衆議院

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第7号 令和3年4月21日(水曜日)

会議録本文へ
令和三年四月二十一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 高鳥 修一君

   理事 加藤 寛治君 理事 齋藤  健君

   理事 津島  淳君 理事 宮腰 光寛君

   理事 宮下 一郎君 理事 亀井亜紀子君

   理事 矢上 雅義君 理事 稲津  久君

      穴見 陽一君    伊東 良孝君

      池田 道孝君    泉田 裕彦君

      上杉謙太郎君    江藤  拓君

      金子 俊平君    木村 次郎君

      小寺 裕雄君    佐々木 紀君

      斎藤 洋明君    鈴木 憲和君

      中曽根康隆君    西田 昭二君

      根本 幸典君    野中  厚君

      福田 達夫君    福山  守君

      細田 健一君    渡辺 孝一君

      石川 香織君    大串 博志君

      金子 恵美君    神谷  裕君

      近藤 和也君    佐々木隆博君

      高木錬太郎君    緑川 貴士君

      濱村  進君    田村 貴昭君

      串田 誠一君    玉木雄一郎君

    …………………………………

   農林水産大臣       野上浩太郎君

   農林水産副大臣      葉梨 康弘君

   経済産業副大臣      長坂 康正君

   農林水産大臣政務官    池田 道孝君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 遠藤 和也君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           新井ゆたか君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  水田 正和君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  光吉  一君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            牧元 幸司君

   政府参考人

   (水産庁長官)      山口 英彰君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           黒田 昌義君

   政府参考人

   (気象庁地震火山部長)  森  隆志君

   農林水産委員会専門員   森田 倫子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十一日

 辞任         補欠選任

  今枝宗一郎君     穴見 陽一君

  上杉謙太郎君     中曽根康隆君

  佐藤 公治君     高木錬太郎君

  藤田 文武君     森  夏枝君

同日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     今枝宗一郎君

  中曽根康隆君     上杉謙太郎君

  高木錬太郎君     佐藤 公治君

  森  夏枝君     串田 誠一君

同日

 辞任         補欠選任

  串田 誠一君     藤田 文武君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 畜舎等の建築等及び利用の特例に関する法律案(内閣提出第四五号)


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     ――――◇―――――

高鳥委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、畜舎等の建築等及び利用の特例に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省消費・安全局長新井ゆたか君、生産局長水田正和君、経営局長光吉一君、農村振興局長牧元幸司君、水産庁長官山口英彰君、外務省大臣官房参事官遠藤和也君、国土交通省大臣官房審議官黒田昌義君及び気象庁地震火山部長森隆志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。渡辺孝一君。

渡辺(孝)委員 皆さん、おはようございます。自由民主党の渡辺でございます。

 今日は、本法案のトップバッターを切らせていただきました。宮腰先生始め理事の皆様、御質問の機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。何せ、何年かぶりでございますので非常に緊張しております。しばらく農水委員会から離れておりましたので、是非、聞き苦しい点がありましたら、御容赦をお願いしたいと思います。

 ただ、その前に、今、日本全国、各地でコロナウイルスが猛威を振るっております。私も、大変月並みな言葉で申し訳ないんですけれども、本当に、感染なされた方には一刻も早く回復してほしい、さらには亡くなられた方々にはお悔やみを申し上げ、そして医療関係者始め各地のいろいろな方々がこのコロナと戦っているということを我々国会議員も肝に銘じて、今後どうすべきかということを更に真剣に話し合っていかなければいけないのかと思っております。

 一日も早くコロナを収束、克服し、元の日本に戻っていただければと。それが一番ではないかと思っております。もちろん農業界も大きな影響を受けておりますので、みんなでコロナに対して戦っていかなければいけないのかなと思っております。

 さて、この話が表に出たときに、たまたまなんですけれども、我が地区に実は小平町という町がございます。そこは、小平牛という和牛の生産地でもございます。ただ、総じて十七戸の農家の方々が細々と牛を飼っているという状況で、そうはいいましても小平牛はA5のランクをいただいておりますので、これを何とか残していきたいということで町長が英断しまして、公設民営、地方でしっかりと牛舎を建てて、町のブランドをしっかり守っていくんだということを掲げまして、十七戸の農家の方々の協力を得ながら世界のブランドにしようということで気勢が上がっております。

 この小平町、正直申し上げまして、三千百人程度の町でございますし、東京から比べると大変小さな町ではございますけれども、その小さな町でも気勢を上げて、世界に向かっていこうという意気込みに関しては、最後に大臣にもエールを送っていただければありがたいなというふうに思います。

 計画が初年度は三百五十頭ぐらい、皆さんの牛を集めてスタートするようですけれども、将来、千頭ぐらいまで増やさないことにはなかなか流通に乗れないということで、今、その計画を着々と進めております。

 しかし、その十七戸の農家の方々は、御多分に漏れず、二、三人の方とは私もお会いしましたけれども、高齢化で、そして後継者がいないという形で、十七人が集まれば、そこはそこで皆さん、お互い助け合って、勇気づけあってやろうという気持ちになったんですけれども。

 町長はその現実も見ながら、畜産業の振興ということもありますけれども、是非、しっかりとこれを軌道に乗せることによって、若者の雇用の場、定着の場というふうにですね。地方創生という目的も、それは町長さんらしいです。町おこしでしっかり戦っていきたいということを申しておりましたので、是非成功していただきたいなというふうに思っております。

 今回の法案におきまして、一戸の農家、経営者ではなかなか大きな目標を立てられなかったのが、これが、拍車がかかって、全国各地で皆さんが、よし、やってやろうじゃないかと。法人化、さらには企業との連携というのができる農家の方々もいらっしゃいますけれども、一戸一戸の農家を見ますと、まだまだ、農作物を作る、育てるというふうに従来の農業の方法にどうしても固執して、表に向かって半歩あるいは一歩前に出るということがなかなかできなかったのが、私は自分の地元を見ていて思っております。これが是非、拍車がかかるような法案になっていただければいいなというふうに思います。

 それでは、トップバッターでございますので、そもそも論からちょっと質問をさせていただきたいと思います。

 まず、畜産業を取り巻く情勢の変化など、本法を制定することになった背景は何なのか、お教えいただきたいと思います。

水田政府参考人 お答えいたします。

 畜産業につきましては、輸出も含めまして拡大が見込まれる国内外の需要に応える供給を実現するための基盤整備の強化に取り組む必要がございます。このために、増頭、増産を強力に推し進めていくという必要があるわけでございます。また、特に酪農におきましては長時間労働が課題となっているところでございまして、省力化機械の導入などによりましてこれを改善する必要があると考えておるところでございます。

 畜産業には畜舎が必須の施設でございまして、今申し上げましたように、増頭したり、省力化機械、例えば搾乳ロボットなどといったものを導入したりする場合には畜舎を新築したりあるいは増改築する必要があるわけでございますけれども、近年、建築資材や工賃の単価が高騰いたしまして、畜舎等の建築費用が増加をしているといったことから、畜舎等の建築基準を緩和してほしいという要望が農家から上がってきておったところでございます。

 こうした状況を踏まえまして、昨年七月の規制改革の実施計画におきましても、農林水産省が国土交通省と連携して、令和三年の上期までに畜舎等を建築基準法の適用対象から除外するための法律案を整備するということとされたところでございます。

 この法律案によりまして畜舎等の建築等に係る畜産農家の皆様の負担を軽減し、我が国畜産業の国際競争力の強化等を図ってまいりたいと考えております。

渡辺(孝)委員 それでは、建築基準法におきます畜舎を建築することと比べて、新法で畜舎を建築するのはどこが大きく変わるのか、教えていただきたいと思います。

水田政府参考人 お答えいたします。

 建築基準法におきましては、畜舎等を含めました全ての建築物に適用される構造等に関する基準を定めてございます。また、都市計画区域以外の木造で五百平米、木造以外、すなわち鉄骨などで二百平米を超える建築物につきましては、構造等の基準に適合しているかにつきまして、建築確認という手続が必要となっているところでございます。

 一方、この法律案でございますけれども、畜舎等の構造等及び利用に関する計画の認定を受けることによりまして、建築基準法の適用が除外をされるということでございます。

 一点目といたしましては、構造等の技術基準につきまして、建築基準法より緩和された基準とすることが可能となりまして、畜舎の建築コストが削減できるということがございます。二点目といたしましては、構造等の技術基準の審査が不要となる面積、先ほど、建築基準法におきましては木造で五百平米以下、木造以外で二百平米以下と言っておりましたが、これの大幅な引上げをすることによりまして審査に係るコスト及び時間を削減できるということがございます。三点目といたしまして、そのほか、畜舎に真に必要な基準のみを設定するということで、畜舎建築に係る基準の簡素化が図られる、こういったメリットが受けられるようになるということでございます。

 こういった経営コストの削減などのメリットを受けられる制度を創設することによりまして、今後、拡大が見込まれる国内外の需要に応えて増頭、増産を進める場合の畜舎の建築が推進されやすくなる、さらには省力化機械の導入のための畜舎の建築も行いやすくなるということで労働負担の軽減にも寄与するというふうに考えているところでございます。

渡辺(孝)委員 なかなか、今の答弁を地元に伝えると、理解が難しいのかなと。決して悪い答弁ではないんですけれども。

 より具体的な基準等について、省令で定める箇所が幾つかありますので、何点か確認をさせていただきたいと思います。

 まず一点目は、対象となる畜舎の高さはどうなるのか。二点目は、いわゆる建築確認が不要となる畜舎の面積はどのくらいになるのか。三点目は、新法では技術基準が利用基準と相まって建築基準法の基準より緩和されるが、具体的にどのような基準となるのか。四点目は、B基準の利用基準では滞在時間の制限を行うとのことですが、現時点ではどのように設定しているのか、お考えを聞きたい。そして、五点目です。新法の制定理由である畜舎の建築コストの削減については、新法によりどの程度見込めるでしょうか。

 具体的に教えていただければ大変ありがたいと思いますので、よろしくお願いします。

水田政府参考人 お答えいたします。

 まず一点目でございますけれども、新法で対象となる畜舎の高さでございます。

 現行の建築基準法における一般的な畜舎でございますが、これは、高さが十三メートル、そして軒の高さを九メートル以下ということになっているところでございますが、現場からは、ダンプとかの運搬用車両は更に畜舎の高さを高くしなければ畜舎内になかなか入りにくい、乗り入れとか作業に支障が生じる、こういった声が寄せられているところでございます。この高さの制限につきましては、新しい法律では十六メートル以下ということにしたいというふうに考えているところでございます。

 二点目の御指摘でございますけれども、建築確認が不要となる畜舎の面積をどれぐらいにするのかということでございます。その規模につきましてでございます。

 現行の建築基準法の建築確認が不要となる面積でございますが、先ほど申し上げましたように、木造で五百平米以下、その他、すなわち鉄骨などで二百平米以下ということになっておりまして、これ以下でありますといわゆる建築確認の手続というものが要らないということになっておりますが、農家からはこれを大幅に緩和してほしいということを要請されております。また、畜舎は平屋でシンプルな構造でございまして、今回、建築士が設計するということにいたしておりますので、これによりまして基本的に安全性が担保されると考えておるところでございます。この面積につきましては大幅に引き上げることを考えておりまして、具体的には三千平米以下は審査不要とすることを考えております。

 全畜種の平均の畜舎全体の面積でございますけれども、調査をいたしましたところ、平均いたしまして約千平米、九百六十平米ぐらいでございます。そういたしますと、大部分の畜舎は技術基準が審査不要ということになると考えているところでございます。

 続きまして、技術基準と利用基準でございます。

 新制度におきましては、建築基準法と異なりまして、建築基準法につきましては構造の基準だけで規制をしておるところでございますが、新制度におきまして畜舎の利用方法に関する利用基準というものを設けまして、これと構造等に関する基準との組合せによりまして安全性を担保するということにしているところでございます。利用基準を厳しくすれば技術基準の方は緩くすることができるということでございますし、利用基準が緩ければ技術基準の方は厳しくということで考えております。

 具体的には、A基準とB基準という二つの基準を考えているところでございまして、A基準につきましては技術基準の方を、建築基準法の基準に準じた、同じような技術基準と考えております。この場合は、利用基準につきまして、簡易な利用基準を考えております。例えば畜舎内で宿泊しない等、通常の営農をしていれば満たせるということで考えているところでございます。B基準の方は、建築基準法の基準より緩和された技術基準を考えておりまして、この場合の利用基準につきましては、畜舎の中に滞在する時間を削減していただくということを考えておりまして、こういったものを十分加味した滞在時間と滞在人数の制限、こういった利用基準を考えているところでございます。

 これによりまして、利用する方の安全性を確保するということでございます。具体的には省令で定めることにしておりますので、今後、畜産農家、専門家等の意見も踏まえて策定していくということを考えているところでございます。

 それから、今申し上げましたB基準の利用基準でございます。滞在時間の制限、滞在人数の制限等を行うわけでございますけれども、具体的にどのように設定をするのかということでございます。

 これにつきましては、畜舎に滞在する人数とか時間につきまして昨年六月に調査を実施いたしました。調査をいたしましたところ、具体的には、全ての畜種の平均といたしまして一日の延べ滞在時間が、これは滞在人数と滞在時間を掛けたものでございますが、畜舎一千平米当たり八時間掛ける人程度であったということでございますので、この調査結果を踏まえまして、今後、専門家の方の御意見も聞きながら具体的な利用基準の内容を検討してまいりたいと考えているところでございます。

 最後に、畜舎の建築コストの削減ということでございます。新法によりどの程度建築コストが削減されると見込んでいるかということでございます。

 これにつきましては、既に建築基準法の基準で建築済みの畜舎につきまして、新法に基づいた基準で設計し直すとどうなるかということをやってみました。

 その結果でございますけれども、部材の強度の見直しということによりまして、柱とか鉄骨とか生コンクリートなど畜舎の構造に係る部材につきまして、その使用量が鉄骨の畜舎の場合は約一割が削減できる、それから木造畜舎の場合は約三割が削減できるということでございまして、これによりまして、畜舎の構造に係る部材の費用が鉄骨で約一割、木造で約三割まで削減できる可能性があるというふうに考えているところでございます。

渡辺(孝)委員 ありがとうございます。

 ここまでは打合せどおりでございますので、どうも御苦労さまでございました。ここからは私の本番で。

 やはり、一つの法案で、全国各地の対象となる方々が右往左往するわけでございます。今の話を聞いておりますと、関係する方々、特にこれから計画を進めようという方々が大変喜ぶ話ではないかと思います。ただ、何にせよ、農林水産省の一番の目的は、農業者ないしは関係者の方々の所得、これがしっかりと確保できるというのが一番の、あるいは最終の目標ではないかと思います。

 冒頭に、畜産関係、特に肉の消費は伸びている、あるいは安定しているという話もありましたし、この間、報道を見ていますと、卵も何か、東南アジア等々に輸出されているということで、卵も輸出できるんだという、私も不思議に思いましたけれども。是非、本法案が創設されると酪農家の農家所得の向上にどうつながるか、御意見をいただきたいというふうに思います。

池田大臣政務官 先ほど来お話がありましたように、建築基準法の適用が除外されますと、構造等の技術基準が建築基準法より緩和された基準となるため、畜舎の建築コストが削減できます。また、構造等の技術基準の審査が不要となる面積の大幅な引上げによりまして、審査に係るコストを削減できるほか、手続に要していた期間が短くなる、そうしたことで畜舎が早く利用可能になり、早期に収入を得ることができる、あるいは、これに加えまして、建築コスト等の削減に伴い他に使えることとなった資金を活用していただいて省力化機械を導入することによりまして、農業従事者の労働時間を削減し、生乳生産コストの削減を図ることも可能になってまいります。

 今、渡辺委員がおっしゃられるような、直接、すぐこれによって所得がどっと増えるという単純なことにはならないと思いますけれども、今まででも建築基準法の申請等では相当な日数を要していたと思います。こうした新制度を御活用いただきまして、酪農家の皆さんの所得向上につながると考えております。

渡辺(孝)委員 どうもありがとうございます。

 所得向上というのは、決して政府だけの責任ではなくて、やはりしっかりと、生産者の方々、また一般消費者である我々も責任を負っているのではないかと思います。是非、本法案がスタートとなって、更に今の所得よりも向上していくというような流れをこれからもっともっとつくっていかなければいけないのかと思っています。

 そこで、時間もあれですから最後の質問にします。

 野上大臣から昨年、稲作農家の方々に米の問題でお言葉をいただきました。地元の稲作農家の方々には、大臣のお言葉ですから大変重く受け止めておりますし、中には、子実コーンなど、しっかりと新しい展開をしていきながら、外国の飼料穀物の輸入に対して一石を投じたいという若者たちが法人グループをつくって、まだまだ規模は小さいですけれども、水田の活用の仕方を頑張ろうじゃないかということで挑戦しているところも出ましたし、また、本当に純粋な稲作農家のところは、ちょっと首をかしげながら、本当にお米が余っているんだということで、そういう視点にまでなったと。やはり、大臣のお言葉というのはすごく重いのではないかと思います。

 是非、本法案につきましても大臣からエールを送っていただき、特に、これからやろう、あるいは今までなかなか挑戦できなかったという方々にエールを送っていただき、温かいお言葉をいただきたいなと思います。

野上国務大臣 畜産業につきましては、これから、輸出も含めまして拡大が見込まれます国内外の需要に応えるための増頭ですとか増産を含めた生産基盤の強化、また、酪農等の長時間労働の改善に向けまして省力化機械の導入等を進めていく必要があると考えております。

 畜産業には畜舎等は必須の施設でありますが、近年、建築資材や工賃が高騰しまして、建築費用が増加している中で、畜舎等の建築基準の緩和を求める声が畜産農家から上がっていることを踏まえまして、今般、この法案を準備したところであります。

 冒頭、先生から御地元の小平和牛のお取組等々も御披露いただいたわけでございますが、本法案によりまして畜舎等の建築に係る畜産農家の皆様の負担を軽減して、我が国の畜産業の生産基盤の強化に向けての環境整備を図ってまいりたいと考えておりますので、関係の皆様におかれましては、新制度を御活用いただいて、増頭、増産や省力化機械の導入等による所得の向上あるいは労働負担の軽減が図られることを期待しているところでございます。

渡辺(孝)委員 もう時間が来ましたので、本当にありがとうございます。なかなか、小さな国日本が世界に打って出るということになりますと、並々ならぬ努力が私は必要かと思います。是非、その努力が報われるような、そんな農林水産業にしていただくことを最後にお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 今日はどうもありがとうございました。

高鳥委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 公明党の稲津久でございます。

 通告に従って順次質問させていただきますが、まず最初に、法案に入る前に、喫緊の農林水産業の問題であることについて一つだけ伺っておきたいと思います。それは漁業問題なんですね。

 近年、地球の温暖化なのか、あるいは海洋環境の変化なのか、沖合や沿岸等で捕れる魚種に変化が出てきております。北海道では、これまでほとんど捕れていたことのないブリが捕れたり、イワシが大漁になるなどの状況が生まれております。

 先日、私は、留萌管内の浜を歩いておりました。その折にニシンの水揚げの場面に遭遇いたしました。小平町の臼谷というところですけれども、ニシンが揚げられて、浜では活気を呈しておりました。そして、この町の鬼鹿という地域では、海岸にニシンが産卵に寄せてまいりまして、いわゆる群来が見られたそうでございます。この数週間、北海道の各地でこの現象が出ている、これはうれしいことですけれども。

 ただ一方で、ここ数年、サンマやサケ、イカは不漁が続いていて、漁業関係者の経営に大変大きな影響を及ぼしております。いずれも昨年度は過去最低のレベルで、不漁の原因はよく分かっていない。これも、海水温の影響なのか、あるいは外国漁船による漁獲の影響なのか、そうしたことが言われているところでございます。

 そのような中で、先日、サンマ等の不漁の原因と対策に関する、水産庁の不漁問題に関する検討会が開催をされました。関係者の多くが大変注目をしておりまして、この検討会では具体的な不漁原因の解明ですとか今後の施策の展開が期待をされているところでございますが、この検討会の目的と対象の魚種、そして、その検討結果を今後どのように施策に反映していくお考えなのか、この点についてまずお伺いさせていただきます。

山口政府参考人 お答えいたします。

 近年のイカ、サンマ、サケの不漁は複数年にわたって継続しておりまして、これまでに発生していた不漁とは異なる状況が生じております。こうした変化は地球温暖化や海洋環境変化などに起因するものと見られておりまして、今後長期に継続する可能性もございます。

 このため、水産庁といたしましては、不漁問題に関する検討会を開催し、イカ、サンマ、サケの三魚種を例として不漁の要因の分析を行いつつ、仮にこれが長期的に継続した場合の施策の在り方等について議論していただくこととしておるところでございます。

 検討会の結果につきましては、令和四年三月を目途に改定を予定しております水産基本計画に反映するなど、今後の水産政策に生かしてまいりたいと考えております。

稲津委員 昨日、水産庁は、サンマの二〇二一年の漁獲枠を前年比四一・二%減の十五万五千三百三十五トンと、過去最低水準に変更する案を公表いたしました。二〇年と比べますと当初から四割減ということで、これは当然、資源保護、そして、今年の二月に開かれた北太平洋漁業委員会、八か国・地域のですね、この協議に沿ったものであることは致し方ないとしても、いずれにしてもこのような状況下にあることからも、近い将来のサンマ等の漁の拡大を期待するそうした関係者に是非とも応える検討会にしていただきたい、このことをお願いさせていただきます。

 さて、法案について順次質問してまいりますけれども、一点目は畜舎の建築コストについてお伺いさせていただきます。

 この法案の背景としては、畜舎の建築に係るコスト高が過大となっている、これが挙げられると思います。昨今の人手不足からくる例えば工務労賃の上昇ですとか資材単価の高騰、これは容易に想像ができます。特に、資材単価の高騰は北海道が一番顕著だという話もお聞きしました。

 実際に、せんだって私は北海道の深川市というところの畜産農家と意見交換をさせていただきましたが、この経営者は牛の増頭を図る中で畜舎の増築を考えておりました。ところが、建築に要する費用が近年高くなっているということで、大変切実な声を伺いました。

 そこで伺いますが、この畜舎建築のコスト高の現状をどう見ているか。それから、施設整備を支援する畜産クラスター事業、ここにおいて基準事業費が平成二十九年に引き上げられましたが、その引上げが現場のコスト高になかなか追いついていないというような声もございます。基準事業費の更なる引上げというのは厳しいものであるというふうに思いますけれども、この見直しも含めて、こうした現状についてのお答えをいただきたいと思います。

水田政府参考人 お答えいたします。

 近年の建築コストでございますけれども、オリンピック、パラリンピックですとかあるいは災害復旧の建設需要の高まりによりまして、資材費、作業員の方の労務単価の上昇等を背景に上昇していると承知しているところでございます。

 委員御指摘のように、こうした建築費の上昇等によりまして、畜産クラスター事業につきまして基準単価の引上げを求める声が多かったということを踏まえまして、平成二十九年度の補正予算からでございますが、これまでの事業実績等を調査いたしまして、その実態を踏まえて、施設の種類ごとに基準単価について必要な見直し、引上げを行った上で、引き続き、地域の実情などやむを得ないと認められる場合には、一・三倍の特認単価という制度がございますので、これを認めるということとしているところでございます。

 また、昨今の建築コストの上昇の中におきましても、新しい法律が施行されれば、畜舎の建築コストが一定程度削減できるというふうに考えているところでございます。

 こうした中で、委員御指摘の畜産クラスター事業の実施に当たっては、できるだけ少ない投資で整備を行うことが望ましいことも踏まえつつ、今後の建築コストの動向等を注視いたしまして、必要に応じて基準単価の見直しについて検討してまいりたいと考えております。

稲津委員 畜舎の建築コストについてもお伺いしましたけれども、酪農、畜産の経営上の課題というのはやはり総じてコスト高にある、このように私は思っておりまして、畜舎の建築コスト高も困り事なんですけれども、年間を通してコストの多くは餌代、飼料代が占めております。先月の業界紙の報道では、JA全農の配合飼料の供給単価が一トン当たり五千五百円の値上げだった、このようなことを知りまして、厳しい状況だと思っています。

 餌代の低減のためには自給飼料の増産が望まれるところでございますが、現状はどうなっているのか。それから、草地に恵まれる北海道においては自給飼料の体制がかなり整っている、このように申し上げたいんですけれども、一方で、府県において増産はなかなか厳しい状況ではないのかなと。コスト縮減の決め手となる自給飼料の増産対策をどう考えるのか、この点についてお伺いいたします。

水田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、畜産、酪農におきます飼料費の生産コストに占める割合でございますが、肉用牛の繁殖経営で四割、肥育経営で三割、酪農経営は北海道で四割、都府県では五割となっておりまして、非常に高い割合を占めているところでございます。

 こうした中で、畜産経営の安定を図るためには、輸入飼料が今高騰しております、こういった高値で推移している状況も踏まえまして、輸入飼料に過度に依存している状況から脱却いたしまして、国内の飼料生産基盤に立脚した足腰の強い生産に転換して飼料費の削減を図ることが重要と考えているところでございます。

 このため、国産飼料の増産ということに向けまして、草地基盤の整備による草地の生産性向上あるいは飼料用種子の安定供給ですとか、コントラクターなどの飼料生産組織の作業の高効率化、そして運営の強化、さらには、繁殖基盤の強化に向けました肉用繁殖雌牛の放牧を推進していく、こういった取組を支援しているところでございます。

 特に、委員御指摘いただきました都府県でございますが、土地利用の制約が大きいわけでございますので、こういったところにつきましては、荒廃農地などにおきます放牧とか公共牧場の有効活用、水田等を活用いたしました飼料作物の生産の推進、コントラクターが自ら行う飼料生産とか稲わらの収集、さらには食品残渣や農場残渣などの未利用資源の利用、こういったものを推進しておりまして、これらの取組を総合的に支援してまいることによりまして、自給飼料の生産拡大を図ってまいりたいと考えております。

稲津委員 ありがとうございました。

 飼料のコスト高について御答弁いただきましたけれども、やはり特に府県の方は、恐らく一つ、二つの政策で何かできるという状況ではないと思うんですね。ありとあらゆる政策を総動員しないと、多分、府県の餌代のコスト高というのには対応できないんだろうと思います。そういう意味で、是非こうしたことについてもしっかり目配りをしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 畜舎の建築コストと飼料の高騰について今お伺いさせていただきましたけれども、今回の畜舎等の建築特例法の改正につきましては、畜酪経営のコスト対策の中でも、特に、初期投資、それから家畜の増頭による畜舎の増改築等の費用軽減が大きく期待されると思います。その意味でも、一日も早い法の改正の施行が強く望まれると思います。

 例えば、新たな畜舎の中での作業になると効率的で、当然、労務コストの縮減にもなるわけですから、総合的な対策になるというふうに私は思っております。それから、生産基盤を強化するということ、後で質問しますけれども、そういった意味では、畜産クラスター事業の的確な施策の実施が望まれる、このようなことを申し上げておきたいと思います。

 次の質問に移りますけれども、次は、今申し上げましたように、生産基盤をどう強化するかというお話でございます。

 まず、需要と供給から見た現状について伺っていきたいというふうに思っておりますけれども、近年、国内の畜産物の需要は堅調であるということ、特に牛乳・乳製品、チーズの需要が拡大している。これは観光振興とかインバウンドの影響も大きいと思うんですけれども、もちろん今、コロナの現状を考えるとなかなか厳しいものがあるというのは承知の上で申し上げますけれども、しかしながら全体としてはそうであろう、牛肉も一人当たりの消費量は伸びている。一方で、こうしたことを踏まえていったとしても、畜産物の供給状況というのは国内生産量が消費量を下回っている、このように承知をしております。

 まず、需給の現状がどうなっているのか、この点についてお示しをいただきたいと思います。

水田政府参考人 お答えいたします。

 主要な畜産物でございます牛肉及び牛乳・乳製品の国内需給についてでございますが、令和元年度で見てみますと、牛肉につきましては、九十四万トンの国内需要に対しまして国内生産が三十三万トンでございます。牛乳・乳製品につきましては、生乳ベースでございますが、千二百四十万トンの国内需要がございますが、国内生産は七百三十六万トンでございまして、両者共に国内需要を国内生産で賄い切れず、不足分を輸入で賄っている、こういった状況にございます。

 このように、国内需給だけを見ても国内生産量が足りないという状況にあるのでございますが、輸出について見ますと、日本産の牛肉は高い品質から海外での人気が高く、和牛ブランドとして世界中で認められております。実際に、輸出量につきましても、どんどん増えている、伸びを見せているという状況でございまして、これを始めとして、我が国の畜産物は輸出の重点品目として期待されているということでございます。

 こういったことから、輸出も含めまして拡大が見込まれる国内外の需要に応える供給を実現するということから、肉用牛、酪農の増頭、増産、生産基盤の強化に取り組む必要があるというふうに考えているところでございます。

稲津委員 需給のバランスを考えますと、今まさに御答弁していただいたとおり、供給体制の強化が重要であることは明確なわけでございまして、供給力を図るには、現在、畜酪共に規模拡大が進んでいる、このことが後押しになると思っておりますし、大規模な法人経営によることは生産基盤の充実に欠かすことはできないんだろう、これをまず一つ思っています。

 一方で、小規模な家族経営が多い現状を考えると、これら家族経営の生産基盤を充実させて持続可能な経営を図るということも大変重要な課題であると思っています。この生産基盤の充実をどのように図ろうとしているのか、これは大臣にお伺いしたいと思います。

野上国務大臣 農林水産省といたしましても、牛肉ですとか牛乳・乳製品の生産量の増加に向けまして、経営規模の大小にかかわらず、生産基盤の強化と生産の効率化を図ることが重要と考えております。

 このために、中小規模経営も対象としました増頭、増産のための奨励金の交付ですとか、中小規模が事業を活用しやすくなるように、畜産クラスター事業につきましては、規模拡大の要件の緩和ですとか、中小規模経営の労働負担軽減を目的としました搾乳ユニット自動搬送装置、いわゆるキャリロボ等の省力化機械の導入支援ですとか、あるいは、TMRセンター、キャトルステーション、酪農ヘルパー等の外部支援組織の育成強化等々、中小規模の家族経営も対象となる生産基盤の強化を支援しているところでございます。

 今後とも、中小規模、家族経営も含めて多様な経営体が主体性と創意工夫を発揮して、その経営を発展させることができるように、各種支援を行ってまいりたいと考えております。

稲津委員 よろしくお願いいたします。

 供給体制の基盤強化について今お伺いをさせていただきましたけれども、今後、需要を拡大していく、その核となるのは、輸出が占める割合が大きいと思っております。そこで、輸出について一点だけお伺いして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 農林水産物・食品の輸出、二〇三〇年までに五兆円を目指す、そして、輸出拡大実行戦略では、畜産物の輸出を二〇二五年までに二千六十五億円、それから二〇三〇年までに四千六百七十六億円を目指しているということでございますけれども、海外での販路拡大についてはやはりマーケットインの発想で取り組むことが重要だと思っていますし、当然、農林水産省は大方針としておりまして、私も全く異存のないところなんですが、畜産物のマーケットイン、具体的に何をどう取り組むのか。決意も含めて、これも大臣にお伺いして、質問を終わりたいと思います。

野上国務大臣 昨年十一月に輸出拡大実行戦略を取りまとめまして、マーケットインの輸出を促進していくということとしたわけでありますが、具体的には、日本の強みを最大限に生かす品目別の具体的な目標を設定する、また、マーケットインの発想で輸出にチャレンジする農林水産事業者を後押ししまして、省庁の垣根を越えて政府一体となって輸出の障害を克服することといたしました。

 この考え方の下で、畜産物につきましては、牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵及び牛乳・乳製品を輸出重点品目と位置づけまして、それぞれに意欲的な輸出目標を設定いたしました。

 また、オール・ジャパンのプロモーションの取組に加えまして、輸出に取り組む産地ごとに、生産者、食肉処理事業者等に加えまして、輸出先のニーズを把握する輸出事業者が連携したコンソーシアムを設立しまして、その具体の商談ですとか産地のプロモーションなどを支援するほか、政府一体となって、新たな輸出先国の解禁ですとか、規制の緩和、輸出施設の認定の迅速化を図っているところであります。

 また、現在、世界的に内食化の傾向にありますので、これに対応するために、スライス肉ですとか食肉加工品といった店頭に即座に陳列可能な製品の輸出の促進ですとか、あるいは、今、アメリカを中心にEコマースが好調でありますので、その推進等を実施していくこととしております。

 これらの取組によりまして、目標達成に向けて全力を尽くしてまいりたいと考えております。

稲津委員 終わります。

高鳥委員長 次に、石川香織君。

石川(香)委員 石川香織です。今日もよろしくお願いいたします。

 今回の法律ですけれども、建築基準法の中で畜舎に適用する基準を独自につくるというのは初めてのことだということで、この制度がいろいろな懸念をちゃんとクリアして実用化となれば、画期的な法律になるんだと思います。生産者だけではなくて建築関係の方も非常に注目をされている、関心が高い法律だと思います。

 農業の現場も、当然、省力化が進んできまして、今回、このような畜舎の基準のコストを削減しようということと、それから、その上でしっかり働く人とか家畜を守る安全性というところも確保しなきゃいけないということで、この二つの点をどうしっかり両立をしていくかということがこの法案の肝になるんだと思います。

 建築基準の緩和は、これまで国交省と農水省の連携で進めてきたという話だというふうに聞いています。現在は、積雪の荷重とか風の荷重、防火壁の緩和などについて、国交省の告示に示されたものに基づいて実施をしているということでありましたけれども、地域によって、雪が降るところ、台風がしょっちゅう来るところなど、いろいろ違いまして、当然、畜舎の在り方、防災の視点というところも変わってくるんだと思います。また、近年、気候も変わってきていると言われている中で、各地でこれまで実証データというのを蓄積されていると思いますけれども、これが今の建築基準に反映されているというふうに聞いています。

 今回、新しく畜舎に適用する基準をつくるという中で、こういった地域性、天候の変化などにどのように対応していくのか、これまでのデータをどうやって反映していくのかということについて、まずお伺いをさせていただきます。

水田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、建築基準法でございますけれども、平成十四年の告示によりまして、畜舎とか堆肥舎につきまして、一般建築物より低減された構造基準が定められているところでございますが、この告示の中では、雪や風の荷重につきまして、地域による違いを考慮して計算するように定められているところでございます。したがいまして、本法律案におきましても、これを参考にしながら、技術基準におきまして、雪や風の影響につきまして、地域による違いを反映した基準を策定してまいりたいと考えているところでございます。

 基準の詳細につきましては、今後、畜産農家や専門家の意見を踏まえて検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。

石川(香)委員 今後、長い年月の中で、場合によってはデータをアップデートしていくということも可能性としてはあると思いますけれども、しっかりと地域の特色が考慮されるものになるということをお願いしたいと思います。

 もう一つ、今回、新築、改築、増築などに適用できるということですけれども、いろいろなケースがあるかと思いますが、この緩和によってコストはどれぐらい削減できる見込みなのかということについてお伺いをします。

水田政府参考人 お答えいたします。

 建築コストの削減についてでございますが、新法によりましてどれくらい削減できるのかということにつきまして、既に建築基準法の基準で建築済みの畜舎につきまして、新法に基づく基準で設計し直すということにより試算をしたところでございます。

 その結果、部材の強度を見直すことによりまして、柱、鉄骨、生コンクリートなど、畜舎の構造に係る部材について、その使用量が、鉄骨の場合は約一割削減できる、それから木造の場合は約三割削減できる、こういった事例も見られたところでございます。これによりまして、畜舎の構造に係る部材の費用につきまして、鉄骨で約一割、木造で約三割まで削減できる可能性があると考えております。

石川(香)委員 鉄骨では一割、木造では三割ということで、非常にこれは生産者にとってはありがたいと思います。

 ただ、これまで、建築コストそのものがやはり上がっているということが近年の特徴だと思います。資材の搬入なども状況などによってはスムーズにいかないこともあるという中で、今回の緩和は、思い切って規模を拡大してみようということを考えている方の背中を後押しするきっかけになると思います。

 この緩和は畜舎、堆肥舎などの新築、増築、改築に適用になるということですけれども、これをきっかけに規模拡大をするということは非常にいいんですけれども、現状として、規模拡大が進み過ぎてしまうと、農村地域を守るという観点からすると懸念も出るのかなと思いますので、この辺りについてお伺いをしてまいりたいと思います。

 現状は、今、農家戸数が減る中で、一戸当たりの頭数が増えているという状況だと思います。経営規模が大きくなりますと、投資する額も非常に大きくなりますし、定期的に機械などのメンテナンス費用もそれなりにかさんでしまう。頭数が多くなりますと家畜の病気のリスクも伴うということで、こういったリスクをいろいろ承知の上で酪農業、畜産業を引っ張っていくんだという強い意欲を持ってやってくださっている生産者の方々もいらっしゃるということで非常にありがたいと思う反面、ただ、やはり、大規模一辺倒と思われがちな方向性がこれまでの政策の中には多かったと思うんです。

 この規制緩和が大規模一辺倒に更に拍車をかける可能性がないのかということについて、お伺いをさせていただきます。

水田政府参考人 お答えいたします。

 この新しい制度につきましては、経営規模の大小にかかわらず、全ての畜産農家に御活用いただける制度と考えているところでございます。

 具体的に申し上げますと、新制度では、一定の手続を経て、建築基準法の適用が除外されまして、構造などの技術基準が建築基準法より緩和された水準となり、畜舎の建築コストが削減できるというメリットがございます。それからもう一つ、構造等の技術基準の審査、いわゆる建築基準法の建築確認でございますが、これが不要となる面積の大幅な引上げによりまして審査に係るコストとか時間が削減できるというメリットもございます。

 こうしたメリットのうち、最初の方の技術基準の緩和につきましては、建築する畜舎の規模によって変わるものではございません。また、二番目の、手続の簡素化、建築確認の簡素化でございます、対象とする面積でございますが、具体的には三千平米以下のものはこれを不要とするということを検討しているところでございまして、現在建っております畜舎等の規模を考えますと多くの畜舎が対象となる見込みでございまして、こうしたことから考えますと、経営規模の大小にかかわらず、小さい方も含めて全ての畜産農家に御活用いただける制度であるというふうに考えているところでございます。本法律案による規制緩和が大規模化に拍車をかけるというものではないと考えております。

石川(香)委員 ありがとうございます。全ての畜舎に使えるという今回の緩和というのは、非常に現場にとっても心強いものだと思うんです。

 次からはちょっと酪農の話に入りますけれども、近年、北海道は生乳生産量というのを本当に伸ばし続けている。令和元年度では、生乳生産量、初の四百万トンを北海道で突破したということで、その要因の一つに畜産クラスターが挙げられると思います。今回の規制緩和はクラスターなどの補助金とも併用できるということですので、新築、改築、増築などを考える生産者の方にとっては、合わせ技で大分負担が軽減されるということだと思います。

 平成二十七年から畜産クラスター事業が開始になりまして、北海道の数字ですけれども、北海道内では、畜産クラスターを使って機械を導入した数は累計で一万一千八百三十五件、それから施設整備で三百一件、総事業費二千億円以上ということで、北海道は全国一の実績がある地域です。

 その一方で、やはり、地域の方のお話を聞いておりますと、畜産クラスターは要件として規模を大きくするということがありますので、規模を拡大する農家にしか当たらないんだということで、不公平感みたいなものも若干漂ってしまっているのかなというのが、いろいろな方のお話を聞く中での私の実感です。

 北海道内も、大きくするところはどんどん大きくなって、投資する流れがある程度落ち着いたというんでしょうか、進んだというんでしょうか、そういった傾向があるのではないかなと思うんですけれども、その一方で、やはり現状を貫く経営スタイルというものも非常に多いということで、現場を歩いていて、大規模化していく流れと、現状維持、若しくは小規模、中規模をしっかり守っていくんだという考え方が、ちょっと二極化しているような印象も持ちます。それぞれの経営スタイルがあると思うので、どちらもすばらしい経営をされていると思うんですけれども。

 その中で、家族経営が全体の九割を占めると言われている中で、現状維持、それか規模を縮小してでも営農を継続したいという方、営農を継続するということがやはり最も大事なことであって、こういった農家にも何らかの評価というものが必要ではないかと私は考えています。高齢化も進んでおりまして、後継者がいないなどの理由で規模を拡大できない農家の方もたくさんいらっしゃる中で、このクラスター事業がこれまで、規模拡大ということが要件であると、これをきっかけにちょっと、営農を断念せざるを得ないというきっかけにもなりかねないということがあったと思います。

 そんな中で、令和元年の十二月に畜産クラスター事業の要件が見直しをされました。これまで規模拡大要件は地域の平均規模だったんですけれども、これをおおむね北海道を除く全国平均などとする要件緩和が行われました。

 例えば、私のいる十勝、道東というエリアでは、オホーツク、釧路、根室、非常に大型農家が多いので、ここの平均というとかなり要件として厳しく感じられるんですけれども、これが地域の平均規模からおおむね北海道を除く全国平均となったことで、要件緩和されたということで、これまでの大規模一辺倒という流れに対して一定の理解という形でこのような要件にしてくださったのかなと思っています。

 現状維持といっても、維持をするということは、それまで物すごい努力をされて初めて維持をされるわけで、頭数を増やすということだけがもちろん意欲の表れではないと思うんですが、非常に難しいんですけれども、頭数を減らすとか、現状を維持して経営を継続していくということをどう評価するのかというのは非常に難しいテーマで、議論が必要だと思うんですけれども、やはり地域を存続させるためには戸数を減らさない努力というのが大切だと思います。

 どういった支援ができるかということなんですけれども、とにかく営農を継続していくことをもっと評価できるような支援のメニューの在り方、こういったメニューを増やすべきだというふうに考えるんですけれども、こういった方向性についてお考えをお伺いしたいと思います。大臣、お願いいたします。

野上国務大臣 御指摘がありましたとおり、我が国の畜産、酪農は中小規模の家族経営が大宗を占めていますので、そのことを踏まえまして、大規模な経営体に限らずに、家族経営を含めた多様な経営体を育成していくということが重要であると考えております。

 今御披露いただきました畜産クラスター事業につきましても、中小規模経営、家族経営が本事業を活用しやすくなるように、令和元年度補正予算におきまして規模拡大要件である平均飼養規模の取り方を緩和したところであります。

 また、機械導入に関しては、飼養規模の大小にかかわらず、規模の拡大を伴わなくても、収益性の向上や生産コストの削減につながる場合、支援対象としているところであります。

 今後とも、現場の声を聞きながら、家族経営を含めた多様な経営体にとって取り組みやすいものとなるように努めてまいらなければならないと考えております。

石川(香)委員 是非、経営のスタイルというのも多様化しておりますので、引き続きメニューの充実化というものをお願いしたいと思います。ありがとうございます。

 幾ら省力化が進んだといいましても、やはり、生き物の面倒というのは、病気になったり、突然出産したりということで、人間にしかできない作業というのが絶対つきまといます。担い手不足、人材不足というのは農業に限った話ではありませんけれども、今の日本にとってここが一番の課題ではないかなと感じています。

 私の地元では、農協などが連携して、デーワークが非常に好調でして、短期の農業人材の募集ということなんですけれども、非常に人が集まりやすいということで活用されているということを聞きました。

 一方で、いろいろな生産者の方にお話をしますと、働き方の多様性というものも重視するべきではないかということで、例えば朝の搾乳だけでもやってくれればありがたいなということで、イメージとして、作業の一部でも仕事としてやってくれる人がいれば非常にありがたいという話をされている方もいらっしゃいます。

 農業の現場は、週休二日とか、夜は決められた時間で終わりというお仕事ではそもそもありませんので、働き方に多様性を持たせた方がいいのかという観点で、最近、ボランティアバイト、ボラバというらしいんですけれども、ちょっとライトな働き方というんでしょうか、そういう働き方も実際に農業の現場でも増えているというふうに聞いています。

 仕事として、大前提として責任を持って働いていただくということはもちろんなんですが、若い人の傾向、働き方ということにも配慮をして、こういった働き方というものも観点として必要ではないかなと感じていますが、例えばこういった考え方も含めて今後の人材不足の解消についてどのようにお考えか、お答えをいただきたいと思います。

葉梨副大臣 お答えいたします。

 今まで、特に農業の関係でも、特に耕種の関係なんかは、技能実習生とか特定技能とか、外国人に頼るところも多かったんですけれども、外国人は外国人としてポストコロナではまた活用しなきゃいけないとは思いますが、改めてやはり日本国内でしっかりと人材を確保していく必要性というのは再認識を私どももしておるところです。

 そこで、まず就農の関係ですけれども、まず一つは、農業次世代人材投資事業ということで、新規就農に対する支援を行っています。それから、農の雇用事業ということで、雇用就農者の研修に対する支援を行っております。また、農業教育高度化事業ということで、農業大学校、農業高校等の農業教育機関に対する支援を行わせていただいております。

 それに加えて、今先生御指摘になられましたように、多様な働き方、あるいは農業の現場においては農繁期等において短期、短時間でも働く人を確保したいというニーズは当然あるわけでございまして、新規就農者確保推進事業を行っておりまして、その中で、産地と労働者をマッチングする仕組みづくり、農業で働いてもらうための農作業研修・体験等、産地において労働力を確保するための取組を支援させていただいています。

 引き続き、これらの多様な取組によって農業における人材確保に努めていきたいと考えています。

石川(香)委員 新規就農者の支援、研修の支援、短期で働く人の支援など、本当にバリエーションがあると思いますけれども、本当に、日本人の働き手、担い手というのを、どうやって皆さんにやる気を持ってやっていただくかということを非常にコロナの中での課題だなと感じたのは、私もそう思います。

 今副大臣のお話の中にもありましたけれども、外国人の技能実習生は大分農業の現場に見られるようになってきました。ただ、一月十三日以降、新規での外国人技能実習生の入国ができないという状況が続いていまして。もちろん、技能実習生というのは、技術を日本で学んでいただいて、自国に持ち帰っていただいて活用していただくという制度ですけれども、ただ、現場では技術を学ぶ以上に貴重な人材、助っ人として受け入れている、やはり現場の感覚としてはそういった受け止めをしているということです。

 ちなみに、今現在、入国できる外国人の方というのは、人道支援の観点で、例えば日本人の親戚がいて、その方が今体調が悪いとか、技術者、それから、IOCが今トラックの整備などで日本に入ってこられているということで、立会いをしなければいけないといったときなどにIOCの関係者などが特例的に入国できるということで、技能実習生は公益性という観点でなかなかクリアできないそうでして、ちょっとめどが立っていないということでした。

 そして、ちょっと今度は酪農ヘルパーについてお伺いをさせていただきたいんですけれども、酪農ヘルパーは、利用する農家の平均日数も増えまして、今、月平均二日ペースになっているということでした。ただ、利用される場面が増える一方で、専任ヘルパーは、二〇〇五年の千二百九十一人をピークにして、年々減少してしまっているということでした。

 そんな中で、JAの北海道中央会は特定技能の制度を使って、酪農ヘルパーの現場で活躍する外国人の方を、JA幌延、それから浜中町というところで実証試験を行っているということでした。これまでも技能実習生の方は酪農の現場にいました、この制度は特定技能ですけれども。酪農ヘルパーといったら、いろいろな酪農家さんのところに行って作業をしますので、当然能力としても高いものを求められますし、コミュニケーション能力も、言葉のところも求められるということです。これは派遣ということになりますので、日本人の方とセットで現場で作業をするということで、既にベトナム人の方、一人が派遣をされているということでありました。

 こういった酪農ヘルパーの外国人の方の活用というものも実証試験として始まっていますが、ここでも、先ほどの話に戻りますが、やはり、日本人の酪農ヘルパーの方に、いかに仕事として選んでいただき、長く働いていただけるかということに尽きるのではないかなと思うんです。

 こういった酪農ヘルパーという方のお仕事を、どうやって国として、処遇改善も含めて、長く働けるお仕事若しくは次につなげるお仕事というふうに仕組みをつくっていくかということが重要だと思うんですが、このことについて大臣にお伺いをしたいと思います。

野上国務大臣 酪農ヘルパーは、酪農家にとって不可欠の存在でありまして、人材確保や定着促進が大きな課題だと認識しております。

 農林水産省としても、これまで、学生インターンシップや技術研修等への支援ですとか特定技能外国人の活用の支援等を行ってきておりますが、令和三年度からは新たに、将来酪農ヘルパーを目指す農業大学校や専門学校等の学生や生徒を対象とした奨学金制度への支援ですとか、あるいは、利用料金を改定し酪農ヘルパーの給与を引き上げる取組を行う利用組合に対する奨励金の交付等の措置を講じまして、支援の拡充を図ったところであります。

 今後とも、関係者の御意見を聞きながら、待遇改善も含めて、酪農ヘルパーの確保、定着に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

石川(香)委員 今、家族経営の割合は全体の九割を占めるということで、従業員を雇うわけにいかないので、やはり小中規模農家の方にとってもヘルパーの存在は非常に大きいと思います。その一方で、ヘルパーさんの休みも取れないという状況も続いていまして、やはり、ヘルパーの方々の仕事の定着率を上げるということ、それから、一生働ける仕事、若しくは自分が新規参入して農家として働くときに何らかのインセンティブがあるとか、そういうこともいいのかなと思うんですけれども。非常に酪農の現場において人手不足というものが顕著であり、酪農ヘルパーの方々の存在というものもこれからますます重要になってくるのではないかなと思います。

 技能実習制度も、技能実習生とか特定技能とか特定活動とか、ちょっと現場の方も分かりづらいというようなこともありまして、所管する官庁も違うそうでして、この辺りも、いろいろな制度を法務省に、コロナの中でいろいろな特例もしていただいていますので、ちょっとその辺りの周知なんかも必要なのではないかなと改めて思いました。

 また引き続き、畜産、酪農の現場でのいろいろな課題について質問させていただきたいと思います。

 では、時間が来ましたので終わらせていただきます。ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、金子恵美君。

金子(恵)委員 立憲民主党の金子恵美でございます。よろしくお願いいたします。

 法案の質疑に入る前に、東電福島第一原発のトリチウムを含む処理水の海洋放出基本方針について、政府の動きがありましたので、前回に引き続きまして質問させていただきたく存じます。

 四月十六日に、政府は第一回目の、ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議、実行会議という名称だということですけれども、これを開催しました。野上農水大臣も御出席された関係閣僚のお一人であります。この会議はどのような経緯で設置され、今後どのような進め方で実行に向けた取組というものがなされていくのか、お伺いしたいと思います。

野上国務大臣 四月十三日の関係閣僚会議で決定しました基本方針の中では、農林水産業について、処理水の処分に伴い新たに生じ得る風評被害への懸念が示されているとした上で、政府全体として、将来生じ得る風評影響について、現時点で想定し得ない不測の影響が生じ得ることも考えられることから、ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議を設置しまして、必要な対策を検討していくこととされたわけであります。

 これを踏まえまして、四月十六日に一回目の会議が開催されました。この会議ではワーキンググループを設置して、水産業を始めとした関係者の御意見を幅広くお聞きしながら、追加対策の必要性を検討し、機動的に実施していくとされたところであります。

 会議では、今後のスケジュールとしまして、五月以降、ワーキンググループを複数回開催して関係者からヒアリングを行った後、夏頃に二回目の関係閣僚会議を開催して、課題を抽出するとともに当面の対応を整理するとの説明があったところであります。

金子(恵)委員 もう一言、御決意もいただければなというふうに思ったんですけれども、改めて、関係閣僚等会議で配られました資料の中では、政府一丸となって、スピード感を持って着実に実行していくとあるんです。

 私は、今回の海洋放出の基本方針というのは本当に乱暴に決定してしまったので、決定までのプロセス等については大変な批判があるということを承知していますし、それについて認識をしていただき、今後、国民の皆さんにどういう発信をするのかというところはとても重要なことだというふうに思っています。また、地元の漁連の会長も今回の決定については、容認できない、断固反対だという、この姿勢は変わらない状況なわけです。繰り返し申し上げますけれども、余りにも乱暴な決定、そして今に至る。

 政府一丸となって、スピード感を持って着実に実行していく、政府一丸となっていくというのはどういうことなのか。大臣、決意をお伺いできますか。

野上国務大臣 原発事故以来、復興に向けて懸命に取り組まれておられる農林水産関係者の皆様の御苦労、御心配は本当に大変なものでありまして、海洋放出による風評被害が生じることを懸念されるお気持ちは本当に当然のことだと思います。

 先般、漁連の会長を始め漁業者の皆様からも様々な御要請等をいただいたところでございますが、やはり、風評被害についてどのようにして対応していくのか。今般、実行会議も設置をされたところでありますが、様々な風評被害が想定されるわけでありますので、そこに向けて政府が一丸となって、想定され得ない風評被害に対してもしっかりと対応できるように、実行会議、ワーキンググループ等において検討しながら全力を尽くしていくということでございます。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 関係閣僚会議の初会合でも、大臣は、福島県産の農林水産物や加工品の買い控え、価格低下が新たに生じることが懸念されているとおっしゃったと報道されています。その懸念というものを払拭できるのかどうか。あるいは、実際に、風評被害以上に実害となっていくとは思うんです。

 でも、今回の実行会議では、風評被害対策と言ったらいいんですか、一言で言えばそれを主にやっていくということではあるんですが、実際に、風評対策についてこれまでいろいろなことをやってきています、十年間ずっとやってきています。それでも、買いたたきをされたり価格が低迷のままだったりということが続いている状況なんです。効果等について、今までやってきた風評被害対策についての検証というものをしっかりやっているのか。

 そして、大臣は、追加的な風評被害対策が必要だとこれまでずっとおっしゃっています。前回、私が委員会で質問したときにもそのようなこともおっしゃっておられるんですが、どのような追加的な風評被害対策が必要だというふうに思いますか。

 十六日に、実は東電は、風評被害対策というものも含めて方針を出しているんですね。その中に、魚類等の飼育試験をALPS処理水で行うとか、そんなことまで言っているんです。賛否はいろいろあると思いますけれども。でも、これから思い切ったことを何かやっていかなかったら本当の対策にはならないということだと思います。改めてまた決意を伺いたいと思います。

野上国務大臣 農林水産省では、風評対策としまして、これまで、福島県農林水産業再生総合事業によりまして、放射性物質の検査ですとか、流通実態調査、商談会の開催といった販売促進、GAPの取得促進等々、様々な支援を行ってまいりました。流通事業者や消費者に対して、福島県産の食品の安全性あるいは情報を幅広く発信してきたところでありまして、これらの取組も引き続きしっかり行ってまいりたいと思います。

 さらに、生産体制の強化につきましては、がんばる漁業復興支援事業による漁獲量の回復の支援ですとか、荷さばき施設などの共同利用施設の整備の支援などによりまして、生産段階への支援なども行ってきたところでございます。

 これらの取組の検証を行っているのかという話でございます。

 福島県産の農林水産物の流通実態調査によりますと、福島県産品と全国平均の価格差は徐々に縮小してはおりますが、依然全国平均を下回る価格の品目が多いことが明らかになっております。

 他方、消費者を対象とした調査の結果を見ますと、福島県産の食品の購入をためらう割合は、平成二十五年二月は一九・四%だったのに対しまして、直近の令和三年二月の調査では八・一%まで減少しているわけであります。

 いずれにしても、今般設置されました実行に向けた関係閣僚会議におきまして、やはり水産業を始めとした関係者の御意見を幅広く聞かなければならないというふうに思いますし、どのような風評被害が発生するのか、こういうことも注視しながら、生産、加工、流通、消費、それぞれの段階での追加の支援策を検討していくことが重要であると考えております。

金子(恵)委員 国民の皆さん全体の意見を聞いていく、情報発信をしながら聞いていくということも大切だと思いますし、報道されていることが全てということではないかもしれませんけれども、ここのところ、例えば昨日の地元紙を見ても、「福島ブランドに逆風」と福島民報新聞に出ている。「悪夢の日々よぎる」果樹園を営む方からのそういう言葉もありました。ですから、漁業だけじゃないですね。また、もう一つの地元紙で、福島民友という新聞があります。これも昨日の新聞ですけれども、今度は「都内の消費者 政府が安全性発信して 応援したい、でも 少ない情報、不安」これが見出しなんですね。

 もう既に、この間も申し上げましたように、海洋放出決定となった段階で新たな風評が起こっているというふうに言わざるを得ない状況なんです。ですから待ったなし、急いでいただきたいというふうに思います。お願いいたします。

 それで、十八日に地元のいわき市で廃炉・汚染水・処理水対策福島評議会が開かれました。ここで海洋放出に関する方針を浜通りの首長の皆さんや関係団体の代表者の皆様に説明した、そういう場でありました。そこでどのような意見が出されたのでしょうか。県漁連の会長を始めとして、地元関係者の皆さんからは恐らく大変厳しい言葉もあったというふうに思います。

 今日は長坂経産副大臣にもお越しいただいておりますので、是非、現場での声というのを御報告いただければと思います。

長坂副大臣 お答え申し上げます。

 先日十八日に開催されました廃炉・汚染水・処理水対策福島評議会には、福島県庁を始めとした自治体の皆様や福島県漁連、またJA等、関係団体等の方々に御出席をいただきました。

 まず第一に、漁業者や地元自治体への説明が不足しており、丁寧な説明や情報発信を継続すべきではないか、第二に、風評被害が生じないよう風評対策を徹底すべきである、第三に、風評被害が生じた場合には東電が確実に賠償を行うよう国が適切に指導すべき等の御意見をいただきました。

 政府といたしましては、こうしていただきました御意見をしっかりと受け止めさせていただきまして、まず第一に、安全性に係る科学的な根拠に基づく情報を透明性高く発信し、説明を尽くす広報活動を行うこと、第二に、風評の影響を未然に防ぐための販路開拓などの支援、そして第三に、万が一風評被害が生じた場合の丁寧な賠償など、国が前面に立って風評払拭に取り組んでまいりたいと考えております。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 ただ、本来、賠償がないように、とにかく風評被害対策をやるんだということですので、万が一の場合の賠償の話まで出ているということでありますけれども、これについて、やはり厳しい声もあったというようなことだと思うんです。

 実際に、私は、農水大臣に、このことについてどのようにお考えになられているか、皆さんの現場の声をどのように受け止めていらっしゃるかということを質問させていただきたかったので、通告させていただきました。でも、通告した段階で農水省から、どなたもこの会議には陪席していなかったので分からないのでということでございまして、経産省が主催のような形、事務局的な形になっているということから、今日はわざわざ長坂経産副大臣に来ていただいたということであります。

 私たちには、その場でいろいろな声があったということ、これも報道ベースで伝わってくるわけです。でも、通告して御意見を聞きたい、どのように受け止めるかというふうにお伺いしたいとなったときに、そこにいなかったから分からないと言われてしまうと、反対に、先ほど来おっしゃってくださっていた政府が一丸となってというのはうそなのかなと感じてしまうわけですよ。本当に残念でならないと思います。

 改めて、今、長坂副大臣から御報告もありましたので、野上大臣、どのように受け止めていらっしゃいますか、お伺いしたいと思います。

野上国務大臣 様々な情報についてしっかり共有していくことは重要であると考えております。

 今、十八日に開催されました福島評議会での状況の答弁があったところでありますが、福島県の副知事を始めとする地元関係者の皆様から、処理水の安全性等についての理解が深まるように、関係者への説明は継続するとともに国内外への情報発信を行い、風評が生じないよう万全の対策を行うこと、あるいは、安全対策に万全を期す、東京電力に対して賠償ですとかを国がしっかりと指導すること等の発言があったという答弁が今あったところであります。

 その中で、福島県漁連会長からは、海洋放出への反対は変わらず、これからも地元で漁業を継続することが会員の総意であること、あるいはALPS処理水について関係者の理解を得ることとの発言があったとも聞いております。

 農林水産省としては、関係省庁と連携をしながら、ALPS処理水の安全性について国民の皆様や海外に対して丁寧に説明する、今先生からお話があったとおりでありますが、しっかりと理解を得るように醸成を図っていく、風評を生じさせないための最大限の努力を行うとともに、先ほど来答弁させていただきましたとおり、漁業者を始めとする関係者の皆様の意見を伺いながら、生産、流通、加工、消費、あらゆる段階において風評対策を実施して、漁業が継続的に発展していけるように対策に取り組んでまいりたいと考えております。

金子(恵)委員 それでは、長坂副大臣、ありがとうございました。御退席いただいて結構ですので、ありがとうございます。

 続いて、風評被害で苦しんでいるのは漁業者だけではないということを何度も申し上げさせていただいているんですが、昨年の十二月八日の委員会でも取り上げさせていただいたんですが、福島県産の畜産物は風評被害によって低い価格で取引がされていて、以前の水準に戻らないという状況であります。その中で、昨年四月からコロナの影響で肉牛が下落したということから制度を変えた牛マルキン、肉用牛肥育経営安定交付金制度でありますけれども、この制度が福島の実情に合っていない状況であるということを申し上げさせていただきました。

 東北ブロックという形で、ブロックごとの算出によって交付金が算定されるということになりまして、これは、東北ブロックの中でいうと、高値がつく米沢牛、前沢牛、仙台牛のようなブランド牛が生産されているので、福島だけは価格が低いわけですから、実際の取引よりも標準的な販売価格が高くなっていって、計算上ですと赤字の幅が狭まるということで、牛マルキンの交付金が下がっているという話でした。

 それで、そのときに大臣は、十分に検証した上で必要があれば見直しを行うことも考えております、そういう御答弁を下さいましたので、その後どのように検証が行われたのかということをお伺いしたいと思います。

野上国務大臣 牛マルキンの算定方法につきましては、昨年五月に標準的販売価格をブロック別に算定するという見直しを行いました。

 これは、従前から、マルキンの発動について県間に格差があって、単価についても大きな差が問題となっていた中で、コロナによる枝肉価格の下落に伴って、相対取引価格の下落率が市場価格の下落率より大きくなるという、交付金単価の県間格差が更に広がる懸念が生じまして、セーフティーネットとしての牛マルキン制度自体への信頼が失われかねない事態となったことから見直しを行ったものです。

 この見直しについては、本年二月にその効果の検証を実施いたしました。

 この検証の結果、相対取引価格が市場取引価格よりも低かった県におきまして、月によってばらつきはあるものの、総じて見れば相対取引価格が市場取引価格に近づいて、さらにはそれを上回る月がある県も出てくるなど、販売価格の地域ブロック化の効果はあったと考えられることから、現行の地域ブロックによる算定を引き続き行うとしたところでございます。

金子(恵)委員 福島県の現場からの声としては、理解はしていないですよ。

 実際に、こちらからちょっと申し上げさせていただきますと、見直しができないという話でしたから、二月の段階で説明が行われたというふうには聞いていますが、その代わりに福島県農林水産業再生総合事業における肥育農家への支援というのが新たにつくられたということで、モデル牛を導入したときは十万円、優良牛を導入したときは七万円なんですね。これはこれで、ありがたいことだと思っています。

 でも、これは全ての方々をカバーするわけではないので、牛マルキンとはやはり違います。全てが対象ではないということですから、どうしても牛マルキンで福島県の農家にとってマイナスになっているこの制度設計は変えてほしいと。福島県からもいろいろ要望が以前あったわけなんですが、今も同じ要望であるということです。それに応えていただきたいというふうに思うんですが、いかがですか、大臣。

野上国務大臣 福島県の畜産、特に肉用牛につきましては、現在においても、東京市場における福島県産牛の枝肉価格が同市場の平均値に比べまして一割程度、一頭当たりにしますと十万円程度低い状況になっておりまして、これは原発事故の風評被害による影響も考えられることから、その払拭は重要な課題であると認識をしております。

 このために、これまでも農林水産省としては販路拡大に向けた取組や販売促進の支援を行ってきたところでありますが、今般、今言及いただきました令和三年度の福島県農林水産業再生総合事業の中で、新たに肥育農家に向けての支援としまして、福島県産の優良な肥育素牛の導入に当たって、一頭当たり最高十万円の助成を措置したところであります。

 マルキンにつきまして従来の県別方式にするということ、これは昨年五月の見直しの趣旨にそぐわないため難しいと考えておりますが、本対策によって風評被害を受けている福島県産牛の品質向上、ブランド力の強化につながると考えておりますので、福島県と連携しながら福島県の生産者の皆様に丁寧に説明もして、御活用いただきたいと考えております。

金子(恵)委員 海洋放出の問題もあって、これからまた、再度申し上げますけれども、新たな風評被害が起きる可能性がある、価格が低迷また低下する可能性もある。是非しっかりと支援をしていただければというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 法律案についてでありますけれども、先ほど来、コストの削減の話は御答弁をいただいています。鉄骨では一割、木造では三割。でも、一方で、畜産クラスター事業というものの基準事業費が引き上げられている措置もあるということで、実際に、安全基準というものをそのままにしながら補助事業の支援を更に手厚くして、それで生産者の規模拡大等を後押しするという考え方もあったのではないかというふうに思うんですが、御所見をいただければと思います。

水田政府参考人 お答えいたします。

 畜産クラスター事業では、畜舎の建築等に対して補助を行っているところでございまして、基準単価につきましては、先ほどちょっと答弁させていただいたとおり、これまで引上げを行ってきたところでございます。

 一方で、畜舎の建築コストが上がっているという声がございまして、建築コストの削減を求める声というのはございました。ということでございますので、できる限り安いコストで建築できた方がいいというのは当然のことでございますので、私どもといたしましては、今回、新しい法律を出すことによって建築コストを少しでも引き下げていきたいというふうに考えて、この法律を出したということでございます。

 補助事業の方の基準単価につきましては、今後とも、建築コストの今後の上昇とかそういったことを注視いたしまして、必要に応じてまた検討してまいりたいというふうに考えております。

金子(恵)委員 重複しないように質問させていただいていますので、よろしくお願いいたします。

 利用基準、ソフト基準、今回、省令で決めていくということなんですが、実際にどのように決めていくのか。畜舎の規模、畜種の違いとか、様々な観点から決めていかなくてはいけないというふうに思いますが、どのようなお考えをお持ちでしょうか。実際に、避難経路、避難訓練はどのようなことを想定しているのか、お伺いしたいと思います。

葉梨副大臣 多分、技術基準が緩和される利用基準となるB基準について主にお尋ねだというふうに理解をいたします。

 具体的には省令で決めていくことになるんですけれども、一日当たりの滞在時間と滞在人数の制限、畜舎等内の整頓を行うことなどによって災害時の避難経路を確保すること、災害による被害の防止、軽減に資する取組として、年一回程度の避難訓練の実施や、新制度のB基準に基づいて建築したことを畜舎等に明示することなどを具体的に今後省令で決めていくことになろうかと思います。

金子(恵)委員 第三回目の新たな畜舎建築基準等のあり方に関する検討委員会が昨年五月の十一日に書面開催されていますが、ソフト面で何ができるかというところも含めてではありますけれども、そこで本川委員がこのように言っています。法人として雇用を持つなら、働く人たちの環境づくりと安全性の確保、経営の安定・持続性を高めていくことから、家畜の命を軽視してはならない、被災時の損害を軽減し、人がけがをすることもなく、家畜の命も守ることによって早期に生産再開することが可能となるというふうに言っています。

 この法律は反対するものではないんですけれども、やはり、アニマルウェルフェアの観点から、家畜にストレスをかけるような畜舎であってはいけないというふうにも思います。改めて、家畜の安全確保、ストレスのない飼養環境を担保できるということでよいのか。一言だけお願いします。

高鳥委員長 申合せの時間が経過しておりますので、御協力願います。

野上国務大臣 本法案によりまして、畜舎内の滞在時間等を制限することで、例えばまれに起きるような地震で畜舎が損傷しても倒壊はしない強度にまで構造等の基準を緩和することを考えておりまして、家畜の生命を軽んじているということではございません。

金子(恵)委員 終わります。

高鳥委員長 次に、矢上雅義君。

矢上委員 立憲民主党の矢上雅義です。

 今回の畜舎新法につきましては、規制改革会議等の議論が発端とはなっておりますけれども、この三十年にわたる農林水産省及び農林水産委員会の委員の皆様方の御努力のたまものということで、まず、これまでの歴史を振り返りながら、質問に当たる前の共通の見解、認識を持っていただきたいと思います。

 ちょうど三十年前なんですけれども、自民党の海部政権、宮沢政権にかけて、ちょうど平成三年に牛肉・オレンジの自由化というものが決定されて、これが全国の農業者に大激震を起こしました。自民党の皆様方には大変御無礼なことかもしれませんけれども、盤石の体制であった自民党の時代に一つの大きな転換点をつくった事件であったかと思います。

 その後、今度は、政権交代しまして細川政権が発足した平成五年。平成五年は六月から七月にかけて各地で集中豪雨が多発し、それとともに夏は冷夏が襲い、ちょうど当時は約一千万トンぐらい米が必要だったんですけれども、一千万トンに対して七百四、五十万トンしか取れないような大変な凶作の時期を迎えました。

 そこで、細川政権が取った手法としては、タイからの緊急輸入米を導入するということで、これがまた一つの大きな政治問題となりました。細川政権が短期で終わった要因の一つであったかもしれませんけれども、それを契機に、平成六年ですか、ガット・ウルグアイ・ラウンドにおいてWTO協定が成立いたしました。

 こういうことで、最初は、水田生産局長がおっしゃった国際競争環境の激変というものはここに端を発しておりまして、当時から、アメリカとかオーストラリアから食肉が入ってくると価格競争で負ける、では価格競争に勝つためには何が必要かということで、農林水産省が提言したのが規模拡大政策でございます。

 ところが、規模を拡大するに当たっては、せっかく規模を拡大しても低コストでなければ可処分所得が残りませんので、いかに規模拡大をする上で低コスト化を図るか。それと、当時からもう農村部の少子高齢化が進んでおりましたので、労働力の確保とともに、確保できない場合には省力化機械を導入する。この当時から、フリーストールとかミルクパーラーとか、今はやりの言葉が使われておったんですけれども。そして最後に、大事なのが、意外だったのが環境対策でございます。

 ちょっと過去の資料を調べたんですけれども、昭和五十八年の酪肉近代化方針の努力目標が、土地制約の少ないところの専業農家で昭和五十八年は酪農はモデル頭数が四十頭です。そして、国際競争にさらされるということで、平成八年に大胆に規模拡大を導入しようとしたときの、平成八年の酪肉近代化基本方針の目標頭数が八十頭でございます。四十頭から八十頭ですよ。

 また、土地制約が大きい九州とか西日本レベルでいきますと、これまで三十頭がモデルケースだったのが六十頭まで増頭になったんですよ。

 ただ、ちょうどこのときに酪農家も高齢化が進んでおりましたので、若い担い手農家に牛を引き取ってもらう代わりに、高齢の農家の方は退職金代わりにお金をもらったり、あと、それで負債を整理したりして、そのときには円満に済んだんですけれども、直ちに起きてきましたのが、特に水分の多い酪農の家畜ふん尿問題で、これまで野積みとか素掘りで処理しておったのが、数が多くなり過ぎまして、本格的な家畜ふん尿処理施設を造らなければならないということで、安くても二千万、高いところは一億以上の家畜ふん尿処理設備を造らざるを得なくなりました。

 そういうことで、この当時から畜産、酪農の規模拡大をするに当たっての、いかに低コスト化を図っていくかという問題が浮上してきておりまして、恐らくあの当時は、平成五年から七年にかけてこの衆議院の農林水産委員会でも、畜舎に係る莫大なコストをいかに低減するかということで農林水産委員会でも数度視察をしました。そして、平成七年ぐらいから畜舎の建築基準法の規制緩和の検討が始まりまして、それが実ったのが平成九年ですけれども、当時は建設省の協力がありまして、建設大臣から平成九年に畜舎設計規準の緩和の大臣認定が行われました。これがまずスタートなんですけれども、それからまた二十数年かかって、ようやく皆様方の努力が日の目を見たということなんです。

 その後、忘れられないのが、昔、自民党の松岡利勝先生、あの方が、産業政策だけではなかなか農業は立ち行かないから地方政策と安全保障の面からきちっと基本法を作るべきだということで、平成十一年に食料・農業・農村基本法の制定を目指されまして、平成十一年だったですかね、できたんですけれども。

 当時の戸別所得補償とか農業の多面的機能というのは、モデルケースとしまして、ヨーロッパの山岳地帯、特に国境地帯において、そこに人が住んでもらうことによって国土の安全保障が図れる、それと同時に食料の安全保障も図れるということで始まったといいますか、当時の農水省の職員さんとか松岡先生あたりが外国の事例を参考にして食料・農業・農村基本法というのを作られたということでございます。そういう流れの中で、今回、畜舎法が提案されましたことに大変感慨深いものがございます。

 続きまして、質問に入らせていただきますけれども、今回の畜舎新法の立法背景が国際競争力の強化ということであります。また、担当大臣も農水大臣と国交大臣の二名です。今後予定される認定畜舎及び特例畜舎の利用に関する監督責任が非常に重要となってきますが、そういったときに建築基準法と畜舎法の法体系の関係が大事だと思います。今回、畜舎新法で行われる技術基準の緩和は、何というんですか、建築の世界の憲法とも言える建築基準法の世界における基準緩和の延長線上なのか、同一のものなのか。その辺の法体系はどうなっていますかね。

水田政府参考人 お答えいたします。

 この法律につきましては、この法律案による基準の適用を希望する方が、畜舎の構造及び利用に関する計画を作成いたしまして都道府県知事の認定を受けた場合に、この計画に基づいて建築される畜舎等につきまして建築基準法の適用が除外されるという仕組みになっているところでございます。

 このように、この法律案は建築基準法の適用が除外される制度でございまして、法体系ということで申し上げますと、建築基準法の法体系の中の制度ではなくて、建築基準法とは独立した制度となるということでございます。

 ただ、実態を申し上げますと、これまで建築基準法の中で講じられてまいりました畜舎設計規準等の告示によります基準の緩和等がございますので、そういったことを踏まえて、そこから更に基準を緩和していくということになると思いますので、建築基準法の基準を参考にしながら、必要な規制については引き続き行いますし、緩和できるところは緩和していくというのが実態であるというふうに考えております。

矢上委員 一般的に特例法と申しますのは、例えば、例を例えますと国土交通省の河川法ですね、治水ダムは河川法を根拠とするんですけれども、治水ダムに農業用水、発電用水、上水道用水とかを加えまして多目的ダムになると、特定多目的ダム法が法根拠になるんですよ。この特定多目的ダム法は河川法の特例法と言われておりますけれども、この関係は一つのピラミッドの中に入っておりまして、河川法という大きなピラミッドの中に特定多目的ダム法は吸収されていきます。

 それに対して、今回の建築基準法と特例の畜舎新法というものは二つのピラミッドを構成するわけでございますから、今後、計画を認定して、建築を許可して、利用の実態を管理する以上、農林水産省独自の監督責任というものが非常に大きくなると思うんですけれども。

 そこで、ちょっとお聞きします。今度は国土交通省の方にお聞きしますが、平成七年から十五年ほどにかけて作られた国土交通大臣告示による基準緩和、要するに建築基準法上の基準緩和は選択肢としてこのまま残るんでしょうか。お答えください。

黒田政府参考人 お答えいたします。

 畜舎に関します建築基準につきましては、先ほど委員がおっしゃられましたとおり、平成七年三月に閣議決定されました規制緩和推進計画を踏まえまして、農林水産省との連携の下に、畜舎特有の事情を踏まえた検討を行いまして、構造強度や防火に関する基準の一部緩和をしてきたところでございます。

 具体的には、開放性が高いことやその立地特性など、畜舎特有の事情を踏まえまして、構造計算で使用する積雪荷重や風圧力の緩和、防火壁等に関する基準の緩和等の措置を講じております。

 それで、今回の新制度の対象となります畜舎につきましては、人命の確保に配慮したソフト対策を法令上追加的に要求し、都道府県知事が認定することを前提に、建築基準法の耐震基準等を更に緩和したハード基準を適用することで、総合的な畜舎の安全性を確保することを想定しておりますが、新制度を活用しない畜舎につきましても、これも存在いたしますので、引き続き従来の建築基準法の基準を適用するということと考えておるところでございます。

 以上でございます。

矢上委員 次に、畜舎建築及び利用計画を農林水産大臣に提出して認可を受ける際に、認定の要件として、利用基準と相まって技術基準に適合する畜舎については建築及び利用を許すと。利用基準と技術基準という二つの要件がなければ建築及び利用が認められないんですけれども。

 技術基準は物理的なものですから見れば分かるんですが、一つ、利用基準ですね。畜舎に出入りする人の人数を減らしたり滞在時間を大幅に減らすとなると、その手法としては、当然、省力化機械とかAI化の導入が一つ、農作業の動線の工夫により無駄をなくすことが一つ、三番目に、規模拡大とは逆に、減頭、減数など規模縮小により出入り人数を減らすという三つの選択肢があるんですけれども、今回の立法背景の趣旨であります国際競争力の強化という視点からは、どうしても省力化機械等の導入等が避けられないと思うんです。

 今回の計画を農林水産省に申請するに当たって、畜舎計画書とともに省力化機械の導入事業の申請も義務づけられるんでしょうか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 端的に申し上げますと、そのようなことはございません。

 新制度におきます滞在人数とか滞在時間の制限でございますが、畜舎の利用方法に関する利用基準の一つとして、畜舎の構造等に関する技術基準との組合せにより安全性を担保する観点から設けるものでございます。

 この滞在人数及び滞在時間の制限につきましては、省力化機械の導入などによらずとも、例えば、酪農牛舎であればフリーストール化することによっても達成可能でございますし、また、委員御指摘のとおり、動線を簡単にすることによっても可能でございます。その手法のいかんは問わないということでございます。

 また、現状において滞在時間が一定程度以内でありまして利用基準を満たしているのであれば、こういった新たな取組を求めるというものでもございません。

 以上でございます。

矢上委員 法案の趣旨では、利用基準と相まって技術基準に適合する畜舎に限り建築及び利用を認めるとなっているんですけれども、申請してもらうときの利用基準のところに、例えば私が、直ちに省力化機械を入れて十人いるところを五人にしますとか、一日八時間の労働時間を四時間にしますという、要するに利用基準を作文して、申請して認定を受けて、それから建築します。ところが、経営状況とか故意により省力化機械の導入をなされなかった場合には、いつまでたっても十人を五人に減らすことはできませんし、八時間を四時間に減らすことはできないんですよ。

 そうなると利用基準と技術基準が同時に達成できないという現象が発生するんですけれども、そういう場合でも建築の許可とか利用の許可が下りるんでしょうか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 この法律案におきまして、都道府県知事の認定を受けた畜産農家は、畜舎等の利用につきまして、利用基準を遵守するということが求められるところでございます。

 利用基準の遵守状況につきましては、省令で定めるところにより、当該畜産農家が畜舎等の利用状況について定期的に都道府県知事に報告するということも定めておりますし、都道府県知事は、必要に応じまして、当該畜産農家等に対しまして報告徴収や立入検査等を行うことができるということとしておりまして、これらにより遵守状況の確認を行うこととしておるところでございます。

 また、都道府県知事は、畜産農家の方が詐欺とかその他不正の手段によりまして認定を受けたときは取り消すことができる等の規定もございますので、そういった規定がございますので、こういった規定を基にしっかりと監督していくということになると思います。

矢上委員 利用基準の部分の基準の設定とか、利用基準をいつまでに達成するかとか、それに猶予期間が認められるのかなど、もう少し省令の方できちんと分析していただかないと私たちがいただいた法案の趣旨と現実の対応がちょっと変わってくるかなと思うもので、指摘したところでございます。

 あと、次に、国際競争の変化に対応する国際競争力強化ということで出ておりますけれども、国際競争力強化の目的は価格競争に勝つことでありますから、低コスト化が手段なんですね。

 ところが、今回、例えば、畜舎を安く建てられて千円もうかりましたよ、ただし、その代わり一万円の機械を買ってちょうだいねというと、一万円から千円を引くと九千円足りなくなるんですけれども。要するに、畜産、酪農の補助事業の根拠というのは、生産費調査があるんですよ。生産費調査の中できちんと、省力化機械とIT化の費用、初期費用とか、毎月のメンテナンス費用とか、そういうものをきちんと織り込んでできるような省力化機械、AI化の導入に取り組んでほしいんですけれども、その点について農水省にお伺いいたします。

葉梨副大臣 省力化機械、搾乳ロボットですとか自動給餌機ですとかあるいは分娩の監視装置ということですが、これについては、まず、私どもは畜産クラスター事業とか畜産ICT事業によってその導入を支援しておりまして、着実に増えてきております。

 そして、この機械等の導入というのは、おっしゃられた労働力の不足の解消だけではなくて、例えば、肉用牛の分娩間隔の短縮や事故率の低減、乳用牛の乳量の増加や乳房炎の減少などの生産性向上の効果が得られるという報告を現場から受けています。労働費の低減や収入の向上によって結果として省力化機械の償却費を上回る収益増を図ることが可能というふうに考えております。

 具体的な試算もいろいろとさせていただいておりますので、そういったことをしっかり丁寧に現場に説明して、是非とも、労働力不足とあるいは生産性の向上を両立させるような形で導入を図っていただくように支援していきたいと思っています。

矢上委員 今の御答弁、ありがたく感じます。どうぞ、実現に向けて、よろしくお願いいたします。

 次に、農林水産大臣の方にお伺いしたいと思うんですけれども、生産基盤の強化というと、よく食料・農業・農村基本法にも生産基盤の強化、生産力の増強ということで、生産力の増強に力を入れ過ぎちゃうと、いわゆる豊作貧乏というのが起きちゃうんですよ。

 今回の生産基盤の強化の中には、生産力の増強だけなのか、それとも、生産力は現状維持でも、きちんとキャッシュフローが残せるような財務会計、財務体質の強化とか、そういう経営基盤の強化というものも含むんでしょうか。もしよろしければお答えいただければと。

野上国務大臣 まず、現在、主要な畜産物であります牛肉及び牛乳・乳製品の国内需給でありますが、令和元年度で見ますと、牛肉につきましては九十四万トンの需要に対しまして国内生産は三十三万トン、また、牛乳・乳製品につきましては生乳ベースで千二百四十万トンの需要に対して国内生産は七百三十六万トンとなっておりまして、両者とも需要を国内生産で賄い切れず、不足分を輸入で補っているという状況にあります。

 一方で、国内産の畜産物は高い品質から海外での人気が高いわけでありまして、例えば和牛は和牛ブランドとして世界中で認められて、実際、輸出量も二〇一五年の千六百十一トンから二〇二〇年には四千八百四十五トンと大きな伸びを見せているところであります。

 このようなことから、輸出も含め拡大が見込まれる国内外の需要に応える供給を実現するためには生産基盤の強化に取り組む必要があると考えておりまして、令和二年三月に策定しました基本計画におきましても、食料自給率の向上に向けて、令和十二年度までに牛肉は四十万トン、生乳は七百八十万トンに増やすという努力目標を設定しているところであります。

 本法律案は、この生産努力目標を達成するために必要な畜産の生産基盤強化を支える環境整備のための重要な取組の一つとして同計画にも位置づけられているものでありまして、委員御指摘の生産力の増強も目指すものと考えております。

矢上委員 参考人で結構なんですけれども、先ほどの質問の中でちょっと答弁が欠けております。要するに、キャッシュフローというんですか、資金繰りが回らないとどうしようもないものですから、この生産基盤強化の中には、資金繰り対策というかな、農家に無理をさせないような金融対策とか財務指導とか、そういうものも含んでおるんでしょうか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 畜産業でございますけれども、委員御承知のとおり、多額の設備投資や運転資金が必要でございますし、投資資金の回収には時間を要するものでございます。また、資材とか生産物の価格変動も大きいという特徴がございまして、キャッシュフローの確保というのは非常に重要だというふうに考えているところでございます。

 この法律案でございますけれども、先ほど来説明させていただいておりますように、増頭、増産によります生産力の増強によって販売額を増やしていく、一方で、畜舎建設の低コスト化を目指す、コストを削減していくということでございますので、畜産経営におきますキャッシュフローの改善にも寄与するものというふうに理解をしております。

矢上委員 時間の関係で次の質問に移らせてもらいますけれども、低コスト化対策ですね。二問あったんですけれども、一問だけに絞ります。

 今、稲WCSというのは全国的に普及しておりますが、今後、自給飼料の確保という観点から、水稲地域です、水稲地域における飼料用作物の普及について考えがございましたら、簡潔にお答えいただければと。

野上国務大臣 先生御指摘のとおり、水田地域において、栄養価の高い、そして収量が高い、粗飼料としても濃厚飼料としても利用可能な飼料用トウモロコシの生産を進めることは重要と考えております。

 我が国では飼料用トウモロコシの生産の中心は青刈りトウモロコシでありまして、令和二年の作付面積は九万五千二百ヘクタール、このうち一割の八千六百十ヘクタールが水田での作付となっております。

 水田を活用した飼料用トウモロコシの生産を更に拡大していく上では、湿害に弱いために排水性の悪い圃場では収量が低下する、あるいは、ハーベスターやラッピングマシンなど水稲と異なる機械装備が必要となるなどの課題もあります。

 農林水産省としましては、排水性の改善のための明渠の整備ですとか、あるいは青刈りトウモロコシ等の収穫を受託するコントラクター等の飼料生産組織の強化、自給飼料の増産を図るために必要な機械の導入、水田活用の直接交付金の交付といった支援を行うことによりまして、飼料用のトウモロコシの生産の拡大を図ってまいりたいと考えております。

矢上委員 これで質問を終わります。ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。畜舎建築に関する特例法案について質問します。

 法案では、畜舎を建築基準法の適用範囲から外して、新しい基準を設けるとしています。新基準のB基準では、震度六強から七では倒壊するおそれを否定できない強度としています。新基準のA基準では、震度六強から七に達する程度の地震では倒壊し得ない基準を想定していて、今後、緩和を検討しているとしています。

 気象庁がお見えでしょうか。気象庁にお尋ねします。

 気象庁ホームページの震度の段階の項目に、震度の揺れの状況、これが具体的に記述されています。震度六強の揺れの状況について説明をしていただけますか。

 もう一問。あわせて、日本付近で発生した主な被害地震というのもあります。一九九六年、平成八年以降、紹介されていますけれども、震度六強以上の地震はどのぐらいあるか、重立った地震名も少し挙げて説明していただけますか。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 震度六強とはどの程度の揺れなのかというところでございますけれども、気象庁では、地震があった場合に、その揺れによりその場所でどのような被害が発生するか等を示します気象庁震度階級関連解説表というものを作成いたしまして、公表しているところでございます。

 本解説表におきまして、震度六強の揺れにおける人の体感、行動は、「立っていることができず、はわないと動くことができない。」また、「揺れにほんろうされ、動くこともできず、飛ばされることもある。」とされているところでございます。

 また、平成八年以降、日本付近で発生した地震で、震度六強以上を観測した地震についてでございます。平成八年以降、日本付近で発生した地震で、震度六強以上を観測した地震の回数というのは二十回というふうになっております。

 それから、重立った地震というところでございますけれども、例えば、二〇一一年、十年前の、地震名としては東北地方太平洋沖地震、震災の名前としては東日本大震災となっているものがございます。それから、二〇一六年四月に起きました平成二十八年熊本地震というものがございます。それから、直近のところですと、今年の二月十三日に福島県沖で発生しました地震で震度六強を観測しているところでございます。

 以上でございます。

田村(貴)委員 近年だけでもこれだけ大規模地震が発生しています。震度六強、まして震度七では逃げることもできません。この地震に耐えられないと分かっているものを新たに法律で認めて造ってしまっていいんでしょうか。

 農水省が想定しているソフト基準は、避難手順の明確化、避難経路の確保、時間がかかる場合の避難スペースの確保としています。震度六強は、今気象庁の説明があったように、はわないと動けないというレベルです。このソフト基準は無意味なものなんじゃないですか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 新制度では、利用に関する基準を遵守することで、構造に関する技術基準を緩和しても両者相まって畜舎としての安全性が確保される基準というものを設けることとしているところでございます。

 緩和された構造の基準は、いわゆるB基準でございますけれども、その地域でまれに発生する地震、震度五強程度でございますが、で損傷はしても、傷は入っても畜舎としての利用には問題が生じない強度とすることとしておるところでございまして、これは、具体的に申し上げますと、部材の基準強度に設けられております安全係数を設定しないということでございまして、そういたしますと、部材の持つ強度を満度に使うことになるということになるわけでございます。そうしますと、余裕を持たせた強度ではございませんが、その地域でごくまれに発生するような地震、震度六強から七に対しましてぎりぎりの強度は持っているということでございまして、倒壊する前提の基準ということにはなっておらないところでございます。

 こうしたことから、その地震の揺れが収まった後に速やかに退避できるよう、このB基準における利用基準におきまして、畜舎等内の整頓を行うことによる災害時の避難経路の確保、あるいは、災害による被害の防止、軽減に資する取組として、避難訓練の実施等、こういったものを定めることを検討しているところでございます。

田村(貴)委員 全然その説明が合理的じゃないですよね。震度六強から七に達する程度の地震、これで倒壊するおそれがあると資料に書いているじゃないですか。そして、六強の地震でははわないと動けない、そういうときに避難経路を定めたところで意味がない、私はそう言っているんですよ。まともな回答はありませんでした。

 もしかして、人の滞在が少なければいいと考えているんじゃないですか。建築基準法では、例えば、人の出入りが非常に少ない灯台であるとか、あるいは山間地の気象観測所とか電気通信中継施設、こうした、人がいてもいなくても、安全を第一の基準としているわけであります。この特措法のたてつけは、建物等の安全確保の思想とはかけ離れた考え方だと言わざるを得ません。

 新たな畜舎建築基準等のあり方に関する検討委員会の議事録を読ませていただきました。異論が噴出しておるじゃないですか。安全、安心な社会的資産を造る点は用途に関わらない、安全基準を動かすのは慎重であるべきだ、牛舎には一億の機械が入っている、償却が終わらないうちに失われる事態があってよいのか等々です。

 重大なのは、建築技術系の委員から次のような発言がされているところです。現行法でもかなり緩和されており、私ども専門家からしても正直限度だと思っております、こう指摘されています。別の委員からも、畜舎基準の低減率があり、既にかなり落としているというところで、正直これ以上落とすのは無理だと建築の専門家は大体思う、低減の数値を見ると、これはもう限界値だろうと思っている、こういう発言が次々とされているわけであります、検討委員会で。

 お伺いします。落とすところまで落とした、現行の畜舎基準が限界ぎりぎりだというのが技術者の意見です。外力に対する基準に対してこれ以上緩和する余地はない、この立場に農水省は立っているんですか、立っていないんですか。どちらですか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の、本法律案について検討いたしました新たな畜舎建築基準のあり方に関する検討委員会におきまして、建築の専門家である委員の方々から、畜舎等の構造等の基準について、建築基準法の告示で限界まで緩和されているため、これ以上緩和の余地はないのではないかといった御意見もいただいたところではございます。

 そういったことを踏まえた上で、新築や増改築の際に畜産農家が、新制度の基準を選ぶか、あるいは建築基準法による従来の基準を選ぶか、それを選択可能にするという制度にしたところでございますし、また、利用基準、ソフト基準と、技術基準、ハード基準の組合せによりまして一定の安全性を確保するといった仕組みにもしたところでございます。

 そして、技術基準、ハード基準の緩和につきまして、建築基準法では部材の基準強度に安全係数が設けられているわけでございますが、新制度のB基準につきましては、これを設定せずに部材の持つ強度を満度に使う、こういったところまで緩和をするということにしたところでございます。

 さらに、これらの組合せにつきまして、簡易な利用基準と建築基準法と同等の技術基準の組合せであるA基準を選ぶか、あるいは、畜舎内の滞在時間の削減などを十分加味した滞在時間と人数の制限などの利用基準と建築基準法よりも緩和された技術基準の組合せでございますB基準、そちらの方を選ぶか、それを畜産農家の方が選択できる仕組みとするということとしたところでございます。

 こういう考え方をまとめて畜産の専門家の先生方に御説明したところ、各委員の御賛同をいただいたということでございます。

田村(貴)委員 賛同をいただいたと言いますけれども、賛同をいただいていません。それは後で言います。

 建築基準法で、技術専門家の方が、これ以上緩和する余地はない、そういう立場なんですね。だから、ソフトとハードの対策を打つ。そして、建築基準法でもいいし、A基準でもいいし、B基準でもいい、そういう三択を迫っている。選択制は、建物が法律によって安全が守られているんじゃなくて、自己責任を押しつけることになるんですよ。六強以上、七で倒壊する可能性があると初めから分かっておって、これで造って壊れてしまったら、自己責任になっちゃうんですよ。そういうたてつけなんですかと聞いているんです。それでいいんですかと聞いているんです、大臣。

 これは私は非常に重要な提案だと思いますよ。検討委員会では技術系委員の方が、外力に対する基準についてはもうこれ以上緩和する余地はないということをみんなで合意した方がいいんじゃないか、こういう提案をしたんです。ところが、農水省は合意を得ようとしなかった。

 挙げ句に、参加していた渡邊畜産部長はこう言っています。ソフト基準と、利用計画を作り、基準法の適用を除外するという点には基本的には反対意見はなかったとしたのであります。読んでみたら、技術職の方はことごとくこの基準はおかしいと言っているんですよ。この声を無視しているじゃないですか。

 大臣にお伺いします。何でこれだけ異論が出ているにもかかわらずこういう法案が出てくるんでしょうか。専門家の意見を聞く検討委員会であるはずなのに、意見を聞いていないじゃないですか。何のための検討委員会だったんですか。答えてください。

    〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕

水田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど御説明させていただきましたが、検討委員会でございます、新たな畜舎建築基準等のあり方に関する検討委員会におきまして、第二回におきまして先ほど申し上げたような御意見等々が専門家の方々から出たところでございます。それを踏まえまして、先ほど申し上げたような選択制等の仕組みにいたしまして、第三回の取りまとめでその案を提示して賛否を聞いたところ、全ての委員の方から了承するとの回答が得られたということでございますので、こういった法案を提出させていただいたところでございます。

 技術基準の詳細につきましては省令で定めることとされておりますので、今後、畜産農家あるいは専門家の関係者とよく議論し、御理解をいただいて策定していきたいと考えております。

田村(貴)委員 元々、畜産農家などからの要望は、確認申請が不要な木造五百平米以下、非木造二百平米以下の基準を家族農業で千平米以下にしてほしい、既存不適格の畜舎を増築するときに全体を再改築しないで済むようにしてほしい、こういう要望だったんです。ところが、一足飛びに三千平米まで申請が不要になった、しかも選択制にしてしまった。こういうところまで緩和されたんです。

 検討委員会のある委員の方です。規制改革会議の議事録を読んだ、そこでの議論は本当に困っている日本の大多数の農家の声じゃない、企業的に大きくやられている方が更に大きくするのに問題があるという議論だった、中小、家族経営を大事にしようとするときに一体何なのか、現場の実態も分からない規制改革推進会議がいろいろ議論されているのではこれは無理だ、そういうふうに述べています。

 結局、この検討委員会は出来レースではなかったんですか。結局、検討会も、規制改革推進会議から出た結論が先にあった、一応利害関係者に意見を聞きました、そういう体裁を整えるための検討委員会だったとしか読めないんです。どうなんですかね。

 ここで大臣にお伺いします。

 大臣、考えてください。今必要なのは、地震が今後どれだけ大きな規模で来るか分からない。

 政府の地震調査委員会は、三月二十六日、全国各地で今後三十年以内に震度六弱以上の激しい揺れに襲われる確率を示しました。千島海溝あるいは南海トラフ、特に海溝型の巨大地震が予測される地域で七〇%以上の高い確率となっている。太平洋側で、七〇%以上の高い確率で今後三十年以内に震度六弱以上の地震が起こっていくという状況なんですね。

 今必要な施策というのは、野上大臣、被災を未然に防ぐために畜舎の安全性を確保することじゃないんですか。人や畜産動物の命を守ることであって、老朽化したものも含めて平時から耐震化に対して補助をすることだ、私はそれを先行すべきだと思うんですけれども、大臣、どうなんでしょうか。

野上国務大臣 既存の建物に対します耐震対策につきましては、国土交通省におきまして、改正耐震改修促進法に基づきまして、要緊急安全確認大規模建築物等について耐震化の支援策が講じられていると承知をいたしております。

 この支援の対象となる建物は、一般住宅や多数の者が利用する三階建て以上の建物とされていると承知をしておりますが、一方で、畜舎は平屋で、防疫上の観点から第三者がみだりに立ち入ることがない等の特徴を有していることから、畜舎を当該支援の対象にすることは難しい面があると考えております。

 いずれにしても、我が国の畜産、酪農は、お話があったとおり、中小規模の家族経営が大宗を占めておりますので、家族経営を含めた多様な経営体を育成していくことは重要であると考えておりまして、引き続き、畜舎を含む生産基盤の整備など、生産基盤の維持強化に努めてまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 法案の提出の理由の中に、建築に係る負担が畜産業の経営状態から見て過大となっていますと。そうであるならば、その負担をもっと支援すべきではないんですか。それをやらずに、耐震基準を後退させて建築コストを抑えようというのは、本末転倒した議論だと言わざるを得ません。人と家畜の命と健康のリスクを高めることには私は同意できません。

 大臣、再建支援に財政出動をするよりも、結局、社会的コストが削減できる支援を行ったら、私は、その方が社会的コストを削減できるというふうに考えます。

 次に、畜舎の被災実態について把握されているかどうかを聞きます。

 熊本地震では、畜舎の倒壊によって多くの農家が被害を受けました。日本獣医生命科学大学の羽山伸一教授は、「災害時動物マネジメント体制の確立による人と動物が共存できる地域の創造」という研究報告書の中で被害実態を述べておられます。熊本地震では、乳牛百五十頭、肉用牛六百頭、豚五百五十頭、馬十頭、鶏は五十四万羽が畜舎でへい死しました、死んでしまいました。被害額は十億円に上ると報告していますし、畜舎等の損壊による被害はその十倍、百二十七億円となっています。

 農水省にお伺いします。畜舎の構造上の問題が多くの被災動物を発生させたと先生はおっしゃっていますけれども、じゃ、今の建築基準法、緩和されてきた建築基準法で建てられた畜舎の被害実態というのは、調査、把握されていますか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 近年の地震におきます畜舎などの畜産関係施設の被害といたしましては、例えば、令和三年の福島沖を震源とする地震では二十九件、二千万円の被害がございました。また、平成三十年の北海道胆振東部地震では二百九十四件、合わせて十一億四千万円の被害があったところでございます。

 これらの被害を受けました畜舎等が現行の建築基準法に基づく畜舎基準で建設された特定畜舎であるかどうかまでは把握はしておりません。

田村(貴)委員 耐震の新基準を提案しておきながら、これまでの地震における畜舎の被害について把握も分析もできていないと。私は、提案の仕方がかなりいいかげんだというふうに思っています。

 建築基準法は、第一条で、最低の基準を定めて国民の生命、健康及び財産の保護を図ることを目的にしています。この法の目的に沿って、建築基準法二十条は、建築物は積雪、風圧、地震その他に対して安全な構造でなければならないとしています。このほかに例外はないんです、建築基準法で。

 ところが、本法案では、二条において、安全上、防火上、衛生上支障がないものにすればよいと規定しています。まさに建築基準法の思想を骨抜きにするような表現であります。こうした法案には、やはり、なぜこういう形で提出に至ったのか、検討委員会の議論も踏まえていない、釈然としないところはたくさんあります。

 以上のことを指摘して、質問を終わります。

宮腰委員長代理 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一です。

 まず、本法案は、大規模な法人経営に有利になるのか、それとも中小規模の家族経営に有利になるのか、どちらを前提としているのか、お聞かせいただきたいと思います。

池田大臣政務官 本法律案では、一定の手続を経まして、法律案に基づく畜舎等について建築基準法の適用が除外されまして、構造等の技術基準が建築基準法より緩和された基準となっており、畜舎の建築コストが削減できる、そしてまた、構造等の技術基準の審査が不要となる面積の大幅な引上げにより審査に係るコスト及び時間が削減できる、こうしたメリットがございます。

 こうしたメリットを含めまして、経営規模の大小にかかわらず、全ての畜産農家にメリットがある、こうした制度であると考えております。

串田委員 ちょっと質問の順番を変えますが、本法案を党内で検討しましたところ、北海道を地盤としている議員からは、大いにこれは進めるべきだという意見がありました。畜産も非常に周囲にいっぱいありますし、そういったようなことの声も聞いているんだと思うんですが。

 一方で、例えば東京とか神奈川、大阪の議員からしますと、市街化調整区域にどんどん新設の住宅が建てられていて、今も建っているところもあって、その境がほとんど見た目からすると分からないという状況で、普通の住宅街が市街化と市街化調整区域と。市街化調整区域も随分建物が建てられやすくなってきたということもありまして、私の地元の横浜も、周囲を見ると、市街化調整区域と市街化というのが境がなくて、ただ単に住宅街がずっと続いている、そういう状況なわけでございまして、そこに畜舎が容易に建てられるようになってくるということになると、近隣住民からすると予想外というようなこともあるのではないか、そういう声もございました。

 そういう意味で、地域差というのを非常に考えていかなきゃいけないことなんだろうなとは思うんですけれども、このような形の近隣住民の声というか、そういったようなものに関して、この法案で、畜舎を建てるに当たっては何か考慮されているのかどうかをお聞かせいただきたいと思います。

    〔宮腰委員長代理退席、委員長着席〕

水田政府参考人 お答えいたします。

 この新法でございますけれども、対象となる畜舎につきましては、市街地でございます市街化区域そして用途地域、こういった地域を除いた地域に建築なりをする畜舎をその対象とすることとしております。

 ですので、委員御指摘の市街化調整区域内に畜舎等を建築する場合においてはこの法律案の対象となっているということでございますが、市街化調整区域はそもそも市街化を抑制することを目的とした地域とされておりまして、一方で、農業振興地域の整備に関する法律における農業振興地域と重複している場合も非常に多くて、畜舎等の建築も通常行われているという状況でございます。

 委員御指摘の、畜産農家と近隣住民との間でのトラブル云々ということでございますけれども、こういったことが発生をいたしまして、なかなか当事者間だけでの解決が難しいといった場合には、都道府県や市町村といった地方公共団体も参加して協議会をつくって対応されているということもございます。なかなかそれでも難しい場合には、公害紛争処理法に基づく公害紛争処理、こういった制度を利用するということによる解決が図られているというケースもあろうかと思います。

串田委員 今、答弁の中で、市街化調整区域というのは市街化を抑制するということでございましたが、昨年ですか、国交省で、市街化調整区域に建物が建てられやすいような、開発というものの法案が通ったと思います。

 そういう意味で、抑制するということなんですけれども、現実に市街化されていくというか、市街化調整区域であるにもかかわらず建物が建てられていくという現実の中で、そこに畜舎が加わっていくという、ますます市街化調整区域が複雑な様相を呈してくる。特に、東京、神奈川、大阪などもそうですけれども、住宅街が市街化調整区域に発展していく中で、また畜舎も加わっていくということになると、今、紛争審査会とかいろいろな御指摘がありましたが、果たしてうまくいくのかどうか。かなりトラブルが発生するんじゃないか。

 例えば、騒音、悪臭、こういったようなことが、北海道とか広大な土地を持っているところとそうではないところというのは、かなり違ったことになるのではないかと思うんですけれども、そこら辺についての配慮というのは、そういう法的な紛争解決をしていくということになるんでしょうか。ただ、建物自体は建てられるわけですよね。紛争解決というのは、どんなような形で解決がなされるんでしょうか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の、同じ市街化調整区域でも、例えば地域によって違うのではないかという御指摘をいただきました。確かに、北海道と、例えば神奈川県とかそういう都市的なところとは違う点もあろうかと思います。

 例えば、北海道におきましては、そもそも、市街化区域とか市街化調整区域とかございますけれども、それらを含めました都市計画区域が狭うございまして、都市計画区域外の、区域じゃない地域が九割以上でございますので、そういったところに畜舎も建てられるケースが多いのではないかというふうに思っております。

 一方で、神奈川県の都市部、例えば横浜とかにおきまして、ちょっと見てみたんですが、市の全域が都市計画区域になっておりまして、そのうち市街化調整区域は少のうございますが、よく見てみますと、平地ではなくて丘陵地のようなところ、そういったところに定められていることが多いということでございまして、そういったところに畜舎が建つということでございましても、それを本法律案の対象とすることが問題になるとは、なりにくいとは思っております。

 いずれにいたしましても、市街化を抑制する地域とされております市街化調整区域でございます、住宅の建築、確かに最近建ってきたという話もございますが、やはりそこは制限が、開発許可が必要となっておりますので、市街化調整区域に建築される住宅というのは比較的少のうございますので、そういった中で、畜舎をこの法律案の対象にすることが問題となるとは考えにくいと思っております。畜舎を造るときに、あえて近隣に住居があるところに造ってトラブルを起こしたいということではないと思いますので、そういったことはないと思いますが、あった場合には、先ほど申し上げたような調整の手続、そういったものもあるということでございます。

串田委員 丘陵地とか言いますけれども、本当に近いところにいっぱい建物が建っているんです。

 ちなみに、これが、地方自治体の条例で、地域の住民、それの代表する議会あるいは行政府が条例でこの法案は認めないというようなことというのは、地方自治体によってそういう自由度というのは認められているんでしょうか。

水田政府参考人 この法律とは別に、条例によって制約をかけるということについては可能であるというふうに考えております。

串田委員 そういう意味で、地域とのトラブルが発生しそうな場合には、地域の声というものでこれを制限することも可能だということで、ある程度コントロールはできるのかなというふうに今お聞きをしました。

 ところで、先ほどの質疑の中でほかの議員からもありましたが、人がいないということは機械化が行われていくということでございますので、機械化になるということは電気が利用されるということで、地震なり何かがあったときには、機械から電気が漏えいされるなどして、火災が発生して延焼になるのではないかというようなことで、それこそ都市部の市街化調整区域というのは市街化と本当に隣接をしている状況でございます。

 そういう意味で、人が入らないということは機械に任せている、その機械から電気が漏れて火災になってしまったときというようなことも大変心配される住民の方もいらっしゃるかと思うんですけれども、このようなことに関しては今回の法案では対応されているという理解になるんでしょうか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたように、この法律案におきます畜舎の立地につきましては、市街化区域とか用途地域といった市街地を対象としていないということでございます。

 それから、もう一つでございますけれども、この法律案に基づいて構造等について定める技術基準というものがございます。これは省令によって定めるものでございますし、今後、専門家の意見等も踏まえて検討するというものでございますが、防火に関する専門家の意見も踏まえて検討することとしておるところでございます。建築基準法においても防火に関して定められている基準がございますので、防火につきましては、それを大きく緩和するようなことを考えておるわけではございません。

 なお、畜舎は、通常、広い敷地内にかなりの余裕を持って建てられるということでございますので、隣の建物と隣接して建築がされるということは少ないと考えておりますので、そもそも畜舎からの火が周囲に延焼する懸念というのは一般的な建築物と比較して小さいものと考えております。

串田委員 ところで、先ほど田村委員からも質問がありましたが、人がいないけれども命ある動物がいるということでございます。

 私も何度かここで取り上げさせていただいている世界動物愛護協会の二〇二〇年の畜産動物に関する日本の指数というのは、A、B、C、D、E、F、Gの最下位でございます。やはり、これは日本としてそういう意味では改善していかなきゃいけない指摘なんだろうなというふうに思っております。

 そういう意味で、今回の法改正で、人がいないからいいだろうみたいなことではないんだと思いますけれども、命ある動物がいるというようなこともあって、もっと悪くなってしまうんじゃないかというふうに心配される動物愛護の方々もたくさんおられるんですが、その点についてはそういう心配はないんでしょうか。

水田政府参考人 この法律案でございますけれども、畜舎等の利用の方法などに一定の基準を設けることによりまして、建築基準法の特例として、構造等の技術基準、こういったものを緩和するというものでございまして、利用基準と技術基準の組合せによりまして畜舎等としての安全性を確保するということでございます。

 委員御指摘のアニマルウェルフェアにつきましては、家畜を収容する畜舎内におきます設備ですとかあるいは日頃の飼養管理により実現されるというものでございますので、畜舎等の安全確保を目的とした利用基準とか構造基準自体が良好なアニマルウェルフェアの実現に影響を与えるものではないというふうに考えているところでございます。

串田委員 今の答弁でございましたが、農水省が外部リンクされていらっしゃる公益社団法人畜産技術協会が、飼養実態アンケート調査報告というのを平成二十七年三月にまとめられております。

 それによりますと、乳用牛に関してなんですが、平成二十二年三月に作成されたアニマルウェルフェアの考え方に対応した乳用牛の飼養管理指針を御存じですかという質問を、これは、いろいろな、乳用牛とか肉用牛とかブロイラーとかで質問されているんです。例えば、乳用牛に関しては、アニマルウェルフェアの指針を御存じですかということに関しては、はいというのが二二・二%、いいえというのが七七%。肉用牛も同じように、管理指針を知っていますかということに関して、はいというのが二六・七%で、いいえというのが七二・四%なんですね。

 ですから、私は、飼養管理指針というのは、アニマルウェルフェアの向上という日本競馬会が支援している事業で出されている報告書を基に畜産技術協会が飼養管理指針を作って、そういう意味で、国としてはアニマルウェルフェアをこういうふうに進めていきたいということで指針を作っているわけですが、現実の業界は、知らないというのが七七%というような形で、せっかく作っているのを知らないという方が非常に多い状況なんですね。そういうような状況の中で簡易な畜舎を造っていくということは、アニマルウェルフェアが、今最下位ですから、ますます悪化するんじゃないかというふうに思ってしまうことも、これは致し方ないと思うんです。

 やはり、むしろ農水省としては、飼養管理指針というのをしっかりと業界へ知らせていただいて、そして、畜舎を造るに当たっても、この指針を前提としてしっかりとアニマルウェルフェアを踏襲するような、そういう畜舎として両立できると思うんですよ。経費が、負担が少なくなるからといって、必ずしもアニマルウェルフェアが悪化するとは私は思わないんですが、ただ、考え方として、アニマルウェルフェアを進めるんだという前提の中でこの法改正というものをしていかないと、せっかく作る法改正ですから、もったいないなと思うんです。

 大臣、この法改正に関して、矛盾しないのか、どんなような考えでこれを農水省として進めていかれるのか、お聞かせいただきたいと思います。

野上国務大臣 先般の四月六日のこの委員会におきましても、串田委員からの御質問の際に、私から、OIEの陸生動物衛生規約におけるアニマルウェルフェアに関する勧告において、五つの自由がアニマルウェルフェアを考える上で役立つ指標として示されていることを答弁させていただきました。

 農林水産省では、酪農や肉用牛経営の労働負担軽減ですとか省力化に資するロボット、AI及びIoT等の技術の導入を推進しておりますが、このことは、五つの自由に関して言えば、例えば、搾乳ロボットについては、乳用牛が自発的にロボットに向かうことによりまして通常の行動様式を発現する自由の面でメリットがある、また、自動給餌機につきましては、個体ごとの精密な栄養管理によりまして飢え、渇き及び栄養不良からの自由の面でメリットがある、分娩監視装置につきましては、分娩事故の低減により苦痛、傷害及び疾病からの自由の面でメリットがあるとされているところでございます。

 こういう先端技術の導入によりまして搾乳ですとか給餌といった作業の省力化を進めることで生じた時間を活用しまして、アニマルウェルフェアへの配慮を含めた家畜の飼養管理の充実を図ることができると考えておりまして、今般の技術基準の緩和等がアニマルウェルフェアの充実と矛盾することはないと考えております。

串田委員 命あるものでございますので、動物のことを最優先に考えながら、そしてまた日本の畜産業というものを発展させていくということの両立を是非ともお願いをいたしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。

 本法案についてまず質問いたします。

 先ほどから、規制緩和のメリットの一つは建築コストの削減だということで、構造に係る部材について、鉄骨で約一割削減、木造で三割削減ということがあったんですが、よく分からないんですね。

 つまり、構造に係る部材というのは全体の建設コストの一体どのぐらいを占めているのか。つまり、端的に、これをやったらどれだけ安くなるのか。畜舎を建てたりですね。そういうことがよく分からないので、そこをもう一度お答えいただきたいのが一点と、併せて伺いたいのは、仮にコストが下がったとしたら、コストと販売価格の差額によって様々な補助制度をつくっています、典型がマルキンですが、こういったマルキンの計算において、標準的生産費や、それに基づいて算出される給付金の減額要素としてカウントされるおそれがあるのではないかと思うんですが、そういうことはあるんでしょうか、ないんでしょうか。併せてお伺いします。

野上国務大臣 建築コストの削減につきましては、既に建築基準法の基準で建築済みの畜舎について、新法に基づく基準で設計し直すことにより試算をしたわけでありますが、その結果、今先生からお話がありましたとおり、部材の強度の見直しによって、柱、鉄骨、生コンクリート等の畜舎の構造に係る部材については、その使用量について、鉄骨畜舎は約一割、木造畜舎は約三割ということの可能性があるとお答えさせていただいております。

 また、これが、畜舎の建築工事費全体で見ますと、構造に係る部材の費用は削減可能になりますが、畜舎の建築工事費全体には、構造に係る部材以外の部材の費用ですとか人件費ですとか、構造基準の見直しで削減することが難しい費用が含まれておりますので、建築工事費全体で見ますと、構造基準の見直しによりまして鉄骨畜舎では一%から二%の削減、木造畜舎では三%から六%が削減可能と考えられております。

 また、基礎について凍結深度より深く根入れしなくてもいいと見直すことで、建築工事費全体の一%から三%の削減となった事例が見られます。

 以上のことから、合計では、鉄骨畜舎につきましては建築工事費全体の二から五%、また、木造畜舎につきましては建築工事費全体の四から九%の削減が見込まれてございます。

 ですから、例えば、建築工事費全体で一億三千万円、面積千八百平米の木造畜舎におきましては、建築工事費を最大九%削減できるということであれば、約一千二百万円の削減となるということであります。

 また、マルキンのお話でございますが、標準的生産費には建物費も含まれますが、これは、畜舎の建築工事費全体を耐用年数で割った償却費を基に家畜一頭当たりの費用として計上されるものでありますので、建物費が生産費全体に占める割合は小さいものでありまして、牛マルキンでは一%程度となっているところであります。

 さらに、建物費は、農家ごとの算定ではなくて、あくまで全国の平均値でありますので、建築基準法に基づき建築された現在の畜舎に対して、今後、新法により建築される畜舎がどれほどを占めるかにもよりますけれども、当面は建築基準法に基づき建築された畜舎がほとんどを占めておりますので、新制度で建築された畜舎がマルキンの大きな減額要素にはならないと考えております。

玉木委員 大きな減額要素にはならないという大臣の明確な答弁でしたけれども、小さな減額要素にもならないように、ここはやはり心配している人もいるので、給付金の減額要素とならないように、是非そこは配慮いただきたいと思っております。労務単価なんかが、建てる人のいろいろなものが上がっているので、やはりそういったものも見て判断をすべきだと思いますので、是非よろしくお願いしたいと思います。

 次に、和牛の輸出について前回も聞いたんですが、改めて、ちょっと納得いかなかったので再質問するんですが、二〇一九年十一月に中国との間で署名をした動物衛生検疫協定、二年弱がたとうとしているんですが、江藤前大臣もいらっしゃるんですが、あのときの質問に対して、かなりいいところまでいっているという感じだったので、すごく期待していたんですよね。中国向けの牛肉、今は言っても一グラムも正面からは輸出されていませんので、これが再開されたら非常に大きいのですが、協議の現状と牛肉の中国の輸入解禁のめどを、改めて交渉状況も含めて教えてください。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 日本産牛肉の中国への輸出再開についてでございますけれども、委員御案内のとおりでございますが、二〇一九年十一月、いわゆる日中動物衛生検疫協定に署名をいたしました。その上で、当局間の協議に加えまして、二〇二〇年十一月の日中外相会談を含めまして、外務省といたしましても、様々な機会に牛肉の輸出再開に向けての働きかけを行ってきておるというところでございます。

 牛肉輸出再開の時期のめどについて、予断を持ってお答えすることは差し控えさせていただければと存じますけれども、引き続き、農林水産省を始めとする関係省庁とも連携を取りながら、日本産牛肉の早期輸出再開を目指して、今後とも様々な機会を通じて働きかけ、協議を行ってまいりたいと考えておる次第でございます。

玉木委員 大分難航していますね。やはり、習近平主席の訪日とセットなんですかね。そこは外交的にも非常に難しいところだと思いますが、切り離して、孔鉉佑大使閣下も中国においしい牛肉を届けたいということをおっしゃっているようですので、是非ここは積極的に更に進めていただきたいと強く要請をしておきたいと思います。何もせずに時間だけがたっているような気がしますので、外交努力を引き続き、外務省も農水省も続けていただきますことを強くお願い申し上げます。

 次に、規制緩和について伺います。

 三月五日の規制改革推進会議の農林水産ワーキング・グループで、農地所有適格法人について、例の二分の一未満としている農業関係者以外の議決権制限の緩和が議論されております。これは確かに、緩和しろという、上場できないのはおかしいじゃないか、資金調達を融資じゃなくていわゆるエクイティーも入るようにすべきだとか、一方で、やはり農業関係者以外が二分の一の議決権を持つということについては大変な懸念もあるということで、両側からの議論がなされています。

 私が気になったのは、委員の中にかなり積極的に農業経営を展開されている人もいて、そういった方からかなり所有については慎重な意見が出ていてですね。かつ、こういう表現もあって、資金調達は全く問題ありません、正直言ってお金は集まるんですということをおっしゃっていますね。資金調達が既存の制度とかでできないという会社の経営内容はどうなっているのかと思います、この状態の中でお金が集まらないというのはよっぽど悪い会社ではないかと私は経営者としてずばり思うのですということもおっしゃっておられるんです。

 農林水産省の説明だと二割ぐらいの方が調達が困難だということで答えているんですが、本当に二割強の法人は資金調達に支障があるというふうにしているんでしょうか。

 私が心配するのは、農地を取得した後、一切農業をしないで農業から撤退するとか、こういったケースは懸念されるので、こういうものもしっかりと考慮に入れなきゃいけないんですが、あわせて、最近だと、やはり経済安全保障の観点がすごく大切だと思っているんです。

 つまり、優良農地を始めとして外国人の農地所有ということについては、もちろん、WTO等々がありますので内外無差別だということはよく分かりますが、ただ一方で、食料安全保障、経済安全保障、国家安全保障の観点から、いろいろな農業者以外に開放してしまうと、出資者の中に様々な人が紛れ込んでくるのは当然なので、外国人土地所有の全てが悪いとは言いませんけれども、やはり食料安全保障の観点からも問題があるのではないかと思いますが、この点は、大臣、いかがですか。

野上国務大臣 農業者以外の議決権制限の緩和についての議論でありますが、農業、農村現場におきましては、法人の農地所有について、農業から撤退をしたり、あるいは農地を他用途に転売をしたり、産廃置場になるのではないか等々を心配する声があるところであります。

 このため、農地所有適格法人の議決権要件において、外国資本かどうかの別はありませんが、農業関係者が総議決権の過半を占めることを要件としておりまして、これにより農業関係者による農地を始め農業についての決定権を確保しているところであります。

 そういう中で、農業関係者以外の者が決定権を掌握するようになった場合、農業からの撤退など様々な点について心配する声がありまして、農業関係者が農地を始め農業について決定権を確保していること等の重要性を考慮する必要があると考えております。

玉木委員 これも立法事実が大事だと思うんですね。

 農林水産省の資料だと、二割強の法人は融資では必要額を賄えない等から支障があると回答となっているんですが、ただ、農水省の資料をよく見ると、農業関係者以外の者の議決権割合が四〇%から四九・九%の二百六法人だけに聞いて、十四法人が支障があるといって二割と言っているんですが、全ての適格法人を分母にすると一・七%しかないんですよ、支障があるというのは。資料の作り方もどうなのかなという気が正直しますよ。

 かつ、支障があるという理由は、融資は返済を求められるためにリスクがあると。当たり前じゃないですか、融資は返済を求められるんだから。だとしたら、据置期間を長くするとか、いろいろなことだってあるわけで。あと、担保不足の中、融資では必要額を賄えない。そうなんですが、無担保無利子の融資制度をつくればいいし、そういった支援をすればいいし。

 また、支障があるという十四法人も、理由がよく分からないですね、私は。いや、頭から否定しないですよ、IPOで上場したいというような人もいる、若い人もいるのも私は大事だと思うんですが、よくよく、支障があると答えている人たちの実態をよく、慎重に見極めて規制緩和をしないと、私は安全保障の観点からも問題が多いのではないかと思いますので、大臣、そこは慎重に是非やっていただきたいなと。規制緩和をすれば全部バラ色になるということでいろいろこの間やってきたんですけれども、余りバラ色になっていないので。いいものはいいですけれども、多少慎重に考えるところは慎重に、理由があるので、しっかり考えていただきたい。

 特に、この農林水産委員会のメンバーの皆さんには共有の認識だと思いますが、農地法第一条には地域調和要件というのがきちんと入っているんですよ。やはり、地域との調和ということをきちんとやらないと農地の適正利用というのはできないと思いますので、既存のそういった法体系との関係もしっかり整理した上で対応していただきたい。これも強く要請したいと思います。

 最後に、これは私の最近の一番の問題意識なので伺いたいんですが、集落営農なんですよ。一時期、集落営農組織をつくって、法人化ということをある種のゴールというか、出口にしながらやってきたと思うんですが。

 ある年代の人たちが地域で、うちの地元もそうなんですけれども、集落営農組織をつくって、例えば退職した六十代の人たちが中心になって、同級生中心に集落営農をやったり、あんたがこれやれ、あんたがこれやれとやって、うまくやってきたのがあるんですが、それから例えば二十年ぐらいたって、みんな更に高齢になって、くたびれてきているんですよ。それを更に次の代にどうつないでいくかとか、集落営農組織の次の展開がなかなか見えなくなってきていると思うんですね。

 農水省的にはそれを法人化していくのが出口だと思っているんですが、私は、法人化に過度な期待をかけるべきではないんじゃないのかなと。特に、中山間地域における集落営農組織の在り方というのはよくよくちゃんと見ないと、そのまま、もう集落営農が成り立たなくなって、イコール、地域が廃れていくことに直結するんですよ。この辺りをどうするのか。

 特に、認定農業者と、法人化を前提とした集落営農とか、支援の対象をこの間ずっと限ってきたんですけれども、私は限界が来ているのかなと。基本計画の中でも家族型経営を大事にしましょうとは書いているんですけれども、基本的に、担い手に八割を集約しようという基本的な構造は変わっていないので、この先があるのかなと実は思うんです。

 一方で、三月二十四日に農水省が中山間地域における地域特性を活かした多様な複合経営モデルというのを出しているんですけれども、私はこっちの方が好きなんですよ。二百万とか四百万とか、小ぢんまりとしているんだけれども、かなり現実的で、例えば薬草と稲作とかいろいろ組み合わせて、これぐらいだったらできるでしょうということを示している方が現実的じゃないかな。

 しかも、ずっと兼業農家はけしからぬという論調で来たんですけれども、今、一方で、社会的に見れば、特にポストコロナで、副業をもっとやりましょうとかやっているじゃないですか。兼業農家って最高の副業なんじゃないのと私は思うわけですよ。

 一方で農外収入があって、農業もしていきましょう、それを家族型とか、小さい規模でも持続可能で成り立っていく、そういうモデルをむしろ、大規模農業は別に否定しませんよ、それはそれでやっていけばいいんだけれども。特に、私の地元もそうなんですが、中四国地方は特にそうですが、中山間地域の多いところは、なかなか土地利用も大規模でみたいなこともしにくい中で、この新しいモデルをむしろきちんと農林水産省も示していくことが大事。

 話を戻しますが、集落営農はこのままいって法人化ですよと言うだけでは未来がないような気がするんですが、その点について大臣としてどう認識をして、どのような突破口を考えているのか。考えをお聞かせください。

野上国務大臣 集落営農の課題は、もちろん法人化の推進だけで解決できるわけではなくて、将来にわたって集落営農を存続させるためには、例えば今、米、麦、大豆ということが中心でありますが、これに加えまして、高収益作物の導入による収益力の向上ですとか、集落営農同士の広域連携によって農作業等に必要な労働力の調整、確保をしていく、あるいは農産物の加工や販売面での異業種との連携などの取組も重要であると考えております。

 国としても、経営所得安定対策ですとか水田農業の高収益化の推進、あるいは経営相談支援に係る事業の実施等を通じまして集落営農の持続的な発展が図られるよう支援をしてまいりたいと思っておりますが、一方で、特に中山間地域では地域の特性を生かした複合経営などの多様な農業経営の推進を図ることが必要と考えておりまして、今先生から御紹介いただきましたモデルについて、本年三月に公表させていただいたわけであります。

 これは、大規模な営農が困難な中山間地域であっても十分な所得が確保できるモデルを示したものでありまして、小規模な家族経営体を始めとする多様な経営体の皆様が参考としていただくということで公表したわけでありますが、このモデルを目指す農業者に対しても中山間地直払いですとか中山間地農業ルネッサンス事業等によりまして支援を行って、中山間地域における営農の確保も図ってまいりたいと考えております。

玉木委員 人・農地プランの実質化ということをやっておられますね、私はずっと指摘していて。すごい政策だと思うんですよ。人・農地プランの実質化がいかに今まで形骸化していたかということをある種認めているわけですよ。ただ、人・農地プランの実質化がまた更に形骸化しないようにしてもらいたいので。

 何を申し上げたいかというと、今大臣からもお答えいただいたような、中山間地域における地域特性を生かしたモデルもうまく組み込みながら、地域に応じた持続可能な人と農地の在り方について非農家も含めてみんなが入って検討して、本当にこの地域はどういう農業でやっていくんだということをしっかりみんなで考えて、地域に応じたモデルを示し、それをまた応援していくということを進めていただきたいと思うので、画一的なことを押しつけて、それができないからけしからぬというような方向は是非取らないことを求めて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございます。

高鳥委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。田村貴昭君。

田村(貴)委員 私は、日本共産党を代表して、畜舎等の建築及び利用の特例に関する法律案に反対の討論を行います。

 本法案は、規制改革実施計画に基づき、畜舎建設におけるコストカットにより経営規模の拡大をしやすくするため、建築基準を畜舎等に限って緩和しようとするものです。

 基準法の適用外となるB基準は、震度六強から七では倒壊するおそれを否定できない強度としています。

 建築基準法第一条は、建築基準は生命、財産を守る基準であるとし、同二十条は、積雪、風圧、地震などに対して安全な構造でなければならないとはっきり定めています。

 本法案のように、安全上、防火上、衛生上支障がない程度の水準に緩めることは、最低限の安全性を犠牲にするものであり、賛成できません。

 農水省は、基準を緩める代わりに、避難経路の確保などの利用基準によって安全を担保するとしています。

 しかし、確認申請が不要となる上限床面積が三千平方メートルという巨大な畜舎であることを考えると、動けないほどの地震が頻発する中で、本当に走って逃げられるのか疑問です。

 また、滞在時間も規制するとしていますが、畜舎の中には家畜も高額な機材もあり、また、短時間でも人が立ち入る以上、倒壊しない建物にするべきです。

 さらに、現行基準、A基準、B基準から選択できるとする点も、建築物の最低限の強度を定める建築基準の考え方に反する自己責任論と言わざるを得ません。

 本法案の策定に当たり行われた検討委員会では、畜産農家の団体や技術者から、安全基準を動かすのは慎重であるべきだ、人の滞在時間が少ないからよいのかなど、異論が噴出しました。

 特に、委員から口々に、畜舎の建築基準は既に限界値まで緩和されていると指摘され、これ以上の緩和の余地はないという点で合意をとまで提案されたにもかかわらず、これを無視して法案を提出したことは重大です。

 地震頻発の今、必要なのは、規制改革推進会議にむやみに従うのではなく、畜舎の安全性を確保し、老朽化した畜舎も含め、建て替えや耐震化への本格的な財政支援を行うべきです。

 以上で反対討論を終わります。

高鳥委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、畜舎等の建築等及び利用の特例に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高鳥委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、宮下一郎君外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、公明党、日本維新の会・無所属の会及び国民民主党・無所属クラブの五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。石川香織君。

石川(香)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文を朗読して趣旨の説明に代えさせていただきます。

    畜舎等の建築等及び利用の特例に関する法律案に対する附帯決議(案)

  我が国の畜産・酪農経営は、畜産クラスター等の地域の関係者が一丸となった取組の成果として、乳用牛、肉用繁殖雌牛の飼養頭数が増加に転じる一方、担い手の高齢化、後継者不足は深刻さを増しており、さらには、我が国の畜産・酪農経営は、国際的な競争に直面している。そのため、中小・家族経営を中心とする国内生産者を着実に支えていく必要がある。

  畜産・酪農経営を維持・発展させるためには、生産基盤及び国際競争力の強化が喫緊の課題であり、省力化機械の導入や増頭・増産等の取組を推進するため、畜産業の経営実態に合った畜舎等の建築等をできるよう措置し、畜舎等の建築に係る負担を軽減することが急務である。

  よって政府は、本法の施行に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。

      記

 一 技術基準、利用基準を定める主務省令の制定に当たっては、畜産農家はもとより、建築士をはじめとする専門家の意見を十分に踏まえ、関係者の十分な理解と納得を得た上で各基準を策定すること。また、畜舎建築利用計画の作成・申請においては、手続きが煩雑なものとならないよう留意すること。

 二 畜産農家の畜舎等の建築を含めた総合的な経営判断に資するため、本法律案に基づく新制度による畜舎等の建築の経済的な優位性が明らかとなる事例等を畜種ごと等きめ細かく示すこと。また、建築に係る負担が低減された場合においても、財政支援を含め各支援策の削減は行わないこと。

 三 家畜の能力が引き出され、家畜が健康になり、生産性の向上や畜産物の安全につながるアニマルウェルフェアに配慮した家畜の管理の普及促進のための指導、支援を充実させること。

 四 常に地域・現場の声に耳を傾け、生産基盤・国際競争力の強化に資する畜産クラスター事業等の施策を的確に実施すること。

  右決議する。

以上です。

 何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。

高鳥委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高鳥委員長 起立多数。よって、本法律案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣野上浩太郎君。

野上国務大臣 ただいまは法案を可決いただき、ありがとうございました。附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

高鳥委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時九分散会


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