第5号 令和3年4月7日(水曜日)
令和三年四月七日(水曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 高鳥 修一君
理事 加藤 寛治君 理事 齋藤 健君
理事 津島 淳君 理事 宮腰 光寛君
理事 宮下 一郎君 理事 亀井亜紀子君
理事 矢上 雅義君 理事 稲津 久君
伊東 良孝君 池田 道孝君
泉田 裕彦君 今枝宗一郎君
上杉謙太郎君 江藤 拓君
金子 俊平君 小寺 裕雄君
佐々木 紀君 鈴木 憲和君
高木 啓君 中曽根康隆君
西田 昭二君 根本 幸典君
野中 厚君 福田 達夫君
福山 守君 細田 健一君
渡辺 孝一君 石川 香織君
大串 博志君 岡本あき子君
金子 恵美君 神谷 裕君
近藤 和也君 佐々木隆博君
堀越 啓仁君 松尾 明弘君
緑川 貴士君 濱村 進君
田村 貴昭君 藤田 文武君
玉木雄一郎君
…………………………………
農林水産大臣 野上浩太郎君
農林水産副大臣 葉梨 康弘君
農林水産大臣政務官 池田 道孝君
経済産業大臣政務官 宗清 皇一君
政府参考人
(国税庁長官官房審議官) 木村 秀美君
政府参考人
(農林水産省大臣官房長) 横山 紳君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 青山 豊久君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 森 健君
政府参考人
(農林水産省消費・安全局長) 新井ゆたか君
政府参考人
(農林水産省食料産業局長) 太田 豊彦君
政府参考人
(農林水産省生産局長) 水田 正和君
政府参考人
(農林水産省経営局長) 光吉 一君
政府参考人
(水産庁長官) 山口 英彰君
政府参考人
(中小企業庁次長) 奈須野 太君
政府参考人
(中小企業庁経営支援部長) 村上 敬亮君
農林水産委員会専門員 森田 倫子君
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委員の異動
四月七日
辞任 補欠選任
木村 次郎君 高木 啓君
斎藤 洋明君 中曽根康隆君
大串 博志君 堀越 啓仁君
神谷 裕君 松尾 明弘君
佐藤 公治君 岡本あき子君
同日
辞任 補欠選任
高木 啓君 木村 次郎君
中曽根康隆君 斎藤 洋明君
岡本あき子君 佐藤 公治君
堀越 啓仁君 大串 博志君
松尾 明弘君 神谷 裕君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇号)
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○高鳥委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房長横山紳君、大臣官房総括審議官青山豊久君、大臣官房総括審議官森健君、消費・安全局長新井ゆたか君、食料産業局長太田豊彦君、生産局長水田正和君、経営局長光吉一君、水産庁長官山口英彰君、国税庁長官官房審議官木村秀美君、中小企業庁次長奈須野太君及び経営支援部長村上敬亮君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○高鳥委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。今枝宗一郎君。
○今枝委員 皆様、おはようございます。自民党の今枝宗一郎でございます。
投資円滑化法改正案の質問の機会をいただきまして、まず皆様に感謝を申し上げます。
では、早速質問に入らせていただきます。
農林水産業につきましては、九年前、自公政権に戻していただいてから、様々な政策を講じていただきまして、マクロの生産額の増大など一定の効果を上げていただいておりますが、やはり、状況としては依然厳しいものがございます。
そういう中で、今回の投資円滑化法の改正案の目的は、農林漁業の持続的な発展に寄与することとされております。この持続的な発展というのは具体的にどういうことを想定されておられるのか、御説明いただきたいと思います。
○池田大臣政務官 農林漁業や食品産業の分野におきましては、輸出を始めとした様々な新たな取組が行われてきており、投資活用のニーズは十分に存在いたしております。
一方で、投資分野としては、手堅い成長が見込まれる分野であるものの、生産活動サイクルが長く、投資回収までの期間が長いため、民間ファンドの資金は投資回収までの期間が短い分野に集中し、外部からの投資を十分に受けることが難しい状況にございます。
このため、今般の改正では、法目的につきましては、農業以外に林業、漁業及び食品産業を追加し、その持続的発展を図ることとする改正をいたしております。
この持続的な発展につきましては、例えば、農林水産物の輸出の促進、スマート農業の推進による農林漁業の生産性の向上が図られ、その結果、農林漁業、食品産業が成長し、農林漁業者の所得の向上が図られるものと考えております。
○今枝委員 どうもありがとうございます。最終的に、農林水産業の生産性の向上ですとか、また、農林漁業者の所得の向上までつなげていきたい、すばらしい思いであるというふうに思っております。
私は、農林水産業ですとか農山漁村の課題というものの非常に多くが所得問題というところにやはり起因をしているのではないかなというふうに思っておりまして、農林水産業従事者の所得の向上というのは農林水産政策の最も重視すべき点の一つだと考えております。そこで、持続的に所得を向上させていくためにも、また、当然、生産性の向上というのも同時にやはり必須だと思っています。
さて、そこでお聞きをいたします。今回の投資円滑化法の改正で投資対象範囲が拡大されることになります。これによって本当に農林水産業従事者、農山漁村の所得向上までつながっていくのかということを少し聞きたいと思います。
これまでの投資対象というのも地方部の方が多かったというのはお聞きをしておりますけれども、都市部ですとかグローバル企業、大企業への投資が一方的に増えていくというわけじゃなくて、地方の農山漁村への投資が増すと考えてよいのでしょうか。これまでの実績も踏まえて、御回答をお願いいたします。
○太田政府参考人 お答えいたします。
現行の投資円滑化法におきましては、承認会社等を通じまして、全国各地域の農業法人が行う生産設備の高度化あるいは規模拡大の取組等に対しまして、件数にいたしますと二百五十七件、金額にいたしますと七十九億八千万円の出資が行われているところでございます。
今回の法改正によりまして、農業法人に加え、林業、漁業を営む法人、食品産業やスマート農林水産業を投資対象といたしまして、フードバリューチェーン全体の投資を促進し、農林水産物の輸出の促進あるいは農林水産業の生産性の向上、流通の合理化などを推進することを目的としております。
したがいまして、今回の改正は、農山漁村の農林漁業、そして食品産業の事業者に広く利益をもたらし、農林水産従事者や農山漁村の所得向上につながるものと考えているところでございます。
○今枝委員 どうもありがとうございます。よく分かりました。この法案というのが、いわゆる都市部のみならず、本当に、農山漁村に対しても大きな福音といいますか、希望になるということがよく分かりました。
それでは、実際に、農林水産業者の方々の所得向上について、この後、詳しくお聞きをしていきたいと思います。
先ほども少しお話をしましたが、農業改革の本丸は私は農家の所得向上だというふうに考えております。農業問題でよく挙がる平均年齢の高さ、耕作放棄地の問題、荒廃農地の問題も同様ですが、これらの問題というのは様々な要因がもちろん複雑に絡み合っておりますけれども、最終的には担い手不足、後継者不足の問題に行き着くのではないかなと思っております。
これらを解消するには、農業所得を含む農山漁村全体の所得を増加させて、十分な所得が得られるものであるということを、若者ですとか次の世代にしっかりと示していくということが絶対に必要ではないかなと思っております。
平成二十五年に、自民党は地域の活力創造プランで、二〇二五年の農家の所得倍増計画を掲げました。それ以来、様々な政策で農業所得と農村関連所得を伸ばしてきております。
農業所得の増大については、よく価格掛ける生産量引く生産コストの式で考えられておりますけれども、この中で、生産コストの縮減というのは、大規模化であったり、農地基盤の整備、人・農地プランでの農地の担い手への集積、また、中間管理機構によって農地自体の集積もしたり、資材費等の縮減、スマート農業などによる人件費の縮減など、今、農水省さんも非常に積極的にこういった政策に取り組んでいただいておりますし、現場も大変御尽力をいただいているというふうに思っております。
一方で、生産額の増大というのも非常に重要であると思っています。それには、輸出はもちろんでありますけれども、国内の需要拡大、これが非常に重要であります。消費拡大のようなこともございますけれども、人口減少の中で非常に大変なわけでございまして、そうなってくると、やはり、先ほど来議論している高い生産性、高い付加価値というものが非常に重要だと考えられます。
ここで、高い生産性を目指していくのに最適な政策といいますか、それを一番目標に掲げている政策で、産地パワーアップ事業があるかと思います。当然、当初予算でもしっかりと入れていただいているわけでありますが。
この産地パワーアップ事業、本当にこれまで、累次にわたって進化をしてきたと思っております。例えば、大規模農業のみを有利にするものではいけないということで、平成二十九年に私も農水省に対して質問させていただきました。それによって、その後、いわゆる面積要件の緩和ですとか、また、成果目標に労働生産性向上というものが入ってきました。本当に感謝をしたいなというふうに思っています。
この産地パワーアップ事業、次の進化はどういうふうに考えたらいいかなというときに、やはり、高い生産性の産地をどのように守り、維持もしつつ、さらに、もう既にかなり高まっておりますので、そこからまた一気にどんと高まるのはなかなか難しいにしろ、だんだんだんだん、少しずつでも強化していく、そういったところというのもスコープに入れていくというのは非常に重要ではないかなというふうに思っています。
産パワは六年間続いておりますので、既に生産性の高い産地はかなり増えてきたと思っておりますので、これらの産地に対しまして更に大体一〇%上げろというのが成果目標とかであるんですけれども、やはり、更に一〇%上げるという話になるとかなり厳しいものがあると思っております。
実際には、産パワも、ほかの強い農業づくり交付金なんかもポイント制となっておりまして、現在もう既に産地としての価値が高い、生産性が高いというものには現況値ポイントというのも割り振っていただいておるようでございますので、これについては一応評価をいただいていると思いますが、このポイントが余り高くないということもあったりもするものですから。
先ほど来お話ししていますように、生産性を更に上げるとなると結構大変なものですから、その辺りの困難性を十分に理解いただいた上で、今既にかなり生産性が高い産地、ここを少しずつであっても更に強化していく、そういったことについての支援というものも考えていただいた方がいいのかなと思うんですが、その辺り、農水省の御見解をお聞きしたいと思います。
○水田政府参考人 お答えいたします。
産地生産基盤パワーアップ事業の収益性向上対策、あるいは強い農業・担い手づくり総合支援交付金の産地基幹施設等支援タイプにおきましては、産地の収益力の強化に向けた集出荷施設あるいは貯蔵施設、こういったものの整備等の支援をさせていただいております。
これらの事業におきましては、予算の配分に当たりましてポイント制を採用しております。例えば、産地生産基盤パワーアップ事業では、産地が作成する産地パワーアップ計画に定めました成果目標の達成に資するような目標を二つ設定していただきまして、その高さに応じてポイントづけをした上で、中山間地域での取組、あるいは輸出拡大が有望な品目等に係る取組、これらを対象にポイントの加算を行いまして、これらを集計いたしましてポイントの高い順に予算を配分する仕組みとなっているところでございます。
このとき、成果目標に関するポイントにつきましては、一つの目標について最高で十五ポイントがつくわけでございますが、このうち、将来達成すべき目標の水準に応じまして最高で十ポイント、これに加えまして、現況値の水準に応じて最高で五ポイントとしているところでございます。この現況値ポイントによりまして、既に生産性が向上されている先進的な産地におきますこれまでの取組といったものが評価されるという仕組みになっているところでございます。
委員が御指摘いただきました、現況値ポイントを更にかさ上げするということについてでございますけれども、本事業の目的でございますパワーアップということで、産地の収益力の強化ということでございますので、ある意味でどうしても、現況値ポイントよりも将来達成すべき成果目標ポイントの方を重視せざるを得ない面はございます。
一方で、成果目標につきましては多数の項目の中から選択できるようにしておるところでございまして、例えば、収量についてもう既に先進的な産地で更なる収量アップが難しい場合でございましても、品質の面で高い目標を掲げることによりまして高いポイントを取得することが可能となっておりまして、こうしたやり方につきましても、現場の実情に応じて御相談に乗っていきたいと考えているところでございます。
今後とも、先進的な産地を含めて現場の御意見をよく伺いながら、より事業効果が高まるよう、適切な執行に努めてまいりたいと考えております。
○今枝委員 ありがとうございます。是非、様々な産地の声を聞いていただきながら、現場に寄り添いつつ、お願いを申し上げたいと思います。
ここまで農業生産の増大による所得向上について取り上げてまいりましたが、今後は、所得倍増を実現していくのに非常に重要な農村地域での関連所得の増大についてお聞きをしていきたいと思います。
農村地域の関連所得については、農水省が主要七分野を対象に金額目標を算出していただいております。しかし、いわゆる都市と農山漁村の交流ですとか、バイオマス・再生可能エネルギー以外の加工・直売、輸出、医福食農連携、地産地消、そしてICT活用・流通などの五分野は、なかなかちょっと伸び悩んでおります。
これは全て六次産業化が必須の分野だと思います。現在政府は六次産業化交付金なども活用して推進していただいておって、二十五年の段階では四・七兆円だった六次産業も七・五兆円ほどに、令和二年に入ってどんどんどんどん、増えてはきております。
しかし、更に更に伸ばしていきませんと、農村地域での関連所得の増大というのが十分な規模になってまいりません。また、六次産業化交付金の対象規模なんですけれども、年十五件程度と想定されておりまして、規模はやはり余り大きくないというふうに言えると思います。
一方で、政府は昨年の第三次補正予算で、中小企業が最大一億円を受け取れる事業再構築補助金を創設いたしました。一兆一千四百八十五億円という非常に多額の金額を確保されておりまして、建物の建築、改修から、リースなど、機械装置・システム構築費などにもいろいろ使えるというものだと思います。これは農水省の予算じゃないんですけれども、六次産業化を進める事例を全国に数多くつくっていくためには是非とも活用すべきなんじゃないかなと思っております。
そこで、農林水産業の六次産業化にもこの事業再構築補助金は使用できるのか、これは中企庁にお聞きをしたいと思います。
また、農水省には、農村所得を増大させる六次産業化を数多く生み出すための切り札としてこの事業再構築補助金の活用をどう考えるのか、考えをお聞きしたいと思います。特に、六次産業化サポート事業においては事業再構築補助金も紹介をしていただいたり、手続が結構難しいので、積極的に申請を促しサポートするようなことを体制としてつくってみてはどうかということを考えるんですが、お答えをいただきたいと思います。
○奈須野政府参考人 お答え申し上げます。
事業再構築補助金ですけれども、ウィズコロナ、ポストコロナの時代の中小企業の事業再構築を支援することで日本経済の構造転換を促すということで、三次補正予算で一兆一千四百八十五億円を措置しております。
具体的には、コロナ前と比べて売上高が一〇%以上減少している中小企業、個人事業主などに対し、新たな商品で新たな市場に進出する新分野展開の取組などを行う場合に、要件に該当すれば、農林水産業を含む幅広い事業に対して、補助率三分の二で最大一億円まで補助することができるようになっております。
御指摘の農林水産業の六次産業化でございますけれども、例えば、農林漁業の方が新たに加工などの二次産業、さらにはサービスや販売などの三次産業に事業を展開することで、新たな商品で新たな市場に進出し、新分野展開に該当する、こういった場合には、事業に必要な設備の購入費用や研修費用、こういったものを補助金の対象とするということとなっております。
農林漁業に従事されている皆様におかれても、本補助金を積極的に活用しつつ、前向きな事業再構築に取り組んでいただきたいと考えております。
○池田大臣政務官 六次産業化の市場規模の拡大に向けまして、新商品の開発や販路の開拓、加工・販売施設の整備の支援に加え、六次産業化サポート事業として、エグゼクティブプランナーによる事業拡大や経営の発展に向けたアドバイスをする取組を進めてまいりました。引き続き、農村地域の関連所得の増加につながる付加価値の高い六次産業化の推進に向けて、しっかりと支援を行ってまいります。
また、事業再構築補助金につきましては、六次産業化に取り組む事業者がコロナの影響を受け、新分野への展開や業態転換あるいは事業再編等にチャレンジする場合に有効な事業と考えておりますので、今後とも、経済産業省と連携して六次産業化事業の再構築を支援してまいります。
○今枝委員 どうもありがとうございました。非常に積極的な姿勢に感謝を申し上げます。
それでは、ここまで農業の所得倍増について議論をしてきたんですが、今の現状を見てみますと、やはり新型コロナの影響で大変に苦しい状況が続いておりますので、倍増を目指しつつも非常に状況は厳しいのかなと思います。ただ、新型コロナに対する影響に対して農水省さん、政府は大変様々な支援をしていただいておりますので、これには感謝を申し上げたいと思います。
ただ、私としましては、更なる支援というものをしっかりと考えていただいて、更にその先の農家の所得倍増、こういったことをやはり目指していくべく努力をしていただきたいなと思っておりますので、関連した質問を幾つかさせていただきたいと思います。
例えば、この冬の緊急事態下においては、いわゆる飲食店には営業時間短縮協力金が六万円支払われるわけでありますが、一方で、飲食店が時間短縮営業をするということは、当然ですが、納入業者である卸の方々や農林水産業の方々には大きな影響がありまして、この方々に対して最大六十万円の一時支援金が支払われるというふうな形になってくるかなというふうに思います。
この一時支援金、まずはいち早く受け取っていただくということが非常に重要でありますが、農林水産業の方々は、この存在について余り御存じない方も結構いらっしゃいます。ですので、この支援金、やはりいかに周知をしていくのかというのが非常に重要なのでありますが、ただ、この支援金、登録確認機関というもので事前確認をやっていきますけれども、農林漁業者が日頃つき合いのある農協ですとか漁協も登録確認機関になっていただけますし、事前確認が電話でもよくて、さらに申請のサポートまでいただけるということは非常にいいことだなと思っております。
私はこれまでも、多くの農協や漁協が登録確認機関になっていただくべきだということは強く訴えてまいりましたが、三月上旬にはゼロだったものが、この一か月で農協で二百、更に漁協で四百五十まで増やしてきていただいたので、これは本当にありがたいんですけれども、ただ、全国の漁協とか農協の数に比べれば、まだ一部と言わざるを得ません。
四月二十一日に実は登録確認機関の登録が締切りとなってしまいますので、残り時間がないので急いで増やしていかないといけないと思いますけれども、どのように考えておられるか教えていただきたいと思いますし、また、農業者、漁業者、こういった方々への周知もどのように考えておられるのかも併せて教えてください。
○池田大臣政務官 一時支援金の申請に当たりましては、御指摘のように、登録確認機関が事前確認を行うこととされております。
農林水産省といたしましては、二月下旬から、関係団体を通じて農協、漁協が登録確認機関として登録を行い事前確認に協力するよう要請しているところでありまして、四月六日時点で、農協、漁協合計で約六百五十件が登録をされております。
また、このほかに、現在、農協、漁協からも追加の登録申請が行われていると関係団体から聞いておりまして、随時登録申請が進められているものと認識をいたしております。
農林水産省といたしましては、農業者、漁業者の皆様が円滑に一時支援金を申請できるよう、登録確認機関の登録申請期限を踏まえつつ、引き続き、関係団体を通じて農協等が登録確認機関に登録するよう呼びかけてまいります。
また、農業者、漁業者の皆様には、一時支援金の制度について農林水産省のホームページで紹介を行うなど、引き続き、関係団体と連携して制度の周知に徹底してまいりたいと考えております。
○今枝委員 ありがとうございます。是非お願いをいたしたいと思います。
最後に、次期作支援交付金についてお話をしたいと思います。これは十アール当たり最大八十万円ということで、非常に手厚いものなんですけれども。
冬の緊急事態の発出に鑑みまして、私は次期作支援交付金の再交付をすべきであるとこれまでも訴えてまいりましたけれども、先日、四次公募を行うということを発表いただきました。
確認ですが、この四次公募は一から三次公募で交付を受けた人も再び交付を受けることが可能かどうか教えていただきたいと思いますし、また、可能ならば、先日農水省がサイトに出していただいたんですが、再交付も可能ですよということが明示されていないので、五月の募集開始より前にいち早く明示をしていただきたいと思っております。その可否についても教えてください。大臣、農家の方々に是非、安心いただけるようなメッセージをお願いしたいと思います。
○野上国務大臣 御指摘のありました高収益作物次期作支援交付金でございますが、これまでの公募における支援対象は、昨年の緊急事態宣言等によってコロナによる影響を受けた生産者が行う次期作の取組であったことに対しまして、今回の第四次公募の支援対象は、本年の一月から三月までの緊急事態宣言の影響を受けた生産者が行う次期作の取組でありますので、これまでの公募で既に交付金を受け取った生産者であっても今回の公募の対象になるということであります。
また、この旨については、地方農政局等を通じて周知しているところでありますが、今後、事業の実施要綱等を公表する際には、それらと併せてホームページにも公表していきたいと考えております。
○今枝委員 ありがとうございます。
まだ少し時間がありますので、簡潔に申し述べたいと思いますが、次期作支援交付金は、今大臣からもすばらしいお話をいただいたんですけれども、対象品目としてメロン、つま物類、香酸かんきつ、切り花となっておりますが、つま物類はワサビや穂ジソ等となっているんですけれども、等はどこまで読めるのかなというのをちょっとお聞きしたいと思います。
私の地元で、大葉とか、つま菊とか、花木とかマイクロトマトなんかも非常に影響を受けておりますので、是非、影響がありますので、入れていただきたいと考えておりますので、いかがでしょうかというのを聞かせてください。
あともう一つ、対象の二つ目に、都道府県域で対象となる品目も、都道府県ごとの市場取扱金額のデータに基づいて品目を指定しますとあります。
これは非常に大事な次期作支援交付金のポイントだと思っていまして、地域によってかなり違うので、これについては第三次公募までと同様の基準やプロセスでやっていくのか、また、手続が結構大変なので、申請手続やプロセスの一層の円滑化、こういったことも考えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○水田政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のつま物類でございますが、大葉、つま菊、花木、マイクロトマト、こういったものを御指摘いただきましたが、これらはいずれも飲食店において料理に添えられることが多い品目と考えられるところでございますが、これらも含めまして、どのような品目がそれぞれの地域でつま物類として販売されているのか、農林水産省で全て把握できているわけではございませんので、都道府県に実態をお聞きしまして、それを踏まえて具体的に整理してまいりたいというふうに考えているところでございます。
それから、もう一点ございました、地域ごとに影響がある品目についてでございますが、第四次公募におきましても、これまでの第三次公募までと同様、都道府県域で対象となる品目についても、これを指定する仕組みを設けているところでございます。
具体的には、対象期間でございます本年一月から三月までの間で、緊急事態宣言の影響により市場取扱金額が平年の二割以上減少している月があるという、こういったデータを都道府県から提出していただくことで、当該都道府県におきます対象品目に指定するということとしているところでございます。
こういった形でデータを出していただきまして、しっかりと品目を整理いたしまして、農業者が円滑に申請できるよう、しっかり周知してまいりたいと考えております。
○今枝委員 どうもありがとうございました。よろしくお願いいたします。
終わります。
○高鳥委員長 次に、濱村進君。
○濱村委員 公明党の濱村進でございます。
本日は、農業法人投資円滑化法についてお伺いいたしたいと思います。
まず、現行法において農業法人ということで対象が絞られているわけですが、今回の法改正においては、農林漁業法人等に変更して、対象となる法人が追加されると認識しております。漁業であったり林業、食品の製造、加工、流通、販売、輸出、飲食、あとスマート農業等の支援事業者についても追加されるという認識です。これは二条で規定されているわけでございます。非常に私は大事だなと思って評価をしておるんですが。
農林水産物・食品の輸出等への投資の促進に関する検討会、ちょっと長いので検討会と略しますが、この検討会では、投資促進を図る対象範囲は広く捉えるべきという意見があったようでございます。そこでお伺いしたいのが、バリューチェーン全体を含む考え方もあるというような言及があったわけでございますが、サプライチェーンという言い方ではなく、バリューチェーンとなっているんですね。バリューチェーンとして対象範囲を定めるということは、一体どういうことなんだろうか。サプライチェーンとバリューチェーンの意味合いの違いも含めて、この点についてお伺いしたいと思います。
○太田政府参考人 お答えいたします。
フードバリューチェーンの構築とは、農林水産物の生産から製造・加工、流通、消費に至る各段階の付加価値を高めながらつなぎ合わせて、食を基軸とする付加価値の連鎖をつくるということでございます。そういう意味で、物の流れというニュアンスの強いサプライチェーンではなくてバリューチェーンという言葉を使っているものでございます。これによりまして、フードバリューチェーンを構成する生産者、製造業者、流通業者、消費者により大きな付加価値をもたらすということを狙いとしているところでございます。
今般の改正におきましては、投資により各段階の事業者の付加価値を高めていくという点で、このフードバリューチェーンを構築するということで、食品産業の事業者に加え、スマート農林水産業に必要な技術開発等を行う事業者など、農林漁業者や食品産業の事業者を支援する事業者も投資対象としているところでございます。
こういうフードバリューチェーンに携わる事業者全てを対象とした投資対象の拡大によりまして、農林漁業及び食品産業全体の更なる成長発展を図ってまいりたいと考えているところでございます。
○濱村委員 いわゆるバリューチェーンといいますと、機能に着目して捉えていくということは、大体、MBAとかで勉強するような話の中には書いてあるんですが、供給者の原理だけではなくて、事業活動を機能で捉えて、先ほど局長からもありましたとおり、食を基軸とする付加価値に注目されるということでございますので、非常に大きく農業を取り巻く環境が変わっていくんじゃないかということで期待をしております。
その上でお伺いしたいのが、二条の中に、農林水産物とか食品の定義として、四項、五項にそれぞれ定義が書いてあるんですが、食品以外のものについてもどのように考えればよいか、この点についても伺いたいと思います。
○太田政府参考人 お答えをいたします。
法律第二条第四項の農林水産物の定義に含めるものといたしまして、農林水産省令で定めるものというのを追加させていただくということになりますけれども、この具体的な規定ぶりにつきましては現在検討中ではございますが、輸出促進法と同様に、農林水産物を原料又は材料として製造又は加工したものであって、食品には含まれないものと考えておりまして、例えばでございますが、畳表であるとか生糸であるとか製材、こういったものを想定しております。
また、五項につきましては、食品の定義を置いてあるところでございますけれども、この食品につきましては、輸出促進法と同様に、医薬品、医薬部外品、再生医療等製品を除く全ての飲食物を対象とすることとしているところでございます。
○濱村委員 具体にはちょっと今検討中だということなんだと理解しました。
いずれにしても、食品衛生法とか輸出促進法にある規定ぶりと類似の規定のされ方をしていくんだろうと思っておりますが、しっかり明示して、より多くの事業者さんをしっかり抱え込んでいくという意識を持っていきながら進めていただきたいと思っております。
続いて、大臣にちょっとお伺いしたいと思っておりますが、フードテック分野への投資でございます。
世界的に見ますと、フードテック分野への投資というのは大きく伸びておりまして、二〇一八年二兆三千百七十七億円、二〇一九年二兆一千七百九十億円と、二〇一二年段階では二千三百四十四億円という金額規模でございましたので、非常に大きく伸びているのは明らかだと思っております。一方で、日本におけるフードテック分野への投資額というのは九十七億円、極めて小さい金額でしかないと私は感じております。
このフードテック分野への投資を強化するべきと考えておりますが、大臣の御所見をお伺いいたします。
○野上国務大臣 フードテック分野への投資でございますが、近年、植物性たんぱくを原料とする代替肉製品ですとか、コオロギなど、昆虫を原料とする昆虫食製品が発売されるなど、いわゆるフードテックが注目をされておりまして、御指摘があったとおり、近年では毎年二兆円を超える規模の投資が行われているとの推計もあると承知をしております。
農林水産省としましても、我が国食品産業を強化する観点から、このような多様な食の需要に適切に対応した産業を振興していくことが重要と考えておりまして、本法案におきましても、投資対象としまして、食品産業の事業者、農林漁業又は食品産業の事業者の合理化、高度化その他の改善を支援する事業活動を行う法人を新たに加えることとしておりますので、フードテック分野の投資促進にも資するものと考えております。
また、これに加えまして、フードテック官民協議会というものを昨年十月に立ち上げましたので、投資環境も含めた課題につきましてそこで推進をしていきたいと思いますし、また、フードテック分野を含む起業を目指すスタートアップを支援する、スタートアップへの総合支援も措置をすることとしておりますので、フードテック分野の推進も通じて、多様な食の需要に向けた新たな市場の創出を推進してまいりたいと考えております。
○濱村委員 新たな市場にどんどん出ていかないと、成長する分野というところ、そしてそこにおける広がり、こうした産業の大きな構造をみすみす見逃してしまうと非常にもったいないというふうに思っております。
更にお伺いしたいのが代替たんぱく質なんですが、EUのファーム・トゥー・フォーク・ストラテジーにおきますと、植物、藻類、昆虫とかの代替たんぱく質、こうした分野に対する研究開発をしっかり位置づけて、新興技術を重要視していると。これは、持続可能な食料供給を可能とするために行っているということでございます。
具体的に言えば、やはりアフリカ大陸等にはなかなか食料が行き渡っていないというような状況もございますし、アフリカ大陸の方々がしっかり成長していくというためには食料供給が極めて重要であるという観点も見逃してはいけない点だと思っております。そういう観点からも、持続可能な食料供給を可能とするフードシステムの構築は非常に重要であると思っております。
ATカーニーが予測している数字でいえば、二〇四〇年まで食肉市場は年率三%成長して、百八十兆円の市場規模ですと。そのうち代替肉は年率九%と見込まれております。代替たんぱく質分野における投資について強化するべきと考えますけれども、いかがでございましょうか。
○青山政府参考人 お答えいたします。
近年、ベジタリアンやビーガンといった新たな食の需要を背景としまして、代替たんぱく質市場が拡大していることを承知しております。
農林水産省といたしましては、我が国食品産業を強化する観点から、代替たんぱく質分野も含めまして、このような多様な食の需要に適切に対応した産業を振興していくことが重要と考えております。
このため、本法案におきますフードテック分野の投資促進でございますとか、昨年十月に立ち上げましたフードテック官民協議会を通じました官民共同のフードテック促進策を実施しているところでございます。
こうした政策を通じまして、農林水産省といたしましても、引き続き代替たんぱく質分野を含むフードテック分野の振興を図ってまいりたいと考えております。
○濱村委員 是非よろしくお願いしたいと思います。
もう一問、大臣にお伺いしたいと思います。
こうした新しい分野、フードテックの分野であったり代替たんぱく質の分野、こうしたところへの投資は強化する必要があると思っておりますけれども、一方で、既存の生産者の皆様、食肉産業を支えておられる方々は、私も地元が兵庫ですので非常に多くのつながりを持っておりますけれども、ともすれば競合するかもしれないというような不安が起こり得るんじゃないかと思っております。
私の整理で申し上げますと、正しいかどうかは別として、世界全体の食料供給を支えていくというような観点、こうした観点と、既存の食肉産業が果たしている役割というのはそれぞれ少し違うのかなというふうにも思っております。ですので、それはそれ、これはこれとしてお互いに成長し合っていけばいいんじゃないかというぐらいに思っておりますが、しっかり不安を解消して、あらぬ誤解を払拭するためにも、どのように整理するのが適切なのか、大臣にお伺いしたいと思います。
○野上国務大臣 やはり、フードテック分野が今注目を集めている背景には、今後も増加する世界の人口に対して持続的な地球環境を維持する観点からは、食肉の供給を安易に増加させていくことは困難であると考えられることから、食肉に代わるたんぱく質を確保する技術開発が求められているということもあると考えられます。
このようなことを踏まえれば、我が国におきましても、今のベジタリアンの話ですとか、あるいはビーガンといった新たな食の需要に適切に対応するとともに、新たな食の供給を支える技術であるフードテックへの投資を推進していくことは重要なことであると考えております。
一方で、畜産業との関係につきましては、例えば牛肉について見ますと、欧米では現在、一人当たりの年間の牛肉の消費量が十キロから二十五キロ程度でありますが、日本では七・五キロにしかすぎず、我が国における食肉の需要というものは引き続き拡大することが見込まれます。このため、仮にフードテックによる代替肉が一定の需要を獲得しても、牛肉などの需要がそれによって減少することにまではならないと思われることから、代替肉の開発が今すぐに畜産業と競合するということにはならないと考えております。
今後、食肉については、輸出拡大を図っていく目標もあります。また、地域を支える重要な産業でもあることから、農林水産省としては、代替たんぱく質分野等の新たな食品分野にも注視をしつつ、新技術による環境負荷軽減等も推進しながら、引き続き畜産業の振興を図ってまいりたいと考えております。
○濱村委員 しっかり役割を認識していただいた上で、こうした新しい分野への投資の強化、そしてまた既存の畜産業の皆さんも、当然新規で挑戦される方々も含めて、それぞれ、魅力も違うわけでございますし、求めておられるような方々も違って、市場も違うというふうに思いますので、適切に行っていただきたいと思っております。
昨日、日経新聞の記事、ネットの記事ですけれども、不二製油さんが代替肉のファンドに出資するということで、記事が載っておりました。
不二製油さんというのは、皆さん御存じかどうか分かりませんけれども、ティラミスの、ティラミスというのは本来はマスカルポーネチーズを使って造るわけですけれども、その代替品を油脂加工品として造っていて、マスカポーネというものを造って提供したことによって、日本においてティラミスというのは昔は高級イタリアンにしか置いていなかったものを、デニーズさんが一九八六年にメニューとして載せ始めて、そこにちゃんとマスカポーネを供給することによって、爆発的に、要はティラミス需要を支えたというようなものがございました。
代替品というものによって大きく市場が発展するというようなこともありますので、こうしたところを支えていきながら、食文化の広がりを是非お支えし、そしてまた発展を促していただきたいというふうにお願いを申し上げます。
最後にもう一点だけ伺いたいと思っておりますが、外国法人への投資の点でございます。
投資事業有限責任組合契約法、LPS法でございますけれども、投資金額は出資総額の五〇%未満という制限がございます。一方で、この法案におきましては特例措置を設けておりまして、五〇%を超える海外投資を可能としているわけでございます。これによって、承認組合が行います農林漁業法人等投資育成事業の選択肢が広がるんじゃないかというふうに期待をされているわけですけれども、外国法人に対して国内事業者の事業の発展に寄与すると認められることについて、農林水産大臣の確認を受けたという場合に限ることとしているんです。
当然、私は、国内の農林漁業の発展のために投資を円滑化していくんだということでございますので、そうしたところに投資を行っていくということでございますので、国内の事業者の発展に寄与するということは極めて重要だと思っているんですが、どこまで入りますかねということが大事かなと思っています。言ってみれば、要件みたいなものですね。この要件についてはどのように考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
○太田政府参考人 お答えいたします。
外国法人に対する投資でございます投資事業有限責任組合法に基づきまして、外国法人に対する投資額というのは全体の五〇%未満とするという制限がございます。今回の法律改正によりまして、輸出先国での例えばコールドチェーンを構築する、こういった取組に対して十分な投資が行えるように、投資円滑化法の枠組みの中での一定の投資に関しては、外国法人に対する投資額の制限がかからないよう特例措置を設けることとしているところでございます。
具体的には、承認組合が外国法人に投資するに当たりまして、我が国の農林漁業者及び食品産業の事業者と資本関係があったり、あるいは一定の取引関係があったり、我が国の事業者の持続的な発展に寄与する、こういうことにつきまして農林水産大臣が確認をする、その確認を受けた場合に、この外国法人への投資につきましては投資事業有限責任組合法の特例の対象とするということとしているところでございます。
○濱村委員 出資の総額というものを捉まえる時点であったりとか、そういう点については工夫が必要かなと思っております。
適切な運用をしていかないとちょっと、別の法律ですが、放送法というものがございますが、あれは結構、時点時点で、議決権の時点区切りで把握しておけばいいんですが、その瞬間に、超えた瞬間にもう駄目よというような規定ぶりになっているので、あれはもうちょっと工夫しなきゃいけないかなと思っているんです。
同様のことが、こうした外国法人といいますか、出資総額とかを捉まえるに当たっては重要な運用の方法論としてあり得るかと思っておりますので、是非適切に運用していただきたいということをお願い申し上げて、質問を終わります。
ありがとうございました。
○高鳥委員長 次に、緑川貴士君。
○緑川委員 皆様、お疲れさまでございます。立憲民主党の緑川貴士です。
今日、水産庁長官にお越しいただいていまして、その前に大臣に、この法案に係る基本的なことで少し触れさせていただきたいんですけれども。
今回の法案は、農業法人だけに限ってきた農業支援ファンドの規制を緩和して、漁業や林業法人、また食品加工業や流通事業者にも拡大をしているわけです。政府の輸出拡大実行戦略を受けて輸出に必要な設備投資を後押ししていくということが想定されている法案なんですが、今日の議論にあるように、この法案の目的規定に書かれていることとしては、農林漁業を含めた事業者の健全な発展、持続的な発展、やはりこれがゴールなんですね、目的であるわけです。
ただ、投資サイクルが短いものに投資が集中したという御答弁が今日ありますように、これまでも、現行法律では農業法人への投資は小口が多かったわけで、投資実績も結果として少なかったという中で、今回も、それは、農業法人に対しては投資のメリットが加わったわけではないんですね。一次産業についても投資サイクルは長くなるというのが、やはりどうしても、一次産業の性質上、伴うものであります。
そうすると、投資先というのはおのずと、輸出などで収益を短期に見込めるような二次産業、あるいはスマート農林産業を支えるいわゆる支援事業者へと、やはり投資の矛先というのは向かいやすくなっていくんじゃないかというところで、想定される投資先のウェートについて、大臣、どのように想定されていらっしゃるでしょうか。
○野上国務大臣 今御指摘をいただきました件につきまして、農林漁業やあるいは食品産業の分野におきましては、輸出を始めとした様々な新たな取組が行われておりまして、投資活用のニーズは十分に存在をしていると考えております。
一方で、御指摘がありましたとおり、投資分野としては、手堅い成長が見込まれる分野であるものの、生産活動サイクルが長く、投資回収までの期間が長いために、民間ファンドの資金は例えばIT分野等回収までの期間が短い分野に集中をして、外部からの投資を十分に受けることが難しい状況にあるというふうに思います。
このため、今般の改正では、法目的につきましても、農業、林業、漁業及び食品産業の持続的発展を図ることとする改正をしているわけであります。
この持続的な発展につきましては、改正後の本法に基づく措置を通じて、例えば、農林水産物の輸出の促進ですとか、スマート農業の推進による農林漁業の生産性の向上も図られるわけでありまして、その結果、農林漁業あるいは食品産業が成長し、また、農林漁業者の所得向上などにもつながっていくものと考えているわけであります。
○緑川委員 直接の一次産業の事業者としては輸出に取り組みにくい現状がありますし、スマート農林水産業ということをすぐ導入するというのが、御高齢の農家さん、生産者さんも多いわけですから、やはりそこは、食品産業を通じてのというような、それ経由での所得アップとか産地の振興というふうになってしまっているところが果たして本当にそういうゴールにたどり着くのかというのが、私はちょっと疑問を持っておるわけです。
投資がなかなか進まない農業、純粋な民間ファンドでは対応が難しい漁業そして林業への投資、こうした分野で、投資サイクルが長い場合であったとしても、細かく見ていって、将来性を期待できる投資先を一次産業の中から丁寧に見出すということが私は非常に大事だというふうに思っています。
食品産業経由ではなくて、じかに一次産業の持続的な発展につなげていけるかどうかというのを、ある種チャンスの法案だというふうに私は捉えているわけであります。直接につながっていくことで産地の活性化や生産者の所得向上につながっていく、そういう投資であるというふうに位置づけていきたいと私は思っております。
今日は、水産庁の長官にもお越しをいただきました。ありがとうございます。
本法案との関連で、まず水産業の、私、秋田県なので、ちょっと地域的なお話も交えてなんですけれども、現状についてまずは伺いたいというふうに思っております。
この十年で見ても、全国的に多くの魚種で漁獲量が大きく減りました。サンマやサケ類、そしてスルメイカ、漁獲量が過去最低になりました。
不漁の原因というのは、一部では外国漁船による乱獲などがあったり、魚種ごとに異なる部分というのはあるんですが、歴史的な不漁というところで、ホッケとかシラス、スケトウダラ、そして先ほどお話をした私の秋田のハタハタなども起こっています。
お配りしている資料の一を御覧いただきたいと思うんです。
ハタハタは、北海道周辺、そして鳥取から秋田県沖の日本海を回遊しています。各県の沿岸が繁殖域なんですけれども。秋田県では県魚に指定されていて、冬の味覚として親しまれているんですが。日本海北部の五県、青森、山形、新潟、富山そして秋田の漁獲量を見ても、やはり全体として不漁続きです。資源管理のために漁獲枠もかなり制限してきたんですが、赤い枠にあるように、この五県の昨年の漁獲量というのは、漁獲枠の厳しい前の年を更に大きく下回って、六割ほどに落ち込んでいます。
秋田県では、ハタハタの禁漁を解いた一九九五年以降で漁獲量が三番目に少ない数になりました。捕れる場所についても、今まで普通に捕れる場所だった県の北側でまとまった水揚げができずに、十二月に入って捕れた場所は全て県の南側だったということです。
地元の漁師は、ハタハタの通り道が変わってしまったと。長年の方が言うんですから間違いないというふうに思うんですが。秋田県沖というのは、水温も高い状態がしばらく続いています。ハタハタは高い気温を嫌いますので、冷たい潮流が南側の沖へ流れたからではないかということが言われています。
水産庁長官にお伺いしたいんですけれども、こうした潮流とか水温の変化によって漁獲が減っているのか。あるいは、全体の資源量がそもそも低くなっている、そういう可能性があるのか。それとも、複合的にそうしたものが重なっているのか。水産庁として、今漁獲量が減っていることの要因の分析と、今後どのように対応していくのか、伺いたいと思います。
○山口政府参考人 お答えいたします。
ハタハタにつきましての令和二年の漁獲量低迷の要因といたしましては、秋田県の水産振興センターによりますと、沖合では小型のホッケが大量に混獲される状況を回避するために操業を一部見合わせたということ、また、沿岸では、接岸時期が短くなった、ハタハタが沿岸に寄ってくる時期が短くなってしまったということや、しけによりまして操業日数が減少したということで漁獲が抑制された可能性も要因として挙げておられますが、最も大きな要因は資源が低水準であったためだというふうな考え方が示されております。
また、ハタハタの資源評価を行っております国立研究開発法人の水産研究・教育機構によりますと、本州日本海側の沿岸を北上する潮流が弱まって、また、西側から蛇行しながら男鹿半島周辺に向かう潮流も弱まるという海洋環境の変化がございまして、産卵場があります秋田県の沖合にハタハタが集まりにくくなったということで、漁獲量の減少や資源の再生産に影響が生じているのではないかということでございました。
○緑川委員 御答弁ありがとうございます。
今、水産改革の一環として改正漁業法が施行されていますけれども、それに伴って、二十二の魚種別に資源の回復、維持を目指すという目標水準が新たに設定されていくということなんですが、既に一部の魚種は漁獲枠に反映されているということも聞くんですが、この二十二種の中に実はハタハタが含まれております。
つまり、この目標水準というのは、長い目で見た場合に自分たちの漁獲量をしっかり確保するための水準なんですが、短期的に見れば、漁獲枠に制限がかかってしまう、更に厳しい管理につながってしまうのではないかという懸念が現場からも聞こえてくるわけなんです。
ハタハタの目標水準、今、山口長官は全体の資源量も下がっているということをおっしゃいました、そうした中でこの目標水準というのはどのように変わっていくのか、そして浜の理解を得るのにどのように取り組んでいかれるのかというところをお伺いできればと思います。
○山口政府参考人 お答えいたします。
今先生から御指摘がございましたように、ハタハタにつきましても、今資源評価を水産研究・教育機構の方でやっている魚種でございますので、今後、資源管理を数量管理に合わせていくということも検討しなきゃいけない魚種の一つだというふうには思っております。
ただ一方で、TACの設定に当たっては、漁業者の皆様の理解と協力を得ながらやっていくという方針でございますし、特にハタハタにつきましては、秋田県の水産振興センターの方で既に、ある程度、資源量を基にした漁獲枠というものを設定していただいております。
今は自主的な管理ということでございますけれども、漁獲枠の設定の中で適切な運用が行われているというふうに考えておりますので、それを尊重しながら、これは、水産研究・教育機構の評価の中にも秋田県の水産振興センターの研究員の皆様も一緒になって入って研究いただいておりますので、県が示している漁獲枠なども参考にしながら、今後の資源管理の在り方については検討してまいりたいと思っております。
○緑川委員 ハタハタは、全国的には知られていない方は多いと思うんですが、地域的には、春はヒラメとかタイ、冬はタラなどを捕って生計を立てている、そうした漁師も、年間の収入の半分以上はハタハタだという方は多いんですね。その不漁というのはやはり死活問題になるわけです。地域の漁獲枠を尊重していただくという方向性の中で御答弁いただいたことは、一つ、これはしっかりと地元で共有をしていくべきお話であるというふうに思うんですが。
水産研究に当たる県の担当者は、厳しい状況にあるんですけれども、ある程度魚は逃がすといったこれまでの漁であれば、一気に漁獲を抑制するという段階ではないと。やはり、小型魚の混獲というところをいかに防いでいくかということが非常にポイントになるんだろうなというふうに考えております。捕ることを続けながら、資源を活用していかに守り育てていくかという視点だと思います。
商品価値の低い小型の個体が混じってしまうことを防ぐためには、中型以上のハタハタを効率よく捕る、そのための定置網や底引き網には、網の目をちょっと大きくしていかないといけない。
実は、この改良に非常に費用がかかります。ここの、網の目を広げた漁具の開発というのは、本当に最近なんですけれども進めてきました。今の普及の状況を、長官、どのように御認識されているでしょうか。
○山口政府参考人 お答えいたします。
今先生からも御指摘がございましたように、資源管理のためには、小型魚を逃がしたり、混獲を減少させる漁具を開発することが重要だというふうに考えております。
このため、国立研究開発法人の水産研究・教育機構では、沖合漁業、この場合は沖合底引き等になるわけでございますが、これの選択制漁具の開発に今取り組んでいるところでございます。さらに、都道府県の試験研究機関では沿岸漁業について同様の取組を行っているところでございます。
ハタハタにつきましては、沖合底引き網漁業についての研究は、秋田県と連携しながら、クモヒトデ類等の不要物の入網を回避できる底引き網を開発しているところでございます。また、先端のコッドエンドの網の目合いを拡大するなどということで、小型魚を逃がす漁具の開発に向けた検討が今行われているところでございます。
一方、秋田県におきましては、沿岸に寄ってきますハタハタを漁獲します定置網の実証試験に取り組んでいるところでございまして、この目合いを、十五センチ未満のやつを捕らなくて済むようにということで、そういった、選択的に逃がす効果の実証が行われているところでございます。
今後とも、このような漁具の開発を含めまして、ハタハタの資源管理が効果的に実施できるよう支援してまいりたいと考えております。
○緑川委員 ここで大臣にお伺いしたいんです。
ハタハタ漁の場合は、テニスコート分の大きさの網というのが通常なんですけれども、これが材料費、加工費込みで二百万円はかかると。一つの網ですから。事業者が選択しようかしないかというところは非常に大きな判断になります。そこで導入できれば、ハタハタの個体の選別作業というのを負担を和らげて効率化を図ることができます。長期的な資源の確保にもつながっていく取組になるんです。
こうした事業者に投資をしていこうという判断は、あくまで本法案の投資育成事業で承認を受けた投資主体なんですけれども、今後、省令で具体的にどういうものなのかというところは定めていくというお話なんですが、漁具の改良によって生産性を高めながら、着実な資源管理によって漁業者の収益確保につなげていける、持続的な発展に寄与するという目的に沿うものであるというふうに思います。投資対象が今回広がる漁業法人の改善事業の一つの例として非常に重要であるというふうに思っているんですけれども、御認識はいかがでしょうか。
○野上国務大臣 今お話のありました、漁具の改修等々によって生産性を高めていく、そういう分野についての投資については極めて重要なものだと認識をしております。
○緑川委員 重要だというお答えをいただきました。ありがとうございます。
改良された漁具の普及に向けて、まだまだ実験段階で、今始まったばかりですので、しっかり本法案で後押しをしていただくということを求めたいと思います。
済みません、もう一つ確認させていただきたいことがあります。ハタハタの産卵場となる藻場の再生ということが課題になっていまして。
資料の二を御覧いただきたいんですけれども、ハタハタは、初冬に大群で沿岸に接岸するときに、アカモクという海草がたくさん生えた、藻場と呼ばれる場所がありますが、そのアカモクの茎や枝にたくさん一斉に産卵を冬にします。数字は、その卵が一定の範囲でどれだけ産みつけられているかという卵塊密度という値です。赤枠で囲った今年の値を見ても、やはりハタハタの接岸が減っていることによる産卵の減少というのが大きいと思うんですが、藻場自体の減少によって卵を産みつけにくくもなっているのではないかという有識者の指摘もございます。
こうした藻場の維持、育成に取り組むに当たっては、水産庁の事業で、水産多面的機能発揮対策、確かにこれは可能ということだと思います。ただ、藻場の保全とか種苗の放流、河川のクリーンアップ、こうしたものが活動組織をつくりながら広く国民の活動として広がってきた、これは成果のある取組だと思うんです。
一方で、組織を立ち上げたとしても、技術水準、こういう藻場を長期的に育成していく技術、この水準を組織として高めていくために、専門家のサポートがどうしても必要になってきます。いつもそばにいるわけではない専門家による継続したサポート体制の充実というのは、国の補助があっても地方の負担が大きくなっていくわけです。
そうして確認したところでは、秋田県内で藻場の保全活動でこの対策は現在使われておりません。そうした中での、今、資料二で御覧いただいた産卵と藻場の状況になっています。
ハタハタが捕れなくなったことを受けて、実は若手も動き出して、水産加工会社が、先代から引き継いだ若手の経営者というのが藻場の育成に乗り出しています。アカモクが生えていない場所にその種を運んで、ハタハタの産卵場所を増やして、持続可能な漁獲の状況をつくって漁獲量を上げる、将来的に水産加工事業の拡大を目指していこうという経営者の考え方です。
この場合に、漁場の環境を改善するという公益という部分はあると思うんですが、それに加えて、水産加工業ですので、アカモクの種を藻場で育てながら、そこで取れた種を使って、例えば、加工場の屋外の水槽でアカモクの本格養殖をしていく、海草の加工品を造って売りながら種の生産も拡大するという事業にもつなげていけるというふうに思います。
国では、指定魚種のハタハタは水産加工施設への低利融資の制度もあるんですけれども、水産加工会社でもハタハタは扱っているんですが、これは五年ごとの見直しになりますから、もしかしたらハタハタが漁獲減少で、今後、対象業種というのが変わっていく場合があると思います。十分に融資を受けられない可能性がありますし、新しい養殖事業を始めるとしても、過去に実績がないということで手当てが難しい場合もあると思います。
そうした場合に、輸出にリスクマネーを惜しまないとなっている法案ですので、こうした新しい若手の意欲的な取組に対して、十分な資金の手当てのない若手に対して、法案で、こうした投資でもって後押しをしていただきたいと思うんですけれども、大臣のお考えはいかがでしょうか。
○野上国務大臣 水産業につきましては、昨年十二月に漁業法が施行されまして、水産資源の適切な管理と成長産業化を両立させる、将来を担う若者にとって漁業を魅力ある産業としていくことが重要であると考えております。
今御言及もいただきましたが、例えば、ICTやデータを活用して効率的な養殖業を行ったり、また、インターネットを活用した直売に取り組む若手の漁業者などもおられると承知をしております。
先生も今、いろいろな若手の皆様のお声を紹介いただきましたし、私も、先ほど御紹介いただいた富山県でありますが、地元の若手の漁業者の皆さんのお話もお伺いしております。
若手の漁業者の方々が新たな取組を行う際には、やはり、過去の実績がありませんので、融資を活用することが難しい場合があります。そういうことから、資金の使途に制約がなくて事業設計の自由度が高い、投資による資金調達のニーズがあるものと認識をしているわけであります。
今般の改正によって、新しい漁業にチャレンジする若手の漁業者の方々を後押ししてまいりたいと考えております。
○緑川委員 力強い御答弁をありがとうございます。
目的規定の「その他の改善を支援する」となっているこの「その他」というのが、私は、非常に幅の広いもの、重要な取組が含まれるというふうに思っておりまして、これを広く読んで、浜の暮らしを守っていくということにつながる事業、地域にとっても望みのある新たな取組に積極的に展開できるように、ひいては事業者の健全な発展のために、資金供給というものを是非後押ししていただきたいというふうに思っております。
最後になりますけれども、ちょっと一つ飛ばさせていただいて、有機農業の促進についても重要な法案なのではないかというふうに考えております。さっき申し上げたように、対象は広がったとしても、農業法人に直接のメリットというものを高める法案の中身ではないというふうに思っていますので。
農業法人への投資をいかに生み出すかということなんですが、みどりの食料システム戦略で、温暖化対策の一つとして有機農業の取組面積を、二〇五〇年までに百万ヘクタールということを打ち立てています。
世界ではESG投資ということが叫ばれている中で、政府が温暖化対策の野心的な目標を設定している以上は、リスクを取る投資、有機農業、単収が減少していくような面がある、そして、温暖化対策としては一方で稲作を抑制していくとかメタンガスを抑制していくとか、非常に重要な取組が含まれます。こうしたものに対してこの円滑化法を生かして、農業法人の有機農業への取組に更にエンジンを吹かしていく必要があるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
○野上国務大臣 今御紹介いただきましたみどりの食料システム戦略でありますが、先般、中間取りまとめを行わせていただきましたが、その中で、有機農業の取組面積を耕地面積の二五%にまで拡大することを目標とさせていただきました。
有機農業を始め持続性に配慮した農産物や食品というのは海外のニーズが非常に高いわけでありまして、輸出促進の観点からも有効でありますし、投資によって有機農業を振興することは農林水産業、食品産業の持続的な発展にも資すると考えているところであります。
このために、今回の法改正に基づいて、有機農業に取り組む農業法人のみならず、有機農産物を輸出する事業者、あるいは有機農業の推進に資する技術開発を行う事業者等についても投資対象として、それぞれの事業活動を支援することによって、有機農業の取組を広げていきたいと考えているところでございます。
○緑川委員 質問はいたしませんけれども、途中過程で、A―FIVEの反省、教訓があると思います。国費を投じる以上、リスクを取る国として、投資の失敗に向かう、その端緒をどこでつかむのかも非常に重要だというふうに思っていますので。
一方で、有機農業に取り組む農業者としても、目標設定をする以上はより真剣な思いで投資を受け止めて、しっかりと取り組んでいくモチベーションにもつながっていくというふうに思いますので、本法案には期待したいというふうに思っております。
質問を終わります。
○高鳥委員長 次に、近藤和也君。
○近藤(和)委員 石川県能登半島の近藤和也でございます。よろしくお願いいたします。
COVID―19、コロナ感染症がまだ猛威を振るい続けてきています。もう第四波に入ったと言ってもいいと思います。その中で、私の地元でもいろいろなお祭りが次々と中止になってきております。そして、会社ももうやめようか、もうもたぬという話もたくさん伺っています。
その中で、今日は日本酒についてのお話も途中でさせていただければと思いますが、委員の皆様、これ、分かりますでしょうか。うなずいていただけたらありがたいんですが。農水省さんのBUZZMAFFですね。シュ、シュ、シュ、ニホンシュ、こういう踊りを農水省の役人の皆様が一生懸命されておられます。再生回数は七万回を超えていまして。すごくありがたいというか、元気が出るというか、日本酒を盛り上げていこう。
日本酒は特に地方の文化そのものですから、こういう取組も是非とも盛り上げていきたいなと思いますし、こういう農水省の役人の皆様の元気でけなげな一生懸命な姿を見て、農水省はいいところだな、一次産業は大事なところだなと、多くの皆様から応援をもらえたらありがたいなというふうに思います。少し明るめの話なんですけれども。
一方で、今年に入って、一つ深刻な調査結果を目にいたしました。東京商工リサーチが九州・沖縄地域で、コロナの状況がずっと続いたら事業を続けますかという調査をしました。そこでの第一位、廃業を考える第一位は何と農業ということでございました。正直、飲食だとか宿泊だとか、そういったところが一位なのかなと思ったら農業ということで、相当私はショックを受けましたが、この点について、大臣、御所見をお願いいたします。
○野上国務大臣 まず冒頭、当省のBUZZMAFF等について御披露いただきまして、誠にありがとうございました。
農林水産省においては、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた農林漁業者の皆様の生産基盤を守っていかなきゃならない、こういう思いで、第三次補正までにわたる補正予算等によって支援策を講じてきたところであります。
やはり、需要減少ですとか価格の低下等によって大きな影響を受けた生産者の皆様がおられるわけでありますので、例えば、販路の多様化等々の事業も実施をしてまいりましたし、販促活動への支援もやってまいりました。また、在庫が滞留している例えば米とか乳製品、あるいは和牛、水産物等々、在庫の滞留ということも生じましたので、その保管経費や在庫の軽減措置への支援もやってきた。また、一時的に大幅な減収があったという皆様におきましては、経営安定対策、資金繰り支援等々を実施してきました。
様々な対策をやってきたところでありますが、このようなコロナの影響を受けた農林漁業者の皆様の生産基盤を守るために、今後ともしっかり対応してまいりたいと考えております。
○近藤(和)委員 危機感を持続して、頑張っていただきたいと思います。
一次産業、農業は投資そのものだと思います。先の見えないことに対していかに私財を投じていくか。今、目の前にあるものを手にしないで未来へ向けて身を投じていくというか、信じて投げるということでございます。
そこで、今回の農業法人投資円滑化特別措置法でございます。方向性は私はこれでいいと思っております。ただ、先ほど同僚議員の緑川さんからもありましたように、A―FIVEの失敗もございます。
そこで、この法律ですけれども、平成十四年、二〇〇二年に成立して、アグリビジネス社そのものは平成十五年からスタートして十七年たっております。十七年たった中で、逆に、なぜ今改正なのか、なぜ投資対象を広げるのかといったことに対して素朴な疑問がありますが、この点について、いかがでしょうか。
○野上国務大臣 近年、農林水産、食品産業の分野におきましては、輸出の促進ですとかあるいはスマート農業の導入など、資本を必要とする新たな取組が行われてきておりまして、投資のニーズは増えてきていると考えております。
本法案提出の直接の契機の一つとしましては、昨年十一月に取りまとめました農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略において、輸出に取り組む事業者への資金供給のための施策を導入することが挙げられるわけでありますが、この投資円滑化法を改正しまして、現行の農業法人に加えて、輸出を始め、流通、加工等の食品関連事業者ですとか、林業、漁業の生産を営む法人、あるいはスマート農林水産業の農林漁業者、食品産業事業者の取組を支援する事業を営む法人等々を追加させていただきたいとするものであります。
○近藤(和)委員 現状ですけれども、資金として投資主体には百三十七・八億円ございます。そして、その中で、現状では農業法人に限定されて七十九・八億円。まだ五十八億円が投資主体に滞留しているわけですよね。農業法人そのものにまだまだ投資する先はあるのではないかなというふうにも感じます。一方で、輸出促進ということで、五兆円、かなり高過ぎる目標ではないかなと思います。
そもそも論として、投資主体からの要請だったのか、農業法人以外に投資したいよということなのか。若しくは、投資対象ですね、漁業、林業に携わる方、加工業に携わる方からの要請の改正なのか。若しくは、五兆円目標という政策目標からの今回の法律の改正なのか。
といいますのは、A―FIVE、私は閉じて成功だったと思います。投資の一つ大事なことは、いかに駄目なときは損切りを早くするかだと思いますので。
ただ、A―FIVEをやめようというときに、輸出を促進していくための何らかの手段は考えていきたいんだという話もあったわけですよね。そして、A―FIVEをやめる、その前の段階では、百億を超える投資を一遍にしようとしたけれども十数億しか投資先がなかったといったこともありました。そう簡単に投資先も見つけにくいという実態はあったわけですよね。
ですから、投資主体からの要請なのか、投資対象からのものなのか、若しくは政策目標として、どちらにウェートがあるのか、教えてください。
○太田政府参考人 お答えいたします。
今般の法律改正の直接のきっかけは、先ほど大臣から申し上げましたとおり、実行戦略に位置づけられたことというのも一つでございますけれども、検討するに当たりまして、投資先事業者側あるいは投資主体側の双方を含んだ形で個別ヒアリングを行いました。さらに、農林漁業者、輸出事業者、金融機関、学識経験者等から成る検討会を開催して検討を行ってきたところでございます。
このようなヒアリングあるいは検討会で有識者の御意見を伺う中で、農林水産物の輸出を始め新たな取組にチャレンジする事業者というのは設備資金あるいは運転資金など様々な資金調達が必要でありまして、その手段として、融資、補助金の活用に加えまして民間投資の活用、こういったニーズがあるんだという声、それから、法人の立ち上げ時あるいは新規事業は融資の活用が困難であって、農林水産関連には資金が集まりにくいといった課題があるということをお聞きしたところでございます。
これにつきましては、そのどちらか、投資をする主体あるいは投資を受ける側のどちらかがそういうことをおっしゃったということではなくて、双方からこういった御意見が出されたところでございまして、双方、どちらからも御要望があったということでございます。そうしたことから、こういったフードバリューチェーンに携わる事業者全てを投資対象とするというような改正を検討してきたという経緯でございます。
○近藤(和)委員 アグリビジネス社の実績とすれば、比較的うまくいっていたわけですよね。収益としても、累積では黒字になった、東日本大震災のときの減損を抱えてさえも今年度では黒字化するというお話を伺いました。私、本当にすばらしいなと思います。
そこで、あえて伺いたいのが、アグリビジネス社の投資した先で回収不能になった先は何社、何億程度あるか、分かりますでしょうか。
○太田政府参考人 お答えいたします。
現在把握している件数として、五件につきまして投資の回収が困難になったというところを把握しているところでございます。
○近藤(和)委員 ありがとうございます。百件を超える投資、百五十二件のうちの五件ですよね。本当にうまくいっています。
一方で、ベンチャーキャピタル的な視点でいけば、百五十社に投資して五社しか投資回収ができないというのは、奇跡的というか、正直、あり得ないわけですよね。逆に、三十社に投資して一社が株式公開してくれれば元が取れる、ビジネスとして成り立つとも言われています。
すごく難しいと考えますのが、官民ファンド的なものは民が出しにくいところに投資するわけですよね。いわば危ない橋を積極的に渡っていこうということに近いことだと思います。恐らくは、アグリビジネス社はそうではないやり方をしたんだろうなというふうにも思います。この会社の出資元である政府系金融機関や農協系の金融機関が目を光らせてくれて、着実に投資先を見つけていったのかなというふうに思います。
今回は、一気に枠組みが広がるわけですよね。GDPで見れば、農業の枠組みというのが大体五・一兆円と言われています。林業、漁業も含めて、そして外食、流通も含めると五十五兆円。パイが十倍以上に広がるわけですよね。漁業は違うところもあるし、加工業も違うところがあるわけですから、今までのやり方では通じない部分が相当あるのではないかなと思います。
アグリビジネス社の延長線上でいくのか、若しくはベンチャーキャピタル的な方向性でいくのか、こういったところで私は迷いが出るところがあると思うんです。この部分について国のチェックがどこからどこまで働くことができるのかということについて伺います。
○太田政府参考人 お答えをいたします。
投資の分野につきましては、委員がおっしゃいますように、かなりハイリスク・ハイリターンな分野もございますけれども、今回、検討会を開催する中で、農林水産業、食品の分野は、着実な投資が見込まれるものの、なかなか回収に期間がかかるといった特徴があるということが浮かび上がりました。その結果が、アグリビジネス投資育成会社がこういった堅実な成果を上げているということにつながっているのではないかなというふうに思っております。
今回、対象が広がるということになるわけでございますけれども、この投資主体につきましては、事業計画を農林水産大臣が承認するという仕組みになっております。
ただ、この承認に当たりまして、共通する考え方としては、着実な投資が見込まれるけれども投資期間が長いというのはいずれにいたしましても共通する分野でございますので、そうした分野を見込みながら、承認に当たっての基準であります、適正かつ確実に営むことができるかどうかであるとか、自己資本の充実を図って健全な発展に資するものであるかどうか、あるいは、円滑かつ確実に遂行するために適切であるかどうか、こういった審査を行う中で、事業活動の健全な確保、こういったものを図っていきたいというふうに考えておるところでございます。
○近藤(和)委員 例えでいけば、二十五メータープールで泳いでもらって、いろいろ練習してもらって、それで監視員が見ていてという状況から、私の地方でいけば、いきなり日本海で、さあ泳いでくれと。泳ぐのも大変ですし、監視する方も大変なんですよね。
今までどおりにはいかないということを認識してほしいなということと、あとは、そもそもがリスクマネーだという認識をどこまで覚悟するかということだと思います。適切かつ確実な投資というのは、正直、そんな、いろいろあるものじゃないと思うんですね。損失をしない形での運用をするのか、若しくは、リスクを取りますと。
ただ、リスクを取るということは、ベンチャーキャピタルということでいけば、今回、株式公開を前提としないわけですよね、基本的には、恐らくは。そこはちょっとあえて答弁を求めませんけれども、農林漁業だけでいきますと、株式公開というのはなかなか難しいのかなと。そして、株式公開を前提としないベンチャーキャピタルというのは存在し得るのかなという不安がございます。
そうすると、結局のところは、大きなリスクが取れない、イコール、リスクのあるところにはなかなか投資できない、イコール、ちょっとチャレンジング的なところには投資できない、従来型のところでしか投資できないという方向になると思います。
そういう方向性でやるのか、若しくは、リスクをどんどん取っていきますよということでやるのか。これはぶれない方がいいと思います、どちらの方向性でいくのか。
極論を申し上げれば、A―FIVEの失敗というのはある意味当然だったと思いますし、失敗をしたからといって、それが全て悪いと私は言うつもりはありません、投資には失敗がつきものですから。その覚悟をどちらで持っていきますかということだけで投資先というのは随分変わってくるんだろうなというふうに感じます。投資で一番やってはいけないことは、理念を変えることであったり、投資目的、ゴールを変えることであったり、運用の手法を変えることですから、そこをぶれないようにしていただきたいなというふうに申し上げたいというふうに思います。
この点について、大臣、全体の枠組みですね、今、百三十七・八億円のボリュームですが、将来的にどこまで考えていくのか。これによっても投資理念であったり方向性は随分変わっていくと思いますが、時間軸とボリュームについてどこまでお考えなのか、教えてください。
○太田政府参考人 お答えをいたします。
なかなか、投資対象が大きくなる中での投資の方針ということにつきまして、それぞれの投資主体における判断というのがあるわけでございまして、この法律自体は、A―FIVEのように、国が投資主体をつくって、かなり強い関与の下で運営をしていくというよりは、民間の投資主体の事業計画を承認して投資を促していくという仕組みでございますので、それぞれ運用の方針というのは異なってくるということなんだろうというふうに思っております。
また、投資の運用に当たりまして、最初から返ってこないというようなことを想定して投資をするということは多分なくて、いろいろ審査をした上で、リターンとそれからリスクというのをしっかりと検証した上での投資ということになるんだろうというふうに思っております。
そういう前提の上で、今の御質問のことにお答えをいたしますと、それぞれの運用主体によって、例えば、国内中心の投資、あるいは食品産業中心の投資、それぞれあろうかと思いますけれども、そういった中で、時間軸であるとか、どの程度のリスクを取っていくのであるとか、そういったことが決まってくるというふうに考えているところでございます。
○近藤(和)委員 投資には意味のある失敗と意味のない失敗があると思いますので、是非とも、うまくいってほしいということはありますけれども、もしうまくいかない場合でも、意味のある、そういった形で、一番の目的である一次産業の方々の持続的な発展、私は維持ということでもいいと思いますが、そこは見失わないでいただきたいなと思いますし、実際には、お金のボリュームでいけば融資の方が圧倒的に多いわけですよね。農林中金さんでも、預貸率でいけば半分にいっていないわけですから。こういった形の融資であったり補助金であったり、こういったことのトータルでしっかりとサポートしていただけたらと思います。
それで、コロナ対策に話を移したいと思いますが、国産農林水産物等販路多様化緊急対策事業、私は説明を伺って非常にいいなと思いました。大きくは四本柱があるんですけれども、インターネット販売よりは、実際には、創意工夫による多様な販路の確立、こちらは使えるなと思ったんです。
例えば、私の地元でいけば、カキ祭りが中止になって、海のカキですね、また、旅館などもお客さんが激減して大変苦しんでいらっしゃいます。そして、お米もだぶついているということもありますし、先ほど申し上げました日本酒の需要も相当落ち込んできているところであります。生産者目線ではなくて、販売者にイベント等をしていただくことでもお金が出るわけですが、こちらの方が圧倒的にボリュームが大きいと感じます。
ただし、この事業は生産者には余り伝わっていないなということも感じたんですが、飲食店さん等に聞くと、ほとんど知らないんですね。商工会、商工会議所の方にお話を伺って、何となく知っているけれども、実際には事業再構築補助金であったり一時支援金で頭がいっぱいで、それは二の次的な状況になっています。ここは私は改善していくべきだというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
○野上国務大臣 販路多様化緊急事業でありますが、これを広く御活用いただくために、緊急事態宣言発令中には、説明動画の公表ですとかウェブ会議の開催、あるいは関係省庁及び省内品目部局を通じた関係団体への周知に取り組んできたところであります。
また、三月十七日から第二次募集を実施しておりますが、募集に当たりましては、事業内容の新聞紙面での周知を実施するとともに、緊急事態宣言が解除されました翌日の三月二十二日からは現地説明会を開始しまして、これまで全国九か所で実施をしてきているところでありますが、やはり、しっかりと知っていただいて、御活用いただくということが重要だと思いますので、引き続き、今の御指摘も踏まえて周知に努めてまいりたいと考えております。
○近藤(和)委員 経産政務官にもお越しいただいておりますが、これらの事業を何とか、商工会、商工会議所さん、飲食店さんに広めていただきたいと思います。いかがでしょうか。
○高鳥委員長 持ち時間が経過しておりますので、答弁は簡潔にお願いします。
○宗清大臣政務官 お答えをさせていただきます。
先生から御指摘のことにつきましては、今までも、全国商工会連合会や日本商工会議所の皆様方は、経済産業省の施策のみならず、他省庁の施策も含めて、全国の商工会や商工会議所、事業者の皆様方への周知も行っていただいていると承知をしております。
今回、御指摘の国産農林水産物等販路多様化緊急対策事業につきましても、農林水産省から具体的なお話もいただければ、全国商工会連合会や日本商工会議所に周知をお願いしたいというふうに考えております。
引き続き、できるだけ多くの事業者の方々へ必要な支援策がお届けできるように、様々なチャンネルを活用して広報していきたいと考えております。
○近藤(和)委員 ありがとうございます。
先ほどの大臣の答弁をもって具体的な話をいただければということで、通じていただければと思います。
時間が参りましたので、この事業は四月十五日までなんですよね。ゴールデンウィークに間に合わせるようにということですが、実際には、今、蔓延防止等重点措置もスタートしています。緊急事態宣言もいつ出るか分かりません。ゴールデンウィークがあってないようなものになるかもしれませんから、是非とも、第二次募集は四月十五日で致し方ないと思いますが、第三次募集、次へつなげて、地域を盛り上げていただけたらと思いますので、御要望申し上げて、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○高鳥委員長 次に、神谷裕君。
○神谷(裕)委員 立憲民主党、神谷裕でございます。
今日も、質問の時間をいただきましたことを感謝を申し上げたいと思います。
投資円滑化法について質疑をさせていただきたい、このように思います。
先ほどから、この委員会のメンバーの皆さん方、一様に触れられますのはやはりA―FIVEのことだと思います。そしてまた、しっかりと総括をしていただかなければなりませんし、これをいかにして検証し、そしてまた次のこの法案に生かしていくか、これは非常に重要なことだと私どもは考えております。
だとするならば、まず、A―FIVEについて、しっかり検証を農水省の方ではされているというふうに理解をしておりますが、この検証結果について伺えたらと思います。お願いをいたします。
○葉梨副大臣 お答えいたします。
先ほど来A―FIVEの話が出ておるわけでございますけれども、農水省においても、この法案の検討に当たっては、A―FIVEの検証に関する検討を行って、A―FIVEの検証に係る検討会からの報告をいただいたところでございます。
その内容ですけれども、一つは、投資対象が六次産業化認定事業者のみに限定されて、手続も重層的で、スピード感を持った投資ができなかったということが一つ。一方、投資規模等を過大に見込みましたので、これを前提とした高コストな組織体制を整備しました。収益はあったんですけれども、投資収益に比べて固定コストが非常に大きかったということなどが挙げられています。
今回の法改正では、このような高コストの組織ではなくて民間の投資主体が採算ベースの事業運営を行う仕組みとすること、投資対象を限定するのではなくてフードバリューチェーンに関わる事業者全てを対象にすること、個別の投資における事業計画認定の要件を廃止しスピーディーな投資が行えるようにすることなどの法改正を行って、この教訓を生かしているところでございます。
投資ニーズについても、今回の制度改正に先立って、先ほど来議論がありますけれども、関係事業者に対する個別ヒアリングに加えて、各分野の有識者の検討会を開催して、その結果を踏まえて法改正案を提出させていただいたというわけでございます。
○神谷(裕)委員 今お話をいただいたとおり、しっかり検証していただいたという認識の下にこの法案ができているんだろうということを期待をしております。決して、A―FIVEの失敗は失敗としても、これをいかに生かすかによって大分変わってくると思いますので、しっかりやっていただきたいと思います。
今、図らずも副大臣におっしゃっていただきましたが、投資のニーズがあるんだということなんだろうと思います。率直に言うと、これまで、伝統的には、例えば、補助であるとか、融資であるとか、あるいは税制であるとか、そういった形での支援策というのがこれまで重要なツールだったと思うんです。
その上で、今回はまた投資ということになります。投資は当然、危険、リスクが伴うというところはあります。ですので、またあえてここで、なぜ投資なのかということについて伺えたらと思いますが、いかがでございましょうか。
○太田政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、支援策といたしましては、補助、融資、税制、様々な選択肢がある、手法があるということで、それぞれ特徴それから役割というものを持っているのだろうというふうに思っております。
そういう意味で、出資、投資につきましては、メリットとして、自己資本が充実する、それによって対外的な信用力が向上するということがございます。また、制度資金に比べまして資金使途の制約がないということで、事業設計の自由度が高い、そういう特徴もございます。
それから、直ちに返済が始まるということではなくて、事業の成長に集中できるということもあるんだろうなというふうに思いますし、出資を受け入れるということは、そういった事業に対して知見やノウハウを持った出資者、こういった方々が経営に参画するきっかけを与えるというようなことによりまして、経営の向上につながるということも期待できるのかなというふうに思っております。
こうしたメリットがある中で、事業者の状況に応じまして、融資などのほかの資金調達手法と役割分担を行いながら、事業の発展につなげていけたらいいなというふうに思っているところでございます。
○神谷(裕)委員 今、図らずもニーズについてもお話をいただいたと思います。多くのところで、ひょっとするとこういった出資が必要なところがあるのかなというふうには思うんですけれども。先ほどの委員の質疑なんかも聞いていましても、例えば漁業分野、これも確かにそうだよなと思っておりました。水産の分野での通告はしておりませんので、そこは質問いたしませんけれども。
確かに、私自身がこれまで漁協にいた中で、特に、長期航海をするわけですね、二百十日とか、ひょっとすると一年航海とか。そういう中で、融資というのはなかなか民間からは受けられなかったなというのも記憶にありますし、そういう中でなかなか回収していくのは難しいわけで、そういった意味で、こういった投資、出資していただけるというのは実は非常に有力な手段なのかなというふうにも思っていました。
ただ、当然、なかなか民間の方からは出してもらえない部分も多いと思いますし、そういった部分のリスクというのは常に考えていかなければいけませんから、そういった意味においてA―FIVEの失敗というのか経験というのが今度は生きてくるんだろうということを御期待を申し上げたいと思いますし、そういった意味で進めていただけたらと思うんですけれども。
今回、この法改正において期待できる分野、というよりはお手伝いをしようということで、輸出というのがあると思うんです。私自身も輸出に非常に関心がございます。今回の法改正ではそういう意味において輸出支援の意味合いも込めているんだと思うんですけれども、輸出を行う上で、特に、新しい市場をつくっていく、これが非常に大変なことだというふうに認識をしています。
特に、新しい市場をつくるときには、そもそもその市場が大丈夫な市場なのか、十分なニーズがあるのか、そういった調査を行わなければなりません。あるいは、実際にニーズがあったとしても、そうならしむるためには、当然、宣伝であるとか、これがいいものなんだよというような広告宣伝、そういったものでも相当大きな経費がかかってまいります。
あるいは、私自身、実はやったことがあるんですけれども、実は北京で市場をつくろうと思って。というのは、当時、マグロがあふれていたものですから、それを何とか少しでも食べてもらおうということでやったことがあります。これは相当なお金がかかりました。というのは、コールドチェーンをつくっていかなきゃいけない。当時、中国にはほとんどなかったので。
マグロの場合は、マイナス五十度の超低温の冷蔵庫が必要になります。マイナス五十度の超低温はやはり大変なんですよね。あるいは、鮮度を維持するためには、そのための例えばトラックであるとか、これも冷凍のトラック。それから、加工施設であるとか。そして、その上で、各店舗にストッカー、冷蔵庫、冷凍庫、こういったものを置かなきゃいけないということで大変でした。お金もかかりました。市場ができるかどうかも分からない中で、こういった巨額の投資をしなければいけないということになります。
ただ、これでも、いわゆる企業さんが、商社さんがビジネスとしてこれはいけるんだということであるならば、そのリスクを超えてやっていただけるからいいと思うんです。というよりは、むしろ、それも含めて応援していかなきゃいけないと思うんですけれども。
もう一方で、実は私が携わったのは、漁協として、魚価を何とかしなきゃいけない、魚の値段を何とかしなきゃいけない、あるいは、海外でも食べてもらえたら少しは価格が回復するんじゃないかという意図があってのことでございまして。
魚の話だけではなくて、恐らく、この国のお米であるとか、非常にいい産物があると思います、これを出していく。ただ、まだ市場ができていないというときにおいては、非常にリスクが高い中で出していかなきゃいけない。ここを支えていくということが、要は最初の扉を開けるということは非常に大きな大事な仕事だと思うんですが、今申し上げたように、非常にお金がかかります。調査にしても、あるいは広告にしても億の単位のお金が必要になってくる、これが普通だと実は思います。というよりは、中途半端にかけても、逆に言うと全然効果がありません。
そういう意味で、こういったサプライチェーンへの支援であるとか、あるいは市場調査であるとか、広告費であるとか、非常に様々な形での支援、これを、できればパッケージのような形もありがたいなと思いますし、パッケージじゃなくても個々に支援できるような形がいいと思うんですけれども、こういった巨額な、ある意味大きなお金、しかもリスクが伴う、こういうものをやはり国として支えていくということが必要だと思うんです。
こういったことができないかということを是非お願いをしたいと思うんですけれども、大臣の所感を伺いたいと思います。
○野上国務大臣 今、輸出目標五兆円というものを立てているわけでありますが、その達成のためにもいわゆるプロダクトアウトからマーケットインに転換していくことが必要だ、新たな市場を開拓していくことが必要だというふうに思います。輸出向け産品の生産、輸出にチャレンジする、非常にいろいろなリスクがあるわけでありますが、そういう事業者をしっかりと後押ししていくことが重要だと思います。
今御指摘いただきましたとおり、そのためには、輸出ターゲット国・地域の規制やニーズの把握をすること、あるいは、適切なマーケティングですとかブランディング、また、現地商流を開拓していくということ、こういうことが不可欠になってきまして、先般決定しました農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略におきましても、オール・ジャパンでプロモーションをしていく、広告宣伝をしていくということの推進ですとか、大使館やジェトロによる輸出事業者の支援方策についても検討することといたしております。
また、海外における物流、販売促進につきましては、今、コールドチェーン等々の御経験の話もいただきましたが、やはりサプライチェーンの構築というのは輸出拡大に極めて有効でありますので、今回の投資円滑化法の改正に基づきまして、このような業務を行う海外法人等の投資も促進をしてまいりたいと思います。
やはり、マーケットインの発想で輸出にチャレンジする、そういう農林事業者につきまして、当然、この投資円滑化法についてもそうでありますが、投資円滑化法による支援も含めて、しっかりと後押しできるようにしてまいりたいと考えております。
○神谷(裕)委員 大臣、ありがとうございます。ただ、マーケットインの発想は大事なんですけれども、まだマーケットがない段階ですから、そもそもインができるかどうかも分からない、でも、やはり開けていかなきゃいけない。
今、広告宣伝なんかの話もいただきましたけれども、実際には本当に細かいものでございまして、例えば魚一つにしても、どうやって切ったらいいのか、扱い方をどうするのか、冷凍の解凍方法をどうするんだ、もっと言ってしまうと、例えば調理器具は適当なものがあるのかないのか、そういったことまで含めて、どうやって食べさせたらいいのか、どうやったらおいしいんですよということまで含めて提供しなければ、ニーズというか需要が起きてこない。
これも全部含めて、要は手取り足取り、全てをやってあげないと、この国のいいものが入っていった上で、さらに、いいものがいいもののうちに処理されないと食べていただけない。食べていただけないと次につながらないわけなので。結構、市場開拓というのはお金もかかりますし、中途半端にやると、下手すれば当該国のものと置き換わっていくだけのことですし、結局、努力が何にも実にならないことがあります。ですので、本当にしっかりやっていただかなければいけませんし。
例えば農産物、これから出していくんだと思うんですけれども、頑張ってください、あるいはフェアみたいなところでビジネスをつなぐことはできるんだと思うんですけれども、その先、この国のいいものをどんどん出していくに当たっては、かなり細かく、そして、かなり大きなお金、ほかの外国の例を聞いていますと、数百億というお金を一つの、例えばサーモンなんかはそうでしたけれども使っているというような事例も聞いています。これも広告宣伝費を相当使っておりますのと、あとは、やはり、実際に食べていただく上で物を流しています。
だとすれば、この国のいいものを、例えばお米なんかがそうです、実際に食べていただく、こういったことも必要だと思いますし、実際に今、この国では少し余裕もあるようですから、例えば、国でそういうものを買っていただいて試食用に、販路を開くために支援をするとか、そういった使い方もこの際は御検討いただいたらいいのかなと思ったりもするんですが。
これは一種思いつきに近いようなアイデアに聞こえたかもしれませんけれども、実際にこの国の需給を少しでも緩和させる意味でも海外に持っていくことは大事ですし、かといって、海外で市場を開くためには食べていただかなければいけませんし、そのためには一回でも接する機会が必要だと思いますから、そういったところは是非やっていただけないかなと思うんですけれども。
これは御通告申し上げていないんですけれども、大臣、いかがですか。
○野上国務大臣 農林水産品を輸出していくということについては、やはり、日本食の文化をしっかりと理解していただくということが重要だと思います。今、例えば、いろいろなプロモーションの中で、日本のシェフが行って、シェフの取組の中で紹介をするとか、SNSを通じての取組の紹介ですとか、そういうこともやっているところでありますが、今先生にお話をいただきましたとおり、日本の食の文化の在り方ですとか、食材の取扱い方ですとか、そういうことも丁寧に説明して周知をしていくという取組も併せてやっていくことは重要なことだと考えております。
○神谷(裕)委員 それでは、本題に戻していくんですけれども、今回の問題で、投資なんですけれども、むしろ投資をすることは簡単なんですが、問題は撤退することというか、エグジット、出口戦略、これがもっと大事なのかなと思っていまして。
政策的な意図を考えれば、当然、利益の最大化ということになってくるんですけれども、この国の利益の最大化と個人の利益の最大化は違っていまして、一方で出口戦略を描かなければ、どうしてもやはり最後に必要になってまいりますので。投資の原資が税金である以上は毀損するわけにいかないので、そうかと思うと、投資先企業から円満に撤退していくということ、これがなかなか難しいんじゃないかなと思うんですが、この辺の考え方について伺えたらと思います。
○太田政府参考人 お答えをいたします。
投資した後の出口をどうするかということでございます。こちらにつきましても、A―FIVEの反省というのがございます。A―FIVEにおきましては、出口、エグジットに関して投資先の事業者の意向を尊重するといった制約がかかっておりました。今回は、そういった制約は設けずに、投資先の事業者の成長戦略に適したエグジットの方法というのを投資主体が選択するということで、投資主体の柔軟な出口戦略を可能にいたしまして、農林漁業者等への安定的な資金の供給を促進するというふうに考えております。
また、今回の仕組みは、A―FIVEを始めとする官民ファンドのように国が投資の原資の大半を出資するということではなくて、公庫の出資を呼び水としつつも農林中金などの民間資金を導入するといったことでございますので、民間主体が持つ知見を活用してより効果的、効率的な投資が行われ、またそれが出口戦略にも最終的にはなっていくということでございますけれども、そういう運営に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
○神谷(裕)委員 ありがとうございます。
それでは、次の質問に移らせていただきます。輸出の話もしましたので、RCEPについてちょっと伺わせていただきたいと思います。これは確認でございます。今回の一次産業分野での影響をどう見ているのか、大臣に所感を伺いたいと思います。
○野上国務大臣 RCEPにおきます我が国の農林水産品の関税につきましては、いわゆる重要五品目、すなわち米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物につきましては関税削減、撤廃から全て除外し、また、関税撤廃率は近年締結されました二国間EPA並みの水準といたしました。
したがいまして、国内農林水産業への特段の影響はないと考えております。
○神谷(裕)委員 ありがとうございます。関税のところはそういうような形で守られたというふうに思うんですけれども、関税以外の部分を若干懸念しております。
今回、大きな特徴としては中国、韓国が入るということだと思いますけれども、当然、こういったEPA、FTAを考えたときに、攻めをどうするか、守りをどうするかということが議論としてこの委員会の中ではあるんだと思います。
もちろん、関税は、今お話がありましたとおり、大事な話です。関税は大事なんですけれども、例えば攻めで考えたときには、要は中国、韓国の関税を下げることも大事なんですけれども、それ以上に、例えば非関税障壁の部分、あるいは商標の話であったり、そういったルールのところがむしろ大事なんじゃないかなと思うんです。
この辺がどれだけ前進したのかということがRCEPを考えていく上で非常に重要な鍵になると思いますが、どのような前進を見たのか、この辺について伺えたらと思います。
○森政府参考人 お答えいたします。
RCEP協定におきましては、関税分野に加えまして、ルール分野におきましても、全世界の人口の約三割に相当する大きな市場への農林水産物・食品の輸出促進に資する環境が整備されたものと考えております。
具体的には、例えば、税関手続につきましては原則四十八時間以内、さらに、生鮮食品など腐敗しやすいものについては六時間以内の引取り許可など、迅速な通関手続のための規定が整備されたところでございます。
また、衛生植物検疫措置、いわゆるSPS措置につきましては、手続の透明性の確保に係る義務等が規定されるということに加えまして、例えば、相手国の措置が貿易に影響を及ぼしているというふうに認める場合には技術的協議を要請することができる、さらに、この要請が行われた場合には原則として三十日以内に協議を行うことが義務づけられるといったようなことが規定されております。これらにつきましては、いずれもWTOを上回るルールが盛り込まれたということでございます。
今後、こうした協定の交渉成果も最大限に活用しながら、更なる農林水産物・食品の輸出拡大を図っていくということが重要であるというふうに考えております。
○神谷(裕)委員 ありがとうございます。
そういった意味で、もう一回、確認のために伺いたいんですけれども、例えば米なんかですと、中国であれば、指定の倉庫の登録であったり、指定の薫蒸施設であったり、様々な規定、規制がかかっていたと思っています。あるいは、枠の問題であったり、そういうこともあったと思うんですけれども。今回、RCEPによってこういったところが、直ちにと言わないですけれども、徐々にというのか、三十日以内なのか、少しはクリアできるという認識でよろしいですか。
○森政府参考人 お答えいたします。
先ほど申し上げましたように、今回、RCEP上で定められましたルール、WTOを上回るルールが盛り込まれたところでございます。これをしっかり具体的に活用していくということが重要だと思っております。御指摘のような、例えば、対中国における様々な先方の措置といったような点について、こういった措置がどう活用できるかといった点をしっかりと検証して、更に活用していくことが必要だというふうに考えております。
また、あわせまして、非関税障壁という観点で申し上げますと、様々な輸入規制の問題等もあるかと思います。RCEP関係国でも、まだ四か国につきましては規制が維持されているという点もございます。そういった点もしっかりと取り組んでいくということかと思っております。
○神谷(裕)委員 ありがとうございます。
輸出に関して言えば、むしろ関税よりもこういった規制の方が大きいんじゃないかなと思っておりますので、これを逐次撤廃していくというか、むしろ我が国と同程度のルールにしていく、これがやはり大事だと思っていますので、ここは引き続き努力をいただかなければなりませんし、これが本当に最大の政府の輸出に対する貢献になるんじゃないかと私は思っていますので、是非よろしくお願いをしたいと思います。
攻めの部分はそうなんですが、守りの部分。今回、先ほど関税の部分で重要五品目の話をされましたけれども、私が若干心配しているのは野菜調製品とかそういったものです。すみ分けができるということで、長期の関税の撤廃を受け入れたよということでございますけれども、こういったことが、必ずしも本当に影響がないと言えるのか、私は非常に心配をしております。これについて大臣の所感を伺いたいと思います。
○野上国務大臣 今御指摘をいただきました野菜調製品でございますが、RCEP協定におきましては長期の関税撤廃期間を確保したわけでありますが、その品目につきましては冷凍した野菜調製品と乾燥野菜ということになるんですが、冷凍した野菜調製品は、ゴボウ、ニンジン、タマネギなどといった野菜を主体とした食材に調味したり加熱したり油で揚げたりして調理を施した、例えば、かき揚げのような冷凍食品であります。業務用又は消費者が加熱後にすぐ食べられるような小売向けとして既に一定量の輸入が定着しているものであります。
また、乾燥野菜は、ボイルなどで保存処理をした後に凍結乾燥した野菜でありまして、インスタントラーメンですとかスープの具材など、即席食品の原料として既に一定量の輸入が定着しているものであります。
このため、主に製品として流通、販売されております国内野菜とは用途や価格の面で競合しないものでありまして、中国を始めとしたRCEP参加国に対して関税撤廃をしても特段の影響は見込み難いものだと考えております。
○神谷(裕)委員 そういった御説明はあるんですけれども、実際には、例えば同じニンジンならニンジン、ゴボウならゴボウで、この国でも生産しているわけでございますから、必ずしも本当に影響がないと言えるのかどうか。この国の野菜価格が高いときに中国から入ってくる、あるいは韓国から入ってくる、そういったこともあるわけでございますから、必ずしもリンケージしていないとは思いませんし、そこはよくよく丁寧に見ていただいた上で、本当に野菜への影響があるのか、ないのか。
もしも影響があったときにはしっかりと農水省が対応していただくということだけお願いを申し上げさせていただいて、私の質問とさせていただきます。ありがとうございました。
○高鳥委員長 次に、田村貴昭君。
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
法案審議に入る前に、農水行政に関わる疑惑について質問をいたします。
アキタフーズの秋田善祺元代表と吉川貴盛元農水大臣が一月十五日に贈収賄疑惑で在宅起訴されてから、間もなく三か月になろうとしています。
二〇一八年から二〇一九年にかけて、秋田氏は、何の見返りを求めて吉川大臣に五百万円の現金を渡したのか。なぜ吉川大臣は、現金授受の前後に農水省の幹部職員を会食に誘い、アキタフーズと引き合わせをしたのか。そこで何が話され、養鶏行政にどういう力が働いたのか。今に至るも明らかになっていません。
現金授受と同時に進行してきたのが、アニマルウェルフェアをめぐっての農水省OIE連絡協議会であります。
協議会の委員から、自分の意見が無視されている感じだったとの証言を受けて、私は予算委員会でこの問題を取り上げました。特に、贈収賄事件発覚後の十二月十八日において、これまでの協議会の議論を見直すべきではないかとの委員の指摘は全うなものでありました。しかし、議事概要に記載はありませんでした。私が議事録の提出を求めた結果、その後、示されました。
そこでお尋ねします。
これは議事録なのでしょうか。いわゆるテープ起こしをしたものであったのかどうかについて、事実確認をしたいと思います。いかがですか。
○新井政府参考人 お答えいたします。
OIE連絡協議会は、産業界及び学界における技術者又は学識経験者、それからアニマルウェルフェア関係者及び消費者と行政機関との間で情報共有と継続的な意見交換を行う場ということで設定されております。開催要領に基づきまして、あらかじめ予告して、一般傍聴も可能なオープンな会議として運営されております。そこの議事につきましては、開催要領に基づきまして議事概要を作成して、出席者による内容の確認を得た上で公表するということで、毎回このような方式でやっているところでございます。
先般、国会等におきまして議事録の提出を求められましたので、その作成の経緯につきまして御説明をさせていただきたいと思います。
実際、会議におきましては、公表用の議事概要とは別に、執務参考用として、事務局の担当者のメモから、より詳細な議事録を作成しております。
当該議事録につきましては、公表を前提として作成してはございませんし、会議ごとに録音しているという状況ではございません。二月十日の衆議院予算委員会におきまして議員より二〇一八年度第二回OIE連絡協議会の議事録を提出するよう要求があったこと、さらに、二月十二日の衆議院予算委員会理事会におきまして二〇二〇年度第二回OIE連絡協議会の議事録を提出するよう要求がありましたので、記載内容について、この議事録を基に、正確を期すために、六日間の猶予をもちまして、出席者メンバー全員に内容の御確認をいただきました。その上で、二月十五日及び二月十七日に衆議院予算委員会に提出をしたものでございます。
○田村(貴)委員 つまり、音声データがない、テープ起こしをしたものではないと。議事録じゃなくて議事概要だったということなんですよ。
委員の一人は、アニマルウェルフェアのことについてOIE協議会で協議をしてきた、協議をしている中で養鶏業者と元農水大臣との金銭疑惑が出てきた、これは重大であると。だから事実経過の説明を求めたんですよ、協議会の始まる前にも、協議会のときにも。
そうした発言も除かれているわけですよ、議事録といいながら。なぜちゃんと記録を残さないのか。話し合うとか、情報共有と言うけれども、アニマルウェルフェアについて意見をやっているんですよ、是非を判断しているんですよ、委員の人たちは。特別の参加者も含めてやっているわけでしょう。だったら、ちゃんと記録を残すべきじゃないですか。
今後は、議事録としてちゃんと残すことを要求したいというふうに思います。そうじゃないと、こういう事件があった後、真相究明ができないんですよ。強く要求しておきたいと思います。
改めて振り返ってみたいと思いますけれども、吉川元大臣と秋田氏との金銭授受、その会食は、日本がOIEに対して、OIE連絡協議会での議論を受けて、鶏卵のアニマルウェルフェア基準について、巣箱などの設置に反対する意見を上げた、その前後に行われているわけなんです。したがって、今度の会食の問題というのは、利害関係者からの接待を受けた、倫理規程違反で処分した、それで済まされる問題ではないわけであります。
ここに至って分からないのが、会食の趣旨であります。会食で一体何が話し合われたのか。利害関係者のアキタフーズの秋田氏がいて、農水省幹部がいて、吉川元大臣がいて、西川公也氏も一回はいて、何が話されたのか、これが全然分からないんですね。農水省で参加した幹部職員の聞き取りでは、吉川大臣に誘われたから行った、ただそれだけです。
当事者である吉川元大臣に、そしてアキタフーズの秋田善祺氏に、なぜ農水省は確認を取らないんですか。どなたかお答えできますか。
○横山政府参考人 お答え申し上げます。
まず、会食の趣旨ということでございますが、今ほど委員からも御指摘があったとおりでございまして、当時の上司である吉川元大臣からの招きを受けて会食に出席したところ、その場にアキタフーズの関係者が同席していたということでございます。
その部分について、今、職員からの聞き取り、それに加えて、いわば当事者であるところの吉川元大臣あるいは秋田元代表なりになぜ聞かないのかというのが委員の御質問でございましたけれども、この両名の方につきましては、まさしく贈収賄ということで、現在、起訴をされておられまして公判を待っておられる、こういう立場でございます。
そうした方々に対して私どもから連絡を取るということについては、慎重でなければならないのではないかというふうに考えております。
○田村(貴)委員 さらっと言われましたけれども、吉川氏それから秋田氏、被告になる前ですよ、在宅起訴される前に何ぼでも聞く機会はあったじゃないですか。贈収賄罪に問われている業者と会食をした、このことの重大性が本当に農水省には私は欠落していると思いますよ。農水省自体でこの疑惑の解明をちゃんとやっているか、全然見えてこないじゃないですか。当事者に確認しないことには、やはり真相究明に行き着かないと思います。
委員長にお願いしたいと思います。
最前からお願いしていますけれども、枝元次官の本委員会への出席、それから吉川元大臣、秋田善祺氏の国会招致を求めたいと思います。取り計らっていただきたいと思います。
○高鳥委員長 後刻、理事会で協議いたします。
○田村(貴)委員 第三者委員会について伺います。
野上大臣は、第三者委員会を立ち上げると一月二十九日に発表して、四人の委員を任命されました。二月三日に一回目の会合を行ったというふうに聞いています。その後の検証の途中経過については、スケジュールも含めて公表しないことを決めたと言っていますよね。いつ頃に検証結果を公表するか、このことについても述べておられません。
大臣に伺います。
しっかり検証を行ってもらうと言いながら、検証作業をやっていることすら、これでは分からないではありませんか。検証委員会を何回やっているんですか、いつやりましたか。それから、それを止めることがなぜ今後の調査に影響があり得るのか、このことについてしっかり答えていただきたいと思います。
○青山政府参考人 お答えいたします。
吉川元大臣、秋田元代表が贈収賄容疑で起訴されたことを受けまして、農林水産省として、養鶏・鶏卵行政の公正性について検証するため、第三者委員会で幅広く検証いただいているところでございます。
委員会でしっかりと検証いただいた上で、その検証結果を公表したいと考えております。
実際に、委員会の方では、養鶏・鶏卵行政の公正性に関しまして、アニマルウェルフェアの国際基準策定プロセス、日本公庫の養鶏業者への融資方針決定プロセス、鶏卵生産者経営安定対策事業その他養鶏・鶏卵行政に関し必要な事項について、職員への聴取などによりまして調査、検証を行って、その結果を取りまとめていただくことになっております。
なお、座長の下で職員に対して厳格な調査を行うということで、今後の調査に影響があり得るということで、委員会としては、スケジュールも含めまして、検証の途中経過については公表しないことを決定されております。いずれにいたしましても、しっかりと検証を行っていただいた上で、その検証結果を公表していきたいと考えております。
○田村(貴)委員 全然分かりません。
大臣に改めて伺います。
大臣が述べているんですよ、しっかり検証してもらうと。そして、この検証委員会は何回やっているんですか、いつやっているのか。それさえ答えられないというのが、なぜ今後の調査に影響があるのか、なぜ影響が出てくるのか、そのことについての理由を聞いているわけです。答えてください。
○野上国務大臣 今御答弁申し上げましたとおり、吉川元大臣及び秋田元代表が贈収賄容疑で起訴されたことを受けて、第三者委員会で幅広く今検証を進めていただいているところであります。
これはやはり、極力速やかに検証いただいて、調査結果として報告書を公表することができればと考えておりますが、第三者である委員の方々から成る委員会で幅広く十分な検証を行っていただくことが重要であります。検証にどれほどの期間を要するか、あるいはその内容についてどのようなものであるか等々、現時点では予断を持てないことから、検証を受けている当省において具体的な期間をお示しすることは困難であるというふうに考えております。
いずれにしても、委員会でしっかりと検証いただいて、この検証結果を公表していきたいと考えております。
○田村(貴)委員 国会は、こうした疑惑に対しての真相究明、そういう任務を担っています。国会に対して真実を覆い隠すやり方では、国民の疑念は一層深まるものだと指摘せざるを得ません。
法案について尋ねます。
本法案は、政府の農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略の中で、国の出資を受けた日本政策金融公庫と、民間金融機関から出資を受けたアグリビジネス社及び投資事業有限責任組合による投資主体が、農業法人だけでなく、海外も含めた加工、流通、販売などの関連産業にまで投資できるよう対象を広げるものであります。
投資主体に出資されている額の総額について教えてください。そのうち、国の日本政策金融公庫への出資額及び日本政策金融公庫から投資主体への出資額、その数字について教えてください。
○太田政府参考人 お答えいたします。
投資主体に対して出資されている額の総額は、百三十七・八億円でございます。このうち、日本政策金融公庫から出資されている出資額の総額は、六十一・一億円でございます。一方、日本政策金融公庫に対して国から出資されている金額の総額は、九十五・三億円でございます。
○田村(貴)委員 投資となる原資の半分近く、四四・三%を国費をもって支えているということであります。
政府は、二〇二〇年の農林水産物・食品の輸出額は九千二百二十三億円に達したことを強調しています。加工品がそのうち四割を占めます。中にはアルコール飲料や清涼飲料水まで含まれています。国産原材料の割合はどのぐらいなんでしょうか。その内訳はどうなっているんでしょうか。
○太田政府参考人 お答えいたします。
二〇二〇年の農林水産物・食品の輸出額につきましては、その後、貿易統計の修正がございましたので、九千二百十七億円でございます。
そのうち、まず、食品製造業の原料調達の国産割合につきましては、産業連関表におきまして、食品製造業で原料として使用された食材の合計金額に対する国産食用農林水産物の金額の割合として算出されておりまして、六六%となっております。
ただ、この産業連関表によって算出される数字につきましては、輸出されるもののみの切り出しというのが困難でございますので、把握はしておりません。
しかしながら、食品製造業の原材料費の国産割合が六六%を占めるということを考えますと、輸出されている加工食品にも国産の農林水産物が一定割合使われているというふうに考えているところでございます。
○田村(貴)委員 数字的にはっきり出てきませんね。どうして輸出額がはじき出されるのか、非常に不思議であります。そもそも、膨大な食料の輸入を進めて、食料自給率が四割を切るような事態の中で輸出を政策の軸に据えるというのは、本末転倒だと言わざるを得ません。
昨年五月の規制改革推進会議農林水産ワーキング・グループで、専門委員であり庄内こめ工房代表取締役の斎藤一志氏は次のように言っています。アグリ社から強く配当を要求されたので株を買い戻した、持っている別の会社は赤字が続いたらすぐに投資を引き揚げられたと、びっくりするような報告をされています。もうからなければ、さっさと出資は引き揚げられてしまう。
お伺いしますけれども、農業法人への投資そして出資に当たって、現在、農業法人への出資に制限はありますか。
○光吉政府参考人 お答えいたします。
現在、農業法人に対します出資につきましては、投資円滑化法施行規則第四条におきまして、投資育成会社や投資育成組合が取得する議決権の保有割合について、百分の五十を超えないこととされております。
○田村(貴)委員 しかし、それは省令でしかないために、法的拘束力を持ちませんよね。
企業の農業参入というのは、農地リース特区によって解禁されました。その後、様々な制度的な変更がされて、参入企業数は拡大の一途をたどってまいりました。
二〇〇九年の農地法改正により、リース方式であれば一般企業であっても農業の参入が全面的にできるようになりました。したがって、農地所有適格法人については、二分の一までの出資制限はありますけれども、賃借権などで農地利用権を取得する法人への出資制限はありません。国会の承認なしにこの省令等も改廃できることになっています。
大臣にお伺いしたいんですけれども、これでは出資企業によって農林水産業がコントロールされてしまうのではないでしょうか。何をどれだけ植えて、誰を雇って、どこにいつ出荷するか、地域やJAとの折り合い、兼ね合いをどうしていくか、自主的、自律的に決められなくなってしまうのではないか、そういう懸念があります。
輸出ができて農業がもうかる部分については、投資主体の方から、いいとこ取りで、出資企業が利益を持っていく、もうからなければ切り捨てられる、耕地の四割を占める中山間地などの条件不利地の農業はほっておかれるようになってしまうのではないか、そういう制度につながる懸念がありますが、大臣、いかがですか、この法案の提出で。
○野上国務大臣 今回の改正は、承認会社等の投資対象を、現行の農業法人から林業、漁業、食品産業の事業者等に拡大するものでありまして、元々の投資対象であった農業法人の農地の所有に係る制度に関しては、何ら変更を行うものではございません。
○田村(貴)委員 先ほどの庄内こめ工房の斎藤一志さんですけれども、百万円の利益が出たらアグリビジネス社から全額優先配当しろと言われた、腹が立ったので株式を全量買い戻した、経営する別会社では大手商社より出資を受けたが三期連続で赤字で出資金を引き揚げられた、利益がどんどん出て配当がすぐ来るとか、大幅な取引の増につながるということがないとすぐに引き揚げられてしまう、これが現実だと。まさにこの投資円滑化法の仕組みの中でこういう事態が起こっていることを明らかにされているわけであります。
本法案は、結局、もうかるところだけを農外企業が囲い込んで、利益は出資企業が持っていく、その仕組みを生産から加工、流通、販売にまで及ぼして、外国企業の投資の制限も取り払って、その都合を生産現場に押しつけてくるというものであります。
私は、改めて、地域の自然の恩恵によって営まれる農林水産業は、農林漁業者によって自律的に経営されるべきであり、そして産出される利益は農林漁業者に属するべきだ、そういうことを申し上げて、今日の質問を終わります。
○高鳥委員長 次に、藤田文武君。
○藤田委員 日本維新の会の藤田文武でございます。
それでは、法案の質疑に入っていきたいと思います。
まず、今回、特措法の改正でございますけれども、本特措法の本来の立法趣旨に立ち返りますと、一番は、農業法人の体力強化のために、出資上限に制約を課しつつも農業法人に対する出資を可能にしたというようなところからスタートしているわけであります。
今回の改正は、農産物の輸出力強化ということが全体戦略の背景にもあり、投資活性化に資するものということと認識しているわけでありますが、当初の立法趣旨から考えると、かなり解釈が拡大されて、見方によれば立法趣旨とずれていっているのではないかということも言えなくもないなというふうに思うわけであります。
まず、その見解からお聞きしたいと思います。
○葉梨副大臣 本特措法は、今回改正をお願いしているわけですけれども、農業法人の自己資本の充実を促進するという法制定当初の目的は維持させていただいています。
その上で、農林漁業や食品産業の分野において、輸出、スマート農林水産業等の新たな取組が行われてきている一方、農林漁業は生産活動サイクルが長く、投資回収までの期間が長いため、民間ファンドの資金はIT分野など投資回収までの期間が短い分野に集中して、外部からの投資を十分に受けることが難しい状況にあることを踏まえて、農業法人投資育成事業の対象をフードバリューチェーンに関わる全ての事業者に拡大することとしたわけでございます。
農林漁業や食品産業の分野における新たな取組を踏まえて投資対象を拡大し、農林漁業及び食品産業の持続的発展を図ることとしたものであって、投資対象の拡大に伴って、目的規定の改正を行わせていただいております。
○藤田委員 ありがとうございます。
投資対象を拡大してファンドの自由度を上げていくわけでありますけれども、背景にはA―FIVEの失敗もあるわけです。
その中で、ファンドもちゃんと機能しつつ当初の目的である農業法人の体力強化、資本強化というところがちゃんと進んでいけばいいなと思うわけでありますけれども、ファンド側から見るとリターンの大きいところに、私がファンドマネジャーだったとしたらリターンの大きいところにやはり投資したいわけでありますから、これがうまく力学として機能するかなというふうに思うわけです。
その中で、農産物の輸出力強化ということを主眼に置くならば、今回の特措法の改正ではなくて、そもそも、例えば出資上限とかが規定されてキャップがかけられている農地法とか農協法等の、そういう農政全般の、全体的な戦略的改正というものの方向性づけを行っていくというのが王道ではないかなというふうにまず思います。その点についての御見解をいただけたらと思います。
○太田政府参考人 お答えをいたします。
本法案は、昨年十一月に取りまとめられました輸出拡大の実行戦略にも位置づけられ、五兆円目標の達成に向けた重要な施策の一つというふうに考えております。
この中で、輸出の拡大を加速する上では、輸出向け産品の生産、輸出にチャレンジする事業者の存在が不可欠でございますけれども、その事業者の取組というのは、農業者だけではなくて、林業、漁業の事業者、あるいは食品の加工、流通、輸出、こういった食品産業の事業者の取組も取り込んでいく、こういった必要があるところでございます。
このため、今回の改正につきましては、農業法人に対する投資について農業関連の法律を含め見直しを行うということではなくて、むしろ、本制度の投資対象を現行の農業法人から、林業、漁業を営む法人、輸出を始めとした流通、加工等の食品産業の事業者、こういったところに拡大するという措置を講ずることによりましてフードバリューチェーン全体への投資の促進を図ろうというものでございます。
○藤田委員 ありがとうございます。
じゃ、ちょっと資本増強のところに関連して。
農業法人が流通、加工などのビジネスに関わっていくためには資本の増強が必要と。時間もかかりますし、体力が要るということは理解できますけれども、特措法によって、特措法ができて大分たちますが、自己資本比率というのは上昇しているのかどうか、データがあれば教えてもらいたいんですが。二〇〇二年当時の農水大臣の答弁によると、認定農業者である農業法人の自己資本比率は一六%だったという発言が確認できています。これはどのようになっていますか、お答えいただけますでしょうか。
○光吉政府参考人 お答えいたします。
現行の農業法人投資円滑化法に基づきましてこれまで承認を受けて農業法人に出資したことのある投資主体、これは株式会社一社と投資事業有限責任組合十七組合となっております。
これら十八の投資主体において、出資した農業法人の自己資本比率が出資の前と後で何%上がったのか、その平均値を取ると、約一六・六%の自己資本比率の上昇となっております。
○藤田委員 ありがとうございます。
これは全体的な考え方だと思うんですけれども、既存の農業に関わられている事業者さんを資本増強して輸出なり海外に打って出る、競争力を高めていくということと、それから既存の農業事業者外の参入というのを活性化させるということ、これは両輪だと思うんですね。やはり、前者は手厚く、後者の方はどちらかというと排除、排除と言ったら語弊がありますけれども、非常に抑制的であるというのが多分、農政のこれまでのやり方だと思うんです。
私たちは、既に体力がある株式会社等の一般法人に対して農業参入等の制限も緩和していくべきじゃないか、そこで競争力を一つのエンジンとしてつくっていくべきじゃないかなというふうに思いますが、その点についての御見解をいただけたらと思います。
〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕
○光吉政府参考人 お答えいたします。
農業参入に関しまして、例えば、輸出を考える上で重要な畜産ですとかあるいは施設園芸などの部門につきましては、個人だけでなく、法人も全く自由に参入できるところでございます。
また、農地を利用する場合であっても、農地法改正でリース方式を完全に自由化したところであり、法改正前の約五倍のペースで参入が進んでおり、これを更に推進していくことが重要と考えております。
○藤田委員 ありがとうございます。この点、細かいところをまたやりたいなというふうに思います。
ファンドのところについてちょっと突っ込んで質問していきたいんですが、そもそも論として、食品の製造とか加工流通、販売とか輸出、幅広い事業を営む事業者さんに至っては、民間融資とか各種助成金など既にいろいろな資金調達方法があって、ファンドへのニーズというのがどれほどあるかというところが多分ポイントになってくると思うんですね。
例えば、近年、地酒とか、日本酒なんかは海外でも人気が出てきている地域もありまして、そういう販路拡大などにおいては、既存の公的な補助金を利用したり、民間ファンドとかというものの投資も割と活発になってきているというふうなことが見受けられるわけでありますけれども、今回のスキームでどれほどファンドへのニーズがあるのかというところに関して、御見解があれば教えていただけたらと思います。
○葉梨副大臣 資金調達方法は、融資、助成金、さらに投資、それぞれの特徴があるわけでございます。
昨年、有識者検討会やヒアリングを開催させていただきました。農林水産、食料産業の分野では、先ほど来お話のあります輸出を始めとした新たな様々な取組が行われてきております。これはベンチャーに近いものも非常に多うございますので、この場合は、投資活用のニーズというのは十分に存在しているということでございます。
また一方で、投資分野として、手堅い成長が見込まれる分野である農林水産、食品産業の分野ですけれども、生産活動サイクルが長くて、投資回収までの期間が長いため、民間ファンドの資金がIT分野など投資回収までの期間が短い分野に集中してしまうという指摘もあって、外部からの投資を十分に受けることが難しい状況にあるというお話もございました。
そこで、農林水産、食料産業分野のビジネスは、急激な事業成長はなくても、長期的な投資に対応する資金が供給されれば安定的な事業展開を通じて中長期的な回収が可能になるという指摘があったことから、その仕組みづくりの検討をさせていただいたわけでございます。
本案は、その特性を踏まえて、日本政策金融公庫の出資を呼び水として民間投資を促していくとともに、農林中央金庫が積極的に農林水産、食品産業分野に資金を供給することを期待しているところでございます。
○藤田委員 ありがとうございます。
そうしたら、投資対象を広げていくということで、その対象についてお聞きしていきたいと思います。
事業は割と幅広いなというふうに読み取れるわけでありますけれども、改正案におきましては「農林水産大臣が定める基準に照らして適切なものであること。」という記載があるわけでありますけれども、割と曖昧だな、ファジーな感じだなというふうにも取れるわけであります。
投資対象基準というものはどのようになっているかということをお聞かせいただきたいのと、流通等を含めて、農林水産省の直接の所管外の領域というのがやはり含まれてくると思うんですね。その場合の意思決定のプロセスといいますか、そもそも農林水産省の所管外のところも適切な意思決定をできるのかということをお聞きしたいというふうに思います。
○太田政府参考人 お答えをいたします。
農林水産業や食品産業の発展の観点から、スマート農業の機械開発、こういった事業活動で、農林漁業や食品産業には含まれないものの、農林漁業、食品産業の持続的な発展に寄与すると認められる事業活動、こういった事業活動に資金供給を図ることが適当だというものにつきまして、農林水産省令で定めるということにしているところでございます。
これらの省令で定める事業者に対しまして投資を行う投資会社等が本法の承認を求める場合、これが選定の基準ということになるというふうに思いますけれども、投資先の選定の基準から想定される投資先、これが農林漁業又は食品産業の持続的な発展に寄与するものであるか、こういったことを審査するということにしているところでございます。
例えばでございますけれども、IT企業、既にいろいろなことをやっていて農業のことは全くやっていないというところが新たに農業分野に参入する、こういった場合であっても投資対象になり得るというふうに考えているところでございます。
〔宮腰委員長代理退席、委員長着席〕
○藤田委員 ありがとうございます。
今局長にお答えいただいた最後の内容を私は事前のレクでお聞きしたんですけれども、要は、例えば、システムをつくっている会社で、流通管理とかマーケティングとかそういうのをやっている会社さんがあって、他業種で成功されていて今回農業分野にちょっと参入する、でも、事業規模のうちの例えば百分の一とか十分の一とか小さい、しかも新規でこれから参入していく、又は参入したてみたいなところも書きようによっては含まれるということでいいんですか、確認ですけれども。
○太田政府参考人 お答えをいたします。
今委員がおっしゃったような場合であっても対象とはなり得るというふうに考えているところでございます。
ただ、投資会社などが承認を受けた後、投資事業の実施状況につきまして報告を求めたり、仮に違反するおそれがあるような場合には改善命令、承認の取消しというようなことがございますので、そういったところを通じてコントロールをするということになるかなというふうに考えているところでございますけれども、特に、今おっしゃったような、やや限界的な事例なのかなとも思いますけれども、そういう、ちょっと入ってくるというようなものを排除するというようなことは想定はしておりません。
○藤田委員 ありがとうございます。
これは結構、現場実務においては非常に重要なことだと思うんです。
というのも、農林水産分野というのは、先ほど来ずっと質疑の中でありますように、利益が、リターンが得られるまでに非常に足が長いという、長期投資に向く市場なわけでありますけれども、例えば、今言ったような事例でいうと、短期的な利益が大幅に見込めるかもしれないし、しかも、その会社さんの母体がそもそも、割と優良企業であれば投資リスクが低くなるわけですから、そういったところに行きやすくなる可能性も、ファンドマネジャーの心理としては出てくるわけですよね。
そうした場合、さっきあったように、違反した場合に取り消すとかという話があったんですけれども、これは事業ですから、例えば、新規参入したて又はこれから新規参入をするというのであれば、やはり、うまくいかなかったら撤退というのは責められるべきものじゃないというふうにも思うんですね。
例えば、貸付けなんかだと、何かのビルを建てますというときに、ひもつけで、支払いに直接貸し付けしてしまって、ほかに流用しないようにするということはできますけれども、資本の場合はそうはいきませんから、事後で引き剥がすみたいなことというのは現実的に無理だと思うんですけれども。
先ほどおっしゃられたような、事後的にチェックするというのはどういうことを指していらっしゃるか、お答えいただいてもいいですか。
○太田政府参考人 お答えをいたします。
投資をする際にどういうチェックをするかということにつきまして、投資主体から事業計画を求めてその承認を行うという仕組みになっておりますので、どういうチェックをするかということについて、IT企業が農林分野に進出する、そこに対して出資をする、そういうことをやりますよという、例えばですけれども、そういうことの承認をするということでございます。
その結果、投資をした先が農業分野から撤退をするということが仮にあったとしても、最初のルールとして、農業分野に進出しますよというところでの事業計画の承認をしているわけでございますので、投資先が農業分野から撤退をしたとしても、これは直ちに承認した行為に対して違反をしているということにはならないとは思いますけれども、例えば、そういったことが繰り返されている、あるいは意図的にそういったことが行われるということになれば、これは、仮定のことでございますし、個別のことでございますので一概には申し上げられないところでございますけれども、改善命令、承認の取消しにつながるということもあり得るというふうに考えているところでございます。
○藤田委員 ありがとうございます。
ちょっと答えにくい答弁を頑張ってしていただいて、ありがとうございます。実際に、意図的に悪さをしようと思ってやっているところはもちろん論外だと思うんですけれども、事業ですから、リスクを取ろうと思ってやったら失敗はつきものですから。私は、どちらかというと自由度が高い方がいいと思っているので、むしろファジーでいいと思っている方です。思っている方ですけれども、その辺り、改めて見解をお聞きできてよかったなというふうに思います。
あと、これはやはり政策的な目的がそもそもあると思うんですね、農政に対しての。しかしながら、ファンドの側からすると、構造的に、やはりスピードとか自由度というのが非常に重要で、それが損なわれると、ファンド側から見ると足かせであると。
だから、そういう意味では、官製ファンドとか官民ファンドとか、官がある程度のキャップをかけたり審査をするということはそもそも似つかわしくなくて、もっと言うと、そういうものに受けやすい可能性があったり、アーリーステージで事業に革新性があったり、経営能力が高かったり、そういう芽が出そうなものを見つけてくる能力というのは、官が関わることで相当そがれてしまうというふうに私は思っています。だから、素朴に、このファンドのスキームというのは非常にポジショニングが難しいというふうに思います。
特に、エグジット戦略の話、今日、他の委員からもありましたけれども、こういう官民ファンド、官製ファンドのようなものは、そもそも論として、足が長い農林水産分野においては機能しないんじゃないかなという課題意識が私はあります。また、理想的なエグジット戦略というのを描きにくい、だから、理想的なエグジット戦略というのがあるとするならどういうものであるのかということを、大臣から最後に御所見をいただきたいと思います。
○野上国務大臣 本制度につきましては、民間金融機関等が設立する株式会社ですとか投資事業有限責任組合を対象としまして、国がこれらに対する資金供給の円滑化を図ることを通じて民間投資を促進するものでありますので、政府がその株式の大部分を出資する法人が投資事業を行います例えばA―FIVEの仕組みとは別のものであります。
そういう中でどのように投資回収を行っていくかという出口戦略についてでありますが、本制度につきましては、投資を行う民間事業者が投資対象の実情を考慮しながら、バイアウトですとかIPOを含めた投資先の成長戦略に適したエグジットの方法を決定していくことになるのではないかと考えております。
○藤田委員 ありがとうございます。
投資対象が広がって自由度が上がるという、短期的な面で見ると私は賛同しますけれども、先ほど申し上げましたように、素朴に、ポジショニングが難しいなというふうに今思いながら、引き続き、A―FIVEのように失敗事例にならないように私も注視していきたいと思います。
ありがとうございました。
○高鳥委員長 次に、玉木雄一郎君。
○玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。
私も、法案について質問します。
今の、出口戦略の話がありましたけれども、私もA―FIVEは賛同してきて、出資金はもっと積んだ方がいいと言って応援してきた立場なので、あれがなくなったのは非常に責任の一端も感じています。ですから、同じような失敗をしてはいかぬなというふうに思います。
その上で、六次産業の分野とか農業の分野とかというのはなかなか、さっき言ったIPOは、大臣、本当にできるんですかね。あったらいいと思いますが、そういった出口戦略が描きにくいからうまくいかなかったんじゃないのか。
端的に聞きますが、いわゆるIRR、内部収益率とか回収率をそもそもA―FIVEはどれぐらいと見込んでいて、それが高過ぎたのではないのかという報告書も出ておりますが、今度の新しい法律で認められたら、円滑化の仕組みによって内部収益率とかをどれぐらいと見ているのか、そこはちゃんと分析した方がいいと思いますよ。金融の話なので、ちゃんと数字を出して、そこを分析した上で、これぐらいのIRRだから、あるいは投資回収率だからこういうエグジットが描けますということとセットなんですよ。
そこなくして理想論で、出口はIPOもありますし、MアンドAもありますし、バイアウトもありますしみたいな話をしたってまた同じことの繰り返しになると思うので、内部収益率とか投資回収率を一体どのように考えているのかということを、A―FIVEの反省から教えてください。
○太田政府参考人 お答えをいたします。
A―FIVEにつきまして、検証の検討会を行いました。検討会の報告の中には、投資対象の限定であったり、手続であったり、それから高コストな組織体制ということもあったわけでございますけれども、一番大きな改善点といいますか、今回、その反省を踏まえた法改正の仕組みといたしましては、国主体の高コストな投資組織ではなくて、民間の投資主体が事業計画の承認を受けて採算ベースで事業運営を行う仕組み、こういうことを促進しようというところが大きな違いであるというふうに考えております。
そういう意味で、今おっしゃったような内部の検証すべき数値につきましては、それぞれの民間の投資主体が採算ベースに合うかどうかということをチェックしながら、また、投資主体でありますので、資金を集めるということで、投資事業有限責任組合であれば有限責任組合員がついてお金を出すわけでございますけれども、そうしたところに対する説明責任というのも負っているという、民間の投資主体が採算ベースで事業運営を行う仕組みというふうにしているというところでございます。
○玉木委員 いえ、局長、駄目なんですよ。私、失敗してほしくないから言っているので。
そのためにサブファンドをつくったんですよ、A―FIVEは。サブファンドという言い方をしているけれども、投資事業有限責任組合、LPそのものなんですよ、同じ仕組みなんですよ。ここに民間を入れて、民間の判断でできるからといって、うまくいくだろうと思って、三百億。民間で十九億出していただいて、三百十九億でやったはずですよ。このサブファンドの仕組みはうまくいかなかった。
じゃ、伺いますよ。サブファンドのうち、一件も投資せずに解散、清算したのは幾つありますか。
○太田政府参考人 お答えをいたします。
清算したものにつきましては四件でございます。その清算したものが一件も投資をしなかったかどうかにつきましては現在確認は取れておりませんけれども、清算したものが四つということでございます。
○玉木委員 一件も投資せずに清算したものは報告書に出てくるから、答えてください。
○太田政府参考人 お答えをいたします。
訂正をさせていただきます。失礼をいたしました、解散したサブファンドの総数は十三件でございます。このうち、一件も投資せずに解散をしたサブファンドにつきましては八件でございます。
○玉木委員 一件も投資もせずに解散したサブファンド、民間主体ですよね、投資事業有限責任組合、これは八つもあるんですね。なぜそういうことが起こるのかということの分析も検証報告の中に出ていて、一部のサブファンドからは、A―FIVEの求めるIRR、内部収益率が高過ぎることにより無理な事業計画を作成せざるを得ないということも、サブファンドからのヒアリングから出てきているわけですね。これが事業計画とその後の実績の乖離を生じさせる要因となったということになっているので。
何が言いたいかというと、検証で指摘された根本的な問題が今回も解決されていないのではないのかと。狭い六次産業の事業にだけ投資をするということになっていましたけれども、解散の直近一、二年はかなりA―FIVEも投資対象を広げたんですよ。今回やっているような輸出とか、あるいは製造とか販売とか。そういったところにも広げたにもかかわらず、あえなく解散になっているんですね。
今回、広く投資対象を広げようということでやるのはいいですけれども、私はとても反省が生かされているとは思えない。かつ、投資ですから、エクイティーなので、やはりエグジット戦略、出口戦略を明確に描かないと、きちんとした運営というのはできないのではないのか。そこをチェックしないまま、改善しないまま新しい法律を通そうとしていることについては私は非常に強い懸念を持っていることを議事録に残しておきたいと思います。私はA―FIVEで責任を感じているから、あえて申し上げている。
だから、そこのところが、せっかく検証報告が出たにもかかわらず改善が十分行われていないというふうに思われますので、その点は更に確認してもらいたいと思います。しかも、検証報告の中には、農林水産省としての監督とかそういったことも不十分ではなかったのか、更に言うと、農業者等に対する宣伝とか広報も農林水産省としては弱かったのではないかということも言われていますので、私は、農水省としてもやるべきことがいっぱいあるなというふうに思いますよ。
そこを含めて、大臣、本当にA―FIVEの反省はこの法案に生かされているんでしょうか。
○野上国務大臣 今回の法案検討を行うに当たってはA―FIVEの検証に関する検討を行ったわけでありますが、先ほど御答弁申し上げました検討会の報告で、六次産業化の認定事業者に限定されていたのではないか、あるいは、手続も重層的だったのではないか、高コストな組織体制だったのではないか等々が挙げられたわけであります。
今回の法改正においては、民間の投資主体が採算ベースの事業運営を行う仕組みとした、あるいは、投資対象もフードバリューチェーンに携わる事業者全てを対象にする、事業計画認定の要件も廃止する等々、今回の法改正にはその教訓を反映させていただいたというふうに考えております。
○玉木委員 もう一度確認しますね。
今回、法改正をしますけれども、エグジットは、出口は具体的にどういうことをイメージされているんですか。A―FIVEの場合は、三十一件あったうちの二十四件、自社株買い、約八割です。それがまずいということで、投資主体の判断でやるとは言っているんですけれども、じゃ、本当に投資を回収できるような出口というのは具体的にどういうことをイメージしているのか。もう一度、ここは明確にお答えいただけませんか。出口戦略が明確じゃなければ、投資は失敗しますから。
○野上国務大臣 農林水産、食品産業分野の投資につきましては、一般的に事業規模が小さいために株式公開を行う事例は余り多くないものの、食品産業分野につきましては事業承継などに伴うMアンドAも行われており、また、フードテックなどのベンチャービジネスにつきましては株式上場等に至った例もあり、様々なエグジットが考えられるというふうに思います。
他方、本制度におきましては、対象をフードバリューチェーン全体に拡大しつつ、先ほど申し上げたA―FIVEの反省も踏まえて、エグジットに関する投資先事業者の意向の尊重といった制約は設けずに、投資主体の柔軟な出口戦略を可能としまして、バイアウトやIPOを含めた、投資先事業者の成長戦略に適したエグジットの方法を投資主体が選択することが可能な仕組みとしているところでございます。
○玉木委員 よく分からないですね。
制度としてつくるのは私は賛成ですけれども、同じことの繰り返しにならないように、しっかりやっていただきたいと思います。元々、公的資金が入っていますから、そういった責任もしっかり自覚しながらやらなければならないということを、改めて強く申し上げたいと思います。
その上で、一つ大きな課題になっているのは、多分、同僚議員の質問の中にもありましたが、輸出五兆円を目指すということの一つの手段としてやるんだということがこういったファンド創設の大きな柱、理由になっているんだと思いますが、五兆円の輸出を実現した際に農業者の所得は具体的にどれぐらい増えるんですかね。ここが、いつも私は同じような質問ばかりして申し訳ないんですけれども。
例えば、農林水産省が作った、輸出が増えましたよねという、二〇二〇年の主な増減要因というのがあって、その中に例えば、アルコール飲料は四十九億円増えていますと。その中で、日本産ウイスキーが人気なんですね。日本産ウイスキー、すごく売れているんでしょうけれども、多分、清酒よりも結構伸び率は高いんだと思うんですが、農業収入に何か関係するんですかね。あるいは、ベトナムで、育児用の脱脂粉乳、ミルクの粉ですよね、こういうものも売れているんですけれども、これも本当にどれだけ酪農されている方とか農業者の所得につながるのか。一つ一つ見てみると、よく分からない。
輸出が増えている大きな要因は、お酒とか、あと清涼飲料水とか、それとソースなんですね、ソース類。上位をこういったものが占めるんですが、農業所得に関係しているんでしょうか。
五兆円目標を達成したときに農業者の所得は一体どれだけ増えると考えておられるのか、お答えください。
○太田政府参考人 お答えをいたします。
農林水産物・食品の輸出額目標五兆円、これは、農林水産物・食品ということで目標を掲げているところでございます。その意味するところは、まず食品というところに一定の意味があるのかなというふうに思っております。
特に、食品産業につきましては、地域においても展開しており、地域経済や地域の雇用を支えているということでございますので、農林漁業だけではなくて食品産業も含めて輸出を促進することで、今後需要が減少することが見込まれる国内需要、それから需要が拡大するということが見込まれる世界需要、国内需要から世界需要を取っていく、こういった取組を進めていくということが重要だというふうに考えているところでございます。
これまでの施策の延長ではなくて、マーケットインの発想に立って改革を行っていけばこういった輸出額の目標というのは十分実現可能だというふうに考えておりまして、輸出実行戦略を取りまとめ、この戦略をスピーディーに実行していくということでございます。
加工食品につきましては、先ほどの議論にもございましたように、産業連関表ベースで我が国の食品製造業の国産原料の調達割合は六六%でございますので、輸出されている加工食品にも国産の農林水産物が相当程度使われているために、加工食品であっても、その輸出は農林漁業者の利益に一定程度なっているというふうに考えているところでございます。
また、輸出で農林漁業者の所得はどれだけ増えるのかということでございますが、輸出が農林漁業者の所得向上につながった事例として、例えば茨城県で、サツマイモを長期保存することによって年間を通じて輸出する体制を確立いたしまして、コロナ禍であっても輸出額それから輸出量が共に十五倍になったということで、こういった事例もございます。
このように、輸出の拡大は農林漁業者に利益をもたらすものであります。実績を大きく伸ばしてきた農林漁業者の取組を全国に広げていくことで、農林漁業者の所得の向上に努めていきたいというふうに考えているところでございます。
○玉木委員 これもよく分からない答弁です。
私は、加工食品も入れた目標を立てるのは否定しないんだけれども、農林水産省として、農家や浜の人の所得を増やすためには、いわゆる普通の人がイメージする農林水産物の輸出をここまでにしようという目標も持ってやらないと少し誤解を与えるし、やはり、所得の向上ということをきちんとターゲットに置いてやる必要があるなと思います。
時間が来たので、最後、大臣に聞きますが、大臣、今日は何の日か御存じですか。
○野上国務大臣 緊急事態宣言が昨年発令された日だと認識をしております。
○玉木委員 そうなんですが、農林水産省の創立記念日なんです。
一八八一年に、当時は農商務省でしたけれども、四月七日に創立されているんですね。農商務省でしたから、むしろ一次産業が非常に大きな産業を占めたときに商工業と一緒にやっていたというのが、スタート時点の農水省の姿。それが、農林省と商工省に一九二五年に分かれて、またいろいろな再編を経て今日に来ているんですけれども。
非常に伝統のある役所なので、そこが改めてまた、いわゆる六次産業化とか、産業とある種一体となった農林水産業、一次産業をやっていくというのは一つの時代の流れなのかなと。これは是非成功させてもらいたいなと思います。どちらかというと経済産業省の視点で六次産業とか農商工連携みたいなことが言われますけれども、農水省がここはしっかりとイニシアチブを取って。
だからこそ、きちんとした精密な議論の中で、単なる数字だけが躍るものではなくて、農業者の所得や、一次産業に従事されている方が誇りを持ってやれるような、そういった農林水産業にしていくために是非頑張っていただきたいということで、農林水産省創立記念日を忘れずに取り組んでいただきたいということを申し上げ、質問を終わりたいと思います。
○高鳥委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○高鳥委員長 これより討論に入ります。
討論の申出がありますので、これを許します。田村貴昭君。
○田村(貴)委員 私は、日本共産党を代表し、農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
本法案は、農業法人に限定していた投資対象を、農林水産物、食品の輸出、製造、加工、流通、小売、飲食の提供、林業、漁業の法人、スマート農林水産業の技術開発を行う事業者まで広げるものです。
改正によって農外企業による投資が関連産業や輸出先の外国企業に広がれば、その都合によって農業経営が左右され、耕作者の自律性は一層奪われることになります。
また、投資企業は本質的に利益のみを追求し、農業経営、地域社会、環境、伝統、文化の維持に無関心です。投資会社から出資を受けた農業法人が利益を出したら配当を要求され、もうからなければ当然撤退となります。出資を引き揚げられれば一層経営が悪化し、荒廃農地化する可能性も生じます。
さらに、改正によって、投資会社による漁業生産組合への出資が可能となり、漁業者でなくとも組合員になることができます。これは、労働の共同化のために漁業生産組合の組合員を漁業者に限定している水産協同組合法第七十九条を空洞化するものであり、協同組合の性質を変質させるものです。
本法案は、投資による企業支配の構造を農業ばかりでなく林業や漁業にも持ち込み、日本政策金融公庫を通じた公金を使って一層推し進めるものであります。
地域の自然の恩恵によって営まれる農林漁業は、農林漁業者によって自律的に経営されるべきであり、産出される利益は農林漁業者に属するべきであります。
以上で反対討論を終わります。
○高鳥委員長 これにて討論は終局いたしました。
―――――――――――――
○高鳥委員長 これより採決に入ります。
内閣提出、農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○高鳥委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
―――――――――――――
○高鳥委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、宮下一郎君外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、公明党、日本維新の会・無所属の会及び国民民主党・無所属クラブの五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。石川香織君。
○石川(香)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
案文を朗読して趣旨の説明に代えさせていただきます。
農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
農林水産物・食品の輸出の促進、スマート農林水産業の進展等、農林漁業及び食品産業を取り巻く諸情勢の変化に対処し、その持続的な発展に向けては、家族農業経営発展の支援及び農業経営の法人化を引き続き推進するとともに、農林漁業の生産現場から、輸出、製造、加工、流通、小売、外食等に至るフードバリューチェーン全体への資金供給の促進を図ることが重要な課題となっている。
よって政府は、本法の施行に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。
記
一 改正後の農林漁業法人等投資育成事業の投資対象が現行よりも大幅に追加・拡大される前提として、我が国の農林漁業は、家族経営及び地域に根差した法人等による経営が中心であり、これらの農林漁業者の経営の安定と所得の向上がその持続的な発展に必要不可欠であることを十分認識し、政府主導で設立した株式会社農林漁業成長産業化支援機構の反省も踏まえた上で、本法に基づく民間の資金供給を促進する制度を適切に運用すること。
二 農林漁業法人等に対する投資育成事業の実施に当たっては、出資、融資等の資金調達に係る利用者の自主的な判断を尊重した上で、農林漁業法人等が本制度による出資を活用する際に、農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略の実施、六次産業化の推進等、農林漁業及び食品産業の持続的な発展に寄与するための幅広い施策との連携が可能となるよう、丁寧な制度の説明及び周知を図ること。
三 外国法人への投資割合規制を緩和する改正後の法第十二条の運用等、外国法人に対する投資育成事業の実施に当たっては、国内における投資以上に投資リスクが懸念されることを踏まえて、投資主体に対する適切な指導・監督を行う体制を確保する観点から事業計画の承認に係る基準等を定めるとともに、当該投資リスクの低減に万全を期すこと。
右決議する。
以上です。
何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
○高鳥委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○高鳥委員長 起立多数。よって、本法律案に対し附帯決議を付することに決しました。
この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣野上浩太郎君。
○野上国務大臣 ただいまは法案を可決いただき、ありがとうございました。附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
―――――――――――――
○高鳥委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
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○高鳥委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時十三分散会