衆議院

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第2号 令和5年11月8日(水曜日)

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令和五年十一月八日(水曜日)

    午前九時十分開議

 出席委員

   委員長 野中  厚君

   理事 小島 敏文君 理事 古川  康君

   理事 細田 健一君 理事 山口  壯君

   理事 近藤 和也君 理事 緑川 貴士君

   理事 池畑浩太朗君 理事 角田 秀穂君

      あべ 俊子君    東  国幹君

      五十嵐 清君    伊東 良孝君

      上田 英俊君    江藤  拓君

      尾崎 正直君    勝目  康君

      金子 俊平君    木村 次郎君

      小寺 裕雄君    齋藤  健君

      高鳥 修一君    高見 康裕君

      橘 慶一郎君    谷川 弥一君

      西野 太亮君    保岡 宏武君

      柳本  顕君    山口  晋君

      梅谷  守君    金子 恵美君

      小山 展弘君    佐藤 公治君

      山田 勝彦君    渡辺  創君

      一谷勇一郎君    掘井 健智君

      稲津  久君    山崎 正恭君

      長友 慎治君    田村 貴昭君

      北神 圭朗君

    …………………………………

   農林水産大臣       宮下 一郎君

   農林水産副大臣      武村 展英君

   環境副大臣        八木 哲也君

   財務大臣政務官      佐藤  啓君

   厚生労働大臣政務官    三浦  靖君

   農林水産大臣政務官    舞立 昇治君

   政府参考人

   (内閣官房内閣人事局人事政策統括官)       阪本 克彦君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           笠置 隆範君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           鳥井 陽一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         杉中  淳君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         宮浦 浩司君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房危機管理・政策立案総括審議官)            松尾 浩則君

   政府参考人

   (農林水産省輸出・国際局長)           水野 政義君

   政府参考人

   (農林水産省農産局長)  平形 雄策君

   政府参考人

   (農林水産省畜産局長)  渡邉 洋一君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  村井 正親君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            長井 俊彦君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           川合 豊彦君

   政府参考人

   (林野庁長官)      青山 豊久君

   政府参考人

   (水産庁長官)      森   健君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房原子力事故災害対処審議官)  湯本 啓市君

   政府参考人

   (国土交通省水管理・国土保全局下水道部長)    松原  誠君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 堀上  勝君

   農林水産委員会専門員   飯野 伸夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月八日

 辞任         補欠選任

  橘 慶一郎君     勝目  康君

  鳩山 二郎君     金子 俊平君

同日

 辞任         補欠選任

  勝目  康君     橘 慶一郎君

  金子 俊平君     柳本  顕君

同日

 辞任         補欠選任

  柳本  顕君     鳩山 二郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

野中委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官杉中淳君、大臣官房総括審議官宮浦浩司君、大臣官房危機管理・政策立案総括審議官松尾浩則君、輸出・国際局長水野政義君、農産局長平形雄策君、畜産局長渡邉洋一君、経営局長村井正親君、農村振興局長長井俊彦君、農林水産技術会議事務局長川合豊彦君、林野庁長官青山豊久君、水産庁長官森健君、内閣官房内閣人事局人事政策統括官阪本克彦君、総務省自治行政局選挙部長笠置隆範君、厚生労働省大臣官房審議官鳥井陽一君、経済産業省大臣官房原子力事故災害対処審議官湯本啓市君、国土交通省水管理・国土保全局下水道部長松原誠君、環境省大臣官房審議官堀上勝君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

野中委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。木村次郎君。

木村委員 おはようございます。自由民主党、青森三区選出の木村次郎です。

 二年ぶりにこの農林水産委員会に戻ってまいりました。どうぞよろしくお願いいたします。そしてまた早々に質問の機会をいただきましたことを、皆様に感謝を申し上げたいと思います。

 早速質問でございますが、まず、国連のグテーレス事務総長が、地球沸騰化の時代が到来したというふうにまで言わしめた、今年はなかなか夏が終わらなかった感がございます。

 また、今日は暦の上では二十四節気の立冬ではございますが、昨日は、御案内のとおり、東京でも最高気温が二十七度超えという状況でございます。一年間の四割がこの東京でも夏ということは、やはり異常気象、そしてまた地球の温暖化が進んでいる、加速をしていると言わざるを得ないというふうに私は思っております。

 そうしたことに起因して、我が国の農林水産業にも多分に影響を及ぼしているということ、今日はそうしたことも織り交ぜながら質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 まず最初に、ALPS処理水の海洋放出についてでございます。

 東京電力福島第一原発の処理水の海洋放水が始まった八月二十四日以降、中国を始め一部の国等において水産物の輸入規制が強化されました。これが我が国の水産業界にも甚大な影響を及ぼしておるわけでございます。

 昨日、たまたま、農水省の方においても、九月の、例えば中国向けの輸出水産物で、これが前年同期比で九〇・八%減というような発表もなされておりました。

 私の地元について申し上げますと、青森県の陸奥湾、ホタテの養殖が盛んなところでございます。今回のこの事態を受けて、青森県もこうしてはいられないということで、県が音頭を取る形で、陸奥湾ホタテガイ総合戦略チームというものを立ち上げて、いろいろな切り口から検討していくこととしております。その柱は三つございまして、そのうちの一つが、まさにこの輸出、販売促進対策というようなことでございます。

 そこで、今回の事態を受けて、現状の認識、また今後の取組について大臣にお伺いしたいと思います。

宮下国務大臣 先生御指摘のとおり、中国等が科学的根拠に基づかない規制を措置したことは極めて遺憾であります。

 現在、首脳級、閣僚級及び事務レベル等様々な機会を通じまして、中国等に対して規制の即時撤廃を求めているほか、WTOの場での当該規制の撤廃を求める反論書面を提出したり、また、WTO・SPS協定やRCEP協定の規定に基づく討議の要請をしております。

 私自身も、ASEANプラス3農業大臣会合等ありまして、先月マレーシアを訪問したんですが、こうした会合や二国間の会談におきましても、参加国の大臣の皆さんに対して、日本産水産物の安全性を説明をし、働きかけを行いました。

 今後も、政府一丸となって、様々な機会を通じて、科学的根拠のない輸入規制措置の即時撤廃を強く求めてまいりたいと思います。

 また、こうした措置から国内水産業を断固として守り、また、特定国、地域依存を分散させるために、先般取りまとめられました総額一千七億円の政策パッケージに基づいて、輸出先の転換対策、また、国内の需要拡大対策等に取り組んでいるところであります。

 さらに、補正予算においても、ホタテ等の一時買取り、保管や、販路拡大の取組への支援の拡充等について調整をしております。

 引き続き、現場の情報把握や周知に努めながら、影響を受ける水産事業者の皆様に寄り添った対策の実施に向けて、万全を尽くしてまいりたいと考えております。

木村委員 心強い答弁、ありがとうございます。

 あらゆる機会またツールを利用しながら、引き続き、積極的に粘り強い交渉、働きかけを行っていただきたいと思います。

 私の青森県、ホタテ以外にも、青森県産のナマコは高級食材として中国に輸出されてきたわけでございます。このナマコ漁を行う各漁協あるいは漁師の皆さんからも、この状態だとなかなか先が見通せない、そういう不安の声も聞かれているところでございます。

 原発の事業主体である東京電力が損害賠償を行っていく姿勢を見せておられるわけでございますけれども、こういうことに対して、国としてどのように対応していくのか、お伺いいたします。

湯本政府参考人 お答え申し上げます。

 中国を始め、一部の国等によります日本産水産物への輸入規制により被害が出ているという声は、経済産業省にも届いているところでございます。

 処理水放出に伴い必要となります賠償につきましては、令和三年四月の関係閣僚等会議におきまして、期間、地域、業種を画一的に限定することなく、被害の実態に見合った必要十分な賠償を行うよう東京電力を指導することを政府の基本方針としてございます。

 これを踏まえまして、ALPS処理水の放出開始の翌日であります八月二十五日に、西村経済産業大臣が東京電力の会長、社長と面談をいたしまして、賠償に当たっては事業者に寄り添って対応するように指導したところでございます。

 引き続き、経済産業省としまして、被害を受けた事業者の方々に、被害の実態に見合った必要十分な賠償が迅速かつ適切に実施されるよう、今後も東京電力を指導してまいります。

木村委員 ありがとうございます。

 冒頭申し上げました異常気象、温暖化、そういったことに起因することについて質問させていただきます。

 地球温暖化などを背景として、海水温の上昇を受けて、全国的に漁獲される魚種の範囲が総じて北上傾向にあるなど、異変が生じております。例えば、私の地元青森県においては、スルメイカの、昨年、令和四年の漁獲数量が、それより前の過去五か年平均の五六・三%にまで落ち込んでいる、こういう実態も報告がなされております。こういったことを踏まえながら、中長期的な視点に立って、様々な検討、対応が必要であるというふうにも考えております。

 そこで、現状の認識、また今後の対応方針などについてお伺いいたします。

舞立大臣政務官 木村先生御指摘のとおり、青森県でのスルメイカの不漁のほか、全国的にもサケ、サンマなどが不漁となる一方、ブリのように分布が北方にシフトする魚種もあるなど、海洋環境の変化による水産資源の変化が見られているところでございます。

 こうした状況を踏まえまして、水産庁では、本年三月から五月に海洋環境の変化に対応した漁業の在り方に関する検討会を開催し、海洋環境の変化に対応した適切な漁業経営や操業の在り方、当面の対応策等について有識者の方々に検討していただいたところでございます。

 本検討会の取りまとめにおきましては、漁法や漁獲対象魚種の複合化、転換、そして養殖業との兼業化、転換、そして加工、流通における魚種の変更への対応等を進めていくべき旨が指摘されたところでございます。

 御地元の青森県でも、沖合底引き網漁業によるイトヒキダラへの魚種転換の調査が開始されたところでございまして、水産庁といたしましては、漁法、魚種の複合化等の実証的取組を支援するなど、海洋環境の変化に対応した持続的な経営体の育成、構築を目指してまいります。

木村委員 ありがとうございます。

 なかなか、自分のエリアで漁獲されていなかったことの魚種に対して目を向けていく、それがなかなか漁師の皆様方、漁協も始め、慣れていない部分もあると思います。そういった技術的な、また、いろいろな環境整備、そういったことにも是非目配りをしていただきたいというふうに考えております。

 養殖業というお話についてでございますが、これは、魚種によっては海外の需要も大変旺盛なところがあり、今後、我が国の水産業の生き残りということにも照らし合わせますと、販路開拓というものを大いに期待できる部分があろうかと思います。

 私の地元青森県においても、サーモンの養殖に力を入れている企業があります。今後の成長性も期待できるということもあって、先般、株式上場も果たしたところでございます、その企業につきましては。

 そこで、養殖業に対して、今申し上げたとおり大変期待できるところがあると思いますので、水産庁として、より一層の養殖に対しての後押しを期待したいところでございます。水産庁として今後どのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。

森政府参考人 お答えいたします。

 世界的に養殖魚の生産、需要が増加傾向にある中、国内においても、サーモン養殖が広く行われるようになってきておりますし、また、大規模養殖等による生産性向上の取組も進められているというところでございます。

 こうした中、水産庁におきましては、養殖業について、国内外の需要を見据え、生産から販売、輸出に至る養殖業成長産業化総合戦略、これを令和二年七月に策定しまして、養殖業の成長産業化というのを推進しているところでございます。

 現在、この戦略に即しまして、マーケットイン型の養殖の実証のために必要な資機材の導入など、販売拡大の意欲のある養殖業者に対する支援を行っているところでございます。

 また、農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略も踏まえ、輸出拡大に必要な設備投資、ジェトロや品目団体を通じた輸出拡大の取組等への支援、これも推進をしているところでございます。

 引き続き、現場の声も伺いながら、養殖業の未来を見据えて施策を力強く進めてまいりたいと考えております。

木村委員 ありがとうございます。

 また異常気象にまつわる質問にさせていただきます。農業、いろいろな影響が全国的に及ぼしているということをいろいろな報道がなされておるわけでございます。いわゆる高温障害なるものについてでございます。

 私、九月に、地元の農家、現地にお邪魔して、いろいろ視察をして、また、農家の皆様方からお話を伺ってまいりました。そのときは、リンゴ農家、そしてトマトを栽培している農家の皆さんにお伺いしたところでございます。

 トマトも、少雨の影響もあってか、実が青いままに肥大して割れが入ってしまう、なかなか商品として出荷できないものが出てきている、こういった不安の声もいただいたところでございます。

 また、リンゴ園地につきましては、その時期、リンゴであれば、わせの品種であります「つがる」などが出荷を迎えようとしているところでございましたが、やはりこの高温障害、日焼けの状態がその時点で約一割強ぐらいあるということでございまして、なかなか、これが仮に、更にこの猛暑が続いた場合に、二割、三割という日焼け状態が続いた場合、あるいは、来年以降も今年のような猛暑が長い、そういう夏が続いた場合、なかなか、結果としてそれが農家の皆さんにとっては収入に直結してくるわけでございます。そうしますと、なかなか資金繰り的にも厳しくなって、立ち行かなくなりつつあるのではないか、そういう切実な不安の声もいただいたところでございました。

 そこで、リンゴについて、高温耐性のある品種開発、改良というものも、今後中長期的な視点に立った場合に求められる、また期待されるということになろうかと思います。今後、この点についてどのように取り組んでいくのか。これは、自民党の果樹振興議員連盟でも大臣には御指導いただいてまいりましたが、青森に次ぐ第二のリンゴの産地であります長野県の出身の大臣に是非答弁をお願いしたいと思います。

宮下国務大臣 御指摘のように、青森県では、本年の七月以降、例年にない高温によって、リンゴの果実に日焼けが発生をして、出荷できない被害が出ているというふうに伺っております。

 品目別に見ますと、青森県の出荷量の九割を占める主力品種の「ふじ」等のなかてやおくて品種については比較的影響は少ないものの、お話にありましたように、わせ品種の「つがる」では日焼けの影響によって一割から二割出荷量が減少しているというふうに聞いております。

 高温の影響は本年のみならず今後も発生すると考えられますので、農林水産省としては、まず、日焼け対策として、直射日光を遮る遮光ネットの設置、また、遮光ネットが設置しやすい樹高の低い省力樹形への改植などの産地への取組への支援を進めているところであります。

 また、高温障害への危機感を自治体や大学等の研究機関の皆さんとも共有しながら、夏場の気温が高い年でもよく着色する青森県で開発されました「紅はつみ」、また、高温でも軟化しにくい着色の優れる農研機構で開発した「紅みのり」、こうした品種の普及や新たな品種の研究開発を引き続き進めてまいりたいと考えています。

 さらに、現在検討中の補正予算にも高温環境に適応した栽培体系への転換の実証支援等を盛り込んで、高温対策技術の導入を促進していく考えでございます。

木村委員 ありがとうございます。

 こういった、予期せぬといいますか、突発的な事案に対処していくためには、できるだけ農家の皆様方の負担がかさまないように御配慮をいただければと思います。その上で、農水省におかれては、地元の農協、あるいはいろいろなリンゴ関係団体とか、あるいは農家の皆様方、また自治体とも、しっかり連携、情報共有をしながら進めていっていただければというふうにお願いしたいと思います。

 最後になります。同じように、この高温障害、お米についてでございます。

 いろいろな報道がなされておりますけれども、一等米の比率の低下が全国的に、また各品種において報道がなされております。青森県においても、九月末現在の速報値ベースですが、一等米の比率が全体で前年同期比で二三・三ポイント下回っている、こういった発表がなされておるわけでございます。

 味、うまみとしてはそんなに遜色ないのかもしれませんけれども、どうしても濁りが入ってしまうということで、なかなか、消費者の皆さんによっては控えるというか、そういうことが懸念もなきにしもあらずというふうにも考えております。

 そこで、今夏の猛暑による影響に対する現状の認識、そしてまた、先ほどのリンゴと同じようなことになりますが、高温耐性のある品種開発、改良など、今後の対応、取組についてお伺いいたします。

平形政府参考人 お答えいたします。

 本年、厳しい高温に見舞われた地域におきましては、白未熟粒の発生等によりまして米の一等比率の低下が見られまして、経営への影響も懸念されるところでございます。

 お米につきまして、収量の減少ですとか品質の低下による収入減に対しましては、水稲共済や収入保険による対応が基本となりますが、このような温暖化に伴う影響は本年のみならず今後も引き続き発生することが懸念されることから、産地において高温対応を進めていただくことが重要となっております。

 農林水産省といたしましては、現在検討中の補正予算の中に、都道府県やJA等によりまして高温耐性のある品種への転換を進めていただく、あるいは、高温対策の技術の導入、実証に係る費用への支援を盛り込み、高温対策栽培体系への転換を進めたいというふうに考えております。

木村委員 ありがとうございます。

 高温耐性の品種の開発、改良が望まれるところでございます。

 私、見ますと、ここ最近は、各自治体というか地域において、いろいろな特A級、ブランドをPRするため、いろいろな品種が開発され、また販売されというふうな印象を受けております。それはそれで大事なことだと思いますが、やはり、こうした中長期的な観点に立って対応していくということが、これはお米、リンゴ、水産業だけでなくて、農水省全体としていろいろなことを、全体を俯瞰をしながら中長期的な取組というものをしていただきますよう御期待を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

野中委員長 次に、小寺裕雄君。

小寺委員 おはようございます。滋賀四区の小寺裕雄でございます。

 今日は、郷土の先輩である武村展英先生が農林水産副大臣に御就任いただきましたので、ちょっと前半は滋賀県ネタでやらせていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず最初に、環境保全型農業の推進の在り方についてお尋ねをさせていただきます。

 滋賀県では、環境保全型農業直接支払交付金を活用して、農薬や化学肥料の使用量を従来の二分の一以下に低減させる農業に長年にわたって取組を進めさせていただいております。その目的は、濁水を流さずに富栄養化を防いで、琵琶湖の環境を守ることにあるわけであります。

 こうした取組を滋賀県では環境こだわり農業と称して、水稲やお茶あるいは野菜などを中心に作付をして、令和四年までにそうした農産物の取組面積が一万四千四百三十七ヘクタールまでに拡大をしています。最も取組の進んでいる水稲においては、作付面積の四五%がそうした環境保全型農業で占められるようにまでなってまいりました。

 滋賀県の農業にとって、なくてはならないこの環境保全型農業直接支払交付金でありますが、この交付金は五年ごとに制度の見直しが検討をされるものというふうに承知をしております。前回の見直しのときには、ちょっと離席されておられますが、当時の齋藤農林水産大臣に大変お世話になりまして、この場をかりて厚く御礼を申し上げたいというふうに思います。

 そこで、来年度に行われる制度の見直しに当たっては、これまでの先進的な取組が後退することのないように配慮しながら、オーガニック農業などの新たな取組が進むように、各都道府県の現場の意見を十分に聞きながら検討を進めていただく必要があるものというふうに考えておりますけれども、武村副大臣のお考えをお聞かせ願います。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 今御指摘をいただきました環境保全型農業直接支払交付金は、地球温暖化防止や生物多様性保全に効果の高い農業生産活動を支援するもので、農業の持続的な発展を図る上で重要な取組です。

 この交付金は、令和六年度に五年間の事業実施期間を終えることから、令和七年度に向けた見直しを行うこととしております。令和五年六月に公表されました食料・農業・農村政策の新たな展開方向におきまして、環境負荷低減に向けた取組の強化については、先進的な環境負荷低減への移行期の取組を重点的に後押しするとされていることを踏まえまして、今後、具体的な仕組みを検討することとしております。

 検討に当たりましては、第三者委員会による施策の効果の検証を行うとともに、四十七都道府県の事業担当者との意見交換や、本事業を実施している市町村に対する取組推進のためのアンケート調査を実施したところでありまして、引き続き、現場の意見も十分お聞きをしながら検討していく考えです。

 小寺先生から御紹介がありました、滋賀県が推進をしている琵琶湖の水質保全に資する取組、環境こだわり農業、こうした取組も含めまして、環境負荷に対する低減効果を踏まえて、先進的な取組が拡大をするよう後押しをしてまいりたいと考えております。

小寺委員 期待以上の御答弁をいただきまして、誠にありがとうございます。特に、やはり、市町村並びに自治体の意見をよく聞いていただくことが肝要であろうというふうに思いますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

 続きまして、高止まりが続く農事用電力料金の負担軽減支援策についてお尋ねをいたします。

 土地改良区では、維持管理費に占める電力料金の割合が高いために、昨年から続くエネルギー価格の高騰の影響を大きく受けてまいりました。おかげさまで、昨年度は、臨時交付金等、国や県の御支援をいただき、賦課金を上げることなく何とか安定的に農業用水を供給ができました。大変ありがたく思っています。

 さて、一般的に、農業用水は利水ダムであったり河川を水源とするのが普通ですが、滋賀県の場合、河川水量が乏しいということもあって、琵琶湖の水を用水源としている改良区が全体の四四%もございます。つまり、琵琶湖の水を一旦ポンプアップして、遠いところでは何十キロも先の中山間地域まで、逆水で揚げてから送水をしている地域が存在します。

 そのため、琵琶湖の周辺には揚水機場が大きなもので二十一か所、そのうち十か所は特別高圧を使用しています。平年ベースでも、主要な揚水機場だけで、かかる年間の電力料金は五億円にもなりますが、高騰した昨年度では七億円、今年度も、見込みでも昨年度を更に上回る電力料金が想定をされています。

 一方で、それぞれの改良区は何も策を打たずに決して手をこまねいているわけではありません。インバーター制御方式に変更したり、節水等を呼びかけて送水を効率化させたり、運転操作の工夫、再エネ設備の活用など、涙ぐましい努力により、電力使用量の約一〇%の節電を達成をしています。

 とはいえ、引き続きこの御支援をいただかなければ、一億五千万相当の負担増となり、これを賦課金として徴収するようなことになれば、現下の主食用米の価格状況では、たちまち離農につながるであろうということは想像に難くありません。

 用水の使用が本格化するのは来年四月以降であります。そこで、こうした滋賀県の農業用水に琵琶湖の水をポンプアップして活用しているという事情を勘案していただいて、来年四月以降も農事用電力への継続的な支援が必要であるというふうに考えますが、武村副大臣の御所見をお伺いいたします。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 農業水利施設は、食料の安定供給の確保や農業の生産性向上を図る上で不可欠であるとともに、健全な水循環の維持形成にも寄与しておりまして、その安定的な機能の発揮に資するよう、適切な維持管理が重要と考えています。

 このため、御指摘のとおり、電気料金の高騰が農業水利施設の維持管理に及ぼす影響を踏まえまして、令和四年度から、省エネルギー化に取り組む施設管理者に対しまして電気料金高騰分の一部を支援する措置を講じております。また、電気料金が高い水準で推移している現状を踏まえまして、その措置を令和六年四月まで延長する予定としております。

 来年五月以降につきましては、電力料金の推移等を注視しつつ、必要な対応を検討してまいります。

小寺委員 ありがとうございます。

 是非、今申し上げたことを御理解いただいて、来年五月以降の適切な対応を取っていただけますようにお願いを申し上げます。

 次に、牛の問題であります。和牛の在庫と価格の動向、そしてその対策等についてお伺いをしたいと思います。

 滋賀県は、日本三大和牛の一つである近江牛の産地であります。コロナ禍が終わりまして、飲食業や観光業の勢いが元に戻りつつあるにもかかわらず、滋賀県の食肉市場で落札される枝肉の価格が安くてしんどいというお話を畜産農家の方々からいただきます。

 ウクライナへのロシアの侵略や急激な円安で、生産資材や飼料、輸入牧草等が高騰しており、畜産農家は、まあ、酪農家ほどではないというふうには言えるかも分かりませんが、変わらず大きな打撃を受けております。

 子牛を買って、三十か月近くも餌を食べさせて出荷をし、その価格が手間暇かけたコストに見合わなければ、事業の継続にはつながりません。そのためにマルキン制度があるというふうに言われればそうなんですけれども、マルキンで全てをカバーできるわけではありませんから、子牛の買い付けを控える農家が出てきています。

 もちろん、融資制度はありますから、借入れを起こされる農家もありますけれども、先の見通しが明るくないことから安易に借入れにも踏み切れない中で、資金繰りに苦しみながら農家の皆さんは牛の世話をしておられます。

 そこで、まず、近年の和牛の在庫と枝肉価格の動向、そして、なぜそのようになっているのか、その原因等について武村副大臣にお尋ねをいたします。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 国産牛肉の在庫は、新型コロナウイルス感染症の影響により増加をしましたが、その後、減少傾向で推移をしております。

 しかしながら、現在、物価高騰等に伴う牛肉の需要低迷によりまして、一部の事業者からは、特に高価格帯の和牛肉の販売に苦戦し、在庫が増えてきているとの声も伺っております。

 また、令和五年度の和牛枝肉価格は、物価が上昇する中で消費者の生活防衛意識が高まっていることなどから、和牛肉全規格で、枝肉一キログラム当たり前年同期比五%減の二千二百六十円と、前年を下回って推移している状況です。

小寺委員 ありがとうございます。

 今、副大臣に答弁いただいたように、高い部位ほど実はやはり生活防衛のために売れないということが顕著に表れている。近江牛もブランド牛でありますので、和牛の中でもそうした影響を大きく受けているのかなというふうに認識するところです。

 そうであるならば、私は、ここはやはり和牛の需要を喚起する支援策が必要ではないかというふうに考えます。

 令和五年度の補正予算にある経済対策の中で、そうした需要を喚起あるいは拡大するような事業が必要ではないかと考えますが、武村副大臣のお考えをお尋ねいたします。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 物価高騰等に伴い和牛肉の需要が低迷している状況におきましては、小寺先生御指摘のとおり、国内外の需要価格が重要であると考えております。

 このため、牛肉の輸出促進に引き続き取り組んでいくとともに、今般閣議決定をされました経済対策におきまして、和牛肉の需要拡大緊急対策を盛り込んだところであります。和牛肉の新規需要開拓、消費拡大やインバウンド需要の喚起を行う事業を、令和五年度補正予算において検討しております。

 農林水産省といたしましては、こうした対策によりまして、販売の拡大を通じた和牛肉の需給状況の改善を図ってまいりたいと考えております。

小寺委員 ありがとうございます。

 農家の皆さん、大変喜ばれると思いますし、その期待は大きいものというふうに思います。是非、早急に具体的な事業立て等をお示しいただいて、畜産農家の皆さんが少しでも経営継続に意欲を持っていただけるようにお願いを申し上げます。

 それでは次に、宮下大臣に一問、質問をさせていただきます。

 去る九月十一日、食料・農業・農村政策審議会が、食料・農業・農村基本法の見直しに関する最終答申をまとめられたというふうに承知をしております。その中で、私は、食料安全保障の確立と適正な価格形成の仕組みを構築することが何より重要であろうというふうに考えます。

 食料供給を取り巻く環境は、現行の基本法を制定した平成十一年当時とは大きく変化しています。地球温暖化による異常気象、新型コロナウイルス感染症のような新たな病気、穀物や肥料の供給不足や価格高騰を招いたロシアによるウクライナ侵略など、食料の安定供給に対するリスクへの対応は喫緊の課題であり、食料安全保障を抜本的に強化するのは当然であろうというふうに考えます。

 不測の事態への対応は言うまでもありませんが、平時から食料がしっかりと国民全体に十分に行き渡るよう、見直しを行っていかなければならないと考えます。

 また、生産資材、肥料や飼料、燃料代に電気代など、生産コストの上昇分を価格に転嫁できない現在の農業の現状では、次世代の担い手への継承はおろか、たちまち農家の廃業につながりかねないような状況であります。再生産可能な販売価格の形成が何よりも求められます。

 この実現には、消費者はもちろんのことですが、流通、販売、加工などの関係者の理解が得られなければ、簡単にできないということは承知をしておりますけれども、今回の見直しで生産現場を守ることができなければ、日本の農業は崩壊してしまいます。是非、再生産可能な販売価格形成の仕組みづくりの実現を強く求めるところであります。

 そこで、宮下大臣にお尋ねをさせていただきますが、改めて、今回の食料・農業・農村基本法の見直しにかける宮下大臣の思いと、食料安全保障と再生産可能な価格形成の実現に向けた決意をお聞かせ願いたいと思います。

宮下国務大臣 先生から大変重要な御指摘をいただいたと思っております。私も、その二つ、特に重視して頑張っていきたいと思っています。

 まず、食料・農業・農村基本法でありますけれども、御指摘のように、制定から四半世紀が経過しようとしておりますけれども、食料安全保障の強化を始めとした昨今の社会情勢の変化、また、今後の見通し等を踏まえて、基本法が農政の基本的な方針としてふさわしいものとなるように、しっかり見直していく必要があると考えております。

 先生からも御指摘ありましたけれども、食料安全保障については、気候変動による生産の不安定化、世界的な人口増加による食料争奪の激化、また、世界の食料需給をめぐる環境が大きく変化しております中で、輸入依存度の高い小麦や大豆、飼料などの国産化を進めることも重要ですし、また、輸入の安定化を図るなど、平時からの食料安全保障に向けて対策を強化することが重要だと考えています。

 加えまして、近年顕在化しております食品アクセス問題等、国民一人一人の食料安全保障の確保にも対応していきたいと考えているところであります。

 また、食料システム全体を持続可能なものとしていくためにも、適正な価格形成というのは本当に、御指摘のように、重要だと思っております。そのために、八月から、生産から消費までの各段階の関係者が一堂に集まります、適正な価格形成に関する協議会を開催しまして、議論に着手しております。

 今後、協議会の議論を踏まえて、おっしゃるとおり、生産から流通、加工、消費、全ての関係者の皆さんの理解を前提として、新たな価格形成の仕組みづくり、しっかり進めてまいりたいと考えています。

 これらの基本的考え方の下で、長期的視点に立って農政を再構築するべく、基本法につきましては、次期通常国会への改正案提出に向けた作業を加速してまいりたいと思います。よろしくお願いします。

小寺委員 ありがとうございます。

 大臣は長野県の中山間地の御地元でもありますので、地方のことをよく知っていただいているというふうに承知をしております。是非、日本全体、とりわけ地方、中山間の農業を今度の法改正で守っていただけますように、よろしくお願い申し上げます。

 それでは次に、農福連携についてお尋ねをいたします。

 農福連携については、もう既に何人かの先生方から御質問が出ているところではありますけれども、今回私は、農水省ではなくて、厚生労働省に対して質問を投げさせていただきたいと思います。

 三浦政務官が来ておいでになりますので、どうぞよろしくお願いします。

 ちょうど一年前になりますけれども、農福連携が、私からすれば、一生懸命やっていただいているんだけれども何でもっと広がっていかないのかなということに疑問を感じて、地元の滋賀県で、農福連携だけではなくて、障害者の特性を生かして様々な事業を展開しておいでになる日野町の社会福祉法人わたむきの里福祉会さんと、京都府京田辺市にある、ノウフク・アワードでグランプリまで受賞された、全国的にも有名なさんさん山城さんを立て続けに視察させていただいて、意見交換を行ってまいりました。

 簡単に御紹介すると、わたむきの里さんは、平成十二年に創立された後、百二十名を超える障害者の皆さんが仕事をされていますけれども、農業を行っておられるファームわたむきという施設のほかに、資源回収を行うエコドームというところであったり、食品加工や弁当の製造や配食など、四つの施設で様々な事業を展開されています。

 特に、就労継続支援B型のファームわたむきでは、棚田を中心に九ヘクタールで米作りを、併せて、日野菜の栽培や加工をされています。令和二年には、日本最大級のお米の食味コンテストで滋賀県初の最高金賞を受賞されました。

 地域では大変大きな話題となりましたけれども、全国の専業農家が作ったお米との比較において金賞を受賞されたこともあり、ファームわたむきのお米はほとんどが予約注文でなくなる状況で、かなりの高値で販売されているというふうに伺っています。日野町は中山間地域でもあり、地域の稲作の担い手として大いに期待をされている存在であります。

 もう一つの、京都府京田辺市にある聴覚障害者が働かれるさんさん山城は、全国的に農福連携で有名な施設でありますが、宇治茶に始まり京都の伝統的京野菜であるえび芋、万願寺トウガラシ、京田辺ナスなど、地域特産品にこだわった農業に取り組んでおられます。

 既に認定農業者として地域農業の担い手としての地位を確立しておられ、伝統的野菜の分野においては貴重な存在であります。また、六次産業化を実現することで、全国平均を上回る作業工賃を達成しておられます。

 両施設をいわゆる視察に訪れた方は、是非取り組みたいというふうに頑張って帰っていかれますけれども、余り、同じように実現をしたというお話は伺いません。なぜなら、農福連携の成功には属人的な要素が大きいからだと考えます。

 社会福祉法人や施設、作業所に、農業に精通している人、あるいは事業経営の感覚に優れた人、そして、関係者を束ねてまとめるようなリーダーシップのある施設長や理事長さんがいる施設が成功されているのであって、当たり前の話ですが、どこでもかしこでも決して簡単に成功するわけではありません。

 視察に訪れた二つの施設で、農福連携の成功に求められる支援は何ですかというふうにお尋ねをしたら、福祉の分野に経営感覚に優れた人材を育て配置できる仕組み、あるいは、一般の施設は日々の業務で手いっぱいで、恐らく、農福連携に取り組みたくてもその余裕がないところが多いのではないか、新たな事業に取り組めるように余裕のある人員の配置が必要だというふうなお答えをいただきました。

 求められる支援策は、いずれも福祉サイドの要望であります。初期の頃と比較をすると、格段に進歩されているこの農福連携ですけれども、四つに分類されますが、このことは省略をさせていただいて、現状では、作業工程のいわゆる見直しや工夫や生産規模の拡大や生産性の品質の向上など、更なる進化を遂げています。

 そこで、農業サイドでは様々な事業を展開しているわけですが、一方の厚生労働省では、当然協力してやっていただいているものの、独自の展開と申し上げますと、農福連携マルシェの開催や専門家の派遣を支援する事業であったり、あるいは、ハローワークを通じて人手不足に悩む農業事業者に対して障害者を紹介、支援するマッチング事業などをされているところでありますけれども、それだけでは物足りないと感じているのは私だけではないはずです。

 そこで、障害者側あるいは福祉側に可能性といわゆる効果がすごく期待できる農福連携ですけれども、厚生労働省ではその農福連携の効果や可能性についてどのように認識をされているのか、お尋ねしたいと思います。

三浦大臣政務官 お答え申し上げます。

 農福連携は、農業と福祉が連携し、障害者の農業分野での活躍を通じて社会参画を実現する取組であり、障害者の自信や生きがいの創出につながるほか、農業分野での就労機会を拡大する上でも重要な取組であると考えておるところでございます。

 本年三月に実施いたしました農福連携に取り組む福祉サービス事業所に対する全国アンケート調査によりますと、八七・五%の事業所が利用者へのプラス効果ありと、また、五八・四%の事業所が過去五年間の平均賃金、工賃が増加したと回答しておりまして、福祉に一定の効果があったものと認識しておるところでございます。

 さらに、農福連携等推進ビジョンに基づく福祉の広がりへの支援として、高齢者、生活困窮者、引きこもり状態にある方、そして、働きづらさや生きづらさを感じている皆さんの就労、社会参画の機会の確保等の取組をこれからも進めていくところでございます。

 今後とも、関係省庁としっかりと連携し、農福連携を推進することによりまして、障害者等の就労機会を確保するとともに、その能力を生かし、生きがいや働きがいを感じながら活躍できるような活動を推進してまいりたいと思っております。

 引き続き、先生の高い御知見の中で御指導いただきますこと、よろしくお願い申し上げます。

小寺委員 質問が多過ぎたのか、時間配分を間違えたのか、ここで一番大事な質問をするところであったんですが、最後に、終わりますけれども、私が思っているのは、厚生労働省内にこそ農福連携室をつくってほしいということを申し上げたかったので、結論だけ申し上げて、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

野中委員長 次に、山崎正恭君。

山崎(正)委員 公明党の山崎正恭です。

 四国比例ブロック選出の新人議員でありますが、本日は農林水産委員として初めての質問になります。機会をいただきまして、ありがとうございます。貴重なお時間ですので、早速質問に入らせていただきます。

 まず初めに、現在、農政の憲法と言われる食料・農業・農村基本法の改正に向けての作業が行われています。大臣が所信の中でおっしゃられていたように、我が国の食をめぐる情勢は、これまでとは大きく変化しており、こういった社会情勢の変化や今後の見通し等を踏まえ、我が国の農政の基本方針としてふさわしいものとなるよう見直していく必要があります。

 今回の改正の目的の一つに、平時からの食料安全保障の確立が言われ、その状況を平時から評価する新たな仕組みの導入が検討されていますが、その評価の一つの指標が、国民一人一人がいつでも食料を安易に入手可能な状態にする食料自給率があります。令和四年度の直近の数字では、生産額ベースの食料自給率が五八%、カロリーベースは三八%であります。

 一方、もう一つの指標、食料自給力とは、農業資源、農業技術、農業労働力等にも着目し、日本ではこれだけの食料、カロリーを最大限生産することが可能であるという総合的な指標で、食の安全保障についてはこの指標で考えるべきだとの動きもあります。

 確かに、総合的に多くの観点から日本が食料を自給できる力を捉えて、力を蓄えていくことは重要でありますが、その反面、国民の皆さんにとって分かりやすい指標としての食料自給率という指標は、そういった意味において、ほかとは違う重要な指標でもあります。

 いずれにしても、大臣が所信でおっしゃられたように、農業政策の重要な使命はいかに国民の皆さんに食料を安定的に供給していくかであります。

 そこで、基本法の見直しの中で、食料自給率、食料自給力等を食料安全保障の強化のために明確に位置づけるべきだと考えますが、大臣の見解をお伺いします。

宮下国務大臣 国民の皆様に食料の安定供給の確保をする、そのためには、国内で生産できるものはできるだけ国内で生産していくことを基本として、それに安定的な輸入と備蓄、この三つを適切に組み合わせることで食料安全保障の強化を図ることが重要だと考えております。

 一方、昨年のウクライナ情勢の影響等によって肥料価格が高騰して、食料安全保障の確保に係る肥料やエネルギー資源の重要性を痛感したところでありまして、このような生産資材等の安定供給というのは自給率には反映されないので、自給率を見ただけではそこら辺の状況は分からないということであります。

 こういうことで、必ずしも食料自給率だけでは生産、消費の状況を直接に捉えられていないということを踏まえまして、食料自給率を目標の一つとしつつも、平時から、食料安全保障上の様々な課題に応じて、各種指標を用いて総合的に検証する仕組みを設けることを検討してまいりたいと思っております。

 その中で、御指摘の食料自給力指標、これも重要な指標ですので、しっかり位置づけていきたいと思っています。

 食料安全保障を適切に担保するための基本法上の在り方については、現時点ではまだ決まったものはありませんけれども、上記のような点を踏まえまして、しっかり検討したいと思っております。

 以上でございます。

山崎(正)委員 ありがとうございます。

 そういった形で、一つ重要な指標でもありますので、安全保障という面もありますし、ふだんからの農政というところでも重要な指標であると思いますので、よろしくお願いします。

 次に、緊急事態食料安全保障方針と食料・農業・農村基本法の改正についての、この関係についてお伺いします。

 農水省では、不測の要因により食料の供給に影響が及ぶおそれのある事態に対処するため、政府として講ずべき対策の基本的内容、根拠法令、実施手順を示した緊急事態食料安全保障方針を平成十四年に決定、数回改定していますが、今回の食料・農業・農村基本法の改正においては、不測時において、総理のリーダーシップの下、関係省庁が連携して政府全体で対応するための法整備を含めて検討していくと認識しておりますが、今回の改正と現状ある緊急事態食料安全保障方針について、何点か確認をさせてください。

 まず、基本的な質問として、現状、緊急事態食料安全保障方針があるにもかかわらず、新たに今回この改正の中で法整備をしていく必要性があるのか、また指針との整合性はどうなっていくのか、大臣にお伺いします。

宮下国務大臣 御指摘のように、不測時の食料安全保障につきましては、現在、平成二十九年九月に農林水産省が定めました緊急事態食料安全保障指針、ここにおいて、不測の事態の基準や必要な取組を整理しております。

 ただ、現行の指針は、まず第一に、法令に基づくものではないため、それ自身が不測時の制約を伴う措置を行う根拠になり得ないということ、それからもう一つは、あくまで農林水産省が策定したものであって、政府全体での意思決定を行う根拠とならない、こういう問題があるということです。

 一方で、近年、気候変動によります世界的な食料生産の不安定化、また、ウクライナ情勢等を受けた食料や生産資材の価格の高騰、サプライチェーンの混乱、こういったことによって輸入依存度の高い我が国の食料安全保障上のリスクが顕在化しております。そんな中、食料供給が大幅に減少する不測の事態への対応が必要であるというふうに考えています。

 このために、生産、流通、消費や法律、リスク管理など、幅広い分野の有識者や関係省庁から成ります不測時における食料安全保障に関する検討会を開催しまして、現行の指針を必ずしも前提とせずに、不測の事態への対応についての法的な根拠の整理、また必要な対策の検討を行っているところであります。

山崎(正)委員 必要性がよく分かりました。ありがとうございました。

 少し内容に入っていきたいと思います。

 次に、不測の事態のレベル分け、例えば先ほどの指針においては、一番高いレベル二は、生命維持を図るため、一人一日当たりの供給熱量が二千カロリーを下回る状況、レベル一は、特定の品目が平時の供給を二割以上下回る状況とされていますが、今回の法改正の背景には、先ほどから大臣も述べられていたような国内外の厳しい状況があります。

 また、ドイツやスイスなど諸外国では既に不測時の対策法を制定しており、スイスなどでは、不測時のおそれのある段階からの対策や、さらには、食料の不足する期間をどれだけにするのか、そういったことを意識しながら作られています。

 こうしたことも想定しての、更に緊急事態の想定を上げての対応が求められると思いますが、緊急事態食料安全保障指針で規定されている不測の事態レベルゼロから二については新法においてはどのように定義されていくのか、お伺いいたします。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 緊急事態食料安全保障指針におきましては、事態の深刻度により、レベルゼロから二の三つのレベルを設定しております。

 レベルゼロは、事態の推移いかんによっては食生活に重大な影響が生じる可能性がある場合、レベル一は、特定の品目の供給が平時の供給を二割以上下回ると予測される場合、レベル二は、一人一日当たり供給熱量が二千キロカロリーを下回ると予測される場合を、それぞれ判断基準としております。

 現在開催しておる不測時における食料安全保障に関する検討会におきましても、食料供給の大幅な不足のおそれのある段階から、国民生活や国民経済への影響の深刻度に応じて対策を強化していく方向で現在御議論をいただいているところでございます。

山崎(正)委員 次に、今回の法改正では、不測事態での食料安全保障対策として、流通規制や私権制限を伴う措置も含めて実施していくことも想定されていると思いますが、今回の改正で食料の供給を確保するための政府の措置に関して、特に農業者に係る部分、生産者に対しての措置に関する部分、例えば、米を作ってほしいとか小麦を作ってほしい、国民のカロリーが不足しているので芋を作ってほしいなど、具体的にどのようなことを想定しているのか、お伺いします。また、それに対する罰則規定を設けるのかどうか、併せてお伺いします。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 検討会におきましては、食料供給確保のための対策として、出荷の調整、輸入による対応、生産の拡大などの措置の必要性について検討を行っているところでございます。

 農業者の方々におきましては、生産したものの計画的な出荷や、備蓄や輸入によって十分な食料供給を確保できない場合において、生産の拡大を図っていただくための措置について検討会で議論を行っているところでございます。

 加えて、検討会におきましては、民間事業者のリスクを軽減するために、インセンティブを持たせるような支援措置が必要である一方、供給確保のための指示、これに実効性を持たせるために、他法の例を踏まえつつ、履行されない場合の公表措置や罰則についても議論を行っているところでございます。

 いずれにいたしましても、事業者の負担を十分に考慮しつつ、不測時の食料安全保障の確保のために官民が講ずべき対策について検討してまいります。

山崎(正)委員 ありがとうございました。丁寧なまた議論をお願いしたいと思います。

 仮に増産力や生産転換を求めるにしても、平時からの生産力や体力をつけておかないといざというときに作れない。そういう意味で、ふだんからの取組が非常に重要であると思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、政府の備蓄米についてお伺いします。

 これについても、不測の事態における備蓄量において様々な意見があるところですが、現在は年間原則二十一万トンで、五年分で百万トン程度が備蓄されていますが、主食用米の需要量がどんどん減少していく中で、備蓄するためのコストも考えて減らした方がよいという意見と、一〇〇%自給できる米はしっかりと備蓄すべきだという意見がありますが、食料安全保障上の観点から、政府の備蓄米制度について、適切な量など、現在どのような議論が行われているのか、お伺いします。

宮下国務大臣 答弁に先立ちまして、先ほど山崎委員の御質問に対して、緊急事態食料安全保障指針が平成二十九年九月に策定と答弁したんですが、正しくは、平成二十四年九月が正しいということでしたので、この場をおかりして訂正させていただきます。

 その上で、ただいまの御質問ですが、現在、米の備蓄につきましては、十年に一度の不作、作況でいいますと九二の状況や、通常程度の不作、作況程度は九四を想定して、これが二年間連続した事態があった場合、こういったパターンで、いずれにしても、不足分を補って一年間供給できる水準として百万トン程度が必要だということで運用しているところであります。

 御指摘のように、この備蓄水準については、食料・農業・農村政策審議会の基本法検証部会、また食糧部会におきましても、需要が減少している中で政府備蓄米の水準を考えるべきではないかという御意見や、米の備蓄量の変更については慎重に検討する必要がある、また、備蓄の強化に要するコストについての国民への分かりやすい説明が必要だ等々、様々な御意見をいただいているところであります。

 さらに、本年六月に取りまとめました食料・農業・農村政策の新たな展開方向におきましては、食料の備蓄強化に向けては、国内外の食料安全保障の状況を適切に把握、分析の上、備蓄の基本的な方針を明確にしていくことを検討することとしております。

 こうしたことも踏まえて、米の備蓄の在り方についても、備蓄全体の議論の中で、今後しっかり必要な検討を行ってまいりたいと考えています。

山崎(正)委員 全体的な議論が大変必要だと思いますが、やはり我が国といえば、水田があって米の生産力がある、この力が日本というところもあると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。今後、やはり、平時からの米の生産力とか将来の水田の在り方等も含めた検討を是非お願いしたいと思います。

 次に、大臣が所信の中でもおっしゃっていました、食料システム全体を持続可能なものにしていくための適正な価格形成についてお伺いします。

 これにつきましては、特に農業従事者からの要望、期待も大きいのですが、現在、農水省においては、飲用牛乳と豆腐、納豆の適正な価格形成についてワーキンググループでの議論がスタートしているとお伺いしています。

 そこで、現在、適正な価格形成について議論を進めていますが、先ほどの飲用牛乳と豆腐、納豆に続いて、今後、その他の品目も検討するのかどうか、お伺いいたします。

宮下国務大臣 御指摘のように、農林水産省では、適正取引を推進するための仕組みとして、生産から消費までの各段階の関係者が一堂に集まる、適正な価格形成に関する協議会を八月から開催しておりまして、先月開催しました第二回の協議会におきましては、まずは、流通経路が簡素でコストの把握も比較的可能であり、生産等の持続性を確保すべき品目である飲用牛乳と豆腐、納豆、この二つを対象としてワーキンググループにおいて具体的な議論をすることとして、その他の品目についても、協議会でのコストデータの把握、収集や、価格交渉や契約においてどのような課題があるか等を協議会において調査、検証することが決定されたところであります。その際の議論においては、その他の品目についてもしっかり検討することが必要との意見がありました。

 今後、こうした議論を踏まえ、消費者の皆様、多くの関係者の皆様の理解を前提として、我が国の実態に即した価格形成の仕組みづくりを進めてまいりたいと考えています。

山崎(正)委員 なかなか難しい問題だと思うんですけれども、やはり、コストの見える化とか、経営的な視点の強化、農業従事者の方のそういった取組も重要になってくると思いますが、実効性のある仕組みづくりが大変期待されておりますので、是非これからも取組をよろしくお願いいたします。

 そして、やはり適正な価格形成を行っていくには、生産者から流通業者、販売業者、そして消費者までの国民理解の醸成、なかんずくその中でも消費者の皆さんの理解がその大前提となると考えます。そこで、そのための農業教育が非常に重要であると考えますが、農水省としてどのような取組を行っていくのかをお伺いします。

宮下国務大臣 おっしゃるとおり、適正な価格形成を進めていくためには、農産物や食品の生産、流通に関わる実態、また、生産資材や原材料のコスト高騰の背景等について消費者の皆様にも正確に認識していただくことが不可欠だと考えております。

 このため、農林水産省では、本年七月からフェアプライスプロジェクトというプロジェクトを開始しまして、生産者インタビューなどインターネット動画による情報発信をしたり、また体験学習イベントを開催したり、また親子で学べる動画コンテンツの作成をしたり、こうした取組で生産コストが上昇している背景などを分かりやすく伝えるための広報を行っているところであります。

 こうした広報によりまして、まずは生産現場の実情を消費者の皆様に知ってもらうことが大事でありますけれども、適正な価格形成を行っていくためには、生産コストだけではなくて、流通や販売のコストを含めて食料システム全体で考えていくことが必要ですので、このような考え方でしっかり価格形成の仕組みづくりを進めてまいりたいと思っております。

山崎(正)委員 ありがとうございます。

 アニメを使った動画コンテンツとかがありましたけれども、僕も元々が中学校の教員でして、農業従事者の方に、しっかり子供の頃からの農業教育を頼むというふうな声がありますので、またよろしくお願いします。

 次に、農業の持続的な発展と農村の振興を図る上での多様な経営体についてお伺いします。

 現在の日本の農業従事者の五六・七%が七十歳以上であるという年齢構成であり、今後二十年で高齢者の方がリタイアすると基幹的農業従事者は現在の約四分の一まで激減すると予想されており、今回の法改正の中では、食料の生産基盤たる農地を確保、維持していくためには、中長期的に農業従事をしてくれる人材、いわゆる受皿となる経営体、付加価値向上を目指す効率的かつ安定的な経営体を育てていき、農業で生活していける基盤をしっかりつくっていく、それとともに、継続的に農地利用を行う小規模の経営体の皆さんや農業を副業的に行う経営体の維持強化を図っていくというふうに認識しています。

 ここで確認したいのが、地域計画に位置づけられた、先ほど述べた受皿となる経営体、いわゆる担い手と言われている人以外の小規模な経営体の人や農業を副業的に行う経営体等、多様な経営体が、基本法の見直しの中ではしっかりと農業者として明確に位置づけられていくべきだと考えますが、大臣の見解をお願いします。

宮下国務大臣 今後、全ての農地を有効活用していくということが重要でありますけれども、いわゆる担い手だけでは全ての農地をカバーし切れないということもあります。そういうことも含めて、農業を副業的に営む経営体などの多様な経営体についても、農地の保全管理や集落機能の維持の役割を果たしているというふうに認識しています。

 このため、本年六月に政府の主要閣僚により取りまとめられました食料・農業・農村政策の新たな展開方向では、こうした多様な農業人材についても、担い手とともに生産基盤の維持強化が図られるように一定の施策を講ずる旨記載されているところであります。また、本年九月にいただきました食料・農業・農村政策審議会の答申においても同様の内容が記載されております。

 したがいまして、基本法の見直しに当たりましては、新たな展開方向やこの審議会の答申に示された方向に沿って、この多様な農業人材についてもしっかり位置づけをしていきたいと思います。

山崎(正)委員 ありがとうございました。

 実は、この点につきまして、私の地元高知の若い四名の農業従事者の方からお話を聞かせていただく機会がありました。

 最初に四人から話があったのは、高知県では、基幹的農業従事者がこの二十年で約半数近く減っているにもかかわらず生産額は変わっていない、少ない人数で生産力を上げるために頑張っているんですよという話がありました。四人とも、規模を拡大しながらしっかりと農業で稼いでいきたい、地域の基幹産業としての農業を守っていきたいとのことでした。

 そこで、私の方から、今、農水省の方は受皿となる経営体を育てていきたいと考えているから、みんな法人にしたらと言うと、その中の一人の若者は、僕は既に法人にしていますと言って、今の彼の課題は、地域の農業従事者の方がどんどん高齢化されて引退する、是非僕にやってもらいたいと言って、どんどん集まってくるらしいんですけれども、規模拡大しているけれども、やはり、自分の農地と農地の間に、もう引退しているけれどもどうしても土地を売りたくないという人がいて、飛び地になってしまって、なかなか集約が進まないというふうに言っていまして、彼は、今、人・農地プランや目標地図で取り組んでいる地域における適地適作やそれに伴う農地の集積、集約の取組の展開、これにすごく期待しているというふうに言っていました。

 もう一人の青年は、僕も法人にしたいと思っているが、仕方が分からない、誰か丁寧に教えてくれる人がいれば法人にしたいということでした。

 もう一人の青年は、僕は、実は、山崎さん、子供がいるし、今は、できたら週に一日、日曜日は休みにしたいと考えていると。また、法人にして人を雇うと、閑散期に違う仕事を準備しなければならないので、将来的には分からないが、今は法人にしないで頑張っていこうと思っていると言っていました。

 これを聞いて僕が思ったのは、今、どの業界でも人手不足でありますが、今の若い人の考え方として、お給料よりも休みというか、家族と過ごす時間を大切にというのが最近ぐっと増えてきたと感じるのですが、まさに今の時代の若い農業従事者の本音の意見だなというふうに思いました。

 最後の若者は、野菜安定価格制度と収入保険の同時利用を恒久的な制度にしてほしいというお願いがありました。

 何が言いたいかといいますと、四人とも、農業に誇りを持って、これからしっかり高知県の農業を支え、農業で生計を立てていこうと思っている若者ですが、その経営の仕方は様々であり、そして、課題やニーズもまさに四者四様。ただ、逆に、この四人に共通しているなと感じたのは、しっかりと必要な支援を講じて育てていけば、四人とも将来はこの国の農業の担い手になっていく可能性が高いということでありました。

 そこで、経営体や規模によらずに、やる気のある人がきちんともうかって、持続できるような、幅広で懐の深い支援を国には是非お願いしたいと考えますが、大臣の決意のほどをお伺いいたします。お願いします。

宮下国務大臣 現場の皆様の声を生に伝えていただきまして、本当にありがとうございます。

 現行の食料・農業・農村基本法でも効率的かつ安定的な農業経営を育成、支援することが規定されておりますけれども、こうした農業経営はどういったことを意味しているかといえば、食料・農業・農村基本計画において、経営規模の大小や家族経営か法人経営かを問わずに、経営意欲があり、農業所得で生計を立てる農業者である旨、示しておりまして、まさに今お話があった皆様のような方を示している、このような担い手を育成、支援をするというふうに記されているところでございます。

 その結果、多くの品目で、中小経営、家族経営を含めた担い手が農業生産の相当部分を担う構造を実現しているところであります。

 今後も、担い手については、法人化の推進を含めて、補助金、金融措置、税制措置など様々なツールを用いて、それぞれの支援のニーズに合わせて幅広くしっかりサポートしてまいりたいと考えています。

山崎(正)委員 次に、農業現場の皆様からニーズが高いのが、農業の集約化と経営基盤を目指すための強い農業づくり総合支援交付金と産地生産基盤パワーアップ事業の拡充であります。先日もニラの集出荷場ができまして、作業の集約化が進んで大変喜ばれていますが、何分、申請してもなかなか通らない、採択されないというお声が多く聞かれます。

 また、現場のニーズが高いのは改修であります。当初の新規のみではなく改修も認められましたが、生産性を上げていくことが目的ですので致し方ありませんが、改修には機能アップが条件となっており、費用額も含め、二の足を踏んでいるというお声も聞きます。

 そこで、生産基盤を強化するために、強い農業づくり総合支援交付金や産地生産基盤パワーアップ事業等の支援の拡充と、特に施設整備については、要望の多い施設改修等、現場のニーズに対応できる運用やメニューを創設するなど、一層の拡充を強く求めたいと思いますが、農水省の見解をお願いします。

平形政府参考人 お答えいたします。

 強い農業づくり総合支援交付金や産地生産基盤パワーアップ事業につきましては、委員御指摘のとおり、産地の収益力向上を目的としておりますので、老朽化に伴う建屋のみの改修ですとか施設の単純更新は支援の対象外としておりますが、一方、これらの事業につきましても、令和元年度の補正予算以降は、内部設備の増強ですとか性能の向上等を伴う場合は、既存施設の建屋の改修も含め支援対象としているなど、いろいろ工夫をしていきたいというふうに思っておりますので、産地の収益力強化に向けた取組を支援していきたいというふうに考えております。

山崎(正)委員 次に、林業分野の外国人材の活用についてお伺いします。

 今、林業分野でも、すごく人材不足が深刻であります。実は川上から川下までが大変な状況ですけれども、木材加工や製材については、本年十月三十一日に、技能実習第一号から第二号、三号への移行ができる職種に、研修期間も最長五年間となり、より一層人材として活躍できることが期待されております。一方で、川上の育林、素材生産作業においては現在一号のままで、二号、三号へ移行できる職種への追加はこれからとなっており、是非、積極的に検討していただいて、早期に二号、三号へ追加されるよう林野庁としても業界全体の後押しを引き続きお願いしたいと思いますが、大臣の見解をお伺いします。

宮下国務大臣 技能実習制度は、労働力の確保ではなくて海外への技術移転を目的としているものでありますけれども、林業については、業界団体の皆様が、技能実習二号、三号の対象職種の指定に向けて評価試験の作成等の取組を進めておられます。

 このため、農林水産省としましては、評価試験の作成、試行、受入れ事業体向けマニュアルの作成等に必要な予算を計上しまして、関係省庁と連携しつつ、技能実習二号、三号への林業分野の追加及び追加後の技能実習二号外国人材の早期受入れを目指して、業界団体の取組への支援を進めております。

山崎(正)委員 最後の質問、実は、カツオ・マグロ漁業の皆様方が、今、洋上投票の方がファクス投票になっているんですけれども、是非インターネット投票にしていただきたいというふうな御要望をいただいておりまして、本日、総務省の方からも来ていただいておりましたが、済みません、時間配分がうまくできておりませんでして、また次回にしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わりたいと思います。大変にありがとうございました。

野中委員長 次に、金子恵美君。

金子(恵)委員 立憲民主党の金子恵美でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 この農水委員会では、宮下大臣が与党筆頭理事でいらっしゃったときに、私は野党の筆頭理事をさせていただきまして、宮下大臣のお人柄にも触れる機会が多々ありました。改めて、宮下大臣には、農林水産大臣御就任、誠におめでとうございます。期待しております。是非この期待を裏切らないでいただきたいという思いもあります。

 そして、今、我が国の第一次産業、農林水産業は大変厳しい状況にあると思います。そして、多くの問題を抱えている農水省のトップとして是非しっかりとかじ取りをしていただきたいというふうに思いますし、特に、先ほど来お話がありますけれども、農政の憲法であります食料・農業・農村基本法の見直しが進んでいる中にあって、やはり最も重要な時期に大臣になられたわけですから、これまでの農政の問題点をしっかりと検証していただいて、チェックをしていただいて、間違いのない方向でこの日本の農業を守っていただきたいというふうに思っております。よろしくお願いいたします。

 その上で、自然災害が本当に頻発しているということでありますし、また、この激甚化というものも顕著になっているのではないかと思います。そして、第一次産業、農林水産業もやはり各地で被害に遭っている状況です。

 もちろん東日本大震災原発事故の被災地である福島県にも大臣はお入りいただいているということでありますけれども、そこからの教訓を得て、ある意味、諦めないことの重要性とか、どんなことがあってもとにかく第一次産業を再生していくんだということで、いろいろな思いもお持ちいただけたのではないかというふうには思うのですけれども。そういったところで、私は、今こうやって自然災害がこれだけ頻発し、そして、先ほど申し上げましたように激甚化しているということを考えると、今までの農政の中であった仕組みだけでは足りないんじゃないかなという気がしておりまして。

 もちろん、何か被害があると、必ず、そのときに現地に足を運ばれる皆様方は、いやあ、しっかりと農済に入っておいていただければよかったですねのお話とか、収入保険にもしっかりお入りいただきたいとか、そういうお話になるわけなんですけれども、これだけで本当に大丈夫なのか、今までの仕組みだけで大丈夫なのか、そういう議論もそろそろしていかなくてはいけないのではないかなというふうに思うんですね。

 そこで、大臣のお考えと、そして御決意をお伺いしたいと思います。お願いします。

宮下国務大臣 御指摘のように、近年、梅雨前線、集中豪雨、台風等もありますし、被害が激甚化しているという認識は私も持っております。

 こうしたことが起こったときに、まずは災害復旧事業をやって被災した農地等の復旧を図ること、それから御指摘のような農林漁業セーフティネット資金とかで資金的にサポートする、それから共済金も早期に支払いをする、収入保険に係るつなぎ融資もやる、こういういろいろなことで支援をしてきています。

 それから、やはり、今までの仕組み、当初の仕組みでよかったのかという反省に立って、収入保険については、過去五年の収入実績で基準が決まるわけですけれども、何回もその五年の中に被害を受けて収入が減ってしまうと基準が減ってしまうということで、補償がレベルが下がってしまうということもあるので、被災により収入が大幅に減少した場合には、その後の基準収入が下がることを少しでも緩和しようということで、令和六年の加入者の皆様からは、被災年の収入実績を上方修正して、基準収入を引き上げることで、災害による影響を緩和する特例を実施するというようなこともしております。

 さらに、今般の補正予算においても、豪雨災害だけじゃなくて、今年は高温による被害もひどいわけですが、高温環境に対応した栽培体系への転換に向けまして、地域の実情に応じた高温耐性品種や高温対策の栽培技術を産地に導入するための実証等の支援も盛り込んでいるところであります。

 農林水産省として、引き続きまして、都道府県や市町村の皆さんとも連携をして、こうした危機時にどうそれをサポートしていくかということは、不断に取り組んでいきたいというふうに思います。

金子(恵)委員 ありがとうございました。

 改善をしている部分もあるのだとか、現場の声もしっかりと反映しているというようなことではありました。

 線状降水帯のような状況が発生したり、やはりこの気候変動をしっかりと注視して、そして、その上で制度設計等をやはり考えていかなくてはいけないというふうに思いますので、是非よろしくお願いしたいと思いますし、福島県においても、御存じのとおり、台風十三号によって、いわき市などでは甚大な被害を受けているということでありますので、よろしくお願いしたいと思います。御対応をお願いいたします。

 そして、今福島県のお話をしましたけれども、いわき市もそうなんですけれども、ALPS処理水の放出によっての影響を大変懸念をしていました。このALPS処理水に係る責任ある対応というのが今求められていると思いますし、水産業の再生に係る取組の強化についてもしっかりと対応してほしいという、昨日、実は、私のところに届きました、ふくしまの復興・創生に向けた緊急要望、農林水産分野の、福島県からいただきましたこういう要請、要望書がございます。その中にも、今申し上げましたようなALPS処理水の問題と水産業再生に係る取組の強化ということで、是非しっかりやっていただきたいという要望があるわけなんですけれども。

 前の大臣の話を申し上げてしまいますけれども、残念なことに、ALPS処理水について、私もこの委員会の中で随分質問させていただきました。そのたびに、人ごとのようなお言葉をいただいたこともあり、大変苦しい思いをしておりましたけれども、実際に海洋放出がなされたときに、やはり、中国の日本産水産物の全面輸入停止措置について全く想定していなかったというお言葉を発したということについては、随分、私の地元の福島県民からもそうでしょうし、全国各地の皆さんからも批判があったというふうに思います。

 まさか、想定外ではなかったはずなんです。農水省の皆さんあるいは水産庁の皆さんは、恐らく準備はされていたと思います。私は、それが表に出ないのは残念だとも思っているし、あらゆることを想定して準備をして、その上で、これから、先ほどもお話がありましたけれども、福島県の漁業の問題だけではなくて全国の漁業をどう守っていくかということが重要でありまして。

 今後も、改めて、福島県の要望の中には、万全な風評対策と、ALPS処理水の処分に係る安全確保等をしっかり進めてほしいということと、それから水産業再生に係る取組強化ということで、令和四年の沿岸漁業生産額は震災前の三八%にとどまっているという状況でありまして、今現在は、ALPS処理水が放出された後も、いろいろな方々が福島支援をしてくださって、何とか踏ん張って前進をしているところでもありますけれども、でも、そもそも、全く震災前に戻っていない状況です。それで海洋放出前と後のことを比較されてもどうしようもなくて、やはり震災前にいかに戻していくかということも重要なのだということも申し上げさせていただきたいと思います。

 今申し上げました福島県の問題と、そして、全国各地の漁業をしっかりと守る、我が国の漁業全体をどのように守っていくか、大臣の御所見を伺いたいと思います。

宮下国務大臣 ALPS処理水の海洋放出への対応につきましては、岸田総理も述べられておりますとおり、たとえ今後数十年の長期にわたろうとも、ALPS処理水の処分が完了するまで、政府として責任を持って取り組む必要があると私も考えております。

 また、被災地の復興再生も私にとって大変重要な責務であると考えております。

 九月二十七日に福島県を訪問して、漁業関係者の皆様、また仲買人、小売の皆様からもお話を伺ったんですが、先生御指摘のように、今全国の皆さんが、福島県そして水産業を応援しようという機運が高まっていて、実際は、常磐物、福島県産の水産物が欲しい、こういうことで、むしろ、魚が足りない、もっとやはり水揚げを増やす努力をしなきゃいけないんだ、こういう力強い言葉もいただきました。そういった意味で、本格操業に向けた水揚げ回復の取組などについてしっかり取り組んでいくことが必要だと認識しています。

 農林水産省としましては、これまでも、復興予算を活用して、福島の水産物の安全性について国内外に向けて透明性高く発信するとともに、漁業の収益性向上、また水産加工業の販路回復等への支援を行ってきているところでありますし、また、日本全体の水産業を守るという意味でいいますと、このALPS処理水の海洋放出の影響を乗り越えて、持続可能な漁業を実現するためにつくりました「水産業を守る」政策パッケージ、三百億円基金、五百億円基金、こうした基金も活用しながら、必要な支援が、福島県を含めて影響を受ける現場の皆様に迅速かつ柔軟にお届けできるように、しっかり取り組んでいきたいと思っております。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 ALPS処理水の海洋放出というものは、本当に長期的に進めていかなくてはいけない話なんですね。それで、今の、直近の例えば事業の活用実績とか、そういうものにとらわれない息の長い支援を実施していただかなくてはいけないということだというふうに思います。

 今、「水産業を守る」政策パッケージについて、最初は三百億、そして次に五百億、そして二百七億ということで、全体で千七億円となったわけなんですけれども、これについても、今大臣からは柔軟な運用をやるというふうにおっしゃっていただいたわけで、そこがとても重要で、今までも、この基金は、なかなか現場では、何か使いにくい、使い勝手が悪いというような声があって、特に、最初の三百とか五百億のことについては、やはり沿岸漁業者のところには届いてないよという声もありまして、お金を積まれて、基金を積まれても、実際に本当に支援に回るのかということが明確に示されてこなかったというのがありますので。

 改めて、今回の、昨日の福島県からの要望の中にも、まさにそこです、「水産業を守る」政策パッケージについては、現場の実態に即して迅速かつ柔軟な運用を図ること、これを求められていますので、大臣、今、先におっしゃっていただいたと私は理解をしておりますけれども、是非その部分についてはこれからも注視していただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いします。

 そして、次に参ります。

 私は、この委員会の中で、今年の六月の十四日でありますけれども、通常国会の農林水産委員会において、食料安全保障の確保など、やはり内閣の重要政策に係る取組を推進する体制の重点的な整備のため、令和六年度の定員要求については、前年度を大幅に上回る新規増員要求を行うとともに、確実に確保すること、これを野村大臣に求めました。野村大臣は、そのときに、食料の安全保障を始めとした農林水産業を取り巻く諸課題に的確に対応するために最大限の取組をしていきたいとの答弁を下さいました。

 宮下大臣も、全く同じ考えでしょうか。

宮下国務大臣 はい、私も同じ考えで取り組みたいと思っています。

 特に、食料安全保障の確立を始めとしました農政の課題への対応に当たりましては、予算だけではなくて、必要な体制の確保も大変重要だというふうに認識しています。

 令和六年度組織・定員要求につきましては、政府全体のルールの下で、食料・農業・農村政策の新たな展開方向も踏まえて、所要の定員要求を行っているところですけれども、引き続き、査定当局に対してもしっかり説明をして、定員確保ができるように頑張りたいと思います。

金子(恵)委員 大臣もそういうお考えなんですけれども、残念ながら、九月七日に公表した令和六年度機構・定員等の要求状況、これを見ますと、農林水産省だけが、要求時点で、減員数が時限増員及び特例定員を除く増員数を上回る状況にある、減員数が増員数を上回る状況にあるということで、極めて厳しい状況からスタートしているということです。

 でも、その要求されたものも、これまででいえば、確定率は、全省庁の中で農水省は一番悪いんですよ。ですから、要求しても確定の段階でまた減らされていくということですから、本当に我が国の農業、食料安全保障というとても重要な政策をこれからつくり上げなくてはいけない。これはある意味、前回のときも私申し上げましたが、農は国の基なりなわけで、農業あるいは第一次産業というのはやはり国力を示すものでもあるわけで、それが本当に弱まっていってはいけない。それを強めるためにやはり人員確保はしっかりとやらなくてはいけないということなんですけれども。

 実際に、内閣の重要課題を推進するために、私たちは人員は確保しなくてはいけないというふうに言っているのですけれども、内閣人事局としては、令和六年度内閣の重要課題を推進するための体制整備及び人件費予算の配分の方針を決定していますけれども、内閣の重要政策に係る取組を推進する体制の整備の重点化項目に、食料安全保障の強化と農林水産業の持続可能な成長の推進、これが盛り込まれなかったんです。ということは、内閣人事局から見ると、いや、これは重要な政策ではないということなんでしょうか。

 今日は内閣人事局の阪本人事政策統括官がおいでですので、教えてください。

阪本政府参考人 お答え申し上げます。

 内閣人事局では、御指摘のとおり、機構・定員の審査を通じまして、内閣の重要政策へ迅速かつ的確に対応できる政府の体制の確保に努めているところでございます。

 農林水産省につきましても、直近三年間を見ますと、例えば、直面する課題である食料安全保障の強化、そして農林水産物等の輸出促進、水際検査、防疫の強化、そういったものに対応するため、二百人以上の増員を措置しております。

 令和六年度につきましても、これらのほか、現在進められている食料・農業・農村基本法の見直しを受けました新たな課題などに的確に対応していくため、農林水産省の要求を踏まえつつ、必要な体制を適切に確保してまいる所存です。

金子(恵)委員 水際対策を含むCIQというものは削られたということですから、実際にやはり減らされている状況になっているわけなんですね。削減されているわけです。

 そして、繰り返し申し上げますけれども、食料安全保障の強化、そして農林水産業の持続可能な成長の推進、とても重要な時期に来ているということですよ。それなのにもかかわらず、実際には、今まで確定率が余りにも低過ぎるじゃないですか。今申し上げたその内容も中に含まれていない。

 ただ、今、もし阪本人事政策統括官がこれからしっかりと対応するということを、ここで、この委員会でおっしゃっていただいたということであれば、農水省がここでしっかりと対応して押して押していけば、しっかりと満額確保できるんですか。予算も満額確保したいけれども人員もしっかりと満額確保したいということなんですけれども、阪本統括官、いかがでしょうか。

阪本政府参考人 お答え申し上げます。

 なかなか、現時点では、まだ農林水産省とも議論の段階でございますので、なかなか確たることは申し上げられませんが、我々も、農林水産省全体としては確かに数字として例えば査定率がよくない、そういったことも御指摘ございました。ただ、例えば、新たな課題の企画立案を担う農林水産省の本省とか、あるいは国際的な課題である動植物検疫、漁業取締り、そういったところを担当する部署について見ますと、この三年間で百人程度の純増をしております。そういった配慮は、当然、内閣の重要課題を推し進める内閣人事局としてはやっていきたいと思っております。

 まさに、今後とも農林水産行政が新たなニーズに対応していくことができますよう、引き続き適切に対応してまいりたいと思っております。

金子(恵)委員 時間が参りましたのでこれで終わりたいとは思うんですけれども、大臣に、最後もう一回決意を聞いて終わりたいと思います。

野中委員長 申合せの時間が来ておりますので、答弁は簡潔にお願いいたします。

宮下国務大臣 本当に、今、農政の大転換期でありますし、今頑張らないでどうするという気構えでしっかり取り組んでいきたいと思います。

金子(恵)委員 ありがとうございました。終わります。

野中委員長 次に、近藤和也君。

近藤(和)委員 石川県能登半島の近藤和也でございます。よろしくお願いいたします。

 早速質問に入らせていただきます。

 日本海の好漁場でございます大和堆での違法操業問題、これが出てきてから大体八年前後になります。私もこの委員会で度々取り上げさせていただいていますが、例えば取締り船や巡視船の放水口を増やしてはどうか、そういった変化球的な質問もさせていただきながら、ただ、実際にはそういった船も最近増えてきているということも伺っております。様々な試行錯誤をしながらも問題解決をしていかなくてはいけないと思っています。

 そして、その中で、この二、三年は違法操業が減っている。一方で、北朝鮮船籍ではないかと見られる公船の影響で、日本の漁船に対して移動の要請が度々出されて、漁ができないという状況が発生をしています。

 公船であれば、EEZの中であっても、普通の航行であれば退去勧告や放水などできるわけではない。実際には、外務省に確認しますと、こういった状況はある程度連絡を受けている、農水省等と情報共有はできているというふうなことは聞いておりますけれども、実際には、では、このままの状況が続いていいのかということなんですね。

 違法操業だったら出ていけとできるけれども、公船だったら、逃げてください。これであれば、漁師さんたちが漁ができない。ただでさえ今、水産資源が減ってきているという状況の中で、自然のものはいかんともし難い部分はありますが、こういう人為的なものというのは、やはりこれは政府に頑張ってもらわなくてはいけません。こういった事態を少しでも改善させるべく努力をしていただきたいと思います。

 外向きのことであれば、いや、公船だから何もできませんよということではなくて、この部分に関しては、政府全体、外務省も関わってくるところで、農水省ではいかんともしにくい部分はあるにしても、何らかの働きかけはしていただきたいと思いますし、内政的な部分に関しては、これは支援ですとか、こういったことをしっかりと拡充していくということを更に準備をしていくべきだというふうに思います。

 この点について、現状からの更なる脱却、改善ということで大臣に伺いたいと思います。

宮下国務大臣 御指摘のように、大和堆周辺水域において、北朝鮮公船の可能性がある船舶の活動が確認される等の情報があった場合には、我が国漁船の安全な操業の確保を最優先として、必要に応じて、当該水域の一部から一時的に移動を要請しているところであります。

 また、違法操業を行う外国漁船に対しては、退去警告の措置によって我が国水域から退去させておりまして、本年においては、十月末現在、延べ六十八隻の外国漁船に対して退去警告を行っております。

 御指摘の、公船についてもう一段の対応をというお話でありますけれども、公船については、海上保安庁と連携をしてしっかり対応していくということです。特に、北朝鮮公船は武器を有している可能性も排除できませんので、我が国の漁業者の皆さんが安心して操業できるように、海上保安庁とか関係省庁と連携して対応を取ってまいりたいと思っております。

 それから、支援についてですけれども、おっしゃるとおり、一時的退避等々で漁業収入が減ってしまう、こういった事態も発生しておりますけれども、漁業共済、積立ぷらすによってしっかり補填をすること、また、外国漁船の操業対策事業ということで、外国漁船の操業状況の調査、監視活動を行っていただいた場合に、当該活動に関する経費の支援ということで、こうしたことで、収入減のところを補う支援も予算措置しているところでございます。

 総合的に持続可能な操業ができるように支援をしていきたいと考えています。

近藤(和)委員 様々なことをしていただいていることは分かりますが、やはり政府としての覚悟というものが必要だと思います。

 その点で、岸田総理の先ほどの臨時国会の所信表明の中でも、そして宮下大臣の所信の中でも、日本海、そして、海における資源確保ですとか安全操業という言葉が一切入っていなかったんですね。ですから、私は、ここはちゃんと意識をして動いていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、次の質問に参ります。

 中山間地直接支払制度について伺いますが、資料一にありますように、この緑の線、耕地面積が平成十二年から見てもかなり右下下がりであることが分かる一方で、中山間地のこの協定面積等で見ますと相当頑張っていただいているなということは、私の地元からも、皆様から御意見をいただきます。

 その中で、いい制度なんだけれども、地域によっては半分ぐらいの集落しか入っていないよという集落もあることも事実でございます。制度を活用できる人材がいる地域しか活用できていないのではないか、これも現状でございますし、私の知っている大変親しかった方が、本当にまめでリーダーシップがあって事務手続ができる方が亡くなられたんですけれども、その方の集落もやはり困ったという現在進行形の話が、恐らく全国各地であるのではないかなというふうに思います。

 そして、ある町では、その町単位の中で皆さんでお金を出し合って、集落ごとでお金を出し合って、そして人を雇って、ちゃんと事務手続をして、この制度に入るべき中山間地の皆さんが入っている。一方で、隣の町ではばらばらで、大変ひどい状況だ。所属する市や町によって制度が使える、使えないという差があるということは、やはりよい状態だとは到底思えません。

 その中で、来年は第五期の最終年度ということでございます。第六期へ向けた見直しも来年八月にまとめるというふうに伺っています。この手続の更なる簡素化や、委託も含めた事務負担の軽減、また、要件緩和、使い勝手をいかによくしていくか、そして、隣町の好事例を、しっかりとそれを普及させていく努力も含めて、更なる改善をしていきたいと思います。

 来年の八月まであと十か月少々でしょうか、その中でもっともっとバージョンアップしていくためにどのような努力をされていくのか、ここを伺いたいと思います。

宮下国務大臣 御指摘のように、中山間地域等直接支払制度に取り組む集落では、高齢化、担い手不足、こういったことで、五年間の活動継続が困難だとか、リーダーがいないとか、事務手続が煩雑だということで、活動を廃止したり、また取組をちゅうちょする集落の皆様も少なくない状況にあると認識しています。

 こうした状況を踏まえまして、これまでも、集落協定を広域化して、元気な皆さんがいるところと一緒になって一括して申請をいただくとか、病気や死亡、高齢化等によって活動できなくなった農業者に対する交付金の返還は免除するというような交付金返還規定を緩和すること、また、様式の簡素化、また事務の外部委託等の推進などを行ってまいりました。

 その上で、本年八月に第三者機関によります中間年評価が行われましたけれども、ここでは、令和七年度からの次期対策に向けて、多様な組織や非農業者の活動への参画を促進して、共同活動が継続できる体制づくりや、協定の事務を支援する仕組みづくりなどの検討を求められたところであります。

 制度の見直しに当たっては、第三者機関の意見、また地域の農業者の皆様の声等もしっかり踏まえて、適切な仕組みを検討してまいりたいと考えています。

近藤(和)委員 様々な御意見が、恐らく来年へ向けてたくさん入ってくると思います。団体の方も大事ですし、個人個人も本当に大事だと思いますので、幅広く、ぎりぎりまで、いろいろな意見を取り入れるように努力をしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、新規就農支援金の要件緩和について伺います。

 この点については我が方の梅谷議員からも前の国会でも質問させていただきましたが、やはり高齢化といったところが、現在進行形で、そして最も根の深い問題ではないかというふうに思います。

 その中で、具体的に申し上げれば、以前は四十四歳でした、新規就農は。今は四十九歳になりました。六十歳、六十五歳までもう延ばしていかなきゃいけないんじゃないかなと私は思っております。恐らくは、地方選出の方であれば皆様お分かりだと思いますが、六十代は若手ですよね、特に農業の世界においては。そして、Uターン、Iターンも含めて、サラリーマンから引退してふるさとに帰ってきて、さあ農業を始めようかという方は、こんなありがたい方はいらっしゃらないですよね。

 ここも含めて、年齢上限を緩和していく、上げていくということを、あえて、いい答えをもらえないということは分かった上で質問いたしたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

宮下国務大臣 農業従事者について、六十歳以上が約八割であるなど、年齢構成のアンバランスが大きな課題でありますから、これを是正するために、長きにわたって我が国の農業を担う者を確保、育成するために、こういうバランスをできるだけ若いところにシフトさせたい、そういう発想だと思いますが、当初は四十四歳、現在は四十九歳以下の若い就農者に対して、資金面及び経営発展のための支援を重点的に行っているということです。

 ただ、御指摘のように、五十歳以上の方についても、地域の担い手として活躍することが大いに期待されております。そのために、例えば農業大学校における就農を希望する方向けの研修をやるとか、令和四年度から新たに措置しておりますが、地域における就農相談体制、それから実践的な研修農場の整備等、サポート体制の充実のための支援については、年齢に関係なく、新規に就農する方々が農業技術等を身につけるための支援として実施しております。

 今後も、委員御指摘の内容、また現場の声を踏まえつつ、新規に就農する方の育成、確保について、しっかり取り組んでいきたいと考えています。

近藤(和)委員 平均年齢は下がっていないですし、ボリュームそのものも減ってきているんですよね。ですから、極論を申し上げれば、七十代でも八十代でも、新規就農をしていただけるというのはありがたいことなんですよ。

 このままではいけないという意識を共有していただきたいと思いますし、この点は私、言い続けていきますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。

 それでは、次に参ります。

 資料二なんですけれども、農業機械、そして、資料三はドローンのことについて伺います。

 私も、早朝に自転車等に乗っていますと、夏場はドローンが空に浮かんでいて、ああ、農薬散布をしているのかなと、そういう風景も見るようになりました。そしてまた、収穫祭に行きますと、農業用機械と同じようにドローンの展示販売もされるようになってきています。

 その中で気になりますのが、外国製のものばかりだなということでございます。日本製のものもあったにしても、実際には名前だけを使わせてもらっているというようなことで、ここは何とかしていくべきではないかなというふうに思っております。

 農業機械で申し上げれば、この資料二でいきますと、大体、国内の需要が、市場が縮小してきている中で、海外への輸出を増やして頑張っているなと、これは見て取ることができます。

 一方で、資料三でございますが、ドローンに関して、右側です。今、二〇二三年度でいきますと大体二千五百億円程度ですが、二〇二八年になりますと、約三倍の九千億ぐらいまで広がります。こういった予測が出ております。現状においても農業用のドローンは約一千億、これがますます拡大をしていくということを考えれば、農業用機械等を含めて、これからますますその重要性が高まっていくのではないかと思います。

 食料の安全保障という観点、そして経済安全保障という観点、そしてドローンはいろいろな情報も取れるということで、安全保障そのものといったことも含めて、国産の比率を上げていくべきではないかというふうに思いますが、研究開発は、今支援しているということも以前伺いましたが、今年度で一区切りだと聞いております。

 継続と更なる増額、強化、そして別の研究開発の支援も含めてしていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。

宮下国務大臣 委員御指摘のように、人口減少下においても、生産水準を維持できる生産性の高い食料供給体制を構築するためには、ドローン等の先端技術を活用したスマート農業技術の推進がもう必須だというふうに私も考えています。

 現在、農業現場で利用されているドローンにつきましては、外部のデータセンターに接続しないと飛行できない機体があるなど、データの流出などのセキュリティーリスクへの対応が課題となっていると認識しています。

 このため、農林水産省では、高いセキュリティー機能を備えた国産のドローンの開発を支援しておりまして、本年度中には市販化される予定になっています。

 これに加えて、国産ドローンを含むスマート農業技術の開発、改良、また農業者や農業支援サービス事業体へのドローンの導入支援など、更なる普及にも取り組んでいけるように、予算の確保もしっかり頑張っていきたいと思っています。

近藤(和)委員 農業用機械だと国内シェアは八割、そして、ドローンに関しては、逆に八割前後が外国産だという状況をいかにして反転させていくか。数値目標が、これは国際的にいいかどうかは問題があるとは思いますが、何らかの目標というものを設けた上でやっていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、インボイスについて伺います。

 十月から本格的にスタートいたしました。私自身も、十月以前に、インボイス大変だよ、どうしましょうかということを地元の方々にお話ししてきたんですが、いざ十月が始まったら、やっぱり大変だと。何であんたらっちゃ反対してくれんかったがいねということをかなり言われるんですね。お米作りの方もそうです。給食事業者などに出されている方もそうです。

 例えば、ころ柿、石川県能登半島ではころ柿が結構有名なんですけれども、ころ柿の生産者の方も、この冬、作っていいかどうか分からないと。買ってくれるかどうか分からないわけですから。こういった声もいただいていますし、みそ作りなどもかなり小規模でされておられますので、こういったインボイスについて、不安の声というのがどれだけ集まってきているか。

 今まで、役所の方とお話をしていますと、特例だとか猶予期間があるからということを説明しているというんですけれども、私は、地元の方々と接している限り、それで納得したという答えはほとんど返ってきていないという感じです。

 その中で、公正取引委員会など、相談や苦情が来ているということは把握していますが、農林水産省として、今そのような声が入ってきているか、若しくは今後把握していこうという努力を私はすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

宮下国務大臣 これまでも、インボイス制度の円滑な実施と定着に向けましては、農業者の皆様を対象とした説明会の開催であるとか、専用ダイヤルによる相談対応によって、農業者の皆様の声を把握してきたところであります。

 制度の実施に当たりましては、協同組合特例など様々な特例もありますし、経過措置も設けられております。その上で、専用ダイヤルには、特例の内容や農協以外の出荷先へ出荷する場合の対応等についての相談も寄せられているところであります。

 こうしたことを踏まえまして、農業者等向けに、インボイス制度のポイントが分かる資料や、出荷先ごと、こういうところに出荷する場合にはこういう検討が必要ですよと、こういうことを、想定される対応の考え方が分かる資料などを今農林水産省のホームページに掲載するなど、農業者の皆様に寄り添ったきめ細やかな対応に努めてきているところです。

 先生御指摘のように、スタートしてこれで終わりではなくて、今後も対応が、フォローが必要だと思いますので、今後も、専用ダイヤルや、また地方農政局等による相談対応などを通じて、農業者の皆様の不安を解消していけるように、関係省庁とも連携して丁寧に取り組んでいきたいと考えております。

 また、ちょっと御指摘ありましたが、取引先からの取引価格の不当な見直し要求に農業者が応じないときに取引を停止するなど、明らかな独占禁止法違反のような事案を把握した場合には、公正取引委員会等の関係省庁とも連携してしっかり対応したいと考えています。

近藤(和)委員 今までの対応では足りないということを申し上げております。インボイスをきっかけにして離農者が増えたら元も子もないですから、ここをちゃんと考えて動いていただきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

野中委員長 次に、緑川貴士君。

緑川委員 皆さん、お疲れさまです。立憲民主党の緑川貴士です。

 今年、二三年産の一等米比率の全国平均が六割を下回って、過去最低になりました。猛暑の影響で、米が白く濁ったり、あるいは米が胴割れを起こしていたりと、高温障害によってお米の等級が下がり、また稲枯れも起きて収量が落ちたりということで、農家の収入に大きく影響しています。十一月に入ってもいまだ三十度の真夏日になったところがあったり、そうでなくても、二十五度を超える夏日になっているところも多くあり、異常な高温になっていますけれども、七月から九月の月別の国内の平均気温が今年は観測史上最も高くなりました。

 宮下大臣は所信的御発言の中で、気候変動によるリスクを減らすために高温耐性品種の普及を図るというふうにおっしゃっていただきましたし、今日、都道府県とJAで連携をして品種導入を支援するといった御答弁もありました。

 これまでも高温耐性品種については、例えば二〇一〇年のときにも、六月から八月の国内の平均気温が当時として過去最高になった年でした。北の寒い地域でも高温障害の大きな影響があって、全国でその危機感、品種導入の必要性というものは共有をされてきましたけれども、この間、十年をかけて一生懸命に開発をした品種であっても、今は当時を上回るような暑さになっていますし、品種によっては病害に弱いものというのがあって、それを嫌った農家がいて、いもち病に弱い品種もありました、そういうことから普及が進まなかったということがありました。

 現存する高温耐性品種でこの先も被害の発生を抑えていけるのかということと、将来更に気温が上がっていく、そうした長期の見通しに立って新たな品種の開発というのが必要だと思いますけれども、その場合には、暑さだけでなくて、雨の降り方も変わっています。今後もそうした変化が予想される中で、それに伴う病虫害の発生にも対応できる、そういう品種の開発、その導入を先を見据えて考えていく必要があるというふうに考えておりますけれども、大臣のお考えはいかがでしょうか。

宮下国務大臣 まず、委員御指摘のとおり、今年産の米は九月末時点の農産物検査で一等比率が過去最低となる五九・六%となっておりまして、その大きな要因としては、夏場の高温による白未熟粒の発生等によるものと考えています。

 このような温暖化に伴う影響は、本年のみならず、今後も引き続き発生することが懸念されることから、産地において、委員御指摘のような高温対策を強化していくことが必要だと思っています。

 そして、御指摘のように、こうした気候変動、地域それぞれまた事情も違いますので、そうした状況に応じた高温耐性品種をしっかり開発していくことが重要だと思いますし、同時に、もう一つは、栽培の方法、営農技術でここを何とか乗り越えるというのも喫緊の課題として重要だと思います。

 農林水産省としまして、都道府県を始めとする関係機関に対しまして、農業技術の基本指針におきまして、高温耐性品種の導入を進めることに加えて、栽培期間の適正化による登熟期の高温回避であるとか、堆肥や土壌改良資材の施用による土づくり、また、圃場の温度を適正に保つための通水管理、また、登熟期の肥料切れ防止のための適期適量の追肥等、高温対策技術の励行を促しております。

 こうしたことも併せてやった上で、今回の補正予算においては、高温環境に適応した栽培体系への転換に向けまして、高温耐性品種、また高温対策栽培技術を産地に導入するための実証等の支援をしっかり検討してまいりたいと考えています。

緑川委員 稲については、高温被害を減らすための栽培の管理、また営農技術の指導というものは、これまで以上にしっかりと、新しい技術も含めて、しっかりと普及を図っていく必要があるというふうに思っています。

 果樹についてもお伺いをしたいと思いますが、今年の高温で、今日も御議論があるように、リンゴ、ブドウも、着色不良、日焼け、こうしたことで商品価値が下がったり、もはや売り物にならないといったことで、大きな減収がありました。

 果樹も高温耐性品種はあるんですけれども、果樹の場合は植えてから実がなるまでにはやはり時間がかかります。同じ木で数十年栽培しなければ採算が取れない永年作物で、品種転換というのはやはり簡単ではありません。新たな品種ができたとしても、頻繁には植え替えができない。

 こういう果樹なんですが、他方で、熟練の生産者も、長きにわたる取組の中で、いろいろな工夫をして高温対策に取り組んできても、今日御答弁で、遮光ネットであるとか、また省力化できるような樹体の導入ということもおっしゃられましたけれども、今後もこういう災害級の暑さというものが続いていく、気温が更に上がっていくことも見込まれる中で、リスク分散を図るために、たとえ永年作物で導入が難しかったとしても、長期を考えれば、大変だったとしても、今、品種を今から一部入れ替えてちょっと試してみるといった、こういう、植え替える、そういう経営の見通しが立てられるような見極めができるかどうかというのを支えていく、そうしたことも非常に大事であるというふうに思いますが、御見解はいかがですか。

宮下国務大臣 御指摘のように、果樹はまた米とは違った課題を抱えていると思います。特に果樹農業は、枝を整えたり剪定等に高度な技術が必要ですし、機械化もなかなか難しいという面もあります。生産者の減少、高齢化や後継者不足も相まって、今、栽培面積が減少したり、国内外の需要に国内生産が対応し切れていない、こういう厳しい状況にあると思っております。

 こうした低下した供給力を回復するための生産基盤強化に向けた施策に取り組んでいるところでありまして、担い手、労働力の育成、確保に資する取組への支援、また、スマート農業技術に資する省力樹形の導入等による省力化した生産体系への転換の支援、こうしたことにしっかり取り組んでいきたいと思っております。

 同時に、先ほど来お話しの果樹においても、高温耐性品種、これまでは農研機構において、西日本及び九州向けのにこまる、関東から九州向けのなつほのか、北陸及び関東以西向けのにじのきらめき、これは稲でした、済みません。こうしたこともやっておりますし、リンゴでいえば紅みのり、錦秋、それからブドウでいえばグロースクローネ、こういった品種を農研機構で開発したりしておりまして、やはり各地域に沿った形の品種開発も御指摘のように重要ですので、しっかり進めてまいりたいと思っています。

緑川委員 品種改良の一方で、温暖化の影響で春の気温も高くなって、果樹の発芽、開花、生育も早まっています。それによって、低温への耐性が最も弱くなる花の満開期に、寒の戻りで気温が下がって凍霜害が発生することも、これは品種にかかわらずありますので、そうしたことの技術指導、営農指導というものも、今被害が膨らんでいますので、その辺りも是非徹底をお願いしたいというふうに思っています。

 収入保険は時間の関係で先にちょっと飛ばして、熊対策についてお尋ねをしたいと思います。

 人身被害の数は、これまで過去最多だった三年前、二〇二〇年を上回って、しかも、今年の四月から十月の七か月間だけで百八十人という人数です。

 お配りしている資料を御覧いただくんですが、ツキノワグマによる被害人数の推移を見ますと、二〇〇〇年代に入ってから明らかに被害人数のベースが変わっています。餌である山のドングリが、これはずっと豊作か凶作かというのはありますが、それにかかわらず、被害人数のベースが以前よりも上がっているんですね。ということは、個体数そのものがやはり増えていることだと思います。

 全国的な課題として、やはり指定管理鳥獣にツキノワグマを追加して、その中で、自治体が地域の実情に応じて適正な管理ができるようにするための個体数の推定調査であったり、あるいは出没の抑制対策に取り組める人材育成を進めていけるようにすることが今必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

八木副大臣 環境副大臣を仰せつかっております八木でございます。

 ただいま緑川議員の方からデータを示されて、そのとおりだ、こういうふうに思いますし、また、お地元では大変な状況になっていることを十分承知して答弁させていただきたい、こういうふうに思います。

 今御指摘のありました指定管理鳥獣についてでありますけれども、鳥獣保護管理法に基づきまして、全国的に生息数が著しく増加し、またその生息地の範囲が拡大している鳥獣であって、生活環境、農林水産業又は生態系に深刻な被害を及ぼすために、集中的かつ広域的に管理を図る必要があるわけでありまして、環境大臣が指定したものをいうわけであります。現在では、ニホンジカ及びイノシシを指定しているところでありまして、御指摘のとおりであると思います。

 熊類につきましては、例えば北海道や東北地方では個体数の増加が指摘されている一方、四国地方等ではむしろ個体数が減少し、保護を必要としている状況であります。このように地域によって生息状況が異なりまして、指定管理鳥獣にも指定されていないのが現状であります。

 今後、今年度の熊類によります人身被害の発生状況や、熊類の最新の生息状況を踏まえまして、専門家の意見を聞きながら科学的知見に基づきまして必要な対策を検討してまいりたい、こういうふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

緑川委員 生息数は当然地域によって違うんですけれども、被害件数が全体として多い年は、西日本でも近年は被害が多い、そういう年が多くなっています。全国の問題としてやはり考える局面に来ているというふうに私は考えております。

 そして、人の生活圏にまで出没をしなければならない背景というのは、ブナの木にほとんどドングリがならない、大不作、大凶作です、東北地方。そして、秋田県を始めとして、ナラ枯れの深刻な被害が広がっている。同じくミズナラ、コナラが減っていますし、餌を取り合う関係にある鹿やイノシシの数も、農村の過疎化で更に増えている。こうしたことで、熊の餌が余計足りなくなっているんじゃないかといったこと。

 様々な要因を分析した上で、熊の生息域を奥山に戻すための森林の整備、環境整備というのをどう進めていくのか。改めて環境大臣、環境副大臣、そして林野庁長官、時間の関係でなるべく端的にお答えいただければと思うんですが、よろしくお願いします。

八木副大臣 本年におきまして、熊類の出没が増加している要因につきまして、今おっしゃられたとおり、熊類の餌となるドングリ等、広葉樹林の木の実の凶作が考えられる。

 中長期的な要因といたしまして、中山間地における人間活動の減少、具体的には、人口減少に伴う山林の管理不足や耕作放棄地の増加などによりまして、熊類が進出しやすい環境が増加していると考えられます。

 このように、様々な要因が複合的に影響しまして、果樹や生ごみなどの誘引物の不適正な管理とも相まって、熊類の出没が増加していると考えられます。

青山政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省におきましては、森林における人為活動を活発化することが熊を含む野生鳥獣の活動抑制にもつながることから、林業の持続的発展に向けた支援を進めるとともに、野生鳥獣の生息環境となります針葉樹と広葉樹が交じり合った森林、針広混交林や広葉樹林の造成への支援等を地域の実情に応じて行っているところでございます。

 今後とも、こうした取組を進めまして、野生鳥獣による被害の抑制に貢献してまいりたいと考えております。

緑川委員 ナラについてはナラ炭とか、そうした、林農連携という形で、それを肥料に使ったりとか、バイオ炭の活用というものも今注目されていますので、そうした林産物をしっかりと生かしていくというサイクルを回しながら、森林整備をしっかり進めていただければというふうに思います。

 農水大臣にもお伺いしたいんですが、こうした人里でもやはり餌になるものが多い。それがなかなか見つからないということを覚えさせることが大事だと思います。喫緊の対策として、高齢化している集落などで、誘引物になっている手つかずの収穫されていない柿やクリ、これを取り除く、いろいろな団体との連携をした支援や、護身用としての熊スプレーの配布、あるいは、今、アメリカの住宅地で進んでいる熊対策用のごみ箱、電気マットの購入などの、そうした、日本として支援をしていくということ、いろいろ検討する必要があるんじゃないかと思いますが、その辺りはいかがでしょうか。

宮下国務大臣 農林水産省として、野生鳥獣による農作物被害の防止に向けて、地域ぐるみでの被害防止活動やハンターを含む捕獲の担い手育成等を支援するために、鳥獣被害防止総合対策交付金、これを措置しております。

 この交付金は熊への対策も対象となっておりますので、電気柵の整備とか農地周辺での捕獲、また、御指摘のように、熊を農地に近づけないための、餌となる柿やクリの実の処分、こうしたことにもこの交付金をお使いいただけます。また、これらの活動に際して、安全確保の観点から、熊を忌避するためのスプレーの購入も可能としております。

 さらに、熊に対する追加対策としては、生息状況調査等の基本的な取組をやった上で、さらに、研修会の開催や、センサーカメラ等のICT機器を導入するなど、二段構えの一定の取組をしていただけると、加算措置を導入しているところであります。

 こうした取組が着実に行われるように、予算確保にもしっかり取り組んでいきたいと思っております。

 あわせて、農業現場における熊による人身被害防止等のために、十一月一日には、都道府県に対して注意喚起を行うための通知を発出しております。

 引き続き、環境省とも連携して、熊対策を推進してまいりたいと思います。

 なお、熊対策のごみ箱、電気マットの御指摘もあったんですが、個人用のものというのはなかなかこの交付金には使いにくい、むしろ、公的なごみ箱であるとか、それからエリアをくぐる電気柵とか、そういったことにお使いいただけるとありがたいと思っています。

緑川委員 喫緊の、いずれ効果的な対策というものをお願いしたいと思います。

 最後、セーフティーネットの一つ、収入保険については、これは災害の激甚化に加えて、今、資材高の影響が特に大きいです。これまでと同じ収入が得られたとしても、収益が目減りをして、保険料の支払い、この掛金の負担も今、実質、重くなっています。

 しかし、それに逆行するように、積立金の国庫負担分を引き下げる議論が財務省で一部行われていますけれども、今はむしろ国の負担分を引き上げて、加入者の保険料支払いをできる限り抑える、今、災害で被災して営農意欲を失って、離農につながるというようなことがないように、農家の保険料の負担を和らげていく、そういう局面だと思いますが、いかがですか。

宮下国務大臣 農業保険は、基本的に加入者の保険料また掛金によって被害を受けた加入者を支える仕組みになっておりますけれども、これに対して、収入保険においては保険料の二分の一、特約補填金の四分の三、農業共済においては原則掛金の二分の一、これを国庫が負担しているということで、通常の民間保険に比べれば大きな国の支援がある仕組みにはなっております。

 農業保険は、近年、新型コロナや自然災害等によって支払い額が増加しておりまして、こうした厳しい状況の下でも、これらを持続的に運営していくことが重要な課題となっています。

 このために、農業保険の国庫負担割合の引上げ、これによる加入者の保険料等の引下げというのは、現実としてはなかなか厳しい状態にあるというふうに思っています。

 なお、収入保険は、先ほどの質問でもありましたけれども、過去の収入実績によって基準収入を設定することから、被災により収入が大幅に減少した場合に、その後の基準収入が下がるために、令和六年加入の皆様からは、被災年の加入実績を上方修正しまして、基準収入を引き上げるということで、実質その発動がしやすい、より多くのサポートが得られる、こういうふうな特例も実施するなど、こうした改善は行ってきているところであります。

緑川委員 大臣が厳しい現実から目をそらさず、歴史的な転換点に立っているという自覚を持って対処していくというお言葉を私は信じたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。

野中委員長 次に、小山展弘君。

小山委員 静岡県中東遠の出身の小山展弘です。

 まず冒頭、昨日、実は地元の、私の場合はお茶農家の掛川市の方から、肥料の価格は少し落ち着いてきたけれども、まだまだ他の資材、燃料等も含めてコスト高が続いておりまして、一方で、なかなか農作物については価格転嫁が進んでおりません、大変農業経営が厳しい状態にありますので、是非様々な補助金、制度の継続を願いたいということで御連絡いただきました。

 是非、大臣、政府の皆様におかれましては、前向きに制度継続についてお取り組みをいただければと、まずお願い申し上げます。

 さて、大臣所信の中で、宮下大臣から、食料争奪の激化により安価に食料を輸入できるわけではないことが明白、また、我が国においては食料安全保障上のリスクは近年例がないほど高まっている、気候変動の影響に伴う世界的な生産の不安定化等による輸入リスクの顕在化などなどの文言がございました。

 加えて、私は、近年の円安、とりわけ実質実効為替レートで見たときの円の購買力の大幅な低下も、今後、食料輸入に影響を与え得るのではないかと懸念をいたしております。

 特許の数や、あるいは研究開発における日本の国際的な地位の相対的な低下、製造業の競争力の中長期的な低下を意味しておりまして、ある意味、この十年間、日本製造業の衰退を勘案すれば、よく、「買い負ける日本」なんという本も出ていますけれども、そういう状態も到来しかねない。

 まさに、今までのように製造業の製品を輸出して食料を輸入してくればいい、そういう時代の常識が通用しなくなってくる、そういう可能性も中長期的にあるんじゃないだろうか、日本国民が飢えることがないように備えを怠るべきではないと思っております。

 また、不測時の中で、とりわけ日本周辺有事の際には、周辺有事ですから、船舶の安全な航行に懸念が出るといったこともやはり考えるべきではないだろうかと。

 こういうことを考えていきますと、食料安全保障を考えるに当たっては、今回、改正法の中で余り、単語としてちょっと露出が少ないようにも感じているんですが、食料自給率を高めるということをやはり中心概念とすべきではないかと思います。

 ただ一方で、あした輸入が途絶えるわけではない、あるいは、同盟国のような、直ちに輸入が途絶える可能性が低い国からの輸入に懸念する必要はない、食料自給率は中心に考えなくてもいいんだ、こういう議論も、考え方も、一方であろうと思います。一理はあると思いますが。

 これらの議論や様々な意見を踏まえて、宮下大臣は、この食料安全保障、検討する際に、食料自給率の概念を用いることについてどのような認識を持っていらっしゃいますでしょうか。

宮下国務大臣 御指摘のように、国民への食料の安定供給の確保のためには、まず、一丁目一番地は、国内で生産できるものはできるだけ国内で生産していく、これがもう基本だと思います。その上で、安定的な輸入と備蓄、この三本柱ですね、適切に組み合わせることで、食料安全保障の強化を図ることが重要と考えております。

 一方、昨年のウクライナ情勢の影響等によって肥料価格が高騰いたしました。食料安全保障の確保に係る肥料とかエネルギー資源の重要性を痛感したところでありまして、ところが、こういう生産資材が国内で供給されているか海外から来ているか、こういったことは自給率には反映されない仕組みになっているということで、このように、必ずしも食料自給率だけでは、生産、消費の状況を直接に捉えられないということも分かってきたということであります。それから、食料自給率一つを取っても、カロリーベースと生産額ベースと、分かる、見えてくる情報が違います。

 こうしたことも踏まえまして、食料自給率を目標の一つとしつつも、平時から食料安全保障上の様々な課題に応じて、各種の指標を用いて総合的に検証する仕組みを設けることを検討してまいりたいと考えています。

小山委員 今大臣からもお話ありましたとおりで、特に、肥料やあるいは飼料の自給率、これのことも考えますと、例えば東大の鈴木宣弘教授などは、鶏卵などはもっと自給率が低い、お米も更に、化学肥料というところが、肥料自給率が低いことを考えても、もっと、実は実質的な日本の自給率は低いんじゃないか、こんな議論もありまして、それを踏まえた総合的な算出はしていないんですけれども、やはり、一つだけではないんですけれども、それでもやはり国内で生産をして国内で消費をしていく、国産国消、国消国産、こういったことがやはり基本にはなるのではないかなと思います。

 次の質問で、所信の中で、農業政策の最も重要な使命は国民に食料を安定的に供給することという御発言がございました。

 今回の法改正に当たりましては、不測の事態の際に、農水省が農家に対して栽培品目の変更を命令できる権限を付与する法改正が検討されていると報道されております。いわゆる、報道されているところの芋作れ命令でありますけれども。

 有事の際にも、あるいは不測の事態の際にも、そのような品目変更を命じなくてもいいような体制をつくっていくことが農水省の使命であると考えますけれども、大臣の認識はいかがでしょうか。

宮下国務大臣 まず前提として、近年、気候変動による世界的な食料生産の不安定化、また、ウクライナ情勢等を受けた食料や生産資材の価格の高騰、サプライチェーンの混乱等によって、食料、肥料、飼料の多くを輸入に依存しております我が国の食料安全保障上のリスクが顕在化しているということがあります。

 このために、これを受けて、本年八月から、生産、流通、消費や法律、リスク管理など、幅広い分野の有識者や関係省庁から成ります不測時における食料安全保障に関する検討会を開催して、不測時の食料安全保障のために必要な対策について検討しているところでございます。

 本検討会につきましては、食料安全保障上のリスクに応じて食料供給の対策を講じることによって、不測時における国民生活や経済へ重大な影響を防止することが重要という認識の下で、輸入や出荷の調整の措置を速やかに講じていくといった議論を現在いただいているところでございます。

 さらに、委員御指摘の栽培品目の変更を含む、事態がより深刻化した段階で措置する対策についても議論が行われる予定となっております。

 私の考えでは、やはり、栽培品目の変更というのは、よほどの事態が進行した危機の場合ということでありますが、そういったことについても議論しなくてはという問題意識があります。

 これらの議論の内容を踏まえつつ、不測時の食料安全保障の強化に向けて、引き続きしっかり検討を進めてまいりたいと考えています。

小山委員 もちろん、本当の不測時には、今も大臣がおっしゃったようなこと、あるいは、農家でない方も栽培を自らしていくというようなこともあり得る、まさに戦時体制のような状況だと思いますけれども、しかし、品目変更するにも、もちろん、お花を作っていた方がいきなり芋を作れるかということもありますし、そのときに農家がいなくなっていて、品目変更をお願いする相手がいないということがないように、あるいは、できる限り今生産している、お米であるとか、そういったものを日本人が食べられるように、是非、中長期的な立場からも、より農家の経営を安定させる政策を進めていただきたいと思っております。

 また、大臣所信の中で、みどりの食料システム戦略についての言及もございましたが、有機農産物の需要として、学校給食の食材、これを有機食材とするオーガニック給食の普及を求める声があります。超党派でオーガニック給食の普及の議員連盟もできておりますし、大臣も、大変これについても御理解をいただいておると伺っておりますが、これについての大臣の意気込みと認識をお尋ねしたいと思います。

宮下国務大臣 御指摘のように、本年六月に設立されました超党派のオーガニック給食を全国に実現する議員連盟におきまして、私も副代表という立場をいただいております。これまでも議員の立場からオーガニック給食を応援してきたところであります。

 みどりの食料システム戦略におきましては、二〇五〇年までに有機農業を耕地面積の二五%まで大幅に拡大する目標を位置づけておりますけれども、有機農産物を学校給食に活用することは、安定した消費を確保する観点からも非常に有意義なものだというふうに考えております。

 一方、学校給食で有機農産物を利用するに当たりましては、食材の形、納入の方法等について、生産者や給食事業者を始めとする関係者の皆さんの間で調整を行う必要があるなど、まずは導入段階における多くの課題を解決することが必要であります。

 令和三年度末時点では、全国百三十七市町村において学校給食に有機食品が活用されておりますけれども、更に拡大を図るためには、地域ぐるみで有機農業に取り組む先進的な産地でありますオーガニックビレッジの取組の、今支援をしているんですが、更にそうしたことを拡大することも重要だなというふうに思っています。

 オーガニックビレッジへの支援、具体的には、令和五年度までに取組を開始した九十一市町村のうち七十五市町村で、地域の関係者の連携体制の構築や検討に要する経費、また、給食メニューに有機農産物を導入する際の必要経費に対する支援を、このオーガニックビレッジの事業の中で支援を活用いただくことになっています。

 今後、オーガニックビレッジの取組を更に拡大するとともに、導入段階での支援の活用を促しながら、地方自治体における主体的な取組の中で、継続的に学校給食における有機農産物の活用拡大を図っていただきたいというふうに考えています。しっかり応援をしてまいります。

小山委員 大変前向きな御姿勢での御答弁をいただきましてありがとうございます。是非リーダーシップを発揮していただいて、これは是非超党派で、私たちもできることを応援していきたいと思っております。

 次は、大規模化のことで、委員の皆様方にもちょっと御披露したいと思うことがあるんですが、耕作面積を大規模化してきて、農地の受委託が進むことによって、受委託が進むわけですから、農業を営まない農地所有者の方も、これは全国的にも増えるわけですね。

 その結果、優良農地であったり、そういった青地の農振地域なんかでも、例えば、農振地域を解除しようとか、あるいは農地転用とか開発計画なんかが持ち上がると、その農地所有者の方々がそれに、これは悪いというわけじゃないんですが、賛成する。結果、若手で、しかも農業をやっていきたい、しかも優良農地で土壌もいい、そういう方がいるところでも、耕作者の方が地区で孤立してしまう、彼らの表現をかりると村八分になっちゃった、こういうようなケースもあるやに聞いております。

 地方議会とか地方自治体行政なんかでも、農家さん、実際の耕作者の、本当に農業をやっている方の戸数が少ないと、中長期的には、ここで耕作したいという農家の方の声が、市議会議員さんであったりとか、あるいは職員さんであったり、場合によっては首長さんであったり、意見が反映されにくくなる状況というのも想定され得るんじゃないか。多数決で負けちゃうわけですね、耕作する方が少ないと。

 これらは、経営の大規模化によって耕作農家数が減少し、また一方で耕作をしない農地所有者が増えたことに伴う、これはどちらがいいとか悪いではなくて、ジレンマじゃないかなと思っております。

 このようなことが全国で発生することになると、やはり中長期的に食料安全保障あるいは食料生産にも影響を与えるんじゃないかということが考えられますので、是非、産業と農業の両立が必要であるとはいえ、どうバランスを取っていくか、国としての中長期的な対策やビジョンを考えていく必要があるのではないかなと思っております。

 ところで、これにちょっと関連するんですが、七月二十八日に、国土の利用に関する基本的な方向を示す国土利用計画(全国計画)が閣議決定されました。その一ページ目において、「地方創生の観点から、地域の合意形成に基づき、地域の持続性確保につながる土地の有効利用や転換を推進するという視点を追加した。」との文言があります。八ページ目には、「地方創生の観点から、交通利便性の向上等の地域産業の立地適性の状況変化等を踏まえた、地域の持続性確保につながる産業集積の促進を図るための土地利用転換など、関連する制度の弾力的な活用や必要な見直しを通じて、地域の合意形成に基づき、積極的な土地利用の最適化を推進していく。」との文言もございます。

 この国土利用計画の閣議決定において、農地制度の運用に変更がなされる、とりわけ農地の転用あるいは農振地域の解除に影響を与えるような政策効果というのは見込まれるんでしょうか。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 農地は、農業生産の基盤でありまして、食料安全保障の観点から、適切に確保をしていく必要がございます。

 このため、国土利用計画におきまして、御指摘のような「関連する制度の弾力的な活用」などの文言はありますが、その前段に、「土地利用の転換は慎重な配慮の下で計画的に行うことが重要である。」と規定されているところであります。この閣議決定をもって、農振除外や農地転用が緩和されるものではありません。

小山委員 確認させていただきました。

 次の質問に移りたいと思いますが、緑川議員も以前質問主意書で尋ねておりますけれども、来年、令和六年六月から、食品衛生法の改正によりまして、漬物製造に大きな規制強化が加えられます。お配りした資料にも、御覧いただきたいと思いますが、静岡県御殿場市にある中清水報徳社では、その報徳社の建物の台所を使って、保健所の指導もしっかりと受けて、傷害保険などにも加入した上で、ネギキムチや白菜キムチなどの地域の特産品の製造販売を行ってきました。もちろん、今まで食中毒を出したことはありません。

 しかし、この食品衛生法の改正によって、一定の作業スペースが必要である一方で、独立したトイレ等の専用の作業場を備えなければならないということになりまして、さすがにそんな設備負担はできないと。二ページ目の方に、こういった様々な、法改正の趣旨は分かるけれども、お金をかけて設備投資する気持ちにはなれないとか、改修して借入れまでできないというような声も寄せられておりますが、そういったことから製造と販売の中止の決断に至ったと伺っております。

 確かに、平成二十四年のO157の食中毒事件が発生したこと、最近の減塩ブームなどを背景に、食品衛生を強化したい行政の意図は分かります。しかし、過去には上場企業の食品メーカーでさえ不祥事は発生しておりまして、施設を備えること、規制を強化することで全ての問題が二度と発生しなくなるということではないと私は感じます。

 そこで、まず伺いますが、平成二十四年の食中毒事件はどのような原因で発生したのでしょうか。保健所はどのような指導を行っていたのでしょうか。

鳥井政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の食中毒事件につきまして、札幌市保健所によります調査では、病因物質は腸管出血性大腸菌O157でございまして、原因食品とされた白菜切り漬けの製造過程において、製造施設内で非清浄区域と清浄区域が区分されていなかったことから、各工程で微生物による汚染の可能性があったこと、それから、殺菌時の次亜塩素酸ナトリウム液の濃度管理がされておらず、原材料の殺菌に不備があった可能性があったこと等が報告されております。

 当該施設に対しまして、保健所は、毎年度策定する監視指導計画に基づいて調査等を実施しまして、厚生労働省が通知いたしました大量調理施設衛生管理マニュアル等に従い、指導等を行っていたと聞いております。

小山委員 金融行政なんかでも、体制整備をすれば不正は起きないといいながら、大変立派な、政府系金融機関でも不祥事は起きているわけです。ケース・バイ・ケースで、ほかの多くの漬物業者はそういう不祥事は起きていないわけなんですね。

 法施行によって、農作物を栽培するだけでなく、それを加工することで付加価値を高めて販売する意欲的な農家の所得の減少も懸念されます。地産地消の活動にもネガティブな影響が発生すると見込まれますが、法施行に当たっては最大限の弾力的な運用が必要であるとも考えますけれども、厚労省はどのように対応していらっしゃいますでしょうか。

鳥井政府参考人 御指摘の食中毒事件を背景といたしまして、平成三十年の食品衛生法等改正におきまして、令和三年六月から、漬物製造業に新たに製造許可が必要となって施設基準が設けられております。

 その際に、それまで漬物製造業を営んでいた営業者につきましては、設備の改良等に相当程度時間を要することを考慮いたしまして、許可の取得に三年間の経過措置を設けたところでございます。

 さらに、この基準に係る都道府県等における監視指導に当たって、家族経営等の小規模な営業者にとって、新たな施設基準等の設定により過度な負担が生じないよう、営業者の事業継続に配慮するよう厚生労働省から各都道府県に通知をしており、保健所等によります丁寧な説明等が必要だと考えております。

 厚生労働省といたしましては、改正法の適切かつ円滑な運用が行われますよう、引き続き、必要な技術的助言等、都道府県等に対して行ってまいりたいと考えております。

小山委員 是非、事業継続に配慮いただくことを改めてお願い申し上げまして、質問時間が終わりますので、これで質問を終わります。

野中委員長 次に、梅谷守君。

梅谷委員 立憲民主党の梅谷守です。よろしくお願いいたします。

 私も、初当選をさせていただいてから丸二年が経過をいたしました。この間、地元となる新潟県の現場の切実な声を国会につなぐべく、農林水産委員会に一貫して所属をさせていただいております。

 その中で、大臣所信、毎回楽しみに、じっくり読ませていただいております。この大臣所信というのは、言うまでもなく、時の大臣の思いや信念とか、また、お人柄が表れるのかなというふうに個人的に考えておりまして、そういう意味でいうと、宮下大臣の所信は、歴代の農林水産大臣の方々の所信にも増して、大臣御自身の強い思いを込めて作られたのかなというふうに私は受け止めさせていただきました。

 ただ、あえて、この中で一つ足りないなというふうに感じた点を申し上げさせていただくとすれば、今の日本の農林漁業に対する強い危機感。もちろん、危機意識を表明する箇所はあります。また、大臣所信では幅広な様々な取組を限られた字数の中で表現しなければなりませんから、何でもかんでも入れ込めるわけではないというのは分かるんですが、ただ、言うまでもなく、今の我が国農業の危機的状況を考えれば、大臣所信でもっと強烈に日本農業への危機感を打ち出して、国民の皆さんにこれを共有をしていただく、その上で、農業を前に進める政策などを表明していただければよかったのかなというふうに、ちょっと生意気ながら思った次第です。

 そこで、この十年間が勝負と感じているんですが、二〇二〇年農林業センサスによれば、農業経営者の平均年齢は六十七・五歳。これはよく言われる話ですが、更にここから高齢化が進んでいることは言うまでもありません。そして、年齢階層別に見ると、六十五歳以上の層が六五%、五年前の二〇一五年と比べて一〇・二ポイントも上昇。他方で、六十から六十四歳階層で三九・六%、五十から五十九歳層で四五・九%と大幅に減少しています。

 農水省の今行われている基本法の見直し検討の中でも、今後二十年で基幹的農業従事者は百二十万人から三十万人と四分の一、農村人口の減少により三十万から七十万ヘクタールが営農継続のリスクがあるなど、危機的な見通しが示されています。

 また、資料一を御覧ください。

 これは、新しく地元になりました魚沼市の令和二年の二月に行ったアンケート調査なんですが、全市を対象に行ったものです。この中で、Aの年齢。言うまでもなく、コシヒカリの米どころですね、まさに。ここの年齢を御覧になっていただきたいんですが、六十代、七十代、八十代以上を足すと七三・三。そして、右のところの真ん中、Q4、耕作農地を五年から十年後にどうしたい、ここの、縮小したい、ないしはやめたい、これを足すと四二・九%。こうした推移を見ると、我が国の農業は、今後五年から十年の間に適切な対応を取らなければ大変なことになると強く危惧をする次第です。

 そこで、お尋ねします。

 これから五年から十年の間こそが戦後日本農業の総仕上げであり、想像以上に日本農業の危機だと考えますが、改めて大臣の危機認識を伺うとともに、こうした中で、これからどのように農業を前へ力強く押し出していくのか、決意をお伺いします。

宮下国務大臣 食料・農業・農村基本法の制定からちょうど来年の改正は二十五年目ということですけれども、本当にこの二十五年でめぐる状況は大きく転換しているというのを強く感じています。

 先ほど来話がありますように、世界的には、人口が増加して、食料は争奪状態にある。それから、気候変動で世界全体の食料生産が不安定化している。それから、地球温暖化、高温障害と裏表ですけれども、こうした地球温暖化を防止するということで、農業、林業、水産業も変わらなきゃいけないというニーズも高まっておりますし、それから、御指摘のように、何より、我が国は、国内人口減少を更に上回るスピードで農業人口が減少するという予想があって、二十年間で基幹的農業従事者が四分の一というのは、本当に激変どころのことじゃないというふうに思っておりまして、まさに食料供給を支える力への懸念がある。こういった危機という意味でも、歴史的大転換点にいるということを強く私自身も感じています。

 こういうことを踏まえて、じゃ、新たな農業・農村基本法を作るに当たっての考え方はどうすればいいか、こう議論いただいて、展開方向も六月にまとまったわけですが、一つは食料安全保障。国全体のことをマクロで考えていればいいだけじゃなくて、今、買物難民とか、それから、貧困家庭に食料が届かないみたいなこともありますので、平時から、国民一人一人、ラストワンマイルまでしっかり食料が届くようにしていくことが今まで以上に必要だということが一つ。それから、環境に配慮した持続可能な農業とか食品産業に大転換していくことが必要だ。それから、御指摘のように、人口減少下であっても少ない人数で農業を持続可能にしていく、強固な食料安定供給基盤をつくっていく。こういうところが非常に重要だというふうに思っています。

 こうした危機感がまずあり、そして、こうした方向性をしっかり打ち出して、一方で、少ない人数で多くの生産資源を使えるわけですので、やり方によっては、成長産業化、そして農業所得の向上というのも追求できる、そういう産業だというふうに思っておりますので、こうした魅力ある産業として持続的に発展して、将来に向けて安定的に食料を供給できるように生まれ変わらせる、そのために今が一番大事だなと思っております。

 それから、追加でちょっと言いますと、今年、来年で地域計画を全国で作っていただく、このときに、まさに土地改良なんかもしっかり活用いただいて、地域計画の中に位置づけた土地改良については農業者負担はなしでやりますということですし、これから、輸出とか有機農業の拡大とか、新しい農業に取り組んでいただくそういうきっかけですので、しっかりしたいろいろな情報もお届けして、みんなで将来に向けた戦略をつくっていただく、そうしたサポートもしていきたいなと思っております。

 しっかり、先生の御指摘いただいた危機感も共有して、前に向けて頑張っていきたいと思っております。

梅谷委員 大臣、ありがとうございます。

 大臣のその危機意識と決意を、都市部を始めとする国民、一人でも多くの方々に届くように是非御努力していただきたいと思いますし、また、今日財務省からもお越しいただいていますので、是非、この危機感、本当に危機的状況にあるという農林漁業と、また、今の熱意を是非感じ取っていただきますようお願いをいたします。

 次に、渇水、高温障害の被害対策、対応についてお伺いをします。ちょっと、時間もないので駆け足で行きます。

 資料二を御覧ください。

 その前に、武村副大臣、先日は、申入れ、御丁寧に対応してくださりありがとうございました。

 資料二を御覧いただきますと、裏表になっております。水稲ウルチ玄米検査成績、この中で、等級の下落についてなんですが、令和四年度産を見ると、全国は後で御覧になっていただきたいんですが、真ん中の辺りの、真ん中よりちょっと上、北陸農政局の一番上、新潟、右の方に目をずらしていただくと、等級比率、一等、七四・四。これを是非覚えていただいて、令和五年度産を見てください。同じ辺りの一等、新潟、一三・五。七四・四から一三・五。等級下落が非常に厳しい。

 もちろん米だけでなく、果樹、野菜。新潟だけでももちろんございません、もちろん全国的に被害が発生しておりますけれども、今回、この新潟の米の被害は、見て、もうこのとおり突出して大きいのがお分かりいただけたと思います。そして、渇水被害だったり高温障害、これは自然災害の一つであるんですけれども、これも言うまでもありません、収入保険にも共済にも入っていなければ何の補償もないとか、また、共済については今回特例措置を検討されているとは聞いていますけれども、それでも収量の減少が対象となるが、品質低下やそれに伴う価格の低下には補償がないということだと思います。

 私としても、これだけ異常な渇水、高温障害ですので、収入保険、共済の加入の有無にかかわらず、全ての農家にひとしく、ある程度収入減少への対応をしていただけないかなというのが現場の切なる願いではあるんですけれども、収入保険、共済、加入者との契約やバランスがあって非常に難しいということも理解はしております。

 そこで、先ほど緑川委員の答弁でも大臣お答えされていたんですけれども、舞立政務官にお尋ねをしたいんです。

 二日に公表された経済対策、この中で、温暖化対応のための高温対策栽培体系への転換支援を行うことが示されました。補正予算への具体化はこれからということでしたけれども、先ほどお話が少しございました。

 なぜ舞立政務官かといいますと、新潟県庁に少しお勤めになった頃がありまして、新潟の理解は一定あるのかなということも踏まえて政務官に答弁をお願いをさせていただきました。是非、決意も御自身のお言葉で、少し追加でお話ししていただければなおありがたいですし、それをもって、また大臣が真摯にそれを受け止めていただければありがたいと思いますので、よろしくお願いします。

舞立大臣政務官 御指名ありがとうございます。

 私、総務省在勤中、三年九か月ほど新潟県庁に出向をさせていただきました。そのとき、本当に、新潟県の方にとってコシヒカリというものは特別な存在、非常にプライドを持たれているなと、ところどころで感じたことを覚えているところでございます。

 そうした中で、本年、大変この新潟コシが厳しい状況にあるという状況でございますけれども、先生御地元の新潟県におきましては、例えば新之助の一等比率が九七・三%と高い水準になるなど、高温耐性のある品種は等級比率の低下が抑えられる傾向にあると認識しているところでございまして、また、温暖化により今後も高温傾向がやはり続いていくおそれが非常に高い中で、高温環境に適応した栽培体系への転換が非常に重要と考えております。

 そうした中で、今般の補正予算におきまして、高温耐性品種の導入を更に進めますとともに、地域の実情に応じた高温対策栽培技術を導入するための実証等の支援を検討しているところでございまして、この方向で適切に対応してまいりたいと考えております。

梅谷委員 ありがとうございます。

 時間ももうなくなりそうなので、一問飛ばして、今日財務省からお越しをいただいておりますので、是非お願いします。

 先ほど申し上げたとおり、非常に強い危機的状況にある中で、一生懸命農水省は頑張っています。そこで、是非、今、一二〇%の概算要求をされているんですけれども、財務省としてお答えづらいところではあるかもしれませんが、是非この思いを受けていただいて、財務省として、今、この概算要求どおりの決定をしていただくようにお願いをしたいんですが、意気込みをお聞かせいただくとともに、あわせて、その後大臣からも決意をお願いして、私の質問を終わりにしたいと思います。

野中委員長 申合せの時間が来ておりますので、答弁は簡潔に願います。

佐藤大臣政務官 お答えいたします。

 農林水産関係予算につきましては、令和六年度概算要求におきまして、食料の安定供給の確保や経営安定対策などに要する経費として、二兆七千二百九億円の要求をいただいていると承知をしております。

 先般、政府として取りまとめていただきました、食料安定供給・農林水産業基盤強化に向けた緊急対応パッケージを実施するため、現在、令和五年度補正予算に係る最終的な調整を行っているところでありますけれども、引き続き、令和六年度の予算につきましても、現下の課題にしっかり対応し、食料の安定供給を確保する観点から、農林水産省とよく議論をしてまいります。よろしくお願いいたします。

宮下国務大臣 農水省としても、この必要性、例年に増して、まさに大転換期に必要な予算だということをしっかり要望してまいりたいと思っています。

梅谷委員 ありがとうございました。

野中委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

野中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 最初に、食料自給率について宮下大臣に質問します。

 異常気象による生産の不安定化、新興国の食料需要の激増、穀物の燃料向け需要の増大、経済力の相対的な低下による買い負けなど、食料は都合よくいつでも輸入できる状況ではなくなっています。それなのに、日本の二〇二二年度の食料自給率はカロリーベースで三八%、十三年連続四〇%を下回っています。このままでは国民の命の源である食料の安定供給が根底から脅かされるのは必至であります。

 ところが、食料・農業・農村基本法の改正に向けた政策審議会の答申では、差し迫る危機への緊迫感がみじんも示されていませんでした。岸田首相が本部長を務める食料安定供給・農林水産業基盤強化本部の食料・農業・農村政策の新たな展開方向では、食料自給率という言葉すらもありませんでした。

 危機を招いた政策の根本的な検証もない。大臣、これでよろしいんでしょうか。

 答申では、「国内生産を効率的に増大する必要性は以前にも増している。」としながら、食料自給率の目標を「国内生産と望ましい消費の姿に関する目標の一つ」としている。何度も読みましたけれども、これはどういうことなんでしょうか。

 先ほど大臣は小山議員の質問に答えて、国内でできるだけ生産していく、安定的な備蓄と輸入、この三本柱、お話しされました。

 繰り返しは結構なんですけれども、食料自給率、上げるんですか。そして、大臣は目標の一つと言われたんですけれども、今、現行基本計画の目標は四五%あるんですよね。これは堅持するんですか。それとも、もうやめてしまうのか。三八%を維持する程度なのか。ここが見えないと、生産者はこの先大変不安を抱えてしまいます。しかとお答えいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

宮下国務大臣 先生御指摘のように、近年の気候変動の影響に伴う生産の不安定化等によりまして、食料安全保障上のリスクが大きく高まっております。

 食料・農業・農村政策の新たな展開方向が六月に取りまとめられましたけれども、この中には、小麦や大豆、飼料作物など、海外依存度の高い品目の生産拡大を推進するというふうに明記されておりまして、こういう取組は自給率の向上につながるというふうに認識をしています。

 現在、この新たな展開方向を基に食料・農業・農村基本法見直しの検討作業を行っているところでありますけれども、この中で、新たな基本法に基づいて、食料安全保障の一層の強化を図っていきたいと考えています。

 方向として上げるのかとおっしゃれば、もちろん上げる方向で頑張るということでありますけれども、この食料自給率、先ほども御答弁申し上げましたように、食料自給率だけでは食料の安定供給というものが担保されない。生産資材の安定供給なんかも見ていかなきゃいけませんし、食料自給力というような指標も更に重要度を増していると思います。

 そういったことで、総合的な指標も勘案しながら、総体的にはリスクに強い体制に持っていく。中でも食料自給率向上については、国民の皆様の理解が非常に重要だと思っております。国民の皆様に、国産の農林水産物を積極的に選択するといった、消費面でも行動変容につなげていただく、こういったことにも努力をして、上げる方向で努力をしていきたいと思っています。

田村(貴)委員 食料自給率、上げる方向で頑張るとおっしゃいました。

 大臣、もっと強い言葉で発せられた方がいいんじゃないでしょうか。だって、これまで宮下大臣は、自民党の会議であるとか、それから地元の生産者を前にして、食料自給率のことを何度もおっしゃっています。

 例えば、自民党野菜振興議員連盟の決議を野村前大臣に渡したときに、カット野菜や業務用の冷凍野菜のニーズに応えることが食品ロスの削減や食料自給率の向上につながるということを訴えたとブログで書いておられます。

 また、自民党の農業基本政策検討委員会で、パン用の米粉生産のための専用品種や飼料用米の専用品種など、用途に応じた米の生産に取り組み、生産性の向上と食料自給率向上を目指すべきことと述べておられます。

 別の会議では、今後、食料の安定供給の確保と食料自給率の向上を図りつつ、農業の成長産業化を進めていく上で、生産基盤である農地が持続性を持って最大限利用されるようにすることが必要ですと、何度も食料自給率を挙げておられます。

 自給率の向上につながる農業関係者の努力を評価されて、そして自給率の向上を主張されてきたのであるならば、農林水産大臣に就任された今、まさに自給率向上へのリーダーシップを果たされるべきだと考えますが、数字的にはいかがなんですか。四五%、これを堅持するんですか、上げるんですか。それとも、三八%にとどまるんですか。もう一度答えてください。

宮下国務大臣 今、不測時の対応等も含めて検討している中で、本当に、あれは令和十二年目標ということで四五%を言っていると思いますけれども、今現在はもちろんそれを目指しているということでありますけれども、今後、その水準自体がそれでいいのかというのも含めて、四五%で十分なのかということも含めて、再検証していく必要はあると思います。

田村(貴)委員 我が党はやはり、すぐに五〇%に引き上げること。そういう主張をされている政党の方は結構おられます。そして、もっと上げていこうと。地方のJAへ行ったら、食料自給率が余りにも低い、もっと上げないと駄目だと言われる方はたくさんおられますよね。

 何か自給率の維持であるような発言が大勢になってくると、これは本当に国の将来を見誤ることになってしまいます。

 今も岸田政権は、農政への信頼をちゃんと獲得されているでしょうか。

 日本農業新聞の九月下旬に行った農政モニターでは、岸田政権の農業政策を評価しないが計六二%になっている。評価するの二六・六%を大幅に上回っています。

 五月の農政モニター調査では、食料・農業・農村基本法の見直しで重視すべき課題の中で、食料自給率の向上が六三・一%に上がっているわけです。

 農業新聞は論説で、「政府は自給率以外にも政策目標を設ける方針だが、自給率を軽んじてはならない。先進国で最低の現実を直視し、自給率向上にまず本腰を入れるべきだ。」と述べています。これは耳を傾けるべきではありませんか。

 野村大臣のときに、日本共産党として、基本法改正に向けた提案、提言をさせていただきました。大臣も聞かれていると思いますけれども、なぜ農業生産の現場が危機的状況にあるのか、自給率が低下、低迷している中、政策上の原因を分析、検証する、そして実効ある計画を立てること、このことを提言しています。その達成度の検証、検証結果の国会への報告、政策の見直しを法的義務として政府に課す、そうした法改正が私どもは必要と考えています。

 大臣、私、今提案したんですけれども、これは当たり前のことだと思うんですよね。過去の農政について検証していく。そして、問題点は、なぜそういうことが起こったのかということを科学的に解明していく。それで今度は、計画を立てたらその達成に向けて、国会にも報告していく、絶えず検証していく。これは当たり前のことだと思うんですけれども、大臣の受け止めはいかがでしょうか。

宮下国務大臣 基本計画におきましては、基本法第十五条第六項において、その重要性から国会としても関与を保つ必要があるということで、遅滞なく国会に報告することというふうに定められています。

 このため、基本計画で定めた各般の施策につきましては、農林水産委員会を始め国会で常に御議論いただいております。特に、基本計画の見直し時期に審議いただいている内容は当然尊重して、真摯に対応してきているところであります。加えまして、毎年国会へ報告することとされております食料・農業・農村白書におきまして、基本計画に基づく施策の進捗状況を報告しているところです。これらによりまして、基本計画への国会の意向の反映、国会による履行状況の検証がなされているものと考えています。

 また、食料・農業・農村政策の新たな展開方向におきましても、様々な指標を活用、分析して、平時の食料安全保障の状況を定期的に評価する仕組みを検討するということにしておりまして、その具体的方法についてもしっかり検討していきたいと考えています。

田村(貴)委員 資材高騰対策について伺います。

 肥料、飼料、資材の高騰が依然として続き、多くの生産者が経営危機に直面しています。特に酪農では、一年間に七百戸、毎月数十戸の離農、廃業が起こっています。

 先日、国会に来られたある酪農家の方が、こうおっしゃっています。まさに生かさず殺さず、やめられる人はどんどんやめる、農水省の誘導で借金をして規模を拡大した人はやめるにやめられない、借金が更に膨らんでいく。これまでの赤字を埋める緊急のカンフル剤として一頭十万円の支援を是非お願いしてほしいと言ってきたけれども、なかなか受け入れてくれない。今農水省は生産過剰だから乳牛を減らそうとしているが、この調子で離農が続けば、需要が戻る来年の夏には牛乳が足らなくなるんじゃないか。このように述べておられます。

 大臣、酪農に限らず、この機会にやめてしまおう、資材高騰の中で、そういう方が後を絶ちません。政府の資材高騰対策というのは、離農、廃業を回避するものとなっていないのではありませんか。これから緊急経済対策、それに対する補正予算の計上、対策を進められていくと思いますけれども、現状ではまだまだ不十分、もっと対策を強める必要があろうかと思いますが、いかがですか。

宮下国務大臣 特に生産資材の価格高騰が農家の皆さんの経営を圧迫しているというのは、おっしゃるとおりでありまして、その対策として、これまでも累次対策を打ってきました。

 一方で、価格転嫁が間に合わない価格急騰に対する、こうした影響緩和だけではなくて、中長期的に、国際価格の影響を受けづらい構造への転換を進めることも重要だと考えています。

 それぞれちょっと付言しますと、燃油価格につきましては、経済対策に盛り込まれております激変緩和措置は来年四月末まで継続するということになっておりますし、それから、施設園芸等燃料価格高騰対策を実施するための基金の積み増しをすること、また、ヒートポンプ等の省エネ機器の導入等により、影響緩和と省エネ技術の導入の加速化を図っていきたいというふうに思っています。

 一方、肥料につきましては、価格高騰の補填対策の追加対策として、地域単位での化学肥料の低減に向けた取組への支援を行っております。また、飼料については、配合飼料価格安定制度による緊急補填を実施しておりますけれども、いずれも価格は落ち着きつつありますために、今般閣議決定された経済対策に盛り込まれました国内資源の肥料利用拡大対策、また国産飼料の生産、利用拡大対策、こうしたことを通じて、国内資源の利用拡大を進めていきたいと考えています。

 さらに、この経済対策におきましては、物価高騰の影響を受けた農林水産事業者の皆様を引き続き支援するために重点支援地方交付金を追加する旨が盛り込まれておりまして、引き続き、農業者の皆様の支援に活用されるように、地方公共団体にも促してまいりたいと思っています。

田村(貴)委員 肥料については、実際にはコスト増加分の五割程度の支援にしかならなかったんですよね。それから、飼料についても、結局二〇二〇年とのコストの差を埋める手だてになっていない。三割ぐらいを畜産、酪農農家が負担している、こういう状況なんです。もっと大きな措置を打っていかないと、離農、廃業に歯止めがかかりません。予算を増やさないといけないんじゃないでしょうか。

 資料をお配りしました。資料三の方を御覧いただきたいと思います。一般歳出総額に占める農林水産関係予算の比率を表しました。一九八〇年に一一・七%あった農水予算は、二〇二一年には三分の一に低下、三・四%まで落ち込みました。要因はいろいろあろうかと思いますけれども。これは、補正予算を加えても数字は余り変わりません。

 基本法改正に向けた検証部会では、現場から切実な願いが出されました。耕作放棄地がなぜ出てくるか、それは作物を作っても売れない、又は作っても適切な対価をもらえないからだ。高収益作物というのも耳触りのいい言葉だが、これについてもほとんどもうけがないと農業者が言っている。日本農業法人協会副会長さん。

 輸入の増加が国内農業生産を弱体化させている。生産コストが高騰、高止まりしている一方で、農畜産物価格が伸びず、非常に厳しい。適切な価格形成の実現を意識した再生産可能な価格での安定供給を目指すべき。中家全中会長。たくさんの貴重な意見が述べられました。

 大臣にお伺いします。

 輸入依存から脱却すると言います。そして、食料自給率の向上を目指すと言われました。安心の物価高騰対策を確立するためにも、基盤強化していく、生産基盤を強化していく、そのためにも予算というのが必要になってまいります。予算措置をもっと図っていくべきではないでしょうか。

 宮下大臣は、今の農林水産予算を増やす立場にありますか。

宮下国務大臣 御指摘のように、これは今日の委員会でも様々御意見はありますけれども、非常に様々な危機に直面している農業、逆に大きな転換を図っていくということが必要な局面にあります。食料安全保障の強化、それから環境対応、人口減少への対応、三本柱を中心として要求をしているところでございます。

 食料安全保障の面では、食料の安定供給の確保、また農業の持続的な発展、農村の振興、環境負荷低減に向けた取組強化、多面的機能の発揮などについて要求を行っておりますし、林野予算としても森林・林業、木材産業の成長産業化、また花粉症対策のための予算、水産予算としても適切な資源管理や水産業の成長産業化のための予算となっておりまして、今後、令和六年度当初予算の概算決定に向けて調整するということでありますけれども、こうした農林水産行政の課題に対応するためにもしっかりした予算が必要だ、そういう立場でしっかり取り組んでいきたいと思っています。

田村(貴)委員 予算の思い切った引上げを財務省にも要求していただきたいと思います。

 漁業についてお伺いします。漁業も大変厳しい状況です。

 資料一を御覧いただきたいと思います。

 例えば、スルメイカの大不漁がここ数年続いています。東北の沿岸イカ釣り漁民の声を聞きましたので、大臣に聞いていただきたいと思います。

 大臣許可の沖合底引き船が、一年中、昼夜分かたず操業している。これではイカ資源は全滅する。まき網が操業すると、全くイカがいなくなる。資源がないときは、捕り尽くしてしまうのはやめてほしい。小指ほどの小さいイカまで全部捕ってしまう。資源を壊すと、沿岸が困るだけじゃない、地域が壊れるし、沖底も捕るものがなくなって結局困るというような厳しい意見が向けられています。

 スルメイカは、東シナ海から対馬周辺で産卵し、日本海側、太平洋側を北上して八戸沖に集まってきますけれども、そこで大臣許可の大規模操業がスルメイカを一網打尽にし、沿岸漁民が生活できないほどの不漁になっています。

 水産庁長官、おられるでしょうか。全国いか釣り協議会から、大臣許可漁業をきちんと規制できるTACを求める要望が届いていると思いますが、どう受け止めていますか。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のスルメイカについては、TACに対しまして、近年、三割から六割程度の漁獲量、消化率ということになっているところでございます。

 こうしたスルメイカ消化率が低い背景、あるいは漁獲量が低い背景には、海洋環境の変化による回遊や分布の変化、漁場形成の変動などがあるものと考えているところでございます。

 ちなみに、今申し上げたTACに対する消化率を見ますと、沿岸のイカ釣り漁業者だけではなくて、大臣許可漁業である大中型まき網についても消化率が低い一方、御指摘の沖合底引き網漁業ですとか、あと、沿岸の定置網については高い消化率となっている、なかなか一様ではないという状況でございます。

 こうした中で、TACの配分量が全て消化されているわけではない状況で、さらに、国全体のTACも超過していないという状況でございますので、特定の漁業種類の漁獲が資源の枯渇を招いているといったようなことはないというふうに認識しております。

田村(貴)委員 イカ釣りの沿岸の漁師さんたちの声というのをやはり聞くべきだと思いますよ。そして、ちゃんと検証しないといけないと思います。

 大臣許可船への規制について、もう一例紹介します。

 資料の二を御覧いただきたいと思います。

 この写真は、長崎県対馬の沿岸漁師さんが撮ったものであります。大臣許可の大型船が高級魚であるノドグロ、別名アカムツを大量に漁獲し、小さいものを海に捨ててしまっているということです。これは三年前の映像ですけれども、今も同様の状況だと伺っています。

 京都府農林水産技術海洋センターのノドグロに関する報告では、底引きで捕獲されても出荷されない一歳魚は、商品価値がなく、海上でリリースされるが、残念ながら全て死んでしまう。結局、こういうことになってしまうんですよ。こういう状況を看過していいのかということです。

 ノドグロも、大臣許可船は東シナ海から中国地方沖まで広く操業できますけれども、沿岸の漁師は目の前にある海で捕るしかできないわけであります。現場の漁師は、大臣許可船が操業した後は水揚げが消えるというふうにもおっしゃっています。

 これは、資源を枯渇させないということで大臣が免許を、許可を与えている船なんだけれども、こうして資源を枯渇させている現状があるじゃないですか。告発があるから、私もこの場で訴えているわけなんですよ。

 資源水準が厳しいときには大臣許可漁業への制限も強化する必要がある、そして、スルメイカの資源枯渇の要因分析を行うべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

森政府参考人 お答えいたします。

 水産資源を持続的に利用していくためには、大臣許可漁業であれ沿岸漁業であれ、当該資源を利用する全ての漁業者が協力して資源管理に取り組む必要があると考えております。

 その上で、大臣許可漁業につきましては、沿岸漁業と異なる漁獲能力等を有しているということを踏まえて、例えば一定の禁漁期間ですとか操業禁止水域を設定するなど、沿岸漁業にはない規制を設定している場合が多くあるところでございます。

 また、大臣許可漁業にはVMSの設置も義務づけられており、国が監視を行う体制になっております。

 引き続き、こうした大臣許可漁業に対する適切な措置を講じながら、大臣許可漁業と沿岸漁業が、共に限られた資源を利用しつつ、両者が共存していけるよう取り組んでまいりたいと思っております。

 また、スルメイカの資源の評価につきましては、本年十二月末に最新の資源評価が行われることとなっておりますので、これに基づいて、資源の状況が大きく変化しているということが明らかになった場合などにおきましては、またTACの見直しについても検討していきたいというふうに考えております。

田村(貴)委員 大臣許可船なんですから、弱腰になっては駄目だと思いますよ。

 時間がないので、大臣に、ちょっとお答えする時間がなくなったんですけれども、大臣、この写真、これはやはり大きな告発ですよ。高級魚ノドグロ、小さいものは売り物にならないから海に捨てている、こんなことをやっていたら駄目ですよ。こういうことにちゃんと目を光らせて、ちゃんと規制していくということを強く要求したいと思います。

 最後に、有明海の再生に向けた漁民との話合いについて質問します。

 先月三十一日、政府は、諫早湾干拓事業で被害を受けている漁業者の問題について、佐賀、福岡、熊本の漁業団体の代表者との会合を非公式で行い、政府方針を示した上で、書面で回答するよう迫ったと報道されています。

 お伺いします。この三県の参加者というのはどなたでしょうか、県漁連の代表の方でしょうか。書面での回答を迫った、つまり非開門を前提とする話合いを迫ったのは事実なのか。参加者はこれに対してどういう発言をされたのか。そして、水産庁から、農水省からどのような資料を配付したのか。お答えいただきたいと思います。

長井政府参考人 お答えいたします。

 十月三十一日に農林水産省と福岡、佐賀、熊本の三県漁業団体と非公開の会合を行ったことは、事実でございます。

 会合での具体的なやり取りにつきましては、相手のある事柄でございますので、先方の参加者も含めまして、お答えすることは差し控えたいと思います。

 農林水産省といたしましては、本年三月に、今後の有明海再生に関する国の方針と決意を示すとともに、裁判でなく、話合いで開門によらない有明海再生を図ることを呼びかける大臣談話を発出したところでございます。

 有明海沿岸の各漁業団体に対しましては、大臣談話の趣旨を丁寧に説明しているところでありまして、広く関係者から御賛同がいただけますように、引き続き努力を続けてまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 具体的な答えはありませんでした。

 おかしな話なんですよね。さっき、裁判と言われました。裁判によらず話合いによって解決していく、漁民原告もそれを一番望んでいるわけですよ。何度も何度も、私も、そして立憲民主党の議員さんも、ほかの党の議員さんも立会いの下で、私たちはその話合いができるよう言ってきました。その漁民原告の人たちじゃなくて、これ、違うじゃないですか、漁協じゃないですか、当事者はまず漁民原告じゃないんですか。

 しかも、胸襟を開いて話し合っていこうという土壌をつくろうというときに、農水省の方から、水産庁の方から、非開門を前提にして、それで文書で回答を求める、こんなひどいことをやるんですか。宮下大臣、いずれ長崎とか佐賀にお越しになると思うんですけれども、これではやはり理解は進まないし、解決はできないと思います。まずは条件をつけずに話し合っていく、こういう土壌をつくっていくことが何よりも大事だと思います。

 改めて確認しますけれども、国は開門義務を負っていますよね。いかがですか。

長井政府参考人 お答えいたします。

 本年三月の請求異議訴訟の最高裁決定によりまして、平成二十二年の福岡高裁判決に基づく開門請求権そのものが失われるわけではございません。

 国は、平成二十二年の福岡高裁判決が確定した後、開門義務の履行に向けて最大限努力し、開門することが事実上不可能となった中で請求異議訴訟を提起し、開門の強制執行を許さないとする判決が確定した経緯がございます。

田村(貴)委員 福岡高裁の確定判決は生きているわけです。そして、国は開門義務があるわけです。それを履行しないことに対して、大きな怒りと不満が有明海周辺にあるわけなんですよ。

 開門義務があるにもかかわらず、非開門を前提にして、それに応じなければ話合いをしない、何と不遜な態度ですか。そんなことでいいんですか。

 大臣、是非、漁業者の方は、漁民原告の方は、聞かれていると思うんだけれども、かなり妥協しても、まずは国の言い分も聞きながらとおっしゃっています。でも、やはり話合いのテーブルに着かない限りは物事は進んでまいりません。

 そういう話合いの場を、大臣もリーダーシップを取っていただいて、イニシアチブを発揮していただいてつくっていただくということを心からお願いしたいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか、話合いの場について。

宮下国務大臣 これまでの経緯をちょっと整理しますと、請求異議訴訟の相手方当事者であった方々の代理人であります弁護団から、まず、本年九月七日付で、地元での公開の話合いを求める旨の書簡をいただいております。

 これに対して、本年十月四日には、農林水産省から弁護団に対して書簡を発出しまして、本年三月の大臣談話の趣旨等を御説明する機会をいただきたいと御提案をいたしました。

 その後、弁護団の皆様から十月十九日付で改めて書簡をいただいておりまして、この書簡については、先方と現在事務的な調整を行う等、対応しているところであります。

 いずれにしても、本年三月の大臣談話に対して、広く関係者の皆様から御賛同がいただけるように努力を続けていくことが大事だというふうに考えております。

田村(貴)委員 引き続き論議したいと思います。

 時間が来ましたので、今日の質問はこれで終わります。

野中委員長 次に、池畑浩太朗君。

池畑委員 日本維新の会、池畑浩太朗でございます。どうぞ本日はよろしくお願いいたします。

 次期通常国会では、食料・農業・農村基本法改正法案を国会に提出される方針と聞いております。

 宮下大臣は所信表明において、農業政策の最も重要な使命は、国民に食料を安定に供給することであり、将来を見据え、川上から川下まで、食料供給基盤を確かなものとしなければなりませんと述べられております。そのとおりだというふうに思っております。

 そこで、大臣にお聞きしたいと思いますけれども、大臣所信でおっしゃっておられました内容について、特に食料・農業・農村基本法の改正を中心にお聞きをさせていただきたいというふうに思いますけれども、まずは、政府は、現行の基本法について、どこに問題があって、どのように改正しようとしているんでしょうか。

 自民党からは、基本法の見直しは、新自由主義からの脱却が基本法の見直しであるとも言われておりますけれども、大臣は、現行の基本法のどこが新自由主義で問題だと考えているのでしょうか。

 後にも取り上げさせていただきますけれども、官邸と自民党の取りまとめは、内容は同文でありました。

 自民党の農林部会長も経験されました宮下大臣はかなりこの辺お詳しいというふうに思いますので、明快に答弁をいただきたいと思います。

宮下国務大臣 必ずしも、既存の路線が新自由主義で、今回そこからの脱却を図るというような論点での議論はしておりませんけれども、明らかに、この一九九九年に制定された食料・農業・農村基本法、およそ四半世紀が経過して、状況が大きく変わっている、このままの基本法では対応できないということから、大きな議論を進めてきたということは言えると思います。

 特に、食料安全保障の強化が必要であること、環境との調和が必要であること、それから人口減少への対応が必要だ、こういった視点であります。

 もう少し付言しますと、大きく三つの視点から見直しを進めているわけですが、一つは、平時からの食料安全保障の確立という視点であります。

 食料安全保障の環境が大きく変化する中で、不測の事態が生じないように、平時から食料の確保に向けた対応を強化していく必要があります。また、現行基本法では、総量として必要な食料を確保できれば食料の安全保障は確保される、これはこれまでの考え方でしたけれども、近年顕在化しております食品アクセス問題等、国民一人一人の食料安全保障の確保にも対応していく必要があるという視点であります。

 第二点は、環境等に配慮した持続可能な農業、食品産業への転換であります。現行基本法では、適切に農業が営まれていれば、多面的機能が当然に発揮される、こういった考えでしたけれども、さらに、地球温暖化や生物多様性等への国際的な関心が高まる中で、環境と調和を一層図っていくことが必要だというのが二点目です。

 三点目は、人口減少下でも持続可能で強固な食料供給基盤を確立しなければいけないという視点です。現行基本法の理念であります農業の持続的発展、農村の振興という大きな方向性は変わりませんけれども、国内人口が減少局面に転じて、生産者の急減が見込まれる中で、農業、農村に関わりのある人口を一人でも多く確保しながら、一方で、スマート技術やサービス事業体の活用等により、少ない人数でも食料供給できる生産基盤も確立していく必要があると考えています。

 こうした基本的な考え方に従って、政策の再構築を図る、そのため、施策の具体化を進めながら、基本法の改正につなげていきたいと考えております。

池畑委員 ありがとうございました。

 お詳しくお話をしていただきました。現行法の理念、そして、これからこういう部分を改正していくんだということがよく分かったと思います。

 新自由主義の問題点ということに関しては、一番最初にちょっと、お話をそらせられましたけれども、一番簡単な質問をちょっと再質問させていただきたいんですけれども、安い農作物を海外から仕入れることが効率的だとされるのが新自由主義の考えだというふうに、そこから転換をしていくんだということを、自民党の元農林水産大臣のお声もありましたけれども、宮下大臣もそのお考えでよろしいでしょうか。

宮下国務大臣 やはり、ここ数年の状況を見ますと、最適地、最もコストの安いところから供給をすれば一番の利益が得られる、そういった考えではリスクに対応できない、こういうことが本当に明らかになってきたと思います。

 それだけに、肥料にしても様々な生産資材についても、複数のところから、輸入するにしても、供給ルートをしっかり確保するとか、それから、国内での生産基盤をもう一回立ち上げるとか、様々なことでリスクに対応できる体制にしていかなきゃいけない、おっしゃるとおり、そういう意味では大きな発想の転換をしなきゃいけない局面にあると思っています。

池畑委員 ありがとうございました。

 そこを踏まえながら、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 現行法の基本法、今大臣からも説明がありましたのでちょっと、少し外させていただきますけれども、基本理念を掲げておられます。そのお話を今ずっとしていただきましたけれども。その基本法の、食料自給率の目標、規定されております。これはもうずっと、午前中もいろいろな委員の先生方が質問をされておりますので、少し変化をつけながら質問をさせていただきたいと思います。

 この自給率の問題については、私も予算委員会で、岸田総理、そして角度を変えて、河野消費者担当大臣、斉藤国土交通大臣にもお聞かせをいただきまして、どういったところに原因があるんですかという質問をさせていただきました。

 その中で、自給率が向上しない原因は、自給ほぼ一〇〇%の米を減り続けさすということと、麦は、昔と比べれば品質もよくなっているんですけれども、国内の条件ではなかなか限界があるというのが現状であります。また、麦は外国に依存しているので、自給率が上がらない大きな原因とされているというふうに私は思っております。

 そこで、現在、自給ができる米について、その生産を年々縮小させているような状況であるというふうに思います。更なる自給率の向上は難しいと思います、そのままだったらですね。米の生産を抑制する中で、今後どのような方法で自給率を高めようと考えておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 まず、食料自給率が向上していない原因ということですが、カロリーベースの食料自給率は、御指摘のとおり、長期的に食生活の変化が進み、国内で自給可能な米の消費が減少していること等によりまして、近年、三八%前後で推移をしていると認識をしております。

 次に、自給率の向上を図るためには、主食用米の需要が毎年減少していくことが見込まれる中、麦、大豆、加工原料用野菜等、輸入依存度の高い品目への国産転換を推進するとともに、米粉の特徴を生かした新商品開発等による利用拡大や、米の輸出促進等による米の消費拡大や販売促進を図ることが必要です。

 さらには、我が国の食と農について国民の皆様の理解が深まり、国産の農林水産物を積極的に選択をしていただくといった消費面での行動変容につなげていくことも重要だと考えております。

池畑委員 米に関しては、今副大臣が答えていただいたとおりだというふうに私も思っております。

 さらに、先ほどお話をさせていただきました、輸入に依存しております麦や大豆について。大豆は特に国産が七%台ということでしかありませんので、この麦と大豆、現実的にどこまで日本で増産ができるとお考えでしょうか。また、そのために財政負担はどれぐらいかかるというふうにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、主食用米の需要量が毎年十万トン程度減少している中で、輸出の拡大は大変重要なテーマではありますが、輸出は、輸出先国それぞれのニーズを捉えながら伸ばしていくので、一気に拡大できないため、輸出は年間三万トン程度となっております。

 一方、輸入依存の高い小麦、大豆なんですけれども、現在の基本計画において、令和十二年度の生産努力目標として、小麦は百八万トン、大豆は三十四万トンを掲げておりますが、令和四年産では、小麦は九十九万トン、大豆は二十三万トンと順調に増加をしております。委員おっしゃるとおり、国産の小麦、大豆に対する需要も、品質の向上によって、近年高まってきているというふうに考えております。

 財政負担でございますけれども、麦、大豆につきましては、諸外国との生産条件の不利を補正する畑作物の直接支払交付金、いわゆるゲタ対策と、水田における水田活用の直接支払交付金の対象になっておりますが、これらは複数の品目でまとめて単価を設定しているものがありまして、麦、大豆を取り出して財政負担をちょっと申し上げるのは難しい状況でございます。

 いずれにいたしましても、財政負担とのバランスも考慮しながら、過度な輸入依存からの脱却に向けた構造転換を進めていきたいというふうに考えております。

池畑委員 百八万トンと三十四万トンと、なかなか、トン数で言われちゃうと何%に増強しているのかちょっと分かりにくい部分もあると思いますけれども、増やしていこうという方針には変わらないというふうに思っております。

 そこで、大臣所信において、輸出額を、今現在は二兆円でありますけれども、二〇三〇年の輸出額が五兆円ということで、目標を取り組んでおられるというふうに思います。

 現行法の第十八条第二項では輸出に関して規定をしておりますけれども、そんな中、私はちょっとこだわっておりますけれども、日本で最も作付をされる米の輸出目標は百二十五億円、目標設定、全体の五兆円に対しては少な過ぎるというふうに私は思っておりますけれども、輸出額は現在七十億円にとどまっております。この原因をどのように考えておられるか。

 先ほどちょっと、少しお話をいただきましたけれども、どのように考えているのかということと、目標設定の達成に向けてどのように取り組んでいかれようというふうに思っておられるのか。輸出目標の五兆円に対して、やはり、余りにもこの百二十五億円というのは設定が少ないというふうに思いますが、どのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

水野政府参考人 お答え申し上げます。

 農林水産物、食品の輸出は、国内市場が縮小する中、国内の生産基盤を維持するために不可欠なものであり、政府では、二〇二五年に二兆円、二〇三〇年に五兆円の輸出額目標の達成に向けて、二〇二〇年に輸出拡大実行戦略を取りまとめ、その実施に向けた施策を進めているところです。

 具体的には、二十九の重点品目を定めた上で、品目ごとの輸出額目標の達成に向けて、例えば、輸出向けに生産、流通を転換する輸出産地の形成や、マーケットインの輸出に向けて、輸出先国において事業者を支援する輸出支援プラットフォームを設置するなどを推進しているところでございます。

 お尋ねの米につきましては、米、パック御飯、米粉及び米粉製品を重点品目の一つとして定めた上で、二〇二五年の輸出額目標を百二十五億円と設定したところですが、その後の輸出額は年々伸びておりまして、二〇二二年には、二〇一八年の約二倍となる約八十三億円となったところでございます。

 この輸出額目標の達成に向けましては、日系だけでなく現地系スーパー、レストランチェーンや、輸出事業者の進出が不十分な国、地域など新たな市場の開拓、米加工品であるパック御飯などについて、市場規模の大きい米国等における需要開拓に取り組んでいきたいと考えているところでございます。

池畑委員 五兆円に対して百二十五億というのは適正だというふうに思われているんでしょうか。もう一度、ちょっとお願いしたいと思います。

水野政府参考人 いずれにいたしましても、二〇二五年の百二十五億円と設定しておりますので、それに向けて、現在、額を伸ばしているというところでございますので、現時点で、二〇二二年、八十三億円ということでございます。

池畑委員 それでは、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 午前中に公明党の山崎委員からもありましたので、問題意識をお伝えするとともに、少し質問をまとめたいというふうに思いますが、食料安全保障に関してお尋ねをさせていただきたいと思います。基本法第十九条の、不測時における食料安全保障に関してでありました。このお話は山崎委員からもありましたので、米について緊急時の措置を規定されております。

 その中で、いざというときに制度を整備することは当然必要だというふうに私は思っておりますが、米を生かして農業を発展させる、そして輸出を含めて成長させていくことが重要だと、今の質問をさせていただく中で、また、政府の考え方としても、そういう考えは変わらないということであるというふうに思っております。

 いざというときに、米の増産というのは、すぐにできるものではないというふうに考えております。政府・与党、いつも取りまとめておられます、いわゆる水田の畑地化ということなんですが、二年前だったというふうに思います、与野党を問わず、委員の方々も熱心に質問されていたことを記憶をしておりますけれども、今回、今、畑地化を進めてしまえば、米の増産は難しいというふうに考えております。

 地元の夢前町の畜産農家さんも、自分で飼料を自家栽培しているんですけれども、それをいろいろと、心配事も増えるし、問題が浮き彫りになってきているんじゃないかということを訴えられております。

 私も、水田の畑地化について考え直すべきではないかというふうに考えますが、いかがお考えでしょうか。

舞立大臣政務官 お答え申し上げます。

 私も地元に帰ったときに、地元の農家の方と話すことがよくありますけれども、先生御指摘のような御意見をおっしゃる農家も、時々、本当、聞いているところでございます。

 ただ、米だけ増やせばいい、米だけ考えればいいといったものでもないなというところでございますが、人口減少や少子高齢化等によりまして主食用米の需要が毎年十万トン程度減少する中で、我が国の食料安全保障を強化するためには、やはり、輸入依存度の高い麦、大豆や加工・業務用野菜などへの転換を推進することが重要と考えておりまして、水田機能を維持しながら、水稲と麦、大豆等とのブロックローテーションに取り組む産地に対しては、水田の汎用化の基盤整備、そしてまた水田活用の直接支払交付金の交付等を行う一方で、やはり、畑作物が連続して作付されており、水田としての機能が失われているような産地につきましては、畑地化を促すこととしておりまして、麦、大豆、加工・業務用野菜等の産地化に向け、一定期間の継続的な支援、畑地化の基盤整備への支援等を行うこととしたところでございます。

 農水省といたしましては、各産地におきまして、畑地化一辺倒ではなく、水田機能を維持して産地化するのか、又は畑地として産地化するのか、御検討いただいているところでございまして、需要に応じた生産とともに、農家所得の向上という観点からも、いずれの産地の取組も後押ししていきたいと考えております。

池畑委員 今、政務官が本当に言われるとおりだというふうに思います。大豆、そして麦への転換をすることが重要であるというふうなお話をいただきました。今、農水省から答弁いただきましたけれども、やはり、大豆や麦に抽出して、どういうふうな財政負担がかかるかということは特段抽出して考えていないという答弁もいただきました。

 その中で、政務官は、やはり大豆、麦は、重要なものであるということですから、転換していくことも重要であるということですから、やはり少し、ちょっと具体的に、どういったスケジュール感があって、大豆と麦、どれぐらい負担がかかって、どれぐらい増収ができるのかということも考えていただかないといけないというふうに思います。まさに政務官が言われたとおりですので、そういった財政は、財政というか、どれだけ財政負担がかかるかというのは抽出するべきだというふうに思いますので、是非よろしくお願いしたいというふうに思います。

 その中で、今、現行法の、旧基本法と大きく異なりますのは、第二十一条の望ましい農業構造の確立と、第二十二条の専ら農業を営む者等による農業経営の展開であるというふうに言われておりますが、これらの規定を改正するおつもりはあるのでしょうか。

 私は、効率的に、安定的な農業経営を育てていく方向性は残して、条件不利、いわゆる中山間地域と言われる地域は別建てで支えるべきだというふうに考えておりますが、どのような問題意識で、どのような改正を考えておられるのか、分かる範囲で結構でございますので、教えていただきたいと思います。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 現行の食料・農業・農村基本法におきましては、効率的かつ安定的な農業経営を育成、支援することが規定をされています。

 こうした農業経営とは、食料・農業・農村基本計画におきまして、経営規模の大小や家族経営か法人経営かを問わず、経営意欲があり、農業所得で生計を立てる農業者である旨を示しておりまして、このような担い手を育成、支援しているところでございます。

 その結果、中小経営、家族経営を含め、担い手が各地で育ち、多くの品目で担い手が農業生産の相当部分を担う構造を実現しています。

 このため、本年六月に政府の主要閣僚により取りまとめられました食料・農業・農村政策の新たな展開方向におきましては、効率的かつ安定的な経営体を育成、確保する旨記載をしたところでありまして、そうした経営体が重要であるとの考えに変わりはございません。

池畑委員 ありがとうございました。分かりやすい答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 それを踏まえながら、今回の基本法改正に進む手順として、前回の改正は実に六年以上かけて改正をされておられます。多数の農家さんであったり、各種団体のお話を聞く必要があったからだというふうに思います。長ければいいというものだとは思いませんけれども、今回は一年半ぐらいでまとめていこうとされているように聞こえております。

 前段、一番最初に質問させていただきましたけれども、五月十七日に自民党内で取りまとめた後に、五月の二十九日、審議会検証部会。たくさんのメンバーの方がおられまして、農協の方もおられますし、大学の先生方もおられます。その中で、六月の二日に官邸本部にて取りまとめられまして、ここで、先ほども何遍も聞きましたけれども、六月二日に官邸本部にて取りまとめておられます。

 自民党と官邸本部は同文だ、同じ文言でありますというふうに先ほどお話を聞かせていただきまして、大臣からも答弁をいただきました。

 自民党と官邸本部は審議会の取りまとめを踏まえていないというふうに、私は日程的にも思ってしまうんですけれども、踏まえておられるのでしたら、踏まえている部分を御指摘いただきたいと思います。

杉中政府参考人 お答え申し上げます。

 議員が申し上げたとおり、食料・農業・農村審議会におきまして、基本法検証部会を昨年の九月から開催をしておりました。

 官邸本部又は党の取りまとめに先立って、検証部会の方で中間取りまとめというものを行って、その後、地方の意見を聞くとかの手続をしたところですけれども、基本法検証部会の中間取りまとめの内容と展開方向の内容とおおむね即したものであるというふうに考えております。

池畑委員 おおむね即したものであるというふうに答弁をいただきました。

 そこで、総理所信でも農政の転換という言葉が使われていました。何をどう転換するということなんでしょうかね。意見を多く聞き、機関紙の「自由民主」でも取り上げておられましたけれども、農政の憲法とまで取り上げておられます。幅広く聞かれているわけですから、是非そういった意見をきっちり取り入れていただきながら進めていただきたいというふうに思います。

 その中で、大臣、最後にお聞きさせていただきたいんですけれども、今、いろいろな意見があって、それを踏襲しているという話も聞かせていただきましたけれども、いろいろな補助金とか、そういった維持をするために都合がよいと考える勢力の方々の意見も当然反映されていくわけじゃないという部分も含めまして、宮下農林水産大臣の下、農政の転換をされる、そして、農業は強くなって、発展して、自給率も向上するとの御決意を、いま一度お聞かせいただきたいと思います。

宮下国務大臣 我が国の食料安全保障は、世界の人口増加、気候変動等の食料安全保障を取り巻く環境が変化していること、また環境等の持続可能性の取組への関心が高まっていること、また国内の人口減少に伴う食料供給を支える力への懸念、こうした大きな社会情勢の変化や課題に直面しておりますので、本当に大きな転換をしなければいけないという局面にあると思います。

 その転換を通じて、一言で申し上げれば、食料安全保障の確立に取り組んでいきたい、この一語に尽きるわけですけれども、そのためにも、先ほど来申し上げていますように、平時から国民一人一人の皆様への食料安全保障の確立、それから、国内農業生産の増大、輸入の安定確保、市場拡大に向けた輸出の拡大、適正な価格形成に向けた食料システムの構築、また、環境の面では持続可能な農業、食品産業への転換に向けたみどりの食料システム戦略による取組の強化、さらに、人口減少下でも持続可能で強固な食料供給基盤の確立に向けたスマート技術の活用による生産性の向上等々が重要だと考えています。

 以上のようなことを踏まえて、基本法が農政の基本的な方針としてふさわしいものとなりますように、令和六年の通常国会への基本法改正案提出に向けて、施策の具体化を進めるなど、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

池畑委員 大臣が今ずっと紙を見てお話をしておられました。午前中、委員会でお話しのときに、大臣が紙を見ずにお話をされるときに勢いを感じさせていただきます。

 是非、紙を見ずに、もういま一度だけ、時間もありますので、大臣が紙を見ずに、ここを私が、農業の農政として、ここを改革するんだ、ここをこういうふうにするんだという思いを聞かせていただきたいと思います。

宮下国務大臣 午前中からの議論で申し上げましたように、多くのリスク、課題に直面しております。しかし、そこを乗り越える知恵もあるし、皆様の意欲と知恵でしっかりこれを乗り越えていく、まさに転換期に立っているのが今の我々だと思います。

 全ての皆様のお知恵もいただきながら、その知恵も結集して、この農政の転換期、農政の憲法と言われる法律を新しくする、それと同時に、大きくみんなで農業を成長産業に転換していくんだという機運を高めていく、多くの皆さんにもそうした認識を持っていただいて、この危機を乗り越えて、未来に向かって発展する農業にしていきたいと思っております。

池畑委員 大臣、ありがとうございました。

 我々もしっかりと、対案を出して頑張ってまいりたいというふうに思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 本日はありがとうございました。

野中委員長 次に、一谷勇一郎君。

一谷委員 日本維新の会の一谷勇一郎です。

 私は、福祉分野が専門なんですが、日本維新の会が全国政党になるべく、第一次産業、農林水産をしっかりやりたいという思いで志願をして参りました。どうぞ皆さんよろしくお願いをいたします。

 では、早速質問をさせていただきたいと思います。

 有機農業についてなんですが、有機農業を広げる目標があります。二〇三〇年に六万ヘクタール、二〇五〇年には百万ヘクタールということになっております。

 今現在、日本の中の有機農業を行っている面積を考えると、実現できるのかという思いもありますし、二〇三〇年から二〇五〇年の間の二〇四〇年に、参考資料のグラフを見ていると急激にぐっと上がっていくということで、これの理由が、次世代有機農業技術の確立ということになっています。

 二〇四〇年といえば、私は団塊ジュニアの最後ですけれども、ちょうど我々団塊ジュニアが六十五歳に入っていって、労働者が非常に減るということも重なっているんですが、一体これを本当に現実にできるのかということを、まずは政府参考人の方にお伺いをさせていただきます。

平形政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、みどり食料システム戦略では、二〇五〇年までに有機農業の取組面積を農地の二五%、百万ヘクタールに拡大する目標を掲げております。

 この達成に向けて、当面は、一つは、国内消費の拡大それから輸出促進によってマーケットを拡大するということ、二つ目、生産から消費まで一貫した取組で、地域ぐるみで進めるオーガニックビレッジ、これを創出していくこと、三つ目、先進的な農業者それから産地の取組の横展開を進めるということで、現在二・七万ヘクタールの有機農業の取組面積を二〇三〇年までに六・三万ヘクタールまで拡大すること、これを目標としているところです。

 さらに、二〇四〇年までに、特に、有機の場合、品種の開発、それから除草ロボット、除草が非常に労働が負担なので、こういったことの技術開発を進め、より容易に有機農業に取り組むことができる環境をつくり、普通の農家が経営の一つの選択肢として有機農業に取り組むことができる技術体系を確立することで、飛躍的な取組面積の拡大を図って、百万ヘクタールまで達成したいというふうに考えております。

一谷委員 では、少し、更に追加の質問をしたいんですが、その百万ヘクタールに向けて、どれぐらいの従事者の方が必要なのかというふうな人数が示されていないんですね。もし、すごくイノベーションが起きて、先ほどの除草ロボットとかが発達したとすれば、その目標人数から減らせばいいと思うんですが、目標の人数、働く従事者の人数がいなければ、その人数の雇用をどういうふうに組み立てるかということはできないというふうに考えるんですが、その辺り、お答えいただけたらと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 実は、現在、有機農業を経営されている方を拝見いたしますと、十数アールぐらいの大きさの方から数百ヘクタールまで及ぶような方まで様々いらっしゃいまして、品目ごとに必要となる労力及び技術体系など大きく異なっているので、どの程度の方、人数がいらっしゃればこの百万ヘクタールになるのかと試算するのがとても、ちょっと困難であります。

 一方で、有機農業者の育成自体はやってはおるんですけれども、特に省力化技術の開発による規模拡大、これは確実にやっていかなければいけないところでございまして、農林水産省では、特に、先ほど申し上げましたけれども、乗用型の除草機ですとか除草ロボットといった、そういった技術の開発それから普及。それから、病害虫への抵抗性のある品種の開発、これもとても重要になります。さらに、地域の営農をサポートする、農業支援サービス事業体といって、技術を教えたり、あるいは難しい技術を代わりにやっていただくような、そういった事業体を育成するという、そういったことで面的な取組が拡大するような環境を整えていきたいというふうに考えております。

一谷委員 丁寧な御説明、ありがとうございます。

 ただ、とはいえ、やはりどれぐらいの人数かというのを示していただいた方が、それに向かって確保をしていけるのではないかなと思いますし、大分有機農業については議論されてきたというふうに私も聞いておるんですが、ここの委員におられるどれだけの先生方が達成可能だというふうに思っておられるのかなというのは、ちょっと私は疑問に感じています。

 それでは、次の質問をさせていただきたいと思います。

 化学肥料が高価になり、国内の資源を有効活用した肥料製造が必要と考えます。どういった対策を講じるのかということとともに、肥料の国内生産を増やす具体的な政策を政府参考人の方に問います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 肥料につきましては、その原料の多くを海外に依存しておりまして、国際価格の影響を受けづらい構造に転換するためにも、国内資源の肥料利用、これを拡大することが重要だというふうに考えています。

 国内資源の肥料利用の取組を持続的な形で進めていくためには、原料を提供される方、肥料を製造される方、肥料を利用される方の連携が不可欠でございまして、本年二月に、国内肥料資源の利用拡大に向けた全国推進協議会を設置いたしまして、各地域でマッチング会合を開催するなど、関係事業者間の連携づくり、まずこれを支援しております。

 また、良質な肥料の供給を進めるために、一つは、肥料の供給面では、堆肥の高品質化に資する堆肥化施設や散布しやすい肥料のペレット化に必要な施設の整備、それから二つ目、利用面では、新たな肥料の導入に伴う施肥効果の実証ですとか散布機の導入等の取組に対して支援をしているところでございます。

 さらに、今回の経済対策にもこうした対策を盛り込んだところでございまして、検討しております補正予算においても、必要な事業が実施できるように努めていきたいというふうに考えております。

一谷委員 時間の関係もありますので、更に質問はやめておくんですが、良質な肥料というところがどういった肥料なのかというのが、ちょっと私は調べ切れなかったというところと、やはり、数値というのは必要ではないかなというふうに考えております。

 そういった肥料に関連して次の質問をしていくんですが、大臣所信で、生物多様性の話がありました。生物多様性の話があると、生物を守っていこうという、ちょっとマイナス面のような話に聞こえるんですが、実は、日本は微生物に関してはすごい優位性があるというふうに私は聞いております。

 農業は土が大切であり、この微生物が土や土を生かす堆肥に及ぼす研究について促進されているのかということをまずお聞きしたいということと、私は、実際、滋賀県で検討されておられる乳酸菌を用いた堆肥の研究を拝見をしてきました。民間企業が堆肥の問題にも真剣に取り組み、この問題に対して、県の職員の方や市の職員の方も一緒におられました。土壌分析も、さらに、近くの大学にお願いをしてやっておられたということです。

 肥料というか堆肥について、国の計画や目標値があれば、これは滋賀県ですので、武村副大臣にお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 国内の肥料資源の活用におきましては、土壌微生物等の土壌が有する特性を最大限活用することが重要です。

 令和二年度から、政府全体で推進するムーンショット型研究におきまして、土壌中に存在する微生物が、作物の生育促進に最大限の効果を発揮できる土壌や日照などの環境条件を解析し、制御する技術開発を目指しています。

 農林水産省におきましては、みどりの食料システム戦略で掲げる二〇五〇年までに化学肥料の使用量を三割削減するという目標に向けまして、今後とも、微生物を活用した堆肥等に関する研究開発を推進してまいります。

一谷委員 やはり、こうやって研究を進めていく中でも、民間企業や県や市がしっかり取り組んでおられるところもピックアップしていただいて、国の後押しをしていただきたいなというふうに思いますので、是非、滋賀県はすごく力を入れてやっておられて私も感動したんですが、またお力添えをよろしくお願いをいたします。

 それでは次に、産地についてどういったお考えがあるのかというのを、農林水産省の考えを政府参考人の方にお伺いいたします。

平形政府参考人 産地につきましては、一定の定義があるわけではありませんけれども、地域の特性に応じた作物の生産、販売に戦略的に取り組む、一定の面的な広がりを持つ地域のことを指すものというふうに考えています。

 農産物の生産の面で見ますと、個々の取組よりも、産地を形成して生産技術ですとか品種を統一し、そうしますと生産量が拡大するということと、品質向上、それからブランド化、これが可能になります。このために、産地の形成というのは農業者の所得向上に向けた重要な方策の一つというふうに考えております。

一谷委員 私は、産地というのは競争の基ではないかなというふうに思っています。やはり、同じものを作っても、あの産地には負けないというような気持ちがあるから更にブランド化を高めていく、品種改良をするということがモチベーションとして上がってくるのではないかなというふうに思うんですね。

 そこで、次の質問に移りたいんですけれども、産地を生かすためには各地の農業試験場がキーになると考えています。RアンドD、研究開発が産地の競争力を増す源ですが、農林水産省とのニーズやシーズ、これは、試験場の持っている技術との乖離が、農業試験場との間にあるんじゃないかなというふうに考えています。

 予算も含めてこの辺りの意見をお伺いしたいのと、もう一つは、農林水産省の職員の方々は各地の農業試験場に赴かれているのかということもお答えいただきたいですし、予算については、これは文科と共同して公設試の研究予算確保を国費で対応してもらいたいと思いますが、御意見をお願いをいたします。これは大臣にお願いいたします。

宮下国務大臣 都道府県の農業試験場は、地域ごとに様々な特色を有する我が国の農林水産業の研究開発を担う重要な役割を有しているというふうに認識しております。

 農林水産省としましては、従来から、農業試験場との共同による品種開発、また病害虫防除等の研究の実施をしたり、また、各都道府県の農業試験場長との定期的な意見交換会の開催などを通じて緊密に連携をしております。

 今後とも、農業試験場による研究開発が進むよう、農業試験場も活用できて、産地のニーズに対応した基礎研究から成果の現場実装までを支援する研究開発予算の確保にしっかり努めたいと思いますし、もう一つ、産学官連携という意味では、平成二十八年から知の集積と活用の場という事業を運営しております。これは、農林水産、食品分野への異文化のアイデア等の導入によるイノベーション創出を目指した事業でありまして、こういった場を通じて農業試験場と企業、また大学等の更なる産学官連携も推進してまいりたいと考えています。

一谷委員 政府の方々とこういった質問を作るときにいろいろお話しさせていただいたときに、予算が農林水産省としても出ています、アカデミアの方も出ていますということだったんですが、私は、そこはやはりプロとしての見方であって、やはり、すごいイノベーションを起こすときというのは全く違う研究が農業に生きてくるというようなことが必要ではないかなと思っていますので、是非ここは、文科省との連携というか、そういったところも予算組みをしていっていただいて、広い視野で農業のイノベーション、科学的な、アカデミアも入った研究を是非農業の試験場でやっていただきたいです。こういったところに権限と人と予算をもっともっと割いていただくのが、産地が生きて、切磋琢磨して、輸出をするにしても、輸出を受ける国がそれを欲しいと思えるようなものができるのではないかなと思いますので、是非考えていただきたいと思います。

 温暖化の話も所信にありました。環境と調和が取れた産業に転換していくということですが、温暖化の本質は病害虫の発生区域の拡大化だと私は考えます。ならば、温暖化の今だからこそ、温暖化の影響を受けにくい中山間地域にサイエンスを導入して、中山間地域のポテンシャル、これは、標高五百メーター以上になれば病害虫も少ないということであったり、標高が百メーター上がるごとに気温が〇・七下がる、そして、日の温度差ですね、朝と夜の温度差が激しいということで、物すごくポテンシャルがあるというふうに考えています。そういったことを引き出す政策こそが必要だというふうに考えています。

 食料・農業・農村基本法の改正審議がされている今だからこそ、第三十五条にある農業の生産条件が不利な地域をサイエンスの力で変えていくということを考えていただけないかというふうに思います。

 また、中山間地域直接支払制度だけでは、中山間地域のポテンシャルを生かすことはできません。近年生じる高温障害は、品種改良だけでは乗り越えることが限界と考えますが、このことについて、大臣に御意見を求めます。

宮下国務大臣 様々な御示唆をいただきました。

 農林水産業は全般に気候変動の影響を受けやすい分野でありますので、温暖化の被害を回避、軽減する適応策、どうしていったらいいかということは本当に大事だと思います。

 長野県においても、同じ果樹でも上の段と下の段ででき方が違う、上の段の方がいい出来になってきたみたいなことは実感としてよく聞く話ですし、その高度を利用して最適地を更に拡大していくという考え方も重要だと思います。

 ただ、高地になればなるほど耕地面積が少なくなるという傾向もあって、それで全てが解決するわけじゃありませんので、やはり、高温に強い品種も開発して、そういったものへの移行も重要ではないかなというふうに思っています。

 そういった意味で、米であればにじのきらめきだとか、ブドウであればグロースクローネとか、こういった高温に強い品種の開発もやってまいりましたし、先ほども出ましたけれども、温暖化に適応した生産技術の開発、遮光とか、そういう育て方、育成の技術で高温障害を乗り越える、そうしたノウハウを開発して適応していくというのも大事だと思います。

 令和五年度当初予算においても、持続的生産強化対策事業ということで、こうしたことに対応できる優良品種への改植支援をやっておりますし、補正予算でも、こうした高温環境に適応した栽培体系への転換の実証支援、こういうこともやって、様々な知恵を結集しながら、総力戦でこうしたリスクを乗り越えていきたいと思っております。

一谷委員 産地の北上化ということもありますし、沸騰社会と言われる世の中になってきて、我々の想像を絶するほどの温暖化が急速に進んでいるというふうに思います。また、この北上化ということが、やはり福島の復興の物すごいいい面になることもあるのではないかというふうに考えますので、是非スピード感を持って対応をしていただくことが大事ではないかなというふうに考えます。

 それでは、日本の農業者のことについて質問をさせていただきます。

 現在、農業者は、人口で割ると百七人に一人ということで、平均年齢は六十八歳です。昨年、初めて新規就農者が五万人を割り、四万六千人だったというふうに記憶しております。

 農業とは誇り高い産業であり、貴重な存在です。そこで、これは一つ提案というか案なんですが、兼業公務員という農業スタイルを考えてみてはどうかなというふうに思うんですが、若者にとって魅力的な産業に農業を上げていくための意見も併せてお伺いできたらと思います。政府参考人の方にお伺いいたします。

村井政府参考人 お答えいたします。

 農業者の高齢化、減少が進む中、農業生産を安定的に行っていくためには、農業現場で必要な人材を確保していくことが重要な課題であると考えております。

 近年、新規就農者数は減少傾向ではありますが、農業外から参入する新規就農者は微増となっております。農林水産省としては、引き続き、農業の魅力を発信する取組を進めてまいりたいと考えております。

 今委員の方から御提案のございました兼業公務員でございますけれども、例えば、サクランボの収穫作業等の副業を認めている山形県や、果物の収穫作業等の副業を認めている福島市など、農業を副業として認める地方公共団体も出てきているものと承知しております。

 いずれにしても、農業を支える人材、新規就農者の確保は大変重要でございます。令和四年度から新たに措置をしております新規就農者育成総合対策におきましては、就農準備資金あるいは経営開始資金といった資金面の支援に加えまして、経営発展のための機械、施設の導入あるいは地域におけるサポート体制の充実などを支援しております。

 このような総合的な支援によって、農業人材の確保から育成、定着までを一層推進してまいりたいと考えております。

一谷委員 政府の方との話合いのときに、実際に先ほどお答えいただいたとおり、兼業をやっておられるところもあるというふうにお聞きして、ちょっと驚いたんですが、ただ、やはり公務員だから、もうけてはならないみたいな感じで、実費の範囲内でみたいな感じの話をお伺いして、それではなかなか公務員の方も働いて兼業してみようかなというふうには思わないというふうに思うんじゃないかなと思います。

 私も福祉の分野で働いていますけれども、なかなか、年齢層が高くなってくる産業で若い方の参画がないというのは非常に厳しいですし、一気に人材がいなくなってしまって、もう手に負えないというような状況になるのではないかなと思いますので、ここは、今までの考え方を覆すような人材確保の方法というのが必要ではないかなと思います。

 公務員の方でも、知恵を絞って、仕事を早く、例えば一つの仕事を五分で終わらすのと五時間かかった人の評価が同じというのではなくて、早く終われば終わったなりに次へ行けるような、兼業で農家ができるようなことができたらなというふうに思うので、ちょっとここは考えていただけたらありがたい。

 副大臣、すごくうなずいていただいているので、是非滋賀県からやっていただけたらありがたいと思いますので、お願いします。

 最後に、今日は国交省の方も来ていただいていますので、質問をさせていただきたいと思います。

 下水道からの肥料を生成するという計画があるというふうにお聞きしているんですが、一体どのような計画なのかということと、実際それがうまくいっているのかということについてお伺いを政府参考人の方にさせていただきます。

野中委員長 国土交通省松原水管理・国土保全局下水道部長、申合せの時間が来ておりますので、答弁は簡潔に願います。

松原政府参考人 お答えいたします。

 下水道、下水を処理したときに出る下水汚泥がございまして、これがリンを含んでおるということで、肥料に活用しようということでございます。

 昨年十二月に食料安全保障強化政策大綱が定められまして、この中で、下水汚泥発生量の約一四%が今肥料として利用されていますが、これを二〇三〇年までに倍増する目標が定められております。

 目標の達成に向けまして、現在、肥料化のコスト縮減のための技術実証を行うとともに、下水道事業者と肥料製造業ないし農業者とのマッチング支援など、取組を進めております。

 引き続き、農林水産省と緊密に連携をいたしまして、農業者等へのPR、それから関係者間の案件形成支援を推進し、地方公共団体に対する施設整備の支援などを継続して進め、これら施策を一つ一つ実施いたしまして、目標の達成に向けて取り組んでまいります。

一谷委員 ありがとうございます。

 これで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

野中委員長 次に、長友慎治君。

長友委員 国民民主党の長友慎治です。

 一月十一日の大臣の発言の中で、基本的な考え方としまして、宮下大臣から下記のとおりお話がございました。農業政策の最も重要な使命は、国民に食料を安定的に供給することであり、将来を見据え、川上から川下まで、食料供給基盤を確かなものとしなければなりません。

 この点、本日の委員会でも、午前中からここに触れる委員の皆様がたくさんいらっしゃいまして、それぞれに厳しい現状認識を御披露いただいたというふうに思っております。

 私からも、食料を安定的に供給するための農家が減少し、担い手も増えず、これからますます農業従事者が減ることが予想される現状におきまして、国民に食料を安定的に供給するための国内の生産体制として、今日は御質問をしたいと思っているんです。

 私も、先ほど一谷委員から御質問があったように、農業従事者を何人確保することが望ましいのか、また、農地、耕地面積はどのくらいあれば日本国民に食料を安定供給することができるのかということを伺いたいんです。伺いたいんですが、事前のレクで、人数を想定してはいない、人数を答えることはできない、また、どのぐらいの耕地があれば食料を安定供給できるか、試算もできていないと。その理由としては、先ほどの一谷委員に対する回答にもありましたように、技術力であったり、それぞれの生産性であったり、品目ごとにいろいろ複雑な関係があるので数字は出せないというふうに説明をいただいております。

 確かにその点理解はするんですけれども、例えば、ベストな想定であればこういうような人数と耕地の面積、最悪だとこれぐらいのケースが想定される、また現実的だとこの辺りかと、それぐらいのシミュレーションは私はできると思うんですね。

 現在の基幹的農業従事者、つまりは十五歳以上の世帯員のうち、ふだん仕事として主に自営農業に従事している人の数というのは、今現在が百二十三万人となっています。これは農林水産省の農業構造動態調査による二〇二二年の数字なわけなんですけれども、平均年齢は先ほどから御指摘いただいていますように六十七・九歳、六十八歳、年齢構成的には七十歳以上の方が五六・七%で半分以上、六十歳以上となると八割ということになっているのが現状なわけです。五十代以下、つまり、今五十代以下で二十年後の基幹的農業従事者の中核を担っていただく層の皆様は現在二十五・二万人ということで、現在二一%しかいないというのが現実なんですね。

 このような趨勢の中で、食料供給基盤をどのように安定的なものにしていくのか。現実としては厳しいという認識は、これまでの御指摘があったとおりだと思います。

 今後、十年から二十年先を見据えると、基幹的農業従事者は大幅に減少することが確実で、現在の僅か二〇%ほどの五十代以下の農業従事者で農業生産を支えていかなければならない状況を、私はもっと国民を巻き込んでフォーカスしていかなければならないというふうに思います。

 午前中には、近藤筆頭から、新規就農の参入の年齢も引き上げて、補助、サポートしていくべきだという御指摘もございました。このまま農業従事者が減り続ければ、今のように新鮮で安心して食べることができる国産の野菜を身近で作る人もいなくなってしまうんじゃないか、そのような心配も出てまいります。

 国民に食料を安定供給するための農業従事者をどのように確保していくイメージでいらっしゃるのか、まず大臣に伺いたいということと、もう一つは、耕地、農地ですね、どのくらいあれば政府が目指す食料自給率を達成することができるのか、大臣の御所見を伺いたいと思います。

宮下国務大臣 委員御指摘のとおり、今後、国内の人口全体が減少して、生産者の減少が避けられない中で、農地などの食料の生産基盤を維持していくということでいいますと、現在よりも本当に相当程度少ない人数で国内の食料生産を担うということを想定せざるを得ないということであります。

 それをどういう方策で実現するかということでありますけれども、主なところは三つ。

 一つ目は、生産性の向上につながるスマート農業技術の開発、実用化をやって、自動トラクターとかドローンとかそういったことで、広い面積を少ない人数でマネジメントできるような技術をどんどん開発して実装していくこと。

 それから二つ目は、経営とか技術面で経営体をサポートして、地域内の作業を請け負うサービス事業体というようなことで、何から何まで自前で持つという時代から、サービスをみんなで共用して使う、こういう体制で、少ない人数で回していく体制に移行していくということ。

 三番目は、先ほどもちょっと言いましたが、地域の話合いで将来の農地利用の姿を示した地域計画を今年、来年で策定していただくわけで、その中で、農地バンクを活用した農地の集積、集約化を進めていただく。こうすれば、農家負担なしで新しい農地の姿がつくれますので、そうしたことで、新しい、これからの十年先を見通した農地の姿もみんなで考えていただいて、地域の農地の計画的な保全を一体的に推進する。

 こういうことを合わせ技でやって、何とか少ない人数でも食料生産を担える持続可能で強固な食料供給基盤を確立してまいりたいと考えています。

長友委員 大臣、ありがとうございます。

 三点触れていただきながら、少ない生産者の数でもしっかりと国民に安定供給をしていく体制を整えていくということで、御答弁いただきました。これまでの議論でも、その三点プラス、輸入と備蓄のバランスをしていくというふうにお話をいただいているところでございます。

 現在、農林業の就業者数の全産業の就業者数に占める割合というものに着目しますと、世界の主要国を見ても、軒並み低下しているというのが現実であります。日本だけじゃないんですよね。二十年前に比べて、例えばEU、オーストラリア、中国、韓国なども軒並み半減していますし、カナダ、イギリスも、半減とまでは言わないまでも、三分の二程度に減少しているという認識でおります。

 輸入に頼る、輸入も見据えてということもありますが、既に世界で食料争奪戦が起きている状況だということからも、あらゆる手段を使って全体最適化を図っていくという方針はもちろん私も賛成ではございますけれども、やはり自分が食べるものは自分で作る、日本人が食べるものは日本人で作るという基本を追求していただきたいなというふうに思っております。

 そのために、私たち農林水産委員会の、私たち個人のそれぞれの委員も、農業に従事する若者を増やす努力をやはりしていかなければならないんじゃないかと思いますし、今頑張っている若い生産者の皆様が離農することがないように支援することも必要だと感じておりますので、当然、大臣にもお力添えいただきたいと思いますし、委員の先生方にも御指導いただきたいというふうに思います。

 各国の農業従事者の年齢構成を見ても、六十五歳以上が占める割合は、主要国と比較しても日本が突出していますから、この点、喫緊の課題だというふうに認識を、共通の理解とさせていただきたいと思います。

 次に、大臣発言の中で、米政策についても触れられました。その中でも、米粉についても一言言及がございました。

 世界の食料需給をめぐるリスクが顕在化する中、国内で唯一、自給可能な穀物である米を原料とした米粉の活用は重要な課題だというふうに考えております。

 その米粉の需要を喚起するための出口拡大策として、学校給食や議員会館等の政府関連機関での米粉活用の推進も含め、国や自治体が率先して米粉の普及と食育につながる取組を行うべきというふうに考えますが、政府の見解を伺います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 委員がおっしゃるとおり、米粉の拡大をするためには生産面以上に需要を開拓していくことが必要でございまして、農林水産省では、米粉の特徴を生かした新商品の開発ですとか、パン、麺などの製造機械の導入、それから米粉利用に向けた情報発信、それから米粉、米粉製品の製造能力の強化についても支援をしているところなんですが、おっしゃられるように、いろいろな政府機関あるいは自治体等に働きかける前に、まず我が省でやれることをということで、実は省内の食堂の経営者の方の御協力の下に、本年九月上旬に米粉フェアというのを農林水産省の食堂で開催いたしまして、七店舗において、多かったのは米粉のから揚げ、それから玄米そば、米粉のバウムというようなものを提供を行っていただいたところであります。

 また、自治体によっては、年十二回、市内の全五十一校の小中学校の学校給食で米粉パンの提供を行うというようなところもかなり実は増えてきているようでございまして、こういったことにも、まずPRして、米粉を使っているところを見ていただいて、それで利用していただくというふうにやっていきたいなというふうに考えております。

長友委員 先ほど農水省、まず率先して、恐らくあふ食堂でのフェアだというふうに思うんですけれども、使っていただいているということでございますし、米粉の利用拡大支援対策事業等でいろいろ取組も進めていただいているということは伺っておりますので、引き続き需要の開拓というものに取り組んでいただきたいと思うんです。

 学校給食にも触れていただきました。米粉パンを導入いただいているということなんですが、学校給食、平日五日あるうち既に三・五日は米を使っているというふうに聞いておりまして、給食の中で米や米粉の消費を推進するというのは限界があるんだ、そんな話も伺ったところでございます。それからまた、自衛隊の皆様なんかも、恐らく日本人の中で最もお米を食べていただいているんじゃないか、そんなことも現場から聞かせていただきました。農水省の方では、省を挙げて米粉を使ったメニューを提供しているということでございました。

 委員長、事前にちょっと通告も特にしていないんですが、議員会館であったり、まだまだ取組ができるところ、私たちもあるんじゃないかなというふうに考えております。

 そこで、委員長にお願いということになるんですが、議員会館の食堂又は議員宿舎の食堂等でも米粉利用の促進について御尽力いただきたいと思いますが、野中委員長、いかがでございますでしょうか。

野中委員長 議員会館と宿舎について、私の力の及ぶところか存じませんが、この件については後刻理事会で協議したいと思います。

長友委員 前向きな答弁、ありがとうございます。

 それでは、次の質問に移りたいと思います。

 昨今の生産資材の高騰、さらには気候変動による食料生産の不安定化などから、今、農業に従事する方々の収入が不安定なものになっております。今日の委員会でも様々先生方から御指摘いただいているところでございます。

 生産者が安心して農業を続けていけるように、例えば、園芸農業に従事する方には、野菜の価格安定制度というものがございましたり、それから収入保険というものがあったりするわけでございます。その野菜の価格安定制度と収入保険の同時利用というものが現在行われているわけなんですけれども、私の地元では、これに対する様々な御意見をいただいているところでございます。

 まず、事実を確認したいと思います。現在、野菜の価格安定制度と収入保険を同時利用している生産者が何人ぐらいいるのか、教えてください。

村井政府参考人 お答えいたします。

 農業保険法におきましては、収入保険とその他類似制度については選択制となっておりますけれども、野菜価格安定制度につきましては、出荷団体内における精算手続が複雑であるなどの事情を踏まえまして、二年間に限って両制度を同時利用できる特例を措置し、収入保険への移行を推進してきたところであります。

 野菜価格安定制度と収入保険の同時利用者の数ということでございますけれども、令和五年九月末時点で七千三百二十経営体となっております。

長友委員 ありがとうございます。

 収入保険の利用者数が約九万人いるというふうに聞いておりますので、七千三百二十人ということは、約八%、一割いないというぐらいであるという認識、理解はいたしました。

 ただ、この同時利用、二年に限って今特例ということで行っていただいておりますけれども、この検証を今しているというふうに伺っています。つまり、同時利用していることに対するメリット、デメリットと、これを引き続き続けるのかどうか、この点、同時利用の在り方について今後どのような見解をお持ちなのかを伺います。

村井政府参考人 お答えいたします。

 先ほど答弁させていただきましたように、収入保険とその他類似制度は選択制となっておりますけれども、野菜価格安定制度につきましては、出荷団体内における精算手続が複雑である等の事情を踏まえて、二年間に限って両制度を同時利用できる特例を措置し、収入保険への移行を推進してきた、こういうことでございますけれども、同時利用につきましては、農業団体等から特例の恒久化を求める声がある一方、一部産地からは収入保険への移行に伴う野菜需給への影響を懸念する声もあったところでございます。

 このため、同時利用の効果を検証し、今後の取扱いを検討することといたしましたけれども、これまでの調査におきましては、同時利用者の九割以上が利用期間終了後に収入保険を選択する、また、既に収入保険に移行した経営体、それから同時利用されている経営体のいずれも、九八%が従来から出荷先を変更していないといった回答をいただいたところでございます。

 現在、こうした結果や類似制度との公平性等も踏まえて今後の取扱いを検討しているところでありまして、決定次第、関係者の方々に速やかにお知らせしたいと考えておるところでございます。

長友委員 今後の在り方についてはまだ検討中ということで理解しましたが、収入保険は令和元年から始まった制度で、当初は、令和三年一月から当分の間、初めて収入保険に加入された方を対象に、最初の一年に限り野菜価格安定制度と収入保険の同時利用が可能だったというものだと理解しております。それが、令和三年分に初めて加入された方が、令和四年分も暫定で同時利用が可能になった。

 野菜価格安定制度は、出荷して市場価格が保証基準価格を下回った場合の補償として、長年、再生産に向けて有効に活用されてきたものだというふうに聞いております。野菜の指定産地の方々がそれを利用してきたわけですけれども、これは野菜を出荷しないと補償の対象とならないというのが、当然、野菜価格安定制度ということになります。

 一方で、収入保険は、自然災害を始め、あらゆる収入減少に対し補償されます。

 この両制度を同時利用できる仕組みの構築によって両制度のデメリットを補い、生産者は最大限の努力を行い高品質の野菜を生産するとともに、不慮の災害に見舞われた場合のセーフティーネットとして収入保険を利用する、こういう二段構えにすることで、担い手不足の解消、また生産量の維持、食料の安定供給に寄与するという考え方も聞きますし、理解はできるんです。

 なんですが、収入保険の制度が始まった令和元年から収入保険に加入している生産者も含めて、もし恒久対策として同時利用が可能な制度を構築してほしいということになると、令和元年時から収入保険に加入した方たちが野菜の価格安定制度と同時にはできないという説明を受けております。悩んだ挙げ句、収入保険を選んだという人たちがいるわけです。現在同時利用している人に対しては強い不公平感を感じているんだ、そういうことを私は地元で言われるんです。

 実際に、地元のJA青年部のメンバーから、同じ部会でナスやキュウリを作っているのに、同時利用している人とできない人がいて不満がたまっている、そういう相談を受けました。

 彼らに集まってもらって話を聞きましたところ、元々仲のいいメンバーなんですね、部会で。なのに、収入保険との同時利用があることで、部会の空気が悪くなってしまっている。だから、同時利用を延長しないで早く同時利用をできなくしてほしいと、同時利用をしている人がそのように主張もしておりました。でなければ、仲のよかった青年部の空気が悪くなる、そういう御指摘も上がっておりますので、同時利用できる期間を延長するのであれば、更なる不公平感を増さないように、令和元年から収入保険に加入している人も含めて同時利用できるようにすると早く判断をしていただきたいということを、改めてお願いをしておきたいと思います。

 次の質問に移りたいと思います。ALPS処理水に対してでございます。

 「水産業を守る」政策パッケージでは、ALPS処理水放出に対する政府の支援策として、産地段階における一時買取り、保管への支援が示されておりますが、例えば、これは業界団体から聞きましたけれども、北海道では、アキザケ等の他の魚種により倉庫がいっぱいとなっている中で、輸出できないホタテの原貝の倉庫の確保に苦慮をしています。倉庫の確保や新たな倉庫建設などが必要と感じているということなんですけれども、このような想定外の費用に対しても支援が行き渡るのかどうかを確認したいと思います。

舞立大臣政務官 先生御案内のとおり、本年九月四日に、農水省、経産省、復興庁そして外務省と共同で、「水産業を守る」政策パッケージを打ち出させていただいたところでございます。

 中国等によります輸入規制の影響が大きいホタテにつきましては、水揚げ後の冷凍保管を進めるとともに、国内外への販売促進を早急に進めていくことが重要と考えておりまして、ホタテにつきまして、一時買取り、保管支援の中で、倉庫へ保管するための入出庫料やその保管料に加え、より広域で保管する場合の運送経費も支援対象としているほか、限られた冷凍庫の効率的な使用にも資するホタテの殻むきを進めるための人材支援ですとか加工機器の導入支援、そして国内外への新規の販路拡大に向けた支援を盛り込み、その実施を推進しているところでございます。

 さらに、今般の補正予算におきまして、これらの対策の拡充に加えまして、新たな輸出先のニーズに対応した加工を本格的に行えるようにするための地域の拠点となる加工施設整備への支援等も盛り込むよう検討、調整しているところでございます。

 引き続き、現場の状況把握、周知に努めながら、我が国水産事業者を守るための対策の速やかな実施に万全を期してまいりたいと考えております。

長友委員 今の御答弁の中で、補正予算で新たに加工する施設などの補助を考えていただいているということでございましたが、倉庫、建物そのものに対する支援というものも盛り込まれるという理解でよろしいでしょうか。

舞立大臣政務官 現時点におきましては、基本的に、販売促進、販路拡大につながるような倉庫の建設をイメージしておりまして、具体的には今後詰める方向で今検討しているところでございます。

長友委員 倉庫に関して、建物そのものに関しては今後詰めていただけるということでございましたけれども、ALPS処理水の海洋放出の影響を受けた水産事業者を守るため、是非機動的に対処いただきたいなというふうに思います。

 科学的根拠に基づかない輸入禁止措置というものを行う国、地域が今後も拡大しないとも限らない。既に輸入禁止措置をしている国、地域も含めて、日本の水産物は安心で安全であるという認識の下、輸入規制強化措置を行ってくる一部の国に対しては毅然とした態度で政府も対応していただくということを現場の皆さんは望んでおりますし、水産物の一時的な買取りはもちろん、保管の支援、さらには、水産物の国内における加工体制の強化に必要な人材の確保及び設備の支援を是非引き続きお願いをしておきたいと思います。

 続きまして、これまでの委員の先生方からも御指摘、御質問がありましたが、不測時における食料安全保障に関する検討会というものが今行われているということでございます。どのような狙いでこの検討会を行っているかということは、これまでの御答弁の中でもう明らかになっておりますので、そこに関しては省きたいと思いますが、それでは、今話合いを行っている中で、生産者にはどのような対応が求められているのか、具体的にお答えできる部分について教えていただきたいと思います。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 近年、気候変動による世界的な食料生産の不安定化や、ウクライナ情勢等を受けた食料や生産資材の価格の高騰、サプライチェーンの混乱等によって、食料や肥料、飼料の多くを輸入に依存する我が国の食料安全保障上のリスクが顕在化をしていると考えております。

 このため、生産、流通、消費や法律、リスク管理など、幅広い分野の有識者や関係省庁から成る不測時における食料安全保障に関する検討会におきまして、世界の食料生産が大幅に減少する等の事態が発生したときにいかなる措置を取る必要があるか等について議論をしております。

 検討会におきましては、食料の供給確保のための対策として、出荷の調整や、輸入による対応、生産の拡大などの措置の必要性について検討をしているところです。

 この場合、生産者の方々には、計画的な出荷や、備蓄や輸入によって十分な食料供給を確保できない場合において、生産の拡大を図っていただくといった措置について検討会で議論を行っているところです。

 加えまして、検討会におきましては、民間事業者のリスクを軽減し、インセンティブを持たせるような支援措置が必要だとも議論をされておりまして、事業者の負担を十分に考慮しつつ、不測時の食料安全保障の確保のために官民が講ずべき対策について検討してまいります。

長友委員 有事に備えてというか、不測の事態に備えて早めに対応をしていくということになりますけれども、生産者の皆様に求めていく具体的な品目というものも明らかになっているようであれば教えていただきたいのですが、いかがでしょうか。六品目あるというようなことを聞いているんですけれども。

杉中政府参考人 検討会におきまして、特に国民のカロリーの確保又は国民経済上重要な品目についても議論を行っているところでございます。

 そこにつきましては、米、小麦、大豆、油糧作物、砂糖、あと畜産物、これは肉であるとか乳製品、鶏卵などが含まれておりますけれども、そのようなものを対象に議論、検討していく、こういう方向で検討を行っているところでございます。

長友委員 ありがとうございます。

 生産者の側に立った場合に、政府の方から、作ってほしい、いきなり作れというふうに言われて、分かりました、はい、作ります、そういうような形になればいいんですけれども、是非、生産者のリスクがないようにしてもらいたいというのが、私の今の懸念でございます。

 例えば、すぐにはそれぞれ収穫できないですよね、作ってくれと言われても。じゃ、作りましたということで、作った段階で、いや、実はもう足りてしまった、出荷する段階になって、もう足りたから要らないみたいな、そういうことがないような段取りに是非していただきたいなというふうに思うわけでございます。

 要請する対象の、生産者が対象の品目を今生産している人だったらいいんですけれども、そうじゃない人にも要請をしていくから、いわゆる不測時における、非常事態の体制だというふうに思いますので、これまで作付はしたことがある人だったりしたことがない人が、資材や機材なども用意しなければなくなるというふうな負担も増えると思いますので、当然この点は国が要請措置に見合った支援を行ってもらうというふうな認識でおります。事業者の負担を十分に考えて、考慮した御対応というものを盛り込んでいただきたいと思いますので、その点をお願いいたしまして、私の質疑は終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

野中委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 大臣の先日の所信表明の中で、農業政策の使命というものは国民に安定的に食料を供給することだと鮮やかな言葉を残されました。あわせて、食料基盤も持続的で強固なものでなければいけない、それを確保するのが急務だというお話もありました。ところが、食料基盤の一つである農地、この農地が、御案内のとおり外国人、これは法人も個人も含めて、かなり買いあさられているという現状があります。これについて、大臣の現状認識を伺いたいと思います。

宮下国務大臣 農地や森林であるか否かにかかわりませず、外国資本による土地の取得について様々な懸念や意見があることは承知しておりますし、北神委員と同様、私も非常に高い関心を持っているところであります。

 農地法においては、法人の農地取得は農業関係者が議決権の過半を占める農地所有適格法人に限定しておりまして、当該法人は、取得する農地の全てを効率的に利用すること、また、役員の過半が農業に常時従事する株主である等の要件を満たす必要があります。

 このため、地域とのつながりを持って農業を継続的に営めない者は農地を取得することはできないということで、そういう意味では、外国法人が農地を取得することは基本的には困難であるというふうには考えております。

 また、森林の取得については、そうした外国人の出資割合等々の規制はありませんけれども、外国人等が森林を取得した場合も含めて、取引状況を把握するとともに、森林の有する多面的機能が確保されるように、保安林や林地開発許可制度等を措置しているところであります。

 農林水産省としましては、外国資本等の農林地の取得状況の把握に努めますとともに、取得後の状況についても、農業委員会による日頃の農地パトロール、また、市町村を通じた継続的な状況確認等を通じまして、不適正利用の防止に努めております。

 なお、外国投資家が農林水産業等の指定業種を営む日本企業の株式を取得する場合には、外国為替及び外国貿易法による事前届出を義務づけておりまして、我が国経済の円滑な運営に著しい悪影響を及ぼすおそれがないか審査する等、国が関与する仕組みも設けているところでございます。

 というところで、今現状の仕組みの中で、しっかりチェック、精査をしていきたいというふうに考えています。

北神委員 ありがとうございます。大臣は、一議員のときも、その言動から、この問題に大変危機感をお持ちだということをよく分かっております。

 現状のその仕組みはいろいろある、基本的には好ましくないというふうに私は受け取ったんですけれども、あるいは、困難という言葉を使われていましたが、今の仕組みの中でも結構できることもあるというふうに思います。

 それで、今私の配った資料の二ページ目に、令和四年の段階では、外国人が、これは法人も個人も含めて、百十五件購入している、ヘクタールでいうと百五十四ヘクタールぐらい購入されている。

 これは多いか少ないかは別にして、大臣のおっしゃった懸念もありますし、資料の一ページ目の農地法第一条に、冒頭の部分、「国内の農業生産の基盤である農地が現在及び将来における国民のための限られた資源であり、かつ、地域における貴重な資源である」ということが書いてあります。国民のためで、全人類のためとか、そういうふうに書いていないわけですよ。だから、この農地法の精神にのっとってやるべきだというふうに思います。

 それで、農地を買うときに認可をされるのが各市町村の農業委員会ということになっています。これは局長に伺いたいんですけれども、農業委員会は三つぐらい要件があって、これを満たしているかどうかを審査して、満たしていたら認可をするということになっていて、皆さん、それでもう大丈夫なんだというふうにおっしゃるかもしれませんけれども、地元の実際にあった話をちょっとお伝えしたいと思います。これは京都市内であります。農業委員会をやっておられた方から直接聞いた話です。

 数年前に、日本語を一切しゃべられない中国人が農地を買いたいと。畑ですね。その道路の向かい側に、その同じ中国人が所有しているいわゆる資材置場みたいなものがあると。普通に考えると、ちょっと怪しいなというふうに思われたけれども、いわゆる農地法の第三条二項に書いてある三つの要件は形式的に満たしてあるわけですよ。面接もし、書類もいただいた、だから認可せざるを得なかったというのがこの農業委員会の本当の思いです。本当は懸念があった、しかし、形式的な要件を満たしているので、認めざるを得ないと。

 それで、去年の夏にいわゆる調査に行かれた。そして、調査したときに、トラックのわだちの跡が畑の中にある、腐葉土は何か申し訳程度にぱらぱらとまかれている、何かトラックの荷台、アルミニウムの荷台の中に、真夏ですよ、お米の苗が置いてある、それから、何か育苗ポットみたいな黒いやつがその辺に転がっていた。これで本当に本気で農業をやるんですかと。そうしたら、その中国人は日本語がしゃべれないから、仲介をされた不動産業者、これは日本人です、この方が全部答えるんです。いろいろな質問を投げかけても、中国人、当の御本人には一切何も通訳を介して聞かずに、その仲介業者が、慣れたもので全部お答えする。これはおかしいと。お米は、何か、もっと冷やさないといけないのに、そんな初歩的なことすらできていない。ところが、農業委員会というのは、調査権はあれども強制力はないわけです。注意するしかないんです。ちゃんと真面目にやってくださいねとか、こういうことしか言えない、こういう実態があります。

 農業委員会がどういう形で実質的に審査をしているのか、認可を下ろしているのか、これを是非教えていただきたいと思います。

村井政府参考人 お答えいたします。

 農業委員会による農地法第三条第一項の許可は、第一号法定受託事務でございます。その審査は、法律、政令、省令に加えて、国が定めた処理基準に基づいて行っていただく必要がある、こういうことでございます。

 農地法第三条第二項各号の許可要件でございますけれども、具体的には、権利取得者の経営規模、作目等を踏まえまして、まず、第一号の全部効率利用要件につきましては、耕作に必要な機械の所有状況、労働力、技術、そういった観点から、第四号の常時従事要件につきましては、農業に必要な農作業に年間従事する日数、それから第六号の地域調和要件につきましては、周辺農地の集約化や水利用への影響の有無、これらを総合的に勘案して許可の適否を判断していただく必要がある、こういうことでございます。

 農業委員会におきましては、当該許可の判断に当たりまして、現地調査を実施をしたり、ほかの農業委員会に営農状況を確認したりすることによって権利取得後の農地の効率利用を担保していただく、こういうことで考えております。農業委員会の中には、具体的な営農計画書を提出させた上で権利取得希望者の面談を行っていただいているというふうに承知をしておりますけれども、いずれにしても、こういったことをしっかりとやりながら実質的な判断をしていただく必要があるということでございます。

 なお、先ほど、調査権はあるけれどもという委員の方から御指摘がございましたけれども、農地法第三条第一項の許可は農業委員会による行政処分ということでございますので、ほかの法令と同様に、許可権者としてその許可を取り消す権限を有しているというふうに御理解をいただければと思っております。

北神委員 農地法の三条の第二項の一号、二号、三号の条件を満たしていて、それを踏まえて総合的に判断をされるという話なんですけれども、これは私の言っている事例がちょっと極端な事例なのか、例外中の例外なのか、ここは私も分かりません。しかし、私が聞いているこの関係では、審査をするときに、効率性、従業員は何人いますかとか、これはほとんど面接で話を聞くとか書類に書くとか。農機具をそろえていますか、はい、そろえています、はい、チェック。今まで持っている農地と大体二時間半以内にありますか、あります。もう一つ、現有地、元々持っていた農地も実際には調べに行かないわけです。私、何も農業委員会を責めているわけじゃないですよ。なかなかできないと思います。

 要するに、何が言いたいかというと、形式的な要件さえ満たしたら、認可というのは、よほど違う意図がない限りは、普通に純粋に、法令に基づいて、皆さんの方針に基づいてやれば認可せざるを得ないわけです。

 だから、私は、やはり二つあって、認可をする手続というものをもっと実質的にやるような、私、分かりますよ、今の農業委員会の体制ではなかなか難しい。しかし、そこを考えていかないと、何ぼでもこういう、多分、その仲介していた不動産業者は、これは一つの商売にされているぐらいだというふうに思います。これをちゃんと認可というものを実質的に審査するという体制。

 あるいは、例えば、今まで農地を持っているのであれば、その農地を実際に見に行って、周辺の農家の人たちに聞いて、この人はちゃんと農業をやっていますか、見たら分かると思いますけれども、ふだんどういう行動を取っていますか、場合によっては、固定資産税をちゃんと払っていますかとか、連絡が取れますかとか、外国人の場合、連絡が取れないという場合もあるわけです。ですから、そういった認可をする際の基準を含め、運用の厳格化というものを図れば、私は相当こういう事例は排除することができるというふうに思っています。

 もう一つは、もう時間がないんですけれども、さっきちょっと聞き取れなかったんですけれども、やはり取消しをする権限というものを農業委員会に与えないと、彼らも余りややこしいことに首を突っ込みたくないわけですよ。というのは、今までもこういう事例で訴訟に及ぶ場合がある。私が話した方は、一勝一敗一引き分けになった、こんなことを普通やりたくない、しかも、ただ注意をするだけの話でと。だから、ちゃんとした権限がないと、この認可制度というのは完結していないんですよ。つまり、何ぼでもこれは抜け穴がある。

 これはもちろん、外国人だけじゃなく、日本人でも同じような問題があるというふうに承知しておりますけれども、やはりここをしっかりやるべきではないかというふうに思いますが、もう時間がないので、大臣、多分、私が職員の方々とお話をしても、彼らはここまでしか言えないと思います。ただ、私が大臣にお願いしたいのは、これは一回検討を省内でして、何ができるのかということをお願いしたいんですけれども、いかがでしょうか。

宮下国務大臣 御指摘のように、食料事情が不安定化している中で、食料安全保障を強化するためには農地の確保がまさに極めて重要だという認識であります。

 御指摘の農業委員会による農地法第三条の許可の審査が適切かつ円滑に行われて、農地の適正利用に資するように、やはり現場のそうした様々なトラブルもあるということですから、しっかりそうした声に耳を傾けて、許可要件の明確化など、農地法の適切な運用を図ってまいりたいと思っています。

 また、許可基準の見直しについては、六月に取りまとめられました新たな展開方向においても、農地の権利取得時の耕作者の属性の確認等の仕組みを検討するというふうにされております。こうしたことも踏まえて、農林水産省としても引き続き検討していきたいと思っています。

北神委員 ありがとうございました。以上、終わります。

野中委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時九分散会


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