衆議院

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第5号 令和6年4月2日(火曜日)

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令和六年四月二日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 野中  厚君

   理事 伊東 良孝君 理事 小島 敏文君

   理事 古川  康君 理事 山口  壯君

   理事 近藤 和也君 理事 野間  健君

   理事 池畑浩太朗君 理事 角田 秀穂君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      上田 英俊君    江藤  拓君

      加藤 竜祥君    神田 憲次君

      小寺 裕雄君    高鳥 修一君

      橘 慶一郎君    中川 郁子君

      西野 太亮君    細田 健一君

      堀井  学君    宮下 一郎君

      保岡 宏武君    簗  和生君

      山口  晋君    梅谷  守君

      金子 恵美君    神谷  裕君

      緑川 貴士君    山田 勝彦君

      渡辺  創君    一谷勇一郎君

      掘井 健智君    稲津  久君

      山崎 正恭君    田村 貴昭君

      長友 慎治君    北神 圭朗君

    …………………………………

   農林水産大臣       坂本 哲志君

   内閣府副大臣       工藤 彰三君

   農林水産副大臣      武村 展英君

   農林水産大臣政務官    舞立 昇治君

   政府参考人

   (消費者庁食品衛生・技術審議官)         中山 智紀君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    依田  学君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           森  孝之君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         杉中  淳君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         宮浦 浩司君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房統計部長)          山田 英也君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           安岡 澄人君

   政府参考人

   (農林水産省輸出・国際局長)           水野 政義君

   政府参考人

   (農林水産省農産局長)  平形 雄策君

   政府参考人

   (農林水産省畜産局長)  渡邉 洋一君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  村井 正親君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            長井 俊彦君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           川合 豊彦君

   農林水産委員会専門員   飯野 伸夫君

    ―――――――――――――

三月二十七日

 国産食料の増産、食料自給率向上、家族農業支援強化に関する請願(渡辺創君紹介)(第六八六号)

 同(野間健君紹介)(第八四六号)

 食料自給率向上を政府の法的義務とすることに関する請願(篠原孝君紹介)(第七一六号)

 同(宮本徹君紹介)(第七一七号)

 同(たがや亮君紹介)(第七八七号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第八四四号)

 同(志位和夫君紹介)(第八四五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案(内閣提出第二六号)


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     ――――◇―――――

野中委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、来る四日木曜日午前八時五十分、参考人として一般社団法人アグリフューチャージャパン代表理事理事長合瀬宏毅君、北海道農民連盟書記長中原浩一君、株式会社日本総合研究所創発戦略センターエクスパート三輪泰史君、特定非営利活動法人兵庫農漁村社会研究所理事・兵庫県立大学大学院地域資源マネジメント研究科客員准教授西村いつき君、東京大学大学院農学生命科学研究科特任教授鈴木宣弘君、東京大学大学院農学生命科学研究科教授安藤光義君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官杉中淳君、大臣官房総括審議官宮浦浩司君、大臣官房統計部長山田英也君、消費・安全局長安岡澄人君、輸出・国際局長水野政義君、農産局長平形雄策君、畜産局長渡邉洋一君、経営局長村井正親君、農村振興局長長井俊彦君、農林水産技術会議事務局長川合豊彦君、消費者庁食品衛生・技術審議官中山智紀君、審議官依田学君、文部科学省大臣官房審議官森孝之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

野中委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。金子恵美君。

金子(恵)委員 立憲民主党の金子恵美でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 私たち立憲民主党は、新食料・農業・農村基本法検討ワーキングチームを立ち上げまして、その中で議論を深めてまいりました。もちろん、生産者の皆さん、そしてまた有識者の皆さんからのヒアリング等もさせていただきまして、今に至っています。前にも申し上げたわけではありますけれども、昨年の六月には、当時の農水大臣に対しましても提言書を提出させていただいております。

 その上で、私たちの考え方というのもありますけれども、その提言、そしてまた、昨年からスタートいたしました、私たちの仲間で編成されています農林水産キャラバン隊がありますけれども、農山漁村に足を運びまして、そして現場の生の声を聞いてきているということもありますので、そういった声、そして私たちの考え方などが今回の基本法改正案にどのように反映されているのか、いないのかということも含めまして議論をさせていただきたいというふうに思いますので、今日はよろしくお願いいたします。

 食料・農業・農村基本法改正案、これは、総理もおっしゃった、皆さんおっしゃっているように、農政の憲法であるということであります。憲法なので、簡単に一括で四法案を審議ということにはならないでしょうねということを申し上げさせていただいておりまして、この一本でしっかりと審議することになったということは喜ばしいことではあるというふうに思うんですが、今度は、しっかりと見ていかなくてはいけないのは、やはり、国民の皆さんを巻き込みながらこの基本法改正の議論がなされるのかということだというふうにも思います。

 私は、この週末なんですけれども、JA福島県青年連盟の総会に行ってまいりました。来賓で御挨拶もさせていただきました。もちろん、この基本法の改正については本当に関心を持っていただいていますので、若い世代から、是非、課題を取りまとめ、今後も地域農業を持続可能な産業として確立してほしい、そういうお声もいただいてまいったところでございます。

 我が国の農業の未来像をどう描いていくか、これが今の課題ということだというふうに思っています。しっかりと確認をしながら質問させていただきます。

 そこで、基本法の改正が必要な理由といたしましては、近年における世界の食料需給の変動、地球温暖化の進行、我が国における人口の減少、その他の食料、農業及び農村をめぐる諸情勢の変化に対応というようなことをおっしゃっていただいているわけなんですけれども、基本法が示す政策の方向性にこれがどのような影響を与えているのか、教えていただきたいと思います。

 そもそも、政策の方向性自体を転換しようとするものなのか、あるいは政策の方向性は維持したまま情勢の変化に対応するための新たな課題に関する規定を補充するものなのかどうかということについて、大臣、御答弁いただければと思います。

坂本国務大臣 基本法の改正につきましては、制定から四半世紀が経過をいたしました。その中で、食料安全保障上のリスクが高まってまいりました。さらには、環境と調和の取れた産業への転換の必要性というのが叫ばれ始めました。そして、農業従事者が激減しているという状況になりまして、食料安全保障が非常に懸念されるということになりました。こういうことをめぐりまして、基本法の骨格は維持した上で、これらの課題に対応すべく必要な修正を行うものであります。

 過度に輸入に依存している麦、大豆等を国内生産に切り替える、あるいは安定的な輸入をする、そして環境負荷低減をやる、さらにはサービス事業体の育成をする、そしてスマート農業、こういうことで、やはり様々な変化に対応するものであるというふうに思っております。

 昭和三十六年の高度経済成長期に制定されました農業基本法、これは農家の方々の地位向上とか、所得の他産業並みの拡大とか、そして選択的拡大による所得確保とか、こういったものが中心でありました。しかし、その後、世界が大きく変わりまして、やはり食料全体を考えなければならないんじゃないか、あるいは集落も考えなければいけないんじゃないかということで、平成十一年、一九九九年に今の食料・農業・農村基本法ができました。

 ですから、枠組みは一九九九年とほとんど変わっておりませんけれども、やはり世界の情勢、先ほど言いましたように、ウクライナの情勢あるいは食料争奪の情勢、そして気候変動の情勢、我が国内の農業従事者の情勢、こういったものが大きく変化しつつある中で、その時代に対応した法律にしていかなければならないというのが今回の法改正の大きな狙いであり、そして将来に対する備えであるというふうに思っております。

金子(恵)委員 そうしますと、どちらかというと、大きく方向性を変えるものではなくて、補充型ということでいいですか。

坂本国務大臣 単なる補充型ということではありません。やはり、これだけ気候変動で、様々な干ばつも含めて災害の激甚化、こういったものが出ております。そして、食料のアクセスの問題も新たに出てまいりました。ですから、補充ということではなくて、今の大きな枠組みの中で、やはり足らざるところをしっかりと見直して将来に備えるということであります。

金子(恵)委員 向いている方向性は多分同じなんだというふうには思いたいのですけれども、今、大変厳しい状況にある農業者の方々がそこにいて、もちろんウクライナの情勢もあります、円安もありましたけれども、肥料も飼料も高騰し、生産資材が大変高騰していた。でも価格には転嫁されない状況の中で、厳しい状況にあって農業を継続することができないというような人たちもいた。

 一方で、社会情勢の中で、困窮者の方々も大変多くなってきた。そして食品アクセスの問題もある。そしてまた気候変動の問題もある。それが重なっているということで、誰をまずはしっかりと支援しなくてはいけないか。

 食料安全保障をしっかりやっていくということで、今回の基本法の改正ということでよろしいんですよね。その上で、食料安全保障の定義をしっかりと今回盛り込んでいただいて、国民一人一人にしっかりと食料の安定的な供給をしていく、しかも合理的な価格でというところまで入れていただいているわけですよね。ですから、私は、これはある意味大きな転換なんだというふうに思うんですね。

 でも、これを、特に、基本法の改正は今しなくてはいけない、もっと早くしてもよかったかもしれない。でも、もう少しちゃんとした議論をしてほしかったと私は思うんですけれども、とても気になっていることが、いろいろと私も文献などを読ませていただいていたときに、記事が出てきたんですけれども、気になるものがありました。

 それが、東奥日報というところ、青森県の地方紙なんですが、三月の二十五日に掲載されていまして、元農水事務次官の奥原さんがインタビューに答えているんですね。お一人だけじゃないです。農業基本法改正の論点ということで、ほかには東大大学院の教授の中嶋先生や、あとは横浜大名誉教授の田代先生もインタビューに答えているんですけれども、とても気になるのは、奥原さんは、今は東大公共政策大学院の客員教授をされているんですね。そもそも基本法を見直す必要はあるのかという質問に対して、ないと答えているんですよ。基本法を改正することによって構造改革にブレーキがかかるんじゃないかというようなこともおっしゃっていて。

 ということであれば、事務次官もされた方がこのようなことを言っているということは、今まで基本法についてどのような考えをお持ちになってその政策を進めていらっしゃったか。そして、今回は、本当であれば、やはり私は今までの農政の失敗、あるいは、どうしてこんなに窮地に追い込まれた農業者の方々がいるのかということをしっかりと検証していかなくてはいけないと思うんですが、それがまずできていないという状況の中で改正する。今までの農政をやろうとしていた事務次官の考えでは、今回の改正が起きてしまうと、今までやってきたことがストップしてしまうんじゃないかという懸念があるから、改正はしなくていい、見直しをする必要がない、そういう御意見まであるようなんですね。

 私は、このようなことを見たりすると、混乱もしますし、この国の農業をどういう方向に持っていけばいいのかということが本当に分からなくなります。

 大臣は、何か御意見ありますか。

坂本国務大臣 今回の基本法につきましては、奥原先生がどういうふうに今考えられているか私たちは分かりませんけれども、農林水産大臣から、令和四年の九月に、食料・農業・農村政策の審議会に諮問をして、そして二年をかけて論議をしていただいております。そこから新たに、これからの新しい農業の在り方像というものを提言していただいております。その中で、現行法の考え方、あるいは現行基本法制定後の情勢の変化と、今後二十年を見据えた課題、そして今後の見直しの方向というようなことを提言されております。その提言を受けて、今回の改正案ということになりました。

 しかも、その改正案そのものは、これまでの基本法の下に進めていくわけですけれども、日本を取り巻く情勢というのは非常に大きくこの一、二年で変わった。これは将来かなり大きな変化になり得る。先ほどから何回も言いますように、気候変動であり食料争奪であり各国の紛争であり、そして我が国での少子高齢化、こういったものにやはり堪え得る、対応できる法律を今改正をして備えておかなければいけないということで今回の提案になり、私もそのように考えております。

金子(恵)委員 社会情勢の変化に対応すること、そこは否定はしません。ただ、今までの農政がもしかすると間違っていたから、それを今回大転換して、違う方向に持っていかなくてはいけないということがあるから改正するのではないかという考えはなかったのかということを確認させていただきました。

 といいますのは、この奥原さんは農協改革の急先鋒でした。そしてまた、アベノミクス農政の牽引車でした。その方は、改正しなくていいと言っている。だから、あのときはこれでやろうとしていたわけですよね。

 しかしながら、今は、変えなくてはいけない、大変厳しい状況にある方々を生んでしまったから改正しなきゃいけない、社会情勢云々だけではなくて、やはり、農政の失敗があるから今回は改めて改正しなくてはいけないということを認めるべきだと思うんですね。

 やはりそこに失敗があったんじゃないでしょうか、大臣。

坂本国務大臣 私は失敗ではないというふうに思っております。やはり、これまでの食料・農業・農村基本法は貫き通していかなければいけない、しかし、やはり国内外の情勢の変化がある、この情勢の変化に対応した農業政策あるいは食料システム、こういったものをやはり今準備しておかなければ、これから二十年後に堪え得ることができないというようなことで現在改正するものでありまして、失敗ではない、これまでの政策を更に補強するものであるというふうに私自身は考えております。

金子(恵)委員 分かりました。失敗ではないということなんですが、でも、しっかりと検証しないと、今まで、失敗でないのに、なぜ、自給率は上がらない、そして基幹的農業従事者は減る、農地は減っていく、こういう状況が起こっているかということです。それをしっかりと検証しなきゃいけないんです。それが足りないんじゃないですか。いかがですか。

坂本国務大臣 しっかりその検証をした上で今回の法改正になっております。米の消費が毎年八万トンずつ減っていたものが十万トンずつ減るようになった、さらには、麦、大豆をやはり必要とする肉、そういったものが非常に消費行動として増えてきた。そういったものに対してどういうふうに対応していくかということも考えていかなければいけません。なおかつ、先ほど言いました、国内外の情勢の変化というものであります。

金子(恵)委員 消費者側が食べるものを変えてきたから、そういう御回答なんだというふうに思うんですね。でも、消費者と一緒に食料、農業、農村というものを考えてこなければいけなかったんですよ、もう既に。そこが多分抜け落ちているというふうにも思います。

 私は大臣にお願いしたいのが、検証はしっかりやるということで、今更なんですけれども、この審議の議論の中でも、しっかりとそこに目を向けた御答弁をいただければありがたいというふうに思っています。

 今現状、本当に厳しいんです。そして、その上で、やはり、この改正をせよという多分官邸からの指示というのが下りたときでしょうか、それはある意味、新自由主義からの脱却という言葉があったかどうか分かりませんけれども、もしそうだとしたらば、やはり今までのアベノミクス農政は駄目だったから変えていかなくてはいけない、それは国民向けの提案をしっかりやらなくてはいけない、そういうパフォーマンスをしなきゃいけない、そういう意図があったのではないかというふうに思います。

 これはここまでにさせていただきますが、ただ、食料安全保障の定義ですね、国民一人一人がこれを入手できる状態というのがありますけれども、これは十九条によってどのように具現化できるのかということも、とても私はふわっとしているというふうに思うんです。買物弱者と経済的弱者への食品アクセスの確保とか言っていますけれども、この内容は、例えばフードバンク、子供食堂などの民間に委ねるような形で終わってしまっているのではないか、この条文はそう読めます。

 いかがでしょうか。

坂本国務大臣 アクセスの問題だというふうに思います。

 我が国におきまして、労働力不足等に起因する輸送能力の低下、それから人口減少に伴う買物困難者の増加、低所得者層の増加による経済的な食料アクセスの問題といった、国民一人一人が食料を入手できる状態を確保する上で具体的な課題というのが今発生しております。

 そういうことで、物流拠点の整備、あるいはラストワンマイルをどういうふうにしていくのか、輸送手段の確保、そして更なる様々な関係者が一体となった体制づくりというものをしていかなければいけないというふうに思っております。

 今言われました子供食堂一つにしても、今、九千二百か所ぐらい設立になりました。全国の中学校の数と同じぐらいです。これは、子供の皆さんたちの貧困というだけではなくて、居場所をなくした高齢者の方々もそこに参加するということで、世代間交流の場にもなっているというようなことがあります。

 ですから、これまではNPO法人の皆さんたちにお任せしていた部分もあるわけですけれども、そういう一人一人のアクセスに対してやはり公的にもしっかり支えていこう、支援していこうということで、備蓄米の無償の交付、こういったものもやっているところでございますので、これから、食料のアクセスに向けては、しっかりと充実をさせていかなければいけないというふうに思っております。

金子(恵)委員 私は、もう少し国が前面に出た支援というのをやっていただきたいというふうに思っています。

 予算は、どれぐらい計上していましたか。

坂本国務大臣 昨年の補正も含めて、アクセスの緊急対策として一・五億円、それから、食品ロス削減対策として三・五億円、アクセス確保の対策として〇・一億円、ロス削減対策の総合対策として一・四億円。

 そのほかに、農林水産省以外に、こども家庭庁、そういったところの予算等をやはり総合して、アクセスというものを確保しようとしているところであります。

金子(恵)委員 少ないと思います。しっかりと対応していただきたい。ここに、国民一人一人にしっかりと対応していく仕組みづくりをするということを読めるようにしていただきたいというふうにも思いますね。

 次に行かせていただきたいと思いますが、基本理念で、新二条第四項、「国民に対する食料の安定的な供給に当たっては、農業生産の基盤、食品産業の事業基盤等の食料の供給能力が確保されていることが重要であることに鑑み、国内の人口の減少に伴う国内の食料の需要の減少が見込まれる中においては、国内への食料の供給に加え、海外への輸出を図ることで、農業及び食品産業の発展を通じた食料の供給能力の維持が図られなければならない。」とあります。その上で、農産物の輸出の促進に係る施策を新二十二条で規定することとしております。

 これまでの輸出の取組によって、まずは我が国の食料の供給能力の維持にどういった効果があったのか。ここは本当に、私も輸出促進を全否定するわけではありません、しかし、実際に農業者の方々にいかにプラスになっているか、そしてまた、食料供給能力としてそれを維持するためにどういった効果があるかというのはなかなか見えないものではないかなというふうに思っております。

 そして、今言いました新二十二条と新二条の四項の基本理念の部分で、私は、輸出促進の目的といった上でちょっとずれがあるのではないかなというふうに思うんです。一方で海外への輸出を食料供給能力の維持を図る手段と規定しているのが基本理念ですけれども、今申し上げましたように、新二十二条では、輸出促進は農業者及び食品産業の事業者の収益性の向上に資するよう行われるというような内容になっていまして、これは、ずれはないですか。整合性は大丈夫ですか。

坂本国務大臣 まず、データからお示しいたしたいと思いますけれども、昨年一年間の農林水産物それから食品の輸出総額は十一年連続で増加をいたしました。一兆四千五百四十七億円となります。輸出が国内生産におきまして一定の割合を安定的に占めている、そういう品目も出てきております。

 例えば、リンゴや長芋につきましては生産量の五%、さらにはお茶につきましては生産量の八%が輸出向けとなっておりまして、輸出が国内生産の一部を支える不可欠な取組になっているというのも事実でございます。

 そのため、国内生産の豊凶に、豊作のときも凶作のときもでありますけれども、一定数量を海外市場に供給することで国内需要の安定に寄与する効果が発揮されてきたというふうに考えております。

 また、国内市場で引き合いが非常に少ない、例えば私のところでは小さいカンショ、サツマイモというのがありますけれども、こういったのは国内でなかなか取引をされないわけですけれども、それを高値で海外市場に出すことができる、そのことによりまして農家の所得向上にも貢献しているというような点も重要になってくるというふうに思っております。

 このように、輸出は国内の需給安定を図るとともに、農家の所得向上を通して国内の農業生産基盤の維持に不可欠な役割を果たしてきたというふうに考えております。

 今後、人口減少に伴いまして国内需要の減少が見込まれる中で、成長する海外市場を取り込む輸出の拡大というのは食料安全保障の確保に一層重要であることから、引き続き、関係省庁と一体となって輸出促進を図ってまいりたいというふうに思っております。

 できれば、アジアの食料の中のまさに日本が拠点になる、食料生産の増大も含めて、そういうような姿になればというふうに思っております。

金子(恵)委員 食料自給率が低迷したままの状況で不測時にどうしたらいいかという話になるわけなんですけれども、もちろん、先ほども申し上げましたように、輸出というものを全否定するわけでもありませんし、これは重要なものだというふうにも思いますけれども、ただ、農業の輸出産業化をもって食料の安全保障ということを考えることはできないわけですよね。そういう意味では、即時に、例えば輸出仕向けを国内仕向けにいきなり転換できるかというと、できないじゃないですか。そのことについてはどう考えているんですか。

 それで、今おっしゃっていただいたように、実際には、やはり輸出が伸びているものというのは、牛肉とか、かんきつとか長芋等、ほんの一部であって、ほとんどが加工品、加工食品です。アルコール飲料とか、ソース混合調味料の輸出額が多いということなので、いざといったときに輸出のものを国内仕向けにできるか、できないです。いかがですか。

坂本国務大臣 輸出につきましては、委員おっしゃるとおり二条で理念をうたい、そして二十二条で具体的な政策を出しております。そして、さらに、食料安全保障という意味におきましては、今回の食料・農業・農村基本法の改正の中で、生産、加工、流通、小売そして消費、こういう中でしっかりと食料の安定供給を図っていく、その上で輸出もやはり増大させることによって、その食料供給の一助として、なおかつ各農業者の所得向上に寄与する。そういうような狙いがあるところでございますので、食料の安定供給は安定供給としてしっかりとこの食料・農業・農村基本法の中で進めてまいるというのが今回の改正案の大きな目標でございます。

金子(恵)委員 限られた時間の中での質疑なので次に行かせていただきますが、食料自給率についての考え方を問わせていただきます。

 国内の生産増大に向けた取組をしていくということは方向性としては変わらないということだというふうには思うのですけれども、今回の改正では、現行二条の第二項でありました、食料の安定的な供給の方法として、国内の農業生産を基本として輸入及び備蓄を適切に組み合わせることを規定しているというものを、この部分、「併せて安定的な輸入及び備蓄の確保を図る」と改正するということを言っています。ということは、国内生産と並行して輸入を安定的に行うこととしていて、国内の農業生産を基本としているという部分が後退してしまっているというふうに思うんです。

 輸入への依存がますます強まっているというふうに読めるのですけれども、食料自給率、これをしっかりと高めていく、そういうお考えをしっかりと持っているのか。さらには、改正案の中では、「食料自給率その他の食料安全保障の確保に関する事項の目標」というような定め方をしているので、食料自給率が最も重要ということにはならないように読めます。

 つまりは、自給率の格下げと言ったらいいんでしょうか、そういう状況にあるのではないかと思うんですが、いかがでしょう。

坂本国務大臣 私たち農林水産省の役割は、国民の皆様方一人一人に安定的に食料を供給するというのが我々のまず第一の使命であります。その中におきまして、食料自給率という単独の目標のみでは評価できない部分があります。肥料があったり、あるいは飼料があったり、資材もあって、様々な要因があります。

 このために、食料安全保障の確保に向けてより多角的に捉えるべく、食料・農業・農村基本法の改正法案におきまして、「食料自給率その他の食料安全保障の確保に関する事項の目標」と規定するものとしたものでありまして、食料自給率の重要性が変わるものではありません。ましてや格下げになるといったものでもありません。

 しっかりと私たちは、自給率というものを確保しながら、意識しながら、これからの農政を進めてまいります。

金子(恵)委員 決して格下げではないということであれば、やはり食料自給率、そこを目標にしっかり掲げていくということだというふうに思いますので。私たちは四五%の自給率目標も低いというふうには思っているのですけれども。

 いずれにしましても、会計検査院からもこの指摘がされていて、目標を全く達成していない、その要因分析もせよというような会計検査院からの指摘もありますけれども、これからしっかりと検証していくということですか、今からやるんですか。

坂本国務大臣 会計検査院は、十年先の自給率その他が出ていないということで指摘を受けました。しかし、農林水産省としては五年に一度の見直しをしております。なおかつ、今後、新たな食料・農業・農村基本法の下では、基本計画を作りまして、毎年、一年ごとに、毎年一つ一つ検証をしていくということにしているところであります。

金子(恵)委員 時間が参りましたから終わりますけれども、何が一番重要なのかということが全くこの改正でうやむやになっている状況だと私は思いますので、それをこの委員会での審議を通して、しっかりと明確にしていきながら、そして、よりよい基本法改正ができればというふうに思っています。よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

野中委員長 次に、緑川貴士君。

緑川委員 皆さん、おはようございます。

 基本法案の新しい二十三条について、まずお尋ねしたいと思いますけれども、食料システムの関係者により食料の持続的な供給に必要な合理的な費用が考慮されるようにする。これを具体化した仕組みというのは必要になってきます。

 一方で、先週、坂本大臣の御答弁の中で、食料システムの関係者が集まる協議会を昨年発足させて、費用の考慮が行われる仕組みの構築に向けて協議をして、具体的な仕組みづくりの法制化も視野に検討するというふうにお答えをいただいているんですけれども、そもそもこの仕組みづくりこそが、基本法案の基本理念である食料安全保障の確保、つまり合理的な価格で良質な食料が安定的に供給されるということにダイレクトに関わっているわけでございます。

 食料供給困難事態対策法案あるいは農振法、農業経営基盤強化法、これらは食料安全保障の確保に同じく関わる法案として今回、基本法関連の法案として出ているんですけれども、法制化を検討されるとおっしゃっていた以上は、同じタイミングで、やはりこれらの基本法の関連法として併せて提出するべきであったというふうに思いましたけれども、大臣の御見解はいかがでしょうか。

坂本国務大臣 食料の価格形成につきましては、昨年六月に政府の食料安定供給・農林水産業基盤強化本部で取りまとめられました食料・農業・農村政策の新たな展開方向におきまして、食料システムの各段階の関係者が協議できる場を創設し、適正取引を推進するための仕組みについて検討をすることとされたところであります。

 これを受けまして、昨年八月より、これまでにない取組といたしまして、生産、加工、流通、小売、消費等の幅広い関係者が一堂に集まる協議会を開始し、持続的な供給に必要な合理的費用を考慮した価格形成の仕組みの必要性、それから品目ごとに作成する費用の指標であるコスト指標等について具体的な論議を進めてきているところです。

 価格形成につきましては、非常に幅広い皆様方の合意形成が必要でございます。消費者の皆さん方と、それから小売店の皆さん方、スーパーの皆さん方の現在の立ち位置、意見の違いというのはかなりのものがあります。それを生産者の皆様方も含めて合意形成をしていかなければならない、やはり非常に時間がかかるものである、拙速だけは避けなければいけないというふうに思っております。

 フランスの方でエガリム法が成立いたしましたけれども、これが機能していないというようなこともあって今ああいう農家の方々のデモにつながっているということを考えますと、やはりコスト計算等も含めて合意形成をどうやって図っていくのかというのが、少し時間をかけてしっかりとやっていかなければ後に大きな混乱につながるというふうにも考えますので、しっかりここは論議をしてまいりたいというふうに思います。その上で、法制化も視野に今後取り進めてまいりたいというふうに思っております。

緑川委員 やはり、大臣おっしゃったように、合意形成ということが今回の食料安全保障の確保の肝になる大きなポイントであるというふうに思っております。

 新二十三条では、合理的な費用の明確化を国民の理解と併せて進めるというふうに書いていますけれども、大臣が同じく、一月の記者会見では、やはり今日御答弁にあったような状況については同じ御認識で一月でも御答弁をいただいております。協議会において、生産者、製造業者、小売業者の間の認識には乖離があり、法制化を含めたスケジュールについて見通すことが難しいと説明をされています。

 やはり法律二十三条に書いてあるように、この合理的な費用を明確にしていくことがポイントです。しかし、今、その協議会の持ち方で壁にぶつかっている状況であります。新たな基本法の理念の柱である食料安全保障の確保、良質な食料が合理的な価格で安定的に供給をされて、国民一人一人の手に入るような状態にする。この合理的な価格をつくる仕組みというものが有効に機能し得るのか。基本法がこの仕組みと一体で実効性を持てるかどうかということに大きく関わっているのに、現状では、その仕組みの具体的な中身については明らかにされていないわけであります。

 この合理的な価格を肝とする食料安全保障の確保の審議にやはり影響している話だと私は思っています。法制度になる段階までしっかりと煮詰めてから、基本法の検証もかなり急ピッチで進めてきた分、そこは、やはり拙速な議論にならないように、この仕組みづくりの法案化についても、法制度になる段階までしっかり考えてから、この基本法案の関連法がしっかりと全て出そろった段階でやはり考えるべきであったというふうに思っております。

 大臣、この辺、改めていかがでしょうか。

坂本国務大臣 第二条第五項におきまして、基本理念として、食料システムの関係者によりまして、私がさっき言いましたように、持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるようにしなければならないというふうに規定しております。

 そして、具体的施策として、改正案の二十三条におきまして、食料の価格の形成に当たり食料の持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるよう必要な施策を講ずると規定をしております。

 これらの規定を踏まえた施策の具体化に向けましては、食料システムの関係者が一堂に集まる、先ほど言いました協議会を開催し、費用の考慮が行われる仕組みの構築に向けて協議を重ねているところでございます。費用の考慮というのが一番難しいところでございます。

 今後、基本法に基づく具体的な仕組みにつきましては、しっかりと協議を煮詰めていって、法制化を視野に検討してまいりたいというふうに思っております。

緑川委員 同じような御答弁が続くことになってしまいますので。

 合理的な費用というところをどうやって実際の価格形成につなげていくかというところについての中身が、やはり出てこないんですね。これを、法制化を待ってくださいと言うのであれば、やはり食料安全保障の根幹に関わる重要な論点だというふうに思っておりますので、この辺りは今日の審議でも、法制化はこれからといっても、基本法に密接に関わるというところについて、現状、お考えのところについて具体的に、できれば正確にお答えをいただければというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 生産、製造、流通、小売、大臣がおっしゃったように、いずれの段階においてもやはりコストの構造というのは非常に切実な状況があるというふうに認識をしておりますけれども、特に、生産者は、コストの上昇分を農産物の卸値には十分にできていないというのがやはり立場だというふうに思っております。食料の持続的な供給のために、農家にとっての適正な価格形成というのがなされるようにする。厳しい営農環境の厳しさに応えられる仕組みに、やはり、価格形成の仕組み、法制化を視野に入れているこの仕組みというものがそうしたものに応えていかなければならないというふうに思っています。

 ただ、二十三条においては、一部触れましたけれども、食料の持続的な供給の必要性への理解の増進であったり、あるいは合理的な費用の明確化の促進ということは規定はされているんですが、明確化された合理的費用が価格形成にどう用いられるのかということが明示されていません。

 合理的というのは、政府のこれまでの、先週の御答弁でもありましたが、価格というのはあくまで食料システムの各段階での交渉で決まる、そこで決まった段階の費用について、関係者が納得して合意できる価格にしていくということなんですが、関係者の認識がやはり乖離しているといった大臣の御答弁がある以上は、なかなか簡単な話ではないというふうに思います。

 合意というのは結局名ばかりであって、一部が渋々妥結をするというような結果になるかもしれませんし、コストを最終的に負担することになる消費者の納得をやはり優先することになるかもしれません。それが結局、関係者の括弧つきの納得ということで合理的な価格になるとすれば、結果として、生産者にとっては、再生産が難しい、あるいは生産意欲がなかなか湧いてこないような価格が合理的な価格として決められてしまうという場合もあり得るのではないでしょうか。

 大臣、この辺り、いかがですか。

坂本国務大臣 そこは、これからの協議の中での話合いで、様々なことが考えられると思います。今、非常に意見が乖離しておりますけれども、消費者の皆さん方の役割というのも今回の食料・農業・農村基本法で規定をいたしております。さらには、生産者のコスト指標というようなものも今後つくっていかなければなりません。

 その中で、加工業者の方々、あるいは流通業者の方々、そして卸売業者の方々、それぞれの意見というものをしっかりと、制度も含めてそこでつくり上げていく、その中で、やはり持続可能な食料生産、そういったものができていくと私は思っておりますので、いましばらく時間をおかしいただければ、法制化も視野に入れた協議が徐々に煮詰まってくるというふうに考えております。

緑川委員 その話合いは否定しませんけれども、やはり現実的な結果というものを生産現場は懸念しているところがあるというふうに思っております。

 そして、大臣がエガリム法についても御答弁をいただきましたし、神谷委員からも本会議でこのエガリム法が機能していない懸念についても御議論がありました。先行事例である特にフランスのエガリム2法、これは、農家と最初の買手との取引、生産コストを価格に反映できるようになっていますけれども、書面での契約を義務づけて、契約書は農家の側から提示をして価格を決めていくと。そこに品目別に出されている生産コスト指標を考慮するように義務づけられていることで、かかったコスト分というのは聖域化してその価格交渉の対象外になっているといった、農家にとっては一見するとこれはメリットがあるというふうに思うんですけれども、やはり価格が高騰を続けていくと。これぐらいの仕組みでないと、結果として生産コストの確実な反映というのは難しいというのが、フランスの例を見てもやはり分かる部分があると思います。

 食料システムの交渉の当事者間で納得が得られるようにしていく、それはつまり、独占禁止法に触れないような範囲で、社会的な合意が得られるという範囲で、これまで価格転嫁が進まなかった生産コストを、これは全てコストを吸収できるということがなかなか現実として難しいのではないかということが今日の御答弁でもやはり感じられるところもあるんですけれども、そのコストをどこまで吸収することができるのか。

 そのための客観的な指標として、大臣おっしゃっていただいたような、品目ごとのコスト指標、コストデータに基づく指標化というものが重要だというふうに思いますけれども、業界によっては、品目別にデータをそろえて検証できるというものがやはり限られているということが課題の一つであると捉えています。

 例えば、豆腐や納豆の価格形成の作業部会では、小売業からは、品目別にコストのデータを取るというのが業態としてはやはり制約があって、品目別に標準化をするというのが難しいといった意見が出ています。さらに、価格形成の課題としては、ドラッグストアなどによる極端な安売りということも課題であると指摘されています。安売りによってスーパーの価格の水準もやはり押し下げているといった実態もあるということです。

 この作業部会の小売業は、これは主にはスーパーの関係者がほとんどで、ドラッグストアは参加していないということでございます。価格形成の仕組みづくりを法制化をしていくというのであれば、より幅広くこの関係者を作業部会などにも集めながら、その意見を踏まえて、やはり、ドラッグストアなども巻き込んで意見の調整を今からしっかりと図っていく必要があるというふうに思いますし、業界が抱えるやはりこの業態としての課題、コストデータを可能な限り品目ごとに比較考量できるようにする、指標化に努めていくという必要があるというふうに思います。

 大臣、この辺りのお考え、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 今、協議会の中で一番重要なことは、委員御指摘のとおり、品目ごとに作成する費用の指標でありますコスト指標の作成等に議論を重ねているところでございます。

 これまでの協議におきましては、このコスト指標の作成に必要なコストデータの収集につきまして、小売業の団体からは、飲用牛乳、豆腐、納豆等を含む日配品といった商品カテゴリー別のデータ管理はしているものの、個別の品目別にはコストデータを管理しておらず、品目ごとにコストを明示することが難しいというような指摘があったところであります。

 こうしたことから、今後は、小売業の実情も踏まえ、光熱費や人件費等のデータからコスト指標を推計する方策等につきまして、実態調査もしながら検証をしていかなければいけないというふうに思っております。

緑川委員 ドラッグストアの関係者への巻き込み方、やはり、ドラッグストアを含めた価格形成に向けた仕組みづくりということについてもお答えをいただければというふうに思いますけれども、いかがですか。

坂本国務大臣 私は、酒の安売り店、原価割れをするような安売り店をしっかりと警告する、町の酒屋さんを守る会の幹事長もしておりますけれども、公取委の方に、原価割れの安売り競争、そういったものについてはしっかりとやはり監視をし、指摘をし、そして罰則規定も設けるべきだというようなことも申し入れているところで、公取委の方も、一定の理解を得てそのような調査もやっているところでありますので、それと似たような仕組みができるのかどうかも含めて検討していかなければいけないというふうに思っております。

緑川委員 今、物価高の中で、やはり、消費者が安さであったりとか、あるいは値頃感を求めて、そうしたドラッグストアに対するニーズというものは一層高まっているというふうに思いますし、このドラッグストアの中には、安くてもやはり売上げに相当つながっている、量で売っていくということがありますので、生鮮品であったり、あるいはお総菜を含めて、食品販売の事業を大幅に今広げているといったところが出てきています。

 影響が更に広がっていくというふうに思いますし、それが、今度は価格形成という面においては、食料システムの関係者としてこれまで枠組みに関わってきたスーパーが、法案で言う合理的な価格で販売は続けている一方で、枠組みに参加していないドラッグストアは、安い価格のままで安売りを続けて、それを目玉にして集客をして、販売を更に伸ばしていくといった構図になっていくことも考えられます。

 こうした状況になると、スーパーとしても競争力を高めたい、やはりやっていられないと。これは、価格形成の仕組みから外れてでも販売を伸ばしていきたいといった思いもあると思います。

 こうした価格形成の仕組みの維持というものが、結果として、スーパーがこの枠組みから外れるような動きにもなって、なかなか維持が難しくなってしまうといったことも考えられると思いますけれども、この辺りの御懸念はいかがでしょうか。

坂本国務大臣 まさに今、酪農の世界で、指定団体の世界でそういう状況が起きております。ですから、小売業界でそういう状況がやはり起きないということも考えられないではないというふうに思っておりますので、そこはどういう枠組みができるのかどうなのか、ほかの業界、経営体等も参考にしながら、これからその仕組みの在り方を検討して、さらには検証していかなければいけないというふうに考えております。

緑川委員 類似の既存の制度のこれまでの課題も共有をして、教訓を生かして仕組みづくりにつなげていただきたいというふうに思っておりますし、この価格形成の仕組みというものが、私が今申し上げた既存の制度がある、これとの関係について、特に卸売市場の制度との関係についても確認をさせていただきたいというふうに思っております。

 青果物を始めとして、国内農産物の多くは卸売市場で競りの対象となっています。需要と供給に基づく価格形成というものが原則になっています。売手と買手がそれぞれ多数いて、作況の変動というものが大きい農産物というのは、時期によって価格が大きく動いてまいります。

 需給を反映して価格を決めていくという卸売市場が果たす役割は非常に大きいわけですけれども、これからコスト指標というものが出てきて、それに基づく価格形成ということをやっていきますと、卸売市場の制度の在り方にも関わってくるのではないか、このように考えていますけれども、どのように整理されていくことになるんでしょうか。

坂本国務大臣 適正な価格協議会の中では、青果物の卸売業者の団体、全国中央市場青果卸売協会の方にも参画をしていただいて論議を進めているところでございますけれども、まずは、流通経路が簡素である、そしてコストの把握も比較的容易である、先ほど言いました飲用牛乳と豆腐、納豆につきまして、具体的な検討を進めているところです。

 それ以外の品目につきましては、今後、先ほども答弁しましたように、コストデータの把握や収集、そして、価格交渉や契約上の課題等につきまして調査、検証することとしておりまして、その結果や卸売市場関係者との協議も十分踏まえて、検討を進めてまいります。

 その際に、野菜の価格形成でありますけれども、作況の変化に伴う価格の変動が極めて大きい、そして、こうした価格変動に対しまして野菜価格安定制度による支援が既に講じられている、生産コストが品目や栽培方法によって大きく異なる、生産費統計の対象品目に含まれておらず、生産コストが統計的に把握されていないといった点も十分考慮しながら、今後検討を進めていかなければならないというふうに思っております。

緑川委員 やはり、市場の役割としての需給に基づく価格決定のメカニズム、この厳格な仕組みの中で、生産コストという観点からは、いかにそれを反映した価格形成を促していけるかということが非常に重要であるというふうに思っているんです。

 ここで、資料の二枚目の3を御覧いただきたいんですけれども、農業物価統計調査です。

 令和四年の農業物価指数で、この表にありますように、緑のところ、米などの価格というのは低下をしていますが、野菜の価格が上がったことで、令和四年の農産物のトータルの価格の指数というものは一〇二・二です。一方で、右側なんですけれども、生産資材、この価格指数は、飼料や肥料などが上がったことで、トータル一一六・六、相当な開きがあるわけですけれども、前年に比べて一〇%近く上がっているわけであります。結果、農業の経営環境の改善度合いを表す交易条件指数は、八七%台という歴史的な低水準になっています。

 つまり、最近の農業危機というのは、農産物価格の低迷というのが原因ではなくて、資材価格の高騰が農産物価格に十分反映されていない、価格転嫁の不徹底というのがやはり大きな問題であると思います。

 集荷を中心に担っている農協組織などが、価格転嫁については、この辺り、しっかりと配慮をした上で、同じく、生産者と同じ供給サイドとして、川下側に対しては、農産物価格については強い交渉力を持って取り組んでいくということが大切ではないかというふうに思っておりますけれども、大臣、市場制度との関係でお答えをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 市場制度があるわけですので、そこはそれで、様々な交渉によって価格が決まっていくわけでしょうけれども、私たちとしては、やはり、生産コストが、野菜を取りましても、その品目によっても大きく変わってくる、栽培方法でも大きく変わってくる。それから、生産費統計の対象品目に含まれておらず、なかなか生産コスト統計の把握が難しいというような障壁があります。こういったものも十分に考えながら、これからの市場における価格形成というものをどこまでどういうふうにできるのかということも含めて検討していかなければいけないというふうに思っております。

緑川委員 やはり、従来の商慣習もあると思います。市場との関係で交渉が難しかったり、転嫁が難しいような場合、あるいは、合理的な価格というのが生産現場にとっては結果として納得し難い部分というのが出てくるかもしれません。厳しい価格で妥結をせざるを得ないような場合になったときには、そこはやはり農水省の出番だと思います。政策をもって農家の所得を力強く下支えをしていただきたいというふうに思っております。

 食料システムの川上として、維持可能な価格形成というのがやはり望ましいですけれども、副業とかあるいは多業農家、半農半X、こうした農地の維持管理に重要な役割を果たすと明記された多様な農業人材、その確保につながる報酬の在り方、農作業の料金の在り方についてもお尋ねをしたいというふうに思っております。

 資料の一枚目の1を御覧いただきたいんですけれども、全国農業会議所のデータで、令和四年農作業料金・農業労賃に関する調査結果です。個人農家、生産組織の水稲の基幹三作業の受託料金です。

 御覧のように、令和四年はやや上昇してはいるんですけれども、年次推計全体で見ますと、長期で見れば、個人農家は特にほぼ横ばいの状況というのが続いています。受託作業は、もちろんこれは民対民でありますので、その取引の中でではありますけれども、先ほどの資料3のように米価の下落がある中で、作業料金をなかなか簡単には上げられないといった元請の農家さんの切実な事情もあるというふうに思いますが、受託する側としても、燃料費であったりあるいは農機具代というものが高騰する中で、同じような料金で、この料金を据置きで請け負ってきたという側面もございます。

 畑や畜産を含めた農作業一般の農業臨時雇い賃金というものがありますけれども、それも上がっている傾向にはあるんですが、農業会議所にお話を聞きますと、そもそも最低賃金になっているところが多いんだと。これをやはり最低賃金以上に上げることで、多様な農業人材になりそうな方々が、やはり労働に加わってもらいやすいというふうに思います。こうした人手が集まってくるかもしれません。

 作業料金への転嫁であったり、あるいは農業臨時雇い金をしっかりと上げていくような方向で、民間の賃上げというのはどんどん上がっていますから、こうした最賃含めて、この臨時雇い金についても、しっかりと見ていくということの重要性もあると思いますけれども、この辺りのお答えはいかがでしょうか。

坂本国務大臣 私たちとしてもサービス事業体の充実というのを今掲げているわけでありますので、委員御指摘の点は、非常にこれから重要であるというふうに思っております。

 そういう中で、農作業を受託するというのはやはり主業経営体や農業法人、そして集落営農などの担い手が中心となるものと考えておりまして、農林水産省といたしましても、兼業農家の高齢化が著しい中で、担い手への農地利用の集積、集約化の一環としても、農作業の受託を促進していかなければいけないというふうに思っております。

 ただ、受託者と委託者の間の話合いで決められていくというようなものではありますけれども、今後も継続的に農作業受託事業が実施されるためには、受託者に経済的なデメリットが生じることがないような受託条件の設定が円滑に行われることが重要であるというふうに考えております。

 このため、昨年四月に施行されました改正農業経営基盤強化促進法に基づきまして、市町村は、受託者に対し、受託可能な農作業の種類やエリア、受託料金に関する情報を広く提供するように促すことといたしておりまして、こういう情報を全国に周知をすることによりまして、やはり一定のメリットがある受託農作業団体というものを育成していかなければいけないというふうに考えております。

緑川委員 ありがとうございます。

 時間が非常に中途半端で恐縮ですけれども、やはり食品アクセスの問題について最後にちょっと問いたいというふうに思っています。

 今、高齢者の四人に一人が食品アクセス困難者であるというふうに言われています。高齢化に伴う様々な、地元商店の廃業もそうですけれども、単身世帯が増加していたり、商店街が衰退したりといった要因がありますけれども、地域によってその実情は様々であります。それぞれの実情を踏まえた対応というもの、これまでの政府の協議内容、そして、最後の二つ目の問いも併せて、移動販売業の支援ということについて、国が積極的に支援をしていく必要性について最後に伺わせていただきたいと思います。

坂本国務大臣 アクセスの問題は非常に重要な問題でありまして、フードバンクや子供食堂、それから、移動販売による冷蔵施設の整備支援、こういったものが必要になってまいります。

 さらには、中山間地だけではなくて町中においても、五百メートル以内にスーパーがないというふうなところで、高齢者の方々の足がないというふうなこと、こういったことも含めてやはり自治体でどうするかということも考えていただかなければなりません。

 そういうことで、昨年六月から、八省庁におきまして関係省庁による連絡会議を開催をいたしまして、今後の、地域によって異なる事情を踏まえた上での食品アクセスをどのようにしていくかというふうなことに取り組んでいるところでございます。

緑川委員 駆け足で、御答弁ありがとうございました。質問を終わります。

野中委員長 次に、山田勝彦君。

山田(勝)委員 立憲民主党の山田勝彦です。よろしくお願いいたします。

 坂本大臣に質問いたします。

 食料・農業・農村基本法の改正に寄せられたパブリックコメントの半数以上が種子に関するものだったにもかかわらず、法案が種子に全く触れていないのは明らかにおかしいのではないでしょうか。国民的議論が必要な大改正にもかかわらず、なぜこのように民意を無視するのでしょうか。お答えください。

坂本国務大臣 基本法検証部会の中間取りまとめに対します国民からの意見募集におきまして、食料自給率が他国と比べて低い状況で、種子の国内自給は不可欠である等の、種子の確保に関する御意見を数多くいただいたことは事実でございます。千百七十九件、うち種子関係が五百四十件ありました。これを受けまして、答申の取りまとめに向けた第十七回の基本法検証部会におきましても、これら種子関係の御意見について報告がなされたところです。

 これも踏まえまして、今般の基本法の改正案においては、種子も含めて、農業生産に不可欠な農業資材の安定的な供給の確保について新たに位置づけしたところでございますので、決して民意を無視しているというわけではございません。

山田(勝)委員 大臣は、そういう御答弁であれば、種子の自給は食料安全保障上大変重要であるという御認識でよろしいですか。

坂本国務大臣 我が国の食料安全保障の確保の上からは、農業生産に必要な生産資材の安定供給が必要であります。

 その中の種子につきましても、肥料、飼料などと並んで、農業生産に欠かせない生産資材として重要であるというふうに考えております。

山田(勝)委員 であれば、なぜ法律に明記しないのでしょうか。四十二条の、農水省との事前の意見交換でも、生産資材に種子が含まれているという説明を受けるんですが、肥料や農薬と同じ扱いですか。

 食料安全保障上重要な種子の自給、これは国民の皆様が求めている声です。法案に明確に書き込むべきではないでしょうか。

坂本国務大臣 種子は、肥料、飼料と並びまして、農業生産に欠かせない大切な農業資材であるというふうに考えております。

 基本法の改正案におきましては、種子も含む農業資材の安定的な供給の確保を位置づけるとともに、海外での生産が適している品目につきましては、輸入先の多角化などにより輸入の安定化を図る旨を新たに位置づけたところであります。

 具体的には、稲、麦、大豆など国内で種子生産を行っているものについては安定的な供給を図るとともに、野菜など海外も含め民間会社がリスク分散を図りながら安定調達を行っているものについては輸入先の多角化や採種圃場の確保を図るほか、重要な資材については在庫量を把握して一定の確保を図るなどの取組を後押ししてまいります。

 種子の自給というものは、民間会社において、最も種子の栽培に適したところにおいて、外国で、海外で栽培をし、その種子をしっかりと確保しているところでございますので、これは、所有権あるいは知的所有権も含めて、全て我が国が確保しているということであります。

山田(勝)委員 今のお話を聞いて、大変危機感を感じます。

 アメリカやヨーロッパの国々は、自国の主要農産物の種子は公共の種子として、自給を公的に行う。しかし一方で、今のお話であれば、我が国は、海外で種子の生産をする、そして海外の国から種子の供給に頼る、こういったお話ですので、本当に、これでは食料安全保障は強化されないということがはっきりとしたと思います。

 種子法とは、そもそも、一九五二年に、戦後もう二度と国民を飢えさせない、その決意で、米、麦、大豆の種子の生産と普及を国の役割と定めた法律でした。しかし、自民党政権は、民間企業の参入を促すために、二〇一八年にこの法律を廃止してしまいました。

 六年経過しましたが、民間企業の参入を促し続けた結果、どのような効果を得たのでしょうか。若しくは、どのような不具合が生じているのでしょうか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 平成三十年に主要農作物種子法が廃止されて以降、都道府県のみならず、民間事業者も含めて、需要に応えた品種の種子の供給が進められております。

 例えば、富山県では、民間企業が開発した品種も含めて、県外に供給するため、新たに原種の供給センターを整備するなど、民間事業者と連携して、需要に応じた種子の供給を拡大する取組も見られております。

 一方、法律の廃止後も、稲、麦、大豆などにつきましては、一つは、種苗法によりまして一定基準以上の品質の種子の流通が担保されるとともに、各県における種子供給に係る事務についても、引き続き地方交付税措置が講じられているところでございまして、種子の供給に不具合が生じているとは承知しておりません。

 このため、引き続き、現行の枠組みの下、円滑な種子の供給を後押ししてまいります。

山田(勝)委員 当初、民間に参入を促せば生産性が上がるという説明はあったんですが、むしろ、民間企業の種子は十倍高いという状況です。メリットはほとんど生産者は感じていない状況の中で、不具合について明確に答弁がなかったんですが、実際、種子法廃止、そして、農水省が推奨してきた民間企業の参入を促した結果、大変な事件が起こっています。

 資料一を御覧ください。

 農水省は、三井化学のみつひかりを優良品種として、全国の農家に推奨して回りました。ここにも書いてあるとおり、たくさんの収量が取れる、収益も上がる、こういったことを農水省は全国各地で生産者の方々に伝え回って、その結果、三十八都府県の千四百ヘクタールの農家の皆さんがみつひかりの生産者になりました。

 しかし、事件が起こります。二〇二三年二月下旬、みつひかりの栽培を予定していた農家に対し、突如、三井化学はみつひかりの供給を中止すると。これによって、田植を控えていた全国の農家の皆さんは大混乱に陥りました。

 種子法を廃止し、民間に頼った結果、種苗法上の重大な違反が判明しております。主な不正内容は三点あります。二〇一六年から、茨城県産に愛知県産を混入させるなどの産地の不正表示を行っていた。二〇一七年以降、他品種の種子を混入させていた。二〇一九年以降、発芽率を満たさないロットが多くあり、二〇二〇年から二一年はほぼ全てのロットが発芽率九〇%未満だった。産地偽装、他品種混入、発芽率九〇%以下など、どれ一つ取っても一発アウトです。

 このように、農家の皆さんへ多大な被害を与えたみつひかりを、坂本大臣、まさかと思いますが、いまだに農水省は農家へ優良品種として推奨し続けているのでしょうか。お答えください。

坂本国務大臣 需要に応じた生産を進めていくためには、都道府県のみならず、民間事業者も含め、需要に応じた品種の種子を供給していくことが重要であるというふうに考えております。

 このような観点から、主要農作物種子法を廃止する法律案が議論をされた際、みつひかりは、外食、中食向け多収米として品種の開発から種子の生産、販売までを民間事業者自身が担っていた好事例の一つであったことから、他の民間事業者に対する類似事例の取組拡大の啓発を目的として紹介をいたしました。当該品種の利用を推奨しているわけではありません。

 一方、みつひかりの方は、販売者である三井化学クロップ&ライフソリューション株式会社が生産者等に種子を譲渡、販売する際、内容と異なる品種名や産地、発芽率の表示等、種苗法上の不適切な行為が明らかになったことから、種苗法に基づきまして、報告徴収命令を発出し、報告の結果を踏まえて文書による厳重注意を行ったところであります。このような行為に対しましては、種子の生産や普及の取組とは別に評価する必要があるというふうに考えております。

山田(勝)委員 今、評価する必要があると。

 私の質問に端的に答えていただきたいんですけれども、農水省は、いまだに全国の農家さんに、これは優良な品種だとして推奨しているんですか、していないんですか。

平形政府参考人 特定の品種について、利用を推奨しているわけではございません。

山田(勝)委員 農家の皆さんは、本当にこのような、農水省が勧めた品種を栽培し、結果、被害を受け、大混乱をしたわけです。しかし、農水省に確認すると、これはあくまで民間同士の契約だからということで、国として、そういった農家の皆さんに救済を一切していないと。

 政府は、通常ならば、食品に関する表示の虚偽の疑いがあれば直ちに立入検査に入り、調査した上で、改善命令を出し、公表するなどの行政処分をしていますが、農水省は三井化学を厳重注意処分にするだけで、この不正事件、終結をしようとしています。しかし、これは、それで済まされる話では当然ありません。三井化学のこの不正事件は、現在、刑事告発されているところです。

 この問題で大変気になっているのが、厳重注意処分、農水省の指導に従ったから注意で終わっていて、指導に従わなかったとしても、僅か五十万円以下の罰金程度で済まされる。一方で、種苗法の改正時に、生産者が自家採種をした場合には、農家に一千万円以下の罰金、十年以下の懲役。相当重い罰を生産者には与える。明らかに生産者より企業の利益を守ろうとしている法律ではないか、大変な問題だと感じております。

 そしてまた、今、社会問題になっている小林製薬の紅こうじ、これはサプリメントをめぐる健康被害問題であって、これと全く構造が同じなのではないでしょうか。

 安倍政権時代に、健康食品のビジネスチャンスを広げるとして、機能性食品表示の条件を届出だけにし、民間企業の参入を促しました。安全規制の行き過ぎた規制緩和であると当時から批判があり、参議院の予算委員会で、先日、立憲民主党の辻元議員が、規制緩和の見直しも含めた再発防止に即座に着手するべきではないかと岸田総理へ迫ったところ、総理は予算委員会で、規制強化も含め再発防止に向けた対応を検討する考えを示されました。

 そこで、坂本大臣に伺います。

 この重大なみつひかりの不正事件を受け、種子ビジネスの拡大をこれまで国が後押ししてきたような種子法廃止、これは今こそ見直すべきです。大臣、食料安全保障強化のために種子法を復活するべきではないでしょうか。

坂本国務大臣 種子法がいかにしてできたかというのは、委員もちゃんとお調べになったというふうに思います。

 種苗法というのが先にできました。そして、やはり日本の穀類を守るべきではないかということで、改めて議員立法で、昭和二十二年だったと思いますけれども、種子法、主要作物種子法、これが今後の日本の食料に重要であるということで、成立をいたしました。以来、種子法と種苗法を並行してやってきたわけであります。

 種苗法がどちらかというと知的所有権をしっかり守る方、それから種子法につきましては、それぞれの都道府県に義務化をして、それぞれの都道府県で米や麦や大豆の品種改良をしていくというようなことでありました。

 しかし、ほぼ全ての都道府県で、需要は、供給が満たせるようになった、品種改良もしてきた、そして、東京や大阪までもそういったものを義務づける必要があるのかというようなことで、民間も含めて、これからの米、麦、大豆についての品種開発、そういうことをやっていこうというふうにしたのが、種子法のまずは成り立ちでございます。

 その種子法の廃止後は、種苗法におきまして、民間事業者が生産する種子も含めて稲、麦、大豆の種子の品質について担保することとしたものであります。

 ですから、今委員がおっしゃいました、今般のみつひかりの種子につきましては、これは表示等の違反でありますし、このような種子の品種等の検査を行う中で明らかになったものであります。このことから、種子法廃止後の制度は有効に機能しているものというふうに考えております。

 引き続き、現行の枠組みの下で、適正な種子の生産、流通を後押ししてまいりたいと考えております。このため、廃止した法律を復活させることは考えておりません。

 ですから、今回のみつひかりは、本来ならば当初に届けたみつひかりの品種そのものの純粋種でなければならなかったものを、後で開発した二〇〇二とか二〇〇三とか、こういうものも含めて混合して販売していたということで、それは表示違反になるというようなことで、これは種苗法が機能をして、厳重な注意というふうになったところであります。

山田(勝)委員 種苗法が機能したから今回の事件が発覚したという言われ方をするんですけれども、そもそも、種子法を廃止せずに、地域の種を従来どおり、公的に安定した品質を安く地域の農家さんに提供する仕組みであれば、こういう事件は起きなかったはずです。大臣の答弁は、どこか論点がずれているのではないでしょうか。

 今のお話を聞いていても、やはりこれからも種子ビジネスを拡大させる、そういった考えに変わりないようです。しかし、このような国の方針に従うことなく、全国各地の地方が立ち上がっております。種子法に代わる種子条例が全国三十四都道府県で制定されています。私の地元長崎県でも種子条例は既にありますし、坂本大臣の御地元熊本県でも早々に種子条例が制定されています。

 このように、既に民意が明確に示されています。世界的食料危機の時代に国民を二度と飢えさせないため、本来であれば、国の責任において種子法を復活すべきであると改めて強く訴えさせていただき、次のテーマに入ります。

 資料二を御覧ください。二〇二二年、世界では有機農業が一気に進んでいます。栽培面積は、前年比二七%増。中でも、オーストラリアが四九%増。インド、アルゼンチン、中国、フランスの順で続き、日本は残念ながら九十二位。しかし、前年比二八%では伸びています。これは、みどり法の効果もあったのではないか。

 みどり法が成立するとき、農水省を挙げて有機農業を推進していくと強い決意が語られました。最もその中でも有効な政策がオーガニック給食であり、坂本大臣は、超党派、オーガニック給食を全国に実現する議員連盟の立ち上げ時の共同代表でもあられ、坂本大臣の下、有機農業がますます推進されることを期待しておりました。

 しかし、驚くべきことに、今回の農業基本法の改正案に有機農業の言葉が一言も入っていません。一体なぜか。二〇五〇年までに有機農業の農地面積を二五%にするという国家目標を、本気で達成する気があるのでしょうか。もしその意思があられるのであれば、「環境への負荷の低減の促進」とうたった三十二条の条文に、有機農業の推進を明確に書き込むべきだと提案いたしますが、大臣、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 基本法の改正案では、基本理念におきまして、食料供給の各段階における環境負荷低減の取組の促進など、生産から消費に至る食料システムを環境と調和の取れたものにしていくという旨をまず位置づけております。

 また、基本的施策におきまして、環境への負荷の低減の取組として、化学農薬、肥料の使用削減など幅広い取組を促していくこととしており、その中に有機農業は当然含まれております。

 いずれにいたしましても、有機農業は、温暖湿潤な我が国の生産現場におきまして非常に意欲的な取組であり、みどりの戦略に位置づけた目標の実現に向け、今回の基本法の見直しの内容も踏まえて、引き続きしっかりと後押しをしてまいります。

 なお、みどり法においては有機農業を位置づけているではないかというようなことも言われると思いますけれども、みどり法は、みどりの食料システム戦略で位置づけた施策を具体的に講ずるための法律でありまして、その中で、地域で行う有機農業について防除等に関わる一定の営農ルールを定める必要があることから、協定制度の枠組みの中で有機農業を位置づけたものであります。

 オーガニックビレッジも含めて、有機農業をしっかりとこれから後押しをしてまいりたいというふうに思っております。

山田(勝)委員 当然含まれていますよね、大臣が今言われたとおり。当然含まれているのであれば、なぜそれを特出ししないのかということが、全く残念ながら、大臣はそういうお気持ちであることは、もちろん、オーガニック給食を全国に広めようとされている代表者でもありますので感じているんですが、これは私たち野党が言っているというよりも、全国の生産者の方々や、有機農業にこれまで取り組んでいる方々や、そういった食を求める消費者の声であるということで、是非御検討をいただきたいと思っております。

 そして、次、ちょっと十番と十一番を飛ばして十二番に入ります。資料三を御覧いただきたいんですが、日本の有機農業は世界から大きく遅れている。

 EUでは、環境直接支払い制度、これを柱に農村振興を続けています。三十年以上も、その成果で有機農業が右肩上がりで拡大を続けている。しかし、EUに比べれば、日本の環境直接支払いは余りにも予算規模が少な過ぎる現状です。

 これがその比較です。日本円で比較しております。フランスが五百四十一億円、ドイツが一千五十九億円などに対して、いわゆるヨーロッパ型の環境直接支払い、日本では二十六・五億円、少な過ぎる。これは、日本の約十八倍から四十倍になっている。これでは当然、先ほど紹介したとおり九十五位ぐらいという順位でありますが、みどりで、国家戦略で掲げた有機農業の農地面積を二五%にするというのは、到底かないません。

 世界から遅れている有機農業を強力に推進するために、この日本の環境直接支払交付金の予算をEU各国並みに大幅に拡大すべきだと提案しますが、大臣、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 御指摘のEUにおける有機農業への支援につきまして、フランスでは、二〇二三年からEUの共通農業政策に基づいて、有機農業の取組に対する環境支払いを行っております。十アール当たりに換算をいたしますと、約千七百円の支援を行っております。農村振興施策において、有機農業への転換の取組に対しまして、十アール当たり五千三百円から六千八百円の支援を行っているというふうに承知をしております。

 それに対しまして、我が国では、環境保全型農業直接支払交付金におきまして、有機農業のかかり増し経費への支援を行っていますが、令和二年に十アール当たり八千円から一万二千円に引き上げたところであり、フランスと比べて高い水準になっております。

 この交付金は、令和六年度に五年間の事業実施期間を終えることから、令和七年度に向け見直しを行うこととしていますが、我が国の有機農業の耕地面積に占める割合がEUに比べて低い水準にあるのは事実であります。それは、我が国の、先ほど言いました温暖湿潤な気候であり、冷涼なEU、ヨーロッパ諸国とは違うということ、それがゆえに雑草や病害虫の防除に手間がかかるというのも要因の一つとなっております。このため、今後、自動除草ロボットや、品種改良を更に進めて、技術的にも取り組みやすい環境を整えることで有機農業の更なる拡大を図ってまいります。

山田(勝)委員 今言われたとおり、ヨーロッパでは、日本の農家の一人当たりの耕作面積、全く桁が違うわけなので、そうじゃなくて予算規模でしっかりと、環境直接支払いの、農水省の予算の比重をしっかりと上げていって、農村の環境や農家の、特に条件不利地域で生産活動をされている農家の皆さんを支えるという仕組みが必要であるということを訴えさせていただきます。

 続きまして、これは坂本大臣にお聞きしたかったんですけれども、今回の法改正、スマート農業や輸出促進、こういったところに力を入れるということは、従来の大規模農家を優遇してきた自民党農政の延長でしかない。大臣も、農村の状況を十分熟知されている。私も、農村を回れば、もう七十代、八十代の小規模の農家の方々が何とか中山間地域の農業を守っている状況です。今回の改正内容で、そういった本当に支援が必要な小規模な家族農家、こういったところにどうやって国の支援を届けようとされているんでしょうか、教えてください。

坂本国務大臣 その前に、先ほど私が答弁の中で間違っていたことがありますので、一つだけ訂正をさせていただきます。種子法が昭和二十二年に制定されたと言いましたけれども、昭和二十七年の誤りでございました。訂正しておわびを申し上げたいと思っております。

 中山間地の農業についてでございますけれども、担い手の割合が平地と比べて非常に低くて、人口減少、高齢化も進行しております。多様な農業者の減少が地域の農業により大きな影響を与える、それは委員御指摘のとおりでございます。

 そういう中でも、やはり、スマート技術を活用した生産、それから農村の関係人口の増加、そして農村RMO等における生活の利便性、こういったものに対して支援をしてまいりたいというふうに思っております。

 これまで五年間の農業生産、それぞれ、平たん地も含めて減少しておりますけれども、中山間地の農業については農業生産額が上昇しているところというのが非常に多くあります。それは、中山間地がゆえに、その中山間地を活用したブランド化、付加価値化、こういったものに取り組んでいる地域においては、非常に所得そのものも上がり、そして、高齢者の方々も農業生産に非常に喜びを見出しているというようなことでございますので、しっかりと中山間地の方に目を向けて今後も後押しをしてまいりたいというふうに思っております。

山田(勝)委員 大臣、スマート技術、これ自体を否定するわけじゃないんですけれども、もう七十代、八十代で、わっかもんがおらんくなったと言っている農村の現場にスマート技術はどうですかと言って、投資するわけがありません。なので、スマート技術が全国各地の農村に行き届くとは到底思えませんので、この小規模農家を大切にする農政であっていただきたい。そのためにも、私たちは農家の戸別所得補償制度の復活を訴えているわけです。

 そして、前回、神谷議員が岸田総理に質問したときに、岸田総理からいろいろと反対する理由があったんですけれども、到底その理由が理由になっていません。買いたたきについて言及があったんですが、最後、時間が来ましたので、資料を配っています。もし所得補償を理由に買いたたきがあったとすれば、これは当時、民主党政権のときに、農水省が通知を出した文書です。当然、公正取引委員会の取締り対象になるということです。

 食料安全保障を強化するためには、種子法、そして農家の戸別所得補償制度の復活が必要だということを強く訴えて、私の質疑といたします。

 ありがとうございました。

野中委員長 次に、渡辺創君。

渡辺(創)委員 立憲民主党の渡辺創でございます。

 坂本大臣と農水委員会でのやり取りは初めてになります。どうぞよろしくお願いいたします。

 お隣の宮崎の選出でございますし、新聞記者出身、県会議員の経験があるという意味でも、実は同じような道を歩んでおりまして、大臣は私のことを御存じじゃないと思いますが、一方的にシンパシーを抱いております。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、基本法改正の議論に入る前に、ちょっとその前提になるような話をさせていただきたいというふうに思います。

 今回の基本法の改正の狙いは、私なりに解釈をすれば、農政を取り巻く環境が国内外の様々な要因から大きく変化していく中で、国民の安定的な食料確保の重要性をより明確にしつつ、環境との調和や農業の持続、生産の舞台である農村の振興を図り、政策の力強い推進のために新たな背骨をつくるというところにあるのかなというふうに思っておりますし、むしろ、そのための改正であってもらわなければ困るというふうに思っているところであります。

 そこで、具体的な議論に入る前に、岸田政権における農政の基本的な認識を確認しておきたいというふうに思います。

 この議論、宮下前大臣のときにも一度させていただいておりますが、岸田首相は、総理就任前に出版された「岸田ビジョン」の中で、二ページだけと言うべきか、二ページにわたってと言うべきか、農林水産業について触れていらっしゃいます。

 そのポイントは、まず、地方の活力を考える中で改めて再認識すべきなのは農林水産業の役割の大きさだというふうに、非常に重要なんだという指摘をされています。

 その上で、次のポイントとなるのは、農業については二つの考え方があるというふうにおっしゃった上で、1は、農業は、農産物の生産活動により、生産だけではなく農地や環境の維持、地域文化、コミュニティーの維持に貢献をしている、経済合理性を求めるのではなく、支援もその観点から行うべきであるという考え方。2は、農業は産業として育成すべきで、競争力のある経営体を育てて、コスト削減など体質強化によって経営の安定を図るべき、農業が産業として成長すれば農村も活性化すると言っています。その上で、要はそのバランスだと。それは当たり前といえば当たり前な話なのでありますが。

 私は、現行の基本法の想定はともかく、近年の農政は2の方に振れ過ぎてきた、ある意味では競争市場、強い者が強くなることで全体が引き上げられるという、新自由主義的な政策の行き過ぎが表面化してきていたというふうに感じています。ですので、今回の基本法改正に当たっても、先ほどの説明でいえば2から1への回帰、つまり、競争に委ね過ぎない、明確に農業を守るという方向性にかじが切られることを期待をしていたところであります。その評価については、これから議論が始まっていくところですので、今日は避けたいというふうに思います。

 質問したいと思いますけれども、今るる述べてきたこと、さらには総理の農政への基本姿勢などを踏まえて、現行基本法下の農政をどう総括をするのか、また、農政における新自由主義的な政策からの転換の必要性についてもどうお考えかということを、まず大臣にお伺いしたいと思います。

坂本国務大臣 ありがとうございます。

 これまでの農業政策におきましても、農地の集積、集約、あるいは農林水産物・食品の輸出促進など農業の競争力強化のための産業政策と、そして、農業の有する多面的機能の発揮に向けた日本型直接支払いといった農村政策と、同時に進めてきたところであります。

 「岸田ビジョン」にもありますように、産業政策と地域政策のバランスの取れた政策が非常にやはり大事であると私も思っております。

 私のところで恐縮ですけれども、私のところで集落営農組織というものが一つあります。十三の集落が一緒になって、三百五十ヘクタールの水田をブロックローテーションによって動かしております。これは、地域農業七割、そして、その広さを生かした産業政策三割。そして、畑地の方では、今非常に焼き芋がブームでありますので、昔から私たちのところは芋の産地でございますので、カンショ、そしてニンジン、こういったところで非常に大きな収益を上げていらっしゃる。これはやはり産業政策の一環である。

 その地域地域におきまして地域政策と産業政策が非常にバランスが取れている、このことが大事であるというふうに思っております。そういうバランスの取れた中で、スマート化とか、規模拡大、あるいは効率化、そして経営的な判断、こういったものはしていくべきであろうというふうに思っております。

渡辺(創)委員 ありがとうございます。

 両方の要素が必要だというのは、こちらか、こちらだけかという話ではないというのは、重々分かっているつもりであります。

 その上で、今日も金子委員の質問でもありましたけれども、やはり、国民の皆さんにこの国の農政がどっちを向いていくのかというのを分かりやすく伝えていく、それによって国民の理解形成をして、様々な農業の関係者の皆さんのところに届く政策を推進する力を得るということも大事だと思いますので、その意味では、今冒頭でしているような議論の中で、両方大事なんですけれども、やはり今から重視されるのは、どちらにシフト、ある程度偏りをつくっていくのかということも一つ意識をしながら議論をしていくのは大事なんじゃないかなと感じているところであります。

 そういう意味でいうと、自民党の森山総合農政調査会最高顧問でしょうか、昨年の五月の話で、予算委員会でも出ていますけれども、JA全中、全国農政連の全国大会等でも、先ほども申しましたが、やはり新自由主義的な政策からの転換が柱になる、必要だということを、改正案が出る前の話でありますけれどもされてきているので、この認識というのはある意味で広く、永田町というか、この国の農政に関わる方々の中で、強弱はあれども一定程度共有されているイメージではないかと思いますので、是非このことを私は個人的にも重要視をしていただきたいというふうに思っております。

 次の質問に入ります。ちょっと端的にお伺いをしたいと思いますけれども、食料自給率の低迷、農地面積の減少、農業者の減少、この三点はいずれも、現行法において問題意識を持ちながらも歯止めをかけることができなかったという分野、政策の話だと思います。この間の対策は、これも、済みません、金子委員にも近いことを聞かれていらっしゃいましたけれども、期待される政策効果を上げてきたのか。今後の議論の前提になることだと思いますので、是非この認識を明確に大臣からお伺いしたいと思います。

坂本国務大臣 自給率の方でありますけれども、基本法制定当時の四〇%から三八%に低下をいたしました。

 自給率の引下げ要因、これは、国内で自給可能な米の消費の減少が、三・〇ポイント低下するその原因となりました。消費面での変化が大きな要因になっております。ですから、米がそのままであれば、三八%プラス三ポイントというような単純計算にはなります。

 一方で、小麦や大豆などの輸入依存度の高い品目の国産化の推進によりまして、これは自給率が一・四ポイント上がるなど、私は一定の効果は上がっているというふうに思います。

 農地面積につきましても、集約化、荒廃農地の発生防止等に一定の経過がありましたけれども、結果的には六十万ヘクタールの減少というふうになっております。

 そして、農業従事者もおおむね半減をいたしましたけれども、その代わりに法人化が進みまして、農地面積の四分の一、販売金額の四割を担うところにまでなりました。そして、農業総生産額でいいますと九兆円台を維持しているということで、私は、大きな目で見て、これまでの農業政策、やはりしっかりと効果は表している面が多い、それを今後、国内外で来たるべき変動に対してどう修正をしていくのか、どうそれに備えていくのか、そのことが最も今一番大事なことであるというふうに考えております。

渡辺(創)委員 評価の内容についてはいろいろ言いたいこともありますけれども、大臣の方から、政策効果はそれぞれのところに一定程度以上あったという認識を示していただきましたので、これからの議論の前提にしたいというふうに思います。

 もう一問お伺いしたいと思います。

 私自身は、この国の現状というのは、食料の国内調達を軽んじてきた結果、経済的に優位であれば食料の入手は容易という認識に立ち過ぎてしまって、過度な輸入依存にあるというふうに思っています。

 大臣は、現状を、例えばいろいろな品目ごとによっては過度な輸入依存にあるというようなこと、答弁等でも聞こえておりますけれども、現状を過度な輸入依存であるというふうにお考えか、仮にその認識に立つのであれば、現状を招いた原因をどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。

坂本国務大臣 戦後、我が国の人口が急増する中で、食料の自給基盤が十分に整備されていなかったことから、不足する食料を輸入していたこと、これは輸入依存につながったというふうに思います。

 さらに、我が国の経済が急成長する中で、安価な輸入品を購入する経済力というのが培われておりまして、そして同時に、食生活の洋風化も進んでおった。そういう面で、輸入品には一定のものも大ロットで確保できるといったメリットもあったことから、輸入依存が高まっていったというふうに認識をいたしております。

 畜産におきましても、粗飼料にしましてもやはり大ロットで簡便に輸入ができますので、これまで、飼料に対して、粗飼料に対して輸入依存が強かったということは言えるというふうに思います。

 ただ、ここに来て、輸入が好きなときに好きなだけできるような状況では、内外ともできなくなったということで、今回の食料・農業・農村基本法の改正案となっているところであります。

渡辺(創)委員 ちょっと改めて確認をしたいと思いますが、輸入依存が高まった状態にあるという御説明がありました。これは、質問で言ったとおり言えば、過度の輸入依存にあるというふうに大臣は認識していると思っていいでしょうか。

坂本国務大臣 これまでは過度な輸入に依存していた面があるというふうに考えております。

渡辺(創)委員 ありがとうございました。ちょっと前提となることを整理させていただきました。

 次に、農林水産省の予算編成の在り方についてお伺いをしたいと思います。

 現行の基本法が成立した平成十一年度、農林水産省の予算は、これは、ごめんなさい、資料を作るべきだったと反省しておりますが、総額で三兆九千八百三十一億円ありました。このうち、当初予算が三兆四千四十四億円で、補正予算は五千七百八十七億円を措置しています。農水省予算全体に占める比率としては、当初予算が八五・四七%、補正予算が一四・五二%。

 一方、二十四年が経過した昨年度、令和五年度、農水省予算の総額は三兆八百六十五億円。このうち、当初予算が二兆二千六百八十三億円で、補正予算が八千百八十二億円。予算全体に占める比率は、当初予算が七三・四九%、補正予算が二六・五〇%。

 つまり、この二十四年間で農水省予算総額は八千九百六十六億円減少し、現行法ができた時代の七七・四八%の予算規模になってしまっています。また、注目をしたいのは、予算全体に占める当初予算の占める割合が、八五・四七%から七三・四九%と、一二ポイント低下しています。結果として、当初予算ベースで、農林水産予算額は一兆一千三百六十一億円も減少しているということになります。

 しかも、この間、政府予算全体を見ると、平成十一年度の総額は八十九兆百八十九億円であったのに対し、昨年度は百二十七兆五千八百四億円になっているわけですので、政府の予算総額が一・四三倍に膨張する中で、農林水産予算は大きく減少し、さらに、当初予算の占める比率を大きく下げていっているというのは明らかです。

 これは決して都合のいい年度を引っ張ったわけではなくて、この三十年の経過を見て、もう先生方はよくお分かりでしょうが、明らかな傾向と言えると思います。

 大臣にお伺いをしたいと思うんですが、もちろん、予算編成がこういう状況にあるというのは全て農水省の責任とばかりは言えないというふうに思っておりますけれども、この国の政権であったり政治全体が、農林水産、つまりは国民の食の確保や食料生産の環境などを軽んじてしまったことの証左でないかというふうに、自省も含めて思うところであります。

 現在の予算規模、さらには当初予算と補正予算の関係性などについて、大臣はどのような見解をお持ちでしょうか。

坂本国務大臣 予算の説明になりますけれども、令和六年度当初予算につきましては、食料の安定供給の確保や、農業の持続的発展と農村の活性化、みどり戦略の取組の強化などに重点を置いた農業関係予算を編成しております。森林、林業、木材産業におきましては、林業関係の予算をグリーン成長として措置をしておりますし、適切な水産資源管理や水産業の成長産業化に向けた水産関係予算も確保しているところであります。

 今委員が言われましたような、今回の令和六年度の予算につきましては、令和五年度の予算を上回ります二兆二千六百八十六億円を確保しております。また、令和五年度の補正予算につきましては、過度な輸入依存からの脱却、それから畑地化促進などで八千百八十二億円を措置しております。そのうちの畑地化は七百五十億円でございます。

 当初予算の割合をやはり増やすべきだというのは、委員おっしゃるとおりだというふうに思います。しかし、各省庁、それぞれ見てみますと、やはりそれぞれが補正予算対応というふうになっておりますけれども、私たちとしては、できるだけ当初予算で取るべき予算は取っていくという方向で、これからも努力をしてまいりたいというふうに思っております。

渡辺(創)委員 ありがとうございます。

 その上で、今回、今議論しているのは、四半世紀ぶりの基本法の改正をやろうとしているわけです。これは農水省の問題だけではなくて、政府全体で重要性を認識しているからこういう法案を国会に出しているわけでありますし、岸田総理も予算委員会等でも何度も農政の憲法、農政の憲法と繰り返していますし、昨日の参議院の決算委員会でもおっしゃっていました。

 そういう位置づけをしているのであれば、予算編成についてもある種の健全性、先ほど大臣、いわゆる当初予算の割合がもっと高まるのが望ましいというお話がありましたけれども、ある種の健全性をこの機会に取り戻すべきではないか、必要なものは補正ではなくてきちんと当初予算で確保するという体質を取り戻していくべきではないかというふうに思います。

 仮に改正が成立をすれば、次は基本計画の策定に進んでいくわけですので、それを踏まえた予算編成の段階では、予算総額の確保、そして今大臣もおっしゃったようなことをしっかりと、当初予算での予算措置というところに体質を変えていくべきだ。

 先ほどの答弁と重なるかもしれませんが、大臣の見解をお伺いしたいと思います。

坂本国務大臣 委員おっしゃるように、食料・農業・農村基本法の改正を成立させていただきましたならば、その後、食料・農業・農村基本計画が作られます。その基本計画の中で、具体的な施策というものを進めてまいります。

 その具体的な施策を進める中で、予算措置がなければならないという大きなバックボーンができるわけでありますので、しっかりと予算を確保してまいりたい、食料・農業・農村の基本計画に沿った予算獲得をしてまいりたいというふうに思います。そのことが、ひいては我が国の食料安全保障の強化につながるというふうに思っております。

渡辺(創)委員 そのためにも、今、基本法で何が大事であるべきかという議論を委員会でもしているところですので、是非また皆さんにもよく聞いていただければというふうに思うところです。

 具体的な内容に入っていきたいと思うんですが、食料安全保障の確保という観点での海外輸出促進についてちょっとお伺いをしたいと思います。

 今回の基本法改正の中で、私は、個人的には一番違和感があるのは、食料安全保障の確保という文脈の中で、農林水産物の海外輸出の促進というのが位置づけられていることであります。違和感の詳細についてはおいおい順番に話していきたいと思います。

 法改正の案が出てくる基となった審議会の答申などをよく読むと、人口減少などで国内市場が縮小する、輸出は堅調なので、国内需要に応じた生産に加え、輸出増加が持続的な成長を確保するすべとなる、農業生産基盤の維持にもつながるというロジックが示されています。

 分からなくはないんですが、さはさりながら、輸出は農林水産業、食品の国内生産額の数%でしかありませんし、輸入拡大実行戦略を目標どおりに実行できたとしても、その数値は二〇三〇年に五%程度になるというものだというふうに思います。しかも、出ているもののボリュームゾーンは、先ほど金子委員のところでもありましたけれども、加工食品だったりとかお酒だったりとかというところであります。

 この現状を踏まえたときに、農林水産省が描く食料安全保障の確保というロジックの中で、輸入促進というのは具体的にどういうイメージなのか。輸出の現状をきちんと踏まえた上で、具体的にどのような農産品の輸出拡大がどういう状況をつくり出していくことができるというふうに言っているのか、御説明をいただきたいと思います。

水野政府参考人 お答えいたします。

 二〇二三年の農林水産物・食品の輸出額は一兆四千五百四十七億円となり、この中には、米を含む穀物等が六百六十七億円、牛肉を含む畜産物が一千三百二十一億円となるなど、国民の食生活に不可欠な産品が多く含まれております。

 このほか、委員御指摘のとおり、日本酒、その他の加工食品の輸出も大きな金額を占めておりますが、こうした加工食品の輸出についても、例えば、日本酒はほとんど国産原料を使用しているほか、輸入原料を使う加工食品であっても、食品製造業が輸出により収益を上げることで、併せて国産原材料の買手としての機能が地域で維持強化されるなど、我が国の食料安全保障の確保につながるものと考えております。

 いずれにせよ、我が国の農林水産物・食品の輸出は、農業生産基盤や食品産業の事業基盤等の食料の供給能力の確保につながるとの考え方の下、引き続きその促進に政府一体となって取り組んでまいります。

渡辺(創)委員 よく分かったような、分からないようなというところで。

 私は、まず、農産品の輸出促進を否定する立場には立っていません。是非、国内農業の可能性を広げるという意味でも推進すべきだというふうに思っていますが、今回の改正案の中で、食料安全保障の確保の方策という位置づけには、やはりちょっと強い違和感というか、無理があるような気がしています。

 衆議院に来る前に県会議員を十一年しておりましたけれども、その頃、輸入促進というのを地方でも大分、国の声かけを聞いて取り組んできましたが、農産品の輸出促進というのは、安倍政権下において成長戦略の一環、生産者、ここで見れば、もうかる農業というか、農家の所得向上という観点から出てきたという意識が強くあります。しかも、輸入促進が、どこかに利益は上がっているはずですけれども、生産者の利益にどこまでつながっているのかという課題も、常にセットで議論されているわけであります。

 今回の改正に当たって、法体系の中でここに結びつけるしかなかったという事情があるのかもしれませんが、今、四本柱となっている、食料安全保障の確保、環境と調和の取れた食料システムの確立、農業の持続的な発展、農村の振興、この四本柱と別個に立てて並べるぐらいの形で輸出促進というのを位置づけて、農業の可能性を広げるというようなふうにした方がすっきり分かりやすかったのではないか。今の段階で申しても遅いかもしれませんが。

 そこが違和感の原因になっていて、多くの国民の皆さん、多くかは分かりませんが、一部の国民の皆さんには少なくとも頭をひねるという状況につながっているという気がするんですけれども、いかがですか。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 輸出の位置づけ、基本法改正案における柱立てについてのお尋ねです。

 国内人口の減少に伴い、国内市場の縮小が見込まれる中、国内展開型の戦略を維持すれば、これは農業、食品産業も縮小するしかなく、将来的に食料供給機能に不安が生じることにつながります。

 このため、基本理念として、市場が拡大している海外への輸出を図ることで、農業それから食品産業の発展を通じた食料の供給能力の維持を図ることが重要でありまして、その旨を第二条第四項に規定をしているところです。

渡辺(創)委員 済みません、ちょっと今の御答弁、言わんとする趣旨と、私が下手くそで伝えられなかったかもしれませんけれども。

 通告していませんが、大臣、どうですか。

坂本国務大臣 まず、農業者に元気になってもらわなければいけない。そして、国内の農業生産を拡大しなければいけない。そのためには、国内の供給をしっかり満たすのと同時に、輸出産品もやはり作っていく。

 世界を見ても、農業が盛んな国は輸出も盛んです。フランス、オランダ、そしてドイツ、スペイン、あるいはアメリカもしかりです。輸出を余りしていなくて国内の農業だけというのは、そんなには聞きません。ですから、これは私はパラレルでやるものだというふうに思っております。

 やはり、農業そのものが元気になる、そして、国内生産が拡大する、それはおのずと輸出にもつながる。それは方法論の違いであって、輸出が盛んになれば、おのずと国内生産の増大にもつながってくるというふうに思っております。

渡辺(創)委員 ちょっと時間がないので、要は、もう一度だけ繰り返しますが、決して輸入促進を否定しているわけではありません。国民理解をつくるためにどういうロジックを立てることが大事なのか、つまり、無理やりだなと思われるのではなくて、国民の多くの皆さんがそうだと、快くというか、思える組立てを考えていただければと思います。この議論は、今日はここでやめたいと思います。

 次に、ちょっと時間が厳しいですが、農地確保の方策についてお伺いをしたいんです。

 今、農業従事者が大きく減っていて、百二十万人ぐらいの基幹的な農業従事者は、将来、三十万人ぐらいになってしまうという見通しも立っているような状況であります。農地をどうやって守っていくかは極めて大事だと思います。

 この中で、改正案の中では、効率的かつ安定的に農業に当たる、いわゆる担い手の方が果たしていく役割がこれからは拡大していきますよということをおっしゃっています。また、片や一方で、多様な農業者の位置づけについても、決してその重要性を否定しているわけではないわけですが、彼らが果たす役割も重要だというふうに、配慮というか、いろいろな書きぶりがあるというふうにも受け止めているところなんですけれども。

 私、先ほど山田委員もちょっとありましたが、宮崎一区で、中山間地の農地も抱える地域にいますが、肌感覚でいうと、いわゆる多様な農業者、その中でも、農業以外の収入も得ている兼業農家だったり、半農半Xみたいな多様な農業者の一部が、かなりやはり重要なウェートを占めているという印象があります。

 農水省もこのことは十分分かっていると思いますが、農地を守るために、多様な農業者の役割を決して軽んじることはできないというふうに思いますので、農地を守るという観点での多様な農業者の位置づけを改めて確認したいと思います。

村井政府参考人 お答えいたします。

 高齢化する農業者の減少に伴いまして、今後、離農農地が多く生じることが懸念されます。そういった中で、経営規模の大小や、家族あるいは法人などの経営形態を問わずに、農業で生計を立てる担い手を育成、確保していくことが引き続き必要であると考えております。

 一方で、今委員の方から御指摘ございましたけれども、兼業農家など担い手以外の多様な農業者も、農地の保全管理や集落機能の維持、地域社会の維持ということになりましょうか、集落機能の維持などの面で重要な役割を果たしていただいていると認識をしております。

 このため、今般提出をいたしました食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案におきましても、担い手である効率的かつ安定的な農業経営の育成、確保を引き続き図りつつ、担い手とともに地域の農業生産活動を行う、担い手以外の多様な農業者を位置づけたところであり、多様な農業者につきましても、その役割に応じた支援を行って、農業生産の基盤である農地の確保を図っていくことが必要であると考えております。

渡辺(創)委員 ありがとうございました。

 この後、ちょっと水活について議論したいところだったんですが、今日は質問はやめますけれども、本会議で神谷委員が質問したように、私も、我々は、少なくとも法制化なども含めた制度的な安定を高めることが農業者の皆さんの安心感につながるというふうに思っています。

 実は、大臣のブログを読ませていただきました。三月十日のブログに、水田活用直接支払交付金についてのブログの記載があられた。ホームページにあります。そこの中で、いろいろな不満の声が寄せられるという……

野中委員長 時間が来ておりますので。

渡辺(創)委員 はい、分かりました。

 農家の方々からは、私たちは人間が作る米を作りたい、そして、うまいと言っていただくのが農業のやりがいだという声を、大臣が書いていらっしゃいました。こういう気持ちを持っていらっしゃる皆さんに国の事情の中でお願いをしているということを踏まえながら政策を構築することが必要だと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

野中委員長 次に、掘井健智君。

掘井委員 日本維新の会・教育の無償化を実現する会の掘井健智でございます。

 それでは、質問いたします。

 今回の基本法は、基本的な政策の方向性を示しているものであります。日本の農業を取り巻く情勢の変化によって基本法が改正されまして、改正されたことで政策の方向性にどう影響するのか、伺っていきたいと思います。

 まず、現行法、食料・農業・農村基本法の検証、特に、農地の集積率、また集積化、集約化のこれまでの変化とか成果について伺いたいと思います。

 現行の基本法は、旧基本法の農地改革で形成されました非常に生産性の低い農業構造では日本の農業はもう発展しない、そういった反省の上で制定されたものでありました。現行法のポイントは、まさに構造政策であって、生産性の低い農業構造から、輸出もできる、そんな競争力のある農業構造をつくることが大きな目的であると認識しております。そのことで農地バンク法の制定にもつながって、本格的な農業経営者による農地が広がっておると認識しております。

 農業の産業政策は非常に大事であります。現行法の下、どれだけ構造変化してきたのか、農地の集積率、また農業法人経営者の数の変化、そういった変化や成果についてどう受けておられるのか、まず伺いたいと思います。

坂本国務大臣 現行基本法に基づきまして、規模の大小や家族経営か法人経営かを問わず、農業所得で生計を立てる農業者を担い手として幅広く育成、そして支援をしてまいりました。多くの品目で、担い手が農業生産の大部分を担う構造を実現してきたというふうに思っております。

 このうち法人経営につきましては、経営体が三万を超えるまで増加をいたしまして、経営農地面積の四分の一、そして販売金額の四割を担うまでになりました。雇用の受皿としても重要な存在となっております。

 また、今委員もおっしゃいましたけれども、基本法制定時に三割にも満たなかった担い手への農地集積率は、農地バンクの創設などもありまして、約六割まで進展をいたしました。

 こうした担い手の育成や農地の集積、集約化を進めてきた結果、農業の総産出額は、基本法制定時と同水準である約九兆円を維持してきているというふうに考えております。

掘井委員 やはり、厳しくてもうからない産業に人は来ませんので、農業を産業としてしっかりと考えていくという取組が必要であるということが分かります。

 続いての質問でありますけれども、ちょっと順番を変えますので、四番、農業の担い手について、法案の二十六条二項についてであります。

 この度の法案は、食料安全保障の確立、また、環境等に配慮した農業への転換、人口の減少の中で食料供給基盤の確立、こういった三本立ての農政への転換を進めていくということになっております。

 しかし、現行法も、この食料安全保障の確保ももちろん考えておりましたし、環境の配慮は、みどりの食料システム法が制定されて非常に意識されております。また、人口の減少も織り込んでおって、関連法案も整備してこられたところであります。

 それではどこが変わっているのかといえば、農業の担い手についての考え方であります。

 現行法の二十一条では、望ましい農業構造の確立において、国は、効率的かつ安定的な農業経営を育成し、これらの農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を確立する、こういった理念の下、主業農家を育てるための政策、先ほど大臣がその成果を述べられましたけれども、集約、集積が進んできました。

 しかし、法案二十六条では、望ましい農業構造の確立に二項が新設をされております。国は、効率的かつ安定的な農業経営を営む者及びそれ以外の多様な農業者により農業生産活動が行われることで農業生産の基盤である農地の確保が図られるように配慮する、こういうことであります。

 質問なんですけれども、農業構造の変化についてであります。兼業農家が望ましい農業構造に入ってきておると私は認識しておりますけれども、これは政策方針の大きな転換ではないかと思っております。その見解を尋ねます。大臣、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 我が国全体の人口減少が進んでおります。農業者の急速な減少がその中でも見られます。食料の安定供給を図るためには、担い手が農業生産の相当部分を担う望ましい農業構造の確立に向けて、担い手である効率的かつ安定的な農業経営の育成、確保が必要であるとの考え方に変わりはありません。

 そういうことで、現行基本法の二十一条は、改正案の第二十六条第一項としてそのまま維持しており、農業政策の転換はありません。

 一方で、担い手だけでは管理できない農地が出てきている中で、担い手以外の多様な農業者に農地の保全管理を適切に行っていただく重要性が増しているところであります。このために、担い手以外の多様な農業者が、地域における協議に基づきまして、農地の保全を行っていただく役割を、新第二十六条の二項に新たに位置づけたところでございます。

 二十一条からそのまま二十六条に持ってきた第一項、そして、担い手以外の方々の多様な農業者が第二項というふうなたてつけになっております。

 こうした取組を総合的に講ずることによりまして、農地の確保を図ってまいりたいというふうに思っております。

掘井委員 では、お伺いしたいんですけれども、この農業の構造、日本の農業が求める農業の構造、私は、大きく、日本の農業がやはりもうかる農業、そして産業として成り立つ農業の構造、これをこれまで求めてきたと思うんですけれども、大臣が思う農業の構造というのは、どんなものになるんですか。

坂本国務大臣 今申し上げましたとおりに、農業を主体とする担い手が、やはり農業生産の大宗を占める、それを多様な農業の皆さん方がしっかりと補完していく、そこに日本の確固たる農業構造というのができ上がってくるんだろうというふうに思っております。

掘井委員 やはり、戦後、農地改革を行いまして、想定外に経済が発展したものですから、農地を耕作してきた人がどんどんどんどん離農していった。それで、今は農業就業人口が農家戸数を下回る、そんな現象が起こりました。農業以外の、農業に就きながら、週末は農業に従事したり、若い人がいなくなって、残された高齢者の人が引き続き農業をしている状況、これが日本の農業の課題であります。私は、このことと、やはり産業として求める農業を分けていく必要があると思うんです。ですから、現行法の求めてきた農業構造は非常に大きかったと思うんですね。

 では、大臣は、その農業構造の中に、日本の農業を産業として大きくしていく中に、サラリーマンをしながら農業をやっていく、農家と一緒にやって日本の農業を支えていく、こういう考え方でよろしいんでしょうか。

坂本国務大臣 やはり、農業を担っていくのは担い手です。農業で生計を立てる人が、農業の経営的な判断も持って、日本の農業をしっかり引っ張っていかなければいけないというふうに考えております。

 そして、多様な農業形態というのはいろいろな形で発揮できると思いますけれども、例えば集落営農集団、あるいは法人化、そういう中に多様な経営体の方が、サラリーマンを定年をした、あるいは兼業の方がそういった法人化の中に入っていただく、あるいは独自の、自分の付加価値の高い農業をやる。そのことによって、非常に多様性のある日本の農業、担い手が引っ張りながらも、やはりそれをカバーしていく人たちがいるという日本の農業が成り立っていくというふうに考えております。

掘井委員 私は、兼業農家さんはほっておけと言うておるんじゃないんですね。政策としてきちんと分けて考えるべきだ、こういう主張なんです。現行の基本法は、それを明確に分けながら、このままではいかぬ、そういうことで成り立ったんですね。

 今の大臣の考えでは、例えば米ですね、お米の生産調整の問題とか農家の支援の問題、またAIの問題、これはできるのかどうか。こんないろいろな問題が一向に解決しないと思うんですけれども、どうお考えでしょうか。

坂本国務大臣 米の問題あたりにつきましては、水田活用直接支払交付金等も活用しながら、今後水田をどうしていくのか、あるいは畑地化を選ぶのかというようなことで、日本の農地、あるいは米政策、あるいは麦、大豆政策、こういったものは成り立っていくというふうに考えております。

掘井委員 分かりました。

 自民党さん、また農協さん的には、多様化ということの中で兼業農家さんが増えるのがいいと思うんですけれども、しかし、ここに新設することで、やはり以降の集積、集約、またそれ以外の政策が、法案が進んでいくのか心配であります。農業の現場は恐らく混乱すると思いますよ。そうじゃないということを、いま一度、大臣、述べていただきたいと思います。

坂本国務大臣 農林水産省では、経営規模の大小や家族、法人を問わず、農業で生計を立てる農業者である担い手と、そして農業以外で生計を立てる多様な農業者では、農業において果たしている役割が違うというふうに、役割は異なるというふうに考えます。

 このため、担い手である農業者に対しましては、補助金、金融措置あるいは税制措置など各種政策によりまして重点的な支援を行ってまいります。

 一方、担い手以外の多様な農業者に対しましては、農地の保全管理や集落機能の維持などの役割を果たしていると考えておりまして、多面的機能支払いや中山間地域等の直接支払いなどによる水路の泥上げ等地域の共同活動への支援などを行ってまいりたいというふうに思っております。

掘井委員 お考えは分かります。じゃ、何で二項に新設したんですかということが言いたいんですね。あの二項を入れることによって、やはり現場の考え方が変わってくる。ひょっとして違うんじゃないか、こういう心配があるんです。どうして二項を新設したかということなんですよね。

 大臣が言うことを今から質問するんですけれども、同四条に多面的機能の発揮ということがあります。主業農家さんと兼業農家さんの位置づけを、私は政策によって分けるべきだと思うんです。兼業農家さんをもちろんないがしろにするという考えではありません。別のところできちんと守るべきだと考えております。全国の耕地面積の約四割、総農家数の約四割を占める中山間地域の農業は、もちろん、多面的な機能を含めて重要な役割があります。兼業農家さんも非常に多いんです。

 法案では、第四節、第四十三条から第四十九条まで、農村の振興に関する施策について書かれております。

 農業には多面的な機能があって、それをやはりきちんと担う農家さんが必要であります。多面的機能には、中山間地域の振興から、また環境負担軽減の機能ももちろんあって、ここに兼業農家さんを農村振興にきちんと政策として位置づけて支援するということで、生産、食料を供給する専業農家の政策ときちんと分ける必要があると思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 我が国全体の人口減少に伴いまして、担い手の減少だけではなくて、委員言われるところの多様な農業者についても急速に減少していくことが見込まれています。こうした中で、総力戦でやはりそこは農業振興を図っていかなければなりません。

 食料の安定供給を図るためには、担い手への農地集約を進めながら、担い手以外の多様な農業者についても、自らの農地は生産を通じ保全管理を行うとともに、世代交代等により適切な管理が難しくなる場合には管理できる方々に円滑に継承していくことが重要と考えております。

 このため、多様な農業者が地域における協議に基づき農地の保全を行っていく役割を基本法改正案において新たに位置づけたところでございます。このように、人口が減少している状況において望ましい農業構造を実現していくためには多様な農業者の取組が重要となることから、農業の持続的な発展に関する施策に位置づけているところであります。

掘井委員 ちょっと長くて、途中で分からなくなってしまったんですけれども。

 要は、兼業農家さんの役割と主業農家さんの役割は違うんだ、総合的に農業を考えていくことが当たり前の理念であって、そのために、行政の政策でありますので、きちんと分けて考えていかなあかんということに対して、どうですかということ。それに対して、やはり二項はどうしても納得がいかないんですけれども、それでもそうだと言うならば、分けて考える考え方、政策として分けるということ。

 それと、ついでに聞きますけれども、そうであれば、やはり予算が少ないです。多面的機能の支払いが四百八十億円、中山間地域の直接支払いが二百六十一億円、環境保全の農業は二十六円。桁が違うんですね。こういった予算もふんだんにもっとつけていただきたいと思うんです。

 一緒にちょっと聞きますけれども、いかがでしょうか。

舞立大臣政務官 先生御指摘の多面的機能支払交付金や中山間地域等直接支払交付金でございますけれども、担い手や兼業農家等を含めた多様な農業者による農業生産活動を通じまして、国土の保全、良好な景観の形成などの多面的機能が発揮されておりますし、また、地域住民も含めまして農地の保全等に資する共同活動を行われることによりまして、良好な地域社会の維持及び形成に重要な役割を果たしているところでございまして、今、必要な予算の確保に努めているところでございます。

 また、令和七年度からまた次期対策が始まることになりますけれども、それに向けて、多様な組織等の活動への参画を推進することなど、制度の見直しを現在検討しているところでございます。

 様々な関係者の声をお聞きしつつ、今後とも必要な予算の確保についてしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

掘井委員 ありがとうございます。

 政策としてきっちりと整合性が合ったら、やはり財務省はお金を出すと思うんです。その辺、よく考えていただきたいと思います。

 次の質問です。団体について、五十一条についてであります。

 第五十一条に、団体の相互連携及び再編整備についてがあります。私は、農家、農民のための改革に、特に農協改革は避けて通れないと思っております。

 これまで、関係団体も基本法の理念に即してやってもらったという印象があったが、法案では関係団体を国が後押しをするという、ちょっと今回後ろ向きな感じがするんです。

 これまでは、理念に即してやってもらわないと駄目ですよ、こういうメッセージがあった印象があったんですが、今回、それぞれ頑張ってください、それを後押しします、こんな印象が今回の改正法にあるんですけれども、どうでしょうか。

坂本国務大臣 食料・農業・農村基本法改正案の第十二条で、団体について、その行う農業者、食品産業の事業者のための活動が、基本理念の実現に重要な役割を果たすものであることに鑑み、これらの活動に積極的に取り組むよう努めると規定をしているところであります。農協につきましては、農業者の団体であることから本規定が適用されます。

 また、平成二十七年に改正されました農業協同組合法におきまして、農協は、農業所得の増大に最大限の配慮をしなければならないと規定されており、その役割が明らかにされております。

 これを踏まえまして、JAグループにおきましては、農業生産の拡大、そして、農業者の所得増大等を基本目標とする不断の自己改革に取り組まれていると承知をいたしております。

 農林水産省といたしましても、引き続き、このような農協の自己改革を後押ししていく考えであり、農協改革が後退するということはありません。

掘井委員 農協改革は後退することはないとおっしゃりました。

 先ほどから私の印象としまして、農業構造がやはりちょっと変わってきたと思うんですよ、二項が入ることによって。政府が農業団体を見る視点は、法案の第五十一条にあります基本理念の実現に資することができるのかどうかであります。

 法案第二条から第六条がありますけれども、特に第五条の農業の持続的な発展には、望ましい農業構造が確立されるということが規定されております。しかし、法案第二十六条に戻りますが、その望ましい農業構造の中にやはり兼業農家が入るということであるならば、高齢化の問題でありますとか、また、集積、集約の問題、大規模化の問題、また、米の価格調整、生産調整。これ、問題が解決しないんじゃないかなと思うんですけれども。

 農協さんを後押しするのは全然いいんですね、農協さんの改革を促すのはいいんですけれども、この基本法の理念に基づいてやるならば、ひょっとしたら、また昔の政策に戻るんじゃないのかな、こんな懸念があるんですけれども、この辺、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 現行の基本法理念や農協法の規定にのっとりまして、JAグループにおきましては、農業生産の拡大、農業者の所得増大等を基本目標とする不断の自己改革に取り組まれているところであります。

 農林水産省といたしましては、基本法が改正された際におきましても、引き続き、この自己改革の取組を後押しするとともに、意見交換や対話を通じて、必要な支援、助言等を行ってまいる考えです。

 実際にJAが取り組んでいる自己改革の中でも、担い手への支援に重点を置いた具体的な取組も見られるところであり、基本法の改正により、農協の自己改革の方向が変わるものではありません。

 そして、先ほど言われております、そういった専業農家と兼業農家を分けるべきであるというふうなお考えですけれども、実際、それぞれの地域に行きますと、あるいはそれぞれの集落に行きますと、農業法人の経営一つにいたしましても、あるいは大規模な個人経営にいたしましても、それを分けるということはやはりなかなか難しい。その中で、主業農家が果たすべき役割と、それを支え補完する多様な経営体というのが一体となって、これからの地域の農業政策、それがそのまま日本全体の農業の活性化につながるというふうに考えております。

掘井委員 私が言った分けるというのは、区別せよということじゃないんですよ。政策として、きっちりと分けて担保するということなんですね。

 兼業農家さんはたくさんおられます。しかし、兼業農家さんがだんだん農業から離れていくというか、年に何か月しか田んぼに入らないとか、数か月しか田んぼに入らない、こうなってきて、それでも農家さんでありますから。でも、その政策と、これから輸入を生み出す大きな政策がやはり合致しない。でありますから、やはりそこはきちっと分けるんですよね、政策で。区別はできませんね、もちろん。分けてきっちりせいということなんですよね。

 農協さんはやはり、もちろんメンバーの数が大事でありますから分からぬことはないんですけれども、そのことを踏まえてきっちりと考えて、協力してもらわなあかんということなんです。

 だから、僕は、何回も言いますけれども、この二項はいろいろな問題をはらんでいるんじゃないかなと思っておりますけれども、もうこの辺でやめておきます。

 次の質問です。

 食料安全保障の確保、これは元々は二番でありますけれども、戻ります。法案第二条であります。ウクライナとロシアの戦争の影響と考察についてであります。

 この度の基本法改正は、主に食料の安全保障がクローズアップされております。その背景にはウクライナとロシアの戦争があると思いますけれども、それでは一体、日本に対する影響はどれくらいあったのか、それを見てどう考察されたのか、その受け止めについて伺いたいと思います。

坂本国務大臣 ロシア及びウクライナは、穀物の主要な輸出国でありまして、両国から我が国への輸入量はごく僅かでした。これらの国から輸入していた国が調達先を振り替えました。そのことによりまして小麦やトウモロコシ等の穀物の国際価格が急騰をいたしました。その影響が私たちの国にも、我が国にも大きく影響が及んだということであります。

 さらには、ロシアやベラルーシは、肥料の主要な原材料である塩化カリの輸出国でありました。両国からの輸出が急減をいたしました。また、尿素やリン安の輸入先国である中国が輸出検査を厳格化したことも相まって、肥料についても国際価格が急騰をいたしました。そして、安定供給に非常に影響を来したということであります。

 地政学的なリスクは、食料や生産資材の輸入に関する食料安全保障のリスクにもなり得るということを、私たちは改めて今回のロシアのウクライナへの侵略で経験したということであります。

掘井委員 分かりました。ありがとうございます。

 そうしたら、法案第二条の二項でありますけれども、国内の農業生産の計画の目標について聞きたいと思います。安定的な食料の供給には、国内の農業生産を増やしていくということが基本にあります。その上で輸入と備蓄をやっていく、こういうことになります。

 現行法では、輸入と備蓄を適切に組み合わせていくと表現されておりますけれども、今回の法案では、輸入と備蓄を確保するということでありますから、よりその積極性が感じられるということで、随時伺いたいと思いますが、まず、国内での農業生産について、主に穀物ですね、どのようなものを増やしていかなければならないのか、目標と計画について伺いたいと思います。

坂本国務大臣 委員との先ほどからのやり取りの中でも出てきましたように、世界の食料需給が不安定化しつつあります。

 その一方で、我が国においては、農業者の急減、そして農地の減少、さらには、農業を支える集落機能の低下などが続いておりまして、国内の農業生産をめぐる情勢も大きく変化をいたしております。

 こうした中で、国民への食料の安定供給を確保するため、特に、過度に輸入に依存をしています麦、大豆、飼料作物、加工原料用野菜等の品目について、国内で生産できるものはできる限り国内で生産していくという考え方の下で、生産拡大を図っていきたいと考えております。

 これから、少ない人数で食料が安定的に供給できるよう、担い手と農地の確保はもちろんのこと、スマート技術の展開等によります生産性の向上や、農業の付加価値の向上、輸出による販路拡大等を通じまして、収益性の高い農業の実現を図り、農業の維持発展に努めてまいりたいと考えております。

掘井委員 個別でいろいろあると思うんですね、この穀物は幾ら幾らと。こういった計画に基づいてやっていただきたいなと思っておりますけれども、次に備蓄体制について質問します。

 穀物の備蓄計画に、今回の改正で変化があるのかどうか。特に米です。米の適正な備蓄水準が現在どれくらいなのか、又は備蓄水準の根拠、また、運用方法、これからの変化、安全保障のことを考えた変化について、何か変化があるのか、教えていただきたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 政府備蓄米につきましては、十年に一度の不作等の事態があっても不足分を補って国産米で一年間十分に供給できる水準として、百万トン程度で備蓄をしております。

 備蓄米の運営方式でございますけれども、買い入れた米を一定期間保管後、主食用以外の用途に販売する棚上げ備蓄方式によって運用しております。これは、主食用米の市場関係者が予見可能で、市場に対してより透明性を確保した形で、備蓄運営上必要な量の買入れや売渡しを計画的かつ確実に行う観点から採用しているものでございます。

 また、備蓄水準等につきましては、今後、今国会に提出しております食料供給困難事態対策法の基本方針において、米を含む重要な食料の備蓄の方針を定めることを検討しておりますので、その中で検討していきたいというふうに考えております。

掘井委員 続いて、輸入について質問したいと思います。

 安定的な供給を確保するためには、国内の農業基盤の強化とそのバランスを考慮して見るような戦略があると思いますが、輸入の拡大と食料の増産が同時に行政措置として非常に求められてきていると思うんですけれども、輸入についてはどのようなお考えでしょうか。

水野政府参考人 お答えいたします。

 食料安全保障の確保に当たっては、国内生産で国内需要を賄うことができない一部の主要穀物等について、平時から安定的な輸入の確保を実現することが重要と考えております。

 そのため、こうした品目について、我が国商社などの民間事業者が行う調達に係るサプライチェーンの強化を後押しすべく、海外現地において民間事業者が有する集荷、船積み施設等に対する投資の促進を図っているところでございます。

 さらに、我が国の民間事業者による調達が安定的に継続される環境整備を図る観点から、主要な輸入相手国との間の政府間対話の機会の活用、官民で協調して対応するための関係者間での情報交換の強化に取り組んでまいります。

掘井委員 それでは、先ほど質疑の中でもありましたけれども、輸出と食料供給能力の維持について聞きたいと思うんです。

 新設といたしまして、法案二条四項では、海外への輸出を図るということで、農業及び食品産業の発展を通じた食料の供給能力の維持が図られなければならない、こう表現されております。

 これまでの輸出の取組によって、我が国の食料供給能力の維持にどういった効果があったのか、また、これからどういうことを期待しているのか、教えてください。我が国の食料供給能力に。

坂本国務大臣 平時におきまして、輸出促進を通じまして国内農業生産の基盤を維持することというのは、不測時においても対応可能な供給力を確保することが可能となる点を考えますと、食料安全保障の確保に重要な役割を果たすものと考えております。基本法改正にもその旨の位置づけをしたところです。

掘井委員 ありがとうございます。

 これから食の安全保障、また国内需給バランス、いろいろ考えて、輸入、自分のところで作る、備蓄、これをやはり戦略的に持っていく必要があると思っております。

 次の質問に移ります。米政策についてであります。食料安全保障には欠かせない米について質問したいと思うんです。

 時には米不足となり、時には米余りになったり、主食であるお米を安定的に供給し、その上で米の値段を安定させるということは重要な政策課題でありました、政治課題でありました。主食をどうやって守るのか、結果的に農家をどうやって守るのかで米政策が行われてきたことが、日本の農業の大きな課題の一つであります。

 しかし、農政が間に入って、生産量と需給を釣り合わせようというこのさじ加減は非常に困難であるということでありますから、できるだけ市場に任せたいのでありますけれども、年に一回の収穫で、しかも天候に左右される農業でありますから、なかなか工業製品のようにはいかないということであります。

 法案二十九条のところで水田の汎用化及び畑地化がありますけれども、それでも私は米の課題に向かい合って水田を放棄しないように祈るばかりでありますから、その思いに基づいて質問いたします。

 米の生産性向上についてであります。

 国内需要に合わせて米を生産調整することを繰り返せば、人口減少や高齢化に伴って需要も供給も縮小し続けることになります。しかし、生産技術が確立し、単位面積当たりの収穫量も断然小麦と比べて多い米がこれでいいのかということで、食料安全保障の強化を考えるならば、やはり米の生産性の向上は必要であると思っております。

 法案において、水田の耕地化推進が叫ばれております。でも、その前に、私は米の集積、集約が先ではないのかな、こう思っております。大臣の御所見を伺います。

坂本国務大臣 米につきましては、生産面積の拡大に伴いまして、生産コストが確実に減少するということが数字で表れております。

 例えば、六十キログラム当たりの生産コストにつきまして、経営規模が〇・五ヘクタール未満の経営体は二万六千円コストがかかります。三ヘクタール以上五ヘクタール未満になりますと、一万四千円で済みます。十五ヘクタール以上二十ヘクタール未満の経営体ですと、一万一千円となっております。このことから、生産性向上に向けては、作付を集約、集積することが重要であると考えております。

 そのために、農地バンクを通じた農地集積、集約化や、農業生産基盤整備による農地の効率的な利用等を推進をしているところであります。

 加えて、我が国の食料安全保障の強化のためには、輸入依存度の高い麦、大豆等の生産拡大など、国内の農業生産の増大も図っていくことが重要というふうに考えております。

掘井委員 はい、分かりました。水田の集約も重要である、このように認識されておるということであります。

 ちょっと余り時間がないので一緒に質問してしまうんですけれども、水田機能の維持についてちょっと伺いたいと思うんです。

 やはり、適地適作でいえば、米は、例えば、当分の間、海外から化学肥料が入ってこなくても、土づくりをやっておればちょっとの間は大丈夫ということもあります。日本の水田を守ることは、食料安全保障の要とやはり考えるわけであります。米も、どれくらいが必要なのかを知っておくべきであると思います。

 いざというときに日本人が飢えないために、日本の水田はどれだけ米を作れるのか、何ぼ減らしていく傾向があったとしても守らなあかんということで、そのためにはどれだけ水田が必要なのか、人口が一億二千万人ほどおったとしたときの、その辺の計算ですよね、これらを勘案して、どの程度の水田を守っていくかについて、それらをきちっと検討されていくのかどうかということ。

 まず、小麦、大豆の国内生産の増産を推奨しております。適切な土地を無理やり水田として守っていくことはないと思うんですけれども、生産性が高く、畑地化にした方がいい場合もそれはもちろんあります。小麦や大豆を輸入に依存しておりますけれども、取引国を見て、輸入は比較的安定していると思うんです。こういった輸入と国産小麦、大豆、これもどれくらい足らなくなるのか。

 こういった計画を、米は駄目だからこうじゃなしに、きっちりと、小麦と大豆はこれだけ、米はこれだけ守らなあかん、こういった計画はあるんでしょうかということです。

坂本国務大臣 現在、食料・農業・農村基本計画に係る目標といたしまして、令和十二年の農地面積を四百十四万ヘクタールというふうに見込んでいます。これは水田と畑を分けて設定はしていません。

 直近では、農地面積四百三十万ヘクタールのうち、水田面積が二百三十四万ヘクタールであり、その中で主食用米に加工用米、飼料用米を合わせた米全体の作付面積は百四十八万ヘクタールとなっています。これに対しまして、基本計画におきまして、生産努力目標の実現に必要な米の作付面積として、令和十二年に百四十四万ヘクタールを見込んでいるところでございます。

 米は食料自給率を確保する上で重要な作物ですけれども、その需要量が毎年毎年十万トンずつ減少していることから、需給の安定に必要な水稲の作付面積を確保するとともに、先ほどから繰り返しておりますけれども、輸入依存度の高い麦や大豆を生産することが食料安全保障上大切なことであるというふうに思っております。

 その際、麦、大豆につきましては、畑地だけではなくて汎用化された水田でも生産が可能でありまして、水田で生産するか畑で生産するかは各地域において農地利用面積も含めて産地形成について検討され、決まっていくものであると考えていることから、食料安全保障のために必要な水田面積をお示しすることは今は難しいというふうに思います。

掘井委員 時間が来ましたのでこれで終了いたしますけれども、質問は若干残りました。また別の機会でやりたいと思います。

 ありがとうございました。

野中委員長 次に、池畑浩太朗君。

池畑委員 日本維新の会の池畑浩太朗でございます。教育無償化を実現する会との共同会派であります。

 今回も、食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案に関して質問をさせていただきます。

 さきの本会議での質問でも、生産を増加させるための前向きな政策という維新の基本の姿勢であります政策を訴えさせていただきました。この農林水産委員会でも具体的に議論させていただきたいんですが、時間が少し短いので端的に質問させていただきたいと思います。

 最初に、担い手の確保についてお尋ねをさせていただきます。

 先ほども掘井代議士からもありましたが、農業者の確保については極めて重要なことだというふうに認識をしております。先ほども申しましたが、本会議でも担い手関連の質問をさせていただきました。担い手の確保については、大臣の時間の都合もあったというふうに思いますけれども、少し短く感じましたので、多様な農業者という概念が追加されることによって、プロの農家の育成がおろそかにならないとは思いますけれども、他党からも我が党からもありましたけれども、再度、その辺りを含めて、農林水産大臣の個人的な思いも含めてで結構でございますので、答弁をしていただきたいと思います。

坂本国務大臣 委員御指摘のとおり、今後、我が国全体の人口減少に伴いまして農業者の急速な減少が進んでおります。

 こういう状況の中で、食料の安定供給を図るための担い手が農業生産の相当部分を担う望ましい農業構造の確立というのがそういうことであるというふうに思います。担い手である効率的かつ安定的な農業経営の育成、確保が必要であるとの現行基本法の考え方に変わりはありません。

 そして、実情に応じて、法人経営あるいは大規模家族経営、そして小規模ながら売上げを伸ばす家族経営など、様々な規模や形態の経営体が育っています。例えば、私の先ほど言いました地元では、ネットワーク大津という集落営農法人がありまして、そこで三百六十町歩、三百六十ヘクタールの大規模経営を十数人の若い人たちを雇用してやっております。

 こういう集落営農法人を中心とした担い手、それから単独で大規模化をする担い手、こういった様々な担い手を中心として、これからの農業をやはり進めていかなければいけない、そのための支援措置というのは、経営所得安定対策あるいは収入保険や出資や融資などの重点政策でもって育成をしていかなければいけないというふうに考えております。

池畑委員 ありがとうございます。

 大臣が、総力戦でというお話もありました。その中で、最後、育成の話もありましたので、大臣の答弁を受けまして、次に人材の育成、確保についてお聞かせをいただきたいと思います。

 新第三十三条に、人材の育成及び確保について規定をされております。今回は修正をされておりません。なぜなんでしょうか。旧法の制定時には、今と比較したときに、人材の育成は、農業大学校や農業高校、法人等、多岐にわたっておりまして、現在の状況は大きく変化をしていると思いますが、それらを受けながら、法律の修正は必要ないとお考えでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 今後、農業者の急速な減少が見込まれる中、効率的かつ安定的な農業経営を担うべき人材の育成及び確保を図ることが必要であります。そのためには、新規就農者を始めとした将来の担い手に対して、農業の技術あるいは経営方法の習得の促進、こういったことを進めていくということは必要であるという考え方には変わりがないということで、今委員から御指摘のありました現行法第二十五条、改正法案の中では第三十三条ということになりますけれども、この規定そのものについてはそのままの形で維持をしているということでございます。

 一方で、新規就農者等に対して、どういったことを学んでいただくかということに関しては、その時々の諸情勢は勘案して考えていかなければいけないということでございます。例えば、今回の改正法案におきましては、第三十条で先進的な技術等を活用した生産性の向上であるとか、第三十二条におきまして環境への負荷の低減の促進等を規定をしております。こういったことも踏まえて、具体的な新規農業者等に対する教育の内容というのは考えていかなければいけないし、政策においても、そういったことを勘案してやっていく必要があるというふうに考えております。

 農業教育に関する施策につきましては、農業高校や農業大学校等の農業教育機関において時代に即した教育が行われるよう、これまでも必要となる施策を随時講じてきておりますけれども、今後とも、スマート農業や有機農業等の教育カリキュラムの強化、研修用機械、設備等の導入、農業法人等による出前授業やインターンシップなど、雇用就農のニーズの高まりに対応した取組に対する支援等を通じ、農業をめぐる情勢の変化や改正法案の考え方に応じた教育の充実を図っていきたいと考えております。

池畑委員 ありがとうございます。

 今、新第三十条についても質問する前に答弁いただきましたけれども、生産性を向上させるためには、他党からも別角度で質問がありましたけれども、やはり多収を実現することも重要だというふうに考えております。国産での供給が足りていない作物はもちろんなんですけれども、国産供給が十分なものでもコストの削減につながっていくのではないかなというふうに思っております。

 先ほど答弁もいただきましたけれども、先端的な技術等を活用した生産性の向上という条文が新設をされております。新品種の育成についても触れられておりますけれども、今回この条文が新設された狙いはどこにあるんでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。それと併せて、モデルケースがありましたら答弁をいただきたいと思います。

坂本国務大臣 改正基本法第三十条で、国は、先端的技術を活用した生産、加工又は流通方式の導入の促進というのを規定しております。そして、省力化等に資する新品種の育成等の施策を講ずるということも規定しております。

 特に品種につきましては、品種に勝る技術なしというふうに言われるほど、農業の生産性の向上を図る上で極めて重要であります。このために、多収性に優れた品種や、高温耐性、病害虫抵抗性といった気候変動に対応した新品種の開発に取り組みます。特に、地球温暖化で酷暑の夏を迎え、非常に厳しい暑さに耐え得るような農作物がなければなりません。

 それと、今国会には、スマート農業技術の活用を促進するための新法を提出しております。この中では、スマート農業技術と併せて、機械収穫等に適した新品種の現場での導入そして開発についても支援の対象にしていく考えであります。

 モデルとしては、やはりスマート農業をやっていく過程で、新しい品種で生産性も高める、あるいは質も高める、そういうような状況をつくり出してまいりたいというふうに思っております。

平形政府参考人 委員お尋ねのモデルケースでございますけれども、新しい技術につきましては、都道府県の普及指導員が産地の合意形成を図り、栽培技術を指導し、実装につなげている、そういう事例がございます。

 一つは、農研機構が開発いたしました小麦ゆめちからですけれども、需要が強いパン用として適性が高いということだったんですけれども、北海道において優良品種に認定され、普及組織による栽培技術指導を通じて、導入を開始して以降十五年間で二万ヘクタールまで生産が拡大した。また、兵庫県では、高温耐性のある新品種の酒造好適米Hyogo Sake 85を平成二十九年に育成いたしました。その後、普及指導センターが施肥体系を確立し、収量の安定化に成功したことで作付が拡大しております。

 このような事例を積極的に推進していきたいというふうに考えております。

池畑委員 大臣から、やはり多収性の重要性というのもお話をいただきました。是非、我々も、そういったところも進めていただきたい。そして、局長からも兵庫県のモデルまで出していただきまして、ありがとうございました。酒米も含めて、技術的にカバーできるところをしっかりと推進していただきたいというふうに思います。

 ちょっと時間がなくて急いでおりますけれども、次に、最後の質問になります。農業者の方に理解されることはもちろん大事だというふうに思っております。先ほどの品種改良、そして多収化についてであります。それで、我々は、消費者の方にも丁寧に情報発信することが重要だというふうに思っております。特に、給食などの献立とか栄養価、アレルギー問題に関しては子育ての真っ最中のお母さん方が特に気にされておりますが、新品種の開発と同時に、環境にもどのような影響があるかなど、丁寧な普及の上で啓発活動が大変重要だというふうに思っております。

 品種改良を進めていく上で、最初に丁寧に説明をしていけば、しっかりと消費者の方も応援団になっていただける、そういった観点からの質問でありますが、農水省の見解をお伺いいたします。

舞立大臣政務官 新品種などの研究開発による成果等につきましては、当然ながら、農業者だけじゃなくて消費者等も含めまして、農研機構等の研究機関と連携いたしまして、アグリビジネス創出フェアなどのイベントでの紹介や試食、そしてプレスリリースやホームページでの情報発信等に努めているところでございます。

 また、新しい技術につきましても、消費者の皆様への理解を深めることが重要でありますことから、農水省では、消費者等への出前講座や研究施設の見学会等を通じまして、技術について分かりやすい言葉で伝えるアウトリーチ活動も実施しているところでございます。

 引き続き、農業者や消費者、そして団体等に対する情報発信にしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

池畑委員 消費者の立場、またお母さん方の立場でどんどん啓発をしていただくことで、応援団になっていただきたいというふうに思っております。

 大体、新しい品種が出てくると、何か心配事が多くて、なかなか普及が進まないということもありますので、是非とも、我々も今後とも、この農政の憲法、よりよい基本法になるように更に議論を深めていきたいというふうに思っております。

 これで私の質問を終わらせていただきます。

野中委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時二十一分開議

野中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 法案審議の前に、機能性表示食品について質問します。

 小林製薬が製造した紅こうじ配合サプリメントを摂取した人から、健康被害の訴えが相次いでいます。これまでに五人が死亡し、三月三十一日時点で延べ百五十七人が入院、深刻な事態となっています。

 行政の対応と責任はどうでしょうか。内閣府工藤副大臣に来ていただいています。

 機能性表示食品は、二〇一三年に安倍首相が、世界で一番企業が活躍しやすい国にするとして、健康食品の機能性表示を解禁宣言し、その後、導入されました。二〇一五年五月十四日、本委員会において我が党の斉藤和子議員が、特保で安全性が認められなかった成分が、機能性表示食品では体によい成分として表示される、実際に販売されてはならないと強く指摘しました。これに対して消費者庁は、事業者からの情報を公表し、届出後の事後チェックを機能させる、寄せられる疑義情報も活用し、届出情報の公表後に、安全性や機能性に関する科学的根拠などにつき、食品表示法に基づく事後監視を行うなどと答弁したのであります。

 副大臣にお伺いします。

 被害が出てからの対応で、取り返しのつかない事態となっているではありませんか。食品の安全性評価を企業任せにするために、今回のように大規模な健康被害が生じて初めて政府が対応することになっています。機能性表示食品は事後処理型の制度であり、安全性をないがしろにしたこの制度はきっぱり廃止すべきと考えます。いかがでしょうか。

工藤副大臣 田村委員にお答え申し上げます。

 安全性に問題のある食品の流通規制は食品衛生法により行われており、現在、厚生労働省を中心に、今般の健康被害の原因となった物質と、当該物質が製品に含有されるに至った原因の特定に向けた取組がなされております。

 消費者庁といたしましては、機能性表示食品制度に関し、三月二十二日付で小林製薬等に対し科学的根拠の再検証を求めたことに加え、三月二十八日付で、小林製薬を含む全ての届出食品約七千件について、届出者に対し、健康被害の情報の有無や報告状況などの確認を行った上で消費者庁に回答することを求めたところであります。

 三月二十九日に開催された関係閣僚会合において、官房長官から、本事案を受けた機能性表示食品制度の今後の在り方について五月末をめどに取りまとめるよう指示されたところであり、これら調査結果も踏まえ、五月末までに本制度の在り方の方向性を取りまとめるべく、スピード感を持って取り組んでまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 人の口に入るものは、政府の責任においてしっかりと事前に検査しなければならないじゃないですか。国がつくった制度が命を奪うという最悪の事態を招いています。機能性表示食品は廃止すべきであります。

 それでは、食料・農業・農村基本法について質問しますので、工藤副大臣は御退席いただいて結構です。

 まず、食料自給率について質問します。

 先月二十六日の本会議質疑で、岸田総理は、食料安全保障の強化の観点から食料自給率向上に資する取組は重要ですと答弁されました。しかし、食料自給率をどうするかについては明言がありませんでした。

 農水省に聞きます。

 改正案二条二項では、国内の農業生産の増大を図ることを基本としていますけれども、これは食料自給率の向上を意味するものなのでしょうか。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 改正法案の第二条第二項は食料安定供給の重要性を規定したものでありまして、そのための第一の手法として、国内の農業生産の増大を規定しております。

 一方、食料自給率はあくまで国内で生産される食料が国内消費をどの程度充足しているかという結果を示す指標であり、第二条第二項の安定供給のための手法と食料自給率の向上を同列に述べることは、必ずしも適当ではないと考えております。

 また、食料自給率の変化は、生産面に加えまして消費の動向も影響するため、生産面の取組だけで必ず向上するとは言い切れませんが、麦、大豆、加工原料用野菜等の輸入依存度の高い品目の国産転換といった国内農業生産の増大を図る取組は、食料自給率の向上に資するものであり、このような自給率の向上を図る取組を進めていきたいというふうに考えております。

田村(貴)委員 非常に要領の得ない答弁だと思います。

 日本農業新聞、三月六日の論説では、「今回の基本法改正が、自給率を上向かせる転機となるか、注視したい。」このように論評しています。生産者や多くの国民の注目が今、自給率の向上、ここに集まっているんです。私も、生産者それから消費者から、それを願うたくさんの声をこれまで聞いてまいりました。ここにおられる委員の皆さんもそうであると思います。

 坂本大臣にお伺いします。

 大臣は、二月二十二日、予算委員会での私の質問に対して、食料自給率は大切だというふうに考えております、ただ、食料安全保障という視点からいいますと、食料自給率に換算されない飼料や肥料、そういったものもあります、さらには、安定的にやはり輸入をしていくということが大事でありますので、食料自給率一本というわけにいかないと答弁されました。私は驚きました。

 大臣、食料自給率、現行三八%より引き上げるんですか。上げるとするならば、どの程度まで上げないといけないと考えておられるんですか。この際、明確に回答していただきたいと思います。

坂本国務大臣 基本法制定以降の、今の基本法ですけれども、制定以降の食料自給率は三八%前後で推移をしております。その変動要因を見ますと、国内で自給可能な米、野菜、魚介類の消費量の減少、そして、輸入依存度の高い飼料を多く使用いたします畜産物の消費量の増加など、消費面での変化が食料自給率の低下要因というふうになっています。

 こうした食料消費の傾向がしばらく継続することが想定される中で、食料自給率が確実に上がると言い切ることは困難でありますけれども、麦、大豆、加工原料用野菜等の輸入依存度の高い品目の国産転換といった食料自給率の向上にも資する取組を更に推進することが重要であるというふうに考えております。

 なお、食料・農業・農村基本法の改正法案について、国会で御審議いただき、改正案を成立させていただきましたならば、それに基づいて基本計画の策定を行うこととなります。その基本計画の策定の際には、食料の自給率のほか、その他の食料安全保障の確保に関する事項について適切な目標設定に向けた検討を行ってまいります。

田村(貴)委員 ますます釈然としません。

 大臣、お金を出しさえすればもう海外から輸入品が調達する時代ではない、その認識は一致していると思います。いろいろな要因があります。だからこそ、国内でできる食料は国内で生産し、調達していく。それは人口が減ったとしても、どの人口規模になろうが、食料自給率というのはやはり上げないといけないんじゃないんですか。

 自民党の二〇二二年参議院選公約を私は読みました。「食料の安定供給の確保は国家の最重要の責務であるとの認識のもと、食料自給率・食料自給力の向上に努めるとともに、食料安全保障関連予算を確保します。」とホームページで書かれています。

 食料自給率向上に努め、予算を確保すると自由民主党は公約しているではありませんか。自給率は大事だと言うだけでは、そして輸入も大事だということになりますと、これまでのように自給率は下がっても仕方がない。

 大臣、さっき答弁にありましたように、食料自給率を確実に上げるというのは困難である、本当に何か答弁がずっと後退しているんですけれども、自給率は下がっても仕方がないと思っているんですか。輸入で補えばそれでいいとお考えなんですか、まだ。自給率引上げの目標を投げ捨ててしまったのですか。再度お答えいただきたいと思います。

坂本国務大臣 私たちの使命は、食料を国民の皆様方に安定的に供給をするというのが最大の使命でございます。そういう中で、自給率は高める。ただ、今の消費性向が続きますならば、自給率が確実に上がるとは言い切れませんけれども、最大限、食料の増産に努めると同時に、安定的な食料の供給を国民の皆様方にしていくためには、やはり安定した輸入も一方の方では必要であるというようなことで、今回の食料・農業・農村基本法の骨格を示しているところでございます。

田村(貴)委員 自給率を高めると大臣がおっしゃったんだったら、ちゃんとそのことをやはり国民に対して宣言をし、そして法文に明記していかなければならない、これがこの法改正の一丁目一番地だと私は思います。そして、輸入の確保、それは、自給率が足らない部分は輸入の確保はありますけれども、では輸入依存をどうやって改めていくのか、これに真剣に向き合わなければならないというふうに考えます。

 前回の改正の直前、一九九八年の食料・農業・農村基本問題調査会の答申で、食料自給率について、次のように書かれてあります。紹介します。熱供給量ベースの食料自給率については、国民の食生活が国産の食料でどの程度賄われているか、また国内農業生産を基本とした食料の安定供給がどの程度確保されているかを検証する上で分かりやすい指標。食料自給率はこの点で分かりやすい指標というふうに述べられています。

 農林水産省は、この認識に変更はありませんか。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のように、一九九八年の食料・農業・農村基本問題調査会答申におきまして、食料自給率は、国内で生産される食料が国内消費をどの程度充足しているかを示す指標とされており、農業者だけではなく、その他の関係者や消費者にとっても分かりやすい指標であり、この位置づけ等は今回の改正にとっても変わっていないと考えております。

 一方で、食料自給率につきましては、海外依存度の高い小麦、大豆等の国内生産を拡大する、先生が言われたそういった増加要因と、自給率の高い米の消費の減少等の減少の要因の双方が作用しているという意味で、複数の要素が重なり合ってできるものということでございますので、政策の評価を行うというときに当たっては、自給率の在り方についても基本計画の中で議論をしていくことが必要かというふうに考えております。

田村(貴)委員 食料自給率を示すことの意義は認めていながら、食料自給率の目標という十五条二項の文言を、食料安全保障の動向に関する指標などと、曖昧な表現に切り替わってしまっています。やはり、食料自給率の向上を投げ出しているのかと言わざるを得ません。

 会計検査院の令和四年度決算検査報告における「食料の安定供給に向けた取組について」では、「目標年度において目標を達成していなかった場合の要因分析をするなどの検証は行われていなかった。」と述べています。そして、「総合食料自給率やその目標の前提となっている指標に係る目標の達成状況を適時適切に検証することにより、得られた知見等を将来の政策に的確に反映していくことが重要である。」、こういうふうに指摘しているわけであります。

 この指摘に農水省はどのように応えますか。今後は確実に検証していくのでしょうか。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 食料・農業・農村基本計画で定めた目標につきましては、目標年度の十年後を待たず、その見直しを五年ごとに行っております。五年ごとの見直しに当たっては、食料・農業・農村政策審議会の意見を聞きながらそれまでの効果等の検証、見直しを行ってきたところですけれども、会計検査院からは、目標年度の十年後における達成状況の分析が不足しているという指摘があったものというふうに理解をしております。

 今回の基本法改正法案におきましては、食料自給率やその他の食料安全保障の確保に関する事項の目標を定め、目標の達成状況を少なくとも毎年一回調査し、その結果を公表するなど、目標の達成状況を踏まえてPDCAを回す新しい仕組みを導入するということを検討しております。自給率や今後新たに設定される目標の達成状況の評価をしっかりと行っていきたいというふうに考えております。

田村(貴)委員 あらゆる行政の審議のときに、PDCAということの強調をされますよね、政府は。これまでどうだったのかということが非常に大事なんですよね。

 会計検査院は、食料安定供給のこれまでの政策が検証されていないと指摘しているんです。ですから、やはり、これまでの政策がどうだったのか、農業基本計画を打ち立てた、実行してみた、検証してみた、そして反省点は次の行動に変えていく、この基本的なことをやらなかったら、基本法は新たなものにならないと思います。

 ちゃんとこれまでの政策というのは検証してしかるべきだと思いますし、その検証の仕方が極めて私は不十分だと思いますけれども、坂本大臣、いかがですか。

坂本国務大臣 会計検査院の指摘は、目標年度十年の検証がやられていなかったということでありますけれども、食料・農業・農村基本計画では、その見直しを五年ごとに行ってまいりました。そういうことで、食料・農業・農村政策審議会の意見も聞きながら検証、見直しを行ってきたところであります。

 ですから、目標年度の十年後における達成状況の分析が不足していたわけですけれども、農林水産省としては、五年ごとにその見直しを行ってきた、そういう期間の違い、時間的な違い、そういうものがあるというふうに認識しております。

田村(貴)委員 農業基本計画で僅か四五%の食料自給率を掲げながら、ただの一度も実践されたことがなかった。目標を達成したことがなかった。なぜなのか。これまでの自由貿易協定、どう見直していくのか、輸入依存をどう変えていくのか、これが見えてきていないじゃないですか、一年間の検証にわたっても。そこを私たちは言っているんですよ。

 権利としての食料アクセスについても質問します。

 改正案二条では、「食料の安定供給の確保」とあったものを「食料安全保障の確保」に書き換え、「国民一人一人がこれを入手できる状態」という文言が追加されました。これは、国連食糧農業機関、FAOの食料安全保障の定義を導入したというふうに聞いております。

 FAOの定義は、全ての人が、いかなるときにも、活動的で健康的な生活に必要な食生活上のニーズと嗜好を満たすために、十分で安全かつ栄養ある食料を物理的、社会的及び経済的にも入手可能であるときに達成される状況とされています。その内容は、外務省資料で、一、供給面が十分な量か、二、アクセス面で、栄養ある食料を入手するため合法的、政治的、経済的、社会的な権利を持ち得るか、三、利用面で、安全で栄養価の高い食料を摂取できるか、四、安定面で、いつ何どきでも適切な食料を入手できる安定性があるかと、四つの要素を指摘しています。

 基本法案の食料安全保障の定義は、この四要素を盛り込んだと理解してよろしいでしょうか。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のとおり、基本法改正案における食料安全保障の定義は、国連食糧農業機関、FAOの定義を踏まえたものでございます。

 具体的には、適切な品質の食料を十分な量供給する、二つ目、全ての国民が栄養ある食料を入手できる、三点目として安全かつ栄養のある食料を摂取できる、四点目で、いつ何どきでも適切な食料を入手できる安定性があるという、四つの基準が設けられておりまして、本改正案におきましては、食料安全保障の定義に関しまして、安全で栄養のある食料を「良質な食料」と定義した上で、「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態」と定義したところでございまして、この四点を網羅しているというふうに考えております。

田村(貴)委員 第三回検証部会において、清原昭子福山市立大学教授は、いわゆる健康な食生活、主食、主菜、副菜を組み合わせた食事を一日二回以上、ほとんど毎日取っていると回答した世帯所得は六百万円以上が多いのに対して、明らかに二百万円未満の世帯で有意に低い、所得が低いと健康な食生活ができなくなっていると指摘しました。権利としての食料アクセスを保障する仕組みが必要だと清原先生は主張されましたけれども、これは非常に大事な指摘だと思います。

 そこで伺いますけれども、第二条の「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態」というのは、権利としての国民の食料アクセスを保障するということでよろしいでしょうか。

坂本国務大臣 我が国におきまして国民一人一人が食料を入手できる状態を確保するために、委員御指摘のとおり、低所得世帯の増加といった課題に対応する必要があるというふうに考えております。

 改正案の第十九条では、これらの課題に対応するため、経済的な状況その他の要因にかかわらず食料の円滑な入手が可能となるよう、必要な施策を講ずる旨を位置づけているところです。

 また、その具体的な施策といたしまして、食料の寄附を通じたフードバンクや子供食堂の取組について、地域の関係者が連携する体制づくりの支援などの環境整備を位置づけているところでございます。

 食料アクセスというのは、非常に、他省庁との連携も取っていかなければなりませんので、昨年六月より、合計八省庁で連携をしまして、関係省庁によります連絡会議というのを開催しながら、今後の食料アクセスに万全を期すということで備えているところでございます。

田村(貴)委員 よく分かりません。

 国民の食料アクセスは権利ですか。この法文は権利として書かれているんですか。

杉中政府参考人 基本法は、食料、農業、農村に関する基本理念と、そのための施策を定めるものでございます。当然、国の責務として、基本理念の実現のために必要な施策を行うというふうに規定をされておりますので、国として、こういった国民一人一人の食料アクセスというものの確保をするための施策を行うという責務を負っているというふうに御理解いただければと思います。

田村(貴)委員 責務と聞こえましたけれども、権利なんですか。もう一度お答えください。

杉中政府参考人 基本法という法律の性格上、関係者、消費者、国民等の権利を定めるような法律ではございませんけれども、基本理念の実現のために国及び関係者が行うべきような取組を示したものでございまして、この基本法の、国民一人一人の食料アクセスの関係におきましては、国がそういった、国民一人一人に食料を安定的に供給されるといったことを確保するための施策を行う、施策を行わなければならないということを規定したものというふうに考えております。

田村(貴)委員 先ほど、FAOの定義で、アクセス面で、栄養ある食料を入手するため合法的、政治的、経済的、社会的な権利、これを盛り込んだと言われるから、権利として明記しているんですかと聞いたら、そうではないと。ちゃんとしないといけないよ、基本法ですから。こういう言葉を入れているんだったら、これは国民の権利として分かるようにしないといけないと思います。

 これまで政府は、FAOが公開しているフード・インセキュリティー指標、つまり、深刻な栄養不足人口及びその比率などについての統計データをFAOに提供してきませんでした。何と、日本の栄養不足人口は、FAOが直接職員を派遣して調査している。FAOの職員が調査している。このことについて伺います。

 今後は、政府が調査を行い、FAOに提供するんですか。

坂本国務大臣 FAOによります食料安全保障に関する調査は、二〇一四年から、人々の食料不安の状況を国際比較可能な形で測定するものとして、FAOの事業として行われ、食料不安の経験尺度という指標として公表をされてきたものです。

 その後、二〇一七年に、SDGsの達成に向けた状況を測る指標の一つとして、このFAOの指標に沿った形で食料不安の経験尺度が盛り込まれ、各国が独自に指標を作成するか、あるいは、各国が独自に指標を作成しない場合は、引き続き、FAOが調査を行って公表するということになりました。

 この調査結果は、国際比較が可能なものとして、我が国も含め約百四十か国におきまして実施されていることや、我が国においては、これに該当する統計が国内に存在しないことで、FAOの調査結果をもって今公表をしているところであります。

 いずれにいたしましても、我が国の食料安全保障に関する状況の把握につきましては、今後、基本計画策定の論議の中で検討していく考えであります。貧困の指標とか、あるいは食料不安の指標とか、こういったものを、我々の国ではこれまでその指標を持っていなかったというようなことで、今後は、基本計画の策定の議論の中で、どのようなものにしていくかということを検討していくという考えであります。

田村(貴)委員 時間が来ました。もう終わりますけれども、FAOの提起に対して、政府が本気で実現しようというふうには伺えなかった。そして、食料自給率の向上についても、政府の決意が示されていない。これは問題だと思います。

 続きは、またあしたさせていただきます。終わります。

野中委員長 次に、長友慎治君。

長友委員 国民民主党の長友慎治です。

 坂本大臣が大臣所信の中で、「農業政策が大きな転換点に立っているとの自覚を持ち、食料安全保障改革元年として、基本法の改正と関連施策の実現に全力を尽くしてまいります。」このように所信の中で述べられております。

 そして、農水省も、これまでの議論でもありましたけれども、今が農政のターニングポイント、転換点を迎えているとの認識の下、現行の基本法の検証を始めたというふうに説明をいただいていると認識しております。

 つまり、これまでの農政から転換するための基本法の改正だというふうに受け止めているわけですけれども、今までの議論ともかぶる部分はあるかとは思うんですが、改めて大臣に説明をいただきたいのですが、転換する理由を具体的にお示しください。そして、どのような方向にかじを切ろうとしているのか、説明を求めます。

坂本国務大臣 気候変動によります食料生産の不安定化、これがまず深刻になってきております。そして、世界的な人口増加等に伴います食料争奪、これがますます激しくなっております。さらには、国際情勢の地政学上も含めた不安定化ということで、世界と我が国の食をめぐる情勢が大きく変化をしているというのが現状でございます。

 このような情勢の変化を踏まえまして、基本法が時代にふさわしいものになるようにということで、改正を行うところであります。

 具体的には、まず、食料安全保障の抜本的な強化に取り組んでまいります。輸入リスクの増大に対応しまして、食料の安定供給を確保するため、平時からの食料安全保障の対策を強化をいたします。現行基本法では、総量として必要な食料を確保できれば食料の安全保障は確保されるという考え方でありましたけれども、近年顕在化します食品アクセス問題等で、国民一人一人の食料安全保障の確保にも対応してまいるということでございます。

 それ以外にも、環境と調和の取れた産業への転換、それから、人口減少下における農業生産の維持と発展、農村のコミュニティー、こういったものも十分考えながら、一方の方で農地の集積、集約、そしてスマート農業の技術の導入、こういったものを図りながら、今後の少ない人数でも食料供給できる生産基盤というものを確立しなければいけないというふうに思っております。

 そういう意味で、農業政策が大きな転換点に立っているという自覚を持ち、食料・農業・農村基本法の改正案の成立に向けて、今、全力を尽くしているところでございます。

長友委員 大臣、ありがとうございます。

 私も、地元、現場を回っていて、今回の基本法は何で転換するのかということを聞かれますので、大臣にしっかり答弁いただきましたから、そのように現場でも説明はしていきたいと思います。

 先ほど、午前中に、渡辺創議員とのやり取りの中で、これまで過度な輸入依存にあったということを大臣もお認めになられました。なぜ過度な輸入に依存したのかということをまた更に改めて聞きたいんですが、それはまた別のときの議論にしたいと思います。

 輸入に依存している農産物の国内生産の振興及び円滑な流通ということが今回の基本法でも重要になってくると思いますが、原料を仕入れて加工するメーカーなどが国産農産物を積極的に活用できる環境整備ということを力強く推し進めていただきたいと思います。例えば、製粉施設等というものが小麦、大豆等には今まで以上に必要になってくると思うんですが、その支援を強化すべきということに関しての施策を伺いたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 我が国の食料安全保障の強化のためには、輸入依存の高い小麦、大豆の生産拡大など、国内の農業生産を増大していくことが不可欠でございますが、そのためにも、国産農産物に対する需要拡大、これが前提となります。

 令和五年度の補正予算におきまして、食品原材料調達リスク軽減対策事業ですとか、産地生産基盤パワーアップ事業を措置いたしました。これは、食品製造業者の国産原材料の調達また導入のための、委員御指摘ございましたけれども、製造ラインの増設ですとか機械施設の導入等を支援することとしているところでございます。

 加えて、先月この委員会でも御可決いただきました改正特定農産加工業経営改善臨時措置法、これによりまして、国際価格の水準が高止まりしている小麦、大豆を使用している農産加工業者を対象にしまして、国産農産物の利用等、原材料の調達安定化に向けた取組に対しましても、施設整備を含め、金融措置等で支援することとしているところでございます。

長友委員 特に小麦、大豆等について、補助対象となるものというものがある、例えば倉庫での保管料、それから産地の倉庫から製粉、製麦企業の倉庫への運搬費、また産地の倉庫からの運搬にかかる荷役料、こういうものもちゃんと手当てをしていただいているということと、またさらに、小麦、大豆の製粉機の補助事業もある、製粉機そのものですね。

 ということを、私の地元でそういう話もすると、知らなかったという方が結構いるんですね。作りたいというんです、大豆、小麦。実際、作ってもらっているんです。ただ、それを製粉してくれる場所がないという地域、エリアも実際私の地元でありますので、こういう事業をしっかり活用していただいて、小麦、大豆の生産を増やしていきたいというふうに私も思いますので、しっかりその点、アピールをしていただきたいと思います。

 今日は四月二日で、昨日、四月一日から、トラックドライバーの残業規制が本格的にスタートをいたしました。基本法では、食料の円滑な入手の確保が可能となる施策の一例としまして、食料の輸送手段の確保の推進を掲げています。農産物、食品流通はトラックによる輸送が九七%を占めていますが、トラックを含む自動車運送業は人手不足が深刻化しているところです。農産物、食品は、物流事業者の負担が多い物品と言われています。特に、生鮮食品の輸送では、運行管理が難しく、産地が消費地から遠く、長距離輸送が多いという点がございます。

 物流の二〇二四年問題は政府全体で対応していく課題ではありますけれども、農産物、食品の輸送に係る課題について、どのような取組を進めていくのか、また他省庁との連携をどのように強化するのか、これは大臣に伺いたいと思います。

坂本国務大臣 物流の二〇二四年問題につきましては、荷主としての位置づけにあります農林水産業としては非常に大きな問題であります。物流事業者を所管する国土交通省、そして荷主事業者を所管する農林水産省、経済産業省を中心に、昨年六月に物流革新に向けた政策パッケージというのを策定し、関係省庁が一体となって物流革新に向けた取組を現在進めているところであります。

 今国会には、政策パッケージに基づきまして、物流業務総合効率化法等の改正案が提出されておりますけれども、同法案では、荷主、物流事業者の双方に対し、物流効率化の努力義務を課すとともに、一定以上の取引を行う荷主、物流事業者には、更に中長期計画の策定を義務づけるなどとしておりまして、国土交通省等と連携をしまして、物流の効率化を進めることにしております。

 他方、現場ではコスト負担を含めて様々な問題が生じますので、農林水産省といたしましては、昨年十二月に、私を本部長といたしまして、農林水産省物流対策本部を設置をいたしました。その中で、現場の課題、これは例えば共同配送をしよう、あるいは標準のパレットを作ろうというようなことでありますけれども、そういった現場の課題解決に具体的に着手を今しているところでございます。

 これまでのところ、農業団体それから食品産業団体のほか、トラック、鉄道、海運といった物流団体の協力も得まして、官民合同タスクフォースを設置をいたしまして、関係者が現場に入って問題解決に当たる取組を開始したところであります。今後とも、産地に十分配慮した取組というものを進めてまいりたいと思っております。

長友委員 農林水産省として、大臣を対策本部長にした対応もしていただいているということでございます。

 私が先日、物効法についての質疑をしようとして国交省、関係省庁との議論をさせてもらったときに、ちゃんと連携は取っていただいていると思うんですね、思うんですけれども、この問題は農水省じゃないのというような国交省からの発言だったり、農水省としても、農水省の範囲でやっていくけれどもそれは国交省とみたいな、縦割りなのかお見合いなのか分かりませんけれども、そういう場面に出くわしましたので、是非そこは、全ての政府が連携してやっていく、いわゆる農水省としては農水省の持ち場を是非リードしていただきたいなというふうに思いますので、そこはお願いしたいと思います。

 続いて、都市の問題について伺いたいと思います。

 農村人口の減少によりまして集落機能の低下が懸念される地域においても農業生産活動が維持されるよう、農業以外の産業との連携の強化、農村における生活利便性の向上を通じて、都市から農村への移住、都市と農村の二地域居住、地域内でのビジネスにおけるイノベーションの創造等によって農村と関係を持つことにより、地域のコミュニティー機能を集約的に維持することが今回の基本法の改正に盛り込まれていますが、農水省として、関係人口の創出、さらに、二地域居住ができる環境整備にどのように取り組むのか、施策を伺います。

武村副大臣 お答えいたします。

 農村地域におきましては、人口の減少、高齢化が急激に進行しておりまして、地域コミュニティーを維持するために、委員御指摘のとおり、二地域居住の推進などにより農村関係人口を創出、拡大し、多様な人材を呼び込むことが重要であるというふうに考えております。

 このため、農林水産省では、農業への関心を高める農業体験活動や農泊等の取組の推進、また、農村地域の所得の向上や雇用機会の確保につながる農山漁村発イノベーションの推進、さらには、地域で支え合い、農用地保全にもつながる村づくりを推進する農村RMOの形成などにより農村関係人口を創出、拡大する取組を支援しているところであります。

 これらに加えまして、国交省を始めとする関係府省と連携をしながら、ワーケーションの受入れに向けた環境整備や定住、交流を促進するための施設整備などを支援し、二地域居住を一層推進してまいりたいと考えております。

長友委員 農村の問題、非常に現場では厳しい意見が聞かれます。私の地元でも、私の選挙区は村が三つあるんですけれども、人口の減少に歯止めがかからないんですね。その中において、二地域居住を進めていただけるということは本当に希望でもありますし、村落の維持、そして持続可能な集落にしていくために期待をしておりますので、是非力を入れて取り組んでいただきたいと思うんです。

 その一方で、やはり厳しい現実を目の当たりにします。人口減や超高齢化社会の到来を前に、農業法人のことなんですけれども、農業法人の設立を二十年以上前に進めて農地を集積してきたところで、まとまった面積の耕地が突然休耕地になるような事態が起きております。高齢化による法人の解散ということが選択肢として選ばれるような場所があるわけですけれども、この地区の農地を委託する集落型の法人を二十年前に設立した人たちというのは、当時五十代ぐらいなんですね。その方々が七十代となって、もう続けていくのは難しいな、こういう話を聞くわけですね。

 そうした場合、多面的機能支払交付金というものをどう維持していくのかということが議論になってくるわけですけれども、地域に人がいなくなる中で、どのように多面的機能支払交付金を運営していくのか、維持していくのか、これについて見解を伺いたいと思います。

舞立大臣政務官 農地等の保全管理活動を支援する多面的機能支払いは、人口減少、高齢化によりまして、共同活動や事務手続を中心的に担う方の減少などに伴う組織の弱体化や廃止等が課題となっているところでございます。

 このため、活動組織の広域化を図りつつ、県や市町村等の支援により、外部団体等とのマッチング、多様な組織や非農業者の参画等を推進すること等が必要と考えております。

 こうした取組を通じ、また、全国でも参考となる事例紹介等も行いながら、各地域で共同活動が継続できる体制づくりに努めてまいりたいと考えております。

長友委員 広域化、それから外部団体とのマッチングでということでお話があるんですけれども、また私の地元で恐縮ですけれども、宮崎県は中山間地域が県土の約九割を占めます。私の選挙区だと九割五分ぐらいになるんですけれども。そこに約四割の県民が暮らす生活の場となっているわけですね。農作物を作る土地が狭い地域、当然御承知のとおりなんですけれども、地理的条件や生産や経済的条件が不利な地域が多くて、急速な人口減少、少子高齢化の進行により、農地を維持する環境が厳しさを増している。その中において、広域化とか外部団体とのマッチングが果たしてうまく機能するのかというのが現場としての感覚なんですね。

 省庁としては、そういう方針で、うまくいっている場所もありますよということを御説明されますし、私もそういう事実は分かってはいるんですけれども、果たして本当にそれが全国津々浦々で機能するかというと、頼みたいけれども頼めないというような現実がやはりリアルだと思いますので、是非そういう地域にも目を配っていただきたいなというふうに思いますので、お願いをしておきたいと思います。

 次の質問ですが、三月二十六日の本会議で本案の趣旨説明がありましたが、その際の質疑で、私の方が地産地消が大切だとただしましたところ、岸田総理は、地場産物を購入できる直売所の整備や、学校給食における生産現場との連携等への支援を通じて、消費者と生産者がつながる地産地消の取組を推進してまいりますと答弁をいただいたわけでございます。

 消費者と生産者がつながる地産地消の取組を推進するということなんですが、どのような施策を行うのか、伺います。

長井政府参考人 お答えいたします。

 地産地消は地域で生産された農林水産物をその地域で消費する取組でありまして、消費者にとりましては、生産者との顔が見える関係が築け、安心して地域の新鮮な農林水産物を消費することができる、また、生産者にとりましては、消費者ニーズに対応した生産が展開できるなど、消費者と生産者の結びつきの強化につながるものであります。

 このため、農林水産省といたしましては、給食現場と生産現場との間の意見を調整する地産地消コーディネーターの派遣でありますとか、農山漁村の活性化や、六次産業化等に取り組む場合に必要となります直売所の施設整備などの支援を行いまして、地産地消に取り組んでまいりたいと考えております。

長友委員 地産地消に取り組んでいただけるということで、実は次の質問に関わってくる話なんです。食と農の教育機会についてという質問になりますけれども、食育基本法に基づきまして、政府は、二〇二五年までの五年間の取組方針としまして、第四次食育推進基本計画を定めています。中間年に当たる二〇二三年度の進捗状況を農水省が取りまとめましたけれども、その結果、食育の推進に向けて政府が二〇二五年までの達成を目指す二十四の目標のうち十一の目標で、設置時よりも数値が悪化したという結果が出ました。特に、産地や生産者を意識して農林水産物・食品を選ぶ割合が、二〇二三年度で六七・四%と、二〇二〇年度に比べて六・一ポイント低下をしている事実が明らかになったんです。

 物価高が食育推進にも影を落としているという分析もありますけれども、小学校、中学校、高校など学校の現場での食育推進の強化や、行政、民間事業者等による幅広い食育活動の展開などに重点的に取り組まないと、この目標達成は難しいんじゃないかと私は思っています。

 そこで、農水省と文科省にも見解を伺いますが、まずは文科省から、文科省の立場として食育にどのように取り組むか、見解を伺いたいと思います。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 子供たちに対しまして、食に関する正しい理解や適切な判断力、望ましい食習慣を身につけさせるよう、学校におきまして食育を推進するということは非常に重要でございます。

 また、食育の推進に当たりまして、学校給食において地場産物を活用するということは、地産地消の推進はもとより、地域の食文化、産業への理解や、生産者への感謝の気持ちも育むなど、子供たちの食に関する理解を深めるために有効である、このように考えてございます。

 この点、学校給食における地場産物の活用割合につきましては、令和四年度現在で全国平均五六・五%というふうになってございますけれども、ただいま御指摘ございました第四次食育推進基本計画におきましては、令和七年度における学校給食における地場産物の使用割合が令和元年度から維持向上した都道府県の割合が九〇%以上となるということを目標として定めているところでございます。

 文部科学省といたしましては、今後とも、地場産物の活用に関しまして、学校現場と生産者等をつなぐ仕組みづくりを担うコーディネーターの配置等に対する支援でございますとか、農林水産省と連携をした活用事例の発信など、学校における地場産物の活用促進、そして食育の推進に取り組んでまいりたいと存じます。

安岡政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省では、現在、第四次食育推進基本計画の取組状況のフォローアップを行っているところでございます。委員御指摘があったとおりで、産地や生産者を意識して農林水産物・食品を選ぶ国民の割合などの目標において数値が低下していたり、さらには伸び悩みなどが課題となっているところでございます。

 こうした課題を踏まえて、今後、重点的にどのようなことに取り組むべきかということを取りまとめをしているところでございます。

 例えば、一つとしては、今ございましたけれども、学校における食育の強化などに加えて、学校を離れた、今度は消費者である大人を対象とした食育などを進めるということで、食品企業、さらには小売業者、生産者など、民間事業者による幅広い食育活動を展開していく。さらには、農林漁業体験を始めとした農林水産業への理解醸成の取組を強化するといったことが必要かというふうに考えております。

 こうしたことを踏まえて、農林水産省では、令和六年度から、地域の食育を支援する予算の中で、農林漁業体験を提供する取組を優先的に支援するほか、食品事業者などの民間企業による食育などの促進などを進めているところでございまして、関係省庁とも連携して食育の一層の推進を図ってまいりたいと思っております。

長友委員 国産の地場産品、地産地消のものを選ばない国民も、減っているということもそうですし、まず、食育に関心がないと答えている方々もやはり増えているんですね。その理由が、食費を安くすることの方が重要だとか、仕事や趣味が忙しくてそういうことに関心を持つ余裕がないという人たちが三〇%以上いる。

 今回の基本法で食料安全保障ということをうたっている中において、この食育ということを力を入れていかなければ、国産のものというのは消費が増えないですよ。ですから、私としては、今回の基本法にも基本的施策として是非食育を盛り込んでいただきたいということを強く申し上げまして、私の質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

野中委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 大臣も、あともう少し、十五分だけなので、もう一踏ん張り、よろしくお願いしたいと思います。

 まず、私も、食料安全保障、これは今回の基本法の一番の目玉だというふうに思います。その定義が、私が今までの審議を聞いている中で、ちょっと広げ過ぎかなというふうに思います。

 食料安全保障というのは、現行の基本法で言うと十九条の不測の事態に対するものであって、これは、輸入の途絶とか、国内の農作物が何らかの大災害とかあるいは汚染されるとか、こういう本当に非常事態に応じたときの食料安全保障。

 それから、もちろん、不測のときのために、平時から国内の食料の供給基盤というものを強化しないといけないと。それもこの食料安全保障に入っている、言うならば、平時の食料安全保障みたいな感じで入っていると。

 三つ目は、先ほど田村先生からも話がありましたが、格差、これを埋める。これはほとんど福祉政策なんですよね。これも食料安全保障に入っていると。

 それでいいと皆さんお考えなのかもしれませんけれども、例えば、私なんかが思うのは、今回の改正案の第二条第一項において、食料安全保障とは、「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態」という定義であります。

 これは、平時の安全保障だったら良質な食料ということは非常に重要だというふうに思います。現行のいわゆる食料の安定供給でも、そういう良質という言葉が入っております。

 しかし、極限状態で、輸入が途絶して、言うもはばかられますけれども、戦争状態になったときとか、みんな核シェルターの中にいるときとか、こういったときに果たして良質な食料というものを確保しなければいけないのか、それができなければ食料安全保障じゃないのかというと、ちょっと首をかしげざるを得ないというふうに思います。

 これについて、大臣でもどなたでも結構ですけれども、お考えを伺いたいと思います。

坂本国務大臣 基本法改正案における食料安全保障の定義は、FAOの定義も踏まえたものであります。

 委員もおっしゃいました、適切な品質の食料を十分な形で供給すること、全ての国民が栄養ある食料を入手できること、そして、安全かつ栄養のある食料を摂取できるというようなことが求められておりまして、良質な食料の供給が安定的に確保されることも重要視されることを踏まえて、改正案においては良質な食料ということを位置づけたわけであります。

 それで、今議員御指摘の不測時にはどうなのかということでありますが、熱量の供給などを優先いたしまして食料の供給が必要とされることもあるというふうに考えられます。それは考えられます。熱量さえしっかり取っていればいいんじゃないかと。しかし、この場合においても、やはり栄養価が高く安全な食料、すなわち良質な食料を供給するということはやはり国の役割であるというふうに思っておりますので、この国としての責任をしっかり果たすためにも、良質のというような文言で、皆さん方に供給できるような体制を取りたいということでございます。

北神委員 いわゆる努力をされる、輸入が途絶して大変な状態でもできるだけ良質な食料を提供するというお考えだというふうに思います。

 一応、この話、もう少し言うと、現行の基本法について、いわゆる法律の解釈をしている、皆さんのお墨つきだと思います、農林法規解説全集農政編というやつを見ますと、これは前の食料の安定供給という話なんですが、食料は、人間の生命の維持に欠くことのできないものであり、人間の生存の基礎として最低限の水準の確保が常に要請されていると。ここですね。さらに、現代においては、食料は必要最低限あれば足りるというものではなく、健康で充実した生活の基礎として、量、質の両面において一定の水準にあることが求められると。

 ですから、これはちょっと資料はないのであれなんですけれども、要するに、良質というのは多分ここから来ていると思うんです。

 一方で、農林水産省のホームページをさっき見ていたら、そこに食料の安全保障とは何ぞやというところが書いてあるんです。そこには、凶作や輸入の途絶等の不測の事態が生じた場合にも、国民が最低限度必要とする食料の供給を確保しなければならないと。ここは、いわゆる最低限度必要とすると。だから、これが本当の多分、私は食料安全保障、あえて言うと、狭義の食料安全保障の目的ではないかというふうに思います。

 これは、こうなっている理由は、やはり例えば国民の必要最低限度、非常事態における食料を提供するときには、場合によっては良質でない、良質を目指すのはいいんですけれども、平時のいわゆる良質な食料でないものを例えば生産をするとか、あるいは備蓄をするとか、こういった発想もあり得るんじゃないかというふうに思いますけれども、これについて、もしお答えできるんだったら、別に質問通告していなかったんですが、お答えできるんだったらしてください。

杉中政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほどの大臣の御答弁とほぼ重なりますけれども、議員御指摘のように、不測時におきましては、国民が最低限度必要とする食料の供給を確保するということが求められるということも想定しなければならないと考えております。

 国民が必要とするというものがその状況によって変わってくると思いますけれども、こういった事態におきましては、栄養価が高いとか、生存のために必要なビタミン等を確保するといったことが強く求められるようになります。良質な食料の中には、栄養価が高いということと、あと、安全性という二つの大きな要素があると思いますけれども、このような事態においても、国民に栄養価の高いものを供給すると。あと、当然、安全性の確保されたものを供給しなければならないというところは変わらないと思いますので、良質という意味は、あるいは環境下でちょっと解釈が変わるということはあると思いますけれども、良質な食料を供給するという国の役割は変わらないというふうに考えています。

北神委員 ありがとうございます。

 私の資料の二番目にありますけれども、これはいわゆる国連食糧農業機関の食料安全保障の定義なんですけれども、今、杉中さんがおっしゃったのは、十分で安全かつ栄養ある食料、これを、いわばこの基本法では良質な食料に置き換えているということなんですが、これも言いますと、私もこの定義をちょっと勉強させてもらったんですが、これは四つの要素でできていると。量的な充足、十分な量が確保できなければいけない。あと入手可能、入手しないといけない。それから安定性、いつでも入手できないといけない。四つ目に適切な利用と。

 その中にこの安全かつ栄養ある食料というのが入って、これは実は、良質な食料を手に入れるというよりは、衛生条件とか、こういったものを指していると。

 何でかというと、このFAOの定義というのは、そもそも発展途上国に対して、どんな発展途上国で貧しい人たちでも、基本的人権として食料は確保すべきだ、だから、国連みたいなところが、そういったところに一種の福祉政策として食料というものを提供するという意味で、そこで我々が、皆さんが言っているような良質な食料まで、それは大臣の答弁でもう全部カバーされていますけれども、それは努力して良質にこしたことはないんでしょうけれども、そこのそごがあるということだけ指摘をしたいというふうに思います。

 この神学論争はここで終わりたいと思います。あした、我が会派の福島伸享というのは私よりも詳しくて、目力がもっと際立っておりますので、彼にお任せをしたいというふうに思います。

 狭義の安全保障において、ここに第二条第四項の方で海外の輸出の話がある。これは先ほども皆さん違和感があるという意見があったんですが、唯一、違和感がないのであれば、穀物輸出、これはふだんからたくさん生産をして、国内のみならず海外にまで供給をしている。いざというときにこの輸出を止めて、それを国内に向けるということは十分あり得るというふうに思います。

 ただ、穀物といっても、麦とか大豆とか、これはもうコストが海外に比べて三倍ぐらい幅があると。だから、やはりお米しかないというふうに思うんですが、それでよいのかということが一点と、時間がないのでもう次の質問に行きますけれども、お米しかないと私は思うんですが、その場合、今、いわゆる環境の負荷云々という話があります。

 この資料にもございますように、三番目に、これは資源エネルギー庁のホームページから取ったものですが、今、いわゆる温室効果ガスをできるだけ抑えるというところで、国際的に、単に自社が直接排出をする温室効果ガスだけじゃなく、間接的に、このスコープ3という、一番左の、上流のところでありますけれども、一の購入した製品、原材料など、こういったところもできるだけ温室効果ガスを抑えることが大事である、これが国際的な標準になっていると。

 確かに、私の地元南丹市というところで、農家の方が商社とかに、この方はお米を輸出しているんですが、やはりこういうことをすごく今、日本の商社も求め始めているということですので、やはりお米の輸出をどんどんする、今はほとんど、お米を輸出していますけれども、七割がお酒ですよね、日本酒ですから。やはりこういったことを農家の皆さんにもっと広めてほしいと。というのは、なかなかこういう勉強ができない、だから農林水産省がBUZZMAFFとかああいう動画でどんどん宣伝して教えてほしいと。

 あと、もう一つは多収米ですね。多収米だったら結構東南アジアとかああいったところに、吉野家とかああいったところにも結構需要があるというふうにその現場の農家の人は言っていますので、こういったことをどんどん宣伝すべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 まず、穀物なんですけれども、麦、大豆等ありますけれども、御指摘のとおり、我が国で輸出拡大に取り組めるのはお米というふうに考えております。

 ただ、お米でありましても、国際競争力を有していたり、あるいは農家手取りがある程度確保できないと、なかなか輸出が続いていかないという面もございます。このため、多収米の導入ですとか、作期を分散して生産コストを低減しているような取組というものも、各産地の中で見られ始めております。

 今、全国で三十ほどモデル輸出産地を農林水産省は育成しているんですが、その中にも、にじのきらめき等の多収米の導入に取り組む産地も発生してきております。

 また、環境負荷との関係で申しますと、水田からのメタンの発生を抑制する中干しの延長ですとか、秋に稲わらなどをすき込む秋耕というのも環境保全のためにもなりますし、このモデルの輸出の産地においてもこういった取組が進んでいるところもございます。

 そういった、生産性の向上ですとかあるいは環境負荷の低減、これも輸出において一つの特徴づけるようなやり方になっていますので、各地においての説明会の中でも、こういったことについても十分周知していきたいというふうに考えております。

北神委員 是非よろしくお願いしたいというふうに思います。

 最後の質問ですけれども、第二十四条第一項で、これは私が言うほんまもんの食料の安全保障ですが、不測時における措置として、備蓄する食料の供給を行うこととなっている。先ほども御質問がありましたけれども、今のお米の備蓄というのは大体百万トンで、二か月ぐらいですかね、国民を食べさせる期間。

 この私の資料を御覧いただきますと、四番目ですが、裏側ですが、スイスなんかだったら小麦、米を四か月分、フィンランド九か月分、中国なんか、本当かどうかは分からぬけれども、十四億人の民を一年以上お米なんかでは食べさせる備蓄をしている。

 こういう水準、日本は本当に今の水準で大丈夫なのか、これを最後にお聞きしたいと思います。

野中委員長 坂本大臣、答弁は簡潔に願います。

坂本国務大臣 はい。

 政府備蓄米につきましては、十年に一度の不作、これは作況指数九二というふうに仮定をいたしまして、そういう事態があっても不足分を補って国産米で一年分、十分に供給できる水準として、百万トン程度を備蓄をいたしております。

 現時点ではこの水準で十分というふうに認識をしております。

 ただ、食料供給困難事態対策法の基本方針におきまして、米を含む重要な食料の備蓄の方針を定めることも検討をしておりますので、これからも様々なことを考えてまいりたいというふうに思っております。

北神委員 どうもありがとうございました。

野中委員長 次回は、明三日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十九分散会


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