第3号 令和3年3月17日(水曜日)
令和三年三月十七日(水曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 高鳥 修一君
理事 加藤 寛治君 理事 齋藤 健君
理事 津島 淳君 理事 宮腰 光寛君
理事 宮下 一郎君 理事 亀井亜紀子君
理事 矢上 雅義君 理事 稲津 久君
伊東 良孝君 池田 道孝君
泉田 裕彦君 今枝宗一郎君
上杉謙太郎君 江藤 拓君
金子 俊平君 木村 次郎君
小寺 裕雄君 佐々木 紀君
斎藤 洋明君 鈴木 憲和君
中村 裕之君 西田 昭二君
根本 幸典君 野中 厚君
福田 達夫君 福山 守君
細田 健一君 堀井 学君
村井 英樹君 渡辺 孝一君
石川 香織君 大串 博志君
金子 恵美君 神谷 裕君
近藤 和也君 佐々木隆博君
佐藤 公治君 緑川 貴士君
江田 康幸君 田村 貴昭君
藤田 文武君 森 夏枝君
玉木雄一郎君
…………………………………
農林水産大臣 野上浩太郎君
農林水産副大臣 葉梨 康弘君
環境副大臣 笹川 博義君
農林水産大臣政務官 池田 道孝君
政府参考人
(農林水産省農村振興局長) 牧元 幸司君
政府参考人
(林野庁長官) 本郷 浩二君
政府参考人
(水産庁長官) 山口 英彰君
政府参考人
(環境省大臣官房審議官) 土居健太郎君
農林水産委員会専門員 森田 倫子君
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委員の異動
三月十七日
辞任 補欠選任
佐々木 紀君 堀井 学君
鈴木 憲和君 村井 英樹君
福田 達夫君 中村 裕之君
濱村 進君 江田 康幸君
藤田 文武君 森 夏枝君
同日
辞任 補欠選任
中村 裕之君 福田 達夫君
堀井 学君 佐々木 紀君
村井 英樹君 鈴木 憲和君
江田 康幸君 濱村 進君
森 夏枝君 藤田 文武君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第三三号)
農林水産関係の基本施策に関する件
有明海及び八代海等を再生するための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案起草の件
有明海及び八代海等の再生に関する件
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○高鳥委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として林野庁長官本郷浩二君、水産庁長官山口英彰君及び環境省大臣官房審議官土居健太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○高鳥委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。斎藤洋明君。
○斎藤(洋)委員 おはようございます。自由民主党の斎藤洋明です。
本日は、政府提出の間伐等特措法の改正法案に関連しまして質問させていただきます。
私の地元も、かつて林業が盛んだった地域を大変多く抱えておりますが、いずれも林業が盛んだった地域は今過疎化が進んでおります。それは、林業が今なかなか経営が成り立たないことが大きな原因となっております。
この法改正は、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けた再造林の促進ということでありますが、林業に関する施策は、林業の振興という観点から継続的に取り組んでいただきたいと考えております。
では、早速質問に入らせていただきたいと思います。
私は新潟県でございますが、この法律で特定母樹の開発ということが盛り込まれておりますが、積雪地あるいは寒冷地に適した特定母樹の開発ですとか、あるいは、苗木の生産者、資料を拝見しますと現在のところやや西高東低の傾向にあると思いますが、苗木の生産者が地域的な偏りなく育成されることが長期的には望ましいと考えます。農林水産省の見解をお伺いしたいと思います。
○本郷政府参考人 お答えをいたします。
本法案においては、成長に優れた苗木を積極的に用いた再造林を計画的かつ効率的に推進するための措置を新たに追加することとしておりますが、そのためには、それぞれの地域の気候に適した品種の苗木を開発し、安定的に生産していくことが重要と考えております。
これまでに指定された特定母樹は、この三月に指定された二十六品種を含めて四百十三品種あり、このうち、積雪地に適した品種として、雪害抵抗性を有するものが十九品種ございます。今後、地域のニーズを踏まえつつ、より増やしていきたいと考えており、現在、林木育種センターにおいて新品種の開発を積極的に進めているところでございます。
また、苗木の生産者については長期的に減少傾向にありますことから、苗木生産への新規参入及び生産規模の拡大を図るため、新たな苗木生産者の確保に向けた技術研修に対する支援、苗木生産に必要な機械や施設等の整備に対する支援、苗木の需要者や生産者に対する生産、需要に関する情報提供等を推進しているところです。
これらの取組により、地域の気候に適した品種開発及びこれらの苗木の安定的な供給を図ってまいります。
○斎藤(洋)委員 ありがとうございます。是非、地域の特性に応じた苗木の生産体制の構築に格段の御配慮をお願いしたいと思います。
二点目にお伺いしたいと思います。
森林吸収量の確保等の点で、この法律ですと、あるいは今現在のスキームにのっとって開発された特定母樹の樹種なんかを拝見していますと、針葉樹が中心となっております。法律の目的であります森林吸収量の確保という観点からしますと、広葉樹より杉などの針葉樹が優れている点はどういう点でしょうか。今後、広葉樹等の様々な樹種の特定母樹を開発する考えはないか、お伺いしたいと思います。
○本郷政府参考人 お答えいたします。
森林の二酸化炭素吸収量は、樹種や地域等の様々な要因によって異なります。広葉樹にも成長が速く吸収量が大きい樹種もありますが、我が国の森林においては、一般的に、杉などの針葉樹の人工林は、天然の広葉樹林に比べて成長量が大きく、二酸化炭素の吸収量も大きい傾向があり、森林吸収量の確保の観点から優れていると考えております。
特定母樹については、杉、ヒノキ、カラマツなどの主要な造林樹種を指定していますが、地域の木材需要も踏まえた多様な森林整備を進める上で、広葉樹の造林も重要と考えております。
近年では、家具やバイオマス用の広葉樹材の確保に向けて、センダンや柳などの短期間で成長して早期に活用できる早生樹に注目が集まっており、こうした早生樹種の開発や造林技術の開発が進められているところです。
今後、成長に優れた特性を有する広葉樹の開発や広葉樹造林の動向を踏まえつつ、特定母樹の指定について検討してまいりたいと考えております。
○斎藤(洋)委員 是非、偏りのない、幅広い特定母樹の開発に取り組んでいただきたいと思います。
針葉樹は、大変優れた特性を有することは今御答弁いただいたとおりですが、一方で、花粉症の問題もありますし、また、材の価格が低迷している状況で、今までと同じ割合で人工林の整備を進めていいのかということについてはいろいろな考え方があり得ると思います。幅広い、様々な樹種によって構成される森林の形成ということが長期的には災害防止などの観点も含めて望ましいと考えておりますので、是非御配慮をお願いしたいと思います。
三点目にお伺いしたいと思います。
この法律によりまして特定増殖事業を実施するに当たりまして、優れた形質を有する特定母樹ということでございますが、特に挿し木の場合は、いわばクローンを生産して植えるということになると思います。挿し木の場合は、優れた遺伝的形質が伝わりやすいということはあると思いますが、一方で、遺伝的欠陥が仮にあった場合、遺伝的欠陥もたくさんの個体が共有するということになるおそれはないか、農水省の見解をお伺いしたいと思います。
○本郷政府参考人 お答えいたします。
林木育種センターが実施している林木育種事業では、これまで、各地域で成長が優れたものを、精英樹と申しますけれども、精英樹として選抜し、これらを人工交配によりかけ合わせ、その中から更に優れた樹木の選抜を進めてきたところでございます。
特定母樹は、この選抜の過程の中で、病虫害にかかりやすいなどの欠陥のあるものを排除するとともに、選抜されたものの中から成長や材質に優れたものとして指定するといった方法で選定しておりまして、特定増殖事業を実施するに当たって、このような過程の中で遺伝的に欠陥のあるものは既に排除されているものと考えております。
○斎藤(洋)委員 同じ種類の樹木であっても、同じ場所に植わっていても全く成長が違うということは、私も田舎育ちですので、よく見ております。
遺伝的欠陥を排除するように配慮していますということでありますが、是非それはお願いしたいのと、それから、やはり、樹木というのは年数をかけて成長するものですから、後から分かるような欠陥ももしかしたらあるかもしれないという懸念はあると思います。ですので、是非長期的に経過観察をしていただいて、よりよい母樹の開発に努めていただきたいと思います。
四点目にお伺いをしたいと思います。
林業は、どこでも、私の地元でもそうですが、担い手の確保が非常に重要になっておりますし、また、待遇の面もちょっと後でお伺いしたいと思いますが、その中で、作業環境をよくするというのが非常に重要だと考えております。
その観点で、路網の整備ということに関連してお伺いしたいんですが、効率化、省力化のために、多様なスペックの路網の整備を心がけていただきたいと考えております。
と申しますのは、技術が進展して、大型の重機を入れたいのでもっと高規格の林道あるいは作業路を整備してほしいというニーズもございますし、また一方で、手持ち機材からして、こんなハイスペックの路網は要らない、これで十分というような話がある場合もあります。
多様なスペックの路網整備が重要と考えますが、農林水産省の見解をお伺いしたいと思います。
○本郷政府参考人 お答えいたします。
林業の担い手の確保のためには、高性能林業機械の導入や木材の効率的な輸送で生産性の向上や省力化を図り、山側への利益の還元や働く方々の労働環境の向上を図っていくことが重要だと考えております。
このためには、基盤となる路網整備を地域の実情に応じて推進していくことが不可欠と認識しております。森林の傾斜や担い手の状況といった地域の実情に応じて、大量の木材の輸送に必要な幹線となる林道、森林施業用のトラックが走行するような林業専用道、森林内で高性能林業機械が作業するための森林作業道ということで、広さや、あるいは最大荷重ですとか、そういうものが違った、多様なスペックの路網を適切に組み合わせた整備を進めていくこととしております。
特に、令和三年度予算においては、森林整備事業を拡充し、幹線となる林道の開設、改良を重点的に進める山村強靱化林道整備事業を創設したところであり、今後とも、これらの予算を最大限活用して路網整備の推進に取り組んでまいりたいと考えております。
○斎藤(洋)委員 是非よろしくお願いします。
事路網整備を始めとする施業環境の整備ということに関しましては、実際に施業に当たる森林組合の関係者の皆さんとのコミュニケーションが非常に重要だと考えております。是非、継続的な現場とのコミュニケーションをお願いしたいと思います。
次に、この法律に限らず、林業の振興を図るためには、何といっても林業の現場で働いていただく方々の確保が非常に重要だと思います。そのためには、処遇の改善は欠かせないと思います。
平成二十九年の国税庁の民間給与調査によりますと、全産業従事者の給与平均四百三十二万円に対して、林野庁の統計によりますと、林業従事者が三百四十三万円と、八十九万円の差があります。林業労働者の確保のために、給与面での処遇改善を是非やっていただきたいと思いますが、見解を是非政務からお伺いしたいと思います。
○葉梨副大臣 御指摘のとおり、林業従事者の年収ですが、非常に少ないということに加えて、日給制が七割と非常に多い、そこら辺が非常に大きな問題だと思っております。
そこで、まずはやはり経営体の力をつけてもらうということ、販売力やマーケティング力の強化、この法律にもありますけれども、エリートツリーの導入、造林、間伐コスト削減など、生産性の向上による林業経営体の収入増大、そして、一年を通じた複数の林業作業の習得によって通年雇用化の促進に必要な支援を行いまして、林業従事者の所得向上や処遇改善につながるよう、引き続き取り組んでいきたいというふうに思っています。
また、林業従事者が有する技能を適切に評価する技能検定制度に林業を追加することについて、業界団体による仕組みの早期創設に向けた取組への支援を強化し、技能に応じた処遇の改善を進めていく考えでございます。
○斎藤(洋)委員 是非、継続してお願いしたいと思います。
地元の森林組合にお伺いしますと、若い人たちも入ってきてはいるんですね。入ってきてはいるんですが、なかなか定着しない、それは処遇、給与の面の問題も非常に大きいということをやはり伺います。とりわけ、初任給もさることながら、入って五年、十年してもなかなか給与が伸びないという、中堅の方々の処遇改善がなかなか進んでいないという現状があるというふうに認識しておりますので、是非ともよろしくお願い申し上げたいと思います。
最後にお伺いしたいと思います。
最近、自然災害が激増しております。緑の強靱化、つまり、間伐をしっかりやって災害に強い森林をつくっていくということが重要と考えますが、農林水産省の見解をお伺いします。
○本郷政府参考人 お答えいたします。
国土の七割を占める森林の整備、保全を進めていくことは、国土の強靱化にとって極めて重要だと考えております。
災害に強い森づくりの観点から、個々の樹木の成長と根の発達を促していくこと、林内に適度な光を入れ下草の発生を図ることが重要であり、間伐を適切に実施していくことが必要です。
このため、農林水産省では、平成三十年度から、防災・減災、国土強靱化のための三か年緊急対策として、間伐、林道の改良等の森林整備対策を集中的に実施してきております。
さらに、この三か年対策に引き続き、令和二年度補正予算から措置されることとなった防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策にも森林整備対策が位置づけられ、氾濫した河川上流域や重要インフラ周辺における森林整備等を重点的、集中的に実施するため、必要な予算を計上したところでございます。
引き続き、国土強靱化や地球温暖化対策の取組を加速化し、地域の安全、安心を確保するため、必要な森林整備を進めてまいりたいと考えております。
○斎藤(洋)委員 ありがとうございます。
質問を終わります。よろしくお願いします。
○高鳥委員長 次に、稲津久君。
○稲津委員 おはようございます。公明党の稲津でございます。
森林間伐特措法の改正案について質疑をさせていただきます。非常に大事な法案だというふうに思っております。特に、林産物の供給など森林が持つ多面的な機能、これをこれから遺憾なく発揮していくということが、やはり我が国の地域経済の発展等々に大きな影響があると思っています。
今日はこのことは質問しませんが、実は、やはり出口対策ですね。川上から川下まで一貫して様々な課題があると思うんですけれども、とりわけ出口対策。特に、公共物の建築のみならず、様々なところで木材の利活用をこれから図っていく必要があるだろう、こういう問題意識を持っておるところでございまして。ちょうど戦後の人工林の造林から今日に至るまで五十年以上経過して伐期を迎える、伐期をもう既に超えている、そういうところも多いことから、この法案をしっかり成立させて、施策を大いに前に進めていきたい、こう思っております。
まず初めに、特定苗木を用いた再造林についてお伺いをさせていただきますけれども、再造林の確保に向けては費用の低減を進めることがやはり一つの課題であると思っております。同時に、当然ですけれども、苗木の安定供給が必要であるということ。造林コストの縮減、これはこれまでも伐採と造林の一貫作業システムの導入が図られてきておりますけれども、加えて、この度の本法案においては特定母樹由来の苗木、いわゆるエリートツリーの導入をうたっているということで、非常に大事なポイントだと思っています。
そこで、伺いますけれども、特定苗木を用いたこの取組、具体的にどのように再造林を促進するのか。この点について、まずお伺いさせていただきたいと思います。
○本郷政府参考人 お答えいたします。
今回の改正法案では、特定母樹から育成された苗木である特定苗木による再造林を促進する措置を新設することとしております。
通常の苗木では、植栽してから五、六年間、下刈りという作業を毎年猛暑の中で行っておりますけれども、特定苗木は成長に優れているため、その回数を減少させることで費用や労働強度の縮減が期待できると考えております。
また、植栽に当たっては、通常、一ヘクタール当たり三千本程度の植栽をされてきましたが、成長に優れた特定苗木であれば早期の成林も期待できることから、植栽本数を一ヘクタール当たり一千本から二千本程度とする低密度植栽も可能となり、効率化できるのではないかと考えております。
このような特定苗木の使用による造林の作業の省力化、効率化によりまして、造林費用の低減を図り、森林所有者の意欲を高め、主伐後の適切な再造林がなされるよう促進してまいりたいと考えております。
○稲津委員 ありがとうございました。
先ほど私が申し上げました我が国の森林の多面的機能を遺憾なく発揮するためには、当然、人工林等の主伐後の再造林、間伐、こうしたことが欠かせないわけでございまして、今、やはり問題点がコストの低減ということで、それについての答弁がございましたので、しっかりこれを進めていっていただきたいと思います。
次に、広葉樹化の取組についてお伺いさせていただきますが、先ほど斎藤議員の質問、そして答弁にも一部ありましたが、確認も含めてお話を伺いたいと思います。
人工林の樹種別の内訳を見ますと、やはり圧倒的に杉が多くて四百四十四万ヘクタール、全体の四四%を占めているということ。それから、次いでヒノキが多くて二百六十万ヘクタールで、全体の二五%を占めている。今回の法案の再造林についての基本はやはり杉、ヒノキであろうと思います。そうしたことを念頭に置いていると思います。
私は、そのことを否定するのではなくて、それをしっかり進めながらも、生物多様性などの公益的機能を発揮する観点では広葉樹化の取組も必要で、災害に強い森づくりという観点でも、そういう意味では混交林の育成、また、経済的な視点でも、家具、インテリア、クラフト、さらにフローリング、こうしたことも大変活用を期待していきたいというふうに思います。杉等の植栽だけではなくて、こうした広葉樹化の取組についても進めていくべきだと思いますが、この点についての見解を伺います。
○野上国務大臣 今御指摘のとおり、森林が有する生物多様性などの公益機能の発揮ですとか、あるいは広葉樹材を活用した家具、内装材また栽培キノコ原木等の需要への対応の観点からも、広葉樹も含めました多様で健全な森林の育成を進めるということは重要であると認識しております。
このために、立地条件に応じて、針葉樹と広葉樹が交じり合った森林ですとかあるいは広葉樹林の造成を進めることとしまして、森林整備事業による針広混交林化や、ナラ類、桜類等の十数種類以上にわたる広葉樹造林への支援を実施をしております。
また、一般的には広葉樹は杉、ヒノキ、カラマツ等と比べると成長が遅いんですが、近年、家具等への利用が期待されますセンダン等の成長が速い広葉樹の造林実証等に対する支援も実施をいたしております。
今後とも、地域の実情も踏まえて、針広混交林化や広葉樹林化など多様な森林づくりを進めてまいりたいと考えております。
○稲津委員 今大臣から御答弁いただきましたが、センダンなどの、成長の速い、そうした苗木等も有効に活用いただくということで、やはり経済的な側面を見ても非常に期待していきたいと思うんです。
それと、お話にもございましたが、二〇一九年の九月、十月の台風それから低気圧で大きな被害が出ました。私も、千葉の方に足を運んで、後に現場を見させていただきましたけれども。
そのときに、山崩れ等の山地災害が多く発生したということ、このことは、やはり一部、林業の衰退とともに、残念ながら、杉などは主伐、間伐の当然必要なところが放置されていたのではないか、こんなこともありまして、そうした観点からもこの法案にしっかり取り組んで施策を進めていただきたい、このことも併せて申し上げておきます。
次に、今回の法案とは直接のつながりはございませんけれども、関連で一問お聞きしたいんですが、日本海のホタテの稚貝のへい死ということなんです。何でそんなことを質問するのか、この場でと思われるかもしれませんが。
森は海の友達、森は海の恋人、そのように言われますけれども、森の有機物が河川を通して海に入って、前浜などで栄養を与えて植物性プランクトンを発生させる。森林は海とつながりが大きい、この関連から質問させていただきたいと思います。
ここ数年、北海道、とりわけ日本海側のホタテの稚貝のへい死や生育不良が多くなっております。先日も、北るもい漁協から連絡をいただいて、状況を伺いました。それから、三日前の十四日には新星マリン漁協を訪問して、詳細について聴取をしたところでございます。
北海道留萌管内では、四つの漁協で今年の一月から二月にかけてホタテの稚貝の生育状況調査を行いました。独自に行ったんですけれども。その結果、種まきをして、この時点での生存率が、平年は九〇%前後のところ、いいところでも八〇%台、悪いところは五〇%、平均しても六〇から七〇%程度でございました。それから、貝の長さですけれども、これも平均して、平年は八センチぐらいですけれども、三センチから七センチ前後となっている状況です。こうした中で、計画量に満たないのではないか、それだけ稚貝が生産できないんじゃないかという不安が走っています。
原因としては、先ほど申しましたように、餌となるプランクトンの不足があるんじゃないだろうか、水温の変化、それから、台風、低気圧に伴うしけの影響ではないかと。要するに、分かっていないわけですね。ただ、いずれにしても海況の変化、いわゆる海の環境に起因する可能性が高い、このように普及指導所は示しています。こうした状況の中で、関係者からは、国において原因についての調査を実施してほしい、こういう強い要望が出ております。
水産庁においては、養殖業成長産業化推進事業、これを実施しておりまして、その中で養殖業関係者の取組等を支援しているということは私も承知しておりましたが、このほど、ホタテやカキ、アコヤガイ、こうした貝を対象とした、貝類の適正養殖管理手法開発事業、これを新たに予算化しました。
そこで、伺いますけれども、この事業によってホタテ稚貝へい死等の対策に有効な手だてとなることを期待をしたいところなんですけれども、それゆえに、この取組が機能するかどうか、事業内容も含めてお伺いしたいと思います。
○山口政府参考人 お答えいたします。
北海道の日本海側においてホタテ稚貝のへい死や成長不良が発生しているということは我々も承知しているところでございます。
現在、北海道において状況の調査や対策の検討を行っているところでございますが、今委員からも御指摘がございましたような、日本海の水温が例年より一、二度高くて、貝の活力が低下したことがへい死等の要因の一つではないかというようなことが言われているところでございます。
今後も、北海道において、水温や流速などの海洋環境の情報を漁業者に発信するとともに、高水温時期の作業を極力避けることや、施設の設置水深を調整する手法などを指導されると聞いているところでございます。
水産庁といたしましては、令和三年度から、今御紹介がございましたように、新たに貝類の適正養殖管理手法開発事業を実施することとしております。これは、関係者の意見を聞きながら、ホタテを含む近年の自然環境等に適した貝類の養殖管理手法のモデル開発を行うこととしております。
そのやり方としましては、既存の養殖管理マニュアルやモニタリング用のICT機材また省力化機器等を組み合わせた管理手法、さらに、新たな養殖管理体制の構築等を具体的に導入するモデル、こういったものの開発を行うこととしております。
この事業の成果がまとまりましたら、適切な養殖管理が行われるよう、関係者に対して十分周知してまいりたいと考えております。
○稲津委員 長官、是非しっかり取り組んでいただきたいと思います。漁業者の方々の期待は大きい。
そして、今、日本の農林水産物・食品の輸出の、和牛もそうですけれども、牛肉、そしてホタテが先頭を走っていただいています。今私は日本海側のホタテの稚貝のへい死等についてお話を申し上げましたけれども、オホーツク海側とか、ホタテは北海道噴火湾、それから青森、そういった地域もありますので、そうした観点で是非お取り組みいただきたいと思います。
最後の質問をさせていただきます。人工林の間伐促進について。二〇〇八年に間伐特措法を制定し、地球温暖化防止を目的とした間伐の推進を森林所有者の努力で行ってきましたが、森林所有者が経営意欲を持てず、また、所有者不明などが原因で手つかずとなっている人工林の間伐をどう進めるのか、伺います。
○本郷政府参考人 お答えをいたします。
森林吸収量の確保など森林の公益的機能の発揮に向け、更なる間伐を推進していくためには、所有者が不明である森林への対応も進めていく必要があると考えております。
このため、林野庁では、平成二十三年及び平成二十八年に森林法を改正し、新たに森林の土地の所有者となった者の市町村への届出制度や、森林所有者や境界の情報等を一元的に取りまとめた林地台帳の創設による所有者情報等の整備に取り組んできたところです。
さらに、平成三十年には、森林経営管理法を制定し、所有者が不明な森林についても、公告するなどの一定の手続を経た上で、市町村が経営管理を行う権利を取得できる特例を措置した森林経営管理制度を創設し、運用を開始しました。
これらの制度をしっかりと活用し、所有者が不明な森林を含め、手入れが遅れた人工林の間伐を推進してまいりたいと考えております。
○稲津委員 終わります。
○高鳥委員長 次に、亀井亜紀子君。
○亀井委員 おはようございます。立憲民主党、亀井亜紀子でございます。
今日は、環境省からも笹川副大臣にお出かけいただきました。よろしくお願いいたします。
最初の質問は環境省に対してです。
本法案、間伐特措法というのは、日本が宣言したカーボンニュートラルに大きく関係している法律だと思います。
昨年十月に、菅総理が所信表明演説において、二〇五〇年までに温室効果ガスの排出をゼロにすると宣言をしました。この宣言については私たちも率直に評価をしております。二〇一九年十二月にマドリードでCOP25が開催され、そのときに小泉環境大臣が演説を行ったわけですけれども、その演説が各国を落胆させ、不名誉な化石賞をNGOのネットワークから受賞したということから考えれば大転換であり、非常に評価できるカーボンニュートラル宣言だと思います。
現在までのところで、二〇五〇年カーボンニュートラルを宣言している国の数ですとか、あるいは、カーボンニュートラルに向けて日本としてどのような方法で、例えば何割が森林吸収、何割が再生可能エネルギーというような、具体的な数値目標等があるのかどうか、その点について笹川副大臣にお尋ねいたします。
○笹川副大臣 委員におかれましては予算委員会の分科会でも御指導を賜り、ありがとうございました。同時にまた、政府の、総理の御発言も含めて、カーボンニュートラル二〇五〇年、この宣言に対しても御評価を賜りまして、ありがとうございました。
今、具体的な数値等々の御質問もございましたが、これにつきましては、総理の方から大臣に対しまして、政府の地球温暖化対策推進本部において、地球温暖化対策計画、エネルギー基本計画、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略等々の見直しを加速して、全閣僚一丸となって取り組むようにというような指示が小泉大臣にありました。それを含めた上で、今委員の御指摘いただいた数値についても、今具体的な検討をしている作業の最中というふうに御承知いただければというふうに思っております。
○亀井委員 では、今のところはまだ検討中で、いわゆる、ちょっと言い方は悪いですけれども、アドバルーン状態だということでしょうか。
今質問いたしましたのは、この宣言については評価しているんですけれども、例えば一般市民ですね、私の周りの一般市民の意地悪な声として、二〇五〇年であれば、今政策を担当している私たちのほとんどが引退しているか、この世にいないかということで、誰も責任を負わないであろうから、大きな目標をどかんと掲げただけではないだろうかというような、そういう意地悪な声も聞こえてまいりますので、そういうことについて、どういう計画であるのか、何か御発言がいただければと思って伺いました。
○笹川副大臣 二〇五〇年、確かに私も相当な年になりますけれども。しかし、それは二〇五〇年にはっきり結果を出さなきゃならないということでありますけれども、中間であります二〇三〇年、この二〇三〇年というのも節目の年として大事な年であります。したがって、二〇三〇年までに目標を定めて何をすべきかということが肝腎要のところだというふうに思っておりますので、それに向けて今議論を加速させているわけでありますので、ここでまた数値等を申し上げる段階ではないのは大変恐縮でございますが、これは御理解を賜りたいというふうに思います。
政府、総理としても、COP26、十一月に英国のグラスゴーで開催予定でありますが、までに意欲的な目標を設定しということを政府としても目標としておりますので、そういう意味での議論を積み重ねてまいりたいというふうに思っています。
先ほどちょっと答弁が漏れましたけれども、二〇五〇年までにカーボンニュートラルを目指す国の数というお話がございました。これに対しては、カーボンニュートラルを目指すということの同盟をそれぞれの国が結んだということで二〇一九年に発足しておりますが、これは、同年に百二十か国プラスEU、そして、昨年の総理のカーボンニュートラル宣言、その後に総理から電話をし、日本も参加ということでございます。
○亀井委員 では、まず、途中段階として、二〇三〇年までの具体的な目標の計画を早く練っていただきますように、よろしくお願いいたします。
次の質問ですけれども、今度は農水省、有機農業の新戦略案、二〇五〇年までに農地の二五%に拡大、そういう発表が最近ありました。
有機農業についても、私は今までここで何度か質問いたしております。例えば、ネオニコチノイドの農薬を禁止してはどうですかとか、種苗法の改正のときにも、有機農業は例外とすべきですとか、いろいろ有機農業については質問をしてまいりました。ですので、これも歓迎はいたしますが、随分思い切った目標だと思います。
今の有機農業の面積が約二万三千七百ヘクタールで全体の〇・五%ということですから、それを二五%ということは百万ヘクタールを目指すということでして、これはかなり大変なことだと思いますけれども、どういう背景で今回の発表に至ったのか、大臣にお尋ねいたします。
○野上国務大臣 今お話のありましたみどりの食料システム戦略でございますが、これは食料、農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現するための新たな政策指針としまして現在精力的に検討を進めておりまして、その中で、今御指摘のあった有機農業の取組面積を耕地面積の二五%にまで拡大するということを目標にすることを検討しております。
有機農業は、御案内のとおり、海外の肥料原料などに依存しないで、地域の自然環境を活用して生産を行うものでありますので、農業生産に由来する環境への負荷を低減する、あるいは生物多様性の保全ですとか地球温暖化防止等にも高い効果を示すことから、国連の持続可能な開発目標、SDGsの達成にも貢献をするものだと考えております。
そして、我が国におきましては、有機食品の国内の市場規模、これは過去八年で四割拡大をしまして、同じ期間に有機農業の取組面積も約四割拡大をしているところでありまして、今後も更に拡大が見込まれること、日本の一人当たりの有機食品の消費額はアメリカの約十分の一程度でありまして、我が国でも今環境意識が高まってきておりますので今後も消費が拡大をする余地がまだ大きいということ、また、世界の有機食品市場が拡大する中で我が国からの有機のお茶ですとかしょうゆなどの輸出量が増加をしていること、さらに、新しく農業に参入しようとされる方の二割から三割が何らかの形で有機農業に取り組むなど、新たに有機農業に取り組もうとする方々が相当数存在しておりまして、これらの方が自ら望む農業を行えるようにその環境を整えていくことが必要であること等から、この取組を大きく拡大していくことが必要だと考えております。
この戦略の検討のために、今年の一月から、生産者ですとかあるいは食品事業者等、幅広い関係者と意見交換を行ってまいりましたが、有機農業の取組拡大につきましては、やはり品目によって有機栽培の難易度というのは異なるわけでありますが、二〇五〇年に向けて、EU並みの目標、二五%ですね、この目標は可能であり、意欲的な目標を掲げてほしい等の意見もいただいたところであります。
生産現場において、近年、米や根菜類など、有機栽培で安定的に生産できる品目が出てきておりまして、こうした品目で先進的な取組を横展開していけば取組の拡大が可能になってきていることですとか、さらに、今後、抵抗性品種の開発ですとか生物農薬あるいは天敵利用など防除技術の進展、ロボットによる省力化、様々な有機農業に取り組みやすくなるイノベーションを創出しまして、普通の農家が経営の一つの選択として有機農業に取り組むことができる環境をつくっていくことができれば、取組の大幅拡大が可能と考えていること等から、二〇五〇年を目標年度として、二五%に拡大することを目標として今検討を進めているところでございます。
○亀井委員 有機農業を拡大するという取組についても率直に私は評価いたしますし、いい方向だと思います。農業を成長産業にというスローガンで安倍政権以来進んできて、それに疑問を抱くところもあったんですけれども、ただ、実際、EUなどの市場でどんどん農薬に関して厳しくなっていますから、輸出をしようと思えば当然有機栽培も広げていかなければいけないでしょうし、いわゆる外的な要因であっても、広げていくということは非常に歓迎をいたします。
JAが余り農薬や肥料を販売している関係で協力的ではなかったというようなことも一般的に言われますけれども、その辺も今日は、これがメイントピックではないので余り突っ込みませんが、是非、政府主導で進めていただきますように、よろしくお願いいたします。
それでは、間伐法についてですが、この委員会で森林経営管理法案なども扱い、私も質疑させていただきましたし、また、国有林野の改正法案などもございました。そうした議論の中で私が感じてきたことは、どちらかというとちょっと皆伐の方に、主伐の方に政策が寄り過ぎてはいないかということです。
森林経営管理法案のときに、最初、八割の森林所有者が森林の経営意欲がないですとか、意欲のない森林所有者のうち七割が主伐の意向すらない、こういう文言があって、この委員会で与野党から質問があり、そして、自伐型林業、間伐も大事なんだというような表現も入れて、結局、私たち立憲民主党も賛成はしております。ただ、やはり、手つかずの山林、伐採期に入っている山林が放置されているということがあり、主伐に少し偏った方向にここのところ進んできているのではないかという懸念は持っております。
今日、参考資料をお配りしたんですけれども、このグラフを見ていただきますと、まず、下向きに赤、森林減少活動、これが伐採ということです。そして、上に長く伸びている薄緑のような棒は森林経営活動でして、これは間伐等による森林整備です。そして、薄紫、これが新規植林・再植林活動です。
これが何を示しているかといいますと、温室効果ガスの森林吸収量、吸収源別のグラフなんですけれども、ほとんどが間伐等の森林整備を行ったことによる森林経営活動なので、やはり、主伐というよりも間伐を進めていかないとなかなか森林によるCO2の吸収にはならないということがこれによって明らかなのではないかと思います。植林しても、確かに、最初は苗木で、大きくなるまでしばらくかかるので、大してCO2は吸収されないということだと思うんですけれども。
このことについて、つまり、間伐に力を入れていかないと、主伐に余り寄っていると問題だと思うんですけれども、大臣はいかがお考えでしょうか。
○野上国務大臣 京都議定書で森林吸収量の算入対象となりますのは、一九九〇年時点で森林でなかった土地に一九九〇年以降に植林を行う、ここにあります新規植林及び再植林と、一九九〇年以降に間伐や主伐、再造林、保育等の森林整備等を行う森林経営が行われる森林となります。
我が国におきましては新規植林、再植林の対象地は少ないということから、森林経営により森林吸収量を確保していくということが重要であると思います。
一方で、我が国の森林は、人工林を中心に適時適切に間伐等の森林整備を行うことなどによって森林経営の対象となっておりまして、二酸化炭素吸収源として貢献しております。
なお、人工林は高齢化していきますと単位面積当たりの吸収量が減少することから、近年、森林吸収量は減少傾向で推移をしています。
このために、間伐を実施するとともに、利用期を迎えた人工林の木材の需要に応じた主伐と確実な再造林を進めていくことが重要と考えています。
このようなことから、将来の森林吸収量の確保に貢献するため、本法案によりまして、間伐等の着実な実施や、主伐後の成長に優れた苗木による再造林を促進することに加えまして、二酸化炭素を貯蔵しています木材の利用推進、このようなことも含めて総合的な取組を進めていくということが重要だと考えております。
○亀井委員 主伐をしてすぐに植林をされれば問題ないわけですけれども、苗木の生産が追いつかないですとか、しばらく放置されているということが一番問題なわけでして、このグラフからも見えるとおり、例えば二〇一〇年などは、森林減少活動、伐採がすごく伸びていて、それに対して新規植林は数値が少ないですから、こういうことが重なっていくと未更新地が増えていっているのではないかと思うんですけれども、未更新地の面積の推移ですとか、その解消に向けた施策についてお伺いいたします。
○池田大臣政務官 伐採後に造林されていないいわゆる造林未済地の面積は、平成二十六年度末の八千九百十六ヘクタールから、平成二十九年度末には一万一千四百四十四ヘクタールに増えているところでございます。これは、御承知のように、林業採算性の長期低迷あるいは経営意欲の低下等により発生しているものと考えております。
このために、農林水産省では、森林所有者等に対しまして再造林に対する補助を行うとともに、伐採、造林の一貫作業の導入等に加えて、本法案で新たに措置する成長の速い特定苗木の活用等によって造林コストを大幅に低減すること、あるいは木材需要の拡大や安定供給体制の整備などにも力を入れて取り組んでいるところでございます。
また、令和元年度からスタートいたしました、市町村を介して経営意欲を持てずにいる所有者から意欲と能力のある者へ伐採及びその後の造林の経営委託を進める取組を加速化していく考えでおります。
こうしたことを通じまして、造林の未済地が発生しないように努めてまいります。
○亀井委員 今の御発言で森林経営意欲がないとおっしゃいましたけれども、そういう問題ではないと思います。経営意欲がないわけではなくて、コストの問題であったり、まさにそこが森林経営管理法案のときにかなり皆が疑問を呈したところですので、森林所有者はやはりきちんと森林を整備したいと思っているということはお伝えをしたいと思います。
それで、今、苗木生産事業者が減っている問題がございます。
林野庁の森林・林業基本計画における供給量目標、四千万立方メートルに対する再造林面積は約七万ヘクタールと想定されています。これを二千本植栽と仮定した場合、単純計算で一万四千万本の苗木が必要となるんですが、これは今の二倍強、現在が六千五百万本なので、苗木の供給量の拡大というのは喫緊の課題なんです。
一方で、苗木生産事業者というのは約八百事業者まで減っているという資料がございます。なぜ減っているかというと、金銭的な問題なので、事業者に対する手厚い支援が必要だと思うんですけれども、苗木生産事業者についての支援についてお伺いいたします。
○池田大臣政務官 御指摘のように、今、苗木の生産事業者は令和元年度で八百十一の事業体となっております。
苗木生産に当たりましては、広い土地を必要とせず、労働負荷の軽減にもつながるコンテナ苗を普及しており、近年、苗木生産に新たに参入する事業者も増えつつある状況でございます。
御承知のように、ちょうど四十五年、五十五年には相当な苗木業者もございました。ちょうど西日本で松くい虫の被害が出た当時だろうと思います。
こうした苗木生産への新規参入及び生産規模の拡大を図るために、新たな苗木生産事業者の確保に向けた技術研修に対する支援、コンテナ苗の生産技術の標準化に向けた手引の作成、コンテナ苗生産に必要な機械や施設等の整備に対する支援、あるいは生産、需要に関する情報提供等を推進しているところでございます。
こうした取組によりまして、苗木の安定的な供給を図ってまいりたいと思います。
○亀井委員 先ほどの私の質問、ちょっと数値をきちんとします。一ヘクタール当たり二千本を植栽と仮定したときに一億四千万本の苗木が必要になるんですが、それに対して、現在の供給、二〇一九年度では六千五百万本なので開きがあります、そういう質問でございました。失礼しました。
次ですが、林業労働者の育成について。
森林経営管理法案のときに、この委員会で視察に行きまして、いろいろな大型機械の導入の様子などを見せていただきました。伐採に関しては大分楽になっているようですし、先日テレビ番組などでもちょうど見かけたんですけれども、伐採機の中は空調も利いているようですし、一時よりは大分体が楽になったので、若者がその分野に行くようになったというような報道でした。
ただ、それは伐採の方でありまして、例えば下刈りですとか植林の方というのはそんなに機械化、効率化できないので、大変なんですね。ですので、林業従事者の育成でも、大変な作業、下刈りですとか植林の方の人たちを増やすというのはなかなか大変ではないかと思いまして、どのように対処されるのか。いわゆる所得の面でも改善が必要だと思いますけれども、対応策についてお尋ねいたします。
○池田大臣政務官 御指摘のように、今は機械化されて伐採をしております。昔のように、伐採をやり、そしてまた、その後、そのまま同じ方が苗木を植えるということからだんだん変わってきております。そうした森林整備を担う林業従事者の確保が必要であると認識はいたしております。
そのために、緑の雇用事業におきまして、新規就業者の確保、育成、そしてまた、今年度の補正予算あるいは新年度の予算におきまして、育林従業者を育成するための研修を新たに計上いたしたところでございます。
そして、先ほどもお話がございましたが、新しいエリートツリーの活用などによりまして植林の本数を減らしていく、あるいは機械での伐採と造林の一貫作業、そうした新たな技術を導入した実証的造林などの、造林の省力化、低コスト化に資する取組に対する支援を行っているところでございます。
こうしたことを通じまして、再造林等の森林整備の促進を図ってまいりたいと考えております。
○亀井委員 是非、育林事業者の育成に財政面でも力を入れていただきたく、お願いを申し上げます。
今日の私の問題意識というのは、やはり、森林経営管理法案が通って主伐の方に少し傾いていて、主伐に対して苗木の生産も追いつかないですし、事業者も少ないですし、植林の方が追いついていない。なので、さっき数値もお尋ねいたしましたけれども、未更新地が増えているという現状があるので、これが何年も続いていくとはげ山が増えていくということですので、それについての問題意識を非常に持っているということでございます。
それで、国有林野の改正法案のときに、樹木伐採権を与えて、それが最長五十年というのがここの委員会でも問題になり、私たちがあの法案に反対した理由、大きな部分は五十年も要らないでしょうということなんですが、その後、五十年の契約を結んだところというのはありますでしょうか。お尋ねいたします。
○葉梨副大臣 お答えします。
国有林野管理経営法は昨年の四月の施行でございまして、新型コロナウイルス感染症の影響で、民有材木の、木材全体の需要が落ち込んでおりますので、現在は樹木採取区の指定は見合わせております。
基本的には十年ということを考えているんですけれども、引き続き、木材需要の動向を見極めながら、慎重に対応していきたいと思っています。
○亀井委員 私たちも、十年で更新をしていけば十分だろう、五十年の契約は要らないんじゃないだろうかというふうに党内でも話しておりましたので、まだそういう対象業者がないのであれば、それはちょっと一安心いたしました。慎重にお願いをいたします。
次は、予算委員会の第六分科会で私が議題にしたんですけれども、風力発電計画と林業とが競合してしまうケースについてです。
農水省にお尋ねいたしますが、今、私の地元島根県益田市もそうですし、あるいは鳥取の西郷、明治地区というところでも、風力発電の計画に対して地域住民が反対しております。それで、問題は、風力発電の工事用の道路というのを、大きな風車を運ぶために直線的に山を切り崩す、それによって土砂が流れ込んだり環境破壊になるので反対だということなんですが、そして、この工事用道路というのは一度つけられてしまうと路網整備ですとか林業の道路とは共存し得ないというふうに聞いておりますが、やはりそうなのでしょうか。
これは農水省に確認をいたします。
○葉梨副大臣 風力発電を保安林に設置しようとする場合には、保安林の解除の措置、これが必要になりますし、また、保安林以外であっても、一ヘクタール以上は林地の開発許可が必要になります。
これは道路も同様でございますので、道路についても、森林の有する公益的機能の確保の観点から、地形に沿った構造とするなどによって開発行為に係る土地の面積を必要最小限度にすること、土砂の流出等のおそれがある場合は侵食防止等に必要な防災措置を講ずること、これを要件としております。
引き続き、森林の公益的機能の確保に向けて、これらの制度の適正な運用に努めていきたいと考えております。
○亀井委員 最後、笹川副大臣にお尋ねいたしますが、私は、やはり、風力発電と林業との競合が起きてくる、その中で、土地を風力発電に貸した方が得だと考えれば山林所有者はそっちの方に誘導されてしまいますので、本当は洋上風力の方が島国日本においては向いているのではないかと思っているんですが、どのようにお考えでしょうか。
○笹川副大臣 風力の発電についてのポテンシャルについては委員も御承知のとおりというふうに思います。特に、洋上風力についての可能性については大変期待をされているところでありますので、秋田沖も含めてゾーニングを指定し、そして今、事業の展開をしているところである。
我々環境省といたしましても、長崎県の五島沖で浮体式の洋上風力、これは、大変、最初は地元の皆さんにも御理解がなかなか進まなかったんですが、非常に魚礁としても有効だということで、地元の皆さんにもこの事業については大変好意的に評価をしていただいて、まさに基数を増やしてほしいというような声も上がっているところでありますので、そういう意味において、先生の御指摘のとおり、洋上風力についてのポテンシャルについては大変評価をしておるというふうに思っております。
○亀井委員 それでは、時間ですので、森林がきちんと主伐後に再生されるように、そして再生可能エネルギーの方は是非洋上風力等に力を入れていただきますようにお願いをいたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。
○高鳥委員長 次に、金子恵美君。
○金子(恵)委員 立憲民主党の金子恵美でございます。よろしくお願いいたします。
東日本大震災、原発事故から十年がたちました。法案の質疑に入る前に、被災地の農林水産業の再生についてお伺いさせていただきたく存じます。
農林水産省の集計によれば、東日本大震災による農林漁業への被害額が計二兆四千四百二十六億円に達した、三月の十一日の時点でありますけれども、そのように発表されました。避難指示が解除された福島県の一部地域で調査が進み、今年に入って約六百億円増えたということでございました。私も福島県の人間でございます。なかなか農林水産業の再生というものが進まないなということでもありますし、多くの課題を持っています。
この被害額は、実際に、阪神・淡路大震災の約二十六倍、新潟県中越地震の約十八倍ということでありますけれども、発生十年を経てなお被害の全容は不透明である、そして、特に福島県のことがありますから、これから被害額が増えていくという可能性があるということでございます。
インフラ整備というのはおおむね完了したというふうに農水省もおっしゃいますが、福島を中心とした原発事故からの復興の課題というのは、ますます大きな課題として残っているという認識を持っていただければと思っています。
野上農水大臣も所信表明で福島について、営農再開や、水産業、林業の再生、風評払拭等、まだまだ取り組むべき課題があると認識しておりますというふうにもおっしゃっていただきました。
この十年間、台風十九号もありました。そして、今年に入って二月十三日の福島県沖地震もございました。更なる農林水産業の被害が起きました。そのことも含めまして、福島の農林水産業の再生についての御認識をお伺いしたいと思います。お願いいたします。
○野上国務大臣 今月の十一日で東日本大震災発災から十年がたちました。
本当に、この十年間、様々な形で御労苦をされてこられた皆様に、まず心よりお見舞いを申し上げたいというふうに存じます。
私自身も、大臣に就任させていただいてすぐに、一市三町、御地元の方に入らせていただきました。御地元の皆様の生のお声もお聞かせをいただいたわけであります。
やはり、この十年間、被災地の復旧復興に取り組んできました結果、全体としては農林水産関係インフラの復旧は相当程度進展をしてまいりましたが、原子力災害被災地域であります福島県におきましては、営農再開、風評払拭、あるいは森林・林業の再生、漁業の本格的な操業再開等々、いまだに様々な課題を抱えているというふうに思いますし、まだまだなりわいの再開に至っていない厳しい地域があるということも現地に参りまして実感をしたところでございます。
農林水産省としては、これらの復興に向けて、今、原子力被災十二市町村に職員を派遣させていただいておりますが、やはり、市町村、地元との連携を密にするということが大事だと思っておりまして、そんなようなことを通じて様々な施策を講じてまいりました。
農業では、昨年改正されました福島特措法によります農業集積の特例措置の活用ですとか、あるいは広域の高付加価値産地の展開を通じました営農再開の加速化等に取り組むとともに、林業では、放射性物質のモニタリングですとか森林整備、さらにはシイタケなどの特用林産物の生産の再開、継続、シイタケ原木生産のための広葉樹林の再生の取組、あるいは、水産業では、生産、加工、流通体制の各段階で本格稼働ができるように、水揚げの回復、水産加工業の復興、風評の払拭、販路拡大、加工原料の転換等々に取り組んでまいりました。
やはり、今先生からお話があったとおり、現場の声を聞きながら、情報も広く発信しつつ、この復興再生に向けて全力で取り組んでいかなければならないという思いを更に強くいたしております。
○金子(恵)委員 ありがとうございます。中長期的な支援が必要です。よろしくお願いいたします。
特に福島県の森林・林業の再生に向けた取組についてお伺いしたいと思うんですけれども、三月十三日、JAグループ福島により農林水産業の再生を祈念して開催された東日本大震災復興祈念大会がありまして、私も出席させていただきましたが、そこで共催団体の一つの福島県森林組合連合会の秋元会長が共同メッセージを示してくださいました。その中でこのようなことをおっしゃっていました。
東日本大震災並びに東京電力福島第一原子力発電所の事故により放出された放射性物質は、森林・林業に大きな影響を与えて、今もなお継続しております、原発事故後は、森林を健全に維持するための間伐等の森林整備面積が震災の前の半分になるなど大きく停滞し、森林所有者が長年管理してきた森林への経営意欲低下を招いており、森林の荒廃が懸念されますということです。
先ほど来、意欲という言葉が委員会の中で出されていました。皆さんおっしゃっていただいた言葉でもありますけれども、意欲の低下というのが、何をするにも本当に前進できないという状況を起こしてしまっているわけなんです。でも、放射性物質の対策というのをしっかりとやっていくということで、いろいろな仕組みづくりもしてきていただいているということではあります。
特に、福島県は実はシイタケ原木の生産で有名で、阿武隈山地を中心に、原発事故前まで全国トップの生産を誇っていました。しかし、残念ながら、現在は会津地域の一部を除く本県一円においてシイタケ原木の生産が困難となっています。まだ放射性物質の動態が明らかになっていないこともありますので、シイタケ原木林の伐採、更新を図っていく必要があるということではあるけれども、いかに着実な対策を実施していくのかということも一つの課題になっているということであります。
地元の原木シイタケの生産者の皆さんは、やはり地元の原木で生産したいということをおっしゃっています。それがどのぐらいの時間をかけて実現できるか現状分からないということではあるけれども、でも諦めないというスタンスで頑張っていかなくてはいけないというふうに思っています。大臣、是非支えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○野上国務大臣 今、放射性物質のお話がございました。この影響を受けました森林・林業の再生に向けまして、今、関係省庁等と連携して、放射性物質対策と一体となった森林整備、また今お話のあったシイタケ等々、特用林産物の産地再生等に向けて取り組んでいるところでございます。
令和三年三月に閣議決定しました第二期復興・創生期間以降における東日本大震災からの復興の基本指針におきましては、福島等の森林・林業の再生に向けまして、放射性物質のモニタリングや各種実証等による知見の収集ですとか、福島県においてふくしま森林再生事業として実施しております放射性物質を含む土壌の流出防止のための森林整備とその実施に必要な放射性物質対策ですとか、あるいは里山再生モデル事業の成果等を踏まえた里山の再生に向けた取組、これも、私、去年御地元で視察させていただきましたときに秋元会長ともお会いをさせていただきまして、秋元会長からも、県全体で大変厳しい状況でありますので、この森林整備の支援の継続を要望を受けたところでございました。また、今お話のありました原木シイタケ等の特用林産物の産地の再生ですとか、シイタケ等原木生産のための広葉樹林の再生に向けた取組、このことも引き続き実施することとされております。
このような方針の下で、この森林・林業の再生に向けて、関係省庁また福島県としっかり連携して取組を進めてまいりたいと考えております。
○金子(恵)委員 ありがとうございます。今日は間伐等特措法改正案の審議なんですけれども、この改正が行われても、福島では残念ながら十分にこの法律を活用できない可能性があるということもありまして、大変厳しい状況であるということも御理解いただければと思います。
それでは、改めて間伐等特措法改正案について質問をさせていただきたいと思います。
まずは、この法律は、とにかく森林吸収量目標を着実に実行していこう、そういう目標があるわけですけれども、その中で、間伐目標量、実際にこの確保ができているのかということであります。
京都議定書第二約束期間における間伐の実績でありますけれども、林野庁が公表しているのは二〇一三年から二〇一八年の部分であります。この期間で二百六十六万ヘクタールということです。年の平均換算では四十四・三万ヘクタールとなります。目標とされるのは年平均五十二万ヘクタールでありましたから、大きく届いていないという状況にあります。
実績が公表されていない二年分を含んで、最終的に第二約束期間の目標である年平均五十二万ヘクタールを達成できるということになるのでしょうか。二〇一九年は今集計中ということだと思います、そして二〇二〇年度分はまだこれからということですけれども、この間伐実績量五十二万ヘクタールを確保できる見通しというものもあるのでしょうか、お伺いしたいと思います。また、これまで実施してきた間伐等特措法に基づく施策によって温室効果対策としてどの程度の効果があったのか、その実績と評価についてもお伺いしたいというふうに思います。
今後の目標というのはパリ協定に基づいていくということだというふうにも思いますし、カーボンニュートラルという大きな目標に向けて進むということだと思います。これは年平均四十五万ヘクタールの間伐ということだと思いますが、それと並行して再造林を始めとする森林整備も着実に実行していかなくてはいけないということで、しっかりと予算の確保というのも必要になってくるというふうに思います。その辺の見通しをお聞かせいただきたいと思います。
○野上国務大臣 間伐等特措法によりまして、平成二十年の法律制定後、一定以上の森林面積を有します市町村の約九割で本法に基づく特定間伐等促進計画が策定され、交付金による支援ですとか、あるいは森林整備事業による都道府県負担額の四分の一程度に地方債の起債特例などが充てられるなど、間伐の促進を図っているところでありますが、御指摘のとおり、直近二〇一八年度の間伐実績は約三十七万ヘクタールでありまして、第二約束期間の目標五十二万ヘクタールには及んでいないわけであります。
この原因として、間伐対象地の奥地化等に伴う間伐コストの増大ですとか、間伐の収益の低下がありますので森林所有者がなかなか経営意欲を持てないということ等が挙げられます。
このために、本法に基づく支援を引き続き継続して、施業の集約化、路網整備の加速化、高性能林業機械の導入等の間伐コストの低減に向けた条件整備ですとか、あるいは間伐コストを低減させる列状間伐などを推進します。さらに、奥地等の条件不利地につきましては、森林環境譲与税も活用しながら、森林経営管理法に基づく市町村による所有者への働きかけ等も行いつつ、公的な間伐を実施することによりまして、パリ協定下における二〇三〇年度の我が国の森林吸収目標の達成に必要な、これは四十五万ヘクタールでありますが、この間伐に取り組んでまいりたいと考えております。
○金子(恵)委員 年平均四十五万ヘクタールの間伐に取り組んでいくということでありました。
ここで、先ほどもお話があったんですけれども、二〇五〇年目標を踏まえた対策の必要性であります。余り先のことだから分からないという話では私はないと思います。森林整備というのはやはり長期的な対応、対策というのが必要になってくる、しっかりと継続して予算を確保して、しっかりと対策を講じるという、その仕組みづくりもしなくてはいけないわけなので、改めてお伺いしたいというふうに思うんです。
改正の目標というのは聞いたんですけれども、やはり、二〇五〇年カーボンニュートラル、これを大きな柱として、従来の森林整備予算の枠を超えた形で、予算の継続的な措置に向けて農林水産省として積極的に取り組む必要があるのではないかというふうに思うんですけれども、そこはいかがでしょうか。実際に、国土の七割を占める、温室効果ガスの吸収源として八割以上である森林を一層活用していく必要があるというふうにも思うわけなんですけれども。
二〇五〇年までに温室効果ガス排出をゼロにするという目標や、原発の稼働が前提ではない状況の中で、間伐を始めとした森林整備の目標についても考えていく必要もあるというふうにも思います。様々な課題がある中で温室効果ガスの削減に向けて取り組むと同時に、温室効果ガスの吸収源対策をしっかりと行っていく必要があるというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。
○野上国務大臣 我が国の森林は、人工林を中心にしまして二酸化炭素吸収源として貢献してきているところでありますが、人工林は高齢化してまいりますと単位面積当たりの吸収量が減少しますので、近年、森林吸収量は減少傾向で推移をしているわけであります。
このような中で、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けましては、やはり、必要な間伐を着実に実施をして利用期を迎えた人工林について、「伐って、使って、植える」といった適切な循環利用によって、成長が旺盛な若い木を増やして森林吸収量の向上を図るとともに、二酸化炭素を貯蔵して、省エネ資材である木材の利用を進めて、最終的にエネルギーとして活用するといった取組を推進することによって、炭素の長期・大量貯蔵や二酸化炭素の排出削減を進めることが重要と考えております。
また、農林水産省としましては、森林の吸収量確保に向けた間伐や再造林等の森林整備の推進あるいは木造需要の拡大、このようなことを総合的に進めなければならないと思っております。本法案によりまして、成長に優れた成長苗木の活用に加えまして、ICTを活用した造林・下刈り作業の省力化ですとか、あるいは中高層建築物への木材利用拡大に向けた部材の開発など、林業のイノベーションというものも加速化してまいりたいと思います。
今お話がありましたとおり、森林、木材をフル活用することによって、カーボンニュートラルの実現に向けて取組を進めてまいりたいと考えております。
○金子(恵)委員 今、イノベーションの話もされたので、済みません、順番を変えて、林業労働力の育成、確保の関係で、就業条件改善に向けた対策強化についてお伺いさせていただいてもよろしいでしょうか。
この法案でこれからやっていこうとすること、それを進める上でも、労働力をしっかりと確保していくということだというふうに思うんです。林業労働力の育成、確保、そして賃金、労働安全などに係る処遇改善は、今後の間伐、再造林を始めとする森林整備を進めていく上でも重要な課題だというふうに思っております。緑の雇用政策等によって年間三千人程度の新規参入者が継続的に確保されているというふうには聞いていますけれども、長期的には減少傾向にあるということで、残念ながら労働力の確保というのが十分にできていないということです。
先ほどもお話がありましたけれども、全産業との格差が、若干縮小はしていますけれども、二〇一八年の段階では八十九万円程度の差があるということであります。相対的にいうと、やはり林業労働者の確保、就業条件の改善は遅々として進んでいないと言わざるを得ません。実際に労働力の確保、就業条件等の改善の現状をどのように受け止めていらっしゃるのかということをお伺いしたいと思うんです。
いろいろなイノベーション等をして機械を使ったりしても、できることというのはやはり限られてしまっているのではないかなというふうに思うんです。
林野庁が二〇一一年に示した「林業構造の展望について」の中で、効率的かつ安定的な林業経営の主体が十年後に、これが今年に当たるわけなんですけれども、十年後に達成すべき目標というのを実は明らかにしていて、この中で、効率的な施業実行の主体が十年後に達成すべき目標として、素材生産であれば、これは一ヘクタール当たりなんですけれども、間伐で一人一日当たり八から十立方メートルと言っていて、それで、主伐の場合はこれが十一から十三立方メートルというふうに言っているんです。この目標を実際に達成すれば施業における収支改善が可能となって、作業従事者の年間賃金も四百二十万円に引き上げることができるというふうに言っていました。
そういう姿を描いていたわけなんですけれども、実際には、二〇一八年の賃金でいえば三百四十三万になっていると思いますので、その四百二十万円には至らないということであります。
それから、目標でもありますけれども、全くその目標には達していなくて、現状を言いますと、間伐で四・一七立方メートル、そして主伐で七・一四立方メートルということで、目標とした姿の半分程度の水準にしかなっていないということでもあります。
いろいろなことをやってきてはいるんだと思いますけれども、なかなか生産性にもつながっていかない、そのことによって実際には賃金アップというものにもつながっていっていないということでありますので、その部分について、どういうふうに対策を今後講じていくかということを真剣に考えていかなくてはいけないというふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。
○野上国務大臣 今御指摘のありました林業事業者の就業条件につきましては、給与につきましては、日給制が全体の七割を占めるとともに、年間の平均給与も、今お話がありましたとおり、全産業より八十九万円低い三百四十三万円ということになっております。また、死亡災害件数も、十年前から約二割減少しておりますが、死傷災害の発生率は全産業の十倍程度と依然として高い状況となっておりまして、林業従事者を育成、確保する上での課題となっていると思います。
このため、農水省としては、まずは、林業事業者の収益力の向上が必要なことから、販売力やマーケティング力の強化や生産性の向上について支援をしているところであります。
林業従事者に対しては、緑の雇用事業により、一年を通じた複数の林業作業の習得による通年雇用化の促進に引き続き取り組むとともに、林業事業者が有する技能を適切に評価する技能検定制度に林業を追加することについて、業界団体による仕組みの早期創設に向けた取組への支援も行っておりますが、その所得向上や技能に応じた処遇の改善を進めてまいらなければならないというふうに思います。
また、労働災害の縮減に向けましては、伐倒作業を安全に行うための最新トレーニング装置等を用いた研修ですとか、あるいは労災を防止するための装備、装置の導入への支援等により、その対策も強化をしてまいりたいと思います。また、林業の生産性、安全性等を向上させる無人化に向けた機械開発など、林業イノベーションの推進も同時に図っていかなきゃならないと思います。
これら総合的な取組を通じて、林業従事者の就業条件が改善されるように取り組んでまいりたいと考えております。
○金子(恵)委員 林業従事者は、日々の労働を通じて公共財である森林を保全し、その多面的機能を維持、発揮させているというふうに私は思います。
比較できるかどうか分かりませんけれども、介護職員も厳しい仕事だというふうに言われてきていて、これまで、例えば二〇〇九年からは処遇改善をするために介護職員処遇改善交付金というものが創設されました。現在は処遇改善加算というふうになっておりますけれども、交付金の際の財源は一〇〇%公費でありました。
このような思い切った仕組みをつくって、しっかりと林業従事者の方々を支えて、そして労働力の確保をしていくということも一つ提案をさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○野上国務大臣 御提案のありました介護職員処遇改善交付金でございますが、現在では介護保険制度の下で措置されているものというふうに承知をしておりますが、同様の制度を持たない林業事業者に対してこのような仕組みを新たに設けることについては、財源ですとか具体の制度設計等々、様々な課題があるものと考えております。林業従事者に対する処遇改善の取組というのは極めて重要だと考えておりますので、先ほど申し上げたような様々な施策を通じて、総合的な取組を進めてまいりたいと考えております。
○金子(恵)委員 よろしくお願いします。
質問を一つ戻ります。再造林の推進に係る苗木供給、そして生産者への支援措置の拡充。これは先ほど同僚議員からも質問がありましたので、少し角度を変えた形で質問させていただきたいと思います。
先ほどお話がありましたように、とにかく、未更新地の発生を抑制するための一助に今回の改正がなり得るというふうには考えますけれども、全ての解消には至らないだろう、しっかりとした対策が必要であるということではありますが、再造林を進める上でも苗木が大変不足している、圧倒的に不足しているというのが先ほどの話で分かったというふうに思います。
特定母樹から育成された特定苗木を積極的に用いた再造林を計画的かつ効率的に進めることを目指している今回の法案でありますけれども、実際に、特定苗木の生産も、二〇一九年の実績で、杉が二百六十六万本、グイマツ二十万本ということで、二百八十六万本、苗木全体の四%程度ということでありました。生産拡大に向けた体制確立、事業者の育成というのは本当に急務になっているということであります。
実際に、裸苗の場合でも二、三年かけて育成しても七十三円から百九十三円前後、これは二〇一九年の実績の金額ですけれども。そして、コンテナ苗でも一、二年かけて育苗して百四十円から二百七十九円ということで、この金額も生産者の意欲を損ねるものになっているのではないかということです。
実際には今、生産者は八百十一事業者に減ってきてしまっているということで、一九九八年から二〇一八年の二十年間を比較しますと、二十年間で約三千事業者から八百十一事業者に減少しているということでありますので、本当に苗木の確保ができて、それで本当に再造林ができるんですか、現実的な話をもっとできるのかどうかということなんですけれども、その部分について、一言で結構ですので、決意を伺いたいと思います。
○野上国務大臣 今先生から御指摘があったとおり、平成十年は三千三十七事業者だったものが、今八百十一事業者になっているわけであります。長期にわたって需要が低迷したこともあって、減少傾向で推移をしてきたと考えております。
やはり、優良な苗木を低コストで安定的に供給するということは極めて重要だと思いますので、先ほど御議論になった様々な対策も含めて、苗木の安定供給に向けて、新規参入及び生産規模の拡大を図るためにしっかり取組を進めてまいりたいと考えております。
○金子(恵)委員 是非お願いいたします。現実的に何ができるかをしっかりと考えていかなくてはいけないというふうに思います。
その上で、最後になりますけれども、国有林野事業について、職員、組織体制の確保ということでお伺いしたいと思うんです。
今回の間伐特措法とは直接の関係はないかもしれませんけれども、ただ、一般会計移行後は、施策の効率化、低コスト化等に係る先駆的な事業の実証を通じて民国連携の役割を果たしているということでございます。
国有林野事業の現状は、資源の充実も相まって素材生産や立木販売といった事業量は年々増えている一方で、職員数は四千人程度まで減少し、国有林の現場を預かる森林管理局・署では欠員ポスト、欠員率が増加しているということであります。さらには、現場の最前線の森林事務所に森林官を配置できていないケースも増えていると聞き及んでいます。
今回の法案が成立すれば、間伐の推進を始め、造林事業の低コスト化、効率化等の先駆的な事業の実証を通じて民国連携に貢献することが今以上に求められるのではないかというふうに思います。国有林に求められる使命と役割を最大限発揮させていくためにも、事業量や業務量に合った職員の確保、組織体制の充実を図っていく必要があると思いますが、いかがでしょうか。
○野上国務大臣 国有林野事業につきましては、公益を重視して管理経営の一層の推進を図っていくとともに、やはり民有林に係る施策との連携を図るということが重要でありまして、その組織、技術力、資源を活用して林業の成長産業化を実現していくことに貢献していかなければならないと思います。
国有林野事業におきましては、伐採、造林等の事業の実施は全面的に民間に委託するとともに、これまでも、国有林野事業全体の効率的な執行に努める一方で、民有林への支援ですとか防災・減災、国土強靱化の推進等の政策課題に的確に対応するために必要な体制整備を図ってきたところでありますが、引き続き、事業全体を通じた業務あるいは事務の改善を進めつつ、必要な組織・定員の確保に努めてまいりたいと考えております。
○金子(恵)委員 時間が参りましたので、終わります。
ありがとうございました。
○高鳥委員長 次に、田村貴昭君。
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
森林間伐特措法の改正案について質問をします。
この法律は森林間伐を進めていく上で大事な役割を担っており、これまでの法定交付金などの支援措置については必要だと考えています。
しかし、今回新たに盛り込まれた特定植栽促進事業については、環境面においても、CO2の吸収源対策としても問題があります。したがって、我が党として、特定植栽に関する規定を削除することを提案します。
まず、法案十四条二項四号の特定苗木を植栽する土地、山についてであります。この立ち木の伐採については、標準伐期なのか、主伐なのか、択伐なのか、どういうやり方をするんですか。また、伐採面積には上限があるのか、ないのか。お答えください。
○本郷政府参考人 お答えをいたします。
第十四条第二項第四号に規定する、特定苗木を植栽する土地の上にある立木の伐採につきましては、択伐も皆伐も想定されるところでございます。
伐採方法や伐採面積の上限など森林施業の規範につきましては、森林法に基づき、市町村森林整備計画や保安林における指定施業要件において定められているところでございまして、特定植栽のための伐採をする場合であっても、これらを遵守する必要があると考えております。
○田村(貴)委員 上限は。
○本郷政府参考人 今申し上げましたように、この上限等につきましては、市町村森林整備計画に定められているもの、あるいは保安林における指定施業要件として定められているものがございます。これを遵守するということでございます。
○田村(貴)委員 上限はないということですよね。
レクのときの説明と全然違いますね。ずっと主伐、主伐と担当者の方は言ってこられましたよ。
これは一定量を取らないと植林できませんよね。事業としても成り立ちませんよね。じゃ、今回の特定植栽促進事業というのは、森林の本数密度を調整していく、木材の切り出しは別に前提としないということで考えてもいいんですか。
○本郷政府参考人 ただいまお答えをしましたように、立木の伐採についてでございますけれども、択伐というのは、択伐をした後に植え付けるものでございます。また、皆伐については、皆伐をした後に植え付けるものでございまして、どちらも主伐というふうに位置づけております。
○田村(貴)委員 立ち木が皆伐されるとどうなるのかという大問題があるわけですよ。標準伐期であれば、四十年から五十年は炭素を固定してきたことになります。
しかし、主伐してなくしていけば、その地域における森林の炭素の固定量は一旦ゼロになります。一方、成長が速いエリートツリーを幾ら植栽したとしても、元々あった樹木と同量の炭素を固定するまでには数十年かかります。この法律は二〇三〇年という目標年限に合わせた時限立法であります。主伐をしていけば炭素は逆に増えるということになるのではないでしょうか。いかがですか。
○野上国務大臣 森林吸収量は、主伐を行った場合でも、生産される木材を建築物等に利用していくことによりまして、木材製品による炭素貯蔵量を森林吸収量に計上することになっておりまして、木材利用を進めていくことが重要と考えております。
また、主伐後に成長が速く二酸化炭素の吸収効果の高い特定苗木を用いた再造林を行うということは、長期的には森林吸収量の増大にもつながるものと考えております。
このように、木材利用ですとか再造林を行うことは、大気中の二酸化炭素の吸収、固定を増大していくということにつながるものと考えております。
○田村(貴)委員 そこにあった立ち木を皆伐してしまったら、それは、幾らエリートツリーでも数十年かかるから、二〇三〇年目標には間に合わないんじゃないか。誰でも分かる議論なんですよね。
そして、大臣は木材利用というふうに言われました。木を切れば、木材加工製品となる部分はあります。しかし、廃棄される部分もあります。また、発電等で燃焼されてCO2を出す部分もあります。このプラスマイナスをちゃんと見極める必要があります。
資料をお配りしています。一の1、これは、農林水産省から出してもらった数字なんですけれども、ちょっと分かりにくいので、裏に解説の資料も出しています。上の表が目標値、そして下の表が一九九〇年以降のトレンドにおける実績値であります。
この下の表を御覧いただきたいと思います。建築、これは木材加工の大半を占めるんですけれども、建築については、イン、すなわち着工が、アウト、すなわち解体や廃棄より下回っています。その他の木材製品についても、インよりアウトの方が大きいわけであります。
木材加工品の大部分というのは住宅でありますけれども、新規住宅着工件数、これは減少傾向でありますよね。そして、コロナ禍の今、更に低迷しています。こういったことを考えていけば、木材加工、伐採加工品、これを吸収源として捉えるのは根拠が非常に乏しいと言わざるを得ません。
この法案は二〇三〇年を目途としており、あと九年では、エリートツリーを吸収源にカウントしたとしても間尺に合いません。造林未済地、たくさんあるわけですけれども、造林未済地に植林するならばまだ話は分かりますけれども、主伐とセットで推進することには問題があるんじゃないですか。
続いて、樹木の成長と炭素貯留量の考え方についてお伺いしたいと思います。
杉やヒノキの寿命は二百年から三百年と言われています。寿命ですよ。植物として成熟するのは百五十年前後と言われています。現在の標準伐期は五十年といいますけれども、森林生態学では森林の成長は林齢とともに低下せずに持続するというのが今議論の主流となりつつあります。森林総合研究所の正木隆企画課長さんが、雑誌「山林」でこのように指摘をしています。
資料二を御覧いただきたいと思います。農学博士の藤森隆郎先生の著書「林業がつくる日本の森林」、この本にある森林の発達段階に応じた機能の変化のグラフであります。森林の発達段階、成長段階は五十年から百五十年、老齢段階、百五十年以上であっても森林生態系の炭素貯留量が増加している、このことを示しているわけであります。
そこで、お伺いをしますけれども、温暖化防止には、ただ吸収量を高めることだけに着目するのではなくて、炭素の貯蔵量を高めることも同時に見ることが必要ではないでしょうか。林業の成長産業化ということで、政府は短伐期皆伐の方針を取り続けていますけれども、温暖化対策との関係においては、切らずに森林の体積をなるべく維持することが今重要だと考えられませんか。いかがですか。
○野上国務大臣 森林の成長量は、例えば平均的な杉人工林ですと三、四十年生前後にピークとなりまして、吸収量につきましても若齢林の方が高い傾向にあります。仮に、老齢段階の森林の吸収量が一定程度あるとしても、この傾向は大きく変わらないものと考えております。
このため、将来の森林吸収量の確保に貢献するために、本法案によりまして、間伐等の着実な実施ですとか、主伐後の成長に優れた苗木による再造林を促進することが重要と考えているわけであります。
さらに、木材は、二酸化炭素を固定するとともに、他の資材と比較しますと製造時のエネルギー消費が少ない省エネ資材でありまして、森林資源を持続的に循環利用していくことで、二〇五〇年のカーボンニュートラルの実現に貢献していくものであると考えております。
○田村(貴)委員 そうです、菅首相が二〇五〇年のカーボンニュートラルを宣言したんです。でも、今、熱い焦点は二〇三〇年の中間目標ですよ。この特措法だって二〇三〇年じゃないですか。二〇三〇年に向けて温室効果ガスをいかに削減させていくかということであります。長伐期多間伐の施業というのが最善の方策であると考えますが、違いますかね。いかがですか。
○本郷政府参考人 お答えを申し上げます。
今お示しになられました森林・林業基本計画に基づきまして、森林の公益的機能を発揮しつつ森林の成長産業化を図るということで、木材の生産を行いつつ、森林の吸収量、そういうものも高めていくというような取組を行っているところでございます。
間伐を続けていくということも重要でございますし、木材の需要に応じて木材を生産するということが日本の国の森林・林業にとって必要なことと考えているところでございます。
○田村(貴)委員 二〇三〇年目標値に対してどうなのかということなんですよね。
大臣、先ほど、木材加工が非常に大事だと言われました。私、資料を、ちゃんと説明してもらって、その上で、こういう現実があるんだということで今日わざわざお配りしているんですけれども、建築においても、その他の木材利用においてもコロナの前からこういう傾向なんですよ。そして、コロナ禍の今、やはり今家を建てるのは低迷しますよ。そして、木材加工というのは、こういう傾向にある中で、やはり、ここに活路を見出すといっても、それは限界があるんじゃないですか。だから、主伐はやはりやめるべきだと思います、こういう現状から見ても。
大臣はここの木材加工で吸収量を増やすと言うけれども、現実はそうなっていないということについてはどうお答えになりますか、大臣。
○本郷政府参考人 まず、二〇三〇年の目標についてでございます。二〇三〇年の目標については、これまでも、森林の間伐を適切に行い、二〇三〇年の目標を達成するということでございます。
木材の生産を需要に応じてしていくという中で、再造林をきちっと進めていくことは、更にその先の長期的な観点から進めていく必要があろうと考えております。今回、再造林を行うに当たって、特定苗木を植えることを促進し、長期的な吸収量の確保に努めてまいりたいというふうに考えております。
また、木材につきましては、今申し上げましたように、国産材の需要に応じて供給をしていくことが大切だというふうに考えておりまして、木材の二酸化炭素をきちっと固定したものを都市に、あるいは町に第二の森林として維持することによって、森林における吸収、蓄積と、更に都市における木材の蓄積を合わせていくことによって、吸収量を増やしていきたいというふうに考えております。
○田村(貴)委員 何十年先の話をしているんですかね。これは時限立法でしょう。そういう話をしているわけですよ。今、吸収量を維持し、そして高めていかなければならないということですよ。皆伐してしまったら、その途端にゼロになっちゃうんですよ。木材加工に回してもこういう状況はあるんですよ。そこを踏まえないといけないと言っているんです。
それから、林野庁の資料にある自然的社会的条件のよい地域というのは、これは生産性の高いところで、保安林も含まれるというふうに理解しています。保安林は含まれますよね。尾根筋や谷筋といった保安林を含めて主伐してしまえば、炭素の放出だけではなくて、災害防止、水源涵養、こうした公益的な機能が損なわれるのではないかと思いますが、いかがですか。
○野上国務大臣 森林の有します公益的機能を持続的に発揮させるためには、立地条件に応じた適切な伐採が行われることが重要であると考えております。
このために、森林法に基づきまして、今お話のありました保安林につきましては、指定目的に沿った指定施業要件を定め、さらに、その保安林を含む森林全体につきましては、森林計画体系の中で、山地災害防止機能の発揮など、森林が求められている機能に応じてゾーニングを行うとともに、尾根筋や谷筋に保護樹帯を設けるなど、伐採方法等の規範を定めております。
これに基づいて、都道府県、市町村が適切な指導を行うこととしておるところであります。
○田村(貴)委員 保安林の伐採の上限は二十ヘクタール。皆伐も可能であります、日本においては。ドイツでは、全ての州で最高二ヘクタールまでしか皆伐を認めていません。日本の規制は非常に緩いと言わなければなりません。
日本は、森林の半分は保安林です。水源涵養林がほとんどであります。そもそも、保安林は主伐の対象に入れてはいけないのであります。計画から外すべきであります。
続いて、災害との関連について質問をします。
資料の三を御覧いただきたいと思います。「台風十九号 「皆伐」跡で崩落多発」、毎日新聞、二〇一九年十二月十七日の記事であります。過去の豪雨災害でも皆伐と見られる跡地から土砂が崩落したケースが多発していることを、この毎日新聞は報じています。
おととしの台風について、それから、死者、行方不明者四十二人を出した二〇一七年の九州北部豪雨、毎日新聞の調査によると、伐採届を分析したら、一五年の四月から災害までの三百九十九件中百二十九件が皆伐だったと。そして、林業目的と見られる一ヘクタール以上の皆伐跡地十二件については、国土地理院が豪雨直後に公表した航空写真と照合したら十件で土砂崩れが起きていたということで、非常にリアルな事実であります。
災害と林業というのは密接に関わっています。皆伐が土砂の崩落を引き起こして、河床の上昇を招いて、甚大な被害を河川流域に及ぼしている。このことをしっかり認識されているでしょうか、林野庁は。そして、昨年の七月豪雨での熊本県の球磨川、一昨年の台風による宮城県丸森町、こうした個別の事例で検証はちゃんと行われているんでしょうか。いかがですか。
○本郷政府参考人 お答えをいたします。
近年、地球温暖化の影響もあり、記録的な豪雨や台風による土砂流出や倒木等の山地災害が多発しております。平成二十九年の九州北部豪雨などの記録的な豪雨による災害の発生メカニズム等についての専門家による検証においては、森林の機能を大きく超える自然の力が働いた結果発生したものとの報告がなされています。
このように、皆伐地であるか否かにかかわらず災害は発生するということでございますけれども、伐採に当たっては適切な方法を取るべきと考えております。
伐採が無秩序に行われることは適切ではないと考えておりまして、森林法に基づく様々な規範、市町村森林整備計画の中で立てられている伐採方法を遵守すべきというふうに考えております。
森林については適切な整備などを行うことが重要であって、危険な箇所については、谷止め工による渓床勾配の安定や山脚の固定を図るなどの治山対策が必要であり、また、頻発する河川の決壊などの洪水被害に対して、流域全体での治水対策を進めることにより被害の防止、軽減を図っていく必要があると考えており、上流の森林が有する国土保全の公益的機能の発揮が重要であると考えており、しっかり取り組んでまいりたいと思っております。
○田村(貴)委員 いろいろ言われましたけれども、答弁の中で、森林の機能を超える大きな力が働いていると。そうなんですよ、気候が異常なんですよ。異常気象によってまさに深層崩壊まで雨が降る、こういう事態の中で一層森の機能というのは守っていかなければならないんじゃないんですか。それを、私、九州ですけれども、各地に短伐期皆伐主義ではげ山がいっぱいあるわけですよ。そこが、大雨が降ったらどうなるのか。想像を超える土砂崩れが起こるわけですよ、起こっているわけですよ。そして、河川の流域住民に対しては甚大な被害が起こっていると、検証記事も出ているじゃないですか。だから、ここを大事にしなければいけないと言っているんですよ。
政府はこの間、林業の成長産業化のために短伐期皆伐主義の施業を後押ししてきました。災害時に皆伐跡地で崩落が多発している現実があるわけであります。このことをしっかりと省みなければなりません。炭素の固定量を最大化するためには、長伐期多間伐の施業が最善の策であります。この施業への支援をもっと強めるべきではありませんか。そのことを強く要求して、今日の質問を終わります。
○高鳥委員長 次に、藤田文武君。
○藤田委員 日本維新の会の藤田文武でございます。
今日は法案質疑ということで、ちょっと細かいところも含めてお聞きしていきたいと思います。
本法案は、背景に二〇五〇年のカーボンニュートラルの実現というのがありまして、国際的な温暖化防止のためにCO2吸収が必要だということがあります。その中で森林吸収量を上げていこう、その中で間伐が大事だよということでありまして、ただ、ここからいわゆる間伐を推進するにも、私が構造的な問題にちょっと触れたいなと思うのは、伐採してもなかなか事業として厳しいよ、こういう現実があります。なかなかもうけが出ない。その中で、今回は、支援措置が延長されるということと、それから、再造林を促進する措置の創設がなされる、こういう構造だと思っているわけであります。
何でもかんでも、なかなか、事業が非常によい形で成り立つというのは難しいと思うんですけれども、だから守っていかないといけない部分ももちろんあるし、保護していかないといけないものもある。一方で、補助金等をやっていると、なかなか自立できない、自分の足で立てない、こういうちょっとした、何というんですかね、もやもやの中でバランスを取らないといけないというのが現実であります。
その中で、木材資源をうまく活用してどのような産業化を目指していくかというのは非常に重要だなというふうな観点から、幾つか質問をさせていただきたいと思います。
杉、ヒノキ、松等の建築材など、経済的な木材として植林されているわけでありますけれども、これは、国際的な価格競争にある種巻き込まれているということが言えると思います。間伐した樹木又は適齢樹をどのように活用していくかというのは、出口戦略がやはり大事ですね。森林吸収量を上げるために間伐を促進しても、出口戦略が必要だというのがあります。
これらの間伐、再植林を進めていくために、今後の樹木の活用方法の展望というのを、出口戦略をどのようにまずお考えかということをお聞きしたいと思います。
○本郷政府参考人 お答えいたします。
林業、木材産業の成長産業化の実現については、国産材の安定供給体制の構築とともに、都市部などにおける民間の非住宅・中高層建築物や建築物以外の多様な分野における木材の利用の促進を通じて、国産材の需要を拡大することが重要と考えております。
このため、公共建築物の木造化、木質化に加え、民間企業のネットワークによる木材利用の情報共有や、内装の木質化等の効果検証、普及、木材のよさや利用意義の情報発信等の支援をすることにより、木材利用を促進していく考えでございます。
また、低層非住宅分野における国産材利用に向けたJAS構造材、あるいはCLT、直交集成板と言われているものでございますけれども、そういうもの、それから、中高層分野における木造化、木質化に向けた木質の耐火部材等の新たな製品、技術の開発、普及を進め、しっかりと国産材の需要を大きくしてまいりたいと思っております。
また、付加価値の高い木材製品の輸出ということを促進してまいることにより、木材の出口をきちっと拡大しながら成長産業化を進めてまいりたいというふうに思っております。
○藤田委員 ありがとうございます。
ちょっとコスト戦略についてお聞きしたいと思います。
私、林業は門外漢ですから、いろいろ、ちょっと勉強しました。いろいろ統計資料を見ていると、山元立木という、いわゆる川上ですね、川上から川下で考えると、川上のコスト、いわゆる原価というのは全国平均で三千六十一円というふうになっているんですけれども、令和元年度、杉の平均価格。製材品価格になると六万六千七百円。結構原価率というのは低いんやなというふうに素朴に思いました。
つまり、中間コストというのをどう抑えていくかというのが産業の肝なんだろうなというふうに思料するわけでございます。こういう川上から川下に至るまでの俯瞰したコスト戦略というものをうまく支援してあげるということが非常に大事なことだろうなというふうに思うわけでありますが、具体的に考えている対策等があれば、教えていただけたらと思います。
○本郷政府参考人 お答えをいたします。
今委員お話をされましたように、製品、製材品の価格に対して山元の立木の価格というのは非常に低い状況にございます。これは、途中のコストがそこにかかっているということで、最終製品の価格からコストを引いていくと、結局山元に残るのはこの三千何がしということになるわけでございます。
山元への還元を図っていくために、コストダウンということが非常に大事な政策だというふうに考えておりまして、原木生産、加工、流通の各段階においてコストの削減あるいは安定供給の構築を進めていくことで、少しでも木材の価格を上げていくということが重要と認識しております。
このため、農林水産省では、原木生産段階では、施業の集約化、路網整備、高性能林業機械の導入、林業イノベーションによる施業の効率化を図りたいと考えております。また、加工段階においては、木材加工施設の規模拡大や生産性向上に資する施設の整備を図ってまいりたいというふうに考えております。流通段階においては、川上の供給から川下の需要までの事業者をマッチングして、効率的な流通が図られるような支援を行っているところでございます。
引き続き、これらの取組を進め、国内市場における国産材の競争力を強化し、林業、木材産業の成長化を実現してまいりたいと考えております。
○藤田委員 ありがとうございます。
今、流通の話、ちらっとだけ触れていただきました。需要側と供給側の情報共有は非常に重要ですし、それから、サプライチェーンの再構築ということも重要な課題となってくると思います。一定の競争力を推進していくような枠組みだったり取組というのは必要だと思いますが、木材流通に関しての行政の取組、今考えておられるものがあれば、教えていただけたらと思います。
○本郷政府参考人 木材流通に関してでございます。需給のミスマッチを起こさないように、生産、加工の事業者が、需要者のニーズに応じた、マーケットインの発想に基づく木材製品の安定的な供給体制を構築することが重要だというふうには認識をしております。
木材流通に施策を講ずることはなかなか難しい面もございますけれども、農林水産省では、効率的なサプライチェーンの構築に向けて、木材生産の現場となる川上から木材を利用する川下までの各段階の事業者が参画する、サプライチェーンマネジメント推進フォーラムを設置しております。また、事業者マッチングの調整を行うコーディネーターの育成、ICTを活用した需給情報の共有、利用、このような取組を支援しているところでございます。
このような取組を通じて、需要に応じた木材をマーケットインで供給することにより、流通全体の効率化を図るとともに、需給のミスマッチの解消に努めてまいりたいと考えているところでございます。
○藤田委員 ありがとうございます。
いろいろ調べていったり勉強したりすると、グローバル市場において、日本の林産業というもののポジショニングというか、立ち位置というのは非常に難しいなと思いました。
いわゆるグローバル市場に伍して戦える、席巻していくような成長産業、成長産業化とおっしゃいますが、成長産業までいけるポテンシャルがあるかというとなかなか難しいという現実の中で、需要を増やしていくというのは、主に、多分、国内のことを今お話をいただいたんだと思うんですけれども、日本の林産業の立ち位置というものをどのように捉えていくかということの御所見をいただけたらというふうに思います。
○野上国務大臣 今お話のありました林業のグローバル戦略ということでありますが、林業、木材産業の成長産業化ということを考えていくときに、国産材の利用の促進と安定供給体制の構築が必要であります。
国内のことにつきましては今ほど来いろいろ御議論いただいたところでありますが、国産材の利用について、公共建築物の木造化、木質化に加えまして、民間企業のネットワークを活用しながら、JAS構造材、CLTですとかあるいは木質耐火部材等を用いまして、非住宅・中高層建築物を始めとして、様々な分野で木材利用の拡大を進めてまいりたいと考えております。
また、国産材の供給体制につきましては、林業イノベーション、路網整備、あるいは原木生産の生産性の向上等々を目指し、木材加工の規模拡大、生産性向上に資する施設整備とともに、川上から川下までの事業者のマッチング推進などによって流通を効率化するなど、低コストで安定した供給体制を構築してまいらなければならないと考えております。
さらに、国外に向けてグローバル戦略をどうしていくかということでありますが、国産材の輸出拡大に向けましては、やはり、高付加価値な製材及び合板を重点品目として、マーケットインの発想に基づいて、川上から川下までの企業等が連携した輸出産地を育成する、それとともに、ジェトロ等と連携した日本産木材製品のブランド化を進めていく、また、輸出先国のニーズ、規制等に対応した製品開発を進めていく、やはりこういうことを進めていかなければならないと思っておりますし、国内外における国産材の競争力の強化ということに取り組んでまいらなければならないと考えております。
○藤田委員 ありがとうございます。
では、次に行かせていただきます。特定母樹について。今の特定母樹の植林についての進捗状況を、まずお答えいただけますでしょうか。
○本郷政府参考人 お答えを申し上げます。
平成二十五年の間伐特措法の改正により特定母樹の増殖の取組を進めてきた結果、令和元年度現在、北海道、九州を中心とする二十五道府県において採種園や採穂園の整備が行われ、二百八十八万本の特定苗木が生産、出荷されているところでございます。
造林される、植林されている面積については、今手持ちはございませんけれども、この二百八十八万本の苗木でおおよその推定をすれば、千ヘクタールの造林がなされているというふうに考えております。
○藤田委員 ありがとうございます。
特定母樹は花粉症対策にも資するということも、これは面白いなと思って、私、受け止めているんですけれども、実際に今、東京都民の半数ぐらいが花粉症だというふうに言われていて、私もちょっと花粉症ぎみなんですよ。なかなかこの季節はしんどいんですけれども。その対応というのは一方で重要になってくると思うんですけれども、この取組について教えていただけますか。
○本郷政府参考人 お答えをいたします。
特定母樹については、成長に優れていることに加え、花粉の量が一般的な品種のおおむね半分以下であるものを指定しているところであり、特定母樹由来の苗木の普及や植栽が進むことは花粉発生源対策にも貢献するものと考えております。
農林水産省では、特定苗木も含めた花粉症対策に資する杉苗木生産量を、令和十四年度、二〇三二年度までに約七割に増加させることを目標として生産量の拡大に取り組んでおり、令和元年度の生産量が千二百十二万本まで増加し、杉苗木の年間生産量に占める割合は約五割に達したところでございます。
花粉症は国民の四割が罹患されている重大な課題であり、引き続き関係省庁と連絡しながら花粉症対策に取り組んでまいりたいと考えております。
○藤田委員 ありがとうございます。
特定母樹の造林推進における特定増殖事業というのは認定を受けた事業者が行えるわけでありますけれども、この認定の状況を見ると、結構、地域的な偏在がやはり課題だと思うんですね。北海道と九州に偏っている。理想と隔たりがあると思うんですけれども、どのように認識しているか。それから、今後の植栽事業も同じような構図にならないかということも言えるわけでありますけれども、事業者を増やしていくということの取組についてお聞きしたいと思います。
○本郷政府参考人 特定増殖事業者は、現在までに十道府県で五十五件が認定されておりますが、委員がおっしゃられるように、北海道や九州に偏っているという現状にございます。これは、特定母樹の増殖が再造林の需要が大きい地域で先行しているということによるものであり、全国的な普及に向けた取組を引き続き実施することが必要と認識しております。
主伐後の再造林を確実に進めていくということが重要でございまして、今申し上げた再造林をきちっと進めるということを推進していくことにより、再造林の需要に応じて特定増殖事業者が認定できるように取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○藤田委員 なかなか、答弁を聞いていても、結構大変なんだなというふうに思いました。
今後の間伐推進についての話で、京都議定書における第二約束期間、二〇一三年から二〇二〇年の間伐状況なんですけれども、目標値を下回っていて、非常に厳しい状況であるというのが出ています。でも、一方で、森林吸収量というものを見ると、目標値を上回って推移している。一方で目標を下回っているけれども、一方で結果としては達成している、こういう状況が不思議だなと思うわけですけれども、このメカニズム、これの理由をどのように認識されておられるか、お答えいただけますでしょうか。
○野上国務大臣 今御指摘のありました、京都議定書の第二約束期間における森林吸収源対策の取組でありますが、間伐につきましては、対象地の奥地化ですとか森林所有者の経営意欲の低下等によって目標面積を下回っているということであります。
一方で、第二約束期間から森林吸収量として新たに計上することになりました木材製品、HWPと言っておりますが、これによりますCO2の貯蔵量が国産材の利用の伸びに応じて着実に増加しているといった状況になっておりまして、我が国の人工林の高齢級化に伴いまして、近年、森林吸収量は減少傾向で推移をしてきているわけでありますが、そういう中で、最新の二〇一八年度の実績は四千七百二万二酸化炭素トンでありまして、二〇二〇年は三千八百万二酸化炭素トンでありますので、目標を上回っているという状況になっているわけでございます。
○藤田委員 ありがとうございます。いずれにしても、吸収量の目標達成に向けて動いていかないといけないわけであります。
二〇三〇年のCO2吸収量の目標達成に対して、一年間当たりどの程度の面積の間伐を行う必要があると見積もっておられるかということ。それから、大事なことは、ふだん手入れができていないような林業者さんが多いというふうに聞いています。そもそも、そこまで手が回っていない。それらにおいては、この法案によってそれが進むんだろうかということがありますけれども、行政が想定する間伐などの手入れが行われていくようなことを想定しておられるのか、お聞きしたいと思います。
○本郷政府参考人 お答えをいたします。
二〇三〇年度の森林吸収量の目標達成に向けては、通常の人工林の間伐の頻度を踏まえて、令和三年度から令和十二年度まで、年平均四十五万ヘクタールの間伐が必要と考えております。
この間伐を推進していくためには、本法案により、国から市町村への交付金の交付や、国からの補助金に係る地方負担に対する起債の特例といった国の支援措置を引き続き講じることとしております。
また、委員がおっしゃられました、間伐を推進していくためには森林所有者の負担を軽減するという取組も必要でございますし、森林所有者が自ら行えないような森林については、森林経営管理制度に基づいて、森林環境譲与税も活用して、条件不利地の間伐の実施を進めてまいることとしております。
本法案による措置に加えてこれらの措置を推進していくことで、必要な間伐の実施を進めてまいりたいと考えております。
○藤田委員 ありがとうございます。
林産業の全体を見ていますと、割と保守的な政策で、私は適しているなというふうに評価しています。だから、いいと思うんですけれども、最後に触れられた森林経営管理制度、制度化されて、これによって間伐も効率的に実施されていくと見込んでおられると思うんですけれども、最新の進捗状況を最後にお聞きしたいと思います。
○本郷政府参考人 お答えをいたします。
森林経営管理制度の令和元年度の取組状況については、私有人工林のある市町村の約七割において意向調査やその準備に取り組み、意向調査については約十五万ヘクタールで実施されたところでございます。
令和元年度が初年度でございまして、現在、本年度に入りまして、森林所有者から市町村への経営管理の委託も本格化しつつあり、十月時点で、約六十市町村、約千二百ヘクタールにおいて経営管理権集積計画が策定され、市町村が経営管理権を取得しております。
現在、本年度に入っての取組でございますので取りまとめ中でございますけれども、例示的にお話を申し上げれば、埼玉県の秩父市や静岡県の富士市などで林業経営者への再委託が設定されている、石川県の志賀町などでは、市町村が森林環境譲与税を活用し、公的に、手入れの行われていなかった森林の間伐を実施する取組も始まっているところでございます。森林経営管理制度に係る取組については、順次進みつつあるものと認識しているところでございます。
○藤田委員 ありがとうございます。この制度、これからということですから、現場はいろいろあると思いますので、また是非進捗を追いかけていただけたらと思います。
ありがとうございました。
○高鳥委員長 次に、玉木雄一郎君。
○玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。
法案の中身に入る前に、まずお伺いしたいと思います。外国資本による森林買収の現状についてであります。
平成二十三年に届出制ができてから大分たちましたけれども、定期的に農水省からも報告されていると思いますが、この外国資本による森林買収の現状について、まず教えてください。
○野上国務大臣 外国資本による森林買収の状況でありますが、平成二十二年以降、毎年、都道府県を通じて調査を行っておりまして、直近の調査であります令和元年実績では、三十一件、百六十三ヘクタールの外国資本による森林買収を把握しております。北海道における取引件数が多いわけでありますが、取得目的については資産保有や別荘用地などと報告をされているところでございます。
○玉木委員 より正確に言うと、日本国内に所在する外国資本の入った企業による買収と併せてこれまでの累計を、それぞれ教えてください。
○本郷政府参考人 お答えを申し上げます。
平成十八年から令和元年の十四年間の累計は二百六十四件、二千三百五ヘクタールでございまして、これは、平成二十二年度の調査時に平成十八年まで遡って以降、調査を始めて現在に至っているところでございます。
○玉木委員 外国じゃなくて国内にある外国資本の個人、法人が取得した件数と累計の面積も、併せて教えてください。
○本郷政府参考人 済みません、申し訳ございませんでした。今委員がおっしゃられました、国内の外資系企業と思われるものでございます。各都道府県で知り得る限りの情報として外資系企業と思われるものというふうに考えられるものを取りまとめたものでございますけれども、平成十八年から令和元年の事例の累計は二百一件、五千二百五十五ヘクタールでございます。
○玉木委員 面積としてはそちらの方が大きいんですよね。
もし分かれば教えてほしいんですが、そのうち、外国に所在する個人、法人が取得したもの、そして国内にある外国資本の個人、法人が取得したもの、両方の概念でいいんですが、その森林のうち、防衛関連施設から近接している、例えば一キロ以内にあるものというのは存在しているのかどうか、それを把握しているかどうか、教えてください。
○本郷政府参考人 済みません、そのような観点で把握している数字は持っておりません。
○玉木委員 昨年の十二月に「国土利用の実態把握等のための新たな法制度の在り方について」という、有識者会議が政府の中につくられています、その中にどう書かれているかというと、政府として複数の関係省庁が所有する情報を一元的に集約、管理し的確な分析を行う体制及び仕組みの整備が必要だと書いていますね。
森林所有については、ずっと議論していますけれども、内外無差別の、WTOのガットの原則もありますし、一方で安全保障の観点からしっかり注視しなきゃいけない、難しい中でのバランスを取る中で、少なくとも情報集約をして分析はしよう、その体制をつくろうということが必要なので、農水省が森林とかについては把握していますけれども、それをNSCとか防衛省とか国土交通省とかと、各省の情報共有がまだできていないんですよ。
私は、いたずらに私権を制限しろとは言いませんけれども、少なくともそういった一元的な情報共有、管理の仕組みはすぐにつくるべきだと思います。去年の骨太方針にも書かれていますよね。ここは是非、農林水産省としても他省庁とよく連携を取って進めていただくことを、まず冒頭にお願いを申し上げたいと思います。
次に、法案の中身に入りたいと思います。
同僚議員からも質問がありました。間伐の面積が近年減少しているということなんですけれども、確かに、第二約束期間の、二〇三〇年までの年間目標、四十五万ヘクタールですけれども、二〇一八年の時点で既に三十七万ヘクタールになっておりまして、目標値を下回っていますね。その原因としては、いろいろおっしゃっていました。経営が厳しいとか、いろいろなことをおっしゃっていました。
私が伺いたいのは、二〇五〇年カーボンニュートラルを総理が高々と、通常国会の冒頭、掲げたわけですね。二〇三〇年までは一応、四十五万ヘクタール平均でいきましょうと、二千七百八十万CO2トンを森林吸収量の目標として定めていますが、その先の二〇五〇年カーボンニュートラルってめちゃくちゃ難しいと思うんですよ。それは、再生可能エネルギーの議論をするときも同じような議論があるんですけれども、冷静にいろいろなことで考えたら、ありとあらゆることを集めてもめちゃくちゃ難しいと思うんですよ。そうなんですね。
だから、ネットでニュートラルにしていくということですから、じゃ、森林吸収源というのをどれだけ想定するのか。それを実現する手段として間伐だ造林だとあるんですが、この二〇五〇年までのカーボンニュートラルを実現するためには、二〇三〇年を更に超えて二〇五〇年まで、どういう森林吸収量の目標を持っているのか、そのための間伐面積の目標と造林面積の目標を少なくとも、政府として目標を掲げたんだから、じゃ大体これぐらいのと。まあ、幅は持っていいと思いますよ、三十万ヘクタールなんだ、二十万ヘクタールなんだ、その道筋は示す責任があると思います。
改めて伺います。二〇五〇年のカーボンニュートラルの達成に向けた間伐面積の目標値をどのように政府として捉えていますか。
○本郷政府参考人 間伐につきましては、森林の賦存状況によって何年に一回間伐することを標準的な施業として考えるということで、五十年生までのものは十年に一回、それを超えるものは二十年に一回というような仮定を置いて必要な間伐面積を算定しているところでございまして、二〇五〇年に向けて、まだしっかりと計算しているわけではございませんけれども、四十五万ヘクタールよりは減っていくものというふうに考えているところでございます。
なお、二〇五〇年のカーボンニュートラルに向けた対応については、今後改定が予定されております地球温暖化対策計画などを政府全体において検討される中で、林野庁においても森林や木材分野で一層の貢献ができるよう検討してまいりたいというふうに考えております。
○玉木委員 二〇五〇年カーボンニュートラルは政治的に決めた目標だと思いますし、官邸主導だったと思います。この法案を去年、閣法として審議しているときには、私は正直、余り想定していなかったと思うんですよ。もし二〇五〇年までの目標を立てるんだったら、十年の延長の特措法でいいのかということも含めて本当は考えるべきだと。
ここは、林野庁、農水省、勝負のときですよ。あの大きな目標を立てたんだったら、もっと意欲的な目標を掲げて、今、林野庁長官は、非常に正直だから、次の目標は四十五万ヘクタールよりも少なくならざるを得ないとおっしゃっていましたけれども、それで達成できるんですかね。
何で私がこういうことを言うかというと、やはり林業というのは何十年単位ですよ、我々の寿命よりも長く構想してやらなきゃいけない数少ない政策の一つですよ。だからこそ、二〇五〇年という目標を立てたんだったら、この法案はもっと違った形になるべきだったのではないかと思うぐらいなんですよ。
だから、まだ今は立てていない、あるいは四十五万ヘクタールよりも少なくなるかもしれないではなくて、いやいや、二〇五〇年カーボンニュートラルを立てたのであれば、総理、これぐらいはやらなきゃいけませんよということを、林野庁としても、農水省としても、ここはもっとどんどん積極的に言うべきなんですよ。我々がこれぐらい引き受けるから、逆に再生可能エネルギーでこれぐらい、これぐらいとかね。そういうことをむしろ今積極的に言う、いいチャンスが来ていると思うんですけれども、大臣、もっとプッシュしませんか、これ。
今、目標をまだ定めていないと言ったんですけれども、少なくとも二〇五〇年カーボンニュートラルを定めた以上は、そこについて何らかの考え方を林野庁として、農水省として持つべきだと思いますが、大臣、いかがですか。
○野上国務大臣 今長官から申し上げましたとおり、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けては、現在、政府全体としまして地球温暖化対策計画の見直し等の議論が進められているところでありますが、総理が所信表明演説で、CO2を吸収できるカーボンニュートラルを宣言したことにつきまして、農林水産業を所管する農林水産省として重く受け止めているところであります。
今後、農林水産分野におきましても、既に開始されつつある技術の社会実装ですとか、あるいは革新的な技術、生産体系の開発、その後の社会実装等々の議論も含めて、カーボンニュートラルの実現に向けて貢献をしてまいりたいと考えています。
○玉木委員 是非、積極的にアグレッシブにここは攻めていただきたいということ。チャンスですよ、本当に、林野庁にとっても、農水省にとっても。是非頑張っていただきたいということを申し上げたいと思います。
次に、木材利用促進法施行から十年が経過して、宮腰先生ともいろいろやったのを覚えていますけれども。あのときはどう言ったかというと、まずは公共建築物に入れたら、それと相関して民間でも自動的に増えていくみたいな話をしたんですが、必ずしも、低層の公共建築物については一定の進展が見られますけれども、民間の建築物については思うような波及効果が出ていないと思います。
幾つか理由があると思うんですね。CLTなんかを進めようということで、ある程度進んできたと思うんですが。
私、ある建築士の方に聞いたら、なかなかやはり、木造の構造計算ができるような、学校で余り教えないので人材がいないということがあって、これは前から言われているんですが、少し育ってきたと。今ネックになっているのが何かというと、CLTはいいんですけれども、加工できる機械が余りない、ほとんどがドイツ製とイタリア製で非常に少ないと。いっぱい出したいんだけれども、加工ができる工作機器がないので、こういうところもしっかりやはり応援していかないといけないなと。前田建設さんというところがファナックさんのロボットと組み合わせて国産でやっておられる、こういうところの取組は是非応援していきたいと思うんです。
ただ、なかなか、CLT材を加工できる機械が限られているというところも含めてやはり改善していかないと、広く民間の建築物も含めて木造建築は増えていかないと思うんです。十年たって、木材の利用、公共建築物だけじゃなくて民間の建築についても更に促進していく必要があるし、こういった法的な対応も必要だと思いますが、大臣、いかがですか。
〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕
○野上国務大臣 今お話がありましたとおり、二十二年の法施行以来、公共建築物における木造率というのは緩やかに上昇していると思いますが、民間建築物を含めた建築物全体における木造率は四割程度で横ばいをしておりますし、特に非住宅・中高層建築物における木造率が低いわけであります。
このため、農林水産省では、民間企業の木材利用のネットワークの構築ですとか内装木質化等による効果を見える化しまして、木材のよさですとか木材利用の意義というものを伝える取組を支援するとともに、低層非住宅分野における国産材の利用に向けたJAS構造の普及ですとか、あるいは、今CLTのお話がございましたが、CLTも非常に可能性のある部材だと思うんですが、やはりまだコストが高いという部分がありましたり、認知度が低いという部分がありましたり、これは利用が広がっていけばまたコストも下がっていくという部分もあるんですけれども、そういう様々な課題があるところでございますが、このような状況の中で支援をしているところであります。
また、経済同友会を始め民間団体におきましても、地球温暖化対策ですとかSDGsなどの観点から、木材利用、使用する機運が高まっているというふうに考えております。議員立法による法改正なども視野に検討なども行われているというふうに承知しておりますが、民間建築物への木材利用を進めるために、関係省庁とも連携しつつ、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
〔宮腰委員長代理退席、委員長着席〕
○玉木委員 HWPが貯留、固定の観点からも非常に重要だという話がありましたから、CLTも含めて、もっと、もう一段、十年たったので更にここで積極的に進めてもらいたいし、大臣所信にはCLTの普及、都市の木造化ということが書いていますから。是非、大臣、ここはもう一段プッシュして、現状のチェックと把握と、更に推進をお願いしたいと思います。
最後に温暖化に関して、環境省に今日来てもらって、答えていただきたいんですが。
まだ報道ベースでしか実態が分からないんですが、プラスチックのスプーンについても有料化するということが報道されています。レジ袋の有料化もいいんですけれども、あれも本当にCO2削減効果があるのかなという疑問もあってね。施策というのは、やったことを検証した上で、いいものは進める、やめるもの、改めるものをつくっていくというところが大事だと思うんです。
閣議決定はされたと思いますが、プラスチック資源循環促進法ですが、プラスチックのスプーンとかフォークは今度の法律が通ると有料化されるんですか。
○土居政府参考人 プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案におきましては、ワンウェープラスチックの供給事業者にその利用の合理化に取り組むことを求めることとしておりまして、その内容につきましては省令で定めるということにしております。
省令の具体的な内容につきましては、今後、この法律案の国会での御審議をいただいて成立した後に定めることになりますが、小売、サービス事業者等による提供の実態、これを十分に把握した上で幅広く検討していくということを考えております。
その際におきましては、ワンウェープラスチックが無償で無条件に提供されまして過剰に使用されることがないように、有料化でありますとか代替素材への転換なども含めまして、削減に向けて効果的な内容になるように検討してまいりたいというふうに考えております。
○玉木委員 じゃ、具体的な合理化の方策としては、省令で定めるんだけれども、その一つの方策として有料化は入っているということでよろしいですね。
○土居政府参考人 省令の検討におきましては、有料化であるとか代替素材の検討も含めまして、効果的な内容になるようにということで考えてございます。
○玉木委員 今、飲食店はすごくコロナの影響を受けていて、店舗型からデリバリー型に変えようとして、必死になって頑張っているところもあるんですね。そういうところはどうしてもプラスチックのスプーンとかを使っていて、更に追加の負荷がかかるのではないのかと心配されているところもいるんです。
ただ、そういった環境対策は必要なので否定するものではないんですけれども、果たしてやることがCO2の削減に本当にどれだけつながるのかとか、説明責任が大事だと思うんですよ。特に有料化ということになると、事業者にとっても、また消費者にとっても影響が非常に大きいので、そこは、有料化ということも選択肢の一つという答えがありましたけれども、よくよく考えて、その政策効果も含めた説明責任をしっかりと果たしていただくことを強く求めたいと思います。
最後に併せて、繰り返しになりますけれども、二〇五〇年カーボンニュートラルを設定したことは林野庁、農水省にとってはチャンスだと思いますので、省を挙げてこれを新しい施策を進めていく推進力にしていただくことをお願い申し上げ、私の質問を終わりたいと思います。
ありがとうございます。
○高鳥委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○高鳥委員長 この際、本案に対し、田村貴昭君から、日本共産党提案による修正案が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。田村貴昭君。
―――――――――――――
森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○田村(貴)委員 ただいま議題となりました森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
政府は、二〇五〇年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略の中で、森林、木材による吸収や排出削減の効果を最大限発揮するため、利用期を迎え、高齢級化に伴い吸収量が減少傾向にある人工林について、「伐って、使って、植える」という循環利用を確立し、木材利用を拡大するとともに、エリートツリー等の新たな技術も活用し、森林の若返りを進めていく必要があると説明をしております。
しかしながら、このような政府の姿勢は、短伐期皆伐施業中心の林業を推進するものであり、結果として、森林の有する多面的機能が損なわれ、災害の原因につながるものであるため、到底容認することはできません。また、森林を二酸化炭素の吸収源とするのであれば、伐採をしないのが最善であり、政府のグリーン成長戦略の効果には大いに疑問を抱いております。
今回の法改正において、政府は、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向け、生産が本格化しつつある特定母樹から育成された苗木を用いた再造林を促進するための措置を創設するとしておりますが、これはまさしく短伐期皆伐施業を推進するものであり、極めて問題が大きい改正と言わざるを得ません。
そこで、本修正案は、新設される特定植栽に関する規定を削除することとしております。
以上が、修正案の趣旨であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○高鳥委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
―――――――――――――
○高鳥委員長 これより原案及びこれに対する修正案を一括して討論に入ります。
討論の申出がありますので、これを許します。田村貴昭君。
○田村(貴)委員 日本共産党を代表して、森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案について反対討論を行います。
現行法の間伐事業に対する交付金制度は、百年、二百年の長期にわたって間伐を繰り返しながら森を守っている奈良県のような取組にも活用されており、延長は必要であります。
一方、新たに設置される特定植栽促進事業については、主たる改正理由であるCO2森林吸収対策としても有効とは言い難く、削除が必要です。
原案に反対する理由の第一は、本法案が間伐特措法とうたいながら、皆伐を中心とする特定植栽促進事業を盛り込んだからであります。
エリートツリーを植栽するためには、現に立ち木が存在する森を皆伐する計画とならざるを得ません。また、対象区域は、保安林など、谷筋や尾根筋といった山林の国土保全、水源涵養などの公益的機能が高い地域も含まれます。エリートツリーによる植栽は、三十年という短伐期の皆伐が前提であり、水源涵養機能や土壌流出防止機能が回復しないまま、土砂崩れなどの災害が引き起こされる可能性があります。
第二に、本改正の特定植栽促進事業がCO2の吸収作用の保全及び強化という趣旨に沿っていないからです。
温暖化は既に危険な状態にあり、猛暑や豪雨災害など直接的な被害だけでなく、氷河の急速な消失と永久凍土の融解、海洋の温度上昇と酸性化により、永続的な被害がもたらされる一歩手前に来ています。
この危険な状態に際して、七割に及ぶという造林未済地に植林するのならともかく、森に大きな樹木として固定されてきた炭素を皆伐によって放出し、生育に何十年もかかる苗木を植えるというのでは、法の目的にむしろ反すると言わざるを得ません。
最新の研究によれば、森林の炭素貯蔵量は林齢とともに低下せず、持続的に向上するとの結果が提出されています。温暖化対策は、ただ吸収量を高めることだけに着目するのではなく、森林への炭素の貯蔵量を高めることに注力すべきであります。
第三に、政府はこの間、林業の成長産業化のために、森林経営管理法を制定し、国有林法を改正し、森を大量に皆伐する短伐期皆伐方式の施業を後押ししてきました。この路線は、大手製材企業を始めとする林材生産業者の目先の利益を優先するものであります。
今回、間伐の法律の中にまで皆伐を制度に組み込んでまいりましたが、これはこの間の政府の施策の延長線上であり、是認はできません。
以上述べて、反対討論とします。
○高鳥委員長 これにて討論は終局いたしました。
―――――――――――――
○高鳥委員長 これより採決に入ります。
内閣提出、森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
まず、田村貴昭君提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○高鳥委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
次に、原案について採決いたします。
原案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○高鳥委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
―――――――――――――
○高鳥委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、宮下一郎君外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、公明党、日本維新の会・無所属の会及び国民民主党・無所属クラブの五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。亀井亜紀子君。
○亀井委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
案文を朗読して趣旨の説明に代えさせていただきます。
森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
森林は、国土の保全、水源の涵養、二酸化炭素の吸収による地球温暖化の防止等の多面的機能を有しており、これらの機能の持続的な発揮を確保する上で、適正な森林整備を推進することは極めて重要である。
また、パリ協定に基づく我が国の森林吸収量目標の達成や二千五十年カーボンニュートラルの実現のためにも、引き続き、間伐や再造林等の森林整備を通じて、森林吸収量の最大化を図っていくことが極めて重要である。
よって、政府は、本法の施行に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。
記
一 再造林をはじめ、間伐等の森林施業による森林吸収源対策を着実に進めるため、森林整備事業に係る予算の確保及び支援措置を拡充すること。
二 特定母樹の増殖に当たっては、遺伝的多様性に十分配慮すること。また、増殖した特定母樹から採取される種穂の配布に当たっては、地域の苗木生産者が広く利用できるようにすること。
三 再造林に当たっては、適地適木を原則とすること。また、特定苗木を用いた植栽については、地域の実情も踏まえつつ、区域指定や施業の基準となる考え方を国として示すこと。
四 未更新地の解消を図るため、再造林に係る省力化・効率化、苗木供給量の拡大、苗木生産者の支援に係る施策を拡充すること。
五 森林資源の循環利用の確立に向け、林業労働力の育成・確保に向けた施策の拡充、賃金・労働安全対策をはじめとする就業条件改善に向けた対策を強化すること。
六 二千五十年カーボンニュートラルに向けて、木材の利用拡大による炭素貯蔵、二酸化炭素の排出削減効果を最大化するため、本法の措置に加え、CLTや耐火部材等の活用により、公共建築物のみならず民間の非住宅建築物の木造化・木質化を進めるとともに、熱利用など高効率な木質バイオマスエネルギーの活用を推進すること。
七 国有林野事業においても、国有林の一元的な管理経営の下、再造林、間伐等の森林整備が着実に推進されるよう、適正な人員等の確保、人材の育成、技術の継承等に努めること。
八 台風等の自然災害による森林被害や山地災害が頻発している現状に鑑み、災害からの復旧を迅速化し、今後の災害発生を予防する観点から、間伐をはじめとする適切な森林整備を推進するとともに、災害発生リスクの増大を踏まえた治山対策を強化すること。
右決議する。
以上です。
何とぞ委員各位の御賛同を賜りますよう、お願い申し上げます。
○高鳥委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○高鳥委員長 起立多数。よって、本法律案に対し附帯決議を付することに決しました。
この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣野上浩太郎君。
○野上国務大臣 ただいまは法案を可決いただき、ありがとうございました。附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
―――――――――――――
○高鳥委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
〔報告書は附録に掲載〕
――――◇―――――
○高鳥委員長 次に、農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省農村振興局長牧元幸司君及び水産庁長官山口英彰君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○高鳥委員長 有明海及び八代海等を再生するための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。
本件につきましては、加藤寛治君外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、公明党、日本維新の会・無所属の会及び国民民主党・無所属クラブの五派共同提案により、お手元に配付いたしておりますとおり、有明海及び八代海等を再生するための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案の起草案を成案とし、本委員会提出の法律案として決定すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。大串博志君。
○大串(博)委員 有明海及び八代海等を再生するための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案の起草案につきまして、提出者を代表して、その趣旨及び主な内容について御説明申し上げます。
本法は、平成十二年の有明海におけるノリの大不作を契機に、平成十四年に議員立法で制定した法律であり、海域環境の保全、改善等を図るための特定の漁港漁場整備事業への補助割合の特例等を内容とし、有明海及び八代海等の再生を目的とするものであります。本法に規定された漁港漁場整備事業の補助割合の特例措置は、平成二十三年の改正により、期限が延長され、令和三年度末が期限となっています。また、当該事業については、公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律により地方債の特例等の財政措置が行われてきましたが、令和二年度末で同法の期限が到来することとなっております。
しかしながら、有明海及び八代海等の再生は道半ばであり、地方公共団体が行う事業実施に支障が出ないようにするためには、補助割合の特例の期限を延長するとともに、地方債の特例等の財政措置を本法に追加する法改正を行う必要があります。
次に、本起草案の主な内容につきまして御説明申し上げます。
第一に、県計画に基づいて令和三年度から令和十三年度までの各年度において地方公共団体が行う特定の事業に係る経費について、国の補助割合の特例を設けることとしております。また、当該事業の経費については、地方債をもってその財源とすることができることとしております。
第二に、国及び地方公共団体は、有明海及び八代海等の海域等において、海岸漂着物の処理に努めなければならないこととしております。
第三に、有明海・八代海等総合調査評価委員会は、毎年、その所掌事務の遂行の状況を分かりやすい形で公表するものとしております。
なお、この法律は、令和三年四月一日から施行することとしております。
以上が、本起草案の趣旨及び主な内容であります。
何とぞ速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
―――――――――――――
有明海及び八代海等を再生するための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○高鳥委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
本件について発言を求められておりますので、順次これを許します。神谷裕君。
○神谷(裕)委員 立憲民主党・無所属の神谷裕でございます。
まずは、この法案を取りまとめていただいた発議者の皆さん、そして関係者の皆様に心からの敬意を表したいと思います。本当に御苦労さまでございました。お疲れさまでございました。
それでは、早速発言をさせていただきます。
国民にとって貴重な自然環境及び水産資源の宝庫である有明海及び八代海を豊かな海として再生することは極めて重要であります。この法律が今まで果たしてきた役割及び今回の改正の必要について、また、指定地域内においても、海域により漁獲や環境の違いがかなり大きいとされるため、海域ごとのきめ細やかな対応が必要であると思いますが、発議者のお考えをお聞かせをいただきたいと思います。
○大串(博)委員 本法は、平成十二年の有明海におけるノリの大不作を契機として、貴重な自然環境及び水産資源の宝庫である有明海等の海域環境の保全及び水質資源の回復による漁業の振興を期して、平成十四年に議員立法により制定された法律です。
制定以来、本法や公害財特法に基づく財政措置を活用しつつ、有明海、八代海等の再生に向けた様々な取組が行われてきておりまして、一部の海域や水産資源で漁獲高の回復が見られるなど、一定の効果が現れてきているものと承知をしております。
しかしながら、一口に有明海、八代海等といっても、範囲が大変広うございます。個別の海域で取れる水産資源の内容も異なりますし、もちろん漁獲の方法すらかなり違う、こういう状況であります。また、それぞれの海域の環境の改善の状況も異なっておりまして、一部の海域では今なお漁獲量も改善していない面もありますし、また、水質あるいは海底の底質、これらも改善に至っていない面があるところもあります。
例えば、佐賀県で申しますと、佐賀市に近い一番北の方、湾奥部と言いますけれども、湾奥部においては例えばノリの漁獲量も質、量共に回復してきていると言われてはおりますけれども、例えば、より諫早湾干拓に近い佐賀県の西南部においてはノリやあるいはタイラギなどの養殖漁獲に関しては依然として厳しい状況があるという状況です。
このような状況にありますので、引き続き道半ばにある有明海、八代海等を再生して、海域全体における環境の保全及び水産資源の回復を図っていくためには、本法律を成立させ、引き続き、国、地方公共団体、地元漁協などが一丸となって再生に向けた努力を続けていく必要があると考えています。
その上で、個別の海域での水産資源あるいは漁獲方法等が異なること、及び環境の改善の状況が異なることなどを十分踏まえながら、海域ごとの水産資源の回復等の状況に十分配慮した、きめ細かい取組を行っていく必要があるというふうに考えています。
○神谷(裕)委員 大変御丁寧な御答弁、ありがとうございました。
次の質問でございます。
諫早湾干拓調整池からの排水については、一回当たりの排水量を制限し、海域の環境等への影響を低減する措置である小まめな排水が関係者の協力の下で実施されているとお聞きしています。地元の漁業者においてもこの措置への期待は高いと聞いております。
まず、本法律案により地域の再生を図ろうとする発議者におかれましては、この環境に配慮した小まめな排水の実施についてどう考えるのか、また今後の継続についてはどのように考えているのか、お聞かせをいただけたらと思います。
○大串(博)委員 お答えします。
諫早湾干拓調整池からの排水についてでございますけれども、一度に大量に排水すると海域の環境やあるいは漁業に悪影響を及ぼす可能性があるという懸念もあることから、これまで、できるだけ一回の排水量を小さくして、分けて小まめに排水をするという、いわゆる小まめな排水が関係者の皆様の御努力もいただきながら実施されてきております。
この点については有明海再生のためにも必要不可欠と私も考えておりますことから、常日頃から、国会審議の場も含めて、政府には強く要望をしてきました。
加えて、排水をする際に事前に、自治体や漁協の皆さんなどに、いつ、どれだけ排水するよというのを伝えていただくということも非常に重要で、これに関しても、以前はファクスなどで送っていただいたものを、最近は、より小まめにこれも連絡できるようにということで、メールなどを通じて、しかもできるだけ事前に、これも小まめに、いつ、これだけの排水をするよという連絡をしていただくような改善も図られるように今はなってきております。
さらに、皆さんが気にされるのは、特に年末年始のようにノリの漁期として非常に重要な時期に、ある意味休みの期間になりますものですから、その期間に小まめな排水じゃなくなると非常に心配だなという声もありますものですから、年末年始においても、先ほど申し上げたメールなどを使って排水の状況などを連絡しながら、できるだけ小まめな排水をしていくという取組をお願いし活動を行ってきている、こういう状況にあります。
非常に重要な施策でありますので、今後とも政府においては、有明海再生のための必要な、不可欠な取組として、小まめな排水及び事前の連絡、これらを継続していただくよう強く要望していきたいと思います。
ありがとうございます。
○神谷(裕)委員 ありがとうございました。
改めて、小まめな排水の大切さ、重要さ、これが分かったなというふうに思っております。
そういったことで、最後に農林水産大臣にお伺いをしたいと思います。
関係者の協力の下に実施をされている小まめな排水についての大臣の御評価をお聞かせください。また、地元の漁業者の期待も高い、そういうこともあるので、今後とも本措置を着実に継続すべきである、このように思いますけれども、大臣のお考えをお聞かせをいただきたいと思います。
○野上国務大臣 お答え申し上げます。
調整池からの排水につきましては、佐賀県の漁業者から漁場環境への影響を懸念する声があることを承知いたしております。
農林水産省の調査結果では、排水門からの排水の到達範囲は諫早湾の湾央部にとどまっておりますが、こうした漁業者の思いを踏まえて、排水門を管理している長崎県に対しまして、降雨などの必要な場合を除きまして一回当たりの排水量を百万トン以下とするとともに、北部及び南部排水門からの排水が同程度となるように要請するなど、必要な調整を行っているところであります。
これまでも、可能な限り漁業者の要望に沿って対応してきたところでありますが、今後も、これまで同様、小まめな排水に努力していく考えであります。
○神谷(裕)委員 ありがとうございました。
これで私の発言は終了させていただきます。ありがとうございました。
○高鳥委員長 次に、田村貴昭君。
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
本法律の予算措置を規定していた公害防止事業財政特別措置法を政府が失効させることについて、これは不当であります。これはこれとして、別途議論をしたいというふうに思っております。
大臣、まず、お手元の資料を御覧いただきたいと思います。諫早湾干拓営農地におけるカモの食害です。
ブロッコリーの霜よけのシートにカモの足跡が、人間の足は私の足なんですけれども、ここにカモの足跡がくっきりとついていますね。芽を食べちゃうんです。
それから、二つの大根。小さいのは生育途中で葉を食べられたから、成長が止まって売り物となりません。キャベツもレタスも片っ端から食べられてしまう。この状況が更に進んでいます。
干拓農地というのは、写真にありますように大規模農業でありますから、被害が半端ではありません。この農家の場合は、大根十町で約三千万円、ブロッコリー六町で約一千五百万円、レタス三町で約一千五百万円の被害が出ているわけであります。
私、三年前にもこの問題を農水委員会で尋ねたんですけれども、十二月二十日に大臣は現地を訪れましたね。この話を聞かれたでしょうか。
現行の対策では効果がありません。カモの増加の要因の解明、そして食害を救済する支援策が今こそ必要だと思いますけれども、いかがでしょうか。
○野上国務大臣 私も、先般、現地に参りましたときに、この話を聞かせていただきました。
諫早市におけるカモによる農作物の被害でありますが、これは、平成二十八年以降急増しておりますが、長崎県全体や九州各県においても増加をしているところでありまして、その原因は長崎県の調査等によっても明確にはなっていないところであります。
カモ被害の低減に向けましては、鳥獣被害防止総合対策交付金によりまして、防鳥資材の導入、地域ぐるみで行う追い払い、ICT機器を利用した新技術の実証、専門家の派遣に対して支援を行っているところであります。
特に、不織布等の資材を作物に直接かけて鳥害から作物を保護する取組によりまして令和元年度の野菜の被害は前年度に比べ減少するなどの効果も出ていることから、引き続き、関係機関と連携しながら、カモ被害に対してしっかり支援をしてまいりたいと考えております。
○田村(貴)委員 それらの取組は否定するものではありませんけれども、現に被害がこうやって毎年拡大されているわけなんですよね。
これは何でそうなったかというと、まさに国営諫早湾干拓事業から始まったわけであります。大規模で平たんな優良農地を造成して、生産性の高い農業を実現する。国が始めた事業であります。
農地だけでは今はありませんね、大臣。カモの食害というのは、佐賀県の鹿島市など、ノリの養殖場においても起こっています。県や市任せにせず、国が責任を持って調査、対策に当たるべきだと思います。強く要請したいと思います。
次に、十二月に大臣が佐賀県知事と有明海漁協の漁業者と懇談されたときに、大臣はこうおっしゃいました。一刻も早い有明海再生を望む、そして、有明海の再生のシンボルはタイラギだ、このようにおっしゃったわけであります。その再生のシンボルであるタイラギは九期連続の休漁であります。どうされますか。
○野上国務大臣 タイラギにつきましては、平成二十四年以降、潜水器漁が九期連続休漁となっていることですとか、人工稚貝によりますタイラギ資源の再生の取組に課題があるということを承知しております。
このため、タイラギ資源の再生に向けまして、引き続き、人工稚貝を大量に生産するための技術の向上、あるいは浮遊幼生を発生させるための母貝団地の造成、浮遊幼生が着底しやすい生息環境への改善等に取り組んでまいりたいと考えております。
また、そのほかの魚介類につきましても、ノリについては生産量が安定してきており、アサリについては漁場改善のための覆砂等により資源量や漁獲量が増加するなど、取組の一定の成果は確認をされておりますが、引き続き、漁業関係者の皆様に水産資源の回復の実感を持っていただけるように、技術開発ですとか漁場整備の取組を進めてまいりたいと考えております。
○田村(貴)委員 それをもってしても、九期連続の不漁なんですよ。これは深刻な状況です。稚貝を三千放流をするという話がこのときにも出ています。
しかし、私、現地で潜水漁のタイラギの漁師さんに聞いたら、それは絶対にないと。潮流が遅くなって腐泥がたまって、硫化水素が発生するような海底では育つことはあり得ないと断言されたわけであります。
大浦の漁協の運営委員長さんは、大臣もそのときお聞きになったと思いますけれども、タイラギが諫干完成後は潮流の減少や貧酸素などの環境変化で九年連続休漁になっております、このままでは大浦地区の潜水器漁業の存続ができないような感じになっております、こうおっしゃいました。
そして、私が伺った漁師さんも、タイラギが捕れるなら都会に移っている息子に帰ってきてくれと言っている、地域が寂れるのは本当に嫌だ、こういう声がいっぱい出ているわけですね。
漁に出られない、収入がない、潜水の技術が継承できない、地域が寂れる、これが本当にどれだけつらいことか。大臣、この思いは共有できますね。いかがでしょうか。
○野上国務大臣 現地に参りましたときも、様々なお声を聞かせていただきました。有明海再生に向けて全力で取り組んでまいらなきゃならないという思いは常に持ち続けております。
○田村(貴)委員 潜水漁という特殊な技術、これが継承できないという危機にあるわけですね。このままだったらタイラギが捕れないから、漁師をやめちゃおうかと。後継者がいないわけなんですよ。いないというか、作れないんですよ、そこに資源がないから。文化とか昔からの漁法の技術とかの継承ができない。ここにもっと真剣に思いをはせていただきたいというふうに思います。
十二月の大臣と佐賀県の山口県知事、そして漁業者との懇談において、最後、山口県知事が総括として意見を述べました。紹介したいと思います。
平成九年の堤防締切りから急に海がおかしくなった、十年前、平成二十二年十二月二十一日、開門を命じる判決が確定して、あっ、これでという形で希望の光が見えてきたわけですが、もう十年たってしまった今になっても開門は実現せず、有明海の再生は道半ばだ、そして、そういう気持ちの中で、国に対する不信感とか、そういったものがあったり、将来の不安感、そういったものを抱えて、もう子孫に跡を継がせてやれるんだろうかという切実な声すら上がっているわけであります。
大臣、県知事や漁業者のこの思いに、苦悩に応えるべきではありませんか。開門によらない基金での解決では、いつまでたっても有明海は再生されません。一刻も早い有明海再生を望むのであれば、非開門にこだわっては駄目だと思います。決断が求められると思いますが、大臣、いかがですか。
○野上国務大臣 私も、昨年十二月の二十日に長崎県と佐賀県に出張しまして、両県知事を始めとする地元関係者の方々とお会いして直接御意見をお伺いするとともに、先ほどお話がありましたタイラギにつきましても、有明海の水産センターに参りまして、生産技術の開発等々、その取組を拝見をさせていただきました。
関係者の皆様との意見交換におきましては、タイラギなどの漁場は依然として厳しい状況であること、このことは改めて認識をいたしましたが、一方で、一刻も早い有明海の再生を望む思いも強くしたところであります。
農林水産省としても、令和三年度予算におきましても、有明海再生対策としまして今年度と同額の約十八億円を計上しまして、海域環境の調査、魚介類の増殖対策、漁場の改善対策等々を行ってきております。
有明海の再生は重要な政策課題であると認識しておりまして、今後とも、関係者の皆様の御意見を伺いながら、沿岸四県と国がしっかり協力をして取り組んでまいりたいと思っております。
また、これまで国会答弁で申し上げたとおりでありますが、平成二十九年の大臣談話に沿って解決をしていくということがベストだと考えておりまして、それに沿うような出口を探ってまいりたいと考えております。
○田村(貴)委員 一刻も早い有明海再生と、開門によらない基金による解決というのは相入れないんですよ。みんなが分かっている話ですよ。ここは政策転換が必要であります。
最後に、江藤前大臣も野上大臣も、様々な立場の関係者がバランスよく参加するのであれば一堂に会して話し合うこともあってもよい、この立場を取られています。でも、それを言って、もう三年たっているわけですよね。いつ様々な方々と懇談を持たれるおつもりなのか、お聞かせください。
○野上国務大臣 御指摘の一堂に会する場につきましては、令和元年の開門派弁護団との意見交換の場におきまして、弁護団から、話合いをする場をつくっていただきたい旨の発言があったのに対し、江藤大臣からは、様々な立場の関係者がバランスよく参加するのであれば一堂に会して話し合うことがあってもよい旨を発言されたと承知しております。
これについて、私も、これまでの国会答弁ですとか、昨年十二月の開門派弁護団の方々との意見交換の場においても、この考えが変わっていない旨を申し述べたところであります。
一方、国も、開門を命ずる確定判決の執行力の排除を請求異議訴訟で求めております一当事者であり、また、開門反対派の皆様からは、裁判上の開門禁止義務の履行を厳しく求められている立場であることも御理解をいただきたいと思います。
このことから、様々な立場の関係者の間で一堂に会する場を設ける機運が高まることが、このような話合いを実現する前提となるのではないかと考えております。
○田村(貴)委員 開門を前提に、和解のテーブルに早く着くことを強く要求して、終わります。
○高鳥委員長 これにて発言は終わりました。
この際、本起草案につきまして、衆議院規則第四十八条の二の規定により、内閣の意見を聴取いたします。農林水産大臣野上浩太郎君。
○野上国務大臣 本法律案の御提案に当たりまして、委員長及び委員各位の払われました御努力に深く敬意を表するものでございます。
政府といたしましては、有明海及び八代海等の状況に鑑み、本法案に異議はございません。本法律案が可決されました暁には、その適切な運用に努め、有明海及び八代海を再生するための対策を一層推進してまいる所存でございます。
委員長を始め、委員各位の御指導、御協力を引き続きよろしくお願いを申し上げます。
○高鳥委員長 お諮りいたします。
有明海及び八代海等を再生するための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案起草の件につきましては、お手元に配付いたしております起草案を本委員会の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○高鳥委員長 起立総員。よって、本案は委員会提出の法律案とするに決定いたしました。
なお、ただいま決定いたしました法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○高鳥委員長 この際、加藤寛治君外五名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、公明党、日本共産党、日本維新の会・無所属の会及び国民民主党・無所属クラブの六派共同提案による有明海及び八代海等の再生に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。近藤和也君。
○近藤(和)委員 ただいま議題となりました決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。
案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきたいと存じます。
有明海及び八代海等の再生に関する件(案)
国民にとって貴重な自然環境及び水産資源の宝庫である有明海及び八代海等を豊かな海として再生するため、「有明海及び八代海等を再生するための特別措置に関する法律」に基づき、海域環境の保全及び改善並びに水産資源の回復等による漁業振興に関する取組が行われてきた。しかしながら、その再生は道半ばであり、今後も引き続き、有明海及び八代海等における漁業振興に関する施策を強力に推進する必要がある。
よって、政府は、「有明海及び八代海等を再生するための特別措置に関する法律の一部を改正する法律」の施行に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。
記
一 有明海及び八代海等の海域環境の保全及び改善のため、赤潮や貧酸素水塊の被害防止対策、近年頻発する豪雨等に伴い発生する海岸漂着物等の除去及び処理のための十分な予算を確保し、地方公共団体と協力して取組を推進すること。
二 有明海及び八代海等における漁場生産力の増進、水産動植物の増殖及び養殖の取組を支援し、同海域における水産資源の回復と持続的な利用を確保し、漁業振興に関する取組を着実に進め加速化すること。その際、指定地域内の状況の違いに十分配慮すること。
三 有明海・八代海等総合調査評価委員会の所掌事務の遂行状況の公表に当たっては、有明海及び八代海等における環境等の変化の原因・要因、再生の方策が分かりやすいものとなるよう十分に配慮すること。また、国及び関係県が行う調査の内容については、地域や季節によって状況が大きく異なる同海域の特性を十分に踏まえ、きめ細かな分析を行うこと。
右決議する。
以上です。
何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
○高鳥委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○高鳥委員長 起立総員。よって、本件は本委員会の決議とするに決しました。
この際、ただいまの決議につきまして、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣野上浩太郎君。
○野上国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重させていただき、関係省庁と連携を図りつつ、今後、最善の努力をしてまいる所存でございます。
○高鳥委員長 お諮りいたします。
ただいまの決議の議長に対する報告及び関係当局への参考送付の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時十九分散会