衆議院

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第9号 令和5年5月11日(木曜日)

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令和五年五月十一日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 笹川 博義君

   理事 あべ 俊子君 理事 武部  新君

   理事 若林 健太君 理事 渡辺 孝一君

   理事 近藤 和也君 理事 緑川 貴士君

   理事 足立 康史君 理事 庄子 賢一君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      伊東 良孝君    泉田 裕彦君

      上田 英俊君    江藤  拓君

      加藤 竜祥君    神田 潤一君

      小寺 裕雄君    高鳥 修一君

      西野 太亮君    平沼正二郎君

      細田 健一君    宮路 拓馬君

      宮下 一郎君    八木 哲也君

      保岡 宏武君    山口  晋君

      梅谷  守君    金子 恵美君

      小山 展弘君    佐藤 公治君

      山田 勝彦君    渡辺  創君

      阿部  司君    掘井 健智君

      稲津  久君    角田 秀穂君

      長友 慎治君    田村 貴昭君

      北神 圭朗君

    …………………………………

   農林水産副大臣      野中  厚君

   農林水産大臣政務官    角田 秀穂君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 三橋 一彦君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         杉中  淳君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         高橋 孝雄君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房危機管理・政策立案総括審議官)            前島 明成君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房統計部長)          山田 英也君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           森   健君

   政府参考人

   (農林水産省輸出・国際局長)           水野 政義君

   政府参考人

   (農林水産省農産局長)  平形 雄策君

   政府参考人

   (農林水産省畜産局長)  渡邉 洋一君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  村井 正親君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            青山 豊久君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           川合 豊彦君

   政府参考人

   (水産庁長官)      神谷  崇君

   農林水産委員会専門員   飯野 伸夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十一日

 辞任         補欠選任

  坂本 哲志君     八木 哲也君

  池畑浩太朗君     阿部  司君

同日

 辞任         補欠選任

  八木 哲也君     坂本 哲志君

  阿部  司君     池畑浩太朗君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

笹川委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官杉中淳君、大臣官房総括審議官高橋孝雄君、大臣官房危機管理・政策立案総括審議官前島明成君、大臣官房統計部長山田英也君、消費・安全局長森健君、輸出・国際局長水野政義君、農産局長平形雄策君、畜産局長渡邉洋一君、経営局長村井正親君、農村振興局長青山豊久君、農林水産技術会議事務局長川合豊彦君、水産庁長官神谷崇君、総務省大臣官房審議官三橋一彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。上田英俊君。

上田委員 おはようございます。自由民主党、富山県第二区選出の上田英俊です。

 質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 本日は、今日は御欠席されておられますけれども、野村大臣の所信表明に基づき、農業政策、米政策について質問させていただきます。

 私たちは、食料なしには生きてはいけません。農業はまさしく命を支える産業であり、農は国の基、礎であるにもかかわらず、産業としての農業については、悲観主義的な主張が目立つ社会であります。

 確かに、農業を取り巻く環境は、近年、米価の下落、農業用資材、肥料、燃料の高騰、さらに円安トレンドが農業経営を圧迫しております。人口減少、少子化により日本人の胃袋の数も減少し、食べ盛り世代の減少も、全体として日本人の胃袋を縮小させています。その現実が、悲観主義的な主張、農業の先行き不透明感を構築しているものと考えます。

 しかしながらであります。

 私は、県議会議員の頃から、農業にはまだまだ大きな可能性があると主張してきました。その根拠の一つが、世界的な人口爆発であります。私は昭和四十年生まれで、小学校の頃、社会科の授業で習った世界の人口は四十億人でありました。今は八十億人であります。五十年間で二倍になりました。しかし、地球や農地が二倍になったという話は聞いたことがありません。異常気象であるとか、あるいは不安定な国際情勢、外交戦略により供給サイドが安定しない一方で、人口爆発、グローバルサウスの経済発展等により、食料需要は高まり、強まる一方であります。私はそこに日本の農業の可能性を見出します。

 さらに、ロシアによるウクライナ侵略により、一層、食料の需給バランスが崩壊しています。また、食料安全保障の概念も定着をしてきました。

 私たちは、今日まで、当然のこととして、お金さえ出せば適切な価格で希望するクオリティー、ボリュームの食料を買うことができました。そして、それが未来永劫のものと信じて疑いませんでした。しかし、既に食料争奪の時代に突入しています。いや、食料争奪の時代が顕在化しただけであります。

 そこで、今こそ、耕せ日本の時代と認識をしております。まさしく野村農林水産大臣の述べられるところのターニングポイントであるというふうに認識しております。

 そこで、伺いますが、農林水産省として、ターニングポイントの向こう側にどのような日本の農業の姿を描いておられるのか、その具体的な姿、目標を示すことが生産、流通の現場で汗する者を鼓舞するものというふうに考えますが、所見を伺いたいと思います。

野中副大臣 まず冒頭、本日、野村大臣が発熱のため当委員会に出席がかなわなかったことを、まずおわび申し上げる次第でございます。

 その上で、お答えいたします。

 上田先生からお話がございました、人口が減っていくということは、つまり、胃袋が小さくなり、少なくなっていく、少子高齢化も含めて。一方、世界の中で人口がこれから八十億、百億に迫る中でどのように全世界の人口の栄養を養っていくかというのは、大きな課題でございます。

 そして、その上で、農業従事者が減少していく、そして、その生産を確保していくためにどうするかということでありますが、先生の御地元は米どころでありますので米が何より基でございますけれども、その上で、例えば園芸や畜産ではブランド化や優良品種等への転換による付加価値向上、そして土地利用型農業では生産コストの低減など、地域の地理的条件や生産品目の特性などに応じた取組を通じて、農業で生計を立てられ、産地としても生産が維持されるような姿にしていく必要があるというふうに思っております。

 例えば、先ほどお話をいただいた大臣の御地元の鹿児島の例を挙げさせていただきたいと思いますが、かつては米でございましたが、経済成長によって需要の高まった牛、豚、鳥など、畜産を生産の中心に据えた結果、生産額が約五十年で四倍に増え、全国二位まで上昇したということであります。

 地域の実情に応じてこのような農業の姿を実現していくことで、持続可能で強固な食料供給基盤を確立し、食料安全保障の強化を図ってまいりたいというふうに思います。

上田委員 次に、米政策について質問いたします。

 私は、国会開会中は毎週富山と東京を往復する金帰火来の生活の中で、季節の変化が目に映ります。今年は例年よりも早い田植のシーズンが始まりました。

 私は、土地なし非農家でありますけれども、約三千七百ヘクタールの農地と用排水、小水力発電所を管理する土地改良区の理事長を務めております。新幹線の車窓から見える、三反歩に整備された圃場が見えますが、この季節、水の張られていない水田が多数あることが残念であります。

 富山県は、水田単作地帯であり、昭和四十年代以降、土地改良事業を積極的に進め、豊かな穀倉地帯をつくり上げてきました。

 農業経験の全くない私でありました。平成七年、三十歳のとき、県議会議員に落選した後、後援会の青年部長を務めてくれていた大規模農家に頼み込んで農業の手伝いをさせていただきました。ただ、手伝いと思っているのは私だけで、全くのずぶの素人は単なる足手まといではなかったかというふうに今思います。その大規模農家は十棟以上の育苗ハウスを三回転させる大規模農家で、育苗箱の紙敷き、床土詰め、播種、苗出し、田植、草刈り、無人ヘリコプターでの防除、稲刈り、もみすり等、全くの新しい体験であり、土の力、水の力、そして生産者の力に得難い感動を覚えました。

 今日、全体の約六〇%の水田において約六百七十万トンの主食用米が生産されていますが、今後の需要量の推移で毎年十万トン減少し続ける現実が残念でありますが、減反政策、生産調整は、持続可能な水田農業のためには苦渋の決断と理解しております。作付転換が図られている約四〇%の水田をフル活用して、日本の農業を守り、強くしていく政策が求められます。

 まず、水田を水田として活用していく、飼料用米、米粉用米、輸出用米等の新市場開拓用米について質問いたします。

 まず、飼料用米について伺います。

 飼料用米については、令和二年産の作付面積の七万一千ヘクタールから、令和四年産が十四万二千ヘクタールと倍増しています。まず、この実績をどのように分析しているのか。

 また、令和六年産米から、多収量の期待される品種に支援を重点化する方向で支援体制が変わるようですが、今後の取組方針と併せて伺います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、主食用米の需要が毎年減少する中で、水田において、麦、大豆、野菜など需要のある作物への転換を進めていく必要がございます。

 飼料用米につきましては、輸入に依存している濃厚飼料を国内で生産できる作物でありまして、水田活用直接支払い交付金により支援をしているところでございます。

 令和四年産においては、飼料用米の作付面積十四・二万ヘクタール、生産量も約七十六万トンと見込まれておりまして、令和十二年度の生産努力目標の九・七万ヘクタール、七十万トンを達成する見込みとなっております。

 一方で、作付面積に対する収量、単収が十分上がっていない面がございます。また、主食用米の需給動向次第で供給量が増減するために、需要者への安定的な供給に影響が及ぶ面、こういう面もあるというふうに考えております。

 このため、飼料用米につきましては、一つは、限られた面積の中でより多くの収量を上げるということ、また、飼料用米として定着性を高めていけるように、生産現場への周知や種子の確保等も勘案しつつ、多収品種を基本とする本来の支援体系へと転換を図っていく考えでございます。

上田委員 次に、米粉用米について伺います。

 今から十年ぐらい前でしょうか、米の消費拡大を狙って米粉の生産が進められてきましたが、製粉技術の問題やコスト等の課題が目立ったと記憶をしております。

 私は、米粉を拡大するためには、小麦粉の代替品、代用品という考え方よりも、米粉が米粉として市場から評価される、つまり、米粉でもよいではなく、米粉がよいと評価される必要があると考えます。

 現実には考えにくい想定ですが、小麦が今後安く大量に輸入できることになった場合に、米粉用米の生産者は戸惑うばかりであります。生産者が安心して将来を見通せる米粉用米の作付を行えることが大切です。

 米粉用米については、作付面積が令和二年産では六千ヘクタールから令和四年産では八千ヘクタールと微増ではありますが、伸びているとは言い難い現実であります。

 しかし、今日、ロシアによるウクライナ侵略等により、事情が大きく変わりました。今後の米粉用米に対する取組について伺います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 米粉につきましては、近年、需要量が四・五万トンと拡大しておりますが、今後、更なる需要拡大に向けて、御指摘のとおり、一時的な小麦粉の代替ではなく、グルテンフリーですとか油の吸収が少ないなどの特徴を生かして、消費者に受け入れられる商品作りが重要だというふうに考えております。

 このため、食品製造企業ですとか米粉の製粉企業に対して、令和四年度補正予算等によりまして、一つは、米粉の特徴を生かした新商品の開発、それから、パン、麺などの製造機械・施設の導入、また、米粉の製造に適した製粉施設の導入等の支援を集中的に行うこととしております。

 また、生産面においては、パンや麺の製品適性の高い品種への誘導を進めるため、令和五年産から、米粉の専用品種の導入支援を行うこととしております。

 このように、生産から製粉、製造を通じて、米粉のよさを生かした需要拡大に向けた取組を加速化させていきたいと考えております。

上田委員 次に、輸出用米等について伺います。

 国内需要が、一人当たりの消費量がピーク時の昭和三十七年の年間百十八キロから令和二年には五十一キロと半分以下になる中で、海外への輸出も可能性を秘めているというふうに考えます。また、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたことも追い風であります。

 今後、米の輸出促進について、どのようにマーケットを拡大し、輸出量、輸出金額の増加を図っていくのか、伺います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 二〇二〇年の輸出拡大実行戦略では、米、パック御飯、米粉及び米粉製品、これを一くくりに重点品目と位置づけまして、二〇二五年の輸出額目標を百二十五億円と設定いたしました。

 実績ですが、日本食レストランですとかおにぎり店等の需要開拓が進んだ結果、年々伸びてきておりまして、二〇二二年には、輸出額ではこの四年間で九六%増となる約八十三億円、輸出数量では約一〇九%増となる約三万トンというふうになっております。内訳として、米が約七十四億円、パック御飯は約八億円というふうになっております。

 輸出の更なる拡大に向けましては、米につきましては、日系だけでなく現地系レストランチェーンですとか輸出事業者の進出が不十分な国、地域などの新たな市場を開拓すること、パック御飯などにつきましては、市場規模の大きいアメリカ等における需要の開拓を図る必要がございます。

 このため、一つは、改正輸出促進法に基づく米の認定団体を中心としたオール・ジャパンでのプロモーションの強化、さらには、産地生産基盤パワーアップ事業によります輸出向けパック御飯の製造ライン等の整備などにより、更なる輸出促進に取り組んでまいる考えです。

上田委員 ありがとうございました。

 質問は二点残しましたけれども、やはり農業はまだまだこれから伸びていく可能性が多い、フロンティアの多い領域だというふうに考えております。しっかりと取り組んでまいりたいということを表明して、終了いたします。

 ありがとうございました。

笹川委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 まず冒頭に、大臣が今朝方、急に発熱をされたということで、コロナの方は陰性だというふうに伺っておりまして安心をしておりますが、御回復をお祈り申し上げたいと思います。

 それから、私の都合で時間をちょっと調整していただきまして、ありがとうございます。

 私から質問したいのは三点ございまして、一つは、水田活用の直接支払交付金制度、まだまだ現場では、くすぶっているというか、混乱が続いているという状況であります。

 これは私も何回も農林水産省のホームページとかを読ませていただいて、制度を理解しようとするんですが、いろいろなことを、目的を果たそうとしていて、米の奨励でもあり、転作の奨励でもあり、水田の機能を守るということで、それは結構なんですが、ややもすると、現場では矛盾を来している。畑作をして麦とかソバとかを作って、いきなり水を張れとか稲を植えろといっても、そう簡単にはいかないという状況であります。

 実際、多くのところでは、ソバとか大豆とか、そういった畑作の方に転換をしているのでありますので、私の提案ですけれども、そうであるならば、もう水田活用交付金ということではなく、そのまま畑作の本作化ということで農林水産省として強力に支援をすべきじゃないかというふうに思うんですか、いかがでしょうか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 北神先生、この委員会の中でもそのような御指摘もいただいておりまして、北神先生以外の先生方にもそういう御指摘をいただきまして、全国各地において、それぞれ、湿潤地帯であったり、あるいは水をやはり引いてくるのが難しい地帯ですとか、いろいろな地帯があるというお話をいただきました。

 そのために、農林水産省も、昨年、できるだけ現場の声を伺って、それにそれぞれ対応できるような施策を用意していこうということで検討をいたしまして、今、水田活用の直接支払交付金につきましては、一つは、水が張れるところ、水を持ってきやすいところは水田機能を維持しながら米と麦、大豆、ソバ等の畑作物を輪作する、水稲とのブロックローテーション、これを促して水田機能を維持していただこうという地域がある一方で、今おっしゃられたように、元々水を引くのは非常に難しい状態になっているというようなところにつきましては、畑作物が連続して作付けられていて、それがいい環境で作付がされているのであれば畑地化を促すという、そっちの方にも進めるような政策を用意していこうということを議論させていただき、農水省としてもそういうような方向を今出しているところでございます。

 このために、それぞれに取り組む現場の課題を踏まえて、令和四年度の補正予算、それから令和五年度の当初予算において、水田機能を維持しながら稲、麦、大豆等のブロックローテーションに取り組む産地に対しましては、水田の汎用化の基盤整備ですとか、低コスト生産に取り組むための支援ということを考えております。

 一方で、水を張るのがなかなか難しい、それで、畑作物だけで、水を張らなくてもうまく輪作ができるというところに関しては、畑地化に取り組む産地といたしまして、麦、大豆、それから御指摘のあったソバ等、畑作物の生産が定着するまでの一定期間の継続的な支援、これを新たに行うというふうに考えております。

北神委員 よろしくお願いします。

 お米ももちろん大事なんですけれども、皆さんがよくおっしゃるように、毎年十万トンぐらい需要が減少している中で、やはりそういう戦略的な作物の方に力を入れるべきだというふうに思いますので、よろしくお願いしたいというふうに思います。

 もう一点は、中山間地域で、水田活用の交付金というものを当てにして経営しているところが非常に多くて、私の地元にもたくさんあるんですが、そういったところで、なかなか戻れない。今のいわゆる畑作の本作化の方向ももちろん大事なんですが、一方で、私の地域だったら、亀岡というところでソバをやっていて、その取れたソバを手打ちで、レストランを経営して、それで、その場所でいろいろ、市場とか、そういう地域づくり、町おこし、村おこしみたいなことをやっているところがあります。

 だから、そういったところが、もう、場合によっては水田活用の交付金が受けられない、もらえないというふうになると、非常に、今までの努力というのが水泡に帰してしまうので、是非、一方でいわゆる中山間対策というものも、やはり水田活用の見直しと同時にやるべきだというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

青山政府参考人 お答えいたします。

 中山間地域における水田農業につきましては、主食用米からの作付転換を目的とする水田活用の直接支払交付金のほか、営農の下支えを図る中山間地域直接支払い等の日本型直接支払いが活用されているところでございます。

 今般の水田活用の直接支払交付金の見直しに伴いまして交付対象外となりました中山間地域の農地についても、営農の継続が必要な場合は、先ほど北神先生の方から亀岡でのソバの地域づくりのお話がございましたけれども、そうした地域資源を活用した収益力向上に取り組む地域ぐるみでの農山漁村発イノベーションですとか、複数の集落協定や自治会などが運営し営農や生活を支える農村RMOの形成、それから、粗放的利用を含めました農地利用に必要な基盤整備等に取り組むための最適土地利用総合対策などを推進していくこととしております。

 引き続き、中山間地域の営農に必要な支援を行ってまいりたいと考えております。

北神委員 ありがとうございます。その辺、また私も地元にそういう制度があるということを伝えていきたいというふうに思います。

 それから、最後になってしまいましたが、まだ時間が結構あるみたいですが、この水田活用の交付金制度、もう一つの、違う視点からの課題というか問題点がありまして、これは水を張れという話なんですが、一方で、農林水産省あるいは政府全体としては、メタンガスを含むいわゆる温暖化対策というものを方針として二〇二〇年に明確に掲げています。農林水産省も、当然、そういう農地の部分とかで、メタンガスの排出とか、こういったことについての取組というのをやっている。大臣もたしか中干しを推奨されていますけれども、それがどれほどの効果があるのか分かりませんが。

 我が国のメタンガス排出量の大体四割が水田から出てきているということなので、この水田活用交付金で、これがちゃんと実質的に機能している場合は結構なことだと思いますけれども、ただその交付金をもらうためにまた水を張るとか、こういうことをすると、政府全体の温暖化対策との矛盾を来してしまうという部分があるというふうに思いますので、私の地元、これまた違うところで南丹市というところがあって、そこの園部町で、専業農家の方がそういう問題意識を持って、水稲ではなく陸稲栽培というものに切り替えようとしております。

 陸稲というのは、皆さん御案内のとおり、水稲と植物分類上は同じなんですけれども、水を必要としない、普通、畑地で栽培できるようなお米だ。もちろん、品種の種類とかは限られていますし、モチ米が一番多いというふうに聞いておりますけれども、そういういろいろな制約はあるかもしれませんけれども、現在、たしかビール酵母細胞壁を活用した肥料原料というものを使えば、かなり効率的に栽培をすることができる、収穫量が上がる。

 そういう、非常にこれから展望があるし、メタンガス排出の削減にも寄与すると思いますので、ここをやはり支援を充実すべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

笹川委員長 時間ですので、答弁は簡潔にお願いします。

野中副大臣 はい。

 確かに、陸稲は水を張らないのでメタンガスの発生を抑えるということは、ごもっともでございます。

 ただ、一方、ニーズがあるかとか、地域の特性、まずその需要を調べるというのも重要でありまして、私も陸稲というのは余り知らなかったんですが、栃木と茨城はあるということですけれども、埼玉では余り聞かないんですが。

 ただ、やはり単収が水稲に比べて約半分ぐらいとか、問題も、その出口ですね、使用の目途があれば、そこの部分以上の推進はできないですが、まず出口を見つけるというのは大切だというふうに思っております。

 私どもとしましては、やはり全般として、主食用米からの転換には、需要があって、そして輸入に依存している麦や大豆等の生産拡大をまずは進めていきたいというふうに思っております。

北神委員 ありがとうございます。

 今まで北関東が多かったんですけれども、ただ、京都の方にも結構そういうのに熱心に取り組もうとしているところがありますので、これは引き続きまた質問してまいりたいと思いますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

笹川委員長 次に、緑川貴士君。

緑川委員 皆様、お疲れさまでございます。

 野村大臣が高熱でということで、御体調不良、激務が続いてきたということもあるというふうに思います。お早い御回復をお祈りして、政府三役の皆様、そしてお役所の皆様、今日はよろしくお願いいたします。

 質疑に入りたいと思います。

 政府の貿易統計では、昨年の大豆の輸入額が過去最大になりました。そして、小麦も十四年ぶりの高い水準になっています。現地の生産コスト、輸送コストが増えたことであったり、また円安が要因であるということですが、これほど輸入額が高い、そして輸入品が高い状況でも国外の農産物に頼らざるを得ない。やはり国内の供給力というものが改めて課題になっているというふうに思います。

 早速ですけれども、お配りしている資料の1を御覧いただきたいと思いますが、これは現行の食料・農業・農村基本計画の国内供給力の指標とも言える食料自給率の目標が示されております。作物別であります。

 その目標達成の前提としているものが大豆そして小麦といった主要作物の生産拡大でありますけれども、赤で囲った大豆については、昨年度の補正そして今年度の予算で畑地化そして転作の支援を進めることになっていますけれども、これまでもこれは力を入れてきたわけであります。水田リノベーションであったり、あるいは麦豆プロ事業、こうしたもので国内の生産体制を強化したり、あるいは需要に応えるための施設整備、商品開発といった支援を行ってまいりました。

 生産、流通、消費、それぞれの面でこの後押しをしてきたわけですけれども、昨年の大豆の作付面積というものを見ると、おととしよりは増えて、田畑全体では十五万ヘクタール余りなんですが、この数字というのは、この赤枠にありますように、平成三十年の基準時の十五万ヘクタールから考えて、さほど伸びているというわけではありません。この二十年で見ても、やはり、十四万ヘクタール近くから十五万ヘクタール前後ということで、中長期的にはほぼ横ばいの中で推移してきた、この数字であります。

 おととしよりも面積は増えたのに、収量はおととしよりもこれは減っている。二十四万トン余りなわけなんですけれども。つまり、十アール当たりの収量、単収がやはり下がっている。全国平均で今百六十キロです。平均、平成の三十年よりも、これは百六十七という数字がありますが、これよりも下がっているわけなんですね。

 次の資料ですけれども、都道府県別のデータでは、平均で見た場合、全国平均でありましたから、やはり地域で見るとより大きな差になっているわけです。たとえ作付面積が全国で上位という県があっても、それぞれありますけれども、単収が百キロ未満というところもあります。北海道の実は三分の一ほどの単収になっている。作付面積は多いのに単収が著しく低いようなところもあるわけなんですね。

 これまでも力を入れてきた麦を含めた大豆の生産の事業、これの取組を進めてきたわけですけれども、これまでも踏まえて今の現状をどのように見ていらっしゃるか、お答えいただきたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 もう緑川先生おっしゃるとおりでありまして、国産大豆につきましては、旺盛な需要があるのは事実なんですが、作付面積、生産量はここ二十年で増加傾向にはございます。ただ、一方で、単収は確かに伸び悩んでおりまして、地域差もかなりございます。また、年産ごとの変動幅もかなり大きい傾向にございます。

 まず、単収が伸び悩んでいることにつきましては、一つは、大豆については古い品種が多いということ、それから、経営面積が今かなり拡大をしているんですが、それに伴って適期に作業ができていないこと等が原因だというふうに考えております。

 この解決に向けて、一つは、新品種の開発されたものが結構ございまして、これの導入をとにかく進めていきたいということ、それから、作付の団地化等によりまして、作業の省力化、それを図っていきたい、作業効率の高い大型機械の導入の支援、これなんかも実施していきたいというふうに考えております。

 また、今おっしゃられたとおり、地域差がかなり実は単収についてございまして、これに関しましては、近年豪雨が増えているので、そういったところは単収は低くなっているんですが、特に傾向としては、水田地帯で十分な排水対策が行われなくなっているということが原因だと考えておりまして、この解決に向けて、例えば弾丸暗渠等の営農技術の導入を推進していきたいというふうに考えております。

 さらに、日本の国内になりますと、どうしても年産ごとの収量の変動というのは生じます。このために、令和二年度の補正予算から、調整保管機能を果たすストックセンターの整備というものを支援の対象に加えました。これによりまして、国産大豆の供給の安定化、これを図っているところでございます。

 このような取組によりまして、大豆の需要に応じた生産拡大、これを着実に図っていきたいというふうに考えております。

緑川委員 これまでの取組ということでのお答えを求めていたわけですけれども、これからのお話も、それは非常に大事なことであるというふうに思うんですけれども、今まで費用をかけて事業を進めてきたことがあるということがありますし、天候の不順の影響も受けやすい作物、単収は産地によって、あるいは年によって変動が大きいということはあるんですけれども、これまでもそれに対して対策を取ってきたけれどもなかなか改善されない。安定した収量に到達するまでのいろいろな支援を行ってきたはずなんですね。行ってきただけに、やはり費用対効果はどうであったのか。

 今年度から、そして昨年度の補正も含めて、一体として予算づけもしているわけですから、更に力を入れていく上で、これまでの費用対効果、そしてこれからの費用対効果はどうなのかということはしっかりと、これまでも、少なくとも検証はしなければならないというふうに思いますし、品種改良は非常に、これは研究の段階でもそうなんですけれども、普及していく上で大事なんですが、現場の営農技術とか、指導もそうですけれども、機械の導入とかの要件となっているのがやはり私はちょっとハードルが高いんじゃないかなというふうには思っています。

 今年度から、ますますそうした要件を求めるような内容になっているんですが、というのは、まとまった畑地化に対する地域の合意形成、これを取るのがやはり地域としては難しいところがある、そういう産地があったり、また、ブロックローテーションができるようにするということも求めているんですが、水分管理の技術として、ブロックローテーションというのは、やはり最高、非常に難しい、取り組みやすさとしては難しい部類に入るということが農研機構の資料にも書いてあるわけであります。こういうものを現場で導入してください、これを支援の要件としますというのは、やはりなかなかハードルが高いように思います。

 一言、この辺り、御見解はいかがですか。

平形政府参考人 今、緑川先生が何点か重要な点をおっしゃられておりまして、特に、単収が向上しているのは、実は北海道を中心にいえば、単収は下がっておりません、やや増加しているぐらいでございます。特に、水田地帯の単収が下がっているというところがございます。

 ブロックローテーションは、取組は地域の中で合意をされないといけませんので、それに関しては確かに難しい点はございます。ただ、同じように大豆の作付をやったとしても、ばらばら水稲の間に大豆が作付をされていると、どうしても品質がよくなくなるということがございます。

 このために、農林水産省全体の中で、地域計画もそうなんですけれども、できるだけまとまった面での取組、これはすごく大事でございまして、直接すぐ要件化するというよりも、やはりブロックローテーションは促すというものだというふうに思っておりますので、これは運動としてはしっかりやっていきたいというふうに考えております。

緑川委員 なかなかまとまるということ自体がこの島国である日本でなじむのかとか、そもそもの気候に適した作物であるのかということについて、しっかりこれは冷静に考えていかなければならないというふうに思います。

 これまでの大豆農家、うまくいっていないという声はたくさん聞かれます。種まきから収穫まで、稲作とは使う機械がやはり違いますし、湿害対策のための明渠、暗渠の整備などを含めて、たとえ補助があっても結局は自己負担分が大きいものがあります。そして、どの産地でも取り組めるというわけではないというふうに思います。

 大豆というのは、種をまく時期というのは、梅雨の時期と重なっていきます。まいた直後に、やはり今、気象災害の時代でもありますから、強い雨が例えば一週間以内に降ったときには、これはたちまちに、種を植えたとしても、これが腐ってしまう。もうこれで育たなくなってしまうわけですよね。花が咲く真夏の時期には、片や、雨が全く降らなくなればさやに豆が入らない。雑草が生い茂って刈取りすらできなくなる。収量どころの話ではないわけなんですね。

 こういうところの、やはりちょっと、非常にリスクのある作物であることを前提にした農業政策に考えていかなければならないというふうに思います。

 結局、収量が上がらなかった、補助金をもらってももうからないからすぐに撤退してしまったという農家がいますし、収量が上がらないなら、これはちょっと開き直る形で、これは悪いことですけれども、手間をかけないで、転作の補助金を目当てにして、耕作意欲の低い作付も残念ながらこれは見られるところであります。

 湿害に強い、さっき御答弁をいただいた、新しい品種をもっともっと導入を進めていくためには、これはもっと海外並みの手厚い支援が必要になってくるわけでありますし、それがやはり日本としては難しいというような今の予算のレベルにあるんじゃないかというふうに思っております。

 そういうふうに海外並みに大豆の助成金も厚くしていくことができなければ、費用対効果というものを冷静に考えたときには、日本の大豆の作付の課題というのをなかなか克服することは難しいんじゃないかというふうに思うんですけれども、この辺り、御所見はいかがですか。簡単にお願いします。

平形政府参考人 お答えいたします。

 緑川先生おっしゃるとおり、水田活用の直接支払交付金という面払いのものもございますが、ゲタ対策、これは、いい品質のものを量を多く作れば作るほど補助金が多く出るという直接支払いになっておりまして、生産刺激的な政策でございます。

 こういったことのほか、近年では、麦、大豆の生産技術の向上対策ということで、毎年度の補正予算ですとか当初予算で新しい対策も組んでおりまして、麦と大豆に関しましては、農林水産省としてもかなり特に力を入れて生産を振興している部門だというふうに考えております。

緑川委員 今の日本の農業生産の大豆の作付の立ち位置、位置づけというものを俯瞰して、島国である日本として、モンスーンのアジアの中に置かれる日本としてふさわしい作付となっていくかどうかは、やはり米と併せてしっかりと見ていかなければならないというふうに思いますし、畑地化する場合には、前後の期間の重点的な支援というものが、ゲタ対策をおっしゃっていただいたり、今の政府予算、重点的に支援をしているところがありますが、これがいつまで続くのか、これが長続きするという保証はありませんし、やはり田んぼは水をためる場所であります。畑は水はけが一方で大切になるわけですから、畑作に向く水はけのいいところは、その土地の特性を存分に生かしていただくことがベストですけれども、そうでないところは、やはりどんなに湿害対策を施しても費用対効果が著しく低くなってしまう、予算が正直、無駄なお金になってしまいかねないというふうに思います。

 所得の安定のために、やはり本来の水田利用を前提に農業を考えるということが私は必要だというふうに思っています。

 大豆の国産化を進めて、国内シェアを取り戻す、取り組みやすい大豆生産を行っていくということをちょっと一つ提案をしたいと思いますし、片や、米については、戦争や気候変動で、今、一方で、米も世界的に値上がりをしています。米を食べるアジア、中南米、アフリカの国々、三十五億人とも言われている食生活に今後やはり影響が広がっていくおそれがあるような米不足が今一部で起きています。こういう状況を考えれば、米を減らして大豆を増やすという従来的な考えではなくて、水田本来のよさを生かしながら、米も大豆も作るという観点は私は持っておくべきだというふうに思います。

 昭和の時代まで、畑作の大豆だけでなく、あぜ豆といって、田んぼのあぜに大豆が栽培されていたそうです。田植の前に、田んぼの土をあぜの内側、圃場の内側に、幅三十センチほどに盛って、田んぼの土を載っける。それをくわを使って左官屋さんの仕事のようにきれいに壁塗りのようにして仕上げる。それで大豆を植えるということです。こういう新しい土が水田から供給されることで、稲、大豆が互いに必要になるような養分のバランスが保たれて、生態系の安定にもつながっていたというふうに言われますし、このために、あぜ豆の場合には、畑作大豆のような連作障害が起きない。豆の粒、そして重さも畑作よりも勝っている。その収穫の作業は、稲刈りに合わせて行うので労力もかからないというふうに言われています。

 海外からの大豆の輸入が増えていったことで、あぜ豆というのは衰退してしまって、ほとんど作られなくなりましたが、一九五〇年代、当時の日本の大豆生産量の三割から五割近くを占めていたという文献もあります。

 あぜ豆の場合に、十アールの水田のあぜから六十キロの大豆が取れたということです。北海道の単収が二百三十余り、そして全国平均が百六十ですから、十アール当たりの水田のあぜから六十キロの大豆が取れるというのは、やはり結構な量だというふうに思います。特筆すべき数字であるというふうに思います。今の畑で作る大豆に加えて、あぜ豆もプラスすれば、二百二十キロの単収。これは北海道の単収に近づくことになる。やはり、あぜ豆というものもしっかり並行して進めていくことが大事だと思います。

 農地を最大限に活用する手段として、やはり昔の農業の知恵に学ぶべきところがあるんじゃないかというふうに思いますが、政府の御見解はいかがでしょう。

平形政府参考人 お答えいたします。

 いわゆるあぜ大豆なんですが、現在でも一部の地域で栽培されているということになりまして、詳しいデータがないので有効性についてちょっとお答えするのが難しいんですが、水田の空き地であるあぜで大豆を生産するということは、農地の有効活用の観点からは一つの手段であると思いますし、私も調べましたけれども、大分前の学会報告で、確かに、七十年ぐらい前のものがございまして、害虫の被害が少ないので収量がよくなる、そういう分析の報告も拝見いたしました。

 一方で、あぜ大豆の栽培は、当時、主食用米も実は自給ができていなかったときで、できるだけ土地を使っていろいろなものをやりたいという、労働力が十分あったときの取組でありまして、畦畔の形状から労働力を多く必要とするものでありますので、大規模に栽培することはなかなか向いていないかなというふうには考えております。

 ただ、一方で、中山間地域など、水田のあぜのかなりあるところに関しましては、こういったところで大豆を生産していただいても、一つは、お話ございましたゲタ対策ですね、これは法律に基づく支払いですので、引き続きこれはずっとやっていくものでございますし、先ほど御紹介いたしました麦、大豆の生産性向上技術対策につきましては、こういったものも対象にしてやっていきたいというふうに思っていますので、地域ごとの労働条件等を見ながら、いろいろ活用していただきたいというふうに考えております。

緑川委員 今、多くの水田では、畦畔、あぜはコンクリートになっているようなところもあったり、なかなか難しいようなところもあるんですけれども、一方で、中山間地域を中心に、あぜの面積が大きいようなところ、広いあぜになっているところについては、農家の所得の、副産物としてもしっかりと助けになるような、そんな大豆の生産ということで、やはり地域で分散して、まとまるということは難しい地域がある中で、分散して大豆生産をしっかり各地で取り組める、いろいろな形で取り組める、それによって、収量が全体として、日本としてしっかり上がり、また、品質とかいろいろな栄養面の問題ももしかしたらあるかもしれませんが、実需としっかりと結びつくような、そうした課題も整理もしていただきながら、しっかり、このあぜ豆について、最大限農地を活用できる手段としてお考えをいただきたいというふうに思っております。

 豆もそうなんですけれども、やはり米についても、これは、主食用米には確かに今、生産に限界があるというのは把握はするところなんですが、いろいろな需要に対する可能性というものをしっかり考えていかなければならないというふうに思っております。

 やはり、日本は元来、瑞穂の国、モンスーンの影響で高い気温、豊富な水が栽培の条件となる、こういう稲作が農業の中心である。だから、気候としての適作はやはり私は稲であるというふうに思います。

 この水田を生かすためには、米生産それ自体を縮小するんじゃなくて、需給が緩まないようにして、価格の下落を回避するために、需要に応じた米の生産、その一つとして飼料用米というのが活路の一つになり得るというふうに私は思っています。

 仕向け先、潜在的な需要の大きさについてお尋ねをしたいと思いますが、この畜産、酪農の飼料原料の大半を輸入に頼ってきた、こういう状況から転換をするために、配合飼料の原料として飼料用米の配合可能な割合についてお尋ねをしたいと思いますが、お配りしている資料の3、この農水省の資料であります。

 例えば、農水省の基準によれば、乳牛では一〇%、そして肉牛では三%までなら家畜の生理、畜産物に影響を与えることがないというふうにしています。

 それに対して、次の資料4と5は農研機構の、二〇一六年に作成した、少し前の資料になりますが、生産現場向けのマニュアルの抜粋であります。

 このマニュアルでは、一般に利用可能な飼料用米の配合割合として、乳牛は、さっきの政府のやつと比べていただきたいんですが、二五%まで、そして、下の肉牛は三〇%が上限となっていて、農水省の基準とは明らかに違うわけです。5にある豚についても基準がかなり違っています。

 この畜種別の表には、いずれにも注がついていまして、国産飼料用米を用いた試験によって、その飼養や乳量、乳質、枝肉成績や肉質に影響がない、低下させないということまで丁寧に書いているわけです。特に、体質がデリケートだと言われる乳牛でも、安全を見込んだ上限値であるということまで国の研究機関がわざわざ注までつけているわけです。

 輸入に代わる国産飼料としての重要性が高まっている中で、飼料用米の配合割合について、やはり、国の研究機関と異なるようにも見えるこの政府の基準、もっと明確にしていくべきであるというふうに思いますが、いかがでしょうか。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 米を飼料として使う場合でございますが、これはトウモロコシとほぼ同じような栄養価を持っておりますので、家畜にとって優れたエネルギーの供給源になるものでございます。もちろん畜種ごとに異なる部分はございますけれども、トウモロコシの代わりに一定割合の給与はもちろん可能でございます。

 委員御指摘の資料の3でございますけれども、委員が今おっしゃったパーセンテージでございますが、これは、飼料用米を家畜に給与する際には、急速に消化されるといったことで家畜の健康に影響が生ずる場合があることから、この資料を作成をいたしまして、資料の3でございますけれども、利用の際に、生産者の皆様、生産者ほかの関係者の方に注意を呼びかける資料でございます。ですから、今委員が御指摘になったのは、トウモロコシの代わりに米を使うときに、家畜の生理だとか畜産物に影響を与えることなく給与可能な水準の部分でございます。

 委員御指摘の資料3の中には、下の方に、調製や給与方法を工夫して利用すればいい水準、あるいは、畜産物への影響ですとかを考慮して注意すればよい水準ということで、三種類をお示しをしてございます。

 一方、農研機構の資料につきましては、適切に飼料の設計を行って給与した場合の水準ということでございまして、我が省の、今委員がおっしゃったパーセンテージのあるこの緑色の部分、これは十分に余裕を見ている数字でございまして、委員御指摘の資料3の黄色や赤の部分、こういった注意して給与すべき水準というものもございますので、これは、農研機構の適切な飼料設計を行って給与した場合に与えられる水準の数字と特段矛盾するものではないというふうに考えてございます。

緑川委員 政府で言う、最初の、最も安全だというレベルに対応する農研機構のものがないんですよね。これが、乳牛が二五%で、もうこれで既に安全なんですという見解なんですよね。ですから、明らかに政府の基準と異なることについて、どうお考えですか。

渡邉政府参考人 資料3の緑色の部分、家畜の生理や畜産物に影響を与えることなく給与可能と見込まれる水準というのは、これが安全であるというふうな趣旨でお示ししているものではございません。ここまでならトウモロコシの代わりに与えても家畜の生理や畜産物に影響がないというようなことの水準として、安全を見た水準として、余裕を見た水準としてお示しをしているものでございます。

 これは、実際に配合飼料メーカーが飼料用米をトウモロコシの代わりに使う場合は、当然、飼料設計をして使いますので、そこは、調製や給与方法を工夫して利用する、この黄色の部分ですとか、あるいは、影響に対して調製や給与方法を十分に注意喚起をして使っていただくというようなことをしていただければ、安全にもちろん使えるものでございます。

 例えば、飼料用米の配合飼料の混合割合が増えた場合、どういう影響が出るかといいますと、例えば採卵鶏であれば、卵の黄身のあの黄色の色というのはやはりトウモロコシに由来する部分が多うございますので、飼料用米を多く使いますと、黄色くなくて、黄身の色が薄くなる、つまり白くなるというようなことが発生をいたします。

 それは、黄身が黄色くないと、これはちょっとおかしいんじゃないかというふうな見方をする消費者さんがいらっしゃると困るんじゃないかというような思いが生産者にあると、使いたくないというようなこともございますが、実際、黄身が白くなっても全くその栄養価などは特段変わるものではございませんし、むしろ、国産飼料用米を使った卵として、飼料用米を、国産の米を食べさせて白っぽい黄身になった卵だといってそれを売りにする生産者ももちろんあるわけでございまして、この畜産物に影響を与えることなく給与可能と見込まれる水準というのは、別に、食品としての安全だとか家畜の健康への安全とかというよりも、影響なく給与可能な、余裕を見た水準として示しているものでございまして、配合飼料メーカーさんとかが米では不足する栄養分を添加するようなことをすれば、トウモロコシと同じように使える水準もあるわけですし、あるいは、卵の黄身が白くなってもいいというふうに生産者が、あるいは、そっちの方がむしろいいというような生産者さんが使うということであれば、もちろんもっと多く使えるわけでございまして、いろいろな水準があるというようなことでございます。

緑川委員 飼料用米をふんだんに使ってしまうと卵の黄身が白くなってしまうという問題に対して、全農では、いろいろ試験を行って、オレンジ色にも作れるようになっている、消費者の見かけに対してもしっかり配慮するような色にも近づけられるようになっているという話も聞いております。

 いろいろな可能性があるというふうに思っておりますし、前段おっしゃっていただいた、飼料メーカーの配合の基準、そして注意するべき目安になるというお話がございましたけれども、飼料メーカーも注意するべき水準どころか、第一のレベル、段階にすら達していないわけなんですね、政府で言う。

 例えば、配合飼料メーカーの飼料用米の利用割合というのは、牛は六%。農水省が示す水準に、クリアしているものがあったりもしますけれども、その利用量については、少なくとも四百五十万トンというふうに書いてあるわけなんですが、そのようにメーカーにも伝わっているはずなんですけれども、飼料メーカーが配合飼料に混ぜる量というのは年間で百三十万トンほどで、畜産農家に直接行く分が二十万トンです。合わせて百五十万トンほどしか使われていないわけなんですね。つまり、期待している量の、農水省が本当に大丈夫ですよというふうに言っている量の三分の一しか配合飼料の原料として用いられていません。

 しかも、この百五十万トン全てに飼料用米を仕向けることができていないわけです。というのは、百五十万トンのうちの八十万トンは政府の備蓄米、そしてミニマムアクセス米を充てますから、その結果として、それを差し引いた七十万トンほどしか飼料用米は作れないという状況になっているわけであります。

 利用できる量には要は相当な余地があると思いますし、最後にお伺いしたいと思いますが、資料3で、農水省が示すこの真ん中の水準であれば八百七十四万トン、数字としては主食用米の生産量の七百万トンを上回る量で、マーケットとしての大きな力を秘めているというふうに思いますが、最後、三役から、この辺りの、マーケットの大きさ、そして政府の示す水準にやはり飼料用米の配合割合、量をしっかり近づけるということを進めていただきたいと思いますが、いかがですか。

平形政府参考人 技術的なことも含めますので少し答弁させていただきますが、飼料用米、緑川先生おっしゃるように、八百七十四万トンというのは、餌として食べさせるという量であれば可能といえば可能かもしれませんけれども、飼料用米につきましては、多額のやはり財政負担がある中で、これが国家財政としてきちんと措置できるかという問題もございますので、今はそれを、需要を見ながら、基本計画である七十万トンを目指して生産を進めているというところでございます。

緑川委員 質問を終わります。ありがとうございました。

笹川委員長 次に、山田勝彦君。

山田(勝)委員 立憲民主党の山田勝彦です。どうぞよろしくお願いいたします。

 三月十五日の本委員会の質疑で、国土交通省が推進している海の緑地、ブルーカーボンを取り上げました。CO2吸収量の購入企業から、いそ焼け対策の活動費を漁協や水産加工業者が受け取ることができるということが分かりました。この取引が活性化すればするほど、海の森が復活していくことでしょう。この希望に満ちたブルーカーボンの主体は、養殖海藻です。

 そして、更に明るいニュースがあります。

 今年から、有機藻類JASの新制度が本格的に動き出します。現在認証を受けている品目や、認証事業者に関する情報を教えてください。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 有機藻類のJASにつきまして、現在認証されている有機藻類の生産者は八事業者でございます。

 現時点で把握している限りでは、認証を受けている品目は、昆布、ワカメ、アオサ、モズクの四種類でありまして、このうち昆布、ワカメ、モズクにつきましては、格付の実績があるというふうに承知しております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 このような海藻類に有機藻類のJAS認証がされることで、付加価値をつけて販売価格が上がることが期待されます。安全性の評価も高まり、海外への輸出など、販路拡大も期待できます。

 三月八日の当委員会で、私の質疑で、有機JASの取得にかかるコストの二分の一を国が負担する新たな制度が始まりました。

 そこで、政府参考人に伺います。

 この有機JASの取得に係る新制度、有機藻類にも有機JAS二分の一補助金は使えるのでしょうか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省では、みどりの食料システム戦略の目標であります有機農業の取組面積の拡大に向けまして、農業者の負担を軽減できるよう有機JASの運用改善を実施するとともに、この運用改善の効果を検証するために認証費用を支援する措置を講じたところでございます。

 本事業は、みどりの食料システム戦略の目標達成に向けまして、有機農業の取組面積の拡大につながる有機農産物等のJAS認証を対象としておりますので、委員が今御指摘のありました有機藻類については、現在対象となってございません。

 一方で、有機藻類の生産拡大に向けた取組につきましては、水環境の維持増進を図り、あるいは持続可能な漁業に貢献するものでございますので、この取組を促進するためにどのような対応が可能であるか、引き続き検討してまいりたいと考えております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 みどりの食料戦略同様、海の森を増やしていくことは、当然、政府が掲げているCO2排出ゼロのカーボンニュートラルに大きく貢献することです。是非とも現場の皆さんを支えていただき、こちらも、有機藻類も対象にしていただきたい。前向きな御検討をお願いいたします。

 続いて、この有機藻類JASなんですけれども、最も期待できる藻類がノリであるにもかかわらず、対象品目になっておりません。この海藻養殖の有機JAS認証、ノリに関しても対象にしていくべきだと思っております。

 資料を御覧ください。

 事前に農水省の担当者の方とお話をしたところ、ノリ養殖には、農薬に匹敵するとされている酸処理と言われる処理がなされる。それゆえに、ノリ養殖に関してはなかなか有機認証が難しいという答えでした。

 しかし、この海水中におけるノリの酸処理液について、実際に専門家が実験を行い、有機の酸、いわゆる食用の酸を使うことで、海の環境に全く影響がなかったという実験データも、この資料のとおり、あります。ですから、是非、ノリも前向きに有機藻類の対象にしていくべきだと思っております。

 そこで、お尋ねいたします。

 クエン酸とか、こういう食用の酸を、例えば米酢からクエン酸は作られます。米酢、これが有機のものであったりすれば、十分、有機認証すべきだと思います。

 実際に、農産物においても、有機農業として認められている農薬もありますよね。なので、是非こういったことを検討していただきたいんですが、いかがでしょうか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 有機JASにおきましては、環境への影響や安全性に問題がないものとして一般の生産方法において使用が認められている資材であっても、化学的処理を行っているものについては使用が制限されております。

 ただいまお尋ねのございましたクエン酸あるいはリンゴ酸につきましては、化学的処理を行ったものは、食用に使用することが可能であっても、有機藻類としては使用することができません。一方で、現時点ではまだ想定されておりませんが、化学的処理を行っていない天然物質に由来するものであれば使用は可能というふうになっております。

山田(勝)委員 生産現場の皆さんは、こうやって食用の天然由来の酸処理も実際に行っている方々もいらっしゃいますので、是非このことも検討いただきたいと思っております。

 次のテーマに移ります。

 三月八日の質疑で、食料自給率について、野村大臣と議論をさせていただきました。私は、八〇%を目標に農政の大転換を図るべきだと言いました。大臣は、まずは四五%を達成し、その後考えたいという答弁でした。

 その発言からも、野村大臣は、現場の危機感が全く共有できておりません。今、ウクライナ情勢による飼料代や肥料代、燃料代や電気代の急激な高騰、そして、農産物の価格は、農家さん自身では上げられません。離農を覚悟しているという声ばかりが届いています。

 国内の農家がこれだけ苦しんでいるにもかかわらず、ミニマムアクセス米、乳製品、農畜産物の輸入制限を全く行わない。国内の農家を救うための在庫調整、政府買取りも行わない。物価高による構造的な赤字の補填も十分に行っていない。そして、今年度予算、食料安全保障の強化がこれほどまでに求められているにもかかわらず、防衛予算は前年比二六%増に対し、農業予算、農林水産省予算は、驚くべきことに〇・四%減っているのです。

 私たちは、食べることでしか生きていけません。食料自給こそ最大の安全保障ではないでしょうか。ミサイルより飯。農水省は、今後自給率を本気で上げるつもりがあるのでしょうか。四五%達成してから検討するなど、農水大臣として私はあり得ない発言だと思っております。

 いつまでに五〇%を達成し、その後段階的に六〇、七〇、八〇というロードマップを、全国の生産者の皆さんや国民の皆様にお示ししていくべきだと思います。

 本日は、野村副大臣の食料自給率の目標値を改めてお聞かせください。

野中副大臣 野中でございますが……(山田(勝)委員「失礼しました」と呼ぶ)山田先生の大臣所信表明のときの質問は、非常に印象に残っております。

 やはり、このような状況の上で、どういうふうに、食料安全保障の観点からとか、所得を農家の方が維持していくか、この点については、やはり、思いは共有でございます。

 目標の設定の仕方でありますけれども、山田先生の場合は、やはり、高い八〇%目標を設定しないと令和十二年度の四五%なんて到底できないよというお考えだというふうに思っております。

 私どもは、やはり、この一%を積み上げていくというのは決してたやすいものではなくて、積み上げて積み上げて、この容易じゃない目標設定、令和十二年度四五%をまず達成することに尽力してまいりたいというふうに思っております。

 その先に、更に高い目標設定ができればというふうに思っております。

山田(勝)委員 野中副大臣、ありがとうございました。

 大変、御答弁を聞いていて、やはり、目的を共有できているということを改めて分かり合えてよかったと思っております。

 ただ、具体的に、やはり、食料自給率を上げるための政策というのが圧倒的に不足していると思っております。

 先進諸国の食料自給率の高い国々は、総じて、農家の所得補償を行っています。六〇%から八〇%、国の補助金で所得を支えています。日本ほど自国の農家を保護しない国はありません。だからこそ、民主党政権の所得補償制度が生まれました。しかし、その重要性を理解せずに、子ども手当同様にばらまきだと批判し続けたのが、当時野党だった自民党です。そして、自民党政権により、残念ながら、この所得補償制度は廃止になってしまいました。その結果、離農者や耕作放棄地は拡大し、日本の農政の失われた十年です。全国各地の農業者の皆さんが安心して生産を続けられるように、農政を大きく転換していく必要があります。

 小麦の自給率一五%、飼料自給率は二五%ほどです。ここを集中的に国内生産に大きく転換していく必要があります。民主党政権から始まった、戦略作物である小麦、大豆、米粉、飼料用米などへの直接支払い交付金、当時から単価が変わっていません。食料自給率を高めるために、農家の所得が向上するこの直接支払いの単価を大幅に引き上げるべきではないでしょうか。

野中副大臣 やはり、米から必要な、特に輸入に依存しております麦、大豆、野菜などの生産拡大を進めるということは、これは大切だというふうに思っております。

 そのためにどうやって農家の方を支援しているかと申しますと、麦、大豆などの生産者に対し、諸外国との生産条件の格差から生ずる不利を補正する畑作物の直接支払交付金、すなわちゲタでございます、また、食用米から他作物への作付転換を支援する水田活用の直接支払交付金等、これはそれぞれ措置をしておりまして、それぞれで品目ごとのコスト割れの状況、主食用米との所得の格差などを踏まえて設定をしております。

 また、このような生産対策に加えまして、国産の小麦や大豆、米粉等に対する商品開発、そして需要拡大策、安定供給のための施設整備などを実施しております。

 これらをミックスして、国産の麦、大豆、野菜などの需要の拡大と生産の拡大を図ってまいりたいと思います。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 そのようにおっしゃっていただいた政策も当然大事なんですけれども、やはり、生産者に直接届く支払い単価の向上というのが、最も生産を拡大する、直結する政策だと思っておりますので、是非御検討いただきたいと思います。

 今回のウクライナ情勢、またコロナ禍において、改めて、国民の皆さんは食料安全保障、そして食料自給率に対する危機感を大きく抱いております。

 仮に海外から、今依存しておりますが、化学肥料や野菜の種の供給が止まってしまった場合、この国の食料自給率は何%ほどになってしまうのでしょうか、お答えください。

前島政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘の、海外から野菜の種子や化学肥料などの供給が止まった場合の食料自給率につきましては、算定はしていないところでございます。

 なお、野菜の種子につきましては、国内流通の約九割が海外で生産、輸入されておりますけれども、種子の生産に適した世界各地で分散して生産されております。ですので、安定的な供給が図られておるというふうに考えておるところでございます。また、約一年分の種子を備蓄しているところでございます。

 また、肥料につきましては、化学肥料の原料の大半を輸入に依存しておりますけれども、みどりの食料システム戦略に基づきまして、有機農業や輸入に依存しない肥料の製造を推進しているとともに、経済安全保障推進法の特定重要物資に指定しまして、海外から化学肥料原料の供給が途絶いたしましても、代替国からの輸入に必要な期間、国内生産を継続し得る原料の備蓄体制を整備するところとしておりまして、現在、その準備を進めているところでございます。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 野菜の種、一年間備蓄があるからといって、決して安心できないと思っております。

 今回の物価高も、もう一年以上経過しようとしているわけです。やはり、海外に依存している野菜の種の生産体制をいかに国内に持っていくかが、食料安全保障上の重要な課題だと思っておりますし、先ほど、万が一の有事のときに、戦争に巻き込まれた国から入ってこない、そういうことのシミュレーションが今できていないということも私は問題だと思います。こういった危機感を持って、しっかりとその場合のシミュレーションも含めて国内生産を強力に推し進めるということを是非とも進めてください。

 この食料危機の時代に、自民党政権は、食料安全保障と逆行する政策を推し進めてきました。種子法廃止、農業競争力強化支援法、種苗法の改正、国会においても国会外からも多くの反対の声が上がっていたにもかかわらず、政府・与党は強行採決をしました。公的な種の民営化を推し進め、農家の自家採種の権利を制限し、企業から種や苗を毎年購入し続けるシステムをつくり上げようとしています。この三つの政策により恩恵を得たのは、現在の農業者ではなく、企業や外資ではないでしょうか。

 しかし、そのような政府・与党の動きに対し、地方が立ち上がりました。種子法に代わる種子条例が全国三十三都道府県で制定されているのです。私の地元長崎県でも、今年の四月から、種子条例が始まりました。そして、今現在も四県がこの制定に向けた運動を行っています。

 野中副大臣、これが現場の答えです。地域に根差した優良な種の権利、これは公共の財産であり、種は特定の企業のものでもなく、種はみんなのものです。民主主義国家として、全国各地のこの民意を国会でも重く受け止め、種子法を復活するべきではないでしょうか、お答えください。

野中副大臣 当時、国会でも議論が行われたことは印象に残っておりますし、様々な懸念もあったかと思っております。

 私の地元である埼玉も非常に早い段階で独自の条例を制定したわけでありますが、これらは、全ての都道府県に一律に義務づけていた事務をやめて、官民の総力を挙げ、多様なニーズに応じた種子供給体制を構築するために実施をしておるものであります。

 現在、三十三の道県において、独自性のある条例制定が進み、新たな官民の連携協力の動きや県域を越えた種子供給体制の整備がなされておりまして、地域の農業に必要な対応が講じられているというふうに考えております。

 また、法律の廃止後、非常に心配されていた、地方交付税が引き続き措置されるのかということもございましたが、引き続き地方交付税措置が講じられているところでありますので、廃止した法律を復活させるということは考えておらず、各地方自治体の独自性のある条例については、否定は申し上げません。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 種子法廃止は、一体誰のためなのか。種子法廃止から五年が経過しました。この今の現状を冷静に分析する必要があると思っております。

 生産現場は、今どうなっているのでしょうか。大変驚くべきニュースが入っております。農水省もこれまでわざわざ農業白書で推奨してきた、三井化学アグロのみつひかりについてです。

 このみつひかりは、優良品種として、粒が長く、収穫量が多いとされ、この種子は、都道府県で販売されてきた種と比べ、十倍の価格で取引をされていました。そして、全国千四百ヘクタールで生産をされ、多くのスーパーや飲食チェーンでも採用されております。

 このみつひかりの種が、急遽二月、販売中止となったのです。これによって、多くのこれまでみつひかりを生産、販売していた農家さんや事業者の方々が大変悲鳴の声を上げている状況です。

 つまり、このような状況が種子法廃止によって生まれた。百害あって一利なしではないでしょうか。これが民営化を進めた結果、もう答えは出ているのです。野中副大臣は、地方に任せるという話でしたが、そうではなくて、このような状況も重く受け止めて、やはり国会で、しっかりと種子法復活の議論をしていくべきだと私は強く思っております。

 そして、食料安全保障の観点からも、このような大手企業の種子に依存するのではなく、国内の各地域に根差した固定種や在来種を守り、広げていくことが本来大切です。種苗法の改正により、国際的に認められている農家の自家採種の権利を奪ってしまったのは大きな誤りです。種苗法の改正も見直していくべきではないでしょうか。

野中副大臣 まず、種苗法ですが、令和二年に改正をいたしましたが、これは、日本の優良な品種の海外流出を防ぐことを目的に、登録品種の自家採種についても許諾制としたところであります。

 今先生がおっしゃった固定種、在来種、これはそもそも登録品種ではございませんので、自由に採種をしていただくことは可能であります。

 このため、固定種、在来種について、種苗法改正法により利用が制限される、また食料安全保障上の問題が生じるということはございません。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 よくこの種苗法の改正の議論でもあったことだと思います、海外流出を防ぐことが目的だと。しかし、海外流出を止めるのに最も有効な方法、施策というのは、本来、海外で品種登録を行うことなんです。だから、このことと農家の自家採種を制限することは論点がずれているということをお伝えしたいと思っております。

 そこで、こうやって種子法が廃止になったり、種苗法が改正されたりという中で、大変懸念の動きがあります。

 資料を御覧ください。

 あまおうについてです。当然これは福岡県のブランド、福岡県民の財産とも言えるこのあまおうが、株式会社に分譲された。これは、福岡の原竹県議から資料提供をいただきました。情報公開によって、こういう資料が提供されました。しかし、このように分譲先の企業が黒塗りである、こういう不透明な種の扱いになっている状況です。

 これは、いわゆる公的な財産を民間企業に、農業競争力強化支援法の中でうたわれている、民間に対して知見を提供すること、こういった大変危険な項目がありましたが、これに基づいてこういうことが進められているという理解でよろしいでしょうか。

水野政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のイチゴ品種に関する分譲については、これは種苗そのものについての譲渡であると確認しておりますけれども、育成者権の権利の移転そのものについては、種苗法上、品種登録簿に登録しなければ、これは効力を生じるものではないと考えております。

 今御指摘のあまおうなどについて、これは、現在、福岡県が育成者権者となっておりますけれども、これらの品種に係る育成者権の移転の登録申請が行われるということは承知しておりません。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 あまおうだけではなくて、種苗法改正で議論にもなったシャインマスカット、そして、べにはるか、こういった生産を行っている方々から大変重要な懸念の声が上がっております。

 以前は、自家採種をしていても何の不良もなかった。しかし、最近、シャインマスカットや、べにはるかは、二年目、三年目になると生産ができなくなって、毎年毎年その種や苗を購入しないといけないようになってきている。これは一体どういうことなのか。あたかも種子法や種苗法の改定によってそういうことがもし進められているとすれば、これは大変な問題だと思っております。

 念のために、確認させてください。

 私たち国民の、本当に優良で国民の財産とも言えるブランド、こういった品種に関して、一代限りの生産で種、苗を購入し続けないといけないような品種改良を行っているのでしょうか。

川合政府参考人 お答えいたします。

 公的資金を活用して得られた知的財産につきましては国民全体の財産である、こう思っております。育成者権の利用許諾料につきましては、我が国のための品種開発に再投資していくことが重要と考えております。

 お尋ねの、べにはるかにつきましては、十年以上の歳月をかけまして、農研機構が育成してまいりました。なので、こういった、農研機構においても、少額ではありますけれども、許諾料収入を品種開発に再投資しまして、新たな優良品種の開発を促進しております。

 また、この許諾料につきましてはずっと変更はしておりませんので、特に何か大きい動きで変更したということはございません。

 以上でございます。

山田(勝)委員 そういう動きがないということで、安心いたしました。

 では、たまたまこういう法改正と生産現場の声が一致しているということなのかもしれません。

 しかし、こういうことを踏まえても、やはり、本来、種というのは誰のものなのかと。太陽の光や雨や自然環境というのは、所有なんて誰も気にしていないですよね。地域で根差した産業が農業であって、そういったもので、種もそこの自然環境に根差して本来生産されるべきものです。

 だからこそ、種子法で守られてきた都道府県の農業試験場と、民間の農家さんたちが一緒になって、その地域で本当にマッチした種の品種改良をしていく、官民一体となってそういった種をこの気候変動の時代に作っていく、それを国が支えていくということが、本来農水省が求められている政策なのではないでしょうか。流出を止めるために、海外で品種登録をすればいい、種苗法を本来改正しなくてもいい、そういったことのメリットよりもはるかに失うことの方が私は大きいと思っております。是非とも、こういった農業政策の見直しを進めていっていただきたいと強くお願いいたします。

 続いて、今、私も、地元を回ると本当に、酪農、畜産、大変な悲痛な声を伺っております。引き続き、ちょっと残りの時間で酪農、畜産について議論していきたいと思っております。

 まず、生産者の方からこのような声をいただきました。

 飼料高騰対策としての補助金はいただいた、しかし、全く足りない、飼料は一年前と比較してトン当たり二万円ほど値上がりしている、まさに、山火事にじょうろで水をかけるような対策では何も救われません、業界で若手と言われる同世代の農家が離農、就農を見送りしている、命を絶ってしまった知人もいる、小さい子供を抱えて自己破産を選んだ人もいる、みんな畜産という仕事が好きで、牛が好きで、本当はずっと続けたかった人たちです、既に焼け野原になりつつある畜産業界を何とか救ってほしい。

 こういったメッセージが私のところに届きました。

 これは、野中副大臣も当然共有している思いだと思っております。本委員会でも、私は、こういった現場の声を届けながら、大臣に緊急の支援策を訴え続けてまいりました。その中で、自家配合の畜産農家さんに対する支援をしていただくということが決まったこと、本当にそれは大変ありがたいことですし、心から感謝したいと思っております。

 その上で、現場の皆さんとお話ししたんですけれども、まず、トウモロコシ、トン当たり千二百円、この支援事業なんですが、まだ畜産現場の皆さんには案内すら届いていないということです。

 いつからこの事業が始まるのか。そして、この千二百円という単価はどのような積算根拠になっているのか。また、当然ながら、自家配合の畜産農家さんたちも、トウモロコシだけではありません。トウモロコシ以外を対象にしなかった理由は何なのか、教えてください。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 自家配合飼料への支援でございますが、畜産、酪農のパッケージとして決定をして、速やかに支援をしたいというふうに考えてございます。実際に手続を開始しているところでございます。

 それから、支援の単価の根拠についてのお尋ねでございますが、自家配合飼料の利用農家さんでございますけれども、これは、配合飼料価格安定制度ではなくて、経営判断として自ら配合を行って、それによってコストの低減を図ってこられたというふうに承知をしてございます。

 このような中、自家配合飼料を利用されている農家さんにおいても、様々な経費が高くなっておりますので、経営が厳しい状況であることから、国内での保管料や輸送料などの経費の増加分、これの一部を支援することでその経営を支えることとしたものでございます。

 ほかの原料という御指摘でございます。これは、配合飼料に利用されている原料にはトウモロコシのほかにも大豆かすなどがございますけれども、トウモロコシが飼料原料の主体でございまして、輸入されているトウモロコシにつきましては、圧扁などのような厳格な横流れ防止措置が講じられていて、流通量を正確に把握できるという一方で、大豆かすのようなほかの原料につきましては、輸入されるもの以外に国内製造のものも多いですし、飼料用以外の食料の原料として使われるものなどもございますので、その流通量を正確に把握できないというような事情もございますので、トウモロコシを支援することとしたところでございます。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 このように畜産現場への支援が前進していることは本当にありがたいことです。

 しかし、現場にはまだまだ足りない、この支援では不十分である。更なる追加の現場への支援を心からお願いしまして、私の質疑といたします。

 ありがとうございました。

笹川委員長 次に、掘井健智君。

掘井委員 日本維新の会の掘井健智でございます。

 今日は、大臣の体調が優れないということで、政務三役の皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。

 また、大臣におかれましては、しっかりと養生していただきまして、早くよくなることを願っております。

 それでは、質問をさせていただきます。

 前回の委員会では、G7農業大臣会議においての農作物の輸入制限の見通しについて質問をいたしました。

 先日、日韓首脳会談が行われました。この首脳会談において、原発事故の処理水の放出につきまして、韓国が専門家視察団を現地に派遣するということで合意いたしました。前回私はEUのことで質問したんですけれども、この輸入規制、輸入再開が、どうやら科学的知見だけじゃなしに、政治的ないろいろ思惑で動いているような感じもいたしますけれども、そういうことを交渉の中で乗り越えていくんだろうとは思っております。

 今回、韓国は輸入停止措置を今講じておるんですけれども、こうやって現地に派遣するということで、これは変化の兆しと見ていいんでしょうか。

水野政府参考人 お答えいたします。

 先日開催されました日韓首脳会談におきましては、東京電力福島第一原子力発電所の関連で、ALPS処理水の放出について、韓国視察団を受け入れることになったと承知しております。

 その上で、現在韓国が継続しております福島県等八県産の水産物の輸入停止については、これは現在も継続をしておりまして、輸入可能な品目についても産地証明書等を要求している実態でございます。

 我が国といたしましては、引き続き、あらゆる機会を捉え、規制の早期撤廃に向けて働きかけを行っているところでございます。

掘井委員 こうやって、一つ、一歩進んだような感じがするんですけれども、そのための質問でございました、改めて。

 次の質問に移ります。

 先日の宮崎G7農業大臣会議におかれまして、G7農業大臣声明、宮崎アクションが採択されました。G7の農業大臣会合で行動計画をまとめたというのは初めてと聞いております。

 野村大臣は、G7農業大臣会合に先立って、従来との違いとして農業の生産性の向上をテーマにする点を挙げておりました。日本は農産物の輸入国でありますので、自国の農作物の生産性向上はメリットはありますが、ほかのG7の構成国は輸出国でありますので、生産性向上の文言を盛り込むことができなかったというふうに認識しております。

 共同声明では、強靱で持続可能な農業、食料システムを達成するための一つの手段として、我々は、持続可能な生産性の向上を支援する政策の促進にコミットするという文言が盛り込まれました。大臣は、有言実行されたという捉え方をしております。しかし、国内報道では、生産性向上と持続可能な農業を両立させるという条件付で合意に至った、こういうふうにも報じられておりまして、即効性に乏しいという課題も指摘されております。

 今回のG7農業大臣声明の意義をいま一度、生産性向上の観点から教えていただけますでしょうか。

野中副大臣 四月二十二、二十三日でG7宮崎農業大臣会合が開催されまして、農業の生産性向上、そしてまた、持続可能性の両立などの方向性をコミュニケとして発出したところであります。

 昨年も私は何回か国際会議に出ておりますが、やはり共通する課題は、生産性向上と持続可能性の両立というところはそれぞれの国で認識をしておったんですけれども、先生おっしゃったとおり、それぞれの国の立場が違う中でこのG7でコミュニケが発出できたというのは大変有意義なものであるというふうに思っております。

 生産性向上については、世界人口の増加の一方、気候変動の対応が求められる中、この声明に盛り込めたということは、重ね重ねになりますが、大変意義ある農業大臣会合であったというふうに思っております。

掘井委員 では、前回の一般質問に続きまして、食肉の輸出について質問したいと思います。

 牛肉全体で、二〇二五年、一千六百億円という輸出額目標のうち、中国への牛肉輸出額を四百億円と設定しております。これは前回も言いましたけれども。中国へ牛肉を輸出できていないのは、これは大きなやはり課題だと思うんです。中国への輸出が再開した際に、現状の輸出体制で輸出額目的を達成するということが本当に可能なのかどうか、心配であります。

 また、中国以外の国々への輸出額目標は、引きますと一千二百億円ということになります。それらの国々への輸出認定施設の増設など、輸出体制が本当に急がれるところであると思います。

 今のやり方でやりますと、輸出認定施設の主な担い手は、既に販路を開拓している民間企業であります。このような民間企業だけでは輸出額目標がとても達成できないのではないのかな、そんなふうに思いますので、次のフェーズに進む必要がある、このように思っております。

 地方には従来から第三セクターの食肉処理施設があります。そういったものを最大限活用していくべきだという考えは前回も述べたとおりでありますが、前回の一般質問の答弁では、従来の食肉処理施設が輸出認定施設に向けてのコンソーシアムを設立することに対して、農水省は支援していくとのことでありました。しかし、お手並み拝見という待ちの支援体制にも見えるんですね。そういった体制でいいんだろうかということを課題に思っております。

 輸出額の目標を設定したのは農水省でありますことから、農水省はコンソーシアムの構成員のつくりの段階でももっと主体的に動けないのかな、そんなふうに思います。例えば、農水省が主体となりまして、海外で販路を持っている商社を募集して、全国各地に従来ある第三セクター、こういったところのマッチングを積極的に推し進めていくこともできると思うんですけれども、御所見を伺いたいと思います。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 畜産物の輸出コンソーシアムをしっかり支援をしているということでございますけれども、やはりこれは、畜産農家、食肉処理施設、輸出事業者の三者が連携をして、生産から輸出までを一貫して輸出促進を図る体制でございます。これを支援しているところでございますが、これは、関係者のやはり主体的な取組が何よりも重要だと考えてございます。

 私ども、畜産物輸出コンソーシアムの設立に当たりまして、展示会への参加ですとか、そういった形での商流構築の取組の支援も行ってございます。

 また、農林水産省では、農林水産物・食品輸出プロジェクト、いわゆるGFPを通じまして、登録者同士のマッチングの支援といったものもやってございます。こういった畜産物輸出コンソーシアムへの参加も含めて、地域の小規模事業者が輸出に取り組めるようにサポートをしているところでございます。

 今後とも、関係者の取組をしっかりと後押しをして、輸出目標に向けて取り組んでいきたいというふうに考えてございます。

掘井委員 海外に求められております品質や規制に対応していくために、もちろん生産、加工体制づくりの計画書を作っていくということは理解しております。そして、今言われましたGFPのサイトを見ますと、これを登録いたしますといろいろな情報が共有するということでありました。

 この事業計画書について質問したいと思うんですけれども、輸出促進法上の優遇措置を受けるための輸出事業計画についても、農水省は、やはりもうちょっと当事者意識を持って輸出事業計画に積極的に支援してほしいと思うんです。有用な輸出事業計画を公表しております。そのことを見ながら、それをやはり共有していくというか、そういうことをしてほしいんですね。受けじゃなしに、やはり積極的にこれに当たっていただきたい、そんなふうに思うんです。

 この事業計画書に対する、出してくださいよじゃなしに、もうちょっと、事前に、いい計画書が出ているところを参考にして、こういうふうにしてくださいよ、こういう姿勢が要ると思うんですけれども、いかがでしょうか。

角田大臣政務官 事業者の円滑な計画作成に資するように、農林水産省としましても、これまで認定を受けた輸出事業計画の概要をホームページで公表をする、また、計画の認定を受けるメリットや手続などを分かりやすく解説した計画作成の手引を作成して事業者に提供してきております。

 さらに、各地方農政局に輸出の実務経験を有する商社のOBなどを輸出産地サポーターとして配置をして、輸出事業者への伴走型の支援を行っております。その中で本事業計画の策定についても助言その他の支援を行ってきているところであります。

 ちなみに、輸出事業計画の認定実績につきましても、令和三年度が九十五件であったものが、令和四年度は二百九十一件と大幅に増加をしてきております。

 今後とも、輸出に意欲的に取り組む事業者に対して必要な支援を行ってまいります。

掘井委員 GFPも、今の事業計画書も、まずは意識を持ってもらうということなんでしょうけれども、そもそも、政府の課題といたしまして、国内ではやはり需要が減ってきた、将来の収入が見通せないということで、国外に目を向けて活路を見出すという国のこの事業、方針でありますから、自治体が管理運営に既に携わっている従来からある第三セクターですね、農林水産省から例えば自治体にもっと声をかけてもらって、やりませんか、協力しましょう、こういった主体的な取組ができるかなと思うんです。食肉処理施設がある自治体は必ず、施設の中に、地場産業の活性をやりますと大体地方の総合計画には書かれているんですね。地域創生の観点からもやはり国と地方が連携してやっていただきたいと思うんです。これは質問ではないんですけれども。

 次の質問でございます。

 インバウンド向けの牛肉マーケットへの施策強化についてであります。

 国内のインバウンドに目を向けますと、輸出促進のためのステップとして、インバウンド向けの牛肉マーケットの施策を行うのは非常に効果的であると思っております。

 例えば、対中国の将来の輸出に向けて、細かいニーズを調査し、準備することもできるのではないかと思います。例えば部位なんかで見ますと、アメリカみたいにステーキがいいというところもありますし、中国みたいにしゃぶしゃぶがいいというようなこともあります。国、地域ごとに好みを探ったり、PRもできると思うんです。

 インバウンド向けの牛肉マーケットへの施策を強めていく必要を感じておりますが、いかがでしょうか。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 牛肉の輸出の促進のためには、輸出先国のニーズに対応していくということが重要でございますし、また、そういったニーズをつくり出していくということも大事だと思っております。

 現在、農林水産省では、食べ方や調理方法など、セットでの、ロインのみならず、ロイン以外の様々な部位のPRをしてございますし、スライス肉ですとか小割り肉といった新たな製品の消費や輸出の促進などの取組を推進しているところでございます。

 今後、更なる輸出拡大を図るには、委員御指摘のとおり、輸出先国でのプロモーションのみならず、訪日される外国人にきめ細かく対応して、積極的にインバウンドの需要を取り込んでいくことが重要であると認識をしておりまして、輸出産地の取組を後押しをしております。

 また、インバウンド対策といたしましては、昨年の十二月に、ジェトロ、JFOODO、それから日本政府観光局との連携に関する覚書を締結をしたところであり、農林水産物の輸出とインバウンド消費の相乗的な拡大に取り組んでいきたいというふうに考えてございます。

掘井委員 ありがとうございます。どんどんやっていただきたいなと思います。

 以前、インバウンドを輸出につなげていく取組といたしまして、農水省は、おみやげ農畜産物検疫受検円滑化支援事業として、牛肉は、香港、アメリカ、シンガポールのお土産事業を行っておりました。これは、インバウンドが日本の農畜産物をお土産にして帰国する場合に、本来はインバウンド自らしないとならない検疫手続を業者に代行していただき、お土産の持ち帰りを円滑化する、こういう政策でありました。これは時限的な事業で、今は実施されていないということであります。

 国産農畜産物の持ち帰りを円滑化したことによってインバウンドにはどんな効果があったのか、今後再開しないのか。いかがでしょうか。

森政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のおみやげ農畜産物検疫受検円滑化支援事業につきましては、訪日外国人旅行者によります国産農畜産物の持ち帰りを拡大するという観点から、御指摘のとおり、販売店や運送業者などが連携しまして検疫手続を代行する取組をモデル的に支援する事業ということで、平成二十七年度から二十九年度にかけて実施した事業でございます。

 このモデル事業を契機として、現在も一部の事業者において牛肉を販売している例があるというふうに承知をしているところでございます。

 他方で、本事業に取り組む中で、多くの旅行者の方が日本のものがおいしかったという思い出は持ち帰っていただけているんですけれども、一般的に品質保持の難しい牛肉などの生ものを例えば大量の保冷剤と一緒にお土産として持ち帰る例は非常にまれだといったような課題も明らかになったという状況でございます。

 さらに、最近の世界的な動き、例えば、世界的なアフリカ豚熱の流行等、家畜伝染病をめぐる情勢の深刻化でございますとか、植物の病害虫蔓延によりまして、我が国を含め各国で、旅客手荷物等に対する水際検疫、これが強化される方向にあるといったことでございますとか、近年、ECサイトによる販売が拡大しまして、帰国後に日本産の農畜産物を入手するというようなことが容易になってきているといったような状況を踏まえますと、現時点において本事業を再開するといった状況にはないのではないかというふうに考えております。

掘井委員 余りそこで牛肉を詰めて持って帰るのがなかったということなんですけれども、これは、時間的に、簡略化の中で、相手さんもあることですけれども、時間が短縮されたということではないんですね。確認です。

森政府参考人 簡単にお答えいたします。

 事業実績の中で、従前一週間程度だったものが四日程度まで手続期間が短くなったという実績はございますが、ただ、それでもやはり、相手国の認定施設で処理されたというような証明書ですとか、この取得には結構時間がかかるということで、旅行者のお土産を見て買うというニーズになかなか応え難かったというような状況はあったというふうに承知しております。

 現在、民間の方で既に取り組まれている事例などは、そういった施設認定が必要のない国、お土産として持っていくことが可能な国のお客様に対して販売をされているというふうに伺っております。

掘井委員 ちょっと質問を前後しますけれども、実際に農林水産物・食品の輸出が伸びておりますけれども、輸出目標達成は、輸出に取り組む農業者が大きく増えなければ非常に難しいんだと思っております。輸出を呼び込むには、所得増、輸出のメリットが見えるということが非常に大事だと思っております。

 実際に、輸出額のうちどれくらい農業者の所得になっているのか、こういったデータはございますでしょうか。

水野政府参考人 お答えいたします。

 農林水産物・食品の輸出拡大は、地域農業の維持拡大などに加えて、農林漁業者の所得向上につながるものと考えております。

 例えば、岩手県のあるJAの試算によれば、栽培しているリンゴの全品種平均の農家手取り単価は、輸出用が二百五十三円・キログラムであり、国内販売用の百九十八円・キログラムよりも五十五円・キログラム高いとされています。また、カンショや長芋のように、国内市場では規格外品としてしか扱われないサイズのものが、海外市場では販売が好調である例も見られます。

 このように、輸出拡大は農林漁業者の所得向上に資する効果が高いと考えており、農林水産省として、引き続き、このような所得向上効果に関する情報の把握と発信に努めてまいります。

掘井委員 例えば、第三セクターの食肉処理施設では、組合とか、また公社など、複数の利害関係団体で構成されております。下部組織には家族経営の事業者もおるんでしょう。牛肉の輸出のような、従来とは違うことに踏み出そうとしても、なかなか二の足を踏んでまとまらないということもありますけれども、それを乗り越えてやっていくんだろうと思いますけれども、やはりそこも交えて、農水省も一緒になってやっていこうよ、こういうことが大事であると思っております。

 農産物の輸出戦略だけではなく、まず、所得を確保する道筋をもうちょっと具体的に分かりやすく示していただいて、農業者などの意欲を喚起する、こういった戦略も必要ではないのかなと思いますけれども、御所見を伺います。

水野政府参考人 お答えいたします。

 輸出拡大実行戦略におきましては、農林水産業者の利益の拡大を図り、輸出の拡大を実現するために実施する施策やその方向性を定めております。このため、この戦略に基づいて実施される個別の施策も、農林水産事業者の利益拡大を目指すものではございます。

 他方で、各事業の実施が事業者の所得をどの程度向上させるか、これにつきましては、輸出先の国別、品目別の事情などにより異なるため、事業ごとの所得向上効果を一律に示す戦略の策定は難しいのではないかと考えております。

 農林水産省としては、引き続き、輸出拡大実行戦略の着実な実施を通じて、農林水産事業者の所得向上を含む利益の拡大に努めてまいります。

掘井委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 食肉等の流通構造の高度化、輸出拡大事業の当初予算化についてちょっと質問していきたいと思うんです。

 前回も申しましたけれども、食肉輸出の拡大を図っていくために、食肉輸出の認定を受けた食肉処理施設を増加させることが重要な課題となっております。食肉処理施設のハード面を支援するメニューがありますけれども、当初予算では、支援目的が食肉処理施設の再編のためのみであって、補正予算では、輸出拡大を図るためが追加されております。一説によれば、食肉処理施設の再編のためのお金は出すけれども、輸出拡大を図るためのお金はなかなか、渋っているんではないか、こういうことも聞きます。

 再編にこだわらず、輸出拡大を支援していくために、当初予算にも輸出拡大目的の支援事業ができるんだろう、こんなふうに思いますが、御所見はいかがでしょうか。

角田大臣政務官 食肉処理施設の整備については、従来、都道府県の食肉流通合理化計画に基づいて施設の再編そして合理化を支援してきたところでありまして、これは主に当初予算で措置してまいりました。

 一方、平成二十七年に策定をした総合的なTPP等関連政策大綱において、農林水産業の体質強化の対策として、輸出先国の規制、ニーズに対応した施設の整備、そして食肉処理施設の再編整備というものを掲げて、既存のこれまでの施策に追加するものとして補正予算で対応をしてきたところでございます。

 こうした経緯もありまして、施設再編を伴わない輸出対応の食肉処理施設の整備は補正予算で措置しているところですが、今後とも、輸出の目標の達成に向け、必要な予算の確保に努めてまいります。

掘井委員 これまでのたてつけはよく理解できました。輸出目標達成のために、今後は当初予算でもお願いしたいと思います。

 次の質問です。

 ちょっと戻りますけれども、食肉処理施設では、そもそも人が足らないとも聞きます。特にカット施設の中でそういうことが聞かれるんです。労働力をいかに確保するか、これが大きな課題になっておると思います。農水省の御所見を伺いたいと思います。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 食肉処理でございますけれども、委員御指摘のとおり、特に、部分肉加工などの工程でやはり多くの人手を要するということで、人手不足が課題となっている食肉施設もあるというふうに理解をしてございます。

 こうした課題に対応するには、食肉処理施設におきまして、稼働率の低い施設を合理化することで労働力の集約化を図るですとか、あるいは自動化の機械を導入することで省力化を図るとか、そういったことに取り組んでいただくことが大事であるというふうに考えてございまして、農林水産省といたしましても、このような取組を支援をすることで、食肉処理施設の人手の課題への対応を後押ししていきたいと考えてございます。

掘井委員 そのためには、施設整備がやはりついて回るんです。だから、その辺も考えて、また支援、また補助をしてもらいたいと思っております。

 これで質問を終わりますけれども、日本の食肉関連事業を発展させていくためには、海外の販路開拓は本当に不可欠であると思います。これまで企業を中心にやってきました。もちろん、いろいろな設備が早くできるわけでありますけれども、次のフェーズに至らなければ、やはりこの目標は達成できないと思っております。ですから、従来ある第三セクターを活用して、そのときには、是非自治体にやってくれと、そういうような働きかけをやはり農水省からやっていただきたい、このように思っております。

 ありがとうございます。これで質問を終わります。

笹川委員長 次に、長友慎治君。

長友委員 国民民主党の長友慎治です。

 本日は、法定外公共物と農家の関わりについて質問をしていきたいと思います。

 法定外公共物とは、道路、河川などの公共物のうち、道路法、河川法、海岸法などの管理に関する法律の適用又は準用を受けないものをいいますが、一般的には、里道、また、現場の方とかは赤道というふうにも言ったりされますし、水路、青道と呼ばれており、その多くは昔から農道や農業用水路として地域の住民等によって共同利用されていたものになります。

 これは、明治初期の地租改正に伴う官民有区分の実施により、国有地に分類をされておりました。その後、地方分権の推進を図るために、国有財産であった里道、水路の法定外公共物が平成十七年三月末までに市町村に譲与をされました。これにより、現在は、里道などの法定外公共物は地方自治体が管理しているというふうにまず理解をするわけですが、前提としてその認識で合っているのかにつきまして伺いたいと思います。

三橋政府参考人 お答えいたします。

 法定外公共物は、平成十年五月に閣議決定されました地方分権推進計画に基づく地方分権一括法における国有財産特別措置法の改正によりまして、里道、水路として現に公共の用に供しているもののうち、道路法、河川法等の適用又は準用のない公共物で、その地盤が国有財産となっているものにつきまして国から市町村に譲与されたものでございまして、市町村が自治事務として適切と判断する方法により管理することとなったものでございます。

長友委員 御答弁いただきましたとおり、現在は市町村で管理するということになります。

 いわゆる里道だったり水路、今、日本の国の中にどのくらいあるのかというものを知りたいと思ったんですけれども、レクでお尋ねしたところ、譲与した当時の旧建設省、旧大蔵省は、譲与時に把握をしていなかったということでした。

 また、現在においても、今の国交省、総務省、財務省ともに把握していないということなので、日本全国にどのくらいあるかというのは分からないんですけれども、地方自治体によっては、ホームページなどで公表しているところもあります。

 例えば、石川県の金沢市は、市のホームページで、「金沢市には国から譲与を受けた里道が約五千八百キロメートル、水路が約六千九百キロメートルあり皆様の身近に多く存在しています。」と公表しているわけです。これは、金沢だけで、水路六千九百キロ、里道五千八百キロを足しますと、一万二千七百キロになります。日本一周が約一万二千キロというふうに言われていますから、石川県にある里道と水路だけで日本一周できる距離と。ということは、日本全国千七百以上の市町村があるわけですから、日本を何万、何千周もできる法定外公共物が現在存在しているというふうに推察をされるわけです。

 そこで気になるのですが、この里道や水路などの法定外公共物の管理をめぐるトラブルが農家さんとの間で起こっていないのかどうか、農水省として把握しているかを教えてください。

青山政府参考人 お答えいたします。

 法定外公共物である里道、水路等でその機能を有しているものについては、委員からも御指摘ございましたけれども、市町村に譲与されており、市町村において、法定外公共物の管理に関する条例等により管理が行われていると承知をしております。

 このため、農林水産省では、里道や水路などの法定外公共物の管理をめぐるトラブル等の状況は把握していないところでございます。

長友委員 農水省として関与する部分ではないということでございました。

 答弁にもありましたとおり、各市町村がそれぞれに管理条例を定めて、それぞれに基づいた管理、また使用許可をしているというのが、私も調べたところ、実態でありまして、一般的な維持管理の在り方としましては、法定外公共物は地域に密着した道路、水路であるために、草刈りや清掃、修繕など、通常の維持管理は、ふだん利用している地域の方々、つまり、受益者が共同で行うのが原則となっているというのが一般的な管理の方法ということのようです。

 そこで、お尋ねしたいんですけれども、この農村地域の共同活動による道路、水路の維持管理に対して、農水省は何かしらの支援をしているのかどうか、伺います。

青山政府参考人 お答えいたします。

 地域の共同活動により保全管理されている水路、農道等の草刈り、補修等に対しましては、多面的機能支払交付金により、国が支援をしているところでございます。

長友委員 一例として多面的機能支払交付金等を挙げていただきましたけれども、それでは、この法定外公共物を利用している最中に事故が起きた場合、例えば、赤道をトラクターで運転していたら、道の管理が悪くトラクターが横転してしまい、トラクターが壊れて、運転していた農家さんもけがをした。そのようなことが起きた場合、誰がその責任を取ることになるのかについて、見解を伺います。

三橋政府参考人 お答えいたします。

 個別の事故の事案につきまして、私どもは詳細を把握する立場にはございませんので、総務省としては、お答えは差し控えたいというふうに存じます。

長友委員 個別の事案ということで、総務省としての見解はできないということは理解をしました。

 どうしてこのような質問をしたかということなんですけれども、私の地元宮崎でこういうことが起きました。

 農園を営んでいる農家さんが、自分の農園の近くの赤道をトラクターで走っていたら、アスファルトの下の土が雨や台風でえぐれていて、トラクターの重みでアスファルトが陥没し、トラクターごと横転をしてしまったという事故が起きました。トラクターの運転席のガラスの窓が割れまして、タイヤも一本駄目になってしまった。乗っていた本人も額を切って、三針縫った。これは実は三年前に起きた事故になるんですけれども、今も時々腰が痛む後遺症が残っている、そういうことをおっしゃっている農家さんがいるんですね。

 そのトラクターで横転した彼が赤道の所有者である地元の市役所に管理責任を問うたところ、市の担当者からは、管理は市はしていない、利用者が管理すべきであって、利用している人たちで工事、修繕することになります、こういう対応をされたということなんですね。

 各地方自治体で管理条例を定めておりますので、このような対応になるのは致し方ないのかなということも理解はするんですけれども、先ほども御説明したとおり、法定外公共物は地域に密着した道路、水路であるため、草刈り、整備、修繕など通常の維持管理は受益者が共同で行うのが原則、これは全国の自治体に共通する対応のようなんですね。

 先ほど農水省にはお聞きしました。例えば、多面的機能支払交付金などで、共同の草刈り等に対する支援は国はしている。各自治体で独自の制度があるところでは、農道の維持修繕のための砕石の、現物を支給する、側溝などの原材料の支給をする、また、農道、水路等の維持修繕の工事の一部補助をする、そういうことで対応しているのが現実、現状だということなんです。

 ただ、実際に受益者の皆さんが、自分たちが管理しなければいけないという認識に立っているかというと、そこが曖昧なんですね。管理委託契約書というものを結んでいるわけではないんです、各地方自治体が。管理するのは誰なのか、責任の所在が非常に曖昧な状況にあります。曖昧なまま、現在まで至る。

 そこで、実は、先ほど紹介した三年前にトラクターで横転した方は、トラブルになってしまっております。

 そこで、総務省に伺いたいと思います。

 地域の方々に里道や水路などの法定外公共物を活用いただく際に、自治体として、事前にトラブルを防ぐためにできる働きかけはどうあるべきか、見解を伺います。

三橋政府参考人 お答えいたします。

 里道、水路などの法定外公共物は、御指摘のとおり、地域住民の生活に密接に関連するものでございますことから、各自治体におきまして、地域の関係者や利用する方の御意見を伺いながら、適切な管理がなされるようにすることが肝要であるというふうに考えております。

長友委員 各地方自治体が、責任を持って、使用する方々と十分にコミュニケーションを取って、適切に管理をしていくべきだということで、国の態度、国の説明としては、こちらで理解をしました。それを基に、各自治体の担当課が住民と誠意を持って対応するということだと思うんですね。

 今後、法定外公共物の管理の在り方というものにつきましては、やはり、私がその地元の自治体に問い合わせても、特段、管理委託契約書等を結んでいるわけでもない、覚書をしているわけでもないということでございましたので、今後は、管理責任を曖昧にしたまま使うことがないようにしましょう、また、地域の方々、農家の方々にも、自分たちが使っている赤道等については、どちらが、誰が管理責任、するべきなのかということをみんなで認識を合わせて使う必要があるということを注意喚起するべきじゃないかというふうに思いますし、私自身もそのように注意喚起をしていきたいと思います。

 要は、全国にかなりの数の法定外公共物がある中で、こういうトラブルが今後起きないようにしていきたいということをこの質疑を通しましてお示ししたいと思いました。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

笹川委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 食料・農業・農村基本法の改正に向けて質問をします。

 まず、政府内で行われている課題となっている食料安全保障の規定について質問します。

 現在、食料安全保障についての規定は、二条の「食料は、人間の生命の維持に欠くことができないものであり、かつ、健康で充実した生活の基礎として重要なものであることにかんがみ、将来にわたって、良質な食料が合理的な価格で安定的に供給されなければならない。」であります。一方で、国連食糧農業機関、FAOのフードセキュリティー概念では、全ての人が、いかなるときにも、十分で安全かつ栄養ある食料を、物理的、社会的、経済的に入手可能でなければならないとされています。この違いは、現行法に、全ての人がと入手可能が欠けている点にあります。

 食料・農業・農村政策審議会の第三回目の基本法検証部会で、福山市立大学の清原昭子教授は、FAOの定義に即して、フードセキュリティーが満たされないような状態は誰にでも起こり得る問題、一定の品質の食料に対しても、誰もが身近な場所で、権利としての食料アクセスを保障する仕組みが必要だと指摘されました。ところが、十回目の検証部会に提出された「今後の展開方向(基本理念)」では、「現在の状況の中で、本当に食料が届いているのかというのを考える必要があるというのが現在の課題。」、こういう表記にとどまっています。

 日本において子供の貧困が大きな問題ですけれども、一三・五%、七人に一人の子供が貧困状態にある。学校給食が唯一の食事である子供たちがいる。格差と貧困の拡大、そして物価高騰が覆いかぶさる中で、三度の御飯もちゃんと食べられない国民はたくさんいるわけであります。

 今日は野村大臣がおられないので、野中副大臣にお伺いします。

 副大臣、検証部会における識者の指摘は、これは大変重要なものだと思います。国連の定義に倣って、食料アクセスを権利として保障すべきではありませんか。

野中副大臣 お答えいたします。

 FAOにおいては、食料安全保障について、全ての人が、いかなるときにも、活動的で健康的な生活に必要な食生活上のニーズと嗜好を満たすため、十分で安全かつ栄養ある食料を、物理的にも社会的にも経済的にも入手可能であることと定義していると承知しております。

 食料アクセス問題についてでありますが、現在、食料・農業・農村政策審議会基本法検証部会等において、食料安全保障の定義を、国民一人一人が活動的かつ健康的な活動を行うために十分な食料を、将来にわたり入手可能な状態とすべきではないか、福祉政策や孤独・孤立対策などを所管する関係省庁や自治体と連携しつつ、個人の食料安全保障の観点からの対応が求められるのではないかなどの議論が行われているところでありまして、今後、これらの議論を踏まえた上で対応を検討してまいりたいと存じます。

田村(貴)委員 アメリカの農務省は、SNAP、貧困者向け栄養補助プログラムによって、農産物の価格政策と福祉政策の一石二鳥の対応を行っています。できないことはないと思います。食料へのアクセスを人権として保障し、そのために政府の責任と国の予算による食料支援を図ること、そして、農政に社会福祉的要素を持ち込ませない思想の克服と制度の改善を私は真剣に検討すべきだというふうに思っています。

 SDGsのバッジを着けておられますよね。貧困をなくす、飢餓をなくす、これは一番大事なことですから、しっかり検討して反映していただきたいと思います。

 次に、自給的農家について伺います。

 審議会の十三回目の検証部会では、自給的農家の位置づけについても議論されています。

 ちょっと時間の関係上、私の方で説明させてください。

 自給的農家を農水省に聞いたところ、経営耕地面積が十アール以上三十アール未満かつ年間販売金額が十五万円以上五十万円未満の農家とされている。戸数にして七十一万九千戸、農家のおよそ四分の一を占めるというふうに伺っております。

 そこで、お伺いしたいんですけれども、現在、自給的農家の政策的な位置づけはどうなっているでしょうか。

野中副大臣 まず、自給的農家、割合が全体の四割近くいるというのは、やはり大規模農家だけではなくて……(田村(貴)委員「四分の一」と呼ぶ)四分の一。百七十一分の七十、四分の一ですか。(発言する者あり)四割。(田村(貴)委員「四割か。ごめん」と呼ぶ)はい。四割でございます。というのは、非常に、国土そしてまた地域コミュニティーを支える大切な役割を担っていただいている。

 これは、令和二年三月に閣議決定されました食料・農業・農村基本計画においても記述をされているところであります。

 現在行われている食料・農業・農村基本法の見直しの議論においても、営農に必要な農地を保全するために、農業を副業的に営む経営体、半農半Xなど、また自給的農家が一定の役割を果たすことも踏まえ、地域の話合いを基に、農地の保全管理を継続する取組を進めるとの方向で現在議論が進められております。

田村(貴)委員 議論の方向性までお答えいただきました。

 それから、自給的農家が農家に占める割合は四割ですね。

 例えば、こういう自給的農家のお話を聞きました。

 田んぼと畑でお米、野菜を生産し、親戚とか近所にもお配りする。旅館の食材にも出荷している。そして道端の無人販売所でも売って、神社にも奉納している。

 よくある光景だと思います。よくある自給的農家だと思います。地域の特徴的な作物を生産してコミュニティーの維持にも貢献し、地域の文化の継承など多面的な役割を担っておられます。こういう自給的農家が全農家の四割を占めています。

 都市住民から農村への移住も、それから自給的農業を前提とした半農半X、これを志向する方もおられます。増えています。

 これからは、自給的農家を政策的にしっかり位置づけて、先ほど答弁にあったかも分かりませんけれども、一面的な多面的機能支払いにとどまらない支援策が必要になってくるというふうに思っています。

 半農半X、それから都市から農村への移住も含めて、この流れをしっかり位置づける必要があると思いますけれども、野中副大臣、追加があったらまたお願いします。

野中副大臣 多面的な役割の中で、個人の健康もありますし、そしてまた、私は埼玉の北側ですけれども、最近、非常に土に触れたいという思いで、月契約で毎月の賃料を払って行き来をする方もいらっしゃれば移住する方もいらっしゃる。これは地方分権にもつながりますので、しっかりとその辺は注視して、支援できるところは支援してまいりたいというふうに思っております。

田村(貴)委員 次に、鳥インフルエンザの感染とハエとの関係について質問します。

 三月十四日の本委員会で、私は、鳥インフルエンザの感染ルートについて、国立感染症研究所の研究者による緊急提言を取り上げました。それは、ハエが養鶏農家の対策をすり抜けて、ウィンドーレスの鶏舎の中に入り込んで感染を広げているという指摘であります。

 私の質問の一か月後の四月十五日、全国の研究者が集まる日本衛生動物学会大会が開会され、その特別企画で、九州大学や国立感染研の研究者が、更に詳細にハエが原因であることを証明する発表を行いました。発生農場周辺で流行時期になる冬に活発に活動するオオクロバエ、ケブカバエが高密度で発生していた、これらのハエが渡り鳥の飛来する周辺の池から鶏舎まで飛翔する能力がある、発生農場周辺で採取したハエ類の体内から鳥インフルエンザウイルスを多数検出した、養鶏がこれらのハエを好んで捕食する、つまり、ハエを好んで食べるということなどであります。

 三月の委員会で、私は大臣に対して、日本衛生動物学会大会が行われることも紹介し、これらの知見に耳を傾けるように要望したところでありますが、その後の対応についてどうされているでしょうか。

森政府参考人 お答えいたします。

 委員から御紹介のありました日本衛生動物学会大会特別企画につきましては、国立感染症研究所や九州大学などの研究者の方々から、鳥インフルエンザとハエに関する調査等について発表が行われたものと承知をしているところでございます。

 農水省といたしましても、ハエから高病原性鳥インフルエンザのウイルスが検出されていることは承知をしております。ハエが農場へ病原体を侵入させる可能性がある一つの要因であるという認識はあるところでございます。

 農場におけるハエ対策につきましては、既に飼養衛生管理基準において、鶏舎への病原体の侵入リスクの低減の観点から、殺鼠剤及び殺虫剤の散布、粘着シートの設置その他の必要な措置等を講ずるということを規定しているところでございます。

 また、今後、今シーズンの総括を含め、専門家による疫学調査結果の評価、分析などを行うこととしておりますが、その中で、更に発生原因の分析はしっかり行ってまいりたいと考えているところでございます。

 引き続き、発生予防に資する新たな知見が得られれば、現場の発生予防及び蔓延防止に生かしてまいります。

田村(貴)委員 農水省の衛生管理基準とか、それから農家に対するいろいろな指示の中で、図を見ると、ハエがないんですよ。ネズミとか、それから鳥とか、その侵入経路とかあるんだけれども、ハエについては書かれていないんですよね。全国の養鶏農家の方々にとってみたら、まさかウィンドーレスの中にハエが入ってきてここが感染ルートになっているとはつゆほども思わないわけなんですよ。でも、これが原因となってきているんだったら、対策を変えていかなければなりませんよね。

 学会の発表者の一人の研究者は、こうおっしゃっていました。我々が指摘してからもう十六年もたつのに、なぜ農水省は何もしないのかと憤慨されています。

 別の発表者の方は、農家の方は鶏舎にハエなどいないと言うけれども、オオクロバエは普通のハエと違ってぶんぶん飛び回らないと。素人は見つけられない、止まっているだけだから。我々が行けば、研究者が行けば五分で見つけられる。だから、見つけられないということと、必ず入ってくるということです。

 日本の専門家の方が一堂に集まってこういう発表をして、これだけの知見が出されたわけです。直ちにこの知見を取り入れて、対策を打っていくべきではありませんか。そして、こうした知見が発表された可能性があるということも、全国の養鶏農家の方に、そして鳥インフルの被害に遭った方に、やはりこれは周知すべきだ、知らせることが大事じゃないかと思いますけれども、今後の対策の強化、対策の転換を含めて、もう一度、答弁をお願いします。副大臣からあっても結構です。どうぞ。

森政府参考人 お答えいたします。

 先ほど、飼養衛生管理基準について、殺虫剤散布、粘着シートの設置等について言及をさせていただきましたが、飼養衛生管理基準におきましては、ネズミ及びハエ等の害虫の駆除を行うためにということも明記をしているところはつけ加えさせていただきたいと思います。

 また、こうした家禽における鳥インフルエンザの発生に関して、ハエがウイルスを媒介するのかという点については、別途、専門家からは、ハエの消化管中のウイルスが実際に鳥に感染可能なだけの十分な量があるのか、あるいは、ハエ、野鳥及び家禽で検出されているウイルスについて、それぞれの遺伝子配列や性状を分析する必要があるのではないか等の指摘もあるというふうに承知をしておるところでございます。

 そういったような専門家による更なる検証を行うため、調査研究を行うことを含め、今後、発生原因の分析をしっかり行っていく必要があるというふうに考えております。

田村(貴)委員 原因はここにあると断定的な検証になっているわけなんですよ。だったら、首をかしげているけれども、それじゃ駄目ですよ、そういう態度じゃ。

 だって、全国の養鶏農家は手を尽くして、そして農水省の指導に従って、八方、いろいろやってきて、それでもなぜ感染するのか、これだけ被害を生んでいるんだと。補償は全額じゃないでしょう。困っているわけですよ。再開できないんですよ。廃業している人がいるわけですよ。原因がこれだけ明らかになっているんだったら、これをちゃんと知見として生かして、対策を講じるべきじゃありませんか。

 副大臣、ちょっと、今、やり取りを聞いていて、いかがですか。

笹川委員長 答弁は簡潔にお願いします。

野中副大臣 ちょっと私も不勉強で、やはり地下からネズミとかが入ってくるのか、そして鳥が入ってくるのか、そしてまた人が持ってくるのかというところでしか、私どもは知識は持ち合わせておりませんでしたので、ハエについては私自身もちょっと勉強したいというふうに思っております。

田村(貴)委員 しっかり対応を急いでやっていただきたいと思います。

 終わります。

笹川委員長 次回は、来る十六日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十二分散会


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