衆議院

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第3号 令和4年3月15日(火曜日)

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令和四年三月十五日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 平口  洋君

   理事 江藤  拓君 理事 高鳥 修一君

   理事 宮下 一郎君 理事 簗  和生君

   理事 金子 恵美君 理事 緑川 貴士君

   理事 空本 誠喜君 理事 稲津  久君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      上田 英俊君    尾崎 正直君

      加藤 竜祥君    神田 潤一君

      坂本 哲志君    高見 康裕君

      武井 俊輔君    中川 郁子君

      野中  厚君    長谷川淳二君

      平沼正二郎君    藤丸  敏君

      古川  康君    保岡 宏武君

      山口  晋君    若林 健太君

      梅谷  守君    大串 博志君

      奥野総一郎君    神谷  裕君

      小山 展弘君    渡辺  創君

      池畑浩太朗君    住吉 寛紀君

      金城 泰邦君    庄子 賢一君

      長友 慎治君    田村 貴昭君

      北神 圭朗君

    …………………………………

   農林水産大臣       金子原二郎君

   農林水産副大臣      武部  新君

   農林水産大臣政務官    宮崎 雅夫君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         安東  隆君

   政府参考人

   (農林水産省農産局長)  平形 雄策君

   政府参考人

   (農林水産省畜産局長)  森   健君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  光吉  一君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            牧元 幸司君

   政府参考人

   (林野庁長官)      天羽  隆君

   政府参考人

   (水産庁長官)      神谷  崇君

   農林水産委員会専門員   梶原  武君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十五日

 辞任         補欠選任

  北村 誠吾君     藤丸  敏君

  後藤 祐一君     奥野総一郎君

  佐藤 公治君     大串 博志君

同日

 辞任         補欠選任

  藤丸  敏君     北村 誠吾君

  大串 博志君     佐藤 公治君

  奥野総一郎君     後藤 祐一君

    ―――――――――――――

三月十五日

 環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案(内閣提出第三二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 土地改良法の一部を改正する法律案(内閣提出第一九号)

 農林水産関係の基本施策に関する件

 特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案起草の件


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     ――――◇―――――

平口委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、土地改良法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官安東隆君、農産局長平形雄策君、畜産局長森健君、経営局長光吉一君、農村振興局長牧元幸司君、林野庁長官天羽隆君及び水産庁長官神谷崇君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平口委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。古川康君。

古川(康)委員 自民党の古川康でございます。

 冒頭、有明海の海の状況について質問いたします。

 金子農林水産大臣には、三月五日、お忙しい中、佐賀県にお越しいただき、佐賀県の漁業関係者と意見交換をしていただきました。心から感謝申し上げる次第であります。

 その場において、何人もの漁業者の方から、佐賀県有明海域西南部におけるノリの大凶作及び貝類の不漁の状況について切実な声が届けられました。

 今漁期、この海域では、プランクトンの異常増殖による赤潮が断続的に続き、さらに、雨量が少なかったことで川からの栄養分が海に流れ込まず、今漁期のノリの養殖については、シーズン最初の秋芽ノリから黄色く変色して満足に育たず、かつてないような大凶作になっています。

 このため、この海域では、通常二月末まで続くノリの摘採が一月中旬に終了せざるを得なかった漁場もありまして、さらには、この数年間、ノリの漁期中に赤潮が続いていることでノリが不作となり、貝類も、夏場の豪雨などと相まって、不漁若しくは休漁が続き、漁獲量も年々減少しているところです。この海域の漁業者は、廃業を検討せざるを得ない状況となっています。

 有明海の本来は、冬場のノリ養殖を始めとして、夏場の漁船漁業を行える豊穣の海です。若手の後継者が希望を持って周年にわたり漁業で活躍しているはずです。しかしながら、このような状況が続くようでは、もうノリを続けられない、海での暮らしは不可能、こうした叫びを、私は地元を回りながら目にし、耳にしています。この問題を何とか解決していただきたい。

 以下、漁業者の皆様や地元の議会などからの声を踏まえて、具体的な提案を申し上げます。

 一つは、水の流れる筋というべき、みお筋を造る作澪であります。西南部には大きな川が余りないのですが、その中にあって、塩田川は重要な河川です。この塩田川の流れが土砂の堆積によって緩くなりつつある。かつて、平成二十五年度に行っていただいたような作澪や河口域のしゅんせつを実施することによって、栄養塩が海域に行き渡りやすくなるのではないかと期待されています。また、意見交換会の中でも皆様方から出ましたが、なぜ毎年この海域で赤潮が発生するのか、その原因究明にも御尽力をお願いしたいと存じます。

 二つ目は、海底耕うんです。これについては、毎年小規模に自主的に行われているところもありますが、規模を拡大することによって底質の状況の改善につながります。

 そして三つ目。今は、来期の作付に向けての希望が失われている状況です。漁業者の方々とお話をすると、漁業共済や積立ぷらすのことは御存じです。でも、これだけの不作だと、結局、暮らしが成り立っていかなくなるのではないかと不安を感じておられます。有明海特措法という法律はこのためにあるのではないでしょうか。私は、漁業者の事業継続が可能となるような次年度の事業再建のための支援が必要だと考えます。

 そこで、お尋ねいたします。

 こうした三つの提案に応えていただくことによって、来期も希望を持って、ノリに、二枚貝に、漁船漁業に取り組むことができると思いますが、大臣、いかがでありましょうか。

金子(原)国務大臣 先般の訪問のときには、古川先生始め多くの国会議員の皆様方に一緒になって御意見をお聞きいただきまして、ありがとうございました。

 その際、漁民の皆さん方が、特に今年はプランクトン、赤潮の発生で大変な状況であるということをお聞きいたしてまいりました。

 今、委員からいろいろと御要望を含めたお尋ねがありましたので、お答えさせていただきますが、委員から御指摘がありました作澪や海底耕うんは、有明特措法に基づきまして、水産環境整備事業等により支援することが可能でありますので、事業実施主体となる佐賀県等のお考えや地元漁協等の御要望を踏まえ、適切に今後対応してまいりたいと思います。

 ノリ色落ちの被害の原因となっている赤潮の発生の原因究明に向けましては、研究機関と連携を取りまして、水温や降水量などの環境情報等の収集、分析に現在取り組んでいるところであります。

 また、減収となる漁業者を支援するための措置として漁業共済及び積立ぷらすがあり、関係のノリ養殖漁業者は全員加入されています。そして、今漁期の減収については一定の補填が行われることとなります。さらに、漁業共済には、共済金の早期支払いのための仮渡しや、次期契約の共済限度額が九割を超えて下がらない継続契約特約が措置されております。

 これらの対応について、今後、丁寧に御説明していくことで、漁業者の皆様の不安感の払拭に努めまして、事業継続や再建の支援をしてまいりたいと考えております。

古川(康)委員 作澪と海底耕うんについて前向きな御答弁、ありがとうございました。また、原因究明についても期待するところでございます。

 次年度に向けての更なる支援につきましては、既存の制度を使っていただきたいとの御答弁でございましたが、この既存の仕組みだけでは十分な支援となっていないからこそ、現場から何とかしてほしいという声が出てきているものでございまして、これについては更なる検討をお願いしておきます。

 それでは、土地改良法の一部改正について質問をいたします。

 まず、急施の防災事業の拡充についてでございます。

 地元からは、今回の改正内容について、危険ため池などの整備は、近年の豪雨や地震により、ため池などが被災することも多く、甚大な被害を防止する観点からは大変意義があるものと思うという声が上がっています。それを踏まえれば、地震対策に限らず、豪雨対策にも活用できるようにするという今回の改正は意義があるものと考えます。

 農業用用排水施設の代表であるため池は、令和元年にため池管理法、令和二年に、整備を促進する特別措置法が整備されました。さらに、今回の法改正で手続の簡素化、農家負担を求めなくすることは、整備の促進につながるものではないかと期待をいたします。

 そこで、お尋ねをいたします。

 今回の改正、こうした地元の期待に沿ったものとなるのかどうか。いかがでありましょうか。

宮崎大臣政務官 お答えをいたします。

 農業用ため池でございますけれども、全国に約十五万か所、先生の御地元の佐賀県でも約二千六百か所ございます。その大部分が江戸時代以前に築造されたものでございまして、地震や豪雨に対して安全性が不足しているものが多数存在しております。

 このような中で、先ほどお話がございましたように、ため池管理法に基づきまして、ため池の所有者等による届出や管理の義務を明確化するということ、そして、ため池工事特措法によりまして、国により必要な財政上の支援を行っているところでございます。

 また、土地改良法におきましても、東日本大震災でございますとか熊本地震などの発災を受けまして、地震対策につきましては、防災工事の迅速な着手を可能とする手続上の特例を、御案内のとおり、措置をさせていただいているところでございますけれども、これまでに国営事業一地区、県営事業百七十五地区で適用されておりまして、そのうち百五十二地区がため池に係る防災事業ということでございます。

 本法案におきまして、急施の防災事業の対象に豪雨対策を追加させていただくことによりまして、緊急性の高いため池等の整備が促進をされるものと考えております。

古川(康)委員 ありがとうございました。

 こうした期待の一方、課題もいろいろあると思います。

 一つは、予算です。

 今の予算は、大臣を始めとする皆様方の努力のおかげで大型の補正予算が確保されていますが、どうしても補正予算中心ということが言われています。また、ため池の特措法、これは令和十二年度までの時限立法であります。となると、そのまま期限が来て失効してしまうということがあるのではないか、こうした不安もあります。

 もう一つが、技術者不足であります。

 仮に予算が確保できても、それを執行する市町村や土地改良区において、技術者が少ないことも課題となっています。予算が安定しないとなれば、市町村が積極的に技術者を採用するのにどうしてもちゅうちょしてしまうことも否めません。

 また、財政の問題は国だけではありません。農家負担がないということは、すなわち、整備促進にはつながりますが、その分、県や市町村の負担増になります。更なる地財措置の充実が必要ではないかと思います。地方財政措置については、現在は、国土強靱化債でも充当率一〇〇%、五〇%の算入率です。これをもう少し改善させることなどが必要なのではないでしょうか。

 お尋ねします。

 国の予算、地財措置の問題、技術者の確保、こうしたことについてどのように考えておられますか。

宮崎大臣政務官 お答えをいたします。

 古川先生からお話がございました三点、共に非常に重要な点だと考えております。

 予算につきましては、土地改良事業を計画的に推進をできますように、令和三年度の補正予算におきまして千八百三十二億円を措置をさせていただいておりまして、令和四年度の予算におきましては四千四百五十三億円を計上させていただいているところでございます。

 地方財政措置につきましては、先生今御指摘がございましたように、防災重点農業用ため池の整備でございましたら、充当率が一〇〇%、措置率が五〇%の地方債の措置を講じておりまして、土地改良事業における適切な地方債、地方財政措置の在り方については、これからも、現場の実態を踏まえたものになるように、引き続き関係省庁と協議をしていきたいというふうに思っております。

 これらに加えまして、土地改良区や市町村におきまして、土地改良事業の実施を担う技術者の方が減少をいたしまして事業の円滑な実施に支障が出ているということを踏まえまして、今回の法律の改正によりまして、土地改良事業団体連合会が土地改良区等からの委託を受けて工事を実施できることとしておるところでございます。

 これからも、状況の変化を踏まえまして、地域の要望にお応えできるように、必要な予算、安定的な予算等、しっかり取り組んでまいりたいと思っております。

古川(康)委員 ありがとうございました。

 次に、農地中間管理機構関連事業の拡充についてお尋ねをいたします。

 佐賀県では、農地の一次整備がほとんど完了しています。現在では、土地改良施設の老朽化対策や狭隘な区画の再整備が求められています。

 担い手に農地を集積して、省力化やIT化などを図って生産性を向上させるために、かんがい施設や農道などの再整備をセットにすることは必要不可欠だと思います。

 ただ、課題もあります。担い手と将来の営農像です。

 この制度が実施されることになれば、農家は負担がありませんから整備に積極的になられるかもしれません。しかしながら、これは国の制度設計を理解した上での事業化が必要になると思います。

 佐賀県は現在、人口が約八十万人です。四十年後には六十万人を切るという推計もあります。担い手の確保と将来の営農像をしっかり持たないと、単に作業の効率を上げるための整備ではないことを理解していただくことが必要だと考えます。まさに今回、別途、国会に提出されている人・農地プランの法制化などを生かしつつ、地域の将来を見据え、誰がどのように営農するのか、しっかりつくり上げていかないといけません。となると、土地改良サイドのみの事業推進ではいけないと思います。

 お尋ねします。

 国、県、市町村、土地改良区などの土地改良サイドと営農サイド、加えて、地域振興の担当部局が一緒になってこの事業を推進する仕組みづくりが必要なのではないかと考えますが、いかがでありましょうか。

宮崎大臣政務官 お答えをいたします。

 農地中間管理機構関連農地整備事業につきましては、機構が借り入れている農地につきまして、基盤整備を実施することで、担い手への農地集積、集約化を加速化するとともに、六次産業化を通じて、収益性の高い農業の実現を通じて、地域振興にも資するものというふうに考えておるところでございます。

 このため、事業の実施に当たりましては、農業を核とした地域の将来像を徹底的に議論をしていただきまして、人・農地プランなど、地域の話合いの結果を踏まえた担い手への集積計画でございますとか営農計画といった事業計画を策定していただくということになるわけでございます。

 この議論におきましては、事業主体となる県、そして市町村、土地改良区、JA等の農林部局に加えまして、先生御指摘のとおり、地域ごとの状況に応じまして、自治体の地域振興部局でございますとか地域振興を直接担っていただく民間企業が参加をしていただいておるところでございます。

 こういうしっかりした議論をやっていただけるように、推進を引き続きやっていきたいというふうに思っております。

古川(康)委員 ありがとうございました。

 今回の法改正を機に、連合会を含む土地改良区の役割も変わっていくことになると思います。土地改良だけに取り組むのではなくて、営農から農村振興までを射程に入れたような土地改良区の在り方、組織の在り方もこれから考えていただくことをお願いして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

平口委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久でございます。

 本題の質問に入ります前に、原油高騰対策等について大臣にお伺いをさせていただきます。

 コロナ禍からの世界経済の回復に向かう、そうした需要の拡大ですとか、原油価格等の高騰が問題になっている、そういう中で、ウクライナへのロシアによる侵略により、更なる影響が心配されているところでございます。

 国内では、物価が高騰しつつある現状で、原油のみならず、例えば穀物価格の高騰も生じてきていますし、政府は、原油価格高騰対策として、元売業者に対して価格抑制原資の支給額上限を五円から二十五円に引き上げる、こうしたことを対策として講じるとなっておりますが、農林水産省においても、漁業の燃油高騰対策としての基金の積み増しですとか、施設園芸のセーフティーネット機能の強化などを講じることとしていますが、緊急的な措置としては、私はこれは是非と思っておりますが、今後の世界情勢の不透明さを考えると、先手先手で手を打っていく、更なる対策、一層の取組が必要である、このように思っております。ロシア、ベラルーシからは、塩化カリ、肥料原料の四分の一ほどを我が国は輸入をしているということも不安材料です。

 今後の機動的な対策を講じる必要性について大臣はどのようにお考えなのか、御答弁をお願いします。

金子(原)国務大臣 お答えいたします。

 原油や穀物、肥料などの価格が高騰し、先行きを不安視する声があることは認識しております。

 農林水産省としても、これまで、施設園芸等燃油価格高騰対策や漁業経営セーフティーネット構築事業、化学肥料の節減への支援のほか、配合飼料価格の高騰による影響を緩和するため、直近ではトン当たり八千五百円の補填金を交付するなど、様々な支援措置を講じております。

 さらに、今月、原油価格高騰に対する緊急対策を取りまとめ、燃料油価格の激変緩和対策を講ずるとともに、漁業や施設園芸におけるセーフティーネット対策の充実や、省エネ機器の導入に対する支援策の拡充などを実施したところであります。

 一方、ロシアにおけるウクライナ侵攻などの影響もあり、生産現場では今後の事業への影響を不安視する声もあることから、引き続き、価格動向や調達状況を注視しつつ、状況の変化に応じまして必要な対策について検討を続けてまいります。

稲津委員 大臣、済みません、重ねてのお伺いをさせていただきたいと思います。

 私は、今は、これはまさに今後のことを考えると、国難ともいうべき状況に向かってきているというふうに思っております。それぐらい大変な状況になりつつある。

 トリガー条項の発動の話もあります。私は、予算措置のみならず、税での対応も必要になってくる可能性も高いのかな、むしろ、個人的には、是非そうしたことを検討すべき、このぐらい強く思っています。ただし、そのときに、地方の税の問題がありますから、そこは国としてきちんと補填をしてあげなきゃいけない。

 私は、こう考えていきますと、先ほど申し上げましたように、今後の機動的な対応を、大臣、もっと力強く発信していただきたい、このように強く思っておりますが、いかがでしょうか。

金子(原)国務大臣 力強く言うことはできるんですが、なかなか農林水産省でできる範囲というのは限られております。したがって、政府全体の中でどういうふうにやるかということを参考にしながらやっていかざるを得ない。

 だから、農林水産省の中でやれる範囲は精いっぱいやっております。私たちも、これはある意味では自信を持ってお話をできます。

 実は、国全体で、例の二十五円の関係があります。あの二十五円は、ガソリン代だけじゃなくて燃油にも一応適用されますから、価格を安定させるためにはあれを活用するということを、私も先般、全漁連、全農の皆さん方に来ていただいて説明を受けましたところ、そういった形ができ上がっているそうでございます。

 そういったことで、できるだけできることについては努力をしていきたいというふうに思っております。力強くやります。

稲津委員 ありがとうございました。是非、機動的に対応していただくことを強くお願いをさせていただきます。

 土地改良法の一部を改正する法律案について質問させていただきます。

 我が国の農業を成長産業化していくためには、農地の大区画化、こうした生産基盤の整備が不可欠でございます。国土強靱化において、農業水利施設の長寿命化やため池の適正な管理、これが重要であることは言うまでもありません。こうした点において、土地改良事業、なかんずく土地改良区の果たすべき役割と期待は私は大変大きいと思っています。

 それで、今回のこの法改正について数点お伺いさせていただきますが、まず、土地改良区の組織変更制度の創設についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 本制度の変更の背景には、組合員数の減少ですとか、管理する施設が小規模な場合であるとか、また、土地改良区の調整機能の必要性が少なく地元住民と共同で施設管理が可能な場合がある、このようにしております。その場合に、簡易な管理体制、施設の維持管理が可能といった条件を満たす場合に、一般社団法人又は認可地縁団体に組織変更することができるとしています。

 そこで、伺いますけれども、まず、小規模な土地改良区において、例えば、役員の確保や地域住民による事業参加が困難であることが現行制度の課題になっているのであれば、役員数の特例を設けるとか、事業参加資格の特例として住民参加を認めるとか、こうしたことも有効な方法と思いますが、なぜ特例的な措置を用いなかったのか、あわせて、組織変更後の法人が適正に施設の維持管理を継続できるのか、この点についてお示しをいただきたいと思います。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 土地改良区は、農業水利施設の管理を通じまして良好な営農環境の維持に大変大きな役割を果たしておりまして、土地改良区として存続していただくことが望ましいというのが基本でございます。

 土地改良区は、その法律に基づきまして、公共性の高い事業を行う団体といたしまして、適切な業務運営を確保するというような観点から、同じく公共組合でございます土地区画整理組合と同様に、五人の理事を置かなければならないというふうに規定をされておりまして、これによりまして専制に流れることを防いでいるということでございまして、委員御指摘のような役員数の特例など、組織管理上の要件を緩和するということは適当ではないのではないかというふうに考えているところでございます。

 また、一般社団法人や認可地縁団体への組織変更後も新組織が水管理を行うことを事業として位置づけるなど、適正な施設の維持管理が継続されるということを確認をした上で都道府県知事が認可をするというような仕組みとしておりまして、組織変更後の法人につきましても、小規模な基盤整備、施設の補修などを実施する場合には補助事業を活用することも可能ということでございます。

 適切な施設の維持管理が継続できるよう、国が市町村、都道府県連合会と連携をして支援していくこととなっております。これによりまして、組織運営の負担を軽減しつつ、しっかりと土地改良施設の適切な維持管理を図ってまいりたいと考えております。

稲津委員 次の質問ですけれども、本法案では、国や県が農家の同意や費用負担なしに整備事業を実施できるようにする対象として、ため池など水利施設の豪雨対策を加えるということにしています。

 現状は耐震対策に限るものですけれども、改正の要因と、既存のため池管理保全法、それからため池工事特措法、これらの法律との整合性についてお伺いをさせていただきます。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 急施の防災事業の拡充でございますけれども、これは、近年の豪雨災害の頻発に伴いまして、豪雨対策というものに拡充をするということでございます。

 御指摘ございました、ため池についてでございますけれども、令和元年に施行されましたため池管理保全法でございますが、これは、農業用水確保、また、ため池の決壊による災害防止というものを目的としておりまして、ため池の所有者等によります管理義務の明確化、また、都道府県による防災上重要なため池の防災工事の施行命令や代執行などを規定しているところでございます。

 また、令和二年に施行されましたため池工事特措法でございますけれども、これは、防災重点農業用ため池の防災工事等を集中的かつ計画的に推進するということを目的としておりまして、都道府県によります防災工事等の集中的かつ計画的実施、また、国による必要な財政上の措置というものを規定をしているところでございます。

 これに対しまして、今回の改正法案におきましては、国又は地方公共団体が農業者の申請、同意を必要とせず事業が実施可能となる急施の手続の対象に豪雨対策を追加するというものでございまして、これによりまして、ため池等の豪雨対策事業につきましても、手続を簡略化し、迅速に実施できるよう措置するという内容になっております。

 以上でございます。

稲津委員 急施な対応とか、今、話がございます。確かに私もそう思います。アメダスの観測で、短時間の豪雨の年間発生数は非常に増えておりますし、また、基幹的な農業水利施設の老朽化も目立ってきておりますので、本法をもって早急な対応がこれからもできるようにしていかなきゃならないと思っています。

 それから、本法案では、土地改良事業連合会は、会員である市町村、土地改良区等からの委託を受けて土地改良事業の工事を実施することができるとしております。背景には、土地改良事業の工事施行を担当する技術職員が年々減少し、土地改良事業の円滑な実施に支障が生ずるおそれがあるとしていますが、現行制度でも、土地改良事業団体連合会は、会員の行う土地改良事業に関する技術的な指導や援助を行うことができるとしております。

 現行の制度ではどこが不十分で、今般、土地改良事業連合会が、工事に係る業務委託をできるとした趣旨についてお伺いしますとともに、本法案では、土地改良事業団体連合会の受託可能な業務内容、どのような範囲のものを示すのか、この点についてお示しいただきます。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 土地改良法におきましては、土地改良事業団体連合会は、会員が行う土地改良事業に関する技術的な指導その他の援助を行うことができるとされているところでございます。これに基づきまして、土地改良区等が実施する事業に関しまして、調査、測量、設計等の技術的、側面的な支援を行っているところでございますけれども、土地改良区、市町村における技術職員の不足ということには十分対応できていないというような状況でございます。

 これを踏まえまして、今般の改正案では、事業の円滑な実施を確保するために、連合会の業務といたしまして、会員から委託を受けて行う土地改良事業の工事を規定をいたしまして、連合会の土地改良区等に対するサポート機能を強化するというものでございます。これによりまして、従来から行ってまいりました技術的、側面的な支援だけではなくて、工事の発注から施工中の監督、竣工検査を経て工事を完成させ、造成した施設等を委託者に引き渡すまでの一連の業務というものが受託できることとなるところでございます。

稲津委員 時間が参りましたのでこれで終わりますけれども、本法案の成立と、そして施策の速やかな実行ということを強く望んで、質問を終わります。

 ありがとうございました。

平口委員長 次に、金子恵美君。

金子(恵)委員 立憲民主党の金子恵美でございます。よろしくお願いいたします。

 東日本大震災、原発事故から、先週の金曜日、三月十一日で丸十一年となりました。私も、地元に戻りまして、県主催の東日本大震災追悼復興祈念式に参列させていただきました。

 まだまだ営農再開等については課題があるわけでございますけれども、もちろんハード面の復旧というのは進んでまいりましたが、私たちは、前回の大臣に対しての質疑の中でも私は触れさせていただいているんですけれども、やはり二つの風と闘っているわけです。まずは風評です。そしてまた風化というものであります。その風と闘いながら、これから本当に地元の、被災地の第一次産業をどのように再生していくかというのは待ったなしの課題となっておりますので、是非、そのことも含めまして御理解をいただきたいというふうに思っております。

 私の地元の福島県では、農業産出額は、県全体では震災前の九割まで回復いたしました。ですけれども、原子力被災十二市町村では震災前の約四割にとどまっている状況にもありまして、まだまだ厳しい。避難指示解除が進んだ田村市と南相馬市を除くと、十町村で見ますと震災前の約一七%ということで、大変厳しい状況であります。

 津波被害を受けた浜通り、沿岸部でありますが、農地の塩害にも苦しんでまいりました。東日本大震災に対処するための土地改良法の特例に関する法律も当時制定いたしまして、除塩を定義して除塩事業を行い、農地の再生もしてまいりました。原発事故により被災した地域ではまだ営農再開できていない地域も多く、農地除染も含めて課題を持っています。

 これは農水省の示した数字でもありますけれども、原子力被災十二市町村における令和七年、二〇二五年度末の営農再開目標、一万ヘクタールに対する進捗率は六六%、令和二年度末時点、二〇二〇年度末時点ではございますけれども、そのような状況になっているということであります。

 原発の立地自治体、そしてその周辺にある自治体の土地改良区も先行きが見通せないという状況になっておりまして、解散はせず、賦課金は徴収せず、例えば、事務所を役場内に置いて、そして役場職員を出向させて事務を行うなどの工夫をしながら何とかつなげている、そういう土地改良区もある、本当に頑張っています。営農が再開できたら、人が戻ったら農業者の方々をしっかりと支えていく土地改良区、農業者の方々とともにある土地改良区として、今も存続させているという状況であります。

 こういう中で、是非これからも、国としても全面的に、しっかりと営農再開に向けての支援を続けていただきたいというふうに思いますし、さらに、被災地の特に原発事故の被害を受けた地域の土地改良区に対しての支援もしっかりとしていただきたい、支えていただきたいというふうに思っておりますが、所見を伺いたいと思います。

金子(原)国務大臣 委員御指摘のように、被災十二市町村においては営農再開の加速化が最重要な課題であるというふうに思っております。

 このため、営農再開に向けまして、農地の大区画化等の農業インフラの整備、除染後農地の保全管理や作付実証、営農再開に必要な農業用機械、施設の導入等の一連の取組を各段階に応じて切れ目なく支援しているところであります。加えて、原子力被災十二市町村へ、当省、農林省の職員を三十二人派遣しております。

 また、営農再開に向けまして、土地改良区の管理する農業水利施設の点検、除草及び清掃等の施設の保全管理に対しましては、福島再生加速交付金により支援を行っております。

 引き続き、被災地の声に耳を傾け、営農再開を力強く後押ししてまいりたいと思います。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 昨年の十一月の二十六日なんですけれども、農水省、復興庁、財務省に要請書が提出されているわけなんですが、これは、東北・北海道土地改良事業団体連合会連絡協議会からでございます。私たち福島県選出国会議員にも要請書が渡されましたけれども、その中身は、これは令和四年度の農業農村整備関係予算の確保並びに東日本大震災からの再生、復興に関する要請書でありましたので、東日本大震災関連でいえば、「農地・農業用施設の復旧・復興整備に必要な特例的財政支援措置の継続について」ということで、「東日本大震災により被災した地域の農地・農業用施設に係る復旧・復興事業が完了するまで、復興予算の弾力的な運用を要望する。」ということでございますので、是非これも受け止めていただいて、本当の復旧・復興事業が完了するまでということでございますので、是非しっかりと受け止めていただきたいと思います。

 大臣、一言おありでしたらお願いいたします。

金子(原)国務大臣 ちゃんと受け止めて、頑張ります。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 本当の農業の再生のために、いろいろなメニューもいただいているんですけれども、最近私のところに問合せがありました内容で、例えば十二市町村を対象とした被災地域農業復興総合支援事業というのがありまして、計画の変更についていけていない、支援がいただけない、そういうお声があったんですけれども、どういうことかというと、やはり復興が進む中でいろいろな状況というのが変化してきていたり、それに柔軟に対応ができていない制度もあるかもしれない。あるいは、東日本大震災、原発事故後も自然災害等が発生している。そうすると、ダブル、トリプルでいろいろ重なって、やはり営農再開が進まないとか、本来の形に戻っていかないとか、そういうことがあるんだと思います。

 それについてもやはりしっかりと目を向けていただきまして、たくさんのメニューはいただいてはいますけれども、その中でも柔軟な対応を是非お願いしたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

金子(原)国務大臣 御指摘のありました件につきましては、今後、私も、十分に精査して、できるだけ御要望に応えるように努力をしていきたいと思っております。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 法案の前に関連として質問させていただきましたが、土地改良区、土地改良法の話であります。

 実は私の父も、地元の土地改良区の理事長を長くして、その土地改良区の理事長として亡くなりました。もう十二年以上前のことではありますけれども。ですので、大変身近に感じるこの土地改良区、農業者の代表としてもしっかりと守っていかなくてはいけないというふうに私は思っています。

 今回の法案はもちろん反対をするものではないのですが、幾つか確認をさせていただきたいというふうに思っています。

 先ほど来お話があって、急施の防災事業の拡充ということですが、この必要性については、もう既に自然災害が頻発化している、激甚化しているということでございますので、安全性の向上を図る上で必要であるということ。先ほどほかの委員の方に対しての御答弁があったのでいいんですけれども、大臣から改めて、今回この法律案が必要であった理由ということと、それから先ほどとちょっと重なってしまうんですが、もう既にあるため池管理保全法及びため池工事特措法との役割分担、改めてお伺いしたいと思います。お願いします。

金子(原)国務大臣 お答えいたします。

 頻発化、激甚化する豪雨災害に対しまして、農村の安全、安心、生活環境を確保するため、農業用ため池等の豪雨対策を迅速に実施することが現在求められています。また、農業の成長産業化に向けまして、担い手への農地の集積、集約化を一層加速させていくことが重要であります。

 一方、土地改良事業を担う市町村、土地改良区では、技術職員の減少によりまして円滑な事業の実施に支障が生じております。

 このような農業、農村の現場の課題を踏まえまして、本法律案は、豪雨対策を迅速に実施する仕組みの構築、担い手への農地集積を促す土地改良施設の整備促進などを措置するものであります。

 先ほど、ため池の問題についてのお話がありましたが、ため池保全管理法は、農業用水確保及びため池の決壊による災害防止を目的としておりまして、ため池の所有者等による管理義務の明確化や、都道府県による防災上重要なため池の防災工事の施行命令や代行等を規定しております。

 また、ため池工事特措法は、決壊した場合に国民の生命や財産に甚大な影響がある防災重点農業用ため池の防災工事等を集中的かつ計画的に推進することを目的とし、都道府県による防災工事等の集中的かつ計画的実施や国による必要な財政上の措置を規定しております。

 これに対して、今回の法改正では、行政が農業者の同意書を必要とせず事業を実施できる急施の手続の対象に豪雨対策を追加し、ため池等の豪雨対策事業についても、手続を簡略化し、迅速に実施できるように措置するものであります。

金子(恵)委員 急施の手続という内容でありまして、農業者の申請によらず、費用負担、同意を求めずに実施する急施の防災事業の拡充に当たっては、やはり地域の農業者の理解と納得を得た上で事業が実施されるよう丁寧な説明を行うことが必要だというふうに思いますし、その事業要件の透明性をしっかりと確保して、適切な運用を図ることが求められるというふうに思います。

 急施の、第八十七条の四あたりから見ていきますと、「第三条に規定する資格を有する者の権利又は利益を侵害するおそれがないことが明らかなものとして政令で定める要件に適合するものに限る。」ということであるとか、いろいろとありますけれども、この辺のところの理解ですけれども、しっかりと適切な運用も含めてこれから図られるということでよろしいでしょうか。

金子(原)国務大臣 お答えいたします。

 急施の防災事業の対象は、豪雨の際に住宅等への浸水被害のリスクが高いため池、排水機場等の農業水利施設です。これらの施設に係る豪雨対策事業は、人命、財産を守る極めて公共性の高い事業であり、速やかに防災工事を実施する必要があることから、農業者の権利や利益を侵害しない場合に限り、農業者の同意を求めず行政の判断で事業に着手できることとしているものであります。

 なお、既に同様の特例が措置されている地震対策事業では、法手続上、農業者の同意を省略しているものの、事業や工事の計画段階で工事の施行に伴う土地の使用や営農に及ぼす影響等について地元調整を行い、農業者の意向を確認しながら対策を講じているところであります。

 今般の特例の対象に追加する豪雨対策についても、同様に、農業者の意向を十分に配慮して対策を進める考えであります。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 是非、農業者の方々の理解、そしてまた、プラスアルファで私は地域の方々の理解というのも必要だというふうに思いますので、丁寧な説明の場を設けていただきたい。しかも、これは急施ですから、とにかく安全、安心の確保をしっかりやっていただきたいというふうに思っています。

 最後になってしまいますけれども、組織変更制度の創設ということでございます。

 私は、先ほども質疑の中でありましたけれども、本来であれば、特例をつくって、そして、土地改良区は土地改良区であるまま、土地改良施設をしっかりと維持管理していくべきではないかなというふうに思っています。そうではない方法で、今回は組織変更、一般社団法人、そして認可地縁団体にしていくということを容易にしていくという方向なんですけれども、一言で言えば、土地改良法の枠組みから外れてしまうんだろうというふうに思うんです。本当にこれで大丈夫なのかと懸念を強くしています。

 もちろん、選択ということにはなるかもしれない、そしてまた、しっかりと、この対象になるべきもの、対象としていいものと言ったらいいかもしれませんけれども、精査していくものだというふうには理解はしております。しかし、この組織変更制度の前に、私は、繰り返し申し上げますけれども、もっと土地改良区をしっかりと支える仕組みとか、今ほども申し上げましたように、小規模の土地改良区において、役員確保、地域住民による事業参加が困難であるということが壁であるのであれば、それをしっかりと特例という形で、役員定数もしっかり特例を設けていく、そして事業参加資格の特例も設けて地域住民の参加も認めるなどということで対応すべきなのではないかというふうに思うんです。

 本来、やはり、私は、土地改良施設は土地改良区が行うことを原則として、それを踏まえた上で、しっかりとした基準というものを明確にした上で、今回の組織変更という制度をつくっていくべきだ。そしてまた、それプラス、やはり地域の農業者の皆さんが営農を継続することができるように、土地改良施設の維持管理に係る予算措置も含めて、必要な支援をすべきだというふうに思うんです。

 実際に、今回、土地改良事業団体連合会の業務の見直しの中で様々な支援措置というか、新たなものができているんですけれども、しかし、これの対象にはもうならないわけですよね。土地改良区でない状況で別な組織に移行すれば、土地改良事業団体連合会の業務の見直しの、百十一条の九及び百十一条の二十二から二十五でしょうか、この辺の対象にならないということになるんじゃないんですか。支援というのをきちんと受けられるのかどうか。

 繰り返し申し上げます。地域を守る、地域の農業を守るための予算措置も含めて、これからどうしていくのか、お聞かせいただきたいと思います。

金子(原)国務大臣 お答えいたします。

 土地改良施設は、農業生産を支えるインフラとしてその機能が適切に発揮される必要があり、引き続き土地改良区が管理することが望ましいと考えております。

 今般の組織変更制度は、解散を予定している小規模な土地改良区が対象であり、土地改良区の形態によらずとも施設の適切な管理が可能な場合、組織変更ができることとしています。

 具体的には、組織変更は都道府県知事の認可を必要とし、組織変更後も施設管理を行うことを新組織の事業に位置づけるなど、施設の適正な維持管理が継続されることを確認した上で認可することといたしております。

 さらに、組織変更後の法人が小規模な基盤整備や施設の整備、補修を行う場合、国の補助事業を活用することも可能であり、国としても、適切に維持管理が継続できるよう、地方公共団体や土地改良事業団体連合会と連携をしながら支援してまいりたいと思います。

金子(恵)委員 時間が参りましたから終わりますけれども、しっかりと支援の継続、組織に対しての支援はないかもしれない、でも、その地域の農業者の方々に対しての支援はしっかりと届けるんだ、そういう思いで対応していただければと思います。

 終わります。ありがとうございます。

平口委員長 次に、渡辺創君。

渡辺(創)委員 立憲民主党の渡辺創でございます。

 土地改良法の一部を改正する法律案に関して、急施の防災事業の拡充、土地改良区制度を中心に伺ってまいりますので、よろしくお願いいたします。

 近年、各種の自然災害が頻発化し、さらに、想定を大きく超える規模で被害を与えるケースが相次いでいます。今回の法改正の柱である急施の防災事業の拡充は、まさに、そのような状況に対応し、農業施設、農業用地だけでなく、周辺地の安全を高めるという観点からも重要であるという立場に私も立つところであります。特に、平成三十年以降は豪雨による農地や農業用施設の被害額が毎年一千億円を超えていることを踏まえれば、事前に打てる手を打っておくということはまさに重要な視点であるというふうに思います。

 その前提で幾つか確認をしてまいりたいと思います。

 今回の改正は、既に平成二十九年の法改正で措置された地震対策と同様のスキームを豪雨対策にも当てはめるものだというふうに理解をしています。平成三十年度から令和三年度の四年間で地震対策の方の実績を見ると、このスキームを適用して実施された事業は、先ほど答弁にもありましたが、国営一、県営百七十五、更に詳しく見ていくと、二十件以上の事業が行われたのは、新潟県、石川県、愛知県、そして最大の数四十四が行われている兵庫県の四県のみというふうになっています。私の選挙区がある宮崎県を始め、三十の都道府県ではゼロという状況です。

 もちろん、各都道府県における地震対策の進行状況、長期的な進み方というのは、その都道府県が置かれた環境や防災対策事業の力点、さらにはどのような時期にピークを迎えているかなど、それぞれ事情が違うので、全国一律という進み方にはならないことはよく分かっておりますが、このばらつきは多少気になるところでありますので、この点について、農林水産省の見解をお伺いいたします。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきました平成二十九年改正で、地震対策に係る急施の防災事業というものができたわけでございますが、これまで十七県、百七十五地区において実施をしておりまして、そのうち百五十二地区がため池に係る防災事業でございます。県別では、適用実績が多い順に申し上げますと、兵庫県が四十四地区、愛知県が二十七地区、石川県二十六地区となっておりまして、これらの県ではため池の防災対策を特に重点的に推進しているということでございまして、積極的にこの急施の手続の活用を進めているというふうに承知をしているところでございます。

 一方、引き続き、土地改良事業の基本原則を大変重視をされて、地域の合意形成を図る観点から同意徴集を行うとか、あるいは多少なりとも農業者の費用負担を求めるというようにしている県では、これまでのところ、通常の手続により事業を実施をしているというふうに承知をしているところでございます。

 農林水産省といたしましては、都道府県、市町村による防災事業の検討に当たりまして、各県の考え方、地域の実情に応じた手段を選択できることが重要ではないかと考えているところでございます。

渡辺(創)委員 個人的な話になりますが、牧元局長には、平成二十三年から二十五年まで宮崎県に副知事でお越しいただいておりましたが、県議会でもいろいろやり取りをした仲でございます。不思議な気分で今質問させていただいております。

 大事なことは、今回の法改正の効果ができるだけ有効に発揮されることだというふうに考えます。

 そこで、豪雨に関しても今回の法改正でどれだけ事業進捗がスピードアップできるかということが鍵になるというふうに思いますが、少しケーススタディーをしてみたいと思うんですけれども、お手元に資料を配付しておりますが、これは農水省の補助事業で令和元年から着手した大分県のため池の事業です。事業の進行中に令和二年七月の豪雨があり、工事が終了するまでに被害が出てしまったというケースでありますが、農水省の認識であれば、こういうケースで急施の手続を取ることによって、豪雨被害の前に工事を行うことができるということだというふうに思います。

 このケースだと、受益者は七人という比較的スムーズに進むケースではないかというふうに思われるんですけれども、今回の法改正により省くことができる作業にこのケースでは約六か月かかっているということになりますが、このようなケースをオーソドックスなものと見ることができるか、農水省の見解を伺いたいと思います。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 この委員御指摘の大分県の事例でございます。これは、令和元年十月に事業手続を開始をいたしまして、令和二年六月に手続が完了、事業に着手したものの、直後の令和二年七月豪雨によって、堤体の損傷、漏水等の被害が発生をしたということでございます。

 本地区では、土地改良法の規定に従いまして、事業計画の概要を二十日間公告縦覧、次に、施設管理予定者との協議、調整を経て改めて事業計画の概要を五日間公告、次に、農業者等七名全員から同意を取得して事業の施行を県に申請しているということでございます。県では、この事業計画の内容を精査、審査をいたしまして、令和二年四月に県営事業として事業計画を決定ということでございます。

 この概要の公告から事業計画の決定まで約七か月を要しているところでございまして、さらに、決定しました事業計画の公告縦覧、異議申立てを経て事業計画が確定、事業に着手ということでございます。

 今般御提案をいたしております豪雨対策のための急施の手続では、事業計画の決定から手続を開始をいたしまして、公告縦覧また異議申立てを経て事業計画を確定ということでございますので、仮に本地区で急施の手続が適用されていた場合に、約七か月手続が前倒しできたという可能性があると考えているところでございます。

 一方、この地区については受益者が少なかったのではないかという御指摘もあったところでございます。確かに、これは受益者が七名ということで比較的そこは迅速に進んだということでございますけれども、もし受益者が大変多い場合にはまさに同意徴集とかに更に時間がかかるということも想定をされますので、その意味でも、期間の短縮に非常に効果が発揮できるのではないかというふうに考えているところでございます。

渡辺(創)委員 通常であればそれだけ時間を要する作業を省略するということですから、先ほど金子委員の質問にもありましたが、合意形成を含めて、デメリットはないのかということも心配しなければならないかなと思います。

 自治体の担当者とも話したんですが、現実的には、幾ら当事者、農家の同意が不要とはいえ、実際には一定程度の地元調整がなければ事業を進めることは難しいという印象を持ったところですが、その点について、既に行われている地震対策の事業の現実も踏まえてどのようにお考えか、お伺いをしたいと思います。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 急施の防災事業の対象は、豪雨の際に住宅等への浸水被害のリスクが多いため池とか用水機場といったような農業水利施設を考えているわけでございます。これらの施設に係ります豪雨対策事業につきましては、人命、財産を守る極めて公共性の高い事業でございまして、速やかに防災工事を実施する必要がございますことから、農業者の権利利益を侵害しない場合に限り、農業者の同意を求めず行政の判断で事業着手ができることとしているものでございます。

 なお、既に措置をされております地震対策では、法手続上、農業者の同意を省略をしておりますものの、事業や工事の計画段階で、工事の施行に伴う土地の使用あるいは営農に及ぼす影響等について地元調整を行いまして、農業者の意向を確認しながら対策を講じているところでございます。

 今般特例の対象に追加する豪雨対策につきましても、同様に、農業者の意向を十分配慮して対策を進める考えでございます。

渡辺(創)委員 改めて確認しますが、大きなデメリットは短縮を図ってもないというふうに理解をすればよろしいでしょうか。

牧元政府参考人 農業者の意向を十分確認させていただきますので、そのようなデメリットはないものと考えているところでございます。

渡辺(創)委員 既に述べてきましたように、地震対策については、平成二十九年の法改正でこのスキームが使えるようになっていたわけです。農水省の資料を見ると、確かに豪雨災害による農地、農業施設の被害が大きくなるのは前回の法改正以降ということになりますけれども、豪雨については同じような対応の必要性を全く予見できなかったというふうに言うことはできないだろうというふうに思っています。

 平成二十九年改正の際の議事録を読んで確認をしてみたんですが、平成二十九年五月十八日、参議院の農林水産委員会で当時民進党の櫻井充委員が、具体的な数字も出して、今回もため池がほとんど対象であるというお話がありましたけれども、ため池が決壊するケースは豪雨災害の方が地震災害よりも圧倒的に多く、しかも地震災害のほとんどは、その際のデータでは東日本大震災での被害なので、実際の被害のほとんどは豪雨による被害であって、豪雨対策も一緒に対応すべきではないかというふうに提言をしています。

 この際の政府側の答弁、当時の農村振興局長の答弁がちょっと今から見るとピントが外れたものになっていまして、読み上げますが、「豪雨に対しましては、気象庁の予報等に基づいて事前にため池の決壊等の防止に関する、例えば水位低下といったような被災リスク低減の措置を実施することが可能でございます。また、地域住民に速やかな避難を促すことによりましてある程度被害を抑えることができるというふうに考えてございます。」こういう理由を述べて、豪雨対策も前回の法改正のときに一緒にやるべきではないかという主張に、予測できて、大きな被害を生み出すことはないから、今やる必要はないんだというネガティブな答弁をされているわけです。

 今回の法改正が悪いと言っているわけではありません。けれども、当時も予測できたのではないかというふうに考えるところでありますので、このような経緯も踏まえて先ほどの答弁を考えれば、五年後に、豪雨災害が大変で被害が大きいから、今回法改正をしなきゃいけないというような理由が出てくるというのは予想できないような答弁をされていらっしゃるわけですけれども、この経緯も踏まえて、平成二十九年の法改正の時点で対象に豪雨災害を加えておくという選択肢もあり得たのではないかというふうに考えますが、当時の判断をどう振り返られるか、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

金子(原)国務大臣 お答えいたします。

 平成二十九年改正で措置された急施の防災事業は、大規模地震が頻発していた状況の下、地震災害への備えを強化することが喫緊の課題であったことから、耐震化対策を講ずる緊急性の高い農業用施設を対象に、特例的かつ限定的に、農業者の同意等を求めず迅速に事業着手できることとしたものです。

 その後、平成三十年の七月の豪雨、令和元年の東日本台風など、豪雨災害の頻発化、激甚化が近年顕著となってきており、多数のため池で決壊等の被害が発生していることから、豪雨に備え、迅速な防災対策の実務が急務と考えています。

 このため、今般の改正法案では、豪雨対策を講ずる緊急性の高いため池等についても、現行の地震対策と同様に、農業者の同意等を求めず迅速に事業着手できるよう措置することとし、防災、減災の取組を更に一層推進していく考えであります。

渡辺(創)委員 その後に緊急性の高い状況を認識するようなものがもっと高まったという御答弁だろうというふうに思いますが、当時の質疑の中で、当時の山本大臣も、いろいろ検討した上で、豪雨災害に対する気象の精度が上がったし、衛星も更に精度が高まるので、豪雨災害は次の機会でいいという趣旨の答弁をされていらっしゃいました。

 その後に大きな災害が起きたことは事実でありますけれども、今回の法案説明の資料にもあるように、平成三十年以降の豪雨による農地、農業用施設等の被害額というのは、平成三十年が一千五百五十億円、令和元年が二千三百七十億円、令和二年が一千九十億円と、これまで一千億を超えてくることはほとんどなかった状況の中で、こういう状況になっていますから、イフの話をしても仕方がありませんけれども、もし五年前にできていたらこの分の幾分かを軽減することができたのではないかというふうに思えて、少し残念に思うところであります。

 岸田総理ではありませんが、是非、聞く力を生かして、早めの対処ができる環境をつくっていただきたいというふうに思います。

 続けて、土地改良区制度についてお伺いをいたします。

 土地改良区が、地域の農業者により組織され、農業用排水施設の整備、区画整理等の土地改良事業を実施するほか、造成した土地改良施設の維持管理を行っていることは言うまでもありませんが、時代の変遷の中で、その役割も整備から維持に比重が移ってきているというふうに思います。

 実際に、自分の選挙区の宮崎市にある三十二の土地改良区の設立時期を調べてみましたけれども、設立時期、昭和三十年から六十年代にほぼ集中しておりまして、農地の基盤整備の進展を裏打ちするような形になっていたかというふうに思っています。

 今回の組織変更制度の創設は、解散等も進む中で、組織形態を変えて引き続き役割を果たそうとする組織の手続を簡素化するものと理解をしていますが、近年の全国的な解散状況と、その状況に対する農林水産省の見解をお伺いします。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 近年の土地改良区の解散の状況でございますが、平成二十八年度から令和二年度までの最近五か年間で四百三十地区が解散をしております。その内訳でございますけれども、合併に伴う解散が百五十八地区、市町村へ施設を移管して解散したものが百六十八地区、法人等へ施設を移管して解散したものが八十一地区、事業の完了に伴う解散が二十三地区となっているところでございます。

 このうち、事業完了以外の地区につきましては、解散後におきましても水利施設等の管理を継続する必要があるところでございますが、解散するケースの大半は受益地百ヘクタール未満の小規模な土地改良区でございまして、管理する水利施設も簡易で小規模ということでございます。合併後の土地改良区、市町村に加えまして、そのほかの法人が適切に施設管理を行っている地区も見られるというふうに考えております。

 このような現状を踏まえまして、施設の管理は土地改良区の代わりに集落の共同活動によって対応することが可能な状況であり、かつ、土地改良区として必要な法定の役員定数の確保や総会開催などの対応が困難な状況にある場合には、今般のような他の法人への移管というものも選択肢であるというふうに認識をしているところでございます。

渡辺(創)委員 先ほども申しましたように、土地改良区の役割は、その本質である農業用施設の整備、維持や土地改良事業という役割に加えて、農業を取り巻く環境が大きく変わっていく中で、農村集落、ひいては、もっと大きな意味での地域への貢献も含めた社会的公共性が高まっているのではないかというふうに感じています。多面的機能支払交付金制度の関与等々があることを考えても、その点は明らかではないかと思うところであります。

 私の自宅の近くにある宮崎県宮崎市の花ヶ島土地改良区というのがございますが、都市部に近い限られた農地面積の土地改良区でありますけれども、土地改良という立場でも、また個人の立場でも、地域の共同活動や地域の輪の維持に本当に大きく貢献をしていらっしゃいます。今、コロナ禍で開催できませんが、秋には農地にコスモスを咲かせてイベントをやったり、多くの子供たちや高齢者の方々も楽しむ、そういうふうにも貢献をしていただいていますし、餅つきだったり、そば打ちだったり、そういうことも全面的に支えてくださっております。

 話を本来のところに戻しますが、今回の組織変更制度の創設は、そういう土地改良区の新たな時代の中での役割をしっかりと担い続けることができる、そういう方向性を意識したものだというふうに私自身は受け止めているところでありますが、大臣の見解をお伺いしたいと思います。

金子(原)国務大臣 土地改良区は、地域の農業者の多くが関係を有する農地整備や水利用の管理等を通じまして、良好な営農環境の維持向上に重要な役割を担っています。

 今般の改正法案は、土地改良区が担ってきた機能や役割を適切に引き継ぐことができるよう、解散を予定している小規模な土地改良区が認可地縁団体等への組織変更を選択する場合に手続の簡素化を措置し、土地改良施設の適切な維持管理の継続を図るものであります。

 今後とも、土地改良区が農地整備や水管理の大宗を担い、公共性に係る機能を発揮することが重要との認識ですが、地域の実情に応じ、水管理等に支障が生じないよう、前提に、土地改良区以外の組織についても施設の維持管理が適切に実施されるよう、組織変更を含め、柔軟かつ適切な制度運用を図る考えであります。

渡辺(創)委員 ありがとうございました。

 金子委員の発言にもありましたが、その本質をしっかり守る体制をつくっていただくと同時に、今大臣からありました柔軟な対応というのも必要かと思いますので、それをお願いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

平口委員長 次に、大串博志君。

大串(博)委員 おはようございます。立憲民主党の大串博志です。

 早速質疑に入らせていただきます。

 土地改良法の一部を改正する法律案の審議でございますけれども、その前に、今緊急の課題であります有明海西南部を中心としたノリの不作問題、そして漁業の不漁問題、これに関して取り上げさせていただきたいと思います。

 先々週の週末に、大臣には、有明海西南部の太良町を訪問していただき、漁業者の声を聞いていただきました。大変厳しい声を大臣自身お聞きになったと思います。

 特にノリですね。太良町の運営委員長さんだったと思いますけれども、厳しかった昨年に比べても三十分の一だ、こういうふうに言われました。有明海全体ではいい生産量を上げてはいるんです。しかし、近年、相当、湾央部の東部と言われるところと西南部に差が出ています。諫早湾干拓に近ければ近いほど不作がかなり厳しくなってきている、こういう状況で、かなりの差が出ています。

 ノリだけじゃないです。貝類も含めて大変捕れなくなってきている。タイラギに至っては、もう十年不漁です。十年といいますけれども、十年じゃないんです。十年前に、たまたま一年だけ捕れたんですよ。たまたまと言っていいのか分かりませんけれども、一年捕れたんです。このときは大浦の浜が大変活気づいていまして、ああ、これかと思いました、私。しかし、その前もずっと捕れていないんですね。だから、十年といわず、タイラギは捕れていない、貝は捕れていないんですね。

 そういった状況の中で、ノリにもかなりのことが及んできている近年なんです。別に今年、去年だけじゃないんです。

 平成十二年にノリの大不作がありました。諫早湾干拓との関係が取り沙汰され、そのときに有明海特措法というものを議員立法で作らせていただきました。今回、私、現場を聞いて歩いていると、その平成十二年のノリの大不作、歴史的大不作のときよりひどいという声なんですよ。そういう状況なんです。

 今日、ノリを持ってきたんですけれども、是非見ていただきたいと思うんです。有明海の西南部で取れたノリですよ。二つあります。黒い方と、色落ちしている方と見られますね。

 この黒い方、ああ、黒いな、これがノリだなと皆さん思われると思いますけれども、このノリでも商品にはなかなかなりにくいんです。これはいわゆる五等とか六等とか言われるノリです。一枚数円しか値がつきません。もっともっと、有明海のノリというのは、黒くて、ふくよかで、豊かなんです。真っ黒なんですよ。今、これが取れると、ラッキー、よかったという感じなんです。

 こちらを見てください。これだけ黄色くなっています。これはAといいます。これは売れないということなんです。売れませんと。そのくらいの状況になっているんですよ。今年はこればっかりなんです。

 このAの黄色いノリ、こうなっていればまだいい方なんですよ、まあいい方。すなわち、ノリ師さんが海に出て、あっ、これを摘んで乾燥してみようかなというふうに思う分まだいいんですよ。ほとんどのノリは、今回は、海に行って生育しているのを見て、あっ、これは乾燥してもノリにならぬなということで、皆さん、摘むのをやめちゃったんです。そういったノリは、乾燥しても、手が透けて見えるんですよ、こちら側にこうやって。そんなノリばっかりなんです。これでも、ノリ師さんが乾燥してみようかなと思うぐらいだからまだいい方なんです。そんなノリが続いているんですよ。

 そういう中で、今年だけじゃありません、去年も大変な不作でした。その前も前も、だんだんだんだん不作が続いてきている中での今年なんです。平成十二年以降の、最悪を更に更新するような不作状態。

 資料をお配りしているので見てください。

 有明海特措法を平成十二年を受けて作りました。そこには、二十二条にこう書いています。「国は、有明海及び八代海等の海域において赤潮等により著しい漁業被害が発生した場合においては、当該漁業被害を受けた漁業者の救済について、当該漁業被害に係る損失の補填その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」

 私も、この有明海特措法の改定のたびに提案者として名を連ねさせていただいておりますけれども、立法した側の意思として、あえて、赤潮等による漁業被害等の救済という条項を設けたんです。今回がまさに続きに続いた赤潮による被害で、このようなノリの状況になっているんですよ。

 大臣、まさに、有明海特措法の第二十二条を発動して、特別な支援を今回行うべきときだと私は思います。大臣の政治的な決断を求めたいと思います。いかがでしょうか。

金子(原)国務大臣 先般の意見交換には、御出席いただきましてありがとうございました。私も研究センターで試食をさせていただきました。大変厳しい状況であるということは、改めて思った次第でございます。

 今議員御指摘のように、有明海特措法第二十二条において、有明海及び八代海等の海域における赤潮等により著しい漁業被害を発生した場合、漁業被害を受けた漁業者を救済する措置ということが規定されております。

 有明特措法第二十二条に該当する措置といたしまして漁業共済及び積立ぷらすがあり、佐賀県のノリ養殖業者は全員加入していると聞いておりますので、今漁期の減収については、これにより減収の補填が行われることになります。

 また、漁業共済におきましては、四年間の継続契約特約で加入している場合に、漁業共済の発動ラインである共済限度額が前回契約時の九〇%を超えて下がらない仕組みが措置されており、来漁期におきましても一定程度の補填が可能と考えております。

 今後とも、有明海のノリの安定的な生産のために、佐賀県を始めとする関連県と連携して、適切に対応してまいりたいと思います。

大串(博)委員 いいですか、大臣。有明海の問題があったがゆえに有明海特措法という議員立法をわざわざ作って、その中にわざわざ第二十二条を盛り込んで、赤潮等に対する漁業被害ということがあった場合には損失の補填をしなきゃならないとわざわざ書いたんですよ。立法意思として書いたんですよ。それに対して、通常の、全国の漁家の方々が使っていらっしゃる漁業共済、積立ぷらすで対応しますと。これは、農水省として何もやりません、有明海特措法のこの規定を用いては何もやりませんと言っているに等しいじゃないですか。そんな極めて心ない答弁をされるのは、私は非常に心外です。

 この漁家の方々、大変厳しい状況でいらっしゃるんですよ。先ほど、漁業共済と積立ぷらすで一定の金額を受け取られるというふうに言われました。多分、大臣は、その金額を、このくらい得られますよと事務方から見せられて、ああ、これなら一年間暮らせるじゃないかと思っていらっしゃると思います。全然、漁業の現場は違うんですよ。

 ノリは投資が必要です。経費が必要です。機械を新しくする。乾燥機は何年かに一回更新しなきゃなりません。これは一人でできませんから、集団を組みます。集団を組んでやると、何千万なんですよ。ノリの網も修繕しなきゃなりません。種も買わなきゃなりません。大体、毎年毎年数百万から一千万近い経費と投資をするんです。大きいところは一千万を優に超える経費と投資をかけるんですよ。そういうところに、共済があれば大丈夫だという、その数字だけ見て、これで暮らせるだろうと。私は、余りに漁業の現場を知らなさ過ぎると思いますよ。

 西南部のある漁家の方の息子さんが、ローカル紙、新聞で賞を取られました。一月八日の土曜日に、このローカルの新聞に、冷凍ノリの収穫が始まるということで、これを受けて書かれた、いわゆる新聞記事感想文なんです。読みますね。

 生産量日本一を誇る佐賀ノリの冷凍ノリの収穫が始まった。僕の家は西部地区でノリの養殖をしている。六十年前からしているみたい。今はお父さんが中心に作っている。お父さんが作ったノリはとてもおいしい。一番摘みのノリは格別だ。でも、ここ何年かは黒いノリじゃなくて黄色いノリで見かける。お父さんが不作で悩んだり、会議で少しでもよくなるように話し合っている姿をよく見かける。おいしいノリが取れなくなるのは悲しい。だから、よくなるように僕が勉強して、海の環境をよくしていきたい。

 こんな小学校のお子さん、松本穣君と言われます。こういうことを書いて、新聞社に出して賞を取られている。

 こう言われていましたよ、漁家の皆さん。借金がかさんでいるんだ、もう何年も続いていますからと。投資、経費で借金がかさんでいる。先ほどの漁業共済、積立ぷらすと言われましたけれども、毎年毎年、限度額が、五中三、五年のうちの三年の収入をもって基準額が下がるので、毎年、一割、二割ぐらい、がくっと下がるんですよ。特に、前回、今回のように発動すると、がくっと下がるんです。

 借金があるので、家でノリの話をできない。家族の方々とけんかになるから、みんな心配だから、けんかになるから話ができないそうです。夜逃げ、自己破産ができる人はまだいい、何も考えることができなくなって自ら命を絶つ人が必ず出てくる、こうおっしゃっているんです。そういう状況なんですよ、大臣。

 是非、大臣、有明海特措法二十二条に基づく特別な支援、決断していただけませんか。

金子(原)国務大臣 私も、実態、実情はよく、いろいろとお話を聞いて、現在、調査をさせていただいているところでございますが、実は特措法ができたときには、漁業共済、積立、特に積立ぷらすはありませんでした、制度として。したがって、この二十二条による対応というのは、従来から積立ぷらすで考えられてきているわけでございます。

 それから、この積立ぷらすにつきまして、先ほど委員から五中三で基準価格が下がるというお話がありましたが、この共済におきましては、四年間の継続契約特約で加入している場合には、共済限度額が前回契約時の九〇%を超えて下がらない仕組みが措置されております。したがって、ある一定の、普通の五中三より優遇された形になっております。

 いずれにいたしましても、漁業共済、積立ぷらすによる支援につきましては、現在、共済金の一部の仮渡しによる早期支払いを進めているところですが、補填額の確定は漁業終了後の四月又は五月となる見込みであります。

 農林水産省といたしましては、これらの支援が基本と考えておりますが、漁業者から更なる支援を求める声があることを踏まえまして、漁労収支における支援の効果を把握できるよう、漁業経営の状況を調査してまいりたいと考えております。

大串(博)委員 是非きちんと調査していただきたいと思います。

 先ほど言われた、共済、積ぷらは有明海特措法ができた後にできたと。それはちょっと詭弁ですよ。だって、全国の制度なんだから。じゃ、聞きますけれども、積立ぷらすは有明海特措法ができたからできた制度なんですか。そんな答弁、国会で聞いたことないですよ。全国の制度でしょう。それをもって、後からできたからそれが対応策だと。詭弁もいいところですよ。農水省は農家や漁家や林家を守るところなんじゃないですか。それに対して、そんな心ない発言、私、とんでもないと思いますよ。

 調査をすると言われました。しっかり調査してください。本当に苦しい状況でいらっしゃる、間違いないです、見えてきます。是非、血の通った行政をしていただきたいと私は思います。

 この有明海の状況に関して、やはり、諫早湾干拓が閉め切られて以降、潮の流れが変わって大変厳しい状況になった。やはり諫早湾干拓、開門調査をしてほしい、先般の大臣の来訪の際もそういう声が多く出ました。

 大臣は、昨年の着任早々、十月、通信社のインタビューで、裁判での決着しかないというのが地元の考え方で、私もそれしかないと思うと言われましたけれども、裁判では決着しません。

 今、請求異議の訴訟、福岡高裁、三月二十五日に判決が出ますけれども、開門せよという確定判決には変わりはありません。強制力を問う請求異議訴訟に関しては議論があります。しかし、開門判決に関しては、これは確定判決ですから、これは変わりませんから。かつ、いろいろな裁判が出るでしょう、これからも。訴訟が起こるでしょう。だから、訴訟では解決しないのは明らかなんですよ。話合い以外はないと私は思います。

 大臣の前任の野上大臣のとき、私はここで質疑させていただいて、野上大臣からこういう答弁をいただきました。江藤前大臣の現地視察の際の発言を引いてですけれども、様々な立場の関係者がバランスよく参加するのであれば一堂に会して話し合うことがあってもよいと発言された、江藤大臣の発言に関しては、私も同様に考えておりますというふうに野上大臣は国会でも言われました。これは政府の既定の方針だと私は思っています、話合いに関して。

 金子大臣も、この話合いの方針を維持していただけますか。

金子(原)国務大臣 野上大臣、また、令和元年十月の、江藤元大臣は、現地視察の際に、様々な立場の関係者がバランスよく参加するのであれば一堂に会して話し合うこともあってもよいという旨の発言をされたことは承知しており、私もこの考えには変わりありません。

 開門派の皆様のみならず、開門反対の皆様を含めて、幅広い関係者の間で機運が高まることがこのような話合いを実現する前提となるのではないかと考えております。

 したがいまして、私も、被控訴人の方々から非開門を前提として有明海再生に向けて建設的に話合いをしたいとの提案があれば、真摯に検討する用意があります。

大串(博)委員 前提を最初から、入口から設けないで、大臣、虚心坦懐に話し合いましょうということが必要なんです。先ほど、江藤前大臣の言葉に関しては自分も踏襲すると言われました。であれば、私たち開門を求める立場からも、開門に対して反対していらっしゃる皆さんの立場も含めて、話し合いましょうと申し上げているんですよ。ですから、大臣においても、虚心坦懐に、胸襟を開いて話合いをするということで臨んでいただきたい、繰り返しそう申し上げさせていただきたいと思います。

 大臣、もう一度お聞かせいただきますけれども、江藤前大臣の現地視察の際の言葉、これは同じ考えということでよろしいんですね。

金子(原)国務大臣 私も、そういった機会が設けられることがあれば結構だというふうに思っております。

大串(博)委員 是非よろしくお願いしたいと思います。

 一刻の猶予もなりません。若い方々で、ノリをされている方々、漁業をされている方、多いんです。やめようかな、この土地から出ていこうかなと思われている方すらいらっしゃる。そういう中ですので、一刻の猶予もない。大臣、大変御苦労の多いこととは思いますが、是非力を振り絞っていただけたらと思います。

 大臣は長崎御出身の方でいらっしゃいますし、諫早湾干拓のことを長く御存じでいらっしゃる。私、だから逆に期待しているところがあります。是非よろしくお願い申し上げたいと思います。

 さて、土地改良法ですけれども、私、非常に、今回のこの改正、重要な論点を含んでいると思いまして、先ほど来議論があります。

 特に私、急施の防災事業、今回、豪雨災害にまで手続の簡素化を広げていくということなんですけれども、前回の地震に対する手続緩和のときとちょっと違うと思うんですね。全国、私のところもため池が非常に多いんですが、地震ということよりも、一段ちょっと違って、豪雨でこのため池は崩れるかもしれないというところが多いんですよ。大変多いんです。

 手続の簡素化が今回取り入れられて、これはいいことです。農家負担もないということになってくると、これはありがたいということで、やりたいというところはたくさん出てくると思います。だから、大切なのは、手続を簡素化することだけじゃなくて、それに見合った予算をつけて対応ができるかということだと思うんですね。

 お尋ねしますけれども、具体的には、これを行うことによって、例えば、全国、防災重点農業用ため池、五万五千ございます。そのうちの幾つかを今、一万ぐらいを緊急性の高いところとして挙げていらっしゃいますけれども、例えば今年度、このうちどれだけのものが対応、執行できるという算段でいらっしゃるんでしょうか。十分な数に及ぶんでしょうか。いかがでしょうか。

金子(原)国務大臣 急施の防災事業は、行政の判断で、農業者の同意等を省略して事業に着手する特例的な業務であります。

 この事業は、農村地域防災減災事業を活用して実施されており、令和四年度予算につきましては、同事業の予算額四百七億円の内数となります。

 また、実施地区数につきましては、同事業で令和四年度に新規着工を要望する地域のうち、七十二地域が豪雨対策を含む事業内容であり、これらが急施の手続の対象となり得ると考えております。

 要望に対応できる予算を確保しているところですが、農村地域における安全、安心な生活環境の確保のため、引き続き、必要な予算を安定的に確保しながら、防災・減災、国土強靱化の取組を推進してまいります。

大串(博)委員 今お聞きした対応で、それはないよりもいいんだけれども、まだまだだと思うんですよね。全国、防災重点農業用ため池、五万五千です。どこも苦労されているんです。もっともっとここには積極的に取り組んでいただきたいと思います。

 そしてもう一つ、中間管理事業に係る対象の拡大です。

 これも要望の強い、これは前から言われていましたのでよく分かります。ただ、やはり中間管理事業自体に対する総括を、この間、五年後見直しをやりましたけれども、いま一度やる必要があると思うんです。

 先般も、中間管理事業に関しては、予算の二割が未執行だったということも言われました。これは本当に、中間管理事業で効果を上げていると考えて、今後も同じように続けていいのか。

 例えば、集積目標を今、政府は八割でやられていますけれども、佐賀県なんかは集積が非常に高くて七割まで行っているんです。七割まで行っているけれども、私の地元なんかは非常に集積率の高い、非常に平野の多いところなんですけれども、それでも営農は大変厳しいんですよ。集積しても厳しい。

 どうですか。集積さえ進めれば農業経営は楽になる、よくなるというエビデンスがあるのか、それをもって進めているのか、この点に関してお答えいただきたいと思います。

光吉政府参考人 お答えいたします。

 農地バンクによります集積のことでございます。

 これまで、目標を立てて、農地集積、農地バンクを中心に進めてきております。それで、令和二年度まで五八%となっているところでございますけれども、今後、引き続き、これをもっと推進をしていかなきゃいけないというふうに考えております。

 それで、この中間管理事業について、今、佐賀のお話をされて、佐賀は集積率が高いと。バンクを使うというよりは、使う形ではなくて、集落営農などを活発に行われているので集積率が高いと考えておりますけれども、集積さえすれば、すなわち、担い手の方が農地を受けさえすれば全ての農業問題が解決するわけではもちろんございません。

 集積をした場合には、例えば、米の作付規模別に生産コストを見ると、〇・五ヘクタール未満の層に比べて、三ヘクタールから五ヘクタールの層では半減するとか、そういう生産コストの削減といったメリット、効果がございます。

 しかし、農業をめぐる様々な課題が複雑に発生する中で、集積だけで問題を解決できるというふうにはもちろん思っておりません。

 そして、集積につきましても、ただ集積、受けるだけではなくて、一方、これは、委員、以前にも御指摘をいただいたことがあると思いますけれども、分散錯圃の状況を何とか集団化をしてまとめ上げるような取組をしたり、あるいは、集落営農や法人が利用集積をした後に、その後、その中でどういうふうに農地を効率的に使っていくか、こういったことに取り組んでいただいて、効果が出てくるものと考えております。

大串(博)委員 終わりますが、とにかく、規模拡大一辺倒だけではない、複層的な農政を是非進めていただきますようにお願いします。

 終わります。

平口委員長 次に、池畑浩太朗君。

池畑委員 日本維新の会の池畑浩太朗でございます。

 今回は、土地改良法の一部を改正する法律案について質疑を重ねていきたいと思います。

 十二月、二月の分科会、そして、予算委員会でも私は食料安全保障について質問させていただきました。まさに、このロシア、ウクライナの問題で、もろもろ輸入に頼っているこの日本国は、食品の高騰が問題で、現実味を帯びてまいりました。今回は、食料の確保、食料の安全の観点からも質問をさせていただきたいと思います。

 まず、我が国の農地面積は、昭和三十六年の六百九万ヘクタールから、約百七十四万ヘクタール減少いたしまして、令和三年においては四百三十五万ヘクタールとなっております。

 現在、土地改良区が約二百二万ヘクタールを管理しているというふうにお聞きしました。土地改良事業は最大でどれくらいの面積に及んで、累計で一体どれくらいの国費が投じられたのか。物価の違いもありますし、年数をどこで切るのかという議論もございましたけれども、大臣並びに農林水産省が思う、これまでのこれが実績だという実績も踏まえて、お聞きしたいと思います。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、土地改良事業によりましてこれまで投じられてきた国費についてでございます。

 これは、土地改良法が制定をされました昭和二十四年度から令和三年度までの七十二年間というものを、私ども農林水産省として確認できた範囲で単純に積み上げてみました。委員今御指摘いただきましたように、物価動向とかいろいろとちょっと本当は加味しなければいけない点もあろうかと思いますけれども、この七十二年間の予算を単純に積み上げますと約四十四兆円になるところでございます。

 また、実績についてでございますけれども、平成三十年度時点で、まず、区画が三十アール程度以上に整備をされました水田面積が全国で百五十九万ヘクタール、区画が整備されました畑の面積が同じく全国で百二十八万ヘクタール、そして、農業用水が安定的に供給される農地面積が全国で二百九十万ヘクタールとなっているところでございます。

池畑委員 今答弁いただきました四十四兆円、これも、ただ四十四兆円かけてきたということで、そこを指摘したいわけではございません。平成十四年からは十二兆一千億円ぐらいかけております。それだけかけてきましたこの土地改良事業に関しまして、当然私も、また日本維新の会としても、役割は高く評価をしたいというふうに思っています。また、今後は、それだけの国費をかけたわけですから、食料確保に加えて、さらに、水源の確保、防災、減災、生活用水の確保、さらに、里山の景観保全、過疎化への対応など、多面的な機能がこれからは期待をされております。

 一方で、荒廃農地面積は令和二年には二十八万二千ヘクタールに及びまして、十七万八千ヘクタール、実に六三%が中山間地域であります。また、先ほど七十二年間というお話もありましたけれども、ここまで、多くの委員の先生方また議員の先生方が質問を今日までるる続けておられます。そこで行き着くところは、中山間地は再利用がかなり困難な場所であるというふうには、この委員の中でも認識をされている方が多いというふうに思います。

 加えて、毎年一万数千ヘクタールの農地転用が行われております。昭和四十五年以降、統計を手元計算しますと、累計で実に四十八万八千ヘクタール以上が農地転用されていることになります。

 農水省の説明によれば、ほぼ全ての農地に土地改良若しくは何らかの国費が関わっておりまして、農業予算が投じられております。先ほど御答弁いただきました、七十二年間で四十四兆という国費を投じて行われた基盤整備ないし土地改良事業が、一体どれだけ、あえて、無駄になってしまったのか。法律の改正に当たり、これまでの土地改良事業への総括として、私が今申し上げました、本来とは違う方向性となってしまったのではないかという意味合いを踏まえての、無駄になってしまったのではないか。

 今、総括として、大臣の認識をお聞きしたいと思います。

牧元政府参考人 まず、私の方から事実関係をお答えをさせていただきたいと思います。

 まず、土地改良事業によりまして整備されました優良農地をしっかり確保しなければいけないということは、私ども、基本だというふうに考えているところでございます。

 そして、その土地改良事業のうち圃場整備事業について、平成二十年度に事業が完了いたしました百二十五地区を対象にいたしまして、令和元年に聞き取り調査を行ったデータがございます。これによりますと、圃場整備事業をかけましたところについての荒廃農地の割合は〇・二%ということでございまして、これは全国平均の荒廃農地、委員からも今数字を挙げていただいたところでございますけれども、率にいたしますと約六%ということでございますので、それに比べると、土地改良事業が行われたところについては荒廃農地というものが抑制されているのではないかというふうに考えているところでございます。

金子(原)国務大臣 調査についてのお尋ねでございますが、土地改良事業を実施した農地につきましては、転用状況などの調査はこれまで行っていませんので、今後の調査の実施に向けて、その方法等を検討してまいりたいと思います。

池畑委員 大臣の答弁もいただきまして、ありがとうございます。しっかり、どういうふうにこれから進んでいくべきか、今まで七十何年間もこういうふうにやっていただいているわけですから、そこも踏まえながら次に進めていければいいんじゃないかなというふうに思っております。

 また、脆弱性、緊急性の評価の在り方についてお聞きさせていただきたいというふうに思います。

 今回の法改正は、直面する農地、担い手の問題に対して可及的速やかに対応する必要があるということは認めさせていただきます。日本維新の会としても、必要だろうと。全国どこでも緊急性があるというふうに考えております。どこから手をつけるか、そういうことは大事だというふうに思います。

 土地改良に関する団体の権限強化が行われておりますから、その在り方についての透明性でありましたり公平性が担保されなければいけないというふうに考えております。

 そこで、確認できた範囲でございますけれども、土地改良事業団の全国組織の会長及び都道府県連合会の幾つかの県で現職の国会議員の方が会長を務められております。それぞれ地域をよく知られておりますし、まとめ役として、また、知見を有して、適格な方々ばかりだというふうに存じますけれども、農林水産省として、適切だと判断しておられるか。

 また、あわせて、県会議員や自治体の元会長の方が務める連合会が散見しております。土地改良事業の採択に当たっては、恣意的な、まさに我田引水が行われていないか、疑念を抱かせないような公正な決定がなされているのか。急施の事業に対して、その脆弱性及び緊急性の評価を、国会議員や県会議員など、アドバイスがあるにせよ、実際は誰がどのように行っているのか、質問させていただきたいと思います。

武部副大臣 急施の防災事業につきましては、ため池等の農業用用排水施設について、国土強靱化基本法におきまして、脆弱性の評価の結果、緊急的な豪雨対策が必要と判断された場合に、国又は地方公共団体が農業者の同意を得ずに迅速に事業着手できるよう、特例な手続をしております。

 国土強靱化基本法におきましては、脆弱性の評価につきまして、「科学的知見に基づき、総合的かつ客観的に行う」ということとされておりまして、その評価に当たっては、施設の規模やあるいは周辺の住宅や公共施設の存在を勘案しまして、損壊した場合に被害が甚大になるという施設を対象としております。また、耐震性能や排水能力を調べまして、その施設の安全性を定量的に評価することとなっております。

 このように、定量的な指標に基づいて総合的、客観的に脆弱性評価を行っておりまして、それが公平性を確保することとなりますので、公平性を確保しながら、急施の防災事業を実施していくことになります。

 引き続き、土地改良事業については、農業、農村の強靱化を推進するとともに、生産基盤の強化による農業の成長産業化、多様な人が住み続けられる農村の振興に必要な施策を取ってまいりたいと思っております。

池畑委員 今副大臣から答弁をいただきましたように、公平性を保っていく上にも、先ほど私も申し上げましたとおり、地域のまとめ役であったり地域をよく知る先生方にも会長としてやっていただくということは大事だというふうに思いますけれども、やはり、声が大きいとか、地域をまとめている力が強い、それだけで急施の問題を語っているわけではないというふうに思いますが、十分にその辺りをよく気をつけて、私自身も地域をよく知って、その上で、皆様の、これからどれが緊急性があってということを大事にしていきたいというふうに思います。答弁ありがとうございました。

 その上で、これからの担い手の定義について質問させていただきたいと思いますけれども、三月二日の本委員会においても、我が党の空本委員から質問がありまして、大臣から答弁をいただきました。空本委員もこの後も質問を関連で立たれますけれども、企業の農業への参入についてお聞きをしたいと思います。

 企業は、生産物を販売するマーケット、イコール出口も持っております。流通や加工のノウハウ、その他ニーズを農地に反映させることで、高付加価値で持続可能な農業生産にも寄与していると私は考えます。

 その中で、担い手という場合、企業も農業の担い手に含まれるのか、大臣の認識をお伺いしたいと思います。

光吉政府参考人 お答えいたします。

 担い手でございますけれども、食料・農業・農村基本法第二十一条におきまして、国は効率的かつ安定的な農業経営を育成するとされております。このような農業経営を目指す経営体などがいわゆる担い手と考えられますが、その際、担い手として、家族、法人など経営形態の別や、株式会社など法人の形態にかかわらず、幅広く育成、支援することとしております。

池畑委員 個人だけが担い手ではなく、企業もこれからはどんどん担い手となっていくというふうに考えております。

 その中で、ちょっと観点が違ってくるんですが、適格法人による所有にせよ、リース方式にせよ、先ほどもお話をさせていただきましたけれども、中山間地における企業の参入には工夫が必要であるというふうに思います。

 ニーズのマッチングが、先ほどもるる申し上げております、広範囲に行われるよう、農業参入への土地改良により、今どのような、企業参入することによってインセンティブ、メリットがあるか、ちょっとお聞きをしたいというふうに思います。

武部副大臣 委員御指摘のとおり、中山間地域等、高齢化や担い手が不足している地域もございます。そういった地域におきまして、農業生産を担う存在として株式会社等の企業の農業への参入ということを進めることも重要だと認識しています。

 既に、平成二十一年の農地法の改正で農地リース方式での参入は完全に自由化しておりますけれども、今委員からお話がありましたとおり、どういうインセンティブ、マッチングをするかということでありますが、今現在行っておりますのは、農業参入フェアを開催しまして、都道府県による企業誘致を後押しするとともに、家族、法人など、経営形態の別にかかわらず、地域の農業を担う方々を幅広く支援しているところであります。法改正の前の約五倍のペースで参入が進んでいます。

池畑委員 答弁ありがとうございます。

 やはり、五倍ということは、かなりのスピードでどんどん進んでいっていると思います。

 そこで、企業が参入することによって、また、従来ある農家がそのまま維持をすることによって、やはり大事なところは、人材、担い手だというふうに思っております。

 昨日、母校の農業高校を訪ねることがありました。そこで校長先生から、小学校の頃、中学校の頃から、農業の必要性であったり、食料の安全保障に欠かせない、まさに国土を守る必要性があるということの勉強も必要じゃないかという話を聞かせてもらいました。土俵ばかりつくるのではなくて、強い力士をつくる、担い手をつくる勉強も、小学校、中学校の頃から必要じゃないかというお話をいただきまして、私も、そうだなというふうなことも考えさせていただきました。

 しかし、やはり、七十二年間、四十四兆円、そういったことも、どういったことに使われているかということも、小さな頃から勉強していく、また、折に触れてそういう機会を持っていくということは、これからの日本、そして農地を守っていくということには必要じゃないかなというふうに思わせていただきました。

 その中で、農地バンク、今副大臣からもありましたけれども、特に中山間地で余り機能していないというふうに思っております。選挙区の兵庫県の二〇年度の集積率は二四・五%と低迷しておりまして、予算も二割が未消化であります。今回の法改正が中山間地域の土地の集積を促進するのか、大きく疑問であります。

 二割の未消化、先ほど言いました、広い観点からなんですが、中山間地の生産者の立場からすれば、企業への安定的な集荷ができれば、より持続可能であり、また、出口が見えれば、生産拡大も可能でありますし、農業高校出身者や農大出身者は、新たな就農や農業を継続する意欲も湧いていくというふうに思います。

 今回、一例を申し上げますと、地元の宍粟市では、生産農家に反当たり八千円の独自の補償措置を行っておりました。事実上、直接補う所得補償でもあります。大変喜ばれておりました。中山間地には、根本的な問題として、所得補償を充実して、担い手を確保しなければいけないのではないかというふうに思いました。

 先ほど、母校の校長先生のお話にもありましたように、かなり根底からではありましたけれども、担い手を育成する、その中で、教育も含めて努力をしていく、土俵ばかりじゃなく、担い手を確保していかなければならないというふうに私は思いますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

金子(原)国務大臣 お尋ねの、主業農家に限定した戸別所得補償制度は、旧戸別所得補償制度のように、米への助成を基本にするのであれば、十分な国境措置がある米への助成を行うこととなり、他の農産物の生産者や他産業、納税者の理解を得難いと考えております。

 そこで、中山間地域というのは、全国の耕地面積の四割を占めておるわけでございますが、平場との農業生産条件の格差を補正するために、中山間地域等直接支払交付金を措置するとともに、地域の特色を生かした農業生産を振興する中山間地農業ルネッサンス事業や中山間地域所得確保対策等により、手厚い支援を行っているところであります。

 また、担い手農家の経営の安定に資するよう、諸外国との生産条件の格差から生ずる不利を補正する交付金、いわゆるゲタ対策を措置するとともに、ナラシ対策や収入保険によるセーフティーネット対策を実施しており、中山間地域を含めて、農家の所得確保に資するように現在取り組んでいるところであります。

 今後とも、引き続き、中山間地域で農業を担う方々の支援をしてまいりたいと思います。

池畑委員 大臣、ありがとうございます。

 大臣は常に、地域からしっかり国に上げていただければというお話をよく答弁でもされておられるように聞いております。

 私自身も、農政には与党も野党もないというふうに思っております。日本維新の会としましても、農家と消費者のためにしっかりと地域を盛り上げていきたいというふうに思っておりますので、今後とも努力をお誓い申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

平口委員長 次に、空本誠喜君。

空本委員 日本維新の会の空本誠喜でございます。

 本日、また土地改良法についての質問をさせていただきます。今日はダブルヘッダーでございまして、委員会と、本会議で大臣にしっかりと質問させていただきますので、ここでは政府参考人の皆さん、農水省の方々にお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 先日、三月二日の委員会におきまして、大臣所信を受けての委員会でございますが、ここで、農地バンクによる集積について、いろいろお話を政府からお聞きいたしました。

 まず、農地バンクの集積について、今後、農業者の減少などによりまして、地域の農地が適切に利用されなくなることが懸念されておりますけれども、農地バンクが受け手のいない農地を借りるだけでは、当然でございますけれども、農業の発展の望めるものではなく、その後、受け手に適切に貸付けが行われていくようにしていくことが重要と考えておるというふうに考えてはいらっしゃるんですけれども、実際にこれから農業者が減少する、そして適正に利用されなくなることも懸念されるという中で、農地の集積、集約化、どうやって本当に進めるべきなのか、それについて、まず政府からお聞きしたいと思います。

光吉政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、今後、高齢化、人口減少が本格化して、地域の農地が適切に使われなくなることが懸念される状況にございます。このため、農地が使われやすくなるよう、分散されている農地を集約化するなど、こういった取組に向けた活動の加速化が必要と考えております。

 このため、地域で話合いを行っていただいて、それに基づいて目指すべき将来の農地利用の姿を明確化いたしまして、それを実現すべく、地域内外から受け手を幅広く確保しながら、農地バンクを活用した農地の集約化等を進めていくことが必要と考えております。そのための関連法案を国会に御提出したところでございます。

空本委員 全体的には、よく分かるような分からないような話でございまして、受け手がこれからいなくなります、そんな中でも集積する。先ほどお話もありましたけれども、農地バンク、受け手がなくなるという懸念があって、そして利用されなくなることがあってのこれからの集約というのはすごく考えていかなきゃいけないのかなと思います。

 特に中山間地域です。中山間地域においては、耕作放棄地がどんどん増えていっている。その中でも、集積するべきと集積すべきじゃないところ、いろいろあると思いますし、もうここは耕作放棄にするという、山に戻すということも考えなければいけないかもしれません。そういった意味で、本当に集積するべきところ、また中山間地域で農業を続けてもらうところ、そういったものをじっくりと見定めていただきたいと思います。

 また、土地改良において、転作奨励が行われております。先日の質問におきましても、地域の実情に応じた様々な内容と御回答いただきました。

 でも、現在も、国も自治体も土地改良では算定効果の向上を目指しておられまして、低い水稲ではなくて野菜とか、広島県ではアスパラガスとかネギとか、こういったものを転作奨励されていますが、実際にもう一回お聞きしたいんですが、算定効果の上がらない水稲から水稲への奨励といいますか土地改良、こういったものもよろしいんでしょうか。野菜じゃなきゃいけないんでしょうか。そういった意味で、ちょっと政府からお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 農業の競争力強化を図るためには、担い手の収益力向上に向けまして、農地の集積、集約化、また野菜等の高収益作物への転換を促進する必要がありまして、これらを実現する農地の大区画化や排水改良を行う圃場整備を推進をしているところでございます。

 圃場整備事業の実施に当たりましては、担い手の収益力向上の観点から高収益作物の導入は重要であると考えておるところではございますが、高収益作物の導入自体を事業の実施要件とはしていないところでございまして、地域での話合いによって策定される営農計画では水稲主体の地区も存在をしているところでございます。

空本委員 ありがとうございます。では、水稲でもよいと。

 野菜だけではなくて、やはり地域の事情、また、例えば川のそばだとかですと大雨が来ると流れてしまう、そしてそういったものは野菜は不向きである、そういうところはやはり水稲でなければならないというふうに地域の方々は大きい声を上げていらっしゃいます。そういった意味で、自治体の方に対しても水稲でもよいというような指導を是非ともお願いしたいと思います。

 また、三月二日、先ほどお話ありましたが、地域の意向に基づく営農計画ということを先ほど発言されておりますが、営農計画の主体的な方々はどういった方々になるんですか。それは、地域、農家なんですか、それとも自治体なんでしょうか。政府からお願いいたします。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 圃場整備事業の営農計画は、事業主体であります県、受益者である農家、農業関係機関が一体となった営農検討組織によって検討することとしているところでございます。こういう、地域におきまして将来の地域営農の方向性を十分に検討いただきまして、受益農家の意向を踏まえた営農計画を策定するということとしておるところでございます。

 地域の課題に丁寧に対応しながら、それぞれの受益農家の意向を踏まえた営農計画の実現に向けまして、事業実施に係る支援に努めてまいりたいと考えております。

空本委員 分かりました。農家さんの意見をしっかりと、やはり農家が一番であります。しっかりと継続していただかなければ、やはり農家の意見を第一に考えていただいた、そういう計画を立てるように、これも自治体の方に指導をお願いしたいと思います。

 最後に、農地リース、先ほど池畑議員の方からもありましたが、民間参入、実際、先日の委員会でも、受け手の幅広い確保に対して、民間参入、これを、やはり幅広く受け手を求めなきゃいけないということを、先ほど政府からもありましたけれども、民間参入する際にやはり要件というのはあるんでしょうか。誰でも入っていいんでしょうか。そこをはっきりとさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

光吉政府参考人 お答えいたします。

 農地のリース方式についてでございます。

 株式会社等の企業は、高齢化や担い手不足が進行する地域などにおきまして農業生産を担う存在として期待できるものでございまして、平成二十一年の農地法改正で農地リース方式での参入を完全に自由化したところでございます。具体的には、農地を適正に利用していない場合に契約を解除する、役員などの一人以上が農業に常時従事する等の場合には農地を借りることが可能となっており、法人についての要件はございません。

 農地リース方式での企業の農業参入の自由化により、現に法改正前の約五倍のペースで参入が進んでおりまして、これを推進してまいります。

空本委員 企業が入るとき、しかしながら、いろいろ様々な障壁があるというふうなことを聞いております。実際のところは、企業の方々が、元々地域の方々でございますが、入る際にやはり障壁がたくさんあるというふうに聞いております。そういった意味で、リース方式も併用しながら、企業が参入しやすいようにこれからも進めていただきたいと思います。

 これで終わります。ありがとうございました。

平口委員長 次に、長友慎治君。

長友委員 国民民主党の長友慎治です。

 早速質問に入らせていただきたいと思います。

 御承知のとおり、土地改良区の組合員の皆様の高齢化が進んでおります。土地改良区の業務内容また会計など、組合員の高齢化、減少が理由で課題を抱えている、また、期待される業務が遂行できない改良区が出ているということが推察されるわけですけれども、まず、共通認識を持つという意味で、農水省で、そのような土地改良区が抱えている課題というものを改めて確認させてください。どのような課題を把握されているのか、伺います。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきましたように、土地改良区の組合員の減少、高齢化が進んでいるという中で、平成三十年改正では、土地改良施設の維持管理や土地改良区の事業運営を確保するために、准組合員制度の導入あるいは総代会制度の見直しによりまして運営体制の強化を図ったところでございます。

 一方で、土地改良区の技術職員が減少、不足をしておりまして、事業の円滑な実施が困難となる土地改良区もございますことから、事業、事務の効率化だけではなくて、事業実施面の支援の強化というものが課題となっているところでございます。

 これまでも土地改良事業団体連合会が技術的指導を行ってきたところでございますけれども、技術職員の不足している土地改良区等に対しましては、連合会のノウハウ、マンパワーを生かしまして、更なるサポートを行えるようにすることが必要と考えているところでございます。

 このため、今般の改正案では、連合会の業務といたしまして、会員から委託を受けて行う土地改良事業の工事を規定をいたしまして、連合会が土地改良区の実施体制を更に強力に支援できるように措置したいと考えているところでございます。

長友委員 連合会の方でいろいろと、これから課題を解決できる受皿にしていこうという取組をされているということは理解しております。

 私が少し心配していることが、土地改良区の業務を担う方々が例えば事故に遭うようなことがないのかということでございます。土地改良区に委託された業務を遂行しようとして、その業務に当たろうとされた方々が、高齢な方を含め、事故に遭ったというような集計等、もしあれば、そしてまた事故の内容を把握していらっしゃるようでしたら、教えていただきたいと思います。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきましたように、土地改良区の職員の方も高齢化されているということもございまして、事業の実施に当たりまして事故に遭うということもあろうかと思いますけれども、私どもとして、現在、その全体について把握したものは特にないところでございます。

長友委員 全体として把握されていない、その裏にきちんと事故が起きていないという裏づけがあれば安心なんですけれども、もしも事故が現場から上がってきていないというようなことであれば、是非しっかりと把握していただきたいと思います。

 改良区の施設管理、人命を第一にしていただきたいということなんですけれども、私がこの質問をさせていただきましたのも、三月一日から春の農作業安全運動が始まっております。その中で、これは改良区の業務というわけではないですけれども、これまでの事故の数という意味では、十万人当たり十・八人で、二〇二〇年の死亡者数が過去最多を更新している、その実態は建設業の二倍、全産業平均の十倍近いというようなことが、農作業という意味ではあるということを理解しております。

 実は、私の母方の父、私の祖父ですけれども、農作業中にトラクターから転落して命を落としたりしたこともあります。そのこともありまして心配しているということで、しっかり現場の安全管理、把握していただきたいと思います。

 次に、基幹的な農業水利施設、農業インフラの相当数が、戦後から高度経済成長期にかけて整備されてきたことから、施設の老朽化が進行しているということをお聞きします。現状、標準耐用年数を経過している施設がどのくらいあるのか、伺います。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 我が国の基幹的農業水利施設の多くが戦後から高度経済成長期にかけて整備をされているということから、標準耐用年数を超過している基幹的農業水利施設の割合がかなり高くなっているという状況でございます。

 具体的には、平成三十一年三月時点で、ダム、取水堰、用排水機場などの施設におきまして約五割、農業用用排水路におきまして約四割が標準耐用年数を超過しているというような状況でございます。

長友委員 ありがとうございます。

 施設の老朽化という部分はこれから非常に大きな課題になると思うんですけれども、それに伴う突発事故の件数というものも増加していないでしょうか。施設の経年的な老化及び局部的な老化が原因の事故の件数、また、どのような事故が多いかについても伺いたいと思います。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 農業水利施設の老朽化に起因いたします突発事故の件数でございます。平成二十年度に三百七十八件であったものが、平成二十五年度には一千三十三件に上るなど、年々増加傾向にあるところでございまして、現在も毎年一千件以上の突発事故が発生しているというような状況にあるところでございます。

 近年では、経年的な劣化及び局部的な劣化が事故の八割を超えているということでございまして、パイプラインの漏水、ポンプ場の設備の故障に起因する事故というものが多くなっている状況でございます。

長友委員 ありがとうございます。

 突発的事故が増えているということで、土地改良施設で生じた突発事故の現地の仮復旧及び機能回復を行う復旧事業、これは土地改良施設突発事故復旧事業ということで手当てしていただいているということで認識はしておりますけれども、年々件数が増えているということで、農業は社会的共通資本だというふうに思っていますので、しっかりと予算を使っていただきまして農業インフラを整えていただき、突発事故が起こらないようにということを強く願いたいと思います。

 土地改良区についてなんですけれども、この先、将来にわたりまして、農業水利施設の老朽化への対応、そして農地の集約、また防災・減災対策、コミュニティーの高齢化の対応など、土地改良区に期待される役割はますます増えていくというふうに認識しております。

 しかし、対応できる範囲にも限界があるということだと思うんですけれども、土地改良区が維持できなくなった集落、地域は代わりに誰が役割を担うことになるのかということにつきまして、政府の見解を伺いたいと思います。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 土地改良区の中には、農業者の高齢化、後継者不足によりまして、農業水利施設等の維持管理が困難となっているというような地区もあると承知をしているところでございます。

 このため、小規模土地改良区や受益地が重複をいたします土地改良区の合併を推進するというような観点から、土地改良区体質強化事業によりまして、合併計画策定費等を助成をいたしまして、土地改良区の運営基盤の強化というものを後押しをしているところでございます。

 他方、残念ながら解散を予定しているというような小規模な土地改良区もあるというような状況でございますので、今般の組織変更制度によりまして、土地改良区の形態によらずとも施設の適切な管理が可能な場合には、都道府県知事の認可を得て組織変更できるというような規定も提案をさせていただいているところでございます。

長友委員 ありがとうございます。

 運営基盤を強化していくために、合併したり、連合会の皆様にお願いしていくということなんですけれども、今現状、目先の課題をこなすことにどうも精いっぱいのような印象を持ってしまいます。この先十年、二十年先、また三十年先に、土地改良区が今まで担ってきた役割を本当に既存の枠組みで担うことができるのか、しっかりと計画を立てていかないといけないと思っているところでございます。

 続きまして、農林水産省が受け手がいない農地を計画的に林地化するための支援に乗り出しているということを理解しております。周縁部の農地に植林をしまして、有害鳥獣の緩衝帯として機能させるという取組を始められます。その中には土地改良区にも期待する役割があると思います。

 改めて、この林地化について、地元の皆様にも説明をする意味で、土地改良区にどのような役割を期待しているか、教えていただけますでしょうか。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘をいただきました林地化でございますけれども、特に中山間地域におきましては、荒廃農地化している、あるいは荒廃農地化のおそれがあるような農地というものもあるところでございます。

 こういうような地域につきまして、地域ぐるみで農地の最適化に向けた話合いを行いまして、保全すべき農地を明確化するとともに、荒廃農地やそのおそれのある農地の有効活用ということで、その一つとして植林というものも考えられるのではないかということで、令和四年度予算の中でも、保全すべき農地の周辺部で営農することが困難な農地に対しまして、計画的な植林も可能となるような支援を拡充をしたということでございます。

 本対策につきましては、やはり地域ぐるみで取り組んでいただくということが非常に重要でございます。したがいまして、市町村、農業委員会、JA、そして土地改良区といったような、こういうような皆様方が事業主体となっていただきまして、その中でも特に地権者や耕作者とのつながりが深い土地改良区におかれては、地域の話合いにおける連絡調整など、これらの植林等を含みます対策が円滑に推進するための役割というものを期待をしているところでございます。

長友委員 ありがとうございます。

 林地化することによりまして、農地がなし崩し的に放棄されるのを防いで、周辺の農地の維持につなげていくというその取組は非常にいいと思うんですけれども、いわゆる地域の話合いをしっかり丁寧にして進めていただきながら、それぞれの負担がないように取組を推進できればというふうに思っております。

 また、次の質問をさせていただきたいと思います。

 みどりの食料システム戦略、これから政府が進めていきますけれども、土地改良区の存在がそのみどりのシステム戦略にどのように影響していくのかということを御質問したいと思っております。

 例えば、土地改良区の中に有機農業をやりたいというような生産者、農家さんがいる、増えたというときに、土地改良区の皆様の意見が全員一致しなければ、有機にしようというふうにならないと思います。今、政府は、みどりの食料システム戦略の中で、二〇五〇年までにオーガニック市場を拡大して、耕地面積に占める有機農業の取組面積を二五%に増やそうというふうに野心的な目標を立てています。

 先ほど池畑委員からも御指摘ありましたとおり、耕地面積、今四百万ヘクタールのうち、土地改良区が半分の二百二万ヘクタールを管理していると。もし、耕地面積に占める有機農業の割合を増やそうといったときに、その土地改良区の皆さんが積極的に有機農業に取り組んでもらわなければ、政府の掲げる目標というものは実現が難しいというふうに私は考えているんですけれども、農水省の見解として、土地改良区の皆様にどのように協力していただくのか、見解を伺いたいと思います。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 みどりの食料システム戦略を踏まえまして、農業農村整備事業におきましては、農地の大区画化等によります自動走行農機等の導入あるいはICT水管理の導入といったスマート農業の推進を支えることを通じまして、通常と比べて労力を要します有機農業あるいは環境保全型農業の取組というものを後押ししてまいりたいと考えております。

 また、小水力発電等の再生可能エネルギーの活用でありますとか用排水機場のポンプ設備の省エネルギー化、こういったものも推進することによりまして農業分野の温室効果ガス削減にも貢献していきたいと考えております。

 有機農業の目標達成に向けましては、生産の前提となります資材等の調達から加工、流通、消費に至るまで、関係者が理解を深めまして、長期間にわたって環境負荷低減の行動変容を促すということが大変重要でございます。

 土地改良区には、地域のコミュニティー機能を活用しながら、土地改良事業によりまして整備された施設の維持管理のみならず、有機農業の取組に係る地域の合意形成にも積極的に対応していただくということを期待をしているところでございます。

長友委員 土地改良区の皆様にも積極的に有機農業に取り組んでいただくということでございますけれども、一方で、耕地面積をそれだけ有機にしたときに、政府が掲げる食料自給率をしっかりと達成できるのかという不安等もあったりします。

 そのような中で、土地改良区の皆様と一緒に良好な営農環境の維持をしていきまして、地域コミュニティーの維持の強化、農山漁村の活性化、自立化に取り組んでいくということを私もしっかりと見守って、土地改良区の皆様と一緒に取り組めればというふうに思っております。

 時間は早いですけれども、私の質問はこれで終わりたいと思います。ありがとうございます。

平口委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 土地改良法改正案について質問します。

 最初に、急施の防災事業について伺います。

 防災重点ため池だけでも五万五千か所、全国で急施の豪雨対策が必要な用排水施設はたくさんあるわけであります。農業用用排水施設を防災事業として農家の費用負担なく実施できる点には賛成です。

 一方で、懸念されるのは、農家の同意を求めないことであります。これまで実施してきた耐震化の急施の防災事業について、実施後に賦課金が増えたとか、農家に不利益が生じたような事例はありますでしょうか。

 続けてもう一問伺います。

 この事業の実施は、今度、水害も対象になりますけれども、第三条資格者の利益が侵害されることのないようにとの条文上の縛りがあります。例えば、事業実施後に施設の維持管理費を負担する経常賦課金が上がるようなことはないのでしょうか。説明をお願いします。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、急施の防災事業、これまで実施をしてきた耐震化についてでございます。

 これにつきましては、本来の機能を維持するものでございまして、維持管理費用に変更が生じるようなことはないということでございますので、これまで実施してきた急施の防災事業による施設の耐震化につきまして、事業実施後に農業者に不利益が生じるような事例というものは確認をしていないところでございます。

 また、今回改正を御提案を申し上げております豪雨対策についてでございます。

 これは、ため池の貯水容量の変更でございますとか、あるいは排水機能の向上等に伴う維持管理費の増加等、農業者の営農への影響が生じることも想定をされ、そのような場合には農業者の同意なく工事を行うことは適当ではございませんことから、急施の豪雨対策につきましては、農業者の権利又は利益を侵害するおそれがないと認められるものに限るとしているところでございます。

 このため、急施の防災事業によります豪雨対策の実施後に、施設の維持管理費が増大し、土地改良区の経常賦課金が増えるということは想定されないところでございます。

田村(貴)委員 農地中間管理機構関連事業の拡充について聞きます。

 法案では、農業者の申請や同意なく、都道府県の判断で排水路などの水利施設、農業用道路の整備を実施するとされています。

 事業終了後、維持管理費の負担、例えば組合員の経常賦課金が大幅に増えるようなことはあるんでしょうか、ないんでしょうか。いかがでしょうか。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 農地中間管理機構関連事業でございますけれども、事業実施に当たりまして、農業者の申請、同意を不要としておりますが、これは、その一つには、農地中間管理機構が農地の所有者と賃貸借契約を結ぶ際に、あらかじめ本事業が実施される場合があることを説明をしておりますこと、また、事業計画の策定に当たりまして、農業者に対する事業計画の公告縦覧、審査請求、裁決といった手続が設けられておりますことから、農業者の意向が反映される仕組みとなっているところでございます。

 本法律案によりまして、農地中間管理機構関連事業の対象に農業用用排水施設、農業用道路等の整備が追加されるところでございますが、収益性の向上に相当程度資すると見込まれることという要件は維持することとしているところでございます。

 本事業によりまして、農業用用排水施設等の整備に伴います維持管理費が増加をするということはあり得ることかと思いますけれども、一つには、事業実施に当たりまして、農業者の意向確認をしておりますこと、また、事業後に収益性の向上が相当程度見込まれるということ、また、事業着手に当たりましては、施設の維持管理費用の増減を含む事業の全ての効用が全ての費用を賄うということが必要とされているということから、結論的には、農業者が負担できないような経常賦課金の増加というものは想定をしていないところでございます。

田村(貴)委員 現行の農地整備事業でも農業用用排水施設の整備は行えます。その補助率は国が五割で、農家の負担が生じることになります。今度の中間管理機構関連事業であれば、費用負担なしに事業が行えることになります。

 中間管理機構関連事業と促進事業との間にこのような違いがあるのはなぜですか。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 通常の農地整備事業でございますけれども、これは、土地改良法の原則に基づきまして、農業者の申請があった農地を対象にしまして、都道府県等が農業者の同意、費用負担をもって事業実施をするというものでございます。

 これに対しまして、農地中間管理機構関連農地整備事業は、基盤整備が不十分な農地は担い手が借り受けないといったような状況も踏まえまして、機構による担い手への農地集積、集約化を加速化することを目的といたしまして、長期の農地中間管理権を設定するなどの要件を満たした農地を対象にした事業ということでございまして、農業者からの申請によらず、また、同意や費用負担も求めないということでございます。

 このように、土地改良事業におきましては、同意とか費用負担が原則であるわけでございますけれども、中間管理機構関連事業につきましては、一定の要件の下に事業を進めるということを前提として、同意や費用負担を求めないということにしているところでございます。

田村(貴)委員 一般社団法人への組織変更についても質問します。

 土地改良区が解散しても行政からの補助や支援が受けられるような仕組みを残しておくことは必要だと私たちも思います。一般社団法人となった場合に、直接支払い交付金や多面的機能支払交付金の受皿になることも想定されます。

 一方で、法人化や地縁団体となることで、土地改良区が有していた機能が果たされず、例えば、水利施設の管理などがされなくなって地域の農家が困るようなケースは想定されていますか。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 今般の法改正では、小規模で簡素な施設の管理のみを行うなど、土地改良区でなくとも施設の適切な管理が可能な場合に、認可地縁団体等に組織変更できる制度を創設するものでございます。

 このため、地域農業を維持する上で重要な基幹的な施設を管理する土地改良区におかれては、引き続き土地改良区として組織を維持していただく必要がございまして、このような基幹的な施設を管理する土地改良区につきましては、組織変更制度の対象にはならないと考えております。

 また、組織変更は都道府県知事の認可を必要といたしまして、組織変更後も施設管理を行うことを新組織の事業に位置づけるなど、施設の適正な維持管理が継続されるということを確認をした上で、認可をするということでございます。

 さらに、組織変更後の法人が小規模な基盤整備あるいは施設の整備、補修を行う場合には、国の補助事業を活用することが可能でございます。国としても、適切に維持管理が継続できるように、地方公共団体また土地改良事業団体連合会と連携をしながら、しっかり支援していきたいと考えております。

田村(貴)委員 牧元局長、急施の防災事業について、もう一問伺います。

 急施の防災事業を行う上で、自治体の負担についてはどうなるんでしょうか。自治体は地方債の発行ができると思いますけれども、これは交付税負担でどれだけ措置されるのか。自治体の財政負担について、どういうことになっていくのかについても説明をいただけますか。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘ございました、防災事業に対する負担についてでございます。

 都道府県営によります防災重点農業用ため池の地震、豪雨対策の場合、国庫補助残の五〇%につきまして、都道府県三四%、市町村一六%が標準的な負担割合となるところでございます。

 これらの負担に対しまして、基本的には、充当率九〇%、交付税措置率二〇%の公共事業等債が適用されるところでございますけれども、一つには、防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策に位置づけられた事業につきましては、充当率一〇〇%、措置率五〇%、また、防災重点農業用ため池緊急整備事業によりまして実施される場合には、充当率九〇%、措置率四〇%と、通常よりも相当有利な地方財政措置が講じられているところでございまして、地方自治体の負担軽減を図っているところでございます。

田村(貴)委員 次は、大臣に是非お答えいただきたいと思うんですけれども、土地改良区域内で畑作転換した場合について伺います。

 畑作転換した組合員は、地区除外決済金の納付が義務づけられ、決済金を徴収されることになってまいります。これは、土地改良区の事業を維持していくためであります。こうした畑作転換した農家にとって、水田活用直接支払い交付金は、賦課金の負担を補う役割を果たしてきています。

 しかし、水田活用交付金は、来年度から五年間で一度も水張りしない水田には、二〇二六年以降、転作交付金が支払われないというふうに農水省は今言っています。そうなれば、転作要請に応えた農家を苦しめると同時に、土地改良区の経営にも大きな影響を与えることにはなりませんか。この問題はどうやって解決されますか。

金子(原)国務大臣 水田を畑地に転換することにより、農業用水の利用や排水を行わなくなる場合は、土地改良区の受益地から除外されるため、地域除外決済金を支払う必要があります。

 ただし、水田を畑地に転換した場合であっても、畑地かんがい用に農業用水を利用する場合や、雨水処理等のため土地改良区が管理する排水路を利用する場合は、引き続き土地改良区の行う土地改良施設の維持管理事業の利益を享受するため、地域除外決済金の支払いは生じません。

 農林水産省といたしましては、土地改良事業への影響を含めて、現場の課題を把握、検証しつつ、必要な対応を検討してまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 つまり、ケース・バイ・ケースということですかね。決済金が徴収される場合もあるわけですよね。そして、農家にとってみたら、やはり水活交付金がなくなるというのは、大変な重荷になってくると言わなければなりません。畑作転換しても、価格が安過ぎて営農が成り立たない現状があると多くの農家が言われています。

 そして、私は農家からこんな声も聞きました。決済金を、年間の賦課金の十年分とか二十年分とか、数百万円という単位で支払う必要があると。この負担はやはり重いですよ。

 大臣、水田活用支払い交付金のカット、この問題をやはり見直すべきか、あるいは、新たな支援を行わないとこうしたケースは解決できないと思います。どちらかの支援をしなければいけないと思いますけれども、私は農水省に強く求めたいと思います。いかがでしょうか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の水田活用直接支払い交付金の今回の見直しでございますが、畑作物の生産が定着している農地は畑地を促す一方で、水田機能を有しつつ、麦、大豆等の転換作物を生産する農地につきましては、これらの作物のブロックローテーションを促す、そういう観点から、現場の課題を検証しつつ、今後五年間に水張りが行われない農地につきましては、交付の対象としない方針としているところでございます。

 各地において、やはり、今後の水田をどう利用していくかを検討していただく中で、水稲とのブロックローテーション、これをどうしてもできない、そういう困難な状況があるとすれば、その現場の課題、これを明らかにして、その検証を行っていく考えであります。

田村(貴)委員 営農の現場は、立ち止まることはできないんですよね。次の作物を作っていかなければ、経営が成り立たないし、生活もできない。この先に予定されているのは、五年後に交付金を打ち切りますよと言われることですよ。

 牧草にしたって、多年草については、これまた交付を下げる。下げる、カットするだけは決まっておって、そして、起こる事象については、今後検証していく、検討していく。これは何の安心の担保にもならないじゃないですか。だから、私は、やはりこの問題は一回白紙に戻すか、別の支援をしなければいけないと言っているわけであります。

 是非とも、これは農水省で、農家に対して展望、そして希望の持てる、転作は、畑作は、推奨してきたのは農水省なんですから、この問題はちゃんと解決するべき道筋を立てていただきたいというふうに思います。

 最後に、この審議の後、起草が予定されている特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法について質問します。

 災害が多くて農業生産も不利な特殊土壌の保全と農業生産力向上を目的とする本法の延長、改正は必要であります。

 ちょっと時間がありませんので私の方で紹介しますけれども、この特殊土壌地域における土砂災害発生回数、これは政府の資料によっても、平成二十四年から平成二十八年の平均をもっても、特殊土壌全域指定五県平均で五十か所、全国平均で二十二か所、倍以上の開きであります。平成二十九年―令和一年平均においても、特殊全域指定五県平均は八十三回、そして全国平均は四十九回。やはり、この特殊土壌地域における土砂災害というのは、頻繁な確率によって起こっているということであります。

 特土全域指定の五県のうち、九州は鹿児島と宮崎の二県が指定されています。私は、九州で活動する立場の者として、今の森林の施業の在り方が大変心配になってきているところです。

 皆伐が施業の中心になっています。しかも、施業が荒い。大雨時に水みちを作る路網はそのまま放置されている。端材も放置されている。植林、再造林はしない。こういった山は、九州の出身の議員さんもおられるけれども、こういうのはたくさん散見されるんですよ、最近。もうびっくりするような荒い施業が行われています。

 大臣、特殊土壌地域においては、なおさら水害やあるいは土砂災害の温床になるのではありませんか。皆伐至上主義、皆伐方針をやめて、山の保水力を維持する丁寧な間伐がとりわけ特殊土壌地帯においては必要であると考えますけれども、いかがですか。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年六月に閣議決定をいたしました森林・林業基本計画におきまして、林業経営に適した森林につきましては、多様な伐期での伐採と植栽による確実な更新を図るとともに、急傾斜地の森林など林業経営に適さない森林については、広葉樹の導入などにより針葉樹と広葉樹の混交の育成複層林に誘導するなど、多様な森林づくりを推進することとしております。

 一方で、近年の豪雨災害等による皆伐跡地における崩壊につきましては、伐採、搬出のために一時的に設置された集材路の周辺で発生しているケースが多く確認されているところでございます。このため、林野庁において、集材路の適切な設置を行うための指針を作成をし、その周知を図りますとともに、令和四年四月からは、その指針の内容を市町村森林整備計画に盛り込むこととし、伐採造林届の提出時に市町村等が適切な指導を行うことができる仕組みとすることとしたところでございます。

 さらに、伐採後の再造林が確実に行われるよう、令和四年度予算においても様々な措置を盛り込んでおるところでございます。

牧元政府参考人 先ほどの答弁の中で、防災重点農業用ため池緊急整備事業により実施された場合は措置率四〇%と発言をいたしましたが、正しくは四五%でございました。おわびして訂正をいたします。

平口委員長 申合せの時間が経過しております。

田村(貴)委員 はい。

 林野庁長官、言われたことはそうなんだけれども、実際はそうなっていないということを私はずっと見てきているわけですよ。

 また議論したいと思います。今日はこれで終わります。

平口委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗でございます。

 私も、土地改良区で今まで議論に出てきました構造的な問題、高齢化あるいは後継者が少なくなっているという議論をしていきたいというふうに思います。

 とりわけ、農村地域は農村地域で大変やというふうに思いますけれども、都市部の土地改良区も様々な課題を抱えていて、予算が限られている中、人手もだんだん少なくなっていき、高齢化も進んでいる、こういう中で、日々頭を悩ます機会が多くなっているというのが私の地元の京都市でも言われています。

 具体的に、今日は用排水路、農業用用水路の件なんですが、一級河川が流れている、桂川というところがありまして、そこから農業用水路を引っ張って、これは、太秦というところとか、いわゆる都市近郊の地域を流れるわけです。ですから、割と大きい道路の横を通り、そして、住宅密集地域の中を流れる。当然、住宅の排水の水の受皿にもなっていますし、やはり、昨今の大雨、集中豪雨のときに、水があふれて道路に水が入っていったり、あるいは床下浸水に、住宅密集地域なので、なったりしている。

 こういう状況の中で、先ほど、今回の土地改良法改正の急施の防災事業という話が出てきましたが、話を聞いているとため池の話ばかり出てきているんですが、例えばこういう規模の小さめの用水路みたいなところも対象になるのかどうか、まずお聞きしたいというふうに思います。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 本法律案で拡充いたします急施の防災事業でございますが、ため池のほか、ポンプ場、用排水路などの農業用用排水施設を対象にいたしまして、脆弱性評価の結果、安全性が確保されていないことが判明したものにつきまして、特例的な手続によりまして迅速に事業を実施をするというものでございます。

 このため、農業用用水路でありましても、このような脆弱性評価の結果、安全性が確保されていない、改修などの対策を行う必要があるというようなことで判断された場合につきましては、急施の防災事業の対象となり得るところでございます。

北神委員 こういう農業用水路も対象になるということなんですが、脆弱性の評価とかあって、今までの議論を聞いていると、かなり甚大な被害を及ぼすような、そういったおそれのあるような、そういった対象を考えておられるというふうに思いますので、恐らくこういう用水路はそこまではないというふうに思います。

 ただ、やはり、年々、土がたまったり砂がたまったりしている。当然、土地改良の精神の下で、地元の農家の人たちが年に二回、百人ぐらい、総出で川掃除というものをするわけですね。私も現場を見に行きましたけれども、これはなかなか、土が物すごくかちんかちんになって、私でも多分難しいと思いますけれども、もう平均年齢が七十代以上になって、非常にみんな困っている。なかなか実際に土をすくうことができないような状態です。

 こうなっていくと、今現状どうなっているかというと、水の量も大分減ってきている、やはり川底に泥とか砂がたまっていますので。それからまた、先ほど申し上げたように、台風のときとか大雨のときには水があふれていく。ちょっと低地のところは、毎回水があふれるような状況になっています。

 多分、今回の法律改正で急施の防災事業というのはこういうものは含まれないというふうに思って、維持管理そのもの、これは維持管理ですから地元の土地改良区の皆さんでやるのが当然だということだというふうに思うんですが、これは構造的な問題で、私の京都市内だけじゃなく、多分、ほかの都市部でも同じような問題、あるいは田舎の方でも同じような問題を抱えていて、維持管理といっても、ここまで高齢化が進み、ここまで人が少なくなっていくと、どうやって対応していくのかということも併せて考えないといけないというふうに思います。

 今回の法案には反映されていないかもしれませんけれども、これは、五年後、十年後、かなりの大きな問題になると思いますけれども、農林水産省として、具体例を申し上げましたけれども、こういう場合、どうしたらいいんでしょうか。

牧元政府参考人 お答えを申し上げます。

 今御指摘いただいたような、確かに、農業用水路に泥がたまっているということ、これを取り除くということについては、恐らく通常の管理行為ということでございますので、委員からお話があったように、今回の急施の防災事業の対象にはならないのではないかというふうに考えておりますが、ただ、いずれにいたしましても、農業用水路をしっかり機能が発揮できるように維持をしていくということは大変重要でございますので、こういった農業用水路の泥上げとか草刈りとか、施設の整備、補修といったような施設の管理に関しましては幾つか支援の手段がございます。

 一つには、多面的機能支払いというのがございまして、これは、地域の皆様方が共同でまさに水路の維持管理活動をやる、こういうことについて支援するお金でございまして、全国的には、全国の農地四百四十万ヘクタールの半分以上でお取り組みいただいている、大変広範囲にお取り組みをいただいている事業でございますけれども、こういった多面的機能支払い金でございますとか、あるいは、土地改良施設維持管理適正化事業というものがございます。これも、小規模な土地改良区が集まりまして、それぞれお金を積み立てて、国庫の補助金も出しながら、順番に施設の維持、補修をやっていくというような事業もございまして、これもかなり多くの土地改良区においてお取り組みいただいているものでございます。

 こういった事業によりまして支援をしているところでございまして、今後とも、これらの事業を活用いたしまして、農業用水路、委員から御指摘ありました都市近郊のそういった水路も含めまして、農業用水路の機能が長期にわたって適切に発揮されるように支援してまいりたいと考えております。

北神委員 どうもありがとうございます。

 そういう制度があるのは非常に心強いというふうに思います。私、まだ検証していませんけれども、また地元の方々にもお伝えしていきたいというふうに思っています。

 要は、大臣、彼らが神経を一番使っているのは、彼らにしてみたら農業のインフラの維持管理ということなんですが、どうしても、都市近郊型になりますと、住民の人たちと農家の人たちの利害が対立する可能性が出てくるわけですね、大雨のときとか、集中豪雨のときとか。そういうときに、彼らは、農業のことだけじゃなく、一方で、都市住民、農業と直接関係ないような方々の安全のことも併せて考えないといけない。これが非常にしんどいなということですので、今局長さんからそういった支援策があるということを聞いて、ちょっとそれもまた私らも検討していきたいというふうに思っています。

 最後に、これはこの話とは直接は関係ないかもしれませんけれども、構造的な問題として、先ほども何回も出ています、やはり小規模になっていって、場合によってはこの土地改良区というのが維持できなくなっていく。そういうときに、例えば解散とかそういったこともあり、今回の法案の中にも組織変更の手続というものが規定されるということになっているというふうに思います。

 ただ、例えば解散しても、今申し上げたような用水路というのは残ってしまうわけですよね。今まで土地改良区がこれを維持管理していて、住民もそれである程度の安全が確保できたとしたとしても、解散してほったらかしになっちゃう。これを農林水産省の職員の方にお話をしたら、そういった場合、土地改良区の中でお話をして、それで意見がまとまれば、例えば京都市、自治体に買ってもらうとか、そういった方法があるという話をされました。

 私は、例えば、今、京都市はかなり財政が厳しい状況で、今はそんな買う状況にはないといって断られたときにどうなるのかということについて、私の知っている範囲では、土地改良法上、解決策がなくなって、今の具体例でいえば農水路がそのまま放置されるような状況になるんじゃないかと懸念するんですが、いかがでしょうか。

金子(原)国務大臣 小規模な土地改良区が解散する場合は、合併や市町村への施設の譲渡により土地改良施設の適切な維持管理を継続することが一般的であります。

 しかしながら、合併や市町村への施設移管が困難な場合は、一般社団法人や認可地縁団体が施設の所有、管理主体として地域農業の維持に重要な役割を担っていると認識をいたしております。

 このような状況を踏まえまして、今般の法改正によりまして、解散を予定している小規模な土地改良区が認可地縁団体等への組織変更を選択する場合の手続を簡素化することにより、土地改良施設の適切な維持管理を後押ししてまいる考えであります。

北神委員 大臣、ありがとうございます。

 今、一例を、地元の例を申し上げたわけですけれども、全国的にも結構そういう声が出てきていますので、今回の法案はそれでよしとして、やはり今後の構造的な課題についても、どのように、それでも農業を守り、農地を守り、こういう重要な農業のインフラを守るか、こういったことを共に考えていきたいというふうに思っていますので、よろしくお願いしたいというふうに思います。

 もう十二時を過ぎましたので、終わりにしたいというふうに思います。

 ありがとうございます。

平口委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

平口委員長 これより討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、土地改良法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

平口委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

平口委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、簗和生君外六名から、自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブ、日本共産党及び有志の会の七派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。金子恵美君。

金子(恵)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文を朗読して趣旨の説明に代えさせていただきます。

    土地改良法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  最近の農業・農村を取り巻く情勢変化の中で、土地改良事業が、良好な営農条件を備えた農地・農業用水の確保と有効活用を通じて、農業の生産性の向上、農村地域の活性化、国土の保全、防災・減災等に果たす役割は一層重要なものになっている。

  よって政府は、本法の施行に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。

      記

 一 農業者の申請によらず、費用負担及び同意を求めずに実施する急施の防災事業の拡充に当たっては、地域の農業者の理解と納得を得た上で事業が実施されるよう、丁寧な説明を行うとともに、事業要件の透明性を確保し、適切な運用を図ること。

 二 農地中間管理機構関連事業の拡充に関連して、都道府県が、当該事業を実施するに当たっては、各市町村において実質化の取組が進められている人・農地プランの推進に資するよう引き続き配慮するとともに、適切に整備された農用地が確実かつ円滑に担い手に貸し付けられるよう指導・助言を行うこと。

 三 土地改良区の組織変更制度の創設に当たっては、土地改良施設の管理は土地改良区が行うことが原則であることを踏まえた上で、制度の対象となる土地改良区及び土地改良施設の基準を明確に示すこと。また、土地改良区が一般社団法人又は認可地縁団体に組織を変更した場合には、地域の農業者が安心して営農を継続することができるよう、土地改良施設の維持・管理に係る支援を含め、必要な措置を講ずること。

  右決議する。

以上です。

 何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。

平口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

平口委員長 起立総員。よって、本法律案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣金子原二郎君。

金子(原)国務大臣 ただいま法案を可決いただきましてありがとうございました。附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

平口委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

平口委員長 次に、農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、各党間の協議の結果、お手元に配付いたしておりますとおりの起草案を得ました。

 本起草案の趣旨及び内容につきまして御説明申し上げます。

 特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法は、特殊土壌地帯の保全と農業生産力の向上を図ることを目的として、昭和二十七年四月、議員立法により五年間の時限法として制定され、以後十三度にわたり期限延長のための一部改正が行われました。これにより、今日まで七十年間にわたり、特殊土壌地帯における治山、河川改修、砂防、かんがい排水、農道整備、畑作振興などの事業が実施されてまいりました。

 これらの事業により、特殊土壌地帯における災害防除と農業振興の両面において改善がなされ、本法に基づく対策は地域住民の生活向上に貢献してきたところであります。

 しかしながら、台風の襲来や、近年の短時間強雨の発生頻度等が増加する中、依然として、特殊土壌地帯において大きな被害が発生していること、農業上不利な土壌や地形条件を有している中、地域の特色を生かした競争力のある農業振興、多面的機能の維持、発揮等を図る必要があることなど、今なお対応すべき多くの課題に直面しております。

 これらの課題に対応し、特殊土壌地帯の振興を図っていくためには、引き続き本法に基づく対策を強力に推進していく必要があります。

 こうした観点から、本案は、所期の目的を達成するため、本年三月三十一日をもって期限切れとなる現行法の有効期限を更に五年間延長して、令和九年三月三十一日までとするものであります。

 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。

    ―――――――――――――

 特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

平口委員長 この際、本起草案につきまして、衆議院規則第四十八条の二の規定により、内閣の意見を聴取いたします。農林水産大臣金子原二郎君。

金子(原)国務大臣 本法律案の御提案に当たり、委員長及び委員各位の払われた御努力に深く敬意を表するものであります。

 政府としては、特殊土壌地帯の現状に鑑み、本法律案については特に異存はないところであります。

 この法律案が御可決された暁には、農林水産省といたしましては、関係府省と連携を図りながら、その適切な運用に努め、特殊土壌地帯対策を一層推進してまいる所存であります。

 委員長始め委員各位の御指導、御協力を引き続きよろしくお願い申し上げます。

平口委員長 お諮りいたします。

 特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案起草の件につきましては、お手元に配付いたしております起草案を本委員会の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

平口委員長 起立総員。よって、本案は委員会提出の法律案とするに決定いたしました。

 なお、ただいま決定いたしました法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る十七日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十二分散会


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