衆議院

メインへスキップ



第10号 令和4年4月13日(水曜日)

会議録本文へ
令和四年四月十三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 平口  洋君

   理事 江藤  拓君 理事 高鳥 修一君

   理事 宮下 一郎君 理事 簗  和生君

   理事 金子 恵美君 理事 緑川 貴士君

   理事 空本 誠喜君 理事 稲津  久君

      五十嵐 清君    上田 英俊君

      尾崎 正直君    加藤 竜祥君

      神田 潤一君    国定 勇人君

      坂本 哲志君    高見 康裕君

      武井 俊輔君    中川 郁子君

      中野 英幸君    西野 太亮君

      野中  厚君    長谷川淳二君

      平沼正二郎君    古川 直季君

      古川  康君    堀内 詔子君

      保岡 宏武君    山口  晋君

      若林 健太君    梅谷  守君

      神谷  裕君    小山 展弘君

      後藤 祐一君    佐藤 公治君

      堤 かなめ君    道下 大樹君

      渡辺  創君    池畑浩太朗君

      住吉 寛紀君    金城 泰邦君

      庄子 賢一君    長友 慎治君

      田村 貴昭君    北神 圭朗君

    …………………………………

   参考人

   (豊田市農業委員会会長) 横粂  鈞君

   参考人

   (全国農業会議所事務局長)            稲垣 照哉君

   参考人

   (キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)     山下 一仁君

   参考人

   (明治大学農学部教授)  小田切徳美君

   農林水産委員会専門員   梶原  武君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十三日

 辞任         補欠選任

  東  国幹君     西野 太亮君

  尾崎 正直君     中野 英幸君

  神田 潤一君     国定 勇人君

  北村 誠吾君     堀内 詔子君

  古川  康君     古川 直季君

  神谷  裕君     道下 大樹君

  後藤 祐一君     堤 かなめ君

同日

 辞任         補欠選任

  国定 勇人君     神田 潤一君

  中野 英幸君     尾崎 正直君

  西野 太亮君     東  国幹君

  古川 直季君     古川  康君

  堀内 詔子君     北村 誠吾君

  堤 かなめ君     後藤 祐一君

  道下 大樹君     神谷  裕君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五五号)

 農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五六号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

平口委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案及び農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として、豊田市農業委員会会長横粂鈞君、全国農業会議所事務局長稲垣照哉君、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹山下一仁君、明治大学農学部教授小田切徳美君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、横粂参考人、稲垣参考人、山下参考人、小田切参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、初めに、横粂参考人、お願いいたします。

横粂参考人 ただいま御紹介をいただきました愛知県豊田市農業委員会会長の横粂でございます。

 本日は、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案と農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律案に関する参考人質疑の場にお呼びをいただき、誠にありがとうございます。このような場をいただき、お役に立てることは、本当に感謝申し上げます。また、光栄であると感じております。

 さて、私は、新しい農業委員会制度が導入されてからの平成二十九年七月から豊田市農業委員会会長を務めています。会長職としては今年度で二期目になります。会長職以前は、三期九年、農業委員を務めていました。通算では十四年目になります。

 長年の農業委員会活動の中で関わってきた現場活動、また各種の農業施策に取り組んできた現場経験を踏まえ、私の考え方を申し上げたいと思います。特に、新しい農業委員会制度になってからには強い思いがあります。

 まず、豊田市の農業の特徴を説明させていただきます。

 豊田市は、御承知のように、車の町、世界のトヨタの本拠地として有名であります。しかし、車だけでなく農業が非常に盛んであり、米、桃、梨、お茶など多彩な農産物を生産、出荷をしている県内有数の農業市であります。また、市域の面積は県内一であり、平たん部から中山間部まで、多岐にわたる地形があります。担い手の法人化と集積の進んだ平たん部から、分散錯圃の農地、高齢化、担い手減少の中山間地域まで、日本の農業問題のあらゆる側面をかいま見ることのできる地域でもあります。

 豊田市農業委員会の特徴を説明させていただきますと、農地利用最適化推進委員が四十五名、農業委員十九名の構成で、特に農地利用最適化推進委員の配置数は充実をしています。県内でも一番であります。こうしたことは、豊田市の理解と支援により配置数が確保でき、多様な地域事情をカバーできる地域密着型として農地利用最適化推進業務を行えるという体制になっております。

 それでは、まず、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案の内容について、私の意見を述べさせていただきます。

 今回の改正法律案では、これまで現場で進めてきた人・農地プランを地域計画として法定化し、この中で、農地の集約化を図るため、十年後の農地利用の姿を目標地図として明確化することとされています。ざっくり言えば、こう理解をしております。

 地域計画の責任者は市町村ですが、その計画の要である、将来の農地の効率的かつ総合的な利用に関する農地利用の姿を示した地図、いわゆる目標地図の素案は農業委員会が作成をするということになっています。農業委員会は、農地バンク等と協力して、この可視化した、分かりやすい目標地図の素案を作成すると明確化されています。

 農業委員会が、地域の農地の将来像を設計するに当たり、このようにイニシアチブを取ることができるというのは、これまでの人・農地政策の潮目を変える大胆かつ情熱的な内容であり、これでやっと農業委員会の大きな出番が来た、農業委員会に大きな命、使命が与えられたと思っております。確かに責任は非常に重くなります。しかし、本来の農業委員会の果たすべき役割を明確にしたものと感じております。

 農地所有者である出し手、農業者である受け手の意向を最も把握しているのは農業委員会です。また、農業委員会だけでなく、農地バンク、JA、土地改良区等、関係者の協力を得て素案を作成することとなっています。農業委員会に丸投げをされたわけではありません。農業委員会が得意とする現場での活動を基礎に将来の素案を描く、農業委員会が現場で果たしている役割を農水省において再認識をしていただいたと考えており、今回の法律案については賛成であります。一刻も早く本法案を成立させていただきたいと思っております。

 今回の改正法律案では、市町村が関係者の協議の場を設け、徹底して農業の将来像を話し合う、その結果、協議を踏まえ、市町村が地域計画、最終的な目標地図を作成、公表するとあります。段階的にそれぞれの組織の果たす役割、こういった機能が明確にされており、無理のない、現場実態を踏まえたものだと考えております。

 目標地図を実現するためには、農地バンクを活用し、農地の集約化を進めることが重要であります。改正法律案では、市町村の農用地利用集積計画と農地バンクの農用地利用配分計画を統合して、農地バンクは農用地利用集積等促進計画を作成することになっています。農地バンクは、農地の借入れ等を農地所有者へ積極的に申し入れ、農地の集約化をより強力に進めていくこととされております。また、農業委員会も、農地バンクの定める計画作成を要請できたりして、積極的に関わりを持つことができております。

 また、計画策定の中で、特例として、三分の二以上の同意を得て、一括して農地バンクに区域の農地を貸し付ける仕組みがあります。これは、より積極的な農地の集積、集約ができるようになっているものと思います。一括して貸し出す、この制度については、今後、農地利用集約化に対して大きな役割を果たす存在になるであろうと期待をしております。

 愛知県の場合、農地バンク、すなわち農地中間管理機構を利用した地域まるっと中間管理方式、方言が入っておりますけれども、として進められている事例がありますので、少し紹介をさせていただきます。

 愛知県では、豊川市の長沢地区が最初に行われた例であり、当豊田市では、山間地に位置する押井地区にその事例があります。今までの集落営農を一般社団法人押井営農組合として、集落全戸、三十未満ですけれども、それと集落全農地、これも八ヘクタール未満、小さい本当の山間集落ですけれども、集落丸ごと、すなわち一括して丸ごと中間機構に貸出しをし、押井営農組合が一括して借り受ける、こういう方法を取っております。

 一括して借受けをしても、中には、まだまだ自分で自作を、農業をやりたいと希望する農家はあります。こうした農家には、押井営農組合から自作していた農地をそのまま再貸出しをする方法、特定作業受委託契約を取って、自作農家の意欲をくじかないで、やりたい方はやってください、一括しますけれども個別の特徴は生かしますよ、こういうことになっているんですね。

 また、一般社団法人押井営農組合は、中山間地域等直接支払制度、多面的機能支払交付金制度の受皿となることもできます。受け手を認定農業者や法人等の担い手に限るのでなく、担い手以外の者も含め、地域全体で将来の農地利用の姿を描いていく、このようなことを取るということも非常に重要だと考えております。

 今回の改正法律案には、こうした方向への道筋がつけられていると考えています。また、受け手がいない地域では、多面的機能支払交付金団体や中山間地域等直接支払いの活動組織、JA等のサービス事業体を活用する考え方、方法も打ち出されております。現場実態に即した多様な対応が準備をされております。

 農地の集積、集約化を進めるためには、農地の基盤整備の実施が不可欠であります。圃場が悪くては、集約化、効率化を進めることができません。

 今まで実施されてきた、農家負担ゼロの農地中間管理機構関連整備事業として圃場整備ができる仕組みがありました。この制度は、名前は難しいのですけれども、説明をしますと目を輝かせて聞く人気の制度でありました。今回の改正法案で、更にこの制度を充実するための見直しがなされました。従来の区画整理に加え、農業水利施設や農業用農道整備が追加、拡充されました。また、農地バンクが農作業等を受託している農用地も入れることができるようになりました。

 農地条件が悪いところは、やはり中山間地であります。特にこの地域では、高齢化、担い手不足で、耕作条件の悪さは致命的になります。担い手の努力だけで解決しません。農家負担ゼロの機構関連整備事業は、中山間地を守るための最もよい、有効で効果的な事業と考えております。この整備事業が多くの地域で適用されるような運用を期待し、これらのメリットについて、声を大にして宣伝、説明をしていくべきだろうと考えております。

 また、改正法律案では、地域計画の達成に支障を及ぼすおそれがある場合は農用地区域から除外できないこととされています。

 これは非常に重要で、これまでは、非常に豊かな農地として整備された農用地区域であっても、諸般の都合で農用地区域からの除外が行われることは多々ありました。今回の措置は、地域の話合いの結果を尊重し、農業者側の意向を酌み、将来の農地利用を守り、確保していこう、こういう気持ちがうかがえます。守るべき農地を守る仕組みの一端として、注視し、期待をするものであります。

 なお、豊田市では、農振農用地整備計画の中で、法令上の根拠と規制権限はありませんが、農用地区域の中に特定保全農用地区域、これを設け、優良農地、守るべき農地として啓発を進めようとしています。こうした取組を後押しするものでもあると考えております。

 続いて、農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律案についてであります。

 改正活性化法案においては、活性化計画の対象事業に農用地の保全に関する事業を追加することとされています。

 先ほどの農業経営基盤強化促進法の改正にありました目標地図の作成に当たり、地域での話合いが重要である旨を申し上げました。地域の話合いで、地域全体の将来の農地利用の姿を再構築した目標を明確化しなければなりません。

 その結果、高齢化で農地を維持できない、後継者の方が地域の外に出てしまう等のケースが必ず想定されます。必然的に利用が困難になるような農地が発生してしまいます。後に残った農業者や担い手だけでカバーができません。このままほかっておけば、荒廃化しかねません。こうした農地については、周辺の集約した農地に悪影響を及ぼすことがないよう、適切な管理、保全を行うことが重要な施策となります。

 改正基盤法により集積、集約化を図る農地と、集積、集約が困難な農地については改正活性化法で対応することとされています。めり張りをつけ、セットとなるよう、農山漁村地域の適正な農地利用を図ることを目的にしたものと考えております。

 活性化計画の中で、第一に、粗放的な利用、第二に、ビオトープ、鳥獣害等の緩衝地帯などの農地に近い利用、第三に、農業生産が困難な農地は計画的に森林化への利用を図るというような施策が打ち出されておりますが、こうしたものも妥当な施策と考えております。

 今回の活性化法の中で、農用地の保全等に関する事業が加わったことにより、これらの事業を適切に進めるため、所有権移転等促進計画の拡充だとか、多面法の事業計画申請の簡略化、それから農地転用手続の迅速化を図る改正もなされており、併せて適正な改正として賛成と考えております。

 最後になりますが、以上、法案等の各項目について私の所見を申し上げましたが、改めて、今回の法律案については賛成であり、一刻も早く成立させていただきたいと考えております。また、全国の農業委員会、そして市町村の農業部局は多様な課題を抱えております。この法律の施行と運用については、こうした事情を拝察していただき、無理のない方法で、しかも効率を上げることのできるような対応をお願いをするものであります。

 まとめとして、今回の改正は、一つの大きな節目になり、農業委員会の活動が日本の農業の将来を担う役割の一端を確実に果たすものになるものと考えております。この使命を果たすべく、尽力をしていきたいと存じております。

 一地方の農業委員会現場から考えた拙い意見、説明でありましたが、御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)

平口委員長 ありがとうございました。

 次に、稲垣参考人、お願いいたします。

稲垣参考人 ただいま御紹介賜りました全国農業会議所の事務局長の稲垣と申します。

 本日は、このような機会を与えていただきましたことにつきまして、本当に御礼を申し上げたいと思います。

 全国農業会議所は、御案内のように、全国の農業委員会を支援、お手伝い、そういうことをしている機関でございます。四月一日現在、全国には農業委員会が千六百九十七委員会ございます。そこに、約二万三千人の農業委員さん、そして約一万七千人の農地利用最適化推進委員さん、合わせて約四万人の委員さん、そして、それを支える事務局の職員さんが約八千人、こういう体制で農地の仕事をさせていただいております。

 本日は、そういう皆様の声を少しでも先生方にお届けすることができ、審議の参考になるお話ができればと思って参上した次第でございます。具体的には、今回の法律改正の意義と課題に絞ってお話をさせていただきたいと思います。

 御案内のように、農業委員会組織は、平成二十七年の農業委員会法の改正を踏まえ、新たな法令必須業務となりました農地利用最適化活動につきまして、今回改正法案として上がっております農業経営基盤強化促進法などをフル活用して、組織を挙げて取り組んでまいりました。そして、毎年、成果とその課題を明らかにして各種の政策提案を取りまとめ、先生方にお届けしてまいりました。

 今申し上げましたことはこちらの資料の方に載っておりますので、また後ほどお目通しをいただきたいと思います。

 以上を踏まえまして、本日は、四つの点について意義と課題を申し述べさせていただきたいと思います。

 一点目は、人・農地プランの法定化についてであります。二点目は、農地バンクさんの運用の抜本見直しについてであります。三点目は、活性化法に象徴されます多様な農地利用の問題についてでございます。そして四点目は、農地法の下限面積要件の撤廃の問題でございます。

 まず、人・農地プランの法定化の意義でございます。

 これにつきましては、地域における話合いの結果が地域の農業の将来の在り方、農地利用などについて法律に根拠を持つものとなり、その意義は大変大きなものがあると思っております。そして、その際、この基盤法に、「効率的かつ安定的な農業経営」、これは基盤法の本旨でございますが、それに加えて、「農業を担う者」というワードを明記していただいたことが非常に大きな意義を持っていると思います。

 この間、人・農地プランの話合いを現場で進める際に、これは担い手のためにやっているのかとか、農地の出し手の方にすると、俺に農業をやめろと言うのかみたいな、やや感情的というかそういう議論があったわけですが、今回、地域の農業を担う者というものを位置づけていただいたことで、効率的かつ安定的な、いわゆる担い手と地域が一丸となって取り組める契機になると認識しております。

 そして、基盤法の二十一条で、地域計画の実現に向け、農業委員会が農家の皆さんに積極的に働きかけることを法律に明記いただきました。

 現在、農業委員会は、法律上は、農家の皆さんから申出があってから農地の利用関係の調整、売買、貸借のあっせんに動くという受動的な立場でございますが、今回の改正で、能動的に地域のためにアクションを起こせるということが非常に重要な点と認識しております。

 課題としましては、法定化の取組に当たっては、基盤法の十八条に、農業者などによる協議の場の設定、これが決定的に重要だと思っております。これは、市町村のリーダーシップの下、JAさんの農業生産や販売の問題、土地改良区さんの農地整備などの知見を持ち寄って地域のグランドデザインを描けるか否か、それが成否を握っていると認識しております。

 それを踏まえて、私ども農業委員会では目標地図の素案を作るとされておりますが、現場の委員会の中には、不安というか、どきどきしているわけであります。本当に令和七年度までに自分たちだけで作り上げることができるのかという不安でございます。地域の農業の実態、また農業委員会の体制など、様々な市町村、農業委員会の実態を踏まえますと、農業者の今後の営農意向や農地の貸借意向を地図に落とした、粗い、そういう素案を作る委員会から、地域の農業を担う者ごとに利用する農地、農地の利用が明確になった、ほぼほぼ完成版に近い地図の素案ができる農業委員会まで、幅広く存在するということを御認識いただきたいと思います。

 そして、農業委員会によっては、事務局の職員が一人しかいない、又は皆さん兼務で専門の職員がいない、そういう事務局が少なくございません。目標地図の作成に当たっては、市町村の農政部局と農業委員会の事務局、この連携体制をいかに構築するかということが一丁目一番地だと思っております。

 そういうことを踏まえましても、法律の施行当初は、JAさんの農作業受委託なども活用して順次目標地図の完成度を上げて練り上げていくということになると思いますので、これは息の長い取組になるというふうに考えております。

 二番目の農地バンクの抜本的見直しにつきまして、意義でございますが、基盤法の第二十二条で、農地バンクの事業推進に当たっては、「地域計画の達成に資する」と明記されたことを私個人的には非常にうれしく思っております。地域計画の達成に資するということになれば、バンクさんは、農業委員会、市町村など現場の関係者とともに計画の実現を目指す同志的な、より身近な存在になることを強く期待しているところでございます。

 また、バンク法の第十八条で、農地バンクがバンク計画の策定に当たって農業委員会の意見を漏れなく聞くと位置づけられました。これによって、農業委員会は、バンク計画について、現在の極めて限定的な関与から全面的な関与が可能となり、農業委員会とバンクさんの一体的な取組が進むものと期待しております。

 一方、この課題については、市町村の基盤法による利用集積計画を新たなバンク計画である農用地利用集積等促進計画に統合、一体化することについて、農業委員会を始め現場では戸惑いと不安があることも事実でございます。この課題は二点ございます。

 一つの課題は、農地バンクさんが本当に農地法三条以外の農地の権利移動に遺漏なく対応できるのかということであります。農地バンクさんが間に入ることによって、農地の権利設定の手続について、全て都道府県の知事さんが扱うことになります。これに伴う手間や時間の発生を考えたり、また、小作料の収受などの問題がございます。これに対して、農水省さんは事務の抜本的な簡素化などをうたっていらっしゃいますので、一刻も早くその姿をつまびらかにしていただきたいと思うわけでございます。

 二つ目の課題は、市町村の利用集積計画による利用権設定がなくなることへの戸惑いでございます。一九八〇年、農用地利用増進法、基盤法の前身の法律でございますが、そこで、耕作権の強い農地法三条に基づいて、一旦農地を貸したら戻ってこない、そういう不安を払拭するために、期間の定めのある賃借権である利用権を設けることによって、期間が満了すれば農地が確実に戻って、安心して再設定ができる、これを繰り返して、現場に果たしてきた役割は非常に大きなものがございます。

 この制度がなくなってしまうということに対して、やはり現場では戸惑いがあるということでございますが、しかし、今般の改正で、バンク法の第十八条第十一項に基づいて、農業委員会がバンクさんに対して農用地利用集積促進計画を要請できることを明記いただいております。

 これと農用地利用集積促進計画に関する都道府県知事の認可権限を市町村長に移譲することをセットで運用いただければ、現在のように毎月市町村で利用集積計画を決定、公告しているのと同等、むしろ現行の利用権設定にバンク特約がついたと認識、運用すれば、農地バンクへの農地集積が促進されて、地域計画への取組と一石二鳥の効果をもたらすと思慮しております。何とぞ、政府におかれましては、このような取組について前広に御指導いただけたらと思うわけでございます。

 三点目は、多様な農地利用でございます。

 多くの農業委員会では、農地利用の最適化に取り組む際に、担い手に直ちに集積できないいろいろな条件の悪い農地、また、遊休農地を解消する上で直ちに非農地判断できない農地、そういう農地に苦慮しているわけであります。これらの農地に時間とコストをかけて圃場整備がすぐにできるわけもないわけでありますので、暫時遊休化したり、遊休化の度合いが増して対応に苦慮しているわけであります。

 しかし、今般、活性化法で、農用地保全として放牧、鳥獣害緩衝帯、ビオトープなどなどの取組が明らかにされ、補助事業にもつながるということで、地域計画と取組をうまく活用して、地域全体の効率的かつ総合的な取組と持続的な土地利用の実現に資するものと思っております。このような、圃場整備のように多額のコストと時間を要する手だてに代わり、コストをかけずに農地保全を行える手だてが講じられたことの意義は大変大きなものがあると思っております。

 ただ、農地法や基盤法に比べ、活性化法は、私ども農業委員会、場合によっては地元の周知がまだまだ低いと思いますので、そのPRなり周知、指導方が非常に大きな問題となります。

 この法案の課題があるとすれば、基盤法で進める地域計画とこの活性化法の活性化計画、二つの計画があるわけですが、これが現場で調和して取り組めるようなことが大事であり、競合したり、間にぽてんヒットで落ち込んでしまうような、また、二度手間、手戻りがないような整然とした運用が大事かと思っております。

 最後に、農地法の下限面積要件の撤廃について申し述べます。

 意義としては、やはり農業者の減少、高齢化が進行する中で、農村の定住、活性化、また野菜、果樹など多様な新規参入、さらには半農半Xの方を推進していく上で、また、特に中山間地域の振興を図る上では意義があると思っております。

 ただ、課題としては、現場の農業委員会におきましては、この下限面積要件は農地法第三条による権利移動を判断する際の有力な根拠条文になっていることは明らかなわけであります。ただ、下限面積要件がなくなった場合、その場合、やはり投機的な農地取得が行われるのではないかなどの不安があるわけであります。

 一方、下限面積要件を廃止しても、農地を全て効率的に利用する、常時農業に従事する、地域の調和要件、周辺の農場に悪影響を及ぼさない、こういう要件は残るわけであります。

 また、今般の地域計画の目標地図に基づいて農地の集約化を進めていくことになります。こうした動きと半農半Xなどの農地利用について、いかに調和させていくのか。地域計画の中で、農地の権利取得に当たってのルールづくり、その運用の徹底を期していただきたいと思うわけでございます。

 以上、この法案について、その意義と課題を申し述べさせていただきました。

 参考資料にもございますように、農業委員会系統組織におきましては、市町村、農業委員会、農地バンク、関係機関が一体となって人・農地プランの作成に取り組めるよう、その法定化を要望してまいりました。また、それを見越して、本年度の事業推進も計画しておるところでございます。

 そういう意味では、全国の委員さんは、この国会の審議を瞠目、刮目して、固唾をのんで見守っていらっしゃることと思います。どうか、四万人の農業委員が伸び伸びと、そして誇りを持って仕事ができるよう、枝ぶりのよい法律をお作りいただきますことをお願い申し上げまして、私の発言とさせていただきます。

 今日はありがとうございました。(拍手)

平口委員長 ありがとうございました。

 次に、山下参考人、お願いいたします。

山下参考人 山下でございます。よろしくお願いします。

 今日は、こういう機会を設けていただきまして、大変ありがとうございます。先ほど委員長から忌憚のない御意見を言ってくれと言われたので、私も意を強くして、忌憚のない意見を言わせていただきたいと思います。

 私の発言する内容は二つあります。

 一つは、大きく農政の全般についての問題です。この大きく農政の全般の問題がいろいろなところで影響を与える、農地だけじゃなくて、輸出の問題とか、あるいは食料安全保障とか、いろいろなところに影響を与えているので、その話からスタートさせていただきたいというふうに思います。

 まず、資料の一ページ目にありますけれども、農政の目的とは何でしょうか。実は農家所得は、はっきり言って、もう向上されました。これはもう農政の目的として達成されたんです。その後、ただ、食料安全保障とか多面的機能、これは、農政が所得が向上した後に掲げた目標です。

 ところが、それをやるためには、水田を水田として利用するからこそ、多面的機能も発揮できて、農地を確保して食料安全保障が達成できるわけです。ところが、実際やっているのは何かというと、水田を水田として利用しない減反を五十年間も続けているわけです。

 その結果、何が起こったのか。次のページを開けていただきたいと思います。

 その上の方は、米の生産量はこの五十年間で半分以下に下がってしまったということです。こういうことを行っている国が世界にどこにあるんでしょうかということなんです。

 二ページ目の下を見ていただきたいと思います。

 世界の米の生産量は増えています。平均して三・五倍増えています。ところが、日本だけは減少している。これも、日本の財政赤字と同じように、ワニの口なんです。世界は上がっている、日本は下がっている。

 次のページです。

 単収です。空からヘリコプターで、あるいは飛行機で種まきしているカリフォルニア農業の米の単収の方が、日本で田植機で一本一本丁寧にまいている日本の米の単収よりも、何と一・六倍に上がっているわけです。一九六〇年のときは、中国の米の単収は日本の半分でした。もう抜かれました。

 先ほど豊田市の方が説明されましたけれども、実は、私、このデータをトヨタの内山田会長以下のトヨタの技術系の幹部の方に説明したことがあります。そのときに、彼らが一様に驚きました。何と言ったかというと、日本の自動車業界は世界一生産性が高いと思っている、日本の米も同じだと思っていた、ところが、何ですかこれはということなんです。日本は、減反をすることによって、米の品種改良、増産のための品種改良を抑制してきたわけです。それが先ほどのワニの口になっているわけです。

 では、今、食料安全保障とか、食料危機が起こるんじゃないかと言われています。輸入が途絶したとき、どうなるか。必要な米、終戦直後の配給からやると、今、一千四百万トン必要なんです、今の人口からすると、少なくとも。

 ところが、今年、農水省が提示した米の生産目標数量は六百七十五万トンなんです。これは私にとっては物すごくショッキングです。私が農水省に入ったとき、一九七七年、昭和五十二年の米の生産量は千三百十万トンなんです。それがもう半分ぐらいになってしまった。これでどうするのか。ほとんどの国民は飢えます。

 でも、減反を廃止して、今の水田面積全てに米を作付して、単収もアメリカ並みの単収にすれば、一千五百万トン生産できます。一千五百万トンの生産して、どうするか。価格は下がります。国内で七百万トン消費します。残る八百万トンは輸出するんです。

 食料危機が起こったらどうなるのか。輸入も、小麦もトウモロコシも牛肉も輸入できません。そのときには、輸出していた米を食べるんです。ということは、平時のときの輸出というのは、危機のときの食料備蓄の役割を果たすわけです。これは金がかかりません。

 日本は今、政府は、トウモロコシとか小麦とか大麦とか、あるいは米の百万トンの備蓄なんかをやっています。でも、輸出を八百万トンすることによって、危機のときの備蓄の役割を果たす。このとき、一千五百万トン、国内の消費量が七百万トン、米だけで自給率は二一四%になるわけです。これだけで、カロリーベースの五〇%の目標は優に達成できます。でも、何でそれができないんでしょうかということなんです。

 次のページを見ていただきたいと思います。

 農地面積。食料安全保障の基礎は農地です。だから農地改革をやったんです。でも、その農地がどんどんどんどん減少されてきました。今は四百四十万ヘクタールあります。終戦直後、六百万ヘクタールあります。それでも飢餓が生じたわけです。それでも小学校の校庭を芋畑にしたわけです。

 今、危機が起こると何が起こるか。石油も途絶します。肥料も農薬も、農業機械も動かせません。単収は下がります。そうすると、一千万ヘクタール以上必要なんです。そうすると、ゴルフ場をいかにして農地に転換するか、そういうことを、真剣に有事法制を考えておかないと駄目なんです。でも、そんな取組は日本政府のどこにもないわけです。今、危機が起こったら大変なことになるわけです。

 農地の問題に移らさせていただきたいと思います。

 農地の問題、全体の話なんですけれども、農地の流動化が進まない理由、二つあります。

 一つは、ゾーニングがちゃんとやっていない、転用規制もいいかげんだ。日本の農地法というのは、高度成長時代、日本三大ざる法と言われたんです、三大ざる法の一つ。残念なことに、三大ざる法のうち二つは我が農林省にあったわけです。もう一つは食管法です。でも、食管法はなくなりました。でも、残念ながら農地法はまだ残っているということでございます。

 だから、ゾーニングがちゃんとしていないから、転用期待を持ってしまうわけですね。したがって、貸しておくよりも持っていた方が、いざ転用させてくれといったときに、人が現れたときに転用できるというので、なかなか人に貸さない、こういう状況になるわけですね。

 もう一つは、減反で米価を高くしているので、零細な兼業農家も滞留してしまったということです。農地が出てこないわけですね。

 だから、基本的な問題は、農地が出てこないところに問題があるわけです。ゾーニングしかり、減反政策しかり、農地を出してこないと駄目なんです。

 では、何をやるのか。次のページを見ていただきたいと思います。

 実は、これで私は農林省を辞めたという感じなんですけれども、何を言ったかというと、減反を廃止します、そうすると米価が下がります、兼業農家は農地を出してきます。これに対して、主業農家に限って直接支払いをすれば、主業農家の規模が拡大します、コストが下がります。収益が上がるので、兼業農家に払う地代も上昇するわけです。みんながハッピーになるわけです。

 その下のグラフを見ていただきたいと思います。

 規模が拡大するとコストが下がります。ところが、一ヘクタール未満、一番左の方です、一ヘクタール未満の都府県の平均的な米農家の収益というのはマイナスなんです。だから、マイナスのところを、ゼロ円の米所得に十戸掛けようが、二十戸掛けようが、一万戸掛けようが、ゼロはゼロなわけです。ところが、三十ヘクタール以上の農家に農地を集積すれば、その人だけで一千六百万円近くの所得を稼いでくれるわけです。それを地代としてみんなで分け合った方が農村の活性化になるわけです。

 つまり、構造改革をするということは明るい農村をつくることになるわけです。それが、ちょっと省略しますけれども、次のページで書いているところです。

 これはずっと昔から言っていましたけれども、実は、二〇一一年の三月に、JA、農協が全く同じ主張を、このときだけで、その後は何もないんですけれども、やっているということを御指摘させていただきたいと思います。

 大きな話の最後なんですけれども、農政の総合性が失われたということなんです。

 戦前の日本農業の二つの課題がありました。一つは、零細農業構造の改善です。これは残念ながら今日まで続いています。もう一つは、小作人の解放です。小作人を解放する手段として、もちろん農地改革をやりました。その前に実は農林省は、食管法を利用して、小作人米価を高くして地主米価を低くして、事実上、地主制を解体していたわけです。つまり、食管制度を利用して小作人の解放をやっていたわけです。

 そういう総合性が今の農政にはなくなってしまった。減反は減反、農地は農地、農村振興は農村振興、みんな総合性がないわけです。

 根っこは米価の問題があるわけです。農地を流動化するためにも、米価を下げて、農地を出す必要がある。農村振興のためには、明るい農村にするためには、構造改革が必要だ。輸出促進するためには、当然価格競争力を持たなければならない。それから、食料安全保障のために農地を確保するためには、農地を農地としてフル活用する必要がある。

 それから、高い米価で消費者に迷惑をかけているわけです。三千五百億円の財政負担をして、普通なら、財政負担をして消費者に安く財・サービスを提供するのが普通の政策なんです。ところが、減反政策だけは、三千五百億円の財政負担をして消費者負担を高めている政策なんです。

 今、小麦の価格が上がって大変だと言っていますけれども、とんでもない話なんです。小麦の価格なんて大したことないんじゃないですか、一七%ぐらい上がったって。日本の米というのは、国際価格の二倍も三倍も高い米で、ずっと五十年間、食わせているわけです。だから、今もし消費者対策をやるとすれば、米の減反を即時撤廃するということです。あるいは段階的に緩和していくんです。それが消費者対策です。

 次、農地の話に行きたいと思います。

 実は、柳田国男という、後に民俗学者になる、農林省の私の最初の先輩なんです。柳田国男は何を言ったか。僅か二十八歳のときにすごいことを言っているわけです。規模を拡大して零細分散錯圃を解消するためには、反対者が三分の一なら強制的に交換分合するとか、隣接農家に先買い権を与える、先買い権というのは先に買う権利です。つまり、自分の横の人が農地を売りに出そうとすると、その人の農地を先に、ほかの人に先駆けて買うことができる。そうすると、農地が連担するわけですね。規模を拡大すると同時に、農地を連担する、集約化する。それと同時に、今の農地バンクのような発想も彼はもうちゃんと言っています。

 それを徹底的に、その考え方に近いものを徹底的にやったのがフランス農政です。

 一九六〇年、同じ頃に基本法を作りました。そのときにやったのは、ゾーニングの徹底と、対象農家を主業農家に限定するという政策です。それと併せて、SAFERという農業公社をつくりました。SAFERにあって日本の農地保有合理化法人とか農地バンクにないもの、それが先買い権なわけです。

 農地を売る人が出てくる、そうすると、その情報は全部SAFERに集まります。SAFERが買うか買わないかを判断します。先に買うことができるわけです。それで集積して、担い手に移す。こういうことができたわけです。

 次のスライドをお願いしたいと思います。

 結局、本当にやるべき農地改革は何ですか。

 養父市の特区を認める際に、荒廃したら自治体が買い戻すという特約を、条件をつけさせたわけですね。荒廃したら駄目だというのは、別に株式会社だけの話じゃないわけです。農家もやります。そうすると、荒廃したら、農家であれ株式会社であれ、荒廃させた人から収益還元価格で政府が買い取って、それを農地バンクを通じて担い手に配分する、こういう政策がなぜ取れないのか。

 それから、中間管理機構に先買い権を与えるべきだというふうに思います。これが、日本が農地管理事業団法案からいろいろやってきたんだけれどもなかなか流動化が進まなかった、フランスは流動化が進んだ大きな違いだと思います。

 最後に、そこに、下にありますように、ゾーニングを徹底した上で、フランスには農地法なんかないんです。確固たるPOSというゾーニング制度があります。ゾーニングさえしっかりすれば、農地は守れるんです。農地法なんて要らないんです。

 実は、農地法というのは、農林省は作るのに反対だったわけです。ところが、マッカーサーと池田勇人が、あれは防共政策のために必要なんだというので作らせたのが農地法なんです。もう防共政策の意味はなくなっています。もうソ連はなくなっています。もう農地法はやめてゾーニングをしっかりやる、これが最も重要な農地の改革だと思います。

 次に、先ほど参考人の方も言われましたように、下限面積の撤廃です。いいかげんな制度になっていますから、今更、下限面積を撤廃しても意味はないということもあるんですけれども、ただ、一団の農地の中に、あるところだけが、小さなところだけが転用されたり荒廃したり、そういうことが起こると、全体の農地に波及するという効果があります。したがって、先ほど言ったように、政府が買い入れて、その場合は、買い入れて譲り渡すということが必要だと思います。

 最後に、次のページだけを説明させてください。

 農村活性化法が審議されるということです。でも、我々は基本的なことを忘れています。人がいないと農村は活性化しません。地域は活性化しません。

 日本の農村振興は物すごくうまくいったんです。中国の今最高の内政問題は、三農問題と言われるものです。農村部の一人当たりの所得が都市部の一人当たりの所得の三分の一以下だということなんです。これが中国の最大の内政問題です。

 私、数年前に、中国の国務院に行って講演しました。そのときに彼らが言ったのは、日本には三農問題がない、どうやって日本は地域振興をやったんだと。それは、農村に工業を導入して、それで所得格差を埋めたんだと言ったら、それはすばらしい、我々も日本の政策を勉強したいというのが彼らのリアクションだったんです。

 ところが、今はその手法が使えません。なぜならば、製造業はGDPの二割以下になっているということなんです。GDPの中心になっているのはサービス産業なんです。

 サービス産業の特徴というのは、生産と消費が同時期に同じ場所で行われているんです。だから、フランスのポール・ボキューズのレストランに、食事をしようとしたら、フランスのリヨンに行かないと駄目なわけです。つまり、サービス産業の振興というのは人口集積と結びついているわけですね。

 それを今の農村地域の中でどうやるのか。農村は、一人の方が、広大な面積を耕作して、コストが下がって、収益が上がります。そうすると、農村地域という大きな地域の中で、人口を集積する地域、それから、ある程度規模の大きい、担い手による農業を行う地域、それを総合的にやるような地域政策が必要だ、そういうふうな政策に転換する必要があるんじゃないかなというふうに思います。

 以上、勝手なことを言いましたけれども、これで私の意見陳述を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)

平口委員長 ありがとうございました。

 次に、小田切参考人、お願いいたします。

小田切参考人 明治大学の小田切でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 何よりも、このような場をつくっていただいて感謝しております。

 私、大学で農村政策論を研究、教育しております。その立場から、主に両法案の中で活性化法について、そして必要な限りで基盤強化法について、お話をさせていただきたいと思います。

 まず、農村をめぐる状況ですが、次の四点があると思っております。

 一つは、何といっても、中山間地域で進んだ三つの空洞化、人、土地、村の三つの空洞化でございます。

 そして、この空洞化は、いつの間にか平場に里下りしております。今や非常に多くの地域が耕作放棄に苦しんでいる、そのように言っても過言ではありません。

 しかし、一方では、これに対してあたかも対抗するように、田園回帰というふうに我々が呼んでいる、若者が農村の中で活躍する、そんな状況が生まれております。そして、そのために仕事づくりも行われております。

 ただ、四番目に問題なのは、こういった状況は一部の地域に限られておって、そのために何が発生しているのかというと、従来の都市と農村の格差、すなわち町村格差ではなく、むしろ農村内部の格差が生じているということであります。その意味で、現下の最大の問題は、この村村格差をどのように解消していくのか、ここに一つの論点があるというふうに思っております。

 一方、こういった状況の中で、農村地域でも内発的な地域づくりが進みました。特に九〇年代後半、バブル経済が崩壊してリゾート開発が崩壊することによって、地域は内発的にしか発展しないんだ、そんな思いが特に西日本の中山間地域から湧き上がってきております。それを我々は地域づくりというふうに呼んでおりますが、これは、人材づくり、コミュニティーづくり、仕事づくり、この三つが一体的に対応したものだというふうに理解しております。すなわち、内発的、総合的、革新的な取組であります。

 この地域づくりは、先ほど申し上げた田園回帰や関係人口といわば好循環をもたらしております。地域づくりがあるところに田園回帰が起こり、そして、その田園回帰が地域づくりを更に強化するという好循環であります。例えば、高知県の集落活動センター、昨日も一日私は高知県におりましたが、そこでの取組は、若い女性の仕事づくりのプラットホームにもなっております。こんな農村地域での対応が徐々に始まっているのが現状であります。

 さて、それでは、政策はどうなっているのかということでございますが、二〇二〇年の食料・農業・農村基本計画、閣議決定していただきましたが、農政に新基調が表れております。

 私自身は車の両輪農政の回復というふうに言っておりまして、後ろの方にあります参考一、これは日本農業新聞の資料ですが、こういった発言もしております。もっと言えば、農村政策がいわば補助輪化していた、つまり産業政策のための地域政策であったのが、このバランスを取り戻しつつあるというふうに言ってもよろしいかというふうに思っています。

 そして、そのバランスを取り戻すために、何といっても農村政策の体系化が行われました。このバランスのための、それを十分受け入れるような農村政策の体系化でございます。

 これが、基本計画の中では、仕事、暮らし、活力、そしてそれを下部から支える仕組みというふうに整理されております。先ほど申し上げました地域づくりの三本柱とぴったり一致しているというふうに認識しております。私自身はこの基本計画作りには関与しておりませんが、しかし、まさにこういったあるべき農村政策が体系化されたというふうに理解しております。

 その上で、農村政策の具体化が行われました。新しい農村政策の在り方に関する検討会、長期的な土地利用の在り方に対する検討会、両検討会は、約二年間の検討を経て、今年の四月一日に最終的な提言をしております。

 その内容を簡単に紹介させていただきたいと思います。新しい農村政策の在り方に関する検討会の座長も務めさせていただいたということもあって、少し思い入れを込めてお話をさせていただきたいと思います。

 まず、仕事についてですが、農山漁村発イノベーション、多様な地域資源を、多様な事業分野で、そして多様な主体で、そこで展開していくということが言われております。

 そして、暮らしについては、農村RMO、いわゆる地域運営組織ですが、ここについて農政としてもしっかりとサポートしていく、そんな方向性が打ち出されております。

 さらに、活力、これは人材になりますが、農村プロデューサー養成講座という形で自治体農政の人材育成、あるいは、農的関係人口という形で多様な農への関わり、この中には当然、半農半Xなども入ってくるわけですが、そういったものへの支援。

 さらに、土地利用について言えば、農地を含めた農村空間としての持続的確保の仕組みづくり、これがまさに今般の活性化法につながるわけですが、こういった提言がなされております。

 そして、仕組みとしては、各省庁連携した、ワンウィンドーアプローチというふうに言っていいでしょうか、アクセスを一本化することによってホットラインをつくる、こんなことも行われております。

 思いを込めて書いたこの検討会の最後の文章でございます。あえて、その一文をここに書いておりますが、読み上げさせていただきます。

 両検討会においては、農村政策は農政全般に影響を与えることから、産業政策と地域政策のバランスの取れた農政の確立、すなわち、農政の車の両輪化を意識し、議論した。ここでいう両輪化とは、この二つの政策が単に並走することを意味するものではなく、両者をつなぎ、好循環を生み出す車軸づくりが重要ということである。こんな一文を書かせていただきました。

 このまさに両輪のイメージを次のページに掲げております。単に二つの政策が走るわけではなく、ここに車軸があって、そのことによって好循環が生まれる、こういったイメージを強く持っております。これがまさに新しい農政の中心部分に位置づくというふうに理解させていただきました。

 さて、残った時間で、法案の位置づけをさせていただきたいと思います。

 まず、枠組みでございます。これについて三点申し上げたいと思います。

 一つは、農地を含めた農村空間の持続性確保を両法案が意識している点がポイントだというふうに思います。農地だけではなく、むしろ農村空間と理解する、そのように位置づけることが重要であります。そういう意味で、両法案を一体的に審議する必然性、必要性がここにあるというふうに思います。もっと具体的に言えば、集約あるいは集積を図る農地と、粗放的土地利用等に転換する農地、これが恐らく一つの地域で同時に発生する可能性もある。そうであれば、この両法案が一体的に審議される、一つの体系となっている必要性があるというふうに感じております。

 そして二番目には、先ほど申し上げましたように、本格的な体系的農村政策がこの法案とパッケージされております。法案の中には直接議論されていない、例えば農村RMOの推進などもございますが、これが、言ってみれば、この法案の背景に存在して、二つの法案を支えているというふうに言っていいでしょうか。

 そして三番目、実は恐らくこれが一番重要だというふうに考えておりますが、農村住民によるビジョニングを意識している。将来ビジョンを自らの議論によって自らつくり出していく、これがビジョニングでございますが、それが両法案の中に位置づけられております。基盤法について言えば、人・農地プランの地域計画化、そして活性化法でいえば、地域提案の行政計画化でございます。

 このような地域からのビジョニングは、新しい農政に共通する理念だというふうに考えております。私自身は、それを、かつての農水省の地域農政という言葉を理解して、新地域農政、新しい地域農政が始まったというふうに考えております。

 更に言えば、このビジョニングは国土全体の課題でもあり、現在進められております国土形成計画の議論の中でも、地域管理構想という形で、同様に、例えば、小学校区単位で将来のビジョンをつくる、土地利用の将来像を描く、そういったことが議論されております。

 更に言えば、ビジョニングのための新しい手法、これは例えばフューチャーデザインなんというふうに言われておりますが、ビジョニングをするために未来人になる、そんな手法、少し変わった手法ですが、私たちも実は新潟県の上越市でこれを現在実践しております。そのことによってどんな可能性があるのか、実験的な実践をしておりますが、恐らく、ビジョニングの新しい手法として今後確立していくのではないかというふうに思います。

 そして、各論でございます。

 まず、活性化法について言えば、農村RMO等が農山漁村発イノベーションを意識した農村空間整備の在り方を内発的に提案することが可能になっております。そして、保全管理を含む多様な土地利用の円滑な実現が可能になっております。そして、更に言えば、この活性化法は、将来、農村計画法へと大きく発展する可能性さえもあるような、そんな法律ではないかというふうに思います。

 そして、基盤法についてでございますが、先ほど横粂参考人からもございましたように、目標地図作りというのはビジョニングにまさにふさわしいものだろうというふうに思います。ただ、理解しなくてはいけないのは、大変時間がかかるものであり、あるいは柔軟な改定作業がこのプロセスの中に組み込まれる必要があるというふうに考えております。

 そして、地域計画には多様な担い手の位置づけが可能になっております。稲垣参考人がおっしゃっておりましたが、中心経営体のみではない、様々な経営体をそこに位置づけることができる、これも新しい農政だろうというふうに思います。

 そして、農地の権利取得の下限要件撤廃は、もちろん、稲垣参考人がおっしゃったような懸念事項もありつつも、多様な農への関わりを促進するものとして理解させていただきます。

 とはいうものの、この法案には幾つかの論点があるというふうに認識しております。

 取りあえず、二つの論点について掲げて私自身の考え方をまとめてみたいと思いますが、一つは、何といっても農地確保でございます。当然、ボトムアップ方式で農地利用を考える、そのことによるその集合と国家の必要な農地面積の間にはギャップが生じる可能性、これはあくまでも可能性ですが、そういった可能性があります。

 しかし、私自身は、そのギャップを明確化することが問題対応のスタートラインだろうというふうに思います。そして、そのギャップを埋めること自体がまさに農政全体の課題である、むしろスタートラインについた法律というふうに理解させていただきました。

 そして、二番目は、全国市長会等々から議論があります自治体農政への負担です。

 確かに、目標地図を作る、あるいは地域からのビジョニングは自治体に負担がかかるものだろうというふうに思います。ただし、忘れてはいけないのは、このビジョニングは政策のためではありません。むしろ地域のためのビジョニングであって、そのことが必要とされています。したがって、地方自治体自らが、国の支援を得ながら、負担感をより少なく進められる体制づくり、農林部局に対する人材の増強等々が考えられるんだろうというふうに思います。

 もちろん、現実的にはそれが難しいとするならば、近年、国レベルの政策として整備されつつある集落支援員等の、我々は地域サポート人材というふうに呼んでいます。これはもちろん、地域おこし協力隊、あるいは地域プロジェクトマネージャーなどの多様な新しい仕組みが現在形成されております。その積極的利用が期待されます。

 更に言えば、冒頭で述べました村村格差の下で、県のサポート機能が一層に重要になっているというふうに思います。今法案において県のサポート機能がどのように発揮されるのか、大いに議論していただきたいと思います。

 例えば、これも高知県で恐縮ですが、地域支援企画員制度、高知県の職員が現場に張りついていく、こういったことが地域づくりの推進のために明らかな力になっております。言ってみれば、村村格差解消の方策がそこで実現されているというふうに考えております。こういう形での県のサポート機能、これが一層重要になっている局面において、県の位置づけ、都道府県の位置づけ、これを更に議論していただきたいというふうに思います。

 恐らく論点はこれだけではなく多々あるというふうに思いますが、差し当たり、私自身が考える論点二つについて論じさせていただきました。先生方による更に奥深い議論、審議がなされることを強く期待しております。

 どうもありがとうございました。(拍手)

平口委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

平口委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。簗和生君。

簗委員 自由民主党の簗和生でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 四名の参考人の皆様には、御多用のところお越しをいただきまして、大変貴重なお話を拝聴させていただくことができました。心から御礼を申し上げたいと思います。

 また、これまでの長年にわたる様々な経験に基づく大変貴重な示唆をいただけました。本日は、それに基づいて御質問をさせていただきたいと思っております。

 まず、本法案の意義につきましては皆様からお話のあったところでございますが、改めて、今回、人・農地プランを法定化をするということにおきまして、これまでも、平成二十四年度からこの人・農地プランの取組というものは進めてきたという経緯がありますが、アンケートなどを実施はしている中で、それを地図化して、後継者がいない農地を見える化して、そして話合いにつなげていくということに至らないケースが各地で多かったということでございます。

 その実情、課題、どんなところが課題になって、そういうところになっていたか。そして、今回、この法案によってこれが改善をされて、実際に話合いがしっかりと進んで、そして目標地図が作成される、人・農地プランの実質化が実現する、これにつながる上でのこれまでの課題をもう一度皆様にちょっとお聞きしたいと思います。

 まずは、横粂参考人からお願いいたします。

横粂参考人 お答えします。

 これまでの課題という形でよろしいですかね。

 農業委員会サイドの立場としては、新しい、農地利用最適化推進委員、これがたくさん新しい業務をやっていただくんですけれども、それぞれそういう業務に対するやり方のノウハウがまだまだ定着をしていないものですから、その辺のところをいかに効率的にやるかということを考えております。

 それと、基本的に農家ニーズの把握ということですね。現場活動、これが非常に重要になってきまして、現場活動のノウハウをどうするか、この辺のところを、今までの活動の中で試行錯誤の中でやって、最近やっと現場活動のノウハウ等が把握できて、やや路線に乗ったかな、こんな状況であります。

簗委員 稲垣参考人にもお伺いをしたいと思います。

 実際、法定化をして進めていく中で、やはり農業委員会の役割は非常に重要になってくるというふうに思っております。特に、先ほど来もお話がありましたけれども、実際の、農地の所有者に対して働きかけをしていくということは非常に重要だと考えております。

 現場の全国の農業委員さんの活躍を見る中で、その辺が、今回、この法改正を契機にどのようにより積極的に農業者に働きかけをしていけるか。目標地図を作るという上で話合いをしっかりするわけですけれども、そこにおいてどのように農業委員会の皆さんがこれから活躍していただけるかという観点から、農業者への働きかけというところで、これまでの課題も含めて、御認識をお伺いしたいというふうに思います。

稲垣参考人 御質問ありがとうございます。

 農業委員会による農家への働きかけということにつきましては、お手元に資料を配付させていただいておりますが、これの後ろから二ページ目をお開きください。

 これまでも農業委員会では、農地利用の最適化を進める際に、三つのステップで取り組んでいこうじゃないかということを申し合わせてきました。

 とにかく現場を知ってください、農地を知ってください、人のことを知ってください、それを踏まえて話合い活動に臨んでください、結果、農地のマッチングにいくということで、これまでも第一ステップで、法律が改正された当時は、農地法の中に農地利用状況調査と農地利用意向調査ということで、遊休農地についての農家さんの意向を法律的にアプローチする手だてはあったんですが、最適化で大事なことは、遊休農地ではなくて、今使われている農地を使える人に算段していくということです。

 実は、これは先生の地元の栃木県の栃木市の農業委員会、多くの委員会がそうなんですが、やはり最適化が仕事になったときに、何をやるんだとみんな思うわけであります。そのとき、栃木市の会長さんは、最適化推進委員、そんなものは現場の農家は分からないぞ、名刺代わりに意向調査をやれと言って、栃木市では、一年かけて最適化推進委員さんが農家の戸別訪問をして、将来の農業をどうするんだ、農地をどうするんだ、こういう活動が全国点々と運動的に取り組まれてきた。

 このことを令和元年のバンク法の改正の中で、二十六条の三項で、所有者等の意向を把握しという手だてを講じていただきまして、全国的に意向調査をやる。そして、現在、タブレット等も予算的に手当てをいただいて、これからは、農業委員さん、最適化推進委員さんによる、農家さんの御意向をいかに把握して、それをデータ化していくということであります。

 今回、私ども農業委員会では、改正農業委員会法が五年たちまして、新たな農地利用の最適化に一歩取組を進めるべきだろうということを組織決定して取り組んでいるわけで、そこに今回の法律改正も乗ったわけですが、その前提で、この青字の三つのステップの前に、日常活動ですね。

 農業委員さん、最適化推進委員さんというのは、基本、農業者です。農家の方です。まあ、中立委員の方もいらっしゃいますけれども、基本、農家のことですから、日々の営農活動、日々の経営の中でいろいろな農家さんとの接点があるわけでありますので、そこに、農地の見守り活動とか、仲間への声かけ活動ということで、農業委員会で組織的に調査しましょうとか、パトロールをしましょうとかという組織立った取組以前に、日々の、三百六十五日の活動の中で、農家さんと接点を持って意向を把握する、これを今徹底的に取り組もうとしているところでございます。

簗委員 ありがとうございます。

 次に、協議の場をいかに機能させるかということについてお伺いしてまいりたいというふうに思います。

 法の施行、そして、その後の策定期間を含めて約三年程度ということで、今、農水省の方でこういう見立てをしているわけでございますけれども、その間にしっかりと協議をして、そして、できるだけ多くの地域にしっかりとした地域計画を作ってもらうということが必要になると思います。

 当然、地域には多種多様な事情がありますので、すぐに完成度の高いものを、先ほどお話がありましたけれども、そういうものが作れない地域もあるでしょう。また、担い手を、外から来ていただいて農地の受け手になっていただくということにおいては、策定後にそういったことが起こるかもしれません。また、輸出やみどりの戦略というものに基づいて新たな取組を今後展開していく、そういう変化に対応して、前向きに計画を策定するという事情も出てくると思います。

 しかしながら、これまで人・農地プラン、これを長年、数年やってきた中で、なかなか進まない地域もある、一方で順調に進んでいる地域もあるという中で、やはり全体として、今待ったなしという農地の問題については全国でこの認識を共有して、国と地方がしっかりと連携をして全国の底上げを図るという意味も含めて、なるべく地域計画をしっかりとこの三年間で作っていただくということ、これは私は大変重要であるというふうに思っております。

 その中で、協議というもの、これもこれまでも行われてきたわけでありますけれども、先ほどの質問にもちょっと重なる部分もありますが、改めて、今回新たにつくる協議の場、これがより有効に機能していく上で必要になること、これを横粂参考人からお伺いしたいと思います。

横粂参考人 協議の場をどのようにつくり、しっかりしていくか、こういうふうに御質問を受け止めさせていただきました。

 それで、今までは、人・農地プラン、これが一つの話合いの基礎のベースでありました。そういった場合、基本的には、人・農地プランは市町村が作ることになっていますけれども、現場活動の話合いの場においては、推進委員、農業委員、特に農業委員が中心になって実際にはやっております。

 ですので、これからの地域計画を作るについても、目標地図を、話合いだけじゃなくて、将来の具体像をどうしようかということで地図に描いてしまうんだから、それぞれの言いたい人が、意見は常に多様になるんだけれども、将来の目標が目標地図として明確になるので、非常に協議の場の的が絞りやすい。その中に、農業委員、推進委員が地域に密着、形にして、会議を主導すれば、意外とまとまりができる。

 つまり、地域計画が、案ずるより産むがやすしで、今回はしやすいじゃないか。ただ話合いだけをしなさいよというと多様な意見の場になってしまうんだけれども、明確な目標地図を作る、こういうポイントができましたので、話合いの成果が目に見えて、見えやすいということです。

 それから、あと、担い手がいないところについては外から担い手をとか、そういった形で地域の計画をどう担うのかというような形で、ちょっと質問の意図を受け止めさせていただきました。

 特に、中山間地の場合ですと、話合いをして、みんなでどうしようといっても、話合いの当事者だけでは事が解決しないわけですね、やはり。そこで、いろいろ外からIターン、Uターン、そういった形で、新しい農山漁村の活性化、今回この審議の中にありますので、いろいろな方、仕組みがかなり多様になってきましたので、外から、つまり、中山間地の中でもいろいろな要素が導入できる方法ができたので、こういった地域計画もまとめやすい形になるのではないであろうかな、こういうふうに思っております。

 いずれにしても、今回の改正の中で、地域計画をまとめるということ、そのポイントである一番分かりやすい目標地図の素案を農業委員会に作れ、やりなさい、それで、後は段階的に協議をしなさいということですので、この仕組みに乗っかれば、内心を言うと、うまくいくんじゃないかな、こんなふうに思っております。

 以上です。

簗委員 ありがとうございます。大変貴重な御指摘をいただきました。

 先ほど冒頭のお話でもありましたけれども、各段階においてそれぞれの主体にやっていただくことが明確化されている、法定化されている、これがやはり重要だということで、そして、その地域計画の中のまさに要となる目標地図、これが農業委員会さんに担っていただくということで、活躍の場がこれまで以上に、そしてまた、その役割も大変大きくなるということで、そういったところで役割を果たしていただけるというふうにお話をいただいたというふうに思っております。

 先ほど来ちょっとお話がなかった点を確認したいんですけれども、協議の場でお話をしていただいて、それぞれの農地利用の在り方を議論していただくということの一方で、やはり将来の生産品目を決めていく。これは、やはり今、食料安全保障のお話もありますので、様々な作物を自給化していくという流れもあります、水田をどのように活用していくかという話もあります。こういう中で、生産品目の在り方を、より将来を見越して議論をしていく。そこにおいては、随時変更等もあるかもしれません。

 こういったいわゆる営農部分、農業振興の部分と農地利用の部分、これをうまく整合させながらこの協議の場を持っていかなければいけないと思うんですけれども、これまでそういった取組をどのように進めてきて、今後、この法律の改正を機に、またどのようにそれを展開していくか。この点について、横粂参考人と稲垣参考人、お二人から聞かせていただきたいと思います。

横粂参考人 生産品目ということについては、農業委員会の業務よりも農政部局の方のことになるんですけれども、地域地域で生産品目というのがかなり固定化をしておったり、こういうことを新しくやろう、そういったときに、農業委員会としては、そういったものの取組がうまくいくように、認定農家だとか、そういったことを上手にまとめ上げていくということで、生産品目そのものについてよりも、生産品目を何にしようかとか、どういうものを作ったら売れるんだろうだとか、野菜だとかイチゴとかね。そういった経営が成り立つような相談、そういったところに農業委員会としては関わっているし、これからも支援をしたいということであります。

稲垣参考人 質問ありがとうございます。

 生産現場で何を作るかということが、まさにこの間、人・農地プランが現場でなかなかうまくいっていない理由の一つ、農業委員会が中心になってやる場合で、なかなかもじもじしていた部分は、まさにその生産の部分ですね。

 その生産の部分に農業委員会だけではなかなかコミットし切れていない、いわゆる専門分野ではないということで、そういう意味で、今回、基盤法の十八条の協議の場、そこで、生産であるとか土地利用の問題であるとか、その地域のグランドデザインを描く、そこをまず徹底的にやっていただく。その生産、何を作るのか、それから、米から野菜に替えるのかとか、樹園地であれば果樹をどうしていくのか、そういう生産ベースの話については、やはりJAさんを中心とする生産の部隊がまずしっかりとグランドデザインを描いていただいて、それに基づいて地図作りとかというのが始まってくる。

 そういう意味で、今回の改正は、人・農地プラン単発、単発といいますか、やや農業委員会が農地の問題で取り組んでいた部分のその前段で、地域の農業のありようをまずみんなで議論を重ねて、それから作り込んでいく。そこがうまく機能すれば、農業委員会の地図作りもスムーズにいくのではないかと期待しているところでございます。

簗委員 ありがとうございます。

 次に、両法案の関係についてでございます。

 先ほど来参考人の皆様からも、やはり一体的に進めていくこと、調和を持って進めることが重要だというお話がありました。すなわち、優良農地を確保することと、それから、農地の保全管理、いわゆる農村を活性化するという、今回、法律の中でそれを位置づけたわけですけれども、これをバランスを取っていくということであります。

 政策的にも、農地の保全については、様々な政策努力を払ってもなお農用地として維持することが困難な場合に限りということで定義をしていることもありまして、まずは、やはり農地をしっかり優良農地として確保していただくということ、そして、どうしても駄目な場合にはということで、保全という中で、粗放的利用ですとか、あるいは様々な、どうしても駄目な場合には林地化するという話になってございます。

 この辺のバランスの取り方、これから、まずは協議の場で、これを一体的な議論の場としてつくり上げるということも重要ですし、また、協議の中で、これをいかに相互バランスを取って進めるかということも重要になると思いますが、この辺について、小田切参考人からお伺いしたいと思っております。

小田切参考人 御質問ありがとうございます。

 まず、両法案の位置づけなんですが、二重にあるというふうに思っています。

 少し抽象的な言葉ですが、攻めと守り。優良農地を守っていくという意味で、優良農地を確保していくという意味で攻め。しかし一方では、農村空間を、必ずしも農地だけではなく守っていくという、そういった守り。この二つをつなげたという意味があろうかと思います。

 それから、もちろん、産業政策と地域政策、これをどういうふうに両立させるのかという意味合いで、二つの法案が調和しているというふうに考えます。

 その上で、優良農地をどのように確保していくのか、あるいは、仮に保全管理になった場合、どう考えるのかという論点でございますが、これは、先ほど言いましたように、むしろ保全管理をしなければ農村空間全体を守れない、そんな立場で、ビオトープにしたり、あるいは鳥獣被害の緩衝帯にしたり、そのような発想が出てきて、これ自体もまた農村空間を守るための方策だというふうに理解しております。

 以上でございます。

簗委員 ありがとうございました。

 質疑時間が来てしまいましたので、山下参考人には質問できませんでした。本当に皆様から貴重な御意見をいただけたことに心から感謝を申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

平口委員長 次に、金城泰邦君。

金城委員 おはようございます。公明党の金城泰邦と申します。

 今日は、参考人の皆様には、お時間をいただいて、様々意見を述べていただきまして、ありがとうございました。

 私の方からも、何点かお伺いをさせていただきたいと思います。

 農業経営基盤強化促進法の改正案に関してですが、まず、横粂鈞会長にお伺いしたいと思っております。

 今回、地域計画の策定が盛り込まれ、人・農地プランが法定化されることになりますけれども、それに伴いまして、農業を担う者ごとに利用する農用地等を定めて目標地図に表示することとなりますが、その素案を農業委員会が作成するということになっております。関係者の方々は、この作業が事務的に負担増にならないかという懸念の声があるようでございます。

 横粂会長も、これまで御自身が取り組んでこられた経験があるかと思いますが、その当事者として会長はいかがお考えになるのか、伺いたいと思います。

横粂参考人 地域計画を作成する上でこれが形骸化しないだろうか、又は、主体となる農業委員会としてどのようにイニシアチブを取ることができるのか、こんなふうにちょっと受け止めをさせていただきました。

 確かに、農業委員会は、現場活動で、非常に現場を知っているわけですけれども、人・農地プラン等については、非常に農業委員会と市長部局、こういうところが連携しておるところは意外とできるんですけれども、どうしてもプランそのものが事務的に、つまり、公務員側からできる傾向も、全国、ややできると思いますね。

 ですので、そういったときについてはやや形骸化の可能性が出てきますけれども、今回は、一番の大本を、一番現場を知った農業委員会にやれよ、こういう形ですので、しかも、それを目に見える十年後の目標地図、そんな地図はでたらめには描けぬ。ここをどうしようかということは出てくるんです。意外と分かりやすい形で議論がまとめられますので、形骸化することはなく、あくまで作るのは、素案は農業委員会であって、現場の人たちが話し合って、地域の人とも話をして、あそこの農地は、将来はあのおじさんができなくなったら誰がやるんだなんということは大体地元では分かっておるわけで、市役所の中ではそれは分からないんだけれども。ですので、そういったことが分かる。それを更に市部局がいろいろなまた公式な会議を重ねていく中で段階的に固めていきますので、今回については、非常に形骸化する要素は少なくなっただろう。

 ただし、一番大事なのは、農業委員会がそういうことを意欲を持ってプランニングをするときにしないと、逃げてしまうと、大本がこけると全てこけてしまいますので、やはり農業委員会がはっきりした自覚を持つことがこの政策を生かすことになるだろう、こう感じております。

 以上です。

金城委員 ありがとうございます。

 私は沖縄出身でございまして、地元の沖縄県の北中城村という村があります。そちらも農業新聞の四月八日の紙面にも掲載されて、紹介されておりましたが、やはり会長のおっしゃられたように、農業委員会が先頭に立ってアンケートを取ったりとかして、そういった問題解決加速化の支援事業を活用して、様々な農業関係者の方にワークショップ形式で意見を集約して、それを、農業委員会法第三十八条に基づき、意見の提出を村長に手渡した、そういったところを農業委員会が先頭に立ってやったという事例も紹介しておられました。

 このような形で、やはり会長としましても、全国の農業委員会においてもこのような作業や取組というのは可能であるというふうにお考えになるのか。また、会長がこれまで取り組んだ中で、ここが最も一番苦労したというところもあれば、ちょっとお聞かせいただきたいと思うんですが、よろしいでしょうか。

横粂参考人 二点、全国の農業委員会でこういうことが可能だろうかということでありますけれども、農業委員会でも、前回、稲垣委員が言われたように、多様な組織がありますので、楽勝でできるところもあるし、いろいろですので、この辺のところは、実際の運用の中で、いろいろな問題を抱える各農業委員会が対応できるような仕組みを考慮していただけるとありがたいだろうな、こう思っております。

 それと、この農業委員会、結果についてはいかにまとめるか、それから、いろいろな負担がかかるかどうか、こういう御心配があるかと思いますけれども、いろいろ新しい、最適化推進委員とか、そういった農業委員会の組織の在り方そのものが変わってきていますので、そういった点から、新しい農業委員会等の使命を果たすことがあれば、そんなに心配はすることはないだろうなと。

 確かに、いろいろ現場では、そんなことまでやれるかとか、昔のイメージの委員さんが結構多いこともありますので、ただし、新しい認識に立てば、必ずやこのことはうまくやっていけるかな、こう思っております。ただ、断定はできませんけれども、そのつもりでおります。

金城委員 横粂会長、ありがとうございました。

 今、新しい農村の取組に関してのコメントがありましたが、同じくこの改正案につきまして、今度は小田切徳美教授に伺いたいと思います。

 小田切教授は、新しい農村政策の在り方検討会で、人口減少を踏まえた新たな農村政策を提言されております。

 従来の大規模経営に加えまして、農業以外の事業にも取り組む者、例えば、農村マルチワーカーや半農半X実践者等、地域資源の保全、活用や農業振興と併せて地域コミュニティーの維持に資する取組を行う農村地域づくりの事業体など、多様な形で農業に関わる者を育成、確保し、地域農業を持続的に発展させていくという発想も新たに取り入れて施策を講ずる必要があると述べられております。

 つまり、農村政策サイドから、兼業、副業タイプの農業生産者を育成すべき政策対象として、それによる地域農業への貢献が期待されていると主張されております。

 改正案では、農地の集約化を行い、その農地の利用の最適化を推進することになりますが、その農地の活用、最適化の対象主体として、多様な形で農業に関わる者も可能と考えられておりますでしょうか。御答弁いただきたいと思います。

小田切参考人 御質問ありがとうございました。

 半農半Xを含めた多様な担い手、これが新しい農政の肝だというふうに考えております。

 この考え方は、例えば、新規参入政策を考える場合には、従来は専業型の新規参入が一般的でした。というよりも、専業型しかほぼ許していないというふうに言った方がいいというふうに思います。ところが、兼業農家自体も、ある種、安定性を持っていて、兼業農家からスタートして、場合によったら、兼業農家から専業化する、あるいは兼業農家を維持していくような、こういった多様なプロセスが必要なんだろうと思います。

 ところが、こういったプロセスを実現している、都道府県農政を見ても、多くはありません。例えば、島根県では半農半X型の新規参入政策というものが取られておりますが、他の県でそれが導入できない理由を聞くと、農政というのは産業政策だから、兼業農家をつくること自体はまかりならぬのだ、こういった議論が横行しております。

 そういう意味で、今回の農政において、その入口を広げたという意義は大変大きいのではないか、そのように考えております。

 以上でございます。

金城委員 ありがとうございます。

 同じく小田切教授に、農山漁村活性化法改正案につきまして伺いたいと思います。

 小田切教授は、雑誌に、二〇一八年三月の総務省、「田園回帰」に関する調査研究報告書を紹介されております。

 移住者が増えた地域の割合が高いのは、沖縄、中国、四国等であります。これらの地域では、従来から田園回帰傾向がレポートされておりましたが、データにもはっきりと表れている。この中で、沖縄では、離島部に移住者増加区域が多く、中国、四国では特に山地の脊梁部である県境付近でこの傾向が見られる。また、田園回帰は関係人口の厚みと広がりから生まれた現象とも記述されております。

 小田切教授は、沖縄の田園回帰をどのように分析され、今後どのような方向に進んでいくと考えておられますでしょうか。お願いいたします。

小田切参考人 どうもありがとうございます。

 私どもが総務省で作った報告書まで読んでいただきました。

 その中でもはっきりした傾向が出ておりますが、田園回帰が集中しているのは、離島及び中山間地域、すなわち、県境部分であります。

 その背景を探れば、何といっても、そこでは高齢化、人口減少が進んで、言ってみれば、危機が先行した、それと同時に再生も先行している、このようなメカニズムがあるというふうに思っております。そこにおける危機意識が高まり、そして、何とかしたい、そういった思いが若者に届いている。そして、若者が地域に入ることによって、その地域を更に面白くしていく。面白くなることによって、更に若者が入ってくる。移住が移住を生む、仕事が仕事をつくるという、そんな好循環が生まれております。

 沖縄においても、このようなメカニズムが一部の離島においては動き始めているというふうに認識しております。

 以上でございます。

金城委員 ありがとうございます。仕事ということでありました。

 人口減少が進む農山漁村に関して、開かれた地域づくりに取り組む地域住民、地域で自ら仕事をつくろうとする移住者、また、その候補としての地域おこし協力隊、何か地域に関われないかと動く関係人口、これらの動きをサポートするNPO法人や大学、また、SDGsの動きの中で、社会貢献活動を再度活性化し始めた企業などの多彩なプレーヤーが交錯するにぎやかな過疎、それは、人口減だが、人材増として地域を活性化させると主張されておられます。

 多彩なプレーヤーが交錯するコミュニティーは、活性化する反面、これまでの価値観と相反することがあり、生活全般にわたり調整が必要となると考えておられます。

 過疎化する農山漁村が多彩なプレーヤーによって活性化する条件、それについて、どのようなものがあると考えていらっしゃいますでしょうか。

小田切参考人 これもまた私の論文を読んでいただき、御質問していただきまして、ありがとうございます。

 今おっしゃっていただいたように、にぎやかな過疎、様々なプレーヤーが交錯する、これが地域づくりのために必ず必要だろうというふうに思っています。

 それでは、その条件は何なのかというと、まさに様々のプレーヤーが一堂に集まるような場があることが重要です。その場は、例えば、コミュニティーカフェであったり、あるいは、場合によったら公民館であったり、そういった場があることによって、そこで様々な主体がごちゃ混ぜになる。

 このごちゃ混ぜという言葉は福祉の言葉ですが、私は好んで使っておりますが、世代がごちゃ混ぜになる、あるいは多様な価値観がごちゃ混ぜになる、そのことによって新しい社会が切り開かれる、これがまさに地域づくりで展開しているメカニズムだ、そのように理解しております。

 以上です。

金城委員 教授、ありがとうございました。

 教授は、ごちゃ混ぜということが大好きだということでした。

 沖縄では、ごちゃ混ぜのことを、方言でチャンプルーというんですよ、ゴーヤチャンプルーとかが有名ですけれども。沖縄は、チャンプルー文化というものがありまして、まさにその教授のおっしゃるようなごちゃ混ぜの文化が根づく地域じゃないかなと感じました。

 また、この田園回帰についてですが、関係人口の厚みと広がりの上に生まれた現象だと理解することができ、その増大が実現されれば移住者が枯渇してしまうことはないと主張されていることに関しまして、沖縄県の主たる産業は観光でございますが、観光に来る方、観光者は関係人口に含まれるとお考えになりますでしょうか。また、観光と農業の関係、つまり、観光としての体験農業などは、関係人口の厚みと広がりと考えてよいと思われますでしょうか。

 このような施策を拡充することが、過疎地域への移住が増加し、農山漁村の活性化の下支えに貢献するとお考えになりますでしょうか。伺いたいと思います。

小田切参考人 これもありがとうございます。

 関係人口をめぐる御質問でございますが、まず一番最初に、関係人口の数について少しお話をさせていただきます。

 私どもが国交省で調査をして、かなり精度が高い調査をしておりますが、実は、訪問型の関係人口は、三大都市圏で八百六十一万人いる、そういう数字が出ております。膨大な数字であります。そういう意味では、関係人口は決して侮れないという存在だと思います。

 そして、御質問の観光との関係でございますが、もちろん、一過的な観光、行って終わりでは関係人口ではありません。そこに継続的に思いを寄せる、あるいは継続的に訪問する、これが関係人口でございますので。しかし、一過的なものであっても、それが関係人口に発展していく、成長していく可能性というのは大いにあるというふうに思います。

 まず、入口としての観光、それを関係人口化して、そして、最終的には、我々は関わりの階段というふうに言っておりますが、あたかも階段を上るように、最終的には移住をするような、そういったプロセスもあるというふうに理解しております。

金城委員 ありがとうございました。

 やはり関わりから始まっていくということで、最終的に、その関わりの中から、教授は両輪農政の定着という考えを述べられておられますが、多様な形で農に関わる者が農政の対象となって、実質的に農業の担い手として位置づけられ始めている。先ほどもありましたように、農業の担い手の改革で、静かなる農政改革。この静かなる農政改革が始まっているということですが、このポイント、やはり食料・農業・農村基本法、この法律の関わりといいますか、それについて教授のお考えを述べていただければと思います。

小田切参考人 御質問ありがとうございます。

 かなり本質的な御質問をいただいたというふうに思っております。

 すなわち、今回の法案が食料・農業・農村基本法に影響を及ぼすのか、その改定を求めるのかどうか、そういった回答を迫られているというふうに感じております。

 私自身は、先ほどの日本農業新聞の記事にありますように、基本法の二十二条などを考えても、この基本法は最終的には改正する方向で議論が進むべきだというふうに考えております。

 すなわち、多様な担い手を基本法の中に位置づける。そして、もっと言えば、農村政策自体が、三条、三つの条しか存在しておりません。今回の体系化によって、もっと農村政策は書き込むところがあるんだろうと思います。

 そういった面からも、基本法改正の議論はそろそろ始めてもいいのではないか、これが私の見解でございます。

 以上です。

金城委員 教授、ありがとうございました。

 そのような提言も受けて、今後、様々な農政の議論の中で意識してまいりたいと思います。

 以上で参考人質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。

平口委員長 次に、小山展弘君。

小山委員 立憲民主党の小山展弘です。

 今日は、参考人の皆様方には、大変御多忙のところお越しをいただきまして、ありがとうございます。

 まず最初に、参考人のお四方に一言ずつ、この法案の背景にあるのではないかと考えることについてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 従来から、担い手への農地集積あるいは集約化が政策目標として掲げられてまいりました。その担い手とは何かということで、これも、従来の基本計画では、効率的かつ安定的な農業経営及びこれを目指して経営改善に取り組む農業経営、いわゆる認定農業者、認定新規就農者、あるいは集落営農といったことで示されて、これは人・農地プランの中心経営体とおおむね一致してきたことかと思っております。

 しかし、二〇二〇年三月の食料・農業・農村基本計画では、農業現場を支える多様な人材や主体が掲げられ、中小・家族経営などの多様な経営体による地域の下支え、今日の議論にもなっておりますけれども、次世代型の農業支援サービスの定着、多様な人材が活躍できる農業といったようなことが掲げられました。

 また、令和三年に改定された活力創造プランにおきましても、農地を将来にわたって持続的に利用すると見込まれる者として、半農半X、これは農業会議所さんのお言葉ですと新規兼業、というようなことも位置づけられ、また、中小規模の経営体などの多様な経営体を認定農業者とともに位置づけております。

 大規模化や農地の集積を否定はいたしませんが、しかし、大規模専業農家や認定農家だけでは農村と農業の維持はできず、中小規模の農家や兼業農家も農政の対象として位置づけざるを得なくなったのではないか。

 今日、小田切参考人のお話で、車の両輪というお話もありましたが、その小田切参考人の論文の中で、こういった多様な農に携わる者が農政の対象となり、実質的に農業の担い手として位置づけられ始めたという御指摘もございます。

 こういった中で、農業を担う者をどのように参考人の皆様方は位置づけていくべきだと考えますでしょうか。一言ずつお願いしたいと思います。

横粂参考人 農業を担うメインは、やはり担い手農家、法人、平野部において大規模なことをやるについては、半農半XのX、それではちょっと担い切れませんので、大事にするのはやはりしっかりした担い手、これを育成しなければならない、こう思っています。ただし、中山間部においては、担い手そのものが、育てようと思っても育たないわけです。

 ですので、多様な担い手という形で、本来の認定農家以外に、NPO法人とか中山間直払いの組織だとか、そういった形で、本来の担うべき担い手が担い切れない部分を補完する形で多様な担い手に担わせなければ、もうにっちもさっちもいかない、そういう事態に至っている。

 だから、先行き多様な担い手というよりも、もう既に多様な担い手の存在は必要とされている。ただし、メインの担い手の存在というのは決しておろそかにできないものだ、大切にするべきものだ、こういうふうに感じております。

 以上です。

稲垣参考人 御質問ありがとうございます。

 農業を担う者、担い手は何かということは、まず第一義的には、今の担い手の定義は四つあると思います、認定農業者、認定新規就農者、法人化した集落営農、それから基本構想到達者。

 やはり自前というか内発的なそういう方をまず核として、その地域の農業を頑張っていただく。それが難しいとすれば、地域外からそういう担い手の方を呼び込むということなんですが、ここ数年、やはり農業委員会の皆さんと最適化の仕事をして、本当にちょっと空気が変わってきているなと思ったのは、要するに、担い手に農地八割といったときに、それなりに結構現場からは反発があったんですが、最近、反発というよりも、もう担い手だけで農地を賄い切れない、地域を、そういう既存の担い手、今いる、さっき言った四種類の担い手、そういうものでは賄い切れない、担い手に単純に集積するということではなくて、もう賄い切れないぞ、そういう中で、みんなで農地を守っていかなくちゃいけないんじゃないかというような話が出てくる中で、今回の改正法の中で、効率的かつ安定的な農業経営の前に、地域の農業を担う者ということで、幅広くその地域で農業を担う人を、それは既存の兼業農家なのか、それとも半農半Xなのか、それは地域でお決めいただいて、地域も総がかりで農地を守っていく必要があるのかなと。

 それで、今、新規兼業という御指摘がございましたが、これは、やや半農半Xという言葉について警鐘を鳴らす意味で申し上げて、うちの組織として、あえて括弧、新規兼業と書かせていただいたのは、先ほどどなたかの話もあったかと思いますが、今までは、新規就農者というのは農業に専念をしていただく方を第一義にやって、その方が、結果、事後的に兼業農家になるということは幾らでもあり得たわけですが、最初から兼業農家をやらせてくださいということについては、今のいろいろな政策なり体系がうまくいっていないのではないか。

 そういう中で、半農半Xということを政策で打ち出されたということは、これはありていに言えば、新規で兼業をやるということを地域なり政策の中でしっかり受け止めなければいけないのか。

 そういう意味合いで、あえて私どもは、半農半Xの後に、御批判はあるんですが、新規兼業ということで、既存の兼業農家の方とは違った意味で、そういう方もうまく地域になじませていくことについて考えていかなければならないという問題意識を持っているということでございます。

 御質問ありがとうございます。

山下参考人 私は、全く逆の問題意識を持っています。

 というのは、今まで、冒頭に申し上げたのは、農政の場合は、目的に掲げていること、言っていることとやっていることが真逆のことをやってきたわけです。

 その結果が、資料の後ろから三枚目を見て、その裏の方なんですけれども、豊かな農業と特殊な米農業というグラフがあると思います。米だけ異質なんです。米農家の所得のうちの農業所得はごく僅かです。ダイダイが兼業収入です。緑が年金収入です。だから、日本の米農業は、ほとんどが兼業農家と年金生活者によって賄われている、これが実態なわけです。

 この農業をつくり上げたのは、我が農政だったわけです。高米価政策がこれをもたらしたわけです。実は、高米価政策は、農業基本法の理念とは全く反する政策だったわけです。だから、基本法農政を潰したのは高米価政策なんです。その後、担い手とかなんとか、いっぱい言っています。農林省が書くのは、みんなそんなことばかり。だけれども、やっていることは何だということなんです。

 その結果が、次のページを見てください、私が書いている日本農業最大の問題です。円グラフがあると思います。ほとんどの農家は稲作をやっています。ところが、稲作の所得は、日本農業全体の二割もないんです。これが実態なわけです。

 何で稲作だけこういう変なことになってしまったかというと、農政がやってしまったわけです。農業政策、私がやって導入した中山間地域の直接支払いも含めて、国の予算、地方公共団体の予算にすると、大体一兆五千億ぐらい米に費やしています、NN事業も含めてですね。ところが、稲作農業の生産額というのは、一兆八千億か九千億しかないわけですね。物すごい金を、日本の農政のほとんどを稲作につぎ込んできたわけです。でも、その結果、こういう状況になっているわけです。これが実態なわけです。

 だから、既に今の日本の農政というのは兼業農家育成政策なんです。それは基本的に転換していかないと駄目なんです。だから、日本の兼業農家育成政策にしていることは、さっき挙げたグラフのように、一ヘクタール未満のところはゼロかマイナスの所得しかないわけです、そこをやらないと。本当に農村を活性化しようとすると、やはりある程度の規模の大きい人に集積しなければならない。

 だから、途中ではありますけれども、柳田国男は言いました。この種の農家が、兼業農家ですね、多くなるのはまさしく国の病だと言ったわけです。

小田切参考人 御質問ありがとうございました。

 私自身は、担い手を中心経営体に特定化して限定していく時代は既に終わったというふうに思っております。むしろ、総がかりで担い手を確保していく、特に、切れ目のない担い手育成が重要であって、その入口は、それが兼業農家であっても半農半Xであっても、あらゆるものがその入口になり得るというふうに思っております。

 そういう形で、いわば総がかりで日本農業を守っていくような、そういうふうな時代に転換している、そんな実態認識を持っております。

 以上です。

小山委員 参考人の方々のそれぞれの御意見を伺いまして、ありがとうございました。

 私は、個人的には、小田切参考人や稲垣参考人のお話のとおり、半農半X、新規兼業と言うかどうかというところは、言葉のこともございますし、私どもの篠原孝議員は新規兼業と言い切っておりますけれども、兼業農家も、新規であろうが既存であろうが、これからやはり農政で位置づけていくべきではないかなと思います。

 それと、ここから法案の具体的なところについてお尋ねしたいと思いますが、先ほど金城議員の小田切参考人へのお話の中にもございましたので、稲垣参考人に是非伺いたいと思います。

 地域計画の策定や見直し、あるいは目標地図の作成に当たっては、市町村、特に農業委員会さんに大変な事務負担、仕事の負担がかかることを懸念する声があります。現状でも、利用状況調査など、農業委員会さんの業務は増える一方で、最近では、一方で、農業委員会の事務局の方は、先ほどお話もございましたが、一人とか、あるいは少ない、減員されているような傾向がある。市役所でも、農林課、農水課というのは、人員を削減されたり、ローテーションで、なかなか、人事異動もあるので、着実な対応が取れないのではないかとの懸念の声もあります。

 農業委員会が、今回の目標地図の素案作りを行い、こういった業務の増加や業務の負担についてどのように対応していくか、マンパワーをどうやって補充していくか、あるいは、それへの政府の支援の必要性について、どのようにお考えでしょうか。

稲垣参考人 御質問ありがとうございます。

 今般、目標地図を作ったり地域計画を作る上で農業委員会の役割が非常に大きいということは、ひしひしと責任を感じると同時に、やはり現場の農業委員さんや職員の皆さんは、一様にみんな、ハッピーと思っている人はなかなか少ないんじゃないか、やはり心配だと。横粂会長のように、自信満々というか、そういう方はなかなか少ない。

 やはり今でもうまくいっている市町村は、人・農地プランの実質化にこの間取り組んでまいりました。ほぼ間違いなく、そういう農業委員会は、農業委員会の事務局といわゆる市町村の農政課、この連携が絶対いいところです。これは、絶対、必須条件であります。

 ですので、先ほどの陳述の中でも申し上げましたが、今回の成否を握るのは、ある意味、市町村役場の中だと思っております。市町村部局と農業委員会の事務局がしっかりタッグを組める、その体制をどうつくれるかということが必須だと思っています。

 その上で、農業委員会の事務局の職員の方、市町村の農政課の方を含めて、やはりこの政策をしっかり現場の農業委員さんにお願いをする、指示をする。動きのいい農業委員会、後ろに横粂会長がいらっしゃるんですけれども、そこは、まず間違いなく、事務局、それは農業委員会の事務局であるか市町村役場の担当であるか分かりませんが、そういう職員の方が、農業委員さんに具体的なお願い、具体的な指示を出していらっしゃいます。

 やはり四万人の農業委員さん、推進委員さんは農家で、実質、いろいろ農業経営の傍ら、その地域のためと思ってやっているわけですが、そこに政策の方向性を与えるのは、農業委員会の事務局であったり市町村役場の職員さん、その方が具体的な要請、指示ができているところは成果が上がっているのかなと。

 これは、ある農業委員会の職員から面と向かって言われたんですが、稲垣さんなんか駄目よ、地域の農地を守りましょうなんて、そんな運動論なんかじゃ駄目なの、ここの農地で、誰が農地を欲しいと言っているんだから、しっかりあっせんをやってちょうだい、こういう具体的な指示ができないと物は動かないのよと。ああ、そうかなと思いました。

 その上で、今回、市町村の役場の皆様、いわゆる農政部局の皆様と農業委員会の事務局ががっちり連携が取れる方法として、四点ほど、腹案といいますか、常日頃持っているのがあります。

 初めに申し上げる三つは、ほとんどお金がかからないと思っております。

 一つは、令和元年に人・農地プランの実質化をスタートしたときに、令和元年の六月に、農水省の経営局の経営政策課長と農地政策課長の連名通知で、「「人・農地プランの実質化に取り組む地区の状況」の作成等について」という通知文が出ました。

 この文書の中で、いわゆる地区ごとに工程表を作ってくださいということなんですが、市町村の担当者の名前、それから地区の農業委員のお名前、それからJAさん、土地改良区、それぞれのステークホルダーの方をしっかりテイクノートする、そういう工程表を作るように農水省さんの方から御指示をいただきましたが、今回も当然そういうものが出てくると期待しているわけですが、そこにしっかりと、市町村のところには、いわゆる市町村部局の担当者の方と農業委員会の事務局の方をテイクノートするようなことがまず必須かと思っております。

 それから、あと、これはいろいろなところで既に行われているんですが、京都府の宮津市の農業委員会でありますとか、かつては長野県の飯島町だったと思いますが、農業委員会と農政課、場合によっては、県の普及センターとかJAさんとか、ワンフロア化も、これも一つ大きな成果を上げているところかと思います。

 それと、これはちょっといろいろ事例等で公表はしていないので、お名前を申し述べるのは控えさせていただきますが、先ほど、農業委員会は兼務の職員が多いと申しました。兼務には、いい兼務と悪い兼務があると思います。

 規模の小さい自治体になると、農政課とかそういう名前ではなくて、観光産業課みたいな形で、お一人、二人の方が、ありていに言うと、農水省のお仕事、国交省のお仕事、国土交通省のお仕事、全部やっていらっしゃる、そういう兼務というのはこれはなかなか問題なんですが、いい兼務というのは、ちょっと名称を述べるのは差し控えさせていただきますが、平成二十八年にこの最適化がスタートしたときに、ある県庁所在地の農業委員会と農政課は、農政課の職員の方に全部、農業委員会の事務局職員の兼務発令をしました。これが非常にいい意味で、今まで農政課の職員の方が農業委員会にはなかなか近づきづらいと思っていたのが、農業委員会の兼務もいただいた結果、農政課の立場で農業委員会といい意味で接点を持った、そういうことはまずもって必要なのかなと思います。

 最後の四点目は、これはもう政治にお願いするしかないと思っております。やはり今回、もう待ったなしという言葉がいろいろ出てくるわけであります。まさにいろいろな意味で、日本の農業、地域を守っていく、農地を守っていく、待ったなしであります。

 そういう意味で、私どもの昨年の要請の中で、やはりこの法律ができて例えば五年間とかは、集中実施期間ということで、市町村の担当職員であるとか農業委員会の担当職員を増員を重点的にお願いしたいという要請をさせていただいております。そして、市長会さんの要請の中にも、農業関係職員の確保というワードがあったかと思います。

 やはり市町村の、自治体で今農林部局、農業委員会部局の増員を願っても、これは、今の行政の中、財政構造の中ではなかなか難儀でございます。これはもう政治の力をお願いするしかないと思いますので、何とか政治の力で、市町村の農政現場、また農業委員会の事務局の増員が可能になるようなお力をいただければということをお願い申し上げまして、答弁に代えさせていただきます。

小山委員 本当は小田切参考人に、農村における、今度十月一日施行の労働者協同組合や、あるいは農業協同組合の役割についてお尋ねしたかったところですけれども、また機会を改めてお尋ねできればと思います。

 時間が来ましたので、質問を終わります。ありがとうございました。

平口委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 参考人の皆さん、今日は本当にありがとうございます。

 最初に、全国農業会議所稲垣照哉参考人にお伺いします。

 今度、法改正によって、地域計画が自治体に義務づけられる、そして、自治体からの要望によって農業委員会は十年先を見越した目標地図を策定していく。参考人は、先ほど、市町村と農業委員会がしっかりタッグが組めるかといったところが要だという話でありました。

 その自治体からは、全国市長会からかなり厳しい意見も出されております。

 私は、昨日、委員会の方でも紹介したんですけれども、三月二十二日付、基盤法、促進法の改正に対して意見が出されているわけです。その意見の中では、地域を取り巻く環境は多種多様であることから、地域におけるこれまでの取組を十分に尊重すること、地域計画の策定に当たっては、これまで地域が着実に積み上げられた人・農地プランの取組を最大限生かしつつ、地域の自主性が発揮される仕組みとすることと、地域の実情を考慮してほしいということを求めています。

 それは、換言すればそれだけの憂慮があるんじゃないかということじゃないかなと思うんですけれども、農業委員会の立場としては、自治体のこの指摘について、憂慮されることについて、どう受け止めておられるでしょうか。

稲垣参考人 御質問ありがとうございます。

 何度か申し上げていますように、私ども全国農業会議所、農業委員会系統組織は、平成二十四年にこの政策がスタートして以来、有形無形に人・農地プランに関わってまいりました。そして、実質化にも関わってくる中で、実質化から実行へというスローガンで取り組んでまいっております。

 そういう中で、やはりこれまで補助事業とか運動論で取り組んでいたものをしっかりしたものにするためには、市町村の基本的な計画、法定化も視野にということで提案をさせていただきました。

 市長会さんの要請書も読ませていただきました。つらつら読ませていただきますに、これは私なりの読み方でございますが、令和七年に完璧なものを全国一律で義務づけというふうに読めばああいう御反応になるのかなと思います。

 我々の理解は、令和七年に可能な限り多くの市町村で人・農地プランの法定化された目標地図のある地域計画を作るわけですが、それは完璧版を一気に作り上げるということではなくて、まず計画というものを作って、十年を見据えて話合いを更に続けていく。例えて言えば、地域計画は、だんだんよくなる法華の太鼓じゃございませんが、初めは、まずとにかく作るという地域合意を掲げて、可能なところは担い手に集積をしていく、それが難しいところは、しばらくはいろいろ、作業受委託とかそういうものを活用して、最終的には地域のみんながしっかり農地を守っていける、そういう絵姿を作り込んでいくと思えば、やや、市長会さんが一律義務づけみたいな形で御表現なさっているのは違うのかなと。

 むしろ、まずスタートラインに立つという意味で令和七年を迎えて、所によってはもう完璧版の目標地図ができる、それは担い手がいっぱいいるようなところは多分できるんだろうと思います。ところが、担い手が全然いないようなところであれば、少しずつ担い手を集積する、また、外から担い手を連れていくというようなことの中で、繰り返し申し述べますが、長い息をかけてそれは作り込んでいくということであろうかなと思っております。

田村(貴)委員 今のところは、法案提出者の農林水産省の方にも確認をしていきたいと思っております。

 次に、横粂鈞参考人にもお伺いします。

 市町村からの求めに応じて目標地図を作っていくことになるんですけれども、改めて、農業委員会から見て目標地図を作ることの意義について、一番大事なところについてお考えになっていることを教えてください。

 それから、先ほど参考人は、全国の農業委員会それから農業部局というのは多様な課題を抱えているということで、それに即した対応が必要だというふうにも意見を述べられました。

 この目標地図を作る上で予想される困難あるいは課題について感じておられること、また、豊田の農業委員会だけじゃなくて、全国の農業委員会は同じ立場でお仕事をされることになるんですけれども、全国的に見て、全部作ることができるのかということについても教えていただきたいと思います。

横粂参考人 三点ほどの御質問。

 地域計画を作ることにかなりハードルがあるのではないか、こういう御認識を持っておられますけれども、実際に、作ること自体は、私も当事者として人・農地プランだったり何かを作るんですよ。意外とみんな問題は分かっているから、計画、プランはできるんです。

 ところが、プランができれば、現実は、どんないいプランを作っても全然解決しないわけなんですよ。プランは本当のスタートであって、はっきり言うと、武器が欲しい。何が欲しいかというと、例えば、中山間地の問題をするのも、困った、プランはすぐできる、だけれども、今回の法案にあったように、農家負担ゼロで圃場整備ができるだとか、そういったものがないと、プランは絵に描いた餅になってしまう。

 ですので、プランというのは、集まってすれば、だから人手が要るとかいろいろですけれども、とにかく努力すればこれはできるものであるので、それを実現する手段が、武器が欲しいということを逆に主張をしたいかな、そう思っております。

 それから、いろいろな多様な農業委員会、これは確かに、本当に、先ほどから話されているように、あります。今までだと、市長部局から受けて農業委員会ということですけれども、これは今度逆転をされて、農家サイド側のイニシアチブが取れるようになったということで非常に働きやすくなるので、これから、そういったことが浸透すれば、事務局から農業委員会に来るんじゃなくて、農業委員会側から、あなたたち、もうちょっとこういうことをやってよということも生まれる要素ができてきたということで、農業委員会の実際にやっている委員さんは、かなり地域のそういうことについて問題意識があって、積極的に働きかけをできるんですけれども、仕組みがなかなか、意見を言う機会だとか協議、いろいろな意味合いで、吸い上げるだけのまとめがないのが基本的に課題かなとも思っております。

 それからあと、全国的に、こういった、いろいろなところがやれるかどうかについては、やはりいろいろな私の経験からだと、市長部局それから農業委員会、先ほど話したように、連携が取れたところが非常にうまくいって、連携が取れたところは意外と、農業委員会、部局、つまり農業委員、推進委員さんが発言をし、うまくやっているというふうに理解をしています。

 私どもも結構、先進農業委員会を視察をしますと、そういったことを強く感じておりますので、これからも連携を取っていく。ただし、農業委員会側からイニシアチブを取れるような連携体制が何よりも望まれる。それと、プランではなくて実戦力、現場を変える力を与えていただきたい、農業委員会そのものに、こう思っております。

田村(貴)委員 ありがとうございます。

 今の横粂参考人のお話について、稲垣参考人、補足あるいは感じておられることがあったらプラスしていただきたいと思うんです。

 それともう一つは、先ほど稲垣参考人は政治の力というふうにおっしゃられました。まさに私たちに与えられた責務でもあると思うんですけれども、一つは、マンパワーが不足しているとか、あるいは、それを実現するための財政支援といったところなんかが私的には想定されるんですけれども、政治の力というのは、どういったことを行政あるいは政府に対して要望されるのかといったことも併せてお答えいただきたいと思います。

稲垣参考人 御質問ありがとうございます。

 横粂会長のおっしゃったことにはもう付言するものはないと思いますが、ただ、申し上げたいことは、先ほども言いましたように、全国に約一千七百弱の農業委員会があって、そこに四万人からの委員さんがいます。一番大きい農業委員会は六万ヘクタール以上の農地を抱えているところから、あと、一番小さいところは、もう必置規制がなくてまさに市町村の自己判断で置かれているところは十ヘクタールを切るような農業委員会も、これほど幅が広いということですので、要するに、現場に応じた、現場というのは、極論すれば、四万人の委員さんには四万か所の現場があるということでございますので、そういう現場の思いに沿えるような運用が大事かなと思っております。

 政治の力という非常にぶしつけなお話を申し上げましたが、これまで本当に行政の皆様には最大限の努力を講じていただいていると認識しています。予算を取っていただく、また、特に体制の方でも、基準財政需要を農水省さんと総務省さんでしっかり調整してそこを変えていただく、そういう行政ができることはほぼほぼ今やっていただいているのかなと。それでも、そこから先がいかない。

 市長会さんからも農業関係の補充みたいなことが出るということは、端的に、やはり農政部局、農業委員会部局のマンパワーを措置できる、それが正規の職員なのか、臨時の職員なのか、また外部スタッフなのか、とにかくやはり、農政、農業委員会部局なり市町村部局、いろいろ活動をしていく上でのマンパワーがとにかく足りていないということが私どもの率直な思いでもありますし、市長会さんの要請のポイントもそういうところにあったのかな。

 これは、今の行政の枠組みではもういかんともし難いところに、今、最大限の努力を講じていただいて、毎年の予算を確保していただいたり、いろいろ政省令等の対応をしていただいている。それをやっても乗り越えられない、そういう、人を増やすというようなところはもう政治の力で、こういう、もう平時ではない、非常時である、待ったなしであるということであれば、そういう部分に手当てをいただくことができないか、そういうことを先生各位にお願いするところでございます。

田村(貴)委員 分かりました。

 マンパワーという言葉が出たところなんですけれども、小田切徳美参考人に伺います。

 先生の方からは、ペーパーの最後の論点というところでお話をいただいたんですけれども、この中で、地方自治体に負担がかかる、国の支援を得ながらも、負担感をより少なく進められる体制づくりをすべきではないかと。

 私はここに都道府県も入ってくるのではないかと思いますけれども、今度の法改正による地域計画の策定にしても、目標地図の策定にしても、これは、実務は一定の仕事量になります。それから、協議の場をつくるにしても、これは自治体が、所有者、それから担い手、地域外の人も含めて呼んでこないといけない。できるだけ参加してもらうと農水省は言っているんですけれども、この労力だけでも本当に大変だと思いますし、それには、やはり経験も生かせる職員の人じゃないとなかなか難しいところもあると思います。

 そうしたところで負担感を少なく進められる体制づくりにおいて、これは一体どういう意味を成しているのか、どうすればいいかということについて解説をしていただけるでしょうか。

小田切参考人 先生、御質問ありがとうございました。

 御主張のように、自治体農政に大きな負担がかかるというのは、そのとおりだろうと思います。

 ただし、繰り返し申し上げておりますように、将来ビジョンを作るというのは、基盤強化法のためだけではありません。むしろ、地域のために必要なプロセスであって、その地域のために必要なことを各自治体がやっているんだという、発想を変える。つまり、農水省に振り回されているのではなくて、これは地域のための仕事なんだという、そんな発想を持っていただきたいなというふうに思っています。

 その際、昨日も高知県のあるところでワークショップづくりをしかけてきましたが、そこで重要なのは、今回の場合は農業委員会と農政部局ということになりますが、企画部門だろうと思います。企画部門と農政部門が一緒になってワークショップをやるという、そのことを昨日も議論してきたわけなんですが、そのことによって、全省的に、全庁的にその課題を吸収していくような、そんな体制づくりも可能ではないかというふうに思っています。

 以上です。

田村(貴)委員 先生にもう一点。

 その上の農地確保のところなんですけれども、これまで、十年間で二十三万ヘクタール、農地が縮小しました。それから、五年間で四十万人、基幹的農業従事者が減っている。いわゆる生産基盤が大きく落ち込んでいる。

 そんな中で、農地利用の展望と国家的な必要農地面積とのギャップというお話がありましたけれども、これについて、そのギャップというのはどういうふうに理解したらいいのか、解説していただけるでしょうか。

小田切参考人 今回の基盤強化法で、目標地図を作る。これが仮に全地域で作られるとすると、最終的なボトムアップ型の取組による農地面積が計算できてしまうんだろうというふうに思います。そうなると、二〇三〇年の四百十四万ヘクタールという、ここに場合によったらギャップが生じる可能性があります。それはもちろん最終的に積み上げてみなければ分かりませんが、仮にそこにギャップがあるとすれば、そこに政策が発動する根拠がある、そんなふうに考えられるものであって、その意味で、基盤強化法の中で目標地図を作っていくということは重要な基礎的プロセスであろう、そんなふうに考えております。

 以上です。

田村(貴)委員 農水省は、二〇二三年度の集積率を八〇%と言っています。耕地面積に占める、担い手の方が田畑を耕作される面積の割合が八〇%と。二〇一〇年度が四八・一%、二〇二〇年度が五八%、十年間で約一割の伸びという状況です。

 その状況が、歩みがこういう状況なので、今度、強力な力をもって法改正というふうに説明を受けてきているわけですけれども、今度の基盤強化促進法それからもう一方の法律の改正をもって、農村地域の強化をもって、この集積率というのがどのように変化していくのか、集積がどのように変わっていくのかということについて、専門家の皆さんの見通しといいますか、展望について、それぞれの参考人の方からお伺いできればというふうに思っております。横粂参考人から順次お願いします。

横粂参考人 集積率のことでありますけれども、一概に集積率が八〇%といっても、現場のところでは、平野部と中山間部ではどだい比較にならないわけです。統計で取るとそれなりに出てくるんだけれども、多分、統計上の集積率は、一律、足してやったところですね。ですので、集積率は分けて考えないと、平野部ではかなりもう、七割から八割いっているんですけれども、中山間部ではほんの数割、こういうところですので、ちょっとその辺の考え方を分けて考えないといけないということ。

 それから、今回、基盤法の中でも、集積よりも集約化、こういうことに非常に力点が置かれているわけです。集約化というのは、集積と違って、ある担い手にばらばらに農地が集積されておるのじゃなくて、使いいいように固めるわけですね。ですから、集約化が進んでも、集積率は極端に言えば同じなんです。

 もう一つ、中山間地においては、元々狭い面積ですので、集約化ができる農地もあるんだけれども、この谷、あの谷、この谷、それで担い手は一つしかいないんだから、元々みんなやっておって、集積なんか同じなんですけれども、集約なんかできないわけなんですよね。ですから、集積は同じだけれども、集約化しようが、物理的にあの谷、この谷を一つの場所へひっつけられないので、基本的には、何が利便性になるかというと、ある谷のところの農地条件が、圃場整備がよくなれば、集約とかそういうことでなくて、担い手にとっては物すごく利便性が高い。

 それから、地域の担い手、担い手は多様な担い手があってもいいんですけれども、基本的に、再生産の悪い農地については、努力のしようがないものですから、その辺のところを勘案をしていただいて、一概に集積率という考え方も大事ですけれども、集約化、それから、集約をしながらも、その農地の再生産性、基本的には、再生産性を、いかにいい農地で安く生産ができるか、この辺のところが問題になるかと思いますので、私の方は、現場としては、集積率にこだわらず、上げることはもちろん絶対いいんですけれども、集約化を考えながら、その集約というのが、再生産が上がるような形で集約できたら一番すばらしいのではないかな、こんなふうに考えております。

田村(貴)委員 済みません、皆さんの御意見を聞きたかったんですけれども、時間が来ましたので、これで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

平口委員長 次に、住吉寛紀君。

住吉委員 日本維新の会の住吉寛紀でございます。

 本日は、横粂様、稲垣様、山下様、小田切様、お忙しい中お越しいただきまして、ありがとうございます。

 二十分という短い時間ではございますが、有意義な時間にしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まずは、横粂参考人にお伺いしたいと思います。

 日本の農業のあらゆる面をかいま見ることができる豊田市において、農業委員会で様々なことに御尽力していただいていると承知しております。事前にいただいた資料ですと、令和三年度までに十四集落が実質化された人・農地プランを作成しているということで、いただいたこの「農業委員会だより」も拝見させていただきました。本当に、資料を拝見いたしますと、かなり活動的に、定期的に勉強会をしたり、また、推進委員さんの農地のパトロールであったり、また、戸別訪問していろいろな意向を確認しながら丁寧に進めているんだなということが分かりました。

 少しほかの委員の皆様と同じような質問になるかもしれませんが、こういった実務を、実際に実務をしていく中で何がポイントになってくるのか、また、いろいろな御苦労があったと思いますが、何かそういうエピソードとかがあれば御紹介いただけるとありがたいです。お願いします。

横粂参考人 現場実務の中で何がポイントであるかというのは、やはり、机上の話でなくて、農家さんと、話を聞く、現場で何が問題なのかを、ということが一番大事かと思っております。

 それから、一つのポイントとして、私どもの中山間地の中で、ある集落が全村遊休農地化して、農地が全部、耕される農地がなくなってしまうというようなところがありまして、そういったところを推進委員さんが訪ねて、何かできないだろうかということで、たまたまその近くにしょうゆの蔵が、貯蔵庫がありまして、そこがたまたま小麦を原料にしたしょうゆを造っているものですから、その地区で試験的に小麦を作ったらどうかというようなことを企業とも話をして、話がとんとん拍子に進んで、ある程度将来的にはその地域で小麦生産をだとか、そんなことが進んだこともありました。

 ですので、何よりもポイントは、現場に行って肌でニーズを感じる、それは、農業委員、推進委員が自ら行って活動する、活動した中には必ず何か生まれる、こういうふうに感じております。

住吉委員 ありがとうございます。

 先ほどから、いろいろな事務負担がこれから発生する中で、すごく前向きな発言が多かったのかなと思っております。それは、本当に現場を足で回りながらいろいろな意見を集約している、それの自信の表れなのかなと思っております。

 続いて、最大三年間で、目標地図を策定していく必要がございます。当然、農業委員会さんの負担が大きいものと推察されます。それでも、この仕組みに乗っかっていけばうまく回っていくというような発言もございましたが、実際に取り組むに当たって、イメージした中で、どういったところが懸念点になってくるのか、また、国や県のサポート、それ以外の、こういうサポートがあればもっと円滑にいくなというのがありましたら教えていただけませんか。横粂参考人にお願いします。

横粂参考人 どういうところが懸念されるのか、こういうところですけれども、事務負担がすごくあるといっても、例えば私のところですと、十九人の農業委員と四十五人のたまたま推進委員が与えられておるわけです。マンパワーが不足しておるわけではありません。

 逆に言うと、その地域地域にいるので、そういった方が働いてくれればいいわけなので、何も全部事務局が何から何までやってくれなければできないということではなくて、事務局はあくまでお手伝いで、主役じゃないわけですので、そういった意味合いでは、現場の農業委員、推進委員さんにいかに効率的に仕事をしていただくか、この辺のところがポイントです。つまり、地域をまとめ上げていただくか。だから、地域をまとめ上げられれば事務局はいい成果を報告できるわけなので、現場がやらないと事務局は成果が上がらないので困っちゃうわけ、負担がかかるわけです、それだけ、というふうに思っております。

 それから、どのようなサポートということですけれども、例えば、この中で、農業委員会には、農地利用最適化交付金といって、市の負担がなくて、国が全額負担をしてそういう最適化活動を支える仕組みがあるんですよ、補助金もたくさんついて。こういったものも、正直、あり得ないぐらいの先進的な制度であります。

 ただし、なかなかそれが普及していないのは、それをうまく活用していないというのか、そういう意欲のこともありますので、サポートについては、いろいろな意味合いで、私どものところでは農政部局もいろいろなサポートもしていただけますし、そういった意味合いの、お金のこともありますので、何かサポートが不足かなということは、私のところでは考えておりません。

 ただし、よそのところではいろいろな課題を抱えておるということは聞いております。ただ、ちょっと、よそのことは申し上げられませんので。こんな形で済みません。

住吉委員 ありがとうございます。

 本当に、先ほどから前向きな発言、心強く思うところでございます。運用していく中で、こういったところがあればというのがあればどんどん声を上げていただきたいなと思います。

 では、ちょっと関連して、稲垣参考人に質問させていただきたいと思います。

 私は兵庫県出身でございます。兵庫県は四十一の市、町がございます。特に町レベルになりますと、財政規模も小さい、役場の職員数も少ない、その割に面積が多く、特に、中山間地域と言われている地域も多く、かなり市、町にとっては負担になるのかなと思っております。

 こういった市、町、人手が足りない、先ほど横粂参考人はマンパワーが足りているということですが、足りていないところも多いのではないかな、実際にこの計画策定していくのに非常に難しいのではないのかなと思ってしまうわけですが、その点についての御見解、あれば教えてください。

稲垣参考人 御質問ありがとうございます。

 この問題を進めていく上での課題は二つあると思っております。一つは、やはり地域の農業の置かれた特性がまず一つあります。それからもう一つは、やはり、事務局なり、それを動かしていくマンパワーの問題だと思っております。

 今回の実質化を進める中で、農業委員会なり市町村の中には、もう今回の法案が目指す目標地図がほぼでき上がっているような地域、委員会がございます。それはやはり、先ほど来申し上げていますように、体制がいいということもさることながら、農業の状況がいいということですね。担い手がきっちりいるということで、今回の実質化の話を進める上で、この地域はこの担い手さんに集めていこうということが内々合意が取れている、そういうところは今回の目標地図作り並びに地域計画作りというものがスムーズにいくのかな、再三お話のあった豊田市さんなんかも、そういう地域ではどんどん進んでいくのかなと。

 問題は、多くのところで担い手がいないとお答えになっているところですね。どんなに話し合ったって、担い手がいないとなれば、自ら育成するか、自ら集落営農をつくっていくか、はたまた外から人を引っ張ってくるか、そういうことについて、市町村、農業委員会、挙げて奮闘しなければならない。そこで、今、農地バンクさんのコーディネーターとか、そういうもので手当てをするということですが、そういう地域外の担い手をそれぞれの市町村にどううまく接合していくのか、その仕組みづくりということが大きな課題。それは、今申し上げましたように、農業の状況によって、そういう二つのパターンがあるということですね。

 それから、やはり、再三申し上げましたように、農業委員会の事務局、平均すると、千七百弱で四・何人ですが、最頻値というんですか、モードというんでしょうか、一番数が多いのは二人か三人、そこにほとんどの農業委員会が寄っている。たしか七百弱の委員会では専任スタッフがいないというところで、日常の農業委員会業務、それ以外、これまでの業務に加えて今回のものが加わってくるわけでありますので、多くのそういうところでは今不安に思っているということで、再三申し上げていますように、まず、市町村の内部でしっかり連携体制を取って、市町村、農業委員会が一緒になって委員さんにしっかり指示なり依頼を出していく。

 農業委員会は、御案内のように、三年に一回、改選でどんどん替わってまいりますので、連続してお務めになる委員さんが多数いらっしゃるような委員会はまだしも、総替わりするところも毎年のように出てくるわけですので、再三申し上げますように、やはり、事務方、事務局がしっかりこういう国の政策を委員さんにおつなぎをしていく、そのためのマンパワーが必要だということを改めて強調させていただきたいと思います。

住吉委員 ありがとうございます。

 担い手のところで少し深掘りして質問していきたいんですが、稲垣参考人に質問させていただきます。

 地域計画の策定の中で、協議の場を設けるということでございます。農業者、農業委員会や農地バンク、農協、土地改良区などが話合いをしていくということなんですけれども、昨日、我が党の池畑委員も質問させていただいたんですが、例えば、独自に大規模に借りている大手のスーパーであったり大手食肉卸、こういった担い手になり得る方々の例えばオブザーバーの参加とか、そういったことについてはどう考えるか。

 例えば、集約化しても、いい場所は担い手がいますけれども、そこまでよくない場所は当然余ってきてしまうというようなことがございます。そういった方々にも、農業委員会が頑張っているということを知ってもらうためにも、例えばオブザーバーの参加なんかもいいのかなと私は考えております。

 昨日質問した答弁は、農林水産省は、検討はしていないが今後考えてみるというような答弁でしたが、それについて、もし見解があれば、お願いいたします。

稲垣参考人 御質問ありがとうございます。

 担い手のお話については、この前の御質問の中にもありましたように、地域地域によって、担い手がもう既に決まっているところ、また、足りないところ、いろいろまちまちでございます。特に、足りないところでは、いかに地域外の担い手、また、担い手になり得る方を話合いの場に入れていくかということが肝だと思っております。そういう意味では、農業参入をされたい企業の方等もそういう話合いにチャンネルを持つということは大事かと思います。

 たしか、昨日の質疑の中で、弱っている地域で話合いだけ重ねたってしようがないじゃないか、もっと外の血を入れたらどうかみたいな、そういう御趣旨があったかと思いますが、やはり、担い手のいない地域においては、この人・農地プランの取組というのは、ある意味、地域の農地を管理するというよりは、村づくりの話をするということでありますので、既に、若い女性を入れたりとか、それから若い農業後継者の方を入れたりとか、また、商工会とかそういう部局と連携をして話合いをしているところというのもございます。そういう中に、地域外ではあるけれども農業をやりたいという人なり企業をスムーズに入れるチャンネルをつくるということは、本当に大事なことかと思っております。

住吉委員 ありがとうございます。本当に貴重な御意見、また党内の方でも議論していきたいと思います。

 続いて、山下参考人にお伺いいたします。

 食料安全保障の問題、これは本当に喫緊の課題で、最低限千四十万ヘクタールが必要であるということでございます。フランスの事例で、ゾーニングをして国民全員が農地を守っていくんだというような理解が必要という、そういう事例もございました。

 今回の法改正は、そこまで強力じゃないかもしれませんが、しっかりと農地を守っていくというような意図、意識があると思うわけですが、今回の法案について、山下参考人、どのように評価しているのか、ずばりお聞かせください。

山下参考人 冒頭申し上げましたように、何で農地が出てこないか。米価が高いからなんですね。今、農地の集積で問題にされているのは米農業なんです。畜産とかそんな話じゃないわけですね。土地利用型農業、米農業で農地が出てこない。これは、高米価政策、減反政策をやっていることなんです。その根本のところに皆さん方はメスを入れようとしないんです。その根本のところの問題を解決しないから、農地が出てこない。だけれども、何か仕事をやっているふりをしないと駄目だと。ということで、こういう法案が出てくるわけですね。

 こういう法案は、やってもそれほど効果はないと思います。担い手集積率八割と言っていますけれども、それほど増えないと思います。今までやってきたわけですから、それを法案に書いただけで進むとは思えません。

 やはり、SAFERのような強力な先買い権を持つとか、本当に強力な集積をやらないと駄目だし、米価を下げないと駄目だ。その根本のところにメスが入らない。

 それで、それをやると、結局、最終的な評価は、私は、その真ん中ぐらいに書いていますけれども、柳田国男でいうと、「大に改革すべくして少しく改良し、大に進歩すべきして僅に退歩を免れたるのみなるに、「猶全く無きに優れり」と称して、自ら満足し他を慰めんとする者あらば、亦未だ国家のために憂ひて最も忠実なる人とは称すべからず。」と。だから、少しは進むでしょう。でも、これで問題の解決にはならない。

 それで、さっきの担い手は何かということなんですけれども、担い手集積率八〇%と言いました。でも、担い手に兼業農家も含めるなら、今、担い手の集積率は一〇〇%じゃないですか。だから、矛盾しているんです、この両法案は。どっちに向かって行政はやろうとしているのか。だから、今の担い手の集積率一〇〇%。本当にどっちの方向を向いて我々は議論しているのか、そこを明らかにする必要があると思います。

 以上、勝手なことですが。

住吉委員 本当に貴重な御意見、ありがとうございます。

 もう一点質問させていただきます。

 この農地中間管理機構が担う役割というのは非常に大きいわけでございます。しかし、令和二年度に農林水産省が市町村及び担い手に対して行ったアンケート調査では、市町村の六八%、担い手の七九%が農地の集積、集約化を進める上で軌道に乗っているところまでいっていないと回答しております。また、目標に対して、まだ集積率五八%にとどまっております。

 山下参考人から見て、農地バンク、これをどのように評価されているのか、よろしくお願いします。

平口委員長 申合せの時間が経過しておりますので、答弁は簡潔にお願いします。

山下参考人 この中間管理機構というのは、農水省が基本法を作ってからやろうとした夢なんです。ただし、それが不十分だというのは、先買い権を持っていないということ、これが決定的にフランスのSAFERとは違うということです。

 それから、三分の二以上の賛成があったら管理権を中間管理機構に設定する、そういう義務規定みたいなのがありますけれども、三分の二以上じゃなくて、これは中間管理機構が進んでできるというふうに、SAFERのような強力な集積の権利を与えるべきだというふうに思います。

 以上です。

住吉委員 済みません、貴重な時間をありがとうございました。

 時間が来ましたのでこれで終わらせていただきます。ありがとうございます。

平口委員長 次に、長友慎治君。

長友委員 国民民主党の長友慎治です。

 参考人の皆様、朝早くから長時間にわたりまして委員会に御出席いただきましてありがとうございます。

 まず冒頭なんですけれども、横粂参考人から、陳述のときに、今回の法改正につきましては、農業委員会が要となる農業経営基盤強化促進法に賛成と力強い表明をいただきました。目標地図を明確化する大胆かつ情熱的な役目を与えられた、農業委員会がイニシアチブを取ることになる、本来のあるべき姿になるという大変ありがたいお言葉をいただいたわけなんですけれども、先ほどから委員の皆様が、負担が大きくなるんじゃないかという御心配もされています。

 私が心配するのは、負担が増える分、やはりその分の対価、報酬も増えなければ持続可能じゃないのではないかというふうに考えるんですけれども、現場の皆様、農業委員会の皆様は、そのような問題意識、また、手当ては十分にされているという認識であるかどうか、横粂参考人にお伺いしたいと思います。

横粂参考人 農業委員会が仕事をする対価の報酬は十分か、こういう話ですけれども、一概に申せなくて、豊田市の場合はまあまあであろうと。よそのところで聞いておりますと、えっ、この金額で、頑張ってるねというところもあるかと思います。

 もう一つ、それを補完する形で、報酬の点については、農地利用最適化交付金という形で国が全額そういったことに、事務ではなくて仕事に対して補助を出す仕組みがあります。

 これが遅々としてどうも進んでいないようで、つまり、農業委員会側が余り積極的にそれを活用していないという傾向もありますので、ちょっとこの辺のところの普及をすると、農業委員会側にとっては、市の負担なしで報酬が出るわけですので、いい制度なので、ちょっとその辺のところを国側でももっと推進、普及するように御検討いただければ報酬の問題もかなり上向きになるんじゃないかな、こう思っております。

 以上です。

長友委員 ありがとうございます。

 そこで、稲垣参考人にお聞きしたいんですけれども、今、横粂参考人から報酬についての認識がありました。全国農業会議所として、それぞれの農業委員会に対して、報酬の部分に対しての現場からの声であったり、また、農業会議所としてどのような御指導等をする予定等ありましたら、伺いたいと思います。

稲垣参考人 御質問、どうもありがとうございます。

 報酬の問題でございますが、これは極めてデリケートな問題であると思っております。四万人の委員さん一人一人に、あなた、農業委員の報酬、高い、低いと聞いたら、ばかやろうと言う人の方が多いかと思います。俺はそんな報酬のためにやっているんじゃないんだ、村のために、市長さんや町長さんや村長さんに頼まれたからやっているんだ、それから、農業委員会から委嘱されたから推進委員をやっているんだ、そんな報酬目当てでやるとか、ふざけるなと。多分、言い方を間違えると、そういうお叱りを受けると思います。

 ただ、一方で、長らく農業委員さんは、バッジをつけて、地域の農地の番人として、誇りとそういう気概を持って仕事をする上で、我々の耳に入る中では、いろいろ活動に駆り出される、そういうお仕事もいっぱいする中で、よく言われておりましたのは、市町村会議員さんの大体一月の報酬にも農業委員の年収はいかないよ、その割には随分仕事をさせられているなみたいな話のある中で、先ほど横粂会長のお話がございましたように、その辺の問題を解決する一つの手だてとして、平成二十七年に制度改正いただいたときに、最適化交付金という、国費一〇〇%で農業委員会の報酬に上乗せをする補助金を手当てしていただきました。豊田市さんはそういうものをフル活用いただいている委員会でございますが、なかなか使い勝手が難しいという中で、十分な使い切りができていなかった。

 ただ、今般、令和四年度の予算の中で、農水省の方で破格の対応といいますか、今までは、ありていに言うと、成果が出ないと、集積がどんと進まないと、遊休農地が思い切り減ったとか、そういう成果がないとなかなか算定が、数字が上がってこない。その一方で、活動している日数とか、そういうものの比重が低かったものを、逆転して、出していただいた。執行率が低い中でも前年同額を確保いただいているということでありますので、こういうものをうまく活用いただいて、先ほどの高いか安いかという部分の、デリケートな部分を手当てしてまいりたいと思っておるところでございます。

長友委員 ありがとうございます。

 続きまして、小田切参考人にお伺いしたいと思います。

 本日、新しい農村政策の在り方についてお話をいただきました。

 今日御用意いただいたレジュメの中でも、車軸づくりが重要ということを強調していただいていますけれども、この車軸は誰が担うべきであるか、また、何が車軸となるべきかということにつきまして、もう少し教えていただけますでしょうか。

小田切参考人 どうもありがとうございました。

 車軸というのは、随分抽象的な表現をいたしました。つまり、産業政策としての農業政策と地域政策としての農村政策が単にばらばらに走るのではなく、両者が調和しながら、連携しながら、そのことを意識しております。

 そういう意味では、例えば、仕事づくりからスタートして、その方が農業に関心を持って農業の担い手になっていくとか、あるいは、逆に、農業の担い手が地域の景観を守ることによって農村政策として生活基盤を確保するとか、こういった両者の応答関係が重要だということを申し上げています。

 そういう意味では、誰がということでいえば、政策当局ということになろうかと思います。

 以上です。

長友委員 ありがとうございます。

 続きまして、小田切参考人、そして山下参考人にもお伺いしたいんですけれども、私が昨日の委員会でも質疑させていただきましたけれども、農山漁村発イノベーション対策というものが今回の法案の中に盛り込まれております。

 農山漁村発イノベーションサポート事業というものを、予算がついておりまして、中央のサポートセンター、こちらはパソナ農援隊さんが受注されております、そこが都道府県のサポートセンターと連携して、支援を希望する農林漁業者の皆様の相談対応をして、伴走して、イノベーションを起こしていこうということであります。

 それぞれの専門家、プランナー等が、大体、一回の相談、三万円ぐらいの謝金の中で、やる気のあるというか、イノベーションに取り組もうという事業者にサポートしていくんですけれども、私は、こういう専門家のサポート派遣事業についてちょっと懐疑的なところがございます。

 これまで私も、実は農泊推進の交付金等を地元で活用させていただいたことがありました。そこに民間のコンサル等が入ってきて、交付金を執行していく、まずは交付金を取りに行く。そして、交付金が決定したら、それを最後まで、クロージングするところまでアドバイスをもらうということで、コンサルの皆さんがそれなりのフィーを持っていくんですけれども、結局、そのコンサルの質等を、果たして満足できるものだったのかというと、私の中ではかなり疑問符がある方にコンサルに入っていただいたんです。

 こういう農山漁村発イノベーションサポート事業が本当にイノベーションを起こすことに機能していくのかどうか、お二人のお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

山下参考人 明治の時代に、興業意見、これは殖産政策の柱になった意見なんですけれども、それを作った前田正名さんが、村是を作って、村の方針です、村是、町是、郡是、県是、それをやって国是にする、ボトムアップ運動というのをやったことがあります。今の下着メーカーのグンゼというのは、その運動で、意気に感じた人が京都で始めたのがグンゼという会社だったわけです。

 でも、これはボトムアップの運動だったんですけれども、それを、大変な運動になったわけですけれども、柳田国男は批判します。それはなぜかというと、おっしゃるとおり、コンサルタント、設計士なるものが全国に回って金太郎あめのような村是、町是、郡是を作っちゃったわけですね。だから、本当に地域の方針や、あるいはイノベーションをやろうとすると、そこの人が本当に考えてやらないと駄目だ、その地域の人々、町の人々がそれを本当にやらないと駄目だと。そういうふうにコンサルタントが町を歩いて、村を歩いて作ったような村是とか町是なんかは本当に意味がないのだということを言われました。

 今回の人・農地プランもそうなんですけれども、本当にやろうとすると、そこで本当に、そこの地場の人が真剣に考えて、何をここで、メリットがある、我々としては、アドバンテージがある、資源があるのかとか、それを本当に勉強して、自分で見つけないと駄目なんです。答えは自ら見つけるしかないわけですね。問題を見つけるというのも考えないと駄目だということだと思います。

小田切参考人 どうもありがとうございました。

 かなり実践的な質問で、大変重要なポイントだろうと思います。

 確かに、おっしゃるように、コンサルタントは玉石混交であります。ただし、その中でも、いわゆるハンズオン支援、いわば担い手に伴走しながら支援をするような、そういう者も出始めております。

 これは、例えば、地域おこし協力隊を経験して、地域の中で定着して、そしてコンサルタントになったような、そういう方々には、そういった覚悟を決めたハンズオン支援ができる方々も増えておりまして、そういう意味で、恐らく、コンサルタント業務について、世代交代と同時に発想の転換ということが求められて、現にそれができつつあるのではないか、そんなふうに考えております。

 以上です。

長友委員 ありがとうございます。

 今回、サポート事業を請け負うところが、六次化をやられたところがその延長で請け続けるような様子がちょっと見えるものですから、本気でイノベーションを起こしにいくのであれば、相当な情熱と、相当な現場に対する責任感がある人じゃないと私は難しいと感じているところでちょっと問題意識がありましたので、御質問をさせていただきました。

 山下参考人にお伺いしたいと思います。

 今日御用意いただいたレジュメの前から十一ページ目、その下の段に、精神面からも崩壊した農業というタイトルで、忌憚のない御意見をいただいております。

 そこには、第一次農地改革の担当課長さんだった方の言葉が書いてあります。農の心を荒廃させたという御指摘をいただいております。農民自体が農業を軽視しているのではないかという大変手厳しいところでございますけれども、今回の法案、二つの法案を一部改正することで、ここの部分が取り戻せる、回復するということは期待できますでしょうか。

山下参考人 本当に私が一番言いたいスライドを指摘していただいて、どうもありがとうございました。

 農の心がなくなったんです。減反政策と農地転用で農の心がなくなった。物すごくもうかったわけですね。だから、その農の心を取り戻すにはどうするか。農家が、農業を誇りだと思えるような職業であるという認識を持たないと駄目なんです。その後に石橋湛山の言葉もありますけれども、みんな農業というのはつまらない産業だと。

 農村政策でもそうです。何か、直売所とかなんとか、そういうアイデアは出ます。そうすると必ず、じゃ、あなた方は何かサポートを行政に期待しますかと言うんです。自立自助の人たちだったら、農業を農業としてやろうとする人たちならサポートなんか要らないんです、はっきり言って。そういう農業をやるため、農業として食っていける農業、これが自立経営農家といって、農業基本法が目指した農家なわけです。

 そのためには、農業だけで暮らしていく、ちゃんとゾーニングをやって、しかも、農政の対象を、フランス農政のように、労働の半分、所得の半分を農業からやってくる、そこに農業の、国の政策資源を全部集中すべきだと。そういうことによって誇りのある、農地を転用するのが俺たちの役割じゃないよと。国民に食料を安定的に供給するからこそ農本主義なんです。真の農本主義はそこなんです。だから、石黒忠篤という戦前の農政の大御所はそれを強調したわけです。最後のスライドにありますけれども。そういうプライドを持てるような、農業を農業としてプライドを持てるような農業、それはゾーニングと規模拡大によってできるんだと。

 この法律でそこまでできるとは思いません。ゾーニングもちゃんとやらないだろうし、担い手への集積率というのはほとんど上がらないと思います。でも、フランスのように、フランス農政を本当はまねてほしいなというのが私の意見です。

 ありがとうございました。

長友委員 忌憚のない御意見、ありがとうございました。

 私も、現場の生産者さんたちが一番収入も上がり、そして、さらに、持続可能として、自分たちの子供に農業を継がせたい、そう思わせる農業を、私もこの委員会の一員として取り組まなければならないと強く肝に銘じているところでございますので、これからも御指導いただきたいと思います。

 少し早いですが、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。

平口委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 皆さん、こんにちは。有志の会の北神圭朗です。

 参考人の先生方には、長時間、本当にお疲れさまでございます。私が最後なので、もうちょいなので、よろしくお願いいたします。

 私も、二時間、六人質問して、もう余り質問することが、全部取られてしまいましたけれども、あえてちょっと質問したいと思うのは、一つは、この人・農地プランです。これはもう既に今、法律で法定化されていますけれども、もう現場でも進められている。

 中山間地域の方で、高齢者が、私は京都なんですけれども、京都の和知町というところがありまして、ほとんど、八十歳ぐらいが平均年齢です。そこで日本型直接支払いとかを受けたりして頑張っているんですけれども、この人・農地プランというのが、京都のバージョンがありまして、それをやろうとしている。

 二、三人、県外から来られて、一生懸命、意欲のある若手がいるんです、三十代、四十代。この人・農地プランを作る段になって、やはり高齢者の方々は、もうこんなことをする元気がないと。それで、自分たちももう終わりだということで、困っているんです、その意欲のある人たちが。意欲のある人たちは、ここである程度集約化して、高齢者の方々がもしやめられるんだったら自分たちがその分頑張りたいという意欲はあるんだけれども、恐らく、この法律でいくと、話合いになって、多数決で、やはりやめておこうと。

 あるいは、もう一つの法案の方で、鳥獣緩衝地帯とか、放牧とか、こういう話になってしまって、せっかく違う県から来て頑張ろうとしている方々が非常に落胆をしてしまうような結果になるということなんですけれども、こういう問題について、多分、私の読んだ感じでは、この法律ではなかなか対応できないというふうに思うんですけれども、皆さん、それぞれのお考えを、じゃ、逆の方向からお願いしたいと思います。

小田切参考人 どうもありがとうございました。

 和知町は、私がかなり濃密なフィールドワークに入ったところですので、そういう意味では、地域実態がよく分かります。集落営農が形成されて、それが崩壊し、農業公社が受皿となったという、その段階まで追いかけておりました。そういう意味で、先生がおっしゃるような実態が確かに存在しているんだろうと思います。

 ただし、今回のこの法案の中で、地域計画を作っていくというプロセスの中で、これは両法案ともなんですが、繰り返しになりますが、ビジョニング、分かりやすく言えば、ワークショップというものを政策の中に位置づけているというのが大変重要だというふうに思っています。

 もちろん、ワークショップは、地域資源を発掘したり、リーダーを探したり、そういった役割があるんですが、一番重要な役割は、実は、地域の人々の当事者意識づくりです。

 先ほど、山下参考人に、農の心という話がありました。珍しく意見が一致したわけなんですが、農の心とは言いませんが、地域の当事者意識をどのようにつくっていくのかというのが大変重要だと思います。

 そういう意味では、意外とお年寄りの方がこの当事者意識を復活しやすいという、そういう傾向もあります。つまり、ワークショップを展開することによって、自分たちの問題なんだ、この課題を次の世代に、孫の世代にどうするのかという、そういった発想を持っていただくと、がらりと雰囲気が変わる集落を私どもも経験しておりますので、そこを目指すような、そんな取組をしていただきたいと思います。

 以上です。

山下参考人 中山間地域のお尋ねなんですけれども、私は、地域振興課長として、中山間地域等の直接支払い制度を、最初の制度設計から、与野党の調整とか、財務省の調整、総務省の調整、農水省の調整、全部やりました。最後の実施もやりました。

 そのときに一番印象に残ったのは、集落協定を作れと言ったわけですね、集落協定を作ったところに直接支払いが出ると。そのときに、最初に言われた言葉は、いやあ、今まで地域で、集落で話合いなんかできなかったと。この集落協定を作る過程で、やっと地域で話合いができるようになった。それほど、その当時、もう二十何年前ですけれども、やはり中山間地域はそこまで追い込まれているのかなというふうな思いをいたしました。

 それと、もう一つ強調させてもらいたいのは、中山間地域の直接支払いの第一号というのは、大分県の九重野地区というところです。これは、六か八つぐらいの集落をまとめたんです。それで、そのまとめた人が言ったのは、竹下内閣のときの地域創生のときには町に一億来た、まとめると、直接支払いというのは五年間でこの集落に六億来るんだと。六億か二億かはちょっと忘れましたけれども、そういうことでまとめたんです。

 そのときに、何を言いたいかというと、そこにまとめた人がいたわけです。それは、竹田市の市議会の副議長だった人が、副議長をリタイアしたんですけれども、その人がリーダーになって、六つの集落をまとめて、それで集落協定も全部自分で書いたわけですね。

 だから、制度をつくっても、人、リーダーがいないと魂が入らないんです。だから、そういう意味では、今日いろいろな議論がありますけれども、一番重要なのは、そのリーダーをどうやってつくるのか。それは、つくろうと思ってつくれるわけじゃないんですね。やはり内発的に出るような、そこをいかにして後押ししながらやっていくか、そこが一番私は重要だと思います。

稲垣参考人 御質問ありがとうございます。

 京都の京力農場プラン、京都府が熱心にやっているということをよく存じ上げております。

 やはり、先ほど来申し上げていますように、プランを進めていく上で、二つの地域にはっきり分かれていますね。

 担い手がもうしっかりいるところは、今回の実質化である程度そこにまとめていくという青写真ができつつありますので、そこは淡々とそういうふうに進めていただければよろしいかと思います。

 ですが、大多数の、担い手がいない、特に中山間地みたいなところは、今日、先生のお話の中にもいろいろありましたけれども、やはりワークショップレベルから、この地域はどうするんだ、この村はどうするんだ、そういう村づくりなり町づくりの発想も入れていかないとなかなか議論が進んでいかないのかなということで、農業委員会系統組織では、平成三十年ぐらいからそういうワークショップを、ちょっと迂遠な取組と言われても、やはり農業委員さん全て横粂会長のようにリーダーシップががんがん取れる人ばかりではございません、非常にシャイな方もいらっしゃいます、そういう方に、話合いに出て主導権を取ってねと言ってもなかなか難しいので、農業版ファシリテーションということで、全国農業会議所では、会議ファシリテーター協会という一般社団とタイアップして。

 そこのやり方というのは、そういうファシリテーションというか話合いのコツをつかむだけではなくて、町づくりのメソッドを持っている、多くの市町村で町づくりのセクションで実績を上げていた協会だったもので、それを農業版に応用して、そういう農業委員なり推進委員がファシリテーションのスキルを身につけて取り組む。先ほど先生のお話の中でフューチャーデザインみたいなお話もありましたけれども、やはり、地域で話合いをする際に、いろいろなメソッドを使ってやるというやり方が大事なのかなと。

 それで、このMFAメソッドの特徴は、物を決めるとき、一人三票やるんですね。多数決で、一票で決めるのではなくて、必ず、話合いをして、アウトプットをして、話合いをやる中で、最後に、それを全部並べて、みんなが三票ずつ投票する。なかなか、一票、多数決ですと、周りを見て、議論が声の大きい人に引きずられがちなんですが、これを使うと、やはり一票、二票、三票となると大体話がまとまる。

 私どもがこれを採用したきっかけは、茨城県の東海村の農業委員会がまさにこれをやって、新規就農者、現場でなかなか認知されないような方をそういう話合いの中で混ぜ込んで投票をやってみたら、新規就農者の何とかさんに農地を集めようじゃないかみたいな話が集まって、農地バンクさんを使って成果を上げたということで、このやり方を私どもの組織では農業版ファシリテーションということで、そんなまどろっこしいことをやっているのかと言われても、まずそういうことから始めております。

 いずれにしろ、担い手がいない、ゼロから話合いがなかなか成立しないところでは、いろいろな手法の中でもやはりワークショップ的な手法を、今申し上げました手法以外にもいろいろなやり方がございますので、そういうものから始めてみることが大事かと思っております。

横粂参考人 これから人・農地プラン、地域計画がどうなるであろうか、こういうことですけれども、平野部においては、つまり、しっかりした担い手がおるところは、計画は必ずスムーズにいくかと思います。

 問題は中山間地であって、基本的に、中山間地においては、もう既に、どうにもならない、守るべき農地も全て遊休農地化又は再生困難になった、それから、農業に携わる人がいない、こういったエリアについては、先行きは全く、プランができるとか計画ができる見込みはないと思います。

 それで、あとは、人、リーダーとなる人材がいて、なおかつ、そこにまだ守るべき農地が維持されているところは、必ず、こういう機会が生かせて、かなり上向きに、よくなっていくと思います。

 ですから、駄目なものは駄目なまま、それから、何とか努力すればできるところは、今回の法案に基づいて、かなり願った状態になっていくだろう、こんな予測をしております。全てがバラ色ではない、こう思っております。

北神委員 率直な御意見、ありがとうございます。

 おっしゃるとおりだと思います。ただ、ほかの三方がおっしゃったように、そういう指導力のある方々が出てきて、地域が本当にいろいろ、汗をかいて、考えて、イノベーションとかいいますけれども、本当に自分の地域をよくしたい、農業を活性化したいという、そういう思いが大事だと。

 山下先生から、制度だけつくっても魂が入らないといけないと。でも、逆に、山下先生がおっしゃったように、自らつくられた中山間地域の支払い制度というのは、まさに地域協定というのを結ぶことによってそういう意欲を引き出したということなので、制度によってそういう意欲を引き出すということもあり得るということを証明していただいて、本当に意を強くさせていただきました。

 余りもう時間がないですけれども、最後に、山下先生が一番忌憚のないというか、かなり過激な御意見をお持ちなので。

 確かに、今回の法案を私も勉強して、当然、集積化、集約化は大事、地域の話合いでやることもすばらしい、農業委員会が率先して頑張るのは、一番地域の事情をよくお分かりだと思います。ただ、これは本当に、農林水産省が目標としている八〇%というのは、とてもこれは私も厳しいと。

 聞きたいのは、先生のおっしゃっている、タコつぼ化しちゃっていると。総合的なところというのは、農林水産省で、どの法案、あるいはそういう計画があるのか、戦略方針というのはあるのか、それをどこで検討しているんですか。

 というのは、今回の法案も、先生の著書とかを私も拝読していますけれども、究極の農政の目的というのは、農地資源というものを守ることだ、これによって、国民、平時のときももちろん、有事のときもしっかりと命をつなぐ、こういう崇高な目的があると。じゃ、それを果たすための戦略みたいなところはどこにあるのかというのをちょっとお尋ねしたいと思います。

山下参考人 戦前の食管制度を利用して、食管法を利用して、事実上の農地改革を先取りしたような改革を行った、地主制度を解体した、あのときは、農林省自体が小さな、世帯としてそんなにがたいの大きな省庁ではなかったと思うんですね。ただし、農林水産行政全体を見渡せるようなすごい人材がきら星のごとくいたんですね。だから、タコつぼ化にはならなかったわけです。

 だから、そういうふうなことを見渡せるような人材が残念ながら今の農林水産省にはいないのかなと。はっきり言って、後輩もいますけれども、残念ながらそんな感じを受けます。

 あのときは、先ほど言った東畑四郎だけじゃなくて、第二次農地改革をやった和田博雄とか、それから、政治家の人も重要だったです。農地改革は、松村謙三という人が大臣になって、これから農地改革をやるんだぞと言わなければ、農地改革はできなかったんです。政治家の物すごくイニシアチブが強かったわけですね。だから、そういうふうな政治と官僚の一体性、これが重要だと思います。

 それから、先ほどの中山間の直接支払い、お褒めいただいてありがたいと思うんですけれども、あれをちょっと付言させていただきますと、あのとき、一つよかったのは、制度をつくって、このお金をもらって、あなた方、何をやってもいいですよと言ったんです。ハワイに旅行に行ってもいいし、加工施設を造ってもいいし、簡易な圃場整備をやってもいいし、何に使ってもいいよと思って言ったんです。そうすると、みんな考えたんです。集落の人が考えたんです。じゃ、何をしたら集落を活性化できるかということを一生懸命考えたわけですね。

 そういうふうな制度のつくり方、それも、私がつくってもう二十数年になりましたけれども、その制度づくりのやり方も、まあ、中山間の直接支払いを自慢するわけじゃないんですけれども、ちょっと勉強していただきたいなと思います。

 そういう意味で、残念ながら、今の農林水産省にはそういう総合性が欠けてきたなというふうに思います。

 それから、最後に一点。

 中間管理機構が、一回、集積率が上がったことがあるんです。導入してちょっとしてから、低調だったのが、上がったときがあるんです、集積率。それはなぜかというと、そのとき米価が下がったんです。米価が下がると、出てくるんです。中間管理機構の集積率も上がると思っています。この因果関係はあると思います。

北神委員 どうもありがとうございました。

 四人の参考人の先生方には、今回の法案に光を当てていただきましたし、それを超えて、農政全体のことも考える機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 もう質問がなくなりましたので、終わりたいと思います。ありがとうございました。

平口委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。

 次回は、来る十九日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.