第6号 令和4年3月24日(木曜日)
令和四年三月二十四日(木曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 平口 洋君
理事 江藤 拓君 理事 高鳥 修一君
理事 宮下 一郎君 理事 簗 和生君
理事 金子 恵美君 理事 緑川 貴士君
理事 空本 誠喜君 理事 稲津 久君
東 国幹君 五十嵐 清君
上田 英俊君 尾崎 正直君
加藤 竜祥君 神田 潤一君
北村 誠吾君 国定 勇人君
坂本 哲志君 鈴木 英敬君
高木 啓君 高見 康裕君
武井 俊輔君 土田 慎君
中川 郁子君 野中 厚君
長谷川淳二君 平沼正二郎君
古川 直季君 古川 康君
保岡 宏武君 山口 晋君
若林 健太君 梅谷 守君
神谷 裕君 小山 展弘君
後藤 祐一君 佐藤 公治君
渡辺 創君 池畑浩太朗君
住吉 寛紀君 金城 泰邦君
庄子 賢一君 長友 慎治君
田村 貴昭君 北神 圭朗君
福島 伸享君
…………………………………
参考人
(東京農工大学理事(教育担当)・副学長、大学院教授) 有江 力君
参考人
(秋田県立大学教授)
(日本有機農業学会会長) 谷口 吉光君
参考人
(株式会社金沢大地代表取締役) 井村辰二郎君
参考人
(有限会社大塚ファーム代表取締役) 大塚 裕樹君
農林水産委員会専門員 梶原 武君
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委員の異動
三月二十四日
辞任 補欠選任
高見 康裕君 土田 慎君
長谷川淳二君 鈴木 英敬君
平沼正二郎君 国定 勇人君
古川 康君 高木 啓君
北神 圭朗君 福島 伸享君
同日
辞任 補欠選任
国定 勇人君 平沼正二郎君
鈴木 英敬君 長谷川淳二君
高木 啓君 古川 直季君
土田 慎君 高見 康裕君
福島 伸享君 北神 圭朗君
同日
辞任 補欠選任
古川 直季君 古川 康君
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本日の会議に付した案件
環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案(内閣提出第三二号)
植物防疫法の一部を改正する法律案(内閣提出第三三号)
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○平口委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案及び植物防疫法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
本日は、両案審査のため、参考人として、東京農工大学理事(教育担当)・副学長、大学院教授有江力君、秋田県立大学教授・日本有機農業学会会長谷口吉光君、株式会社金沢大地代表取締役井村辰二郎君、有限会社大塚ファーム代表取締役大塚裕樹君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、有江参考人、谷口参考人、井村参考人、大塚参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。
それでは、初めに、有江参考人、お願いいたします。
○有江参考人 皆様、おはようございます。東京農工大学の有江と申します。
まず、ちょっとだけ自己紹介をさせていただきますと、私は現在、東京農工大学の農学研究院の教授をしております。植物病理学研究室という研究室を主宰しております。また、日本植物病理学会の会長を二年前に務めました。また、農薬学会の会員でありまして、農林水産省植物防疫の在り方に関する検討会の委員をさせていただいております。また、農林水産省の農業資材審議会農薬分科会の委員もさせていただいておりまして、また、文部科学省のカルタヘナ法研究第一種使用における意見聴取会、いわゆる組み換え生物の野外実験に関する委員もさせていただいております。海外における病害のパンデミックだとか我が国の侵入病害の検出に関わる研究、それから、実際に、農林水産大臣の特別許可をいただきまして、輸入禁止品、すなわち、土壌だとか病原だとか植物を輸入して使用させていただいております。そういう意味で、様々な面で植物防疫の関連部署には大変お世話になっております。
実は、お手元に送らせていただいたスライド、これをお送りしてからこの分厚い改正の本をいただきまして、通常、私たち、学生に授業を行っておりますけれども、大体、事前にスライドを渡しても予習をしてくるような学生はおりませんので、非常に基礎的なものを作ってしまって、釈迦に説法のようなスライドで大変申し訳ありませんけれども、まずお聞きいただいて、それから御質問いただければというふうに思っております。
まず、一枚目のスライドを、スライドというか一枚目を御覧いただきたいと思いますが、植物の病害虫というのは間接的に人命に影響を及ぼしています。これは、今、コロナウイルスは直接的に人命に影響を及ぼしておりますけれども、植物の病害虫というのは非常に間接的ながら大きな影響を与えます。
例えば、この下の写真は、一八四五年から九年にヨーロッパで蔓延しましたジャガイモ疫病によるジャガイモ飢饉、これで約百万人の方が亡くなったというようなことを示すものでございます。北欧に始まって、広がっていってしまったというようなことになります。
右側のグラフ、円グラフでございますけれども、現在もまだ、実質生産できる量の約四五%程度、病害と害虫とそれから雑草害でそれぞれ一五%程度ずつ失われているというふうに言われています。その残りを食べているということになります。これから地球人口はまだ増えてまいりますので、この部分を増やす、すなわち、病害虫等のロスを減らしていかないといけないというように考えております。
百五十年ほど前にジャガイモ飢饉が起こっておりますけれども、言い方を換えると、たった百五十年前なんですね。私ももう六十を超えていますけれども、それの倍ぐらい、もう一世代前ぐらいにはこういう飢饉が起きていた。この飢饉がなぜ起きなくなってきたかというと、下に赤字で書いてありますけれども、化学農薬だとか品種改良、それから国際的な物流ですね、例えば稲が取れなかったら海外から輸入するということを過去にもやりましたけれども、そういったことができるようになって解決をしてきているということになります。
次の紙を御覧いただきたいと思います。
これは、最近の植物病害のパンデミックの例を示してございます。世界地図がありますけれども、これは、パナマ病には二つのレースが、レースというか系統があります。青いのが昔からいる系統、そして赤いのが、今我々がスーパーマーケット等で買うことができるキャベンディッシュというバナナを侵す新しい系統になります。
この新しい赤の系統、台湾に数十年前に始まりまして、今フィリピンではかなりの面積がやられまして、日本でもバナナが食べられなくなるんじゃないかというようなことが話題になりましたけれども、大きな問題になっております。その後、オーストラリア、アフリカ等に広がりました。
我が国も、その対策として、例えばエクアドルからバナナを輸入するなどということをしておりました。そういう方向にシフトをしようとしておりました。
中南米はバナナ生産の最後のとりでと言われていたんですが、このコロナ禍で余り目立ちませんでしたけれども、二〇一九年にコロンビアでとうとう新しいレースが発生をしまして、そして昨年の四月、ペルーでパナマ病が発生したということになります。右側にありますナショナルジオグラフィック誌、ここにはバナナが絶滅への第一歩を踏み出したという記事が載っかっているということになります。
一方、地球温暖化に伴って、バナナの栽培地域というのは少し北あるいは南に広がっていっています。地図では、このベルトがありますけれども、その上下に広がっていっております。日本でもバナナの生産が盛んになっておりまして、私の知るところでは、東北から北海道でもバナナが、温室を使ってですけれども、作られるようになっているというふうに言われております。
下の写真は、日本でも初めて沖縄でパナマ病が出たという報告、これは私どもがしましたけれども、真ん中が病原菌のカビになりますが、そういう報告をいたしまして、昨年は奄美大島でもこの病害が確認されているということで、現在その病原性などを解析しております。
このように、種子、バナナの場合には種子はできませんので苗ですね、それから人の国際的な移動、それから気候変動が病害虫を広げているということになります。
次の紙を御覧いただきたいと思いますけれども、二〇二〇年から二一年にかけて、国連のFAOが国際植物防疫年に指定をいたしました。日本でも、農林水産省が国際植物防疫年という日本語を当てて、そこの下にありますように、ワンヘルスという概念の中で植物の健全性を保つ、これが人の健全性につながっていくということで、植物検疫の強化などを行いました。
右側にある記念切手、私、この分野で記念切手が出たのを初めて見ましたけれども、植物防疫官の仕事のこういう切手が出されております。
このIYPH二〇二〇の中では、戦略としての食料確保、今でも、例えばロシアのウクライナ侵攻によって小麦が価格高騰しているということから、やはり米をどうするかというような問題が生じてくるでしょうし、それから植物検疫、それから科学的な根拠と組み合わせて総合的な防除を行うこと、それから化学農薬の使用削減、これはみどりの法案等にも関係しますけれども、などが求められているということになります。
次の図を御覧いただきたいと思いますが、植物検疫制度というのは、大きく分けますと、三つに分けることができます。まず、輸入検疫、これは海外から病害虫が入ってくることを防ぐ検疫。輸出検疫、これは日本からの農産物を海外に持っていくときの検疫。そして最後が国内検疫で、国内で重要な病害虫が広がっていることに対するものということで、パンデミックを防ぐ非常に重要な役割を果たしていただいているというふうに思っております。
右側にある写真はオランダの空港で球根が売られている写真ですが、オランダに旅行に行かれると、よく日本人が空港とかで球根を買って荷物に入れて持って帰るのを見ますけれども、実際にはちゃんとサニタリーサーティフィケートというものを受けていないと持ってこられないということになっていまして、そういうところを注意されているというふうに理解をしております。
下の例にエンドウ萎凋病というのが書いてございますが、これも我が国にはない病害ということだったんですけれども、数年前に日本に入りまして、農林水産省さんのお手伝いをさせていただいて、右側にありますような検出計を作りました。右側のフィールド二十八と書いたものは全部オレンジ色になっていまして、これは陰性なんですが、下の四十九というのが一部黄色になっていまして、これが陽性反応ということになります。この四十九番というフィールドがエンドウ萎凋病菌に汚染していると。
これは、実はPCRを更に展開をしたようなLAMPという方法ですけれども、これをつくるだけでも相当大変なんですけれども、この技術をつくりまして、土壌の検診を行い、農林水産省の植物防疫所さん、それからその当該の地域に圃場の消毒を示唆をさせていただきまして、消毒をされて、その後三年間ほど発生が見られておりませんで、根絶に成功したという理解をしております。
一方、次になりますが、昨年度から、農林水産省の方で植物防疫の在り方に関する検討会というのを開催していただきました。
ここには、大学、それから植物防疫関連の協会、JAS有機生産者やその流通関係の方、JA全農の方、地方自治体、科学ジャーナリスト、農研機構の研究員など十二名が委員として参画いたしまして、そこにありますように、五回に分けて、まず、植物防疫の全体の認識をし、それから、その中で病害虫の発生だとか駆除、蔓延防止等のことを議論をいたしまして、それから、三回目で輸出入の措置に関する議論をいたしました。中間論点の整理を六月三十日に行い、最終的な会議を三月の十一日に開催をいたしました。これで、これをもって植物防疫法の改正の提案に一部つなげていただいたというところを大変ありがたく思っております。
例えば、侵入調査事業の実施など及び緊急防除の迅速化、早く、必要なものは防除しましょうというようなこと。
それから、防除に関する農業者への勧告、命令などの措置ができるようになるということ。
それから、植物防疫官の検査に係る対象、これは農機具、今までは種苗だけだったわけですけれども、土壌が付着している農機具なんかも重要な伝染源になりますので、きちっとしましょうということでそれを検査できるようになったり、あとは権限、荷物を開けていただくような権限を強化したりということをしていただいております。
また、輸出検疫体制の整備。これは、日本から農産物輸出、これから増やしていこうとしているところでございますけれども、その検疫をするのに、今までは全て植物防疫官がやっていただいておりました。それを、第三者の機関がやったものを植物防疫官が承認をするという形が取れるように、海外と同じような形にできるようにしていただいたということになります。
ここでは、やはり総合的な防除という観点から、多様な農業体系に適合した防除体系をつくっていくということが基本になっております。
最後の紙になりますけれども、みどりの法案の方にも関係しますが、総合的防除というものに関して、これは私の考えている立場から少し御紹介をしたいと思います。
総合的な防除、よくIPMというふうに呼ばれますけれども、これは、そこに書いてございますように、化学農薬、それから生物農薬、抵抗性品種など、どれか一つに依存することがなく、科学的な根拠、診断結果などに基づきまして、経済的に成り立つ範囲で多様な方法を組み合わせて防除することをいいます。
その結果、効果が相乗的に得られて、例えば生物農薬の効果が少し弱いというところをほかのもので補完をして効果を上げていたり、人や環境への負荷の低減を併せて達成しようとするものです。安全で、消費者に信頼される農作物の安定生産に資するということにつながります。
内容的には、病害虫の確実な制御につながるような方法。それから、単に減らしましょうということではなくて、化学農薬もうまく使いながら農業生産に寄与していこう。それから、薬剤耐性、化学農薬を使い続けていますと耐性が出てまいりますが、その問題点を回避できる。それから、結果的には、化学農薬が特効薬のような形で価値が高まってくるということになります。それから、生物農薬などの効果や価値が高まる。それから、科学的根拠に基づいて防除することが必要であるということが起こってまいります。
ただし、欧州とは異なる、すなわち、欧州は比較的病害虫が出にくい気候ですので余り農薬を使わないでもできるんですが、我が国の場合には、非常に湿潤で温暖だということから、病害虫が出やすい環境になっておりまして、しかも水田だということから、このIPMのやり方自体も少しずつ、少しは変えていかなくちゃいけないかというふうに思っております。
以上、御説明申し上げましたけれども、私は、この総合防除に関しては、生物農薬の開発だとか、それから検出法の確立などを行っておりまして、現に今も東京都の圃場を借りて生物防除の試験を行っているというふうなことをやっておりますので、植物防疫に関する御質問をいただけましたら幸いでございます。
以上になります。どうもありがとうございました。(拍手)
○平口委員長 ありがとうございました。
次に、谷口参考人、お願いいたします。
○谷口参考人 おはようございます。谷口です。拍手いただけるとは思わなかったので、緊張しております。
秋田県立大学の谷口と申します。
私は、日頃から、国会議員の方々が非常に厳しい環境の中で様々な難しい問題に御尽力いただいていることに感謝の気持ちを抱いております。まず、そのことに対して感謝の気持ちを表したいと思います。大変ありがとうございます。
そして、このような機会をいただいて、微力ながら国政に貢献する機会をいただきましたので、何とか頑張りたいと思います。よろしくお願いします。
さて、私は、日本有機農業学会の会長を仰せつかっております。専門は農学ではなくて、文系の社会学という分野を専門にしております。ですから、今日これからお話しする話は、農業に特化せず、限らずに、広い社会全体の中で農業をどう見るか、その中でみどり戦略をどう見るかという視点からまとめさせていただきました。
それで、意見をまとめようと思ったんですけれども、到底十五分ではまとめられないので、資料を用意いたしました。
議員の皆さんはお忙しいと思いますので、十一項目にまとめまして、まず、論点といいますか、それを一行か二行でまとめたものを用意して、それに解説をつけるという形で資料をまとめました。
十五分の時間では全て説明することはできませんので、そこに書きましたけれども、今後、もし詳しい説明を御入り用の方は、メールをいただければ対応いたします。今回、私は野党側の参考人として出席しておりますけれども、このみどり戦略は与野党が対立するような法案ではないと思いますので、会派を問わず対応いたしたいと思います。
また、以下の意見は、非常に限られた時間で、ほぼ二、三日でまとめたものですので、私の誤解や誤りが含まれている可能性がありますので、その辺も御了承ください。
まず一番目、意見一です。みどり戦略は、持続可能な社会への転換という世界的な流れの中で捉えるべきと考えています。
これは、先ほど申しましたように、私が社会学という分野をやっているからこういう見方になるわけですけれども、ちょっとそこに書いてある三行の文章を読み上げます。みどり戦略がなぜこの時期に出てきたかを理解するには、その背景を理解する必要がある。みどり戦略の背景にあるのは、二十世紀の大量生産、大量消費社会が地球の限界にぶつかっているという危機感である。
これをちょっと図に表してみましたのがその下の図となります。
赤で右肩上がりになっていますのが、今までの、二十世紀の成長主義といいますか、大量生産、大量消費の流れであります。それが、上の緑の雲で書いています、地球の資源と環境容量の限界にぶつかって、にっちもさっちもいかなくなっているというのが現状だというふうに思います。
問題は、このような認識は、多分、委員の皆さんも共有していただけると思うんですが、これをどのような方向に向けていくことが根本的な解決になるのかということであります。
私が考えましたのは、下から二行目なんですが、それに対して、世界中で持続可能な社会への転換が模索されている、持続可能な社会への転換は、図二のように、右肩上がりの経済から定常的な経済への転換として描くことができる。
二ページ目を御覧ください。
図一に描きましたように、赤で描いた成長主義、大量生産、大量消費はもう限界である、これも皆さん、薄々感じておられるかと思います。では、それに代わってどうしたらいいのかというのをこの図の右側にあります緑色の矢印で表しました。定常的な経済イコール持続可能な社会と書きました。
これは、これ以上、物質エネルギーを使わないという意味ですね。物質エネルギーをたくさん使おうとするから環境容量にぶつかってしまいます、地球の限界にぶつかってしまいますので、人間の経済活動は止められないので、人間の経済活動はするんだけれども、エネルギーや物質をこれ以上使わない方向で進める。そうしますと、物質収支、エネルギー収支はゼロになりますので、それでも人間活動は続くということになりますので、こういった横に進むというイメージで表しました。
問題は、この定常的な経済というのは、今の私たちが暮らしている資本主義の社会と全く違う社会だと思います。これは、話せと言えば一時間も二時間もしゃべりますけれども、今日は時間がありませんのでお話しできませんけれども、かなり異質な社会だと思います。ですから、今私たちが浸っている資本主義経済の中で想像することは難しいですね。
では、どうするかというと、この右肩上がりから定常的な経済につなぎが必要である。それをこの真ん中辺の楕円の点々で描きました。右肩上がりから定常型につなぐ、これを、持続可能な社会への転換、キーワードは転換という言葉です。日本語で転換というと、普通の言葉なのでぴんとこないんですが、英語ではトランジションというふうに呼ばれています。その下に書きましたけれども、英語でサステーナビリティートランジションという言葉が国際的によく使われています。この言葉がキーワードになると思います。
もう一度繰り返しますと、右肩上がりの経済から定常的な経済にどうしたら移行できるのか、その移行期の工夫をどうするかというのがトランジションのテーマだと思います。
下線のところを御覧ください。そう考えますと、みどり戦略は、持続可能な社会への転換の試みとして理解することができます。その意味で、世界で起こっている大きな流れに適合した政策として高く評価できます。これが私の一番目の意見です。
二番目。意見二、みどり戦略の使命は、農業関係者にしみついた化学肥料と化学農薬を使わなければ農業生産はできないという固定観念を払拭することであると書きました。
農業基本法以来、農水省は、農薬と化学肥料の使用を前提とした農業を推進してきました。そのため、農業関係者の頭には、農薬と化学肥料を使わなければまともな作物は収穫できないという固定観念がしみついていると思います。もちろん、研究者ですとか組織の上部の方は、そんなことはない、農薬を減らすんだということは理解していると思いますが、ごく普通の農家、普及所、JAの職員の中にはまだまだこの固定観念が強いと思います。ですから、この固定観念があるがゆえに、多くの農家、普及員、JAは、農薬や化学肥料に安易に頼る、依存する体質がしみついていると思います。
次のページをおめくりください。
みどり戦略を実現するには、この固定観念を払拭する必要があります。四つの数値目標は、農業関係者にショックを与えて、意識改革と行動変容を迫るという意味では大きな効果があったと考えます。
私は、この四つの数値目標は、数値目標そのものにはほとんど意味がなくて、むしろ、これが農業関係者に与えたショック効果という点で評価すべきだと思います。農水省が突然、農薬と化学肥料を減らす、有機農業を広めると言ったあのショック、それによって、多くの農業関係者はこのままじゃいけないんだということを理解した、そこにみどり戦略の意義があると考えています。それが二番目です。
三番目。農薬と化学肥料を前提とした政策を総括し、関係者への丁寧な説明が必要と書きました。
意見一では、みどり戦略は世界中で起こっている大きな流れに適合していると前向きに評価しましたが、反面、この政策は、農薬や化学肥料の使用を前提としたこれまでの政策を根本的に覆すという現状破壊的な性格も持っております。国、地方自治体、JAは、研究開発から普及、指導に至るまで、農薬、化学肥料の使用を当然の前提としてまいりました。それを一夜にして覆すような政策転換を実行する以上、農水省は、全国の農業者に対して、これまでの政策を総括し、なぜ変えなきゃいけないか、政策転換の必要性を丁寧に説明する必要があると思いますが、その努力が足りているだろうかという問題があります。
次の段落に行きます。
しかし、私が見る限り、現在までのところ、農水省は、そうした総括や説明を行わず、有機農業をなし崩し的に推進しているように見えます。このままでは、全国の農業関係者には農水省への不信感が広がり、農薬と化学肥料の使用を当然とする従来の基準と、農薬と化学肥料をできるだけ削減するというみどり戦略の基準が併存することになり、二重基準、ダブルスタンダードの状態が起こると思います。
特に、熱心に農家に指導してきた普及員の方たちは、多分非常に困っているというふうに思います。つまり、今までは農薬と化学肥料をしっかり使って取りなさいと言ってきたものを、これから減らしなさいと言わなければいけないわけですね。
この問題をどうしたらいいんだろうか。これをきちんと解決しませんと、みどり戦略の着実な推進の障害になるのではないかと懸念いたします。これが三番目。
さて、四番目からは法案の中身に入ってまいります。ちょっと専門的な話になりますので、ここは簡単に済ませます。
生産力向上と持続性の両立という文言は曖昧で不十分だというふうに思います。
みどり戦略のキャッチコピーには、食料、農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現するというふうに書いていますが、生産力向上と持続性の両立という言葉を使っていますが、これは曖昧で不十分だと思われます。
私、法案を送っていただいて見たんですけれども、持続性の意味が法案の中で定義されておりません。法案の第一条に持続性という言葉は使われているんですが、ちょっと引用文は飛ばしまして、下線部を引いたところだけ御覧ください。「もって農林漁業及び食品産業の持続的な発展」という言葉と、その次の「持続的に発展」という言葉、二か所しかありません。それ以外に、法案を全部見ましたけれども、「持続性の確保」、「持続性の高い」という言葉が数か所出てきますけれども、肝腎の持続性とは何かという言葉が第二条「定義」には出てきておりません。これは非常に問題だと思います。
それ以外の使い方をちょっと見ますと、第三条を見ますと、「環境と調和のとれた食料システムの確立に当たっては、環境への負荷の低減と生産性の向上との両立が不可欠である」と書いてありまして、ここでは、持続性の代わりに、環境への負荷の低減と言い換えられています。
これらを見ると、本法案では、持続性とは環境負荷の低減と同じ意味であると考えられているように思われます。
しかし、持続可能性に関する国際的な定義を見ると、これは非常に矮小化された定義だと言わざるを得ません。
例えば、EUのファーム・ツー・フォーク・ストラテジー、農場から食卓への戦略で、持続可能な食料システムの特徴としては、次のような説明が挙げられています。環境負荷がゼロ又はマイナスである。環境負荷を減らすのは、みどり戦略と同じです。しかし、その後に、気候変動を緩和し、その影響に適応する。生物多様性の喪失を逆転する。食の安全、栄養、公衆衛生を保障し、全ての人が十分な、安全で、栄養があり、持続可能な食にアクセスすることを保証する。こういった社会的な公正といったものまで持続可能性の中に含まれているんですね。
ちょっと少し飛ばします。
このように、EUのファーム・ツー・フォーク・ストラテジーを見ても、持続可能性は非常に多面的な意味があるというふうに定義されているわけですけれども、本法案を見る限りは、持続可能性イコール環境負荷の低減と、非常に狭く定義しているように私には思われます。
もしこのような定義をするのであれば、次のページ、五ページ目の第二段落のところなんですけれども、国際的には時代遅れの認識として、みどり戦略そのものの評価を著しく低下させてしまうのではないかと懸念されます。つまり、日本が、みどり戦略は生産力の向上と持続性を両立しますと言っているのに、持続性というのは環境負荷の低減だけを言っているのか、話にならないなというふうに思われるのではないかと懸念いたします。
ただ、これは私自身の短い時間で資料を読んだ感想ですので、間違いがあるかもしれませんので、どうぞ議員の皆さんには、今後、審議の中で農水省から正しい認識を引き出していただければというふうに思います。
意見の五番です。生物多様性創出という視点を盛り込むことを強く求めたい。
これは有機農業にとって非常に大事なことなんですが、時間が大分なくなってきました、下線部だけ読みます。
環境と調和した農業生産を目指すなら、生物多様性の危機に対する対応が重要な方針として明記されるべきだと思います。しかし、さっき言いましたように、本法案には、生物多様性の創出という言葉がほとんど、全く見当たりません。有機農業と申します技術は、有機農業というのは、生態系を豊かにして、その機能を発揮させることによって農業生産を行う農業ですので、生物多様性を創出することは不可欠であります。
有機農業を推進するための法案の中に、どうして有機農業の基礎である生物多様性の創出が盛り込まれていないのでしょうか。私は、非常に疑問だと思っております。これが意見の五番目です。
意見の六番目。これは、これから対策を実施するに当たっての現場的な話であります。対策の実施に当たっては、有機農家と慣行農家の交流と協力を促すべきである。六ページの一番上に書きました。
みどり戦略に有機農業を進めるということが書かれていて、それは評価できるんですけれども、二行目の下線部です。みどり戦略が描く日本農業全体のビジョンの中で、有機農業がどのような位置づけになるのかが明確になっていないというふうに思います。
具体的に言うと、目玉政策であるオーガニックビレッジ事業とグリーンな栽培体系への転換サポートという事業が二つあります。オーガニックビレッジの方は有機農業推進で、グリーンの方は減農薬、減化学肥料の推進だということは読めば分かります。ただ、この二つの事業を連携しないで行うのでしょうか。例えば、ある市町村で、オーガニックビレッジもやるし、グリーンな栽培体系もやる、つまり、ある地域の中で有機と減減を両方推進しようとなったときに、これを別々に推進するんでしょうか。みどり戦略を見る限り、この二つの事業が連携するという視点はないように思われます。
しかし、皆さん御存じのように、有機農業は今まで、地域の中で非常に少数派であって、変わり者として見られてきました。片や有機農業を推進し、片や減減を推進するということをしますと、有機農家と慣行農家の間に目に見えない壁をつくってしまうのではないかということを懸念いたします。
みどり戦略に当たっては、有機農業だけを特別な農業とするのではなくて、有機農業と減減と慣行を一体として捉えて、地域農業全体を変えていくんだ、そういう視点が必要かというふうに思います。そうしませんと、農家の中に不必要な対立を持ち込みまして、みどり戦略の推進に障害になるのではないかというふうに思います。
七番目。有機農業はみどり戦略を導く指針の役割を果たすべきである。これはちょっと時間がありませんので、項目を読み上げるだけにいたします。
八番目、七ページを御覧ください。有機農業という言葉を再定義することを強く求めたい。
有機農業という言葉は、七ページ目の下から三行目を読んでいます。有機農業とは何かと聞かれると、一般的には、農薬や化学肥料を使わない農業という答えが出てきます。有機農業推進法でもそのように定義されていますが、この定義は非常に不適切だと思います。古くなった。確かに有機農業は農薬や化学肥料を使いませんけれども、それが有機農業の本質であるというふうに誤解される弊害が非常に多くなってきております。
そこで、みどり戦略を契機に、有機農業の定義を見直していただきたい。具体的には、有機農業とは、八ページ目の中段の下線部ですけれども、生態系を豊かにし、その機能を発揮させることによって農業生産を行う農業というような言葉で定義することを求めたいというふうに思います。
あとは、済みません、時間が来ましたので、項目だけを読み上げます。
意見九、小農や家族農業の存続に特別な関心を持つべきである。
意見十、消費拡大に有機給食は有効な政策だが、それだけでは不十分である。
最後、意見十一、ゲノム編集については、消費者の知る権利を保障するために、表示を義務化すべきである。
以上であります。
不十分なところは御質問の中でお答えしたいと思います。
ありがとうございました。(拍手)
○平口委員長 ありがとうございました。
次に、井村参考人、お願いいたします。
○井村参考人 おはようございます。株式会社金沢大地の井村辰二郎と申します。
先生方におかれましては、日頃から地域の農業を応援いただき、感謝申し上げます。また、参考人として国会の場でお話しする機会をいただき、光栄であります。
私は、昭和三十九年生まれ、五十七歳ですが、社会人一年目の娘と大学一年生の息子がおります。大学の農学部を卒業後、三十三歳で脱サラして新規就農して、二十五年がたちました。
現在、石川県金沢市近郊の河北潟干拓地と奥能登で、米、大豆、大麦、小麦、ソバ、ハト麦、野菜、ブドウなど、水田を四十ヘクタール、畑地を百四十ヘクタール、計百八十ヘクタールの、大規模と言われる経営をしております。
有機栽培に取り組むとともに、自社でみそや豆腐、納豆、六条大麦茶など、有機農産物の加工品販売にも取り組んでおり、輸出や農家民宿、レストラン、ワイナリーなど、農業の六次産業化にも積極的に取り組んできました。
私が二十五年前、就農したときに挑戦したことは、一つは、有機農業に転換したということであります。二つ目が、豆腐、みそなどの農産加工、いわゆる六次産業化をスタートしました。そして、耕作放棄地、周りにたくさんありました耕作放棄地を開墾して、規模の拡大を図ってまいりました。私が二十五年間でやってきたことであります。その結果ですけれども、二十五年間で約百四十ヘクタールの耕作放棄地を開墾しました。これは自分でも本当に二十五年間よく頑張ったなと思っています。
さて、有機農業を始めたきっかけですが、三十三歳で家業である農業を継ぐと決めたときに、理念をつくりたいと思いました。その理念、二つのキーワードを掲げました。一つは、持続可能性、サステーナビリティー、もう一つは、生物多様性に資する農業であることです。みどり戦略ができた後づけじゃないかと仲間に言われるんですけれども、二十五年前に私が掲げた理念は持続可能性と生物多様性です。
この二つのキーワードから、持続可能で生物多様性に資する農業とはどんなものかと考え、ヨーロッパの文献などを調べまして、そのときたどり着いたのがオーガニック、有機農業でありました。ですから、私にとって、有機農業は目的ではなくて手段、どうやって持続可能な農業をするのかという手段として有機農業を選択したのだと思っております。
父親が長くやっていたいわゆる慣行栽培、この農業を有機栽培に転換するときの最初のハードルは、父親の説得でした。できるわけないだろう、そんなの無理だ、無理だ無理だ無理だ、毎日けんかです。半年かかりました。六か月、父親と母親を説得して、最後に父親が折れてくれました。そのときに父親が言ったのが、おまえの時代になる、おまえの経営の時代になるから、好きなようにやってみろ、失敗するかもしれないがチャレンジしてみろということで、父親と母親、農業一筋で私を育ててくれた父親と母親に本当に今でも感謝しております。
振り返ると、始めた頃は、有機JAS制度もなく、有機農産物の販路もなく、技術もありませんでした。国産原料の有機加工食品に関してはマーケットすらなく、自らマーケットをつくりたいと、自分で商品開発し、販路開拓し、自分で売るというように、作ること、売ることを両輪として成長してきました。現在は、少しずつマーケットも広がってきて、可能性が広がってきていると感じております。
有機農業をしてきて、やってよかったということは、まず、食べてくださる消費者との関係性が深まって、消費者や流通から指名買いをいただけるような関係になってまいりました。マーケットインの発想で、消費者のニーズのあるものを作る、販路があるものを作る、この習慣が身につきました。
環境の面からは、団地化されてきた、この二十五年間有機農業を行ってきた私の農地では、生物多様性が豊かになり、生態系がよみがえり、自然環境が変わってきたのが実感できています。
二十年以上有機農業を行っていると、生物の多様性が育まれ、自然界の本来のサイクルによって生態系ができてくるのです。害虫もいます。しかし、益虫もいるんです。必要な益虫がいて、秩序が保たれています。自然界では、一つの種の独り勝ちはなく、全ての命がつながっています。結果、害虫だけが大量発生するということは、私の二十五年間の経験では、ありません。被害があっても、破壊的な被害が出ることもありません。
例えば、当農場の有機栽培の水稲において、カメムシの食害による被害粒は決して多くはありません。農場で導入している色彩選別機に通せば、農産物検査により一等の格付となり、品質低下とはなっておりません。
農業界は、やみくもに予防的な農薬散布を行うのではなく、地域や作物の実情に応じ、科学的な知見から総合的病害虫管理、いわゆるIPMなどが進むことを願っています。
さて、社会全体でもSDGsの認知が進み、それに伴って消費者の購買行動にも変化が出てきています。
現在、小中高校の授業でもSDGsを学習するようになりましたが、その子供たちが大人になって農産物を購入する立場になったときには、日本でも環境に配慮した農産物や加工品を選ぶような時代が来るというふうに信じております。今の小学生、中学生が、まさにみどり戦略の目標に掲げた二〇五〇年には買う側になっているということです。
この法案に対する評価です。
このように有機農業をやってきた者として、みどり法案に対する期待は大変大きく、関係者の皆様に本当に感謝申し上げます。また、この戦略では、調達、生産、加工、流通、消費者の輪をもってスマートフードチェーンをつくるという構想や、十四の野心的なKPIを策定いただきました。このことも高く評価しております。
今後期待することは、一つは、やはり農業の持続可能性を高めるのは待ったなしということです。
一枚のA4の資料を出しましたが、プラネタリーバウンダリーという図、農林水産省さんからいただいた図ですけれども、これを見たときに、私も本当に、持続可能な農業がなぜ必要なのかということがすごくすっと自分の中に入ってきまして、仲間の農家に説明するときにこの図を使って説明しております。
一つは、種の絶滅の速度、生物多様性のことであります。そしてもう一つは、左下に伸びています、窒素、リン酸の循環。これは、不確実の領域を超えて高リスクの領域に入っているということを私たち生産者はしっかり認識しなければなりません。
これに対して、KPIにありますように、化学合成農薬五〇%削減、これは生物多様性に大変効力のあるKPIであります。もう一つは、化学肥料の三〇%削減目標、これも、窒素、リン酸の過多であるということであるとか、一酸化二窒素に対するものであるというふうに考えております。農業界にとって野心的な数字ではありますが、地球市民の理解を得、日本の農林水産業の持続可能性を高めるためには、大変ポジティブな項目である、目標であるというふうに考えております。
緊急の課題として、みどり戦略は、今有機をやっていない九九%の生産者を対象にした戦略とも言えると思います。有機農業の面積はまだ〇・五%から一%ぐらいしかないと言われています。つまり、みどり戦略に書いてあることは、残りの九九・五%の私たちの仲間の農家がどのように変わっていくか、マーケットインとして消費者とつながっていくか、そういう大きなテーマだと思っています。
更なる環境保全型農業に取り組む農業者、有機農業に転換する農業者、新規就農者にとってやりがいのある、希望の持てる取組を応援することが重要です。また、近未来、そして長い時間を視野に生産性を上げていくこと、生産者、実需者とともにゴールを共有すること、そして結果として農業者の所得が向上すること、これが大事だと思います。
最近、私の仲間の若い農業者は、輸出や海外市場に販路を見出すことに希望を持っております。このように、地域のステークホルダーが建設的な意見交換、連携を行いながら、慣行栽培農家、有機農家、それぞれの立場で、化学農薬の使用削減など、戦略に書いてあることに地域で取り組んでいかなければいけません。重ねて、多様な農業経営者、その生産工程を認め合いながら、地域で連携していかなければなりません。
そして、消費者の目線に立った流通、販売の仕組みをということです。買う人がいないと、作っても売れません。私が二十五年、苦労してきたことは、作ってもマーケットがなかったということです。作るなら誰でも作れます。有機農業をして有機農産物を作ることは、チャレンジすれば可能です。ただ、それを買ってくださる人がいないと、その努力は無になってしまいます。
学校給食でありますとか、公共のグリーン調達、こんなようなことも議論していただきまして、やはり、有機農産物の出口、消費者にどう理解してもらって、その優良性を認めていただいて、買っていただけるか、これは大きなテーマだと思います。買う人がいないと作っても売れない、マーケットインの発想が大事なのであります。消費者の理解や動機づけ、これを是非応援していただければと思います。
特に、若い世代を中心に、SDGsの認知が急速に進み、環境への意識が高くなっています。
私が十年以上前にドイツのトレードショーに出展した際に、世界中の国や地域が特徴ある有機農産物を生産して、オーガニック市場の国際的な広がりを知ることができました。日本からドイツのニュルンベルクというところの有機見本市に出たときに、日本から出展したのは私だけでした。向かいはタイ・ブースです。タイは、二十種類以上の有機米を持ってきて、調理人が来て、農林水産大臣に当たるような方がスピーチをして、国を挙げて有機農業をするんだというコメントをしていました。
それから十年たちました。いよいよ日本もその挑戦を始めるときに来ているとも感じております。
将来、国内市場でさえ海外のオーガニック食品に圧巻される、このようなことがあるかもしれません。私たちの世代は、お百姓さんの苦労も分かり、日本の国産のものを食べるという習慣があります。国産のものを大切に消費しております。若い世代が本当に国産を選択してくれるのだろうか、私はこういう危機感すら持っております。オーガニックの方がいいんじゃないの、外国産のオーガニックの食べ物の方がいいんじゃないの、もしこういう消費行動が生まれたならば、私たちはそのマーケットに物を供給できるのか。そういう意味でも、国産の有機農産物はある程度の量を作っていく必要性があると思います。
地域ぐるみの産地化、農産物のブランド化、有機等のファーマーズマーケットなども有効な取組だと考えております。一過性の取組にならないように、行く行くは誰もが気軽に有機農産物やその加工品を買えるようにすることが大切です。
また、現在有機をやっている人からすると、競争の時代に入るとも捉まえることができます。日本のオーガニックマーケットは新しいフェーズ、ステージに入っていくのだと感じています。
多様な幅広い消費者の支持を得るためには、有機栽培でも、生産性を高めて、買いやすい価格にしていくことも大切です。有機農業を普及させるためには、優れた現在の技術の標準化、新しいイノベーションの創出なども大切な鍵となります。農業外のステークホルダーにも加わっていただいて、この技術というのをしっかりとつくっていくというのがこれから十年、これから二十年の私たち農業者の使命でもあるというふうに思っております。
最後になりますが、二十五年間、有機農業を行い、消費者、流通の方々と接し、情報交換してきて再認識できることは、農業は、単に食料生産のためのなりわいではなく、多面的な機能を持ち、多様な存在意義があるということです。
高齢化、労働力不足、価格の低迷、資材の高騰、自然災害や鳥獣被害、地域農業が抱える問題は多いですが、日本の農業が国民、消費者から支持を得、応援してもらうような産業であること、なりわいであること、そのために、私は、基本法にあるとおり、地域農業を牽引して、効率的かつ安定的な農業経営を行うために努力し、多様な農業の在り方として、みどり戦略にある環境保全型農業、有機農業を通じた消費者、生産者、流通加工業者等のスマートフードチェーンへ参画し、日本の農業を応援してくださる皆さんのために、未来の子供たちのために、持続可能な農業経営を実現させたいと思っております。
本日はどうもありがとうございました。(拍手)
○平口委員長 ありがとうございました。
次に、大塚参考人、お願いいたします。
○大塚参考人 おはようございます。
日頃より日本の農業のために様々な政策を打っていただいております先生方に、心から感謝と敬意を表します。本当にありがとうございます。
本日は、このような機会をいただきましたことをまた改めて感謝を申し上げて、私の発表というか意見とさせていただきたいと思います。
まず、私は、北海道の札幌から北東に二十七キロ、石狩平野のほぼ中心部で有機農業をやっております。私のひいじいちゃんが福井県の永平寺の地域から入植して、私で四代目、今年、百九年になります。
私が有機農業を始めた経緯ですが、初めは、二十歳のときに、水耕栽培で、農薬と化学肥料だけで安心、安全な農産物を作るということで実はチャレンジしまして、それが、ハウスの中に入って、アレルギーがあることが分かりまして、農業をやめるか農薬をやめるかという選択で、農薬を使わない、無農薬栽培を二十一のときからスタートしたのが経緯であります。その後、平成九年に、仲間と、外食産業さんとの取引の中で、有機農産物を販売する販売会社を設立して、今に至っております。
大塚ファームの会社概要ですが、面積は十七ヘクタール、地域の平均面積が二十二ヘクタールなので、それほど大きな面積ではありません。そして、そのうち有機JASの認定が九・八ヘクタールで、五七%、有機でやっております。また、ハウスが今五十九棟ありまして、今年度、六十一棟に増やす予定をしております。また、農福連携も行っておりまして、一番多いときは三十名のハンディキャップを持っている方々に、ミニトマトの収穫などをやっていただいております。また、地元の農協と一緒にグローバルGAP米を生産して、頑張って取り組んでおります。
それでは、様々な活動は時間がありませんので割愛させていただきまして、本題のみどり戦略に対しての賛成点から入りたいと思います。
まず、一番、二番の、有機農業の推進、そして減農薬、減化学に関して、都道府県が認定して、税制優遇若しくは融資の優遇措置を得るということは、私は画期的な政策だと思っております。補助金は、集めるのにもお金がかかりますし、配るのにも時間がかかります。また、税制優遇は平等です。これを推進していただけることによって、非常に取り組みやすい政策だと、私は賛成しております。
次に、三番の園芸施設の化石燃料ゼロです。
これはデンマークで行われていますが、麦殻を燃やして発電しているということがあります。また、日本でも、もみ殻を圧縮して炭を作って、それを燃料にするような取組も実際に行われておりまして、こういったバイオ燃料を積極的に活用するということは、私は必要だと思いますし、また、最近、プラスチックのリサイクルの問題が起きています。ですから、プラスチックのチップ燃料をこういった農業の世界で活用させていただいてやることが、私はカーボンゼロにつながっていくのではないかと期待しております。
そして、四番のフードロスです。
日本は、海外から農産物を輸入している量と同じぐらいを廃棄していると言われているぐらい、非常に食品残渣が多い国です。私は、平成十一年より、外食産業の生ごみのリサイクルをずっとやっております。二か月に一回、レストランに行って生ごみを持ってきて処理をしています。例えば、これは産業廃棄物の問題ですけれども、うちが札幌の食品残渣を百トン年間受け入れて、それを堆肥化して有機肥料として使う、そうすると、この百トンに対して約四百万円の処理料が所得として入ってきます。ですから、こういうような地域循環、そして農家にきちんとお金が入るような仕組みがもしできれば、私はこのフードロスは可能ではないかと思っております。
五番目の農地での再生エネルギーの活用。
今回、大阪の農業ウィークでも出ていましたが、今は垂直型の太陽光パネルが開発されました。これを南北に垂直でパネルを設置すると、両面で発電します。そうなると、非常に効率のいい発電が実際できますし、垂直でのパネルなので、農地が陰にならないんですね。ですから、こういうことも、私は、もう今ドイツでは進んでいますが、日本でも可能だと思います。そして、我々のこの発電を、消費者やまた有機農業を推進する方々に電力を買っていただくということも、私は、補助金から、まさに電力の所得を農家が得ていくということにつながるというふうに期待しております。
そして、六番。
先ほども言われていましたように、今回、農水省は有機農産物を買っていただける人たちを、ネットワークを構築するということで、非常に画期的な取組だと自分は思っております。実は、有機農産物は二割から三割高いという問題があります。私は、このネットワークが何らかの形で、有機農産物に例えばシールという形で、広告として例えば三十円、貼ることによって安くなれば、ホウレンソウが同じ値段で売れるような仕組みができると思っております。ですから、補助金やそういったことに頼らないでも、有機農産物を民間の力で安くできないかというようなことも期待しております。
続きまして、みどり戦略の課題点を整理しました。
まず一点目。
やはり日本の子供たちに安心、安全な有機野菜を学校給食に活用するという目的というかビジョンが組み込まれておりません。
そして二番目。
学校教育現場での国産志向、食料安全保障の観点が、教育の場面が弱いと自分は考えております。今、小学校では、北海道が平均で三千万借金があって、本州は平均一千五百万借金があって、いまだにぼっとん便所で、花嫁不足で大変だという教育をしています。それでは農業に夢を感じないと思うんです。ですから、まさに子供たちの現場に日本の農業の大切さを訴えてほしいと思っております。
三番。
私は、百十年の歴史のある岩見沢農業高校のPTA会長を今、仰せつかって活動しています。日本は農業とバイオ系の大学が非常に弱いというふうに感じております。今、私が二十何年前にアメリカのシリコンバレーに行ったときに、まさにバイオベンチャーがアメリカではすごい伸びていました。アメリカでは、とにかく、バイオ、農業系の大学を卒業すると非常に就職が有利だと言われております。もっともっと農業とバイオに国の予算を投資して、優秀な人材を育てていくような仕組みが私は必要ですし、また、企業も、工業ではなくて、まさに種から育てていく農業という世界を、やはり雇用として受け入れてほしいと思っております。
そして、四番なんですが、とにかく、今、農産物が安い。
コロナ禍ということもあります。しかし、この価格では農業はやっていけません。ですから、私たちは、国の政策に乗っても、消費者の意向も一〇〇%聞きます。何とか再生産価格で買っていただける仕組みをつくっていただいて、農家がもうかる仕組みをつくっていただいて、そして農家がきちんと法人化して、ちゃんと給料を払って、社会保障をつけて、そして息子たちにしっかりとした給料を払える仕組みにしていかないと、私は持続可能な農業は不可能だと思っております。
六番目です。
有機農家は、北海道でも四百数軒しかいません。百七十九市町村ありまして、一つの町に平均で二人いません。ですから、有機農業者を団地化して支援するということは非現実的な状況ではないかなと思っております。それよりも、先ほど言われたとおり、都道府県レベルでこれをどう推進していくかという議論をしていかないと、有機農業者が変に孤立してしまうというふうに思っていますので、どうかよろしくお願いいたします。
七番目。
有機農産物は、価格が高い以上に、物流コストがかかります。物が少ないので宅急便で送ります。例えば、私は、有機大根を一本九十円で沖縄に送っています。その一本の大根に百四十円の運賃がかかっております。そして、末端で四百四十円で売っているんです。ですから、そういった物流コストがかかります。それを支援するための商工業者への税制優遇も必要かと思います。
続きまして、みどり戦略に対しての要望をまとめました。
一つは、環境保全型直接支払いです。
私も、今、年間百二十万円ほどいただいております。それを活用して有機JASの認定に使わせていただいております。そういった形で、この環境保全型直接支払いの拡充を私は期待しております。
次に、今後、有機農業を進めていくことに当たり、スマート農業の推進、また、有機農業にイノベーションを組み込みたいということがあります。そのために様々な支援がされると思いますが、そのときに、補助金のポイント加算の部分で、私は様々な取組に対する加点を増やしてほしいと思っております。今現在、農水省の補助金は、ほとんどが面積拡大が一番の大きなポイントに加算されております。しかし、面積をどんどん拡大すればもうかるというわけではないんです。まさにその辺を考慮していただいた政策に転換すべきでないかなと思っております。
続きまして、三番です。水活の問題です。
有機農産物は、有機JASを取るのに三年かかります。そして、三年やっとかかってから、また三、四年、例えばサツマイモを作ります、その後、有機のお米を作る、有機の飼料米を作る。しかし、これを何年も続けていくと草がひどくなってしまうんですね。そしてまた畑に還元していくということで、五年という形では到底不可能な状況です。これも地域の実情に合った形に変えていただきたいと思っております。
また、最後に組み込んでいるんですが、有機農産物を学校給食に使ってほしいという願いがあります。
そして、最後になりますけれども、セカンドロゴマークを、私が四十歳、入植して百年のときに作りました。「はじまって百年。そして二百年へ。」私たちは、皆さんの孫、ひ孫の代まで有機農産物を生産します、そのために三人の息子たちに農業を継がせますという目標を立てました。
農業だけは特別です。誰かがやらないといけないんです。日本の農業がアジアで恥ずかしくない農業にするために、先生方の是非ともすばらしい政策をお願いして、私は終わります。
本日はありがとうございました。(拍手)
○平口委員長 ありがとうございました。
以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○平口委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。野中厚君。
○野中委員 自由民主党の野中厚でございます。
本法案は、持続性そして生産力向上の両立、大変難しいテーマであります。
印象としては、現代、そしてこれから未来の技術をもって以前の農業に回帰していく、そのようなイメージを持っております。
そこの理由はなぜかということで、時代の潮流に遅れることなくルールメイキングに参画していきたいという理由であれば、これは誰も納得してくれないと思うんですね。やはり、消費者、生産者、事業者、地方公共団体の役割をそれぞれ説明をして理解していただく、そのために国がしっかりと動いていかなきゃいけないと思いますし、負担が過度にかかり過ぎないように国が支援していくべきだというふうに思っておりますので、是非、その点も含めて、四参考人の皆様方にお聞きしていきたいというふうに思っております。
まず、有江参考人にお伺いしたいと思います。
農業は、自然災害、そして気候、そして病害虫との戦いだと思っております。私の地元でも、クビアカツヤカミキリとかジャンボタニシで農業の被害が出ています。
先ほど参考人の御説明もいただきましたけれども、人、物の動きが増えている、そのことによってリスクが高まっているので、国内に侵入させない、そして侵入しても被害を拡大させない、そして国外に出さない、そうすることによって、先ほど四五%と言われておりましたけれども、病害虫による被害を抑えることで損失を抑えていくんだということでありました。
そして、今回の法案の、植物防疫法の改正法の取組の中で、総合的な防除の仕組みをつくっていくということであります。
その経緯としては、やはり今までのとおり農薬に頼っていくと、耐性を身につけて、今後防除できなくなるので、今のうちにやっていかなきゃいけないということであります。
しかしながら、耐性を防除薬剤について身につけていくんだという、理解している農家の方はどれぐらいいらっしゃるのか、現在。
それはなぜかといいますと、先ほど谷口参考人もおっしゃられました、やはり農家の多くの方は、安定的に農産物を生産するためには、農薬の適切な使用は不可欠だというふうに思って今まで取り組んでいらっしゃるからです。
そして、有江参考人の著書の中にも、食味や生産量を重視し育種を重ねていくと、元来植物が持っている防御機構を弱め、病気が起きやすい状況になっている、これも知らない方がいらっしゃると思うんですね。
そういった方々に、今後、二〇五〇年には化学農薬の使用を五〇%減らしていくんだということをどういうふうに生産者に向けて説明をしていくか、このことは、IPMの、今、一三・七%でしょうか、この導入のアップにもつながると思うんですが、御所見を伺いたいと思います。
○有江参考人 どうもありがとうございます。
主に二つの論点かというふうに思います。
一つは、現在、我々が食用としているような植物というのがどういう植物なのかということだというふうに思っております。
例えば、映画とかでもよく出てきますけれども、昔のトマトは青臭かったというような話がよく言われます。でも、今のトマトはそういうことがなくて、元々赤くておいしいんだと。これは、基本的には、我々が子供の頃から今までの間に、短い期間で行われた品種改良の結果だというふうに理解いただければと思います。
例えばトマトでいえば、木熟というのが出てきたのが一九八〇年ぐらいで、木の上で赤くなってから収穫をしても壊れないトマトというのが出てまいりました。これは日本の育種業者の技術もすごいところですけれども、アメリカは遺伝子組み換えで、フレーバーセーバーという壊れないような、腐らないようなトマトを作ったんですけれども、日本は普通の育種でそういうものを作ってきたという歴史がございます。
これは別にトマトに限ったことではなくて、例えば稲であっても何であっても、我々にとっておいしい、我々が求める品質を追い求めた結果というふうに御理解いただければというふうに思います。
我々にとっておいしいということは、単純ではありませんけれども、やはり病害虫に対しても弱くなっているということになります。ですから、例えばトマトでいうと、やはり菌と戦うための物質を作っています。例えばトマチンという物質がありますけれども、その生産量が下がってくると、味覚的にはおいしくなってまいりますけれども、それで甘くなってまいりますけれども、逆に言えば、病害虫に弱くなってくる。それは、我々が求めるところを育種会社が実現したということで行われているものだというふうに思います。
ですので、我々が食べている植物は基本的には自然なものではありませんので、ただ単に昔の方法、自然に戻すだけでは、通常の収量というのは得られないんじゃないかというふうに思っております。
それから、もう一つの耐性菌ですけれども、これは、ある同じようなメカニズムを持った薬剤をずっと使い続けると、そのメカニズムに対して耐性が生まれる。これは遺伝子の変化等によって起こるんですけれども、そういうことでございます。
これをいかに生産者が、今の生産者はかなりそういうことを御理解いただいていて、やはり昔から農協の方が、同じ農薬は使わないでくださいというような話をしていたんですが、ここにも裏がありまして、同じ農薬を使わないときに、同じ成分のものでA社とB社から違う名前のものが出ているのを使い続けると全く同じことになってしまいますので、やはり同じ成分、同じメカニズムのものを使い続けないということが重要になっております。
これに関しては、日本農薬工業会等が耐性菌を出さないための仕組みをつくっていまして、どういう農薬がどういうメカニズムだということで番号をつけております。最近、我が国の農薬にもその番号を振られるようになってまいりましたので、多分、農協の方は、農薬を使う場合ですけれども、同じ番号のものは連続して使わないというような工夫をしてくださいというような指導はできるようになってきていますので、次第に、そういう意味では農家の方も勉強していただいて、そういうことを御理解いただけるようになっているというふうに思っております。
○野中委員 更に理解を深めていかなければならないというのと、やはり総合的な防除対策にかじを切るといえば、今、就農者数も減っていますし、高齢化が進んでいる中、労働負担も伴うものであろうというふうに思っておりますので、その辺については国や都道府県がまた支援をしていかなければならない点かなというふうに思っております。
続いて、谷口参考人と井村参考人にそれぞれのお立場で伺いたいと思うんですが、目標設定の数値についてですね。
EUは二〇三〇年二五%、そして、日本は二〇五〇年二五%。これだけを見ますと、非常に、二十年も遅れているじゃないかということを考える方はいらっしゃると思うんですが、ただ、気候も違います、そして、先ほどお話でありました有機農業の農業者数というのも非常に低うございます。
その中で、この二〇五〇年二五%という数値目標、そして、化学肥料三〇%減、化学農薬五〇%減。今、緊急事態とはいえ、化石燃料にも補助金を出しているというのが日本の現状であります。その中で、この目標に向かってやっていくという数値目標について、そしてまた、目標を達成するためにどのような取組を行うべきかということをそれぞれお伺いいたしたいと思います。
○谷口参考人 御質問ありがとうございます。
先ほどの私の資料に書き込んでありますので、また御覧いただければと思います。資料の三ページ目の三行目から四行目にそのことを書いておきました。
私は、四つの数値目標は、ここにも書きましたけれども、農業関係者の意識を大きく変えたという意味で効果があって、それでいいとするべきだと思います。先ほど井村さんやそれから大塚さんがおっしゃったように、有機農業に取り組んでいる方はすごくやる気になったとおっしゃいましたよね。それでいいと思うんです。
この数字自体は、ほとんど意味がないと思います。なぜならば、例えば農薬の使用量を五〇%減らすという目標ですけれども、なぜ五〇%なのか。私は、この目標は、EUの数値を横から引っ張ってきて引き写したものだと思っています。つまり、もし本当に実行可能な農薬の削減量を考えるのであれば、もっと積算が必要ですよね。でも、みどり戦略を策定するまでの非常に短い時間の中で農水省がそれをやったという形跡は、私の知る限りはありません。ですから、農水省は、EUやほかの国の政策を参考にしながらこの数値をつくったと思います。
ですから、これをKPIで管理するというのも私はふさわしくないと思います。この目標は、あくまでも非常に高いものなんだということが伝わればいいんだというふうに思います。
これを、このままその数値目標を達成すればロードマップがいくというようなものではないと思います。それについては、資料の六ページ目から七ページ目に書いたところなんですけれども、七ページ目を御覧ください。
私が先ほど申しましたように、みどり戦略がやろうとしていますのは、今までの成長志向の、生産力向上一辺倒だった日本農業が、持続可能な状態、経済、農業に転換するという非常に難しいトランジション、転換のプロセスを歩むことだと思います。
このプロセスは、決して一方方向に、あるいは段階的に進むとは到底思えません。先ほど大塚さんがおっしゃったように、実際にJAS有機を取って、それから輪作体系にするまでに五年も十年もかかるとおっしゃいました。それも、必ず五年たてばなるわけではありません。気候が変わればまた変わっていきます。非常に不確実なものであり、かつ、蛇行的といいますか、紆余曲折を経るものであります。
ですから、そのような難しい課題をKPIを使って進行管理をするということ自体が、本音を言えば、ナンセンスだと思います。
では、どうすればいいのかというと、七ページ目の三行目から読み上げます。
私は、みどり戦略は持続可能な社会への転換の第一段階だと考えています。これまでの農業の常識を覆す四つの数値目標を打ち出して、農業関係者の意識改革と行動変容を起こすことができれば、第一段階の目的は達成できたと言っていい。
しかし、それだけで終わりではない。みどり戦略を持続可能な社会への転換の第一段階と位置づけたとして、第二段階以降はどうなるのかという問題がある。強力な規制によって生産力向上に歯止めをかけることができたとしても、それだけで農業者や農業関係者を定常的な経済に向かわせることはできないだろう。
むしろ、行き場を失ったエネルギーは、期待したのとは違った方向に迷走する危険性がある。例えば、スマート技術とのつながりを強調し過ぎれば、持続可能な技術体系に転換するという目的が忘れられて、センサーやドローンやロボットを買うことが目的になってしまうという危険性があります。
第二段階の課題としては、定常的な状態に向かうための指針を設定することであると思います。そのための指針とは何かというと、いわゆる進行管理をするようなインディケーターという指針ではなくて、未踏の原野を間違いなく進むための目印のようなもの、つまり、こっちに行けばいいよというような目印になるもの、あるいは目指すべき目標のようなもの、これに向かっていけばいいと教えてくれるナビアプリの目的地のような機能を果たすものであります。私は、有機農業がみどり戦略を導く指針になり得ると思っております。
これ以上の説明は、そこに書きました論文に書きましたので、後で御説明を読んでいただければと思います。
ありがとうございました。
○井村参考人 野中先生、ありがとうございます。
先生からの質問は、三つのKPIに対する農業者としての印象といいますかと、どうやればそれが実現できるかという二つだったと思うんですけれども。
まず、KPIについてなんですけれども、SDGsの勉強とかを私もするんですけれども、やはりバックキャスティングするという考え方がとても重要だと思っていまして、今あるものの積み上げで、何年後にどうなっていくかということではなくて、先生も御存じのように、二〇五〇年に高い目標を立てて、それを実現するためにどうやっていけばいいんだろうか、そういう考えは農業者にも必要だと思っていまして、私が八十五歳になったときが二〇五〇年だと思うんですけれども、そのときに達成できているかどうかというのはこれからの私たちの頑張りにということだと思うんですけれども、やはりそこに高い目標を掲げてバックキャスティングするということはすごくポジティブな作業になると思いますので、私は、この二五%というのは大変いい目標だと思っています。
化学肥料と化学合成農薬に対するKPIも全く同じような考えであります。
それで、具体的な対策なんですけれども、まず化学肥料なんですけれども、例えば耕畜連携、まだ未利用の畜産の排せつ物がたくさんあります。あと、食物残渣、これも未利用なものがたくさんあります。こういったものを循環、代替の肥料として使うような仕組み、そういったものができていけば、日本は大変多くの窒素、リン酸、カリを、食べ物も含めて輸入しているわけですから、これをキーワードとして、耕畜連携であるとか循環型の農業というので、化学肥料というのは、とても目標としては可能性があるんじゃないかというふうに感じます。
もう一つ、化学合成農薬についてですけれども、病害虫に関して言いますと、やはり先ほど有江先生がおっしゃったように、IPMだとか、今まで結構予防的に使っているシーンがたくさんありまして、それをエビデンスを基にしっかり効果も検証しながら減らしていくということは、地域、作物に応じてこれからも努力できることなんじゃないかと思います。
それともう一つ、有機農業でも減農薬でも一番大変なのが雑草の問題であります。
雑草に関しては、物理的な除草というのが手段としては有効かと思うんですけれども、日本にはまだ有機農業とかそういうマーケットがないので技術革新は進んでおりませんが、世界中でいろいろな機械が開発されておりまして、例えば、センサーを使って雑草を見て、それをロボットが除草するような技術だとか、レーザーで焼いていく技術だとか、先日、私もびっくりしたのは、デンマークの技術で、GPSを使って、太陽光を積んだ無人の機械が種を植えていくんですね。その種を植えた場所を記憶して、今度はそれをもう一回、同じ機械で物理的な除草をしていく、こういう機械まで開発されています。
ですから、この機械がいいかどうかは別として、日本の技術力、あと、研究者の皆さんと一緒に新しい技術を開発していくというのは、除草にとっては大変可能性があるというふうに思っております。
ありがとうございます。
○野中委員 ありがとうございます。
まず目標を立てたということを評価するということでありました。目標に向かってポジティブな活動、行動を起こせるということも分かったところであります。目標にこだわり過ぎることで現役世代に過度の負担がかかると、そもそもの持続可能性を損なわれますので、その点について理解をしたところであります。
学校給食についても聞きたかったんですが、これは、機会があれば後ほど、また後日教えていただきたいんですが、地産地消や、また食育、そして消費者の理解を深めるためにも、やはり学校給食の有機化というのは必要で、そのためには、やはり基礎自治体の首長の存在は大きゅうございます。ただ、販路を確保している首長というのは、都道府県は六割ですけれども、市町村では四%ということで、首長の理解を深めていくというのは大切なことだというふうに思っております。
最後に、生産者の立場からお二人、大塚参考人を含め、井村参考人にお聞かせいただきたいんですが、お二人とも有機JAS認証を取得されております。有機JAS認証を取得すると、オーガニックとか有機というのが表示できるというメリットがあります。一方、事務負担とか手続のために十万円かかる。
それを、表示できるというメリットが超えないから、この有機JAS認証取得数が増えていないのか、増えていない理由と、また、増やすための取組についてお二人にお聞かせいただきたいと思います。井村参考人と大塚参考人にお伺いいたします。
○井村参考人 ありがとうございます。
私は、有機JASは、施行されて最初から取得しております。
私の場合、ある程度大規模にやっておりますので、近く、地産地消というよりは、むしろ消費地に向けて物を送っておりますので、その優良性をしっかりと認めてもらうという意味で、まず、基準があるということと、第三者が客観的にそれを監査する、この仕組みは合理的かなと思っています。
ただ、有機農業は、三者認証ではなくて二者認証でありますとか、地域で、食べる人と作る人が認証し合うという仕組みもできておりますので、必ずしも有機JASだけが全てだとは思っていません。ただ、私のようにある程度大規模にやったりとか、あるいは輸出までやりたいというような、そういう経営体にとっては、この認証の仕組みというのは必ず必要で、これは責務だと思っています。
あと、費用負担だとか、そういう事務的な負担があるということを言いますけれども、今、GAPなんかもできておりまして、これとほとんど全く同じような仕組みで、やはりちゃんと履歴を残していく、トレーサビリティーできる、これは、有機農業にかかわらず、全ての農家の私は責務だと思っておりますので、宮沢賢治先生もちゃんと記帳をしてやっておりましたので、そうやって見ると、記帳するのが面倒くさいとか、コストがかかるという、それも分かるんですけれども、これからの農家の安全、安心で履歴のしっかりした生産物を作るという使命として、これは、有機にかかわらず、全体がやっていくべきことだというふうに捉えております。
○大塚参考人 ありがとうございます。
私も、一番最初から認定を取っています。
これは、日本で初めて農家が権限を与えられて、僕が有機JASシールを貼ると有機になるという画期的な法律なのです。ですから、皆さんは、きっとそれを分かっていないんだと思うんですよね。
ですから、本当に有機農家が、しっかり自分のやっていることを保証してくれる制度なので、私は、これは活用すべきだとみんなに言っていますし、ただ、問題は、お客さんは、このJASマークがついていると簡単なんですよね、説明しなくていいので。ですから、有機JASがあることによって流通がしやすいというのも現実なんです。
ですから、その辺のコストを今環境保全型の部分でいただいていますので、私は、この補助金をきちんと活用して、JASを取るということを整理していただければ、広まると信じています。
○野中委員 ありがとうございました。
本委員会での審議があり、そして、本法案があったからこそ、二〇五〇年に持続可能性の農業が達成され、そしてまた、生物多様性が守られ、環境負荷が少なくなったということを期待いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
本日は、参考人の皆様、ありがとうございました。
○平口委員長 次に、庄子賢一君。
○庄子委員 公明党の庄子賢一と申します。
参考人の皆様、今日は大変にありがとうございます。非常に示唆に富むお話で、勉強になりました。
その上で、まず冒頭、有江参考人にお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。
今回のみどり法につきまして、昨日、我が党の稲津理事からも、総論、これにはみんなが賛成だ、各論はいろいろ課題もあるけれども、しかし、その課題に向き合って乗り越えていかなければいけないという趣旨の発言がございました。私も同感でございますけれども。
先生は、いわゆる植物防疫の専門のお立場から、先ほど、冒頭の資料では、約四五%が病害虫等で農作物が失われているという傾向があるという御指摘があって、大変大きなショックを受けました。
この植物防疫というお立場から見て、今回のこのみどり法の課題や、あるいは重要性、必要性ということについての見解をまずお尋ねをしたいというふうに思います。
○有江参考人 どうもありがとうございます。
総合的な防除というのは、様々な、要するに、一つに頼らないでいろいろな方法を使おうという方法で、やはり現在広く使われてきた農薬、化学農薬ですね、これは非常によいところがあって、微量で効く、それから安価であるというような利点がありました。
これを、例えば、先ほど雑草のところにありましたように、人力に置き換えるとなったときに、それは、農薬を使うよりもかえって値段が高くなる。あるいは、機器でもかなり高いものだというふうに思っております。
ですので、ここのところをいかに整理をしていって、例えば、普及することによって値段が下がっていくというようなことがあれば、使えるようになるんじゃないかと思っております。
例えば、総合防除で、一つ重要な使える手段であります生物農薬という、要するに、生きた生物をそのまま使って、農薬として使うという方法がございます。これは、当然ながらJAS有機でも使えるんですけれども、これが普及し出したのが大体二十年前になります。ただ、現在のところ、まだ生産量で〇・五%、それから出荷量で一%超えぐらいなんですね。ということは、値段も倍ということです。
私は、先ほど申し上げましたように、生物農薬をやっていますので、やはり生物農薬をいかに効果を高め、いかに使っていただけるような形にするかというところが重要だというふうに思っております。
ですから、総合的な防除というのは、一つの方法によらない、様々な手法を併せて使う方法ですけれども、それぞれがやはり経済的に成り立つようなバランスを取って、農家の方が使えるような手段になっていくということは必要なんじゃないかなというふうに思っております。
○庄子委員 ありがとうございます。
今度は、実際に有機の生産に長く関わってこられております大塚参考人に、生産者の立場でお伺いをしたいというふうに思います。
いわゆる化学農薬あるいは化学肥料によらない有機農業、この有用性等について、例えば、地下水、環境への負荷、あるいは人間の体への影響、生態系への様々な悪影響など、あるいは薬剤耐性の問題もございますけれども、こうした観点を踏まえて、生産者というお立場から、有機農業、今回のシステムの有用性について改めてお伺いをしたいと思います。
○大塚参考人 ありがとうございます。
まず、先ほど言われたように、農薬は、卵に効く農薬、幼虫に効く農薬、成虫に効く農薬、それを展着させる展着剤、それに殺菌剤、これをかけるわけですね。
ですから、先ほど農薬は安いと言っていましたが、ペットボトルで今六千円、七千円、八千円します。約百ヘクタール規模で一般の農業をやっていますと、一千五百万から二千万の農薬代がかかるわけです。ですから、農薬を半分にするということは、まさに自分の利益なんですよ。ですから、そういう意味では、北海道の大規模な農家は全員やっています。
ですから、農薬をいかに減らすか、そのために様々な取組をしていくわけで、そこで、今、トラクターにカメラをつけて作物の様子を見たりということで、農薬を減らすということは、まず農業者にとって一番メリットがあることだと思います。
次に、影響です。
これは、昔、蛍がいました、私の地域にも。ドジョウもいました。全くいません。全くいなくなりました。それで、どんどんどんどん虫がいなくなっています。逆に、我々の有機の畑は、どんどんどんどん虫がいて、カエルがいて、バッタがいて、鳥がいるんですね。先ほど、僕は芋も作っているんですが、北海道には、芋虫というのはいなかったんですよ。サツマイモに芋がつくんですね。そうすると、カラスとか鳥が来て、その虫を全部食べてくれるんです。
ですから、何となくバランスよくやっていると、非常にメリットが出てきていいという実感があります。
○庄子委員 ありがとうございます。
それで、今のお話に関連するかどうかあれですが、先ほど谷口参考人が御指摘をされた中で、非常にはっとするところがございました。
有機農家の方と慣行農家の方の交流という御指摘でございまして、このみどり戦略の成功の秘訣の一つ、鍵の一つとして、区別せずに一緒になって地域農業をつくっていくという、そうした連帯感を生み出していく必要があるという御指摘があって、私は、なるほどなというふうに思って伺っておりましたが、その御指摘を踏まえて大塚参考人に伺いたいと思います。
現状、今、北海道でおやりになっているお立場で、こうした慣行農家の皆さんとの連帯感あるいは一体感というんでしょうか、こうしたことの醸成について、何か事例や、あるいは課題と思われるようなことがあれば、伺いたいと思います。
○大塚参考人 ありがとうございます。
昔、「北の国から」ということで、有機農業をやったら、何か知らない間に誰かが農薬をまいたみたいに、あるんですが、皆さん、虫になってもらった気持ちでいると、有機の畑から農薬の畑に虫は行かないんですね。農薬のかかっているところから有機の畑に逃げてくるんですよ。ですから、どっちかというと、僕は逆の発想でやっていますけれども。
ただ、やはり僕はありがたいのは、農薬が、残留農薬の問題が非常に叫ばれて、要するに、人の畑に農薬がかかることを、すごく規制になりましたよね。それが本当に今地元に浸透していまして、周りの畑に、人の畑に農薬をまいちゃいけないんだという形が今浸透しました。
昔はそうじゃなくて、一斉防除ということで、一斉に全部防除したんですね。僕は、地域で駅伝大会があって、夜、粉の防除をして、走っていたとき、ぜんそくが出て死ぬ目に遭いましたけれども、それぐらい昔は徹底して防除をやっていたのが、今はすごくそういうのを管理できるようになってきました。
ですから、誰が有機農業をやっていて、誰が減農薬をやっていてということがもう当たり前の時代になったので、まさに有機農業、減農薬がやりやすくなってきたなというのが今現状です。
○庄子委員 ありがとうございます。
これは直接このみどり法と関係のないところを一つだけ簡潔にお答えください、大塚さん。
燃油高騰の影響、さっきハウス五十九棟とおっしゃっていたので、この影響は今どのぐらい、金額的にもし概算でも分かれば、教えていただけませんか。
○大塚参考人 実際は、本当に倍ぐらいの勢いでコストになっています。
しかも、今、九州の野菜が安いんですね。九州も、冬は暖房をたいているんですよ。ですから、北海道は、実は夏、暖房をたかないんですよね、北海道は冬は作っていないんですよ、野菜。だから、実は、そういう面では、北海道よりも本州の農家さんの方が今非常に大変だなと自分は思っています。
ですから、できれば、冬の野菜は高いんだよということを皆さん訴えてほしいというのが悲願です。
ありがとうございます。
○庄子委員 ありがとうございます。
それから、消費者の方々の意識をどう変えていくかというお話もあったんですけれども、これも大塚参考人にお尋ねをさせていただきます。生産者というお立場で是非お答えをいただければと思います。
我が国においての有機農作物というのは、体にいい、あるいはおいしいという理由で購買をするということではないか。ただし、これはヨーロッパ等に行けばそうではなくて、むしろ、環境にいいという理由で選ばれるというふうに私は思います。
今回のシステムというのは、まさに次の世代に悪い遺産を残さない、そういう理念の下での今回の戦略ではないかなというふうに思っているんですけれども、そういう意味では、消費者の側が、生態系を保持する、あるいは未来に良好な環境を残すという意味で、化学肥料、化学農薬をできる限り使わない有機のものを購入するという意識に変えていくことが重要ではないかというふうに思っておりますが、この点、何か生産者からのメッセージなり御意見があれば、伺いたいと思います。
○大塚参考人 非常にいい論点だと思います。
私も、顔の見える農業から取組の見える農業へということで転換して、障害者の方々の自立支援ですとか、そういった子供たちの農業体験だとか、そういうことに取り組んできました。
やはり日本の農業がごく一部の消費者のためだけにあってはいけないと自分も思っていまして、消費者の方々が、有機農産物を買うことによって農家の人が農薬の被曝から助かるんだ、だから私たちが買おう、また、障害者の人たちがこうやって一生懸命頑張っている農産物を私たちが買い支えようという形に変わっていってくれれば、私は非常にうれしいなと思います。
うちの例えば大根が一本二百円だとしたときに、私は、その価値が四百円、五百円あれば、二百円は安いなと思ってもらえると思って取り組んでいます。そのために、取組が見える農業をやはり進めていかないと、ただ値段が高い安いになってしまったら、残念だなと思っています。
○庄子委員 ありがとうございます。
井村参考人にも少し視点を変えてお尋ねをしたいというふうに思いますが、どうしても、やはり有機農作物は高いというのが現実にあるというふうに思います。これから超高齢社会になって、年金受給者が増えていくわけですね。したがって、毎日の食事のことですから、少しでも切り詰めて安いものをというふうに年金の受給者の方はならざるを得ないわけです。
したがって、一部のお金に少し余裕のある方が購入するという有機から、一般の消費者の方々が口にできる有機農作物にしていくための、現場感覚での、例えば、それが生産コストなのか、流通のコストなのか、資材のコストなのか、いろいろなことがあるというふうに思いますが、将来的に、普通に一般の消費者が口にできる有機農作物になっていくためのポイント、課題等があったら、教えていただきたいと思います。
○井村参考人 御質問ありがとうございます。
今、お米でいえば、大体倍ぐらいの金額になっているのかなと思います。一方、ヨーロッパ、アメリカでは、二〇%から三〇%ぐらいだかが有機農産物の価格としてあるのかなと思っていまして、それを更に一〇%だとか、慣行栽培と同等ぐらいの価格にするというのは、やはり実現できればいいなというふうにも私は思います。
ただ、今、やはり有機農産物が高い理由としては、生産性の問題、例えばお米でいえば、単収が低いとか、あと除草の手間がかかるとか、そういうことだと思うんですけれども、これをやはり解決していくというのが次のフェーズだと思っていまして、今はニッチなので、高くても買ってくださる層があるんですけれども、これを二五%にするというのは、もっとカジュアルになっていくということだと思いますので、やはり求めやすい価格にするためには、私たちは努力をして、生産性を上げて、損金を減らして、適正な価格にしていくような努力はしたいと思っていますし、これは、農業者だけではなくて、いろいろなステークホルダーを巻き込んでやっていければなと思っています。決して、実現できないとは思っておりません。
ありがとうございます。
○庄子委員 最後の質問は、谷口参考人と大塚参考人、お二人に伺いたいと思いますけれども、今回のこの戦略がきちっと機能するために、いわゆるシステムとして川上から川下まで、いわゆる生産、加工、流通、そして消費といった流れとして一気通貫で機能していなければ、せっかく有機農作物を現場で作っても、その先、そのシステムが壊れていてはこれは戦略として成り立っていかないわけです。
そうした関係者の理解、連携をつくっていくために、この道筋というのはいろいろ課題があろうかと思いますが、学術の立場から御覧になって谷口参考人から、そして、生産者のお立場から大塚参考人から、その道筋、アプローチの仕方、こんなことの御意見を伺いたいと思いますので、よろしくお願いします。
○谷口参考人 御質問ありがとうございます。
私の資料の九ページにそのことを書いておきました。
今、庄子議員から御質問いただきましたように、みどり戦略は、生産、流通、加工、消費まで、いわゆるフードシステムと呼ばれているもの全体を持続可能に変えていくというふうに言われています。それをどのように進めていったらいいかという御質問だと思います。
個々のその政策をどう進めるか、KPIをどうするかという技術的な話ではなくて、実際にこのシステムがいわば日本全体を変えていく動きとして考えた場合に、一番鍵を握るのは、まさに消費者だと思います。買う人を増やす、もうそれに尽きると思います。
しかし、日本では、有機農業はいまだに〇・四%又は〇・五%の状態がずっと続いています。なぜか。その理由は、先ほど井村さんがおっしゃったように、ニッチであった、マーケットが小さいがゆえに、生産者も消費者も小さいマーケットにずっと安住した、そういう考え方を持ってきたわけですが、みどり戦略は、それをいわば国民全体に開放するということになりますので、まず、買手がしっかりつくことが何よりも大事かと思います。
そのために、資料の九ページの五行目のところからちょっと説明したいと思います。
有機農業の価値は環境保全、安全で栄養価の高い食べ物の提供、それによる消費者の健康増進、食育効果、地域の問題解決への独自の貢献など、非常に多岐にわたっている。有機食品に対する消費者の需要を大幅に高めるためには、こうした有機農業の多面的な価値を評価し、農業政策のみならず、健康、環境、教育、地域づくりなどの諸政策に盛り込むことによって消費者の理解を高めることが必要不可欠だと考える。
ちょっと難しく書きましたけれども、先ほどたしか大塚さんか井村さんがおっしゃった、子供たちにもっと農業の大事さを伝えてもらいたいというふうに言いました。これは文部科学省の力をかりなければできません。あるいは、有機農業を、有機農業に限りませんけれども、健康な農産物を食べれば医療費が減ります。これは厚生労働省にお願いしなければいけません。
こういった省庁横断的な取組を進める必要が、絶対に必要だと思います。そのために、農水省が中心となって、厚生労働省、文部科学省、環境省、総務省などと省庁横断的な推進体制をつくる。
それによって国民が変わる。どう変わるかというと、単に有機農産物を買うというだけではなくて、今、生産者の方お二人が言ったように、農業は大事なんだということを理解する、高い安いだけで判断してはいけない、自分たちが買ったものは農家を支えているんだということを理解する、そういう理解者としての国民。それから、直接支払いなり補助金を負担する納税者としての責任。もう一つは、自分の息子たちを農家にしたい、子供たちを農家に嫁がせてもいいという、そういった担い手を育てる国民。
国民は、もはや消費者ではなくて、農業の多面的な価値を理解して、農業全体を理解して支援する応援団。国民全体をそう変えていかなければ、みどり戦略は実現しないと思っております。
そのために国ができることは、今申し上げましたように、今この農林水産委員会でやっているような議論を、省庁横断、全体に広げて、国全体でこのみどり戦略のシステムづくりを盛り上げることではないかというふうに思っております。
ありがとうございました。
○大塚参考人 ありがとうございます。
私は、先ほども言いましたけれども、農産物を高く売らないとやっていけない。そのために、我々有機農家は、プライスリーダーとして、高くても頑張ってやっています。本当は、安く売った方が売れるし、楽なんですね。しかし、ディスカウントに走ってしまっては、僕はいけないと思います。
やはり農業の価値をどうやって売っていくか、それをまさに今、農家、関係団体が問われているんだと思います。消費者の方々に理解していただいて、何でこんなに高いのか、何でこんなにコストがかかるのか、それを真剣に話をしていかないと、これは、有機農業とか減農薬とかの問題ではなくて、そもそも日本で農業が成り立たなくなる、現実に僕はなっていくんだと思うんです。
それで、今回いいチャンスだなと思うのは、化学肥料が今入ってこない状況です。ならば、有機肥料を使おう、そして、地域の循環のリサイクル肥料を活用しようとするのが僕は農業者の務めだと思います。
ですから、そういう意味で、まさに今、何でこれだけコストがかかって、何でこの価格なのかということを真剣に消費者と議論して、この価格でないと合わないんだというふうに持っていかないと農業が成り立っていかない。
そのための、このみどり戦略はいいチャンスだと実は思っています。今までいろいろな政策が、何か補助金という形で何か解決していたように思うんですが、補助金ではもう解決できない。いかにこれから農業を十年間で減らさないということを、強くこの政策によってアピールしていただければなと期待しております。
○庄子委員 ありがとうございました。
終わります。
○平口委員長 次に、神谷裕君。
○神谷委員 立憲民主党の神谷裕でございます。
本日は、四参考人の皆様、国会までお越しをいただき、また、大変貴重な御意見を賜りました。心から御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
それでは、私からも何点か質問をさせていただきたい、このように思っているところでございます。
まずは、有江参考人にお伺いをしたいと思います。
今、先ほどお話をいただいたように、やはり植物防疫、これは非常に大事なんだなというふうに思っているところでございます。昨今、コロナもございました。あるいは、その前の豚熱の話もございました。今更ではございますけれども、こういったことは本当に大事だなと思いますので、だとすれば、やはりもう一回植物防疫について我々は考え直さなければいけない。今回、そういった意味でこの法律も出ているところでございます。
そういった意味におきまして、やはり国境措置、これまででも十分とは言えなかったわけでございますが、改めて、参考人の立場から見て、何が欠けていて、何が問題なのか、そこについてお話をお伺いをしたいのと同時に、もう一つ伺いたいのは、どうしても化学農薬であるとか防除であるとか、この重要性、これはもう農家の皆様方もよく御存じだと思います。そういったときに、みどりの戦略というのは、どちらかというと、これを減らしていこうじゃないかという取組だと思うんです。
ということで考えましたときに、植物防疫の専門家の立場から見て、このみどりの戦略に対して何か注文というわけではないのですが、物申しておきたいことがあったら是非お伺いをしたいと思うんですけれども、いかがでございましょうか。
○有江参考人 どうもありがとうございます。
一点目ですけれども、植物防疫において国境の問題ということだというふうに思いますけれども、やはり、一番最初、冒頭に申し上げましたけれども、例えばコロナであっても、感染しているかどうかというのは、どこで感染したかというようなことは結局分からないで、PCRで初めて分かるというようなことになっております。特に、植物の防疫の場合というのは、我々自身が直接の痛みとかそういうのはございませんので、間接的ですので、それがなおさら助長されるかと思います。
特に、植物の病原菌等がどうやって国境を越えてくるか。虫の場合には、虫が飛ぶので、国境も何もございませんので、勝手に飛んできますけれども、例えば種苗でしたら、非常に多くの種子の中のごく一部が汚染をされている、それが圃場に入って圃場で増える、増えると隣の植物にうつるというような形で伝播をしていきます。ですから、目に見えないような形で参りますので、それをいかに発見をしていくかというところだというふうに思います。
大体報告があるのが、農家の方が栽培をしていて、こんな病気があるよと気がつく、初めて試験場だとか農水省とかに連絡があって分かるんですけれども、本当はその前にもう入り込んでいてというようなことになるんだと思います。例えば、エンドウ萎凋病菌なんかもそんな例でございました。
それからもう一つ、化学農薬に関して言うと、実は、化学農薬の歴史というのはそんなに長くありません。先ほどジャガイモ疫病の話をしましたが、ジャガイモ疫病は百七十年前です。化学農薬が初めて出てまいりました。これは硫黄だとか銅とか、天然物由来のものが大体百五十年前、合成農薬に至っては百年の歴史しかありません。ということは、その間で発明されたものがいろいろ検証されて、危険なものは排除され、より安全なものを選んでいくという、まだそういう過程にあるというふうに思っております。
ですから、本当に安全な農薬は何なのかというような議論もまだされておりませんし、ですので、私は、農薬をどんどん使いなさいというような立場では全くありませんので、やはり基本的には、また時代がたつと、どういうものが安全かという指標も変わってまいりますので、そういうことをきちっと見直していかなくちゃいけないんじゃないかと思っております。
ですので、みどりの法案においても、そういう意味で、総合的な防除というのは、やはり化学的な農薬を使うところのよくない点というのも見出して、それをほかのもので補っていくことで化学農薬の働きも高める、あるいは、化学農薬を使いたくない方はほかの方法でやりますというようなものを提案するということではよろしいんじゃないかと思います。
みどりの戦略の中で、五〇%リスク削減という言葉がありますけれども、このリスクというのも、ですから、先ほど申し上げましたように、測ることが基本的にはなかなか困難です。
現在は、農薬に関しては、一つの薬剤のリスクを、ADI、一日にどれだけの農薬を我々が取って、残留農薬を取って大丈夫かという数値を基に三つに分類をいたしまして、それを係数で掛け算をして、その五〇%を減らしましょうということになっております。ですけれども、そのADIを使うこと自体が本当にいいのかどうかという議論もまだ成熟しておりませんので、今後ともそういうことはやっていかなくちゃいけないんじゃないかと思っております。そういう点が問題点だというふうには思っております。
○神谷委員 ありがとうございます。
図らずも今おっしゃっていただいたんですが、ほとんどの畑での病害虫が分かるのは、国境の時点ではなくて、実際に植えてから発現することが多い、やはりそういうことなんだろうなと。
私どものシロシストであるとか、大変大きな問題になっておりました。入ってくると大変な問題になりますから、改めて、防除もそうですし、国境措置、これは大事だなと思っていまして、そういう意味においては、この法案、少し前に進んでいただければいいなとは思うんですけれども、これでもまだ十分かなというふうに思ったりもするものですから、そういったことでまたお話を伺った次第でございます。
続きまして、谷口参考人にお話を伺いたいと思います。
今回、このみどりの戦略法案、これは非常に大事な法案だと私どもも考えているところでございます。
先ほど、転換という言葉で言っていただきました。これは本当にそのとおりだと思います。従来の農政とまたこのみどりの食料戦略の方針、大きく変わるものだと思います。そういった意味においては本当に大事なんですけれども、そしてまた、図らずも言っていただきました、数値目標というのはあくまで目標でしかないということで、これで意識改革ができればというようなお話だったと思います。
しかし、もう一方で考えますと、行政というところで見ますと、この数値目標というのも非常に大事な目標ということになりますし、これを実現するためにどうしようかということが今後議論をされていくと思います。そこでやはり無理があってはいけないんじゃないかなと私自身も思っていますし、この無理が、例えば農業の現場であるとか、あるいは様々なところにいったときに、消費者にもいくかもしれません、そういったことが現実に起こったときには、この目標そのもの、持続可能な農村というのか、そういったことが現実のものとならないんじゃないかなというふうに不安にも思うところでございます。
そういった意味においては、先生おっしゃるとおり、この目標というのは目標でしかないんだ、とらわれる必要はないというのもごもっともなことだと思いますが、今後、恐らくこれを具体化していくための議論が様々行われていくと思います。その際に何に留意をすればいいのか、この点について御高見を拝せればと思います。
○谷口参考人 大変難しい質問だと思います。
先ほど申し上げましたように、農水省は、どうしてもロードマップのようなものを作って数値管理をするというイメージでこの計画を考えておりますけれども、多分、これは非常に難しいだろうと思います、このような打ち続く異常気象のこともありますし。
具体的に考えると、例えば、オーガニックビレッジを、今、農水省はこれから推奨していって、三年以内でしたか、百のオーガニックビレッジの宣言を求め、またその数年後には、二百市町村からオーガニックビレッジの宣言を求めると言われています。例えば、そのオーガニックビレッジの数というようなもので一つ管理することはできるかと思います。
しかし、オーガニックビレッジが、ぱっと手を挙げた。これは市町村が主導することになっていますので、市町村の首長さんが、いいね、これをやろうねとなると、すぐ始まることになります。でも、仕組みが必要なんですね、オーガニックビレッジをやるために。地域に有機農家はいるだろうか。技術はあるだろうか。誰が教えるんだろうか。取れた農産物を学校給食に使うという、じゃ、誰が運ぶんだろうか。学校の栄養士さんと誰が調整するんだろうか。
つまり、オーガニックビレッジというのは一つの国の政策だけれども、これを実際にやるとなると、一つの、専門家の言葉でローカルフードシステムというような言葉で言っています、地域の中のフードシステムをつくり上げる新しい事業になるんですね。この事業がうまくいくかどうかは、やってみないと分かりません。
そういう食に関心のある方が多い地域だと、いいね、いいねとさっさと進むかもしれませんけれども、首長さんは熱心だけれども、地域の住民が余り乗り気でないと進まないかもしれない。そういう停滞とか試行錯誤は起こり得ると思うんですね。
KPIで管理することの問題は、数値どおりに進まないことに対して現場を叱責する危険だと思います、何で進まないんだという。それは無理です。現場は一生懸命やったって進まない。有機農家だって、農法を転換して安定した収入を得るためには何年もかかります。期待したとおりの、今年はうまくいったけれども、来年はうまくいかないこともある。すごく、農業は全てそうじゃありませんか、いろいろなことに左右されて、思うとおりに進まない。
その思いどおりに進まない事業をどう管理するのかというのは、ちょっと私はすぐには答えは出ませんけれども、まず、少なくとも、ロードマップとかKPIだけで一元的に管理することは無理があると思います。幾つかの指標を組み合わせて、複数の指標で管理する。そして、計画に変更があった場合に、それを、仕方がないねと、おおよう、おおようというか、余りやるとルーズになっちゃうんですけれども、ルーズにならない程度に、その取組が真剣に進んでいる限りは見守るといったような態度でしょうか、そういった態度でとにかく育てるということが大事かなというふうに思います。管理するんじゃなくてね。育ってこなければ、作物自体も育っていかなければいけませんので。
このように予算をつけてから五年後にこうなるはずだということではなくて、こうなればいいんだけれども、どうなっただろうかというふうに柔軟な管理といいましょうか、済みません、余り的確な言葉で説明できないんですけれども、こういった現場に優しい、少なくとも、意欲を持って取り組む人たちが腰折れをしたりとか、プレッシャーを感じたりとか、やる気を失わないような管理、現場を支援する管理ということが必要じゃないかなと思います。
余りいい答えになっていませんけれども、済みませんでした。
○神谷委員 誠にありがとうございました。
ちょっと難しいというか、私自身、どうしたらいいものかなという思いで伺ったわけでございますが、やはり大きな目標だけが先行するような形というのは難しいんだろうなと思いますし、農業者の方がついてこられない、消費者の方がついてこられないとなったときに、やはり大きな問題が出てくるだろう。
それを埋めるために、例えばイノベーションというところに頼ったときに、逆に、本来目指していた世界と全く別の世界が生まれることを、実は若干懸念を、若干というか、かなり懸念をいたしておりまして、そういった意味からも、是非今後も関心を持って、先生方には是非またお話を伺えたらというふうに思う次第でございます。
続きまして、井村、大塚両参考人にお伺いをしたいと思います。
お二人は現役の農業者ということもございまして、一番、実際に有機農業にも取り組まれて、実際に経営もされているという大変な御経験がある方々だと思いますので、是非その立場からお話を伺いたいのですけれども。
現実に有機農業は、なかなか、普通の農家さんにはハードルが高いのかなというのが率直な思いです。
と申しますのも、例えば、減農薬あるいは薬を使わないということになったときに、例えば虫は大丈夫なのか、あるいは雑草は大丈夫なのか、肥料を使わない、減らす、これによって、ひょっとして収量は大丈夫なのか、やはり当然にして思うと思うんです。
そういった意味では、例えば、粗放的にやっていくという道を選ぶのか、はたまた人手も含めて相当手間をかけてやっていくのかというような話になっていくんじゃないかなというふうに思うわけでございます。
現実に有機農業を、今、形として大変に成功されているお二方に是非お伺いをしたいのは、こういった普通の農業者さんが有機農業を取り組みやすくするためにどういったことをやっていくのか、あるいは、やっていかなければいけないのか、こういったことを是非お伺いをできたらと思います。両参考人、お願いをいたします。
○井村参考人 御質問ありがとうございます。
有機農業の技術というのはこれからだと思っておりまして、やはりみんなで、地域、作物に応じて創意工夫をしていくということだと思うんですね。
今までは、普及員の方がいて標準化された農法を普及させていくというような形だったんですけれども、有機農業の場合は、やはりその地域、作物によって全然やり方が違いまして、大変多様性のあるなりわいだと思っています。そういうことを考えますと、やはり都道府県が中心になって、その地域、その地域の作物に合ったものをみんなで創意工夫をしながら実現していく、そういうプロセスになっていくのかなというふうに感じます。
ですから、本当に、やはり今まではマニュアルがあって、標準化していく、あったものをやっていくという考えなんですけれども、有機農業の場合は、その都度その都度いろいろな対策をしていくということが蓄積されるというようなイメージを持っておりますので、そういう形になっていけば広がっていくんじゃないかなと思います。
ありがとうございます。
○大塚参考人 先生、ありがとうございます。
これはまさに本質の話でして、実は、私は一般の慣行栽培を若干やったことがありますけれども、百点取って当たり前なんですよ。失敗ができない。百点取って当たり前ということは、それだけ厳しい世界なんですね。そのために農薬もしっかり使う、化学肥料もしっかり使うわけです。にもかかわらず、価格が保証されていないという中で、物すごい苦労をされているわけですよ。
ですから、私は今回チャンスだと言っているのは、今まさに、見た目じゃない、形じゃない、やはり取組だ、若干虫がついていてもいい、若干形が悪くてもいい、まず、この取組に対して、その価値をお金にしようということ。
だから、若干ちょっと失敗してもいいという少し寛容のあるステージにこの農業が入っていかないと。僕も東京に出荷します。十ケース、百ケース出荷します。一ケースもし悪いものが入っていたら、全部赤点、切られるわけですよ。それだったら、今までずっとカボチャを作ってきて、百ケース出荷して、着いたら物が悪かった、全部赤、これはやる気をなくすと思うんですよね。
ですから、僕は、今回、この環境、循環、やっていくという中に、やはりこの規格、今までの市場流通、これを少し変えていかなきゃいけない。
学校給食は、私は何度も言うんですが、一生懸命農家が作ったものが自分たちの目の前の子供たちに食べていただくということが、これはやりがいにつながるんだと思うんですね。価格は、当然、直接農家が給食に持っていけば安くなるんです。
だから、私は、首長が地元の有機農産物を学校給食に使うということは、高くなるわけじゃないんですよ。直接有機農家から買うということにつながって、有機農家がやりがいにつながっていく。そうしたら、俺も有機農業をやって、息子が小学校にいるから、俺もちょっとカボチャを有機で作るかな、そういうように僕はなっていけば、実は、家庭菜園は農薬を使っていないですよ。これは売る野菜、これは自分のうちで食べる野菜、そうですよね。多分、地元の方もそうだと思うんですよね。
だから、そういうことをしっかりやっていけば、僕は難しくないと思います。
○神谷委員 誠にありがとうございました。
おっしゃられるとおりだと思います。
それと同時に、やはり大事なのは、言っていただいたように、消費者がどれだけしっかりと理解をしてくれて、適正な価格をちゃんとつけてくれるか、マーケットインという発想もいただきましたし、マーケットをつくってくれという発想も頂戴したところでございます。これは本当に大事なことだなと思います。
今まで農業者の方は、どちらかというと、作るプロではありますけれども、実は販売するプロではなかったというところでございまして、そこが実は大事なんだろうと思います。
だんだんだんだんこのみどりの戦略が大きくなってくると、結果としてそこが広がっていくわけですから、皆さんが売るプロになれるかどうかは分からないところではありますが、そういった意味でも、是非給食等も使う方向で考えていったらいいのかなと思っています。
ただ、給食で提供するだけでは駄目で、実際にこれがどういうものなのか、農業者の方がどれだけ汗をかいて作ったものはいいものなんだという、そういった教育、食べるだけではなくて、その背景も含めてしっかり学習をさせなきゃいけないんだなということも、今、皆様方のお話を聞いて理解をしたところでございます。
どうも私の時間もそろそろ来たようでございますので、本当に、本日は参考人の皆様、ありがとうございました。これで私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○平口委員長 次に、空本誠喜君。
○空本委員 日本維新の会の空本誠喜でございます。
本日は、参考人の皆様方には、本当に御多忙の中、御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。感謝を申し上げます。
本日は、みどりの食料システム戦略におきます食料システム、これがどういうふうに我が国の持続可能な農業に続いていくのかということについてお聞きしたいと思います。
まず、このみどりの食料システム戦略の中における食料安全保障、食料自給率の観点から、まず、生産者の井村参考人、また大塚参考人の立場からお聞きしたいと思います。
食料自給率は、現在、カロリーベースで三七%、約五十年前は、昭和四十年頃は七三%とすごく高く、安定しておりましたが、下がった原因としましては、やはり自給率の高い米が消費減少といいますか、下がってきたこと、また、輸入しています穀物類とか飼料類とか、また乳製品、こういった畜産、小麦、油脂類、こういったものが消費拡大してきた、この原因があろうかと思います。
政府の方は、二〇三〇年に四五%という、高い目標と考えますけれども、一応、掲げておられまして、これについて、これまでの一次産業のありようを振り返ってみると、なかなか、この十年といいますか、二〇三〇年までには厳しいのではないかなというふうに感じるところでございます。
実際、現場で農産物を作っていらっしゃる井村参考人、また大塚参考人におかれましては、どうやったら自給率を上げることができるのか、どういう作物を作っていけばいいのか。米も作るし、麦も作るし、野菜も作るしとありますけれども、逆に、有機を拡大させることによって、自給率というのが、米の方が下がってしまうんじゃないかなというような危惧もございます。
そういった観点から、生産者の立場から、どういう農産物をこれから作っていくべきか、御意見をいただきたいと思います。お願いいたします。
○井村参考人 空本先生、ありがとうございます。
私は、お米と麦を作っておりますので、いわゆる食料自給率、カロリーベースの食料自給率に大変関係する農家であります。
そんな中で、どんなものを作っていけばいいかという御質問なんですけれども、これは、日本全国、北海道から沖縄まで、やはり地域に合ったもの、地域の実情に合ったもの、適地適作ですね、これを作るというのが生産性という意味ではふさわしいのかなと思っています。ただ、一方、それが作っても売れるのかどうか。やはり消費者のニーズにちゃんと合致したものを作っていく。この二つが大きなポイントだと思っています。
そんな中で、私の地域の話をすれば、石川県は北陸地方でして、やはりお米が適地適作としてはすごく合理性があるのかなと思っております。
このカロリー自給率ということになると、実はでん粉ということになるのかと思うんですね。これを、小麦のでん粉なのか、トウモロコシのでん粉なのか。お米というのはまさにでん粉でありまして、お米は本当に真水が大変重要な作物でして、日本は古くから水稲を作っていて、世界でもまれに見る連作障害のない作物であります。こういうふうに考えると、お米を作るというのは生産性の意味ではすごく日本には合っているのかなと思います。
ただ、これがやはり、食べてもらえない、人口減少社会に入っていくということで、ここを解決するためには、食育だとか、そういったものを通じて子供たちに選んでもらうという努力をしていかなきゃいけない。私たちは、生産性を上げるということと、やはりおいしいものを作っていく、これに尽きるのかなというふうに思っています。
麦も大豆も大変大切な穀物です。ですから、日本の中でお米と麦と大豆をバランスよく、消費者のニーズに合ったものを作っていくというのが使命かなというふうに考えています。
○大塚参考人 ありがとうございます。
私も、この自給率、思っています。やはり飼料です、餌。僕も実際に、オーガニックの飼料を来年からできないかな、WCSですが、オーガニック牛乳用の飼料はできないかなと思って、今勉強しています。
これだけ海外から飼料が入らなくなってきている。しかも、世界の飼料のマーケット、輸入しているのが日本と韓国と台湾が異常に多い、この変わった飼料の物流も、勉強したら、やはり国内で何とか飼料を生産できないのかなというのをすごく自分は思っています。
ですから、最近はそういう食品残渣からエコフィードのようなものもできていますし、もっと、牛とか鳥とか豚とか、そういった国内の飼料を何とか自給できれば、かなりこの自給率は高まっていくのではないかなと思います。
ただ、僕は専門家ではないですが、牛は餌が替わると極端に言えば死んでしまうというふうにも聞いています。ですから、大塚君、そんな簡単じゃないよと怒られたこともあります。ですから、その辺は非常に難しい問題だと思いますが、今回、こういう円安で大変な状況なので、頑張っていただければなと思っております。
○空本委員 ありがとうございます。
米の値段がまたどんどん下がっておりまして、やはり、農家の皆さん、大変だということも私も聞いておりますし、実際に悲鳴を上げていらっしゃる方はたくさんおられます。
その中で、逆に、米を消費させなきゃいけない、消費を拡大させなきゃいけない。農水省の方の資料によりますと、消費見通しというのがありまして、今、一人当たり一年間五十四キロを食べています。令和十二年、ここで、今、五十一キロに落ちるであろうと言われております。
先ほど申し上げましたけれども、食料自給率を上げるためには、やはり、自給率の高い、九七%ぐらいあります米を消費拡大してもらわないと自給率は絶対に上がらないというふうに考えるんですが、まず、研究者の立場から、両先生方、どうお考えでしょうか。有江先生と谷口先生。
○有江参考人 お答えできるような問題ではないかもしれませんけれども、やはり、私どもは米の日本人の消費が減っていることに関しては非常に危機感を持っております。ただ単に食料という問題ではなくて、例えば国際戦略的にもかなり重要な問題だというふうに思っております。
例えば、テレビなんかを見ていると、麦が足りなくなったからパンの値段が上がっている、困ったなというような意見は出ていますけれども、じゃ、米を食べようというふうにはなっていきませんので、そこのところを、どういうふうに米を食べてもらうか。
もちろん、私は農学系の大学ですので、米の育種をしている方もいらっしゃいますし、例えば、米をどういうふうに使おうかと。米の新しい育種によって、例えば酒造米を作っていこうというので育種をされていまして、そういうものを作っていくことで逆に輸出に向けていくというふうなことも考えておりますけれども、国内需要をどのように増やしていくのかというのは、谷口先生に伺っていただければと思います。
○谷口参考人 先ほど申しましたように、私は社会学が専門ですので、この問題を結構広く見ています。
米の消費が減っているといいましても、日本人が物を食べなくなったわけではなくて、代わりに輸入の小麦を食べているわけですよね。何かその問題が全く議論に上がってこないのは不自然に思います。つまり、これは自由貿易を前提としているからです。
日本は、戦後、加工貿易立国というのを国是にしていると思います。つまり、工業製品の原料を輸入して、付加価値をつけて輸出して、その工業製品の輸出の代金を原資として経済成長するというモデルですけれども、私は、このモデルは時代遅れになっていると思います。まず、その検討から始めるべきだと思います。
そもそも、自由貿易は、世界中に物を動かすわけですね、貿易ですから。自由貿易を進めれば進むほど物が移動します。それによるエネルギーは物すごくかかっていきます。農業の分野ではフードマイレージという形で問題化されています。
先ほど私がお見せした資料のように、もう右肩上がりの時代でないとすると、グローバリゼーションがこのまま進むと考えることを変えるべきだと思います。私は、グローバリゼーションは限界を超えていると思います。行き過ぎている。だから問題が起こるんですね。何が入らなくて困った、何が入らなくて困ったと、あたかも問題を外にあるように言っているんだけれども、そうじゃなくて、自分たちが進めたグローバリゼーションが行き過ぎたために地球の限界というしっぺ返しを受けているんだと考えるべきだと思います。そのことを国民に訴えるべきです。
日本の国民は、私は農学が専門でないからかもしれませんけれども、農業と農業以外の間に不思議な壁があるように思います。日本の消費者は、農業に対して恐ろしく無知です。何も知りません。何も知らないことが問題だとも思っていない。そのくせ、食の安全が不安だとか、食料、物が入ってこないと不安がっている。この問題こそ手をつけるべきじゃないでしょうか。先ほど農業者の方がおっしゃったように、国民にもっと農業の現状を訴えるべきです。
その例が、つい昨年の暮れにありましたよね、牛乳が余ったとき、飲んでくれませんかと応援が入ったじゃないですか。どうしてあのことを米に対してやらないんでしょうか。国民が、米が安くなればいいんだ、喜ぶんだといういわば右肩上がり時代の、消費者は安いものを喜ぶんだという固定観念に縛られていないでしょうか。
国民を味方にするためには、一緒に消費してくださいという訴えこそが必要なんじゃないでしょうか。それは官僚の方たちには無理です。やはり政治家の方たちが、消費者に対して、日本の農家は困っています、米を、御飯一杯食べてくれれば在庫は減りますということを訴えて食べてもらう、どうしてそういうことはできないんだろうかということを不思議に思います。
それはなぜかといえば、先ほど、繰り返しますけれども、戦後、日本が成功した加工貿易立国論による国の繁栄、その前提として、自由貿易は絶対揺るがせないものだというその固定観念こそ、今こそ変えるべきじゃないかというふうに思います。
ちょっと大きな話ですけれども、私のお答えは以上です。
○空本委員 ありがとうございます。
私も、米を食べる、ある程度目標をつくった方がいいんじゃないかなと。例えば、一年間一人が六十キロを食べる、それを政治家がしっかり国民の皆さんにお願いする、そういった消費政策も大事じゃないかなと思っております。
次に、生産者の立場から、今日、少し変わった質問でございますが、鳥獣被害についてちょっとお聞きしたいと思います。
みどりということであれば、山も守っていかなきゃいけない。だけれども、鳥獣もたくさん出てくる。ちょうど北海道と能登、違った面での鳥獣被害があるかと思うんですけれども、両生産者の参考人の皆さんにお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○井村参考人 ありがとうございます。
私たち石川県では、私は、二〇〇六年に、能登の方の耕作放棄地を求めて、能登に進出しました。そのときに、イノシシはゼロでした。全く被害がなく、南から来る視察の方々に羨ましがられた記憶があります。
それが、やはり地球温暖化の影響なのか、冬、雪が降らなくなって、暖かくなって、加賀の方にいたイノシシがどんどん北上してきまして、五、六年前からイノシシが爆発的に増えて、実際、三年前、私の能登の有機の大豆が全部食べられてしまって、一千万円以上の被害がありました。びっくりしました。それぐらい環境が変わってきているんだなというふうに思いまして、これからどんどんイノシシが北上していくのかなというふうに思っています。
ただ、豚熱の影響だと言われているんですけれども、二、三年前から個体数はまた減ってきまして、やはり自然というのはデリケートで、すごく環境に左右されるんだなということを感じています。
電気柵なんかの支援もいただきまして、今、電気柵をして守っているような状態なんですけれども、電気柵をすると、その管理だとか、草管理なんかもすごくコストがかかるようになります。
ですから、鳥獣の被害は本当に農村にとって深刻な問題で、私たちも本当に困っているというのが現状です。
ありがとうございます。
○大塚参考人 大変いい質問です。
沖縄は作物を育てるときに一切ネットは使いませんみたいなことが書いてあるんですよ。それで、僕が沖縄に十何年前に行ったときに、全部ネットがかかっているんですよね。それは何でですかと言ったら、鳥に食べられるということで話をしておりました。
また、青森の方も、大豆を猿に食べられるということで、とにかく、我々のところもそうなんですが、先ほど言われたとおり、全滅するんですね、小さいときに全部食べちゃうということで。
非常に難しい問題ですし、これはまさに、すぐ農業をやることを諦めてしまうぐらい落胆してしまう。そういうことでは、これは本当に何とかできないのかなと。北海道では、自衛隊が冬にヘリコプターで上から鹿を追い詰めていただいたこともありますけれども、それぐらい、鹿も物すごい数で増えています。
本当にこれは、農業者だけの問題じゃなくて、戦略的に頑張っていただきたい議論なので、鳥獣対策はどうぞよろしくお願いいたします。
○空本委員 最後の質問をさせていただきます。
担い手対策として、やはり民間企業の農業への進出、参入というのが大変重要かなと思っております。
維新では、これまでは養父市で行われておりました農業特区の全国展開、こういったものを、農地の所有にかかわらず、農地リースも含めて展開し、本当に必要な地域には必要じゃないかということを考えています。
今、大塚さんも井村参考人も、両参考人も会社を経営されていらっしゃると思うんですが、民間の農業参入、これからどうあるべきかということで、井村参考人、大塚参考人、簡単でよろしいので、お答えいただきたいと思います。お願いいたします。
○井村参考人 ありがとうございます。
農業は、どんどん農業の人口が減っていきまして、他産業からの農業参入というのを否定するものでは全くありませんで、やはり多様な農業者が必要になるんだというふうに思っております。
ただ、私も去年まで規制改革推進会議の委員をさせていただいていまして、そこでも議論をした経験があるんですけれども、現場の農業者としては、大きな資本が入ってきて貸し剥がしに遭っちゃうんじゃないだろうかとか、参入したはいいけれども、すぐ撤退するんじゃないかとか、何年も続けてうまくいかなかったら、そこが荒れたりとか、不正な転用になったりとか、あと、外資が入ってくるんじゃないかとか、やはりいろいろな不安を持っています。
ですから、これを進めるに当たっては、農業者の意見でありますとか、しっかりと準備をして、実態を調べて、今、養父の事例も農林水産省さんの方で検証しているということを聞いておりますので、やはりしっかりと検証して、議論した上で進めていっていただければなというふうに個人的に思っております。
○大塚参考人 今、先ほど言われたとおり、様々な企業が、植物工場だとかいろいろな形で、一部、資本を入れてやっていると思います。それで失敗されている人もいるし、成功されている方もいると思います。
私は、別に、企業が農業をやるということが悪いとは全然思っておりません。ただ、今は農村は地域によって成り立っていますので、それによって雇用が生まれて、地域が活性化して、また、そこが地域の加工品の開発ですとか、そういったことをやっていただければ、地域にとっては最高な形にはなっていくのではないかと思います。
ですから、民間が駄目とかいいとかじゃなくて、地域の実情に合ったすばらしい企業が入ってきてくれるのであれば、多分、田舎は大歓迎だと思います。
終わります。
○空本委員 ありがとうございます。
どういう担い手であろうとも、多様性のある担い手が入っていただいて頑張っていただくというのが地域のためになるかと思います。
維新は、外国人の資本の土地所有とか、そういったものには制限をかけたり、やはり農業者にとっての安全装置をちゃんと組み込んだ上で展開するべきかなと思っております。
今後とも御指導をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
○平口委員長 次に、長友慎治君。
○長友委員 国民民主党の長友慎治です。
参考人の皆様、本日は、専門的な御意見と、そして貴重な現場の声をいただきまして、ありがとうございます。
私は、実は地元の方で「宮崎ひなた食べる通信」という食材つきの情報誌の発行をしておりまして、年に四回、春、夏、秋、冬、地元のこだわりの生産者の商品を付録につけて、その背景、ストーリー、そして思いというものをタブロイドで約八ページにまとめたものを全国の食に関心の高い方たちに発行するという取組をしております。私だけじゃなくて、全国に三十ぐらい編集部があって、私は宮崎のものを担当しているということで、御存じかもしれませんが、その「食べる通信」で取り上げさせていただく生産者の皆さん、ほとんど有機の方々でございます。
それはなぜかというと、私が五年前に地元にUターンして、地元の農家の皆さんのことを私が余りにも知らないということを恥ずかしいと思ったのと、先ほど谷口先生がおっしゃいました、国民の皆さんが農家のことをほとんど知らない。そして、生産者の話を聞くと、有機の農家の皆さんはJAさんにほとんど属していないというか、JAさんとなかなか一緒にできないもので、販路は自分で広げないといけないんだと。しかし、小規模でやっている有機の皆さんはどうやって販路を広げていいか分からない。例えば、営業に行く、また、出店するにしても、畑やハウスを離れてはいいものは作れないんだということで、営業できる人がいないんだと。そこを私が是非やりたいと思って、「食べる通信」を三年前からやって、現場を取材しているんです。
その中でやはり実感するのが、有機に携わっていただいている農家さんたちは非常に魅力的で、非常に情熱がある方たちなんですけれども、一部地域ではやはり、変人扱いされていたり、最初は誤解を受けていたり、今でも地元のJAさんたちとうまく関係性が築けないというような方々がたくさんいらっしゃいます。
その上で、今日、谷口先生から、意見六、今回のみどり戦略に当たって、有機農家と慣行農家の交流と協力を促すべきであるという御意見をいただいております。
私もこの点につきまして非常に同感であるんですけれども、有機農家と慣行農家が交流して協力するような環境を整備する必要、それについて、具体的に、どのようなことをやって取り組んでいくと連帯感を生み出して、このみどり戦略を更に強力に進めることができるのか、まずは谷口参考人にお伺いしたいと思います。
○谷口参考人 大事な御質問、ありがとうございます。
有機農家と慣行農家がなかなか理解し合えないのは当然であります。なぜかというと、農薬や化学肥料に対する考え方が全く違うからであります。
先ほど私が申し上げましたように、農林水産省は、農薬と化学肥料を前提とするいわゆる近代農業というものをずっと進めてまいりました。その価値観にしみついたというか、価値観を受け入れた人たちがいわゆる慣行農家として地域の大部分を担っています。その方たちは、農薬や化学肥料が悪いとか、そういうことを考えたことがない方が多分多いと思います。当たり前に使っている。それに疑問を持つ方がいるとすれば、むしろ自分が病気になったとか具合が悪くなったから考えるということぐらいではないかと思います。
それに対して、有機農業を志す人たちは、最初から農薬や化学肥料の危険性を意識して始めていますので、農薬と化学肥料に関する認識が全く違うのは当然であります。
ですから、ある地域の中で、大部分が慣行農家、ごく一部が有機農家というのはごく当たり前の風景だと思います。それぞれ余り交流がなくて、お互いに横目で見ながら、何かやっているなというような感じになる。
じゃ、それをどう連携させたらいいのかについては、幾つかちょっと思いつくことがあります。
何よりも、行政が主導権を取ることが大事だと思います。まず、都道府県が、その都道府県の市町村に対して、有機農家と慣行農家の交流をする、そういう場をつくるというようなことを呼びかけることが必要かなと思います。それに応じて、市町村の中で有機農家と慣行農家のまず顔合わせからする。例えば、実際にお互いの圃場を見学する。
多分、慣行農家の方は、大部分は有機農家の圃場を見たことがないと思います。イメージだけがあって、何か草だらけで虫がいっぱいいるみたいな。もちろんそういうところもありますけれども、でも、中には非常に優れた農業をしている方がたくさんおられますので、そういうところを見に行って、ああ、こうやってやっているんだということを理解する。また、今度は、有機農家の方たちも、慣行栽培の田んぼに連れていって、圃場に連れていって、ああ、慣行栽培というのはこうやってやっているんだということを理解する。
つまり、農薬、化学肥料を使っていると聞いていたんだけれども、結構節約もしているんだなというふうに、お互いが、全く異質な人間ではなくて、私は、同じ農という基盤があると思うんですよ。慣行栽培と有機栽培の基盤に、同じ農の営みというものがある。同じ農業をやっているんだということをまず理解し合うことですね。お互いの現場を知って、実態を知って、確かに違うところはあるんだけれども、理解し合えるんだなという関係をまず築くことが一つ目です。
もう一つは、是非行政の方から呼びかけてもらいたいのは、これからはこの地域で慣行栽培も有機栽培も必要なんだ、両方力を合わせて地域農業を支えてもらいたいというメッセージを両方の農家に送ることだと思います。有機農家と慣行農家の連携が成功している事例を幾つか知っていますけれども、そこに共通するのは、地域のためということなんですね。
先ほど大塚さんは何度か、地域だと。あるいは井村さんも、企業が入ることはいいんだけれども、地域の農業は地域が支えているんだと。その地域という意識もまた、慣行農家も有機農家も共有していると思いますので、もう一回繰り返しますけれども、慣行農家と有機農家の交流を深めるためには、共に、一見違ったように見えるんだけれども、同じ農という基盤を持っているということ、それから、両者が助け合ってこれからの地域農業を支えてもらわなければ困るんだというような呼びかけをしてもらって、いわば共通の使命感を持ってもらうことが大事なのではないかと思います。
○長友委員 ありがとうございます。
次は、井村参考人と大塚参考人にお伺いしたいんですけれども、今の谷口参考人のお話も聞いた上で、有機農家と慣行農家さんの交流、どのようにしていけばいいか。また、既にもう御実践されているようなこともありましたら、併せて御紹介いただきたいと思います。
まずは井村参考人からお願いします。
○井村参考人 ありがとうございます。
私は五代目の農家であります。父親の代までは慣行栽培をやっておりまして、おじいちゃんの代も化学肥料とかを使っていたと思います。ただ、その前の代になると、恐らく使っていないんだと思います。
私たちにとって、農業というのはやはりなりわいでありまして、これで食べていかなきゃいけないんですね。私も、大学まで出してもらったのは、父と母が、いわゆる化学肥料を使ったりとか農薬を使って、その結果、再生産できる農業をして、育ててもらいました。
ですから、私のような代々農業をやっている者にとっては、農薬は必ずしも悪ではありません。やはりそのときの時代が、農村から人が二次産業、三次産業に流れていって人手不足になるときに、やはり、農業機械であるとか、そういう化学肥料、化学合成農薬は、再生産する手段としてすごく有効だったんだと思います。
ただ、時代が変わりまして、外部経済とかいろいろなものを考えなければいけない時代に入ってまいりました。その中で、慣行農家、有機農家、そういう白黒的な議論というのは私は間違っていると思いまして、やはり地域農業をみんなでどう考えていくかということなんだと思います。
それともう一つは、消費者が何を求めているか、これを一緒に考えていく。その中に、当然、役割分担もできてきましょうし、協調もし合っていくべきだと思います。
やはり連携はすごく大事なんですけれども、これから、慣行農家で、半分は慣行農業をするけれども、半分は有機農業にポートフォリオを移していく、そういう農家も当然現れてくるわけで、有機農家、慣行農家、この二つに分けるという考えは私は全くなくて、やはりその地域にあって、どういう農業をしていくのが持続可能性があるのかということをみんなで考えていくというステージだと思いますし、若い方はすごく建設的で、若い農業者は特に建設的にこういう話をしてくれると思いますので、そういう対立というものは私はないと信じます。まあ、地域によってはあるとも聞いているんですけれども。
ありがとうございます。
○大塚参考人 ありがとうございます。
うちの地域は、二十五年ぐらい前から、有機農産物生産協議会という形で、地域のグループで、農協と村から助成金をいただいて、ずっと活動してきています。実際にうちの農協の組合長は有機をやっておりまして、非常に先進的な地域であります。
先ほど言われたとおり、有機肥料は一〇〇%分解するんです。ただ、化学物質は一〇〇%分解しません。今日は女性の方は少ないんですが、化学物質、多分、化粧で余り使いたくないと思うんですね。ですから、やはりオーガニックということは、循環型というか、土づくりの基本だと思うんですよ。
ですから、地域の課題として、この土づくり、環境をどう守っていくか、そしてどうやって有利に販売していくか、これは農協にやはり先頭を切っていただいて僕は進めるべきだと思いますので、地域と行政とJAがタッグを組んでやってほしいと思います。
○長友委員 ありがとうございます。
次に、大塚参考人にお聞きしたいことがございます。
今日御用意いただいた資料の中で、みどりの戦略に対しての課題点をいただいております。その中の、資料でいう二番で、学校教育現場での国産志向、食料安全保障などの観点からしっかりとした教育が行われていないと御指摘をいただきました。
実は、昨日、この農林水産委員会でも、私も、教育の観点がこのみどりの食料システム戦略から抜けているんじゃないかという指摘をさせていただいたばかりです。私は、思い切って農業という授業を小学校、中学校の学校から導入すべきじゃないかというような提言をさせていただきました。野心的な目標を掲げているこのみどりの食料システム戦略ですから、井村参考人もおっしゃったようにバックキャスティングで、この目標を達成するには、それぐらいの思い切った取組をする必要があると思っています。
まずは大塚参考人にお伺いしたいんですけれども、大塚参考人がイメージする教育の分野、どのように教育をしていけばいいというふうにお考えか、お聞かせください。
○大塚参考人 どうもありがとうございます。
私も、実は二十三から有機農業をやっていまして、先輩方に有機農業をやりましょうと言ったんですね。誰も聞いてくれなかったんですよ。男性社会って、やはり年下の言うことを聞くわけないんですよね。それで、僕は二十五から、若い人たちに、有機農業はいいぞと言うようにしたんです。
それで、そのときに、札幌から中学生が体験で来ました。それで、僕に一言言いました、農家って貧乏なんですよねと。衝撃を受けました、私。それぐらい学校現場で、農家って貧乏だという教育をしているということなんですよ。
だから、皆さん笑われているかもしれませんけれども、実際に、田植、今、手で植えていますか。はだしになって田んぼに入って、子供たちは足が真っ赤っかになって、苦しい思いをして田植をさせます。そして、農業は大変だよねという話をしているんですね。現実の農家はもっと格好いい、自動操舵で、GPSで自動で植えてくるんです。だから、現実の格好いい農業を子供たちに教えていただきたい。
今、教員の方々の三年目研修をうちで受け入れています。学校の先生になって三年目の人たちを受け入れて、実際に現場で農業体験、農業教育をやっています。先生は初めて農業をやるものですから、手が震えています、緊張して。それぐらいやはり先生方も、農業というものを分かっていなくて、緊張しているんですね。
ですから、まず、我々北海道の青年部も、子供たちに教える前に先生方に農業を教えようという取組を今やっています。是非、初任者研修で農家に一週間ぐらい入れていただければ、変わると思います。
○長友委員 ありがとうございます。
是非、井村参考人にもお伺いしたいんですけれども、教育という部分で、今お感じになっていることがありましたら教えてください。
○井村参考人 農業はやはり生命産業でありまして、農業を学ぶことによって子供たちが吸収することというのはすごく多いと思います。種を植えて作物ができる、その成長というのは実際とても面白いと思いますし、子供たちにとっても好奇心のあるものだと思いますので、先生おっしゃる、授業で農業をやるというのは、私は、本当にそんな時代が来たらいいなと思っていて、すばらしいことだと思います。
修学旅行生の受入れなんかをずっと、八年ぐらいやっているんですけれども、子供たちはやはり、自然の中で田植させたりとか押し植えさせたりすると、物すごくいろいろなものを吸収します。
ですから、そういう意味でも、是非、子供たちが農業に関心を持つ、そういうきっかけとして授業に取り入れてもらうというのは、今聞いてすごくうれしく思いました。
ありがとうございます。
○長友委員 ありがとうございます。
今、農業の分野では、人手不足、担い手不足が言われています。お二人の今日来ていただいた参考人は大規模に有機農業を展開されているわけですけれども、いわゆる人材不足、人手不足という部分に関してどのように対策を取られているか、実際に募集しても来ないのか、いや、お二人のところには十分募集もあって来ているよということなのかを含めて、井村参考人からお伺いできますでしょうか。
○井村参考人 ありがとうございます。
私が二十五年前、農業をしたときには、父親、母親、私、アルバイト一人、四人でやっていたんですけれども、今四十人ぐらいの従業員が働いています。法人ですので、その従業員も担い手として捉えた場合、やはり、お給料を上げてあげたりとか、あと、お休みを増やしてあげたりとか、これを何で実現できるかというと、やはり所得なんですよね。
ですから、やはり本当に適正にもうかる農業にならないといけないかな、私はそれに尽きると思っていまして、そうすることによって農業をする人が増えてくる。さっき、もうからないという話もありましたけれども、へりくだるわけではなくて、やはり、農業を是非もうかる産業にしていくような、そういったことをやっていかなきゃいけないんだなというふうに考えています。
ありがとうございます。
○大塚参考人 農業の人手不足は深刻です。全く来ないということで、外国人に頼った部分もあります。しかし、今度、外国人が入ってこれないということで、今まさに危機的な状況で、生産もできない地帯も多分あります。
その中で、多様な人材を受け入れるということで、うちも僕が二十二のときから、平成七年からハンディキャップのある方々を受け入れてきた関係もあって、一気に外国人からそういった障害者の方々に切り替えて成功することができました。また、飲食店の方や、北海道の有名な石屋製菓さん、白い恋人の石屋製菓さんの社員の方々にも来ていただいて、助けていただいたりもしております。
やはり農業というものは一人ではできません。ですから、何とか今回のこのみどり戦略では、手間が逆にかかってきてしまうということも含めて、そういった雇用の部分も含めてやはり見ていかないと、なかなか伸びていかないのではないかなと危機感を持っています。
○長友委員 ありがとうございます。
最後に、谷口参考人にお伺いしたいと思っております。
意見の九、本日配っていただきました資料の中に、小農や家族農業の存続に特別な関心を持つべきであるというふうに御指摘いただいております。SDGsの言葉をかりれば、日本で農業を続けようと頑張っている農家を一人も取り残さないという包括的な支援が求められるということでございますけれども、具体的に、今、谷口参考人の中に、こういうことをしてほしいというものがありましたら、最後に教えてください。
○谷口参考人 適切な質問、ありがとうございました。
今日、この委員会に参加して、一つ気になっていたことがあります。それは、今日参加していただいているお二人の農業者の参考人が、非常にすばらしい、規模が一定程度大きくて、企業型経営をしている農家だということなんですね。この二人の取組はすばらしいし、お考えも本当にすばらしいと思いますけれども、同時に、この委員会場を出れば、そうでない農家の方がたくさんおられる、その問題を考えなければいけないと思います。
確かに、どの農家も厳しいといえば厳しいんですけれども、この資料に書きましたように、小泉政権以来といいましょうか、グローバル農政というのをずっと続けてまいりました。それで、日本の農家は規模が大きくてもうかる農業を推進しなければいけない、だから法人化なんだ、加工なんだ、付加価値なんだ、輸出なんだというふうに方向を切ってきたかと思います。
それは一定程度間違いではなかったと思うんですけれども、その反面として、この政策保護の対象から除外されてきた小規模農家、家族農業ですね。具体的には、兼業農家、高齢農家、新規就農者、自給農家などが政策保護の対象から除かれているのではないかというふうに思います。
例えば、先ほど獣害の話がありましたけれども、獣害をどうしたらいいんだろうか。一つ研究者の間で言われていますのは、里山に人が住まなくなったことが影響していると言われています。つまり、日本は、里山といいまして、中山間地も山の方まで人が住んだ。人が住んで、その手入れをしていましたよね。条件が悪いですから、こんなところに、一軒家みたいなところに人が住んでいる、でも、その人たちが畑をやり、田んぼをやり、山の木を刈っていたから、その部分だけは獣が来なかった。ところが、中山間地で人が住まなくなったものだから、獣は山から下りるようになってきて、里に来るようになったということが言われています。
例えば、こんなところにも経済だけでは成り立たない農業の姿があると思うんですね。中山間地に人が一人住むことによって守られる自然がある、この視点を忘れないでいただきたいと思って、このことを申し上げました。
本当に、SDGsの言葉では、一人も取り残さないとすれば、日本で農業を続けようと頑張っている農家も一人も取り残さないような政策をみどり戦略の中で進めていただきたいなというふうに思います。
ありがとうございます。
○長友委員 ありがとうございました。
以上で私の質問を終わります。
○平口委員長 次に、田村貴昭君。
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
四人の参考人の皆さん、今日はありがとうございます。
最初に、植物防疫の関係で有江参考人にお伺いします。
今度の植物防疫法の一部改正で、先生からもお話がありましたように、業務が増えてくる可能性があります。そして、登録第三者機関による検査、マンパワーも大変大事だというふうに思っています。
率直にお伺いしますけれども、検疫所等における検疫官、調査官、この人員と体制についてはやはり法改正に伴って強化されてしかるべきだと考えますけれども、先生の御所見を伺います。
○有江参考人 ありがとうございます。
植物検疫官の数は、少しずつですけれども、今、増えている状況でございます。犬も活用するようになっている等、対応はある程度されているというふうに思います。
ただし、私どもの学生もかなり植物防疫所等で就職をさせていただいておりますけれども、やはり非常に業務が多様であり、かつ、先ほど国境を越えてというお話がありましたけれども、日本中海に囲まれているわけで、実際には日本中じゃなくて決まったところにおりますけれども、そういうところで働いていただかなくちゃいけないということで、やはり増員が必要なのではないかというふうに思います。
その中で、先ほど、輸出検疫に関しまして、第三者機関で一旦審査をして、その後、植物防疫官が許可を出すという制度に今回変えようとされていることでございますけれども、これに対しては、リーズナブルなのではないかなというふうに思っております。
特に、今、植物防疫所の方に検疫をしていただこうとした場合には、植物防疫所が全て植物防疫官の出張旅費等の費用も出して、検査をして、その結果を輸出しようとされる方にお渡しをするという形になっておりますが、これが本当に増えてきた場合に対応できる形なのかどうかということも含めて今回の議論になったのではないかというふうに思います。
そういう点で、第三者の検査が入るということによって、多分、ある程度費用が生じることになるかと思いますけれども、そこのバランスを整えていただければ、それは達成可能だと思っております。
あとは、今度は輸入の方で、先ほど種子にくっついて病害虫が入ってくるという話をさせていただきましたけれども、これの検査も今は全部国がやってくださっています。植物防疫所がやってくださっています。例えば、種子ではなくて、じゃ、私がバナナの苗を輸入しようと思ったら何が起こるかというと、バナナの苗を一年間、植物防疫所で育ててくださって、それが一年たって何も起きなかったら渡していただけるという形になります。その費用も全くゼロ円です。
ですので、そういうところをかなり今、国に御負担いただいているという部分がありますので、そこら辺も見直しが今後も併せて必要になってくるのではないかというふうに思っております。
以上になります。
○田村(貴)委員 それでは、みどりの食料システム法案の関係でお伺いします。
谷口先生からは、意見四のところで、生産力向上と持続性の両立という文言は曖昧で不十分であるというような御指摘がありました。
法文の中には、「環境への負荷の低減と生産性の向上との両立が不可欠」、こういうふうに書かれているわけなんです。
それで、生産者の井村さんと大塚さんにお伺いします。
有機農業を実践する中で、生産性の向上というのはどのように捉えるのかということです。
井村さんは、自然界に独り勝ちはありません、害虫が増えれば捕食する虫や鳥が増える、一割、二割を生態系に分けてあげて減収しても、長い目で見れば減収にはならない、そういうふうに主張されています。
大塚さんは、収量を追求することなく、半分取れればいいという考え方で投資を減らし、労働生産性を上げるようにしているというふうに資料でも紹介されておりました。
生産性の向上というのはいかようにも取られるわけなんですけれども、ややもすれば、単収増、そして大規模化、機械化、効率化一辺倒、そういう中で議論もあったわけですので、この考え方をどう捉えておられるか、教えていただきたいと思います。
○井村参考人 ありがとうございます。
今のお米、麦、大豆でいいますと、お米については、民間稲作の稲葉先生でありますとか先人が頑張ってくださいまして、かなり生産性は上がっていると思います。ただ、麦、大豆については、取り組んでいる人がほとんどいないような状況で、まだ全然生産性が上がっていないというふうに自分も認識しています。ただ、今まで全く研究もされずに、それを作ろうという意思もなかった中で、これからみどり戦略ができて、恐らくこれからいろいろな技術が出てきますので、私は伸び代がとてもあるんじゃないかというふうに個人的には思っています。
あと、全体的な話として、毎年毎年の単収というのを今までずっとデータにして追っかけてきているんですけれども、やはり長いスパンでどれだけ取れるのかということも考えていかなきゃいけない。これから百年、二百年、本当に極端ですけれども、千年間今の農業のやり方を続けて、千年間のアベレージで本当に生産性が上がるのだろうか。これは、しっかりとしたエビデンス、研究者にも入ってもらって、持続可能な、生産性が向上する農業というのはどういう農業なのか、恐らく組み合わせていくようなことになるのかもしれないですけれども、そこをやはり考えていく。
やはり考え方としては、単年で考えるのではなく、なるべく長いスパンで生産性が向上するというのはどういうことなのかということが一つのヒントになるのかなというふうに思っております。
ありがとうございます。
○大塚参考人 ありがとうございます。
半分取れればいいということで、私も、有機に切り替えて何とか慣行並み以上に取れるようにということで、過剰な有機肥料、過剰な有機的な農薬を使ってチャレンジしました。実際に六十種類ぐらいの農産物を作って分かったことは、やはり資材に頼ってはいけないと。元々、我々のオーガニック、有機栽培の上には自然農法というのがありまして、自然農法は資材も使えないし機械も使えないんです。それから比べると、有機農業は資材も使えるし機械も使えるんですね。その中で、私は、半分取れればいいという考え方を取り入れて、少し考え方をシンプルにしたら、すごくいいものが取れるようになりました。
あとは、いかに歩留りの悪い部分をどうするのか。うちで言うと、加工しています。大根だと切り干し大根にしたり、干し芋にしたり、ドッグフードにしたり。また、残渣物は一〇〇%オーガニックの卵を作っている鳥屋さんに有機の餌として全て供給しています。ですから、ほとんど廃棄はゼロです。
ですから、そういうような形で、いかに自分たちの畑で取れたものを価値あるものにしていくか、それがまた従業員に対する給料に高まっていくということで私は労働生産性というお話をさせていただいたんですが、そういった価値を生み出していきたいというふうに考えています。
○田村(貴)委員 そこで、谷口先生にお伺いするんですけれども、先ほどは持続性の意味についての御意見をいただきました。条文には「環境への負荷の低減と生産性の向上との両立が不可欠」、こういうふうに書かれているんですけれども、生産性の向上について、先生はこれをどう見ておられるか、教えていただけますか。
○谷口参考人 御質問ありがとうございます。また学者らしいお答えをしたいと思いますけれども。
まず、生産性の向上と持続性の確保はバランスの問題だと思います。今までは、日本の農業政策は生産性向上一本でやってきたというふうに思うんですね。その生産性というのは、量の確保、規模、面積を大きくする、効率化する、いいものを取るということだったと思います。この度、みどり戦略で初めて持続性という言葉が入った。入ったんだけれども、まだバランスが取れていないと思います。
じゃ、どういうのが適正なバランスかというと、持続性というのは、基本的に、私たちが生きている地球環境そのものだと思うんですよね。あるいは、もっと、地球環境と言うと想像が難しければ、地域と言ってもいいと思います。地域に人が住まなくなったら持続性がありませんよね。私たちが経済活動をしたり好きなことをするためには生きているための基盤が必要で、それが持続性という言葉だと思うんです。
今、持続性が脅かされているとすれば、優先順位は、持続性の確保が優先されると思うんです。ですから、生産性向上と持続可能性のバランスをどう書くかというと、この今日の私の提案書の五ページに書きましたけれども、持続可能性の範囲内での生産力向上、持続性が許す限りの生産力向上という考え方をまずすべきだと思いました。
それから、今、井村さんが大変いいことを言ってくださって、生産性というのは一体どれぐらいのスパンで考えるのか。化学肥料や農薬はすぐ効くんですね。だから一年間の単収ということをすぐ考えるんだけれども、この先はそうはいかないと思います、使えなくなりますから。有機肥料は投入してから効くまで時間がかかります。効いて、まだ効き方も不安定になります。ですから、生産性の概念にもっと時間軸をはっきり入れるべきだと思います。
例えば、仮に単年度の収量が下がったとしても、それによって有機農業が成り立って、その経営が百年続くとすれば、それは生産力向上として認めていいんじゃないか。単年的な収量が下がったとしても、それによって百年間続く経営ができるんだったら、それは生産力向上と考えていいんじゃないかというような考え方。
つまり、生産力向上という考え方も、今までの固定観念を離れて、持続可能性とのバランスの中で考えるということを御提案したいと思います。
○田村(貴)委員 また論議を委員会の審議で深めていきたいと思います。
有機農産物をいかにして販売し、そして消費者の下に届け、実際、買っていただくか、この道のりは大変大事なところだというふうに思っています。
谷口先生からは、多面的な価値を国民が共有するという、この提起は、まさにこの問題の本質ではないかなと思っております。農林水産省、環境省、文部科学省、省庁が果たす役割、また地方自治体の果たす役割も大変重要だなと。これは、やはり政治と行政の責任において施策を打っていかなければいけないと思います。
私も、昨日、質疑の中で、公共調達、公共施設や学校で有機農産物を消費してもらう、そして、田んぼの中で、生物多様性とか、農薬やあるいは化学肥料に頼らない、環境に負荷を与えないということはどうなのかということを子供のときから体感していく、教育現場で知っていくということは本当に大事だというふうに思っています。
農水大臣の答弁は、意欲ある市町村の取組が進むように支援するということだったんです。意欲のある市町村が出てくれば、それは本当にいいんですけれども、なかなか、みんながそういったらいいんですけれども、アンバランスも生まれてくるだろうというふうに考えます。それでは地方自治体次第になってくるということもあると思うんです。
公共調達とか、あるいは学校給食で有機農産物が安定的に、継続的に活用される、そして食べていかれるということは、今日は、参考人の皆さん、その方向がいいとおっしゃいました。国はこれから何をしていかなければならないか、谷口先生、解説していただけますか。
○谷口参考人 ありがとうございます。御質問、三つほどいただいたと思います。
まず、公共調達に関してです。
有機農業の推進法ができましてから、国は、五年ごとに有機農業推進のための基本的な方針というのを出しております。今、たしか三期目ぐらいのが出たんじゃないかと思いますけれども、なかなか進んでいないんですね。
私、二年前に出された新しい方針を見たんですけれども、こう書いてあるんです。有機農業を進めるためには需要をつくらなければいけない、需要プルという考えですね。需要をつくって、それに見合う生産をつくる。それは多分いいと思うんですが、じゃ、需要はどうするかというと、市場動向であるというんですね。市場動向というのは、有機食品のマーケットがどれぐらい増えているかということを基にして、市場動向、市場需要を考えています。
私は、これは非常に、国としては弱腰だなと思います。つまり、市場次第だということなんですね。市場が増えれば、市場が増えそうだから生産を増やす。ですから、生産者からすると、いや、本当に増えるのかという疑問が残ります。
実際、この一期前の、五年前に、十年前かな、作られた基本方針では、有機農業の面積を〇・五%から一%に倍増するという計画が立てられていたんですが、その根拠となるのは東京パラリンピックだったんですね。東京オリンピック・パラリンピックによってオーガニック需要が増えるだろうから、それを見越して倍にすると言ったんだけれども、見事に外れました。このように、市場動向を当てにした需要拡大というのは非常に弱いと思います。
じゃ、どうしたらいいのかというと、国が国の責任で市場をつくることができる、それが公共調達であります。公共調達、あるいはグリーン購入とも言われますけれども、ある商品が出ますよね、新しい商品が出る。市場がないので売れない。でも、その商品が非常に公共性が高いものなので、行政が率先して購入する。そうしますと、そこに、小さいけれども市場が生まれますよね。その市場を使って新しい産業が生まれて、一定程度広がったところで行政は手を放せば、一般にも売れていくという考え方であります。
具体的に言うと、再生紙を使ったコピーとかトイレットペーパーがありますよね。昔は全部バージンの商品を使っていましたけれども、今、コピーは再生紙を使うのが当たり前になりました。それは、一番最初に公共調達したからです。その発想を有機農業に当てはめていただきたいと思うんです。有機農業が本当に公共的な価値があると皆さんが認めていただければ、公共的なものを広げるために国が支援してマーケットをつくりましょう、そのために税金を使いましょうと。
その一つの具体的な政策が給食なんですね。学校給食を使って有機農業を増やす、有機農産物を増やす。それは子供たちの食育的な効果があるということは、先ほど農業者の参考人の方もおっしゃいました。その方法を力強く踏み出すことによって、全国の農業者が、あっ、国は本気で有機農業を広める気があるんだと。
だって、給食で入れれば、必ずその給食分の農産物は売れるわけじゃありませんか、買手があるわけじゃありませんか。その安定した市場を目指して生産者は作り始める。しかも、そのときの価格を安くし過ぎないでいただきたい。再生産可能な価格にする。それで、再生産可能な価格で一定程度の量を国の責任で買い上げていく。有機給食が広がることによって、消費者が有機農業を理解していくようになる。それで、消費者が今度は自発的に有機農産物を買うようになる。そのときの価格は、安ければいいだろうではなくて、公共調達で示したような持続可能な、再生産可能な価格で消費者が買っていく。そういうマーケットの展開を考えていくために、有機給食や公共調達は非常に重要な手段だと思います。
○田村(貴)委員 ありがとうございます。
先ほど井村参考人は、これから若い人たちが、外国産のオーガニックが入ってきたら、そちらを選択することもあるかなというお話があったと思います。
食料自給率を上げることについては、誰も異論はないと思います。ただ、輸入依存に頼っている、そして、それプラス自由貿易協定、経済連携協定、たくさん協定が作られて、関税がなくなる、あるいは引き下げられるという、いわゆる逆行する部分が私はあると思うんですね。
そうしたことについて、自由貿易協定とか、それから関税をなくしていくとか、オーガニックであっても、外国産が入ってきたらそれでもいいじゃないかといったことの問題について、どのように捉えておられるのか。
私は九州なんですけれども、例えば畜産で、繁殖牛をやったら、これはなかなかいいぞとやって踏み出す人がいる。だけれども、実際、これから先のことを考えたら、農業はどうなっていくのか、畜産はどうなっていくのか、子や孫には、これはなかなか継がせていく気にもなれないなという声もいっぱい聞いてきたんですね。いわゆるTPPとかEPAとか、こうしたことについて、実際に生産に携わっておられる立場からどのように受け止めておられるか、教えていただけますか。井村さん、お願いいたします。
○井村参考人 私の周りにある物質的な豊かさというのは、私が生まれてから五十七年、これを本当に許容してきたものであります。そういう意味で、私たちは外国から入ってくるものに対して余り抵抗がないように育ってきたのかなと思っています。
ただ、食料に関して言えば、私は、できれば私たちの作ったものを国民が選んでくださって食べてもらえる、これがやはり理想だと思っています。今JAグループさんでも国消国産というスローガンで運動を展開なさっていますが、私はまさにこれが大事だと思っていまして、このベースの中に国産の有機農産物も選択していただければなと思っております。
そんな中で、先ほどちょっと危機感として、今の若い子たちが大人になったときに、国産だとか、日本の農業の大切さだとか、外部経済のこと、フードマイレージのこと、そういったことと関係なしに、ファッション的に、利己的に外国産のオーガニックのものを食べる、そういう社会にはなってほしくないと思っています。
そのために私たちが今すべきことは、やはり日本の農業というのが多面的な機能を有しているということであるとか、国産のものを選ぶということは大変国益になるといいますか、この国にとって大変大切なことだ、こういったことを今の若い子供たちと共有できるような、そういう社会になっていけばいいと思いますし、そこには適切な教育というのがやはり大切だと思っていますので、ちょっとうまくまとめられないんですけれども、私は、日本の農家として、応援してね、日本の農業というスローガンをずっと言ってきています。本当にそういう社会になっていくことを願ってやみません。
ありがとうございます。
○田村(貴)委員 時間が来ました。
四人の参考人の皆さん、本当にありがとうございました。
終わります。
○平口委員長 次に、福島伸享君。
○福島委員 野党系無所属の五人で組んでおります有志の会の福島伸享と申します。本来は北神委員が参加するんですけれども、今日は憲法審査会に北神委員は参加しておりますので、代役として私が参加させていただきます。
四人の参考人の皆さん、今日は、長時間にわたり、本当に有意義な話をありがとうございます。最後の質疑でございますので、肩の力を抜いて気軽にお答えをいただければと思っております。
私、大学は農学部なんですけれども、運動部だったもので、インチキ農学部でありまして、そんなに農業の技術があるわけじゃないんですが、それでも庭で、土に対する感覚を失いたくないと思って、家庭菜園をやっておりまして、先ほど大塚さんの方から家庭菜園は農薬を使っていないとおっしゃっていましたけれども、なるべく堆肥とか腐葉土とかを入れた有機栽培を心がけて、農薬もまきたくないので、木酢液とかはまくんですけれども、やっているんです。
それでも、やはり日本の梅雨どきは物すごく雑草がはびこりますし、国会に平日に行って、帰ってくると全部葉っぱが虫に食われちゃったりとか、あと、同じ作物を栽培していても、種をまく時期が一週間遅れるだけで虫の食いの状況が変わったりとか、有江先生の資料でも欧州と異なる栽培環境とありますけれども、日本でやはり有機とか減農薬とか無農薬で栽培するというのは、欧州で気軽にオーガニックと言いますけれども、それとは違う御苦労があるんじゃないかなというふうに思っておりまして、井村さんや大塚さんの取組に非常に心から敬意を表するところでございます。
そうした中で、まず有江先生にお聞きをしたいんですけれども、総合的防除、IPMということで、化学農薬、生物農薬、抵抗品種などのいずれか一つに依存することなく、科学的根拠に基づく防除を行うということでありますが、みどりの食料システム戦略では、二〇五〇年までに化学農薬の使用量を、これはちょっと概念が分かりづらい、リスク換算で五〇%低減という目標を掲げています。
先生から御覧になって、この目標というのは科学的に根拠のある妥当な数値と思われるのか。僕ら消費者にとってみたら、これは非常に分かりづらい概念なんですね。その点を分かりやすく御説明いただけたらと思います。お願いします。
○有江参考人 どうもありがとうございます。
リスク換算で五〇%削減の五〇%という数値ですね。
これに関しては、谷口先生もおっしゃっているように、KPIとして与えるということの意味はあるかもしれませんけれども、それが達成できるかできないかということで、その数値を達成することだけが目標にならないようにしないといけないだろうというふうに思っております。
先ほども申し上げましたけれども、このリスク換算、リスクというのをどういうふうに捉えたらいいのか。これは資材の審議会の方でも審議しておりまして、私もメンバーなんですけれども、結果的には、今、リスクを完全に測る方法というのはありません。
ですので、今のところは、ADI、一日に残留農薬をどれだけ摂取してよろしいかという値を三段階に分けて、それ掛けるグラムの計算値が現在の値になっていて、それを半減しましょうということを目標にしましょうという話になっておりますが、もっとよい目標が立てられたときにはそれを変えていきましょうという議論になっております。
ですので、そういう形でのKPIだという御理解をしていただくのがよろしいのではないかと思いますし、そこのところは、私自身も、数値を出すのがよろしいのか、どういうふうに考えたらよいのかというのは、常に疑問に思っているところでございます。
○福島委員 真摯に御回答、ありがとうございます。
ただ、これはやはり、国民一般から見るとさっぱり分からないというのが現実だと思うんですね。せっかく、みどりの食料システムと言っている中で、農薬に対する関心というのは消費者の皆さん方も非常に大きいものがあると思いますので、数字が高い低いとかじゃない、分かりやすい目標を是非つくるように、これからも努力していただけたらと思います。
次に、谷口先生にお聞きをしたいんですけれども、資料の中で、みどりの戦略の使命は、農業関係者にしみついた化学肥料と化学農薬を使わなければ農業生産はできないという固定観念を払拭することであるとか、農業関係者にショックを与えて意識改革と行動変容を迫るという意味では大きな効果があるというふうにおっしゃっております。
ただ、私自身、現実に自分の地元を歩いていまして、正直言って、有機まで頭が回らないほど疲弊しているというのが実態だと思うんですね。
一方で、先生は、小農や家族農業の継続というのも非常に重要視をされていらっしゃいますけれども、現実にこのみどりの食料戦略をやっていく上で、小農、家族経営の方、高齢者の方、この人たちが有機に取り組むというのは、物すごく、私は、心理的にも、あるいは経済的にも、あるいは肉体的にも、ハードルは高いと思うんですね。
そうした中で北風を吹かすようなことをやったり、ショックを与えるというよりは、もっと私はインセンティブが必要だと思っているんです。北風よりは南風じゃないかなと思っておりまして、今回の法案にも南風の部分は税制の優遇とかいろいろありますけれども、ただ、具体策はまだまだ不足しているように思うんですね。
その点で、ショックを与えるんじゃなくて、もっと温かい、小農や家族経営の皆様方に有機を促すような政策が必要だと思いますけれども、この点、どうお考えでしょうか。
○谷口参考人 大事な御質問、ありがとうございます。
私の提案の中では、意見八の、有機農業という言葉を再定義するということでお答えしたいと思います。
有機農業ということについても、日本で有機農業が始まって、五十年ぐらいたちますか、六十年ぐらいたちますけれども、やはりイメージが固定化していると思います。農薬や化学肥料を一切使わない、草だらけの田んぼ、手で取るのが大変。何か、今日のこの委員会に出していただいて、農業の世界というのは本当に古い固定観念がまだまだたくさん生きているな、農業って貧乏なんでしょうみたいなね。有機農業もそうだと思います。
私が知っている有機農家や自然農法の方たちの病害虫管理は、もっと違います。例えば、さっきお名前が出ましたけれども、民間稲作研究所、栃木県にあるところの舘野さんという方のモットーは、有機農業は草を増やす技術なんだというんですね。虫を増やす技術なんだという。
どういうことかというと、ちょっと説明が必要なんですが、IPMとさっき有江先生がおっしゃいました。それから、私は生物多様性と。それから、井村さんと大塚さんは、同じように、生き物は多いとおっしゃいました。生き物で生き物を抑えるという技術だと思うんです。天敵もそうですけれども。
それを、有江先生のように天敵を開発してやるとなれば科学研究的に見えるんだけれども、農家目線でいえば、あえて草を生やす。それから、周りに木を生やす。天敵を増やすことによって病害虫を抑える。農家は何をするかというと、それを見ているだけ。農家は、草を取るんじゃなくて、草を抑える仕組みを入れて、農家は手を出さない。抑草とかいう言葉があります。そういう技術が有機農業の最先端の部分ではかなり実証されているんですね。ですから、有機農業に関するイメージを変えたいというのがまず一つあります。
有機農業の再定義なんですが、有機農業の定義を見直して、さっき南風とおっしゃいましたけれども、南風が吹くような定義をやる必要があると思います。
これは学会の会長として申し上げるのではなくて、一人の研究者として申し上げますけれども、例えば、JAS有機を取った場合には絶対に農薬を使ってはいけないという厳しい縛りがあるんですね。でも、それは、例えば気候変動なんかが起こった場合には非常に難しい。原則として無農薬なんだけれども、例えば、緊急避難的には使っていいんだというような規則を入れてはどうでしょうか。
それから、先ほど井村さんが、耕作放棄地を百四十ヘクタール有機にされたと言っていましたけれども、私の知っている岩手の農家は数十ヘクタールを有機でやっている。それは、任せられちゃうからだ、やってくれ、やってくれと言われるから、どんどんどんどん有機の面積が増える。数十ヘクタール有機でやっていますと言うんだけれども、実はそれは、有機農業というよりは、何にもしていないんですね。殺虫剤もまかないし、除草剤もまかないし、草も取らない、植えたら植えっ放し、言い方は悪いですけれども。粗放的有機農業です。そうすると、収量は下がります。でも、その農家は、経営面積的な全体の収入と補助金で経営しているんですね。
その方は、私はすごく優れた考えだと思うんですけれども、結局、任された田んぼができないとなれば耕作放棄地になるんだけれども、耕作放棄地になるぐらいだったら粗放的有機農業で管理したらいいという考えなんですね。だって、資材を使わなくていいわけですから、植えて収穫しておけば、有機は有機じゃないですか。安全性もあるし。その代わり、収量が悪いし、場合によっては品質も悪いかもしれない。
私たちは、何か品質や収量は一定以上なきゃいけないという固定観念にとらわれているのではないでしょうか。収量や品質ももう少し下げても構わないから有機でやっていいんだというシグナルを送れば、多くの方が有機農業に取り組むんじゃないか。
私は、有機農業のイメージや定義をもっと柔軟に変えていく、今までのごく少数の人たちができた有機農業ではなくて、望むなら、全ての農家が取り組めるような有機農業の定義やイメージをつくっていきたいと思います。
ちょっと詳しくは御説明できませんけれども、以上のように考えます。
○福島委員 ありがとうございます。
ただ、私は、やはり経済的なものがないとなかなかやる気にならないと思うんですよ。有機がいいという概念で理解するんじゃなくて、自分の収入が増えるとか、作業が楽になるとか、実際は楽にならないと思うんですけれども、そういうのがないとなかなかインセンティブにならないんじゃないかなと思います。
そうした中で、今回のみどりの農業システム法案の中でも、有機農業の団地化を進めやすくするための栽培管理協定というのが法案の第三十一条で規定されております。
ただ、私の周りで見ても、有機をやっているのは、大体、都会から移住してきた新規就農の人か、あるいは、ちゃんと大学を出て特別の思いでやっている、後を継いだ農家の方、井村さんのような方が多くて、今までの地域の中核的であった農家の皆さん方は、そうしたところとやはり一線を残念ながら引いちゃっているのが多いんですね。
そうした中で、栽培管理協定というのがこの法律で規定されているんですけれども、それだけで、じゃ、有機をやっている人が地域の農家のリーダーとなっていろいろな人を巻き込んでいくかといったら、まだまだ私は足りないんじゃないかなという気がしております。
大塚さんの北海道のところは、もう既に北海道有機農業協同組合というものをつくられているということですけれども、この法案のこの仕組みに照らしてみても、周りの農家を巻き込んでいく仕組みとして、栽培管理協定というのが果たして有効と思われるのか。そうじゃない、足りないとすれば、どういったことをやっていけばいいのかということを、井村さん、大塚さん、お二人にお聞かせいただけないでしょうか。
○井村参考人 ありがとうございます。
私のところでは、結果として、今一番大きい団地で二十五ヘクタールぐらいの団地になっています、有機だけの。
私が団地が必要であるというところでいえば、緩衝地帯の問題と、あとはやはりドリフトの問題がありまして、みんながまとまることによって、やはり有機農業者にはメリットがすごくあるのかなと思うんですが、先ほどのお話にもあったように、今、有機農家というのは点で存在している状況なので、それを一つのところに集まれということはまずできないんですね。転換期間中からまたスタートしなければいけなかったり、いろいろな問題があるので。
ですから、本当に、技術的にはいろいろな問題があると思いますが、私がイメージとしてこういうことならいいのかなと思うのは、やはり市町とかが中心になって、小さい農家さんも、兼業農家さんも、大きい農家さんも、一つのところに集まって新しい地域づくりをしていくというか、農業公園もあってもいいと思いますし、レストランがあってもいいと思いますし、単なる生産基地というだけの団地というイメージではなくて、一つの地域のコンセプトとしての、そういう地域づくりみたいな感覚で団地化というのを捉えています。
ですから、生産基地として一つのところに寄せようというのは、その団地の規模がどれぐらいの大きさを想定しているのかもちょっと私は勉強不足なんですけれども、やはり時間はかかるのかなというふうに思っています。
ありがとうございます。
○大塚参考人 ありがとうございます。
私も、団地化はちょっと余り賛成しておりません。
先ほど言ったとおり、先輩農家に一緒にやりましょうと言うのはかなり困難な状況なんです。ですから、やはり北海道全体とか、例えば僕らのところだと石狩管内みたいな形の中で緩やかに支援していただきたいと思いますし、また、環境保全型は地域と一体になってやっていますので、そこの部分での加算を上げることによって、僕はインセンティブはあるんじゃないかなと思います。
○福島委員 ありがとうございます。実態を踏まえたお話をいただき、ありがとうございます。
もう一つ、有機を進めていくに当たって、やろうと思っても、例えば堆肥の供給とか、そういうのでうまく耕畜連携を進めるのが、大きな方とかやる気のある方だったらできるんでしょうけれども、これまでずっと長く慣行栽培をしてきた人たちが、いきなり、じゃ、どうやって供給を受けるのか、先ほど食品残渣の話とかありましたけれども。その辺りのマッチングがうまくできていなかったり、地域の中で耕畜連携を進める仕組みというか、そういうのができていないことも一つの問題があるんじゃないかなと思っております。
この法案でも多少十条のところで書かれているんですけれども、国は、農林水産物の生産において環境への負荷の低減が促進されるよう、家畜排せつ物等の有効利用による地力の増進などに必要な措置を講ずるものとする。ただ、何が必要な措置とはどこにも法律には書いていないんですね。
絵に描いた餅に終わる可能性もあるんですけれども、この辺りの、堆肥の供給のために必要な条件とか仕組みというものがありましたら、先ほどISO法とか廃掃法の問題というのもありましたけれども、お二方、井村さん、大塚さんにお答えいただければと思います。
○井村参考人 ありがとうございます。
堆肥についてですけれども、私のところは、隣の富山県の採卵農家と約二十年ぐらい耕畜連携で、私たちの飼料米を送って、堆肥を引き取るということをずっとやってまいりました。ただ、石川県の場合は、畜産県ではありませんで、なかなか畜産農家が少ないという問題があります。北海道とか九州のような畜産県では進んでいくのかなと思うんですけれども、やはり地域性がありますので、その地域地域でどういう未利用資源を使っていくのかというのがテーマだと思います。
そんな中で、堆肥の問題については、やはり産廃というものの知識が必要だったりとか、堆肥でも、例えば大動物ですと、敷きわらの問題があって、そこに外材のチップが使われていたりするようなケースもあります。ですから、その品質といいますか、消費者にちゃんと求められているものなのかというのを検証するのが、農家だけではなかなか難しいところがあります。
ですから、以前、十年ぐらい前に私提案したことがあるんですけれども、そういうコーディネーター的な人がしっかり、これは行政なのか研究者なのか分からないですけれども、間に入ってちゃんと耕畜をつなぐような、そういう仕組みづくりをしていかないとなかなか進まないのかなというふうに印象としては持っています。
ありがとうございます。
○大塚参考人 ありがとうございます。
まず、堆肥の利用は、一番にはコストだと思います。まず、まくための施設、機械を買わなければいけない、また、一時的に堆肥を堆積して、それを完熟させていく仕組みをつくらなきゃいけない、当然臭いの問題もありますし、様々なハードルがあってなかなか難しい。
しかし、でも、これはやっていかなきゃいけないということだと思うんですよね。それをどうやって支援していくかということが僕はテーマになってきていると思います。
ですから、是非、畜産農家と我々耕種農家がうまく連携できるような仕組みをこのみどり戦略の中に組み込んでいただければなと期待します。
○福島委員 ありがとうございます。
もうちょっと時間があるので、では、もう一問だけ行きたいんですけれども。
有機JASの問題も何件か出ておりますけれども、お二人方、有機JASの表示をうまく使っていらっしゃるということですけれども、やはり小農の方、家族経営の方は、JASは結構荷が重い部分もあると思うんですね。
もう一つぐらいの表示、エコファーマーとかいろいろありますけれども、消費者の皆様方に分かっていただくような分かりやすい、流通の目印になるものを、JAS以外でも必要なんじゃないかなというのが私の思いなんですけれども、その点につきましては、生産者の井村さん、大塚さん、お二方、いかがお考えでありますでしょうか。
○井村参考人 消費者に対して商品を説明する大切な表示として、マークだとか認証があるんだと思います。
そんな中で、これは私の持論なんですけれども、やはり余り複雑にすると消費者は分かりにくいと思うんですね。海外に行くと、有機か普通、コンベンショナル、この二つしかないんですよね。これにいろいろなものができてくると、すごく分かりにくくなるのかなと思っています。
私は、それよりも、むしろ、JASを、例えば三百万以下の売上げの農家は認証を取らなくても、ほかの手法で確認をして有機と表示できるようなシステムをつくってあげるとか、ですから、有機を表示するということはシンプルに一つでいいと思っていまして、マークの色が違うとか何か技術的なところは分からないですけれども、やはり運用として、多様な有機農業を認めていくという意味でも、JASだけにはこだわらずに、そういったものがあってもいいと思うんですが、ただ、基準は一つでなければいけないと思います。その基準をみんなで守って、その確認の仕方は、二者認証もあると思いますし、いろいろな認証の仕方があってもいいと思っています。
これくらいの自分の中では整理をしています。
ありがとうございます。
○大塚参考人 ありがとうございます。
私は、今回、都道府県で認定をしたら税制優遇があるということがあったので、できれば、本当に、行政が有機の認証ができれば、その都道府県レベルで認定してやればいいんじゃないかなと。そうすればお金もかかりませんし、当然、そこでまた人間関係もできて、行政との関わりもできて、様々な支援を受けられていけるのかなと実は思っています。
ですから、やはり行政の方が有機農業のことを全然知らないというのもありますし、我々も行政が求めていることを全く分かっていないので、そういう意味で、行政側に、有機を進めるという責任において、何か認証制度はあってもいいのかなと思います。
○福島委員 ありがとうございます。
時間が参りましたので終わりにしますけれども、このみどりの食料システム法案を見ていると、インセンティブの部分が抽象的なように思うんですね。ですから、今後、審議を通じて、あるいは法律の施行の際に、北風じゃなくて、南風のインセンティブとなる策の充実と具体化を望みまして、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○平口委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)
次回は、来る三十日水曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時三十四分散会