衆議院

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第4号 令和6年3月26日(火曜日)

会議録本文へ
令和六年三月二十六日(火曜日)

    午後三時四十五分開議

 出席委員

   委員長 野中  厚君

   理事 伊東 良孝君 理事 小島 敏文君

   理事 古川  康君 理事 山口  壯君

   理事 近藤 和也君 理事 野間  健君

   理事 池畑浩太朗君 理事 角田 秀穂君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      上田 英俊君    加藤 竜祥君

      神田 憲次君    小寺 裕雄君

      高鳥 修一君    橘 慶一郎君

      中川 郁子君    西野 太亮君

      細田 健一君    堀井  学君

      宮下 一郎君    保岡 宏武君

      簗  和生君    山口  晋君

      梅谷  守君    金子 恵美君

      神谷  裕君    緑川 貴士君

      山田 勝彦君    渡辺  創君

      一谷勇一郎君    掘井 健智君

      稲津  久君    山崎 正恭君

      田村 貴昭君    長友 慎治君

      北神 圭朗君

    …………………………………

   農林水産大臣       坂本 哲志君

   農林水産副大臣      武村 展英君

   農林水産大臣政務官    舞立 昇治君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           安彦 広斉君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         杉中  淳君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         宮浦 浩司君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           安岡 澄人君

   政府参考人

   (農林水産省農産局長)  平形 雄策君

   政府参考人

   (農林水産省畜産局長)  渡邉 洋一君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  村井 正親君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            長井 俊彦君

   農林水産委員会専門員   飯野 伸夫君

    ―――――――――――――

三月二十六日

 食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案(内閣提出第二六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案(内閣提出第二六号)


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     ――――◇―――――

野中委員長 これより会議を開きます。

 ただいま付託になりました内閣提出、食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣坂本哲志君。

    ―――――――――――――

 食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

坂本国務大臣 食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 我が国の食料・農業・農村施策の基本的な方針を定める食料・農業・農村基本法については、制定から四半世紀が経過する中で、世界的な食料需給の変動、地球温暖化の進行、我が国の人口の減少などの食料、農業、農村をめぐる情勢の変化が生じ、その制定時の前提が大きく変化しております。

 このため、こうした変化を踏まえて食料・農業・農村施策を講ずることができるよう、基本理念を見直すとともに、関連する基本的施策等を定める必要があることから、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一に、食料安全保障の抜本的な強化についてであります。

 食料安全保障について食料の安定供給に加えて国民一人一人の食料の入手の観点を含むものとして定義し、その確保を基本理念に位置づけます。この考え方に基づき、国内農業生産の増大を基本とし、農業生産の基盤等の食料供給能力の確保の重要性、生産から加工、流通、消費に至る食料システムの関係者の連携などを位置づけます。その上で、国内農産物、農業資材の安定的な輸入の確保、食料の円滑な入手の確保、輸出の促進、価格形成における合理的な費用の考慮などの基本的施策を講ずることとしております。

 第二に、環境と調和の取れた産業への転換についてであります。

 食料供給が環境に負荷を与えている側面があることに着目し、環境と調和の取れた食料システムの確立が図られなければならない旨を基本理念に位置づけ、この考え方に基づき、農業生産活動、食品産業の事業活動等における環境への負荷の低減の促進などの基本的施策を講ずることとしております。

 第三に、生産水準の維持発展と地域コミュニティーの維持についてであります。

 我が国全体の人口減少に伴い農業者、農村人口が減少することが見込まれる中においても、農業の持続的な発展と農村の振興を図っていくことができるよう、農業法人の経営基盤の強化、先端的な技術を活用した生産性の向上、農業経営の支援を行う事業者の事業活動の促進、農村関係人口の増加に資する産業振興、農地の保全に資する共同活動の促進などの基本的施策を充実しております。

 以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願いを申し上げます。

野中委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

野中委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官杉中淳君、大臣官房総括審議官宮浦浩司君、消費・安全局長安岡澄人君、農産局長平形雄策君、畜産局長渡邉洋一君、経営局長村井正親君、農村振興局長長井俊彦君、文部科学省大臣官房審議官安彦広斉君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

野中委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。伊東良孝君。

伊東(良)委員 御苦労さまでございます。いま少し前まで衆議院の本会議で、総理大臣また坂本農水大臣から様々御答弁を聞いていたところであります。また今も、大臣から提案理由、趣旨の説明があったところでありますので、順次質問をさせていただきたいと思います。

 我が国の農政の憲法とも言われる食料・農業・農村基本法は、制定から二十五年を経過いたしました。この間、我が国の食と農をめぐる情勢は劇的に変化をしてきたわけであります。基本法を時代にふさわしいものへと改正し、現実を見据えた責任ある農政を展開していかなければなりません。

 このような観点で質問をさせていただきたいと思いますが、食料の安定供給は言うまでもなく国家の重要な責務であります。ロシアのウクライナ侵略に端を発した小麦、飼料、肥料などの高騰による国民経済の混乱は、政府により強力な対策が重層的にこれまでも行われてまいりましたが、私も食料安全保障における国家の役割について認識を新たにしたところであります。

 今回の改正では、食料安定供給について安定的な輸入の確保という考え方が加わっているところでありますが、引き続き農業生産を増大することが食料供給の基本である、このように考えるものであります。

 この農業生産の増大を基本とするという従来の方針に政府として変わりはないのか、改めてその確認をするとともに、農業生産の増大を基本としながらも安定的な輸入の確保を規定した、その趣旨についてもお伺いをするものであります。

坂本国務大臣 世界の食料需給が不安定化している中で、将来にわたる食料の安定供給を図るためには、過度に輸入に依存している麦、大豆、飼料作物等の国内生産の拡大を進めるなど、国内で生産できるものはできる限り国内で生産することが重要だというふうに考えております。

 その上で、現在の消費に合わせた生産を国内で全て図ろうと思うなら、国内農地の約三倍が必要であるという試算もありまして、どうしても自給できないものについては輸入による食料供給も不可欠です。

 また、昨今の情勢を考えますと、必要な食料や肥料、飼料などの農業資材をいつでも安価に輸入できる時代ではなくなっており、食料安全保障の確保の観点から、安定的な輸入は重要であるというふうに考えております。

 このため、今般の基本法改正案では、国内の農業生産の増大を図ることを基本としつつ、安定的な輸入の確保を図ることを新たに位置づけたところであります。

伊東(良)委員 それでは、農産物の価格形成についてお伺いします。これも本会議でたくさんの議論がなされたところであります。

 農業の現場では、長期的に生産資材や人件費等の高騰が続く中でありましても、例えば、生産性の向上、ブランド化等による付加価値の向上など、様々な努力が行われております。こうした努力を見るにつけ、また、食料システムを持続可能なものとするためにも、価格形成の新たな仕組みが必要と考えますが、こうした価格形成を今後どのように実現をしていくのか、お考えをお聞きしたいと思います。

坂本国務大臣 農産物や食品の価格につきましては、需給事情や品質評価によって決まることが基本であるというふうに考えております。

 他方、近年、資材価格の高騰は生産から加工、流通、小売、消費等の各段階に幅広く影響が及んでおりまして、食料の持続的な供給を行っていくためには、食料システムの各段階で持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるようにしなければならないというふうに考えております。

 このため、農林水産省では、食料システムの関係者が一堂に集まる協議会を昨年八月に発足させまして、費用の考慮が行われる仕組みの構築に向けて協議を進めているところです。今後、基本法に基づく具体的な仕組みづくりについて、法制化も視野に検討してまいりたいというふうに思っております。

伊東(良)委員 ここでは、アンケートが取られた結果が出ておりました。大規模経営をされている農業法人協会の会員企業への調査によりますと、燃油、肥料、飼料価格は前の年に比べて九八%の企業が高騰、値上がりしたと回答をしております。また、コストの高騰を価格に転嫁できないという企業が九六%を占めております。

 これらの実態を消費者にもやはり理解してもらうということが重要だと思いますが、今後の実効ある取組について、この価格形成についてお聞きしたいというふうに思います。

宮浦政府参考人 お答えいたします。

 価格形成に関する理解醸成についてでございますが、生産資材ですとか原材料のコスト高騰の背景などを消費者にも正確に認識していただくために、昨年七月からフェアプライスプロジェクトを開始しております。

 この中では、生産者自身がコスト高騰の窮状を現場から訴えるなどのインターネット動画、あるいは、夏休みなどを活用した親子での酪農現場での餌やり体験などの体験学習イベント、さらには、食品の値上げなどの背景を分かりやすく伝えるなどの動画コンテンツ、こういったものを作成いたしまして取組を進めてございます。生産、流通に関わる実態ですとか背景を消費者にも分かりやすく伝えるための広報を行っているところでございます。

 今後とも、農業などの現場の状況を正確に伝えて、コスト高騰などを踏まえた価格形成に関して、消費者を始めといたします関係者の理解醸成を図ってまいりたいと考えているところでございます。

伊東(良)委員 価格形成をしっかりすることによって農業従事者の所得向上につながる、こう思うわけであります。

 先ほどの本会議でも、また、これまでの農水委員会あるいは予算委員会でもしばしば中心になって出てきておりましたのが、食料自給率についてであります。現行の基本法では、食料・農業・農村基本計画の中で自給率の目標を定め、その向上について規定をしているわけであります。

 一方で、基本法を制定した平成十一年の自給率はカロリーベースで四〇%でありましたが、令和四年には三八%と減少し、伸び悩んでいるわけであります。これは、私が初当選した十五年前の民主党政権になっても、一%ずつ自給率を伸ばしていくんだという目標で行われていたわけでありますけれども、なかなか伸び悩んでいるわけであります。

 自給率の向上が進まない要因とともに、これまでも様々な取組をされてきたことは承知をしているところでありますけれども、この法改正を機に、実効力ある向上策についてどのように進めていくつもりなのか、農水省の考え方をお聞きしたいというふうに思います。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 食料自給率は、国内で生産される食料が国内消費をどの程度充足しているかを示す指標であり、引き続き重要であるというふうに考えております。

 基本法制定以降の食料自給率は、御指摘があったように四〇%から三八%前後へと微減をしております。食料自給率を引き下げた要因について見てみますと、輸入依存度が高い飼料を多く使用する畜産物の消費が増加する、国内で自給可能な米、野菜、魚介類の消費量が減少するなど、消費面での変化が主な要因となっております。

 食料自給率の変化につきましては様々な要因が関係をしておりますけれども、最も大切なことは、国内生産を一層増大することにより、輸入に過度に依存している状況を改善し、食料安全保障の確保を図ることだと考えております。

 このため、麦、大豆、飼料作物や加工原料用野菜などの輸入依存度の高い品目の国産転換の推進や、米粉の特徴を生かした新商品開発などによる利用拡大や、米の輸出促進等による米の消費拡大、販売促進を図っていきたいと考えております。

伊東(良)委員 前々からよく言われているように、カロリーベースでありますから、カロリーだけを上げるつもりになれば、芋やカボチャや炭水化物をどんどん作ればいいじゃないかという話を、極端な話、しているのを聞くわけであります。

 しかし、日本の国の畜産物、特に肉類に関して言えば、この餌、飼料はほとんどが海外からの輸入品であるものでありますから、これは国産の自給率としてはカウントされないということになるわけであります。

 特に、畜産物を見てみますと、牛肉が前年比プラス一%の三六%の自給率であります。豚肉は、これまた近年一%前年より増えて五〇%、鳥肉は六六%の自給率であります。これは前年比二%のアップであります。肉類の自給率は一%ずつ毎年向上しておりまして、令和元年五二%、令和二年も五三%と連続して上昇をしているところであります。

 輸入飼料から国産の自給飼料への転換が一部進められてきた結果であると思われますけれども、これを含めても、更なる取組について大胆に行っていかなければ、自給率の向上ということには、なかなかなってこないというふうに思うわけであります。

 この点、自給率の向上に向けて、もう少し力強い、根本的なるその原因を把握しつつ、向上策についてお伺いするものであります。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 農林水産省といたしましては、持続的な畜産を実現するためには、国内の飼料生産基盤に立脚した生産に転換することが重要と考えてございます。

 このため、畜産農家と飼料作物を生産する耕種農家との連携ですとか、コントラクターなど飼料生産組織の運営強化などの取組を支援をしてございまして、国産飼料の生産、利用の拡大を推進してまいります。

 例えば、北海道の酪農の主産地では、国の事業で作業機械を導入をして、飼料の生産、調製だけでなく、乳牛への給餌作業も農家に代わって行って酪農家の労働負担を減らしているTMRセンターもございまして、こうした優れた事例を広めていくことが重要と考えてございます。

 また、令和六年度中に市町村が策定する地域計画の中に、耕畜連携ですとか、飼料生産の外部化、輪作による合理的な農地利用など、地域に適した飼料生産を位置づけて、飼料産地づくりを進めていきたいと考えてございます。

伊東(良)委員 それでは次の質問に入りますが、今回の改正案の中で、多様な農業者について議論があるところでありますけれども、効率的かつ安定的な農業経営を育成、確保し、これが相当部分を占める農業構造を実現すると規定した上で、さらに、多様な農業者について新たな位置づけをしているということであります。

 一方、生産現場では、担い手だけでは引き受け切れない農地が出てきている中で、この多様な農業者を位置づけた背景についてお伺いをいたします。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 現行基本法におきましては、効率的かつ安定的な農業経営、いわゆる担い手の育成、確保を図ってきたところでございます。今回の基本法改正においてもこの考え方に変わりはございません。

 一方、今後、我が国全体の人口減少に伴い、担い手の減少のみならず、それ以外の多様な農業者についても急速に減少することが見込まれます。

 こうした状況の中で、食料の安定供給を図るためには、担い手への農地集積を進めつつ、担い手だけでは管理できない農地が出てきている中で、担い手以外の多様な農業者についても、自らの農地は生産を通じて保全管理を行うとともに、世代交代などにより適切な管理が難しくなる場合には、管理できる方々に円滑に承継していくことが重要と考えております。

 このため、多様な農業者が地域における協議に基づき農地の保全を行っていく役割を基本法改正案において新たに位置づけたところでございます。

伊東(良)委員 次に、農村の活性化について伺いますが、農村は人口減少が大変厳しい状況にあります。集落の戸数が十戸を下回ると、草刈り、泥上げといった共同活動が急激に低下すると言われております。そういった分析もあります。

 農村の水利施設の維持などのほかにも、農業の基盤たる農村を守っていくために、本会議の場でも出ておりましたけれども、地域の小中学校、保育所、高齢者福祉施設などの生活基盤、このほかに商店、その他もありましょう、そういった生活基盤など、農村を維持することが極めて重要であります。

 農村に人を呼び込むなど農村の活性化が不可欠と考えるわけでありますけれども、これまでの取組に加え、具体的に今後どのように対応していくのかお尋ねいたします。

長井政府参考人 お答えいたします。

 農村では、人口の減少、高齢化の進行等によりまして、農業水利施設でありますとか地域コミュニティーの維持等に支障が生じつつあると認識しておりまして、こうした現状を踏まえ、農村におきまして農業生産活動が持続的に営まれていくよう、多様な人材を呼び込みながら農村の活性化を推進していくことが必要であると考えております。

 このため、仕事づくりに向けまして農泊でありますとか六次産業化、農福連携等の農山漁村発イノベーションの取組の推進、暮らしづくりに向けまして農村RMOの形成、活力の創出に向けまして社会貢献活動を行う企業と地域との連携促進や地域づくり人材の育成、農村における持続的な土地利用のための中山間地域等における地域の話合いや農地の粗放的利用等の促進等によりまして、農村の活性化を図ることとしております。

 また、農業水利施設につきましては、末端施設の管理作業の省力化に資する整備の推進、草刈り、泥上げ等の集落の共同活動を継続するための非農業者、非農業団体の参加の促進等によりまして、農村における生産活動を支えてまいります。

伊東(良)委員 農村人口が減少する中で、生産現場の関係団体の連携も必要と考えます。今回の改正案では、関係団体の役割が新たに規定されておりますけれども、その趣旨及び団体に何を期待しているのかお伺いするものであります。

 また、時間がないのでもう一問だけこれにくっつけたいと思いますけれども、外国人材の採用が、農業分野を始め特定技能十二分野で増えてきております。また、今回、育成就労という新しい制度が始まりましたが、これまでの実績を見ますと、ベトナム、ネパール、ミャンマー等からの人材が人手不足の農業を支えていることが分かります。今後の受入れ企業側、また働く外国人の要望など、マッチングがより重要になると思います。

 新しい外国人人材活用制度の中で、どのように農水省としてこの労働力確保を図っていくのか、お伺いしたいと思います。

杉中政府参考人 私の方から、関係団体の役割について答弁をさせていただきます。

 今回の基本法改正法案におきましては、食料システムの役割を明確化いたしまして、食料システムの関係者により合理的な費用が考慮されるようにしなければならないこと、また、食料システム全体で環境への負荷の低減が図られなければならないことを位置づけたほか、輸出の拡大のために、農産物の生産から販売までの各段階が一体となった取組を推進することといったような内容を盛り込んで、充実させているところでございます。

 こういった基本理念の実現のための取組は、個々の農業者や食品産業事業者のみでは対応が困難であることから、関係団体の役割が重要であると考えております。

 具体的には、合理的な価格の形成や、食料システム全体での環境との調和の実現のため、食料システムの各段階の団体が協力して、合理的なコストや環境負荷低減の取組などについての理解醸成、明確化を図ること、農産物の更なる輸出促進のため、生産、加工、流通の団体が連携し、海外の規制に対応した産地を形成することなど、様々な役割が期待されております。

 このため、今回の基本法改正法案におきまして、食料、農業、農村に関する団体の行う活動が基本理念の実現に重要な役割を果たすため、その活動に積極的に取り組むことを団体の努力規定として明記したところであり、それぞれの団体の構成員の利益に資するよう、積極的な活動を展開することを期待しております。

村井政府参考人 外国人材の関係について答弁させていただきます。

 農村部の人口減少等が進行する中、外国人材を含め、農業現場における労働力確保は重要であり、特に外国人材の確保に当たっては、御指摘あったとおり、海外で働く意向のある外国人材に日本の農業現場に関心を持っていただくことが重要です。

 このため、国内外での技能試験の実施、海外の教育機関と連携をして、日本の農業経営体も参加をした形で現地説明会あるいは相談会の実施、こういったことを支援をしております。また、日本での就労意欲の促進や、日本の農業経営体との交流機会の創出に取り組んでいるところでございます。

 引き続き、外国人材の適正かつ円滑な受入れと働きやすい環境整備に取り組み、農業現場における労働力の確保に努めてまいりたいと考えております。

伊東(良)委員 終わります。

野中委員長 次に、簗和生君。

簗委員 自由民主党の簗和生でございます。

 本日は質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 この法律は四半世紀を経ての改正ということでございまして、基本理念として、目的規定の第一条に、食料安全保障の確保ということがしっかりと規定をされたということが一番大きなところだと思います。

 この二十五年間、食料、農業、農村を取り巻く環境は変化をして、そして課題が顕在化してきました。そうしたものにしっかりと対応する法律とするべく、しっかりと審議をして成立に導いていただきたい、そういうふうに思っております。

 その中で理念、そして基本的方向性というものを定めるこの法律ですけれども、これをしっかり実効のあるものにしていくということが一番重要だというふうに思っています。つまり、具体の施策というものがこれから問われることになるわけですけれども、そういう観点から詳細を伺ってまいりたいというふうに思います。

 特に、私は消費という点が重要だと思いますので、先にこの消費の点について話をしていきたいと思います。

 食料安全保障の確保が国民の安定した食料消費を実現するのと同時に、国民の食料消費の在り方が、需要に応じた生産による適正な価格形成等を通じて農産物の自給率を高め、食料安全保障の強化をもたらす、そういう側面もあります。

 そこでまずお伺いしたいのが、今回、消費者の役割規定というもの、これに、食料の持続的な供給に資するものの選択に努めることによって、食料の持続的な供給に寄与するものとするという旨が明記をされました。この消費者の役割規定を実効性あるものにするための具体的施策について、見解を伺いたいというふうに思います。

 政府は、国民への情報提供というものにとどまらず、国民の理解醸成、消費行動の変容をもたらす取組を強化していく必要があると考えていますけれども、これまでの取組の成果等を踏まえ、農林水産省の今後の施策についてどのように展開をしていくのか、伺います。

 また、特に食育について、学校教育段階にとどまらない、消費者全体へのものとしてもその必要性が議論されてきているところでありますけれども、今後のかかる取組について、農林水産省の見解を併せて伺いたいと思います。

安岡政府参考人 お答えいたします。

 改正法案では、委員御指摘のとおり、消費者の役割として、食料、農業、農村に関する理解を深めるとともに、食料の消費に際して、環境への負荷の低減など、食料の持続的な供給に資するものの選択に努めることにより、食料の持続的な供給に寄与することとしているところでございます。

 そのため、農林水産省では、食や農林水産業に対する理解を深める食育を推進するとともに、環境負荷の低減の取組の見える化などにより、国民理解の醸成と消費行動の変容に取り組むこととしているところでございます。

 特に、食育の観点からは、給食における地場産物の活用など学校での食育を進めるとともに、生産現場の実態を知ることができる農林漁業体験の提供を支援するほか、まさに消費者である大人の理解を進めるためということで、食品企業など民間による食育活動なども更に進めることとしているところでございます。

 引き続き、民間などとも連携、協働して、家庭、学校、そして地域など、様々な場面において幅広い世代に対する食育を進め、食や農林水産業に関する理解増進を図ってまいります。

簗委員 それでは、学校教育段階の食育ということで、今日は文科省にも来てもらっていますので、質問していきたいというふうに思います。

 食育基本法がありますけれども、こちらも制定からもう二十年を迎える状況にありますが、食料安全保障という文言は、その法律の中には一切文言がありません。という中で、今回、この食料・農業・農村基本法の改正を受けて、先ほど私が申し上げた消費者の役割規定というものも改正された。これを受けて、学校教育段階において今後食育をどのように推進をしていくのか、文科省に見解を伺いたいと思います。

安彦政府参考人 お答え申し上げます。

 食は人間が生きていく上での基本的な営みの一つでありまして、子供たちに対して食に対する正しい理解や適切な判断力等を身につけさせる観点から、各教科において、それぞれの特質に応じて食育を進めることが重要でございます。

 委員御指摘の食料安全保障や消費者の役割に関しまして、学習指導要領におきましては、例えば、小学校第五学年の社会科におきまして、我が国の食料生産は、自然条件を生かして営まれていることや、国民の食料を確保する重要な役割を果たしていることを理解すること、また、生産物の種類や分布、生産量の変化、輸入など外国との関わりなどに着目して、食料生産の概要を捉え、食料生産が国民生活に果たす役割を考え、表現すること、その際に、消費者や生産者の立場などから多角的に考え、これからの農業などの発展について、自分の考えをまとめることができるよう配慮することなどが示されております。

 また、高校段階では、政治・経済におきまして、食料の安定供給の確保と持続可能な農業構造の実現について示されているほか、学習指導要領の解説でも食料安全保障について触れられており、各学校において指導が行われているところでございます。

 今後につきまして、文部科学省としましては、これまで発達段階に応じた食育教材を作成してきておりますが、令和六年度予算案におきましても食育教材を改定するための予算を計上しておりまして、この食育教材の食料安全保障等の観点を踏まえた記述の充実を図るなど、学校教育における食育の一層の推進に取り組んでまいりたいと考えております。

簗委員 一人一人が食料安全保障の確保の担い手という意識で主体的に行動変容を図っていく必要があると私は思っておりますので、先ほど来いろいろ省庁の取組をいただきましたけれども、一層連携を強化して食育の推進に努めていただきたい、そのように思っております。

 次の質問ですけれども、適正な価格形成について伺います。

 先ほど伊東先生の方からもお話がありましたので少々重複をしますけれども、今回、第二条の五項、そして第二十三条で、食料の合理的な価格の形成に当たっては、食料システムの関係者により食料の持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるよう、食料システムの関係者による食料の持続的な供給の必要性に対する理解の増進及びこれらの合理的な費用の明確化の促進その他必要な施策を講ずるものとするというふうに規定をされました。

 農林水産省においては、フェアプライスプロジェクトで広報活動等を行うとともに、適正な価格形成に関する協議会を設立し、適正取引を推進するための仕組みづくりを目標に議論を重ねていると承知をしております。適正な価格形成に向けたこれまでの農林水産省の取組と、そこから見えてきた今後の検討課題について伺いたいというふうに思います。

 それから、あわせて、適正な価格形成に関する協議会における議論等を踏まえて、最終的にはどのような仕組みを構築して制度的な担保を図るのか、見解を伺いたいと思います。

宮浦政府参考人 お答えいたします。

 適正な価格形成に関する協議会でございますが、原材料価格の高騰などの下でも食料を持続的に供給していくというために、生産から消費に至る各段階の関係者が一堂に会して、昨年八月以降協議を行ってございます。

 まずは、飲用牛乳と豆腐、納豆に関しまして、一つは、持続的な供給に必要な合理的な費用を考慮した価格形成の仕組みの必要性の共通認識、それから、品目ごとに作成をいたします費用の指標、コスト指標の作成などについて具体的な議論を行っているところでございます。

 今後の検討課題といたしましては、基本法の改正案二十三条にございますとおり、各段階で持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるような仕組みづくりが課題であります。引き続き、関係者との協議を深めながら、法制化も視野に具体的な仕組みづくりを進めてまいりたいと考えております。

 また、飲用牛乳、豆腐、納豆以外の品目に関しましても、コストデータの把握、収集ですとか、価格交渉、契約上の課題などについて調査、検証することとしてございます。

 米、野菜、果実、食肉などの幅広い品目につきまして、コスト構造などの実態を把握した上で検討してまいりたいと考えてございます。

簗委員 今、飲用牛乳、豆腐、納豆以外も品目を拡大していく方向性という話もいただきました。その中で、特に合理的な費用というものを明確化する、これは条文にもありますけれども、ここがやはりキーになるというふうに思います。

 消費者に、いかにその農産物を生産するに当たって費用がかかっているのか、それを我々は消費行動の中でしっかり負担をできているのか。そうでなければ、それは農林予算の中で支援をしていくということの合理性にもつながるわけですから、この費用の見える化という取組は大変重要だと思いますので、是非しっかりと、協議会等を含めて、検討を重ねて成果を出していただきたい。法制化という話もありました。力強く感じますので、取組を力強く進めていただければと思っております。

 次の質問でございますけれども、今度は生産面の方の質問に移りたいと思います。

 食料安全保障の確保においては、国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと併せて、安定的な輸入及び備蓄の確保を図ることにより行うとされ、食料や生産資材について過度な輸入依存を低減していくために、小麦や大豆、飼料作物等、海外依存の高い品目の生産拡大を推進するなどの構造転換を進めるとされています。

 水田政策については、需要に応じた生産に向けて、各地の産地の意向を踏まえ、水田機能を維持しながら麦、大豆等の畑作物を生産する水田については水稲とのブロックローテーションを促すとともに、畑作物の生産が定着している水田等は畑地化を促していくという方向性の下で、特に、畑作物の生産を増大させる上で、本作化による品質や収量の向上を図ることが重要であり、各産地における農地利用も含めた産地形成の取組を推進していく必要があるというふうにされています。

 現在、畑地化促進事業として、畑作物が連続して作付されている水田については、麦、大豆、加工・業務用野菜等の需要のある作物の産地化に向け、畑地化支援、定着促進支援等により着実に支援する仕組みを措置しているわけですけれども、中長期的観点から、水田施策と畑地における施策を併せて総合的に支援施策の在り方を検討し、それぞれの品目を本作として自給目標の達成に向けて支援していく、いわば農地フル活用ですね、水田フル活用でなくて畑地も含めた農地フル活用型の施策を構築していく必要があると私は考えております。

 海外依存の高い品目の生産拡大や今後の水田、畑地政策に関する今後の取組の検討に係る農林水産省の所見を伺いたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 水田政策につきましては、昨年末の食料安定供給・農林水産業基盤強化本部において、需要に応じた生産を基本としながら、令和九年度までに各産地の意向を踏まえ、水田におけるブロックローテーションや畑地化の取組を集中的に推進するとともに、令和九年度以降につきましては、将来にわたって安定運営できる水田政策の在り方をあらかじめ示すことができるように検討していくとされたところでございます。

 この検討につきましては、食料安全保障の強化を図るため、水田を活用した米、麦、大豆等の生産性の向上や主食用米の需給調整を効果的に進めていく観点から行うこととしておりますが、今国会で基本法が成立した暁には、それを踏まえて策定される次期基本計画において、食料安全保障や農業経営に係る目標、施策を具体化していく中で検討、議論してまいる考えでございます。

 その中で、特に小麦、大豆につきましては、次期基本計画において、これまでの生産状況を踏まえて、作付面積拡大に係る意欲的な目標を設定し、増産を図り、我が国食料安全保障の強化につなげていく考えでございます。

簗委員 次期の基本計画に向けてしっかり議論をしていくということ、それから、あらかじめ示せるようにしていきたいという答弁をいただきました。生産者の皆さんは、できるだけ早く今後の方向性について示してほしいという声がありますので、是非よろしくお願いしたいというふうに思います。

 それでは最後の項目になりますけれども、今度は生産資材の話でございます。現行の基本法では、生産資材について、生産、流通の合理化を促進する旨は規定されていますけれども、これにとどまるということで、輸入依存度が高い生産資材に係る今後の対応として、改正案では、第四十二条第一項において生産資材の安定確保の視点が付加されるとともに、第三項で価格急騰時の農業経営への影響緩和の対応も明確化をされました。

 そこで、肥料についてまず伺いますけれども、価格急騰時において、価格転嫁が間に合わない高騰分の補填対策を実施するということでありますけれども、当該対策を適切に、適時実施していく上での具体的な対応をどのように考えているのか伺いたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、国際相場の影響によりまして価格転嫁が間に合わない肥料価格の急騰が生じるわけでございますけれども、農業経営への影響を緩和する補填対策が必要と考えております。

 このため、昨年末に改定いたしました食料安全保障強化政策大綱におきまして、平時より通関における肥料原料価格等を調査し、肥料小売価格の急騰が見込まれる場合は、これまでに実施した肥料価格高騰対策の仕組みや効果等を踏まえて影響緩和対策を実施することを明確化しました。

 さらに、御指摘のとおり、今般提出いたしました基本法改正案においても、新たに農業資材の価格の著しい変動が育成すべき農業経営に及ぼす影響を緩和するために必要な政策を講ずる旨を盛り込んだところでございます。

 これらを踏まえ、令和六年度当初予算には、肥料価格急騰対策の発動に要する国内外の肥料原料価格の動向調査を計上しているところでございまして、価格の急騰が見込まれる場合には、必要な措置を実施していく考えでございます。

簗委員 ありがとうございました。

 それでは最後の質問になりますけれども、今度は飼料についてでございます。地元でも今回のこうした食料事情、農業事情を受けて、自給飼料の生産拡大に意欲を示す若手の酪農家もたくさんいらっしゃいます。飼料の生産基盤の強化、生産増大に向けた今後の具体的な農水省の施策について伺いたいと思います。

 また、耕畜連携の実現においては、地域計画の話合いに畜産、酪農の農家さんもしっかりと参加をしていくということが重要になると思いますけれども、この辺の今の現状について伺いたいというふうに思います。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 農林水産省といたしましては、持続的な畜産を実現するためには、国内の飼料生産基盤に立脚した生産への転換が重要でありまして、労働力や労働時間が限られる中で飼料の生産拡大を図るためには、外部化の推進が重要であると考えてございます。

 このため、コントラクターによる飼料生産の拡大、省力化に必要な機械ですとか、ICT機器の導入、また、コントラクターによる飼料生産面積の拡大への支援などの対策を措置をいたしまして、飼料生産組織の強化や耕畜連携を進めているところでございます。

 また、委員御指摘のとおり、各市町村では、将来の農地利用の姿を明確化をする地域計画の策定を進めております。畜産が盛んな地域を中心に、畜産農家や飼料生産組織も話合いに参加をして、飼料生産についての議論が深められている地域もございます。

 一方で、畜産農家の参加が進んでいない地域もあるというふうに聞いておりまして、現在、飼料生産に意欲のあるモデル地域を選定をいたしまして、そこに職員を派遣をして、畜産農家も参加しての話合いが進むよう意見交換を進めるということをやっておりますし、優れた事例については、全国に展開して、周知をして横展開を図っていきたいと考えてございます。

簗委員 時間になりましたので、終わります。ありがとうございました。

野中委員長 次に、角田秀穂君。

角田委員 公明党の角田秀穂でございます。

 質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 付託をされました食料・農業・農村基本法について順次質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 食料・農業・農村基本法改正案では、食料安全保障の抜本強化、これを打ち出して、輸入に多くを頼っている麦、大豆、飼料用作物などの国産化を進めるとしていますけれども、このことについて、畑地化など、これら作物への転換を促す施策を今後推進しなければならないことは当然として、南北に延びる日本は、狭い国土ではありますけれども、地域ごとに気候風土も大変異なっております。それぞれの地域ごとに、その気候風土に適した作物が長年生産をされてきておりますが、ほかの作物に転換できない、そういった地域も中にはあります。また、湿田地帯など、畑地化を進めるのも困難、こうした地域も多くあります。

 今後、主要作物の国産化を推進するとともに、転作が難しい地域の農業を守っていく、こういう視点も欠かせないと考えますが、この点、改正基本法の下で、国産化の推進、畑地化の推進、それと並んで適地適作の施策のバランスをどのように取っていくのか、お考えを伺いたいと思います。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 我が国の食料安全保障の強化のためには、輸入依存度の高い麦、大豆等の生産拡大など、国内の農業生産の増大を図っていくことが重要です。

 また、我が国の国土の特性上、農業生産におきましては、気象や土壌の条件に応じて適切な作物や生産時期が異なります。そのような中で、各地域が自らの判断で地域の特性を生かした産品の産地化を進めることが、産地の競争力強化ばかりでなく、我が国農業の発展に向けて重要だと考えております。

 このため、水田機能を維持しながら稲、麦、大豆等の作物を生産する水田につきましては水田でのブロックローテーションを促す一方、畑作物が連続して作付をされている水田につきましては、産地化に向けた一定期間の継続的な支援や畑地化の基盤整備への支援を行っているところです。

 農林水産省としましては、畑地化だけでなく、水田機能を維持し農地を有効活用する場合も含めて、いずれの取組も後押しをしてまいります。

 さらに、国産化の推進や適地適作のバランスを取りながら、需要に応じた生産とともに、農家の所得の向上という観点から、農地の集約化等による経営規模の拡大、スマート農業技術や省力栽培技術の導入など、各産地の取組を支援していく考えです。

 以上です。

角田委員 日本の将来の農業の姿をどうこれから描いていくかという点で、現在、市町村ごとに策定を進めている地域計画、これは極めて重要なものだと思っております。

 地域の話合いによって将来のあるべき農地利用の姿、目標というものを地図に落とし、これを基に地域の内外から農地の受け手を確保する、また農地バンクを活用して農地の集約化を進めることで、地域の農地、農業を将来にわたって守っていくために、この地域計画、来年三月までに全国で策定することを目指して今現在作業が進められておりますが、今年度中に策定を完了する予定は全地区数の六分の一程度にとどまっており、中にはまだ一つの地区も策定をされていないという県もあります。

 国もこれまで予算を措置して、マニュアルを作成したり、関係団体への働きかけを行うなど、策定の支援に取り組んできていることは承知をしておりますが、現場で聞かれるのは、予算的な制約というよりも、むしろ、人手が圧倒的に足りないという声です。

 地域計画策定の意義等について関係者の理解を得るための説明会と話合いの場を何度も持たなければならないことが多い中で、行政の農政部局は、ただでさえ少ない人員で業務を行っているところに、更に策定に向けた手間のかかるこうした作業には対応し切れないという事情が、策定が進まない一因になっているのではないかとも考えます。

 令和六年度は策定支援を強化するとのことですが、具体的にどのように取り組んでいくのか伺います。あわせて、地域計画の持つ重要性に鑑み、令和六年度中の策定という目標達成のためには、人的な支援も含め、国としても更なる支援を講じるべきと考えますが、この点について見解を伺いたいと思います。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、地域計画は、地域農業の設計図として大変重要であります。

 農林水産省におきまして、各市町村に地域計画の取組状況についてお伺いをしましたところ、令和五年十一月末時点で、計画の策定期限である令和七年三月末までに全国千六百三十六市町村の約二万三千地区で策定いただく予定となっております。

 これは、これまでの人・農地プラン、全国千五百五十五市町村、約二万二千地区よりも多く、各地の市町村、農業委員会や農業関係者の皆様方の御理解と御協力によるものと承知をしております。

 一方、これまで市町村の方々から職員不足といった声を多く伺ってきたことから、そうした御意見を十分に踏まえて作成した地域計画策定の手引におきまして、人・農地プランをベースに、対象地区や協議の場などを市町村が柔軟に定める方法を示すなど、現状でできる範囲で取り組んでいただけるよう配慮し、周知をしてきたところです。

 さらに、令和六年度予算におきまして、市町村の取組を後押しするため、予算額をおおむね倍増し、臨時職員の雇用に係る経費や、協議を円滑に進める専門家を活用するための支援など、市町村の人的支援等に必要な予算を措置しているところです。

 加えまして、先行事例の紹介や取組のキーパーソンとの意見交換を行う全国会議の定期開催などの取組を継続的に実施することなどによりまして、現場の取組を親身になって後押しをしてまいりたいと考えております。

 以上です。

角田委員 是非とも、国としても親身な後押しをお願いをしたいと思います。

 基本法の掲げる理念に対する国民の理解、これをいかに得ていくか、特に消費者の理解をどう得るかというのは今後の大変大きな課題となると思いますので、この点について幾つかこれから質問したいと思います。

 まず、改正案においては、消費者の役割について、現行基本法の食料、農業、農村に関する理解と消費生活の向上、これに加えて、環境への負荷の低減に資するものの選択に努めることを新たに規定をしておりますけれども、まず、この基本法の改正によって消費者に期待される新たな役割とは具体的にどのようなことか、確認をさせていただきたいと思います。

舞立大臣政務官 消費者に新たに期待される役割という重要な視点の御質問、ありがとうございます。

 持続的な食料の安定供給を可能とするためには、基本法の改正案で新たに基本理念に位置づけております環境との調和、合理的な価格形成などにつきまして、生産から流通、消費までの食料システムの関係者が一体となって取組を進める必要があると考えております。

 こうした農業者、食品産業の事業者における基本理念の実現に向けた取組は、最終的には消費者の購買活動によって支えられることが必要であるため、基本法改正案におきまして、消費者の役割として、食料の持続的な供給に資するものの選択に努めることを位置づけているところでございます。

 これにより、消費者には、現在の生産現場の実態等もよく認識していただきつつ、食品ロス削減などや環境負荷低減に係るコストを考慮して食料を選択していただく、そして、持続的な食料供給のために必要となる合理的な価格について理解を深めていただくといったような行動を期待しているところでございます。

 農水省といたしましても、今回の基本法の改正を踏まえつつ、食料の持続的な供給の実現に向けて、消費者の理解の増進が図られるよう、必要な取組を行ってまいりたいと考えております。

角田委員 その上で、将来の農業生産の目指すべき方向として、生産の向上、付加価値の向上とともに環境負荷低減が位置づけられて、生産面においては農薬、肥料の適正な使用の確保であるとか家畜排せつ物等の有効利用などを進める一方で、これらの生産物の流通、消費の確保のため、消費者への適切な情報提供を進めるとしているわけです。

 まず、生産面、こちらの環境負荷低減の具体的な取組の一つとして、地域ぐるみで有機農業に取り組むオーガニックビレッジ、これを二〇二五年までに百市町村を目標に支援施策を講じておりますけれども、地元の千葉県においても、木更津市と佐倉市が既にオーガニックビレッジ宣言を行っています。

 このうち、人口十三万人の木更津市では、平成二十八年に、木更津産米を食べよう条例、こうした条例を制定して市内で生産された米の消費拡大に乗り出して、農業振興の柱の一つとして、有機米の生産促進を始めとする有機農業の推進、これを位置づけて、理解を示してくれた農家とともに、令和元年から、一・八ヘクタールの水田から有機栽培米の挑戦をスタートさせたといいます。ただ、一年目、二年目は雑草だらけでなかなかうまくいかない。先行している自治体や民間の指導を仰いで雑草防除技術などを学び、三年目からは生産者、栽培面積も順調に増えて、令和七年度には市内全小中学校に全量、有機米を提供できるめどが立ったとのことであります。

 こうした木更津市の事例からも、今後、有機農業を拡大するためには、まずは首長のリーダーシップ、これが重要であって、その決断を後押ししてあげる支援施策の重要性、それと並んで、雑草防除などの作業の省力化とともに、手間をかけて生産をした作物の出口、販路の確保、開拓、これが極めて重要になってまいります。

 有機栽培農産物の販路を拡大する上で、特に若い世代を中心にまだまだ消費者の認知度は低いと言えます。有機JASは聞いたことがあっても、特別栽培とどう違うのかということになるとよく分からない。差別化した生産品にはそれなりの評価が伴うべきこと、違いを理解した上で選択してもらうようにするための消費者への情報提供もこれから非常に大きな課題ですけれども、食育の一環としての学校給食への導入は、有機農作物への理解を深め、将来の消費拡大につなげていくとともに、子供から大人へ伝えることで、地域全体に理解を広めていくという効果も大いに期待をできます。

 有機JAS認証を取得して学校給食の食材も提供している有機野菜の生産者にもお話を伺いましたけれども、直売所などではどうしても価格面が重視をされてしまう。オーガニック専門のスーパーも地方部ではまだまだ少なく、販路は限られてしまう。そのような状況の中で、安定した需要先としての学校給食への導入は、有機農業を続けていく上でも極めて重要と語っておられました。

 有機栽培農作物を学校給食で使用する際の課題の一つになるのが、やはりコスト面の問題です。学校給食に有機栽培米を導入するに当たって、どうしても慣行栽培に比べて単収が低いことや、市場価格の動向、こうしたことも考慮をして、生産者からの買取り価格、これが、当初は六十キロ二万円からスタートしておりますけれども、現在はこれを二万三千円まで引き上げているとのことですが、その分、給食費が値上がりしないようにするための財政の持ち出しも増加をしてしまいます。

 有機農産物の学校給食の活用促進については、予算委員会でも取り上げさせていただきました。その際には、オーガニックビレッジ支援の中で、学校給食に導入する段階での課題を解決するための支援を行っているとのことでしたが、これからは、オーガニックビレッジの枠にとらわれない支援も必要になってくると考えます。

 有機農作物に対する理解を広める上でも大きな効果が期待できる学校給食への導入促進のために、財政的な支援を含めて、是非とも積極的な取組が求められると考えますが、この点について、見解を伺いたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 有機農業は、環境や生物多様性に配慮した栽培方法であるものの、除草等の手間がかかり、生産コストが高くなります。このため、学校給食に導入する場合にも、関係者に御理解をいただき、安定的な供給ルートを確保することが重要でございます。

 このため、環境保全型農業直接支払交付金のほか、委員御指摘の転換直後の有機農業のかかり増し経費への支援、またさらに、産地に適した環境に優しい栽培技術の体系化、それから省力化機械の導入に対する支援を行うとともに、御紹介のございましたオーガニックビレッジの取組の中で、学校給食への導入に向けた関係者間の調整や試行的な導入に対する支援も行っているところでございます。

 オーガニックビレッジは現在九十三市町村まで拡大しましたが、そのうち七十七の市町村で学校給食の取組が計画されております。また、本年一月にはオーガニックビレッジの全国集会を開催いたしまして、有機農産物の学校給食への活用について、市町村の皆様より御報告いただきました。

 さらに、令和六年度当初予算におきましては、オーガニックビレッジの地域内にとどまらずに、地域外の消費地と連携した有機農産物の供給拡大に向けた取組ですとか、有機農産物の認知度向上に関するセミナーですとか、教育コンテンツの作成等に要する経費への支援も計上しておりまして、有機農業の拡大に向けた取組を積極的に進めてまいります。

角田委員 是非お願いしたいと思います。

 環境負荷の低減に資するものの選択を含めて、食料・農業・農村基本法の理念を実現していくためには、特に消費者に対する戦略的な広報もこれから重要になると考えております。

 広く消費者に届く広報活動を行うためには、外部の専門人材の活用なども含め、広報のための体制強化の取組を一層推進する必要があると考えますが、農水省として今後の広報戦略をどのように描いているのか、この点について伺いたいと思います。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 基本法改正法案では、環境との調和や合理的な価格形成など、生産、加工、流通から消費に至る食料システムの取組を位置づけておりますけれども、この取組を機能させるためには消費者の役割が重要であり、新たに位置づけた消費者の理解増進を通じ、最終的に購買行動へつなげることが不可欠であると考えています。

 これらの問題につきましては、これまでも、例えば、環境負荷低減の取組の見える化、ノーフードロス・プロジェクトを通じた食品ロス削減、フェアプライスプロジェクトなど合理的な価格形成への理解増進など、当省公式ウェブサイトやSNS、各種広告媒体を通じて情報発信を行ってきたところでございますけれども、今後、改正基本法に基づく基本理念の見直しについて国民に広く広報するとともに、今後の施策の見直しと併せ、一層消費者への広報を充実させていきたいと考えております。

 その際には、外部の専門人材の知見もおかりしながら、担当部局間の連携を進め、消費者にとって理解しやすい広報活動を進めていきたいと考えております。

角田委員 これからの持続可能な農業を考える上でもう一つ重要な防災・減災について、一点お伺いしたいと思います。

 平成三十年七月の豪雨や令和元年の台風十五号、十九号など、近年、全国的に豪雨による浸水、土砂災害が頻発していることに対して、従来の河川、下水道による対策だけではなく、流域全体でハード、ソフト両面からの対策を総合的に推進する流域治水という考え方の下で、対策が各地で進められておりますが、この流域治水には、農業用ダムやため池などの農業施設とともに、水田に降った雨をゆっくり排水することで被害の軽減を図る、田んぼダムというものが位置づけられています。

 この田んぼダムの取組面積は令和四年度で七万四千ヘクタール余りとなっていますが、この田んぼダムの治水効果についてはどのように評価をしているのか。効果があるならば、流域治水の重要な施策として今後推進していけるものと考えますが、この点について見解を伺いたいと思います。

長井政府参考人 お答えいたします。

 田んぼダムは、水田の落水口に流出量を抑制する堰板などを設置し、水田に降った雨を一時的に貯留することで、河川や水路における水位の急上昇を抑え、実施する地域や下流域の浸水被害リスクを低減させる、防災・減災に有用な取組と考えております。

 このため、農林水産省では、流域の多様な主体が協働して取り組む流域治水プロジェクト等に位置づけられた田んぼダムの取組を支援することとしております。

 具体的には、田んぼダムの取組に対しまして、多面的機能支払交付金における単価の加算、農地整備事業における畦畔や排水升等の整備に係る経費の助成等の支援を通じまして、引き続き推進してまいりたいと考えております。

角田委員 時間となりましたので、以上で質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

野中委員長 次回は、来る四月二日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十一分散会


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