衆議院

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第6号 令和6年4月3日(水曜日)

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令和六年四月三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 野中  厚君

   理事 伊東 良孝君 理事 小島 敏文君

   理事 古川  康君 理事 山口  壯君

   理事 近藤 和也君 理事 野間  健君

   理事 池畑浩太朗君 理事 角田 秀穂君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      上田 英俊君    江藤  拓君

      加藤 竜祥君    神田 憲次君

      小寺 裕雄君    高鳥 修一君

      橘 慶一郎君    中川 郁子君

      西野 太亮君    細田 健一君

      堀井  学君    宮下 一郎君

      保岡 宏武君    簗  和生君

      山口  晋君    石川 香織君

      梅谷  守君    金子 恵美君

      神谷  裕君    緑川 貴士君

      山田 勝彦君    渡辺  創君

      一谷勇一郎君    小野 泰輔君

      掘井 健智君    稲津  久君

      山崎 正恭君    田村 貴昭君

      長友 慎治君    北神 圭朗君

      福島 伸享君

    …………………………………

   農林水産大臣       坂本 哲志君

   農林水産副大臣      武村 展英君

   農林水産大臣政務官    舞立 昇治君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           森  孝之君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         杉中  淳君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         宮浦 浩司君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)

   (農林水産技術会議事務局長)           川合 豊彦君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房統計部長)          山田 英也君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           安岡 澄人君

   政府参考人

   (農林水産省輸出・国際局長)           水野 政義君

   政府参考人

   (農林水産省農産局長)  平形 雄策君

   政府参考人

   (農林水産省畜産局長)  渡邉 洋一君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  村井 正親君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            長井 俊彦君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 奥山 祐矢君

   農林水産委員会専門員   飯野 伸夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月三日

 辞任         補欠選任

  山田 勝彦君     石川 香織君

  掘井 健智君     小野 泰輔君

  北神 圭朗君     福島 伸享君

同日

 辞任         補欠選任

  石川 香織君     山田 勝彦君

  小野 泰輔君     掘井 健智君

  福島 伸享君     北神 圭朗君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案(内閣提出第二六号)


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     ――――◇―――――

野中委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官杉中淳君、大臣官房総括審議官宮浦浩司君、大臣官房技術総括審議官・農林水産技術会議事務局長川合豊彦君、大臣官房統計部長山田英也君、消費・安全局長安岡澄人君、輸出・国際局長水野政義君、農産局長平形雄策君、畜産局長渡邉洋一君、経営局長村井正親君、農村振興局長長井俊彦君、文部科学省大臣官房審議官森孝之君、環境省大臣官房審議官奥山祐矢君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

野中委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。小島敏文君。

小島委員 おはようございます。自民党の小島敏文でございます。

 お時間をいただきまして、誠にありがとうございます。

 この農業基本法案につきましては、我々が心血を注いで作り上げた法案であります。これを一日も早く成立させまして、食料の安定供給と、農業者、関連事業者への支援を進めていくということが重要であるというふうに考えております。

 これらの法案が狙いとしたところを、幾つか焦点を絞りまして質問したいというふうに考えます。坂本大臣の御答弁をよろしくお願い申し上げます。

 まず最初に、基本法改正の理念が我々の考えとぶれてはいないかについてお伺いをいたしたいと思います。

 御承知のように、農林水産業には、国民食料の安定供給という役割と、地域社会の健全な維持発展に資するという二つの重要な使命を帯びております。この二つの役割は相互に関連しており、どちらもおろそかにできない車の両輪であろうと思っています。

 私は、農政とは、産業としての農業と、地域社会としての農村づくりを一体に推し進める必要があると考えております。そういった認識が本法案にきっちりと盛り込まれているのか、坂本大臣の見解をお伺いします。さらに、本法案の成立の暁には、農林水産予算が大幅に前進する元年にしたい、このように期待をしているところでございます。大臣の覚悟のほどをよろしくお願いいたします。

坂本国務大臣 農業を持続的に発展させるとともに、農業を下支えいたします農村の活力を守っていくためには、委員御指摘のとおり、農業を成長産業とする産業政策と、そして農村を活性化させるための地域政策、その双方を展開していくことが重要であるというふうに考えております。

 食料・農業・農村基本法改正案におきましても、基本理念として、農業の持続的な発展と農村の振興を位置づけております。これらの規定では、農村のなりわいであります農業の発展や、農業の持続的な発展の基盤たる役割を果たす農村の振興を図ることにしておりまして、やはり車の両輪としてこれからやっていかなければいけないというふうに思います。

 私自身も純粋な農村部に育ちまして、まさに地域農業一本やりのところでありまして、閉鎖的な社会で、それを一刻も早く抜け出したいというふうに思っておりましたが、最近は、法人化をいたしまして、規模拡大もいたしまして、非常に開かれた産業農業になっています。それでいて農村のコミュニティーというのは崩れておりませんので、そういう車の両輪というのがやはり必要であるというふうに思っております。

 また、基本法の改正案が成立をした暁には、政府といたしましては、これに基づきまして、食料・農業・農村基本計画を策定いたします。その中で、基本法に定めます各般の施策の具体化を行います。その上で、基本計画に定める施策を的確に着実に進めていくために、しっかりとした必要な予算を確保してまいりたいというふうに考えております。

小島委員 次に、食料安全保障と食料自給率の問題についてお伺いいたします。

 国民の食料安全保障にとって重要な課題は、一言で、食料自給率の向上にあると言えます。食料自給力を重視するという御意見もございますけれども、食料自給力は各品目によって重要な指標とは言えますが、やはり、私は、国際比較が可能な、FAO、国連食糧農業機関がルールとしております、オリジナルカロリーベースでの食料自給率を基本にすべきだというふうに考えております。

 このオリジナルカロリーベースというのは、食料として用いられる肉、卵、魚などを生産するために必要な飼料をカロリーとして表した量というふうに私は理解していますけれども、そこで問題でございますけれども、我が国の場合は、国内の畜産、酪農の原料に使用されている飼料穀物などの多くが輸入であります。このことが自給率の足を引っ張っておるというふうに考えております。

 これは今に始まったことではなくて、食生活が高度化、多様化して米離れが進んだ今から四十年前の八〇年代からの問題でありまして、依然として、畜産、酪農経営の構造、日本農業の体質は変わっておりません。

 こうした中、過度に輸入に依存している飼料穀物についてできるだけ国内で生産することは、畜産、酪農の安定という面からも重要であります。耕畜連携を始め、更に思い切って進めるためには何が必要であるのか、大臣のお考えをお伺いいたします。

坂本国務大臣 我が国では、飼料穀物を輸入に大きく依存していますが、耕地面積が限られていますために、飼料穀物の生産を大きく拡大し、自給率を大幅に引き上げることは、現実的に困難な面がございます。

 ただ、耕作放棄地の拡大が見られる状況を踏まえれば、労働時間が短くて済む飼料作物、これはトウモロコシとか牧草、労働力が五分の一以下で済みます。そういった飼料作物の特色を生かして、人手が不足する中でも、農地の活用を進めていくことが重要であると考えております。

 このため、畜産農家と飼料作物を生産する耕種農家との連携、いわゆる耕畜連携、そして、コントラクターなど飼料生産組織の運営強化などの取組を支援しているところでありまして、国産飼料の生産、利用の拡大を推進していかなければいけないというふうに思っております。

 また、現在行われております地域計画の策定に向けた話合いにおきまして、飼料作物生産についてもしっかりと位置づけられるように促してまいりたいというふうに思っております。

小島委員 次に、農産物の輸出促進についてお伺いをいたしたいと思います。

 第二次安倍晋三政権以降、農林水産業・地域の活力創造本部が設置されまして、農業改革や農業団体改革が行われてまいりました。その中で、農林水産物の輸出目標を、二〇二五年までに二兆円、二〇三〇年までに五兆円といった方針が取られてきました。その目標を達成するためには、私はやはり、いろいろな農林水産物があるわけですけれども、米ではないか、米がキーポイントを握っているというふうに思っているところでございます。

 実は、昭和五十六年八月に、時の亀岡高夫農林水産大臣が中国の雲南省に訪問されました。そのときに、雲南省にある米を、これが日本のインディカ米のルーツということを実は確認されたということでございます。実は、農業新聞に記事が載っておるんです。そういうことは、言い換えれば、日本のインディカ米というのは、中国と食味が合うのではないかという……(発言する者あり)失礼しました、ジャポニカ米と食味が合うんじゃないかというふうに思っておりまして、ここをしっかりと考えなくては、これからの、さっき申し上げたように二兆円、五兆円の輸出が達成できるかということで、そんなことを思うわけですけれども。

 実は、これまで政府・与党において、例えば中国への米の輸出に関して、いわゆる輸出港が四か所整備されました。また、薫蒸処理施設が五か所整備されておりますけれども、今現在、その効果はどのようになっておるのかということを、まず一点、お伺いいたします。

 さらに、やはり、私は、もっと政府として高いレベルの取組が必要ではないかというふうに考えております。そこで、坂本大臣、大臣自ら中国へ赴かれて、こうした米のセールスということを積極的に取り組まれるということも肝要ではないかというふうに思っております。今後、こうした、亀岡元大臣もわざわざ中国へ行ってそういうルーツを調べてこられて、そのルーツで実はジャポニカ米があったということですから、そこらのお考えをよろしくお願いいたします。

坂本国務大臣 輸出拡大実行戦略では、米それからパック御飯、米粉及び米粉製品の二〇二五年輸出目標は、百二十五億円を掲げております。

 中国は輸出先の重点国の一つとして位置づけております。中国向けに精米を輸出するためには、中国側に認められた指定精米工場での精米及び登録薫蒸倉庫での薫蒸処理が必要となっています。

 そして、二〇〇八年の輸出解禁時には、中国向けの指定精米工場は一か所、登録薫蒸倉庫は二か所でしたが、歴代政府・与党の働きかけによりまして、二〇一八年に追加され、現在はそれぞれ三か所、五か所となっております。当時、北海道に李克強首相が来られた、それをきっかけに広がったというふうに理解をいたしております。

 これによりまして、中国向けの輸出実績については、精米工場や薫蒸倉庫が追加される前の二〇一七年の一億円弱から、二〇一九年には三・六億円に増加をしたところです。

 ただ、二〇二〇年以降は、新型コロナウイルス感染症の影響、それから、その後の中国経済の後退等によりまして輸出が伸び悩んでおりまして、昨年、二〇二三年の輸出実績は一・七兆円というふうになっております。

 中国は、今委員御指摘のように、日本と同じ短粒種、ジャポニカ米の大きな市場であり、米の輸出先としてはとても重要であるというふうに思っております。

 あらゆる機会を捉え、中国向けの精米工場等の追加や規制緩和の働きかけなど、中国向けの米の輸出の促進を図っていく考えです。

 具体的な対応につきましては、相手国との関係国もありまして、私自身のことにつきましてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。

小島委員 どうぞ大臣、しっかり中国へ出向いていただきまして、営業の方、よろしくお願いしたい、このように思っております。

 やはり国内の人口が減少していくわけですから、そういう中で、やはり、農業の方々が安心して穀物等、作物を作って海外へ持っていけるというふうな体制をしっかりとつくっていただきたい、このように思っております。

 次に、中山間地域の農業への支援と、農山村の活性化についてお伺いをいたします。

 御承知のように、中山間地域の農業生産額は、国全体で四割を占めているということで、極めて大きな比率を占めていますけれども、中山間地域には、しかし、条件不利地域が多いことから、平場以上にてこ入れ策を講じなければ、我が国の農業、農村は、総じて立ち行かなくなる懸念があると考えております。

 中山間地域農業をどう活性化するかは、日本農業全体においても重要な問題でもあります。中山間地域における高齢少子化は、都市部に比べて二十年近く早く進んでいると言われていますけれども、基本法の改正を節目に、新たな決意で臨まなければならないと考えます。

 鳥獣被害の深刻化、そして集落の崩壊危機に対して、どう手を打っていくのか、基本法改正で、この位置づけを政府としてどういうふうに考えておられるのか、方針をお伺いいたします。

坂本国務大臣 答弁する前に、先ほど私は、二〇二三年の米の輸出額一・七兆円と言ったようでありますけれども、一・七億円に減少しております。訂正して、おわび申し上げたいと思います。

 基本法制定後、農村地域では、委員おっしゃるとおりに、人口減少、高齢化が急速に進みました。今後、特に中山間地域を中心に、地域コミュニティーの維持等が困難になる集落が増加することが懸念をされております。

 このような情勢を踏まえまして、基本法の改正案では、基本理念に、地域社会が維持されるよう、農村の振興が図られなければならない旨を追記するとともに、中山間地域の振興につきましては、これまでの農業の振興等に加えまして、改正案に、地域社会の維持に資する生活の利便性の確保を新たに位置づけたところであります。

 これを踏まえまして、集落の維持機能に向けましては、地域資源を活用して所得や雇用機会を確保する農山漁村発のイノベーションの推進、それから、複数の集落協定や自治会などが連携し、農地の保全や生活を支える農村RMO形成、鳥獣被害防止対策やジビエ利用の取組等に対する支援を強化することというふうにしておりまして、今後とも、中山間地域の活性化に向けて、しっかりと支援してまいりたいと思います。

 ちなみに、中山間地域の販売農家数、農業産出額では、農家数では、二〇〇〇年と二〇二〇年を比べますと、半減をしております。ただ、農業の産出額については、畜産や、あるいは、その地域の中山間地の野菜や果物のブランド化等もありまして、横ばい若しくは微増になっておりますので、中山間地は中山間地として、今後、やはり非常に活性化する要素を多分に持っているというふうに思っておりますので、そういうところを、今回の改正法の後でも、改正法が成立しましたならば、しっかりと後押しをしてまいりたいというふうに思っております。

小島委員 次に、みどり戦略、みどりの食料システム戦略につきましてお伺いしたいと思います。

 政府は、今後、我が国が脱炭素社会を目指す中で、自然に優しい、環境と調和した農業生産を展開するために、より安全、安心な肥料の開発普及や、農業生産のコストを下げて、担い手の減少にも対応できるようなみどり戦略をどのように展開されようとされておるのか、お伺いいたします。

坂本国務大臣 議員お尋ねのみどりの食料システム戦略の実現に向けましては、みどりの食料システム戦略推進交付金によりまして、堆肥による土づくりや、化学肥料、化学農薬の低減に取り組む産地を創出いたします。そして、戦略の実現に必要な技術の開発、普及等の産地の環境負荷低減の取組を支援しているところでございます。

 令和四年七月に施行されましたみどりの食料システム法によりまして、環境負荷低減の取組に必要な化学肥料、化学農薬の代替資材の開発、普及を行う事業者の計画認定を行っております。

 また、リモコン草刈り機、可変施肥田植機などは、非常に省力化と同時に化学肥料、化学農薬を減らす効果もありますので、しっかりと今後もこういったものに対する支援措置をしてまいりたいというふうに思っております。

小島委員 ありがとうございます。

 質問の最後になるかもしれませんが、昨年四月、農業経営基盤強化促進法が施行されました。各県、各市町村におきまして、農業委員会系統が中心になり地域計画の目標地図の作成が進んでおります。農地集積等による経営規模拡大や水田と畑地化の有機的な連携を図ることがますます重要となっております。農地確保と適正な利用は食料自給率の向上を目指す上での基本でもあります。基本法改正の大きな柱でもあります。

 その目標地図について、国の方針を農業委員会と市町村行政、農業諸団体がどのように頑張っておるか、進捗状況についてお伺いをいたします。よろしくお願いします。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 地域計画は、地域農業関係者による話合いを基に将来の地域農業の在り方などを明確化するものであり、地域農業の将来設計にとって大変重要であります。

 農林水産省において各市町村に地域計画の取組状況についてお伺いしたところ、令和五年十一月末時点で、計画の策定期限である令和七年三月末までに全国千六百三十六市町村の約二万三千地区で策定いただく予定となっております。

 これは、地域計画として法定化する前に取り組んでいただいていた人・農地プランがございますけれども、人・農地プランが全国千五百五十五市町村、約二万二千地区で取り組んでいただいていたという実績になっておりますので、この人・農地プランよりも多いという数字になっております。各地の市町村、農業委員会や農業関係者の皆様方の御理解と御協力によるものと認識をしております。

 農林水産省といたしましては、現場起点で定める地域計画の中で、輸出向け作物の生産や水田の畑地化などを国の農業政策の方向性を踏まえて話合いをしていただくよう、地域計画策定の手引等において明記をし、周知を図っているところでございます。

 引き続き、市町村、農業委員会、JA、土地改良区等の農業関係機関と一体となって、地域の取組を親身になって後押ししてまいりたいと考えております。

小島委員 どうもありがとうございました。

 私、地方なんですけれども、今、こういう中で、人口一万五千人の町村、実はなかなかこの土地計画ができないところがあるんですよ。国が言うから、まあしかし作っておけというふうなことがちょっとあるところもあって、これが、国が言うから作ったはいいが、十年後に見たら全然現場と違ったということはあるんじゃないかと思うんですね。したがいまして、私が農水省にお願いしたいことは、どうかきめ細かにひとつ御指導してあげていただきたい、よろしくお願いします。

 以上で終わります。

野中委員長 次に、古川康君。

古川(康)委員 ありがとうございます。自由民主党の古川康でございます。

 農政の憲法たる食料・農業・農村基本法の審議に当たりまして、こうした質疑の機会を賜りましたことを本当にありがたく思うところでございます。基本法の改正によりまして目指すところのものをお尋ねさせていただきたく存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず一点目が、食料安全保障についてでございます。

 この法案は、食料の安定供給に加えまして、国民一人一人の食料の入手という観点も含むものとして、食料の安全保障を定義していただいています。そして、その確保を基本理念として位置づけられているものと理解をするところでございます。この考え方に基づきまして、国内における農業生産の増大を基本としているわけでございますが、この国内における農業生産の増大をどのようにして達成していくのかをお尋ねしてまいります。

 まず、一つ目のお尋ねです。

 農地そのものについては、残念なことに長期にわたって減少している傾向にあります。農地を確保していくためには、基本法の関連法案として農振法や農地法、こうしたものの提出も行われておりまして、こうした法案によりまして減少傾向にある農地を守っていこうという方向性、これは理解できるところでございます。しかしながら、農地を確保する、この確保というだけでは、農業生産を増やしていくということには直接つながらないのではないでしょうか。

 また、スマート農業の展開による効率化、これも今回の法案の中に示されているわけですが、これによって、基幹的農業従事者が減っていく中であっても農業生産を確保していくということにはつながっていくだろうと考えるわけでありますが、スマート農業の展開が農産物の生産の拡大にどうつながっていくのか。

 さらには、農地の確保やスマート農業以外にどのような政策を実行していくことによって国内の農業生産の増大を実現しようとしているのか、お尋ねをいたします。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、国内の人口の減少に伴い、農業者の減少が不可避となる中で、担い手の育成、確保を図りつつ、少ない人数でも安定的な食料供給が可能な体制を整えることが必須だと考えております。

 このためには、生産性の向上と付加価値の高い農業を実現することが必要です。具体的には、スマート農業に関する新しい法制度によりスマート農業の普及を図る。また、スマート技術を始め、経営、技術面で経営体をサポートするサービス事業体の育成、確保を図るほか、単収向上や省力化に資する品種の開発を進めます。また、付加価値の向上を図るためのブランド化や知的財産の保護、拡大する海外市場も視野に入れた輸出促進等の複数の施策を組み合わせることによって、国内農業生産の増大に努めてまいりたいと考えております。

古川(康)委員 ありがとうございます。

 私が申し上げたような政策に加えて、単収向上、新品種の開発、そして輸出、こうしたものを組み合わせることによって国内の農業生産を増大させていくという御答弁でございました。

 食料安全保障の観点からいえば、国内でいかに多くのものを、農産物を生産できるかということが問われると思っております。今御答弁いただいたことが実現できるように心から期待申し上げるところでございます。

 そして、二つ目が、適正な価格形成についてのことでございます。

 この基本法の改正に向けて地元で様々な意見交換などを行っておりますが、やはり、適正な価格の形成ということについて地元の農業関係の方の関心が非常に高いということを感じています。農業資材の価格が高騰しているにもかかわらず、なかなか農産物の価格がそれに見合ったものにならない、これを何とかしてほしいという切実な声は、ここにいらっしゃる全ての皆様方の元に届けられているのではないかと思います。

 農水省では、こうした声を受けて、適正な価格形成に関する協議会を昨年の八月に発足していただきました。私の印象からすると、これまでは、もう市場に任せるというところがメインであったところからすると、こうした価格の形成というものについて農林水産省が協議会を発足させた、立ち上げたということは、これまでから見ると大きな方向転換と言えるのではないかと思って、そこは評価しているところでございます。

 この審議の状況、そしてこれからの方向性についてお尋ねをさせてください。

 適正な価格形成につきましては、今、飲用牛乳、そして豆腐、納豆について検討を進めることになっています。まず、現場から一番お尋ねがある事柄として、代表的な作物であるお米について、この適正な価格形成についての検討対象としないのはなぜなのか。そして、更に申し上げれば、様々ある農産物、農畜産物の中で、飲用牛乳、そして豆腐、納豆、ここに言う豆腐、納豆というのは、その原料である大豆というよりは、製品としての豆腐や納豆が適正な価格形成の議論の対象になっていると理解をしているところでございますが、なぜこうしたものが対象になっているのか。また、現在における審議の状況を教えていただければと思います。

 そして、今はまだ、なかなか関係者間での議論がしっかりとした一定の方向性に向けて結論が得られているという状況にないとも報道等で承知をしておりますが、この議論が進んだ上で関係者間で納得が得られたならば、我々から見たときに、消費者から見たときに、関係者から見たときに、どういう結果になるということが考えられるのか、併せてお尋ねをいたします。

宮浦政府参考人 お答えいたします。

 昨年八月より開始をいたしております協議会の対象の品目でございます。

 これにつきましては、まず、飲用牛乳につきましては、指定生乳生産者団体などに九割以上の生乳が集荷されて、これを背景といたしまして主に大手乳業との間で価格が決定されるという、流通経路が簡素な面を考慮いたしてございます。また、豆腐、納豆につきましても、八割程度が総合スーパーですとか食品スーパーなどとの間で取引されるということで、こういった両品目の実情を考慮いたしますと、流通経路が簡素でコストの把握も比較的容易であるという点に着目をいたしまして、まずは具体的な議論を進める対象としたところでございます。

 また、御指摘のございました米についてでございますが、米につきましては、地域ごとに農協出荷を通じて卸売業者などへ販売されておりましたり、あるいは生産者自身が自ら直売をされておりましたり、流通経路が非常に多様でございます。また、生産面積の拡大に伴いまして、生産コストが減少する傾向が強くございます。様々な生産者の方々の米が集荷される中で、どういった規模のコストを指標にすればよいのかといったことに関して非常に合意形成が難しいという実情があろうかと思っております。

 このために、今後、その他の品目の一つとして、まずはコストデータの把握、収集ですとか、それから、価格交渉や契約においてどのような課題があるかなどを調査、検証するということとしているところでございます。

 さらに、協議会における議論の状況でございますが、持続的な供給に必要な合理的費用を考慮した価格形成の仕組みづくりの必要性についてのまず共通認識、それから、品目ごとに作成されます費用の指標でありますコスト指標、これをどういうふうにつくっていくのかといったことについて議論を進めてございますが、こういったものについて合意形成が進めば、次は、こういった費用をどういうふうに考慮するのかといったことについて、その仕組みづくりをまた一層検討を深めていかなければならないと考えてございます。

 これらの内容を踏まえまして、最終的には法制化も視野に検討を進めていきたいと考えているところでございます。

古川(康)委員 ありがとうございました。

 このことについては期待感の高いところでございます。難しいことは重々承知の上ではございますが、是非いい結論が得られることを心から御期待申し上げる次第であります。

 次に、食育についてお尋ねをいたします。

 一定程度、価格が相対的に割高であったとしても、環境配慮をされた農産物であるとか、今お話のあった適正な価格形成システムに基づいての値づけであるとか、こうしたことについて、消費者や関係者に理解をしていただく必要があります。これがまさに食育であります。

 この食育を担っていくのは、学校においては栄養教諭の役割でございます。栄養教諭は、学校給食をおいしくかつ安全なものとして提供できるという役割を担いつつ、子供たちに対する食育も行っていただいています。

 最近では、大規模な共同調理場による、給食センター方式による学校給食の提供が増えました。こうしていく中、そのセンターで、いかに安全で、おいしくて安価な学校給食を提供するかということに栄養教諭の先生方はいわば忙殺をされているという面もあるとお伺いをしていまして、本来栄養教諭に期待されている、学校現場において子供たちに対して食べるものの大切さ、作ることの大変さ、そして、こうしたことを楽しむことの大事さ、そうしたことから遠ざかってしまっているという声も聞くところでございます。

 今回の法案の成立を機に、食育の重要性について更に認識が深まっていくことを期待しますが、農水省として、どのように考えておられるでしょうか。

安岡政府参考人 お答えいたします。

 国民の食生活と農林水産業の現場との距離が遠くなる中で、委員御指摘のとおり、食や農林水産業の現場に対する国民の理解の醸成を図るということが重要になっておりまして、食育が改めて重要となっているところでございます。

 このため、食料・農業・農村基本法の見直しにおける議論も踏まえて、子供から大人まで幅広い世代を通じた食育を、官民が協働して幅広く進めることとしております。特に、委員からお話がございましたとおり、子供の頃からの食育というのは、健全な心身を培うとともに、将来の消費者を育てていくという観点からも重要でございます。

 文部科学省と連携しながら、栄養教諭の皆さんも生かしつつ、学校給食での地場産物を活用した食育や、地域での農林漁業体験の提供などの更なる推進を図ることとしておるところでございます。

 今後とも、食や農林水産業に対する国民の理解を深めるため、文部科学省などの関係省庁とも連携して、学校における食育を始めとした食育の取組の充実強化を図ってまいります。

古川(康)委員 食料に関するもう一つの基本法、食育基本法ができてから約二十年になります。今回の法改正を契機に、更に食育の充実が図られることを心から願います。

 次に、環境と調和の取れた食料システムの構築について、お伺いをいたします。

 近年、地球温暖化による気温の上昇や、記録的な豪雨、台風などの頻発、薬剤防除の推進による薬剤抵抗性の発現、化学肥料を多く投入することによる地力の低下など、環境負荷の低減が課題となっています。このような課題に対応するため、農水省から、みどりの食料システム戦略が打ち出されました。

 今般の基本法の改正に当たって、環境と調和の取れた食料システムの確立を初めて基本理念として位置づけ、農業の環境への負荷低減を規定することとなったと認識をしています。これはまさに農政の大きな転換点であり、画期的なものであります。

 一方で、アジア・モンスーン地域に位置する我が国は、温暖湿潤であります。環境負荷低減を見据えた農業の展開にはハードルが高いという状況にあります。環境負荷低減、生産力の向上を両立させ、生産現場に過度の負担をかけることなく転換を進めること、このことが求められるのであります。

 そこで、基本法の新たな理念を実行に移していくため、新たな施策を導入し、しっかりと環境と調和した食料システムを実現していくべきと考えますが、大臣の御決意をお聞かせください。

坂本国務大臣 農林水産業、食品産業におきましても、地球温暖化など環境への負荷の低減を図ることは待ったなしの重要な政策課題となっております。

 ただ、委員おっしゃいますように、アジア・モンスーン地域に位置し、温暖湿潤で、環境に対する取組に高いハードルがある、我が国にはそういうハードルがあります。しかし、基本法の改正を踏まえまして、環境負荷低減を見据えた農業を展開していくためには、委員御指摘のように、新たな施策を導入することが必要だというふうに考えます。

 まず、農林水産省の全ての補助事業等に対しまして、最低限行うべき環境負荷低減の取組を義務化するクロスコンプライアンスを導入することとし、これを令和六年度から試行実施をいたします。

 その上で、令和七年度より次期対策期間が始まります環境保全型農業直接支払交付金等につきましては、有機農業の取組面積の拡大や、環境負荷低減に係る地域ぐるみの活動推進のための見直しを検討いたします。そして、その後、新たな制度を導入したいというふうに思っております。

 令和九年度を目標に、みどりの食料システム法に基づきまして、環境負荷低減に取り組む農業者を認定いたしまして、そして、先進的な営農活動をやる方々を支援する新たな仕組みに移行するということをただいま検討しているところでございます。

古川(康)委員 大臣の力強い御決意、ありがとうございました。まさに、これからの新しい日本農業の姿として、この環境と調和した食料システムの実現を期待申し上げるところでございます。

 最後の質問になりますが、農水省にお伺いをいたします。

 こうした環境負荷低減のクロスコンプライアンスの導入を始めとして、様々な事柄が、新たなハードルとして受け取られるということはないのでありましょうか。そうしたことについて、生産者、そしてさらには消費者の理解をいただくために、どのような取組を行っていただけるのか、簡潔にお願いいたします。

野中委員長 時間が来ていますので、簡潔にお願いいたします。

武村副大臣 お答えいたします。

 御指摘のとおり、地球温暖化による農業への影響、化学肥料原料の輸入依存の問題などについて、農業者の皆様に知っていただき、必要性を御理解いただくことが重要であるというふうに考えております。

 このため、クロスコンプライアンスの導入に当たりましては、適正な堆肥や不必要なエネルギー消費の節減といった基本的な取組の重要性を現場にしっかりと周知をしているところです。

 先ほどもありましたが、みどりの食料システム法に基づきまして認定を受けた農業者も三月末に全国で四千名を超えたところであります。引き続き、同法のメリット措置の活用を促していきたいというふうに思います。

 また、消費者等に対しても、分かりやすい形で、消費者に生産者の努力を伝え、御理解と支持を得て行動変容につなげていくことが重要であります。そのため、みどりの食料システム戦略におきまして、環境負荷低減の取組を見える化をしていく……

野中委員長 答弁を簡潔に願います。

武村副大臣 はい。

 そうした消費者に分かりやすい表示を進めていきます。

 環境負荷低減の見える化の普及を通じまして、消費者を含めた食料システムの幅広い関係者への理解浸透に努めてまいる所存です。

 以上です。

古川(康)委員 終わります。ありがとうございました。

野中委員長 次に、山崎正恭君。

山崎(正)委員 公明党の山崎正恭です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 貴重なお時間ですので、早速質問に入らせていただきます。

 まず初めに、担い手への農地集積についてお伺いします。

 今回の基本法の改正については、今後急速に農業者が減っていくことが予想される中で、いかにして農産物を生産し国民の食料を安定供給できるか、また農地を守っていくことができるのかが当然視野に入っており、やはり、その中では、効率的かつ安定的な農業経営者、特に法人への集積に期待している面も大きいと思います。

 その点につきまして、私の先日の本会議における質問に対して、大臣より、食料の安定供給を図るためには、担い手への農地集積を進めつつ、担い手だけでは管理できない農地が出てきている中で、世代交代等による適切な管理が難しくなる場合には、管理できる方に円滑に継承していくことが重要との答弁がございました。

 実は、これにつきまして、私は四国比例ブロック選出の議員でありますが、徳島県におきまして地元で長く農業法人として経営されている方が、地域においてまさに世代交代における適切な管理が難しくなった農地を、農業者の皆さんから何とかお願いしたいと託されて、その土地で代わりに農業を継続してくださっています。実は、その数に私は驚いたのですが、実に約二百の農業者の土地を代わりに農業されています。

 その、代わりに行っている農地がどこにあるのかというのを航空写真で見せていただきましたが、その都度依頼のあった方から受けた土地ですので、もちろん集積されておらず、約二百の土地が市内の各地に点在しております。そこで実際に農作業を行うとなると、例えばトラクターなどの機械の移動だけでも大変な労力がかかっています。

 今、地域計画が進んでおり、これからはこういった土地がもっと集積されていくと思うのですが、今は過渡期であり、そのような中で、耕作放棄地を増やさないために、このように地域の中で積極的に継承している農業者の方の負担が大きくなっています。実際には、経営的利点というよりも、経営者の、農業は人間の命を支える源であり地域の灯台であるとの信念の下で行ってくれていますが、最近はこういう要請がどんどん増えてきて、どうしても断らざるを得ない状況も出てきたと言われていました。

 そこで、このように適切な管理が難しくなった農地を継承してくれている農業者に対して、もちろんフリーではなくて一定の要件の下、例えば、ある意味収益性を度外視してこれだけ多くの土地を継承している方に対して、今回などの場合には例えばトラクターの移動経費だとか、何らかの支援策を講じていくことはできないでしょうか。こういった取組は地域計画が整っていくまでの間の農地の確保に重要なことであると思いますが、大臣の認識をお伺いします。

坂本国務大臣 農業者の減少が見込まれる中で、農地の受皿となる担い手の育成、確保、これは最重要であります。このため、担い手に対しまして農地の集積、集約化を進めるとともに、経営所得安定対策、それから収入保険、そして出資や融資、税制などを通じて重点的な支援策を講じているところであります。

 このうち、農地の集積、集約化につきましては、昨年四月に施行いたしました改正農業基盤強化促進法におきまして、これまでの人・農地プランを、委員おっしゃいましたように、地域計画として法定化し、地域の農業関係者の話合いにより、将来の農地利用の姿を目標地図として明確化をいたします。その上で、目標地図に位置づけられた受け手に対しまして、農地が利用しやすくなるように、農地バンクの活用というものを進めようとしております。

 農業労働者が少なくなる今後におきましては、特に、農地の集約化を進めることが最重要と考えています。このため、分散した農地を農地バンクがまとめて借り受ける場合には、農家負担ゼロの基盤整備、それから集積協力金の交付等の、農地の受け手や出し手に対する支援策を講じております。

 引き続き、担い手の負担の少ない形で農地が円滑に引き継がれるように対応してまいりたいというふうに考えております。

山崎(正)委員 ありがとうございます。

 農地バンク等の取組が始まったということで、是非、そういった取組が更に充実、促進していくようによろしくお願いいたします。

 次に、新たな担い手の確保について、私の地元高知県の取組について紹介させていただきます。

 実は、新しく農業をしたいという就農希望者に対して、国の新規就農者育成総合対策事業を活用して取組を行っています。その内容は、市町村内の居住を要件として、農業公社などの研修施設で二年間の研修を受けた後に就農していく農業研修制度を創設して取り組んできましたが、その中で、県外の方などを中心とした移住者の促進という面において、ここに住みたいという居住地域の希望と作りたい品目のマッチングがうまくいかないなどの課題が出てきました。つまり、居住地域にある研修施設の品目がそのまま就農後の生産品目となってしまうルールのため、この市町村に住みたいけれども私の作りたい品目と違うということが見られ、就農希望者の増加につながらないという課題がありました。

 そこで、今回、周辺六市町村が連携して、例えば、Aの自治体の就農希望者が希望する品目がトマトだったが、Aの自治体の研修施設の品目はキュウリであり、今まではそこでマッチングがうまくいかなかったのを、隣の自治体Bの研修施設の品目がトマトだった場合に、このAの自治体の就農希望者の研修を自治体Bのトマト研修施設で受け入れる、そして、二年間の研修後は、自分が居住を希望していたAの自治体に住んで、そこで、Bの自治体で研修してきた、作りたかったトマト農家として活動していくという取組を広域六市町村で始めました。

 この取組により、就農希望者の居住地域や生産品目の選択肢が増え、単純に言うと、今まで生産品目が一択だったのが、今、六市町村で三施設ありますので、生産品目の選択肢が増え、就農しやすくなることが期待されていますし、実際にそのような事例ができてきております。

 この地域の場合は、中山地域であり、地域でこれを作っているといった特産品のような品目が少なく、元々多品目を生産しているような地域であるということとともに、もう一つは、元々、ふだんから六市町村が仲がよいといいますか、よく連携が取れているという条件だということもありますが、こういった、就農者ファーストといいますか、就農者を真ん中、中心に置いた、就農希望者に寄り添った現場での取組が、これから一人でも多くの新規就農者を増やしていくためには非常に重要な視点であり、このような地方の取組を政府はより一層支援していくべきだと考えますが、大臣の認識をお伺いいたします。

坂本国務大臣 今委員から御紹介ありました、高知県幡多地域、六市町村が一緒になって、そして九品目の研修をするということにつきましては、大変私たちも注目をいたしております。

 そういう中で、就農相談から研修、そして就農後の定着に至るまで、市町村やJA等の地域の関係機関が連携して、就農希望者のニーズに応じたきめ細かな支援をしていくこと、これは、これからの若い人たちの就農には大変大事なことだというふうに考えております。

 農林水産省では、こうした取組を全国展開すべく、農業経営や生活面等の相談窓口となる就農相談員の設置や、技術習得に必要となる研修農場の整備、そして就農後の経営安定に向けた先輩農業者による技術指導など、地域におけるサポート体制の充実を支援しているところであります。

 これらの取組を通じて、農業人材の呼び込みと定着を一層推進していきたいというふうに思っております。

山崎(正)委員 ありがとうございます。

 本当に幡多地域の方は非常に高知県の方でも中山間の方ですので、そういった農水省の後押しがありますと、また移住者の方も進むと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 済みません、質問の順番を変更いたします。申し訳ありません。次に、先ほど古川先生からもありましたけれども、食育についてお伺いします。

 今回の改正では、消費者の役割が拡充され、環境への配慮や食料の持続可能な供給に資するものの選択に努めることで、食料の持続的な供給に寄与していこうという内容になっており、それには食育が今まで以上に重要になってきています。

 この点につきまして、私の先日の本会議の質問に、総理からは、農業の持続可能性を確保し、その発展を図る上で、農産物が生産から加工、流通を経て消費者に届く過程、また、国産農産物や環境に配慮した食品を選択することの意義等について、食育を通じ、子供たちの理解を深めていくことが重要ですとの答弁がありました。

 実は、この点につきまして、まさにこのことを絵に描いたような実践をされている高知県の小学校の栄養教諭さんがいます。

 まず驚いたのが、昨年一年間で約百七十六時間の食育の授業をされていたことでした。その内容は、生活科や総合学習の時間の中で一年生から六年生までで実施されており、それぞれの学年の授業の教材とリンクさせ、まず田植から始まりまして、田植をして、野菜を育てることから始めまして、収穫をして調理をして食すという工程を、実に工夫をしながら、楽しく子供たちと行っています。

 例えば、「おおきなかぶ」を習う一年生は、カブの種を植えて育て、収穫したものを給食の食材として使ったり、調理実習でカブスープを作って食したり。二年生は、生活科の夏野菜を作ろう、冬野菜を作ろうの中で高知県の特産品であるナス、トマト、ピーマンを、国語の授業で「ゆうすげ村」を習う三年生は、その物語の中で出てくる大根を作ります。昨年度は大根の収穫量が百キロを超え、学校給食として子供たちはそれを食すといった体験的な学びで、子供たちは学びを深めていっています。

 さらに、その栄養教諭さんは、ほかの先生の協力も得ながら、校内で高知の特産品でもあるニラを子供たちと育てています。小型のビニールハウスを子供たちと一緒に張り、ニラを育て、収穫し、今では、学校給食で使うニラは、一年間全て自校で育てたニラで賄っているそうです。

 これらの取組は、実は、学校生活が荒れていた当時小学校五年生の男子児童二名に、栄養教諭さんが一緒に農業をやってみないかと声をかけ、それに乗ってきた二人と始まったようですが、今は、農業ボランティア部という名前がついて、五年生、四年生も加わって、朝の始業前の時間と休み時間を使って楽しく活動しています。

 その中では、ニラをただ切って食べるというだけではなく、この食べられるような状態になるまで、土を耕し、種を植え、ハウスを張って、水をやり、そして常々雑草を刈りといった手間、工程があってこそ私たちの口に入ってきているんだという、この工程を体験的に知ってもらう、学んでもらうことを重視していると語っておられました。

 このことは、先日の総理の食育の答弁にありました、農業体験機会の提供、学校給食における地場産業の活用、栄養教諭を中核とした食育の推進であります。

 また、地元に代々伝わる地元飯を地域の方と一緒に交流しながら作る中で、どうしてこのような地元飯が作られるようになったかという、地元の歴史や気候、土壌についても学んでいます。

 そのほかに、地産地消の推進も含めて、健康も絡めて、必ず成分表示を見ていくような習慣化、災害時の防災食を作ったり、SDGs学習での食品ロスの学習、学校給食を通した牛乳のすばらしさを知ってもらう授業等、その内容は多岐にわたるとともに、その学習内容の質の高さには驚きました。

 私は、六年前まで公立中学校の教頭をしていましたが、当時とは隔世の感があり、学校現場における食育の急速な推進に驚くとともに、大変うれしく思いました。

 そこで、食育について、先ほどの事例にあったような、地域や家庭で受け継がれてきた伝統的な料理や作法等を継承し伝えていく取組は、地域教育との相乗効果があり大変有意義であると考えますが、現在の食育の現状と今後の具体的な取組の推進についてお伺いします。

坂本国務大臣 御紹介のありました高知の教師の方の取組、すばらしいものがあるというふうに思っております。

 農林水産省でも、食育の活動の中で、地域食文化の継承等に取り組んでいるところでございます。

 特に、和食文化の普及を担う人材を育成する具体的な取組といたしまして、栄養教諭や栄養士の方々を主な対象として、二〇一九年、令和元年度から和食文化継承リーダー研修を実施しており、これまで千三百名の方が修了をされております。

 研修を受講した和食文化継承リーダーの方々にあっては、実際に小中学校の教育現場等で行う食育の取組といたしまして、地域の伝統野菜を題材とした和食の授業を行ったところ、これをきっかけとして地元生産者との結びつきが生まれ、地元産野菜の給食への導入に至り、子供たちが伝統野菜や地域の食材について考える機会が増えたというような効果が出ております。また、調理実習の授業におきましては、郷土料理をメニューに取り上げたところ、子供たちの間で地域、家庭で受け継がれてきた郷土料理に対する関心が高まったという声も寄せられております。

 農林水産省では、今後とも、和食を始め伝統的な料理、あるいは作法等を次世代に継承していくよう、着実に取組を進めてまいりたいと考えております。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 学校における食育に関しましては、委員御紹介のとおり、給食の時間でありますとか各教科を通して行われているわけでございますけれども、これに当たりましては、食に関する指導そして給食の管理を担う栄養教諭が大変重要な役割を果たしておるというところでございます。

 例えば、御紹介ございましたけれども、学校給食に地場産物を活用したり、郷土食、行事食を提供し、そうした意義を説明するなどによりまして、児童生徒に地域の食文化、歴史、伝統、そして生産者の努力などに対する理解、関心を深めさせるなど、創意工夫ある取組を行っていただいているところでございます。

 文科省といたしましても、栄養教諭等の教職員定数につきましてこれまでも計画的に改善を図ってきておりますほか、児童生徒に対する食の指導の充実等のための栄養教諭等の加配措置を行っているところでございまして、令和六年度予算においても改善分を計上しているところでございます。

 文科省としましては、栄養教諭の職務の明確化等を図りますとともに、任命権者に対しまして、栄養教諭の新規採用や学校栄養職員から栄養教諭への任用替え促進等を働きかけているところでございまして、今後とも、こうした取組を通じまして、栄養教諭の配置促進、そして食育の推進に努めてまいりたいと考えてございます。

山崎(正)委員 ありがとうございます。

 農水省と文科省が一体になった推進の中で、このような展開、いろいろな事例が出てきていると思いますので、横展開をお願いしたいと思います。

 農業者の方は、適正な価格形成においても、やはり、消費者の行動変容という点において、小さいときからの食育への期待、すごくそういったところに対する期待が大きいですので、更なる推進をお願いしたいと思います。

 それで、先ほどありましたけれども、このような取組が出てきたので、やはり栄養教諭を単独で配置してほしいというふうな声がすごく大きくなってきております。先ほど言及していただきましたが、本当に、また、今なかなか難しいと思いますけれども、やはり農は国の基と言われるような大事な教育を担ってくれていますので、是非、配置基準の見直しの方もお願いしたいと思います。

 そこで、食育の推進が進んできている中で、学校現場では、栄養教諭が本来の業務ではない給食費の徴収業務等を行っているとの現状が散見されるようです。そこで、栄養教諭さんが食育も含めた本来の業務に専念できるような職場環境づくりが重要であると考えますが、御認識をお伺いいたします。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 学校において食育を推進するということは極めて重要でございまして、その際、御指摘のとおり、栄養教諭がその専門性を発揮をして本来の職務に集中できるような環境を整備していくということは重要であると考えてございます。

 文部科学省といたしましても、栄養教諭の職務の範囲について明確化を図りますため、その標準的な職務内容に関しまして、主として食育に関すること、主として学校給食の管理に関することということを示しつつ、各教育委員会に対しまして、学校管理規則等の関係規定を整備をし明確化するよう求めているところでございます。

 また、御指摘の学校給食、給食費の徴収、管理を公会計で行い、また学校や教職員ではなく地方公共団体の業務として実施しているというところが少なくとどまっておりまして、学校給食費の徴収や未納者への督促等の事務が教職員の負担になっているという状況が生じているというふうに認識をしております。

 文科省といたしましては、学校給食費につきましては、徴収、管理の効率化、そして透明性の確保の観点からも、公会計により学校以外が取り扱うべき業務であると考えてございまして、ガイドラインの作成や先行事例の紹介等を通じまして各教育委員会に対応を求めているところでございます。

 今後とも、こうした取組を通じまして給食費の公会計化等を推進し、栄養教諭を含め、教職員が本来の業務に集中できる環境づくりに努めてまいりたいと考えてございます。

山崎(正)委員 本当にコロナのときとかは大変だったようで、今は不登校の子供さんへの給食の配慮等もあって、一日誰が休んでいるのかというようなところも大変だったようで、悲鳴を上げておられました。

 本来の業務とは違うと思いますので、実際の現場ではそれぞれの学校で違うようで、そういった業務はやらなくていいよというふうなところも、きちっと行われている学校もありますけれども、そうでないところも残っているということですので、また改めて、文科省の方から、本来の業務に集中できるような発信をお願いできたらというふうに思います。

 次に、農福連携についてお伺いします。

 基本法の制定時に比べ、全国で農福連携の取組が格段に活性化されていますが、今回、新設で、第四十六条に障害者の農業に関する活動の整備が盛り込まれましたが、今回の改正法の下で、具体的に農福連携についてどのような取組を行っていくのか、お伺いします。

坂本国務大臣 農福連携の推進に当たりましては、これまでも、官民が連携いたします農福連携の優良事業の表彰、いわゆるノウフク・アワードの選定、公表をしておりました。そして、障害の特性等を踏まえました農福連携の実践手法を現場でアドバイスする専門人材の育成をやってまいりました。さらには、障害者が農作業を行うために必要な生産施設や休憩所、そしてトイレ等の整備等を支援してきたところでございます。

 今後は、新設されます第四十六条の規定に基づきまして、更に農福連携の取組が地域に広がり定着していくよう、農業関係者が主体となった地域協議会の拡大の後押し、そして、障害者だけでなくて、社会的に支援が必要な者の社会参画の促進、こういったものに取り組みまして、厚生労働省等の関係省庁と連携をしながら、農福連携の取組をしっかりと推進してまいりたいと考えております。

山崎(正)委員 ありがとうございます。

 実は私も、農福連携によって町がつながり活性化してきた事例を間近で見てきました。

 生きづらさを抱えた方々に寄り添い、農業を通じて様々な機関とつながり、支援を行い、社会的に自立してもらおうという取組を行っている団体が高知県安芸市にあります。そこには、障害者の方を始め、引きこもり支援を通じての通所者、生活困窮支援を通じての通所者、さらには触法者支援を通じた通所者など、様々な制度の切り口から、多くの生きづらさを抱えた方が通所してきています。

 ナス生産を行っていますが、ナスを収穫する人と袋詰めする人との大きく二つの仕事に分かれていますが、例えばナスを収穫する人は、自分の畝を任されまして、最初は、自分の出てこれる時間に、作業可能な時間だけナスを取って、それが自分の収入になる。作業中はナスに向き合うだけで、自分のペースで作業ができる。そして、次の日も可能なら来てくださいねという感じでスタートします。

 そのルールが、対人関係が苦手であったり、相手の気持ちや場の空気が読みづらい発達障害の方にとっては、仕事のスタートとして非常に入りやすい環境であり、発達障害の二次障害で十年引きこもっていた、二十年引きこもっていたという人が、自信を徐々に回復し、結果として就労が続き、就農するのが当たり前の日常となり、お給料を稼いで社会的自立を果たしていく。そういった方が続出しており、現在は、その取組を聞いて、市外はもちろん県外からも入所者が殺到しているとともに、その取組が他の市町村へも伝播しております。

 そういった取組の中で、一昨年の四月から、十年引きこもっていた発達障害の三十代の青年が見事に農業者として独立を果たしました。

 そのときに重要なのが、発達障害者の方の場合、新しいことの予想や見通しがつきにくかったり、不安が高いということがあります。先ほどの男性の場合は、ビニールハウスの手配のサポートを受けながら、困ったことや分からないことがあればいつでも相談に乗ってくれ、すぐに助言をいただける環境の中でスタートしました。無事に一年目のナスの生産を終えた彼は、何と、一年目の一反当たりの収量は安芸市の農家さんの平均収量を超えました。そして、彼は自信を持って、二年目の今、生産に向かっています。

 ここで何をお伝えしたいかというと、発達障害の方は、その障害の特性ゆえに、スタート時には一般の方よりも手厚いサポートが必要であるが、そこで成功体験をしっかり積むことができれば、そこからは見通しを持って自走していけるということであります。

 そういった取組を行っている中で、現在出てきている案が、実は高知県安芸市などは、一般の新規就農者の場合は、サポートとして、農家での実践研修を終えていよいよ独立するときに、自治体が建てたサポートハウスと呼ばれるビニールハウス一棟を使って二年間実際に経営をやってみて、そこで練習して、その後自分でビニールハウスを購入して本格的に独立するという取組を行っていますが、ここで先ほどに話を戻すと、発達障害の方がこれから、なかなかやはり通常のサポートハウスの支援だけではスタート時は厳しいこともあり、先ほど紹介したような発達障害の方の障害特性に合わせた支援を行う障害者サポートハウスの設置も検討している自治体が出てきています。

 そこで、このような取組の根幹は、障害者の方でも自立営農ができる、そのための障壁を取り除いていくという障害者への合理的配慮だと考えます。今回の基本法の見直しに当たり、この機会を捉えて、農福連携についてこのような考えを持って施策を推進していくというような検討が必要であると考えますが、見解をお伺いします。

坂本国務大臣 それぞれの皆さん方の御尽力により、そして私たち農林水産省としても、農福連携を支援してまいりました。その結果、令和元年度、四千百十七の農福連携の事業所から、令和四年度は六千三百四十三と、三年間で農福連携に取り組む主体というのは大きく増加をいたしました。多様な作業が必要となる農業現場におきましては、障害者の方々が個々の特性に合った作業を分担することで、農業現場における貴重な働き手となっているところです。

 委員御指摘の障害者の独立就農に向けた取組、そして、自走していく農業就農、将来の農業の担い手の確保に向けてもこれは重要なものであるというふうに考えておりますが、実態につきまして十分把握できておりませんので、その実態や期待される成果等を今後しっかり調査をし、農福連携の今後の推進に生かしてまいりたいというふうに考えております。

山崎(正)委員 今年度、先ほど言った先輩の姿を見た通所八年目の後輩が、いよいよ今年度から自立するというふうな形の流れも起こってきています。ますますの推進をお願いいたします。

 済みません、ほかにも質問がございましたが、お時間が来ましたので、大変、準備していただいたのに申し訳ありません。次の機会に必ず質問したいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

野中委員長 次に、近藤和也君。

近藤(和)委員 近藤和也でございます。よろしくお願いいたします。

 今日は、石川県が開発されましたお花で、フリージアの一種で、エアリーフローラというお花でございます。十数種類、種類がございまして、一番北では輪島市町野地区でも作られています。ちょっと今年の生産は微妙だということも伺ってはいるんですけれども、しっかりと生産活動が様々な分野で再開されていけばいいなと思いますし、農林水産省の関係の皆様には、今までの御苦労していただいていますことに心から感謝を申し上げます。実際には今は調査段階ということがほとんどで、これからもっともっと力を入れていかなければいけないということで、何とぞお力添えをいただきたいと思います。

 そして、先週ですけれども、私の集落では江堀りがありました。恐らく地域によって言い方が違うと思うんですけれども、田んぼなどの溝、水路を掃除をするということでして、井堀りとか、えんぞ堀りとか、泥すくいですとか、様々な言い方があります。この江堀りを通じてですが、改めて、農業というのは、食料・農業・農村基本法の中で、農村というところ、こちらが成り立たなければ農業もそして食料供給もままならないんだということを、改めて今回の基本法の質疑の中でしっかりと皆様と情報共有をして、更なるよりよい方向になっていけばというふうに思います。

 そして、質疑に入らせていただく前に、今の被災地の状況を少し、皆様に是非とも共有をしていただきたいと思います。

 二日前ですけれども、官房長官が、九割の地域で水が来ているようになっているということを言われました。確かに、石川県全域でいけば、五十万軒弱の中で、今、水が来ていないのは六千軒台ですから、九割が水が来るようになったという言い方は間違いではありません。

 ただ、しかし、今回の地震では、金沢では断水はほとんどなかったと聞いております。そして、私のところは中能登町というところで、七尾市、志賀町よりも南の隣のところで、こちらは一月五日から水が来ております。そして、七尾市は、ようやく全軒に近い形で、この三月末で水が来るようになりました。

 実際には、ほとんど関係のなかったところも含めて九割が水が来ているんだということではなくて、例えば珠洲市であれば、九割以上まだ水が来ていない、断水状況が解消されたといっても、家の中でひねって水が出る状態になっていないということでありますので、今の能登の状況は、九割水が来ているんだという状況ではない、そしてまだ復旧段階であるというところもたくさんあるということも、御理解をいただきたいと思います。もちろん、珠洲市の中でも、輪島市の中でも、復興段階に移っていらっしゃる方もいらっしゃいますし、復旧にも至っていないという方もおられます。

 そして、ボランティア等々も含めて、最初のときには、一月の一週目、二週目のときには、極力能登には来ないでくださいということを皆様にもお願いをしていました。一時間かかる道を三時間かかる、二時間かかる道を六時間かかる、緊急車両が通る、救急車であったり消防車であったり自衛隊の車が通ることに対して、一般の車がそれこそ邪魔をしてしまう、道が更にがたがたになってしまうということも含めて、極力来ないでください、プロの方々、プロのボランティアの方はどうぞ自力で来てくださいということではあったんですけれども、今はこの道路状況がかなり改善をされてきました。

 例えば、私の家から珠洲市まで、一番端までは通常は二時間近くかかるんですが、今は二時間半若しくは三時間で行けるようにはなっています。渋滞の時間も大体夕方、金沢を出発して珠洲や輪島に作業に行かれた方が六時、七時に戻るために、四時台に穴水町というちょうど分かれ目のところ、輪島と珠洲に分かれる、この中間のところで大体四時、五時、六時前後ぐらいでは渋滞を起こすんですが、ほとんど渋滞が少なくなってきていますし、今、たとえ渋滞が一時間のところを二時間かかったにしても、命に関わるような渋滞ではありませんので、是非とも、専門的ではないボランティアの方も含めて、そして議員の皆様であれば何らかのノウハウがあると思いますので、是非とも能登に来ていただいて、課題を一緒に共有をしていただけたらということをお願いをいたします。

 それでは、質疑に入らせていただきます。

 まずは、災害ということからお話をしたいと思いますが、改めて、国土強靱化ということに対して、恐らくは、この強靱化という言葉、好きだという方と違和感のある方、それぞれいらっしゃると思います。私自身は違和感を持っている方ではあるんですけれども、ハードについての強靱化がいかに限界があるかということを今回の能登半島地震で示されたというふうに思います。

 強靱化という点でいけば、災害が起きた後でのサポート、ここも含めて強靱化を。強靱化という言葉をこれからも生かしていくのであれば、災害が起きた後のハード面のサポートと、そして支援面での、ソフト面でのサポート、どちらも大事だと思っています。今日はまず、このサポートという点から質疑に入らせていただきます。

 今、四月に入りました。例えば田んぼを植える方、例えばスイカを植える方が、今、苗を注文していいかどうかということを大変悩まれておられます。

 分かりやすく資料の三から見ていただきたいんですが、左上の田んぼは、一メーター以上田んぼがずれました。恐らく上の方が隆起してしまったということでございますが、最初私も、見に行ってと言われたときに、どこがどうなっているかよく分かりませんでした。なぜかといえば、能登に住む私たちは棚田が当たり前だからです。最初はただの棚田だと思ったんです。ただ、この左下の方ですね、ただの棚田だと思ったのが、左上の方を見たら、完全にずれてしまったんだなということが分かります。

 そして、右上の資料では、これは水路の問題もありますし、農道が駄目で農業ができない、こういった現状もあります。特に今、機械が大型化してきていますので、水路が直っても機械を通せないということも農業の阻害要因になってきます。

 そして次のページですが、左上、これは貯水の池からの水路でございます。そしてその隣、右上の写真ですが、これは、貯水の池から集落のある田んぼのところまで、山の上に水路を通している。山崩れがあって、右上の写真の下の方に白い塊が見えると思いますが、これは、用水路を支えるためのブロックが崩れ落ちてきています。

 ですから、集落にある田んぼがたとえ無事であったとしても、たとえ貯水池が、ため池が無事であったとしても、山崩れによって、角度がありますから、下の方でバイパスの水路を造ったとしても上げなきゃいけない、ポンプアップしなきゃいけない、余計な費用も更にかかってしまうということも、今後支援が必要です。

 このようなことも含めて、一部だけ見て大丈夫かなと思っても、実際に、苗を植えるということをやりたいけれどもやれるか分からないという状況の中で、でも、やる気のある人はもう注文をしています。そして、悩まれておられる方もたくさんおられます。

 そこでですけれども、収入保険に入っていないという方もやはりたくさんいらっしゃる中で、共済でカバーできる品目がございますが、植える、植えないは、ぎりぎりまで、その方の個人的な努力ではどうしようもない、土木的なところも含めてかなり他力にお願いしなければいけないんですけれども、ぎりぎりまで頑張って、植える、注文もしたけれども、でも植えられなかったというときには、苗を注文したお金が、今、田んぼや畑だけではなくて家も被災していますから、コインランドリーで一回千五百円とか二千円とかをかけて、いろいろな面で今お金をなくしていますので、農業にだけ資金を振り向けるということは、正直、大変厳しいです。ですから、キャンセルしてもその分をかぶっても、通常であればそれほど痛くないかもしれないですが、今は本当に痛いんです。

 ですから、何らかの形で、このぎりぎりのところで共済に入れるのであれば、そこはぎりぎりまで待っていただきたいと思いますし、この苗の部分は何らかの形で担保できないか。それがあれば、今できるかどうか、耕作地ができるかどうかは、整備できているかどうかは分からないけれども、何とかその部分を持っていただければ準備をしたいという現地の声がございます。その点について柔軟な対応をお願いしたいのですが、いかがでしょうか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 営農再開には、田植期に向けて、農業者の御意向の確認、これに加えて、水張りが可能かどうか、圃場の被害状況を確認した上で、必要な苗をスピード感を持って確保すること、これが肝要でございます。県、市町、農協等の関係者と連携して、今年産に必要な水稲の苗の計画的な供給に努めているところです。

 石川県内では一般的に田植期は五月上旬というふうには伺っておりますが、六月上旬まで遅らせることも可能というふうに伺っております。六月上旬に田植を行う場合は、五月中旬まで育苗の調整を行うことができるため、余った苗ですとかキャンセル料への支援というのはなかなか難しい、適当ではないと考えておりますが、計画的な苗の供給に向けて現地と連携しながら進めてまいりたいと考えております。

 また、御指摘ございました水稲共済でございますけれども、水張りが可能であれば、六月上旬まで田植を延期した場合でも加入することができるというふうに考えております。

 その上で、どうしても水稲の作付を断念せざるを得ない場合は、なりわい支援のためのパッケージに基づきまして、一つは水田活用直接支払交付金の活用ですとか、農業機械のレンタル等によります大豆、ソバ等の代替作物への転換、それから、農業法人等が被災農業者を一時的に雇用して作業に従事してもらう、研修する場合の支援等、各種支援を重層的に講じてまいります。

 これらの施策が被災地の農業者の方々に伝わらなければいけないということでございまして、現在、県、JA、農林水産省の職員が常駐した相談窓口を設置しておりまして、個別の相談を受けながら、事業申請手続等の伴走支援、これを行っていきたいというふうに考えております。

近藤(和)委員 稲についてはある程度ということだと思いますけれども、スイカは共済は関係ないということも含めて、しかも、お米での稼ぎをメインといいますか、これで本当に全面的に収益を確保するという方よりも、スイカはお金になりますから、このお金になるところがお金にならないということだと、余計に農家の方の収支でいけばダメージが大きいんです。

 今はどうしようもできないということのような答弁だったと私は思うんですが、ここはやはり、強靱化というか柔軟にというか、ソフト面での支援が必要だと思うんです。大臣、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 それぞれ個別個別のことにつきましては、しっかり調査をして実情を把握した上で、どういうふうにしていくのが最適なのか、地元とも協議をしながら今後検討してまいりたいというふうに思っております。

近藤(和)委員 検討という言葉、ありがとうございます。前向きな検討であることを願いますし、もうやらない、やる気をなくしたという方の支援を、こういった方々の支援をしてくださいと言っているわけではありません。やる気のある方々を助けてくださいということでございますので、何とかよろしくお願いいたします。

 それでは、続きまして、先ほどの土砂崩れや水路の破壊などとつながるんですけれども、共同作業がそもそも厳しいという地域がございます。今でも二次避難をされておられる方がございまして、様々な支援策、中山間の直接支払い、こちらは相当柔軟にしていただくということは伺ったんですが、水田活用の直接支払交付金であったり、多面的支払いのところも何とか柔軟にしていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 被災した水田におきまして、水田の復旧が間に合わず、水稲の作付が困難な場合であっても、大豆やソバなどの水稲以外の作物を作付し、適切な生産を行っていただくことによりまして、水田活用直接支払交付金等による支援が可能となっております。

 また、多面的機能支払交付金につきましては、甚大な自然災害によりまして当初の計画どおりの活動が実施できない場合であっても、活動組織が対象地域において被災した地域の復旧や農地周りの施設の補修、復旧等の活動をする場合には、本交付金の対象となります。

 当省としましても、引き続き、被災地域の状況を引き続き丁寧にお聞きをしながら対応してまいりたいというふうに考えております。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 集団で避難されておられる方もいらっしゃいますし、戻ってきても、家の片づけで、田んぼのところや畑などに行きたくないという方もいらっしゃると思います。しかも、今、直接関わっている方が少なくなってきているんですよね。非農業者の方が多くなってきているので、余計に共同作業も含めて大変だという現状もございますし、今までお米しか作っていなかったのに、突然ソバだ大豆だと言われても、ううんという。ただでさえ、今、頭がいっぱいになってしまっています、ストレスもかかってきている中で、では別のものをお金が出るからやってよということになかなかいかないですから、こちらに対しても丁寧に寄り添っていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、今、壊れてしまった納屋や倉庫、例えば農業機械を入れる倉庫であったり、能登であれば、志賀町というところが主にやっているんですが、ころ柿ですね、冬の時期に干して、そして商品化するというところでは、この納屋が随分と壊れてしまいました。そこで言われることが、原状回復、原状復帰をするだけではなくて、特に耐震機能を加えてくれないかという声は随分と聞いております。

 例えば、能登半島沖地震、十七年前にございました。大変な被害でした。震度六強でした。そして、珠洲市というところであれば、去年も震度六強、おととしも震度六弱の地震がありました。

 単に同じものを造ってもまた壊れてしまうんじゃないかということで、やはり十分の九の支援の中で耐震機能を加えていただきたいというのは、なりわいを続けてほしいという方にとってみれば切実な願いなんですが、いかがでしょうか。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 被災した農業用施設や農業用機械の再建、修繕等を支援する農地利用効率化等支援交付金の被災農業者支援タイプにつきましては、被災前の状態への復旧を支援する事業ということで、機能向上部分については自己負担で対応いただくことが原則となっておりますが、建築時には適法だった農業用倉庫が、その後の法改正により耐震基準を満たさない状態になっていた場合には、耐震基準を満たさないまま復旧することは適当ではないということで、現行の耐震基準を満たすために必要な工事も含め、原形復旧のための取組として支援対象としております。

 この場合、石川県で申しますと、国が二分の一、県と市町村が合わせて十分の四の上乗せ補助を行うということになっておりますので、合計、補助率十分の九の支援を受けることが可能であるということで御理解をいただければと思います。

近藤(和)委員 過去の耐震基準で造られたものであれば、原形復旧のということで、例えばですけれども、一億の建物が一億一千万になったとしても、それは原形復旧ということで認められるんでしょうか。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 現行の基準に合致をするために、今委員お話がありましたように一億一千万かかるということであれば、それは一億一千万が補助対象になるということで御理解をいただければと思います。

近藤(和)委員 本当に大変ありがたい御答弁でございます。本当にありがとうございます。

 それでは、なりわい支援、ほかの支援もそうなんですが、スマート農業ということは、大臣も所信の中で言われましたが、今後のこの原状回復、原形復旧の中で、あくまでもスマートじゃない機械の原状回復であって、本当は今後スマート農業を進めていきたいわけですよね。

 ですから、壊れてしまったものを、段階を置いて、原状回復をしてそして更にスマート農業の機械をするということではなくて、今回を機に、スマート機能も付加をした形での原形復旧、原形復旧とは違うとは思いますが、していくべきだと思いますが、いかがでしょうか。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど御説明させていただきましたように、農地利用効率化等支援交付金の被災農業者支援タイプでございますけれども、被災前の状態への復旧を支援する事業ということで、一般的な農業用機械等が被災した場合にスマート農業機械等を導入する場合には機能向上ということになりますので、原形復旧を超える部分については自己負担で対応をいただかなければいけないということになります。

 ただし、今回の災害をきっかけに、個々の経営体で被災した農業用機械等を個別に復旧するのではなくて、地域の共同活動により農業を継続しようとする場合、個々の被災農業用機械の復旧に要する費用を上限に、共同利用に必要な農業用機械を導入することが可能となります。共同利用に必要な範囲で、機能向上を、例えば大型化ですとか、スマート化ですとか、そういった機能向上した農業用機械を導入することは可能であるというふうに考えております。

 この場合は、先ほど申し上げましたとおり、今回の石川県で被災された方の場合には、国が二分の一、県と市町村が合わせて十分の四の上乗せ補助の活用ができるということになります。

 いずれにしましても、被災された方が今後の営農再開に当たってどういった形でやっていきたいのか、そういった御意向をきちんと受け止めながら、親身になった相談といいますか、そういった相談に応じながら、個別具体的に対応していければというふうに考えております。

近藤(和)委員 耐震機能と比べてはちょっと微妙な答弁かなというふうには思いますが、意向をしっかりと受け止めてということで、何とか柔軟に動いていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、基本法ですが、基本法は、我々農林水産の委員であれば、さあ大改正だということで気合が入っていると思っています。

 ただし、地震が起きる前の能登の私の地域でも、さあ基本法改正だということでの意識というか盛り上がりは余りありませんでした。残念ながら今はもう災害ですから、それどころじゃないという方がほとんどなんですけれども、全国的に見ても、本当に盛り上がっているのかということが大変不安です。

 世論調査のようなものはあったのかなということで調べてみましたら、三月三十一日に日本農業新聞が、三月二十六日に農林中金が調査しているんですよね。そこで、私もその調査を見て、これはまずいなと思ったのが、消費者と生産者、それぞれ千人ずつアンケートを取っているんですが、消費者の方でも、八割が課題があると感じているのに、食料供給に不安だと思っている人は僅か二割しかいない。これはまずいなというふうに思います。

 これは通告していないんですけれども、大臣、この消費者の、課題があるというところはいいと思いますが、不安に思っていない。不安をあおってもよくないと思いますが、ただ、不安だ、このままではまずいからこその、今回の基本法の改正だと思うんですね。このことについての御所見はいかがでしょうか。

坂本国務大臣 消費者の皆さんは、日常の生活の中でどれだけ自分たちの食料を確保できるかということを考えられます。そういう中で、やはり消費者として今のところ不安が少ないということだろうと思います。

 私たちは、今回の改正に当たりまして、二十年後、日本の農業はどうなるのかというようなことで、改正作業に着手をいたしました。そういうことで、やはり私たち農林水産省としては、改正をしなければならない。そういう消費者の方々との意識のずれが少しあるのかなというふうに思います。

近藤(和)委員 食料を余り作っていない東京や大阪の方々にも、本当に意識をしてほしいなというふうに思います。

 そして、その中で、今、食料自給率のことについては、昨日からも度々質疑に上げられていますが、大臣は、基本計画の中でしっかりとやっていきますよという答弁であったりとか、また、安定供給ということで、輸入も含めてということを、今のうちからそれを打ち出し過ぎるのはいかがかなというふうに考えています。

 それで、食料の自給率であれば、一度も今まで達成したことがないということは周知の事実でございますが、かけ声だけになってはいけないと思っています。

 そして、今までの基本計画の中でも、農地については、食料の自給率を上げていくためのベースの推測、これくらいは農地が必要ですよね、使っていかなければいけませんよねということは計画の中にはありますが、就業人口も含めて、これくらいの人にはやはり農業に就いていただかなきゃいけませんよねということもつなげた上での基本計画にならなくてはいけないと思いますし、基本法のところでもそこをしっかりと位置づける必要があると思うんですが、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 食料の自給率は、国内で生産される食料が国内の消費をどの程度充足しているかという結果を示す指標であります。国が基本理念に基づきまして施策を実施した結果が反映されるものであるというふうに考えております。

 このため、国としてコミットするのは、基本法の理念に定められた国民一人一人の食料安全保障、そして、国内の農業生産の増大などを通じた食料の安定供給や、農業の持続的発展であります。その観点から、麦、大豆、加工原料野菜などの輸入依存度の高い品目の国産への転換、それから、生産性の高い、付加価値向上による農業の収益向上、こういったものに取り組んでいるところであります。

 国民の皆様方、それから各都道府県に対しましては、国内の農業生産の増大を図ることによりまして、食料の安定供給を図ることなど改正基本法の普及啓発に努めたいというふうに思っております。同時に、食料自給率の持つ指標としての意味についても説明をしてまいりたいというふうに思っております。

近藤(和)委員 国民的理解なくしては、今回の改正の本当の意義を達成することはできないと思います。

 資料の一ですが、これは、バブルのときからの農水省の予算、自給率、就業者人口、これは水産業も入れてということでございますが、悲しいことに、ほぼリンクをしています。要は、農林水産関係の予算を増やさなければ食料の自給率というのは上がらないんじゃないですかということを、多くの方々に共通の認識として持っていただく必要があると思います。

 そして、農林水産省の関係予算だけではなくて、農林水産省の職員の数も、十年間の間に、二万二千三百七十九人から一万九千五百八十三人で、一割以上減っているんです。定員合理化計画の中で、十年間の中で、農林水産省だけが真面目にこの削減に取り組んで、ほかの省庁でいけば、ほかは総務省と防衛省しか減っていないんです。

 予算は減るわ、職員は減るわの中で、本当に食料自給率を、例えば目標を四〇%にするのか四五パーにするのか五〇%にするかは分かりませんが、本当の意味の土台のところを強くしていかなくてはいけないのではないでしょうか。大臣、いかがですか。

坂本国務大臣 厳しい定数の中で、そして厳しい予算の中で、私たちとしては、国民の皆様方一人一人に安定的に食料を供給する、その実現を図るためにはどのような政策を展開していったらいいのかということで、今回の基本法の改正というものになったところでございますので、現状の体制をしっかり今後も向上させていく、広げていくということは大事なことでありますけれども、まず、基本法の改正によりまして、食料の安定供給、こういったものに努めてまいりたいというふうに思っております。

近藤(和)委員 どのような立派な車を造っても運転手は必要ですし、油も必要ですから、是非ともこの立派な車を今回基本法として作り上げなければいけないと思いますが、運転をする農林水産省の方々の人件費、そして数、そしてさらには農林水産省に関しての予算ですね。一次産業に関わる方々へ、しっかりと、あなたたちこそが日本の食料を支えていただいているんだということも含めて、この枠組みを何とか〇・五歩でも一歩でも、大臣には、これは巡り合わせだというふうに思いますので、頑張っていただきたいと思います。

 それで、最後になりますが、資料の二です。

 都道府県別での食料自給率の目標は作っていないということで、確かにどこまでこの目標をぎちぎちにやっていいかという難しさはございますが、この資料を見ていただいて分かることが、赤で線を引いてあるところはカロリーも生産額でも一〇〇%を超えている。そして、青のところは生産額ベースで超えているというところでございます。ぱっと見てお分かりいただけるように、結局は地方が支えているんですよね、日本の食料というのは。

 ですから、地方への政策をしっかりと、農林水産省だけではなくて、ほかの政策も含めて、地方へもっと目を向けていくべきだということと、今、現実的な問題として、二〇二四問題、輸送のコストがかかりますから、まさにこの北と南の大生産地から運ぶことに対してコストがかかる、コストがかかることによってなりわいを諦めてしまうということがないように支援をしていただきたいと思いますし、東京や大阪ということをあえて名前を出しましたが、こういった地域の方々にも、国策として、食料の支援、一次産業への支援があなたたちを支えていっているんですよということを、今回の基本法の質疑を通じて、もっともっと盛り上げていく必要があると思うんです。

 大臣、最後に答弁をお願いいたします。

坂本国務大臣 委員御指摘のとおり、我が国の食は、北海道あるいは鹿児島などの消費地から遠い産地の生産によりまして支えられている面があります。

 今般の二〇二四問題によりまして、長距離輸送が困難になることや物流コストが上昇するなど、円滑な食品流通の維持に懸念がある中で、食料の安定供給を図るには、物流の確保が重要な課題となってまいります。

 このため、今回の基本法改正案におきましては、食料の円滑な入手の確保について新たに改正案第十九条を、これは食品アクセスのことでありますけれども、規定し、そして中継共同物流拠点の整備やモーダルシフトの推進、そして食料の輸送手段の確保の促進を図る旨を規定したところであります。

 今後、委員御指摘のように、産地から消費地への物流の確保も含めて、そして、地方がこれだけ食料生産と食料確保に対して貢献しているということをしっかりと周知していくと同時に、今後の日本の食料事情、食料体制というものを充実してまいりたいというふうに思っております。

近藤(和)委員 ありがとうございました。

野中委員長 次に、野間健君。

野間委員 立憲民主党の野間健です。

 今日は基本法改正案の審議ということで、まず食料の合理的な価格ということについてお尋ねしたいと思います。

 私も地域の農家の皆さんと話をしていますと、今回の基本法改正で、やはり、価格に目が向いた、価格にメスを入れてもらえると、大変喜んでいます。期待をしています。

 もう大臣も御承知のとおりですけれども、なかなか農業はもうからないんですよね。これは令和四年の資料ですけれども、小規模な農家も大規模なのも全て含めて、農業のいわゆる売上げ、一千百六十五万八千円。そのうち経費が幾らかかるか、一千六十七万四千円。手元に残るのは九十八万二千円なんですね。八・四五%です、令和四年ですけれども。というように、この中に人件費も入っていないところもあります。ですから、ほとんどもう赤字ですね、手元に残らない。

 そういう中で農業をやっていますので、生産者の皆さん。今回、これだけ、とりわけ、例えば畜産にしても、もう配合飼料が上がって牛の値が下がる。もちろん、ガソリン、電気、様々な農業資材、上がっています。そういう中でやっているわけですから、ああ、ここで価格をきちっと、合理的な価格を考えてくれているんだということで、大変大きな期待があるわけであります。

 そういった意味で、この合理的な価格、関係者の納得が得られる価格ということですけれども、生産者含めて、どういう価格を想定しているんでしょうか。どういう考えで価格を形成しようとしているんでしょうか。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 近年、資材費や人件費が長期的に上昇傾向にある中で、持続的な食料供給を確保し、平時からの食料安全保障を確立するために、食料システム関係者の合意の下、こうした恒常的なコスト増などが考慮された価格形成が行われることが必要となってきておるところでございます。

 このため、改正基本法案におきまして、基本理念として、食料の合理的価格の形成を位置づけておりますが、現行基本法第二条第一項においても、国民の理解と納得が得られる価格という意味で合理的な価格という用語が用いられていることも踏まえまして、食料システムの関係者全員が理解し納得をした上で合意する価格ということを意図して、今般、合理的な価格というふうに規定をしております。

 この施策を踏まえた施策の具体化につきましては、食料システムの関係者が一堂に集まる協議会を開催し、コスト指標の検討やコスト指標を活用した価格形成方法の具体化や国民理解の醸成に努めていくということとしておりますので、今後、基本法に基づく具体的な仕組みづくりについて、法制化も視野に検討してまいりたいと考えております。

野間委員 国民の納得する価格、そして関係者も納得する価格ということなんですが、本当にできるのかなと思います。生産者については、農家についても今申し上げたとおり、ほとんどぎりぎり、赤字でやっている。

 食品業界はどうかといいますと、これは二〇二一年のデータですけれども、営業利益というのが、これは全業界のあれですけれども、二・九%しかないんですよね。欧米の大きな食品産業を見ますと、ほとんど三割とか、三〇パー、五〇パー、利益を取っています。非常に低いです。これでも、その前年よりはよくなっているんですね。

 これは二〇一九年ですけれども、食品関連企業で上場企業が百三社ありますけれども、この中で一〇%を超える利益を出しているというのが十社もないんですね。二%未満というところも三十三社もあります。

 このように、食品業界、上場企業であっても、なかなか今、利益が出ない業界であります。恐らく、外国、欧米と違って、日本の食品業界、ほかの業界もそういうところはありますけれども、一次卸とか二次卸、非常に流通も複雑ですし、そういった中で利益を取り合っている、何とか分配して成り立たせているという現状があろうかと思いますけれども、こういう皆さん。

 そしてまた、消費者も、もう御承知のとおりですけれども、今年、四十年ぶりにエンゲル係数が二七%を超えて、家計に占める食費の割合が非常に、ほかの先進国のデータを見ましたけれども、イタリアが同じぐらいですけれども、他の国は大体二割、一〇%台、アメリカなんかは一四%ですけれども、ここまでエンゲル係数が上がっているのは、日本が先進国の中ではトップであります。

 そういった意味で、消費者も、これ以上また価格が上がると、本当に食費が三割超えてくるような事態にもなってきます。こういう三すくみ、四すくみの中で、どうやってみんなが納得できる価格を一体できるのか。それぞれ利益が私は反していると思うんですけれども、いかがなものでしょうか。

坂本国務大臣 昨年八月から、生産、加工、流通、小売そして消費等の幅広い関係者が一堂に集まります協議会を開催いたしました。そして、これまで、合理的な費用を考慮した価格形成の仕組み、そしてコスト指標の作成、そういったものについて論議をしてまいりました。

 委員言われるように、それぞれ利害がありますので、生産者、あるいは中に入る加工、流通、小売、そして消費者、なかなか、意見の乖離がまだまだあります。それは事実でございます。

 しかし、問題は、食料供給が持続可能なこと、あるいは食料生産が持続可能なこと、このことを常に念頭に考え、協調することを各関係者に働きかけていかなければいけないというふうに考えております。

 食の安全保障を確保する上で最も重要なことでありますので、食料システムの持続性の確保という共通の認識の下で、相互に理解し合えるよう、これからも丁寧に、そしていろいろな方法を駆使しながら、合意形成に向けてやってまいりたいというふうに思っております。

野間委員 そうなってくれることを望みますけれども、大臣もこの間、フランスのエガリム法もなかなかうまくいっていないという現状もおっしゃっておりました。

 そうしますと、それは本当にうまくいくのかどうか、うまくいかない場合もありますね。我々は、やはり、これはどうしても生産者に最終的なしわ寄せが行くんですね。歴史を見てもそうであります。そうしますと、やはり生産者に何らかの形で所得の補償をしていかないと、本当の食の安全保障は守れないと思います。

 我々は、かつて民主党時代、価格は市場に任せよう、所得は政策で補おうということを主張しておりました。それは今でも変わりありませんし、そういった手法を取るべきだと思うんですね。

 大臣、ちょっと通告はしていないんですけれども、岸田総理の本会議の答弁のこともちょっと関係するんですが、例えば、市役所の職員さんが兼業で農業をやっている。その人が米作りをしていて、六十歳になって市役所を定年退職しました、退職金が入りました。そうしたら、この人は退職金をもらったといって、お米を買いに来た人が、あんた随分収入が今年上がったね、その分、お米の売値をまけてくれよ、こうきたら、これはおかしいと思われますよね。大臣、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 そこは、お米の価格、物事の価格は、それぞれの流通の中で決まっていくもの、あるいはお互いの相対の中で決まっていくものであるというふうに思っております。

野間委員 この前、我が党の神谷議員が本会議で岸田総理に基本法の質疑をさせていただいたときに、総理は、かつての戸別所得補償制度、これは農地の集積や集約化が進まなかった、そしてまた、その農家に、先ほど言ったように、収入が、補填が入るから、その分、生産者の、要するに米の価格を低く抑えられるという懸念があったんだ、そういうことでこれは失敗したんだ、それでやめたんだという御答弁がありました。

 ですが、これは、今おかしいと大臣おっしゃったような、そういう誤りを犯した答弁じゃないかと思うんですね。戸別所得補償制度の補填と、それからお米の価格をリンクさせてやってのことで、実際これはそういうことが当時起きています。

 当時、やはり、山形県の方の農家に、いつも買ってもらっている業者さんが、あんたは戸別所得補償でお金をもらったんだからまけてくれと。それで、まけましたということを、ちゃんと当時のニュースで、そう言われるとまけざるを得なかったということを言っているんです。

 これは御承知かと思いますけれども、ある意味で優越的な地位の濫用で、公正取引、公取に違反する事案にもなるので訴えたらどうかということも言われたそうなんですが、この農家は、いや、そんなことをしたら来年また買ってくれなくなるからけんかできないんだ、長年のつき合いなので、おかしいと思ったけれども値引きせざるを得なかったと。

 こういうことが実際に起きているんですが、そういったことを理由に、戸別所得補償制度はおかしかった、あるいはそういう懸念があるんだということは、ちょっと総理の認識として相当間違っているんじゃないか。むしろ、そういったことをなくすのが政治がやらなきゃいけないことだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 総理の答弁は私も聞いておりました。あくまでも一般論としての懸念をされたものだというふうに認識しております。

 総理の答弁での需給バランスや取引価格への影響等への言及は、旧戸別所得補償制度の導入時と政策をめぐる環境が異なっていることなども踏まえ、あくまでも今の時点での一般論として懸念を表明されたものだというふうに思っております。

野間委員 これ以上は申しませんけれども、やはり、なかなか合理的な価格が本当にできない場合は、生産者にきちっと所得の補償をしていくということが我々としての最大の政策ではないかということを申し上げたいと思います。

 次に、今回、この基本法改正案の中で、非常に特異な言葉が何か所も入っています。それは、農業は環境に負荷を与えるんだと。私が見たところだと九か所、各条文に九か所も出ているんですね。

 かつては、基本法のときは、農業は自然循環機能があるんだ、多面的機能があるんだと。その言葉も少し残っていますけれども、環境に負荷を与えるとなりますと、農業あるいは畜産業は悪いんだ、悪者なんだ、環境を悪くするんだと、九か所も繰り返し繰り返し、述べられているんですね。

 今までおっしゃってきていた自然循環機能とか多面的機能というのは、どこに行ってしまったんでしょうか。

坂本国務大臣 まず、農業は、食料の供給機能のほかに、農業生産活動が行われることによりまして、国土保全に貢献している、そして良好な景観の形成など多面的機能を発揮をいたしております。国民生活、そして国民経済の安定に重要な役割を果たしているもの、それは間違いありません。

 また、農業の持続的な発展を図るためには、農業生産に当たって可能な限り自然の再生力を活用し、自然循環機能の維持増進が図られることが重要であるというふうに考えております。

 ただ、一方、稲作はメタン等の排出を指摘をされております。それから燃料燃焼、そして家畜排せつ物、CO2や硝酸窒素などの影響によりまして温室効果ガスが発生しているほか、化学肥料、化学農薬の不適切な使用を通じた環境への影響が懸念をされております。

 国内外におきまして、農林漁業、食品産業における環境への負荷の低減を図ることは待ったなしの重要な政策課題というふうになっているところでありますので、今般の食料・農業・農村基本法におきましても、農業が環境に負荷を与えている側面にも着目をして、環境と調和の取れた食料システムの確立というものを柱として位置づけているところであります。

野間委員 農水省のみどり戦略、グリーン戦略、これを別に否定するものではないんですけれども、先ほど古川委員からも御指摘もあったと思うんですけれども、ここ数年、ヨーロッパで農業者が大反乱を各地で起こしていますよね。高速道路をトラクターで封鎖したり、フランスもベルギーもドイツも、各国で大変な反乱が起きています。

 これは我が国もある意味そうですけれども、今までやってきた農業は、農水省とかあるいはJAが推奨してきた農業、農薬も使ったり、いろいろやってきたわけですね。これを急激に、ヨーロッパの場合、今、転換させようとしています。これに対する反乱でありますし、もちろん、ウクライナから安い小麦が関税なしで入ってきたり、あるいは中南米からいろいろな畜産物が安く入ってきたり、もろもろの原因があろうかと思うんですが、今大臣もおっしゃいましたけれども、急激にそういうことをすると、農家は本当にやっていけないですよね。

 オランダなんかでも、畜産を三割減らすんだ、じゃ、その後どうするのか。結局、安い中南米のものが入ってくるというように、自分たちの産業を潰してしまうようなことが、過激な、ある意味での環境主義で起きつつあるわけです。

 農水省も、そこまでとは言いませんけれども、今度、来年度から、この六年度からになるんでしょうかね、全ての補助金事業を、さっきお話がありましたように、補助金の支給については環境に配慮したものを要件とするということも言われましたし、これは余りに過激なみどり戦略を発動されると農家もついていけないということになりますので、そこは徐々にやっていただきたいと思うんですね。

 それとあと、よく畜産農家の方から、自分たちが、牛が悪者になっているんだと。牛は、げっぷをするわ、いろいろな、トウモロコシとかそういう輸入物を食べて、これはいろいろ資料も出ていますけれども、それだけのものを日本で国内で作れば二・一倍の耕地面積が要るんだ、それを外国から輸入して、大量の水を使ってやっている、そういう畜産はけしからぬというふうなことも言われるわけであります。

 これはインドの農業大臣が言ったことなんですけれども、インドの場合、ヒンズー教で牛を神聖視していますけれども、それは、単に宗教的な理由というよりは、牛が牧草を食べてくれる、そして、牛ふんで地域に有機物を与えて、そこの土地を耕してくれている、そしてまた、死んだ後は皮を残して、それも一つの製品になる、そういう、非常に経済的に有用だから牛があがめられているということなんですけれども。

 牧草を食べたり、そういったことで牛の飼い方を変えることによって、環境への負荷というのは当然減らすことはできるわけでありまして、今のあれでいきますと、畜産業自体が悪いんだというような方向になっているので、これは改めていただきたいと思いますけれども、大臣の御見解はいかがでしょうか。

坂本国務大臣 幾つか御指摘をいただきました。

 ヨーロッパで起きている様々な農家のデモ、そういったものは、ウクライナの問題、あるいはそれ以外の地域紛争の問題、そして環境の問題、いろいろなものがやはり重なっているんだろうというふうに思います。

 それで、急激な変化、急激な規制というのは、やはり農家の皆さん方の反発を招く、これは洋の東西を問わないというふうに思っております。

 そこで、我々農林水産省では、令和三年五月にみどりの食料システム戦略を策定をいたしました。食料システム全体で環境負荷の低減に今取り組んでいるところです。

 みどりの食料システム戦略におきましては、アジア・モンスーン地域の温暖湿潤な気候条件を踏まえた上で目標設定を行い、様々な支援策を講じながら、まずは、既存の技術の普及、そして定着に取り組んでいるところです。

 また、令和四年七月にはみどりの食料システム法が施行され、同法に基づき認定を受けた農業者は、本年三月末までに全国で四千名を超えるなど、目標実現に向けた取組が広がってきておりまして、引き続き、同法のメリット措置の活用を促しながら、認定を進めていくこととしております。

 そして、来年改定されます、七年度に改定されます環境農業、そして、先ほど答弁いたしました、令和九年度からの新たな仕組みづくり、こういったものを重ねながら、徐々に徐々に、そして丁寧に丁寧に、施策を推進してまいりたいというふうに思っております。

野間委員 是非丁寧に進めていただきたいと思います。

 続いて、今後、法案としてもまた審議がなされると思いますけれども、スマート農業技術を促進していこうということなんですが、その前提として、これから二十年間で、基幹的な農業従事者が現在の四分の一、三十万人になるんだ、減少するんだという前提が置かれています。これについては、なぜそうなのかということは、いずれの機会にまたお聞きしたいんですが、そうなると、このスマート化ということを進めていかなきゃいけないということなんですけれども。

 この前、大臣も、三月二十七日ですか、例の小林製薬の紅こうじの問題で、首相官邸にも関係閣僚会議で行かれたわけですね。機能性表示食品ということですけれども、これに、農水省の管轄でいいますと、似たようなものと言ったらなんですけれども、ゲノム編集食品ですとかフードテックという問題があります。

 恐らく、これだけ、三十万人しか農業者がいなくなれば、それこそ食料は工場で作るとか、そういう何らかの形で科学的に合成していくというか、そういうことも考えているがゆえに、こういったものが出てくると思うんです。

 この紅こうじの問題も、アメリカのダイエタリーサプリメント制度というのをまねして、当時、安倍総理がつくったそうですけれども、この中で、アメリカの制度は、しかし、まず最初に、危険性がある場合はどうするかと、きちんといろいろな規定を置いていたんですね。ところが、日本の場合は、ただ届出をすればいいんだ、それでもう売っていいという、全く検査も承認もない、いわゆるサプリメントになってしまったところにこういう問題が起きているわけです。

 同じように、ゲノム編集食品というのも本当に大丈夫なのかなと思いますよね。例えば肉厚のマダイを今作っています、実際、商品化されていますね。あるいは、ギャバというトマト。

 例えば、このマダイ、タイですね。タイの何をするかというと、我々人間もそうですけれども、成長する遺伝子がありますよね、当然子供から大人まで。しかし、ある段階で止める、成長を抑制する遺伝子が当然あるわけですね。なければ、人間、二メーター、三メーターになって、とんでもなく大きなものになりますけれども。そういう成長を当然、抑制する遺伝子があるんですけれども、その遺伝子をマダイから削除しちゃうんですね。それで、どんどんどんどんマダイが大きくなって、その生産性が、大きなものができるということで、よかった、よかったということなんですが、そういったものが本当に果たして安全なのか。

 ちょっとにわかに、自然の摂理から余りに離れて、安全とは言い難いと思うんですけれども。そういったゲノム編集食品でありますとか、あるいは、今、コオロギの粉末を食品にしようとか、いろいろな、ちょっと信じられないようなものがフードテックという形で、安全性などがどこまで確認されているか分からないようなものが入り込んできているわけであります。

 こういったこと、今回の紅こうじの問題もありましたので、もう少し安全性をきちっと確認して世の中に出すというふうにすべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

川合政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、ゲノム編集の方でございますが、この安全性につきまして、ゲノム編集技術は、自然で起きるランダムな突然変異を狙った場所で起こす技術でございまして、効率的に品種改良を行うことができるということで期待されている技術でございます。一方で、ゲノム編集は、遺伝子組み換えのように外来遺伝子を導入する技術ではないものの、新規性の高い技術でございまして、消費者の理解の醸成が必要でございます。

 ゲノム編集農林水産物につきましては、その流通等に先立ちまして、食品安全の観点からは消費者庁が、生物多様性確保等の観点からは農林水産省がそれぞれ専門家に意見を伺いつつ、問題ないことを確認しております。

 また、フードテックの関係でございます。

 フードテックにつきましては、細胞性食品でございます。安全性が確認されることが大前提でありますが、現在、厚生労働省薬事・食品衛生審議会で議論が進められていると承知しております。

 農林水産省では、令和二年に、民間企業、研究機関、行政から成るフードテック官民協議会を立ち上げまして、各分野の現状や課題について具体的な議論を進めておりますが、協議会が自ら安全性について検討することではなくて、ロードマップにおいて、細胞性食品に関しまして、厚生労働省、農林水産省等が、海外の動向等についての情報収集、必要な措置やスケジュールについての検討を行っていくこととしております。

野間委員 安全性を確認しているということなんですが、本当にこういったものを何年も食べて大丈夫なのかということまでの確認はされていないと思いますので、そういったところもやっていただかないと。

 これは釈迦に説法で申し訳ないですけれども、人類は何十万年、何百万年、いろいろなものを食べながら取捨選択して、今日が来ているわけでありますから、そういう新規なものを作って本当に大丈夫かというのは甚だ疑問だと思いますので、確実に安全性を確保していただきたいと思います。

 それで、この法案の二十条、三十条でうたっている先端的な技術の活用というのは、やはりフードテックとかゲノム編集食品、こういったことも当然入っているという理解でよろしいんでしょうか。

川合政府参考人 お答えいたします。

 今般の基本法の改正案でございますが、基本理念におきまして、食料供給の各段階において、環境負荷低減の取組の促進など、生産から消費に至る食料システムを環境と調和の取れたものにしていく旨を位置づけております。

 また、基本的施策におきまして、農業生産活動における環境負荷の低減を図るため、環境への負荷の低減に資する技術を活用した生産方式の導入を促進することとしております。

 農林水産省では、みどりの食料システム戦略におきまして、こういった化学肥料、化学農薬の低減等の実現に向けた技術開発、普及をしておりますが、こういったものにつきましても、ゲノム編集技術やフードテック等の先端技術の活用も必要であると考えておりまして、これらの新しい技術について消費者への理解を深めつつ、引き続き研究開発や実用化を推進してまいります。

 また、みどりの食料システム戦略におきましては、革新的な技術、生産体系の実用化に際しましては、食や環境への安全の確保はもとより、科学的な知見に基づく合意が形成されることが重要でありまして、国民への情報発信、双方向のコミュニケーションを丁寧に行うこととしております。

野間委員 こういった技術が含まれているということでありますので、非常にこれは危険性も高いと思いますので、安全確保には万全を期していただきたいと思います。

 最後の質問になります。

 私も、地元は鹿児島県、畜産が盛んであります。一番今大きな問題は、もちろんこの生産者の問題はありますけれども、獣医師さんが極端に不足をしています。とりわけ県庁で、いわゆる公務員獣医師さんという方々がどんどんどんどん、今、団塊の世代以降、辞めていってしまって、なかなか新しく入ってきてくれない。確かに、犬や猫の小動物の獣医師さんは、これは女性がかなり、今半分以上を占めていますけれども、なりたい、やってみたいという方が増えております。しかし、こういう牛や豚、鳥、いわゆる産業動物を扱う、とりわけ公務員として勤務をしながら獣医師をやるという方が極端に減っています。

 と申しますのも、私の地元では、例えば鳥インフルエンザが発生する、豚熱が発生する、そういったところにいち早く駆けつけて様々な対処をしなければならないということがあって、これはやはり獣医師さんでないと対応できない問題であります。

 いろいろな努力はされていると思うんですけれども、獣医師さん、私も、鳥インフルエンザのところで従事されている方にも聞きましたけれども、鳥を殺処分する、一羽一羽ビニールに入れて、ガスを入れて殺処分する。埋めたらまた生き返ってよみがえってきたり、これは本当に精神的にも、メンタルの面でも本当に大変な作業なんですね。県庁の職員さんも農水省の職員さんもみんな加勢してやっていただいていますけれども、そういった中で指揮を執る、大変な仕事です。仕事ですけれども、こういう方がいないと畜産の健全な発展もないわけであります。

 そういった意味で、どういう形で獣医師さんの確保を考えて、実行されているんでしょうか。

安岡政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、豚熱などの家畜伝染病の防疫業務などに携わる公務員獣医師というのは、言うまでもなく、我が国の畜産業にとって不可欠な存在でございます。一方で、委員御指摘のとおり、まさに地域によってはその確保が困難となっているところでございます。

 農水省では、こうした公務員獣医師を含む産業動物獣医師を確保するため、一つは、地域で産業動物獣医師として就職することを条件に、獣医学生などに修学資金を給付する取組のほか、実際に県の家畜保健衛生所で体験学習を行うなどの獣医学生の産業動物分野への関心を高める取組、さらには、デジタル技術を活用して、まさに移動の時間などが制約となっていますので、時間や距離、人的資源の制約を緩和する遠隔診療の導入でありますとか、また、女性の話が出てまいりましたけれども、結婚や育児を理由に離職する女性獣医師さんも多うございますので、こうした方が職場復帰や再就職しやすくなるような研修の実施などに対する支援を行っているところでございます。

 また、各県では、独自の取組によって公務員獣医師の人員確保に向けて取り組んでおります。確保に向けた優良事例を収集、共有することで取組の横展開を行っているところでございます。

 引き続き、各都道府県と連携して、公務員獣医師を始めとした産業獣医師の確保に努めてまいります。

野間委員 是非、やはり本当に厳しい仕事でありますので、処遇面等も含めて配慮をしていただきたいと思います。

 これは最後になりますけれども、農水省の管轄ではないんですが、この獣医師さんと同等に重要な役割をしている方がいます。それは、畜産関係のいろいろな試験研究所、研究機関、試験機関がありますけれども、そういったところで、いわゆる技術補佐員さんという、いわゆる現業職員ということなんですが、こういった方も今どんどんどんどん、国の政策で現業職員はもう全部雇わなくていいということになっています。

 ただ、こういう方は、私も見たことありますけれども、本当に棒一本で牛をこっちにやったり、あっちにやったり、もう完全に言うことを聞かせることができて、牛を操る職人ですね。何十年にわたってそういう経験を積んで、牛と一体となって、いろいろな形で畜産に貢献しているんですけれども、こういった現業職員を全部、今、これは総務省の指示ということでありますけれども、ほとんどの自治体でいなくなっているわけです。

 こういったこともこの畜産政策の中できちっと見ていただかないと、紙の上だけでは、また獣医師さんだけではできない問題でありますので、こういったことについても、大臣、是非御配慮いただきますよう、最後に一言お願いしたいと思います。

坂本国務大臣 私の地元でも、阿蘇などの中山間地で、やはり非常に獣医師さんが不足しておりまして、どうするか。そして、今、それを補佐する方々も不足しております。

 しっかり取り組んでまいりたいと思います。

野間委員 ありがとうございました。終わります。

野中委員長 次に、石川香織君。

石川(香)委員 立憲民主党の石川香織です。

 今日は、委員の皆様に御配慮いただきまして、三十五分間、質問させていただきたいと思います。

 さきの衆議院の予算委員会等でも、この基本法を含めて、農業の現状について坂本大臣に質問させていただいてまいりましたけれども、その予算委員会の質疑なども踏まえながら、改めてお伺いをさせていただきたいと思います。

 初めに伺いますのは、先日の日本農業新聞での記事についてであります。三月七日の農業基本政策検討委員会の会合で、これは予算委員会ですけれども、米政策に対して議論がなされた際に、小野寺五典予算委員長が、今回、この予算委員会において農政で積極的に発信をしているのは野党だ、自民党はむしろ農業の時間が少なかったということを発信をされたという記事がありました。

 私も予算委員として全ての審議を見ておりましたけれども、与党議員から、農業を始め一次産業の質疑はほとんどなかったなという印象を持っております。

 まず、率直に、この小野寺委員長の感想について、坂本大臣も予算委員会を通じてどのようにお感じになったかということをお伺いしたいと思います。

坂本国務大臣 多分、それは予算委員会とかそういう場でのことを言われたんだろうというふうに思っております。

 自民党の方では、令和四年二月に食料安全保障委員会、この食料・農業・農村基本法の改正に向けての委員会を発足をいたしました。そして、その秋には分科会を立ち上げました。小野寺先生は基本農政の分科会の座長でありまして、私が人と農地の分科会の座長、そして、その後、野村先生になりましたけれども、野村先生が食品確保等の座長ということで、論議をしてまいりました。

 ですから、この食料・農業・農村基本法の改正に向けての党としての準備は、多分一年半以上かけてやってこられたんだろうというふうに思っております。

 野党の議員の皆様にも、今回、基本法改正が国会に提出されたこともありますので、予算委員会等におきまして、農政の関係で熱心に御質問をいただきました。ありがたい限りでございます。

 今後、この委員会を通して更に論議を深めていただいて、最終的に充実した基本法の改正が成立するようにというふうに願っているところであります。

石川(香)委員 いろいろと議論をされてこられたということはそのとおりだと思いますけれども、予算委員長が、このように苦言ですね、呈されたということは、これは重く受け止めるべきではないかなと思っております。

 ちなみに、野党が戸別所得補償制度の復活を主張していることに対して警戒感を示したと、自民党の側ではですね。それで、次期総選挙で大きな課題になると指摘というところまで書いておりますので、この点についても、私たち立憲民主党も、多くの時間の中でこの農業の現状を取り上げて、とにかく所得対策が大事であるということを訴えてまいりました。

 今回のこの基本法の改正に当たりましても、今までの農政の失敗をしっかり検証した上で、生産コストの上昇分を国が補填する直接支払制度の創設であったり、農地を守る農家に対して、面積に応じて助成金を支払う仕組みなども提案していきたいということで、かなりこの現状に対して危機感を持って、この所得対策、我々も真剣に議論をして進めていきたいと思っております。

 農業の現場で起きていることと、それから国会で議論をする場、この認識がしっかりやはり共有されていないと、農家の皆さんが求めている今の現状を改善するための策を打つことができないと思っております。その現場との乖離を少しでも埋めるために、政治家が現場に行って話を聞いているということだと思っておりますので、私もそれを心がけて、現場の話も含めて、今日は質問させていただければなと思っております。

 再び大臣にお伺いをさせていただきます。

 予算委員会の中で何度もやり取りをさせていただきました、この農家所得の政府の認識ということについて質問させていただきます。

 二月の五日、私が質問いたしましたときに、現状の所得についての認識を問いますと、坂本大臣は、所得そのものは上がっているという答弁をされました。

 私は、そんなはずがないということで、もう一度質問するんですけれども、所得そのものが上がっていると言われた根拠としては、この農業所得、主業経営体、全農業経営体、共に取っているこのデータの中で、平成二十五年から平成三十年は、確かにこれは増加をしている、コロナ前ですけれども。

 調査方法が令和元年から変わりまして、ここになって、調査方法が変わったということだけが原因ではなく、物価高騰の影響であったり、いろいろな影響を受けて所得が下がってきているということがもうデータとして明らかになっているにもかかわらず、所得が上がっているということをおっしゃられたので、もう一度確認をしたところ、大臣の肌感覚ではどうでしょうかと質問をさせていただきました。したらば、現状は、肌感覚としては厳しいということもおっしゃったわけですけれども、ただ、所得そのものは上がっているというふうに思いますと更にお話しなさった。

 さらに、資材高騰などで大変だということは当然理解をしていただいておりましたけれども、団体の方からは、何とかやっていける、ありがたいということも、北海道の方からお聞きしていますということを答弁されました。この点が、このやり取りを見ていた北海道ですとか様々な現場の生産者の方から、やっていけるということではない、非常に厳しいんだという言葉をいただいております。

 このことについて、改めて、政策が十分だというふうにも取られかねないということですけれども、この御認識について再度御確認をさせていただければと思います。

坂本国務大臣 農業所得につきましては、全体では、私は上昇傾向にあるというふうに思います。ただ、足下で物価高騰の影響を受けまして、経営が非常に厳しいという現場の声は重く受け止めております。

 とりわけ、酪農、畜産等におきましては、日常のやはりコストが非常にかかるわけですので、厳しい経営が続いているというふうに思っております。

 そういう中で、私たちは、令和四年から五年、あるいは令和五年にかけまして、緊急の補填策、あるいは特別な対策、そういったものをやってまいりました。五千七百億円の予算措置もしたところでございます。そういうことで、厳しい中にも、この状況を何としてでも乗り切るべく、様々な経営判断、あるいはブランド化、こういったものも進めていかなければいけないというふうに思っております。

 何とかやっていけると言われたのは、それぞれいろいろな方の受け取りようはあると思いますけれども、私は、酪政連の代表の方、その方は北海道ですけれども、そういった方から、こういう対応策で何とかやっていけているので今後もよろしくお願いしますというようなことを言われたということを、あの中で答弁をさせていただきました。

石川(香)委員 経営そのものは厳しいということを御認識されつつも、所得、これは私は可処分所得、つまり手取りの部分を言ったつもりだったんですけれども、増加傾向にあるということをお話しされておりました。

 確かに、肥料、飼料高騰対策を打っていただいたということはありますけれども、これはいずれも、引き続き継続しているものは今ありません。農家さんの中には、いろいろな対策をして収入の部分をしっかり確保されているという方、伸びている方は当然いらっしゃると思いますけれども、全体としては、データにしても、所得は下がっている傾向があるということは事実としてあると思うんですね。

 農家の方はしっかり現状を認識されていると私たちも認識しなきゃいけないと思うんですけれども、農業に詳しくない方がこの大臣の答弁を聞いたら、ああ、何か農家はもうかっているんじゃないかということを、勘違いしてしまうのではないかなと思うんですね。

 よくテレビなどで街頭インタビューがありますけれども、一般の方が、野菜の価格が下がると助かりますというインタビューの声を取り上げる。ただ、一方で、価格転嫁が進まず、農家が泣いているという現状はわざわざ放送されなかったりするわけでありまして、やはり消費者目線だけの捉え方というのが一層進んでしまうのではないかなと思います。

 つまり、ネガティブな話ばかりするべきではないと思うんですけれども、まずしっかり現状を把握して直視をするということが現場で汗を流す生産者の支えにつながるのではないかということを指摘をさせていただきたいと思います。

 私は、農業は非常に政治との結びつきが大きい業種だと思っています。農業は国の基であるという考えの下で、国も様々な政策の中で農業者を支援してこられたと思っております。

 その一方で、これまでの農政としましては、TPPですとかEPAですとか、海外との価格競争に国内の農業をさらしてきて、民間の参入を促して、改革という名の下に規制緩和を行ってきたと思います。これは、全てが悪いとは言いませんが、国会でも農業界でも反発が大きかったものもあったと思います。

 そして、二〇一三年、所得倍増という目標も掲げておりました。この達成度を改めて伺いたいと思います。

杉中政府参考人 農業、農村の所得倍増目標についてお答えいたします。

 まず、農業所得についてでございますけれども、令和七年の三・五兆円目標に対しまして、平成二十五年の二・九兆円から令和三年には三・三兆円まで増加しましたけれども、令和四年は、御指摘のように、肥料、飼料などの農業生産資材の価格が上昇したこと等の影響により、三・一兆円となっております。

 今後とも、農業所得の増大に向けて、農業の生産性の向上と付加価値の向上により、収益性の高い経営を実現することが重要だと考えております。このため、需要に応じた生産を推進しつつ、農業経営の経営管理能力の向上、農産物のブランド化による付加価値向上や輸出拡大による収入の増加、農地の集積、集約や、スマート技術の開発、実用化の加速化等による生産性向上等の施策を推進していきたいと考えております。

 また、農村地域の関連所得でございますけれども、令和七年度の四・五兆円目標に対し、平成二十五年度の一・二兆円から令和三年度は二・三兆円となっているところでございます。

 これは、農業者が主体となった加工、直売の分野が人口減少に伴う国内市場の縮小などにより想定よりも伸び悩んだことなどが要因であると考えております。

 農村地域の関連所得の拡大に向けまして、六次産業化や関連商品の輸出促進、農村に滞在して地域の食や体験を提供する農泊を始めとする農村地域の観光振興、食品産業等との連携強化などを推進してまいります。

石川(香)委員 所得を増やすこと、これは大変重要です。現に、所得対策が重要だということも訴えてまいりましたけれども、所得倍増という目標の下で令和七年度までこの目標に向かってやっていくということでありますけれども、ただ、この所得倍増という言葉が今の現場が奮い立つネーミングかといいますと、私は、ちょっと雰囲気が違うかなと正直感じております。

 今の雰囲気としては、これまで大変なことがあって、体力を温存していた時期からようやく動き出す、元気をつけていくというタイミングではないかなと思います。

 この所得倍増という言葉は、現場の方にとってかえって負担に感じるようなものであってはいけないと思うんですけれども、そういう意味で、この所得倍増という目標は今後も続けていくのか。そして、振り返りと今後の方向性についても伺います。

杉中政府参考人 まず、所得倍増目標でございますけれども、平成二十七年の食料・農業・農村基本計画の策定の際に、十年先の令和七年を目標年として設定したところでございます。目標年である令和七年に向け、引き続き、農業・農村所得倍増の達成に向けた取組を進めてまいります。

 その上で、今後、七年度以降ですけれども、農業の収益性の向上を図るためには生産性向上や付加価値向上等の取組が重要だということで、こういった要素を考える必要があること、また、農業者が減少し、人口減少によって国内市場規模が縮小していく中で、農業総産出額をベースとする総額としての所得目標が適当なのかなど、様々な課題があるというふうに考えております。

 令和七年度以降の目標の在り方については、改正基本法に基づく基本計画の策定に向けた議論の中で検討していきたいというふうに考えております。

石川(香)委員 これまでの農政の方向性として、生産性の向上、増産、増頭といった、こういう言葉を意識せざるを得なかったのではないかと思うんですね。今は増頭とか増産という言葉から一度離れて、本当の意味で生産者が奮い立つ、現場に寄り添える目標、方向性が重要ではないかと思っております。

 この方向性は政策にも色濃く反映されていると思います。農業を行うには必ず農機具の購入が必要になりますけれども、今、機械の価格が非常に値上がりをしております。以前は一千万円で購入していた機械が今倍になっている、二千万ということもざらでありまして、補助が出ているとはいえ、機械の更新や導入が非常に農家の大きな負担になっています。

 ただ、機械の更新は定期的にやってきますし、戸数が減り、一戸当たりの面積が大きくなって経営規模が大きくなっていると、省力化を進めていかなければいけないということで、機械を新たに購入しなければいけないということは、当然、必須になると思います。

 農林水産省では様々な機械の導入を後押しするメニューが多くあります。ただ、その要件として、三戸以上の申請であったり、五人の連名を出すといったものが多くて、産地の方向性を含む合意形成に苦労する農家も多くいるということを聞いております。個々の農家で大規模化しているという地域も当然あるわけですが、個人で申請できる機械がある補助のメニューというものはあるんでしょうか。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 地域計画の目標地図に位置づけられる担い手に対しまして、経営改善に必要な農業機械等の導入を支援する施策といたしまして農地利用効率化等支援交付金を措置をしております。この農地利用効率化等支援交付金につきましては、個人、法人を問わず、一経営体での申請が可能となっております。

石川(香)委員 そういったものもあるということなんですけれども、産地パワーアップ事業、例えば、これは収益力強化、計画的に取り組む産地に向けて申請をするというものでありますけれども、既に努力をして規模が大きくなっている農家に関しては要件を満たすのが非常に難しくなっているということを多くの農家から聞いております。お父さんの世代で大きくして、息子世代で機械を導入しようと思っても、更なる生産性の向上のためにはかなり無理をして計画を立てなければいけない。そして、成果目標もありますので、達成できなかった場合は、最悪の場合、補助金の返還ということにもなってしまうということなんですね。

 様々な条件の中で、生産量を伸ばすという成果目標は非常に大きな負担になっておりますし、ただでさえ高額な農機具を購入する、非常に大変なことですので、これが離農のきっかけになり得るということもある。これはあってはならないということなんですけれども。

 もちろん、農家の所得向上は国の施策としても力を入れるべきだと思いますし、農家自身も取り組んでいると思いますが、一方で、農家戸数の減少を抑えるということも最大の目標の一つだと思っております。

 つまり、農家戸数の減少を抑えるためには、経営の規模や方向性にかかわらず、経営の継続を価値とする、こういう価値観も重要ではないかと思います。これからは、生産量を伸ばす、大きくするということだけが価値ではなく、現状維持、まあ現状維持といっても努力をしていないわけではなくて、物価高ですとかあらゆる外的要因に負けずに、現状維持ということは非常に努力があってこそなし得ることであって、ここをどうやって評価するかということだと思います。ここを評価できる仕組みが大事だと思います。

 経営を継続するためには、機械の導入の際の補助、非常にモチベーションが高まる重要な政策だと思います。こうした機械の導入の際の補助金の申請の要件を緩和するといったことが有効だと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 農業機械等の導入を支援する事業には、今委員言われました産地生産基盤パワーアップ事業、それから農地利用効率化等支援交付金、こういったものがあります。産地の収益力向上など、農業者の経営改善を目標として、その実現に取り組む産地や農業者を支援するための事業というふうにしております。

 これは、農業が産業として持続発展していくことが必要であるという観点に立って、このために、農業の生産性向上と付加価値向上によりまして、収益性の高い経営を実現することが重要であるという認識に基づいたものでございます。

 収益力の向上等の取組に支援を集中的に実施するため、単純な農業経営の継続への支援は適当ではないというふうに考えますが、これらの事業におきまして、生産コストそれから労働生産性の向上だけではなくて、販売額や輸出出荷額の増加など、経営継続に不可欠となる複数の成果目標から選択可能となるよう成果目標を追加するなど、産地の農業者がその実情を踏まえて事業を活用できるようにしているところでございます。

 農林水産省といたしましても、現場の皆さんが農業機械等の導入に取り組みやすくなるよう、事業の説明会あるいは産地との意見交換会などを、今後も丁寧に説明してまいりたいというふうに思っております。

石川(香)委員 今、単純な経営の支援、これは適当ではないというような御答弁がありましたけれども、農家戸数を減らさないという目標は非常に重要だと思います。それに、このことに関しては非常に現場からも要望が強い話ですので、是非この声を念頭に入れていただきたいなと思います。

 では、次の質問に参ります。

 今回の基本法の改正では、備蓄の重要性についても触れられております。不測時に備えて国内にどれぐらいの備蓄があるのか、国が直接備蓄をしたり備蓄を支援している品目以外にも、民間の備蓄の在庫を明らかにしていくということは重要だと思っております。

 ただ、この民間において、どういった品目を国が把握するべき対象とするのか、今の米、小麦、飼料以外に品目を広げていくのかという点について伺います。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 備蓄は、国内生産、輸入と並ぶ食料供給の重要な手段であり、特に食料供給が大幅に不足する事態における初期の対応策として大変重要です。重要な食料の備蓄の在り方については、今国会に提出している食料供給困難事態対策法案における基本方針の中で定めていく予定としております。

 委員御指摘のように、食料供給が大幅に不足する事態においては、国内に当該食料がどの程度存在するのかを把握した上で、必要となる供給確保対策を講じることとなりますけれども、現在では、多くの品目で、民間在庫、特に流通在庫が把握できていない状況でございます。

 これを踏まえ、今国会に提出する法案において、これら民間の在庫量を含む必要な情報を調査できる規定を措置したところでございます。この措置の対象品目につきましては、今後、食料供給困難事態対策法案に基づく規定、政令で特定食料として指定されることになりますけれども、この三品目以外の品目も視野に入れた形で検討を進めていきたいというふうに考えています。

石川(香)委員 では、この民間の備蓄というものに、農家の備蓄が対象になり得るのかという点についても伺います。

 農家の中には大規模な経営をされているところも多いわけですので、この点について、改めて伺います。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 食料供給困難事態対策法案において設けられている、需給状況に関する報告徴収の対象につきましては、対象品目の出荷、販売、輸入、生産等の事業を行う者等を想定しております。

 品目ごとの流通の実態によって、どの段階に在庫があるかは異なりますが、一部の品目につきましては、大規模な農家や法人、農協等が出荷のために一定量の在庫を所有している場合もありまして、この場合には、個別の農家や法人が持つ在庫についても調査対象になり得ると考えております。

石川(香)委員 今回の基本法では、この計画作成に従わなかったり立入りを拒否すると農家に罰金も科されるということですので、この農家の備蓄というのは農家の資産でありますので、ここまで把握をさせるということに関しては、現場からいろいろな声が出るのではないかと個人的には感じております。この点については、しっかり慎重に進めていく必要があるのではないかと思います。

 そして、次に、難しいのが、一体どのぐらいの備蓄があればみんなが安心できる量なのかというところです。

 このことに関しては、今日は質問も用意しておりましたけれども、ちょっと時間の都合上、意見だけ述べさせていただきますけれども、世界に比べて日本がどうなのかという点については、非常に国民に分かりやすい説明で設定をしなければいけないと思いますので、あとはコストとの兼ね合いでもありますけれども、安心できる備蓄量、そして品目、これを日々議論して深めていく必要があるという指摘をさせていただきたいと思います。

 では、次の質問に参ります。

 国内のバターの流通状況について伺います。

 私の選挙区はスイーツ王国とも言われておりまして、たくさんのお菓子屋さんがあります。そして、今、町のお菓子屋さんが非常に困っていることがありまして、あるお菓子屋さんからは、バターが手に入らない、通常の七割ぐらいしか確保できないといった声や、いつも買っている問屋さんからは毎回違うメーカーのバターが届くという、その供給の不安定さで大変困っているという声が相次いでおります。

 今、バター不足は起こっているんでしょうか。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 本年一月末に業界が公表した乳製品の需給見通しによりますと、バターの在庫は適正な水準を上回っておりまして、現時点では、全体として不足するような状況にはなく、特に家庭向けは潤沢な状況にあると承知をしております。

石川(香)委員 Jミルクの出している、二〇二三年、二〇二四年度の生乳及び牛乳乳製品の需給見通しと課題についてというものがありますけれども、これは一月のものですけれども、適正在庫が二・五か月分と言われている中で、第一・四半期、第四・四半期を見ても、三か月分から三・六か月分となっていて、在庫は十分にあるという状況にはあると思います。

 今、家庭用に関してはということを言っておりましたけれども、では、なぜこんなにも町のお菓子屋さんはバターの確保に苦労されているんでしょうか。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 全体としての需給については先ほど申し上げたとおりでございますが、昨年夏場の猛暑による生乳生産の落ち込みもあって、実需者の中に通常以上に在庫を積み増しておこうという動きがあるというふうに聞いております。

 このため、その実需者や商品形態によっては、あるいは国産を選好するというような実需者さんもおられるようですが、そういった実需者や商品形態によりまして、国産バターを中心に、確保の状況に差が生じているということではないかと考えてございます。

 これらに加えまして、今後のバターの需給でございますが、令和五年十二月に乳製品の値上げがございましたので、その影響がどう出てくるのか、あるいは、主産地北海道の今後の生乳生産がどうなっていくのかということで影響を受けてくるということでございます。引き続き、状況を注視していきたいと考えてございます。

石川(香)委員 大きい事業者、小さい事業者にかかわらず、やはりこれはバターがしっかり行き届いていかないといけないと思うんですね。今、町のケーキ屋さんがとにかく困っているということですので、これはとにかくしっかりバターが確保できるように、国としてもしっかり対策が必要なんじゃないかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 今、畜産局長がお答えいたしましたように、実需者の中に、やはり大規模事業者もあられますし、今委員言われますように町のケーキ屋さん等もございます。そういうことで、やはり実需者のいろいろな規模に応じて差が生じているのではないかというふうに考えております。

 そこで、こうした状況を踏まえまして、農林水産省といたしまして、小規模実需者向けの輸入枠を用意するなど、国家貿易を柔軟、適切に運用することで、バター全体の安定供給に努めてまいりたいというふうに思っております。

 引き続き、状況を注視し、生産者団体のほか、乳業メーカー及び実需者等との情報交換をしながら、バターの安定供給を図ってまいります。

石川(香)委員 今御答弁いただいたように、全ての規模の事業者に渡るように、輸入バターの入札の枠、通常とは別に昨年百トン用意したと聞いております。これは、きちんと小さなケーキ屋さんなどに卸したかなどのチェックも含めて事務作業も発生することを敬遠してか、何と三トンしか入札されなかったということなんですね。その後、枠を十トンに減らして、以前は毎月だった入札の機会を二か月に一度にして入札をかけると十トンのうち六トン入札されたということで、この書類などの事務負担を嫌がる商社と、輸入ではなくて国産バターにこだわる菓子職人の間でどうも順調にニーズがマッチしないという問題があるということだと思います。

 ただ、こうした機会もあるのであれば、その書類などの手続も簡素化するですとか、小規模のいわゆる地域のお菓子屋さんが困らないようにしっかり目配りをしていただきたいと思います。

 続いて、ビートについて伺います。

 昨年はビートの糖度が過去最低の水準に落ち込みました。全道平均で一三・七ということで、道内の製糖工場でも、ビートに糖分ではない部分が多いということで、その糖分を抽出するために工場で余計なエネルギーがかかってしまうということで、そんな話も伺いました。そして、更に予想を上回るスピードで作付面積が減っているということでありました。今、砂糖の価格も非常に上がっているということです。昨年は、エルニーニョの影響で、生産量が世界一位のブラジルを始めインドやタイのサトウキビの不作も予想されまして、一時はインドが砂糖の禁輸に踏み切るかどうかということもありました。

 改めて、砂糖の世界の価格、それから国内の流通の状況について伺います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、砂糖の国際相場ですけれども、原油の上昇に伴うエタノールの需要の増加ですとか、主要国の天候不順などによりまして、令和五年十一月に一ポンド当たり約三十三セントまで上昇いたしました。その後、主要産地における供給不足が解消されたことなどを理由に、今年三月時点においては一ポンド当たり二十八セントまで下がってまいりましたが、いまだ十年ぶりの高い水準で推移しているところでございます。

 一方、砂糖の国内での供給につきましては、量的には不足は生じておりません。ただ、累次にわたる価格転嫁、引上げが行われている状況でございます。

石川(香)委員 世界でこのような砂糖の価格が依然、ピークよりは下がったということでしたけれども、高騰する中で、国内の砂糖業界、非常に厳しい状況が続いています。

 一つは病気です。道内の主産地の十勝管内では、記録的な暑さが原因で褐斑病が多発をいたしました。来年以降もこれは気をつけていかなければいけないということで、今年のビート作業、始まっておりますけれども、再び発生の可能性もあるということであります。

 国は褐斑病に対してどのような対策を取っているんでしょうか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、昨年は夏の高温多湿の影響によりまして褐斑病が発生いたしたところなんですけれども、今年においても、気象庁の発表によりますと、かなり高い気温が見込まれるということでございまして、褐斑病の発生に対する注意、これを行っているところでございます。

 この被害を抑えるために、一つは、発生初期からの適期防除の徹底、それから二つ目、褐斑病抵抗性品種の導入、これが重要だというふうに考えております。

 農林水産省としては、昨年、令和五年度の補正予算によりまして、抵抗性品種の導入など、高温、病害対策技術の実証を支援していくこととしておりまして、対策の徹底を図っていきたいというふうに考えております。

石川(香)委員 私の選挙区の農家の方からは、農薬をまく回数を増やしてほしいといった声もありまして、これについては、農薬メーカーがデータをそろえて、土ですとか周りの環境に影響がないと証明されれば回数を多くまくことができるようになるそうなんですけれども、データの蓄積にも時間を要するために、準備をしているというところもあるということです。

 そして、このビートの作付でありますけれども、令和三年、交付対象数量五十五万トンという目標が立てられましたけれども、五万ヘクタールという目標数値が予想以上に減りが速くなっております。非常に地元でも心配をされておりますけれども、令和五年度で五万千百ヘクタールとなっておりますけれども、予想以上に作付が減っているということについて、大臣の受け止めを伺いたいと思います。

坂本国務大臣 てん菜につきましては、北海道畑作につきまして、輪作体系を構成する重要な作物であるというふうに考えております。また、てん菜糖業とも相まって、地域の雇用や経済を支える重要な役割を担っているというふうに認識をいたしております。

 このような中、てん菜を含め、北海道畑作が将来にわたって持続的なものとなるよう、生産者団体やビート糖業の方々との継続的な意見交換を行った上で、令和四年十二月に、令和八砂糖年度に向けて徐々にてん菜糖の交付対象数量を引き下げていくとともに、加工用バレイショや大豆など、需要のある作物への計画的な転換を進めていくことにしたところであります。

 他方で、てん菜につきましては、輪作を構成する他の作物に比べまして、労働時間が長い、それから、肥料費が高いといった生産上の課題がありまして、これらが作付面積の減少の要因にもなっていると考えております。加えて、昨年、今委員おっしゃいましたように、褐斑病が多発するなど、気候変動への対応も課題となってきているところであります。

 このため、農林水産省といたしましては、令和五年度補正予算におきまして、てん菜生産の省力化、生産コスト削減の取組への支援を引き続き措置をいたしますとともに、褐斑病対策など、高温、病害対策技術の実証への支援メニューを創設をしたところです。

 今後とも、てん菜を含め、北海道畑作が将来にわたって持続的なものとなるよう、産地からの御意見をよくお伺いしながら、現場の課題を把握して必要な支援策を行ってまいりたいというふうに考えております。

石川(香)委員 時間が参りました。輸出に関しての二問、今日は質問できませんで、申し訳ありませんでした。

 では、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

野中委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時五分開議

野中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。神谷裕君。

神谷委員 立憲民主党の神谷裕でございます。

 大変大切な基本法の論議、定刻にスタートできなかったことを本当に残念に思います。その点については、申し訳ありませんが、厳しく申し上げたいと思います。大変大切な論議でございますので。

 それでは、質問の方を改めてスタートさせていただきたいと思います。

 これはもう多くの委員の先生方にも御指摘をいただきましたが、食料安全保障、私も今回これについてしっかり伺いたいなと思うんですけれども、食料安全保障をうたうとなれば、食料自給率をいかに上げていくのか、これが非常に重要な課題であるというふうに思います。その際、カロリーベースの自給率について、私は非常にこれは大事な指標だと考えているんですけれども、率直に、農林水産大臣はどのようにお考えになっているのか、所感を伺いたいと思います。いかがでしょうか。

坂本国務大臣 基本法制定以降の食料自給率は三八%前後で推移をしております。その変動要因を言いますと、米、野菜、魚介類の消費量が減ったこと、そして、輸入依存度の高い飼料を多く使用いたします畜産物の消費量の増加がある。こういったことで、消費面での変化が食料自給率の低下の要因であるというふうに思っております。

 こうした食料消費の傾向がしばらく継続することが予測されます中、国民の消費の在り方を政策の対象とすることの難しさを痛感しているところです。食料安全保障上最も重要なことは、輸入に過度に依存している食品の国内生産を増大することであるというふうに考えます。

神谷委員 今回、特に食料安全保障ということが大きな課題というか問題として提起をされてございます。その中での食料自給率、特にカロリーベース、今回、不測時についての法律も出てくるわけでございますけれども、最後は、万が一のときにはどれだけ国民を飢えさせないでいくのか、それを考えたときに、やはりカロリーベースというのが一つの指標になるというか、最後のとりでになるんじゃないか、このように思うわけです。もちろん、生産力、様々なカテゴリーあるいは指標があるわけでございますけれども、最後、どれだけのカロリーを国民の皆さんに提供し得るのか、ここをやはり突き詰めていかなきゃいけない。今回それが一つの大きな課題として着目をされたわけでございますから、これをいかに上げていくのか、これが非常に、大臣、重要だというふうに思ってございます。

 今ほどもいろいろ、上げられなかった要因について御説明をいただいたわけでございますけれども、やはりここは思い切り食料自給率を上げていくんだということを決意として固めていただいて、決めていただいて、これを上げていくことに全力投球をしていただきたい、このように思うんです。

 そう考えたときに、今ほど様々な要因についてのお話はいただきましたけれども、単純にこれまでの政策の延長では、上げていくことはなかなか難しいんじゃないか。この間、いろいろなところで、この委員会でもそうですし、予算委員会でもそうです、私は本会議の登壇でも申したかもしれませんけれども、既存の政策の延長線上では、今の下降線のベクトルを反転攻勢させる、これはなかなか本当に厳しいだろうというふうに思っています。

 だとするならば、新たに何をすることによってこのベクトルを変えていくことができるのか、ここを考えていかなきゃいけないんですけれども、新たな政策というか、どういうふうな施策でこれを上げていくというふうにお考えなのか、大臣に伺いたいと思います。いかがでしょうか。

坂本国務大臣 食料自給率の変化につきましては、様々な要因があるとは思っておりますけれども、最も大切なことは、国内生産を一層増大することである、そのことによりまして、輸入に過度に依存している状態を改善し、そして食料安全保障の確保を図ることであるというふうに考えております。

 そういうことで、麦、大豆、あるいは飼料作物や加工用野菜への、輸入依存度の高い品目を国内生産に転換していくこと、そして、米粉の特徴を生かした新商品の開発、あるいは利用の拡大、そして、米の輸出促進等によります米の消費拡大そして販売促進、こういったものを図っていくことによって自給率は上げていかなければいけないというふうに思っております。

 また、食料・農業・農村基本法の改正案が成立をさせていただきましたならば、これに基づきまして食料・農業・農村基本計画を策定いたしますので、その中で、食料の自給率も含めて、食料安全保障の確保に関する事項について、国内外の食料需給の動向や、これまでの取組の検証結果などを踏まえつつ、適切な目標設定と、そのための具体的施策について検討してまいりたいと思っております。

 いざというときのカロリーというのは、後でこれは不測の事態のときの法案で論議をされることになると思いますけれども、千九百キロカロリーというのを最低限として考えているところであります。

神谷委員 大臣今おっしゃっていただいたとおり、最後は供給していかなきゃいけないわけです。そういう意味では、今大臣おっしゃっていただいたように、国内生産をどれだけ増大させていくか、これは本当に大事なことだろうと思うんです。

 ただ、その後でいろいろな施策についても御紹介いただきました。今、必要な農作物を作っていただくんだとか、様々な施策を言っていただきましたけれども、実は、これまでも取り組んでいる部分が結構あるんじゃないかなと思っています。もちろん、これを更に後押ししていくんだということも必要なんだろうと思います。ただ、この延長線だけで本当に目標とするところにたどり着くのか、私はここが今のままでは厳しいだろうと思ったりするわけです。

 じり貧になっていくようだと、何のための議論だったのかということにもなりかねないものですから、ここはあえて申しませんけれども、やはりここは、既存の施策だけが処方箋ではないということを是非お考えをいただきたいと思いますし、そのためにどうしていくのかということを、率直に、いろいろ考えていただきたいと思うんです。

 今ほどの御答弁ですと、申し訳ないですが、これまでも対応していた施策だろうと思います。これの効きがどうだったかというのは別にあるかもしれませんけれども、この延長線上では残念ながらベクトルを変えることはできないと思いますので、是非御考慮をいただきたい、御検討いただきたいと思います。

 また、不測時についての議論というのは、別のときに、別の法案のときに様々させていただきたいと思いますが、是非お願いをしたいと思います。

 その上で、食料安全保障を全うするためにどうするか。今ほど大臣からもお話ございましたけれども、まずは国内生産を増大しなきゃいけない、また、輸入と備蓄で対応していくというお話だと思います。

 先ほど石川委員からも御指摘事項がございました。私も、備蓄について少し伺いたいなと思っています。

 単純に我々、備蓄というとイメージするものがあるんですけれども、この備蓄なんですが、これまでの様々な御説明を聞いていますと、国外で既に取引された農産物や、例えば海上輸送中の船倉にある農産物まで備蓄と考えているような節もあるのかなと思っていまして、どこまでを実際の備蓄として有効なものとしてカウントしていくのか。

 いわゆる政府備蓄というものはこれとは別の世界であるのかもしれませんが、この政府備蓄以外の備蓄を、どこまで今回、食料安全保障上の考え方として、政府備蓄として考えていくのか、これについてお話を伺えたらと思いますが、いかがでしょうか。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 重要な食料の備蓄の在り方につきましては、食料供給困難事態対策法、これに基づく基本方針の中で定めていく予定にしております。

 また、委員お尋ねの備蓄の範囲でございますけれども、一般的に備蓄は、国内において存在する在庫を備蓄としてカウントします。この中の範囲ですけれども、政府備蓄、あと民間が持っている在庫等も含めて考えたいと思っておりますが、海外にある在庫や輸送中の食料は備蓄としてはカウントしないという考えでございます。

 一方で、適正な備蓄水準を考えるに当たっては、輸入、あと生産による追加的な供給能力を考慮しながら決定することになると思いますので、海外や洋上において、日本企業が所有権を持つ食料がどの程度あるのかということも考慮に入れて検討することになっていくというふうに考えています。

神谷委員 不測時の事態の程度にもよると思うんですけれども、今我々が議論している食料安全保障上の概念でいうところの、二割ぐらい減りそうなときの備蓄で考えたらば、海外にあるそういったものも含めて、あるいは海上輸送中のものも含めて備蓄として考えるべきなのか、供給力として考えるべきなのか。あるいは、本当に厳しい状況の中では、むしろ国内のものだけをもって備蓄として考えるのか。そういう考え方の整理でよろしかったですか、念のための確認なんですが。

杉中政府参考人 その辺り、事態の進展に合わせた備蓄の在り方というのも一つの検討テーマだと思いますけれども、その辺りも含めて、食料供給困難事態対策法における基本方針の中で検討していくことになるというふうに思っています。

神谷委員 実は、そうなると、まだそんなにきつくないとは言いませんけれども、供給困難事態、要は、二割程度のときであればまだ多くの備蓄を抱えているとも言えるんですけれども、更に厳しくなってくると、どんどんどんどん備蓄そのものが小さくなってしまうというような逆のジレンマがあるものですから、こういうところをどういうふうに考えていくか。とするならば、むしろかなり厳しく見た方がいいんじゃないかなというふうに個人的には思っていまして、まして食料安全保障というふうに考えるときには、この辺のところの整理をしっかりやっていただかなければいけないなということを御提言申し上げたいと思います。

 さらに、その上で、先ほども指摘あるいは質問なんかもあったんですけれども、様々な農産物で恐らく適正な備蓄量は千差万別なんじゃないかなと思っています。農産物だけじゃなくて、この場合、食料加工品というのか農産加工品というのか、そういったものまで幾つかは備蓄していかなきゃいけないだろうということでございまして、それぞれいろいろなものがあるので、必要、ニーズによっても変わってくるんですけれども、だとしても、おおむね何日分ぐらいを目途として備蓄を考えていくのか、それはやはり考えていかなきゃいけないと思うんです。

 まず、どれくらいの日数、何日分を目途として備蓄を行うのか。また、そのうち、政府が自ら保管するんだと考えている農産品はどれくらいの種類で、どの程度の量あるいは日数分をお考えなのか。ここをお聞かせいただきたいと思います。いかがでしょうか。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになりますけれども、食料の備蓄の在り方につきましては、食料供給困難事態対策法の基本方針において規定することを検討しております。

 備蓄の方針を検討するに当たりましては、委員御指摘のように、食料又は原材料としてどういう形態で流通し、保管されるのか。生鮮の形で流通するのか、又は加工された形で流通するのか。また、フードチェーンの各段階、すなわち輸入、あと食品製造、流通、小売の段階で、どの程度在庫というのは通常有しているのか。あと、食料供給が不足する場合に、輸入先の転換や生産拡大といった供給追加対策を行うのにどの程度の期間を要するのかということで、御指摘のように、品目によって千差万別ということでございますので、品目別に必要な調査を行った上で、必要な水準等についても検討していければというふうに考えています。

神谷委員 これも実は戦略的に考えていく上で非常に重要な部分じゃないかなと思います。

 それと同時に、裏表の関係として、当然、予算というところにも響いてくるんだろうと思います。

 現実には、今お米について政府備蓄をやっていただいておりますけれども、五年間、食べられる水準で保管をしていくということについては、非常にコストもかかってまいります。これはもう必要なコストだと思っているので、そこは我々としても、問題にしようとは私は思わないんですけれども。それだけコストがかかってくるということを念頭に置きながら、でも、やはり国民の食料を安定的に供給するために、食料安全保障として全うさせるためには、必要なコストなんだろうということは思います。

 ただ、この部分だけで農水予算をかなり使われるということになると、それもまた問題になるのか、あるいは、ここは大臣に頑張っていただいて予算を獲得していただくのかというような形になっていくと思いますので、そういったことも、制約の上ではあるのかもしれませんけれども、ただ、ここは、予算以上に、どうやったら国民の皆さんを飢えさせないで全うできるのかというところに重点を置いて是非御検討いただきたいという意味で、これも問題提起として申し上げさせていただきたいと思います。

 とすると、民間の在庫にどれくらい期待するのか、実はここも気になるところでございまして、純粋に政府の肩代わりで備蓄とするならば、当然ながらこの部分について予算面も含めた支援策を考えなければいけないと思いますが、いわば基本的な部分で、備蓄について、政府と民間の間でどのような役割分担を考えているのか。これもひょっとするとまだ議論の途中なのかもしれませんけれども、もし議論の途中であれば、その方針、考え方の方向性、そういったことも含めて、農林水産大臣にお考えをお伺いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。

坂本国務大臣 食料につきましては、民間が流通や食品製造、そして小売の段階で在庫を有するものでありまして、備蓄についてはこのような民間の在庫機能を活用するのが通例であります。諸外国の備蓄制度も、民間備蓄を基本としています。我が国におきましても、政府が独自に備蓄を行っているものは米だけでございます。その他の品目につきましては、民間の備蓄を政府が支援しているところです。

 今国会に提出いたしております食料供給困難事態対策法案におきましても、供給確保対策の一つとして出荷、販売の調整を位置づけていますけれども、民間事業者の在庫の確保や放出に関して政府が必要な協力を行っていくということを考えています。

 民間における出荷、販売の調整といたしましては、民間の在庫を適切に市場に供給すること、民間の出荷先、例えば、生鮮用か加工原料用かのバランスを取った供給を行うこと等の役割を果たしていくことを期待しております。

 政府といたしましては、出荷、販売に係る要請を行った場合に、民間事業者が円滑に出荷、販売を行うための財政上の支援を行うということにしているところであります。

神谷委員 今の御答弁ですと、念のためなんですけれども、基本は、民間の備蓄というか民間の在庫、これを備蓄として考える。加えてというか、米の場合は特殊、米は特殊なのかもしれませんが、これだけは政府備蓄なんだというような整理の延長線上で考えるということのようでございますが、これでよろしかったですか。

杉中政府参考人 備蓄については、先ほど大臣から答弁があったとおり、民間において在庫を管理する、また放出するということを行っております。このコストはかなり高いものなんですけれども、これに対して、一定程度、余分の分を保管してもらうということで在庫を増やすということが経済的に合理的だと思っておりますし、先ほど大臣の答弁にあったように、諸外国のいわゆる備蓄制度ということも、民間の在庫量を一定程度余裕を持つという方式でやっております。

 我々も、基本的に、こういった民間の在庫、販売機能というものを円滑にするということが必要になってくるものですから、そこをベースに制度を考えたいというふうに考えております。

神谷委員 若干不安を覚えたのは、要は、食料安全保障という意味で、本当に大変な状況になったときに、どれだけ民間在庫に対して、いわば命令とは言いませんけれども、出してもらえるかというところ。ここについても、そういう意味では、政府の支援を入れるということはそれを助ける一助になるんだろうと思いますけれども、基本的に民間の在庫ですから、何らか命令措置をかけるなんということにもならないんでしょうから、そうなると、例えば備蓄について、そういった、非常事態とは言いませんけれども、何らか法律的な担保みたいなものが必要になってくるような気もするんですけれども、そんな必要はありませんか。念のためなんですが。

杉中政府参考人 現在提出の法案でまた御議論いただきますけれども、議員御指摘のような問題点に応えるために、食料供給困難事態対策法案につきましては、出荷、販売事業というのを供給の主要な方策の一つとして位置づけて、まず要請を行い、それで十分でないというときには、出荷、販売についての計画の作成の指示、届出を行わせるということで、その計画に従って適切に、計画的に市場に出してもらうということを要請していきたいというふうに考えています。

神谷委員 あくまで計画の作成だと思いますので、そこに強制力があるのかないのか。計画を作っていただくということには意味があるということは否定しません。

 ただ、それで、計画は自分で作るわけですし、それを提出するということでございますから、それが提出されたからといって、非常事態にしっかりそういった食料が供給され得るのかどうか、そこについてはいささかの疑念が残りますが、また後日の議論に回させていただきたいと思います。

 次なんですけれども、米なんですが、市場の需給の緩和を回避する意味でも、これまで棚上げ備蓄とされてきたわけでございますが、今後、食料安全保障上の備蓄に変わることによって、この棚上げ備蓄については、棚上げ備蓄以外の、回転備蓄みたいな形で制度の変更を考えているのか。そうでなければそれでいいんですけれども、もしも棚上げじゃなくて出すよということになるのであれば、ほかにどのような活用を考えているのか。あるいは国外への援助物資としての活用を更に広げていこうというお考えなのか。これについてお考えをお伺いしたいと思います。

坂本国務大臣 政府備蓄米の運営方式につきましては、市場に対して透明性を確保した上での運用となるよう、買い入れた米を一定期間保管後、主食用に販売する回転備蓄方式から、一定期間保管後に、主食用以外の用途に、飼料用等ですけれども、販売する棚上げ備蓄方式に平成二十三年に見直したところであり、見直しに当たっては委員にも大変な御尽力をいただいたというふうに聞いております。

 それまで実施されていた回転備蓄方式では、年間の備蓄米の販売数量に見合った数量を買入れするという運営ルールであったために、政府買入れの時期や数量が一定とならず、また、市場に対しての透明性に欠けた部分があります。農業者や産地の需要に応じた生産や、流通や小売業者の安定的な販売に向かない面があったというふうに考えております。

 このように、主食用米の市場関係者が予見可能で、市場に対してより透明性を確保した形で、備蓄運営上必要な量の買入れや売渡しを計画的かつ確実に行う等の観点から見ますと、棚上げ備蓄方式が適しているというふうに思っておりますので、今のところ、制度の見直しその他は考えておりません。

神谷委員 ありがとうございます。

 備蓄というと、今回、肥料や飼料等の備蓄についてもお考えいただいたと承知しております。これもどの程度の規模を想定されているのか、検討されているのか、伺いたいと思います。

 ただ、肥料や飼料は、価格高騰もあって、生産者の経営に影響が出ているというふうにも承知をしています。備蓄をするということは、もちろん供給不足への対応としては非常に有効なんですけれども、逆に言うと、保管をするということは、金利、倉敷を含めた経費が更に加わることになります。そうでなくてもコストが高くなっているところに、更にコストが加わるということでは、これもやはり大きな問題になると思っています。仮に農家に対して有償で供給するとなれば、この辺のところも考えなければいけないと思いますが、この点についてどうお考えなのか、お聞かせください。

平形政府参考人 まず、肥料についてお答えいたします。

 肥料につきましては、農業生産に不可欠な生産資材でございまして、経済安全保障推進法に基づきまして特定重要物資十二品目が指定されておりますが、その一つに位置づけられておりまして、肥料原料の備蓄制度が創設されております。

 農林水産省では、海外からの肥料原料の輸入が途絶した場合であっても、国内の肥料製造が継続できるように、代替国からの調達に要する期間として、国内需要量の三か月分相当の肥料原料備蓄を行うこと、これを令和四年十二月に目標として設定をいたしました。令和四年度の補正予算におきまして創設した基金を通じて、肥料原料の備蓄に取り組む肥料製造事業者及び肥料原料輸入事業者に対して、保管料や金利相当額など、備蓄に係る費用を定額で支援をしているところでございます。

渡邉政府参考人 飼料につきましては、私からお答えをいたします。

 我が国は、トウモロコシなどの配合飼料原料のほとんどを輸入に依存しておりますので、不測の事態に主要輸出国からの飼料原料穀物の輸入が停滞するというような事態に備えまして、約一か月分の需要量に相当する約百万トンが備蓄ということで国内に保有されております。あと、それに加えまして、海上輸送中の一か月分もございますので、それも合わせますと二か月分ということで確保されております。

 この備蓄のうち、過去の大災害に匹敵する事態にも対応可能な水準が七十五万トン分でございます。その七十五万トン分を対象といたしまして、保管経費についてはその三分の一以内、金利については定額で支援をしてございます。

 いずれにいたしましても、備蓄につきましては、今後、今般提出している食料供給困難事態対策法案の基本方針において方針を定めることとしてございます。

神谷委員 是非、この辺のところ、先ほど金利、倉敷と申し上げましたけれども、結構これは経費がかかってまいります。定額の部分であったり、助成をしていただいていますけれども、あくまで定額なものですから、量が大きくなって、かつ金利、倉敷がかかってくると、その分どうしてもコストに反映するんじゃないか。その辺も考えなきゃいけないものですから、できることであれば、この辺は全部見ていただけるぐらいのことで考えていただけたらいいなというふうには個人的には思っていますので、是非お願いをしたいと思います。

 また、この後また不測時の話も出てまいりますけれども、民間在庫の話も先ほどさせていただきました。ただ、強制的に、計画を出していただくんですけれども、これを出さなかったというと、二十万程度ですか、罰金というふうに聞いております。これは農家にもあるんだというふうに聞いていますけれども、企業さんにとって二十万というのは余りにも少ないと思います。逆に、農家にとって二十万というのは非常に大きな数字だと思っています。

 そういう意味で、企業にとって二十万は少ない、農家にとっては重い、こうなると、こういうところで罰金をかけていいのかというのをやはり思ったりするわけなんです。

 済みません、時間も来ておりますので、この辺は指摘ということにさせていただきますが、後々こういったところもしっかり考えていただいて、できることであれば、例えば企業さんなんかは名前を出すことだけでも十分ペナルティーになると思いますし、民間在庫なんかも含めて半ばつかめるわけですから、是非いろいろな形で、余り罰金という形にならないようにお考えをいただきたいということを申し上げさせていただいて、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

野中委員長 次に、小野泰輔君。

小野委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の小野泰輔でございます。

 今日は、本来私は委員ではありませんが、質問の機会をいただきました。同僚委員、そしてまた委員長、理事の皆様方に御礼を申し上げたいと思います。

 今日は、農業の憲法と言われる食料・農業・農村基本法の改正案について質問をさせていただきます。

 我が党の中でもこの基本法についてはかなり様々な議論がありまして、これに関してどういうスタンスで対応すべきだろうかということを、かなりいろいろな激しい議論が行われました。

 今日は私は、あるテーマに沿って、特に、この基本法の改正の柱の一つは食料安全保障ということだと思います。ウクライナの危機から、小麦の価格が世界的にも上がった。我々も輸入に頼っているような食生活を送っているので、安全保障をちゃんとこの基本法にも盛り込むということは、私も方向性としてはそのとおりだと思うんですが、ただ、いろいろ個別の施策を進めていく上ではしっかり深く考えていかなければいけない問題があろうかと思っています。

 最初に、資料を御覧いただきたいんですけれども、これはちょっと数字が細か過ぎて、目がちらちらして、本当に不快な思いをさせて申し訳ないんですが、グラフ化しようと私も努力してみたんですが、結局これが一番分かりやすいだろうということで、ちょっと御説明をさせていただきたいと思います。

 食料安全保障の中で、食料自給力というような考え方が農水省の中にもあります。今の担い手と農地をフル活用するとどれぐらいの食料が自給できるのかということで、今回はちょっと米に絞って資料を整理しています。

 まず一番左から、年が書いてあって、その後が収量、そして、田んぼの面積がどれぐらいなのか。その後、これが自給力の方で、農水省が設定しているものですが、米と小麦中心の作付をした場合にはどれぐらいの作物が確保できるのかということです。その後に、カロリー。また、それと併せて、それを作るための農業就業人口。また、人口も参考までに付してあります。

 これは全部グラフでいろいろ説明しようとすると難しいので、一番下のところを見ていただきたいんですが、まず、昭和五十一年からというのは特に意味があるのかというと、全部これがそろうデータが昭和五十一年からだったのでこういうふうにしてありますが、昭和五十一年から平成三十年まで四十数年ありますけれども、ここで収量は一一七%ぐらいの増になっている。いろいろと技術も改良されているとかがあります。田んぼの面積はどうなったのかというと、約二五%近くが減ってしまっている。自給力ということで、最大の生産をすると米はどうなるのかというと、これも九一%、一〇%減ということになりますね。熱量の方もそれと似たような形になっています。

 今回、この資料で皆さんにお分かりいただきたいというか確認していただきたいのは、農業就業人口が七五%も失われてしまっているということなんですね。この一番下の一一六・九%と七六・八%というのを掛け合わせると八九・七%ということで、単収の増とそれから田んぼの減ということを併せて見ると、一〇%ぐらいの減になっている、生産力としては。米の確保とかそれからカロリーというのも大体一〇%減ということで、ここはある程度計算どおりなのかなと思うんですが、驚異的なのは、この一〇%減ぐらいの食料を、七五%失われてしまった農業者の方々で今こしらえることができるということなんです。

 これはいいのか悪いのかというと、私は農業者の皆さんが頑張っていると思うんですが、ただ、これからが大変で、いろいろな資料にも出てきますが、基幹的農業従事者の方々、今、一番のボリュームゾーンというのは七十代で、そういう意味だと、十年、十五年たつとこの人たちが一気にいなくなるという事実でございます。

 ですから、食料・農業・農村基本法の中で、私は一番考えなければいけないのはやはり担い手の問題だというふうに思っているんですが、まず最初にお伺いをしたいのは、収量が増になっている、一一六・九%というのは単収向上なんですが、これは一体どういう努力をして実現したのか、そして、これから単収増というのは更に図れる余地があるのかということをお伺いしたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 委員の配付資料にございますけれども、米の十アール当たりの平均収量なんですが、昭和五十一年が四百五十五キロということで、三十年が五百三十二キロになっていますが、直近は令和五年まで来ると五百三十六キロということで、五十年間の増加率は一五%と、それほど高くないことになっています。

 実はこれは、単収よりも、施肥を抑えてたんぱく質含有率を上げないというふうにしますと食味がもちもちとしていいんだというので、食味を重視した栽培方法だとか品種がここまで志向されてきた、そういったことが背景にあるというふうに考えています。

 一方、近年では、食味が重視される家庭用の需要から、外食、中食向けの需要というのが増加しておりまして、これになりますと、一部で多収品種の導入みたいなことも進んできているところでございます。そういった意味でいうと、今後、更なる単収の向上の余地はあるというふうに思っています。

 事例といたしまして、農研機構というところが開発いたしました多収品種、にじのきらめきというのは十アール当たり七百キロでありますし、実際、令和四年産の単収を見ますと、長野県の平野部、これは日本の中でも単収が高いんですが、平均でも六百三十キロ取れています。また、飼料用米なんですけれども、多収日本一コンテストというのを農水省がやっておりまして、これだと十アール当たり九百キロまで取れるようなことがございますので、余地はあるというふうに考えています。

小野委員 ありがとうございます。

 ここではどれだけの量が取れるのかという食料自給力の話なので、そういう意味だと、今御披露いただいたような品種を使えばもうちょっと数字が改善されるかもしれないということで、この点は技術的には努力をしていただきたいというふうに思います。私も、自分が想像していた以上にかなり、それだけ単収の面で向上の余地があるんだなというのはよかったと思うんですが、それは引き続き努力もしていただきたいと思います。

 もう一つ、次に、赤く示した七五%減のところ、労働生産性が向上したというふうにこのデータを見ると考えられると思うんですが、同じ田んぼを少ない人数で耕して、そして収量をこれだけ頑張って得ているというのは、労働生産性の向上という意味でどういった努力をしたことによるんでしょうか。そして、これも今後向上する見込みがあるのかということをお知らせください。

平形政府参考人 お答えいたします。

 我が国の米の十アール当たりの労働時間を見ますと、農作物生産費統計というものがございますが、五十一年が十アール当たり八十時間かかっておりました。直近の令和四年で申しますと二十一時間ということで、五十年間で七割、労働時間が減少しています。

 主な要因といたしましては、田植機ですとかトラクターなどの農業機械の普及、それから経営規模の拡大、さらに、一度の施用によって除草だとか施肥が可能な一発処理剤というものが最近増えておりまして、この一発処理剤ですとか緩効性肥料ということで労働が軽くなっている部分、これがあるというふうに考えています。

 労働時間の減少度合いというのは実は最近鈍化しておりますけれども、今後、農地の集約化ですとか、スマート農業技術や省力技術の導入によりまして、更なる労働性の向上というのは可能であると考えております。

 これもちょっと一つなんですけれども、農林水産省が令和四年から五年にかけて米の生産コスト低減の実証事業を行っておりました。愛知県の百五十ヘクタールを対象にやったんですが、一つは直播、田植じゃなくてそのまま植えるという直播の栽培、それから水位センサーを入れることによりまして、労働費が削減される。もう一つは、衛星画像の診断によって必要なところに必要な量だけの施肥をするということで、単収が向上いたしました。これによりまして、この事業をやる前が六十キロ当たり一万四千円かかっていたものが、三年間で一万一千円、つまり三千円程度削減されたということもありますので、こういったことを周知していきたいというふうに考えています。

小野委員 ありがとうございます。

 こちらについてもかなり努力をしているということで、やはり、かけている時間が昔と違って、八十時間だったものが七割減というのはすさまじいイノベーションだと私は思うんですね。これが更にまた余地もあるということですが、私も、熊本でやっておりましたのは、農地の集積というものはかなり一生懸命やっていました。人・農地プランを作って、集落の人たちと話合いをして、十年後はこうなりますよ、ですから、今のうちに担い手にちゃんと農地を預けて生産向上を図りましょうというようなこともやっておりましたが、これもどんどんやっていくべきだと思うんですね。

 そういう中で、今回のこの法律の改正の中で、我々の中で議論があったのは二十六条の二項なんですね。これを見てみますと、「国は、望ましい農業構造の確立に当たっては、地域における協議に基づき、効率的かつ安定的な農業経営を営む者及びそれ以外の多様な農業者により農業生産活動が行われることで農業生産の基盤である農地の確保が図られるように配慮するものとする。」ということで、新たに、「効率的かつ安定的な農業経営を営む者」のほかに、「それ以外の多様な農業者」というのを入れている、それが望ましい農業構造の確立だというふうに言っているわけなんです。

 これは、我々の中では、先ほど答弁いただいたように、生産性を上げていくというようなことを目指していく、そこがやはり主眼になるのが望ましい農業構造の確立なんじゃないかという議論があったんですね。

 そこでお伺いしたいのは、「それ以外の多様な農業者」というのは一体何の作物を生産する人が多いのかということと、その方々が現に耕作している作物の耕作面積は一体どれぐらいの面積が多いのか、この辺についてお答えいただけますか。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 担い手以外の多様な農業者とは、農業を副業的に営む経営体などを示すものと考えております。主に生産する作物は米であると考えておりまして、その平均作付面積は約一ヘクタールとなっております。

 なお、米の主業経営体で見ますと、平均作付面積は約三・三ヘクタールとなっているところでございます。

小野委員 我が党でもこの議論をしていたときに、やはり農地の集積も、私がやっていた熊本、坂本大臣もよく御存じだと思いますが、だんだんだんだん集積のペースは落ちてきます。八割を目標というふうにしていましたが、なかなかそこまでいかないという現実もありますし、今、そうやって御答弁いただいたような面積で米をやっているような農家さんもしっかり守っていかないと、農地が草ぼうぼうになって取り返しがつかなくなる、それがひいては食料安全保障にも影響してくる。この考えは分かるんですよね。分かるんですけれども、でも、それは、あと十年、十五年、そのままでいったら、多分同じことになってしまう。

 そこで、大臣にお伺いしたいのは、今回の基本法の改正で、その他の多様な農業者に頑張っていただきましょう、そこに対しての支援も国としてしますよという考えを打ち出したわけなんですが、私はそのままでは多分問題は解決しないと思うので、大臣は、こういったその他の多様な農業者、農地保全という意義はすごくあるとは思うんですが、それに加えて、これから先の展望をどういうふうにお考えになっているのかを、是非御答弁いただきたいと思います。

坂本国務大臣 今後、我が国全体の人口減少に伴いまして農業者の急速な減少が見込まれる中で、食料の安定供給を図るためには、まずは、担い手が農業生産の相当部分を担う、望ましい農業構造の確立をしていかなければいけないというふうに思っております。

 その一方で、担い手だけでは管理できない農地が出てきている中で、担い手以外の多様な農業者に農地の保全管理を適切に行っていただくことは、重要性が増しているというふうに思っております。担い手以外の方が一人一ヘクタールというのは、やはり相当な広さだと思います。農地解放のときが一人大体一ヘクタールから一・五ヘクタールでしたので。

 このため、担い手以外の多様な農業者が地域における協議に基づきまして農地の保全を行っていく役割を、基本法改正法案に新たに位置づけました。

 こうした多様な農業者が果たしている役割を踏まえ、農村地域コミュニティーの維持に向け、そうした人材を呼び込むとともに、農地集積、集約化を始めとする担い手への重点的な支援により、引き続き、担い手が農業生産の相当部分を担う望ましい農業構造の確立をしていかなければいけないというふうに思っております。

 委員も熊本の副知事として集積、集約化に大変な御尽力をされて、本当にありがたいと思っております。地方に行きますと、主要な担い手と言われる農業者と、そして担い手以外の方々が一体となった農村コミュニティーというのをつくっておりますので、そこで、担い手を中心として、担い手以外の方々がしっかりとそこで、社会の中で役割を果たしていく、こういう構造がやはり今求められているというふうに思っております。

小野委員 副業的にやっている「それ以外の多様な農業者」の方々の年齢もちゃんと押さえる必要があると思うんですね。兼業農家として、副業もそうかもしれませんが、その方々が高齢化してしまって、そして次に引き継ぐようなことがないようにしなければいけないと思うんですね。

 ですから、今そうやって一生懸命守っている農地について、次の世代に渡せるような形ということで、やはりそのつなぎをこの施策でしっかり考えていくことが大事だというふうに思っていますので、その点に御留意いただきながら、これからこの基本法に従って施策を進めていただきたいと思います。

 担い手ということに関して、次の項目でちょっと質問させていただきます。

 食料・農業・農村基本法の中で、食料安全保障ということが前面に出ているということもあるんですけれども、十七条の二項の三号というところで目標が書かれていて、その中で、食料自給率に関しては数値目標というものも掲げるんだということで定められているんですけれども、私は、食料自給率とか食料自給力とかというものを実現するためには、先ほど冒頭も資料でお見せしましたけれども、それをちゃんと耕して作ってくれる人がいないとどうしようもないというふうに思うんですね。

 この十七条の二項の三号は、食料自給率その他の食料安全保障の確保に関する事項の目標を定めるというふうにしてあるんです。今までは、食料自給率と食料自給力に関して数値目標はありましたが、私は、先ほどのグラフのように、もう七五%も農家さんが減っちゃっているということで、やはり担い手に関する目標を、ちゃんと農水省が数値も示した上で施策を進めなければいけないんじゃないのかというふうに思っています。

 これから、今回のこの法案の中身にはそういった表現は出てきませんが、ただ、「その他の食料安全保障の確保に関する事項の目標」というのも掲げられておりますので、是非、計画の中で、担い手も含めて、どのように確保するのかというところまで含めて、ちゃんと数値目標というものも設定していくべきだというふうに思いますが、大臣、いかがお考えでしょうか。

坂本国務大臣 基本法成立の暁には、新たな基本計画におきまして、平時からの食料安全保障の実現をする観点から、我が国の食料安全保障につきまして、課題の性質に応じた目標の設定を行うこととなります。

 具体的な目標につきましては、基本計画の策定の過程で検討していくこととなりますために、現時点でお答えすることはできませんが、現下の輸入リスクの増大や、あるいは国内外の食料供給の不安定化等を踏まえ、人口減少下においても安定的な食料供給の確保を図るため、食料安全保障の確保に関する事項、この事項の中には担い手も含まれ得るわけでありますので、この事項につきまして、適切な目標を設定するために今後更に検討を加えていきたいと思っております。

小野委員 大臣、ありがとうございます。

 私は、農水省の方はやはり、農地をすごく守ろうというのは分かるんですね。例えば、あと林野行政とか、私もやっていると、林業関係の方は本当に森林が大好きで森林を守ろうとするんですが、是非、やはり、農林水産行政は担い手をちゃんと守るということを、そこを主眼に据えてこれからやっていかなきゃいけない。生産年齢人口が減っていく中では、やはりそこを主眼にしてやっていただきたい。今大臣からも、そういった、担い手に関する指標とか、そこら辺のことについても検討していきたいというような御答弁もいただきましたが、本当にそれはやっていただきたいというふうに思うんですね。

 実際に、計画の方も、現行のやつを見てみると、全然数値目標は出てこないんです。ですから、やはりそこはもっともっと、田んぼをちゃんと守って耕していただく人たちがどれぐらい残っていくのか。我々は今まで本当にそこに無関心であり続けたんじゃないか、国民全体がですね。七五%もの農業者が減ってしまっても、いまだに危機感を抱いていない、これは国民全体ですよ。もちろん、農水省とか大臣はそんなお考えではないことは分かっていますが、やはりそこをもっともっとにじませるというようなことをこれから進めていただきたいというふうに思うんですね。

 次に、カロリーベースの食料自給率の目標について、全然、今まで目標を掲げても実現できていなかった。皆さんもじくじたる思いがあると思いますが、でも、その目標を掲げたときに、各回の計画では、計画期間内における実現可能性を考慮したというふうに書かれているんですが、それでも実現できていない。

 ですから、ここについては、ちょっと次の質問に時間をかけたいので大臣には質問しません、私が指摘するにとどめたいと思うんですが、是非、次の計画では、カロリーベース、私はカロリーベースが本当に必要なのかなというふうには思うんですが、それよりかは自給力の方が大切だなと思っているんですけれども、いずれにしても、掲げた目標に関して、ちゃんと次は、坂本大臣が作った計画であるからにはちゃんと達成するということで農水省に頑張っていただきたいというふうに思いますので、そのことだけちょっと指摘して、次の項目に行きたいと思います。

 我々、先ほどの「それ以外の多様な農業者」という二十六条二項のところと同時にいろいろな激論を交わしたのが、二十三条なんですね。これは農水省の中でも非常に難しい問題を抱えてこういった法案になったと思うんですけれども、二十三条で、「国は、食料の価格の形成に当たり食料システムの関係者により食料の持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるよう、食料システムの関係者による食料の持続的な供給の必要性に対する理解の増進及びこれらの合理的な費用の明確化の促進その他必要な施策を講ずるものとする。」というふうになっていまして、一言で言うと、合理的な費用というものを考慮して、それで農家さんあるいは食全体のサプライチェーンに関わっている人たちが食べていけるようにしましょうということで、非常に私もこれは大事な点だと思うんです。

 この間、先日、金子委員が質問をされていることに関して、この点について舞立政務官が、今日もありがとうございます、お越しいただいていますが、合理的な価格とはどういうことなのかということで御答弁をされています。それをちょっと一部御紹介しますと、合理的なと規定しているのは、食料の価格は、あくまで食料システムの各段階での価格交渉を経て決定されるものである中で、持続的な食料供給に要する各段階の費用について、食料システムの関係者が認識を共有し合意した上で決定される必要があることから、関係者の納得の得られる価格ということで、合理的な価格という用語を使用しましたというふうに御答弁をされているんですね。

 これはすごく難しい議論で、私、政務官も大分いろいろなことをお考えになられてこういう御答弁をされたというふうに思うんですけれども、我々が議論していった中でも、合理的な価格というのは人によって違うんじゃないかということがあります。

 つまり、今、給料が上がっていない、実質賃金が岸田政権になってずっと下がり続けている中で、食料の価格が上がってしまえば生活者は大変だろう。そして、その生活者に対して納入する小売業者も、当然それを配慮しなければ売れないということにもなります。片や農業者の方々は、今、資材価格が上がっている中で、こんな価格でしか買ってくれないんだったらもう農業はできませんよということになるわけです。

 ですから、この合理的な価格というのは一体誰にとっての合理的な価格なのかというのが、それはそんなにすぐに合意できるのか、納得できるのかということだと思うんですけれども、そこに関して改めて舞立政務官にちょっとお伺いしたいと思うんです。

舞立大臣政務官 先生御指摘のとおり、生産者や消費者、それぞれの立場はあると思いますけれども、それぞれの立場でそれぞれが理想とする適正な価格というのは異なるんだと思っております。

 一方で、持続的な食料供給を行っていくためには、食料システムの各段階の関係者によりできる限り納得の得られる価格で合意がなされる必要があり、今回、法文において合理的な価格と表現させていただいているところでございます。

 農水省は昨年八月から、食料システムの関係者、幅広い関係者に一堂に集まっていただく協議会を設置して議論を始めているところでございますが、その中で、消費者の関係団体等々いろいろなところが参画して、今いろいろな御議論をいただいて、なかなか意見の一致が難しいところでございますけれども、そういった中では、第一に、持続的な供給に必要な合理的な費用を考慮した価格形成の必要性、この必要性についての議論をいただいておりまして、いずれの段階でも利益が取れていない場合には、価格上昇を伴わない限り、将来的に供給自体が停滞しかねず、消費者の利益を損なうですとか、価格上昇に対する理解を得るためには各段階のコストを示すことが必要であるといった、様々な協議を行っているところでございます。

 消費者を含む関係者間で、食料を持続的に供給するためには協調して取り組まざるを得ない、お互い協調して取り組まないと駄目だよねと、相互理解や納得がなければ成立し難いところでございますので、基本法の理念の実現に向けて粘り強く丁寧に合意形成を図っていきたいというふうに考えております。

小野委員 ありがとうございます。

 真摯にお答えいただいたんですけれども、ただ、本当にそうやって協議をして解決するのかというと、結構難しいと思うんですね。

 私は経産委員をやっているので、ずっとガソリン補助金の問題について取り上げているんですけれども、あれも、ウクライナ危機とかそれより前から世界的に燃油が高騰して、そして、車を使っている人とかが生活でみんなひいひい言っている、ですから、補助金を政府が入れますよということで、この二年間やってきています。この二年間で岸田政権が入れたお金というのが六・四兆円ということです。

 これは、農業者の皆さんが、自分が本当にこれだけかかったんですよ、そして別に無駄な生産をしているわけじゃないということで、堂々と、エガリム法なんかで、自分がかかったコストはこれぐらいですよということを言った上で、それで売ることができれば、ガソリンと同じように、これだけ上がっちゃって食料は大変だよというふうになるわけですね。

 もちろん、石油資源の場合には、我々、国産していないので、全部外から言われるがままの値段を払わざるを得ないということがあります。国内の農業生産者は、自分たちがある程度価格転嫁してしまったら海外の安い農産物に乗り換えられてしまうだろうという、事情の違いがやはり大きいとは思うんですけれども、そうはいっても、経産省がここ最近焼け太りなんですね。今まではそんな予算はなかったのに、それが、ガソリン補助金だけで二年間で六・四兆円も使っている。

 農家さんを守るために、もっとやらなきゃいけないことが本当はあるんじゃないのか。ですから、食料が高くなったらそれだけ見てあげるというようなこともしていかなければいけない。

 時間が来たんですけれども、一谷さんが俺の分を使っていいと言われたので、ちょっとお許しいただきたいと思います。ありがとうございます。ちょっと今、大事なところなので。

 それで、農林水産省としても、そうやって、コスト割れをしているよというような農家さんを助けるのか。これは私は、戸別所得補償という形で、どういう範囲でやるかというのはまた別ですけれども、そういうことも必要だと思いますし、そうでないのであれば、国民の側が食料が上がっているからということで、そちらに対して補助金とか給付金を入れるということだってやったらどうかというふうに思うんです。

 是非、これは大臣にお伺いしますが、経産省がガソリン補助金ということでこうやってじゃぶじゃぶに支えているわけですが、それと比べて農水省はそういうのが何もないんですけれども、これをどう思われますか。

坂本国務大臣 農業者の収益性を確保するためには、まずはコストというのを考慮されるべきであるというふうに思います。そして、適切な価格形成がそこに生まれるというふうに思います。

 ただ、委員が言われる、石油の分野についての言及もありましたけれども、農業分野においても価格転嫁が間に合わない急激なコストの高騰等が発生することがあります。それに対しましては、収入保険等の経営安定対策、それから影響緩和対策、そしてそのほかの直接支払い、あるいは中山間地におきましては中山間地の直接支払い、そういった我が国農業の実態と課題に応じて個々に、様々なセーフティーネットといいますか影響緩和対策、そういったものを尽くしているということであります。

小野委員 様々な諸制度があることはもちろん存じ上げていますが、多分、構造的に、農家さんが安心して食べていけるようなところまで届いていないというのが実情だと思いますので、そこはやはりもうちょっと踏み込んで考えていくべきなのかなと思います。

 私も阿蘇の方で米を百ヘクタール以上やっている農業生産法人の方と年明けにお話をしたときに、そのときに彼が言っていたのは、やはり農家に対しては生かさず殺さずなんだよねというふうに言うわけですね。そうじゃなくて、もっともっと国民の側も合理的な価格というものを理解するようなことも、ちゃんと政府としても努力をした上で、そして、持続的に農業ができるような、もっと収入を補償するとか、そういった思い切ったことをやらなきゃいけないと思うんです。

 経産省の予算が今めちゃくちゃ膨れ上がっているんですけれども、さっき近藤委員の資料を見て改めて思いましたが、農林水産省の予算全体で二・二八兆円しかないというのは、私は、この国は本当に自分たちがちゃんと飢えないように、予算の使い方を考えているんだろうかと思うんですね。農林水産省の予算なんかは多分、三倍ぐらいあっていいと思うんです。それぐらいのやはり気概で、農水省の方々が、農家を守るんだ、そして、食料をちゃんと自分たちで飢えないようにしていくんだということをもっと強くやっていただきたいと思いますし、そして、坂本大臣は多分それができる方だろうと私は思っていますので、是非そこをしっかりと大臣としてやっていただきたい。

 最後の質問はちょっともう、物流二〇二四年問題への対応ということで、物流の方々も大変なんですが、それ以上に、物流を使って農産物を運ぶところが、今、二〇二四年問題で大変だというふうに思っていますので、こちらの手当ても、質問はしませんけれども、ここも是非力を入れてやっていただきたいというふうに思います。

 大変、時間も、ありがとうございました。

 以上で私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

野中委員長 次に、一谷勇一郎君。

一谷委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の一谷勇一郎です。どうぞよろしくお願いをいたします。

 臨時国会からこの農林水産に委員として来ました。本日は、理念法の農業の憲法と言われる大事な審議の中で質問をさせていただきます。

 まず、私がこの農林水産で臨時国会から質問をさせてきていただいて、こういったことが大事じゃないかなということをちょっと読み上げさせていただきたいんです。

 農業は、従来からのイメージを大きく変えつつあると私は思います。次世代農業において成功するためには、新たなアプローチと取組が必要だと思います。その中で、特に重要なのは、他産業の技術力の応用と地方分権の徹底だというふうに質問をしてまいりました。

 農業におけるデジタル技術やロボット工学などの先端技術が注目されています。これらの技術は他の産業で既に確立されているものであり、農業においても、ベテラン農業者の暗黙知を可視化し、その効果を発揮する潜在能力があると思います。農業生産の効率化や品質向上のためには、他産業からの技術導入が不可欠です。

 また、地方分権も次世代農業の重要な要素だと思います。南北に長い我が国は、この気候特性から、適地適作の農業技術が産地ごとに確立されています。産地ごとの競争力が、結果として、国内農業生産力のバロメーターになっている。地方自治体や地域コミュニティーが持つ独自の特性のニーズを理解し、それに基づいた政策や支援が提供されることで、地域との農業の発展が促進されると思います。地方分権の徹底により、中央集権的な政策では対応しにくい地域の課題に柔軟かつ効果的に対応することも可能となるのではないでしょうか。

 二〇二九年九月十三日の日本経済新聞には、オランダの記事がありました。これを読んで私も驚いたんですが、オランダは九州ほどの宅地面積ですが、農産物輸出で世界二位だということが書いてありました。オランダでは、カノンという農家研究者、アグリビジネス、教育機構が協力して、知識を共有し、RアンドDを推進するプロジェクトが設立されているという報告があります。農業者と研究機関の距離がとにかく近く、しかも、ビジネスモデルとしての知識が共有されているとの報告です。

 我が国でも、県の農業試験場と農業者が課題を共有しているケースがあると思います。しかしながら、マーケット関係者が参画し、しかも、産地ごとにネットワーク形成されている事例は、既に我が国でも、高知県等で実施されている部分はあると思いますが、行政が多くの関係者を巻き込んでの農業課題の解決として、成功ポイントを抽出できていると考えます。しっかり頑張ってやっているところの地域には広範な裁量があってしかるべきだというふうに思います。これらを踏まえて、今日の質問をさせていただきます。

 まず、農林大臣にお伺いをしたいんですが、他産業の技術力を積極的に応用しなければならないと考えますが、そのような取組や成功事例、そして、省内に他産業の技術を取り込む、取り入れていく戦略を練る部署がどこにあるのか、お尋ねさせていただきます。

舞立大臣政務官 先生御指摘のとおり、本当にこの農林水産業、食品産業の持続的な発展のため、多様な分野の技術、アイデアを積極的に取り込むことは重要と考えております。

 農林水産省では、研究開発行政を担う農林水産技術会議事務局研究推進課産学連携室におきまして、オープンイノベーションを促進するプラットフォームとして知の集積と活用の場を設けて、他産業や大学等との連携による取組を進めております。

 例えば、化学分野の技術を導入して、カニの殻から抽出した新素材でございますキチンナノファイバーによる化粧品等の開発、情報工学及びロボット工学分野との連携による乳牛の飼養管理の自動化技術の開発等の成果を上げているところでございます。

 このほか、食品産業政策を担当する新事業・食品産業部新事業・食品産業政策課におきまして、地域の食品産業を中心とした多様な関係者がそれぞれの知見、技術、販路などの経営資源を結集するプラットフォームを都道府県に設置する仕組みの構築を支援しておりまして、地域食品産業連携プロジェクト、LFPといいますが、この推進事業を実施しているところでございます。これまで三十道府県でプラットフォームが設置されており、引き続き、いろいろと多くの事例が出てきておりますけれども、持続可能な新たなビジネスの創出に取り組んでまいります。

一谷委員 今、連携を進めているという御答弁をいただきました。

 では、軸になるみどりの戦略なんですけれども、他省庁と話し合ってこれは制作されていたのかということと、あわせて、追加質問として、他産業から見てみどりの戦略はどう見えているのかというのを、これは参考人の方でも結構ですので、もし答えがあればお願いいたします。

川合政府参考人 お答えいたします。

 みどりの食料システム戦略につきましては、農林水産省だけでできない部分が多々あります。この関係で、みどりの食料システム法を成立させていただくときに、附帯決議として、他省庁とよく連携するようにということであります。

 学校給食なんかの関係ではもちろん文部科学省なんですけれども、例えば、下水汚泥の資源を肥料に使うということであれば国土交通省でありますし、経済産業省と連携して、新しい技術をどんどん取り入れてやる。あるいは、厚生労働省と連携して、ヘルスケアだけじゃなくて、介護のロボットをそのまま農業の現場へ入れるとか、そういった他産業との連携をしております。

 特にこのみどりの戦略を打ち出したときに、他省庁は大変驚きまして、農林省はこんなに他省庁と連携を進めようと思っていたのかというのと、そのために技術開発を相当しないといけないということでありまして、関係省庁と連絡会議を設けまして、毎年何回か打合せをして出張しております。それから、外国に向けても発信しなきゃいけませんので、外務省なんかともしっかり連携して、海外に戦略を打ち出しているところであります。

一谷委員 ありがとうございます。

 農業でしたら、厚労でしたら農福連携ということもあると思いますが、それは農水省から見て周りだと思うんですけれども、周りの省庁から見て今のみどりの戦略というのはどんな評価になっているのかというところが、御意見があればお願いいたします。

川合政府参考人 お答えいたします。

 みどりの戦略では、十四のKPIを設けております。肥料、農薬の削減だけではなくて、有機農業だけではなくて、例えば、燃料を使わない新しいエンジンでありますとか、あるいは水素を使った船、あるいは、木であれば速く育つエリートツリーの拡大、これにつきましては、いろいろな建築物に使っていかなきゃいけませんので、国土交通省なんかは非常に高く評価されています。それからエンジンの関係は、農水省だけではできませんので、経済産業省と連携して、水素あるいは電気を使ったトラクターなどの開発についても連携してやっていかないといけないということであります。

 他省庁からは、非常に高い取組だ、ハードルが高い、でも是非連携させてほしいということで、関係省庁の連絡会議ができ上がっておりますし、他省庁の予算でも、このみどりの食料システム戦略を実行していただければ優先的に採択するという事業も他省庁の事業で実施していただいておりますので、相当高い評価をいただいていると感じております。

一谷委員 ありがとうございます。

 今、他省庁からも大変高い評価を得ているということで、私もすごく納得をしました。

 では、次の質問をさせていただきたいと思います。

 マーケットの変化に農業がどのように対応していくのか。マーケットインの発想、食品のニーズの国内外のマーケットについて、これは武村副大臣、お願いします。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 マーケットの変化、ニーズの変化にどう対応していくかということなんですが、まず、高齢化によるニーズの変化につきましては、農林水産省では、平成二十八年、介護食品につきまして、例えば、健康維持上、栄養補給が必要な人向けの食品、また、かむことが難しい人向けの食品、さらには、飲み込むことが難しい人向けの食品の三つに分類をして、識別マークを設け、新しい市場開拓の商品としてスマイルケア食と呼ぶこととしたところです。

 本年は二月に東京で開催されましたメディケアフーズ展に出展をし、海外からの来場者を含め、マーケティングを行ったところでありまして、海外展開を含めた新たな市場開拓に向けまして、後押しをしていく考えです。

 また、医療分野におけるニーズの変化ですが、先ほども政務官から御指摘をさせていただきました知の集積と活用の場におきまして、多くの農林漁業者団体や食料企業を始めとした様々な分野の機関が参画をし、例えば、医療分野からのニーズを踏まえた、カリウムの摂取制限がある方でも食べることができる低カリウムメロンの栽培方法の開発と普及など、各分野のニーズを踏まえた技術開発や事業化が行われているところです。

 以上です。

一谷委員 私が想像していたよりもたくさんの取組をされているということで、少し驚いたんですが、では、マーケットが求めることに対して技術開発が追いついていないんじゃないかという、私も今、農家さんを回っていて聞くんですが、どうですかね。ニーズの変化に対して追いついていっているという意識なのかどうかということをちょっとお伺いいただけたらと思います。

川合政府参考人 マーケットのニーズというのは、毎年、日々たくさん変わっておりますので、その時々に応じた技術をすぐ入れないといけないんですけれども、それをすぐ農業現場に入れられるかというと、これは時間がかかりますので、他産業で実用化されているものをいち早く入れるというのが一番早い、こう考えています。

 特に、経済産業省とか厚生労働省と連携した取組を、現在、かなり、一番現場で使いやすいというものについては入れていっています。先ほど申し上げました介護の現場で使っているアシストスーツとか、こういったものにつきましては、農業現場で果樹の収穫の現場でありますとか、重労働の現場を軽減できるということで入れています。

 やはりニーズというのは非常に様々分かれますけれども、先ほど申し上げました知の集積と活用の場では、そういったニーズをたくさん出していただきまして、それに合う技術につきまして、他省庁から提案いただきまして、それを農業現場に入れる、それを実証事業でやっていく、そういった話をやっています。

一谷委員 今、連携されているということなんですが、そうしたら、もう一度お聞きするんですが、他産業を巻き込むことによって農業力が向上するという考えを省内では持っているということでよろしいでしょうか。

川合政府参考人 農水省が得意とする品種開発などは、各地の農業現場で、品種開発ということでかなり農水省が前面に出てやりますけれども、やはりスマート農業でありますとか、あるいはアシストスーツのようなもの、それから、花粉症緩和米のような薬あるいは食品にするようなものにつきましては、他省庁と相当連携しないとできないと考えております。それから、文部科学省と連携して、やはり学校給食の問題なんかは農水省だけでは解決できないものだと考えております。

一谷委員 今までこの質問をずっと繰り返してきた中で、私が一つ御提案というか、こういうものがあればいいんじゃないかなと思うんですが、他産業を巻き込む他産業巻き込み課みたいなのを省内に設置するのはどうかというふうに考えるんですが、いかがでしょうか。御答弁あればお願いします。

坂本国務大臣 今後の農林水産業、食品産業の持続的な発展のためには、他産業との連携が欠かせないと認識をいたしております。農林水産省としても、積極的に後押しをしていきたいというふうに思います。

 このため、これまでも各担当部署におきまして、他産業との連携を進めてまいりました。今後とも、より効率的、効果的に連携が進むよう、担当部署間で緊密に情報の共有を図りながら取り組んでまいりたいと思いますし、委員の御提案も貴重な御提案として受け止めておきたいと思います。

一谷委員 ありがとうございます。

 他産業巻き込み課というのを、今様々な取組をお聞きしましたので、これがスムーズに連携していけるように、是非、課をつくっていただけたらありがたいなというふうに思います。

 では、少し質問を変えまして、脱炭素についての取組を聞かせていただきたいと思います。脱炭素についてのみどり戦略では、どのように取組効果が出ているのかということをお聞かせください。

坂本国務大臣 農林水産省では、令和三年五月に策定いたしましたみどりの食料システム戦略や、それから、令和三年十月に改定いたしました農林水産省の地球温暖化対策計画に基づきまして、地球温暖化対策を推進をしております。

 これらに基づきまして、省エネ型園芸施設の導入によるCO2排出の削減、水田の水管理によるメタン排出削減、そして、適切な森林整備や農地へのバイオ炭施用による吸収源対策等の取組を進めることとしております。

 また、みどりの食料システム戦略に基づきまして、生産現場での環境負荷低減の努力の見える化や、温室効果ガスの削減、吸収によりまして民間資金を呼び込むJクレジット制度の活用を推進しております。

 引き続き、私が本部長を務めますみどりの食料システム戦略本部における毎年の進捗管理も行いながら、農林水産分野の地球温暖化対策を着実に進めてまいります。

一谷委員 Jクレジットについては、後で質問をさせていただきたいと思います。

 環境負荷軽減技術促進の予算はどのように使われているのか、計画などの制度設計を問わせていただきます。

川合政府参考人 環境負荷関係の予算の概要についてのお問合せがありました。

 農林水産省では、環境負荷低減に取り組む産地向けの予算といたしまして、みどりの食料システム戦略推進交付金があります。

 この交付金では、都道府県を通じまして、地域の実情に合わせまして、環境に優しい栽培技術や省力化に資する先端技術の実証、優良事例の調査、あるいは、地域ぐるみで有機農業の団地化や学校給食等の利用に取り組む先進的な産地づくり、これらの取組を支援しておりまして、令和五年度には全国で四百件以上の取組が行われております。

 本交付金は、令和五年度補正予算及び令和六年度予算におきまして、約三十億円の予算を措置したところでありまして、引き続き、これを活用しまして、全国の産地の取組をしっかりと支援してまいります。

一谷委員 予算としては、スマート農業の予算と比較すると、多いのか少ないのかというのはあるんですが。

 これは冊子を作ったというふうにお伺いしているんですけれども、どうしてもこういう補助金事業というのは、補助金が終わってしまって、取組が終わってしまうということもあると思うんですが、補助金が終わってからのフォロー、後追いはどうされているかということを、ちょっと追加で質問させていただけたらと思います。

川合政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げました四百件の取組につきましては、まだ始まったばかりの取組もありますが、これを横展開していくことが必要でございます。まず、この取り組んでいる内容につきまして、全国各地に知っていただくということが大切なので、委員御指摘のような冊子、これにつきましては、デジタル版もありますし、それから動画も作っておりまして、これを見ていただくということももちろんあるんですけれども。

 やはり、取り組んでいただくことが大切なので、知らないという人が多いので、地域で非常にいい取組があるんですけれども、それを知っていただくということと、実際に実践していただくということが大切なので、先ほど申し上げましたみどりの交付金を使いまして、実証圃を造っていただきますとか、あるいは、先進地を見に行っていただきますとか、新しい機械を実際に入れてもらって使っていただきますとか、そういったものにつきまして、冊子だけではなく、体感できるような取組を後押ししております。

一谷委員 これも後でまた質問をさせていただくんですけれども、是非周知が必要なんじゃないかなと思います。

 では、脱炭素関係は他省庁との連携が不可欠ですが、どのように連携をして成果を出しているのかということをお伺いします。

川合政府参考人 みどりの食料システム戦略は、狭い日本の国土で食料の生産性を上げると同時に、環境負荷低減を同時に図る、非常に難しい課題にチャレンジしておりますので、これは関係府省の連携が大切だと。

 先ほども申し上げましたが、関係省庁もみどりの取組に対しましては非常に関心が高くて、自分たちで何ができるのかということで、それぞれの持っている、例えば、環境省とか経産省とか国土交通省でありますとか、そういった予算の中にみどりの戦略の部分を取り入れていただきまして優先的に取り組んでいただきますとか、あるいは、事業者認定に当たりましても、経済産業省と連携いたしまして、みどりの関係の肥料、農薬の削減に資する機械あるいは施設について早く認可をしていただくように、一緒になって取り組んでいるとか、こういったこともあります。

 それから、Jクレジット制度につきましても、関係省庁、環境省、経産省なんかと連携して、Jクレジット制度の周知、それから実際に使っていただくということをやっております。

 以上でございます。

一谷委員 先ほど、Jクレジットのお話、いろいろお伺いしたんですけれども、少し身近な話になるんですけれども、ビールについてはカーボンフットプリントの算定ルールがあるのですが、日本酒にないのはなぜかというのがすごい疑問なんですが、そのお答えをいただけたらと思います。

奥山政府参考人 お答えいたします。

 カーボンフットプリントは、温室効果ガス排出量を見える化することによりまして、消費者が脱炭素の実現に貢献する製品やサービスを選択するために必要な情報を提供する、そういった重要な手法でございます。

 これまで、算定ルールの策定ですとか個別の算定は事業者の自主的な取組が進められてきておりまして、委員御指摘のビールに係る算定ルールというのもそうした取組の一つでございます。

 一方で、カーボンフットプリントの算定には、類似の製品、サービスであっても、それぞれの材料や工程などを踏まえた計算が求められておりまして、難易度が高いことから、日本酒メーカーを含めて、取組をちゅうちょする企業も少なくないというふうに認識しております。

 このため、カーボンフットプリントの普及に向けまして、環境省では、昨年、経産省とともに、各製品、サービス共通の算定の方針をガイドラインとして示しましたほか、農林水産省とも連携いたしまして、フードサプライチェーン全体の排出量の見える化と脱炭素化の取組を推進しております。

 また、算定に取り組む企業などを支援するモデル事業を令和四年度から実施しておりまして、今年度も公募により実施する予定でございます。

 このような取組を含めまして、引き続き、関係省庁と積極的に連携しながら、様々な製品、サービスにおけるカーボンフットプリントの普及に向けた取組を進めてまいりたいと思っております。

 日本酒メーカーにおきましても、類似の製品に係る取組も参考にしながら、こういった取組を進めていくということを期待したいと思っております。

一谷委員 今お聞きしたんですけれども、是非、日本の長い歴史と文化のある日本酒ですので、算定基準を公表していただきたいなと思うんですが、環境省の方、どうでしょうか、いけるでしょうか。

奥山政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、算定ルールにつきましては、それぞれの材料や工程などを踏まえた計算をしながら、それぞれの事業者さんのところで基本的には取り組んでいただく、そういった取組でございます。

 もちろん、環境省といたしましても、そういった事業者さんの取組、その後押しをするようなモデル事業などをやっておりますので、そういったものも活用しながら、是非、事業者さんの方で取組を進めていただくということを期待したいと思っております。

一谷委員 では、ちょっと少し、できたら公表していただきたいと思うんですが、中干しについてお伺いをいたします。

 中干しについて、メタン量が減少しますが、これは、私は選挙区が神戸の中央区で、灘があるので、日本酒のことをお伺いするんですけれども、日本酒についてカーボンクレジット化した事例はあるのかということをお伺いいたします。

平形政府参考人 お答えいたします。

 水田は、中干し期間を七日以上延長することでメタンの排出を三割削減することが可能なので、令和五年四月からJクレジット制度の対象としております。

 水田からのメタンの排出は、水田の所在地域、作付面積、排水性、施用有機物の量によって異なりますが、水稲の種類は影響しないことから、Jクレジットの認証申請において品種情報については求めておりません。

 このため、これまで十件が承認されておりますけれども、農林水産省として酒米品種のJクレジット制度における取組状況は把握しておりませんが、酒米品種においても本制度の活用が可能となっております。

一谷委員 可能だということをお聞きしました。でも、なかなか難しいなと思うので、是非事例をお示しいただけたらと思うんです。

 このJクレジット制度について、いろいろやり取りを政府の方とやらせていただいていると、中干し期間延長に取り組んでみませんかというチラシを制作されたと先ほどもお伺いしたんですけれども、これ、大変意味のあることだと思うんですが、どんな場所でどんな品種で取り組まれているかといった具体的な事例が見える必要があるんじゃないかなと思うんですが、是非これに取り組んでいただきたいと思うんですが、御回答をお願いいたします。

舞立大臣政務官 先ほど農産局長からも答弁がありましたが、昨年四月にJクレジット制度の対象になったことを受けまして、まずは昨年五月に、制度の仕組みや支援策について紹介するチラシを作成し、生産現場に周知を図ってきたところでございます。

 本年の三月現在、複数の生産者によります中干し期間延長の取組、先ほどの十件、承認されているところでございますが、公開情報もちょっと限られている部分もございまして、どこまで把握できるかという問題もございますけれども、今後、取組面積や地域性を勘案した事例を収集し、チラシやパンフレット等でできる限り具体的なイメージが湧く取組を周知することで、制度の活用を推進してまいりたいと考えております。

一谷委員 そこで、ちょっと追加で、お答えできたらしていただきたいんですが、素朴な質問なんです。

 中干しが生物多様性に与える影響があるのか、ないのかということをお伺いしたいのと、菌が減少して、収穫高が最大一四%減少したという記事も読みまして、土が乾き過ぎるとよくないということなんですが、差し水をすると、このJクレジット制度では対象とならないというんですが、これは課題ではないかなと思うんですが、もしお答えがあれば、お答えしていただけたらと思いますが、どうでしょうか。

平形政府参考人 ちょっとお答えできる範囲で。

 中干し期間の延長をしますと、水田に生息するヤゴだとかオタマジャクシの、水生生物の必要とする時期に中干し期間が重なることで、影響を及ぼす可能性というのは確かにございます。

 対策としては、圃場単位で中干しの間に生物の避難所になる江を設置したり、作期を分散して、地域全体が中干しにならないような、そんなふうな工夫をしているところがございます。

 Jクレジットとの関係でも、いろいろとまだ事例が十分じゃないところもありますので、どういったバランスを取っていくのかというのはこれから更に詰めていく必要があると考えております。

一谷委員 生物多様性はこの国会でも議論されていますので非常に注目をされていると思いますので、よろしくお願いいたします。

 では、中山間地域について。

 私は、みどりの戦略は本当に大切なところだと思うんですが、中山間地域を気候変動対応可能地域にするために、農業資源に恵まれた条件最適地域にさせるために、標高ごとの補助加算というのがもしあればいいなと考えるんですが、この考え方について意見をお伺いいたします。

坂本国務大臣 みどりの食料システム戦略では、我が国の食料システム全体で環境負荷を低減していくこととしておりまして、清らかな水、冷涼な気候等を生かした農産物の生産が可能である中山間地域を含め、全国の産地でそれぞれの地域の特性や農業の実態を踏まえた取組を進めていく必要があると考えております。

 このため、みどりの食料システム戦略推進交付金によりまして、地域資源を活用した土づくりや、それから化学肥料、化学農薬の削減に取り組む産地の取組を支援しております。

 そのほか、みどりの食料システム法に基づきまして、全ての都道府県で基本計画を策定していただいて、地域の実情に応じた環境負荷低減の取組を認定し、金融、税制による支援を行っているところでございます。

 引き続き、環境と調和の取れた持続的な食料システムの実現に向けまして、中山間地を含む全国各地で環境負荷低減の取組が拡大、定着するように、関係者の理解と協働を得ながら、農林水産省一丸となって取り組んでまいります。

一谷委員 温暖化も進みますので、是非この中山間地域をすばらしく活用していただけたらというふうに思います。

 それでは、少し質問をまた変えさせていただきまして、今回の農業基本法の中に農福連携ということが書かれておりました。基本法の改定にわざわざと言うたらあれですけれども、農福連携を書き込むことで何が変わるのかということをお伺いいたします。

坂本国務大臣 今後、農村地域では人口減少そして高齢化が急激に進行することが見込まれる中、障害者を含む多様な人材の確保が大きな課題となってまいります。新たな基本法で農福連携の推進を位置づけ、そして、障害者等が農業活動を行うための環境整備を進め、地域農業の振興を図る旨が盛り込まれることとされております。

 多様な作業が必要となりますので、農業現場では、個々の障害者の特性に合った作業分担によりまして、障害者の賃金、工賃の向上や、体力や社会性の向上、そして生活の質の向上というのも期待されております。

 例えば、例を取りますと、群馬県前橋市では、農福連携に取り組みます障害者就労施設では、障害者の個々の特性に合った作業分担などの配慮によりまして、令和四年度には、県平均の四倍の工賃を達成をしております。

 このように、農林水産省としては、優良事例を横展開するとともに、障害者が働きやすい環境となるよう、今後も、アドバイスをする専門人材の育成、それから、トイレや働きやすい生産施設などの環境施設の整備、こういったものをしっかりと進め、農福連携を推進してまいりたいというふうに思っております。

一谷委員 私はこの分野でずっと仕事をしてきたんですけれども、先ほど大臣がおっしゃっていただいたように、やはりトイレの問題があって、なかなか受入れができないということもお聞きしたりとか、あと、私が、少しうがった見方かもしれないですけれども、この基本法に書いてある文言だけを読むと、ちょっと何か障害をお持ちの方は農業をやって働いたらいいんじゃないかみたいな感じでちょっと受け取ってしまったので、ここは書きぶりをもう少し変えていただくのも必要なんじゃないかなというふうに思っています。

 ただ、私もこの農福連携をちょっと勉強してみまして、二〇一九年度比で三千件増えて、二四年度には七千百十七件という事業所ができているということで、非常に驚きました。また、四国の方へちょっと行かせていただいたら、糖尿病にいいお芋を栽培をして、しかも、加工して販売をして、高い販売をできているというのも見たんです。

 ここで、ちょっと時間がありますので、もし、追加の質問で、答えていただけたら答えていただきたいと思うんですが、今回の二四年度は、医療、介護、障害、トリプル改定があって、介護事業所もそうなんですけれども、障害の事業所も大変経営が厳しい状況になってきていますので、せっかくこれだけ増えてきた障害の就労施設と農業が一緒に仕事をできていくということが現実になってきているんですけれども、事業所が潰れていくという事態も出てくるんじゃないかと思うんです。ここは、先ほど厚生労働省と一緒に仕事をやっているという話をされていましたので、どういったふうに農林水産省としては考えているかというのがお答えできたらお答えいただきたいと思うんですが。

長井政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘のように、農福連携の取組はどんどん進んできておりまして、これによってかなり好事例も出てきておりますので、そういうことを進める中で工賃も増えてきております。また、いろいろな意味で事業所にとってもメリットのあるものでございますので、これをどんどん進めていくことによってその辺の課題は解決できていくのではないかなというふうに思っておりますので、しっかりと取組を進めていきたいと思っております。

一谷委員 ありがとうございます。是非取組を進めていただきたいと思いますし、事業所がやはり利益が出るような、これは補助金ではあかんと思いますけれども、そういった利益が出るような野菜を育てるとか、そういったことを是非やっていただきたいと思います。

 そして、最後、ちょっと私が独り言をしゃべりますけれども、生活困窮者の方の就農にもすごい有効じゃないかなというふうに思いますので、是非是非、この農福の福というのは、障害をお持ちの方だけではなくて、様々な問題があって生活困窮者の方になられているんだと思うんですけれども、是非そういった方々にも、農業を通していい仕事ができたり社会復帰できたりとか、あと、少年院に入っている少年が、農業の事業を通じて更生していくというような事例も新聞でちょっと読んだんですけれども、是非そんな感じで取り組んでいただけたらと思うんですが、うなずいていただいているので、是非コメントをいただけたらありがたいと思います。

長井政府参考人 お答えいたします。

 今委員の御指摘にありましたように、農福連携につきましては、農福連携等推進ビジョンということで、現在、令和元年六月にまとめたもので進めておりますが、今お話ございましたように、引きこもりの方、また、犯罪とか非行をした者の立ち直り支援等にも対象を広げまして、取組を進めておりますので、そのビジョンに基づきまして、しっかりと進めてまいりたいと思っております。

一谷委員 ありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。

 私は、この農業というのは専門分野ではないんですが、是非しっかり勉強させていただいて、自分が専門にしているところを少しでも意見が言えて、日本の農業の業界が発展していくことに力を使いたいということをお誓いして、私の質疑を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

野中委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 食料・農業・農村基本法の改正案について質問をします。

 食料・農業・農村基本法は、文字どおり農業政策の基本法であります。ならば、まず、農業が持っている意義、役割、これは何かということを、私は法文で明らかにすべきだというふうに考えています。

 坂本大臣、政府は、農業の意義とか役割について、どのように考えておられますか。

杉中政府参考人 農業は、国民に対する農産物の供給機能のほか、適切な農業生産を通じ、水源の涵養や良好な景観の形成などの多面的機能を発揮することにより、国民生活及び国民経済の安定に役割を果たしていると考えております。

田村(貴)委員 私は、この基本法の第一条というところは非常に大事だというふうに思うわけです。

 現行法に改正する前の法律、旧農業基本法の第一条について紹介してください。

杉中政府参考人 旧農業基本法第一条、国民の農業に関する政策の目標について、読み上げさせていただきます。

 国の農業に関する政策の目標は、農業及び農業従事者が産業、経済及び社会において果たすべき重要な使命に鑑みて、国民経済の成長発展及び社会生活の進歩向上に即応し、農業の自然的、経済的、社会的制約による不利を補正し、他産業との生産性の格差が是正されるように農業の生産性が向上すること及び農業従事者が所得を増大し他産業従事者と均衡する生活を営むことを期することができることを目途として、農業の発展と農業従事者の地位の向上を図ることにあるものとするとなっております。

田村(貴)委員 旧農業基本法の一条には、今答弁があったところの文言が入っていました。

 今聞いて、私も読み直してみて、この一条というのは、きちんと、農業の意義、そして農業はこうあらなければならないという理念がうたわれています。

 農業に関する政策の目標は、国民経済の成長発展及び社会生活の進歩向上に即応、そのとおりですよね。農業の自然的、経済的、社会的制約による不利を補正する、これも今にも生かさなければいけません。農業従事者が所得を増大して他産業従事者と均衡する生活を営むことを期する、これも今に通じる話です。そして、農業の発展と農業従事者の地位の向上を図る、今に通じる話です。

 この一条が、現行基本法に改正する前に、全てこの要素が削除されてしまいました。現基本法一条については、農業の持つ役割や重要性については何も書かれていません。

 農業は、国民の命の源となる食料供給を担うとともに、環境を守り、国土を保全し、国民生活、文化を豊かにする多面的機能を持っている、今答弁があったところです。そして、農業は、このような機能を有する産業として、坂本大臣、私は、公益的使命を担っているというふうに考えます。

 ただの産業ではなくて、公的な役割、公益的な使命を持っていると考えますが、大臣はいかがですか。

坂本国務大臣 旧農業基本法が論議をされ、そして成立したのは昭和三十年代の半ばでございました。その経済的なもの、それから労働負担も非常に厳しい状況にありました。そういうことで、農業と他産業の間の生産性、さらには生活水準の格差是正を図るため、農業の発展と農業従事者の地位の向上というのを主眼にした、農業施策に特化をした法律であったというふうに思っております。そのために、第一条に、農業及び農業従事者が産業、経済及び社会において果たすべき重要な使命というのを規定したというふうに考えます。

 一方、現基本法は、農業及び農業従事者に着目した法律から、国民全体の視点に立って、食料と農業と農村の役割を規定する法律へと政策転換を図ったものであります。

 このため、基本理念におきまして、食料供給機能や多面的機能などの農業が国民生活に果たす役割は位置づけていますが、農業従事者の所得を増大する旨は規定しておらず、今後もその予定はないということであります。

田村(貴)委員 では、今農家は潤っているのか。これは本会議質問でも予算委員会でも述べてまいりました。酪農に至っては、マイナスですよね、収入が。赤字経営ですよ。どんどん離農が増えている。お米だって、たった一円ですよ。そういう状況は今日もある。だからこそ、国民の食料を供給し、そして多面的機能を担っている農業というのは非常に大事である、公益的な使命を担っていると思いますが、もう一度お尋ねします。

 ほかの産業と違って、公益的な使命を農業というのは私は担っていると思いますが、大臣、いかがですか。

坂本国務大臣 農業の持つ多面的な機能、これは十分に農業は保持している、持っているというふうに思います。

田村(貴)委員 公益的使命を私は一条に明記すべきだというふうに思います。

 条文にいろいろ書いてあるというふうにこれまで答弁がありました。しかし、この条文をよく読むと、あくまでも農家の努力が主で、農家、農民を国として責任を持って支えるというような表現が見当たりません。その条文はこれを回避しています。

 食料の供給や多面的機能があり、農業は公益的な使命を持っていること、だからこそ、国が責任を持って農家、農民を守るということを基本法の中心にすべきではないかと思いますが、条文の冒頭に持ってくるべきだと思いますが、農水省、いかがですか。

杉中政府参考人 先ほど大臣から答弁ありましたとおり、現行基本法というのは、国民の視点に立って、食料、農業、農村の果たす役割というものを規定したものでございます。

 こういった政策転換によって、こういった食料、農業、農村の必要性を国民に理解してもらうということが重要でございますので、先ほど答弁があったとおり、農業基本法に戻るような形で、農業従事者の所得向上、それを目的とするようなものを規定するような法律にするということは考えておりません。

田村(貴)委員 十三条に、農家の自主的な努力を支援するというのを挙げています。農家が自主的な努力を続けることは非常に尊くて、大事であります。しかし、その努力と奮闘もかいなく、やはり飼料が上がって、肥料が上がって、そして光熱費が上がって、経営が維持できないという農家の方はたくさんいるじゃないですか。

 ですから、私は、今これだけ農地が減って、そして農業従事者が半減する中で、今農業を頑張っておられる方はやはり国が責任を持って支える、そういう局面にあるからこそ、今の基本法の改定ではないのか。四半世紀ぶりにここを変えるんだったら、今置かれている現状、今政府が担わなければならない使命というのをやはり冒頭、書き込む必要があると思います。そのことを強く要求しておきたいと思います。

 私は本会議質問において、岸田総理に対して、農業基本法の改正から二十五年、農村は疲弊の一途であるということを指摘しました。農村から農家がいなくなり、今や農村生活の基盤が失われている、何が問題で、どこに責任があるのかというふうに質問しました。

 岸田総理の答弁は、都市への人口流出があった、出生減と死亡増に伴う自然減があるとして、農村人口の減少は避け難いというふうに答弁されました。私にとっては、これは本当に他人事のように聞こえました。政府の責任は感じておられないんでしょうか。

 人口減が起こっているから、農業従事者が減っている。坂本大臣も同じ認識ですか。

坂本国務大臣 先日の本会議での総理の御発言というのは、農村人口の減少は、以前は他産業への就業による都市への人口流出が主因だった、その一方で、近年は、高齢化が進む農業者を中心に、農村人口の出生減、死亡増に伴う自然減が主因になっているという旨を述べられたものと承知をいたしております。

 農村部の人口減少は、当然、農業者の急速な減少にもつながるものであります。そのために、少ない農業者でも食料の安定供給を図るとともに、農業を下支えする農村コミュニティーの基盤を維持していくということが重要になってくるというふうに思います。

 このため、担い手の育成、確保、そして、農業法人の経営基盤の強化、さらには、農業の関係人口の増加にもつながるような様々な産業づくり、地域社会の維持に資する農村RMO、こういったものを駆使しながら、今後の農村地域の活性化、こういったものを図っていくべきであるというふうに思っております。

    〔委員長退席、伊東(良)委員長代理着席〕

田村(貴)委員 日本の人口は確かに減少しています。この四半世紀で見るならば、その減少率は四%であります。でも、農業従事者は五〇%減っているんですよ、五割減っているんですよ。

 審議官にお尋ねしますけれども、人口が四%減少している中で、ある職種の従事者が半分も減っている、そういう職種はあるんですか。製造業とかサービス業とかいろいろな分野の仕事があるんですけれども、農業は五割減っているんです。それは本当に、人口減少だから起こっているんですか。

杉中政府参考人 人口における産業ごとの従事者の数というのは、その産業をめぐる状況等によって変わっているものでございますので、委員御指摘のように、農業従事者というものはこの基本法制定では半分になりました。他産業についてのお答えは持ち合わせておりませんけれども、日本で製造しなくなったものとか、農業と同程度に減っているもの等もあるというふうに思われます。

 詳細についてお答えすることは、今は差し控えさせていただきます。

田村(貴)委員 重要産業ですよ。国民に食料を供給しているその従事者が、僅か二十五年間の間に半分に減っている。危機感が感じられないんですよ。それを何か自然現象であるかのように総理大臣が答弁すること自体が、私は政権として本当に危機感がないなと思います。

 財務省は、二〇二一年度の財政制度審議会の資料で、二〇四〇年には基幹的農業従事者が現在の約百二十万人から四十二万人になると推計しました。

 農水省は更に深刻な予想をしていますよね。四回目の検証部会の資料で、今後二十年間で高齢者がリタイアした後、基幹的農業従事者数は現在の約四分の一まで激減するおそれがあると言っています。すなわち、二〇四一年には三十万人に減少するという見方であります。二〇〇〇年に二百三十四万人いた、そして今、百十六万人に半減した、二〇四一年には三十万人に減っていく、これが政府の予測、見立てとして出されてきているんですよ、公的な会議で。そうですよね。

 三月に本委員会で、私の質問に対して大臣は、担い手は確保するというふうに答弁をされました。後継者をしっかり育成していく、それを全て包含した上での基本法の改正案だというふうに答弁されました。

 担い手を確保する、これは当然のことであります。担い手を支えていく、守っていく、当然のことであります。お尋ねしたいのは、半分まで減った日本の基幹的農業者数を、今度の農業基本法の改正、新たな農業基本計画で、担い手数を、従事者数を増やしていくんですか。そういう計画を今から作っていくんですか。しかとお答えいただきたいと思います。

杉中政府参考人 今回の基本法の改正案が成立を見れば、新たな基本計画におきまして、平時からの食料安全保障を実現する観点から、我が国の食料安全保障について、課題の性質に応じた目標の設定を行うということとしております。

 その内容については今後検討していくこととなると思いますけれども、安定的な食料供給を図るためには、農業経営者の数、規模等、非常に重要な要素だと思いますので、そういったことも考慮に入れて、適切な目標を設定するべく検討を行っていきたいというふうに思っております。

 また、その中で、担い手の確保というのは非常に重要なことですけれども、現在の農業、農村部の人口構成を考えた場合には、今後、農業者の減少というのは避けられないものというふうに考えております。

 我々、そういうことを大変大きな危機を感じておりまして、そのために基本法の五条においても、人口減少による農業者の減少というのを踏まえて、その中でも食料安定供給を図っていくための施策を講じなければならない、そういうふうに規定をさせていただいたところでございます。

田村(貴)委員 何かもう諦めの境地になっているんじゃないですか。

 改正案の五条は、人口の減少に伴う農業者の減少という状況において、これらの機能が発揮されるようという文言がつけ加わっています。

 そして、総理大臣も、避け難いというふうに答弁されました。

 結局、もう日本の農業従事者は減って構わないということなんですか。食料自給率は上げるべきじゃないですか、みんなそういうことを願っているのに、なかなか上げるのは難しいと。これは昨日の答弁ですよね。

 いつまでには、今でも四五%の目標を設定しているのにそれを踏襲するとも言わない、どこまで上げるとも言わない、そして、農業従事者数は半分になっているのにこれを増やそうとも言わない、そんなのでいいんですか。そこが今問われているんですよ。

 政府の資料に、あちこちに、その後退傾向が出ているんです。検証部会の資料では、少ない経営体で農業生産を支えていかなければならないと。限られた生産者で生産を支えていかなければならないというのは、坂本大臣も本委員会で同様な答弁があったというふうに記憶をしております。

 大臣に再度伺います。

 農業従事者数はもう減っても構わない、減るのが仕方がないと考えているのか、それとも、やはりここは頑張って農業者数の減少に歯止めをかけて、日本の生産人口を向上させていく、そういう政策目標は掲げないんですか。いかがでしょうか。

坂本国務大臣 私たちの使命は、国民一人一人に食料を安定的に供給するということでございます。

 農業者人口は半減いたしましたけれども、農業法人の数、農業法人の産出額、そして、農業全体の生産額、これは九兆円ということで、それほど減っておりません。ですから、少ない人数の中でより生産性の高い農業を展開をして、そして食料を増大することによりまして、国民の皆さん方に食料の安定的な供給をする、そういう使命を持って今回の基本法の改正に臨んだところでございます。

 そういうこともありまして、人口減少に伴う農業者の減少というものを第五条において明記する必要があるというふうに考えたところであります。

田村(貴)委員 大臣、大臣のイメージは、そうすると、効率化そして大規模化、限られた生産者で生産を支えていくというイメージなんでしょうか。

坂本国務大臣 家族経営が九六%を占めております。ですから、家族経営の大切さ、これも十分私たちは認識をいたしております。

 その一方で、やはり需要に応じた農業生産をすること、そして、過度に輸入に依存することなく、できる限り国内で作付できるやつは国内で作付するというようなことで、国民の皆さんたちに、法人も、そして大規模農場も、そしてさらには家族農業も含めて、食料の安定供給を果たすというようなことが私たちの今回の基本法の第一の使命であるというふうに考えております。

    〔伊東(良)委員長代理退席、委員長着席〕

田村(貴)委員 九六%を占めている家族農業の方がどんどん廃業、離農しているんですよ。だったら、ここに依拠するんだったら、この人たちが農業で生計が立てられるようにしていく、すなわち農業従事者を増やしていくのが当たり前じゃないんですか。

 大臣、ちょっと答弁原稿から離れて結構ですけれども、私も今朝ちょっと知ったんですけれども、JA共済連が全国の十代から五十代の一万人を対象に行った、最近の農業に対する調査結果がインターネットでも公表されています。この調査結果、私も非常に興味深く拝読したんですけれども、この一万人を対象に行ったアンケートで、三七・四%の方が地方暮らしを希望している、そして、十五歳から二十七歳の、しかも農業未経験のZ世代、この若い人たちの四人に一人、二六・九%が農業をやってみたいと回答しています。

 私、希望があるなと思いました。やはり、地元回帰、そして生まれ育ったふるさとで暮らしたい、そして、親が農業をしていたんだったら後を継ぎたい、そう思われている若い人たちはいるんだという確信が持てました。この調査結果、大臣、希望がある結果だと思いませんか。

 就農希望の方、そして農業に興味がある若者、どんどん農業に参加していただいて、この方たちをやはり支えて、日本の農業人口、生産人口を増やそうと私は思いたいです。でも、大臣は思いませんか。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 我々も、今後の日本の農業を支える担い手となり得べき若い世代の人材の確保、これは大変重要だというふうに考えております。

 そういった中で、今委員の方から御紹介がありましたような、JA共済連の調査結果といいますか、アンケートの結果なども出ておりますけれども、そういった中で、最近、我々もいろいろな施策を展開をしている中で、若い方に農業の魅力を感じてもらえるような、そういった傾向といいますか、兆しが出てきているということは感じながら施策の展開をしております。

 ただ、先ほど総括審議官の方からの答弁もありましたけれども、現在の基幹的農業従事者の年齢構成を見ますと、七十歳以上の層が約七十万人というような状況にあるわけでございます。

 そういった中で、若い人に当然入ってきてもらわなきゃいけないということではありますけれども、こういった現状を踏まえると、どうしてもやはり農業従事者の数が減っていくということをある程度覚悟しながら、我々、今後の日本の農業を支える構造をつくっていかなければいけない、そういう問題意識を持って政策を講じていかなければいけないというふうに考えております。

田村(貴)委員 減っていくことは仕方がないから諦める、だけれども増やそうとはしないというふうに聞こえましたけれども、大臣も一緒の考え方ですか。

坂本国務大臣 私はそのアンケートをまだ見ておりませんけれども、Z世代の方々が三四・七%就農したいというようなことを聞きますと、心躍る思いがいたします。

 それだけに、やはり就農に当たってはそれだけの準備が必要です。農業法人に勤めてもらう、そこでまずスタートをしてもらう、あるいは大規模農場の方で働いていただく。あるいはまた、様々な資金等も必要でございます。そういうことで、国としては、これから、今後、研修資金、あるいは経営開始のための資金、さらには雇用就農促進のための資金、そして先輩農業者による技術指導、こういったものを充実させていかなければいけない。そして、社会人向けの農業研修にも取り組んだ上で、こういったZ世代、あるいは若い世代を農業に取り込んでいきたいというふうに思っております。

田村(貴)委員 若い人たちが就農することについて、それに意見を異にすることはないと思います。

 大臣、Z世代の方の就農意欲は二六・九%です。そして、地方暮らしを希望している方は三七・四%だったという結果でありました。

 私は、農業基本法の改定は、ある意味、中長期の計画になるわけですよね。今後、これからの農政を展望する中で、少ない経営体で生産を支えていかなければならないとか、それから、人口の減少に伴う農業者の減少という状況においても機能が発揮されるようとか、現状追認、そういう表現でこの農業基本法を作ってほしくないんですよね。

 やはり、これから、大臣も大転換だと言われたじゃないですか、所信の表明のときに。大転換が必要だと。やはり、ここまで生産基盤が落ち込んでいるんだったら、大転換につながる大志と、そして計画を持って臨むのが私はまともな農政だと思います。農業従事者の減少が人口の減少によるものだと、それを原因であるかのように主張するのは、これは私は間違いであると思います。

 昨年十一月、輸入の配合飼料等がとにかく高くなって苦しんでおられる酪農家の方が農林水産省の前に集まりました。そのとき坂本大臣は大臣でなかったんだけれども、大臣、お聞きになっていると思います。その酪農家の方が次のように訴えたんです。ちょっと、大臣、聞いてください。

 酪農、やばいです。地域から酪農家が壊滅すれば、当然ながら、関係する業者も壊滅します。牧場従業員、獣医さん、餌屋さん、機械屋さん、酪農ヘルパー、酪農協の職員、県酪農の職員、指定団体の職員、クーラーステーションの職員、集乳車のドライバー、動物用の薬屋さん、牛の種屋さん、そして削蹄師さん、検定員さん、コントラさん、農業高校畜産部の方々、乳業メーカー、酪農教育ファームの方々、俺はこの人たちの全ての顔を知っていると訴えられました。すごいなと思いました。

 農業者が離農することで、農村人口に、地域の社会にどれだけの影響を与えるか。単にその農家が廃業で二人、三人いなくなったんじゃないんですね。これほどの方たちが影響を受けて、仕事がなくなる、仕事を失うということなんですよね。これらの方々が地域からいなくなる、あるいは仕事を失うことが、これが人口の減少で仕方がないというふうになるんでしょうか。これも人口減なんでしょうか。いかがですか。

杉中政府参考人 議員今申した点につきましては、農業の地域の経済における重要性というのは我々も認識をしております。さらに、人口が少なくなっていく中でと我々申し上げておりますけれども、一つの経営体の持つ面積だけではなくて、地域経済の役割もより重大になっていくというふうに考えております。

 我々は、今回の基本法の中でも農業法人の経営基盤の強化ということを改めて追加しましたので、リスクに強い経営体をつくっていくことで危機時においても廃業することがないように、これは政府としてもしっかり支援をしていきたいというふうに考えています。

田村(貴)委員 一軒、二軒の農家が、酪農家が、畜産農家が、もうやめた、できないとやめたときに、じゃ、それはほかの大規模を担う人たちがフォローしていけばいい、そういうのじゃないんですよね。地域社会が丸々影響を受けてしまうといったことをやはり肝に銘じないといけないと思いますよ。

 次に、JA全中が農地面積について、国土交通省、国土の長期展望によって推計したところ、二〇二〇年の四百三十七万ヘクタールが二〇五〇年には三百四万ヘクタールへ三割減少する、そういう試算をしました。もう既に二〇二〇年には四百三十二万五千ヘクタールへと日本の農地は減少しています。

 今度、法案の中で、政府の責務として農地の維持が条文として加わりました。この先三割も減らしてしまっては、既にこの四半世紀で五十三万ヘクタール減っているんですけれども、そうして減らしてしまって、農地を維持したことには、当然なりませんよね。今回、この条文で農地の維持が加わったというのは、農地が減らないように施策を展開するということなんでしょうか。四百三十二万ヘクタールを維持するという理解でよろしいんでしょうか。

長井政府参考人 お答えいたします。

 現行の食料・農業・農村基本計画におきましては、令和十二年の時点で農地面積については四百十四万ヘクタールと見通しているところでございます。委員御指摘の今回の農振法等の改正によりまして食料の安定供給の確保のために農地の維持をしていくということでございますので、そうしたことも踏まえまして、今国会で基本法並びに農振法等の改正法案が成立した暁には、それを踏まえて策定される次期基本計画におきまして農地面積の確保を始めとする具体的な内容について議論をしていきたいと思っております。

田村(貴)委員 大臣、確認です。

 農地については維持をしていくということでよろしいんですか。

坂本国務大臣 農地の維持に努めてまいります。そして、それぞれの地域の実情があると思います。そして、そこにつきましては、国と地方の協議の場をつくりながら、いかに農地を維持していくかというような話合いを進めてまいります。

田村(貴)委員 そうすると、農地は維持する、でも農業従事者は減ってしまう、減って仕方がないと、もう諦めているというんですね。

 もしこれで、財務省なり農水省なり推計している二〇四〇年に四十二万人、あるいは二〇四一年に三十万人という政府の推計が行われるとするならば、例えば三十万人の農業従事者で四百三十二万五千ヘクタールを維持しようとすると、一人で百四十四ヘクタールを維持、耕作することになります、夫婦なら二百八十八ヘクタールということになります。これは極めて非現実的なことになるのではないでしょうか。

 私は、本会議で、水田作農家の平均収入が年間一万円だったというふうに指摘をしました。ごめんなさい、先ほど一円と言いましたが、間違えて、一万円ですね。一万円だったと指摘しました。総理は、自家消費を目的としたり農外収入を主としたりしている小規模農家を含めた全ての水田作経営体の平均値であり、農業で生計を立てていく水田作経営体の所得に着目するというふうに答えました。

 お伺いします。ならば、専業で生計を立てている水田作経営体の収支はどうなっていますか。水田作農業における主業経営体の農業経営収支を紹介してください。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 農業経営体の経営収支でございますが、令和四年の統計結果で申し上げますと、水田作経営のうち、農業所得が主である、いわゆる主業経営体におきましては、農業粗収益、収益の総額でございますけれども、千三百八十四万円、農業経営費、経費でございますが、千百八十六万円、粗収益から経営費を差し引いた農業所得で百九十八万円となってございます。

 また、今申し上げた水田作経営のうち、作付延べ面積が二十ヘクタール以上の主業経営体というのも区分してございますので、こちらを申し上げますと、農業粗収益が三千九百八十三万円、農業経営費が三千百三十八万円、農業所得が八百四十五万円となってございます。

田村(貴)委員 さきにあった百九十八万円というのは、これはまた本当に低いですよね、月収十六万円です。年収一万円でも百九十八万円でも、まるで収入が足らないということには変わりがありません。

 日本の農家は、誰もが知っています、農業では生計が立てられない。稼ぎたいけれどもできないから、息子には、あるいは子供たちには継がせたくない、ほかで仕事を見つけろと言う。代々の農地は何とか維持したいんだけれども、今全ては無理だ。息子は、ほかの仕事を探して、兼業でできる範囲で農地を残していく。

 農業従事者が激減する、そこに歯止めをかけないでまだまだ減っていく。しかし、田畑、耕地面積は維持していく。そうすると、本当に少数の人員で広大な面積を面倒を見ていかなくちゃいけない。これは本当に無理な話であります。

 農業従事者がこれだけ激減しているというのは、人口減少が理由ではありません。農業で生計が立てられないからじゃありませんか。米を作って飯が食えねえと農家の方は言っていますよ。だから、農業をやめざるを得ない、離農、廃業せざるを得ない。ここに原因があるんじゃないですか。いっぱいいっぱい理由は言われたけれども、農業で生計が立てられないから農業従事者が減っていく、これは真実なんですよ。

 坂本大臣、耕地面積は維持していく、農業従事者は今からも減少していく、これでいいんですか。

野中委員長 時間が来ておりますので、答弁は簡潔に願います。

坂本国務大臣 若い農業者の離農を食い止めるためには、やはり農業者の所得向上というふうに思います。

 そのためには、経営管理能力を向上させること、あるいはスマート化、ブランド化、そして一方の方で、肥料コストや飼料コストを抑えるということ、そのことによって、十分、先生が言われました飯が食える農業、そういったものをこれから目指して、収益性の高い農業経営の育成を図ってまいりたいというふうに思っております。

田村(貴)委員 時間が来ました。続きはまた次回させていただきたいと思います。

 終わります。

野中委員長 次に、長友慎治君。

長友委員 国民民主党の長友慎治です。

 今回の基本法の改正におきまして核になるのが食料安全保障の確保であることは、これまでの議論の中でも明確になっているというふうに思っております。

 そこまでは共通認識ができていると思うんですが、その上で、農水省がこれまで説明していただきました、また農水省が作成した今回の改正案の資料等を読み込んでいきますと、国民に対する食料の安定的な供給に当たっては、海外への輸出を図ることで食料の供給能力の維持が図られなければならない旨を規定するという旨のことが書かれてあります。そして、基本的施策として、農産物の輸出の促進を行っていくことを今回の改正で農水省、政府は強調をしているわけです。

 農業という産業を守るために、狭まる国内市場に代わるマーケットを海外に求めることは理解はします。そうなんですけれども、輸出した先のターゲットが海外の富裕層向けになっているように思われるんですね。

 日本からの輸出農産物で最も金額が多いのは加工食品でありまして、その中で多いのは、金額が大きい順にアルコール飲料、そして調味料、菓子類。このお菓子には、米菓、お米で作ったお菓子は除いてありますが、こうした、農産物というよりも加工食品の輸出促進が食料安全保障にどう貢献するのか、まずは教えていただきたいと思います。

水野政府参考人 お答えいたします。

 昨年の農林水産物・食品の輸出額一兆四千五百四十一億円のうち加工食品は五千百三億円と約四割を占めており、農林水産省としては、日本酒、ウイスキー、焼酎やソース混合調味料、菓子、しょうゆ、みそなどを重点品目として輸出促進に取り組んでいるところでございます。

 これらの加工食品の輸出は、日本酒のようにほとんど国産原料を使用しているものは、その輸出拡大が国産原料の需要拡大に直接的につながるほか、その他の加工食品でも、輸出拡大が食品メーカーの国産原材料の買手としての機能を高める効果を持つということでございまして、いずれにしても、国内の食料生産能力の維持強化につながるものと考えております。

 また、加工食品も含めて国内の農産物が海外の富裕層に高い値段で購入されることにより、国内の食品産業や農業者の収益向上を通じて生産基盤の強化につながると考えております。

 このように、加工食品であっても、その輸出促進を通じて食料の供給能力の維持、ひいては食料安全保障の確保につながると考えており、引き続き、政府一体となって輸出促進に取り組んでいきたいと考えております。

長友委員 日本酒は分かりやすいと思うんですね。原材料は国産のものだと思うんです。

 では、例えばウイスキー、ウイスキーの原料も日本で賄っているものだったら更にいいなと思うんですね。あと調味料も、みそ、しょうゆなどもあるとは伺っていますけれども、中身を見るとカレー粉が割合が多かったりというふうな現状もあります。

 例えばウイスキーやカレー粉などの原料も国産で賄ってこそ、輸出に力を入れる意味がまた出てくるんじゃないかなと思うんですが、この点について、もし見解をもらえればと思うんですが、いかがでしょうか。

水野政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のウイスキーですとかその他の調味料のものでございましても、そういった形で、食品メーカーが国産原料を買い取るための機能を高めるということに輸出拡大というのはつながるということで考えておりますので、御指摘の加工食品についても、やはりこれは輸出拡大を通じて食料の供給能力を高めるという考えでございます。

長友委員 メーカーさんがしっかり国産の、国内の生産者のものを買い取っていただいていることにつながっているということを信じたいというか、そこもデータで求めれば出てくるんでしょうけれども、そういうことで輸出に力を入れていくんだということは理解をしました。

 では、生産者さんがそれを本当に実感できているのかなというところも気になるところですので、そこは引き続き私も現場の声を拾っていきたいと思いますので、引き続き取り組んでいただきたいと思います。

 次の質問でございます。

 先ほどから、田村委員も、またそれまでの委員も基幹的農業の従事者の話は出ておりますが、農水省の発表によって、今後二十年で基幹的農業従事者が約四分の一程度、二〇四一年には三十万人に急激に減少するということが分かっているところでございます。

 小野泰輔委員の資料でも示されたとおり、この四十二年ぐらいの間で生産者の数は七五%以上減っていて、それでも単収を上げているという現状があるということは理解した上で、あえて伺いたいなというふうに思うんですが、人口全体が減少している中で、人材の獲得競争も当然激化している中で、農業人口も何とか確保していきたいということだとは思うんですが、今後の農業生産を担うのは大規模な農業法人、とりわけ雇用型経営であるというふうに、どうしても数字上、見ると、そういうふうに考えざるを得ないんじゃないかというふうに私は感じてしまうんですが、改めて農水省としての見解を伺いたいと思います。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 現状、農業経営体の約九六%は個人経営ということでございますけれども、一方で、法人、まだ数としては三万強、法人以外の団体経営も含めると三万八千という数字になるんですけれども、現在、農業生産に団体経営がどの程度のシェアを占めているかということになりますと、経営耕地面積ベースで申しますと二三%、約四分の一を占めているというような状況になっているということで、現状、我が国の農業生産は、九六%を占める個人経営と、法人経営の組合せで成り立っているというふうに認識をしております。実態は法人がこれだけの数でこれだけのやはりシェアを占めているということですので、今後の日本の農業の中核を担う役割は担っていただく必要があるというふうに考えております。

 ただ、大規模な農業法人だけが農業生産を担うということではありません。農業法人や中小・家族経営がそれぞれの実情に応じて農業生産を行うことが重要であるということでございまして、経営規模の大小あるいは個人、法人などの経営形態を問わずに、農業で生計を立てる担い手を育成、確保していくというのが国の方針でございます。

長友委員 国の今後の方針として明確に御答弁いただきましたけれども、数字で見ていくと、家族経営の皆さんが九六%いるというのは分かりますよ。でも、実際に耕地を担っている皆様が、法人が増えてきていて、これだけ農業人口の減りが激しくて、さらに、維持していきたい農地に対応していくために、私も中山間地域が非常に多い地元ですから、家族経営の皆様も大変大事にしていただきたいということは、そこはもう間違いないんですけれども、一方で、それでは厳しい部分があるよねということは本音だと思うんですね、農水省としての。

 余り変にオブラートに包まないでいただきたいなという部分がありまして、明確に、法人化して農地を維持していくんだ、これはもう雇用型経営でやっていくんだ、大規模化していくんだということが本音であるんだったら、僕は、はっきりと正々堂々とそこは御披露いただいた方がいいと思うんです。その上で、中山間地域等の大規模化に向かないところは家族経営の皆様にしっかりと守っていただきたい、ですからどうぞよろしくお願いしますと頭を下げて、しっかりそこは直接的支払い補償もするとか、手当てをしていただければいいと思うんです。でないと、議論をしていく中で、建前で議論されて本質が見えなくなるということが一番、この時間は何だったんだろうなと思いますので。

 レクのときにはちょろっと本音を言っていただけたりしますけれども、是非、本音で議論をいただいて。これは国民の、農業、農家さんと一緒になって取り組まないといけない基本法の改正であって、安全保障だと思います。

 私の地元は、本当に中山間地域が多いんです。ですから、その方々にもしっかりと一緒になって農業を守っていこうねというふうに言えるように。余り変なオブラートに包むような御説明はもう要らないかなと思っているということを、今日はちょっとお伝えしたいなと思います。

 その上で、やはり、多様な農業者の皆様に今後農業に携わっていただかないといけないということは、私も同感でございます。農村でそういう多様な農業者の皆様を確保していかないといけないわけなんですが、これは、中山間地域など、農業だけで生きていこう、暮らしを成り立たせていこうというのはなかなか難しいわけなんですね。ですから、半農半Xだったり、ほかの仕事、副業をやりながら農業も兼業でやっていただくということになっていくんですが、半農半Xの半Xの方の部分で、農村で例えば雇用や教育、学校ですね、あと病院等がなくなると、半農半XのXがなくなるわけですよね。更に農村が人口が減少していくと、どうやって農家として残っていけばいいのということになるんです。

 ですので、農業の大規模化以外に、新たな所得の獲得先や雇用先を半農半Xをしていただく人のためにつくっていくということも、積極的に農水省も取り組んでいくべきではないかというふうに考えるんですが、見解を伺いたいと思います。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 将来にわたる食料の安定供給の確保に向け、農業経営の規模拡大や付加価値の向上の取組を通じて、農業で生計を立てる担い手の育成、確保、これを図っていく必要があるということでございますけれども、一方で、担い手だけでは管理できない農地が出てきている中で、兼業農家など担い手以外の多様な農業者も、農地の保全管理や集落機能の維持などの面で重要な役割を果たしていただいていると認識をしております。

 こうした兼業農家は、特に高齢化が進展しております。御指摘があったように、こういった状況でございますので、今後、中山間地域を中心に地域コミュニティーの維持が困難になる集落が増加することが懸念をされるという認識でございます。

 このような情勢を踏まえ、農村に所得と雇用の機会を確保するとともに、農村への訪問者の増加に資する産業を振興し、多様な人材を呼び込むことも重要であると考えております。このため、多様な人材の呼び込みに必要な六次産業化や農泊など、農村地域の仕事づくりを一層推進してまいる必要があると考えております。

長友委員 先ほど田村委員から、Z世代のアンケート調査の御披露もありました。地方暮らしを希望するとか農業をやってみたいという世代もいるという部分に、大臣も心躍る、胸が躍るというふうにおっしゃいましたけれども、やはりそのような方々にしっかりと場所を用意していくということも必要だと思いますので、そこは是非取組をお願いしたいなというふうに思います。

 続きまして、集落営農についての質問を通告しておりますが、ここは飛ばしまして、農業者の所得向上について質問したいと思います。

 これまでも農業者の所得向上については議論になっておりますけれども、当然、農家のなり手、担い手を増やすためには、農業者の所得向上は引き続き取り組まなければならない大きな課題だと思っています。

 一方で、国民経済全体から見た場合、国民に必要な食生活をなるべく安いコストで、いついかなるときも満たすということ、農水省のミッションは、いつ何どきも食料を安定して供給するということですので、その部分とどうしてもてんびんにかける部分が出てきてしまうのかなというふうに思うわけなんですね。

 国民の食生活を守ることを目標に、中長期的な視点で、例えば二〇五〇年までにどれくらいの農地と農業人材を確保する必要があるのか、そのためのコストをどれぐらいかけるのか、その点を起点に戦略を練るべきだというふうに思うんですね。農家さんの世帯年収はこれぐらいまで上げようね、それから、二千何年までに世帯年収幾らぐらいのいわゆる農業人材が何人いれば、このぐらいの規模がいれば日本人の胃袋は満たすことができるよね、そういう仮説というか目標を持ってバックキャスティングをしていただければ、農水省として予算をかける規模というのが見えてくると思うんですね。

 先ほど小野泰輔委員が、経済産業省の予算は焼け太りしている、農水省の予算はもっと三倍ぐらいあっていいんじゃないかという御発言もありましたけれども、もしバックキャスティングで、何年後には世帯年収幾らぐらいの農家さんたちを何人育てます、若しくは確保します、そのためにこれぐらいの予算が必要なんです、そうしなければ日本の食料安全保障は守れません、そういうようなロジックで財務省を説得すれば、予算も引き出せるというように考えるんです。

 質問としては、バックキャスティングの手法で、どれぐらいの農地と農業人材を将来確保する必要があるのか、そのためのコストをどれぐらいかけるのかを起点に戦略を練るべきだと考えますが、その見解を伺います。その実現に向けて、農家の所得を底上げしていくというふうにすべきだと思うんですが、農水省の考えを伺います。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 改正法案では、基本法に基づき策定する食料・農業・農村基本計画におきまして、食料自給率その他の食料安全保障の確保に関する事項の目標を定めまして、達成状況を少なくとも毎年一回調査し、結果を公表することとしております。

 この中で、委員御指摘のように、人口減少下でも持続可能で強固な食料供給基盤を確立するため、農地の維持や担い手の育成、確保を含めて、中長期的な観点も踏まえつつ、適切な目標の設定及びそのための具体的施策について、これは当然、施策に関する予算の効果なども踏まえながら定めていきたいというふうに考えております。

 また、議員御指摘のように、将来にわたって持続的に食料を供給するという中では、農業所得の向上は非常に重要だと思っております。そのためには、経営管理能力の向上、生産性の向上、付加価値の向上といったようなことを図っていく必要がある、その内容についても、基本計画の中で具体的な施策として反映していきたいというふうに考えております。

長友委員 御答弁ありがとうございます。

 フォアキャスティングだと、どうしても予算をつけにくいと思うんですね。なぜなら、いわゆる将来確保するべき未来像というのがなかなか見えませんので。是非、農水省もバックキャスティングの手法を入れていただいて、戦略的に予算を取っていただき、農家の皆様の所得の向上に取り組んでいただきたいなというふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。

 次に、酪農のことにつきまして質問をしていきたいと思います。

 本日も酪農家の皆様についての話はたくさん出ておりますけれども、酪農家の戸数が減っているわけですね。全国の指定生乳生産者団体への出荷戸数、これは二月末時点で一万三百三十四戸まで減りまして、このペースだと一万戸に減るおそれが見えてきているような状況です。円安が続きまして、酪農の危機というものは今も続いています。

 四月、五月は酪農家の離農が増えます。これは去年のデータです。二〇二三年は、二月末で一万千十二戸だった酪農家の数が、二〇二三年の五月には一万七百二十九戸になっているんですね。三か月間で二百八十三戸、去年は減っています。年度をまたぐこの時期に離農がどうも集中するようです。昨年と同様のペースで離農が進めば、今年の五月末までにはもしかしたら一万戸を割りかねないんじゃないかというような危機感を抱いているわけです。

 その中におきまして、酪農には、御存じのとおり指定生乳生産者団体、指定団体がありまして、乳業メーカーとの交渉を行っているわけなんですが、十分な価格形成ができていないとの指摘が現場から上がっています。酪農家が経営を安定的に維持するために、全農や指定団体等などに対して政府はどのような働きかけを行っているのかを教えていただきたいと思います。

 また、酪農乳業乳製品在庫調整特別対策事業の実効性や、課題の検証に基づく同事業の改良、それから適正な乳価水準を確保できる仕組みを検討するべきと考えますが、見解を伺います。

渡邉政府参考人 委員にお答えをいたします。

 酪農関係者でございますけれども、令和三年以降の配合飼料価格の急な上昇を体験をいたしました。このような生産コストの上昇につきましては、製品の販売価格に適正に反映することが重要であるということで、令和四年四月でございますけれども、大臣から関係の事業者に対して、適正な価格の反映について協力をお願いすることを、文書で協力をお願いをしたということでございます。

 生乳ですとか乳製品の、特に生乳の取引価格にコストを適正に反映するということのためには、生乳ですとかあるいは脱脂粉乳といった乳製品の需給ギャップを解消することが重要だったわけでございますので、委員御指摘の事業などによりまして、指定団体の要望を踏まえて、脱脂粉乳を例えば子牛のミルク向けに転用するというようなことを、生産者の拠出あるいは乳業メーカーの負担、あるいは政府も補助をすることで対策をやりました。それによりまして、一時は十万トン程度あった脱脂粉乳の在庫量も、この足下では大体五万トン程度まで対策の効果によって削減ができている。こういったことで生乳需給あるいは乳製品の需給の改善を図って、生産コストの上昇を適正に価格に反映できる環境を整えてきたということでございます。

 こうした対応、取組もございまして、令和四年度以降でございますけれども、今申し上げましたとおり、脱脂粉乳在庫の積み上がりが回避をされることもありまして、令和四年十一月から令和五年十二月までの間、四回にわたり、乳価の引上げ、生乳の取引価格の引上げが実現できたというふうに認識をしてございます。

 引き続き、国としても、よく関係者の声を聞きながら、生乳需給の改善などの業界の取組を支えていきたいと思っております。

 また、それに加えまして、現在、農林水産省では、指定生乳生産者団体や乳業メーカー、あるいは小売業界、そういった生産から消費までの関係者が一堂に会する適正な価格形成に関する協議会を開催してございまして、その中で、適正な価格形成に向けて、丁寧な議論を引き続きやっていきたいというふうに考えてございます。

長友委員 過去、この農林水産委員会でも、酪農の問題、乳価の問題を取り上げてきています。野村大臣のときなどは、よく野村大臣が、農産物の中で唯一自分で価格を決められるのが生乳なんだ、こんなことをよくおっしゃって、答弁されていました。

 実際、コスト上昇分を販売価格に転嫁しようと、指定団体はこの二年足らずで一キロ当たり飲用向けの乳価を計二十円引き上げています。しかし、値上げで消費が減るかもしれないという不安と常に闘っているというのが現状です。将来にわたって酪農を続けていける価格を設定できないということに対して、酪農家の皆さんの中では、失望が生産者側に広がっている。それが離農につながっていってしまっているんじゃないかというふうに思います。

 現在、政府主導で適正な価格形成に向けた議論を進めていただいていると思いますが、離農を食い止めて、持続可能な酪農を期待できる制度設計というものを強く求めたいというふうに思います。

 最後、質問してまいりたいと思います。

 昨日、私のSNSを見ていたら、こういう投稿、書き込みがあったので、大臣、これを是非聞いていただきたいんですけれども、よろしいでしょうか。

 まず、これは、投稿された方は十年前から有機農業で米を作っている方で、五年前に法人化された方なんですね。読みますね。そのまま書かれていたことを読みます。

 助けてください。お米がなかなか売れていません。もうすぐ今年度の田植も近づいています。不景気だと食費から削られる、その中でも一番最初が主食のお米。一番大事にしないといけない部分が軽くあしらわれているのが現状です。普通にスーパーとかで販売されているのは、JAの規格に合ったものだけ。農薬、化学肥料を使っていないと、JAは買取りを拒みます。規格外品としての買取りになります。農家も高齢化になり、体力を使うことができず、草取りは農薬、害虫予防はラジコンヘリ等で農薬散布といった具合。こだわって農薬散布、化学肥料を使わず作り上げたお米は、自分たちで販路を探し、販売するしかないんです。一個人の農家ではどうしようもありません。購入希望の方やお米を探されている方、いらっしゃいませんか。ぼやきに近い現状です。玄米、白米、あります。体は、食べたものでできています。その食べ物は安全、安心して食べられるものですか。自分だけでなく、子供や孫のことも考えて口にしてください。

 こういう投稿を見つけました。

 農水省としては、今、みどりの食料システムの中で、みどり戦略の中で、有機農業を是非取組を増やしてほしい、農地も増やしますし生産者も増やしたいというふうに進めているところではございますけれども、これが現場のリアルだというふうに受け止めなければいけないと思うんですね。

 大臣、この声をどのように受け止められたでしょうか。これは通告にないことではございますけれども、これは現場の声でございますので、是非、大臣の見解を伺いたいと思います。

坂本国務大臣 私たちも、環境と調和の取れた農業というのを展開していかなければなりません。そういう中で、先ほど答弁いたしましたけれども、令和七年度からの環境農業に対する交付金の見直し、そして、令和九年度から新たな仕組みというふうにしていくことで、環境農業あるいはみどり戦略、こういったものを一つ一つ実現をしてまいりたいというふうに思っております。

 と同時に、生産現場の生産基盤というものをしっかり充実させること、そして、もう一方の方で、消費者も含めて全員が、生産者、加工そして流通、小売も含めて、それぞれ食料というものに関心を示し、合意を得ること、そのことによって、持続的な農業、こういったものを今後しっかりと打ち立てていかなければいけないというふうに思っております。

長友委員 大臣、答弁ありがとうございます。

 現場の生産者がこのようにSNSに投稿しないといけない。大変私としてもいたたまれなく、どうしても今日は大臣にこの声を聞いていただきたいと思いまして、最後、述べさせていただきました。

 環境負荷低減のクロスコンプライアンスなどに、新しい取組として今後も取組を始めていただきますけれども、是非、現場の皆さんが本当に、農水省の政策にのっとって、有機農業に取り組みたいと本気で思えるように寄り添っていただくことを最後にお願いしまして、質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

野中委員長 次に、福島伸享君。

福島委員 有志の会の福島伸享でございます。

 久しぶりに懐かしい農林水産委員会に来まして、一期目、二期目とずっと農水委員会だったんですけれども、今日は緊張して議論させていただきたいというふうに思っております。

 今回の食料・農業・農村基本法の前身となる農業基本法が制定されたのは一九六一年であります。私、この「自民党農政史」という分厚い本がありまして、皆さん読んでいますか、先生方。よく愛読するんですけれども、それを読んでおりますと、当時の総理大臣は池田勇人先生。池田首相は、基本法制定のために全国運動を展開し、最初の訪問地に茨城県水戸市を、私の地元です、選んだ。水戸徳川家が毎食事時に、お百姓さんありがとう、いただきますと言っていたが、池田首相はそこに国家の尊厳を見出したということが書いてありまして、三月十九日に、水戸二中という私の地元の体育館で、農業基本法の早期成立を訴える最初の演説会を開催しました。

 今日はその演説原稿を資料としてつけているんですけれども、一ページ目、これは表紙ですけれども、最後の行、ただいま国会で議論の中心となっております農業基本法は、日本の新しい国づくりをする基でございます。したがいまして、この大事な法案につきまして、全国民、殊に農民各位の御協力を得たく、第一声を上げることにしたのでございます。総理大臣自らが水戸の地に来ていらっしゃって、こういう話をした。

 左側のページ、国会におきまして、いつの日か、誰かが農業問題を解決せざれば日本民族は伸びていかない、滅亡とは申しませんが、廃退の道をたどるであろうということをはっきりと申し上げました。この日本再建の土台をなした農民に対して、我々は何とか知恵を絞って、他の産業と比較して劣らないような、立派な生活を農民の方々にしていただくことが政治の根本じゃありますまいかと。

 まさにこれが保守本流の首相の言葉だというふうに私は思います。非常に熱い演説だと思います。

 また、私は水戸の千波というところに住んでいるんですけれども、同じ町内の出身で、戦前に農林次官をやって、戦後に初代のJA全中の会長となった荷見安さんという人がこの「米と人生」という本を書いていますけれども、私の地元の水戸は水戸学というのがあって、農本主義を思想としていて、そこの思想を受けた人たちがこれまで多く農政にも携わってまいりました。そうした様々な先達たちが紡いできた農政の延長に今回の法案があるという思いで、私は万感の思いを込めて今日は議論させていただきたく、北神さんから時間を譲っていただいた次第です。是非、大臣と答弁したいので、大臣、答弁のほど、お願いを申し上げます。

 最近、地元を回っていますと、二十年間政治活動をやって、ずっと二十年間、街宣車で一軒一軒回っていますと、農村の光景というのは変わってきたなと感じます。当時は、二十年前は、担い手に農地を集約しなきゃならないと言われておりました。その間、十年ぐらいたって、戸別所得補償制度は集約化に生きていないと言いますけれども、そうじゃないですね。私の地元で見ても、集約化は進んでおります。様々な理由があるけれども、一番大きいのは、高齢化でできなくなって、地域の中核となる農家に耕作をしてもらうという形で農地が集約されています。

 でも、ここ数年はそうじゃないんですね。その当時七十代だった方が八十代になって、特に男性は八十代になると急に体が自由に利かなくなるような方も多くなって、集約されていた中核の農家が亡くなったり耕作に出られなくなったりして、地域でまとまった田んぼが耕作できなくなるというような事例も起きております。

 この週末も、百五十軒ぐらいの農村の集落をずっと回ってきたんですけれども、百五十軒あったら、昔は、今の時期はみんな、庭先でトレーにもみをまいてハウスの中に入れて苗作りが始まるんですけれども、それをやっている農家は二軒しかありませんでした。

 今、土地改良区のなり手もいない。みんな耕作していないから、田んぼは持っているんだけれども、水代を払いたくない、トラブルになるから土地改良区のなり手もいないし、神社のお祭りも成り立たなくなっている。氏子会も解散で、農村が集落として成り立たなくなったり、さらに、最近は、そうした耕作されない土地を外国人が買うようになっております。これは集落に看板が出ている、農地を買います、携帯電話が、林(はやし)さんだと思ったら林(リン)さんという中国人で、特に、干し芋の原料になるサツマイモなどの畑とか、水田も買っている場合があって、外国人の農地の所有が進んでおります。

 私は、令和四年二月の予算委員会の第六分科会で、金子農相に対して、私は、まさに今、日本の水田農業が崩壊するかどうかの瀬戸際にこの国はあると思っていますということを訴えました。大臣も地元を回っていらっしゃると思いますけれども、今の日本の現状、とりわけ、普通作を中心とする、昔ながらの農村の光景を持った水田農業を中心とする農業の現状について、どのように認識されているか、まずお答えください。

坂本国務大臣 私の地元も、相当、農村の風景が変わりました。私は七十五戸ぐらいの集落ですけれども、昔は六十戸ぐらいが全て農家でありました。農家でないところは二、三軒でありました。しかし、今は農家をやっているところが一軒若しくは二軒であります。

 そこで、私のところがどう変わったかというのを少し紹介いたしますと、十三集落ありまして、その十三集落が一緒になりまして集落営農法人をつくりました。一人一株五十万円の株式会社をつくりました。そこで、今、三百五十ヘクタールでブロックローテーションを組んで、稲作、それから飼料米、あるいはホールクロップサイレージ、そういったものをやっております。十数人を使っております。若い人たち、二十代、三十代ばかりであります。

 そういうことで、これからの農村風景、個人が一人で大規模化する、これも大事です。それから、多様な経営体として家族経営でやっていく、これも大事です。それと、集落を一体化した集落営農法人、こういったものも大事です。やはり、多様な経営体によって、これからの農業、あるいは農村、集落が維持されていく、このことが大事であるというふうに考えております。

福島委員 地に足の着いた答弁をいただき、ありがとうございます。でも、その集落営農も、私の地元ですと、核になる経理をやったりする人たちが倒れると、途端に集落営農が維持できなくなる事例も出ておりまして、そうしたまとまりすら維持できなくなっているというのが現状だと思うんですね。

 その根本にあるのは、基本的に価格ですよ。もうからないからやらないというのが第一だと思うんですね。とりわけ、普通作、田んぼ、水田とかを使うものでは、再生産の価格がないから、もうからなければ誰も農業をやらない。

 そこで、ちょっと通告を飛ばして四番、五番に行くんですけれども、一般の産業では、価格というのは需要と供給の神の見えざる手で決まるというのは、高校レベルの経済学です。皆さんの持っているスマホは、需要と供給で決まっているわけではありませんよね。メーカー小売価格とか、申し込んだら、そこで初めから値段は決まっているんですね。

 実際は、情報の非対称性などによって、供給者側に有利で、非完全競争市場の独占価格と経済学でいいますけれども、それで決まるのが通例なんです。そこでやると、利潤ではなくてレントが生じるんです。それから、ブランド力とか、様々な超過利潤が生じるんです。それが再生産への原資になるんです。

 一方、農業では、需要に応じた生産が難しい。今需要があるからといって植えたって、作物がなるのは数か月後、一年後なわけですね。在庫をすればするほど、途端に古くなって価格が下がるので、生産者は早く売らなきゃならない。あとは、天候などによる変動のリスクがある。著しく供給者側の力が弱いために、高校のレベルの、神の見えざる手の完全競争市場で価格が決まるんです。

 私は農業経済学科というところにいましたけれども、何で農学部にあって経済学部にないのと聞くと、価格のつくり方がほかの産業と農業は違うんだ、だから、そこに政策的な関与の必要性が生まれるから農学部に農業経済学科があるんだということを、農業経済学の一時限目で教わるんですね。

 大臣、こうした農産物の価格形成の特性について、どのようにお考えでしょうか。

坂本国務大臣 農産物や食品につきましては、一般的に、短期間で品質が低下しやすい性質を有しております。取引上の立場に格差が生じやすくなっております。持続的な供給を確保するためには、単にどちらかが価格決定権を握るということではなくて、食料システム全体でバランスの取れた持続可能な価格形成の在り方が重要であるというふうに思っております。

 また、近年では、海外からの調達や気候変動のリスクが増大をいたしております。今般の基本法の改正におきまして、国民一人一人が良質な食料を入手できるよう、食料安全保障を確保していくために今回やりました。

 ですから、私が言いたいのは、食料システムの中で、消費者も生産者も含めて、そこで全てにわたって合意を得られる努力が必要である、合意形成を図っていく努力を私たちはしなければいけないということであります。

福島委員 それは非常に特殊なんですよ。経済産業省の分野ではそういうことを言いません。全ての関係者の合意で価格なんて形成されるわけないんですね。皆さん、携帯電話料金、納得して払っていますか。請求されるから払っているだけであって、合意なんてしていないはずなんですね。

 今回、法案の第二条五項では、食料の合理的な価格の形成については、需給事情及び品質がうんたらで評価されつつ、関係者によりその持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるようにしなければならない。法案第二十三条で、国は、食料の価格の形成に当たり食料システムの関係者により食料の持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるよう、必要な施策を講じるものとするとなっていますけれども、これは、合理的な価格と合理的な費用、二つあるんですけれども、似ていますけれども、全然別です。

 私は、合理的費用というのはあると思うんです。ちゃんとした費用でちゃんと生産したら、それは合理的な費用。合理的な価格というのはないんですよ。経済の世界で、商売の世界で合理的な価格というのは、もうけがないということなんです。いかにレントを獲得するかというのが商売の肝であって、そのレントが再生産の原資になるんですね。だから、農水省の今持っている組織も適正な価格形成に関する協議会で、合理的な価格形成に関する協議会と書いていないですよね。

 私は、条文修正を維新さんがやるんだったら、合理的な価格は駄目で、適正な価格に変えた方がいいと思いますよ。これから法制化すると言っているんですけれども、農業の価格の一番の肝は、いかにレントを生産者とか各段階に獲得させるかなんです。

 それで見ると、合意を得る価格というのは何かといったら、それは最低価格なんですよ。合理的な費用に基づく価格というのは最低価格で、それにどれだけレントを上乗せさせるかというのが再生産可能な価格で、最低価格をつくると、今度、その最低価格を下回るような価格ができたら、これはまさに独禁法の世界で、競争政策的な観点から厳しくやらなければならないのに、先ほどおっしゃったような、食料システム関係者の合意でやるといって、またJAとかがしゃしゃり出て価格なんてやったら、めちゃくちゃな日本の農業になっちゃうと思うんですね。

 だから、農業政策に対して行うべきは、いかに弱い交渉力を持った生産者に交渉力を持たせてレントを取らせてあげるか、その仕組みをつくることであって、合理的な費用を下回る価格はきちんと取り締まる、最低価格として。それが本来の価格政策だと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 それでも食料の自給、持続的な供給をしていくためには、やはり、生産者から全ての段階におきまして、加工、流通、小売、消費者においてのそれぞれの理解が必要なわけです。ですから、食料システムの特定の関係者だけが優位になる構造を追求するのではなくて、食料システムの幅広い関係者が納得できる、バランスの取れた仕組みをつくり上げること、構築していくこと、これが大事であるというふうに考えております。

 それがゆえに、私たちも去年の八月に協議会をつくって、まだまだ意見の乖離、そして理解度の乖離はありますけれども、これをやはり徐々に徐々に縮めていきたい。そして、最終的には法制化も視野に、これからの価格形成がどうあるべきかということをしっかりとつくり上げてまいりたいというふうに思っております。

福島委員 私は、全然違うと思います。あえて議論はしません。ただ、ここを間違えたら何の意味もなくなることになりますから、是非、法制化するときにはしっかりと、まず理論を踏まえて、実際の現場を踏まえて、商売の流れを踏まえて検討していただけたらと思います。

 三番目は食料安全保障の問題なんですけれども、この新しい第二条を見てもよく分かりません。二条の柱書きを「食料の安定供給の確保」から「食料安全保障の確保」へと変更しました。じゃ、その食料安全保障とは何かといえば、第一項で、「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態をいう。」と定義されておりますが、これは、一九九六年のFAOの世界食糧サミットでのフードセキュリティーという英語を訳したものだと説明を受けました。

 でも、似ているようで違うのは、「世界食糧サミット」の「糧」というのは、こめへんに量の「糧」なんですよ。こめへんに斗の「料」とまた違うんですね。政府も、このFAOのフードセキュリティーは、「食糧安全保障」と訳していて、今の法文上の「食料安全保障」とはまた別の概念だと思うんですよね。

 これまで農水省は、ホームページで、「食料安全保障」というのは「全ての国民が、将来にわたって良質な食料を合理的な価格で入手できるようにすること」と、これは今の、現行の、改正前の基本法の条文をそのまま書いております。改正前の法律では、十九条で、「不測時における食料安全保障」というところの柱書きで食料安全保障が出てくるだけなんですけれども、どうも、今回、二条の柱書きを「食料安全保障の確保」と変えたがゆえに、概念が私は混乱しているように思います。

 不測時だけじゃなくて平時における食料安全保障を位置づけようとする方向性は、これはいいと思うんです。理解いたします。でも、今の改正法の条文では全くそれは読み取れません。食リョウ、このリョウが、「糧」と「料」の安全保障の概念が恐らく混在していて、平時において食料の安定供給を実現することが不測時における食料の安定供給も実現し、結果として「食糧」、こめへんに量るの方の安全保障が実現するという関係なんですけれども、どうもそうなっていないことにこの法律の混乱があるんじゃないかと思います。私は、これも条文修正をして、ちゃんと定義を変えればいいと思うんですね。

 その一方、今回の改正によって、単に農産物だけじゃなくて、第四十二条で農業資材の確保等が規定されたというのは、これは今の情勢を踏まえたものとして、すばらしいと思います。

 そこで、改正法案第十七条において、これまでの食料自給率の目的に加えて、その他の食料安全保障の確保に関する事項の目標というのが加わりました。私はここが一番大事だと思うんですよ。耕畜連携で肥料の自給を向上しましょうとか、飼料用作物の作付を増大しましょうとか、種の検疫を確保して種の自給を進めましょうとか、輸入原料を使ったような化学肥料を減らす農法の普及など、本当はここがこれまでの食料自給率の目標以上に重視されなければならないと思うんですけれども、大臣、ここの「その他の食料安全保障の確保に関する事項の目標」は実際どのような目標なのか、具体的にお答えいただければと思います。

坂本国務大臣 まず、前半の御質問にお答えいたします。よろしいですか。

 基本法の改正における食料安全保障の定義は、これはFAOの定義を踏まえたものであります。

 適切な品質と十分な量の供給、全ての国民が栄養ある食料を入手する、安全かつ栄養ある食料を摂取する、そして、いつ何どきでも適切な食料を入手する安定性があるということでありますので、本改正法案におきましては、食料安全保障の定義に関して、安全で栄養のある食料を良質な食料というふうに規定をし、その良質な食料を国民一人一人に安定的に供給することができる。ですから、そこは、こめへんに量るとはやはり違うわけです。「食料」になるわけです。

 それで、後段の方でありますけれども、後段の方につきましては、ウクライナ情勢の影響等によりまして肥料価格が高騰するなど、食料安全保障の確保を図るには、生産資材の安定供給、あるいは食料自給率という単独の目標のみでは評価できない課題に対処する必要があります。

 ですから、改正案を成立させていただきましたならば、これに基づきまして基本計画を策定し、その基本計画の中で、平時からの食料安全保障を実現する観点から、我が国の食料安全保障について、課題の性質に応じた目標の設定を行うということにしているところであります。

福島委員 それは駄目だと思います。というのは、ここは立法府の議論ですから、法律で「その他の」と書いてあれば、国会の場でここの条文が何があるのかと具体的に示さなければ、丸投げするわけにいかないと思うんですね。基本計画を作るのには、国会は関与できませんよね。

 私は、この「その他の食料安全保障の確保に関する事項の目標」というのが、この改正の一番の肝だと思いますよ。もっとここは条文を起こしていいんですよ。「その他の」だけじゃなくて、いろいろな「その他」に該するものを列挙したっていいはずなんですよ、食料自給率以外が大事なんだから。それをやらずして、今の抽象的な答弁で終わらすというのは、国会軽視と私は言わざるを得ないと思います。

 資料二として、食料・農業・農村基本法が当初作られた平成十一年の趣旨説明の演説、あれっ、中川郁子さんがいなくなっちゃいましたけれども、中川昭一大臣の演説を挙げさせていただきました。

 何で挙げたかといったら、先ほど御紹介した池田首相の、最初の農業基本法のときの演説も、この法律の最初の中川農相の趣旨説明も、やはり今の日本の農業に危機感を持ち、熱を持ってやっていたし、そこに現場の農家の土の匂いがして、農業は単なる産業じゃなくて、そこに込められた精神性とか文化性とか、そういうものがあって、だから池田首相は、亡国の道だとか、日本の新しい国づくりだといって農業基本法を作ったんだと思います。今回の改正には、申し訳ないけれども、私が農水委員会にいないからかもしれないけれども、そうした土の香りとか熱とか、今の農業に対する危機感というのを余り感じないんですね。

 私はずっとこの農水委員会で議論をすることはできませんけれども、法案成立まで是非そうした議論を行って、条文修正すべきところはこの国会で修正した方がいいと思うんですね、立法府なんですから。

 農業イコール政治そのものだと私は考えますから、是非、充実した審議をお願い申し上げまして、私からの質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

野中委員長 次回は、明四日木曜日午前八時四十分理事会、午前八時五十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時九分散会


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