衆議院

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第12号 令和5年6月14日(水曜日)

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令和五年六月十四日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 笹川 博義君

   理事 あべ 俊子君 理事 武部  新君

   理事 若林 健太君 理事 渡辺 孝一君

   理事 近藤 和也君 理事 緑川 貴士君

   理事 足立 康史君 理事 庄子 賢一君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      伊東 良孝君    泉田 裕彦君

      上田 英俊君    江藤  拓君

      加藤 竜祥君    勝目  康君

      神田 潤一君    小寺 裕雄君

      坂本 哲志君    高鳥 修一君

      土田  慎君    平沼正二郎君

      細田 健一君    宮路 拓馬君

      宮下 一郎君    保岡 宏武君

      山口  晋君    青山 大人君

      金子 恵美君    小山 展弘君

      佐藤 公治君    山田 勝彦君

      渡辺  創君    池畑浩太朗君

      掘井 健智君    角田 秀穂君

      山崎 正恭君    長友 慎治君

      塩川 鉄也君    仁木 博文君

    …………………………………

   農林水産大臣       野村 哲郎君

   農林水産副大臣      野中  厚君

   農林水産大臣政務官    角田 秀穂君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         杉中  淳君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         高橋 孝雄君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房危機管理・政策立案総括審議官)            前島 明成君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           森   健君

   政府参考人

   (農林水産省農産局長)  平形 雄策君

   政府参考人

   (農林水産省畜産局長)  渡邉 洋一君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  村井 正親君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            青山 豊久君

   政府参考人

   (国土交通省水管理・国土保全局下水道部長)    松原  誠君

   農林水産委員会専門員   飯野 伸夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十四日

 辞任         補欠選任

  西野 太亮君     土田  慎君

  平沼正二郎君     勝目  康君

  佐藤 公治君     青山 大人君

  稲津  久君     山崎 正恭君

  田村 貴昭君     塩川 鉄也君

  北神 圭朗君     仁木 博文君

同日

 辞任         補欠選任

  勝目  康君     平沼正二郎君

  土田  慎君     西野 太亮君

  青山 大人君     佐藤 公治君

  山崎 正恭君     稲津  久君

  塩川 鉄也君     田村 貴昭君

  仁木 博文君     北神 圭朗君

    ―――――――――――――

六月十三日

 食料危機の下で、国産食料の増産、食料自給率向上、家族農業支援強化を求めることに関する請願(宮本徹君紹介)(第二三四四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件(食料・農業・農村基本法の見直し等)


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     ――――◇―――――

笹川委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、去る六月五日、肥料及び飼料の価格高騰等に関する実情調査のため、茨城県において視察を行いましたので、参加委員を代表いたしまして、私からその概要を御報告申し上げます。

 まず、つくば市において、全国の農場で野菜の生産を行うとともに、加工野菜を製造している有限会社ワールドファームを視察いたしました。

 現地では、キャベツの収穫作業を見学するとともに、冷凍野菜などの六次産業化の取組や若い農業者の雇用及び育成状況等について説明を聴取いたしました。

 その後、つくば市の国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構において、地域の稲作、園芸、酪農、肉用牛、養豚、養鶏農家の方々と意見交換を行いました。

 意見交換会では、肥料高騰への不安・政策の拡充、小規模な酪農経営を見据えた支援の必要性、再生産を可能とする価格転嫁への支援の必要性、豚熱発生時における埋却及び焼却処理の併用の要望、鳥インフルエンザワクチンの開発及び使用への要望等の御意見をいただきました。

 次に、小美玉市において、関東屈指の規模で酪農経営を行っている有限会社PIONEER FARMを視察いたしました。

 現地では、飼料の価格高騰の影響のほか、家畜ふんの堆肥化等の循環利用の取組や搾乳ロボットの利用による省力化の取組等について説明を聴取いたしました。

 以上が、視察の概要であります。

 最後に、今回の視察に御協力いただきました皆様に心から御礼を申し上げ、視察の報告とさせていただきます。

     ――――◇―――――

笹川委員長 農林水産関係の基本施策に関する件、特に食料・農業・農村基本法の見直し等について調査を進めます。

 この際、お諮りをいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官杉中淳君、大臣官房総括審議官高橋孝雄君、大臣官房危機管理・政策立案総括審議官前島明成君、消費・安全局長森健君、農産局長平形雄策君、畜産局長渡邉洋一君、経営局長村井正親君、農村振興局長青山豊久君、国土交通省水管理・国土保全局下水道部長松原誠君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。武部新君。

武部委員 自由民主党の武部新です。

 本日は、食料・農業・農村基本法の見直しに関する一般質疑において質問の機会をいただきました。誠にありがとうございます。

 私は自民党で農林部会長をさせていただいております。江藤拓総合農林政策調査会長の下、森山裕先生が食料安全保障に関する委員長として先頭に立っていただいて、党内でも本当に熱心な議論を重ねて、提言書をまとめて、政府に提出させていただきました。心血を注いだ提言書になっていると我々は自負しております。

 そこで、基本法の見直しに当たりまして、六月二日に政府におきまして食料・農業・農村政策の新たな展開方向を決定されましたが、これに基づいて質問をさせていただきたいと思いますけれども、今回、基本法の基本的な考え方など、大きな枠組みについてお聞きしたいというふうに思っています。

 現在の食料・農業・農村基本法は約二十年以上経過しておりますが、当時の基本法制定のときの社会情勢、それから見通し、そのときに今後農業がどうなっていくかということの見通しと変わってきたところがあるんだろうというふうに思います。だからこそ、今回、基本法の見直しを検討されているというふうに思いますが、その情勢の変化について、政府の認識を伺いたいと思います。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 食料・農業・農村基本法の制定から二十年超が経過したわけでございますけれども、制定時に前提としていた社会経済情勢と比べ、今日の情勢及び今後の見通し等が大きく変化していることが明らかとなってきました。

 特に、世界的な人口増加や気候変動などにより国際的な食料需給が不安定化するなど、食料安全保障を取り巻く環境が変化していること、環境などの持続可能性の取組について国際的な議論が進展し、関心が高まっていること、国内の人口減少、あと農業従事者の減少等に伴い食料供給を支える力に懸念が生じているといった社会情勢等の変化に対応する政策の再構築が必要であるということが明確となりました。

 このことから、政策の見直しの方向性につきまして、基本法検証部会の中間取りまとめの議論も踏まえまして、先日開催されました第四回食料安定供給・農林水産業基盤強化本部におきまして、食料・農業・農村政策の新たな展開方向を取りまとめたところでございます。

武部委員 ありがとうございます。

 もちろん、ロシアによるウクライナの侵攻によって、食料の安全保障といいますか、食料の安定供給についてのリスクが高まった、国民の関心も高まっているというのもあると思いますが、やはり農業、農村地域で人口が急減しているということと、世界的にやはりカーボンニュートラルに対応をした食料、農業、産業、そういった政策を再構築しなければならないので基本法をしっかりと見直していくということなんだろうと思います。

 この社会情勢と今後の見通しというのは、農業部門だけじゃなくて、我が国の社会全体の課題でもあるんだろうと思います。それゆえに、岸田総理が新しい資本主義を掲げて政策を投入していると思います。

 農業でいえば、例えば、現行法では価格形成は市場に委ねるということにしました。しかし、必ずしも、期待したとおりに、農産物の市場動向だけでは農業者の皆様方は農業経営を変更しているということは言えない状況にあるんだろうと思います。

 加えて、日本は、長期のデフレで安さにのみ消費者の関心があって、なかなかその価値がちゃんと評価されて価格が形成されるということがしづらい、価格に転嫁できない、再生産可能な価格になっていない、そういう問題もあるんだろうというふうに思います。

 経済を最優先にさせてきた影響が、気候変動という問題も出てきていますし、地球温暖化という地球規模の大きな課題にも直面しています。

 そこで、市場や競争に任せる新自由主義というのが経済成長の原動力だということは間違いないと思いますが、一方で、今も申し上げたとおり、気候変動の問題が出てきた。それから、過度に海外に依存しているがゆえに、食料安全保障の問題もそうですけれども、経済安全保障のリスクも増大して弊害も出ているというのも、これは間違いないことなんだろうと思います。

 そこで、岸田総理が掲げる新しい資本主義をどのように基本法の中に取り込んでいき、農業、食品産業の持続的な発展を図っていくか、お考えを伺いたいと思います。

野村国務大臣 お答えを申し上げたいと思いますが、先ほど武部委員の方からございましたように、二十年前に作りました我々の、我々というか国の方で定めていただきましたこの基本法について、大きな変動があったということは先ほど総括審議官の方からお答えしたとおりでありますが、新しい資本主義というのは新自由主義からの脱却だということを総理が就任のときにもおっしゃいましたが、この新しい資本主義というのは、先ほど武部委員からもありましたような、気候変動問題などの社会課題を解決しながら成長を実現することで持続可能な経済社会を目指していくものだというふうに理解をいたしております。

 農林水産分野におきましては、気候変動による世界的な食料生産の不安定化といった食料安全保障上のリスクが大変高まっているという御認識はおありだと思いますが、さらに、国内におきましては、生産者の減少なり国内市場の縮小、こういったような社会の課題を解決しながら農林水産業の持続可能な成長を図っていくことで新しい資本主義が実現される、こんなふうに理解をいたしております。

 こうした諸課題に対して、新しい資本主義を実現するためには、やはり食料、農業、農村政策を見直す必要があると考えておりまして、このため、今般の食料・農業・農村政策の新たな展開方向では三つのことを打ち出してございます。

 一つは、平時からの国民一人一人の食料安全保障の確立であります。二つ目が、環境等に配慮した持続可能な農業、食品産業への転換、それから三つ目が、人口減少下でも持続可能で強固な食料供給基盤の確立といった政策の方向性を踏まえて、基本法の改正に向けて検討を進めてまいりたい、このように思っております。

武部委員 大きな三つの柱ですね。食料安全保障を抜本的に強化することと、そして、環境に調和した農業、食品産業、そして、今私も申し上げましたけれども、やはり、特に農村地域の人口減少で、生産力を維持できるのか、あるいはコミュニティーを維持できるのか、こういった大きな課題がある、この柱をしっかりと背景にして基本法の見直しを進めていただきたいと思います。

 ちょっと申し上げると、例えば畜安法ですね。法改正して、生乳の出荷先を選択できるようにしました。生産者の皆さん方の選択肢が増えたということはよいことでありますけれども、ただ、今みたいに需要が低迷すると、生産基盤全体を守るために、例えば、指定団体の皆様方は生産抑制に取り組む協力をお願いしているという状況にあります。生産抑制をお願いする一方で、自由に、協力しないで出荷される方々もいるということは、これは全体の生産基盤を弱めてしまう、食料安全保障上の観点からいうとどうなのかなという議論も確かにあるんだろうというふうに思います。

 基本法の見直しと同時に、関連法案も、恐らく多くの関連法案を改正していかなきゃ、見直しを検討していかなきゃならないと思いますので、しっかりと検証と検討をしていただきたいと思います。

 最後に、食料安全保障についての考えをお聞きしたいと思います。

 食料安全保障のポイントは、今大臣もおっしゃられましたけれども、食料の安定供給の確保が第一ではありますけれども、今の現行法制を制定した当時から比べると、食料へのアクセス自体の課題が増加しているんじゃないかと思います。例えば、都市部であっても買物困難者の方々が増えているという状況もありますし、それから、経済的な理由で十分に食料を手にできない、そういったこともあって、子供食堂あるいはフードバンクみたいな、そういう政策が農林水産省でも展開しているんだろうというふうに思います。

 基本法の改正の大きな柱はもちろん食料安全保障の抜本的強化なんですけれども、もちろん食料自給率も上げていかなきゃならないですし、生産基盤をしっかりしなきゃならないんですが、食料の安定供給確保を前提とした上で、不測時のみならず平時から国民一人一人が食料にアクセスできて、国民の健康を、しっかりと健康を享受できるようにすることが平時からの安全保障として大事だと考えますけれども、食料安全保障の在り方について、政府の考えをお聞きしたいと思います。

野中副大臣 食料・農業・農村基本法を二十年ぶりに改正するという理由については、先ほど来、大臣また総括審から申し上げましたとおり、二十年前と環境、情勢が変化したということで、それに伴い、持続可能で強固な食料供給基盤の確立を図る必要があるということであります。

 その上で、武部先生がおっしゃられた、有事だけではなく平時で、国民一人一人の栄養を養うべし、食料にアクセスできる、アクセスを確保すべきという話がございました。

 六月二日に、食料・農業・農村政策の新たな基本展開におきまして、平時にも、食料安全保障について、国民一人一人が食料にアクセスでき、健康な食生活を享受できるようにすることを含むものへと再整理するとともに、世界の食料需給の状況、我が国の食料や生産資材の輸入等、様々な指標を活用、分析することによりまして、我が国の食料安全保障の状況を平時から定期的に評価する仕組みを検討すること等を内容とする施策の方向性を取りまとめたところであります。

 今後についてでありますが、今回取りまとめた施策の方向性に基づいて、先生がおっしゃられた、関連法案などを含む令和六年の通常国会への基本法改正案提出に向けて作業を加速してまいりたいと存じます。

武部委員 ありがとうございます。

 私も、農林水産副大臣をさせていただいたときに、食料安全保障のリスク検証を省を挙げてやっていただきました。様々なリスク評価をして、高いリスクのもの、低いリスクのもの、国内の問題、海外の問題、海外からの輸入についても、九割は日本と安全保障上友好な国から輸入しているということも検証したことがあります。

 そういったようなリスク検証も含め、これから、今副大臣のお話にあったとおり、様々な指標を用いて、今、食料の安全保障のリスクがどうあるか、どう体制を整えるかということを検証されていくということだというふうに思います。

 この基本法の改正については、またしっかりと国会の中でも政府と議論してまいりたいと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

笹川委員長 次に、庄子賢一君。

庄子委員 公明党の庄子でございます。どうぞよろしくお願いします。

 近年、安全保障という言葉が多岐にわたって使われるようになってきています。いわゆる防衛問題上の安全保障はもちろん、エネルギーの安全保障、あるいは経済安全保障、情報保障といった言葉もございます。そして、今議論をしている食料安全保障ということで、非常に幅広く安全保障を構築していかなくてはいけない時代に入った。

 今回、中間取りまとめが基本法の検証部会から出されておりまして、ここで食料安全保障というのをどういう言葉で定義するのかというように非常に着目もしておりましたが、それによりますと、国民一人一人が健康的な活動を行うために十分な食料を将来にわたり入手できる状態、これが食料の安全保障だという定義でございました。

 そして、そのために具体的に必要な取組として、国内農業生産の増大、これを基本としつつ、輸入の安定確保や備蓄の有効活用を重視することが述べられています。いわゆるエネルギーで言うところのベストミックスですね。余り何か一つのことに過度に依存し過ぎずに、バランスを取って、ベストミックスを構築するということなんだろうというふうに思いました。

 そこで、私が思う大切なことは、今は確かに、ウクライナ侵略戦争や物価高騰、燃油の高騰などがあって、輸入の食料品というのは非常に高くなって、輸入の農作物は高くなっていますから、国内生産を増大しようというふうにかじを切るということは当然だと思うんですが、こうしたトレンドが変わって、輸入の主要穀物、食料品、これがもし安価になっていったとしても、今回決めようとしている国内の生産増大ということについて、しっかりこれを持続し続けていくということが非常に大事で、ここをぶれずに推進することが重要ではないかというふうに思っておりまして、まず、この点、大臣に、国内農業生産の着実な増大についての御所見また決意をお尋ねをさせていただきます。

野村国務大臣 庄子委員とこうして農林水産委員会で何回もやり取りをしているわけでありますが、まさしく御指摘に私も同感でございまして、先ほど申し上げました新たな展開方向におきまして、食料や生産資材について過度な輸入依存を低減していく、このことが大前提でございまして、小麦や大豆、飼料作目など、海外依存の高い品目の生産拡大を推進してまいりたい、かように思っているところでございます。こういった構造転換を進めていくというのが今回の基本法の大きな柱でございます。

 このため、実需からの需要に応えた生産、供給が図られるように、これらの品目が連続して作付けられるように、水田の畑地化等により品質や収量の向上を進めることというのが第一点。二つ目には、各産地における農地利用を含めた産地形成の取組を推進していくというのが二つ目でございます。それから三つ目が、実需から要望の強い国産農産物の安定供給体制を構築すること等が必要だ。このように考えているところでございます。

 具体的には、例えば麦や大豆につきましては、生産性や品質の向上に向けた基盤整備、あるいは農業機械や営農技術の導入、それから二つ目には、各産地における作付の団地化あるいは産地化に向けての検討の促進、それからもう一つは、安定供給に向けて調整保管機能を果たすストックセンターの整備、外国産から国産への切替えに取り組む食品製造業者の新商品の開発、こっちも大事なことであります、など、生産、流通、消費、それぞれの段階において総合的な支援を行っていくということでございまして、今後、特に海外依存の高い品目の国内農業生産の増大に向けて、あらゆる政策を集中させまして着実に実施してまいりたい、かように思っております。

庄子委員 ありがとうございます。

 大臣がおっしゃっていただいた、構造改革で国産の生産拡大をしていくということをぶれずにやっていただきたいと思うんですが、そうなると、今度は、国産で作られた農作物へ、かかったコストをどうやって適正に転嫁するかということがポイントになるんだろうというふうに思っておりますが、長期にわたるデフレ経済の影響、そして実質賃金の低下などで、食料販売は低価格であることが大切、そうしたマインドが日本には残念ながら定着をしております。

 そういう中において、再生産を、窮屈ではなく、可能なものにしていくために、政府としても、適正な価格転嫁に係る理解醸成という取組が非常に重要だろうというふうに思っておりまして、この理解醸成についてどのように取り組んでいくか、伺いたいと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員から御指摘がございましたとおり、長期にわたりますデフレ経済の下で、農業、食品産業は、生産コストが上昇しても、それを販売価格に反映することが難しくなっております。

 したがいまして、生産から消費までのフードチェーンの各段階において適正に価格転嫁を進めていくためには、事業者だけでなく、消費者に生産コストについての御理解をいただくことが不可欠でございます。

 このため、農林水産省といたしましては、テレビやラジオによる政府広報のほかに、インターネットなどの媒体を活用して、資材価格の高騰など生産コスト上昇の背景を分かりやすく伝えるための広報を行っているところでございます。

 今後は、更に効果的な発信につなげますよう、小売店の店頭での発信、あるいはインフルエンサーの活用などにも取り組む予定でございまして、これらの広報手法の充実等を通じて消費者の理解醸成を進めてまいります。

庄子委員 具体的な御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 そして、その理解醸成の上に立って、今度は、具体的に、食料供給システムの生産や加工、流通というそれぞれのフェーズ、フェーズで、関係者合意の下でのコスト指標、こういったものを作成、共有し、各段階で価格転嫁を可能にしていくなど、取引の仕組みを構築すべきではないか。

 この取引の仕組みということについてお尋ねをしたいと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 フードチェーンの各段階を通して適正な価格形成を行っていくためには、生産段階における経営管理が必要である一方、消費者や流通、小売等の事業者に、生産に係るコストが認識されることも不可欠でございます。

 このため、食料システムの各段階の関係者が協議できる場を創設いたしまして、適正取引を推進するための仕組みについて、統計調査の結果等を活用し、食料システムの関係者の合意の下でコスト指標を作成し、これをベースに各段階で価格に転嫁されるようにするなど、取引の実態、課題を踏まえて構築するとともに、適正な価格転嫁について、生産から消費までの関係者の理解醸成を図ることを進めてまいります。

 また、フランスのエガリム法なども参考にしつつ、食料システム関係者の協議の場での御議論を踏まえて、適正な価格転嫁を進める仕組みの法制化へ向けた検討を進めてまいりたいと考えております。

庄子委員 ありがとうございます。

 国民理解の醸成ということと、そして、今おっしゃっていただいた、コスト指標を共有し、また法定化という話も今いただきましたけれども、その具体の仕組みづくり、これからしっかりと検討をお願いをしたいと思っております。

 そこで、現行法の第十二条、これは「消費者の役割」ということが書いてありますけれども、ここでは、「消費者は、食料、農業及び農村に関する理解を深め、食料の消費生活の向上に積極的な役割を果たすものとする。」というのが現行法における消費者の役割なんですけれども、理解を進めていった上で、改正をされますこの基本法については、消費者、国民の行動ということについて、例えば、食料の安定供給を考慮して消費行動に努めるといった内容について具体的に書き込むということについては御検討が可能でしょうか。見解を伺います。

森政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の消費者の役割に関しましては、食料・農業・農村政策審議会基本法検証部会の中間取りまとめにおきましても、「消費者は、食料消費を通じ、食料の生産、加工、流通等の在り方に影響力を持つ」とした上で、「消費者は食料、農業及び農村について正しい理解を深め、具体的な消費行動を取るなど、食料消費においてより積極的な役割を果たすことが期待される。」とされたところでございます。

 これを踏まえまして、今後、食料・農業・農村基本法の改正に向けて、こうした消費者のより積極的な役割をどのように位置づけていくかについても検討してまいることとしているところでございます。

庄子委員 そうしますと、一番最後に伺おうと思っていたのを一つ前倒しをしますが、今回、農業の憲法とも言われる、大きなその見直し作業をしている中にあって、主権者たる国民がこの議論にどう参画できるのか、また、この議論に国としてどう国民を巻き込んでいくのかというところが非常に重要だと思います。

 来年の一月、通常国会に法案を提出するということを目途に進めていくとすれば、その過程の中で国民をどのようにこの議論に巻き込み、また参画をしていただくか、ここについてお答えをいただきたいと思います。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 議員の御指摘のとおり、食や農業の未来に関する基本法の検証、見直しにつきましては、現場の農業者、食品事業者、消費者など、国民各層から幅広く御意見を伺い、国民的なコンセンサスを得ていくことが重要だというふうに考えております。

 食料・農業・農村政策審議会の基本法検証部会におきましても、これまで十六回開催いたしましたけれども、会場やオンラインでの一般傍聴も可能なオープンな場で、農業者、消費者のほか、食品産業、経済界、地方自治体の方々など、幅広い委員に参加していただくほか、食料、農業、農村の現場の方々からのヒアリングを重ねてまいりました。また、農水省の職員、また地方部局の職員についても、関係団体や事業者との意見交換を数多く重ねてまいりました。

 今後でございますけれども、中間取りまとめにつきまして、農林水産省ホームページを通じて幅広い層からの御意見、御要望を募集するとともに、全国十か所程度の地方の現場においてヒアリングや意見交換を行うことを予定しております。

 こういう活動を通じまして、引き続き、広く国民の皆様の声を聞きながら、基本法の検証見直しを進めてまいりたいと考えております。

庄子委員 幅広に、是非お願いをしたい。

 今、農水省さんが、ユーチューブですか、BUZZMAFF、非常に面白いですよね。次官と若手職員がかけ合い漫才のようにして農業を語っているという、ああいう、農水省さんとしては珍しいと言うと失礼かもしれませんが、そんなこともできるんだなというふうに思って拝聴しておりましたが、是非取組を、継続をお願いしたいと思います。

 最後に、海外では、食料安全保障を確立するという観点から、国内外の食料供給に関する内容や食料に対する家計支出に係る報告書の作成を義務づける、こうしたことをしている国があります。こうした事例を参考に、我が国においても、個人レベルでの食料安全保障の状況を定期的に評価する仕組み、これが必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

杉中政府参考人 お答え申し上げます。

 基本法検証部会におきましては、議員の御指摘のとおり、英国の食料安全保障報告書について議論が行われました。同報告書は、世界の食料供給能力、英国の食料供給源、フードサプライチェーンの強靱性、家庭レベルの食料安全保障、食品の安全性と消費者の信頼といった五つのテーマごとに、より細かい指標を設けて、食料安全保障に関する現状を分析するレポートとなっております。

 こういった事例を参考に、中間取りまとめにおきましては、我が国においても食料安全保障に関するテーマを設定し、その具体的な指標を提示しつつ、現状の分析、分析に基づく課題の明確化、課題解決のための具体的施策の検討、施策の評価を行うこととすべきであるという提言をいただいたところでございます。

 こういう中間取りまとめも踏まえつつ、我が国におきましても、食料安全保障の状況等を定期的に評価する仕組みについて検討していきたいというふうに考えております。

庄子委員 終わります。ありがとうございました。

笹川委員長 次に、金子恵美さん。

金子(恵)委員 立憲民主党の金子恵美でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 農水省は、八日に緊急自然災害対策本部を開いたということでございます。その中で、台風二号と梅雨前線の影響による大雨のほか、五月には石川県の能登地方で最大震度六強を観測した地震もあったということもあると思いますけれども、各地で既に大きな被害が発生しているということから、大臣が幹部職員の方々に、地方自治体や関係機関との連携体制を確認し、災害への備えに万全を期すようにと指示をしたというふうに伺いました。これが日農新聞の記事の中にありました。野村大臣は、スピード感を持ってやっていかないと農家の皆さんは心まで折れてしまうという発言をしているわけですね。

 私は、この大臣の言葉というのは本当にありがたい言葉だというふうに思っていて、農業者が災害によって農業をすることができないということがどれほど厳しい状況かということを御理解いただけているものだというふうに思っています。

 それで、福島県では、原発事故によって避難を余儀なくされ、当然、営農も休止しました。現在も避難指示が解除されていない帰還困難区域があります。

 先週の木曜日でございますけれども、福島県知事から要請がありまして、ふくしまの復興・創生に向けた提案・要望をいただきました。農林水産分野においても多くの要望をいただいたわけですけれども、その中で、原子力災害の被災地における第一次産業の再生の道のりというものが、改めて長い道のりになるなということを感じたわけですけれども、徐々に営農再開が進みつつある、もう既に避難指示が解除したところもある一方で、まだまだこれからというところもあるわけです。営農再開が十分に進んでいない帰還困難区域などは、これからなわけですね。

 それで、このような中、福島県営農再開支援事業というのがありまして、令和六年度以降は財源となる原子力災害等復興基金の枯渇が確実な状況にあるので、これについてはしっかりと基金の積み増し等をお願いしたいという要望を受けています。

 大臣、農業ができない方々のお気持ちを酌み取っていただける大臣ですから、これは先の話と言わず今からしっかりと大臣も応援していただきたいと思っているのですけれども、この福島の営農再開支援を継続していくために大臣の御決意を伺いたいと思います。

野村国務大臣 金子恵美先生にお答えしますが、私も大臣になりましてから福島にも二度ほど行ってまいりました。そして、その前に自民党の農林部会の中からも二回ほど行きまして、その後どういったような復興を遂げているのかということを大変よく見させていただきました。

 数字的なことを申し上げますと、福島県の一万七千二百九十八ヘクタールのうち、今現在七千三百七十ヘクタールが再開をしているということで、おおよそ四〇%、四割が営農が再開されている。私もそういった田んぼも見てまいりましたが、そこでは若い被災者の人たちも一緒に働いておりまして、大変生き生きとした感じを見たわけでありますが、ただ、先生おっしゃいましたように、この福島営農再開支援事業につきましては、当初三百六十二億あったんですが、現在四十二億の残高しかございません。おっしゃるように、もう一割ぐらいしか残っておりません。

 したがいまして、営農再開が今本格化し出していきますと、避難指示の解除が遅かった地域では営農再開に向けた支援を継続していく必要がある、このように認識をいたしておりまして、このため、農水省としては、福島県を始め現場の声をしっかりお聞きしながら営農再開が今後も円滑に進むようにやりたいと思っておりますが、これはいわゆる復興庁の方にございます特別会計で管理をいたしております。したがいまして、事業自体は農水省がやっておるんですけれども、予算自体は復興庁の方で計上させていただいておりますので、先ほど積み増しが必要だろうというお話をされましたけれども、復興庁と連携して必要な対応を今後やっていきたい、かように思っておるところでございます。

金子(恵)委員 今四十数億円残っているという話でしたけれども、毎年毎年大体三十億円ずつ使っていますので、そうするともう令和五年で一桁になるわけです。ですから、令和六年度からはしっかりと確保しなくてはいけない、基金に積み増しをしなくてはいけない。大変な状況になっていくということですので、御理解をいただきまして、御決意は伺ったというふうに思っておりますので、是非継続した支援をよろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。

 次に、ALPS処理水の件なんですけれども、前回も私は福島県内での説明会についてお伺いいたしました。大臣は現地には向かうことはできませんでしたが、反対に、今回また動きがございまして、六月の七日に相双漁協の今野組合長が西村大臣と面談をいたしました。そのときにも、とにかく地元の漁業者の生活がどうなるんだという訴えをされたということであります。

 六月の十日には、今度は西村大臣が福島、宮城、茨城に入りまして、それぞれの三県の漁業関係者と意見交換をしたということであります。もちろん、この十日のときにも、福島県漁連の野崎会長は、放出反対は変わらないという意見、そしてまた宮城県の漁業協同組合の寺沢組合長は、もう少し早く宮城で漁業者の生の声を聞いてほしかった、遅いという苦言も呈された、そして茨城沿海地区漁業協同組合連合会の飛田会長は、将来に対する不安が増大し漁業継続への懸念が生じていると訴えたということで、報道もされております。

 このような状況の中、宮城と茨城の漁業者の方々とほとんど初めての面談となったようであります。

 野村大臣、もう私は経産大臣に任せてはおけないんじゃないかと思うんです。政府としての御意見をいつもおっしゃっていただいている。前回も、寄り添うという言葉はいただいています。ですけれども、やはりもうちょっと踏み込んだ形で応援の言葉をいただかないと納得がいかないなというふうに思っておりまして、傍観者であってはいけないというふうに思いますし、大臣は当事者だと思います。漁業者の方々を守るための当事者です。ですから、是非、漁業者の応援団の一人としての発言を期待したいと思いますが、いかがでしょうか。

野村国務大臣 金子先生おっしゃいますように、私どもは決して傍観者だというふうには思っておりません。

 ですから、先ほどおっしゃいましたように、西村経産大臣が先般各県を回られたというのは、ALPS処理水というその管轄は経産省の方でやっておりますので、そういった意味で、この前、漁業者の皆さん方と西村大臣がお会いになったんだろうと思いますが、我々も、これは環境省、あるいはまた復興庁、ここも一緒になって漁業者の皆さんとも話をしておりまして、前回、五月十七日にもそういった御質問がございましたので、そのときにも答弁いたしましたが、それ以降も、福島県の漁業者と六回、それから福島県以外の漁業者、関係者と八回、丁寧、丁重に対話を重ねてきております。

 私が行きましたときには、私はもう当然怒られるだろうと思って行ったんですが、漁業者の皆さんからは、農水省はよくいろいろな情報をつないでくれているということで逆に激励を受けたわけでありまして、農水省としては、引き続き、先ほどおっしゃいましたように、漁業者に寄り添いながら今後も対応していきたいというふうに思っておりますので、被災地域の漁業の本格的な復興を目指す、そして、全国の漁業者が漁業を安心して継続できるように、私ども農水省としては万全を尽くしていきたい、かように思っております。

金子(恵)委員 ありがとうございました。

 それでは、食料・農業・農村基本法の関係で質問させていただきたいと思いますが、中間取りまとめが整理され、そして六月の二日には、官邸の食料安定供給・農林水産業基盤強化本部で、食料・農業・農村政策の新たな展開方向が決定されたというわけです。

 これに対しまして、私たち立憲民主党としましても、野村大臣に、六月二日、お時間を取っていただきまして、提言書を提出させていただきました。ありがとうございました。

 詳しいことはここではお話はできないんですけれども、私たちとしても、食料安全保障に資する直接支払い制度の構築を、そしてまた農村機能の維持を、みどり・環境の観点を加えよう、こういう大きく三点も含めさせていただいた提言書でございました。

 基本、やはり大きなテーマは、先ほど来お話がありますけれども、食料安全保障の在り方、定義ということだというふうに思っています。

 今、その中間取りまとめも含めまして、おっしゃっている、国民一人一人が活動的かつ健康的な活動を行うために十分な食料を将来にわたり入手可能な状態ということを定義として挙げるだろうということ、これについては異論があるわけではないのですけれども、前提となるものが、先ほども答弁がありましたけれども、社会情勢の変化ということをすごく強くおっしゃるわけなんですけれども、そもそも、現行基本法下における農政の検証、反省、それはもちろん検証部会でやったということにはなっているわけなんですが、私はもっと踏み込んだ形でやるべきだったのではないかなというふうに思っておりまして、不十分ではないかと思っています。

 これまでの大規模化の偏重の農政のどこに問題があったのかということも含めて、しっかりその辺のところを明らかにしながら、今後の食料安全保障の問題、定義というものをしっかりと考えていくということが必要なのではないかなと思います。ただ単に食料安全保障の定義を改めたとしても、簡単に理解醸成とか浸透というのは難しいものになっていくのではないかというふうに思っています。

 食料自給率はたったの三八%、二〇〇〇年と二〇二二年を比較しますと、基幹的農業従事者は二百四十万人から百二十三万人です。そして、国内の農地面積、基本法制定以来、五十四万ヘクタール減っている。四百三十二万五千ヘクタールとなっている。こういう数字を見ただけでも、もっともっとしっかりと検証すべきだったのではないかというふうに思いますけれども、これまでの大規模化の偏重の農政をどう総括し、そして反省し、どのように転換すべきと考えるのか、御答弁いただきたいと思います。

野中副大臣 社会情勢の変化はやはりあると私は思っております。

 というのは、やはり、二十年前の基本法制定時に比べて、いまだ世界の人口は増えていますし、カナダで四十九度を超える熱波が発生したり、また、当時に比べて買物困難者の方が増えたり、また、経済的理由で食べ物も手に入れることができない方が増えた。やはり私たちは、社会的情勢の変化を背景として今回の基本法改正を目指しております。

 その上で、食料安全保障は、平時にも、国民一人一人が食料にアクセスでき、健康な食生活を享受できるようにすることを含むものへ再整理する方向で検討するとともに、自給率アップの観点からも、小麦、大豆、加工そして業務用野菜等の国内農業生産の増大、そして買物弱者や経済的弱者等に対する食品アクセスの改善などの施策を通じ、平時からの食料安全保障を確保してまいりたいというふうに思っております。

 加えて、SDGsの観点や、国内人口減少に伴う、食料供給を支える力に懸念が生じているということもありまして、これらについて政策の再構築も必要となっております。

 このため、この六月二日にお示しさせていただいた展開方向を決定いたしまして、平時からの国民一人一人の食料安全保障の確立に加え、環境等に配慮した持続可能な農業、食品産業への転換、人口減少下でも持続可能で強固な食料供給基盤の確立、これらの三つの柱に基づく政策の方向性を取りまとめて、今後、基本法改正も含めて検討してまいりたいというふうに思っております。

金子(恵)委員 副大臣、ありがとうございます。

 社会情勢の変化はもちろん認めます。それだけではなく、もっと踏み込んだ形での検証をしていただきたいというふうに思っています。よろしくお願いいたします。

 不測時における国民への制約を伴う義務的措置というものも出てくるだろうというふうに言われていて、それについては、増産指示、流通規制、そして調達指示、究極的には食料の配給等を例示した上で検証を行うべきだというふうにされているということではありますけれども、この件については、当然、国民の私権の制限につながるのではないか、そういう不安の声が聞こえているということでありまして、ここについては、しっかりと丁寧に議論すべきであると思っておりますし、不利益を受ける、そういう人たちの救済策も含めて協議していかなくてはいけないのではないかと思っていますが、いかがでしょうか。

角田大臣政務官 新たな展開方向においては、不測時の食料安全保障について、関係省庁が連携して対応できるよう、政府全体の意思決定を行う体制の構築と併せて、食料安全保障上のリスクに応じた、不測時の対応根拠となる法制度を検討することとされたところです。

 現行の基本法第十九条においても、凶作、輸入の途絶等の不測時において、国民が最低限度必要とする食料の供給を確保するために必要があるときは、食料の増産、流通の制限等の施策を講ずる旨が規定をされているところでありまして、新たな展開方向を踏まえまして、基本法に規定されているような、不測時に必要な施策が講じられるよう法制度について検討を進めてまいりますが、その過程においては、委員からの御指摘の点も含めまして、専門家を始め幅広い関係者の意見を聞いてまいります。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 もちろん、関係者の意見だけではなくて、このことも含めて、そしてまた、本当に農政が大きく変わるということですので、国民的議論、先ほど来ありますけれども、しっかりと国民の皆様を巻き込んだ形での議論を進めるべきだというふうに思っています。

 最後になりますけれども、こうやって幅広い農林水産施策をとにかく円滑かつ的確に推進していかなくてはいけないという、そういう大切な時期に来ているわけでありまして、ウクライナの危機を背景とした食料安全保障の強化、そして、食料・農業・農村基本法、これがもし改正されたら、また新たな形で農政が動くでしょう。そうすると、十分な予算に加えて、もちろん人員を確保しなくてはいけないということだというふうに思っています。

 私は農林水産省の応援団だというふうにも思っておりますが、残念ながら、大幅な定員削減が継続しているという状況でございまして、そういう中にあっても、新規増員要求数については、前年度要求数と同数の四百十人にとどまっているという状況がずっと継続しているということです。

 定員合理化に取り組むことは必要ですけれども、内閣の重要政策に係る取組を推進する体制の重点的な整備のための新規増員要求は積極的に行うべきだというふうに思っておりますけれども、大臣、令和六年度定員要求において、前年度を大幅に超える新規増員要求を行うとともに、確実にそれを確保するということをお願いしたいと思いますが、大臣の御決意を伺いたいと思います。

野村国務大臣 今、金子先生の方からございましたようなお話は、参議院の方でも同様のお話を伺ったところでございまして、令和六年度定員要求につきましては、政府全体のルールというのがありまして、その中で、食料・農業・農村政策の新たな展開方向も踏まえて適切な要求をしてまいりたい、かように思っておりますが、令和六年度の定員要求確保については、先ほど来お話を申し上げておりますように、食料の安全保障を始めとした農林水産業を取り巻く諸課題に的確に対応するために最大限の取組をしてまいりたい、かように思っております。

金子(恵)委員 最大限の取組。農は国の基なり。本当に国力に関わることで、それに関わる人たちをできるだけ多く持つべきだというふうに思っていますので、これは本当に大臣の力を発揮していただきたいというふうに思っておりますので、是非よろしくお願いを申し上げまして、私からの質問とさせていただきます。

 ありがとうございます。

笹川委員長 次に、近藤和也君。

近藤(和)委員 石川県能登半島の近藤和也でございます。よろしくお願いいたします。

 先ほど、農林水産省の職員の定数ということに対しては最大限の努力をするという答えをいただきました。ありがとうございます。

 是非ともその最大限の姿勢を見せていただきたい、答えを出していただきたいと思いますし、解散があるかどうかは分かりませんが、引き続き、野村大臣のその言葉が本当なのであれば、続けて頑張っていただきたいなというふうに思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、竹の問題から入ります。

 竹は、縄文時代から使われ、茶道や華道、そして笛や尺八などでも使われ、日本の伝統文化そのものと言ってもいいと思います。竹取物語も平安初期に作られた日本最古の物語でもあります。

 私たち日本人にとって大切な存在である竹ですけれども、今は状況が変わってきました。

 資料1にありますように、竹林はどんどん増えてきています。一方で、竹材生産量は減ってきている。そして、タケノコの生産そして輸入についても逆転をしてきているという状況です。

 そして、実際には、皆様の中にも、私の近所もそうなんですが、ある家の敷地内で竹が伸び放題になって、雪で押し潰されて道路を塞いでしまって、あの竹を切ってくれ、誰が切るんだということでトラブルになっている。これは恐らく全国でも似たような事例があると思います。

 そして、山の斜面に竹が侵入してきて、竹の方が成長が速いですから、木がやられてしまって、今まで木が根を深く張ってくれていたのが斜面を守ってくれていた、しかし、竹は根っこは三十センチ程度ということで、表面がそのまま崖崩れで流れてしまう。災害という観点からも、竹に対しての見方という政策をやはり考え直していかなくてはいけないと考えています。

 以前はそれほど影響がなかったんですが、今なぜこういう状況が起きてきているか。過疎化であり、また少子化ということで、竹の需要と供給のバランスが大きく崩れてきてしまっているといったところに問題があります。

 そこで、竹の侵食を抑えて有効活用をいかに進めていくか、地域振興、文化振興を進めていくか。実際には森林環境譲与税も使えるというふうに聞いています。様々な対策もあるとは聞いていますが、もっと力を入れていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。大臣、お願いいたします。

野村国務大臣 お答え申し上げます。

 近藤委員がおっしゃるように、非常に、私も山の中で、山を持っておりますが、竹が入ってきて、なかなかこれを処理するのが大変だなということを思っておりますが、確かに、管理不足の竹林が増えてきたというのは事実でありまして、森林の公益的機能の低下、あるいは景観の悪化等が懸念されているところでございます。

 しかしながら、間伐等と併せて行う竹の伐採に対する支援、これも農水省はやっております。さらに、地域住民等が里山林を保全するために行う侵入竹の伐採あるいは除去などの支援も行っているところでありますが、さらに、もう一つ、これは私も近藤先生の質問の中で役所から初めて聞いて、ああ、そんなことができるのかということを申し上げたんですが、竹の利用拡大も重要だ、こういうふうに言っておりまして、どういった利用拡大ができるのかといいますと、土壌改良資材に使えますと。これは、パウダーにしまして、そしてそれを改良材として使うというのが一点あります。

 それから二つ目は、国産メンマ、いわゆる我々が中華料理なんかを食べるときのメンマですが、このメンマに活用できる。それから、製紙用の原料というようなことにも使えるという話を聞きまして、こうした新たな利用も含めて、竹の有効活用に向けた支援も今後農水省としては進めてまいりたい。

 ですから、ただ伐採するというだけではなくて、竹林の、竹の有効活用という面からももう一つ進んでやらせたい、このように思っておりまして、これらの取組によりまして、拡大抑制と竹資源の活用に取り組んでまいりたい、かように思っております。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 農水省としてはやっているつもりでも、大臣も初めてということも伺いましたので、やはりどんどんどんどんみんなで意識を高めてやっていけたらと思います。

 それでは、米の問題に参ります。

 米作農家の方が困っているという言葉は、十年前も、五年前も、二年前も、今も、皆さんも聞かれていると思います。

 資料の2を御覧ください。いかに困っているかということを、私の知り合いの方で地域の農業のリーダー、地域のリーダーの方から細かくデータをいただきまして、簡単にまとめたものでございます。

 そして、令和三年、四年を見ていただきたいんですが、肥料であったり農薬、また光熱費等々がいかに値上がりしてきているか分かると思いますし、この所得金額、丸で囲ってあるところですね、令和三年は五十九万円、令和四年は百三万円です。

 ちなみになんですが、この令和三年、令和四年は、準備金百万円を取り崩しているんです。準備金を取り崩さなければ、令和三年は赤字、そして去年はたった三万円という状況なんです。

 こういう状況を踏まえて、私たちは、戸別所得補償制度がいかに大切か、復活させるべきだ、これも、もし衆議院選挙があれば、我々は強く訴えていきたいというふうに思っています。

 その中で、この方は、平成二十五年度であれば十八ヘクタール作られていました。それに二百七十二万四千円、戸別所得補償制度の分でお金があったんですけれども、平成二十九年が最後の年です。このときには十アール当たり七千五百円でした。金額は百四十六万円、この平成二十九年の収入のところに乗っているわけでございます。

 そして、もしも去年、一万五千円、戸別所得補償制度があればということですが、下に書いてありますように、三百五十八万八千円です。この三百五十八万八千円が令和四年で乗って、ようやく年収四百六十万円、準備金を取り崩してですから、それがなければようやく三百六十万円なんです。今、日本人の平均の収入というのは四百万円台前半と言われています。三百万円、どんなによくても四百万円に届かなかったら、これで農業を続けていけるのかというふうに思われるのは、ある意味当然だというふうに思います。

 そして、大臣に伺いますが、特に二年前、米価が相対価格が一万三千円を切ったときがありました。そのときにはほとんどの農家の方は赤字だという声を恐らく聞かれていると思うんですね。そして、大規模化すればするほど赤字幅が拡大してきた、そういった声を私は聞いてきたんですけれども、伺いますが、令和三年、どの程度の米作農家が赤字であったか把握をされていますでしょうか。

野村国務大臣 私ども参議院の方では、今朝、決算委員会の本会議があったんですが、そのときも、おたくの党だったのか別な党だったのか分かりませんが、稲作農家のほとんどが赤字だ、こういうお話をされました。決算でございますから特に米作のことを言う必要はなかったんでしょうけれども、そういう話が実は今日出てまいりまして、おかしいなと。

 我々も役所にいていろいろな統計の資料を見ておりますが、もう近藤先生も御覧になっていらっしゃると思いますけれども、一ヘクタール未満の経営体が全体の六割おられるんです。稲作農家の全体の六割は一ヘクタール未満でありまして、この方々は確かに赤字です。しかしながら、一ヘクタール以上の方々は黒字になっておりまして、したがいまして、ほとんどの方が赤字だというのは、全体の六割の、この一町歩、一ヘクタール以下の農家の皆さん方は赤字だというのは、これはもう統計的にも出ておりますので当然のことでありますが。

 したがって、我々は、生産面積の拡大なり、あるいはコストの減少なり、こういった所得が向上する傾向ということで、農地の集約化等を進めたり、経営規模の拡大をお勧めしたり、あるいは集落営農に参加する、こういう仕組みもつくってございまして、作付面積を拡大して生産性の向上を図る、こういったいろいろな取組をしていただきながら所得を高めていただきたい、かように思っております。

 したがって、統計の数字でいきますと、一ヘクタール未満の経営体につきましては確かに赤字だということは間違いございません、先生の御指摘のとおりでありますが、その方々が稲作農家の六割を占めている。だから、全体で見ますと何だか赤字農家ばかりだ、こんなふうに見えるはずですが、そうじゃなくて、やはり一ヘクタール以上の方々は黒字をちゃんと出しておられるということでございますので、そのことだけは御認識をいただきたいと思います。

近藤(和)委員 本当に冷たいと思うんですよ。

 この方は二十四ヘクタールです。確かに農林水産省のデータですと、二十から三十ヘクタールの生産コスト、資料の3を御覧いただければと思いますが、全平均だと確かに大臣がおっしゃるように一万四千七百五十八円なんですが、二十から三十ヘクタールの平均の作付の農家であれば一万七百八十六円です。二年前のお米の相対価格、一万二千八百四円、計算上では黒字なんですよね、間違いなく黒字です。

 そして、私は、この方だけではありません、話を聞いたのは。五十ヘクタール以上の方も百ヘクタール以上の方も聞きましたら、みんな赤字だったと言うんですよ。この声を、首をかしげるんじゃなくて、これが地元の、地域の声ですから。それで、五十ヘクタール以上のところは、生産コスト、九千二十円です。どう考えても黒字じゃないですか、計算上だけで考えれば。でも、実際は赤字だというところの、私は、大臣には、ギャップを埋めていただきたいと思うんです。農林水産省として頑張っているのは分かりますが、実態は赤字でやっていけない、規模が大きければ大きいほど赤字なんだというのが農家の方々の声なんです。これをしっかりと受け止めていただきたいと思います。

 そして、そうであれば、もし計算上黒字なのであれば、じゃ、どうして農家の数が減っているんですかと。百歩譲って、小さな農家が減って大きいところに集約されているのなら分かりますが、大きなところに集約されている中で、じゃ、本当にもうかっているのであれば、農地は減っていませんよね。農地は減っているじゃないですか、この十年間の間でも、二十年間の間でも。ですから、私は、表面上だけの計算で黒字のはず、でも、農家の方々は赤字だという声をちゃんと受け止めてほしいと思います。

 そして、その上で、先ほどから、食料・農業・農村基本法、二十年たっているからということで、改正していかなきゃいけないね、状況が変わってきたねという声がありますが、離農の理由が、二〇〇四年、それこそ十九年前に農林水産省で調べて以来、調べていないんですよ。離農する理由もちゃんと調べないで、いや、もうかっているから大丈夫ですよと。でも、離農も増えている、耕作面積も減っている、ここを私は埋めていかなきゃいけないと思います。

 ですから、今回、食料・農業・農村基本法の中間取りまとめの集中的な審議でもありますから、少なくとも、この基本法の中で、私も調べましたが、統計が大事だ、農家の方々の実情をちゃんと調べるべきだといった文言ですとかニュアンスが入っていません。やはり私は、せめて農家の方の実情をちゃんと我々として、農政としても寄り添っていくべきだといったことを意識をしていくべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

野村国務大臣 お答え申し上げたいと思いますが、今、離農のお話がございましたけれども、先ほどお話がちょっとありましたけれども、農林業センサスで、令和二年は八十五万二千人だったものが、平成二十七年と比較しまして三十万二千人が減少しております。確かに、おっしゃるように、離農が進んでいるというのは、これは数字上あるいはセンサス上も出ておりますが、ただ、平均年齢が七十一歳なんです。

 よく農家の高齢化が進んでとかと言われておりますけれども、私は、これは全部の農家の平均年齢を見るんじゃなくて、作目別、畜種別に見てみろと言って統計部長に出させました。そうしましたら、やはり、先ほど申し上げたように、稲作農家が一番高齢化が進んでおりまして、先ほど言いました七十一歳ですが、例えば私ども、あるいは今日見えております江藤先生のところの畜産でいきますと、養豚農家は平均年齢五十代です。それから施設園芸もやはり五十代。

 というようなことで、平均年齢がもう六十八歳だ九歳だとかという話がよく出てきて、もうお先真っ暗のような話になっておりますけれども、それは違うと。全体の農家を見ればそうかもしれないけれども、やはりこれは作目別、畜種別に言わないと判断を誤るよということを申し上げているところでございまして、今先生おっしゃいましたような、離農が進んでおる、我々は、日本農業法人協会なり稲作経営者会議の方々と話をしても、やはりやめていかれる方々は高齢化の問題だ、こういうふうにお話を伺っておりますので、したがって、一番の原因は高齢化だ、私は、所得の問題ではないのではないか、こんなふうに思います。

近藤(和)委員 二〇〇四年、十九年前の調査でも、主たる離農の理由が高齢化なんですよ。ここも含めて、環境が変わってきたというんですから、離農の理由も変わってきているかもしれないなということも、是非とも意識をしていただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

笹川委員長 次に、緑川貴士君。

緑川委員 皆様、お疲れさまでございます。

 現行の基本法との比較では、基本理念が四つというのは同じなんですけれども、一つ目の、食料の安定供給という現行の規定については、国民一人一人の食料安全保障という形で見直されました。国民の視点に立って、暮らしの実情を踏まえた対応ということを打ち出していますが、その国民の一人一人の理解につなげるためには、この新たな理念、この基本法の理念をいかに国民が納得する具体的な政策に落とし込めるかが大切であると思います。

 そこで、例えば、食品アクセスの改善については、トラックドライバーの不足など物流面の対応、あるいはフードバンク、子供食堂の支援などは確かに触れられているんですけれども、今は、経済的に困窮された世帯ということに加えて、より多くの国民にとっては、賃金の引上げであったり、あるいは累進課税を進めるなどの所得の再分配機能を高めるということであったり、セーフティーネットの充実、こうした格差の是正を進める経済対策、広い税制、こういう各種の施策も含めて、これも食品アクセスの改善と深く関わっていることであると思います。

 農業の発展というものがこれからももちろん基本理念の中核とはなりつつも、現行の基本理念以上に、新たな今回の基本理念というのは、ほかの省庁が関係する範囲も広がってきていると思います。国民の理解を深めるという観点からは、これまで以上に、関係する省庁と連携を取る、課題を共有しながらこの食料安全保障という方向性を農水省として共通の理解をしっかり求めていく、具体的な政策として協力をしながらアプローチを図っていくということが不可欠ではないかと思いますが、大臣、お考えはいかがでしょうか。

野村国務大臣 緑川委員にお答え申し上げますが、今お話にございましたように、六月二日に食料・農業・農村政策の新たな展開方向を決めさせていただきましたが、この中での大きなテーマは、円滑な食品アクセスの確保、これについては、関係省庁と連携を密にしながらということになっておりまして、一つは、やはり消費地での地域内物流については、地方自治体なりあるいはスーパー等と協力して、食品アクセスを確保するための仕組みが必要だ。いわば走るスーパーだとかというのが地方では、私の方でもあるんですけれども、そういったようなやり方だとか、あるいは、先ほど委員からもございましたように、フードバンクだとか子供食堂等への多様な食料の提供を進めやすくするための仕組みを検討していくとか、こういったことも非常に大事なことだろうと思っておりまして、そういった施策の方向性を取りまとめたところでございます。

 今後、展開方向につきましては、先ほど御指摘がございました、関係省庁と連携して必要な施策の具体化を進めてまいりたい、かように思っております。

緑川委員 食品アクセスの改善ということで、あわせて、平時の食料安全保障で重要なのが、やはり今日御議論ありますような適正な価格の形成ということで、こちらについてもお尋ねをしたいと思いますが、農産物、食品の生産コストに見合うような価格にしながらも、農家が再生産できる条件を整えるということが必要なんですが、他方で、今日お話があるような、最終的に価格転嫁されたものを買う消費者には過大な負担となることが懸念をされています。

 参考にしたエガリム法、これは農業国のフランスが作っているもので、これと異なるのは、日本は国土の制約もあってやはり生産者の努力だけではなかなか解決が難しい、それゆえに競争力が乏しくなってしまっている、こうした課題がある。そして、日本は輸入大国でもあります。こういう国内の価格をエガリム法のようなものに基づいて引き上げれば、やはり消費は安い輸入品にシフトしてしまうということに、日本の部分ではここは気をつけなければならないというふうに思っています。

 輸入に流れないように、消費段階で最終的に折り合える国内価格にするためには、やはり農業者、農業生産の効率化を図りながらも、直接支払いによる農家への所得補償をしっかりと行っていくということがまずは大前提であると思いますが、それだけでなく、今日御答弁をいただいているような、流通の合理化であったりとか、あるいは消費者への啓発、これも、生産から流通、消費に至るまでの対策ということも、予算措置そして立法措置も含めて、省庁が横断的に協力して取り組んでいかなければならない課題であるというふうに思いますが、国内農産物の再生産と、消費者に対する無理のない価格でしっかりと売り出すということを、このバランスを国としてどのように図っていかれるのか、お伺いしたいと思います。

野村国務大臣 お答え申し上げたいと思いますが、先ほども別な委員からも、こういったいわゆる価格の転嫁の問題の質問がございました。

 したがいまして、私ども、今回の基本法の中でも、また専門委員会の部会の中でも、適正な価格形成の仕組みというのをつくらなきゃいかぬのじゃないかという大変力強い御支援、御支援というよりも御指摘をいただきまして、そういったことを我々は今模索をしているところでございます。

 ただ、今日の新聞で出ておりましたように、今、先んじて酪農のところの適正価格の在り方について検討が進められるようになりました。ほかの作目はどうなのかというのはまだまだなんですが、酪農の方からまず先んじてやってみようということで、今朝の新聞にいろいろ載ってございましたので、御覧いただいているんじゃないかと思います。

 ただ、やはり、先ほど来お話がありますように、適正価格とは何ぞやということも一つあるし、それからもう一つは、生産者はそれでいいかもしれないけれども、では、消費者の皆さんはそれでいいのかということもありまして、いろいろな各方面のコンセンサスを得る仕組みをつくっていかなければいけませんので、この仕組みづくりをまず議論していこうじゃないかということで農水省の方では考えておりますので、適正取引を推進するための仕組みづくりがまず第一段階だろうと思います。

 今委員おっしゃいましたフランスのエガリム法なんかについても、まずは畜産からしかやっていません。ほかのものはやっておりませんので、一番やりやすかったのが畜産だったんだろうと思いますが、そういったことも我々も参考にしながら、どういった仕組みにしていけばいいのか、あるいはどういう方々の御意見を聞けばいいのか。当然、生産者の意見も聞かなきゃいけないし、消費者の意見も聞かなきゃならない、あるいは流通業者の皆さん方の意見も聞かなきゃいけない。こういったいろいろな方面の意見も聞きながら、取引の実態なり課題等を踏まえて是非構築をしてまいりたい、かように思っているところでございます。

緑川委員 大臣がおっしゃった価格交渉を含めた仕組みづくりということが非常に重要になってくるというふうに思います。

 今日御答弁をいただいているところでちょっと伺いたいんですが、生産、流通、販売など、各段階の関係者の価格交渉、統計に照らして、関係者の合意の下で作成したコスト指標を基に取引を進めていくということが考えられているそうなんですが、そもそも、基準となるコスト、例えば生産コストに関するデータを見ても、これは経営体の経営規模によって相当ばらつきがあります。

 このコスト、大きく違うわけなんですが、具体的には、やはり中小の経営体に生産コストが大きくかかってくるわけです。そういう中小の経営体に不利な指標とならないように、こういった配慮も含めて、どういうふうに価格交渉の仕組み、統計に基づいて定めていくというお考えなんでしょうか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 具体的な制度設計なりについてはこれからの議論でございますけれども、例えばフランスの例を御紹介いたしますと、フランスでは、専門職業間組織という、生産者あるいは流通といったフードチェーンの縦の関係者が集まった協議体がございまして、そこにいろいろなデータを持ち寄って、そこでコスト指標を決めるということになっております。

 したがいまして、どのデータを取るのかという議論はありますけれども、関係者が話し合った中で、これがいいだろうというような指標をつくる仕組みになっておりますので、そういった他国の仕組みなりも参考にしながら、これから我が国の実態に合った仕組みというものを検討してまいりたいと考えております。

緑川委員 畜産の部門からまずは様子を見るというところもありますし、こうした交渉の仕組みなども、議論が進むにつれて、やはりしっかり注視をして、また必要な対応を求めたいというふうに思っております。

 経営体についてお伺いをしたいと思います。

 基本理念の一つについて、生産性の高い経営体の育成ということが重視をされています。確かに、十ヘクタールを超えるような大規模経営体が増えて、担い手への農地集積も進んできましたけれども、日本の耕地面積全体を見ると、年間で二万ヘクタールから三万ヘクタールずつ毎年減り続けている状況は変わっていません。むしろ、この直近の五年間では、耕地面積の減少率というのは大きくなっているわけであります。

 担い手のいる地域は確かに耕地の減少率が抑えられているんですが、担い手が見つからない、中山間地域などでは特に耕地の減少が進んでおります。こういう地域は、条件不利地と呼ばれるにしても、農業生産額、耕地面積は日本の農業の四割を占めている重要な農地であります。大きな経営体だけではこれを維持できないということが、この二十年で見ても明らかになっています。

 検証部会では、農村だけでなく、農業生産においても、「多様な農業人材が一定の役割を果たす」と加えられたことは、これは前進であると思うんですけれども、記述が少ないですね。具体的な役割と支援の在り方というのが明確ではないというふうに思います。

 今、耕地の減少が進んでいるところというのは、集落としての機能を維持することが難しくなっている地域、こういう集落としての活動ができなくなれば、中山間地域等直接支払い、こういうお金も受け取れなくなるわけでありますから、食料基盤の農地を守って、引受手が今見つかっていない、大規模経営体ではやはりカバーできないところを含めて、農業生産のために、多様な農業人材、これの果たす役割は非常に重要であるというふうに思います。

 農村を活気づけて、失われつつある農地を回復させて、将来の農業生産にも関わっていく、貢献できるような、こんな農業政策と農村政策、しっかりとこれをつなげることができるような主体として、基本法は、これは別建てで中間取りまとめは書かれていますけれども、改めて、農村政策と農業政策をしっかりつないでいける多様な農業人材ということをしっかり位置づけていくべきではないかというふうに思いますが、お考えはいかがでしょうか。

野村国務大臣 今、緑川委員のおっしゃったお話は、この検討部会の中でも随分と議論をしていただきまして、先ほどおっしゃいましたように、農業政策の見直しの方向と農村政策の見直しの方向について両方記載してあるわけでありまして、また、その中でも、多様な農業人材と、それから生産基盤の維持強化が図られるような施策、こういったような農業の持続的な発展についても方向づけをしておりますが、ただ、農業を副業的に営む経営体などの多様な農業人材が一定の役割を果たしているということは、これはもう事実でありまして、集落なりあるいはそこの地域は、そういう方々も一緒になって農村が形作られているんだよということがこの検討部会の中でも出てまいりました。

 したがいまして、今後、これらを踏まえまして、多様な農業人材の政策上の位置づけについて、まだ今の段階では宙ぶらりんというか、まだ完全にコンクリートしたものはないです、考え方として。したがって、引き続きこのことについては、委員の指摘もございますので、検討を進めてまいりたいというふうに思っております。

緑川委員 新規就農支援もこれまで力を入れてきたわけですけれども、やはり、研修のシステムとか、農業機械の扱い方を含めて、なかなか実地では実は余り研修が、そういった具体的な中身が取り組まれていないというような産地も聞いておりますし、こういうところで多様な農業人材に対するどういった支援があるのか、研修も含めた、農業をしっかり支えていける人材なんだというメッセージをしっかりとこの中間取りまとめには入れていただきたいというふうに思っています。

 食料供給を担う農業生産については、中間取りまとめの中で気になるのは、「相当少ない経営体」というふうに書かれている、食料供給を担うのは本当に少ないんだということが何度もこの取りまとめの中には出てくることがやはり大変気になっております。一部の人による農業という印象ではなくて、農業に対する国民的な理解を広げるためには、より多くの人材が積極的に農業に関わっていけるという、やはり開かれたメッセージが欲しいところだというふうに思っています。

 複数の仕事に、例えばマルチワークという働き方は、季節や時間によって、農林業を手伝いながら、集落の見守り事業、あるいは報酬を得たり、企業の経営相談や動画の編集の仕事などを併せて行ったりというケースがありますけれども、その中で、特に自分に合う仕事に絞って農業に専念していくことも考えられると思いますし、集落に関わる多様な農業人材が大きな経営体に育って、結果として、将来の農業生産、食料供給を担う力にもなり得るというふうに思っています。

 農地の保全や生活支援などを行う組織として農水省が進めている農村RMOに、こういう人材の確保や、あるいはマルチワーカー、地域おこし協力隊、あるいは任期を終えて地域に定着した人、こうした方々がどういった形で関わっていくのか、有機的に一緒に取り組んでいけるということも考えられると思うんですが、最後に御答弁をお願いしたいと思います。

野村国務大臣 今御指摘のありましたように、担い手以外の多様な農業人材については具体的にどのような施策を講じていくのかという御質問だったと思いますが、今回取りまとめました食料・農業・農村政策の新たな展開方向で示されました大きな方向性を踏まえて、今後、施策の具体的な検討を進めてまいりたい、かように思っておりまして、まだコンクリートされておりません。

 したがって、今後の検討でまた皆さん方の御意見もお伺いしたいと思っております。

緑川委員 終わります。

笹川委員長 次に、青山大人君。

青山(大)委員 ありがとうございます。

 今日は、ふだんは私はほかの委員会なんですけれども、六月二日、三日の台風二号や梅雨前線の影響で私の地元茨城県で大きな被害がございまして、その被害の件で、大臣に要望も含めて質問を一点させていただきます。

 茨城県、日本で二番目に大きい霞ケ浦の湖岸は日本一のレンコンの産地でございまして、先ほどもほかの委員の答弁にあったように、レンコンというのは、大臣御存じのように、しっかり安定的な収入も確保できて、そして担い手も育っている、そして、今後、輸出にも力を入れようということで、非常に今、生産者が増えている作物でございます。

 一方で、私も初当選以来、レンコンの課題としましてネモグリセンチュウというのが出てきまして、そういう中で、農水省の方で、農薬、グランドオンコルを承認してもらったりですとか、そういったいろいろ政府の方でもサポートをしてもらっているんですけれども、今回、本当にこの時期に、長くレンコン農家をやっている方も言っていました、初めてだ、こんな時期にこんな豪雨で蓮田が全部やられてしまったと。

 私もその後現地を調査する中でまざまざとその被害状況を見てきたわけでございますけれども、正直、まだ出荷の時期ではないので、被害状況の全容はこれからにならないと分からないんですけれども、現在、地元の土浦市議会始め各議会、そして茨城県議会でも、その支援内容については議論中でございますが、お手元にこういった写真も配っていますけれども、こういった蓮田を掘るエンジンも水につかってしまったりとか、そんな状況でもございます。

 国としても何かしら支援策が私は必要だと考えますけれども、大臣のお考えをお伺いいたします。

平形政府参考人 お答えいたします。

 梅雨前線によります大雨ですとか台風二号による被害に遭われました全ての方々に心よりお見舞い申し上げます。

 その上で、農業関係の被害につきましては、茨城県を始め多くの地域において、レンコンを含む様々な農作物の冠水、倒伏、農地への土砂の流入、ハウスへの浸水等の被害があったというふうに報告を受けております。

 農林水産省におきましては、茨城県を始めとした全国の被災現場と連絡を密にいたしまして、被害状況を早期に把握した上で、県、市町村と連携して対応を検討していきたいというふうに考えております。

青山(大)委員 是非大臣の答弁も聞きたいんですけれども。

 今回の場合、なかなか激甚災害の指定とまではいかないような案件かなと思っていますけれども、やはり地元としては、そういった声もしっかり国会に届けてほしいというふうにも聞いております。

 大臣、何かお考え等ございましたら、御答弁の方をお願いいたします。

野村国務大臣 今局長の方から御答弁申し上げましたが、今回の大雨あるいはまた台風二号、これの被害につきましては、これは茨城だけではなくて、非常に、日本全国とまでは言いませんが、ほとんどの地域で被害が出ておりまして、今その被害額を取りまとめている最中でありまして、先ほどおっしゃいましたように、災害の規模がどのぐらいなのかというのを、激甚だとか、激特だとか、局激もあるわけですが、そういうところまで、まだどこまで行くのかちょっと分かりません。ですから、そういうのを取りまとめた上で、対応についても検討をして出したいと思っております。

 ただ、委員おっしゃいました、レンコンは初めてでございまして、元々水につかって、水の中で育つ作目でありますから、どういったような対策が打てるのか、ちょっと、初めての経験ですから、十分な検討をさせていただきたいと思います。

青山(大)委員 そうなんです。まさに今大臣おっしゃったように、初めてなんですよね。元々つかっているんです。全部、一面もう湖と一緒になってしまって、この写真にあるように、蓮田を掘るエンジン、モーターも全部つかっちゃったりとかですね。

 同じように、今まで、例えばそれぞれ線虫対策でそういった農薬を使ったところとかが全部一緒になっちゃったんですよね。そうすると、そういった防除対策なんかも面でしていかなきゃいけないなと思いますし、ところどころにピンクの卵があるじゃないですか。これは多分大臣も御存じと思うんですけれども、これはジャンボタニシ。これだけ大雨が降って全て流されているのに、このジャンボタニシだけは鮮やかに、むしろきれいに蓮田一面に残ってしまう。これが雨で唯一残った新芽をまた食べてしまうとか、こんな状況になっているんですよ。

 一時期、地元も、ジャンボタニシについて、面で農薬の散布なんかも検討されたんですけれども、やはり費用がかかってしまう。さすがに自分たち農家でできない。そんな状況の中で、やはり国として、そういった面でできるような制度、今はドローンなんかを使ったスマート農業への支援もございますけれども、そういったものも含めて、恐らくレンコンの質問をする議員は国会議員でもほとんどいないと思うんですよ。多分私の地元が日本一ですので、そういった意味で、大臣、レンコンの件、あとジャンボタニシの件、もし最後に一言あったら、是非何かお願いいたします。

笹川委員長 答弁は簡潔に。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 レンコンの栽培に係りますジャンボタニシ対策につきましては、これまで茨城県におきまして、薬剤散布、卵塊除去などの防除対策の指導が行われていると承知しております。

 発生拡大への対応といたしましては、農林水産省としても、適切な防除体系を実証する取組、この支援をする事業を措置しておりますし、また、農研機構を中心として新たな防除技術の開発のための研究を実施しておりまして、令和四年度から、民間事業者によります一斉捕獲技術の製品の販売も開始されたということでございます。

 引き続き、茨城県と連携いたしまして、防除対策についての指導助言を徹底してまいりたいと考えております。

青山(大)委員 最後、一言、大臣、何かございましたら、よろしくお願いいたします。

笹川委員長 時間が経過しておりますので、終了してください。

青山(大)委員 そうですか。分かりました。

 終わります。どうもありがとうございました。

笹川委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 これまでも基本法については何度か御質問してまいりましたが、今日はもう大臣とですね。

 私は、これまでの委員会質疑では、これはもう大臣のお手を煩わす必要はないんじゃないかということについては、大臣にお休みをいただいて、局長の皆様と討論をしてまいりましたが、今日は、事務方から、できればもうちょっと副大臣や政務官にもと言われましたが、今日は勝負デーということで、全部大臣と……(野村国務大臣「いや、おりますから」と呼ぶ)いやいや、大臣とお話をさせていただきたい、こう思います。もちろん細かいことは事務方で結構でありますが。

 それで、基本法ですから、本当にこれは農業政策の根本であります。

 大臣、ちょっと通告外なんですが、一つちょっと気になっていることがありまして、やはり岸田内閣というのは、本当に、安倍内閣、菅内閣から比べて、新しい資本主義とおっしゃっていることもあって、大分雰囲気が変わってきています。農業政策についても、安倍政権、菅政権でやってこられた農業政策が、岸田内閣そして野村大臣になって大きく変わっているように思います。

 大臣が着任されたときに、いろいろ私も耳に、農水省の職員の皆様が歓迎されている、大臣の着任を、そういうのをちょっと仄聞しました。やはりそれは、安倍さん、菅さんのときの農業改革が、農政改革が激し過ぎてちょっとしんどかった、ついては、野村大臣になって変わるということを歓迎しているのかなと私は勝手に思っていたわけでありますが、ちょっと話を基本法に寄せると、まさに安倍政権でやってこられた、当時局長とか次官として安倍政権の農業改革、農政改革を支えられた奥原正明さん、当時の事務次官、局長から事務次官をなされて、まさに奥原さんが安倍政権の農政改革、農業改革を支えてこられたわけです。

 その奥原さんが、「農林水産法研究」という、何か分からないけれども、研究書があって、それの二〇二三年四月付で、「基本法の見直しを憂慮する」というのを出されているんです。

 大臣、これを見られたことがなければ、それこそ局長でもいいんですけれども、奥原さんは何と書いているかというと、いや、いいですよ、別にこの文書を御存じなくても。聞いていますよね、奥原さんの活動は。奥原さんはこう書いているんですよ。驚きますよね。

 今回の大臣が取り組まれている基本法の改正については、こう書いております。的確な問題意識を欠いた、要は、的確な問題意識を欠いているんだと。安易で拙速な基本法見直しが、逆に今の基本法の生産性向上を目指した政策方針を否定するようなものになることを深く憂慮すると。

 いや、すごいですよ。元次官ですよ。すごいなあと思って。

 それから、更に言うと、何か凍りついていますね、大丈夫ですか。(発言する者あり)大丈夫。あと、こういうことも書いていますね。

 ウクライナ侵攻後の状況は、現行基本法、今の基本法に基づく政策を更に加速的に推進する、加速的な推進を求めるものではあっても、基本法の政策方針の見直しを必要とするようなものではないんだと。

 要は、今の基本法を変えるべきではなくて、今の基本法の精神を早く個別法でちゃんとやってくれと彼は言っているわけです。

 制定から二十年経過したからという理由で基本法の見直しを提起すること自体が問題であり、元次官ですよ、歴史認識を欠いた迷走した議論の結果、大臣のやっている仕事を歴史認識を欠いた迷走した議論の結果なんだと言っているわけです。

 私が言っているんじゃないですから。私は大臣派ですから。私は野村大臣派ですから。奥原さんが言っているんですよ。

 農業の生産性の向上により食料の安定供給を目指す現行基本法の考え方が後退することを深く憂慮している。

 ちょっと感想をお願いします。

野村国務大臣 私は、その奥原元事務次官が記述されたものを読んでいませんので、どういったような論評をした方がいいのか分かりませんが、ただ、一つだけ違うのは、やはり、奥原さんが事務次官なり、あるいは基本法の精神に基づいて農政を進められた、今の時期とその頃とは全くその状況は変化しているというのは、先ほど来お話がずっと出ておりますような、気象変動のことだとか、あるいは農村の人口の減少だとか、いろいろなことが、環境が変わってきているというふうに私は思っております。

 したがって、これはターニングポイントだということを私はずっと役所の皆さん方には言ってきて、ここで変えていかなければ、日本の農業は、将来、子供たちにひもじい思いをさせてしまうよということをずっと言ってきました。これは前の選挙のときからもそうでありますが、そのことを私は農水大臣になって一番最初に幹部職員の皆さん方に、今年をターニングポイントにしようよということを申し上げて、今、こうして基本法の見直しに取り組んでいるところでございます。

足立委員 奥原さんは、その文書の中でこうおっしゃっています。

 要は、今の基本法を作るのは、すごい、六年かかってやったんだと。そして、見直し、要は、一番最初の基本法から今の基本法、二つ目の基本法ですね、現在の基本法に変える、その着手をしたのは一九九三年、まさにガット・ウルグアイ・ラウンド農業交渉が決着して、そしてまた、大凶作が重なった大変なときに議論が始まった。そして、六年かけて一九九九年に新しい基本法ができた。ところが、その基本法を実際にやるのは個別の法律を作らなあかん、その個別の法律を作るのは、それはそれで大変だったんだと。一九九九年に新しい基本法ができたが、その方向に沿った農地法が抜本改正されたのはずっと後で二〇〇九年なんだ、農地バンク法は二〇一三年、そして、農協改革に至っては二〇一五年。その後、多分、奥原さんが主導して、翌年の二〇一六年には農業競争力強化プログラムを作って云々ということが書いてあるわけです。

 まさに始まったばかりじゃないか、始まったばかりであるにもかかわらず戻るんかいと。いやいや、僕は野村派ですよ。僕は野村派ですけれども、奥原さんはそう言っている。

 私は一理あると思うので、今日はその点について質問をさせていただきたいと思うわけであります。

 今日議論になっている食料安全保障。食料安全保障って何だというと、私はもう再三ここでも申し上げましたが、これは経済安全保障の一環だと思います。食料だから別だなんということはあり得ません。だからこそ、今日もどなたかおっしゃっていましたが、私はずっとここで言っているのは、経済安全保障なんだからアメリカやカナダや豪州からの輸入を心配するなと言っているんです。そんなことを言ったら半導体はどうするんですか。だから、一国主義ではなくて、友好国、同盟国としっかりとした体制をつくる。

 申し上げたいことは、食料安全保障といっても経済安全保障と同じ文脈でアプローチすべきなのであるから、開放経済下にあって、国民の生活、食料を守るためには、それは何か内向きではなくて、やはりそれは、しっかりと生産性を上げることと輸出を拡大することだ、これをしておくことがいかに食料安全保障にプラスかということを彼は強く訴えていて、だから今のままでいいんだと。今のままというのは、一九九九年、今の基本法に基づいた生産性向上と輸出競争力の向上が大事なんだと言っている。

 ああ、なるほどな、僕は野村派だけれども一理あるな、こう思うわけであります。

 ところが、今日るるあったように、大臣が今何をされているかといったら、需要に応じた生産ですよ。米とか乳製品とか、輸出したらいいんだけれども、なぜか知らないけれども、アメリカとかドイツが急速に、オランダとか、輸出を伸ばしているのに、日本だけこんな、日本が低迷しているのは所得だけじゃないんです。可処分所得だけじゃないんです、日本が低迷しているのは。輸出が低迷しているんです、農業の。

 だから、彼は、輸出をせなあかんのに何を生産抑制しているんだといって大批判をされているわけですよ。一理あります。これにどう反論しますか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 まず、私はお米ですとかの担当の方なんですけれども、生産を抑制しているという御指摘なんですけれども、行政による生産数量のお米の配分というのは平成三十年から廃止しておりまして、もう今は、現地、それぞれの方が需給の見通しですとか米価の状況を見ながら生産をされている。一方で、主食用米が作れないところについては、麦ですとか大豆ですとか、そういっただけではなく、今御指摘のありました輸出用を含む新市場の開拓に向けた米作りというものに対しての転換の支援を行っております。需要に応じた生産、販売、これがないと生産が続かないということで、このように進めているところでございます。

 一方で、いや、輸出が思ったほど、そんなに伸びていないじゃないかという御指摘もあるかと思いますけれども、これは、余ったものをそのまま海外に持っていけるかというと、それほど実は、やってみても容易ではない。マーケットインの発想に基づいて、新たな市場を開拓しながら、オール・ジャパンでプロモーションを強化しながら、やっと実績がかなり上がってきたところであります。そのように、需要を捉まえながら輸出についても拡大をしていく。

 それで、どうしても、輸出について拡大する一方で、主食用の需要がそれ以上の速さで減退しておりますので、輸出に向けられないお米につきましては、需要のある麦ですとか大豆ですとか、そういった生産、この生産性を高めているということを同時に行っているところでございます。

足立委員 いや、もう全然分からないですね。

 今おっしゃった、需要に応じた生産は仕方なくやっているんですか。需要に応じた生産というのは一大政策として今打ち出されているじゃないですか。そうじゃなくて、需要に応じて生産を調整するのではなくて、輸出したらいいじゃないかと奥原さんは言っているわけです。

 もうちょっと、細かいことはいいから、要は、今の基本法の精神には生産を調整するなんということは書いていないですよね。それは輸出を拡大しろと書いてあるんですよ。そこはこれからも、今回の基本法の見直しにおいても変わらないということでいいですか。

杉中政府参考人 お答え申し上げます。

 基本法検証部会において様々な議論を申し上げましたけれども、例えば、現行基本法におきましては、委員御指摘の、輸出を通じて国内の食料生産基盤を確保していくというような考え方というのは含まれていないと。また、この前政策でやった環境と調和するみどりのようなものもありませんし、生産性向上についても、近年ブレークスルーとしてやられたスマート農業の活用、そういったものが含まれていないという実態でございまして、そういった、この二十年間に新たに重視されていた輸出であるとかスマート農業、そういう施策を踏まえた形で、より未来に適したような基本法に見直していくという議論がございましたところでございますので、更に輸出を促進していくためにも、こういった基本的な政策の体系の見直しが必要であるというふうに考えております。

足立委員 ちょっとよく分からないので更問いをすると、さっきおっしゃった需要に応じた生産ということで、米、乳製品については需要が減退しているわけですよ。そういう中で、水田の畑地化というのを進めていますね。そして、小麦や大豆を作ってくれ、こうなっていると思うんですが、そこで、皆さんがおっしゃっている小麦とか大豆を、さっき言ったように、どこから輸入しているんですか。小麦はアメリカとカナダと豪州から輸入しているんですよ。何でそれを拡大する必要があるんですか。

 大事なことは、ちゃんと生産基盤がある米を、国内の需要が落ちてきているんだったら輸出したらいいんですよと奥原さんは言っている。いや、僕は野村派ですけれどもね。でも、奥原さんはそうとも言っているように読める。

 じゃ、役所に、小麦や大豆を作るんだと言うけれども、その小麦は何で作るのと言ったら、いや、アメリカやカナダや豪州も不作のリスクがあるんです、こう言うわけですよ。分かった、じゃ、仮に不作のリスクがある、それに対応するために、今、小麦で一七%の自給率なのかな、それを何%にしようとしているんですか。即答できる。

平形政府参考人 足立先生、ちょっとしっかり申し上げますが、今一七%というのは、令和四年の小麦の自給率は一七%なんですが、実は小麦はここ五年ほど非常に作付面積も生産量も増えてまいりました。

 今の基本計画を作っておりました令和二年のときに目標にしましたのは、平成三十年の小麦七十六万トンということで、自給率一二%でした。これを、令和十二年に百八万トン、一九%にするという目標を立てました。現在、令和三年で百九・七万トン、実はこの十二年の目標を上回っております。これが自給率一七%というふうになっておりますので、ここ五年ほどを見ますと、実は小麦というのは計画以上に生産が伸びている、そういう状態だと思っています。

足立委員 いや、いいんですよ。一二とか一七とか一九とか、何か、そういうことなんですかね、大臣、これは。こうやって気合を入れて安全保障だと言って、いや、不作のリスクが出てくる、審議会の資料を見たら、いかに小麦とかの値段が上がっているとか、あるいは世界的な需給が逼迫しているとか、そういうことを言うんだけれども、では、日本で自給するパーセンテージはどうするんですかといったら、一七とか一九とかいって、その先はないわけでしょう、まだ目標は。一九の先に目標はありますか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 令和二年に、十年後ということで一九を目標として設定しておりまして、まだその途中でございますので、その先の目標というのはございません。

足立委員 とにかく、奥原さんはそう言っているんですね。

 さて、その奥原元次官がおっしゃっているのは、構造改革を続けてくれと言っているわけです。そのときに、いわゆる効安経営、効率的かつ安定的な経営体ということで、まさにそういう効安経営をこれまで基本法に基づいて推進をしてきたんだけれども、今回の基本法の議論の中で新しく、農地の受皿となる経営体という新しい概念が生まれています。これは効安経営の中ですか、外ですか。

村井政府参考人 お答えいたします。

 今回の取りまとめられた食料・農業・農村政策の新たな展開方向におきまして、今委員御指摘の、受皿となる経営体、それから付加価値向上を目指す経営体という概念を記載、記述させていただいておりますけれども、これは効率的かつ安定的な経営体を指している概念であるというふうに御理解をいただきたいと思います。

足立委員 奥原さんは、奥原さん、奥原さんと言って申し訳ないけれども、元次官ですからね。それも、安倍政権、菅政権で構造改革を支えてきた、農林水産省の柱として頑張ってこられた方が、そこについてやはり後退じゃないかと言っているわけですね。

 今あったように、私も事前に確認したら、いやいや、それは効安経営の一部なんです、だからそこはそういうことですという御説明があったんですが、一方で、何か、経営力のある専業の農家をどんどん振興していって、生産性を向上して輸出を拡大していくということから若干方向転換するかのように、兼業農家を前に出すような議論が、ちょっと今手元にはあれですが、人材のとか、要は、農村を維持するという観点で兼業農家の話が出てきますが、これはどういうことですかというのをちょっと答えてほしいんですが。兼業農家をどう位置づけるんですか。それは、今までの基本法ではちゃんと位置づけられていなかったと思うんですが、新しい基本法の中で位置づけるんでしょうか。ちょっとその辺、兼業農家の扱いを教えてほしいと思います。

村井政府参考人 お答えいたします。

 審議会の基本法検証部会の中間取りまとめにおきましては、農業を副業的に営む経営体など多様な農業人材については、農地の受皿となる経営体や付加価値向上を目指す経営体とは別のものとして記載をされております。

 食料・農業・農村政策の新たな基本方向においては、先ほども申しましたように、農地の受皿となる経営体と付加価値向上を目指す経営体を効率的かつ安定的な経営体と記載をしておりますので、農業を副業的に営む経営体は効率的かつ安定的な農業経営には含まれていないというふうに理解をしておりますけれども、一方で、実際の農業の現場を見れば、直ちに担い手だけで全ての農地を適正に利用できるという実態にはなく、やはり副業的に営む経営体が、多様な農業人材、農地の保全なり、そういったことに一定の役割を果たしているというふうに認識をしております。

 そういった観点から、こういった副業的な農業を、副業的に営む経営体をどういうふうに位置づけるか、これは今後の具体的な検討になるというふうに考えております。

足立委員 ちょっと、ごめんなさい、通告をちゃんとしているはずなんだけれども、ぐだぐだになってきたんだけれども。

 効安経営の議論と多様な人材の活用による農村の機能の確保というのは別じゃないの。ちょっと、事務方、大丈夫。

 要は、効安経営については、受皿となる経営体と付加価値向上を目指す経営体、こういうことで整理をされていて、兼業農家はどうなのと私が事前に確認したら、それは効安経営とは別の軸で、多様な人材の活用による農村の機能を確保するために兼業農家等を位置づけているのであると。例えばこの中間取りまとめで言うと四十五ページとか三十五ページなんですが。もうやめておこうか。ちょっとややこしいからやめておこう。

 まあ、いいんだ。とにかく、心配しているんですよ。心配している。大臣、ポイントは、私が理解するところの奥原さんが心配しているのは、要は、せっかく、この二十年、あるいは基本法を作ってから最初のうちはなかなか個別法がなくて、さっき申し上げたように、まさに安倍政権になってから様々な法律を作った、いよいよこれを本格的に機能させていくタイミングで、なぜ基本法を直すのか。いや、直してもいいんですよ。アップデート、バージョンアップするのならいいんだけれども、幾つかの点で先祖返りというか、構造改革という点では先祖返りするのではないかという懸念を彼は持っている。持っていますよね。

 要は、先祖返りするんですか、しないんですかというのをちょっと確認したいんですよ。もうちょっとすぱんといかないかな、すぱんと。

 要は、だって、あれでしょう、新しい資本主義なんだから、先祖返りすると言ったらいいんですよ。岸田内閣は明らかに、安倍内閣がやってきた今の基本法に基づく構造改革路線をひっくり返そうとしているんですよ。そうならそうだと言ってほしいんです、次の議論につなげるために。今日は議論の入口だからね。

 だから、安倍政権が進めてきた農政改革、構造改革は、更にそれを先に推し進めるのではなくて、軌道をちょっと今直そうとしているんだ、そのときに出てきているのが、農地の受皿となる経営体という概念や、あるいはさっきの農村の維持ということで出てきている兼業農家の位置づけとかなんだ、あるいは需要に応じた生産なんだ、こう私は受け止めているんですが、どうですか。

村井政府参考人 お答えいたします。

 少し繰り返しになる部分があるかと思いますけれども、委員御指摘のように、現行の食料・農業・農村基本法におきましては、「効率的かつ安定的な農業経営を育成し、これらの農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を確立するため、」「必要な施策を講ずるものとする。」と規定されております。

 これまで、経営規模が大きいか小さいかや、家族経営か法人経営かを問わずに、農業所得で生計を立てる農業者を担い手として育成、支援をしてきたということでございます。

 その結果、現状、中小・家族経営を含めて、担い手が各地で育ってきている、多くの品目で担い手が農業生産の相当部分を担う構造が実現してきているというふうに考えております。

 今回取りまとめられた食料・農業・農村政策の新たな展開方向におきましては、今後、人口減少が避けられない中で生産水準を維持するためには、受皿となる経営体と付加価値向上を目指す経営体、すなわち効率的かつ安定的な経営体を育成、確保すると記載をされております。

 したがいまして、従来の考え方と変わりはないというふうに認識をしております。

足立委員 大臣も、せっかくだから、変わりないというところだけ復唱いただけないですか。いやいや、本当に。

 これはだから、要は、従来の基本法に基づき、そして、安倍政権で、先ほど御紹介したような累次の、農協改革とか農地バンクとか、いろいろなものをやってきた。その法律はできたばかりなんですよ。できたばかりで、今、それをどうやってより実効ある形で執行していくかということでみんな頑張っているわけです。その安倍内閣の構造改革路線は変わらない、今変わらないと言った。

 大臣からも、是非、変わらないとお願いできないですか。

野村国務大臣 もう時間がありませんのでお答え申し上げますが、またこれはゆっくりと、基本法を来年国会に提出しますので、その時点でまたお話をさせていただきたいと思いますが、今、村井局長が答えましたように、受皿となる経営体、それからもう一つは付加価値向上を目指す経営体、それから効率的かつ安定的な経営体を育成、確保するというふうに今の基本的な方向では書いてございます。したがいまして、そのことだけで取り上げますと、従来の考え方とは変わっておりませんということでございます。

 ですから、今委員がおっしゃいましたような、いろいろな今までの政策がございます。例えば農地バンク等につきましてはすばらしい仕組みだと思っておりますから、これらについてはどんどん進めていかなきゃいかぬだろうと思っておりますし、それを百八十度違う方向に持っていくという考え方ではございませんで、我々が考えてきましたのは、やはり外国依存、農産物にしても農業生産資材にしても、この依存を、過度な依存からの脱却を図らなきゃいかぬのじゃないか、ここにやはり基軸を置きながら考えていこうということでございます。

 例えば、小麦の話がさっき出ましたけれども、生産資材なんかにしましても、日本は、肥料の三要素の窒素、リン酸、カリ、これは全て原料は外国からの輸入であります。ですから、そういったものの過度な輸入というものから脱却していかないと、一番いい例がリンでありまして、中国から九割輸入していたものが、今年になってそれが六割になってしまったと。慌てて国の方も、あるいはまた商社の方も、ヨーロッパじゃなくてアフリカの方から輸入をしてきたということであります。

 そういう意味では、どうした方がいいのかというのは、今申し上げましたように、できるだけそういうものを脱却していこうじゃないかということでみんなに取り組んでもらっているところでございます。

足立委員 おつき合いいただいてありがとうございました。

 もう時間が来ますので終わりますが、この議論は結局、まさに、元々昔の基本法があって、そして新しい基本法ができた。そして様々な構造改革を進めてきた。そのきっかけはガット・ウルグアイ・ラウンドであり、そしてその後はTPPでしたよね、TPP対策、これで様々なお金も流れた、税金も使いました。そして、いよいよ今回、食料安全保障という新しい旗を掲げて、第三の旗ですよ。ガット・ウルグアイ・ラウンド、そしてTPP、次は食料安全保障、三つ目の旗なんだけれども、大事なことは、それぞれ、同じ、大きな開放経済下でどうやって日本国民の食料を安定的に確保していくかということなんだから、そういう観点でいうと本当は方向性は変わらないはずなんだけれども、この食料安全保障という旗にかこつけて、これを隠れみのにして、何か安倍政権で実現しようとしてきたことが逆噴射するようなことがないように、私は野村派ですよ、しかし、奥原さんがそういう懸念を示されていますので、そういう点も含めて、今日を皮切りに、国会は終わっちゃいますが、また臨時国会も含めて、来年の通常国会に向けてしっかり議論をさせていただきたいと思います。

 本日は大変ありがとうございました。

笹川委員長 次に、長友慎治君。

長友委員 国民民主党の長友慎治です。

 本日は、基本法改正についての集中の審議でございますが、私は、地元の酪農家の方から、野村大臣に是非質問をしていただきたいということで声を預かっておりますので、冒頭、二、三、大臣に御質問させていただきたいと思っております。

 酪農を取り巻く状況は、飼料費、動力光熱費を始めとする経費が昨今の物価高により大幅に増加して、大変苦しい状況であるということはもう御承知のとおりでございます。

 私が話を聞いた酪農家の農業所得は、令和二年度の実績に比べて、令和四年度は、農業所得、四分の一に減少をしておりました。約百三十万円。これは周りの酪農家の平均だというふうにおっしゃっていました。

 先ほど近藤委員からある米作農家さんの収支もありました。米作農家さんは令和二年度に比較して約三分の一の落ち込みでしたけれども、酪農家さんはそれ以上ということが分かるかなと思います。

 この方は、恐らく酪農の仲間の中で離農者が出るのも時間の問題ということで、大変仲間のことを心配されていましたが、そこでこんな話をお聞きしたんですね。

 これは宮崎の場合でございますので、宮崎の酪農家はJA宮崎経済連を通しまして九州生乳販連に生乳販売を委託して、それから九州生乳販連が乳業メーカーと価格交渉をし、生乳を提供して、その乳業メーカーが牛乳を始めとする乳製品を作っているわけでございます。

 牛乳やチーズ、バター、ヨーグルト商品などの在庫がだぶつく時期があるということでございました。需要が落ちるときです。年末や年度末に九州生乳販連から買取りを求められるそうなんですね、生産者の皆様が。買い取ったものは近所の方に上げたり配ったりすることもしてあげたいとは思うものの、それは本来であれば消費者の皆様に買っていただくものでございますので、それもできなくて、自分たちで絞った乳でできた製品を自分たちで買い取らないといけないということが大変やるせなくて、むなしい気持ちになるというふうにおっしゃっておりました。

 これは、九州生乳販連に限らず、全国にある十の指定生乳生産者団体でもしかしたら行われている慣習なのかな、慣例なのかなというふうに推察をしているところなんですけれども、この指定生乳生産者団体は農林水産大臣が指定していることでございます。

 このように、生産者にも乳製品を買い取っていただいているという実態について把握しているのか、伺いたいと思います。

野村国務大臣 長友委員のこういう御質問があるということで、私も地元の酪農協に電話してみました。そうしたら、そんなことはしていないと。これは酪農協の参事がそう言っていました、昨日電話をかけたばかりでありますが。それで、どうしているんだと言ったら、酪農家とそれから農協が積み立てる、それで買取りをした、そして、あとはもうそれを酪農家の皆さん方に配付した、宮崎でもそういうことをしたとは聞いていないよという話でしたが、どこまで、これは隣の県の話ですから分からないんですが、少なくとも私の鹿児島では、そういうふうな、農家に割り当てて買わせたということはありません。

 ちなみに、私のことをちょっと申し上げますと、私が中央会にいる頃は、鹿児島もミカンが相当できたものですから、それを熊本果実連に頼んでジュースにして、そして一人十箱ずつとか、ジュースの缶の十箱入りを買わされたものでした。我々も買わされた。あるいは、豚肉が余ってくれば、豚肉よりもブロイラーだったですね、ブロイラーの胸肉が余って売れないので職員みんな買ってくれといって割当てがあった。

 それは、私も給料をもらっていましたから、そうだよな、しようがないよな、農家の助けになるのならばと思って買いまして、余りぶつぶつは言いませんでしたが、農家の皆さんも、そんなに、破棄するとか、あるいはその乳製品を買って云々という話は余り私は聞かなかったんですけれども、ただ、長友先生のところは、そういうお声が聞こえてきたのなら事実なんだろうと思いますけれども。

長友委員 大臣のお知り合いの情報ということで、貴重な情報だったと思います。

 事前のレクでは、業界として消費を盛り上げていこうということで、別に生産者に限らず、業界団体や役所であったり、いろいろ御協力をいただけるところで購買運動や消費拡大、消費運動というのはやっていることはあるということではあったんですね。

 その中で、先ほども大臣から、買わされたということもあったという話もありましたけれども、応援していくのは私も賛成なんです。ただ、もし生産者にまで買取りをという話が行くとなると、これは下請法にもひっかかるような話じゃないかなと私はちょっと心配をしております。これは優越的地位の濫用というにおいがしないわけでもないわけなんですね。もしこれが、これまで、今まで、結構昔からあるような慣習であれば、好ましくないなというふうに感じるわけです。

 もちろん、全国の指定団体が乳業メーカーに対して価格交渉を、交渉力を強化するという意味で、業界努力として牛乳の消費や乳製品の消費運動、購買運動を展開するということは、適正な乳価水準を実現するために必要な部分もあるかと思います。団体とか職員の皆様が購買運動を応援するということであれば、私も大いに結構だと思いますし、私たち国会議員も貢献すべきだというふうに思います。しかし、私が話を聞いた生産者の言葉をそのまま受け止めると、自分たちが買っているんだと。購入しないといけないというのは、生産者自身が買い上げないといけないというのでは、決して健全とは言えないなというふうに思うわけでございます。

 生産者さんたちは、気持ちとしてはかなり複雑だと言っていました。本来は消費者の皆さんにスーパーやコンビニで購入いただいて少しでも売上げにつなげたいという商品でございますので、それがゆえに、御近所の方々にどうぞと無料で配るわけにもいかず、上げるわけにもいかず、自宅の冷蔵庫にたくさんの乳製品がたまる時期がある、そういうことをおっしゃっていましたので、こういうことが本当に現場で起きているということが全国的にももしあれば、調査をしていただきたいなと。そういうことがあれば、生産者に買い取ってもらうんじゃなくて、国で買い取る、そして活用すべきだと思いますので、大臣、この点はお留め置きいただきたいなと思っております。

 これは牛乳に限った話ではないと思うんですね。先ほども大臣からありました、豚肉だったり、いろいろ、ミカンの話もありました。これは例えば、今、日本人は魚の消費も減っております。そうすると漁師さんが困るわけですよね。今、みどりの食料システム戦略で有機野菜の生産者を増やそうとしていますけれども、安定供給先がなくてオーガニック農家がなかなか増えないよねということもあります。

 米の消費が減って米農家さんが大変だねといったときに、国民全員でその意識を共有して、自分事として消費拡大に国全体で取り組むというのがあるべき姿だと思いますし、同じ仲間の生産者の日本人を、その人たちに負担をさせるというのは私は許されることではないと思いますので、国民運動として、それぞれの課題を解決するために、こういうことはオープンにして、国民全体で消費を伸ばすということに取り組んでいただきたいと思います。

 ここでちょっと御提案がありまして、例えば、農水省では料理マスターズという料理人の顕彰制度があります。その目的として、日本の食や食材、食文化のすばらしさや奥深さ、その魅力に誇りとこだわりを持ち続け、生産者や食品企業等と協働して地産地消や食文化の普及の取組に尽力した料理人を国が顕彰し、更なる取組と料理人相互の研さんを促進することにより、日本の農林水産業と食品産業の発展を図るというふうに目的として書かれていました。

 今時点で全国に百人ぐらいの料理マスターズに選ばれた料理人さんがいらっしゃいますけれども、例えば、この方々と連携し、牛乳を始め、米、魚、オーガニックの野菜などの消費拡大に取り組んだりと、こういう国民運動の先頭に立っていただくことをやるべきではないかというふうに思います。

 大臣、是非御所見を伺いたいと思います。

 生産者の方々に自分が育てたものを買い取らせるというようなことがもしあるとしたら、それをやめていただいて、オープンに、国全体で消費拡大、購買運動を展開していただくということを是非約束いただきたいのですが、大臣、いかがでしょうか。

野村国務大臣 酪農協の組織の中では、六月を牛乳月間として、消費拡大の運動を進めておられます。ですから、各県ともそういう形で指定団体の皆さん方も牛乳の消費拡大に向けて取り組んでおられるということは私どもも聞いておりますし、また見ております。ですから、そういう意味で、買ってくれとか、生産者の方々にもある程度消費拡大に協力してくれ、押しつけということじゃなくて、自分たちの生産したものだからできるだけ生産者の方々も御協力をという、私はそういう話で指定団体の方も卸しているというふうに思います。

 ですから、ちょっと調べてみましたら、これはもう私とかあるいはまた委員の九州の指定団体、それから北海道も多分そうだと思いますが、ほかのところはむしろ飲用の生乳が足らないぐらいですからそういった加工用に回すという余裕はないと思います。ですから、あるとするならば九州地区とそれから北海道だけだ、こんなふうに思いますので、日本全国そういうことが行われているとは理解しておりません。

長友委員 大臣、ありがとうございます。

 もう一点、酪農家さんから、これは前向きな話です。

 酪農家さんは、インバウンド需要の力強い復活を切望されていました。欧米人や海外からのお客さんがホテルに泊まれば朝食で牛乳が飲まれるということで、そこから注文が入るそうなんですね。海外の方々が牛乳を飲んでくださることに期待を持っているというふうに話されていましたので、農水省としても、酪農家の皆さんのために、インバウンドを増やすための施策を打つことを是非考えていただきたいなというふうに思うわけです。

 もう一つは、ロングライフ牛乳、LL牛乳の増産を政府として後押しをしてほしいという声も聞かれました。ロングライフ牛乳は、常温で保存できて、賞味期限が三か月から六か月ほどもつというものですから、ロングライフ牛乳の可能性、更なる需要増しに酪農家は期待をしております。

 そこで、伺いますが、更なるロングライフ牛乳の増産、また輸出促進に取り組むことはできないのかにつきまして御答弁をいただきたいと思います。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 国内人口の減少が見込まれる中で、牛乳・乳製品の需要拡大を図るためには輸出が重要でございます。牛乳・乳製品の令和四年の輸出実績は、対前年比三一%増の約三百二十億円となりまして、過去最高でございます。

 特に、ロングライフ牛乳につきましては、日本産ブランドの浸透などによりまして、香港や台湾を中心としたアジア諸国・地域への輸出が増加をしてございます。

 ロングライフ牛乳を含めた牛乳・乳製品は輸出重点品目でございまして、輸出目標の達成に向けまして、コンソーシアムにおけるプロモーションですとか、輸出先国の求める水準を満たす乳業施設の整備ですとか、あるいは輸出先国における輸入規制の緩和、撤廃の働きかけなど、しっかりと輸出促進を図っていきたいと思います。

 また、直近の不需要期における乳製品の指定団体による乳製品の購買奨励の事例でございますが、ホクレンと九州がやっているというふうに聞いてございます。あとは、ちょっとこれは違う形ですが、北陸と東海は助成がある形で製品の販売を案内をしているということもあるというふうに聞いてございます。

長友委員 購買奨励のお話までフォローしていただきましてありがとうございます。

 現場からの声を私は届けて代弁させていただいたわけですけれども、酪農家の皆様は大変奮闘していただいていますので、頑張っていただいていますので、是非また前向きにフォローいただきたいと思います。

 最後、残した時間で一点だけ御質問させていただきます。

 CPTPPの締結によりまして、例外なき関税撤廃の流れが加速したというふうに理解しております。その結果として、安価な農産物輸入の増加に押されまして、担い手や農地の減少に歯止めがかかりません。農業産出額、生産農業所得、共にに現行基本法の制定時よりも低迷をしているという実態でございます。最大の生産基盤である農地面積はこの半世紀で約四分の三に減少しました。農業の就業者数は約六分の一にまで減少しています。その最大の理由が農業者の所得の低さだというふうに理解をしております。

 なぜ農家の方々の所得が上がらないのか、農水省の認識を伺います。

村井政府参考人 お答えいたします。

 生産農業所得は、農業総産出額から肥料代などの物的経費を差し引いて算定いたしますが、現行基本法の制定時から生産農業所得が伸びていない要因としては、少子高齢化や人口減少による国内市場の縮小、これに伴う産出額の減少が主な要因と認識をしております。加えて、近年の肥料などの農業生産資材価格の上昇の影響もあると考えております。

 具体的には、米の産出額で見ますと、国内需要の減少等により、平成十一年の二兆四千億円から令和三年の一兆四千億円と、約一兆円減少しております。

 一方で、畜産は産出額が増加をしております。

 野菜、果実は、算出額はおおむね横ばいで推移をしている、そういった状況にございます。

 農業総産出額全体といたしましては、平成十一年の九兆四千億円から平成二十二年には八兆一千億円まで減少したものの、近年は令和三年の八兆八千億円まで上昇傾向にあるという状況でございます。

 こうした中、個々の農業者を見れば、農地の集積、集約化による生産性の向上や高収益作物への転換などによって大きく所得を伸ばしている方もおられるという状況でございます。

 農林水産省といたしましては、今後とも、肥料高騰対策や収入保険等によるセーフティーネット対策に加えて、農地の集積、集約化、スマート農業による生産性の向上、輸出の促進等により所得の確保を図ることが重要であると考えております。

長友委員 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。

笹川委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 食料・農業・農村基本法見直しに関連しまして、災害対策について質問をいたします。

 この中間取りまとめにおきましては、「災害が頻発化・激甚化する傾向にあり、農作物や農地・農業用施設等に甚大な被害をもたらしている。」とあります。

 こういった災害の頻発化、激甚化、そういう下で、こういった災害を機に離農する方というのが、実態はどうなっているんだろうか、離農者がどれだけ生まれているか、こういう点について農水省としては把握をしておられるんでしょうか。

村井政府参考人 お答えいたします。

 近年、豪雨や台風などの大規模な自然災害が頻発しております。農林水産業に甚大な被害が発生しております。令和四年には二千四百一億円の農林水産関係の被害が生じたところでございます。

 農林水産省では、農業者の数の推移は把握しておりますが、離農の原因が災害であるかどうか特定することはなかなか困難であるということから、災害を契機とした離農者の人数は把握をしておりません。

 被災した農業者の方につきましては、迅速に営農を再開できるよう、引き続きしっかり支援をしてまいりたいと考えております。

塩川委員 把握していないということでありますが、やはり、様々、離農の要因はあると思いますけれども、この激甚化した災害に伴うようなものが、実態がどうなのか、こういったことの把握というのは改めて、重要ではないのか、今後の課題ではないかと考えております。

 あわせて、災害の規模によっての支援策がどうかということもあります。

 こういう点で、災害対策として、この中間取りまとめでは、「生産基盤の防災・減災機能の維持・強化を図る。」とありますが、中間取りまとめではこの一文だけということもありまして、この点で、ここをどうするのかということが問われたときに、私は、災害に遭った場合に、災害復旧に当たって、農地やまた農業用の施設についての被災農家への負担をいかに軽減をするのかということが問われているのではないのかと。少なくとも、災害規模で支援策に差をつけるようなことは、これは見直す必要があるのではないか。

 大臣、いかがでしょうか。

野村国務大臣 お答えを申し上げたいと思いますが、委員御質問の、農地や水路などの生産基盤の復旧に当たりましては、災害復旧事業により支援をいたしておりまして、農家一戸当たりの復旧事業費に対して国庫補助率のかさ上げを行うとともに、補助残の地方公共団体の負担については地方財政措置が適用され、地方公共団体が農家には負担を求めない、こういうふうにやっておることでございます。

 また、災害規模が大きく激甚災害に指定された場合には、地方公共団体の財政負担を緩和するなどの観点から国庫補助率が更にかさ上げされる仕組みになっておりまして、農家の負担というのはほとんどないということになってまいりまして、我が省としては、こうした災害復旧事業や地方財政措置を通じて、引き続き農家負担の低減に努めてまいりたいと思っております。

塩川委員 激甚とそうでない場合についての国庫補助、またそれらのかさ上げ措置の違いというのは当然あるわけであります。そういった場合に、自治体がやる気になればきちっと支援もできますよということになりますと、自治体の財政力の支援もある、関わってくるといった点での交付税措置というのがなかなか実態として、本当にその自治体にとっての財源となるのかどうか、特交などは特にそういう不安の声というのは出てくるわけで、そういった点でも、個々の被災農家にしてみれば被害は甚大であるわけで、大規模であるかどうかは本来問われる話ではなくて、やはり被災農家に対しての個々の被災実態に見合った支援策は同等であってしかるべきだ、そういう負担をやはり軽減をする措置についてしっかりと対応することが求められている。

 加えて、農作物につきましては共済でという話になりますと、農業共済から、今、農業収入保険といった流れを考えても、未加入者が大変多いということもありますし、それは掛金が高いということもあります。そういった点についても改めて、こういった災害が頻発化、激甚化する中で、被災農家への支援策を抜本的に拡充するということを位置づけることが求められているということを申し上げておくものであります。

 次に、豪雨災害のありました茨城県取手市の双葉地区の浸水被害に関連してお尋ねをいたします。

 先ほど委員の質疑の中でレンコンの話もありました。茨城でもそういった被害がある。もちろん全国各地に被害が及んでいるところであります。

 私がこの後、個別の案件で紹介します取手市の双葉地区というのは、牛久沼沿いの水田地帯の中にある住宅地であります。一千百戸の住宅のうち、この前の台風二号の豪雨災害で、床上浸水が四百三十六軒、床下浸水が百六十五軒ということで、世帯の四割が床上浸水という大変な被害となりました。

 被災者の方のお話を聞くと、床上三十センチの浸水で、寝ていて目が覚めたらあっという間に水が入り込んできて、消防のボートで救助された、五十年間住んでいてこんな被害は初めて、家財道具がほとんど駄目になり、片づけも終わらない、この先も心配だというお話をお聞きしたところであります。

 この地域には、農業用水として田んぼに供給される水は二つの排水機場で小貝川に排出をされております。田んぼの中にある双葉地区においては、この排水機場の排水によって地区内に水が流入しないようになっております。農業用施設である排水機場の機能と能力が住宅地の浸水被害にどのような影響を与えたのか、この点についての検証と対策が必要だと考えます。

 お尋ねしますが、この排水機場、新川排水機場、第一、第二の二か所あるんですけれども、この能力というのは、水稲の湛水被害防止のためには、一時的ではあれ、七十センチの湛水を許容するものとしていると聞きますが、それでよろしいでしょうか。

青山政府参考人 お答えいたします。

 本地区の事業計画におきまして、二十年に一度発生する三日間連続の降雨を二百五十九・八ミリと想定しておりまして、ポンプをフル稼働させた状態で最低田面における最大湛水深が六十六センチになると試算されております。新川第二排水機場は、この湛水を二十四時間以内に三十センチ未満に排水することができる能力となっております。

 先ほど委員の方から御質問がございました、三十センチの話ということをおっしゃられたんですけれども、水田の田面というのは、通常、道路面から三十センチ程度低い位置にございまして、そこで水がためられるようになっておりますので、最大の湛水深六十六センチといいましても、道路面からの高さではなくて、最も低い地面からの高さとなっておりますので、地域一帯が六十六センチで湛水するというものではございません。

塩川委員 現地へ行っていただければ分かるんですけれども、水田地帯の最末端のところにこの住宅団地があります。この間、地盤沈下もありまして、全体が沈んでいるところなんですよ。そういう点でいっても、六十六センチの湛水を一時的に許容する、それが、二十四時間以内で排水することによって三十センチ未満にすることで水稲の被害を防止するということがありますけれども、しかし、七十センチ深くの浸水を許容するということは、民家にすれば当然大きな被害を及ぼすことになるといった規模になって、現にこのように床上浸水というのが千百戸の世帯のうち四割を占めるような状況になっているわけであります。

 そうしますと、水稲被害防止対策として農水省では一時的な六十六センチの湛水を許容しておりますけれども、民家については、これは床上浸水にもなりかねないような住宅被害をもたらすことにもなる。そういう点でも、民家の浸水被害防止の観点に立つと、この七十センチ、六十六センチの湛水というのは、これは許容できないんじゃないかなと思うんですが、いかがですか。

青山政府参考人 お答えいたします。

 新川第二排水機場の整備につきましては、水稲の湛水被害を防止することを目的に、茨城県において事業計画を作成し、国へ補助事業の申請があったものでございます。この事業は水稲の湛水被害防止を目的としたものでございまして、申請内容は適当と判断し、採択をしております。

 委員から、民家の浸水被害防止について御指摘ございましたけれども、農林水産省としましては、民家の浸水被害を防止することを目的とした事業に補助することは困難であるということを御理解いただきたいと思います。

塩川委員 もちろん、水稲の被害防止のためということでのこのような排水施設の整備ですけれども、そこに、でも、住宅があるわけで、そこへの浸水被害について、それは農地じゃありませんから関係ありませんという話でこれらの地域の方々の理解が得られるんだろうかというふうに思うわけです。

 農地をしっかりと災害から守るといった対策は必要であります。ただ、同時に、こういった住宅地になっている中で、ここに対する対策というのをどうするのか。この点、国交省などは、こういう被害、この現状の下で、何かできることがあるんでしょうか。

松原政府参考人 お答えいたします。

 下水道による浸水対策は、五年から十年に一度程度の大雨に対して、市街地における浸水被害の防止を目的に進められるものであります。

 具体的には、地方公共団体が雨水排除の計画を立案し、雨水管や排水ポンプ、雨水貯留施設などの整備に取り組むものであり、国土交通省では、防災・安全交付金による財政支援などにより地方公共団体の取組を促進してまいっております。

 また、事業の実施に当たっては、流域治水の考え方に基づいて、河川管理者、農業関係部局などとも連携をしまして浸水被害の軽減に努めております。

塩川委員 河川管理者や農業関係機関との連携ということは是非やっていただきたいんですが、六十六センチの湛水で床上浸水になるような民家に対して、下水道だけでそもそも対応できるんですか。

松原政府参考人 お答えいたします。

 個々の事案につきましては、やはり、しっかりと計画を立てて、どのようなことになるのかという具体の検討が必要だと思いますので、現在、この地区は下水道浸水対策をやっておりませんので、仮にそういうことになりましたら、下水道にするということで地方公共団体の方が判断されましたら、下水道、それから、先ほど申し上げましたように、河川であるとか農業の関係の方々とも連携をしながら、どうやったら浸水防除ができるのかということを検討していくことになると思っております。

塩川委員 大臣、是非お答えいただきたいんですけれども、要するに、関係部局が力を合わせてこういった被害が起こらないような対策を取っていくという点で、農業分野の災害対策として合理的なものであっても、地域の災害防止の観点では不合理となるような場合というのはあり得るわけで、農水省として、国交省や自治体と連携して、こういった民家の浸水被害対策を講じる必要があるのではないのか、この点についてお答えいただけないでしょうか。

野村国務大臣 塩川委員にお答え申し上げますが、調べてみましたら、現在、取手市におきまして被害状況の把握に努めているという今の状況でございますが、この調査結果を踏まえまして、本地域の排水対策については、茨城県やあるいはまた取手市から相談があれば、国交省や関係自治体と連携して対応を検討してまいりたいと思っております。

塩川委員 取手市から茨城県に要望書が提出をされております。その点、国の方は承知しておられるか。

 その中に、双葉地区の内水排除のための排水路及び国直轄の排水機場の新設という要望がありますけれども、これに対してどのように対応されるのかをお尋ねしたいと思います。

青山政府参考人 お答えいたします。

 大臣から御答弁申し上げましたとおり、現在、取手市において被害状況の把握に努めているということでございます。

 要請書につきましては、まだ私ども確認をしておりません。

 今後、排水対策について、必要があれば、国土交通省や関係自治体と連携して検討してまいりたいと考えております。

塩川委員 新川第一、第二排水機場の排水施設の改修及び非常用電源施設の設置とか、大夫落排水路、勘兵エ堀排水路の改修等の要望も寄せられているということですので、そういうことを含めてしっかり対応をお願いしたいと思っています。

 終わります。

笹川委員長 次に、仁木博文君。

仁木委員 有志の会の仁木博文です。

 ラストバッターで質問したいと思います。

 野村大臣、このところ私は、大臣とお米というか水田の問題について議論しています。

 今日の問い、通告を出しておりますけれども、米を専ら作っている農家が、例えば国民の平均所得を得ようと思ったらどうすればいいのか、具体的には、どれくらいの耕作面積を確保したり、どういう手法でやっていけばいいのかということを出していますが、その趣旨というのは、今後、私は、この前も耕作放棄地のことを問題提起させていただきましたが、やはり経営的に成り立たないと、今までは、赤字であったとしても、先祖代々の土地、もし休耕にしちゃうと周りの頑張っている農家の方々に迷惑をかけるというふうな形で、使命的にお米を作っている、そういう水田を維持しているという農家の方がいらっしゃるわけです。特に、私はこのことに関して通告を出しておりますけれども、まずそのことについてお答えいただきたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 水稲につきましては、生産面積の拡大に伴って生産コストが減少すると十アール当たりの所得も増加する、そういう傾向にございます。

 委員お尋ねのございました、どのぐらいで平均所得になるのかということなんですが、令和三年産を取りまして、農産物の生産費統計によりますと、水稲の場合、経営規模が十五ヘクタール以上二十ヘクタール未満の経営体になりますと、十アール当たりの所得が約三万五千円というふうになりまして、これに十五ヘクタールを掛けますと所得が大体五百三十万円程度というふうになります。

 このため、個々の農家がそこまでというのはあれかもしれませんけれども、一つは、農地の集積を進める、経営規模を拡大するということがあるんですが、あるいは、小さい農家であっても、集落営農に参加するということで作付面積を拡大して生産性の向上を図るという取組ということについて、農水省としても後押しをしていきたいというふうに考えております。

仁木委員 このところ与党の方でいろいろな、特に経済産業省で多いんですけれども、伴走支援という言葉が躍っておりますけれども、私は、この際、今おっしゃったような、平均的なこともあるんですけれども、例えば北陸、東北地方の水田、あるいは西日本、特に四国とか、私のいるところとか、やはり耕作面積そのもの、いわゆるプラットフォーム自体が違いますので、十五ヘクタールとなると、それだけ所有している農家なんかはほとんどいるはずがないわけです。

 ですから、その辺を、細かく国が監視するというのではなくて、伴走支援を行っていくという名目で、例えば、より経営的なことの相談もできるような、あるいは、もっと言うと、もう少し把握する上で、水田の作付状況も、外的に見ると、GPSとかいろいろな形で見ることもできます。もちろん生産者側の理解も要りますけれども、伴走支援をしていって、さっき言ったような、地方において、市街化区域に隣接した調整区域内農地において耕作放棄地が増えないように、日本の地方の風景が変わらないように、やはり、具体的には、生産者がそのままいていただく、新規の若い生産者が参入していただくということが重要ですので、そういったことを、大臣、これはより踏み込んで、農家の方も、ある種、どうやっていいのか分からない、子供や孫にやってほしいけれども、やってと言えない現実があるわけです。

 そういうことを大臣も共有してきたはずですので、そのことに対して、私が言ったような具体的な提言ですけれども、どういうふうにお感じになっていらっしゃるか、御答弁いただきたいと思います。

野村国務大臣 お答え申し上げたいと思いますが、面積だけで収入を得られるというのは、先ほど平形局長がお答えしたとおりで、大体、米の場合は十ヘクタール以上でないとなかなか所得は上がってこない。じゃ、その面積のない人はどうするのかと。それが私の鹿児島では一番ひっかかったところなんです。ですから、どういうふうにしたか。それとプラス畜産、それとプラスほかのものをやって、複合経営で所得を上げていく。これしかないと思います。

 ですから、面積の拡大をできないところについては、そういう形でほかの複合的なもので収入を得ていくという、兼業農家じゃないですよ、ほかの作目を入れるとか、あるいは畜産を入れてやるとかというようなことでやはり経営を維持していただきたいと思います。

仁木委員 そういう意味では、私の今日の提言は、やはり地区別というか、農家の経営体に応じたことをまず国がもう少し実態を把握された上で、それぞれの、例えばお米という切り口でもいいんですけれども、それに対してのいわゆるサポート体制、これを考えていただきたいということなんです。

 一律、アベレージを出しても、やはり、さっき言ったように、耕作面積の大きいエリア、大臣の御地元鹿児島とかと、私の地元徳島とか、全然違うわけですから、そういったことをやった上での支援体制じゃないとやはり効果的にならない、そういうふうに思います。

 そのことで、大臣は私との答弁の中で転作というソリューションもあるということをおっしゃいましたが、今日申し上げているのは、質問しているのは、飼料米のことですけれども、今、お米から飼料米への転作、これは、この前もレクを受けると、結論的に言うと、飼料米はもちろん、これは国がどんどんと推進すればするほど国の支出というかお金がより必要になってくるので、要は、もう外国からトウモロコシを買うのでいいんじゃないかのようなことをおっしゃっている官僚も一部にいらっしゃったんです。

 先ほど武部議員もおっしゃったように、やはり食料安全保障は大切ですから、家畜の餌となる、もちろん飼料用のトウモロコシの作付も重要ですけれども、飼料米もブランド化して頑張っているエリアもあるわけであって、何か、今後の予定として、国が指定するような飼料米でなければ、そのサポート、助成金を下げるとかいうような情報もありますけれども、そんなことがあるのかないのかというのが一点。

 そして、やはり飼料米も、食料安全保障という概念でいうと、さっき言った、お米だけで成り立たない場合に、そういう飼料米、これは原価で勝負できませんが、国の価格として、国がサポートすることによって飼料米を作っている農家の人の所得となるということで経営が維持できる、そういう観点ではいいと思うんですけれども、その二点について、大臣、御答弁いただきたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 飼料用米につきましては、輸入に依存している濃厚飼料は国内で生産できる作物だというふうに認識しておりまして、水田活用の直接支払交付金により支援をしているところでございます。

 令和四年、飼料用米作付面積十四・二万ヘクタール、生産量七十六万トンというふうにして、令和十二年度のそれぞれの目標を上回っております。一方で、作付面積に対する収量、これが十分上がっておりません。また、飼料用米の需給動向次第で主食用にも戻る、そういうような不安定なところもございます。

 このために、今後、数年間かけて、一般品種ではなく、多収にされる方のところ、多収品種が増えるように政策体系を見直すということをアナウンスして進めているところでございます。(仁木委員「飼料米によっての価格は」と呼ぶ)飼料米によっての……(仁木委員「助成額は」と呼ぶ)助成額については、今、数量払いにしておりまして、十アール当たり五万五千円から十万五千円と……(仁木委員「変わらないんだね」と呼ぶ)多収品種であれば変わりませんということでございます。

野村国務大臣 飼料用米で実はブランド化した畜産がありました。まだ飼料米がこんなに認知される前の、前というよりも、一番最初に飼料米を作り出した方々がこれを豚にやった、そしてそれが山形の方でのブランドの豚になったというのを私も食べに行ったことがありますが、本当においしかったです。これは米を食べさせた。もう名前を言っちゃうと、みんな知っているんです、平田牧場というところなんですが、私の鹿児島の黒豚とそこの豚の食べ比べをしたことがありました。どっちがうまいかとマスコミからは責められましたけれども、どっちもうまかったんですが、そういうブランド豚ができている。

 あるいはまた、卵にしても、黄身が少し白くなるんですが、それが売りになってブランド卵ができ上がっているということで、飼料用米といえども、こういうような畜産と結びついたブランド化ができるということも一つのヒントにはなると思います。

 ただ、先ほど平形局長がお答えしましたように、これからは、飼料用米というと、今までの主食用米を単なる飼料米に替えるのじゃなくて、専用のやはり飼料米を作っていただきたい、こういうふうに思います。

仁木委員 最後の質問になるかもしれませんが、一つは、人・農地プラン等々でも、例えば、農地バンクを活用することによって国の助成金を有意義に使えるというような方法がありますが、それを知らない農家の方も結構いらっしゃいます。そういう意味で、農水省の様々なこういった助成制度、新しい制度、できているわけなので、地方の農政局や、あるいは場合によっては農協等々、職員を通じて農家の方に広めていただきたいと思うことが一点。

 二点目は、一番目と二番目の質問で私が言いたかったのは、例えば、農地が近くになかったり農家の方がいない地域の国民も、今、食料は一日も待てないものでございますから、食料安全保障という名の下で、もう少し公的なサポート、いわゆる税金の方をつぎ込んでもいいんじゃないかという機運も私は国会議員としてつくっていかなきゃいけないと思っておりますので、農水省も、来年度予算、そして今、防衛費の増額の話にもなっていますけれども、この食料安全保障という面で、農水大臣として、岸田政権の、総理の方にしっかりと御提言、あるいは意思を伝えていただきたいと思います。

 その二点について、最後に御答弁をお願いします。

笹川委員長 簡潔にお願いいたします。

野村国務大臣 予算の確保につきましては、先ほども金子先生の方からもありました。そのときに申し上げたのは、最大限の努力をいたしますと。これしかまだ今のところは申し上げられません。

仁木委員 ありがとうございます。

 それでは、質問を終わります。ありがとうございました。

笹川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十九分散会


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