衆議院

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第6号 令和2年11月19日(木曜日)

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令和二年十一月十九日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 高鳥 修一君

   理事 加藤 寛治君 理事 齋藤  健君

   理事 津島  淳君 理事 宮腰 光寛君

   理事 宮下 一郎君 理事 亀井亜紀子君

   理事 矢上 雅義君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    穴見 陽一君

      伊東 良孝君    池田 道孝君

      泉田 裕彦君    今枝宗一郎君

      上杉謙太郎君    江藤  拓君

      金子 俊平君    神田  裕君

      木村 次郎君    小寺 裕雄君

      佐々木 紀君    斎藤 洋明君

      鈴木 憲和君    武部  新君

      中曽根康隆君    西田 昭二君

      根本 幸典君    野中  厚君

      深澤 陽一君    福田 達夫君

      福山  守君    細田 健一君

      石川 香織君    大串 博志君

      金子 恵美君    神谷  裕君

      近藤 和也君    佐々木隆博君

      佐藤 公治君    緑川 貴士君

      濱村  進君    田村 貴昭君

      藤田 文武君    玉木雄一郎君

    …………………………………

   農林水産大臣       野上浩太郎君

   農林水産副大臣      葉梨 康弘君

   農林水産大臣政務官    池田 道孝君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            太田 豊彦君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            牧元 幸司君

   政府参考人

   (水産庁長官)      山口 英彰君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 大森 恵子君

   農林水産委員会専門員   梶原  武君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十九日

 辞任         補欠選任

  木村 次郎君     深澤 陽一君

  佐々木 紀君     穴見 陽一君

  武部  新君     中曽根康隆君

  根本 幸典君     青山 周平君

  福田 達夫君     神田  裕君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     根本 幸典君

  穴見 陽一君     佐々木 紀君

  神田  裕君     福田 達夫君

  中曽根康隆君     武部  新君

  深澤 陽一君     木村 次郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律案(内閣提出第四号)


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     ――――◇―――――

高鳥委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省食料産業局長太田豊彦君、農村振興局長牧元幸司君、水産庁長官山口英彰君及び環境省大臣官房審議官大森恵子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。津島淳君。

津島委員 おはようございます。自民党の津島淳でございます。

 六年ぶりの農林水産委員会でございます。質疑の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 時間もあれですので、早速、特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律案の質疑に入ります。

 まず、早速この法律案の目的と対象についてお伺いしたいわけでございますが、かねてより、国内外において密漁などの違法漁業及び違法漁獲物の流通が問題となっております。皆さんのお手元に資料を配付いたしたところでございますが、私の地元青森県でも多くの被害が報告されてございます。

 これは青森県水産振興課に調べていただいたんですが、資料をごらんいただくと、一番上にナマコ及びアワビの漁獲状況が出ております。それに対して、二番目、漁業関係法令違反発生件数がごらんのようにあるということでございます。三番目が、典型的な事例ということで、例えば、平成二十七年の十月、むつ市川内町の沖合で反社会的勢力を含む八人のグループによる密漁があった。被害総額としては、推定ですが、ナマコ約八十トン、二億円以上というふうなことでございます。こうした被害が相次いでいること。

 漁獲状況を見て気づかれるかと思うんですが、近年、漁獲量、金額ともに減ってきております。これは、必ずしも密漁が全てだと私は思いませんが、気候的な要因とかそういったものも当然あるわけでございますが、私自身、密漁、乱獲ということが資源に大きな影響を与えているということは全く否定できないのではないか、そう思っております。

 発生件数、これは送致数ですので、検挙された数ということになりますが、件数がナマコに関しては減ってきております。これは、農水省さん始め、あるいは海上保安庁、そして自治体、漁業関係者の皆さんの密漁に対する取締りの強化ということの効果が上がってきている一つのあかしではございます。しかし、アワビに関してはいまだ件数が減っておりません。こんな状況にございまして、これは、青森県にとどまらず、全国各地の水産関係者が本当に悩んで、対策を強く望まれていたところでもございます。

 さて、密漁などの違法漁業については、漁業法を改正いたしまして、密漁行為及びそれによる漁獲物の流通について罰の創設と罰則の強化を図り、本年十二月一日に施行されることになっております。その対象は、省令でアワビ、ナマコ、シラスウナギと定めているところです。

 この漁業法改正は、密漁という不法行為を罰するとともに、犯罪の企図、実行を抑止する効果を狙ったものと私は理解しております。一方で、違法漁獲物の流通もとめなければ密漁はなくならないわけであります。水産物の国内流通の適正化を実現するため本法案を出すに至ったという理解でよろしいのかどうか。特定水産動植物の国内流通の適正化等に関するこの法律案、目的とするところについてお伺いしたいと思います。また、特定第一種水産動植物として何をどのような方法で指定するのかもあわせてお伺いします。

 なお、違法・無報告・無規制漁業、いわゆるIUU漁業については、後ほどの質問で伺いますので、その点は御理解をお願いします。

野上国務大臣 おはようございます。

 今先生から示していただきましたとおり、近年、漁業法令に基づく適切な権限を有さない者による違法漁業が多発しておりまして、本年十二月一日に施行される改正漁業法の中で、生産段階における違法漁獲の防止に対応してきました。

 一方で、御指摘のとおり、違法漁獲はその漁獲物を正規流通に乗せて利益を得るために行われるため、改正漁業法の実効性を担保するためには、あわせて流通段階での違法漁獲物の流通防止も必要となってまいります。

 また、特定第一種水産動植物の指定に当たりましては、漁業関連法令違反の件数が高いこと、生産額が大きく、容易に流通過程に混入しやすいこと、また、漁獲量が減少していること等の基準で、違法かつ過剰な採捕が行われるリスクを勘案しまして対象魚種を指定することを想定しております。このため、具体的な指定魚種につきましては、リスクベースの観点及び実行可能性の観点を加味し、違法漁獲のおそれの大きいナマコ、アワビを想定しているところであります。

 いずれにしましても、具体的な魚種の指定に当たりましては、学識経験者ですとか、あるいは生産・加工・流通団体などの実務関係者によりまして検討会をつくりまして、そこで議論を行って、その上で、水産政策審議会への諮問も経て、省令で決定をしていくということになります。

津島委員 大臣、ありがとうございます。

 流通をストップさせるという目的、そして、対象はアワビ、ナマコを想定し、省令で定めるということでございました。

 それで、次にお伺いしたいのは、漁獲証明に関する検討会取りまとめの内容と本法案との比較ということでお伺いしていきたいと思います。

 ことし六月に漁獲証明に関する検討会が、農林水産省の中に設けられていると思いますが、「漁獲証明制度のあり方について とりまとめ」というものを公表されました。そこでは、指定水産動植物に対する漁獲証明の実施、それから漁業者等の申請による漁獲証明の実施、そして登録証明機関の設置がその取りまとめには記載されております。

 そのうち、登録証明機関の設置と漁業者等の申請による漁獲証明の実施については本法律案には盛り込まれておりません。なぜ盛り込まなかったのか、お伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

葉梨副大臣 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、確かに、ことし六月の検討会取りまとめでは、登録証明機関制度は漁協等の民間機関が適法性を証明する機関となることが想定されて提案をされたわけです。

 ただ、しかし、漁協というのは売買にも参加をいたしますので、公平性、中立性の確保のためには監督措置などを規定することが必要となって、これは複雑な制度となってしまいます。また、適法性を確認する機関としては行政機関の方が適当ではないかということもございます。そこで、漁業者等が行政庁に届け出た後に通知される番号を含む漁獲番号などを譲渡しの際に伝達することで適法性を担保する仕組みとさせていただきました。

 このような仕組みでも適法な権限を有する漁業者により採捕された漁獲物と適法な権限を有しない者によって採捕された違法漁獲物は区別することができますので、違法漁獲物の流通を防止することができるのではないかと考えております。

 また、もう一つの点、漁業者等の申請による漁獲証明については、あくまで事業者の自主性に基づく仕組みとして、民間がガイドライン等を定めて対応することも可能でございますので、本法案では義務づけという形の措置はしていないということでございます。

津島委員 ありがとうございます。

 制度が複雑になるということが、現場にとっては実施するに当たっていろいろな負担につながるということも当然あろうかと思います。一方で、制度をつくるからには効果も上げなければいけないという、やはりバランスをどこに置くかというところも重要な点であろうかと思います。そういった点も恐らく考慮されて今回のような形になったのであろうというふうにも理解をいたしました。

 そこで、今度は現場の負担軽減という話に移っていきたいと思います。

 今回の法律案、届出と情報の伝達ということが現場で行われるわけでございますが、現場の負担軽減についてどのようにお考えなのか。現場にとっては、今回の措置を実施するということは、ある意味正直言っちゃえば一手間ふえる話ではございます。負担軽減には電子化ということが不可欠なんですね。どのように電子化というのを進めていくのか。とりわけ小規模の漁協さんに対する配慮というのが必要だと思いますが、この点、いかがでしょうか。長官、お願いします。

山口政府参考人 お答えいたします。

 今回の水産流通適正化法の制度につきましては、漁業者や漁協等の負担軽減、これをやはり考えて検討を行ってきたところでございます。

 本制度は、税法に基づきまして取引伝票や領収書などの帳簿書類の作成や保存が事業者に現在も課されているということを踏まえまして、これら伝票等を利用することで義務の履行が果たせるようにし、これによって関係事業者の負担軽減に配慮した設計としたところでございます。

 なお、今御指摘のございました電子化の推進ということにつきましては、今回の届出制度につきましては、行政手続でございまして、農林水産省の共通申請システムが今も稼働しておりますが、それのシステムの活用を検討しているところでございます。

 また、漁獲番号等の情報の伝達につきましては、既存の情報伝達のシステム、またいわゆる水産物の流通のシステムというものがございます。また、農水省も含めまして現在実証中のシステムもございますので、こういったものを参考にしながら、現在、全省庁的にデジタル化を推進しているところでございますので、取引における正確かつ円滑な情報の伝達に向け、関係者と連携しながら、また、小規模漁協の問題も今御指摘がございましたので、こういったところにどういった形で適用可能なのかということも含めまして、検討を進めてまいりたいと考えております。

津島委員 山口長官、ありがとうございます。

 電子化というのが今、世の大きな流れとしてある中で、水産業も全くその流れから別であるということではないと思います。当然に進めていかねばならぬということであります。

 この制度においては、漁獲物を扱う者には固有の届出番号というものが付与される、それに個々の取引の日時だとか取引の主体がそれぞれ誰であるかというのを識別するコードを加えていくというような形で制度を運用する、そのような御説明をいただきました。

 大事なのは、この届出番号というものをしっかり、これは固有の、その人にとってはIDみたいなものですから、これが本当に第三者、悪意の第三者に渡るようなことがないような形で、セキュリティーというのもしっかりしないと、電子化ということを図ったときには当然そういう対策も考えていかなきゃならぬので、ぜひその点も考慮してシステムをつくっていただきたい、そう思います。

 では、次に、IUU漁業対策についてお伺いします。

 本法律案のもう一つの柱に、IUU漁業による漁獲物の流入防止のための輸入の規制がございます。

 皆さん御承知のSDGs、サステーナブル・ディベロップメント・ゴールズ、ちょっとかんでしまいましたけれども、その目標の十四は、海の豊かさを守ろうであります。この目標の実現にはIUU漁業の撲滅が欠かせないわけであります。また、実際、撲滅に向けて現在さまざまな国際的な取組がなされているところでございます。

 我が国のIUU漁業に対する考え方と、それに基づいて本法律案でどのように施策を展開していくのか、お伺いします。山口長官、お願いします。

山口政府参考人 お答えいたします。

 国際社会におきましては、資源保護の観点から、平成二十七年に国連サミットで採択されましたSDGs、持続可能な開発目標の中や、また令和元年六月のG20大阪会合首脳宣言等で、IUU漁業、いわゆる違法・無報告・無規制の漁業でございますが、これを撲滅するという方向性が打ち出されているところでございます。また、欧米では既にIUU漁業への対策として輸入規制を導入しておりまして、水産輸入大国でございます我が国でも可及的速やかに同様の制度を導入し、IUU漁業の撲滅に向けて働きかけを行っていく必要があると考えております。

 このため、我が国としましても、海外の違法漁獲物の流入を阻止するため、本法案において、国際的にIUU漁業のおそれの大きい魚種について、輸入時に外国政府等が発行する証明書の添付を求める措置を講ずることとしたところでございます。

津島委員 ありがとうございます。違法に漁獲をされた輸入水産物かどうかという、これを識別できるように証明書の発行をお願いするという御説明でございました。

 国際的に足並みをそろえて資源保護のために取り組んでいかねばならぬことについて、我が日本国内でもそのことに対する異論というものはないのだと思います。IUU漁業を撲滅するということが我々人類にとって欠かせない漁業資源を守るために不可欠なのだということは、この法律案を施行するに当たって広く国民に御理解をいただいて、その上で、適正な輸入水産物だということを消費者の皆さんが適切に判断できる、そういう実効性ある仕組みとしていただくということが不可欠であろうかと思います。

 消費者のことについてはまた後ほど触れたいと思いますので、ここは一旦、ちょっと次の話題に移りたいと思います。

 次は、今回の法律案は、我が国の水産において本格的な漁獲証明というものを行う第一歩であると同時に、私は、トレーサビリティーの推進に関しても重要な一歩を記すことになる、そういうふうに思っております。

 平成三十年六月にまとめられました「水産政策の改革について」では、こういうふうに書かれていますね。「資源管理の徹底とIUU漁業の撲滅を図り、また、輸出を促進する等の観点から、トレーサビリティの出発点である漁獲証明に係る法制度の整備を進め、必要度の高いものから順次対象とするとともに、ICT等を最大限活用し、トレーサビリティの取組を推進する。」とされております。

 水産物の消費拡大が漁業所得の向上につながるかという点で、私はトレーサビリティーは有用であるというふうに考えます。また、これから電子化ということがあれば、ますますトレーサビリティーを行うことが容易になってくるであろう、そのようにも考えます。

 今後、この法律案を起点にトレーサビリティーを推進し、国内消費の拡大、輸出の促進などを通じて漁業所得の向上につなげていくということが求められていると思いますが、この点はいかがでしょうか。

池田大臣政務官 本法案は、事業者間における情報の伝達、取引記録の作成、保存、輸出入時の証明書添付の義務づけ等の措置を講ずることによりまして、特定の水産物について流通の適正化を図り、水産資源の持続的な利用に資するとともに、適正な漁業者等の経営の利益を守るものと考えております。

 本法案の内容はトレーサビリティーにもつながるものであり、水産流通の適正化が図られるとともに、今委員御指摘のように、漁獲物に対する国民の信頼が高まると考えております。

 本制度を通じて、水産物の消費の拡大や輸出促進が図られ、漁業者の所得向上につながるように、適切に対応してまいる所存でございます。

津島委員 ありがとうございます。最後に、消費者の皆様がしっかり適切に理解するように努めていただける、そういう御決意も伺いました。

 このトレーサビリティーということについて、わかりやすい言葉で言えば、漁業者の顔が見えるということ、これも、消費者と漁業者をつなぐ一つのツールとしてトレーサビリティーというものがある、そのようにも私は考えています。既にインターネット等を活用した水産物の直販とかそういった形というのが広がっている中で、やはり、農産物で農家の皆さんの顔が見えるということが今進んでいるように、漁業でもそういう形があってしかるべきだろうと思います。

 新たな水産物の流通、そして既存の流通ルートにおいても、このトレーサビリティーということが広がりを持って、国産の水産物がより広く流通するということを大いに私は期待をするし、私自身も政策目的の実現に向けて努力していきたい、そう思っているところでございます。

 そこで、最後の質問になりますが、消費者の理解促進についてお伺いしたいと存じます。

 今回の法律案は、水産物の流通の適正化というものを目的としたものでございます。最終的に、消費者の皆さんが手にとった水産物が適正な漁獲方法でとられたものかどうか、これがわからなければいけないわけです。つまりは、消費者がこの法律案の内容をよく知り、そして適宜適切な情報提供により適切な購買行動につなげていくということが不可欠であります。

 適正な漁獲物か否かという情報を消費者へ提供していく、そのことについて今回の法律は特段規定を設けておりませんが、やはりそういった取組というのは不可欠でございますので、どのように進めていくおつもりなのか、これは山口長官にお伺いをします。

山口政府参考人 お答えいたします。

 本法案は、先般改正いたしました漁業法と相まって、違法漁獲物の流通防止により違法漁業の抑止や水産資源の持続的な利用に寄与することを目的としておりまして、直接的には消費者の利益に資することを目的として規定しているものではございません。

 しかしながら、適法に漁獲された水産物の適正な流通が確保されることによりまして持続的に漁獲物が供給できるようになるということは、消費者にとっても大きな利益につながると考えております。お店に並んだものについて適法かどうかということを見るまでもなく、並んでいるものは適正であるということをこの制度で担保するということになるわけでございます。

 水産物流通全体に対する消費者の信頼を高めていく、先生から御指摘のございましたとおりでございまして、本制度の趣旨、また、規制の内容によって消費者がどういう利益を受けるか、こういったことについての周知を図ってまいりたいというふうに思っております。

津島委員 ありがとうございます。

 特段の規定は設けていないということでございますが、まさに、法律案の目的とするところが、店頭に並ぶ水産物が適法な漁獲方法によるものだけである、そういう状態を目指していくということにある、そこがこの法律案の肝であって、それで、情報提供という部分は、いわゆる先ほどから言っているトレーサビリティーをいかに進めていくかという流れの中で、情報をどのように示していくかが今後また検討されていくんだろうと考えます。

 したがいまして、今回、まずこの法律案を通すことで、先ほど冒頭で申し上げました、密漁などの違法漁獲をとにかくなくす、それはいわばビジネスとして成り立たないということを犯罪者集団にわからしめる上でもこの法律案は大変重要である、必要である、そのように考えます。

 以上申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 公明党の稲津久でございます。

 きょうは水産流通適正化法の質疑でございますけれども、まず私どもの立場を、考え方を申し上げておきたいと思いますけれども、この法案については、速やかにこれを成立させて、現場で大変御苦労されている方々にしっかりとした施策を進めていくというためにも極めて重要な法案でございますので、多くの方々の御賛同を得るべき、このように思っております。

 それで、まず初めに、質問に入る前に少し北海道の漁業の現状ということを申し上げて、この法案の重要性について語らせていただきたいと思うんですけれども、まず、北海道の漁業の資源管理の問題です。これは言わずと知れたことで、TACの配分枠のことがありまして、現場では非常にセンシティブに、また、ある意味積極的にこのことについて取り組んでいただいているというのが漁業者の現状でございます。

 特に、北海道の北の方の魚群のホッケについては、北海道と北海道の総研というところで共同で実施をしている自主的資源管理、この取組が非常に功を奏してきて、最近、若干ですけれどもホッケの資源が回復傾向にある、このことをきょうは委員の皆さんにぜひ御理解いただきたいと思います。

 その中で、北海道の一番北のところにあります利尻島、礼文島、ここでは、地元のホッケのブランド化を図っている中で、しっかりエコラベルまで引き上げたい、こういうことにも取り組んでおりまして、資源管理の重要性ということについては論をまちませんけれども、そういう、北海道で取り組んでいただいていることについても御承知おきいただきたい。

 もう一方では、北海道の各海域等において、海獣被害、トド、アザラシ、オットセイ、非常にこれが減らない。私も、衆議院に初当選して一番最初のころの質問でもこれを取り上げて、政府にいたときにもこのことについての施策を推進してきた一人でもございますが、改めて、こうした海獣被害についても、今後、国による強力な支援も求めておきたいと思います。

 それで、もう一つ、北海道における密漁の状況ですけれども、実際に、例えば逮捕ということもございますけれども、密漁の検挙件数というのは氷山の一角。北海道では、ナマコ、アキサケ、ケガニ、ウニ、アワビなどが主な密漁の対象になっておりまして、特に近年はやはりナマコの組織的な密漁というのが多発しているということでございます。アキサケも、価格が高騰しているということで、密漁がとまらない。それから、ケガニ、これは、国内の密漁ばかりか、オホーツク等では外国漁船による密漁も行われているという実態があるということで、極めて深刻な状況でございます。

 そのために、これはしっかり今後求めていかなきゃいけないと思っていますが、一つは、密漁防止のための、特に夜間が多いですから、夜間の潜水の禁止。それから、どうしても夜間潜水をする必要がある、例えばスキューバによって海底の写真を撮るとか、それは届出制を実施すればできるだろう。それから、密漁者に対する罰則の引上げ、これも重要です。あと、ICTを活用した新たな密漁監視機器の導入について、こうしたことを国の負担によって支援をすべきじゃないだろうか。せっかくこうした法律を制定、施行していくのであれば、これらの取組を一層強化していただきたい、このことをまず冒頭に申し上げさせていただきたいと思います。

 その上で質問に入りますけれども、まず最初の質問は、先ほどの津島先生の質問と若干、数点かぶりますけれども、それは御容赦いただいて、一つ目は、漁獲番号の伝達、それから取引記録の作成、保存、この義務が漁業者ですとか取扱事業者の負担にならないかということなんです。

 日本の水産流通の特徴というのは、御存じのとおり、市場が非常に多くて、そこに多数の関係者がふくそう的に関与している流通構造になっています。これは非常に特徴的ですけれども。ですから、それらごとに独自に伝票があって、そして取引をしている。したがって、情報伝達ですとか取引記録の作成、保存の義務を新たに課した場合に当然負担が生じると思うんですが、このことについての見解をまずお伺いしたいと思います。

山口政府参考人 お答えいたします。

 我が国の水産流通の実態につきましては、先生から今御指摘いただきましたように、まず、鮮度を重視した迅速な流通を行わなければならないということでございまして、産地と消費地にそれぞれに市場が存在して、また、流通に関係する方々も多数に及ぶ、こういった方々が卸売をしたり加工業者として関与したり、いろいろ複雑な構造になっているところでございます。

 また、これも御指摘がございましたとおり、現在は市場ごとに伝票で取引を行っておるんですが、それは独自の形で行われておりますので、今回、新たに情報の伝達や取引記録の作成、保存の義務を課すということになるわけでございますが、これにつきましては、現在の状況のままやりますと、やはり関係者間の事務手続に一定の負担が生ずる可能性があることと存じているところでございます。

 こうした実情を踏まえまして、現場での円滑な制度運営に向けまして、既存の伝票等を有効に活用しながら電子的な方法をどのように導入していくか、事業者等の皆さんの負担を大きくしない形での制度の導入について、現場の実態をよく調査しながら、法律の施行まで二年以内ということで、二年間の準備期間を設けさせていただいておりますので、そういった期間の中で検討を進めて、負担が軽減する形で進めていきたいと思っているところでございます。

稲津委員 今御答弁のありましたように、各市場等において伝票をそれぞれ独自に使っているわけでございまして、今はこれが非常に有効に機能しているんですね。そこのあり方を変えていくとなると、大変な負担になるんじゃないか。これは恐らく今回の法案の一番肝の部分の一つだと思うんですけれども。ぜひ、現場の混乱が生じないようにしっかりとした体制を整えていただきたい、現場の不安を除いていただきたいというのが一つ目の質問の趣旨でございました。

 次に、特定水産物が小分けされたりとか加工されて、商品の形、形態がどんどん変わっていくんですね、そうしたときの漁獲番号の取扱いがどうなるのか、これも大事な視点だと思っています。

 この特定水産物は、売り買いの過程で荷口が小分けされたり統合されたり、また、加工の段階でもいろいろな荷口がまぜられる、こういう仕組みになっておりますけれども、そのためには、やはり事業者間における情報伝達の簡便化というのがなければいけないというふうに思います。

 新たな荷口の番号を伝達を受けたり、あるいは伝達したり、それごとに番号の変換の対応関係、こうしたものがしっかりわかるように、あるいは残していくべきじゃないか、このように思っております。こうした漁獲番号の取扱いは具体的にどうなるのか、この点についてお示しいただきたいと思います。

山口政府参考人 お答えいたします。

 特定水産物につきましては、売買や取引の過程で荷口が小分けされ、又は統合されるということが生ずることがありますし、また、加工の過程で種々の荷口がまぜられたりする場合があるわけでございます。

 漁獲番号の伝達につきましては、小分けや統合等の行為の前後で、もとの漁獲番号とは別に新たに荷口番号をつけて、それの対応関係がわかるようになっていれば番号を小分けしてもよいというような仕組みで考えているところでございます。

 また、統合時においては各漁獲物ごとの漁獲番号が集まってくることになりますので、漁獲番号を幾つも列記するということが基本になるわけでございますが、事業者間における情報伝達の簡便化のために、複数の漁獲番号を新たに一つの荷口番号に置きかえることも可能にしたいと考えているところでございます。

 また、加工が行われた場合につきましても、加工後に新たな荷口番号を伝達された漁業者がいるわけでございますが、もとの漁獲番号がたどれるように、荷口番号を付与した方、荷口番号を分けた方については、番号の変換の対応関係がわかる、そういった記録を残していただくことが必要だというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、制度の詳細な運用につきましては、水産動植物ごとの流通、加工の実態、これがまた異なるところもございますので、それらを踏まえながら、水産動植物ごとに検討してまいりたいと考えております。

稲津委員 次に、負担軽減についてお聞きしようと思ったんですが、先ほど津島先生からも御質問があり、答弁がありました。また、一番最初に私が質問したことも少しこれに関連しているので、この質問は飛ばしまして、もう少し具体的なことを一つ伺っておきたいと思うわけでございます。

 それは、情報の伝達を円滑に行うためにデジタル化、システム構築をするという先ほど来の答弁がありまして、私は、それは極めて重要なことである、できるだけ速やかに実施すべきと思っていますが、先ほど来私が指摘しているように、日本の水産流通というのは、本当に多くの関係者が複雑にこれに関与して、時に役割を分担しながら、先ほども申し上げましたように、独自の伝票を使って取引が行われている。ですから、全省的にデジタル化を推進していく、そういうことは、できればそれはそうなればいいんですけれども、ただ、ソフトウエア同士の連携ですとかシステムの構築とか、これはこれで非常に難しい課題がたくさんあると思っています。

 そこで、先ほど来二年間の話がありましたけれども、しかし、ここはやはり、ある程度の流れを今からつくって示していかないと、なかなか漁業者の方々や関係者の方々の不安は除去できないと思っています。

 そこで、お伺いしますけれども、現在どこまで検討されているのか、それから、このシステムの構築や連携が可能になるというのはいつごろなのか。定型的にお示しできないかもしれませんけれども、しかし、二年間ということを示しているのであれば、ここである程度の輪郭を示していただかなければいけないと思っていますので、御答弁をお願いします。

山口政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から御指摘がございましたように、我が国の水産流通は、産地市場、消費地市場とに分かれ、また、市場ごとの独自の伝票等による取引が行われているということで、複雑な流通形態となっているということは承知しているところでございます。

 今回の水産流通適正化法に基づく義務の履行に当たりましては、取引における正確かつ円滑な情報の伝達、これが電子化を行うに当たっては必要なわけでございまして、ソフトウエア同士の連携等によるシステムの構築を推進してまいりたいと考えております。

 実際に、システムの構築に向けた実証事業につきましては今年度も実施しているところでございまして、いろいろなシステムなり電子化の方法、これは、既存の事業者の中には既に導入をしていらっしゃるところもありますので、そういった先行して導入しているシステム、これを完全に御破算にして新しいシステムをつくってくれということにはならないというふうに思っております。

 一方で、現在の技術では、APIということで、いろいろな種類のアプリケーションを統合して、また、情報伝達ができる、こういう技術も開発されてきているところでございます。各社が有しておられるこういう既存の電子システム間の連携、これを進めて、情報伝達等が円滑に進むかどうかにつきましてはこれからも検討を進めていきたいと思っております。

 また、先生から、どういっためどでやるのかというお話でございますが、法律の施行は二年以内ということでございますので、それまでの間に、それぞれのシステムの構築の仕方また連携の仕方も、標準化といいますか、どういった形でのシステム伝達、システムの連携ができるかということについての目安なりガイドラインなりをお示しできるように頑張りたいと思っております。

稲津委員 今ここで明確にいついつまでというのは、答弁は難しいと私も承知して伺ったんですけれども、デジタル化については、政府の一丁目一番地の、今、施策の一番重要なところにありますので、ぜひ、そういったことを踏まえて、早急に少し形をつくっていただきたいと思います。

 次は、輸入規制について、外国に対する過度な非関税障壁にならないかという不安でございます。

 国際社会においてIUU漁業の撲滅の実行が求められている中で、WTOの貿易の技術的障害に関する協定に基づいて、正当な目的の達成のために必要以上に貿易制限的な措置とならない、こうありまして、各国の理解が必要だと思うんです。その意味では非関税障壁にならないのか、簡潔にお答えいただきたいと思います。

山口政府参考人 お答え申し上げます。

 現在規制内容として検討しております、輸入時に外国政府が発行する証明書の添付を求める措置、これは、FAOが平成十三年に採択した国際行動計画の一つのモデルとして位置づけられているところでございまして、EUやアメリカ等でも既に導入されているものでございます。

 こうしたことから非関税障壁には該当しないと考えておりますが、WTO上のTBT協定に基づき、正当な目的の達成のために必要以上に貿易制限的な措置とならないことが確保されている制度という形で、今、加盟国への通報を行ったところでございます。

 引き続き、各国からの問合せに対しては、丁寧に協議を行い、理解を得てまいりたいと考えております。

稲津委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 最後の質問になりますけれども、これは大臣にお伺いしたいと思っていますが、漁業者とか関係事業者の方々への説明はどうなっているのか、理解は得られているのかということなんですけれども、それはそういうふうにお答えになるんでしょうが、実際にどういう説明をどの程度行ってきているのかを踏まえた上で、大臣の決意を伺いたいんですね。なぜならば、やはり関係者の方々にこれからも繰り返し丁寧な説明を行っていくということが何より重要だと思っていますので、この点について、大臣の決意も含めてお伺いします。

野上国務大臣 お答え申し上げます。

 本制度につきましては、生産者団体、あるいは加工・流通・小売団体、また自然保護団体、学識経験者、地方自治体等の代表を委員としました検討会を、昨年九月より約一年間にわたり、全七回開催をしてまいりました。また、これまでに、今申し上げたような方々と意見交換、また説明会等々も開催をしてまいりましたし、産地市場や消費地市場、あるいは加工業者、養殖業者、輸入業者、小売業者等への意見聴取など、関係各方面から本制度への理解と協力を得るべく取り組んでまいりました。

 本制度の特徴の一つとしましては、やはり、今申し上げたように、非常に幅広い多くの関係者がおられるということだと思っておりますので、その理解をしっかりと得ていくべく、法律の施行も公布の日から二年以内としているわけでありますが、幅広い関係者に対してしっかりと説明を行って、制度の円滑な実施に向けて努めてまいりたいと考えております。

稲津委員 時間が参りましたので終わりますけれども、ぜひ、機会があれば、大臣、またそれぞれ政務の方々も、そうした関係者との意見交換みたいな、説明みたいなのをどこかでやっていただければありがたいなと思っています。

 以上で終わります。

高鳥委員長 次に、佐藤公治君。

佐藤(公)委員 立民の佐藤公治でございます。

 このたび、大臣、御就任おめでとうございます。また、政務三役の皆様方も御就任おめでとうございます。

 最初に、事前通告はしておりませんが、コロナの今の現状を見たときに、第三波とも言われるような、大変な状況が来ているとも言われております。私は、三月の段階で前大臣にもお願いをし、そしてまたその対策をしていただいてきているかと思いますけれども、感染症対策、経済支援対策、生活支援対策、この三つが大きくあると思います。

 農水省においても、感染症対策、特に、農林水産の現場で働いている方々は高齢者の方々が多い、ついては、この高齢者の方々というのは非常に重症化するおそれがある、そういうふうに言われております。こういう方々に感染症対策、農林水産省としても、徹底して気をつけていただく、声をかけていただくことが私は大事と。

 それと、感染症対策の、人から人、人から動物、動物から人ということも今出てきている。専門家は当初は、人から動物、動物から人なんというのはあり得ないとおっしゃっていましたが、今それが現実的に起こっていることもある。畜産関係でもそういったことが、今はないと言われておりますが、もしかしたらということを考えると、引き続き注視していただくことが大事だと思います。あとは、経済支援対策、経営支援対策、生活支援対策、これを引き続きお願いを申し上げたいと思います。

 新たなフェーズに入っておりますけれども、大臣から、今の現段階で、状況が変わったことについての何か、お気持ち、覚悟というものがあればお答えください。

野上国務大臣 ありがとうございます。

 今先生からお話があったとおり、新型コロナウイルス感染症対策、まず感染予防をしっかりやっていく、同時に経済を回しながら、さらには生活の支援等々も行っていく、今お話しになったとおりだと思っております。

 農水省としましても、これまで各分野にわたる対応、対策、予算の措置等々も行ってまいったところでありますが、今般また感染の拡大が広がってまいったということでありますので、今先生のお話にあったような点にしっかり配慮をしながら、漏れがないようにしっかり対応してまいりたいと考えております。

佐藤(公)委員 皆さん不安を抱えられて、それが増大している。できるだけその不安をなくすように、きめ細やかな対応を含めてお願いを申し上げたいと思います。

 さて、大臣は富山県出身ということで、富山県は、面積こそ広くはないものの、農業、漁業、林業ともに盛んなイメージ。その富山県出身ということでもあり、ぜひとも、農林水産業を大事にする、単なる強い農林水産業という言葉だけではない、地域に寄り添った政策を期待いたします。

 その上で、先日、十一月十日の大臣所信の発言議事録を読み返してみました。少し細かい話ですが、全体では五千字ほど、その中で、総論的なものは除いて、農業政策と漁業政策とそれぞれ述べられています。そのうち農業政策については九百字ほど、一方で漁業、水産政策は二百五十字ほどで、水産政策は農業政策から見れば大分少ない印象でございました。

 農林水産省の役人の方が書かれた原稿なのかなと理解しますが、きょうは水産政策の法律審議ですので、もう少し漁業、水産政策についての大臣の熱い思いがあってもよかったのかな。では、その思いを今、少しお聞かせ願えればありがたいと思います。大臣の御所見はいかがでしょうか。

野上国務大臣 ありがとうございます。

 水産業は、国民の皆様に水産物を安定的に供給するということはもとよりでありますが、漁村地域を支える、そして水産加工業また関連産業を支える、極めて重要な産業だと考えております。

 今先生から御紹介いただきましたとおり、私は富山県が地元でありますので、富山県は、立山連峰、三千メートル級から川が流れ込みまして、非常に富山湾は深い湾になります。能登半島もありますので、天然の生けすと言われておるんですが、寒ブリですとかシロエビですとかホタルイカですとか、豊富な魚種がある湾でありまして、私自身も非常に水産業を身近に感じてまいりました。ここに宮腰筆頭もおられますが、同じ富山出身だということであります。

 一方で、やはり漁業生産量の減少ですとか漁業者の高齢化等々も進んでおりますので、将来にわたって水産業が持続的に発展をしていかなきゃならない、改正漁業法も、七十年ぶりに改正いただいたわけでありますが、これもしっかり進めてまいらなければならないと思います。

 先般、静岡県に視察に行かせていただきまして、漁業高等学校に参りましたときに、そこの生徒の皆様と少し懇談をさせていただいたんですが、その生徒の方の一人が、自分は子供のころにカツオの一本釣りの漁師の活躍を見てずっと憧れていて、カツオの漁師になりたいと思って今頑張っているんだというお話も聞きました。やはりそういう若い人たちがしっかりやりがいを持って取り組めるような漁業にしていかなければならないというふうに思いますし、改正漁業法も始まりますので、各般の取組を行ってまいりたい、そういう思いでおります。

佐藤(公)委員 期待をいたしますので、お願い申し上げたいと思います。

 私は広島県瀬戸内の出身でございまして、どうしても漁業となると瀬戸内のことが多く、そういったことを前提に少しお聞きいたしたいかと思います。

 特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律案についてお尋ねいたしますが、この法律案の前提は平成三十年十二月に成立した漁業法であると考えています。七十年ぶりに改定された法律ですが、当時は法案がかなり唐突に提出され、当時の委員会審議は大分荒れたものと記憶しております。

 そこで、当時の委員会の議論の流れ、特に懸念や不安を訴えた内容の整理、総括をどのようにされたのか、大臣の御認識又は農林水産省のお考えをお聞かせ願えればありがたいと思います。

野上国務大臣 改正漁業法の審議につきましては、七十年ぶりの本格的な改正ということもありまして、委員会でもさまざまな懸念や問題点について御議論をいただいたと思います。例えば資源管理、沿岸漁場の利用等について御指摘があったと聞いておりますが、これを受けまして、法律が成立した直後から法律改正ですとか制度等の内容について周知を図ることとしまして、水産庁職員が現場に出向く形で、三百回以上説明を行ってきたところでもあります。

 例えば、法案審議の際に議論となりました資源管理につきましては、現行のTAC対象魚種につきましてMSYベースの資源評価を実施をしております。また、本年九月には資源管理ロードマップを決定、公表しまして、科学的な資源調査、評価の充実、またTACによる管理の推進など、新たな資源管理システムの構築のために道筋を示したところであります。

 そのほか、申し上げましたように、沿岸漁場の利用等について、あるいは信用事業を行う漁協等への公認会計士監査の導入等々について説明をしてまいったところでございます。

佐藤(公)委員 今、そういった整理をされたということですけれども、何か、最も大事なことが抜けているのかなというふうにも思います。それが逆に、所信表明のときに書かれていたことにもなるかとも思いますけれども。そういった内容が後の政府や農林水産省内でどのように検討されて、そして今日まで、十二月一日施行ということになっております、それにおいてどのように時間をされてきたのか、お答え願いたいと思います。

山口政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から御指摘がございましたように、改正漁業法の審議の際にいろいろな論点が出ました。また、そのときに漁業者の皆様方からもいろいろな懸念、不安等の声もいただいたところでございます。

 それを受けまして、今大臣から御答弁させていただきましたように、水産庁職員が現場に赴く形で、また、浜の漁業者の皆様方からの申出があった場合には必ず行く、そういった形で説明会等を開催してきたところでございます。

 当初のころは、例えば、漁業権が取り上げられるのではないかとか、法定の優先順位規定がなくなることによって自分たちの立場が危うくなるのではないか、こういった御意見等がございましたけれども、これらにつきましては、適正かつ有効に活用していただいている漁業者については優先的に漁業権は付与されますから、皆様方がきちんと漁業をやっていただく限りにおいては何ら心配はございませんというようなお話をさせていただき、漁業者の方々もそこは御理解をいただいてきたというところでございます。

 また、資源管理の問題につきましても、資源管理の目的は、一説では漁獲量が減るんじゃないかという御心配があるわけでございますけれども、これは、一定の漁獲を将来的には回復させていって資源をふやして、漁業者の皆さんの所得をふやしていく、これの目的のためにそういう手段をとっていくということを御説明しておりまして、これらについての理解もだんだん深まってきているというふうに考えております。

 なお、一方で、漁業者の中にはいまだ、説明が足りない、よくわからないとおっしゃっておられる方もいらっしゃいますので、我々といたしましては、改正法が施行された後も、漁業者の皆様の声に耳を傾けて丁寧に対応してまいりたいと考えているところでございます。

佐藤(公)委員 大臣、今お話しされたこと、大臣がおっしゃられたこと、TACを含めての方法論の話もございますけれども、これはある程度やってみなければわからないことが多くあると思います。

 最も大事なことは、実は、当時の議事録における反対討論、附帯決議を見ていくと、まさに大臣がおっしゃった、漁業者を始めとする関係者の理解と協力を得ながら、そこのところが今大事なところであり、今我々が皆さん与党と非常に農水関係で対立する部分というのは、産業政策と地域政策といったもの。それが産業政策に余りにも偏り過ぎている、地域政策をもう少し考えて、そして寄り添った形での農林水産行政、政策をやっていただきたい。それが我々のお願いでもあると思っております。

 私の地元広島にも少し話を聞きました。このことが全ての県、全国のことだとは言えませんが、少し参考としてお聞きになっていただけたらありがたいと思います。

 広島県は、十二月一日から施行の漁業法について、まず、法律成立前に概略的な説明があったと。制度の詳細な説明は、平成三十一年一月以降、合計十七回行われております。この回数だけを見れば、丁寧な説明をされたのかという感想。しかし、少し問題もあるのかなと思ったことがあります。

 それは、漁業法改正によって、多くの分野で大規模な制度の見直しが行われました。しかしながら、法律の具体的運用を担う政省令や技術的助言の内容が長く確定されなかったこと、これは、都道府県における漁業調整規則の改正や資源管理方針の策定などの事務が大幅におくれてしまう要因になってしまったのではないかと思います。更に言えば、資源管理及び許可漁業の分野で規模などの条件が大幅に異なる大臣許可漁業を想定した制度が知事による許可漁業に一律に導入されてしまい、地方の漁業の実態は運用が困難になっている、こんな声も聞かれております。

 そこで、各県の体制、状況というのが非常に大事だと思いますが、その辺の農水省としての、状況、実態、問題点、いかがお考えになられますでしょうか。

山口政府参考人 お答えいたします。

 今、先生の方から広島県の実態についてお話がございました。

 今回の法律制度、先生からも御指摘がございましたように、大規模な制度改正を行っているということ、また、改正事項が多岐にわたるということでございまして、それの一つ一つを準備して、詳細な運用基準をつくって、それで都道府県等にお示しをしてきたという経緯でございます。

 先ほどもちょっと申しましたように、最初のころの漁業者の皆さんの懸念、不安といいますのが、やはり、漁業権制度に関するものや海区漁業調整委員会の選任方法等、そういった問題でございましたので、そういったことについて当初は重点的な御説明をさせていただいたところでございます。

 その後、今御指摘がございましたような許可漁業についての取扱いの細則を決めていくという際に、これは国が独断で決めているわけではございませんで、都道府県との意見交換、調整をしながら決定してきたという経緯がございます。都道府県との間では、法律が公布された後、基本的に毎月一回は都道府県を集めた会議を開催させていただきまして、都道府県からの御意見、御要望も踏まえて、それぞれの制度の運用についてどうしていくかということを議論し、調整をしてきたという経緯がございます。

 知事許可漁業と大臣許可漁業のいわゆる制度の運用についてなるべく並びをとろうということは、法律のときからもう既に規定が入っていたところでございます。具体的な運用については、これは都道府県ごとに今先生御指摘がございました調整規則の内容がかなり異なっておったということもございます、それらを見比べながら、また、各県の個別の御事情を聞きながら調整規則の今後の方向というのをまとめましたので、これについては本年になって都道府県に示したという実態でございます。

 そういったことで、いろいろな点で御意見を伺っているところでございますが、法の施行までに準備を整えて、都道府県と一緒になってこの法律の運用に努めてまいりたいと考えております。

佐藤(公)委員 議事録を読み返してみると、そういったことの懸念材料というのがかなり出ていた。そして、反対討論でもそういったことが我が同僚議員からも指摘がされている。実際、前回の漁業法の改正のときには、時間が非常に短い中で審議が行われた。私は、この大もとのところの議論がまだまだ足りなかった部分、そういったことが今起き始めているのかなという気がいたしてなりません。

 さらに、その先の現場、つまり漁協等に対してどれぐらい漁業法の改正点などの話がされているのかということですけれども、今回の特定水産動植物等の国内流通の適正化等の法案についてでも、地元の漁協関係者からヒアリングしても、やはり全く知らないという声も多くありました。広島県の担当者から聞いたところによりますと、自分なりに理解すれば、先ほどのとおり、具体的運用の明示がおくれている一方で、新型コロナウイルス感染症の感染防止対策の観点からも、事前の説明会の開催はままならず、十二月一日施行を控えた漁業法ですら、現時点で、今も十分な周知が図られているとは言えないような状況にも見えます。

 このような状況で、今どうやってこれをより進めていくのか、コロナ禍ということもあって。何かお考えはございますでしょうか。

山口政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の水産流通適正化法につきましては、生産者団体や加工・流通・小売団体、また自然保護団体、学識経験者、更に地方自治体の代表者も委員とした検討会を昨年九月から開催しておりまして、約一年間、全七回にわたり議論を行ってきたところでございます。

 また、その間におきましても、生産者団体、加工・流通・小売団体、自然保護団体、NPO、また地方自治体への説明や意見交換を行っておりますし、さらに、現場にも実際に伺いまして、取引の実態がどうなっているか、こういったことも水産庁職員が調査をしているというところでございます。

 本制度につきましては、関係団体の皆様方からも、密漁防止を図るということについて、資源管理が漁業者の利益にかなうものであろう、資源が保護されて漁獲物の価値も適正に評価されるようになるということで、おおむね賛成の御意見をいただいているところでございます。

 先生御指摘のような、制度の運用の細かいところにつきましては、政省令等を定める際に都道府県に対しても周知してまいりたいというふうに考えております。

佐藤(公)委員 聞きたいことの十分の一も今聞けないような状況ですけれども、こういったことにおいて、今、現場の方での負担を強いられることが多く出てきているというふうにも思います。

 まさに、今後のスマート水産といったことを含めたことを考えると、現場の方は、高齢者の方々が多く、IT化等々に関しての費用、そして高齢者の方々に対しての理解、又はこういう人たちにどう指導していくのか、こういったこともあると思いますので、十分、よくよく考えて、そこら辺を皆さんが不安がないように進めていただきますことを、切にお願いを申し上げたいと思います。

 もう残り一分ちょっとになりましたので、最後に、これはどうしても、ちょっと言っておきたいことがございます。

 鳥獣被害ということが、きのうの委員会でも議論がございました。私も、今回の水産関係で島の漁協関係をずっと見て回ったんですが、水産関係の陳情よりも、実は鳥獣被害の陳情の方が多くございました。

 実際、農林水産省ですとどうしても、水産関係なんて関係ないというふうにお思いになるかもしれませんけれども、島の小さい村や町においては、農業と水産業が非常にくっついている近い存在、そこにおいてはどうしても、漁師町の中で空き家がたくさん出てきた、そこにイノシシが入ってきて、生活に、若しくは御老人に危害、被害を加えるようなことを目の当たりにしてきました。農産物だけの被害ということではなく、まさに人命にかかわるような案件も幾つも聞きました。

 環境省、きょう来ていらっしゃいます。済みません、農水省関係にも鳥獣被害の方もいらっしゃると思いますけれども。

 大臣、どうかこの鳥獣被害というのを、今数字で見ると少なくなっているように見える部分、若しくは横ばいなんですけれども、実態は本当にひどい状態です。それはもう、生命すらも危ぶむようなというか危険な状態というのは特に高齢者の方々にあるように思えるので、これを、農水省ということ、環境省もそうですけれども、本当に全省庁的に大規模な手を今から打たなければ手おくれになってしまうというような思いを、私は今回の島の水産関係を聞き取り調査をする中で非常に強く感じました。

 どうか最後に、それに対して、全省庁的に大きな一つのプロジェクトチームを組んでこれに対応していかなければ、私は手おくれになるような心配さえいたします。いかがですか、最後に。

野上国務大臣 本当に、先生がおっしゃられるとおり、この鳥獣被害、農作物の被害はもとよりでありますが、人命にかかわること、さらには、それを超えて、農山村に非常に大きな、深刻な状況になっていると思います。

 私も連日、例えば農林関係の方ですとか地元の方もおられますし、例えば商工会の方等ともお話をしても、鳥獣被害の話というのが非常に多くなってきていると肌で感じているのは、先生と全く同じ状況だと考えております。

 農水省では今、環境省と連携をしまして、鹿、イノシシの生息頭数を半減することを目標とした対策を策定しまして取り組んでいるところでありますが、こういう状況なものですから、本年度からは鳥獣捕獲の本格的な強化に取り組むことといたしまして、今、各都道府県にできる限り高い捕獲頭数の目標を設定いただいた上で、狩猟期に入りますので、十一月から三月、この間に集中的に集中捕獲キャンペーンを展開する。今、大体百二十万頭ぐらいの捕獲ということだったんですが、更に上積みして二十万頭捕獲していこうと。こういうキャンペーンの展開ですとか捕獲体制の強化を推進してまいりたいと思います。

 まさに今深刻な状況だというのは先生と全く同じ認識でございますので、これは全力で取り組んでまいりたいと思います。

佐藤(公)委員 ぜひお願いいたします。

 あと、これは技術、科学の研究も大事ですので、それに対しての予算、エネルギーを注いでいってください。

 以上で終わります。ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、大串博志君。

大串(博)委員 おはようございます。立憲民主党の大串博志です。早速質疑に入らせていただきます。水産流通適正化法の質疑でございます。

 まず、大臣、御就任おめでとうございます。どうぞひとつよろしくお願いします。

 水産は、佐賀県でいうと、玄界灘が日本海側に、そして有明海が内海ですけれどもございます。魚種も漁業のあり方もそれぞれの特色があるんですけれども、御案内のように、有明海の方においては、諫早湾干拓をめぐる漁業者の皆さんの苦境が続いております。

 九七年にいわゆる諫早湾干拓の潮受け堤防が締め切られて、もう二十三年になりました。二十四年目です。この間ずっと、二十数年間にわたって漁業者の皆さんの苦境は続いている、係争状態が続いている、こういう状況です。こういう、係争状態が続いているということ自体が私はよくないと思うんですよ。やはり何がしかの解決をしていかなきゃならない、解決を図っていかなきゃならぬということだと思うんですね。

 それに向けて、大臣にお尋ねしたいんですけれども、資料にもありますが、安倍政権になってからの歴代大臣は、資料の一枚目ですけれども、大臣就任後、大体一カ月内外ぐらいに現地を訪れ、行政、漁協関係者や、かつ、もちろん一番大切な原告、弁護団の皆さんとの意見交換を現地視察も含めて行っていらっしゃいました。ずらりと、見ていただくと、このとおりです。

 にもかかわらず野上大臣は、今回、九月の半ば過ぎに着任されて、国会がそもそも始まるのに四十日ぐらい時間があった。ちょっとこれは異例でしたね、異例でした。にもかかわらずまだ一度も、現地を訪問し、原告団、弁護団等との話合いを持たれていない、こういう状況は異例です。本当に二十数年間のこの係争状態を解決しようという意欲はあるのかということを疑われても仕方がない、こういう状況なんですけれども、なぜ大臣は今、もうきょうで二カ月近くですね、二カ月近く、現地を訪問し、原告団、弁護団と意見交換を行うということを前の大臣とは違ってやっていないんですか。

野上国務大臣 お答え申し上げます。

 これまでの現地訪問におきましては、現地視察に加えまして、多くの関係者の皆様との意見交換を実施させていただいてまいりました。極めて重要なことだと思っております。

 一方で、会場はどうしても密になりやすい状況になりましたり、御高齢の方の参加も想定されることから、新型コロナウイルスに関する感染状況等を勘案する必要があると考えておりますが、感染状況も踏まえながら、私としてはぜひ現地を訪問してまいりたいと考えております。

大串(博)委員 大臣、今、ある程度絞るにしても、知事や市長さん、首長さん方あるいは漁業団体の皆さんなど各方面との面会、そして、会場がどうしても密になりやすいとか、御高齢の方の参加も想定されるとか、だから新型コロナウイルスの感染状況を勘案する必要があるとかおっしゃいましたけれども、大臣自身はこれまで、就任されて、さはさりながら、かなりの箇所に出張を既にされていますね。

 出張が悪いと言っているわけじゃないんです。現地を見ていただくことは極めていいことなので、私は、どんどん新型コロナウイルスに対する感染防止をしながら行っていただくのはいいことだと思います。

 これまでも随分行かれているんです。十月三日、いわき市、いわき市長との意見交換、出席者数二十二人。福島県知事等との意見交換、出席者数十九名。あるいは、農業の皆さんとも意見交換をされていますよ。十月十二日、農研機構を見られたときに、行方市、農業団体等との意見交換会、出席者三十名。漁業の皆さんとも意見交換をされていますよ。十月十五日、静岡県に行かれて、静岡市、漁業者等との意見交換、二十一名。焼津市、漁業者等との意見交換会、出席者二十四名。もちろん、富山の方にも行かれていますけれども。

 こうやって、新型コロナウイルスの問題があるからと言われてはいますけれども、出張されているじゃないですか。なぜ諫早湾干拓の問題だけ出張されないのかというのは、説明にはなりませんよ、説明にはなっていませんよ。だから私も申し上げているんです、やる気が本当にあられるんですかということを申し上げているんです。

 大臣、先ほど来答弁されましたけれども、国会をやっていても来られた大臣はいらっしゃるんです。過去の例でいうと、一番最初の林大臣なんかは国会開催中に、始まった直後に来られました。こういったこともあるんですよ。ですから、国会ですら完全な理由にはならないんですね。

 先ほどいろいろおっしゃいました大臣にぜひ求めたいと思いますけれども、もちろん新型コロナウイルスの感染状況を勘案してもらっても結構です。時間や、あるいは出席者を絞る、密にならないようにする、そういったことは結構ですよ。原告団、弁護団とも私も話し合いますけれども、数を絞れと言われたら数を絞りますよ。そういった形でも結構なので、やる気を示していただくためにもできるだけ早く現地に来ていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

野上国務大臣 今御言及を賜りました私の出張等々でありますが、これもできる限り人数を絞って行わせていただいたところでございますが、諫早の方の訪問につきましては、各方面の関係者とお会いをして行うことに意義があると考えております。コロナの状況がありますので全く例年と同様というわけにはいきませんが、私自身はこれは極めて重要な訪問だと考えておりますので、できるだけ早期に調整をして参りたいと考えております。

大串(博)委員 初めて、できるだけ早期にという話をいただきました。できるだけ早期にという話でございますので、本当にできるだけ早期に、ぜひお願いしたいというふうに思います。

 なぜならば、大臣自身は、この諫早湾干拓問題、二十数年、潮受け堤防がおろされてから係争状態が続いているんですけれども、現下の状況をどういう方向に持っていこうとお考えなんですか。

野上国務大臣 平成二十二年の開門を命ずる福岡高裁の判決が確定した後、国は、開門義務の履行に向けまして、諫早湾周辺の農業者、漁業者あるいは地域住民の皆様の理解と協力を得るための努力を重ねてまいりましたが、必要な事前対策工事の着工を行えず、現実に開門することは大変困難な状況にあります。

 一方で、国は、有明海の再生に向けまして鋭意取組も進めてきたところであります。漁業者の中にも、開門をしてほしいという方もおられれば、潮流が速くなるので、養殖に影響が出てしまうので開門をしないでほしいという方もおられます。

 このため、平成二十九年に大臣談話が出されたわけでありますが、私自身もこの大臣談話に沿って解決することがベストだと考えておりまして、それに沿うように出口を探ってまいりたいというふうに考えております。

大串(博)委員 私、きのうちょっと気になったんです。きのうも大臣談話に沿って解決することが望ましいとおっしゃいましたけれども、大臣談話に沿って解決するとはどういうことですか。

野上国務大臣 開門によらない基金による和解を目指すということでございます。

大串(博)委員 その開門によらない和解という提案、国は提案されました、百億円の基金。しかし、それは全然進まなかったんですよね。

 なぜかというと、開門判決は確定しているんです。開門判決が確定している原告団、弁護団の方からすると、開門を前提としない和解案というのが、それを政府側が入り口で仕切ってしまったことで協議がなかなか進まなかったんですよ。それは大臣も御存じのことだと思います。それでは進まないので、今の時期が、今の状況があるんですよ、今の状況がある。

 先ほど言いましたけれども、潮受け堤防の締切りから二十三年ですよ、二十四年になろうとしている。開門判決が確定してからもう、今度の十二月で十年ですよ。開門判決が確定して十年間全然動かないでここまで来ているんですよ、来ているんです。ここは何とかしなきゃいかぬということだと思うんですね。大臣談話にある、開門によらない基金による和解ということでは私は進まないと思います。ですから、ぜひここは、何がしかの知恵を働かせるのが私は政府の役割だと思うんですね。

 大臣にちょっと一つお尋ねしますけれども、とにかく和解をするということしか今の解決策はないと思うんですよ。大臣も繰り返し言われていますけれども。開門判決は確定しています。一方で、開門してはだめよという、これは個別の権利に対する裁判、これが日本の裁判制度ですから、この個別の権利に関しては、開門しちゃだめよという判決もあるにはあります。大臣もいつもおっしゃるように、そういった違う方向の判決が出てきているのも確か。

 これを、この状況を解決していくには、間に入り得るのは政府しかないじゃないですか。政府が和解の音頭を、かつ、開門義務を負うのは政府ですから、政府がイニシアチブをとって和解をしていくしかないと思います。

 大臣にお尋ねですけれども、和解をするという方針でいいですね。

野上国務大臣 開門を行うことが事実上困難となっていく中にありましても、国は有明海の再生に向けて鋭意取り組んでまいったところでありますが、こうした姿勢を評価いただきまして、平成三十年には、福岡、佐賀、熊本三県の漁業団体から、福岡高裁が示した開門しない前提の和解協議を進めてほしいとの考えで一致したとの文書も発出されたわけであります。

 国としては、有明海の再生に引き続き全力で取り組むことを通じて、開門によらない基金による和解について幅広い賛同を得てまいりたいと考えております。

大串(博)委員 漁協の皆様の意思表示は非常に大事ですけれども、でも、開門判決を持っているのは原告団、弁護団です。原告団、弁護団が納得しなかったら和解にならないんです。

 大臣に私が聞きたかったのは、和解をしないという選択肢は農水省にあるんですかということなんです。和解をしないという選択肢は農水省にあるんですか、大臣。

野上国務大臣 国はこれまで、長崎地裁ですとかあるいは福岡高裁におきまして、裁判所の和解勧告も踏まえまして、開門を前提としない和解協議に臨みましたが、和解には至らなかったところであります。

 そういう中でありますが、先ほど申し上げましたとおり、大臣談話に沿って解決することがベストだと考えておりまして、それに沿うように出口を探ってまいりたいと考えております。

大串(博)委員 いや、それがベストだと考えられているのはよくわかります。その上でお聞きしているんです。

 今のこの状況、判決も両様の判決が出ている面があるということを考えると、解決するためには何がしかの和解を図る以外にないじゃないですかと私は思っていて聞いているんです。和解以外の解決策はあるんですか。だから、和解以外の選択肢を探るという思いはあられるんでしょうか、ないんでしょう、そこは確認したいんです。

野上国務大臣 繰り返しになって大変恐縮でございますが、国としては、有明海の再生に引き続き全力で取り組むことを通じて、開門によらない基金による和解につきまして幅広い賛同を得てまいりたいと思いますし、それに沿うような出口を探ってまいりたいと考えております。

大串(博)委員 先ほどから繰り返し言っていますように、裁判上の確定判決を得ているのは原告団、弁護団です。私も一緒に活動していますけれども、原告団、弁護団としては、開門によらないというのが前提になると和解できないんです。大臣が和解をしたいということであるならば、何がしかの和解の考え方をイニシアチブを持って示していかないと何も進まない。

 さっき申し上げたように、開門判決が確定してから十年なんですよ、十年間。この数年間は本当に訴訟、訴訟、訴訟ですよ。これが健全だと思う人はいないと思います。何か政府がイニシアチブをとらないと。この状況は異常ですよ、異常。だから申し上げているんです。

 大臣、いま一度お尋ねしますけれども、和解しないということがあるんだったらここで言ってください、和解しないこともあり得るというんだったら。和解しないということがあり得るんだったら、ここで言ってください。

野上国務大臣 開門につきましては、先ほど申し上げましたとおり、地元関係者にもさまざまな意見があると承知をしております。漁業者の中にも、開門してほしいという方がおられる一方で、開門してほしくないという方もおられると承知をいたしております。

 今、国がイニシアチブをとって探るべきだという御指摘もございました。昨年十月、江藤前大臣が現地視察の際に、さまざまな立場の関係者がバランスよく参加するのであれば一堂に会して話し合うこともあってもよいと発言されたと承知をいたしておりますが、私もその考えは全く同様でございます。

大串(博)委員 江藤大臣の談話を引かれたのはわかりました。

 和解しないということを言ってくださいとここで申し上げたら、和解しないとは言われなかった。かつ、江藤大臣の、一堂に会する機会があるんだったらそれもよしということも言われた。ということは、やはり和解しかないんですよ。

 だからそこは、そのイニシアチブをとれるのは国しかないんだから、大臣、地元に行かないとかそういうことじゃなくて、より積極的に。私たちは開門を前提としないということが前提に来ると和解には絶対になりませんから、いろいろ知恵を使っていただいて、長崎の皆さんの意見も、農業者の皆さんの御意見も、そして水害被害等々をかなり心配されている皆さんの気持ちもわかりますので、皆さんにも応え得るような何がしかの策を示していくのが農水省の義務ですよ。私たちは開門によらないというのが前置きにつくとなかなか和解になりませんから、何がしかの知恵を出して、和解に向けての動きを積極的にやっていただきたいと思います。

 次に、法案の質疑に入りますけれども、事務方で結構なので答弁いただきたいんですが、これはもともと、たしか私の理解では、検討の段階では、流通を適正化するために漁獲証明制度をつくろう、登録機関をつくってやっていこうということだったと思うんです。そういうことかと私は思って見ていたんですけれども、結果として今回は農水省側において届出を受けていくという形になっています。一部委任もありますけれども。これはどうしてこういう経緯になったんでしょうか。

山口政府参考人 お答えいたします。

 今委員から御指摘がございましたように、本年六月に取りまとめられました検討会の取りまとめの中では、漁協等の民間機関が適法性を証明する機関となるということが想定されていたところでございます。

 しかしながら、その後、法制化に当たっての検討の中で、まず、漁協は売買にも参加していくことになりますので、公平性、中立性の確保のため、そのためにはいろいろな監督措置が必要になるということになりまして、これはまた複雑な制度になるというおそれがあったということでございます。

 また、適法性を確認する機関としましては行政機関の方が、国や都道府県の方がより適当であるということから、今回の制度では、漁業者等が行政庁に届け出た後に通知される番号を含む漁獲番号等を譲渡しの際に伝達するという、こういった形で適法に漁獲されたものが流通することを担保する仕組みとしたところでございます。

 このような仕組みにおきましても適法な権限を有する漁業者により採捕された漁獲物と適法な権限を有しない者により採捕された違法漁獲物は区別されることができるものですから、違法漁獲物の流通を防止することは、同じ目的が達成できると考えているところでございます。

大串(博)委員 わかりました。

 ということであれば、私も事務方の皆さんにお尋ねしていたところ、そういうことで、農水省は、一部都道府県への権限委任という中で、新しい課室を農水省の中につくって届出業務等々を担っていくんだということでございましたが、そこで私は非常に気になったことがあって。

 野上大臣と私は長らく農水委員会で議論させていただいたんですけれども、農水省の機構・定員なんですね。新しい室をつくられる。霞が関で新しい室をつくるというのは大きなことなんです。一方で、資料にも出していますけれども、農水省は連年連年、私も何度かこの農水委員会で取り上げさせていただいていますけれども、資料二ページ目を見ていただくと年度末定員の推移というのがありまして、例えば、網かけしていますけれども、二十六年度から三十一年度までの五年間で各省に比べて、農水省は突出して大きい役所じゃないんですけれども、一番定員の削減率が大きいんですね、千六百三十六人。二年度に至る過程においても、一番右ですけれども、二百七十二人と極めて大きな削減になっているんです。

 私たちが愛してやまない農林水産政策において、政府の中においてこの取扱いなんですね。そこで、また新しい課室をつくらなきゃならないという需要は生じるわけです。

 野上大臣にはこの件を、三十年のときにこの委員会においでいただいて、当時、野上大臣は官房副長官でいらっしゃったですね。私の方からこの現状を言って、定員査定をされる立場であられましたから、農水省だけが重い削減努力を負っているというのは不公平ではないか、何とかしなきゃならぬじゃないかということを申し上げたところ、当時の野上内閣官房副長官の方から、「委員御指摘のとおり、農水省に重い負担をお願いしているということは事実であります。」というふうに認められたんです。

 これは私は画期的なことだと当時思いました。定員査定を担当する方がこういうふうに言われた。これは私は非常に期待をして今でもいるんです、今でもいる。その野上さんが大臣になられたものですから、この機構・定員のあり方を見まして、ぜひ、野上大臣、これはやはり、我が国の基を支える農林水産省の定員が各省よりぐんと大きく、これだけ削られ続けてきているというのは何とかしなきゃいかぬという思いで機構・定員増に積極的に取り組んでいただきたいと思いますが、三十年に私が今指摘したような発言を官房副長官として、担当としてされた立場から、ぜひ前向きな答弁をお願いしたいと思います。

野上国務大臣 今、先生から三十年のときのやりとりを御紹介いただきました。私もはっきり覚えているところでございます。

 先生御指摘のとおり、農林水産省の令和二年から五年間の定員合理化目標につきましては、他省より高い合理化率となっております。

 農林水産業を取り巻く諸課題に対応するために、毎年、所要の増員を行うなど必要な定員の確保に努めているところでありますが、一方で、農林水産省の、成長産業化ですとか、土台となる産業基盤強化等のさまざまな重要課題に加えまして、CSFですとかASF等に対する国内防疫、水際検疫、あるいは防災、減災、漁業取締り、また今般の水産物流の適正化に対する対応等々、対応する課題は大変多くなってきております。

 令和三年度の新規の定員要求につきましては、四百十人の増員要求を行っているところでありますが、それぞれの今申し上げたような課題に的確に対応できるように、支障が生じないように、必要な定員の確保に向けて全力を尽くしてまいりたいと考えております。

大串(博)委員 ぜひよろしくお願いします。特に、農水省の中でも地方支分部局への削減率が高いとか、まさに地方が極めて厳しい状況になっているとか、あるいは、きのうも話がありましたけれども、独立行政法人の施設整備費、効率化係数が一義的に掛けられているものですから非常に運営が厳しくなってきているとか、こういう問題もありますので、所管の大臣ですから、ぜひよろしくお願いします。

 最後に、大臣、一問だけ、GoToイート。

 四人以下としてくださいというような内容の発表が総理からありました。農水省からも各県に四人以下でということでの発出がなされています。

 しかし、私が思うに、これは結局、都道府県で適宜判断してくださいということですよね。そうであってもいいし、そうでなくてもいいと。これは私は、GoToイートだけに限らず、GoToトラベルもそうなんですけれども、全体がそうなんですけれども、各都道府県で適宜判断してくださいというのは、今の感染拡大が爆発的にふえている段階において、政府が余りに人ごとのように地方に責任を投げ過ぎだと思うんですよ。

 少なくともGoToイートに関してはこういう考え、基準でやってください、感染が広がらないようにというのをぴしっと、国が責任を持って感染を広げない立場からの基準なり公準なりを私は示すべきじゃないかと思うんです、地方任せにしないで。ぜひそこはそうやるべきだと思いますが、野上大臣、どう思われますか。

野上国務大臣 お答え申し上げます。

 一般的に、感染が拡大した場合には、都道府県は飲食店に対して例えば時間短縮ですとか休業要請等を行うことが考えられます。

 GoToイート事業につきましても、都道府県が新型コロナウイルス感染症対策分科会が示した感染状況のステージなども踏まえまして、例えば食事券の販売ですとかポイント付与の一時停止をするかどうか、これも判断するという仕組みになっております。

 一方で、御指摘の、しっかりと指針を示すべきだという話がございましたが、先般、食事券、ポイントの利用につきましては原則として四人以下の単位での飲食とするということをお示しさせていただきましたが、今申し上げましたとおり、やはり、感染の状況を踏まえながら、そこの地域でそれをどうされていくかというのは都道府県の判断ということになりますが、農林水産省としてもしっかりとバックアップをしてまいりたいと考えております。

大串(博)委員 ステージ3に当たるかどうかの判断も地方が決めることだということなので、私は非常に、今の内閣が地方に丸投げ、責任を転嫁している感がしてなりません。これではなかなか感染はとまらないんじゃないかな、その結果、農林水産政策にも大きな影響が来てしまうんじゃないかと非常に懸念しています。ぜひ、大臣、しっかりお願いします。

 終わります。

高鳥委員長 次に、石川香織君。

石川(香)委員 石川香織でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 きょうは、法律について、そして水産業を取り巻く全般的な課題についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 今の水産業の現状でありますけれども、二〇一九年の漁業、養殖業の生産量は四百十六万トンということで、一九五六年の統計開始以来、過去最低という数字になっています。近年は、不漁のほかに、ことしはコロナの影響もありましたし、また、資源管理の新しいルール化などもありまして、我慢の時期が続いているということで、これが限界に達していると思います。

 そして、ことしは、各地でいろいろ開催予定であったお祭り、お魚に触れる機会が減ってしまったということで、私たちにとっても非常に残念な一年になってしまっています。私の選挙区でも大樹町とか浦幌町というところでそういったお祭りがありまして、アキサケのつかみ取りなんというのがすごい目玉で、大きなプールにアキサケを泳がせて、子供たちが腕と足をまくって歓声を上げながらつかむというのが風物詩だったんですけれども、ことしは残念ながらこれがないと。

 十二月には広尾でカニ祭りというのもありまして、カニ汁を求めて、マイナス二十度近くなるときもあるんですけれども、みんなが頑張って並んでカニを買う。その中で、ケガニの早食い大会というのもありまして、はさみを使わずに口でケガニを食べる。私も毎年、ケガニを事前に買って練習をしているんですけれども、抽せんで毎年物すごい数が来まして、一度もまだ出場できていないんです。こういう機会は、魚に触れる機会ということで、本当に大事な機会だったと思います。こういう楽しいイベントがないということだったんですけれども。

 水産の課題というのはいろいろあると思うんですけれども、水産の課題を考えるときに、私は、一にも二も、まず浜の皆さんの収入をダイレクトに支えていくという仕組みをしっかり構築していくということが一番大事ではないかと考えています。とろうにもとれないという状況が続いているわけですから。

 漁業者だけではなくて、水産加工業者、それから、例えば生魚を入れる発泡スチロールをつくる業者さんであったり、それを運ぶ運送業者であったり、浜というのは全部つながっているわけですよね。魚をとる人がいなくなってしまえば、当然、浜全体が衰退をしてしまって、水産業が日本からなくなってしまうということがないようにしっかり浜を守る、そして収入を支えていくということが一番大事ではないかと思います。

 こういった強い危機感を改めて委員の皆様と共有した上で質問させていただきます。

 漁業者の皆さんの収入を支える大きな役割を果たしている共済、積立ぷらすという制度でありますけれども、この支出額も巨額になってきております。

 一九年度は支払い額が四百七十九億円と、一八年度に比べて三五%ふえて、過去最高になりました。国庫負担の基金の残高でありますけれども、一九年度末には百五十四億円ということで、一八年度と比べて半減してしまったということです。昨年も、この国庫の部分が枯渇しないようにしっかり予算を確保していただきたいという趣旨の質問を、私もこの農水委員会の中で強く要望させていただきましたけれども、コロナの影響も受けているという状況の中では昨年よりも更に厳しくなることは間違いなく、また、過去を見ても類を見ないほど厳しい状況が続いているということを鑑みて、私は、共済、積立ぷらす以上の支援が今まさに必要ではないかと思っています。

 その中でお聞きをしたいのが、クロマグロの強度資源管理の特例というものであります。大臣にお聞きをしたいと思いますが、ことし、この要件が変更になりました。実際にクロマグロの漁獲、放流実績などがなければ、積立ぷらすよりも手厚い補填を受けられないという要件になりました。

 この特例は水産庁が決めたものであるにもかかわらず、要件が変わってしまったのは納得がいかないという声が多くの方から上がっているということです。不漁で苦しい時期が続いているということを考えますと、この制度は非常に収入源としても支えている部分が大きかったということで、再び前の要件に戻すということも含めて検討していただけないかという要望が浜の皆さんから上がっております。さらなる支援強化の取組の中に、このクロマグロの資源管理の制度を、再び前の制度に戻すということも含めて検討することはできないでしょうか。

野上国務大臣 お答え申し上げます。

 今お話のありました太平洋クロマグロにつきましては、WCPFCにおきまして漁獲量の制限が決定をされまして、これを受けて我が国では平成三十年度からTAC制度を導入することになりました。その際に、クロマグロ漁獲の一定以上の削減に取り組む沿岸漁業者の皆様等を対象として、積立ぷらすの特例としまして、基準収入額が平成二十九年の水準から下回らないように、基準収入金額の下げどめ措置を実施しているところであります。

 一方で、クロマグロの漁獲実績がない漁業者に対しても下げどめ措置が適用されているということが多く見受けられたために、今年度から、クロマグロの漁獲実績や放流実績等のある漁業者に限り下げどめ措置を適用することとしたところであります。

 この漁業共済、また積立ぷらすは漁業者の皆様を支える極めて重要な制度だと考えておりますが、今後とも、漁業者の理解を得つつ、適切な実施に努めてまいりたいと考えております。

石川(香)委員 要件を変えた後の制度というのは、令和二年度、今年度からの取組ということもありますので、ぜひ、今年度を終えてみて、漁業者の皆さんの意見もしっかり聞いていただきたいと思いますし、収入を支える制度のメニューの充実というものをしっかり図っていくということが大事だと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 漁業者の収入を安定させる、不漁の原因になってもいる資源管理を適切に行うということは当然大事なんですけれども、この法律の趣旨の一つでもあります違法漁業者の摘発、違法漁獲物の流通を取り締まっていくということは、本当に大事なことだと思います。

 都道府県調べの密漁の現状をあらわす資料の中で、違反者区分別の検挙件数の推移というグラフがありますけれども、これを見ますと、昭和五十七年から平成十四年は、減ったりふえたりもしていますけれども、おおむね横ばいという印象ですけれども、平成十四年から右肩上がりに検挙数が伸びています。厳しく取り締まって検挙数がふえたということもあるのかもしれませんけれども、平成十四年から検挙数がふえたという点については、どんな要因があるんでしょうか。

山口政府参考人 お答えいたします。

 密漁の実態について御指摘がございました。

 近年の密漁の検挙件数を見ておりますと、漁業者以外による漁業関係法令違反の件数が平成十四年には約三百件でございましたが、直近の平成三十年では千二百件と大幅に増加しているところでございます。その中には、暴力団員等による組織的かつ悪質な密漁も含まれておりますし、また、漁場利用のルールを十分に認識していない一般の方による個人的な消費を目的としたものもあると認識しております。

 なお、検挙件数の増加の原因はさまざまということが考えられるわけでございますが、例えば、取締り機関同士の情報共有を促進していく、また、地域における合同取締りの実施をする、さらに、捜査自体の手法、スキルが向上してきた、こういったことで取締り体制の強化が図られ、その効果が生じている面もあると考えております。

 今後とも、関係者が密接に連携し、情報共有、合同取締り等の取締りの強化を図り、密漁対策、これは漁業者自身も行っていただいておりますが、こういったものへの支援を行うことにより、総合的な密漁を防止することを進めていきたいと考えております。

石川(香)委員 非漁業者による密漁がふえているということも特徴の一つとして挙げられておりました。

 密漁が資源管理においても漁業者の収入においても悪影響を与えているという現状ですけれども、この密漁対策ですけれども、改正漁業法では、密漁対策のために特定水産動植物をとることを禁止するということと、新しい罪も新設をされまして、三年以下の懲役又は三千万円以下の罰金ということになっています。

 この法律は密漁に対して流通面からの規制を実施するということですけれども、改正漁業法とこの法律をセットにすることによって、どういった効果、メリットがあるのかということを教えていただきたいと思います。

山口政府参考人 お答えいたします。

 今先生から御指摘がございました本年十二月一日に施行される改正漁業法においては、ナマコ、アワビ等の特定水産動植物の密漁に対しまして三年以下の懲役又は三千万円以下の罰金を科す罪を新たに設けておりまして、生産段階における違法漁獲の防止のための措置を強化したところでございます。

 一方、水揚げ以降の流通の過程において違法漁獲物が流入してしまいますと、適法に漁獲されたものとの判別は困難ということでございますので、本法案により、流通段階においても違法漁獲物を識別できる仕組みを設け、その流通の防止を図ろうとすることにしたものでございます。

 このように、両方の法律を連携して運用することで、違法漁獲物に関しましては生産面から流通面まで切れ目なく防止措置を講じることが可能となりますので、密漁の抑止に高い効果が発揮できるものと考えております。

石川(香)委員 生産面と流通面でしっかり規制をしていくということでしたけれども、北海道を代表する魚の一種でありますアキサケも、遡上する時期に、親のサケであったり、ふ化場や捕獲場で卵を抜くといった悪質な事例も過去にありましたが、このアキサケもここ数年不漁にあえいでいます。

 サケは四年ほどかけて放流された河川に戻ってきますけれども、回帰率が非常に低くなっているというのも近年のアキサケの不漁の一因だと言われています。例年回帰率が三%から四%だったものが、今は一・六%ほどに落ち込んでしまっているということです。この回帰率が低くなってしまっている要因としてはどんなことが考えられるのかということ。

 また、北海道の海域別の漁獲量を見ますと、オホーツクが前年同期比一〇七%、太平洋が六五%、日本海が一八五%という数字があります。前年も厳しい年でしたので、ふえているからといってまだまだ喜べないという現状はありますけれども、この回帰率と関連がある漁獲量が日本海では一八五%とふえているのは、厳しいニュースが続く中でもうれしい兆しの一つではないかと思いますけれども、これらの状況と、それから回帰率の関連も含めて御答弁をお願いしたいと思います。

山口政府参考人 お答えいたします。

 今先生から御指摘がございましたように、サケの回帰率につきましては近年低下しておりまして、北海道においては、御指摘のとおり、一・六%と過去最低レベルとなっているところでございます。

 回帰率低下の主な要因といたしましては、稚魚が海におりる時期に適切な海水温の期間が短かったことが指摘されているところでございます。また、海域ごとの違い、日本海側とオホーツク海側といった違いでございますが、これは稚魚が海におりた後の餌環境や海洋環境の影響が要因として考えられるところでございまして、漁獲がよかった日本海につきましては、これらの要因が当時は他の海域に比べて良好であったものと考えられるところでございます。

 サケの回帰率の向上のためには、海水温等の環境変動に強い健康な稚魚を育てていくということと、河川ごとに最適な時期またサイズ等で放流する取組が必要だというふうに考えております。国も含め、ふ化放流に関係する機関が一体となってこれらの取組を積極的に進めてまいりたいと考えております。

石川(香)委員 今御答弁の中にもありましたふ化放流についてちょっと次にお伺いをしますけれども、サケが戻ってこないということで、種卵、卵を確保するのも近年非常に困難になっております。十月三十一日現在で、北海道の数字として、計画数に対して六七%しか確保できていない。本州はもっと深刻でして、ふ化放流用の種卵確保は計画数に対して八%となっています。

 卵の確保も非常に重要な課題の一つだと思いますけれども、ふ化場での取組として、数をふやしていく、そして質を高めていく、元気な卵をつくる、育てていくということの対策が急務だと思いますけれども、どのような取組をしているんでしょうか。

山口政府参考人 お答えいたします。

 本年のサケの不漁によりまして、北海道内でのサケの種卵の確保が難しくなっておるということで、今先生から御指摘があったところでございます。

 これに対しましては、北海道さけ・ます増殖事業協会を中心に、関係機関やふ化場が連携して、不足する地域に種卵を提供するなどの取組を行っていただいておるところでございます。引き続き、種卵の確保が可能となるよう、必要に応じて国からも指導、調整を行うことにしたいと思っております。

 また、先ほども御答弁いたしましたが、環境変動に強い健康な稚魚をつくる取組や、河川ごとの最適な放流時期、サイズを定めた増殖戦略、こういったものをつくっていく取組を進めまして、安定的な種卵の確保が可能となるとともに、サケの回帰率向上に取り組んでまいりたいと思っております。

石川(香)委員 アキサケの生態というのはまだまだわからないことも多いかと思うんですけれども、サケは放流された川のにおいを覚えていると言われていますけれども、このことについて科学的にわかっていることはあるんでしょうか。

山口政府参考人 お答えいたします。

 近年の研究によりますと、北海道大学の上田名誉教授の論文が学会で二〇一八年に発表されたところでございますが、サケは、放流直後にホルモンの働きによりまして母川、母なる川の水に含まれる溶存遊離アミノ酸のにおい情報を認識して脳内に保持し、成長後、べーリング海においてホルモンの働きによりコンパス、地図、生物時計機能が発動して、沿岸まで移動した後、脳内に保持された遊離アミノ酸のにおい記憶により、九〇%以上の精度で母川に回帰するという説が唱えられているところでございます。

石川(香)委員 においの情報を脳内にとどめて、四年かけてふるさとに帰ってくると。これを聞いただけでも本当に何かロマンを感じてしまいますけれども。大変な命がけで帰ってくるわけですけれども、この四年間の間、逆に、こちら側からすると、餌を与えるわけでもなく帰ってきていたという優秀な魚だったわけですけれども、これが、回帰率が非常に下がってしまっているという問題です。

 サケの不漁の原因を突きとめるためには、回帰率を上げることでしたり、あと水温なども含めた気温、気候の変動、それから放流時の水温などいろいろ要因はあるかと思うんですけれども、それをデータ化して、都道府県の研究所、それから民間のふ化場などと連携をして、魚の生態であったり、海の中で一体何が起こっているかということをしっかり研究して、実態をつかむということが非常に大事になると思います。

 ことしの七月に、横浜市にあります水産研究・教育機構というところは、全国九カ所あった研究拠点を二カ所に集約をいたしました。九つあった拠点を二つにしたといいますと拠点を減らされたという印象を持ちますけれども、今回の再編は、どのような再編が行われたんでしょうか。

葉梨副大臣 御指摘のように、本年の七月でございますが、いわゆる水研機構は、九研究所で構成していた研究開発部門を水産資源研究所と水産技術研究所に再編して、研究開発に戦略的に取り組むこととなりました。従前の研究開発部門である九研究所四十二施設は、再編後の二研究所のもとで現地調査や種苗生産等の拠点施設として存続することとしておりまして、今後とも、産業研究所として水産業にかかわる技術開発研究の中心的な役割を果たすことが期待されるところでございます。

 いずれにしても、我が国の漁業を取り巻く環境の変化に対応して、水産資源の管理と水産業の成長産業化の両立を目指した水産政策の改革を実現するため、効率的、効果的な研究開発の推進が図られるように体制を整備したものでございます。

石川(香)委員 専門性を高くして効率よく研究をしていくという再編だったという説明だったと思いますけれども、水産研究分野はまだまだわからないところも多いと思いますので、一層、引き続き研究に取り組んでいただきたいと思います。

 さて、改正漁業法がことしの十二月に施行されますけれども、二〇二〇年度以降、漁獲規制を本格的に導入するということで、TAC管理のもと、十五魚種を追加する方向性が打ち出されておりますが、漁獲量が多いサバやイワシやサンマなど八魚種に加えまして、ブリやホッケ、マダイ、フグなども追加される見込みとして名前が挙がっております。

 特に、ホッケが入ったことで、浜の皆さんから反発が起こっております。なぜならば、この資源管理については、地元の水産研究機関や漁業者の方と水産庁の意見が割れているということが起きているからであります。

 このホッケは、漁業者の自主的な資源管理によって効果があらわれ始めていました。既に二〇一二年から漁獲量を大幅に減らすなどして自主規制を続けてきたわけですけれども、漁獲割合が四〇%から五〇%前後だったものを、一七年には二八%にまで下げた。そして、実際、一八年の道内漁獲量は前年に比べて、三万二千トンということで、回復の兆しが見えていたやさきだったというわけです。

 大臣、この取組の成果を十分考慮した対応というのが必要だと思いますけれども、いかがでしょうか。

野上国務大臣 お答え申し上げます。

 今、ホッケにつきまして御指摘をいただいたところでございますが、ホッケは、いまだ資源が低水準である現在におきましても我が国周辺水域の漁業生産量で十四位に位置する重要な魚種でありまして、このロードマップにおきましても、TAC魚種拡大に向けて検討を進める魚種の一つとされたところであります。

 一方で、先生御指摘のとおり、北海道の皆様が自主的な管理に取り組まれまして、その結果、ホッケ資源は回復傾向にあるわけであります。まだまだ以前のような状況までには届いていないわけでありますが、更に資源を回復させて、今まで以上に漁業生産量をふやしていくためには、現在の自主的な資源管理も踏まえて、関係者との間で具体的方策について議論を行って、理解と協力を得た上で着実に進めてまいりたいと考えております。

石川(香)委員 漁業者が納得できる説明を尽くすというのはもちろん大前提でありますし、一番大切なことだと思います。長い期間、厳しい規制が続いているわけですので、先ほどから申し上げているように、収入面も厳しくなってしまうということでありますので、本当に、しっかり話合いを尽くして、現場の方の意見をしっかり取り入れるということを改めて強く申し上げておきたいと思います。

 ちょっと質問を一つ飛ばしまして、漁業就業者の減少ということについてお伺いをしますけれども、二〇一七年は二万七千八百二十人ということで、この七年間で一割も減少をしております。

 先ほど、別の委員の質問の中で、水産業がやりがいがある仕事であってほしいというお話を大臣もされていたと思いますけれども、魅力ある仕事であるためには、やりがいももちろんですけれども、当然、収入がしっかりしていないとなりわいとして成り立たないということがありますので、この収入の支えというのは絶対必要不可欠だと思います。

 私の地元の漁業者の方も、子供に浜に帰っておいでととても言えないということも言っておりましたけれども、この言葉があらわしているように、本当に厳しい状況が続いているということです。このままでは本当に浜が衰退してしまう、水産業が日本からなくなってしまうんじゃないかという危惧を抱いています。

 漁業者を支えるための仕組みの構築と、漁業就業者をふやすために努力を相当しなければいけないと思いますけれども、この現状、それから対策について、どのように考えていらっしゃるでしょうか。

山口政府参考人 お答えいたします。

 我が国の漁業が持続的に発展していくためには、新規就業者の確保とその定着を図りまして、年齢構成のバランスのとれた就業構造としていくことが重要と考えております。

 このため、農林水産省では、就業希望者が経験ゼロからでも漁業に就業できるよう、就業相談会の開催や、漁業学校等で学ぶ若者への資金の交付、また漁業現場での長期研修に対する支援を行っているところでございます。こうしたことによりまして、新規就業者のうち約八割が四十代以下ということで、そういった点では明るい兆しも見えているところでございます。

 今後とも、作業性、安全性の高い漁船や養殖施設の導入など、漁業に従事する若者が土日も休めて、かつ一定の所得が得られる、魅力ある水産業の実現を図ってまいりたいと考えております。

石川(香)委員 新規就業者の中には若い人の割合も多いという話もありましたけれども、魅力ある水産業、活力のある水産業のために、収入面をしっかり支えていくということを強くお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 水産流通適正化法について質問します。

 本法案は、違法漁獲、IUU対策であります。IUUといった場合には、本来は、アワビとかナマコなどに限らず、例えば、私が前回委員会でも取り上げましたように、大規模マグロ船団が沖合でとれ過ぎたマグロを海洋投棄したり、大中のまき網などの漁船団がイカ釣りの集魚灯を使って違法に操業したり、こうした問題をどう取り締まるのかという問題も非常に大切なところであります。

 水産庁は、関係者に法令の周知徹底を図り指導すると言っていますが、海の上というのは誰も見ていません。監視というのが非常に必要で大事であります。

 法案の中身に入る前に、一、二点質問します。

 昨年十二月の委員会で、私は、テレビの番組で紹介された、まき網クロマグロ漁で、網の下にマグロが重なり合って圧力で死んでしまい、それを海に投棄している、あるいは、マグロのトロの部分だけを切り取って持ち帰るショッキングな映像も流れた、この問題を取り上げました。

 水産庁の答弁は、公海上のマグロの漁船の一部に乗船させているオブザーバーを拡大するには人員、費用、体制の検討が必要だと答弁がありました。また、関係国との協議も必要だとしました。その検討とか協議については、今日までにどうなったでしょうか。

山口政府参考人 お答えいたします。

 昨年十二月五日の本委員会におきまして、先生の方から、大中型まき網漁船がクロマグロを投棄して漁獲報告を行っていないとの報道に関連いたしまして、太平洋クロマグロを漁獲する大中型まき網漁船の監督を強化すべきという御指摘をいただいたところでございます。特に、オブザーバーの乗船をさせるべきではないかということでございました。

 その後、当方でも、報道について具体的な事実関係を確認しようとしたわけでございますが、報道側からも、個人や船名等を特定する情報は出せないということでございましたので、実際の事実関係を確認することはできませんでした。

 ただし、まき網漁業者に対しましては、洋上で漁獲された個体が死亡していた場合には、その後どう処置したかにかかわらず、その数量を採捕したものとして報告するよう、改めて指導を行ったところでございます。

 また、オブザーバーの拡大につきましては、昨年の本委員会におきまして、私の方から、人員体制、費用、受入れ体制等の課題の検討が必要である、さらに、関係国との協議に基づき決定する必要があるとお答えをしたところでございます。

 その後、水産庁としましてもオブザーバー乗船を含む具体的な方策について検討したところでございますが、現在、新型コロナウイルス感染症拡大の影響もありまして、関係国との十分な議論ができていない状況でございます。

 他方で、今後、改正漁業法に基づき数量管理を基本とした資源管理を実施していくに当たりましては管理の透明性の確保が重要と考えておりますので、我が国としてどのような取組が可能か、検討を進めてまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 違法操業の取締りについて前進点がないということであります。番組は、ニュースソースはもちろん明かしませんから。

 こうしたことは、全国のマグロ漁師さん、それから沿岸漁師さんたちからずっと切望されている、要望が上がっている事象であります。厳し過ぎる漁獲枠で、クロマグロが泳いでいるにもかかわらずとることができない、そして、なりわいに支障を来しているにもかかわらず我慢をされている、そういう沿岸漁師さんたちがいっぱいいるわけですよね。この問題について一層力を尽くしていただきたいと思います。

 もう一点、昨年の五月、そして六月に取り上げました、大臣許可を含む漁船の違法操業について質問します。

 対馬でイカ釣り船の集魚灯を使って違法操業を行っていた、この事実を私は本委員会で明らかにしましたが、水産庁は「長崎県とも連携して、関係漁業者に対して法令の周知徹底及び指導を行うとともに、洋上での監視なども行ってまいります。」という回答でありました。

 私は、対馬の方に、それからどうなりましたかと聞いてみますと、いまだに続いているという報告が上がりました。

 水産庁は、県とも連携して関係漁業者に対して取組をしていると言いますけれども、全く効果が上がっていません。どういう成果が上がり、どういう改善点が見られたのか。あれから一年と半年がたっています。お答えください。

山口政府参考人 お答えいたします。

 水産庁では、昨年の答弁の後、対馬周辺水域で取締り船により取締りを行っていたところ、不審な動きをする大中型まき網漁船と小型イカ釣り漁船を認めましたため、双方の漁業者を水産庁に呼び、操業の実態について確認しましたが、違反の事実は確認できなかったところでございます。

 ただし、これを受けまして、水産庁といたしましては、大中型まき網漁業者団体を通じて関係法令の遵守について指導徹底を要請したということとともに、長崎県に対しましては、小型イカ釣り漁業者への関係法令の遵守について指導徹底をするよう依頼をしたところでございます。

 この対馬周辺海域の取締りについては、ここはもともと重点海域として水産庁としても重視していたところでございますので、水産庁取締り船を重点的に派遣をしているところでございます。また、大中型まき網漁船には、VMS、衛星船位測定送信機というものが設置されておりますので、これを活用して漁船の位置、動向を継続して監視しているところでございます。

 そういった状況でございますが、これまでのところ、違反の確認には至っていないという状況でございます。

田村(貴)委員 あのときは、私は、二回の委員会で再度確かめたんですね。そうすると、大臣許可船も入っていたということで、そういう答弁がありました。

 違反の事実を確認できなかったということで済ませてはならないということであります。そうすると、真面目に操業している人が本当に損をするだけですよね。証拠写真も示し、そして集魚灯も使ってやっていたわけです。そのイカ釣り船は集魚灯だけを使っているから、これは明らかに違法操業ですよね。こうしたところが変わっていないというのであれば、やはり体制を強化すべきではありませんか。さらなる対策を図っていく必要があります。

 別件で、もう一点質問します。

 改正漁業法の施行の問題についてであります。

 今、全国の漁業者からは、コロナ禍によって魚価の低迷の悲鳴が上がっています。香川のある漁協からも、魚価は三割まで低落したとの報告があっています。

 そんな中で、改正漁業法は十二月一日が施行となっており、漁協はさまざまな対応が必要になってまいります。特に、TAC魚種の拡大については、漁獲報告等の各種の事務負担がふえてまいります。

 JCFU、全国沿岸漁民連絡協議会は、コロナ禍での施行を延期するように要求しています。また、地方の漁協からも同様の要望が上がっています。

 お尋ねします。少なくとも新型コロナの感染拡大が終息するまで、この施行は延期すべきではないでしょうか。

山口政府参考人 お答えいたします。

 改正漁業法につきましては、平成三十年の十一月に法律を制定した以降、都道府県や漁協などの求めに応じまして、水産庁職員が現場に出向く形で、三百回以上の説明を行ってきたところでございます。

 また、改正漁業法に基づく新たな資源管理については、本年九月三十日に決定、公表いたしました資源管理ロードマップにおいて、科学的な資源調査、評価の充実、また資源評価に基づくTACによる管理の推進などについて道筋を示したところでございます。

 新たなTAC対象魚種の設定に当たりましては、資源評価の結果を踏まえた上で、専門家や漁業者との意見交換を行い、論点や意見を整理し、具体的な資源管理措置の議論を開始していく、こういう段取りになっております。

 したがって、今先生からは、法の施行と同時にTAC魚種が拡大するのではという御質問でございましたが、新しいTAC魚種につきましては、今申しましたロードマップに沿って、順を追って手続、議論を進めていくという段階でございます。

 なお、TAC魚種が拡大されれば漁獲報告等の義務が課されるということになりますが、これにつきましては、漁業者の負担を軽減する観点から、水揚げデータ等を電子的な方法により収集し、これらを行政庁への報告にもかえられるような体制、これの構築を今検討しているところでございます。

 新たな資源管理の実施に当たりましては、漁業者を始めとする関係者の理解と協力を得ながら進めることが重要と考えておりまして、今年度中に、主要な漁業地域、漁業種類をカバーする現地説明会を実施することとしております。

 地域ごとの漁業の実態を踏まえつつ、目標の達成に向けて、ロードマップに盛り込まれた行程を一つ一つ実行してまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 三百回の説明があったとしても、コロナ禍の中において、現場、漁協、漁業関係者のガイダンスというのが見送られたりしているわけですよね。そして、これは何も私だけが言っているわけじゃなくて、現場の漁協から、それから漁師さんたちが、十二月一日はコロナの中では早過ぎるだろうと言っているわけですよ。

 先ほどの、TAC魚種が徐々に拡大していくということはわかりました。だけれども、期日というのはシビアなものですよ。どういう事務量がふえていくのか、やはり不安な思いにはしっかり応えなければいけないと思います。現段階での施行は延期すべきだというふうに強く要望しておきます。

 続いて、法案について質問します。

 届出によって付与される漁獲番号は漁業権に対応しており、漁業者個人に番号を付与することもできますが、共同漁業権を持つ漁協に一つの番号を付与することもできるために、漁業者個人の負担は軽減されるというふうに伺いました。しかし、漁協や加工、流通事業者の事務負担は増大するものと見られます。

 法案検討会の取りまとめでは、登録証明機関が採捕の適法性を証明することが要求されていましたが、法案化に際し、この部分はなくなりました。この点に関しては、漁協の負担が相当軽減され、法目的の実効性も上がるというふうに考えられます。ただ、オンラインでの漁獲番号の伝達も視野に入れたシステム構築も必要になると思われます。やはり、人も雇わなければならない事態も生じると思います。

 そこで、伺います。

 検討会の取りまとめでは、事業者の負担軽減のために必要な支援を行うべきとありますが、この点は法案に盛り込まれていません。負担軽減策は必要だと考えます。この必要な支援についてはどうするんですか。

山口政府参考人 お答えいたします。

 本法案、本制度につきましては、漁協等の負担の軽減ということは、今先生からも御指摘がございましたように、検討会の場でも指摘されてきたところでございます。

 そのため、本制度では、今でも税法に基づきまして取引伝票や領収書などの帳簿書類の作成、保存が事業者に課されている、こういったことを踏まえまして、これらの伝票等を利用することで義務の履行が果たせるようにし、関係事業者の負担軽減に配慮した設計としているところでございます。

 こうした中で、正規の漁獲物であることを識別するため、今回、これらの伝票等に新たに漁獲番号を記載することを求めることにしております。この点については、容易に的確、迅速な義務履行が可能となるような方策を検討する必要があるということを考えております。

 このため、水産庁では、現在、資源管理を推進する観点から、スマート水産業を推進するための産地市場また漁協等の電子化を図る事業を実施しているところでございますが、こうした中で、漁獲番号の円滑、迅速な伝達についても措置ができるかどうか、こういった検討を進め、負担の軽減に努めてまいりたいと思っております。

田村(貴)委員 負担がふえないように、しっかりやっていただきたいと思います。

 次からの質問は、判断を要する話でありますので、野上大臣の答弁をお願いしたいと思います。

 特定第一種水産動植物を自由漁業で採捕するのは違法となります。対象魚種の選定に関しては、自由漁業を阻害する点について配慮が必要だと考えます。さらに、本制度は、対象魚種を取り扱う全ての流通業者に届出をさせ、漁獲番号の伝達を強制する内容であり、事業者の負担の面でも、制度の実効性確保の面でも、対象魚種をむやみに広げてはいけないと思います。

 そこで、特定第一種水産動植物の対象の選定についてです。密漁による社会的損失が非常に大きいものに限定する必要があると私は考えますが、この点について大臣はどうお考えですか。

野上国務大臣 お答え申し上げます。

 特定第一種水産動植物の指定に当たりましては、漁業関係法令違反の件数が高いこと、また、生産額が大きく、容易に流通過程に混入しやすいこと、漁獲量が減少していること等の基準で、違法かつ過剰な採捕が行われるリスクを勘案して対象魚種を指定することを想定しております。

田村(貴)委員 今、アワビ、ナマコというふうに挙がっているんですけれども、この魚種の拡大はむやみに広げるべきではないというふうに思います。後で補足があったら、またお答えください。

 さらに、対象魚種の拡大について、取りまとめにおいては、関係団体、学識経験者、NGO等幅広い立場の有識者の検討を経て農林水産大臣がその魚種を指定する仕組みとすることが適当であるというふうにされました。NGO等幅広い立場の有識者の検討も入れるべきだと。ところが、法案では、農水大臣が水産政策審議会の追認を受けるだけというふうになっています。

 取りまとめの答申どおりに、幅広い意見聴取がなされ、実質的な議論ができる、そういう環境、プロセスをつくることが必要だと考えますが、いかがでしょうか。大臣にお願いします。

野上国務大臣 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、本制度につきましては、生産者団体、加工・流通・小売団体、自然保護団体、学識経験者、地方自治体等の代表を委員としました検討会を昨年九月より約一年間にわたり実施をしまして、七回開催をしており、十分な議論を行ってきたところであります。

 本法案における魚種の指定に当たりましては、引き続き、学識経験者や生産、加工・流通団体などの実務関係者による検討会で議論を行って、その上で、水産政策審議会への諮問も経て、省令で指定をしていくことになると考えております。

田村(貴)委員 幅広い意見を取り入れていただきたいと思います。

 最後に、立入検査については、地方農政局に水産の担当部署を設けたり、県にも人員を配置するというふうにされています。しかし、地方農政局の人員は継続的に減らされてきています。農業政策の実施の支障とならないように、また、職員の労働強化とならないように、予算と人員の確保をすべきであると思いますけれども、大臣、いかがですか。

野上国務大臣 本法案に基づきます監督につきましては、これは水産庁が全体を総括するわけでありますが、従来の食品表示法に基づく表示の確認の例も踏まえまして、二つ以上の都道府県において業務を行う事業者に対しては地方農政局が行います。また、都道府県内で業務を行う事業者に対しては都道府県が実施をすることを想定しておりますが、水産庁ですとか今お話のあった地方農政局などの組織・定員につきましては、今要求しているところでありますので、しっかりと予算や人員の確保に努めてまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 予算と人員の確保、これは、当然ですけれども、やっていただかないといけません。

 ところが、本法案のように新しい業務がふえると、役所の総定員法によって本省、各省庁の定員が定められているから、地方でふえますと、今度は農水省内の公務員を削減しなければならないといったことになってくると思います。

 そもそも、地方農政局の人員はずっと減らされ続けてきたのであります。とりわけ、私が今思っているのは、統計職員の数をこれ以上減らしてはならないというふうに思います。日本の統計職員の数は、カナダの十分の一、フランスの六分の一しかいません。これ以上統計の職員を減らすことはやめていただきたい。そもそも、今の業務量に対して公務員の数が追いついていない、そして減らし過ぎだということも、あわせて指摘させていただきたいと思います。

 大臣は先ほど、大串議員の質問の答弁で合理化率を誇りましたけれども、この点については向いている方向が逆ではないかなということを指摘させていただいて、本法案の質疑を終わります。

 以上で終わります。

高鳥委員長 次に、藤田文武君。

藤田委員 日本維新の会の藤田文武でございます。

 今国会から農林水産委員会に異動になりまして、私もいろいろ、情報収集のために農林水産省のツイッターをフォローしてみました。実は、結構おもしろくて、各地の名産のレシピとかが載っていたりして、興味深いなと思って見ていたんですけれども。実は、フォロワーが十二万七千人ぐらいいて、ああ結構すごいなと思って見たんです。

 私、先国会までは厚生労働委員会におりまして、厚生労働省は八十五万人ぐらいのフォロワーがおりまして、これはコロナもあって注目度が高いのかなと思って見ていたんですが。一応、他省庁をちょっと見てみると、文科、外務でも四十一万フォロー、それから経産省でも三十一万フォロー、環境省でも三十二万、財務省という余り国民に直接なじみがないところでも二十三万ぐらいいて、消費者庁なんかでいうと倍以上の二十八万、中小企業庁が一緒ぐらいの十一万ぐらいだったんですね。

 何が言いたいかというと、広報をぜひ頑張ってほしいというふうなことなんです。内容自体もさることながら、若い世代に、農林水産業、豊かな資源のあり方とかにもうちょっと興味を持っていただくという手法の中でもぜひ取り組んでほしいなということをちょっと最近思いまして、一言激励したいというふうに思いますので、頑張ってください。

 それでは、法案について入っていきたいと思います。

 改正漁業法とセットで、本法案は、資源管理が強化される中で、適正に漁業者が市場で正当評価されるために必要なものというふうに私は認識をしております。その中で、通告でさっき同様の趣旨の質問があったので一つ飛ばさせていただいて、この制度を導入している諸外国との連携について、特にEU、米国との連携についてお伺いをしたいと思います。

 水産物を流通過程でチェックする具体的な項目、いつ、どこで、誰が、どのように生産、加工し、流通したかという情報の様式を統一又は共有していってはどうかという問題意識がございます。EUや米国は既にIUU漁業由来の水産物の流入を防止する制度を整備しておりまして、現在、行き場を失ったIUU漁業由来の水産物が世界第三の輸入市場である我が国にフリーパスの状態で流入してくる可能性が高いというふうにも言われておるわけでございます。

 日本がIUU漁業水産物の流入を防止するということは我が国にとってもその他の諸外国にとっても大きな意味がありますが、もしここで日本が安易に、EUや米国の様式や情報共有の方法と独自設定などをしてかけ離れていた場合に、輸出国政府や輸出業者にそれを求めてしまうことがあるようなことがあれば、輸出国政府、輸出業者は日本に輸出するためだけの余計な手間がふえてしまうということも懸念されるわけでございます。日本にとって輸入のハードルを不用意に上げるということにつながるおそれもあるわけでございます。

 この世界の三大市場が調整し合って同じ様式を用いるようになって合理化、効率化して、生産、流通の現場に不要な負担をかけぬようにすれば問題の解決に大きく貢献するのではないかというふうに思うわけでございます。EUや米国との様式の統一や情報共有についての連携のあり方について、お答えいただけたらと思います。

    〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕

山口政府参考人 お答えいたします。

 本法案では、海外からの違法漁獲物の流入を阻止する措置を講ずる観点から特定第二種水産動植物を指定することとしておりますが、その際、既に制度を実施しておられますEUや米国の制度も参考にしながら我が国に適したものにする必要があると考えております。

 このため、外国政府機関等が発行する適正に採捕されたことを示す証明書の様式や証明事項などについても、既にIUU漁業への対策として輸入規制を導入している欧米などの先行事例の実態調査を行い、また共通化、標準化できる部分は統一していくなど、法案の施行までに各国との連携も深めながら実効性のあるものにしていきたいと考えております。

藤田委員 ありがとうございます。細かい話なんですけれども、現場でのスムーズさ、効率性を求める上でこれは非常に重要な課題だと思いますので、ぜひ前向きに検討いただけたらと思います。

 次に、情報管理における電子化の推進についてお伺いしたいと思います。

 効率化を図り、改ざんを防ぐ、そして事業者の事務負担を軽減させるためには、国内流通、輸出、輸入の全てにおいて、生産や流通における情報の報告や伝達をいわゆる中央データベースのようなもので電子管理を行う仕組みを整備すべきという課題意識がございます。その導入に当たっては、事業者への支援の体制づくりが欠かせないことは言うまでもありませんが。

 このようなデータベース化、ICT管理について、十分な予算をつけて社会に実装していくということがこれからのデジタル化の社会の流れにも求められていくことだと考えます。これは事業者の負担軽減のみならず貿易事務の円滑化や不正の検証コストを低減していくという効果もあると考えますが、この点について御見解をお聞きしたいと思います。

池田大臣政務官 我が国の水産流通は、産地市場と消費地市場とに分かれ、多くの事業者がその流通にかかわるという特徴があり、市場ごとに独自の伝票等による取引が行われているなど、複雑な流通形態になっております。

 今回の水産流通適正化法に基づく伝達義務の履行に当たっては、取引における正確かつ円滑な情報の伝達に向け、ソフトウエア同士の連携等によるシステムの構築を推進してまいります。特に、先行して電子化を進めている事業者もいることから、それらの取組を参考としつつ、各社が有している既存の電子システム間の連携に向けて、どのようなことが可能であるか、検討を進めてまいる所存でございます。

藤田委員 ありがとうございます。施行まで時間がありますし、これは、これからのデジタル化の流れの中で、効率化を進めていくには不可欠な議論だと思います。もちろん大きなコストがかかることですから、ぜひ前向きに進めていただきたいとは思います。

 続きまして、制度導入後のIUU漁業水産物の輸入排除の検証についてお伺いしたいと思います。

 IUU漁業水産物の輸入排除は、輸入大国の日本としても重大な責任を負っているわけでございます。今回の制度の導入後にIUU漁業水産物の輸入排除がどの程度効果的に行われたのかということは検証をしっかりとしていくべきだというふうな課題意識がございますけれども、どのように実施されるおつもりか、現時点での御見解をお聞かせいただけたらと思います。

山口政府参考人 お答えいたします。

 水産流通適正化制度の導入によりまして、違法漁獲物の流通が抑止され、その結果、違法漁獲行為が減少する効果を期待しております。

 KPIにつきましては、特定第一種水産動植物の密漁の検挙件数を半減させることを設定しておりまして、制度導入後は継続して検挙件数を調査していくこととしております。本制度の導入と生産段階の密漁対策もあわせて実施することにしておりますので、これにより違法漁獲が減少するよう、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。

藤田委員 ありがとうございます。

 やはり、私なんかは、前回の種苗法もそうなんですけれども、この制度への変更によって実効性がどう担保されるのか、その検証をしっかりと行えるのかというのは非常に重要だというふうに思います。せっかくいい制度であっても、ちゃんと検証がなされて、だめであれば強化すべきだし、又は変更、改善していくべきという観点から、どうしても、政府が行うことで、検証によってちゃんと微修正がなされていないんじゃないかなということがどの政策においても課題意識でもありまして、ぜひともしっかりとやっていただけたらと思います。

 続いて、トレーサビリティーについて少し議論したいんですが、法案の趣旨の中にも、取引記録を追跡調査し流通適正化を図るという趣旨が明記されているわけでございますけれども、漁獲、水揚げから消費者までの流通の追跡調査が今後可能となるような制度を目指しているのかという質問をしたいんです。

 政府からも、二〇一八年の規制改革実施計画においては、資源管理の徹底とIUU漁業の撲滅を図り、また、輸出を促進する等の観点から、トレーサビリティーの出発点である漁獲証明に係る法制度の整備を進め、必要度の高いものから順次対象とするとともに、ICT等を最大限活用し、トレーサビリティーの取組を推進すると。また、一九年には、同じく規制改革実施計画におきまして、輸入水産物のトレーサビリティーの出発点となる漁獲証明制度の創設に向けて必要な措置を講ずるという、トレーサビリティーというものも一定意識された方針が出ているわけでありますけれども、本法案はこのトレーサビリティーを目指していく入り口として捉えてよいものか、現段階の御見解をいただけたらと思います。

野上国務大臣 本法案によりまして、特定第一種水産動植物につきましては、漁業者等が付与した漁獲番号を事業者間で伝達をして、それに関する取引記録を作成及び保存することが義務づけられているわけであります。また、密漁品の混入等の疑義案件が生じた場合には、行政機関が関係事業者に立入検査を行って、取引記録に記載された漁獲番号を確認することで流通経路の追跡調査が可能となるということであります。

 これによりまして、国内で違法に採捕されるおそれが大きい水産動植物の国内流通について密漁品の混入が疑われる場合は、問題の発生源の把握が容易になると考えられると思います。

藤田委員 本件はちょっと昨日事務方の方と議論したんですけれども、要するに、違法なんかを追跡できるという、どちらかというと生産者側からのニーズによって追跡されることは進むでしょう。しかしながら、世界の潮流として、消費者側の観点から見るトレーサビリティーというものが必要度が増してくるということがありますし、今後、輸出戦略を拡大していくとするならば、このトレーサビリティーの考え方というものは避けては通れないかなというふうに思います。

 そういった意味で、やはり、ICTの技術をしっかりと活用して、一旦は、初めの導入時には現場の方もなれてもらわぬといけなかったり負担があったとしても、中央データベースによる一元管理だったりとか電子管理を最適化していくことが中長期の日本の水産業の発展に必ず寄与するんじゃないかなというふうに私は思います。ぜひとも、そういう観点からもこういうデータベース化やトレーサビリティーの体制整備というものに取り組んでいただきたいというふうに思います。

 続きまして、やはりこれには触れたいなと思いまして、今、日本海大和堆の話が話題になって、最近、ここ数日でも報道が出ているわけですけれども、中国漁船の違法操業が大和堆に大挙して来ていると。数年前から北朝鮮籍の漁船の違法操業の問題はかなり深刻になっていまして、海上保安庁そして水産庁の取締りに対して銃での威嚇等を含めた違法操業が行われてきたわけで、これはイカに代表されるような水揚げの激減につながっていて、相当深刻になっています。

 報道では、ことしになって中国漁船がすごくふえてきていると。水産庁の退去警告の数値を見てみると、中国は昨年は一千百十五隻だったのがことしの五月時点で四千三十五隻、北朝鮮籍は昨年四千七隻だったのが一隻ということで、いわゆる北朝鮮が中国に置きかわっているというようなことも認められるということで、中国漁船は北朝鮮の数倍の規模、大きさがあるということで、いわゆる密漁規模も大きいわけでございます。報道によりますと、北朝鮮の漁業許可証を密売によって中国漁船が取得した上でそういうようなことをやっているということも出ていまして、政府の対応が後手後手であるというふうな批判も各所で出ているわけでございます。

 農林水産省が所管する水産庁だけの力ではもちろん無理なことはわかっていますし、きょうの委員会ではここぐらいまでの質問しかできないんですが、これはまた改めて時間をとってやりたいですが、海上保安庁や水産庁、そして外交努力によってしっかりとこれを抑止していかないと、とめどなくこういうことがふえていくわけでございますが、この問題に対しての水産庁の御見解と、どういう役割を水産庁としては担っていくかということを御答弁いただけたらと思います。

    〔宮腰委員長代理退席、委員長着席〕

葉梨副大臣 御指摘のとおり、大和堆周辺水域については、水産庁といたしまして、本年三月に新造の大型漁業取締り船二隻を就航させて、イカ釣り漁業の漁期が始まる前の五月から、これら二隻を含めて同水域に重点配備をして取締りに当たっております。

 また、先生御指摘のように、海上保安庁との連携強化というのも水産庁だけではなくて大変大切でございますので、漁業取締り船と巡視船との配置の見直しなどを行って連携強化を図っているところでございます。さらに、大和堆以外の地域ブロックでも連絡会議を定期的に開催して、海上保安庁との連携強化を図っています。

 さらに、令和三年度においては新たに二隻の、一隻は二千トンで、一隻は四百九十九トンから九百トンに大型化して更新するわけですが、大型漁業取締り船を就航させ、更に関係省庁との連携を強化していきたいと考えています。

藤田委員 きょうは総論としてお聞きしたんですが、本件については、安全保障上も非常に重要ですし、水産資源、漁業資源の枯渇につながるゆゆしき問題でありますから、水産庁のいわゆる権限範囲というものももちろんあると思いますが、政府一丸となって、国民一丸となって抑止していかなければならない問題であると思いますので、ぜひともしっかりとやっていただきますようにお願いを申し上げます。

 一問、同じ趣旨の質問がありましたので、割愛させていただいて、きょうはこれで終わります。

高鳥委員長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。

 まず冒頭、また鳥インフルエンザの件なんですが、通告していませんけれども、五例まで出たんですが、六例目、七例目がどうも出たんじゃないかということで、簡易検査等々をやっているというふうに聞いていますが、大臣、何か情報は入っておられますか。

野上国務大臣 香川県三豊市の移動制限区域内の二つの農場におきまして鳥インフルエンザの六例目と七例目の疑いが生じまして、香川県の簡易検査を行っているところであり、本日六時ごろの判明が予定されているということであります。

玉木委員 ありがとうございます。六例目、七例目ということで、きょうの夕方六時ぐらいに確定ということですが、大変狭いエリアで広がっていますので、本当に地域の産業、経済そのものに大きな影響を与えているので、万全な防疫体制とまたさまざまな支援措置の徹底を、ぜひ、大臣、改めてお願いしたいと思います。

 法案について伺います。

 IUU漁業の撲滅というのは法案の一つの法目的だと思いますけれども、密漁の実態等々については同僚議員、与野党の先生からあったと思いますが、そもそも、IUU漁業については、日本は世界的に見ても余り成績がよくないと思うんですが、これは水産庁長官でも結構なんですけれども、IUU漁業についての指標がありますよね、インデックスが。IUUインデックスというのがありますけれども、日本は世界で何番目ぐらいなのか御存じですか。

山口政府参考人 お答えいたします。

 突然の御質問でございまして、ちょっと手元に数字がございませんが、先進国の中では真ん中よりも下の方だというふうに記憶をしております。

玉木委員 百五十番台なんですね。全然、褒められるものになっていなくて。ただ、不思議だなと思ったのは、ちなみに、最低というか一番悪いところは中国なんですね。日本がそんなに悪いなとは余り思えないんですけれども、一から五まで、五・〇〇というのが一番悪くて、中国が三・九三で一番悪いんですね。日本は二・六三。ごめんなさい、百五十二カ国中百三十三位が日本です。中国が一番悪いんですけれども、日本も結構悪い。二・六三というスコアなんですね。

 ちょっと思ったのは、何でそんなに悪いのかなと思ったんです。そんなに何か違法なことをしている人が日本国内にたくさんいるようにも、さっきのナマコとかアワビですか、反社の方がとっているとかそういう話はあるんですけれども、そもそもこの法案によって、IUU、イリーガルでアンリポーテッド、こういうものがなくなるということなんですけれども、現状でそんなにあるんですかね。そこが私は非常に、この法案を、それはある種の立法事実としてですね。

 先ほど、津島先生の資料でしたかね、確かに何件かあるんですけれども。令和元年で二十六件、これは津島先生の資料なんですけれども、アワビが二十件で、ナマコが一件ですよね。こういうことで、世界的にもそんなに悪い成績なのかというのがよくわからなくて。これはやはりあれですか、トレーサビリティーが十分できていないからスコアが低いんですかね。ここがちょっとよくわからなくて。

 詳しく通告していなくて申しわけないんですけれども、きょうずっと審議を聞いていて何でなんだろうなと思ったんですけれども、何でなんですかね。

山口政府参考人 お答えします。

 今のインデックスについては、私の記憶によれば、政府、公的な機関で出しているものではなく、NGOか何かの指標だったというふうに思います。その際のコメント等を記憶の中でたどりますと、恐らく、やはりIUU漁業の輸入規制がないということも大きな要因だったというふうに考えております。

玉木委員 私も、これは民間のインデックスだったと思いますけれども、この法律が通ったらそういうところにもしっかり報告するなり説明するなりして、日本のそういった、ちょっとこういうところで評判を下げているようなところはランクを上げてもらうように、これも水産庁、農水省の重要な広報の一つだと思いますので、ぜひやっていただきたいなというふうにまず冒頭お願いしておきたいと思います。

 そこで、過度な規制になり過ぎないかな、過度な負担になり過ぎないかということが一番の懸念、浜の皆さんとか漁業とか食品関連産業の人たちの心配だと思うので、改めて確認なんですが、現在、漁業権を正しく有している人はほぼ自動的に採捕の権限を有するというふうに解してよろしいんでしょうか。それとも、また新たな何か、申請手続とか、そういったものをほかの人と同じように一からやらなければいけないのか。

 現在、正しく漁業をされている、特に漁業権をきちんと有している者については、そこは正しく権限が法律上も認められるということになるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

山口政府参考人 お答えいたします。

 現在、漁業権を有する、又は漁協等が有する共同漁業権に基づき漁業権行使ができる方々といいますのは、今回の法律でも、適法な漁業者である、漁獲ができる者であるというふうに考えております。

玉木委員 当然そうだと思うので、手続的にも新たな追加の負担がないように、十分その点は気をつけていただきたいなと思います。

 もう一つ、加工品についてちょっと伺いたいんです。

 遺伝子組み換え食品を使った大豆でできたしょうゆみたいなことが、表示義務のところでいろいろ議論になりました。GMOの大豆だと表示するんだけれども、それを使ったしょうゆだと全く表示義務はないというのが我が国の法制だったんですが、違反して採捕された疑いのある水産物を使ってつくった例えば加工品、つくだ煮、いろいろなものがあるんですけれども、これはわかりにくくなると思うんですけれども、そういったものもきちんと規制対象、摘発対象になるのか、実行可能性はあるのか、この点について伺います。

山口政府参考人 お答えいたします。

 今回の法案におきましては、国内外で漁獲された違法漁獲物の流入を阻止するためには、これを加工したものについても規制の対象とする必要があるということで、農林水産省令で具体的な加工品を定めるということにしております。

 この場合、加工品の範囲をどこまでにするかということにつきましては、原材料の使用が外観から判別可能であるかどうかとか、また、加工品として一般的に流通して消費者等にもなじみがあるかどうか、こういった点を考慮して定めていきたいというふうに考えております。

 加工業者を含む特定第一種水産動植物等の取扱事業者につきましては、行政機関への届出や取引記録の作成、保存、また伝達の義務が課されておりますので、当該事業者が保存する取引記録を確認し、また、記載されている漁獲番号をトレースすることによりまして、違法漁獲物の混入の存否や、疑わしき主体かどうか、こういったことについては把握は可能と考えているところでございます。

玉木委員 そこをしっかりやっていただきたいなと思いますね。

 違法伐採された木材を使ってつくった家具とか、そういうのもなかなか難しいんですね。さっきのみそ、しょうゆの話もそうですけれども、やはり、原材料が違法に輸入された、あるいはとられたものであっても加工するとわからなくなるので、その辺は、どういう基準でやるのかとか、きちんと、今長官がおっしゃったようなことをしっかりと、運用に当たって、実施に当たっては基準も決めてやっていただきたいということを改めて求めたいと思います。

 あともう一つ、先ほども少し関連する質問があったので、改めて確認します。

 いわゆるこの規制が非関税障壁になるのかという問題は、常にガット、特に第三条との関係で問題になるんですけれども、関係国に通報したということで、説明を求めていくということなんですが、ここはさすがに、内外無差別の原則には整合的だということは当然そうだと思いますので、その点は、通報するというよりも、心配ないということをちゃんと、WTOあるいはガットに合致した範囲でやっているということはむしろ強く、きちんと説明する必要があると思うので、通報するというよりも、しっかり各国に大使館等を通じて直接きちんと説明するということをやるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

山口政府参考人 お答えいたします。

 今委員からも御指摘がございましたように、今回の輸入規制、これは、国際社会において、IUU漁業の撲滅のためということで、アメリカやEUなどが先行して実施しているものでございます。そういったことでございますし、また、国連食糧農業機関、FAOが十三年に採択されましたIUU漁業の排除等のための国際行動計画の一つのモデルとして位置づけられておりますので、これは当然、内外無差別の原則に整合すると考えておるところでございます。

 ただ、御指摘がございましたように、WTO上のTBT協定の中では、輸入を制限するような措置を講ずる場合には加盟国に対して通報するということが義務づけられておりますので通報を行っているところでございますが、当然、我々の制度が適切なものであることは各国にも説明してまいりたいと思っております。

玉木委員 法案についてはこれで終わりますが、今回大事なのは伝達制度、情報をどう伝達していくのかということが大事で、ITの電子化とか、うまくやってくださいという話が与野党の同僚議員からありましたけれども。

 大臣、三役の人も長官もちょっと頭に入れておいてほしいのは、間もなく始まる消費税のインボイスの話なんですよ。インボイスの導入は中小零細事業者に結構大きな負担になってくるんですけれども、二〇二三年からこのインボイスは導入されて、逆にこれがないと取引から排除されますから、いわゆる免税事業者の方はインボイスをちゃんと発行できないと排除されるということになろうかと思います。

 そのときに、実は、いろいろな、この商品は何%とか、あと会社の番号とか、そういうのをちゃんと入れた書類を取引において渡すことになるんですが、一方でそのシステムをつくっていくんですよ。実際、インボイスが始まるのが二〇二三年の十月からなんですけれども、来年の十月から申請受け付けが始まるんです。

 そのときに名称とか漁獲番号をやるシステムを全く別につくってしまうと追加投資になるので、一緒にこれを、ちょこっとだけですよ、インボイスに漁獲番号とかを載せるだけで済むので、多分、システム開発のときに漁業関係はインボイスと一緒にうまく開発するということをすれば追加投資もなくなるし、事業者の負担も少なくなるので、これは国税当局とかともよく相談して、もし一体的なシステムにできるのであればそういったことをした方が電子化に当たっての追加負担ができるだけ抑えられると思うので、ちょうどタイミングも重なってくるので、その点はぜひ頭に入れて、国税当局ともよく話をしてもらいたいなと思います。

 次に、中国公船の尖閣周辺への侵入事案について伺いたいと思うんですが、連日、尖閣周辺の接続水域へ、今月六日、七日には領海にも侵入しているということなんですが、時には我が国の漁船を追尾しているということで、ある種向こうからすれば法執行をしているというのは、私はとんでもないことだと思っております。これは一義的には外務省とかの関係かもしれませんが、水産庁としても当然関心を持って対応しておられると思います。

 これは、その都度抗議するんですけれども、全く無視ですよね。抗議だけでは全く、何の効果もなくて、安心して我が国の漁船の安全操業を確保するというのは農水省としても重要な責務だと思いますけれども、抗議しても抗議しても改まらない、時には我が国漁船を追尾されるこの現状について、農水大臣としても厳しく抗議すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

野上国務大臣 お答え申し上げます。

 中国公船が尖閣諸島周辺の我が国領海に侵入して、日本漁船に接近しようとする動きを繰り返していることにつきましてはまことに遺憾であると考えております。

 中国公船が我が国の領海に侵入している間、現場海域におきましては海保の巡視船が中国公船に向けて領海からの退去要求を繰り返し実施しておりますし、また、日本漁船の保護の観点から、同漁船の周囲に巡視船を配備し、漁船の安全を確保していると承知しております。また、外交ルートでは、東京と北京の双方において日本漁船に接近しようとする動きを直ちにやめて速やかに我が国領海から退去するよう強く求めるなど、中国に対して厳重に抗議をしていると承知いたしております。

 農林水産省といたしましても、周辺海域に漁業取締り船を配備をしておりますが、今後とも引き続き、関係省庁と連携をして、日本漁船の安全が保たれるように、政府全体としてしっかりと対応してまいりたいと考えております。

玉木委員 アメリカの議会などでは、IUUの問題というのは、漁業資源、環境問題だけではなくて、実は国家の安全保障の問題だという観点でも捉えています。ですから、先ほど申し上げたように、ある調査によると中国はIUUのインデックスで最低ということになっていますが、これは安全保障の問題としてもしっかり考えていかなければならないと思います。我が国も当然国際的な義務を果たす必要があると思いますが、関係国にもその義務を果たすように求めていかなければならないと思います。

 そこで、最近気になるニュースがあったのは、外国船舶に対して中国の海警局が武器使用を認める海警法の改正案というのを出すということが明らかになりましたけれども、来月にも採択されると。武器使用をするということですね。二〇一八年三月には海警局が武装警察部隊に編入されて軍事組織化が進んでいるということですけれども、ますます我が国漁船は危なくなりますよね。我が国の漁船が我が国の領域内で武力行使を受けた場合の対応については考えておかなければいけないと思いますが、いかがでしょうか。

 もう一点、あわせて質問します。中国は大量の漁師を、これはオーストラリアのシンクタンクの報告なんかにもあるんですけれども、海上民兵として採用していると。現場の法執行にも当たらせているというレポートもありますが、こういった事態を我が国として把握しているのかどうか、あわせてお答えください。

山口政府参考人 お答えいたします。

 政府といたしましては、海警法草案につきましては承知をしているところでございまして、引き続き関係機関が高い関心を持って注視をしているところでございます。

 尖閣諸島周辺海域においては、海上保安庁が我が国の領土、領海を断固として守り抜くという方針のもと、関係機関と緊密に連携し、事態をエスカレートさせないよう、冷静かつ毅然とした対応を続けております。また、領海警備に万全を期していることと承知しているところでございます。

 水産庁といたしましては、引き続き、緊張感を持って、関係省庁と連携し、情報収集に努めるとともに、日本漁船の安全が確保されるよう、しっかり対応してまいりたいと考えております。

 なお、お尋ねの海上民兵につきましては本年の防衛白書において記載されているところでございますが、南シナ海での活動などが指摘されておりまして、漁民や離島住民などにより組織されているというふうに考えられておりますが、その実態は明らかにされていない、こういったことで承知しているところでございます。

玉木委員 本法案の成立を機に、違法漁獲物あるいはその加工品の我が国への流入をしっかりと阻止すると同時に、改めて、我が国の漁船の操業の安全をしっかり確保すること、このことを強く求めて、質問を終わりたいと思います。

 以上です。

高鳥委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 これより討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高鳥委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、津島淳君外五名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・社民・無所属、公明党、日本共産党、日本維新の会・無所属の会及び国民民主党・無所属クラブの六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。石川香織君。

石川(香)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文を朗読して趣旨の説明にかえさせていただきます。

    特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律案に対する附帯決議(案)

  我が国において、違法に採捕された水産動植物が流通することにより、国内の水産資源が減少し、適正に操業を行う漁業者等の経営に影響を及ぼすおそれがある。これらに対応するため、輸出品を含めて違法漁獲物の流通を防止し、国内流通を適正化することは喫緊の課題である。また、国際社会においてIUU(違法・無報告・無規制)漁業撲滅の実行が求められており、水産物輸入大国である我が国としても、海外の違法漁獲物の流入を阻止する措置を講ずることが急務である。

  よって政府は、本法の施行に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。

      記

 一 本法制定の第一義的目的は、国内外において違法に採捕された水産動植物の流通を防止することであることについて、漁業者、漁業協同組合、流通・加工業者及び消費者等の国民全般に周知し、十分な理解と協力を求めること。

 二 特定第一種水産動植物等、特定第二種水産動植物等を定めるに当たっては、我が国水産業の実情を踏まえ、漁業者、流通・加工業者の経営及び地域経済に及ぼす影響について十分に配意し、慎重に行うこと。

 三 漁業者等の届出、漁獲番号等の情報の伝達及び取引記録の作成・保存等の制度の創設・運用に当たっては、関係する漁業者、漁業協同組合、流通・加工業者及び産地・消費地市場等の過度な負担とならないよう、電子化等制度運用体制の整備に必要な支援を行うこと。

 四 近年、我が国の排他的経済水域内における外国漁船による違法操業が、頻発かつ恒常化している事態に鑑み、違法外国漁船を早急に排除し、我が国の漁船の安全操業を確保すること。また、違法漁獲物及び加工品の我が国への流入を確実に阻止すること。

  右決議する。

以上です。

 何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。

高鳥委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高鳥委員長 起立総員。よって、本法律案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣野上浩太郎君。

野上国務大臣 ただいまは法案を可決いただき、ありがとうございました。附帯決議につきましては、その御趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

高鳥委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十分散会


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