には、一部責任を認め、全面的には原告側の意見を取り入れなかったという結末でありましたけれども、しかし、非常に大きな問題でありました。
4の、九八年、改善法が廃止されて、国有林野事業の改革のための特別措置法という形で、ここで、企業特別会計から、一般会計繰入れを前提とした特別会計制度というふうになりました。
さっきは改善特別措置法、今度は改革措置法、さて、これが破綻したら次は何が来るんだろうか。改善でだめ、改革でだめ、もうこれは革命しかないなという言い方をした人もいるぐらいでありますが、革命とはさすがに言っていませんが、今回のはかなり革命的な荒治療だというふうに言ってもいいかと思います。
5のところ、国有林野法の改正と、このとき初めて、今回改正の対象になっています国有林野の管理経営に関する法律、こういうことになります。
そして、二〇一三年に、ついにもう破綻、お手上げしました。完全に一般会計化ということであります。この一般会計化したということは何かというと、国民負担ですから、国民の山になった、もう国有林が勝手なことをするわけにいかない、公共性を十分発揮しますということを言ったはずでありました。
しかし、それで、最後のところです、最後のページで、もうこれを一分でということになりますけれども、結局、今申しましたように、一般会計への転換は、名実ともに国民の山にならなくてはならないのに、そして国有林の公共性の充実が最大の任務なのに、そうはなっていないということであります。
あと、先ほども指摘をされましたように、五十年というのは、これは短伐期林業ですよ。しかも、ちょっと、統計上、ここにも怪しげな、不正確な言い方がされています。
十齢級以上の森林が過半数だと。十齢級というのはどういう年齢を言うかというと、四十六年から五十年までを十齢級と言うんです。十一齢級が五十一年から五十五年です。だから、五十年生以上となれば十一齢級以上でなくてはいけません。ところが、国の説明の中には、十齢級以上の大材が五割を超えたと言っています。これも間違った読み方です。十一齢級に直すと、これは三八%です。つまり、短伐期林業を進めよう、こういうようなことからこういった作業はなされているんだということだと思います。
最後に一言。
森林も、国家、国づくりも、百年の大計に基づかなければ、目先の利益でやっては将来に禍根を残します。そういう意味では、五十年で繰り返すというような、そういった、土地も疲弊するこのようなやり方は、やはり旧来のやり方と抜本的に違っているということで、これで終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
○武藤委員長 ありがとうございました。
以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○武藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。宮路拓馬君。
○宮路委員 おはようございます。自由民主党の宮路拓馬でございます。
参考人の皆様方には、朝早くからまことにありがとうございます。
限られた時間でございますので、早速、参考人の皆様方にお聞きをしてまいりたいと思います。
まず、昨年の森林経営管理法の改正、ことし四月から施行されたわけでありますが、そしてまた、今般のこの国有林野管理経営法の改正案、日本の林業政策を大幅に変更し、そして成長産業化を目指すという考えのもと行われている、いわゆる林業改革だと思います。改革ということは、それが改革をせざるを得ない状況にあるということなんだろうと思います。
先ほど来、参考人の皆さん方からも、日本の林業の抱える課題、自給率が低下している件であるとか、林業従事者が減少している件であるとか、林業従事者が減少しているということは、それすなわち、産業としての魅力がないということなんだろうと思います。それに伴って、林業施業がなかなか十全に行われず、山林の公益的機能、先ほど来参考人の皆様方も言及されている公益的機能の発揮すら、これは民有林にかかわらず国有林も一部そうなのかもしれませんが、その公益的機能が発揮されない、したがって土砂災害等の発生につながってしまう、そういう状況にもある。
林業が抱える課題というのは非常に複合的で難しい問題だろうと思いますが、まず、参考人の皆様方から、日本の林業が抱えている課題をどのように捉えておられるか。八時三十五分に起きられて、九時過ぎにはお越しになられた、すごいなと思いましたが、まず野口参考人にお伺いできればと思います。
○野口参考人 今の林業の現状というのは、もちろん自給率は若干上がりつつはありますけれども、やはり、私はもともと、日本の木材成長率は年間八千万立方メートルほどある、これをうまく活用すれば、もちろんその中には保安林から来ているとか若齢林のやつも含まれますので、その六割をもし切ったとしても、六、八、四十八ということで、自給率を五割以上には割と早い時期には持っていける、そういうふうには主張してまいりました。
それを行うためには、まず、採算性がとれない、そういう林業部門では、人ももちろんいませんし、しかも日給月給というのが大部分であります。機械化もそんなに、機械化でどんどん切れるような山はそう多くはありません。そういったことで、何とか林道網も整備しつつ、そして多面的機能も発揮しつつ、そして木材生産量もふやすという、これは非常に難しい課題であります。
それを、安易に伐採量をふやせばいいというようなところに力点を置き過ぎたのが今回の法ではないか。必ずこれは後で問題が生じる。しかも、山が一旦はげると、もう我々のようなのは植毛してもだめなので、そういうふうなことで、手に負えなくなってしまいますから、ぜひその辺は御注意いただければというふうに思います。
○武藤委員長 いいですか、全員じゃなくて。
○宮路委員 そうしましたら、せっかくですので、これは一番大事な論点になりますので、では、立花参考人にもお伺いします。
○立花参考人 御質問ありがとうございます。
日本林業においての一番の課題は、立木価格が安いということだと思います。どうやってこの立木価格を上げていくかというのが、まさに政治の場で皆さんにも御検討いただきたいですし、我々研究の場でもしっかりとそれを分析しなければいけないと思っております。そういう意味では、もう少しこういった研究をするためのさまざまな研究費も我々欲しいなというふうに思っているところでございます。
立木価格が安いことにつきましては、幾つかあると思います。
例えば、素材生産の生産性が先進国に比べると日本はまだ低いです。例えば、アメリカ、ニュージーランド、北欧などでは、一日一人当たり三十立方メートルとか三十五立方メートルというような主伐、皆伐の生産性になっております。日本でも、半分ぐらいですかね、一日一人当たり十五とか十六立方メートルぐらいまでの高まりがあるというふうには聞いておりますけれども、一般的にはまだまだ、十立方メートルいくかいかないかというような状況だと思います。こうした生産性を上げるということが一つ大事なことだと思います。
また、木材を使う上でも、さまざまな需要の開拓も必要です。要するに、需要が高まればおのずと価格は上がっていくということになりますので、現在、木材自給率は上がってきていまして、需要が高まっていますので、そうすると、今何が起きているかというと、若干木材価格は上昇ぎみになっている。特に、地域でいくと西日本の方がより高い傾向が出てきているかなというふうに私は見ております。これもやはり需要があるかどうかにかかわってくると思います。
そうすると、さまざまな業界において木材を使う状況をつくっていく、例えば、商業施設に木材をもっと使っていただく、それを川上、川下、連携して進めていくということが大事になってくるというふうに思います。
以上です。
○日高参考人 私は、現場の立場からしまして、今、それぞれ民間が持っている山というのは、本当に、一人一人、平均の面積は小さいですよね。やはり、それを効率よく安定的に、経費も節約して出そうかということになれば、基本的には、きちっとした、境界を明確にして集約をするというのが基本であろうと思います。それがあれば、今数字も出しましたけれども、やはり、複数年にわたって、きちっとした認定事業体を活用して、そして地元の行政と密接に計画的に対応していけば、決してヨーロッパのコストも夢ではない。それは、もとの、一番の基本がそういうことですから。
ですから、我々も今、機械を持って、特に九州なんかでも、三ヘクタール以上じゃないとなかなか、素材生産事業体、認定されておる事業体、機械が大型化して、安定的に供給するということになってくると、ちっちゃな山じゃ対応できぬですね、現実問題。そして、木材の丸太についても、非常に川上側を憂慮してくれるような行動というか、お話もいただけるような方向になってまいりました。ひところからすると、状況は変わってきているのかなというふうに思われます。
それからまた、機械化も、私のところが平成元年からそういう機械を活用してきたわけですね。しかしながら、ベースマシンがその地域地域に沿う、やはり足回りなんですね。アタッチメントに関してはもう出そろっておる。ですから、新たなそういう林業機械、山に、環境に優しく、そして効率的な機械を新たに導入するということが大事であろう。
それからまた、国有林の林道関係も、お世辞にも余りこれは恵まれておるというような環境にはまだなっていないと思います。やはり、きちっとした森林整備をして、そして、九州においては、特に南九州四県はどんどんどんどん奥地の方に行っている、九州山地に近い方向に行っておるということで、通勤も遠い、それからまた、効率的にも、やはり林道はきちっと延長して、安全に、また、新たな時代を担う人たちが、雇用できる人たちを養成する、そういう素地をつくっていただければ、きちっとした対応はできるものと私は思います。
○土屋参考人 御質問ありがとうございました。
これまでの参考人の方々の御回答で、基本線のところ、つまり、木材価格の安さとか、それから労働条件の厳しさとか、そういったところは言われていますので、ちょっと違うところを述べさせていただきます。
それは、大きく言うと、国民の林業若しくは木材に対する認識、まだそれがある水準に達していないのではないかというところと関係します。
というのは、例えば、森林認証という制度があります。これは、持続的森林経営がされている森林を認証して、そこから出てくる木材を、言ってみれば、少しプレミアムをつけて、価格をつけて販売するようなことができるようなシステムというのが国際的に確立しております。
この普及で見ますと、実は、ヨーロッパ諸国等は、特に国有林などではほとんどが森林認証を受けている森林になっているんですが、日本の場合はそういったところの普及率も低いですし、それからもう一つは、森林認証された森林から出てきた材の価格が、なかなか、プレミアムがついたり、よく売れたりするというような状況ができない。せっかく認証制度をとっても、そこでの、言ってみれば、生産の増進につながっていかないというような状況があります。
これは当然、我々業界や研究者のさまざまな努力の不足もあるんですが、と同時に、国民の皆様の理解も足りない。これも、そういう意味では、教育やそれからさまざまな広報が足りないということもあろうかと思いますけれども、その辺の理解が進むと、単に森林認証材だけではなくて、これも最近は大分進んでいるところですが、いろいろなところでの木材の利用といったものを促進、若しくは、木材を利用することがむしろ斬新である、新しい、若しくはセンスがあるといったような、そういう認識というのができてくるとかなり違ってくるんじゃないかというふうには思っております。これはあくまでもちょっとつけ加えになりますけれども、そう思っているところです。
以上です。
○宮路委員 ありがとうございます。
各参考人、やはり、野口参考人におかれては、採算性がなかなかとれない、路網整備の問題等もある、これは、おっしゃったとおり、参考人の皆さん、共通する部分が大きいのかなと思って聞いておりました。
これは農水省から、林野庁からいただいたデータですが、木材生産のコスト構造の問題というのも、これは大きな問題だろうと思います。日本と地形や森林所有規模等、条件が類似するオーストリアと比べた場合でも、まず流通コスト、それと伐出コスト、これが非常に高い。したがって、丸太の価格は同程度であるにもかかわらず、結局、立木価格が非常に抑えられてしまう。先ほど立花参考人がおっしゃったとおりだろうと思います。
それについてはさまざまな問題解決の手段があろうかと思いますが、今、参考人の皆さん方からお聞きしておると、やはり新規の需要開拓であるとか厳しい労働条件、これはつまり生産性の問題だと思いますが、生産性を高めるための路網の整備、大型機械の導入、そしてこれは素材生産業を営まれている日高参考人の御説明が最も説得力があったかと思いますが、やはり集約が必要だと。それに伴って、複数年にわたり計画的に投資をすることもできる。そして、大型機械を導入すればなおさら一定程度のロットが必要になってくるということ。
それに向けて、今回の改正法案、そして昨年の、ことし四月から施行されておる森林経営管理法、これはある意味、非常に理にかなったものだというふうに捉えておりますが、先ほど野口参考人におかれては、拙速に過ぎて取り返しのつかないことになってはならないということがございました。
その一番懸念されるところ、もう一度、どこになるのかというのを野口参考人からお伺いできればと思います。
○野口参考人 国有林、民有林、両方にかかわるわけですけれども、少なくとも民有林の今回の法律でも既にできたものは、各所有者が、例えば、これは今価格が余りよくないから長伐期化をして切らないというような、そういう状況があるときに、それを、切る気がない、やる気がない、こういうふうな言い方をする、これは間違いだろうということであります。
もちろん、ずっと前に比べれば価格も安くなっているので、切る頻度が下がってきて、そういう意味では私も経営意欲は下がっているかと思うんですけれども、ただ、数字の捉え方に間違いがあるという点であります。
今回の法案は、そういうことの上に、もうちょっと大ロット化すれば、あるいは大型機械等も入れるような形にすれば、もっとコストも下がって、それで出しやすくなるんじゃないかという言い方になっていると思うんですけれども、国が例えば一千ヘクタールあたりを一つのプロジェクトとしてやろうとかいう、まだ規模は何か必ずしも具体的にはされていないようですけれども、かなり大規模な面積になることは間違いない。
そういうものをやっていった場合に、森林は、一旦破壊されると、そう簡単に再生できるものではないんですね。例えば、一ヘクタールぐらいを切って、そこのところをまた少し補植をするとかいうような形でやれば、そんな大きなけがではないわけですけれども、ばさっと大面積皆伐するということになると、これは、かつて三十年代に、パルプ生産等で広葉樹をどんどん切った時期があります。そういうときに、次の再生というのはなかなか難しいということもありまして、日本ではいろいろな樹種が入り込んでくる可能性もあります。それを杉林に育てようとすれば、確実に植林をしていかなくちゃいけないんですけれども、それが申入れで、義務化、それこそここを、義務になっていないんですよね。
そういう点からすると、やはり、今回の管理法にしても、国有林野法の改正にしても、山を荒らしてしまうおそれが多分にある。特に国有林は、過去の経歴からして、むちゃくちゃなことをやったわけですから、という感じです。
○宮路委員 ありがとうございます。
今、参考人の皆さん方も野口参考人のお答えをお聞きになられたと思いますが、これについて、研究者としての立場から、この野口参考人の懸念に対して、今回の国有林の改正法はどのような手当てがなされていると考えているのか、若しくは、なされていないと考えているか、これは立花参考人と土屋参考人にお伺いできればと思います。
○立花参考人 ありがとうございます。
皆伐について、私は、大事なポイントは何かと申しますと、生産性を上げるためには大面積がいいということになるわけですけれども、環境面、公益的機能というのを考えたときに、一定程度の制限を持たせるということが必要になってきます。
例えば、オーストリアの皆伐においては二ヘクタールが一つの基準になっていると、私、調査に行ったときに聞きました。ドイツでも、皆伐の場合は一ヘクタールぐらいが多い。多くても二ヘクタールとかというようなことだと現地で聞きました。皆伐にこうした一定程度の制限を持たせるということが大事だと思います。そうしたことをすることによって、ある意味では、林齢、森林の年齢が違うものが多様になると、そこに来る鳥も違う。虫も、動物も違う。生物多様性が高まるんですね。
ですので、そうした、人工林において小面積皆伐をしながら多様な森林をつくっていって、それで生物多様性と公益的機能を高めていくということをしていく必要があると思います。
その意味でいくと、今法案においても、大面積の皆伐は想定されていないと思います。だから、せいぜい五ヘクタールとか、多い場合、場所によっては二十ヘクタールぐらいということはあるかもしれませんが、そうした面積を一定程度制限していくということが必要であるということは申し述べておきたいと思います。
以上です。
○土屋参考人 御質問ありがとうございます。
これは私の参考人の陳述のところでも述べたところなんですが、今回の法案については、国が国有林の管理者として経営を差配する力をぎりぎり確保したというのが私の認識です。
というのは、例えば、計画を五年ごとに更新させるということや、それから、そもそもの国有林の計画に従うことを前提としたというようなこと、それから、事業者についても、特に川下までを含めた形でしっかりした連携をとった者にしか認めないといったようなこと等で、先ほども申しましたように、経営を差配する力若しくはコントロールする力を林野庁若しくは国有林が持てる、そういう仕組みになっていると思います。
ただし、これも先ほど申し上げたところですが、ということは、国有林若しくは林野庁の見識若しくは実力が非常に問われるところである。
野口参考人の場合、そこのところについて非常に懸念をお持ちなわけだと思いますが、先ほども申しましたように、一般会計化の一つの経験の中で、その辺のところについてはかなりバランスのとれた一つの認識を持ち始めているのではないかというふうに、私はある意味で信頼をしているところであります。
以上です。
○宮路委員 時間となりましたが、今、土屋参考人がおっしゃったとおり、今般の改正法には、そもそも国有林の考え方に即した施業計画であるかどうか、しっかり農水省、林野庁の方で確認をした上で契約をしていくということでありますし、それについては、報告、そして立入検査もあったかと思います。そして、最終的には取消しというものもあるということで、その実効力が試されているというのは、参考人の皆様方のお話を聞けば、そのとおりだなと思いましたし、それについて林野庁に、その執行に当たってのしっかりとした体制を構築することを最後に希望いたしまして、私の質問とさせていただきます。
ありがとうございました。
○武藤委員長 次に、稲津久君。
○稲津委員 おはようございます。
きょうは、四人の参考人の皆さんに、大変お忙しい中、時間をつくっていただいて貴重な御意見を賜りましたことを、心から厚くお礼を申し上げる次第でございます。
私の方からも参考人の皆さんに順次質問させていただきたいと存じますが、まず最初の質問は、各参考人の皆さんに、お一人お一人全員にお答えいただきたいというふうに思います。
これは、先ほど土屋参考人の方からも御紹介のありました森林・林業基本法の第五条のところで、いわゆる国有林の持っている公益的機能、これの維持推進を図ると同時に、いわゆる産業振興とか福祉の向上に国有林をしっかり寄与させていくという基本理念、このことに基づいてさまざまな、今回の法律も含めて、整備あるいは改正をされていくべきだろうというのは、私もそのように思っております。
そこで、お伺いしたいのは、各参考人の皆さんから、特に、林業、木材業の成長産業化、これに対する期待、あるいは考え方、もちろん、そういうこと以上にむしろ公益的機能をしっかり維持していくことの方が重要であるという御意見であれば、それはそれで御意見かと思います。
ただ、本質的に、私が思うには、今回の法改正の中で最も肝になってくるのは、やはり国産材をどのようにしてこれから供給をしていくのか、そして、林業、木材業の成長産業というところが少しおくれているのかなという意識も私個人的にもあったりして、そうしたことを踏まえての質問になりますけれども、各参考人の皆さんからお答えいただきたいと思いますが、こういうふうに順番に聞きますと、普通は立花参考人から順に聞いていくんですけれども、考えてみたら逆もよろしいかなと思いまして、野口参考人から順次お答えいただければと思っていますので、よろしくお願いいたします。
○野口参考人 何度も発言の機会をいただきましてありがとうございます。
先ほども申しましたけれども、森林には、公益的機能と、木材生産機能、これを経済的機能という言い方で私はあらわしていますけれども、この両方をあわせて多面的機能を発揮しなくてはいけないという、これは一般論として正しいと思います。
ただ、その時々の状況によって、木材生産機能に突出し過ぎて公益的機能がちょっと弱められたり、あるいは、ある時期、木材景気が非常に悪いときには、公益的機能論がずっと先行し、木材生産は非常に停滞した、こういう経緯をたどっています。
今回でいえば、木材生産機能を充実させるというところの方に大きな力点があるということで、その二つがいつでも併存しているのなら問題ないんですけれども、切り過ぎれば、当然これは公益的機能が落ちるという側面があります。
その点で、バランス的に言えば、今回のは、公益的機能という言葉は残ったり、多面的機能は残ってはいますけれども、とりわけ、国有林の公共的使命という、全体的な、国民へ奉仕するその側面が木材生産機能のところに特化し過ぎているのではないかという懸念を持っているのでございます。
以上です。
○土屋参考人 御質問ありがとうございました。
まずは、林業の成長産業化についての私の意見ということになりますが、これについては、これまでの参考人の陳述にもありますように、それからこの議論でもありますように、日本の森林の持っているポテンシャルからして、十分、成長産業としての林業というのはあり得るだろう、それのためのさまざまな制約があったところをなくしていくということは非常に重要なことだと思っております。
それから先なんですが、では、森林ということに関して言いますと、その所有形態若しくは経営形態がかなり違います。経営形態によって取り組み方というのはさまざまであろうということになります。つまり、里山地帯での主に私的な森林所有者が所有しているような森林と、それから奥山で国が所有しているような森林、そういうところについては、そのやり方若しくはそのバランスはかなり違ってくるということが必要だろうと思っています。
そういう意味でいいますと、今回の国有林については、さまざまな形で成長産業化の試みをすることは重要だとは思っていますが、より公共性とのバランスを慎重に行うべきだろう、つまり、アクセルもかけるけれども、同時にブレーキもかけながらというようなことが求められるだろうと思っております。
それは、これは野口参考人からも今御説明がありましたように、森林の場合は往々にして、これまでも、ある方向にぶれてしまって、それが森林の長期性若しくは林業の長期性からいって、後に非常に禍根を残したという現実がありました。それを今回も繰り返さないためには、しっかりとしたブレーキも構築しながらアクセルを踏むというようなことが求められる、特に国有林については求められるというふうに思っております。
以上です。
○日高参考人 私は、公益的な機能の維持とそれから木材生産のバランスが大事で、そして、地域においても、林業自体がもう忘れ去られておる。半世紀、五十年もたったもので、そして地元でもいろいろと、境界を間違えた、木を切ってしまったということで、昔から誤伐はあったわけですけれども、地域に山に詳しい長老の方とか造林をされた人たちがもういない。それから、二代目の人たちももう山に行くこともできぬ。今度、お孫さんの時代は、もうお孫さんがそこの地域にいないというような中で、非常にもう、林業が忘れ去られています。
ですから、先ほどの公益的なこととやはり木材を生産するバランスを大事にしながら、それから、ある程度やはり時間をとった上で、バランスよく、一部に、一極に集中することがないように、林地崩壊がないような、そういう生産の仕方、施業の仕方、それから、やはり世間の皆様方に森林・林業、木材産業というものを周知していただいて、周りから盛り上げてもらうような素地ができればなというふうに思います。
我々が集まるときには、それぞれ、森林・林業、木材産業オンリーの会合が多いんですけれども、一般の方々が森林を見てどのように思うのか、我々はそれにある意味では感化されて、前向きに、今度は、森林・林業、木材産業、その姿を見ていただくような、理解していただくような方向になれば、成長産業につながるのではなかろうかというふうに思います。
以上でございます。
○立花参考人 御質問ありがとうございます。
野口参考人は私の大先輩で、土屋参考人は私の先輩に当たるような年齢関係なんですけれども、基本的に、森林が存在することそのものに公益的な機能があることは紛れもない事実です。その中で、その機能をいかに高めていくのか、プラス、木材生産をすることによって、キノコ等を生産することによって、それを経済的にもいかにいいものにしていくかということになるわけですけれども、国有林におきましてもその機能区分というのがあるわけで、その中で、今回のこの制度の中で採取権の対象となる地域について、どのぐらいの森林を想定していくかによってかなり変わってくるんだと私は思っております。
公共性という意味では、安定的に木材を生産するというのが国有林の一つの使命というふうに野口参考人もおっしゃっていましたし、私もまさにそうなんですけれども、そうした中で、今回のこの権利設定をどのエリアにどういうふうにしていくのか、それがまず大事になってくると思います。
それが明確になってくる中で、我々は安心して事業展開を見ていけるということになりますし、先ほど土屋参考人がおっしゃったように、林政審議会でそれをしっかりと見ていくということも私も必要だと思いますし、あるいは、場合によったら第三者委員会のような形でそれを確認をしていく、これは国民の代表として確認していくというようなことも必要になってくるかと思います。
いずれにしても、公共性というのをやはり国有林に対して我々は求めていきたいわけですので、一定程度の保全的な伐採というのか、私は、さっき申し上げた小面積皆伐のような形での生産をしっかりと継続して、安定してやっていく、そうした方向性を期待したいなというふうに思っております。
以上です。
○稲津委員 ありがとうございました。
参考人の四人の皆さんから基本的な考え方を今御説明いただきまして、ありがとうございました。
そこで、その上で、今度は各参考人の方に個別にお伺いしたいと思っているんですけれども、一つ目のことは、今のことに関連していきたいと思うんですけれども、実は、私ども、この委員会として栃木県の那須に視察に行きまして、現地の木材の切り出し、生産、それから関係者の方々との意見交換がありました。関係者の方々の意見交換の中では、全員が、今回の法改正については賛成である、ぜひこれを改正していただきたいという、そういう強いお話をいただきました。
その中で、今回やはり特徴的なのは、樹木採取権を付与して、そして十年及び最大五十年という期間を設定できるということになるわけでございます。この期間については、立花参考人が一つ触れていただきました。私も基本的に同じ考えでございます。
その上で、先般、視察の現場でお聞きしたのは、私もいろいろな山は拝見させていただいていますけれども、より具体的に、高機能の機材が導入されてきて、明らかに現場の変化というか発展というのは著しいものがあるんだなと思いました。ハーベスター、フォワーダー等々ですね。
それで、私が聞いた範囲では、全体の山で、例えば、人工林でここが今十年木が多いとか、ここは五十年木やもうちょっと超えたのも多いとか、そして今度は、いわゆる川中、川下の方からのニーズに応じて、では、ここの五十年物を切ろうか、十年物を切ろうか。それは、これは私は現場ではっきり聞いたんですけれども、これからは、更に高機能になっていく中で、例えば、レーザー光線を当てて樹木の年齢をそこでデータとしてとる、それから、樹木の太さなんかも、これも、一々はかりに行かなくても、データとしてとっておく。したがって、山全体の管理をしながら必要なものを切り出していく、こういう説明があって、そういう方向に持っていきたいという強い御意思もありました。
そこで、これは立花参考人にお聞きしたいと思うんですけれども、私は、もちろん、十年ぐらいを一つのベースにして、最大五十年ということもそういう考えでいくと必要になってくるんだろうなと思うんです。これから、農業も水産業も及び林業も、そうした時代に入ってくるんだと思っています。
そういうことも踏まえて、将来的なことも含めて、この最大五十年という考え方、このことについて、改めて立花参考人に御意見をいただきたいと思います。
○立花参考人 ありがとうございます。
まず、五十年という場合というのは、本当に限定的に、いろいろな条件がそろった場合に成立するということになると思いますけれども、今議員がおっしゃいましたように、ドローンを始めとして、さまざまな新しい技術が林業にも導入されようとしておりまして、そうした中で、人が現場に行かなくても森林がどうなっているのかというのを把握できるようになってきております。
そうしたデータを積み重ねていくことによって、長期に、どのような形で森林を管理していくのか、それをどういうふうに使うのか。例えば、樹木の形状がわかれば、この形状であれば、この太さであれば、こういった材に加工するのが最もいいということが出てくるわけですね。そうした木材の利用とを関連づけることによって、有効な活用というのは出てくると思います。そうしたことを、さらに、製材、合板、集成材などの木材産業との連携を図っていくことによって、これが一層発展へとつながっていくんだと思います。
そういう形で川上から川下までが連携を図っていけるようなことができれば、一定程度の長期の権利設定をした上で、さらに、五年ごとに国有林、林野庁の方への、しっかりと契約の更新という形でのチェックも入っていきますので、持続可能な森林管理ということを実現していくということは十分可能なんだと思います。
ですので、あくまで、山側、国有林側の森林の管理をしっかりやっていくこと、そこにいろいろなテクノロジーを使うということと、もう一つは、利用者、木材利用側との関係をしっかりと構築していくということも必要になってくるんだというふうに考えております。
以上です。
○稲津委員 ありがとうございました。
まさに、スマート林業という考え方、取組の視点からいくと、これからさまざまなことも、高機能の機材も更に出てまいりますでしょうし、それから、長期的な期間の設定というものも私は必要になってくるというふうに思っております。
同じ質問を日高参考人にもお伺いしたいのと、もう一つ、日高参考人には、ぜひこれはお伺いしたいと思うんですけれども、先ほどのお話の中にも、やはり人材の確保、育成という話がありました。
私も知り合いの方によく伺うんですけれども、植栽をかけたり、下草刈りをしたり、この作業をするところの従業者が本当に減っている。もちろん重労働だし、危険も伴うということで、なかなか若い方々にはここのところは余り理解が進まないのかもしれませんが、しかしながら、こうした将来展望とか、またスマート林業のことも含めて考えていったときに、ここはここでいろいろな手だてを打っていかなきゃいけないと思っています。
この人材確保と育成についても、あわせてお伺いしたいと思います。
○日高参考人 私たち業界からすると、少しでも期間は長い方がありがたいということと、期間が長ければ、その山の特質、やはりここは、林地については、非常にずれるとか壊れるとか、また、ここは問題ないね、ここは石が多いというようなことが、短期間の、ちっちゃな山になってくると、把握しなくても、とにかく急いで出せと。
それから、基本的には、今、バイオマス、それから木材を海外に輸出するというようなことで、バイオマスも含めて、もとの方からちっちゃなところまで全て受入れしてくれる工場ができて、非常に助かっております。
九州に関しては、山から出てくるものは木と名がつけば全てお金と換金できるというありがたい地域ではなかろうかと思いますけれども、そういう部分では、余りにもちっちゃい、すぐ終われというようなことでやると、技術的にまだ伴わないような未熟な技術者がそこで事故を起こす可能性も高い。それは、エリアが広ければ、そういうところを設定して、その場所で安心して、極力安全に働く、雇用ができる体制ができる。
それからまた、きょう最初にお話ししましたように、雨が降って、風が吹いて、仕事ができぬですよね、いまだに、高性能機械があっても。それはやはり、危険性が伴うということと、林地崩壊につながる可能性もあるということで、でき得れば、やはり、広く、そして期間が長くあれば、雇用に対する、また、若手の教育にも役立ってくるというふうに私は思います。
以上です。(稲津委員「人材育成、人材確保について」と呼ぶ)
人材確保の部分につきましても、地域でそういう方がいらっしゃれば、非常に、地の利のよさと、そしてまた、そこで仕事を安定的にできるということは、これはもう人材確保の方につながりますので、安定した環境の中で調査ができ得る、また、そこでわかる、林地において安心して作業ができるというようなことについては、地域で働く人たちを一人でも多く雇用して、そして、少しでも地域が活性化できるようなものになればというふうに思います。
○稲津委員 ありがとうございました。
四人の参考人の皆様に心からお礼を申し上げまして、質問にかえさせていただきます。ありがとうございました。
○武藤委員長 次に、佐々木隆博君。
○佐々木(隆)委員 立憲民主党の佐々木でございます。
四人の参考人の皆さん方には、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。
本来であれば、参考人の意見を聞いてからもう一度初めから議論をやり直したいぐらいなところでございますけれども、審議が大分進んでございますので、ぜひきょうは、そういった意味で、何点か確かめさせていただきたいなという思いでございます。
私は、今度のこの法律のポイントというのは三つあるのかなというふうに思っています。先生方からも御指摘いただきましたが、一つは、多面的機能、公益的機能といいますか、がこの中でどう担保されていくのかということが一つと、もう一つは、採取権がいわゆる十年ないしは最大五十年というのが妥当な期間なのかということが二つ目、三つ目が、再造林が本当に担保されるか、植林が担保されるのかという、この三点かなというふうに思っておりまして、そういう視点でお伺いをさせていただきたいと思いますが、四人の先生方がおられますので、一往復五分で二十分、超過をしてしまいますので、できるだけ私も簡潔に質問させていただきたいというふうに思います。
最初に立花准教授にお伺いしたいんですが、今申し上げました、もともとこの法律の出だしが未来投資会議の長期、大ロットというところから始まっておりますので、先ほどの土屋部会長のお話だと、それは大分押し戻したというようなニュアンスの話がありましたけれども、いわゆる大型化をすると、それは当然コストも下がります。ただし、しかも大型で長期間ということになって、五十年ということになれば二世代から三世代という話であります。
分収育林みたいに植えて自分でまたその権利で買うという場合はそれは長くても結構だと思うんですが、これは切るだけの話ですから、その中にどうやって担保していくかといったときに、長期、大型化で一番心配するのは、寡占が進むのではないかという懸念です。
素材生産者側からの寡占ではなくて、一番下の方の、工務店だとかそういった方からの、あるいは製紙工場、製紙会社とか、そうした下の方からの寡占が進んでいくのではないかという心配をするわけでありますが、その点について、先生の御意見があればいただきたいと思います。
○立花参考人 ありがとうございます。
大手川下の企業から川上の方、素材生産の方へと系列化が進んでいく、今寡占というお言葉を使われましたけれども、ということだというふうに理解いたしました。
確かに、権利設定が大きくなれば、一定程度の、年々の対象地が大きくなれば、それに対する、必要となる資本力というのは異なってきます。大きくなれば、大きくなるわけですので。そこで、資本力がどれだけあるかということが重要になってくると思われますので、そこで一定程度の系列化なり関係が強まるというのは生じ得るとは思います。ただ、そこのところが、やはり国有林の側でどういった権利設定をしていくかによって変わってくるんだろうというふうに思います。
あともう一つは、地場の森林組合、素材生産業者などの皆さんが地場でしっかりと事業をしていくということが大事になってきますので、そこをやはり視野に入れながら、いわゆるこの法律で言うところの林業経営者を選定していくというところは、農林水産大臣のもとで林野庁のところへ選定されていくわけですけれども、そこの部分はやはりしっかりとした形でやっていくというのを、我々もそのことを見ながら、意見を申し述べられるときには述べていくというようなことも必要なんだろうというふうには思います。
○佐々木(隆)委員 一往復以上やりますと時間がオーバーしますので。
本当は、だから、十年であればそれは余り心配しないんです。最大五十年というのがあるから、そこをちょっと心配をして今お伺いをさせていただいたような次第です。
次に、日高組合長にお伺いをいたします。
素材生産者の代表の立場できょう御意見をいただきました。
今回の法律で、国有林に参加をする、いわゆる採取権を取得するに当たって、サプライチェーンを目指していくんだ、こういう話があります。サプライチェーンは、普通、下の方から上の方へサプライチェーンというのは行くのかなと思ったら、今回の場合は、入札するといいますか、採取権をとる人がサプライチェーンを設定をしなきゃいけないということになるわけでありますけれども、素材生産者として、そのサプライチェーンというものをつくっていくということについて、こういうことが課題、あるいは可能、不可能、これをクリアできればというような御意見があればいただきたいと思います。
○日高参考人 もう九州の方では、そういうサプライチェーンを前提に、山元から生産工場に至るまでの流通になっております。なっておりますというか、そういう方向にもう流れていっております。
それから、通常の市場関係が、近ごろも一社閉めたところもあるんですけれども、基本的には山側から直納体制をつくる、そしてまた、木の大きいところ、ちっちゃいところ、幅広くそこに安定的に優先的にとっていただくということで、ある意味では、山主さん、それから私たち素材生産業者、製材工場は、それぞれ情報交換と、それから意見も交わしながら、安定的な供給体制をつくるというふうに実行の方向でもう動いて、既に私のところの会社でもそれはもう実行しております。
○佐々木(隆)委員 済みません、もう一点、日高さんにお伺いさせていただきたいんですが、先ほど、コストを下げていくに当たって、長期、大ロットというのは、もちろんコストが下がることはそのとおりなんですけれども、三つの視点みたいなことで、路網、機械化、雇用というようなところを取り上げていただきました。
私は、今回のこの法律の中でそこも一つ大きなポイントだと思っているんですが、国有林のみならず、森林を伐採をして利用していくに当たって、どうやって山のコストを下げていくのかというのは、それは当然考えなきゃいけない。それが、長期、大ロットという方法だけではないはずだ。
先ほど御指摘をいただいたように、路網が公共的な事業で整備がされるとか、機械化についてもっと何らかの制度的に充実をさせるとか、雇用の面で国でバックアップするとか、いろいろな仕組みがあって、そこでそれぞれの業界の皆さん方が頑張っていただけるということも私は大きな要素だというふうに思うんですけれども、そういうものと今回の長期、大ロットというものを比較して、素材生産者として、将来的に山を安定的に育成し、伐採をしていくという視点から考えると、その点、どのようにお考えでしょうか。
○日高参考人 長期に立ち木が契約できるということは、安定的にやはり仕事ができる。金融面からにしても、特に、今までどちらかいうと山には関心がなかった金融機関も、私たちの業界のいろいろな事業に参加してもらう、若しくは、工場、現地の方に視察に行くというような動きで、なかったような状況になっております。それが安定的に長期にわたっていただくということは、経営的にもプラスになるのではなかろうか。
それと、長期といえども、これはやはり、経営的な要因も社会的な要因もいろいろあって、はい、そうですというように全てが丸くおさまるような状況ではなかろうとは思いますけれども、それでも、従来の、私たちが山主さんと契約をして山主さんに還元をするという対応は、やはり、ある程度のロットをいただいて、安定的に工場に供給をして、単価をいただいて、山元の方に還元するというような方向でいくのがベストではなかろうかというふうに思います。
○佐々木(隆)委員 次に、土屋参考人にお伺いをさせていただきます。
林政審の中心的な役割を担って、今日、まとめていただいたわけであります。部会長として、当初かなり厳しい発言をされていたことも、我々からすれば同感する発言ということになるんですが、承知をしておりますが、この法律のもう一つの課題であります多面的機能を重視をしていかなければならないという視点からいうと、再造林をどうやって担保させていくのか。申入れとしかなっておりませんで、これで十分に担保できるのかということ。
もっと言うと、先ほどの日高参考人のように、もう既に素材業者と、植える、植林とが一体的にやられているところもありますが、まだまだそこまで進んでいないのが現状ですので、そういうことも踏まえて、土屋参考人の御意見をいただきたいと思います。
○土屋参考人 御質問ありがとうございます。
初めに、正直申し上げますと、そこのところが一番難しいところだというふうに考えております。
基本的に言えば、再造林が担保されないことはあり得ないわけで、それをどうやってしっかり担保するかということ、それからもう一つは、その再造林の資金をどちらが出すのかというようなことも当然議論になってくるところだと思います。
この点については、林政審議会の場でも議論がありましたし、それから、それ以外の学会の場等でも議論が現在もあるところだと思っております。
一つ、例えば、都市公園の方での民間活力導入のようなところでは、事業が終わった後については原状復帰ということが言われていて、開発が行われる前の状態に戻すのは事業者の責任であるというような、そういう考え方もございます。ですが、これが森林の場合、若しくは国有林、人工林の場合にそのまま適用するのは少し難しいのではないだろうかという認識は持っておりまして、申入れが、では、それにかわるだけの制約力、規制力を持つかというところは、法律用語の申入れというのにどの程度の制約、規制力があるかというところが、研究者なのに何だと言われるとそれまでなんですが、ちょっと私どもには完全に判断できないところがあります。
ですが、そもそも、初めに、こういった申請を行い、それを林野庁が審査するときに、そういった再造林の意欲というか実行能力といったようなものを精査することでその申入れといったことが事実上担保できるんじゃないかと思っております。
ですので、これも先ほど言ったことと同じことなんですが、その審査をする林野庁の力量が問われるところであるというふうには考えております。
○佐々木(隆)委員 後でもう一問お伺いするかもしれませんが、野口参考人にお伺いいたします。
今の話ともかかわりがありますけれども、この全体の法律の中で、野口参考人も御指摘されているように、生産の方にウエートがかなりかかった法律になっているものですから、その分だけ、多面的機能というもの、あるいは公益的機能でもいいんですが、どこまでこの法律で一つ一つの場面で担保していけるのかということが非常に気にかかるところでございます。
プラス、御指摘をいただいた地域貢献という意味においても、これまた公益とはちょっと違う場面で森林の果たしている役割でありますけれども、この多面的機能とかあるいは地域貢献とかということはこの法律の中で我々も危惧しているところなのでありますが、その点についての御意見をいただければと思います。
○野口参考人 ありがとうございます。
私も、今御指摘のように、今回の法律の中身は、多面的機能とか地域貢献という国有林の三大使命の中で木材生産にちょっと特化し過ぎていて、しかも、その木材生産は、国有林の使命の公共的役割という中で申しましたけれども、持続的、計画的に行わなくちゃいけない。つまり、未来にわたっても、あるときばさっと切るけれども、それを過ぎたら山がないとか、そういうことではいけないということですから、多面的な面、あるいは公共的な面、そして今の地元貢献という点でも、地元貢献で一番大きいのは恐らく地域の自伐林家であったり、あるいは、所有者の団体で主として植林、保育関係を担ってきたのは森林組合なんですよね、素材生産業者は専ら素材を中心にし、植林、保育関係は森林組合と。この森林組合の姿が大分見えなくなってきているんです。
そういう点から、しかも五十年という長い間にどこでどう担保するのかというのは私も非常に危惧しておりまして、国有林の職員が、かつてのように一担当区事務所といった現場現場にずっと張りついているというような状況ならともかく、今は、森林管理署の中にいて非常に広大な面積をやっておりますから、とてもそんなところに目が回らないんじゃないかという、その点でも危惧しております。
○佐々木(隆)委員 あと一、二分しかありませんので、もう一度質問するとちょっと時間がオーバーするかもしれません。
昨年の森林経営管理法と今回の法律は補完をするんだという説明を盛んにするんですけれども、昨年のはどちらかというと民有林が中心であって、どちらかというと西日本側が中心で、ことしは国有林が中心で、どちらかというと東日本が中心の話で、東日本が西日本を補完できるのかという点で、私も、その説明は余り説明になっていないということをずっと申し上げているのでありますけれども、ある意味で、足らざるところを、できればこの委員会で参考人の皆さん方の御意見もいただきながら補完をして、よりいい法律にしていきたいという思いで議論をさせていただいております。
大変参考になりました。ありがとうございます。
○武藤委員長 次に、近藤和也君。
○近藤(和)委員 「つくろう、新しい答え。」、国民民主党の近藤和也でございます。
私の背景からまず申し上げますと、石川県能登半島というところで生まれ育った人間でございます。ちなみに、国有林はございません。私の家のすぐ裏は山でございまして、小さいころは、お風呂をたくために家の裏に行ってすんばを拾ってきて、そしてそれを燃やして、まきを割ってということで、木とともに生まれ育った地域の人間でございます。
そして、山もございます。祖父が亡くなって、母が相続して、何人も兄弟がいるんですけれども、そして、母が亡くなって、私が相続しているのかどうかさえも今わからない。小さなころは軽トラックに乗って、山道までおじいちゃんに連れていってもらって遊んでいた記憶がございますけれども、あのあたりかなという記憶程度でして、どこからどこかというところが全くわからない。そして、今、集落の区長さんが辛うじて、いろいろな方を集めて、いろいろな情報を集めて、線引きを一生懸命されておられるところでもございます。
そして、三百軒程度の集落でございますが、製材所がありました。隣の百軒ぐらいの集落でも製材所がありましたけれども、当然今そういったところもやっていないという状況です。
本当に山を何とかしなければいけないということは、地域、そして国全体の課題だというふうに思っています。
そこで、まず最初に、立花参考人にお伺いをいたしたいと思います。
林業ということの、産業ということについての考え方について、どのように捉えられておられるかということを伺いたいと思います。
なぜかといいますと、私のところでいけば、半農半林、農業そして山という業態が、以前は、私の生まれる前ですけれども、昭和の三十年、四十年ぐらいのときまではそういったことが常態化していた。そして、場合によっては、半農半漁であったり、半漁半林であったり、農林漁がまさしくミックスしたあり方でございましたけれども、今、この法案の方向性としては、やはり林業、特に意欲と能力のある林業経営者を育成していくという目的がございますので、林業は林業として確立していこうよという方向性だと思うんですけれども、この方向性で日本全国が望ましい形なのかどうか、参考人の描かれている思いということを教えていただければと思います。
○立花参考人 質問をありがとうございます。
実は、私は、岩手県の出身でして、父が林業を営んでおりまして、高度経済成長期は植林を、造林会社を持っておりまして、その後は素材生産をしてまいりました。もう亡くなったんですけれども。母親が畜産、祖母が畑、祖父は公務員だったんですけれども、そういったところで生まれ育ってきましたので、恐らく、かなり近いような状況で経験を積んできているというふうに思っております。私も、ですので、農山村、特に山村の、本当にいわば僻地と言われるようなところのことは身をもってわかっております。
それで、どうするかということを申しますと、私、これからは、所有と経営を分離するということが一つの方向だろうというふうに考えております。つまり、経営をしたい、林業経営をしたいという皆さんが土地を預かって林業生産をしていくということですね。そうすると、例えば、私も不在村所有者ですけれども、私の土地を誰かに預けて、そこで活動していただく。一定程度収入を得ていれば、それを地代のような形でいただくような形というのはあり得るんだろうと思います。
例えば、ニュージーランドでも、そうしたパートナーシップ造林というのが展開しておりまして、日本においても、かつて、一九八〇年代に同じような取組、さっき野口参考人からも少し話題がありましたけれども、民有林においてもそうした取組がありました、ややうまくいかなかったということなんですけれども。
ただ、これから林業がしっかりと産業として発展していくに当たっては、そうした一定のまとまりを持った経営をしていくという観点から申し上げて、経営と所有というのを分離していく、そこでしっかりと契約を結んだ上で、自分が持っている土地を経営者、経営してくれる方に頼むということがあり得るんだろうというふうに思います。
ですので、どうしても、小規模な部分はそういった形でまとまりを持っていくというのが必要なんだというふうに考えております。一方で、大規模な社有林なりあるいは都道府県有林については、それはそれで、もう一度、どういった形で生産性を高めていくのか。あと、北海道にある大手社有林では、まさに先ほど私が申し上げたようなゾーニングをしながら、保護林と生産林とに分けながらやっているところもあるんですけれども、そうした方向性をしっかりとつくっていくということも大事なんじゃないかなというふうに考えております。
以上です。
○近藤(和)委員 ありがとうございます。
それでは、日高参考人に伺います。
今回は、国有林の契約を通じて、収益を通じてと言ってもいいと思いますけれども、林業経営者を育成していこう、そして日本全体の山を守っていこうということだと思いますけれども、先ほど佐々木委員からもお話がございました、東日本と西日本のバランス、国有林のバランスですね。
ちなみに、私のところは、大阪府よりも広い選挙区ですけれども、国有林はありません。
例えば、企業の経営規模が狭い範囲であれば、競争条件として、例えば収益性を持てる企業と国有林が全然ない企業との競争格差というのは問題にならないと思います。ただ一方で、広範囲ということに広がってくると、あの地域の企業は競争優位に立っている、私のところはそうではないといったことが生まれてくるのではないかなと思います。
日高参考人は宮崎県と伺いましたけれども、九州はかなり国有林が少ないということでございます。まずは、かなり広範囲に事業をされておられると伺いましたけれども、物理的になのか資本的になのかわからないんですけれども、経営範囲がどこまで拡大していくことができるのかということと、そして、ネックになるものは何なのか。そして、競争条件が、例えば経営規模がかなり大きくなった場合に、国有林の権利を、樹木採取権を請け負っている、契約しているところとの競争格差という問題が生まれてくるかもしれない、こういったことに対しての御懸念を教えていただければと思います。
○日高参考人 宮崎県内の素材生産業者、基本的に、隣接県の大分、熊本、鹿児島ということで、昔から、やはり県境をまたいで、相互にある程度情報と、それからまた事業も今までやってきた、実行してきた経緯があるんです。
それで、国有林が広いという部分について、一つの契約の中で広い面積を契約できるというのもありますけれども、宮崎の場合は民間の山が結構ボリュームがありまして、条件的には民間の山の方がいいというところもあって、国有林は、今度、どんどんどんどん奥地の方に行けば、条件がまだまだ悪くなってくる。
ですから、一括に事業を契約していただければ、じゃ、利益は出るよというものでなくして、やはり地域の環境によって違ってくる。どちらかというと民間の山の方が場合によってはいい山もある、多いと言う人もいるんです。当然、面積の方は民間が多いんですけれども、そこのところについては、今、南九州の方では、大手の木材、製材会社、それから集成材、それから合板、それからまたバイオマス、それから木材貿易ということで、そつのない木材の扱い方をして、非常に重宝はしておるんです。
やはり基本的には、宮崎を中心として、木材を供給してもらう部分についての売る側の有利性というものが出てきて、まあまあ前向きに行動してもいいんじゃなかろうかというような考えと、それから、大手の製材工場がここ数年できまして、もう製材工場自体が県境を乗り越えて、例えば九州から集荷するという考えのもとに、受入れするところが、そういった広域的に集荷をしようかということですから、我々も、山に、一つのところにとどまらず、ある程度は広く作業エリアを広げていって、安定的に地域に供給するという考えも持っております。
よろしいですか。
○近藤(和)委員 ありがとうございます。
そして、せっかくなので、森林環境税との関係について。
実際には直接リンクするものではございませんけれども、こちらについては特に地方自治体が関与する、そして、もともとの今回の法律に関しては、先ほど土屋参考人が言われましたように、国の、林野庁の実力が問われてくるということで、やらなければいけない中で、予算はこちら側ということで、そのバランスについて、まず日高参考人には、国有林の比較的少ない、むしろ民有林の方が多いんだ、もっともっとやりたいことがあるんだということに対しての、森林環境税についての何か望まれること、そして土屋参考人には、バランスですね、国と地方との、森林環境税についての、今回の法律についての、何らかのバランスをとり得るアイデアのようなものがあれば、お聞かせいただければと思います。
○日高参考人 森林環境税が譲与税としていただけるということについては、非常にありがたく、また、非常に感謝をしております。
いずれにしても、そういうものが毎年毎年地域に出てくるということは、やはりいろいろな意味で森林に関して興味を持っていただくということと、それからまた、新たに森林の、木材産業の方に参入してくる、雇用の安定にもつながるのかなというふうに思われます。
ただし、今私も、すべからく、全て詳しくというような状況ではありませんけれども、環境税も、もう少し活性化できるような、我々業者としても活用できるような、また、特に再造林に関連する部分については、やはりかゆいところに手が届くような、そういう方向の再造林にひとつ対応していただけるような方向になるとありがたいと思っております。
○土屋参考人 御質問ありがとうございます。
かなり難しい御質問だと思うんですが、御承知のとおり、森林環境税若しくは森林環境譲与税については、もともと、地球温暖化対策の一つとして吸収源対策を考えた場合に、一番、森林経営管理上、森林の経営管理が難しい民有林の中でも、意欲の余りない森林所有者の持っているような森林について、それをどう支援していくかというところから始まっております。
私、実は総務省の検討会の委員もさせていただいて、その辺のところを議論をしたところなんですが、そのたてつけからいいますと、実は、国有林については、若しくは公有林については、それぞれが、公共団体若しくは国が公共性を持っているんだから、当然それはしっかり管理しているよねという前提に基づいているので、そういう意味では、恐らく、直接的に環境税というのがこちらの方に影響を与えることは、原理的にはないんだと思います。
ただし、これも御承知のとおり、実際の森林環境譲与税の配賦の仕方を見ると、人口の多いところにある一定程度の配賦があるということで、そこでの利用の仕方としては、木材のさまざまな利用の仕方、それから森林に対するさまざまな認識を高めるための広報、普及等が大きな活動になってくると思われます。そうすると、そのときには、やはり国有林も含めた森林や若しくは木材利用に対する認識の上昇ということがあり得るわけで、間接的に国有林にいろいろ影響を与えてくる、これはあると思います。
もう一つは、むしろこれはメリットというよりは、国有林として、そういった、例えば市町村を支援しなきゃいけないという面の方が強くて、そういう意味では少し大変な役割を国有林は担わされていると言った方がむしろいいのかもしれません。
ちょっとお答えになったかどうか、失礼します。
○近藤(和)委員 ありがとうございます。
実際には、国も地方も、自治体も負担がやはりふえてくるということだと思います。こちらに対して、ありとあらゆる形でのサポートが必要なんだろうというふうにも思います。
それでは、最後に野口参考人にお伺いいたしたいと思います。
今回の最長五十年ということに対して、樹木採取権についてですけれども、正直、私も最初、長いなと。特に経営者の方が大丈夫かということを最初思ったんですけれども、二代、三代にわたるわけですが、逆に申し上げますと、政治リスクもむしろあるのかなと。
この農林水産委員会の中でも、さまざまな政策がころころ変わることに対して事業者が迷惑されているということも今までよく伺ってきましたので、この期間の長さについて、経営体リスクと政治リスク、この見直しも含めて、リスクという言い方が適当かどうかわからないですけれども、この点についてのお考えを教えていただければと思います。
○野口参考人 今まで、林業関係でのいろいろな契約の中で、複数年にわたって行われるというのは、例えば土石採取とかなんかでは三年だとか、あるいはシステム的な販売で三年とか五年とかという、せいぜいその辺までの単位での複数年契約はありました。しかし、一気に五十年というのは、もちろん初めてのことであります。
五十年ということになると、恐らく、今御指摘のように代がわりもあり得るであろうということで、本当にそれが持続的な形でなされるかという、その点は担保をどうするかというのは非常に大きいんですよね。そして、特にその後の植林は絶対不可欠であるというのは、素材業者の方もおっしゃっているとおりであります。
その植林については、申入れということになると、五十年、伐採した、さあ、さてその後の植林はというときに、非常に、植林のところまでも不安が残る。つまり、五十年後の話ですから、極端に五十年をとりますと。
ですから、やはりもっと確実な方法というものがとれないのかどうか。余りに一気に、言ってみれば業者任せ的な側面は否めないなと。その点は国がどこまで責任を持つかというのは、今回非常に大きな問題点ではないかというふうに思っております。
○近藤(和)委員 ありがとうございます。
この点につきましては、やはり地域の方々の世代間を超えた夢ですね、この地域でどうやって暮らしていきたいか、この山をどうやって守っていきたいかということと、あとは国策としての山をどうしていきたいかということ、そして更に申し上げれば、各自治体そして林野庁の現場に近い方々も、世代どころか、もう何年かで交代されていかれるわけですから、この思想というものを、私は、しっかりと今回の議論を通じて、そして五年後見直しも通じてつくっていかなくてはいけないなと。特に、長期的なものほど、幅広い合意というもの、縦に貫くようなもの、党派を超えての思いというものを少しでも皆様と共有していけるようなこういう山づくりに、また皆さんもともに参加をしていただけたらというふうにも思います。
きょうは参考人の皆様、お越しいただきましてありがとうございました。
それでは、質問を終わらせていただきます。
○武藤委員長 次に、田村貴昭君。
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
参考人の皆さん、きょうは本当にありがとうございます。
早速、質問に入ります。
林野庁は、私有人工林において、現状、二〇一五年ですけれども、千五百万立方メートルの国産材供給が十年後に二千八百万立方メートルになると、KPIで示しています。また、森林・林業基本計画では、森林全体で二〇二五年には四千万立方メートルの国産材供給を掲げているところであります。その中心は育成単層林でありまして、基本は五十年周期の主伐の方向であります。
大量の木の切り出しは森林の持つたくさんの機能に対して心配がされるところでありますけれども、切り過ぎではないかなといった私の思いに対して、まず野口参考人は、どのように考えておられるでしょうか。
○野口参考人 お答えします。
かつて国有林では、成長量の倍近くを十数年にわたって切り続けたという歴史があります。その後、むしろ過伐どころか減伐という形で、不景気の中では過ごしてきました。
そういう歴史をいろいろ繰り返してきているんですけれども、今の、二千万ヘクタールを四千万ヘクタール、二五年ですか、というのはなかなか、その達成できる、毎年の推移を見ていただければわかりますけれども、そんなに一気に倍増できるような状況はない。もしこれをやろうとすれば、先ほどのような、五十年お任せして、そしてどんどん切ってくれというような、伐採中心主義的な考え方を導入しない限り、その数字は出てこないなと。現実的にはなかなか難しい。
ただ、将来的には私も、自給率が過半を占めるような、国産材時代に戻ってほしいと思っているんです。現在はずっと外材時代、外材過半時代ですから、そういう点では、国産材がもっとふえることは望ましいことでありますけれども、これは無理をするわけにはいかないので、徐々に、企業体や森林所有者等を育成しながら達成していくべきものであって、山は一気に切り出してできるとかいう、そういうものではないということだけははっきり申し上げたいと思います。
○田村(貴)委員 次は、日高参考人にお伺いしたいと思います。よろしいでしょうか。
資料としていただいた「NJ素流協News」を読ませていただきました。この中で、日高さんが講師として述べられたことがまとめられているんですけれども、「九州では今莫大な量の木材を出しており、「再造林なしには伐ってはいけない」と言われるほど、伐採後の再造林は必須となっている。」また、「二十七年間スギの生産量日本一ということでやってきたが、山を丸坊主にしてしまうリスクを負いながらやってきた。」先ほどの意見陳述の中で、とったら必ず植えるという方向性を日高さんからお伺いして、それは大変重要なことだというふうに思いました。
現状、九州宮崎の方で、私は、この状況は、切り過ぎている状況があるのかなというふうに思ったんですけれども、業界の最先端におられる日高さんとしては、どういうふうに受けとめておられるんでしょうか。
○日高参考人 あくまでも私の個人的な見解ですが、過伐、切り過ぎというよりも、偏りは出てきておる。それから、宮崎の方でも、安定して莫大な量が二十八年間連続、生産量、杉の生産ではトップを走っているような状況が続いております。
その中で、近々の再造林率を見ましたら、宮崎の再造林率、これも私の見解です、大体、年間二千五百から二千八百ヘクタールの中で、再造林率が約八割程度、宮崎県では実行されておると思います。
再造林に対し、確かに切ることは切るんですけれども、再造林においては、宮崎県も、全国でも北海道に次いでのトップクラスではなかろうか。北海道の場合は面積が広うございますから。
それと、苗木も足らないというような状況でありましたけれども、ほとんど地元の苗木で網羅して再造林をしておるという状況ではなかろうかと思います。
○田村(貴)委員 私、国有林で、本当に荒い施業をしているところ、それから、大規模に皆伐してしまって、その後植林していないところを見ました。そういう懸念があるものですから、今度の法案の中身については、本当に十分審議しなければいけないなというふうに思っております。
続いて、日高参考人にお伺いしたいんですけれども、このニュースの中で、「六年前に中国木材の工場ができた」、これは県北ですね。「同時期に、バイオマスも出てきて、それこそ県をあげて「伐れ伐れ」という状況でやってきた。」と。
やはり、需要が高まってきている、バイオマスだ、そして行政の方からも、もう今はとれ、そして加工せよというような方向性にあるんでしょうか。
○日高参考人 そうですね、タイミング的に、中国木材の進出とともに、この当時は中国木材の大型工場だけではなかったんですね、バイオマスも同時に話が出てきた。それから、木材貿易、中国を中心として、丸太の原料が欲しいということで同時に出てきた経緯があります。
その中で、宮崎県は、その当時、六、七年前は、約百五、六十万立方あったものが、大体三十万から四十万立方伸ばして、地域の加工場に原料が足らないということで増産をした経緯はございます。
○田村(貴)委員 そのバイオマスの話なんですけれども、続いて土屋参考人にお伺いしたいと思います。
資料として読ませていただいたUEDレポート、この中で先生は研究者の心配の声を挙げて、伐採の進展によっては森林が減少してしまう、国土保全上の問題が起きるという声も紹介されて、木材がかなり引く手あまたになってきて、一番大きいのはバイオマスエネルギー、ちょっと前には考えられなかった状況も起きているのが現在の状況というふうに述べておられます。
切り過ぎ、そして今そういう傾向にあるのではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○土屋参考人 御質問ありがとうございます。それから、余り一般に流布していない雑誌まで見ていただきまして、どうもありがとうございます。
今御紹介がありましたように、特に木質バイオマスについては、発電についてはかなりの大規模な供給が必要なわけで、それの懸念というのは今御紹介のとおりです。
しかも、かなり他業界からの参入した業者等も多いので、いわゆる森林の経営の専門家ではない方々がそういうのに携わっていることもあって、その辺のところの持続性というようなことを業者の方がそれほど認識されていない可能性もあり、かなり懸念材料があると思います。
もう一つは、地域にかなり偏りがあって、特に九州なんかは、この中でも今議論があるように、かなり逼迫しているという状況はあります。
そうなってくると、やはり、森林には森林経営計画、若しくはもう少し上の、森林のさまざまな計画制度がございますので、その計画制度のしっかりした運用というのがこれから問われてくるところになってくると思っております。
○田村(貴)委員 そうした中で、やはり切り過ぎの状況があり、これから短伐期で主伐をしていくという方向性の中にあって、そうすると、森林の多面的機能が損なわれるのではないか、再植林の保証はあっていくのかという問題にぶち当たっていくと思うんですけれども、最後に立花参考人に、切り過ぎではないか、この現状についての先生の御所見を伺いたいと思います。
○立花参考人 御質問ありがとうございます。
ちょっと、まず最初に、先ほど、国有林の今回の権利設定にかかわって、植林の件がかなり問題視されていると思うんですけれども、あくまで今回は、採取権、伐採なんですね。そこの権利であって、再造林の部分は、民間、林業経営者に対して申し入れてやってもらう、そのときには改めてその契約を結んでやってもらうということですので、やや誤解があるのかなというのをきょう感じております。
もし林業経営者の方がやらなければ、林野庁が自分の責任で自分の土地に木を植えるということですので、それは我々の税金を使って植えていくということになるというふうに私は認識しております。ですから、この部分については、再造林どうのこうのというのは、これは当然やるものであるという認識です。
あと、今の御質問につきましては、まず、切り過ぎではないかというのを、きょう、私、冒頭の意見陳述で申し上げましたけれども、五百万ヘクタールの人工林を生産林として、年間十万ヘクタールを主伐して、再造林も行い、間に間伐も行うということをやるだけで、私の計算では五千万立方メートルの生産量は可能です。つまり、例えば宮崎県の杉の四十五年生、五十年生だと、一ヘクタール当たり五百立方メートルとか、場所によっては六百立方メートル以上の生産ができます。北海道のカラマツの人工林、四十年生ぐらいでも、主伐で三百三十立方メートルぐらいは出てきます。つまり、押しなべてみて、少なく見積もっても三百五十立方メートルだとヘクタール当たりにしたときに、十分にそれは、十万ヘクタールで五千立方メートルの生産は可能なんですね。ですから、それをもって切り過ぎという話にはならないと私は思います。
つまり、面積としてどれだけ主伐されているのか、その後にそれがしっかりと再造林されているかというのを我々は見るべきで、その再造林についても、実は、私、冒頭に申し上げましたように、ある程度もうゾーニングをした上で生産林は決めていく方がいい、ある程度区切りをした方がいいと思っていますので、そうすることによって、ある程度、今私が申し上げたようなことは可能になってくるというふうに思います。
以上です。
○田村(貴)委員 そうした林野庁の掲げる国産材の供給が、大規模な供給は可能だというお話も今出たんですけれども、野口参考人に改めてお伺いします。
やはり森林の多面的機能、これは非常に大事だというふうに思います。それから、先生が先ほど言われた、公益性に加えて公共性ですよね。ここの点で、私は、熊本地震も、それから九州北部水害も、あらゆるところの災害現場に行ってきて、まさに森林の涵養というのは物すごく大事だなと。そして、短期間における主伐ではなくて長いスパンの中での多間伐、これが今求められているんじゃないかなというふうに思っているわけであります。
皆伐は、山肌がむき出しになり、豪雨、台風、地震によって地割れが起きたり、いろいろな状況をつくり出してまいりました。洪水も招いてまいります。改めて、この多面的機能という観点に照らしてみて、今から大量に木を切っていくという方向性について、先生のお考えをお伺いしたいと思います。
○野口参考人 私は、世界史的な流れの中で、今、日本が考えているのはむしろ逆行しているという理解であります。
森林の役割に対する国民の期待という、政府が行っているアンケート調査によっても、常時、上位三項目の中には、災害防止とか、それから近年では温暖化が入ってきたり、水資源涵養、こういったいわゆる公益的機能というのが上位を占めています。ということは、国民は、森林のそういった多面的機能の中で、我々の命にかかわるような、そういうところに多くの役割を期待しているということであります。
更に言えば、温暖化防止については、これは三・九%を、日本が五%を削減するという言い方を京都議定書のときに行った、日本で行われた会議であったわけですけれども、そのときに、五%を将来にわたって削減するということを言いましたが、そのうちの三・八、後には三・九に訂正しましたけれども、その部分は森林が吸収源になっている。
つまり、世界的な公約の中でも森林のCO2吸収能力というのは非常に高く評価されているわけでありまして、それが切られてしまいますと、その分だけ吸収源は減ってくるというふうになりますので、やはり切り方に関しても、秩序あるというか、つまり、山をできるだけ裸にしない状態で、択伐という言い方をしますけれども、間伐や択伐を繰り返す。これは決してコスト的に安いものではありません。安いものではありませんけれども、しかし、国民の命や暮らしを守るためには、そういったことも含めてしっかり手当てをしていくべきではないかというふうに思います。
○田村(貴)委員 私も、長伐期多間伐のやり方が、森林がCO2を吸収する役割をしっかり保っていけるんじゃないかなというふうに思っております。
同じ質問で、土屋先生、いかがでしょうか。今からの方向性の中で、三・九%、森にその役割を担わせる、地球温暖化対策、これがちゃんと維持し、そしてまた発展が遂げられるであろうかという疑問に対してはいかがでしょうか。
○土屋参考人 御質問ありがとうございます。
地球温暖化の対策としては、これはやはり間伐をいかにやっていくかというのが非常に重要な部分だというのは御承知のとおりで、今おっしゃったとおりだと思います。
ただ、もう片っ方で、多間伐をやっていっても林齢は上がっていきますので、その一部分についてはやはり更新をして次の世代をつくっていくということも同時に大事でして、これはもうほとんど同じことを繰り返しているんですけれども、要するに、バランスをいかにとるかであって、ただし、そこで皆伐についての懸念はこれまでも発言がいろいろあったわけですが、例えば小面積の皆伐をなるべく離してやるような形の、技術的な問題である程度解決が可能ですから、やはり間伐とそれから皆伐はある程度組み合わせることが必要だとは思っております。
以上です。
○田村(貴)委員 はい、わかりました。
先日のこの法案審議のときに林野庁の答弁でも明らかになったんですけれども、国有林一ヘクタールの再造林、保育にかかる費用が二百二十万円、これは一ヘクタール当たりですね、そして立ち木の販売額が百三十万円であると。なかなか国有林で採算がとれないという状況にあることが明らかになったわけであります。
野口先生に伺いますけれども、国有林の歴史的な経緯も踏まえて問題点の御指摘がありました。なぜ、そういう、採算がとれない、そして、山で意欲とそしてやる気を起こさせる施業ができないのかといった問題、それは根本的にはどこにあるのかなと。それを改善して改革するならば、どこに国有林野のいわゆる林産物の持続的、計画的供給が、先生が言われた持続的、計画的供給がもたらされるのか、そのポイントについて教えていただけないでしょうか。
○野口参考人 ありがとうございます。
大変難しい問題ではあるんですけれども、私の理解では、まず、国産材が非常に価格が安い、あるいは国有林も赤字が続いてきたというのは、やはり外材が過半を超えてきたという外材体制下の中で進んできたものであるということがまず一点です。
それから、国有林の独自の課題としては、先ほど、一九七八年に改善計画が出されました。そこから何が行われたかといいますと、自前で借金をして、そしてそれで採算を何とか償え、そういう言い方をしてくるわけですけれども、もう既に木材価格は実際は非常に低下してきている。
林業利子率という考え方があります。つまり、林業を五十年の投資として考えたときに、伐採した収入で初期投資に対してどれだけの利子で回ったのかというのが林業利子率です。これは、既にもう一九九〇年代にはマイナスになっています。補助金が入ることによって、辛うじて何とかなってきたというのが木材価格であります。
一方、国有林にはどういう借金を充てられたかといいますと、財政投融資資金です。これは、一般的に悪いとか高いとか、そういうことではありません。例えば住宅金融公庫とかそういうことのもとになる、そういう意味では安定した財源というふうに言っていいんですけれども、ところが、林業経営をやるのに対しては余りに高い金利である。数%の金利のものを借りて、マイナス、プラスマイナスのところを動いているような経営をやったら、誰が見たって、これは赤字が膨らむに決まっているじゃないですか。そういうことで、サラ金財政に国有林ははまってしまったということであります。
ですから、私は、一般会計化したということは、もう冒頭からボタンのかけ違いだったということを申しました。そういう意味では、喜ばしいことではありますけれども、しかし、ここまで来て本当に一般会計で国民の負担にするのであれば、しっかりとした山の管理経営をやっていただく。
それは、当然、税金が投入されるわけですから、国民のための山づくりというところで、適度な、成長量に見合った伐採と、それから、より多面的な機能の充実、地域貢献、これをやっていくという、まさに三大使命をしっかり果たさなければ、会計だけは一般につけた、しかし、やっていることは乱暴なことをやっている、これでは国民は納得できないのではないかというふうに思います。
○田村(貴)委員 大変参考になりました。
四人の参考人の皆さん、ありがとうございました。
質問を終わります。
○武藤委員長 次に、森夏枝君。
○森(夏)委員 日本維新の会の森夏枝です。
本日は、四人の参考人の皆様にお越しいただきまして、大変貴重な御意見をお伺いしました。ありがとうございました。
それでは、質問をさせていただきます。
もう最後の質問者ということで、かなり重なる質問がございましたので、私の方からは人材育成についてお伺いをしたいと思います。
今回の法改正によっても、森林経営計画をしっかり策定して、五十年後、百年後と日本の森林資源を守っていくために大切な計画を立てていかないといけないと思います。皆伐をする、そして植栽をしていく、大変重要な計画を立てていくことだと思います。
本日お越しいただいております参考人の先生方のように、知識があったり現場の経験があったりという方々ばかりではないところでございます。先生方からも御指摘ありましたけれども、やはり専門家の不足というのは問題点の一つだろうと思います。
私も、林業の現場の方々とお話をさせていただいたときに、例えば、森林組合ですと、事務作業も、二、三人で済むようなところに五、六人座っていたり、ちょっと無駄なコストもあったり、また、なかなか山へ行かない方、もうお金にならないから、木を切っても売れない、植林するにももう年だしという感じで、森林組合の方々の中にも、ちょっと林業を諦めているような方々もいるというお話をお聞きしまして、今回、この法改正によって新たに、参考人の先生方からもお話ありましたけれども、林業に国民の目が向くように、関心が向くようにと、私もそうなればと思っております。そして、森林組合だったり現場の方々の意識改革というのも必要かと思います。
そこで、人材育成というのが大変重要になってくるのではないかと私は思っております。
続けますけれども、役所の方々も、一生懸命仕事をしてくださっているので、仕事なのでしようがないんですけれども、二年、三年で職場環境が変わってしまうということで、やはり林業の専門家が少ない、そういうことをお聞きしますので、四人の先生方に、林業の専門家をどう育てていくのか、どう配置していけばいいのか、お聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○立花参考人 大変重要な御指摘をいただいたと思います。ありがとうございます。
というのは、私は、日本森林学会、林業経済学会というところで研究活動をし、発表をしているんですけれども、かつて、林学科というのがあって、今、大学によっては森林科学科とかと言うこともあるんですけれども、この林学科、森林科学科という、大学における林学教育が、残念ながら、教員の数が減っているとかで十分になされてきていない部分があるということを御説明しなければいけないと思います。
例えば、我々、私、土屋参考人は前の会長なんですけれども、我々がメーンとする林業経済学会、小さな学会で四百人程度なんですけれども、実は、教員が減っているにもかかわらず、結構学生たちがふえているとか、であります。学生たちの関心が結構高まっているんじゃないかなというようなことを私は感じています。我々のところで研究したいという学生もふえております。ただ、残念ながら、全国的には大学教員の数が減っているとかという部分がありますので、これをできれば皆様と一緒にどうにか変えていきたいというふうに私は思っております。
あともう一つは、各地に林業大学校、農林大学校ができ始めておりまして、彼らは、しっかりと林業の現場で働く、若しくは林学科の方に進学するとかという形で、林業に携わる方々が多いわけですので、こうした部分を拡充していくということも必要になると思います。
その意味では、現場で働く、きょう来られている日高参考人のような、仕事をしておられる方が例えば大学校においてレクチャーをするとかというふうなことも含めて、さまざまな形で連携しながら、我々、拡充していかなければいけないというふうに考えております。
以上です。
○日高参考人 九州の場合、特に地元の宮崎ですけれども、新たな、森林、木材産業、山の方に来る技術者の教育、特に実践をする分についての素地というのが何かあって、人材を現場の方に入れてある程度の作業ができることは、宮崎ではなぜかしら実行をされてきた。
現在、造林の関係ですかね、下刈りをしたりということで、非常に過重労働に関する部分については不足はしておるところがあるんですけれども、事木材の生産については、機械を私のところも導入してもう三十年ということで、県の方も機械化センターというものもできていまして、それぞれに、地域の、自分の家族とか、親戚とか、近所も、林業に関連する現場で働いた人たちが結構身近にいるということが非常にプラスになっておるのではなかろうかと思います。ですから、田舎で育った人というのは、山に入ると、山道がなくても、おのずとけもの道を歩いてしまうような、そういうものが子供のころから、教育、何か身についたものがあるんじゃなかろうか。
それで、宮崎もことしから林業大学ができました。これはやはり、全国に先駆けて、当然、林業に関するノウハウ、見識も深めて、そして、どこよりも、若いけれども、現場、宮崎にはやはり、きちっと徹底して、安全な作業をして、山の人材としておかしくないような方向で、県はもとより、我々業界も手を添えて育てていかないかぬというふうに思っております。
ですから、先ほどありました、やはり、先進地を確認するとか、機械化を徹底するとか、それからまた、それぞれ連携して、情報交換と研修ということは当然必要ではなかろうかと思います。
○土屋参考人 御質問ありがとうございました。
一つ、これまで余り出ていないのですが、育成というよりは活用の方になろうかと思うんですけれども、いわゆる公務員ですが、国には四千人ぐらい、それから実は都道府県には九千人、市町村には三千人ぐらいというふうに大まかに言われています。つまり、市町村には非常に今のところ少ない、これからもなかなか、今回の森林経営管理法等でも非常にそこの能力が問われるわけですが、どうしてもふやす状況がないというのがあります。
そうなってくると、九千人の都道府県の職員をいかにうまく活用するか。活用するかというのが失礼な言い方であれば、いかにその方々たちが現場の中で有効な活力を生み出すような活動ができるかということを、国としてもそういうところをどうやっていくかということをこれから考えていくということが非常に重要なのではないかと思っています。
一つは、先ほどもありましたが、任期の問題で、それが二年とか三年ぐらいではなくてもう少し、例えばドイツのような場合には、非常に長く一つの地域にとどまって、そこで指導を行うというような体制ができております。そういったことが今後できないかというのも一つの課題だと思っております。
もう一つは、今度は少し違って、育成されたような方々の受入れということなんですが、この前の参考人の方にもありましたように、森林・林業再生プラン、二〇一一年以降、さまざまな研修や育成の制度が整ってまいりました。それが今、現場の方にもだんだん蓄積されてきているところなんですが、例えば森林施業プランナーというようなのがありますが、それが森林組合に、その代表として行って、さまざまな研修を受けて、資格も得て帰ってくるんですが、そこで、森林組合の中でなかなか実力を発揮できるような形で登用されないという例があるやに聞いております。そこのところでもやはり問題になるのは、例えば先ほど出ていた長野県の大北森林組合のようなところもあるわけで、経営陣の経営感覚なり経営能力なりというものをどうやって高めていくか。
その中で、新しい人材をいかに登用していくかというようなことを考えるような、そういうセンスをいかに持つかということも問われているところだと思います。もちろん、森林組合は協同組合ですので、一つの制約があることは十分承知しておりますが。
以上がお答えになろうかと思います。
○野口参考人 大変重要な点を御指摘いただきまして、ありがとうございます。
我々山関係の専門家というのは、本当に数はやはり減っています。大学の定員も大きく減らされていますし、まして、林学科と言ったのが、今は林学科と言わずに、辛うじて信州大学は森林科学科という名前がついていますが、森林科学科ですら全国でたしか二、三校しかない。だから、あとは、ぱっと見たら何をするところかわからない、こういう状況でありますので、もっと大学。
それから、短期大学は結構、最近は少しふえてきています。できるだけ現場で対応できる技術者を養成しよう、そういうふうな意味合いで、長野県ももう相当、二十年以上前からありまして、そこの教員は、大学の、私みたいな信大農学部の教員が兼務するというようなことで、必ずしも教える側の体制は十分ではないんですが、そういう形で対応していまして、ここはなかなか、例えば森林組合に就職するとか、素材業者のところに就職するとかという、非常に現場対応的な形が林業短大の場合には多いです。
それから、もう一つ申し上げたいのは、皆さんの中で「WOOD JOB!」という映画を見られた方、ありますか。三浦しをんという、ああ、何人もおられますね、見ておもしろいですよね。つまり、都会の何にもわからない青年が、行くところがないからしようがなくて、あるいは緑の雇用事業にかかわったんだと思うんですけれども、そこに派遣されて、そして現場の厳しさ、ヒルはいるわ蛇はいるわ、もうとんでもない。帰ろうと思ったら、それは携帯で電話しようにも通じない地区であったとか、ちょっとどたばた的なところもありますけれども。しかし、その青年も、山の仕事のおもしろさというのがわかってくる中で、しっかりと後を継いでいこうという、つまり、よそから来た、都会の生徒ですよ。
そういう点では、信大の宣伝ではないですけれども、信州大学は田舎の大学ですけれども、最も全国区の大学なんです。沖縄から北海道まで、あちこちから来ます。そして、そこに住みつく人もいます。
そういう点で、まだ若者たちは、山の問題に訴えれば理解を示す、共鳴する、そういう余地があるので、我々がいかに、山関係の人あるいは国会議員の先生方も市町村議会の方も一緒になって、あるいはマスコミも一緒になって、山の必要性を訴えていく必要があるなというふうに感じております。
ありがとうございました。
○森(夏)委員 ありがとうございます。
四人の参考人の方々から大変貴重な御意見をお伺いしました。学生がふえているのに教員が減っているというのは大変もったいないことだと思います。
関心を持って、林業でやっていこうという若者をどんどん育てていただきたいので、先ほどお話ありましたように、日高参考人のように、現場の方々を講師に招くとか、教員が足りないのであれば、どんどんそういった形で、若い方を育てていく環境というのも進めていただければと思います。
時間が余りなくなってまいりましたが、人材育成というところで、もう一問お伺いします。
日高参考人にお伺いします。外国人雇用の問題について少しお伺いをさせていただきたいと思います。
林業分野では、農業分野と違って、なかなか、言葉が通じないと厳しいとか、山は危険性があるので大変だというようなお話を聞きました。例えば野菜の収穫などであれば、少し言葉が通じなくても、隣にいて、見せながら、見よう見まねでできる部分もあるという話ですけれども、林業の現場に立つと、例えば二人一組で作業する場合、離れたところに外国の方を作業に当たらせるのは難しいといったようなお話もお聞きしたことがあります。
若い方を育てていくというのも大事だと思うんですけれども、今後、外国人の受入れについて、その指導であったり、林業分野で、実際に外国人の受入れというのはどんどん進めていくことは可能なのかどうか、お聞かせ願います。
○日高参考人 宮崎の話ばかりで恐縮ですけれども、九州においての再造林率というのは、南九州四県を中心として、全国的に見ても、いい方向で向かっておるような気がいたします。
それで、派遣労働者、外国人の雇用ということにつきましては、私たち業界もやはり慎重に対応したい。特に素材生産については、大型重機ということで、やはり一つ間違うと大変な事故につながるということで、また、足場のいいところということでも。それからまた、木もいろいろと、所によれば、また、木の樹種によって、もう常に変化をするというようなことで、かなり教育も要るであろう。あったときの対応というのは、もしもあったら大変なことになりますけれども、そういうリスクからすると、やはり山は非常に難しい部分がある。
それと、再造林に関連する部分についても、そういう部分については、基本的にはできないこともなかろうというところもありますけれども、今、地元では八〇%ほどの再造林をやり、苗もほとんど地域で網羅しておる、つくったものが植えられておるという状況でございますから、まだまだ、やはり地域、また組合とか、我々の民間の組織と膝を突き合わせて、安定的に事業が地元で実行できる体制というのはまだまだ余裕があるんじゃなかろうか。
それからまた、ある宮崎の組合の、県南の方については、サーファーの人たちが、結構、宮崎はサーファーで海に遊びに来る方が多いということで、そういう人たちが短期的に、時期的に山に行って造林をしたというようなこともありまして、先ほどの「WOOD JOB!」じゃありませんけれども、何かのきっかけづくりで行動することが大事じゃなかろうか。まだまだ、地域で相談をして対応すれば、地元でもできるのではなかろうか。
素材生産に関しては、やはり今のところはまだまだリスクが多いのかなという感じがいたします。
○森(夏)委員 ありがとうございます。
最後に、立花参考人にお伺いさせてください。
環境政策の御専門ということで、環境面ということで、皆伐地の災害対策について、もう、ちょっと、二分ほどしかないんですけれども。皆伐をすることで、不安の声というのも少しありますので、災害対策について、森林経営計画をしっかりしていくとは思いますけれども、少し、皆伐地の災害対策という面でお話しいただけたらと思います。
○立花参考人 ありがとうございます。
きょう何度か申し上げましたけれども、皆伐するに当たって、大面積では行わないということが基本だと思います。
オーストリアで、基本二ヘクタール以内ということで皆伐しているという現場を何カ所か見ましたけれども、そこにおいては表層侵食のような問題というのはそんなに起こらないというふうに考えていいんだと思います。ただ、大面積になった場合にはかなり表面が流れ出てしまうというようなことになっていきますので、そこの部分は、我々、注意しなければいけないということになると思います。
だから、皆伐するところと、あと、きょうも話題になったような間伐をしたり、あるいは択伐をしたりというような、いろいろな施業の形があっていいんだと思います。それによって生物多様性を含めた公益的機能を高めていく、そうした林業を我々は推進していく必要があるというふうに考えております。
以上です。
○森(夏)委員 ありがとうございます。
本日は、もう大変勉強させていただきました。
先ほど立花参考人からもありましたけれども、保護林、生産林、保安林といった形で、しっかり、やはり、計画を立てるときに、山のわかる人というのが重要になってくると思います。災害対策の面でもそうですけれども、国民が不安に思わないような林業経営をしっかりしていただきたいと思います。
また今後も御指導いただければと思います。ありがとうございました。
○武藤委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時二分散会