衆議院

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第9号 令和2年3月25日(水曜日)

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令和二年三月二十五日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 吉野 正芳君

   理事 池田 道孝君 理事 齋藤  健君

   理事 谷  公一君 理事 野中  厚君

   理事 細田 健一君 理事 石川 香織君

   理事 近藤 和也君 理事 濱村  進君

      泉田 裕彦君    稲田 朋美君

      今枝宗一郎君    上杉謙太郎君

      金子 俊平君    神谷  昇君

      木村 次郎君    小寺 裕雄君

      坂本 哲志君    笹川 博義君

      鈴木 憲和君    高鳥 修一君

      永岡 桂子君    西田 昭二君

      福山  守君    古川  康君

      宮腰 光寛君    宮路 拓馬君

      簗  和生君    青山 大人君

      大串 博志君    神谷  裕君

      亀井亜紀子君    佐々木隆博君

      佐藤 公治君    長谷川嘉一君

      広田  一君    緑川 貴士君

      石田 祝稔君    田村 貴昭君

      森  夏枝君

    …………………………………

   農林水産大臣       江藤  拓君

   農林水産副大臣      伊東 良孝君

   農林水産大臣政務官    河野 義博君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  水田 正和君

   農林水産委員会専門員   梶原  武君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 家畜改良増殖法の一部を改正する法律案(内閣提出第三五号)

 家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律案(内閣提出第三六号)


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     ――――◇―――――

吉野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、家畜改良増殖法の一部を改正する法律案及び家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省生産局長水田正和君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

吉野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

吉野委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。宮路拓馬君。

宮路委員 おはようございます。自民党の宮路拓馬です。

 委員の皆様方には、質問の機会をいただいたこと、感謝申し上げます。

 今、新型コロナウイルスの影響によりまして、多方面にわたり影響が出ております。牛肉の消費に関しても同様でございまして、需要が大幅に減退し、インバウンドの観光客が減り、あるいは外食を控える動きもあり、その中で枝肉価格が大幅に下落をしている。それに伴い、肥育農家も影響を受け、そしてまた子牛の価格にも影響が出ているということで、そうした状況において、どのような対策を講じていくか、これから議論がなされていくわけでありますが、ぜひ、政府挙げて、生産農家にも、あるいは肥育農家にも、そしてそれにかかわる和牛関係の関係者にも、再び希望を持って活動していただけるようにしていただきたいと思います。

 その和牛でありますが、二年前の全国和牛共進会で、我が鹿児島は総合優勝という形を飾らせていただきました。が、しかし、それ以前は、五年に一遍の共進会でありますが、大臣の御地元、宮崎が二回連続で優勝を飾られ、しかし、日本の和牛というのは、何も鹿児島、宮崎で改良されてきたわけではありません。

 さかのぼれば、和牛共進会、初回においては、和牛は肉牛たり得るかと。つまり、日本の牛というのは、役牛、農耕のための牛であるとか、そういった用途で用いられるものが主でありました。概して、肉牛としては海外のいわゆるビーフというものが念頭に置かれていたわけでありますが、それから、多くの関係者、もちろん生産者もございますが、それにかかわる人工授精師、あるいは削蹄師、そしてまた餌を工夫する方々、もちろん流通にかかわる方々等々、本当に多くの関係者の努力により、今、世界に誇る和牛というものが形づくられてきたというふうに考えております。

 そうした中で、特に最近の若い生産者の皆さん方は、丹精を込めて和牛を育て、それをいずれ海外に、霜降り肉を輸出して、国が築き上げてきた和牛のすばらしさというものを世界に伝えていきたいという夢を持って営農されておられます。

 ただ、そうした中、一昨年、和牛の精液あるいは受精卵を不正に中国に持ち出そうとする事案が発生したことを契機として、改めて、我が国の宝である和牛の遺伝資源の不適切な流通等を防止する必要性が認識されたところであります。

 今回の家畜改良増殖法の一部を改正する法律案、あるいは家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律案、これは新法になりますが、の二つの法案が提出されることになったわけでありますが、まずはその法案の概要についてお伺いをしたいと思います。

伊東副大臣 おはようございます。

 ただいま宮路議員から、法案の内容についてという御質問をいただいたところであります。

 まず最初の家畜改良増殖法の一部を改正する法律案につきましては、家畜人工授精所から生産、流通状況等の行政への定期報告、これの義務化を図る、そして、精液、受精卵について、家畜人工授精所以外での保存禁止を法定化する、さらに、特に適正な流通を確保する必要がある和牛の精液、受精卵について、ストロー容器への表示、譲渡の記録の義務づけ等の措置を講ずるものであります。

 また、もう一方の家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律案につきましては、家畜遺伝資源の不正取得等を不正競争として定義し、当該不正取得等に対する差止め請求等の民事上の救済措置を行う、また、不正利用のうち悪質なものに対する刑事罰の措置を行うという、この二法案であります。

 家畜人工授精用精液等の適正な生産、流通、利用を確保し、家畜遺伝資源の知的財産としての価値を保護することによりまして、日本の宝であります和牛をしっかり守っていく考えであります。

宮路委員 日本の宝である和牛の遺伝資源、これをしっかり守り抜くということで、今回、二法案が提出されたところでありますが、今回の事案というのは、中国に不正に輸出しようとするものでありました。

 従来、アメリカあるいはヨーロッパ、そして香港、台湾などでは、サーロインあるいはヒレなど、ステーキに向くいわゆる赤身の高級部位が人気を博しておりました。しかし、近年は、海外でも和牛のサシの入った牛肉の人気が出てきておりまして、我が地元鹿児島からも黒牛がアジア諸国あるいは米国、欧州に輸出をされ、大変好評を博しているところであります。

 特に、生活水準が向上いたしましたアジア圏を中心に、いわゆる日本のスタイルの食肉文化が普及してきておりまして、薄切り肉を使うすき焼き、焼き肉を出す和食店がふえております。そうしたところでは、肩ロースあるいはバラといった比較的手ごろな部位の需要がふえてきており、そうした意味では、今後、我が国の和牛産業、牛肉産業のビジネスチャンスというのはまだまだ広がっていくのであろうというふうに考えております。

 昨年の日米貿易交渉でも、六万五千トンもの牛肉の低関税率枠を確保、獲得できましたし、また、中国への輸出解禁交渉も進んでいると聞いております。しっかりと科学的なデータを提供して、早期にそれが解禁されることを期待しているところであります。

 一方で、先ほども申し上げたとおり、一昨年、和牛の精液や受精卵を不正に中国に持ち出そうとした事案が発生したことを受けまして、牛肉業界の皆様は、これまで一生懸命、育種、改良してきた和牛の遺伝資源が海外に流出し、海外で霜降り肉が生産され、そのマーケットで競合したり、あるいは日本に逆輸入される事態に陥ってしまうのではないかといったような懸念もされるところであります。

 本法案により、どのようにこうした海外流出事案の再発防止が図られるのか、具体的に御説明をお願いいたします。

伊東副大臣 宮路委員御心配いただいていることが懸念されるわけであります。一昨年六月に、ブローカーが持ちかけて、和牛精液等を徳島県の農家がブローカーに販売したという経緯があります。

 今回の家畜改良増殖法の改正によりまして、家畜人工授精所以外で保存した精液等の譲渡禁止を明文化しておりました。この上で、これに反した場合、回収、廃棄命令を措置することによりブローカー等の手に渡らないようにするとともに、精液、受精卵の容器への表示や家畜人工授精所による業務状況報告を義務づけ、トレーサビリティーの確保を図ることといたしております。

 さらに、精液等の利用を日本国内に限定する旨明示した契約を全国に普及した上で、新法におきまして、家畜遺伝資源の生産事業者との契約に違反して譲渡しを行った農家や、これを譲り受けたブローカーに対して、差止め請求を可能とすることといたしております。

 これらの措置によりまして、不正流通への抑止力を高め、本事案の再発防止を徹底していくこととしておりますが、畜産農家を始めとする関係者におかれましては、日本の宝であるこの和牛の遺伝資源について、御自分たちで守るという、そういった意識も高めていただくことが極めて重要と考えているところでありまして、この点につきましても啓発を進めていきたいと考えております。

宮路委員 ありがとうございます。

 家畜遺伝資源の流通にかかわることができるのは許可を受けた家畜人工授精所だけであって、許可を受けていないブローカーなどが扱うことはできないということを、これまでもそうだったわけでありますが、今回、法改正により、はっきりと打ち出していただくということ。また、流通の記録、帳簿をしっかりとつけていただくことによって、流通経路を明らかにしてトレーサビリティーの確保を図るということ。こうしたことにより、不正な流通を排除して、海外流出を阻止することが極めて重要であると考えております。

 ただ、一方で、実は、昨年は宮城県で、そして今月に入って沖縄県そして山口県で、血統書に書かれた父牛と遺伝学上の父牛が違っているという血統書矛盾事案が相次いで明らかになったというふうに把握をしております。

 日本の宝である和牛遺伝資源の海外流出を防ぎ、和牛の輸出促進を図っていこうとする中で、和牛ブランドに対する信頼を損なうようなことがあってはなりません。和牛が消費者に信頼されているのは、単においしいというだけではなく、一頭一頭の血統、出自が明らかであり、そして、それらが生産者の皆様により間違いなく生み育てられている、そういう安心感あってのことだというふうに考えております。

 これらの血統矛盾の案件に対する今回の農水省の対応と、あわせて、今回の家畜改良増殖法の改正がどのような形でそうした事案の再発防止につながるのか、御説明をお願いしたいと思います。

伊東副大臣 昨年七月に公表されました、今委員から御指摘ありました宮城県の事案に続き、本年三月には沖縄県、山口県からも同様の報告があったところでありまして、和牛の血統矛盾が確認されたことは大変遺憾である、こう思っております。

 農水省といたしましては、これら三県に対し、原因の究明及び再発防止をしっかり行うことを指導するとともに、他の都道府県に対しましても、同様の疑わしい事例があった場合には農林水産省へ迅速な報告を求めているところでもあり、また、立入検査など適切な対応を依頼いたしているところであります。

 特に、宮城県の事案につきましては昨年十二月に県が獣医師を県警に告発いたしましたが、今後も悪質な事例については厳正に対処していくことといたしております。

 また、家畜改良増殖法の改正案におきましては、精液ストローへの表示義務化による取り違え防止、また家畜人工授精所に対する業務状況報告の義務化、家畜人工授精師の欠格事由の厳格化、場合によっては、罰金刑以上の刑に処せられた場合は免許を取り消す、こういったことを図ることとしておりまして、これらの措置を通じて、家畜人工授精師協会等の関係団体とも連携をしながら、再発防止を徹底してまいりたいと考えております。

宮路委員 先ほども申し上げたとおり、長い月日をかけ、多くの研究機関を始めとする本当に多くの関係者の努力の結晶として今の和牛の遺伝子があり、そして、それが一頭一頭しっかり出自がわかる、血統が明らかであるということが和牛にとってのまさに命であるというふうに考えております。そうした血統矛盾事案というのはあってはならないことであると考えておりますので、今ほど御答弁をいただきましたが、今回の事案に対する厳正な対処をお願いするとともに、再発防止に、立入検査の数をふやすなど、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 今回の法改正によりまして、容器への表示を義務化することで取り違えが起きにくくなる、今ほど御答弁をいただきました。また、流通管理チェックをしっかりと行うことで、万が一取り違えが起こったとしてもそれを発見しやすくなる、つまり、トレーサビリティーが確保されるということで、不正な流通に対し大きな抑止力が働くことが期待できると考えております。

 一方で、本法案によってこうした環境が整えられたとしても、現場の理解、すなわち、先ほど御答弁いただきましたが、日本の宝である和牛を何としても守るんだという関係者の意識が高まらなければ、実効性のある取組にはならないというふうに考えております。

 また、記録の作成や契約の締結など、今般の法改正により新たに発生する事務、生産者、関係者の負担がふえるのではないかと心配する向きもございます。さらに、国や自治体が記録をしっかりする体制の整備も必要であるというふうに考えております。

 そこで、現場への支援、あるいは国の今後の体制づくりについてお伺いをしたいと思います。

伊東副大臣 今回の家畜改良増殖法の改正に向けましては、精液等の譲渡を行う者につきましては、都道府県知事の、家畜人工授精所の許可を得るように指導し、その数は、昨年九月の時点では千五百七十七カ所でありましたが、本年一月には二千百十二カ所にふえるなど、現場でも和牛遺伝資源の適正流通に向けた取組が進んでいるところであります。

 また、畜産現場におきましても、和牛遺伝資源保護の重要性を啓発するポスターの配布、五万枚ほどを配布しておりますし、家畜人工授精師への技能や法令遵守に関する研修、契約についての説明会、これらを行うことによりまして、畜産農家やあるいは家畜人工授精師などの意識の啓発に努めてきているところであります。

 こうした中で、法改正に伴い現場に生ずる負担につきましては、今委員からも御指摘がありましたが、これは先ほどからもお話ししているとおり、日本の宝である和牛の遺伝資源の保護の重要性に鑑み、御理解、御協力をいただけるものと考えているところであります。

 農水省としましては、現場の負担をできるだけ軽減するために、和牛遺伝資源の流通履歴に関する帳簿の記録、保管につきましては、帳簿を電子的に管理できるシステム構築への補助金、これはALICより二分の一補助になるわけでありますけれども、このシステム構築の補助金、また、種雄牛名などの、容器のストローへの表示につきましては、ストローの印刷機等の導入補助、これもALICの補助事業として行いますが、この補助、さらにまた、知的財産的価値の保護に向けた契約の締結につきましては、契約のひな形や約款の普及により支援をしていくことといたしております。

 将来的には、農水省に情報がきちっと集約できるような、そういうことも目指していきたいと考えております。

宮路委員 ありがとうございます。

 新たに今回システムを構築していくということでありますが、そのシステムについては副大臣の御答弁で十分よくわかりましたが、今後のスマート農業の推進に資するものとしていただくようにお願いしたいと思います。

 農業の現場におきましても、例えば酪農では、カメラやセンサーを搭載した搾乳ロボット、あるいは、農薬散布を行う自動飛行ドローン、そして、レタスなど作物の自動収穫を行うロボットであるとか、あるいは、そうした収穫した作物の選果や箱詰めをする自動ロボットなど、さまざまなスマート技術の導入が進んできておりますが、農業現場だけではなく、農業には、今回のような記帳、帳簿の記録や契約の締結など、そういった事務的な作業も当然あるわけでありまして、そうした作業を負担に感じる方も多くいらっしゃいます。例えばスマホで手軽に、高齢の方でもできる限り簡単に作業ができるようなシステムの構築を、ぜひ目指していただきたいというふうに考えております。

 一方、実効性という意味では、遺伝資源のトレースの仕組み、トレーサビリティーの確保や不正競争防止の仕組みが整備されるということもとても重要なことでありますが、それらに違反した場合の罰則が抑止力として十分かどうかという点も大変重要であると考えております。

 先ほど法案の概要の説明の中で、刑事罰を新たに設けるということでありましたが、現在の家畜改良増殖法では、既にさまざま既存の罰則規定がありますが、一番重いものでも百万円以下の罰金であり、懲役刑は規定されておりません。

 和牛の遺伝資源は非常に貴重なもので、これを損なうような不正行為に対しては相応の刑罰が必要だというふうに考えておりますが、今般提出された法案においてはどのような措置になっているのか、お伺いをしたいと思います。

水田政府参考人 お答えいたします。

 罰則が抑止力として十分かどうかという御質問をいただいたところでございます。

 今回、知的財産的価値の保護という観点から、家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律案という新法を出させていただいているところでございます。

 この新法におきましては、差止め請求とか損害賠償などの仕組みのほか、悪質な場合には刑事罰を措置するということとしておりますが、この場合の罰金の額でございますが、和牛遺伝資源などの不正利用は、被害が甚大になり得るということから、高額の罰金が科される類似の法制度を参考といたしておりまして、個人には十年以下の懲役又は一千万円以下の罰金、この両方が科される場合もございます。それから法人には三億円以下の罰金というふうにしたところでございます。

 これは、種苗法の育成者権ですとか、特許権ですとか著作権ですとか、こういったものの侵害に対する罰則と同じ内容ということになっているところでございます。

 和牛の精液の価格でございますが、安いもので千円、あるいは、高いものですと一万円程度ということでございます。また、受精卵につきましては一万円から十万円程度であることを踏まえれば、この法案による罰金により十分な抑止効果が期待できるというふうに考えております。

宮路委員 あくまでもこの刑罰というのは、科されないことが一番でありますけれども、いざ科されるとなるとそれだけのサンクションがあるということをしっかりアナウンスするということが、国を挙げて、そして関係者を挙げてこうした不正流通を防止するんだという強い意思のあらわれとして認識されることになると思いますので、ぜひその点についてもしっかりと周知を図っていただきたいと思います。

 今般の法改正でありますが、先ほど申し上げたとおり、畜産農家、特に若い方々が夢を持って営農を続けていけるよう、和牛の遺伝資源の流通の確保を図るべく提出されたものであると思います。今般のこの法改正をもとにして、さらなる和牛の振興を図っていただくことを期待したいと思います。

 さて、最後になりますが、二〇一九年の農林水産物、食品の輸出実績は九千百二十一億円でありました。全体では、二〇一八年同期比〇・六%増、微増にとどまってしまいましたが、その中でも牛肉の輸出というのは二割増しの二百九十七億円となりまして、和牛の海外での人気は更に高まっていると感じております。そのような中、食肉処理の認定施設の増加も輸出増の後押しになったというふうに考えております。

 また、本年四月に設置されます農林水産物・食品輸出本部において、今後、政府一丸となって輸出促進の基本方針、実行計画を作成し、さらなる輸出拡大を目指していくというふうに認識をしております。その意味では、まさに今こそ和牛を世界に売り出すチャンスであると考えております。

 ただ、残念ながら、輸出に向けるための牛肉生産が落ち込んでいる。つまり、離農がふえ、生産がなかなか伸び悩んでいるというふうにも認識しているところであります。

 江藤大臣が就任されてから、令和元年度の補正予算において、増頭奨励金など、和牛生産の倍増を強く打ち出されてこられました。また、先ほど申し上げたとおり、日米貿易協定での牛肉輸出枠の拡大あるいは中国への輸出解禁を織り込んで、二〇三五年までに和牛生産を三十万トンに倍増させる計画だというふうに伺っております。

 大臣に、今後の和牛の振興について、その意気込みを伺いたいと思います。

江藤国務大臣 まず、宮路議員におかれましては、この二法につきまして自民党でPTを組みました。私も座長代理でありましたけれども、宮路議員も座長代理、同格で、この法案の党内での作成について大変な汗を流していただきました。御苦労さまでございました。

 不正競争防止法も絡めて、これを参考にしてつくった法律であって、なかなか越えるハードルは高かった二法でありましたけれども、必ず現場では実効性のあるものになると思います。そのことの御努力について、まず感謝を申し上げたいと思います。

 とにかく、日本にしかないものをやはり世界で売るということはとても合理性のあることで、十四万九千トンの和牛生産能力ですけれども、中国に行くと、もうとにかくうちで扱わせてくれと、下手をすると、一手でうちで扱わせてくれというような人もいるぐらいで、せんだっても、数カ月前に事務次官が出張で中国に行ったんですが、もうあらゆる人間から、うちで扱わせてくれ、うちのスーパーチェーンだけで全部、十四万九千トン扱えるからというような人までいたぐらいでありまして、とにかく、日本としては、高く買ってくれるところに売るというスタンスでこれからいきたいと思っております。

 そのためには、まずは繁殖雌牛をふやし、そして、そのためには、畜舎に対する建築基準等も見直す必要もある。それから、いわゆる畜産の廃棄物、いわゆる野積みはできませんから、そういったものもやらなきゃなりませんし、技術的な指導もしなきゃなりません。いろいろなハードルはありますが、あくまでも生産現場の元気が出るように、そして農業所得が上がることを目的に、輸出の拡大に向けて、処理場の整備等も含めて、全力を挙げて取り組んでいきたいと考えております。

宮路委員 大変心強いお言葉をいただきました。つくれば売れるというものを、我が国は歴史をかけて、時間をかけてつくり出してきたということであります。

 令和四年、二年後に開催されます第十二回の全国和牛共進会、そのテーマは和牛新時代であります。今まさに和牛は新しい時代を迎えているわけでありまして、今回の法改正を含め、国全体の総力を挙げて畜産業の未来を切り開いてまいりたい、このことを申し上げ、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

吉野委員長 次に、福山守君。

福山委員 おはようございます。自由民主党の福山でございます。

 本日は、宮路先生の後、和牛遺伝資源の保護について質問させていただきます。若干かぶる点もございますけれども、視点、観点を変えた見方で御質問をさせていただきたいと思います。

 私は、ちょうど一年前に、自民党で和牛遺伝資源の流通管理に関する専門検討PTが立ち上がったときに、農林水産委員会でこの問題について質問をさせていただきました。そして、和牛の遺伝資源の流出を防ぐために法律が完備されていないことも指摘をさせていただきました。

 その後、専門PTには私も参加をさせていただき、さまざまな議論もさせていただきました。政府に提言も行いました。PTにおいては、法律で和牛遺伝資源の輸出を制限できないかとのアイデアも議論されましたが、政府からは、輸出を法律で制限するのは難しいとの見解が示されました。

 このため、法的に輸出制限ができないことから、長い間、畜産農家や家畜改良関係者に輸出の自粛をお願いし、輸出に向けた動きがあれば関係者で説得に当たるという非常に大変な努力を求めてまいりました。今般の法改正により、国が輸出を法律で一律に禁止するということができるようになるのかどうか、改めてお伺いをいたします。

水田政府参考人 お答えいたします。

 輸出を規制する措置につきましては、ガット協定におきまして原則廃止ということになっているところでございます。ただ、同協定の二十条におきまして例外が認められております。その一つとしては、人とか動物又は植物の生命又は健康の保護のために必要な措置、さらには、有限天然資源の保護に関する措置などについてでございます。

 ただ、これらに該当しない和牛遺伝資源の保護というものを目的に法律において輸出を一律に制限するということは、このガットに整合的な政府の規制措置といたしまして講ずることはできないところでございます。

 しかしながら、今回は別の手法でございまして、和牛遺伝資源の持っております知的財産的な価値に着目いたしまして、不正競争防止の仕組みによりまして、和牛の遺伝資源を海外に流出させないという契約に反して輸出しようとした場合に差止め請求を可能とするということで、不正輸出を未然に防ぐ新法を今国会に提出することとしたところでございます。

福山委員 輸出禁止が国際協定との関係で非常に難しいというのは理解をいたします。一年前も、実はそういった事情から和牛遺伝資源を知的財産権として認められないか質問をさせていただいて、種苗にはUPOV条約があって国際的に育成者権が認められておりますが、家畜には条約がなく知的財産権にするのは難しいが検討すると、そのときに答弁いただきました。その結果、農林水産省は、和牛遺伝資源の知的財産的価値の保護強化に関する専門部会を設置し、知的財産に関する専門家などの意見を聞いて中間取りまとめを公表し、法案を提出するに至ったと承知をしております。

 これまで長い間、畜産関係者は、法律により海外への不正な持ち出しを防止することを望んできましたが、知的財産権という概念では法制化に至らなかったわけですけれども、今回どのような点を工夫されて法制化に至ったのか、御説明をお願いいたします。

河野大臣政務官 家畜の遺伝資源の保護につきましては、平成十八年に家畜の遺伝資源の保護に関する検討会を立ち上げまして、和牛を始めとする家畜について、知的財産制度の活用も含めた遺伝資源の保護に係る問題点を明らかにするなどの検討を行っておりました。

 その際、和牛などの家畜につきましては、育成権者が認められている植物のように、同一世代でその特徴が十分均一であること、いわゆる均一性、何世代も増殖しても特性が安定をしているということ、いわゆる安定性、こういった特性が見られないという点で、知的財産を構成することは困難とされていたところでございます。

 また、種苗の育成権者のように知的財産権を設定する仕組みにおきましては、外国における権利の保護は国際条約により当該外国政府が負うことになっておりますけれども、家畜遺伝資源に関しましてはそのような国際条約がないため、実効性のある保護が得られないということになっております。このため、今回は、新たな権利の創設という仕組みによらず、行為規制による仕組みにより保護を図るとしたところでございます。

 具体的には、平成三十年の不正競争防止法の改正によりまして、限定提供データに関する規定が導入されましたけれども、これは、価値のあるデータを限られた者に提供する際に、それ以外の者が不正にこれを取得する行為に対して差止め等の救済措置を設けるものであり、これと同様の不正競争防止の仕組みを構築することによりまして、今般、家畜遺伝資源の知的財産的価値の保護を図ることができるということになったものでございます。

福山委員 不正競争防止法の限定提供データに関する規定が導入されたということが転機になったということで、それでよろしいですね。

 この限定提供データというのは、携帯電話の位置情報データや自動車走行用の地図データ、またPOSシステムで収集された商品ごとの売上げデータなどが該当すると言われております。提供している業者に対価を支払えば利用でき、マーケティングや商品企画などでは重宝します。しかし、そのデータは、契約で認められた範囲でしか使用されないようにしなければならず、勝手に公開されたり転売されてしまうと、ビジネスとして成り立ちません。不正競争防止法では、このような行為を不正競争として規制するとともに、そのような不正な行為の結果できた成果物も差止めの対象としていると理解をしております。

 それでは、今回提出された家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律案は、この不正競争防止法の仕組みを参考としたと伺いましたが、この新法や家畜改良増殖法の改正案により、具体的にどのように和牛遺伝資源を守っていくのか、お伺いをいたします。

河野大臣政務官 和牛遺伝資源の海外への流出につきましては、家畜改良事業者を始めとした畜産業界関係者の皆様の共通の強い認識として、これを許さないという思いがございます。

 現在、人工授精用の精液などの売買に当たっては、和牛遺伝資源の利用を国内に限る、こういった契約の普及が図られているところでございます。

 こうした中で、今回の新法によりまして、契約に反した使用、譲渡などを不正競争行為と位置づけることによりまして、その上で、不正競争行為により営業上の利益を侵害された家畜遺伝資源の生産事業者、いわゆる家畜改良事業者によります差止めの請求、また悪質性の高い不正競争行為に対する罰則などを措置することとしてございます。

 また、家畜改良増殖法の改正によりまして、家畜人工授精所に対しまして、和牛の精液の譲渡などを記録すること、及び十年間その記録を保管することを義務づけるほか、精液、受精卵の容器となるストローに表示された種雄牛名など基本情報をもとにトレーサビリティーの確保を図るとしたところでございます。

 このように、今回の法改正によりまして、和牛遺伝資源を契約に反して国外に持ち出すこと、それ自体を不正競争行為とすることが可能となり、また、そのような行為に関与した者も特定されるため強い抑止効果が発揮されることとなるというふうに考えておりまして、この二法案による措置を着実に実施し、和牛遺伝資源をしっかりと守ってまいりたいというふうに考えております。

福山委員 今御答弁いただいたそういう考え方は、動物の品種保護の分野では世界でも余り例がない画期的な仕組みだと思いますので、しっかりと運用をしていくということを心がけていただきたいと思います。

 また、今、和牛遺伝資源を国内利用に限る内容の契約が締結されていればと答弁をされましたが、今般の法整備では契約違反に対して差止め請求や損害賠償を可能とする不正競争防止法を参考にしたとのことでしたが、現場では、そのような契約はどのくらい結ばれていて、今後どのように普及をしていくお考えでしょうか。また、全部の畜産農家と精液の販売業者が契約を結ぶことは、大変な手間がかかります。この点についても、どのような対応を検討されているのか、お伺いをいたします。

水田政府参考人 お答えいたします。

 契約がどのくらい結ばれているかということでございますけれども、今まさにこの普及を図っているところでございますが、既に、宮崎県とか鹿児島県、鳥取県など十七の県におきましては、県の試験場で造成されました県有牛、これの精液の売買に関して、利用範囲や利用に当たって遵守すべき事項を盛り込んだ契約が交わされているというふうに承知をしております。

 さらに、こうした契約慣行を現場に定着させるためには、家畜改良事業団などの大口の民間の家畜人工授精所において積極的に取り組んでいただくことが効果的であると考えておりまして、契約のひな形をお示しするとともに、説明会などにおきまして相談を受けてきたところでございます。

 その結果、家畜改良事業団は、全国のユーザーと契約を円滑に行うため、本年四月に施行される改正後の民法に基づきまして、ホームページなどで約款を公表いたしまして、それを相手方に伝えて合意するということによって契約を行う方法、これを採用して、既に約款の案をホームページに掲載をしているところでございます。

 このような取組によりまして、大勢の農家の方と契約を円滑に結ぶという取組を御紹介いたしまして、事業者の方、畜産農家の方の負担軽減に配慮しながら、契約の締結に向けた取組、これを更に進めてまいりたいと考えております。

福山委員 畜産農家は高齢化が大変進んでおり、契約と言われても難しくて敷居が高いので、丁寧に説明をして普及を進めていっていただきたいと思います。

 今回の法律は、関係者が大変な苦労をされて、知恵を絞り尽くして工夫されたものだと思っております。江藤大臣は、常日ごろから和牛の振興に熱心に取り組んでおられ、今回の基本計画や酪肉近基本計画の検討でも、和牛の飛躍的な生産基盤強化を図り、強力に和牛肉の輸出を推進する方針と伺っています。大臣お地元の宮崎牛は、先日、アメリカで発表されたアカデミー賞のパーティーでも振る舞われたと報道もありました。

 今回の二法案により牛肉の輸出拡大をどのように進めていくのか、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

江藤国務大臣 まず、福山先生におかれましても、御自分でもおっしゃいましたけれども、森山先生とか野村先生とかと同格、私と同格の座長代理をお務めいただいて、大変汗を流していただき、そう言うとたくさんメンバーがいるように誤解される方もおられるかもしれませんが、座長を合わせて十一人の限られたメンバーでありますので、毎回御出席いただいて、大変ありがとうございました。

 やはり、日本の強みを失わないということがとても大事です。この後も、この委員会で種苗法の話もまた出てまいりますけれども、強みをやはりぱくられない、ほかのところで和牛に近いものを生産されて競争力を失わないということがとてもまずは大事だと思います。

 その意味で、この二法を出させていただくことによって、罰則規定もきちっと厳しくさせていただきました。授精師のことについても欠格をするということでやらせていただきますが、しかし、どんなに罰則を強くしても、やはり農家の意識、その関係者の意識の高さが一番求められるということは申し上げておきたいと思います。

 そして、これからは、引きは間違いなく強いということでありますが、先ほど申し上げましたからもう言いませんが、日本においては、例えば食肉処理場をつくっても、完成してから二年間、完成までに、いわゆる衛生管理がクリアされたという許可がいただけないというような事案もありました。そういうようなことがないように、これからは、輸出増加に向かっては、食肉処理場ももっと増強していかなきゃなりませんが、設計の段階からもう、衛生管理の基準が守られているのか、並行してその検査をすることによって、完成して日を置かずにそこが認定されるというような手順も踏んでいきたいと思っております。

 それから、四月一日からいよいよ対策本部が開かれますけれども、相手の国に対しても、しかるべきアクセスもさせていただきたいと思っております。

 いずれにしましても、国内でしっかりと生産しなければ、もう売るものがないわけですから、まず生産基盤をしっかり拡大をする。それには、今コロナで、直近の私の地元の競りでも、六十万円台まで、六十五万ぐらいまで子牛の値段が今落ちております。これによって生産の意欲が失われないように、直近のコロナ対策に向けての対策をやることもこの二法にあわせて今求められているということでありますので、また党内で汗を流していただければありがたいと思います。これからもよろしくお願いいたします。

福山委員 今、それぞれ御答弁をいただきました。また、大臣からも、これからの海外展開についてのお話もいただきました。

 実は、昨年三月三日に、海外に違法輸出といいますか、この問題が起きたのは去年の三月三日でございます。これは、大阪府警の方が逮捕、拘束いたしまして、そして、その販売元は実は徳島だったということで、我がふるさとだったということで、一年前に、この問題についておわびを兼ねながら質問をさせていただいたわけでございます。

 先ほど宮路先生も、大臣からいろいろ和牛のお話もお聞きしまして、本当に日本のすばらしい宝でございます。この和牛というのが、私もその過程で勉強させていただきまして、アメリカに渡り、そしてまた、今オーストラリアに渡った、研究用のそういう形の中でWAGYUとして出されておるというふうなことも伺いました。ただ、日本のこの技術のすばらしさというのはもう十年、二十年も前のものであって、今の日本の和牛の品質というのは世界で誰も追いつけないだけのすばらしい状況であるということの勉強もさせていただきました。

 そういう中で、これから、この二法案ができたことによって、更に我が国の財産であるこのすばらしい品種、種類のこのようなものを守っていく、私は、今後とも、農水省の大臣以下皆様によろしくお願いいたしたいと思います。

 それと、最後になりますけれども、やはり今、コロナ、この問題でいろいろ、生産者、あるいは販売、卸そして小売、いろいろな部分において、私も地元の皆さんと話をすると、かなり厳しい状況にあるようでございます。やはり、それぞれホテル、旅館も観光客は少ない。そしてまた、そういう中で、いろいろ、卸でやっていた分がみんな在庫でたまる。そしてまた、各飲食店、これもお客さんが減って、そして、いい肉ほど、なかなか、そういう場所に出ておったのが制限されて残っていく、そういう中で、大変苦労しております。

 きょうの朝の農業新聞によっても、いろいろな形で今政府の方も考えられていっているようでございますけれども、生産者、そして小売、中間業者、そういう方にとっても、やはり今一番大切な時期だと思います。知恵を絞って一生懸命やっていただいているのは十分理解をしております。我々も、しっかりとそういう中で提言をしながら、そういう生産者、あるいはそういう販売者の皆さんとともに頑張っていきたい。そして、このすばらしい和牛がこれからの我が国の財産としてこれからもしっかり残りますように、今回の法案をしっかり運用していくことを私も誓いまして、私の全ての質問を終わらせていただきます。

 きょうはどうもありがとうございました。

吉野委員長 次に、濱村進君。

濱村委員 公明党の濱村進でございます。

 本日は、和牛遺伝資源二法について質問をさせていただきます。

 まず、平成三十年六月に、和牛の精液、受精卵が輸出検査を受けずに海外、中国に持ち出されました。これは、中国の当局によって輸入不可とされて、輸入が水際でとどまったというような状況がございましたけれども、この事案におきましては、家畜伝染病予防法に基づいて家畜防疫官によって輸出検査を受けていないということでございました。これによりまして、家伝法四十五条の第一項を適用させて、輸出の際に家畜防疫官の検査を受けて輸出検疫証明書の交付を受けていない、本来であればこういう輸出検疫証明書の交付を受けなければいけませんよということなんですけれども、これを受けていないということで、これに違反したということでございました。こうした違反事案があったために、刑事訴訟法にのっとって刑事告発を行ったわけでございまして、水際でとどまったということはあるんですけれども、本当に見つかってよかったなと思っております。

 一方で、仮に中国が輸入を許可してしまっていたらどのような被害が想定されていたのか、伺いたいと思います。

水田政府参考人 お答えいたします。

 平成三十年六月の和牛精液、受精卵の中国への不正な持ち出しの事案でございますが、大阪地裁の判決によりますと、今回の不正輸出未遂事件でございますけれども、受精卵が注入されたストローが二百三十五本、それから精液が注入されたストロー百三十本が持ち出されようとしたということでございます。

 これが、もし実際に流出いたしまして、現地の肉用牛の生産というものに利用されるようなことが起こるとすれば、海外における和牛肉の市場が失われ、我が国の牛肉輸出の拡大に支障を来すという事態に陥っていたということが懸念されるところでございます。

濱村委員 今、新型コロナウイルスの影響もあって、和牛の、高級であればあるほど、高級肉に関しては少し需要がないという状況もあって、なかなか本来想定していた売上げを得ていない、こういうことがございますけれども、仮にこの受精卵、精液が中国に持ち出されていた場合は、中国でこれが再生産されて、現地で肉用牛として肥育されるというようなことが想定されていたということで、極めて重大な被害が起き得る状況であったということでございます。

 であるからこそ、今回の二法案は非常に重要な法案であると思っておりますけれども、今回、この二法案、今審議をスタートしたわけでございますけれども、これが仮にこの当時も法案として存在していれば、あるいは、これは過去において適用させても意味がありませんから、大事なことはこれからどういう効果が発現されるかということを考えていかなければいけませんけれども、今回の二法案があることによって、こうした不正に流出させるような、まあ未遂の事案でございますけれども、こうした事案等においてもどのような効果が発現されると考えるのか、伺いたいと思います。

河野大臣政務官 今回の改正によりまして、家畜人工授精所以外で保存した精液等の譲渡禁止を明文化をいたします。こうした上で、これに反した場合の回収、廃棄命令を措置することによりまして、ブローカーなどの手に渡らないようにするということとともに、精液、受精卵の容器への表示や家畜人工授精所による業務状況報告を義務づけまして、トレーサビリティーの確保を図るということにしたところでございます。

 さらに、精液等の利用を日本国内に限定するということを明示いたしました契約を全国的に普及をさせた上で、新法におきまして、家畜遺伝資源の生産事業者との契約に違反をして譲渡し、譲受けを行った農家やブローカーに対しては差止め請求を可能とするということにしたところでございます。

 このため、今回の二法案が整備されていれば、差止め請求により輸出そのものをとめることが可能となるほか、新法により刑事罰が措置されていることがこのような不正行為の抑止力となったのではないかというふうに考えております。

濱村委員 抑止力が働くということが非常に重要だと思っております。いわゆるブローカーと言われるような方、一部、精液とか受精卵を扱っている方々の中でいえば、コレクターのような方もおられるというふうにも聞いておりますけれども、こうした方々が不正に持ち出しあるいは輸出をしようとしても、これ、やめておこうかと。差止め請求されて、実際は使えないとかあるいは刑事罰がかかるというようなことがあれば、まあ、やめておこうかということでございます。

 逆に言えば、先ほど福山先生の質問にもございましたけれども、一律に禁止をしないとか、あるいは知財として認めるかどうかというような論点もあろうかと思っております。こうした法律のたてつけにしなかったということについて改めて私からも確認をしておきたいと思っておりますけれども、植物であれば、種苗法にのっとって育成者権が設定されます。あるいは、新品種の保護のためには国際的な条約、UPOVの条約がございます。

 一方で、和牛遺伝資源に関しては、育成者権を設定するという方法はとりませんでした。なぜそういう方法をとらなかったのか、伺いたいと思います。

河野大臣政務官 和牛などの家畜につきましては、育成権者が認められている植物のように、同一世代でその特徴が十分均一である、いわゆる均一性、何代増殖しても特性が安定しているという、いわゆる安定性といった特徴がないといった点で知的財産権を構成することは困難と考えております。

 また、種苗の育成権者のように知的財産権を設定する仕組みにおいては、外国における権利の保護は国際条約によりまして当該の外国政府が負うこととなりますけれども、家畜遺伝資源についてはそのような国際条約が存在しないため、実効性のある保護が得られないということになろうかと考えております。

 このため、家畜については、種苗法の育成権者のような形で知的財産権の保護を行う仕組みを構築することが困難であるというふうに考えておりますことから、不正競争防止法を参考に、知的財産的な価値の保護を強化することといたしたところでございます。

濱村委員 更に伺いますが、一律禁止ではないというたてつけにしたと、外為法の考え方を適用しております。武器弾薬とか天然資源の輸出と同様に適用して、輸出を一律規制するという方法をとらなかったというのはなぜなのか、伺います。

水田政府参考人 お答えいたします。

 外国為替及び外国貿易法、外為法と称しておりますが、におきましては、経済産業大臣の許可などの輸出規制が設けられております。同法に基づく輸出貿易管理令におきまして、武器とかその原材料、あるいはウナギの稚魚、こういったものについて、こうした規制の対象となっているところでございます。

 これは、ガット協定において原則廃止をすることとされている輸出規制の例外でございまして、同協定の二十条及び二十一条におきまして、「人、動物又は植物の生命又は健康の保護のために必要な措置」、あるいは有限天然資源の保護に関する措置、これはウナギの関係でございます、それから、武器弾薬及び軍需品の取引に関する措置、こういったものが認められているということでございます。

 一方で、こうした例外に該当しない和牛遺伝資源の保護でございますが、これを目的に法律において輸出を一律に制限すること、これは、ガット協定に整合的な政府の規制措置としてとり得ないという状況でございます。

 なお、一般的に申し上げますと、家畜遺伝資源、すなわち和牛以外の乳用牛とか豚につきましては、国際的な流通がかなり行われておりまして、我が国も外国の品種を導入、活用して改良を行っているところでございます。こうした中で、和牛だけについては外に出さないでやっていきたいというようなことでございますので、こういった面でも難しい面があるのではないかということもございます。

 このため、家畜遺伝資源の有する知的財産的価値に着目いたしまして、不正競争防止法を参考にいたしまして、和牛遺伝資源を海外に流出させないという当事者間の契約、これに反して輸出しようとした場合に差止め請求を可能とする、こういったやり方によりまして不正流出を防ぐ、こういう新法を今国会に提出することとしたところでございます。

濱村委員 日本は、和牛以外について外国品種を輸入しながら生産活動を行っております。そうした観点からも、ガット協定との整合性はしっかりと担保した上で、不正競争防止法のあり方を参考にして今回は法整備をしたということでございました。

 もう一つ、更に伺います。

 これも先ほどの福山先生の質問の中でも触れられておったところでございますが、不正競争防止法、限定提供データの不正取得等に対する規則を参考にしたというのが今回の家畜遺伝資源に係る不正競争防止法でございますが、この点も先ほど質問があったとおりでございますけれども、どういった点を参考にしたのか、また、その参考にした理由というのは何なのか、伺います。

水田政府参考人 お答えいたします。

 不正競争防止法で参考にした点ということでございますけれども、不正競争防止法には、もともと、営業秘密といった、特定の者以外には流布することのない情報、これにつきましては、これまでも知的財産としてずっと保護されてきたところでございます。

 ところが、精液などの家畜遺伝資源につきましては、その遺伝情報は多くの人々に流布しているということから、これと同じようなやり方で知的財産として保護するということは難しくて、さらなる工夫が必要だったという状況でございます。

 しかしながら、その後、我が国におきます知的財産に関する理解、あるいは制度による保護が進みまして、平成三十年の不正競争防止法の改正によりまして、限定提供データ、すなわちビッグデータのようなものでございます、秘密に当たらない情報を集積したもので、集積することによって知的財産的価値がある、こういったものについて、限られた者に提供されるというデータでございますが、これにつきまして、それ以外の者が不正にそれを取得する行為を不正競争として、差止めなどの救済措置を設けるという規定が不正競争防止法に導入をされたということでございます。

 このことを踏まえまして、多くの農家に配付している家畜遺伝資源についても、使用する者などを国内に限定している、こういったものについては、限定提供データと同様の不正競争防止の仕組みを構築することによりまして、この知的財産的価値の保護を図ることができるように、今回したものでございます。

濱村委員 特定の者以外に流通しないということは非常に大事なポイントだと思っております。

 その上で、家畜遺伝資源に係る不正競争防止法におきましては、不正競争、これは定義が設けられていて、第二条に定義がございます。これは非常にたくさんあって、三項の一号から十三号まで規定されております。お読みになられた委員の皆様も多くいらっしゃると思いますが、これは、読んだら、読めば読むほど、迷路に迷い込むような、入れ子のような書き方になっておりまして、非常に難しいなと、私は個人的に理解するのが難しかったです。

 ただ、その中においても、四号におきまして、契約外不正譲渡等行為の内容について記載があるというふうに思っております。この契約外不正譲渡等行為というのは五号に出てくる言葉でございますけれども、この「明示された使用する者の範囲」であったり、「使用の目的に関する制限」というのは重要なポイントだと思っておりますが、これがどのように規定されていくのか、実際にそれがちゃんと運用されていかなければいけませんので、これの運用もイメージした上でどう規定されると想定しておるのか、伺いたいと思います。

水田政府参考人 お答えいたします。

 新法の第二条第三項第四号におきます契約外不正譲渡行為ということでございます。

 これは、家畜の遺伝資源の生産者と家畜人工授精所等が結ぶ契約、あるいは家畜人工授精所と農家とが結ぶ契約、こういった中に明示される使用する者の範囲及び使用の目的に関する制限といったことになるわけでございますけれども、一般的には、契約でございますので、さまざまな内容の制限というのがあり得るわけでございますが、この新法は、和牛遺伝資源の海外への不正な流出を防止することを念頭に検討してきたところでございまして、このような観点からは、使用の目的に関する制限といたしましては、今回契約のひな形とかに示しておりますように、国内で利用する目的であることなどを想定しているところでございます。

 また、例えば、県の畜産試験場で造成された種牛等でございますと、県内での利用に限るといったことも想定されるところでございます。

 また、同様に、使用する者の範囲に関する制限といたしましては、国内で利用することを目的とする者であることを想定しております。

 また、県の畜産試験場とかで生産されるものであれば、県内の畜産農家などであることといった者が想定されるというところでございます。

濱村委員 これは、ひな形をしっかり提示していただきながら、国内使用であったり県内使用であったり、こうした利用の範囲を適切に設定していっていただくように業界の方々の協力も得ながらやっていかなければいけないところだと思っております。

 不正競争として定義されている行為について伺いたいと思いますが、この不正競争を行った者からすれば、家畜遺伝資源の譲渡、引渡し等を受けた者が行う行為について、これが悪意であること又は重大な過失により知らないということが条件となっております。

 精液や受精卵につきまして、家畜遺伝資源として地域内で顔が見える相手に譲渡するという慣例があります。先ほどの質問の中でも、十七の県では国内利用限定の契約があるというような話もございました。そうした慣例から考えれば、通常取引する相手というのは顔が見える方なんだろうというふうに思っているわけでございますけれども、この条文にあります「重大な過失により知らない」ということは極めて限定的なことなのかなと思っておりますし、悪意が感じられるようなものであるんじゃないかと私なんかは捉えているわけでございますけれども、これはどのような場合を想定されておられるのか、伺いたいと思います。

水田政府参考人 お答えいたします。

 この重大な過失でございますけれども、これは、業界の関係者として当然果たすべき義務、確認とかこういったことを怠るといったことを指すものでございます。

 例えば、一部の県有牛、県の畜産試験場で造成された牛につきましては、その精液等の使用範囲が県域内に制限されていることがございまして、これは、県のホームページを参照すれば当該制限についても把握ができるというものでございます。そうした精液について、ストローについている種雄牛の名称等から確認をすれば使用範囲の制限が容易に判明するということでございますので、そういった確認を怠り、不正な経緯を知らずに当該精液を入手する場合、これは重大な過失に該当する可能性があるというふうに考えております。

 また、一方で、和牛の精液につきましては、輸出が許容されていないということにつきましては、関係者の間で、活動によりまして広くこれは認識をされているところでございまして、この輸出してはならないことを本当に知らなかったというようなことは非常に限定的と考えるところでございますが、仮にそのような場合があったとしても、これは重大な過失に該当するというふうに考えております。

濱村委員 業界の方々はよくこの辺は理解されておられるということで、この重大な過失というのはある程度自明のものもあるかなというふうに私は考えております。

 その次の質問に移りますが、今回、差止め請求権が設定されるわけでございますけれども、不正に取得したり、契約に違反したり、あるいは、それらを使って生産された子牛や受精卵、更にそれらを使った子牛あるいは孫牛について、精液や受精卵につきまして転売を受けた者にも適用されるという理解でございますが、確認的に伺いたいと思います。

水田政府参考人 今委員が御質問いただいた点については、そのとおりでございます。

 この新法では、不正取得された家畜遺伝資源の不正使用により生産された、子供である牛ですとか孫牛ですとか精液や受精卵といった派生物につきまして、不正な経緯の介在を知りながら又は重大な過失により知らないで転売を受ける行為につきましても、不正競争に該当するものとしておりまして、差止め請求の対象となるところでございます。

濱村委員 しっかり、転売を受けた者にも、知らないふりをしたってそんなことは通用しないよということでございまして、さらに、国外に持ち出された場合において差止め請求は可能なのかどうか。

 ただ、差止め請求をしたとしても、国外に一旦持ち出されてしまいますと、どこまでこれは強制力が及ぶのかというところも疑問符が残るところではあります。行使についてはどのような強制力があるのかという点も含めて、伺いたいと思います。

水田政府参考人 お答えいたします。

 家畜遺伝資源が国外に流出した場合でございますが、民事上、国内で不正行為を行って国外に流出させた者に対しましては、差止め請求は可能でございます。例えば、流出させたものを廃棄させろという請求をすることはできるところでございます。仮にこの不正を行った者が国外に行ってしまったという場合でありましても、その者に対しまして差止め請求をすること自体は可能でございます。

 また、差止めの判決というものも出せるわけでございますけれども、差止め判決の執行の担保と申しますか、強制執行というのは事実上できない状況になっておりますので、そういったことでございます。

 なお、罰則に関して申し上げますと、詐欺行為など悪質性の高い行為によりまして取得した家畜遺伝資源を不正に輸出した場合、この輸出した者に加えまして、輸出したものを海外で受け取って、日本国外で、海外で使用した者についても罰則の対象となっておりまして、これによる抑止効果も期待できると考えております。

濱村委員 なかなか行使については難しい部分はありますけれども、一方で執行は担保されているということでございました。罰則についても触れていただきました。

 もう一つ差止め請求に関連して伺いたいのは、これは民事訴訟の手続を経たものとなるわけでございますので、この遺伝資源が利用されて再生産がなされた場合には被害が拡大するのではないかというふうに思っております。そうした場合には損害賠償請求ができるとは思っておりますけれども、一方で、この五条において損害額の推定の規定がございます。この規定にのっとって言うと、どの程度損害賠償請求できるのかしらというのがちょっと気になる点でございます。要は、端的に言えば、本当に実際に被害が起きた場合に被害救済されるのであろうかという点でございます。

 こうした観点から、なかなか予断を持ってこの金額がどれぐらいになりますというのはお答えしづらいだろうと思いつつも、大体どの程度損害額が見込まれているのか、数値を当てはめて推計をするならばこういう仮の数字は出せますよとかというようなことが可能であるならば、お願いしたいと思います。

水田政府参考人 お答えいたします。

 損害額の算定に当たりましては、家畜又はその精液や受精卵、これが不正競争によりまして譲渡されたという場合に、譲渡された家畜などの数量に、当該家畜などに係る遺伝資源についてのそのストロー一本当たりの利益の額、こういったものを乗じて得た額を損害額とすることができるという規定が今回入っているところでございます。

 これによりますと、例えば、一本当たり一万円、結構高いあれでございますが、一万円の精液が入ったストローが不正取得されまして、不正使用された結果、牛が生産されて、その牛から仮に一万本の精液が生産されて譲渡されたという場合には、この一万本に、不正取得された精液一本当たり一万円というのを掛けますと、一億円という損害額になるということでございます。

 さらに、侵害者が不正競争を通じて得た利益というものも損害額として推定するということができることになっておりますので、例えば、侵害した方が不正取得した精液等を使用して生産した牛の販売、これによって利益を得たという場合には、その利益の額が損害額として推定できるということになっております。

濱村委員 ありがとうございます。

 数字は、あくまで当てはめで今計算をしていただいて、ざっと一億みたいなことを出していただきましたが、重要なことは、こうしたことが起きないように地域の生産者の皆さんであったり家畜人工授精師の方々の協力を求めていくことだろうと思っております。しっかりと丁寧に御説明していただいた上で、適切な運用をお願いを申し上げて、質問を終わります。

吉野委員長 次回は、来る三十一日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十時十四分散会


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