衆議院

メインへスキップ



第6号 令和3年4月14日(水曜日)

会議録本文へ
令和三年四月十四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 高鳥 修一君

   理事 加藤 寛治君 理事 齋藤  健君

   理事 津島  淳君 理事 宮腰 光寛君

   理事 宮下 一郎君 理事 亀井亜紀子君

   理事 矢上 雅義君 理事 稲津  久君

      伊東 良孝君    池田 道孝君

      泉田 裕彦君    今枝宗一郎君

      上杉謙太郎君    江藤  拓君

      金子 俊平君    木村 次郎君

      小寺 裕雄君    佐々木 紀君

      斎藤 洋明君    鈴木 憲和君

      西田 昭二君    根本 幸典君

      野中  厚君    福田 達夫君

      福山  守君    宮澤 博行君

      渡辺 孝一君    石川 香織君

      大串 博志君    金子 恵美君

      神谷  裕君    近藤 和也君

      佐々木隆博君    堀越 啓仁君

      緑川 貴士君    宮川  伸君

      濱村  進君    田村 貴昭君

      串田 誠一君    玉木雄一郎君

    …………………………………

   農林水産大臣       野上浩太郎君

   農林水産副大臣      葉梨 康弘君

   内閣府大臣政務官     和田 義明君

   内閣府大臣政務官     吉川  赳君

   財務大臣政務官      船橋 利実君

   農林水産大臣政務官    池田 道孝君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  安東  隆君

   政府参考人

   (内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局次長) 菅家 秀人君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  勝野 美江君

   政府参考人

   (内閣府食品安全委員会事務局長)         小川 良介君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 吉田 泰彦君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           新井ゆたか君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            太田 豊彦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  水田 正和君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  光吉  一君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            牧元 幸司君

   政府参考人

   (農林水産省政策統括官) 天羽  隆君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           菱沼 義久君

   政府参考人

   (水産庁長官)      山口 英彰君

   農林水産委員会専門員   森田 倫子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十四日

 辞任         補欠選任

  細田 健一君     宮澤 博行君

  神谷  裕君     堀越 啓仁君

  佐藤 公治君     宮川  伸君

  藤田 文武君     森  夏枝君

同日

 辞任         補欠選任

  宮澤 博行君     細田 健一君

  堀越 啓仁君     神谷  裕君

  宮川  伸君     佐藤 公治君

  森  夏枝君     串田 誠一君

同日

 辞任         補欠選任

  串田 誠一君     藤田 文武君

    ―――――――――――――

四月十三日

 畜舎等の建築等及び利用の特例に関する法律案(内閣提出第四五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 畜舎等の建築等及び利用の特例に関する法律案(内閣提出第四五号)

 農林水産関係の基本施策に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

高鳥委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省消費・安全局長新井ゆたか君、食料産業局長太田豊彦君、生産局長水田正和君、経営局長光吉一君、農村振興局長牧元幸司君、政策統括官天羽隆君、農林水産技術会議事務局長菱沼義久君、水産庁長官山口英彰君、内閣官房内閣審議官安東隆君、まち・ひと・しごと創生本部事務局次長菅家秀人君、内閣審議官勝野美江君、内閣府食品安全委員会事務局長小川良介君及び外務省大臣官房審議官吉田泰彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。佐々木紀君。

佐々木(紀)委員 おはようございます。自由民主党の佐々木紀です。

 農水委員会には昨年の臨時国会で初配属ということで、今回が初質問ということになるんですけれども、よろしくお願いいたします。

 まず、質問に入る前に、私が胸に着けておりますのはエアリーフローラといいまして、石川県が開発したフリージアの新種でございます。今コロナ禍で、冠婚葬祭業は大変な状況でございまして、フラワー業界も大変でございます。身近に花を置くことで応援していきたいと思いますので、是非、農水委員会にも花を飾っていただければ。お願いいたします。

 それでは、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 まず、今日は、担い手の確保とスマート化の推進についてお伺いしたいというふうに思います。

 日本の農業は、大変課題が山積しております。高齢化、担い手不足、耕作放棄地、食料自給率の低下など、挙げれば切りがないわけでありますけれども、中でも、担い手をいかに確保するかというのは最大のポイントだと思います。しかし、これから人口減少、少子化社会ということで農業従事者自体も減っていく、これは農業に限った話ではないわけでありますけれども。担い手の確保、これは本当に喫緊の課題だというふうに思っております。

 そこで、地方創生移住支援事業というのがございます。東京からの地方移転を促す事業でございまして、今、コロナ禍で大変注目されています。東京は七か月連続転出超過ということになっておりまして、やはり、都会の生活から地方の生活を見直している傾向なんだろうというふうに思います。一方で、農水省が持っている農業次世代人材投資事業というのもございます。農業への転職を促す事業でありますけれども。

 この二つの事業をうまく利用して、例えば、東京在住のITリテラシーの高い人材、DX人材を地方に移住させて、農業人材として活用することができれば農業人材の確保と農業のスマート化というものが一気に進む、また、東京一極集中是正も解決できるということで、大変私はいい事業だというふうに思います。

 そこで、今日は吉川政務官にお越しいただいております。政務官は地方創生担当ということでございますし、御地元も大変農業も盛んだということで、この移住支援事業を活用して農業の担い手確保ができないかということで、これまで大変熱心に取り組んでいらっしゃったということでございますので、今日はお越しをいただいております。

 そこで、早速質問ですけれども、この地方創生移住支援事業の要件に就農を加えてはどうかということ。そしてまた、移住支援事業を使いながら農業次世代人材投資事業も活用することで、東京から若い人を地方に移住させて農業人材を確保するということができるのではないかということ。そしてまた、この移住支援事業の要件の中にはリモートワークも入っているんですね。東京からリモートワークでこれまでの会社の仕事をしながら地方に住むことについても移住支援事業の対象になるんですけれども、兼業もできるのではないか。リモートワークをしながら田舎で農業をする、こういう方も対象にするというか、兼業も認めるというような方向もあるのではないか。

 この三つのことについて、内閣府の御見解をお伺いしたいと思います。

吉川大臣政務官 三つまとめて質問いただきましたので、まとめて答弁をさせていただきたいと思います。

 まず、委員のおっしゃるとおりでございまして、農業は地方の主要な産業でありまして、地方創生といたしましても、就農による移住というものを促進することは大変重要なことであると認識しております。

 私の地元が農業が盛んだと言っていただきましたが、委員の御地元もお米が大変おいしいということで、ひゃくまん穀であるとか能登ひかり、そういう石川県の独自のブランド米というものもあるやに伺っております。

 まさにそういった地域で、東京からの移住、また東京圏からの移住で就農していただくということを今後推奨していくに当たってでございますが、まず、御指摘の地方創生移住支援事業では、これまでも、道府県が運営するマッチングサイトに掲載されている求人であれば就農する場合も事業の対象としてきております。ただし、その場合はあくまで就農ということでございますので、自分で農業を新たに始めるという場合は対象にならないところでありましたが、今年度の拡充により、市町村が認めれば、マッチングサイトに掲載されている求人にかかわらず、就農、そして農業を新たに始めるということも含め、幅広く本事業の、つまり支援金の対象とすることができるように措置をしたところでございます。

 実際に市町村特認として、就農する場合にも本事業の対象としている地方自治体も出てきているところでございますので、今後、市町村に対して就農も本事業の対象になり得ることをしっかりと周知して、是非市町村の要件の中に就農と農業を始めるということを含めていただけるように、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。

 また、二点目でございますが、移住支援事業に併せて、就農準備や経営開始時の早期経営確立を支援する農業次世代人材投資事業の活用、この併用ということも可能となっておりますので、これらの在り方というものもしっかりと周知をしてまいりたいと思います。

 それと、三つ目の質問でございますが、おっしゃっていただいたように、直近の二月まで連続で東京都からの転出超過ということが続いている。その中で、移住支援事業の中のテレワーク、東京でやっていた仕事を地方に移住してテレワークでそのまま続けるということ、これは要件に含まれているところでございまして、現在、内閣府といたしましては転職なき移住というようなことで位置づけさせていただいております。

 その中で、委員がおっしゃっていただいたように、地域で副業としてテレワークをしながら農業を続けるという事例、これが実際に出てきているということを認識しております。要件としては、地方で続けるテレワーク、つまり本業の方の企業の雇用の要件に特段副業の禁止ということがなければ、これらも対象として活用できることとなっております。

佐々木(紀)委員 政務官、詳しく御説明をどうもありがとうございます。今、説明を聞いておりますと、東京から地方が農業人材を獲得するには大変使い勝手のいい事業だというふうに思います。

 ただ、私、今聞いておりまして、今年度から、市町村特認ということで、それぞれの自治体が就農を位置づければ活用できるということなので、是非この辺をPRしていただきたいというふうに思います。その点、多くの自治体が、是非うちの県に就農目的で来てくださいということをうたっていただければ、東京からの移住も進んでいくんだろうというふうに思います。

 移住する際、支援金として百万円もらえて、更に農水省の事業を使えば年間百五十万円もらって農業をやっていけるわけでありますから、そういう意味では、農業人材をつくる意味でも後押しになる事業だと思いますので、引き続き制度の周知に取り組んでいただきたいと思います。

 今日は、お忙しいと思いますので、政務官はこれで御退席していただいて結構です。

 それでは、農業のスマート化ということについてお伺いしたいんですけれども、ちょっと時間の都合もありまして後回しにさせていただいて、農協改革についてちょっとお聞きをしたいと思います。

 今、改正農協法、改正から五年たっております。改正のポイントというのは、農協の監査制度の改革と准会員の利用規制の検討ということでございました。それぞれについて現状がどうなっているか、お聞きしたいと思います。

 まず、監査制度改革について。

 全中の監査から会計監査人による監査に移行したわけでありますけれども、法改正をする当時、小さいJAほど監査費用の負担が重くなるのではないかという大変な懸念があったわけです。そこで、附則第五十条に、政府は次に掲げる事項について適切な配慮をするということで、実質的な負担が増加することがないようにということで書かれております。また、衆参の附帯決議でも、配慮事項が確実に実施されるように万全の措置を講ずることというふうになっているわけなんです。

 そこで、実質的な負担が増加することのないようにどのように配慮してきたのかということをお聞きしたいんですね。

 実は、私、地元のJAの組合長さんに聞きますと、かつて中央会の監査のときは賦課金と監査料で約四百五十万円、しかし監査法人に移行したら七百九十万かかっていると言うんですよね。あるJAの方にも聞くと、同様に、賦課金と監査料が六百万ぐらいだったのが監査法人に移行したら一千百万円かかっているということで、相当負担が増えているということなんです。

 そこで、実質的な負担が増加することがないように配慮しなければいけない、こう法律に書かれているわけでありますけれども、農水省としてどのように対応してこられたのか、見解を教えてください。

光吉政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、公認会計士監査への移行に当たりまして、農協あるいは公認会計士双方にとりまして新しい取組となるということでございまして、従来に比べ監査時間を要し、費用を含め負担の増加ということが懸念されたところでございます。

 このため、これも御指摘いただきましたが、改正農協法の附則第五十条あるいは国会での附帯決議を踏まえまして、予算事業を活用いたしまして、監査コストの合理化を図る農協の取組を支援してきているところでございます。

 具体的には、平成二十八年度から三十年度までは、監査費用につきましての試算、分析を通じまして準備マニュアルというものを作成いたしまして、公認会計士監査が円滑に実施されるよう農協の皆さんに周知をするとともに、令和元年度以降は、個別農協に対しまして具体的な費用低減策を提示するなどコンサル活動を行い、そこで得られた費用低減策を取りまとめて全国の農協関係者において共有されるようにしてきているところでございます。

 このような取組につきましては、引き続き、具体的な費用低減策の周知なども含めまして、監査コストの合理化の取組を後押ししてまいりたいと考えております。

佐々木(紀)委員 それなりに配慮していただいているようでございますけれども、これだけの監査費用の増額ということはなかなか、ちょっとコンサルしただけでは賄い切れない、補い切れないわけでありますから、やはりもう少し考えていただきたいというふうに思います。

 今、農協さんには自主改革をお願いしているわけであります。経営の改善、収益の改善なんかもお願いしているわけでありますけれども、幾ら努力しても、これだけ監査費用が増えたのではなかなか努力も実らないというふうに思いますので、是非ここは考えていただきたい。

 このままいくと、小さい農協はどんどん潰れていきますよ。どんどん合併が進んでいって、地域農業というのが壊れていく一つのきっかけになりかねないので、ここは是非、今後とも引き続き、しっかりとした配慮をお願いしたいというふうに思います。

 次に、准組合員の利用規制の検討についてお伺いします。

 附則五十一条において、准組合員の組合事業の利用に関する規制の在り方について施行から五年を経過する日までの間調査を行い、検討を加えて結論を得るものとするとございます。つまり、今年は結論を出さなければいけないということになっております。

 農協さんは、営農指導や農機具、農業用品の販売のみならず、信用事業や共済その他、生活関連、医療、福祉などあらゆる事業を行っているわけでございまして、組合員の営農とその生活を支えていらっしゃる。それだけではなくて、その地域の皆さん全ての利便を提供していただいているわけでございます。特に、中山間地になればこういった傾向は強くなっていきます。スーパー、金融、ガソリンスタンド、もう農協しかないわというようなところも多いわけでございまして、地域にとっては重要なインフラと言っても過言ではないんだろうと思います。

 准組合員は、直接、間接問わず、地域農協や地域経済の発展を共に支えている応援団と言えるわけです。正組合員、准組合員が一体となって農協を運営している、地域に貢献しているといったことではないかなと思っております。

 そこで、准組合員の利用規制についての検討状況、調査結果、そして結論をどのように出していくのか、見解をお聞きしたいと思います。

光吉政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の改正農協法の附則第五十一条におきまして、政府は正組合員及び准組合員の組合の事業の利用状況について調査を行うこととされたところでございます。

 調査につきましては、第三回目を現在行っているところでございまして、これまでの二回分の調査につきましては、第一回、第二回共に、信用事業の貸出しを除きまして、正組合員の利用が准組合員の利用を上回るものとなっているところでございます。

 准組合員の事業利用の規制の在り方については、改正農協法上、今申し上げた調査及び改革の実施状況につきましての調査を行いまして、検討を加えて結論を得るというふうにされておりまして、この規定を踏まえまして、JAグループともよく議論しながら検討を進めてまいりたいと考えております。

佐々木(紀)委員 ありがとうございます。

 自民党の農水部会でも決議をしております。JAグループの自己改革の支障とならないよう、農協組合員の判断に基づくものとするというふうにちゃんと決議をしておりますので、こういった決議もしっかり受け止めていただきたいと思いますし、私は個人的には准組合員の事業の利用規制には断固反対でございますので、是非その点も強く申し上げておきたいと思います。

 次に、農協が営農法人を設立するケースが最近増えてきております。農協が直接農業に取り組んでいこうということでございますけれども、こういった取組、どういう目的で設立しているのか、農水省ではどのように捉えているのか、そしてまた、現状でどれくらいの数があるのか。農水省の見解をお聞かせください。

光吉政府参考人 お答えいたします。

 組合員あるいは地域の要望を踏まえまして農協が自ら農業経営を行う、あるいは農協が出資する法人を通じて農業経営に関わる、こういった事例がございます。

 その目的につきましては、地域の耕作放棄地増加の防止、あるいは、新規就農者などの人材の確保、育成や、新たな担い手への経営継承、新たな経営モデルの実証、農畜産物の地域ブランドの維持などが挙げられているものと承知をしております。

 なお、全国農業協同組合中央会からは、令和二年四月時点におきまして、総合農協五百八十四農協のうち二百六十六農協において、直営で、又は農協が出資する法人を通じて農業経営に取り組んでいると聞いております。

佐々木(紀)委員 ありがとうございます。本当にそのとおりなんですね。地方へ行きますと、耕作放棄地がやはり増えている、営農の継続も大変厳しくなっている。その受皿として、いわば最後のとりでとして、農協さんが営農法人をつくって農業の受皿となるということなんです。私は、是非こういった取組を支援していただきたいというふうに思います。

 ただ、農水省に支援してくださいと言ったら、いや、農協さんだけにちょっとできませんわみたいな話を必ず出してくるんです。しかし、この法人の意味というのは、単に農業で稼ぐためにつくるわけではなくて、まさに高齢化して担い手がいなくなるその受皿であり、耕作放棄地であってもやはり営農はしていかなきゃいけない、地域農業を守るために設立されているということなんですね。ですから、こういった公益的な役割を持った法人なんだということで、私は逆に、しっかりと支援をしていただきたいな、そのように思うわけなんです。

 ともすると、私は、政府の農業政策というのは、農協さんと農協に入っていない企業的な農家との対立構図をつくっているんじゃないかというようなことも時たま思うわけなんです。

 農協からの独立を促して、補助金を出して農家の企業化、大型化を支援しているわけですよね。そうすると、農協さんも体力がなくなってくる。そういった企業的な農家さんも、一から設備をつくって営農をやっていく、でも、いずれ高齢化で農協さんのそういったところに引き継いでもらわなきゃいけないということで、持続可能ではないというふうに思うんですね。ですから、もう少し、今後の農政を考えるときに、農協さんを軸に考えたらどうかなと私は思うんです。

 特に、農業というのはなかなかもうかるものではありません。特に水稲はなかなかもうからないです。だから、組合をつくって、みんな協力してやっていこうということなんですよね。その一方で、独立する農家をどんどん増やしていくと、これは、お互いに共倒れというか、将来的にはやはり厳しくなってくるわけなんです。

 例えば、農協さんの持っている共同施設なんかも、多くの人に使ってもらえればウィン・ウィンなわけなんです。あるいは、農機具なんかも物すごく高額です。年に一回しか使わぬようなものを買ってもらうよりも、地域でシェアしてやればより効率的なのではないかなというふうに思うんです。

 農業分野というのは、自由競争を余り進めると私は駄目なんだと思うんですよね。ですから、この辺は農協さんをうまく使って、企業的な農家さんも農協さんとうまくやれるように、地域農業を守るためにもしっかりこの辺を考えていただきたいなというふうに思うわけなんです。

 ですから、農協さんが今設立している営農法人、そういったものをしっかり支援してほしいということなんです。企業的な農業法人と同列には議論できないということは言わないでいただきたい。農協さんの公益的な役割もあるんだということをしっかり位置づけて今後の農政を考えていただきたいな、そのように思うわけでございます。

 それでは、先ほど飛ばしました農業のスマート化ということについてお伺いします。

 スマート化の前に、最近、カーボンニュートラルということでどこの役所も取り組んでいるわけでありますけれども、農業機具のグリーン化についてちょっとお聞きをしたいと思います。農業機械のグリーン化の取組や今後の方針について、どのように考えていらっしゃいますか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 二〇五〇年のゼロエミッション化というのがございます。農業機械分野においてもこれを目指して取組を進めていく必要があると認識しておりまして、このため、みどりの食料システム戦略の中間取りまとめにおきまして、農業機械の普及期間なども勘案いたしまして、二〇五〇年の十年前の二〇四〇年までに農業機械のゼロエミッション技術の確立を目指すこととしているところでございます。

 農業機械におきますゼロエミッション化に向けましては、一つには、他分野の技術確立などを待たずに取り組むことといたしまして、小型農業機械におきまして電動化技術の開発を進めるということ、それから、当面稼働が続く現行のエンジンでも使用可能なバイオ燃料への対応技術を開発するということが一つございます。

 もう一つは、大型機械につきましては高出力を長時間続ける必要があるわけでございまして、こうしたものにつきましては、ほかの分野の基盤的な技術開発と連携いたしまして、バッテリーや燃料電池から電力を受けたモーターで駆動する農業機械を開発する、また、CO2を発生させない新たなカーボンニュートラル燃料で駆動する農業機械を開発する、こういったことにつきまして、技術の進展状況や可能性を踏まえながら、必要な技術開発を進めていくこととしたいと考えております。

 また、農業機械につきまして、ゼロエミッション化などの環境対応につきましては、一般的にコスト面が課題になってまいります。こうした技術開発に当たりましては、他分野との連携、こういったものを通じまして、できる限り効率的な開発、製造が行われるよう取り組んでまいりたいと考えております。

佐々木(紀)委員 ありがとうございます。おっしゃるとおり、コストが上がるんですね。今、スマート化をやらなきゃいけない、スマート化をすればするほど機械も高額になってくる、一方でグリーン化もやるということになると、もっともっと値段が上がってくるんですよね。

 ですから、私は、グリーン化はそんなに優先順位は高くないと思っています。というのも、全体に占める炭素排出量というのは物すごく小さいです、日本全体に占める農業機械の排出量は少ないので、私は、グリーン化よりもスマート化、これをしっかり進めていただきたいというふうに思います。

 時間が来ましたので、以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。

高鳥委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 公明党の稲津久でございます。

 通告に従って順次質問してまいりますが、初めに、本題に入ります前に、東京電力福島第一原発から出るトリチウムなど放射性物質を含んだ処理水のことについて、通告はもう終わっておりましたので今日は質問しませんけれども、少し問題意識を共有するためにお話しさせていただきたいと思います。

 政府の発表、昨日のことによりますと、例えば、海洋放出に当たっては、モニタリングはIAEAの協力を得て透明性を向上させるんだと。それからもう一点は、トリチウムの濃度も、国基準の四十分の一程度に薄めて放出するんだ、こういうお話がありました。

 ただ、その上で、私は、国民、とりわけ福島、東北の被災地、また漁業者等の関係団体、従事者の方々に対して、やはり、不安払拭、そのために政府はしっかり丁寧に説明をしていかなきゃならない、このことは強く申し上げていきたいと思うんです。

 例えば、処理水の安全性に関する情報発信ですとか、国際社会の情勢ですね、輸出に関しても今非常にまだまだ厳しい状況はありますので、こうしたこと。それから、処分方法、環境モニタリングの厳格な監督、風評被害対策、それから売上げが減少した場合の十分な損害賠償、こうしたことを、これから様々議論もあると思いますし、いろいろな場で、周知、あるいはいろいろな意見交換もあると思います。

 今日は問題提起だけに終わらせていただきますけれども、機会がありましたら是非と思っておりますので、御理解いただきたいと思います。

 質問に入ります。

 まず一点目は、マーケットインによる農林水産物・食品の輸出促進についてということで、特にマーケットインの考え方に沿ってお伺いしていきたいと思います。

 政府は昨年末、農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略を策定しまして、マーケットインで輸出に取り組む体制を整備するための具体的施策を取りまとめました。

 日本からの海外への輸出額を、二〇二五年に二兆円、そして二〇三〇年までに五兆円という高い目標を掲げている中で、更なる輸出拡大のためには、やはりマーケットインの発想に立って、海外市場で何が求められているのかというスペックの産品を専門的、継続的に生産、販売する、そうした体制整備が重要であるというふうに考えております。

 その中でも、特に、重点品目ごとに生産から輸出に至る事業者を包括する品目団体等を組織化するということ、それから、ほかの先進国のように、輸出先の情報収集ですとか販売戦略づくり、販路の拡大などに取り組む団体を支援することは、先ほど申し上げましたように、輸出額目標五兆円という高い目標の達成のためには欠かせないもの、このように思っております。

 この品目団体等の在り方について、戦略では令和三年の夏を目途に結論を得る、このようになっておりますが、私は、この団体の組織化等を行うことは難題だというふうに認識しております。そこで、品目団体の組織化の推進について、既存の業界団体もある中で、限られた時間の中でどのように取り組んでいくのか、見解をお伺いします。

野上国務大臣 お答え申し上げます。

 農林水産物・食品の輸出に取り組みます他の先進国におきましては、主要品目ごとに生産から輸出に至る事業者を包括する団体を組織化しまして、輸出先国のニーズですとか、ナショナルブランドによる共同マーケティングや販路拡大等々を行っているところであります。我が国におきましても、昨年、輸出拡大実行戦略を取りまとめたところでありますが、その中で、二十七の輸出重点品目を選定するとともに、品目団体の組織化等に取り組むこととしているわけであります。

 現在、例えば、米、パック御飯、米粉及び米粉製品ですとか牛肉を始めとした全ての輸出重点品目につきまして、生産から輸出に至る事業者が一丸となって輸出に取り組む体制の構築について、それぞれの関連団体あるいは事業者等と議論しながら今まさに検討を進めているところであります。

 官民一体となって海外における販売力の強化をしていく、また、品目団体が主体となって情報収集、販売戦略、ブランディング、販路開拓に取り組んでいく、そういう体制ができるように、今、関係機関が連携して品目団体の組織化の実現に向けて取り組んでいるところでございます。

稲津委員 ありがとうございました。是非、品目団体の組織化をしっかり推し進めていただきたいですし、我が国のこれからの農林水産業の発展のために輸出は本当に欠かせないことでございますので、省としても働きかけていただきたいと思います。

 次の質問に移ります。

 次は、農福連携推進の課題についてということでございますけれども、障害者が農業分野で活躍することを通じて自信、生きがいをつくり出す、それから社会参画を促す、こうした農福連携は今後ますます重要視されるものと考えています。

 先日、私は、千葉県の我孫子市にあります株式会社帝人ソレイユの農福連携を視察させていただきました。ここでは、年間、百種類余りのオーガニックの野菜ですとか食用のバラ、それから主力のコチョウランを作っておりました。十人余りの知的又は精神の障害のある方々が、サポートを受けながらも、むしろ主体的に作業をして、フルタイムで働いているということ。会社は障害というハンデを個性として受け止めている、そして、障害のある方は多様性のある能力を仕事の中で発揮して働いているという、大変すばらしい取組でした。

 この会社の特徴は、帝人グループの特例子会社であるということで、障害者の法定雇用率を親会社と合わせて算定できるということが挙げられまして、このことも障害者が働きやすい環境となっている、このように受け止めました。

 意見交換の中で農福連携の課題を伺ったところ、コチョウランの生産は安定しているものの、販売先を確保するのは大変な課題であるということ、そして何よりも、ここがポイントなんですけれども、農福連携がまだ十分に認識されていない、障害者の雇用の場として社会、地域に周知をもっと図っていかなければならない、こうしたことが挙げられました。確かに、農福連携を知らないとか、あるいは、知っていても、経営者側は手間や費用がかかるので心配事の方が先に来る、こういった声があるのも想像されます。

 そこで、今後更に農福連携を推進するに当たって、農福連携の周知、後押しを図るべきと考えますが、農林水産省の所見と今後の取組について伺います。

野上国務大臣 農福連携は、障害者等が農業分野で自信や生きがいを持って社会参画していく取組でありまして、障害者等の雇用、就業の機会の創出となるだけではなくて、農林分野におきましても新たな働き手の確保あるいは農業、農村の維持発展につながることが期待をされております。

 農福連携を強力に推進していくために、令和元年六月に農福連携等推進ビジョンを決定させていただいたわけでありますが、これまでに、農業団体だけではなくて、福祉団体、経済団体等が参加する農福連携等応援コンソーシアムを設置いたしました。また、農業分野における障害者の職場定着を支援する農業版ジョブコーチ等の育成研修の実施等にも取り組んできたところであります。

 今、なかなかそれが周知されていないんだというお話もございました。これはやはり広く周知をしていくことが重要だと思います。優良事例の表彰、横展開に資するノウフク・アワードというものを実施しておりまして、これによって農福連携の認知度向上ですとか理解促進のための普及啓発をやっていきたいと思いますし、都道府県と連携した農業者、農業経営体を対象とした普及啓発をやっていく、あるいはコンソーシアムの活動を通じた企業の取組を促進していく等々によりまして、厚生労働省を始めとした関係省庁とも連携しながら周知を図ってまいりたいと考えております。

稲津委員 今、ノウフク・アワードのお話がありまして、私はこれはすばらしい取組だと思っております。こうしたことが周知を図っていく一つの大きなキーワードだと思っております。

 もう一つ、農福連携は、私は障害者の方々の立場に立って進めるべきだろうと思っています。帝人ソレイユさんの成功例というのは、やはり、それぞれの持っている方々の個性、そうしたものを優先的に対応していただいているということ。ただ、もう一方で、実際の農福連携の現場は、私も十分知っているわけじゃないですけれども、例えば、居場所になっている、それから生きがいとか、そういう場になっているというのもあります。要するに、農福連携というのは非常にウィングが広い取組なのかなと思っておりまして、こうしたことも含めて、是非、今後もそうした理解、周知を図っていただきたいと思います。

 次は、新たな土地改良長期計画の課題についてということで、二点伺いたいと思います。

 まず一点目は、農業の成長産業化ということでございます。

 農業の成長産業化に資する指標として、担い手の生産コストの削減及びスマート農業実装の加速化がKPIに位置づけられました。我が国農業の成長産業化を図る上で、私は非常に重要な視点であるというふうに思っております。

 例えば、担い手の米生産コストの労働費について事業実施前の六割若しくは六十キログラム当たり二千五百円まで低減を求めるということ、それから、スマート農業の実装を可能とする基盤整備を行う地区の割合を八割以上とするということ。目標が高過ぎるのではないか、本当に達成できるのか、そうした懸念も一部、各地から上がっているのも認識しています。もう一方では、十分認識されているのかという課題もあると思うんですけれども。

 頑張っている農家が前向きに取り組んでいけるように、そうした目標になっているのか、その設定の考え方、それから根拠についてまずお伺いしていきたいと思います。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 土地改良長期計画における目標についてでございますけれども、今委員から御指摘いただきました担い手の生産コストの削減に関するKPIでございますが、日本再興戦略におけるKPIを踏まえまして、特に基盤整備との関係性が高い労働費につきまして、事業実施前の六割以下又は米六十キロ当たり二千五百円以下に低減する地区の割合を八割以上としたところでございます。

 この考え方でございますけれども、これまで基盤整備が実施されていなくて生産コストが高い地域におきましては、労働費を事業実施前の六割以下に低減させるという目標、また一方、基盤整備によって既に一定程度の生産性向上が図られている地域におきましては、大区画化等によりまして米六十キログラム当たり労働費を二千五百円以下を目標とするということで、従前の生産コストに応じた目標としたところでございます。

 一方、スマート農業実装の加速化に係るKPIでございますが、大区画化、パイプライン等の基盤整備を行うことによりまして、自動走行農機等のメリットを最大限発揮できるようにする地区の割合を約八割以上とすることで、スマート農業の実装の加速化につなげたいということでございます。

 いずれにいたしましても、委員から御指摘いただきましたように、現場に十分周知を図るということが大変重要かというふうに思っております。現場の生産者の皆様と共に目標達成に向けて取り組んでいくよう、しっかり周知を図っていきたいと考えております。

稲津委員 しっかり取り組んでいただきたいと思います。

 関連してもう一点伺いますけれども、小水力発電の導入推進ということです。

 政府全体としてカーボンニュートラルの実現を目指している中で、農林水産省ではみどりの食料システム戦略の策定に向けて検討中、このように伺っております。

 また、新たな土地改良長期計画におきましては、小水力発電等再生可能エネルギー導入による施設の維持管理費の低減がKPIに位置づけられました。これは大変意義深いことだと思っています。今後一層の推進をしていただきたい、重要である、このように認識しております。

 ただ、今後、小水力発電施設の整備を進めるには、既存の小水力発電施設の利用効率を高めることが必要だというふうに思っております。このことにおいて特に、問題の一つは、非かんがい期の水利権の取得又は増量をすべきと考えますが、今後の取組について伺います。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員御指摘のように、小水力発電につきましては、再生可能エネルギーの活用の面からも大変重要と考えておりまして、現在、令和元年度末の時点でございますが、全国で百四十七施設が稼働しておりまして、四十五施設で整備を行っているというふうに承知をしているところでございます。

 小水力発電につきましては、かんがい期間は発電量が多いんだけれども、流量が少ない非かんがい期は発電量が減少するという傾向にあるわけでございまして、委員から御指摘いただきましたように、発電施設の利用効率を上げるということが大変重要でございます。そのためには、非かんがい期に水利権を取得するということが必要になってくるわけでございます。

 この点につきまして、非かんがい期の水利権の取得あるいは水利権水量の増量のために、発電用水利権取得申請図書の作成に関するマニュアルといったようなものを整備しております。また、発電用水利権の支援相談窓口の設置でございますとか、発電専用水利権取得事例に関する情報提供といったようなものも行っているところでございまして、引き続きまして、農業水利施設を活用した小水力発電の推進というものにしっかり取り組んでいきたいと考えております。

稲津委員 小水力発電については、これまでも私も何回か取り上げさせていただいたんですけれども、地元でもこれを進めようとして残念ながら十分できなかったという実例もありまして、今後、いろいろな面から様々な意見交換をさせていただきたいと思います。

 時間の関係上、最後の質問にさせていただきますが、有機農業について伺います。

 有機農業は、環境への負荷を低減する、あるいは生物多様性の保全ですとか地球温暖化防止等に高い効果を示すなど、こうした効果が期待できるとして、農水省は新たな方針というものを公表しました。この新たな方針では、人材育成とか産地づくりなど、有機農業の取組拡大を推進することとしたわけでございます。目標等についても非常に高い目標を設定しておりまして、一方で、是非これを実現していくことも必要であろうと思っております。

 こういう中で、私は、先日、十一日の日に北海道新篠津村を訪問しまして、有機栽培で野菜を生産している有限会社大塚ファームを訪れました。同社では、水稲のほかに、ミニトマトやホウレンソウなど二十品目余りの野菜を有機JAS認定を取得して生産しています。さらに、農福連携、それから、二十五人のスタッフの半分が女性であるという、女性の活躍にも大変な貢献をしています。まさに全国的に見ても様々な観点からいろいろな取組の最先端を行っている、そういうところでございました。

 意見交換の中で有機栽培の課題について伺いましたところ、一つはやはり販売の問題です。既存の販路が少ない、自ら開拓しなければならない、それから、有機農業の理解が、あるいは周知がまだまだ不十分で、高価であるというふうに思われているということ、そうしたことがあるわけでございます。機械化も十分されていない。

 こういう視点に立って、是非、今日は時間がありませんので、乗用タイプの水田の除草機、これは大体四百万ぐらいなんですね。こうしたことを考えていったときに、まず水稲の有機栽培体系では除草対策が一番大変なことでございますので、このスマート化について、今どのような状況になっていて、そして今後どう取り組もうとしているのか、農林水産省の見解を伺います。

菱沼政府参考人 お答えいたします。

 有機農業の取組の拡大につきましては、化学農薬を用いず雑草防除を徹底させることが必要です。

 雑草防除の徹底にあっては、スマート農機の導入が期待されておりまして、水稲につきましては、人や従来の機械では作業しにくい場所での草刈りが可能となるリモコン式の自走草刈り機や、小回りが利く乗用型の除草機、こういったものを開発、普及しております。

 農研機構は、これまでのこういった研究成果を水稲有機栽培技術マニュアルとして取りまとめ、公表しているところであります。

 まだまだ価格面でも安心できる除草機の開発に取り組んでいかなきゃいけませんけれども、こういった研究開発でできました機械につきましては、シェアリングとかリース、レンタルといったような新しいシステムを生み出していく必要があるかなと思っています。

 これから、農研機構が産学官と連携して、一体となってイノベーション創出が順次なされるよう頑張っていきたいと思っています。

 以上です。

稲津委員 終わります。

高鳥委員長 次に、亀井亜紀子君。

亀井委員 おはようございます。亀井亜紀子でございます。

 今日は、久々に一般質疑の時間を三十分いただきました。早速質問に移らせていただきます。

 初めは酒税法についてなので、財務省にお出かけをいただきました。

 今日、参考資料をお配りしております。私は地方創生特別委員会と兼務をしておりますので、この農水委員会と行ったり来たりしておりまして、地方創生特別委員会の方は特区に関する法案が審議されるものですから、両方の審議を聞いているといろいろと見えてくることがあります。

 今日お配りしたのは、地方創生特別委員会で特区の法律が改正されたときに使われた資料です。

 この一枚目は、国家戦略特区、総合特区、構造改革特区、それから地域再生法、どういう違いがあるのかという表でして、非常に分かりやすいのでお配りをいたしました。

 そして、二枚目なんですが、ここに構造改革特区の内訳があります。これは、令和元年八月、この資料を受け取ったときの数字なんですけれども。

 御覧いただきますと、この当時の認定計画数四百二十二の中で、一位がどぶろく特区百九十件、二位が特産酒類の製造九十五件。このときの改正は、清酒の例は初めてですと。これに清酒を加えるための改正だったので、合わせますと、二百八十五プラス法改正をして清酒が一件で、二百八十六件目の登録をするための改正だったんです。

 特区というのは特別区域ですから、二百八十五もあったら特別でも何でもないですよね。なので、ここまで特区を増やすんだったら酒税法の改正をしたらどうですかというふうに当時私は質問したんですけれども、いまだに私はそう思っておりますが、御答弁をお願いいたします。

船橋大臣政務官 お答えいたします。

 酒税法の特例に関する特区認定についてでございますが、平成二十三年二月の構造改革特別区域推進本部におけます評価・調査委員会では、地域の雇用の創出、交流人口の増加に寄与するとともに、地域の魅力の向上が期待されるなど、地域の活性化としての意義が大きいと認められることから、酒類の製造事業については特区において当分の間存続すべきとの評価意見が示されたところでございます。

 令和二年八月に開催された直近の評価・調査委員会におけます評価意見では、関係省庁は特区における新たな弊害、効果の発生などについて引き続き情報収集し、それを踏まえ令和五年度に改めて評価を行うとされており、財務省といたしましては、こうした評価意見を踏まえ、適切に対応してまいりたいと考えております。

亀井委員 当分の間とおっしゃいますけれども、結構時間がたちまして、特別区域が今日の時点で幾つあるか私は分かりませんが、二百八十六は確実にあるわけでして、法改正の時期に入っていると思います。

 この委員会で漁業法の改正を審議しました。漁業法の方は、復興特区として宮城県に先例ができて、それで特区の評価もさして行われないうちに七十年ぶりの漁業法改正になったので、片方は一つしか特区がないのに七十年ぶりの法改正をして、酒税の方は二百八十六件もあって、でも本法の改正はしないというのは余りにもバランスを欠いているのではないかと思いますので、財務省は真剣に取り組んでいただきたいとここで申し上げておきます。

 財務省さんは、これで質問は終わりですので、結構です。ありがとうございました。

 次は、養父市の国家戦略特区についてお伺いいたします。

 昨日、地方創生特別委員会に出ておりまして、こちらの方で養父市の国家戦略特区について質問をいたしました。

 普通は五年で事業の評価をするところですけれども、今回、二年延長するということで、争点は、果たして株式会社は農地を所有する必要があるのだろうかと。リースで十分ではないか、所有する必要があるのかというのが一つの大きな論点です。そして、あくまでも中山間地での事例ですから、中山間地で特段問題がないからといって、これを全国展開したときに問題が発生しないかどうかというのが、これは私は非常に懸念する点です。

 養父市にまで私は出かけて視察をしてきました。現地の人に言われたことは、中山間地、養父市のようなところについてはただ同然で引き受けている耕作放棄地もあるので、それほど所有をするメリットはないと。本当に企業が欲しいのは優良農地だと言われました。ですので、この特例、株式会社の農地所有を全国展開したときに優良農地が企業に買われていくということが発生するだろうと私は思っております。

 そこで、質問ですけれども、株式会社の農地所有について大臣はどのように評価をされていますでしょうか。

野上国務大臣 まず、養父市についてでありますが、養父市が中山間地域という大変厳しい条件の中で地域農業の振興に取り組んでおられることは高く評価したいと思います。

 一方で、養父市に適用されている特例につきましては様々な意見があるものと承知をしておりますが、令和三年一月時点で、対象の六社が所有している農地は経営面積の約五・五%でありまして、残りの農地についてはリース方式で農業が行われているということ、また、六社のうち一社は平成三十一年の三月から休業して、その所有する農地は農業利用されていないという現状にあります。

 養父市によれば、今後も複数の企業が本特例措置を活用する可能性もあるということでありますので、今般、特例措置の期限を二年延長する国家戦略特区法の改正法案が国会に提出されておりまして、引き続き、養父市の取組を応援してまいりたいと考えております。

亀井委員 それでは、内閣府の方にも質問をいたします。今回の特例で、農地のリースではなくて所有による効果があると思われますか。

吉川大臣政務官 委員も御認識いただいているところかと存じますが、まず、養父市では本特例により六法人が合計約一・六ヘクタールの農地を所有しているところでありまして、これらの六法人が営農のために所有又はリースしている農地の面積は合計約三十一ヘクタールであり、そのうち十五・七ヘクタールは従前は遊休農地であったわけでございます。

 これらの六法人の営農活動により、農業の六次産業化による地域経済の活性化などの成果が上がっているものと評価をしているところであります。また、特段の弊害が生じているとは認識をしておりません。

 これらの六法人は所有又はリースしている農地を一体として農業のために所有しており、法人がそれぞれの経営判断により、農地の所有とリースを適切に組み合わせて営農することが可能になることに本特例の意義があると考えているところであります。したがって、これらの六法人の事業を一体として捉えた上で本特例の効果を評価することが適当である、そのように考えております。

亀井委員 今の御答弁ですと、特段、所有することの効果というのは特に見えないですよね。リースしているものと所有しているものを組み合わせて使うということですけれども、なぜ所有が必要かというところまでは私は納得ができないというか、特にその必要を感じないと思います。

 もう一度御答弁されますか。じゃ、お願いします。

吉川大臣政務官 一般論でございますが、農地のリースのみでございますと、リース契約の解除や期間満了後に更新できないことにより、事業継続ができなくなる可能性があります。その辺を所有ということでカバーができるものと認識しております。

亀井委員 養父市に視察に行って、確かにそういう声はありました。唯一違うとしたら、返してくれと言われたときに続けられなくなるという視点はありましたけれども。

 それが発生するとしたら優良農地ですよね。耕作放棄地については養父市で、それこそ耕作する人がいない条件不利地で、そこを企業が入って何とかよみがえらせている、それは非常によいことだと思うんですけれども、そういうところは、条件不利地なので、そんなに喜んで誰かが返してくださいとは言わないですよね。むしろこれを全国展開して、優良農地を企業が取得できるようになったときにそこが取得したがるでしょうし、その先には農地の転用が待っているかもしれない、そういう懸念があるということを農水委員としてはお伝えしておきたいと思います。

 ですので、慎重にしていただきたい。そして、延長する二年間の間に、リースではなくて所有でなくてはいけないのだということをきちんと証明していただきたいと思います。この件については以上です。

 次の質問に移りたいと思います。

 強い農業、農業を成長産業にということが安倍政権の頃からずっと言われてきました。企業の農業への参入を促進し、そして輸出も強化するという政府の方針なんですけれども。

 優良農地を企業が所有し、あるいはリースし、生産物が主に輸出された場合、これは地産地消とは対極的な農業になっていきますけれども、農業の方向性として農水省はどのように考えておられますか。これは大臣に伺います。

野上国務大臣 今後、人口減少によりまして国内の食市場の規模が縮小すると見込まれる中で、世界の食市場の規模は大きく拡大すると見込まれておりますので、国内生産を維持、拡大するためにも、高品質といった日本産の強みを生かした輸出拡大が必要であると考えております。

 また、国民に対する食料の安定供給を図るためには、国内生産の維持、拡大を図り、輸入の多い農林水産物を国内生産に切り替えていくことは重要でありますので、生産者が個人であるか法人であるかを問わず、地域で生産された農林水産物をその地域で消費する地産地消の取組も大切であるというふうに考えております。

 このように、海外の食料需要をターゲットとした輸出拡大と地域の需要に対応する地産地消ということ、これは、国産農林水産物の販売拡大という点、需要拡大という点から、どちらも我が国の農林水産業の発展に資するものであると考えております。輸出拡大と地産地消を図ることで、国内生産の維持、増大と、農林漁業者の所得向上の両方を実現してまいりたいと考えております。

亀井委員 人口が減少している中で輸出をし、外貨を稼ぐというのは否定するつもりはないですけれども。

 よく我が党の佐々木委員などが話していますけれども、農業というのは地域政策と一体であるという考え方、これが基本だと思います。

 私たちは歴史の授業で帝国主義時代の植民地、プランテーションなどを習いましたけれども、あれはやはり、そこに広大な土地が広がっているのに、そこで生産されたものがその土地に住む人には全く関係がない。全部外に出ていってしまって、外でお金に換わるということですので。今の時代に国がそういうことはしないわけですけれども、結局、企業が農業に参入して、農地を買収して、そこで生産したものを国外で売るということになると、昔の帝国主義とちょっと形は違うけれども、似たような形になっていくのではないか、その土地とそこに住んでいる人がちょっと切り離されていくような形になりはしないかなという心配をしています。

 そこの土地に住む人が、地元の企業が輸出を強化しましょうと言ってボトムアップで発展していくならまだいいんですけれども、外から大手が入ってきたときにどうなるのか、そういう懸念を持っているので伺いました。

 これは懸念としてお伝えして、次の質問に進みたいと思います。改正卸売市場法についてなんですが。

 この委員会で大串委員が何度も確認をした点だったんですが、認可と認定はどう違うんですかと最後まで質問を重ね、そして採決の日に、要するに認定がない市場というものも誕生し得るのだというところで驚いたんですね。つまり、認可が認定に変わったということは、政府はもう認可しないので自由に卸売市場を開いていいですよ、それで認定を取りたければ認定を取ってくださいねというふうにあのとき法律が変わったのだろうと最後は理解をしたんですけれども。

 この改正後、要するに国の許認可がなくても卸売市場を開設できるわけでして、市場の新たな開設あるいは地方の市場の買収なども含めて、何か変化はありましたでしょうか。また、そのような計画を把握しておられますか。伺います。

太田政府参考人 お答えいたします。

 今委員がおっしゃったように、卸売市場法の改正によりまして、卸売市場の開設が、農林水産大臣又は都道府県知事の認定を受けなくても開設することが可能となっているところでございます。

 今御質問の、民間による卸売市場の開設あるいは買収につきましてちょっと整理をして申し上げますと、まず中央卸売市場でございます。これは六十五市場を認定しているところでございますけれども、開設者は全て地方公共団体となっております。民間による中央卸売市場の開設、あるいは民間による中央卸売市場の買収につきましては、現在のところ認定はありませんし、計画があるということも承知をしていないというところでございます。

 もう一つ、地方卸売市場というものもございます。地方卸売市場は改正前から地方公共団体以外の者でも開設ができる制度でございます。昨年十一月時点で九百十一市場が都道府県知事に認定されております。開設者につきましては、地方公共団体の市場が百四十三、第三セクターの市場が三十一、民間事業者の市場が七百三十七、こういう状況になっているところでございます。

亀井委員 そうしますと、私は地方創生特別委員会で新潟の農業特区なども視察をしたんですけれども、行った先はローソンファームでした。例えば、ローソンファームのようなところが自社の市場を開設して、そこで集めた農産物を系列のコンビニに卸すというような、全部、生産から市場、販売まで完結する、そういう仕組みをつくることは法的には可能でしょうか。お伺いいたします。

太田政府参考人 お答えをいたします。

 まず、卸売市場法の改正によりまして、認定を受けた卸売市場につきましては、認定を受けるためにいろいろ条件がございます。これは、生鮮食品の公正な取引の場として卸売市場があるわけでございますので、例えば、売買取引の方法の公表であるとか、差別的な取引の禁止、あるいは代金決済ルールの公表、策定、こういったものを業務規程に定めるということが認定の条件になっているものでございます。

 今委員御質問の、農業に参入した企業が生産物を自社の市場に集めて系列の店舗に流通させるということにつきましては、こういった共通の取引ルールを遵守している限りにおいて可能でございます。ただ、その場合、遵守しないといけないわけでございますので、他の生産者から出荷された生産物、あるいは自社系列以外の生産者、取引参加者、こういった方々に対しても自社の系列間の取引と差別なく取り扱う必要がございます。

 このため、自社の系列企業間取引を行うことを目的として卸売市場を開設し、卸売市場法に基づく認定を受けるということは、余り想定されないのではないかというふうに考えているところでございます。

亀井委員 確認ですけれども、卸売市場法改正のときに認定を受けない市場というような御答弁があったので、そんなものをつくることが可能なのかどうか、認定を受けないのであれば卸売市場の取引のルールというのはそもそも守らなくてもいいというような抜け道ができたのではないかというふうにも取れたので伺ったんですけれども、もう一度その点について御答弁いただけますか。

太田政府参考人 お答えをいたします。

 今委員御指摘のとおり、認定を受けなければ、先ほど申し上げたようなルールというのを遵守する必要はございません。したがいまして、差別的な取引と言われていることをやるということは可能でございますけれども、市場が幾つもある中で、あえてそういうものをつくるということ自体、それほど意味のあることかなというふうに考えているところでございます。

亀井委員 やはりそうですよね、確認したかったんですけれども。あのとき、第三者販売の禁止とか全量買取りの規則とか、そういうのが守られたというふうに思ったわけですけれども、そもそも認定を受けない市場が存在し得るのなら、そこに大きな抜け道があるじゃないかと思ったんです。今のところはそのような市場はできていないようですけれども、ここは法律の抜け道なので注意していかなければいけないと思います。

 内閣府の方は、もう私は質問は終わりましたので、御退席いただいて結構です。ありがとうございました。

 では、次の質問はミニマムアクセス米についてです。

 今、米余りの状況で、米の価格が下がっていることが大変問題になっています。その中で、ミニマムアクセス米を購入するということ、これは国際約束なわけですけれども、必要なのだろうかという疑問は湧いてきますし、ミニマムアクセス米をどうしたらいいのかということを当然のことながら考えます。

 私、参議員だった頃に汚染米、事故米の事件がありまして、質問しました。ミニマムアクセス米、輸入米、ベトナム米とか中国産米でしたけれども、それにカビが生えたり、残留基準値を超えた農薬が付着していたり、それを非食用として売却したら食品に混ざってしまって大問題になったことがあります。

 その当時、私が質問したことは、ミニマムアクセス米、需要がなくて倉庫の中でカビが生えるぐらいだったらば、購入はするとして、それを海外の食糧支援などに役立てたらどうですかと聞いたんですね。そうしたら、一度国内に入れなきゃいけないという取決めになっているので、例えば海外で購入してそれを食糧支援に回すというようなことはできないんだという答弁だったんですけれども、それは今も変わっていないでしょうか。質問いたします。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 ミニマムアクセス米のことについて御質問をいただきました。

 お米のミニマムアクセスですけれども、平成五年に合意をしたガット・ウルグアイ・ラウンド交渉の中で、全体のパッケージの一つとして、従来日本がほとんど輸入してこなかった、日本だけではありませんけれども、ミニマムアクセスというものが、従来輸入がほとんどなかった品目について、最低限度の市場参入機会を与えるという観点から、全ての加盟国の合意の下に設定されたものでございます。日本のお米については、現在、年間七十七万トンという輸入数量を国際的に約束してございます。

 したがいまして、七十七万トンの輸入を日本としては達成して、WTOに対して毎年度、ミニマムアクセス米の輸入数量を報告しておるところでございます。

 これを海外援助に使ってはどうかということでございます。

 お米を活用した海外食糧援助につきましては、被援助国などからの要請に対しまして、正常な貿易に支障を与えてはならないというFAOのルール、被援助国のニーズに対応して行われるものであることというWTOの閣僚会議の決定など、国際ルールとの整合性や財政負担に留意をしつつ、ODAを活用したスキームにより実施しておるところでございます。

亀井委員 それでは、前から疑問なんですけれども、トランプ政権のときにトウモロコシを緊急輸入したかと思いますけれども、あのトウモロコシは一回国内の倉庫に入ったんでしょうか。あれがどこに行ったのかということ。ミニマムアクセス米とどう扱いが違うのかという疑問でして、トウモロコシはどこに行ったのかということについてお答えください。

葉梨副大臣 令和元年七月でございますけれども、日本国内で、ツマジロクサヨトウという害虫ですね、トウモロコシに対して非常に強い食害性と伝播力を持つ、これが確認されたということで、畜産農家の餌用のトウモロコシが足りなくなるんじゃないかというような懸念がございまして、ALIC事業で、飼料穀物備蓄緊急対策事業というのを実施させていただきました。

 それでトウモロコシを買いまして、この飼料用トウモロコシは全て国内で保管されて使用されたということです。まあ、使用されたかどうか。国内で保管されたということです、ごめんなさい。

亀井委員 では、全量国内に入ったということでいいんですね、倉庫に。それを確認したかったんですけれども。済みません、時間がなくなってきたので、この質問はこれで終わりにします。

 最後、官房の方をお呼びしているので質問します。

 今、日米貿易協定に基づいて牛肉のセーフガードが発動されています。四月十六日までの発動になっております。一方、CPTPPのセーフガードの発動基準の中には米国産の牛肉の分もカウントされているわけですから、二重にカウントされているということは以前からこの委員会でも問題になっておりました。

 アメリカがCPTPPに戻るというのは、今バイデン政権に替わりましたけれども、全くそういう見込みはないと私は思いますし、米国の専門家に聞いても同じような答えが返ってまいりますが、果たして日本政府はいつ発動基準等について再交渉するのでしょうか。質問いたします。

和田大臣政務官 お答え申し上げます。

 二〇二三年度以降について、TPP11が修正されていれば、米国とTPP11締約国からの輸入を合計してTPPの発動基準を適用する方向で米国と協議するというようなことを、米国と交換文書にて確認をしております。ですので、そこに、米国と以後の協議をスタートさせるには、やはりTPP11のメンバーの中での協議というのが必要になってまいります。

 TPP11の牛肉セーフガード措置に関しましては、これまでも様々な機会を捉えてTPP関係国に対して我が国の考え方を伝えてきているところでありまして、引き続き関係国と緊密に意見交換を行ってまいりたいと思います。

亀井委員 早めに判断してCPTPPの加盟国に交渉を求めるべきですし、求めたところで相手がいいよと言うかというのはまた別の問題なので、早く真面目に取り組んでいただきたい、そのことは申し上げて、もう時間ですので、質問を終わります。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、堀越啓仁君。

堀越委員 立憲民主党の堀越啓仁でございます。

 本日は、農水委員会において質問に立たせていただく機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 私は、環境委員会所属でございますけれども、今日は質問とともに農水省そして官僚の皆さんに御礼に来たいなと思いまして、まず冒頭、お礼から申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 私は、環境委員会で小泉環境大臣に、畜産動物関係の動物虐待をなくしていくべきなのではないかという趣旨の質問をさせていただきました。その際に小泉環境大臣からは、動物愛護の精神にのっとって産業動物についても適正な取扱いが浸透していくようしっかりと取組を進めてまいりたいと思いますという御答弁をいただきました。これを受けて早速、今年に入って、一月二十一日付で農水省と環境省が連名で通知を出していただきました。

 このことについて、動物愛護の観点、アニマルウェルフェアの観点から農水省も一歩進んでいただいたということを、私はすごくうれしく思っております。まず、大臣に心から御礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。

 そして、動物の件について私が取り上げさせていただいたのは、牧場内、農場内でどのように豚が殺されているのかという例を一例挙げさせていただきました。

 それは、豚が、防疫の観点から、殺処分を牧場内でもしなければいけないという、これがあるのは承知しているわけですけれども、その殺処分の方法が、非常に長時間苦しむような方法を取られていた。具体的にどういうものかといいますと、豚の首にロープをかけて、フォークリフトのぐっと上がっていくところにつり下げて、そのままぐっと引っ張り上げていく、そして窒息死させる、こういう在り方でした。これはさすがにまずいだろうと。

 全ての牧場内で行われているわけではないと私は思いますが、しかし、そういう例が実際に起こっていた、これに関しては、動物愛護の観点からも、人道的に見ても、一般通念的にもあり得ないのではないかということをお話しさせていただいたら、そのとおりだと、農水省の方々も、これはいかぬ、是正しなければいけないということで通知を出していただいたという例があります。これは正していかなければいけない大問題だというふうに思いますので、通知を出していただいたことに関しては本当に感謝を申し上げたいと思います。

 今、私の地元であります群馬県、ここに群馬県の福田先生もおりますけれども、前橋で豚熱が発生して、一万二百七頭を殺処分しなければいけないという事態が起こっております。また、今季は鳥インフルエンザも大流行してしまっていて殺処分されるという状況もありますので、まさに牧場内で行われる殺処分の方法について、アニマルウェルフェアの観点、確かに防疫に係る処分ですから大量な処分をしなければいけないということでありますけれども、国際基準、OIEの規約であるとか、あるいは畜産技術協会の方が出している指針等々にもあるように、殺処分に至ったとしても、防疫的な殺処分に至るにしても、アニマルウェルフェアというのは非常に重要なんだということは、やはり共通認識として持っていなければいけないということであると思います。

 豚熱の件に関して、今回は大規模、今までにないぐらいの規模での処分が行われるということでありますので、生産者の皆さんの大変な心労と悲しみがひしひしと伝わってきます。そういう悲しいことを私は本当に終わりにしたい、そのように思うので、それに関わる質問をさせていただきたいと思います。

 まず、先ほどお話しさせていただいたOIE、国際獣疫事務局の陸生動物規約の第七の六章では疾病管理を目的とする動物の殺処分があります。また、畜産技術協会はこれを簡素化して、アニマルウェルフェアの考え方に対応した家畜の農場内における殺処分に関する指針というのを策定しています。この指針やOIEの規約、これを殺処分に関わる責任者の方々は把握されているのかということがまず一点。

 それから、豚熱や鳥インフルエンザが発生した際には伝達経路、通報経路など詳細なマニュアルというのがあるというふうに承知をしているわけですが、この中に、アニマルウェルフェアを担保するために、いわゆるOIEの規約に即した具体的な指示等が入っているのかということを、政府参考人で結構なので、お答えいただきたいです。

 その上で、もう一点、大臣にお答えいただきたいんですが、殺処分に伴う自治体の職員さんや自衛隊の皆さんの精神的な負担というのは相当なものであると私は承知しておりますし、今報道もなされています。このことについて、実際に殺処分を行う方々の精神負担を軽減するためには、私はやはりアニマルウェルフェアが、苦痛をなるべく抑えて速やかに死に至らしめる、そのことが何より重要なことだというふうに思っているんですが、その辺りについての大臣の見解を伺いたいと思います。

新井政府参考人 お答え申し上げます。

 防疫措置におきます殺処分はやはり迅速に行うということが非常に重要でございますが、アニマルウェルフェアの考えも取り入れながら現場で対応しているということでございます。

 委員から言及がございました畜産技術協会のアニマルウェルフェアの殺処分の指針は農場内におけるということでございまして、通常の殺処分の際の方法を記載しているというふうに承知しております。

 他方、言及がございましたOIEコードの第七の六章につきましては、これは疾病の制御のための殺処分ということでございまして、殺処分の責任者は人道的かつ迅速に殺処分ができるよう計画を立てなければならないということが書いております。まさに人道的というのがアニマルウェルフェアの思想というふうに理解しております。

 この規定を受けまして、それぞれの畜種ごとに迅速に殺処分を行う、それからアニマルウェルフェアに配慮して行うということで防疫指針を定めております。まさに委員から言及がございましたように、それぞれの畜種ごとに殺処分の手法についても防疫指針で定めているところでございます。

 先ほどお話にありました豚熱につきましては、最近の発生事例におきますと、基本的には電殺をするということで対応しておりまして、先ほどお話があったような殺処分の方法は現時点では行われていないというふうに承知をしております。

 こういう中におきまして、まさに責任者、防疫措置の現場責任者は都道府県の職員でございます家畜防疫員でございます。これらの方々には、防疫指針に基づく演習を繰り返しているということでございまして、現場で理解した上で適当な作業指示をしていただくという体制をつくってまいりたい、今後も努力してまいりたいと思っております。

野上国務大臣 家畜伝染病発生時の殺処分につきましては、OIEコードに定めております人道的かつ迅速に殺処分を行うという観点を踏まえて、疾病ごとに防疫指針において、動物福祉に配慮した殺処分の方法で実施するよう規定されているところであります。

 委員御指摘のとおり、現場での殺処分は本当に大変な作業でありまして、従事される方々には、肉体的負担というのはもとよりでありますが、それに加えて精神的な負担は大変大きなものがございます。このため、防疫指針におきまして、防疫措置の従事者の健康管理に留意するとともに心情にも配慮することとしておりまして、実際に、医師や看護師が現場に入って従事者の健康管理やメンタルケアを行っているところであります。

 いずれにしても、家畜伝染病の発生時には、防疫指針に基づいてアニマルウェルフェア、動物福祉に配慮することが大切でありますし、それとともに作業従事者の心身の健康に留意して殺処分を実施する、また、疾病の終息後も家畜の所有者あるいは作業従事者に対してきめ細かな対応を行うよう努めることとしているところでございます。

堀越委員 ありがとうございます。

 先ほどお話をいただいた現場で殺処分に関わる責任者については、OIEの規約等々も周知しているというところもあると思いますが、畜産技術協会の方が出されている指針を、防疫に係る有事の際にもしっかりとしたベースを作った方が私はいいのではないかというふうに思っておりますし、やはり、通常の牧場内での殺処分とはまた、方法というか、規模が大きく異なります。

 先ほど、電殺とおっしゃっていただきました。電殺のことも私も承知はしているわけですが、電殺した後に心臓にパコマを打ち込むであるとか、あるいは二酸化炭素で殺処分するとか、様々な方法もある中で、どれが人道的で推進されていくべきものなのかということも、併せて農水省の方からもしっかり発信していただけるとありがたいなというふうに思います。

 また、大臣の方からお答えいただきました精神的な負担、これは、確かに従事されておられる方々に対するメンタルケアというのは絶対に必要なことだと思いますが、同時に、メンタル的に負担を少なくするためにも速やかに死に至らしめるということを、機材も投入して、マニュアルに徹底されたものを実現することによって精神的な負担も軽減できるという、アニマルウェルフェアに配慮した形が私は一番のある意味では特効薬だというふうに思いますので、是非進めていただきたいというふうに思っています。

 豚だけではなくて、鳥インフルエンザも、先ほどからお話しさせていただいているように非常に猛威を振るっております。九百六十万羽が殺処分されている、とてつもない数の鶏が殺されてしまうわけです。鳥インフルエンザ発生農場においても殺処分の方法でアニマルウェルフェアが求められているわけですけれども、完全にアニマルウェルフェアを無視した方法が通常から取られているなということも分かってしまうんですね。

 どういうことかといいますと、鶏をコンテナの中に押し込めて、そして蓋をして二酸化炭素を注入して窒息死させるという方法を取っている場合に、OIEの規約では鶏が重なるぐらいまで入れてはいけないよというものがあるんです。それはなぜかというと、鶏が重なるような感じになれば二酸化炭素がコンテナ内に充満するまでに時間が当然かかるわけですし、逆に、場所によっては、長いこと時間をかけないと死に至らないというような生体も場所によってはあるわけですよね。

 なので、均一に二酸化炭素を吸入できるような形にするためには、コンテナ内にぎゅうぎゅうに鶏を押し込めてはいけないということがOIEの規約にはあるわけです。

 しかし、大量に殺処分しなきゃいけないという状況の中で、しかもそれを、しっかりと遵守を意識的に行わなければいけないんだという知識自体が不足していれば、ぎゅうぎゅうに押し込めて二酸化炭素でという、それは作業されておられる方々も苦しいですから、そんなことは早く終わりにしたいというマインドもやはり働くと思います。

 しかし、そういう状況にしていると死に至らず、結局もう一回、蓋を開けて、私が確認したのはアヒルですけれども、死んでいるアヒルだけを出して、ばたばた動くようなものはもう一回そこに入れて、そしてまた殺処分するというような、そういう状況もあるわけですね。

 しかも、明らかに動いているけれども、その後、地中に埋葬するためのいわゆるペール缶ですとかフレコンバッグに入れられて、そしてそのまま連れていかれる。これはつまり、言えば、生きたまま埋められてしまう、そういう生体もあるわけですね。

 更に言えば、ウィンドーレス鶏舎で換気扇を止める。換気扇を止めると酸素濃度が当然薄くなっていきますから、それで鶏舎全体で鶏が死んでいくというような方法を取っているところもあるんですね。更に言えば、換気扇を止めれば鶏舎内の温度がどんどんどんどん上がっていくので、温度によって、熱中症でじわりじわりと殺処分をしているというようなところも実際にあるわけです。

 生き埋めであるとかあるいは換気を遮断することによって長時間苦痛を与え続ける殺処分の方法を、農水省はどのようにまず認識されているのかということを伺いたいと思います。

 続けて、この殺処分の方法は、動物愛護法に照らし合わせても、先ほどからお話しさせていただいているOIEの規約に照らし合わせても、一般原則から大きく外れてしまうわけです。基本的には即時に死亡に至らしめなきゃいけない、そして即時の意識喪失をもたらすものを取らなきゃいけないというようなことがある。それは、不安や痛み、苦難又は苦痛を動物に与えないものとするということが決められているわけですので、是非ともこれは早期に是正していただきたいというふうに思います。

 要望かたがた、二点お伺いしたいと思います。

池田大臣政務官 防疫作業に当たりましては、埋却の際に処分鶏の死亡を確認した上で行うこととされており、生き埋めにつきましては認められているわけではございません。先ほど御指摘のように、ポリバケツへ十羽ぐらい入れて、通常ですと五秒ぐらいで死ぬるということで、その後、フレコンバッグ等へ行きますので、大体その時点で確認ができると思います。

 また、そうした炭酸ガスを用いる場合には動物福祉に配慮しつつ行うこととされており、家畜防疫員の指導の下で確実かつ迅速に殺処分を行うように指導をいたしております。

 また、ウィンドーレス等による、大型換気扇を止めることによって鶏舎の換気を遮断する目的というものは、換気扇の気流に乗りまして羽毛等に付着したウイルスが鶏舎の外に飛散し、周囲の農場に感染が拡大するリスクを低減するための措置でありまして、殺処分の手法として実施をしているものではありません。

 また、委員御指摘のように、殺処分に当たりましては動物福祉に配慮しつつ、防疫措置としては更に多くの鶏が感染し殺処分する鶏の数が増えることのないように対応することが重要であり、家畜伝染病の蔓延を防止するということが最優先ということを御理解いただきたいと思います。

堀越委員 ありがとうございます。換気扇を止めることは、周囲へのいわゆる拡大を防止するための措置であると御答弁いただきました。

 そのこと自体は私は、羽毛に付着したウイルスですとかそういったことを考えれば、やはり、可能性は完全に否定できるものではないなというふうに思いますので、適切な処置の一つなのかもしれません。しかし、換気扇を止めたことで殺処分をしているということになってしまっている自治体もあるんですね。なので、是非、農水省としても実態把握をしていただいて。そして、換気扇を止める措置は必要な措置であるけれども、それをもって、そのまま放置をして殺処分に至らしめるということは推奨できないんだということは是非言っていただきたいというふうに思っています。

 ちょっとまた話題を変えていきますが、やはり、大規模集約化された畜産の在り方ということを私たちはもう一度見直さなければいけない時代に入ってきているんだろうというふうに思っています。

 今、新型コロナウイルス感染症の影響が様々なところに出ていて、また、大阪でも大変感染者が増えているという状況の中で、三密を避けろとこれまでずっと言われてきました。密を避けなきゃいけない、換気を徹底しなきゃいけない、そういうことを言われているけれども、じゃ、実際、動物はどうなのかというふうに言われると、豚熱、鳥インフルエンザ等々も含めて、やはり飼育の環境そのものを大きく見直さなければいけないんだろうというふうに思っています。

 豚熱が発生した養豚の農家さんは、これまで衛生面も徹底してきた、ワクチンも接種してきた、しかし発生してしまった、これ以上どうしたらいいんだ、こういう声も実際に聞かれているわけです。

 私は、伸び代があるのは、アニマルウェルフェアに配慮した飼養管理指針、これを徹底することによって動物の免疫力をしっかり高めていく、そして、大規模集約化された畜産の在り方から、密を避けるような、持続可能な畜産の在り方に転換していく、そういう時代に私は入っているのではないかなというふうに思っています。その観点から、鶏のケージの件について伺いたいと思います。

 昨年、国連の環境計画は「次のパンデミックの防止 人獣共通感染症と伝染の連鎖を断ち切る方法」というレポートを出しているんですね。豚熱、鳥インフルエンザ、様々な感染症、新興感染症もありますが、全体の約六〇%は人獣共通感染症だと言われています。今回の新型コロナウイルスもやはり同様ですよね、人獣共通感染症。

 そういった点から、現在の人獣共通感染症に関与する大多数の動物が接触率の高い家畜であり、人獣共通感染症の主な人為的要因の一つが、動物性たんぱく質の需要の高まりとそれに伴う持続不可能な集約畜産であることを指摘しています。つまり、持続不可能な集約畜産を持続可能な質と量に変えていかなければ次のパンデミックが防止できないと指摘しているわけです。

 しかし、それに比べて日本の現状は今どういう状況か。私は見ていて、逆行しているというふうに言わざるを得ないんですね。なので、鳥インフルエンザ、毎年のように何万羽と殺処分をされるという状況になっております。今年に入って採卵鶏で約八百八十万羽、これは肉用の鶏の十倍に当たるわけです。農水省に確認したいんですけれども、採卵鶏の飼育されていた飼育方法がケージ飼育であった割合を是非お答えいただきたいんです。

新井政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、今シーズンの高病原性鳥インフルエンザでございます。このウイルスによる家禽の疾病につきましては、大規模だから発生する、小規模だから発生するということではございません。それから、採卵鶏、肉用鶏のいずれも感染するということでございまして、そういうことを前提に今の御質問に答えたいと思います。

 今回の発生は全体で五十二例でございまして、そのうちケージ飼いが三十四事例、平飼いが十八事例でございます。これを採卵鶏について申しますと、採卵鶏で発生した事例は三十事例でございまして、全てがケージ飼いということでございます。

堀越委員 私も、平飼いだからいいとか、ケージだからいいとか、そういうことを言うつもりはないんです。ただ、やはり、大規模集約化していると、一回ウイルスが入り込むと、当然、同じ種類の同じ宿主がたくさんいるわけですから、ぶわっと拡散するということは考えられなくはないことなんじゃないかなというふうに思います。

 今季に起こっている鳥インフルエンザは全てケージ飼いの鶏であるということでありまして、確かに、卵は国内生産、国内消費がほとんどですから、輸入されるものがほとんどないわけですよね。ごく僅か、粉末状のものであるとか液状のものが入ってくるということはあっても、ほとんどの場合は国内生産、国内消費。なので、消費者側が意識を変えていかなければいけないということは、私は消費者特でも、委員でもありますので、エシカル消費のことについて是非牽引してもらいたいということを発言させていただいているわけです。

 やはり、世界動向とかを見てみても、ケージからはどんどんどんどん、今やめていこうという動きが世界の潮流になっている中で、人獣共通感染症も蔓延を阻止できていないという状況も現在はありますから、これは、今の状況だけを見て物事を判断するのではなく、長期的に物事を見ていったらば、私は、採卵鶏、鶏、卵、ここを守っていくためにも、日本の畜産を守っていくためにも、農水省が、アニマルウェルフェアに配慮した飼養管理を徹底していくべきだ、その方が持続可能な畜産の在り方なんだということを発信していただきたいというふうに思います。

 その上で、最後、質問させていただきたいというふうに思います。

 産業動物についても、やはり、密を避けて、適度な運動もできてストレスが少ないという飼育方法を取り入れる必要は私はあるというふうに思っているんですが、防疫措置などに数百億円の税金が投入されているわけですから、エビデンスそのものを重視して考え直していただきたいというふうに思っています。

 世界十六か国の六千四十の商業用鶏群、一億七千六百万羽の鶏のデータを見ると、バタリーケージが平飼いやエンリッチドケージなどと比較して死亡率が最も高いというデータがあるんですね。世界十六か国ですから一億七千六百万羽の鶏なわけですけれども、日本の採卵鶏は一億三千から四千万というふうになっていますので、こういった観点からも、私は生産者ばかりにコストを押しつけるものではないと思いますので、消費者側も守らなきゃいけない、でも、国が牽引していくこと、これが何より大事だと思うので、大臣、どうか、ケージフリーを長期的にもやっていくべきなんじゃないかと御発言いただければありがたいです。

野上国務大臣 採卵鶏の飼養方式につきまして、ケージフリーを推進していくべきではないか、こういうお尋ねでございます。

 アニマルウェルフェアの観点から見て、今、我が国で広く行われておりますバタリーケージによる飼養管理方式につきましては、五つの自由との関連では、闘争行動を防止する、あるいは寄生虫病の蔓延を防止する等々、苦痛、傷害及び疾病からの自由の点では優れている。

 一方で、EUで導入が進んでおりますエンリッチドケージや多段式の平飼い方式につきましては、通常の行動様式を発現する自由の点では優れているものの、今申し上げた恐怖及び苦悩からの自由ですとか、苦痛、傷害及び疾病からの自由などの点ではデメリットがある。

 そういう意味では各飼養方式にはそれぞれのメリット、デメリットがある、一概に科学的な優劣をつけることは難しい中で、一律にケージ飼いを禁止するということではなくて、生産者や消費者の理解を得ながら、時間をかけて取組を拡大していくことが重要だと考えております。

 そういう中で、どの飼養形態を選択するかにかかわらず、バタリーケージだけではなくて、エンリッチドケージや多段式平飼い方式なども含めて、鶏舎の整備についての支援の対象としているところであります。

 また、強い農業・担い手づくり総合交付金などにおきましても、アニマルウェルフェアの要素を含むGAP等の認証を取得している場合には、平成三十年度から加算ポイントを設けて採択されやすくするなどの措置を講じているところでありますので、こうした支援を活用していただくことも可能だということでございます。

堀越委員 時間が来たのでこれで終わりにしますけれども、是非、大臣、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、金子恵美君。

金子(恵)委員 立憲民主党の金子恵美でございます。よろしくお願いいたします。

 東京電力第一原発から出ておりますトリチウムなど放射性物質を含む汚染水の問題について、質問させていただきたく存じます。

 昨日、関係閣僚等会議が開かれまして、水の処分方法について基本方針が決定されたということでございます。梶山経産大臣も福島にお入りになられて、知事や県漁連の会長等に面会しているということでありますけれども。

 驚いたのは、報道ベースで申し訳ないですけれども、梶山経産大臣との会談は五分で終了、県知事は先に席を立つという報道もなされていて、きちんとした説明がなされてきたのか、なされているのかということがまた大きな問題になっているわけです。十三日決定だというようなことも、報道が先行していました。七日に菅総理が全漁連の岸会長と面会、そういうことになって、それも、与党の中からも批判的なお声があったようでありますが、つまりは誰も知らなかった、聞かされていなかったということが、委員会の中でもやり取りがあったようでございます。

 そういう中で、唐突感が否めないような形で進み、そして昨日の決定であります。

 昨年の十月の末にも、これが決定されるのではないかという報道があったときに、多くの方々の反対もあり、そこが先送りされました。でも、私たちも、いたずらに先送りしてくれと言っているのではなくて、何をすべきかお考えいただきたいと。それは、国民の皆さんや県民の皆さん、そして漁業者、農業者、本当に直接的な影響を受ける皆様方がしっかりと理解できるような説明があったかどうかというのが一番の問題なんだと思うんですね。

 この半年間、それがなされてきたかということですが、私は、今に至るまでそれがなされてこなかったからこそ、もちろん全漁連の岸会長もあのような怒りの声を出していらっしゃると思いますし、特に、これは福島県での海洋放出が決定ということでありますので、福島県漁連の野崎会長も、改めて福島県の漁業者の意思として処理水の海洋放出に反対したいと述べています。

 処理水かどうかということも、今回、どうも定義を変更したということであります。トリチウム以外の核種について環境放出の際の規制基準を満たす水のみをALPS処理水と呼称することとしたということでありまして、ですので、私は冒頭、あえて、問題としてはまだ汚染水の問題であるというふうに申し上げています。

 といいますのは、現在、タンクに貯蔵されている水の約七割には、トリチウム以外にも規制基準値以上の放射性物質が残っているということです。私が本会議場でこの処理水を汚染水と申し上げたときに、汚染水じゃないぞとやじを飛ばされたことがありますが、今回、明確に定義というのがありますから、今の段階では汚染水なんですね。

 それをきちんと処理水とできて、その上で海洋放出とおっしゃりたいんだと思いますけれども。そういう流れ、これから二年後、海洋放出ということを決定されているようなんですが、これまでの経緯も見ていて、全く地元に丁寧な説明もなされていない、国民的な議論もない。そして、海洋放出や大気放出以外の処分方法についてのしっかりとした検討というものもなされていない。トリチウムを本当に取り除く技術開発についてしっかり取り組んできたのか、そこも見えない。

 風評被害対策についても、今回どのように改めて取り組まれるのかということでありますけれども、福島県の漁業は、試験操業からやっと本格操業に向けて一歩を踏み出したところ。そのときに、福島での海洋放出決定。この決定だけで新たな風評被害も生まれるということでありますので、最悪のタイミングでした。

 なぜこのときにこの方針が決定されたんでしょうか。大臣、お願いします。

野上国務大臣 お答え申し上げます。

 原発事故以来、復興に懸命に取り組まれておられる農林水産関係者の皆様には大変な御労苦と御心配をおかけしているところでありまして、海洋放出により風評被害が生じると懸念をされるお気持ちは当然のことであるというふうに考えております。

 政府としましては、有識者や専門家から成る委員会における六年以上にわたる議論を経て、幅広い関係者からいただいた御意見も踏まえて慎重に検討された上で、昨日の決定に至ったものと考えております。

 これらを踏まえまして、基本方針では、先般の総理との会談で漁業者から求められたことも考慮しまして、漁業者を始め国民の皆様に対して、処理水の安全性や処分方法などを周知し、風評を生じさせないための最大限の努力を行うこと、また、放出に際しては、安全性を厳格に確保し、第三者の目も入れつつ透明性高く監視するとともに、年間トリチウム放出量を管理目標値を下回る水準に限ること、仮に風評被害が発生した場合には東京電力が適切な賠償を行うとすると約束すること等が明記されております。

 また、生産、流通、加工、消費にわたる風評対策につきましては、今後、漁業者など関係者の皆様の御意見を伺いながら検討していくこととしております。

 処理水の放出までの二年間で、漁業者を始め国民の皆様の御理解を得ることができるように、また御懸念が払拭できるように、農林水産省としても全力を尽くしてまいりたいと考えております。

金子(恵)委員 私は昨年の十一月にもこの農水委員会で、当時、ALPS処理水について質問させていただきまして、そのときの答弁で大臣も風評被害対策についても触れられておりまして、そのときに、復興に向けた漁業者の皆様の努力を妨げないことを最優先に、これは経産省に対して働きかけをしていますというふうにおっしゃったんです。どのような働きかけをしてきてくださったのかというところが余り見えていないものですから。

 そうであっても、漁業者あるいは農業者、第一次産業、直接的に影響を受ける皆様方を支えていらっしゃる立場、農水省のトップである大臣には、昨日の関係閣僚等会議では農水省のトップとしてしっかりと御発言をされたのだろうというふうに思いますが、どのような御発言をしてくださったのでしょうか。お伺いしたいと思います。

野上国務大臣 昨日、私からは、まず、原発事故以降、農林水産関係者の方々には復興に向け大変な御労苦をおかけしており、海洋放出された場合の風評被害を懸念し、反対される気持ちは十分理解できると申し上げました。当然のことであると考えております。

 そして、このような状況に鑑みて、海洋放出するのであれば、年間トリチウム放出量を最小限にして風評を抑えることに加えて、今後も福島産の農林水産物を買ってもらえるよう、安全性について国民の皆様や海外に対して丁寧に説明し、理解の醸成を図り、風評を生じさせないための最大限の努力を行っていただきたいと述べたところです。

 また、仮に風評被害が発生した場合には、東京電力が適切な賠償を行うと約束することが重要であるとも申し上げました。

 また、実際に放出が開始されるまでの二年間に、農林水産関係者、特に水産関係者の御理解が得られるように最大限努力してほしいと関係閣僚に申し上げたところでございます。

金子(恵)委員 最後の部分、最大限の努力というのは全てということですか。全ての省庁に対して言っていることですね。農水省だけじゃないということでよろしいでしょうか。

 気になるのが、では、放出するトリチウム年間総量をできるだけ小さくする努力とおっしゃっている、でも実際にそうすると、一回海洋放出が始まりましたら何十年かかりますか。

山口政府参考人 お答えいたします。

 今回の基本方針の中では、年間の排出の総量につきまして、二十二兆ベクレルを下回る水準ということにしておりまして、そういたしまして、現在、これから具体的な年数等については東京電力の方で検討するというふうに承知しております。

金子(恵)委員 全て大臣にお答えいただきたいと思います。

 三十年以上とか、三十年から四十年というふうに言われているわけなんですね。この間、そうすると、今までも、この十年間、ずっと風評被害と戦ってきたわけですけれども、それでも本当に懸命に漁業を諦めないということで頑張ってこられた、あるいは第一次産業を諦めないということで頑張ってこられた福島県民がそこにいるわけですけれども、三十年、四十年、ずっと新たな風評被害とまた戦っていくという可能性があるわけなんです。

 そのことも含め、そして今回、海洋放出が決定されたということで、国内外でも様々な意見はあります。やはり、その決定を批判する声が大きく、御存じのとおり、輸入規制を解除しない国々からもまた厳しい目を向けられているということでありますし、それについて英語圏の報道機関でも相次いで速報が出ていて、関心が高いということも分かるというふうにも思います。

 今回の影響というのは、単に第一次産業だけでもありません、観光業にも関わっていくことですが、そういうあらゆる影響にどのように対応していくのか、大臣の御認識を伺いたいと思います。

野上国務大臣 昨日の関係閣僚会議で決定をされました基本方針の中でも、福島県の漁業また観光、商工業、農林業等につきまして、ALPS処理水の処分に伴い新たに生じ得る風評被害への懸念が示されていることを踏まえて対策を講じることとされています。

 水産業について申し上げれば、福島県の漁業関係者から処理水の処分に伴い新たに生じ得る風評被害への懸念が示されていることとした上で、これらを踏まえて、政府全体として、将来生じ得る風評影響について、現時点で想定し得ない不測の影響が生じることも考えられることから、必要な対策を検討していくこととされております。

 具体的には、これまでも実施してきました生産、流通、加工、消費、それぞれの段階ごとに徹底した対策を講じるほか、基本方針で設置がされましたALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚会議におきまして、水産業を始めとした関係者の御意見を広くお聞きしながら、追加対策の必要性を検討して機動的に実施することとされております。

 さらに、農林水産省としましては、水産物のモニタリングを拡充するとともに、モニタリング結果や安全性に関する分かりやすい説明を情報発信するなどの風評対策にも取り組んでいかなければならないと考えております。

 その上で、仮に風評被害が生じた場合は、東京電力が適切な賠償を行うよう求めてまいりたいと考えております。

金子(恵)委員 風評被害対策としてどのような具体策があるのかというのは、やはり御回答いただいていないんですよね。これからやるということですか、政府の方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議、これは関係九大臣等が参加されるというふうには聞いていますけれども。それをこれから開いて、そこで具体的に丁寧に、頻度を高くしていただいて開催するということもあるんだというふうにも思います。

 もう一点申し上げると、風評被害対策として賠償云々の話がありました。これは、東電に丸投げということなんだというふうに思うんですね。

 もう一つ申し上げると、東電との信頼関係というのは、ここのところ東電の不祥事というのが出ていて全くない状況にもあります。そういう中で本当に大丈夫なのかということ。

 また、さらには、漁業者の方々は、後継者の問題もこれからありますけれども、何十年間取り組まなきゃいけない話になっていくわけですよね、海洋放出するというふうになれば。

 賠償で漁業をなりわいと考えていけるかという話ですよ。漁に出たいんですよ。魚を捕りたいんですよ。本当の漁業者として働きたいんですよ。賠償をもらったって何にもならない。今まで試験操業で大変苦しい思いをしてきた。でも、今度は本格操業だ、前進できるという思いでいた、そういうことなので。

 これまでもそうでした。前回、私が大臣に質問させていただいたときに、仮定のことにはお答えになれない状況のような、そういう御答弁があったり、そしてまた、今回も仮に風評被害がというようなおっしゃり方をするけれども、実際にはもう風評被害が出ていると思ってください。昨日の基本方針が発せられたその段階で、新たな風評被害があるんですよ。それに対して、いや、賠償があるから大丈夫と言うのは、余りにもひどいじゃないですか。

 福島の漁業をどのように守っていくのか、日本の漁業をどのように守っていこうと思っているのか、大臣、お聞かせください。

野上国務大臣 福島県の水産業、そして日本の漁業、これは政府全体としてしっかりと対策を講じて支えてまいりたいと考えております。

 具体的には、例えば、がんばる漁業復興支援事業による漁獲量の回復の支援ですとか、あるいは荷さばき施設などの共同利用施設の整備の支援により、生産段階の支援をしっかり引き続き行ってまいります。

 加えまして、福島県農林水産業再生総合事業等によりまして、水産物の放射性物質検査の推進ですとか、あるいは流通実態調査や商談会の開催といった販売促進の支援、いわゆる加工、流通、消費段階、それぞれの支援も引き続き行ってまいらなければならないと思います。

 また、日本の水産業の現状は、今、不漁やコロナ禍によりまして経営に大きな影響が生じているところであります。全国の漁業者、加工・流通業者などをしっかり支えていかなければならない。

 影響を受けた水産物について、販路の多様化、あるいは学校給食等への食材の提供、新たな販促活動等の取組への支援を行う、さらには、水産物の保管経費や在庫調整措置等々もやっていかなければならないと思います。入国制限に伴う人材不足もありますので、代替人材を確保するための経費なども講じていきたいと思います。

 さらに、昨日の閣僚会議で決定されました、基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚会議、これが設置をされましたので、このような対策を今講じておりますが、更に追加的な対策につきましては、関係者の皆様の御意見を伺いながら検討していかなければならないと考えております。

 農林水産省としては、漁業が持続的に発展していけるような施策を講じる、そして、生産、流通、加工、消費にわたる風評対策を政府全体で実現できるように全力を尽くしてまいりたいと考えております。

金子(恵)委員 私は、大臣はやはり風評被害のことを甘く見ているのではないかなと思っているんです。

 麻生大臣が、飲んでも何ちゅうことのない処理水の海洋放出に理解を求める、そういうニュースが出てしまったんですけれども。別にあの水飲んでも何ちゅうことないそうですから、どんどんタンクを増やしていく経費が減ることになると思いますけれどもねと発言したと。これはニュースですね、報道されたわけですね。

 余りにもひどいなと思います。今までの漁業者の方々の積み重ねというのを踏みにじるようなことですし、本当に安全だったら、こんなに怒りというのは、怒りの渦というのはないと思うんです。だから、どうやって丁寧に今まで説明してきたかというところが全く見えない状況です。

 今何度も申し上げても駄目なので、最後に一点だけ、別なものを質問させていただきたいと思うんですが。

 同じように、海を汚すなという観点から、漁具の海洋流出問題について質問させていただきたいと思うんです。

 プラスチックについては、気候変動問題や海洋プラスチックごみ問題など、様々な問題が今指摘されているんですが、政府もプラスチック資源環境促進法案を今国会に提出しています。私たち立憲民主党も、プラスチック廃棄物削減法案を国会に提出すべく、今議論をし、準備を進めています。

 漁具の海洋流出に関する取組状況についてお伺いしたいというふうに思います。

 環境省としても、毎年行っている海洋ごみ調査、二〇一八年の調査によりますと、プラスチックの漂着ごみのうち、福島県の小名浜でも重量ベースで四分の一が漁具となっていると。また、プラスチックの漂着ごみのうち重量ベースで七割以上を漁具が占める調査地点が、千葉県の富津七七・八%、東京都八丈七二・六%もあり、漂着ごみの多くを漁具が占めるということになっています。

 これは実際に流出した漁具が魚と一緒に底引き網などにかかることで漁業の妨げにもなっているということですので、是非、水産庁としても被害状況を見て取組をしっかりとすべきだというふうに思いますが、見解をお伺いしたいと思います。大臣、お願いします。

野上国務大臣 公益財団法人海と渚環境美化・油濁対策機構におきまして海岸漂着物の組成を平成二十七年から三十年までの四年間調査しましたところ、プラスチック類のうち漁網等の網やロープは、外国から漂着したものも含めて一割から二割程度の調査結果であったとのことであります。

 使用中の漁具の流出ですとか使用済み漁具の不適切な管理による流出は海洋ごみの発生原因の一つでありますので、海洋への漁具流出防止の対策は重要と考えております。

 農林水産省としましては、漁業者による操業前後の点検などを行って、厳しい海況等に起因する漁具の流出を可能な限り防止するよう、事業者団体を通じて指導を行うとともに、荒天などによりまして資材が流出した場合の対策として、生分解性プラスチックを用いた漁業や養殖業に用いる浮き、カキ類養殖の資材の開発等も支援を行ってまいりたいと考えております。

金子(恵)委員 時間が参りましたので終わりますけれども、国が前面に出て、漁具の回収についても是非財政的な支援等について御検討いただきたくお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございます。

高鳥委員長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。

 まず、畜産物の輸出について伺います。

 二〇三〇年までに五兆円の輸出目標なんですが、私は従来からこれにはある意味建設的な批判を加えてきたと思っているんですが、ただ、畜産はその中でも有望だなと思っているんですよ。特に牛肉、私は、富裕層がアジアの中で増えていく中で、ここはきちんと戦略を打てば結果が出てくる分野かなと思っているんです。

 ただ、実行戦略は、二〇二五年に、今、足下の二〇二〇年で五百九十五億円の畜産物を二千六十五億円までにする。特に牛肉は、二百八十九億円から二〇二五年に千六百億円と、その五年後の二〇三〇年に三千六百億円、五年間で二千億増やす、こういうすごい目標なんですね。是非実現してほしいと思うんですが、これは実現できますか、大臣。

野上国務大臣 輸出につきましては、昨年、実行戦略を決定させていただいて、マーケットイン輸出への転換をする、海外市場で求められているスペックの産品を専門的、継続的に生産、販売する体制を整備することといたしました。

 具体的には、日本の強みを最大限に生かす品目別の具体的な目標を設定する。先ほど、その目標につきましては御言及をいただいたところでございます。マーケットインの発想で輸出にチャレンジする農林水産事業者を後押しして、政府一体となって輸出の障害を克服することとしたわけです。

 この考え方の下で、畜産物につきましては、牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵及び牛乳・乳製品を輸出重点品目と位置づけまして、直近五年間の増加率を踏まえて、それぞれに意欲的な輸出目標を設定したところでございます。畜産物輸出促進協議会におけるオール・ジャパンでのプロモーションの取組に加えまして、産地ごとに生産者、事業者、輸出事業者が連携したコンソーシアムを設立して、輸出先国が求めるニーズへの対応、あるいは食肉施設の整備などに対して支援をするほか、輸出先国の規制の緩和等々を図っているところであります。

 特に、御指摘のありました牛肉の輸出につきましては、二〇一五年の百十億円から二〇一九年の二百九十七億円へと二・七倍となっておりまして、大きな伸びが期待をされております。

 今お話をいただきましたとおり、二〇二五年の目標額は二〇一九年実績の五・四倍となる千六百億円と設定しておりますので、この達成に向けましては、まず、和牛の大幅な増頭、増産をしなければならない、生産基盤の拡大を図らなければならない、中国等ニーズの高い国の輸出解禁を図っていく、また、マーケットインの発想に基づいて、今、世界的な内食化の傾向にありますので、それに対応しましたスライス肉ですとか食肉加工品等の輸出促進、あるいはEコマースの推進などを進めることによりまして、輸出目標の達成に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

玉木委員 二〇二五年千六百億円の牛肉の輸出目標なんですが、地域別でいうと一番多いのは中国の四百億円なんですね。

 今、さらっと大臣はおっしゃいましたが、現時点において中国に対する輸出牛肉の実績は幾らですか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 中国につきましては、輸出がまだ再開というか解禁されておらない状況でございますので、現在のところ実績はございません。

玉木委員 あと四年間で四百億をどうやって達成するんですか。一昨年の十一月だったと思いますが、検疫協定が一応結ばれましたよね。二年弱かな、たちますから。動物衛生検疫協定ですね。発効していないじゃないですか。どうやってこれを動かすんですか。それがないと増えないじゃないですか。

 併せて聞きます。今、牛肉が一番出ている輸出先、一位の国はどこですか。

水田政府参考人 中国に対しましては、二〇〇一年の九月、日本でBSEが発生以降、牛肉の日本からの輸出が禁止をされているということ、それから、二〇一〇年に口蹄疫が発生したということでございまして、その後、輸出の解禁に向けました協議を進めてきておりまして、二〇一九年の十一月、御指摘の日中の動物衛生検疫協定というものが署名をされたところでございます。そして、その年の十二月には、中国政府によりますBSE、口蹄疫に関する解禁令が公告をされたということでございます。

 今後の手続といたしましては、中国によります、我が国の食品安全システムを評価していただいて、家畜衛生条件を設定する、そして、輸出施設の認定及び登録、こういった手続がまだ残っておりますので、そういった手続を鋭意進めてまいりたいと考えておるところでございます。

高鳥委員長 一番と言っている。

水田政府参考人 失礼いたしました、輸出が一番多い国がどこかということでございますが、二〇二〇年の実績ではカンボジアが一位になっております。

玉木委員 去年のちょうど同じ日に、当時の江藤大臣が答えています。まず前段の話ね。動物衛生検疫協定が、去年だから一昨年前ですね、結ばれて、技術的な協議を進めていますと当時の新井ゆたか局長が答えているんです。そのときの江藤大臣が、今日はいらっしゃらないな、相当いいところまで来ています、相当いいところまでと。ちょうど一年前にそういう答弁をしているんですが、いいところまで来ていたんじゃないんですかね。まだやっているんですか。いつ中国へ解禁できるんですかね。

 カンボジアに関しては、これも委員会でありましたけれども、カンボジア経由で中国に入れているんじゃないのかという、江藤大臣は当時、都市伝説と言っていましたけれども。マーケットのニーズを把握するという観点からこういう事実は確認されていますか。

水田政府参考人 対中国の輸出解禁、再開に向けました協議につきましては、相手国もあることでございますので、いつまでにどうと言うことができませんけれども、なるべく早くできるように進めてまいりたいと考えております。

 それから、カンボジアへの輸出でございますけれども、それが中国の方に回っているのではないかというあれにつきましては、確認されたものはございません。貿易統計で、カンボジアに日本から輸出されているというものが一番多いということが確認されているということでございます。

玉木委員 もう一年たっているんですよ、対中国については。二〇二五年目標ということは、あと四年ですよね。四百億を達成するのであれば、もっとそういった外交努力を外務省も一緒になってやる必要があると思うんですけれども、そこができないと、スライス肉にした方がいいとか、何とかかんとか言う前に、そもそも、輸入制限をかけているところを撤廃しない限りは輸出は増えないじゃないですか。

 そういうところも一つ一つ潰していかないと目標達成に至らないということで、一年、ちょうど同じ日だからあえて聞いているんです。去年の四月の十四日の参議院ですけれども、そういうやり取りがあったんですが、全く進展がないということについては、大臣、ここはしっかりと、もう一度、現状を踏まえて更にプッシュして。五兆円目標は大変ですよ。私はなかなか難しいと思うんだけれども、ただ、応援する立場で申し上げているので、こういったところを、一つ一つ課題を、国会の中でも取り上げられた問題ですから、一つ一つ潰していってもらいたいなと思います。

 それに関して、輸入制限を課している国が、日本が農産物の輸出を拡大しようとする国に多いんですね。メインランドの中国、香港、韓国。十五か国、実はEUとかアメリカも一部課しています、特に東北五県の農林水産物に関して。

 いわゆる処理水の排出の決定をしたということについては、私は、科学的な根拠に基づいて安全性を確認するということをきちんとやっていくということであれば、それは、科学的に安全であれば、あるいはIAEAなんかも大丈夫ということであれば、一つの、これは苦渋の選択だと思うんですが、ただ一方で、風評被害というのはある種科学を超えたところにあるので、そこは丁寧に丁寧に時間をかけて、地元の皆さんの理解や消費者の理解も含めて、その努力をしていかないと風評被害というのは消えない。

 幾ら日本政府が、安全です、風評被害はないですと言っても、現に、東北の農林水産物を、私からすれば科学的な根拠ではなく輸入規制を課している、そういう国が現に今も存在している中で、いや、風評被害は大丈夫ですよと言っても説得力がないですよ。だって、同盟国であるアメリカも、あるいは韓国や中国や香港も課しているわけですから。

 こういうことを、例えば、RCEPの協議をするときに、RCEPの合意をする一つの条件として、自由貿易を推進する観点からも、こういうものをのけてくれぬかという交渉をしたんですかね、外務省とか内閣府は。そういうところが見えないのに、いや、安心です、安全です、先ほど金子委員からもありましたけれども、飲めますとか言っても、それは信頼できないと思うので。今もなおこうした輸入規制が東北の、特に福島の農林水産物について残っていることについて、いち早くこれをのけてもらう、こういう努力をもっともっとすべきだと思うんですが、いかがですか。

 併せて伺いたいのは、RCEPの交渉の際にそういうことをきちんと関係国に要請したのかどうか。事実関係を教えてください。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 日本産食品に対する輸入規制の撤廃は、政府の最重要課題と考えております。総理及び茂木外務大臣からも、あらゆる機会を捉え、関係国・地域に対し、日本の安全性の確保の取組につき、科学的根拠に基づいた説明を行い、規制撤廃に向けて働きかけをしてまいりました。昨年は、フィリピン、モロッコ、エジプト、UAE及びレバノンが、そして本年一月にはイスラエルが規制を撤廃いたしまして、震災後に規制を導入した五十四か国・地域のうち、現在までに三十九か国・地域で規制の撤廃が実現しております。

 まだ規制が残っている国・地域につきましても、震災から十年の機会を捉え、先月改めて申入れを行うなど、様々な外交機会に早期撤廃を働きかけているところでございます。

 御質問がありましたRCEPにつきましても、規制がまだ残っている国がRCEPの交渉参加国に含まれておりましたので、RCEP交渉の機会に接点を持つ際には、日本産食品の輸入規制の撤廃についても働きかけをしてきたところであります。

 今後、二〇三〇年までに五兆円の農林水産物・食品の輸出という政府目標の達成に資するよう、一日も早い規制の完全撤廃を実現するべく、引き続き全力で取り組んでまいりたいと考えております。

玉木委員 イスラエルとかが輸入規制を撤廃してくれたのはありがたいけれども、五兆円戦略の主要国のほとんどがまだ輸入規制をかけているんですよ。香港、中国、台湾、韓国、マカオ、米国。戦略的に極めて重要な地域でしょう。残ったままじゃないですか。

 こういうことをきちんと取り除いてから、じゃ、もう安全なので、各国も認めました、処理水の方をやりましょうという順番なら分かるけれども、私はこういうところの努力が足りなかったと思いますよ。そのことによって、やはり新たな風評被害を生んでいるんじゃないのか。

 今度、日米首脳会談があると思いますが、アメリカもEUと一緒に、一部の地域の規制をまだ残しています、米国も。こういうところをしっかりと菅総理からも申し入れていただきたいということと、繰り返しになりますが、牛肉に関して、中国もまだ一グラムも入れていないので、カンボジア経由とか香港経由とかではなくて、ここも外交努力をしっかりやっていく。

 目標を掲げるのはいいんです。それを実現するための具体的なステップを、農水省も、そして外務省も、関係省庁が連携して具体的に進めていただくことを、強くここは申し上げたいと思います。

 次に、いわゆるソーラーシェアリングについて伺いたいと思います。三月二十三日の規制改革会議のタスクフォースで示された、いわゆるソーラーシェアリングの要件緩和方針について。

 見ましたけれども、営農型太陽光発電、これまでは八割以上の単収は確保されるということだったと思うんですが、荒廃農地を再生利用する場合は八割以上の単収要件はもう課さない、農地が適正かつ効率的に利用されているか否かによって判断するということにしたので、一定の緩和が進んで、農業と売電収入を組み合わせてやっていくような新しい形態が進むことは私はいいと思うんですね。

 ただ、農地が適正かつ効率的に利用されているか否かというのが非常に定性的な判断なので、現場の農業委員会とか、いろいろなところで判断するときに困るんじゃないのかということ。あともう一つは、本当に再生困難な農地に関して言えば、太陽光発電のために転用することをむしろ積極的に進めるという方針に農水省は変わったのかどうか。確認させてください。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘がございました三月二十三日のタスクフォースで示させていただきました方針についてでございますけれども、御指摘いただきました営農型太陽光発電でございますけれども、これは営農と発電を両立させるための仕組みということでございます。

 ここにつきまして、荒廃農地を再生利用する営農型発電の取組につきましては、荒廃農地の再生に資する一方で、単収八割の確保が困難なケースが生じているということもございまして、単収要件の見直しなども行ったところでございます。

 御指摘いただきましたように、基本的には私ども、しっかり優良農地を守っていくということが基本でございますし、あと、太陽光発電につきましても、営農型につきましては、まさに営農をやりながら太陽光発電もやるというようなシステムでございます。ここにつきましては一定の見直しを行ったところでございます。

 今後とも営農型の太陽光発電につきまして農業と太陽光発電が両立できるような形で取り組んでいくという形で、一定の見直しを行ったというところでございます。

玉木委員 八割の要件は撤廃するということなんですが、農地が適正かつ効率的に利用されているか否かの判断はどういう基準なんですか。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 農地が適正かつ効率的に利用されているか否かということにつきましては、現に耕作の目的に供されておらず、かつ、引き続き耕作の目的に供されないと見込まれる農地、また、その農業上の利用の程度がその周辺の地域における農地の利用の程度と比べて著しく劣っている農地に該当しないかどうかにより判断することとしたものでございます。

玉木委員 今聞いていてもよく分からないので、通知とかガイドラインを出すときには、明確になるように、そういった基準を出していただくことをお願いしたいと思います。

 今日はいろいろ聞くことがたくさんあったんですが、前段の輸入規制のところで時間を取ってしまったので、空振りになった質問があったことはおわびを申し上げます。

 大臣、改めて、今回の、処理水の問題だけじゃなくて、この五兆円を本当に広げていくのであれば、大事な国々に様々な、関税ではない、いろいろな規制がかかっています。かつてのオーストラリアがそうです、TPPのときに関税がゼロになったんだけれども、検疫で、一グラムも入れないということだったんです。それを外してくれました。ですから、ここの、輸入規制をきちんと取り除くというところが実は五兆円の戦略にとっては私は最も大事なファーストステップだと思っていますので、その点、風評被害の払拭のためにも是非農水省としても努力していただくことをお願い申し上げて、質問を終わりたいと思います。

高鳥委員長 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一です。

 池江選手の大活躍もありまして、オリパラに関しての期待感というのも高まってきたんだろうなというふうに思っております。そういう意味で、今日はオリパラの選手村の食事をお聞きしようと思うんですけれども、先ほど堀越議員からアニマルウェルフェアの話がありましたが、その続きというような部分もございます。

 まず最初に、日本中央競馬会特別振興助成事業の「アニマルウェルフェアの向上を目指して」という資料があります。農水省のページのアニマルウェルフェアの表題の下の方に、外部リンクということで公益社団法人畜産技術協会が開けられるようになっていて、そこからこの「アニマルウェルフェアの向上を目指して」というのが出てくるわけですけれども、この資料を農水省は利用しているのでしょうか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の資料でございますが、これは、平成二十六年の三月に、公益社団法人畜産技術協会が、それぞれの畜種ですね、肉用牛、乳用牛、ブロイラー、採卵鶏及び豚につきまして、生産現場におけるアニマルウェルフェアの取組を進めるために作成したものであると承知しております。

 この資料でございますけれども、畜産技術協会は国の支援を受けまして、アニマルウェルフェアの考え方に対応した家畜の飼養管理指針というものを作っておりますけれども、この内容を引用しながら、写真などを用いることにより、具体的な対応例を分かりやすく、アニマルウェルフェアについて説明をしたものということでございます。

 農林水産省といたしましても、これまで、アニマルウェルフェアに関する講習会などの場でこの資料を活用するなどしてきたところでございます。

串田委員 資料としては添付しておりませんが、ホームページから御覧いただけるものなんですけれども、内容は非常にすばらしいと私は思っております。日本中央競馬会の特別振興資金助成事業ということで行われているということでございますが、今指摘されました公益社団法人畜産技術協会の、アニマルウェルフェアの考え方に対応した採卵鶏の飼養管理指針というのが令和二年三月に出ているということです。

 私が質問しようと思った動機というのは、この「アニマルウェルフェアの向上を目指して」というのが、畜産技術協会だけではなくて、北海道大学や東北大学、信州大学や麻布大学が一緒になって行った平成二十六年三月の資料であります。それに対して飼養管理指針は、令和二年三月、公益社団法人畜産技術協会が単独で出されているわけなんです。

 今、写真等をいろいろ利用されているということなんですけれども、是非御覧いただきたいと思うんですが、せっかくすばらしい「アニマルウェルフェアの向上を目指して」というものが飼養管理指針になっている。私から見ると、全く生かされていないんじゃないかというふうに思わざるを得ないわけでございます。そこで、少々その点についてお聞きをしたいんです。

 「アニマルウェルフェアの向上を目指して」の冒頭に「EUやアメリカの現状」と書かれていますけれども、この内容について農水省はどのような受け止め方をしているでしょうか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の冊子の二ページのところに「EUやアメリカの現状」ということが書かれているわけでございますけれども、これに関しまして、特に採卵鶏の関係について申し上げますと、EUが二〇〇八年の一月八日にEUの域内におきましてバタリーケージによる採卵鶏の飼養を二〇一二年一月一日から禁止するという措置の猶予期限の見直しは行わないという発表をいたしておりまして、禁止がされるということになったわけでございます。

 これにつきましては、EUはバタリーケージよりもエンリッチドケージや平飼いの方にアニマルウェルフェア上の利点があると判断したというものでございますけれども、日本の場合、湿潤な気候でございまして、細菌が繁茂しやすいという環境でございますので、気候条件が異なるということで、EUの結果がそのまま日本に当てはまるものではないというふうに理解をしております。

 また、アメリカの一部の州においてバタリーケージ飼育が禁止されているということでございますけれども、平成元年度のOIE総会では、アメリカからは、止まり木などの設置を必須とするOIEの二次案に対しまして、全ての飼養形態が認められていた一次案に戻すべきとの発言があり、二次案については不支持ということでございましたので、アメリカ全体としてはバタリーケージ飼育を禁止するような状況ではないというふうに理解をしております。

串田委員 今お答えいただいているのを聞いていただければ分かりますように、「アニマルウェルフェアの向上を目指して」というのは、EUやアメリカの現状を端的に、EUは二〇一二年から従来型ケージ飼育を禁止したんだ、アメリカも幾つかの州で従来型ケージ飼育を禁止し、生産者団体もアニマルウェルフェアへの対応に向けて様々な検討を行っていますと書いてある。

 そして、その下に「加速する国際機関での動き」というふうに書いてあって、ISOでもアニマルウェルフェアの技術仕様書の作成に関する検討を始めるなど、国際機関においてアニマルウェルフェアに関する検討が積極的に進められていますということで、一番最初の表題の「アニマルウェルフェアの世界的動向」という紹介がなされているわけなんですが、先ほど言いましたように、この飼養管理指針が令和二年になると全く生かされていないというのはまさに今の答弁のとおりで、こういう動きがあるけれども、そういう違う動きもあるんだということで、現状を維持するというような状況になっている。

 先ほどオリパラの話をしましたが、今、EUが禁止をしている、そういう国から日本に、オリンピック・パラリンピックにアスリートが参加してくるわけですね。そういう選手からすると、禁止されている食べ物を出してもらいたくないということで、今、キャンペーンで、日本の選手村ではバタリーケージの卵はやめてくださいというキャンペーンがなされているわけでございます。

 採卵鶏の飼養管理指針、令和二年には「各飼養方式の特徴を以下に記すが、ケージ方式以外の飼養方式に関する知見が少ないこと、わが国の飼養方式は、現時点ではケージ方式が主流であること等から、本指針では、構造及び飼養スペースについては、ケージ方式を基本に記述する。」というふうになっているわけなんですね。

 「アニマルウェルフェアの向上を目指して」というのは、まさにそれは、世界はそうではない動きになっているんですよというのをせっかく日本中央競馬会の特別振興資金助成事業で提示して、これを生かしてほしいということでこういう資料を出されているにもかかわらず、その後の部分に関しては、現在はケージが主流だからケージを前提にして書くということになると、何が生かされているんだという質問をさせていただきたくなるのは当然ではないかと思うんです。

 そもそも農水省は、国際機関が加速しているという認識はあるんですか。それとも、ここの記述は間違っているんですか、加速していないんですか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の冊子、資料でございますけれども、作成されましたのが平成二十六年の三月ということでございまして、OIEから採卵鶏のアニマルウェルフェアに関する指針の一次案というものが示されたのはその三年後の平成二十九年九月でございまして、それより以前に作成された資料でございます。

 資料が作成された時期は、OIEにおきまして、順次各畜種におけるアニマルウェルフェアに関する指針案の検討が進められておったということでございまして、採卵鶏はまだでございましたけれども、その後、採卵鶏についても指針が作成される、検討が進められるということが予想されたということもございまして、「加速する国際機関での動き」というような記述がなされたということでございます。

串田委員 今の説明を聞いても何を言っているのか全然分からないんですけれども、国際機関というのはかなり加速しているんだろうというふうに思っていただきたいんですよ。特に二〇二五年は、すごく大きな、世界的にも大きな企業が一斉にケージフリーの卵に移ろうとしているじゃないですか。

 私が申し上げているのは、先ほど大臣が堀越委員の質問に対して、バタリーケージのメリットも御指摘されました。メリットもあるんだと思うんですよ。ただ、国内だけでそのことを言い続けて、世界の流れから遅れてしまっていいんだろうかということを申し上げているんですね。

 要するに、これを言っているのは、畜産業を何か非難するということではなくて、畜産業をこれからも日本としては支援していくためにも、世界から非難されないような畜産業にしないといけないんじゃないかと。玉木委員からも輸出の件がありましたが、輸出をしたいのだったら世界標準の、そういう飼養環境になっていなければ世界は受け入れないですよということを申し上げているわけでございます。

 「アニマルウェルフェアの向上を目指して」の中に、「正常行動等の発現を促すための工夫」ということで、アニマルウェルフェアの向上を図るためには、五つの自由の観点から、日常の飼養管理や取組について改めて見直すことが重要ですと。改めて見直すことが重要ですということを指摘しているのに、今の答弁だと、見直す必要はないんだ、そういうことをずっと言っているんじゃないかとしか思えないんですね。正常な行動ができる自由については、それを保証するために飼育システムの変更など経済的負担が伴うことから、いろいろなシステムの導入を検討することも必要になってくるということでございます。

 元農水大臣への現金提供もありましたけれども、現実にすごく資金がかかるというのは飼養管理指針にも書かれているわけですよね。一時的に多額の投資が必要になると。ですから、それを、世界がそういう流れになってしまって、国に支援してもらえなければ畜産業はやっていけないという危機感というのもあったんだろうなと。別に弁護するつもりはありませんけれども。

 国も、今の現状が世界からかなり取り遅れているということに関して、それを変えていかなければいけない畜産業に対する、一時的に多額な資金が必要だというから変えられないんだ、変えないでほしいというようなことを陳情し、そういう動きも出てきてしまうわけですから、国としてアニマルウェルフェアへの転換を支援していくということが、私は今、日本の畜産業を守るために必要なんだろうというふうに考えているわけでございます。

 改めて見直すことが重要であるという指摘に関しては、農水省としては、一次とか二次とか、また一次に戻りましたとか、そういう答弁はありましたけれども、改めて見直すことが重要であるという認識はないんですか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 我が国で広く飼われております、バタリーケージ飼いでございますけれども、五つの自由という観点で見ますと、それぞれ実現の程度に濃淡があるものの、全て実現することができるということでございます。

 具体的には、通常の行動様式、正常の行動様式とこの資料では書いてございますが、今、通常の行動様式を発現する自由というふうにOIEでは言っております。バタリーケージでは止まり木とか営巣の区域は設置されていないということでございますが、一方、羽ばたき等の行動を抑制しているものではないという点では実現していると考えております。また、その他の自由につきましても、施設のみならず日頃の飼養管理といったものを含めた総合的な取組によって、バタリーケージにおいても五つの自由が実現可能というふうに考えているところでございます。

 一方で、御指摘の資料にバタリーケージの改良をするとかそういったものも入っておるわけでございますけれども、バタリーケージに止まり木とか巣箱や砂浴び場を設置するような工夫をすることについては、いろいろと試験研究が行われたことがございましたが、改造に多くの労力を要するにもかかわらず、エンリッチドケージのデメリットでございます、営巣の区域等を設置しますと寄生虫が発生するとか、止まり木の設置によりまして骨折が生じやすい、こういったデメリットもありますので、現場での普及には至っていないということでございます。

 しかしながら、こうした中ではございますけれども、先ほどおっしゃられた、施設整備等に非常に大きな資金がかかる、経済的に負担になるということでございますけれども、鶏舎の整備への支援につきましては、バタリーケージだけでなくてエンリッチドケージ、それからエイビアリー、多段式平飼い方式なども含めまして支援の対象としております。

 その際、強い農業・担い手づくり総合支援交付金の産地基幹施設の支援タイプにおきましては、アニマルウェルフェアの要素を含むGAP等の認証を取得している場合には、加算ポイントを設け採択されやすくする優遇措置を平成三十年から講じているところでございまして、こうした見直しの措置も含めましてアニマルウェルフェアの推進を図ってまいりたいと考えているところでございます。

串田委員 ところで、オリパラの選手村の先ほどの話もあるんですが、EUからやってくる選手というのは元々、二〇一二年からバタリーケージの卵は食べていない、そういうものをやめてくれというキャンペーンがあるわけですけれども、現実に選手村では卵は何を使うんでしょうか、飼養環境に関して。具体的にお答えいただきたいと思います。

勝野政府参考人 お答えします。

 東京大会の選手村で食べられる食材に関しましては、持続可能性に配慮した畜産物の調達基準、これに基づいて調達されるということになっておりまして、この中でアニマルウェルフェアに配慮した基準というのも含まれておるということで、そういったものが調達されるというふうに承知しております。

串田委員 ですから、具体的に卵が、今、世界的にバタリーケージかそうでないのかというのが大きな問題になっているので、アスリートがバタリーケージの卵はやめてくれとキャンペーンで、何人もの人がキャンペーンをしているから、どういう卵を出すんですかと具体的に聞いているんですよ。

勝野政府参考人 お答え申し上げます。

 組織委員会で調達する食材に関しては、具体的には、飲食提供事業者が決まっておりまして、ここが購入するということになっております。この購入の際に調達基準に則して調達するということになっておりますので、基準を満たした卵が調達されるということになっております。

串田委員 ロンドンもリオも、しっかりと、卵に関しては、どういう卵なのかと表示しているわけですから。そして、世界のアスリートがやめてくれと言っているわけでしょう。そうしたら、選手村でトラブルになるじゃないですか、この卵は何ですかって。それはおかしいんじゃないかなと思うんですけれども。

 いろいろほかの質問もありましたが、時間がないので、最後に大臣に。

 ケージ関係に関しては、世界的な流れとして採卵鶏のケージ飼育が問題視されていますというのがこのアニマルウェルフェアの中に書かれていますけれども、これに関して、認識と目標をお聞かせいただきたいと思います。

野上国務大臣 御指摘の資料は、今ほど来御議論いただきましたとおり、畜産技術協会が生産現場におけるアニマルウェルフェアの取組を進めるために作成したものでありまして、農林水産省としても、これまで、講習会などの場でこの資料を活用するなどしてきたところであります。

 今ほど来、バタリーケージあるいはエンリッチドケージ等々のそれぞれのメリットやデメリットについて答弁をさせていただいてきたところでありますが、このメリット、デメリットについて一概に科学的な優劣をつけることは難しい中で、やはり、アニマルウェルフェアというのは飼養管理における総合的な取組によるものであるということ、また、生産者による設備投資の努力のみならず、畜産物の販売価格への影響という点を含めて消費者の理解も必要であることから、一律にケージ飼いを禁止するということではなくて、アニマルウェルフェアの取組を推進する重要性やメリットを示しつつ、今申し上げた生産者や消費者の理解を得ながら時間をかけて取組を拡大していくことが重要と考えております。

 このため、四月六日の本委員会でも先生に答弁させていただいたとおり、アニマルウェルフェアの一層の普及を進めるに当たっては、家畜が少しでも望ましい形で飼育されるように、専門家の御意見も伺いつつ、どのような技術的な対応が可能なのかも含めて、更に検討を進めてまいりたいと考えております。

串田委員 時間になりましたが、鶏は、庭の鳥なのでニワトリというわけで、ワイヤーの中にいないんですよね。是非、自然の中で活動できるような状況にしていただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 今日は、除草剤グリホサートの問題について質問します。

 日本の小麦の食料自給率は一六%で、多くを輸入に頼っています。農水省の発表によれば、食用の輸入小麦から六十四種類の残留農薬が検出され、除草剤グリホサートは百五十サンプル中百二十一の高い確率で検出されています。グリホサートは、アメリカのモンサントが開発して、ラウンドアップの商品名で広く使われています。

 では、小麦を原料とする商品についての調査はどうなっているんでしょうか。小麦を使った食品のグリホサートの残留検査は政府として行っていますか、教えてください。

高鳥委員長 時計を止めてください。

    〔速記中止〕

高鳥委員長 速記を起こしてください。

 天羽政策統括官。

天羽政府参考人 国内で流通している食品の残留農薬の検査などは厚労省が所管していると承知をしております。

田村(貴)委員 そういう結果があるんですね。商品についての残留検査、政府として行っているんですかと私は聞いているんですけれども。

天羽政府参考人 私どもとしてはお答え申し上げられません。

田村(貴)委員 よく分からないので、皆さんに今日は資料を持ってまいりました。

 農民連の食品分析センターがカップ麺やインスタントラーメン、乾麺などを調査したところ、十六製品中十製品からグリホサートの残留が検出され、特に北米産小麦から高い確率で検出されているわけであります。コロナ禍の中で、いわゆる巣ごもり需要で、カップ麺などの消費が伸びています。大変気になる数値であります。

 グリホサートは、近年、国際学術誌などで健康障害に関する多数の論文が発表されて、広範な健康影響が取り上げられています。そのため、世界各国では、グリホサートの使用規制、禁止に向けて多くの国が動き出しています。日本では、二〇一七年に残留基準値を大幅に緩和し、使用量が増えているわけであります。逆行しています。

 お尋ねします。農水省が登録を許可したグリホサート製剤は百十三種類に上って、グリホサート系の農薬の国内出荷量は二十年間で三倍にも増えています。農水省は、使用量が多い農薬について、二一年以降、新たな科学的知見に基づき優先的に再評価する意向を示しているわけですけれども、グリホサートについてはいつ再評価を行うのでしょうか。

新井政府参考人 お答えいたします。

 農薬につきましては、改正されました農薬取締法に基づきまして、登録されている全ての農薬でございます、全ての農薬につきまして今年度から順次、最新の科学的知見を踏まえた再評価を行うことにしております。

 グリホサート、四つの有効成分、百十三の剤でございますけれども、これにつきましては、令和元年九月に告示を行いまして、本年度の第四・四半期中に必要な試験結果を提出するよう求めているところでありまして、提出を踏まえまして再評価を開始することとしております。

田村(貴)委員 時期については未定ということですね。

 現在、グリホサートやグリホサート製剤の健康への影響に関してたくさん指摘がされています。発がん性、環境ホルモン作用、出生異常、生殖系への影響、脂肪肝、自閉症など発達障害、パーキンソン病、急性毒性としての皮膚炎、肺炎、血管炎。日々、多数の論文が発表されています。世界各地で発表されているので、紹介したいと思います。

 三月には、アメリカのマウントシナイ医科大学、ミネソタ大学、ワシントン大学、イタリアのボローニャ大学から、妊娠中の暴露による内分泌攪乱により女児の肛門性器間距離が男性型に近づくと発表されています。

 二月には、土壌細菌の遺伝的組成が変化して抗生物質耐性遺伝子が増加している、これはイギリスのヨーク大学です。

 一月には、ロンドン大学から、低濃度グリホサートが人の腸内細菌叢を変化させる可能性があると発表があっています。

 十二月には、千葉大学から、グリホサート暴露が子孫の自閉症の原因になる可能性があると発表されています。

 昨年の十一月、低い濃度でヒト精子のミトコンドリアに悪影響を与える、これはイタリアのサレント大学。また、フィンランドのトゥルク大学からは、グリホサートが人の腸内細菌叢の約半分に影響を与える可能性があるとされている。

 十月、チリのタラパカ大学、アメリカのコロンビア大学メディカルセンターから、グリホサートが内分泌攪乱物質の特性を持っていると発表されています。

 半年間ぐらい見たんですけれども、相当な研究発表の量であります。

 お伺いしますけれども、こうした科学的知見というのは評価の際にどのように反映されるんでしょうか。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘がございましたいわゆる公表文献、公表論文につきまして説明申し上げます。

 食品安全委員会は、残留農薬の食品健康影響評価に当たりまして、これまでの評価結果及び国内外の安全性評価の考え方を基本に評価指針を取りまとめているところでございます。

 この評価指針におきましては、公表文献は、リスク管理機関から提出され、残留農薬のリスク評価を行う農薬専門調査会が使用可能と判断したものを用いることとしております。

 農薬専門調査会では、公表文献は、いわゆるGLP基準に従って実施される安全性試験とは異なり、評価の目的との適合性や結果の信頼性は様々であるといったことから、その使用に当たり、研究内容について評価の目的との適合性及び結果の信頼性に対する検討を実施することとしております。

 以上でございます。

田村(貴)委員 世界各地でこれだけ多面的な健康影響が出るという知見が出されているわけですから、既存の毒性評価では不十分ですよ。しっかりと参考にされていただきたいと思います。

 加えて、補助剤の問題があります。フランスのカーン大学のセラリーニ教授の研究グループは、ラウンドアップの補助剤の一つ、界面活性剤POEA、これがグリホサート単体に比べて毒性が一千倍以上あることを示す研究結果を二〇一七年に発表しました。一日許容摂取量と残留基準値の設定には安全係数の積み増しが必要だ、市販農薬の全ての成分が同じリスク評価を受けるべきであると指摘しました。

 また、二〇一八年、ロンドン大学の研究者らも、市販の農薬に含まれる界面活性剤などの補助剤が主成分よりも毒性が高いとして、補助剤に対する新たな規制が必要とする研究結果を発表しました。

 POEAは、主成分のグリホサートが植物の細胞膜を通過するのを助けるために必ず含まれています。次回の評価の見直しの際には、POEAの毒性、補助剤についても検査すべきではないでしょうか。

野上国務大臣 御指摘のPOEAでありますが、POEAを始めとした補助成分は、作物や害虫への付着性の向上等を目的として農薬の製剤に添加される物質であります。

 農薬の登録に当たりましては、有効成分や補助成分を加えた製剤それぞれについて必要となる試験成績を求めて、農産物への残留ですとかあるいは人の健康に対する急性の影響等を評価して、安全性を確保しているところであります。

 一方で、欧米では、今お話がありましたとおり、補助成分単独での評価を行っている国があることは承知しておりまして、農薬を安心して使用いただくためにも、その取扱いの検討が課題と認識をいたしております。関係府省庁とも連携して、専門家の意見も聞きながら現在検討を進めているところであります。

田村(貴)委員 是非、補助剤についても単独で検査すべきだというふうに申し上げておきたいと思います。

 EUでは、POEAは、二〇一六年にグリホサートの登録許可を暫定的に延長するように決めた際に使用を禁止しています。しかし、日本では、補助剤の方がはるかに毒性が強いにもかかわらず、主成分だけで安全性を評価して、次々と商品化が認められているわけであります。

 大臣、続いて、安全性を評価して、必要があれば使用を禁止する、そういう措置も必要ではないでしょうか。いかがでしょうか。

新井政府参考人 お答え申し上げます。

 農薬の登録、それから今回の再評価もそうでございますけれども、事業者に必要な試験データを求め、農薬取締法におきまして科学的知見に基づいて判断をするということでございます。仮に、農薬の取消しをしない、あるいはするといった場合には、それらの科学的な知見に基づいて判断してまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 POEA以外にも、いろいろな添加剤、補助剤が農薬に含まれています。安全性審査は、こうした添加物についても今審査しているんでしょうか。

新井政府参考人 お答え申し上げます。

 現在の農薬の登録のデータの要求の考え方でございます。有効成分と製剤についてそれぞれデータを求めるということでございまして、大臣から答弁をしていただきましたけれども、補助成分のみの評価というのは現在の制度では行っておりません。しかしながら、重要な課題と認識しておりますので、今検討を進めているところでございます。

田村(貴)委員 製剤での審査内容は急性毒性のみであります。肝心の発がん性に関わる慢性影響については考慮されていません。

 慢性毒性の評価について質問します。

 欧州司法裁判所は二〇一九年に、農薬は、単独の有効成分だけでなく、その売られている製品の安全性が審査されなければならず、急性毒性だけでなく、慢性毒性と発がん性試験を行わなければならないという判決を出しています。慢性毒性についても評価すべきではないでしょうか。

新井政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、日本におきます製剤の評価におきましては、急性毒性、農家の方が暴露された場合の目への刺激性でありますとか、圃場での暴露といったものが中心になっております。

 慢性毒性につきましては、試験の方法につきまして、非常に多くの動物、一回の試験で四百匹のラットを使用するでありますとか、なかなか時間がかかるといった問題点がございます。

 委員の御指摘で、EUで製剤について慢性毒性の試験を要求しているというお話がございましたが、事務方が承知している限り、EUでも製剤についての慢性毒性の試験は要求していないというふうに承知をしております。

田村(貴)委員 現在使用されている農薬全体について、慢性の無毒性量をやはり調べるべきだ。そして、種類が多過ぎてできないのであれば、安全係数を上げる必要があるんじゃないでしょうか。安全係数一〇〇というのは、これは私はなかなか根拠はないと思いますよ。ですから、一〇〇ではなくて、もっと引き上げるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

新井政府参考人 お答えいたします。

 評価に際しましてどのようなデータを要求するのかということにつきましては、やはり専門家の知見を仰ぐということが必要だと考えております。委員の御提案につきましては、専門家に諮って結論を出したいと考えております。

田村(貴)委員 あらゆる健康障害の可能性が指摘されているわけです。そうであるならば、安全の範囲が今は分からないのであれば、予防原則の観点から引き上げていくべきだと私は思います。

 農薬調合の内容は企業秘密とされて、非公開のものが多いです。日本で行われている安全性審査は、企業が提出したデータのみに基づいて行われているんでしょうか。

新井政府参考人 お答えいたします。

 農薬登録申請の際に農薬メーカーが提出する試験の結果は、農薬の効果と安全性を審査する上での根幹ということでございますので、その信頼性を確保することは極めて重要というふうに考えております。

 試験結果の改ざんはあってはならないことでございまして、これまでも、申請時に厳正な審査を行うとともに、GLPの基準として、試験を実施する施設の組織体制や試験・操作手順、記録の保全、施設内での監査の実施等を定めることで、改ざんの未然の防止に努めているところでございます。事業者にこれらのデータを求めるという点につきましては、農薬のみだけではなく医薬品も同じでございまして、世界的に共通だというふうに認識をしております。

 さらに、試験施設につきましては、独立行政法人の農林水産消費安全技術センターが基準を満たしているかどうかを定期的に確認するということにしているところでございます。

 加えまして、二〇一八年の改正農薬法におきましてはこれらの取組を、GLP基準を申請時に提出する試験結果が必ず満たすべき法律上の義務として明記することによりまして、より厳格な仕組みを導入したところでございます。

田村(貴)委員 政府において、客観的な検証をしっかりと行っていただきたいと思います。

 大臣にお伺いします。

 るる述べてきました。グリホサートと補助剤の毒性について、かなり危険性があります。世界中で様々な角度で人体への影響が検証されています。使用を禁止する、あるいは規制する国も増えています。長年の暴露、摂取による病気あるいは健康障害、これは今は分からないけれども、予防原則の観点に立ったらグリホサートの使用は禁止すべきではないかというふうに考えますが、大臣、いかがでしょうか。

新井政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しの答弁になり恐縮でございますが、農薬取締法におきましては、登録、再評価等につきましては科学的知見に基づいて判断をするということでございますので、今後とも、そのような趣旨で判断をしてまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 大臣、同じ質問です。

 今の段階で長年摂取することによる健康障害というのは因果関係が分からないか、あるいは解明できないかも分からないけれども、これだけの世界中の識者が、あるいは知見で危険性、安全性を指摘されているんだったら、やはり予防原則の観点に立ってこういうグリホサートの使用は禁止すべきではないかと思うんですけれども、予防原則の観点、いかがでしょうか。

野上国務大臣 今申し上げたとおり、科学的知見に従って判断をしていくことだというふうに考えております。

田村(貴)委員 大臣、そうはおっしゃるけれども、世界では、毒性が明らかになる中で、各国で規制が広がっています。

 それで、製造元のバイエルは、健康被害による訴訟で多額の損害賠償を強いられ、何と昨年は一兆円払うと発表もされています。株価も落ち込んでいる。そういう事態となっているわけなんですよね。

 最後に、小麦や大豆を九割輸入する、九割を依存している日本にとって、グリホサートの毒性に暴露している可能性は極めて高いです。北米小麦からの汚染度も高く、その小麦から造られるパンの汚染度も高いわけです。ビールやワインからも検出されています。

 給食パンについて最後にお伺いします。

 学校給食のパンからもグリホサートが検出されています。残留農薬の高い二等級、三等級で造られて、等級の低い小麦粉は味が落ちるので、多種の食品添加物が使われることが多いわけです。子供たちが毎日食べる学校給食のパンに残留農薬、食品添加物という危険が潜んでいます。学校での輸入小麦の使用、これは調査をして見直していくべきではないでしょうか。

高鳥委員長 既に時間が経過しておりますので、簡潔にお願いいたします。

野上国務大臣 国家貿易により農林水産省が輸入する小麦につきましては、全て残留農薬等の検査を行っておりまして、厚労省が定める食品衛生の基準に適合するものを輸入、販売しております。

 輸入した小麦のグリホサートの検査結果は全て基準値以内となっております。

 このため、輸入小麦は食品衛生法の基準に適合しておりまして、学校給食での輸入小麦の使用率の調査をする必要はないと考えております。

田村(貴)委員 予防原則に基づいたグリホサートの国内使用の規制や、残留農薬基準の厳格化を求めて、今日の質問を終わります。

     ――――◇―――――

高鳥委員長 次に、内閣提出、畜舎等の建築等及び利用の特例に関する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣野上浩太郎君。

    ―――――――――――――

 畜舎等の建築等及び利用の特例に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

野上国務大臣 畜舎等の建築等及び利用の特例に関する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 近年の経済連携協定の締結による関税削減等により畜産物の価格の低下が見込まれる一方、経済連携協定による輸出相手国の関税撤廃等により我が国の畜産物の輸出は着実に増加しており、これを拡大する絶好の好機でもあります。このような中、我が国の畜産業の国際競争力を強化し、その振興を図るためには、省力化機械の導入による生産性の向上や、増頭による経営規模の拡大を進めていくことが必要であります。しかしながら、省力化機械の導入や増頭を行うためには、通常、畜舎等の建築等が必要となりますが、その際、建築基準法に基づき行う畜舎等の建築等に係る負担が畜産業の経営実態から見て大きくなってきているところです。

 こうした状況を踏まえ、建築基準法によらず畜産業の経営実態に合った畜舎等の建築等ができるよう、畜舎等の建築等及び利用に関する計画の認定制度を創設し、その認定を受けた計画に基づく畜舎等の建築基準法の特例を定めるため、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、本法律案が対象とする畜舎等についてであります。

 一定の高さ以下の平屋で建築士により設計された家畜の飼養の用に供する施設及びこれに関連する施設並びに堆肥舎であって、市街化区域等以外の区域において新築、増改築等が行われるものを本法律案の対象とする畜舎等とすることとしております。

 第二に、計画認定制度の創設についてであります。

 建築基準法の緩和を受けようと希望する者は、畜舎等の建築等及び利用に関する計画を作成し、その計画が畜舎等の利用の方法について畜舎等における一日当たりの滞在時間の制限等の利用基準に適合すること、また、畜舎等の構造等について利用基準に適合する利用の方法と相まって安全上支障がないこと等を定める技術基準、すなわち建築基準法よりも緩和された技術基準に適合していること等について都道府県知事の認定を受けることができることとしております。この場合において、一定の規模以下である畜舎等については技術基準への適合審査を不要とすることとしております。

 第三に、建築基準法令の適用除外であります。

 前述の都道府県知事の認定を受けた計画に基づき建築等がされた畜舎等については、建築基準法並びにこれに基づく命令及び条例の規定は適用しないこととしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

高鳥委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十一分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.