第8号 令和6年4月9日(火曜日)
令和六年四月九日(火曜日)午前九時一分開議
出席委員
委員長 野中 厚君
理事 伊東 良孝君 理事 小島 敏文君
理事 古川 康君 理事 山口 壯君
理事 近藤 和也君 理事 野間 健君
理事 池畑浩太朗君 理事 角田 秀穂君
東 国幹君 五十嵐 清君
上田 英俊君 江藤 拓君
加藤 竜祥君 勝目 康君
金子 容三君 神田 憲次君
小寺 裕雄君 高鳥 修一君
武井 俊輔君 橘 慶一郎君
中川 郁子君 細田 健一君
堀井 学君 宮下 一郎君
保岡 宏武君 簗 和生君
山口 晋君 梅谷 守君
金子 恵美君 神谷 裕君
小山 展弘君 緑川 貴士君
山田 勝彦君 渡辺 創君
一谷勇一郎君 掘井 健智君
山本 剛正君 稲津 久君
山崎 正恭君 田村 貴昭君
長友 慎治君 北神 圭朗君
…………………………………
農林水産大臣 坂本 哲志君
農林水産副大臣 武村 展英君
国土交通副大臣 堂故 茂君
農林水産大臣政務官 舞立 昇治君
政府参考人
(公正取引委員会事務総局審査局長) 大胡 勝君
政府参考人
(消費者庁政策立案総括審議官) 藤本 武士君
政府参考人
(文部科学省大臣官房学習基盤審議官) 浅野 敦行君
政府参考人
(文部科学省大臣官房文部科学戦略官) 梶山 正司君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 杉中 淳君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 宮浦 浩司君
政府参考人
(農林水産省大臣官房技術総括審議官) 川合 豊彦君
政府参考人
(農林水産省消費・安全局長) 安岡 澄人君
政府参考人
(農林水産省輸出・国際局長) 水野 政義君
政府参考人
(農林水産省農産局長) 平形 雄策君
政府参考人
(農林水産省経営局長) 村井 正親君
政府参考人
(農林水産省農村振興局長) 長井 俊彦君
政府参考人
(国土交通省水管理・国土保全局次長) 小笠原憲一君
農林水産委員会専門員 飯野 伸夫君
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委員の異動
四月九日
辞任 補欠選任
橘 慶一郎君 武井 俊輔君
西野 太亮君 勝目 康君
山田 勝彦君 小山 展弘君
一谷勇一郎君 山本 剛正君
同日
辞任 補欠選任
勝目 康君 金子 容三君
武井 俊輔君 橘 慶一郎君
小山 展弘君 山田 勝彦君
山本 剛正君 一谷勇一郎君
同日
辞任 補欠選任
金子 容三君 西野 太亮君
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四月五日
国産食料の増産、食料自給率向上、家族農業支援強化に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第九六三号)
同(笠井亮君紹介)(第九六四号)
同(穀田恵二君紹介)(第九六五号)
同(志位和夫君紹介)(第九六六号)
同(塩川鉄也君紹介)(第九六七号)
同(田村貴昭君紹介)(第九六八号)
同(高橋千鶴子君紹介)(第九六九号)
同(宮本岳志君紹介)(第九七〇号)
同(宮本徹君紹介)(第九七一号)
同(本村伸子君紹介)(第九七二号)
同(田村貴昭君紹介)(第一〇一一号)
食料自給率向上を政府の法的義務とすることに関する請願(田村貴昭君紹介)(第一〇一〇号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
委員派遣承認申請に関する件
政府参考人出頭要求に関する件
食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案(内閣提出第二六号)
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○野中委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。
本案審査の参考に資するため、来る十五日月曜日、鹿児島県及び北海道に委員を派遣いたしたいと存じます。
つきましては、議長に対し、委員派遣の承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○野中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
なお、派遣委員の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○野中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○野中委員長 次に、政府参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官杉中淳君、大臣官房総括審議官宮浦浩司君、大臣官房技術総括審議官川合豊彦君、消費・安全局長安岡澄人君、輸出・国際局長水野政義君、農産局長平形雄策君、経営局長村井正親君、農村振興局長長井俊彦君、公正取引委員会事務総局審査局長大胡勝君、消費者庁政策立案総括審議官藤本武士君、文部科学省大臣官房学習基盤審議官浅野敦行君、大臣官房文部科学戦略官梶山正司君、国土交通省水管理・国土保全局次長小笠原憲一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○野中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○野中委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。武井俊輔君。
○武井委員 おはようございます。自民党の武井俊輔でございます。農水委員会で久しぶりに質問の機会をいただきました。理事、各委員の皆様、心から感謝を申し上げたいと存じます。
お伺いしたいことがたくさんありますので、早速進めさせていただきます。
去る四月一日でありますが、私ども宮崎県の十三のJAが合併をいたしまして、JAみやざきが県一農協として発足をいたしました。販売供給高一千三百六十五億円、購買品供給高八百三億円、貯金残高九千二百七十一億円、長期共済保有高二兆九千二百二十四億円と、日本最大規模のJAとなったわけであります。各JAで同じ時間に理事会を開いて賛否を取って、九割以上の賛成の下でこうしてスタートをしました。
まさにこの四、五年は、ずっとこの議論を繰り返してきたわけですが、それぞれの皆さんが違いや立場を乗り越えて、こうして発足をすることができたというふうに思っておりますが、この日本最大規模のJAが発足したことについて、坂本農水大臣の御評価をいただきたいと思います。
○坂本国務大臣 令和六年四月一日、宮崎県内の全十三JAが合併をし、宮崎県全域を地区とするJAみやざきが発足をしたというふうに承知しております。農業大県でございます宮崎県で、よく県一農協が達成されたなと、合併に向けたこれまでの関係者の御尽力に心から敬意を表したいというふうに思っております。
JAみやざきは、将来に向けて、産地としての持続的な農業振興、そして、組合員の安定的な営農活動の継続の実現を目指し、最大限の統合メリットの創出と地域密着のJA事業活動の展開の両立を運営方針として発足をしたというふうに承知をいたしております。
日本を代表する農業県である宮崎県における県域JAとして、JAみやざきにおかれましては、関係者が一丸となって、宮崎県農業の発展の原動力となっていただくとともに、全国のJAの模範となっていただくことを期待をしているところであります。
○武井委員 ありがとうございます。
大変御評価を高くいただいたと、心から感謝を申し上げたいと存じます。
今、統合のメリットと、また、組合員の利用の最大化というお話がございました。
ただ、当然、経営の効率化は進めていくわけでありますけれども、一方で、やはり不安もあるところでございます。三年間は、それぞれの各JAが地域本部として、基本的には現状の体制を維持していくということになっているわけですが、その後、様々な仕組みの変更というものも進んでくるわけですが、そういった中で、支店の統廃合なども進んでくるのではないかという不安の声も聞くわけであります。
そしてまた、JAは様々なサービス事業もしておりまして、JAまたJAグループに多くの准組合員の皆さんが生活の多くの部分を頼っているという部分もあるわけであります。
そういう意味では、大変苦しい合併であったわけですけれども、それを乗り越えた結果、地域に住む人たちにサービスの低下があるということは極力あってはならないわけでありますし、やはり、先ほどお話がありましたように、これがまた次への道、ほかの都道府県への一つのメルクマールにもなっていくわけですので、そういった意味でも、ここは非常に重要だというふうに思っております。
こういったサービスが低下しないということについて、国として、どのように支援、サポートも含めてお考えか、お伺いしたいと思います。
○村井政府参考人 お答え申し上げます。
一般的に、合併は、農協系統組織におきましても、事業基盤や経営基盤の強化、経営の効率化等の方策の一つとして有効な手段だということで、これまで取り組んできたという経緯がございます。
他方で、御指摘があったように、合併等に伴う支店の統廃合等によりまして、農協との距離が離れるのではないか、組合員サービスが低下するのではないかなど、組合員の皆さんにも様々な不安が生じ得ると承知をしております。
農協は、農業者の自主的な組織であります。合併につきましても自主的な判断により行われるものですが、合併に伴う事業運営体制の見直しに当たっては、合併によるメリットを説明するだけではなく、組合員の不満や懸念を払拭するために講じる施策等を明らかにしながら、組合員の理解と納得の下で進めていくことが必要であると考えております。
JAみやざきにおきましては、合併に向けた説明において、利便性の低下に対する不安への対応として、委員からも御紹介ございましたけれども、合併当初は旧JAを地区本部として、地域の特色を重視した運営を行うことや、JAの職員が組合員に出向く活動を強化をしていく、そういったことを方針として示していると承知をしております。
農林水産省といたしましても、ヒアリング等を通じて、監督行政庁である宮崎県庁と連携しながら、合併後の農協運営の状況についてフォローしてまいりたいと考えております。
いずれにいたしましても、合併後も組合員とJAとの間で継続的に話合いがなされる、意思疎通が図られるということが極めて重要であるというふうに考えております。
○武井委員 ありがとうございます。是非よろしくお願いしたいと思います。
続きまして、人・農地プランについてお伺いしますが、人・農地プランが地域計画に変わってまいります。十年後のその地域の絵姿を描いた目標地図ということで各地で取り組んでおられて、いろいろな話を伺っているわけであります。しかし、また地元でいろいろと話をしていても、描くのはもちろん描くわけですが、実際にそれが可能だろうか、実際に担う人がいるのかという声を多く伺うわけであります。
やはり、耕作者の絶対数が減るわけでありますので、規模の拡大が必要なわけですけれども、それをすればするほど、今赤字で、借りて経営を回しているのに、ますますきつくなる。要するに、規模拡大をするということがなかなかイメージできないということがあります。
もちろん、私からも、DX化も含めて様々な取組、支援について説明をしたりするわけでありますが、この目標地図を描いていくには、そもそも、規模拡大をするということがメリットになるということを感じていただかなければやはり根本的に難しいなということを改めて痛感をするわけであります。
規模拡大のインセンティブをどう伝えていこうと考えておられるか、農水省の考えをお伺いしたいと思います。
○村井政府参考人 お答え申し上げます。
昨年四月に施行されました改正農業経営基盤強化促進法に基づきまして、現在、各地で策定が進められております地域計画では、地域の農業関係者の話合いによって、将来の農地利用の姿を目標地図として明確化した上で、目標地図に位置づけられた受け手に対して、農地バンクの活用により、農地の集積、集約化を進めることとしております。
その際は、御指摘がありましたように、受け手である担い手が農地を利用しやすくなるようなメリットを感じられるようにすることが重要であると考えております。
そのため、分散した農地を農地バンクがまとめて借り受ける場合には、農家負担ゼロの基盤整備や集積協力金の交付など、農地の担い手に対する支援策を講じておるところであり、こういったことをフルに活用していきたいというふうに考えております。
○武井委員 ありがとうございます。
続きまして、食料・農業・農村基本法についてでありますが、二十六日の衆議院本会議で、岸田総理が、食料安全保障の確立に向け、食料価格の形成で、国内外の資材費、人件費の恒常的なコストが考慮されることが重要だということで強調されました。江藤先生の質問でありましたけれども、これにつきまして、こうした仕組みを法制化も視野に検討していくと総理は表明されたわけですが、これは非常に重要な答弁だというふうに思います。
今後のこの件についての取組、見解をお伺いしたいと思います。
○坂本国務大臣 農産物や食品の価格につきましては、需給事情や品質評価によって決まることが基本ではございますが、近年の資材価格等の高騰は、生産から消費に至る段階に幅広く影響が及んでおりまして、食料の持続的な供給を行っていくためには、食料システム全体の持続性を確保する必要があるというふうに考えております。
このため、農林水産省では、昨年八月より、生産、加工、流通、小売、消費等の幅広い関係者が一堂に集まります協議会を開催し、食料システム全体の持続性の確保を目標に、持続的な供給に必要な合理的な費用を考慮した価格形成の仕組みの必要性、そして、品目ごとに作成する費用の指標であるコスト指標の作成等につきまして、関係者間で論議を行ってきたところです。今、その途中でございます。
今後とも、価格形成の仕組みにつきましては、関係者間で丁寧に合意形成を図りながら、総理が答弁されましたように、法制化も視野に検討をしっかりと進めてまいりたいというふうに思っております。
○武井委員 ありがとうございました。
この法制化という言葉は非常に重いというふうに思っております。やはりここに対する関心も非常に高いと思います。引き続きよろしくお願いしたいと思います。
その中で、今のお話の中にもありました、やはりコスト増というのが非常に今生産者を苦しめているわけであります。
農業者の皆さんは、お互いに部会をつくって取れ高を競うといいますか、単収をどれぐらい上げるかといったようなことも努力されるわけですが、最近は、単収を上げるといっても、三十トン上げても取る人がいない、要するに、頑張ったほどの見返りをなかなか得ることができないということも話を聞くわけであります。
肥料などを含めていろいろと努力をいただいて、大分コストも下がってきたんですが、そういった中で話を聞きますと、段ボールとか包材関係がなかなか下がらない、上がり続けているということがあります。頑張って出荷しようとしても、この辺はもはや努力でどうしようもない部分でありまして、こういったような出荷経費の削減ということについての支援というものについてどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。
○平形政府参考人 お答えいたします。
施設園芸は、園芸作物を周年供給していく上で重要な役割を果たしておりますけれども、近年は燃料ですとか資材の高騰に直面をしております。
このため、施設園芸につきましては、燃料費につきましては施設園芸等燃料価格高騰対策を実施しておりますが、肥料についても、令和四年秋肥、令和五年春肥を対象にした肥料価格高騰対策、さらに、それ以外の資材費につきましては、産地生産基盤パワーアップ事業等におけるハウスの施設整備等の交付対象上限事業費の引上げ等を実施しております。
さらに、施設園芸の低コスト生産それから収益力の強化に向けまして、ヒートポンプ等の省エネ機器ですとか、高品質、多収生産の実現が可能な高度環境制御装置等の導入、こういったものについても支援をしているところでございます。
引き続き、施設園芸農家の所得の確保を図ってまいりたいと考えております。
○武井委員 ありがとうございます。燃油、肥料など、非常に取組をしていただいた効果が出ていると思います。ただ、一方で、やはり、産地パワーアップ事業も、取れるところ、取れないところ、あったりもするものですから、この辺りは是非また引き続きお願いしておきたいと思います。
続きまして、収入保険は農水省も非常に力を入れていただいて、大分取組も進んできたわけですが、やはり、話を聞いていても、災害で大きく下がるということを当然、前提にしているわけですけれども、やはり経費が一方で非常にこのように上がってきているということでありまして、そういう意味では、収入が減っていっているということにおいては、全く災害が起こったときと結果変わらないじゃないかという話もあるわけでありまして、やはり利益がどんどん減っているわけであります。ですから、このままですと、やはり保険料の支払いにも支障を来してしまうと。
ですから、やはり、今後、あくまでも今の収入保険は売上げが下がったということが当然支援の対象になるんですが、こういう形で利益がどんどん減っていっている、やはり所得という部分で見ていただかないと、なかなかこの持続可能性が低いのではないかといったような声を、特に施設園芸農家から伺うわけですが、今後、この在り方について、これは長期的な部分もあるかと思いますが、検討していく必要があると考えますが、見解を求めます。
○村井政府参考人 お答え申し上げます。
収入保険は、個々の経営に対して販売収入の減少を補填する制度になっております。コストにつきましては経営ごとに適切な水準が異なり、仮に収入保険で対応するとした場合、過剰な投資を行った際にも保険でカバーされる等のおそれがあるため、そういった観点で見直しはなかなか簡単ではないというふうには考えております。
一方で、加入者の皆さんにとってできるだけ保険料等の負担を軽くしてほしいという声があるということも承知をしております。収入保険の保険料等につきましては、国が保険料等を補助しているほか、補償範囲を調整すれば保険料等の負担軽減が可能となっております。
また、収入保険は、保険方式と、あと任意で加入をする積立方式の二階建てと申しますか、二つで対応するところになっておりますけれども、この積立方式に加入された場合、当初の積立金の負担が大きいという声があります。そういった声を受けまして、令和六年加入者からは、積立金の負担なしで保険方式のみにより九割まで補償する新たなタイプを創設したところでございます。
このように、負担軽減の工夫もしてきておりますが、近年、自然災害が多発する中、農業者の方々には、幅広い品目、リスクを対象とする収入保険の加入を引き続き御検討いただけるよう、収入保険のメリット等について引き続き周知を図ってまいりたいと考えております。
○武井委員 ありがとうございます。
続いて二〇二四年問題でありますが、やはり、宮崎県は非常に遠いものですから、非常に、この輸送の問題で、今後競争力が落ちていくのではないかということを不安視しているわけであります。
一方では、私もどこまで正確かというのは分かりませんが、北関東や南東北で、もう西日本はなかなか厳しいから我々で拡大しようみたいな話があるっちゃわみたいな話を聞いたりすることもあります。
やはり、そういった意味でも、これから、様々な取組をしていただいていますが、鮮度やコストも含めて戦えなくなるのではないかという不安があるわけでして、遠隔地の農産品が不利にならないように対策をしていくことが極めて重要だと考えますが、農水省としてどのように考えておられるか、お伺いしたいと思います。
○宮浦政府参考人 お答えいたします。
物流の二〇二四年問題につきましては、昨年六月に関係閣僚会議で策定いたしました物流革新に向けた政策パッケージに基づきまして、関係省庁が一体となって取組を進めているところでございます。
特に、遠隔の産地から消費地への輸送が不可欠な農産物につきましては、極力輸送コストの増加を抑制することができるようにすることが重要であると考えてございまして、まずは、産地での共同集出荷施設の整備によりまして荷を大きくして、ドライバーの待ち時間を短くいたしまして、輸送コストを抑制するといった取組ですとか、それから、標準仕様のパレットを導入いたしまして、フォークリフトでの積卸しによってドライバーの荷役の縮減をして、荷役サービスへの支払いを抑制するといった取組も推進をいたしてございます。
また、鮮度の低下につきましても、産地での予冷施設の整備ですとか、中継物流拠点での保冷荷さばき施設の整備も併せて進めることといたしてございます。
農林水産省では、昨年十二月に、坂本大臣を本部長といたします農林水産省物流対策本部を設置いたしまして、現場の課題解決の取組を開始したところであります。
今後とも、農業団体それから食品産業団体のほか、物流団体の協力も得まして、現場に入って問題解決に取り組んでまいりたいと考えてございます。
○武井委員 もう時間も来ておりますので最後の質問をいたしますが、今、中央畜産会のCMが、テレビとか東京駅のデジタルサイネージなどでも流れております。原価がかかるということ、大変分かりやすいと思うんですが、しかし一方で、農産品の値上げのニュースがありますと、大体、テレビでは、安売りスーパーの店長が出てきて、ああ大変だという話をするわけであります。これは報道ですから否定はしないわけですけれども、やはり、その後、せめてコメンテーターに、コストはかかりますぐらいのことを言ってもらわないと、これはなかなか適切な価格転嫁は進まないなと思うわけであります。
農水省、消費者庁に、こういった価格転嫁についてのコストアップをどのように消費者に啓発をしていくか、それぞれどのような役割を認識しておられるか、お伺いしたいと思います。
また、あわせて、公取に来ていただいていますが、やはり、農産品の不当廉売について、きちんと公取にも指導していただかなければいけないと思っております。時々はそういったことも公取から発表されるわけですが、まだまだ、実態から見ますと非常に少ないというふうに思います。公取にもよりしっかりと注視をしていただきたいと思いますが、それについての公取の取組も併せてお伺いしたいと思います。
○宮浦政府参考人 お答えいたします。
価格形成に関します理解醸成につきましては、昨年七月から、フェアプライスプロジェクトというものを開始いたしております。
この中では、生産者自身がコスト高騰の窮状を現場から訴えるインターネット動画の情報発信ですとか、夏休みを活用した、親子での酪農現場での餌やり体験といった体験学習イベントの開催などによって、生産、流通に関わる実態ですとか背景などを消費者にも分かりやすく伝えるための広報を行っているところでございます。
今後とも、こうした取組を通じまして、コスト高騰などを踏まえた価格形成に関して、消費者を始めといたします関係者の理解醸成を図ってまいりたいと考えているところでございます。
○藤本政府参考人 お答え申し上げます。
消費者庁といたしましては、賃金上昇と物価上昇との関係について、消費者の理解増進を図る取組を進めております。
具体的には、消費者庁ホームページにおきまして、物価が緩やかに上がりながら賃金が上がっていくことが望ましい姿であることですとか、あるいは、消費者が取ることができる行動として、行きつけの店や推しの商品に値上げがあっても、買って応援することなどを紹介しております。また、中高生にも分かりやすい動画コンテンツを公表しているところであります。
一人でも多くの消費者の方に届けるべく、SNSを活用して周知啓発も行っておりまして、引き続き今年度も、作成した動画コンテンツの周知に努めてまいりたいと考えております。
○大胡政府参考人 お答えいたします。
公正取引委員会は、従来から、中小企業等に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用や不当廉売に厳正に対処しております。
議員御指摘ございました、量販店などの大規模事業者による不当廉売が疑われる事案でありまして、周辺の業者に対する影響が大きいと考えられるものについては、個別に調査を行い、違反行為が認められる場合には厳正に対処することとしております。農産物につきましても、例えば平成二十九年頃には、食品スーパーによる野菜の廉売に対して、独禁法に規定する不当廉売に違反するおそれがあるとして警告を行った事例がございます。
公正取引委員会としましては、引き続き、中小事業者等に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用や大規模事業者による不当廉売に対して、厳正に対処してまいりたいと考えております。
○武井委員 ありがとうございました。終わります。
○野中委員長 次に、上田英俊君。
○上田委員 おはようございます。自由民主党、富山県第二区選出の上田英俊です。よろしくお願いいたします。
質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。
食料・農業・農村基本法改正について質問をいたします。
今回の改正は、制定から四半世紀が経過する中での改定です。改正の理由は、この二十五年間で食料、農業、農村を取り巻く環境が大きく変化したためと述べられております。
まず一つには、世界的な食料需給の変動、具体的には、世界的な人口爆発であるとか、あるいはグローバルサウスの台頭、ロシアによるウクライナ侵略等により緊張し続ける国際情勢、そして、食料が既に戦略物資となっているということなどでありましょう。
そして、気候変動であります。地球温暖化、最近では沸騰化という言葉も見られますが、自然環境の変化、毎年続く異常気象は、農業生産に大きな被害、災害を与えています。
まず、地球温暖化、沸騰化が、農業生産、特に米生産に与えた影響及び今後の対応策について質問いたします。
昨年の猛暑、酷暑は、水田農業に大変大きな影響を与えました。富山県でも、異常気象により、七月、八月は降水量がほとんどなく、結果として、水を必要とする期間が長くなりました。今では、水の王国富山と言われておりますし、また、電源開発のシンボルである黒部川においても、農業用水の確保といったものが大変苦労されました。国土交通省、関西電力、北陸電力等の電気事業者や内水面漁業者の理解を得て、農業用水の提供に協力をいただきました。大変ありがたいことでありました。しかしながら、大幅な一等米比率の低下となりました。
一つの組織があります。黒部川渇水情報連絡会という組織であります。構成メンバーは、国土交通省であるとか、富山県農林水産部、土地改良区、電気事業者等により黒部川渇水情報連絡会が設置されていますが、今後も、酷暑であるとか、あるいは沸騰化といったものが毎年あり得るということを想定すべきだろうというふうに思います。
農業を守るため、米生産を守るため、そして農家を守るために、具体的には、水利権水量の在り方の見直しといったものが必要ではなかろうかというふうに思います。具体的には、水のボリュームであるとか、あるいは契約期間をより柔軟に対応するということが、米生産を守り、農家を守り、所得が維持され、そして、ひいては食料安全保障にもつながるものというふうに考えますが、農林水産省と国土交通省の所見を伺います。
○坂本国務大臣 委員がおっしゃる温暖化に伴います酷暑対策、これは本当に重要だと思います。とりわけ、御指摘の水田農業に対する米の劣化の問題、これは本当に深刻度を増しております。
そういうために、異常な高温等によりまして農業用水の取水期間の延長等が必要になった場合には、河川の流量やダムの運用等を踏まえまして河川管理者と協議をして、可能であれば、河川に水があれば河川から緊急的な取水を行うことが考えられます。
しかし、渇水によりまして河川からの取水が困難な場合には、排水の反復利用のためのポンプの設置、あるいは地下水利用のための井戸掘削を行うことが考えられます。
農林水産省では、昨年、北陸地方における渇水被害を踏まえまして、ポンプ設置等のための補助事業の要件を緩和をいたしたところです。農業水路等長寿命化・防災減災事業の拡充ということで、事業費で二百万以上のものに対して補助をするというところまで緩和をいたしました。
今後も、気候変動への対応を図っていくために、河川からの緊急的な取水、そして排水の反復利用、さらには地下水利用などの地域の実情に応じて現場に応じた取組というものを支援してまいりたいというふうに思っております。
○堂故副大臣 国土交通省といたしましても、農業の振興のためには農業用水の確保が重要であると認識しています。
上田委員御指摘の水利権の水量や期間の設定、変更に当たっては、河川環境に与える影響を考慮する必要があるため、河川管理者が必要な事項を審査した上で許可を行うこととしています。その上で、異常な渇水が発生した場合には、関係利水者などで構成される渇水調整協議会を国土交通省が開催し、取水の状況や見通しを踏まえ段階的に取水制限を実施するなど、互譲の精神で渇水調整を行うこととしています。
国土交通省といたしましては、引き続き円滑な調整がなされるよう努めてまいります。
○上田委員 大臣、副大臣、大変力強い答弁、ありがとうございました。
やはり政治に携わる者にとっては、こうした厳しい暑さといったものが今年も起こり得るということをきっちり想定しておくべきなんだろうというふうに思います。ありがとうございました。
副大臣、これで結構でございますので、ありがとうございます。
さて、この法律案の概要は四つの柱がうたわれております。まず一つ目には食料安全保障の確保、二つ目には環境と調和の取れた食料システムの確立、三つ目には農業の持続的な発展、そして四つ目には農村の振興、この四つが柱だというふうに思っております。
まず、農業の持続的な発展の中のスマート農業について質問をさせていただきます。
私は、平成七年、県会議員の選挙に落選した後、富山県の基幹産業である米作りの現場を学ばせていただきました。それから約二十五年経過した今日、その形態は大きく変化してきました。
まず、農地の集積が進み、農業法人は規模を大きく拡大し、常用雇用、人を雇い、年間を通じて収益を上げるため、ハウスによるイチゴ栽培であるとか農産加工等、六次産業化、切り花の栽培も広がっております。
米作りについては、当時、一反当たり二十三枚ぐらいだったと記憶をしておりますけれども、軽トラックで運んでおりました。それが今では、直まきも大分普及してきましたし、密苗といったものも広まっております。防除においては、無人ヘリコプターだけではなくて、昨今では至る所でドローンによる薬剤散布も見られます。
経営の大規模化により、スマート農業は効果を発揮しています。大規模農家にとって、スマート農業は大きな武器であると考えます。効率化、労働生産性の向上、労働時間の短縮に効果を発揮しています。また一方で、農業者の減少が進んでおります。このスマート農業の実現がより重要となってくるというふうに考えます。
そこで、まず確認いたしますが、スマート農業は農業者にとってどのようなメリットがあり、課題は何なのか。そして、今国会においてスマート農業を進めるための法案を提出しておりますが、この法案の狙いといったものを確認したいと思います。
○武村副大臣 お答え申し上げます。
まず、メリットにつきまして、例えば、リモコン草刈り機を用いた除草による危険、重労働からの解放があったり、また、水田の自動水管理や牛の体調等の自動モニタリングによる現場の張りつきからの解放といったことがあったり、さらには、自動操舵システムや果実のスマート選果システム等により、若者や女性など不慣れな方でも作業が可能になるといったこともあります。施設園芸におけるデータを活用した環境制御による農産物の収量や品質の向上など、直接的な効果があります。そして、農業者の所得向上にも寄与するというふうに考えております。
次に、課題についてですが、これまでのスマート農業実証プロジェクトを通じまして、例えば、従来の栽培方式にスマート農業技術をそのまま導入しても、その効果が十分に発揮されないといったことや、スマート農機等の導入コストが高く、またそれを扱える人材が不足をしているということ、さらには、果樹や野菜の収穫など人手に頼っている作物でスマート農業技術の開発が不十分な領域があるなど、生産サイドと開発サイド双方での課題が明らかになっています。
今国会に提出をしておりますスマート農業技術活用促進法案につきましては、生産と開発に関する二つの計画認定制度を設け、認定を受けた農業者やサービス事業体等に対しまして、税制、金融による一体的な支援を行うことにより、農業の生産性の向上につなげてまいりたいと考えております。
以上です。
○上田委員 ありがとうございました。
スマート農業の最終的な目的地、到達点というのは、やはり生産者の所得の向上であろうかというふうに思っております。
スマート農業によって生み出された労働時間をどのように生かしていくのか、畑地化が促進された土地でどのような高収益作物を作付していくのか。そのためには、やはり私は農業普及指導員の存在、仕事といったものが最重要と考えますが、普及指導体制、技術体制をより充実させ、農家、生産者の所得向上にどのようにつなげるのか、所見を伺いたいと思います。
○川合政府参考人 お答えいたします。
気候や地形、農産物の特色、スマート農業技術の活用状況などは地域によって多様でありまして、スマート農業技術の活用を促進するためには、こうした地域の特性、事情に関して知見を有する地方公共団体の役割が重要であると考えております。
特に、都道府県に置かれている普及指導員につきましては、令和三年度には全国三百六十一か所の全ての普及指導センターでスマート農業の相談窓口を設置するなど、各産地における高収益作物の生産なども含めまして、スマート農業技術の効果的な活用が図られ、農業所得の向上につなげられるよう、国として都道府県と連携して取り組んできたところであります。
こうした取組の促進も念頭に、今国会に提出しているスマート農業技術活用促進法案におきましては、地方公共団体の役割といたしまして、区域の特性を生かした必要な施策の実施、計画の実施に関する普及指導員などによる指導助言等の援助に関しまして規定を設けているところであります。
国とこうした地方公共団体などの関係機関が密接に連携しつつ、スマート農業技術の活用の促進を図ってまいります。
○上田委員 先ほど副大臣の答弁にもありました、スマート農業というのは大変すばらしいもので、これから期待ができる分野だというふうに思いますけれども、一方で、技術の導入、機械の導入には、イニシャルコスト、初期投資の費用が高いということが一つの課題なんだろうというふうに思います。
生産者、農業者がそれぞれ機械を買う、購入するということも一つの方法でありましょうし、一方で、農業法人、法人の場合には、リース方式などを導入するという方法もあるというふうに考えますが、農水省としてどのように対応されるのか、所見を伺いたいと思います。
○川合政府参考人 お答えいたします。
スマート農業技術の活用を促進するためには、御指摘のとおり、農業者の費用負担の軽減や活用しやすい環境を整備することが重要であります。
このため、今国会に提出しているスマート農業技術活用促進法案におきましては、農業者によるスマート農業技術の活用及びこれと併せて行う新たな生産方式の導入に関しまして、税制、金融等の支援を行うとともに、複数の農業者が同一の計画に参画することによる機械の共同利用の促進、スマート農業技術の効果的かつ効率的な活用を促進するため、農業者のスマート農業技術の活用をサポートするサービス事業者の取組の促進などの措置を講じてまいります。
○上田委員 先ほどオペレーターの不在等の答弁があったと思いますけれども、やはり、実用化に至っていないスマート農業技術の開発を加速化する必要があるというふうに思います。
そのためには農研機構が果たす役割が重要だと考えますが、農研機構を中心とした産学官の連携をどのように進めていくのか、所見を伺いたいと思います。
○川合政府参考人 お答えいたします。
農研機構は、民間企業と共同で開発したロボットトラクターやシャインマスカットなどの新品種を始め、我が国の農業を支える技術の開発を担っております。
今後、更に情報通信技術を活用したスマート農業技術の開発を加速化するためには、農研機構と民間や公設試、大学などとの共同研究に加えまして、スタートアップや異業種、異分野など、多様なプレーヤーの参画を進め、その技術、知見を十分に生かすための体制の構築が必要であります。
特に、スタートアップなどの事業者から、技術の開発に必要となる研究設備や実証圃場を自ら保有することが困難との意見をいただいたこともありまして、今国会に提出しているスマート農業技術活用促進法案におきましては、スマート農業技術などの開発、供給に取り組むとして国の認定を受けました事業者が、農研機構の研究開発設備などを利用できるようにすることとしております。
さらに、令和五年度補正予算、令和六年度当初予算におきまして、スマート農業の実証圃場や新品種の育成を加速化するための温室の整備などを実施し、農研機構の機能強化を図ることで、農研機構を中心とした産学官連携を進めてまいります。
○上田委員 次に、環境と調和の取れた食料システムに関連して質問いたします。
みどりの食料システム戦略が掲げる食料、農林水産業の生産力向上といったものと環境負荷低減といったものの両立というのは、なかなか容易ではないんだろうなというふうに思います。
大変大切な課題だと認識しておりますが、生産現場での取組は今どのようにやっているのか、その進捗状況を伺いたいと思います。
○川合政府参考人 お答えいたします。
議員お尋ねのみどりの食料システム戦略の実現に向けましては、みどりの食料システム戦略推進交付金を活用しまして、堆肥による土づくりや化学肥料、化学農薬の低減の実証など、全国で四百件以上の取組が行われております。
また、令和四年七月に施行されましたみどりの食料システム法に基づきまして、本年三月末までに、四十六道府県で四千名を超える農業者の認定、六十四の事業者の基盤確立事業の認定、十六道県二十九地域におきまして地域ぐるみで環境負荷低減に取り組む特定区域の設定、二県三区域におきまして特定計画の認定、一県一区域におきまして有機農業を促進するための栽培管理協定の締結がなされております。
また、今年度、令和六年度からはクロスコンプライアンスを試行実施しているところでございます。
○上田委員 終わります。ありがとうございました。
○野中委員長 次に、小山展弘君。
○小山委員 立憲民主党の小山展弘です。
今日は、農林水産委員会での質問の機会を与えていただきまして、委員長、また理事の先生方を始め、委員の先生方には深く感謝を申し上げます。ありがとうございます。
それでは、早速質問をさせていただきたいと思います。
今回の食料・農業・農村基本法の改正に当たって、今回の法改正は理念法たる基本法の改正でございますけれども、この改正を受けて、政府は、今後、日本の農業の将来ビジョン、例えば二〇五〇年の食料、農業、農村のビジョンについて、どのように描いていらっしゃるでしょうか。また、そのビジョンへの工程をどのように描いていらっしゃいますでしょうか。
○坂本国務大臣 気候変動や世界的な人口増加に伴います食料需給の不安定化が予測される一方、国内は、二〇五〇年、日本の総人口は一億人、現在から約二千万人減少することが予測されています。このように人口減少が不可避となる中で、農業につきましても、今後二十年間で基幹的農業従事者が百二十万人から三十万人に減少することが見込まれております。
こうした中で、輸出が大幅に増え、日本の農業がアジアを中心とする諸外国への食料供給を担うことにより、生産の維持拡大を図ってまいります。そして、経営基盤の強い農業経営が育成され、スマート技術の展開等によります生産性や付加価値の高い農業生産の実現によりまして、少ない農業者でも食料の安定供給を可能にしていきたいと考えております。さらには、農村関係人口も増加し、農村人口が減少する中でも活力ある農村が維持されることを目指してまいります。
こうしたビジョンを実現するための具体的な施策につきましては、新たな基本法の下で、基本計画の策定過程において検討してまいりたいというふうに思っております。
○小山委員 日本全体でも人口も減りますし、また、農村人口、農業従事者の人口も、今のままでいけば、人口予測が一番正確と言われておりますので、減っていかざるを得ない。そういう中で、大規模化であったり、あるいはスマート農業であったり、あるいは日本人の需要といったものになかなか日本の適地適作のお米が適していないというような、今はちょっとマッチしていない部分もあって、輸出というようなところに力を入れていかなければいけないというのは、ある程度やむを得ないことだとは思います。
しかし、大規模化、専業化といったのは、今までの農政の発想と同じようなところというか延長線上であるところもありまして、大規模化あるいは専業化の弊害といったものも、あるいは農業従事者の方々が減っていくことの弊害といったものも少し私は指摘させていただきたいと思いますし、また、今日の私の質問の趣旨は、ここが私の一番訴えたいところでございます。
といいますのも、例えば、関係人口を増やすために農村人口を維持しなければいけない、その農村人口、核となる農業従事者あるいは農村人口をどうやって確保していくのか。あるいは、よく言われていることですけれども、大規模化をしても、担い手で大規模にやる方は当然効率のいい農地というところに集中しますから、やや効率面では劣るけれども食料生産に欠かせないような農地が耕作放棄地になっていくことも、懸念されるところでございます。また、よく言われるような水利施設とか農業施設あるいは農地の維持といったところも困難になってくることも、可能性として考えられる。
だけれども、私が一番訴えたいのは、食料生産やあるいは食料安全保障に対する国民的な理解が、農業従事者の減少とともに、理解というものも減っていってしまうんじゃないだろうか。
私は、産業ごとに競争の在り方というものは違っていいと思っています。いろいろな、自動車であるとかあるいは製造業、こういった方々の産業と、農業あるいは鉄道といったものは、全然競争の在り方が違うと思うんですね。よく、私の地元などは繊維産業がかつて盛んでしたから、なぜ繊維産業には支援がないのに農業には支援があるのか、これは理屈できれいに説明することはなかなかできない。まさに国民的な理解で、食料安全保障が大事なんだよということを理解してもらわなきゃいけない。
かつて戦後間もない頃は、第一次産業の従事者が人口の中でも多くを占めて、そして、工業化、産業化が進んで、農村の農家の次男坊、三男坊さんが都市に出ていって工場労働者になったんですけれども、だけれども、実家に戻れば農家だし、農とそれほど離れていなかった。ところが、今や自分のお父さんもお母さんも農家ではないというような方々がどんどん増えて、やはり農業に対する理解というものが減ってきていると思います。
そういう中で、例えば農地の確保といったことでいえば、優良農地は、工業用地あるいは住宅用地としても大変垂涎の的である場合も多いです。農地の所有者と実際の農業耕作者、農業従事者の方々の乖離が進んでしまいますと、こういう小規模な農地所有者のところに、甘い言葉で大きな金額を、まさにほっぺたを札束でひっぱたくような声がかけられて、受託を受けた大規模な少数農家の方々が、彼らが言うところの村八分、あなた方がいるせいで開発できないじゃないかということを言われてしまう。こういう大変つらい状況もございます。
あるいは、地方議会へ議員を送り出せない。そして、地方議員や地方首長の理解が乏しくなって、いまだにこういった地方の首長さんの中には、リーマン・ショック前の発想で、開発していこうと。ちなみに、これは我が党の、我々の野党側の首長さんではありません。そういう方々もいらっしゃいます。そうしますと、ますますこういった農業への理解が減っていくことで、農地が減っていったり、あるいは農業政策への理解が得られなかったり、そのことが食料安全保障に影響してくる。まさにこれが残された課題ではないかなということを改めて感じました。
次の質問なんですけれども、多分、アメリカでも同じようなことを感じているようなところがあるかと思っておりまして、アメリカのビルサック農務長官が、大規模化の偏重を反省する、農村の弱体化を招いたと発言をいたしております。
米国のようなところでも農務長官がこういう発言をしたということなんですが、同様に大規模化や農村の弱体化が指摘をされる日本の国内農業あるいは国内農村について、このビルサック農務長官の発言を坂本大臣はどのようにお受け止めになりますでしょうか。
○坂本国務大臣 アメリカの農務長官が農業の大規模化に伴います地域社会の弱体化の問題を指摘されたということは、承知しております。
各国の農業が置かれている状況は様々でありますけれども、その国の農業を取り巻く課題に応じて必要な政策を講じていくということが重要であるというふうに思います。
米国と我が国では大規模経営の規模が大きく異なるというふうに思います。アメリカでは一戸当たり平均百八十ヘクタール、日本は三ヘクタールでございますので、規模がまた全然違います。
そして、我が国では、経営規模の大小や、家族、法人などの経営形態を問わず、農業で生計を立てている担い手を幅広く育成、支援していくことが引き続き必要だと考えております。大規模化一辺倒の支援ではございませんし、基本法の見直しに当たりましても、今後こうした考えに変わりはありません。
あわせて、担い手だけでは管理できない農地が出てきている中で、担い手以外の多様な農業者につきましても、農地の保全管理や集落機能の維持の役割を担っていただくことが重要であることに鑑みまして、水路の泥上げなど地域の共同活動への支援等も行ってまいりたいというふうに思います。
こういった地域の泥上げ等につきましては、やはりアメリカではないことだというふうに思いますし、それに対しまして多面的機能直接支払い等がやはり機能をしているというふうに思いますので、より小さなコミュニティー、そして家族経営、さらには規模の大きな法人、あるいは個人経営、こういったものの組合せによりまして、日本の農業というものをしっかり形作っていきたいというふうに考えております。
○小山委員 まさに坂本大臣が今お話しになられたとおり、アメリカと日本ではそもそもの規模が違うというところと、日本では手厚いそれ以外の方策もあるというところは私も理解しているところではございますけれども、日本自体の国土も元々狭い中で、驚くほど似たような現象が起きているというところで、担い手をどうやって確保していくかということは、やはり、仮にこれからスマート農業やあるいは大規模化、専業化が進んでいったとしても、それでも百二十万人から三十万人というのは大変なインパクトでございまして、是非この担い手の確保ということはこれからも力を入れていただきたいと思います。
残念ながら、私も当時落選中だったんですけれども、二〇一三年に国連の定めた国際家族農業年という年があったんですけれども、そのときは、政府としても、この家族農業年に対して大きな理解の進展といったことが余り大きく強くはできなかったところがあったのではないかと思います。是非、来年は国際協同組合年でもございますし、大規模な農家あるいは法人経営ということだけではなくて、家族農業あるいは協同組合といったものの価値をもう一度見直す一つのきっかけにしていただきたいと思います。
あわせて、担い手不足というようなところで今大臣からもお話がございましたが、今回の法改正において、今後、深刻化する農業の担い手の急減をどのような方法で、またどのような理念で克服していく方針でしょうか。それはどの条文から読み取れますでしょうか。
○坂本国務大臣 農業者の数につきましては、個人経営体の農業者である基幹的農業従事者が、この二十年、高齢化等の進展によりまして、百六十万人、半減をいたしました。現在、年齢構成から見て、先ほど言いましたように、今後二十年間で三十万人にまで減少するおそれがあるというふうに危機感を抱いております。
一方、法人経営体の役員や常雇い等は、基幹的農業従事者とは別に二十四万人おられまして、この二十年間で増加をいたしております。
我が国の農業は、経営体数の九六%を占める個人経営と、それから経営体数が三万を超え、農地面積の四分の一、販売金額の四割を担うまでになりました法人経営の組合せで成り立っている。先ほど御答弁したとおりでございますけれども、一方の方で、この二十年間で、農業総産出額の約九兆円というのは維持しているところでございます。
こうした中で、次世代の農業者の確保に向けまして、基本法改正案の三十三条に基づきまして、家族経営を念頭に、様々な資金メニューでの支援、それから機械、施設の導入支援、そしてサポート体制の充実などのほか、二十七条第二項を新設いたしまして、新規就農の受皿としても重要な法人経営の経営基盤強化など、あらゆる施策を講じてまいりたいというふうに考えております。
○小山委員 今大臣からも御答弁いただきましたが、なかなか、今、物価高ですね、こういう中で、コストが増加することで利益が減る、そのことで経営が将来に対して見通しが立たない、あるいは所得が減ってしまうというようなことがよく聞かれておりまして、予算委員会のときにも、大変恐縮ですが質問させていただいたとき、酪農の農家の方々も離農したり、あるいは今でも離農している方々も多くございます。あるいは、大規模にやっている若い農家の方々が、今のうちだったら別の産業に就職してもまだやり直しが利くから、だからやめようなんというような声も、私の地元だけかもしれませんけれども、聞かれたことがございます。
こういった中で、今後の安定して経営を見通せるんだというようなことがやはり必要だと思いまして、その点からも、是非、これはどこどこの党の手柄だとか、どこどこの党のメンツだとかということではなくて、超党派で、これは理念法が今回の基本法ですので、この後、農家の方々の経営あるいは所得といったものをしっかり確保できるような、名前もどうでもいいと思っております。そういう政策をやはり超党派で、与野党を超えて今出していくということが僕は必要なことじゃないかな、そう思っております。
協同組合振興研究議員連盟の方でも、実は今、森山会長のところに、これは党ではなくて議連の構成議員として申し上げますが、御党の城内実議員と一緒に今まで作ってきた原案を森山会長のところに持っていっておりますけれども、是非また与党の先生方にも御検討いただきまして、名前とか、あるいはどこどこの手柄とかということではなくて、そういうことはもう本当にどうでもいいと思いますので、是非与野党で、あるいは国会の力で、農家の方々の苦境を救うということを是非御検討いただければと思います。
それでは、今の質問に関連しまして、済みません、ちょっとお尋ねしたいんですが、離農者を上回る新規就農を確保できているのか、あるいは下げ止まりのトレンドというものは見られるのか、お尋ねしたいと思います。
○村井政府参考人 お答え申し上げます。
農業者の高齢化、減少が進む中、農業生産を安定的に行っていくためには、農業の現場で必要な人材を確保していくことが重要であると考えております。
ただ、現実は非常に厳しい状況にあるというふうに我々も認識をしております。四十代以下の新規就農者につきましては、令和四年で一万七千人程度となっております。これまで以上にしっかりと新規就農対策を推進する必要があると考えております。
このため、令和四年度から政策の見直しを行い、先ほど大臣からも御答弁させていただいたとおりでございますけれども、支援の内容充実を図っているところでございます。
今後も、次代の農業を担う人材の確保から育成、定着までを一層推進してまいりたいと考えております。
○小山委員 次の質問をさせていただきたいと思いますが、食料安全保障を確保して食料自給率を向上し、また、農地を維持したり、様々な農業政策への理解を得ていくためにも、国民的な広い理解というものが必要かと思います。
与党の先生方も御覧になられたと思いますが、去年、NHKスペシャルで、スイスの農業とかあるいは食料生産に関する高校での授業の様子なんかも出ていた。よく話題になるNHKスペシャルもありましたけれども、こういった意識と、特定の我が国の、名前は、あえて固有名詞は出しませんけれども、何とか新聞というのは、必ず最後に改革が必要だと、何の改革だ、どんな改革だと突っ込みたくなるんですけれども、我が国のこういった農業に対する改革が進んでいないというような偏見、こういったものと比較すると、非常に国民的な理解といったところで落差が大きいと思っています。
消費者及び国民の理解を得ていくために、農水省はどのような対策、政策を考えていますでしょうか。
○安岡政府参考人 お答えいたします。
国民の食生活と農林水産業の現場との距離が遠くなる中で、委員おっしゃるとおり、食や農林水産業に対する国民の理解の醸成を図る観点からは、食育が改めて重要になっているところでございます。
このため、食料・農業・農村基本法の見直しにおける議論なども踏まえて、子供から大人までの世代を通じた食育を幅広く進めることとしているところでございます。
具体的には、学校給食での地場産物を活用した食育であるとか、地域での農林漁業体験の提供など、関係省庁とも連携して、食育の取組の充実強化を図ってまいりたいと考えております。
○小山委員 今、学校給食への地場産品の導入といったこともありましたが、今後、みどりの食料システム戦略とも軌を一にして、そこから更にその先の目標として、学校給食への有機農産物の導入ということで、坂本大臣も元々、大臣になられる前にその議連の会長をお務めでございましたけれども、是非そういったことも与野党一体になって、無理なことを進めてはいけないですけれども、できることを着実に一歩ずつ進めていくように、また御検討賜れればと思います。
また、国民全体での広範で深い理解を得ていくために、農林中金総合研究所にいらした蔦谷栄一さんは、生産消費者を増やすということを訴えていらっしゃいます。
消費者というだけでなく、小さくても、あるいは販売農家ということでなくても、自ら食料を生産する、あるいは何らかの形で生産に関わる消費者が多くなること、それが、先ほど申し上げた、戦後はまだ農家が実家であったというような、こういう、土と離れていなかった、農と離れていなかった、だけれどもどんどん農と離れてしまっている現状からすると、こういった生産消費者が増えていくこと、あるいは国民全体が何らかの形で農業に関わるための国民皆農というビジョンを訴えております。
なかなか国民皆農というと拒否感を持つ方もいらっしゃるかもしれないですけれども、そのぐらいの強い意気込みを示してもいいのではないかと思いますけれども、農水省はこのような生産消費者という発想についてどのようにお考えになりますでしょうか。
○安岡政府参考人 お答えいたします。
先ほど申し上げたとおり、消費者と農業現場の関わりが薄くなり、その距離が遠くなる中で、農業への理解を深めていただくためには、委員御指摘のような生産消費者や国民皆農の考え方にもあるように、消費者が実際に農業現場で作業をして、農業生産に関わって農業を体験していただくこと、これが重要だというふうに考えているところでございます。
実際、こうした中で、農林水産省では、食育を推進する中での各地域における農林漁業体験の機会の提供などを支援しているほか、小中学生などが農山漁村に宿泊して農林漁業体験を行う取組を支援する、さらには都市農地を活用した市民農園などの農業体験の取組の促進、さらには、農業現場で活躍する若手農業者の下で農作業を行って、職業としての魅力を体感する農業体験を実施するなど、様々な農業体験の取組を推進しているところでございます。
国民の農業理解を進める上では、委員御指摘のとおり、多くの国民が実際に農業に関わり、体験することが重要でございますので、今後ともこうした取組を推進してまいります。
○小山委員 ありがとうございます。
今のようなお話を実は資料一の方に、これは蔦谷さん作の図でございますけれども、まとめてあります。
今、農水省さんからの答弁で、あくまでも体験、そういったことで、どう日本の農政の中で位置づけるかというところまではまだいっていないかと思うんですけれども。
このように、実際の食料生産の、生産量でいえば大規模利用型農業あるいは高度技術集約型農業というこの部分が主力となるわけですけれども、その一方で、市民の家庭菜園とかそういったところでも、国民的な理解の醸成、農業政策や農への理解といったところで、理解のある人が幅広い裾野を持つということ、これもまさに農業政策を支える、農業を支える大きな一つの基盤になるのではないかということと、少しでも自分で生産していれば、そのことも、ドイツなどでもあるようですけれども、食料安全保障にも資することになってくるのではないだろうか。こういった、少数による大規模経営による食料生産と、多数の方々による農業政策に対する理解、この組合せが必要ではないかなと思っております。
産業として業を営む大規模農家や、あるいは小農、家族農業でも、プロ農家、販売農家の方々と、あるいは半農半Xと言われる方々プラス市民によるアマチュア農家、販売をしない、こういう農業をやっている方々というものも農村の維持の上では必要であると思いますけれども、改正法では、こういったアマチュア農家や販売に至らない農家の方々を何か位置づけているところがあれば、御答弁いただきたいと思います。
○舞立大臣政務官 今後、我が国全体の人口減少に伴いまして、農業で生計を立てる担い手の減少のみならず、御指摘の担い手以外の多様な農業者も減少することが見込まれているところでございまして、こうした状況の下で食料の安定供給を図るためには、担い手への農地集積を進めつつ、担い手以外の多様な農業者についても、自らの農地は生産を通じて保全管理を行うとともに、世代交代等により適切な管理が難しくなる場合には、管理できる方々に円滑に承継していくことが重要と考えております。
このため、例えば第二十六条第二項におきまして、担い手以外の多様な農業者が地域における協議に基づき農地の保全を行っていく役割を新たに位置づけているほか、いわゆる農村人口の裾野を広げるという意味では、半農半Xなど、農業と関わりを持つ方を増やしていくということが必要と考えておりまして、新たに第四十四条、第四十五条におきまして、農村の振興に関する施策といたしまして、農地の保全に資する共同活動の促進や、地域の資源を活用した事業活動の促進を新たに位置づけているところでございます。
○小山委員 次の質問をさせていただきたいと思いますが、今回の基本法改正で、第十二条で、食料、農業及び農村に関する団体は、その行う農業者、食品産業の従事者、地域住民又は消費者のための活動が、基本理念の実現に重要な役割を果たすものであると記載されております。政府は、農業関連団体に具体的にどのような役割を果たすことを期待しておりますでしょうか。
ちょっと時間が少なくなってきましたので、済みません、農協についてのみ御答弁をお願いしたいと思います。
○舞立大臣政務官 第十二条の関係でございますが、農協についてということでございます。
平成二十七年に改正された農業協同組合法において「農業所得の増大に最大限の配慮をしなければならない。」と規定されておりまして、この役割を果たすため、JAグループにおいて、農業生産の拡大、農業者の所得増大等を基本目標とする不断の自己改革に取り組まれていると承知しております。
農林水産省といたしましても、このような農協の自己改革が積極的に進められることを期待するとともに、引き続き、自己改革を後押ししていく考えでございます。
以上です。
○小山委員 また機会がありましたら、農業委員会さんや土地改良区についてもまた質問させていただきたいと思います。
それと、改正後の食料・農業・農村基本法の中で、みどりの食料システム戦略というのはどのように位置づけられておりますでしょうか。
○武村副大臣 お答え申し上げます。
農林水産省では、令和三年五月にみどりの食料システム戦略を策定しまして、食料システム全体での環境負荷低減に取り組んでいるところです。
こうしたみどりの戦略に基づく取組の内容も念頭に置きまして、今回、基本法の改正におきましては、基本理念におきまして、食料の供給の各段階における環境負荷低減の取組の促進など、生産から消費に至る食料システムを環境と調和の取れたものにしていくということを第三条で位置づけています。そして、基本的施策におきましては、環境負荷低減に資する技術を活用した生産方式の導入の促進、環境負荷低減の状況の評価の手法の開発等を第三十二条で位置づけることとしたところです。
今後、基本法の見直しの内容も踏まえまして、みどり戦略に基づく施策を着実に推進するために、環境と調和の取れた食料システムの推進のための必要な施策の見直しを行ってまいります。
○小山委員 今の御答弁で、一つには、基本法の改正によって、一つ前の御答弁ですけれども、新たに農協の役割が付加されるということは特別ないということや、あるいは、みどりの食料システム戦略も今回の基本法の改正の中でも位置づけられて、是非これもそごなくこれからも進めていただきたいと思います。
それで、時間が本当に少なくて大変恐縮なんですが、最後に、私が出てくるとあの質問をするんじゃないかといつも言われるんですけれども、ちょっと順番を変えさせていただきまして、今年のお茶の現在までの生育状況、また、今年の価格見通しなどの茶況について、現在政府が把握されていてお答えできる範囲の中におきまして、見通しなどについてお尋ねしたいと思います。
○平形政府参考人 お答えいたします。
静岡県での新茶、一番茶の摘採はこれからですけれども、生育につきましては、三月の低温により平年よりも遅れが見られるものの、現時点において凍霜害や病気等による大きな被害はなく、生育は順調であるというふうに承知しております。
また、四月一日から鹿児島県産の新茶の取引が開始されましたが、前年を上回る単価でスタートをしたというふうに承知しております。
静岡県を含め、これから全国で新茶の取引が本格化する中で、市況について、今後の気象などによっても品質が左右されるために予断を持って申し上げることはできませんけれども、引き続き、注意深く見守ってまいりたいと考えております。
○小山委員 私も、実は新茶摘みの、手摘みの方をちょっとお手伝いに行ったりしたんですけれども、今年は桜の開花も最初四月の一日と言われていて一週間遅れたりとか、少し前にやはりちょっと冷え込むことがあって、ハウスの中でお茶をやって、手摘みの、一番最初のお祭りなどに出すお茶を作って、それを手摘みでやっていたわけですけれども、そこのハウスが破れてしまって、そこのハウスの中だけちょっと霜が降りてしまった、霜というか凍霜害になってしまったということもございまして、ちょっと心配していたところではあるんです。
是非、引き続き、政府の方でも茶況あるいは茶の生育状況を注視していただいて、また必要な支援が、何もないことを祈っておりますけれども、出てきましたらまたお願いをしたいと思います。
ちょうど時間も参りましたので、質問を終わらせていただきます。
○野中委員長 次に、金子恵美君。
○金子(恵)委員 立憲民主党の金子恵美でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
四月の四日に参考人質疑も行われまして、それぞれの参考人の皆様から様々な御意見をいただいたところであります。その中の一つではありますけれども、やはり予算の問題、予算について心配をされている方々が多かったような気もします。
農林水産省では、今が農政のターニングポイントを迎えているとの強い意識の下、現行基本法の検証を始めたということで説明がされてきて、そして今回の基本法改正に至っているということであります。
そうであれば、もちろん予算をしっかりと獲得する、そして、これから、ターニングポイントということですから、農政の大転換ということになっていくんだというふうに期待しておりますけれども、そうであれば、それに必要な人員の確保というものも必要になっていくので、しっかりとした配置というものもしていかなくてはいけないということです。
中原参考人は、締めのところで、食料安全保障の強化に向けて農業予算を増額し、岐路に立っている日本農業の再興を目指して、国民のための法改正となることを改めてお願いしますというふうにもおっしゃっていました。それ以外に安藤参考人も、これは神谷委員の質疑に対しましてのお答えの中で、ちょっと雑駁に申し上げると、今まで、農水省はいいこともやってきていたかもしれない、しかしながら、財源がしっかりと確保できていなかったことによって、例えば食料自給率の向上にもつながらなかったというような趣旨のことをおっしゃっていました。やはりですが、締めの言葉では、最終的に行き着くところは予算の問題になるのかなと思っております、そういう御答弁もいただいていたということでありますし、鈴木参考人は、防衛費よりもやはり農水省にしっかりと予算を獲得しなきゃいけないだろうというような、そういう御発言もされていました。
予算の問題と、そしてまた、今まさに内閣人事局が準備を進めております定員合理化計画、次の定員合理化計画において、あるいは農水省において、しっかりと人員の獲得ということで、私は過度な今までのような軽減ということにはならないようにしていただきたい、是非農水省も頑張っていただきたいということを心から思っております。いかがでしょうか。
○坂本国務大臣 食料・農業・農村基本法の改正案を成立させていただきましたならば、政府といたしましては、これに基づきまして、食料・農業・農村基本計画を策定をいたします。その中で、基本法に定める施策の具体化を行ってまいります。
その上で、基本計画に定める施策を的確かつ着実に進めていくためには、その施策の推進の原動力となる予算そして定員を確保する必要がありますので、このことは委員御指摘のとおり重要な課題である、問題であるというふうに思っております。
今後とも、食料安全保障の強化を始めとした農林水産行政の課題に対応するため、当初予算はもとより、補正予算も含めて、必要な予算の確保に努めてまいります。そして、定員につきましても、将来の業務運営に支障が生じないよう、その確保に向けましてしっかりとやってまいりたいというふうに思っております。
今言われました定員の合理化計画につきましては、各府省の行政需要の動向や定員増減の状況を踏まえまして、今後、内閣人事局を中心として検討をされていくものでありますけれども、農林水産省といたしましては、食料安全保障の強化、そして農林水産物・食品の輸出促進、さらには、みどりの食料システム戦略の推進を始めとした各種主要政策課題に係る行政需要を内閣人事局にしっかりと説明し、将来の業務運営に支障が生じないように、その人的な確保というものを図ってまいりたいというふうに思っております。
○金子(恵)委員 大臣の御決意も頂戴したというふうに受け止めさせていただきまして、今おっしゃっていただいたことについては、私たちもしっかりと後押しをさせていただきたいというふうに思っています。地方組織も含めました人員配置というものもしっかりと進めていただきたいので、是非頑張っていただきたいというふうに思います。
そこで、今日は、少し皆さんの、ほかの方の質問とかぶるところもあるかもしれませんけれども、消費者の役割というところをまず次の質問でさせていただきたいというふうに思います。
今回、新しい十四条で消費者の役割というのがありまして、現行法の消費者の役割に、食料の消費に際し、環境への負担の低減に資するものその他の食料の持続的な供給に資するものの選択に努めることによって、食料の持続的な供給に寄与しつつという内容がつけ加えられました。消費者、つまりは全ての国民ということであります。
先ほど小山先生からも、生産と消費者というものを結びつけているというお話をしていただいて、生産消費者という言葉についても触れていただきましたが、そこで私は、重要なのはやはり食農教育だというふうに思っています。
ずっと食育というお話はされているんですが、改めて、前回この場で質問させていただいたときにも触れさせていただきましたけれども、JA福島青年連盟の総会にお伺いした際に、JA福島青年連盟の皆様が特に力を入れているのが食農教育活動だということでありまして、JA福島青年連盟の星委員長の挨拶では、農業に関わる人を増やすを合い言葉に三本の柱を打ち立てて実践してきたと話され、一つ目に食農教育の拡充を挙げられていました。
これまでは伝統的に小学校以下の低年齢層に向けて行ってきた食農教育活動を中高大学生に広げた、職業としての農業をより考えていける年代にもアプローチすることで農業の視野を広げることが目的だ、また、食農教育のもう一つの側面は消費者教育でもあり、消費者が地元の食や農を応援していくということで、地産地消、JAグループが提唱している国消国産を推進するとともに、適正な価格形成への理解を促進し、食と農を守ることにもつながるというふうにおっしゃっていました。
私は、JAの女性部の部員でもあります。まさに、消費者の理解なくして農業と農村を守ることができない、だからこそ、消費者の方々の理解をしっかりと深めることができるような、そういう国としての明確な施策を示していくべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○坂本国務大臣 改正案におきまして、消費者の役割として、農業等への理解を深めるとともに、食料の消費に際しまして、環境への負荷低減など食料の持続的な供給に資する選択に努めていただくということを、委員御指摘のとおり規定をいたしました。
消費者にこういった役割を果たしていただくためには、委員御指摘のとおり、やはり、食や農林水産業に対する理解を深める食育あるいは食農教育を更に進めることが重要であるというふうに考えております。
特に、生産現場の実態を知っていただく上では、生産者との交流などのほか、農林漁業体験が、子供たちだけではなくて、消費者の皆さん方、保護者も含めて、これまで以上に重要となっております。
農林水産省が実施しました調査によりますと、この体験に参加した方々の六割強が、自然の恩恵や生産者への感謝を感じられるようになった、また、四割の人たちが、地元産や国産の食材を積極的に選ぶようになったと回答されています。
農林水産省では、今後とも、農林漁業体験を始めとした各地域の食育活動、あるいは食農教育活動を支援することとしており、食や農林漁業への理解醸成に向けた取組が更に広がるよう後押しをしてまいります。
○金子(恵)委員 ありがとうございます。
食育と食農の使い分けをされているのだというふうに思うんですけれども、実は、今ほど申し上げましたJA福島青年連盟の皆様の総会の際に、食農教育プログラムの類型化と普及可能性の検証を、喜多方市立加納小学校をモデルとしてということで、福島大学食農学類というのがあるんですが、そこの、今卒業されたばかりなんですが、菅原帆乃香さんの研究発表がありました。今度、四月からは大学院の方に行かれて研究を続けていらっしゃるということなんです。
内容としては、食農教育は明確な定義が設けられていない、実施主体によって食農教育に関する共通認識が異なる、食育と食農教育が混在し内容の差別化が図られていない、何を学んでほしいのかの視点が定まらず、プログラムの実施目的が不明瞭になってしまうのでということで、そのような背景があって、目的としては、食育と食農教育の内容の差別化が図られるようにする、現状を明らかにしていくということで、差別化が図られていないので現状を明らかにするということと、食農教育の定義化をしっかりと図っていく、食育と食農教育を区別する、それと三つ目には、食農教育プログラムのスタンダードになり得る新たな食農教育プログラムを提案し、その普及可能性について検証するというようなことで、これを目的にされて研究をされたんです。
最後のところだけちょっと申し上げますと、食農教育の定義というのが、菅原帆乃香さんの定義、研究の成果としての定義になりますけれども、食農教育とは、地域に根差した食と農、自然との関わりを重視した活動の下、地域農業について知ることにより、地域の風土、地域の食文化、地域が抱える課題について理解を深めるとともに、食の大切さ、食を支える農を身近な存在として捉えることによって、食と農と自分自身とのつながりを認識し、農業の理解者又は支援者となる人間を育てることであるということで定義づけられていました。
是非、こういうことも参考にしていただきまして、もちろん食育推進の法律もありますけれども、どのような展開をこれからしていくのか、この中にある地域の食文化ということについても、私はとても重要な観点だなというふうに思います。これをしっかりと守り続けるために、自らがどのように、地域の皆さんが一つになって働けるか、あるいはそれを発信していけるかということだというふうに思いますが、是非、この件についても御関心をお持ちいただければと思いますけれども、大臣、何か一言ありますか。
○坂本国務大臣 私たちは、食育基本法に沿って様々な施策をしておりますけれども、その中に、食というものを、そして農というものをどういうふうに考えていくかということは、やはりしっかりと取り込んでいかなければいけないというふうに思っております。
○金子(恵)委員 ありがとうございます。
是非、参考にしていただきまして、これからの政策にも反映させていただきたいというふうに思いますし、よろしくお願い申し上げます。
次の質問に行かせていただきます。
農村人口がとにかく急激に減少している、集落機能の維持ができなくなる、そういう状況が出てきているというふうに思います。そのためには、関係人口の増加により集落コミュニティーの維持を図っていくことが重要かというふうに思っています。
改正案の中では、農村の総合的な振興に係る新第四十三条に、農村との関わりを持つ者の増加に資する産業の振興との文言が追加されておりまして、また、新設される第四十四条に、農業者その他の農村との関わりを持つ者による農地の保全に資する共同活動の促進が規定され、同じく新設される新第四十五条に、地域の資源を活用した事業活動を通じて農村との関わりを持つ者の増加を図るためとの文言が上げられています。
そこで、関係人口、今申し上げた農村との関わりを持つ者ということになると思いますけれども、関係人口とはまずどのようなものか、お尋ねしたいと思います。その上で、関係人口の増加のためにどのような施策を講じようとしているのかということをお伺いしたいと思います。
○坂本国務大臣 農村関係人口は、都市部にいながら農産物の購入など農村に関わる形から、実際に生活拠点を農村に移す形に至るまで、農村の外部から関心、関与を持ち農村に関わる人であり、徐々に段階を追って農村への関わりを深めていくことで、農村の新たな担い手へ発展すること、これを期待しております。いわゆるその地域地域のファンを増やすということであります。
そして、農村地域におきましては、人口減少、高齢化が急激に進行しておりまして、地域コミュニティーを維持するために、農村関係人口を創出、拡大し、都市部の消費者も含めた多様な人材を呼び込むことが重要であるというふうに考えております。
農林水産省といたしましては、農泊など都市と農村との交流の促進、そして六次産業化や農福連携などの農山漁村発イノベーションの取組、さらには、農村RMOの形成を通じた地域課題の解決や鳥獣害防止の推進による農村に人が住み続けるための条件整備、こういったものが必要であるというふうに思います。
私も、地方創生担当大臣のときにこの関係人口というものを大分増やすような努力をいたしまして、内閣府の立場としては、ワーケーションとか民間企業の地方への様々な派遣とか、こういったものを、人材派遣というものを行ってまいりましたけれども、農林水産省としての施策と、そして、各省庁との、関係省庁との様々な連携、こういったもので関係人口というものをやはり増やしていくこと、これが大切だというふうに思っております。
○金子(恵)委員 ありがとうございます。
農水省でできることだけではなくて、省庁、横串を刺した形でこの関係人口の増加ということになっていくんだというふうにも思いますし、そのことが農村を守る、地域を守るということにしっかりとつながっていくのだというふうに信じてやみません。
しかし、まずは今回の基本法の中で何ができるかということだというふうに思います。農水省としての取組をどのように強化していくかということだと思いますが、関係人口の増加は都市と農村の交流の取組が出発点になろうかと考えられますけれども、都市と農村の交流等については、新第四十九条に規定されています。
現行法では、都市と農村の間の交流の促進、市民農園の整備の推進その他必要な施策を講ずるとしていたところ、改正案では、都市と農村の間の交流の促進の例示として、余暇を利用した農村への滞在の機会を提供する事業活動の促進を掲げるとともに、新たに都市と農村との双方に居所を有する生活をすることのできる環境整備を追加することとしたものです。
先ほど大臣も、農泊のことはおっしゃっていただきました。RMOのこともおっしゃっていただきました。二地域居住、このことなんですけれども、大都市の住民の関心が高いというふうにも言われていますが、都市住民の方々が農村にも居所を有して、そして生活をすることができる環境整備ということでこの文言が入ってきているというふうに思いますけれども、ただ、例えば週末は農村で過ごすという形などが想定されるのかなというふうに思うんですが。
実際に、都市と農村との双方に居所を有する生活をすることのできる環境整備というのは、素直に読むと、もしかすると、農村の住民が都市部に居所を有して閑散期に都市で過ごすという形もあり得るということにはならないのでしょうか。反対に、人口が流出するということとか、農村にいた人たちが都市部へ流出するというようなことはあってはいけないことだというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○坂本国務大臣 農村地域におきましては、農村関係人口を創出、拡大し、多様な人材を呼び込むことが重要であると考えておりまして、御指摘の二地域居住もその有効な手段だというふうに考えております。
このため、農林水産省といたしましては、先ほど言いました農泊とかRMOとか、そういったものを実施しているところでございますけれども、国土交通省の方でも、社会資本整備交付金等によりまして広域的な流通というものをやろうとしているところであります。ですから、関係省庁と連携をしながら、様々な、先ほど言いましたワーケーションの受入れに向けた環境整備、それから定住、交流を促進するための施設整備などを実施してまいりたいというふうに思います。
それは、そのまま農村からの人口の流出にはやはりつながらないというふうに思っております。それだけの吸引力をやはり農村部の方がしっかりやること、これが大事だというふうに思っております。
農村におきまして、仕事、暮らし、活力、土地利用の観点から農村振興施策を総合的に推進することで、農村に居住されている方も含めて、そして新たな都市住民も含めて、農村に定住していただけるようにしっかりと取組を進めてまいりたいというふうに思っております。
○杉中政府参考人 議員御指摘の懸念について回答させていただきますけれども、第四十九条については、元々、「国民の農業及び農村に対する理解と関心を深めるとともに、健康的でゆとりのある生活に資するため、」というふうに前提を置いておりますので、当然、二地域居住につきましても、都市住民が農業、農村に触れることによって理解を増進するということを目的としたものでございます。
○金子(恵)委員 ありがとうございます。
大臣、国交省でやっていることというような言い方もされましたけれども、今回は基本法の改正の中での議論をさせていただいていまして、もちろん、先ほど申し上げましたように、関係省庁、横串を刺していろいろな対応をしていくことも重要というふうに申し上げさせていただきましたが、恐らく、関係省庁と連携というふうになり、そしてまた、ほかの省でやっていることというふうになると、そういうふうなおっしゃり方をしますと、農水省の予算が取りにくくなると思うんですよ。
ですから、私は、農水省でこういうことをやりたいんだ、やっていくんだという決意をやはり大臣として示していただいた方が、せっかくここは基本法改正で大きく示させていただくわけですから、その辺のところはいかがですか。
○坂本国務大臣 農水省は農水省として、農泊、それから農山漁村発イノベーション、そして農村RMO、こういったものを進めてまいります。
先般も、私のところの廃校になりました小学校を活用して、農山漁村活性化交付金、こういったもので五千五百万拠出をしたところでありますけれども、そういう予算の獲得というものを、具体例を提示しながらしっかり確保してまいりたいというふうに思っております。
○金子(恵)委員 ありがとうございました。
改めて、今、強いお言葉も決意も発していただいたというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
次に、関連させていただくのですけれども、私のこの質問の関連というのは、いかに消費者の方々にやはり理解をしていただけるかということの流れの中で質問させていただいてまいりましたが、次は、先ほども小山委員に触れていただきましたが、やはり都市農業の関連です。
これは、基本法においては、現行法の三十六条第二項、新第四十九条第二項においてということになりますけれども、「国は、都市及びその周辺における農業について、消費地に近い特性を生かし、都市住民の需要に即した農業生産の振興を図るために必要な施策を講ずるものとする。」と規定されているんです。
まず、都市農業の農政上の位置づけについてお伺いしたいというふうに思います。
今回は、食料・農業・農村基本法において、都市農業が果たす多様な機能というものが明記されていない、そういう状況でありまして、一言で言いますと、今回、現行法と全く同じでありまして、改正されていません。恐らく、審議会の中でも様々な議論はなされてきたんだというふうに思います。
私は、都市農業というのはとても重要で、それは、繰り返し申し上げますけれども、消費地に本当に近い特性ということになりますが、消費者に対して農業というものを身近に感じていただくことができる。つまり、消費者の理解というものをしっかりと深めることができる重要な部分でもありますが、様々な点について、ほかにも大変大きな機能を持っているというふうに思います。でも、今回、改正は全くされていませんけれども、それはなぜでしょうか。
農政上の位置づけと、そして都市農業の果たす多様な機能を明記する、その必要性について、御所見をお伺いしたいと思います。
○坂本国務大臣 都市農業につきましては、現行の基本法の三十六条第二項の中で、今委員御指摘の条文が盛り込まれているところでございます。
これを受けまして、都市農業に関する議論が深まる中で、平成二十七年に、都市農業に特化した基本法である都市農業振興基本法という、もう一つの基本法が制定をされました。そういうことで、都市農業につきましては、農産物を供給する機能のみならず、良好な景観や、防災、さらには国土、環境の保全などの面で、農産物の供給の機能以外も多様な機能を果たしているものというふうに思っております。その安定的な継続を図るとともに、多様な機能の適切かつ十分な発揮を通じて良好な都市環境の形成に資する旨というのが明記をされているところでございます。
このように、都市農業の機能につきましては、既に先ほど言いました都市農業振興基本法において明記されていることから、食料・農業・農村基本法で重複して規定するということは考えておりません。
○金子(恵)委員 都市農業振興基本法、今大臣もおっしゃっていただきました、二〇一五年四月に制定されているわけですけれども、しっかりと機能について書かれているわけなんですよ。それと今回の基本法との間にやはり温度差があるのではないかなというふうに思って、そういう意味でも質問させていただきました。
本当に消費者の方々の理解をしっかりと醸成していくということであれば、もう少し、基本法の中でも、それを例示としてでいいですから書き込むべき、つけ加えるべきなのではないか、しっかりと明記すべきではなかったかなというふうに思っております。
ただ、今おっしゃっていただいたように、もうそのつもりはないということが明確に言われてしまうと、本当に国民的な議論をし、そして消費者の方々の理解を深めた基本法となり得るのかというところが心配されます。残念です。
次の質問に行かせていただきますけれども、国際水準GAPについて今度は質問させていただきたいというふうに思います。
まず、国際水準GAPの意義と、普及、推進状況についてお伺いしたいと思います。
○平形政府参考人 お答えいたします。
GAPは、農業生産の各工程の実施、記録、点検及び評価を行うことで、農業経営の改善につながるとともに、近年は輸出先国からGAPの取組を求める動きが広がりまして、輸出拡大にも有効な取組だというふうに考えています。
このため、従来、食品安全、環境保全、労働安全の三つの分野だったんですが、労働者への人権保護の配慮と農場経営管理の実践、これを加えました国際水準GAPの取組を普及することといたしまして、一つは、農業者が取り組むためのガイドラインの作成、二つ目、GAP指導員の育成による指導体制の構築、三つ目、実需者の購買行動につなげるための農業者とのマッチングなどを進めてきております。
これまでの結果なんですけれども、国際水準GAPでありますグローバルGAP、アジアGAP、JGAPの認証を取得した経営体数は約八千と五年前の一・六倍に、また、国際水準GAPを実践する経営体の数なんですが、令和四年度末で約三万四千経営体と、二年前の約二倍に増加をしております。
農林水産省としては、これまで、輸出に取り組むための国際水準GAPの認証の取得ですとか商談会への支援を行うとともに、令和六年度の当初予算で、新たに二〇二五大阪・関西万博向けの国際水準GAP認証取得への支援を開始するなど、国際水準GAPの更なる普及拡大を図ることといたしております。
○金子(恵)委員 ありがとうございます。
国際水準GAPが少しずつ動いてきていると。今回の基本法の改正では、輸出促進ということも言ってきています。全否定はしませんが、輸出促進よりも、まず国内の生産を増大させることが重要であるということはいつも申し上げさせていただいておりますけれども、しかし、輸出促進をするという上では、やはり、この国際水準GAPに基づいてしっかりとやっている、日本の農業は大丈夫だということを示していくことは重要かというふうに思っています。
その中で、今おっしゃっていただきまして、説明していただきましたけれども、やはり、人権保護については重要な観点だと思いまして、その取組の事例として、労働者への労働条件の提示と遵守、家族間の十分な話合いに基づく家族経営の実施、技能実習生等の受入れに係る環境整備というのが挙げられているということであります。
もちろん、家族経営の中で何が起こっているかというのはなかなか見えにくいものではありますけれども、人権侵害行為というものが絶対に起きないようにしなくてはいけないということで、これはとても重要なことだということを申し上げさせていただきたいと思います。
その上で、人権保護について、やはりしっかりと基本法の中にも盛り込むべきではないかな、基本理念の一つとしてしっかりと盛り込んでいくべきではないかなというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
○坂本国務大臣 農業経営の規模拡大が進む中、法人における雇用労働者や外国人材が増加していることを踏まえますと、人権に配慮した経営を更に進めていくことが重要であるということは認識をいたしております。
また、こうした取組につきましてGAP認証を取得することは、国内のみならず、海外への輸出や我が国農業の、農産物の評価向上に際しましても有効なものであるというふうに考えております。
国際水準GAPにおきましては、人権保護の取組といたしまして、労働者への労働条件の提示、契約に基づく労務管理、そして快適な職場環境の整備、さらには外国人材等の受入れに係る環境整備等が取組事項となっておりまして、このような取組を広げていくことは農業の持続的な発展を考える上で大変重要であるというふうに思います。
そういうことで、二〇二五年に開催されます大阪・関西万博や二〇二七年の横浜国際園芸博覧会におきまして、農産物の調達基準の一つにGAPの認証が位置づけられたことも契機に、引き続き、人権保護も含めた国際水準GAPの推進に取り組んでまいりたいというふうに思っております。
基本法の改正案では、新設いたしました二十七条第二項におきましては、特に、今後雇用の受皿として期待される農業法人について、人権配慮の観点も踏まえて、国は、雇用の確保に資する労働環境の整備その他必要な施策を講ずる旨を明記をしたところでございます。
○金子(恵)委員 私は、そうであれば、大きな国際的な流れもあるとしたら、やはり基本理念の一つにきちんと入れ込むべきではないかなというふうに思っております。
前回、このGAPの問題になったときに、オリパラのときに、GAP取得をされている農業者が提供する食をしっかりと使うのだというようなこと、農産物を使うのだということで進みました。そうしたら、今回は万博があるからというんですね。何かきっかけがないと進まないというのではよくない。ふだんからしっかりとこのことについて人権配慮をしていく農業の現場があるということを言っていかなくてはいけないです。
それと、農福連携をやるんですよね。そこで障害のある方々、そしてニーズのある方々のある意味雇用の場というのもつくっていく、そういう環境をつくっていくということであれば、この人権に配慮するということはとても重要であります。
また、反対に、輸入に関する件でありますけれども、新二十一条については、国と民間との連携による輸入の相手国の多様化という話があるんですが、ここの部分についても当然人権についての言及があってもしかるべきではないかなというふうに思います。フェアトレードへの取組等もあります。いかがでしょうか。最後になります。
○杉中政府参考人 お答えいたします。
議員御指摘のように、人権に関する国際的な意識が高まっておりますので、食料の持続的な供給を実現していくというためには、これまでも環境負荷低減ということは食品産業の中で規制されていたわけですけれども、それだけではなくて、輸入を含めた原材料の調達先の人権配慮といった社会的な持続可能性に配慮した事業活動というのが重要だというふうに考えております。
こういうことも踏まえまして、基本法の改正案第二十条において、人権配慮の観点も含めた形で、国は、食品産業の健全な発展を図るために、食料の持続的な供給に資する事業活動の促進、その他必要な施策を講ずる旨を明記して改正をさせていただいているところでございます。
○金子(恵)委員 時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。
○野中委員長 次に、神谷裕君。
○神谷委員 立憲民主党の神谷裕でございます。
本日も、お時間を頂戴しましたことを感謝を申し上げたいと思います。
それでは、早速、私から質問させていただきたいと思います。
今、農村現場を歩いておりますと、今回の基本法の改正に当たり、適正な価格、適正な価格の形成、大変に注目をされていると思います。これについて若干お伺いをしたいと思っております。
今回の基本法で言う合理的価格、合理的な価格の形成、あるいは合理的な価格ということが出ておったわけでございますけれども、これは、審議の途中、これまでの審議会の議論の中であった適正価格というものと果たして同じなのでしょうか、それとも違うのでしょうか。違うのであるとすれば何が違うのか、御説明をいただけたらと思います。いかがでしょうか。
○坂本国務大臣 適正価格という言葉は使っておりません。適正な価格形成、価格形成が適正であること、そして、価格につきましては、合理的な価格ということで使い分けをしております。
○神谷委員 とすると、これは同じ概念なんでしょうか。それとも概念として違うんでしょうか。
○坂本国務大臣 概念としてというか、価格形成におけるその適正さ、適正な価格の形成をしていくという意味での適正でございまして、合理的価格は、生産から加工、流通そして小売、消費者に至るまでの段階で、それぞれのやはり業界、業態が合理的な価格でもって納得をするというようなことで、概念という捉え方でいうならば、それは違うというふうに思います。
○神谷委員 今のお話を伺っていると、今、生産から流通、様々な過程を経て合理的な価格は形成をされるというか、合理的な価格は本来その生産からずっと形成されていった上でできるのだということなんだろうけれども、その上で最終的にでき上がった価格というのは、適正な価格なんでしょうか、そうしたら。違うんでしょうか。
○坂本国務大臣 条文化する際は、統一的な価格水準で決めるように見えますけれども、生産者そして食品事業者の取引関係者ごとにその水準が異なり、価格を一義的に、価格そのものは定められるものではありません。
そういうことで、現行基本法第二条第一項におきまして、先ほども言いましたけれども、国民の理解と納得が得られる価格という意味で、合理的な価格との用語を用いております。
そして、答申の趣旨でございます関係者全員が合意できる価格を指す用語は、合理的な価格を用いることが整合的であるということを踏まえ、法律用語としては、合理的な価格のその言葉、用語を用いているというようなものでございます。
○神谷委員 そうしますと、大臣、率直にお伺いしたいのは、現在の市場価格というのは、合理的というか、合理的な価格形成の結果、決まった価格なんでしょうか。
○坂本国務大臣 これまでは、生産、加工、流通そして小売、消費者、そういったものの食料システムとしての考え方をしておりませんでした。
ですから、今回の合理的な価格、あるいは価格形成を適正にしていくということで、このそれぞれの流通段階におけるシステムの皆さん方に話合いをしていただいて、納得でき得る価格を決めていくというようなことで、持続可能な農業を今後確立していくというふうにしたところであります。
○神谷委員 今お伺いしているのは、今の市場価格、これも需要と供給というか様々なことを勘案してできてくる価格だと思うんですが、これは合理的な価格の形成において結果としてできた価格ではないということなんでしょうか。いかがですか。
○杉中政府参考人 食農審、審議会においても価格形成については多くの時間を割いて議論をしましたけれども、審議会での現状認識としては、デフレ経済下で値段が上げられない、コストが上がっても値段というのは固定化されているという現状をかなり問題視するような発言が出ました。
その原因としては、やはり、食料システムの中でコストの在り方というのを、問題を共有するということが現状行われていないということが最大の問題であろうという問題の下、今回、合理的な価格に向けた価格形成をしっかり行っていくということの重要性について改正案を出させていただいたところでございます。
○神谷委員 審議官で結構なんですけれども、じゃ、今の市場価格というのは合理的なんですか、合理的じゃないんですか。
○杉中政府参考人 価格形成につきましては、食料システムの関係者がそのコストの構造等についての実態というのを共有することが十分行われていないということにつきましては、合理的な価格に向けた価格形成というのは十分機能していないのではないかというふうに認識しております。
○神谷委員 だとすると、今度のこの合理的な価格の形成というのは、価格の決定の仕方を変えていくということなんですか。審議官、いかがですか。
○宮浦政府参考人 お答えいたします。
今般議論になってございますのは、食料の持続的な供給を図っていくということに着目して議論をしているところでございます。
そのためには、生産から消費に至るまでの関係者がきちんと持続性を確保できるような価格形成を行っていく必要があるということで、合理的な価格形成というような概念が出てきているということでございます。
○神谷委員 その概念は十分認識をしておりますし、それは理解をしているんですけれども、じゃ、今の価格形成の在り方を抜本的に変えていくということで、この合理的な価格形成というものをなそうということなんでしょうか。その辺はいかがですか。
○宮浦政府参考人 お答えいたします。
抜本的というお話がございましたが、今回、持続的な供給が行われるようにするために、食料システムの関係者によって持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるような、そういう価格形成をしないといけないということでございます。
これまでも御答弁差し上げておりますとおり、需給事情、それから品質評価、こういったものによる価格形成ということが基本ではあるんですけれども、持続性に支障があるような場合、持続的な供給を担保するために、こういった合理的な費用を考慮するということをつけ加えたところでございます。
○神谷委員 どういうふうに変えるのかなというふうに、できることであれば、当然、再生産可能な価格を私もつくっていただきたいと思いますし、できれば、農業者にとって見通しが利くものとしていただきたいと思います。
ただ、現在の市場価格を変えていくというのは大変なことだろうと思いますし、その中で合理的な価格の形成を言っていただいておりますけれども、これがどういうふうに決まっていくのかなという率直な関心事項でございまして、伺った次第です。ただ、いかんせん、今のお話だと、私自身、余り納得もいかない話でございます。
こればっかりやっているわけにいかないので、次に進まさせていただきたいと思います。
合理的な価格形成、これによって、やはり一番の関心事は、農業者にとって再生産可能な価格となるかどうか、ここだと思うんです。合理的な価格形成によって、農業者にとっての再生産可能な価格となるのかどうか、ここについて確認をさせてください。いかがでしょうか。
○坂本国務大臣 基本法の改正案におきましては、農業者も含めた、生産から消費までの各段階の関係者が合意できる価格として、先ほどから答弁しております、合理的な価格と規定して、この価格の形成につきましては、食料の持続的な供給が行われるよう、その持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるようにしなければならない旨を規定したところでございます。
この考慮されるべき持続的な供給に要する合理的な費用というのは、生産から消費に至る各段階の費用を対象としているため、農業だけに特化したものではありませんが、農業者がその生産活動に要する合理的な費用なども含まれ、これらの費用が考慮されることによりまして持続的な食料供給が確保されることを目指したいというふうに考えております。
その際、合理的な価格は、あくまで食料システムの各段階の交渉によって決定されるものであるため、生産者が支払った費用がそのまま単純に価格に転嫁されるものではないということについては御留意いただきたいというふうに思います。
○神谷委員 今のお話ですと、次の質問に絡むところなんですけれども、今お話にあったように、あえて、法文上というか、有機的な連携みたいなことで書かれております。有機的な連携によれば、合理的な価格が形成されるというようなことだったというふうに承知をしているわけですが、今のは、大臣の答弁は多分それに近い概念だろうと思うんですけれども。
果たして、この有機的な連携によることであれば、合理的な価格が形成され得るんでしょうか。そしてまた、先ほど申し上げたように、農業者にとってのいわば合理的な価格が形成されるんでしょうか。ここはいかがでございましょうか。
○杉中政府参考人 委員の問題意識にもあると思いますけれども、生産、流通、小売、消費の各段階にとって望ましい価格というのは異なるというのは当然のことでございます。一方で、先ほどから申し上げているように、持続的な食料供給ということを考えれば、長期的にいろいろなコストが上がっているというものが適正に価格に反映されていくということが必要だというふうに考えております。
このためには、先ほどから述べておりますように、フードチェーンの各段階の関係者が、食料供給に要するコストなど食料に関する様々な課題について共通の理解を醸成して、一体的に問題の解決を図っていくということが必要だというふうに考えております。
このため、第二条第五項におきまして、生産から消費までの関係者による全体としての取組ということを、有機的な連携というふうに規定をしたものでございます。この有機的な連携に基づく食料システムの構築というのが持続的な食料供給にとって重要と考えております。
その上で、第二十三条におきまして、有機的な連携によって合理的な価格の形成を図るための関係者の取組として、食料の持続的な供給の必要性に対する理解の増進、合理的な費用の明確化の促進などを位置づけさせていただいたところでございます。
○神谷委員 おっしゃられるとおり、有機的な連携というのは分からなくはないんです。有機的な連携というのは、生産であれ小売であれ、要は、その各部分において最適な形になれば自動的に全て最適化する、そういう概念だと私は理解しております。ですので、それぞれが最適な形を取れば最終的にはいい形になるだろうということなんだとは思うんです。
ただ、もう一方でいいますと、実は、生産から流通、小売に行く間に、双方にとっては実は利益は相反関係にある部分もあるんじゃないかなと思っていて、そういう意味でいうと、有機的な連携が果たして取り得るのかどうか。あるいは、情報量の格差もある、力関係の格差もある。横串を刺す、これは本当に大事なことだと思うんですけれども、ただ、これで単純になり得るのかという、やはりここは非常に疑問だと思っています。
そういった意味で、先般登壇させていただいたときにもそうだったんですけれども、総理からも、法案を出すよみたいなことを言っていただいたと思います。だからこそ法案が必要なんだろうというふうに思うわけでございますが、だとするならば、この法案をしっかり出していただかなきゃいけないんだろうと思うんですけれども、ただ、この法案を出していただいて施策を打ったとするならば、果たして本当に合理的な価格が実現するのかどうか。あるいは、私が目指しているところの、農業者にとっての適正な価格が実現をするのかどうか。
やはり、法案を出す以上、そこまで目指していただかなきゃいけないと思うんですけれども、ここについてはいかがでしょうか。
○坂本国務大臣 昨年の八月からやっております協議会、生産から消費に至るまでの幅広い関係者による話合い、この食料システム全体の持続性の確保を目的として、それぞれ関係者が協調して、そしてこれまで論議を行ってまいりました。
先週五日金曜日の第四回協議会では、関係者による納得が得られる合理的な費用が考慮される仕組みづくりにつきまして、共通認識が得られたところであります。ですから、基本法とは別に、法制化も視野に検討するとともに、持続可能な食料システムの実現に向けて引き続き取り組んでまいりますし、この協議会でも引き続きそれぞれの立場で協議をしていただきたいというふうに思っております。
○神谷委員 適正価格を追求していただくということは、私もできればやっていただきたいと本当に思っています。その上で、できれば農業経営にとっては再生産可能な価格になることを本当に望んでおります。ただ、それが果たして消費者の方に受け入れられるのかどうか、ここもあると思っていて。そういう意味では、各段階の皆さん方が、いわば横串というのか、情報の共有ができたとして、最終的にそれが再生産可能な価格なのか、あるいは消費者にとって受け入れられる価格なのかどうか、ここもやはり大いに疑問というか。
今のところ、先ほどからお話を聞いていると、私自身いまだに納得できないところがあるので、これは、やがて法案も出てくるというようなことなんだろうというふうに思いますが、その際にまた議論をしなければいけないなというふうに思ったところですが、今回、こういう形で打ち出されて、農業者の方も大変に期待をされている概念でございますので、もう少し説明できるように、できることであればお願いをしたい、このように思います。
次の質問に移らせていただきます。種子について伺いたいと思います。
種子について、今回の基本法ではどんな書きぶりになっているでしょうか。いかがでしょう。
○杉中政府参考人 お答えいたします。
種子、種苗は、肥料、飼料などと並んで農業生産に欠かせない大切な農業資材という側面がございます。このため、基本法の改正案第四十二条におきまして、種子も含む農業資材の安定的な供給の確保を位置づけたところでございます。
また、種子、種苗は、農業の成長の源でもございます。このため、三十条におきまして、新品種の育成による生産性の向上、三十一条におきまして、高い品質を持つ品種によるブランド化や新品種に係る知的財産の保護による付加価値の向上などについて規定をさせていただいているところでございます。
○神谷委員 基本法においてそういう書きぶりになっているということは私も承知をしております。
その上で、本当に、種子、種というのはただの資材ではないと私自身は思っています。というよりは、むしろ、種子というかゲノムというのか、これは本当にいわばこの国の、国民共有の財産じゃないかと思っておりまして、多様な種子の存在、いろいろなゲノムの存在が、いわば可能性でありますし、本当に重要なものだと思います。
だとするならば、資材という範疇を超えてもっと考えていかなきゃいけないと思うんですけれども、大臣の所感を伺いたいと思います。
○坂本国務大臣 種子は、肥料それから飼料などと並んで農業生産に欠かせない私は大切な資材の一つであるというふうに考えております。農業資材の一つである。また、種子は、生産者、消費者、それから実需者のニーズに即した優れた品種を開発するためにも重要でありまして、種子に勝る技術はなしというような言葉があります。
ですから、種子は、非常に重要視しながら、次世代に引き継ぐべき貴重な遺伝資源として今後もしっかりと考えてまいりたいというふうに思っております。
○神谷委員 大臣がおっしゃるとおりだと思うんです。本当にこれは大事な話だと思っておりますので、種子の扱いについて、かつて農業競争力強化法なんという話もありましたけれども、そういう範疇にとどまらず、国としても、育苗もそうでしょうし、育種もそうでしょうし、保全管理、あるいは収集、そういったことも是非心を砕いていただきたいと思いますし、それをもって農業者のために頑張っていただきたいと思います。
時間が参りましたので、本日の質疑はここまでとさせていただきます。ありがとうございました。
○野中委員長 次に、池畑浩太朗君。
○池畑委員 日本維新の会、池畑浩太朗でございます。教育無償化を実現する会との共同会派であります。
今回も食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案に関して質問させていただきたいと思います。
質問に入る前に、公人の発言とはいえ言葉尻を捉えて意見を言うことは今までありませんでしたけれども、さきの報道にて、静岡県知事の発言に対してです。県庁はシンクタンク、野菜を売ったり牛の世話をしたり物を作ったりとかとは違って、皆様方は頭脳、知性の高い方と述べておられました。あした、あさってに辞表は提出されるような報道もありますけれども、一部報道では、坂本大臣からは、憤りを禁じ得ないというふうな発言もされておられました。
第一次産業を所管するこの農林水産委員会でも、静岡県知事の発言に対して、大臣の今の現在の考えについて、発言をお願いしたいと思います。
○坂本国務大臣 第一次産業を所管する大臣といたしまして、やはり静岡県知事の発言は看過できないというようなことで、次のようなことを記者会見を通して述べさせていただきました。
国民の食ばかりでなく地域の経済やコミュニティーを支える農業者の皆様にとって残念なものであり、農村地域に生まれ育ち、これまで農業の現場における創意工夫を見てきた一人の政治家として、憤りを禁じ得ないというようなことを言いました。
私自身は、行政は、現場と価値観や将来構想を共有した上でこれからの日本の農林水産業をつくり上げていくものであるというふうに考えており、引き続き、現場の声をしっかりと伺いながら、現場の皆様とともに、農業が直面する課題に一つ一つ取り組んでまいりたいというふうに発言をいたしまして、その思いに今も変わりはありません。
○池畑委員 大臣、そのとおりだというふうに思っております。
我々も、野菜を売ったり牛の世話をしておられる方を一生懸命これからも応援していきたいというふうに思いますので、大臣もその思いでい続けていただきたいというふうに思います。
次に、金子委員からもありましたけれども、農林水産省の予算の件であります。
経営の合理化計画の話もありました。大臣からも答弁もありましたので、少し、簡単に質問させていただきたいというふうに思いますけれども、当初予算で二兆二千億である一方、経済産業省は、ガソリンの補助金だけでも五兆円を超えている。ラピダス、これは大事なことなんですが、補助金だけでも数千億投入をされております。
ただ単に予算の獲得を声高に言っても簡単には実現しない、金子委員の答弁にもありました。頑張りますというお話もありました。その中に、やはり当初予算にはシーリング、いわゆる要求額に上限があるためであります。現状、ある意味、シーリングのない補正予算も併せて頑張りますという大臣の答弁もありましたけれども、この補正予算でも、例えばこれまでの実績、TPP対策とか、対外対策だとPRできるような柱立てが必要だと。これも先ほど大臣もお話でありました。
具体的に熊本県の廃校の具体例なんかも出されておられましたけれども、どのようなチームで具体的に戦略を組んでこれから予算を獲得するんだと臨んでおられるか、大臣の考え方をお伺いしたいと思います。
○坂本国務大臣 この食料・農業・農村基本法の改正案を成立させていただいた暁には、政府として、これに基づきまして食料・農業・農村基本計画を策定し、その中で、基本法に定めます施策の具体化を行うことになります。
このため、令和七年度予算につきましても、この新たな基本計画に定める施策の柱立てを基に要求を行ってまいります。
タイムスケジュールでいいますと、夏に概算要求をいたします。そして、十二月に概算決定になるわけですけれども、基本計画を並行しながら、その柱立ての中で予算を獲得をしてまいりたいと思っております。
重要なことは、やはり食料安全保障の強化を始めとして、農林水産行政の課題に対応しなければならないということであります。そして、その原動力が予算であるということであります。
今後とも、当初予算はもとより、補正予算も含めて、あらゆる機会を捉えて、必要な予算の確保に努めてまいります。
○池畑委員 予算の減少とともに自給率が下がっていく、また、打たなきゃいけない政策を打てないという状況はよくないというふうに思いますので、今の大臣の答弁にもありましたように、具体的に活動、そしてチームとして戦略を練って、予算の獲得に向かって努力をしていただきたいと思います。
次の質問に移らせていただきます。
有機農業について、今までこの議論の中で質問させていただいたことはありませんが、現状〇・六%から、二五%に拡大する目標が掲げられております。
その中で、今回の基本法の法文上に明記をされないということは、農業の現場、地元を歩いておりますと、そういった声をよく聞かせていただきます。この法案質疑でも多くの質問がなされてまいりましたけれども、私も、基本法に有機農業が明記されない理由に関するほかの委員への答弁をお聞きしておりまして、有機農業を進めていく決意とか目標を達成する思いというようなものがなかなか感じられないなというふうに思っております。
一方、先日の参考人の質疑において、参考人の西村いつきさんから有機農業の具体的な話があったとおり、今の基本法でも、農業の現場では有機農業は進んでおります。兵庫県でも、千ヘクタールを達成するためにどのようなプログラムを組んで、誰がどのように行動するか、先ほどの予算の話ではありませんが、戦略的にチームで取り組んでいくといったことを達成しておりました。
そういうことも含めて、この新三十二条の環境に配慮した農業というところに含んでいるんだという説明を受けさせていただきましたけれども、有機農業を進めるためには、あとは自治体の支援をどういうふうにしていくかということが大事だと思います。地元の上郡町というところでもオーガニックビレッジに参加して有機農業を進めるための施策をいろいろと進めておられるというふうに思いますが、基本法に明記をされないという理由と、これから日程的にもその有機農業をどのように押し上げていくんだということを具体的に決意を含めて答弁いただきたいと思います。
○平形政府参考人 お答えいたします。
基本法の改正案でございますけれども、まず、基本理念において、環境と調和の取れた食料システムの確立、第三条なんですが、これについては新設をしております。また、基本的施策なんですけれども、委員御紹介のございました第三十二条、これも新設でございまして、環境への負荷の低減を図るため、農薬及び肥料の適正な使用の確保、環境への負荷の低減に資する技術を活用した生産方式の導入の促進を進めていくと規定をしておりまして、このような新設の規定を作りながらやっているんですけれども、その中に有機農業はもう当然含まれる、そういうふうに考えておりまして、このように規定の整備もしたところでございます。
一方で、有機農業でございますが、生物の多様性の保全など、環境負荷の低減に資する取組であるとともに、有機農産物を活用したブランド化によります国内外の消費者の評価の向上、つまり、産地化だとか差別化に有効に使っていただくための非常に有効なツールだというふうに考えております。
このため、みどりの食料システム戦略において、意欲的な目標、委員御紹介ございましたけれども、二五%、二〇五〇年という目標を掲げておりますが、それに向かって二〇三〇年までに六万三千ヘクタールまで伸ばす。そのためにも、現在ある技術で地域ぐるみで有機農業に取り組む先進的な取組産地、オーガニックビレッジ、兵庫県は日本の中で最も多くのところが手を挙げていただいておりますけれども、こういった創出による面的な拡大、これをまず進めていくことを今進めております。
こうした取組によりまして、みどりの食料システム戦略策定後、取組面積の増加は、これは確実に増加はしておるんですけれども、これを加速化するために、技術面では、地域ごとに有機農業の栽培体系の確立ですとか品種、機械の開発、それから、指導面では、指導人材の育成や指導体制の強化、需要面では、消費者等に対する理解の醸成、販売ルートの拡大、多様化など、多くの課題、これを解決していく必要があると思っております。
有機農業は、温暖湿潤な我が国の生産現場においてはなかなか難しい農業でありまして、非常に意欲的な取組でもありますけれども、多くの農業者が経営の選択肢の一つとして有機農業に取り組むことができる環境を整えてまいりたいというふうに考えております。
〔委員長退席、伊東(良)委員長代理着席〕
○池畑委員 今局長からも答弁いただきました。
やはり環境を整えていくというのはすごく重要なことだと思うんですが、計画的に、成功例、そして今、兵庫県のこともちょっと褒めていただきましたけれども、褒めていただいたというか、多いねという話だったんですが、そういう思いで兵庫県も取り組んでまいりますし、国としてもいろいろ全国的に展開をしていこうということだというふうに思います。
次の質問に関連するんですが、有機農業を進めていく上で、農林水産省が掲げられた目標、先ほど答弁をいただきました内容を含めて、言わずもがななのは、教える方の存在がすごく大事だと。今も答弁がありました、オーガニックの指導者を五百人を目標としているということを以前お聞かせをいただきまして、目標を上回っているということでありましたので、何よりであります。
そこで、今回は農業高校の指導者にちょっと絞ってまいりますが、農業高校の教員は日々実践的な農業教育をされておられます。競走馬を何十頭も飼っていたりとか、養蜂をやったりとか、かなり幅が広い農業高校なのでありますけれども、農業実習を指導する教員にも、様々呼び名といいますか、役割がいろいろありまして、作業員だとか、実習教員だとか、実習助手だとか、主任実習教員とか、主任実習教諭とか、いろいろ呼称も、もう全国、県によって様々なんですけれども、当然、民間の塾でも、水産科でも工業科でもそうなんですけれども、座学で教えるのが得意な先生方と実習が得意だという先生もおられます。実習の先生は、何年か勤めていくと農作業の腕が上がっていったり、いろいろな意味で成長していくんですけれども、せっかく上手になったとしても、なかなか採用の枠がいっぱいで採用されずに、長年勤務していても試験に合格しない、任期満了になってしまってやめてしまうという。
人材を確保している上で、試験を受けることによって人材の整理をしているんだというふうに思うんですが、こういった現状も、各県の農業高校、いろいろな科ではあるというふうに思いますけれども、専攻科の中で採用人数を文科省としてはどれぐらい把握をしているのかということと、兵庫県の県立農業大学校でも、全国に先駆けて有機農業の専攻科が、カリキュラムが組まれますけれども、これから、有機農業のプロセスとして、高校でも、我が県でも教えたいということが県から国へ上がってきましたら、窓口は十分あるというふうに思うんですが、文科省として、今の二つの問題点についてどのようにお考えか、答弁をいただきたいと思います。
○梶山政府参考人 お答え申し上げます。
農業高校と公立学校の教職員の任用や退職、任期については、各設置者の判断に基づき、法令に基づき実施されているところでございます。
そのような中で、農業高校を含めた専門高校における教師の確保、それから研修機会の充実などにつきましては、専門教育の充実に大変重要であるというふうに考えているところでございます。
教師の確保についてでございますが、各教育委員会における教員選考において、例えば特別免許状も活用しつつ、農業分野に実績のある者を採用するための特別選考を実施するなど、事例もあるところでございます。
また、教師の研修につきまして、先ほどおっしゃっていただきましたが、産業教育の実習の助手の方々、こちらの方々の向上など、こういうところに関して実施しているところでございます。
有機農業に関しましては、私どもといたしましても、生産環境の改善に向けた環境負荷の軽減が課題となっているというふうに承知をしておりまして、農業高校において、有機農業も含めた環境保全型農業の教育を推進することは重要というふうに考えております。私どもとしまして、先ほども御紹介しました様々な施策等を通じまして、有機農業を含めた環境保全型農業の教育の推進に努めてまいりたいと考えております。
ただ、先ほど申し上げましたように、数でございますが、その把握につきましては、各設置者で行うところでございますので、私どもとしては現状で把握しておりません。
以上でございます。
○池畑委員 今答弁をいただきましたとおり、やはり、先生という、指導員という立場で育っていっても、なかなか採用されないということは現状あるわけであります。
今お話もいただきましたけれども、農業大学校というのは農林水産省の管轄でありますけれども、そういう職業高校、今日は農業高校に絞っておりますけれども、そういったところで有機の科をつくっていく。いろいろな生徒を集めるために、オーガニック科とか、いろいろ片仮名でつくったり、総合学科が増えてしまって、単独の農業高校というのは余りありませんけれども。
そういったことも踏まえながら、数を把握せよというふうには言いませんけれども、現状、どういうところで、どういう活動をしていて、どういう先生方がおられるのかというのは、県の設置者の方からやはり数を上げてもらって把握をしていくということも大事だというふうに思いますので、是非管理をしていただきながら、県の方にもハッパをかけていただく。そういった努力も必要なんじゃないかというのを、アンケート等でも文科省が取っていくということは、農業高校に対して大事なことだというふうに思いますので、是非実施をしていただきたいと思います。
最後の質問になります。最後に農村政策について質問します。
これも先ほどから質問もありましたけれども、農村の真の活性化のためには、農業関連産業のみならず、他産業を含めて、農村を総合的に振興すべきということは三月二十六日の本会議でも私も質問させていただきました。
人口減少が続く中、特に農村は人も少なくなってしまっています。先ほど小山委員の方からもありましたけれども、雇用をつくる産業もどんどん同じく減っていってしまっています。仕事もなく、生活基盤が弱い地域で、農業をやってくれとお願いしても、なかなかそれはできないと。私も地元を回っていて、そういう思いでありますが、外部の人を積極的に呼び込む、他産業も含めて農村の振興が図られれば、農業をされる方、農地を維持する方も出てくるだろうというふうに私たちは思っております。
本会議でしたので時間も限られていたというふうに思いますが、他産業も含めた農村の振興について、本会議での答弁を深掘りしながら答えていただければありがたいというふうに思います。
○舞立大臣政務官 先生御指摘のとおり、人口減少、高齢化が急激に進行しております農村地域におきましては、地域コミュニティーを維持するために、所得なり雇用の機会の確保や農村への訪問者、関係人口の増加に資する産業を振興し、多様な人材を呼び込むことが重要と考えております。
このため、農村地域の仕事づくりの推進に向けまして、農業と食品産業等の連携によります六次産業化や、宿泊業や飲食業と連携し、農村に宿泊して地域の地元の地場産の食や郷土料理等を味わってもらう農泊など、農山漁村発イノベーションの推進を図っているところでございます。
これらに加えまして、都道府県内を中心として、これまで農業、農村に関する仕事に携わっていなかった民間事業者等と農業、農村活性化に関わる関係者とのマッチングの機会を創出し、地域の課題解決につなげる官民共創の仕組みをつくっていくことにより、課題解決に協力可能な企業の農村への呼び込みを進めてまいりたいと考えております。
こうした取組を通じまして、農山漁村におけます雇用と所得の機会の確保とともに、関係人口の拡大等、しっかりと図ってまいりたいと考えております。
〔伊東(良)委員長代理退席、委員長着席〕
○池畑委員 政務官、ありがとうございました。しっかりと取り組んでいくという言葉をいただきました。
新四十三条の農村活性化は、人口減少に悩んでおられます地域の活性化に直結する重要な問題であるというふうに私たちも思っております。ここでもう一息強い農村をつくるための条文になっていければというふうに我々も考えておりますので、日本維新の会としても、教育無償化を実現する会と共同会派でありますけれども、この新四十三条に少しこだわって、食育また農村についてよりよい法律になるよう、我々も引き続き知恵を絞ってまいりたいというふうに思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。
時間が参りましたので、私の質問は終わらせていただきます。
○野中委員長 次に、山本剛正君。
○山本(剛)委員 日本維新の会の山本剛正でございます。
今日はちょっと出張をしまして、農林水産委員会で実は二度目の質疑ですが、ちょっと席を見てみると随分空席が多くて、さっき、もしかしたら定足が満ちていなかったんじゃないのかなというふうに思いますが、せっかくの二十五年ぶりのこの法律の改正ということで、皆さん、農業は大事だ大事だと言っているのに、委員会がこの状況でいいのかというのはちょっと私は思いましたので、ちょっと一言言わせていただきたいというふうに思います。
私、福岡でございまして、サラリーマン時代は、坂本大臣の地元であります阿蘇にもお客さんがおりまして、よく阿蘇の道を走っておりました。道を行くと、坂本先生の、大臣のポスターがいっぱい貼ってあって、眠気も覚めるというようなことでございましたけれども、阿蘇の雄大な自然を見ると、やはり日本の原風景というのは本当にすばらしいものだなという思いをしながら、いつも一の宮の彦しゃん食堂で私は焼き肉を食べておりましたので、是非、今度いつか坂本大臣と御一緒できる日が来たらいいなというふうに思っております。
私も、党のタスクフォース、この改正のタスクフォースのメンバーに入れさせていただきまして、様々な議論を党内で進めてまいりました。私が一番懸念をしたのは、実は、先日、有志の会の福島先生が合理的な価格について結構議論をされておりました。私も全く同じことを党内で言っていたんですが、なかなか理解をされない部分でもあるのかなと。
私、法案が出ると必ず読み込むんですけれども、一言感想を言うと、ニュアンスで分かってよというような表現がすごく多いんですね。やはり言語はすごく大事で、単語の打ち出し方というのは私はすごく法律の中で大事だと思うんです。
おっしゃっていることはよく分かるんです。大臣の答弁もいろいろ聞きました。議事録でも見ました。ビデオでも実は見て、坂本大臣の答弁、やはりすばらしいんですね。これは別にお世辞を言うわけではなくて、きちっと例えば答弁書を見ておられるときもありますけれども、御自身の言葉で答えている部分も非常にあられて、農業に対する強い思いというのを感じます。
私は本当に、皆様方のを全部ではないんですけれども見させていただいて、ただ、ただ一つ、ニュアンスで、皆さんもう分かっているから、そこを飛ばしてしまっている。
例えば、合理的という言葉は何ですかと。理にかなっているというふうに言ったら、例えば価格であったら、福島議員は、費用と価格は違うというふうに言っておられましたけれども、費用は確かに、費用の価格というのはいわゆる利益とかかった経費とかの積み上げでくるもので、引き算みたいなものですね、価格を上回ることは絶対になくて、様々なかかった経費が反映されるわけでございます。一方で、価格というのは、レントの話もありましたけれども、様々な利益に様々な付加価値みたいなものがついて、簡単に言うと、天井がないものになりかねないというところが私は価格だというふうに思います。
そうすると、合理的な価格という言葉は非常にあやふやで、私は法律の文章にはなじまないと思うんですね。これは、揚げ足を取って、いや、これだって合理的な価格でしょう、合理的な価格でしょうと言われたら、やはりそれは合理的な価格になってしまうんです。
まず、ちょっとお尋ねをしたいんですけれども、合理的な費用というものの概念は何ですか。ちょっと教えていただきたいと思います。
○杉中政府参考人 お答えいたします。
農業生産、食品製造、流通、小売、全ての段階で、長期的に資材費や人件費などが増加している中で、持続的な食料供給というのを可能とするためには、こういった費用というのが価格形成において考慮されていく必要があります。
こういった価格形成を実現するためには、生産から加工、流通、小売に至る食料システムの関係者の間で、こういった費用の実態について最終的に納得が得られるという必要があることから、こういった関係者が合意に至って納得するということについて、合理的な費用として規定をさせていただいております。
合理的な費用として、食料システムにおいて考慮されるべきものとして、具体的には、先ほど述べました資材費や人件費が長期的に上昇する中における恒常的なコスト増、また、環境負荷低減を図るための取組に係るコスト増などが想定をされるところです。
○山本(剛)委員 大臣の答弁とかでもありました。納得がいく価格形成の在り方について、大臣はこのように述べられています。私が言いたいのは、食料システムの中で、消費者も生産者も含めて、そこで全てにわたって合意を得られる努力が必要である、合意形成を図っていく努力を私たちはしなければならないということであります。これを聞くと、そのとおり、おっしゃるとおりなんです。しかも大臣は、答弁書を見ていないで、御自身のお言葉で語られています。確かにそのとおりなんですが、ここに消費者の視点といいますか、商売の根本的な視点が私は足りないというふうに思っております。
私は商社マンだったんですけれども、基本的に、実は商取引というものは、ウィン・ウィンとかよく言いますけれども、ウィン・ウィンというのはあり得ないんですよ。利害関係は基本的に一致することはないということが実は前提になければならないんです。
その先、そこから交渉を始めて、要は、お互いに折り合いをつけるというのは確かに合意でありますけれども、一方で、合意であって、妥協でもあるわけですね。そこで妥協、そこで妥結をした、決定をしたものがあったとしても、実は商取引というのはその先があります。
例えば、この価格で今回は決めるけれども、三か月後には改定しますよというのが織り込まれていたり、若しくは、少し高い値段で買いますけれども、要は、いわゆる在庫が逼迫したときでもちゃんと商品の供給は保証してくださいよ、その代わり高い値段で買いますというような取引形態もある。若しくは、安い値段で買うけれども、スポット的に買うもので、要は、継続的には買わないから、ただ、ここで一発これだけが欲しいから、この価格で欲しいというものもある。様々な取引の中で、合意というものは、一点に対する合意ではなくて、面での合意というものが商取引では非常に重要になります。
残念ながら、今回の合理的な価格というものの、この切取りでは、やはり点でしかないんですね。
例えば、消費者の方がそれなりの値段で、それなりの値段というか、自分が買い求められる値段で買える、だけれども、どんどんどんどん例えば付加価値がついたりいろいろなものがついたりして値段が高くなったら、やはり安心して買える価格ではなくなるわけであります。だけれども、売手からすると、いや、これは合理的な価格ですよ、これだけ費用がかかっているんですから、これだけいろいろなものがあるわけで、いろいろな外的要因があるから高くなってしまうんですよということは、やはり言えてしまうわけであります。
言葉というのはすごくやはり大事で、合理的な価格というような言い方ではなくて、本当に私は修正した方がいいと。福島議員もおっしゃっていましたけれども。ただ、適正な、福島議員は適正な価格とおっしゃっていたんですね、適正というのはやはりこれまた概念がなかなか難しくて、私も党内では適正な価格が一番近いなというような話をしたんですが、適正と言ってしまうと何をもって適正なのかということを言われてしまうので、ここはやはり皆さん方と一緒になって、与党とか野党とかもう関係なく、知恵を出していって、国民の皆さんが、それは生産者から消費者に至るまで、まさに納得のいく価格というものはどういう表現をすれば納得できるものになるのかというのは、私は知恵を出していただきたいと思うんです。合理的な価格というのは、本当に言葉はよくないです。
じゃ、聞きますけれども、合理的な価格とは一体本当に何ですかということなんですね。ちょっとこれをお答えいただきたいと思います。
○坂本国務大臣 まず、私たちの役割としては、国民の皆様方に安定的な食料供給をして、そしてそれを手元までお届けするというのが、農林水産省のまず大使命であります。そして、そのことが持続的に行われなければいけない、持続的な食料供給でなければならないというようなことであります。
そして、その持続的な食料供給を行っていくためには、食料システムの中で、生産、加工、流通、小売、消費の中で、それぞれの関係者によって納得の得られる価格で合意されたものが必要であり、これを合理的な価格ということで表現をしたものであります。
なお、この表現は、現行の基本法の第二条第一項においても、国民の理解と納得が得られる価格という意味で、合理的な価格との用語が用いられております。
ですから、これらを踏まえまして、合理的な価格というふうに規定をいたしました。
○山本(剛)委員 いや、それは二条一項にもありますし、ちゃんと合理的な価格とは何かというのは法の中に書いてあるんですけれども、そもそものその合理的なという言葉が私はよくないと言っているわけです。大臣のおっしゃられていることは、もう私も痛いほどよく分かります。痛いほどよく分かるけれども、合理的なという言葉を追求したときには、残念ながらそういうふうにならない。
例えば、十九条の中には、食料の円滑な入手の確保の項目があります。ここには、価格のことは全く触れられていません。だけれども、読みますと、国は、地方公共団体、食品産業の事業者その他の関係者と連携し、地理的な制約、経済的な状況その他要因にかかわらず食料の円滑な入手が可能となるよう、食料の輸送手段の確保の促進、そこからつらつらつらとあるんですが、経済的な状況その他の要因という、またそれというのは何ですかみたいなのが出てくるんですけれども、これと合理的な価格の整合性というのは、私、いまいち読み取ることが残念ながらできません。これは私の理解力がないのか、それとも、法文、条文の作り方が問題があるのかというのは、私は非常に議論をしなければならないんだろうなというふうに思っています。
是非、皆さん、別にこの方向性とか、そのもの自体が私は悪いと言っているわけではございません。合理的な価格という言葉も、ニュアンスではよく分かります。だけれども、これを進めていったときに、法律として運用していったときに、いや、合理的な価格だからいいでしょう、合理的な価格だからいいでしょうということが我々の思いと違うところで進んでいってしまっては、残念ながら法律のその意図というものはやはりゆがめられてしまうと私は思っています。
ですから、これからどういう議論になっていくのか、私は本当に、ここに途中からやってきて、おまえは何を言っているんだと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、是非これは与野党問わず議論をしていただきたいなというふうに思っております。
第二条の第四項の、食料供給能力の維持という言葉があります。食料供給能力の維持をしなければならないその維持の数量というのは、どの時期の供給量に対しての維持なのか。これもちょっと中途半端な表現なんですね。言っている意味は分かるんですよ。多分、国民が食べていけて、かつ、もう少し余力を持って生産して海外に売っていこうという話ですから、ニュアンスでは分かるけれども、余りにもやはり抽象的過ぎる。
じゃ、どの時期の供給量に対しての維持なのかをちょっとお答えいただきたいと思います。
○杉中政府参考人 お答えいたします。
第二条第四項の趣旨でございますけれども、現在、人口減少によって国内市場が縮小していく。国内需要の減少に合わせまして食料生産が縮小すると、農業の生産基盤や食品産業の事業基盤の縮小ということにつながっていきます。国の役割としては、将来にわたって国民に対して食料の安定的な供給というのを確保することが重要でございますけれども、その懸念があることから、食料供給能力を維持するための生産基盤を維持するということの必要性を規定したものでございまして、特定の時点ということではなくて、将来にわたって食料供給能力を維持するということの必要性を規定したものでございます。
そのための手法といたしましては、委員御指摘のとおり、食料の安定供給に当たって、海外への輸出を通じて生産規模を維持することによって、食料供給能力を維持することが必要であるというふうに考えています。
○山本(剛)委員 ありがとうございます。
今の答弁を聞きますと、でしょうね、そうですよねとなるんですよ。だったらそういうふうに書けばいいのになと思うんですけれども、こういう抽象的な表現になってしまっているというのが、やはり私はこれがニュアンス、ニュアンスでは分かるんですよ、ということを言っているわけであります。
ですから、ここで議事録に残すことが私はいいことだと思っているので、あえてこういうふうにおっしゃっていただきました。おまえ、ジャガイモみたいな顔をして何を言っているんだと思われるかもしれませんけれども。やはり具体性を持つということは非常に私は大事だと思いますし、議事録に残して、いや、ちゃんと農水省としてはこういうふうに答弁しているんですよというのを残すことが私は大事かなというふうに思っています。
続きまして、第三条の環境の負荷についてなんですけれども、これも、例えば、環境負荷を考えていろいろなことを対策をしなければならないとなったら、これは費用になりますよね。それは当然、商品に反映されるんですよ。
環境と言っておかなきゃいけないのは、今の時代、よく分かります。だけれども、ここに本当に費用という概念があるのかどうなのかというのも分からないですし、とにかく環境の低減を図れ図れといって、それでとんでもない費用がかかってしまった場合には、商品代にそれが反映したときに本当にそれが適正なものなのか、合理的なものなのかというのはいかがでございましょうか。
○杉中政府参考人 お答えいたします。
まず、環境の負荷低減についてでございますけれども、農業、食品産業には、例えば、稲作や畜産によるメタンの発生、食品製造過程におけるCO2の発生などの地球温暖化への影響、あと、化学農薬等の不適切な使用を通じた生物多様性への影響など、環境へのマイナスの影響を与えるおそれがある中で、これらの負荷の低減、すなわち、温室効果ガスの排出抑制や、化学農薬、化学肥料の使用低減などの取組を目指します。
また、こういった環境負荷低減を図る食料供給を行うためには、委員おっしゃるように、追加的なコストがかかります。しかし、環境と調和の取れた食料供給を行うためには、これらのコストも価格に考慮される必要があると考えています。
これらのコストにつきまして、食料システムの各段階の関係者により納得の得られる費用として合意された上で形成される価格が合理的な価格だと考えます。
また、議員、先ほどの質問にも若干答えますと、おっしゃるように、生産から加工、流通、小売に至るまで様々なコスト要因がありますけれども、これを全て積み上げれば食料の価格というのは大幅に上昇するおそれがあって、このような価格は、現実の消費者の購買能力を考えれば、消費者や、消費者に直接販売する小売業者にとっては受け入れられない場合があるというのも御指摘のとおりだというふうに考えております。
このため、持続的な食料供給を確保するためには、生産から販売に至る、るる述べておりましたコスト増と消費者の購買能力の折り合いをどうつけていくのかというのが大切だと考えています。
この点、関係者の間で議論を行って最適解を見つける、どこまでのコストを考慮すべきかという点での各段階での価格交渉というのが重要になってくるというふうに考えております。
これを踏まえ、改正案におきましては、関係者の納得の得られる価格という意味で、合理的な価格という言葉を使用させていただいているところでございます。
○山本(剛)委員 もう本当におっしゃるとおりなんですね。納得のいく。だから、納得のいくが何なのかなので。これはやはり、食べ物、食料だから非常に難しいというふうに私は思います。
要するに、人間は食べなかったらどうなるんですかというと、一番明快な答えは死ぬんですよ。そうですよね。要するに、人間の生死とやはり背中合わせにあるものが私は食料だというふうに思いますし、だからこそ、とんでもない価格になってしまったときは、それはやはり抑制しなければいけない。それはまさに政策的にやらなければいけないし、私は国が責任を持ってやるべきものなのかなというふうに思っています。
ただ、では、これも福島議員との議論にありましたけれども、食リョウのリョウの字ですね。いわゆる穀物とかそういったものを指す「糧」なのか、食料全体を示すのかというのは、やはり私は考えなければならないというふうに思っておりますし、生きていくために必要なものに対して、どれだけの政策的なものを我々が打ち出していくことによって、施行していくことによって、国民の皆さんが安心して、安定してその食料を手に入れることができるのかというのは、これから本当に永遠の政治の課題だというふうに我々は思っております。
時間がなくなったので、一問ちょっと飛ばします。
この中によく、人口減少に伴うという言葉があるんですよ。確かに、人口減少は今本当に大きな問題です。私、実は、政治に初挑戦は三十五歳のときですけれども、初挑戦のときから、人口減少への備えということを既に言っておりました、選挙のときも。
これは、条文の中にその言葉を入れるのはそもそもなじむのかなというのもありますが、やはりそれに歯止めをかけるのも政治の役割なんですよ。私は、人口減少と別に入れなくても全然文章は通るので、あえてそれを入れる必要があるのかなという思いが実はしております。
例えば、人口減少に伴う農業者の減少という言葉がありますけれども、人口の減少に伴わない農業者の減少の場合はどうなのかとか、何か、これからの農業のいろいろな方向性が人口減少のせいになってしまうというふうにも読み取れるこの文章を、私は余りよろしくないのかなというふうに思っております。実際、この中から人口減少という言葉を抜いても、文章ははっきり言って通ります、それは。通るような言葉を使えば通ります。
だから、例えばですよ、例えばでいいので、人口減少に伴わない農業者の減少の場合はどのように捉えているのか、ちょっと教えていただきたいと思います。
○坂本国務大臣 人口減少、平成二十年をピークにどんどん減っております。同時に、やはり農業者人口も減っております。この二十年間で、先ほど私は百六十万人と言いましたけれども、百十六万人、半減をいたしました。そのうちの七十歳以上が六十八万人でございますので、現在、百十六万人いらっしゃる中で、七十歳以上が六十八万人、五八・七%でございます。これが二十年後に三十万人に減少するという一つの積算の基礎、積算でございます。
こうした状況を考えながら、担い手の育成、確保を図りながら、同時に、将来的には現在よりも少ない人数で食料生産を担うということを想定していかなければなりません。その中で農業の持続的な発展をどうしていくかというのが、今回もその規定を基本理念の中に盛り込んだところでございます。
ですから、法人経営の基盤強化、あるいは農地の集積、集約、そしてスマート農業化、こういったものを進めながら、これから、人口減少そして農業者の減少が、少なくなっても、しっかりと食料の供給体制は確立していくということで、今回の基本法に規定しているところであります。
○山本(剛)委員 時間が来ましたので。
人口が増えているときでも農業者は減っているんですよね。二〇〇八年ぐらいから減少していると言われていますから。だから、魅力ある農業を我々がつくっていくことで、やはり農業の担い手を増やしていかなきゃいけない。そういう意気込みをきちっとやはり私は条文の中にも盛り込むべきだというふうに思いますし、人口減少という言葉は何となくなじまないような気がしているということを最後に皆さんにお伝えをして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
○野中委員長 次に、北神圭朗君。
○北神委員 有志の会の北神圭朗です。
野獣の後に美女というわけにはいきませんけれども、より紳士的な質疑をしたいというふうに思います。
まず第一問は、基本法そのものには明記されておりませんけれども、第二十四条第一項に、今回、不測事態に備えて二段階に分けていると。供給量が二割減少したときに警戒体制というものをつくって、そして、さらに、供給量が千九百キロカロリーを下回ったときに、また多分生産転換とか、そういったことに入るということが書かれております。
この千九百キロカロリーの根拠というのは何かをお聞きしたいというふうに思います。
○杉中政府参考人 お答えいたします。
議員御指摘の今国会に提出している食料供給困難事態対策法案におきまして、事態の深刻度に合わせた対策を講じることとしており、国民が最低限度必要とする食料確保が困難な場合、この場合は公示を行うわけですけれども、その基準については、今後、基本方針において定めることになります。
ただ、現在の議論でございますけれども、直近二〇一九年における国民一人一日当たりの摂取熱量が千九百キロカロリーであることを踏まえまして、現在の供給熱量というのは二千二百六十キロカロリーでございますけれども、不測時には食品ロス等の損失を最小限にすることを考慮しても、供給熱量が千九百キロカロリーを下回るという場合には、国民生活に極めて大きな影響が出るというふうに考えられるため、最低限度確保するべき食料の基準として、供給熱量千九百キロカロリーを目安とする方向で今検討しているところでございます。
○北神委員 ということは、千九百キロカロリーというのは、二〇一九年の国民の摂取カロリーに基づいている、今現在みんなが、国民一人一人が大体平均的に摂取している食料だ、これを下回ると非常に危機的な状況になっていくという、そういう発想ですね。
もう一つお聞きしますと、じゃ、この不測の事態において、農林水産省あるいは国として最低限確保しなければいけないキロカロリーというのがこの千九百キロカロリーという位置づけでよろしいんでしょうか。要するに、目標であると。不測の事態になったときに、千九百キロカロリーを下回ったときに、またその千九百カロリーぐらいには少なくとも戻さないといけない、そういう意思の表れかということをお聞きしたいと思います。
○杉中政府参考人 具体的には、基本方針を設定する中の議論の中で、こういった不測時に向けてどれぐらいまでに供給カロリーを確保できるかという議論も踏まえて検討したいというふうに考えておりますけれども、基本のベースとしては、やはり千九百キロカロリーを下回るという事態になるときには、国民の現在の生活を維持できないということですので、それを基本として検討していくことになるというふうに考えています。
○北神委員 ありがとうございます。
なぜこの質問をしているかというと、大臣、私は今回の基本法でやはり物足りないのが、具体的な目標というものが一つもない。現行の基本法においては一応食料自給率というものが非常に中心にあったというふうに思いますけれども、これがその他の指標の中に後退をしてしまっている。
ということは、不測の事態のときに一体どのぐらい食料体制というものを整えて供給量というものを確保しないといけないのか。もっと言うと、私は、有事のことだけじゃなく、そのためには平時においてどのぐらいの国内の安定供給というものを目指さなければいけないのか、あるいは備蓄を目指さなければいけないのかということがいまいち明確ではない。今の基本法で、農家の皆さんもなかなか期待感が上がらないのは、そういうものが全くない。
それ以外に、もちろん、輸出をするとか、輸入を多元化するとか環境負荷を低減するとか、よいことも書いてあるんだけれども、それはあくまでよいことであって、本当に食料安全保障というものを語るのであれば、では具体的にどういう目標を目指すのかというものがいまいち分からない。
一方で、皆さんからも、食料自給率というものをもっと中心にすべきだということをおっしゃる方もおられます。
農林水産省のお答えを聞いていると、皆さんの懸念というのは、分母のところで、今現在、国民一人一日当たり、食生活が和食離れ、米離れをして、外国に依存せざるを得ない小麦を中心としたものに相当移行している。だから、さすがに、国民の皆さん、お米を毎朝あともう一杯食べてくださいとか、そういうことはなかなか国としてはできない。
ということは、食料自給率というのは非常にコントロールが難しい指標であって、幾ら農林水産省が頑張って国内の安定供給を増強しても、国民の食生活、嗜好によって食料自給率が下がってしまう、そういう問題意識がおありだというふうに思います。
であるならば、食料安全保障版の食料自給率の指標というものを新たに作って、分母というのは、今の高級化した食生活ではなく、本当に千九百キロカロリーを切ったときにどのぐらい、あるいは、千九百カロリーを目標にするのであれば、それを基準にして、分母のところに、本当にいざというときに、輸入も途絶したときに、どのくらいの、健康で、皆さんの言葉で言うと良質なですか、良質な食料というものをどこまで提供するのかというのを目標にして分母に置くということであれば、有事のときにこの目標を目指して頑張るんだということになるというふうに思いますけれども、こういう食料自給率の食料安全保障版というか、有事の際の目指すべき食料自給率という指標を考えるべきではないでしょうか。
○坂本国務大臣 基本法はあくまでも理念法でありまして、これが成立した暁には、基本計画として、自給率も含めて、新たな数字というのをしっかりそこに入れてまいります。
そして、今言われた、私たちにとって必要最低限の熱量。現在は二千二百六十キロカロリー、これは欧米とはやはりちょっと、いろいろな体格の差もありますので違うんだろうというふうに思います。それが、ぎりぎりのところで私たちとしては千九百キロカロリー、そういうのが非常に困難になった場合には改めてしっかり計画を練りましょうということで出しております食料供給困難事態対策法というものを出して、改めてそこに困難になった場合の対応策を規定しているところでございます。
その困難の食料供給の目標につきましても、改めて政府対策本部を設けまして、そこで策定いたします実施方針に基づいて供給体制というものを決めていくことになります。
まず、どれだけ国民の皆さんたちに食料が供給できるか、それは、生産の方も、加工品を貯蔵されている方も、そして輸入業者の方も、全て含めて、今の日本であるいはこういう事態になったときの影響が出たときの供給量をまず把握をして、そして把握をした中で千九百カロリーを、それは最後の段階ですけれども、いかにその前の段階で満遍なく国民の皆さん方に良質な食料を届けることができるかというものを計画してまいりますので、これは、今の基本法と、それから、やがて出てまいります、皆さん方と審議をいたします食料供給困難事態対策法の中で様々な論議をしてまいりたいというふうに思っております。
○北神委員 大臣、これは基本法だからそこまで具体的な指標は書き込まないという話なんですが、少なくとも今までは食料自給率、今使われている食料自給率というのを、それだけとは限らないかもしれないけれども、それをやはり中心に据えていたというふうに思います。
ですから、理念法であっても、非常にここが要だというふうに思うんですよ。食料安全保障を語るのであれば、やはり私の感覚では、安全保障と言う限りは、やはり本当に輸入が途絶した場合とか、あるいは国内で大規模な災害、あるいは、言うのもはばかられますけれども原子力の事故とか、こういったときに輸入に頼らざるを得ないし、そういったことを想定して、直視して、そして、そのときにどのぐらい国民の最低限の健康である食料供給というものを目指すのかということを、今から、本当は理念法であろうとこれを書き込むべきだというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○杉中政府参考人 議員御指摘のように、平時から、不測時において、食料供給困難、これはいろいろなステージがあるわけですけれども、それをどういうふうにして確保していくかということをよく検討しておくことというのは大変重要だというふうに思っております。
食料供給困難事態対策法案の中では、基本方針というのを法案とともに閣議決定することとなっておりますけれども、その中では、食料供給困難事態の各段階の基準のほか、こういった食料供給困難事態になったときにどういう対策を取るのかということも併せて記述をすることとしております。
スイスにおきましても、二千三百キロカロリーということと併せて、この二千三百キロカロリーを、どういうことを、食料生産をすることによって確保していくかとかいうことと併せて決めておりますので、そういった議論をして、平時から有事に、そういった不測時の起きたときの対策について備えられるようにしていきたいというふうに考えています。
○北神委員 今、杉中総括審議官さんから、スイスの話もありました。
私の今日提出している資料を御覧いただきますと、これはちょっと古いんですけれども、平成十二年で大分、農業白書に書かれたものなんですが、余り変わっていないような気もしますので、これをちょっと採用させていただきました。
今おっしゃったスイスは、私はかなり、総括審議官も非常にお詳しいというふうに伺ったのでありますけれども、山岳地帯で、両大戦、第一次、第二次世界大戦というものを経験して、やはり輸入に依存している食料体制というのは極めて脆弱であるということを実際に経験をされている。そういう中で、食料自給率も五〇%ぐらいしかないということで、我が国よりは高いけれども、そんなに、ほかのフランスとかいう国に比べると低い。ですから、参考になるというふうに思います。
ここで、前回かな、前々回か、私が質問しましたけれども、食料安全保障の定義の中で良質な食料という言葉が入って、私はこれを、平時のときはよいけれども、有事のときも良質って、そんな余裕があるんですかということを質問したと思いますけれども、スイスとかドイツなんかは、この表に、真ん中の食料供給目標というところにありますけれども、やはり、平時のときはスイスなんかは三千三百キロカロリーだ、そして有事のときは二千三百キロカロリーというふうにちゃんと分けて、そして、今、杉中さんがおっしゃったように、有事のときにこの二千三百キロカロリーをちゃんと確保できるための国内の食料体制、生産体制、さらには備蓄、こういったものに相当強化をして、具体的にそれをちゃんと達成できるようになっているんですよ。
もう一つ今の流れで言うと、スイスというのは、これは私も勉強不足ですけれども、私、どこかで読んだのは、スイスというのは、全体の目標値二千三百キロカロリーのみならず、国民一人一人の献立、例えば朝は牛乳一本、チーズ二枚、ハム一切れ、パン一つ、あとコーヒーとか、あるいは夜はパスタとか、かなり、そんな戦争状態でそこまで保障できるのかというふうに思いますけれども、でも彼らは、そのための備蓄とか、ちゃんと、少なくとも計画というものは作っている。
我が国もそういうことも考えるべきではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○杉中政府参考人 お答えいたします。
スイスでは、委員おっしゃるように、民間備蓄を基本として、備蓄品目の輸入事業者から賦課金を徴収して、当該賦課金をもって備蓄費用を賄うということで、備蓄においても、日常の食生活をできるだけ反映した備蓄というものの取組を行っているというふうに承知をしています。
我が国においても、スイスは大変参考になりますので、不測時においても平時における食生活を可能な限り維持し、また、国民経済に支障が生じないようにする観点から、重要な食料及び生産資材についての供給確保のための対策というのを検討していく必要があるというふうに考えています。
食料供給困難事態対策法案におきましては、国民生活、国民経済上重要な食料やその生産資材につきまして、特定食料、特定資材として指定をしまして、同法案に基づく基本方針において、平時から行う対策の一つとしてまず備蓄の方針を定めたいというふうに考えています。
また、供給が不足するときには、こういった民間在庫の放出や保管など出荷、販売の調整に関する要請を行う、また必要があれば輸入や生産により供給確保を行うということで、可能な限り平時の食生活に近いバランスの取れた食生活というのを維持するように心がけていきたいというふうに考えています。
○北神委員 大いに期待しております。今後もまた議論を続けたいと思います。
以上でございます。ありがとうございました。
○野中委員長 この際、暫時休憩いたします。
午後零時六分休憩
――――◇―――――
午後二時五十八分開議
○野中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。稲津久君。
○稲津委員 公明党の稲津久でございます。
食料・農業・農村基本法改正に当たり、質問をさせていただきます。
まず、合理的な価格形成についてお伺いしたいと思いますが、本法案の重要な論点として、食料の合理的な価格形成があります。
本法案審議の本会議の代表質問では、食料の価格形成で資材や人件費などのコストを考慮した仕組みについて、総理より法制化を視野に検討する旨の答弁がありまして、大変大事な答弁だったというふうに思っております。
具体的に法案の中を見てみますと、まず、第二条では、農業者や食品産業事業者、消費者等が、食料の安全保障の観点から、合理的な価格形成に考慮する規定が明記されている。また、第十四条には、消費者の役割として、食料の消費に際して、食料の持続的な供給に資するものの選択に努める、このようにあります。さらに、第二十三条には、国による、食料価格形成に対する食料システム関係者の理解の増進、また合理的費用の明確化の促進等、施策を講じることが明記をされています。さらに、第三十九条では、国が需給や品質評価が適切に反映される施策を講じる、このように明記がされているわけであります。これらのことが具体的な施策として確実に施行されることを、私は強く期待をしております。
特に、農畜産物の生産コストが確実に価格に転嫁されることが重要で、そのために、国として食料の合理的な価格形成に具体的にどう取り組むのかということについて伺っていきたいと思っています。
その上で、伺いたいのは、消費者の理解の醸成をどう図るかだということです。これは大変難しいことだと私は思っています。最終的には、食料品等については消費者が購入するわけでございますので、消費者が何を求めて、何に価値を見出して購入するかで価格が決まる。だから、最終的には、価格の決定者というのは消費者であるということであります。
昨年、内閣府が行った食料・農業・農村の役割に関する世論調査という大変興味深いアンケートがありました。その中で、この二年間余り続いた物価高、物価高騰、とりわけ食料品の高騰を背景にした調査項目があって、そこには、食品価格について、あなたは何割までの値上げであれば許容できるかという問いに対して、七五%の方が値上げを許容できると答えている。一割とか、二割とか、三割ですけれども。一方で、食品高騰対策について食生活の対応をどうしましたか、こういう問いに対しては、六〇%の方が価格の安いものに切り替えたと答えました。
当たり前といえば当たり前なんですけれども、私はちょっと深読みをしたいと思って、いろいろ考えてみましたが、価格高騰は理解しているが、安いものを購入するという選択をする、安いものに価値を見出したのか。私はこう思うわけですね、消費者は、理解はするが、納得して価値を見出さなければ、購入をするという行動変容は起きないということです。だから、理解をして、価値を見出して、納得して初めて物を買う、こういうことになる。
例えば、今ではもう当たり前ですけれども、コンビニエンスストアで一本百五円のミネラルウォーター、これは普通に売れています。しかし、昭和の頃は想像がつかなかった。納得して、価値を見出しているから買っている。思えば、お米は茶わん一杯が、平均の小売価格で計算すると、約二十五円。これはどうかということですね。農家の方々が丹精込めて作ったお米が、茶わん四杯でペットボトル一本の価格になっている。
どう考えるかということですけれども、消費者の方がお米と水を比較して購入しているわけでは当然ありませんけれども、はっきりしているのは、納得して一本百五円のミネラルウォーターを購入しているのは確か。
そこでお伺いしますけれども、農水省として、適正な価格形成に向けた消費者の理解の醸成にどう取り組んでいて、そして、基本法の改正にどう今後取り組んでいくのか、この点について、大臣のお考えをお伺いします。
○坂本国務大臣 食料の価格形成につきましては、再三答弁しておりますように、昨年八月より、生産、加工、流通、小売、消費の幅広い関係者が一堂に集まります協議会を開催をいたしております。食料システム全体の持続性の確保を目的に、持続的な供給に必要な合理的費用を考慮した価格形成の仕組みの必要性、そして、品目ごとに作成する費用の指標であるコスト指標の作成等につきまして、関係者間で議論をこれまで行ってまいりました。
先週五日金曜日に開催いたしました第四回の協議会では、今後の検討方向といたしまして、品目等の実情に応じて、価格形成の仕組みづくりを検討していくこと、そして、品目ごとに、コストの実態調査等を通じて費用の明確化を検討すること、さらに、コスト指標の作成主体や価格交渉における活用方法等を具体的に検討すること等につきまして、関係者間で認識を共有いたしました。
そういうことで、法制化を視野に今後も更に検討を進めてまいりたいと思っております。一頃の非常に大きな乖離があった状況からは、かなり狭まってきて、いろいろなものを共有できたというふうに思っております。
それから、二番目の質問でございます消費者の理解醸成につきましては、こちらの方は昨年七月よりフェアプライスプロジェクトを開始をいたしました。生産者自身がコスト高騰の厳しい状況を現場から伝えるインターネット動画による情報発信、あるいは、親子での酪農現場での餌やり体験等の体験学習イベントの開催、そして、食品の値上げ等の背景を分かりやすく伝える動画コンテンツの作成といった広報の取組を行っているところでございます。
これも、先週五日金曜日に開催いたしました協議会では、消費者団体の委員の方々から、こういう意見が出ました。合理的な費用が考慮されるために必要な仕組みについて、消費者にも分かりやすく示してほしい、それから、生産者の置かれている状況や、どこにどの程度のコストがかかっているかを明らかにしてほしい、そして、納得感を持ってもらうことが必要というような御意見でございました。
こうした意見にも今後応えられるように、やはり消費者の皆さんたちの価値行動と消費行動が狭まってくるように、今後検討も進めてまいりたいというふうに思っております。
○稲津委員 大臣の御答弁で明確になったと思います。
私は、先ほど来質問などで申し上げたように、価値を見出して消費者の方々に納得していただく、そういう仕組みがやはり必要で、そのために、今御答弁いただいたように、例えば動画コンテンツですとか広報媒体を通して、より消費者の方々に理解を求めていく、こういうことを丁寧にやっていく必要があるだろうと。ですから、そうした効果の検証とか見直しを含めたPDCAサイクルを是非効果的に活用していただきたいということを申し上げておきたいと思います。
次は、食料自給力の話です。
我が国の食料自給率の低さが指摘をされ、食料自給率向上の議論がなされている、大事な視点だと思っております。同時に、食料自給力に注目をしていきたい。我が国の農林水産業が持つ潜在的な生産能力がどの程度あるのか、農地、農業用水、農業技術、労働力、教育力等々、あらゆる要素を考慮した食料自給力をいかに上げていくのか、こういう視点は極めて重要だというふうに思っております。
我が国の食料自給力をどう評価し、どう引き上げていくのかを所見を伺うと同時に、また、この自給力の引上げにおいては、とりわけ農地の大区画化、汎用化、水田の水利施設の整備が欠かせません。そういう意味で、農業農村整備事業予算の確保、なかんずく本予算における拡充をどう求めるか、この点についてお伺いします。
○坂本国務大臣 世界の食料需給が不安定化している中で、食料を安定的に供給していくためには、国内で生産できるものはできるだけ国内で生産する、すなわち、今委員言われました自給力を向上していくことが重要であると考えております。
現行基本法制定時に比べますと、国内人口が減少局面に転じまして、生産者の急減が見込まれる中、今回の基本法の改正におきましては、農業法人の経営基盤の強化、サービス事業体の育成、確保、それから、農地の集積、集約やスマート技術の導入等によります生産性の向上等の施策の充実を図ることとしております。
特に、農業農村整備事業、NN事業につきましては、農地がスマート化にも堪え得るような大区画化や水田の汎用化、そして、畑地化により生産性の向上と需要に応じた生産を支えるとともに、農業水利施設等が老朽化していることから、更新、長寿命化等の保全の取組を進めることが大変重要であり、基本法改正案におきましても、これらの施策について規定をいたしたところでございます。
今後とも、農業農村整備事業を着実に推進することができるよう、当初予算も含め、必要な予算の確保に努め、我が国の食料生産能力の向上を図ってまいりたいというふうに考えております。
○稲津委員 今の御答弁は、とても重要な御答弁だというふうに思います。本予算も含めて検討していきたいというお話でございますので、是非進めていただきたいと思いますし、やはり自給力の向上というのは極めて重要だというふうに私は思っているんです。
我が国は農業技術は非常に進歩しているというふうに、私もそう思ってきたんですけれども、先日の参考人質疑で、合瀬参考人から、稲、麦、大豆の収穫量の指標の比率が示されまして、海外は日本の倍近くの収量となっているという点も示されました。それから、最近知り得たんですけれども、日本が得意とする米作り、これも年によっては単位面積当たりの収量で韓国に負けているときがあるんですね。
だから、やはり、自給力を向上させていかなければ、日本の農業の骨組み自体が崩れてしまうので、これをしっかり進めていただきたいと思います。
次は、ちょっと質問を飛ばしまして、戸別所得補償制度の弊害についてお伺いします。
かつて民主党政権において米の農業戸別所得補償制度が導入されましたが、弊害が多かったのはもう周知のとおりです。導入されたのは平成二十二年。二十一年と比べて二十二年は、米価が全銘柄平均で千七百五十九円下落しました。在庫水準はいずれも二百十万トン台と変わっていない中での下落は、戸別所得補償制度の導入が、例えば買手から取引価格が低く抑えられたという影響があったのではないかと考えるのが常識的です。
二十三年、米価が上がっているじゃないか、こういうことをおっしゃる方もいらっしゃるんですが、この年は東日本大震災の発災の年であって、供給不安が影響したと見るのが正解であると思います。
民主党政権下での農業戸別所得補償制度の予算は、二十二年度当初予算で、米戸別所得補償モデル事業として、定額部分に一千九百八十億、変動部分に一千三百九十一億、合わせて三千三百七十一億円、ほかに、推進事業費に八十億円を計上しました。
一方で、その見合いの財源として、農業農村整備事業予算関係は、二十一年度の当初予算で五千七百七十二億円あったのが、二十二年当初では二千九百八十一億円、前年比二千七百九十一億円減少した。さらに、二十三年度は二千三百一億円、二十四年度は二千百八十七億円と減少していったんです。農地の大区画、汎用化、農道整備、排水改良など、著しく遅れてしまった。担い手への農地の集積、集約も進まないという事態を招いた。
そこで、大臣にお伺いしますけれども、例えば、需要が減少している米について、旧戸別所得補償制度のような、主食用米に対する直接支払いを行うのであれば需要に応じた生産が進まないのではないか、こういう考えがありますけれども、所見をお伺いします。
○坂本国務大臣 農林水産省では、主食用米の需要量の減少が続く中で、主食用米から、需要に応じ、輸入に依存する麦や大豆、加工・業務用野菜などへの転換を進める必要があり、水田活用直接支払交付金や畑地化促進事業等によりまして、麦、大豆等の本作化を推進をしているところです。
これに対しまして、所得を補償する政策は、過去の戸別所得補償制度を見ましても、農地の集積、集約化等が進まず、生産性の向上が阻害されるおそれがあるほか、一般論として、消費が減少している品目の生産が維持され、需給バランスが崩れる、そして、補償を織り込んで生産者の取引価格が低く抑えられる等の懸念が考えられます。
そして、旧戸別所得補償制度は、主食用米の個々の販売農家に生産数量目標を割り当てることを前提にしていました。政府においては、需要に応じた生産を米政策の基本とし、行政による生産数量目標の配分は、平成三十年産以降、廃止をしております。旧戸別所得補償制度を復活させることとなれば、生産数量目標の配分を復活させることになります。結果として、需要に応じた生産を行うという農業者の努力を損なうリスクがあると承知をいたしております。
農業の現場では、多くの産地で、生産性や付加価値の向上等の取組によりまして、所得確保に向けた創意工夫がされているところであります。
農林水産省といたしましても、改正基本法に基づきまして、生産性向上や付加価値向上の後押し、そして適正な価格形成の推進などを基本に、収入保険制度等の経営安定対策を適切に講じながら、所得の向上を図っていかなければならないというふうに考えております。
○稲津委員 今の大臣の御答弁も、極めて重要な御答弁だというふうに思っております。全く大臣のおっしゃるとおりと思っていますし、やはり大事なのは、需要に見合った供給によって生産が行われるという考え方、そして、その上で、品質や付加価値が見出されて価格が形成される。これは当たり前のことなんですけれども、旧戸別所得補償制度では、流通業者が、農業者の所得補償があることで、それを理由に買いたたく、こういう現象が生じた可能性が極めて大きい。この場合は価格転嫁どころか価格引下げを招く、こういうおそれがあるということを、これは是非、委員会で皆さんに認識をしていただきたいというふうに思うわけです。
時間の関係上、ちょっとまた飛ばしまして、環境への負荷低減についてお伺いします。
みどりの食料システム戦略を踏まえて、環境負荷低減の項目が設けられたことを評価したいと思います。先日の委員会では、坂本大臣は、環境負荷低減に取り組む農家を支援する新たな直接支払い制度を、二〇二七年度を目標に導入することを答弁で表明しました。我が党の参議院の代表質問で山口代表がこのことについて質問し、道筋をつけたことから、大変喜ばしく、評価をさせていただきたいと思います。
その上で、具体的にお聞きしますけれども、第三十二条二項に、環境への負荷低減の状況の把握及び評価の手法の開発とあるが、このことはどう意味するのか。
それと、もう一点につきましては、その手法と結果はどういうふうに使うのか。そして、評価の手法の開発においては、その評価手法を活用することで、例えば、生産者の収益が上がるようなことがあるのか。また、複雑な測定や申請では農業者の方が対応できないこともありますので、どのようなよい仕組みでも、農業者の理解は進みません。こうしたことにどう対応するのかお伺いして、質問を終わります。
○坂本国務大臣 農林水産省では、みどりの食料システム戦略に基づきまして、農産物の生産段階における温室効果ガス削減や生物多様性保全等の環境負荷低減の取組を評価をし、星の数で消費者に分かりやすく伝える、見える化の取組を現在進めているところです。
これは、面積、収量、農薬、肥料の使用量など、基本的な栽培情報があれば、どなたでも取り組める簡易なものとなっております。
一方、昨年、内閣府が実施をいたしました世論調査では、消費者の八割以上の皆さん方が、環境に配慮した農産物を購入したいと回答した一方で、環境に配慮した農産物を購入しないと回答した消費者の六割以上が、どれが環境に配慮した農産物かどうか分からないためというような理由を挙げておられます。
このため、今後も、マニュアルや動画の充実、研修会の開催、そして相談受付等を通じたサポートを行いまして、生産者にとって取り組みやすく、消費者の皆さんたちにとって分かりやすい、選択につながるようなものとなるよう、見える化の取組を進めてまいりたいと思っております。
○稲津委員 終わります。
○野中委員長 次に、田村貴昭君。
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
食料・農業・農村基本法の改正案について、今日は、環境負荷の低減について主に質問をします。
改正案には、有機農業の振興が、基本理念はもとより、法案全体でも一言も触れられていません。有機農業がなぜ書かれていないんですか。
○杉中政府参考人 お答えいたします。
基本法の改正案では、基本理念におきまして、食料供給の各段階における環境負荷低減の取組の推進など、生産から消費に至る食料システムを環境と調和の取れたものにしていく旨を位置づけております。
その上で、基本的施策におきまして、環境への負荷の低減の取組として、化学農薬、肥料の使用削減など幅広い取組を促していくこととしており、その中に当然有機農業も含まれていることから、あえて記述しなかったということです。
しかしながら、有機農業というのは当然に重要な取組でございますので、みどり戦略に位置づけた目標の実現に向けて、今回の基本法の見直しの内容も踏まえて、引き続きしっかりと推進していきたいというふうに考えています。
○田村(貴)委員 重要だったら、条文の中にその言葉を入れないと駄目じゃないですか。読んでも分かりませんよ。
三十二条では、環境への負荷の低減を図るため、農薬及び肥料の適正な使用の確保としています。
確かに、みどりの食料システム戦略では、化学農薬の使用量を二〇五〇年で五〇%低減、化学肥料の使用量を同じく三〇%低減する目標を掲げています。同時に、耕地面積に占める有機農業の割合を、二〇五〇年に二五%、百万ヘクタールに引き上げる目標も定めています。
環境保全のKPI指標では、化学農薬、化学肥料、有機農業はひとしく並んで設定されているにもかかわらず、どうして有機農業だけ外しているんですか。整合性が取れないじゃないですか。
○坂本国務大臣 環境負荷低減につきましては、輸出促進と同様に、改正案におきまして、第三条の基本理念として新たに位置づけを行うとともに、第三十二条でその具体的な施策を規定をしています。
繰り返しになりますけれども、これらを踏まえまして、環境への負荷の低減の取組として、化学農薬、肥料の使用削減など幅広い取組を促していくこととしており、この中に有機農業も当然含んでおります。環境負荷低減の中に有機農業がしっかりと含まれているというような考え方であります。
○田村(貴)委員 化学肥料、化学農薬と書いて、どうして有機農業というのを入れないんですか。言葉として入っていないから、おかしいと言っているんですよ。有機農業を軽視しているんですか。
一方で、例えば、二十二条、農産物の輸出の促進、これは条項を見てみますと、本当に内容を細かく書いていますよね。産地の育成、農産物の競争力強化、市場調査の充実、情報の提供、普及宣伝の強化、相手国における需要の開拓の支援体制の整備、知的財産の保護、動植物の検疫等々、輸出の促進についてはこれだけの文言を並べているわけですよ。これだけ具体的に列記しているわけですよ。
政府の方針でも、今二万六千ヘクタールの有機の耕作面積を、二〇五〇年に百万ヘクタール、実に三十七倍に増やすという大目標をみどり戦略で掲げているんでしょう。農産物の輸出の促進を掲げるんだったら、同様に有機農業の促進も設けて、例えば、耕地面積の拡大、給食への採用の促進、既存の技術の普及啓発、そのための人員の確保、これらのために、財政措置等、国は必要な施策を講じる、同じようにこういう文言、規定を作ってもいいんじゃないですか。なぜこういうことをしないんですか。好きなところはいっぱい書いて、苦手なところは書かないということなんですか、基本法は。いかがですか。
○杉中政府参考人 繰り返しになりますけれども、環境負荷低減については、今回、基本理念、基本施策でも新たに書き加えて充実させておるところでございまして、その中に当然有機農業も含まれているというふうに考えているところでございます。
なお、みどり法の言及がありましたけれども、みどり法の中でも、定義として、有機農業は環境負荷低減のための事業活動という中に含まれるんですけれども、この定義の中で有機農業ということが例示されているわけではございません。みどり法の中で有機農業というのがあるのは、有機農業に関する協定制度という個別の制度の中で出てくる。
ただ、当然のことながら、みどり法の中でも目標に掲げているとおり、有機農業の推進というのは非常に重要な要素でございますので、この基本法に基づく施策においても、有機農業の推進というのはしっかり行っていきたいというふうに考えています。
○田村(貴)委員 目標として、化学農薬、化学肥料、それを削減する、そして並立して、ちゃんと、有機農業の割合を増やしていくと書かれているわけですよ。だから、基本的な戦略と基本的な方向性を示して、KPIを含めて掲げているのに、何で基本法になってきたらバランスを欠いてしまうのか。これはやはり問題だと思いますよ。こういうところはやはり修正すべきですよね。私はそう思いますよ。
環境負荷の低減では、肝腎なところが抜けていると言わざるを得ません。更に聞いてまいります。
三条、環境と調和の取れた食料システムの確立、及び三十二条、今も出てきました、環境への負荷の低減の促進、ここでは、地球温暖化対策、温室効果ガス、すなわちCO2の削減を目的としている、そういうふうに捉えてよろしいんでしょうか。
○杉中政府参考人 御指摘のように、基本法改正法案の三条で環境と調和の取れた食料システムの確立について規定し、三十二条において環境への負荷の低減の促進について規定しております。
これらの規定の環境負荷の低減の中には、稲作や畜産によるメタンの発生、食品製造過程等におけるCO2の発生などを踏まえた温室効果ガスの排出削減の取組というのを含むものでございます。
○田村(貴)委員 CO2排出削減ならば、どうして、日本と世界の今一番の目標である温室効果ガスの削減、地球温暖化対策の促進、そういう基本的な言葉が入ってこないんですか。私は本当に不思議だなと思うんですよね。環境負荷対策の肝であるのは、CO2の削減じゃないんですか。ここに出てくる言葉は、家畜排せつ物であるとか、農薬、肥料とかですね。それより、最初に大事に訴えなければいけない言葉があるんじゃないですか。
大臣にお伺いします。
岸田政権の主要政策にはこう書いてあります。二〇五〇年までのカーボンニュートラル実現に向け、二〇三〇年度に温室効果ガスを二〇一三年度比で四六%削減することを目指し、さらに、五〇%の高みに向けて挑戦を続けていますと。これはもう誰もが知っています。
国の内外に宣言したこの国の目標を農業基本法では踏まえないんですか。どうして、地球温暖化対策、CO2の削減、温室効果ガスをなくしていく、そうして誰もが分かる表記にしないのか。これについて大臣はどう考えますか。
○坂本国務大臣 基本法は理念法でありますことから、施策の対象を狭めないよう、具体的な内容を逐一例示することはしませんが、カーボンニュートラルも含めた概念として、環境と調和の取れた食料システムの確立を柱に位置づけたところであります。
カーボンニュートラルの実現も、みどりの食料システム戦略に位置づけられた重要な政策事項でありますので、この実現に向けて、関係者の理解と協働を得ながら、省一丸となって取り組んでまいりたいと考えております。
○田村(貴)委員 細かな施策はといいながら、細かな施策はいっぱい書いておるんですよ、ここに。理念法といいながら重要な理念については書かれていないから、おかしいじゃないかと言っているんですよ。
私は、この条文を見て一番やはり奇異に感じたのは、この三十二条、それから三条のところですよね。ほかにもいっぱいあるんですよ。あるけれども、やはり、もう地球温暖化対策は待ったなしですよね。特に、農業で占めるCO2の削減というのは重要な分野を占めています。そこが言葉として欠落しているのは問題と言わざるを得ません。
もう一点、伺います。
みどりの食料システム戦略の目標設定では、温室効果ガス削減、農林水産業のCO2ゼロエミッション化、二〇五〇年CO2ゼロ、これが一番目に明記されているんですよね。ここでも出てくるんです、一番最初にこれは出てくるんです。化学農薬も化学肥料も低減といいますけれども、この農薬も肥料も化石燃料を原料に作られているんです。だから削減していかなくてはいけないんです。
環境負荷の低減で一番大切なことはCO2の削減ではないんですか。温室効果ガスの削減ではないんですか。確認したいと思います。いかがですか。
○川合政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、CO2の削減は大変重要でございます。
世界のGHG、温室効果ガスの排出量は五百九十億トン、CO2換算でございます。このうち、農業、林業、その他土地利用の排出というのは二割以上を占めているということで、世界的にも温室効果ガスの削減、特に農業、林業の分野で削減しなきゃいけないというのは世界共通の課題だ、こう思っております。
一方で、日本の排出量は十一・七億トン、非常に少ないんですけれども、ただ、このうち農林水産分野の占める部分は四千九百四十九万トン、排出量の四%とはいえ、ここで出てくる内容が燃料燃焼、トラクターとかカントリーエレベーター、あるいは稲作のメタン、あるいは家畜排せつ物の管理、こういったものなので、非常に農業の重要な部分がその部分を占めているということで、みどりの食料システム戦略においてもCO2のゼロエミッション化というのは重要だということで進めておるところでございます。
現在、今、全ての都道府県でみどりの食料システム法に基づく計画を作りまして、都道府県でしっかり前に進めていくところでございます。
○田村(貴)委員 カーボンニュートラル、地球温暖化対策、こうしたことがしっかりと基本法で明記されるように要求します。
三十二条、環境への負荷の低減の具体化では、農薬及び肥料の適正な使用の確保、家畜排せつ物の有効利用を挙げ、二項で、農産物の流通の確保、状況の把握及び評価の開発その他必要な施策を講ずるものとするとされています。ここには、農林水産物の移動あるいは輸送に伴う温室効果ガスの削減も含まれているのでしょうか。確認したいと思います。
○川合政府参考人 お答えいたします。
国内であれば、輸送に係るトラックとか、そういったものについての燃料燃焼、特にトラクターの作業、それからカントリーエレベーターにおける乾燥調製、そういったもので石油燃料を使っておりますので、そういったCO2の削減には非常に重要でございます。
国内の移動、そういったものにつきましては、みどりの食料システム戦略の中でも非常に重要な位置づけとして、CO2の削減ということで進めているところでございます。
○田村(貴)委員 国外における輸送も、CO2、トラクターなど、それでいいんですか。輸出入に係る温室効果ガスの削減は、個々の条項では入っていないということで断言するんですか。
○川合政府参考人 お答え申し上げます。
海外から持ってくるものにつきましても、食料の輸送の仕方、トラックというわけでもありませんけれども、飛行機でありますとか、あるいは船、いろいろな輸送手段がありますので、その輸送手段によって換算の仕方が非常に難しいということでございまして、私どものみどりの食料システム戦略及びこういったCO2の削減の中では、国内の輸送に関しては、我々は削減対象としてしっかりと進めているということでございます。
○田村(貴)委員 それはちょっとおかしいんじゃないですか。
日本は、一人当たりのフードマイレージ、食料の輸送距離が極めて高く、二年前のみどりの食料戦略法案、この審議のときに六千七百七十トンキロメートルと私は申し上げました。そのとき、農水省の説明では、食料の輸送にかかる燃料や二酸化炭素の排出量が世界一多く、環境への大きな負荷を与えているということを意味しますと答弁があったんです。
そして、このときの審議で、二〇五〇年カーボンニュートラルはフードマイレージの低減が含まれているのか、私はこう聞いたんです。そうしたら農水省は、温室効果ガスの排出抑制の観点から、フードマイレージも重要な取組の一つであると考えていると答弁された。
それは国内に限った話だ、国外は関係ないということなんですか。
○川合政府参考人 お答え申し上げます。
フードマイレージは、食料の輸送重量と輸送距離、これを掛け合わせた指標でございます。食品や飼料の輸入量を減少するとフードマイレージも減少すると考えております。
非常に距離がありますので、当然、世界的な認識としては、たくさんの距離を航行すればCO2が出る、これは常識でございますが、輸送手段が飛行機あるいは船舶、列車、トラックといった輸送手段の違いによりまして排出量は異なります。こういった輸入食料の輸送量が減少したとしても、温室効果ガスの排出量の削減に直接つながるかどうかという算定式もできませんので、今回の場合は、私どもとしては、国内の生産については見える化とかJクレジットの対象にしておりますが、海外から持ってくる場合につきましては、その手段によりまして排出量が異なるというところが大きいと考えております。
○田村(貴)委員 もう、どんどんどんどん矛盾にはまっていきますよね。海を隔てて遠い遠い異国から、たくさんの燃料を使って運ばれてくるんですよ、農産物がこの国に。その輸入依存で食料自給率が低下し、そして温室効果ガスの排出が世界で五番目になっているんだよ。そういうことが分かっていて、そして環境負荷の低減を掲げて、しかも、それは輸入農産物は関係ない、そんな言い訳、通用しませんよ。駄目ですよ、そんなこと言っておったら。温室効果ガスの削減にフードマイレージを低減することは重要と言った、でもそれは国内に限る話だ、それは通りませんよ。ちゃんとここは、今の現実、どれだけの農産物を海外から輸入しているか、このことを踏まえて対処していかなければならないと思います。
大臣に伺います。
三条では、食料システムが環境負荷を与えているとしています。だから、その低減を図って、環境との調和を図らなければならないと書いているわけですよね。ならば、世界一環境に負荷を与えている我が国の輸入依存を脱却し、食料自給率を高めていくというのは、国民の強い要望にかなっているものであると私は考えます。国際社会から求められている重要な課題ではないのでしょうか。
環境負荷の低減と輸入依存との関係について、大臣、答弁をお願いします。
○坂本国務大臣 フードマイレージを小さくするためには、国内で生産いたしました食料を国内で消費すること、そして、地産地消の推進を図ることが有効なのは御指摘のとおりでございますけれども、一方で、国内生産で国内需要を賄えない農林水産物・食品につきましては、安定的な輸入の確保が必要であるとともに、将来にわたり国民に対して食料の安定的な供給を図るためには、海外への輸出を通じた食料供給能力を維持することが必要であります。
この輸出や輸入においても、でき得る限り温室効果ガスの排出削減につながるような取組が必要です。このため、基本法改正案第三十二条二項におきまして、環境への負荷の低減に資する農産物の流通が行われるよう新たに規定を設けるとともに、流通業者については、第二十条において、環境への負荷の低減に資する事業活動の促進を図る旨を規定したところでございます。
これを受けまして、幹線輸送の大ロット化、中継共同物流拠点の整備による輸送効率の向上、そして、モーダルシフトの推進におけます国内向け、輸出向け双方でのトラック輸送の削減、そして、輸出産地の育成による輸出の大ロット化、さらには、長距離輸送におけるCO2排出量の削減につながる冷凍冷蔵技術の開発等の取組を通じまして、食料システム全体で温室効果ガスの排出削減に取り組んでまいるところでございます。
○田村(貴)委員 輸出入における温室効果ガスの削減、CO2の削減というところに大臣は言及されました。それは本当に大事なところです。それは私も同感です。ですから、それでフードマイレージをちゃんと輸出入に対しても確認していく、そしてそれを意識して削減していく、そのことをやらないと駄目です。そのことを強く申し上げたいと思います。
最後に、大臣、三十二条二項では、環境への負荷の低減に資する農産物の流通及び消費が広く行われるよう、消費者への適切な情報の提供を推進するとあります。
今日議論したフードマイレージ、さらに、生産面、消費面、廃棄面も含めたCO2の排出量、カーボンフットプリントをやはりしっかり把握する、それを適宜消費者に示していくべきだ、この法文からはそういうふうにすべきだと私は思うんですけれども、大臣、いかがですか。
○野中委員長 坂本大臣、簡潔に答弁願います。
○坂本国務大臣 委員御指摘の輸入品について、しっかりやるべきだと思っております。
そのために、現在、官民の円卓会議というのを設けております。そして、その下に温室効果ガスの見える化作業部会というのを設置しまして、カーボンフットプリントの算定方法等に係る議論を行っているところでございます。
○田村(貴)委員 時間が来ました。終わります。
○野中委員長 次に、長友慎治君。
○長友委員 国民民主党の長友慎治です。
まずは、農業の経営者の育成についてお話をしていきたいと思います。
四月四日の参考人質疑で、アグリフューチャージャパンの合瀬理事長がこれからの農業人材の育成についてお話をしてくださいました。今後、農地を集約し、広大な耕地面積で農業を展開するには、経営感覚を持った人材が必要になるという合瀬理事長の指摘には、私も同意をしているところでございます。
そこで、集積した広大な農地を預かりまして、これから日本の食料安全保障を支える農業経営者の育成に農水省としても取り組んでいることがあるのかどうかを、まずはお話を伺いたいと思います。
○村井政府参考人 お答え申し上げます。
これは基本法改正法案の審議の中でも繰り返し御答弁させていただいておりますけれども、個人経営体の基幹的農業従事者につきましては、この二十年間でおおむね半減をしております。一方で、法人等につきましては、農業従事者が増加をし、農地面積の約四分の一、販売金額の約四割を担うまでになっております。その結果、農業総産出額は約九兆円を維持しているという状況でございます。また、四十代以下の新規就農者のうち、雇用就農者が四割強を占めるという状況になっております。こういったことで、農地や雇用の受皿として農業法人が果たす役割はますます重要になっていると我々は認識をしております。
こうした農業法人が農地を新たに引き受けたり、事業の多角化などに取り組んだりしていく上では、御指摘があったように、より一層の経営管理能力の向上が必要になると考えております。
このため、基本法の改正案におきまして、農業法人の経営基盤の強化を図るため、その経営に従事する者の経営管理能力の向上について規定をしたところでありますが、これに基づき、農業経営者を対象とした研修プログラムの策定、それから、自ら経営状況を財務分析するソフトの開発、各都道府県で整備されております農業経営・就農支援センターの支援能力向上などを通じて、経営感覚を持った農業者を育成してまいりたいと考えております。
○長友委員 ありがとうございます。
これから新しく農業を始められる方たちに、就農時に大きな借金を背負うとか、休みが取れないということがイメージされるような世界というのは、なり手はいないということは容易に想像がつくわけですよね。若い人たちが農業の世界に夢を持って、モチベーション高く取り組んでもらうためには、やはり法人経営は必要であって、法人が存在しない地域では法人を育成していく、そのことに関しては私もそのとおりだなと思っているわけです。
一方で、半農半Xとか二拠点居住、関係人口といった方々は、個人経営が担う部分なのかなと思います。
農村地域において、農業は、その地域の関係人口で維持していくといった役割もありますので、両者とも大事であって、それぞれが今後の日本の農業において、どの機能を法人が担っていくのか、そして、いわゆる多様な農業者がどういう機能になっていくのかという役割分担を、これは参考人質疑のときにはそれぞれの先生たちから明確なお話があったんですけれども、農水省としてもはっきりとその役割分担のメッセージは出していっていただきたいなというふうに思います。
続きまして、有機農業、先ほどからお話が出ていますけれども、私も有機の話をさせていただきたいと思います。
今日、朝一番の質疑に自民党の武井委員が立たれて、宮崎県、県域JAが誕生した、発足したという話をされたと思いますが、その宮崎のJAで起きていること、現場での実態についてちょっとお話をさせていただきたいと思います。
これは四月三日の委員会でも大臣にも直接聞いていただいた話です。宮崎市で有機米を十年間作っている生産者から、苦労して有機米を生産しても、地元のJAが農薬、化学肥料を使っていないと買取りを拒むんですよ、規格外品として買い取られるという現状を聞いております。ゆえに、この生産者さんは、販路を自分で開拓するしかないわけなんですね。一町三反で五トンを作っていらっしゃいます。その販路を自分で開拓し、売りさばかなければならない状況です。もうすぐ田植が始まるんですけれども、まだ去年収穫した米が二トンほど残っていると。これは売れ残っているんですよね。
まずは大臣にお聞きしたいんですけれども、有機農業で作ったお米をJAの方に持っていって、有機米として取り扱ってもらえないという実態があるということなんです。こういうJAがあることについては大臣は把握しているのかどうか、教えていただけますか。
○平形政府参考人 御答弁申し上げます。
農林水産省として、有機農業として取り扱わないJAの数を把握しているかというと、把握しておりません。
農協は組合員の自主的な協同組織で、共同で集荷、販売を行っておりますけれども、JA管内の有機農産物の生産量が限定的でロットがまとまらない場合は、そのものだけ別の取扱いを行っていない例もあるものとは考えられます。
一方、農林水産省が令和三年度に実施いたしました意識調査、意向調査では、有機農業で生産した農産物の販売先として、JAが四六・一%と最も高く、消費者個人と相対で取引が次いで三一・八%、直売所が二六・二%となっておりまして、有機農産物がJAで販売されるものは少なくないとは考えております。
○坂本国務大臣 今、事務方から答弁したとおりでございますけれども、実際には、いろいろな形で、各それぞれのJAが、有機米の出荷、そういったものに非常に協力をしているところがあります。
ですから、有機米の推進に当たりましては、ブランディングとか有機米農法の指導とか、こういった能力を持つ地域のJAを巻き込んで推し進めていくことが大事だろうというふうに思っております。
○長友委員 大臣、お話しいただいたんですけれども、私もJAの方にお話を直接聞いたんですね、何で有機米が規格外としての扱いになるのかと。それなりの立場の方です、宮崎の。その方から、こういう回答が返ってきたんですね。JAの立場としては、お米は国からの委託販売という形になるから、JAの規格はそれにのっとる形で肥料や農薬や決められているんだ、それにのっとらないものは規格外になるという説明をいただきました。
国の委託販売をする以上、そのルールにのっとり、均一なブランドを提供するためにも、有機米として、それをJAの規格米とかJA米として売ることはできないということなんですね。
事情は私も有機農業の方たちを取材しているので分かるんですけれども、大臣、先ほど、有機農業をしっかりJAとしても取り組んでいるところもあるとはおっしゃいましたけれども、全てではそうなっていないということだと思うんです。
有機米も、白濁とか、斑点とか、品質が安定しないとか、虫が寄ったりするということで等級が落ちるということも私も理解はするんですけれども、じゃ、そうなったときに、国としては有機農業を推進しているわけですよね。
じゃ、自分で販路を広げなさいといったときに、例えば農協の直売所で売ればいいじゃないかという話もありましたけれども、実際、この農家さんは農協の直売所を断られました。JA米が売れなくなるからということなんですね。後はどうすればいいか、自分で販路を開拓するしかないですね、そういうような対応をされているんです。
それでも買い取ってほしいということであれば、JAの規格に合わない規格外のお米ということで、一等米だと大体、一袋、玄米三十キロで七千円程度で買い取るところを、半額ぐらいだったら買い取るよ、そういう話をされているということなんですね。
みどりの食料システム戦略、令和四年四月に成立して、令和四年七月一日に施行されていますけれども、成立して二年ちょうどたっています。それでもこういう状況だということを農水省としてどう受け止めるのかなというふうに私としてはお聞きしたいんですけれども、大臣、お伺いできますか。
○平形政府参考人 ちょっと前提として誤解があるようなので、御説明をさせていただきます。
先ほど委員がおっしゃられた中で、国からの委託販売でお米を作っていただいているという話なんですが、国がもし委託販売あるいは委託購入をする場合は政府備蓄米のことが考えられるんですが、宮崎県から政府備蓄米はいただいておりませんので、国からの委託販売で受け取れないというのは、多分、そのJAの人の説明かあるいは生産者の方か、どちらかが間違っているんだというふうに思います。明らかに民間民間の中での集荷の話だというふうに思います。
それから、規格外なんですけれども、有機のものが必ず規格外になるというよりも、有機であろうが慣行であろうが、どのぐらい整粒歩合があるかどうかで規格外か規格内かというのは農産物検査において決まりますので、今ほどおっしゃられた中で、有機だと規格外になるのでというのではなく、有機米としての取扱いじゃなく、一般のお米としてJAが引き受ける、多分そういう意味なんじゃないかなということなので、ちょっと申し上げさせていただきたいと思います。
○長友委員 答弁いただきましたけれども、じゃ、認識が間違っているJAがあるということなんですよね。
認識が間違っているJAがあったときに、誰がどうこれを指導する、指摘するんでしょうか。
○平形政府参考人 そのJAの方が先生に対しておっしゃられたことが、我々もお伺いしたいなというふうには思っておりますので、国に対して委託販売するのでその方に対して引受けができないというのは、私は少なくとも誤解だというふうに思っております。それに関しましては、JAの方から我々、あるいは我々がJAの方にお伺いしてでも、やはりそこのところは直していただかなければいけないというふうに思っております。
一方で、みどりの食料システムの中でもやはり有機というのは重要なものでありますし、我々もそれを進めていかなければいけないと思っております。
また、JAグループ自身としても、今年の三月七日に全中が決定いたしました、JAグループの環境調和型の農業取組方針の中においても、JAグループとしても環境調和型の農業に取り組むことということは書かれておりますし、JA単協段階では、部会単位で取組が想定されて、あらかじめ出口戦略を明確にして取り組むことが必要というふうに、JAのグループの運動方針の中でも書かれているわけなので、そういったものを踏まえて、各JAの中でも取り組んでいただけるように、我々も協力を要請したいというふうに考えております。
○長友委員 今、JAグループの中でも出口戦略に取り組みたいと書いてあるという話がありましたけれども、私の地元の理事にも聞きました。二年たちましたけれども、現場に、みどりの食料システム戦略というものに取り組んでいこうということは一切下りてきていないと理事の一人が言っていましたからね。だから、上の皆さんではそうかもしれないけれども、現場では全然そうじゃないという実態があるということなんですね。そこで有機の生産者さんが非常に悔しい思いをしているという実態があるということを、是非認識していただきたいと思うんです。
農水省として、JAの現場で国が目指す方向性と違うことが行われていた場合、誰がそれを改善する指示を出せるのか、指導ができるのかについて教えてください。
○村井政府参考人 お答え申し上げます。
農協法上、制度のたてつけとしては、例えばいわゆる県域JAも含めて、各都道府県のJAは、複数県にまたがらない限りは、監督行政庁は都道府県ということになります。法律に基づく指導というのはそういった意味では都道府県からやっていただくということになるんですが、一方で、国の様々な施策についてJAグループとして協力してほしいという要請、お願いをするということについては、これは法律上の指導とは別の次元の話になりますので、そういったことは、我々国としても、JAグループといろいろな対話をしながらお願いをするということは可能であるというふうに考えております。
○長友委員 みどりの食料システム戦略というものを掲げていて、野心的な目標を掲げているわけですよね、農水省。これはJAさんと一緒にやれなかったら、僕は不可能だと思いますね。その意味でも、何で現場でこういうことが起きているのかというのが非常に疑問なので、今日質問させていただいているわけなんですね。
大臣、現実の問題として、米を十年間有機で作ってこられている生産者さんが、現在二トン余らせて、余らせてという言い方じゃないんですが、売り先がなかなか見つからなくて困っているという声に対して、大臣だったらどういうアドバイスをされますか。
○坂本国務大臣 実際に有機農業に取り組んでおられる方々におきましては、有機農産物を取り扱うネット上のサイトの利用や、近隣の直売所での販売など、消費者への直接販売に取り組んでいらっしゃる方が非常に多いというふうに思います。
それから、有機農産物を取り扱う流通業者や生協等への契約出荷や近隣のレストランへの販売などによりまして安定的な販売先を確保するなど、安定的な供給ルートを確保しながら有機農業の経営の安定を図っていらっしゃる方が多いというふうに思っております。
それに、市町村を核といたしましたオーガニックビレッジの取組の中で、有機農産物の学校給食への導入や、加工品の商品開発に向けた支援などを行っており、市町村や他の有機農業生産者と連携をして取り組んでいただくことも考えられます。
農林水産省といたしましては、引き続き、JAとも、そして消費者や流通業者の方々とも理解の醸成に努めまして、有機農業に取り組む皆さん方に寄り添って対応してまいりたいというふうに思っております。
○長友委員 寄り添っていないと思うんですね。目の前で二トン余っていることに対して、すぐ解決策が欲しいんですよ、頑張っていらっしゃる皆さんは。でも、今の答弁だと、もう有機農業をやる気にならないんじゃないかなと私は本当に思ってしまいます。
一番最初に私が日本の食料安全保障を支える農業経営者の育成ということを申し上げましたけれども、私は、JAの幹部の皆さんもまさに農業経営者であるべきだと思うんですね。なのに現場がこういうふうになっているということに関しては、もっと農水省は積極的にコミットをした方が私はしかるべきだと思うんです。
この関連の質問として、最後、これは現場の理事から実際私にこういう声が上がりました。有機農業をやりたいけれどもなかなかどうやればいいのか、進めていいか分からないということで、各地のJAに有機部会を設置すればいいんじゃないかと理事が言っているんです、JAの理事が。これを、有機部会がないJAの方が多いじゃないですか、農水省からの働きかけが私は強くあってしかるべきだと思うんですが、各地のJAに有機部会をつくるということを、大臣、力強く進めていただくことはできますか。
○平形政府参考人 先ほど申し上げましたけれども、JAグループの運動方針の中でも、単協の中で部会単位、有機部会ですね、部会単位での取組が想定される、出口戦略を明確にして取り組むことが必要というふうに明記されております。
農林水産省としては、JAグループに対する説明や意見交換などを行う中で、組合内での議論を踏まえてになりますけれども、JA段階においても、自らの意思で有機農業に取り組んでいただけるように、引き続きこれは協力を働きかけていきたいというふうに考えております。
○長友委員 最後にしますけれども、大臣のお地元でも農協離れが進んでいるんじゃないでしょうか。私の地元でもそうです。そういう事態をやはり深刻にこれは受け止めるべきだと思いますことを申し上げまして、今日の質問は終わりたいと思います。
○野中委員長 次回は、来る十一日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時一分散会