衆議院

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第2号 令和3年12月22日(水曜日)

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令和三年十二月二十二日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 平口  洋君

   理事 江藤  拓君 理事 高鳥 修一君

   理事 宮下 一郎君 理事 簗  和生君

   理事 金子 恵美君 理事 佐藤 公治君

   理事 空本 誠喜君 理事 稲津  久君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      上田 英俊君    尾崎 正直君

      加藤 竜祥君    神田 潤一君

      國場幸之助君    坂本 哲志君

      高見 康裕君    武井 俊輔君

      中川 郁子君    野中  厚君

      長谷川淳二君    平沼正二郎君

      古川  康君    保岡 宏武君

      山口  晋君    若林 健太君

      神谷  裕君    小山 展弘君

      後藤 祐一君    野間  健君

      緑川 貴士君    渡辺  創君

      池畑浩太朗君    住吉 寛紀君

      金城 泰邦君    庄子 賢一君

      長友 慎治君    田村 貴昭君

      北神 圭朗君

    …………………………………

   農林水産大臣       金子原二郎君

   農林水産副大臣      武部  新君

   農林水産副大臣      中村 裕之君

   農林水産大臣政務官    下野 六太君

   農林水産大臣政務官    宮崎 雅夫君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         安東  隆君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)         信夫 隆生君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           小川 良介君

   政府参考人

   (農林水産省農産局長)  平形 雄策君

   政府参考人

   (農林水産省畜産局長)  森   健君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  光吉  一君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            牧元 幸司君

   政府参考人

   (林野庁長官)      天羽  隆君

   政府参考人

   (水産庁長官)      神谷  崇君

   農林水産委員会専門員   森田 倫子君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月二十二日

 辞任         補欠選任

  北村 誠吾君     國場幸之助君

  梅谷  守君     野間  健君

同日

 辞任         補欠選任

  國場幸之助君     北村 誠吾君

  野間  健君     梅谷  守君

    ―――――――――――――

十二月二十一日

 一、農林水産関係の基本施策に関する件

 二、食料の安定供給に関する件

 三、農林水産業の発展に関する件

 四、農林漁業者の福祉に関する件

 五、農山漁村の振興に関する件

の閉会中審査を本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件(畜産問題等)

 令和四年度畜産物価格等に関する件


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     ――――◇―――――

平口委員長 これより会議を開きます。

 この際、農林水産大臣、農林水産副大臣及び農林水産大臣政務官から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。農林水産大臣金子原二郎君。

金子(原)国務大臣 皆さん、おはようございます。

 就任に際する御挨拶、農林水産大臣を拝命いたしました金子原二郎でございます。

 この度、就任後初めて御挨拶の機会をいただきましたので、一言御挨拶を申し上げます。

 我が国の農林水産業は、関連産業である食品産業とともに、国民の皆様に食料を安定供給し、地域の経済やコミュニティーを支え、その営みを通じて、国土の保全、景観の維持等の多面的機能を発揮している、まさに国の本です。このような農林水産業を将来にわたって持続可能なものとしていくため、国際競争や災害にも負けない、足腰の強い農林水産業を構築していくことが必要と考えています。

 現在、我が国の農林水産業、食品産業の現場では、依然として新型コロナウイルスの感染症による影響を受けておられる方々がいらっしゃるほか、人口減少に伴うマーケットの縮小や、農林漁業者の減少、高齢化など、厳しい状況に直面しています。

 また、国内外で重要性が高まっている気候変動等への対応を適切に行うとともに、農林水産業、食品産業の生産力向上と持続性の両立を実現していくことも課題です。

 他方、世界に目を向ければ、世界人口の拡大や所得の向上に伴い、世界の飲食料のマーケットは年々拡大しており、新型コロナウイルスの感染症の影響を受ける中でも、我が国の農林水産物・食品の輸出額は拡大が続いています。

 農林水産省としては、まずは、新型コロナウイルスの感染症により影響を受けている外食産業や農林漁業者などの方々への対策をしっかり行ってまいります。

 そして、年々拡大していく世界の食市場を獲得するため、農林水産物・食品の輸出促進、本年五月に策定したみどりの食料システム戦略を踏まえた環境負荷低減の取組の推進、さらには、これらを進めるための土台となるスマート農林水産業の推進などの施策を着実に進めてまいります。

 農林水産業の生産基盤を強化し、農林水産業の成長産業化を推進するとともに、家族経営や中山間地域を含め、農林水産業や農山漁村の持つ多面的な機能を維持し、新しい資本主義の実現に貢献してまいります。

 地域に寄り添い、現場を重視しながら、両副大臣、両政務官、そして職員全員と一つのチームとなってこうした諸課題に取り組んでまいります。

 平口委員長を始め理事、委員各位におかれましては、今後とも一層の御指導、御鞭撻を賜りますようにお願い申し上げます。(拍手)

平口委員長 次に、農林水産副大臣武部新君。

武部副大臣 農林水産副大臣を拝命しました武部新でございます。

 金子大臣を先頭に、政務三役、職員一同、一致結束して、我が国の誇る農林水産業、農山漁村の発展のために、次の世代にしっかりとつないでいけるように精いっぱい努力してまいります。

 平口委員長を始め理事の皆様、委員の皆様方の御指導、御鞭撻、どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

平口委員長 次に、農林水産副大臣中村裕之君。

中村副大臣 この度、農林水産副大臣を拝命いたしました中村裕之でございます。

 金子大臣の下、武部副大臣、下野大臣政務官、宮崎大臣政務官と一丸となって、地域に寄り添いながら、足腰の強い農林水産業の確立に向けて全力を尽くしてまいる所存でございます。

 平口委員長、理事、委員の先生方の格別なる御指導、御鞭撻を賜りますよう、心からお願いを申し上げます。

 ありがとうございます。(拍手)

平口委員長 次に、農林水産大臣政務官下野六太君。

下野大臣政務官 この度、農林水産大臣政務官を拝命いたしました下野六太でございます。

 金子大臣を始め武部副大臣、中村副大臣、宮崎大臣政務官と力を合わせて、将来にわたって持続可能な農林水産業の実現に向けて全力を尽くす決意です。

 平口委員長を始め理事、委員各位の御指導、御鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。(拍手)

平口委員長 次に、農林水産大臣政務官宮崎雅夫君。

宮崎大臣政務官 この度、農林水産大臣政務官を拝命をいたしました宮崎雅夫でございます。

 金子大臣の下、武部副大臣、中村副大臣、下野大臣政務官とともに、現場の声を大切にしながら、美しく活力ある農山漁村の実現に向けまして全力で取り組んでまいります。

 平口委員長を始め理事、委員の先生方の御指導、御鞭撻を賜りますように、どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

平口委員長 次に、農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官安東隆君、大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官信夫隆生君、消費・安全局長小川良介君、農産局長平形雄策君、畜産局長森健君、経営局長光吉一君、農村振興局長牧元幸司君、林野庁長官天羽隆君及び水産庁長官神谷崇君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平口委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。中川郁子君。

中川(郁)委員 自民党の中川郁子でございます。

 本日は、質問の機会をいただきましたこと、誠にお礼を申し上げたいと思います。

 まず冒頭に、本年、北海道太平洋岸に発生をいたしました赤潮被害についてですが、一昨日可決されました二〇二一年度補正予算で、北海道赤潮被害対策支援事業として十五億円をお決めをいただきました。誠にありがとうございました。

 地方負担分も合わせた二十一億円の支援となります。特別交付税措置で実際の地方負担は少なくなるとのことで地域も安堵しておりますが、一方で、先の見えない不安感が消えているわけではありません。まずは、漁場を回復させ、漁業被害を防ぐ技術開発で、赤潮の発生を早期に把握する技術の精度向上や、発生メカニズムの解明などが待たれるところでございます。引き続きの御支援、よろしくお願いいたします。

 また、アキサケ定置網漁業者にとっては、赤潮の発生後、サケ・マスふ化放流事業のための種卵の確保など、資源の回復に向けた緊急の支援が必要であり、減少が続いている回帰率の原因の解明、標識放流調査の拡充、不漁時における増殖事業の運営費支援制度の創設など、国の支援が必要であると強く感じています。

 全国の漁業者にとって、海洋環境の変化による不漁、人手不足、高齢化、船舶、機械の老朽化など、課題が多い状況でありますが、燃料費の高騰対策、積立ぷらす、もうかる漁業、セーフティーネット資金などで漁業を支援し、資源回復に努めながら、水産大国日本の復活を目指して、国民への安定供給を図ることが求められており、金子大臣に期待が高まっているというふうに思います。どうぞよろしくお願いします。

 では、質問に入ります。生乳についての質問です。

 先日も、金子大臣、両副大臣が記者会見で、牛乳をおいしそうに飲み干していただきました。そして、消費喚起を行っていただいたと聞いております。昨日も、岸田総理大臣が記者会見の中で、国民の皆さんに、牛乳を飲みましょうと呼びかけてくださいました。

 このように、今、牛乳・乳製品は需給の緩和状況が続いているところでございます。

 我が国の生乳需給は、飲用需要に優先的に生乳を供給するとともに、飲用需要の変動を乳製品加工で調整することで、消費者への生乳の安定供給、酪農経営、乳業経営の安定を図ってきました。

 近年では、都府県の生乳生産が減少する中、不足分は北海道から供給することで生乳需給を調整する構造にシフトしていました。北海道への依存度が高まる中、輸送量の繁閑差、オーダーキャンセルなどの問題も発生していました。つまり、北海道酪農が、乳製品加工により需給調整の役割を担ってきたということです。

 そのような状況の中で、新型コロナウイルス感染症が発生をいたしました。感染症蔓延防止のために、国民の皆様へ行動の自粛をお願いをしたという経過になります。

 コロナの影響が長引く中、飲用需要を始めとする全国の生乳需要の減少を乳製品加工で調整してきた結果、バター、脱脂粉乳などの在庫が過去最高水準で積み増しされることになりました。こうした状況が放置されれば、乳製品加工による需給調整の構造が破綻し、飲用市場も含めた生乳流通全体の安定を保つことができなくなります。

 これに対して、全国の生産者、乳業者が協調して、令和四年度には、脱脂粉乳の在庫二万トンを解消するために、生産者拠出四十億円、乳業者拠出四十億円、合わせて八十億円の負担による対策を実施することになったそうです。いまだ先の見えないコロナの影響が予測される中、このように全国の生産者、乳業者が在庫削減対策、需給調整対策に取り組んでいることは大変重要であると思います。

 私は、全国の生産者、乳業者が協調して取り組む在庫削減対策に対して、国が関与し、支援することが必要と考えていますが、政府のお考えを聞かせてください。

武部副大臣 中川委員の御指摘のとおり、私も北海道でございますので、加工原料乳地帯の北海道が需給調整に大きな役割を担ってきた、そのように承知しております。特に、非需要期に対して大変な努力をしていただいております。

 その上で、コロナの影響がございまして、牛乳・乳製品の業務用の需要が回復し切っておらず、乳製品の在庫が高水準になっているということを承知しております。

 現在、脱脂粉乳の在庫の削減に向けて、全国の生産者と乳業メーカーが一体となった取組について、農林水産省も議論の中に参加して、この議論を進めております。

 委員の御指摘のとおり、コロナの影響で積み上がった分の二万トン、これの在庫の削減対策に取り組むことについて議論が進んでいると承知しておりますが、農林水産省としましても、こうした関係者の取組状況を踏まえて、コロナの状況下で必要な対策をしっかりと検討してまいりたいと思います。

中川(郁)委員 ありがとうございます。是非お願いしたいと思います。

 次は、国家貿易による輸入枠数量についてです。

 先ほど質問させていただいたとおり、生産者、乳業者が協調して、約二万トン規模の脱脂粉乳の在庫削減対策に取り組むことになりました。

 一方、国家貿易による輸入枠数量として、生乳換算で十三万七千トンのバター、脱脂粉乳の輸入が義務づけられております。

 国際約束は承知していますが、国内の乳製品の在庫事情などを考慮して来年度の輸入枠数量を決めていただきたいと思います。

 北海道のキャラバンの折にも、酪農家の皆さんから同様の御意見が多数ありました。北海道では、今年度より、酪農家がキロ当たり二円二十四銭、北海道全体で百億円、酪農家一戸当たり、年換算でありますと、数百万円単位で拠出しているということになります。

 バター、脱脂粉乳の在庫削減対策にこのように取り組んでいます。酪農家の皆さんも本当に頑張っているのであります。我慢が怒りに変わらないうちに、不安が失望に変わらないうちに、政治の決断が必要であると考えています。

 来年度の輸入枠数量について、政府のお考えをお聞かせください。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 脱脂粉乳及びバターの国家貿易による輸入枠数量につきましては、過去の生産、消費動向を基に、毎年一月に、翌年度に必要な年間輸入枠数量を設定し、その後、五月と九月に直近の需給を踏まえて検証し、必要に応じて見直しを行っておるところでございます。

 本年度の輸入枠数量につきましては、WTOで約束をしておりますカレントアクセス数量でございます生乳換算で十三万七千トンと、最低数量にとどめたところでございます。

 来年度、令和四年度の輸入枠数量につきましては、今後、脱脂粉乳等の在庫の推移、生乳生産の動向等をよく見極めたいと思っております。例年一月末に、乳製品需給等情報交換会議というものを開催することになっております。関係者の御意見を伺いながら、適切に判断してまいりたいと考えております。

中川(郁)委員 次に、加工原料乳生産者補給金と集送乳調整金と総交付対象数量についてお尋ねしたいと思います。

 加工原料乳生産者補給金については、生乳の需給環境が大幅に悪化する中で、購入飼料、資材、燃料費などの生産コストが増加しています。集送乳調整金についても、燃料費の上昇や、ドライバー不足などによる輸送費用が増加している現状にあります。

 これらを踏まえて、加工原料乳生産者補給金と集送乳調整金を合わせた単価について、十円八十五銭を上回る水準が必要と考えていますが、政府のお考えを聞かせていただきたいと思います。

 また、総交付対象数量については、年間を通じた国内乳製品の安定供給が可能となるように、また、生産現場に向けて減産メッセージとならないように、現行の三百四十五万トンを維持する必要があると考えています。

 昨日開かれました自民党の畜産・酪農対策委員会でも議論がありました。国民一人当たりの牛乳の消費量は増えているということでありますから、コロナの影響がなくなったときに牛乳・乳製品を国民の皆様に安定供給できるような価格、対象数量が必要であるというふうに思います。

 加工原料乳生産者補給金と集送乳調整金、総交付対象数量について、政府のお考えをお聞かせください。

森政府参考人 お答えいたします。

 加工原料乳生産者補給金、集送乳調整金、それから総交付対象数量についての御質問をいただいたところでございます。

 加工原料乳の生産者補給金の単価につきましては、加工原料乳生産地域での再生産が可能となりますように、生産コストの変動でございますとか直近の物価動向等を考慮するということになっております。

 また、集送乳調整金単価につきましても、指定事業者が、あまねく、遠隔地も含めて集送乳の確保が可能となるように、集送乳に要するコストの変動でございますとか、これもまた直近の物価動向等を考慮することとしております。

 他方、総交付対象数量につきましては、飲用牛乳及び乳製品の国内需給の状況、国内の生乳あるいは乳製品に対する需要といったものを考慮して定めるということでございます。

 いずれのものにつきましても、食料・農業・農村政策審議会の意見を伺いまして決定をするということでございます。

 引き続き、再生産、さらに、酪農経営が継続をできるように、本年度もこうしたルールにのっとりながら適切な算定を行っていきたいというふうに考えているところでございます。

中川(郁)委員 全国の酪農現場の状況は様々であるというふうに思います。都府県のある地域では、粗飼料が調達できなくて困っている、こういう地域もあります。また、私の地元、北海道十勝では、今年は天気がよくて牧草もよく育った、粗飼料も本当にいいものがあって豊富である、でも、生産抑制をしなければいけない。

 酪農家、生産者にとって、豊作が喜べない、こういう悲しい状況にはありますが、全国の酪農家の皆さんは本当に頑張っている状況でありますので、是非、皆様方の御要望、御意見に沿った形での数量、また補給金、調整金になりますようにお願いしたいと思います。

 次は、新規就農対策についてお尋ねしたいと思います。

 令和二年の農林業センサス調査によりますと、基幹的な農業従事者は百三十六万人であり、平成二十七年の百七十六万人から二割減少したことが公表されました。また、四十代以下の新規就農者数も減少する傾向にございます。

 これらの傾向に歯止めをかけるため、国において新規就農対策の見直しが検討され、本年の夏に、経営開始時の投資を基本とする経営開始資金、研修向け農場の整備などの取組を総合的に支援することが概算要求されています。

 その際、一部の事業について、国と地方が一体として支援するとして、これまで全額国費での対応から、新たに地方の負担が求められることとされています。

 このことに対し、全国知事会などが、地方公共団体の財政力によって支援対象者数などに地域格差が生じるとして、従来どおり全額国費による措置にするよう要請がなされており、北海道についても、十月に、これまで同様、全額国費による措置を継続するよう要望がなされております。

 現下の状況に鑑み、新規就農対策について見直し、充実が必要であると思います。地方の理解が得られないままに進めることはできないと思います。

 全国から全額国費による措置を継続するように要望がなされていることについてどのように対応されているのか、大臣のお考えをお聞かせください。

金子(原)国務大臣 全国知事会から、本当に、知事さんの方がお見えになるたびに、この新規就農対策については従来どおりといった御要望がありました。

 そういった中で、農業を担う人材の減少傾向が続いていることを踏まえまして、新規就農対策をしっかりと推進する必要があるというふうに考えております。

 新規就農者の育成がうまくいっている地域では、都道府県や農業団体が新規就農者をサポートしまして、必要な初期投資を行った上でしっかりと経営を発展させていることから、令和四年度の予算の概算要求におきましては、こういったことも踏まえながらの内容で要求しているところであります。

 概算要求後、地方の声を聞きながら関係方面との調整を進めてきたところであり、従来の事業を引き継ぐ形の就農に向けた研修資金、経営開始資金等については引き続き全額国費とするとともに、新たに措置する機械、設備等の導入支援につきましては、国と地方が連携して支援するといった方向で検討しているところであります。

 いずれにしろ、新規就農者の皆さん方が本当にやりやすい、また、各県の要望を十分に踏まえた中で、限られた財源の中でよりよい方向に向かっていくように、私たちも今後の政策の中で考えていきたいと思っております。

 以上です。

中川(郁)委員 金子大臣から力強い御答弁を頂戴しました。本当にありがとうございます。

 私は、個人的に、農業女子プロジェクトとか、GIとか、食と農の景勝地事業とか、最近余り耳にすることがなくなったわけでありますけれども、これらの事業も再構築して、若者にとって農林業が魅力的に映るような、そういう政策をどんどん実施していただければというふうに考えています。

 次に、エゾシカやアライグマなどの野生鳥獣による農林水産業への被害について質問させていただきたいというふうに思います。

 北海道でも、このエゾシカ、アライグマは深刻化、広域化し、被害防止策の拡充や防止技術の確立など、更なる対策が求められているところでございます。

 エゾシカの生息数は六十七万頭、アライグマは一万八千六百十五頭、こうなっています。また、近年はヒグマの人里への出没も相次いでおり、残雪期の捕獲など、個体数の適切な管理などが求められていると思います。

 農林水産省のお考えをお聞かせいただければと思います。

宮崎大臣政務官 お答え申し上げます。

 令和二年度の野生鳥獣による農作物の被害額は、全国で百六十一億円というふうになっております。

 そのうち北海道でございますけれども、委員御指摘がございましたエゾシカによる被害額につきましては、令和二年度に約四十億円、前年度に比べて、残念ながら、二・九億円の増加ということになっております。また、アライグマによる被害額につきましても、約一・四億円ということになっておりまして、前年度に比べて約一千七百万円増加している状況でございます。また、ヒグマでございますけれども、その被害額は約二・四億円ということでございまして、前年度に比べて約四千万円増加しているという状況でございます。

 こういうような状況を踏まえまして、エゾシカ、アライグマやヒグマによる農作物への被害防止につきましては、鳥獣被害防止総合対策交付金によりまして、これら有害獣の捕獲でございますとか生息環境管理に加えまして、捕獲者への講習会、侵入防止柵の設置等を支援をさせていただいているところでございます。

 そして、もう一つ御指摘がございましたヒグマでございますけれども、人里に出没している状況もございます。農作物への被害にとどまらず、人身被害等も引き起こしているという状況でございますので、農林水産省では、環境省や警察庁と連携をいたしまして、熊を誘引する農作物残渣の除去、収納庫の施錠等の徹底等、農作業現場における出没防止対策の実施、熊が出没したときの警察等関係機関との連絡体制の整備、こういったことにつきまして、都道府県に対して通知をさせていただいております。

 野生鳥獣による農作物の被害につきましては、農業者の営農意欲の減退、そういった被害額に表れる以上の深刻な影響を及ぼしておりますので、関係省庁と連携して対策に取り組んでまいりたいと思います。

中川(郁)委員 大変ありがとうございました。

 農家の皆さんにとっては、せっかく育てた農産物が野生鳥獣によって被害に遭うことは本当に切ないことであろうというふうに思いますし、是非積極的にお願いしたいというふうに思います。

 少し時間が余りましたけれども、コロナによるいろいろな影響が農業に出ています。三白問題といって、ただいま質問させていただいた牛乳のほかに、米、砂糖などが挙げられるというふうに思います。

 私の地域、十勝地域は、武部副大臣の地域もそうでありますけれども、ビート、てん菜の生産が盛んであります。この砂糖も、今、コロナによって消費が低迷をしているということで、農家の皆さんは非常に心配をしているところであります。

 北海道では、輪作体系によって、連作障害を防ぎながら地力を維持し、そして生産量を上げている。農家の皆さんの知恵と努力によって続けられている四輪作、武部先生のところは三輪作でありますけれども、これを維持することは、政府が進めるみどりの食料システム戦略に合致しているというふうに思っています。

 また、先ほどの酪農と関連することでありますけれども、てん菜は、その製造過程からできるビートパルプペレットは牛の餌になることから、耕畜連携の象徴とされています。

 これらの取組、農家の皆さんの生産意欲が減退しないように、また、先ほども申し上げましたとおり、やはり減産メッセージにならないような政策が必要であるというふうに思います。収穫を喜べる農業、このことが必要だと思います。

 ありがとうございました。

平口委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久でございます。

 通告に従いまして、順次質問させていただきますが、質問に入ります前に、牛乳・乳製品の需給緩和について一言意見を申し述べさせていただきたいと思います。

 先ほどの質疑にもありましたけれども、この牛乳・乳製品の需給緩和の問題について、今、政府の在庫対策に対して大変注目が集まっております。この問題に対しては、生産者団体と乳業メーカーが、例えば、輸入調製品から国産品への置き換えとか、餌、飼料への転換、こうしたことが進められていまして、大臣も消費拡大の取組に積極的、このように理解をしておりますが、今後一層国による支援が必要なところに来ている、私はそのように思っております。

 今日は質問いたしませんが、是非とも早急な検討と、それから現場の声に沿ったそうした結論をいただきたい、このことをまず申し述べさせていただきたいと思います。

 質問に入ります。

 まず第一点目は、燃油高騰等に対する輸送コストの増大について質問させていただきたいと思います。

 私の手元に、令和三年十二月十日調査の札幌市における石油製品小売価格の調査表がございます。

 これを見ますと、例えば灯油について、これは、多量配送ということで申し上げますと、たくさん一遍に配送する、前年の同期比に比べて約四四・七%値上がりしております。それから、ガソリンの現金ですけれども、これはフル、いわゆるセルフでない、ここが一五・四%上がっている。軽油についても、現金のフルで一七・八%。

 札幌市でこういう状況ですから、酪農現場で申し上げますと、北海道の郡部の方にそういう地帯がありますから、恐らくこの小売価格よりももっと高い数字になっていることは言うまでもありません。

 この燃料費の上昇ですとか、あるいはドライバー不足、こうした問題によって輸送費用は確実に上昇している、全体の酪農の経営に関わるコストが上がっているということなんですけれども、こうしたことを踏まえて、私は、集送乳の調整金について、輸送費用などの上昇等を踏まえて適切に単価を設定する、そのことを強く申し上げたいと思いますが、この点についての見解をまずお伺いさせていただきます。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 集送乳調整金につきまして御質問をいただきました。

 集送乳調整金の単価につきましては、指定事業者があまねく集送乳の確保が可能となるようにという観点で設定をされるものでございます。燃油費等の集送乳に関するコストの変動でございますとか物価動向等の方をきちっと考慮をした上で、食料・農業・農村政策審議会の意見を聞いて決定をするということとしております。

 本年度につきましても、こうした事情も踏まえながら、さらに、遠隔地を含めて適切な集乳が可能となるよう、ルールにのっとりまして適切に算定を行っていきたいというふうに考えております。

稲津委員 このことに関連してもう一点、飼料の、餌ですね、高騰対策についてお伺いしていきたいと思います。

 JAの全農については、二〇二二年の一月から三月期の配合飼料の供給価格について、これは二一年の十月から十二月までのこの期に比べて、全国の全畜種総平均で一トン当たり二千九百円値上げする、こう発表がされました。トウモロコシとか大豆かすの相場が上がっていること、また円安があるということでございますけれども、これに加えて、副原料の糟糠、あるいは飼料用の油脂、添加物などが値上がりしている。

 こういうことで、配合飼料価格安定制度における補填、これは一月から三月期も発動が見込まれるということで、この制度そのものは非常にありがたいものだというふうに改めてこういうときに感じていますが、今後の対策としては、輸入飼料への過度な依存からの脱却を図りますとともに、良質な自給飼料の確保、これが大変重要で、令和四年度の予算案につきましても、自給飼料対策予算として畜産生産力・生産体制強化対策事業で十七億円ということで、前年、倍増ということで、関係者の期待も大きいところでございます。

 ただ、一方で、北海道の牛乳生産費の内訳を見ますと、やはり飼料費は全体の約四割ぐらいを占めているということで、生産コストの多くをこの餌代が占めているわけでございます。いわば経営に直接影響を与えるということです。

 こうしたことからも、私は、この加工原料乳の生産者補給金について、酪農経営の持続的な再生産が可能となる水準で単価を設定すべき、このように思いますが、この点についての見解もお伺いしておきます。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 加工原料乳の生産者補給金単価につきましては、加工原料乳生産地域での再生産が可能となるようにという趣旨で定められるものでございます。

 委員御指摘の例えば飼料費でございますとか、あるいは一頭当たりの乳量の変動でございますとか、さらに、子牛等の副産物の収入といったような生産コストに影響を与えます諸要素の変動でございますとか直近の物価動向等を考慮いたしまして、食料・農業・農村政策審議会の意見を聞いて決定をするということでございます。

 酪農経営の持続的再生産が可能となるように、本年度につきましても、ルールにのっとって適切に算定をしていきたいというふうに考えております。

稲津委員 是非、この加工原料乳の補給金等について、もういよいよでございますけれども、しっかり対応をお願いしたいと思います。

 時間の関係上、これで質問を終わりますけれども、一点だけ意見を述べさせていただきますが、この酪農関係で申し上げますと、やはり担い手の高齢化、それから後継者不足、これが実は根本的な、大変重要な問題だというふうに私は認識しております。

 酪農の経営の離脱とか新規就農状況を見ますと、これは農水省の情報ですけれども、北海道においては、毎年、離脱者数が約二百人ぐらい。だから、十年間で二千人ですよ。これに御家族を入れると、ちょっとした一つの町が消えていくぐらいということだと思います。

 一方で、新規就農者について、大体百人ぐらいで推移してきたのが、最近八十人ぐらいにちょっと落ちているんですね。中でも、新規参入者が二十人前後ということで、ここがちょっと心もとないんですが。

 私は、あるJAの組合長で、元々、若いときに全くの新規参入で入ってきた、そういう方と親しくしていろいろな意見交換をしているんですが、そういう方が地域に入って酪農を始めると、全く今までと違う貢献度が出てくるんだと。それは、新しい人、新しい考え、そういうことで地域が大いに活性化される、こういう見方もあるんですよ。

 今、国の方では、例えば就農支援金とか、機械や施設の様々な整備もしていただいています。これは大変ありがたいことですけれども、行政からの新規参入に向けての呼びかけだけではなかなか私は打開されていかない、この方もおっしゃっていました。そういった方々のネットワークをもっと広げる必要がある。

 こうしたソフト面の御支援もこれから議論していきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 以上で終わります。

平口委員長 次に、金城泰邦君。

金城委員 おはようございます。

 私は、本年十月の総選挙で比例九州ブロックで初当選をさせていただきました、沖縄の金城泰邦でございます。

 本日、御支援いただいた支持者の皆様方、また稲津理事、同僚議員のおかげで、初当選後、初めての質問をさせていただくことができました。心より感謝申し上げます。

 また、この二年間、新型コロナウイルス感染により大きな影響を受けられた農林水産業関係者の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

 質問に入らせていただきます。

 今月、二〇二一年に日本の農林水産物・食品の輸出額が初めて年間一兆円を超えることが公表されました。新型コロナウイルス感染の影響からアメリカや中国の経済が回復しつつあることを背景に、海外で人気の高い牛肉などの輸出が伸び、全体を牽引したと分析されています。

 公明党も、農産物・食品の輸出後押しのため、生産性向上を図る基盤強化などを推進してまいりました。

 私のふるさと沖縄は、子牛の生産が全国第四位の状況であります。海外で人気の高い日本のブランド牛の産地に沖縄から子牛を出荷しています。沖縄は日本のブランド牛生産を下支えしています。

 日本の農産物・食品の更なる輸出拡大のためには、沖縄における子牛の増産と肥育農家の育成が必要と考えます。そのための対策の一つとして、食肉の輸出に関するHACCP等に係る施設認定等を推進する必要があります。食肉の輸出拡大のために、輸出のためのHACCPに認定された屠畜場、食肉センターを増やすことが必要です。

 政府はHACCP支援法を制定し、屠畜場、食肉センターのHACCP認定に取り組んでこられました。現在、沖縄県の食肉処理施設は六か所ありますが、牛について、輸出用HACCP認定が一つもなされておりません。食肉処理施設について、一つでも多くの施設が牛の食肉輸出のためのHACCP認定施設となることにより、沖縄の食肉輸出が増えることは間違いありません。

 そこで、農林水産大臣にお伺いいたします。

 農林水産省として、屠畜場、食肉センターと食肉処理施設が輸出用HACCP認定施設となるよう、プッシュ型の積極的な支援を行うべきであります。御所見をお伺いいたします。

金子(原)国務大臣 お答えいたします。

 二〇三〇年の牛肉の輸出目標三千六百億円の達成に向けまして、農林水産省といたしましても、輸出に対応できる加工流通施設の整備を推進しているところであります。また、施設の整備完了後、迅速に認定が行われるよう、農林水産省及び厚生労働省が、食肉事業者等に対しまして施設の整備の検討段階から助言できる体制を既に構築しているところであります。

 沖縄の問題につきましては、まず県庁と御相談をいただきまして、国としても、輸出に向けて必要なものは後押しがあれば積極的に対応していきたいと思っておりますので、どうぞ、これから御意見等があればまた言っていただきたいと思っております。

金城委員 御答弁ありがとうございました。

 沖縄の食肉処理施設で牛の輸出認定がなされるよう、農林水産省として積極的な御支援をよろしくお願いいたします。

 次に、牛の餌の価格について質問いたします。

 沖縄の牛に対する配合飼料について、農林水産省の国内における農業資材の供給に関する調査において、令和二年三月時点のアンケートの結果は、肉牛肥育用配合飼料の購入価格は一頭につき最小価格四万四百二十五円、最大価格六万八千百八十円、平均価格五万三千三百五十円となっています。また、沖縄県の配合飼料流通価格の推移の公表資料では、令和二年四月、本島流通価格は六万三千四百四円です。比較しますと、沖縄本島の配合飼料価格は農林水産省調査の平均価格より一万円強高く、最大価格に近い価格となっています。

 配合飼料価格安定制度、また肉用牛肥育経営安定交付金、通称牛マルキンのこの二つの制度は、セーフティーネットとしては必要不可欠ですが、飼料費用の地域的な不均衡の是正に資するものとは言えません。

 餌代について、地域的に価格に差が生じていると思われます。実態把握のための取組が必要と思われます。そのことについて、農林水産省の御見解をお伺いしたいと思います。

森政府参考人 お答えいたします。

 配合飼料価格につきましては、畜種ですとか購入量、銘柄により異なるということもございますので、地域ごとに把握をする、その上で比較をする、あるいはその結果を活用するという点についてはなかなか難しい面があるという点は御理解をいただければと思います。

 ただ、一概には申し上げられませんけれども、トウモロコシ等の輸入穀物が主な原料ということでございますので、大規模な輸入港から離れた地域では、輸送コストの面から高くなる傾向があるという状況でございます。

 ちなみに、沖縄県につきましては、配合飼料価格を見ますと、この立地の面から価格が比較的高い傾向があるということでございますが、一方で、例えば肉用牛肥育経営に関して申し上げますと、素畜費は全国平均価格よりも低いということで、生産コスト全体では必ずしも全国より不利というふうには言えないのではないかといったようなところもございます。

 一方、沖縄につきましては、中城の湾港の新港地区におきまして、大型船の着岸を可能とする港湾、さらに穀物サイロ、出荷施設などの関連施設の整備が実施をされたということでございまして、県から伺ったところによりますと、まさに今月から大型船の入港が始まったというふうなことだそうでございます。そういった意味で、今後、この配合飼料価格の低減の方が期待をできるのではないかというふうに考えております。

 農林水産省としても、こうした動向をしっかり見ていきたいというふうに思っております。

金城委員 御答弁ありがとうございました。

 是非、遠隔地の畜産農家のために、まず、餌代に対して地域差があるのかないのか、農水省として調査をし、実態把握をしていただきたいと思います。農林水産大臣に強く要望いたします。

 本日、初質問させていただきました。しっかり沖縄の畜産の発展、振興のために全力で取り組んでまいります。

 本日は、どうもありがとうございました。終わります。

平口委員長 次に、野間健君。

野間委員 立憲民主党の野間健です。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 私は、北海道や宮崎県と並ぶ畜産県であります鹿児島県の選出であります。本日も、養鶏やまた肉用牛生産について質問させていただきます。

 十一月に入りましてから、全国で、高病原性鳥インフルエンザの発生が各所で起きております。私の地元の鹿児島県出水市におきましても二例出ておりまして、既にもう五万羽の鳥が殺処分されるという状況であります。農水省さん始め、県、地元自治体の迅速な対応で終息に終わり、移動制限等も解除されたところであります。

 地元出水市で起きたのが、十一月の十二日と十四日でありました。その直後の十一月十八日に、出水市が、国際的な条約でありますラムサール条約湿地保護の地域として登録がされました。これは、毎年、ロシア、ヨーロッパから四万羽とも言われる渡り鳥がやってくる広大な湿原、湿地であります。

 そういった自然保護の観点からのラムサール条約の登録がなされたわけですけれども、実は、その隣に、四百万羽とも言われる一大養鶏産業が立地をしております。ですから、自然保護、水田や湿地、ため池、そしてそこに飛来する渡り鳥や水鳥を保護する、そういう要請と、その隣に、そういった水鳥等が運んでくるであろうインフルエンザ等の病気から守らなきゃいけない養鶏業が共存しているという地域になっているわけであります。

 自然保護と、そして養鶏産業を守っていくという、両立し難い、なかなか難しい課題を私たちも抱えているわけでありますけれども、であるからこそ、やはり国としても、養鶏業を守るため、手厚い支援が必要だと思いますが、大臣の御所見をいただきたいと思います。

金子(原)国務大臣 高病原性鳥インフルエンザは、野鳥によって国内に運ばれるために、全国いずれの地域においても発生するリスクがあり、緊張感を持って発生予防に取り組む必要があります。

 その上で、今シーズンの発生事例では、農場周辺に野鳥が飛来するため池等の水場が確認されていたことから、改めて、飼養衛生管理の徹底について注意喚起を行ったところであります。

 鹿児島県出水市につきましては、養鶏農家の密集地帯である一方、先ほどお話がありましたように、渡り鳥の一大飛来地でありますので、個々の養鶏農家による飼養衛生管理の徹底とともに、地域の全体として発生リスクを低減させることも有効と考えています。この観点から、今年度の発生を踏まえまして、出水市が行う地域の消毒に対し、支援を行うこととしているところであります。

 今後とも発生予防に努めてまいりたいと思います。

野間委員 ありがとうございます。

 なお一層の手厚い支援、よろしくお願いいたします。

 続いて、肉用牛の生産、とりわけ畜産クラスター事業についてお聞きしたいと思います。

 今、畜産クラスター事業のおかげさまで、牛の生産もここ近年伸びております。ただ、同時に、やはりこの畜産、肉用牛生産、大規模化が非常に進んでおりまして、飼養戸数としては減少傾向にずっとあります。それはある意味やむを得ないことかもしれませんけれども、中小の、零細の、十頭、十五頭飼っているような牛の農家も地域を支えているのも事実でありますし、恐らく全体的な戸数でいえば六割ぐらいが、こういった中小の小さな農家が生産を支えていると言われているところであります。

 したがって、今、畜産クラスター事業、こういった事業に取り組めるところは、認定農家という形で事業の要件になっておりますけれども、なかなか中小の小さな農家が、認定農家と違って、いろいろな機械を入れたい、とりわけ、粗飼料を作るためのホイールローダーですとか、それをまた、牧草をラッピングする機械ですとか、なかなか、これは何百万もする高い機械であります。

 認定農家はこういったものもほぼ二分の一補助でどんどんどんどん購入をするわけですけれども、中小の小さな、零細の牛を飼っている農家、牛が、何というんでしょうかね、家族の一員なんですね。我が子のように手塩にかけて育てていますから、非常にいい牛を生産します。しかしながら、こういった機械化に遅れているというのが現状であります。

 地域をやはり支えているこういった農家を大規模化や集中化ということでなくしてしまうと、地域社会自体が崩壊してしまいます。そういった意味で、是非、こういった認定農家ではない零細な農家に対する支援、またクラスター事業の要件の緩和等を含めて、是非見解を伺いたいですし、御支援をいただきたいと思います。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 畜産クラスター事業についての御質問をいただきました。

 この畜産クラスター事業につきましては、地域一体となって畜産の収益性を向上させる、生産基盤の強化を図るための事業ということで、畜産クラスター計画に位置づけられました中心的な経営体に対する支援を行うということでございます。この機械導入事業につきましては、認定農業者又は認定新規就農者であることを要件としております。

 これは、中心的な経営体につきましては、自らの経営における収益性の向上に取り組むことでございますとか、さらに、率先してこのクラスター計画に定められた取組を実践する、さらに、地域への貢献する意思を有しながら、地域や他の畜産関係者との連携を図るといった役割が求められるということから、こうした意欲のある経営体を対象とするという観点から要件化をしているということでございます。

 ただ、機械導入事業につきましては、認定農業者であれば規模要件というのは課してはいないところでございまして、経営の大小にかかわらず、この事業の補助の対象というふうにさせていただいているところでございます。

野間委員 そういった要件の緩和も最近されているということでありますけれども、なお中小の小さな農家にも手を差し伸べていただきたいと思います。

 続いて、今、牛の増頭政策で随分肉用牛も増えているわけですけれども、これと表裏の関係で、いわゆるそういった家畜の排せつ物の処理の問題が地域でも出てきております。

 平成十六年に家畜排せつ物法という法律が施行されて、排せつ物の処理は畜産農家自らの責任で行うという基本方針が出ているわけでありますけれども、大規模な農家は、今、国の補助事業、リース事業、融資、税制特例等を使って、大型の機械を導入して堆肥化をしたり、いろいろな形で処理をしているわけでありますけれども、なかなか小さな農家はそういったものに追いついていきません。

 堆肥化等をしても、なかなかこれは、販売をするとか、そういうところまでいかないのが、実態はそうであります。相当な機械、お金を使って堆肥を作って、それをただで使ってもらうというのが実際は現状になっております。ですから、これは労多くしてなかなか益を生まない仕事になっておりますので、そういったところも、手が届かない中小零細の農家に対しての支援を是非お願いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

宮崎大臣政務官 お答えをいたします。

 委員お話がございましたように、家畜排せつ物を適正に処理をいたしまして堆肥やエネルギーとして有効活用を推進するということにつきましては、資源循環に資するということから、持続的な農業生産を図る上でも大変重要なことであるというふうに考えております。

 このため、農林水産省といたしましては、地域特性や経営実態に応じた資源循環等の取組を推進するために、成立をいたしました令和三年度の補正予算におきまして、高品質堆肥の生産でございますとか、堆肥の広域流通に資するペレット堆肥の生産に必要となる施設の整備、それから家畜排せつ物等の地域資源を活用したバイオガスプラントの整備や、バイオ液肥散布車の導入等によるエネルギーの地産地消の実現等について支援をしていくこととしておりますので、これら事業についてしっかり周知徹底を図っていきたいと考えております。

野間委員 是非、そういった事業、周知、PRをお願いしたいと思います。

 続きまして、今、サツマイモ、鹿児島ではカライモと呼ぶんですけれども、この基腐れ病が全国に蔓延しております。

 二〇一八年に沖縄で発生が確認されてから、鹿児島県、宮崎県、今もう全国でこれが起きているわけでありますけれども、この対策、本当にいろいろな形でやっていただいているのはもう承知しているところであります。

 これは百年前からアメリカで起きているということで、恐らく日本でもそういったものが起きていたのではないかと思います。私も地元の農家の方に聞きますと、皆さんも芋焼酎を飲まれるんじゃないかと思いますが、昔の芋焼酎というのは、物すごく芋臭くてなかなか飲めなかったんですね。ところが、近年のは非常にフルーティーで飲みやすくなっているんですけれども、どうも昔の芋焼酎というのは、こういう基腐れのサツマイモなんかも入っていたんですね。

 そういったものをいろいろ入れて、いろいろなにおいもありながら飲んでいたそうでありますけれども、そういった意味で、この基腐れ病というのは、コロナと同じようになかなか全面的に退治することというのは難しい病気だ、地域の昔からを知っている農家の方はそう言っていました。

 ですから、これはもうなかなか、対症療法、もちろんこれは今やらなきゃいけないことですけれども、ある意味、共存して、中長期的に余り発生しないように抑えていくということもやっていかなきゃいけないと思いますので、現在のもちろん対処を含めて、中長期的に対処していただきたい、対策を取っていただきたいと思いますけれども、現状、そして方向性を教えていただければありがたいです。

小川政府参考人 サツマイモの基腐れ病につきまして、対策のお問いがございました。

 現在、農研機構と関係県が連携して、排水対策の徹底等も盛り込み、先ほど御指摘のありました農薬だけの対処に頼らない総合的な防除対策のマニュアルを作成し、生産現場での取組を推進しているところでございます。特に、現地で実証試験を行ったりしながら、より効果的な、総合的な防除対策を検討してまいりたいと思っております。

野間委員 是非、総合的、中長期的な対策をよろしくお願いいたします。

 続きまして、私どもの地元でも一つの基幹産業になっているんですけれども、植木ですね、特にイヌマキという大きな木があります。これを、従来まで中国に毎年、私どものやはり鹿児島県の出水市から七、八千本輸出をしておりました。昨年からこれが輸出が中断しております。

 このイヌマキというのは、中国では何か豊かさ、富の象徴ということで、富裕層が買うんですね。これは、一本数百万、物によっては数千万するものでありまして、非常に大きな輸出産業になっていたんですが、昨年から、今までは植木の根元に土をつけたまま輸出していたんですけれども、そうでないと枯れてしまいますから、ところが、中国側から、ここにいろいろな細菌や病害虫がいるということで、そういった理由で今はストップしております。

 いろいろと中国側ともこの輸出の中断について交渉されていると思いますけれども、どういった現状で、どういう、これから輸出の再開に向けての交渉がなされているか、教えていただきたいと思います。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 日本産イヌマキにつきましては、二〇二〇年十二月に中国側から、土つきの日本産イヌマキは病害虫の侵入リスクが高いことから中国への輸入は認めない旨の連絡があり、現在、日本からの輸出が停止しているところでございます。

 これを受けまして、私どもといたしましては、イヌマキについて土を除去して輸出できるよう、中国側に協議を申し入れているところでございます。今後とも、イヌマキの輸出が再開できるよう、中国側に働きかけてまいりたいと思います。

 以上でございます。

野間委員 いろいろ日中関係の問題もあろうかと思いますけれども、是非、技術的な問題をクリアして輸出できますようにお願いしたいと思います。

 最後に、私どもの地元でもやっていることなんですけれども、漢方薬の原料である薬草の栽培、私も仲間の皆さんと組合をつくってやっております。漢方薬の消費といいますか処方は、この五年ぐらいで二割ぐらい伸びていると言われますね。もちろん西洋医学の薬もいいんですけれども、漢方のように副作用が少ない、また、体全体に効くということで、欧米でも漢方薬への、東洋医学への見直しというのが行われていると聞いております。

 ただ、残念ながら、今は漢方薬の原料の薬草の八割が中国からの輸入に頼っているという状態で、これをやはり国産化していくということ、これこそまた、食料、経済安全保障にもつながると思いますけれども、私どもも熊本県に並ぶ産地として今一生懸命取り組んでいるんですけれども、漢方薬の原料、薬用作物、薬草の栽培について、今年も約十九億円ぐらいの予算がついているということなんですが、ただ、これはお茶の生産、お茶についての予算にも含まれているということで、実際、ここ近年、この予算の大体大半がお茶関係のことに使われ、なかなか薬用栽培の、薬用作物のものに使われていないというのが現状であります。

 今後のことを見通していきますと、これは非常に高収益な農業であることも事実であります。ただ、大変、雑草の処理等手間のかかる農業でもありますけれども、中山間地でおじいちゃん、おばあちゃんがやることもできる農業でもありますので、そしてまた、この漢方薬のこれから伸びている需要に応えるという意味でも、是非、政府、農水省を挙げて推進していただきたい事業だと思いますので、それにしてはこの十九億円という予算は余りに少ないと思いますので、これを倍増ぐらいしていただいて、もう少し、かつては日本でもいろいろなところで、各地で漢方薬、民間薬もありました。そういったことを是非復活させていく意味でも、予算の増加について考えていただきたいと思います。

平形政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、漢方薬は、近年需要が大変伸びておりますけれども、中国以外も含めると、原料の約九割を海外に依存している状態でございます。このため、漢方薬メーカーからは、国内での薬用作物の生産拡大、これへの期待が高まっているところでございます。

 おっしゃるとおり、中山間地域等における新たな作物で注目をされておるんですが、一方で、大部分が契約栽培でございまして、供給先ですとか価格の情報が少ないために、生産者、産地が新たな契約に取り組みづらいところがございます。

 また、メーカーが求める品質を確保するための栽培技術の確立、これが遅れている面、こういう面もございますので、こういった課題に対応するために、委員御紹介のございました茶・薬用作物等地域特産作物体制強化促進事業、これによりまして、メーカーとの契約に向けた事前相談、マッチング機会の提供ですとか、安定生産に資する栽培技術確立のための実証ですとか、栽培マニュアルの作成、栽培技術指導等の支援を行っているところでございます。

 今年度の予算は十三・六七億円、来年に向けて要求は今しているところなんですけれども、実際、お茶よりも薬用作物の方が産地として手が挙がってくる件数が少ないのでございまして、この事業がしっかり活用されるように、産地ですとか生産者の方への周知、これに努めていきたいというふうに考えております。

野間委員 ありがとうございました。是非よろしくお願いいたします。

 これで質問を終わります。ありがとうございました。

平口委員長 次に、渡辺創君。

渡辺(創)委員 立憲民主党、宮崎一区選出の渡辺創でございます。

 国会で初質問の機会をいただきました。どうかよろしくお願いをいたします。

 現在も鳥インフルエンザや豚熱に対する警戒で高い緊張感が続く中、畜産業が直面する将来に向けた産業構造の転換、強化に力を注ぐ関係者の皆さんに、心から敬意を表するところです。

 私が政治活動を始めたのは平成二十二年で、宮崎は口蹄疫の災禍に見舞われた年でありました。約三十万頭の家畜が犠牲になり、県内経済への影響は二千三百五十億円とも言われています。さらに、経済的損失のみならず、関係者、県民の心にも大きな傷痕を残しました。

 私は主に県会議員としてその復興の歩みに接してまいりましたが、この委員会にいらっしゃる江藤拓議員、武井俊輔議員を始め多くの方々の御奮闘があり、その歩みは確かなものになってきたと思っています。私と同じく今回初当選した国民民主党の長友慎治議員を含め、宮崎県に関係する四名の議員がこの農林水産委員会所属となっていることからも、宮崎県にとって、農林水産業、そしてその大きな柱としての畜産がいかに重要であるかということを裏づけているというふうに思うところです。

 今回の質問では、高齢化や後継者不足、飼料価格の高騰、規制緩和による輸入品の増大など、常に時代の変化の波にさらされる畜産を取り巻く状況を確認しながら、担い手の確保という観点に重きを置いて質問をしてまいりますので、どうかよろしくお願いをいたします。

 まず、牛肉の増頭奨励事業についてお伺いします。

 牛肉の国内消費量が比較的高い水準で推移し、同時に世界的にも需要が拡大する中で、国内生産の振興が極めて重要になっています。また、各生産地が海外輸出に熱心に取り組むことが裏打ちしているように、高い利益を上げる戦略的な輸出のツールとしても重要なわけですが、肉用牛生産は、冒頭でも申したように、高齢化や後継者不足など、ある種の構造転換を求められる渦中にあるというふうに認識をしています。

 このような産業課題が表面化したのが、子牛が市場に出てこないという状況です。そうなれば、子牛価格は当然高くなり、肥育農家の経営を圧迫することになりますし、そもそも、最終的な生産量が向上しません。その打開策の一つとして令和元年に始まった繁殖用の雌牛の増頭奨励事業ですが、予算額、実績共に年々伸びています。

 令和十七年度に和牛の生産量を三十万トンにするという目標を見据えた上で、この事業の効用をどのように考えていらっしゃるでしょうか。また、一定期間、事業の継続が図られるという安心感があれば、更なる積極的な増頭につながるのではないかというふうに考えますが、大臣の見解をお伺いいたします。

金子(原)国務大臣 渡辺議員、初当選おめでとうございます。

 繁殖雌牛に関しましては、酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針におきまして、和牛肉の国内需要への対応と輸出の一層の拡大を目指しまして、その頭数を令和三年の約六十三万頭から令和十二年に七十八万頭に増やす目標を持っております。

 肉用牛増頭奨励事業はこのための重要な事業でありまして、令和二年の実績では全国で約二万六千頭の繁殖雌牛の導入を支援しており、和牛の着実な生産拡大に貢献をしています。

 牛肉輸出が順調に増加するなど、今後も堅調な増加が見込まれる需要に応えるため、本事業も活用して和牛の増頭に今後取り組んでまいりたいと思います。

渡辺(創)委員 今、私、お祝いまでいただきまして、ありがとうございました。

 着実で、かつ堅調な増加があるという御答弁があったと思いますが、やはり目標に向けた全体計画の中でこの事業の効用を明確にしながら、繁殖農家の増頭意欲を更に底堅いものにしていくためには、この事業がやはりある程度の期間、恒常的に続いていくものであるということがきちんと伝わっていけば、その趣旨はより明確になっていくのではないかというふうに考えますので、そのことを御指摘申し上げて、次の質問に移りたいと思います。

 次に、担い手確保についてお伺いをしたいんですが、担い手確保は、畜産のみならず、農業全般において重要な課題です。その問題意識から、農業大学校についてお伺いをいたします。

 全国農業大学校協議会の資料によれば、全国には四十七の農業大学校があり、道府県大学校が四十二校、それから民間農業教育施設が五校というふうになっています。

 道府県立と民間では少し位置づけが違うので、四十二の道府県大学校についてお伺いをいたしますが、定員の充足率はどのような状況になっているでしょうか。

光吉政府参考人 お答え申し上げます。

 令和三年四月の道府県立農業大学校の養成課程の入学者数は、定員二千三百二十九名に対して千九百八名でございまして、その比率は八二%となっております。

渡辺(創)委員 八二%という御答弁でありました。

 宮崎県にも、江藤先生の選挙区でありますが、児湯郡高鍋町に県農業大学校が設置をされております。その敷地は、冒頭申し上げました平成二十二年の口蹄疫メモリアルセンターがある県農業科学公園と隣接をしています。農業科と畜産学科がありますが、近年の定員充足率は、令和二年度が九四%、今年度は八〇%というふうになっておりますけれども、過去五年の充足率の平均は九四%、過去十年でも八八・七%というふうにありますので、先ほどの御答弁を踏まえれば、全国平均よりも高い充足率にあるということかと思いますが、全国を見れば、定員に対して二割ぐらいが空いている状態のままで農業大学校はそれぞれ運営がなされているということが分かります。

 令和三年版の食料・農業・農村白書を見ると、農業大学校について、就職氷河期世代等を含む幅広い世代の就農希望者が農業技術や農業経営に関する教育を受けることができるよう、農林水産省としてもカリキュラム強化を支援するというふうにされています。

 農水省は、このような見解を持っているわけですから、農業大学校に新たな役割を期待しているというふうに思うのですが、就職氷河期世代を始め、いわゆる高校を卒業したばかりというような方々以外の世代、言い換えれば、違う分野から農業へ志を持ち、就農することを強く意識して入校する存在の実態をどのように把握し、認識しているかをお伺いしたいと思います。

光吉政府参考人 お答え申し上げます。

 多くの道府県立の農業大学校におきましては、委員御指摘の就職氷河期世代を含めた社会人などの就農希望者も対象にした研修を実施していると承知しております。

 例えば、ある農業大学校におきましては、社会人が受講しやすくなるように、平日又は週末のどちらかのコースを選択できるようにして、五か月間で計十回、栽培技術ですとかいろいろな知識を学ぶことができるような研修コース、こういうものを用意しているというふうに承知をしております。

 農林水産省といたしましても、農業に関心を抱かれる多様な人材を呼び込むという観点から、農業大学校における幅広い人材を対象とした研修の実施を支援していきたいと考えております。

渡辺(創)委員 いろいろな取組はあるようでありますが、それが本当に功を奏していけば、やはり、定員の充足率が満たされて、もっと農業大学校が十分な活用をされていくような状況になるのが望ましいはずだというふうに思います。

 各種のデータを見比べてみますと、四十九歳以下の新規就農者は平成三十年で約一万九千三百人というふうになっています。一方で、農業大学校の卒業生は、同じ年、平成三十年が千七百五十五人です。このうち就農した者は九百四十七人というデータがあります。仮に、農業大学校の定員充足率が一〇〇%近くで、ほぼ全てが就農をするという構造であるならば、恐らく新規就農者の一割程度が農業大学校出身というふうになっても、これはもちろん頭の体操、数字の体操の話でありますが、そういうふうになってもいいはずであります。

 何を申し上げたいのかといえば、農業従事者が全体で減少していく中で、新規就農者の確保というのは国、地方共に重要な課題になっています。解決するためには、全く新しい分野から意欲ある人材が参画してくること、もう一つは、畜産などはその傾向が強いかもしれませんが、なかなかゼロから新規参入が難しいという分野では、既存の足場を持った上で、更に事業拡大の意欲とノウハウのある次世代を育成することが不可欠なはずです。

 そこで、農業大学校等の教育機関を、就農の入口としての側面をもっと強く打ち出して、就農率が五〇%台にとどまるような形ではなく、高い就農率に結びつく教育機関として誘導していくべきではないかと考えます。農業大学校の話をしてきましたが、ここに全国で三百七十校ある農業高校まで視野を広げれば更に底堅い可能性を持つのではないかというふうに考えますが、大臣の見解をお伺いしたいと思います。

金子(原)国務大臣 お答えいたします。

 農業を担う人材の減少傾向が続いていることを踏まえ、新規就農者を確保していくことが必要であります。

 特に、農業大学校や農業高校は、農業を志す若者が農業技術や経営を学ぶ場として重要な役割を担っていると考えております。

 このため、農林水産省といたしましては、将来の職業としての農業を選んでもらえるよう、農業大学校や農業高校の教育環境の充実に向け、スマート農業のカリキュラム強化など、教育内容の充実や、そのために必要な農業機械、設備の導入、現場実習などの実践的な教育の実施について支援してまいりたいと考えております。

 実は私も、かつて知事をしておるときに、長崎にも農業大学校がありました。なかなか卒業生が農業に従事しないという問題がありましたので、いろいろと設備等もやってみましたけれども、なかなか難しいところがあるんですね。

 それで、結局、やはり、本当に農業というものがいいものであり、農業をすることによってちゃんと生活をしていけるというような保障と、そういった担保的なものがある程度、大学校に行っているときにそういったものが示されていかないと駄目だし、高校生は意外と意欲的にいろいろなことに取り組んでおりますので、少し農業高校の方にも力を入れるのも一つの考え方だというふうに思っていますので、これからも、地域のそういった学校、大学校とはよく相談をしながら、どういったやり方をすれば就職者が増えるのかということについて検討してまいりたいと考えております。

渡辺(創)委員 大臣、知事時代の御経験も含めて、御答弁ありがとうございました。

 私が今申してきた問題意識は大臣にも御理解いただけたというふうに思いますので、その上で、私も自治体議員として十年歩んできた中で感じてきたことをちょっとお話をさせていただきたいと思うんですが、自治体が国の示す方向性に沿って地域実態に合わせながら様々な事業を推進する際には、国から一定の補助を受けるわけです。農業分野では、昨今、スマート農業が提唱され、資機材の導入や施設整備に係るコストが上がってきたという面が否めません。

 例えば、今回取り上げてきた農業大学校を見ても、宮崎県の農業大学校の場合、今年度の予算額は約三億円です。三億円で人件費も含めて運営をしているわけです。今年度を見ると、このうち国庫が財源となった部分というのは、約一千四百万円にとどまっているというのか、一千四百万円いただいているというのか、ここは見解が難しいところですが、一千四百万円にすぎないという状況にあります。

 特に、自治体として厳しいのは、スマート農業の推進に向けた研修用の農業機械や設備の購入は、例えば農業教育高度化事業というのが農水省の事業でありますけれども、これは補助率二分の一というふうになっています。畜産用ロボットトラクターなどは軽く値段が一千三百万とか一千四百万円するわけですので、年間三億円で運営しているぐらいの規模の農業大学校にとって、二分の一の裏負担分を県が出すというのにもなかなか、ここは苦労があるところだというふうに思います。

 ですので、今回の質問に当たって、併せて、これは文科省の所管の分野になるかもしれませんが、県内の農業高校についても調べてみたんですが、昨年度の見積額のベースで、実は、五千万円を超えるような規模でスマート農業のための先進機器を導入しているという学校もあります。

 ただ、もう皆さんお分かりのとおりで、この一、二年というのはコロナ対策の予算が自治体にはいろいろついていましたので、ある意味、地方としてはたくましくいろいろ活用してきた面もあって何とかやっていけていると思うんですが、これから、未来につながる農業機材の導入等をしてこれからの世代に学んでいただく機会をつくるに当たって、裏負担が大変自治体にとって重たいという状況が出てきていますので、どうか、お伺いをしたいと思うんですけれども、次世代の担い手を育成するための教育施設等の機械導入、設備整備に関しては、国の補助率を引き上げるなど、自治体がもっと踏み出しやすい誘導を図ってはいかがかというふうに思います。

 大臣は知事の経験も含めておありですので、お気持ちをお分かりいただけるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

金子(原)国務大臣 農業大学校や農業高校は、各地域における将来の農業の担い手を育成するために各都道府県が運営している教育機関であり、各都道府県が主体的に教育環境の充実に向けた取組を実施するものと認識しております。

 しかし、いろいろと議員からも御指摘があったように、やはり限界がありますので、その辺については、これからも文科省とよく話合いをしながら、農林省としてどういう対応ができるか、そういった面もこれから考えていきたいというふうに思っております。

 このような都道府県の農業教育の充実に向けた主体的な取組を後押しするために、令和二年度から、教育機関において必要な農業機械、設備の導入経費の二分の一を支援しているところであります。

 引き続き、農林水産省といたしましても、都道府県の農業教育の充実に向けた取組を支援してまいりたいと考えております。

渡辺(創)委員 大変心のこもった御答弁、ありがとうございました。

 私の選挙区に国富町というところがあります。そこに三十歳で繁殖農家をしている若い友人がいるんですが、先ほどまで議論してきた農業高校や農業大学校の卒業生という立場でありますけれども、年間で十五頭ほどの子牛を出荷しているということのようです。

 今後のことを考えれば、先ほど議論してきたように、増頭して少し基盤強化を図る必要があるのかもしれませんけれども、今年の二月にゆっくり話す機会があったんですが、集落の人口もどんどん減っていっている、そして畜産をやめる人たちもたくさん出ていっている、けれども、ふるさとを守るためにも自分はここで畜産を頑張りたいと言っていました。今年になって、同じ集落の中で自分より一歳若い人が畜産に新たに入ってきてくれた、ようやく最年少を脱した、非常にそれがうれしいというお話をしていました。

 今、畜産は、規模拡大も含めて大きな変化の潮流の中にあるのかもしれませんが、時代適応だけではなく、彼が話したような根源的な思いを大事にできる二面性を担保することが重要ではないかというふうに思っています。

 そのためにも、志のある若い人材の参入をしっかりと支えられる格段の措置こそが畜産の未来につながるのではないかというふうに強く感じております。そのことを最後に申し添えまして、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

平口委員長 次に、神谷裕君。

神谷委員 おはようございます。立憲民主党、神谷裕でございます。

 今日も質問の時間をいただいたことを感謝申し上げたいと思います。

 また、金子大臣、政務二役の皆さん、御就任誠におめでとうございます。日本の農林水産業のために、これからも御尽力、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 早速でございますが、お時間が余りないものですから、早速質問に入らせていただきます。

 大変恐縮ですが、通告の順番を若干変えさせていただきたいと思います。

 最初に、水田活用交付金のことをちょっとお聞かせをいただきたいと思います。

 今般、多年生牧草の播種年以外の単価の見直しが行われるということでございます。農家から酪農家の皆さんも含めてですけれども、こういった皆さんにとってこれは大変大きな変更になる、経営にも大きな影響があるんじゃないかと思うんですけれども、これについて、やはりちょっと考えていただきたいと思うんですけれども、いかがでございましょうか。

金子(原)国務大臣 多年生牧草については、一度播種をすれば五年から十年の長期にわたって収穫ができる作物であり、収穫のみを行う年は生産に要するコストが低いため、令和四年度から水田活用の直接支払い金の戦略作物助成の単価を十アール当たり現在三万五千円から一万円とするということにしたところであります。

 こうした見直しを行いつつ、需要のある作物の生産に取り組む農業者が前向きに農業を続けていけるようにしっかりと支援していきたいと思います。

神谷委員 大臣、御答弁ありがとうございます。

 確かに、播種年以外の年についてはコストが少ないという観点、それは理解をさせていただくんですけれども、やはり経営という観点を見なければいけないと思います。木を見て森を見ない議論になってはいけないと思うんです。当然、もうかる分野があって、もうからない分野がある、そして最後にトータルとして経営が回っていく。これを当て込んで、例えば投資であるとか、あるいは機械投資もそうですけれども、やっておられる方は厳然としているわけでございまして、ここの部分、コストが低いから下げるよということになると、本当に、もうかる部分、もうからない部分があって初めて経営でございますから、ここの部分だけ見れば確かにそうかもしれないけれども、経営全体として見ていただきたいと思うんです。

 そういった意味で、やはり影響が少なくないと思っています。特にこういったところは、中山間地であったり、酪農、あるいは必死に頑張っているところの地域が多いわけでございますから、やはり簡単な話ではないと思いますし、面積も大きいんじゃないかと思っています。そういった意味で、ここはもう一度、経営というものを観点として、是非お考えをいただきたいところだなと思っています。

 できることであれば、仮にこの水活の世界では難しいとしても、やはり経営の中で何とか支えてあげるための施策、方策を考えていただきたいと思うんですけれども、これについて、いかがでございましょう。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 経営全体の中でというお話もございました。そういった点で申しますと、やはり自給飼料生産というのをどう支えていくかということではないかというふうに思っております。

 やはり畜産経営の安定の観点からも、輸入飼料への過度な依存から脱却をして、国内飼料生産基盤に立脚した生産に転換していくことが重要だというふうに思っております。

 そういった意味で、農水省といたしまして、例えば、基盤整備等によります草地の生産性向上でございますとか、効率的な生産を行います飼料生産組織の運営強化といったようなことを多面的に支援をして、全体として国産飼料の増産に向けた取組を推進し、畜産経営の安定を図っていくという観点で取り組んでいきたいというふうに考えております。

神谷委員 もちろん、草地更新とか、そういったこともやっていただかなきゃいけないんですけれども、やはり経営という観点はしっかり見ていただきたいと思いますし、やはり木を見て森を見ない議論になってはいけないと思いますので、大臣、ここは、酪農経営を支えていくという意味で、こういったところも是非目くばせをいただきたいと思いますし、経営に影響が出ないように是非お願いをしたいというふうに申し上げさせていただきたいと思います。

 続きまして、今話題になっているところの、五千トンもの生乳が廃棄されるというような話題、報道が出ております。

 これについて、事実関係等、あるいは対策等についてお伺いをしたいと思いますが、いかがでございましょうか。

森政府参考人 お答えいたします。

 本年の年末年始につきましては、例年以上に生乳の需給が緩和をして、処理できない生乳の発生が懸念をされているということでございます。

 五千トンといいますのは、業界団体におきまして、何も対策を講じなければ廃棄される可能性があるという試算をしたものでございます。この生乳廃棄を回避するために、乳業メーカーも含め、牛乳の消費拡大の取組を強化しているということと承知しております。

 現状では生乳廃棄という事態はまだ生じておりません。今後の生乳需給につきましては、消費の動向、さらに、乳業メーカー等の取組によって大きく変わることでございます。引き続き、こうした生乳廃棄といったような事態に至らぬように、我々としても、私どもとしても、消費拡大を訴え、業界と連携を密にして対応してまいりたいというふうに考えております。

神谷委員 ありがとうございます。

 ただ、今の答弁だとちょっと分からない部分が幾つかございます。

 年末年始という話でありますと、もうそんなに時間がありません。そういった中で、もちろん需要喚起は大事です。ただ、間に合うのか、率直に言うとそういったところです。五千トンもの大きな量です。

 今の中でよく分からないのは、なぜ廃棄をされる可能性があるのかというところで、要は、在庫がもうたまっているからなのか、あるいは、そういった生乳受入れの皆さん方がもう受け入れられるだけのキャパがないのか、こういったところは、どういった、何が受け入れられないのか、何がとどまっていて実際に廃棄をしなければいけないのか、そこをもう一度教えてください。

森政府参考人 お答えいたします。

 年末年始につきましては、基本的に、例えば学校給食がなくなっているというようなことでございますとか、あと、お節料理等の、食生活の観点からもなかなか飲用乳の消費が伸びないという状況がございます。

 こうした中で、生乳につきまして、じゃ、そういったものを例えば乳製品という形に加工していくということになりますと、これは乳業メーカーがそれを受け切れて、それを加工し切れるかといったようなことがございます。各乳業メーカー、この年末年始に向けて、例えば操業のシフトを工夫するなり、あるいはいろいろな、フル稼働ができるように今取組を進めているところですが、併せて飲用乳の消費拡大も図りたいということでございます。

神谷委員 今の御説明ですと、乳業メーカーが受け入れられないんじゃないかというような話だと思います。だとすると、出荷できないということになりますから、廃棄をしなければいけないのは酪農家ということになると思います。ということは、酪農家が生乳を廃棄しなければいけないということなのか。

 この間、増産について農水省でも取り組んでいただいたと思います。私、その方向は間違っていないと思っています。ただ、実際に、増産はさせたけれども、乳業メーカーが受け入れられるだけのキャパがなかったということだと、これはまた問題だと思うんです。この辺はどうだったんでしょうか。

森政府参考人 お答えいたします。

 乳業メーカーの方のキャパの問題につきましては、特にこの年末年始、今年、例えば、夏に非常に涼しかったということで、夏以降も含めて各一頭ごとの生産量といったものが増えているといったような特殊事情、さらにコロナでの乳製品需要の減退といったような、様々な総合的な要因の中で今回の生乳廃棄の懸念というのは生じているものというふうに承知をしております。

神谷委員 局長、それではちょっと、また分からなくなってきてしまいました。もう一回分かりやすく答弁いただけますか。

 今のだと、結局、何でこの年末年始が、それもまた五千トンという単位だと、これは学校の皆さんが飲まないからという形で合う数字だとは到底思えないわけですけれども。もう一回お願いします。

森政府参考人 失礼いたしました。

 例えば、年末年始、通常の年の通常の操業ですと、例えば、勤務体系を含め、あるいは、加工、脱脂粉乳ですとかあるいはバターを作る施設といったものの整備をその時期に充てるとか、そういったような運用を、通常、乳業メーカーの方は取ってきていたということでございます。

 そういった意味で、今年については、そうしたような通常の年ではないやり方をやろうとしているのですが、一方で、先ほど申し上げました、生乳生産量が増加をしているということの中で、今年の特殊事情の中で、今回の年末年始、生乳廃棄の危機というのが生じているということでございます。

神谷委員 もう時間でありますので、余り、もうこれ以上は言いませんけれども、酪農家が現に生乳を捨てなきゃいけないような状況が生まれつつあるというのは、非常に懸念を申し上げさせていただきたいと思います。

 そしてまた、在庫も大変大きくなっていると聞いております。輸出でも、あるいは海外では結構日本の乳製品は本当にウェルカムというか需要があるとも聞いております。様々そういった努力を是非、農林水産省挙げて御尽力をいただきたい、そのことを本当に心からお願いをさせていただいて、もう年末年始、余り時間がありません、しっかり頑張っていただきたいということをお願い申し上げて、私からの質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

平口委員長 次に、金子恵美君。

金子(恵)委員 立憲民主党の金子恵美でございます。よろしくお願いいたします。

 今ほど神谷委員からもありましたけれども、生乳の大量廃棄は是非避けていただきたい。しかも、酪農家による大量廃棄、本当に生産者の心が折れるような状況に陥れるようなことをしてほしくないというふうに思います。

 私は福島県の人間ですが、東日本大震災、原発事故後、酪農家の皆さんは、これは要因は違いますけれども、あのときは放射能の問題、出荷制限があったということではありますけれども、大量廃棄をせざるを得ない状況でした。そして、生乳の大量廃棄をしながら、涙を流して、何とか自分たちの酪農を再生したいんだ、でも、こんな状況、苦しくてしようがないとおっしゃっていたその言葉というのを、私は忘れることができません。

 ですから、繰り返し申し上げますけれども、酪農家の皆さんをしっかりと守っていただきたい。そして、そのためにも、私たちは、この委員会においても、少しでも飲んで応援をしようということで、牛乳を飲むことができる、そういう環境をつくっていただきました。我が党の筆頭理事である佐藤公治筆頭理事からの提案もありまして、そしてまた、与野党を問わず、これはいいことだとおっしゃっていただきまして、そういう環境をつくっていただきましたこと、本当に私からも御礼を申し上げたいというふうに思います。委員長にも、本当に御理解いただいて、ありがとうございます。

 そして、今申し上げましたように、私は被災地福島県の人間でありますけれども、金子大臣には、御就任いただいた後、十一月十三日でしょうか、福島入りをしていただきまして、そして、その御視察の際には、いわき市の小名浜魚市場の視察、そして富岡町では里山再生事業地区の視察、浪江町で農業者との意見交換もされたということです。そしてまた、最後には福島県知事との意見交換もされたというふうに伺っておりますが、この視察には、残念ながら、畜産、酪農関係はありませんでしたが、それでも、金子大臣には、原発事故によって多くの方々が避難を余儀なくされたということだけではなくて、農林水産業は大きな被害を受けたということを御理解いただき、そしてまた、農林水産業に従事している方々は本当に再生のために大変な努力を積み重ねてこられたということも御理解いただけたことと思います。

 今日は、畜産、酪農価格に関する質疑の場でありますので、そこに絞ってさせていただきたいというふうに思いますけれども、福島県の畜産業に対する支援をどのようにこれからまた更に進めていかれるのか、まず伺いたいというふうに思います。

 そしてさらに、一番厳しいのはやはり風評被害だというふうに思っていますが、知事との面談のときにも、大臣は、とにかく国として相当な努力をしていかなければならないと、風評被害の払拭についての決意も述べられているということでございますので、この件についてどのように進めていかれるのか。風評被害対策、どのように進められるのか、お伺いしたいと思います。

金子(原)国務大臣 お答えいたします。

 東日本大震災及び原発事故によりまして、福島県の畜産が大きな影響を受ける中で、福島県におきましては、福島県産牛のブランド力の強化や酪農の生産基盤の回復等を目指して努力されていると承知いたしております。

 農林水産省といたしましても、大規模な酪農関係施設の整備等の支援を行うとともに、特に、肉用牛につきましては、風評被害により枝肉価格が低い状況が続いていると考えられ、優良な肥育素牛の導入による福島県産牛の高品質化等の取組を支援しているところであります。

 今後とも、福島県の意見をしっかりと聞きつつ、畜産の復旧復興に向けて取り組んでまいりたいと思います。

金子(恵)委員 大臣、特に福島県の肉用牛ですけれども、枝肉の価格は全国平均よりも一キロ当たり二百円低い状態、これがずっと続いてきているんです。これは固定化されてしまっていて、そういう中で、でも、コロナ対策だということで、牛マルキンはブロック算定というのを導入しています。でも、これが導入されることによって、福島県はずっと低い水準で来ていますから、実際に交付金というのは減らされてきたというような、そういう課題もありまして、私も、昨年から、この委員会でもこの件について取り上げさせていただいているところでもあります。

 検証もして、実際にブロック算定はやめないという、農水省のそういう考え方であるということではあるんですけれども、でも、こういう厳しい状況にあるということも御理解をいただき、現場では、どんな質のいい肉を作っても、生産者は、本当に何か報われない状況だということをおっしゃっているわけなんですね。

 ですので、そのことを含めて、大臣、もう一言お願いできないですか。

金子(原)国務大臣 牛マルキンの算定方法につきましては、昨年の五月、標準的販売価格を地域ブロック別に算定するという見直しを行いました。その効果の検証の結果、現行の地域ブロックによる算定を引き続き行うこととしたところであります。

 委員は、かねてより牛マルキンの算定は福島県単独ですべきとの御意見だと承知していますが、従来の県別方式算定は、補填を見込んで枝肉価格を引き下げるような取引を招くおそれがあり、適切でないと考えております。

 一方で、福島県の枝肉価格の低下につきましては、これまでも、農林水産省といたしましては、販路拡大に向けた取組や販売促進の支援を行ってきたところでありますが、令和三年度から、新たに肥育農家向けの支援として、福島県産の優良な肥育素牛の導入に当たりまして、一頭当たり最高十万円の支援を行うことを実施しているところであります。

金子(恵)委員 今後、ALPS処理水が海洋放出されればまた風評被害が悪化するのではないかというようなことから、今回、知事面談のときにも、知事から、処理水処分に伴う新たな風評によって生産者の心が折れないように全力で取り組んでほしい、そういう意見があったということですので、是非しっかりと受け止めていただきたいと思います。

 そして、原発事故の影響を受けたのは福島県だけではないです。実際に、近隣県の栃木や宮城、少し離れた岩手でも、原発事故の影響を受けて、放射性物質対策、放射性物質汚染牧草等の処理を進める、そういう取組も今までされてまいりましたけれども、これをまた大きく推し進めなくてはいけないというふうに思っています。

 特に、近隣の栃木では、実は指定廃棄物になってしまっている放射能濃度が高いものも、処理をどうしていったらいいかということで、実際に農家に保管されている状況でありますので、こういうことも含めてしっかりと対応していかなくてはいけないんですが、畜産、酪農家を支援する、そういう観点から是非お答えいただきたいと思います。

金子(原)国務大臣 放射性物質に汚染された牧草や稲わら、牛ふん堆肥に関しましては、八千ベクレル・パー・キログラムを超えるものは指定廃棄物として国が、それ以下の濃度のものは一般廃棄物として市町村等がそれぞれ処理をしており、今年の十一月現在、被災八県全体として八四%が処理済みとなっております。

 汚染牧草等の処理を更に推進するため、農林水産省としても、平成二十九年度より、汚染牧草等の放射性セシウム濃度の再測定や、市町村等による汚染牧草等の処理方法に係る検討会の開催等を支援しております。

 令和四年度予算概算要求におきましても、このような支援が継続できるよう要求しており、環境省や関係者と連携をいたしまして、汚染牧草等の処理が進むよう、粘り強く取り組むつもりであります。

金子(恵)委員 終わります。ありがとうございます。

平口委員長 次に、住吉寛紀君。

住吉委員 よろしくお願いします。

 兵庫県姫路市よりやってまいりました、維新の会の住吉寛紀でございます。

 この秋に、衆議院選挙において初当選させていただきました。初めての質問ということで緊張しておりますが、朝にたくさん牛乳を飲んで気持ちを落ち着かせてまいりました。三十六歳、若い柔軟な発想で質問していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 一つ目の質問は、農林水産省共通申請サービス、いわゆるeMAFFについて質問させていただきます。

 畜産、酪農家を始めとする農林水産漁業者の方は、よりよい農作物や畜産を育てて独自の販路を拡大していくなど、経営に集中できる環境をつくっていく必要がございます。しかし、必ずしもそのような環境になっているとは言い難い状況です。

 農林漁業者が経営に集中できない要因の一つに、旧態依然とした煩雑な申請の書類に忙殺されていることが挙げられます。さらには、紙で作成した書類を窓口に持っていき、間違えた箇所があれば、場合によっては再度役所に赴き、訂正印を押すというような非効率な運用が行われておりました。

 農林水産省が開発したeMAFFについては、それらの非効率な運用を効率的なものにし、農林水産漁業者が本来やるべきことに集中できる環境の一助になることを期待しております。

 令和二年度からオンラインの申請のスタートが始まり、令和四年度までに、農林水産省が所管する全ての申請手続のオンライン化率一〇〇%、さらには、それの利用者、オンライン利用率六〇%と目標を掲げておりますが、現在の進捗状況、利用率、さらには、実際の利用者の声や、今後進めていく上での課題があるとしたらどのような点が挙げられるのか、御所見をお伺いいたします。

信夫政府参考人 お答え申し上げます。

 農林漁業者の高齢化や労働力不足、地方自治体の職員などの減少が進む中で、生産性を上げ、農林水産業を成長産業とするためには、農林漁業者は経営、それから、地方自治体の職員の方は営農指導といった、本来の仕事に注力できる環境を整備する必要がございます。

 このため、農林水産省といたしましては、農林水産業の成長産業化に向けた様々な施策は講じておりますけれども、行政手続に手間暇がかかり、申請書類の作成などに相当な労力を要するものがある、これは先生御指摘のとおりでございます。新型コロナウイルス感染症の下での社会的要請、すなわち、書面、押印、対面を避けるという要請、こういったことも踏まえますれば、このような状況を早期に改め、申請者にとって利便性の高い行政手続を実現する必要がございます。

 以上のような状況を踏まえまして、農林水産省では、当省所管の法令や補助金等の行政手続をオンラインで行えるようにする農林水産省共通申請サービス、eMAFFの整備を進めております。

 令和四年度までに、三千を超える全ての手続についてオンラインで申請できるようにすることを目指しておりまして、十二月二十二日、本日現在で、全体の三分の一に当たる千二百を超える手続のオンライン化が完了してございます。

 また、オンライン化に当たりましては、実態把握をまず行い、従来の業務フローや申請項目、添付書類など、手続に係る業務そのものを見直した上で、制度や業務を担当する職員自らオンライン申請の画面作成に当たってございます。

 このような取組によりまして、行政手続に係る申請者の利便性を向上させるとともに、得られたデータを効果的な施策の企画、実行や農林漁業経営の高度化に活用していきたいと考えております。

 農林漁業者や自治体職員の皆様がデジタル化の恩恵を実感していただけるよう、引き続き精力的に取り組んでまいります。

住吉委員 御答弁ありがとうございます。

 是非とも進めていただきたいと思います。現在、三分の一、千二百が手続が進んでいるということで、令和四年度ということで、あと一年でしないといけないということで非常に大変だと思いますが、よろしくお願いいたします。

 私の知り合いの方は、若手農家が知り合いが多いんですが、大体皆さん、それは行政書士に頼めば済むことを自分でやっているという方が多いです。そういう意味で、これが進むと経営に集中できるというようなところですので、お願いしたいと思いますし、御答弁でもありました、職員の方がそれぞれのフローをつくっている、フローというかシステムを構築しているということで、こういった三千のシステムを見直すという機会というのはなかなかないと思うんです。それの中に、例えば、これは本当に必要なのかどうかというのはチェックする体制ができると思いますし、それは、ひいては職員の働き方改革にもつながりますし、最終的には利用者の利便性の向上につながって、経営であったり、よりよい農作物、畜産物を作ることにパワーを注げるということですので、是非ともよろしくお願いします。期待しております。

 そして、次の質問に移りたいと思います。

 次の質問は、畜産物の輸出、二〇三〇年の輸出目標額についてお尋ねいたします。

 私の地元兵庫県は、淡路地域というところは、日本古来から平安時代にかけて、皇室、朝廷に海産物などを献上し、みけつ国と呼ばれていたことから、「御食国ひょうご」をキャッチフレーズに、兵庫の多彩な農林水産畜産物を国内外へ発信し、提供し、そして力強い農林水産畜産業を展開しております。

 特に、畜産の分野ですと、二〇一七年、姫路でも食肉センターを整備させていただきました。私も、その当時は県会議員でございました。整備していただきまして、お礼を申し上げます。四年越しでございますが、ありがとうございました。

 この兵庫県は、ブランド牛の神戸ビーフを始め、兵庫県が開発したブランド豚肉の展開を行っているところでございます。全国各地で、その地域に合った様々な取組が行われていると承知しております。

 二〇三〇年の輸出目標、これに目を向けてみますと、例えば、牛肉ですと三千六百億円、これを輸出していくというような目標がございます。それに対して、二〇二〇年の実績、これは牛肉が二百八十九億円と約八%、その他の品目においても大体二割から三割ぐらいと、かなりこの目標に対して大きくかけ離れた状況となっております。

 今後、この目標値を達成するためには、例えば、最大のマーケットである中国であったり、経済成長が著しい東南アジア、世界人口の四分の一を占めると言われているハラール圏、こういったところにも販路の開拓が必要なのではないでしょうか。

 今後、二〇三〇年の目標に対して、どのような戦略を持って取り組んでいくのか、大臣の意気込みをお伺いいたします。

金子(原)国務大臣 初当選おめでとうございます。

 二〇二一年一月から十月の畜産物の輸出額は、輸出先国での巣ごもり需要に対応するべく、インターネット販売による新たな販路を開拓したことなどによりまして、前年同期比一四五%となる七百四億円となりました。特に、牛肉は、前年同期比一九〇%となる四百七十一億円と、二倍近い伸び率になっております。

 更なる畜産物の輸出拡大に向けましては、農林水産省といたしましては、生産から輸出までの関係事業者が一体となった販売促進活動など新たな商流構築等の支援、高い衛生水準を満たす食肉処理施設等の整備、中国など未解禁国との輸出解禁に向けた協議、中東などイスラム諸国を含め、今後、輸出拡大が見込まれる国への輸出促進等を推進しているところであります。

 引き続き、これらの取組を加速させ、二〇三〇年の輸出目標の達成を目指していきたいというふうに思っております。

住吉委員 ありがとうございます。

 本当に、日本の食というのは世界でも人気がございますし、それの根幹を成す日本の農林水産物というのは非常に海外でもニーズがあると思っております。やはりそのブランドイメージ、最低限必要なのは、安全、安心のイメージが必要だと思うんですが、それに関連して、次の質問に移りたいと思います。

 鳥インフルエンザの対応についてお伺いいたします。

 豚熱や鳥インフルエンザなど、一頭、一羽でも発生すれば農場の全ての殺処分が必要な特定家畜伝染病については、家畜保健衛生所が初動防疫に全力を注ぎ、これまでのところ、全国的に同時多発発生のような状況には至っておりません。

 兵庫県でも、昨年度の淡路島、また本年も十一月、姫路市の養鶏農家で鳥インフルエンザが発生しております。県と市が一体となって、さらに、自衛隊の協力を得ながら、処理を速やかに行うことができたと聞いております。

 家畜保健衛生所は、疑わしい事案の通報を受けると初動準備にかかります。一方で、運搬用トラックであったりフォークリフトを始めとする資機材の効率的な保管管理や輸送に係るスキルは持ち合わせておらず、そこがいつも課題とのことです。

 姫路では、県に加えて、姫路河川国道管理事務所や自衛隊が即座に業界関係者とも連携して機材、人員を投入できたから処理がスムーズにできておりましたが、それでも、現場の方の話を聞くと、現場では綱渡りで、どれかが遅れた場合は混乱していた可能性があるとのことです。

 今回は、姫路の件は約十六万羽の規模でしたが、近隣市町では百六十万羽規模の養鶏場がございます。先ほど野間委員の話では、四百万羽のところも全国にはあるわけでございます。

 今後、更に鳥インフルエンザが発生したときに、蔓延防止を確実なものとしていくため、大規模養鶏場等での発生や、同一地域での連鎖的な発生、これも当然想定されるわけですが、このような事態が発生したときの関係省庁の地方機関や都道府県の広域の連携も欠かせないと思われ、その調整の仕組みをいま一度検証し、国が主導して対応する体制を強化する時期ではないでしょうか。

 頻発する鳥インフルエンザ発生を踏まえた課題と体制充実への所見をお伺いいたします。

金子(原)国務大臣 今の御答弁をする前に、ちょっと先ほど私の答弁に誤りがありましたので、訂正をさせていただきたいと思います。

 数字で、前年同期比一九〇%となる、私は四百七十一億円と申しましたが、正しい数字は四百十七億円でございます。どうも済みませんでした。

武部副大臣 鳥インフルエンザ発生時の県と省庁等の連携の御指摘だと思います。

 家畜伝染病の対応につきましては、家畜伝染病予防法に基づいて、発生予防そして蔓延防止を講ずることとしております。この同法に基づきまして、特定家畜伝染病防疫指針を作成し、公表しています。

 この指針の中で、高病原性鳥インフルエンザの発生時における動員体制については、各都道府県内の最大規模の農場で発生した場合でも対応可能となるように、都道府県や関係団体等が連携した動員体制を整備することとなっております。

 その一方で、都道府県内のみでは迅速な防疫措置が困難と見込まれる場合には、農林水産省や他の都道府県から職員の派遣を受けることとなっています。

 それでも困難であることが見込まれる場合に、自衛隊への派遣要請について、農林水産省と相談して、動員計画に盛り込むこととなっております。

 いずれにしましても、高病原性鳥インフルエンザについては、今シーズンでも全国各地で発生が確認されております。引き続き、飼養衛生管理の徹底による発生の予防に努めつつ、万が一、農場で発生した場合におきましても、関係省庁と連携し、現地に農水省の連絡調整を担っている職員を派遣しておりますので、しっかり連携しながら、迅速な防疫措置による蔓延防止に努めてまいりたいと思います。

住吉委員 ありがとうございます。

 しっかりと対応していただきたいと思っております。

 ちょっと時間が来てしまいましたので、あと一問用意していたわけですが、それについては割愛させて、次の機会に議論させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

平口委員長 次に、池畑浩太朗君。

池畑委員 私も初めて質問をさせていただきます。日本維新の会の池畑浩太朗と申します。

 私は、先ほど渡辺委員から質問がありました農業高校出身、農業大学校出身、農業高校の実習教員を九年八か月続けてまいりまして、本来であれば就農しなければいけない立場かもしれませんが、しっかりこの場で質問をさせていただきたいと思います。

 まずは、先ほども申し上げましたように、私は農業教育に関わってまいりました。また、二人の子供の父親として、食育の大切さも感じてまいりました。今年、神戸市では、小学校の給食に神戸ビーフが活用されました。兵庫の宍粟市では、また、米飯給食の推進と併せて、地元の宍粟牛などの食材を活用してまいりました。

 そこで、大臣、質問であります。

 国の宝であります子供たちの健全な発育に寄与する安全、安心のおいしい給食に、今回は、国産の畜産物を活用することによってどういうことを考えておられるか、農水省としての意気込みをお聞かせいただきたいと思います。

金子(原)国務大臣 初当選おめでとうございます。

 これまで、新型コロナの影響を受けた国産畜産物の消費拡大を図るため、食育の一環としての学校給食での国産畜産物の提供等を支援してきたところであります。

 このような取組は、子供の頃に畜産物を始めとする地元の農畜産物のよさを知り、食べる機会を持つことで、食育や環境と農業の関わりについての理解促進、将来の農畜産物の消費拡大に寄与するという点でも有意義であると考えております。

 引き続き、令和三年度の補正予算におきましても、新型コロナの影響を受けている国産畜産物において学校給食や子供食堂への提供を支援できることといたしております。

池畑委員 大臣、答弁ありがとうございます。

 私は兵庫県の選出の議員になりますが、兵庫県と大阪の空の玄関であります伊丹空港には、大臣の地元であります長崎の、長崎和牛日本一という、どおんと大きい看板がございます。

 そこで、やはり今大臣もお話しでしたけれども、そういう看板も大事なんですけれども、やはり、本物を小さい頃から今食べられるという大臣の答弁をいただきましたけれども、小さい頃から食べていますと将来消費に本当につながっていく、地元の畜産連合会の会長もそういうふうにお話をしておられました。私も、やはり価格や品質にまた敏感な消費者の視点も忘れてはいけないというふうに思っております。

 そこで、食育や食品の安全の観点から、文科省や消費者庁などと連帯をしまして、広く消費者、保護者、特にお母さん、ママさんたちの御意見も、意見を聞く場所を持っていただくように要請をしつつ、次の質問に移ってまいりたいと思います。

 次は、粗飼料の確保について質問をさせていただきたいと思います。

 今現在では、粗飼料の不足と価格の高騰が問題になっております。コロナによる海上コンテナの世界的な逼迫に加えて、北米での干ばつという二重苦、三重苦です。改善を待つしかないのかという現場の農家の声もありますが、それでは本当に困ってしまいます。目先の緊急対策が必要ではないかというふうに思っておりますけれども、どのような対応をしておられるか、質問をさせていただきたいと思います。

宮崎大臣政務官 粗飼料の輸入状況につきましては、令和三年一月から十一月までの輸入量は平年並みとなっておりますけれども、直近の十一月では米国からの輸入が減少しているということが見られております。カナダや豪州からの輸入で代替をされている状況もありますけれども、一部では、他品種への変更、国内の別地域からの配送等を余儀なくされておられる生産者もおられるというふうに承知をしております。

 こうした輸入の状況の変化は、先ほど委員からも御指摘がございましたけれども、国内輸送の逼迫に由来するものでございますけれども、農林水産省といたしましては、輸入業者等から引き続き粗飼料の輸入状況をよくお伺いをするということ、それから、国土交通省と連携をしながら、国際コンテナの輸送の状況でございますとか今後の見通しについて情報共有を行うなど、引き続き供給環境の改善に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

池畑委員 大臣政務官も兵庫の出身ということで、神戸ビーフの里としましても、今伝えましたように、動物の命というのは、世界情勢で、コンテナがないとか、しようがないという状況ではなかなか済まない状況であります。反すう動物であります子牛が食べる柔らかい草から、サシを入れるために必要な稲わらなど、多岐にわたっておりますけれども、増頭を目指すのであれば、粗飼料の確保対策にも国を挙げて取り組むべきだというふうに思います。

 今、国土交通省とも連帯をして船の確保というお話もありましたけれども、実際、本当に国が船を確保して粗飼料を取りに行くぐらいの気持ちでないといけないというふうに私は思っております。

 やはり、そもそも日本では生産地が限られます。一定程度輸入をしなきゃいけないと今大臣政務官の答弁もありましたけれども、先ほど申しましたように、お金があっても、購入費用があっても、購入資金があっても買えないという状況であります。また、持ってこられないという状況でありますから、今御答弁もいただきましたように、粗飼料の共同の調達だったり、機動的に輸送手段を確保する。

 今、国土交通省とのお話というふうにありましたが、繰り返しになりますけれども、国が船を確保して取りに行くぐらいの気持ちが緊急事態のときには必要ではないかなというふうに思っております。

 それでは、時間もありませんので、質問をさせていただきますが、また、粗飼料に代替し得るもの、木の皮とか、そういったものを混ぜて取り組んでいる事例もあるというふうに思いますので、こういった国内調達も取り組んでいくべきではないかというふうに思っております。

 三番目の質問にさせていただきます。

 最後は、畜産クラスターの事業についてであります。

 補助単価について質問をさせていただきます。地元の赤穂市の農家さんのみならず、農家は懸命な覚悟と努力で増頭作戦をしております。踏み切っておりますが、昨今の資材高騰に対して補助の単価が追いついていないのではないかというふうに私は思っております。

 当該事業については、平成二十九年度補正予算で上限価格の見直しを実施しておりますけれども、その当時から現在に至るまで建設資材の価格は高騰を続けております。兵庫・神戸では、二〇一五年を一〇〇といたしますと、平成二十九年、二〇一七年には一〇三・四、今年十月は一四九・三までウナギ登りになっております。

 地元の兵庫県、そしてまた地方の農政局との協議では、全国的な資材高騰だけでは、ここなんですが、知事特認単価の引上げの対象にはならないというふうに言われております。

 農家の意欲ある取組を応援できるように、本来はこの上限価格の見直しが大変必要だと私は思っておりますけれども、せめて特認の制度の運用について改善ができないか、政務三役の皆様から前向きな答弁をいただきたいというふうに思います。

宮崎大臣政務官 今の御質問に先立ちまして、先ほど御答弁させていただいた粗飼料の関係につきまして私がお答えさせていただいた中で、委員の御指摘の中で、その答弁の中で、コンテナ輸送の逼迫と申し上げるべきところを国内輸送の逼迫というふうに申し上げましたので、訂正をさせていただきます。申し訳ございません。

 畜産クラスター事業についてのお答えでございますけれども、この事業の施設整備事業につきましては、都道府県が作成をいたしました事業実施計画につきまして、所管する地方農政局が審査をさせていただくということになっております。

 事業の推進に当たりましては、日頃から県と農政局の認識の共有が非常に重要だというふうに考えておりますので、県からの照会等には丁寧に対応するように農政局にも日頃より指示をしておるところでございます。

 また、本事業についての理解を深められるよう、今、特認というお話もございましたけれども、生産者や農協、都道府県担当者等を対象といたしました研修会も実施をさせていただいているところでございますので、今後とも都道府県との連携をしっかり図っていきたいというふうに考えております。

池畑委員 答弁、ありがとうございます。

 やはり、資材高騰を理由にしてはいけないということはないというふうに思っております。地元の県の職員の方も、地元の農家の方々とお話をさせていただく上で、どうしてもそれだけが理由にならないということで、随分使い勝手が悪い、また、困ったなというふうな話がありました。

 今大臣政務官から、説明会も設けてお話をしていくということです。そんなに大きいクラスターは年に一件も二件もあるわけではありませんので、膝詰めで、少しこういう資材高騰に関してもきちっと対応ができるようにお話をしていただきたいというふうに思います。

 畜産クラスターの事業には、やはり乳牛や輸出のエースであります和牛を増頭させようという目標があります。それは本当にいいことだというふうに思いますけれども、同時に、それに堪える餌の確保のために、濃厚飼料、粗飼料、共に目標頭数に堪える飼料作物の基盤整備が不可欠であると思います。

 私も、先ほど冒頭に申し上げましたように、農業高校の出身であり、農業大学校出身であり、農業高校の先生までやってきましたので、せっかくここでお話ができるわけでございますから、更なる日本の農業や畜産、水産の応援をしていきたいというふうに思っておりますので、生産農家の喫緊の課題に応えて、中長期で今後とも一緒に活動していきたいというふうに思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 これで私の質問を終わらせていただきます。

平口委員長 次に、長友慎治君。

長友委員 国民民主党の長友慎治です。さきの衆議院選挙で九州ブロック比例で初当選させていただきました。

 この農林水産委員会には、私と同じ宮崎選出の先生方が私以外にも三人いらっしゃいます。自民党の江藤先生、お世話になります。武井先生、立憲民主党の渡辺創さん、先輩方に御指導いただきながら、一回生らしくしっかりと仕事をしてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 では一問目、進めさせていただきます。

 トップバッターの中川先生が御質問されたことと同じようなことになりますけれども、新たに農業に挑戦する若者の支援策についての見解をお伺いしたいと思っております。

 農業分野は後継者の育成が急務でございます。岸田内閣は、全額国費負担だった青年就農給付金、現在の農業次世代人材投資資金について、地方自治体に半額負担を求める制度に変えようとしています。これでは、財政力の乏しい地方では後継者育成が困難となるため、自治体の負担割合を引き下げるべきだと考えます。先ほど大臣からも従来どおりの要望が多いというお話もありましたが、改めまして、大臣の見解をお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

金子(原)国務大臣 初当選おめでとうございます。

 お答えいたします。

 農業を担う人材の減少傾向が続いていることを踏まえ、新規就農対策をしっかりと推進する必要があると考えております。

 新規就農者の育成がうまくいっている地域では、都道府県や農業団体が新規就農者をサポートし、必要な初期投資を行った上でしっかり経営を発展させていることから、令和四年度予算概算要求におきましても、これを踏まえた内容で要求したところであります。

 概算要求後、地方の声を聞きながら関係方面との調整を進めてきたところであり、従来の事業を引き継ぐ形の就農に向けた研修資金、経営開始資金等については引き続き全額国費とするとともに、新たに設置する機械、施設等の導入支援につきましては国と地方が連携して支援するといった方向で現在検討しているところであります。概算決定に向けて最終的な調整を現在進めているところであります。

長友委員 大臣、ありがとうございます。

 自治体の財政力によって支援に差が生じかねないと私先ほど申し上げましたけれども、それ以外にも少し不安がございます。それは融資事業についてになります。

 今回の見直しでは、日本政策金融公庫が最大一千万を無利子で融資して、国と地方自治体が折半して償還金を負担する方向で調整されているというふうに伺っております。もし、この返却期間、返済の途中で営農を断念するということがあった場合に、償還への支援はなくなってしまう、もし融資の残りが新規就農者に返却が求められるということになりますと、就農を目指す若者がこの点において二の足を踏む可能性が高くなるのではないかという懸念をいたしますが、政府のお考えをお聞かせいただいてもよろしいでしょうか。

光吉政府参考人 お答えいたします。

 概算要求の時点におきまして、委員御指摘の形で、融資を活用して、その償還金について支援をするということを概算要求したわけでございますが、先ほど大臣から御答弁申し上げたように、概算要求後、地方の声もお聞きしながら関係方面と調整をしてきておりまして、新たに措置する機械、施設等の導入支援事業につきましても、国と地方が連携して支援するという内容で現在最終的な調整を行っているところでございます。

長友委員 ありがとうございました。

 地方との負担について、地方交付税措置で負担を軽減するということもお聞きしておりますが、実際に、地方の自治体から、事務負担も含めるとやはり負担増しという感覚は否めないということは声が上がってきております。自治体からそういう声が上がっているということを踏まえまして、是非御検討をいただきたいと思っております。

 重ねてお願いになりますけれども、宮崎出身の者としまして、財政力で支援に差がつくということについては、これから農業を希望する若者たちの支援で場所によって差がついてしまうということになりますと、なかなか、中山間地域等の条件が不利な地域において、人口減少や高齢化の進行が著しくて社会を維持することが困難な状況になりつつあるような場所で就農しようとする若者の挑戦が、もしかしたらハードルが高くなってしまうのかなと思ったりもしております。今、地方におきまして活性化、振興を図るために、農業を核とした様々な施策を農村地域の活性化につなげて必要な総合的な支援を推進していくためにも、十分な予算の確保と対策をお願いしたいと考えております。

 二つ目の質問をさせていただきたいと思います。

 稲津先生から配合飼料の価格の安定についての御質問もありましたけれども、私が今気になっているというか関心が高いのが、SDGsや環境問題への対応強化が急がれる中での家畜飼料が輸入に頼っている状況についてお伺いしたいと思っております。

 家畜の生産現場は、飼料費を始めとするコスト増しに悩んでいるという声が聞かれます。牛の肥育農家さんからは、輸入する餌代が高くてなかなか採算が合わないという声を耳にします。私の地元では、A5ランクの牛がつくれなかったら赤字だという声も上がったりしております。また、別な宮崎の和牛の肥育農家さんからは、飼料の高騰で肥育に係るコストが一頭当たり二割程度上がった、約百頭飼育していると飼料代は月百万円に上り、経営を圧迫するというお話を伺いました。その分、どこで補っているのかというと、自身の作業量を増やして雇用の人件費を抑えるという努力をされているということをおっしゃっておりました。

 その家畜、特に牛の飼料は、現状、輸入に頼っている部分が大変大きいと理解しております。濃厚飼料の原料となる子実用トウモロコシについては、日本は世界一の輸入国、九九・九%を輸入しております。しかし、この輸入原料は、CO2削減の意味からいいましても国産に切り替えることが望ましいということは明らかだと思います。消費者の意識としましても、脱炭素の流れの中で、燃料代にお金をかけている食べ物がこれからはなかなか選ばれなくなるような価値観の変化も、当然、市場で起こり得ることが予想されます。

 そこで御質問ですけれども、みどりの食料システム戦略の一環としまして、国産の飼料を使う農家には補助をするというような制度をつくってみると、水田の利活用であったり、子実用のトウモロコシ栽培を増やす生産者が増えていくのではないかと思うのですが、御見解を伺いたいと思います。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 農林水産分野におけます、例えば輸入に伴うCO2の発生など環境負荷軽減の重要性でございますとか、輸入飼料価格の変動が畜産経営に与える影響を踏まえますと、持続的な畜産物生産を図っていくためには、輸入飼料への過度な依存から脱却をして足腰の強い畜産経営への転換を進めていくことが重要と考えているところでございます。

 こういった観点で、国産飼料増産に向けた取組というものについて、農林水産省でも支援、推進を行ってまいりたいと思っております。例えば、飼料用トウモロコシなどの生産、利用の拡大、さらに、効率的な飼料生産を行いますコントラクターの運営強化、未利用資源を活用いたしましたエコフィードの利用、生産基盤の整備によります草地の生産性の向上などを支援してまいりたいというふうに考えております。

長友委員 ありがとうございます。

 我が国の畜産から排出される温室効果ガス、乳用牛由来が約四五%、肉用の牛の由来が約三五%を占めると。牛由来が合わせて全体の八割を占めているところでございます。

 ところで、韓国の事例になるんですけれども、畜産分野のメタンガス発生量の削減に今力を入れているというふうに聞いております。牛のげっぷとして排出されるメタンガスの発生を抑えられる飼料の普及を主に削減戦略をまとめているというところだそうなんですけれども、例えば日本の飼料につきましても、国産の飼料につきましても、メタンガスの発生を抑えられる飼料を開発するメーカーに補助金をつけたり、また、メタンガスの発生を抑えられる飼料を積極的に使っていこうという生産者を増やす、そのようなお考えなどはありませんでしょうか。御見解をお聞きしたいと思います。

森政府参考人 お答えします。

 畜産由来の温室効果ガスにつきましては、牛などが牧草などを微生物の働きで発酵させて消化する過程で発生するメタンでございますとか、家畜排せつ物の管理の過程で発生するメタン等ということが主なものとなっております。御指摘のみどりの食料システム戦略の中でも、こうした畜産由来の温室効果ガスの削減というものは課題ということでございます。

 取組といたしましては、様々な家畜改良等によります飼養管理の改善ですとか、家畜排せつ物の管理方法の変更というのもございますし、委員御指摘のいわゆる牛のげっぷ由来のメタン排出を減らしていくという意味での飼料の改善、新たな飼料の開発、そのための牛の胃の機能の分析等を含め、新技術の開発、普及、研究の方を現在進めようとしているというところでございます。

長友委員 御回答ありがとうございました。

 それでは、もう一つ、最後、質問をさせていただきたいと思います。

 最近の鳥獣被害についてなんですけれども、鳥獣類の被害額、二〇一二年度をピークに減少傾向にあるというふうに理解しておりますけれども、二〇二〇年度の野生鳥獣による農作物の被害額が百六十一億九百八万円となりまして、前年度から二%増えたということが農水省の調査で明らかになっております。北海道で鹿による畑の作物などの被害が膨らんだことが主な原因だということでお聞きしているんですけれども、イノシシの被害も地域によっては急増しています。

 私の選挙区の宮崎の方でも、たくさんの防護柵などが里山に張り巡らされているような状況なんですけれども、地元の方の声を伺っていますと、野生鳥獣の農作物被害については、被害金額はもとより、被害によってやはり営農意欲の減退につながってしまい、それが耕作放棄や離農の原因にもなっているということを伺っております。

 そこで、ジビエの利活用を推進し、総合的な鳥獣被害対策関連予算である鳥獣被害防止対策と、ジビエ利活用を推進するための予算を確保するべきだというふうに思いますが、御見解を伺わせてください。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員御指摘のように、鳥獣害につきましては、農業者の営農意欲の減退なども招いておりまして、被害額に表れる以上の深刻な影響を及ぼしているというふうに認識をしているところでございます。

 このため、農林水産省では、有害鳥獣を農地に侵入させない防止柵の設置などにつきまして、鳥獣被害防止総合対策交付金により支援をしているところでございます。

 そしてさらに、御指摘をいただきましたジビエの利用ということでございます。これにつきましては、令和七年度までに四千トンとするという目標の達成に向けまして、処理加工施設の整備、あるいは捕獲した鳥獣の施設への搬入促進といったような対策を推進しているところでございます。

 引き続きまして、ジビエの利活用に向けまして対策を推進してまいりたいと考えております。

長友委員 ありがとうございました。以上で質問を終わります。

平口委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 通常国会から半年ぶりの農林水産委員会です。

 大臣、この間、たくさんの問題が起こっていますので、緊急を要する課題について、まず二つお尋ねします。

 一つは、有明海の漁業についてです。

 豊穣の海、有明海を代表する二枚貝、タイラギは、十季連続休漁となっています。調査では成貝が一個も見つからない深刻な事態が続いています。

 同時に、佐賀県西南部を中心に、ノリの深刻な不作が広がっています。ノリは、秋芽の新ノリが出荷され始めていますけれども、佐賀県の西部の大浦、太良の漁場では、収穫、入札を断念せざるを得ない事態となっています。

 昨日、国会内で有明海漁民・市民ネットワークの会合が持たれ、佐賀のノリ養殖業者がオンラインで農林水産省の担当者に深刻な状況を伝えました。大臣、伝わっているでしょうか。是非聞いていただきたいと思います。

 十二月になっても秋芽ノリは一枚も取っていない、これから冷凍ノリが始まるが、毎年の赤潮被害で網を張り込めない状況、西南のノリ業者は、借金が返せればいい方で、自己破産や夜逃げをしなければならない、二十年ノリ養殖をやってきたけれども、秋芽は少しも取れず、心が折れる、先々やめざるを得ない。

 金子大臣、有明のことです、御存じのことです。農水省は、漁業共済と積立ぷらすで対応すると言っています。しかし、保険でこれは救済できるんでしょうか。毎年不作が続いていては、共済の基準が下がっている以上、経営が成り立たないではありませんか。

 もう一点、伺います。

 有明海及び八代海等を再生するための特別措置に関する法律、いわゆる有明特措法、この第二十二条では、赤潮等による漁業被害等の救済を明記しています。読み上げます。「国は、有明海及び八代海等の海域において赤潮等により著しい漁業被害が発生した場合においては、当該漁業被害を受けた漁業者の救済について、当該漁業被害に係る損失の補填その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」とされています。

 金子大臣、過去に例のない被害が起こっている、まさにこうしたときのためにこの法律があるのではありませんか。なぜ、この有明特措法二十二条を適用して損失補填をしないのか。するべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

金子(原)国務大臣 お答えいたします。

 有明海におけるノリの生産の現状につきましては、全体として、昨年並み又は前年を上回る収穫となっている一方、佐賀県西部においては、昨年に引き続き、大変厳しい状況にあると聞いております。

 佐賀県によれば、育苗期に同地区を中心に発生した赤潮と雨が少なかったことによる栄養塩類の濃度の低下により色落ちが生じたことが原因であると聞いております。

 このような厳しい状況が続き、一定の減収が発生した場合には、漁業共済及び漁業収入安定対策事業によりまして、減収の補填を行っています。

 今後とも、これらの施策を通じて、有明海のノリの安定的な生産のために、関係県と連携して適切に対応してまいりたいと思います。

 有明特措法二十二条についてのお尋ねでございますが、有明特措法二十二条に規定される漁業被害に係る損失の補填として、ノリ不作等に伴う減収については漁業共済及び漁業収入安定対策事業により対応してきており、昨年の漁期のノリ不作に対しても、その減収の補填が行われているところであります。

 同法第二十二条に規定される赤潮等による漁業被害者等の救済については、個別の事案ごとの漁業被害の状況を踏まえ、適切に対応していく必要があると認識をいたしております。

田村(貴)委員 共済で救済できているのであれば、自己破産するしかないという、そういう声は出ないんですよ。ですから、この特措法二十二条を発動すべきだと言っているわけです。しっかり検討していただきたいと思います。

 次の緊急課題は、軽石の漂流、漂着の問題です。

 予算委員会で我が党の赤嶺政賢衆議院議員が指摘しましたように、沖縄、鹿児島県で深刻な漁業被害が秋から続いています。

 私も、ソデイカの解禁が行われた十一月に与論島に行ってまいりました。年間の水揚げの六割はソデイカという島です。エンジンの冷却水に軽石が入るとオーバーヒートを起こします。一隻では遭難のリスクがあるので、グループをつくって漁に出ている、まさに命懸けの漁だと漁協から伺いました。しかし、多くの漁師は休漁を余儀なくされています。

 予算委員会で金子大臣は、漁業者に対する支援はこれまた漁業共済だとして、共済未加入者には融資があると答弁されました。

 では、沖縄や鹿児島、奄美群島の経営体ベースの共済加入率はどうなっていますか。沖縄県の調査では、共済加入率は三割程度だとされています。これでどうやって未加入の漁業者を救うことができるんですか。お答えください。

金子(原)国務大臣 共済加入者の割合についての沖縄県の調査によれば、漁業共済の経営体ベースの加入率は二割程度となっていると承知していますが、これは、沖縄県における平成三十年度における漁業経営体数と令和二年度における漁業共済契約数を比較したものと聞いております。

 漁業共済においては、漁協が契約主体となっている場合、漁業者が集団で加入している場合、また、一つの経営体が複数の契約で加入している場合があることから、経営体ベースの加入率について把握することはなかなかできておりません。

 今後とも、沖縄県や漁業共済団体と協力しながら、漁業共済の加入推進に努めてまいりたいと思います。

田村(貴)委員 だから、加入の実態もつかめていない。しかも、多くの方が、共済では救済できないと自らおっしゃっているわけですよ。

 八千七百九十五億円もの補正予算を農水省は組んでおきながら、自然災害で塗炭の苦しみに遭っている漁業者には何の支援もメニューもない。こんな冷たい姿勢でいいんでしょうか。

 船が出せない以上、収入は途絶えるわけです。不漁、漁獲減とは全く性質の違う、災害なんです。だから、漁業者は、漁に出られない漁民への休業補償を求めています。これは真剣に検討してほしいと思います。

 また、こういう災害があったときにどうやったら減収を救うことができるのか、経営安定対策の根本を是非見直して、そして検討を進めていただきたいと思います。

 時間がないので、畜産農家の経営支援について質問します。

 国連家族農業の十年も、来年で四年目に入ります。コロナを契機にして、小規模な家族経営の農業を営む暮らしが改めて注目され、若者を始め、地方、中山間地に移り住む人が増えています。

 しかしながら、農村の体制は大きく変化していません。肉用牛の飼育戸数は、二〇一三年から七年間で六万一千三百戸から四万二千百戸に一万九千二百戸も減少しました。乳用牛は、同期間、一万九千四百戸から一万三千八百戸に五千六百戸も減少しました。豚は、同期間に五千六百戸から三千九百戸に千七百戸減少しています。地域からどんどん農家がいなくなり、大規模農家だけがぽつんと存在する状況になっています。

 金子大臣にお伺いします。

 規模の大小、あるいは中山間地のような不利な条件であっても農家が安心して経営に取り組めるようにすることが重要だと考えますけれども、大臣の基本的な見解をお伺いします。

金子(原)国務大臣 我が国の畜産経営は中小規模、家族経営が大宗を占めており、規模の大小を問わず、持続的な経営を実現することが重要であると考えております。

 このため、農林水産省では、中小規模の畜産農家も含め、安心して経営継続できるよう、畜種別の経営安定対策のほか、経営をサポートする外部支援組織の充実、中小規模経営も対象とした機械や家畜の導入支援等も講じ、生産基盤の強化を図っております。

 今後とも、中小規模、家族経営も含めまして、多様な経営体が主体性と創意工夫を発揮し、その経営を発展させることができるよう取り組んでまいります。

田村(貴)委員 牛マルキンの制度について尋ねます。

 肉用牛は、販売価格が低迷して、飼料価格や資材価格、燃油の高騰などもあって、大変厳しい状況に今陥っています。重要なセーフティーネットの制度であることは承知していますけれども、この牛マルキンは補填が十分でないとの声が各方面から寄せられています。

 お尋ねしたいのは、二〇一九年の法制化を契機にして、牛マルキンは八割から九割に引き上げられました。これは前進ですけれども、なぜ十割ではないのか、その理由について教えてください。

金子(原)国務大臣 マルキンにつきましては、平成三十年に法制化するとともに、議員御指摘のように、補填割合を八割から九割に引き上げるなど、経営安定対策として大変手厚い仕組みとなっています。

 また、マルキンの交付金単価の基準となる標準的生産費は、小規模家族経営も含め、対象農家の規模や地域の偏りがないように設計された畜産物生産費統計等に基づき厳正に算定しています。

 なお、御指摘のあった販売額と生産費の差額を全額補填することにつきましては、補填を見込んだ買いたたきがなされるおそれがあること、コスト削減や収益性の向上への意欲を弱めることが懸念されることなどの課題が大きいと考えております。

田村(貴)委員 要するに、経営合理化、競争力強化へのインセンティブがなくなってしまうということが根底にあると思います。

 そうはいっても、現実には、畜産農家は、先ほど言いましたように、七年間で三割減少しています。厳しい環境の下で、販売価格が生産費を下回る事態になったときに、九割の補填では、やはり離農、耕作放棄地化に向けて追い打ちをかけてしまうのではありませんか。十割にすべきだということを主張しておきます。

 もう一つの問題は、標準生産費の問題です。

 標準生産費が実態に合っていません。一頭当たりの全算入生産費は、飼養頭数規模別で見ますと、二〇一六年では平均は六十万円であります。二頭から五頭未満の農家では七十三万五千百一円となっています。五十頭以上では五十万四千三十二円と、ここは大きな開きがあります。

 飼養頭数、農家の規模、こういったことも勘案していると先ほどおっしゃいましたけれども、標準生産費を大小平均して補填金額を計算すると、これはもう明らかに小規模にとっては不利になってしまうのではありませんか。マルキンはありがたいんだけれども足りないんだよね、こういうことを言われるのは、このやり方に即しているからであります。

 大臣に質問します。

 小規模な畜産農家ほど生産費がかかるのに、あくまでも標準的生産費を平均で出すというのは、これはやはりおかしいです。経営規模の大小や中山間地域といった条件にかかわらず、意欲のある農業者が安心して経営に取り組めると大臣はおっしゃったのであるならば、畜産農家の実態に応じた制度にマルキン制度も改善していただきたいと思います。いかがですか。

金子(原)国務大臣 先ほどと同じお答えになりますが、マルキンの交付単価の基準となる標準的生産費は、小規模家族経営も含め、対象農家の規模や地域の偏りがないように設計された畜産物生産費統計等に基づき厳正に算定していますので、御理解をいただきたいと思います。

田村(貴)委員 これは絶対矛盾ですので、是非、検討、改善していただきたいと思います。

 一昨日、金子大臣に対して、日本共産党国会議員団として、酪農、畜産に関わる要望書を提出させていただきました。大臣からは、要望を受け止めて今後の政策に生かしていきたい、そういうふうに御発言がありました。

 生乳の需給調整、燃油、飼料高騰対策、それから農家の経営安定、たくさんの課題がありますけれども、農林水産省、大臣を先頭に総力を挙げて取り組んでいただきたい、そのことを要望して、今日の質問を終わります。

平口委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗でございます。

 とても新人とは言えませんけれども、農林水産委員会は初めてですので、第一次産業の発展のため、農山間地域の発展のため、皆さんと一緒に頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いしたいというふうに思います。

 また、有志の会は非常に少ない会派であるにもかかわらず、委員長を始め皆さんの御協力で、このように質問をさせていただいていることにも心から感謝を申し上げたいというふうに思います。

 私の選挙区は、一部が亀岡市、南丹市、京丹波町という中山間地域でございまして、そこからの生の声を皆さんにお伝えしながら、質問を三点ほどしたいというふうに思っております。

 一つ目は、エコファーマーという制度がございます。本格的な有機農業者に至るまでにいろいろと支援をしていくという制度で、有機農業者を育成するような制度だというふうに思っております。

 ある亀岡の中山間地域の方がこの制度で、これは当然、気候変動に対応する話で、よいことなんですが、一方で、農家の方にとっては、化学肥料とかいわゆる化学合成農薬をある程度減らさないといけない、土づくりから始めるという、大変負担が重い作業でもございます。

 こういう中で、今年、全国的にもそうだと思いますが、京都府では、米価、米の値段が六十キロ五千円ぐらい暴落しまして、大変苦しい状況であります。これは一般の農家もそうなんですが、特にこのエコファーマー制度で頑張っておられる方は、元々厳しい状況の中で、国の方針の下でよかれと思って頑張っておりますので、何かこういうときに支援をしていただける仕組みはないか、それをお尋ねしたいと思います。

平形政府参考人 お答え申し上げます。

 エコファーマー、有機農業生産者の方々の取組や、農業と環境、調和の取れた生産を拡大していくという意味で、農業を持続性の高いものにしていくという意味で、重要なものだというふうに考えております。

 このため、こうした取組に対しましては、エコファーマーに関しましては、認定を行った都道府県が指導助言を行っておりますけれども、国といたしましても、化学農薬、化学肥料の使用を一定程度低減した上で、堆肥の施用それから有機農業等に取り組む場合、環境保全型農業直接支払交付金により、かかり増し経費の支援を行っているところでございます。

 さらに、今年の補正予算からなんですけれども、環境に優しく省力的な栽培体系への転換に向けた栽培マニュアルの作成への支援ですとか、地域ぐるみで有機農業に取り組むモデル的な先進地域づくり、こういったものに対しての支援も始めることとしております。

 委員おっしゃるとおり、有機栽培、慣行栽培よりも付加価値をつけるという意味で、差別化という意味でも期待がされるところでございます。

 今後とも、エコファーマーを含め、持続性の高い農法に取り組んでいる農業者に対しての支援を強化してまいりたいと考えております。

北神委員 どうもありがとうございます。

 補正予算でいろいろな支援策があるということですので、またちょっとそのエコファーマーの方に話をして、利用するようまた助言をしていきたいと思いますので、よろしくお願いしたいというふうに思います。

 もう一つは、美山町というところで林業を営んでいる小規模事業者がございます。林業にも、農林水産省、林野庁としては、今、気合を入れ直して、林業復活のために林業経営計画なる制度というものを、平成二十三年度だったと思いますが、策定をされたというふうに思います。

 これは、いわゆる地元の林業組合というものが中心となって計画を策定して、様々な支援策をいただいて、森林の伐採とか、路面、いわゆる作業道の整備とか、こういったものに取り組める仕組みだというふうに思います。

 当然、この林業組合というのが非常に歴史的に、小規模の林家がだんだん減少したり高齢化する中で、地元ではこういう林業の中核的存在だということは私もよくよく分かっておりますし、もちろん頑張っていただきたいというふうに思っていますが、一方で、組合じゃない、小規模の事業者で、たまたまかもしれませんけれども、うちの地元では、一生懸命頑張って、組合もできないぐらい奥山に至るような作業道をきめ細かく整備をして、そして実際に建材とかいわゆる燃料の炭とか、こういったものを提供している、そういった事業者がございます。

 どうもこの林業経営計画というのは、どうしても組合を中心に想定しているような制度に思えてならないんです。そういう中で、小規模事業者にも、やはり参入をして大いに活躍をして、森林、山を守る、そういったことに取り組んでもらいたいというふうに思っていますが、農林水産省あるいは林野庁はこの小規模事業者に対してどういうことを期待しているのか、お伺いしたいというふうに思います。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 森林経営計画について御質問をいただきました。

 森林経営計画でございますけれども、これは森林法の第十一条に規定がございます。面的なまとまりを持って一体的に整備すべき森林を確保し、森林所有者等による持続的な森林の経営を推進することなどを目的とした計画でございます。

 森林経営計画の作成につきましては、森林所有者自ら又は所有者から経営の委託を受けた者が単独で又は共同して、五年を一期とするということなんですけれども、作成する仕組みとなってございます。

 このように、森林経営計画でございますけれども、委託を受けた森林組合のみが作成するというものではございませんで、小規模な事業体におかれましても、例えば共同して取り組むといったようなことにより作成することも想定されているということでございます。

北神委員 今、共同して取り組むという話だったので、単独で小規模事業者がこの林業経営計画に参入するということは余り想定されていないという理解でよろしいでしょうか。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま、例えば共同してというふうに申し上げました。これは、森林経営計画がある程度の面的なまとまりを持って一体的に整備すべきという考えがございますので共同してというふうに申し上げましたけれども、森林所有者自ら又は所有者から経営の委託を受けた者が単独で計画を作るということが否定されているものではございません。

北神委員 ありがとうございます。

 この際、単独でやる場合に、当然、山の所有者というのは非常に入り乱れている場合がございます。森林経営計画の趣旨である、ある程度の集約化というものを図るためには山林の所有者の情報というものが非常に重要になってくるんですが、これについて、私が聞いているのは、組合だったら割と市町村とかあるいは都道府県とパイプがあって、そういう情報を得られるという話ですが、小規模事業者はなかなかその情報を提供してもらえない、もらいにくいというような話がございますが、この点について、何とかその情報提供をしていかないとこれはなかなか集約化が図れないというふうに思いますので、その辺の件について、どのように取り組んでおられるのか、教えてください。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 森林経営計画、先生御指摘のとおりでございますけれども、これを作成するためには、当該森林の所有者に関わる情報などを把握するということが必要でございます。

 このため、平成二十八年の森林法の改正におきまして、森林法の第百九十一条の四という規定がございますが、森林の所有者情報や測量の状況などの情報を記載した林地台帳、これを民有林が所在する市町村に整備する制度が創設されてございます。

 また、令和元年度から、これは森林法の施行令第十条でございますけれども、これらの情報の一部を森林所有者や森林所有者から委託を受けた事業体等に提供できる仕組みを構築してございます。

 農林水産省といたしましては、今後とも、このような取組を促進しつつ、森林経営計画の作成を促進していきたいと考えております。

北神委員 ありがとうございます。

 小規模事業者でも、今のお話を聞いていると、そういう情報を得ることも可能だということだと思いますが、運用面で、できるだけそういったところにも、個人情報の問題がございますけれども、当然、それはいろいろな制約とか、そういったことは仕組みとしてあると思いますので、そこら辺の促進をよろしくお願いしたいというふうに思います。

 最後の質問なんですけれども、中山間地域の件で、これも皆、全国各地、そうだと思いますが、非常に人口も減少し、高齢化している。そういう中で、中山間地域のいわゆる直接支払い制度というものがあって、これは命をつないでくれているすばらしい制度だというのが現場の皆さんの声でございます。

 ただ、最近、この中山間地域の直接支払い制度について、何か使い勝手が悪くなってきているというのか、あるいは、認められる、認定されるのが非常に難しくなってきているという声が出てきていまして、私もいろいろ話を聞いている中で、恐らくは、第五期の直接支払い制度の中で、いわゆる集落戦略というものを形成しないといけないと。私もちょっとホームページで見させていただいたんですが、非常に分かりやすく説明されているとは思いましたが、中山間地域の、非常に、もう平均年齢七十五、八十とか、こういった方がこういう集落プランを作るというのはなかなか大変だということが一つある。

 もう一つは、これは当然、中山間地域の直接支払いを受けるためには、草刈り、草刈りの機械を使ってやるとか、田んぼにすきを入れるとか、こういったことをしていかないといけないとか、条件としてある。これも、高齢化で本当に、七十八歳のおばあちゃんが、この中山間地域で、亀岡の畑野町というところがあるんですけれども、非常に急斜面のところを草刈りの機械で駆り出されてやっている。そして、八十五歳の私の知り合いなんかでも、何度も転げ落ちている。そのときに、この機械が自分にのしかかってくると命にも関わってくるということで、これはなかなか答えは簡単ではないというふうに思いますけれども、こういったことを含めて、やはりこの中山間地域の直接支払い、今後も守っていただけるという決意を大臣の方からいただきたいというふうに思います。

金子(原)国務大臣 中山間地域直接支払い制度につきましては、五年間を一つの対象期間とする制度でありまして、令和二年度から実施している第五期対策では、新たに人口減少や高齢化による集落機能の弱体化や担い手不足等に対応するための措置を講ずるなど、これまでも必要な見直しを行ってきました。

 また、本制度に取り組む多くの組織から、荒廃農地の発生防止等に大きな役割を果たしており、制度の継続が必要との声をいただいております。

 今後とも、本制度の着実な推進を図り、中山間地域の農業やそれを担う方々をしっかりと支援してまいりたいと思います。

北神委員 大臣の決意、ありがとうございます。

 全国四割、この中山間地域で農地の面積を占めておりますし、非常に厳しい状況でありますので、是非、今の決意どおりよろしくお願いして、私の質問を終了させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

平口委員長 この際、簗和生君外六名から、自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブ、日本共産党及び有志の会の七派共同提案による令和四年度畜産物価格等に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。神谷裕君。

神谷委員 ただいま議題となりました決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきたいと存じます。

    令和四年度畜産物価格等に関する件(案)

  我が国の畜産・酪農経営は、畜産クラスター等の地域の関係者が一丸となった取組の成果として、乳用牛、肉用繁殖雌牛の飼養頭数が増加に転じる一方、担い手の高齢化、後継者不足は依然として問題であり、特に、中小・家族経営においては経営継続の課題となっている。こうした事態に対応するためには、生産基盤のより一層の強化や次世代に継承できる持続的な生産基盤の創造の取組の継続が重要である。また、規模の大小を問わず、生産者の生産性向上等を強力に支援するとともに、より多くの若手が就農を目指す魅力ある労働環境を構築することが重要な課題となっている。

  このような中での新型コロナウイルス感染症による需要の減少や、配合飼料等の資材価格の上昇、高病原性鳥インフルエンザ等の家畜伝染病の発生は、畜産・酪農経営に大きな影響をもたらしている。また、経済連携協定等の発効、締結により我が国の畜産・酪農の将来に対する懸念と不安を抱く生産者も多い。

  よって政府は、こうした情勢を踏まえ、令和四年度の畜産物価格及び関連対策の決定に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。

      記

 一 新型コロナウイルス感染症による畜産・酪農経営への影響を克服するため各種支援策を強力に実施すること。特に、乳製品在庫が高水準にある中、酪農経営の安定と牛乳・乳製品の安定供給の確保が図られるよう、生産者団体・乳業が一体となった脱脂粉乳の在庫の削減に向けた取組を支援するとともに、牛乳・乳製品の消費拡大に取り組むこと。また、既往負債については、償還負担の軽減に向けた金融支援等を周知徹底し、活用が拡大するよう取組を強化すること。

 二 高病原性鳥インフルエンザ、豚熱の感染拡大防止は、現下の家畜伝染病の防疫上、最重要課題である。そのため、各種対策を強力に推進し、農場における飼養衛生管理基準の遵守の徹底を図り、感染リスクを低減させる取組を支援すること。また、アフリカ豚熱については、水際での防疫措置等の発生予防対策を徹底し、さらに、これらの措置を着実に進めるため、地域の家畜衛生を支える家畜防疫員や産業動物獣医師の確保・育成を図ること。

 三 配合飼料価格の上昇は、畜産・酪農経営を圧迫しており、その影響を緩和するためには、配合飼料価格安定制度の安定的な運営はもとより、国産濃厚飼料の生産・利用の拡大、飼料用米、稲発酵粗飼料の生産・利用の推進、草地等の生産性向上、放牧の推進等による国産飼料に立脚した畜産・酪農への転換を強力に推進すること。

   また、近年頻発する大規模災害への対応も含め、飼料穀物の備蓄をはじめとする配合飼料の安定供給のための取組等を支援すること。

 四 経済連携協定等が、我が国の畜産・酪農経営に与える影響について、統計データ等を常に注視し、分析を行い、これを公表すること。また、新たな国際環境下において、関税削減等に対する生産者の懸念と不安を払拭し、生産者が経営の継続・発展に取り組むことができるよう、実効ある経営安定対策を講ずること。その際、実施した施策の効果を検証し、適宜必要な見直しを行うこと。

 五 加工原料乳生産者補給金・集送乳調整金の単価及び総交付対象数量については、中小・家族経営を含む酪農家の意欲が喚起されるよう、再生産の確保を図ることを旨として、新型コロナウイルス感染症による影響や燃油及び飼料価格の高騰に配慮しつつ適切に決定すること。また、期中における一方的な出荷先の変更等の契約違反や不公平な取引については、適切な需給調整が図られるよう、必要な措置を講ずること。

 六 肉用子牛生産者補給金制度における保証基準価格等については、中小・家族経営を中心とする繁殖農家の経営努力が報われ、営農意欲が喚起されるよう、再生産の確保を図ることを旨として適切に決定すること。

 七 中小・家族経営をはじめとした地域の関係者が連携し、地域一体となって収益性の向上を図る畜産クラスター等について、引き続き、現場の声を踏まえた事業執行に努めつつ、収益性向上等に必要な機械導入や施設整備、施設整備と一体的な家畜導入等を支援すること。また、畜舎等の建築等及び利用の特例に関する法律の施行を控え、新制度についての現場への丁寧な説明の実施等により、円滑な制度導入を図り、引き続き畜舎の安全性を確保すること。

   さらに、乳業工場・食肉処理施設の再編整備、国産チーズの競争力強化に向けた取組等を支援すること。

 八 酪農経営、特に中小・家族経営にとって不可欠な存在である酪農ヘルパーについては、その要員の育成や確保・定着の促進のための支援を行うとともに、外部支援組織の育成・強化を図ること。また、ロボット、AI、IoT等の新技術の実装を推進し、生産性の向上に加え労働負担の軽減等を図るとともに、次世代を担う人材を育成・確保するための総合的な対策を実施し、既存の経営資源の継承・活用に向けた取組を強力に支援すること。

 九 国際社会において、SDGsに基づく環境と調和した持続可能な農業の促進が求められていることを踏まえ、資源循環型畜産の実践に向けた家畜ふん堆肥等の利用推進や家畜排せつ物処理施設の整備等の温室効果ガス排出量の削減に資する取組を支援するとともに、これらの取組に資する新技術の活用を図ること。

   また、畜産GAPの普及・推進体制の強化を図るための指導員等の育成やGAP認証取得等の取組を支援するとともに、アニマルウェルフェアを考慮した家畜の飼養管理の普及を図ること。

 十 家畜能力等の向上を図る取組を一層支援すること。また、関係者の長年の努力の結晶である和牛遺伝資源の厳格な流通管理及び知的財産としての価値の保護を確実に実施すること。

 十一 畜産物の輸出促進を図るため、畜産農家・食肉処理施設等・輸出事業者が連携したコンソーシアムの組織化・販売力の強化等を進めるとともに、国産畜産物の需要の増加に対応できる生産基盤の構築や輸出対応型の処理加工施設の整備に取り組むこと。

 十二 原発事故に伴う放射性物質の吸収抑制対策及び放射性物質に汚染された稲わら、牧草等の処理を強力に推進すること。また、原発事故に係る風評被害対策に徹底して取り組むこと。

  右決議する。

以上です。

 何とぞ委員各位の御賛同を賜りますよう、お願い申し上げます。

平口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

平口委員長 起立総員。よって、本件は本委員会の決議とするに決しました。

 この際、ただいまの決議につきまして農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣金子原二郎君。

金子(原)国務大臣 ただいまの御決議につきまして、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

平口委員長 お諮りいたします。

 ただいまの決議の議長に対する報告及び関係当局への参考送付の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十七分散会


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