第4号 令和3年4月6日(火曜日)
令和三年四月六日(火曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 高鳥 修一君
理事 加藤 寛治君 理事 齋藤 健君
理事 津島 淳君 理事 宮腰 光寛君
理事 宮下 一郎君 理事 亀井亜紀子君
理事 矢上 雅義君 理事 稲津 久君
池田 道孝君 泉田 裕彦君
今枝宗一郎君 上杉謙太郎君
江藤 拓君 金子 俊平君
木村 次郎君 小寺 裕雄君
佐々木 紀君 斎藤 洋明君
鈴木 憲和君 西田 昭二君
根本 幸典君 野中 厚君
福田 達夫君 福山 守君
細田 健一君 渡辺 孝一君
石川 香織君 大串 博志君
金子 恵美君 神谷 裕君
近藤 和也君 佐々木隆博君
重徳 和彦君 日吉 雄太君
緑川 貴士君 濱村 進君
田村 貴昭君 串田 誠一君
藤田 文武君 玉木雄一郎君
…………………………………
農林水産大臣 野上浩太郎君
農林水産副大臣 葉梨 康弘君
内閣府大臣政務官 岡下 昌平君
農林水産大臣政務官 池田 道孝君
政府参考人
(消費者庁次長) 高田 潔君
政府参考人
(外務省大臣官房審議官) 赤松 秀一君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 宮崎 敦文君
政府参考人
(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長) 赤澤 公省君
政府参考人
(農林水産省大臣官房長) 横山 紳君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 青山 豊久君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 森 健君
政府参考人
(農林水産省消費・安全局長) 新井ゆたか君
政府参考人
(農林水産省食料産業局長) 太田 豊彦君
政府参考人
(農林水産省生産局長) 水田 正和君
政府参考人
(農林水産省経営局長) 光吉 一君
政府参考人
(農林水産省政策統括官) 天羽 隆君
政府参考人
(農林水産技術会議事務局長) 菱沼 義久君
政府参考人
(林野庁長官) 本郷 浩二君
農林水産委員会専門員 森田 倫子君
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委員の異動
三月三十日
辞任 補欠選任
濱村 進君 江田 康幸君
同日
辞任 補欠選任
江田 康幸君 濱村 進君
四月六日
辞任 補欠選任
神谷 裕君 重徳 和彦君
佐藤 公治君 日吉 雄太君
藤田 文武君 串田 誠一君
同日
辞任 補欠選任
重徳 和彦君 神谷 裕君
日吉 雄太君 佐藤 公治君
串田 誠一君 藤田 文武君
―――――――――――――
四月五日
農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇号)
三月二十四日
家族農業を守り、食料自給率の向上を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四四一号)
同(笠井亮君紹介)(第四四二号)
同(神谷裕君紹介)(第四四三号)
同(亀井亜紀子君紹介)(第四四四号)
同(穀田恵二君紹介)(第四四五号)
同(佐々木隆博君紹介)(第四四六号)
同(志位和夫君紹介)(第四四七号)
同(清水忠史君紹介)(第四四八号)
同(塩川鉄也君紹介)(第四四九号)
同(田村貴昭君紹介)(第四五〇号)
同(高橋千鶴子君紹介)(第四五一号)
同(畑野君枝君紹介)(第四五二号)
同(藤野保史君紹介)(第四五三号)
同(宮本徹君紹介)(第四五四号)
同(本村伸子君紹介)(第四五五号)
同(金子恵美君紹介)(第四七一号)
は本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇号)
農林水産関係の基本施策に関する件
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○高鳥委員長 これより会議を開きます。
農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房長横山紳君、大臣官房総括審議官青山豊久君、大臣官房総括審議官森健君、消費・安全局長新井ゆたか君、食料産業局長太田豊彦君、生産局長水田正和君、経営局長光吉一君、政策統括官天羽隆君、農林水産技術会議事務局長菱沼義久君、林野庁長官本郷浩二君、消費者庁次長高田潔君、外務省大臣官房審議官赤松秀一君、厚生労働省大臣官房審議官宮崎敦文君及び社会・援護局障害保健福祉部長赤澤公省君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○高鳥委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。根本幸典君。
○根本(幸)委員 おはようございます。自民党の根本幸典でございます。
今日は、農林水産委員会で質問をさせていただく機会をいただいたことに、心からまず御礼を申し上げたいと思います。
その上で、最初に大臣にお伺いをしたいというふうに思うんですけれども、今国会で提出されました農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案、この関係資料の参照条文において誤りがあった、こういった報告を受けているわけであります。我々が三月五日に国会に提出いただいていろいろと議論をしている中で、資料の間違いというのは私はあってはならないというふうに思っているんですね。その中で、やはり、今後のことも考えてしっかりと農水省として対応していく必要があるというふうに思っています。
そこで、大臣にお伺いをしたいんですが、今回の間違いの発生原因、これをどのようにお考えになっているのか。そしてまた、再発防止策、どのように農水省として対応していこうと考えているのか、お伺いをしたいというふうに思います。
○野上国務大臣 今国会に提出しました農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案の参照条文に誤りがございました。
法律案の関係資料に誤りがあったことにつきまして、深くおわびを申し上げます。
本件の原因は、印刷原稿の印刷業者への発注及び校正段階でのチェック漏れによるものであります。
農林水産省としましては、今回のことを重く受け止めまして、チェックの体制、手法も含めて、誤りや単純なミスを防止するためのマニュアルを整備すること、また、当該マニュアルに基づいて、法令改正担当者等を対象にしまして実践的な研修を実施すること等によりまして、再発防止を徹底してまいりたいと考えております。
○根本(幸)委員 今、大臣から、発生原因、そして再発防止策ということでお伺いをしました。
私も地元でいろいろ回っていますと、中小企業の社長さんがいて、メーカーに商品を納品するときに間違いをどうやって極力減らすかということを一番真剣に考えているんですね。そのとき、私が親しくしている経営者からは、うちはなぜなぜをやるんだと。徹底的に、どうして起こったんだ、どうしてなんだ、どうしてなんだ、どうしてなんだ、これを追求することによってミスがなくなって、メーカーさんにきちっとした、いいものが納品できるんだということであります。
そういう意味では、今回の再発防止でいろいろとやっていただきますが、是非、なぜなぜ、どうしてだ、どうしてだというのをひたすら突き詰めていただいて、今後このようなことがないように取り組んでいただくことを期待申し上げたいというふうに思います。
それでは、次の質問に参りたいというふうに思います。
まず、新型コロナウイルス感染症と農産物への影響についてお伺いをしたいんです。
私の地元は、野菜とか花とか、こういった農産物であったり畜産も盛んでありますし、ただ、この中で、今回、新型コロナウイルス感染症によっていろいろな影響をたくさん受けたわけであります。そのことに対して、農水省の方の経営継続補助金であったり、さらには高収益作物次期作支援交付金等々で農家の皆さんはある意味一息つけた、こんなようなことを言っていただいていまして、今までの農林水産省の皆様方の御支援には、現場からも大変ありがたいという言葉はいただいています。
一方で、緊急事態宣言が再発令をされたわけであります。そうしますと、やはり私の地元でもいろいろと影響が出ているんです。例えば、つま物といって、お刺身のつまとか、穂ジソとか、小菊とか、あとはサラダにつけるようなベルローズとか、こういったいわゆる外食で使うような農産物が大変、価格にも影響が出ていますし、さらには出荷量においても非常に影響が出ているんです。
あとは、花もそうなんですけれども、例えば、お葬式も家族葬が増えて、うちの地元では小さくやるというのをこびそにやると言うんですが、こびそにやるところが多くて、だんだんだんだん花の需要も減ってきている。そういう中で、いわゆる白い菊、輪菊の価格というのも大変厳しい状況になっているんですね。
そんな中で緊急事態が再発令されて、農産物への影響、どんな影響が出ているのか、そして、これに対して今どのような対策を考えているのか、まずはお伺いをしたいというふうに思います。
○池田大臣政務官 御指摘のように、緊急事態宣言の発令に伴いまして、農産物への影響につきましては、外食向けの食材であります、今言われましたつま物類、あるいは贈答用のメロン、花卉の価格の下落などの影響が出ておりました。
こうした状況を受けまして、令和二年度第三次補正予算で措置をされました国産農林水産物等販路多様化緊急対策事業におきまして、インターネット販売や地域の促進活動など、販路多様化に資する取組を行った場合に支援することとしております。
また、緊急事態宣言発令の影響によりまして、この一月から三月の間で市場取扱金額が平年の二割以上減少した月のある品目、例えばメロンであるとか、つま物、かんきつ、切り花などを対象に、令和二年度補正予算で措置した高収益作物次期作支援交付金の第四次の公募を実施することといたしました。
これらの対策を活用いたしまして農業者の皆様が安心して営農を継続できるよう、支援してまいります。
○根本(幸)委員 ありがとうございます。
今いただきました国産の販路拡大とか次期作とか、是非しっかり対応していただければと思います。
やはり、農水省がしっかりと対応して対策を打っていただくということは、農家の皆さんにとっては、これから後継者を入れてしっかり農業をやろう、こういうモチベーションになっていくというふうに思いますので、もちろん今の経営もしっかり対応しなきゃいけないですが、同時に先を見据えての経営も農家の皆さんに考えていただいていますので、是非対応をしっかりやっていただきたいというふうに思います。
さて、一方で、実は、コロナにかかわらず、需給のバランスによって価格が低迷しているという農産物もあるんです。例えば、私の地元でいきますと、トマトとかミニトマトというのが大変価格が低迷しています。いろいろな分析があるんでしょうけれども、私が聞いている限りでは、やはり、需給バランスが崩れて生産量が多くなって、なかなか需要が追いついていかないというふうに聞いています。
例えば、私の地元のJA豊橋のミニトマトでいきますと、市場販売価格でいきますと、去年の秋、十一月、十二月、今年の一、二を見ますと、大体二割前後ぐらい減少をしているんですね。二割を超えているときもあれば、一割台のときもある。もちろん、農家の皆さんはこれまで産パワを使ったりスマート農業を使ったりして、モチベーションを高めてずっとやってきているんですけれども、その一方で価格が低迷していると大変厳しいという状況があります。
例えば、JA豊橋で計算した再生産価格、これは原価と考えたらいいのかな、そんなような数字だと思いますが、これがキロ八百七十七円。では販売価格はどうかというと、今は大体キロ七百円、七百四円とかぐらいなんですね。ちょっとこれは、大分乖離がある。これは右肩下がりで、V字回復するようなイメージよりも、だんだんだんだん、漸減しているというような感じでして。
ではセーフティーネットをどうするんだということを私はしっかり考えなきゃいけないというふうに思うんですが、収入保険であったり野菜価格安定制度、こういったものを使いながらやってくださいということなんです。
その一方で、では価格安定制度の保証基準額はどうなのかといいますと、先ほどは、再生産価格が八百七十七円、販売価格が七百四円。そして、今年の二月ですと、私が聞いている限りでは六百円を切るぐらいの価格になっている。そうすると、再生産価格から差額がキロで二百七十円ぐらいあるわけで、こうすると、今のセーフティーネットでは大変厳しいなというのがあります。もちろん、今回は、コロナの影響というのはなかなか表現しづらいので、コロナの外でしっかり対応を打っていかなきゃいけないと私は思っているんですが。
そこで、こういったトマト、ミニトマトの価格下落とセーフティーネット対策を含む対策について今どのようにお考えなのか、お伺いをしたいというふうに思います。
○水田政府参考人 お答えいたします。
御指摘のトマト、ミニトマトでございますけれども、一月後半頃から気候がよかったということもございまして、生育が良好でございます。大玉の傾向になっておりまして、出荷量が増加をしたということでございまして、まさに一月下旬から二月上旬にかけて卸売価格が平年に比べまして三割程度下落をしたという状況でございます。ただ、その後は生育が落ち着いたことから、価格も回復傾向にはあるという状況でございます。
御指摘のトマトなどの野菜の再生産価格でございますけれども、これは産地や生産方式の違いなどによりまして様々でございます。なかなか公式な統計等で把握できないものでございます。そこで、考え方といたしまして、卸売市場におきます平年並みの価格であれば長い目で見れば再生産が可能というふうに考えられるということから、野菜の価格安定制度におきましては過去六か年の平均の卸売価格を基準といたしまして保証基準価格を設定いたしまして、その額を下回った場合に生産者補給金を交付して再生産の確保を図っているという考え方に基づいているということでございます。
なお、価格が下がっている品目、今回はトマト等というお話でございましたけれども、需給が緩和して価格が下がっていて、ほかの品目に転換したいというような御希望もあると聞いております。ただ、施設整備の補助金、例えば産地パワーアップ事業とか強い農業・担い手づくり総合支援交付金によりまして整備したハウスについて、なかなか品目の転換がしづらいという声も聞いているところでございます。
ただ、ハウスを整備した後の社会経済情勢の変化などにより品目転換が必要となった場合には一定の手続により品目転換が可能な仕組みとなっておりますので、これにつきましては、こういう品目転換の仕組み、あるいは先ほど申し上げました野菜価格安定制度の適切な運用の考え方につきまして、しっかりと周知をしてまいりたいというふうに考えております。
○根本(幸)委員 ありがとうございます。
価格安定制度は確かにそういうルールなんでしょうけれども、そういう意味では、価格が上がったり下がったりするときは多分そういう形でいいんでしょうけれども、下がり続けているところではなかなかセーフティーネットになりづらいんじゃないかというふうに私も考えておりますので、是非、この辺りはいろいろな形で、セーフティーネットがどうあるべきかというのを一緒に考えていただければありがたいなというふうに思っています。これは投げかけとして、これで終わっておきたいというふうに思います。
三つ目に、今回、経営継続補助金をコロナ対策で取っていただいて、大変評判がいいんです。農家の皆さんからは、導入した機械によって作業の省力が図られたとか、三密を防ぐことができたとか、作業効率が上がったとか、こういう声が多いんです。さらに、声としては、中小企業庁が持続化補助金をやっているように、経営継続補助金をこれからも是非やってほしいと。
いろいろ考えていると、特に中小とか家族経営の農家の皆さんにとっては、なかなかなかったメニューが今回出てきたということで、中小さらには家族経営の皆さんにとっては大変ありがたい制度だったわけですね。これから日本の農業を考えていくと、うちの地域でも、中小で、あとは小規模で、家族でやっているようなところがたくさんあって、やはりこういうところもしっかりと農業を支えていただいている経営体の一つでありますから、こういったところを応援するという意味でも、このような制度は私はこれからも必要だというふうに思っているんですね。
そこで、今回の経営継続補助金の評価と、私が申し上げたように、コロナ後も、中小さらには家族経営、こういったところの補助金というのを考えるべきだというふうに考えていますが、経営継続補助金の今後の在り方についてお伺いをしたいというふうに思います。
○光吉政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘の経営継続補助金、これにつきましては、令和二年度の第二次補正予算におきまして、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、接触機会を減らす機械の導入などを支援するものとして措置されたところでございます。
この補助金につきましては、昨年の六月から七月、そして十月から十一月の二回に分けて公募を実施いたしまして、合計で十二・五万件の採択を行いまして、順次、農業者等の皆様への補助金交付を進めているところでございます。
このように、経営継続補助金は感染防止に取り組む農業者等を緊急的に支援しようとしたものでございますけれども、農業者の方々による機械の導入などにつきましては、強い農業・担い手づくり総合支援交付金、産地生産基盤パワーアップ事業、畜産クラスター事業等により支援をしているところでございまして、このような事業を活用して今後とも農業者の皆様の各取組を後押ししていきたい、そういうふうに考えております。
○根本(幸)委員 ありがとうございます。現在ある産パワとか強農、これはこれで大切だと思いますが、先ほど私が申し上げました小規模の経営体、家族経営体、こういうところを支援していくというのが今回非常に評判がよかったということですから、是非今後もまた議論をさせていただければというふうに思います。
続いてですが、豚熱の件であります。
私の地元でも、豚熱によって大変大きな影響がありました。しかし、農水省の皆さんが本当にいろいろ御努力をしていただいて、罹患した経営体へ支援をしていただいたおかげで、一部、後継者がいないということで廃業された方はいらっしゃいますが、やりたいという意思のある方は皆さん再建をして今順調に養豚の経営ができているということでありますので、本当にこのことにはまず感謝を申し上げたいと思います。
その上で、今、養豚家の皆さんからお伺いすると、アフリカ豚熱、これが一番心配なんだと。もちろん生産者も飼養衛生管理基準を徹底していくということなんですが、アフリカ豚熱が入ると、ワクチンがないということもあって、では本当に今回のように再建できるのか、これが大変不安だという声が非常に多いわけですね。
そこで、二つの観点からお伺いをしたいんですが、一つは、まず入ってこないということが大切でありますので、水際対策の徹底が今どのように行われているのかというのが一点。それから、アフリカ豚熱はワクチンがまだないということで、これがまた生産者の皆さんの不安だというふうに思っています。国としてワクチンを開発するのにどのように取り組もうとしているのか、お伺いをしたいというふうに思います。
○新井政府参考人 お答え申し上げます。
まず、水際対策についてでございます。
アフリカ豚熱、平成三十年八月の中国での発生以来、アジア諸国での感染が相次いでおります。直近でも二月にマレーシアで新しく発見されたということでございます。中国も、若干下火ではございましたけれども、また先月、新たに六件の発生ということでございます。韓国におきましては、農場での発生は抑止されておりますが、野生イノシシの感染が相次いでいるということでございまして、日本への侵入リスクは依然として高い状況にございます。
水際対策につきましては、改正家畜伝染病予防法を昨年七月一日に施行いたしました。この中で、罰則の強化、携行品に対します質問・検査権限、それから畜産物の廃棄権限ということで、水際の権限を強化していただきました。
それとともに体制強化というのもしております。ここ五年間で家畜防疫官を八十九名増員した、それから、検疫探知犬につきましては、令和二年度当初は五十三頭でございましたが、令和二年度末、この三月には百四十頭ということで、大幅に増強いたしました。これによりまして、地方空港も含めまして、アジア諸国からの到着便への対応の体制の強化というのを図っているところでございます。
それから、関係省庁一体となりました在外公館、航空会社、現地のカウンターでの注意喚起というのも引き続き行っていきたいと思っております。
現在は外国人の入国は制限されているという中ではございますが、緊張感を持って対応してまいりたいというふうに考えております。
それから、アフリカ豚熱のワクチンについてでございます。
アフリカ豚熱のワクチン、ウイルスの特性上、大変難しいという状況がございます。このような状況にございますので、世界でも実用化されたワクチンは今のところないということでございます。
近年、アメリカや中国などで一定の効果が認められるワクチン候補株というのができたという情報はございますが、これらにつきましても実用化に向けた課題というのがまだ残っているということでございます。
我が国におきましても平成三十年度よりワクチン開発の研究に着手いたしまして、研究者、農研機構、それから大学、民間企業とともに研究開発に取り組んでおります。
このような中、今年の三月には、アフリカ豚熱ウイルスを効率よく増殖できる、豚に由来した新しい細胞株ということで、開発研究の中で一つの一里塚の開発ができたということで、農研機構が発表しているところでございます。
これらの世界各国の知見を生かしまして、アフリカ豚熱のワクチンの開発に我が国としてもしっかりと貢献してまいりたいと考えております。
○根本(幸)委員 時間が来ましたので、終わります。
ありがとうございました。
○高鳥委員長 次に、稲津久君。
○稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久でございます。
それでは、質問に入らせていただきたいと思いますが、その前に一点申し上げたいと思います。
先ほど大臣から、貯金保険法の法案のミスについてのおわび、それから、今後マニュアルを作り研修なども行うということで、再発防止についてのお話がございました。その点について、私からも一点触れておきたいと思うんですけれども。
まず、率直に申し上げて、極めてゆゆしき問題だ、私はそういう問題意識を持っております。農水省に限らず、各省でも相次いでこのようなミスがあったということ、これはやはり断じてあってはならないことだと思っておりますし、もう一つ、法案にミスが見つかったときに迅速な報告をお願いしたい、このことを申し上げておきたいと思います。
何よりも、これは規律の問題だと思っています。したがいまして、私どももそうですけれども、しっかり、規律の立て直し、こういうことにこれから一層注意喚起をしていかなきゃいけない、このことをまず強く申し上げておきたいと思います。
それでは、質問に入らせていただきます。
まず一点目の質問は、規制改革推進会議の農林水産ワーキング・グループ会合での意見についてでございます。
政府の規制改革推進会議農林水産ワーキング・グループ会合が三月十九日に行われまして、この中で生乳流通についての意見がございました。指定生乳生産者団体が独占的な立場にあるとして分割を求めるという、大変乱暴な意見が出されたというふうに私は思っております。これに対して、野上農水大臣は三月二十三日の閣議後の記者会見で、乳業メーカーに対する価格交渉力が弱体化するおそれがあり、慎重な議論が必要だ、このように述べられました。
民間の協同組織である指定生乳の生産者団体は、乳業メーカーに対して価格交渉を行うに当たってやはりそれぞれの単体の生産者では不利になる、こういうことから組織化されたものでありまして、分割の意見はこのことを否定するもので、私は極めて理解に苦しむ、こういうことを申し上げておきたいと思います。改めて、この委員会の場において、大臣のこのことに対する所見をお伺いしたいと思います。
○野上国務大臣 今御指摘の、三月十九日の金曜日に規制改革推進会議の農林水産ワーキング・グループにおきまして今のお話があったわけでありまして、酪農家が出荷先を自由に選択できる環境を整備した制度改革は一定の進展があるものの、指定団体への出荷が大宗を占める実態は変わっておらず、指定団体が不公正な取引を行っている疑いもあることから、実態として制度改革が進んでいないとの意見があったと承知をいたしております。
また、一部の委員から、指定団体について、取引実態を調査し、不公正な取引を防止する取組などを行ってもなお、なかなか適正な競争が成立しないのであれば、生乳流通事業者の競争を促す手法として、組織の分割や取引の透明性確保の取組など、いろいろな意見があったと承知しておりまして、指定団体の分割ありきでの議論がなされたということとは認識をしておりません。
御指摘のとおり、現在の指定団体は、歴史的に乳業メーカーとの対等な価格交渉を行う上で、酪農家が団結して、酪農家の協同組織として発展した経緯があります。こうした経緯を踏まえますと、競争を促すために指定団体を分割すれば、乳業メーカーに対する酪農家の価格交渉力が弱体化することにつながるおそれがあるなどということも考えております。
今回の議論は、指定団体が系統外の事業者を排除するような不公正な取引を行っている懸念があるという点から始まっておりますので、農林水産省としては、会議で示された不公正な取引事例について承知をしていないことから、まずはそのような実態があるのか否かを含め調査をして、その上で課題を見極めて対応を検討していく必要があるものと考えております。
○稲津委員 先ほど私が申し上げましたように、生産者一人一人の力というのはメーカーに対しては極めて弱い、不利な立場にある。だから、今大臣がおっしゃったように、歴史的に協同的な組織としてこれがつくられて今日まで至っているということ。
私は、分割意見というのはこれまでの生産者の努力に対して水を差すような結果になるんじゃないか、こういうことを懸念しております。二〇一七年の同会議の答申の中での、指定団体が自らの合理化も含め乳価交渉の強化を図る、こうしたことに対しても半ば無視をするような発言ではないか、私はこのように思う次第でございます。大臣として是非引き続きしっかりと対応していただくことをお願い申し上げておきたいと思います。
次の質問です。次は、北海道岩見沢市の大雪に対する果樹被害対策についてお伺いをさせていただきたいと思います。
北海道を始め、今年の冬の大雪の被害というのは大変甚大なものがございまして、我が党は一月の二十日に農業用ハウスなどの施設再建等の緊急要望を大臣に提出させていただきました。その際、大臣からも丁寧な対応をいただいたことに改めて感謝を申し上げたいと思います。
大雪による被害はこの時点でも大変大きなものでございましたけれども、降雪時のみならず、雪解けが始まった今の段階で実は更に被害の実態が拡大してきている、こういうことが分かってまいりました。
先月の二十六日に、果樹栽培が盛んな北海道岩見沢市の万字そして毛陽という地域がございまして、そこを訪問して、豪雪に伴う被害の実態を生産農家から伺ったところでございます。
岩見沢市は、今年の冬に過去最高に匹敵する降雪を記録しまして、昨年十二月の段階でも三・八四メートル。それから、今年に入って、一月二十八日の時点でも降雪量は六・二五メートルも記録しまして、さらに、三月に入ってもまた雪が降って、例年にない降雪に見舞われまして、岩見沢市は災害対策相当の豪雪対策本部を設置して対応に追われてまいりました。
雪が解け始めて被害の実態が明らかになり、リンゴの枝折れですとか、中には幹ごと折れているものもございまして、私が見た範囲では約八〇%のリンゴの木が改植の必要があるということで、この際離農すると決めた農家の方もいらっしゃいました。
九年前に記録的な豪雪に見舞われたこの地域ですけれども、今回もこのような状況になって、九年前に全面的な改植をした、そういう状況で、ようやく本格的な収量を見込める九年目、十年目に入ってくるということで喜んでいたところ、農家の方々は今回の豪雪で肩を落としているという状況でございます。
そこで、お伺いしますけれども、こうした状況への支援としての改植、また、これにより生ずる未収益期間に対応した経費の支援としての果樹産地再生支援対策がございますが、早急な対応と地元への丁寧な説明をお願いしたいと思います。
それから、樹体の修復資材確保ですとか、傷んだものの資材の撤去等に対する支援がどうなっているかをお伺いしますとともに、地域の要望の一つとして、この際に、堆肥を入れての土壌改良とか、石を取り除く除石、それから暗渠整備ですとか、そうした土地改良も考えたいという意見もあります。是非こうした対応も併せてお願いしたいと思いますが、見解をお伺いしたいと思います。
○水田政府参考人 お答えいたします。
昨年末から今年にかけての大雪でございますが、果樹につきましても、枝折れや樹体の倒伏など、大きな被害が発生しているところでございます。また、委員御指摘のとおり、今後、被災園地の雪解けが進むとともに明らかになる新たな被害もあるものというふうに承知をしております。
農林水産省では、二月の二日に、この大雪の被害に対する支援対策を決定いたしました。この中で、果樹の樹体の修復用の資材ですとか、あるいは被害を受けた果樹の改植、そしてそれに伴う未収益期間の幼木管理に要する経費についての支援をすることを決定いたしたところでございます。
また、委員が御指摘されましたような、より強い樹園地とするために改植に併せて土壌・土層改良といったものを実施する場合につきましても、生産性の高い園地造りに向けた取組の一環として支援をさせていただいているところでございます。
農林水産省といたしましては、永年作物である果樹の特性を踏まえつつ、現場の状況をよくお聞きしながら、被災された果樹農家の方々が一日も早く経営再開できるよう、園地の復旧復興と果樹農業の生産基盤の強化に全力で取り組んでまいりたいと考えております。
○稲津委員 丁寧な御答弁をいただきまして、ありがとうございました。是非しっかりそうした声に、また、丁寧な地元への対応もよろしくお願いしたいと思います。
次に、木材の需要拡大についてということでお伺いしたいと思います。
先日、東京銀座にあります今年十月に完成予定の木造の商業ビル、地上十二階建てでございました、その建築現場を視察してまいりました。このビルの建築には約三百立方メートルの木材を使用しておりまして、百八十九トンの二酸化炭素排出を削減することにつながる、こういう説明を現地で受けました。すばらしいことだと思います。
東京銀座の一等地のところに、あの鉄筋コンクリートのビルばかり並ぶところに木造の商業ビルが建つということで、完成後の景観の説明もいただきましたけれども、これは相当注目されるだろうなと思って見てまいりました。
心配していたのは耐震とか耐火のことなんですけれども、まず、耐震については、集成材などを用いた制振壁ですとか防振の柱、これを整備することで鉄筋コンクリートと同様の耐震性能が備わる、こういう説明も受けました。それから、耐火のことについては、二時間の耐火性能がある集成材を利用した柱やはりがあることによって、鉄骨等のビルとほとんど遜色がない、こういうこともありました。
先ほど申しましたように、完成の暁には、ビル街に木造の高層建築物ができるということで、恐らく、木のぬくもりとか、そういうことを直接受けることによって更に注目が集まる。問題は、コストの問題だと思うんですね。残念ながら、少しコストは高いという説明がありました。
その解決の方法は何があるのかなと思うんですけれども、やはり一番大事なことは、もっと木材の需要が拡大していく中でコストが必然的に下がってくる、そういう環境をつくっていくことが大事なのかな、こんなふうに思いました。その意味におきまして、特に都市部における木材の利用の促進が必要ではないか、こんなことも感じてきたところでございます。
それからもう一つ、林業における課題として、人材の育成の確保というのは喫緊の課題でございますけれども、全体として、やはり、森林・林業に携わる方々については人材不足というのが否めないと思います。
どこに問題があるか。私は、何といっても、他産業並みの従業者所得を確保することができるかどうか、ここにあると思います。ここも実は、この課題の解消のためには木材の需要拡大というのがキーポイントかなと思っておりまして、そういう意味でも木材の有効活用そして需要拡大を図るべきと思っています。ある意味一大ブームを巻き起こすぐらいの、そういう大きな流れがあるといいのかな、こう思っておりまして、木材の需要拡大の取組について見解を伺いたいと思います。
○本郷政府参考人 お答えを申し上げます。
林業、木材産業の成長産業化を実現し、林業等の従事者の所得向上を図るためには、国産材の安定供給体制の構築とともに、いわゆる出口対策、都市部などにおける民間の非住宅・中高層建築物などへの木材の利用の促進を通じて国産材の需要を拡大することが重要と考えております。
このため、引き続き公共建築物の木造化、木質化を推進することに加え、低層非住宅分野における国産材利用に向けたJAS構造材の普及や、中高層分野等における木造化、木質化に向けた木質耐火部材やCLT、直交集成板などの新たな製品、技術の開発、普及を進める考えでございます。
また、民間企業のネットワークによる民間建築物等における木材利用の情報共有、内装木質化の効果検証とその成果の普及に加え、デザインの優れた木の建築物等を表彰するウッドデザイン賞や木材利用優良施設コンクールを通じた優良事例の普及などの取組を推進するとともに、今委員がおっしゃられましたが、木材は二酸化炭素の貯蔵庫でございますので、そういう木材利用の脱炭素化に向けた意義などもよく御説明をして、木材利用に対する都市部の企業や住民の皆様の安心感や共感を得ることにより、国産材の需要を拡大してまいりたいと考えております。
○稲津委員 そうした施策をしっかり進めていくためにも、今後、必要な法改正、法整備も私は前向きに検討すべきではないだろうかなと。このことを申し上げて、次の質問に移りたいと思います。
緊急事態宣言再発令に伴って影響を受けた農産物の生産者支援についてということでお伺いしたいと思います。
二点ありますが、まず、国産農林水産物等販路多様化緊急対策でございますが、二月九日から二十二日までの期間で一次募集を実施しましたが、さらに、三月十七日から四月十五日までの期間で二次募集を実施しています。なぜこの期間なのか、一か月は余りにも短い。また、年度をまたいだ理由。
さらに、三月二十一日に緊急事態宣言は解除となりましたが、引き続き飲食店等については夜九時までの営業時間短縮を要請している。また、蔓防、蔓延防止等の措置がございましたけれども。こうしたことを考えていきますと、緊急事態宣言の解除の一か月後、例えば四月の二十一日とか、あるいは蔓防の解除後の五月五日とか、消費が戻り始めるところまでにしたらどうか、こういうふうに思いますけれども、どうでしょうか。
○青山政府参考人 お答えいたします。
令和二年度三次補正予算で措置しました本事業につきましては、令和三年度まで繰り越した上で、二次募集では、七月末までの取組を対象として、三月十七日から四月十五日の約一か月を申請期間としております。
これは、新型コロナの影響を受けました国産農林水産物の販路多様化を支援する本事業の実施に当たりまして、日もちしない農林水産物の特性を踏まえまして、販路を失った生産者等の方々に早期に安心して事業に取り組んでいただく観点から、大型連休までには事業実施者に対して事業採択のお知らせができるよう、四月十五日までを募集期間としたところでございます。
また、なるべく多くの準備期間を設けるため、二月二十四日には二次募集の予告を公表した上で、現在も現地説明会等を実施し、周知に努めているところでございます。
このため、四月十五日までの二次募集の期間の延長を現段階では想定しておりませんけれども、新型コロナウイルス感染症の状況ですとか公募や採択状況を踏まえまして、引き続き適切に対応してまいりたいと考えております。
○稲津委員 柔軟な対応をお願いしたいと思います。
もう一点、高収益作物次期作支援交付金ですけれども、今回、二回目の緊急事態宣言発令後の売上げが平均の二割以上減少した品目を対象に第四次募集をすることを決定しましたが、その理由と予算は十分と考えているのか。また、この交付金の対象期間を少なくとも、緊急事態宣言の終了月の末ではなくて、緊急事態宣言の解除後、引き続き夜九時までの営業時間短縮要請を飲食店は受けていることから、少なくとも短縮要請が解けるであろう四月二十一日以降とすべきと思います。蔓防のこともありますので、この辺のことについてお伺いさせていただきます。
○水田政府参考人 お答えいたします。
高収益作物次期作支援交付金の件について御質問いただきました。
一月の緊急事態宣言の再発令に伴う農産物への影響につきましては、三月に入りまして花とかメロンとか価格が回復している品目も一部ございますが、この緊急事態宣言による不要不急の外出の自粛、あるいは飲食店の時短営業、イベントの自粛などによりまして、外食向けの食材でございますつま物類や、スダチなどの香酸かんきつ、あるいは贈答用のメロン、それから花などにおきましては、売上額の減少が二割を超えるなどの影響があったところでございます。
こうした影響を踏まえまして、これらの品目を対象に高収益作物次期作支援交付金の第四次募集を実施することとしたところでございます。
委員御指摘の対象品目の選定につきましては、これまでの第三次募集までと基本的に同様でございまして、市場取扱金額が二割以上減少した品目を対象とすることとしておりまして、具体的には、先ほど申し上げましたメロンとか、ワサビ、穂ジソなどのつま物類、スダチ、カボス、ユズなどの香酸かんきつ、切り花、こういったものを全国で対象としております。
また、そのほかに、都道府県域において地域特有の影響が生じていることも考えられることから、これもこれまでと同様の仕組みでございますが、対象期間でございます、今回、一月から三月でございますが、この間の市場取扱金額が平年の二割以上減少している月があるというデータ等を都道府県から提出していただくことで、当該都道府県域における対象品目に指定する仕組みを設けているところでございます。
予算措置につきましては、本交付金の予算のうち、第三次公募までの執行残額を活用することで対応可能と考えているところでございます。
また、三月までの期間についての延長というお尋ねでございますけれども、今回の高収益作物次期作支援交付金でございますが、緊急事態宣言が発令されました一月から三月に売上げが大きく減少したことを踏まえまして、第四次公募を行うこととしたものでございます。
今後のことにつきましては、国産の農林水産物の販路多様化の緊急対策事業というもので、ネット販売ですとか地域の販促活動など、販路多様化に資する取組をただいま支援しているところでございまして、こうした事業を活用いただき、販路の確保により売上げが確保されるように支援していくことが大事なのではないかというふうに考えているところでございます。
○稲津委員 終わります。
○高鳥委員長 次に、佐々木隆博君。
○佐々木(隆)委員 立憲民主党の佐々木隆博でございます。
私の方からも指摘をさせていただきます、法案の間違い、ミスについてでありますが。
私たち国会議員は、法律の審議をすることと予算の審議をすること、まさに議員の使命であります。その法律が間違っていれば、審議も間違った方向へ行ってしまうことになるわけですし、あるいは、ホームページにそのまま掲載されたら、それを読んだ人もまた間違った解釈をするということにもなるわけでありますので、是非、私はアナログ時代の人間でありますが、アナログ時代には余りそういうことはなかったんだと思うんですが、しっかりとしたチェックをしていただくこと。
もう一点、これは新聞報道でありますけれども、農水省が一太郎がいけないかのようなことを言ったという。これもまたちょっと、人のせいにしてしまったのではないかというような気がしますので、その辺もしっかりとこれから内部でチェックをすると同時に、誰かのせいにして責任逃れをするなどということのないように、指摘をさせていただきたいと思います。
今日は、仲間の皆さん方が気を遣っていただいて、十五分だけいただきました。大変短い時間でありますので、是非簡潔な御答弁をいただければというふうに思ってございます。
私の方からは、四月一日付で次官通知が見直し、再発出をされたわけでありますが、それに関しての質問をさせていただきたいというふうに思います。
種子法廃止に伴う次官通知でありますが、百九十三国会において種子法が廃止をされました。その廃止の施行に先立って、平成二十九年十一月十五日付で発出された次官通知というものがありまして、これは、その際、私も大臣と議論をさせていただきましたが、大臣からも見直すというようなことの答弁をいただいたところでございます。
この次官通知でありますが、自治体や農業団体でつくっている、民間も当然入っているんですが、種子協会の皆さん方にとっては大変不安の声を私もたくさんいただきました。その意味でいうと、種子協会には民間もそもそも入っているので、民間に知見を提供するということ自体が本来おかしな話であって、種子協会は別に民間を排除しているわけじゃありませんので、ここそのものも不要だったと私は思うんですが。
そのときに、議論の中で、この委員会で幾つかの附帯決議をさせていただきました。十項目にわたる附帯決議であります。全部を読むとちょっと時間がありませんが。
その附帯決議の二つ目では、稲、麦及び大豆の種子については、農業者が円滑に入手し利用できることが我が国の食料安全保障上重要であることに鑑み、都道府県と連携してその安定供給を確保するものとし、各都道府県が地域の実情に応じてその果たすべき役割を主体的に判断し、品種の開発、種子の生産・供給体制が整備されるよう、適切な助言を行う。三番目では、各都道府県が、種子の原種圃及び原原種圃の設置等を通じて種子の増産に必要な栽培技術の種子の生産に係る知見を維持しと。五番目でありますが、ここでは、交付税措置を講じること。そして、八番目では、公的試験研究機関が民間事業者に種苗の生産に関する知見を提供する場合においては、いわゆる知的財産である技術や品種の海外や外国企業への流出を防止するための適切な契約を締結するなど十分な配慮をするよう指導することというようなことを、そのときに附帯で決議をさせていただいてございます。
このときの大臣が、見直しをする旨の答弁をいただいたわけでありまして、それを受けて四月一日の再発出ということになったんだというふうに思いますが、今申し上げたような附帯の決議というものは十分払拭をされたというふうに大臣は思っておられるのか、まずお伺いします。
○野上国務大臣 御指摘のございました主要農作物種子法につきましては、昭和二十七年に、戦後の食料増産という目的のために、稲、麦類及び大豆の優良な種子の生産、普及を進めるために制定され、食料増産に貢献するものでありました。
しかし、その後、食料不足の解消や食生活の変化に伴う需要量減少等の状況の変化が起きた後も法によりまして都道府県に一律に種子供給を義務づけた結果、いわゆるブランド米の種子については多くの都道府県により力を入れて供給が行われる一方で、需要が高まっております中食、外食用途に適した多収品種等の種子の供給には十分取り組めていない、民間の品種が参入しにくい等の課題が生じてきておりました。
種子法により全ての都道府県に対して一律に義務づけるというやり方を廃止して、都道府県の力に加えて、民間事業者の力も生かした種子の供給体制を構築するということといたしましたが、平成二十九年十一月に発出した次官通知につきましては、これまで、今先生から御指摘もいただきましたとおり、委員会の場でも様々な御指摘をいただいてきたわけでございます。
このような中、さきの臨時国会におきまして、種苗法改正案に対する附帯決議をいただきまして、私からは、附帯決議について、その御趣旨を踏まえ適切に対処してまいりたいという旨を申し上げたところでございます。
このような経緯を踏まえまして、種苗法の施行に伴い発出する御指摘の次官通知につきましては、附帯決議の趣旨を踏まえ、次について新たに記述をしているところであります。
少し長くなりますが申し上げさせていただきますと、まず、都道府県は、稲、麦類及び大豆の種子について、農業者が円滑に入手して利用できることが我が国の食料安全保障上重要であることに鑑み、その安定供給を確保するものとし、それぞれの地域の実情に応じてその果たすべき役割を主体的に判断し、品種の開発、種子の生産・供給体制の整備に取り組んでいくことが求められていることや、また、このような状況で、都道府県は、稲、麦類及び大豆の種子の原種圃及び原原種圃の設置等を通じて種子の増殖に必要な栽培技術等の種子の生産に係る知見を維持し、我が国の農業競争力の強化を図ることを目的として、こうした知見を民間事業者に提供するという役割も担いつつ、都道府県における稲、麦類及び大豆の種子の生産や供給の状況を的確に把握し、それぞれの都道府県の実態を踏まえて必要な措置を講じていくことが必要であること、さらに、都道府県が行う稲、麦類及び大豆の種子に関する業務に要する経費については従前と同様に地方交付税措置が講じられていることを新たに記述しているわけであります。
本通知につきましては、四月一日付で施行させていただいておりまして、都道府県や関係機関に発出しております。その内容につきましても、今後、丁寧に説明を進めてまいりたいと考えております。
○佐々木(隆)委員 一歩前進はしたというふうに思いますが、しかし、さきの通知の大きな懸念でありました、民間事業者の種子生産への参入が進むまでの間、知見を維持し提供する役割を担うと前にあったわけでありますが、この表現が種子協会の皆さん方には大変心配をいただいたわけであります。
要するに、都道府県の役割は、それまでの間ですから過渡的なものだ、そういうふうに受け止めざるを得なかった。そのことによって、今全国二十八の道県が条例を制定しております。これは、種子法廃止の不安の裏返しとも私は言えるのではないかと。新通知ではこの点のことがしっかりと払拭されたのか、しかも、関係者に分かりやすく、明確にそのことが伝わるような通知になっているのか。
そしてもう一つ、併せてお伺いしますが、交付税措置はあくまでも行政の裁量であります。国会と共有しているわけではありません。ですから、必ずしも国民や関係者の不安が取り除かれるわけではなくて、行政の裁量で重要な施策が遂行できるのであれば国会は必要ありません。国会として法律によって担保すべきであるというふうに思いますが、併せて伺います。
○野上国務大臣 まず、今般の次官通知の改正でありますが、今般の種苗法改正によりまして、都道府県において新品種を核とした産地づくりや地域ブランドづくりに取り組みやすくなることから、今後、稲、麦、大豆の種子の生産、供給についても積極的な役割が期待されるところでありまして、このような観点からも次官通知を改正したところでございます。
また、法的な担保が必要ではないかというお話でございます。
平成三十年の四月一日に種子法が廃止されたわけでございますが、稲、麦類及び大豆の種子供給に係る事務につきましては、圃場審査などに関する事務については種苗法、また、原種圃の設置などに関する事務については種苗法及び農業競争力強化支援法に基づいて、都道府県が従前と同様に実施することが見込まれることから、引き続き地方交付税が講じられることとされております。
今後とも、この交付税措置が講じられるよう、総務省と連携をしてまいりたいと考えております。
○佐々木(隆)委員 残念です。
我々は何のために議員になったかといいますと、それは、制度を利用するということももちろんありますけれども、地域の皆さん方や関係する団体の皆さん方のいろいろな不安というようなもの、法律を作ることによってそのことを払拭する、そういう役割を私は担っているんだというふうに思うんです。
だから、制度を利用するだけであると、議員は要らないということになるわけですよ。議員がやらなければいけないのは、制度を利用することもありますけれども、関係者の皆さん方に安心していただくための法律をちゃんと作るということが私は役目だというふうに思っております。
答弁を求めたいんですが、ちょっと時間がありませんので、もう一点だけ伺わせていただきます。それは、公的機関による種子の開発についてであります。
今大臣も御答弁いただきましたが、種子法は種子の増産についてのみ書いてあるわけで、もう一つ、開発の方はここには書いていないんですが、しかし、競争力強化法や、我々の附帯決議の中でも十番目のところで、我が国において優良な植物新品種が持続的に育成される環境を整備するために、公的試験研究機関による品種開発及び在来種の収集、保全を促進することということも併せてそのときに決議させていただいてございます。よって、新通知においても新たな品種開発の促進ということを言っております。
交付税制度では、種子生産に関する項目は、第五節第一款第三の三、生産流通振興費という項目で、(八)から(十一)にわたって記されています。しかし、種子開発については、一の農業振興費、その(一)農業試験場費の(二)に一項目あるのみであります。
公的機関による新品種育成や在来品種の保全について政府としてしっかり方針を示して、公的試験研究機関による新品種の育成や在来種の保全を図るための法律も必要だというふうに併せて思うわけですね。是非とも、私は、法律によってこうした関係者の不安を取り除くためにこのことが必要だということについて答弁を求めます。
○野上国務大臣 品種開発に当たりましては、産学官が連携をして、高い品種開発力を発揮していくということが重要でありまして、その中で都道府県の公設試験場を活用することが期待されているわけであります。
令和二年度予算におきましては、都道府県の公設試に対しまして、品種開発に対する研究予算を措置したところであります。
また、令和三年度予算につきましても、公設試と農研機構が連携をして、各地の遺伝資源を活用できるようなデータベースの構築等も行うこととしております。
さらに、農研機構では、独立行政法人通則法に基づいて、本年度から令和七年度までの中長期計画を策定しまして、その中で、公設試験場の品種開発が加速化できるように、例えば国内外の遺伝子資源の収集、保存、配付等を行う体制の整備等も位置づけているところであります。今後とも、都道府県公設試験場による品種開発をしっかりと促進してまいりたいと考えております。
○佐々木(隆)委員 終わりますが、今の大臣の答弁も、やはり行政の範疇から出ないわけですよね。我々は、行政を超えて何かを議論しないと国会の意味はありませんので、是非、このことの法律を作って誰かが不利益を受けるわけじゃないんです。安心をする人が増えることは確かでありますし、不利益を受ける人がいないのであれば、私は、法律によって整備をすべきだということを改めて申し上げさせていただきます。
世界中の小麦の元になっているのは農林10という日本の品種です。これを開発したのは岩手農業試験場なんですね。そういった意味でも、公的機関の試験研究、開発というものが重要だということを改めて申し上げて、質問を終わります。
○高鳥委員長 次に、石川香織君。
○石川(香)委員 石川香織です。今日もよろしくお願いいたします。
先ほど、ほかの委員からも少し触れられておりましたが、先日、政府の規制改革推進会議による第九回の農林水産ワーキング・グループが開催をされましたので、その中の議論について初めにお伺いをしてまいりたいと思います。
この会議は、畜安法の改正から三年目という節目で、その経過なども含めて議論するフォローアップの場だというふうに聞いております。会議では、農水省や指定団体以外の生乳卸などから意見を聞いたということでした。議事録はまだないようですので、全てのやり取りは確認はできておりませんけれども、当日の資料や関係者の方々から話を聞きまして、質問させていただきたいと思います。
まず、その当日、農水省から、いいとこ取りの是正について事例集を作って、それがちゃんと功を奏して違反件数が減少しているということを報告したところ、いいとこ取りはビジネスでは常識なんだというふうに佐久間座長が発言をされたということでした。
私も、このいいとこ取りについては昨年も質問させていただいたんですけれども、今までルール違反とされていたことを常識なんだと、いいとこ取りを肯定する姿勢に、正直、私は驚きました。農水省もその際に、年度内の途中切替えは駄目ですけれども、複数契約は駄目とは言っていないというふうに反論したようなんですけれども。
まず、佐久間座長の発言は事実かどうか。また、事実だとしたら、この発言についての農水省の受け止めをお伺いします。
○野上国務大臣 御指摘のとおり、三月十九日にワーキング・グループのヒアリングが開催されたわけでありますが、会議では、酪農家が出荷先を自由に選択できる環境を整備した制度改革については一定の進展があるものの、指定団体への出荷が大宗を占める実態は変わっていない、また、指定団体が不公正な取引を行っている疑いもあることから実態として制度改革が進んでいないとの意見があったというところであります。
委員御指摘の、この会議におきまして、いいとこ取りはビジネスでは常識といった発言につきましては、複数の相手と取引をすることでリスク分散や収益性を高めることは普通の産業では当たり前のことだとの趣旨でありまして、生乳取引の年間契約に違反して出荷先を変更することを認める発言ではないと理解しております。
いずれにしても、酪農家が創意工夫を生かせる環境を整備したこの改正の趣旨が徹底されるように、しっかりと対応してまいりたいと考えております。
○石川(香)委員 酪農家の方は経営者、事業者でもありますので、リスクを回避するとか、より資材を安く買いたいとか、生乳を高く売りたいという気持ちがあるのは当然ですけれども、この場において、いいとこ取りというのは、やはり、今までのルールの中では違反とされていたいいとこ取りだという認識で当然受け取ると思います。
もし仮にみんながいいとこ取りをしてしまったら逆にどうなるかということなんですけれども、生乳が安定的に供給される仕組みがまず崩れて、それから、卸業者にみんな殺到してしまったら、指定団体以外のところに殺到してしまったら、受入れのキャパを優に超えて、生乳が大量に廃棄されるのではないかとまで考えるんですけれども、ちょっとこの発言は、私、非常に驚きました。誤解を招く発言だと思います。
さらに、もう一つ、翌日以降の新聞に「ホクレン分割」という衝撃的な見出しが出ました。
このことについてお伺いしますが、十九日の会議の中で複数の委員から、ホクレンのような全国十ブロックに分かれている指定団体が圧倒的なシェアを持つことに対して分割といった言い方をして発言をしたと。こういった趣旨の発言があったようです。当日、事務局からは、電力の送配電部門の法的分離に係る電力会社の会社分割という資料が配付をされて、分割の例として、JRとかNTTの例を挙げる委員もいたようです。
まず、この発言の事実関係と経緯をお伺いしたいと思います。
○野上国務大臣 今御指摘の発言でありますが、一部の委員から、生乳流通事業者の競争を促す手法の一つとして、現在生乳流通の大宗を占める指定団体について、不公正な取引を防止する取組などを行ってもなお、なかなか適正な競争が成立しないのであれば分割することも検討すべきとの意見もあったと承知をいたしております。
現在の指定団体は、先ほど申し上げましたが、歴史的に乳業メーカーとの対等な価格交渉を行う上で、酪農家が団結して、酪農家の協同組織として発展してきた経緯がありますので、こうしたことを踏まえますと、競争を促すために指定団体を分割すれば、乳業メーカーに対する酪農家の価格交渉力が弱体化することにつながるおそれがあるわけであります。
なお、規制改革推進会議の場では、一部の委員から、生乳流通事業者の競争を促す手法として、組織の分割や取引の透明性確保の取組など、いろいろな意見があったことは承知しておりますが、指定団体の分割ありきで議論がなされたものということは認識をいたしておりません。
いずれにしても、今回の改正について、その趣旨が徹底されるようにしっかりと対応してまいりたいと考えております。
○石川(香)委員 今御答弁いただきました内容と同じように、二十三日の大臣の記者会見の中でも、慎重な議論が必要だというような発言をされておると思います。
これも、ホクレンと名指ししたかどうかは別として、というか議事録がまだないのでよく分からない点もあるんですが、当日、農水省も、公的なインフラの話と生乳の加工乳の話を同じレイヤーで扱うのには違和感があるということで、分割というふうになってしまうと農協制度そのものの否定になるので慎重に判断したいというふうに言ってくださっています。
先ほど大臣も、なぜ今こういう制度になっているのか、指定団体の制度になっているのかという経緯をお話しいただいたのが、今の、なぜこうなっているかという理由なんですけれども、やはり、その当時の背景とか歴史の認識というのが、この発言も含めて全く感じられないなと。
先ほど御説明もされておりましたけれども、指定団体が大きなシェアを持つこと自体がよくないとされているのであれば、そもそも、生乳供給の安定とか農家の収入を支えるという仕組み、それは先人が知恵を出して築き上げたものでありまして、その取組自体が否定をされて、過去に遡ることになってしまうわけですよね。指定団体はなぜあるかといえば、酪農家が乳業メーカーに買いたたかれないように指定団体が窓口になって交渉してくれるということで、酪農家の方も選択をして、選んでいるわけですよね、どこに生乳を出すかということを。そういった背景を規制改革会議の委員は本当に御存じなんだろうかと正直感じています。
さらに、指定団体以外の事業者への支援というものも今後の課題というふうに聞いておりますけれども、そのことについてはどのような認識でしょうか。
○水田政府参考人 お答えいたします。
三月十九日金曜日に開催されました規制改革の農林ワーキング・グループにおきまして、新たな取組を行う者への支援といったことが議論されたというふうに聞いております。
これにつきましては、これまでも、第三号対象事業者でございます、酪農家自ら乳製品製造に取り組む方に対しましてチーズ工房の施設整備ですとか六次産業化の取組に対する支援を行っているところでございまして、こういった支援を今後とも引き続き後押ししてまいりたいということでございます。
○石川(香)委員 改正畜安法で指定団体以外の生乳の卸の事業者の参入もできたということで、選択肢が広がったということについてはいいと思います。そのことについては全く否定はしないんですけれども、一方で、指定団体が大きくなり過ぎたゆえにほかの選択をする酪農家に対して圧力をかけるだとかというようなことがあれば、それは不当な行為であって容認されるものではないと思っています。
指定団体ではない卸事業者と取引しているということを理由に差別的なことをされた、圧力を受けたというような体験談も当日紹介されたようです。例えば、系統外の生乳の運送を拒否された、チーズ工房をやっている方が加工用ではなく飲用向けの乳価での購入を強制されたとか御報告されたそうです。こういったことが事実であれば明らかにこれは不当な行為ですけれども、こういったことがあったとしても、指定団体との取引をしていないからそういうことをされたかどうかというのは、これだけではちょっと読み取れない、断言できないということもあると思います。
さらに、この場には指定団体は呼ばれていませんので、指定団体側からすると、反論する機会ももらえなかったと。一方的に言われてしまい、片方の意見だけがこうやってクローズアップされるというのも、生乳改革のフォローアップの場としてはいかがなものかなと感じています。
とはいえ、繰り返しになりますけれども、大きな立場を盾にしたこうした不正な行為というのは容認されるべきではありませんが、農水省として、この不公正な取引というのは把握をされているんでしょうか。
○野上国務大臣 当日その会議で報告された事例でありますが、指定団体が取引先の乳業や運送会社に対して圧力をかけ、指定団体以外の事業者と取引させないようにしている事例ですとか、あるいは、指定団体が取引量の少ないチーズ工房に対してチーズ向け乳価よりも高い飲用向け乳価での取引を強制した事例など、指定団体による不公正な取引の事例が報告をされたわけであります。
農林水産省としましては、現時点ではそのような事実は承知しておりませんが、示された事例が仮に事実であれば、公正な取引に支障を来す問題のある行為だと考えております。
いずれにしても、三月十九日の規制改革推進会議においてこのような事例が報告されましたので、この不公正な取引事例について承知をしていないものであることから、まずはそのような実態があるのかどうか、このことを含めて調査をして、その上で課題を見極めて対応を検討していく必要があるものと考えております。
○石川(香)委員 そのことについては、今後明らかになってくるのかなと思います。
改正畜安法というのは規制改革推進会議の肝煎りでありまして、この制度によって、指定団体以外の新たな卸の事業者が補給金を得ることができた。これで酪農家の選択肢が増えました。そして、それからは酪農家の選択になるわけです。
当日の会議の中では、系統外が増えていない、まだまだ改革が必要なのではないかという意見も出たそうですけれども、この発言だけを見てしまうと、もっと指定団体以外の卸事業者を増やしたいというふうにも聞こえてしまいますし、そのためには指定団体のシェアを削ってでもそうしたいのかという意見にも取られかねないと思います。
今回の議論は、改正畜安法のフォローアップの場であるにもかかわらず、指定団体の方がこの間こなしてきた役割というもの、実績には触れられていないのが非常に残念に感じています。
例えば、北海道胆振東部地震がありましたけれども、ブラックアウトになった際、酪農家は本当にお水が止まったり電気が止まったりすると大変なんですけれども、ホクレンや乳業メーカーが連携をして、地域をまたがって生乳を運んで、やりくりをしてくれた。それから、コロナで今生乳の需要が減りまして、一斉休校になったりもして、牛乳が余ってしまうのではないかといった心配の中で、チーズとか脱脂粉乳とか加工用に回して、工場をフル稼働して、何とか生乳を廃棄させないということをしてくれました。その間のオペレーションは本当に大変だったというふうに聞いています。
こういったことも含めて、生乳の需給の調整を広域的に図ってきたということに対して、有事の対応も含めて、もっとやはり評価するべきじゃなかったのか。
一方で、この制度に対して、指定団体以外の事業者がまだまだ活躍できていないのではないかという意見はそれはそれでいいと思うんですけれども、やはり、指定団体に対する評価というのがこの会議の中では明らかに欠けている。そういう意味で、ちょっと平等ではないのではないかと思います。こういった意見は全く出ることもなく、数字だけを見て系統外が増えていないと言うのは、全体を見られていないのではないかなと感じています。
委員の発言に対して農水省がその場で角を立てずに反論をしてくださっているというのは、いろいろな資料を見て、お話を聞いて感じ取れて、それは非常に私はうれしいと思ったんですけれども、そもそも、議論の前提から説明をする時間とエネルギーそのものがちょっともったいないというか、無駄とは言わないですけれども、農水省の仕事を増やしてしまっているんじゃないかと逆に思っています。
今日は、規制改革の所管であります内閣府から岡下政務官に来ていただいておりますので、以後、ちょっと政務官にお伺いをしたいと思います。
今までの議論もお聞きいただいたと思いますけれども、昨日も規制改革をめぐって、参議院の決算委員会で田名部委員からこんな御指摘がありました。
国家戦略特区の養父市の話ですけれども、農業に詳しくない民間委員が議論を主導することに対して問題視するというような質問がありまして、菅総理が御答弁をされております。大胆な規制改革を進めるには、その分野の専門家だけではなく、経済構造を俯瞰的に捉える有識者の参画が重要だと答弁をされています。この御意見は当然そうだと思います。偏った方じゃなくていろいろな意見の方を取り入れるというのは、それはすごく重要なことだと思います。
ただ、生乳改革を例に挙げますと、かなり制度が専門的な話であって、制度そのものについて議論をするとなると、深い知識、それから現場での経験とか、そういうことが必要になってくると思います。
私の選挙区は全国の生乳の一五%の生産のシェアがありまして、私もいろいろ、生乳関連のお仕事をされている方、酪農家の方に今回の規制改革での話について意見を聞きましたけれども、それはいい意見を言ってくれたねとは、やはり一人も言っていません。
いろいろな意見を言う方が大事だということは否定はしないにしても、余りにも現場とほど遠い方が委員として好き勝手言い過ぎなのではないか、大変失礼なんですけれども、私はそういうふうに感じます。もっと言ってしまえば、委員の選定そのものが、ちょっとこれは間違っていたのではないかと甚だ疑問なんですけれども。
生乳改革のフォローアップの場として、もっと現場に近い方を委員に入れるべきではないかということについて、政務官から御答弁をいただきたいと思います。
○岡下大臣政務官 お答え申し上げます。
規制改革推進会議の委員につきましては、規制改革推進会議令に基づきまして、優れた識見を有する者のうちから内閣総理大臣が任命することとされております。
御指摘の点につきましては、議題に応じて、ワーキング・グループの座長の御判断によりまして、委員とは別に、現場の方などをお呼びして御意見をお伺いすることも行っております。実際、三月十九日に開催されました農林水産ワーキング・グループにおきましては、生乳卸売販売業の方にも御出席をいただいております。
今、石川委員御指摘の点も踏まえて、今後とも適切な会議運営が行われるよう努めてまいりたいと思います。
○石川(香)委員 酪農家の方を始め現場の方の意見も聞く機会があるとお話をされていましたけれども、幾ら現場の方のお話を聞くと言っても、その話を受け入れる側の委員の方が現場とほど遠い感覚であれば、議論はかみ合わないんじゃないかと思います。指定団体の分割という、ちょっと衝撃的な見出しの書き方もあったかもしれません。それが必要以上に不安をあおってしまった部分はあるかもしれませんけれども。
ただ、この制度そのものを私は全く否定をするわけではありませんで、酪農家として、一事業者として、もっと収入を上げたいとか、いろいろな取組にチャレンジしたいという欲求は当然の欲求ですので、非常にこれは選択肢を広げたと思います。ただ、一方で、九五%の生産者が指定団体を選んでいるというところは、生産者自身の選択ですので、やはりそれは指定団体に対しての信頼ということになるんだと思います。
規制改革会議のワーキング・グループの議論の中でも、酪農家ファーストであるべきだという議論があったというふうに聞いておりますけれども、やはり、酪農家を始め、当事者の方の意見をもっと酌めるような体制をつくっていく配慮というのが必要ではないかなと思います。本当の意味で酪農家の目線に立った制度、もっとよい制度になること、みんなそれは気持ちは一緒だと思いますので、是非今回の議論を心に留めていただければと思います。
岡下政務官、これで終わりですので、ありがとうございます。
では、これで規制改革会議の話については終わりにしたいと思いますが、次は、有機農業についてお伺いをします。
日本の有機食品の売上げの推移というのは、二〇〇九年から二〇一七年までの八年間で約四割拡大したそうです。二〇三〇年までに有機農業の取組の面積、有機農業者数は三倍にするという目標を掲げているということですが、誰もが薬品を使わずにオーガニックのものを気軽に食べられるのであれば、やはりそういう選択を取りたいという方は多いと思います。ただ、分かっていながらもまだ、毎日オーガニックだけを食べるというような習慣はなかなか今の環境整備の中では不十分ではないかと思いますが、オーガニックを広めたいと思ったときに、もっと健康面のアプローチというのは必要ではないかと思います。
今、子供たちの中で、自閉症とか発達障害と言われる子たちが増えていると言われております。学校現場の感覚では、生徒の十人に一人、もっと多いのではないかというデータもあるそうですけれども、このような感覚で学校の先生たちも接しているということでした。
急激に発達障害、自閉症と言われる子供たちが増えた要因の一つに、ここ二十年で著しく増加をしているネオニコチノイド系の農薬、それから遺伝子組み換え食品が関連をしているのではないかという見方をしている方もいらっしゃるんですが、この関連性をどう分析されているか、まず農水省にお伺いをしたいと思います。
○葉梨副大臣 発達障害が増加傾向かどうかというのはまた厚労省の方にお聞きになってと思いますが、今のネオニコチノイド系農薬、グリホサート等の農薬については、防除効果があって、人の健康や環境に対して、関係府省と連携して、安全性が高いものについて登録をしているということでございます。
これらの農薬は、我が国の食品安全委員会における食品健康影響評価が行われており、登録された使用方法どおりの使用をすれば人の健康上問題がないことを確認して、登録をしています。それで、発達神経毒性や発がん性などの様々なデータ、これに基づいてやっているわけですけれども。
今後、平成三十年に改正された農薬取締法に基づいて、ネオニコチノイド系農薬やグリホサートについて、再評価の初年度、本年度が初年度でございますので、これらの発達神経毒性や発がん性も含めて、最新の科学的知見に基づいて再評価を始めることとしています。
また、さらに、遺伝子組み換え食品についても、厚労省において食品安全委員会の食品健康影響評価の手続を経た旨の公表がなされ安全性の確保がなされたもののみが流通等していると承知しておりますが、発達障害等々との関係については、ちょっとまだ、そういうことで、エビデンスが現在あるわけではないということでございます。
○石川(香)委員 厚労省の方にも来ていただいておりますので、発達障害の子供たちの増加傾向といいますか、そういったことについて、どういうふうな認識を持っているかということについてお願いします。
○赤澤政府参考人 お答えいたします。
発達障害のある方々につきましては、平成十七年の発達障害者支援法施行後、障害福祉サービス等の充実や地域における支援体制の整備が進むとともに、発達障害に関する社会的認知が大きく広がってきております。
こうした社会的認知の広がりに伴い、従来は育てづらさ、生きづらさを抱えていても自覚する機会がなかった方々も含めまして、相談支援等の機関につながり、必要な支援が提供されるようになってきたため、一般的に増加したと捉えられているものと承知しております。
○石川(香)委員 非常に難しい問題だと思います。ただ、今おっしゃっていただいたような、一人一人の特性に対して向き合う環境ができてきたという言い方もできるかもしれません。自覚する機会が増えたということも関連するかもしれませんけれども。
食との関わりということについては、二〇一二年にアメリカの小児学会が、子供に対する農薬の暴露が子供の発達障害や脳腫瘍などを引き起こしやすくするといった警告もしているそうです。
食べ物と、発達障害とか、こういう病気、健康面への影響ということについては、農水省、厚労省とも連携して知見を蓄積していくということが大切なのではないかと思います。やはり、長くデータを取らないと分からないということもあると思いますし、関連性、影響がないんですよというのであれば、それをもっと証明できるようなデータというものを積極的に提示していくことが消費者の不安を取り除くということにもなるのかなと思っております。
また有機農業に戻りますが、令和二年四月改定の有機農業の推進に関する基本的な方針の中で、十年後、二〇三〇年に有機農業の面積、有機農業者数をおおむね三倍にするということですけれども、そのためには、有機農業に取り組む新規参入者を支援する取組が必要だと思います。農業の新規参入者のうち有機農業を実施する方の割合は、全作物で有機農業を実施している農家が二〇%を占めるということですので、関心がある農家を後押しするということで、この面積、農業者数を増やすことができるのではないかと思います。
とりわけ、新規参入者、小規模農家の参入ということを支援していく必要があると思いますが、このことについて最後にお伺いをします。
○水田政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のように、農業に新規に参入する方々についてでございますけれども、全作物で有機農業を実施する方が約二割、さらに、一部作物で有機農業を実施される方もいらっしゃるということから、全体で見ますと、二割から三割の方々が何らかの形で有機農業に取り組んでいるなど、新たに有機農業に取り組もうとする方が相当数存在しているということでございます。
また、大規模経営のみならず、野菜などで小規模の有機農業に取り組まれる農業者もおられると承知しております。これらの方々が有機農業に取り組みやすくする環境づくりが必要であると考えているところでございます。
このため、農林水産省では、令和二年度から、新たに有機農業に取り組む農業者を対象といたしまして、有機JAS制度の研修を受講することに対する支援とか、有機JASの初回の圃場実地検査を受検する際の支援ですとか、こういったことを実施しておりますし、また、有機農業に関する相談や指導を受けやすくするため、都道府県を通じまして、指導員の育成支援、こういったことも実施をしております。
また、有機農業を行う上での課題といたしましては、手間がかかる、労力がかかるということ、それから、収量や品質が不安定であるということがございます。こういったことに対応するために、一つは、水田におきます深水管理ですとか、畑地で太陽熱を利用するというやり方、こういった省力的に雑草を管理する技術の実証を通じまして労力の軽減を図るとか、あるいは、地域の農業者グループなどでの栽培技術講習会、こういったものを開催することによりまして、熟練の有機農業者の技術が新規参入者などに円滑に継承されるような支援をさせていただいているということでございます。
先日、中間取りまとめを行いましたみどりの食料システム戦略では、二〇五〇年までに有機農業の取組面積の大幅拡大ということを目指すこととしておりますので、有機農業に取り組む農業者が増えるよう、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
○石川(香)委員 是非、オーガニック農業の後押し、よろしくお願いいたします。
終わります。ありがとうございました。
○高鳥委員長 次に、緑川貴士君。
○緑川委員 皆様、お疲れさまでございます。立憲民主党の緑川貴士です。
今日は農研機構のお話が出ておりますけれども、私からもその関連で御質問させていただきます。
春から、農業・食品産業技術総合研究機構、農研機構内の研究組織に大きな再編がありました。早速お配りしている資料一のところを御覧いただきたいんですけれども、ちょっと今、配るところで申し訳ありません。
これまでの次世代作物開発研究センター、通称作物研という研究組織が農研機構内にありますけれども、これは、稲、小麦、大麦、大豆といった資源作物の品種改良、その品種改良のための技術開発などを進めています。このうち、稲研究領域というところは、米消費の多様なニーズに応えながら、稲の安定生産を目指して品種改良を進める重要なセクションです。
この春から、作物研究部門という組織名で、新たな研究体制が矢印の右のようになりました。右側は、三月に農研機構の職員向けに配付された資料の抜粋です。オーダーメイド育種基盤グループという赤字のところ、書いていますが、作物研のホームページに昨日アップされたものを確認すると、研究体制のところが職員向けに配られた名前とは違っていまして、オーダーメイド稲育種基盤グループと、稲が追加される形で変更されていました。
非常に私は内部の、この農研機構の現場の苦心というものを感じています。後でお話しさせてもらいますけれども。ただ、それでも、研究領域から一段下がってしまって、グループに下がりました。大きなくくりの領域としては、稲の名前が消えてしまいました。
この研究体制は今年度から五年間の中長期目標に沿ったもので、主務大臣である野上大臣から指示された目標でありますけれども、作物研究で稲を冠とした研究領域が消えたことで、これまでできたことが新体制ではできなくなるのか伺いたい。そしてまた、稲研究に係る予算や人員にはどのように影響するのか、お伺いしたいと思います。
○野上国務大臣 農研機構におきましては、今御指摘がありましたとおり、今年度から令和七年度までの間を第五期中期目標期間としております。この期間におきましては、研究開発の成果を最大化するために、研究組織の再編も含めた戦略的なマネジメントを行うということにいたしております。
戦略的なマネジメントを遂行するためには、スマート農業や最先端の育種技術の開発を作物横断的に行えるような研究領域が設定されることが重要と考えております。
このような中で、今お話のありました従前の次世代作物開発研究センターの稲研究領域につきましては、第五期では、稲、麦、大豆の作物を横断的に対象とした作物研究部門を設置し、その中で、研究内容に応じて、最先端の育種技術の開発等を行う新たな研究領域を設置したと承知をいたしております。
そして、新しい研究領域におきましては、稲に関しましては、気候変動に適応した高温でも品質低下が起きにくい品種ですとかあるいは外食用等のニーズに応じた品種の開発、また、品種育成に要する期間を大幅に短縮する新たな育種選抜技術の開発等々を行うこととしておりまして、稲の研究が後ろ向きになるということはないと考えております。
○緑川委員 これまで稲研究領域でできていたもの、なくなるものを教えてください。
○菱沼政府参考人 お答えいたします。
今も稲に対してのしっかりした研究を行っていますけれども、この領域、名前が変わっても、今の課題等を整理しながら、しっかり続けてやっていきたいというふうに考えているところであります。
以上です。
○緑川委員 やはり、これまで稲を冠としていた研究領域というもの、この一つの研究領域に落ちる交付金というものと、稲を冠としている唯一のグループに落ちる交付金が、やはり同じ額になるとは思えないんですね。結局、現場の方で、横断的な研究といっても、大豆の方が今は先に来ているわけですね、御覧のように。
組織体制で変わったところがもう一つあるんですけれども、稲研究領域という大きなものがなくなったことに加えて、畑作物というものが前に来ているわけですね。そうすると、やはり、稲というものが後退しているのではないかという現場の声が上がってきているわけです。
現場の研究者にお話を伺いましても、交付金というのはかなり削られているということです。以前は研究者一人当たりに七十万から九十万円。でも、昨年は一人当たり四十万円。そして、今年は選択と集中という名の下に更に減額されるということです。交付金だけで賄えないので、プロジェクトに応募して外部資金でもらわなければ研究がままならないと。それが稲研究であれば、なおさら資金は獲得できないのではないかという心配の声が内部から上がっているんですよ。
畑作の順番も違います。そして、中長期計画、大臣からもお話がありましたけれども、研究開発の重点化方針という中でも、大豆作、麦作、稲作等の新品種開発などと書かれて、稲が後ろに来ています。研究領域としても、畑作物については従来どおりその名が冠として残るのに、稲はなくなる。研究分野としての存在感が薄れてしまっているということなんです。
確かに、気候変動の影響の一因と言われる異常気象に対応していくため、高温障害あるいは高温不稔、厳しい暑さというものが開花の時期と重なれば受精障害が起こりやすいので、そうした事態に対応するために、早朝に開花する性質を持つ品種の研究とか、それだけに限らず、台風も大型化している中で、台風に強い稲の品種とか、様々な方面から研究、品種開発に当たっていかなければならないのに、それが、唯一名前がついているのが、このオーダーメイド稲育種基盤グループというものにしかついていないわけなんですよ。今後の行方が大変心配であります。
やはり、政府肝煎りのみどりの食料システム戦略の話も先ほどありましたが、有機農業の取組面積を二〇五〇年に百万ヘクタールにするということであれば、温室効果ガスの発生割合が顕著な稲作でどう抑制をしていくのか。また、化学農薬を使わなくても病虫害に強い品種の開発というのは一層重要になってくるわけです。そういう研究領域がなくなってしまうというのは、私は大変問題があるというふうに思っています。
日本の食料の基盤として、これまで稲が先に来ていました。稲作、畑作があるように、様々な課題に対応するための稲作研究、品種開発というのは、これまでのように研究領域として畑作と同列に扱われるべきだというふうに考えますが、いかがでしょうか。
○菱沼政府参考人 お答えいたします。
稲の研究につきましては、やはり、今後は水田農業の高収益化を図るため、前期に続いてしっかり取り組む必要があると考えております。こういった中で、領域の名前を変えるということになりましたけれども、農研機構の中におきましては、組織面、研究領域面については丁寧に研究の説明が行われたと聞いております。
まだまだ機構内でいろいろとお話があるのであれば、しっかりと説明をした上で、しっかりした研究ができるようにということを指導助言していきたいと考えております。
○緑川委員 いや、全く聞かされていないんですよ。ホームページにも稲というのが突如として上がったかのようなお話はありました。
農業競争力強化支援法の八条四項の、農研機構そして都道府県の優良な育種知見を民間に提供するということになって、農研機構の中長期計画には、公設試験場だけでなくて民間がニーズに応じて迅速に稲の育種を行うということが書いてあります。このオーダーメイドというのはやはりそういう意味に私は受け取っておりますし、一グループに集約されてしまっています。何とか稲の名前を残せたというのはやはり研究現場の抵抗であると私は思いますし、稲の研究に心血を注いできた研究者のプライドであるというふうに思っています。
名目が立たなければ研究予算というのは下りないという世界ですから、人や土地を使うという研究である以上、オーダーメイドに従わないような名目になってしまう、そうした事業であれば実質お金は下りないんじゃないかというふうに私は思っています。
民間が求めるような経済的にメリットのある品種開発だけではなくて、やはり、おっしゃるような、食料危機、気候変動、地球規模の課題に対応する長期的な視点に立った稲の研究を深めていくためには、明確な研究体制の冠がなければ務まることができないというふうに私は思っています。所管する農水省には重く受け止めていただきたいと思います。
残りの時間を使いまして、大雪被害、この冬の農業被害についてお尋ねをいたします。
東北、北陸地方を中心に二十七の道府県で、農業用ハウス、畜舎、そして果樹の枝折れ、倒伏など、多くの被害が発生いたしました。大雪による農林水産関係の被害、二十七の道府県で百八億円。そして、このうち最も被害が大きいのは農業用ハウスです。被害額がおよそ百七億円、そして一万九千件近いハウスに被害が出ました。雪深い地域では雪解けがまだ遅いです。生産者から最近でも被害について新たな報告が寄せられていまして、被害額がまだ伸びています。
政府は、今回の対策というのは三年前の平成三十年豪雪の対策を基にして、農業用ハウス再建の柱の一つである強い農業・担い手づくり総合支援交付金、強農の地域担い手育成支援タイプを使って、被災したハウスを優先採択して再建を後押しするというふうにしています。
ただ、パイプハウスの再建費用の補助については、今回は強農の補助額に上限が設けられているんですが、上限を六百万円としている根拠をまず端的に教えていただきたいと思います。
○野上国務大臣 農林水産省におきましては、これまで、甚大な自然災害が発生した場合には、災害状況を踏まえて、個別災害ごとにどのような支援が必要かを判断しながら対応してきております。
今般の大雪で措置をしましたいわゆる強農の地域担い手育成支援タイプの優先採択でありますが、これは北陸を中心とした平成二十九年から三十年までの大雪による被害への対策と同様の支援内容としておりまして、補助上限額を通常事業と比べて二倍となります一経営体当たり六百万円に引き上げているわけでございます。
○緑川委員 それと同様ということで、何が違うのか、私からお話ししたいと思います。
三年前の豪雪被害の対策を参考にするということなんですが、農業用ハウス被害額としては、三年前は四十五億円です。しかし、今回は百七億円です。倍以上違います。そして、ハウスの被害額だけを見れば、おととしの台風十九号をも上回っています。台風十九号は特定非常災害に指定されて、人や家屋の被害、生活インフラへの影響、規模は確かに違うんですけれども、農業用ハウスの被害額としては八十五・五億円です。
このときのハウス再建でも、強農による支援なんですが、支援のタイプが違うんですね。今回の地域担い手育成支援タイプではなくて、被災農業者支援型を発動しました。被災農業者支援型になれば、六百万円までというような上限はなくなります。台風十九号では上限がないのに、それよりもハウスの被害額の大きい今回の大雪被害には上限がつけられている。これまでのハウス再建の支援との整合性が取れていないんじゃないんでしょうか。
○光吉政府参考人 お答えいたします。
先ほど大臣から申し上げましたとおり、今回は、いわゆる強農の交付金につきまして、優先採択ということで対応しております。
それで、御指摘の支援型につきましては、これは、過去に例のないような甚大な気象災害等によりまして、担い手の農業経営の安定に支障を来す事態が発生しており、特に緊急に対応する必要がある場合に限って発動することとなっております。
今回は、それぞれの災害の状況、これまでの支援内容を踏まえて、先ほど御説明したような対応にしているところでございます。
○緑川委員 全く答えになっていないですね。被害額は見ないんですか、トータルとして。甚大な被害じゃないんですか、これは。
ちょっと、もう一回答えてもらえますか。台風十九号をも超えているんですよ。
○光吉政府参考人 お答え申し上げます。
今回の災害につきましての考え方は先ほど申し上げたとおりでございますが、特段、過去のものと比べて、激甚指定がされたり特定災害に指定されている状況はないものと承知しております。
○緑川委員 特定非常災害という話と農業被害の話は分けてくださいよ。強い農業の担い手づくり総合支援金について話をしているんです。被災農業者支援型に匹敵する被害額が生じていることをどういうふうに考えていますか。
○光吉政府参考人 お答えいたします。
先ほど申し上げたとおり、災害対策につきましては、災害状況を踏まえまして、個別災害ごとにどのような対策が必要かを判断しながらやっております。
それで、委員御指摘の点につきましては、過去の大雪についての災害なども踏まえて今回の対応を考えているところでございます。
○緑川委員 だから、過去の大雪とは被害額がまるで違うんですって。時間がないんですけれども、次に行きたいんですが。
野上大臣は新潟県の上越市、そして南魚沼市、葉梨副大臣は秋田県横手市で視察されて、現場のお声を聞いていただいたというふうに思います。
初冬からやはりどか雪でありました。休みなく短期に集中して降ったということが被害を広げて、雪に慣れたところでも除雪が間に合わなかった。それゆえ現場にたどり着けないという中で、ハウスの相次ぐ被害を防ぐことが慣れた方でもできなかったということ。その中で、一つの経営体だけで十棟を超えるハウスが倒壊したところもあるわけです。
資料二をここで御覧いただきたいんですけれども、補助割合のところで、被害額が二千万円というところが基準になって、支援が足りない部分と支援が何とかカバーされるという基準になっているんですが、仮に二千万円の被害が出た場合には国が十分の三で補助上限いっぱいの六百万円の負担、そして、農家が園芸施設共済に加入している場合、十年が経過したハウスでも国費相当分と合わせて十分の四は最低でも補償されます。そして、県と市町村が十分の三の負担をすれば国の補助上限があっても何とかカバーされるんですが、自治体に確認しますと、二千万円以上の被害のあった経営体というのがありました。
二千万円を超えた場合に、国の上限額が六百万円であれば、国の負担は十分の三未満になってしまう。補助割合が下がった分だけ、結局、県や事業主体の市町村が十分の三を超える負担をする可能性があります。それを出すかどうかというのが県や市町村の判断というだけでは無責任だというふうに思います。上限は撤廃するということを御検討いただけないでしょうか。
○光吉政府参考人 今回の大雪に関しましては二月二日に支援策を決定しておりますが、その中では、強い農業・担い手づくり総合支援交付金の優先採択、そのほかに、持続的生産強化対策事業の産地緊急支援対策、強い農業・担い手づくり総合支援交付金の被災産地施設支援対策、こういったものを措置することとしております。
これらの支援策は、被害を受けた農業用ハウスにつきまして、例えば、簡易な育苗施設など自力施工が可能なものにつきましては持続的生産強化対策事業の産地緊急支援対策を活用し、それ以外のものにつきましては先ほど来ございます地域担い手育成支援タイプを活用するといったように、複数の支援策を組み合わせて復旧を行うことが可能でございます。
被災された農業者の方のニーズに応じまして、地方自治体や現地との連絡を密にしながら対応していきたいと思っております。
○緑川委員 複数の事業を一つの経営体に組み合わせて使えるということを把握していない市町村があります。
秋田県に確認させていただくと、例えば被害が三千万円の場合には二千万円は強農でカバーする、一千万円を超えた場合、例えば一千万円の分については、もう一つは国のハウス再建補助である持続的生産強化対策事業を利用するという、合わせ技で対応していくということなんですが、それを、合わせ技ということができるということを把握している市町村が、ちゃんと通知していますか、把握していないところがあるんですよ。自治体から問い合わせて初めて、そうなんだって知ったわけですから。農水省もしっかり確認させた方がいいと思いますけれども、いかがですか。
○光吉政府参考人 お答えいたします。
先ほども申し上げたように、事業の目的あるいは復旧の仕方に応じて多様な取組が可能な状況でございます。こういったことにつきまして現場に周知をしていきたいと思っております。
○緑川委員 強農は、人・農地プランに位置づけられた中心経営体しか使えないことになっています。ですから、認定農業者とかそうした中心経営体でなければ、中心経営体でない場合は強農は使えない、でも、二千万円以上の被害があったらどうするんだという話とか、組み合わせて使えるということを知らない市町村はそうした考え方にいけないわけですよ。そうしたところをしっかり伝えていただきたいというふうに思います。
そして、これは被害額を問わずなんですが、心配されるのは資材費の高騰した分の負担です。
園芸施設共済に加入している人は年数のたったハウスでも最低四割が補償されるんですが、補償額は、被害を受けた時点の資材の単価表に照らした資産価値、そのときの資産価値に基づいた補償額になるわけです。つまり、資材費がどんどん高騰している中ではその補償額には反映されません。実際の資材費高騰分が含まれる再建事業の総額の四割に満たない、そうした補償になる可能性があります。被害総額を賄えないという声を自治体からいただいていますけれども、いかがですか。
○光吉政府参考人 お答えいたします。
施設園芸共済におきましては、築年数がたった施設につきましては、新築時の資産価値が分かればいいんですが、領収書などで確定できない場合には、施設の種類ごとに国の方で標準価額を定めて、それに基づいて計算することとなっております。
この場合、標準価額を用いた補償水準であるということにつきましては加入者に御理解をいただいた上で、それを踏まえた掛金をお支払いいただいているところでございます。
○緑川委員 結局、資材費高騰分は全く反映されないわけであります。営農を続けようという農家に実際に大きな実費が生じるおそれがあるわけです。県、市町村は、そうした実費に対してどのぐらいの農家の負担があるのか、営農を続けられないぐらいの負担が生じてしまうのか、そうしたところをしっかり確認をしていただきたいというふうに思います。
強農の二つ目の問題点、やはり、地域の中心経営体のみが対象になっています。法人、個人、集落営農というのは、中心経営体でなければ使えませんから、例えば兼業農家などは強農は使えません。
中心経営体でない農家がハウスの再建に使えるものとして持続的生産強化対策事業というものがありますが、これは資材代の分しか補助しません。自力施工が前提ですから、若い農家であれば、農水省が公開しているハウスの建て方の動画などを見れば、何とかノウハウを得て自分で施工できるのかもしれません。しかし、やはり農家は御高齢の方が多いです。自力では施工できないというケースにどのように対応していくのか、伺います。
○水田政府参考人 お答えいたします。
持続的生産強化対策事業の産地緊急支援対策でございますけれども、ハウスの場合、ハウスの強靱化とかに取り組む産地に対しまして、産地の生産者による自力施工を前提に、パイプハウスなどの再建、修繕に必要な資材の共同購入、こういったものを支援しているところでございます。
被災された農業者の方が自力施工できない場合には、産地の例えばJAなどの生産部会の方々などによります施工体制の構築が重要と考えておりまして、各地域でのこうした施工体制の構築を働きかける通知を一月十四日付で都道府県に発出しております。また、大雪対策の現地説明会においてもこういった説明をいたしましてこの取組を推進しておりまして、これによりますハウスの早期復旧に努めているというところでございます。
○緑川委員 発出をされたとしても動ける体制かどうかというのは、この春から本格的にこれは動き出していくわけです。
被災したハウスの解体費用を含まないこの事業の場合は、やはり高齢農家の自力施工に対して解体作業についても地域で協力し合ってくれというお答えでありますが、被災したハウスは全体で一万九千棟近くにも及びます。雪が解け切っていない山合いに建つハウスも多いんですね。農村地帯で、非常に移動範囲も広いわけです。国が事前着工を勧めても、資材待ちで、多くのところで施工が遅れています。手伝う側も、田植、畑作などの準備期間ともこれから重なっていくわけです。一件一件の作業効率そして労力を考えれば、地域のJA、農家のボランティアで頑張ってくれと言うだけでは私は限界があると思うんですね。
自力施工、そしてその前の解体作業などを手伝う、そうしたボランティアに対する活動補助の部分が必要じゃないでしょうか、国として。
○野上国務大臣 先ほど来御議論になっております持続的生産強化対策事業でありますが、これは資材の共同購入費等を支援するものでありまして、自力施工が前提であるためにハウスの施工費等につきましては支援対象としておりませんが、地方自治体の中には、別途、ハウスの施工ですとか解体を業者やJA等が請け負う場合に、その経費に対する支援を行っているところもあるわけであります。
この場合、施工や解体を請け負った業者やJA等が農家の有志の方々などを作業員として雇用すること等によりましてこうした方々の作業労賃が支払われることになりますので、地方自治体のこうした支援も併せて御利用いただくことも含めて、早期の営農再開に向けて、被災ハウスの復旧に努めてまいりたいと考えております。
○緑川委員 もう質問は終わりにいたしますけれども、やはり、全ての自治体、全てのJAが隙間なく取り組めるように、しっかりそれは国が応援していただきたいというふうに思います。よくJAと情報共有をして。
農村を支えるのは主な担い手だけではありませんから、兼業で農村を支えている農家のニーズを是非酌んでいただきたいということを強く求めて、質問を終わります。
○高鳥委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 立憲民主党の重徳和彦です。
今日は矢上筆頭、先輩、同僚議員の御了解をいただきまして、私の地元の問題であります八丁味噌GI問題について取り上げさせていただきたいと思います。
一見、明白に結論がおかしな問題でありまして、八丁味噌というのは、私の地元愛知県岡崎市の岡崎城から西へ八丁、八百七十メートル行ったところで、数百年間の歴史を持つ老舗二社によって、みそ蔵で木のおけに石を積んで、丸二年かけて常温で熟成される、そういう伝統製法で造られるものであります。この老舗二社だけが農水省のGI、地理的表示保護から外されて、他の県味噌組合が登録されてしまった事態が三年以上続いております。異常事態です。
このあべこべ登録、これは地元の市民の皆さんあるいは八丁味噌愛好者の皆さん方にとって極めて深刻な問題であります。直筆の署名は九万筆を超えております。取消しを求める行政不服審査請求も三月十九日に農水省が棄却しました。即日私は大臣室に飛び込みまして、野上大臣に抗議と事態打開の申入れをさせていただきました。
このまま進むと取り返しのつかない失政、失態となると思いますが、大臣の認識、この事態をどう受け止めておられるか、まずお答えください。
○野上国務大臣 今御指摘のありました地理的表示の八丁味噌についてでありますが、令和元年の九月の行政不服審査会からの答申を受けまして、令和二年三月から第三者委員会を設置して、専門的な見地から登録要件等について更なる調査、検討を行っておりましたが、その報告書を三月十二日に受け取ったわけであります。
報告書におきましては、八丁味噌の登録に登録拒否事由があるとは認められず、違法、不当の処分とは言えないことから、処分庁の判断は適当とされました。また、その結論を踏まえまして、八丁味噌のGI登録の取消しを求めた行政不服審査請求につきまして、登録を取り消す理由がないとして、請求を棄却する判決を三月十九日に行ったわけであります。
私としましては、この第三者委員会の報告のとおり、登録されておりますGIは妥当と考えておりますが、一方で第三者委員会が提言しているとおり、県組合と八丁組合が協力して八丁味噌を保護すべきと考えております。このため、愛知県とも連携しつつ、八丁組合、県組合の両者に対して、両組合が共同したGI八丁味噌の保護のための話合いを働きかけてまいりたいと考えております。
○重徳委員 今、大臣は役所の方が書いた答弁をそのままお読みになるだけでありましたが、両組合で話し合えなんておっしゃいますが、そもそも私は農水省の、農水行政の失態、失敗だったというふうに申し上げているわけでありまして、この点はやはり政治的に、大臣が政治家として打開すべきであるということを申し上げているところです。
それで、事務方に聞きたいんですけれども、どうしても、何でこんなことになっちゃっているのということを確認したい点が幾つかあります。
まず、一つ目。民間の二つの組合があります。片一方は本家、もう片一方は後発組ですけれども、後発組は別に本家と争っているわけじゃないんです。だけれども、民間企業ですからね、やはりライバル同士ですよ。そういう関係。しかし、この両者がちゃんと折り合いがつかない限り、また、元祖じゃない方を登録したら深刻なトラブルになることぐらいは農水省は予期できていたでしょう、こういうことなんですよ。予期できなかったんですか。何を考えて登録したんですか。
○太田政府参考人 お答えいたします。
八丁味噌につきましては、八丁組合がGIの申請を取り下げた後に県組合の申請を審査した結果、法律に定める登録拒否事由がなかったことから登録をしたものでございます。
農林水産省におきましては、申請があれば、この産品の名称を知的財産として保護するという観点から、産品の特性が生産地に主として帰せられるものであるかどうかなどを審査して、登録拒否事由がなければ登録をするという、こういった仕組みとなっております。
しかしながら、登録の時点におきましても、八丁組合も共にGIとして八丁味噌を守っていくということが望ましいというふうに考えております。このため、八丁味噌のGIの登録の際にも、当時の副大臣から、岡崎市の生産者にも声をかけていただき関係者が一体となって対応していただけるよう県組合にお願いしたのを始め、農林水産省も老舗二社に対しまして説明を行ってきたところでございます。
農林水産省としては、八丁組合の伝統的製法も尊重しつつ、愛知県の貴重な知的財産であるGIの八丁味噌が両組合によって保護されていくことが八丁味噌のブランドを守るということになります。両組合、それから消費者の利益にも合致するものというふうに考えているところでございます。
○重徳委員 野上大臣、よく聞いていてくださいね。あほみたいな話ですわ、これ。八丁組合、元祖が取り下げましたとおっしゃいますけれども、そんな、よそに登録がいってもいいから取り下げますなんて思うわけがないじゃないですか。
知的財産戦略となると、恐らく大企業なんかでは世界での戦いですよね。知財戦争だと思います。だけれども、GIというのは、地域の伝統を大事にしようとか、そして、それがいろいろなまがいものに侵されないように、地域を大切にしなきゃいけない、そういう制度ですよね。それを、八丁組合が取り下げたから、違う組合の申請が生きているから、そっちに自動的に拒否もできないので登録しましたなんて、あほみたいな話じゃないですか。心がないですよ、これは。地域への思いがないと私は思います。
県組合が悪いわけじゃないですよ。県組合を批判しているんじゃないんです。どっちも一生懸命やっていますから。農水省がやっていることは完全におかしいと私は思います。
八丁味噌組合はいろいろ事情があって取り下げましたよ。自分たちが求める定義、伝統的な、最初に申し上げましたような製法が認められないんだったら、それは本来のGIじゃないよねということで取り下げたはず。別に、よそに登録がいってもいいから取り下げるという意図なわけがないわけで。
こういう、もし取り下げちゃったら、そうはいっても法律上は違うところに登録がいっちゃうよというようなこととかをきちんと説明して、まかり間違ってもそんなようなことにならないようにするのが農水省の仕事じゃないですか。それをほっておいて、取り下げたなら反対側の方だねなんというのは、何にも考えずにやっているとしか思えないんですけれども。いわば取り下げた手続の間隙をつくような、この農水省の手法というのは大いに疑問があります。
もっと手取り足取り、こんなことにならないように、元祖の二社、そりゃ田舎の企業ですから、こんな、知的財産戦略なんて考えたことはないですよ。というか、なかなか理解しづらいところもある、ちゃんと、こういうことも含めて農水省はリードすべきだったんじゃないでしょうか。お答えください。
○太田政府参考人 お答えいたします。
この制度の仕組み上、同一名称で複数の登録申請があった場合には、まず先行の申請から審査をすることとしており、その先行の申請が取り下げられた後で後行、後に申請された申請を審査する、こういう仕組みになっているところでございます。
八丁味噌の場合につきましても、八丁組合が申請を取り下げる前に、八丁組合の代理人に対しまして県組合も八丁味噌について登録の申請を行っているという旨を伝えております。この登録の可能性につきましては八丁組合も認識した上で申請を取り下げたものというふうに考えているところでございます。
○重徳委員 これで八丁組合のせいにするわけですけれども、僕は農水省の責任は重いと思いますよ。現にトラブルになっているわけですよ。
そして、今更ながら、八丁組合がこの後、県組合と合意をすれば、大臣も最初におっしゃっていましたよ、両組合が協力してなんておっしゃいますけれども、民間企業同士を協力させる前に、農水省が正しい制度の運用をすべきじゃなかったですか。順序が逆だと思いますよ。それから、民間のせいにしちゃいけないと思います、この話は。そう思います。
私が大臣に申し上げたいのは、農水省に何の非もないのかということなんですよ。一見、明白におかしな結果になっていますよね。農水省は法律にのっとってやっただけですと言い訳のような答弁ばかりされていますけれども、農水省は法にのっとってやれば何も痛まない、何も困らない、逃げていればいい、こういう姿勢を正さなきゃいけない、それが大臣の責任ではないかと思うんですけれども。民間事業者で話し合えとか、そんなんじゃなくて、農水省もやり方がまずかった、そのぐらいはお認めになりませんか、大臣。
○野上国務大臣 これまでの経緯につきましては、今事務方から御説明をさせていただいたとおりであります。法に従って進めてきたというふうに認識いたしております。
私としては、先ほども申し上げましたが、やはり、八丁味噌につきましては県組合と八丁組合が協力をして保護すべきと考えております。愛知県とも連携しつつ、八丁組合に保護のための話合いを働きかけていきたいと考えております。
一方で、第三者委員会からも提言がなされているわけですね。八丁組合の伝統的製法を尊重した保護の方法についても説明して理解を求めていきたい、こういう提言もなされているわけでありますので、こういうことも含めて理解を求めてまいりたいと考えております。
○重徳委員 だから、農水省に何の非もないのかと言っているんですよ。
例えば、大臣、富山県の御地元にも、私もこの間まで知らなかった、入善ジャンボ西瓜というのがあるそうですね。入善町の人たちはみんな知っているんでしょう。でも、愛知県や東京の人は、知っている人は少ないんじゃないかと思います。だけれども、その町の人は一生懸命、製法とか味とか、そういうものを大事にして、一生懸命やっておられるんだと思うんです。
そこをおいておいて、取り下げたんだからしようがないよね、農水省には何の非もありません、こういう言い方というのは私は非常に問題があると思いますが、大臣、もうちょっとないですか。心はどこに行ったんですか、大臣。
○野上国務大臣 先ほど来申し上げておりますとおり、八丁味噌のGI登録の取消しを求めた行政不服審査請求等々につきましても、先ほど来申し上げたとおりの経緯で対応してまいりました。また、八丁組合あるいは県組合に対しての対応につきましても、一つ一つ丁寧に対応してきたというふうに考えております。
その上で、先ほど来申し上げているとおり、八丁味噌につきましては、八丁組合また県組合が協力して保護すべきと考えているということであります。
○重徳委員 更にひどい事態になってきますよ。これから、GIが結局八丁組合に認められないまま、これで時がたてば、いよいよ元祖八丁組合二社は八丁味噌という名前を使えなくなるんです。
それで、例外はないのかということを事務方に聞いたら、いや、誤認防止表示をすれば使えますというわけですよ。どういう意味かというと、うちの八丁味噌はGI登録されていませんということを明記すれば使えるというんですね。
GI登録って何の証明なんですかね。GIじゃないことが本物の証明みたいになるじゃないですか。こんな恥ずかしい事態に陥って、しかも、勝手に名前を使ったら取り締まられて罰則まで科せられる。これはGI制度全体に影響すると思いますが、その辺も含めてどう対処するのか、大臣に最後にお尋ねします。
○野上国務大臣 八丁味噌の発祥の地が愛知県岡崎市であることは異論のないところであります。
一方で、八丁組合二社が伝統的製法にこだわった生産を行っていることについては敬意を表したいと思いますが、他方、八丁味噌が昭和初期以来、岡崎市の八帖町以外の愛知県各地で生産されて、第三者委員会の報告書におきましても、八丁味噌の社会的評価は両組合の八丁味噌から形成されていることとされておりまして、八丁味噌が愛知県の特産品として広く認知をされているわけでございます。
そういう中で、地理的表示保護制度でありますが、これは地域の伝統産品の名称を地域の知的財産として保護する制度でありまして、この地理的保護制度をしっかりと適正に運用してまいりたいと考えております。
○重徳委員 農林水産行政の責任を今後も追及していきたいと思います。
大臣にはしっかり政治的リーダーシップを発揮していただきたいと思います。副大臣、政務官もよろしくお願いいたします。
以上です。ありがとうございました。
○高鳥委員長 次に、田村貴昭君。
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
米問題と食料支援策について質問します。
コロナ禍によって、外食需要の激減、インバウンド需要の消滅によって、米余りと米価下落が一層深刻な問題となっています。
米どころの山形県庄内平野のお米の状況を見聞きしてまいりました。大変深刻な状況です。流通業者は倉庫がいっぱいで農家から米を引き取ってくれない。あるJAの倉庫では、フレコンバッグに入ったお米が全く出ていかないために、入口までいっぱいになっていました。このままでは、秋に新米を入れるスペースもなくなってまいります。農民連、庄内産直センターにおいては、業務用米だけでも、はえぬき一俵二千円、全体で千六百万円の減収、下落となっている状況であります。
このままいけば、今年も、そして来年も米価が下がり続けることは必至であります。そして、二一年産米については、過去最大規模の六・七万ヘクタール、政府は主食用米の減反を農家に押しつけている状況です。
改めて聞きます。なぜ、政府備蓄米を大きく増やして、大規模な市場隔離による需給調整ができないのですか。
○野上国務大臣 政府備蓄米につきましては、不作等によります主食用米の生産量の減少によりまして、その供給が不足する事態に備えて、必要な数量の国産米を在庫として保有することを目的としているものであります。
需給の状況に応じて買入れ数量を増減させるなど、国による需給操作や価格の下支えにつながる運用は、政府備蓄米制度の趣旨に沿わず、また、自らの経営判断による需要に応じた生産、販売を進めるという米政策の考え方にも沿わないと考えております。
主食用米につきましては、毎年需要の減少が見込まれていく中で、需給と価格の安定を図っていくためには、今後も、国内の消費や輸出の拡大の取組を進めつつ、自らの経営判断による需要に応じた生産、販売を着実に推進することが重要であると考えております。
○田村(貴)委員 でも、大臣、この状況はとても深刻ですよね。緊急事態ですよね、お米に関する。趣旨になじまないと言うんだけれども、その趣旨をやはり追加するなり変えるなりしないと、この問題は解決できないんじゃないですか。作付転換を促していますけれども、加工用米だってどんどん値下がりしています。
三月二十九日付の農業新聞の報道にありました「米販売 業務用苦戦で滞留」。大手卸の声として、価格の先安観が強く、必要最小限の仕入れにとどめざるを得ない、在庫を持つと先々損をするというふうに伝えています。卸は商売だからシビアであります。作付転換、需要喚起などの政府の対応では、米の滞留は改善されません。
お米が余っているのに、なぜ外国から輸入し続けているのか、おかしいじゃないかと、たくさんの農家の方の声を聞いてまいりました。大臣も聞かれていると思います。農水省の皆さんも聞かれていると思います。
国内消費の一割以上に及ぶミニマムアクセス米は七十七万トン、この輸入を中止あるいは停止する、そしてとどめておく、こうしたことも私は提案してまいりましたけれども、大臣は、ガット・ウルグアイ・ラウンド農業協定上、輸入は義務であるというふうに言って退けています。しかし、協定上、全量輸入しなければならないという法的義務はないわけであります。ここは真剣に検討すべきであります。
コロナ禍の下で、収入減、失業等、生活苦が拡大して、食料が買えない食の危機が起こっています。そんな中、NPOやフードバンク、ボランティア、市民団体、労働組合、日本民主青年同盟などが、一人親世帯、学生など生活困窮者に食料支援の活動を全国各地で行っています。どこでも行列ができています。私も、せんだって、北九州小倉の公園で行われた食料支援の活動に参加してまいりました。
今日は、特に学生の実態を紹介したいと思います。
全国大学生活協同組合連合会が三月八日に公表した学生生活実態調査の結果であります。下宿生のアルバイト収入と仕送りが共に大幅減少して、収入合計は一九七〇年以降最大の減少幅になっている。そして、今日の日本経済新聞です。東京地区私立大学教職員組合連合の調査結果ですけれども、これは私大生への仕送りです、八六年の集計開始以降最低、コロナの影響で保護者の収入が減ったためというふうな結果が報じられているところであります。
熊本県では、青年、学生たちが、くまもと学生食料支援プロジェクト実行委員会をつくって、支援をこの間行ってまいりました。先日、私は、オンラインで支援スタッフにお話を聞きました。大臣、聞いていただきたいと思うんです。
食料配布会を訪れた学生約三百人に対するアンケート結果なんですけれども、一日の食事回数について、約半数の学生が二食だと答えている、中には一食だと。この一食という回答が、私は九州のあちこちの学生から聞いたんですけれども、今日初めて御飯を食べるのが夕御飯だと、結構あったんですよね。
受け取った食料や物資の中でうれしかったもの、助かったものは何ですか、プロジェクトの実行委員会のアンケートに、この質問に対して断然トップはお米、四四%の学生がお米と答えています。久々にお米が食べられる、うれしいと喜ぶ学生が印象的だったと答えていただきました。お米は日もちするので重宝します、こういう声もあった。食料支援の中で、とりわけお米の配布が歓迎されているわけであります。
琉球新報などが昨年末に食料支援の利用者などに行った、沖縄での希望する食材についての調査結果があります。米を始めとする主食が八四%に上っているわけですよね。ですから、みんな、このコロナ禍の中で生活が困窮し、わけてもお米を求めているということが明らかになっています。
そこで、お尋ねしますけれども、大臣、お米が余って、米価下落で苦しんでいる農家がおられる、その一方で、お米を求めている国民、学生がたくさんいるわけです。ここをつないだらどうかと思うわけであります。学生たちにお米を届ける、そういう仕組みを農水省がつくってもいいんじゃないですか。それが、私、政府、農林水産省の果たすべき役割に来ているというふうに考えますけれども、大臣、率直な思いを聞かせていただきたいと思います。
○野上国務大臣 生活困窮者の方々に向けました支援策としましては、生活困窮者自立支援制度における例えば子どもの学習・生活支援事業におきまして、子供食堂やフードバンク等と連携した取組がなされております。
また、子供食堂やフードバンクの活動など、民間の取組も盛んになっておりますし、それを政府、地方公共団体とも多様な手法で支援をしているところであります。
また、今お話があった学生の方々に対する支援としましては、文部科学省等におきまして、新型コロナウイルス感染症の影響で学びの継続が困難となっている者に対する経済的な支援も行われていると承知をいたしております。
農林水産省では、令和二年度の第一次補正予算におきまして、農林水産物の販売促進緊急対策におきまして、中食、外食向けの米の販売促進の取組を支援しておりまして、この中で、例えば全国の大学生協の食堂の御飯大盛りキャンペーン等々の取組を支援してきております。
また、三次補正の販路多様化におきましても、農産物等を活用した販売促進、販路多様化の取組に対する支援を行ってきているところでありまして、例えば大学の食堂ですとか生協においてもこれらの支援策の活用ができますので、こういうことを積極的に周知してまいりたいと考えております。
○田村(貴)委員 大臣、考えていただきたいんですけれども、であるならば、なぜ大学前とか近くの公園等における食料配布会にこれだけたくさんの学生が列を成しているのかということですよね。
今大臣がおっしゃった施策については私も知っています。文部科学省の学生支援緊急給付金、言われましたけれども、これは昨年度で終了ですよ。そして、再給付もかなり限定された対策になっています。
それから、販路多様化事業についても、これは、活用しても多少安くなるというものであります。お米が、御飯が食べられないという根本問題を解決するに至っていないわけであります。だから、新たな対策が必要ではないですかと私は訴えたいのであります。米農家と学生をつなぐ役割を果たしていただきたいと思います。
九州のある大学生から、こんなお話を伺いました。聞いていただきたいと思います。
この学生さんは、授業料は年間約百二十万円の私立大学生。親に頼れないために、貸与型の奨学金を毎月十二万四千円借りている。返済額は約六百万円になります。入金された奨学金は、まず家賃を支払う。授業料には少し足りなくなるために、二つのアルバイトをかけ持ちしている。バイト代は十万円弱。よく頑張っています。しかし、生活費も含めてやりくりをしている状況であるけれども、コロナ禍でアルバイトを見つけるのが難しくなって、五月にやっと始めた塾の講師のアルバイトでも、初めは月二万円程度にしかならなかった。収入が減ったということです。しかし、食料支援にも助けられ、何とか生活をしてきたということであります。
コロナが直接的な原因になっています。しかし、元々高い学費の負担があり、奨学金という名の借金が重く肩にのしかかってくる。こういう今までの政治の矛盾が浮き彫りになっているわけであります。
大臣、私も学生時代のことを思い出しました。大臣も学生時代のことをちょっと思い出していただきたいんですけれども。
今、大学の授業料は国立で五十三万五千八百円、私立が平均で九十一万一千七百十六円。大臣が学生だったときの約二倍になっているというふうに思います。その学生たちがお米を求めて、野菜を求めて、食料を求めて列を成している。未来を生きる青年たちがこういう状況に全国各地で置かれている、これをどう思われますか。
我々の学生のときと違って、学生の置かれた状況は違います。コロナ禍の下では親も頼れない、バイトも思うようにいかない。この困難な状況にあるということは、大臣、私と認識を共有していただけるでしょうか。いかがでしょうか。
○野上国務大臣 今、コロナ禍という中で、それぞれの方々、厳しい状況にあるということは認識を共有させていただきたいと思います。
○田村(貴)委員 頑張っても努力しても、報われない現実があるわけですね。
筑波大学では三千人、北海道大学と北海学園大学ではそれぞれ一千人の学生が列を成したというふうに伺いました。
私、地元の福岡で支援事業に当たっている青年からお話を聞いたんですけれども、福岡教育大学では女子学生がこう言っています、今日は一日インスタントみそ汁だけで耐え忍んだ、過ごしたと。つまり、お米も食べられないんですよ。昔を振り返って、お米さえあれば何とかなる、そうですよね。だけれども、そのお米さえ、お米が手に入らない、店に並んでいるんだけれども買うお金がない、こういう状況です。私は本当にこの話にショックを受けました。
三月二十二日の参議院の農林水産委員会で、天羽政策統括官が、政府備蓄米を貧困家庭や学生に制限なく交付した場合、需給に悪影響が及ぶおそれがある、お米を売買する業者にも影響があるというふうに答弁をされました。
そこで、提案したいと思います。需給にも販売業者にも悪影響がない方法、それはお米券です。昨年の臨時国会で私は提案しました。全米販、全国米穀販売事業共済協同組合のお米券を配付することであります。
お米券は、スーパーで、またドラッグストアなど、全国一万三千の店舗でお米に交換できる金券であります。お米券であれば、販売業者に悪影響は及びませんよね。大規模に活用すれば、福祉政策としても価格支持政策としても大変優秀であります。
だからこそ、全国の自治体がお米券を支援策として取り入れています。東京都文京区では一人親家庭に配付しています。群馬県の館林市、茨城県の日立市でも高齢者支援に使われています。福岡県の久留米市、熊本市社会福祉協議会でも行っています。そして、野上大臣の地元、富山県です。富山県では昨年、県内の一人親家庭に市町村と共同でお米券を世帯当たり二十枚、八千八百円を配付したと伺っています。
大臣、私はこれは大変いい政策だというふうに思います。富山県はいいことをやっておられるじゃないですか。大臣、どう評価されていますか。
○野上国務大臣 福祉政策の観点から、生活保護受給世帯に対して学校給食費の無償化等が従前より講じられているわけでありますが、新型コロナの影響による休校の状況等を踏まえて、一人親世帯ですとかあるいは生活困窮世帯に限って、お米等現物の支給ですとかあるいは商品券の配付を行っている自治体もあるということは承知いたしております。
他方、農林水産省では、従来より、食育の観点から学校給食に対して政府備蓄米の無償交付を行ってまいりましたが、昨年五月からは学校給食の補完機能を果たす子供食堂を対象に加え、さらに、本年二月からは子供宅食にも対象を拡大して交付しているところであります。
子供食堂等については、食育について過大な要件は設定しておりません。令和二年度の申請者の希望数量が多かった実態を踏まえて、令和三年度から一団体当たり年間上限数量を九十キログラムに引き上げるなど、子供食堂等の状況を勘案して柔軟に対応しているところであります。
さらに、お米ももちろん大事なのでありますが、米以外の対応も重要であることから、フードバンク活動に対する食品の輸送、保管費の支援ですとか、あるいは、第一次、第三次補正予算、この両方で措置をしておりますが、国産農林水産物について、子供食堂等に提供する際の食材の調達費等への支援も行っております。引き続き、これらの支援を通じながら、活用してもらえるように推進を図ってまいりたいと考えております。
○田村(貴)委員 大臣、自治体のそうした自主的な取組について否定されませんでした。尊重されるとおっしゃるのならば、全国展開されたらいかがですか。今大臣が言われた学校給食、それから子供食堂等々、やっておられることは分かっています。しかし、それは微々たる量じゃないですか。そして、学生はこの中に入っていません。
今日は学生の問題を中心に挙げていますけれども、やはり、未来を担う学生が多額の奨学金の返済に追われる、高い学費に苦しめられている、親は当てにならない、アルバイトができない。この非常事態に対して、お米が余っているんだったらお米の支援が必要じゃないか、やり方としてはお米券が非常に合理的で優れているじゃないかと私は申し上げているわけであります。是非この対応を御検討いただきたいと思います。
私、今日質問するに当たって、全米販の担当者にお話を伺いました。国や自治体から現物を送るより配送経費がかからない、お米券は、お米を売買する業者にも悪影響はなく、むしろ地域経済にも貢献できる、大規模に配っても需給が緩むことはないというふうに語っていただきました。
力の弱い方でも、お米券だったら、それを受け取って、そして自分の好きな量でお米に換えられる、これはやはり優れた政策だというふうに思うわけであります。合理的な解決法だというふうに思います。
米価下落、そして、お米を作っても飯が食えない、この農家の現実があります。米が倉庫に滞留して米余りなのに、お米が食べられないという生活困窮者が増加している現実があります。世界第三位の経済力を誇る日本でありますけれども、一日一食しか御飯が食べられない、そのお米さえも手に入らないという現実があります。
野上大臣、この国の主食をめぐる大問題なのに、緊急事態なのに、解決のための手だてを打たなくていいんですか。ここが今問われているんですよ。大臣の判断で、決断で、米余りと米を必要としている方々の問題は解決できます。農水省、今こそ出番だと思います。何か前に進める対策を講じるべきではありませんか。最後にそのことをお伺いしたいと思います。
○野上国務大臣 新型コロナウイルスの状況に対して、様々なお立場の方が非常に厳しい状況に直面している、このことに対して、これまで説明してまいりました累次の政策を今、立案して実行しているところであります。このことをしっかりと着実に実行していくことが重要だと考えております。
○田村(貴)委員 また論議したいと思います。
今日は以上で終わります。
○高鳥委員長 次に、玉木雄一郎君。
○玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。
まず、次期作支援交付金の追加公募について伺います。
端的に伺いますが、対象農家を教えてください。過去に一度もらった人も、もう一回もらえるのかということ。あと、一月からの緊急事態宣言の影響を受けてということの追加公募なんですが、今月から蔓延防止等重点措置も始まっておりまして、多分、四月もかなり売上げが落ちる農家も出てくるんじゃないかなと思いますが、対象をどのように考えているのか、教えてください。
○野上国務大臣 今お話がございました高収益作物次期作交付金の第四次公募でありますが、支援対象品目を、本年の緊急事態宣言が発令されました一月から三月までのいずれかの月で、売上げ、具体的には卸売市場での取扱金額が二割以上減少した品目としておるところであります。
具体的には、全国で今回の第四次公募の対象となる品目につきましては、メロン、ワサビや穂ジソ等のつま物類、また、スダチ、カボス、ユズ等の香酸かんきつ、そして切り花となります。
このほかにも、都道府県域におきまして地域特有の影響が生じていることも考えられますので、第三次公募までと同様に、対象期間である一月から三月までの市場取扱金額が平年の二割以上減少している月があるというデータ等を都道府県から提出していただくことで、当該都道府県における対象品目を指定することができる仕組みを設けております。
また、これまでの公募における支援対象は、緊急事態宣言等コロナによる影響を受けた生産者が行う次期作の取組であったのに対しまして、今回の四次公募は、一月から三月までの緊急事態宣言による影響を受けた生産者が行う次期作の取組でありますので、これまでの公募で既に交付金を受け取った生産者であっても今回の対象に含まれるということであります。
○玉木委員 既に過去の公募で受け取った方も受け取れるということはよく分かりました。
大臣、これは判断していただきたいんですけれども、一月から三月の緊急事態宣言の間だということで、多分、最初、四次公募を決めたときはそうだったんですよ。ただ、多分、五月ですよね、次の申込期限にするのは。だったら、四月も入れた方がいいですよ。四月の蔓延防止等重点措置の影響が、この一カ月、出るところは出てくると思います。
ですから、先ほど言ったように、県がちゃんと認定するとか、一定の基準は決めたらいいと思うんですが、四次公募を決めたときにはまだ、緊急事態宣言のことしか考えていなかったので、一、二、三月のいずれかの月になっていますが、四月に落ちるところも出てきますから、蔓延防止等重点措置、初めて措置されましたけれども、この影響も勘案して、一月から四月の間で二割以上落ちたところは対象にする、これを農水省として考えた方がいいと思うんですが、いかがですか。
○野上国務大臣 やはり、農業者の皆様がしっかりと営農を継続していただくということが農水省の役割であること、これは十分承知をいたしております。
本事業につきましては、三月になって価格等が回復してきた品目もあります。それぞれの品目についての四月の平均価格、これがどうなるかは現時点では見通せない状況にありますので、今後、価格等の動向をしっかりと見極めてまいりたいと考えております。
○玉木委員 是非四月も検討して、五月に公募になっていますから、まだ見極める期間がありますので、四月の影響もきちんと見て、対象を決めて五月からということに、これは検討を是非いただきたいなと思います。大臣、是非、そこを検討いただけますかね、四月の。局長、大丈夫ですよね。
○野上国務大臣 四月の平均価格、これをしっかりと見極めてまいりたいと考えております。
○玉木委員 是非お願いします。
次に、RCEPについて聞きたいと思います。TPPのときはこの農水委員会でも物すごく議論になったんですけれども、RCEPは余りなっていないので。ただ、農作物については除外品目も多いので余り話題になっていませんが、今日ちょっと伺いたいのは、食の安全、特に表示義務等々について伺いたいと思います。
TPPのときも、当時からの先生方がいらっしゃるのでよく分かると思いますが、ある表示義務を課すことを非関税障壁だと言う国が出てくるので、そんな変な表示義務を課すなというようなことは、特に遺伝子組み換え、GMOなんかにはよく言われた話であります。RCEPについてこれがどうなっているのかについては余り議論になっていないので、表示義務や、あるいは知的財産の保護という観点で今日は質問したいと思います。
まず、RCEPが発効されれば、外国において無関係な第三者が無断で、例えば日本の地名を冠したトレードマーク、商標を登録申請や使用することがちゃんと改まるのかということを聞きたいと思います。
何でかというと、例えば、私の地元だと小豆島とか讃岐牛とか、あと、リンゴの青森とか、そういうのをやたらめったら登録して、日本の、ある種我々の権利を害するようなことを、ある国はよくやっておられたので。その国が今回RCEPの対象になりますので、こういう無断商標、特に悪意による商標の出願をちゃんと拒絶できるようになるのか、そういう国内法が締約国の中できちんと整備されるのかどうか、ここを教えてください。
○赤松政府参考人 お答え申し上げます。
外国におきまして、日本企業の商標と類似した商標や、日本の地名を含む商標が外国企業によって商標として登録される問題につきましては、日本政府といたしましても問題視してきておりまして、これまでも、個別の事案ごとに、当事者の意向も踏まえまして、我が国企業等の商標が保護されるよう必要な働きかけを行ってまいったところでございます。
RCEP協定におきましては、WTOの知的所有権の貿易関連の側面に関する協定、TRIPs協定と呼んでおりますけれども、やTPP11協定、こうしたものにはない規定といたしまして、委員御指摘のとおり、悪意による商標の出願を拒絶し又は登録を取り消す権限を当局に与える規定、第十一・二七条でございますけれども、を設けております。これによりまして、例えば、締約国において、日本企業等が保有する周知商標と同一又は類似の商標につきまして出願が悪意で行われた場合には、当局が当該出願を拒絶し又は登録を取り消す権限を有することとなります。
政府といたしましては、こうした規定を通じて、日本企業等が保有する商標の保護が強化されることを期待しております。
また、仮に締約国が協定の規定と相入れない措置を取る場合には、RCEP協定上の規定された協議メカニズムや紛争解決手続を活用いたしまして適切に対応していく、それとともに必要に応じて外交ルート等を通じた対処も検討してまいりたい、このように考えております。
○玉木委員 このRCEPをてこにして、そこをきっちりやってもらいたいんですね。
ちょっと気になるのは、協定の文言上はそういうことを、すべきであるとか、やらなければならないというふうに、強く規定がないような気がして。要は、規定するものとするみたいになっているので、きちんとそれぞれが、必要な国内法の整備であるとか、先ほどおっしゃったような紛争解決メカニズムがきちんと本当に働くのか、迅速に働くのかというところが大事だと思いますので、その辺は引き続き、外交当局でもチェックをするなり、相手国に働きかけを続けていただきたいというふうに思います。
次に、RCEPによって、先ほど申し上げました、我が国国内の遺伝子組み換え農産物や加工品の表示義務については何ら変更がないのかどうか、改めてここは確認させてください。
○高田政府参考人 お答えいたします。
我が国では、現在、遺伝子組み換え食品について、消費者の自主的かつ合理的な選択の機会の確保の観点から、安全性審査を経て厚生労働省において国内で流通が認められているものについて、遺伝子組み換え表示を義務づけているところでございます。
RCEPの発効によって当該義務表示制度は変更されるものではないと考えております。
○玉木委員 変更されるものではないと考えておられるということなんですが、変更ないですね。解釈の問題なんですか、事実として変わらないんですか。
○高田政府参考人 お答えいたします。
RCEPの発効によって当該義務表示制度は変更されるものではないというものでございます。
○玉木委員 そこもしっかりとチェックをしていきたいと思います。
次に、遺伝子組み換え食品ではなくて、ゲノム編集食品についてちょっと伺いたいと思います。遺伝子組み換えの話とゲノムの編集というのは、似ているようで全然違う話なので。
ゲノム編集食品について、食の安全の観点から懸念される方もいらっしゃいます。一方で、無用な不安をあおっても仕方がないので、現在の規制がまずどうなっているのか、国内規制ですね、特にゲノム編集食品の認定基準。国に届け出て、認定制度があるのかないのか。
そして、表示義務ですね、先ほど申し上げた、遺伝子組み換え食品にはある。ゲノム編集食品ですよ、あるいはそういう農産物ですよという表示義務。
認定制度、認定基準ということと、表示義務について、ゲノム編集食品について教えてください。
○宮崎政府参考人 お答え申し上げます。
私からは、委員御指摘のうちの前段の部分について御答弁申し上げます。
ゲノム編集技術応用食品の食品衛生上の取扱いということになりますが、これにつきましては、従来の品種改良技術を用いた食品と比べた安全性等の観点から整理をしておりまして、具体的には、ゲノム編集技術応用食品のうち、自然界又は従来の品種改良技術でも起こり得る範囲の遺伝子変化により得られるものについては、開発者等から届出を求めて公表することとしております。一方、従来の品種改良技術では起こり得ない範囲の遺伝子変化のもの、つまり外来遺伝子が組み込まれるというようなものについては、遺伝子組み換え食品として安全性審査の対象とすることとしております。
こうした安全性審査の要否を確認するために、開発者等には事前に厚生労働省に相談をしていただいて、専門家の意見を伺う仕組みも設けているところでございまして、引き続き、実効性のある仕組みとなるように、制度の周知徹底を図るなど、適切に対応してまいりたいと考えております。
○高田政府参考人 後段についてお答えいたします。
ゲノム編集技術応用食品の表示の在り方については、令和元年九月に通知を発出し、公表したところでございます。
表示については、厚生労働省の整理において安全性審査の対象となるものは、食品表示基準に基づき遺伝子組み換え表示を行う必要があるものでございます。
また、厚生労働省の整理において届出の対象となるものは、消費者の自主的かつ合理的な選択の機会の確保の観点から、事業者には表示等の情報提供を行っていただきたいと考えております。
なお、現段階では、国内外において、書類による情報伝達の体制が不十分であり、ある食品がゲノム編集技術を利用して得られた食品かどうかの情報の真正性を書類で確認することは困難であること、また、海外においてはゲノム編集技術応用食品の表示に関する具体的なルールを定めて運用している国等はないと承知しており、輸入品について特に情報を得ることが難しいと考えられること、さらに、現時点では、ゲノム編集技術を用いたものか、従来の育種技術を用いたものか科学的に判別することが不可能であることから、違反者に罰則の適用がある義務表示制度において、事業者に表示を義務づけることは現時点では困難であると考えております。
○玉木委員 分かりにくいな。ゲノム編集食品の中でも、表示義務があるものとないものがあるということですか。
あと、もう一つは、届出はするけれども、審査が必要なものと必要じゃないもの、二種類あると。審査が必要である、必要じゃないということと、表示義務の有無は同じ対象なんですか、違うんですか。ちょっともう一度、どちらからでもいいので。
○宮崎政府参考人 それぞれから答弁させていただくのが適切だと思います。
まず、届出なのか審査なのかというところにつきましては、自然界又は従来の品種改良技術で起こり得る範囲の遺伝子変化により得られるものは、開発者から届出だけになっていまして、それを公表するという仕組みにしております。一方、外来の遺伝子が組み込まれるようなもの、これについては、遺伝子組み換え食品として安全性審査の対象とするという形で、遺伝子組み換え食品として規制をかけているということでございます。
○高田政府参考人 お答えいたします。
厚生労働省の整理において安全性審査の対象となるものは、食品表示基準に基づき遺伝子組み換え表示を行う必要があるというものでございます。
○玉木委員 今ちょっと説明がややこしかったんだけれども、ゲノム編集食品のうち遺伝子組み換え食品と同じようなものだったら表示義務がかかるということだから、それは遺伝子組み換え食品としての規制をかけているんでしょう。だから、ある種ゲノム編集食品だということでは表示義務はないという理解でいいんですよね。
○高田政府参考人 お答えいたします。
厚生労働省の整理において、遺伝子組み換え食品、安全性審査の対象となるものは、食品表示基準に基づいて表示を行うというものでございます。厚生労働省の審査の対象かどうかで変わってくるものでございます。
○玉木委員 じゃ、厚生労働省は、ゲノム編集食品のうち、外来のが組み込まれて、組み換え食品だと思うものは表示義務を課すということですね。そういうことですよね、遺伝子組み換え食品としての規制の対象になるということですよね。うなずいているから。
○宮崎政府参考人 失礼しました、御指摘がありましたように、ゲノム編集食品のうち外来遺伝子が組み込まれたようなものについては、遺伝子組み換え食品として安全性審査の対象にしているということでございます。
○玉木委員 遺伝子組み換え食品としての規制がかかるということなんですね。この辺、ちゃんともう少し整理した方がいいし、ある程度同じにした方がいいんじゃないかなというふうに思います。
最後に伺います。有機JASの認定についてなんですが。
私の理解では、有機だと言われるためには、遺伝子組み換えの農産物は有機農産物じゃないですよね、たしか。じゃ、ゲノム編集食品のうち有機農産物になるものがあり得るのかということ。つまり、ゲノム編集でやった農産物も有機JASの対象になるのかならないのか、これを教えてください。
○野上国務大臣 有機JAS制度でありますが、登録認証機関が、認証を受けようとする事業者が提出した書類ですとか実地調査によって生産、管理のプロセスを確認して、有機JASに適合すれば認証を行う制度でありますが、現行の有機JASにおきましては、ゲノム編集技術の取扱いについては明確には規定をされていない状況です。
このため、ゲノム編集技術を用いて生産された農産物を登録認証機関が確認する方法等について、ゲノム編集技術を用いて生産された農産物の生産、流通状況ですとか、あるいは他国における取扱い等を踏まえて、現在、日本農林規格調査会において検討しているところであります。
○玉木委員 遺伝子組み換え食品は有機の対象にならないんだけれども、今大臣がおっしゃったように、ゲノム編集についてはまだ入るか入らないかが決まっていないということですね、国際的なものも見ながら決めると。ここはやはり、よくいろいろな知見を調べて、慎重に是非検討いただきたいなというふうに思います。
あと、TPPのときにも申し上げましたけれども、ある程度こういった新しい技術を使うことは私は必要になってくるのかなと思います。ただ、消費者の知る権利を確保するためには、表示はきちんとして、選ぶ権利だけは消費者に常に残しておくことが必要だと思いますので。今、ゲノム編集食品も三つのカテゴリーがあって、一つ目、二つ目は表示義務の対象にならないということですけれども、ここも、表示義務はやはり同じように設けた方がいいのではないか、遺伝子組み換え食品と同じように。
そこも併せて検討いただいて、消費者の皆さんに安心感を与えていく、必要な情報を提供するということに、農林水産省としても他省とよく連携して推進していただくこと、このことを強く求めまして、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。
○高鳥委員長 次に、串田誠一君。
○串田委員 日本維新の会の串田誠一です。最後の質疑者となりました。
今日は、農水省のホームページからもダウンロードできるアニマルウェルフェアの考え方に対応した採卵鶏の飼養管理指針、これは畜産技術協会が作っているものなんですけれども、これを中心に質問させていただきたいと思うんです。
ここで、アニマルウェルフェアの定義ということで、国際的なガイドラインを策定、勧告しているOIE、国際獣疫事務局ですが、アニマルウェルフェアとは動物が生活及び死亡する環境と関連する動物の身体的及び心理的状態をいうという定義があります。そこで、通告は大臣にというふうに思っていて書いているんですけれども、ちょっと細かいのでどなたでも結構なんですが、心理的状態をいうというのを加えているというのはどういう趣旨と理解されているでしょうか。
○水田政府参考人 お答えいたします。
委員が御指摘いただきました、OIEの陸生動物衛生規約におけるアニマルウェルフェアに関する勧告でございますが、アニマルウェルフェアの定義で、動物の生活とその死に関わる環境と関連する動物の身体的、心的状態をいうと。動物が健康で、快適で、栄養豊かで本来の生態を発現できている場合であって、痛み、恐れ、苦痛等の不快な状態を経験していないときには良好なウェルフェアの状態にあると定義をされております。
これを考える上で役立つ指針として示されているものの中で五つの自由というものがございますけれども、この中に恐怖及び苦悩からの自由といったものもございまして、心的状態というものを表しているものといたしましては、こういったものがあるのではないかというふうに考えているところでございます。
○串田委員 そこで、農水省は、アニマルウェルフェアを推進するというか、大事と思っているという答弁を前回も聞かせていただいたんですが、五つの自由というのが今紹介されました。五つの自由というのは、どれか一つが満たされたらいいのか、それとも五つの自由は全て満たされなければいけないのか。これはどのようにお考えでしょうか。
○野上国務大臣 アニマルウェルフェアにつきましてのOIEの勧告につきましては今お話があったところでありますが、五つの自由とはアニマルウェルフェアを考える上での役立つ指針として同勧告に示されているものでありまして、これらの自由の確保を目指して、これを実現することによって、良好なアニマルウェルフェアの状態を実現することが可能になると考えられております。
このため、五つの自由につきましてはその全てを実現する必要がありますが、良好なアニマルウェルフェアの状態を実現する上で、気候条件や飼養条件により優先すべき事項が異なるため、それぞれの自由の実現の程度には濃淡があり、アニマルウェルフェアの状態の実現の内容には幅があると考えられております。
○串田委員 今、幅があるという答弁ではございましたが、五つの自由は全て満たされなければならないという前提で今の答弁があったという理解でよろしいですか。
○水田政府参考人 お答えいたします。
今大臣から御答弁させていただいたとおりでございますけれども、五つの自由について、全てを実現する必要があるわけでございますが、それぞれの自由の実現の程度に濃淡があるということでございますので、満たす、満たさないということではなくて、濃淡の幅があるということでございます。
○串田委員 五つの自由を実現する必要はある、ただ、それについて濃淡があるという御主張でございました。
先ほどの、農水省のホームページの採卵鶏の飼養管理指針というものの、五つの自由の中の「例えば、」というところで、鶏の砂浴び行動等はアニマルウェルフェアを考える上で重要な要素であるが、これら五つの自由を総合的に考慮し快適性に配慮した家畜の飼養管理を行うことが重要であるということで、ちょっと曖昧な形になってしまっているんじゃないか。五つの自由を総合的に考慮、砂浴びは重要な要素であるがと言っていたんですけれども、最後は総合的に考慮しということでございまして、これが、元農水大臣の事件もありまして、砂浴びができるような状況というか、止まり木とか、そういったようなものをOIEが入れようとしたときの問題として注目を浴びているところでございます。
この総合的という表現で、本来の五つの自由をしっかりと当てはめようということがなくなってしまって、丼勘定みたいになってしまっているというふうに感じるんですけれども、そういう懸念はありませんでしょうか。
○水田政府参考人 お答えいたします。
総合的に判断するということではございますけれども、それぞれの五つの自由につきましては、それぞれ実現の程度に濃淡があるものの、全て実現することが必要だというふうに考えております。
例えば、今回、バタリーケージ飼いとか、そういったものについて五つの自由をどういうふうに実現しているのかということについて申し上げますと、一番の、苦痛、障害又は疾病からの自由につきましては、例えば、強い鶏が弱い鶏をつつくなどの闘争本能をバタリーの方が防止できる、個体ごとの健康状態の点検がたやすくできるとか、あるいは、鶏と排せつ物とを分離することによって寄生虫病等の蔓延を防止する、こういった点で実現していると考えております。
それから、通常の行動様式を発現する自由につきましても、止まり木や営巣の区域というものは設置されていないものの、羽ばたきなどの行動を抑制しているものではないという点で一定程度実現しているものと考えているところでございます。
それから、アニマルウェルフェアにつきましては、施設のみならず日頃の飼養管理を含めた総合的な取組ということでございますので、施設の点ではなくて飼養管理の点で、例えば、飢え、渇き、栄養不良からの自由につきましては良質な餌や水を給与することで実現できますし、恐怖及び苦悩からの自由につきましては鶏を丁寧に扱うということで実現できます。物理的、熱の不快さからの自由につきましては、適切な換気によりまして暑熱あるいは寒冷対策といったものを実施することによって実現可能なものというふうに考えているところでございます。
○串田委員 いろいろと今説明を受けたわけですが、最初にアニマルウェルフェアの定義の中で心理的状態はなぜ入っているのかという質問をさせていただいたのは、まさに五つの自由の中には、恐怖や苦悩、不快あるいは苦痛からの、通常の行動様式を発現する自由、鶏自身の傷だとか飢えだとかだけじゃなくて、身動きできない、バタリーケージのようなワイヤーの中に閉じ込められた状況というものの、この環境が五つの自由の多くの部分で満たされていないということです。
EUはもう二〇一二年に禁止、そして二〇二五年には全米にも広がっていこうという中で、日本だけが五つの自由を満たしているんだと言い続けるというのはかなり難しい状況になりつつあるんじゃないか、そういう流れにやはり国もある程度かじ取りを取っていかなければならないんじゃないかというふうに私は指摘させていただきたいと思っているんです。
飼養管理指針の中に次のようなことが書かれているんですが、八ページなんですけれども、「わが国の飼養方式は、現時点ではケージ方式が主流であること等から、本指針では、構造及び飼養スペースについては、ケージ方式を基本に記述する。」というふうになっていて、アニマルウェルフェアの考え方に対応した管理指針というのが、そもそも現時点ではケージ方式が主流であると。
バタリーケージというのは、日本は九五%ぐらいがバタリーケージなので、これを基準にすれば当然ケージ方式になるわけですけれども、世界はそもそも、二〇二五年には全米でもケージフリーにすべきだという動きが非常に広がってきているし、そして、今度のオリンピックでもアスリートたちが、バタリーケージの卵は出さないでくれ、選手村で出さないでくれというキャンペーンを始めているという状況の中で、そもそも現時点の状況を前提にした日本独自のアニマルウェルフェアというのは考え方としておかしいんじゃないか。
世界的な意味での、OIEも含めまして、アニマルウェルフェアに合致しているかどうかということを前提にした上で指針というものをつくるべきであるのに、現時点を前提にしたら一向に新しい改善というものが行われていかなくなるのではないかと思うんですけれども、この点、大臣、いかがですか、こういう指針の在り方。現時点を前提にしてアニマルウェルフェアを考えたら、現時点を前提にして進むしかないと思うんですけれども、いかがでしょう。もしあれでしたら、参考人でも結構ですが。
○水田政府参考人 お答えいたします。
今御指摘いただきました畜産技術協会の飼養管理指針でございます。「わが国の飼養方式は、現時点ではケージ方式が主流であること等から、本指針では、構造及び飼養スペースについては、ケージ方式を基本に記述する。」とございます。
これは、アニマルウェルフェアを推進する上でケージ方式が基本であるという趣旨ではございませんでして、先ほど委員からも御指摘がありましたように、現時点では我が国においてはケージ方式が主流であるということから、この指針においてケージ方式におけるアニマルウェルフェアについて多くの分量を記述するということを述べたものでございます。別途、エンリッチドケージ、平飼いについても記述はしているところでございまして、このように、本指針はあくまでアニマルウェルフェアを推進することを前提とした内容となっているというふうに考えているところでございます。
それから、世界の動きということでございます。
現在、OIEにおきまして、本年五月のOIE総会での採択に向けて、採卵鶏のアニマルウェルフェアに関する指針の検討が進められておりますけれども、採択に付される予定の指針案でございますが、止まり木や営巣の区域の設置は推奨事項とされております。多様な飼養形態が認められる内容となっておりまして、世界全体がバタリーケージを認めない方向に進んでいるというものではないというふうに考えております。
○串田委員 今、最後がよく分からなかったので、OIEは、止まり木だとか巣箱とか、そういったものを推奨するということに変わりつつあるということなんでしょうか。前の場合は日本が非常にそこの部分は反対意見を言ってそれを入れないようにしていたという報道がなされていますけれども、今度、OIEはそれを入れるような方向になっている、そういう説明を今されたんですか。
○水田政府参考人 お答えいたします。
そういうことではございませんでして、OIEの関係でございますが、現在の案では推奨事項とされておりますが、二次案では必須事項、義務的事項とされておったところでございます。止まり木とか営巣の区域、これが推奨事項という形になったということでございまして、必ずしも設置をする必要はない、望ましいものというふうに整理がされたということでございます。
以上でございます。
○串田委員 だから、そういう記載にするように日本が一生懸命したという報道がされていますから指摘をさせていただいているわけです。
世界的な流れがどうであるかというと、二〇一二年にはもうEUは禁止になっているわけですし、二〇二五年にはケージフリーを宣言する全米の大企業が軒並み手を挙げているわけでございますので、それが世界中と言えないというんだったらそれはそれでいいですけれども、大きな流れが今起きているという認識はあるんでしょうか、それともこのままで、バタリーケージでいいという認識なんですか。今の認識を聞かせてください。
○水田政府参考人 お答え申し上げます。
OIEの先ほど申し上げました二次案で、止まり木とか営巣の区域が義務的事項、必須事項になっているという案が示されたわけでございますが、これにつきましては、令和元年に開催されました八十七回のOIE総会で、アメリカからも全ての飼養形態が認められた一次案に戻すべきとの発言がございましたし、コロンビアとかインドとかジンバブエなどからも二次案に対する懸念が示されているということでございまして、我が国以外にも二次案に対して反対の意見を提出した国はあったというところでございます。
私どもといたしましては、様々な飼養方式がある中で、飼養方式の多様性が認められる案にすべきであるという意見をこれまでも出してきているところでございまして、今後ともこういう考え方で進めてまいりたいと考えております。
○串田委員 いろいろな国がケージフリーにどんどん進んでいく中で日本だけが今のままでいいんだというようなことだと、それは畜産業界を保護しているということに私はならないんじゃないかと。要するに、失格みたいに認定されてしまうと、輸出もできなくなるし、インバウンドの人たちも食べなくなってしまうんじゃないか、やはり、畜産業界に大きな打撃が一気に来るのではないかというのをいつも言わせていただいているわけでございます。
環境省と農水省は連携するというのも予算委員会でも答弁をしていただいたわけですが、その環境委員会の小泉環境大臣がバタリーケージは推奨しないというのを記者からの質問のときにも答弁されていましたが、大臣としてはこのような環境省の大臣の答弁というのはどのように受け止めていらっしゃるでしょうか。
○野上国務大臣 小泉大臣の御答弁でありますが、バタリーケージには止まり木に止まったり地面をつついたりといった鶏が本来備えている行動欲求を満たすことができないという課題があり、アニマルウェルフェアの行動発現の自由の観点からはこういった飼い方は推奨されるものではないと考える、一方で、鶏同士の闘争などについては平飼いよりもリスクが少ないという指摘もありますが、動物愛護を所管する環境省としては、あらゆる動物がアニマルウェルフェアという観点から考えて、少しでも望ましい形で飼育されるように変わっていくことが重要だと考えていると発言をされていると承知しております。
この御答弁は、私がこれまで説明してきました農林水産省の取組の方向性、すなわち、採卵鶏の各飼養方式にはアニマルウェルフェアを実践する上でそれぞれメリット、デメリットがあって、一概に比較することが難しい中で、国際機関であるOIEのアニマルウェルフェアの指針を踏まえて、生産者そして消費者の理解を得ながらアニマルウェルフェアの一層の普及に努めていくという農林水産省の取組の方向性と異なるものではないと考えております。
農林水産省としても、アニマルウェルフェアの一層の普及を進めるに当たっては、家畜が少しでも望ましい形で飼育されるように、専門家の御意見も伺いつつ、どのような技術的な対応が可能なのかも含めて更に検討を進めてまいりたいと考えております。
○串田委員 日本独自の評価というか、基準というか、尺度というのはきっとあるのかなとは思うんですけれども。
この件に関しては、世界動物保護協会が二〇二〇年の畜産部門では日本は最下位のGという評価をされているわけでございます。こういう団体が評価をしたというのは、やはり、これはかなり大きな団体でございますので、しっかりとこれは受け止めていく必要があるだろうし、現実に、EUで二〇一二年に禁止、もうはるか前に禁止されているものを日本で出していた場合、今回はオリンピックの選手ですけれども、インバウンドの人たちが自分の国で禁止されているものが日本で出された場合にどう思うかというのも、それは、日本の尺度というのが大事だというのは分かるんですが、世界的な状況というものも見渡していかないと、業界の保護にならないんじゃないか。
ですから、そういったような部分に関して、すぐに変えるというのはなかなか難しいと思いますけれども、長い視線で、例えばSDGsだと二〇三〇年ですけれども、そういった方向に向かって、日本も移行に関する設備投資に対する補助金を出していくような形で、日本がアニマルウェルフェアもしっかりと守っていくんだという方向性を示しながら補助し、軟着陸させていくということが私は必要だと思うんですけれども、大臣、そういったような形でアニマルウェルフェアを進めていただけないでしょうか。
○野上国務大臣 先ほど来、バタリーケージあるいはケージフリーのメリット、デメリットがそれぞれあるという話は御議論をいただいてきたところであります。
それぞれのメリット、デメリットにつきまして一概に科学的な優劣をつけるということは難しい中で、やはり、アニマルウェルフェアは飼養管理における総合的な取組である、また、生産者による設備投資等の努力のみならず、畜産物の販売価格への影響という点も含めた消費者の理解も必要なことから、一律にケージ飼いを禁止するということではなくて、アニマルウェルフェアの取組を推進する重要性やメリットを示しつつ、生産者や消費者の理解を得ながら取組を拡大していくことが重要と考えています。
このため、鶏舎の整備に対する国の支援につきましても、生産者の方々が消費者のニーズを踏まえて生産方式を選択できるように、バタリーケージだけではなくて、エンリッチドケージや多段式平飼い方式についても既に支援の対象としておりまして、特に、強農、総合支援交付金におきましては、アニマルウェルフェアの要素を含むGAP等の認証を取得している場合には、加算ポイントを設け採択されやすくするなどの措置を講じております。
こうしたことについても、生産者の方々に積極的に周知をしてまいりたいと考えております。
○串田委員 五つの自由を丁寧に当てはめながら進めていただきたいと思います。
終わります。ありがとうございました。
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○高鳥委員長 次に、内閣提出、農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣野上浩太郎君。
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農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
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○野上国務大臣 農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法においては、農業法人の自己資本の充実を通じ、農業の持続的な発展を図るため、農林水産大臣による承認を受けた投資会社等を通じて投資を促進してきたところであります。
近年、農林漁業や食品産業の分野では、輸出のための高度な衛生管理施設の整備や、スマート農林水産業に必要な技術開発等の多様な分野の新たな動きに対応する等の資金需要が生じており、これに対応する必要性が高まっています。
しかしながら、農林漁業や食品産業については、農林漁業が天候等のリスクを有すること、生産活動サイクルが長く投資回収に時間を有する等の事情により民間投資を十分に受けられていない状況にあります。
こうした状況を踏まえ、農林漁業の生産現場から、輸出、製造、加工、流通、小売、外食等のフードバリューチェーンに携わる事業者全てを対象として、農林漁業及び食品産業の更なる成長発展に必要な資金供給を促進するための措置を講じるため、この法律案を提出した次第であります。
次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
第一に、目的規定についてであります。
農林漁業や食品産業における新たな動きへの資金供給の必要性に鑑み、目的を農林漁業及び食品産業の事業者の自己資本の充実を促進し、その健全な成長発展を図るとともに、農林漁業及び食品産業の事業者の事業の合理化、高度化その他の改善を支援する事業活動に対し資金供給を行い、もって農林漁業及び食品産業の持続的な発展に寄与することとしております。
第二に、投資対象とする法人の追加であります。
農林水産大臣の承認を受けた投資会社及び投資事業有限責任組合の投資対象に、現行の農業法人に加え、これまで対象でなかった林業や漁業を営む法人、そして、農林水産物や食品の輸出、製造、加工、流通、小売、外食等の食品産業の事業者、さらに、スマート農林水産業に必要な技術開発等を通じて農林漁業者又は食品産業の事業者の取組を支援する事業活動を行う法人等を追加することとしております。
第三に、投資事業有限責任組合に関する外国法人への投資に関する特例であります。
農林水産大臣の承認を受けた投資事業有限責任組合が、外国法人への投資について農林水産大臣の確認を受けた場合には、投資事業有限責任組合契約に関する法律における外国法人への投資割合に関する規制の対象外とすることとしております。これを通じ、農林水産物の輸出促進に資する海外での物流・販売拠点の整備等を推進していきたいと考えております。
以上が、この法律案の提案理由及び主要な内容であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
○高鳥委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
次回は、明七日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時二十一分散会