衆議院

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第5号 令和2年11月18日(水曜日)

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令和二年十一月十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 高鳥 修一君

   理事 加藤 寛治君 理事 齋藤  健君

   理事 津島  淳君 理事 宮腰 光寛君

   理事 宮下 一郎君 理事 亀井亜紀子君

   理事 矢上 雅義君 理事 稲津  久君

      伊東 良孝君    池田 道孝君

      泉田 裕彦君    今枝宗一郎君

      上杉謙太郎君    江藤  拓君

      金子 俊平君    木村 次郎君

      小寺 裕雄君    佐々木 紀君

      斎藤 洋明君    鈴木 憲和君

      武部  新君    西田 昭二君

      根本 幸典君    野中  厚君

      福山  守君    細田 健一君

      青山 大人君    石川 香織君

      大串 博志君    金子 恵美君

      神谷  裕君    近藤 和也君

      佐々木隆博君    佐藤 公治君

      緑川 貴士君    濱村  進君

      田村 貴昭君    藤田 文武君

      玉木雄一郎君

    …………………………………

   農林水産大臣       野上浩太郎君

   農林水産副大臣      葉梨 康弘君

   農林水産大臣政務官    池田 道孝君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 檜垣 重臣君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 小宮 義之君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房長) 横山  紳君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           新井ゆたか君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            太田 豊彦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  水田 正和君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  光吉  一君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            牧元 幸司君

   政府参考人

   (農林水産省政策統括官) 天羽  隆君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           菱沼 義久君

   政府参考人

   (林野庁長官)      本郷 浩二君

   政府参考人

   (水産庁長官)      山口 英彰君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  上原  淳君

   農林水産委員会専門員   梶原  武君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十八日

 辞任         補欠選任

  石川 香織君     青山 大人君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 大人君     石川 香織君

    ―――――――――――――

十一月十八日

 特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律案(内閣提出第四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律案(内閣提出第四号)

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

高鳥委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房長横山紳君、消費・安全局長新井ゆたか君、食料産業局長太田豊彦君、生産局長水田正和君、経営局長光吉一君、農村振興局長牧元幸司君、政策統括官天羽隆君、農林水産技術会議事務局長菱沼義久君、林野庁長官本郷浩二君、水産庁長官山口英彰君、警察庁長官官房審議官檜垣重臣君、財務省大臣官房審議官小宮義之君及び国土交通省鉄道局長上原淳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。小寺裕雄君。

小寺委員 おはようございます。滋賀四区の小寺裕雄でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 時間が限られておりますので、早速質問に入ります。

 私の地元滋賀県は、総じて米中心の農業で、集落営農組織を基盤として米、麦、大豆をつくるといった経営をしております。これまではこの経営方式でよかったのですが、これからは米だけではだめだということで、高収益作物への取組を拡大しつつあるといった現状であります。

 そこで、本日は、現下の米が余るという状況にどう対応していくのかといった問題と、先般、党農林部会の鹿児島視察で拝見したサツマイモの病気について質問をさせていただきます。

 去る九月三十日に、九月十八日時点における作付状況では、作況指数が一〇一、予想収穫量が七百四十三・六万トンと発表され、激震が走りました。なぜなら、国があらかじめ示していた二〇年産の適正生産量を二十五万トンも上回ったからであります。その後、十月十五日に示された作況指数では、西日本でのウンカの被害などを踏まえて九九に下方修正をされたため、現在では七百二十三万トンの予想収穫量が見込まれているというふうに承知をしております。九月時点と比較すれば予想収穫量は減少したものの、依然として適正生産量を上回る状況となっています。

 来年六月末の民間在庫量をどう推計するかにもよりますが、もし二百十万トンという数字を仮に置いたとすると、二一年産の適正生産量は約六百九十万トンあたりという数字が出てまいります。

 新型コロナの影響のもと、外食産業で利用される業務用米の需要が消失していることから、一九年産米の在庫がまだある中で、ことしとれた新米をどうしていくのかといった問題と、あわせて来年の作付をどうするのかといった問題があります。大手外食チェーンや居酒屋など、これまで業務用米の主要な契約販売先であった飲食業が閉店を次々と発表されるなど、不安は広がる一方であります。

 先ほど申し上げた数字をもとに計算しますと、来年は約三十二万トンもの減産が必要となり、面積に直せば、約六万ヘクタールという面積を他作物に転換しなければなりません。昨年、全国で作付された面積が百三十六・六万ヘクタールですから、六万ヘクタールといえば大変な面積であり、さて何の作物に転換するのか、早急に決めなければなりません。

 そこで、まず、今までは十月十五日時点の作況指数をもとに計算していましたが、現時点における全国の作況と収穫量の状況、また、価格の動向はどのような状況にあるのか、お尋ねをいたします。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 今ほど委員御指摘のとおりでございますけれども、令和二年産の水稲の十月十五日現在における作付面積及び予想収穫量によりますと、主食用米の作付面積は全国で百三十六・六万ヘクタール、これは対前年比で一・三万ヘクタールのマイナス、微減ということでございます。

 また、全国の作況指数は九九ということで、予想収穫量は七百二十三万トンでございます。これは対前年比で約三万トンのマイナスでございます。

 また、令和二年産米の相対取引価格についてでございます。全銘柄平均で十月は六十キロ当たり一万五千六十五円ということで、前年同月比六百六十八円安、パーセントにいたしますと約四%のマイナスとなってございます。これは九月の相対取引価格と比べますと七十八円安ということでございまして、引き続き動向を注視する必要があると考えております。

小寺委員 私はまた、もうちょっと違う数字が何となくこの先集計されて出てくるかなと予想していたんですけれども、私の思っている数字をそのままいきましたので、おおよそその数字をもとにお話を進めたいと思います。

 では、そこで大事なことは、六月末の民間在庫量をどれぐらいと見るかという前提を置きましたけれども、来年の適正な米の生産量はどれぐらいがよいのかといったことを想定されるのかということが大事なことであろうと思います。そして、その適正な生産量を実現させるためにはどうしなければならないのかといったことを考えていかなければなりません。

 つまり、私の前提で進めるとするならば、三十万トン以上の減産と、六万ヘクタールの作付面積を主食用以外の作物に転換しなければならないということですから、まさに、繰り返しになりますけれども、それをどのような手法で実現するのかといったことが問われているのだと思います。

 地元のことで恐縮でありますが、滋賀県の事情をお話しさせていただきますと、水田農業を基盤とする滋賀県農業にとって、米価の下落は農家の継続意欲や再生産に大きく悪影響を及ぼします。集落ぐるみで支え合って成り立っている地域農業は、一気に崩壊に向かいかねません。何としても、米価を安定させることと主食用米以外への転換を進めながらの農業所得の維持が求められています。

 米の消費が年々十万トンずつ減少する中で、今回の新型コロナの影響であります。その上で予想した収穫量がふえたとなれば、私たちが御飯をもう一杯おかわりしたくらいでは需給が合うとは到底思えません。大胆な方策が求められています。

 そこで、過剰米を政府で買い入れていただき、備蓄米や援助米として活用するなどして、大胆に供給を抑えることが必要ではないかと考えます。あわせて、コロナ禍における生活や消費スタイルの変化、また、多様性に対応した米の消費拡大策を強化していただく必要があります。また、主食用米から飼料用米等の非主食用米への転換を支える戦略的作物助成並びに産地交付金の拡充が必要であります。

 滋賀県では、既に麦の播種適期を超えた現時点においては非主食用米への転換しか手法は残されておらず、主食用米と非主食用米の手取り格差を最小限にするための支援拡充がどうしても必要であります。果たして概算要求で示された水田活用の直接支払交付金三千五十億円でこれらを賄うことができるのか、予算が十分なのかという声が地元からは上がっており、来年の作付に対して非常に大きな不安の声が届けられております。

 そこで、政府の需給安定策についての考え方と、私の地元からの需給安定策に対する要望もあわせてお伝えさせていただきましたけれども、現在のところどのように考えておいでになるのか、お尋ねをいたします。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 主食用米につきましては、委員御指摘のとおりでございますけれども、十一月に開かれました食料・農業・農村政策審議会の食糧部会におきまして、令和三年産の主食用米の生産量の見通し、六百九十三万トンということで、令和二年産の実生産量の七百二十三万トンとの対比では三十万トンマイナスという数字をお示しするなど、厳しい需給環境にございます。

 一方で、主食用米の需要は毎年減少すると見込まれるわけでありまして、委員御指摘のとおり、国内の消費拡大、輸出拡大の取組も進めつつ、みずからの経営判断により需要に応じた生産、販売を着実に推進していくことが基本というふうに考えてございます。

 農林水産省といたしましては、現下の厳しい需給環境のもとで、需要に応じたお米の生産、販売が進みますよう、消費の拡大、調整保管、輸出拡大といった対策の充実、さらには、麦、大豆、輸出用米、WCS、飼料用米といった主食用米以外の生産拡大、高収益作物への転換に向けましての水田活用の直接支払交付金などでの効果的な推進方策などにつきまして、過去、生産調整の取組をさまざまやってまいりました実績も踏まえながら、財政当局とも議論をし、検討してまいりたいと考えております。

 また、委員の御地元で過剰米の買入れという声があるというふうに伺いましたけれども、需給操作や価格の下支えを目的として主食用米を国が買い上げるということは、備蓄米の考え方とも合いませんし、みずからの経営判断による需要に応じた生産、販売を進める米政策改革の考え方にもそぐわないというふうに考えております。

小寺委員 一部厳しいお答えをいただきましたけれども、今、結局、五十六万トンの減産ということで、六百九十三で考えますと、滋賀県では現在二万九千七百ヘクタールございまして、それを割り当てると、ざっと千九百ヘクタールの面積を減らさなければなりません、二万七千八百ヘクタールということで。それを仮に飼料用米に転換しますと単純に二十三億八千万円の収入減少となり、転換する千九百ヘクタールを飼料用米に転換すると、現状と合わせて約三千ヘクタールの作付で十六億円、その穴を埋めるためには戦略的作物助成と産地交付金が必要であるということを事実として申し上げておきたいと思います。

 次に移ります。

 野上大臣にお尋ねをさせていただきます。大変さまざまな課題への就任早々の対応、御苦労さまでございます。

 さて、今回の米の問題では、三年前の方針転換以来、何とか地域で自主的な需給を合わせる取組により米価を安定させてきたところですが、ついにと申しますか、とうとうと申しますか、ことしはこのような状況に陥ってしまいました。高収益作物等への取組により、米を中心とする農家の経営のあり方も徐々に変わりつつはありますが、一朝一夕とはまいりません。

 そこで、これからの米政策に対する野上大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

野上国務大臣 お答えいたします。

 米政策につきましては、主食用米の需要が毎年減少していく中で、需給と価格の安定を図っていくためには、今後とも、国内の消費拡大あるいは輸出拡大の取組を進めつつ、みずからの経営判断による需要に応じた生産、販売を着実に推進していくことが重要であると考えております。

 このため、需給見直し等について、一層小まめできめ細かな情報提供を行うこと、また、事前契約、複数年契約による安定取引を推進すること、また、麦、大豆、野菜、果樹、輸出用米や加工用米、米粉用米、飼料用米など、需要のある作物や主食用以外の米への転換に対する支援による水田フル活用などによりまして、産地、生産者が消費者、実需者のニーズを的確につかんで、どのような水田農業を進めていくのか、しっかり判断できるような体制を整えていかなければならないと考えております。

 また、農林水産省では、新型コロナの影響により中食、外食向けの需要が落ち込んでいる状況を踏まえまして、米穀周年供給・需要拡大支援事業による保管経費の支援対象期間を拡充することといたしました。本支援を活用して、全農等において二十万程度の調整保管に取り組むものと承知をしております。

 また、一次補正の国産農林水産物等販売促進緊急対策の対象品目としまして、需要が大きく減少しております中食、外食向けの米を新たに追加をして、販売促進の取組を実施することといたしております。

 令和三年度予算要求では、水田活用の直接交付金につきまして、助成単価や基本的仕組みを維持した上で前年度と同額の三千五十億円を要求しておるところでございますが、加えまして、麦・大豆増産プロジェクトの推進のための新規予算や、水田における野菜や果樹などの導入を支援する予算を要求しているところでありまして、これらを含めて必要な予算をしっかり確保できるように、財務当局とも議論をして、よく検討してまいりたいと考えております。

小寺委員 ありがとうございました。

 時間が近づいておりますが、せっかくですので、サツマイモの話をさせていただきます。

 十一月八日に鹿児島へ視察に行ってまいりました。武部委員長のもと、おられませんが、宮下先生も御一緒に部会長として行きました。要は、もと腐れ病という病気が出ていまして、それを現地で現物を見せていただいたり、圃場で確認をしたところであります。

 サツマイモは、食用はもちろんのことですが、地域によっては、でん粉の生産でありますとか焼酎の原料になるということで、大変重要な作物で、地域経済を支えております。

 そこで、あわせてお聞きしますが、もと腐れ病というのは一体どんな病気で、いつごろからどうなって今に至っているのかということと、それにどう対応されているのかといったことをあわせてお伺いいたします。

高鳥委員長 時間が経過いたしておりますので、簡潔にお願いします。

新井政府参考人 お答え申し上げます。

 サツマイモもと腐れ病は、糸状菌というカビの一種が原因となりまして、サツマイモのつるが枯れ、芋が腐るという症状の病気でございます。我が国におきましては、平成三十年にこれが発見をされたということでございます。本年は、特に梅雨末期の豪雨によりまして被害が甚大だということでございます。

 このための対策といたしましては、従前から、甘味資源作物産地生産性向上緊急支援事業等によりまして、残渣の処理の徹底、それから苗の消毒、土壌消毒や薬剤の散布等の支援を行ってきたところでございます。

 本年産の発生拡大を受けまして、健全な苗や種芋の調達、治療薬剤の支援といった、カンショ生産を継続しながらしっかり病害対策を行っていただけるよう、既存の支援の拡充を措置したところでございます。

 さらに、次期作に向けましては、県等とプロジェクトチームを設置をいたしまして、生産者への情報提供、それから巡回指導を徹底してまいりたいと考えております。

小寺委員 終わります。

高鳥委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。

 それでは、通告に従って順次質問してまいりますが、済みません、通告に従ってと言ったんですけれども、通告を変えさせていただいて、質問の順番ですけれども、最初に、北海道農産物の物流についてということで、きょうは国土交通省から上原鉄道局長にお越しをいただいておりまして、この点について順次お伺いしていきたいと思います。まず、貨物調整金の扱いについてということでお伺いさせていただきたいと思います。

 北海道の農産物の移出というのは年間に約三百五十五万トン、実にそのうちの少なくとも三割は鉄道が占めておりまして、その割合というのは高いわけでございます。ここで、今後問題になってくるのは貨物調整金制度でございます。

 これは、新幹線の開業後、並行在来線を運営する鉄道事業者の経営環境が厳しいことから、使用実態に応じた鉄路の使用料を確保することが必要だとしておりますが、一方、JR貨物の負担増を回避する、そういう必要もあることから、差額相当分を調整金としてJR貨物に交付する仕組み、新幹線の貸付料収入の一部を財源とする貨物調整金制度でございます。この制度につきましては、平成二十七年の一月の政府・与党申合せにおきまして、二〇三一年度から新幹線の貸付料を財源としない新制度に移行する、このように明記をされているところでございます。

 新制度移行まではまだ十年の期間が残されているものの、計画的かつ十分な検討を早急に行う必要があるのではないか、私はこのような問題意識を持っています。特に、二〇三〇年度完成予定の北海道新幹線の並行在来線の区間については、旅客列車の輸送密度が低い一方で、貨物輸送面では北海道と本州を結ぶ大動脈であるということ、したがって、道内の農産品や本州からの生活関連物資などが数多く運ばれてくるわけでございまして、仮に並行在来線が廃止などとなればその影響は甚大である、このように言わざるを得ないわけでございます。

 この貨物調整金の現在における検討状況と今後の見通しについて、国土交通省の見解をお伺いします。

上原政府参考人 お答えいたします。

 国土交通省といたしましては、現時点では、実は今年度末がJR二島・貨物会社に対する支援の期限とされております。委員にも御相談をさせていただきながら、現在、これらの会社への新たな支援策について検討を行っているところでございます。

 委員御指摘の平成二十七年一月の申合せにおきましては、この貨物調整金制度につきまして、完全民営化に向けた進捗状況を踏まえたJR貨物の負担による対応の可能性の検討、並行在来線の経営支援の観点からの一般会計による対応、JR二島・貨物会社の経営自立支援を目的とする特例業務勘定、これは、鉄道・運輸機構にもともと清算事業団であったときの勘定がございますが、この特例業務勘定からの繰入れによる対応、この三つの視点から見直しを行うこととされているところでございます。

 本件につきましては、まずは、今般のJR二島・貨物会社への新たな支援に関する検討状況を踏まえながら、今後、JR貨物、並行在来線会社が、委員御指摘のとおり、北海道につきましては、まずは道庁、関係市町村、JR北海道、更にJR四国ともしっかり連携をいたしまして、令和十三年度以降の貨物調整金に関する検討を加速化していきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

稲津委員 そこで、次の質問でございますけれども、鉄道網の維持の重要性について、認識を伺っておきたいと思うんです。

 平成三十年の七月に、北海道は大変な豪雨に見舞われました。その際、鉄道網の復旧に長い期間を要して、JR貨物はその間の代替輸送経路や輸送の手段を確保しなければならない等、鉄道網の寸断により大きな影響が出ました。

 JRの旅客の方は、この鉄道網についても、当然、災害時のルートを確保する上でもその維持は極めて重要なわけでございますが、他方、地方の旅客運送については、輸送密度が著しく低い赤字路線については鉄道の廃止を含め地域で協議が行われておりまして、協議の結果、バス転換を含めて廃止となる路線も散見されてまいりました。

 仮に、北海道から本州への輸送を鉄道から船舶に移行した場合、例えば、トラック輸送の輸送コストが大幅にふえる、トラックドライバーも道内外ともに数百人規模の人員が新たに必要になる、こうした試算もあることから、鉄道以外の方法での代替輸送はかなり厳しいものがあるといった意見、これは正当な意見だと思っています。

 そうした中で、北海道の農産物の輸送、経済、ひいては我が国の食料供給にとって極めて重要な鉄道路線をいわゆる採算性のみで判断していいのか、こういう問題もあるわけでございまして、物流や災害時のルート確保といった観点から、北海道と本州を結ぶ貨物鉄道路線を重要インフラと位置づけて、国が積極的に支援していく仕組みが必要ではないか、このように考えますが、国土交通省の見解をお伺いします。

上原政府参考人 お答えいたします。

 北海道内はもとより、北海道と本州との間の貨物鉄道は、北海道の農産品等を輸送する上で重要な役割を担っているものと認識いたしております。

 国土交通省といたしましては、JR北海道に対しまして、令和元年度からの二年間で四百十六億円の支援を行ってきておりますが、この中で、貨物列車走行線区に係る支援、例えば、木枕木のPC枕木化でございますとか、高架橋の耐震補強、トンネル、橋梁の保全、軌道・土木構造物に係る修繕などの設備投資や修繕費に対する助成を行っておりまして、JR北海道の経営基盤強化を通じまして、委員御指摘の貨物輸送や災害時の輸送網の確保にも資するものと考えております。

 先ほども申し上げましたとおり、JR北海道に対する支援の期限が令和二年度末となっておりますが、引き続き、委員御指摘の貨物輸送の観点にも十分留意しながら、地域の関係者の御意見も伺いつつ、その後の支援のあり方についてしっかり検討してまいりたいと考えております。

 以上でございます。

稲津委員 私は、貨物は別にして、一般の方々が乗客として乗り込むことについて、ニーズが本当になくなってしまっているものについては必要な見直しを行うべきだろう、そういう物の考え方でお話を申し上げています。

 その上で、ニーズのあるものと、それから、貨物については、今議論させていただいた中でおわかりのとおり、大変重要なインフラであるということ。さまざまな意見をお聞きしながらという今の御答弁でしたけれども、やはり国土交通省の立ち位置というのは非常に大事なわけでございまして、これは、今年度で次に向けてのいろいろな体制も整えさせていただくことから、責任を持った対応をお願いしたい、このことを申し上げて、この質問を終わりたいと思います。

 鉄道局長におかれましては、お忙しいところお越しいただきまして、ありがとうございました。この後は御退席いただいて結構でございます。

 次に、農業、農村における女性の活躍についてということで、大臣にお伺いしたいと思っています。

 まず、現状についてお伺いしたいと思いますが、令和元年度の食料・農業・農村白書の中で、特集「輝きを増す女性農業者」ということで、女性のさらなる活躍を推進していくことが重要だ、こういうふうに明記されておりまして、なるほどなと思っています。

 ところが、二〇一九年までの過去二十年間で、基幹的農業従業者に占める女性の割合は四六%から四〇%に減少しているということ。特に私が非常に危機感を持っているのは、農村地域の女性人口が減少して、そのうち、子育て世代、二十五歳から四十四歳の減少が顕著で、しかも、男性よりも女性の方が減少が大きいということです。こうしたことを踏まえて、まず、大臣、簡潔で結構でございますので、現状をどう見ているか、お答えいただきたいと思います。

野上国務大臣 女性の基幹的農業従事者は、今先生からお話があったとおり、一九九九年から二〇一九年の二十年間で百八万人から五十六万人まで減少して、女性の割合も四六%から四〇%に減少しております。また、農村においては男性に比べて女性の家事や育児の負担が重くなる傾向がありまして、特に子育て世代では農村地域での女性の減少が大きくなっているということであります。

 他方、女性が経営主や幹部となっている農業経営体では経常利益の増加率が高いといったデータもありまして、今後の農業の発展のためには、女性に知恵や能力を発揮していただいて、地域や経営をリードしていただくことが重要だと考えております。

稲津委員 ありがとうございました。

 私は、先日、北海道庁に参りまして、北海道農政部、また同僚の議員とも意見聴取を求めさせていただいたんですけれども、特に北海道は、女性農業者をめぐる現状の課題が非常に大きいと思っています。なぜならば、年齢別の農業の就業人口の中で三十九歳以下の女性の占める割合が三一・八%ということで、全国レベルからいっても非常に低いわけでございます。

 その課題解決のために、女性農業者によるいわゆるグループ活動、こうしたことを今積極的に行っているということで、私は、そうしたネットワークづくりということについて今北海道で非常に精力的に取り組んでいる、こう承知しておりまして、このネットワーク拡大の支援をしっかりやっていくべきだ、こう思っています。

 その上で、もう一つお聞きしたいのは、令和三年度の概算要求の概要を見たときに、女性が変える未来の農業推進事業は、八千五百万円の予算要求。今年度は七千五百万。私が承知している間では、過去にずっと一億円だった。もっと上げられないのか、本気度を見せてくれ、こういうことを繰り返し言ってきたんですけれども、何と、むしろ予算が下がってきている。次年度に向けては約一千万ふやすわけですけれども。特にこの中にも地域の女性グループ活動支援ということが明記されていますが、女性の活躍に対するこうしたことは省を挙げてしっかり取り組んでいかなきゃいけない。

 大臣の決意も含めてお伺いします。

野上国務大臣 女性に地域農業や経営をリードしていただくためには、女性がスキルを身につけられるようにしたり、また、働きやすい農業、農村としていく必要があります。

 その環境を整えるために、今先生からお話がありました、地域の女性のグループ活動ですとか研修会、また、託児、農作業支援を地域でサポートするネットワークの構築を支援するとともに、女性農業者と企業、教育機関が連携して商品開発ですとか若い女性の就農意欲を喚起する農業女子プロジェクトを推進しており、特に地域の女性グループ活動への支援につきましては、農林水産省としても、令和三年度予算で更に要求をして進めていくこととしております。

 農業におきまして女性が輝き、地域の経済が活性化する大きな力となっていただくように、働きやすく暮らしやすい環境をつくるとともに、女性の活躍を後押しする対策を進めていきたいと考えておりまして、農林水産省としても、そのための必要な予算の確保に全力を挙げてまいりたいと考えております。

稲津委員 ありがとうございました。予算の確保もさることながら、施策の推進をしっかりやっていただきたい。

 女性が活躍し輝く地域、これは農村に限らず、たくさんの方々に大きな希望と喜びを与える、私はそう思っていまして、男女の差はありませんですし、ぜひともこの施策を進めていただきたいということを強く申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、藤田文武君。

藤田委員 日本維新の会の藤田文武でございます。

 きょうは、昨日本委員会で可決されました種苗法について少し、昨日可決されたということで、あえて質疑をやりたいと思います。

 種苗法については私も賛成の立場でいろいろ取り組んできたわけでありますけれども、やはり、反対派の方にも引き続き耳を傾けながら、今後の継続して注視すべき課題については、問題があれば改善し、又は、あるときは強化していくべきだというふうに思います。

 特に何点か、今後の実効性を確認する上でも注視しなければいけないところで、特に本法案の趣旨でもございます不正な海外流出をどうとめていくかということ、水際対策も含めてですね。それから、多くの農家がまだ見ぬ今後の流れを注視しております許諾料がどうなっていくのか、上がり過ぎないか。それから、種苗のそもそものあり方というのが変わっていくのではないか。このような点は、長いスパンでしっかりと継続して注視していくべきだと思います。

 その中で、きょうは、一点目としまして、保護品種の不正な海外流出を防ぐための実効性を上げなければいけないという課題意識の中で、昨日も同様の質問をさせていただいたんですが、きょう実は財務省の方に来ていただいて、税関についても聞きたいと思います。

 まず、本法案によって水際対策がどのように変わるか、実効性がどう上がっていくかということをまずは農水省から御見解をいただいた後に、実際の現場をつかさどります財務省の方から、税関対応について、どう変化し、効率的にできるようになるかということを確認したいと思います。

太田政府参考人 お答えいたします。

 種苗法に規定いたします育成者権を侵害する物品につきましては、関税法に基づき税関において取締りが行われることとなっておりますが、現在の種苗法におきましては、登録品種の種苗を購入して海外に持ち出すことにつきましては育成者権の侵害にはならないため、事実上、税関で取り締まることは困難な状況となっております。

 今般の法改正では、輸出先に制限がある登録品種を持ち出す場合については例外なく育成者権の侵害物品となります。このため、育成者権者による輸出差止め申立て制度の利用を通じまして、事前に持ち出しの動きを察知し、税関で差し止めることが可能となります。

 また、利用条件に反した海外持ち出しを制限できるようにすることで、そもそも海外持ち出しが抑制される上、種苗又はその包装には利用条件が付された登録品種である旨が表示されるようになり、税関において確認しやすくなります。

 さらに、外国人や外国商社が海外持ち出しが制限された登録品種を買い付けたような場合には海外持ち出しがされるリスクが高いため、農林水産省にその旨の情報提供をしてもらい、農林水産省から税関にも速やかに情報共有をすること、あらかじめ海外への持ち出しが制限されている品種の情報を税関に伝えることなど、水際措置の実効性確保に向け、しっかりと連携を図ってまいります。

小宮政府参考人 お答え申し上げます。

 税関におきましては、育成権者からの事前の輸出差止め申立てに基づきまして、税関で侵害疑義物品を発見した際には認定手続を開始し、必要に応じて農林水産大臣に意見照会も行い、侵害物品であると認定した場合には差し止める制度となってございます。

 今般の種苗法改正によりまして、輸出差止め申立て制度がより広範に活用できることから、事前に侵害物品を輸出するおそれのある者等の情報を入手しやすくなること、また、種苗又はその包装に利用制限が付された登録品種である旨が表示されるようになることなどから、農林水産省や育成権者の御協力のもとで、税関においての水際対策の実効性が高まるものと承知をしております。

 税関といたしましても、育成権者が意図していない国への流出を実効性を持ってとめられるよう、引き続き農林水産省と協力して対応してまいりたいと考えております。

藤田委員 御答弁ありがとうございます。

 せっかく制度が整ったからには、水際対策の実効性を絶対に高めないといけないというふうに思いますので、きょうお話をいただいた内容をしっかりと現場に落としていただきまして、より効果的な法整備の活用をぜひやっていただけたらと思います。

 それから、これも昨日少しお話をお聞きしたんですが、私自身はちょっとまだ疑問点が残るところがありまして、種苗事業における公的機関と民間企業のバランスというところで。

 特に、いわゆる農業競争力強化法の、民間事業者の活力発揮で適正な競争環境を促していこうという方針の中で、種苗事業が、民間企業というのは基本的には私企業で自由ですから、どのような種をつくる、どういう売り方をする、価格設定をどうするというのは自由な中で、ある一定のシェアが伸びてくる可能性もあるし、また、私自身は、種苗事業の国際競争力を高める上でも民間企業の活力はしっかりと活用すべきだという立場でもございます。

 その中で、役割分担とかというお話も昨日もありましたが、民間企業のバランスをどうふやし、どう抑えていくかというのは、ある程度やはり戦略的にやらないといけないんじゃないかなというふうにも思います。そのあたりのバランスについて再度御答弁いただきたいのと、昨日、他の委員からも御指摘がありました、公的機関の種苗事業を、もう一度、競争力強化のためにしっかりと予算措置も含めて支援していくこと。

 同時に、私自身は、国内の民間種苗業者さんも、ある種の種苗を扱うという食の根幹にかかわる事業ですから、公的役割を一定果たしているというふうにみなされるべきものだとも思うわけでありますから、このあたりの支援についても、どのような具体的な支援があるか、また検討されているかということをお答えいただけたらと思います。

菱沼政府参考人 お答えいたします。

 まさに、品種にまさる技術なしというお言葉がありますが、品種開発は極めて重要であります。

 このため、二点ありますが、一点目は、生産現場に近く、ニーズを的確に把握している公的機関の開発能力の強化、二点目は、民間の開発能力を活用した産学官連携によるイノベーションの創出、こういった二つの考え方をバランスよく研究開発の施策に組み込んでいくことが必要だと考えています。

 このため、農林水産省におきましては、公的機関や民間企業のそれぞれの強みがございます。例えば、公的機関では、地域のブランド品種の育種能力の強さ、農研機構のような先端的な育種技術能力の強さ、さらに、民間企業の消費者ニーズに適した野菜や花の育種能力の強さ、これらの強さを融合させるように、産学官連携を強化するための支援措置を講じていきたいと考えています。今後も推進してまいります、戦略の上でしっかりやっていきたいと思っています。

 さらに、民間の研究開発部とかは非常に重要でありますので、産学官連携をするために、例えば、民間では、民間企業の研究シーズと公的研究機関の研究シーズをマッチさせたような新たな共同研究を実践させる環境が必要だとか、ベンチャーを含む民間企業の参画を通じた研究開発を推進することが重要だと考えています。

 このため、支援措置として、農林水産省では、一点目は、産学官コンソーシアムを形成し共同研究を行うための知の集積による産学連携推進事業、さらには、農林漁業者のニーズに対応して国主導で実施するプロジェクト研究である農林水産研究推進事業、ベンチャーを含む民間企業のさまざまな知識、技術等を結集してイノベーションを起こしていくというイノベーション創出強化研究推進事業、それぞれを展開しておりまして、これらの支援を通じて、民間企業の開発能力も生かしながら我が国の品種開発力の強化に取り組んでいきたいと思っています。

藤田委員 ありがとうございます。これもちょっと注視していきたいなというふうに思います。

 続きまして、GoToイートについて、少し最近動きがありましたので、そのことについて農水省の見解を聞きたいと思います。

 先週、私の地元の大阪の吉村知事もいろいろ御意見を伝えまして、西村大臣、そして総理大臣からもいろいろ御発言がございました。その中で、GoToイートの対象を、人数制限、四人以下というところにしてはどうか、そして、いわゆる自治体が主導してしっかりと運用をやっていくと。

 私たちも、コロナと闘い始めてもうすぐ一年がたつということで、かなり長期戦になってきている中で、感染拡大を防止することと、経済活動をしっかりと動かしていく、各産業にしっかりと元気を取り戻してもらうということを、本当に工夫しながらやらないといけないということがまだまだこれからも続くわけでございます。ですから、GoToイート、GoToトラベル、GoToシリーズは御批判もいろいろなところであるとお聞きしていますけれども、私は非常によかったんじゃないかなというふうに思います。

 ただ、運用面で、感染拡大とのバランスをいかにとっていくかということを、つぶさに管轄官庁が察知してやっていくということは非常に重要なことであると思います。今回の動きは私は歓迎しているんですけれども、今回のこのGoToイートの対応について、管轄される農水省の御見解をお聞きしたいと思います。

太田政府参考人 お答えをいたします。

 先般の新型コロナウイルス感染症対策分科会の緊急提言を踏まえまして、農林水産省として、GoToイート事業につきまして感染防止策を強化したいと考えております。

 御指摘の人数制限につきましては、GoToイート事業の感染防止対策の強化として、十一月十六日のコロナ本部の結果も踏まえ、食事券、ポイントの利用は原則として四人、これは子供を除く四人でございます、四人以下の単位での飲食とし、具体的な対応について、各地域における感染状況等を踏まえ、都道府県知事に早急な検討を要請したところであります。都道府県におきまして今まさに検討が進められており、農林水産省としても、十一月十六日のコロナ本部における総理指示を踏まえ、都道府県をしっかりバックアップしてまいります。

藤田委員 ありがとうございます。

 これは素早い対応で、大阪でもGoToイートと感染拡大の関係性みたいなのが対策本部で相当議論されました。やはり相関関係が少なからずあるんじゃないかということが指摘の中で意見を言われたと思うんですけれども、この早い対応については私は非常に歓迎したいというふうに思いますので、引き続きよろしくお願いをいたします。

 続きまして、ちょっと話題をかえまして、ふん尿の処理技術について少し触れたいと思います。

 先日、北海道に私も行ってきまして現地を見てきたんですけれども、ふん尿の処理技術も非常にテクノロジーの進化で進んでいるということで、これは、酪農家のいわゆる悩みの種というか、非常に悩ましい問題だった、においとか汚水の問題を解決するために非常に重要な技術ということです。

 視察させていただいた内容でいうと、ふん尿が約五、六時間で、においもなく、さらさらの状態になって。私もずぼっと、六時間たった、ふん尿処理されたやつをさわったんですけれども、においもなくてさらさらで、顔にも塗れるんじゃないかなぐらいの、本当にさらさらの状態だったんですけれども。

 こういう技術はもっと推進してあげる、後押ししてあげるべきだ、今は対象外になっているので。酪農家で、大規模な酪農をされているところで四、五十トンのふん尿が一日に出るということで、これは六時間で処理できるんですけれども、今対象外になっているこういうものを支援してあげるべきだというふうに思います。

 また、いろいろ聞いてみると、この技術は環境技術に転用できて、例えば、ごみの分別なんかも自動化でできてしまうだったり、もちろん、水分を飛ばして、においなんかもかなり低減する、ほとんどゼロに近いぐらいにできるということで、これは可能性のあるもので、特に酪農のみならず今後伸びていくべきものかなというふうに思うんですが、御見解を聞かせていただけたらと思います。

野上国務大臣 家畜排せつ物につきましては、畜産農家みずからの責任におきまして適正に処理をしなければなりませんが、その際に、単に廃棄物として処理するのではなくて、堆肥として土づくりに有効活用するなど、資源の循環を図っていくことが重要であります。

 また、畜産物の国内外の需要は今後も拡大することが見込まれておりますので、中小農家ですとか家族経営なども含めて増頭、増産による生産基盤の強化を図る必要がある中、増加する家畜排せつ物を適切に処理して有効活用を図ることが不可欠となっております。

 これまでも、畜産環境対策総合支援事業による堆肥の高品質化ですとかペレット化に資する高度な施設等の整備、畜産クラスター事業に新たに創設した環境優先枠、二十億円になりますが、これによる家畜排せつ物の処理施設の整備、あるいは、農山漁村地域整備交付金による地方公共団体、農協等が所有する堆肥センターの整備等の対策を講じてきておりまして、個々の畜産農家の経営状況に合わせて家畜排せつ物の適正な処理及び有効利用が図られるように総合的に対応してきたところであります。

 先生御自身が現地に行かれて施設を視察されたという点につきまして、御指摘の新たな家畜ふん尿システムにつきましては、システムの内容ですとかあるいは効果をよく勉強させていただいた上で、補助事業の趣旨に合致しているかも含めて、よく検討してまいりたいと考えております。

藤田委員 ありがとうございます。前向きな御答弁をいただきました。

 続いて、ちょっと時間がなくなってきたんですけれども、最後に一点。農林水産物の輸出力強化について改めてまた時間をとって議論したいんですが、きょうは総論として。

 日本の輸出力を上げていく中で、これは非常に戦略的にやらないといけない。目標設定としては二〇三〇年に五兆円という五倍ぐらいの規模に持っていくというところで、どうしてもイメージとして、日本の高付加価値のものをしっかりとブランド化して世界に打って出ようというのはもちろん必要なことで、私も賛同するところでありますけれども、それだけで、いわゆるニッチな部分、シェアの非常に少ない部分だけでいけるのかという疑問を持っております。だから、私は、極論を言うと、ハイブリッドで、価格戦略にもたえ得るものというものをある程度打ち出していくべきとも思います。

 そうすると、いろいろ、大きな議論で、農政における諸課題を構造改革していかないといけないという問題にもつながってくるわけでございます。細かなところはきょうはおいておきますが、輸出力強化についてのお考え、そして、近年、いろいろ輸出先を見ていると、やはり中国市場というのが大きく伸びているというところで、この中国市場への攻め方について御見解を頂戴したいと思います。

野上国務大臣 現在、輸出、二〇三〇年五兆円に向けまして、総理からの指示がありまして、年内に必要となる具体的な戦略を取りまとめるということで今作業を進めております。

 輸出の考え方でありますが、高付加価値のものが売れるのか、又は価格を抑えた産品が売れるのか、これは、輸出する産品とターゲットになる国によって異なってくると考えております。このため、海外の消費者ニーズに合った産品を適切な価格で販売できるように、マーケットインの発想に立って、品目やターゲットになる国ごとに細やかな戦略を構築していくことが重要であると考えております。

藤田委員 きょうは、最後に米について触れたかったんですけれども、次回にまたさせていただきたいと思います。

 きょうはこれで終わります。

高鳥委員長 次に、青山大人君。

青山(大)委員 立憲民主党の青山大人でございます。

 きょうは、急遽、この農林水産委員会で質問の時間をいただきました。ありがとうございました。

 というのも、茨城県の南部、筑波山の麓から霞ケ浦、湖の方まで、広範な地域でイノシシによる被害が深刻化しております。この状況については、私もこれまでも何度か国会で取り上げてきました。鳥獣被害防止総合対策交付金が活用され、それぞれの自治体でもさまざまな対策をしているのも私も承知をしております。

 しかし、この地域に関しては、東日本大震災による原発事故以降イノシシの出荷制限がかかっている関係などもあり、イノシシの増加、近年では年じゅう繁殖するイノブタが爆発的にふえており、そういったイノシシ、イノブタの増加に対して対策が追いつかない状況は農林水産省の皆様も御承知だと思っております。被害額の数字にあらわれる以上に、農家の皆さんはもちろん、周辺住民の皆様にも深刻な影響を及ぼしているわけでございます。

 そういった中で、やはり、財政支援とマンパワー、こういった支援の体制、これは逐次投入じゃなくて、一気に投入しないと更に大変なことになります。

 ぜひ、そこで幾つか大臣に提案をさせていただきます。

 まず一点目が、捕獲活動経費への直接支援の増額です。これも交付金を活用して各自治体ごとにやっていますけれども、ばらつきがあるのも現状です。まず、その底上げをしっかりと図ってほしい。

 二点目が、捕獲活動において、これは大体、猟友会の皆様にお願いしているところがほとんどですけれども、当然、猟友会の皆様だけでは限界がございます、周辺の農業者も巻き込んだ、捕獲活動を支援する体制づくりをしっかりつくり、そして財政的な支援もお願いしたいところでございます。幸い、筑波山麓から霞ケ浦へわたっては若手農家が結構ふえてきております。そういった若手農家のやる気にも今大きく響いている状況でもございます。

 三つ目は、捕獲したイノシシを解体処分できる施設、焼却施設などの整備に関する補助率のかさ上げです。これも現在二分の一の補助の制度がございますけれども、なかなか自治体も手を出しにくい状況です。廃校になった学校を活用するなど、改修経費で済む場合もございます。やはり、これは本当に、交付金を使ってもらっていろいろやっていますけれども、一気に、期間を決めてやってほしい。

 そして四つ目は、放射性物質をその場で即時に検査できる体制整備、構築です。現在、捕獲したイノシシを出荷するには、一旦、別の場所、保健所などに持っていかなければいけません。その間、日数がたってしまうと、当然、仮にジビエで出そうとしても品質が落ちることがございます。そういった中で、放射性物質をその場で即時に検査できる体制の整備、構築をお願いいたします。

 以上、四点の具体的な提案を踏まえまして、大臣、ぜひ、イノシシ対策の効果的な考えについてお伺いいたします。

野上国務大臣 イノシシを始めといたしました野生鳥獣による農作物被害は、平成三十年度にイノシシで四十七億円、全体で百五十八億円でありまして、営農意欲の減退など、被害額として数字にあらわれる以上に深刻な影響を及ぼしているものと認識をいたしております。

 被害の対策としましては、有害鳥獣の捕獲ですとか侵入防止柵の設置、あるいはやぶの刈り払いですとか、野生鳥獣を寄せつけない環境の整備に総合的に取り組むことが重要でありまして、鳥獣被害防止総合対策交付金によって地域ぐるみの対策を支援しているところであります。

 環境省と農水省では、令和五年度に鹿、イノシシの生息頭数を半減することを目標に掲げまして、直近で年間約百二十万頭程度を捕獲しておるんですが、更に約二十万頭を上積みするということで、捕獲活動を抜本的に強化をするため、本年秋から集中捕獲キャンペーンを展開しております。

 令和三年度予算要求におきましても、これまで取り組んできた活動を支えるとともに、今御指摘のありました、農業者ですとかあるいは農業団体等による捕獲活動へのサポート体制の構築ですね、地域で捕獲活動にかかわっていない人材を幅広く巻き込んで、捕獲者のサポート体制を構築することが必要であります。

 今、鳥獣対策交付金の令和三年度予算要求におきまして、地域の協議会が捕獲サポート隊を結成して、捕獲者が設置したわなの見回りですとか餌づけ作業等の補助的な活動を行うための必要となる経費の支援を新たに要求しているところでありますが、捕獲活動の支援策の充実を図るために、更に必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えております。

青山(大)委員 大臣、毎年予算をつけてもちろん支援していますけれども、繰り返しますけれども、やはりこれは一気にやらないと結局ふえちゃうんですよね。今、副大臣もこちらを見ていますけれども、多分、今、副大臣の御地元の稲敷の方までイノシシが行っている例もございますし、これはぜひ集中してやっていただきたい。

 そして、やはり、解体処分する場所、そこをしっかりできるように。そしてもう一点は、放射性物質の検査、この支援体制をぜひ、もう一度、現場でできるようにさまざまな知恵を絞ってほしいというふうに思っています、重ねて要望させていただきます。

 やはり、今回、コロナもございまして、若手の営農農家も大変精神的なダメージも受けております。そういった中で、更に大きなイノシシの被害、更に彼らにとっては深刻でございます。ぜひ、大臣、ここは集中してしっかりと取り組んでほしい、重ねて要望させていただきます。

 時間がないので、もう一問、次に行きます。

 農水省所管の独立行政法人の施設整備費補助金予算、この減額が続いております。私も何度か、つくば市にある森林総研や農研機構などにも行きましたが、建物の老朽化が放置され、耐震基準を満たしていない建物もあるとの現状を伺いました。

 改めて、施設整備費補助金の減額をこれからも続けていくのか、見直しが必要なときだと私は思っていますが、大臣の見解をお伺いします。

野上国務大臣 お答え申し上げます。

 国立研究開発法人は、最先端の研究開発等を通じてイノベーションを促す、農林水産業の発展に貢献する重要な役割を果たしておりまして、国は法人に対して、運営費交付金、また御指摘のありました施設整備費補助金を措置しております。

 このうち、運営費交付金につきましては、人件費ですとか一般管理費、業務経費、あるいは研究業務を強化する経費であります。また、運営費交付金は、税金で賄われていることに鑑みまして、一般管理費及び業務経費については効率的な使用が求められておりまして、毎年度一定の経費削減を行われておりますが、一方で、各年度で研究業務を強化する等の経費を計上しておりまして、全体としての運営費交付金の確保に努めております。国立研究開発法人の最近五年間の運営費交付金は、ほぼ今横ばいとなっております。

 また、一方で、施設整備費補助金につきましては、厳しい財政状況の中で、施設整備の緊急性を十分に踏まえて、優先度の高いものから必要な予算を措置しまして、計画的な施設の更新を進めているところであります。

 私も、先般、農研機構を視察させていただきました。スマート農業ですとかバイオを始めとする最先端の研究の取組を視察させていただきましたが、農業競争力の強化に貢献していることを確認いたしました。

 今後とも、十分なパフォーマンスが発揮できるように、運営費交付金、施設整備費補助金の確保に努めてまいりたいと考えております。

青山(大)委員 質問時間が終わったのであれですけれども、施設整備の件、そして、繰り返しますけれども、本当に、イノシシに関しましては、大臣、これはちょっと、改めてもう一度、来年度の予算編成に向けてもう一押し、ぜひ力を発揮してください。重ねてお願いいたします。

 以上です。

高鳥委員長 次に、矢上雅義君。

矢上委員 立憲民主党の矢上雅義でございます。

 本日は、令和二年七月豪雨の農地の被害状況等についてお伺いしたいと思います。

 この災害によりまして、全国で八十二名の方が死亡、そして四名が行方不明、熊本県におきましても六十五名が死亡、二人が行方不明ということです。

 私も被災しましたけれども、人吉市内から球磨川流域の八代にかけまして、昭和四十年ごろの五十年に一度の災害の際には水没地域の浸水の深さが二メートルから三メートルほどであったんですけれども、今回は三メートルから最大で九メートルほどの水没の水位が記録されておるということで、東日本大震災のときの津波と同じような状況を被災地の皆さん方が体験したわけでございます。

 そこで、今回、令和二年七月豪雨の農地の被害状況及び査定事務の進捗状況についてお伺いいたします。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 令和二年七月豪雨でございますけれども、河川氾濫によります表土の流出、あるいは畦畔の崩壊、揚水機場の浸水など、農地・農業用施設に甚大な被害が発生をしているところでございます。

 十一月二日時点で、熊本県、最も被害が大きい県でございますけれども、を始め四十二道府県で、約三万八千カ所、約一千二十八億円の被害が報告をされているところでございます。被害に遭いましたこれらの農地・農業用施設につきましては、災害復旧事業によりまして早期に営農を再開することが極めて重要であると考えているところでございます。

 この災害復旧事業の実施のための災害査定でございますけれども、国の農業土木職員によります技術支援を行いますとともに、机上査定の上限額の引上げ、図面の簡素化を行っておりまして、年内に完了するということを目標に進めているところでございます。

 引き続きまして、被災した農地・農業用施設の早期復旧に向けて支援等を行ってまいりたいと考えております。

矢上委員 通常、これほどの災害でなければ早く手当てができると思うんですけれども、今回、球磨川のような一級河川だけでなく中山間地にも、線状降水帯の影響で、四時間ほど降り続いただけで中山間地の小河川が流れ込んだ土砂により山盛りになりまして、河川が山盛りになって閉塞したものですから、周りにあります道路が川となり、また、周りにあります農地が川となりまして、中山間地の農地の護岸まで崩れて、田畑が、大きな丸い石ころがごろごろして、河原のような状態になっております。

 このような状況の中で、市町村におきましては、早朝より現地調査、それを国、県に報告し、早急にコンサルタントも入りまして測量、基本設計等をやっておるんですけれども、何しろ範囲が広過ぎまして、実際、農政局とか各都道府県の農業土木に詳しい担当者の方が現場、市町村に入ってかなりの技術的支援をしていただいておるんですけれども、なかなか、一般の農家からしますと、もうそろそろ秋冬になり、何とか工事が始まるんだろうかという非常に不安な状況で、来年の作付に期待しておる状況でございます。

 そういうことで、ぜひとも、査定の簡略化と、国、県等、また都道府県の土地改良連合会等の技術者の技術的な支援等もぜひ望みたいところでございます。

 続きまして、今回、豪雨被害が起きたのが七月四日の早朝でございます。そういうことで、一般の農家はちょうど田植が済んで一安心している作付直後に水田が被災してしまいましたけれども、当然、収穫と収入が望めません。

 また、熊本県及び南九州におきましては、たばこが産地でございます。鹿児島、宮崎、熊本。たばこ農家にとりましても、WCS、ホールクロップサイレージのちょうど作付前ということで、たばこもやられましたし、WCSの作付の準備で水田に置いておりました機械とかが全部流れたわけでございます。

 収穫どころか作付もできないまま被災に遭っておりまして、もしこの災害復旧事業が早期に終わらなければ、先ほど言いましたように、来年の作付、収穫も望めません。作付そのものが望めないということは、来年度の品目ごとの災害保険であります農業共済の適用とか、作付そのものの営農計画が立たなければ、収入保険等の適用も不可能ではないかと思っております。

 そういうことで、査定が一律に行われるのではなく、比較的軽微な地域に限っては早期の事前着手により来年の作付が望まれるようなことがなければ、収入が激減して離農につながる可能性もございますので、早期の災害復旧事業の着手につきまして、御見解をお伺いいたします。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 委員から御指摘いただきましたように、来期の作付に間に合うように復旧を急ぐということが大変重要だというふうに私どもも考えているところでございます。

 そこで、災害査定を待たずに復旧工事に着手をできます査定前着工制度というものがございますので、こういった制度を活用いたしまして、用水路、農道に堆積をいたしました土砂の撤去でありますとか、あるいは農業用ポンプの復旧、これも大変大きな被害が出ておりますので、そういったものを進めているところでございます。

 これらを通じまして、早期に営農が再開できるように、復旧に努めてまいりたいと考えております。

矢上委員 ちょうど今、農業ポンプの復旧ということもお話に出てきましたけれども、査定前着工制度について、ぜひ各市町村に広く活用していただけるように御指導を、また技術的指導をよろしくお願いいたします。

 先ほど農業ポンプの復旧ということが出ましたけれども、実は、かなりの土砂が一級河川、小河川に流れ込みまして、取水用のポンプ倉庫が直撃を受けて大変な状況です。ただし、農政局の皆様方の御配慮で直ちに、農業用の取水ポンプまたホース等、普通では手に入らない資材をすぐ、迅速に届けていただき、何とかことしの作付は間に合いました。そこで、現場にかわりましてお礼を申し上げます。

 もう一つ、先ほど言いましたように、収入保険とか品目ごとの農業共済保険が受けられない。しかも、農地の復旧が複数年かかる場合には、当然、農家の収入が途絶えるということで先ほど申しました。

 過去の例ですけれども、平成十一年台風十八号、熊本県の不知火町松合地区というところで高潮災害が起きて、田畑等が高潮でやられまして、塩害復旧事業を行ったんですけれども、このときの記憶では、農地が使えない間、農家の所得が上がるようにということで、自己の所有する農地の災害復旧について、農家の労務提供による災害復旧事業を農家自身に認めて、そこに対する労務費等の手当てをしたという記憶がございます。

 ここ最近、令和二年七月豪雨におきまして被災された農家の方が作付ができるまでの数年間、そのような、何らかの収入を手当てできるような制度の活用とかを考えておられますでしょうか。お伺いします。

葉梨副大臣 お答えいたします。

 七月豪雨の当時、私も自民党で農林水産災害対策委員会というものの委員長をやっておりまして、非常に甚大な被害であったことに本当にお見舞いを申し上げたいと思います。

 御指摘の点ですけれども、災害復旧事業は市町村等が事業主体となって実施をいたします。先生御指摘のとおり、被災農家の収入の確保につながるように、受注業者による被災農家の雇用の推進だけではなくて、被災農家が直営で施工する場合の労務費や機械のリース代の支払い、これらについて国から事業主体である市町村等に対して要請しているところです。これは昨年の台風十九号でも同様だったんですが、引き続き、被災農家の支援、収入の確保に努めていきたいと思っています。

矢上委員 再度ちょっと確認ですけれども、そういう資材等のリース代とか資材等の経費の手当てだけでなく、労務費とか日当に関する、ちょっと聞きそびれたかもしれませんけれども、そのあたりのことも含んでということでよろしいですか。

葉梨副大臣 労務費も入っております。

矢上委員 今、地元の、被災されて複数年作付ができない農家に対する支援策を現在でもやっておられるということで、ぜひ今回の令和二年七月豪雨でも活用していただきたいとお願いいたします。

 続きまして、今回の農地被災のことを前提として考えたんですけれども、我々の食料を、食料安全保障上も含めて、日本国民の食料の供給に資する地域の農地保全、このことが災害も含めて平常時から大事になってくるわけでございます。

 御存じのように、農業生産の担い手としては、個人の農家、農業法人、また集落営農組織等が今設立されて頑張っておられます。また、農地及び土地改良区等の水利施設の管理等につきましては、各地域の市町村におります土地改良区の組合員の皆様方が一生懸命頑張っておられますが、今、地域におきまして、これまで少子高齢化ということで言われていましたけれども、少子高齢化を飛び越して、人口減少、人がいなくなる時代に入ろうとしております。

 昔は、兼業農家ということで、二十代、三十代、四十代の息子さん夫婦がおられて、おじいちゃん、おばあちゃんが毎日農業をされて、家族みんなで助け合って農業をやっておるという形態が多かったものですから、少子高齢化といいながらも人口の動態が一つのピラミッドの形になっておったんですけれども、今、地域で、建設業とかタクシーとかバスとか、そのような産業がかなり衰退してきておりまして、若い方々が皆さんよそに出ておられます。

 そういうことで、昔は、孫さん、子供さん、じいちゃん、ばあちゃんということで三世代で、かなり一世帯の人数が多かったんですけれども、現在、私どもの市町村におきましても、七十歳プラスマイナス五歳ぐらいですか、六十五歳から七十五歳、又は地域によっては八十歳前後の方々が現場で現役として担っておられます。そう考えますと、農業生産の担い手である個人農家、集落営農組織にかかわる人口数が急激に激減することも十年後には考えられますし、当然、集落の皆さん方が高齢化して現役で亡くなりますと、土地改良区の構成員自身も減ってくることになると思います。

 ほかに、農地の流動化を進める農業委員会がありますけれども、農業委員会は役場とタイアップして行政機関の一つとして頑張っておられますので、農業委員会そのものについては行政上の組織として今後予算的にも運営、維持が可能でしょうけれども、今後十年後に予想され得る、集落営農組織、土地改良区、また小規模な開田組合などの今後が大変危惧されるところでございます。そういうことで、将来の食料安全保障という観点からも、必要な農地の維持保全、そして用水路施設などの水利施設の維持管理そのものが更に大事になってくると思います。

 そこで、農林水産大臣の見解をお伺いいたします。

野上国務大臣 先生御指摘のとおり、国民に対する食料の安定供給の観点からも、将来にわたり農地を保全することは極めて重要であると認識をしております。そのためには、今お話があったとおり、農業者あるいは集落営農組織、土地改良区、また農業委員会等々、関係者による農地の利用に関する話合いなどを通じて農地利用を確保していくことが重要であります。

 ただ一方で、政策努力を払ってもなお農地を維持していくことが困難な土地が増加することが懸念される、これも先生が今御指摘のとおりだと思いますが、そういうことから、今、長期的な土地利用のあり方につきまして、有識者による検討会を立ち上げて検討を行っているところであります。

 日本型直接支払いを始めとする支援等を推進しまして、一層の農地保全に努めてまいりたいと考えております。

矢上委員 これまで、所有者不明土地とか所有者不明農地の取扱いがこれまでの喫緊の課題だったんですけれども、最近は子供さんが福岡とか東京に住んでいらっしゃいますから、農地を相続しても使い道がないということで、最近、私どもの農村部においても、農地についての相続放棄とか所有権放棄ができないものだろうかという相談も受けてまいります。

 なぜそういうことが起きるかといいますと、そもそも農村地域の人口が激減しておるものですから、例えば、自分の持っている農地を小作に出そうとしても、以前なら小作に出しますと例えば一反当たり米一俵とか二俵とかの小作料がもらえたんですけれども、今は小作料が要らないと言っても小作にあずかってくれない、若しくは、物すごく草払いとかに手間がかかるからということで、管理費を払わないとなかなかあずかってくれないような現象も出てきておりますし、また、売買におきましても、ただでいいからもらってくれないかと言われても、ただでも困るからということでお断りされる事例がふえてきております。

 今、よく、銀行にお金を預けますと、金利が低金利、マイナス金利、そして将来的には預金を預けると銀行にお金を払わなくちゃいけないというような、預金通帳の話が出ておりますけれども、預貯金と同じような流れが農地の方にも今起きてきております。

 そういうことで考えますと、昭和三十年代が六百万ヘクタール、平成四年が五百二十万ヘクタール、令和元年が四百四十万ヘクタールということで、六百万から四百四十万ヘクタールということで、農地がこれだけ減ってきております。

 こういう状況の中で、これまでの農政は食料・農業・農村基本法という流れの中で地域政策と産業政策という二つの大きな視点を持ってきておりましたけれども、ある意味これまで何百年とかけて培ってきた公共的な財産である農地についても、公共的な財産を保全するという意味での大きな三本目の柱としてこれからの農業政策に入れていかなければ最低限必要な食料を供給してくれる農地が保全できないということになりますので、そのことも踏まえまして、将来の農地保全に関しましては、菅総理大臣も自助、共助、公助と言われておりますけれども、農地保全の世界に関しても、そろそろ公助の考え方を更に推進してもいいのではないかと思います。

 そういう視点から、現在、各地の農政局に出先がありますけれども、そのような体制について検討されておるのか、今の現状の組織体制等についてお聞きしたいと思います。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 農地を将来にわたりまして保全していくためには、先ほど大臣から御答弁がございましたように、農地の利用に関する集落等の話合いが基本だというふうには承知をしております。これら農地利用の話合いにつきましては市町村が中心になって行われているわけでございますけれども、今御指摘いただきましたように、地方農政局、また、地方農政局は各都道府県ごとに拠点というものを持っておりますので、それらの拠点も含めましてでございますけれども、これら地方農政局あるいは拠点が市町村、都道府県と連携をいたしまして、施策の情報提供あるいは優良事例の横展開などを行っているところでございます。

 今後とも、全国の地方農政局等の組織を十分活用いたしまして、地域の声をよく拾い上げまして、課題の解決に向けた助言等を積極的に行い、また政策への反映にも努めてまいりたいと考えております。

 以上であります。

矢上委員 ぜひとも、地方農政局、また各地域の出先の積極的な活用の検討をお願いいたします。

 これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、神谷裕君。

神谷(裕)委員 立憲民主党の神谷裕でございます。

 本日は、この貴重な農林水産委員会の質疑の時間を頂戴しましたことを感謝申し上げたいと思います。

 また、野上大臣、葉梨副大臣、池田政務官、御就任まことにおめでとうございます。農政は本当に重要な局面を迎えております。大臣には本当に、これまで培った経験をぜひ農政の場で生かしていただきたい、そのことをまず心からお願い申し上げたい、このように思います。

 私の地元でございますが、北海道の米の地帯でございます。大変に豊かな地域でございますが、ことしは例年になく、例年になくというか、ことしも本当に米は豊かに実る年でございました。大変にいい年だったなというふうに思う反面、多くの稲作農家の皆さんにとっては非常に不満、不満というか不安を抱えている現状にございます。御案内のとおり、米価あるいは米がどうなるのかということを今非常に気にしておられるわけでございます。

 私自身は、この間、この委員会でもさまざま議論がございましたけれども、やはり、ことしの出来秋の需給についてどうやって考えていくか、これがまず大事なことだと思いますし、もう一つ大事なのは、来年産以降をどういうふうにしていくのか、この両側面からしっかり考えていく必要があるんだろう、このように思っています。

 そういった意味で、まず伺いたいのは、ことしの収穫を受けて、ことしの米価、あるいはその米価によって農業者の収入が確保されるわけでございますが、これが大変気になるところでございます。これについての対策あるいは考え方、そういったことを伺いたいと思います。

野上国務大臣 お答え申し上げます。

 令和二年産米の十月の相対取引価格、これは昨日の夕方公表をされましたが、全銘柄平均で六十キログラム当たり前年同月比で六百六十八円安の一万五千六十五円となりまして、引き続き動向を注視する必要があると考えているところであります。

 仮に米価が今後大きく下落した場合には、セーフティーネットとしまして収入減少影響緩和交付金、ナラシ対策ですとか収入保険等がありまして、補填が行われることになりますが、他方、農水省としては、新型コロナの影響等によりまして中食、外食向けの需要も落ち込んでいるものですから、この状況も踏まえまして、米穀周年供給・需要拡大支援事業による保管経費の支援対象期間を拡充をいたします。五カ月間前倒しして十一月から支援をするということでありますが、これによりまして全農等において二十万トンの調整保管に取り組むものと承知をいたしております。

 また、一次補正の国産農林水産物等販売促進緊急対策の対象品目として中食、外食向けの米を新たに追加をしまして、販促の取組を進めて、中食、外食の販促キャンペーンで使用する米の費用の支援をすることといたしております。

神谷(裕)委員 大臣、今、幾つかの対策を挙げていただいたんですが、例えば周年対策を挙げていただきました。ただ、周年対策は一時的に調整保管をするだけでございます。現実には、ある一定期間たったら市場に戻ってくるということになるわけでございますし、ある意味業者さんからすれば安い米がそこにずっと保管をされているというようなことで、必ずしも需給を締めるということにつながるのかというのは、この間大変議論があったところだと私自身は承知をいたしています。

 あるいは、中食、外食、そういったところでの需要喚起、これは本当に大事なことだと思いますけれども、大変残念なことに、残念というか、主食の特性というのもございまして、主食というのは、御案内のとおり、例えば価格が安くなったからといって急に多く食べるわけでもございません。逆に言えば、価格が高くなったからといっても食べないということにはなかなかならないというのが主食の特性だと私は聞いております。

 だとするならば、この米の対策をもう少し踏み込んだ形でやっていただかなければならないんじゃないか、このように思うわけでございます。とすれば、手っ取り早くというか、需給をしっかり締めていくためには、今のボリュームというか、これをまずは市場から隔離をしていく、これがやはり一番大事なんだろうというふうに思います。

 先ほど周年対策という話もありましたけれども、周年対策は、先ほど申し上げたように、仮に出てきたときに価格が上がっていればまた違うのでしょうけれども、現実にそういったことになるのかと言われれば、今の需給環境を考えたときにどうなのかというのが、どうしても疑問符がつくところでございます。そういった意味では備蓄の方がまだいいのかもしれません、棚上げになっていますから。

 もちろん、さまざまな方策があるとは思うんですが、私自身は、いっそこの国から米を外国に持っていってしまうというようなことも一策として考えられないかなというふうにお願いしたいなと思っていまして、特にWFPなんかの話を聞いておりますと、例えば国外ではバッタの被害が大変大きな被害になっているとか、あるいはコロナであるとか、そういったことで大変、食糧難というか、食糧にお困りの方が大勢いらっしゃるというふうに聞いているところでございます。

 そういった中で、例えば、支援を欲している国も当然あると思いますから、そういった国に対して米を出していく、そういうことは考えられないかと思うわけでございますが、これについての御所感を伺いたいと思います。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 お米を活用した海外への援助ということでございます。海外への食糧援助につきましては、被援助国や今委員御指摘のWFPなど国際機関からの要請に対しまして、正常な貿易に支障を与えてはならないといったこと、さらには被援助国のニーズに対応して行われるといった、国際的なルールとの整合性に留意をして行う必要がございます。

 今ここで被援助国のニーズと申し上げたことの中には、長粒種がいいとか短粒種がいいとかといった被援助国のニーズもあるわけでございます。また、財政負担にも留意をする必要があるということで、ODAを活用したスキームにより実施してきてございます。

 近年の実績でございますが、平成二十九年度は合計七万トン、うち政府の備蓄米が四万トン、平成三十年度は九万トン、うち政府備蓄米が五万トン、令和元年度は八万トン、うち政府備蓄米が四万トンということでございまして、年間合計十万トン弱の援助を実施してきており、うち国産米は四、五万トンとなっておるところでございます。

 引き続き、国際ルール、さらには財政負担に留意をしつつ、被援助国における国産米ニーズの掘り起こし、これは在外公館や外務省にも随分協力をしていただいておりますが、このようなことに努めてまいるということでございます。

 また、先ほど委員御指摘の周年供給事業についてでございますけれども、この事業を利用して金利や倉庫料の二分の一の補助を受けるということにした場合には、翌年の十月までは販売できないというルールになってございます。

神谷(裕)委員 今、御説明いただきました。

 ニーズは絶対あると思っています、海外の。今、例年の数字も言っていただきましたけれども、九万トン、十万程度流れているんだとは思いますが、これは今あるニーズなんだろうと思います。

 ただ、先ほど申し上げたように、ことしはちょっと例年とは違って、例えばバッタもあったでしょう、あるいはコロナもあったでしょう、かなり特殊な状況なんだろうと思います。そして、我々の国にはまだまだ出せる余力が相当あるんだろうと思いますし、そういったところに柔軟に、こちらから、先ほどもお話をいただきましたけれども、在外公館も使って積極的にニーズを掘り起こしていただいて、我々ができる国際貢献としてぜひ進めていただけないかと思っています。そこの点、よろしくお願いをしたいと思います。

 そしてまた、今、後段のところで、来年の十月まで売れないというようなお話でございました。ただ、来年十月というのがまたくせ者でございまして、当然、来年産のお米が出てくるわけでございますから、その時期に出てくるということがまた需給の面で非常に心配だなというふうに思ったりもします。今年産に関しては大丈夫なのかということになるかと思いますけれども、そうなったときにもう一つやはり考えなきゃいけないのは、来年産以降の作付、これをどういうふうに考えていくかということだと思います。

 来年産の作付についてどうお考えなのか、伺わせてください。

野上国務大臣 主食用米につきましては、先般、食糧部会におきまして令和三年産の主食用米の生産量を六百九十三万トンとする見通しをお示ししたところでありますので、大変厳しい需給環境にあると認識をしております。

 米政策につきましては、毎年需要が減少することが見込まれておりますので、国内の消費拡大ですとか輸出拡大の取組を進めつつ、みずからの経営判断により需要に応じた生産、販売を着実に進めていくことが基本であると考えておりますが、そのもとで、農水省としては、現下の厳しい需給環境のもとで、国内の消費拡大、産地の調整保管、輸出拡大の対策、あるいは、需要のある麦、大豆、輸出用米、WCS用の麦等、主食用米以外の生産拡大、また、高収益作物への転換、水田活用の直接交付金等による効果的な推進方策等々、過去の実績がさまざまありますので、過去の実績も踏まえつつ、財政当局等とも議論して、これはよく検討してまいりたいと考えております。

神谷(裕)委員 大臣、今、数字もお示しをいただいて、来年の生産数量目標の配分のことについて触れていただきました。これは相当厳しい数字ですよね。現実には、農業者の方に相当協力をいただかなければなりませんし、これまで協力をしていただいたぐらいのことでは多分達成ができないんじゃないかというぐらい、本当に大変な数字だと思っています。

 ましてや、今の政策は、基本的には自由につくっていいという世界があって、その中で生産数量目標の配分という形で農水省さんがお示しをし、それを農業者の方に、自分たちの判断で決めてくださいという世界です。

 だとするならば、この数字を本当に実行できるのか。私は非常に心配でなりません。ましてや、ことしの数字でさえ、作況でいえば平年並み、九八だったと思いますけれども、それでこの数字でございますから、仮に達成されたとしても大丈夫なのかというのがつきまとうところでございますが、このままでいくと本当に達成できるのか。私は本当に、このままでは大変なことになるんじゃないかと思っています。

 大臣、本当にこれを達成させるために、従来のやり方、従来の方策、従来の施策ではやはり厳しいんじゃないかと率直に思うところでございますが、もう一段踏み込んだ施策がやはり必要なんだろうと思ったりするわけです。作付をしっかりやっていただくために、あるいは生産数量の配分をしっかり守っていただくために、もう一段の施策が必要だと思いますが、この点はどうでしょうか。

野上国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたとおりの方針のもとでありますが、よく検討してまいりたい。申し上げたとおりでございます。

神谷(裕)委員 大臣、本当にお願いをしたいと思います。そしてまた、もう来年の営農計画のことが念頭にあるわけでございますし、それもあるので生産数量目標の配分を早目に決めていただいたんだろう、そのことは御英断だと思いますが、その上で、農業者の皆さん方は、どうしていくのかというのが、今、本当に逡巡をしておられるところだと思います。

 そういった意味で、仮に、転作を受け入れよう、別のものをつくっていこう、麦、大豆をつくっていこうという方々に対して、しっかり腰を押してあげなきゃいけない。その必要が私はあると思いますし、そうでないと、とてもとても守れるものではないと思います。

 そういった意味においては、例えばこの間の水田活用なんかでもさまざまやっていただいていますけれども、特に、水田しかできない地域もあるという中で、米転作ということをこの間進めていただきまして、これは非常に効果があったと思います。ただ一方では、最近になりまして、飼料用米がなかなか進んでないという現状があります。基本計画でもこの飼料用米の位置づけを非常に大きく扱っていただいていますし、やっていかなきゃいけない一つの方策なんだろうと思います。

 そういった中で、今のところ、飼料用米は余り進んでいるようには見えません。この辺のところ、なぜ進まないのかということ、これについて分析は行われたのか。ここについて教えていただけたらと思います。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 飼料用米の作付なり生産量でございます。

 本年産の飼料用米の作付面積につきましては、前年産から約千六百ヘクタール、約二%でございますけれども減少いたしておりまして、七・一万ヘクタールでございます。数量ベースでは合計、生産量が三十七万トン相当となったところでございます。

 これは、近年、主食用米の価格が堅調に推移していることに加え、飼料用トウモロコシの国際相場が低迷しておりまして、それと競合する飼料用米の販売価格も低下したことなどから、産地の中では飼料用米から備蓄米へ、飼料用米から米粉用米及び新市場開拓用米などへの転換が判断されたということの結果であると考えております。

 委員御指摘の基本計画におきましては令和十二年度で七十万トンという目標を掲げておるところでございまして、農林水産省といたしましては、引き続き、実需者である飼料業界や畜産農家の飼料需要に応えられますよう、令和三年度予算では水田活用の予算を要求しておるところでございまして、さらには複数年契約による長期安定的な取引を推進してまいりたいと考えております。

神谷(裕)委員 ここのところ、特に飼料用米は大事な話だと思っています。転作だけでなくて、自給率ということを考えたときに、やはり国産自給飼料という意味でも非常に大きな政策だと思います。これについてもう少し後押しをしていただけるように考えていただけたらと思う次第でございますし、大臣、できれば、例えばこの水田活用なんというのは農家の皆さんにとっては非常に重要なものだということは十分わかっているわけですから、例えば法制化とか、そういったことも含めて御検討なさってはいかがかなということを申し上げたいと思います。

 質問を移らせていただきます。

 私の地元、ソバも非常にいい産地でございます。ことしもまた、ソバもいい年でございました。いい年というのは、量も質も非常にいいものがとれた。しかし、残念なことなのでございますが、コロナの影響で物が動かない、いかんせん物が動かない。物が動かないとして、大きな在庫が今できています。そういった意味で、来年産も非常に作付が心配になっています。

 そういった作物が実はソバだけではなくてたくさんあるような状況でございますが、まずは、ソバを始めとしたそういった来年産の作付が心配な作物について手当てをお願いしたいと思うんですけれども、これについてお伺いをしたいと思います。

池田大臣政務官 ソバにつきましては、新型コロナウイルス感染症の影響によりまして在庫が滞留したことを受けまして、ことしの六月に国産農林水産物等販売促進緊急対策事業の対象品目に追加をさせていただきました。この事業によりまして、インターネット販売や地域による販売促進キャンペーン等の取組を支援し、在庫滞留の解消に向けた取組を進めているところでございます。

 ソバの主産地であります北海道のJAきたそらちでは、本事業を活用して大手のコンビニ等と販売促進キャンペーンを行い、本事業が在庫滞留の解消に役立っておるというふうに聞いております。また、山形県鶴岡市や福島県喜多方市では地元そば店と協力してそば祭りを開催するなど、各地で販売促進事業の活用が行われております。

 引き続き、来年度の作付に影響が出ないように、この取組を進めてまいりたいと考えております。

神谷(裕)委員 ありがとうございます。

 そういった需要喚起は本当に大事だと思っています。ただ、ソバだけでなくて、実は多くの品目でもそういった同様の現象があると聞いています。品目を加えていただいた、これは本当にありがたいと思うんですが、実は、品目に着目しないで、被害があるもの全てに当たって、例えば、面倒を見られないか、需要喚起を行えないか、キャンペーンができないか、そういったこともぜひお考えをいただけないかなというふうに思っています。

 例えば、私の地元でいいますと、タマネギなんかもジャガイモなんかもそういうような形で非常に在庫がたまっている、価格も安くなっているというようなことでございます。もちろん、さまざまなほかの対策もあるかもしれませんが、そういった意味で需要喚起の方も進めていただけたらと思う次第でございます。ぜひ御検討もいただけたらと思っております。

 また、ソバについてもう少しお伺いをしたいのは、今、数量払いもありますので、価格が安くても、どうしても売らなきゃいけないというようなことを聞いております。もちろん、契約栽培なんかもあるものですから、この辺はちょっと難しい部分があるかもしれないんですが、農家にしてみるとどうしても安い、安いから少し手控えたい、でもやはり数量払いも当たらなきゃいけないからというような話だそうでございます。ここの部分を工夫できないかと思うんですが、いかがでございましょうか。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、ソバにつきましても、畑作物の直接支払交付金の対象とされておるところでございます。この中で、実需を伴わない生産ですとか交付金目的の作付を防ぐといった観点から、ソバについても需要に応じた生産がなされるようにということで、生産者には当年産の生産者と実需者との播種前契約を求めておるところでございます。播種前契約に基づきまして生産、販売が行われたものに対して交付金を交付するという仕組みでございます。

 このような仕組みでございますので、播種前契約において、例えば、数量だけではなく、事前に販売価格の決め方についてのルールを取り決めるなどの工夫を行っていただくことで、実需者と生産者との間で相場に左右されにくい安定的な取引関係を構築していくということも一つの手法だというふうに考えております。

神谷(裕)委員 ありがとうございます。ぜひ、そういったことをお進めをいただきたいと思いますし、やっていただけたらと思っています。

 ちょっと話題を離れてしまうかもしれませんが、こういったソバだけじゃなくて、ジャガイモもさっき、あるいはタマネギの話もさせていただきましたけれども、本当に今在庫がひどい状況になっている、価格も安くなっているというようなことでございまして、そういった皆さん方にとって、実は、ちょっと話は違いますが、高収益作物の次期作支援を非常に当てにしていたというようなこともございます。そういったこともあって、今回、今御尽力をさまざまいただいておりますけれども、変更になったということが非常に残念だった、厳しいという声をいただいています。引き続きこの部分についても御考慮をいただけたらということをあえて付言させていただきたい、このように思います。

 話題をかえます。今度はまたジャガイモについて伺いたいと思います。

 ことしの二月だったと思うんですけれども、米国からの加工用ジャガイモの輸入が、これまで期間を区切ったものだったと思うんですが、通年になりました。通年になった経過についてお伺いをしたいと思います。

新井政府参考人 お答え申し上げます。

 米国産のポテトチップ加工用バレイショにつきまして、少し長くなりますけれども、検疫の条件、それから輸入解禁の今までの経緯等もあわせて御説明させていただこうと思っております。

 このポテトチップ用の加工用バレイショにつきましては、我が国が侵入を警戒する多数の病害虫が付着し得ること、それから、繁殖用ということで種芋に転用可能ということでございますので、現在の要件といたしましては、シストセンチュウの無発生の地域で生産していること、密閉のコンテナで輸送すること、それから、輸入後直ちに加工処理施設へ輸送し、摂氏百三十度以上で二分間の加熱加工処理をするということを条件といたしまして、輸入期間を二月から六月に限定いたしまして、二〇〇六年に十四州の輸入解禁を行いました。

 その後、解禁直後、同年の四月にアイダホ州でジャガイモシロシストセンチュウの発生が確認をされたということでございまして、同州産のバレイショにつきましては輸入を禁止いたしました。

 その後、十年間にわたる植物検疫の専門家による協議を経まして、二〇一七年九月に同州からの輸入を再開いたしました。この場合も、同州全体ではなくて、その中の二郡については今でも輸入解禁をしないということで、それぞれ病害虫の発生状況に応じて判断をしてきたということでございます。

 委員御指摘の通年輸入につきましては、二〇一七年の十月に米国側からの要請を受けまして、専門家で植物防疫上の安全が確認をされたということで、産地への説明、それからパブリックコメント等を経まして、本年二月に期間限定を撤廃したということでございます。

神谷(裕)委員 もともと、加工用ジャガイモについては、端境期に入れようじゃないかという考え方のもとに、期間を区切って入れましょう、それであれば北海道を始めとする国内の生産者に影響がないだろうというようなことで、端境期に限って入れようじゃないかというような経過があったと思います。

 今のお話ですと、病害虫対策、シロシストセンチュウであるとか、そういうものの対策をしたものであれば構わないのだからみたいな形で輸入が通年になったようにも聞こえたわけでございます。そういった意味では非常に心配だなというふうに思っていまして。

 あわせて、その翌月ですか、米国から生のジャガイモについての輸入解禁の申出があったというふうに聞いております。これもやはり農業者にとっては、大丈夫かというのが本音だと私は思います。この辺のところ、もしも解禁になったら、当然、ジャガイモは輪作体系の中で非常に重要な作物でもございますし、価格の方でも大きな影響があるんじゃないかということも想像されるわけですけれども、この辺の経過について、私はやはり解禁すべきではないと思ってはいるんですが、大臣の御所感を伺いたいと思います。

野上国務大臣 WTO協定上、他の加盟国からの協議自体を拒むことはできませんが、日米両国間の植物検疫に関しても、両国の専門家が協議を重ねることによって多くの課題を解決してきましたが、他方、バレイショは畑作農業において重要な地位を占める作物でありまして、シストセンチュウといった防除が困難な侵入病害虫が発生していることもあって、米国からの輸入解禁要請に対して農業者の皆様の間に懸念が生じていることは承知をいたしております。

 こうした御懸念を踏まえて、私から事務方に対しては、我が国への病害虫の侵入を許すことのないように、慎重に協議に臨むように指示をしているところであります。

神谷(裕)委員 大臣、もちろん、シロシストセンチュウであるとか、そういった病害虫というか、これは大変な脅威です。それについて農業者が脅威に思うことは当然なんですけれども、それ以上に、入ってくること自体、そのボリュームが農業経営にとって脅威になり得るということについてもぜひお考えをいただきたいと思います。今のお話ですと、検疫の条件、あるいは害虫の侵入防止、これがきれいになったときには大丈夫なんだというような御見解にも聞こえるわけなんですけれども、その辺はもう少し踏み込んでお話をいただけないでしょうか。

野上国務大臣 今の先生の御懸念、あるいは農業者の皆さんの御懸念、これは十分承知をいたしておりますが、解禁要請を受けて間もないこともありまして、仮定の質問にはお答えは差し控えさせていただきたいと思いますが、しかし、まずは科学的根拠に基づく検疫協議の議論にしっかり対応してまいりたいと思います。

神谷(裕)委員 大臣、仮定の質問と言われればそのとおりかもしれませんが、ここは農林水産委員会ですから、農業者の思いに立っていただいて、農業者が例えば生のジャガイモを輸入されると思ったときにどう思うかという思いに立っていただいて、一つ、こちらはどうするかという姿勢を明確に示していただきたいというのが本音でございます。恐らくはきょうの段階ではそこまではお考えではないのかもしれませんが、このままであれば検疫の条件で整ってしまうというのではやはり困るものですから、その辺をぜひ御考慮いただけたらと思います。

 最後の質問をさせていただきます。密漁対策について伺いたいと思います。この後、法案なんかも出てくるとは承知をしているんですが、せっかくの機会でございますので。

 私が懸念をしておりますのは、私の選挙区にもあるんですが、夜間の潜水の禁止です。

 私の地元の漁師さんに聞きますと、原則、夜間に潜ることについて規制をかけるというのはなかなか難しいということは聞いているんですけれども、やはり、あの水域、アワビとかナマコがいる蓋然性が高いところで潜られるというのは、いかに自由といえどもそれはだめだというのが漁業者の総意でございまして、総意というか、私が聞いた中ではそういう話でございまして、できますればこういったところだけでも夜間の潜水を禁止にできないか、あるいは、そうでなかったとしても、漁協に届け出ていただく、あるいは役場に届けていただく、そんなこともできないか、そんなようなお話を聞いています。こういう対策はとれないものでしょうか。いかがでしょうか。

山口政府参考人 お答えいたします。

 密漁対策につきましては、十二月一日に施行される改正漁業法において、全国で組織的かつ悪質な密漁の対象となっているナマコ、アワビ等の特定水産動植物については、採捕禁止違反の罪を新設いたしまして、三年以下の懲役又は三千万円以下の罰金を科すこととしております。

 罰則強化による密漁の抑止効果を最大限に生かすために、漁協、都道府県、警察及び海上保安庁等の関係者が密接に連携して、情報の共有、合同取締りの強化等を行うなど、総合的な密漁対策を推進していくこととしております。

 議員御指摘の夜間の潜水の取締りにつきましては、レジャーによるダイビングと密漁によるダイビングの区別が難しい状況にありますけれども、密漁の多くは夜間に行われている実態がございます。県によっては潜水器漁業の夜間操業を禁止している事例もございまして、また、夜間監視カメラの整備、これが大分性能がよくなっておりますので、こういったものを併用することによりまして密漁者のダイビングを見分けやすくするということで、密漁取締りの実効性を確保することもこれから可能になってくるのではないかと考えております。

 これらのことを踏まえまして、北海道とも協力しながら漁業やダイビングの実態等を調査し、その上でどのような対応が可能かを検討してまいりたいと考えております。

神谷(裕)委員 ぜひ実効ある対策をお願いをさせていただきます。

 これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、緑川貴士君。

緑川委員 皆さん、お疲れさまでございます。立憲民主党の緑川貴士です。

 議論の中にございますけれども、新型コロナウイルスによる影響で外食産業の不振が続いております。業務用を中心に米の需要がやはり減少している。外食需要の喚起策の一環として、国産農林水産物等販売促進緊急対策の対象品目として、大臣からもきょう御答弁もいただきましたけれども、中食、外食向けの米を新たに追加するということを決めたということなんですが、今、具体的な支援額そして数量など、検討はどこまで進んでいるでしょうか。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、国産農林水産物等販売促進緊急対策でございます。これは一次補正予算で措置していただいておりまして、総額は千四百億円ということでございます。この中の対象品目として中食、外食向けのお米ということで新たに追加をされておるわけでございますけれども、品目別の予算上のミシン目は設けていないということでございます。

 また、支援単価でございますけれども、支援単価の方は、この事業は二つございまして、インターネットでの販売推進事業の場合の送料支援、こちらは実費相当ということでございます。また、地域の創意による販売推進事業、これで原料米の支援を行うわけでありますけれども、この支援の上限単価、これは玄米六十キロ当たり五千三百円としておるところでございます。

緑川委員 従来の対象品目の中では、畜産物、果樹、野菜などについては販売額の半額とされていますけれども、米について、これは半額というところは決めるんでしょうか。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 畜産物での半額というものをお米の場合に置きかえてはどうかという、実際の販売価格につきましては、事業者がまたそれぞれ経営上の判断をもって決めていくということになると思いますが、予算上の支援ということでは、先ほど申し上げたとおり、玄米六十キロ当たりの支援単価が五千三百円ということでございまして、相対取引価格は一万四、五千円ということでございますので、それに対して五千三百円の支援があるということでございます。

緑川委員 やはり、畜産物とかそのほかの品目に比べて、トータルの販売額からすると、米がちょっと心もとない支援の額になっているのかなというふうに考えております。

 非常に今、需給が緩み出している中で、在庫が積み上がってきているところであります。確かに、インターネット販売サイトを通じて販売する米の送料を支援するという販促事業とか、道の駅、直売所などの販促キャンペーンも米需要の喚起には重要ですけれども、制度が示されてから申請までの期間も短い気がいたします。この行き場をなくした米を可能な限り、できるだけさばいて、今まさに、これから積み上がろうとしている民間の在庫をいかに抑えていくか、少しでも軽くしていくかということがやはり先決であるというふうに考えております。

 人口減少と高齢化で毎年十万トンの米の需要が下がっていますし、ことしはコロナの影響で、ことし六月までの一年間では二十万トンの需要減です。例年の倍の減少幅になっていますし、きょうも議論があるように、来年六月には、主食用米の在庫が二百万トン以上に積み上がるということが今見込まれているわけですね。

 私の地元秋田でも、米の概算金が六年ぶりに全国と同じラインで下がりまして、あきたこまち一等米では七百円下がりました。大臣が、ナラシ対策について御答弁もありましたけれども、九割が補填されるにしても、下がった分の九割というだけでは、次の年も米価の下落が続いていくこともあり得るとすれば、その後の補填額ということがやはりどんどん下がっていくわけですね。十分な経営安定対策にはなっていかないということがこれまで加入率を下げてきたというふうに思いますし、ナラシ対策への加入面積は今三割ほどになっています。

 私の知り合いに家族経営の兼業農家がいるんですけれども、こうした事情の中で、やはりナラシ対策には加入していないと。三ヘクタールで稲作をやってきて、毎年およそ、三十キロ入りの玄米のものを袋詰めして六百袋を出荷しているという知り合いなんですが、彼が、ことしは二十万円以上の所得の減少になりました、非常に厳しいというお話をしています。

 当面の米の価格の下落を防ぐために、先日、佐々木委員からも御指摘のあったような、行き場をなくした米を市場から隔離をするということはやはり重要だというふうに思いますし、適正な需給のためには、来年産ではいよいよ、過去最大規模になるような作付の削減が各地域で始まってくるわけですね。

 農水省としては、水田活用の直接支払交付金の運用を見直す、主食用米から飼料用米などへの用途変更を地域ごとに行いやすくしようということが模索されているということも報じられております。このことについてちょっと時間を割いていきたいと思うんですけれども。

 来年産から、JAなどの生産者団体また集荷業者が、都道府県の生産の目安などに基づいて、農家ごとに用途別の米の生産数量を決定をしていく、その上で、JAが生産者から委託を受けた上で水田活用の直接交付金をかわりに受け取って、そして、その交付金と非主食用米と主食用米の販売代金を合わせて、それをプールして、共同計算をしてJAから生産者に支払うという仕組みが今検討されているということです。

 いわゆる共補償、その地域で生産調整をする。経済的な不利益を農家が互いに補償し合う、負担を均衡化させるシステム。わかりやすく言うと、非主食用米に転換する痛みをみんなで分かち合うというものであると思います。

 そういう仕組みを産地ごとにこれからとることになれば、やはり地域に大きな影響がこれから生じてくると思いますし、この仕組みというのは、まず、各地で強制されるものなのかというのが一点と、そして、需要に見合った米の生産を進めるということは確かに大切なんですけれども、この仕組みをとったからといって、JAとしての全体の収入が減ることになるような、飼料用米などの非主食用米への作付転換が進んでいくことにはやはりなっていかないというふうに考えているんですけれども、このあたりの御見解はいかがでしょうか。

葉梨副大臣 お答えいたします。

 強制というお話がまずありましたけれども、これは強制ということではございません。

 それで、主食用米以外の需要のある作物、飼料用米、加工用米、米粉、さらには輸出用米といったものに転換していくためには、実需者との取引、これが非常に大事なんですが、それはやはり地域ごとにまとまった方が、ある程度有利な取引もできようかというふうに思います。

 また、その上で、この水田活用の直接支払交付金について、国から生産者に直接支払う、この基本的枠組みは維持しながらも、生産者から委任を受けた場合に、地域の作付計画を調整する集出荷団体等が交付金を代理受領しやすくする見直しを検討しています。そして、その集出荷団体が実需者と取引をするということになります。個々の集出荷団体において、来年産に向けた生産者との出荷契約書の見直しを検討することになるというふうに思っています。

 これによって、例えば、六月末の営農計画書の提出期限の間際まで、米の需給状況や価格動向を踏まえ、産地単位でまとまった主食用米の一部を飼料用米等の用途に変更し実需者と契約するなどの取組が行いやすくなる、どれが有利かというのをちゃんと考えた上でやっていくわけです。そこで、交付金や販売代金を合わせた共同計算によって生産者の手取りも平準化していくということになりますので、現在の仕組みと比べると需要に合わせた生産というものに取り組みやすくなるのではないかなというふうに考えています。

緑川委員 飼料用米への作付転換ということについて焦点を当てると、戦略作物の他の助成金については、確かに、主食用米との兼ね合いでトータルとして所得の水準を何とか支えていく水準にはなっていく、そうした共同計算にはなっていくというふうに思うんですけれども、すると、飼料用米への作付転換というのは今の御答弁だとなかなか進んでいかないんじゃないかと思いますけれども、いかがですか。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の問題意識は、主食用米と飼料用米とで手取りの格差があるので、共同計算を行うとしても餌米の方に転換していかないのではないかということであろうと理解をした上で申し上げさせていただきます。

 そもそも、水田活用の直接支払交付金の中の戦略作物助成の交付単価につきましては、例えば餌米は八万円がへそで五・五万円から十・五万円の間で数量払いということになっておるわけでございますけれども、その八万円の考え方は、主食用米と遜色のない所得が確保できるという考えのもとに単価を設定しておるところでございます。

 このため、主食用米の需給状況なり価格の動向、さらには産地交付金による支援の状況、また県なり市町村における支援の状況によりましては主食用米よりも餌米の方が有利となる場合や地域もあり、一概に主食用米の生産者手取りが下がるということにはならないと考えております。

緑川委員 非常に苦しいと思いますね。

 その仕組みで必ず運用していくことではないということになれば、やはり、共同計算の仕組みというのは平準化させるわけですよね、均衡化させるわけですよね。餌米の方がもうかっている農家はどれだけいるんでしょうか。私は相当少ないケースだというふうに思っておりますけれども。

 この仕組みをとるJAというのは、共同計算をした結果、どのぐらい生産者に所得として割り当てることができるかもしっかりと見ていく、その上で判断していくというふうに考えております。確かに、営農計画書などの変更は、生産者から委託を受けた生産者団体などで柔軟に対応できる。営農計画書の提出期限の六月末まで需給状況などを見きわめる余裕が生まれることは確かにあると思います。しかし、実際に主食用を非主食用として振り向けていくかどうかというのは、あくまで地域の判断によると思います。

 おっしゃったように、JAグループの試算もありますけれども、主食用米の十アール当たりの手取りは、六十キロ当たりで販売単価は昨年産では一万五千五百円、十アール当たりの収量に直せば九俵とれることになりますから、十四万円です。一方で、飼料用米というのは、販売単価が六十キロ当たりで千五百円、これに、標準的な単収である十アール当たり八万円の水田活用の交付金、さらに、産地交付金の複数年契約の加算一・二万円、転作拡大加算一・五万円を合計して十アール当たりにすれば、それでも十二万円にしかならないわけですよね。主食用米とは十アール当たりで二万円の差がやはりあるわけですよ。

 そうした中で、餌米でもうかっている農家がいるというふうに、これを一般論として言われるというのはやはり違和感があります。この明らかな格差が埋まらないと、結局、JAとして飼料用米のような非主食用米への転換を進めれば進めるほど、地域の一般的なJAとしては、入ってくる販売代金と交付金のトータルの額は減っていくことになるんですよ。

 共同計算をした結果、そうしたら生産者に支払う額も縮小していくんじゃないんでしょうか。いかがですか。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 現在においても、例えば、ブロックローテーションの維持といったことのために、各生産者に渡る交付金を転作組合の代表者などの口座にまとめて入金する代理受領を可能としておりますし、こういう取組をしておるところがございます。こういう代理受領につきまして、来年度に向けて、地域がまとまって餌米等について実需者と取引するといった取組を目的として、地域の集荷団体等の単位で代理受領をすることを認めるといったことでございます。

 県別、銘柄別、産地品種銘柄別に、委員御存じのとおり、お米の値段は違うわけでございます。どの産地品種銘柄のお米を対象に考えるのか。秋田県のお米は全国平均に比べると比較的高いので、八万円という単価からすると飼料用米は見劣りをするといったような場合には、産地交付金の配分の中で、地域ごとに更に検討を加えていただくというのが基本だと考えております。

緑川委員 産地交付金の今後の拡充ということは大変重要であるというふうに思いますけれども、ただ、飼料用米のブランド化というところについて、どのぐらいの普及があるんでしょうか。今おっしゃったような、主食用米に並ぶような販売価格で売れているという飼料用米はどのぐらいあるんでしょう。

天羽政府参考人 申しわけありません、私の言い方が悪かったと思いますけれども、主食用米と飼料用米で所得を、収入を比較する場合に、比較の対象になる主食用米は産地品種銘柄ごとに価格が違います。その地域でどの産地品種銘柄を、もともと主食用米として想定していたものを餌米と比較をするかということについては、全国、差がありますので、八万円という水準と比べて主食用米の値段が高い地域においては、産地交付金の交付の仕方で工夫をしていただくのがいいんじゃないかということを申し上げたつもりでございました。

緑川委員 よくわかりませんけれどもね。

 非主食用米の、結局、今の販売価格というのは、これは一般的にですよ、JAのグループの試算では販売価格が千五百円なんですよ。手取り格差は大きいんですよ。

 ここで、どんなに主食用米のものが、作付転換で、飼料用米で、それだからちょっと、主食用米のものとして残っているからそこは価値があるとか、そういうところの議論じゃないわけですよね。手取り格差があるのは厳然たる事実だと思います。非主食用米への積極的な転換ということは、やはりJAとしてはなかなか難しいんじゃないかというふうに考えておりますし、一方の、JAに出荷する農家への影響もあると思います。

 JAが主食用米や非主食用米の生産数量を農家ごとに割り当てる、この共補償によって生産者に実質生産数量を守らせるという形になれば、転作に取り組んできた農家にとっては確かに手取り格差は平準化される、以前よりも大きかった格差が共同計算の仕組みによって平準化されることにはなると思うんですけれども、一方で、今まで主食用米に多く取り組んできた農家にとって、転作に取り組んでいなかった農家としてはこの仕組みではやはり手取りが下がって不利益になる、こういう仕組みです。規模の小さい農家ほどその影響はやはり大きいというふうに思います。

 自由に作付できない、JAに出荷したままでは、自分の作付の自由度が奪われてしまう。主食用米を多く、これから離れて、所得を安定させていくために自主流通を考えていくという農家もこれからふえていくんじゃないかという懸念もあるんですけれども、このあたりはいかがですか。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど葉梨副大臣から御答弁申し上げたとおりでございますが、今回、産地ごとに交付金や販売代金を共同計算できるようにすることについての検討は、それぞれの単協、集荷業者の御判断、さらには生産者との委任について合意が得られた場合に行うということでございまして、強制的に一律にこういう仕組みにしていくということではございません。

緑川委員 それは、先ほど副大臣からも御答弁は聞きましたので。

 そうではなくて、仕組みをとる、それは、合意が得られても反対する農家はいると思います。そうした農家の総意でもって当然仕組みは運用されていくことにはなると思いますけれども、共同計算の仕組み、共補償の仕組みが導入されたことで、今まで転作には主体的には取り組んでこなかった農家にとってはやはり不利益になっていく、そうした農家がやはり農協出荷をやめて離れていくことになるんじゃないかと言っているんです。いかがですか。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 生産調整に取り組む、取り組まない。取り組むとして、主食用米ではなく加工用米にする、飼料用にする、輸出も考える、産地交付金のことも考える、これは、それぞれ、経営者である農業者が御自分の経営判断に基づいて作付なり販売を考える中で決定していくことだというふうに考えておりますので、経営者ごとに判断はさまざまであるというふうに考えております。

緑川委員 経営者で判断はさまざまな結果、現場の生産者、農協出荷でこれまで取り組んできた農家には手取りの減少ということにつながりかねない仕組みであるというふうに思っております。

 今まで、戦略作物助成とか、本来主食用米で来た農家にとってなかなか転換しにくいというのは、農家自身の、確かに部分としてもあるというふうに思います。農協出荷で、それでも頑張ろうというふうに考えて米生産でずっと来た人が、以前の所得からやはり下がっていくわけですから、その所得を維持するために、その人自身が作付をふやす努力はすると思います。遊休地の借受けとか、離農する人たちから農地を借り受けて新たに圃場をふやして、何とか所得の減少を防ごうと、自分自身として作付面積をふやそうと考える農家もいるかもしれません。

 でも、やはり一人では限界があると思います。人手不足の状況がやはり続いておりますし、稲を刈り取ったらすぐに乾燥する必要があるような、圃場をふやせば乾燥施設も足りなくなるわけですよ、そうすれば機械とか設備の問題も出てくる。もう個人で所得を上げようという努力には限界があるというふうに思うんですね。

 それを、経営者の努力だ、経営者の判断だというふうな一口で片づけられてしまったら、農協出荷をする農家さんがいなくなるどころか、やはりどんどん農家が離れていくんじゃないでしょうか。規模拡大ができる農家しかJA出荷ができないとか、手取りの格差を自身で何とかできる農家しか生き残っていかないんじゃないかというふうに思いますけれども、いかがですか。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の懸念についてでございますけれども、繰り返しになりますが、農林省といたしましては、戦略作物助成のメニュー、それから産地交付金の仕組みの見直し、それぞれ、現場でより使いやすいように、実効性が上がるようにということで毎年見直しをし推進をしておるということでございますので、集荷業者単位、場合によったら集荷業者ではなく生産者個人又は生産者のグループにおかれて、それぞれ、自分の経営資源の中でどう作付を進めていくのか、補助金をどういうふうに活用するのか、売り方をどういうふうにしていくのか、これはやはり、個人なのか、グループなのか、集荷業者のもとで糾合して進めていくのか、それぞれだと思いますけれども、地域の実情も踏まえて御判断をいただくということではないかと思っております。

緑川委員 JA主体で最終的に判断した結果、やはり非主食用米への転換というのは図らない方が地域にとっては恩恵がある、トータルとしての収入は大きいというふうに考えるJAは多いというふうに思います。

 懸念されるのが、これから、もう時間もなくなってしまいますけれども、仮に適正な需給が難しいというこの状況がしばらく続いたときに、やはり、心配されるのが米の価格が更に下がってしまうということ、その場合には、先ほどお示しをしたような飼料用米との十アール当たりの手取り格差、二万円近いもの、これが縮小していくことになる可能性もあります。そうなれば飼料用米への転作に、今後下がっていった場合ですけれども、米の価格が下がっていった場合には、飼料用米への転作に取り組みやすくなる状況が皮肉にも生まれてしまうというふうに思います。

 ただ、それは米の価格が下がったことによる消極的な転作ということになりますので、農家の所得の全体の水準を下げることになりかねないと思うんですね、今の交付状況であれば。それはやはり避けるべきだというふうに思っておりますし、今この手取り格差がある中では、やはり、きょうも議論があるように、戦略作物助成の標準単収値を上げていく、あるいは産地交付金の支援メニューの拡充を図っていくということが一つの手段であるというふうに思います。そうした現場の声は強いんです。

 資料の一枚目をごらんいただきたいんですが、水田活用の直接交付金の予算は、これは財務省の資料ですが、転作実績に基づいて、飼料用米の作付面積が減ったことで今予算が削減されてしまっている方向にあります。

 こうした中で、五万五千円の最低の助成を受けようとするばかりに、助成金目当てで、最低限の肥料とか労働力で収穫を上げたという形を見せて助成金を受け取るような生産者も確かにいることは事実なんですが、多くは真面目に、収量をしっかりと上げて飼料用作物の需要拡大につなげていこうと頑張っている農家さんがやはり大半だと思います。

 そうした中では、戦略作物助成を、しっかり標準の単収値を上げていく、産地交付金の支援を更に広げていくということが大事だというふうに考えておりますけれども、大臣、いかがでしょうか。

野上国務大臣 今ほど来、主食用米と飼料用米との比較の話ですとか、あるいは代理受領の話、それにかかわる懸念の話等々を御議論いただいたわけでありますが、飼料米につきましては、お話があったとおり、標準単価を八万円としつつ、インセンティブが働くように、収量に応じて最大十・五万円までというような単価、さらには複数年契約で一・二万円の加算ということでありますが、それに加えて、産地交付金によりまして地域の裁量で飼料米等への支援を追加することが可能となる仕組みとしておりまして、地域の実情に応じた対応というのは産地交付金で行うことでありますが、こういうことを基本としながら、令和三年度予算におきましても要求をしているところでありますが、産地におきまして主食用米以外の需要のある作物や用途への転換が更に進むように、今財政当局とも議論しておりますし、その方策についてもよく検討してまいりたいと考えております。

緑川委員 質問は終わりにいたしますけれども、今後の、飼料用米、つくったからにはしっかりと需要を掘り起こすという、地域とのマッチングなども含めて、ちょっと質疑ができなかったので申しわけありませんけれども、またの機会にちょっと議論をさせていただきたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 きょうは、諫早湾干拓事業と有明海問題についてまず質問します。

 長崎県の国営諫早湾干拓事業をめぐる請求異議訴訟の差戻し審が大詰めを迎えようとしています。潮受け堤防排水門の開門を命じた福岡高裁の確定判決に国は従わず、開門を強制しないように求める裁判が長期化しています。

 まず最初に、野上大臣にお伺いします。歴代農水大臣は就任後一カ月前後で現地を訪問し、漁民、原告又は地元の自治体の長たちと意見交換をするのが慣例となってまいりましたが、野上大臣、地元から、大臣は有明問題に関心がないのかとの声も上がっています。どうされますか。

    〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕

野上国務大臣 現地訪問につきましては、新型コロナウイルスに関する感染状況等も踏まえながら、私もぜひ現地訪問をしたいと考えております。

田村(貴)委員 ほかの自治体とかほかの道県には行かれているので、一日も早く有明に、この間いろいろ異変が起こっている、そして干拓営農地においても訴訟まで起こっているという状況でありますので、関係者の方、自治体の方としっかりと懇談をしていただきたいと思います。

 これまで私が何度も委員会で取り上げてきましたように、干拓農地は、潮受け堤防が締め切られて、調整池の汚濁など、農業に適さない農地の欠陥が次々と明らかになっています。二〇〇八年に四十二経営体による営農が開始されていますけれども、十二もの経営体が干拓農地における営農から離脱しました。営農を継続している二つの経営体からは、農地の欠陥を理由とする損害賠償や開門を求める訴訟が提起されています。今後も、干拓営農から離脱する経営体は更に増加する模様であります。まして、漁業被害は深刻であります。

 国側は、福岡高裁の確定判決に対する請求異議事由として、漁獲量がふえているなどと述べています。誰が見ても明らかな宝の海の荒廃に目をつぶって、あろうことか、諫早湾周辺の漁獲量が回復しつつあるなどというのは信じられない主張であります。

 そこで、農水省に伺います。

 国が裁判で提出した九州農政局の証拠資料、諫早湾近傍の佐賀県有明海漁協大浦支所、長崎県有明漁協及び同県島原漁協における五つの共同漁業権の主な対象魚種の漁獲量、この資料ですけれども、確かに漁獲量はふえています。しかし、ほとんどはシバエビじゃないですか。クルマエビとかタイラギとか竹崎ガニとか、こうした、かつて豊穣の海と言われて、宝の海を象徴する魚種は減少したままではありませんか。事実確認です。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 諫早湾近傍における主な採捕対象魚種の漁獲量についてでございますけれども、海面漁業生産統計調査の結果によりますれば、平成二十五年から漁獲量が増加傾向に転じていることが明らかになっているところでございます。具体的には、平成二十四年度に約一千トンだったものが、平成二十五年には約二千トン、そして平成二十九年には約三千トンとなっておりまして、増加傾向にあるというふうに承知をしております。

田村(貴)委員 質問を聞かれていますか。確かにグラフを見たら漁獲量は上がっているけれども、そのほとんどはシバエビじゃないですか、かつてとれておったものは今はとれていないんですかと聞いているんですよ。どうなんですか。ちゃんと答えてください。時間を潰さないでください。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 主にどのような魚種が増加しているのかという点につきましては、委員御指摘のように主にエビ類ということでございますけれども、平成二十二年福岡高裁確定判決におきまして、漁獲量が有意に減少しているということが漁業被害の判断基準になったというふうに承知をしております。それを踏まえまして、漁獲量の増加について申し上げているところでございます。

田村(貴)委員 その福岡高裁は何と言っているか。漁獲量の減少又は漁獲物の質の低下のどちらかが認められれば漁業被害は存在する、こういうふうに指摘しているじゃないですか。

 だったら伺いますよ。漁獲金額の推移もあるんですか、資料として。出しているんですか。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 諫早湾近傍の漁獲金額に関する統計データはないところでございます。

田村(貴)委員 本当に都合のいい。シバエビだけが伸びているんですよ。それだけとって、漁獲量がふえた、海が戻っているみたいな言い方は裁判所では通用しませんよ。

 シバエビにしても、単純に漁獲量が回復したからといって、資源量が回復したとは言えないんじゃないですか。有明海が再生したなどとは言えません。シバエビは、漁業権漁業の対象魚種ではありません。単価が安過ぎて商売にならないんだけれども、これしかとれないからとっているという現状があります。シバエビに対する漁獲努力量が急激に増大している可能性もあります。

 シバエビの単位努力量当たりの漁獲量、いわゆるCPUE、これについてのデータは農水省にありますか。

山口政府参考人 お答えいたします。

 有明海や諫早湾の主要魚種のうち、いわゆる資源量推定を行っておりますのはアサリやサルボウでございまして、一部地域で行われているところでございます。

 今御指摘のシバエビにつきましては、現在のところ、資源評価データのもとになりますCPUEの調査は行っていないところでございます。

田村(貴)委員 魚がたくさん来ているから、それをとって、そうしたら資源量についてどういう影響があるのかといったところまでやはり精査しないといけないと思います。

 今明らかになったのは、農水省は、シバエビが大量にふえて、それで有明海、諫早湾周辺の漁獲量が上がっていると。これ一点だけなんですよね。それでは、有明海が再生したとはとても言えないわけであります。

 折しも、福岡高裁の開門を命じる確定判決から、来月、十二月二十日で十年を迎えます。この十年間、開門を義務づけた確定判決を履行せず、強制執行として間接強制金を支払い続けるという異常事態が続いてきました。過去に実行した巨大公共事業は過ちだとは認めたくない、そのために、国民の税金を湯水のように使って、世界でも有数な、豊かな干潟を壊し続けているのが現状です。農水省が漁民も農民も苦しめ続ける、この状況をいつまで続けるんでしょうか。

 大臣、ちょっと聞いてください。大臣に就任されて、ちょっと遠いところの話かもわかりません。だけれども、国がつくった国営干拓営農地は、冬は冷害があって、カモの食害があって、当初予定した大規模営農で大きな問題が生じています。そして、有明海異変は、もう大臣御承知のように、このようにシバエビだけがふえてきたんだけれども、ほかの、コノシロであるとかタイラギであるとかアゲマキガイであるとか、本当の、豊穣で、豊かな海で、昔とって、そして漁師さんたちが活気づいていた、あのときの漁場とは全然違うんですよね。

 そういった状況の中で、やはりこれは、裁判を長期化させても何のメリットはありません。今、非開門にやはり農水省は拘泥しているんですけれども、非開門にこだわらず、まず、和解のテーブル、協議のテーブルに着くことが大事ではないかというふうに思うわけなんです。話合いが行われるように、国として、大臣として、話合いのテーブルに着かれるかどうか、今後どういうふうにこの問題に当たっていかれるのか、お話を聞きたいと思います。

野上国務大臣 お答え申し上げます。

 国はこれまで、長崎地裁及び福岡高裁において、裁判所の和解勧告を踏まえまして開門を前提としない和解協議に臨みましたが、和解には至りませんでした。

 国としては、平成二十九年の大臣談話に沿って解決することがベストだと考えておりますが、それに沿うような出口を探ってまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 次の質問に移ります。宮崎県における盗伐、違法伐採、このことについて質問します。

 二〇一七年から、本委員会で私は宮崎県の盗伐問題を毎年取り上げてまいりました。盗伐は、森林法の森林窃盗、犯罪であります。警察において取り締まること、摘発を強く求めてまいりました。

 この間、動きがあったように見えます。警察庁、お越しでしょうか。宮崎県警における森林窃盗の検挙件数等について、また状況について教えてください。

檜垣政府参考人 お答えいたします。

 宮崎県警察においては、森林窃盗に関連しまして、平成三十年は六十九件、令和元年は八十五件、令和二年十月末時点では五十二件の相談を受理していると報告を受けております。

 また、同県警察における森林窃盗の検挙といたしましては、平成三十年は一件、令和元年は七件、令和二年十月末時点では四件を検挙していると報告を受けております。また、中には、懲役一年、執行猶予四年の判決が確定した事例もあると承知しております。

    〔宮腰委員長代理退席、委員長着席〕

田村(貴)委員 相談件数は上がっていく、そして検挙者数もこの近年ふえてきたというところであります。問題は深いところにかかっているんじゃないかと思います。

 二〇一八年十一月二十一日の農水委員会で、私は宮崎県国富町の盗伐のことについて指摘をしました。私、山林に入ったら、その木を切ったという業者と遭遇したんですよね。そのことを委員会で明らかにしました。その伐採を認めた業者は何と言ったかというと、人間は誰しも間違いがあるし、間違って切ったんだ、そういうふうに言うたわけなんですよ。

 それは通用しないだろうということで、委員会では十二月十一日もただして、警察がこの件については既に乗り出しているから農水省としてもしっかり対策を行うべきだと言ったら、当時の林野庁長官はこのように述べました。誤伐か盗伐かという判断、これがいつも問題になるわけでございましてと述べて、なかなかこの強制力を伴う対応がないと難しい面もあるということも事実だと。まるで、先祖代々の山林を、無断で入って、無断で大量伐採されて、その木を売ってもうけをしている、その業者がいるようなもとで、何と人ごとのような答弁をされたわけなんですね。

 警察庁にもう一回お伺いします。先ほど、裁判で判決があったという事例もあったんですけれども、その国富の伐採業者だと思います。どうなったんでしょうか、逮捕された後。教えてください。

檜垣政府参考人 お答えいたします。

 具体的事例につきましては、細かな報告をちょっと受けておりませんので、把握し切れていないところがございます。

 先ほど申し上げました事例につきましては、令和元年七月十一日に森林法違反で通常逮捕された被疑者でございまして、令和二年十月に刑が確定したというふうに承知しております。

田村(貴)委員 そうですね。二〇一九年に逮捕されました黒木林産の社長、黒木達也容疑者であります。

 宮崎地裁の判決は、執行猶予四年、懲役一年の有罪判決です。そして、二審、福岡高裁宮崎支部、一審判決を支持して控訴棄却しました。そして、上告審、これは上告棄却であります。これで有罪判決が確定しました。盗伐業者が初めて逮捕されて、そして有罪判決が確定しました。

 林野庁に聞きます。

 司直の判断が、盗伐は犯罪と下っているではありませんか。盗伐と誤伐は見分けがつかないと、そういう森林のプロが言っていいんですか。地元紙は、誤伐通用せずと大きな見出しを打って、この裁判の判決を報道しました。今でも林野庁は、誤伐か盗伐かの判断は難しい、そういう立場をとられているんですか。答えてください。

本郷政府参考人 お答えをいたします。

 盗伐ということで、黒木林産の国富町の案件については、証拠とか、そういうものを踏まえて判決が下ったというふうに考えております。

 具体的に、個別の事案で盗伐、誤伐の状況を判断していかなければならないと考えております。

田村(貴)委員 警察が被害届を受けて、そして捜査をし、調査をし、立件し、裁判でもこういう流れが出てきているわけですよ。まだ、誤伐と盗伐の判断を見きわめる、そういう立場なんですか。それが役所としての立場なんですか。

 私が初めてこの委員会で取り上げたときに、被害者の会の会員さんは三十数世帯でありました。今、百十八世帯に上っています。そして、報道では、宮崎から今度は鹿児島でも盗伐が起こっているという情報も飛び込んできましたよ。こういう状況を放置していいんですか。

 黒木林産の国からの補助金、これはどうなっていましたか。高性能林業機械、国の補助金を受けて機械を買っていたと思うんですけれども、補助金の扱いはどうしましたか。

本郷政府参考人 お答え申し上げます。

 盗伐事件を起こした事業者は、林野庁の補助金を活用して高性能林業機械を導入しておりまして、現在、補助金の返還に向け、関係する県及び市と調整を行っているところでございます。

 この補助事業は、国から受けた補助金で県が市に補助し、市が事業体に補助した事業でございます。このため、県が国に、市が県に補助金を返還するということになる流れの中で、市から事業者への補助金返還請求を行うことになることから、今慎重に協議を行っているところでございます。

田村(貴)委員 盗伐業者、こういう違法操業をしている犯罪企業に対して国の補助金が流れておったんですよ。そして、こういう司直の判断をもって、やっと補助金の返還請求ですか。ちょっと生ぬるいんじゃないですか。こういうことが今いろいろ起こっているわけですよ。それをずっと私は三年間言ってきた。林野庁、農水省の対応としては極めて甘いと言わざるを得ないと思います。

 大臣に最後に伺います。

 盗伐被害は相次いでいます、そして膨れています。それに対する行政の動きも確かにあります。だけれども、もっとちゃんとパトロールする、伐採届と森林の現状をちゃんと突合して、状況がどうなっているのか把握する、業者への聞き取りとか調査を行っていく。やれることはいっぱいあると思うんですよ。そして、被害者の会が告発していることについて行政もちゃっと耳を傾けて対策を講じていくべきだと思いますけれども、大臣の考え方を最後にお伺いします。

野上国務大臣 引き続き、関係機関と連携を密にしながら、対策の徹底、強化に取り組んでまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 最後に、硫黄山噴火による農業用水汚濁問題について伺います。

 二〇一八年に霧島連山、えびの高原・硫黄山が噴火して、周辺河川、赤子川とか長江川、また下流の川内川流域で稲作ができなくなりました。下流域では水質が回復して、対策も進んで稲作ができるようになったんですけれども、最上流のえびの市岡元小学校周辺の上浦地域、ここでは三年連続して、えびの米、えびのの本当においしいひのひかりの生産が三年続けて今はできなくなっています。地元の農家は、大変つらい思いをしてこれまで来られました。

 私も対策を二〇一八年の委員会でも求めて、動くかなと思ったんですけれども、結論的に言いますと、各省がちょっと様子を見合い続けているというのか、責任の所在が明らかにならないわけですね。不純物を沈殿させて上積みを下流に流す実証実験をつくったけれども、同地区だけは稲作に適した水質になっていないということであります。

 内閣府と農水省と国立公園所管の環境省、林野庁、こうした省庁が実はにらめっこしているような仲になっています。しかし、農業用水の確保で、活動火山対策特別措置法においては、国と自治体は当該河川の水質汚濁を防止し、又は軽減するための必要な措置を講ずるように努めなければならないと言っているので、国の責任、農水省の役割は極めて明確であります。

 時間がなくなりました。

 大臣、この問題を政治的判断をもってすぐに解決するように、音頭をとっていただけませんか。

高鳥委員長 時間が経過しておりますので、簡潔にお願いします。

野上国務大臣 岡元地区につきましては、一部で水稲作付が計画されているものの、硫黄山の噴火以降水稲作付が困難な地域があるということも承知をいたしておりますが、農水省としましても、これまでも、他の地区におきまして、水質を監視して取水を制御する水質監視機器の設置などに対して支援を行ってきたところであります。

 昨日、岡元地区において県と市による来年度の作付に係る説明会が開催をされまして、令和三年度からの水稲作付の再開について地元関係者と合意が得られたと聞いておりますが、引き続き、作付再開に向けて必要な支援を行ってまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 時間が参りました。

 今度また、火山の爆発があったことも踏まえて対処をしていただきたいと思います。

 終わります。

高鳥委員長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。

 まず、きょうも鳥インフルエンザのことについて聞きたいと思います。

 対策が長期化することによって、現場の職員さんたちの疲労が相当たまってきています。自衛隊の皆さんにも頑張っていただいて、県や市の職員、そして農水省の皆さんにも頑張っていただいていますが、建設業協会の方に埋却のお手伝いをいただいたり、あるいはアルバイトで職員をお願いしたり、いろいろな人が当たっています。

 現場からいろいろな声が聞こえてきているんですが、例えば、タイベックスーツ、防護服を着て、それで八時間ずっとトイレにも行けないというような状況で、最初は非常に大変だったという声が聞こえてきて、もう少し短い時間で交代するようにできないのかとか、そういう声が聞こえてきております。

 防疫措置に万全を期すためにも、基本的にはこれは地方公共団体において対応するものだと思いますけれども、国としても、農水省としても、こういった現場の職員の対応についての負担軽減のための指導、こういったものをぜひやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

新井政府参考人 お答え申します。

 家畜の防疫に関しましては、各県とも防疫演習をやるなど、一定の規模の発生に備えて常に準備をしているところでございます。

 香川県におきましては短期間で立て続けに発生したということで、今お話がありましたとおり、防疫対応に従事する現場は大変疲弊しているということは承知しているところでございます。この防疫対応につきましては、自衛隊の災害派遣、国それから関係機関等の職員も派遣して、農水省としても協力しながらやっているところでございます。

 それから、職員の方々の健康管理につきましては、香川県におきまして、防疫措置を実施する現場に医師等を派遣いたしまして配備するとともに、また、県庁にメンタルケアのための相談窓口を設置しているというふうに承知しているところでございます。

 農水省といたしましても、葉梨副大臣、それからリエゾンを当初から派遣しておりまして、加えまして、十五日からは審議官をヘッドといたします現地対策本部を設置いたしました。これから防疫作業とともに経営支援へステージが変わっていくということも考えておりますので、親身に相談に乗ることで解決していきたいと思っています。

 今お話のありました従事時間でございますが、殺処分に係る従事時間、香川県に確認いたしましたところ、四時間交代で実施しているということでございます。他方、重機の作業員、こちらは特殊な能力が必要になるということもありまして、そちらの方は実働八時間ということで、このようにせざるを得なかった現状は聞いております。しかしながら、前後に一時間は健康チェックをするということで休みをとるといったこともございます。

 今後も、必要な対応につきましては助言し、相談に乗っていきたいと考えております。

玉木委員 ぜひよろしくお願いします。

 こういう声が届いているんですね。鶏舎の周辺で防護服の着脱補助というのをやっている職員がいらっしゃるんですけれども、その環境が劣悪だと。一クール八時間勤務なのですが、その間、自分たちも防護服を着用するので一切水分補給ができません、お手洗いにも行けません、その上、体力仕事です、この勤務が二日に一回は回ってくるので、皆脱水症状に陥っていますと。これは先週の金曜日の段階ですから、多分改善されたのかなと思います。

 あわせて、これからの話でこういう声も来ています。殺処分のときには県の職員、自衛隊の動員で二十四時間体制で助けてくれた、しかし、終わった後にこの人たちの動員がなくなりました、今からの作業は、殺処分した鳥を入れた二十キロから三十キロある密閉容器を運び出す作業がある、建設業協会の方は埋却処分で手伝っていただいているんですが、数日間しか手伝いができないので、何とかその間にやってくれと。今は二十名の外注職員でやっているんだけれども、このペースでいけば期限内には到底終わらないので、作業を手伝っている人員を拡充してほしいと。

 これは現場の声です。ですから、こういうところをきめ細かく見ていただいて、国としてもできるだけのサポートをしていただきたいなというふうに思います。

 次に、ちょっときょうは時間がないので、きょうは、同僚議員からもたくさんありましたけれども、米政策についてちょっと聞きたいと思います。特に餌米政策です。

 私は、この委員会でももう何年も前からこの政策をずっと取り上げてきていますけれども、大臣にもちょっと申し上げたんですが、この間の歴代大臣の大臣所信を読み比べてみました。

 そうすると、例えば二〇一九年の吉川貴盛農水大臣のときには、これは常会です、二〇一九年の三月のときに、飼料用米、麦、大豆等の需要のある作物の生産振興に努めていくということを、二〇一九年の三月にはそう言っています。

 次の江藤大臣になったときの最初なんですが、二〇一九年の秋の臨時国会では、引き続き麦、大豆、飼料用米などの戦略作物や高収益作物など水田フル活用に向けた支援を行う、こういうふうにおっしゃっています。ちょっと順番が、麦、大豆が先になって、飼料用米が三番目になっているんですね、この時点で。

 それで、ことしの二月の江藤大臣の常会での所信からは、引き続き麦、大豆などの戦略作物や高収益作物など水田フル活用ということで、「など」になって、飼料用米の明示がこの時点で初めて消えます。

 そして、今回の、初めて就任された野上大臣のことし十一月の臨時国会での大臣所信では、輸出の取組や、麦、大豆、高収益作物等への転換を図る水田フル活用というふうになっていて、輸出の取組ということが新たに加わるんですが、麦、大豆、高収益作物の後の「等」になっているというのが飼料用米の扱いになっています。

 これからも水田フル活用の一環として、ある種転作作物として餌米ということを充実させていくということなんですが、餌米政策は、予算措置も含めて、本当にこれにかけて大丈夫なのかというのは当初から多くの農家の皆さんの不安だったわけですね。

 私は覚えていますが、たしかあれは二〇一五年か六年だったんですが、全農は六十万トンの需要がありますと。よく覚えています。それで、日本飼料工業会が六十三万トンで、中長期的には二百万トンの需要がありますという話を当時よく言っていて、ほんまかいなと皆さんも思っていましたよね。

 実際、初期のころは八万円、十万五千円とかをつけて、かなりそこに注目して移したんですが、私の地元なんかは面積がちっちゃいので、ここは主食用米、ここは飼料用米とうまく分けられないので、コンタミが怖いのでなかなかできないとか、あるいは、乾燥費を入れれば結構お金がかかって実入りが少ないとかですね。それで、現にもう減り始めているわけですね。これから更に飼料用米を本当にふやすことができるのか。さっき緑川さんからもありましたけれども、もちろん単価を上げていくというのは一つのやり方なんですが、財務省がこれだけ厳しく言う中ではなかなか難しいですよね。

 だから、餌米政策について本当にどうなのかというのは、ちょっと、限界なのでもうそこそこにしておきますというんだったら、農家に正直に言った方がいいですよ、それは。ここは、最初から私は申し上げているんですが、久しぶりにこの農水委員会に帰ってきて、しばらく期間を置いたからよくわかるんですよ、この差が。さっき言ったように、大臣の所信表明の表現の仕方とか思いの入れ方も随分変わってきているのかなと思うんですが。

 改めて伺います。飼料用米政策についてはこれからも同じように進めていくのか、そして、財政的な裏づけも含めて、農家が本当に信頼してこの餌米政策に乗っていいのかどうか。大臣からの明確なメッセージを求めます。

野上国務大臣 お答え申し上げます。

 主食用米の需要が毎年減少しておりますので、そういう中で、産地ごとの実情に応じて、主食用米から飼料用米、輸出用米、麦、大豆、高収益作物等の需要のある作物への転換ということを推進することは重要だと考えております。

 大臣所信について言及もいただきましたが、麦、大豆、高収益作物といった作付面積の大きい品目を中心に例示をしたところでありますが、飼料用米が水田フル活用のために重要な選択肢であるということに変わりはありません。

 飼料用米につきましては、飼料業界から年間約百二十万トンのニーズがあり、需要に応じて作付をすることで水田フル活用を図ってまいりたいと思いますし、今後とも、農業者の方々が主食用米以外の作物の生産に引き続き安心して取り組むことができるように、財政当局とも議論をし、よく検討してまいります。

玉木委員 そういう言い方しかできないんでしょうけれども、こういうことを何年も言い続けてきているんですよ。それで、お金がない、いまいち需要が広がらない。WCSみたいなところはまだ少しいいなというところはあるんですけれども、なかなか。だって、鳥と豚にはある程度入りますけれども、牛の餌には入れて三%までですよね。だから、そういうところも含めて、私は、正直にもう少し、餌米政策は、転作作物、戦略作物としてのあり方、位置づけも含めて一回考えてみないといけないと思います。

 もう一つ、これは大きな方針として伺いたいと思うんですが、これも私が安倍内閣の農政に対して、ごまかしだということで激しく批判をしてきた一つなんですが、いわゆる減反政策についての考えです。

 需要のコントロール、よってもって価格のコントロールから手を引くようなことを産業界向けに格好よく言うんですけれども、これは齋藤農水大臣のときの二〇一八年三月の大臣所信なんですが、ことしから米政策が変わりますと高らかに言っているわけですね。そしてその次です、行政による生産数量目標の配分は廃止しましたと言っているんですよ。廃止しましたか。ことしも必死になって、どうやって需給の緩みを調整しようかと。いわゆるかつてのペナルティー型の減反政策は確かになくなっていますけれども、この飼料用米政策だって、インセンティブをつけてほかのものをつくってもらって、よってもって主食用米の需要を引き締めていくという政策なので、生産のコントロールに対して一定の公的関与が続いているという意味では同じなんですよ。

 私は、減反政策という言葉を使うかどうかは別として、何か生産調整そのものが全部悪いように言って、いわゆる減反をやるのがけしからぬ農政だというイメージをつくってきた、その意味での安倍農政からは脱却した方がいいと思うんです。特に米というのは、その中でも特殊だと思いますからね。

 だから、全く生産調整をしないで、自由につくって、それでその年に米価が下落したら、それはほっておきますという政策ならいいですよ。あるいは、そういうことで価格が下がった、その分をきっちり直接支払いで埋めるとか、いわゆる所得政策でこれを全部補うんだというのも一つの考えでしょう。

 生産調整から、あるいは減反をやめましたといって、そういうふうに世の中の農業を余りわかっていない人にはイメージを振りまきながら、でも一方で一生懸命生産調整を何とかやろうとしているという、カメレオンみたいなというか、コウモリみたいな、よくわけのわからない、アクセルを踏んでいるんだかブレーキを踏んでいるんだかわからないような農政をやめて、明確なメッセージをやはり伝えることが必要だと思います。

 必要であれば生産の調整もちゃんとやるんだ、そういう農政なんだということをそろそろちゃんと言うべきではないかなと思うんですが、基本的な、野上農政になってからの米政策の基本方針について、大臣の考えを教えてください。

野上国務大臣 お答え申し上げます。

 やはり、米政策につきましては、今、需要が毎年主食用米は減少しておりますので、需給と価格の安定を図っていくためには、私は今後とも、消費拡大ですとか輸出拡大の取組を進めつつ、みずからの経営判断による需要に応じた生産、販売を着実に推進していくことが基本だと考えております。

 このため、きめ細かな情報提供ですとか、あるいは事前契約、複数年契約ですとか、需要のある作物、主食用米以外の米への転換に対する水田フル活用等々、産地が消費者、実需者のニーズを的確につかんで、どのような水田農業を進めていくのか判断できるような状況を整えていきたいと考えております。

 現下、大変需給環境が厳しいわけでございますが、そういう中で、今後も需要に応じた米の生産、販売が進むように、過去の実績も踏まえつつ、財政当局とも議論しながらよく検討してまいりたいと考えております。

玉木委員 いや、大臣、需要に応じた生産をするんだったら、何でことしみたいなことになるんですか。

 いろいろな理由があって、一年に一回しかとれない、工業製品とは違う特に米のようなものは、需要に基づいて、マーケットのニーズに基づいてやったら市場メカニズムのみを通じて需給が調整されるんですよ、それがされないという特質のあるものを農家の方はつくっておられるので、一定の政策的な関与とか公的な関与がそこに必要になってきて、それがやはり農政の本質、特に米農政の本質だと私は思うんですね。だから、私は、ここをもう一回整理し直して、議論をちゃんとやるべきだと。

 ことしは特に、私から言うのも変な話だけれども、やはり米政策を間違えると選挙に響きますよ。これは何でかというと、政と直結しているということですよ。だから、こっちで言うこととこっちで言うことが違うようなことじゃなくて、一定生産調整が必要だったらそれを正面から認めるとか、そのために最も効果的な手段は何なのかという議論をやはりやっていくべきではないかなと思います。

 最後に、もう時間がなくなりましたから、これだけ確認します。

 自民党が二〇一三年四月に取りまとめた農業・農村所得倍増目標十カ年計画というのがありまして、それに基づいて所得倍増だということで骨太にも書いたりしてやってきたんですが、もう半分以上過ぎていますけれども、この所得倍増計画は現時点においてどの程度まで実現していますか。

野上国務大臣 今お話がございましたとおり、平成二十五年十二月に、地域の活力創造プランにおきまして今後の農業、農村の所得を十年間で倍増させるということを目指していたわけでございますが、このうち、農業所得につきましては、平成二十五年で二・九兆円だったものが、直近の数字である平成三十年では三・五兆円まで増加しています。また、農村地域の関連所得につきましては、平成二十五年度で一・二兆円でしたが、直近の数字である平成二十九年度では二兆円まで増加をしているところでございます。

玉木委員 二〇一五年三月二十四日の審議会資料だと、農業所得と農村関連所得に分かれていて、農業所得は二・九兆円が三・五兆円になる、農村地域は一・二が四・五になって、トータル四・一兆円が八兆円になって二倍になるということで、今のことでいうと、農業所得はもう達成しているんです。農村地域の関連所得というのが四倍ぐらいにならなきゃいけない計算でやっているんですが、これがよくわからないんです。大臣、ここで言う農村地域の関連所得なんですが、この農村の定義は何ですか。

太田政府参考人 お答えいたします。

 農村地域の定義でございます。

 農村の所得につきましては統計上の定義はございませんが、計算におきましては、六次産業化等の推進を通じた農村地域の関連所得、このように概念上整理をいたしまして、具体的には、国民経済計算の考え方をもとに、市場全体の規模に農村への帰属割合を乗じ、さらに、こうして得られた市場規模に付加価値率を乗じて計算したものでございます。

玉木委員 もう時間になったので、きょうはこれで終わりたいと思いますが、ここも、ごまかさずにきちんと議論した方がいいと思います。やはり、農家にとっては自分の所得がふえるかどうかなので。

 担い手の所得がきちんと、私は、倍増といって、一つ言いやすい言い方がありますけれども、具体的に農家所得がどうふえていくのかということをきちんとした目標に定めて、それがいつまでにどれだけになるのかということを現実的な目標として定めてやっていくことが必要だと思いますので、改めて、新しい菅内閣になり、そして野上農政になったわけですから、過去にずっと言ってきたこともちょっとやはり検証して、より現実的な目標に変えるべきものは変えて、特に農家の側にとって、ああそうだなと実感できるようなものに変えて、そこの目標に向かって英知を結集していくということを求めて、きょうはこれで質問を終わりたいと思います。

     ――――◇―――――

高鳥委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣野上浩太郎君。

    ―――――――――――――

 特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

野上国務大臣 特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 我が国において、違法に採捕された水産動植物が流通することにより、国内の水産資源が減少し、適正に操業を行う漁業者等の経営に影響を及ぼすおそれがあります。また、国際的には、違法・無報告・無規制漁業、いわゆるIUU漁業への対策として、海外で違法に採捕された水産動植物等の輸入を規制する必要性が高まっております。

 こうした状況を踏まえ、特定の水産動植物等について、違法に漁獲された水産動植物の流通を防ぐための取扱事業者間における情報の伝達、取引記録の作成及び保存、輸出入に関する証明書の添付等の措置を講ずることにより、違法な漁業の抑止及び水産資源の持続的な利用に寄与するため、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、特定水産動植物等の国内流通の適正化のための措置であります。

 国内において違法かつ過剰な採捕が行われるおそれが大きいものであって、その資源の保存及び管理を図ることが特に必要と認められる水産動植物を、特定第一種水産動植物と定めることとしております。

 次に、特定第一種水産動植物の採捕者やその採捕者が所属する団体は、あらかじめ、その採捕の事業が適法に行われるものである旨を農林水産大臣に届けなければならないこととしております。

 また、特定第一種水産動植物の採捕者や、その譲渡しを行う事業者等は、取引に関する情報の伝達、取引の記録の作成及び保存等をしなければならないこととしております。

 このほか、特定第一種水産動植物及びその加工品を輸出する事業者は、国が発行する適法に採捕されたものである旨を証する証明書を添付しなければ輸出してはならないこととしております。

 第二に、特定の水産動植物等の輸入の適正化のための措置であります。

 我が国に輸入される水産動植物のうち、外国において違法な採捕が行われるおそれが大きいと認められる等、国際的な水産資源の保存及び管理を必要とする事由により輸入の規制に関する措置を講ずることが必要と認められるものを、特定第二種水産動植物として定めることとしております。

 そして、特定第二種水産動植物及びその加工品については、適法に採捕されたものである旨を証する外国の政府機関により発行された証明書等がなければ輸入してはならないこととしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

高鳥委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、明十九日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十四分散会


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