衆議院

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第5号 令和4年3月23日(水曜日)

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令和四年三月二十三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 平口  洋君

   理事 江藤  拓君 理事 高鳥 修一君

   理事 宮下 一郎君 理事 簗  和生君

   理事 金子 恵美君 理事 緑川 貴士君

   理事 空本 誠喜君 理事 稲津  久君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      上田 英俊君    尾崎 正直君

      加藤 竜祥君    神田 潤一君

      北村 誠吾君    坂本 哲志君

      高見 康裕君    武井 俊輔君

      中川 郁子君    野中  厚君

      長谷川淳二君    平沼正二郎君

      古川  康君    梅谷  守君

      神谷  裕君    小山 展弘君

      後藤 祐一君    佐藤 公治君

      渡辺  創君    池畑浩太朗君

      住吉 寛紀君    金城 泰邦君

      庄子 賢一君    長友 慎治君

      田村 貴昭君    北神 圭朗君

    …………………………………

   農林水産大臣       金子原二郎君

   内閣府副大臣       赤池 誠章君

   文部科学副大臣      池田 佳隆君

   農林水産副大臣      武部  新君

   農林水産大臣政務官    宮崎 雅夫君

   政府参考人

   (消費者庁政策立案総括審議官)          村井 正親君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           淵上  孝君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官)  武井 貞治君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         水野 政義君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)       青山 豊久君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           小川 良介君

   政府参考人

   (農林水産省輸出・国際局長)           渡邉 洋一君

   政府参考人

   (農林水産省農産局長)  平形 雄策君

   政府参考人

   (農林水産省畜産局長)  森   健君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  光吉  一君

   政府参考人

   (林野庁長官)      天羽  隆君

   政府参考人

   (水産庁長官)      神谷  崇君

   農林水産委員会専門員   梶原  武君

    ―――――――――――――

三月二十二日

 家族農業を守り、食料自給率の向上を求めることに関する請願(渡辺創君紹介)(第五六二号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第五八三号)

 同(笠井亮君紹介)(第五八四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第五八五号)

 同(志位和夫君紹介)(第五八六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第五八七号)

 同(田村貴昭君紹介)(第五八八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第五八九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第五九〇号)

 同(宮本徹君紹介)(第五九一号)

 同(本村伸子君紹介)(第五九二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案(内閣提出第三二号)

 植物防疫法の一部を改正する法律案(内閣提出第三三号)


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     ――――◇―――――

平口委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案及び植物防疫法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官水野政義君、大臣官房技術総括審議官青山豊久君、消費・安全局長小川良介君、輸出・国際局長渡邉洋一君、農産局長平形雄策君、畜産局長森健君、経営局長光吉一君、林野庁長官天羽隆君、水産庁長官神谷崇君、消費者庁政策立案総括審議官村井正親君、文部科学省大臣官房審議官淵上孝君及び厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官武井貞治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平口委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。尾崎正直君。

尾崎委員 どうもおはようございます。高知二区選出の尾崎正直でございます。

 農林水産委員会では初質問ということでございます。まずは、どうぞよろしくお願いをいたします。

 それでは、みどりの食料システム法案ほかにつきまして質問させていただきたいと思います。

 本法案の背景となりますみどりの食料システム戦略、こちらは大変多様かつ重要な意義を持つ戦略だと思っております。

 例えば、第一に、環境負荷の低減を図って農業の持続可能性を確保するとともに、世界的な環境問題への貢献を図るという意義がありますし、第二に、現状でも、基幹的農業従事者の四割が七十歳を超えているという現状の中で、今後更に生産者の一層の減少が予想される中、イノベーションによって生産性の向上を図っていくという意義が、そしてまた、第三に、人口減少に伴って国内消費の減少が見込まれる一方で、国際的に環境負荷低減の流れがある中で、我が国の農林水産物の国際競争力を確保し、輸出を増やし、国産品への需要を増やすという意義、更に言えば、第四に、海外依存度の高い化学肥料などの使用量を減らして経済安全保障に資するという意義、こういうものもあるのだろう、そのように考えられるところです。

 更に言えば、環境負荷の低減ということと生産性の向上を両立させる技術、産業を新たに開発して、新たな成長産業をつくり上げていく、そういう意義も大きいのではないか、そのように考えるところです。

 我が国の農業、関連産業の将来を何十年単位で展望した際に、このみどりの食料システム戦略の遂行というのは非常に重要であって、そして、この戦略の実行について政府の先々に至るまでの明確なコミットメントを確保するものとして、本法案の意義というものは大変大きなものがある、そのように考えるところであります。

 その上で、ただ、一方で、このみどり戦略については、厳しい状況にある農業者の皆様に更なる負担を課すものだとか、更に言えば、有機農業の普及などについて言えば、生産量減を補うだけの価格上昇を実際に伴うのかとか、消費者の理解を得られるのかとか、様々な不安であるとか消極的な意見も伺うところであります。

 こうした中で、本法案の第二章、国が講ずべき施策の最初の条文である第七条に、食料システムの関係者の理解の増進ということが掲げられていることは至極ごもっともなことだ、そのように考えるところです。

 関係者の不安の声も聞こえてくる中で、本法案の背景、その意義について広く国民の理解を得る努力を徹底する必要があると考えるところでありますけれども、政府の今後のお取組についてお伺いをいたします。

金子(原)国務大臣 尾崎委員も地方自治体の代表でございましたので、地域の問題についてはよく御存じと思いますので、またこれからもいろいろと御指導いただきたいと思っております。

 お尋ねの本法律案は、みどりの食料システム戦略に掲げた環境と調和の取れた食料システムの確立を図ることを目的としていますが、そのためには、農林漁業者のみに負担をかけるのではなく、食品事業者や消費者など、幅広い関係者に趣旨を御理解いただき、関係者が一体となって環境負荷低減に貢献していくことが重要であると考えております。

 このため、本法律案では、第三条の基本理念におきまして、関係者の理解の下に連携をすることを規定した上で、第七条の国が講ずべき施策において、関係者の理解の増進を図っていく旨を位置づけたところであります。

 生産現場などの関係者の方々にやってみようと思っていただくことが全ての出発点になるというふうに考えております。私も、いろいろな現場を経験してまいりましたので、いろいろな施策をこれから推進していくためには、現場の理解とそれから協力が大変必要だというふうに思っております。事務方にも、常々、法律を作っても終わりではなく、現場の声をよく聞きながら、寄り添いながら、関係者と一体となって課題の解決や政策の推進に努めてまいりたいというお願いをしているところでございます。

尾崎委員 大臣、どうもありがとうございました。

 御指摘のように、本当に、生産者、消費者の皆様含め、多くの皆様の御理解を得て取組を進めていくということが重要であろうかということであります。その中でも、この御理解を得るためにも、それぞれの取組が環境負荷の低減にどれだけの効果を持つかということについてやはり見える化する、このことが大事だろう、そのように考えるところです。また、このことは、みどり戦略をPDCAサイクルをしっかりと回して着実に実行していくために、その基礎となるデータを示すものとしても重要だと考えるところであります。

 この点、第十四条に掲げられております評価手法等の開発ということは極めて重要だと思います。しっかりと取り組むべきことだと思うわけでありますが、今後の展開についてお伺いをさせていただきます。

武部副大臣 委員御指摘のとおり、見える化というのが大変重要だと思っております。

 環境と調和の取れた食料システムを確立するためには、生産、加工、流通、そして販売、それぞれの段階で、関係者の皆様方に環境負荷軽減の取組を理解していただいて、そして行動変容していただくということが大事になってまいります。

 特に、需要拡大する上で、消費者の理解と支持を得て、そして選んでいただくということが極めて重要ですから、省エネや化学肥料の削減など、供給側の努力が的確に評価されて、分かりやすい形で消費者に伝わることが大変重要だと認識しております。

 このため、農林水産省では、農産物の温室効果ガス排出削減の取組の見える化を進めるために、令和二年度から検討会を立ち上げて検討を重ねてまいりました。具体的には、本年度までに、農産物の温室効果ガスの削減量を簡単に算定できるツールの作成を行ったところでありまして、令和四年度予算を活用しまして、削減量の効果的な表示等の実証に取り組むこととしております。

 分かりやすく伝えるということが非常に重要となってまいりますので、環境負荷軽減の見える化が進むよう、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。

尾崎委員 どうもありがとうございました。

 さらに、本法案の第三条二項でありますけれども、「環境と調和のとれた食料システムの確立に当たっては、環境への負荷の低減と生産性の向上との両立が不可欠である」とされているところであります。この環境負荷低減ということと生産性の向上、この両立がうまくいくかどうか、このことが本戦略の成否を、ある意味決めるということかと思うわけでありますが、ただ、一点、中山間地域の一部など条件不利地では、やはりこの環境負荷低減ということと生産性の向上ということの両立が困難というところもあるのではないかと思われるところです。

 中山間地域の農業産出額は、我が国農業産出額全体の四割であります。食料自給率確保の観点、さらには、食料・農業・農村基本法に言いますところの農村の維持発展の観点からも、この中山間地域の農業への配慮ということは非常に重要ではないかと思われるところであります。

 みどりの食料システム戦略では、「二〇三〇年までに、施策の支援対象を持続可能な食料・農林水産業を行う者に集中していくことを目指す。」とされているところです。大きな方向性としてはそのとおりだと考えるところでありますが、他方で、引き続き、条件不利地への配慮、これも忘れるべきではないと考えるところでございます。

 この点についての御見解をお伺いしたいと思います。

宮崎大臣政務官 お答えをいたします。

 本法律案につきましては、規模の大小や地理的条件にかかわらず、環境負荷低減に向けた意欲ある取組を後押しするための促進法ということでございます。

 中山間地域におきましては、少子高齢化や人口減少が都市部よりも進行しておりまして、地形的にも、規模拡大、大規模な投資が難しいという側面がございます。

 一方で、物理的に他から独立をしているなど、有機農業を始め環境負荷低減に取り組みやすい一面もございます。現在も、こうした地域の特性を生かしまして、有機農産物の販売等を通じて付加価値の向上に取り組まれている、そういうところもあるというふうに認識をしておるところでございます。

 農林水産省といたしましては、こうした地域の自主性を尊重しながら、丁寧に施策を進めてまいりたいというふうに考えております。

 私も、現地を回りますと、特に中山間地域では、草刈りが大変だというお話を特に伺うわけでもございます。技術開発につきましては、傾斜地にも対応可能な除草ロボットなど、中山間地域の圃場管理に寄与する技術の開発等を進めてまいりたいというふうに考えておりますし、さらに、御案内のとおり、中山間地域等直接支払交付金などの支援措置がございます。本法案による支援措置と併せまして、中山間地域における地域ぐるみの取組を一体的に推進をしてまいりたいというふうに考えております。

尾崎委員 どうもありがとうございました。

 産地生産基盤パワーアップ事業とか強い農業・担い手づくり総合支援交付金などは、採択要件の中に往々にして、増産とかコスト減要件、これがついているわけであります。

 他方で、施策を、持続可能な農業を行う者に支援を集中していくということになりますと、要するに、環境負荷低減の取組と生産性向上、増産とかの取組、これを両立できる人しか支援対象とならないということになりかねないというところでございます。是非、先ほど政務官がおっしゃっていただきましたように、今後とも、こういう両立がなかなか難しい側面もある条件不利地、小規模農家などに対する特段の御配慮をお願いを申し上げたい、そのように思うところでございます。

 それでは、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 みどり戦略では、有機農業の取組面積割合を二〇五〇年までに二五%に、更に言えば、化学農薬五〇%低減、化学肥料三〇%低減というかなり野心的な目標を掲げておられるところです。官民一体となって、政府としても縦割りを排してしっかりと取り組んでいく必要があろうかと考えるところでありますが、この点について三点お伺いをさせていただきたいと思います。

 まず、第一の点でありますけれども、現在、人・農地プランの法制化、この取組が検討されているところでございます。特定環境負荷低減事業活動実施計画でありますとか有機農業を促進するための栽培管理に関する協定などを策定しますことと、この人・農地プランの実質化の取組であります目標地図の策定とか市町村地域計画の策定などの関係はどうなっておられるのか。両者は一体となって進めていく必要があると考えるところでございますが、この点についてお伺いをいたします。

青山政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきましては、特定環境負荷低減事業活動実施計画や有機農業を促進するための栽培管理協定は、地方自治体が基本計画で定めるモデル地域、特定区域内で生産者が地域ぐるみの取組を行う場合に定めることができることとしております。

 また、農業経営基盤強化促進法等の改正法案における地域計画においても、市町村が農業者等の話合いに基づき将来の農業の在り方等を定めることとしておりまして、特定区域が位置づけられた本法律案の基本計画など、地域における他の取組と整合性を図りながら進めていくことが適切と考えております。

 本法律案の十六条第五項では、地方自治体の基本計画の策定に当たりまして、農業振興地域整備計画その他法律の規定による地域振興に関する計画との調和が保たれたものでなければならないとしておりまして、運用に当たっては、地域計画を含めた地域全体の各種取組がきちんと整合が図られるよう、国としても、制度間の連携を図り、全国の地方自治体をバックアップしてまいりたいと考えます。

尾崎委員 どうもありがとうございました。

 さらに、次の御質問でありますが、この環境負荷低減実施計画でありますとか有機農業栽培管理協定について、これを策定した場合のメリットというのをできるだけやはり大きなものにしていくということが大事だろうと考えるところです。

 法案では、計画を策定すると農業改良資金の償還期間を延長するという特例が付されるなどということとなっておりますが、例えばこの農業改良資金でありますが、補助事業の対象となっている事業は対象外ということであります。やはりしっかりとしたメリットを付す、そういう意味では、例えばみどりの食料システム戦略推進交付金などなど、こういう点についてより有利な取扱いをするなど、計画策定者に付与するメリットをできるだけ大きなものにしていく必要があるのではないかと考えるところでありますが、御見解をお伺いいたします。

青山政府参考人 お答えいたします。

 本法律案に基づいて認定を受けた農林漁業者に対しましては、無利子の農業改良資金等の償還期間の延長、地域ぐるみで堆肥舎等を整備する場合の農地転用の許可等の行政手続のワンストップ化等を措置することとしておりますが、これらのほか、除草機等の設備の取得に係る所得税、法人税の特例措置を講ずることとしております。

 また、これらに先駆けまして、令和三年度補正予算及び令和四年度当初予算におきまして新たにみどり戦略交付金を盛り込んだところでございまして、地域ぐるみのモデル的な取組を支援してまいります。

 さらに、本法律案が成立した暁には、認定を受けた方が環境負荷低減に取り組む際にその取組をしっかりと後押しできるよう、効果的な支援の在り方について、今後更に検討してまいります。

尾崎委員 ありがとうございました。

 また、三点目でありますけれども、植物防疫法案、これもまた極めて重要だと思います。化学農薬の使用減だとか、さらには有機農業の普及促進のためにも、この植物防疫法案に定めた有害動植物の総合防除の取組とか、なかんずく発生予防の取組をしっかりと進めていく必要があると考えるところです。

 この同法案に基づきまして基本計画を定める都道府県への技術支援とか、さらには生産者の理解を幅広く得るための取組、これを国としてもしっかりと進めていく必要があると考えるところでありますけれども、こちらについての御見解をお伺いいたします。

武部副大臣 近年、温暖化によりまして、病害虫の蔓延リスクが増加しております。また、過度に農薬に依存した防除をすることによって、薬に対して耐性を持つ病害虫も発生している事例が見られるようになりました。病害虫の発生予防を含めた総合防除の推進が急務だと認識しています。

 そのため、今回の植物防疫法改正に当たりましては、国が総合防除を推進するための指針を定めます。これに基づいて都道府県で総合防除の実施に関する計画を定めていただくなどしまして、総合防除を推進する仕組みを創設いたします。

 この国の指針においては、これまでの研究成果などを基に、指定有害動物ごとの総合防除の技術的内容等についても定めることとしています。

 また、総合防除を生産現場でしっかりと導入していただくために、地域における実証事業を通じまして、防除効果や生産性に関するメリットをしっかりと明らかにしつつ、それぞれの地域に最も合った防除体系の確立を支援することとしております。防除暦や防除対策マニュアル等に盛り込むことによって、分かりやすい形で生産者に理解を得ながら現場の普及を図ってまいりたいと思います。

尾崎委員 ありがとうございました。

 ちなみに、本法案では、同趣旨の取組を含むとして、持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律は廃止をするとされているところです。

 エコファーマー制度について、こちら、少し時間もありませんので飛ばさせていただいて、近年、少しこの認定が伸び悩んでいるという状況、その背景には、やはり価格面における優位性が余り感じられない、そういう御意見もあるやに伺っているところです。まして、より手間のかかる有機農業の普及のためには、エコファーマー制度以上の価格面のメリットを生み出していかなければならないということかと思います。

 有機農業に係るサプライチェーン関係のそれぞれが慣行農業に比べてより高い付加価値を生み出すように取り組んでいかなければならないし、また、消費拡大の取組というのも極めて重要になってこようかと思うところです。この点、同法では、十条から第十三条までを通じて、環境負荷低減に資する農林水産物の生産、加工、流通、消費全体を視野に入れた規定を置いておられます。

 その中で、例えば第十二条などで、当該農林水産物等の流通の合理化の促進を図るなどとされています。有機農業の普及を図るためにも、サプライチェーン全体の付加価値向上を目指す取組が重要だと考えるところでありますけれども、この第十二条の流通の合理化という言葉の意味も含めまして、御見解をお伺いをさせていただきたいと思います。

青山政府参考人 本法律案におきましては、農林水産物や食品の生産から消費に至る関係者が有機的に連携して機能を発揮する一連の活動の総体を食料システムと定義いたしまして、環境と調和を図ることにより、農林漁業や食品産業の持続的発展等を図ることとしております。

 委員御指摘の本法律案第十二条につきましては、国が講ずべき施策としまして流通の合理化を掲げておりますが、この規定は、環境負荷低減の取組を通じて生産された農林水産物等が、消費者の理解と支持を得て、流通、小売等の段階で取扱量を増やされて、その結果、消費者がこれを入手しやすくなることを意図しております。

 このように、本法律案における流通の合理化というのは、単なる流通コストの削減のみを指すものではありませんで、新たな需要の開拓などを含む概念として規定しておりまして、食料システム全体の資金の巡りをよくするような取組を積極的に推進していこうと考えております。

尾崎委員 どうもありがとうございました。是非とも、学校給食なんかでも取り上げていただくとか、いろいろな総合的な施策でもって応援をしていただきたいと思うところです。

 続きまして、農産物輸出についてお伺いをしたいと思います。

 EUのファーム・ツー・フォーク戦略では多くの目標を二〇三〇年に達成するとされていますが、みどりの食料システム戦略ではこれをおおむね二〇五〇年に達成しようということで、大体二十年ぐらいの差が生じてしまう。この間、我が国の農産物輸出というのは大丈夫なのかというところがやや心配をされるところです。

 アジア・モンスーン気候特有のハンディもある中で、EUなどに伍して我が国農産物の国際競争力を維持していくために、今後の国際基準づくりなどにどのように取り組んでいくのか、その戦略についてお伺いをさせていただきます。

武部副大臣 委員御指摘のとおり、我が国の農業は、温暖ですけれども雨が多いということで、病害虫や雑草が発生しやすいという特徴があります。こういう中で国際競争力を輸出も含めて維持していくためには、アジア・モンスーン地域における特有の課題をイノベーションで解決していくことが重要だと考えております。

 今、輸出のお話がございましたが、農林水産物、食品の輸出拡大を目指す上でも国際ルールを踏まえた対応が求められる中で、EUのお話がありましたが、諸外国でも環境分野におけるルールづくりが活発化しています。我々としましても、欧米と気象条件や生産構造も異なりますから、このアジア・モンスーン地域の特性を踏まえた今後の国際環境交渉における基準づくりなどの議論に貢献するとともに、気候変動という人類共通の課題に総力を挙げて取り組んでまいりたいと思います。

尾崎委員 どうもありがとうございました。

 様々な課題を解決していくためにも、技術開発、イノベーション、しっかり進めていくことが大事であります。そういう観点からも、この基盤確立事業実施計画、これをしっかりと進めていくことが大事なのだろうと思うところであります。是非、地方創生も意識していただいて、地域と一体となって進めていただきたいと思いますし、輸出も視野に、新たな成長産業を生み出す、そのような野心的な目標を持って、産学官民連携でお取り組みをいただきたいと考えるところです。

 農研機構さん、「知」の集積と活用の場によるイノベーション創出事業なども展開しておられるところです。この基盤確立事業実施計画をしっかり進めていくためにも、このような、知の集積と活用の場を積極的に活用するなどといった形で前向きに取り組んでいただきたいと考えるところでありますが、御見解をお伺いします。

青山政府参考人 お答えいたします。

 環境と調和の取れた食料システムの確立を図っていくためには、イノベーションの創出が不可欠でございます。

 農林水産省では、農林水産物、食品分野に異分野のアイデアや技術を導入して開発された成果を商品化、事業化につなげるオープンイノベーションの取組として、知の集積と活用の場を平成二十八年度から展開しております。令和四年二月の時点では、民間企業、大学等を含む四千二百を超える会員が参画いたしまして、地域の課題解決に貢献するための研究開発、その成果の社会実装に取り組んでいるところでございます。

 環境負荷の低減を図るための先端技術の研究開発等におきましても、地域の状況や生産の現場をよく知る関係者の参加を得て、基盤確立事業実施計画の策定が行われるよう、知の集積と活用の場の参加者にも積極的に働きかけていきたいと考えております。

尾崎委員 どうもありがとうございました。

 それでは、最後に、もう時間がなくなりましたので御要請だけで終わらせていただきたいと思いますけれども、みどりの食料システム戦略で、林業関係の取組に対する期待感というのも大変大きなものがあります。エリートツリーの普及とか高層木造の技術確立、これができれば本当に中山間対策の切り札になるんだろうと考えるところでございまして、こちらについても是非前向きに進めていただきたい、このことを最後に要請させていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうも前向きな答弁をありがとうございました。

平口委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久でございます。

 早速質問に入っていきますけれども、ちょっと前置きを少し語らせていただきたいと思います。

 まず、いわゆるみどり法についてでございますけれども、この法律案の基本となっているというか基盤的な理由となっている、いわゆるみどりの食料システム、これは多分、多くの方が総論は賛成だと思います。各論反対かというと、私はそうでもないと思っているんです。ただ、問題は、ハードルが高過ぎるんじゃないかとか、あるいは現実的ではないのではないかといった意見が散見される。

 しかし、本当に、例えば有機栽培等が取組として無理なのか、あるいは農家所得が向上しないのか。私は、そうは思わないんですね。むしろ、そういうことよりも、ここから目を背けないでしっかり見て、例えば、実際に取り組んでいる事例を見て、知って、理解するところから始めなければいけない、このようにこの法案について議論する前から感じておりました。

 そこで、一つ例を紹介したいと思うんですけれども、北海道のちょうど中央部から少し西側になりますけれども、北竜町という人口が千七百人余りの純農村地域がございます。この取組を紹介したいと思うんですけれども、平成二十八年に、JAきたそらち、これは北竜町等を含めたこの地域のJAですけれども、そこの北竜ひまわりライス生産組合が日本農業賞の大賞を受賞をされました。

 私もそのお祝いの会に駆けつけて、いろいろなお話を聞いて大変感動しましたけれども、受賞の理由は、全町を挙げての減農薬による水稲栽培、生産情報公表のJAS取得等が評価をされたということです。これは当時、農家戸数、約百四十戸、水田の面積は千二百四十三ヘクタールということでございます。

 そもそも、いつからそういうことに取り組んできたかということなんですけれども、昭和六十三年、まだ農薬規制が緩かった頃、その時点から、有機農業、減農薬、それから防除に取り組んできた。なぜそういう取組をされたんですかということなんですけれども、消費者の方々に安心を届けたい、伝えたい、こういうところから始まりました。非常に崇高な目的を持っていると思います。

 具体的な取組。全町で、農薬を慣行栽培の半分にする、除草は、二回の代かきをする、水稲種子温湯消毒機を導入していく、これらのことをいろいろ組み合わせて取り組んできた。そして、生産情報をネット公開する。農水省の認定機関の有機認証センターで認証を受ける。私の知る限り、全町で認証を受けているのはこの北竜町だけではないのかな、もし違っていたらお許しいただきたいですけれども、そのぐらい非常に希少価値があるということも言えるかもしれません。

 課題。玄米の受入れ区分が多くて、倉庫等の投資が必要であるということ、これはそうかなと思います。流通の広がり、しっかりやっているんですけれども、やはり常に流通の広がりとの闘いというか、チャレンジが続いていると思います。しかし、順調に生産し、そして販売も常に好調であるということ、何よりも、生産意欲が非常に強い。

 今、北竜町の実例を紹介をさせていただきましたけれども、全国には、有機農業に取り組んでいる生産者、環境負荷低減を行っている、そういう生産者、法人、地域、数多くあると思います。その上で、有機JAS認証を取得している生産者も相当程度ある。こうしたことを踏まえて考えていくと、やはり、みどりの食料システムなるものについて、あるいは今回のみどり法について、積極的に議論をして中身を消化していく、そういう必要は今我々に迫られている課題だと思います。そんなことで紹介させていただきました。

 それでは、早速質問に入りますけれども、まず、みどり法からですけれども、これは大臣にお伺いしたいと思います。

 先ほどの質問と武部副大臣の御答弁にありましたので重複するかもしれませんけれども、大臣の御決意も含めてお伺いしたいと思いますが、日本がアジア・モンスーン地域における新しい持続的な食料システム構築を牽引する存在になるべきではないか、そういう私の考えに対する見解をお伺いしたいと思うんです。

 国連主催の食料システムサミットでは、SDGs達成には持続可能な食料システムへの転換が重要とされています。このことに関して、令和三年七月、ローマでの閣僚級の準備会合では、当時の野上農水大臣が参加をして、みどりの食料システム戦略を紹介して我が国の考え方を示しました。この会合に合わせて、日本、カンボジア、マレーシアなど八か国のアジアの農業担当大臣が持続可能な農業及び食料システム構築の共同文書に合意をされたわけでございます。私は、この意義は非常に大きなことだと思っています。

 アジア・モンスーン気候、高温多湿あるいは温暖多雨の国々における、ヨーロッパとは違う環境での化学農薬や化学肥料に多く頼らない農業生産をどうするか。日本が先導的な役割を果たす、あるいは牽引する、こうしたことが今我が国には求められているのではないか、このように思っておりますが、大臣の見解をお伺いします。

金子(原)国務大臣 お答えする前に、先ほどは、稲津委員から大変参考になるお話をお伺いしました。ありがとうございました。

 私も、いろいろとこの法案の勉強をしている中で、なかなかそう簡単にはいかないな、非常に難しい問題だなというようなことを感じておりまして、特に消費者に対して、どういうふうに受け止めるのか、また、それだけのものを作って本当に付加価値があって高く売れるのかな、そういったことをいろいろと尋ねてみますと、現在でも約二万四千ヘクタールが有機農業をやっていて、二万三千ヘクタールは国の補助を受けないで自立しておやりになっているというので、やはりそれだけ知恵を出しながらおやりになっている方は、有機農業に対する需要も非常に多いんだということを私感じました。

 やはり、食の安全という意味からいって、それにお金を出す、そういった消費者もいることを考えていくと、また時代の流れの中で、どうしても我々が避けて通ることのできない、そういう時期が来たわけでございますので、積極的にこれからも取り組んでいかなきゃいかぬというふうに私も思っておる次第で、本当に先ほどはありがとうございました。

 では、お答えいたしますが、近年、世界的にSDGs等への認知が進むとともに、気候変動による作物の収量減少など、農林漁業への影響が拡大する中で、我が国としても、アジア・モンスーン地域の立場から新しい食料システムを提案していく必要があると考えております。

 このため、例えば、温暖で湿気の多い気候では、雑草や病害虫の発生が課題となる中で、除草ロボットなどの最先端技術の開発、普及や発生予防を含めた総合防除の推進などを通じて生産性の向上と持続性を両立させるモデルを確立しまして、今後とも積極的に発信していくことが重要だと考えております。

稲津委員 ありがとうございました。

 やはりアジアの気候を考えると、我が国が、先ほどの話にもありました、質疑にあった、イノベーションでこれらのことをしっかり取り組んで先鞭をつけていくということはやはり非常に大事だと思っていますので、是非その点もよろしくお願いします。

 次の質問です。次も大臣にお伺いしたいと思います。

 オーガニック市場の定義についてですけれども、簡単に言うと、有機JAS認証による有機食品市場なのか、認証を受けない有機農業で生産された食品市場なのかということなんですけれども、みどりの食料システム戦略では、二〇五〇年までに、オーガニック市場を拡大しつつ、耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を二五%に拡大することを目指しているとしております。ここで言うオーガニック市場が、今私が申し上げましたような、認証を受けたものなのか、受けないものなのか、これは基本的なことですけれども、確認の意味も含めてお伺いさせていただきたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 みどりの食料システム戦略、環境負荷低減の取組を推進し、食料、農林水産業の生産力の向上と持続性の両立を図る、特にその中で有機農業につきましては、化学農薬ですとか化学肥料を使用せず、環境負荷がより低いことから、強力に推進することにしております。

 今お問合せございましたオーガニック市場でございますけれども、一つは、量販店ですとかスーパーマーケットなどの販売に際して求められる有機JAS認証を取得した農産物、これだけではございませんで、有機JAS認証を受けていないものの有機農業に取り組んでいる農業者が生産し、例えばマルシェなどで自らの栽培方法を説明しながら販売を行う農産物なども含めた概念として位置づけるように考えております。例えば、有機農業の産地づくり推進事業の支援対象、これにもしているところでございます。

稲津委員 広く消費者の方々に有機農業を知っていただくについては、やはりハードルを下げる必要もあると思うんですが、ただ、有機JAS認証とは何なのか、どういう生産をしているのかということを実はもっと消費者の方々に知っていただく必要がある。

 そういう意味で、今の御答弁で結構なんですけれども、この有機JAS認証制度の周知を図る意味でも、このオーガニック市場の定義の中に、私は、ある一定程度この有機JASのことも含めた、そうした考え方を残して、あるいは進めていくべきだ、このように思っておりますので、これは意見として申し上げておきます。

 次に、有機農業に取り組む生産者の所得向上の支援についてということでお伺いしたいと思います。

 これは恐らく、今日お集まりの議員の皆さん一様に同じような課題、テーマを認識していらっしゃると思いますが、私もそのうちの一人ですが、やはり有機農業経営は所得の確保が一番の問題だということで、有機農産物の出荷先は消費者への直接販売が多数を占めている、こう思っております。いわば生産者の販売力に頼っているところ、これだけでは、生産技術や販売力の弱い新規参入者等は取組にちゅうちょせざるを得ないというわけなんです。ゆえに、有機農業の推進に当たっては、生産者の所得の確保にも十分配慮する必要がある、このように思っております。

 そこで、環境保全型農業直接支払交付金について伺いますが、この交付金では、化学肥料、化学農薬を五割以上低減する取組で環境保全に効果の高い営農活動を支援するものでありますが、私は、予算措置のこのボリュームにちょっと違和感がございます。令和四年度予算で二十七億円措置されていますけれども、有機農業の取組面積の割合を今後二五%に拡大するという目標、ここから考えると大きな隔たりがあると感じています。

 今後の予算の在り方も含めて、この交付金についてお伺いさせていただきます。

金子(原)国務大臣 環境保全型農業直接支払交付金は、有機農業を始めとする地球温暖化防止や生物性、多様性、保全性に効果の高い農業生産活動に対して支援を行うものであります。

 令和四年度の予算におきまして、新たに有機農業に取り組む農業者の技術指導を行う際の加算措置を新設しまして、前年度から二億円増となる二十七億円を確保したところであります。

 先ほど、この二十七億円についての数字がありました。実は、私も昨日、この勉強会のときに、これだけ推進していって法案も作るんだったらもうちょっと思い切った予算をつけないと、それがやはり一般の人に対する、そういった意欲を湧かせることにならないんじゃないかというお話をしましたところ、やはり今、一度にやるというのはなかなか難しいと言うんですね。だから、徐々に環境が整って、それぞれ生産者の皆さん方がそういった環境を整えながらやっていくようなことを見ながら予算というものを増やしていく必要があるんじゃないかというお話だったので、それはそれで一理あるなという考え方も持っております。

 したがって、今年はこれでやっても、やはりだんだん順調にこれが推移していけば、思い切った予算を増額することによって、できるだけやはり、百万ヘクタールという目標がありますから、それに近づける努力をしていかなきゃいけないだろうと思っております。

 さらに、有機農業の拡大に当たりましては、同交付金のほかにも、地域ぐるみの取組拡大に必要な環境整備や技術開発、普及といった様々な取組の支援を行うみどりの食料システム戦略総合対策で、令和三年度補正予算と令和四年度予算と合わせて三十四億円を確保したところであります。

 これらの支援策を組み合わせながら、有機農業の拡大を始め、戦略の目指す姿の実現に向けて全力で取り組んでまいります。

 先ほど私は有機農業の補助金をもらわないでやっている方々を二万三千ヘクタールと言いましたが、一万三千ヘクタールでございましたので、訂正させていただきます。

稲津委員 大臣、今、この交付金について大変重要な御答弁をいただいたと思っております。しっかり今後の予算拡充に向けて取り組んでいただきたい、こう申し上げておきたいと思います。

 次に、環境負荷低減に対し、第十三条のところですけれども、ここに、「消費者への適切な情報の提供の推進、食育の推進その他の必要な措置を講ずるもの」と十三条に書かれています。

 そこで伺いますけれども、まず、どのような情報を提供するのか、それから食育に関してどのような食育を推進するのか、お伺いします。

 それから、今日は文科省に来ていただいていますので、例えば、小中学校での授業ではどのような現状で、今後どのように進める考えなのか。さらに、ここは非常に大事なところですけれども、農業高校では授業のカリキュラムに有機農業による栽培技術などをしっかりと入れるべき、このように考えていますが、見解をお伺いします。

青山政府参考人 お答えいたします。

 第十三条の件でございますけれども、環境と調和の取れた食料システムの確立を図っていくためには、生産者の取組につきまして消費者の理解と支持を得て、有機農産物など環境に配慮した生産物を選択していただくことが不可欠でございます。

 このため、十三条では、国が講ずべき施策として消費者への情報の提供の推進を掲げておりまして、具体的な取組としましては、持続性を重視した消費の転換に向けた、あふの環プロジェクトにおける交流会の開催や、優良な事例を表彰するサステナアワード、消費者と生産者の距離を縮めるための国民運動のニッポンフードシフト等を通じた情報発信を想定しております。

 さらに、生産者の努力が消費者に分かりやすい形で伝わるよう、取組の見える化、表示の在り方や広報等についても、今後検討し、しっかりと取り組んでまいります。

淵上政府参考人 学校における食育の推進に関するお尋ねにつきましてお答え申し上げます。

 食は人間が生きていく上での基本的な営みの一つであり、子供たちに対して、食に関する正しい理解や適切な判断力、望ましい食習慣を身につけさせるよう、学校において食育を推進することは非常に重要であると考えておりまして、各学校における学校教育活動全体を通じた食育を推進しているところでございます。

 環境への負荷の低減に関する理解を深めるというためには、例えば、各教科等におきまして、自分や家族の消費生活の中から問題を見出して課題を設定し、その解決に向けて、環境に配慮した消費生活を考え、計画を立てて実践できるようにするなどの取組が行われております。また、文部科学省で作成をいたしました小中学生用の食育教材においても食と環境についての内容を取り上げているところでございます。

 あわせて、農業高校の取組についてでございます。

 この四月、令和四年度から新しい学習指導要領が高等学校は開始をいたしますけれども、農業科における科目、全ての生徒が原則として履修をいたします農業と環境という科目がございますが、この中には、有機農産物と環境保全型農業について取り上げるということが明記をしているところでございます。この部分の改善充実を図ったところでございますし、また、現状においても、既に有機JASの認証を取得するような農業高校の取組もあるところでございます。

 文部科学省といたしましては、令和四年度の新高等学校学習指導要領の実施を契機としまして、こうした好事例を展開をしながら、農業高校における環境保全型農業の取組も更に進めてまいりたいと考えているところでございます。

稲津委員 時間が来ましたので終わりますけれども、最後の、農業高校の授業のカリキュラムについては学習指導要領を改訂したということですけれども、今後、これは法律が制定されたらまた少し状況は変わってくるんですよ。そのことを文科省、是非踏まえて、農水省も含めよく連携を取ってそうしたことを推進していただけるように強く望みまして、質問を終わります。

平口委員長 次に、緑川貴士君。

緑川委員 皆様、おはようございます。立憲民主党の緑川貴士です。

 環境への影響を抑えるために、化学農薬あるいは化学肥料をできる限り減らすということ、そして温暖化の防止、気候変動への対応、生物多様性の保全、持続的な農業、こうした方向性として、その重要性を否定する方はいないと思います。

 一方で、みどりの食料システム戦略は、農政の大きな方針転換です。生産や流通、消費の現場が抜本的な変革を迫られる内容にもかかわらず、おととしの十一月、農水省に戦略本部が設置されてから昨年五月の戦略の策定まで僅か半年と、すさまじいスピードで策定されました。意見交換会を二十回以上にもわたって開催をして、有識者、農業者の意見を聞いてきたというふうに言いますけれども、みどり戦略の目標で掲げるのは、EUの表面的な数字、あるいは対策の追随というものが、このみどり戦略を見ますと目立ちます。

 しかし、EUと比べて、日本というのは、気候は高温多湿、病害虫や雑草が多いです。温暖化でその病害虫による被害も増える傾向にあると言われていますし、大陸からウンカなどの害虫も飛んできます。また、エネルギーの資源、鉱物資源が不足している、乏しい。あるいは、大量の原料や食料、飼料を輸入する国でもあります。

 こうした日本の実情というものがしっかり考慮されて、今回のみどり戦略の目標というものが科学的根拠に基づいてしっかりと設定されているものなのかどうか、お伺いしたいと思います。

青山政府参考人 お答えいたします。

 本戦略で掲げた二〇五〇年に目指す姿というのは、戦略の検討過程で行ってまいりました生産者等との意見交換の中で、二〇五〇年に向けてであれば、例えば有機農業についてEU並みの二五%の目標は可能であり、意欲的な目標を掲げてほしいという意見もございましたので、そういったことを踏まえまして、先進的な生産者の取組を参考にしながら、時間をかける中で実現可能なものとして判断して掲げたものでございます。

 例えば、有機農業の取組面積を二五%に拡大することにつきましては、当面は、先進的な農業者の取組を横展開することによりまして二〇三〇年までに六万三千ヘクタールを実現し、さらに、除草ロボットの開発や新たな有機農業技術の確立、国内外における更なる市場創出等を通じまして、目標を目指していきたいと考えております。

 また、化学農薬の使用量の五〇%の低減につきましては、総合的な病害虫防除の確立、普及や、新規農薬等の利用、スマート防除体系の確立、化学肥料の使用量の三〇%低減については、有機肥料主体の施肥、土壌診断や生育診断に基づく最適施肥等の取組の横展開を図りながら、さらに、未利用資源からの肥料成分の回収や、新たな品種の育種等のイノベーションを創出していくことを通じまして、目標を目指していきたいと考えております。

緑川委員 環境負荷の低減を図る方法は様々ありますけれども、やはりこれはトータルで、かつ多角的に見ていく必要があると思います。

 化学農薬について言えば、確かに、分解性の高い生物農薬などを用いれば、生物の多様性の保全には貢献できます。その代わりに、では、何が犠牲になりやすいかというと、例えば機械で除草するときのこのエネルギーの使用量、これによって温室効果ガスの発生がかえって増えることになるのではないかというところがあります。

 各種のリスクのトレードオフをどうするのか、環境負荷の低減を図ったときに何を犠牲にしなければならないのか、その様々な要素を踏まえて政策というのは推進されるべきなんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

青山政府参考人 今回のみどりの食料システム戦略では、十四のKPI、政策目標を掲げまして実施しております。その中では、中身としましては共に相反するような、考えられることもございますけれども、今後しっかりと対応をしていくことの中で実現したいと考えております。

緑川委員 途中過程で相反するものが生じてきた場合には、かえってこの環境負荷の低減の取組がマイナスになり得る部分が出てくるんじゃないかということを私は懸念をしているわけです。

 このみどり戦略の中で、化学農薬について具体的に触れていきたいと思いますけれども、リスク換算で化学農薬の使用量を五〇%低減するというふうになっています。

 既に登録されている農薬の中で、リスクの高い農薬からリスクのより低い農薬への転換を進めるということなんですが、そのリスクを、では、どのように評価するかというのは、ADIという指標、つまり、一日当たりの摂取許容量、生涯にわたってこれは毎日摂取し続けても安全な量なんですよというこの指標で測ろうというものです。

 つまり、ADIが小さいほど、摂取許容量が小さいほど、少量で何らかの影響を起こすというリスクが大きいという指標になります。このADIが小さい成分を含むもので、例えば除草剤などは、これはやはりADIが小さいですから、これから大きく減らす方向に除草剤はなっていくというふうに思います。

 ただ、この除草剤の場合は、そもそも散布の対象でない農作物に残留することはないといったこれまでの国の様々な試験データ、あるいは、こうした科学的な知見を基にして、食品の安全上問題はないとこれまで内閣府の食品安全委員会が言ってきたもの、あるいは、環境に問題ありませんと環境省が判断したものを、ADIを指標にして一律に減らすというのは、これまでの政府の立場として理屈が立たないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、みどりの食料システム戦略におきましては、化学農薬の使用による環境負荷を低減し、持続的な農業生産を確保するため、化学農薬使用量の低減、リスク換算で五〇%という目標を設定したところでございます。

 その際、これもまた委員御指摘のとおり、単純に化学農薬の使用量を減らす目標としてしまうと、論理的には、かえって、毒性の高い農薬をどんと半分に減らせばいいのではないかということも考えられるわけでございます。

 そういったことから、農業資材審議会農薬分科会で御議論をいただいて、使用量は同じでありましても、毒性の低い農薬を使えば使用量が減ったとする、いわゆるリスク換算の考え方を導入させていただきました。

 このリスク換算におけるリスクの対象が問題になるわけでございます。現時点では、世界共通で利用可能な、我々の目標でございます環境負荷の低減、環境負荷に関する指標というものは存在していないというふうに承知しております。このため、世界共通で利用されております人への毒性の指標でございます許容一日摂取量を用いまして、リスク換算係数を設定し、各農薬の使用量に掛けるといったことで御議論をいただいてきたところでございます。

 この人への毒性の指標を用いて農薬使用のリスクを換算し、低減していくという考え方でございますが、例えば、EUのファーム・ツー・フォーク戦略におきましても同様であると承知しております。

 さらに、このリスク換算の考え方につきましては、科学の発展に応じて充実させることとしております。例えば、今後、国際的に共通して利用可能な環境負荷に関する指標や環境生物に対する毒性指標が確立されてまいりますれば、それを併せて使用することも検討してまいりたいと考えております。

 以上でございます。

緑川委員 今後、農薬の成分ごとの指数というものが、これは国からこれから発表されるということになりますけれども、いずれにしても、このリスク評価の在り方というものをやはり現場にしっかりと、分かりやすく、透明性も確保しながら、生産者、そして事業者、また消費者、誰もが納得できるものでなければならないというふうに思っています。

 単位面積当たりで考えますと、日本の農薬の使用量というものは世界でもトップクラスです。農薬を使わないといけないという理由は、先ほど申し上げた気候条件、病害虫等々だけではなくて、農家の高齢化という問題もあります。

 今、基幹的農業従事者の平均年齢は六十七・八歳です、農業センサスによれば。七十代、八十代の方々が手で草を取るというのはもちろん、重さが数キロもある草刈り機を背負って長時間作業する場合の体の負担、あるいは、夏場の作業、熱中症など、人の健康被害もこれは出てきます。中山間地域であればなおさらです。作業は更に過酷なものになりますし、やはり除草剤がなければ営農が成り立たないという地域がたくさん出てくると思います。

 中山間地域の農地でいいますと、急斜面の畦畔も多くある中で、今日、御審議で御答弁をるるいただいておりますけれども、除草ロボット、ラジコン草刈り機などが斜面に入って除草するという自動化も、これは計画はされているんですけれども、この自動機であっても、傾斜角が大きいと作業効率が上がりませんので、急斜面を緩やかにしながら、急斜面を緩やかにするような基盤整備をしなければなりません。しかし、除草を自動化できるような基盤整備が実用化されるというのは、この政府のみどり戦略を見ると、二〇三〇年以降になります。

 革新的な技術が現場で実装されるまでの間に、化学農薬の低減に伴って、現場の過重な負担、そして、平場、中山間を問わず、高齢農家が営農を続けていけるようにするための特段の配慮、対応というものが求められるというふうに思いますけれども、どのように取り組んでいくお考えでしょうか。

青山政府参考人 お答えいたします。

 環境と調和の取れた食料システムの確立を図っていくためには、イノベーションの創出が不可欠でございます。

 ただし、委員が御指摘いただきましたように、イノベーションには一定の時間を要するということもございまして、中長期的な時間軸を持ちまして、二〇四〇年までに革新的な技術、生産体系を開発していく、二〇五〇年までにこれらの技術、生産体系の速やかな社会実装を図っていくということにしております。

 一方で、目標の実現に向けまして前に進める必要がある中で、今でも優れた既存技術がございますので、二〇三〇年までにこれを横展開していきたいと考えております。

 具体的には、化学農薬や肥料の使用削減に向けまして、土壌診断を踏まえた土づくりや栽培暦の見直しですとか、既に開発されております水田用除草機等を使いました作業の省力化などの技術を想定しておりまして、先端技術の開発と併せて、これらの既存技術の活用、普及も図ってまいりたいと考えております。

緑川委員 高齢化が進んでいる農村の実情に、果たして既存の機械導入というところが実用可能かどうかということも含めて、やはりコストをかけられる見込みがないような中小の家族経営の農家さん、様々な零細農家に対応したその技術導入というものを、今、実装できるものをしっかりと手配をしていく、それを支援をしていくということが何より求められているというふうに思っております。化学農薬の半減とか化学肥料三〇%、数字ばかりを気にして、徐々にとはいっても減らされていけば、農村の現場には確実な影響が出てくるわけであります。先ほど申し上げたADIだけで判断されては困るというような実情はあると思います。

 そして、この農林漁業の持続的な発展の手段として、やはり技術革新というものが不可欠なものとして、先ほど御答弁にありましたように、位置づけられていますけれども、八十五ページあるみどり戦略の、これは中身を見ても、イノベーションという言葉が実に三十三回、そして、スマートという言葉が五十一回も使われています。

 ただ、いつ頃から本当に活用できるようになるのかというのは分かりません。実現可能性についても疑わざるを得ないものもたくさんあります。環境保全をうたいながらも、これまでのような工業的な農業という側面がやはり色濃くなっていると思いますし、ロボット技術やAI、ICT、ゲノム編集技術などを用いて、その路線が更に強まるような流れになっているのが今だと思います。

 生産現場でも取り組めることはもちろんありますけれども、こうした技術開発の主導権を握るというのはやはり企業です。生産者だけでは解決できない新たな技術、その提供を行う企業というものを国直轄で認定をして、手厚く支援して、その技術開発あるいは市場の拡大の取組に農業の大事な未来をかけている部分が大きいというふうに思っています。

 みどり法案を見る限りは、アグリテックやフードテック、こうした企業が、今後、農業、この生産現場の在り方を主導することになるのではないかというところがありますけれども、お考えはいかがでしょうか。

青山政府参考人 お答えいたします。

 先ほども御答弁申し上げましたけれども、農業現場では、高齢化による人手不足、それから世界的に環境負荷低減が求められておりまして、みどりの食料システム戦略を策定するということに至りましたけれども、この戦略の実現には、イノベーション、スマート化が欠かせないと考えております。

 このスマート化と申しますのは、農業の現場の課題を解決するために先端技術を使うということでございまして、農業の現場に農業以外の方の、事業者の御協力を得て農業をしっかりと進めていくというのがスマート農業でございます。

 今回の法律案では、そういったその事業者に対する支援を講ずることで行っていくわけでございますけれども、現に生産現場では、スマート農業としまして、ドローン等を入れまして、農薬散布できつい、危険な作業が楽になったですとか、あと、ロボットトラクターを入れて、女性や非熟練者でも農作業に積極的に参加できるようになったでございますとか、あと、AIを用いた土壌診断で、肥料のまき過ぎを防ぐことができた、使用量を減らすことができたといった声を現場から受けております。

 こういった労力負担の軽減や人手不足の対応、環境負荷の低減など、今回の取組で行ってまいります持続可能性の改善につながっていくと考えております。

緑川委員 これは、やはり全ての農家に向けた戦略であるわけですから、革新的な技術というものを誰もが安く導入できるという保証はありませんし、有機農業による生産コストを例えば抑えるには、とにかく大規模で効率的な生産をしなければならないという必要性が出てきます。

 環境負荷の低減に取り組む生産者というのも対象がありますけれども、資金繰りや農地転用の許可手続、また、補助金の目的外使用が可能になるといった支援を受けられるわけですが、工場のような大規模園芸施設が農地を覆う、農地転用で建てられて、自動化されたような食品工場で工業製品のようにパック詰めされて、スーパーの棚に並んでいく、こういうオーガニック宣言をする自治体で、こうした事業が展開されていくところも出てくると思います。

 確かに、効率が上がりますし、便利かもしれません。しかし、そればかりが求められるようになって、農家だけではなくて、消費者も農業の現場からますます離れていくことになってしまうんじゃないか。農家や消費者、事業者など、有機的につながるという連携を目指すどころか、農村の持続可能性というものがやはり問われてくることになると思います。イノベーション一辺倒でない、それだけではない、生産現場での実情を踏まえた取組というものを強く求めたいというふうに思います。

 食料自給率と有機農業の関係でお尋ねをしたいと思います。

 世界的な気候変動により食料生産が不安定になる中で、食料自給率を上げていくということ、つまり、そのための生産性の向上と収量増大というものが喫緊の課題ですけれども、有機農業が従来の農法並みにその生産性や収量が高まるまでには、有機農業の取組面積が増えれば増えるほど、当面は、食料自給率を高めるということは難しくなっていくんじゃないかというふうに思います。

 どのように両立を図るお考えなのか、大臣、お伺いいたします。

金子(原)国務大臣 有機農業では、病害虫対策や肥培管理が難しく、単収が減少することが課題となっています。一方で、近年、生産現場では、安定的に生産できる技術や品目も出てきており、しっかりした土づくりや自然の機能を生かした栽培を行うことで、慣行栽培と遜色のない収量を得ている生産者も現在現れてきているところであります。

 農林水産省では、当面、こうした安定的な生産を実現している取組を横展開することで、できるだけ生産性も確保しながら有機農業の拡大を進めるとともに、中長期的には、除草ロボットなど、有機農業に取り組むことを容易にする様々なイノベーションを創出しまして、生産性の高い有機農業の展開を図る考えであります。

 こうした取組を通じまして、健全な作物を育てる土づくり、化学肥料等の輸入依存の脱却など、持続的な農業の発展とともに、生産性の向上について両立を図り、自給率の向上にも寄与していくことといたしております。

 なお、先ほどから緑川委員のいろいろな御意見をお聞きしまして、大変私も参考になりました。これからこの法案に基づいて政策をやっていく上においては、先ほどの御意見をいろいろと参考にしながら、これからも努力していきたいというふうに思っております。

緑川委員 この有機農業は、やはり四分の一まで目指すわけであります、農地の。今後の国内の食料を安定的に確保していくということを念頭に置きながら、では、もう少し聞きたいですけれども、どの作物をどの程度有機農業で行えばいいかということも、併せてこれは考えなければならないというふうに思います。

 お配りしている資料は、みどりの食料システム戦略の抜粋ですけれども、資料1ですね。目的である有機農業の取組面積の拡大については、ここに掲げている技術革新がそれぞれどれくらいの面積拡大の効果をもたらすのかということは示されておりません。有機農業を行う、その作付する作物や、また作付の時期、地域が異なれば、採用する栽培方法や技術革新も違ってきます。

 例えば、二〇二〇年からの取組、技術のところに書いてある水田の水管理による雑草抑制というのは、水田で使用できても、畑地では当然使用できません。逆に言えば、国内の水田作を有機農業化することを目指しているのであれば、同じ二〇二〇年のところにある地力維持作物を組み入れた輪作体系の構築と併せて、この有機農業の目標に向けては水田作が取り組みやすいというのもあるかもしれません。

 水田作から有機農業は取り組みやすいというお考えなのか、あるいは、どの作物をどれくらいの面積で有機農業を行っていくのか、そこでの生産量も考えて具体的な目標を設定するべきであるというふうに思いますし、他方で、従来の農法であっても、環境への影響を最小限にした栽培体系というものも多数あります。従来型の農業の利点も踏まえて、トータルで環境負荷の低減と農業生産の両立を図るということが重要であるというふうに考えていますけれども、お考えはいかがでしょうか。

平形政府参考人 お答え申し上げます。

 現在の、今、有機農業なんですけれども、日本全国で二万三千五百ヘクタールほど取り組んでおります。その中で、緑川先生おっしゃるとおり、取り組みやすいというか、面積的に大きいのはやはり水田だというふうに思っております。もちろん、野菜等で小規模ながら有機に取り組んでおられる方もいらっしゃるんですけれども、面積的には、多分、水田が一番広いというふうに思っております。

 その中で、この資料の方なんですけれども、おっしゃるとおり、水田で現在行われているもの、この技術というのがございまして、これを横展開していく。二〇三〇年までに有機農業については六万ヘクタールという、まずここを着実にこなしていくというのが非常に重要だと思っております。

 そういった意味で、まず水田のところから、そこから、今もおっしゃられましたけれども、有機にまで至らないんですけれども、減農薬で、割合と慣行と、いい生産量を誇っているようなものもございますので、そういったものの発展、さらに、それを有機にしていくということも必要だと思っております。

 一個一個、実は、細かい数字は設定をまだできていないところもございます。そういった意味では、走りながらなんですけれども、まず六万ヘクタールに向けて、有機農業、これを実践的に行っていく。二〇三〇年以降は、やはりある程度イノベーションも含めながら、よりそういったものが全国的に広がって、全体の、農地の二五%まで五〇年までに達成する、そういうふうに着実に進んでいきたいと考えているところでございます。

緑川委員 有機農業かあるいは慣行的な農業との作物との相性、やはり時期的な、今のこの年代でできるものというのはあると思いますし、新たな技術や取組というものが実現可能となる具体的な時期というものも、やはり近くなれば見えてくるところもあると思います。

 現実的で実効性ある選択をしていかなければならないというふうに思いますけれども、今御答弁にありました、水田作というところを進めやすいという御答弁の中で、これは、米を有機農業に移行すると、やはり減収になる可能性がございます。ただ、くしくも、これは需要減少というところ、やはりコロナ禍で特にこの需要減少というものが、非常に落ち込んでいるという中では、皮肉にも、これが整合的であるところがあります。

 その辺りで進めていくというところでのお考え、いかがでしょうか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 お米につきましては、毎年、人口減少等に伴い、年間十万トンほど消費量が減少しているところでございますけれども、有機に関しましては、お米の消費量が減少しているからお米のところで特に有機を進めるというよりも、やはり有機に関しては、環境の負荷、これが非常に少ないということで、お米の消費量がもし上がったとしても、これは進めていくべきものだというふうに思っておりますので、予定調和的に、減少しているから有機を進める、そういう考え方ではございません。

緑川委員 同じ水田の、やはりメタン排出という部分での、もちろん、アジアの農業の一つの課題というものもございます。

 同じ重量で比較しますと、二酸化炭素よりもはるかに強い温室効果を持つメタン、この削減というものは、やはり即効性のある温暖化対策としてはこれは期待をされているところなんですが、国内のメタン排出量の四割は確かに水田からで、水を張った水田では、酸素が不足する環境で微生物が有機物を分解するときにメタンをこれは作り出すということが原因なんですが、夏に水田の水を抜いて土壌に酸素を供給する、政府が勧める、推奨する中干しの期間、これを一週間延長することで水田からのメタン排出量を平均三〇%削減できるというふうに資料で示しています。

 私がお配りしている資料2の農研機構農業環境研究センターの資料ですけれども、これによりますと、水田の中干し期間を一週間延長すると、米の収量が一方で平均で三%減るというデータがあります。地域や土壌、品種ごとにもこれは確かに異なりますが、三%以上の減収になるような地域もこれは確かに出てくるんだろうと思います。

 いずれにしましても、このメタン削減の取組で、減収やコスト増のこうした経営負担の増加というものが、やはりこの中干し期間の延長によってあり得るというふうに思います。

 昨今、コロナによる米の更なる需要減で、本当に減収で頭を抱えていらっしゃる生産現場の米農家さんが多い中で、この取組、どのように理解を得ていかれるでしょうか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 委員おっしゃられたとおり、水田からのメタン発生、これを抑制するために、水稲中干し期間、これを慣行栽培と比較して一週間程度延長すると、三割程度、減収するというのが、これは農研機構が全国九か所で実施した試験ということで、委員の配付資料のとおりでございます。

 これで平均で三%程度の減収になるんですが、この資料にありますとおり、実は、地域によっては増収する地域もございます。また一方で、この資料のちょうど真ん中ぐらいのところにありますけれども、過剰な分げつというか、分かれるのが抑えられることで登熟歩合が向上、つまり、一粒一粒は割合と大きくなるということですとか、あとは、一番右側のところにありますけれども、窒素の吸収が抑えられるということで、食味が上がる、たんぱく含量の低下といったことも、品質の向上、こういったことも実は一つ狙われているところかなというふうに思っております。

 ですから、この中干し期間というのは決してマイナスの部分だけじゃないということもしっかり言っていきたいと思っております。

 減収についてなんですけれども、農林水産省では、それぞれの地域に適した中干し期間の延長技術を確立していくために、みどりの食料システム戦略推進交付金の中で、生産現場で技術の実証ですとか普及についての支援を行うこととしたところでございます。

 また、環境保全型農業直接支払交付金によりまして、中干し期間の延長の取組に対して追加的に発生するかかり増し経費、これについても支援をすることとしております。

緑川委員 やはり中干し期間をこれ以上延長することができないような地域、カドミウムの濃度の高いという地域があります。土壌の酸性状態を強めるような中干しができないところについての、やはり現場への丁寧な情報の提供というものをお願いしたいというふうに思います。

 最後に、環境負荷の低減を図る生産者、事業者の地道な努力が実を結ぶかどうかというのは、消費者の有機農業への理解、そして支持に懸かっていると思います。

 学校給食の有機化というのは少しずつ広がっていますけれども、加えて、病院食あるいは介護施設の食事などを含めた公共調達の一定割合をオーガニック食材とすること、あるいはまた、割高なオーガニックというのは、国内の平均賃金、また可処分所得が伸び悩んでいる状況では、オーガニックを買いたくても買えないという層が多いという問題もございます。

 低所得の方も購入できるように、アメリカ農務省のSNAP、栄養補充支援制度のような、政府が食料用のクーポンを配付してオーガニックの購入を後押しするような制度の導入について、お考えを併せて伺いたいと思います。

金子(原)国務大臣 学校や病院、介護施設の給食の食材調達については、設置者である市町村等の判断により対応していくものでありますが、調達割合などを一律に定めることはできませんが、農林水産省といたしましては、有機農産物を積極的に活用する意欲のある市町村をつくっていくことが重要だと考えております。

 このため、令和三年度補正予算から、みどりの食料システム戦略交付金におきまして、市町村が主体となった、生産から消費まで一貫した有機農業を拡大する取組に対しまして支援することといたしており、この中で、学校等の公共施設における給食への有機農産物の導入なども支援してまいりたいと思います。

緑川委員 やはり変革を迫られる生産と消費の現場、特段のこの配慮、そして力強い後押しをお願いを強く申し上げて、質問を終わります。

平口委員長 次に、梅谷守君。

梅谷委員 立憲民主党の梅谷守です。

 まずは、この度の質問に臨ませていただくに当たり、農水省を始めとする多くの官僚の皆さんから大変な御苦労また御協力をいただきましたことを心から感謝申し上げます。

 いわゆるこのみどりの食料システム法案に対しては、二〇五〇年を目途に、我が国における持続的な食料生産システムの構築に向けて、革新的な技術開発とその社会実装の方向性と目標を示す、その意義は私は認めております。

 しかしながら、いわゆるみどり法案が目指す方向性とこれまでの農政の方向性とは大きく異なるわけでして、例えば農薬、肥料については、今までは、ちゃんと使わなければちゃんとした農作物は取れないよとか、農薬は使い方を誤らなければ安全だと言ってきた。だから、現場の普及員やJAの方々は使ってきた。ここにみどり戦略が突然出てきたものだから、慣行栽培を推進してきた方々にとっては、戸惑いは容易に想像できるわけです。

 にもかかわらず、昨年の戦略の、この中間取りまとめのパブコメを、概要ですけれども、私も全部拝見いたしました。この中には、いわゆる私が現場でいただいているような声が余り載っていなくて、それほどの、戸惑いとか反発とか、そういった表現が余りない。

 だから、ちょっとまずお尋ねしたいんですが、この戦略及び法案の策定に当たって、現場の懸念だったり問題意識をどれだけ把握して、そして、それをどう受け止めているのか、お尋ねをしたいと思います。

青山政府参考人 お答えいたします。

 みどりの食料システム戦略の策定に当たりましては、令和二年の十月から、生産者や食品事業者等の幅広い関係者と意見交換を実施するなど、検討を進めてきたところでございます。

 この戦略というのは、これまでにない新しい政策方針でございまして、実現に向けては、関係者の理解と協働の上で段階的に取組を進めていただくことが重要であるということで、戦略策定後も、全国各地で、本戦略の理念や目指す姿につきまして、生産者、事業者、消費者などと意見交換を行ってきているところでございます。

梅谷委員 これから、私がいただいている、受け止めている声を表明させていただきます。

 その前に、あくまでも指摘なんですが、そもそも、このパブコメの期間が三月の三十日から四月の十二日と、十三日間において行われました。ただ、本来、これも御案内のとおり、原則として、こういった意見の募集は公示日から起算して三十日以上とされているわけですから、特に、これだけの大きな法案になるわけでして、そういう意味で、その後に意見交換をしっかりとやっていますよということなんでしょうけれども、やはりこのパブコメは原則をしっかり今後守られる必要があるのかな、意識されるべきかなと思いますので、指摘にとどめさせていただきます。

 私が現場からいただいている声、確かに今ほどの御答弁だと、一昨年の十月からこの検討を進めて鋭意ここまで来た。ただ、これまでそれ以外に、伏線などが現場にもたらされていればまだしも、現場は寝耳に水だった方ばかりなんじゃないかなと思っています。事実、私の知る限り、こんな声が現場から上がっています。

 新型コロナウイルスによる所得の低下がある中で、高価な有機農産物の需要は高いのか、疑問の声。有機農産物の市場は微妙なバランスで成り立っていて、供給過多による価格の暴落につながるようなことはやめてほしい。環境直接支払いの更なる拡充等の措置で、安価で有機農産物を提供できるようになればいい。農水省の言う有機農業の技術が確立しているというのは、甘過ぎて現実とかけ離れているのではないか。最初の二、三年は、雑草も少なく、栽培管理も楽に行えるが、十年くらいになったところは、雑草の種類も変わり、大変になることを理解しているのか。有機を進めるに当たっては、市町村主体で、市町村が主役で手挙げ方式でまとめることになっているけれども、話がまとまるんでしょうか。あとは、大規模化を進めてきて人数も減らしてきた、そんな中で、手間の増える有機は家族経営には対応し切れない。法人化していれば、あるいは面積を集めようとしているところでは助けになるかもしれないけれども、家族経営では、新しく人を雇うなどがどうしても必要になる。突き詰めれば、手間やコストがしっかり、とてもかかるということなんです。

 まず、そこでお尋ねしたいんですが、こういう有機農業については、現場から、こういったコストの削減と大規模経営を進めてきた農家の手間がかかり、慣行栽培、慣行に比べて三から四倍かかると耳にしていますが、有機農業への転換でどれだけコストが増え、労力が増えると受け止めているのか、収量がどれだけ下がり、所得が下がると計算しているのか、戦略の前提となる事実確認をお尋ねします。

平形政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、有機農業は、化学農薬ですとか化学肥料を用いないことから、一般的には、除草作業等に伴いコストが増える一方、農作物の単収は減少いたします。

 これらの程度は、栽培品目や農業者の技術力により差がありますが、例えば、農研機構による水稲の有機栽培と通常栽培との比較研究の事例では、物財費は一・〇六倍、労働時間は一・三六倍増加する一方で、収量は一割程度減少すること等により、通常栽培よりも、十アール当たりで一五%、六十キロ当たりで約三〇%のコスト増というふうになっております。

 一方で、有機栽培米の販売価格なんですが、全国の農業者六名から聞き取りをしたところ、これは事例なんですけれども、六十キロ当たりの販売価格は二万円から三万六千円、平均では二万七千五百円となっております。これは、令和三年産米の通常栽培米の相対取引価格一万二千九百四十四円と比べて、価格差が二倍以上というふうになっておりまして、販売価格が増加することで所得が向上する可能性があるというふうに考えております。

梅谷委員 丁寧な御答弁、ありがとうございます。

 その上で、政府が用意されている支援策があると思います。例えば、十アール当たり一万二千円だったり、また、勉強会や講習会を開くに当たっての支援ほか、経営指導者、指導員、こういった方々の育成に向けた補助などなどが御用意されていると思うんですが、こういう政府の現在用意している支援は、今ほど申し上げた現場の声、例えば、家族経営で慣行農業をしてきた農家が安心して有機農業に転換するのに十分と言えるものなのでしょうか。見解をお尋ねします。

平形政府参考人 お答えいたします。

 有機農業の取組拡大には、より多くの農業者に有機農業に取り組んでいただくことが重要と考えております。

 このため、委員おっしゃったとおり、農林水産省では、環境保全型農業の直接支払い交付金によりまして、有機農業に取り組む場合のかかり増し経費を支援するとともに、有機農業推進総合対策事業によりまして、新たに有機農業に取り組む農業者が技術習得を行う場合の経費ですとか、有機農業の指導員による技術指導の実施等を支援してきております。

 特に、令和三年度の補正から、新たに市町村が主体となって、学校給食における有機農産物の活用など、生産から消費まで一貫した有機農業の拡大を支援し、モデル的な産地の創出に努めることとしております。

 今おっしゃられた家族経営なんですけれども、やはり一戸の方が有機農業をやるとしても、なかなか実は販売する場所というのは難しくございます。そのために、一戸一戸の農家は小さくても、やはり産地としてまとまっていただく。特に、市町村を中心に、例えば学校給食まで届けるために、数戸の農家が固まって作っていただくような、そういうような産地としての取組ということを進めておりまして、小さい経営の方でもこれに参加していただくということが大変重要だと思っておりまして、そういったことを促していきたいというふうに考えております。

梅谷委員 ありがとうございます。

 小さい農家の方々に対しても配慮をされているということです。

 ただ、一方で、今ほども申し上げましたが、大規模になればなるほど有機は管理が難しくなるので、有機農業はなかなか手を出しづらいよねという声も実はいただいています。有機を推し進めるなら、システム化して、今の人数で回るならウェルカムだけれども、手間がこんなにかかるなら、このままでは大規模には不向きでないかという声も実は現場からはいただいています。その上で、補助制度とか勉強会への支援だけでは弱い、仕事で生み出されるお金がどれだけなのか分からない、人を雇って回せるかとなると難しい、そういったいろいろな声はいただいています。

 ここで大臣にお尋ねしたいんですが、このような現場の切実な声に政治がしっかりと寄り添って応えていくことが戦略目標の達成につながるに違いないと思っています。先ほど、冒頭、大臣が、しっかりと現場の声に寄り添って対応していきたいという力強い御答弁をされておりました。それを踏まえて、今後支援を更に広げていく必要性について、所見をお伺いしたいと思います。

金子(原)国務大臣 有機農業は、生物多様性の増進など、環境保全に寄与することで、持続性や付加価値の高い農業の実現に貢献するとともに、海外依存度が高い化学肥料を使用しないため、国際情勢に左右されにくく、農業生産体制の確立にも資するものであり、全国の多くの農業者や産地に取り組んでいただきたいと考えております。

 これからの時代を考えますと、有機農業は非常に大事だと思っており、農林水産省といたしましても、みどりの食料システム戦略におきまして、有機農業の取組面積を二〇五〇年までに百万ヘクタールに拡大するという高い目標を掲げ、先ほど農産局長から説明した支援策を講じながら、その実現に向け、全力で取り組んでまいります。

 一気にというのは難しいと思います。二〇三〇年まで六万ヘクタールでしたかね、一つの目標を掲げて、徐々に少しずつ慣れていって、最終的には、二〇五〇年に百万ヘクタールということに考えているわけでございまして、これは、社会の流れの中で有機農業というのは必要であり、やらなきゃいけないということはもう委員もよく御存じのとおりだと思います。

 したがって、こういった中で、こういうきっかけ、みどりの法案を作って、そして、こういう姿勢で農林水産省、国としてはやるんだということをお示しして、そして、皆さん方の御意見を十分に聞きながら、そしてソフト的に、ソフトランディングしながら、少しずつ目標に向かって努力していく、その間、必要なものについては我々としても支援をしていく、そういった考え方でこれから取り組んでいきたいというふうに思っております。

梅谷委員 大臣、ありがとうございます。必要なものに対しては、方向性を目指しながら支援をしていきたいと。

 何が必要かはやはり現場にあると私は思っていますので、その意味で、自分で言うのは、私ごとで恐縮ですけれども、そういう、時には現場にも、何度も行かれているとは思いますけれども、例えば、私や高鳥先生の地元である上越市とか妙高市とか糸魚川市、十日町市そして津南町、ここにも是非お越しをいただくなどして現場に触れていただいて、そこに何が必要なのか、そこをまたしっかり受け止めていただきますようお願いを申し上げます。

 この法案は、戦略は、四つの数値目標、これは極めて意欲的だと思います。これらの数字が丁寧に積み上げられた形跡があるのかといえば、私はないかなというふうに思っております。昨年の一月に突然出てきてから四か月ぐらいです。先ほど緑川先生もお話をされているので、ここは省きますけれども、いずれにしても、この四つの数値目標というのは、EUのものをかりただけという指摘もあるわけなんです。その上で、こんな声も、こんな報道もあるんですね。

 政府が環境対応を急ぐ背景には、先行する欧米の存在がある、EUは化学農薬の半減や有機農業の拡大を打ち出し、米国も食品廃棄物の半減を目指すなど、日本が後れを取れば今後の国際基準づくりを欧米が主導することになり、農産物輸出に不利になりかねない、産業構造の転換に乗り遅れることも懸念といった指摘をする声もあるんです。

 そこで、お尋ねしますが、この考えを基に今回の農政の大転換を行ったという理解でよろしいんでしょうか。

青山政府参考人 お答えいたします。

 SDGsや環境を重視する国内外の動きが加速しており、委員も御指摘いただきましたけれども、EUが二〇二〇年五月にファーム・ツー・フォーク戦略を打ち出すなど、各国が食料システムの環境負荷低減に向けて戦略を打ち出しているところでございます。

 このような情勢に的確に対応して、欧米とは気候風土や生産構造が異なる我が国農業の特徴を踏まえて、アジア・モンスーン地域の立場から国際的な議論に積極的に参画していくべく、速やかに検討を行い、昨年の五月、二〇二一年の五月でございますけれども、みどりの食料システム戦略を策定したところでございます。

梅谷委員 この国際ルールづくりに日本が自ら参加して主導することには、とても意義深いと私は思っています。

 その意味で、アジア・モンスーン地帯、SDGs、気候変動というキーワードを基に、これから国際基準づくりに日本からどんどん積極的に参画していきたいという方針だと受け止めますが、有機農業など、国際ルールに日本の立場を反映させるために具体的にどのような取組をしていくのか、今ほどいただいた御答弁以上に具体的なお話があればいただきたいですし、もしなければここでやめますが、いかがでしょうか。

金子(原)国務大臣 みどりの食料システム戦略策定を踏まえ、昨年の九月開催されました国連食料システムサミットや、十一月の気候変動枠組み条約第二十六回締結国会議におきまして、本戦略を紹介いたしました。

 また、本年、今年の夏に開催される予定の生物多様性条約第十五回締結国会議におきまして、今後十年間の新たな世界目標であるポスト二〇二〇生物多様性枠組が採択される予定など、農林水産分野に関係の深い環境関係の重要な国際会議が開催されます。

 このため、国内においては、この法律案に基づいて関係者の理解を深めるとともに、対外的には、あらゆる機会を捉えて本戦略を発信するなど、各国、各地域の気候風土を踏まえた国際ルールとなるように働きかけてまいりたいと思います。

梅谷委員 ありがとうございます。

 諸外国の、世界の動向の中で、日本がやはり大きなかじを切らなきゃならないという御判断をされたというふうに受け止めました。

 ただ、何度も申し上げますが、その一方で、車の運転に例えると、やはり大きくハンドルを切ると、乗っていた関係者の方々が大きく揺さぶられて、気持ち悪くなっちゃったり、けがをされたりすることがゆめゆめないように、しっかりときめ細かな御対応をしていただきたいですし、これも繰り返しですが、是非その現場に基づいて、更なる支援が必要だとなれば、そこをしっかり省として御検討、他省とも連携しながら、是非御検討いただきたいと思います。

 次に、このみどり戦略は、食料、農林水産業の生産力向上と持続性を両輪としてイノベート、イノベーションしていく、これを実現するという理念です。

 このみどり法案で、だから、鍵を握るのは、イノベーションを実現するための研究開発だと私は思います。そして、そのための人材確保であり、人材育成だと思っています。

 この点、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、長いので、今後、農研機構と申し上げますが、の連携を強調、方針としてもされています。

 この農研機構の役割が非常に重要になるんですが、ただ、これは事務方と、あらかじめ伺ったら、やはり令和三年度から令和七年度までのこの予算の大枠がほぼ決まっていると。もちろん、必要であれば、その都度申請をして予算を手当てをしていくというところですが、それを申請すれば、農水省の中からどこか削られてそこに充てられるという話だというふうに私は伺わせていただきました。そして、この令和三年度から七年度までの間の予算を固めたときには、まだみどり戦略の方針が盛り込まれていないし、また、この法案についても盛り込まれていない。

 だから、私は、ここでちょっと提案みたいな話なんですが、やはり戦略も打ち立てられ、それによる支援策を盛り込んだこの法案が出てきている以上、農研機構の予算を総額を増やして、その分、財務省さんとやり取りして、農水省の予算をもっと増やすようにするべきだと思いますが、御見解はいかがでしょうか。

金子(原)国務大臣 農研機構の業務につきましては、五年に一度、中長期目標及び中長期計画を定めておりまして、直近では、令和三年三月に中長期計画を作成したところであります。この中長期計画を実施するための予算は、毎年度、農林水産省から要求をしているところであります。

 また、中長期では、検討途中であったみどりの食料システム戦略にも言及しているところであり、本戦略の策定後は、農研機構においても、これに対応するための有機農業プロジェクトを立ち上げるなど、研究体制を整備しているところであります。

 農林水産省としても、みどりの食料システム戦略の実現に向け、イノベーションの創出に重要な役割を持った農研機構の予算の確保に努めてまいります。

梅谷委員 岸田総理の、ホームページにあるメッセージをざくっと言いますと、政府は新しい資本主義の実現を目指し、その鍵は人、人への分配を強化していく、三年間で四千億円の施策パッケージを提供する、そして、これまでの発想の枠にとらわれず、積極的な御提案をお寄せくださいと呼びかけているんですね。

 そして、今回の農研機構の予算を私も全部見させていただきました。八割が人件費。だから、やはり人への投資にかなうし、我が国の今の最大の課題の一つである本当に人への投資であり、科学技術に対する予算重視、これにもかなうと思いますので、是非いろいろな理論武装、本当に、私なんかが言うとちょっと生意気に聞こえちゃうかもしれないんですけれども、理論武装をされて、財務省にぶつかっていただいて、総枠の予算拡大に頑張っていただき、もって農研機構の予算拡充につなげていただきますようお願い申し上げます。

 次に、農産物の輸出についてお尋ねをします。

 このみどり法案を読みますと、農産物の輸出入に関する記述がないんですね。一方で、令和二年三月の食料・農業・農村基本計画では、有機農業の更なる推進の項目で、諸外国との有機同等性の取得や海外への普及とか、また、我が国の有機食品の輸出を促進すると基本計画にはあります。

 そこで、お尋ねしますが、このみどりの法案では、輸出をどのように想定しているのでしょうか。

青山政府参考人 お答えいたします。

 農林漁業が環境に与える影響が注目される中で、有機食品の市場はこの十年間で世界的に倍増しておりまして、米国で五兆円、ドイツ、フランス、中国で一兆円を超える規模の市場となっております。

 このため、本法律案におきましては、輸出促進を図り、競争力の強化を図る上でも、環境負荷の低減の取組を後押ししていくことが重要と考えておりまして、地方自治体の定める基本計画においても、流通及び消費の促進に関する事項を定めることとしており、この中で、地域の実情に応じて輸出促進を位置づけ、計画的に取り組めるようにしております。

 今後、輸出に意欲的な地域においては、輸出促進の取組をしっかりと進められるよう、農林水産省としても、本法律案に基づく税制、金融等により、生産現場の取組を促進してまいります。

 さらに、有機農産物等の輸出拡大に向けましては、令和三年度補正予算を活用し、農業者等による有機JAS認証の取得、輸出向け商談、商品開発等の取組などを支援してまいりたいと考えております。

梅谷委員 この有機農産物の輸出については、現場の取組を第一義とするというふうに受け止めさせていただきました。

 有機農産物についての輸出の目標というのはあるのかなというふうに私は確認させていただきましたら、今、有機農業推進法に基づいて、二〇二〇年の新たな有機農業の推進に関する基本的な方針が現在も生きている。これ以外の目標は設定されておらず、目安として、有機食品の輸出については、二〇三〇年度までに二百十億というふうな扱いになっていますが。

 これはどうなんですかね。今、政府としては、農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略によって、二〇三〇年輸出五兆円目標の実現に向けて取組を精いっぱいやられているわけですから、これは指摘にしておきます、通告しなかったもので。指摘にしておきますが、これもやはり目標設定を大いに検討すべきかなというふうに私は考えておりますので、御検討いただければと思います。

 あと五分になりましたので、急ぎます。

 次、輸出促進における課題の一つが、やはりこれは各国、地域の輸入規制であります。

 原発事故に伴って、諸外国の地域において輸入規制が講じられました。その上で、政府が一体となった働きかけの結果、こうやって、どんどんどんどん規制の撤廃なり緩和が進められていることは、本当にありがたいことだと思います。現在は、規制をかけた五十四の国、地域のうち、四十の国、地域で撤廃、十四の国、地域で継続となっています。

 この中で、輸入規制を継続措置する中で、継続の中で、一部の都県等を対象に輸入停止をしているのが、香港、台湾、韓国、マカオ、そして中国。新潟県としては、対岸に位置するこの中国との取引を切望している部分もございます。これらの国による輸入規制の撤廃を強く求めているところでもあるんです。

 そこで、お尋ねしますが、原発事故による各国、地域の輸入規制について、特に、米以外の新潟県産食品の輸入を停止している中国の規制撤廃に向けてどのように取り組むのか、お尋ねします。

渡邉政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の輸入規制でございますけれども、御指摘のとおり、導入した五十五の国、地域のうち、現在までに四十一の国、地域が規制を撤廃しましたが、依然として、中国を含めまして十四の国、地域が規制を維持しております。

 規制対象となっております日本産食品の安全性は科学的に証明されているということでございまして、日本産食品に対する輸入規制につきましては、科学的な知見に基づき早期に撤廃すべきというのが我が国の立場でございます。

 農林水産省といたしましては、政府一体の取組の中で、あらゆる機会を捉えまして、早期の規制撤廃に向けて、より一層働きかけをしてまいりたいと考えております。

梅谷委員 ありがとうございます。

 中国への新潟県産米の輸出についてもお尋ねしたいんですが、農水省の皆さんの御努力もあって、二〇一八年十一月二十八日に禁止解除となりました。そして、県から船が出たのが、二〇一九年の一月四日から出荷再開。それ以降、新潟県は、食品バイヤーの招聘や現地での販促プロモーションなどに取り組んで更なる輸出拡大を図っており、二〇一〇年度が一トンだったのが、二〇一九年度には七十三トン、二〇二〇年度で百三十五トンとじわじわと上げられておりますが、一方で、中国が独自に課す防疫条件の厳しさなどによって、それが課題と聞いています。

 その防疫条件の一つである中国の求める薫蒸処理施設の体制については、中国指定の精米工場と併せて、輸出のための環境整備の一環としてとても重要で、新潟からの米輸出の拡大に有効と考えられます。

 中国向け精米の輸出拡大に向けて、精米施設の早期の追加を進めるべきと考えますが、見解をお尋ねします。

金子(原)国務大臣 中国向けに精米を輸出するためには、中国側に認められた精米工場、薫蒸倉庫での精米、薫蒸処理が必要であります。

 施設の追加指定、登録には、検閲対象害虫が発生していないことについて、日本側による確認調査に加えまして、中国側による現地確認が必要となります。

 中国向け精米輸出拡大のため、現在認められている施設の輸出余力の十分な活用を図りつつ、更なる施設の追加に向けて、中国側と協議を行っているところであります。

 引き続き、早期の追加に向けて、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。

梅谷委員 ありがとうございます。

 時間もないので、最後に一問伺わせてください。消費者庁の副大臣もお越しいただいておりますので、是非お願いさせていただきます。

 ゲノム編集について一問。

 このゲノム編集は、法的根拠のない専門家の判断で、届出制であるために表示義務がないということが消費者の不安につながっていると私は考えています。

 そこで、最後に一問お尋ねします。

 表示義務なしに流通している現状をどう考えているかと伺うとともに、表示義務をやはりここは設けるべきだと考えますが、御見解を、御所見をお伺いします。

赤池副大臣 梅谷委員にお答えをいたします。

 ゲノム編集技術応用食品の表示の義務化につきましては、委員も御承知のとおり、自然界に起き得ない人工的なものは遺伝子組み換え食品と同等の扱いでしっかり表示するということになっておりますが、従来、今流通している、例えば、ギャバのトマトとか、マダイの可食部が多いやつとか、トラフグの高成長のやつというのは、自然界に起こり得る、ゲノムと変わらない、分からない、こういう状況になっているということで、科学的な検証、判別ができない、それから、表示を義務づけている国等がないため、輸入食品等の書類における情報伝達等の社会的な検証を行うことは困難であるということの課題があるため、現時点では、違反した事業者に罰則が伴う表示の義務づけを行うというのは難しいと承知をしております。

 一方、消費者庁といたしましては、ゲノム編集技術応用食品であるかどうかを知りたいという、委員御指摘の消費者の要望があることから、ゲノム編集技術応用食品が厚生労働省に届出された場合には、事業者に対して、積極的な情報提供に努めるよう働きかけをしているところでございます。

 消費者庁におきましては、在京大使館等を通じて欧州委員会やアメリカ等の当局に照会を行うなど、諸外国におけるゲノム編集技術応用食品の表示制度に関する情報収集を積極的に行っているところであり、引き続き、諸外国の表示制度に係る情報収集を続けるとともに、流通実態を把握をして、表示の在り方については検討してまいりたいと存じます。

梅谷委員 ありがとうございました。

 時間をオーバーして失礼しました。ありがとうございました。

平口委員長 次に、池畑浩太朗君。

池畑委員 日本維新の会、池畑浩太朗でございます。

 まずは、輸出の検疫体制の整備と輸出の検疫の協議について質問させていただきます。

 政府は、令和十二年までに農林水産物の輸出額を、現在の一兆円から二兆、そしてさらに五兆と段階的に引き上げる目標を掲げておられます。輸出相手国から精密検査要求をされますし、それも、検疫がかなり増加をしていきます。検査体制の増強と各国との輸出検査協議の迅速化が必要とされております。

 防疫官は現在九百六十人程度とお聞きしましたけれども、その中で実働されている検疫官の人数と、これから一兆から二兆、そして五兆へとなるわけですから、増強が必要であるというふうに書いております。農林水産省の、今その人数と、これからどういうふうに実働させていこうとしているか、お聞きしたいと思います。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 植物防疫所では、今委員御指摘のとおり、約九百七十名の植物防疫官がおります。これは大きく二つに業務が分かれておりまして、一つは、全国の空海港での輸出入検疫あるいは国内検疫に係る検査業務に従事している者、それから、海外での病害虫の発生等に関する情報を収集したり、あるいは、輸出入検疫協議も含みますけれども、科学的根拠に基づく病害虫のリスク分析を行っている者に分かれます。

 このうち、病害虫のリスク分析等の業務に従事する者を除きまして、空海港等の検査に現場で従事している者の数は約九百十名となっております。

 それぞれ、それぞれの業務のニーズの増大に伴いまして、計画的に増員を行っているところでございます。

池畑委員 かなりの経験値も求められるでしょうし、試験に合格したからといってすぐに現場に出られるわけではないというふうにも聞いております。

 その中で、今、民間にも委託をしていこうというふうに考えておられると思います。中でも、植物の検体のPCR検査、そういったものを、今、具体的にどのような企業にお任せをしようとしているのか。JAとかいろいろな、地方自治体もあるかもしれませんけれども、先ほど申し上げましたように、簡単ではないというふうに思います。

 その中で、今コロナの検査なんかをしているような検査認証会社みたいなところも、農林水産大臣の登録を受けたらば、JAとかそういう機関以外にも、民間の企業として募集をしてくれば考えていける範囲なのかということもお聞きしたいと思います。

武部副大臣 植物の輸出に当たりましては、輸出先国の要求に応じまして、病害虫の付着がないこと等を証明するための輸出検査を行う必要があります。

 委員の御指摘があったとおり、輸出の目標五兆円というのがありまして、今後も輸出が拡大していくことを我々も推し進めていますので、輸出が拡大することに伴いまして輸出検査も増加するということが見込まれます。これに迅速に対応していかなければなりませんので、現行法では輸出検査は植物防疫官が全て実施するということになっておりますけれども、これを増強していかなきゃならないというのは認識しております。

 今般の法改正におきましては、国際植物防疫条約に基づく国際基準に従って、現在、植物防疫官のみが実施している輸出検査の一部を、必要な知識及び技能を有する者が検査を行うこと、技術上の基準に適合している機械器具やその他の設備を有していること、それから、公平な実施を確保するために必要な体制が整備されていることといった要件を満たす第三者機関に、農林水産大臣の登録を受け、実施できるようにすることとしております。

 具体的には、PCRのお話がありましたけれども、精密検査については、やはり大学ですとか研究機関や民間の検査機関に行っていただく、それから、栽培地における検査もありますので、これについては、都道府県や市町村のような地方公共団体、農協等の民間団体が登録検査機関になることを想定しております。本法案が成立し次第、登録に必要な準備を進めてまいりたいと思います。

池畑委員 副大臣、ありがとうございました。

 やはりいろいろな見識が求められると思いますが、民間の募集がありましたら、しっかり精査していただきまして、そういった企業も採用していかれるのがいいのではないかというふうに思います。

 次の質問に移らさせていただきます。

 予算委員会も含めまして、輸入の乾牧草等、一貫して質問を私はさせていただいているんですが、今回は輸入の飼料の中に雑草等が混入した場合ということでございますけれども、国際基準と整合するように、今回、有害植物の定義の中に雑草を追加したことであります。

 雑草の種子が農作物に被害をもたらす事例というのは、政務官からありましたけれども、やはり草刈りが常に大変だということも、我々農業をしている者からしますと常につきまとうわけでございます。

 その中で、外来雑草の中で、これが外来雑草だということを選別をするには長く時間を要すると思います。リスクの高いところから対応していくということが必要でもありますし、これからリスク分析を考えるに当たって、わざわざ雑草を有害植物の定義に入れるわけですから、安易に除草剤を使って駆除するなどとならないように、水際対策を徹底するべきというふうに考えますが、農林水産省が今、実態をどういうふうに把握をしまして、これからどういうふうな対応策を考えておられるのか、お聞きしたいと思います。

武部副大臣 委員の御指摘のとおり、今般、国際基準等を踏まえまして、有害植物の定義の中に雑草を含める改正を行うこととしております。

 これは、雑草を植物防疫法に基づく規制対象とすることができるように、法律においてその道を設けるものですが、実際に特定の雑草を規制対象にするためには、委員も御指摘ありましたけれども、リスク分析を行うことが必要でありまして、将来的に、直接農地に入るリスクの高い、栽培用の種子に混入する雑草を規制の対象とすることを想定しております。

 ただ、現時点におきましては、雑草のリスク分析手法が確立しているわけではないために、すぐに特定の雑草を検疫対象とするのではなくて、まずはリスク分析手法の確立を進めてまいりたいと思います。

 それと、水際をしっかりとというお話がありました。

 委員の御指摘のとおり、新たな外来雑草による国内の農作物の被害を防ぐには、国内に侵入した後に除草剤で防除するのではなくて、環境負荷低減の観点からも、国内への侵入を防ぐために、水際でしっかりと検疫を強化する必要があると考えています。

 今後、雑草についてのリスク分析手法の確立を進め、これに基づき我が国への侵入を警戒する特定の雑草についてリスク分析を実施して、必要に応じて適切な検疫措置を講じてまいりたい、努めてまいる考えです。

池畑委員 梅谷委員からもありましたけれども、やはり雑草との戦い、そういったことも踏まえながら、また新たな定義も生まれるわけですから、しっかりと取り組んでいただきたいというふうに思います。

 続けてまた質問させていただきます。

 今回、これも予算委員会で取り上げさせていただきました、兵庫県のたつの市室津漁港において、職員の方と市会議員とともに、改めて現地の視察に参りました。アサリに寄生する、その中で、カイヤドリウミグモについてお聞きをいたしました。

 水産資源の保護の観点から、動植物全般においても防疫体制が必要だというふうに考えますけれども、このウミグモについてどのように被害を抑えてこられたのか、お聞きをしたいと思います。

宮崎大臣政務官 お答えをいたします。

 委員御指摘のカイヤドリウミグモに寄生をされたアサリについては、衰弱をしてへい死に至ることから、その対策が重要だというふうに考えております。

 このカイヤドリウミグモは、ふ化直後にアサリに寄生をして、成体となるとアサリの外に出て産卵をするという特性があるというふうに承知をしております。

 千葉県や愛知県におきましては、この特性を利用いたしまして、繁殖期にアサリから離れて海中を漂っているときにカイヤドリウミグモを除去する取組を、漁業者等により構成される活動組織が実施をいたします水産多面的機能発揮対策事業を活用して実施をしていただいているということでございます。

 ほかの都道府県におきましても、地元の漁業者の皆様方からそういった御要望があれば、各県の地域協議会がこの多面的のところでございますので、そちらと連携をさせていただきまして、事業の活用に向けて対応していきたいというふうに考えております。

池畑委員 現場では、このウミグモ対策、今大臣政務官から説明をいただきましたけれども、多面的機能発揮事業というのがあるということをなかなか知らずに、今、三河湾から兵庫県内に入ったのが二〇〇七年でありました、そのときのことを思い出して、一回こういうことがあると、新規参入しても、なかなか続けられないんだというお声でございました。

 今回も、熊本でありました偽装事件、国が基準をスピーディーに対応されて決められました。逆に国産アサリを増産するチャンスでもありますので、新規の業者が、そういったリスクなんかもきっちり国は守ってくれているんだということも踏まえながら、周知徹底していくということが大切ではないかというふうに思います。

 次に、みどり法案について質問させていただきたいというふうに思います。

 これも本委員会でも再三触れさせていただきましたけれども、有機農産物の生産拡大に対して、給食に出口を求めることで、食育や地産地消を進めていくためにも、学校給食への普及拡大が必要だというふうに思っております。

 その中で、今回は、有機の産地づくりの推進事業の中で、二〇二五年までに百市町村、オーガニックビレッジを宣言され、募集されているということであります。現段階で要望の調査があれば、どのくらい市町村が手を挙げられて、これから採択の見込みがあるのか、また、その中で学校給食での利用での採択というのがあれば、お聞かせいただきたいというふうに思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 令和三年度補正予算と令和四年度当初予算におきまして、みどりの食料システム戦略推進総合対策、これを実施しているところでございますけれども、昨年の十二月から本年の三月まで、全国、都道府県に対して事業要望の調査を行ったところでございます。委員御指摘のとおり、要望はいろいろ上がってきておりまして、今後、審査をして都道府県への配分額を決定する、そういう段取りになっております。

 交付金の交付の手続を進めている中で、内容について今どうだというのはちょっと申し上げにくいので、その決定後にまた御報告したいと思っております。

池畑委員 積極的に農林水産省も取り組んでおられるということで、地方自治体も巻き込みながら、給食に関しても是非推進をしていただきたいというふうに思います。

 その中で、今日は文部科学省にもお聞きをしたいというふうに思っております。

 学校給食の中で有機活用を義務づけるなど、役割を明確化するべきではないかなと。保護者の声といたしまして、残留農薬の基準などが大人と同じ水準では安心できないという声がございます。学校給食を所管します文部科学省としても、積極的に関与して、子供のための学校給食安全基準を定めるべきではないかな、素材の段階で調べていくべきではないかなというふうに思います。

 全国での基準作成は難しいようでありますから、各都道府県とか市町村の中で独自に安全基準を定めるという方法も考えられるとは思いますけれども、そんな中、国もそういった観点から応援する必要があるというふうに思いますけれども、文部科学省の現状と認識を教えていただきたいというふうに思います。

池田副大臣 池畑委員にお答えをさせていただきたいと思います。

 文部科学省において、児童生徒を対象とする残留農薬等の新たな基準、こういったものを定める予定というのはないわけでありますが、国民全体の食品の安全性の確保のための基準は食品衛生法で定められておりまして、小さい子供から大人までの基準が既に存在しているというところでございます。

 なお、食材の選定に関しましては、学校給食衛生管理基準、これを踏まえて、食材の選定等において、各地域の実情等に応じて、各学校の設置者において御判断いただくべきものと考えているところでございます。

 文部科学省といたしましては、今後とも、安全、安心な学校給食を確保するよう努めてまいりたいと思っております。

池畑委員 副大臣、ありがとうございました。

 やはり、有機農産物のこれから新規の需要開拓、そういったことなどもかなり必要なことだというふうに思います。

 その上で、流通システムの構築ですとか、これからやはり、管理栄養士さんや学校給食に関わる皆さん、又は実際にお子さんを育てておられるお父さんやお母さん、ママさんたちの生の声を聞くマーケティングが必要だというふうに考えております。高価でも、なおかつ、おいしいというところまで追求をしていかなきゃいけないというふうに思います。

 予算がないという声もありますが、地方でも都市部でも、なかなかこういった給食の予算を割くということは難しいかもしれません。しかし、新規の需要開拓を推進していく上では、この給食という出口は大変重要なものだというふうに思います。

 最後に、マーケティングが必要だというふうに思いますが、時間がありませんのでここで終わらせていただきたいと思いますが、これからも、子供たちのオーガニック給食に関してはライフワークとして頑張っていきたいというふうに思いますので、一緒に取り組ませていただきたいと思います。

 今日は質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

平口委員長 次に、住吉寛紀君。

住吉委員 兵庫県姫路市よりやってまいりました日本維新の会の住吉寛紀です。

 まずは、これからの食料システムについて質問いたします。

 これまでの農業は、作りたいものをよりよく作るというプロダクトアウトの考え方でした。効率的な栽培計画を立てるというよりは、前年踏襲の作法を続け、他産地の状況や気候、今では世界の情勢や為替相場、燃料価格の状況により乱高下する農作物価格で生産者が困ってしまう、その都度、必要があれば補助を出すという状況でございました。

 今の日本の食料システムは、生産者、加工業、物流、小売、メディア、消費者など、それぞれに業界の壁があり、それぞれのバリューチェーンの中での改善を行うというのがスタンダードな考え方となっております。

 日本の農業のポテンシャルを最大に発揮するためには、この壁を取り除き、それぞれのバリューチェーンをつなぎ、指示を与える存在が必要になってまいります。国内の消費動向や海外でのトレンドなど、情報を吸い上げ、バリューチェーンのしかるべきステップに臨機応変に指示を出し、農業バリューチェーンの効率化を図って利益につなげていく、そして、メディアを活用して消費行動も刺激する役割です。

 「食と農の未来」という著書には、その役割は日本では商社が最も得意とするところと記載されております。これによって日本のポテンシャルを最大限発揮していくとも記載されております。

 このように、各業界業界をつなぎ、俯瞰した位置から全体を見て指示を出すことで、利益の最大化、食品ロスの低減、また環境負荷の低減、ひいては食料自給率の飛躍的な向上に資すると考えますが、大臣の御所見をお伺いいたします。

金子(原)国務大臣 生産から消費に至る食料システムを環境と調和の取れたものとし、その持続性を高めていくためには、御指摘のとおり、システム全体を俯瞰するアプローチが重要であります。

 みどりの戦略を踏まえた本法律案では、基本理念におきまして、環境と調和の取れた食料システムの確立は、生産者、食品事業者、消費者等の関係者が連携することによりまして、その確立が図られなければならない旨を規定しております。

 農林水産省といたしましては、こうした関係者との連携を促進するため、これまでも農産物の温室効果ガスの排出削減に関する見える化などへの取組を進めているところでありますが、昨年の十二月には、食の生産、加工、流通、消費の関係者が一堂に会する、持続可能な食料生産・消費のための官民円卓会議を新たに設置したところであります。

 今後、みどりの戦略の実現に向けまして、経営責任者などハイレベルを始め、あらゆるレベルでの対話を通じて、幅広いステークホルダーで情報や認識を共有し、具体的な行動に結びつけていきたいと考えております。

住吉委員 ありがとうございます。

 横同士のつながりを構築していくことは重要だと思います。一方で、俯瞰した立場で指示を与えていく立場も重要だと考えております。

 みどりの食料システム戦略においても、野心的な目標を掲げております。それを達成していく意味でも、今までの食料システムも見直していかなければならないのではないかと考えております。

 例えば、農業新聞を読みますと、ニンジンが今安くなっているということですが、これは供給過多になっているということですが、このシステムを使えば、例えばメディアやSNSを使ってニンジンのレシピを検索しやすくする、そうすることで消費を拡大していく。今までは、供給過多であれば値段を下げるというのが一般的でしたが、値段を下げずにそのまま流通することも可能になってくる。

 そういうようなことも記載されておりまして、少し斬新な提案でもございますので、これについては、今後もいろいろ農水省の皆さんと議論していきたいと考えております。

 この質問はこれで終わらせていただきます。

 次の質問は、畜産業の環境負荷低減についてお尋ねいたします。

 日本では多くの人が、牛肉、豚肉、鳥肉など、外食や家庭の食卓で口にしますが、実は、それらの肉類を生産する畜産業が深刻化する環境問題の一因ともなっております。

 国連食糧農業機関が、少し古いですが、二〇一三年に発表したデータによりますと、世界における温室効果ガスの総排出量のうち畜産業による排出は一五%近くを占めていることが分かっております。

 また、飼料として大量の穀物を必要としますが、世界中の農地の大部分が家畜用の飼料の生産にも使われております。日本は飼料の大部分を輸入に頼っておりますが、その輸送にも温室効果ガスが発生します。ほかにも、水質汚染や土壌汚染、水の過剰摂取など、環境負荷について挙げれば切りがないわけですが、本法案には畜産という単語が記載がないように思いますが、環境負荷低減を考えた際には避けて通れない分野だと考えております。

 本法案に対しての畜産業の位置づけについてお尋ねいたします。

青山政府参考人 お答えいたします。

 本法律案における農業については、畜産も含んだ概念として整理しております。

 環境負荷低減事業活動における畜産の具体的な取組事例といたしましては、家畜排せつ物の管理の方法を送風装置や自動攪拌等により強制的に発酵を促す方法に転換することにより、メタン等の温室効果ガスの排出量の削減を図る取組や、牧草地、飼料畑において化学農薬の使用削減を図る取組ですとか、堆肥散布等によって化学肥料の使用削減を図る取組などを想定しております。

 さらに、農林漁業に由来する環境への負荷の低減に資する事業者の取組として基盤確立事業の認定制度を設けておりますが、その中で、環境負荷の低減に資する資材等の生産及び販売に関する事業としまして、堆肥センター等が行う堆肥の生産及び販売等の取組等も支援しているところでございます。

住吉委員 畜産業の中でも、特に牛肉の生産は、他の家畜に比べて、生産に必要な土地、水などの資源が多くかかり、温室効果ガスの発生も多く、環境負荷が大きいという事実がございます。

 また、アメリカでは食生活の変化が傾向として出ております。過去十二か月の食生活の変化という二〇一七年マッキンゼーの調査によりますと、健康意識が高くなっており、特にミレニアル世代は平均以上に健康に対する注目度が高くなっております。この傾向はヨーロッパでも表れており、環境意識、サステナビリティーの意識のみならず、健康意識からも、牛肉よりも鳥肉をより消費する傾向が表れております。

 また、先日私が質問したフードロスの観点からも、世界ではフードテックへの投資が進み、肉のような食感の大豆加工食品や培養肉などの研究も盛んに行われております。中国や新興国市場において牛肉の需要は旺盛ですが、ある程度経済が発展すると健康志向の人が増えるという可能性もございます。

 一方で、日本では、二〇三〇年輸出五兆円目標を達成するために、輸出重点品目として牛肉も含まれておりますが、これまで、畜産物の国内生産量の一層の増大のため、繁殖雌牛等の増頭に向けた対策をしてこられたことは承知しております。一見すると、国策として進めている増頭対策は環境負荷低減を考えると相反するように思いますが、今後、どのように環境負荷を図りながら、また、輸出五兆円目標などのための増頭対策を図っていくのか、御所見をお伺いいたします。

武部副大臣 農林水産省では、畜産物の国内需要や輸出拡大が大変堅調でありますので、その対応としまして、今委員の御指摘あったように、肉用牛の飼養頭数の増頭などに取り組んでいるところです。

 一方、我が国の温室効果ガスの総排出量というのは十二億トンあるんですけれども、そのうち、畜産分野からの排出量は約一%です。でありますけれども、メタンや一酸化二窒素の主な排出源の一つであるということを踏まえると、畜産業をより持続的なものとしていくことが必要でありますので、需要に応じた畜産物生産を推進しつつ、可能な限り温室効果ガス排出の削減に取り組んでいくことが重要と認識しています。

 このため、みどりの食料システム戦略等に沿って、温室効果ガスの排出量が少ない家畜排せつ物の管理方法への変更、家畜改良やICTの活用等による飼育管理の改善、温室効果ガス排出を抑制する飼料などの利用等とともに、更なる排出削減に資する新技術の開発、普及に努め、畜産物の輸出の拡大と環境負荷の低減の両立を図っていくことが重要と認識しています。

住吉委員 ありがとうございます。

 全体として非常に低いわけですが、飼料も含めて非常に輸入に頼っている現状を考えると、やはり地球規模で考えたときに、地球規模での環境負荷は非常に大きいものだと考えております。

 国策として進めていることが突如変更されたときに、一番被害を被るのは真面目に頑張っている生産者の皆様です。ひょっとしたら、世界的なトレンドとして牛肉のニーズがなくなるかもしれません。そのときには、生産現場の特段の配慮をお願いしたいと思います。

 ちょっと時間もないので、次に移らせていただきます。

 有機農業についてお尋ねします。

 私も数年前に学生インターンと一緒に地元有機農家さんを視察させていただきました。農家の方は元々サラリーマンで営業されていた方ですが、脱サラをして姫路に移住し、夫婦で有機農業を始めた方でした。元営業マンだけあって、自分たちで作った作物を地元のスーパーや飲食店、ホテルなどに売り込み、有機農業のよさを伝えて販路を拡大しておりました。また、異業種交流会や地域の行事、イベントなどにも出展して交流の輪を広げていったとのことでした。

 また、先日、別の農業関係の方に有機農業についてお話をお聞きすると、有機農業を進めていく上での懸念点、先ほど来出ておりますが、販路があるのかということでございます。これまでは農協に規格品を持っていけばよかったものが、農協は農薬も収益源の一つですが、小ロットでもふぞろいでも農協が協力してくれるのか、また、一般的にこれまでの作物よりも価格が高くなることに対して消費者は理解してくれるのか、そういったことを心配されておりました。

 冒頭紹介したこの営業マンは自ら販路を開拓した成功事例だと思いますが、全員がこのような能力は備わっておりません。有機農業の販路拡大、これをどのように農家に示していくのか、御所見をお伺いいたします。

平口委員長 申合せの時間が経過しておりますので、答弁は簡潔に願います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 有機農業の推進のために、販路拡大、これは大変重要でございます。

 農林水産省といたしましては、地域の中で生産から消費まで一貫して取り組むモデル的な産地を全国で育成する、そういったことをやるとともに、流通・加工業界とともに、流通の効率化ですとか有機加工品の生産などにより、消費者に触れていただく機会、これもつくっていきたいと思っております。

 例えば、JAたじまというところがありますけれども、有機農業の栽培指導ですとか生産資材の調達に加えて、有機米のブランディングや販路拡大、これにも主体的に取り組んでおります。

 こういった地域の核になる主体を巻き込んで有機農業を推進していきたいというふうに考えております。

住吉委員 済みません、もう時間もないので終わらせていただきます。ちょっと質問が残ってしまい申し訳ございません。

 ありがとうございました。

平口委員長 次に、長友慎治君。

長友委員 国民民主党の長友慎治です。

 環境、食料システム法案についての質問をさせていただきたいと思います。

 私が初めてこのみどりの食料システム戦略を拝読したときに、農水省もいよいよ本気でSDGsに取り組むのかなとうれしくも思いましたし、いよいよか、やっとかという気持ちもございました。

 私、実は、SDGsの、民間の資格ですけれども、公認のファシリテーターの資格を持っておりまして、地元では、中小企業の皆様であったり、地元の学校、小学校、中学校等で、SDGsを推進するとその先に未来の姿があるということをお話をする機会がたくさんあったんですけれども、その視点でこのみどりの食料システム戦略を読ませていただきますと、システムの戦略の中に、中長期的な観点から、調達、生産、加工、流通、消費の各段階の取組とカーボンニュートラル等の環境負荷低減のイノベーションを推進するということが基本前提として書いてはあります。

 私は、SDGsの基本理念、これは全ては次世代のためにというところが前提になっておりますので、教育の視点、教育の分野に関するアプローチがないなというところが気になりました。

 有機農業の担い手を増やすために、また、有機農業を広めていくためにも、子供たち、小学生や中学生に有機農業や有機野菜に親しむ機会をできるだけ多く創出することが望ましい、その先にイノベーションが生まれるのではないかというふうに考えるんですが、農林水産省としての施策、見解を伺いたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、有機農業の担い手を増やしていく上で、子供の頃から有機農業になれ親しみ、理解を深めていただくということは非常に重要な取組だというふうに思っております。

 例えば、千葉県いすみ市では、JA、県、市などをメンバーとするいすみ市環境保全型農業連絡部会、これが中心となりまして、小中学校の学校給食に対して有機米を提供する、あるいは、市内の小学校で行われているいすみ教育ファームにおいて、田植ですとか稲刈りの作業体験、メダカ等の生き物調査など、地域の子供たちが有機農業を学び、有機農業に触れる機会を創出しているところでございます。

 農林水産省としても、このような各地の取組、これを支援していきたいというふうに考えております。

長友委員 ありがとうございます。

 いすみ市の事例を出していただきましたけれども、SDGsの学習としてでも、農業また有機というのはとても有意義なテーマなんですね。

 SDGsのゴール、十七のゴールがございますけれども、その二番、「飢餓をゼロに」というところには、「飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する」と明確にうたっています。これは国連が設定した目標の中にです。この「飢餓をゼロに」を実現するためのターゲットの中には、女性や家族農家、そして牧畜、漁業者を始めとする小規模食料生産者の農業生産性及び所得を倍増させるというのがきちんと示されておりますし、また、二の四では、「二〇三〇年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、」「土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靱(レジリエント)な農業を実践する。」というふうにちゃんとうたわれているんですね。まさにみどり戦略そのものだというふうに理解するんです。

 また、SDGsのゴールには、十二番に、「つくる責任 つかう責任」というものもありますが、その中にも「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」とした上で、ターゲットは十二の四で、「二〇二〇年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。」ということもしっかりとうたわれています。

 農業そのものもそうなんですけれども、更に有機農業を推進し、持続可能な農林水産業の確立を目指すみどりの食料システム戦略は、SDGsそのものだというふうに言っても過言ではないと思います。

 事実、農林水産省が作られましたこの資料の中にも、SDGsウェディングケーキモデルがちゃんと紹介されております。SDGsの十七のゴールを階層化したときに、十四番の「海の豊かさを守ろう」、十五番の「陸の豊かさも守ろう」、そして六番の「安全な水とトイレを世界中に」、そして十三番の「気候変動に具体的な対策を」といった、自然資本が他のゴールの土台となるということを明記してありますし、この自然資本から生み出される様々なものを生かすことで私たちの社会は成り立っている、この自然資本を持続可能なものにしなければ他のゴールの達成は望めないということで、このウェディングケーキモデル、SDGsの資料が紹介されています。

 そのような観点からいいましても、私個人は、SDGsの実践の場として農業というものを小学校の授業に導入し、子供の頃から土になれ親しむ、また、園芸の魅力を知ることが、農業の、また有機農業の担い手不足の解消につながっていくというふうに実は前々から考えておりました。

 私からの御質問なんですけれども、まず、これまで文科省と農業の授業化というものを農林水産省として検討したことはないのか、また、農業を義務教育の教科として追加するというような議論はこれまで行われたことがないのかについて伺いたいと思います。

宮崎大臣政務官 お答えをいたします。

 先生御指摘のとおり、将来の農業を担う人材の育成、有機も含めてでございますけれども、それには、子供の頃から農業に親しむ機会をつくることが非常に重要なことだというふうに考えております。

 義務教育におきましては、農業という科目は今ございませんけれども、例えば小学校におきましては、社会科の中で日本の農業の現状について学んだり、理科の中で植物の成長について学んだり、生活科の中で植物を育てる体験をするなど、農業関連の知識を学び、体験する機会があるというふうに承知をしているところでございます。

 また、農林水産省におきましては、小中学生が地域で活躍する農業者の方の話を聞く出前授業を支援をしております。

 また、文部科学省など五府省で連携をいたしまして子ども農山漁村交流プロジェクトを実施をしておりまして、小中学生等が農山漁村地域に宿泊をしまして、農山漁村体験等を行う取組を支援をしているところでございます。

 引き続き、関係府省とも連携をいたしまして、子供たちが農業に関する学習や体験をする機会を設けることにおきまして、農業への関心を持ってもらって、ひいては将来の農業を担う人材の育成につながるように取り組んでいきたいというふうに考えております。

長友委員 ありがとうございます。

 体験や学習の機会を増やしていただけるように努力いただいていることは理解しております。

 ただ、このみどりの食料システム戦略、かなり野心的な目標が並んでいるわけですよね。その目標を達成するには、やはり思い切った施策、そして本気度というものを見せていただかないと目標達成は難しいというふうに多くの人が感じているのではないかと思います。

 農業の担い手不足に有効な手だてを見出せていない、今、私たちの日本ですけれども、子供の頃から土になれ親しんでもらう、農業の醍醐味、やりがいを感じてもらう教育を腰を据えてやらなければ、生産者が増えるということは正直望めるわけがない、担い手がいないわけですから、食料自給率のアップなども現実味がないと言われても仕方がありません。ですので、是非、小学校の頃から教育の一環として農業に取り組むぐらいの国家戦略を描いていただきたいというふうに思っております。

 ところで、私の地元、宮崎ですけれども、実は農業小学校という取組がございます。学校の先生などを退職された方や地域の農家の皆さんが子供たちとその保護者に農業を教えるものでございまして、当然、ボランティアから成る任意団体で法人格はないんですけれども、地元に三つあるんですね、財光寺農業小学校、平岩農業小学校、大王谷農業小学校と。

 これは、週末に登校日があります。私も、コロナ禍になる前、一年間通いました。毎月第二と第四土曜日に登校日というものが設定してありまして、ちゃんと圃場の中に学びやもあるんですね。朝の会と帰りの会もあって、校歌もあって、みんなで校歌も歌う。その中で、子供たちと、そして、その大人生徒という形で保護者、また、大人の方にも農業を教えてもらえる場というものがあります。

 この財光寺農業小学校、日向市にあるんですけれども、総務省ふるさとづくり大賞団体賞を受賞していたりして、地域づくりの一環としても寄与している活動であったりします。

 実は、このような取組、全国にどのくらいあるのかなと調べたんですけれども、農水省の方では詳しい数字は把握できていないということだったんですが、ところどころに確かにあるんですね。

 例えば、岐阜県の高山市の国府町には荒城農業小学校というものがありました。これも、小さいうちから自然に親しみを持たせて、明日を担う農業の後継者の育成ばかりではなく、地域づくりのために必要な人づくりの場としても期待しながら取り組んでいるということで、農村活性化モデル事業の一環として、これは高山市がJAひだを管理者として委託し、二〇〇二年に開校されたものになっています。

 また、福島県の喜多方市では、喜多方市の教育委員会の取組として、全国で唯一、小学校に農業科があるという取組があります。これは喜多方市の、全部で十八校ぐらいの小学校があるみたいですけれども、小学三年生から六年生を対象とし、市の予算で運営している農業科の授業になります。平成十九年度は三校から始めて、平成二十三年度には市内の小学校が完全に実施して十八校で行っている。

 このような取組に注目して、非常にいいなと思うのが、生徒さんの変化の中に、児童が、農業に取り組む地域のおじいちゃん、おばあちゃんだったり祖父母を尊敬するようになったという感想だったり報告が上がっています。このような視点というものが今の日本にはやはり足りていないんじゃないかというふうに思うんです。

 この全国の、例えば法人格でやっているところもあったり、学校ではなくボランティアでやっているというところもあるんですけれども、農業小学校のような、このような取組に国からの予算をつけて、有機化を後押ししたり、子供たちが有機農業に親しむ機会をより充実させたりするということがみどりの食料システム戦略の目標達成に私は欠かせないというふうに思うんですけれども、見解を伺います。

金子(原)国務大臣 将来の農業を担う人材の育成のためには、やはり子供の頃から農業に親しむ機会をつくることが重要であると考えております。

 小学生を対象に農業について教える取組につきましては、全国的にどれぐらい行われているかにつきましては、把握をいたしておりません。

 地域の農業経験者等が中心となって、自主的な活動として、小学生に農業体験をしてもらう取組とか、地方自治体が主体となって、小学校の協力を得て、地域の基幹産業である農業について教える取組など、県と農業団体が連携を取って、学校ごとに農園を設置しまして、小中学生に農業に触れてもらう取組等が行われていると承知いたしております。

 このように、子供たちが様々な機会を通じて農業に触れ合うことにより、将来についての関心が高まり、将来の農業を担う人材が育つことを期待しております。

長友委員 大臣、ありがとうございます。

 国内で農家の高齢化が進んでいます。担い手や農地が減り続けています。カロリーベースの食料自給率は、過去最低の三七%と低迷しています。環境の配慮など、新たな課題に直面もしております。今こそ、命を支える農業の重要性をもっと多くの国民に理解してもらう必要があるというふうに考えます。

 SDGsを学んでいる子供たちの実践の場となる、私が先ほど御紹介しました農業小学校の取組というものを政府も研究いただきまして、是非、後押し、そして更に発展いただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。

 以上で私の質問を終わります。

平口委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗でございます。今日もありがとうございます。

 今回のみどり法案についてちょっと質問したいんですが、みどり法案、これは、大変野心的な目標を立てて、二〇五〇年までに農薬の使用量を五割ぐらい減らすということになっています。

 これは当然、生産現場の農家の人たちとか、あるいは流通の面とか、あるいは消費者の面、いろいろ皆さんも努力、取り組む内容があるというふうに思いますが、私の地元で京丹波町の和知というところがあって、ここで有機栽培をずっとやっている方々がいまして、この方たちは新住民で来られたんですが、一生懸命、農薬を使わずにいろいろ作物を作っている。

 ところが、表示、いわゆるスーパーとかで表示されますね、こういうときに、自分たちとしては農薬を使っていないということを表示して付加価値をつけたいというふうにおっしゃるんですが、これはどこから言われているのか分からないんです、自治体から言われているのか国から言われているのか分からないんですが、栽培期間中農薬不使用という表示じゃないといけないと。

 この人たちにしてみたら、いや、我々は、栽培期間中だけじゃなく、栽培の前も後も使っていないと。ところが、そういうふうに一緒くたにされると、私もこれは分かりませんが、彼らが言うには、栽培する前に農薬を使っているところもあって、同じ表示になってしまう、区別化ができないという悩みをおっしゃっているんですが、これについて見解を伺いたいと思います。

水野政府参考人 お答えいたします。

 農薬の不使用については、農薬を使用している期間が栽培期間中のみか栽培期間以前も含むか、消費者に誤解させないことが重要であると考えております。

 このため、農林水産省で定めております特別栽培農産物に係る表示ガイドラインにおいては、栽培期間中に農薬を使用していない場合に、一括表示の枠内に「農薬:栽培期間中不使用」と表示することとされています。

 委員御指摘の農薬不使用の表示については、一括表示の枠内にこのような表示がされている場合に、その表示と矛盾しない範囲で、消費者に誤解を与えない方法であれば、一括表示の枠外に表示することはできると考えております。

 以上でございます。

北神委員 ガイドラインの話ですが、ということは、例えば、私が調べたところによると、無農薬というのはやめてほしいと。無農薬というと、自分たちは一切使っていなくても、隣の田んぼで使っていた場合に水が流れて入ってしまうということで、厳密に言えば無農薬ではないということなんでしょうが、例えば、栽培期間中というのを除いて農薬不使用というような表示は可能なんでしょうか。

水野政府参考人 お答えいたします。

 委員御質問の無農薬につきましては、これは消費者に誤解させる可能性が、どこが無農薬かというのが非常に難しい問題がございますので、そこは禁止ということでしております。

 農薬不使用という表示につきましては、先ほども申し上げましたけれども、この不使用の期間が栽培期間中のみなのか栽培期間以前も含むのかというところが消費者に大変誤解を与えやすいというところもありますので、そこは一括表示の中でしっかりと栽培期間中不使用ですということを明示していただくことによって誤解を回避するということにしておりますので、その一括表示の中に「栽培期間中不使用」という表示があるのであれば、その枠外においてもこれを農薬不使用ということで表示していただいて構わないということでございます。

北神委員 ありがとうございます。

 もう一つは、今回のみどり法案で、農薬だけじゃなくて、化学肥料、これを三割二〇五〇年までに減らすということをうたっていますが、私の地元の亀岡というところで、稗田野で有機農家をやっている方がいます。

 有機農業というのはいろいろな流派があるみたいで、私もそんなに科学技術的なことは分からないんですが、この方たちが言うには、化学肥料を使わないからといって必ずしも、少なくとも人体には安全とは言えない、環境に負荷を与えないというわけではないと。牛ふん、鶏ふんを使うだけでは駄目だ、やはり五年間ぐらい寝かして完熟させないと、そのまま牛ふん、鶏ふんを使ったら、例えばホウレンソウなんかに硝酸態窒素というものが入って非常に影響が人体に及ぶというようなことをおっしゃる方がいて、この人だけが言っているんだったらあれですけれども、調べると、少なくとも、その全国にある流派の人たちはそういうふうに言っているんですが、これについての事実について伺いたいと思います。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 野菜に含まれる硝酸塩でございますけれども、これは、野菜の生育上不可欠なたんぱく質を合成するために土壌から吸収されるものでございます。この成分は、肥料として施用される窒素成分に由来しているわけでございまして、化学肥料であるか堆肥であるか、あるいは完熟であるか否かを問わず、過剰に投与されますと野菜に多く蓄積されるものでございます。

北神委員 分かりました。堆肥の種類によらず、余り過剰に使うと窒素が、当たり前ですけれども、過剰に増えるという理解だというふうに思います。これは私もまたちょっと調べていきたいというふうに思います。ありがとうございます。

 次に、植物防疫法の改正内容そのものではないんですけれども、重要な論点として、これは私、実際に農林水産省で、もう退官されておられますが、国際交渉に携わった方と友人でありまして、その方から言われたんですが、これから更に、輸出促進とか、今回のみどり法案でも、ある意味では、欧米の国際標準というか国際的なルールというものが大きく変わっていく中で、我が国もそれに影響されて合わせていかないといけないと。

 SDGsとか、環境、気候変動とか、これはもう誰も異を唱える人はいないかもしれませんけれども、先ほどから話が出ているように、我が国は非常に気候的にもいわゆる病害虫が発生しやすい。これは日本だけじゃなく、恐らくアジア・モンスーン地域のところはみんな、どうしても農薬にある程度頼らざるを得ないという状況があるわけですね。

 こういう国際標準、今回の国際標準については言いませんが、これから、今までも自由化の交渉とかそういった中で、この国際標準にただ盲目に従うんじゃなくて、この国際標準づくりそのものにやはり力を入れていかなければいけない。

 こういう中で、こういったところは農林水産省の国際部の方が交渉現場に出ていって頑張っておられるというふうに聞くんですが、その方によると、なかなかこの植物防疫の話というのは、各国様々な基準もあるし、国際会議に出ても自分たちではなかなか対応し切れない、やはり原課の、例えば植物防疫課というところがあるらしいんですが、そういったところの人材というものがちょっと不足しているんじゃないか、もっと体制を強化すべきだというふうにおっしゃっておられます。

 大事な国益に関わる話なので、これについて皆さんのお考えをお聞きしたいと思います。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の国際標準づくりへの参加についてでございます。

 植物防疫の分野につきましては、まず、WTOの衛生植物検疫措置の適用に関する協定、いわゆるSPS協定と言われているものでございますが、これがございまして、その中では、食品安全、動物衛生それから植物検疫に関する措置につきましては、国際基準に基づいて取るということが位置づけられております。

 また、この三分野のうち、植物検疫措置に関する国際基準とは、国際植物防疫条約、これまたいわゆるIPPCと私たちは頭文字を取って呼んでおりますが、この事務局主催の下で策定されたものというふうに決められております。

 したがいまして、この枠組みの下、IPPCにおける国際基準策定への貢献が重要と考えております。我が国も積極的にこの活動に貢献しているところでございます。

 具体的には、これは人づくりの面もございまして時間もかかりますが、二〇一〇年から二〇一四年までは、我が国からこのIPPCの事務局長を派遣しております。また、二〇〇三年以降、事務局員として六名を派遣してきております。こうしたことを通じて人材の育成を図っているところでございます。

 更に申し上げますと、国際基準の案を策定する二十五名の委員から構成される基準委員会、ここが原案を作成するのでございますが、この委員の中には農林水産省の職員が委員となってございます。

 こうした貢献をベースに、我が国の農産物の輸出に資する植物検疫措置につきまして、予算も活用しながら科学的データを収集し、国際基準として提案できるように努力をしているところでございます。

北神委員 ありがとうございます。

 非常に大事なところなので、是非皆さん、体制がちょっと不足しているということだったら遠慮なく話をして、我々もしっかり皆さんの応援をしていきたいというふうに思っています。

 あと、関連したことで、国際標準そのものではないんですが、大臣も所信表明でおっしゃっていた、今回の農業政策の一丁目一番地として輸出促進というものを掲げておられます。

 これも、輸出をするときに、先ほど申し上げたように、各国、非常にいろいろな、多種多様な基準があって、日本のお米とか野菜を輸出するときに、そこでいろいろ、こっちはちゃんと基準に合っているというふうに思っているところ、向こうは違うとか、一種、これも、本来あってはならない、科学的見地でやるべきなんでしょうが、それはきれいごとで、やはり交渉みたいなところがどうしても出てくる。

 これも、先ほどの退官をされた皆さん、OBの方がおっしゃっていたんですが、そういう外国の検疫の現場でいろいろ指摘を向こうからされる、これは返さないといけない、いや、ちゃんとこうこうこういう理由で皆さんの基準に合うていますよということを言わないといけないんですけれども、彼らが言うには、これも体制の不足で、なかなか返答が、本国から、日本から、農林水産省から返ってくるのが遅い、こういうのがすごく輸出促進の妨げになっているんじゃないかということをおっしゃっています。

 これは、前の質問でいうと植物防疫課の件ですけれども、これは多分、食料安全政策課かな、彼が言うには、国際局だけではなかなか対応し切れないので、その現場の人たちが、やはりもっと人が、体制ができて、そういった指摘された問題についてぱっと答えを出せるような、そういう体制が望ましいと言うんですが、これについてどういうふうにお考えでしょうか。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 植物検疫に係る輸出検疫協議、これも交渉の一つでございます。先ほど申し上げましたSPS協定あるいはIPPCに基づきまして、基礎的なルールが決まっております。

 具体的に、そのプロセスは、まず、輸出先国において、我が国にはどんな病害虫がいるのかということにつきまして一つ一つリスク評価を先方は行ってまいります。そして、それを踏まえまして、病害虫の侵入を防ぐための検疫措置等について協議を行って、その結果、植物検疫条件が設定されるというプロセスがございます。

 この中で、特に、輸出先国におけるリスク評価、我が国にどんな虫がいて、相手国にどんな害を与えるかというものの病害虫の選定について、これは、植物の病害虫の存在が国や植物の種類によって異なることから、ここの部分の協議には一定の時間を要する、ここで一番時間を使っているということがございます。

 そして、そういった協議の中で輸出解禁をかち取っていくわけでございますけれども、その具体的な期間につきましては、まず、過去十年間を取ってみますと、大体平均で八年間ということになります。これも、相手国の姿勢によっても期間というのは左右されてまいります。一番直近は、先週末にインド向けのリンゴの解禁のニュースがあったと思いますが、これは実は十二年間かかってございます。他方、昨年解禁されたものでございますと、近くから申し上げますと、昨年十一月に解禁できました米国向けのメロンは約五年で解禁ができました。昨年の十月に解禁いたしましたベトナム向け温州ミカン、これは四年で解禁をかち取ることができました。

 いずれにしましても、経験を積みながら、早期の輸出解禁の実現に向け、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。

北神委員 もう時間が来ていますので、大臣から決意表明をと思っていましたけれども、もう結構ですので、ひとつ、人員と予算の方をしっかりつけてあげて、国際交渉を有利に運べるように、よろしくお願いを申し上げて、私の質問といたします。

 ありがとうございます。

平口委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 まず、本法案の目的となっているみどりの食料システム戦略について、基本的な点について確認します。

 食料・農業・農村基本法四条は、必要な農地、農業用水その他の農業資源及び農業の担い手が確保され、地域の特性に応じてこれらが効率的に組み合わされた望ましい農業構造が確立されるとともに、農業の自然循環機能(農業生産活動が自然界における生物を介在する物質の循環に依存し、かつ、これを促進する機能)が維持増進されることにより、その持続的な発展が図られなければならないと定められています。

 有機農業の割合を二五%に拡大するという壮大な目標を立てる以上、この法規定に沿って、日本の農業を、環境保全、生物多様性確保の農業に大きく転換していかなければなりません。

 大臣に伺います。

 みどり戦略は、食料・農業・農村基本法に基づいて、二〇二〇年の基本計画と一体化させて実施させていくのでしょうか。お答えいただきたいと思います。

金子(原)国務大臣 食料・農業・農村基本計画は、食料・農業・農村基本法に基づきまして、食料、農業、農村に関する各種施策の基本となるものとして、今後十年程度先まで施策の方向を示したものであります。

 令和二年三月に作成された基本計画では、「SDGsに貢献する環境に配慮した施策の展開」として、環境負荷低減の取組を進める旨について記載をしております。

 これを踏まえまして、生産力向上と持続性の両立を実現するために、検討を重ねた上で、みどりの食料システム戦略は、翌年の令和三年五月に作成したものであります。

 本戦略の実践を通じて、環境と調和の取れた食料システムの確立を図ることは、健全な作物を育てる土づくり、化学肥料や燃油等の輸入依存からの脱却など、持続的な農業の発展、ひいては基本計画に掲げる施策の推進にも寄与するものであり、本戦略については、基本計画と一体となって実施していきたいと考えております。

田村(貴)委員 そうであるならば、みどり戦略というのは、農業基本法四条に言うところの農地と担い手の確保、食料自給率の向上を、自然の生態系に依存した持続可能な農業の推進を通じて図ることが大きな眼目となってまいります。

 一方で、日本は、一人当たりのフードマイレージ、これが六千七百七十トンキロメートルにも上り、農水省の説明、「毎日の「食」と「食生活」」では、「日本人のフードマイレージは、世界で群を抜いて高くなっています。それは、食料の輸送にかかる燃料や二酸化炭素の排出量が世界一多く、環境への大きな負荷を与えているということを意味します。」というふうに書かれています。

 お尋ねします。

 みどり戦略の中で、二〇五〇年までに目指す姿の農林水産業のCO2ゼロエミッションの実現、そして本法案第一条、「目的」における環境負荷の低減では、フードマイレージの低減と食料自給率の向上、地産地消の推進が含まれているのでしょうか。

青山政府参考人 お答えいたします。

 みどり戦略におけるCO2ゼロエミッション化につきましては、農林水産業におけるCO2の排出をゼロにすることをいうものでございまして、具体的には、農林業機械の電化、省エネ型漁船への転換などによるCO2の排出削減を目指すものであり、流通段階におけるフードマイレージや地産地消の取組については含めておりませんでした。

 一方、本法律案における環境への負荷低減とは、食料システムの生産から販売に至る各段階の環境負荷の低減の取組を含めており、本法律案においては、農林水産物等の輸送に伴う温室効果ガスの排出抑制の観点から、フードマイレージも重要な取組の一つであると考えております。

 これらの環境負荷低減の取組は、近年の自然環境の変化等を踏まえ、農林漁業を持続可能なものとするために促進するものでございまして、食料の安定供給にも資するものであると考えております。

 また、食料の安定供給との関係では、現時点で国内の全てのものを賄えるものではないため、一律に食料の輸入削減を意図するものではありません。

田村(貴)委員 法一条には含有すると言いながら、フードマイレージの低減についてちょっと立場が弱いんじゃないですか。

 農水省の説明では、「国産や地元産の食べ物を食べることは、食料自給率を高めるだけでなく、フードマイレージを低くし、環境にやさしい生活スタイルにもつながります。」フードマイレージの低減というのは、輸入の削減で、自給率の向上であります。この方程式の立場に立っていますか。地域内で生産された食料を消費することによって環境負荷を低減させる、この立場は堅持していますか。いかがでしょうか。

青山政府参考人 みどりの食料システム戦略は十四のKPIを設けておりまして、その中で、「農林水産業のCO2ゼロエミッション化の実現」というのを掲げたわけでございますけれども、その後、法案として検討した中では、フードマイレージも重要な取組の一つとして認識をしているところでございます。

田村(貴)委員 そのフードマイレージの低減の具体的な目標、目標値がないんです。しっかり位置づけることを求めます。

 それから、みどり戦略では、有機農業の取組面積を二五%、百万ヘクタールに拡大することを掲げています。しかし、この十年間で耕地面積は二十二万ヘクタールも減少しています。基幹的農業従事者は五年間で四十万人も減少しています。

 大臣に伺います。

 生産基盤が減少の一途の中でも百万ヘクタールというのを達成できると考えておられるのか、それとも、生産基盤の強化を前提とした今度の目標なのか、いかがですか。

金子(原)国務大臣 二〇五〇年の有機農業の目標は、耕地面積に占める割合を二五%に拡大することを目指すもので、耕地面積が維持されることを前提として二五%相当で、分かりやすい目標となる百万ヘクタールを付記しているものであります。

 もとより、農林水産省といたしましては、農地の維持を図るため、生産基盤の整備や担い手対策などを進めているところであり、引き続き、生産基盤の維持を図った上で、有機農業の拡大を目指す考えであります。

田村(貴)委員 大臣、みどり戦略は、これからの農政、それから食料の戦略なんですよ。言葉からして戦略なんです。戦略といいながら、農地も農業従事者もこれからは減らさないという覚悟と決意がついぞ聞かれないんですよ。どうしてなんでしょうか。

 私、先日、鹿児島市の有機農業法人の代表からこんな話を聞きました。耕作放棄地を有機農業で復活させていければ、そこに雇用が生まれる、温室効果ガスの削減と過疎化の歯止めにもなりますと。政府を挙げて地方創生を主張されているのであれば、耕地面積も農業従事者も減っても仕方がない、そういう諦めの視点から脱却することが何よりも必要ではないでしょうか。

 有機農家の所得の確保について伺います。

 有機農業のコストは慣行農業をはるかに上回ります。小規模だとなおさらであります。千葉県のいすみ市の有機農場でお話を聞いてまいりました。有機の鶏ふんは五倍の値段がするし、土も高い、何よりも手間暇がかかると。

 EUのファーム・ツー・フォーク戦略では、農業者の所得確保と予算措置が強調されています。日本ではどのように有機農家の所得を確保していくのか。慣行農産物との価格差、コスト差などを財政支援を行って措置していく必要があると考えますが、いかがでしょうか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 有機農業の拡大を図るためには、収益性の向上を図り、取り組む農家を増やしていくことが重要だと考えております。

 有機農業は、とにかく除草などで労力がかかるほか、病害虫などで収量が減少することが課題であります。除草機などの省力技術の導入の支援、あるいは有機栽培技術の習得などを支援しているところでございます。

 また、売り先の確保、流通コストの低減、これも大変重要でございまして、販路確保に向けた取組や効率的な流通体制の確保を支援しております。

 その上で、委員お尋ねの所得の関係でございますけれども、環境保全型農業直接支払交付金によりまして、転換期間も含めて有機農業によるかかり増し経費を支援しているところでございます。さらに、令和三年度の補正予算から新たに、みどりのシステム戦略推進交付金のうちグリーンな栽培体系への転換サポート事業において、有機農業への転換を支援することとしております。

 地域の実情に応じて様々な課題解決を支援することにより、有機農業の収益性を高めることで、取組の拡大を図っていきたいと考えております。

田村(貴)委員 環境保全型直接支払いは市町村の負担を伴います。ですから、自治体の意思で左右されるわけですよね。同じ取組をしているのに、隣の自治体では直接支払いがある、こちらではない、そういう事態も起きているわけです。市町村で違いが生まれないたてつけをつくる必要があるのではないですか。これはじっくり検討していきたいと思います。

 そして、有機農産物の仕入れ先、有機農家の所得確保の上で非常に効果的なのは、学校給食であります。千葉県のいすみ市で既に実施をされています。全国有機農業推進協議会、日本有機農業研究会、東都生協、次代の農と食をつくる会、オーガニックフォーラムジャパンなど、全国の有機農業に関連する数多くの団体でつくる日本オーガニック会議は、学校給食を含む公共調達の有機化を法制化すべきだと強く提案しています。

 継続して確実な消費先があってこそ、有機農業の拡大につながるのではありませんか。有機農業の農産物を子供たちに食べていただく、意義のあることです。農水省は、農水大臣はいかが考えていますか。

金子(原)国務大臣 有機農産物を学校などの公共施設で活用することは、安定した消費の確保に加え、有機農業について生徒や利用者など地域の住民に理解していただき、支持を得るためにも有意義な取組であると認識をしています。

 一方、有機農産物を活用するか否かは、財政負担の仕方や食材調達方法が地域によって異なることから、学校給食や公共施設で有機農産物を取り扱うためには、市町村長に指導力を発揮していただく必要があります。

 このため、令和三年度補正予算から、市町村が主体となって、新たに、生産から消費まで一貫した有機農業の拡大に取り組むことに対して支援を行うこととしておりまして、この中で、地域の有機農業者と給食関係者などとの連携や、有機農産物等の給食や食堂への導入など、消費面まで視野に入れた取組を支援することとしています。

 農林水産省といたしましては、まず、こうした取組を通じまして、意欲ある市町村の取組が進むように支援してまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 その中にある、みどり戦略推進交付金も活用という答弁がありましたけれども、これは一時的なもので、給食のように恒常的な固定費を賄うものにはなりません。市町村が、手間と経費をかけた有機農産物にふさわしい価格で買い取れるように、やはりこれは検討が必要であります。

 学校給食の活用なくして有機農業の拡大はあり得ません。是非、位置づけるべきだと思います。環境に負荷を与えないために、無農薬、無化学肥料で作るお米、野菜の意義を食べて考える、これは食育の観点からも大変意義があります。生物多様性を田んぼの中で子供たちが体験をする、食を通じた教育の意義は大変大きいものがあろうかと思います。

 食育推進基本計画の中での目標設定も含めて、今日は提言しました。是非、学校給食は欠かせない消費先であるということをこの計画、戦略の基本にしていただきたい。このことを強く要求して、続きは次回の質疑でやらせていただきます。

 終わります。

平口委員長 次回は、明二十四日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十分散会


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