第7号 令和4年3月30日(水曜日)
令和四年三月三十日(水曜日)午後一時開議
出席委員
委員長 平口 洋君
理事 江藤 拓君 理事 高鳥 修一君
理事 宮下 一郎君 理事 簗 和生君
理事 金子 恵美君 理事 緑川 貴士君
理事 空本 誠喜君 理事 稲津 久君
東 国幹君 五十嵐 清君
石橋林太郎君 石原 正敬君
尾崎 正直君 尾身 朝子君
加藤 竜祥君 金子 俊平君
神田 潤一君 北村 誠吾君
国光あやの君 坂本 哲志君
高見 康裕君 武井 俊輔君
中川 郁子君 西野 太亮君
野中 厚君 平沼正二郎君
古川 直季君 保岡 宏武君
山口 晋君 若林 健太君
梅谷 守君 神谷 裕君
小山 展弘君 後藤 祐一君
佐藤 公治君 渡辺 創君
池畑浩太朗君 住吉 寛紀君
金城 泰邦君 庄子 賢一君
長友 慎治君 田村 貴昭君
北神 圭朗君
…………………………………
農林水産大臣 金子原二郎君
農林水産副大臣 武部 新君
農林水産大臣政務官 宮崎 雅夫君
政府参考人
(文部科学省大臣官房審議官) 淵上 孝君
政府参考人
(農林水産省大臣官房技術総括審議官) 青山 豊久君
政府参考人
(農林水産省大臣官房危機管理・政策立案総括審議官) 前島 明成君
政府参考人
(農林水産省大臣官房審議官) 牛草 哲朗君
政府参考人
(農林水産省消費・安全局長) 小川 良介君
政府参考人
(農林水産省農産局長) 平形 雄策君
政府参考人
(農林水産省畜産局長) 森 健君
政府参考人
(農林水産省経営局長) 光吉 一君
政府参考人
(農林水産省農村振興局長) 牧元 幸司君
政府参考人
(林野庁長官) 天羽 隆君
政府参考人
(水産庁長官) 神谷 崇君
農林水産委員会専門員 梶原 武君
―――――――――――――
委員の異動
三月三十日
辞任 補欠選任
五十嵐 清君 古川 直季君
上田 英俊君 石橋林太郎君
長谷川淳二君 西野 太亮君
古川 康君 石原 正敬君
同日
辞任 補欠選任
石橋林太郎君 上田 英俊君
石原 正敬君 尾身 朝子君
西野 太亮君 長谷川淳二君
古川 直季君 五十嵐 清君
同日
辞任 補欠選任
尾身 朝子君 国光あやの君
同日
辞任 補欠選任
国光あやの君 金子 俊平君
同日
辞任 補欠選任
金子 俊平君 古川 康君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案(内閣提出第三二号)
植物防疫法の一部を改正する法律案(内閣提出第三三号)
――――◇―――――
○平口委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案及び植物防疫法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
両案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房技術総括審議官青山豊久君、大臣官房危機管理・政策立案総括審議官前島明成君、大臣官房審議官牛草哲朗君、消費・安全局長小川良介君、農産局長平形雄策君、畜産局長森健君、経営局長光吉一君、農村振興局長牧元幸司君、林野庁長官天羽隆君、水産庁長官神谷崇君及び文部科学省大臣官房審議官淵上孝君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○平口委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。小山展弘君。
○小山委員 皆さん、こんにちは。立憲民主党の小山展弘です。
それでは、早速、質問をさせていただきたいと思います。
まず、ちょっと本法案からずれる内容にはなるんですけれども、水協法及び漁業等の一部を改正する法律の成立に伴って、漁協系統も、特定組合については公認会計士監査に移行するということとなっております。一方で、漁業等の一部を改正する法律の附則では、「会計監査人設置組合の実質的な負担が増加することがないこと。」と記されており、当時の附帯決議にも、全漁連監査から公認会計士監査への移行に当たっては、配慮事項、今申し上げた配慮事項を確実に実施する旨の記載がされています。
この漁協系統の特定漁業協同組合の公認会計士監査への移行について、負担が増加する、負担が増加しないということだから容認したというような現場からの声も聞かれておりますが、令和六年四月の施行に向けて、負担増加とならないために、水産庁はどのような対策を考えていらっしゃいますでしょうか。
○武部副大臣 漁業協同組合等の監査につきましては、委員の御指摘のとおり、水産業協同組合法によりまして、信用漁業協同組合連合会及び貯金額が二百億円以上の漁業協同組合について、令和六年四月一日から公認会計士監査へ移行することとしております。
ちなみに、昨年、令和三年三月三十一日で三十八の団体が対象というふうになっておりまして、これも、ちなみにでございますが、単協で二百億を超えているのもあるんですけれども、それは全て私の地元のオホーツク海でございます。
公認会計士監査へ円滑に移行してもらうために、予算事業によりまして、各漁業協同組合等に公認会計士を派遣しまして、監査に向けた指導を行っていただいています。
それによりますと、漁業協同組合等における規程類の整備等に問題が見られるということでございまして、これらを改善することにより、公認会計士監査導入までに更なる負担軽減を図ることが可能と考えております。
改正法附則には、公認会計士監査による実質的な負担が増加することがないよう、政府は適切な配慮を行うこととされておりますので、適切に対応してまいりたいと思います。
○小山委員 是非、まだ施行までには時間がありますけれども、もう少し具体的に、今の、今後の配慮についてお話はできますでしょうか。
○武部副大臣 今も申し上げたんですけれども、まさに今、予算措置で、公認会計士さんを実際に各漁協さんに、指導していただいているところでございまして、その中で、今申し上げたとおり、規程類などに問題が見られるということでございましたので、こういったこともしっかり指導しながら、また引き続き、必要な予算措置をしまして対応してまいりたいというふうに思います。
○小山委員 ありがとうございます。
農協法の改正のときに、この公認会計士監査、全国監査機構の監査ということが議論になりまして、当時、全国監査機構の方には一件もたしか業務改善命令などが出ていなくて、適正にそれまでもやってきていた。しかし、公認会計士監査に変えると。
公認会計士の方はどうだったかというと、その直後に東芝の事件が起きまして、当時の東芝を担当した、たしか新日本監査法人だったと思いますが、そこがいろいろ不祥事案ということでございました。
ですので、公認会計士監査があれば不正が防げるということではないということだと私は考えておりますけれども、そういう中での移行ですので、是非、この配慮、確実に実行に向けて取り組んでいただきたいと思います。
もう一つ、漁協系統のことで御質問したいと思いますが、御承知のとおり、東日本信漁連や九州信漁連、あるいは西日本信漁連といった広域信漁連が誕生しつつあります。西日本の方は、今まだ完全には、合併の最終形には至っておりませんけれども、こういった広域信漁連の誕生によりまして、資金量とか資本金も増加をいたしまして、これまでは対応不可能であった比較的大型の融資も行えるような状況となってまいりました。
そこで、例えば漁業近代化資金制度を、二十トン未満の船への九千万円という貸出限度額の引上げとか、あるいは百三十トン未満の漁船のトン数の引上げなどといった法制度の改正といったことも検討したらいかがかなと思いますけれども、政府の認識をお尋ねしたいと思います。
○武部副大臣 先生の御指摘は、合併によって与信力もついたし、また漁船も大型化しているということがあるんだというふうに思いますが、今御指摘のとおり、漁業近代化資金融通法に基づきまして、二十トン未満の漁船によって漁業を営む者についての貸付限度額は原則九千万円、貸付対象となる漁船のトン数については原則百三十トン未満となっております。
貸付限度額につきましては都道府県知事の承認によりまして、トン数の限度については都道府県知事に申請して農林水産大臣が認めるということによりまして、いずれも制限を超えて貸付けを行うことができる仕組みとなっております。
この仕組みによって地域の実情に合わせた柔軟な運用が可能となっておりますので、是非この仕組みを御利用いただきたいと考えております。
○小山委員 この特認の例が増えてきましたら、是非また制度の改正も考えていただきたいと思いますし、私自身も、一番浜のことを理解をして、そしてまた組合員さんのためにというような姿勢でマリンバンクにも頑張ってもらいたいと思いますけれども、そういった漁業金融、マリンバンクの仕組みといったものも、これからますます浜の活性化のために貢献していただきたい、そんな観点からこの質問を申し上げました。
もう一問、今度は農業関係の分野ですけれども、平成二十六年四月一日付で、農村振興局整備部土地改良企画課長名で、「土地改良区等に関する不祥事件の未然防止等について」という文書が発出されております。この文書では、内部統制委員会、いわゆるコンプライアンス委員会を設置することが指示されておりますけれども、現在、全国の土地改良区でどのくらいの数の委員会が設置されていますでしょうか。
○牧元政府参考人 お答えを申し上げます。
委員御指摘の通知につきましては、土地改良区職員が多額の経費を私的に流用し、着服するような事案が相次いで発生をしたために、不祥事案を未然に防止する観点から、役職員のコンプライアンスの意識向上、また、内部牽制強化を審議をする内部統制委員会の設置等を内容とする指導を行ったところでございます。
この中で触れております内部統制委員会でございますが、土地改良区の規約に基づき設置されるものでございまして、総会の議決を経て規約を改正し、設置されることとなります。
なお、当該規約の改正につきましては、都道府県知事の認可を要せず、土地改良区内部で処理される手続でございますために、内部統制委員会が設置されている土地改良区の数は把握していないところでございます。
○小山委員 このようなことをお尋ねしましたのは大変残念なお話でもありますし、また、多くの土地改良区、あるいは、それに限らず、今回の本法案でも様々な補助、支援事業といったものがあるわけなんですけれども、そういったものが必ずしも全てのケースで適正に使われていない、実際、事件も起きている。そういう中で、土地改良区に対して、今回、平成二十六年、もう大分前のことですけれども、内部統制委員会の設置という指示があったわけでございまして、確かに権限としては都道府県の県知事あるいは県の管理ということになろうかとは思いますけれども、しかし、国の補助事業といったものも活用するケースも多々ございます。
そういった中で、こういった補助金や国の資金、支援といったものが私的に流用されたり、あるいは不正があったりということになりますと、これは税金が投入されているわけですので、農政全体の信頼も揺らがすようなことになりかねないことだと思っています。
また、表沙汰になっていない事件もあろうかと思います。三年ぐらい、不正を働いたような事件が実際に起きてから、最初はみんな気づかないんですね、そんな、まさか、することはないだろうと。二、三年たって、それぞれおかしいなと思っている人たちがだんだん情報共有するようになってきて、それでやっと、おかしいということで、証拠がそろったというときには五年を過ぎていて、時効を過ぎていた。
本当にそれがあったかどうかということは、一〇〇%確定的なことは言えませんけれども、しかし、そういった疑義が生じているのに、それについて調べることもできないというようなケースもありますので、是非、こういった不祥事案の再発防止に向けて、こういった内部統制委員会あるいは再発防止策といったものにこれからも努めていただきたいと思います。
それでは次に、有機農業について。
今後、国が、今回の法案にも、法案の元々の、みどりの食料システム戦略、これで掲げているように、百万ヘクタール、農地面積の二五%を有機農業にと意図するとすれば、今あるような個々の農家さんへの支援というだけではなくて、地域の団地化といった話も参考人質疑の中でありましたが、地域や集落で、面的に広がりを持った有機農業の生産体制が求められてくると考えます。
地域や集落に対する、有機農業を地域ぐるみ、集落ぐるみで行っていくような、そういうことに対する取組の支援については検討がなされておりますでしょうか。この点についてお尋ねしたいと思います。
○金子(原)国務大臣 お答えいたします。
これからの時代を考えますと、有機農業は非常に大事な取組だと考えております。
今後、有機農業を拡大していくには、各地域におきまして、有機と従来の農業者とがお互いに協力しながら、農薬の散布や病害虫の蔓延防止等に留意しつつ、委員御指摘のとおり、地域で一定のまとまりを有する生産団地を形成しまして、安定的に有機農産物を供給できるようにしていくことが効果的だと考えております。
こうした団地化の取組につきましては、地域の実情に照らして取り組む必要があることから、令和三年度の補正予算及び令和四年度の当初予算を活用いたしまして、市町村が主体的となって、地域ぐるみの生産面から直売所や学校給食での活用等の消費までの一貫した取組を地域の実情に応じて支援することといたしております。
なお、本法律案に基づく有機農業の栽培管理協定は、協定締結後に農地の所有者等が替わっても協定の効力を有することとしておりまして、地域で安定的な有機農業に取り組めるための措置として、地域で御活用いただける有効な方策の一つと考えております。
○小山委員 地域の実情に合わせてということで、確かに実情を無視して突っ走るということはできないとは思いますけれども、なかなか地域ごとに理解が進まなくて逆に団地化が進んでいかないというような、そういった懸念もあろうかと思います。予算措置でも取っていただいているということで、是非、各市町村に農水省の方からも指導していただいて、有機農業が団地化や、あるいは地域ぐるみでも広がっていくように、是非サポートをお願いしたいと思います。
新たに、新規に有機農業に取り組もうとする農家さんは、現在どのぐらいいて、今後どの程度増加していくというふうに見込みや計画を持っていらっしゃいますでしょうか。
○宮崎大臣政務官 お答えをいたします。
先生から冒頭お話もございましたように、みどりの食料システム戦略で、二〇五〇年までに有機農業の取組面積を百万ヘクタールに拡大する目標を掲げさせていただいているところでございます。
この達成に向けましては、当面は、有機農業の推進に関する基本的な方針で定めました、二〇三〇年までに、有機農業の取組面積を六・三万ヘクタールにまで拡大をするというようなこと、そして、有機農業の新規参入者の定着でございますとか、まだ有機農業に取り組んでいただいていない農業者の転換も併せて促進をすることによりまして、有機農業者の方を三万六千人まで増やすこととしているところでございます。
その後、段階的にということで、二〇四〇年までに、品種開発、除草ロボット、スマート施肥システム、こういった技術開発を進めさせていただきまして、普通の農家の皆さん方が経営の一つの選択肢として有機農業に取り組むことができる技術体系を確立をするということで、飛躍的な取組面積の拡大を図って、目標の達成をしていきたいというふうに考えております。
○小山委員 今のお話の中でも飛躍的というお話がございましたけれども、二〇三〇年に六万三千ヘクタール、そこから二〇五〇年に百万ヘクタールと、十四倍以上増やすというのは、二十年でというのは、なかなかここのところも、今お話のあった飛躍的に増加するということがないと難しいのかなとも感じるんですけれども、まだ二〇五〇年というと大分先の話にはなるんですが、こういった技術とか、今お話しになったような効果といったものが発揮されれば達成される可能性もあると思うんですけれども、こういったことが着実にできるように、これからもフォローしていただきたいと思います。
それと、水田利活用の直接支払いについてお尋ねしたいと思いますが、これも先般の参考人質疑の際にお話がございました。有機JAS認定圃場になるには、なかなか、水田から畑作に替えたりした場合には五年という期間の中ではできない、五年以上の年数がかかるといったような御意見だったかと思っております。
こういう中で、五年以内に、水田の水張り等、あるいは、あぜとか、そういった水田施設といったものがなくなっていたり水張りをしていなければ水田利活用の交付金を停止するという方針が農水省から出されていますけれども、有機農業を推進する上でも、この対応を少しでも延期するということを考えるべきかと思いますが、いかがでしょうか。
○金子(原)国務大臣 水田活用の直接支払い金における今回の見直しにつきましては、畑作物の生産が定着している農地は畑地化を促す一方、水田機能を有しつつ、麦、大豆等の転換作物を生産する農地につきましては水稲と転換作物とのブロックローテーションを促す観点から、現場の課題も検証しつつ、今後五年間に一度も水張り、すなわち水稲の作付が行われない農地は交付の対象としない方針としたところであります。
今後五年間の間に、各地域において今後の水田利用や産地形成をどのように図っていくのかを検討していただき、その中で明らかになった現場の課題について丁寧に検証していく考えでおりますので、有機農の皆さん方についても、どのような事情があるかをよくお伺いしながら、現場の意見を聞きながら対応していきたいというふうに思っております。
○小山委員 是非、この資金につきましては、耕作放棄地が増大しないようにと。耕作放棄地が増えてしまうということは、多面的機能が失われるということにもなりますし、食料自給率や食料安全保障といった観点からもマイナスな効果ということになろうかと思います。今、運用面で、是非こういった現場の声を踏まえていただいて、できればこの水田活用直接支払いについては、こういった、どこか、財務省からの要請があったのかどうかは存じ上げませんが、是非、対応について、もし可能であればやはりこれは継続をしていただきたいと思います。
大塚参考人の意見にもございましたが、有機農産物は物流コストが高く、また価格も高くなるということで、消費者により手頃な価格で有機農産物を消費してもらうためにも、有機農産物を扱う商工業者さんとか、とりわけ流通業者さんに対する税制優遇も必要ではないかという御意見がございましたけれども、その点については農水省としてはどのように考えていらっしゃいますか。
○宮崎大臣政務官 お答えをいたします。
有機農産物につきましては、生産者や産地が点在をしているということでございまして、宅配等による小ロットの輸送になりがちである、こういったことなどから、物流コストの低減が課題であるというふうに承知をしているところでございます。
このため、本法律案の第十二条におきましては、有機農産物等の円滑な流通を図るために、流通の効率化や付加価値の向上等を狙いとしまして、国が講ずべき施策として、流通の合理化に関する規定を設けているところでございます。これを踏まえまして、今後、先生おっしゃったように、商工業者でございますとか流通業者の皆さん方の御意見を丁寧に伺いながら、流通上の課題解決に向けまして、必要な対策等についてよく検討していきたいというふうに考えております。
○小山委員 この計画や目標を示すということ、プラス、細かなところまで御配慮いただいて、そして有機農業また有機農産物の消費が拡大するように是非お取り組みいただきたいと思いますし、また、消費者の理解を得られて国内消費が伸びるかどうかが、まさにこの有機農業、生産の方でも推進できるかどうかの鍵だと思っております。
農水省さんは、前回の私の質問の際に、有機農産物の国内市場は一・四倍に成長している、海外の国々においても有機農産物市場は約二倍のペースで拡大をしているので、需要は十分にあるという御回答でございましたが、需要の見込みだけでは、有機生産をしていこうと決断するには、現下の農業の苦しい情勢もありまして、なかなか不安が残って決断し切れないというところがあろうかと思います。
そういった中で、度々この議論にも出てまいりました学校給食への有機農産物の供給、有機全体の百万ヘクタールあるいは農地の二五%というものだけではなくて、学校給食でどのぐらい全国で食材として供給を受けるかといったような目標も立てるべきではないだろうか。
あるいは、谷口参考人のお話にもございましたが、コピー用紙や木材の公共施設での使用例に見られますとおり、学校給食のみならず、公共施設の食堂などの公共調達での供給先の確保にも最大限の努力が払われるべきだと考えますが、この点について、特に他省庁との連携も含めて、公共部門の需要創造についてどのようにお考えでしょうか。
○金子(原)国務大臣 有機農産物を学校給食などの公共施設で活用することは、有機農産物への理解と安定した消費の確保を図る上で有意義な取組であると認識をいたしております。
このため、令和三年度の補正予算から新たに、市町村が有機農産物を学校給食に活用する場合に食材費等を支援するなど、消費面まで見据えたモデル的な産地を創出していくことにしておりまして、このような産地を二〇二五年までに百市町村、それから二〇三〇年までに全国の一割以上の市町村で創出することを目標にいたしております。
また、公共部門での有機農産物の利用に関しましては、二月の二十五日に、環境省所管のグリーン購入法に基づく環境に配慮した物品の調達方針が見直されまして、国等の食堂における有機農産物の使用が配慮事項として追加されたところであります。
農林水産省では、庁舎内の食堂におきましても率先的に有機農産物の使用を進めることとしたところであり、引き続き、環境省などの関係省庁とも連携を取りながら、公共部門での有機農産物の利用を今後も進めてまいりたいと考えております。
○小山委員 木材などでも大分、公共部門で使うようになってから需要も伸びたということも聞きますので、是非強力に取り組んでいただきたいと思います。
それと、ちょっと品目が特定しますけれども、お茶について、消費者の好みというものが、今、甘みのある味わいを出すというようなことで、これは、樹種によってももちろん味も違うし、栽培方法でも、かぶせをすると甘みが出てくるというような栽培方法の違いもありますけれども、もう一つ、肥料の窒素とかあるいは硫安といったようなものを多く使用する方法が取られやすいということも聞いております。
今後、このお茶についても、品目ごとに二五%とか何万ヘクタールというわけではないのかもしれませんが、有機生産といったものが推進された場合に、本来のお茶の、渋みの強いお茶が出てくるということも予想されます。そうしますと、これは市場のニーズと異なる、甘みできれいな水色のあるお茶を求める市場のニーズと異なる可能性もありますけれども、こういった有機の茶の推進に当たって、有機茶の生産が増えていくことによって産地にどのような影響が出ると農水省では認識していますでしょうか。
○金子(原)国務大臣 茶は、有機栽培のニーズが国内外で高まっておりまして、その結果、国内の有機の緑茶は平成二十七年度から令和元年の五年間で約一・五倍、有機茶の輸出量も平成二十八年から令和二年の五年間で一・七倍に拡大しております。特に欧米諸国への輸出では、EU向けの茶の八割以上が有機であるという、有機茶のニーズが非常に高くなっております。輸出の増加が続く中で、更なる生産拡大が求められているところでございます。
また、有機茶の生産に当たりましては、有機質肥料なども施用しながら、品質の高い茶の生産も行われているところであります。
農林水産省といたしましても、このような有機栽培の技術の確立、普及を図るとともに、様々なニーズに応じた有機茶の生産拡大を進めてまいりたいと思っております。
日本の場合は有機茶についてはまだそれほどなじみがないかもしれませんが、ヨーロッパの輸出が八割というところを見ますと、そういった安全面とか安心感というものを非常に望んでいるような感じもいたしますので、こういった輸出の面については積極的にこれからもやっていきたいというふうに思っております。
○小山委員 私の地元に浜松市天竜区春野町田河内というところがあって、そこはもう二十数年ぐらい前から、条件不利地だということで、また山間部ということもあって、お茶を全部有機にした。砂川というところでもそれをやった。それで今、七割ぐらい輸出をしているということで、まさにこういった中山間地域の農業というのは有機というものが向いているのではないかとも思いますし、こういった取組も後押ししながら、できれば、国内でも有機のお茶を飲んでいただけるような食育も推進していただきたいと思います。
もう一問、最後に、井村参考人の話にもございましたが、有機農業を推進する際に一番大変なのは除草作業の負担軽減だと。こういった課題に対処するには、農業用のロボットとか無人機とか、レーザーなどによる除草作業の負担軽減などが考えられますけれども、こういった無人機の開発、ロボットの開発などについて、農水省ではどのような後押しをしていく方針がありますでしょうか。
○宮崎大臣政務官 お答えをいたします。
有機農業の取組面積の拡大に向けては、もう先生がおっしゃったように、除草作業等で手間がかかることが課題になっておるわけでございまして、先ほどもお答えをいたしましたけれども、スマート農業の技術などの導入によりまして、要は技術開発の部分でございますけれども、作業の省力化を図ることが重要であるというふうに考えております。
このため、農林水産省では、従来の機械では作業しにくい場所で草刈りを可能とするリモコン式の自走式除草機でございますとか、小回りが利いて、旋回時に作物を傷つけることが少ない乗用型の除草機などの開発、普及をこれまで進めてきたところでございます。さらに、AIなどによりまして雑草のみを物理的に除草する新たな除草ロボットの開発を開始をしたところでございます。また、地域の農機メーカー等が取り組む、現場の実態に即したスマート技術の開発を支援する取組も行っております。
今後とも、スマート技術等を活用した省力化を図るなど、有機農業に参入をしていただきやすい環境づくりに努めていきたいと考えております。
○小山委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
○平口委員長 次に、金子恵美君。
○金子(恵)委員 立憲民主党の金子恵美でございます。よろしくお願いいたします。
冒頭、三月十六日に起きました福島県沖地震によって被害に遭われた皆様方に心よりお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた皆様方に心から哀悼の意を表します。
法案についての質疑に入る前に、この三月十六日に起きました地震において、被害の状況、これは、農林水産業に関連する被害をどのように把握されているのか、お伺いしたいというふうに思います。また、国がどのような支援を今後していくのか、お聞かせいただきたいと思います。お願いいたします。
○金子(原)国務大臣 地震により被害に遭われた全ての方々にお見舞いを申し上げたいと思います。
農林水産関係の被害につきましては、宮城県や福島県などから、農業用水路の水漏れや防災重点ため池への土砂の流入、林道施設における舗装の亀裂、漁港の岸壁や荷さばき施設の損傷、それから卸売市場のカントリーエレベーターの損傷、園芸施設のガラスの破損やイチゴの高設栽培ベンチの転倒などの報告を受けております。
農林水産省といたしましては、農林漁業者への影響を緩和するため、被害状況を正確に把握するとともに、支援の必要性について今後検討を行い、被災地の復旧復興に取り組んでまいりたいと思います。
○金子(恵)委員 まだ調査中の部分もありまして、被害の全容が見えないという部分もあるというふうには思うんですが、私は地元なので、いろいろと走り回りまして、被害の状況などを見ていきますと、もちろん、東日本大震災、原発事故から十一年ということでありますけれども、昨年の十年を迎える直前にも、二月の十三日にも福島県沖地震が起きているわけですが、そのときの被害よりも大きいんじゃないかというふうにも言われておりまして、二十五日に福島県が発表いたしました公共土木施設の被害状況なんですけれども、これは三百十五か所で、昨年の二月の地震よりも多い。昨年の二月の地震は二百七十四か所だったんですね。ですから、それよりも多いことになっております。そして、港湾、四十三件、五十一億円、その次に多いのが実は漁港、四十六件で二十四億円ということであります。
これは福島県の話だけなんですけれども、今大臣は全体の話をおっしゃっていただいたことだというふうに思うんですが、福島県だけ見ても大変厳しい状況で、特に、今申し上げた港、東日本大震災のときは津波で被害に遭って、そこから必死に再生して、そして漁港も整備して、漁協の新しい事務所も造った相双漁協もあります。そして、荷さばき施設も造りました。これは相馬市の原釜にあります。そして、その周り、漁港、大変厳しい、昨年よりも随分大きな被害を受けているということです。
前にもこの委員会で申し上げさせていただきましたが、ALPS処理水の問題もあって、漁業者の方々は、本当に心が折れそうになりながらも懸命に頑張っているわけなんですけれども、またこういう被害が起きているという現状です。そして、それぞれの御家族がいらっしゃいます。御家族は、やはり自宅、家屋が被害に遭っているということで、本当にまた生活の再建もしっかりと目指していかなきゃいけないという状況です。
そしてまた、この近くには松川浦、旅館、宿泊施設等を経営している方がたくさんいるんですけれども、これは恐らくグループ補助金の対象になっていくだろうなということですので、そこはそことして、ただ、様々な被害が重なっていますので、是非、農林水産分野としては、ここをしっかりと寄り添っていただきたいと思います。
もう一点言うと、新地町というところでは、ため池が、今、四十二か所のうち二十八か所は被害に遭っているというんですね。農業用ため池として使われていると思いますから、そこの部分も含めてしっかりと把握をしていただきたいというふうに思っていますが、一言お願いできますか、大臣。
○金子(原)国務大臣 昨日の参議院の農水委員会でも、この福島の問題については御質問がありました。
ちょっと写真等も見せていただきまして、大変厳しい状況であるということも私も分かりましたので、早速副大臣とも話合いをしながら、現場をできたら早く見て対応した方がいいのかというふうには考えておりますので、早急に庁内で検討させていただきたいと思っております。
○金子(恵)委員 大臣、よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
それでは、法案の中身について質問をさせていただきたいというふうに思います。
繰り返しになってしまうんですけれども、このみどり法案は、我が国の食料、農業、水産業は、大規模な自然災害や地球温暖化等の厳しい課題に直面している、そして、SDGsや環境を重視する国内外の動きが加速していくと見込まれる中、我が国の食料、農林水産業においても、これらに的確に対応し、持続可能な食料システムを構築することが急務の課題となっており、こうした認識の下、昨年五月の十日に、農水省は、「みどりの食料システム戦略 食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現」という、これを策定したわけです。
これを実現するために、今回、政府は、このみどりの食料システム法案、通称でありますけれども、これを提出されたということで、今、審議をし、そして採決に、出口のところに向かっている状況でありますけれども、参考人質疑もさせていただいて本当によかったというふうに思っておりますが、参考人のお一人のうち谷口参考人からは、今私が申し上げました、生産力向上と持続性の両立と言っているここの部分というのは極めて曖昧だ、不十分であるというような意見がありました。
生産力の向上というのは、ここは何を意味するのか。そして、持続性というのは何を意味するのか。そしてさらには、この文言がこの法案の中で意味すること、あるいは、法案にこの二つの部分というのはどのように盛り込まれているのかということを改めて確認したいというふうに思います。よろしくお願いいたします。
○宮崎大臣政務官 お答えをいたします。
先生お話がございましたみどりの食料システム戦略、これには、気象変動等による農林漁業への影響が拡大をする中で、イノベーションを通じて農林漁業の産業としての持続性を高めることを狙いといたしまして、生産力の向上と持続性の両立を図る旨を記述をさせていただいているところでございます。
本法律案では、これを踏まえまして、第三条第一項、基本理念がございますけれども、ここにおきまして、将来にわたり農林漁業及び食品産業の持続的な発展等を図るためには、農林水産物等の生産等の各段階において環境への負荷の低減を取り組むことが重要というふうに規定をしているところでございまして、持続性と環境負荷低減のこの関係を明確にさせていただいているところでございます。
また、次の項目になるわけでございますけれども、第三条第二項にございます環境への負荷の低減と生産性の向上との両立につきましては、環境負荷低減の取組によりまして、収量の低下など、生産性の低下が懸念をされるところでございますので、これを克服するための技術の開発、活用と円滑な流通の確保の必要性、この関係も明記をさせていただいているところでございます。
本法律案が目指すものということは、最初に申し上げましたように、農林漁業の持続的な発展ということであることには変わりがございませんので、この趣旨を関係の皆様方に御理解をいただけるように、引き続き丁寧に取り組んでまいりたいというふうに思っております。
○金子(恵)委員 生産力の向上という言い方をしたときに、私は、もちろん、農業者の方々が更に豊かになっていかなくてはいけないというイメージを持ちました。そういうことでいいんでしょうか。
○青山政府参考人 お答えいたします。
今回は、農業の持続的な発展のためには環境への負荷の低減が必要だということでこの法律は構成されているわけですけれども、環境への負荷の低減ということをいたしますと、ある一面では生産性の向上について懸念があるということで、それを両立させていくということで書かせていただいているところでございます。
○金子(恵)委員 そうなんですよ。実際に、私は、環境負荷低減というのはいいことだというふうに思っていますけれども、そのことについては、この事業を進めることによって、農業者の方々の負担というのが大きくなっていく。だから、そうならないようにしっかりと国が支えていかなかったら、実際には農業というものを持続できなくなるじゃないかということですね。今そういうふうにお答えいただいたんだと思うんです。やはり厳しくなる。だから、厳しくなるということが分かっているから、あえて両立ができるかどうかという議論をしていかなきゃいけなかったということでよろしいんですよね。
ということであれば、やはり本当に多くの農業者の方々にプラスになるような政策というのをしっかりと全面的に出して、御理解をいただけるようなその仕組みづくりをしていかなくてはいけないというふうに思うんです。でも、そこが何となく今ふわっとした感じですから。
もちろん、環境に優しい、あるいは環境をしっかりと考えていく農業、これは大賛成です。しかし、本当に負担が農業者の方々にかぶさるような、農業者の方々の負担が大きくなるような、そんな状況になってはいけないわけですよ。
そこで、農業者だけではないんですけれども、農林漁業において、大小の規模を問わずに多様な経営体が環境負荷低減事業活動に携わることができるようにするためにしっかりと支援をすべきだというふうにも思います。マイナス面にばかり進むような、そういう状況にあってはいけないわけですから、ここはしっかりと支援をすべきだというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○金子(原)国務大臣 本法律案は、規模の大小や経営の形態にかかわらず、地域の自主性を尊重しながら、環境負荷の低減に向けた意欲ある取組を後押しするための促進法であります。
具体的には、地域の実情に応じまして、化学農薬、化学肥料の使用削減等の取組を進められるよう、地方自治体が策定する基本計画に基づき、農林漁業者の取組を認定することができる仕組みとして、認定された者に対して税制、金融等の支援を講ずることといたしております。
農林水産省といたしましては、こうした法律上の支援措置と併せまして、令和三年度の補正予算及び令和四年度の当初予算で措置しているみどりの戦略推進交付金等を活用いたしまして、中小・家族経営などを含め、意欲ある農林漁業者の環境負荷低減の取組を支援してまいりたいと思います。
○金子(恵)委員 現在意欲のある皆様方に交付金を渡すということだけでは、多分、目標は達成できないんだというふうにも思うんです。
ただ、今回、谷口参考人が、四つの数値目標というものがあるけれども、それは農業関係者にショックを与えるもので、それで意識改革、そして行動変容を迫るものであるから、すぐさま達成を目指すということにはならないだろうというような、そういう趣旨のこともおっしゃっていたというのをとても印象深く今感じているところでもあります。
そうしますと、やはり目指していくものというのはとても大きな新しい農業の形だというふうに思うんですけれども、そうしますと、生産者だけではなくて、事業者、そして消費者の方々の意識改革というのも進めていかなくてはいけないということであります。
農林漁業における環境負荷の低減の取組、これについては、消費者や食品事業者の理解を深めるための取組というのをしっかりとやらなくてはいけないということでありますけれども、具体的にどのような取組をしていかれるのか、お伺いしたいと思います。
○武部副大臣 先生御指摘のとおり、生産者の努力をしっかりと消費者、食品事業者の皆さん方に理解していただくということが非常に大事になってきますので、システムですから、生産、流通、加工、そして消費、調達、システムをしっかりと回していかなきゃいけないと思っています。その上で、関係者と一体となって環境負荷低減に貢献していくことが重要だと考えております。
具体的にというところでありますけれども、今私どもがやっている取組としましては、消費者と生産者の距離を縮めるための国民運動のニッポンフードシフト、あるいは、持続性を重視した消費者の転換に向けた、あふの環プロジェクト等に取り組んでいるところです。
今後も、こうした取組を説明会等で、生産現場のみならず、消費者や食品事業者を含めた皆様方に丁寧に説明して、理解を深めていきたいと思っております。
○金子(恵)委員 第六条には、消費者について、「消費者は、基本理念にのっとり、環境と調和のとれた食料システムに対する理解と関心を深め、環境への負荷の低減に資する農林水産物等を選択するよう努めなければならない。」とされているんです。
どうやって、努力をする、そのような行動を促していくんでしょうか。今おっしゃったいろいろな取組、それだけでは足りない気がします。いかがですか。
○武部副大臣 おっしゃっていただいたとおり、生産者側の努力が、環境負荷に取り組んでいる努力が消費者に分かりやすい形で伝わるということが一番大切なことだと思っております。
この中では、本法律案では、十四条に、環境負荷の低減の状況の評価手法等の開発ということを国の講ずべき施策として位置づけておりますが、これまで農林水産省では、農産物の温室効果ガスの排出削減の取組の見える化について、令和二年度から検討会を立ち上げております。
具体的には、農産物の温室効果ガスの削減量を簡単に算定できるツールを作成するですとか、あるいは、令和四年度の予算も活用しまして、削減量の効果的な表示等の実証に取り組むこととしております。
生産者の努力がしっかりと消費者に分かりやすい形で伝わって、選択していただけるように、見える化、表示の在り方について、しっかりと広報、検討を努めてまいりたいと思います。
○金子(恵)委員 ありがとうございます。
表示もとても大切なことだというふうに思います。情報をしっかりと提供していくということはとても大切なことでありますけれども、みどりの食料システム戦略の中で、国民への情報発信、双方向のコミュニケーションを丁寧に行うという言い方をしているんですね。
情報をただ一方的に発信するだけじゃなくて、やはり相互理解ということだというふうに思うんですが、国民の皆様の御意見というのをやはり吸い上げる仕組みというのも必要なんだと思うんです。どこまで理解度が進んでいるかとか、そういうことも含めてなんです。
それで、私からの提案なんですが、東日本大震災、原発事故で苦しんでいる、とても苦しんできた農林水産業の方々のために、農水省は、福島県農産物等流通実態調査というのを行っているんですよ。これは、もう川上から川下までずっと、流通の部分をしっかりと調査をして、なぜ風評被害がなくなっていかないのかということを知るための一つの指標となっている数字というのを手にすることができているんですが、私は、こういった調査のようなものも含めて、アンケート調査も含めて、取り組むべきだと思うんですよ。調査をすることによって、反対に、例えば、国民の皆さんあるいは事業者の皆さんの意識というものも変えていくことが可能になっていくのではないかというふうに思うんです。
有機農の話もそうです。有機農でできる生産物というのはどういうものなんだろうということをしっかり理解していただくということにつながっていくと思うんですが、最後に一言お願いいたします。
○金子(原)国務大臣 有機農をこれから推進していくためには国民の理解が大変必要だというふうに思っておりますので、やはり国民の理解を得るためには、そういったアンケート等を含めて、ある意味では、アンケートを取るということは、改めてそういった有機農業というものを国民に知らしめることになりますので、そういった努力をこれからやっていきたいと思っております。
○金子(恵)委員 時間が参りましたのでこれで終わりたいと思いますが、今日は、実はプラスチックの問題の続きを質問させていただきたいと思ったのですが、またの機会にさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
○平口委員長 次に、緑川貴士君。
○緑川委員 皆様、お疲れさまでございます。
みどり法案から、前回から引き続きまたお尋ねをさせていただきたいと思います。
長年取り組んできた有機農家にとっては、有機農業が、もちろん更に広まってほしいという強いお声をいただいておりますし、新規就農の方は有機農業に特に関心が高い傾向にありますので、一方で、熟練した有機農家というものがやはり少なく、近くで営農指導ができるような人材というものも、やはり農業団体の方も含めて非常に少ないというのが現状であると思います。
そうした中で、自然農法をその地域の気候風土に合う形で取り組んでいくというのはやはり時間がかかるというふうに思いますし、有機農業に取り組む農家を増やそうという中で、減農薬というものが適切な形で行われなければ、食の安全というものにもやはり関わっていくということは考えなくてはならないというふうに思っております。
特に、高温多湿、そして収穫期にも雨が降りやすい日本の気候というのは、カビの生育に適している環境です。確かに、みそやしょうゆ、こうした日本の伝統ある発酵食品に欠かせない有用なカビというものも多くいますけれども、一方では、農薬を使わない、あるいは減らしていく場合には、農産物のカビ毒というものには注意しなければならないというふうに思います。研究論文の中には、カビ毒は、慣行農法による農産物よりも有機農産物の方が比較的検出率が高いとしているものもあります。
有機農業を進めていくこと自体は大切なんですけれども、この辺りの懸念について、どのようにお考えでしょうか。
○平形政府参考人 お答えいたします。
緑川先生、多分、意識されているのは麦じゃないかなと思います。
有機農業は、確かに、環境の負荷が低いというところでいい点はあるんですけれども、特に日本の場合、高温多湿ということがございまして、有機農業に関して言うと、米というのは割合と親和性が高いんですが、乾燥地帯の作物であります麦等につきましては、特に生産段階でカビ毒のリスクというのが確かにございます。
品目ですとか地域によって異なっているんですけれども、そういったところがございまして、例えば、どういうふうな栽培の仕方にするのかというのは、なかなか、今、研究途上のところもありますけれども、一つは、農研機構においては、有機農業の栽培マニュアル、これを作成して、特に、有機の小麦の栽培のポイントですとか、排水対策ですとか、種子の消毒等について対策をまとめているところでありますし、またさらに、四年度の予算においては、特に小麦の赤カビ病を、抵抗性品種ですとか、堆肥等、有機資材の活用によって、栽培技術、この開発を進めていこうと思っています。
ただ、まだ途上でございまして、当省としても、都道府県、JAとも連携して、現場の有機農業の取組事例、いい事例を集めてこれを横展開していく、これも大事だというふうに考えております。
○緑川委員 今、途上ということですけれども、これまでも、やはりカビ毒に対する対策、マニュアルというものも農水省の方で作られたというふうに聞いております。品種改良や栽培方法の改良、また収穫後の速やかな乾燥という様々な組合せ、対策を組み合わせたマニュアルということなんですが、しかし、要は、やはりカビ毒の低減を図る上で消毒というふうにおっしゃいました。欠かせなかったのは、結局は、やはり農薬ということだと思います。
しかし、それでは慣行の農法の位置づけとは変わらないことになってしまいますから、農薬を使わない、減らすことを前提とした有機農家向けのマニュアルというものも作成をしていく必要があると思いますけれども、その辺り、お考えはいかがでしょうか。
○平形政府参考人 委員御指摘のとおり、まだ、特に米ではない作物については、いろいろ開発途上のところがございます。
そういった意味でいうと、農研機構のマニュアルというのは出してはいますが、これは日進月歩、よりいい取組についてはまとめて、そういったものを皆さんに配付できるように、そういったことを考えていきたいというふうに考えております。
○緑川委員 今後の長い有機農業の栽培普及の取組というところの中で、やはり温暖化というものが進んでいくことのリスクも考えなければならないと思うんですね。そうした気候条件を踏まえ、そして農産物の生産段階、あるいは貯蔵時の管理や取扱いなどによっては、農産物に、健康への悪影響というものがやはり起きかねないというのがカビ毒であると思います。
麦であるというふうに御答弁もいただいたんですが、日本には、これまで発がん性の強いアフラトキシンといったカビ毒を作るカビというのは存在しないと言われてきたんですけれども、実は、国産米でアフラトキシンの汚染が見つかっていますし、これから生産拡大を目指すトウモロコシにはそうしたアフラトキシンがつきやすいと言われます。そして、お答えにあった国産の小麦では、赤カビ病による汚染もありました。
これからこうした国内自給率を高めていこうという作物、あるいは家畜用の餌として飼料自給率を高めていこうという作物、その家畜がカビ毒を取り込むことで牛乳などが汚染されるというリスクも、現実問題としてしっかり想定して考えなければならないことであるというふうに思っております。
日本では、有機農業の取組自体がこれまで少なかったことから、欧米で行われるような食の安全についての比較研究というものはやはりなされなかったところであります。
マニュアルを策定する、効果的なマニュアルを作成していくためにも、改めて農家や消費者の理解を深めるために、食の安全性について科学的な見地から検証して、有機農業の普及の取組を進めていくべきであると思いますけれども、いかがでしょうか。
○青山政府参考人 お答えいたします。
有機農業を進めていくに当たって、食の安全ということは是非とも確保していかなくてはいけない問題だと思っております。
有機に従ってというよりも、農研機構の研究開発につきましても、有機農業に転換していくこと、それから安全性の確保というのは、同時にかなえていかなくてはいけません問題でありますので、農研機構の研究開発に当たっても、そういった安全性を見た上でマニュアルを作っていくことになっております。
そういったことを踏まえまして、今後、有機を前提にして、さらに、栽培マニュアルができました暁には、消費者の皆さん、そういったところに普及啓蒙活動をしていきたいというふうに思っております。
○緑川委員 これまでの農水省のみどり戦略本部と各業界の意見交換会、昨年は二十二回行われたということなんですが、食の安全について意見があったというのは、二十二回のうちの一回の、消費関係団体からの意見だけであった。つまり、食品安全の専門家と正面から議論したという形跡がやはりありません。
こうした安全性の観点からのやはり議論、農研機構とも連携をして、今取り得る対策について現場への丁寧な周知というものを強く求めたいというふうに思います。
有機農業の団地化に係る課題についても、小山委員からお話もありましたけれども、私からも一点お尋ねをしたいと思います。
家畜の排せつ物を堆肥として提供しながら飼料生産を行っていく、こうした地域内で資源を循環させる耕畜連携を進める上でも有機農業は重要ですけれども、これまでは、堆肥を作っても、受皿となる耕種農家が少ない地域があったり、また、堆肥が欲しいところでも、輸送距離の関係でまとまった量が手に入りにくいという課題があります。
有機農業を団地で取り組んでいく場合のマッチング、地域によって団地化の取組に偏りが生じないようにするために、どのように取り組んでいくんでしょうか。
○青山政府参考人 お答えいたします。
有機農業は、環境を切り口とした地域のブランド化につながる一方、生産現場では、病害虫の発生の原因となる等の理由で敬遠されることもあって、意欲ある農業者であっても取り組みにくいといった課題がございました。今後、有機農業を拡大していくためには、地域である程度まとまって産地化を図っていくということが必要になると考えております。
具体的には、今後、市町村が主体となって、有機を一つのきっかけにして、地域でオーガニックビレッジの創出に向けた取組を行っていただくことを支援してまいりますし、また、本法律案におきましては、地域ぐるみで有機農業に取り組みやすくするために、有機農業者にあっては病害虫の蔓延防止、慣行の農業者にあっては農薬の飛散防止等、お互いに理解して協力し合えるよう、営農ルールに関する協定を締結できるように措置しているところでございます。
また、今回、委員の方から御指摘のありました堆肥舎等につきましては、税制も用意しまして、取り組みやすいような措置を講じているところでございます。
○緑川委員 団地化した場合に、堆肥の投入というものが、これは場所によっては大量に必要になってくるところもあると思いますが、この堆肥について、衛生管理を誤ってしまっている現場もあるというふうに聞いています。
堆肥を農地に野積みにしたまま放置をして、その堆肥に含まれる窒素が、硝酸性窒素、有毒な成分に変わっていく、それで土壌から流出をして地下水や川を汚染してしまうような、環境負荷を与えているような事例。あるいは、堆肥の発酵が不十分であったために、農作物に大腸菌が付着をして、O157の感染経路になったと言われる事例もあります。
有機農業の団地化を進めるに当たっては、こうした事例にも一層目配りをして、対処していく必要があるのではないでしょうか。
○平形政府参考人 お答えいたします。
委員おっしゃるとおり、有機農業を拡大するには、化学肥料を使用しないということになりますので、堆肥の確保などが大変重要な課題になると思っております。
このため、地域内に畜産農家が存在して、家畜排せつ物由来の堆肥を入手しやすい地域においては、産地の生産基盤パワーアップ事業ですとか畜産環境対策総合支援事業等を活用していただいて、堆肥の製造だけではなくて保管施設についても整備を支援をいたしまして、地域内での資源の循環、これを促進することとしております。
また、地域内に畜産農家が少ない地域において、運搬ですとか施肥、これが容易なペレット堆肥等の活用、これも重要な課題だというふうに思っておりまして、家畜排せつ物由来堆肥の広域流通を促進するというふうに考えております。
さらに、緑肥の活用ですとか、地域のその他の有機資源を原料とした堆肥の活用、こういったものについても、施設整備等について支援をしていきたいというふうに考えております。
○緑川委員 やはり有機肥料として、本来、これは化学肥料に代わるものとして、土壌改良のための堆肥であるのに、残念ながら、家畜の排せつ物の埋立場のようなところになってしまっている、かえって環境負荷に影響を与えてしまっているような大変残念な事例であるというふうに思います。
法律に基づいて、都道府県による指導というものが、堆肥が野積みされているような事案も含めて、年間で十件ほどの指導が行われてきたということなんですが、いまだ同じ業者が複数年にわたってこの指導を受けている。つまり、改善されていないケースがあり、環境負荷への影響もその現場でそれだけ長く続いているということであります。
農水省の補助事業の名前が記された立札を立てて、堆肥の大量投入による問題が起きている現場もあるわけです。都道府県としっかり連携をして、情報共有をして、現場の実態把握、早期に努めていただきたいというふうに思います。
植物防疫法との関連で、化学農薬を低減しながら防除するという国の方針との関係で、まずは、農薬取締法に基づく再評価制度についてお尋ねをいたします。
昨年度から再評価制度が実施されていますが、その再評価を行うべき対象にネオニコチノイド系農薬が含まれています。イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサムについては、メーカーからデータを提出してもらう期限が昨年の十二月末、そして、ジノテフラン、アセタミプリドについては三月末ということでした。
このデータが既に出そろっているという時期だと思いますが、これらのネオニコ系農薬五種類の再評価は、今どのような状況でしょうか。
○小川政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、農薬の再評価制度は、昨年十月から開始し、御指摘のあった有効成分につきましてはメーカーから必要な資料の提出を受けておりまして、順次手続を進めているところでございます。
この再評価の手続が終わりますと、必要に応じ登録内容の変更等を行うなど、農薬の安全性の一層の向上を図ってまいるといったことになってまいります。
○緑川委員 今年度に再評価が行われるというふうに聞いておったんですけれども、メーカーの提出期限からどのぐらいでこれは結果が出るんでしょうか。もし何もなければ、お答えいただかなくても大丈夫です。
○小川政府参考人 お答え申し上げます。
再評価はいつ頃終わるのかという御質問だと思います。
農薬の再評価制度自体が我が国で新しく導入した制度であるということが一点目。それから二点目は、再評価に当たりまして、科学データだけではなくて、少なくとも十五年間分の公表文献の提出を私どもは要求しております。したがいまして、従来の農薬登録よりも多くのデータや文献に基づき、さらに、専門家の意見を丁寧に聞きながら安全性を評価することが何よりも重要と考えております。
そういったことから、現時点であらかじめ再評価に要する期間を設定する、あるいは予見するということは困難と考えております。
なお、先行的に再評価を実施しているEUにおきましては、再評価に要する期間は標準で三年と設定されております。しかしながら、ネオニコチノイド系の農薬の一つでありますアセタミプリドにつきましては、再評価に着手してから登録が更新されるまでに、EUでもおよそ四年を要したというふうに承知しております。
○緑川委員 農薬取締法によれば、やはり農作物への被害が生じていると認められる場合には、その農薬への登録を変更したり取り消すことができるというふうに定めているわけで、その再評価の結果が待たれている間にも、養蜂家が飼っている蜜蜂への影響、蜜蜂被害というものが深刻です。
蜜蜂の死滅によって国産の蜂蜜が減少している、そして、蜜蜂による花粉交配が欠かせないイチゴやメロンなどの園芸作物の生産にもまさに影響を与えているわけです。農薬散布に、影響を与えないように、地域での対策が再三呼びかけられてきたにもかかわらず、いまだ年間三十件から四十件の蜜蜂被害が起こり続けています。
そして、お配りしている資料の1なんですが、昨年八月の共同通信の記事であります。蜜蜂被害に加えて、ネオニコ系農薬が秋田県の八郎湖から高い濃度で検出されたということ、そして、その農薬の影響で、湖に生息する魚が激減したということが秋田県立大の調査によって報告されています。
この八郎湖は、元々国内で二番目に大きかった汽水湖の八郎潟が、一九五七年から国営による二十年間にわたる干拓事業によって八郎湖になりましたけれども、このときから河川の水と一緒に農業排水また生活排水が流れ込んで、夏場に日照りが続けばアオコが異常発生するような年が見られるようになりました。元々国策として干拓事業が進められてきたことが、ネオニコ系農薬の高濃度の検出も含めた水質汚染の問題の根本にあります。
農薬のリスクの再評価を行われているこの間も、生態系への影響が懸念されているこの研究結果が報告されたということを、大臣、国としてどのように受け止めていらっしゃいますか。
○金子(原)国務大臣 報道の基となりました調査結果につきましては、把握をしておりません。
農薬については、食品安全基本法、農薬取締法及び食品衛生法に基づき、関係府省が連携をいたしまして、安全性を確認した上で、製造や、定められた方法での使用を認めているところであります。
この中で、農薬による魚類などへの影響につきましては、農薬取締法に基づきまして環境省が評価を行っており、定められた使用方法を守って農薬を使用する限り、著しい被害が生じることはないものと考えております。
なお、現在、最新の科学的知見に基づく再評価について手続を進めており、ネオニコチノイド系農薬による魚類などへの影響についても環境省が改めて評価することとなっております。
○緑川委員 最後の質問にいたします。
ネオニコ系農薬の過剰散布の原因になっているのは、指定有害動植物に指定されている斑点米カメムシです。指定有害動植物百十一種ごとに国がIPMの指針を作って対策に取り組む中身になっていますけれども、畦畔の除草とか田んぼの除草というのは、指針に書いてあることは大切なんですが、環境負荷をかけずに、生産現場でいかに作業の労力やコストを抑えながら防除に取り組んでいけるかという点がとても大切であると思います。
お配りしている資料の2、「現代農業」の昔の記事なんですが、石灰防除というふうに書いてあります。生産現場からもお話を聞かせていただきましたが、夏場に、稲の出穂前に追加の肥料として消石灰をまく、学校のグラウンドでラインを引くときの粉ですけれども、カルシウム追肥として消石灰をまいておくことで、稲が丈夫になって、いもち病などの病気にも強くなる、あるいは、稲や雑草に産みつけていた卵からかえった斑点米カメムシも、アルカリ質の肥料を嫌がって、田んぼから追い出すことができる、こういう農薬を使わなくても肥料で防げるというわけです。
この防除の費用も、十アール当たり、カメムシの防除に対しては三千円なんですが、石灰防除の費用は十アール当たり四百円、コストも七分の一以上に抑えることができます。そして、ドローンを飛ばして低空から的確に噴霧できるので、周囲が煙っぽくなることもないということでした。
国の防除指針に基づいて県が総合的防除の推進計画を作るわけですが、県から農家への助言を行う場合に、こうした石灰防除など、防除コストを可能な限り抑えることで農家所得の向上につながるような防除策を地域で実践していくことが望ましいというふうに考えていますけれども、お考えはいかがでしょうか。
○平口委員長 申合せの時間が経過しておりますので、答弁は簡潔に願います。
○小川政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、地域における実証事業の支援を通じて、防除効果あるいは生産性に関するメリットを明らかにしながら、地域に最も合った総合防除の体系を確立していくこととしております。
○緑川委員 質問を終わります。ありがとうございました。
○平口委員長 次に、神谷裕君。
○神谷委員 立憲民主党の神谷裕でございます。
本日も質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。
まず、私からお伺いをしたいのでございますけれども、先般ちょっと報道にあったことでございまして、セーフガード、日米の間においてまとまったという牛肉交渉について、ちょっと伺いたいと思います。
確認なのでございますけれども、我が国への影響、大丈夫なのかというところ、特にセーフガードは、御案内のとおり、国内の農業を守るために設定されているものでございます。これが超えたことによって今回再協議となったわけでございますから、一応ここは確認をしなければいけないと思います。ここを改めて教えてください。お願いします。
○牛草政府参考人 お答え申し上げます。
今回の合意内容でございますけれども、セーフガードの発動基準は現行のTPPの範囲内ということでとどまっておりますから、乳用種やF1の生産を含め、これによる国内農業への新たな影響は特段ないと考えております。
○神谷委員 もちろん、影響があっては大変困るわけでございますが、セーフガードを超えたということであれば、やはりそこは慎重に見ていかなければならないと思いますので、今後も市況をしっかり見ていただきたいと思いますし、万が一影響のあるときには何らか対策を打たなければいけない、その心積もりだけは是非持っていただきたい、このように思います。
その上で、今回、先ほどお話にありましたとおり、CPTPPの枠内に入っているということだと思いますけれども、元々、CPTPPの枠の中には、アメリカの部分も入っていたわけでございます。そしてまた、それに重なる意味でこの日米という部分があったと思います。
そういう意味では、この日米のところは今回合意になったのかもしれませんが、CPTPPのところはこのままほっておくということにはやはりならないんじゃないかなというふうに思います。
これはCPTPPの議論のときにもあった話でございますが、改めて、このCPTPPのところを見直す、その必要が私はあると思うんですけれども、ここについて再協議、しっかりやっていただきたいと思うんですけれども、その考え方についてお伺いをしたいと思います。お願いいたします。
○金子(原)国務大臣 我が国といたしましては、米国とTPP11の締結国からの合計輸入量が現行TPP協定の発動水準を超える場合に、TPPの締約国からの輸入にもセーフガードが発動されるということが本来の在り方であると考えております。
今般の日米間の牛肉セーフガードに関する合意は、米国産牛肉へのセーフガード発動の仕組みにおいて、米国及びTPPの締約国からの牛肉の合計輸入量を用いることとしたものであります。このことは、豪州ほかのTPP締約国にも同じように米国との合計輸入量を用いることを求めていくに当たって、説得の材料となるものと考えております。
このほか、豪州ほかTPPの各締約国に対しましては、これまでも現行のTPP協定の牛肉セーフガード措置に関して我が国の考え方を伝えてきており、今後とも働きかけを続けてまいります。
○神谷委員 大臣、是非お願いをしたいと思います。今回、日米はやりましたけれども、その前にCPTPPというのが、TPP12のときの枠のままで11になっていますので、元々、今回のCPTPPの部分にはアメリカの部分も入っております。別に日米という形でセットされていますので、やはり、ダブルカウントというわけではないのですが、アメリカの部分がかなり過剰に取ってある。ですので、なかなか発動も難しいというか、そういう基準になっています。
今回、日米の方はこういう形で合意になったということでございますが、逆に言うと、CPTPPの方がほっておかれると、なかなか、この国の牛肉というか、特に競合する部分の、先ほどの答弁にあったようなF1であるとか、あるいはホル雄であるとか、そういったところに今後影響が出ないとも限らないわけでございますから。
現在、コロナ禍がやっと終わったところでございますので、多少需要というのか、そういうのもあるのかもしれませんけれども、やはりここは早期に手を打っていく必要があると思いますので、特に、CPTPPの中には、オーストラリアとか、牛肉が強い国がございます。ですので、ここはやはりなるべく早く手を打っていただきたいということで、是非、政府を挙げてお取組を重ねてお願いをしたいと思います。どうぞよろしくお願いをいたします。
もし、決意等あったら。いいですか。(金子(原)国務大臣「やります」と呼ぶ)今、やりますという御答弁をいただいたので、しっかりよろしくお願いをいたしたいと思います。
それでは、私からは植物防疫法について伺いたい、このように思います。
先般の参考人質疑の中で、ちょっと私も聞いていて、そうだなと思って少しびっくりしたんですけれども、病害虫については、農地にまかれて初めて発現するというか、見つかることが多いんだというようなお話でございました。これは、言っても、やはりそういうものなんだろうなと思うのと同時に、水際での対策というのはなかなか難しいのかなというふうにも思いました。
しかし、やはり水際で止めておくということが非常に大事なんだなと私は思います。まずは、実際に水際での対策をしっかりやっていただきたいということを求めたい、このように思います。
そしてまた、水際での対策が非常に難しいということはあるのですけれども、実際には、輸入の際には様々な書類がやってまいります。その書類の中には、当然、原産地表示であるとか、パッキングリストであるとか、衛生証明であるとか、そういうのがあるわけでございますが、それを見た上でどういう反応ができるか、これは大事なことなんじゃないかなと思います。
そのためには、事前に、海外でどこにどういう病気が発生しているのか、あるいは流行地はどうなのかという状況を逐一やはり把握をしていなければいけないんじゃないかなと思います。そういった情報収集というのは極めて大事だと思いますし、あるいは、そこで担当官がしっかり書類を見た上で、なるほど、ここは駄目だということで、通関上、なかなか全部見るということにもならないんでしょうから、いかにしてこの書類で確認をするかというのが非常に大事なんじゃないかと思います。
そこで、こういった、書類でしっかり読み取るというのか、そういった能力の向上であるとか、あるいは先ほど申し上げた国外での状況、これを積極的に情報収集するということが非常に重要だと思うんですけれども、これについて大臣の所感を是非伺いたいと思うんです。あわせて、現在の海外での我が国の情報収集の体制であるとか収集の方法などをお聞かせをいただけたらと思います。いかがでございましょうか。
○金子(原)国務大臣 現在の輸入検疫につきまして御説明を申し上げますが、我が国への病害虫の侵入を防ぐため、貨物として輸入される植物等に対しましては、全荷口を対象に輸入検査を行うとともに、旅客の携帯品として輸入される植物等に対しましても、検疫探知犬を活用した検査を実施しています。
これに関し、今般の改正案においては、輸入検疫の対象に土が付着するリスクのある農機具等の物品を追加するとともに、植物防疫官による携帯品の検査権限の強化を行うなど、輸入検疫を強化することといたしております。
また、海外の病害虫の発生地域や病害虫が寄生する植物が日々変化する中で、御指摘のように、輸入検疫を的確に実施するためには海外における最新情報の収集と分析が重要であります。
このため、平成二十八年に横浜植物防疫所にリスク分析部を新たに設置いたしまして、諸外国における病害虫の発生情報等を毎日調査しておりまして、入手した情報を踏まえまして、適時、植物検疫措置等の見直しを行っています。さらに、植物防疫官による検査証明書の確認が適切に行われるよう、複数名の植物防疫官によりまして確認を行う検査体制を構築するとともに、研修の充実等により植物防疫官の能力の向上を図っております。
こうした取組を総合的に講じることによりまして、病害虫の侵入防止に万全を期してまいりたいと思います。
○神谷委員 ありがとうございます。
ハンドキャリーでの空港での検疫というのか、そういうところについては今もかなり手を入れていただいていて、例えば探知犬も大幅に増やしていただいていますし、職員の数も増やしていただいているのかなと思いますが、例えば、今お話にありました多くの部分は、コンテナでのキャリーであるとか、されるわけですけれども、かつてアメリカでテロがあったときに、バイオテロ・アクトという、たしか法律ができたと思うんです。あのときに、輸入されるもの、テロの観点から彼らは見ていたんですけれども、事前に、入ってくるものについて一定の資料を必ず提出してもらう、それを見た上で、必要であればすぐシップバックさせるというようなことまで、強力な権限を持ってやっておられました。
植物防疫でそこまでやる必要があるのかという御議論はあるかもしれませんが、やはり入ってから、我が国に病害虫、広がってくるとなると、これは大変大きな問題でございますので、少なくとも、そういった資料の収集、情報の収集ばかりでなくて、それを頭に入れた上で、例えばドキュメントを見た上で、これはちょっと危ないなという視点でチェックを入れる、こっちの方がむしろ大事なのかなと思っておりますので、引き続きこの辺のところの強化、是非大臣にお願いをしたい、このように思います。
その上で、チップス用原料のジャガイモの輸入が通年化しております。生鮮ジャガイモの輸入量も大幅に増加しているというふうに聞いているんですけれども、こういった増加が生産者に対しての影響はないのか、ここについて確認をしたいのと同時に、ジャガイモシロシストセンチュウ、これは大変大きな問題でございます。ここへの侵入対策、今回広げたということもありますので、これは万全なのかということを改めて確認をしたいと思うんですが、いかがでございましょうか。
○武部副大臣 私の地元も大変関心の高いことですから、私からお答えさせていただきます。
令和二年二月から米国産のポテトチップ加工用のバレイショを通年輸入後の輸入量になりますけれども、令和二年は二万三千トン、令和三年は四万七千トンと増えています。
大手の菓子メーカーさんにお聞きしますと、ポテト用の原料用のバレイショについて、全て国産でやりたいというお気持ちは持っていただいているんですが、国産バレイショだけでは需要を賄えませんので、原料として輸入せざるを得ない状況となっております。
こうした中で、やはり国産のバレイショをしっかりと作っていただかなきゃなりませんので、この需要に対応するために、令和三年度の補正予算で、種バレイショの確保に係る取組や必要な機械導入などの支援を措置しております。
また一方、生鮮バレイショについてのシロシストセンチュウのお話がございましたけれども、我が国が侵入を警戒する多数の病害虫が付着し得ることから、原則、このような病害虫の発生している国からの輸入を禁止しています。
米国産ポテトチップ用の加工用のバレイショについては輸入を認めていますが、シストセンチュウが発生していない地域からに限定しておりますし、着いてからも密閉のコンテナで輸送して、加工処理施設で加熱処理をするという厳しい検疫措置を行っておりますので、我が国への病害虫の侵入防止をしっかりと図っております。
また、国内で発見された場合、シロシストセンチュウ、これは私の地元でも発生したんですけれども、植物防疫法に基づいて緊急防除を実施しています。
加えて、今回の改正案では、植物防疫官による携帯品の検査権限の強化とともに、輸入検疫の対象に農機具等の物品を追加することとなっておりますので、ジャガイモシロシストセンチュウ含め、病害虫の侵入防止にしっかりと万全の対策を取ってまいりたいと思います。
○神谷委員 副大臣、ありがとうございます。
もう副大臣には釈迦に説法かもしれませんが、これは本当に大事な問題だと思っていますし、たまたま昨年は、ジャガイモはよくなかったです、乾燥、日照りというか、そういったこともあって多分足りない部分が多く輸入されたんだとは思うんです。ただ、これが通常の取れ高になっていったときに、逆に、通年にしたことがあだにならなきゃいいなと私は思っておりますので、是非そこについても注意深く見ていただいて、国内の生産者が是非困らないように、ここは重ねてお願いをさせていただきたいと思います。もうそこは、副大臣、よくお分かりだと思うので、この程度にさせていただきます。
最後に、みどりの法案について確認をさせていただきたいと思います。
参考人の方がおっしゃっていました。野心的な目標は農業者の意識改革にとっては必要としながらも、必ずしも数字にとらわれてはいけないよというようなことでございました。もちろん、今回は法律で定めるわけでございますから、やるべきことはやらなきゃいけない、行政として目標として掲げたからには最善を尽くしていただかなければいけないということは当然だと思います。
ただ、一方で、今回の目標はかなり野心的な目標です。技術革新に負うところも多いわけでございますから、必ずしも、その技術革新の結果いかんによっては、多少目標も変わるというか、不安定というか、不確定な要素も多いんじゃないかなということだと思います。
もちろん、まずはできるところからやっていく、進めていくことが非常に重要だと思いますけれども、やはりこの目標、農業者や消費者の理解をしっかりと得て、かつ頑張っていただかなければいけないということでございますから、目標は目標としてあるんですけれども、これの達成のために何でもやっていいということでもないのかなというふうに思います。
逆に言うと、そのために無理がかかってしまうとできることもできませんし、例えばゲノム編集であるとか、私は決してゲノム編集が悪いとは思いませんが、結果として、理解を得られないというようなことがあったときにはかえってマイナスになるんじゃないかと私自身は思いますので、是非、そこら辺のところを、余り無理をしないように、かといって、しっかりと進めていただくという、この頃合いが非常に大事だと思うので、この辺について、最後、大臣の所感というか、確認の答弁というか、いただけたらと思います。いかがでしょうか。
○金子(原)国務大臣 議員御指摘のように、みどりの食料システムの戦略では中長期の意欲的な目標を掲げておりますが、これを一気に進めるのは難しいと考えております。ソフトランディングしていけるように、目標に向かって、最初は少しずつ努力していくことが重要だと考えております。
このため、本法律案では、生産者や消費者のみに負担をかけるのではなく、幅広い関係者に趣旨を御理解いただけるよう、基本理念におきましては、食料システムの関係者の理解の下に連携することを規定した上で、国が講ずべき施策において、関係者の理解の増進を図っていく旨を位置づけたところであります。まずは、関係者の方々にこれならやれると思っていただくことが全ての出発点になると考えています。
私も、現場の理解と協力が何よりも必要と思っており、法律を作って終わりではなく、現場の声によく耳を傾けまして、寄り添いながら、関係者と一体となって、丁寧に施策の推進に努めてまいります。
○神谷委員 ありがとうございます。是非、その方向でお願いをいたします。
私の質問を終わりにします。ありがとうございました。
○平口委員長 次に、住吉寛紀君。
○住吉委員 兵庫県姫路市よりやってまいりました日本維新の会の住吉寛紀でございます。
既にこれまで議論されてきたことと重なる箇所もございますが、改めて、確認の意味で質問させていただきます。よろしくお願いいたします。
みどりの食料システム戦略では、中長期の野心的な目標を掲げて、これまでの農業からの非常に大きな転換を図ろうとしております。
先日の参考人質疑において、実際に有機農業をされている、株式会社金沢大地の井村さん、また大塚ファームの大塚さんからは、前向きに取り組んでいきたい、政府がこのような目標を掲げることは歓迎するという旨の発言があり、非常にポジティブに捉えていただいておりました。
また、私の地元の姫路市の方で、先日、認定農業者の研修として、兵庫県の担当者がみどりの食料システム戦略について説明を行いました。担当者に聞くと、農業者の方は、これからの取組のヒントになったとか、比較的ポジティブな感想が多かったとのことです。
一方で、高温多湿の日本において本当にできるのかという意見もあったとのことです。この辺りは他の委員の皆様から連日質問があったところで、ほかにもネガティブな意見を挙げようと思えば幾らでも挙げられるわけですが、改めて、この大転換とも言えるみどりの食料システム戦略、推し進めていく目的、また大臣の決意も含めて、御答弁をお願いいたします。
○金子(原)国務大臣 近年、世界的にSDGs等の認知が進みまして、農林漁業についても環境に与える影響が注目されるような中で、我が国の農林漁業、食品産業におきましても、世界の人口増を見据え、輸出促進に取り組む中、このような世界の潮流を踏まえていち早く対応することは、競争力の強化を図る上で重要なことはもちろん、若者世代を中心に環境への意識が高まっている現状を踏まえますと、将来を見据え、環境に配慮した取組を今から進めておく必要があると考えております。このため、みどりの食料システム戦略におきましては、環境負荷低減に向けた意欲的な目標を定めているところであります。
これまでも、農林水産行政におきましては、国の最も基本的な責務の一つである食料の安定供給を確保するため、生産基盤の強化、輸出力の強化等の施策を講じまして、足腰の強い農林漁業の構築を図ってきたところであります。
これからは、さらに、従来の施策に加えまして、環境への負荷の低減にも配慮しながら、農林漁業を将来にわたり持続可能なものとしていくような各般の施策を講じまして、目標の実現に取り組んでまいりたいと思います。
○住吉委員 本当に力強い御答弁、ありがとうございます。
今できることを積み重ねてここまでするというフォアキャスティングではなくて、非常に高い目標を掲げてバックキャスティングで進めていくやり方だからこそイノベーションが生み出されると思います。そのような意味では、今掲げている目標を達成できるのかということを議論することは、現時点では無意味かもしれません。できるのですかではなくて、やるんだという強い決意が必要だと思います。
農水省の資料にもムーンショットという文言がございました。御存じのとおり、ケネディ大統領がアポロ計画を発表し、一九六〇年代のうちに人類を月に到達させると宣言して、その宣言どおりに宇宙飛行士がアポロ十一号で月面に着陸したわけですが、このような壮大な目標を掲げ、それに必要なイノベーションを起こしていく。このアメリカ人の悲願とも言える目標を国民が一丸となって達成しようとしたことにより、イノベーションが起き、達成できたものだと推察いたします。
先ほどの高い目標も、農水省が掲げただけではもちろん達成はできません。生産者が当然取り組んでいかなければなりませんし、生産者が作ったものを運ぶ物流業者、さらにはそれを販売する小売、それを消費する消費者、またメディアなんかも関係者になってまいります。また、イノベーションを起こす技術者、企業、ベンチャー企業など、こう言ってみると、全国民が一丸となって、当事者意識を持って各々が考えて取り組んでいかなければ、この目標は到底到達できるものではないと思われます。
先日、姫路市の認定農業者の集まりでも、消費者の理解は必要不可欠だとの意見もあったと聞いております。このように、どのように国民の当事者意識を醸成し、壮大な目標に一致団結して向かっていくのか、御所見をお伺いいたします。
○青山政府参考人 お答えいたします。
みどりの戦略の実現に向けましては、生産者、消費者を含め、国民各層に趣旨を御理解いただくことが必要であるため、本法律案では、第三条の基本理念におきまして、食料システムの関係者の理解の下に連携することを規定した上で、国が講ずべき施策において、関係者の理解の増進を図っていく旨を位置づけております。
今後、消費者と生産者の距離を縮めるための国民運動のニッポンフードシフト、持続性を重視した消費の転換に向けた、あふの環プロジェクトにおける交流会の開催や、優良な事例を表彰するサステナアワード等を通じまして、国民各層に対して積極的に情報発信を行ってまいります。
さらに、生産者の努力が消費者に分かりやすい形で伝わるよう、取組の見える化、表示の在り方や広報等についても検討いたしまして、しっかり対応してまいります。
○住吉委員 ありがとうございます。
是非取り組んでいただけたらと思います。もちろん、消費者の理解も必要ですし、消費者自身が選択するときに当事者意識を持って選択していく、もう少し踏み込んだ取組もこれから必要になってくると思います。是非ともその辺りを意識しながら取り組んでいただけたらと思います。
そのような目標に向かうこと自体は、多くの方が賛同すると思われ、否定するものでもございません。しかし、現在の農林水産業を取り巻く環境は非常に厳しいものがございます。
高齢化が進展し、そのような大転換に対応できない生産者がいるということも想定されます。この方針にそもそも反対の方もいるかもしれませんし、この方針を理解して、取り組まなければいけないと思っていても、現実的には取り組めない可能性もあります。他の委員の皆様からも指摘されておりますが、条件不利地では、なかなか現実に取り組みたくても取り組めないという事態が想定されます。
さらに、これから消費者の理解が進んで、有機栽培の方がいいと消費者のトレンドができると、相対的に慣行農家さんの生産物の価値が下がり、売上げに響いてくるという可能性もございます。さきの参考人質疑においても、慣行農家と有機農家の分断を生むような結果になってしまってはいけないとの御指摘もございました。
生産者に対して、誰一人取り残さないためにどのようにして進めていくのか、御所見をお伺いいたします。
○武部副大臣 農林水産省としましては、みどりの戦略の実現を通じて、環境に優しい農林水産物が流通して消費者から選択される、これが当たり前になっていくような社会を実現したいと思っています。目指していきたいと思っています。
ただ、足下の状況を見ますと、今御指摘あったとおり、農業現場においては、環境への取組や、またそれを支える消費者の皆さん方の理解など、まだまだこれからというところもありますので、中長期的な視点を持って取り組んでまいりたいと思っています。特に、将来に関わる課題でありますので、現役世代だけじゃなく、将来世代も含めて、幅広い関係者が環境に対する意識を持っていただいて、環境負荷低減に取り組んでいただくことが大事だというふうに認識しています。
このため、生産現場に対しましては、本法律案の趣旨や内容について、丁寧に現場に説明を行ってまいります。また、本法律案に基づく支援措置や、これと併せて実施いたしますみどり戦略推進交付金等、こういった予算措置を通じまして生産者の取組を後押ししてまいります。さらに、生産者の努力について消費者の皆様方に理解とそして支持をいただけるように、消費者の理解の醸成を図ってまいります。
農林水産省としまして、生産者の皆さん方が安心して取り組んでいただけるよう、法律を作って終わりじゃなくて、しっかりと現場の声に耳を傾け、寄り添って、この施策の推進を進めてまいりたいと考えております。
○住吉委員 本当に是非現場の声に寄り添って進めていただきたい、このようにお願い申し上げます。
続いて、スマート農業についてお伺いいたします。
近年、生産者の高齢化が進み、担い手不足ということが深刻化しております。農業経営者の平均年齢は、二〇二〇年、農林業センサスによると六十五・九歳と二〇一五年に比べて二・二歳上昇しており、一般的に農家の実質的な定年が七十歳と言われていることから、これから大量離農が起こる可能性が非常に高くなっております。
労働力不足を補い、生産性を飛躍的に向上させることができる起爆剤として、スマート農業が期待されます。これまでは経験と勘に頼っていた農林水産業が、ロボットやAI、IoT、ビッグデータを取り入れることにより、最も変革する産業であると言われております。農村に広がる水田を無人のロボットトラクターが走り抜け、その上空をドローンが飛行し、画像撮影によって実っている稲の生息状況を把握し、クラウドを通じてロボットトラクターに分析結果を伝え、そのデータを受け取ったロボットトラクターは、水田の箇所に応じて肥料の散布する量を変えていく。その間、農家さんが何をしているかというと、遠隔地の涼しい部屋の中から、アイスコーヒーを飲みながらモニター画面で監視している。そんな農業が近い将来訪れるかもしれないと言われております。
これは、私が、地方議員出身でございますが、二〇一七年に県議会のときに質問させていただきました。そのときと、そんなに進展している気がいたしません。今後、スマート農業についてどのように進めていかれるのか、御所見をお伺いいたします。
○武部副大臣 実際、スマート農業は、自動操舵のGPSつきのトラクターを導入された方々のお話を聞きますと、大変生産性も上がったし災害にも強いというお話をよく聞きます。特に、若い生産者の方々は非常にスマート農業に関して関心が高いと思います。
令和元年から全国百八十二地区でスマート農業実証プロジェクトを行っておりまして、実際にロボットやAI技術を導入していただいて、その効果の検証と横展開に取り組んでいるところです。
今も申し上げましたけれども、自動操舵つきのトラクターですとか、ドローンで農薬散布するですとか、技術導入もかなり進んでおりまして、特に、女性や高齢の方も、技術がまだ未熟な、非熟練者であっても作業が非常に可能であったり、人材活用につながっているとか、きつい、危険な作業が減った、そういうような声も聞いております。
ただ、やはり導入コストが相当かかりますので、回収するのにはやはり一定規模以上の農地面積が必要ということもありますし、操作に慣れた人というのですかね、扱われる人の人材が不足しているということもありますので、令和三年二月に改定しましたスマート農業推進総合パッケージに基づいて、シェアリングなどを行う農業支援サービスの育成、普及、それから、農業大学校や農業高校でスマート農業の教育を充実していこうということで、総合的に進めているところでありますので、今後ともしっかりとスマート農業の積極的な普及に努めてまいりたいと思います。
○住吉委員 ありがとうございます。
本当に導入コストが高い、技術は恐らく既に高いものがあると思うんですけれども、導入コストが高いということで、なかなか進んでいかない。そこはある程度行政が支援をしていく必要があるのかなと思います。
また、答弁の中でもございますが、ちょっと次の質問にも関連するので。
若い方は関心が高いということですが、一般的に、農業は三K、きつい、汚い、給料が低いなどと言われております。このことが、学生の就職の選択肢にそもそも農業が入っていないというのが現状でございます。スマート農業では、新三Kとして、稼ぐ、効率化、簡略化をテーマに日々開発と研究が進められており、担い手不足の解消に期待するところでございます。
兵庫県には、農業を学ぶことができる高等学校、これが数多く存在いたします。しかし、カリキュラムの内容としては従前からの農業技術の指導が主となっておりますが、スマート農業への関心が高く、毎年私も、地方議員のときには予算措置の要望をいただいていたところでございます。
農業高校でもスマート農業を取り入れ、学べる環境をつくっていくことが必要だと考えますが、ちょっと繰り返しになるかもしれませんが、御所見をお願いいたします。
○光吉政府参考人 お答えいたします。
将来の農業の担い手として期待される農業高校の高校生にスマート農業について学んでもらうことは、大変重要なことであるというふうに考えております。
農業高校におきましては、令和四年度から、スマート農業に関する学習内容が盛り込まれた新しい学習指導要領に基づく教育を実施することとされております。
農林水産省といたしましては、農業高校に対しまして、令和四年度予算におきまして、教育コンテンツの作成や外部人材を活用した出前授業を含めたカリキュラムの強化のほか、研修用スマート農業機械、設備の導入ですとかLAN環境の整備などを支援することとしておりまして、農業高校におけるスマート農業教育の充実に取り組んでまいりたいと考えております。
○住吉委員 是非お願いしたいと思います。
先ほど申したように、農業の平均年齢というのが非常に高い中で、なかなかスマート農業への進展というのは、そもそも、ちょっと機械とかそういったデバイスを使うこと自体がハードルが高いわけですが、こういった学生なんかは取り組むハードルというのは非常に低いものだと思っております。もちろん、価格の、導入コストが高いとか、いろいろな課題はあると思いますが、そういった高校の中からでも進めていただけたらと思っております。
ちょっと次の質問、最後の質問に移りたいと思います。
最後に、放置竹林対策についてお伺いいたします。
放置竹林は、竹の需要減少や持ち主の高齢化により、日本全国で急速に増えております。竹は、強い繁殖力ゆえに他の植物を侵食して里山の生態系を変えてしまうほか、根が浅いために土砂崩れなどの災害を引き起こすおそれがあります。
一方で、乳酸発酵させた竹パウダーを野菜、果樹や稲などの作物に与えると、糖度が高くなり病気に耐える丈夫なものに育つと言われております。虫とかもなかなか寄りつかない、そういったことも聞いております。そのため、有機農家さんの間で少しずつ広まっているという話も聞いております。
この放置竹林対策、どのように取り組んでいかれるのか、御所見をお伺いいたします。
○天羽政府参考人 放置竹林対策について御質問をいただきました。
先生御指摘のとおり、近年、国内の竹林面積は増加傾向にございます。このため、農林水産省といたしましては、森林整備事業によりまして、間伐等と併せて行う竹の伐採に対する支援のほか、森林・山村多面的機能発揮対策によりまして、侵入竹の伐採、除去やチップ化による処理などへの支援を行っているところでございます。
さらに、管理不足の竹林の解消に向けましては、竹の利用の拡大、これが重要であると考えておりまして、先生御指摘いただきましたとおり、土壌改良資材としての利用ですとか、家畜の飼料ですとか、竹を集成材にして家具を作られたりといったような形での利用、さらにはタケノコを加工した国産メンマの製造、販売等、新たな取組が全国各地で進められておりまして、こうした竹の新たな利用拡大に向けた施設整備などを支援していく考えでございます。
○住吉委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
○平口委員長 次に、池畑浩太朗君。
○池畑委員 日本維新の会、池畑浩太朗でございます。
今回は、環境と調和の取れた食料システムの確立等に関する法律について質問をさせていただきます。
日本の農業の大転換であります。その観点から、国の責務について質問をさせていただきたいと思います。
本法律案の第四条において、国は、基本理念にのっとり、環境と調和の取れた食料システムの確立を図る上で必要な施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有するとされております。
この施策を総合的に策定するために、政府一丸となって取組が重要であるというふうに皆さん考えておられると思います。政府全体の取組の中で、まず、地元を回っておりまして、今回の法案に対しては期待と不安が折り重なっております。その中で、農林水産省としてどのようにリーダーシップを取られるか、農林水産大臣にお聞きします。
○武部副大臣 本法律案は、農林水産物の生産から消費に至る食料システムの関係者の理解の下に連携しながら、システム全体を環境と調和の取れたものとすることを目指しております。
この関係者には、農林漁業者のみならず、消費者、食品事業者、資材、機械メーカー、教育関係者など、様々な業界、分野の方々が幅広く含まれておりますので、政府内におきましても、農林水産省が主導いたしますけれども、関係省庁と連携して対応することが重要だと考えております。
本法律案が成立した暁には、総理を本部長としまして関係大臣が参画する農林水産業・地域の活力創造本部等の場で、農林水産省だけでなく、関係省庁も連携し、政府一体となって対応してまいりたいと思います。
また、三月二十八日に、参議院の決算委員会で我が党の宮本周司先生の御質問に対しまして、このみどりの食料システムの御質問をしていただいたんですけれども、総理からも、新しい資本主義の実行計画にも盛り込んでいきたい、そういう力強い答弁もいただいておりますので、全省を挙げてしっかり取り組んでまいりたいと思います。
○池畑委員 大臣、ありがとうございます。
次に、環境大臣との関係についてであります。
本法律案の第四十八条において、農林水産大臣は、環境と調和の取れた食料システムの確立のため、施策の実施に当たり、当該施策の実施が環境の保全に関する場合は、環境大臣と緊密に連絡を取り、及び協力をして行うものとされております。
連絡と協力に関して、具体的にどのようなことを実施されようとされているのか、お聞きしたいと思います。
○青山政府参考人 お答えいたします。
本法律案第四十八条では、環境大臣との関係としまして、環境と調和の取れた食料システムの確立のための施策の実施に当たって、農林水産大臣が業横断的に環境施策に取り組む環境大臣と緊密に連絡、協力する旨規定しているところでございます。
環境省とは、令和二年十月に、農林水産政策と環境政策との連携の強化について合意をしたところです。
具体的には、地域の脱炭素の取組を加速させる地域脱炭素ロードマップの策定、消費者への食品ロスに関する普及、広報活動等、分野ごとに連携して取り組んでいるところでございます。
農林水産省としましては、今後とも、環境施策に関する専門的な知見を有する環境省とも連携しながら、農林漁業、食品産業の持続的な発展に向けて取組を進めてまいります。
○池畑委員 取り立てて細かいところをつくつもりはないんですが、第四十八条に環境大臣のみ特出しをしておりまして、文科省や消費者庁や厚生労働省、多くの、先ほど副大臣も答弁いただきましたけれども、連帯をしていくという話の中で、わざわざ四十八条に環境大臣というふうに特出しをしている理由が特別にあるとは感じない部分もありましたが、今答弁をいただきましたので、この後の有機の質問の中で織り交ぜて答弁をいただきたいというふうに思います。
次に、報告の徴収について質問させていただきたいと思います。
法律案の第四十六条一項では、都道府県知事は、認定農林漁業者に対しまして、認定計画の実施状況について報告を求めることができるとされております。
同条二項では、主務大臣、これは経済産業大臣を指しているというふうに認識をしておりますけれども、認定基盤確立事業者、これはメーカーのことだと思います、に対して、認定基盤確立実施計画の実施状況について報告を求めることができるとされております。これらの報告をせず、また虚偽の報告をしたときには、その違反をした者に対しては、三十万円以下の罰金に処する、これは第五十一条に書いてあります。
どのような内容の報告を求めようと考えておられるのか、また、なぜ罰則を求めたのか、お聞きしたいと思います。
○青山政府参考人 お答えをいたします。
本法律案第四十六条第一項では、都道府県知事は、認定農林漁業者に対し、認定計画の実施状況について報告を求めることができるとしております。
具体的には、本法律案に基づいて認定を受けた農林漁業者に対しては、法人税、所得税の特例や無利子の農業改良資金、行政手続のワンストップ化等の特例措置を講ずることとしているため、計画に沿って設備導入や施設整備が行われているか等について、都道府県知事が必要に応じて報告徴収を行うことを想定しております。
また、第四十六条第二項の方につきましては、認定基盤確立事業者に対しましても、同様に、計画に沿った取組が行われているかどうか等につきまして、認定主体であります主務大臣、これは農林水産大臣でありますとか経産大臣が該当しますけれども、これが報告を求めることができることとしております。
それから、第五十一条の罰則規定は、こういった本法律案に基づいて計画の認定を受けた農林漁業者や事業者が都道府県知事や国から報告徴収を受けた際に虚偽の報告を行った場合等の罰則を定めたものでございます。
これは、農林漁業者等が、認定を受けた計画の実施に際して特例措置を受けられることとする中で、計画の着実な実施を担保するために設けているものでございます。
最近の立法例を見ましても、促進法でも報告徴収を担保するための罰則規定を設けているところでございます。
○池畑委員 そうですね、やはり行政の手続のワンストップ化というのもあるというふうに思います。その中で、やはり漁業者が負担になってはいけないという観点から質問させていただきました。
農林水産業の方が作業しながら、なかなかその作業の中でいろいろな書類にまみれて作業ができないという声はよくお聞きします。また、何年後かになりますけれども、消費税の免税をするためにインボイスを出さなきゃいけないという形になってくると思います。さらに、いろいろな書類を抱える中で、せっかくこれに参加していただく農林水産漁業者の方に負担がないように進めていただきたいというふうに思います。
次の質問をさせていただきます。
学校給食における有機農産物の活用拡大について、これは再三質問をさせていただいております。先日の本委員会でも質問させていただきました。池田文科副大臣よりも答弁をいただきました。給食への食材提供は、食品衛生法の基準と学校給食の安全管理基準に従って、各地域の実情に応じて各設置者において判断されると答弁をいただきました。他党の委員からも質問がありました。給食における有機農産物の活用に向けた法制化が必要であるのではないかというふうに私は考えます。
大臣が答弁でよくお話をしていただきます。知事出身でもありますので、首長が指導力を発揮する必要があると。そこで一時的な支援では足りないというふうに私自身も思っておりますので、継続性がかなり必要だというふうに思っております。
法制化による支援措置、恒久的な、恒久化を考えるのはこれから必要ではないかというふうに考えますけれども、答弁をいただきたいと思います。
○金子(原)国務大臣 委員が御指摘のように、学校給食にこれを取り入れるということは、大変消費の面から見ても、また子供の教育、また子供の健康等から考えても、私は非常にいいことだというふうに思っておるんですよ。
ただ、御承知のとおりに、学校給食というのは、それぞれの判断が、市町村長によって判断されるようになっておりますので、なかなかこれを国で一律に定めるということは非常に難しい問題である。したがって、これは農林水産省だけじゃなくて、文部省とよく相談をしながらやっていかなきゃいかぬというふうに思っております。
そうもいいながら、やはり農林水産省としても何らかの対応をしなきゃいかぬということで、この令和三年度の補正予算から、市町村が主体となって、新たに生産から消費まで一貫した有機農業の拡大に取り組むことに対しては支援を行うようにいたしております。
今後、できるだけ、やはり消費の拡大が非常に大事だと思いますので、そういった教育施設、また福祉施設ですか、そういったところにもどういった形で普及できるかということについて、今後とも検討していきたいというふうに思っております。
○池畑委員 大臣、ありがとうございました。
それで、今お話をいただきました。それに向けて、三月の二十三日の本委員会でも質問させていただきました。大臣は、質問ではなくて答弁を聞いたときに、有機農産物を活用するか否かは、財政負担、先ほど答弁いただいたとおりであります、学校給食などに有機農産物を取り扱うには、今大臣も言っていただきましたように、市町村の指導力を発揮するべきではないか。
二十四日に、参考人質疑の中で谷口参考人も、国としては弱腰だなと思います、これから需要拡大を非常に狙っていかなきゃいけないのに非常に弱い考え方だと思います、国が国の責任で市場をつくることができる、それが公共の調達である。
小山委員も質問されておりましたし、学校給食を使って、農業委員会、こういうところは皆さん共通の認識だというふうに思います。
それで、先ほど大臣からも、法制化とか、そういうことにはなかなか踏み切る、また、市町村が頑張るべきだよというお話をいただきました。
それで、私は、少なくとも、今、農水省としてできることがあるのではないかというふうに考えます。
そこで、第四次食育推進基本計画における食育の推進に当たっての目標の中に、三つぐらい項目があるんですけれども、その中で、学校給食における地場産物を活用した取組等を増やすとあります。そこに、有機農産物の使用割合を何%以上にするとか、そういった項目を追加するのはどうかなというふうに思っております。
一定の目標があれば、先ほど大臣がずっとお話をいただいております市町村も、それを目標に頑張っていくのではないかというふうに私は考えますが、いかがでしょうか。
○宮崎大臣政務官 お答えをいたします。
先生お話がございました第四次食育推進基本計画では、重点事項の一つとして、持続可能な食を支える食育の推進を掲げまして、具体的な目標として、今お話がございましたけれども、学校給食における地場産物を活用した取組等を増やすことでございますとか、環境に配慮した農林水産物、食品を選ぶ国民を令和七年度までに七五%にまで増やすこと、こういう目標を掲げさせていただいているところでございますけれども、具体的に、今御提案のございました学校給食での有機農産物の活用割合というお話でございましたけれども、どういうような指標にしていくのかというのは、技術的な問題もあって難しい面もあるんじゃないかなというふうに考えておるところでございます。
いずれにいたしましても、次期計画におきましてどのような目標を盛り込むことが適当なのか、食育推進会議の場で、有識者の皆様方、そして関係省庁などの御意見を踏まえながら御議論をいただくことになるのではないかというふうに考えておるところでございます。
○池畑委員 関係省庁とのいろいろな連帯は必要だというふうに思いますけれども、ここは農林水産省がリーダーシップを取っていただきまして、是非とも、今、項目の中に入れることで市町村も頑張れるんじゃないかなというふうにもう一度お話をさせていただいて、次の質問に移らせていただきます。
同じく、有機農業の推進に当たって、先ほど金子委員からもありましたけれども、市場を持つ企業の参入は非常に有効であるというふうに考えます。その中で、生産、物流、消費、見える化として、生産者と消費者を結びつける流通と情報システムの構築は不可欠だというふうに思います。
農林水産大臣も、先ほど農林水産省で食堂で使ってみるとか、学校給食や病院食、そして出産後の回復期など、特定のニーズに特化した産地と消費のマッチングを行うことは有効であるというふうに考えます。まず、企業や特定のニーズを意識したいわば出口戦略について、マーケットインに資するようなシステム導入をしてはどうかというふうに考えます。
まず、予算措置を考えておられるかどうか、質問させていただきたいと思います。
○宮崎大臣政務官 お答えをいたします。
我が国の有機食品の市場規模につきましては、過去八年間で四割拡大をしているところでございますけれども、生産者が需要に応じた農産物を効率的に生産をしていくためには、生産者と需要者との間で、生産状況や市況などの情報共有が重要であるというふうに考えておるところでございます。
このため、農林水産省では、生産者や実需者が参画する協議会で、どのような作目を、いつ、誰が、どのぐらい作るかというのを検討する作付会議の開催でございますとか、個々の農業者の生産出荷計画をオンライン上で共有をいたしまして実需者と結びつけるマッチングサイトの構築をこれまで支援をしたところでございます。
さらに、令和三年度の補正予算からでございますけれども、市町村が主体となって取り組む関係者間の効率的な生産や出荷の調整のためのシステムの導入実証等についても支援をすることとしております。
引き続き、委員お話がございましたように、より効率的な流通システムが構築できるように、これまでのこういった取組でございますとか、有機農業に関わる生産者や実需者の御意向も踏まえながら、取組を進めていきたいと考えております。
○池畑委員 ありがとうございました。
各市町村がばらばらにいろいろなシステムをつくるよりは、国でまとめて大きなマーケットを構築するシステムをつくったらどうかという提案でありました。
それを踏まえて、最後の質問になりますけれども、給食や病院食、先ほどちょっとお話しさせていただきましたけれども、での有機の活用に向けたニーズの調査について質問させていただきたいと思います。
今のマッチングを行う上で、消費者の生の声を聞いていく必要がマーケティングには大事だというふうに思います。私も、委員会の質問のときには必ず最後に、具体的な、給食や病院食、新たなニーズの調査をするときに、ママさんだとか、今、現役で子育てをしておられるお父さんの意見をしっかりと聞いていくべきだというふうに思いますが、具体的にその辺りをどのように取り組んでおられるか、質問させていただきたいと思います。
○平形政府参考人 お答えいたします。
学校や病院など公共機関の給食において有機農産物を活用することは、安定した消費の確保に加えて、利用者に有機農業の理解と支持を得るために有効な手段だというふうに考えております。
国内の有機農産物の市場規模等について、農林水産省は、これまで消費者を対象に、購入の頻度ですとか購入先について調査を実施してきておりましたけれども、委員御指摘の学校ですとか病院での有機農産物の活用に特化した調査というのは、実は行ってきておりません。
今後、こうした調査についても、どんなふうな手法でできるのかというのは、これは検討していきたいというふうに考えております。
○池畑委員 答弁ありがとうございます。
検討していただくということでございましたので、しっかりと我々も協力をしていきたいというふうに思いますし、市場調査、しっかり頑張っていきたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
これで質問を終わらせていただきます。
○平口委員長 次に、長友慎治君。
○長友委員 国民民主党の長友慎治です。
先日、三月二十四日に、参考人として意見陳述をいただきました秋田県立大学の谷口教授から、みどりの食料システム戦略において、有機農業の日本のマーケットを確立するためには国民を味方につけるべきだとの御指摘をいただきました。つまりは、国民運動として取り組むべきだという御意見で、私も共感をした次第であります。
そこで、農林水産省として、今回のみどり戦略を国民運動として展開する具体的な施策があるのかどうかについて、まずは伺います。
○金子(原)国務大臣 みどりの戦略の実現に向けましては、生産者だけではなく消費者も含め、国民各層に趣旨を御理解いただくことが必要であるため、本法律案では、基本理念の第三条におきまして、食料システムの関係者の理解の下に連携することを規定した上で、国が講ずべき施策、第七条において、関係者の理解の増進を図っていく旨を位置づけているところでございます。
今後は、消費者と生産者の距離を縮めるための国民運動、ニッポンフードシフトや、持続性を重視した消費の転換に向けた、あふの環プロジェクトにおける交流会の開催等を通じまして、国民各層に対して積極的に情報発信を行い、幅広い関係者に趣旨に御賛同いただけるように、今後とも積極的に努力してまいりたいと思っております。
○長友委員 大臣自らありがとうございます。
先ほど、今回の委員会でも、ニッポンフードシフト、また、あふの環プロジェクトのことが出てきます。ニッポンフードシフトは、令和三年の七月から始まったものと認識しております。
このあふの環プロジェクトであったり、ニッポンフードシフトのこれまでの取組の成果について伺いたいと思います。
○青山政府参考人 お答えいたします。
ニッポンフードシフトでございますけれども、昨年七月から展開をしております。
これでは、特にZ世代と呼ばれる十代から二十代前半の、未来を担うべき若者たちを重点的なターゲットとしまして、輸出の拡大、政策のグリーン化、食と農のつながりの深化の三つの観点から、官民協働による情報発信を続けております。
具体的には、これは一月十日でございましたけれども、新聞社との連携によりまして、全国各地で活躍する若手生産者等の取組の情報発信、テレビ局と連携した、高校生による食の未来に関するプレゼン大会の開催、アパレルメーカーと連携した、オリジナル農業ウェアの販売や、店舗における野菜直売所の開催、美術大学と連携した、みどりの食料システム戦略の内容を題材にした情報デザインの制作と展示など、若者たちの間で共感を得やすい情報の発信について取り組んでおります。
また、あふの環プロジェクトにつきましては、二〇二〇年六月に、あふの環プロジェクトを消費者庁、環境省とともに立ち上げまして、企業、団体で構成されるメンバーと共同によりまして、持続可能な生産、消費を広めるための活動を推進しております。
これまで、外見重視から持続性を重視した消費の転換に向けた関係者の意識醸成のための勉強会や交流会、それから、毎年九月には、プロジェクトメンバーと行政が持続可能な消費について集中的に情報発信を行うサステナウィークを実施しております。毎年二月には、持続可能なサービスや商品を扱う地域や事業者の取組動画を表彰するサステナアワードを実施しておりまして、本年度からは、農林水産大臣賞も創設しているところでございます。
○長友委員 ありがとうございます。
御説明いただきましたが、フードシフトにしても、あふの環プロジェクトにしても、国民運動というにはまだまだ私は認知が足りないというふうに感じております。コロナ禍でなかなかイベント等の実施が難しかった側面ももちろんあるかとは思うんですけれども、もうウィズコロナ時代ですので、イベントに頼るような、PR以外のこともしっかりと取り組んでいただいて、認知度向上、そして国民運動としてしっかり進めていただくということを取り組んでいただきたいと思っております。
次に、同じく三月二十四日に、参考人として大塚ファームの大塚代表が、御意見をいただきました。みどりの戦略に対しての問題点として、学校教育現場での国産志向、食料安全保障などの観点からしっかりとした教育が行われていないという御指摘をいただきました。その際には、小学生から、農家さんって貧乏なんでしょうというようなエピソードもお話しいただきました。この委員会では笑いが起きましたけれども、私自身は、笑い事ではないなというふうに感じた次第でございます。
大塚代表からもいただきましたけれども、学校の教育現場で国産志向、食料安全保障などの観点からしっかりとした教育が行われていないという御指摘に対しまして、農林水産省、そして、今日は文科省の方にも政府参考人として来ていただいていますので、それぞれの見解を伺いたいと思います。
まずは、農林水産省、よろしくお願いいたします。
○青山政府参考人 お答えいたします。
先日の大塚参考人の御発言の中で、国産志向、食料安全保障などの観点から教育が行われていないという御指摘がございました。
農林水産省としてできることをやるということで、ニッポンフードシフトにおいては、Z世代という若い人たちを重点的なターゲットとして情報発信を行っているということでございます。
今後、国内の農林漁業や農山漁村の重要性及びこれらの持続性の確保について若い人たちへの理解と共感を求める中で、国産や有機の農林水産物の積極的な選択といった具体的な行動変容に結びつくよう、国民運動として取り組んでまいります。
○長友委員 ありがとうございます。
文科省としての見解はいかがでしょうか。
○淵上政府参考人 お答え申し上げます。
学校給食は、食に関する指導を効果的に進めるための生きた教材として、大きな教育的意義を持っております。地場産物を学校給食の食材として活用することなど、地域の実情に応じて創意工夫を行うことは、児童生徒の食に関する理解を深めるために有効と考えておりまして、政府全体として取り組んでいるところでございます。
学校給食における地場産物の活用につきましては、令和三年度に引き続きまして、令和四年度予算におきましても、学校給食における地場産物の使用に当たっての課題解決に資するための経費を支援するための予算を計上しております。
引き続き、好事例の横展開に加えまして、こうした事業も活用することによりまして、学校給食における地場産物の活用を促進してまいりたいと考えております。
また、学校給食の食材の選定に関しましては、学校給食衛生管理基準におきまして、教育委員会や栄養教諭などにより構成される委員会等において検討を行って、適切な食品選定が行われるべきことを定めております。
文部科学省といたしましては、今後とも関係省庁とも連携しながら学校給食における地場産物の活用を促進するとともに、食の安全性を確保できるよう、安全、安心な学校給食を確保しながら、食育の推進に努めてまいりたいと考えております。
○長友委員 ありがとうございます。
今日の委員会でも他の先生方から、学校給食についての取組、いろいろと御指摘をいただきました。先ほど大臣からも、有意義な取組であるということ、また、文科省とも相談しながら進めたいということで、今、文科省の御答弁もあったわけですけれども、つまりは、学校給食に対して地場産品を使っていくという御答弁はあるんですけれども、学校給食を強力に進めるという意思であるということで認識してもいいということで間違いないでしょうか。
文科省としての意気込みというのはどのくらいのものかというのを改めてお伺いします。
○淵上政府参考人 お答え申し上げます。
学校給食それ自体は、先ほども申し上げましたとおり、教育的な意義を非常に有するものでございますので、その学校給食をしっかり推進していく、強力に推進していくということは、文部科学省として引き続きやってまいりたいと思っております。
○長友委員 ありがとうございます。
文科省としても、今お聞きのとおり、しっかりと推進していくという御答弁をいただきましたので、是非大臣、しっかり連携して進めていただきたいと思います。まさにこれも国民運動の一つだと思いますので、よろしくお願いします。
最後に、環境配慮、脱プラについての質問をしたいと思います。
みどりの食料システム戦略は、環境負荷軽減を目指す政策で、農業従事者の脱プラに対する意識の向上、取組も求められると思います。
そこで、農業分野の脱プラスチックの取組がどのようになっているかについて伺います。
○宮崎大臣政務官 お答えをいたします。
農業分野での脱プラスチックの取組は、環境負荷の低減からも重要であるというふうに考えております。
農林水産省地球温暖化対策計画を昨年十月に改定をいたしました際に、園芸分野で、二〇三五年までに園芸用マルチなどの廃プラスチックのリサイクル率を一〇〇%に引き上げる、こういう目標を定めたところでございます。
また、最近、海洋流出などで問題となっておりますプラスチック被覆肥料につきましては、本年一月に、肥料関係団体が、二〇三〇年までに、プラスチックを使用いたしました被覆肥料に頼らない農業にすることを目標として掲げたところでございます。
こうした目標の実現に向けまして、農林水産省といたしましては、マルチ栽培などでの生分解性資材の利用拡大でございますとか、プラスチック被覆肥料の流出抑制技術、代替肥料の導入など、環境に優しい生産技術の導入の実証を支援をしているところでございます。
こうした取組を更に前に進めまして、農林水産分野におけるプラスチックの使用削減に取り組んでいきたいと考えております。
○長友委員 ありがとうございます。
四月一日から、プラスチック資源循環促進法が施行されます。脱プラの動きがこれから更に加速していきます。農業分野での実績もしっかりとアピールいただきまして、農業を持続可能な産業としてこれからも育んでいくんだと、農水省としてのしっかり姿勢をアピールいただきたいと思います。
以上で終わります。
○平口委員長 次に、田村貴昭君。
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
最初に、植物防疫法の改正案について質問します。
現在、検疫有害動植物を定める農林水産省令を定めるときは、省令の素案を定めた上で公聴会を開き利害関係者及び学識経験者の意見を聞くということになっていますが、改正案では、公聴会に代わり、学識経験者その他の関係者の意見を聞くこととなっています。
これは、手続を民主的に進める上で後退となるのでしょうか、ならないのか、それについてお答えください。
○小川政府参考人 お答え申し上げます。
現在、検疫有害動植物を定める省令を制定する際には、公聴会により学識経験者などから意見聴取を行う仕組みとなっておりますが、植物防疫をめぐる状況が複雑に変化する中で、草案ができる前から意見を聞く場合と比べ、学識経験者などからの意見等が反映されにくいとの課題がございます。
また、平成十七年の行政手続法改正によりまして、意見公募手続、いわゆるパブリックコメントの制度が設けられ、広く浸透してきております。一般国民からの意見を広く反映する点においては、公聴会を開催する意義は失われてきていると認識しております。
このため、公聴会を廃止する一方、今後も必要となる学識経験者などの意見につきまして、草案の作成前の病害虫リスク分析の段階から必要な時点で聴取できるようにすることによりまして、学識経験者などの意見がより適切に反映されるよう、現行手続における課題の解消を図ることとしているところでございます。
以上です。
○田村(貴)委員 しっかり民主的に意見を聞いていただきたいと思います。
それでは、みどりの食料システム法案について質問します。
参考人質疑で、秋田県立大学の谷口吉光教授は、国、自治体、JA、研究機関に至るまで、農薬、化学肥料の使用を当然の前提にしてきた、それを覆すような政策転換をする以上、なぜ変えなきゃいけないのか、必要性を明らかにすべきと指摘されました。
確かに、みどり戦略のどこを読んでも、現在の農薬取締法、肥料法の範囲内、基準内の農薬、化学肥料の使用にどんな弊害があるのかは書いてありません。農薬と化学肥料の使用にどんな問題があるのか説明してください。
○小川政府参考人 お答え申し上げます。
みどりの食料システム戦略を策定した背景の一つといたしまして、例えば、病害虫が蔓延し、主に薬剤防除により対応する中、薬剤抵抗性を獲得した病害虫が発生する事態も生じており、生産環境の改善に向けた環境負荷の軽減が課題であるというふうにされているところでございます。
これを踏まえまして、化学農薬の使用による環境負荷を軽減し、持続的な農業生産を確保するため、化学農薬使用量の低減目標を設定することといたしたところでございます。
○平形政府参考人 お答えします。
肥料につきまして、肥料は農作物の収量を維持、確保するために必要なものでありまして、農業生産活動に不可欠な生産資材でありますが、一方、化学肥料は、主な原料であります尿素、リン安、塩化カリ、いずれも原料となります資源が国内に存在しておりません。我が国はそのほとんどを海外からの輸入に依存しております。
このため、耕畜連携を通じた資源の循環利用ですとか、堆肥等の国内資源の最大限の活用、これを進めることは、食料の安定供給と我が国の農業の持続的な発展を図るというみどりの食料システム戦略の趣旨とも合致するものでございまして、化学肥料の使用量の低減を本戦略に位置づけることとしたところでございます。
○田村(貴)委員 農薬の使用については曖昧であります。
参考人質疑で、生産者の大塚裕樹さんが、蛍もメダカもドジョウもカエルもバッタもみんないなくなった、農薬をやめればみんな戻ってくると述べられました。
農薬の生物多様性に与える弊害は明らかです。生物多様性に与える影響が明らかなんでしょう。だから、EUのファーム・ツー・フォークでも、戦略の中にこの点が明確になっているわけです。EUのファーム・ツー・フォークでは、二〇三〇年までに農薬の五〇%削減という目標と併せて、受粉昆虫の減少を阻止、増加に転換、二〇三〇年までに三十億本植樹する、こうした生物多様性戦略との共同目標が具体的に設定されています。
慣行農業を当然の前提としてきた農家や普及員の皆さんを混乱に陥れないためにも、農薬の使用の何が問題なのか、これはきちんと総括し、説明していく必要があると思います。
次に、有機農業の担い手について質問します。
現在、有機農家の大半が小規模農家、家族農家です。しかし、担い手については、みどりの食料システム戦略にも本法案にも何も記されていません。
有機農業を担っている小規模・家族農業をしっかりと位置づけるべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○金子(原)国務大臣 本法律案は、規模の大小や経営の形態にかかわらず、地域の自主性を尊重しながら、環境負荷の低減に向けた意欲ある取組を後押しするための促進法であります。具体的には、地域の実情に応じまして、化学農薬、化学肥料の使用削減等の取組を進められるよう、意欲ある地方自治体が作成する基本計画に基づき、農林漁業者の取組を認定することができる仕組みといたしております。
農林水産省といたしましては、こうした法律上の支援措置と併せて、令和三年度補正予算、令和四年度当初予算で措置しているみどりの戦略推進交付金等を活用いたしまして、地域ぐるみの有機農業への取組の支援等、中小・家族経営も含め、農林漁業の環境負荷低減の取組を支援してまいりたいと思います。
○田村(貴)委員 現在期間中の国連家族農業の十年は、アグロエコロジー、生態系や生物多様性を考慮した農業、こうした観点から、小規模・家族農業を環境負荷の小さい農業を実現するための中心的な担い手として位置づけています。谷口参考人からも、小農、家族農業に特別の関心を払うべきだとの意見がありました。しっかり位置づけていただきたいと思います。
次に、参考人質疑で、生産者の井村辰二郎さんは、単年で考えるのではなく、長いスパンでどれだけ取れるのかということも考えていかなきゃいけない、百年、二百年、そして千年とというふうに述べられました。
谷口教授は、単年的な収量が下がったとしても、それによって百年間続く経営ができるんだったら、それは生産力向上と考えていいんじゃないか、生産力向上という考え方も、今までの固定観念を離れて、持続可能性とのバランスの中で考えるということを御提案したい、そのように述べられました。これは非常に重要な指摘だったと思います。
環境負荷低減、有機農法に取り組もうとすると、何年にもわたって生産性が落ちることが予測されます。そうした農家を支えていくんだという姿勢が必要です。
だから私は、生産性の向上と両立という法案の文言は、食料自給率の向上と両立に変えるべきだと考えます。修正案を提案していますので、どうぞ御理解をいただきたいと思います。
農林水産省に伺います。
競争力強化、規模拡大に偏重する農政をやめて、この機会に、維持、継続を支援する農政に転換すべきだと考えますが、いかがですか。
○青山政府参考人 お答えいたします。
近年、気候変動等による農林漁業への影響が拡大する中で、農林漁業に起因する環境への負荷の低減にも配慮しながら、農林漁業を将来にわたり持続可能なものとしていく必要が生じております。
このため、本法律案では、基本理念で、農林漁業の持続的な発展を図るためには環境への負荷の低減に取り組むことが重要と規定いたしまして、農林漁業の持続的発展を図るために環境負荷低減に取り組むこととしております。
その上で、第三条第二項にある環境への負荷の低減と生産性向上との両立は、環境負荷低減の取組により収量の低下、生産性の低下が懸念されるところ、これを克服するための技術の開発、活用と円滑な流通の確保の必要性を明記しております。
本法律案で目的とする環境と調和の取れた食料システムの確立のために行う健全な作物を育てる土づくり等の取組は、農林漁業の生産基盤の強化、ひいては食料の安定供給の確保に資するものと考えておりまして、従来の施策と併せて講じていくことが重要と考えております。
○田村(貴)委員 何かぴったりこないんですけれども。例えば、被災した農家の農業ハウスの建て直しすら規模拡大や経営改善を要求していますでしょう。それから、あらゆる補助や支援策にも競争力強化、規模拡大が要件となっているわけです。そうしたやり方は、有機農業をこれから本格的に増やそうという段階では、やはり見直していくべきだと思いますよ。
参考人質疑で、大塚参考人からは、環境保全型直接支払いの拡充も要望として上がりました。是非、持続可能性という点に着目した支援制度を大きく拡充していただきたいと思います。
次に、公共調達について伺います。
谷口参考人は、再生紙を使ったコピー用紙やトイレットペーパーが今では当たり前に使われているが、それは一番最初に公共調達したからだと述べました。その発想を有機農業に当てはめるべきだと述べられました。安定した市場があってこそ、有機の生産者は作り始めることができるわけです。
前回の私の質疑で大臣はこのように述べました。有機農産物を学校などの公共施設で活用することは有意義な取組であると認識している、意欲ある市町村の取組が進むように支援してまいりたいと考えておりますと。
市町村が有機にふさわしい価格で買い上げるには、どうしても財政支出が必要になります。厳しい財政状況の中で、自治体が、市町村をどう支えていくのか。また、病院や官庁など公共施設での採用はどのように進めていこうと考えておられますか。大臣に伺いたいと思います。
○金子(原)国務大臣 有機農産物を学校などの公共施設で活用することは、有機農産物への理解と安定した消費の確保を図る上で効果的な取組であると認識をいたしております。
このため、学校給食等での有機農産物の活用につきましては、令和三年度補正予算から、市町村が主体となって、地域の有機農業者と給食関係者などとの連携や、有機農産物の給食や食堂への導入などの取組を支援することとしており、こうした産地の取組事例やその成果について、シンポジウムなどを通じまして周知に取り組み、横展開を図ってまいりたいと考えております。
また、公共部門での有機農産物の利用に関しましては、二月の二十五日に、環境省所管のグリーン購入法に基づく環境に配慮した物品の調達方針が見直され、国等の食堂における有機農産物等の使用が配慮事項として追加されたところであります。
農林水産省の庁内食堂におきましても、率先的に有機農産物の使用を進めることとしたところであり、引き続き、環境省などの関係省庁と連携を取りながら、公共部門での有機農産物の利用を進めてまいりたいと思います。
○田村(貴)委員 農水省の食堂も始めると。やはり、リードしていくのは官庁、そして地方自治体。地方自治体は大変だから、政府がやはり支援をする、これは本当に大事だと思います。
大臣、百万ヘクタールでしょう。そして、取組面積、耕地面積の二五%ですね。こうした壮大な目標を掲げるのであれば、やはり、自治体の公共調達として、その支援を必須条件としなければいけないと思います。これは是非実践していただきたいと思います。
それから、法案では、みどり戦略の下、国が基本方針を作って、都道府県、市町村が環境負荷低減事業活動の計画を立てることになっています。実効性のある計画を立てるには、市民、消費者含め、食と農に関するあらゆる利害関係者、ステークホルダー、その参加が必要であります。さらにはチェックとフィードバックが不可欠であると考えます。
しかし、本法案には関係者の意見反映の仕組みは規定されていません。どのように関係者の意見を反映させていきますか。これも大臣に伺います。
○金子(原)国務大臣 環境負荷低減事業活動の促進等に関する基本方針は、農林水産大臣の告示で定める予定でありまして、その手続に当たりましては、行政手続法に基づく意見公募手続を行うとともに、本法律案第十五条第五項に基づき、食料・農業・農村政策審議会の意見を聞くことといたしております。
また、本法律案では、各地方自治体において、農林漁業における環境負荷低減を促進するための基本計画を作成できることとしています。この作成に当たりましては、地方自治体の負担に配慮することが大前提となりますが、地域の実情に応じた取組が促進されるよう、地域の関係者との合意形成を図ることを国の基本方針の中で明記していきたいと考えています。
これらを通じまして、国や地方の各段階の検討過程で、幅広く関係者の意見を聞き、反映したいと考えています。
また、みどりの戦略につきましては、これまでも関係者の意見を踏まえて策定してきたところであり、今後の戦略の推進に当たりましても、関係者の意見を踏まえまして、適切に対応してまいります。
○田村(貴)委員 国連環境計画、UNEPは、フードシステムに対して、生産者、消費者のみならず、教育、雇用、健康、産業、金融、公共調達など、多様なステークホルダーが参加する共同的な政策立案が必要だと報告しています。また、欧州や北米では、多様なステークホルダーが包括的に政策、計画立案に参画するフードポリシーカウンシルが採用されています。
関係者の意見を聞くだけでなく、それを国民全体が討議していく、そういう制度に発展させていただくよう、是非検討を深めていただきたいと思います。
次に、私は先日、千葉県のいすみ市の農事組合法人みねやの里で有機農法の話を伺ってまいりました。民間稲作研究所の故稲葉光国先生の指導の下で、二回の代かきと深水管理によって雑草の伸長を抑制する技術を採用して、何年もかけて土づくり、苗づくりの技術を練り上げて、広げてきました。大変、私自身、感動しましたし、すごいなと思いました。
稲作の有機化というのは既に技術が確立されています。地域地域で技術指導、支援があれば、有機稲作の転換、拡大は可能となってまいります。
また、このいすみの例からも、民間稲作研究所や長野の自然農法国際研究開発センター、ジャパンバイオファームなどの民間研究機関による指導を支援することも重要だというふうに考えています。
有機農業のこれら先達の技術支援、技術指導を、是非、アドバイザーとして、そして支援員として位置づけていくことがこれから必要だと考えますけれども、いかがでしょうか。
○平形政府参考人 お答えいたします。
有機農業を拡大する上では、安定した生産ができるような栽培技術の指導、これが大変重要でございます。
このため、農林水産省では、都道府県の普及指導員、それからJA営農指導員の有機技術の研修に対して支援を行うとともに、令和四年度末までに累計五百人の、県の段階の有機農業指導員の育成、確保、これを目指しております。
具体的には、優れた技術を持つ有機農業者の方、それから、今御紹介ございました民間機関の指導者の方を有機農業指導員に起用していただくんですが、これはやはり各地各地で品目だとか技法がありますので、これは県が指定するというような形を取りたいというふうに思っております。
こうした有機農業指導員を活用した研修ですとか指導に対して国の方としても支援をしていきたいというふうに考えておりまして、有機農業の拡大に取り組んでいただきたいというふうに考えております。
○田村(貴)委員 分かりました。
時間が来たので質問を終わります。ありがとうございました。
○平口委員長 次に、北神圭朗君。
〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕
○北神委員 有志の会の北神圭朗でございます。
大臣、今回の法案、我々も基本的に賛成であります。有機農業を振興する法案と、病害虫とかそういうのを厳しく水際で取り締まる法案だというふうに理解しています。
一つの懸念としましては、大変野心的な目標なので、これが本当に実現できるかどうかということで、これはもうみんなで頑張っていくしかないというふうに思っています。
もう一つの大きな懸念は、私も前回質問させてもらいましたが、今回、非常に美しい理念で、SDGsとかいうことで、環境に優しいということで、すばらしいことなんですが、特にEUが、ヨーロッパがこれを率先してやっている。彼らは、彼らのいろいろな気候風土の中で、あるいは食文化や価値観の中でそういったことを率先してやっているということなんですが、前回申し上げたように、国際基準とか、こういうのは若干怪しいというか、怪しいと言ったら怒られますね、それを盾に、一種、競争力を高めるとか、あるいは相手の競争力を弱めるとか、そういう意図がなくても、少なくとも結果としてそういうことも起こり得るということです。
これは、農林水産省の職員の皆さんに聞いても、どうなるか分からないという話なんですが、来年、EUでは農場から食卓へという法律が制定される見通しだと。こうなってきますと、国際基準というものが、今の農薬等に関する安全基準というものがまた議論されていく可能性も十分あるんじゃないかなと私は思っています。というのは、EUの中で、国内の基準を厳格にすれば、輸入するものは、それより緩いものを入れるということはまず考えられないということであります。
したがって、前回はこういう国際交渉の原課の体制というものを強化していくべきだというお話をしましたが、今回、若干、各国とどのような連携をしていくのかというお話をしていきたいというふうに思います。
一つ、EUそのものなんですが、昨年、たしか九月に、国連の方で、EUと日本の間で共同文書が交わされて、引用しますと、「我々は、農業分野のイノベーションが重要であることを認識した上で、我々の自然的・社会的環境や食文化の多様性に基づいた確固たる解決策と道筋について、共同で取り組む。」というのが書かれています。私のこの文章の理解は、社会的・自然的環境、食文化の多様性ということであるならば、農薬に深く関わってくる我が国の、先ほども何遍も委員の皆さんから御意見が出されていますが、日本の高温、そして非常に湿度の高いこの気候の中で病害虫が発生しやすいということで、なかなか、例えばEUの中にもいろいろな国があると思いますが、簡単に同じような条件で競争することは難しいというふうに思っています。
したがって、せっかくEUとのこういった文書を取り交わしていますので、ここのいわゆる社会的・自然的環境、食文化の多様性という言葉を一つの強い武器として、EUと今後、もしそういう国際標準の交渉があれば、押し出していくべきだと思いますが、いかがお考えでしょうか。
〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕
○牛草政府参考人 お答え申し上げます。
今議員から御紹介ありましたとおり、昨年七月に、食料サミットに向けた準備として行われた閣僚級のプレサミットの際に、日・EU共同文書に合意しまして、御紹介いただいた多様性ということが記載されました。
それを受けまして、昨年九月の国連食料システムサミット本番においては、我が国を含む多くの国の発言に基づいて国連事務総長が行動宣言というのを発出しておりますけれども、その中で、読み上げますが、「我々は、万能の解決策はないという意見で一致した。地域ごとの状況、アプローチ及び展望は多様であることを認識する」という文言が入ってございます。
今後とも、国際的な基準、その他の国際規範についての議論に当たりましては、御指摘いただきましたとおり、アジア・モンスーン地域の特殊性を含め、多様性を認めることの重要性について、今後行われる食料システムサミットのフォローアップの会合など、様々な機会を活用して主張してまいりたいというふうに思います。
○北神委員 是非お願いしたいというふうに思います。
万能の解決策はないという言葉は非常に重要だと思います。一つの物差しでいろいろな条件のある、様々な条件のある国々を測ることはできないよという意味だというふうに思っていますので、その路線で是非お願いしたいと思います。
EUは、こういうことで一つ、その合意文書で共通の理解が得られたような気がしますけれども、国際交渉において、米国というのも非常に大きな存在だというふうに思います。
米国は米国で農業イノベーションアジェンダとかいうものを策定して、彼らは、日本もそういうふうなことをしているのかもしれませんが、環境の話だけではなく、同時に農産物四〇%生産量を増やすということも併せてうたっているということが私は重要だというふうに思います。我が国もそこは踏まえなければいけないというふうに思います。
米国ともこういう共同文書みたいなものを取り交わしたことはあるのか、あるいは今後そういう予定はあるのか、お聞きしたいと思います。
○牛草政府参考人 お答え申し上げます。
これまで、米国との間では、日・EU間の共同文書のような二国間での文書というのは結んでおりませんけれども、昨年九月に、アメリカ、米国を含むG20の農業大臣会合というのがございまして、コミュニケが採択されております。その中で、我々は、全てに当てはまる一律の解決策は存在しないことを踏まえ、食料システムの変革をデザインするに当たり、異なる地域の状況、文化、歴史、生産システム、消費形態及び伝統を考慮に入れる必要性を強調するという点が合意されているところでございます。
今後とも、米国も含め、様々な国々と国際的な会合や対話などに当たって、各国農業の多様性を踏まえることの重要性を主張しつつ、我が国の立場の反映に努めてまいります。
○北神委員 それはいいことだというふうに思います。
アメリカ、ヨーロッパということで、特に、私が聞いているところによると、欧州というのは、どちらかというと厳格な基準を採用したがる、予防的な措置というものを強調したがると。要するに、予防的というのは、ちょっとでも可能性があったらあかんということを言いたがる。米国の方は、もう少し緩い、科学的見地に基づいてやるということなので、そういった違いもあるというふうに思いますけれども、米国との連携が、そういった意味で、多分日本とより立場が近いんじゃないかなというふうに推察しますので、そこの連携を深める。
一番大事なのは、同じアジア・モンスーン地域における各国で、これは既に皆さんが、ラオスとかカンボジアとかフィリピンとか、そういった国々、日本と同じように高温多湿、それから中小零細規模の農家が非常に多いということで、こことも連携をしたというふうに思われますが、ここが非常に重要で、やはり数が物を言うというところがありますので、こういったところの、既に合意をされたというのは聞いていますが、もっと深めるということとか、あるいは、ほかにもアジア・モンスーン地域の国々で共通の理解をまだ得られていないところがあると思いますので、ここを是非頑張っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○牛草政府参考人 お答え申し上げます。
今お話しいただいたとおり、昨年七月に東南アジアの七か国と持続可能な農業生産及び食料システムに関する共同文書に合意して、これを、先ほどお話あった国連食料システムサミットでも紹介したところでございます。
そして、この共同文書に基づく実際の協力として、昨年十月にASEANプラス3の農林大臣会合が開かれておりますけれども、その中で、温室効果ガス削減に関する共同研究とかスマート農業の実証など、我が国が提案した協力案件が合意されております。これらの協力は、共同文書に署名した七か国はもとより、それ以外のASEAN各国も対象としたものでございます。
今後とも、ASEANの各国と連携して、持続可能な農業生産と食料システムの達成に向けた取組のための協力を促進していきたいと思います。
○北神委員 ありがとうございます。是非、その方向で進めていただきたいというふうに思っています。
大臣、私の問題意識は、これをもう最後の質問にしますが、こういう農薬とか化学肥料とか、やはり各国の気候とかそういった条件によってかなり競争条件の有利、不利というものがあるというふうに思っています。ですから、やはり国際交渉というのは非常に重要で、今回の植物防疫法案はどちらかというと守りの話ですけれども、やはり国際標準づくりの、攻めの方も今から準備を着々と、既にされているような気がしますけれども、また強力に進めていただきたいなというふうに思っています。
今は大きな戦略の話ですが、やはり大事なのは、現場でいざそういう交渉になったときの人材の部分で、前回は原課の体制の話をしましたが、もう一つ、私も昔、一時期、経済産業省の政務官の方をやらせていただいたときに、COP21とかそういう気候変動の交渉とかに行くと、我が国の交渉に当たる人たちは二年とか三年のいわゆる通常の国家公務員の人事異動みたいなのがある。ところが、例えばニュージーランドとかアメリカとか、そういった国々を見ると、もう十年も、場合によっては二十年もずっとそういう交渉を専門として交渉官をやっている。
もちろん、日本の交渉に当たる人たちは非常に有能だというふうに思います。しかし、大事なのは、やはりそういう現場でずっとやっていると、いろいろな人脈も当然、そういう長年やっている人たち同士で仲よくなる。いろいろな過去の経緯というものも分かって、もう瞬時に交渉の中で、六年前はこういうことだったとか、こういうことも発言することができる。
我が国の国家公務員制度の人事の部分で障害があるかもしれませんけれども、私は、本来は、農林水産省というのは非常にやはり国際交渉が大事なので、そういう交渉の現場にある程度、長年、人脈づくりを含めて、経験を積んでいけるような交渉官を育成すべきだというふうに思いますけれども、そのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○金子(原)国務大臣 議員御指摘のように、特に国際交渉というのは、やはり人脈が非常に大事だと思うんですね。長年おつき合いをしている中で、お互いの気持ちが分かって交渉ができるわけなんです。
したがいまして、そこがやはり、外務省はある程度そういったところがやっているんですが、ほかの役所というのは、どちらかというと、三年間ぐらいそれぞれの国に勤務をさせて、その後、日本の国に帰ってきてからそういった専門分野を育てるという形になっておりますけれども、やはりいろいろな交渉の場を考えていくと、ある程度専門性を持って長く務めた方がいいのかなという感じもいたしております。分野によっては、リタイアした後もその方を活用しましてやっている部門もあるんです、特に水産関係なんかは。
したがって、これは貴重な御意見と思いますので、できるかどうかは分かりませんが、そういった御意見を踏まえて、農林水産省の中でもいろいろとお話をさせていただきたいと思っております。
○北神委員 非常に前向きな答弁をありがとうございます。
これで質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
○平口委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○平口委員長 この際、内閣提出、環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案に対し、田村貴昭君から、日本共産党提案による修正案が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。田村貴昭君。
―――――――――――――
環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○田村(貴)委員 ただいま議題となりました環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案に対する修正案につきまして、日本共産党を代表して、その趣旨を説明します。
本法案は、環境と調和の取れた食料システムの確立に当たって、環境への負荷の低減と生産性の向上との両立を図ることを基本理念としています。しかし、生産性の向上が競争力の強化や規模の拡大といった、これまでの農政の延長であってはなりません。国や自治体は、環境への負荷の低減を図るための活動に対し、食料自給率の向上と両立するよう総合的な支援をするべきです。
また、現在、有機農業の大宗は、小規模・家族農業が担っています。小規模・家族農業を、地域経済や地域社会を支え、環境と調和した持続可能な農業を担う中心的存在として位置づけるべきです。
さらに、国の基本方針、自治体の基本計画を定めるに当たっては、EUや北米のフードポリシーカウンシルのように、多様なステークホルダーが参画する自主的、民主的なボトムアップの意見集約が必要と考えます。
このようなことから、基本理念を見直すとともに、基本方針及び基本計画において関係者の意見を反映する内容の本修正案を提出するものであります。
次に、修正案の主な内容について御説明申し上げます。
第一に、環境と調和の取れた食料システムの確立に当たっては、環境への負荷の低減と食料自給率の向上との両立が不可欠であることを踏まえることとしております。
第二に、環境と調和の取れた食料システムの確立に当たっては、農林漁業において小規模の農林漁業者が果たしている役割の重要性に鑑み、その能力が活用されるように配慮されなければならないこととしております。
第三に、農林水産大臣が基本方針を定めようとするときは、あらかじめ、農林漁業者、食品産業の事業者、消費者その他の食料システムの関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならないこととするとともに、市町村及び都道府県が基本計画を作成しようとするときは、あらかじめ、当該基本計画を作成しようとする市町村の区域の農林漁業者、食品産業の事業者、消費者その他の食料システムの関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならないこととしております。
以上が、本修正案の趣旨及び主な内容であります。
委員各位の御賛同を心からお願いを申し上げ、説明を終わります。
○平口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
―――――――――――――
○平口委員長 これより両案及び修正案を一括して討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。
初めに、内閣提出、環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
まず、田村貴昭君提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○平口委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
次に、原案について採決いたします。
原案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○平口委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
―――――――――――――
○平口委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、簗和生君外六名から、自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブ、日本共産党及び有志の会の七派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。梅谷守君。
○梅谷委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
案文を朗読し、趣旨の説明といたします。
環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案に対する附帯決議(案)
近年、気候変動や生物の多様性の低下等、農林水産物及び食品の生産から消費に至る食料システムを取り巻く環境が大きく変化しており、農林漁業及び食品産業における環境への負荷を低減していくことが重要となっている。また、世界情勢の変化により国民の食料安全保障への関心が高まる中、将来にわたる農林漁業及び食品産業の持続的な発展と食料の安定供給を確保するため、農林水産物等の生産から販売に至る各段階で環境への負荷を低減し、こうした農林水産物等の流通及び消費が広く行われる環境と調和のとれた食料システムを確立することが喫緊の課題となっている。
よって政府は、本法の施行に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。
記
一 環境と調和のとれた食料システムについては、農林漁業者、食品事業者、消費者等の幅広い関係者の理解の下、これらの者が連携することにより、その確立が図られるものであることに鑑み、国が必要な施策の検討及び実施を行うに当たっては、農林漁業者等、特定の者のみに過度な負担をもたらすことがないよう配慮するとともに、農林水産物・食品の付加価値を高め、農林漁業者をはじめとする関係者の経営の発展、農山漁村の活性化に資するよう努めること。
二 農林漁業における環境への負荷の低減の取組が正当に評価されるよう、特に消費者及び食品事業者の理解の醸成、学校教育等の場を通じた食育の推進に取り組むこと。具体的には、販売面における対策の強化として、消費者等に分かりやすい表示・広報、環境への負荷の低減の状況を把握する手法、販路開拓に向けた支援の在り方等について検討し、その結果に基づき所要の措置を講ずること。
三 環境への負荷の低減に向けて、化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本とした有機農業の実践を生産現場で容易にする栽培技術の確立や、当該技術を普及する人材の育成・確保に努めること。
四 環境と調和のとれた食料システムの確立に向けた先進的な取組の実践等に寄与した農林漁業者並びに食品製造・加工業、卸売・小売等の流通業、飲食業その他の食品事業者等の顕彰に努めること。
五 基本方針の作成に当たっては、食料システムを構成する生産から消費に至る各段階の関係者の意見を丁寧に聴取し反映させること。
六 市町村及び都道府県の基本計画の作成等に当たっては、地域の合意形成に配慮して行われるよう国としても必要な助言等を行うとともに、これらの事務を担う市町村及び都道府県に過度な負担をもたらすことがないよう、市町村及び都道府県の実情に応じた適切な配慮を行うこと。
七 農林漁業において、規模の大小を問わず多様な経営体が重要な役割を果たしていることに鑑み、これらの経営体が意欲を持って環境負荷低減事業活動等に携わることができるよう必要な支援を行うこと。
八 有機農業等に取り組む生産者は慣行農業に取り組む生産者とともに地域農業を担う主体であることを十分に踏まえ、これらの生産者の交流・連携が一層進展するよう環境整備を図ること。
右決議する。
以上です。
何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
○平口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○平口委員長 起立総員。よって、本法律案に対し附帯決議を付することに決しました。
この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣金子原二郎君。
○金子(原)国務大臣 ただいま法案を可決いただきましてありがとうございました。附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
―――――――――――――
○平口委員長 次に、内閣提出、植物防疫法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○平口委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
お諮りいたします。
ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
〔報告書は附録に掲載〕
―――――――――――――
○平口委員長 次回は、来る四月六日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時十二分散会